title
stringlengths
0
199
text
stringlengths
3
3.18k
id
stringlengths
23
32
url
stringlengths
56
65
リン酸オクタカルシウム・コラーゲン複合体を基盤とした高機能骨再生材料の創製
種々のリン酸オクタカルシウム(OCP)・コラーゲン複合体(OCP/Col)を用いてその骨再生能について検討し、(1)OCP/Colは細胞の増殖や接着を促進し、(2)小型動物の埋入試験でOCPの含有量に依存して骨再生能が向上し、生じた新生骨の骨質は経時的に増強し、正常骨組織に匹敵する力学特性を示すこと、(3)大型動物での種々の埋入試験によってその十分な骨再生能を確認し、これら一連の成果によって世界初のOCP/Colを用いた臨床研究を実現するに到った。種々のリン酸オクタカルシウム(OCP)・コラーゲン複合体(OCP/Col)を用いてその骨再生能について検討し、(1)OCP/Colは細胞の増殖や接着を促進し、(2)小型動物の埋入試験でOCPの含有量に依存して骨再生能が向上し、生じた新生骨の骨質は経時的に増強し、正常骨組織に匹敵する力学特性を示すこと、(3)大型動物での種々の埋入試験によってその十分な骨再生能を確認し、これら一連の成果によって世界初のOCP/Colを用いた臨床研究を実現するに到った。まず研究実施計画に基づいて合成OCP及びブタ皮膚由来アテロコラーゲンから、OCP/Col配合比(OCP/collagen比を23:77から83:17)、OCP結晶の微小構造を改変した様々な改変型OCP/Colを作製した.次にそれらの一部を用いてOCP/ColあるいはOCPをコーティングしたプレート上で、マウス骨髄由来間質細胞株ST-2細胞の接着能・増殖能を14日まで解析した結果、OCP/ColはOCP単独と比較してその量に関わらずST-2細胞の増殖や接着を促進すること、結晶学的解析でOCP/Col中のOCPはコラーゲンの存在にも拘らずアパタイトに転換する傾向が認められた。そして小型動物(ラット、マウス)を用いた生物学的解析ではOCP結晶の微小構造が結晶表面の細胞接着や骨再生能を制御することやOCP/Colの骨再生能はOCPの含有量に依存して向上(OCP/collagen比83:17において12週で64%の骨再生率)することを明らかにした。これらの成果は英文専門誌に掲載されるとともにシンポジウム講演(「リン酸オクタカルシウム・コラーゲン複合体による骨再生」:第30回日本バイオマテリアル学会大会、2008年11月)等において学会発表を行った。その他、萎縮歯槽骨の骨造成を念頭にメカニカルストレスの影響を低減し効果的な骨再生を図る除圧支持体を考案し特許出願(骨形成用キットおよび骨形成治具嵩上げリング:特願2008-202549)を行った。昨年度までの研究で小動物においては周囲を骨に囲まれた骨欠損部におけるリン酸オクタカルシウム・コラーゲン複合体(OCP/Col)の有効性が確認されたため、本年度は(1)小動物におけるOCP/Colによる骨造成(骨を盛り上げる)の可能性、(2)大型動物(イヌ)での骨欠損部における骨再生能を評価・検討した。(1)始めに厚さの異なるOCP/Colをラット頭頂骨骨膜下に埋入し,術後412週後に摘出した.厚い試料(3mm厚)では埋入後早期から試料辺縁に多数の酒石酸耐性酸フォスファターゼ(TRAP)陽性多核巨細胞が多数観察され、OCP/Colの吸収が著明で新生骨の形成は少なかった。一方、薄い試料(1mm厚)ではTRAP陽性多核巨細胞は少なく,新生骨の形成が観察されたことから,OCP/Colによる骨造成には周囲のメカニカルストレスの関与が示唆された(Suzuki Y,et al.J Dent Res 88 : 1107-12. 2009)。そこでOCP/Colを骨膜下に埋入する際にOCP/Col周囲を高分子材料PTFEリングで囲むことでメカニカルストレスの緩和を図ったもの(徐圧群)についての骨再生を検討した。徐圧群では埋入12週後に新生骨の造成を確認することができ、メカニカルストレスの緩和によってOCP/Colによる骨造成の可能性が示唆された(Matsui A,etal.Tissue Eng Part A 16 : 139-51, 2010)。本年度は1.小動物骨欠損モデルにおけるOCP/Col埋入で生じた新生骨の骨質評価、2.臨床応用を目指しヒト顎裂を模した大型動物の顎裂モデルにおける骨再生能について検討した。1.ラット頭蓋冠に規格化骨欠損を作製後、同部にOCP/Colを埋入し術後4、12週に生じた新生骨を硬度測定、力学試験(靭性、弾性)、X線学的解析、組織学的に検索した。硬度測定試験結果は力学試験やX線学的解析と相関し、新生骨の骨質は経時的に増強し、組織学的には成熟した骨基質を認めた。術後12週では正常骨組織に匹敵する硬度や力学特性を示した。(Masuda T, et al.,Tissue Eng Part C16,2010)2.OCP/Colあるいはコラーゲンを成犬顎裂モデルに埋入し術後4ヶ月で肉眼的、X線学的、組織学的に骨再生能について検討を加えた。肉眼的にはOCP/Colを埋入した歯槽部は顕著に造成され、同部はX線不透過像を示し既存骨と欠損部の境界は不明瞭であった。
KAKENHI-PROJECT-20300165
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20300165
リン酸オクタカルシウム・コラーゲン複合体を基盤とした高機能骨再生材料の創製
組織学的には欠損部は新生骨で満たされ既存骨と骨架橋がなされた。一方、コラーゲン埋入群は肉眼的に陥凹した歯槽部を呈し、主として線維性結合組織で満たされ、新生骨は骨欠損辺縁に少量認めるのみであった。従って成犬顎裂モデルにOCP/Colを埋入すると、同部は明確に骨によって修復されることが示された。(Matsui K, et al.,Int J Oral Maxillofac Surg 39,2010)更に本研究の一連の成果を基にヒトを対象とした臨床研究(リン酸オクタカルシウム(OCP)・コラーゲン複合体による骨再生治療:鎌倉慎治、越後成志、鈴木治、松井桂子)を策定し、本学歯学研究科倫理専門委員会での研究計画実施許可を得、世界初のOCP/Colを用いた臨床研究を開始するに到った。
KAKENHI-PROJECT-20300165
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20300165
農地や森林の活用を視野に入れた高齢者の自主活動が介護予防に寄与できるか
本研究は、宮城県登米市の3地区(農地での活動用運動プログラム提案地区、森林での活動用運動プログラム提案地区、従来からの高齢者ボランティアリーダー研修会年3回実施地区)を対象として、中山間地の特性を生かし、農地や森林での活動を視野に入れた高齢者の自主的運動プログラムを検討した。農地での作業動作と作業者のインタビューから、作業は休憩を任意に取りながら、時に椅座位を多用して作業をしている実態が明らかになり、有酸素作業負荷はほとんどなく、中腰の姿勢による腰部の筋疲労を軽減することや、腰背部・大腿後面の柔軟性を高めておくことの必要性が示唆された。一方、森林での運動プログラムは、高齢者にとって軽度から中等度の運動強度であり、コースの設定を多様にすれば、高齢者の体力水準に応じたプログラムの提供が可能となり、歩行運動の習慣化のきっかけとして利用できることが示唆された。その結果から、農作業時に実践できる運動プログラムや森林歩行に利用する竹杖を使った運動プログラムを提案した。本研究は、宮城県登米市の3地区(農地での活動用運動プログラム提案地区、森林での活動用運動プログラム提案地区、従来からの高齢者ボランティアリーダー研修会年3回実施地区)を対象として、中山間地の特性を生かし、農地や森林での活動を視野に入れた高齢者の自主的運動プログラムを検討した。農地での作業動作と作業者のインタビューから、作業は休憩を任意に取りながら、時に椅座位を多用して作業をしている実態が明らかになり、有酸素作業負荷はほとんどなく、中腰の姿勢による腰部の筋疲労を軽減することや、腰背部・大腿後面の柔軟性を高めておくことの必要性が示唆された。一方、森林での運動プログラムは、高齢者にとって軽度から中等度の運動強度であり、コースの設定を多様にすれば、高齢者の体力水準に応じたプログラムの提供が可能となり、歩行運動の習慣化のきっかけとして利用できることが示唆された。その結果から、農作業時に実践できる運動プログラムや森林歩行に利用する竹杖を使った運動プログラムを提案した。研究対象地域の65歳以上住民から5分の1を無作為に抽出し実態調査を実施した。4,459人から回答が得られ(回収率95%)、そのうち有効な回答の得られた4,070人を平成18年に実施されたデータと比較分析した(有効回答86.7%)。その結果、介護サービスを受けている者の割合はやや増加していたものの、特定高齢者候補者(平成18年当初の選定基準による)の割合はわずかながら減る傾向がみられ、虚弱高齢者予備軍の増加が少なからず抑制された可能性が示唆された。市全体で取り組んできたポピュレーションアプローチにより、要支援・要介護者を水際で押さえ込む介護予防事業がそれなりに機能している可能性がみられたことから、本研究で対象とする3地区で養成・研修会に参加している高齢者ボランティアリーダーが接する機会が想定される65歳以上地域住民をリストアップし、高齢者ボランティアリーダーを通じて地域を行われる様々な健康づくり活動の効果を比較分析するためのベースラインならびにフォローアップ調査対象者を選定した。選定された1012人にベースライン調査を実施し926人から回答を得た。3地区のうち農作業型運動プログラム実施地区が、他の2地区(森林浴型運動プログラム実施地区と対照地区)に比べ年齢が高く、対照地区は他の2地区に比べ男性の割合が高いという差異はあるものの、概ね社会参加や健康度、生活機能ならびに生活体力等には差異はみられなかった。これら3地区のうち2地区において高齢者ボランティアリーダーに対する養成・研修会を通じて、本研究で提案する2つの運動プログラム創案に向けた講話と試案の実技指導を展開した。年度終盤に発生した東日本大震災により、運動プログラム作成にかかわる動作分析や運動量の測定は実施することが当面不可能となったことや、養成・研修会開催の目処がつかなくなったことから研究費の繰り越し申請を行い、次年度の実施に向けて計画を変更することになった。平成22年度末に発生した東日本大震災の影響で、高齢者ボランティアリーダー養成研修会の実施が当初の予定よりも3ヶ月ほど遅れた。そのため、2つの介入地区で作成された2種類の運動プログラムの試案については、作成し研修会参加高齢者との実践、地域での伝達支援を行うに留まり、農作業型運動プログラム試案の農作業時の動作内容や身体活動量の測定や、森林浴型運動プログラムの身体活動量の測定を断念した。地域での伝達支援については、高齢者ボランティアリーダーが指導を行う軽運動のプログラムのパンフレットならびにDVD映像などの教材を作成し提供した。また地域の集会所等にDVD映像などを投影する機器が設置されていないところが多いため、教材とともに機材を貸し出すように配慮した。この教材に基づき、運動指導を行うとともに、研修会で受講した講話の内容(低栄養予防、口腔ケアなど)について地域高齢者に対して伝達を行った高齢者ボランティアリーダーに対して、活動の状況等に関する個別ならびにグループインタビューを実施した。その結果、地域での自主的な活動を促進していくための方策について、複数のリーダーによるチーム編成で他の地域の活動に支援に入るなど、いくつかの有益な意見が提案され、これらの意見を集約し次年度の活動計画に反映することになった。また、平成22年度のベースライン調査を実施した3地区で、訪問面接によるフォローアップ調査を実施した。追跡可能だった対象者は885人であった。得られた調査結果から1年間の変化を分析した結果、各地区とも対象者の生活機能や生活体力などは同様に低下する傾向がみられたが、追跡期間と地区による有意な交互作用は認められなかった。
KAKENHI-PROJECT-22300239
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22300239
農地や森林の活用を視野に入れた高齢者の自主活動が介護予防に寄与できるか
したがって、追跡1年間の変化からは各地区の介入プログラムを反映するような差異はみられなかった。これまでに作成された2種類の運動プログラムを、昨年度に引き続き、地域高齢者の実践や地域での伝達支援を年10回の講座と実践記録の配布回収により実施した。農作業型運動プログラム作成に参考とする農作業時の動作内容について、ビデオ撮影による動作姿勢の確認と実施者へのインタビューを行い、森林での運動量については、歩数計と携帯型呼気ガス分析機を用いて測定を行った。地域での伝達支援については、昨年度同様、軽運動のプログラムのパンフレットならびにDVD映像などの教材貸出とそれを投影する機材の貸し出しを行った。初年度にベースライン調査を実施した3地区(A地区:農地での活動用運動プログラム提案地区、F地区:森林での活動用運動プログラム提案地区、C地区:従来からの高齢者ボランティアリーダー研修会年3回実施地区)で、昨年度に引き続き、2回目のフォローアップ調査を実施した。分析対象者は、2年間追跡可能だった885人から3年間追跡可能だった対象者は841人と減少した。追跡1年目では、各地区ともに対象者の生活機能や生活体力などは同様に低下する傾向がみられたが、2年目も地区間で顕著な差は認められなかった。農地での作業動作と作業者のインタビューから、作業は休憩を任意に取りながら、時に椅座位を多用して作業をしている実態が明らかになり、有酸素作業負荷はほとんどなく、中腰の姿勢による腰部の筋疲労を軽減することや、腰背部・大腿後面の柔軟性を高めて置くことの必要性が示唆された。一方、森林での運動プログラムは、高齢者にとって軽度から中等度の運動強度であり、コースの設定を多様にすれば、高齢者の体力水準に応じたプログラムの提供が可能となり、歩行運動の習慣化のきっかけとして利用できることが示唆された。これらの結果をもとに、農作業時に実践できる運動プログラムや森林歩行に利用する竹杖を使った運動プログラムを提案した。東日本大震災により、研究対象地域の保健師や栄養士が被災者支援の業務等に忙殺され、本研究への協力を依頼できる状況が2011年3月中旬から6月下旬まで続いた。そのため、当初予定していた運動プログラムを実施した際の身体活動量の測定の実施を断念した。さらに、地域住民の中には震災により親族が被災した者も少なくなく、彼らの心情を斟酌して、介入プログラムの地域への伝達についてもあまり強く要請することを避けた。以上の理由により、当初の計画の3分の1程度が遂行できていない状況にある。24年度が最終年度であるため、記入しない。今後は、平成22年度、23年度に遂行できなかった研究内容について平成24年度に内容を縮小して実施するよていである。また介入効果の分析には、震災による影響なども考慮して結果の考察を行う予定である。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22300239
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22300239
エストロゲンで視床下部に発現する新しい蛋白質の機能解析
Differential display法を用いてラット性周期に関連して、エストロゲンにより視床下部に発現する遺伝子探査を行い、卵巣摘出ラット視床下部にエストロゲン投与により発現するcDNA(60bp PCR産物)を得ていた。またこのcDNA(ITE)をプローブとして、ラット性周期の各ステージの視床下部RNAをノーザンブロット法にて調べたところ、発情前期の午前に一過性に発現するmRNA(2.53kb)を同定していた。今回、このmRNAに対するcDNAの単離を試みた。(1)ラット発情前期(午前10時)の視床下部RNAよりcDNAライブラリーを作成し、60bpのcDNA(ITE)をプローブとしてスクリーニングを行った。いろいろなハイブリダイゼーション条件、wash条件にて10個のcDNAを得たが、いずれにおいてもノーザン解析において性周期に特異的発現変化はなく、また上記2.53kb mRNAに相当するものが単離できなかった。(2)60bpのcDNAシークエンスをもとに各種プライマー(12種)を合成し、3′RACE法にて発情前期午前10時に一過性に発現するcDNA単離を試みた。約20個のPCR産物をノーザン解析したが、目的とするcDNAは同定できなかった。現在、cDNAライブラリーの作製をやり直しており、再度2.53kb mRNAに対するcDNA単離を試みている。また、Suppression PCR法を用い、発情前期の視床下部に特異的に発現するcDNA単離を行っているところである。今後、目的とした遺伝子が得られ次第、リコンビナント蛋白質、モノクロナール抗体等を作製し、その機能の解明に進む予定である。Differential display法を用いてラット性周期に関連して、エストロゲンにより視床下部に発現する遺伝子探査を行い、卵巣摘出ラット視床下部にエストロゲン投与により発現するcDNA(60bp PCR産物)を得ていた。またこのcDNA(ITE)をプローブとして、ラット性周期の各ステージの視床下部RNAをノーザンブロット法にて調べたところ、発情前期の午前に一過性に発現するmRNA(2.53kb)を同定していた。今回、このmRNAに対するcDNAの単離を試みた。(1)ラット発情前期(午前10時)の視床下部RNAよりcDNAライブラリーを作成し、60bpのcDNA(ITE)をプローブとしてスクリーニングを行った。いろいろなハイブリダイゼーション条件、wash条件にて10個のcDNAを得たが、いずれにおいてもノーザン解析において性周期に特異的発現変化はなく、また上記2.53kb mRNAに相当するものが単離できなかった。(2)60bpのcDNAシークエンスをもとに各種プライマー(12種)を合成し、3′RACE法にて発情前期午前10時に一過性に発現するcDNA単離を試みた。約20個のPCR産物をノーザン解析したが、目的とするcDNAは同定できなかった。現在、cDNAライブラリーの作製をやり直しており、再度2.53kb mRNAに対するcDNA単離を試みている。また、Suppression PCR法を用い、発情前期の視床下部に特異的に発現するcDNA単離を行っているところである。今後、目的とした遺伝子が得られ次第、リコンビナント蛋白質、モノクロナール抗体等を作製し、その機能の解明に進む予定である。
KAKENHI-PROJECT-08680864
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08680864
家族性高コレステロール血症の新規原因遺伝子の網羅的解析
LDL受容体変異が同定されたが、新規分子の同定には至らなかった。国際共同研究の結果、同様の41家系のうち、9家系において責任変異の同定に至ったが、やはり新規分子の同定には至らなかった。また劣性形式のFH家系に対して同様に解析を行ったが、LDL受容体に突然変異(c.1136G>A or p.Cys379Tyr)が確認された。本症においてこのような報告は世界初であると思われる。また、全エクソーム領域の中で、突然変異は1個程度起こり得ることは、これまでの網羅的遺伝子解析により推定されていたが、我々の解析においてこの現象を再現することができた。人類遺伝学的にも貴重なデータであると思われる。臨床的に家族性高コレステロール血症と診断した症例に対して、LDL受容体及びその関連蛋白遺伝子変異スクリーニングを行った。スクリーニングには我々が独自に考案したスキームを用いた(MLPA法、HRM法により簡便にスクリーニングする手法)。既知遺伝子変異が否定された4家系20名に対して全エクソームシークエンシング解析を行った。解析後はエクソーム領域に約10万個の変異が確認されたが、バイオインフォマティックス解析により、遺伝子変異の変異機能障害予測・変異の頻度・家系内の表現型との照らし合わせの3つのフィルターにより、責任変異の同定を試みた。4家系中1家系においてLDL受容体にミスセンス変異が確認された。スクリーニングで用いたHRM法でのプライマー設計の部位にやや問題があったことが要因の一つであると推定された。しかし残る3家系の解析においても、合理的な責任変異の同定には至らなかった。そこで、同様の解析を行っていた米国マサチューセッツ総合病院ヒトゲノム研究所Sekar Kathiresan博士を中心に国際共同研究を遂行し、同様の調査を行った41家系213例での解析を評価した(我々の家系も含む)。41家系中9家系において、責任変異の同定が可能であったが、新規責任遺伝子の発見には至らなかった。要因としては、非コーディング領域に責任変異が存在する可能性、ないしは、多遺伝子原性の可能性が示唆された(Stitziel NO, Tada H, et al. Circ Cardiovasc Genet. 2015 in press)。遺伝子診断が未確定の家族性高コレステロール血症例に対して網羅的遺伝子解析法(エクソームシークエンシング法)で未解明の原因分子を同定し、その機能を明確とすることを目的とした研究である。このような極端な症例・家系に対して昨年度に引き続き、全エクソームシークエンシング法を用いて網羅的遺伝子解析を遂行した。その中で、本症は通常優性遺伝形式を呈する(両親のいずれかに同様の臨床像が認められる)が、劣性遺伝形式を呈する(両親に臨床像が認められない)家系を同定し、本家系に対して全エクソームシークエンシング解析を行った。新規分子の同定には至らなかったものの、LDL受容体にいわゆるde novo変異(c.1136G>A or p.Cys379Tyr)が確認された(両親に同変異は認められなかった)。このような突然変異は全エクソーム領域にわたり、本変異のみであった。これにより、LDL受容体においてこのような突然変異が起こり得ること、さらにはこのような突然変異により本症臨床像を呈すること、全エクソーム領域において突然変異は1個のみであったことを示した。本症においてこのような報告は世界初であると思われる。また、全エクソーム領域の中で、突然変異は1個程度起こり得ることは、これまでの網羅的遺伝子解析により推定されていたが、我々の解析においてこの現象を再現することができた。人類遺伝学的にも貴重なデータであると思われる。LDL受容体変異が同定されたが、新規分子の同定には至らなかった。国際共同研究の結果、同様の41家系のうち、9家系において責任変異の同定に至ったが、やはり新規分子の同定には至らなかった。また劣性形式のFH家系に対して同様に解析を行ったが、LDL受容体に突然変異(c.1136G>A or p.Cys379Tyr)が確認された。本症においてこのような報告は世界初であると思われる。また、全エクソーム領域の中で、突然変異は1個程度起こり得ることは、これまでの網羅的遺伝子解析により推定されていたが、我々の解析においてこの現象を再現することができた。人類遺伝学的にも貴重なデータであると思われる。独自に考案したスキームにより概ね予定数の家系に対して全エクソームシークエンシング解析を行い得た。27年度が最終年度であるため、記入しない。循環器内科さらに表現型の明確な家系に絞り同様の解析を遂行することを念頭においているが、全ゲノムシークエンシング解析まで発展させることも検討中である。27年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-26893094
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26893094
高温超伝導体におけるネルンスト効果と磁気プラズマ共鳴吸収に関する研究
今年度この研究目的に沿って半導体で行った研究の概要とその研究方法の高温超伝導体への適用結果について報告する。1.赤外線照射によるネルンスト効果試料の一部を光で励起し、その光を吸収して局所的に非平衡になった電子系が磁場の印加の下で平衡に達する流れを生じる際に起電力が発生する現象をネルンスト効果という。例として、InSbの試料の表面をバンドギャップより大きなエネルギーを有する光と遠赤外レーザー光の両方で照射した結果を示す。先ず、遠赤外レーザーを照射しない場合、表面で励起された電子と正孔は拡散によって試料の内部に流入する。磁場の印加によって電子と正孔は試料の別々の端に集積され、それによって起電力が発生する。磁場を強くすると発生する電圧はローレンツカの増大によって大きくなる。更に、遠赤外レーザーを照射すると表面の電子は特定の共鳴磁場のところでサイクロトロン共鳴によってエネルギーを獲得し、そのエネルギーを試料内部に運搬する。そのエネルギーの流れがまた起電力を発生する。後者を共鳴光電磁効果(Resonance-Photo-Elcctro-Magnetic effect)と称する。試料が超伝導体の場合には励起光として炭酸ガスレーザーを用いた。2.マイクロ波を用いたプラズマ励起とフアラデー回転直交して配置したマイクロ波導波管の間に試料を挟む。導波管内を伝播するマイクロ波電場の振動方向は限定されているので、境界部に試料が無い場合マイクロ波は直交してはいちされた導波管を透過することはできない。境界に試料を挟み、磁場を印加すると試料内部の電子プラズマと磁場によるサイクロトロン運動の結合モードとマイクロ波との相互使用によって電場の振動方向が変化し、直交した導波管の間でもある程度透過するようになる。これはいわゆる磁気ブラズマによって誘導されるフアラデー回転である。このマイクロ波の振動方向の回転角によって電子プラズマの特徴を探ることができる。半導体ではGaAsの2次元電子系を、高温超伝導体ではLaSrCuO系を研究した。いずれの場合も高温超伝導体に関する信号は微小で系統的な解析には到らなかった。次年度以降、S/Nの改善を目指す。今年度この研究目的に沿って半導体で行った研究の概要とその研究方法の高温超伝導体への適用結果について報告する。1.赤外線照射によるネルンスト効果試料の一部を光で励起し、その光を吸収して局所的に非平衡になった電子系が磁場の印加の下で平衡に達する流れを生じる際に起電力が発生する現象をネルンスト効果という。例として、InSbの試料の表面をバンドギャップより大きなエネルギーを有する光と遠赤外レーザー光の両方で照射した結果を示す。先ず、遠赤外レーザーを照射しない場合、表面で励起された電子と正孔は拡散によって試料の内部に流入する。磁場の印加によって電子と正孔は試料の別々の端に集積され、それによって起電力が発生する。磁場を強くすると発生する電圧はローレンツカの増大によって大きくなる。更に、遠赤外レーザーを照射すると表面の電子は特定の共鳴磁場のところでサイクロトロン共鳴によってエネルギーを獲得し、そのエネルギーを試料内部に運搬する。そのエネルギーの流れがまた起電力を発生する。後者を共鳴光電磁効果(Resonance-Photo-Elcctro-Magnetic effect)と称する。試料が超伝導体の場合には励起光として炭酸ガスレーザーを用いた。2.マイクロ波を用いたプラズマ励起とフアラデー回転直交して配置したマイクロ波導波管の間に試料を挟む。導波管内を伝播するマイクロ波電場の振動方向は限定されているので、境界部に試料が無い場合マイクロ波は直交してはいちされた導波管を透過することはできない。境界に試料を挟み、磁場を印加すると試料内部の電子プラズマと磁場によるサイクロトロン運動の結合モードとマイクロ波との相互使用によって電場の振動方向が変化し、直交した導波管の間でもある程度透過するようになる。これはいわゆる磁気ブラズマによって誘導されるフアラデー回転である。このマイクロ波の振動方向の回転角によって電子プラズマの特徴を探ることができる。半導体ではGaAsの2次元電子系を、高温超伝導体ではLaSrCuO系を研究した。いずれの場合も高温超伝導体に関する信号は微小で系統的な解析には到らなかった。次年度以降、S/Nの改善を目指す。
KAKENHI-PROJECT-10142207
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10142207
持続可能な消費概念の実体化による環境共生都市形成の促進
川崎市の一般廃棄物処理に対して、容器包装プラスチックを含む可燃ごみと不燃ごみを「普通ごみ」として混合収集し、全量焼却処理する「現状案」、容器包装プラスチックを「プラごみ」として分別収集して直接埋立する「代替案I」、容器包装プラスチックを分別収集して高炉原料化する「代替案II」を想定した。ごみ量について「増減なし」「5%減」「10%減」、ごみの混入率について「0%」「5%」「10%」という状況を想定し、それらと各案を組み合わせ21のシナリオを設定した。各シナリオについて、「インベントリ分析」および「インパクト評価」という手順で、各評価指標の値を推定した。この際、LCA的な考え方で評価範囲を設定し、消費段階のみではなく、生産・供給段階も含めたインベントリを考慮した。地域的な影響項目については、コンジョイント分析を用いて、川崎市の住民の価値判断を反映させて貨幣換算した。手賀沼水域の河川のアメニティー空間としての価値を評価すべく、水域住民を対象にオンラインアンケートを実施して、河川の代表的な属性である水質、水量の持つ金銭的価値を示した。評価属性を指標として個人属性、水辺の利用方法・魅力の関係を解析した結果、水辺を日常的に利用している市民、水辺独特の魅力にひかれる市民は、水辺の価値を高く評価しており、その価値選好の強度は水量に対する選好度合が指標となりうることがわかった。また、水辺の持つ価値及び整備に係るライフサイクル消費エネルギーの評価も考慮した上で、費用便益分析により排水処理整備施策を抽出した結果、排水の分散処理が市民に支持されうることがわかった。これは、今後の流域の排水2マネジメントを考える上で重要な知見であると結論づけられる。これらの検討は、廃棄物と水の面から消費者側の市民の意見を取り込んだ環境共生型都市の形成に資することをめざしたもので、本方法の将来性を示した。持続可能な消費に対する人々の受け止め方を把握するために、水と廃棄物の両者を対象にして、それらの利用形態を変更することに対する受容性をコンジョイント分析などの方法で解析した。まず、水に対しては、味の良い水を求める人々の性向が明確である今日の状況の下で二元給水などのシステムの導入とそれに伴う経費負担に対する受容性を、現状で味が良好とされる水道水質の地域(武蔵野市)と不良とされる地域(東京都北区)を東京都内で抽出しコンジョイント分析を行った。解析結果から、北区および武蔵野市の住民は、エネルギー消費量の減少や、飲料水の味および臭いの改善に対して一定の価値を感じていることが分かった。飲料水の味や臭いの改善に対する評価は、両地区で差があるとは言い切れなかった。現状の水道水の質に対する満足度の差(武蔵野市の住民は、北区の住民と比べて満足度が高い)は、北区の住民については二元給水という新しいシステムに対する期待感があり、武蔵野市の住民については現状維持を望む傾向が強いという形で評価結果に表れた。また、エネルギー消費量の減少に対する評価は、北区の住民よりも武蔵野市の住民の方が高いことが示された。水道水の質に対する満足度が高くなることは、消費者が省エネルギー型の飲料水の利用形態を受容するための必要条件ではないことを示唆している。一方廃棄物に対しては、プラスチックごみの分別収集やごみ収集の有料化に対する住民意識を統計的に解析した。解析結果から、分別収集に対する受容性の方が、有料化に対する受容性よりも高いことが示された。分別収集に対する受容性に影響を与える要因としては、環境改善に対する期待感が正の影響を与え、手間の負担感が負の影響を与えることが分かった。有料化に対する受容性に影響を与える要因としては、ごみの減量・分別に対する期待感が正の影響を与えることが分かった。川崎市の一般廃棄物処理に対して、容器包装プラスチックを含む可燃ごみと不燃ごみを「普通ごみ」として混合収集し、全量焼却処理する「現状案」、容器包装プラスチックを「プラごみ」として分別収集して直接埋立する「代替案I」、容器包装プラスチックを分別収集して高炉原料化する「代替案II」を想定した。ごみ量について「増減なし」「5%減」「10%減」、ごみの混入率について「0%」「5%」「10%」という状況を想定し、それらと各案を組み合わせ21のシナリオを設定した。各シナリオについて、「インベントリ分析」および「インパクト評価」という手順で、各評価指標の値を推定した。この際、LCA的な考え方で評価範囲を設定し、消費段階のみではなく、生産・供給段階も含めたインベントリを考慮した。地域的な影響項目については、コンジョイント分析を用いて、川崎市の住民の価値判断を反映させて貨幣換算した。手賀沼水域の河川のアメニティー空間としての価値を評価すべく、水域住民を対象にオンラインアンケートを実施して、河川の代表的な属性である水質、水量の持つ金銭的価値を示した。評価属性を指標として個人属性、水辺の利用方法・魅力の関係を解析した結果、水辺を日常的に利用している市民、水辺独特の魅力にひかれる市民は、水辺の価値を高く評価しており、その価値選好の強度は水量に対する選好度合が指標となりうることがわかった。また、水辺の持つ価値及び整備に係るライフサイクル消費エネルギーの評価も考慮した上で、費用便益分析により排水処理整備施策を抽出した結果、排水の分散処理が市民に支持されうることがわかった。これは、今後の流域の排水2マネジメントを考える上で重要な知見であると結論づけられる。
KAKENHI-PROJECT-17656169
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17656169
持続可能な消費概念の実体化による環境共生都市形成の促進
これらの検討は、廃棄物と水の面から消費者側の市民の意見を取り込んだ環境共生型都市の形成に資することをめざしたもので、本方法の将来性を示した。
KAKENHI-PROJECT-17656169
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17656169
気候別アジア地域水田の温室効果ガス発生・吸収機構の解明と発生削減管理法の開発
水田における温室効果ガス(CO_2, CH_4, N_2O)動態は、周日変動している事が分かった。CO_2については、イネの光合成の影響が大きかったが、CH_4とN_2Oについては、地温の影響によって土壌微生物の活動が変動するために生じたと考えられる。一方、日本とタイ国水田での比較から、地温よりも施肥管理等の方が温室効果ガス動態に大きな影響を与える事が示唆された。DNDCモデル実験により、間断灌漑を適用すると温室効果ガス発生量は増加するが、収量も増加するので、単位収量当りの温室効果ガス発生量が最小になる事が予測された。(1)営農条件下に置かれた水田において周年にわたるCH_4、N_2Oの発生量と吸収量と土壌の水分と電気伝導度の変動および湛水深を経時的に把握する。(2)土壌中に含まれるアンモニア態窒素(NH_4^+)・硝酸態窒素(NO_3^-)濃度および窒素安定同位体比(δ^(15)N)を時系列に沿って測定することによってN_2Oの発生源と機構を特定する。(3)既存の温室効果ガス発生モデルDNDCを援用することによって、これらのガスの純発生量を削減するための水分管理法及び施肥管理法を開発する。(4)熱帯地方(タイ)から冷温帯地方(北海道)に至る水田においてCH_4、N_2Oの発生・吸収状況を同時期に測定することによって、気候条件の違いによる発生量及び吸収量への影響を定量的に把握する。水田における温室効果ガス(CO_2, CH_4, N_2O)動態は、周日変動している事が分かった。CO_2については、イネの光合成の影響が大きかったが、CH_4とN_2Oについては、地温の影響によって土壌微生物の活動が変動するために生じたと考えられる。一方、日本とタイ国水田での比較から、地温よりも施肥管理等の方が温室効果ガス動態に大きな影響を与える事が示唆された。DNDCモデル実験により、間断灌漑を適用すると温室効果ガス発生量は増加するが、収量も増加するので、単位収量当りの温室効果ガス発生量が最小になる事が予測された。(1)調査地の選定4調査地の選定を行なった。タイ国では、カセサート大学カンペンサン校のキャンパス内に在る大学所有の水田に決定した。AC電源が既に確保できており、十分なフェッチも見込めることから決定した。九州では、九州沖縄農研センター筑後分場内の水田に決定した。AC電源が近くまで来ていることと十分なフェッチが確保できるので決定した。神奈川県では、平塚市の一般農家の水田を借り上げることにした。AC電源を既に設置した。さらに、十分なフェッチが確保できる。北海道でも一般農家の水田を借り上げることにした。AC電源が近くまで来ている上に、十分なフェッチの確保が可能である。(2)選択的サンプリング渦相関法測定装置の組立と試運転光音響式多種ガスモニターと3次元超音波風速計から構成される選択的サンプリング渦相関法測定装置を組立て、学内で試運転を行なった。一部改良を要するところが見つかったので、引き続き改良中である。(3)TDR水分測定装置の組立とTDRプローブの製作水分測定装置は、TDR水分計、TDR用マルチプレクサ、TDRプローブ、データロガーで構成した。土壌水分量・NO3濃度測定用に長さ15cm、30cm、45cm、60cmプローブを、また湛水深測定用に長さ60cmプローブを製作した。湛水深測定に対して実験的に測定可能であることを確認した。(5)ポストドク研究支援者の雇用若手研究者育成のために、ポストドク研究支援者を雇用した。引き続き雇用中である。(6)既存モデルを使った管理法の開発DeNitrification-DeComposition(DNDC)モデルを使って、CH_4、N_2Oの排出削減を目指した適切な管理法の開発が可能かどうかを引き続き検討中である。(1)ガスフラックスの原位置測定タイ国,熊本県,神奈川県,北海道の各地に選定した調査地において,選択的サンプリング渦相関法測定装置を使ってガスフラックスの測定を30分間隔で行った。ガスモニターの故障等で各地での測定期間は極めて限定的となった。使用したガスモニターは,屋外において長期間安定的に無人運転することは困難であることが分かった。さらに,水佃におけるCH_4,N_2Oガス濃度が非常に小さいために,ガスモニターの測定限界以下になる場合が多いことが分かったので,対応策を検討中である。(2)土壌環境の原位置測定選択的サンプリング渦相関法測定装置の設置と同時にTDR水分測定装置を設置する。土壌水分量,電気伝導度,湛水深,酸化還元電位を30分間隔で連続的に測定した。併せて環境条件の測定も30分間隔で行なった。(3)土壌中に含まれるアンモニアおよび硝酸態窒素の化学的抽出調査水田の土壌採取は,ガスフラックスが測定できなかったので行わなかった。δ^<15>Nの測定は,測定値の変動が大きいことから中止した。神奈川県平塚市、福岡県筑後市、北海道美唄市、タイ国に温室効果ガスフラックス測定装置を設置した。光音響式ガスモニターの性能が仕様と異なる事が判明したが、試行錯誤の末、除湿装置を取り付ける事によってCH4フラックスが測定可能である事がわかった。しかし、除湿するとガスモニターの仕様上、CO2, N20と水蒸気フラックスの測定ができない。
KAKENHI-PROJECT-18208021
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18208021
気候別アジア地域水田の温室効果ガス発生・吸収機構の解明と発生削減管理法の開発
そこで、ガスモニターへの吸気ラインを除湿ラインと非除湿ラインの2系統として一定時間毎に切り替える事で、計画通りにCO2, N20, CH4ガスフラックスを同時に測定することが可能となった。本研究で採用した選択的サンプリング渦集積法により測定した顕熱フラックスと潜熱フラックスは、従来法による測定値と極めて良好に一致した。この事から、他の温室効果ガスにおいても正確なフラックス測定が可能であると推測できた。しかし、水田における温室効果ガス濃度が大気中の濃度に非常に近く、ガスモニターの測定下限値に近い事と上下向き風に含まれる温室効果ガスの濃度差がガスモニターの最大分解能よりも小さい事が多いことから、1年間を通した精度の高いガスフラックスの測定が困難である事が判明した。また、環境条件が非常に過酷な屋外でのガスモニターの連続運転は、極めて困難である事も分かった。従って、測定装置を設置した4カ所において計画のように同時期に温室効果ガスフラックスを測定して比較する事ができなかった。水田からのCH_4の発生は湛水時に多く、落水とともに減少する。N_2Oの発生は湛水時にはほとんど無く、落水時に急激に増加する。また、水田からのCH_4、N_2Oの発生は土壌温度、土壌の酸化還元電位、有機物量などの環境条件による影響を受けていることが報告されている。稲作の盛んな地域は熱帯地方から冷温帯地方へと広がっており、それぞれの気候帯で環境条件が異なることが予想される。REA法とチャンバー法との比較実験をタイ国カセサート大学カンペンセーン校内の実験圃場において行った。CH_4フラックスにおけるREA法とチャンバー法との比較を示した。今回の実験により、REA法とチャンバー法によるCH_4フラックスは良く一致し、REA法が水田において実用可能であることがわかった。イネの出穂開花期においてタイと平塚で、ガスの発生と吸収を比較した。出穂開花期においてCH_4のフラックスの平均値はタイの方が平塚よりも大きいことが観察された。タイのCH_4発生が平塚に比べて大きいのは、平塚に比べて地温が大きいために、土壌中のメタン生成菌の活動が活発となったことが考えられる。出穂開花期におけるN_2Oのフラックスの平均値は、平塚の方がタイよりも大きいことが観察された。出穂開花期において、水田土壌がタイに比べて平塚の方が環元状態であるにも関わらず、平塚の方がN_2Oの発生が大きくなった。このため、温室効果ガス発生に対する環境要因をより厳密に調査していく必要があると考えられる。本研究の結果により、気候条件の違いにより、水田からの温室効果ガスの発生量は変化することが測定された。また、一つの原因として農法や管理法の違いであることが示唆された。農耕地からの温室効果ガス発生を削減していくにあたって、気候条件・環境条件の違い、農法や管理法は非常に重要な要素であると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-18208021
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18208021
脊髄グリア細胞に対するニコチンレセプターアゴニストの効果
ニコチン型アセチルコリンレセプターアゴニストの細胞内カルシウムレベル変化に及ぼす影響を調べるためにFura-2を用いた培養アストロサイトの細胞内カルシウムモニタリングで、潅流液中にニコチン型アセチルコリンレセプターアゴニストであるmethylcarbamylcholineを加えると、約5分後に細胞内カルシウムレベルの上昇が観察された。methylcarbamylcholineのEC50は約70nMと考えられ、100nMではsubmaximalな効果が得られた。次にニコチン型アセチルコリンレセプターアゴニストの培養マイクログリアに対する機能を検討した。培養マイクログリアをエンドトキシンであるLPSで刺激すると、NOやTNF-αが発生することが知られている。培養マイクログリアに100ng/mlのLPSを加え、24時間後に培養液中に放出されたNO2とTNF-αを測定したが、methylcarbamylcholineの投与は影響を及ぼさなかった。次に培養マイクログリアにアデノシンレセプターアゴニストであるCl-adenosineを投与すると12時間後に細胞質内の断片化DNAが出現するが、methylcarbamylcholineを更に加えるとmethylcarbamylcholineの濃度に依存して、Cl-adenosineにより引き起こされるアポトーシスガ増強された。今後の研究としては更にmRNAレベルでのサイトカイン合成に対するアデノシンの影響を調べていきたい。ラット脊髄より培養したマイクログリアを用いてニコチン型アセチルコリンレセプターの作用を調べた。即ち、ニコチン型アセチルコリンレセプターの刺激がアルツハイマー病などの神経変性疾患に関与していると考えられているマイクログリアにどのような影響を与えるかを調べる研究である。まず、我々はLPS刺激による培養マイクログリアからのTNF-αやNOの放出がニコチン型アセチルコリンレセプターアゴニストのMethylcarbamylcholine(MCC)の投与により変化するかどうかを観察した。培養マイクログリアをLPS(100ng/ml)に24時間暴露し、培地中に放出されたTNF-αとNOをそれぞれELISA法とGries reactionで測定した。結果は残念ながら影響が無いというものであった。続いてMCCがマイクログリアの細胞死を引き起こす可能性を検討するためベーリンガー社の細胞アポトーシス検出キットを用いた検討を行った。MCCは投与後約12時間で培養マイクログリアのDNAにfragmentationを濃度依存性に引き起こすことが観察された。今後は、このキット以外に形態的観察などを加え、ニコチンのマイクログリアに対する効果をさらに詳細に調べていく予定である。また、マイクログリア以外のグリア細胞であるアストロサイトの培養も行っており、この細胞に対するMCCの効果も検討を行う。アポトーシスやTNF-α、NOなどの比較的遅い反応のみでなく細胞内カルシウム変化などの速い変化についても検討を加えたい。ニコチン型アセチルコリンレセプターアゴニストの細胞内カルシウムレベル変化に及ぼす影響を調べるためにFura-2を用いた培養アストロサイトの細胞内カルシウムモニタリングで、潅流液中にニコチン型アセチルコリンレセプターアゴニストであるmethylcarbamylcholineを加えると、約5分後に細胞内カルシウムレベルの上昇が観察された。methylcarbamylcholineのEC50は約70nMと考えられ、100nMではsubmaximalな効果が得られた。次にニコチン型アセチルコリンレセプターアゴニストの培養マイクログリアに対する機能を検討した。培養マイクログリアをエンドトキシンであるLPSで刺激すると、NOやTNF-αが発生することが知られている。培養マイクログリアに100ng/mlのLPSを加え、24時間後に培養液中に放出されたNO2とTNF-αを測定したが、methylcarbamylcholineの投与は影響を及ぼさなかった。次に培養マイクログリアにアデノシンレセプターアゴニストであるCl-adenosineを投与すると12時間後に細胞質内の断片化DNAが出現するが、methylcarbamylcholineを更に加えるとmethylcarbamylcholineの濃度に依存して、Cl-adenosineにより引き起こされるアポトーシスガ増強された。今後の研究としては更にmRNAレベルでのサイトカイン合成に対するアデノシンの影響を調べていきたい。ニコチン型アセチルコリンレセプターアゴニストの細胞内カルシウムレベル変化に及ぼす影響を調べるためにFura-2を用いた培養アストロサイトの細胞内カルシウムモニタリングで、潅流液中にニコチン型アセチルコリンレセプターアゴニストであるmethylcarbamylcholineを加えると、約5分後に細胞内カルシウムレベルの上昇が観察された。methylcarbamylcholineのEC50は約70nMと考えられ、100nMではsubmaximalな効果が得られた。次にニコチン型アセチルコリンレセプターアゴニストの培養マイクログリアに対する機能を検討した。培養マイクログリアをエンドトキシンであるLPSで刺激すると、NOやTNF-αが発生することが知られている。培養マイクログリアに100ng/mlのLPSを加え、24時間後に培養液中に放出されたNO2とTNF-αを測定したが、methylcarbamylcholineの投与は影響を及ぼさなかった。次に培養マイクログリアにアデノシンレセプターアゴニストであるCl-adenosineを投与すると12時間後に細胞質内の断片化DNAが出現するが、methylcarbamylcholineを更に加えるとmethylcarbamylcholineの濃度に依存して、Cl-adenosineにより引き起こされるアポトーシスガ増強された。今後の研究としては更にmRNAレベルでのサイトカイン合成に対するアデノシンの影響を調べていきたい。
KAKENHI-PROJECT-11671441
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11671441
2型糖尿病における細胞膜マイクロドメイン機能異常の解明と制御
ガングリオシド特異的形質膜シアリダーゼ(NEU3)遺伝子過剰発現マウスが著明なインスリン抵抗性を伴う糖尿病を示すことを,我々は見出した.また,NEU3遺伝子欠損マウスは耐糖能正常であり,高脂肪食負荷によりコントロールマウスでは,耐糖能障害,インスリン抵抗性,膵β細胞の過形成が誘導されるのに対して,高脂肪食負荷に抵抗性を示した.我々はNEU3とガングリオシド異常,インスリン抵抗性,さらに2型糖尿病発症との関連性を明らかにしてきた.平成17年度は,NEU3アデノウイルスベクターを用いて、それぞれ通常食と高脂肪食を与えたC57B/6NマウスとKKAyマウスの肝臓にNEU3を過剰発現させて,In vivoにおけるインスリン感受性と耐糖能へのNEU3の関与を検討した。NEU3を肝臓に過剰発現させると,通常食C57B/6Nマウスの体重増加は対照マウスに比べて有意に少なく,また随時血糖値も2週間有意に低値であった。通常食の肝NEU3過剰発現マウスでは対照マウスに比べて,インスリン感受性と耐糖能は有意に改善した。高脂肪食負荷マウスでも,肝NEU3過剰発現により随時血糖値も2週間有意に低値であった。また,肝NEU3過剰発現は高脂肪食負荷C57B/6NマウスとKKAyマウスの耐糖能も有意に改善させた。NEU過剰発現により,肝臓グリコーゲンと中性脂肪の蓄積が誘導され,かつ肝でのPPARγ発現も増加した。肝NEU3過剰発現マウスの肝ガングリオシド組成変化の分析では,GM1の増加とGM3の減少を示した。肝NEU3過剰発現マウスの肝では,IRS1のチロシンリン酸化は,インスリン刺激前後とも,対照マウスに比べて,有意に増強していた。しかし,通常食,高脂肪食負荷とも肝NEU3過剰発現マウスの肝臓インスリン受容体(IR)とIRS2のチロシンリン酸化はインスリン刺激前,刺激後で,対照マウスと比べて有意の差異を認めなかった。高脂肪食負荷の肝NEU3過剰発現マウス脂肪組織のインスリン刺激IRチロシンリン酸化は,対照マウスと比べて有意に増加していた。肝NEU3過剰発現により,通常食C57B/6Nマウスのインスリン感受性と耐糖能改善,高脂肪食C57B/6NマウスとKKAyマウスにおける耐糖能改善を認めた。肝NEU3過剰発現によるインスリン感受性と耐糖能改善の分子機序として,1)ガングリオシドGM3の減少,2)PPARγシグナルの亢進という2つの機序が示唆された。ガングリオシド特異的形質膜シアリダーゼ(NEU3)遺伝子過剰発現マウスが著明なインスリン抵抗性を伴う糖尿病を示すことを,我々は見出した.また,NEU3遺伝子欠損マウスは耐糖能正常であり,高脂肪食負荷によりコントロールマウスでは,耐糖能障害,インスリン抵抗性,膵β細胞の過形成が誘導されるのに対して,高脂肪食負荷に抵抗性を示した.我々はNEU3とガングリオシド異常,インスリン抵抗性,さらに2型糖尿病発症との関連性を明らかにしてきた.平成17年度は,NEU3アデノウイルスベクターを用いて、それぞれ通常食と高脂肪食を与えたC57B/6NマウスとKKAyマウスの肝臓にNEU3を過剰発現させて,In vivoにおけるインスリン感受性と耐糖能へのNEU3の関与を検討した。NEU3を肝臓に過剰発現させると,通常食C57B/6Nマウスの体重増加は対照マウスに比べて有意に少なく,また随時血糖値も2週間有意に低値であった。通常食の肝NEU3過剰発現マウスでは対照マウスに比べて,インスリン感受性と耐糖能は有意に改善した。高脂肪食負荷マウスでも,肝NEU3過剰発現により随時血糖値も2週間有意に低値であった。また,肝NEU3過剰発現は高脂肪食負荷C57B/6NマウスとKKAyマウスの耐糖能も有意に改善させた。NEU過剰発現により,肝臓グリコーゲンと中性脂肪の蓄積が誘導され,かつ肝でのPPARγ発現も増加した。肝NEU3過剰発現マウスの肝ガングリオシド組成変化の分析では,GM1の増加とGM3の減少を示した。肝NEU3過剰発現マウスの肝では,IRS1のチロシンリン酸化は,インスリン刺激前後とも,対照マウスに比べて,有意に増強していた。しかし,通常食,高脂肪食負荷とも肝NEU3過剰発現マウスの肝臓インスリン受容体(IR)とIRS2のチロシンリン酸化はインスリン刺激前,刺激後で,対照マウスと比べて有意の差異を認めなかった。高脂肪食負荷の肝NEU3過剰発現マウス脂肪組織のインスリン刺激IRチロシンリン酸化は,対照マウスと比べて有意に増加していた。肝NEU3過剰発現により,通常食C57B/6Nマウスのインスリン感受性と耐糖能改善,高脂肪食C57B/6NマウスとKKAyマウスにおける耐糖能改善を認めた。肝NEU3過剰発現によるインスリン感受性と耐糖能改善の分子機序として,1)ガングリオシドGM3の減少,2)PPARγシグナルの亢進という2つの機序が示唆された。ガングリオシド特異的形質膜シアリダーゼ(NEU3)遺伝子過剰発現マウスが著明なインスリン抵抗性を伴う糖尿病を示すことを,我々は見出した.
KAKENHI-PROJECT-16390259
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16390259
2型糖尿病における細胞膜マイクロドメイン機能異常の解明と制御
また,NEU3遺伝子欠損マウスは耐糖能正常であり,高脂肪食負荷によりコントロールマウスでは,耐糖能障害,インスリン抵抗性,膵β細胞の過形成が誘導されるのに対して,高脂肪食負荷に抵抗性を示した.さらに,2型糖尿病患者においてNEU3遺伝子の変異を検索したところ,2型糖尿病患者で正常者に比べて有意に高頻度で,かつインスリン感受性とも相関を示す遺伝子多型を同定した.このように我々はNEU3とガングリオシド異常,インスリン抵抗性,さらに2型糖尿病発症との関連性を明らかにしてきた.平成16年度は,アデノウイルスベクターを用いて,マウス肝臓にNEU3を過剰発現させ,In Vivoでの耐糖能とインスリン感受性の変化を検討した.すなわち,ヒトNEU3アデノウイルスベクターをC57BL/6Jマウス尾静脈より静注し,肝にNEU3を過剰発現させた.糖負荷試験で耐糖能を評価したところ,耐糖能の有意な改善を認めた.さらに,インスリン負荷試験でもインスリン感受性の有意な改善を認めた.さらに,2型糖尿病モデルマウスである,KKAYマウス,高脂肪食負荷マウスでも,NEU3を肝臓に過剰発現させると,耐糖能とインスリン感受性の著明な改善を認めた.これらのマウス肝臓のガングリオシド組成を解析すると,GM3の著明な減少,GM1,GM2の増加を認めた.インスリン受容体,IRS1などインスリンシグナル分子の発現増加とインスリン刺激時のチロシンリン酸化の亢進を認めた.NEU3はガングリオシド代謝を介して,インスリンシグナルを調整する分子機序が明らかになった.ガングリオシド特異的形質膜シアリダーゼ(NEU3)遺伝子過剰発現マウスが著明なインスリン抵抗性を伴う糖尿病を示すことを,我々は見出した.また,NEU3遺伝子欠損マウスは耐糖能正常であり,高脂肪食負荷によりコントロールマウスでは,耐糖能障害,インスリン抵抗性,膵β細胞の過形成が誘導されるのに対して,高脂肪食負荷に抵抗性を示した.我々はNEU3とガングリオシド異常,インスリン抵抗性,さらに2型糖尿病発症との関連性を明らかにしてきた.平成17年度は,NEU3アデノウイルスベクターを用いて、それぞれ通常食と高脂肪食を与えたC57B/6NマウスとKKAyマウスの肝臓にNEU3を過剰発現させて,In vivoにおけるインスリン感受性と耐糖能へのNEU3の関与を検討した。NEU3を肝臓に過剰発現させると,通常食C57B/6Nマウスの体重増加は対照マウスに比べて有意に少なく,また随時血糖値も2週間有意に低値であった。通常食の肝NEU3過剰発現マウスでは対照マウスに比べて,インスリン感受性と耐糖能は有意に改善した。高脂肪食負荷マウスでも,肝NEU3過剰発現により随時血糖値も2週間有意に低値であった。また,肝NEU3過剰発現は高脂肪食負荷C57B/6NマウスとKKAyマウスの耐糖能も有意に改善させた。NEU過剰発現により,肝臓グリコーゲンと中性脂肪の蓄積が誘導され,かつ肝でのPPARγ発現も増加した。肝NEU3過剰発現マウスの肝ガングリオシド組成変化の分析では,GM1の増加とGM3の減少を示した。肝NEU3過剰発現マウスの肝では,IRS1のチロシンリン酸化は,インスリン刺激前後とも,対照マウスに比べて,有意に増強していた。しかし,通常食,高脂肪食負荷とも肝NEU3過剰発現マウスの肝臓インスリン受容体(IR)とIRS2のチロシンリン酸化はインスリン刺激前,刺激後で,対照マウスと比べて有意の差異を認めなかった。高脂肪食負荷の肝NEU3過剰発現マウス脂肪組織のインスリン刺激IRチロシンリン酸化は,対照マウスと比べて有意に増加していた。
KAKENHI-PROJECT-16390259
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16390259
炭化水素化合物の自着火反応機構を解きほぐす
ガソリンエンジンのノッキングは,燃焼室壁面近傍における熱発生および熱損失,乱流現象が複雑に絡み合った現象である.本課題は,燃料の自着火に関して,素反応過程から理解することを目的とした.詳細化学反応機構を用いた反応解析の結果から,自着火タイミングの決定に重要な役割を担うROO(アルキルペルオキシラジカル)の反応性が,化学構造中に含まれる主鎖の長さ,第三級・第四級炭素原子の位置で系統的に整理できることを明らかにした.得られた化学構造と反応性の相関に関する知見は,エンジン設計に利用する化学反応モデルの開発,特にランピング法を利用した簡略化モデルの開発につながることが期待される.ガソリンエンジンのノッキングは,燃焼室壁面近傍における熱発生および熱損失,乱流現象が複雑に絡み合った現象である.本課題は,燃料の自着火に関して,素反応過程から理解することを目的とした.詳細化学反応機構を用いた反応解析の結果から,自着火タイミングの決定に重要な役割を担うROO(アルキルペルオキシラジカル)の反応性が,化学構造中に含まれる主鎖の長さ,第三級・第四級炭素原子の位置で系統的に整理できることを明らかにした.得られた化学構造と反応性の相関に関する知見は,エンジン設計に利用する化学反応モデルの開発,特にランピング法を利用した簡略化モデルの開発につながることが期待される.エンジン内の着火性指標であるオクタン価やセタン価は化合物の化学構造に応じて系統的な変化を示すことが報告されている.本年度は,詳細反応モデルを利用した反応計算により初期温度600ー1200 K,初期圧力1ー8 MPaの定容燃焼を仮定した場合の燃料の自着火遅れ時間を求め,化学構造との関係を整理した.対象とした燃料分子は,アルカン,シクロアルカン,アルケン,アルコールである.炭化水素化合物の基本骨格はアルカンである.このアルカンの主鎖の長さ,側鎖の種類・数・相対的位置に着目して着火遅れ時間の傾向を整理した.基本的には従来から知られているように,主鎖が長い程着火性は良好になり,側鎖が増加すると着火性は悪くなる.この傾向はいずれの圧力条件下でもほぼ成立する.次にアルケン、アルコールなどの置換基が基本骨格に挿入された場合の着火遅れ時間への影響を系統的に調べた.これらの着火遅れ時間と化学構造との関係を説明するためには,着火遅れ時間の決定に大きく関与する低温酸化反応機構について理解する必要がある.まずは中心的役割をはたす燃料(RH)→アルキルラジカル(R)→アルキルペルオキシラジカル(ROO)の反応流れを把握してROOの異性体の生成比を簡単に予測するための方法を検証した.具体的には各燃料のアルカン、シクロアルカン、エーテル、アルコールを対象にしてC-H結合解離エネルギーを求め,化学反応計算によるROOの生成比との比較を行った.Rの異性体の生成比は開始反応であるOHラジカルなどとの反応速度定数によって決定することが化学反応計算により示唆された.文献調査、一部のアルコールの開始反応の反応速度定数の計算結果とC-H結合解離エネルギーを比較し、開始反応の反応速度定数を見積もる手法を検討している最中である.ガソリンエンジンのノッキングは,燃焼室壁面近傍における熱発生および損失,乱流現象が複雑に絡み合った現象である.したがって,ノック抑制手法を提案してエンジンの熱効率を向上させるためには,燃料の化学反応,乱流,壁面熱伝達などの諸現象を基礎から理解することが重要である.本課題は,燃料の自着火に関して素反応過程から理解することを目的とした.数百の化学種と数千の素反応から構成されているアルカン(鎖状飽和炭化水素)の自着火反応機構に対して,自着火を決定する上で重要な燃焼中間生成物であるROO (アルキルペルオキシラジカル)に着目し,ROOの化学構造と反応性について考察を行った.QOOHとO2QOOHが定常状態にあると仮定して求めたROOの連鎖分岐と連鎖成長過程へのみかけの反応速度定数を考察に利用した.みかけの反応速度定数は,燃料の酸化開始の初期段階の温度変化に対応している.また,六員環または七員環の遷移状態構造を経由するROOの異性化反応および後続反応が,主に連鎖分岐および連鎖成長過程に影響を与える.化学構造との関連は以下のようにまとめた.(1)連鎖分岐過程への反応速度定数は燃料分子サイズの増加とともに大きくなる.(2)第二級ROOと比較すると,第一級および第三級ROOの連鎖分岐過程への反応速度定数は小さい(3)γ位に第三級炭素がある場合には,連鎖分岐過程への反応速度定数が,特に低温条件下で大きい(4)γ,δ位に第三級炭素がある場合には,連鎖成長過程への反応速度定数が大きい.(5)γ位に第四級炭素がある場合には,連鎖分岐過程への反応速度定数が小さい(6)β,γ,δ位に第四級炭素がある場合には,連鎖成長過程への反応速度定数が変わる.これらの化学構造と反応性の相関に関する知見は,エンジン設計に利用される化学反応モデルの開発,特にランピング法を利用した化学反応モデル開発の指針になる.燃焼化学当初の計画通り,着火遅れ時間と化学構造の関連を整理することができ,低温酸化反応機構の入口となるROOの生成比をC-H結合解離エネルギーから簡単に見積もる手法の検討に進む頃ができた.
KAKENHI-PROJECT-25820059
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25820059
炭化水素化合物の自着火反応機構を解きほぐす
アルキルペルオキシラジカル(ROO)の後続反応過程は,逆反応の影響があるため単純に反応速度定数を比較するだけでは特徴を捉えることができない.中間体であるヒドロキシアルキルラジカル(QOOH)とヒドロキシアルキルペルオキシラジカル(OOQOOH)に定常状態を仮定した定常状態解析法を行う.この解析により,ROOの後続反応過程の連鎖分岐過程,連鎖成長過程への有効反応速度定数が求まる.この解析を,炭素級数や置換基の種類,位置などに着目して行い, ROOの後続反応過程の分類方法を考案する.これにより任意の化学構造の燃料の燃焼を,いくつかのROOの後続反応過程の組合せで表現することを考える.量子化学計算用の計算機スペックの選定のためにデモ機を利用していたが、デモ機不具合のために発注が遅れ納品が2014年度4月になったから.量子学計算用の計算機購入,成果発表・情報収集のための国内,国外会議に参加費及び旅費に使用する計画である.
KAKENHI-PROJECT-25820059
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25820059
ストレス誘導性のDNAトポロジー変化のヒト細胞での解析
研究代表者らは、大腸菌の細胞内のプラスミドDNAの超ら旋度が、ストレス刺激を受けると減少することを見いだし、DNAの超ら旋度の変化が熱ショックタンパクの誘導に寄与している、というこれまでには無かった新しい考え方を提唱している。さらに研究代表者らは、熱ショックタンパクDnaKの遺伝子欠損株では、熱ショック後のDNAの弛緩が回復しないこと、並びに、精製したDnaKタンパクが試験管内でのDNAジャイレースの反応産物の超ら旋度を上昇させることを示した。これらの結果は、ストレス刺激で誘導されたDNAの超ら旋構造を熱ショックタンパクが回復させる、という、分子シャペロンによるDNAの超ら旋構造の維持機構の存在を示唆するものである。本研究は、大腸菌で見いだされた、これらの事象の普遍性を、ヒトを含めたほ乳動物細胞で検証することを意図して立案されたものである。分子シャペロンの遺伝子ノックアウトマウスを作出し、ストレス刺激後の体細胞中のDNAの超ら旋度を測定することが、目下の目標である。現在、分子シャペロンのcDNAをプローブとしてゲノムライブラリーをスクリーニングすることにより、ゲノムクローンを得て、ターゲテイングベクターを作成することを目指している。本年度は、遺伝子ノックアウトマウスの作成に必要なES細胞培養室、並びにSPFマウス飼育室、マウス胚操作室の運営を軌道にのせることを第一の目標とした。現在、ES細胞がgerm lineに入り込んだマウスを得ることに成功しており、ノックアウトマウスの作成に必要な基本設備を整えることができたと判断している。研究代表者らは、大腸菌内のプラスミドDNAをクロロキン存在下でのアガロースゲル電気泳動で解析することにより、細胞にストレスがかかる条件下では、DNAの弛緩が起こることを見いだしている。さらに研究代表者らは、熱ショック蛋白の誘導とDNAの弛緩の現象との間の密接な対応関係から、DNAのトポロジー変化が、細胞が環境ストレスを認知する手段となっているのではないか、という仮説を提唱している。本研究は、大腸菌で見いだされたストレスに伴うDNAの弛緩が、ヒト細胞でも共通して見いだされるか否かを検証しようとするものである。これまでに、EBウイルス由来のプラスミドをヒトのリンパ球由来細胞にエレクトロポレーションにより導入し、その細胞内での運命を探索する方法を樹立した。その結果、細胞内に導入されたプラスミドは、時間経過とともに、染色体DNAへ取り込まれて行くことが明らかとなった。これらの知見は、プラスミドの導入による細胞レベルでの遺伝子治療を遂行してゆく上にも有用な情報となることが期待される。研究代表者らは、大腸菌の細胞内のプラスミドDNAの超ら旋度が、ストレス刺激を受けると減少することを見いだし、DNAの超ら旋度の変化が熱ショックタンパクの誘導に寄与している、というこれまでには無かった新しい考え方を提唱している。さらに研究代表者らは、熱ショックタンパクDnaKの遺伝子欠損株では、熱ショック後のDNAの弛緩が回復しないこと、並びに、精製したDnaKタンパクが試験管内でのDNAジャイレースの反応産物の超ら旋度を上昇させることを示した。これらの結果は、ストレス刺激で誘導されたDNAの超ら旋構造を熱ショックタンパクが回復させる、という、分子シャペロンによるDNAの超ら旋構造の維持機構の存在を示唆するものである。本研究は、大腸菌で見いだされた、これらの事象の普遍性を、ヒトを含めたほ乳動物細胞で検証することを意図して立案されたものである。分子シャペロンの遺伝子ノックアウトマウスを作出し、ストレス刺激後の体細胞中のDNAの超ら旋度を測定することが、目下の目標である。現在、分子シャペロンのcDNAをプローブとしてゲノムライブラリーをスクリーニングすることにより、ゲノムクローンを得て、ターゲテイングベクターを作成することを目指している。本年度は、遺伝子ノックアウトマウスの作成に必要なES細胞培養室、並びにSPFマウス飼育室、マウス胚操作室の運営を軌道にのせることを第一の目標とした。現在、ES細胞がgerm lineに入り込んだマウスを得ることに成功しており、ノックアウトマウスの作成に必要な基本設備を整えることができたと判断している。
KAKENHI-PROJECT-08878102
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08878102
発話の共有に関する言語的社会化研究―カメルーン狩猟採集社会子ども-大人間相互行為
本研究では、カメルーンの狩猟採集民バカの子どもー大人間相互行為に見られる「発話共有」現象(子ども話者の発話を、大人話者がくりかえす現象)に注目し、バカの子どもの言語社会化過程を描き出すことを目的としている。2018年度は研究課題関連文献の渉猟、海外調査の遂行、研究論文と出版物の執筆に取り組んだ。国内雑誌に、獲物の解体場で取り分を要求する子ども達の相互行為戦略に関する論文を、また海外雑誌に、バカの子ども達が行う集団オニネズミ猟で見られる行為指示の平等主義的言語使用を主題とする論文を投稿した。いずれも発話のくりかえしを分析対象に含んでおり、発話共有がどのような相互行為の文脈を生起させるのか検討した。また、2018年7月にマレーシアで行われた第12回国際狩猟採集社会会議(CHaGS12)の参加報告を、他研究者らと共に『文化人類学』に執筆した。2018年8月に行われたカメルーン東部州現地調査では、言語発達の途上にある子どもの相互行為場面の動画収集、聞き取りと参与観察に基づく世帯調査、言語習得調査を行った。これらは狩猟採集民バカと近隣農耕民ジメの両集落で行われたが、とくに言語習得調査では、子どもの発話内容、大人による言葉がけ、発話の相手など、子どもを取り巻く相互行為環境を理解するための質問調査を進めた。収集された動画資料については今後、書き起こし作業が必要だが、聞き取り調査からは大人の行為指示に対し、「子どもが同一発話をくりかえす」事例も得られ、バカ語話者にとって、くりかえしによる応答が適切である社会文化的文脈を考察するための手がかりが得られた。研究実施計画の予定通り、2018年度は二本の学術雑誌論文を執筆した。大阪大学文学研究科で実施されるデータ・セッションにて、現地調査で収集した動画資料の分析を行いながら、研究課題の理論的方向性と問題の所在の精緻化を進めているところである。また、研究対象言語であるバカ語の文法研究にも取り組んでいるが、当該言語の持つ語の多義性やトーンを理解する必要性など、筆者が克服すべき課題が見えてきた。引き続き現地インフォーマントの協力を仰ぎつつ、バカ語の言語研究をさらに進めていく。最終年度となる2019年度に取り組む内容は、以下の通りである。(1)前年度に引き続き、カメルーン東部州にて補足的調査を実施する。主な内容は、会話データの補充、既に記録した動画資料の言語的情報の精緻化、書き起こし、また子どもの相互行為環境、言語習得に関する聞き取り、である。(2)大阪大学文学研究科や京都大学で実施されるデータ・セッションにて発表を複数回行いながら、理論的枠組みの洗練化を目指す。(3)子ども発話をくりかえす大人(聞き手)の認識的優位の主張を主題にした、会話分析アプローチによる論文執筆を進める。また、これまでの成果をまとめた単著の構想を練る。本研究の目的は、カメルーンの狩猟採集民バカと農耕民ジメのそれぞれの子どもー大人間相互行為における子どもの言語使用実践に注目し、発話の責任主体としての子どもの発達を前提とする、従来の社会化論を再考することにある。平成29年度においては、実施計画にも定めていた通り、研究課題関連文献のレヴューと、投稿論文・著書の執筆をおこなった。本年度の主な成果は、以下の通りである。バカの子ども達の日常生活を概説し、伝統知識をめぐる彼らの学習過程の一端を記述した論考を出版した(園田浩司. 2017.「森との向き合い方を学ぶカメルーンの狩猟採集民バカ(一)」清水貴夫・亀井伸孝編『子どもたちの生きるアフリカ伝統と開発がせめぎあう大地で』昭和堂. pp. 114-127)。これまでに収集した観察記録等に基づき、調査項目のひとつであった「子どもたちのライフコースの把握」について、本書でその一部を整理した。また、コンゴ盆地狩猟採集社会の子ども研究者らと共同で論文を執筆した(Sonoda et al.,2018. Cultural Transmission of Foundational Schemas among Congo Basin Hunter-Gatherers. African Study Monographs Supplementary issue, 54: 155-169.)。本論文では、コンゴ盆地狩猟採集社会の大人と子ども間相互行為実践に注目した。同一発話の共有を含むいくつかの特徴は、平等主義やシェアリングといった、コンゴ盆地狩猟採集社会のスキーマと強く結びついているのではないかと論じた。他方、ヒエラルキー、不服従への処罰、子どもの学習内容の構造化といった学校教室における相互行為実践に関わるスキーマとは必ずしも一環しないことを指摘し、子どもの自立学習やイニシアチブを支援する、前者のような教授法が学校教室にも求められる、と提案した。平成29年度は本研究課題遂行の初年度であったため、まずは研究環境の基礎作りを念頭に置いた。現在研究代表者は、大阪大学文学研究科の研究環境に慣れつつある。具体的には、文学研究科の受入研究者マシュー・バーデルスキー氏をはじめ、言語文化研究科の研究者らが参加するデータ・セッションに積極的に参加し、意見交換をおこなった。また本年度は、関連文献の渉猟や、会話分析セミナーへの参加などを通して、研究課題の理論的方向性の精緻化にも取り組んだ。最後に研究実績の概要で報告した通り、学術雑誌の論文、著書として研究成果の一部を公表した。本研究では、カメルーンの狩猟採集民バカの子どもー大人間相互行為に見られる「発話共有」現象(子ども話者の発話を、大人話者がくりかえす現象)に注目し、バカの子どもの言語社会化過程を描き出すことを目的としている。
KAKENHI-PROJECT-17J01622
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J01622
発話の共有に関する言語的社会化研究―カメルーン狩猟採集社会子ども-大人間相互行為
2018年度は研究課題関連文献の渉猟、海外調査の遂行、研究論文と出版物の執筆に取り組んだ。国内雑誌に、獲物の解体場で取り分を要求する子ども達の相互行為戦略に関する論文を、また海外雑誌に、バカの子ども達が行う集団オニネズミ猟で見られる行為指示の平等主義的言語使用を主題とする論文を投稿した。いずれも発話のくりかえしを分析対象に含んでおり、発話共有がどのような相互行為の文脈を生起させるのか検討した。また、2018年7月にマレーシアで行われた第12回国際狩猟採集社会会議(CHaGS12)の参加報告を、他研究者らと共に『文化人類学』に執筆した。2018年8月に行われたカメルーン東部州現地調査では、言語発達の途上にある子どもの相互行為場面の動画収集、聞き取りと参与観察に基づく世帯調査、言語習得調査を行った。これらは狩猟採集民バカと近隣農耕民ジメの両集落で行われたが、とくに言語習得調査では、子どもの発話内容、大人による言葉がけ、発話の相手など、子どもを取り巻く相互行為環境を理解するための質問調査を進めた。収集された動画資料については今後、書き起こし作業が必要だが、聞き取り調査からは大人の行為指示に対し、「子どもが同一発話をくりかえす」事例も得られ、バカ語話者にとって、くりかえしによる応答が適切である社会文化的文脈を考察するための手がかりが得られた。研究実施計画の予定通り、2018年度は二本の学術雑誌論文を執筆した。大阪大学文学研究科で実施されるデータ・セッションにて、現地調査で収集した動画資料の分析を行いながら、研究課題の理論的方向性と問題の所在の精緻化を進めているところである。また、研究対象言語であるバカ語の文法研究にも取り組んでいるが、当該言語の持つ語の多義性やトーンを理解する必要性など、筆者が克服すべき課題が見えてきた。引き続き現地インフォーマントの協力を仰ぎつつ、バカ語の言語研究をさらに進めていく。平成30年度においては、研究代表者がこれまでに収集したデータについて、引き続き大阪大学文学研究科、言語文化研究科の研究者らとデータ・セッションをおこない、分析を進めていく。これらのデータは、現在執筆している投稿論文(英文)に掲載予定である。また6月に弘前大学で開催される日本文化人類学会、7月にマレーシア・ペナンで開催される狩猟採集社会会議(CHaGS-12)への参加を予定している。研究代表者はこれらの学会で発表し、研究内容の点検をおこなう。さらに、学会参加者の文化人類学者、狩猟採集民研究者らと、今後の共同研究について意見交換も予定している。最後に、前年度に収集できなかったデータについて、現地調査を通して収集する予定である。最終年度となる2019年度に取り組む内容は、以下の通りである。(1)前年度に引き続き、カメルーン東部州にて補足的調査を実施する。主な内容は、会話データの補充、既に記録した動画資料の言語的情報の精緻化、書き起こし、また子どもの相互行為環境、言語習得に関する聞き取り、である。
KAKENHI-PROJECT-17J01622
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J01622
ヒト口腔扁平上皮癌とその前癌病変における癌遺伝子産物の解析及び細胞増殖能の検討
近年、細胞増殖制御に関わるp53及びp16/CDKN2癌抑制遺伝子異常が広範囲の悪性腫瘍に報告されており、代表的な癌遺伝子の一つであるras遺伝子の異常とともに注目されている。そこで今回、生検によって得られた口腔扁平上皮癌20例並びに前癌病変20例を用いて、ras,p53及びp16/CDKN2遺伝子変異を検索するとともに、免疫組織化学的染色,細胞増殖能(PCNA,AgNOR)についても検討した。p16/CDKN2については口腔扁平上皮癌のみに遺伝子欠損が2例(10%)、点突然変異が2例(10%)認められた。また遺伝子欠損を認めた2例は免疫組織染色陰性であった。p53は扁平上皮癌のみに5例(25%)の点突然変異、7例(35%)の免疫組織染色陽性例が認められ、両者はよく相関していたが、細胞増殖能とは必ずしも相関関係は見出されなかった。また2例の前癌病変においても遺伝子変異を示さないp53免疫組織陽性染色を認めたが、それらはAgNOR,PCNAともに高値を示しており細胞増殖能の亢進に伴うwild type p53タンパクの過剰発現の可能性を示唆した。K,N,H-rasでは2例のsilent mutationが検出されたのみであり口腔内腫瘍発生におけるras遺伝子変異の関与は少ないものと思われた。免疫組織染色においては扁平上皮癌に10例(50%)、前癌病変に8例(40%)のras p21陽性染色を得たが、遺伝子変異や細胞増殖能との相関関係は無く臨床指標とはなり得なかった。細胞増殖能については,PCNA index及びAgNOR(Area値,Score値)において高値を示す傾向を認めた。近年、細胞増殖制御に関わるp53及びp16/CDKN2癌抑制遺伝子異常が広範囲の悪性腫瘍に報告されており、代表的な癌遺伝子の一つであるras遺伝子の異常とともに注目されている。そこで今回、生検によって得られた口腔扁平上皮癌20例並びに前癌病変20例を用いて、ras,p53及びp16/CDKN2遺伝子変異を検索するとともに、免疫組織化学的染色,細胞増殖能(PCNA,AgNOR)についても検討した。p16/CDKN2については口腔扁平上皮癌のみに遺伝子欠損が2例(10%)、点突然変異が2例(10%)認められた。また遺伝子欠損を認めた2例は免疫組織染色陰性であった。p53は扁平上皮癌のみに5例(25%)の点突然変異、7例(35%)の免疫組織染色陽性例が認められ、両者はよく相関していたが、細胞増殖能とは必ずしも相関関係は見出されなかった。また2例の前癌病変においても遺伝子変異を示さないp53免疫組織陽性染色を認めたが、それらはAgNOR,PCNAともに高値を示しており細胞増殖能の亢進に伴うwild type p53タンパクの過剰発現の可能性を示唆した。K,N,H-rasでは2例のsilent mutationが検出されたのみであり口腔内腫瘍発生におけるras遺伝子変異の関与は少ないものと思われた。免疫組織染色においては扁平上皮癌に10例(50%)、前癌病変に8例(40%)のras p21陽性染色を得たが、遺伝子変異や細胞増殖能との相関関係は無く臨床指標とはなり得なかった。細胞増殖能については,PCNA index及びAgNOR(Area値,Score値)において高値を示す傾向を認めた。現在口腔扁平上皮癌についての遺伝子関連の研究が数多くなされている。しかし同一組織上における癌化の多段階説を想定した系統だった検索は乏しく同様に前癌病変から悪性化に至る変化も明らかとはなっていない。そこで今回我々は、口腔扁平上皮癌、異形成上皮及び過形成上皮のうち未治療の生検材料各10症例を得た。それらの材料よりDNAを抽出しp53においてはexon4-9,を、N,H,K-rasについてはexon1及び2をPCR-SSCP(Single-strand conformation polymorphism)法にて検索し、それらの中で変異を認めたものについてはDirect Sequencingにて変異パターンの確認をとった。その結果p53変異は扁平上皮癌の3例のみに認められ、腫瘍発生進展過程の後半において変異の発生することが示唆された。rasの変異は扁平上皮癌と異形成上皮に各1例で、しかもその変異はsilent mutationであり、口腔内腫瘍発生におけるras遺伝子の関与は少ないものと思われた。また現在、上記の標本を用いAgNoR,PCNAなどを行い、細胞増殖能との関連についても検討を行っている。生検によって得られた口腔扁平上皮癌20例並びに前癌病変20例を用いて、ras,p53及びp16/CDKN2遺伝子変異を検索するとともに、免疫組織化学的染色、細胞増殖能(PCNA,AgNOR)についても検討した。p16/CDKN2についてはexon13及びhomozygous deletionの有無を検討した結果、口腔扁平上皮癌のみに遺伝子欠損が2例(10%)、点突然変異がexon2に2例(10%)(codon51及びcodon113にC:G transversion)認められた。また遺伝子欠損を認めた2例は免疫組織染色陰性であった。p53は扁平上皮癌のみに5例(25%)の点突然変異、7例(35%)の免疫組織染色陽性例が認められ、両者はよく相関していたが、細胞増殖能とは必ずしも相関関係は見出されなかった。K.N.H-
KAKENHI-PROJECT-06672011
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06672011
ヒト口腔扁平上皮癌とその前癌病変における癌遺伝子産物の解析及び細胞増殖能の検討
rasでは2例のsilent mutationが検出されたのみであり口腔内腫瘍発生におけるras遺伝子変異の関与は少ないものと思われた。免疫組織染色においては扁平上皮癌に10例(50%)、前癌病変に8例(40%)のras p21陽性染色を得たが、遺伝子変異や細胞増殖能との相関関係は無く臨床指標とはなり得なかった。細胞増殖能については、PCNAにおいて扁平上皮癌で高い陽性率が認められ、AgNORでは扁平上皮癌にArea値とScore値が大きい傾向が見られた。本研究において細胞増殖能に関係するp16/CDKN2とp53の両者に異常を示す症例は認められなかった。以上のことから今回検索した癌抑制遺伝子変異は口腔前癌病変には見出されず、またp16/CDKN2またはp53遺伝子どちらか一方が変異することによって細胞増殖制御が失われる可能性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-06672011
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06672011
量刑における一般情状の研究―スウェーデン量刑法における「衡平理由」の比較法的検討
被告人に対して具体的な刑罰の量を定める量刑の場面においては、まず犯罪自体の重さを示す事情(犯情)を考慮して刑の大枠を定め、次にその枠内で、被告人が社会的制裁を受けたこと、犯罪の損害を回復したこと、あるいは重病人であることといった、犯罪自体の重さとは関係のない事情(一般情状)を考慮することによって、刑を調整・決定する。本研究は、この一般情状に相当する事情としてスウェーデン刑法に規定されている「衡平理由」の比較法的検討を通じて、一般情状の考慮に関する正当化根拠と個別的要件を量刑理論の観点から提示し、もって一般情状の考慮に関する「量刑の合理化・透明化」に寄与しようとするものである。被告人に対して具体的な刑罰の量を定める量刑の場面においては、まず犯罪自体の重さを示す事情(犯情)を考慮して刑の大枠を定め、次にその枠内で、被告人が社会的制裁を受けたこと、犯罪の損害を回復したこと、あるいは重病人であることといった、犯罪自体の重さとは関係のない事情(一般情状)を考慮することによって、刑を調整・決定する。本研究は、この一般情状に相当する事情としてスウェーデン刑法に規定されている「衡平理由」の比較法的検討を通じて、一般情状の考慮に関する正当化根拠と個別的要件を量刑理論の観点から提示し、もって一般情状の考慮に関する「量刑の合理化・透明化」に寄与しようとするものである。
KAKENHI-PROJECT-19J21093
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19J21093
遊離コレステロール由来シグナル制御に基づいた、脂肪肝炎・肝臓癌新規治療法の確立
高コレステロール摂食は、TLR9/インフラマソーム経路の活性化を介して、アセトアミノフェン肝障害を増悪させた。その病態機序に類洞内皮細胞が主要な役割を果たしていた。類洞内皮細胞のエンドリソソームでの遊離コレステロール蓄積はTLR9シグナルを増強させた。その結果TLR9/インフラマソーム経路活性化を介して、アセトアミノフェン肝障害を増悪させた。類洞内皮細胞のエンドリソソームでの遊離コレステロール蓄積は、Rab7膜輸送機能障害を介し、後期エンドソームからリソソームへのTLR9輸送障害を惹起した。その結果後期エンドソームでの活性化TLR9レベルが増加し、類洞内皮細胞でのTLR9シグナルを増強させた。肝星細胞を含む肝類洞壁細胞は、肝臓病進展のみならず肝発癌微少環境形成に重要な役割を果たすが、細胞内遊離コレステロール蓄積は、細胞外コレステロールレベルとは独立した形で、肝類洞壁細胞性状変化を引き起こしそれらの病態を修飾する。我々は、各肝類洞壁細胞の遊離コレステロール蓄積が、NASH・肝線維化・肝臓癌の病態機序に及ぼす役割を詳細に解析し、併せて細胞老化との相関も明らかにすることを目的としている。ACAT1は肝星細胞における主要な遊離コレステロール代謝酵素であり、ACAT1欠損マウスでは、肝星細胞に遊離コレステロールが蓄積することを我々は確認した。まず我々は、野生型マウスとACAT1欠損マウスとに、24週間高脂肪食を摂餌させることにより、非アルコール性脂肪肝炎モデルを作成した。また、野生型マウスとACAT1欠損マウスとを、12週間のメチオニン・コリン欠損食摂餌モデルや、22週間のコリン欠乏食摂餌モデルに供することによっても、非アルコール性脂肪肝炎モデルを作成した。これらの非アルコール性脂肪肝炎モデルで、ACAT1欠損による肝星細胞の遊離コレステロール蓄積が、脂肪肝・肝障害・肝臓線維化を含む肝臓病態に及ぼす影響について、組織学的・血清学的に現在評価検討し、詳細な解析を施行中である。さらに、野生型マウスとACAT1欠損マウスとを肝臓癌モデルに供することにより(生後15日でDENを投与。その後生後6週目よりCCL4を週に一度投与にて28週齢まで)、肝臓癌病態機序における、肝星細胞の遊離コレステロールの影響についても検討している。平成27年度は、まず肝星細胞の遊離コレステロール蓄積モデルについて解析を進めており、現在途中経過ではあるが、順調に計画は進展している。肝星細胞を含む肝類洞壁細胞は、肝臓病進展のみならず肝発癌微少環境形成に重要な役割を果たすが、細胞内遊離コレステロール蓄積は、細胞外コレステロールレベルとは独立した形で、肝類洞壁細胞性状変化を引き起こしそれらの病態を修飾する。我々は、各肝類洞壁細胞の遊離コレステロール蓄積が、NASH・肝線維化・肝臓癌の病態機序に及ぼす役割を詳細に解析し、併せて細胞老化との相関も明らかにすることを目的としている。ABCA1により、肝星細胞から遊離コレステロールが排出される。実際に、ABCA1欠損マウスでは、肝星細胞に遊離コレステロールが蓄積することを我々は確認した。まず我々は、野生型マウスとABCA1欠損マウスとに、24週間高脂肪食を摂餌させることにより、非アルコール性脂肪肝炎モデルを作成した。また、野生型マウスとABCA1欠損マウスとを、12週間のメチオニン・コリン欠損食摂餌モデルや、22週間のコリン欠乏食摂餌モデルに供することによっても、非アルコール性脂肪肝炎モデルを作成した。これらの非アルコール性脂肪肝炎モデルで、ABCA1欠損による肝星細胞の遊離コレステロール蓄積が、脂肪肝・肝障害・肝臓線維化を含む肝臓病態に及ぼす影響について、組織学的・血清学的に現在評価検討し、詳細な解析を施行中である。これらの非アルコール性脂肪肝炎モデルでは、ABCA1欠損による肝星細胞の遊離コレステロール蓄積が、肝星細胞のTLR4シグナル増強を介して病態に関与する可能性が示唆されるデータが得られている。また、肝臓癌モデルを作成し(生後2週間でDEN投与、その後高脂肪食を摂食させるモデル)、肝臓癌病態に及ぼす影響についても詳細な解析を施行中である。さらに細胞老化と遊離コレステロール蓄積の病態に及ぼす影響についても、同様の解析を施行し、その詳細を解析中である。平成28年度は、主にABCA1欠損マウスを用いた解析を施行し、順調に計画は進行している。高コレステロール摂食は、TLR9/インフラマソーム経路の活性化を介して、アセトアミノフェン肝障害を増悪させた。その病態機序に類洞内皮細胞が主要な役割を果たしていた。類洞内皮細胞のエンドリソソームでの遊離コレステロール蓄積はTLR9シグナルを増強させた。その結果TLR9/インフラマソーム経路活性化を介して、アセトアミノフェン肝障害を増悪させた。類洞内皮細胞のエンドリソソームでの遊離コレステロール蓄積は、Rab7膜輸送機能障害を介し、後期エンドソームからリソソームへのTLR9輸送障害を惹起した。その結果後期エンドソームでの活性化TLR9レベルが増加し、類洞内皮細胞でのTLR9シグナルを増強させた。今後は、平成27年度の解析を進展させるとともに、他類洞壁細胞の遊離コレステロール蓄積モデルに関しても解析を進める予定である。今後は、平成28年度の解析を進展させるとともに、細胞老化モデルを用いた解析も施行していく予定である。脂肪肝炎本年度は、主に動物モデルの作成をおこなったため、使用額が予想より少なくなった。
KAKENHI-PROJECT-15K09031
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K09031
遊離コレステロール由来シグナル制御に基づいた、脂肪肝炎・肝臓癌新規治療法の確立
本年度は、主に動物モデルの作成を中心に施行したため、使用額が予想より少なくなった。次年度は、作成した動物モデルの解析のため、発生した次年度使用額を使用する予定である。次年度は、作成した動物モデルの解析のため、次年度使用額を使用する予定である。
KAKENHI-PROJECT-15K09031
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K09031
エリスロポエチン由来ペプチドの神経細胞死抑止効果と作用機構解析
エリスロポエチン(EPO)は腎性貧血治療薬として広く用いられている糖タンパク質であるが、EPOの生理作用としてこれまで赤血球産生能のみが注目を浴びてきた。われわれはこれまでにEPOが造血促進のみなぢず、中枢神経系において予測もしなかった重要な神経細胞保護作用を示すことを、脳虚血モデル動物を用いて証明した(Prco. Natl. Acad. Sci. USA,95,463-4640,1998;Biochem. Biophys. Res. Commun.,253,26-32,1998)。さらに我々は、EPOが抗アポトーシス因子Bcl-X_Lの発現増強を介して神経細胞保護作用を示すことを明らかにした(J. Neurosci. Res.,67,795-803,2002)。一方、Campanaらは、EPOのアミノ酸配列のうちAB loopに存在する17-merペプチド(AEHCSLNENITVPDTKV)が、培養細胞(NS20Y, SK-N-MC cells)の突起伸長を促進し、その細胞死を抑止することを報告している(Int. J. Mol. Med.,1,235-241,1998)しかしながら前記のエリスロポエチン由来17-merペプチド(17-MP)が実際にin vivoの系でEPOと同様に虚血脳保護作用を示すかどうかはまったく明らかにされていない。そこで、今年度の本研究では、スナネズミに3分間の前脳虚血を負荷した後に17-MPを20ng/日又は4ng/日の用量で脳室内投与し、その効果を脳虚血後の受動的回避学習実験ならびに海馬CA1領域神経細胞数計測により判定した。その結果、17-MPの投与は、ビークル(vehicle)投与例に比べ.て、有意に脳虚血後の受動的回避学習機能を改善し、海馬CA1領域における遅発性神経細胞死を抑止した。目下、培養神経細胞及びBIAコアシステムを用いて17-MPの作用機構を解析中である。エリスロポエチン(EPO)は腎性貧血治療薬として広く用いられている糖タンパク質であるが、EPOの生理作用としてこれまで赤血球産生能のみが注目を浴びてきた。われわれはこれまでにEPOが造血促進のみなぢず、中枢神経系において予測もしなかった重要な神経細胞保護作用を示すことを、脳虚血モデル動物を用いて証明した(Prco. Natl. Acad. Sci. USA,95,463-4640,1998;Biochem. Biophys. Res. Commun.,253,26-32,1998)。さらに我々は、EPOが抗アポトーシス因子Bcl-X_Lの発現増強を介して神経細胞保護作用を示すことを明らかにした(J. Neurosci. Res.,67,795-803,2002)。一方、Campanaらは、EPOのアミノ酸配列のうちAB loopに存在する17-merペプチド(AEHCSLNENITVPDTKV)が、培養細胞(NS20Y, SK-N-MC cells)の突起伸長を促進し、その細胞死を抑止することを報告している(Int. J. Mol. Med.,1,235-241,1998)しかしながら前記のエリスロポエチン由来17-merペプチド(17-MP)が実際にin vivoの系でEPOと同様に虚血脳保護作用を示すかどうかはまったく明らかにされていない。そこで、今年度の本研究では、スナネズミに3分間の前脳虚血を負荷した後に17-MPを20ng/日又は4ng/日の用量で脳室内投与し、その効果を脳虚血後の受動的回避学習実験ならびに海馬CA1領域神経細胞数計測により判定した。その結果、17-MPの投与は、ビークル(vehicle)投与例に比べ.て、有意に脳虚血後の受動的回避学習機能を改善し、海馬CA1領域における遅発性神経細胞死を抑止した。目下、培養神経細胞及びBIAコアシステムを用いて17-MPの作用機構を解析中である。
KAKENHI-PROJECT-14370437
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14370437
地下深部に存在する天然有機物の多様性と核種移行への影響解明
本研究では,地下深部に存在する天然有機物(NOM)を物理的,化学的性質の点から整理・類型化し,その多様性の起源を明らかにすると共に,核種移行に及ぼす影響の幅を評価することを目的としている.環境中に普遍的に存在するNOMは活性な官能基を多数有しており,放射性核種と結合することで,輸送キャリアとして環境動態に大きな影響を与える.しかし,地下深部という極限環境に存在するNOMの性質は表層環境のものとは大きく異なり,核種の移行への影響も明らかにされていない.本研究では,地下研究施設での原位置ボーリング等から得られた地下水や岩石コア試料から,NOMを濃縮,抽出し(フェーズ1),得られた試料の分光学的性質やサイズ分布,化学構造を評価し,多変量解析を用いて,深部地下水中のNOMの分類を行う(フェーズ2).そして,放射性廃棄物処分で重要となる核種を添加し,NOMへの結合挙動を評価し,NOMが核種の移行に与える影響を明らかにする(フェーズ3).2018年度は,主に,フェーズ1として,異なる深度の堆積岩系地下水を採水し,0.45 μmのメンブレンフィルタを用いたろ過後,タンジェンシャルフローろ過により,NOMの濃縮を試みた.また,岩石コアからの有機物の抽出も実施した.さらに,フェーズ2の内,予察的検討として,3次元蛍光測定と紫外可視吸光光度測定を行い,地下水試料中のNOMの分光学的性質を得た.特に,堆積岩系のNOMは蛍光性が高く,濃縮無しでも十分な蛍光挙動が得られることが分かった.さらに,多変量解析手法の一種であるParallel Factor Analysisを用いた解析から,地下水試料に4つの蛍光成分が含まれ,その分布が深度やボーリング孔位置によって変化することが分かった.本年度は,フェーズ1として地下水水試料の採水をすること,また,フェーズ2として,予察的な分析を行うことを目的としていた.【フェーズ1】異なる深度の堆積岩系地下水を採水し,0.45 μmのメンブレンフィルタを用いたろ過後,タンジェンシャルフローろ過により,NOMの濃縮を行った.また,岩石コアからの有機物の抽出も実施した.【フェーズ2】地下水試料中のNOMの3次元蛍光(EEM)測定と紫外可視吸光光度測定を行い,分光学的性質を得た.その結果,堆積岩系のNOMは蛍光性が非常に高く,濃縮無しでも十分な蛍光挙動が得られることが分かった.さらに,全地下水試料のEEMデータに対して,多変量解析手法の一種であるParallel Factor Analysisを用いた解析を行い,地下水試料に4つの独立した蛍光成分が含まれ,その分布が深度やボーリング孔位置によって変化することを明らかにした.上記の成果は,本年度の当初に予定していた研究計画に沿ったものであり,よって,本研究がおおむね順調に進展しているものと判断する.2019年度には,引き続き,堆積岩系の地下水の採水と岩石コアからの有機物の抽出を継続すると共に,結晶質岩系地下水の採水と岩石コアからの有機物を抽出を行う.そして,得られた地下水試料,有機物試料の分光学的性質を評価する.さらに,2019から2020年度にかけて,サイズ分布や化学構造の評価を行う.そして,有機物の異なる性質を反映した測定結果全体に対して,多変量解析手を行い,我が国の深部地下環境中の有機物の分類,類型化を行う.さらに,放射性廃棄物処分で重要となる核種の模擬元素を添加し,有機物との結合挙動を評価し,NOMが核種の移行に与える影響を明らかにする.本研究では,地下深部に存在する天然有機物(NOM)を物理的,化学的性質の点から整理・類型化し,その多様性の起源を明らかにすると共に,核種移行に及ぼす影響の幅を評価することを目的としている.環境中に普遍的に存在するNOMは活性な官能基を多数有しており,放射性核種と結合することで,輸送キャリアとして環境動態に大きな影響を与える.しかし,地下深部という極限環境に存在するNOMの性質は表層環境のものとは大きく異なり,核種の移行への影響も明らかにされていない.本研究では,地下研究施設での原位置ボーリング等から得られた地下水や岩石コア試料から,NOMを濃縮,抽出し(フェーズ1),得られた試料の分光学的性質やサイズ分布,化学構造を評価し,多変量解析を用いて,深部地下水中のNOMの分類を行う(フェーズ2).そして,放射性廃棄物処分で重要となる核種を添加し,NOMへの結合挙動を評価し,NOMが核種の移行に与える影響を明らかにする(フェーズ3).2018年度は,主に,フェーズ1として,異なる深度の堆積岩系地下水を採水し,0.45 μmのメンブレンフィルタを用いたろ過後,タンジェンシャルフローろ過により,NOMの濃縮を試みた.また,岩石コアからの有機物の抽出も実施した.さらに,フェーズ2の内,予察的検討として,3次元蛍光測定と紫外可視吸光光度測定を行い,地下水試料中のNOMの分光学的性質を得た.特に,堆積岩系のNOMは蛍光性が高く,濃縮無しでも十分な蛍光挙動が得られることが分かった.さらに,多変量解析手法の一種であるParallel Factor Analysisを用いた解析から,地下水試料に4つの蛍光成分が含まれ,その分布が深度やボーリング孔位置によって変化することが分かった.
KAKENHI-PROJECT-18H01912
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H01912
地下深部に存在する天然有機物の多様性と核種移行への影響解明
本年度は,フェーズ1として地下水水試料の採水をすること,また,フェーズ2として,予察的な分析を行うことを目的としていた.【フェーズ1】異なる深度の堆積岩系地下水を採水し,0.45 μmのメンブレンフィルタを用いたろ過後,タンジェンシャルフローろ過により,NOMの濃縮を行った.また,岩石コアからの有機物の抽出も実施した.【フェーズ2】地下水試料中のNOMの3次元蛍光(EEM)測定と紫外可視吸光光度測定を行い,分光学的性質を得た.その結果,堆積岩系のNOMは蛍光性が非常に高く,濃縮無しでも十分な蛍光挙動が得られることが分かった.さらに,全地下水試料のEEMデータに対して,多変量解析手法の一種であるParallel Factor Analysisを用いた解析を行い,地下水試料に4つの独立した蛍光成分が含まれ,その分布が深度やボーリング孔位置によって変化することを明らかにした.上記の成果は,本年度の当初に予定していた研究計画に沿ったものであり,よって,本研究がおおむね順調に進展しているものと判断する.2019年度には,引き続き,堆積岩系の地下水の採水と岩石コアからの有機物の抽出を継続すると共に,結晶質岩系地下水の採水と岩石コアからの有機物を抽出を行う.そして,得られた地下水試料,有機物試料の分光学的性質を評価する.さらに,2019から2020年度にかけて,サイズ分布や化学構造の評価を行う.そして,有機物の異なる性質を反映した測定結果全体に対して,多変量解析手を行い,我が国の深部地下環境中の有機物の分類,類型化を行う.さらに,放射性廃棄物処分で重要となる核種の模擬元素を添加し,有機物との結合挙動を評価し,NOMが核種の移行に与える影響を明らかにする.
KAKENHI-PROJECT-18H01912
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H01912
Web教育における個人認証および理解度予測システムの開発
Web教育では端末側に座っている人間を特定することが、評価などを行う上で重要になる。本研究では平仮名を用いた筆者識別の検討を行い、「そ、よ、ま、わ」の文字を使うことで精度の高い筆者識別を実現した。また、顔画像を使った個人認証について検討し、主成分分析の手法と学習理論を併用した簡便な識別法を提案できた。さらに、学習を継続する上で理解度を予測し適切な教材を提供することが必要となるが、こまめなレベル調整が学習効率につながることを見出した。Web教育では端末側に座っている人間を特定することが、評価などを行う上で重要になる。本研究では平仮名を用いた筆者識別の検討を行い、「そ、よ、ま、わ」の文字を使うことで精度の高い筆者識別を実現した。また、顔画像を使った個人認証について検討し、主成分分析の手法と学習理論を併用した簡便な識別法を提案できた。さらに、学習を継続する上で理解度を予測し適切な教材を提供することが必要となるが、こまめなレベル調整が学習効率につながることを見出した。平成19年度は、文字による個人認証(筆者識別)と学習の効率化について検討した。筆者識別については、"謹賀新年"の4つの漢字と"あけましておめでとう"の10個の平仮名について、新局所円弧法(曲率による特徴抽出)による個人認証について検討した。特に、記入箇所に枠がある場合と無い場合、および、枠の大きさの違いから派生する識別率の変化を、漢字と平仮名の場合で検討した。枠の大きさは、9mm、14mm、18mm、と23mmの4種類、曲率を求める基準となる弦長を5ドットから25ドットまで4ドット刻みの6種類について検討した。その結果、枠の有無については枠有りで識別率が高い(特徴が出やすい)こと、漢字の方が平仮名よりも識別率が高いてと、円弧計算に用いる弦長は13ドットが適していること、および、枠の大きさ(文字の大きさ)は18mmが適していることを示した。学習の効率化は、理解度予測システムの予備的な検討として行った。つまり、どういう学習態度が理解度向上に寄与するかについて検討することで、単にテスト成績のみからの理解度予測でなく、学習意欲の維持、および効率的な指導につながる可能性がある。つまり、学習の効率化は、学習に対する動機、意欲の維持が大切であり、自己モニタリングを行うことで、常に自己の状況を把握し、学習意欲を持ち続けることが可能となる。自己の状況(正解率)を常に把握させ、間違いを復習させるグループとそうでないグループとの間で達成度を比較し、自己モニタリングの有効性を確認した。単に成績から理解度を判定するだけでなく、意欲・態度を加味することで、トータルの理解度とするべき方針の妥当性を明確化することができた。平成20年度は、文字による個人認証(筆者識別)と学習の効率化について検討した。筆者識別については、46個の平仮名を用いて、新局所円弧法(曲率による特徴抽出)による個人認証の精度を、筆者間の類似度の大きさをt-検定によって検討した。18mmの枠内に時期を変えて筆記した10通りの文字の曲率を弦長13ドットで計算し、特徴量として文字種ごとに類似度のt-値を求めた。その結果、文字種によりt-値の大きさが異なり、類似度の大きさのみでなく、t-値によっても筆者識別に適した文字種と適さない文字種とを選び出すことができた。その結果、類似度の大きさのみでなく、t-値の大きさの観点からも推奨文字として、「そ」「よ」「わ」「ま」「や」「な」「ね」「め」「を」を、逆に避ける文字として、「け」「り」「い」「こ」「し」を挙げることができた。学習の効率化についいては、Web学習と対面学習との併用させた学習において、どのように自己モニタリング手法、および習熟度別のWeb教材を活用して学習意欲の持続を図るかという点に焦点をおいて検討した。教材は英検23級の問題を使用し、教材レベルを9段階に分けて習熟度別に個別学習者固有の教材を提供した。間違った問題は次週までに自宅で学習するように指示し、全て正答するまでのトライ回数を記録した。トライすることで自己の状況を把握し、学習意欲を持ち続けることが可能となる。しかし、トライ回数は異常に多いが習熟度の上がらない学習者が存在し、学習の効率化を考える上で、対面学習において如何に個別にフォローしていくべきかが、大きな課題として残った。平成21年度は、個人認証(筆者識別と顔識別による)と学習の効率化について検討した。筆者識別については、新局所円弧法(曲率による特徴抽出)を用いた平仮名による個人認証の精度を、類似度の値と他者との差の程度を示すt-値で検討した。その結果、類似度の大きさのみでなく、t-値の大きさも筆者識別に強い影響を示し、筆者識別に適した文字種と適さない文字種とを選定することができた。推奨文字として、「そ」「よ」「わ」「ま」を、逆に避ける文字として、「し」「こ」「い」「り」を示した。次に、顔画像による識別について検討した。顔部品の抽出はOpenCVを用い、各顔部品間の相対距離(10次元ベクトル)を主成分分析(3次元の主成分
KAKENHI-PROJECT-19500830
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19500830
Web教育における個人認証および理解度予測システムの開発
得点空間への射影)で分類したが、これだけでは高い精度が得られず、精度の向上を目指してSVMとのハイブリッドな識別手法を提案し、比較的安定した識別を実現することができた。学習の効率化については、Web学習と対面学習とを併用させたブレンディッド学習において、自己モニタリング手法、および習熟度別のWeb教材を活用して学習意欲の維持向上を図ることに焦点をおいて検討した。教材は英検2級と3級の問題を使用し、混合割合によって教材レベルを5段階、および9段階に分けて習熟度別に学習者固有の教材を提供した。間違った問題は次週までに自宅でWeb学習するように指示し、全て正答するまでのトライ回数と達成の有無を記録した。正答割合によるメッセージ表示によって自己の状況を把握し、学習意欲を持ち続けることが可能となる。ただし、上級レベルへのステップアップのハードルを高く(80%以上)設定すると効率が上がらないこと、およびレベルは細かく設定する必要があることが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-19500830
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19500830
シナプス長期増強特異的に発現量の変動する遺伝子の解析
まず、ニワトリ胚終脳解離培養系における、機能的なシナプス形成は、シナプス後細胞のE. E. Days(胚齢+培養日数)に依存し、さらにグルタミン酸作動性シナプスでは、2種類の受容体の発現が、分化成熟の段階に応じて変化、機能することを明らかにした。ついで、Mg^<2+>除去操作によって誘導される長期増強現象の機構について、ミニアチュアシナプス後電流の振幅が変化するのではなく、頻度が増大することを明らかにし、誘導に伴う拡散性因子放出の可能性や、細胞内情報伝達系の関与、glia細胞やmGluRIに依存していないことを示唆する結果を得た。一方、これらの電気生理学的解析の結果が十分反映されるように、培養細胞からのRNA調製方法に工夫をこらした上で、Mg^<2+>除去操作の前後で発現量の変化した遺伝子の単離を試みた。単離方法については、Subtraction法、Differential Display法(DD法)、Suppression Subtractive Hybridization法(SSH法)、Restriction landmark cDNA scanning法(RLCS法)の4種類の方法を検討した。Subtraction法、DD法はいずれも、擬陽性率が高く、本当に発現量の変動している遺伝子以外のものも、多数得られることがわかった。これに反して、SSH法およびRLCS法では、擬陽性シグナルがほとんど生じず、確実に発現量の変動したものだけが、優先的に取得できる非常に有望な方法であることが実証できた。これらの実験は、胚齢11日目と胚齢15日目のニワトリ胚終脳神経細胞由来のRNAを用いて行ったが、現在、Mg^<2+>除去操作前後の培養細胞由来のRNAを用いて、誘導の前後で発現量の変化した遺伝子群の取得と解析を進めている。まず、ニワトリ胚終脳解離培養系における、機能的なシナプス形成は、シナプス後細胞のE. E. Days(胚齢+培養日数)に依存し、さらにグルタミン酸作動性シナプスでは、2種類の受容体の発現が、分化成熟の段階に応じて変化、機能することを明らかにした。ついで、Mg^<2+>除去操作によって誘導される長期増強現象の機構について、ミニアチュアシナプス後電流の振幅が変化するのではなく、頻度が増大することを明らかにし、誘導に伴う拡散性因子放出の可能性や、細胞内情報伝達系の関与、glia細胞やmGluRIに依存していないことを示唆する結果を得た。一方、これらの電気生理学的解析の結果が十分反映されるように、培養細胞からのRNA調製方法に工夫をこらした上で、Mg^<2+>除去操作の前後で発現量の変化した遺伝子の単離を試みた。単離方法については、Subtraction法、Differential Display法(DD法)、Suppression Subtractive Hybridization法(SSH法)、Restriction landmark cDNA scanning法(RLCS法)の4種類の方法を検討した。Subtraction法、DD法はいずれも、擬陽性率が高く、本当に発現量の変動している遺伝子以外のものも、多数得られることがわかった。これに反して、SSH法およびRLCS法では、擬陽性シグナルがほとんど生じず、確実に発現量の変動したものだけが、優先的に取得できる非常に有望な方法であることが実証できた。これらの実験は、胚齢11日目と胚齢15日目のニワトリ胚終脳神経細胞由来のRNAを用いて行ったが、現在、Mg^<2+>除去操作前後の培養細胞由来のRNAを用いて、誘導の前後で発現量の変化した遺伝子群の取得と解析を進めている。我々が確立したニワトリ胚大脳神経解離培養系において、Mg^<2+>除去操作により長期増強(LTP)と同様な現象が起こることをすでに見いだしている。今年度は、Mg^<2+>除去前後の神経細胞から全RNAを調製して、Differential Display法を行ない、発現量の変動した遺伝子の単離を試みた。この方法は、P.Liangらによって1992年に最初に報告されたが、その後様々な改良が必要との報告があいつぎ、我々も種々の条件検討を行った結果、以下の点が最も重要であることを明らかにした。1,逆転写反応での基質濃度を、原報よりも10倍高くし、反応効率を上げる。2,PCR反応でのdNTP濃度は逆転写反応からのもちこみも含めて10uM以下にし、放射性同位元素の取り込み率を高める。3,PCR反応でのprimerは、原報の10merよりも長鎖な20merを用い、再増幅効率を上げる。この結果をもとに、50種のprimerセットを用いてDifferential Display法を行い、69種の差のある増幅産物を得た。そのうち再増幅が可能で、かつ鎖長が100bpを越える33種については、本当に発現量が変動しているかどうかを、Northern blottingにより解析した。その結果、個々の増幅産物に対応する特異的な転写産物は検出できたものの、その発現量にはいずれも差がなく、目的の遺伝子はまだ得られていない。これは上記1-3に加えて、4,PCR反応は少なくも2回以上行い、再現性よく差の生じた産物のみを選択する。ことの必要性を示しており、現在、この点を考慮して、さらに候補クローンを収集している。今後、得られた各クローンについて、Northern blotting、RT-PCR法により発現量の変化を確認した上で、その部分塩基配列を決定する。さらに、DNAデータベースにより配列の相同性解析を行ない、LTPに関連の予想される遺伝子および新規な遺伝子の候補を選択する予定である。
KAKENHI-PROJECT-07808075
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07808075
シナプス長期増強特異的に発現量の変動する遺伝子の解析
我々が確立したニワトリ胚大脳神経解離培養系では、Mg^<2+>除去操作により、長期増強(LTP)と同様な現象がおこることをすでに見いだしており、本研究は、Differential Display法(DD法)によって、Mg^<2+>除去操作の前後で発現量の変化した遺伝子を単離することを目的としている。DD法は、1992年に最初に報告され、その後様々な改良が加えられたにもかかわらず、偽陽性率が高いことや発現量の少ないmRNAが検出されにくいなどの問題点が解決されていない。我々も、primerの鎖長や基質濃度、PCR反応の再現性の確認方法等独自に種々の条件検討を加え、可能な限り発現量が本当に変動したものだけが選択できるようなDD法を確立した。その結果、いくつかの候補遺伝子を取得することができたが、これらの遺伝子がLTPに本当に関与しているのか、またそれはどのような機構で働いているのかと言った知見を得るには到っていない。そこで、今年度は、まず、より均質なRNAが取得できるように、培養方法の検討を行い、さらに、先に延べたDD法の欠点を補うために、Restriction landmark cDNA scanning法(RLCS法)とPCR-select subtraction法(PSS法)の導入を試みた。RLCS法は、放射ラベルされた制限酵素断片を2次元マッピングにより直接的に比較するもので、PCRによる増幅を行わないため、疑陽性シグナルがほとんど生じない。また、PSS法は、cDNAを均一化しつつ差引きするため、発現量の少ない遺伝子でも十分検出できると言う特徴を持つ。PSS法により取得できたcDNAのうち、Northern blot法により発現量の変動が実際に確認できたものの割合は、DD法よりもはるかに高く、PSS法の有効性を確認できた。RLCS法では、実験系の確立に時間を要し、まだ、候補遺伝子の取得には到っていないが、PCRによる非特異的増幅の可能性がまったくなく、その結果には大いに期待される。
KAKENHI-PROJECT-07808075
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07808075
ポリシランの紫外光分解を利用したマイクロレンズアレイの作製に関する研究
本研究は、ポリシランのUV光分解に伴う物性変化に着目し簡便で実用可能な全く新しいマイクロレンズアレイ作製方法を創製することを目的とするものであり、以下に研究成果の概要について述べる。1.ポリシランのUV光分解に伴う物性変化とポリマー電着法を組み合わせることで、直径が4pm程度の微小なレンズアレイの作製に成功した。本方法は、広範囲に均一にレンズアレイが作製可能であり、また、電圧や通電時間の制御によりレンズ形状を調節可能である。2.ポリマーコロイド溶液中に顔料を分散させた電着液を用いることにより、単色(青、緑各色)ながらカラーレンズアレイを作製することに成功した。3.ポリシランのuv光分解部分に生成するSi-OHの示すカチオン相互作用を利用することで、基板材料に電極を必要としない無電解ポリマーコーティングにより、十分な集光機能を示すレンズアレイの作製に成功した。本方法は、種々の材質にマイクロレンズの作製を行える点で、その利用用途の拡張が期待される。4.交互吸着法を利用することで、イオン性相互作用による作製法における問題点であった付着ポリマー量の制御が可能となり、所望のレンズアレイ作製が行えることを示した。その結果、大きな肉厚のレンズアレイを作製できる可能性を示した。本研究は、ポリシランのUV光分解に伴う物性変化に着目し簡便で実用可能な全く新しいマイクロレンズアレイ作製方法を創製することを目的とするものであり、以下に研究成果の概要について述べる。1.ポリシランのUV光分解に伴う物性変化とポリマー電着法を組み合わせることで、直径が4pm程度の微小なレンズアレイの作製に成功した。本方法は、広範囲に均一にレンズアレイが作製可能であり、また、電圧や通電時間の制御によりレンズ形状を調節可能である。2.ポリマーコロイド溶液中に顔料を分散させた電着液を用いることにより、単色(青、緑各色)ながらカラーレンズアレイを作製することに成功した。3.ポリシランのuv光分解部分に生成するSi-OHの示すカチオン相互作用を利用することで、基板材料に電極を必要としない無電解ポリマーコーティングにより、十分な集光機能を示すレンズアレイの作製に成功した。本方法は、種々の材質にマイクロレンズの作製を行える点で、その利用用途の拡張が期待される。4.交互吸着法を利用することで、イオン性相互作用による作製法における問題点であった付着ポリマー量の制御が可能となり、所望のレンズアレイ作製が行えることを示した。その結果、大きな肉厚のレンズアレイを作製できる可能性を示した。当該研究では、ポリシランの紫外(UV)光分解によって誘起される膜の物性変化を利用した応用展開を図っている。その一つである水に対する膨潤性および撥水性の変化に着目し、紫外光分解のパターニング部分へのsol-gelガラスの導入やポリマー電着法を用いることで、比較的簡単にマイクロレンズを作製できることを示してきた。今回、ポリシランのUV光分解により生成するSi-OHの示すイオン性相互作用に着目し、イオン性ポリマーコロイドの付着を利用したマイクロレンズアレイの作製を行った。ポリシランとしてpoly[methyl(phenyl)silane](PMPS)を用い、ガラス基板上にトルエン溶液からのスピンコート法により製膜し、直径10μm円形パターン配列にUV光分解パターニングを行った。この試料を、カチオン性ポリマーコロイド分散水溶液(ハニーレジストE-2000)に15分間浸漬し、ポリマー粒子の吸着を行った。引き上げ後、脱イオン水でのリンスを行い、大気下オーブン中で130°Cにて加熱処理を行った。得られた試料の表面形状観察から、広範囲に渡り凸レンズ状の構造が形成されていることを確認した。この方法はポリマー電着法と異なり、基板に電極を必要とせず、種々の材質にマイクロレンズの作製が可能であることから、その利用用途の拡張が期待できる。また、反対の電荷を有するポリマーコロイド粒子をパターニング部分に交互に吸着させる交互吸着法を用いてもマイクロレンスが作製できることを示した。以上、ポリシランのUV光分解部分とイオン性ポリマーコロイドとのイオン性相互作用を利用した、新たなマイクロレンズアレイ作製方法の開発に成功した。この方法を用いれば、堆積量を制御することでレンズアレイのみならず、微小構造物の作製も可能である。当該研究では、ポリシランの紫外(UV)光分解によって誘起される膜の物性変化を利用した応用展開を図っている。その一つである水に対する膨潤性および撥水性の変化に着目し、紫外光分解パターニング部分へのポリマーコロイドの導入やポリマー電着法を用いることで、比較的簡単にマイクロレンズアレイを作製できることを示してきた。今回、ポリマー電着法を用いて、カラー化(青、緑色)マイクロレンズの作製を行った。ポリシランとして、poly[methyl(phenyl)silane](PMPS)を用い、ガラス基板上にトルエン溶液からのスピンコート法により製膜し、直径100μm円形パターン配列にUV光分解パターニングを行った。銅フタロシアニン(青色)を加えたカルボキシル基をもつアニオン性ポリマーコロイド分散水溶液(ハニー化成製MER-34)にPMPS膜を浸積し、印加電圧30V、溶液温度45°Cにて30秒間電着を行った(陰極:ステンレス板)。電着後、洗浄、大気下オーブン(130°C)にて加熱処理を行った。得られた試料の表面形状観察から、広範囲にわたりカラーレンズが形成されていることを確認した。また、塩素化フタロシアニンを用いることにより、緑色マイクロレンズアレイも得た。
KAKENHI-PROJECT-16550160
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16550160
ポリシランの紫外光分解を利用したマイクロレンズアレイの作製に関する研究
さらに、カチオン性ポリマーコロイド粒子を用いてもマイクロレンズが作製できることもわかった。以上、ポリシランのUV光分解部分とポリマー電着法を利用した、カラー化マイクロレンズアレイ作製方法の開発に成功し、「UV光分解、ポリマー電着」を繰り返し行うことにより、フルカラーマイクロレンズアレイへの可能性を示した。このように、電着液に機能性材料を分散させるだけで、レンズ本来の「集光」に加えて、光(電子)機能をも併せ持つマイクロレンズアレイの作製を実例を持って示した。
KAKENHI-PROJECT-16550160
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16550160
超高圧高温実験に基づいた下部マントルおよび境界層の構造と物性の研究
本研究は下部マントルに対応する超高圧高温条件下でのX線その場観察実験を通して、下部マントルに存在するであろう各種ケイ酸塩、酸化物の構造と密度を明らかにし、現在まで提唱されているさまざまな地球深部のダイナミックなモデルを、物質科学的な情報に基づいて検証していくことを目標としたものである。上記の目的のために、レーザー加熱ダイヤモンドアンビル装置とシンクロトロン放射光を組み合わせ、140GPaまでの超高圧領域における高温高圧X線回折実験装置を開発した。また、焼結ダイヤモンドを用いたマルチアンビル装置や対向アンビル装置による実験も行った。これらの装置を用いて、多くのケイ酸塩系、酸化物系について、さまざまなX線その場観察実験、および回収試料の分析電子顕微鏡による解析を組み合わせた研究も行われた。これらの実験により、スラブの主要構成鉱物が下部マントルに沈み込んだ際に相転移を起こして生成すると考えられる多様な相、特にAlを多く含む新しい結晶相の構造や特徴が明らかにされた。また、下部マントル最上部までの条件下におけるさまざまな相の、状態方程式や相平衡関係を定量的に精密に求める研究も行われた。それらの結果を用いて、まだいくつか必要な仮定はあるものの、地震波データとの比較からマントルの温度プロファイルに関する制限を与えることができた。またガーネットが下部マントルまで沈み込んでいった場合に起こるであろう相転移の様子を定量的に明らかにすることができた。地球内部は複雑な多成分系であり、今回の限られた成分による結果だけから結論できることはまだ限られている。しかし本研究によって、従来技術的に不可能であった温度圧力領域でのさまざまなX線回折実験が可能になり、ケイ酸塩や酸化物の下部マントル条件下でのふるまいに関して、多くの新しい知見を得ることができた。本研究は下部マントルに対応する超高圧高温条件下でのX線その場観察実験を通して、下部マントルに存在するであろう各種ケイ酸塩、酸化物の構造と密度を明らかにし、現在まで提唱されているさまざまな地球深部のダイナミックなモデルを、物質科学的な情報に基づいて検証していくことを目標としたものである。上記の目的のために、レーザー加熱ダイヤモンドアンビル装置とシンクロトロン放射光を組み合わせ、140GPaまでの超高圧領域における高温高圧X線回折実験装置を開発した。また、焼結ダイヤモンドを用いたマルチアンビル装置や対向アンビル装置による実験も行った。これらの装置を用いて、多くのケイ酸塩系、酸化物系について、さまざまなX線その場観察実験、および回収試料の分析電子顕微鏡による解析を組み合わせた研究も行われた。これらの実験により、スラブの主要構成鉱物が下部マントルに沈み込んだ際に相転移を起こして生成すると考えられる多様な相、特にAlを多く含む新しい結晶相の構造や特徴が明らかにされた。また、下部マントル最上部までの条件下におけるさまざまな相の、状態方程式や相平衡関係を定量的に精密に求める研究も行われた。それらの結果を用いて、まだいくつか必要な仮定はあるものの、地震波データとの比較からマントルの温度プロファイルに関する制限を与えることができた。またガーネットが下部マントルまで沈み込んでいった場合に起こるであろう相転移の様子を定量的に明らかにすることができた。地球内部は複雑な多成分系であり、今回の限られた成分による結果だけから結論できることはまだ限られている。しかし本研究によって、従来技術的に不可能であった温度圧力領域でのさまざまなX線回折実験が可能になり、ケイ酸塩や酸化物の下部マントル条件下でのふるまいに関して、多くの新しい知見を得ることができた。本年度は、既存の焼結ダイヤモンドアンビル用小型プレスを用いて筑波のシンクロトロン放射光実験施設で、一軸応力下でのオリビンや鉄の圧縮、加熱実験を行った。これらの実験から、本研究計画でめざしている実験技術に関して各種の問題点や今後の研究の進め方に関する指針が得られ、それらを元に新しい焼結ダイヤモンドアンビル装置の設計、製作を行った。単結晶ダイヤモンドアンビルと組み合わせるレーザー加熱システムについては、ビームエキスパンダーなど各種の光学素子を入れて加熱試験を行い、新しい形状のダイヤモンドアンビルのテスト結果とあわせて、新装置の設計製作を行った。また、既存の単結晶ダイヤモンドアンビルとYAGレーザー加熱装置を用いて、ガ-ネットの超高圧高温クエンチ実験を行い、回収試料の構造や組成の解析を、新規に購入したマイクロディフラクトメータや既存の走査電子顕微鏡およびエネルギー分散型X線マイクロアナライザーを用いて行った。この結果、マイクロディフラクトメーターのこのような微小試料に対する有用性を明らかにすると共に、パイロープ組成のガ-ネットに関して、下部マントル条件下での安定相につき新しい知見が得られた。また、レーザー加熱における温度勾配や加熱時間等の相転移に対する影響が明らかにされた。このように、本年はまだ5ケ年計画の初年度のためそのほとんどが、新しい装置の設計と製作に費やされた。しかし導入された新装置も順調に立ち上がり、計画はほぼ予定どおりに進行している。本年度は、昨年度新たに設計し製作したレーザー加熱ダイヤモンドアンビル装置の立ち上げとそれを用いた実験を集中的に行った。装置は高エネルギー物理研究所放射光実験施設のBL-13ハッチ内に設置し、S型課題として優先的に4月から12月までの間に計6週間以上のビームタイム配分を受け実験を行った。その結果ほぼ当初の目標どおり、100GPa以上の圧力発生と、炭酸ガスレーザーを用いた数千度までの加熱、および粉末X線その場回折実験が可能になった。
KAKENHI-PROJECT-07102003
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07102003
超高圧高温実験に基づいた下部マントルおよび境界層の構造と物性の研究
定量的な温度測定やなどまだ残されている問題もあるが、基本的には満足できる性能をもつことが確認された。この装置を使い、下部マントルで重要となるガ-ネットの高圧相に関し、新しい重要な発見が得られた。従来、ガ-ネットを50GPa以上で加熱すると六方晶のペロフスカイト相が生成するという報告があったが、その実態は不明であった。本研究ではパイロープを30GPa領域で転移させるとペロフスカイト相とアルミに富んだ相に分解し、同一試料を60GPa領域で転移させると斜方晶ペロフスカイトに転移すること、および後者のペロフスカイトは圧力を下げるとクエンチ出来ずに六方晶に変化することが明らかにされた。つまり、従来はクエンチ実験しか行われていなかったために、六方晶のペロフスカイト相が生成したと誤認されていたわけである。また回収試料の電顕観察から、このような変化はペロフスカイト中のAlの固溶量が圧力と共に増大するためであろうことが推測された。このような実験結果から、下部マントルの組成についての信頼度の高い議論が可能になりつつある。また下部マントルのもう一つの主要構成鉱物と考えられるマグネシオヴスタイトの高圧相に関連して、MnOの高圧実験が110GPaまで行われた。90GPa付近で衝撃実験に対応する相転移が見いだされたが、予想に反して単純なB1-B2転移ではなく、複雑な構造の高圧相であることが確認され、解析が進行中である。以上のようにまだ本研究は5年計画の2年目であるが、下部マントル条件下ではクエンチ出来ない高圧相が生成する例が2つも明らかにされ、当初のねらいどおりに研究が進行している。本年度は、昨年度までに製作した高温高圧下のX線回折実験装置の改良を行うと共に、ガ-ネットの高圧相転移を中心に研究を行った。CO_2レーザーによる加熱とダイヤモンドアンビルを組み合わせた高温高圧発生装置は下部マントル条件を再現することには成功したが、温度の安定性と均一性が悪く、定量的な実験を行うには種々の困難がある。そこで今年は温度分布を大幅に改良できると期待される、YAGレーザーを試料の両面から同時に照射する新しい加熱システムを製作し、そのテストを行った。その結果、このような加熱法により高温条件の定量化がかなり期待できるので、同様の装置をX線回折実験時にも使えるように現在準備中である。一方昨年までの研究で、クエンチできないガ-ネットの高圧相が新たに見いだされたが、その詳細についてさらに研究を進めた。従来このLiNbO3型構造に逆転移するペロフスカイト型の高圧相は、Alの固溶量が圧力と共に増大するために起き、50GPa程度以上でないと生成しないと思われたが、加熱温度によっては35GPa程度でも生成することが明らかになりつつある。また新たにCa3Fe2Si3O12の組成を持つガ-ネットの高圧相の研究も開始した。この鉱物には3価の鉄イオンが含まれており、下部マントルの酸化状態の問題と関連して重要視されるようになってきた物質である。
KAKENHI-PROJECT-07102003
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07102003
電動義手の末梢神経インターフェースにおける神経束機能の研究
ラットの坐骨神経を大腿二頭筋枝、脛骨神経、総腓骨神経の3つの神経束に分割し、各々の神経束にフック電極もしくは埋設電極を取り付け、ラットの下肢動作時の神経活動電位を計測した。その結果、各々の神経束から個別に活動電位を得ることができ、いずれも活動電位は2相性で、活動時間、最高電位、最低電位、電位差といったパラメータの値や周波数分布の特徴は類似していた。フック電極と埋設電極によって計測される活動電位を比較すると、計測される最高電位、最低電位、電位差の値に相違があるものの、活動時間や周波数分布の特徴から同様の活動電位を検出できた。活動電位は、大腿二頭筋枝、脛骨神経、総腓骨神経ともに類似の波形であり、足関節の屈伸はこれらの神経活動電位の位相差によって、拮抗筋の収縮・弛緩による協調運動が実現するものと考えられた。そのため坐骨神経を神経束に分離後、同一平面上に配置して各神経束に電極を装着することで、電位束ごとに異なる神経電位を感知することが可能であり、この方法で神経束電位による多チャンネル化が実現するものと考えられた。ラットの坐骨神経を大腿二頭筋枝、脛骨神経、総腓骨神経の3つの神経束に分割し、各々の神経束にフック電極もしくは埋設電極を取り付け、ラットの下肢動作時の神経活動電位を計測した。その結果、各々の神経束から個別に活動電位を得ることができ、いずれも活動電位は2相性で、活動時間、最高電位、最低電位、電位差といったパラメータの値や周波数分布の特徴は類似していた。フック電極と埋設電極によって計測される活動電位を比較すると、計測される最高電位、最低電位、電位差の値に相違があるものの、活動時間や周波数分布の特徴から同様の活動電位を検出できた。活動電位は、大腿二頭筋枝、脛骨神経、総腓骨神経ともに類似の波形であり、足関節の屈伸はこれらの神経活動電位の位相差によって、拮抗筋の収縮・弛緩による協調運動が実現するものと考えられた。そのため坐骨神経を神経束に分離後、同一平面上に配置して各神経束に電極を装着することで、電位束ごとに異なる神経電位を感知することが可能であり、この方法で神経束電位による多チャンネル化が実現するものと考えられた。ラット坐骨神経を全身麻酔下に展開し、まず本幹外部から針電極を刺入して神経東電位を導出する方式について検討した。ラット坐骨神経を脛骨神経幹、総腓骨神経幹、大腿二頭筋枝の3本に分け、脛骨神経および腓骨神経を電気刺激して各々足関節底屈、背屈が起こることを確認した。次いで各神経束にテフロン針電極を刺入して各神経束の電位を計測した。その結果、当初の計画のような神経束に針電極を刺入する方法は、電極の先端が移動しやすく同一の神経東電位を導出し続けることが困難であることが明らかとなった。特に本研究は坐骨神経インターフェースを生体ラットに埋入して、導出電位により電動義肢を駆動制御することを目的とするため、ラットの運動時に電極先端が動いて誤動作を招くことが危惧された。そこで各神経束の電位計測を針電極とフック電極で計測する比較実験を行った結果、分離した神経束の電位計灘にはフック電極が、計測部位の誤差が小さく有利であることが判明した。ただしヒト坐骨神経のように神経束が多くなった場合、多数のフック電極を装着することが困難となるため、分離した神経東を三次元的に配置する必要性が考えられた。このように今年度は、ラット坐骨神経の神経束分離から出発し、神経束の電位導出のための神経電極の選定を行って、各神経東電位の計測を行い、基礎的な実験システムを確立した。とくに分離した神経束の電気刺激によって、足関節の屈筋および伸筋を分離して収縮させることが可能となったことは、今後の実験展開にとり有意義であると考えられた。今年度の実験ではラット坐骨神経を脛骨神経幹、総腓骨神経幹、大腿二頭筋枝の3本に分け、各々にフック電極を装着して電極同士が干渉し合わない方法を検討した。その結果、各神経を遠位に約10mm分離してフック電極間に厚さ2mmの絶縁体を挿入することで、各神経電位を独立して計測し得ることが明らかとなった。続いて大脳皮質の運動野を電気刺激して下行性の神経電位計測を試みたが、全身麻酔下では電流が末梢まで下行しないことが明らかとなり、半覚醒状態で辛うじて微弱な電位が計測されるにとどまった。また運動野からの神経電位が下行した場合、筋収縮による筋電も発生するため、フック電極が筋電位の影響を受けることも危惧された。このため3本の神経を三次元的に分離配置して留置し、一旦ラットを覚醒させて自発的な随意運動の神経電位を計測する方法をとることとし、各神経の電位を計測し得た。続いて各神経をさらに神経束に分離して各神経束の電位計測を試みたが、フック電極の大きさに限度があり微弱な神経束電位を計測するにはより微小なフック電極の開発が必要と考えられた。以上によりラットの随意下肢運動中の運動神経電位の計測が可能となり、次年度はラット下肢ロボットを製作、上記の3種類の運動神経の電位をロボットのアクチュエーター制御に応用するシステム構築が主眼となる。昨年度から継続している本研究により、末梢神経電位による神経インターフェースが電動義手制御の多チャンネル化に大きく貢献し得ることが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-20300193
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20300193
電動義手の末梢神経インターフェースにおける神経束機能の研究
今年度はラットの坐骨神経を大腿二頭筋枝、脛骨神経、総腓骨神経の3つの神経束に分割し、各々の神経束にフック電極もしくは埋設電極を取り付け、ラットの下肢動作時の神経活動電位を計測した。その結果、各々の神経束から個別に活動電位を得ることができ、いずれも活動電位は2相性で、活動時間の値は大腿二頭筋枝が0.437(±0.330)秒、脛骨神経が0.475(±0.289)秒、総腓骨神経が0.401(±0.256)秒であり、最高電位の値は大腿二頭筋枝が295.29(±142.26)mV、脛骨神経が261.87(±194.86)mV、総腓骨神経が283.00(±107.40)mVであった。最低電位の値は大腿二頭筋枝が-240.00(±134.02)mV、脛骨神経が-299.37(±186.17)mV、総腓骨神経が-225.50(±164.12)mVであった。活動時間、最高電位、最低電位、電位差といったパラメータの値や周波数分布の特徴は類似していた。フック電極と埋設電極によって計測される活動電位を比較すると、計測される最高電位、最低電位、電位差の値に相違があるものの、活動時間や周波数分布の特徴から同様の活動電位を検出できた。活動電位は、大腿二頭筋枝、脛骨神経、総腓骨神経ともに類似の波形であり、足関節の屈伸はこれらの神経活動電位の位相差によって、拮抗筋の収縮・弛緩による協調運動が実現するものと考えられた。そのため坐骨神経を神経束に分離後、同一平面上に配置して各神経束に電極を装着することで、電位束ごとに異なる神経電位を感知することが可能であり、この方法で神経束電位による多チャンネル化が実現するものと考えられた。
KAKENHI-PROJECT-20300193
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20300193
かゆみの脳内メカニズム解明:ヒト脳機能イメージング研究
アトピー性皮膚炎など難治性のかゆみで苦しむ患者が急増している。かゆみはかきむしらずにはいられない不快な体性感覚である。そのような不快な感覚をつくり出す脳内処理過程を制御することができれば、かゆみを抑制することも可能になる。それを実現するためには、まず、かゆみの脳内メカニズムを解明しなければならない。そこで、本研究では、脳磁図とfMRIを用いて、かゆみ独特の不快感が脳内でつくり出されるメカニズムの解明を目指した。本研究は健常成人を対象とした。左手首にかゆみ刺激あるいは痛み刺激を与え、そのときの脳活動をかゆみと痛みで比較することにより、かゆみ特異的な脳内処理過程の抽出を試みた。特に、かゆみの脳磁図実験は本研究が世界初であり、ミリ秒単位で起こるかゆみの脳内処理過程を世界で初めてが明らかにした。例えば、かゆみの神経情報が、視床から刺激と反対側の右脳第二次体性感覚野(反対側SII)へ、そして、同側SIIへと伝達されることなどを明らかにした(Mochizuki et al., Journal of Neuroscience,査読中)。次に、かゆみの実験と同一被験者で、痛み刺激時の脳活動を脳磁図とfMRIを用いて計測した。得られた脳磁図・fMRIデータをかゆみと痛みで比較した結果、ある特定の脳領域でかゆみと痛みで活動パターンに違いがあることがわかった(論文執筆中)。すなわち、本研究により、かゆみに特異的な脳領域が特定された。この脳領域がかゆみ独特の不快感に関係することがわかれば、将来、かゆみ独特の不快感を取り除く治療法・対処法の開発などへと応用することが可能になる。アトピー性皮膚炎など難治性のかゆみで苦しむ患者が急増している。かゆみはかきむしらずにはいられない不快な体性感覚である。そのような不快な感覚をつくり出す脳内処理過程を制御することができれば、かゆみを抑制することも可能になる。それを実現するためには、まず、かゆみの脳内メカニズムを解明しなければならない。そこで、本研究では、脳磁図とfMRIを用いて、かゆみ独特の不快感が脳内でつくり出されるメカニズムの解明を目指した。本研究は健常成人を対象とした。左手首にかゆみ刺激あるいは痛み刺激を与え、そのときの脳活動をかゆみと痛みで比較することにより、かゆみ特異的な脳内処理過程の抽出を試みた。特に、かゆみの脳磁図実験は本研究が世界初であり、ミリ秒単位で起こるかゆみの脳内処理過程を世界で初めてが明らかにした。例えば、かゆみの神経情報が、視床から刺激と反対側の右脳第二次体性感覚野(反対側SII)へ、そして、同側SIIへと伝達されることなどを明らかにした(Mochizuki et al., Journal of Neuroscience,査読中)。次に、かゆみの実験と同一被験者で、痛み刺激時の脳活動を脳磁図とfMRIを用いて計測した。得られた脳磁図・fMRIデータをかゆみと痛みで比較した結果、ある特定の脳領域でかゆみと痛みで活動パターンに違いがあることがわかった(論文執筆中)。すなわち、本研究により、かゆみに特異的な脳領域が特定された。この脳領域がかゆみ独特の不快感に関係することがわかれば、将来、かゆみ独特の不快感を取り除く治療法・対処法の開発などへと応用することが可能になる。
KAKENHI-PROJECT-20790825
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20790825
高圧力が拓く移植可能な組織構築技術の開発
再生医療を目指した細胞からの三次元組織構築法の研究が著しい発展を遂げているが、血圧に耐える強度を求められる血管組織ではその開発は極めて遅れている。研究代表者は先行研究で、生理的範囲を超える極めて高い圧力を負荷すると、ラット平滑筋細胞では細胞同士が接着して弾性線維などの細胞外基質を多く産生し、強固な血管様組織ができることを見出した。本研究では、ヒト血管平滑筋細胞を用いて通常生体内で経験しないレベルの高圧力を感受する機序を解明し、大気圧環境下では十分に引き出せなかった細胞の能力を最大限に利用することで、最終的には移植可能な弾性・剛性を有する三次元組織を短期間で構築する方法を開発することを目的とする。研究代表者は、ラット平滑筋細胞を用いた実験で、生理的範囲を超える高圧力環境の培養は、弾性線維をはじめとする細胞外基質を豊富に産生させ、細胞播種と高圧力印加を交互に繰り返すと強固な血管様組織が構築されることを見出した。さらに、加圧装置の改良を行い、新規作製した加圧装置を用いることで、酸素分圧やpHといった環境を詳細にリアルタイムでモニターすることに成功した。本年度は、様々な圧力と酸素分圧の条件でヒト平滑筋細胞で多層の強度あるシートを作製できた。さらに、平滑筋細胞の最上層に内皮細胞を播種し2層構造の血管シートを作製する条件を見出した。このシートでは内皮細胞と平滑筋細胞の間に弾性線維の構造を確認することができた。ヒト平滑筋細胞シートはヌードラットへパッチとして移植し、短期生存を確認した。本年度は昨年度に引き続き、酸素分圧の条件を加味した細胞シート作製に適切な培養条件の検討を行い、強度のあるシートの作製に成功した。さらに、内皮細胞と平滑筋細胞を含有したシートを作製することができ、予定していた実験を行うことができた。さらに、平成31年度に行う予定であった、動物への移植実験を行い数例の検討では動脈圧に耐えられる細胞シートができたことが確認でき、次年度に向けた準備を順調に行うことができた。本年度の検討結果を元に、次年度は細胞シートの動物への移植実験を中心に行う予定である。時間の経過を追って解析を行うことで細胞シートの生体適合性を検討する。ヒト由来細胞のマーカーで移植されたシートを染色することで、移植されたシートの残存性やホスト側の細胞の浸潤などを検討項目とする。酸素分圧がむしろ低めである方が細胞シートの作製に適しているという結果も得られており、酸素分圧と圧力印加条件の組み合わせが、細胞シート作製に必要なフィブロネクチン原線維形成にどのような影響を与えているかも細胞レベルで検討してゆく。再生医療を目指した細胞からの三次元組織構築法の研究が著しい発展を遂げているが、血圧に耐える強度を求められる血管組織ではその開発は極めて遅れている。研究代表者は先行研究で、生理的範囲を超える極めて高い圧力を負荷すると、ラット平滑筋細胞では細胞同士が接着して弾性線維などの細胞外基質を多く産生し、強固な血管様組織ができることを見出した。本研究では、ヒト血管平滑筋細胞を用いて通常生体内で経験しないレベルの高圧力を感受する機序を解明し、大気圧環境下では十分に引き出せなかった細胞の能力を最大限に利用することで、最終的には移植可能な弾性・剛性を有する三次元組織を短期間で構築する方法を開発することを目的とする。研究代表者は、ラット平滑筋細胞を用いた実験で、生理的範囲を超える高圧力環境の培養は、弾性線維をはじめとする細胞外基質を豊富に産生させ、細胞播種と高圧力印加を交互に繰り返すと強固な血管様組織が構築されることを見出した(Yokoyama U. et al., Scientific Reports, 2017)。これを受けて本年度は以下について実験を行い結果を得た。1大阪大学、企業との連携により、加圧装置の改良を行い、新規作製した加圧装置を用いることで、酸素分圧やpHといった環境を詳細にリアルタイムでモニターすることに成功した。2ヒト平滑筋細胞を用いて細胞外基質が効率よく産生できる加圧条件を見出した。3加圧によりヒト平滑筋細胞で多層の強度あるシートを作製できた。初年度は高圧力の感知分子機序を解明する目的で、加圧装置の改良を行い、細胞が感受する環境を正確に把握することができ、その条件を用いてある一定の条件が細胞外基質を効率よく産生することを明らかにできた。初年度として予定していた実験を行うことができ、さらに、その条件を用いて、平成30年度に行う予定であった、細胞シートの作製に着手できた。数例の検討では、強度のある細胞シートを得ることができ、次年度に向けた準備を順調に行うことができた。再生医療を目指した細胞からの三次元組織構築法の研究が著しい発展を遂げているが、血圧に耐える強度を求められる血管組織ではその開発は極めて遅れている。研究代表者は先行研究で、生理的範囲を超える極めて高い圧力を負荷すると、ラット平滑筋細胞では細胞同士が接着して弾性線維などの細胞外基質を多く産生し、強固な血管様組織ができることを見出した。本研究では、ヒト血管平滑筋細胞を用いて通常生体内で経験しないレベルの高圧力を感受する機序を解明し、大気圧環境下では十分に引き出せなかった細胞の能力を最大限に利用することで、最終的には移植可能な弾性・剛性を有する三次元組織を短期間で構築する方法を開発することを目的とする。
KAKENHI-PROJECT-17K19403
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K19403
高圧力が拓く移植可能な組織構築技術の開発
研究代表者は、ラット平滑筋細胞を用いた実験で、生理的範囲を超える高圧力環境の培養は、弾性線維をはじめとする細胞外基質を豊富に産生させ、細胞播種と高圧力印加を交互に繰り返すと強固な血管様組織が構築されることを見出した。さらに、加圧装置の改良を行い、新規作製した加圧装置を用いることで、酸素分圧やpHといった環境を詳細にリアルタイムでモニターすることに成功した。本年度は、様々な圧力と酸素分圧の条件でヒト平滑筋細胞で多層の強度あるシートを作製できた。さらに、平滑筋細胞の最上層に内皮細胞を播種し2層構造の血管シートを作製する条件を見出した。このシートでは内皮細胞と平滑筋細胞の間に弾性線維の構造を確認することができた。ヒト平滑筋細胞シートはヌードラットへパッチとして移植し、短期生存を確認した。本年度は昨年度に引き続き、酸素分圧の条件を加味した細胞シート作製に適切な培養条件の検討を行い、強度のあるシートの作製に成功した。さらに、内皮細胞と平滑筋細胞を含有したシートを作製することができ、予定していた実験を行うことができた。さらに、平成31年度に行う予定であった、動物への移植実験を行い数例の検討では動脈圧に耐えられる細胞シートができたことが確認でき、次年度に向けた準備を順調に行うことができた。本年度の検討結果を元に、次年度は細胞シートの作製のための条件検討を中心に研究を行う予定である。細胞膜表面へ可溶性フィブロネクチンの集合と不可溶性フィブロネクチン原線維の形成は弾性線維形成の足場となると同時に、インテグリンを介した細胞同士の接着を促進し細胞の三次元配置が可能となる。そこで、フィブロネクチン原線維形成を最も効果的に誘導できる圧力印加条件を用いてヒト平滑筋細胞の播種と高圧印加を交互に行い、平滑筋細胞同士の接着と弾性線維形成を促進させ、多層細胞シートを構築する。特に重要であるのが、細胞播種密度と加圧に要する時間の検証となる。フィブロネクチン原線維形成と引き続く弾性線維形成は、フィブロネクチン、フィブリリン1、エラスチン蛋白の免疫染色、エラスチカ染色、生化学的検査で確認する。本年度の検討結果を元に、次年度は細胞シートの動物への移植実験を中心に行う予定である。時間の経過を追って解析を行うことで細胞シートの生体適合性を検討する。ヒト由来細胞のマーカーで移植されたシートを染色することで、移植されたシートの残存性やホスト側の細胞の浸潤などを検討項目とする。酸素分圧がむしろ低めである方が細胞シートの作製に適しているという結果も得られており、酸素分圧と圧力印加条件の組み合わせが、細胞シート作製に必要なフィブロネクチン原線維形成にどのような影響を与えているかも細胞レベルで検討してゆく。旅費に関しては招待講演であったため、計上していた研究費を使用しなかった。また、圧力印加装置のための交換部品が、装置の故障や劣化がなく必要とならなかった。蛍光標識をするための試薬一式が研究室内で合成できたためにコストを削減できた。これらの資金を用いて、平成30年度にはより多くの細胞シートを作製し、移植実験に向けた検討を行う予定である。細胞シート作製に要する細胞培養にかかる経費が予定より少ない額で目標を達成できたため差額が生じた。次年度の動物への細胞シート移植実験をタイムコースを複数設定して行う予定のため、差額はこれらの解析にあてる。
KAKENHI-PROJECT-17K19403
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K19403
希ガスマトリックス中での金属と小分子との反応の研究:金属単原子からクラスクーヘ
金属と小分子との反応に関する研究は、新規化学種(反応中間体)の発見や(触媒)反応機構解明に重要な意味を持つ。本研究では、マトリックス単離赤外分光法を用いることにより、一連の金属及び金属クラスターと小分子との反応を解明することを目的している。本年度では、主な研究成果として、ランタノイド原子と亜酸化窒素(N_2O)との反応についてマトリックス単離赤外分光法と理論化学計算手法を組み合わせることにより詳細な研究を行った。亜酸化窒素と前周期ランタノイド原子との反応では、中性OLn(N_2)(Ln=Ce,Pr,Nd,Sm)分子が観測されたが、Euについては同様な化合物の形成が観測されなかった。中性分子に加え、OLnNN^+(Ln=Ce,Pr,Nd,Sm)陽イオン錯体が形成された。亜酸化窒素と後周期ランタノイド(Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu)原子との反応においては、OLn(N_2)及びOLnNN(Ln=Gd,Tb,Ho,Er)が観測された。Ybを除いてGdからLuまでの各元素についてOLnNN^+陽イオン錯体が形成された。密度汎関数法を用いた理論計算による分子振動の結果と赤外分光測定の実験結果の一致により、新規反応生成物の同定が支持された。これらの新規反応生成物の分子構造や電子構造、結合性質、及び反応エネルギーや反応機構が明らかになった。金属と小分子との反応に関する研究は、新規化学種(反応中間体)の発見や(触媒)反応機構解明に重要な意味を持つ。本研究では、マトリックス単離赤外分光法を用いることにより、一連の金属及び金属クラスターと小分子との反応を解明することを目的している。本年度では、主な研究成果として、一酸化炭素(CO)と3d金属2量体との反応、後周期ランタノイド2量体上での一酸化炭素の活性化、及びランタノイド元素と二酸化炭素(CO2)との反応について系統的な研究を行い、新規化学種の構造や電子状態を明らかにするとともに、反応機構を解明した。一酸化炭素と3d金属2量体との反応について、6種類の異なる交換-相関密度関数を用いて系統的に研究を行った。周期表の左から右へ行くにつれて、3d金属2量体とCOとの結合はside-onから、bridgingを経由して、terminalへと変化する。ScとTiにおいて、金属-酸素結合が形成されることを強く示唆された。M_2CO(M=Sc-Zn)の基底状態では、周期表の左から右へ行くにつれて、C-0伸縮振動は増加し、結合エネルギーが減少することがわかった。TmとYbに関しては、一酸化炭素との反応生成物が観測されなかったが、Tb,Dy,Ho,Er,Luについては、一連の新規分子Ln_2[η^2(μ_2-C,0)]_x(Ln=Tb,Dy,Ho,Er,Lu;x=1,2)が形成されることがわかった。これらの新規2核金属クラスターカルボニル分子では、C-0伸縮振動は1100to1300cm^<-1>領域に現れ、気相C0のそれ(2143.5cm^<-1>)より遥かに低く、C-0結合が活性化されたことを示す。密度汎関数法による理論計算を行った結果、これらの新規分子Ln_2[η^2(μ_2-C,0)]_xは、平面構造を取る事が予測され、side-on構造をとることが示された。金属と小分子との反応に関する研究は、新規化学種(反応中間体)の発見や(触媒)反応機構解明に重要な意味を持つ。本研究では、マトリックス単離赤外分光法を用いることにより、一連の金属及び金属クラスターと小分子との反応を解明することを目的している。本年度では、主な研究成果として、ランタノイド原子と亜酸化窒素(N_2O)との反応についてマトリックス単離赤外分光法と理論化学計算手法を組み合わせることにより詳細な研究を行った。亜酸化窒素と前周期ランタノイド原子との反応では、中性OLn(N_2)(Ln=Ce,Pr,Nd,Sm)分子が観測されたが、Euについては同様な化合物の形成が観測されなかった。中性分子に加え、OLnNN^+(Ln=Ce,Pr,Nd,Sm)陽イオン錯体が形成された。亜酸化窒素と後周期ランタノイド(Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu)原子との反応においては、OLn(N_2)及びOLnNN(Ln=Gd,Tb,Ho,Er)が観測された。Ybを除いてGdからLuまでの各元素についてOLnNN^+陽イオン錯体が形成された。密度汎関数法を用いた理論計算による分子振動の結果と赤外分光測定の実験結果の一致により、新規反応生成物の同定が支持された。これらの新規反応生成物の分子構造や電子構造、結合性質、及び反応エネルギーや反応機構が明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-07F07556
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07F07556
電析による磁性金属人工格子の作製と評価
1.目的異種の金属原子を原子単位で交互に規則的に積層した「金属人工格子」は、通常、分子線エピタキシ-・スパッタリング等の物理気相成長法により作製され、新機能材料の創製あるいは新物質探索を目指して研究開発が急速に進展している。本年度は、常温・常圧で行える液相からの金属相形成法である「電析」による磁性金属人工格子の作製を目指すものである。2.方法・結果および考察本研究は、特に、垂直磁気異方性の発現とその光磁気記録媒体への応用が期待されているPt/Co人工格子の電析による作製を主要な研究目標にした。Pt(111)清浄表面へのCo電析初期過程の反射電子顕微鏡観察を基に、電析Co超薄膜の結晶成長機構に関して検討し、単原子層レベルでの積層構造制御の基礎データを得た。電位制御条件下において電析Co/Pt(111)超薄膜はヘテロエピタキシャルに多核多層同時成長してfcc疑似構造をとり、更に、オージェ電子分光・X線および紫外線励起光電子分光法の併用により電析Pt/Co積層界面における規則化合金相形成の可能性を明らかにした。上記解析結果を基に、原子層のオーダで制御された電析Pt/Co多層膜の多重の積層化を試み、断面透過電子顕微鏡法による超格子構造の直接観察ならびにX線回析の併用により超格子の組成周期構造・積層界面構造を評価した。作製されたPt/Co多層構造は電析の過電圧に依存し、また、その磁化特性は面内磁気異方性を示すものの積層界面構造に依存しており、電析条件を厳密に制御することにより従来の気相成長法に劣らないあるいはより特異な構造・機能を有した磁性人工格子に成り得るものであると考えられる。1.目的異種の金属原子を原子単位で交互に規則的に積層した「金属人工格子」は、通常、分子線エピタキシ-・スパッタリング等の物理気相成長法により作製され、新機能材料の創製あるいは新物質探索を目指して研究開発が急速に進展している。本年度は、常温・常圧で行える液相からの金属相形成法である「電析」による磁性金属人工格子の作製を目指すものである。2.方法・結果および考察本研究は、特に、垂直磁気異方性の発現とその光磁気記録媒体への応用が期待されているPt/Co人工格子の電析による作製を主要な研究目標にした。Pt(111)清浄表面へのCo電析初期過程の反射電子顕微鏡観察を基に、電析Co超薄膜の結晶成長機構に関して検討し、単原子層レベルでの積層構造制御の基礎データを得た。電位制御条件下において電析Co/Pt(111)超薄膜はヘテロエピタキシャルに多核多層同時成長してfcc疑似構造をとり、更に、オージェ電子分光・X線および紫外線励起光電子分光法の併用により電析Pt/Co積層界面における規則化合金相形成の可能性を明らかにした。上記解析結果を基に、原子層のオーダで制御された電析Pt/Co多層膜の多重の積層化を試み、断面透過電子顕微鏡法による超格子構造の直接観察ならびにX線回析の併用により超格子の組成周期構造・積層界面構造を評価した。作製されたPt/Co多層構造は電析の過電圧に依存し、また、その磁化特性は面内磁気異方性を示すものの積層界面構造に依存しており、電析条件を厳密に制御することにより従来の気相成長法に劣らないあるいはより特異な構造・機能を有した磁性人工格子に成り得るものであると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-06855079
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06855079
安定なβ-シート構造形成能を有する機能性ペプチドの構築
β-シート構造が関与した多量体形成は天然のタンパク質においてその例が数多く見られるのにもかかわらず、その詳細な分子機構は全くわかっていない。本研究の目的はこれらのタンパク質の二量体形成をになっている部分、特にβ-シート構造による二量体形成部位のモデル化合物を合成して水溶液中での二量体形成機構を探ると共に、それをもとに非共有結合により高次構造を形成する機能性人工タンパク質を構築するための天然には存在しない二量体形成分子を合成することにある。本年度の研究ではすでにその三次元構造がX線結晶解析により明らかになっているファージλCroタンパク質の二量体形成部分をモデル化することを試みた。Croタンパク質二量体とオペレーターDNA複合体で興味深いのはDNA結合能は二量体形成に依存し、二量体形成は各々の単量体のC末端部分での逆平行β-シート形成ならびにフェニルアラニン残基がもう一方の単量体のN末端部分で形成される疎水性ポケットに取り込まれることにより安定化されている事である。この二量体形成機構をもとにして、Croタンパク質のC末端部分のアミノ酸配列を持ち、N末端部分のアミノ酸で形成される疎水性ポケットのかわりにゲスト包接能を持つシロデキストリン分子をもつ14アミノ酸残基からなるオリゴペプチドを合成した。合成したペプチドの二量体形成能の評価は、単量体と二量体の分子量が違うことを利用して、ゲル濾過クロマトグラフィーを用いて行った。現在までの結果では、濃度に依存して二量体と思われるピークが生成することがわかっている。βシート構造をとることによって特徴的な円二色性(CD)スペクトルが観測されると期待されるので、今後、CDスペクトルを用いて構造を明かにする。β-シート構造が関与した多量体形成は天然のタンパク質においてその例が数多く見られるのにもかかわらず、その詳細な分子機構は全くわかっていない。本研究の目的はこれらのタンパク質の二量体形成をになっている部分、特にβ-シート構造による二量体形成部位のモデル化合物を合成して水溶液中での二量体形成機構を探ると共に、それをもとに非共有結合により高次構造を形成する機能性人工タンパク質を構築するための天然には存在しない二量体形成分子を合成することにある。本年度の研究ではすでにその三次元構造がX線結晶解析により明らかになっているファージλCroタンパク質の二量体形成部分をモデル化することを試みた。Croタンパク質二量体とオペレーターDNA複合体で興味深いのはDNA結合能は二量体形成に依存し、二量体形成は各々の単量体のC末端部分での逆平行β-シート形成ならびにフェニルアラニン残基がもう一方の単量体のN末端部分で形成される疎水性ポケットに取り込まれることにより安定化されている事である。この二量体形成機構をもとにして、Croタンパク質のC末端部分のアミノ酸配列を持ち、N末端部分のアミノ酸で形成される疎水性ポケットのかわりにゲスト包接能を持つシロデキストリン分子をもつ14アミノ酸残基からなるオリゴペプチドを合成した。合成したペプチドの二量体形成能の評価は、単量体と二量体の分子量が違うことを利用して、ゲル濾過クロマトグラフィーを用いて行った。現在までの結果では、濃度に依存して二量体と思われるピークが生成することがわかっている。βシート構造をとることによって特徴的な円二色性(CD)スペクトルが観測されると期待されるので、今後、CDスペクトルを用いて構造を明かにする。
KAKENHI-PROJECT-06858061
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06858061
糖鎖と水の相互作用の解明を指向した糖タンパク質の精密化学合成
糖鎖と水の相互作用について解明するために、水の凍結を阻害する活性(不凍活性)を有した糖タンパク質である、不凍糖タンパク質(AFGP)誘導体の精密化学合成とその機能解析を実施した。AFGPに付加した糖鎖構造のうち、我々は、これまでに不凍活性発現に必須であることが示されているN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)の役割を解明するための研究を遂行した。このGalNAc残基がもつ役割を解明するため、AFGPに付加したGalNAcの数を変えた誘導体及び、GalNAcの代わりに、GalNAcとは4位の水酸基の立体のみが異なるN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を付加させた誘導体、計6種を化学合成により精密に作り分け、その機能解析を実施した。その結果、GalNAcの付加する数の減少に伴い、ペプチド鎖の運動性が上昇し、協奏的にAFGP固有の立体構造が崩れ、不凍活性が減少することを見出した。また、GalNAcの代わりにGlcNAcが付加した場合には、AFGP固有の立体構造は発現するものの、活性は低下してしまうことが明らかとなった。以上の結果から、各々のGalNAc残基がペプチド鎖の運動性を精密に制御し、立体構造と不凍活性を誘起させていることを初めて見出すことができた。また、GlcNAcというたった一カ所の水酸基の立体の違いが、明確に活性発現に影響したことから、単糖レベル、さらには、たった一カ所の水酸基の違いという分子レベルで、水との相互作用の仕方に違いが生じることが示唆された。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。糖鎖と水の相互作用について解明するために、水の凍結を阻害する活性(不凍活性)を有した糖タンパク質である、不凍糖タンパク質(AFGP)誘導体の精密化学合成とその機能解析を実施した。AFGPに付加した糖鎖構造のうち、我々は、これまでに不凍活性発現に必須であることが示されているN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)の役割を解明するための研究を遂行した。このGalNAc残基がもつ役割を解明するため、AFGPに付加したGalNAcの数を変えた誘導体及び、GalNAcの代わりに、GalNAcとは4位の水酸基の立体のみが異なるN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を付加させた誘導体、計6種を化学合成により精密に作り分け、その機能解析を実施した。その結果、GalNAcの付加する数の減少に伴い、ペプチド鎖の運動性が上昇し、協奏的にAFGP固有の立体構造が崩れ、不凍活性が減少することを見出した。また、GalNAcの代わりにGlcNAcが付加した場合には、AFGP固有の立体構造は発現するものの、活性は低下してしまうことが明らかとなった。以上の結果から、各々のGalNAc残基がペプチド鎖の運動性を精密に制御し、立体構造と不凍活性を誘起させていることを初めて見出すことができた。また、GlcNAcというたった一カ所の水酸基の立体の違いが、明確に活性発現に影響したことから、単糖レベル、さらには、たった一カ所の水酸基の違いという分子レベルで、水との相互作用の仕方に違いが生じることが示唆された。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-18J10280
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J10280
ストレス誘発膵炎を用いた膵炎の発生機序の解明と新しい治療法の開発
(1)膵炎発生機序および増悪因子の解明(1)血管内皮細胞より分泌され血管を収縮させるEndothelinの膵に対する影響について検討した。セルレイン誘発浮腫性膵炎ラットにEndothelin-1を腹腔動脈内に投与することにより、出血性膵炎を惹起した。この際膵局所微小循環障害に加え、膵内protease活性化の増強や組織学的膵炎像の増悪を認め、Endothelinは増悪因子の一つであることが示唆された。(2)ラットを用いた実験にて、免疫抑制剤Cyclosporin AおよびFK-506投与はセルレイン少量刺激下で、出血性膵炎を誘発し、膵局所血流を低下させた。臓器移植後の急性膵炎にこれら免疫抑制剤の関与が示唆された。(2)膵炎に対する新しい治療法の開発(1)FK-506誘発出血性膵炎ラットにEndothelin受容体拮抗剤(BQ-123)を前投与することにより、膵浮腫および血中Amylaseの上昇の増加が抑制された。また膵は肉眼的にも組織学的にも膵炎は軽減し、膵局所血流量の改善も認めた。(2)また、Ca拮抗剤(Verapamil)の前投与により、同様に膵炎の改善を認めた。以上の成績は免疫抑制剤誘発膵炎の発生機序は血管内皮細胞の障害によることが示唆された。また今後、Endothelin受容体拮抗剤は新しい膵炎の治療薬として期待できる。(3)ストレス誘発慢性膵炎ラットを用いた経口抗トリプシン剤の効果(1)ラットを用い、セルレイン20μg/Kg BWを腹腔内に1時間間隔に投与し、同時に22°C、5時間の水浸拘束を加える処置を、週1回、16回行い、膵機能の低下および組織学的に線維化、細胞浸潤、膵腺細胞の崩壊を伴う慢性膵炎モデルを作成した。(2)本ラットに0.1%抗トリプシン剤(Poipan)含有食餌を投与することにより、これら組織所見は完全に抑制された。以上の成績より、臨床的に慢性膵炎患者への抗トリプシン剤の長期投与は、慢性膵炎の進展を抑制することが明らかになった。(1)ストレス+セルレイン出血性膵炎発生機序の解明:(1)急性膵炎における微小循環:5時間の水浸拘束によるストレス(St)のラット膵に対する影響を観察するため、水素クリアランス法を用い、膵局所(膵尾部)の血流を測定した。経時的な血流の変化ではSt後1時間にて血流は低下し、漸次低下傾向を示し5時間後には約1/3に低下した。局所血流障害が膵炎を増悪させる因子であることが示唆された。(2)組織・電子顕微鏡的検討:Stのみでは水浸拘束後の膵は肉眼的に出血、浮腫の変化は観察されなかった。しかし組織所見は腺細胞内のzymogen顆粒の減少、小空胞化および毛細管内皮細胞の突出、突起や有窓化を認めた。St+Cn群では肉眼的に著明な出血と浮腫を認め、組織所見は腺房の広汎な壊死、細胞浸潤、出血所見を認め、また電顕的観察では腺細胞内の著明な変性、zymogen顆粒の消失、著明な大空胞の形成、endoplasmic reticulumの拡張の所見はcn群のみと比較し著明に増悪し、大空胞のbasolateral exocitosisを認めた。またCn群に認められない血管内皮細胞の崩壊、血球のextravasationを高頻度に認め、血管内にフィブリン血栓を観察した。これらの所見はStによる膵局所血流障害によりもたらされた血管内皮細胞変化と、大量Cn刺激により生じた腺細胞内protease活性化とが相互作用し膵炎病態を増悪させたことを示唆させた。(2)膵炎病態および新しい治療:(1)上記の血管内環境からfree radicalやplateletactivaating factor(PAF)の影響が強く示唆され、free radical scavengerとPAFーantagonistを用いその効果につき検討した(2)Catalase+SODの投与によりSt+Cn群の肉眼的出血は完全に抑制された。(3)PAFーantagonist(CV6209)の投与にて本モデルの浮腫、血清amylaseは有意に抑制された。以上の結果は、膵炎の重症化には膵局所血流障害が関与し、またそれより生じたfree radicalやPAFが膵崩壊を増強することを示唆する所見である。(1)膵炎発生機序および増悪因子の解明(1)血管内皮細胞より分泌され血管を収縮させるEndothelinの膵に対する影響について検討した。セルレイン誘発浮腫性膵炎ラットにEndothelin-1を腹腔動脈内に投与することにより、出血性膵炎を惹起した。この際膵局所微小循環障害に加え、膵内protease活性化の増強や組織学的膵炎像の増悪を認め、Endothelinは増悪因子の一つであることが示唆された。(2)ラットを用いた実験にて、免疫抑制剤Cyclosporin AおよびFK-506投与はセルレイン少量刺激下で、出血性膵炎を誘発し、膵局所血流を低下させた。臓器移植後の急性膵炎にこれら免疫抑制剤の関与が示唆された。(2)膵炎に対する新しい治療法の開発(1)FK-506誘発出血性膵炎
KAKENHI-PROJECT-03670366
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03670366
ストレス誘発膵炎を用いた膵炎の発生機序の解明と新しい治療法の開発
ラットにEndothelin受容体拮抗剤(BQ-123)を前投与することにより、膵浮腫および血中Amylaseの上昇の増加が抑制された。また膵は肉眼的にも組織学的にも膵炎は軽減し、膵局所血流量の改善も認めた。(2)また、Ca拮抗剤(Verapamil)の前投与により、同様に膵炎の改善を認めた。以上の成績は免疫抑制剤誘発膵炎の発生機序は血管内皮細胞の障害によることが示唆された。また今後、Endothelin受容体拮抗剤は新しい膵炎の治療薬として期待できる。(3)ストレス誘発慢性膵炎ラットを用いた経口抗トリプシン剤の効果(1)ラットを用い、セルレイン20μg/Kg BWを腹腔内に1時間間隔に投与し、同時に22°C、5時間の水浸拘束を加える処置を、週1回、16回行い、膵機能の低下および組織学的に線維化、細胞浸潤、膵腺細胞の崩壊を伴う慢性膵炎モデルを作成した。(2)本ラットに0.1%抗トリプシン剤(Poipan)含有食餌を投与することにより、これら組織所見は完全に抑制された。以上の成績より、臨床的に慢性膵炎患者への抗トリプシン剤の長期投与は、慢性膵炎の進展を抑制することが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-03670366
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03670366
ビデオゲーム産業における互換性に関する実証分析
ネットワーク効果を持つ産業の重要な課題のひとつとして、企業の経営戦略のあり方の議論が知られている。中でも複数の異なる規格の間に互換性を持たせるか否かは、規格間競争のあり方に重要な影響を及ぼす。本研究計画では、この互換性の問題に焦点を絞り、実証的な観点から提言を行なうことを目的とした。製品間に互換性を持たせるか否かの経営判断は、大きく分けて技術革新と市場競争の2つに対して影響を与える。互換性がない規格が競争する場合には、企業はそれぞれ自分の規格に消費者を囲い込むために、競い合って性能の向上に努めるが、互換性がある規格の間には、技術革新を行なうインセンティブは小さい。一方で、互換性をもたない規格同士は、互換性をもつ規格と比較して差別化されていることから、製品間の競争はより緩やかになる傾向が見られる。互換性の有無が、技術革新および市場の競争構造にどれだけの影響を与えているのかは、未だ分析されていない実証的な課題である。アメリカにおけるビデオゲーム産業のデータを使って、上記のような互換性の影響を観察するために、19年度においては前年度において収集したビデオゲームのハード(ゲーム機)およびゲームソフトに関するデータをもとに、ゲームソフトの導入のタイミングおよびその収入構造の経済的なメカニズムを動学的な観点から推計を行なった。推計において、(1)ゲームソフトの収入の時系列的な動きはL字型をとること、(2)互換性のある規格についてはL字型がより鮮明に表れること、が明らかになると共に、製品ごとの需要における代替弾力性の強弱と製品導入のタイミングが大きな関連性を持つことが推計結果により明らかにされた。ネットワーク効果を持つ産業において、ひとつ重要な課題として、企業の経営戦略のあり方についての議論がある。とくに、複数の異なる規格の間に互換性を持たせるか否かは、規格間競争のあり方に重要な影響を及ぼす。本研究計画では、この互換性の問題に焦点を絞り、実証的な観点から提言を行なうことを目的としている。製品間に互換性を持たせるか否かの経営判断は、大きく分けて2つの点-技術革新と市場競争-に対して影響を与える。互換性がない規格が競争する場合には、企業はそれぞれ自分の規格に消費者を囲い込むために、競い合って性能の向上に努めるが、互換性がある規格の間には、技術革新を行なうインセンティブは小さい。一方で、互換性をもたない規格同士は、互換性をもつ規格と比較して差別化されていることから、製品間の競争はより緩やかになる傾向が見られる。互換性の有無が、技術革新および市場の競争構造にどれだけの影響を与えているのかは、未だ分析されていない実証的な課題である。アメリカにおけるビデオゲーム産業のデータを使って、上記のような互換性の影響を観察するために、18年度においてはビデオゲームのハード(ゲーム機)およびゲームソフトに関するデータの収集を行なった。ハードのデータに関しては、ゲーム機規格ごとに、実売価格、販売数量を月次で収集すると共に、ゲームソフトに関しては、ゲーム機規格ごとに、それぞれのゲームソフトのタイトルに関して、実売価格、販売数量が月次で収集した。データ収集と平行して、推計に用いるための動学的なモデルに関する文献のサーベイを行い、来年度に用いるにたる推計モデルについての検討をおこなった。ネットワーク効果を持つ産業の重要な課題のひとつとして、企業の経営戦略のあり方の議論が知られている。中でも複数の異なる規格の間に互換性を持たせるか否かは、規格間競争のあり方に重要な影響を及ぼす。本研究計画では、この互換性の問題に焦点を絞り、実証的な観点から提言を行なうことを目的とした。製品間に互換性を持たせるか否かの経営判断は、大きく分けて技術革新と市場競争の2つに対して影響を与える。互換性がない規格が競争する場合には、企業はそれぞれ自分の規格に消費者を囲い込むために、競い合って性能の向上に努めるが、互換性がある規格の間には、技術革新を行なうインセンティブは小さい。一方で、互換性をもたない規格同士は、互換性をもつ規格と比較して差別化されていることから、製品間の競争はより緩やかになる傾向が見られる。互換性の有無が、技術革新および市場の競争構造にどれだけの影響を与えているのかは、未だ分析されていない実証的な課題である。アメリカにおけるビデオゲーム産業のデータを使って、上記のような互換性の影響を観察するために、19年度においては前年度において収集したビデオゲームのハード(ゲーム機)およびゲームソフトに関するデータをもとに、ゲームソフトの導入のタイミングおよびその収入構造の経済的なメカニズムを動学的な観点から推計を行なった。推計において、(1)ゲームソフトの収入の時系列的な動きはL字型をとること、(2)互換性のある規格についてはL字型がより鮮明に表れること、が明らかになると共に、製品ごとの需要における代替弾力性の強弱と製品導入のタイミングが大きな関連性を持つことが推計結果により明らかにされた。
KAKENHI-PROJECT-18730154
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18730154
刺胞動物シナプスの形態と分子構築からシナプスの進化を探る
刺胞動物の散在神経系は、最も原始的な神経系の1つとされる。散在神経系のシナプスは、脊椎動物などのシナプスと比較すると、構造的に原始的な特徴を有しているが、その分子構築の違いはほとんどわかっていない。シナプスの分子進化の過程を探る目的で、刺胞動物モデル生物であるヒドラの神経細胞にどのような脊椎動物シナプスたんぱく質相同分子が発現しているのか検討した。今年度は、脊椎動物のsynaptobrevin(2種類), SV2, PSD-95, gephyrin,SNAP-25, SNAP-29のcDNAクローニングを行い、塩基配列を確認した。これらのうち、5種類についてwhole-mount in situハイブリダイゼーション法により神経細胞に発現しているかどうか検討した。その結果、SV2とSNAP-25は腺細胞と思われる細胞に発現していると考えられた。また、Synaptobrevin(2種類)とPSD-95については、組織の固定法、前処理、ハイブリダイゼーション条件などを検討しつつ検出を試みたものの、明瞭な発現様式を観察できなかった。本研究では、synaptobrevinをシナプス小胞開口分泌マーカー(synaptopHlourin)として利用することも計画しているため、さらに免疫染色による検出も試みた。アミノ酸配列の相同性から反応する可能性があった市販の抗ヒトsynaptobrevin抗体を入手するとともに、ヒドラsynaptobrevinのN末端15残基を抗原ペプチドとして抗体作成を行った。作成した抗体はELISAでは高い力価を示した。FLAGタグ標識ヒドラsynaptobrevinをCOS7細胞に発現させ、市販抗体および作成した抗体により免疫染色を行ったが、いずれの抗体でも染色シグナルが得られなかった。当初の計画では、今年度ヒドラのシナプスに局在する可能性がある分子を2種類同定する予定であった。脊椎動物シナプス分子に相同性を示す5種類の遺伝子の発現を検討したが、いずれもヒドラの神経細胞に発現していることを示す結果が得られず、ヒドラのシナプス分子候補を得ることができなかったため。ヒドラ・シナプス分子の同定は、本研究のなかで重要な位置を占めているので、さらに多くの脊椎動物シナプスたんぱく質相同分子の探索を進める。また、今年度の結果は、ヒドラに存在する脊椎動物シナプスたんぱく質相同分子は、必ずしも神経細胞に局在しない可能性を示唆している。今後は、抗体を作成し免疫染色により局在様式を明らかにする。刺胞動物の散在神経系は、最も原始的な神経系の1つとされる。散在神経系のシナプスは、脊椎動物などのシナプスと比較すると、構造的に原始的な特徴を有しているが、その分子構築の違いはほとんどわかっていない。シナプスの分子進化の過程を探る目的で、刺胞動物モデル生物であるヒドラの神経細胞にどのような脊椎動物シナプスたんぱく質相同分子が発現しているのか検討した。今年度は、脊椎動物のsynaptobrevin(2種類), SV2, PSD-95, gephyrin,SNAP-25, SNAP-29のcDNAクローニングを行い、塩基配列を確認した。これらのうち、5種類についてwhole-mount in situハイブリダイゼーション法により神経細胞に発現しているかどうか検討した。その結果、SV2とSNAP-25は腺細胞と思われる細胞に発現していると考えられた。また、Synaptobrevin(2種類)とPSD-95については、組織の固定法、前処理、ハイブリダイゼーション条件などを検討しつつ検出を試みたものの、明瞭な発現様式を観察できなかった。本研究では、synaptobrevinをシナプス小胞開口分泌マーカー(synaptopHlourin)として利用することも計画しているため、さらに免疫染色による検出も試みた。アミノ酸配列の相同性から反応する可能性があった市販の抗ヒトsynaptobrevin抗体を入手するとともに、ヒドラsynaptobrevinのN末端15残基を抗原ペプチドとして抗体作成を行った。作成した抗体はELISAでは高い力価を示した。FLAGタグ標識ヒドラsynaptobrevinをCOS7細胞に発現させ、市販抗体および作成した抗体により免疫染色を行ったが、いずれの抗体でも染色シグナルが得られなかった。当初の計画では、今年度ヒドラのシナプスに局在する可能性がある分子を2種類同定する予定であった。脊椎動物シナプス分子に相同性を示す5種類の遺伝子の発現を検討したが、いずれもヒドラの神経細胞に発現していることを示す結果が得られず、ヒドラのシナプス分子候補を得ることができなかったため。ヒドラ・シナプス分子の同定は、本研究のなかで重要な位置を占めているので、さらに多くの脊椎動物シナプスたんぱく質相同分子の探索を進める。また、今年度の結果は、ヒドラに存在する脊椎動物シナプスたんぱく質相同分子は、必ずしも神経細胞に局在しない可能性を示唆している。今後は、抗体を作成し免疫染色により局在様式を明らかにする。予想外の研究結果(脊椎動物シナプスたんぱく質ヒドラ相同分子が神経細胞に検出されない)に伴って抗体作成やトランスジェニック動物の作成・観察に必要な物品費がまだ未執行であること、動物飼育の人件費が今年度他の予算から捻出できたこと、研究分担者が学会参加を見送ったことによる。
KAKENHI-PROJECT-18K06339
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K06339
アメリカ合衆国におけるヘイト・スピーチ規制の歴史―「特殊な国」の形成と変容
平成30年度は,当初の計画のとおり1930-50年代のアメリカにおけるヘイト・スピーチ規制の動向を調査した。30年代の動きとしては,ドイツにおけるナチスの勢力拡大にあわせてアメリカでもナチス系団体が多数生まれ,カウンター勢力と衝突するなど数多くの騒動を巻き起こしたことが挙げられる。いくつかの州や自治体ではこれに対抗して法規制が行われた。これらの規制の具体的内容について調べるとともに,ニュージャージー州法を違憲としたKlapprott判決を詳しく考察し,判決を要約した。また,ナチスのような民主政の根幹を破壊しうる動きに対し,法規制により民主政を防御すべきと説いたカール・レーベンシュタインの論文を収集し,熟読した。1940代に入ってエホバの証人が各地でカトリック等を誹謗する街頭宣伝などを行う動きがあった。これにより生じた数多くの衝突事例を調べたうえで,連邦最高裁判例であるCantwell事件判決を詳しく検討した。また,40年代から50年代にかけて集団的名誉毀損法が各州で制定された。各法の主要部分の翻訳,解説を行う論文の閲読を行った。また連邦最高裁のBeauharnais事件判決の内容を,少数意見も含めて詳しく調べた。集団的名誉毀損法に関してはデビッド・リースマンの所説も検討した。さらに,この時期には連邦及び各州で十字架焼却規制法等のヘイト・クライム法の立法が始まっているので,制定の背景や立法過程を含め調査した。今回の研究では,1920年代以降のアメリカにおけるヘイト・スピーチ規制の歴史を概観することを計画しているが,平成30年度は上記のように1930年代から50年代の動向を調査することを予定していた。既に平成29年度に大凡必要な研究業績を収集し,整理できていたため,今期は上記のとおり計画どおり研究を進めることができた。また研究を妨げる特別な状況が生じることもなかった。まず平成31年度に継続して1960年代から90年代までのアメリカにおけるヘイト・スピーチ規制の動向を調査,研究する。その後,平成32年度に2000年代の動向を調べたうえで研究の総括を行う。平成31年度は公民権運動期のヘイト・スピーチ規制の動き,大学キャンパスでのヘイト・スピーチ規制論議等に焦点を当てていく。また90年代以降は重要な連邦最高裁判例がいくつか出されているので,詳しい検討を行っていく。平成29年度は,1910-20年代のアメリカにおけるヘイト・スピーチ規制の動向の確認を行った。まず10年代の動きとして,映画『國民の創生』をめぐる議論を調べた。また,差別的掲示を規制するニューヨーク州の1913年の公民権法について調査した(特にこの法律の制定の経緯を詳しく論じるJeffrey S Gurock, The 1913 New York state civil rights act, 1 AJS Review 93 (1976)を精読した)。1920年代の重要な動向として,H. Fordが発行した新聞におけるユダヤ人差別の煽動の問題がある。これについては近時多くの業績が公刊されている。特にVICTORIA SAKER WOESTE, HENRY FORD'S WAR ON JEWS AND THE LEGAL BATTLE AGAINST HATE SPEECH (2012), HENRY FORD AND THE JEWS: THE MASS PRODUCTION OF HATE (2002)を中心に調べた。また,上記ニューヨーク州法の制定を働きかけ,Fordの新聞をめぐっても主要な役割を果たしたユダヤ人弁護士,L. Marshallの複数の伝記を収集した。このうち,特にMORTON ROSENSTOCK, LOUIS MARSHALL, DEFENDER OF JEWISH RIGHTS (1965)のみ詳しく読むことができた。この研究を通して,ユダヤ系の団体が当時ヘイト・スピーチに対してどのような方針をとっていたかを確認することができた。なお,今年度は集中的に全研究期間に用いる文献の収集を行った。概ね必要な文献を収集することができたので,次年度以降の研究の準備が整った。また,文献管理ソフトを用い,収集した文献の整理も進めることができた。予定通り研究が進んだが,研究計画当初想定していた以上の文献が見つかった。次年度以降読み切れなかった文献を詳しく調べたい。平成30年度は,当初の計画のとおり1930-50年代のアメリカにおけるヘイト・スピーチ規制の動向を調査した。30年代の動きとしては,ドイツにおけるナチスの勢力拡大にあわせてアメリカでもナチス系団体が多数生まれ,カウンター勢力と衝突するなど数多くの騒動を巻き起こしたことが挙げられる。いくつかの州や自治体ではこれに対抗して法規制が行われた。これらの規制の具体的内容について調べるとともに,ニュージャージー州法を違憲としたKlapprott判決を詳しく考察し,判決を要約した。また,ナチスのような民主政の根幹を破壊しうる動きに対し,法規制により民主政を防御すべきと説いたカール・レーベンシュタインの論文を収集し,熟読した。1940代に入ってエホバの証人が各地でカトリック等を誹謗する街頭宣伝などを行う動きがあった。これにより生じた数多くの衝突事例を調べたうえで,連邦最高裁判例であるCantwell事件判決を詳しく検討した。また,40年代から50年代にかけて集団的名誉毀損法が各州で制定された。各法の主要部分の翻訳,解説を行う論文の閲読を行った。また連邦最高裁のBeauharnais事件判決の内容を,少数意見も含めて詳しく調べた。集団的名誉毀損法に関してはデビッド・リースマンの所説も検討した。
KAKENHI-PROJECT-17K03376
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K03376
アメリカ合衆国におけるヘイト・スピーチ規制の歴史―「特殊な国」の形成と変容
さらに,この時期には連邦及び各州で十字架焼却規制法等のヘイト・クライム法の立法が始まっているので,制定の背景や立法過程を含め調査した。今回の研究では,1920年代以降のアメリカにおけるヘイト・スピーチ規制の歴史を概観することを計画しているが,平成30年度は上記のように1930年代から50年代の動向を調査することを予定していた。既に平成29年度に大凡必要な研究業績を収集し,整理できていたため,今期は上記のとおり計画どおり研究を進めることができた。また研究を妨げる特別な状況が生じることもなかった。平成30年度には,1930-50年代の動きをフォローする。30年代のアメリカ国内でのナチスの台頭,それに対する州や自治体の対抗策について,まず検討を及ぼす。次に40年代にエホバの証人が各地で起こした衝突について調査する。その後主に40年代以降各州で制定された集団的名誉毀損法について詳しく調べる。今年度に積み残した文献が少しあるものの,30年代以降の文献の一部を先に読み進めているため,概ね予定通り研究を進めることができると見込んでいる。まず平成31年度に継続して1960年代から90年代までのアメリカにおけるヘイト・スピーチ規制の動向を調査,研究する。その後,平成32年度に2000年代の動向を調べたうえで研究の総括を行う。平成31年度は公民権運動期のヘイト・スピーチ規制の動き,大学キャンパスでのヘイト・スピーチ規制論議等に焦点を当てていく。また90年代以降は重要な連邦最高裁判例がいくつか出されているので,詳しい検討を行っていく。次年度使用額はわずか94円なので,事実上次年度使用額がほとんど生じなかった。予定通りの研究費の執行を行うことができた。ほぼ計画どおりの使用を行ったが,旅費が思いのほか安く済んだため,わずかに残額が生じることになった。平成31年度に旅費として使用する予定である。
KAKENHI-PROJECT-17K03376
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K03376
口腔癌に対する選択的免疫逃避解除を目指した基礎的研究
口腔癌では免疫療法の報告が極めて少ない。この理由として口腔内の免疫学的特異性が考えられる。申請者らはこの点に着目して、自然免疫関連因子の制御が抗腫瘍効果に及ぼす影響を検討した。はじめに細胞周期を観察しやすい様、蛍光タンパク質融合Fucciを発現する口腔癌由来細胞株を作出し、機能を評価したところ、この細胞は細胞周期の解析に極めて有用であった。口腔癌の治療に用いられる抗癌剤の作用に対する自然免疫関連因子の影響を検討した結果、個々の自然免疫関連因子の影響は極めて小さいものの、これらが複合的に作用することで、抗腫瘍効果に影響を与えうることが示唆された。平成26年度は3年間の研究期間の初年度である。本年度は、初年度の研究計画にあるように、細胞内DNAセンサー(DNAウイルスセンサー)であるDLM -1/ZBP1(DAI)の哺乳類発現ベクターの作製を開始した。はじめに、HeLa細胞のmRNAを逆転写酵素によって合成されたcDNAを鋳型としてDAI遺伝子のタンパク質翻訳領域全長をPCR法でクローニングした。次に、p3xFLAGベクターのマルチプルクローニングサイトに挿入した。発現ベクターを細胞内へ遺伝子導入した後、細胞を溶解・調整し、タンパク質の発現をDAI特異的な抗体を用いてウエスタンブロッティング法で確認した。申請者は基礎検討で、DAIの過剰発現により癌細胞の細胞周期が変化することを観察していたが、それを簡便に観察する方法を確立するために、恒常的に細胞周期マーカーを安定発現する口腔癌細胞の安定発現株の樹立を行った。そこで、歯肉癌由来細胞株Ca9-22へpFucci-G1 OrangeおよびpFucci-S/G2/M greenを導入することを目的に、各Fucci-遺伝子を哺乳類発現ベクターにのせ換えた後、それらをリポフェクション法で遺伝子導入し、48時間後にNeomycinとPuromycinを添加することで、遺伝子が導入された薬剤耐性細胞を選択した。現在遺伝子導入前の細胞と比較することで、遺伝子導入による表現型の違いがないことを詳細に観察している所である。平成27年度は、前年度作製した細胞周期の可視化を可能とするFucciタンパク質を安定的に発現する歯肉癌由来細胞株Ca9-22-Fucciの機能解析を行った。その結果、親株であるCa9-22と比較して、Ca9-22-Fucciは細胞増殖速度や抗癌剤に対する応答が異なっていた。この理由として、染色体へのFucci遺伝子の挿入部位がこれらの応答に関与する遺伝情報部位であることが想定された。従来の安定発現株の作製では、標的遺伝子の染色体への挿入がランダムであるため、このようなことが起こり得る。そこで、昨年度に作製したFucci発現細胞の利用を取りやめ、新たに、哺乳細胞内でplasmidが複製されるシステムを利用した。この方法では細胞分裂に伴い、増幅したplasmidが均等に各細胞に分布する。plasmidを含まない細胞は薬剤耐性遺伝子を持たないことから、薬剤感受性を示し、薬剤処理により、死滅する。また、plasmidの状態が保持されることから、染色体DNAの挿入頻度が極めて低く、前述のような問題が解消される。実際に新たに作出したCa9-22-Fucci細胞を親細胞と比較したところ、増殖速度や抗癌剤に対する応答は、ほぼ一致した。そこで、この細胞を用いて、口腔癌の化学療法で一般的に用いる抗癌剤に対する応答を蛍光顕微鏡下でタイムラプス観察して、その解析を行った。本課題は評価モデル細胞の再作製を余儀なくされたが、その作製は比較的スムーズに完了した。また、評価モデルを利用後の解析は比較的順調に進捗していることから、おおむね研究計画に記載の通りに研究が推進されていることから、本課題の進捗状況はおおむね順調に進展しているといえる。歯肉扁平上皮癌由来細胞株Ca9-22細胞に細胞周期評価用蛍光タンパク質Fucci-G1 orangeおよびFucci-S/G2/M greenを同時に安定的に発現するCa9-22-Fucci細胞(前年度作製済み)を用いた顕微鏡下の観察では、限られた視野内の細胞周期の分布を確認することが可能であったが、視野毎の"ブレ“を否定できない。そこで平成28年度は、Ca9-22-Fucci細胞を用いて、抗癌剤の細胞周期に与える影響をフローサイトメトリーにて解析を行った。Ca9-22-Fucci細胞は100%の細胞でFucciを発現しており、フローサイトメトリーを用いた口腔癌細胞の細胞周期を解析に極めて有効なツールであることが判明した。また、各種抗癌剤で細胞を処理すると、すでに知られているような細胞周期の明確な分布の変化が認められた。このことから本研究で作製したCa9-22-Fucci細胞の抗癌剤の有効性評価への応用も期待された。一方、研究立案時に研究対象とした細胞内DNA、RNAセンサーといった自然免疫関連因子を分子生物学的に抑制した実験結果から、抗癌剤が細胞周期に与える影響に対する各分子の明確な影響は認められなかった。しかしながら、有意な差は認められなかったものの、程度に差はあるものの、個々の分子が細胞周期の分布に何らかの影響を及ぼしていたことから、自然免疫関連の複数の因子が抗癌剤依存的な細胞周期の分布の変化に関与している可能性が示唆された。口腔癌では免疫療法の報告が極めて少ない。この理由として口腔内の免疫学的特異性が考えられる。申請者らはこの点に着目して、自然免疫関連因子の制御が抗腫瘍効果に及ぼす影響を検討した。はじめに細胞周期を観察しやすい様、蛍光タンパク質融合Fucciを発現する口腔癌
KAKENHI-PROJECT-26462992
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26462992
口腔癌に対する選択的免疫逃避解除を目指した基礎的研究
由来細胞株を作出し、機能を評価したところ、この細胞は細胞周期の解析に極めて有用であった。口腔癌の治療に用いられる抗癌剤の作用に対する自然免疫関連因子の影響を検討した結果、個々の自然免疫関連因子の影響は極めて小さいものの、これらが複合的に作用することで、抗腫瘍効果に影響を与えうることが示唆された。研究計画の大幅な変更はなく、申請書の予定通り研究を進めるている。本課題は研究計画全体としては、おおむね研究計画に記載の通りに研究が推進されていることから、今後も研究計画に沿った研究を行う予定である。口腔外科研究計画の大幅な変更はなく、申請書の予定通り研究を進めるものである。次年度研究に係る消耗品費が予定より増額することが見込まれるから。来年度の研究に係る消耗品が予定より増額が見込まれるため。次年度利用予定の分子生物関連試薬、培養細胞試薬、蛍光観察用試薬を購入する。次年度使用予定の分子生物関連試薬、特に定量PCR試薬、蛍光色素等の購入に使用する。
KAKENHI-PROJECT-26462992
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26462992
新規タンパク質shootin1を中心とした軸索伸長を司る基本メカニズムの解析
Shootin1のリン酸化修飾により、shootin1とL1-CAM、shootin1とアクチン繊維の相互作用がどのように制御されているかを解析する。shootin1とL1-CAM、shootin1とアクチン繊維との相互作用を制御するメカニズムを、shootin1のリン酸化修飾に焦点を絞り解析した。shootin1がリン酸化修飾を受けるアミノ酸残基を、質量分析を用いて明らかにするため、第一に、HEK293T培養細胞にmycタグを付加したshootin1を発現させ、細胞を脱リン酸化酵素の阻害剤であるフォルスコリンで処理し細胞培養液を、抗myc抗体を用いて免疫沈降し、リン酸化されたshootin1を得た。第二に、大腸菌に発現させたshootin1を生成し、in vitroにおいてAキナーゼで処理することで、リン酸化されたshootin1を得た。今後、これらのリン酸化shootin1をトリプシン処理し、質量分析を行うことで、リン酸化修飾を受けるアミノ酸残基を明らかにする。Shootin1ノックアウトマウスを作成する。In vivoにおけるshootin1の機能を解析することを目的とし、shootin1ノックアウトマウスに対し、C57BL/6、129の2系統に対して、戻し交配実験を行っている。現在までにどちらの系統に対しても1回の戻し交配を終えたヘテロノックアウトマウスを得ることができた。1)Shoolinlがクラッチタンパク質であることを証明するShootinlが成長円錐内においてアクチン繊維とL1-CAMの相互作用を介在し、クラッチ機能を発揮することで軸索が伸長することを以下の3つの解析により示した。i:表面をL1-CAMで覆った直径約1μmのシリコンビーズを、ビーズ表面のL1-CAMと細胞膜に発現するL1-CAMとの相互作用を介して成長円錐上面に接着させる。このとき、shootinlのクラッチ機能により、アクチン繊維の求心的流動から発生する駆動力がL1-CAMを介してビーズに伝達されビーズが移動する。このビーズの移動速度が神経細胞におけるshootinlの発現量に依存することを示し、shootinlがアクチン繊維の駆動力をL1-CAMに伝達することを明らかにした2)Shootinlノックアウトマウスを作成する。In vivoにおけるshootinlの機能を解析することを目的とし、Shootinlノックアウトマウスのホモノックアウトマウスを完成させた。Shootin1のリン酸化修飾により、shootin1とL1-CAM、shootin1とアクチン繊維の相互作用がどのように制御されているかを解析する。shootin1とL1-CAM、shootin1とアクチン繊維との相互作用を制御するメカニズムを、shootin1のリン酸化修飾に焦点を絞り解析した。shootin1がリン酸化修飾を受けるアミノ酸残基を、質量分析を用いて明らかにするため、第一に、HEK293T培養細胞にmycタグを付加したshootin1を発現させ、細胞を脱リン酸化酵素の阻害剤であるフォルスコリンで処理し細胞培養液を、抗myc抗体を用いて免疫沈降し、リン酸化されたshootin1を得た。第二に、大腸菌に発現させたshootin1を生成し、in vitroにおいてAキナーゼで処理することで、リン酸化されたshootin1を得た。今後、これらのリン酸化shootin1をトリプシン処理し、質量分析を行うことで、リン酸化修飾を受けるアミノ酸残基を明らかにする。Shootin1ノックアウトマウスを作成する。In vivoにおけるshootin1の機能を解析することを目的とし、shootin1ノックアウトマウスに対し、C57BL/6、129の2系統に対して、戻し交配実験を行っている。現在までにどちらの系統に対しても1回の戻し交配を終えたヘテロノックアウトマウスを得ることができた。
KAKENHI-PROJECT-19700291
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19700291
活性金属を用いたシリコン単結晶の低温作製
本研究では、太陽電池材料として優れた特性を有するシリコン(Si)結晶を、ナトリウム(Na)金属融液を用いた新しい手法を用いて作製した。NaとSiの状態図を作製し、800900°CでNa溶液中にSi結晶が溶解することを明らかにした。さらに、NaとSiの溶液中からNaを蒸発させることで単結晶や膜、多孔体、マイクロチューブなど様々な形態のSi結晶を作製することに成功した。本研究では、太陽電池材料として優れた特性を有するシリコン(Si)結晶を、ナトリウム(Na)金属融液を用いた新しい手法を用いて作製した。NaとSiの状態図を作製し、800900°CでNa溶液中にSi結晶が溶解することを明らかにした。さらに、NaとSiの溶液中からNaを蒸発させることで単結晶や膜、多孔体、マイクロチューブなど様々な形態のSi結晶を作製することに成功した。本研究の全体構想は、太陽電池材料として優れた特性を有するシリコン(Si)単結晶を、ナトリウム(Na)金属融液を用いた新しい手法を用いて育成することである。具体的には本手法を用いて、主にSi単結晶の育成を様々な条件で試み、それらの形態や結晶性を評価し、その特性向上を目指す。さらに、アルカリ金属融液中でのSiの反応機構を明らかにし、本手法をSi単結晶の新しい育成手法として確立することを目的とする。本年度はアルカリ金属融液を用いたSi単結晶の育成に欠かせないNa-Si二元系状態図の作製に注力して研究を進めた。Na-Siの熱分析を行うために、本研究室で所有するグローブボックス内に自作の熱分析装置(示差熱・熱重量同時測定: TG-DTA)を設置した。熱分析の結果から、NaSiの融点は798°C、NaSiとNaおよびSiの共晶温度はそれぞれ680°Cおよび750°Cであることが明らかにした。そして、世界で初めてNa-Siの二元系状態図を作成した。作成した状態図をもとに、Siを溶かしたNa溶液を800°Cまたは900°Cで加熱し、溶媒のNaを蒸発させることで、厚さ約20μmのSi薄膜や粒径が約100μmの粒状単結晶を作製することに成功した。本研究の成果はSi結晶の低温作製やSi系化合物の低温作製へと応用が期待される。本研究の成果論文はJ. Alloys & Comp.に投稿して、現在On lineで閲覧可能になっている。また、金属学会や応用物理学会にて本研究に関する口頭発表を行った。特許も現在申請中である。本研究の全体構想は、太陽電池材料として優れた特性を有するシリコン(Si)結晶を、ナトリウム(Na)金属融液を用いた新しい手法を用いて作製することである。具体的には本手法を用いて、主にSi結晶の育成を様々な条件で試み、それらの形態や結晶性を評価する。さらに、アルカリ金属融液中でのSiの反応機構を明らかにし、本手法をSi単結晶の新しい育成手法として確立することを目的とする。本年度は初年度に作成したNa-Si二元系の状態図をもとに、Si結晶の形態制御に注力して研究を進めた。原料組成や加熱温度などの作製条件を制御することで、Si結晶の形態(Siクラスレート、膜状、単結晶、多孔質Si結晶など)を制御できることを明らかにした。また、Na蒸気とSi結晶の反応を調べることで、Na-Si溶液からSi結晶が生成するために必要なNa蒸気圧を明らかにした。本研究の成果はSi結晶の低温作製および高純度化へと応用が期待される。本研究の成果は金属学会にて口頭発表を行った。特許も出願済みである。また、研究を進めるなかで、金属間化合物のナトリウムシリサイド(NaSi)を原料とすることで、二重らせん形状を有する結晶Siのマイクロチューブが生成することを発見した。今後、マイクロデバイスや触媒担体など、特異な構造を利用したシリコンの新たな用途が開拓され、シリコン産業の発展に貢献することが期待される。本研究の成果はドイツの国際化学総合雑誌Angewandte Chemie International Editionに掲載予定である。特許も出願済みである。
KAKENHI-PROJECT-20860016
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20860016
日本語学習における漢字学習活動の研究
本研究は、漢字の学習活動の記述的分析を行い、これからの漢字学習支援に資することを目指したものである。漢字学習は日本語教育における古くからの問題であるが、どのような学習活動が必要か・行われているかについての知見はなかった。くわえて、日本語教育における現在の漢字学習研究の問題点は、1)認知科学的研究と現場との橋渡し、2)学習者のストラテジー調査はあるが教師の側からの調査がない、3)学習方法について体系的な分析がない、ことである。そこで、本研究では、認知研究から演繹的に「漢字学習活動上を導き出すと同時に、漢字学習を支援する側が、意識的・無意識的に漢字学習活動をどう捉えているかを明らかにし認知研究からの知見と比較することを主眼とした。教師側のデータについては、当初、質問紙を用いた数量的分析を考えたが、ベースラインとなるデータが存在しないため、質問紙を作成するためのカテゴリを抽出するために、グラウンデッド・セオリーによる質的分析を行った。非日本語母語話者の漢字認知研究からは母語圏による学習活動の違いを導き出すことができた。また学習研究・メタ認知研究からは、学習者の認知過程を視野に入れた学習活動の設計についての知見を得ることができた。教師の側からのアプローチでは、質的分析のリソースによって異なった観点の学習活動カテゴリが見出された。特に、教える側の漢字学習についての考え方は、ボトムアップ的であり、目的志向的なトップダウン志向は見られないことは、現在のアプローチは、学習者のメタ認知能力を育成し自律学習を育てるためには不十分であることを示す大きな成果である。また、従来の教育心理学的研究法では、教師の自由記述から質問カテゴリを生成し質問紙調査を行っていたが、漢字学習活動の調査に当たっては、教師の自由記述だけでは不十分であるという知見も得られた。本研究は、漢字の学習活動の記述的分析を行い、これからの漢字学習支援に資することを目指したものである。漢字学習は日本語教育における古くからの問題であるが、どのような学習活動が必要か・行われているかについての知見はなかった。くわえて、日本語教育における現在の漢字学習研究の問題点は、1)認知科学的研究と現場との橋渡し、2)学習者のストラテジー調査はあるが教師の側からの調査がない、3)学習方法について体系的な分析がない、ことである。そこで、本研究では、認知研究から演繹的に「漢字学習活動上を導き出すと同時に、漢字学習を支援する側が、意識的・無意識的に漢字学習活動をどう捉えているかを明らかにし認知研究からの知見と比較することを主眼とした。教師側のデータについては、当初、質問紙を用いた数量的分析を考えたが、ベースラインとなるデータが存在しないため、質問紙を作成するためのカテゴリを抽出するために、グラウンデッド・セオリーによる質的分析を行った。非日本語母語話者の漢字認知研究からは母語圏による学習活動の違いを導き出すことができた。また学習研究・メタ認知研究からは、学習者の認知過程を視野に入れた学習活動の設計についての知見を得ることができた。教師の側からのアプローチでは、質的分析のリソースによって異なった観点の学習活動カテゴリが見出された。特に、教える側の漢字学習についての考え方は、ボトムアップ的であり、目的志向的なトップダウン志向は見られないことは、現在のアプローチは、学習者のメタ認知能力を育成し自律学習を育てるためには不十分であることを示す大きな成果である。また、従来の教育心理学的研究法では、教師の自由記述から質問カテゴリを生成し質問紙調査を行っていたが、漢字学習活動の調査に当たっては、教師の自由記述だけでは不十分であるという知見も得られた。「日本語学習における漢字学習活動の研究」について平成12年度は以下のような活動を行った。1)日本語学習教材における漢字学習活動の収集日本国内で市販されている日本語学習者用の漢字教材について、練習部分でどのような学習活動を想定しているかについて再分析を行った。ほとんどの教科書では、漢字にふりがなをふる、読み方から漢字を書くという活動が圧倒的に多く、漢字使用場面を想定し記憶の精緻化をもたらすような活動は少なかった。2)日本語教師に対するインタビュー調査漢字学習活動調査のための質問紙を作成するに先立ち、日本語教師に対して授業においてどのような学習活動を行っているかについてインタビュー調査をした。教師の意識は練習よりもいかに説明するかに向けられていることが多い。また、辞書をどのように使わせるか、自律学習をどのようにさせるかについての模索が見られる。3)授業場面の記録2)のインタビューを裏付けるために授業場面をビデオ撮影した。詳細な分析は未完了であるが、学習活動の時間配分について個人差が見られる。4)漢字学習活動調査質問票の作成1)2)3)に基づき、日本語教育現場における漢字学習活動の実態を広範囲に把握するための質問紙を作成した。この調査は平成13年度に実施する予定である。「日本語学習における漢字学習活動の研究」に関する研究実績の概要は以下の通りである1)漢字学習と「メタ認知」との関連の検討2)インタビュー結果の再分析・インタビューの追加3)漢字学習活動調査質問票の再検討平成13年度に先立ち、平成12年度には、日本語学習教材における漢字学習活動の収集、日本語教師に対するインタビュー調査、授業場面の記録を行った。平成13年度には、この成果を踏まえて日本語の教授者に対して質問紙調査を行う予定であったが、調査に先立ち質問項目を再検討した結果、言語学習における「メタ認知」の重要性を認識するに到った。
KAKENHI-PROJECT-12680294
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12680294
日本語学習における漢字学習活動の研究
漢字学習の問題を議論する際には「自律学習」という概念が重要であるが、この「自律学習」という言葉は教授者の言葉での頻度が高いものの教授者による概念規定が曖昧であったり、内実が未分化であることが多い。「自律学習」のあり方を検討する際には、メタ認知すなわち「メタ認知的知識」「メタ認知技能のコントロール」の観点から吟味することが有効である。また、質問紙作成においてはワーディング(質問文の文言)に留意する必要がある。そこで、平成13年度はこの観点から漢字学習活動とメタ認知との関連について検討を行い、インタビュー結果の再分析と補完的なインタビューを行った。さらにこの結果を踏まえて、質問票の再検討を行っているところである。平成14年度には平成13年度で得た新たな観点から漢字学習活動について調査・検討を行い考察をまとめたい。本研究では、「日本語教育現場での漢字学習活動」を明確に記述することを主たる目的としている。今年度は、学習者の「メタ認知」を重視した観点から、教授者がどのように学習者と関わっているのか、また、関わっていくべきかについての記述を目指した。「メタ認知」は、「メタ認知的知識」と「メタ認知的コントロール」の二つの側面を持つ。「メタ認知的知識」には、学習者の自分自身についての認知・学習観・課題に関する知識などが含まれ、これらの知識によって、自らの学習のゴールを設定し、計画を立て、学習を遂行する。インタビュー調査で漢字学習に対する信念・漢字学習ストラテジーとして学習者が言及するのは、まさにこのメタ認知的知識・コントロールの部分である。一方、教授者もまた、漢字学習に対する信念や漢字教授ストラテジーを持つ。教室内の学習場面は、学習者のメタ認知と教授者のメタ認知がぶつかる場であると言える。学習者の漢字学習活動は、教室内と教室外に分けられる。多くの学習者は、教室を知識提供の場として捉え、教室で与えられた知識を、教室外で繰り返し書く・イメージやストーリーで漢字を覚えるなどの方法で自分のものとすることが多いようである。一方、教師の漢字学習に対する考え方・教師が教室での漢字学習に際して用いる教授ストラテジーには個人差がある。今のところ、教室での学習者と教授者との関わりは、あまり有機的であるとはいえず、また、能動的に、メタ認知を働かせて自らの知識に組み込む形で学習することが記憶・理解・問題解決を助けるという認知心理学的知見が活かされているとも言い難い。今後は、効果的な教室活動検討のため実験的な手法が必要であろう。また、教室での学習をどう捉えていくかについては、検討の余地がある。認知的アプローチだけでなく状況的アプローチ的な観点も取り入れていく必要があるかもしれない。
KAKENHI-PROJECT-12680294
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12680294
絶対温度<0となる点渦系で見られる構造形成の理解
2次元点渦系の動力学的特徴を,温度をパラメタとして理解する研究である。本研究では,(1)Montgomeryらが提唱した負温度点渦系の平衡分布解に関する検討,(2)渦結晶などにみられる構造形成と緩和過程のメカニズムを特徴づけるパラメタに関する検討,の2点について集中的な検討を行った。(1)では,離散系においてMontgomeryらの予想が成り立つことが確認できた。また,(2)では,新たに,離散性に起因する拡散効果により,本来保存するはずの量が保存しなくなる可能性を発見し,現在,その定量的評価を進めている。2次元点渦系の動力学的特徴を,温度をパラメタとして理解する研究である。本研究では,(1)Montgomeryらが提唱した負温度点渦系の平衡分布解に関する検討,(2)渦結晶などにみられる構造形成と緩和過程のメカニズムを特徴づけるパラメタに関する検討,の2点について集中的な検討を行った。(1)では,離散系においてMontgomeryらの予想が成り立つことが確認できた。また,(2)では,新たに,離散性に起因する拡散効果により,本来保存するはずの量が保存しなくなる可能性を発見し,現在,その定量的評価を進めている。本年度は,以下のテーマについて研究を推進してきた。■Montgomeryらが提唱した負温度点渦系の平衡分布解に関する検討Montgomeryらが提唱した「負温度点渦系の平衡分布はsinh-Poisson方程式で記述される」という予言について,専用計算機MDGRAPE-3を用いた大規模シミュレーションにより検証するのが本研究の第1目的である。特色は, (1)矩形+周期的境界条件を使っていない,本質的に有限状態数となる円筒境界系を対象としている点,および(2)点渦数が類似の系と比べて多く,精度上の心配が少ない点である。これらの特色は専用計算機MDGRAPE-3を用いて時間発展計算を行っていることに由来する。得られた結果は,予想が十分成り立つ可能性が高いというもので,現在,最終的な検討を進めている段階である。■準安定状態分布を得るための数値的方法の開発エネルギーが拘束条件となる小正準集団に対するモンテカルロコードを開発することを第1の目標として研究を進めた。コードは完成し,結果の検討及び改良を進めている段階である。現状の問題点は,点渦系が平衡分布に緩和するまでの計算時間が非常にかかることであり,時間発展に要する時間と同じくらいか,むしろ時間がかかるケースも多い。このコードを実用化するためには,さらなる改良の必要性を感じている。本年度は,以下のテーマについて研究を推進してきた。■Montgomeryらが提唱した負温度点渦系の平衡分布解に関する検討Montgomeryらが提唱した「負温度点渦系の平衡分布はsinh-Poisson方程式で記述される」という予言について検討を進めた結果,以下の新たな知見が得られた。(1) Joyceらが点渦系について導いたsinh-Poisson方程式は,円筒境界を有する点渦系に対しても成り立つ。時間発展シミュレーションの途中経過について,βを求めてみたところ,初期はβの値は一定に達していなかったが,後半はほぼ一定の値に落ち着くことが確認できた。これは系が時間漸近的に平衡分布に確かに到達していることを表している結果と言える。(2)理想気体に対して成り立つT∝E/Nという関係式は,点渦系に対しては系のエネルギーが高くなるにつれて成り立ちにくくなる。理想気体の場合,温度は1自由度あたりのエネルギーと考えることが可能である。すなわち,エネルギー一定で粒子数のみを変化させた場合,βは粒子数に比例するはずである。しかしこれが成り立たないのは,クーロン相互作用に似た長距離力が点渦系には作用しているためと考えられる。(2)構造形成に及ぼす粒子性は無視できない。上記のエネルギーを一定にして粒子数を変化させたシミュレーションにおいて,最終的に到達する平衡分布が粒子数によって変化する場合があることを新たに発見した。ここから,構造形成における粘性の影響という新たな問題が生まれ,現在,このテーマについて検討を進めている。
KAKENHI-PROJECT-20740222
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20740222
音楽における長調と短調から受ける明暗の感覚の神経生理学的基礎の研究
長調の音楽は一般に明るい印象を与え,短調の音楽は暗い印象を与える.その神経生理学的な基盤を明らかにする目的で,長・短音階や長・短三和音を聞いたときの脳の反応をMRIやMEG(脳磁界)を用いて調べた.短調関連の刺激に対して,MRIの測定で痛みや不快感と関連する部位の活動が観察された.また和音を20Hzで振幅変調して持続的な脳活動をMEGで測定すると,長・短三和音に対する反応が異なった.これらの結果は,長・短調の神経生理学的基盤の一部と考えられる.さらに発展的な研究についても成果を得た.長調の音楽は一般に明るい印象を与え,短調の音楽は暗い印象を与える.その神経生理学的な基盤を明らかにする目的で,長・短音階や長・短三和音を聞いたときの脳の反応をMRIやMEG(脳磁界)を用いて調べた.短調関連の刺激に対して,MRIの測定で痛みや不快感と関連する部位の活動が観察された.また和音を20Hzで振幅変調して持続的な脳活動をMEGで測定すると,長・短三和音に対する反応が異なった.これらの結果は,長・短調の神経生理学的基盤の一部と考えられる.さらに発展的な研究についても成果を得た.西洋音楽における長調・短調は,多くの場合楽曲の性格を決定するのに重要な役割を持っている.そして長調は明るく短調は暗いという一般的な印象を与える.そのような感覚を催す脳には,調・短調に対してある種の神経生理学的基礎があるのではないかと考えられる.それをMEGやfMRIで調べてきた.今年度MEGを用いた研究では,主に長調音階について,各音の役割がどのような神経生理学的現象に対応するのかを調べること,対応する実験を短音階についても始めることを目標とした.このため完全な音階を(ハ長調ならばCDEFGABC)標準刺激として高頻度で提示し,それから一音省略した音階を逸脱刺激として低頻度で提示する,いわゆるoddball課題を実施した.その際,省略直前の音を2倍の長さに伸ばしたり,繰り返したりした.また省略直後の音を繰り返す方法も行った.この3種の実験方法では,直前の音を伸ばす方法が最も顕著な反応を示した.音の種類では特にBの音の省略について強く反応したが,それはBの導音としての役割を反映している可能性が高い.さらに短音階を用いた場合には,導音の役割と思われる現象が長音階よりも強く現れた点が興味深いので,さらに確認したい.fMRIを用いた長・短三和音に関する実験では,特に短三和音提示時に,情動情報処理に関わる脳部位に反応が強く現れた.また不協和に関係する部位の反応も見られたが,それらの部位間の関係についてはまだよく分からない.短調音階に対するfMRI反応については,短三和音と比較して顕著な結果が得られなかった.その原因もよく分からないので,もう少し被験者を増やして実験を繰り返すことを考えている.音楽の基本的要素である調性の神経生理学的基盤を求めることが本研究の目的である.我々は単にドレミファソラシドという長音階と,ラシドレミファソラという短音階を聞いただけでも,前者は明るく,後者は暗く感じる.さらに3つの音を同時に響かせる和音として,長音階における主和音であるドミソを聞いたときと,短音階における主和音であるラドミを聞くと,やはり前者が明るく,後者が暗く感じる.これは万国共通だと思われる.そこで本研究では,長短の音階とそれらの主和音に対する脳の反応を,MEG(脳磁界)とfMRI(機能的MRI)を用いて研究する.本年度までに得られた結果は以下の通りである.実験の協力者はすべて非音楽家である.1.長音階でどの1音を省略しても,MEGにおいて有意な反応が見られた.それは長期記憶に蓄えられた個人の経験によることが分かった.2.導音と呼ばれる(ハ長調ではロ音に相当する)音の省略に対するMEGの反応が一番大きかった.また導音を強調するような音階の変形に対しても大きく反応した.3.短音階に対する実験はまだそれほど数を重ねていないが,自然的短音階と和声的短音階とでは,それらの導音(または導音に準ずる働きの音)の省略に対する反応が,両短音階で異なったことが非常に際立った.4.長・短三和音を聞いたときの脳反応をfMRIで調べたところ,短三和音に対して,情動と係るとされる部位の活動が活発に見られた.しかしながら,長・短音階に対するfMRIの結果では情動と関連する部位に際立った活動が見られなかった.5.MEGのいわゆるoddball実験の結果を表示する方法として,反応がない所での分散が少なく,反応に対するバイアスの少ない方法を開発・提案した.上記1.2に関する詳細をまとめてJournal of Acoustical Society of Americaに投稿し今年6月にonline掲載,7月以降に本誌掲載が決定している.5.に関しては昨年度,日本生体医工学会誌に投稿し,掲載された.研究の目的は音楽における長調と短調から受ける明暗の感覚の神経生理学的基礎を解明することである.24年度において,長短三和音に対する反応のfMRI計測は一応完結した.本年度は長短三和音に加え,不協和度のより高い減三和音,同じく不協和音でも長三度を重ねた増三和音も使用した.結果はすべての種類の和音に対して海馬傍回においてある程度の活動が見られた.
KAKENHI-PROJECT-22500246
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22500246
音楽における長調と短調から受ける明暗の感覚の神経生理学的基礎の研究
この領域は特に負の情動に関わるとされるが,部分的に快情動にも関与するとの報告もあり,長三和音に対する反応はそれに対応していると思われる.短三和音や減三和音に対しては,脳内で負の情動に係るとされる部位,すなわち島,帯状回,海馬傍回などに大きな反応が見られた.長短音階に和声付けを行い,より情動的な色彩を持たせfMRI計測を行った.結果は上記の和声実験とはかなり異なっていて,情動関連部位との結び付きはより微妙であった.和声付けした長音階は上側頭回を強く活性化したが,ここは幸福感との関連が報告されている.本研究においてMRIのスキャンノイズの影響を避けるため,スキャン時には刺激音を聞かせない方法(スパース撮像法)を用いたが,これは全般的に反応を弱くした傾向があり,検討を要する.MEG(脳磁図)を用いた研究では,長短三和音に20HzのAM変調を掛け,トレモロのような効果の音を聞いたときのMEG中の20Hz成分の信号源推定を行った.その結果短三和音に対する反応が長三和音に対するよりかなり大きかったが,応答は時間的に多少遅れる傾向もあることが分かった.被験者数を増やしてより統計的に適切な信号処理をする必要がある.短音階に対するMEG計測では,従来から進めている自然的短音階と和声的短音階に対する反応の大きな違いに注目して測定した.この大きな違いは我々にとって驚きであったので,被験者を増やして確実なものとしたい.音階の1音省略に関する実験結果を15ページ程度の論文にまとめて,Journal of Acoustical Society of Americaのに投稿し,本年7月以降に掲載されることが決定した.少なくとも長音階に対するMEG研究は一段落着いた.自然的短音階と和声的短音階に対する反応の差も新しい発見であった.また,fMRIを用いた長・短三和音の反応研究も一段落ついて,これからはより多くの和音に対する反応を調べる予定である.24年度が最終年度であるため、記入しない。短音階に対する反応の測定がまだ統計的に測定数が不足しているので,これを補う.また和声の実験には減三和音,増三和音などの不協和音を加えて測定する.さらにトレモロ奏法を模した刺激を用いて和声の効果を高めた場合の反応も計測する.本研究の最大の問題点は個人差の大きさであり,個人差を超えた共通部分を求めるのか,個人差に注目するのかが方法論の分岐点となる.私としてはもう少し個人に重きをおいた研究をすべきと考えているので,個人データの個人内での統計的扱いについて方法論的な研究を続けたい.24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22500246
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22500246
OSやサーバシステム構築カリキュラムとスケールする教育用システム環境の構築
本研究では、OSの設定やサーバシステム構築といったより高度な演習を、一般的なPC演習室で実施することができる環境を構築するためのシステム一式を開発した。本システムは、PC演習室のパソコンのOSインストール状況に触れることなく、演習に必要なOSをネットワークブートで取得することにより稼動するため、演習開始に際しての手間が比較的小さいことが特徴である。本研究では、OSの設定やサーバシステム構築といったより高度な演習を、一般的なPC演習室で実施することができる環境を構築するためのシステム一式を開発した。本システムは、PC演習室のパソコンのOSインストール状況に触れることなく、演習に必要なOSをネットワークブートで取得することにより稼動するため、演習開始に際しての手間が比較的小さいことが特徴である。平成19年度は、(1)ディスクの入出力帯域幅やネットワーク入出力帯域幅を仮想的に変動させる仕組み、(2)サーバ上のファイルアクセスパターンを収集できる仕組み、(3)ネットワークブートするOSを仮想計算機上で稼働させた場合の性能評価を実施する計画であった。(1)については、ディスクとして、通常のハードディスクのように物理的な可動部分が動作速度に影響するものの代わりに、i-RAMと呼ばれるRAMを単体のハードディスクのように扱える装置を使用し、最大のバンド幅を確保する構成の評価を行った。(2)については、ファイルシステムに通常存在しているatimeと呼ばれる、アクセスが発生した時刻を記録・更新している情報を収集する方法と、straceと呼ばれるシステムコールトレーサを使用してファイルアクセスに関するシステムコールの呼出を記録する方法を検討した。(3)については、ネットワークブートするOSを、Xenのdomain-0と呼ばれる特権を持った仮想化OSとし、その上でXenのdomain-Uと呼ばれる仮想化OSを動作させる仕組みと、Linuxをネットワークブートした上でVMware Serverを稼働させ、その上でOSを動作させる仕組みを検討した。これらに加えて、本研究で構築しようとしているディスクレス環境を用いて、実際にサーバ設定演習を行い、その際のアクセスパターンなどのデータを収集している。本実習については、ITHET2007で発表した(2007年7月)。また、サーバ設定演習に関して、複数のメールサーバを使用して実地試験を行った事例について、FIT2007で発表している(2007年9月)。平成20年度は、システム全体として,クライアントPCの数よりも多くのOSインスタンスを安全に稼働させる仕組みの検討および実装を行う計画であった。まず、小型で高性能なブートサーバを構築する場合のボトルネック解析を行い、通常のHDDのように比較的ランダムアクセス性能を高くしにくいものと、容量を大きくできないが高速なランダムアクセス性能を有するDRAMをベースとするi-RAMと呼ばれる製品の比較に加えて、近年低価格化が進んだFlashメモリをベースとするSSD(Solid State Disk)を使用した場合の性能比較を行った(2008年9月発表)。また、本研究では演習者用のOSインスタンスを安全に稼働させる為に、Xenの機能でDoma in-Oと呼ばれるドメインを本システムの管理用に限定し、利用者が使用するOSインスタンスはDomain-Uと呼ばれる完全に仮想化された環境で動作させることとしている。このとき、利用者の演習に対する進捗状況やデーモンなどの起動状態を安全に確認できる仕組みについて、Linuxのセキュリティ強化モジュールであるSELinuxを用いた構成について検討を行い、評価環境構築を行った(2008年9月発表)。さらに、サーバ構築の演習をMoodle上に構築した場合に、Moodle側から演習者のOSインスタンスに対してSNMP経由で演習設定をしたサーバの動作確認を実施して、それを自動評価する仕組みの検討も行った(2008年10月発表)。
KAKENHI-PROJECT-19500069
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19500069
Kチャネル・Kトランスポーターの調節機構の解析
1ラン藻Synechocystis PCC 6803のKtr系はNaによってKの輸送が飛躍的に促進されることわかっているがその原因は不明である。Ktr系の細胞外に面する10か所の負電荷アミノ酸に標的を絞り、置換体を作成した。このプラスミドを大腸菌K輸送系遺伝子変異株に発現させて陽イオン輸送活性を測定したところ、Kの輸送活性が変化したものが現れたが、Naの活性化に関与するアミノ酸は絞り込めなかった。分子モデル作成の専門家による構造モデル情報とを照らし合わせて、細胞外にある本アミノ酸の塩橋の有無を推定した。2Ktr系は輸送体本体のKtrBとサブユニットのKrAとKtrEで構成されている。KtrAのKtrEが膜内にあるのかを調べることを目的に、膜と相互作用の有無、サブユニット同士の相互作用の有無について、免疫沈降法を用いる実験やKtrAとKtrEの疎水性領域にアミノ酸置換を導入したタンパク質と生体膜との分離測定を行うことで生体膜に局在していることを明らかにした。KtrAおよびKtrEが発現しない場合でも小さいものの有為なK輸送活性はあるがNa輸送活性は検出できなかった。KtrAとKtrEの輸送活性への寄与が明らかとなった。3ラン藻のNa/HアンチポーターもNa耐性0に寄与するが、その耐性はKのチラコイド膜への取り込みとカップルしていることが示唆された。4植物シロイヌナズナのK取り込み系KチャネルのKAT1の調節機構を調べた。細胞内にある領域がリン酸化を受けることによって、活性が抑制されることが分かった。5KAT1とAKT2はともに酵母の原形質膜に移行するにもかかわらず、KAT1はK輸送活性を有し、AKT2のK輸送活性は検出できない。この活性の差を指標として、KAT1とAKT2のキメラチャネルを用いて輸送発現に必要な領域を同定し、KAT1の輸送活性化に関与する領域は膜領域にあることが明らかとなってきた。ラン藻Ktr系の細胞外に面する10か所の負電荷アミノ酸AspおよびGluを、中性アミノ酸AsnおよびGlnに置換したプラスミドを構築した。そのプラスミドをK要求性変異大腸菌に導入させて、K要求性に関する相補テストを行った。K制限培地では増殖が極端に低下するものが得られた。さらにそれらを詳細に検討するために、原子吸光度分析装を用いたK輸送活性を測定することによりKmおよびVmaxを求めた。さらに、Naに関するK輸送活性の影響についても検討した。Ktr系には3つの細胞内ループ構造があるが、最もC末端領域に位置する酸性アミノ酸が輸送活性に関与していることが示唆された。この関与の原因の一つとして、他のサブユニットの結合領域として機能していることも考えられる。次に、Ktr系は輸送体本体のKtrBとサブユニットのKrAとKtrEのK輸送への依存性を調べることとした。。KtrAのKtrEが膜内にあるのかを調べるのと同時に、膜と相互作用の有無、サブユニット同士の相互作用の有無についてしらべた。明確な結果は得られていないが、このサブユニットがKtrBと相互作用をしている可能性が考えられる。また、KtrBのみでも大腸菌において小さなK輸送活性をもつことが明らかとなった。今後、KtrAとKtrEのどちらかを共存した時に、そのK輸送活性がどのように変化するのかを調べる基礎的知見が得られた。一方、植物シロイヌナズナのK取り込み系KチャネルのKAT1とAKT2はともに酵母の原形質膜に移行するにもかかわらず、KAT1はK輸送活性を有し、AKT2のK輸送活性は検出できない。この原因を調べるために、KAT1とAKT2の変異株をK要求性酵母に発現させて解析を進めている。1ラン藻Synechocystis PCC 6803のKtr系はNaによってKの輸送が飛躍的に促進されることわかっているがその原因は不明である。Ktr系の細胞外に面する10か所の負電荷アミノ酸に標的を絞り、置換体を作成した。このプラスミドを大腸菌K輸送系遺伝子変異株に発現させて陽イオン輸送活性を測定したところ、Kの輸送活性が変化したものが現れたが、Naの活性化に関与するアミノ酸は絞り込めなかった。分子モデル作成の専門家による構造モデル情報とを照らし合わせて、細胞外にある本アミノ酸の塩橋の有無を推定した。2Ktr系は輸送体本体のKtrBとサブユニットのKrAとKtrEで構成されている。KtrAのKtrEが膜内にあるのかを調べることを目的に、膜と相互作用の有無、サブユニット同士の相互作用の有無について、免疫沈降法を用いる実験やKtrAとKtrEの疎水性領域にアミノ酸置換を導入したタンパク質と生体膜との分離測定を行うことで生体膜に局在していることを明らかにした。KtrAおよびKtrEが発現しない場合でも小さいものの有為なK輸送活性はあるがNa輸送活性は検出できなかった。KtrAとKtrEの輸送活性への寄与が明らかとなった。3ラン藻のNa/HアンチポーターもNa耐性0に寄与するが、その耐性はKのチラコイド膜への取り込みとカップルしていることが示唆された。4植物シロイヌナズナのK取り込み系KチャネルのKAT1の調節機構を調べた。細胞内にある領域がリン酸化を受けることによって、活性が抑制されることが分かった。
KAKENHI-PROJECT-08F08103
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08F08103
Kチャネル・Kトランスポーターの調節機構の解析
5KAT1とAKT2はともに酵母の原形質膜に移行するにもかかわらず、KAT1はK輸送活性を有し、AKT2のK輸送活性は検出できない。この活性の差を指標として、KAT1とAKT2のキメラチャネルを用いて輸送発現に必要な領域を同定し、KAT1の輸送活性化に関与する領域は膜領域にあることが明らかとなってきた。
KAKENHI-PROJECT-08F08103
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08F08103
海洋・資源・環境科学の教育・実習・研究に資する船舶の新しい運営機構の研究
第17期日本学術会議海洋科学研究連絡委員会のもとに設置されている「海洋科学研究・教育のための船舶運営機構に関する検討小委員会」ととに,広義の海洋科学教育・研究に関わる問題点を整理し,今後取られるべき施策について検討した.その結果,来るべき時代に海洋科学の健全な発展と社会からの付託に応えるためには,さらに多くの船舶が必要であり,現在水産系学部に所属している練習船を,大学・大学院教育とともに海洋科学研究のために広く活用するべきとの結論に達した.その実現のための具体案は以下の通り.(1)利用可能な船舶の充実のため,現在の練習船の減船・小型化は避ける.(2)練習船は,現在所属している大学に当面引き続き設置し,全国的な利用を可能にする.(3)練習船は,海洋が関わるすべての学問領域の学部から大学院教育,および研究に利用する.(4)練習船群の運航を効率良く行うための組職体制を整備する.以上の結論を,第18期海洋科学研究連絡委員会の報告書としてまとめ,広く公表することとした.第17期日本学術会議海洋科学研究連絡委員会のもとに設置されている「海洋科学研究・教育のための船舶運営機構に関する検討小委員会」ととに,広義の海洋科学教育・研究に関わる問題点を整理し,今後取られるべき施策について検討した.その結果,来るべき時代に海洋科学の健全な発展と社会からの付託に応えるためには,さらに多くの船舶が必要であり,現在水産系学部に所属している練習船を,大学・大学院教育とともに海洋科学研究のために広く活用するべきとの結論に達した.その実現のための具体案は以下の通り.(1)利用可能な船舶の充実のため,現在の練習船の減船・小型化は避ける.(2)練習船は,現在所属している大学に当面引き続き設置し,全国的な利用を可能にする.(3)練習船は,海洋が関わるすべての学問領域の学部から大学院教育,および研究に利用する.(4)練習船群の運航を効率良く行うための組職体制を整備する.以上の結論を,第18期海洋科学研究連絡委員会の報告書としてまとめ,広く公表することとした.
KAKENHI-PROJECT-12894010
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12894010
S.mutansピルビン酸ギ酸リアーゼ(PFL)の発現機構の解析
嫌気的条件下のS.mutans糖代謝系で,重要な役割を担っているビルビン酸ギ酸リアーゼ(PFL)はラジカル酵素であり,その活性化にはラジカル形成に関与するPFL活性化酵素(PFLactivase)の存在が必須である.S.mutansのDPFL活性化酵素遺伝子(act)は,E.coli等のそれと違い,PFL遺伝子の下流には存在しなかった.よって,報告のあったact数種の情報をもとに,アミノ酸残基間で相同性の高い領域を選定してプライマーを合成し,S.mutansGS-51S3株の染色体DNAを鋳型としてPCR反応を行い,act断片をクローニングした.そして,このact断片の情報をもとにゲノムウォーキング法等により全act領域をクローニングし,瑞基配列を決定した.S.mutansのact(塩基数789)は,263アミノ酸残基をコードしており,推定分子量は30148で,E.coliのそれとのアミノ酸残基間における相同性は,43.8%,identical;79.3%,conservedであった.E.coliにおいてPFLactivaseの活性中心と報告されたCys-29,Cys-33,Cys-36の領域は,S.mutansではCys-37,Cys-41,CyS-44の領域として保存されていた.また,親株染色体DNA上のCDS領域に,Campbellタイプの相同組換えによってベクター領域と抗生物質耐性遺伝子を挿入して作製した変異株YASC9YK2(act-mutant/PFLactivase,-)では,PFL活性は検出されなかった(PFLactivaseは,PFLにラジカルを導入してPFLを活性化する酵素であり,活性を直接的に測定することは出来ない.よってPFLactivase活性は,PFL活性化系における計時的なPFL活性の上昇として検出した).しかし,SAKC5Y2C1(pfl-mutant/PFL,ー)とYASC9YK2のcell-freeの菌体内抽出成分を混合して,変異株同士によるPFL活性化系の再構成を行うと,親株の76.5%に相当するPFL活性が検出された. 論文投稿準備中ーS.mutansピルビン酸ギ酸リアーゼ(PFL)の発現を,好気的な実験環境下で容易に検出できるようにするため,S.mutans染色体DNA上でPFL遺伝子とクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子がオペロンを形成している変異株を作成した.そして,この変異株を用い,種々の発酵条件下(好気,微嫌気および高度嫌気条件下各種糖類の種々濃度)におけるS.mutansPFLの発現状況を,CAT活性を指標に解析した.さらに,種々の発酵条件下で培養したS.mutansから全RNAを分離し,RT-PCRを利用しm-RNA転写レベルからも直接的にPFLの発現を解析した.炭素源としてGlucoseまたはGalactoseを高濃度(56mM)与え嫌気的条件下で培養した菌株では,PFLのmRNA転写量は少なく,これに対しGlucose制限条件下ではPFLのmRNA転写量が増加していた.好気的条件下で培養した菌株からも,PFLのmRNA転写を検出した.また,S.mutansのPFL activeting enzyme(PFLAE)のクローニングでは,既報(E.coliとClostridium pasteurianum)のPFLAEアミノ酸残基配列から相同性の高い領域を選びPCR用のプライマーを合成し,S.mutans染色体DNAを鋳型としてPFLAE遺伝子領域の増幅を試み,目的とするPFLAE遺伝子領域と考えられるフラグメントを得た.そして,この領域がE.coliやClostridium pasteurianumのそれと異なり私たちらによって報告されたようにPFLの下流の領域には存在しないことを,S.mutansの染色体DNAをNotlやApalによって切断しパルスフィールド電気泳動後サザンブロッティング分析することによって確認した.嫌気的条件下のS.mutans糖代謝系で,重要な役割を担っているビルビン酸ギ酸リアーゼ(PFL)はラジカル酵素であり,その活性化にはラジカル形成に関与するPFL活性化酵素(PFLactivase)の存在が必須である.S.mutansのDPFL活性化酵素遺伝子(act)は,E.coli等のそれと違い,PFL遺伝子の下流には存在しなかった.よって,報告のあったact数種の情報をもとに,アミノ酸残基間で相同性の高い領域を選定してプライマーを合成し,S.mutansGS-51S3株の染色体DNAを鋳型としてPCR反応を行い,act断片をクローニングした.そして,このact断片の情報をもとにゲノムウォーキング法等により全act領域をクローニングし,瑞基配列を決定した.S.mutansのact(塩基数789)は,263アミノ酸残基をコードしており,推定分子量は30148で,E.coliのそれとのアミノ酸残基間における相同性は,43.8%,identical;79.3%,conservedであった.E.coliにおいてPFLactivaseの活性中心と報告されたCys-29,Cys-33,Cys-36の領域は,S.mutansではCys-37,Cys-41,CyS-44の領域として保存されていた.また,親株染色体DNA上のCDS領域に,Campbellタイプの相同組換えによってベクター領域と抗生物質耐性遺伝子を挿入して作製した変異株YASC9YK2(act-mutant/PFLactivase,-)では,PFL活性は検出されなかった(PFLactivaseは,PFLにラジカルを導入してPFLを活性化する酵素であり,活性を直接的に測定することは出来ない.
KAKENHI-PROJECT-09771547
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09771547
S.mutansピルビン酸ギ酸リアーゼ(PFL)の発現機構の解析
よってPFLactivase活性は,PFL活性化系における計時的なPFL活性の上昇として検出した).しかし,SAKC5Y2C1(pfl-mutant/PFL,ー)とYASC9YK2のcell-freeの菌体内抽出成分を混合して,変異株同士によるPFL活性化系の再構成を行うと,親株の76.5%に相当するPFL活性が検出された. 論文投稿準備中ー
KAKENHI-PROJECT-09771547
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09771547
「建ぎょう」考
三国時代、孫呉王朝の都であった建業は、太康元年(280)、西晋に併合されたのち、名称をもと(漢代)の秣陵に戻し、さらにその2年度(282)、建ぎょうと改めたが、第4代の愍帝(司馬ぎょう)の諱を避けるために、また改称して建康とし、この称は南朝を通して改められなかったとされている。しかし、『南史』及び『宋書』『南斉書』『梁書』『陳書』の南朝関係正史,さらに『建康実録』『資治通鑑』あるいは『太平御覧』等の類書等々から建康を示す呼称を摘出してみると,『南史』には、建康以外に(建業例は少いが)建ぎょうの称がかなり見られるのに対し、『宋書』『南斉書』『梁書』『陳書』には「建業」例は散見するも「建ぎょう」例はほとんど見られない。これは『南史』の撰者である李延寿が恣意的に建ぎょうと記したのではなく、彼が採った原史料の1つにそう記されていたためと考えるべきであろう。それが何か今なお断定し難いが、終始一貫「建康」と記している『資治通鑑』に唯一か所-北朝関係の記事であるが-「建康」とあるべきところを「建ぎょう」と称している例のあることは、示唆を与えてくれるとされよう。三国時代、孫呉王朝の都であった建業は、太康元年(280)、西晋に併合されたのち、名称をもと(漢代)の秣陵に戻し、さらにその2年度(282)、建ぎょうと改めたが、第4代の愍帝(司馬ぎょう)の諱を避けるために、また改称して建康とし、この称は南朝を通して改められなかったとされている。しかし、『南史』及び『宋書』『南斉書』『梁書』『陳書』の南朝関係正史,さらに『建康実録』『資治通鑑』あるいは『太平御覧』等の類書等々から建康を示す呼称を摘出してみると,『南史』には、建康以外に(建業例は少いが)建ぎょうの称がかなり見られるのに対し、『宋書』『南斉書』『梁書』『陳書』には「建業」例は散見するも「建ぎょう」例はほとんど見られない。これは『南史』の撰者である李延寿が恣意的に建ぎょうと記したのではなく、彼が採った原史料の1つにそう記されていたためと考えるべきであろう。それが何か今なお断定し難いが、終始一貫「建康」と記している『資治通鑑』に唯一か所-北朝関係の記事であるが-「建康」とあるべきところを「建ぎょう」と称している例のあることは、示唆を与えてくれるとされよう。
KAKENHI-PROJECT-05610307
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05610307
力学的見地からの超伝導特性評価および改善
超伝導線材は、作製・使用中に機械的・電磁気学的応力場に置かれ、その結果、臨界温度・電流・磁場などの超伝導特性は劣化する。今後さらに厳しくなる力学的環境に対応できるよう、力学的見地からの高超伝導特性確保要件を把握することが必要である。本研究では、力学的見地からの高超伝導特性評価とその改善に関する基礎的研究を行った。主な結果は以下のように要約される。塑性変形能を持つ延性的なNb-Tiフィラメントが安定化銅に埋め込まれた複合超伝導線材では、静的引張応力下で線材単独ならネッキングして破断する歪を越えてもなお変形が続けられる。これは最初生じたネッキングの進行が抑制され、他の箇所でネッキングが生じ、それもまた抑制されるといったフィラメントと銅の力学的相互作用の結果である。その結果、脆いA15型化合物や酸化物超伝導線材では実現できない力学的安全性が確保される。ただし、電流値はフィラメントが均一変形する場合に比して20%程度低下する。一方、繰り返し応力下では、負荷応力レベルが高い場合は、フィラメントのネッキングは、静的応力下に比して、より進行し、マルチプルネッキング現象が生じる。その結果、超伝導電流を輸送するフィラメントの有効断面積が減少し、臨界電流は低下する。また、負荷応力レベルが低い場合は、銅に疲労クラックが形成され、このクラックが進展して臨界電流を低下させる。以上の結果および平行して行った応力計算から、安定化銅を熱伝導率をできるだけ低下させない分散強化がさらなるネッキング抑制に効果的であると提案される。超伝導線材は、作製・使用中に機械的・電磁気学的応力場に置かれ、その結果、臨界温度・電流・磁場などの超伝導特性は劣化する。今後さらに厳しくなる力学的環境に対応できるよう、力学的見地からの高超伝導特性確保要件を把握することが必要である。本研究では、力学的見地からの高超伝導特性評価とその改善に関する基礎的研究を行った。主な結果は以下のように要約される。塑性変形能を持つ延性的なNb-Tiフィラメントが安定化銅に埋め込まれた複合超伝導線材では、静的引張応力下で線材単独ならネッキングして破断する歪を越えてもなお変形が続けられる。これは最初生じたネッキングの進行が抑制され、他の箇所でネッキングが生じ、それもまた抑制されるといったフィラメントと銅の力学的相互作用の結果である。その結果、脆いA15型化合物や酸化物超伝導線材では実現できない力学的安全性が確保される。ただし、電流値はフィラメントが均一変形する場合に比して20%程度低下する。一方、繰り返し応力下では、負荷応力レベルが高い場合は、フィラメントのネッキングは、静的応力下に比して、より進行し、マルチプルネッキング現象が生じる。その結果、超伝導電流を輸送するフィラメントの有効断面積が減少し、臨界電流は低下する。また、負荷応力レベルが低い場合は、銅に疲労クラックが形成され、このクラックが進展して臨界電流を低下させる。以上の結果および平行して行った応力計算から、安定化銅を熱伝導率をできるだけ低下させない分散強化がさらなるネッキング抑制に効果的であると提案される。
KAKENHI-PROJECT-08875130
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08875130
転写因子による造血制御機構の解析
12p13及び21q22転座型白血病の発症機構を解明することを目的に、転座標的遺伝子TEL及びRUNX1の機能と機能制御機構を解析するとともに、キメラ遺伝子の機能を明らかにする。(1)野生型TELの機能制御機構を翻訳後修飾の観点から解析する。(2)野生型TELの機能をノックアウト及びトランスジェニックES細胞を用いて、in vitro及びマウス個体で解析する。(3)野生型RUNX1の翻訳制御機構をmicroRNAレベルで解析する。12p13及び21q22転座型白血病の発症機構を解明することを目的に、転座標的遺伝子TEL及びRUNX1の機能と機能制御機構を解析するとともに、キメラ遺伝子の機能を明らかにする。(1)野生型TELの機能制御機構を翻訳後修飾の観点から解析する。(2)野生型TELの機能をノックアウト及びトランスジェニックES細胞を用いて、in vitro及びマウス個体で解析する。(3)野生型RUNX1の翻訳制御機構をmicroRNAレベルで解析する。(4)RUNX1/EVI1の標的遺伝子を同定する。RUNX1遺伝子は、造血発生や骨髄造血における幹細胞の維持に必須の役割を担う転写因子である。急性白血病や骨髄異形成症候群(MDS)においては、遺伝子座の欠失、染色体転座に伴うキメラ遺伝子の形成あるいは点突然変異によって、その機能が失活していることが知られている。本年度はMDS症例において、miRNAの異常発現がRUNX1蛋白の翻訳抑制を介してRUNX1の機能を失活させている可能性について検討した。解析の対象としたのはRUNX1遺伝子の3'非翻訳領域に結合する10種類のmiRNA (miR-9、miR-27a、miR-27b、miR-199a、miR-18a、miR-30a、miR-30b、miR-30c、miR-30d、miR-30e)である。MDS患者16例(RA4例, RAEB9例, RAEB-t2例, CMMoL1例)および正常人11例の骨髄検体よりsmall RNAを抽出し、Taqman法によりmiRNAの発現を定量した。検討した10種類のmiRNAの中でmiR-9のみに発現変化が観察され、MDS患者16症例中3例において発現が異常に亢進していた。このMDS3例の病型の内訳はRAEB2例、RA1例であった。次に、miR-9がRUNX1蛋白の翻訳を負に制御するかどうかをレポーター・アッセイにより検討した。RUNX1mRNAの3'非翻訳領域をルシフェラーゼ遺伝子の翻訳領域の下流に接続したレポーター・プラスミドを作製し、miR-9とともに293細胞にコトランスフェクションした。また、miR-9結合部位の欠失変異体レポーターも作製して同様の検討を行なった。その結果、miR-9の導入はmiR-9結合部位依存性にレポーターの活性を50%以下に低下させることが明らかになった。以上の結果より、miR-9の過剰発現がRUNX1蛋白の翻訳抑制を介して、MDSの発症や進展に関与している可能性が示唆された。RUNX1遺伝子の機能的失活は急性骨髄性白血病(AML)の重要な発症機構である。RUNX1蛋白の翻訳を阻害する可能性のあるmicroRNA(RUNX1関連miRNA : miR-27a, miR-27b, miR-9, miR-199a, miR-18a, miR-30a, miR-30b, miR-30c, miR-30d, miR-30e)の発現をTaqman法により定量するとともに、その臨床的意義を検討した。本研究は施設の倫理委員会で承認されており、検体供与者からは文書による同意を得た。予備実験として、急性リンパ性白血病及び混合性白血病を含む33例の急性白血病の骨髄検体について解析を行なった所、ほとんどのRUNX1関連miRNAは症例毎に発現レベルにばらつきはあるものの、正常及び急性白血病検体において発現が確認された。一方、miR-9は正常骨髄ではほとんど発現しておらず、急性白血病骨髄では3例に過剰発現が観察された。そこで、87例のAML検体でさらに解析した所、約2割の検体で過剰発現が観察された。正常人骨髄で見られる発現レベルをカットオフ値として、miR-9の発現の有無で2群に分類したところ、16例(約18%)が陽性、71例(約82%)が陰性と判定された。臨床データを照合した所、miR-9発現陽性AMLは陰性AMLに比して寛解率に差は認めなかったものの、全生存が統計学的有意差をもって不良であることが明らかになった。miR-9にはRUNX1以外の標的mRNAが存在する可能性があるが、その過剰発現は白血病発症のひとつの分子機構であると考えられた。RUNX1遺伝子の機能的失活は髄異形成症候群(MDS)の重要な発症機構である。RUNX1 mRNAに結合配列を有するmicroRNAの発現レベルをMDS検体を用いて解析した所、正常骨髄では発現していないMIR-9の発現が約1割の症例で亢進していることが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-20390275
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20390275
転写因子による造血制御機構の解析
MIR-9の過剰発現がMDS病初期の病像である無効造血に果たす役割を明らかにするために、Green fluorescent protein(GFP)遺伝子の下流にMIR-9遺伝子を組み込んだ発現ベクター(pcDNA6. 2-GW/EmGFP-miR-9)をヒト白血病細胞株UT-7/GM細胞に導入してMIR-9安定発現株を樹立し、赤芽球への分化能の変化を解析した。エリスロポエチン存在下で3日間培養した後ベンチジン染色を用いてヘモグロビン合成能を評価した所、MIR-9発現細胞ではコントロール細胞に比較してベンチジン陽性率が有意に低下していた。また、培養4日目の細胞からmRNAを抽出して定量PCR解析を施行した所、β-グロビン遺伝子の発現レベルに関しては両者に有意な差は認めなかったものの、ヘム合成系の遺伝子であるALAS-Eの発現レベルは、コントロール細胞と比較してMIR-9安定発現株において有意に低下していた。最後に、培養7日目のFACS解析では、glycopholin Aの発現がMIR-9安定発現株において低い結果が得られた。以上より、MIR-9の過剰発現は赤芽球分化に対して抑制的に作用すると考えられ、このことを介してMDSの分子病態形成に関与している可能性が示唆された。今後、MIR-9の過剰発現により発現が低下する標的蛋白の同定が重要な課題である。
KAKENHI-PROJECT-20390275
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20390275
熱応力によるチタン酸ストロンチウム単結晶膜の強誘電性誘起とその発現機構の解明
歪みより強誘電性を示すチタン酸ストロンチウム(SrTiO_3)について、基板と薄膜の熱膨張係数のミスマッチ、すなわち熱応力を利用して、薄膜における強誘電性の発現とその機構解明を試みた。SrTiO_3の約2倍の熱膨張係数をもつフッ化カルシウムを基板として用いることで、約0.7%の面内圧縮歪みを有したSrTiO_3膜が成長した。面内圧縮歪みにより、強誘電相転移温度が上昇し、また、酸素8面体の微小回転を伴う構造相転移温度も上昇する事が明らかになった。歪みより強誘電性を示すチタン酸ストロンチウム(SrTiO_3)について、基板と薄膜の熱膨張係数のミスマッチ、すなわち熱応力を利用して、薄膜における強誘電性の発現とその機構解明を試みた。SrTiO_3の約2倍の熱膨張係数をもつフッ化カルシウムを基板として用いることで、約0.7%の面内圧縮歪みを有したSrTiO_3膜が成長した。面内圧縮歪みにより、強誘電相転移温度が上昇し、また、酸素8面体の微小回転を伴う構造相転移温度も上昇する事が明らかになった。近年、鉛やビスマスなどの有害元素を含まない環境調和型の強誘電体材料の研究が盛んに行われている。しかし、強誘電性をもたらす歪んだ格子構造を安定化する鉛やビスマスといった孤立電子対を持つイオンの代替には限りがある。一方で、基板上に成長した薄膜の場合には、基板の拘束によって薄膜を歪ませることができるため、チタン酸ストロンチウム(SrTiO_3)のような本来強誘電性を示さない材料においても強誘電性の発現が可能となり、環境調和型の強誘電体として使用できる可能性がある。本研究では薄膜における格子歪みの安定化手法として、基板と薄膜の熱応力、すなわち熱膨張のミスマッチの利用に注目し、SrTiO_3の約2倍の熱膨張係数をもつホタル石型フッ化物CaF_2を基板として用いることで、SrTiO_3薄膜の強誘電性の発現を目指した。本年度は、CaF_2基板上に中間層などの導入を行い、高品質なSrTiO_3薄膜の作製を目指した。その結果、SrTiO_3中間層を用いて、SrTiO_3薄膜/SrRuO_3電極層/SrTiO_3中間層/CaF_2基板という積層構造にすることで、高品質な単結晶SrTiO_3薄膜が成長する事が明らかになった。これは、SrTiO_3中間層の利用によりSrRuO_3電極層とCaF_2基板との界面整合性が向上したためと考えられる。得られたSrTiO_3薄膜のXRD Rocking Curveの最小の半価幅は0.5°であった。XRD逆格子空間マッピング測定により、得られた単結晶SrTiO_3薄膜は、50nm以上の膜厚でも約0.7%の面内圧縮歪みを有していることが明らかになった。この結果は、歪みの導入が、基板と膜の格子定数のミスマッチではなく熱膨張のミスマッチによることを示している。また得られた歪み量から、約100K以下で強誘電性が誘起されると見積もられた。今後、合成条件の更なる最適化を行い、詳細な特性評価を行う。有害元素を含まない環境調和型の強誘電体材料の研究が盛んに行われている。しかし、強誘電性をもたらす歪んだ格子構造を安定化する鉛のような孤立電子対を持つイオンの代替には限りがある。一方で、薄膜の場合には、基板の拘束によって格子を歪ませることができるため、チタン酸ストロンチウム(SrTiO_3)のような本来強誘電性を示さない材料においても強誘電性の発現が可能となることから、新たな格子歪みの安定化手法として期待できる。本研究では、主に基板と薄膜の熱応力、すなわち熱膨張係数のミスマッチの利用に注目し、SrTiO_3薄膜の強誘電性の発現とその機構解明を行った。最終年度は、CaF_2を始めとする各種基板上における薄膜合成条件の更なる最適化と、得られた膜の特性評価、他組成薄膜への応用を行った。得られた成果は以下の通りである。・CaF_2上に成長した膜の冷却速度の制御により、クラックの発生による歪み緩和を最小限に押さえた。・得られた薄膜の格子定数の温度依存性を明らかにした。その結果、-0.9%の歪み(100)SrTiO_3薄膜の強誘電相転移温度は約140Kと見積られ、理論予測と一致した。・酸素8面体の微小回転による構造相転移(Antiferrodistortive相転移)温度の歪み依存性を、シンクロトロンXRDおよびTEMを用いて明らかにした。観測された構造相転移温度は理論予測よりも大幅に高く(-0.9%の歪み薄膜では約360K)、強誘電特性へ与える影響はこれまでの予測と大きく異なる可能性が示唆された。・SrTiO_3の他に(Ba,Sr)TiO_3についても薄膜を作製し、歪みと強誘電相転移温度との関係を明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-20860036
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20860036
乱流コンタミネーションに関する研究
本研究は境界層遷移に関する基礎研究であり,特に後退翼の前縁コンタミネーションと密接に関係した強い攪乱に対する境界層の非線形応答を実験的に調べている.またこれは,乱流コンタミネーション自身乱流の芽がまさに生まれる過程であることから乱流機構を理解する上でも重要な問題として捉えられる.本実験では,粘性効果の大きな低レイノルズ数の平板上境界層に注目し,1)平板前縁での渦の音響励起および,2)線形安定理論による臨界レイノルズ数以下の領域に開けられた小孔からの渦の励起,の二種類の撹乱励起方法により強いヘアピン渦撹乱を導入している.得られた知見を以下にまとめる。運動量厚さに基づくレイノルズ数が亜臨界の130150付近から(線形論による臨界レイノルズ数は200),初めに励起したヘアピン渦の流下と共にその背後(脚の部分)でヘアピン渦のリジェネレーションが始まり乱流遷移に導く.また,このような亜臨界遷移においては,スパン方向への乱流コンタミネーション(いわるラテラルコンタミネーション)が非常に弱い.すなわち,乱流域のスパン方向の拡がり角は,前縁からの距離に基づくレイノルズ数R_x=1×10^5以下では2度(半角の値)程度しかなく,高レイノルズ数での乱流斑点や乱流楔の拡がり角(約10度)に比べて遙かに小さい.レイノルズ数を少し増すと,拡がり角は急速に大きくなり,例えば,R_x=1.11.7×10^5では4度(半角の値),R_x=2.02.8×10^5では6.5度にまで増加する.また,生まれるヘアピン渦のスパン間隔は局所摩擦速度を用いた壁単位で100程度である.本研究は境界層遷移に関する基礎研究であり,特に後退翼の前縁コンタミネーションと密接に関係した強い攪乱に対する境界層の非線形応答を実験的に調べている.またこれは,乱流コンタミネーション自身乱流の芽がまさに生まれる過程であることから乱流機構を理解する上でも重要な問題として捉えられる.本実験では,粘性効果の大きな低レイノルズ数の平板上境界層に注目し,1)平板前縁での渦の音響励起および,2)線形安定理論による臨界レイノルズ数以下の領域に開けられた小孔からの渦の励起,の二種類の撹乱励起方法により強いヘアピン渦撹乱を導入している.得られた知見を以下にまとめる。運動量厚さに基づくレイノルズ数が亜臨界の130150付近から(線形論による臨界レイノルズ数は200),初めに励起したヘアピン渦の流下と共にその背後(脚の部分)でヘアピン渦のリジェネレーションが始まり乱流遷移に導く.また,このような亜臨界遷移においては,スパン方向への乱流コンタミネーション(いわるラテラルコンタミネーション)が非常に弱い.すなわち,乱流域のスパン方向の拡がり角は,前縁からの距離に基づくレイノルズ数R_x=1×10^5以下では2度(半角の値)程度しかなく,高レイノルズ数での乱流斑点や乱流楔の拡がり角(約10度)に比べて遙かに小さい.レイノルズ数を少し増すと,拡がり角は急速に大きくなり,例えば,R_x=1.11.7×10^5では4度(半角の値),R_x=2.02.8×10^5では6.5度にまで増加する.また,生まれるヘアピン渦のスパン間隔は局所摩擦速度を用いた壁単位で100程度である.本研究は境界層遷移についての基礎研究であり,特に乱流コンタミネーションは強い攪乱に対する境界層の非線形応答でありそれ自身乱流の芽がまさに生まれる過程であることから乱流機構を明らかにする上でも重要な問題として捉えられる。コンタミネーションの機構について普遍的な成果を得るためには基本的な流れと撹乱の組み合わせが重要であり,今年度は,粘性効果の大きな低レイノルズ数の平板上境界層に注目し,線形安定理論による臨界レイノイズ数以下の領域に開けられた小孔から強いヘアピン形状の渦を励起し,乱流構造が生まれる臨界条件やその過程の詳細を実験的に調べた。その結果,運動量厚さに基づくレイノイズ数が亜臨界の150付近から,初めに励起したヘアピン渦の流下と共にその背後(脚の部分)でヘアピン渦のリジェネレーションが始まり乱流遷移に導く様子や,また,このような亜臨界遷移においては,スパン方向への乱流コンタミネーション(いわゆるラテラルコンタミネーション)が非常に弱いことや,そのような狭い乱流領域内でも対数速度分布等の壁乱流構造の特性が観察される,などの興味ある結果が得られた。上記のような新たな知見が得られ,当初の目的がほぼ達成されつつある。成果は,乱流遷移に関するIUTAM(国際理論応用力学連合)シンポジウム(1994.9)および第26回流体力学講演会(1994.10)で発表された。
KAKENHI-PROJECT-06651070
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06651070
乱流コンタミネーションに関する研究
本研究は境界層遷移についての基礎研究であり,特に乱流コンタミネーションはそれ自身乱流の芽が生まれる過程であることから乱流機構を明らかにする上でも重要な問題として捉えられる.コンタミネーションの機構について普遍的な成果を得るためには基本的な流れと攪乱の組み合わせが重要であり,前年度から,粘性効果の大きな低レイノルズ数の平板上境界層に注目し,線形安定理論による臨界レイノルズ数以下の領域に開けられた小孔から強いヘアピン形状の渦を励起し,乱流構造が生まれる臨界条件やその過程を調べている.今年度もそれを継続し,低レイノルズ数でのラテラル乱流コンタミネーションの特徴と機構を実験的に詳細に調べた.その結果,初めに励起したヘアピン渦の流下と共にその背後(脚の部分)や横でヘアピン渦のリジェネレーションが始まり乱流構造が発達していく様子や,また,この低レイノルズ数の遷移過程においては,スパン方向への乱流コンタミネーション(いわゆるラテラルコンタミネーション)が非常に弱く,前縁からの距離に基づくレイノルズ数がRx=5×10^41.5×10^5の範囲では乱流域のスパン方向の拡がり角(半角)が22.5度しかなく,Rx=1.5×10^53×10^5になると5度程度に増し高レイノルズ数における乱流楔や乱流斑点の拡がり角(半角)の値1012度に急速に近づいていく,などの興味ある結果が得られた.
KAKENHI-PROJECT-06651070
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06651070
可視化データ認知におけるバイアスの発生機序及びバイアス除去のための学習法の確立
本研究は可視化データ認知におけるバイアスの発生機序の解明、及びバイアス除去のための学習法の確立を目指し、以下の3つのテーマについて実験研究を行うものである。(1)グラフ理解課題時の眼球運動測定を行い、視線パターンのダイナミクスを同定する。(2)高次データ変換法を用いた認知課題により、グラフ理解におけるノービスとエキスパートの認知モデルを明らかにする。(3)可視化データ認知におけるバイアス除去のための学習法を開発し、効果を検証する。初年度は当初計画通り(2)の高次データ変換法を用いた認知実験を行った。高次データ変換法とは3次元以上からなるデータに対して部分次元の関係を複数のグラフで呈示し、それらを統合することで高次元データの把握を求めるという新規な手法である。予備的実験として当初予定の実験内容(グラフ作成課題)を実施した結果、課題難易度が非常に高く、エキスパートの被験者にとっても課題遂行が困難であった。このため実験課題を一部変更し、部分的に情報が欠落したグラフを完成させる課題に変更した。課題変更の結果、ノービスの被験者であっても課題を遂行できる程度の難易度に調整することが可能であった。実験の結果、試行を重ねるにつれて課題遂行時間や正答率において向上が認められた。また呈示する部分グラフ次元の空間関係による効果も認められた。今後、学習進行に応じたバイアスの減少等の詳細な分析を行う予定である。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。本研究は可視化データ認知におけるバイアスの発生機序の解明、及びバイアス除去のための学習法の確立を目指し、以下の3つのテーマについて実験研究を行うものである。(1)グラフ理解課題時の眼球運動測定を行い、視線パターンのダイナミクスを同定する。(2)高次データ変換法を用いた認知課題により、グラフ理解におけるノービスとエキスパートの認知モデルを明らかにする。(3)可視化データ認知におけるバイアス除去のための学習法を開発し、効果を検証する。初年度は当初計画通り(2)の高次データ変換法を用いた認知実験を行った。高次データ変換法とは3次元以上からなるデータに対して部分次元の関係を複数のグラフで呈示し、それらを統合することで高次元データの把握を求めるという新規な手法である。予備的実験として当初予定の実験内容(グラフ作成課題)を実施した結果、課題難易度が非常に高く、エキスパートの被験者にとっても課題遂行が困難であった。このため実験課題を一部変更し、部分的に情報が欠落したグラフを完成させる課題に変更した。課題変更の結果、ノービスの被験者であっても課題を遂行できる程度の難易度に調整することが可能であった。実験の結果、試行を重ねるにつれて課題遂行時間や正答率において向上が認められた。また呈示する部分グラフ次元の空間関係による効果も認められた。今後、学習進行に応じたバイアスの減少等の詳細な分析を行う予定である。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-24800012
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24800012
地理情報システムを活用した食文化研究の構築
本研究の目的は、地誌を資料として、食料・産物に関するGISを作成し、食文化研究へ活用しようとするものである。資料とした『防長風土注進案』は1840年代に編纂された長州藩の地誌である。長州藩は昔の行政区域であり現在の山口県である。『防長風土注進案』の重要性は19世紀の食料について、詳しく(ときには生産量も含めて)記載されていることである。結果は以下の通りで、(1)GISのための村落地図データを作成した。(2)農産物・採集品、魚介類・海藻類について食品リストを作成した。さらに(3)注進案GISを活用し、薬草などの分布の特徴を明らかにした。本研究は、今日多くの目的で利用されている地理情報システム(GIS)を食文化研究へ活用しようとするものである。資料として、天保期長州地方の地誌である「防長風土注進案」を使用してGISを作成し、それを活用し、江戸時代末から今日にいたる山口県の食生活の変遷とともに、日本における食生活の変遷を考察し、現在の食生活の課題と改善のための提言を行うことを目的としている。平成24年度は、「防長風土注進案GIS」化に向けてデータのチェックを行った。「防長風土注進案」(21巻別冊1冊)(昭和37年山口県文書館編集、山口県立山口図書館発行、昭和58年マツノ書店から覆刻)に記載された物産、産業に関する記載を、平成23年度にエクセル形式で入力した。入力したデータは膨大であり、産物名の記載、物産の項目、単位等について、「防長風土注進案」の刊本にあたり、修正作業を行った。また、宰判(地域)による記述の違いがある、宰判ごとにより呼び名が違う、同じ名前であって宰判で違う、その単位がまちまちであるなど、「防長風土注進案GIS」に使用できるデータに加工するためには、かなりの修正が必要である。データチェックはGISの完成度に大きく関わるため、重要な作業であり、平成24年度はその作業の途中である。GISのソフトは、ArcGIS(ESRI社)を使用する。「防長風土注進案」に記載された地域は、4支藩領を除いた地域で、山口県全域の3分の2にあたる。GIS化に向けてデータの準備を進めている。「防長風土注進案」に記載された、産物・食料をもとに、食品目録の作成することを予定しているので、記載された産物・食料に関する情報収集、資料収集を行った。本研究は、今日多くの目的で利用されている地理情報システム(GIS)を食文化研究へ活用しようとするものである。資料として、天保期長州地方の地誌である「防長風土注進案」を使用しGISを作成し、それを活用し、江戸時代末から今日にいたる山口県の食生活の変遷とともに、日本における食生活の変遷を考察し、現在の食生活の課題と改善のための提言を行うことを目的としている。平成25年度は、前年度に引き続き「防長風土注進案」(21巻別冊1冊)(昭和37年山口県文書館編集、山口県立山口図書館発行、昭和58年マツノ書店から覆刻)に記載された物産、産業に関する記載をもとに、「防長風土注進案GIS」化の作業を行った。「防長風土注進案」を資料として入力した食料、産物のデータチェック、ならびに同一食品をひとつにまとめていく作業や、単位の扱いなど検討した。GISのソフトは、ArcGIS(ESRI社)を使用した。「防長風土注進案」に記載された地域は、4支藩領を除いた地域で、山口県全域の3分の2にあたる。地図情報として、石川卓美編『山口県近世史要覧』に付録された「防長風土注進案」の地図の検討を行った。その結果、村境界のためには、新たに地図データを作成する必要性が明らかになったので、その作業に取りかかった。その一方で、村の地点の特定、入力を行い、村の分布図によるGISによる地図の作成を行った。「防長風土注進案GIS」化に関しての、データ処理、地図化、食料・産業に関して、研究打ち合わせをするとともに、「防長風土注進案」に記載された産物・食料に関する情報収集、資料収集を行った。「『明治十年全國農産表』記載の穀類に関するGIS分析」、「『防長風土注進案』の産物記載にみる食品目録ー農産物・採集品を中心にー」、「『防長風土注進案』に記載された薬草」を報告した。本研究の目的は、地誌を資料として、食料・産物に関するGISを作成し、食文化研究へ活用しようとするものである。資料とした『防長風土注進案』は1840年代に編纂された長州藩の地誌である。長州藩は昔の行政区域であり現在の山口県である。『防長風土注進案』の重要性は19世紀の食料について、詳しく(ときには生産量も含めて)記載されていることである。結果は以下の通りで、(1)GISのための村落地図データを作成した。(2)農産物・採集品、魚介類・海藻類について食品リストを作成した。さらに(3)注進案GISを活用し、薬草などの分布の特徴を明らかにした。本研究は、今日多くの目的で利用されている地理情報システム(GIS)を食文化研究へ活用しようとするものである。資料として、天保期長州地方の地誌である「防長風土注進案」を使用してGISを作成する。
KAKENHI-PROJECT-23500928
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23500928
地理情報システムを活用した食文化研究の構築
それを活用し、江戸時代末から今日にいたる山口県の食生活の変遷とともに、日本における食生活の変遷を考察し、現在の食生活の課題と改善のための提言を行うことを目的としている。本年度は、「防長風土注進案」GISを作成するための基礎的作業を行った。「防長風土注進案」(21巻別冊1冊)(昭和37年山口県文書館編集、山口県立山口図書館発行、昭和58年にマツノ書店覆刻)のうち、入力の対象とする項目を検討し、<物産之事><産業之事>とした。産物の名称、単位その他の不統一であるが、できるだけ原典に忠実に、エクセル形式で入力することにした。GISのソフトは、ArcGIS(ESRI社)を使用することにした。「防長風土注進案」に記載された地域は、4支藩領を除く山口県全域の3分の2にあたる。村の記録は、合計すると326村程度である。地誌を利用したGISの前例がある総合地球環境学研究所の研究員らと入力方法等について研究打ち合わせを行った。村の位置データの入力は、以前ArcViewで作成したデータを活用しながら、作業を行っている。データ入力作業の一方で、「防長風土注進案」に記載された食料、その食品の調理や伝統食について、山口県内外で、資料収集と情報収集を行った。また食文化・食生活に関する文献を収集、図書を購入した。「防長風土注進案」に記載された食料について、食品目録のようなものを作る必要性があることがわかってきたので、食品目録の作成を検討している。本研究は、今日多くの目的で利用されている地理情報システム(GIS)を食文化研究へ活用しようとするものである。資料として、天保期長州地方の地誌である「防長風土注進案」を使用しGISを作成し、それを活用し、江戸時代末から今日にいたる山口県の食生活の変遷とともに、日本における食生活の変遷を考察し、現在の食生活の課題と改善のための提言を行うことを目的としている。「防長風土注進案」(21巻別冊1冊)(昭和35年から山口県文書館翻刻、山口県立山口図書館、昭和58年マツノ書店から復刻)は、史料的価値の高いことが知られているが、データ量が膨大であることからデータベース化はこれまで試みられていなかった。データベース化及びGIS化することで幅広く研究分野への貢献は大きい。「防長風土注進案」に記載された食料・産物について「注進案GIS」化を行った。GISのソフトはArcGIS(ESRI社)を使用した。「防長風土注進案」に記載された地域は4支藩領を除いた地域で、山口県全域の3分の2にあたる。「防長風土注進案」を資料として入力した食料、産物はデータ量が膨大で(約30,000行、品目はのべ4,000項目)、かつ旧漢字、作字も多い。平成25年度までに、データベース化、GIS化を進め、農産物・採集品について、地域による名称の違いなどの検討を加え、学名を付して目録を作成し報告するなど行っている。平成26年度は、GISを作成する上で天保期長州藩の村落地図データの作成および、魚介類・海藻類について食品目録を作成し報告した。また「注進案GIS」を活用した研究を紹介した。今後は、獣鳥類、虫類、草木類、産業類など順次検討を進めて報告していく予定である。その過程で「注進案GIS」の完成をめざし、一般への公開を検討していく。また「注進案GIS」を活用することで、環境、教育、地域振興等への貢献することを考えている。食物学(食文化・食生活)平成24年度当初の計画では、平成23年度に入力したデータチェックを実施し、「防長風土注進案GIS」の初歩段階の作成をめざした。平成24年度は「防長風土注進案GIS」のためのデータチェックを行っており、その作業の途中である。
KAKENHI-PROJECT-23500928
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23500928
建築仕上げ材の質感評価指標としての3次元反射指向特性の有効性に関する研究
建築を構成する材料の中で最も人に近い存在であり,特有のテクスチャーによって空間の印象に大きく影響すると考えられる建築仕上げ材の質感を取り上げ,今後の設計計画に役立てるための評価指標の確立を目的として,反射指向特性の検討を行った。質感を左右さる照明要因である照度と,テクスチャーの知覚に関連する指向性の強い照射光の照射角度について,被験者を用いた評価実験により考察したところ,以下のことが明らかとなった。光沢感,あたたかさ感,やわらかさ感は照度の上昇とともに評価が高くなる傾向が顕著にみられた。この傾向は,試料表面の凹凸の大小が関係し,凹凸の幅の小さいほうが照度の影響を受けやすい傾向があった。また,照射角度による質感の変化をみたところ,光沢感,あたたかさ感,やわらかさ感は照射角度が大きくなるにつれ評価が低くなるのに対し,粗さ感は照射角度が大きい場合に評価が高くなった。これらの傾向の大小は,表面のテクスチャーに依存しており,凹凸の幅によって異なった。これらの質感を客観的に表現する評価指標としての三次元反射指向特性を検討するため,測定装置を作成し,種々の角度で輝度を測定することにより検討を行った。従来,視環境計画に組み込む簡易な反射指向特性の表現は構築されていないことから,本研究は測定装置の精度と測定手法の確立もあわせて目的とした。測定の結果,内装材程度のテクスチャーを有する試料に対しては,入射角が大きい場合に反射特性に特徴が現れることが見出された。また,測定角について,正反射方向近傍の反射特性にテクスチャーの特徴が現れ,テクスチャーとの対応について大概を知ることができた。すなわち,質感評価指標としての三次元反射指向特性の有効性を確認できたと考える。また,測定については,現在は角度の変化を手動で行っているが,自動化することで精度・効率ともにより改善できると考えられる。住環境学と建築材料学の複合的な領域として,材料の物性から空間の快適性を予測する手法を確立することを最終目的とする。本研究は,既に予備的に行った基礎的条件における検討から得られた示唆をふまえ,建築仕上げ材の質感の評価指標としての3次元反射指向特性の有効性を検証するものである。既に行った予備的検討をもとに,本年度は,視覚による評価の手がかりである材料表面の明暗面積比の変化の割合が一定となるよう条件を設定するとともに,指向性の強い入射光における評価を求めた。照射部分の明るさや光の色温度によっても質感が異なる可能性があることから,15lx2000lxの範囲で照度および色温度を変化させ,照射角度を0°(法線方向)85°の範囲とした。その結果,あたたかさ・やわらかさの評価には色温度や材料表面の色の影響があるほか,照度の上昇とともに光沢・粗さの印象が高くなり,やわらかさは100lx程度以上では照度に関係なく評価がほぼ一定であることがわかった。また,照射角度が大きい場合に質感の印象の変化が大きく,45°程度以上で顕著であることが明らかとなった。これらの質感評価との対応関係を検討するため,評価実験と同一の条件を再現し,1.8×1.8×1.8mの暗室内で,輝度の測定を行っている(平成1213年度)。まず,視覚の解像度と対応する測定面積を求めるため,光源に付したマスクおよび輝度計位置によって測定面積直径を4mm35mmの範囲で変化させるほか,断面形状が半円(直径2mm30mm)である単純なテクスチャーの試料を石膏により作成し,適した測定面積の検討を行っている。ここでは光の入射方位・角度を一定とし,測定角を変化させることで基本的な傾向を捉え,質感評価との対応を検討した後,対象とする試料,入射・測定角を増やして,引き続き質感評価指標としての3次元反射指向特性の有効性を検証する。建築を構成する材料の中で最も人に近い存在であり,特有のテクスチャーによって空間の印象に大きく影響すると考えられる建築仕上げ材の質感を取り上げ,今後の設計計画に役立てるための評価指標の確立を目的として,反射指向特性の検討を行った。質感を左右さる照明要因である照度と,テクスチャーの知覚に関連する指向性の強い照射光の照射角度について,被験者を用いた評価実験により考察したところ,以下のことが明らかとなった。光沢感,あたたかさ感,やわらかさ感は照度の上昇とともに評価が高くなる傾向が顕著にみられた。この傾向は,試料表面の凹凸の大小が関係し,凹凸の幅の小さいほうが照度の影響を受けやすい傾向があった。また,照射角度による質感の変化をみたところ,光沢感,あたたかさ感,やわらかさ感は照射角度が大きくなるにつれ評価が低くなるのに対し,粗さ感は照射角度が大きい場合に評価が高くなった。これらの傾向の大小は,表面のテクスチャーに依存しており,凹凸の幅によって異なった。これらの質感を客観的に表現する評価指標としての三次元反射指向特性を検討するため,測定装置を作成し,種々の角度で輝度を測定することにより検討を行った。従来,視環境計画に組み込む簡易な反射指向特性の表現は構築されていないことから,本研究は測定装置の精度と測定手法の確立もあわせて目的とした。測定の結果,内装材程度のテクスチャーを有する試料に対しては,入射角が大きい場合に反射特性に特徴が現れることが見出された。また,測定角について,正反射方向近傍の反射特性にテクスチャーの特徴が現れ,テクスチャーとの対応について大概を知ることができた。
KAKENHI-PROJECT-12780083
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12780083
建築仕上げ材の質感評価指標としての3次元反射指向特性の有効性に関する研究
すなわち,質感評価指標としての三次元反射指向特性の有効性を確認できたと考える。また,測定については,現在は角度の変化を手動で行っているが,自動化することで精度・効率ともにより改善できると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-12780083
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12780083
河口地形管理に向けた河川下流域の土砂動態調査と予測技術の確立
河口域地形変化の現象は未だ明確にされていない点が多くあり,本研究では河川及び河口域地形の計測を高頻度に実施し,河口砂州地形の形成・発達と河川下流域の土砂動態を実証的に追究することを行った。そして,河口砂州地形の形成・発達と河川下流域の土砂動態の予測技術向上を目指し,簡易Lagrange型の掃流砂モデルを新たに提案し,実務向きの水深積分型流れ解析モデルへ導入し河川・河口域地形の予測モデルを構築し,実河川に適用し構築したモデルの検証を行った。本研究は,河川下流域の土砂動態と河口砂州地形の変動特性の関係性を明らかにするため,和歌山県南部を流下する富田川を対象河川とし,河川下流域および河口域について河床地形や粒度構成等の現地計測を行った。河口域において高頻度で詳細な地形計測を実施し,河口砂州地形の短期的な発達・消失と河道の土砂流下特性の関係性を実証的に追究した。RTK-GNSSを利用した歩行地形計測とGPS機能付き測深器を利用したゴムボートおよび観測船による水面下の地形測量により,海域・河口域および河川下流域の地形について途切れなく連続的な地形データを取得した。高頻度に現地計測することが短期的なスケールの現象を捉えるためには重要であるため,本研究を遂行するにあたって安価で低労力化された地形計測手法を選択し現地計測体制を初年度で構築している。河床粒度のデータについては一般的にどの河川においてもデータが乏しいため,対象領域についても河川上流域から河口域まで河床材料採取と粒度分布解析を実施し,対象流域の粒度分布構成についても調査を実施している。本年度は台風11号,18号が研究対象領域近傍を来襲し,台風来襲前後の現地計測結果から台風がもたらす河口砂州地形に与える影響について現地計測から現象を捉えることができた。同じ台風が起因の地形変化であっても,台風が流域にもたらす降雨状況,高波浪の継続時間,流量および高波浪ピーク時間と潮位の関係が,河口域の地形変化をもたらす重要な要素であることが明らかとなり,本年度の現地計測の分析結果から実証的に示すことができた。本研究では,河川下流域の土砂動態と河口砂州地形の変動特性の関係性を明らかにするため,和歌山県南部を流下する富田川を対象河川とし,河川下流域および河口域について河床地形や粒度構成等の現地計測を実施している。河口域において高頻度で詳細な地形計測を実施し,河口砂州地形の短期的な発達・消失と,河道の土砂流下特性の関係性を実証的に追究している。RTK-GNSSを利用した歩行地形計測とGPS機能付き測深器を利用したゴムボートおよび観測船による水面下の地形測量により,海域・河口域および河川下流域の地形について水面下と陸上域において途切れなく連続的な地形データを取得した。高頻度に現地計測することが短期的なスケールの現象を捉えるためには重要であるため,本研究を遂行するにあたって安価で低労力化された地形計測手法を選択し現地計測体制を初年度で構築している。本年度は当初の計画通りに,初年度で環境を構築及び実施した河口域の現地計測を継続し,昨年度に引き続き台風来襲前後の現地計測結果から台風がもたらす河口砂州地形に与える影響について現地計測データの分析から現象を捉えることができた。また,本年度は現地計測に加えて河川,河口域の地形変化を予測するための数値解析モデルの構築に取り組んだ。地形変化モデリングの核となる流砂の計算手法に,従来のオイラー型解法ではなくラグランジュ型解法を導入した実河川適用型の地形変化モデルを構築した。砂粒群の移動過程を代表砂粒の移動で模擬する簡易ラグランジュ型解法であるため,オイラー型解法に比べて計算負荷が大きい。計算負荷は個別要素法等の対象領域の全砂粒を計算する手法よりは計算負荷が小さいが,実用化を考え並列計算手法の導入にも取り組み,新たな流砂計算手法の検証計算を本研究で計測した現地データを用いて実施した。平成26年度(初年度)では,安全で低労力のため高頻度に現地に出向くことが可能なRTK-GNSS測量とGPS機能付き測深器・ゴムボート等を利用した現地計測環境と実施体制を構築し,和歌山県富田川河口域の現地計測を実施することができた。そして,平成27年度は当初の計画通り,初年度の現地計測を継続し,河川下流域の土砂動態と河口砂州地形の変動特性を明らかにする貴重な現地データを蓄積することができた。加えて,河口域の地形変化を予測するための数値解析モデルの構築に取り組んでいる。地形変化モデリングの核となる掃流砂の計算手法に,従来のオイラー型解法ではなくラグランジュ型解法を導入した実河川適用型の地形変化モデルを構築し,砂粒群の移動・堆積の運搬過程のモデル化に新たな手法を提案することが出来た。ただ,計算負荷が従来のオイラー型解法に比べ大幅に増大したため,今後の解析モデルの統合化や実務現場での利用を見据え,並列計算手法の導入や計算手法の簡易化にも取り組み,現地データを用いた検証計算を実施しているため,当初計画には含まれない内容に多くの時間を割いている。本研究では,河川下流域の土砂動態と河口砂州地形の変動特性の関係性を明らかにするため,和歌山県南部を流下する富田川を対象河川とし,河川下流域および河口域について河床地形や粒度構成等の現地計測を行った。河口域において高頻度で詳細な地形計測を実施し,河口砂州地形の短期的な発達・消失と,河道の土砂流下特性の関係性を実証的に追究している。
KAKENHI-PROJECT-26820202
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26820202
河口地形管理に向けた河川下流域の土砂動態調査と予測技術の確立
RTK-GNSSを利用した歩行地形計測とGPS機能付き測深器を利用したゴムボートおよび観測船による水面下の地形測量により,海域・河口域および河川下流域の地形について水面下と陸上域において途切れなく連続的な地形データを取得することができた。高頻度に現地計測することが短期的なスケールの現象を捉えるためには重要であるため,本研究を遂行するにあたって安価で低労力化された地形計測手法を選択し現地計測体制を初年度で構築し,2年度目においても当初の計画通りに河口域の現地計測を継続し,台風来襲前後の現地計測結果から台風がもたらす河口砂州地形に与える影響について現地計測データの分析から現象を捉えることができた。また,現地計測に加えて河川及び河口域の地形変化を予測するための数値解析モデルの構築に取り組んだ。地形変化モデリングの核となる流砂の計算手法に,従来のオイラー型解法ではなくラグランジュ型解法を導入した実河川適用型の地形変化モデルを構築した。砂粒群の移動過程を代表砂粒の移動で模擬する新たな簡易ラグランジュ型解法を提案した。最終年度については,いくつかの現地計測の実施と,開発した地形変化モデル等の本研究の成果を国際会議等で発表し,さらには解析モデルの実用化を考え並列化計算手法を導入し,計測した現地データを用いて検証を進めることができた。河口域地形変化の現象は未だ明確にされていない点が多くあり,本研究では河川及び河口域地形の計測を高頻度に実施し,河口砂州地形の形成・発達と河川下流域の土砂動態を実証的に追究することを行った。そして,河口砂州地形の形成・発達と河川下流域の土砂動態の予測技術向上を目指し,簡易Lagrange型の掃流砂モデルを新たに提案し,実務向きの水深積分型流れ解析モデルへ導入し河川・河口域地形の予測モデルを構築し,実河川に適用し構築したモデルの検証を行った。平成26年度は,現地計測環境と安全で低労力の計測体制を確立することに重点を置き,高頻度に現地に出向き計測を実施した。RTK-GNSS測量とGPS機能付き測深器を利用したボートの計測環境を構築し,京都大学防災研究所技術室の多大なる支援により第一四半期から計測を開始することができた。当初の計画通り,A)河口砂州・河川下流域の地形測量,B)ゴムボートによる河床および海底地形測量,C)河口砂州・河川下流域の河床粒度分布調査の全ての項目を実施することができた。来年度以降も同様の計測を継続する計画であり,富田川において高頻度・高密度な現地計測を実施する。次年度は,これまでの現地計測で得られた貴重なデータを検証材料に用い,河川,河口および河口に接続する海域の地形変化を予測する河床変動モデルおよび海浜流・海浜変形モデルを統合化した解析モデルの開発に取り組む計画である。本研究のモデル開発の基本的なコンセプトは,河川下流域の土砂動態および上述した河口砂州の変化過程を河川域と海域の隔てなく解析することにあり,風と波の影響を考慮した海浜流と漂砂による河口砂州地形予測モデルに,河川の流れ・土砂移動とそれに伴う粒度分布変化を詳細に解析するモデルを導入することを計画している。水工学次年度は,平成26年度から開始した現地計測を引き続き実施し,河口地形の短期的な変化と河道の土砂流下特性の関係性を実証的に追究する。また,河川,河口および河口に接続する海域の地形変化を予測するために,河床変動モデルおよび海浜流・海浜変形モデルを統合化し,河川・海域関係なく土砂移動が解析できる数値モデルを開発に取り組む計画である。
KAKENHI-PROJECT-26820202
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26820202
高血糖下に出現する膵島外プロインスリン陽性細胞の起源と分化異常の解析
平成16年度に引き続きストレプトゾトシン(STZ)糖尿病マウス及びラットにおいて、多臓器内へ侵入する異常な骨髄由来プロインスリン陽性細胞の特徴と糖尿病性神経障害を代表とする糖尿病合併症の発現との関係について詳細な検討を行った。1、骨髄由来の異常プロインスリン陽性細胞と合併症臓器細胞との細胞融合の発見前年度の研究より、多臓器内に出現するプロインスリン陽性細胞は、高血糖下に骨髄で誘導され、他の臓器内へと侵入したものであること、さらに、強力な細胞障害因子であるTNFαを産生して組織障害に関与している可能性が考えられた。そこで、マウスインスリンプロモータにGFP遺伝子を接着し過剰発現させたMIP-GFPマウスをドナーとして、これより取り出した骨髄をレシピエントであるβ-ガラクトシダーゼ・トランスジェニック(β-gal)マウスに骨髄移植し、さらにSTZにて糖尿病を作成し、末梢神経における骨髄由来細胞の特徴を観察した。驚いたことに、プロインスリンを産生する神経細胞内にβ-galとGFPの両者、ならびにTNFαが観察され、この神経細胞は異常骨髄細胞との融合細胞であることが明らかとなった。2、細胞融合に伴う遺伝子発現異常ならびに合併症の誘導糖尿病性神経障害を持つマウスならびにラットを用いて、異常骨髄細胞と融合した神経細胞の特徴をin vitroならびにin vivoで解析した。この細胞は核内DNA量(ploidy)の増加、細胞内Ca^<2+>の代謝異常、易アポトーシスを示した。また、この融合神経細胞の出現頻度は、糖尿病の罹病期間ならびに神経障害の指標である神経伝導速度の異常の程度と平行して増加していた。この萌芽研究の成果より、異常な細胞融合現象は糖尿病合併症の発症に深く関与している可能性が明らかとなったことから、骨髄異常細胞の除去を目的とした新たな遺伝子治療研究を計画している。糖尿病モデル動物であるSTZマウス、STZラット、高脂肪食負荷マウスならびにob/obマウスでは、骨髄、肝臓、膵臓、脾臓、脂肪組織など、全身の多くの臓器内にプロインスリンを産生する細胞が出現する。そこで、βガラクトシダーゼ・トランスジェニックマウスの骨髄を用いた骨髄移植動物をSTZにて糖尿病にし、βガラクトシダーゼの発現を観察したところ、前述の臓器内細胞にβガラクトシダーゼを産生する細胞が見いだされ、この細胞からインスリンが産生されていた。さらに、インスリンプロモータにGFP遺伝子を接着し、これを過剰発現させたMIP-GFPトランスジェニックマウスをSTZにて糖尿病にした後、各臓器の観察を行ったところ、同様にGFPの発現を観察した。これらのことより、糖尿病では高血糖に反応して骨髄内でプロインスリンを産生する異常な細胞が特異的に誘導され、全身の特定の臓器内へと進入していることが明らかとなった。そこで、各臓器のプロインスリン産生細胞の微細構造を詳細に検討したところ、各臓器細胞に特徴的な形態を持つ細胞からプロインスリンが産生されていた。よって、プロインスリン産生細胞は骨髄由来の細胞が臓器内へと進入し臓器細胞に類似する細胞へと分化したものか、あるいは臓器細胞と細胞融合して生じた可能性があり、その役割も含めて詳細な検討を行っている。平成16年度に引き続きストレプトゾトシン(STZ)糖尿病マウス及びラットにおいて、多臓器内へ侵入する異常な骨髄由来プロインスリン陽性細胞の特徴と糖尿病性神経障害を代表とする糖尿病合併症の発現との関係について詳細な検討を行った。1、骨髄由来の異常プロインスリン陽性細胞と合併症臓器細胞との細胞融合の発見前年度の研究より、多臓器内に出現するプロインスリン陽性細胞は、高血糖下に骨髄で誘導され、他の臓器内へと侵入したものであること、さらに、強力な細胞障害因子であるTNFαを産生して組織障害に関与している可能性が考えられた。そこで、マウスインスリンプロモータにGFP遺伝子を接着し過剰発現させたMIP-GFPマウスをドナーとして、これより取り出した骨髄をレシピエントであるβ-ガラクトシダーゼ・トランスジェニック(β-gal)マウスに骨髄移植し、さらにSTZにて糖尿病を作成し、末梢神経における骨髄由来細胞の特徴を観察した。驚いたことに、プロインスリンを産生する神経細胞内にβ-galとGFPの両者、ならびにTNFαが観察され、この神経細胞は異常骨髄細胞との融合細胞であることが明らかとなった。2、細胞融合に伴う遺伝子発現異常ならびに合併症の誘導糖尿病性神経障害を持つマウスならびにラットを用いて、異常骨髄細胞と融合した神経細胞の特徴をin vitroならびにin vivoで解析した。この細胞は核内DNA量(ploidy)の増加、細胞内Ca^<2+>の代謝異常、易アポトーシスを示した。また、この融合神経細胞の出現頻度は、糖尿病の罹病期間ならびに神経障害の指標である神経伝導速度の異常の程度と平行して増加していた。この萌芽研究の成果より、異常な細胞融合現象は糖尿病合併症の発症に深く関与している可能性が明らかとなったことから、骨髄異常細胞の除去を目的とした新たな遺伝子治療研究を計画している。
KAKENHI-PROJECT-16659240
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16659240
四肢虚血リモートプレコンディショニングによる脳虚血耐性機序の解明
四肢虚血リモートプレコンディショニング(remote Limb ischemic preconditioning:RLIP)は短時間の四肢虚血を繰り返し施行することで離れた臓器の虚血耐性を誘導する.これまで主に心臓において有効性を示唆する多くの研究があるが,early phaseにおける脳での長期間の保護効果について検討した報告は少ない.今回,ラット一過性局所脳虚血モデルを用いて虚血後7日間にわたる下肢RLIPの神経保護効果について検討し,脳梗塞体積・神経学的スコアの有意な改善を認めた.RLIPは臨床応用の可能性が高い方法と考えられ,今後保護効果の機序について詳細な検討が必要である.Wistarラットでの中大脳動脈閉塞(MCAO: middle cerebral artery occlusion)2hr虚血モデルを確立し、脳梗塞体積や神経学的評価の検討においても安定した結果を得ることができるようになった。MCAO自体比較的ばらつきの大きなモデルであるが、本実験においてはシリコンコーティングしたナイロン糸を挿入して虚血とする際にレーザードップラー血流計を頭部に装着して脳血流をモニターすることで実際に血流が落ちていることを確認している。ただし一定の割合でナイロン糸を挿入しても血流が低下しない場合も認められ、ナイロン糸の迷入によるものかそのラットの個体の側副血行によるものか、あるいはprobeの当て方など他に原因があるのか判断の難しいところである。ただ低下しなかった場合はきちんと梗塞ができていない場合が多く、そのラットは除外して比較実験を行っていくのか現在検討中である。四肢虚血の方法に関してはなるべく侵襲の少ない方法かつ実際に臨床応用に即した形を考え、直接大腿動脈を遮断するのではなく、hard typeのvascular occluderを使用して体表部から虚血を行う、いわゆるターニケットによる血流遮断の方法とした。きちんと虚血となっているかどうかは閉塞した下肢に動物用の経皮的酸素飽和度プローベを装着し、脈波が消失することで確認した。プレコンディショニングの条件としてはこれまでの報告やパイロットスタディから2hr虚血前に右大腿部をターニケットで5分遮断+5分再灌流を5回施行することとした。H26年度はMCAOのみを施行した群と四肢虚血リモートプレコンディショニング+MCAO群に分けて本格的に比較対象実験を開始する予定である。四肢虚血リモートプレコンディショニング(remote Limb ischemic preconditioning:RLIP)は短時間の四肢虚血を繰り返し施行することで離れた臓器の虚血耐性を誘導する.これまで主に心臓において有効性を示唆する多くの研究があるが,early phaseにおける脳での長期間の保護効果について検討した報告は少ない.今回,ラット一過性局所脳虚血モデルを用いて虚血後7日間にわたる下肢RLIPの神経保護効果について検討し,脳梗塞体積・神経学的スコアの有意な改善を認めた.RLIPは臨床応用の可能性が高い方法と考えられ,今後保護効果の機序について詳細な検討が必要である.Wistarラットでの中大脳動脈閉塞(MCAO: middle cerebral artery occlusion)虚血モデルの確立を当面の目標として研究を行ってきた。今回の研究では前脳虚血モデルではなく、局所脳虚血モデルであるMCAOを用いて当面評価していくこととした。脳組織標本レベル、個体の麻痺スコアなどから評価しているがまだまだ個体間での虚血の程度のばらつきが大きいため、改善点を検討中である。虚血中の体温管理、血圧管理、血液中酸素分圧・二酸化炭素分圧、血糖調節などを厳密に行うことでかなり改善が得られてきている。MCAOの虚血条件としては2hr虚血、それから虚血後1週間、2週間後の脳梗塞体積、神経学的評価を行っていくことを決めた。もう少し短い期間で評価しているものも多いが、今回は虚血後比較的長期にわたっての影響を検討していきたい。MCAO虚血モデルの確立に時間を要しているが、もともとばらつきの大きなモデルであり、ここで安定した虚血が行えないとその後の四肢虚血リモートプレコンディショニングの介入実験の結果にも大きな影響を与えるため、ある程度時間をかけて慎重に行っていかざるを得ない。この虚血手技ではラットが死亡することが非常に少なく、虚血の程度としては軽度なのかもしれないが、虚血後の個体評価が詳細に行えるため非常に有用なモデルであるとの感触を得ている。H24年度はMCAO虚血モデルの確立に多くの費用・時間を費やす形となった。四肢虚血リモートプレコンディショニング(remote preconditioning:RPC)は短時間の四肢虚血を繰り返し施行することで離れた臓器の虚血耐性を誘導する。これまで主に心臓において有効性を示唆する多くの基礎・臨床研究があるが、脳・脊髄などの中枢神経系では報告は少ない。プレコンディショニング反応は数時間持続するearly phaseと開始は遅いが長期間、2-3日間持続するdelayed phaseに分かれこの2つのphaseは異なるメカニズムによって保護効果を発揮すると考えられており、early phaseではイオンチャンネルの透過性や局所ホルモン、アデノシンやNO、ブラジキニンなどの放出を伴うタンパク質の翻訳後修飾に影響し、delayed phaseは血管内皮状態、止血、免疫反応や細胞のエネルギー代謝などを含む遺伝子発現やタンパク質新生が関与するとされている。early phaseでは保護効果が小さく効果を認めても一時的で、その長期間の効果は明らかでない。今回ラットの一過性脳局所モデル(middle cerebral artery occlusion:MCAO)モデルを用いて虚血後7日間にわたる下肢RPCのearly phaseにおける神経保護効果について神経学的・組織学的に検討した。
KAKENHI-PROJECT-24791596
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24791596
四肢虚血リモートプレコンディショニングによる脳虚血耐性機序の解明
下肢虚血はターニケットによる10分間の虚血・5分間の再潅流のサイクルを3回施行し、1時間後に2時間のMCAOを行った。虚血後1、3、7日目の神経学的評価と虚血7日目に潅流固定し脳梗塞体積を算出した。RPC群では虚血のみのコントロール群と比較して有意に脳梗塞体積の減少と神経学的スコアの改善を認めた。この効果は虚血後7日間まで持続した。保護効果はプレコンディショニング虚血の時間・回数、その後の虚血までの時間間隔によって大きく変わりうることが示唆された。詳細な機序の解明までは至らず、今後の検討課題であるが、ターニケットを用いた下肢虚血RPCによる有意な神経保護効果が今回の研究で認められた。麻酔MCAO虚血モデルは確立することができたが、まだ本格的な比較対象実験は行えておらず、当初考えていたその機序の解明につながる部分までの検討に至っていない。ただモデルとプレコンディショニングの条件付けはできているので、今後解析はスムーズに施行できると考えている。虚血モデルの確立がまだできていないため、四肢虚血リモートプレコンディショニングの最適条件(圧、時間、回数など)の条件付けの検討が進んでいない。またその機序についての解明にも至っていない。当初考えていたよりも四肢虚血によるリモートプレコンディショニングは比較的神経保護効果が弱い可能性が考えられた。動物実験では使用する吸入麻酔薬などによる神経保護効果も無視できないため、ナイロン糸を挿入して虚血とした後は閉創して一旦ラットを覚醒・抜管して2hr後に再度全身麻酔をかけてナイロン糸を抜去するいわゆるawakeによる虚血を行っている。虚血耐性にはプレコンディショニングの負荷から数時間以内に生じる早期プレコンディショニングと24時間以降に生じるdelayedプレコンディショニングという概念がある。近年ではその他にもperconditioningやpostconditioningも報告されているが、これまで早期プレコンディショニングでの報告は少ない。リモートプレコンディショニングは効果としては早期に発現する可能性が高いため、本研究では早期プレコンディショニングに焦点を当てて神経保護効果、その持続期間などを検討していく予定である。安定したMCAO虚血手技の確立を早急に目指していく。四肢虚血リモートプレコンディショニングは脳・中枢神経系での報告が少ないのでその条件付けについては心臓など他臓器の結果も参考にする。必要実験器具の購入が当初の予想より低価格となったため、また今年度は学会参加などに伴う旅費や人件費・謝金などが発生しなかったことが理由として挙げられる。次年度使用額は370,738円である。実験を実施するための実験試薬やラットの購入・飼育費、学会参加や発表の経費として使用する予定である。
KAKENHI-PROJECT-24791596
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24791596
イネの吸水能力に関わる遺伝子座とその機能の解明
多収性インド型水稲品種ハバタキは標準的な日本の品種であるササニシキ、コシヒカリに比較して、吸水能力を表す水伝導度と葉の窒素含量が高いこととによって、葉の光合成速度を一日を通じて高く維持すること、そしてハバタキの高い水伝導度は根表面積が大きくなることによることを明らかにした。ついで、ササニシキあるいはコシヒカリにハバタキの染色体断片を置換した遺伝解析集団を用いて、ハバタキの水伝導度を高めることに関わる遺伝子座を第4染色体長腕側の165-Kb、および第8染色体短腕側の789-Kbの領域に推定した。そして、第4染色体の当該領域は根の量を増加させる機能を持つことを明らかにした。多収性インド型水稲品種ハバタキは標準的な日本の品種であるササニシキ、コシヒカリに比較して、吸水能力を表す水伝導度と葉の窒素含量が高いこととによって、葉の光合成速度を一日を通じて高く維持すること、そしてハバタキの高い水伝導度は根表面積が大きくなることによることを明らかにした。ついで、ササニシキあるいはコシヒカリにハバタキの染色体断片を置換した遺伝解析集団を用いて、ハバタキの水伝導度を高めることに関わる遺伝子座を第4染色体長腕側の165-Kb、および第8染色体短腕側の789-Kbの領域に推定した。そして、第4染色体の当該領域は根の量を増加させる機能を持つことを明らかにした。本年度は、まず、吸水能力を簡易に量的に評価する方法を確立し、次いで、吸水能力の高いハバタキの染色体断片をササニシキの染色体に置換した染色体断片置換系統(CSSL)から吸水能力の高い系統を選び、この系統の特徴を明らかにした。1.簡易吸水能力評価法の確立:茎基部からの出液速度および木部液と土壌液の浸透ポテンシャルとから、浸透的吸水過程における根の水の通導抵抗を算出できる。この方法で求めた水の通導抵抗と従来の蒸散速度と葉の水ポテンシャルから求めた受動的吸水過程における水の通導抵抗とを、品種、生育段階を変えて比較した。その結果、両者の間には密接な直線的関係があることが分かった。さらに、浸透的吸水過程における水の通導抵抗は、従来の受動的吸水過程における水の通導抵抗に比較して、測定の労力が数分の一で済むことが併せて分かった。以上の結果から、浸透的吸水過程における水の通導抵抗を求めることによって、従来受動的吸水過程における水の通導抵抗で評価していたイネの吸水能力を簡易に評価でき、この浸透的吸水過程における根の水の通導抵抗を求める方法は吸水能力の量的形質遺伝子座(QTL)解析に有効に使えることが分かった。2.吸水能力を高くすることに関わる遺伝子座の推定:ササニシキとハバタキのCSSLの吸水能力を、浸透的吸水過程における水の通導抵抗と受動的吸水過程における水の通導抵抗を組み合わせて、評価した。その結果、第3、4、8染色体に吸水能力を高めることにかかわる染色体領域のあることが推定された。そして、第4、8染色体に推定された染色体領域は、根の量を増加させることに関わっていることが併せて推察された。吸水能力の高い多収性インド型水稲品種ハバタキ、日本型標準品種ササニシキとコシヒカリ、およびこれらから作出された量的形質遺伝子座(QTL)解析用実験系統群を用い、以下の成果を得た。1.吸水、水輸送能力を高めることに関わる染色体領域の絞り込みコシヒカリとハバタキの染色体断片置換系統(CSSL)を作出して検討した結果、第4染色体の長腕側の2.13Mbpの区間と第8染色体の短腕側の1.45Mbpの区間に、水の通導抵抗を小さくすることに関わる染色体領域があることが分かった。2.根の吸水能力が葉の最大光合成速度能力に及ぼす影響の解析水の通導抵抗が小さく、吸水、水輸送能力の高いハバタキは、蒸散の盛んな日中の光合成速度だけでなく、蒸散の少ない朝の最大光合成速度も高い。ハバタキの最大光合成速度の高い要因を検討した結果、以下のことが明らかとなった。(1)ハバタキはササニシキに比較して、窒素施用量を等しくても葉の窒素含量が高くなることによって最大光合成速度が大きくなる。(2)ハバタキはササニシキに比較して、葉の窒素含量が等しくても気孔伝導度が大きいことによって最大光合成速度が大きくなる。(3)光合成速度測定中に葉の基部を切断すると、ササニシキの光合成速度はイワノフ効果によって大きく増加してハバタキの光合成速度とほぼ等しくなることから、ハバタキの気孔伝導度が大きいのは、水の通導抵抗が小さいことによっていることが推察された。1.光合成速度、吸水、水輸送能力を高めることに関わる遺伝子座の絞り込み前年度までの結果に基づいて、光合成速度、吸水、水輸送能力を高める第4染色体と第8染色体の領域をさらに絞り込むためのコシヒカリと多収性インド型品種ハバタキの染色体断片置換系統(CSSL)を作出し、圃場に展開して、それぞれの系統の光合成速度、気孔伝導度、水の通導抵抗を比較した。その結果、水の通導抵抗を高める領域を、第4染色体では165kbpに、第8染色体では789kbpに絞り込めた。第4染色体におけるこの領域は水の通導抵抗を小さくして気孔伝導度を大きくするとともに葉身窒素含量を高めることによって、そして、第8染色体は主として水の通導抵抗を小さくして気孔伝導度を高めることによって、光合成速度を高めていることが分かった。
KAKENHI-PROJECT-19380009
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19380009
イネの吸水能力に関わる遺伝子座とその機能の解明
2.吸水、水輸送能力を高めることに関わる遺伝子座の機能吸水、水輸送能力を高めることに関わる遺伝子座の機能を検討するため、ササニシキとハバタキのCSSLから第4染色体に吸水、水輸送能力を高めることに関わる遺伝子座をもつ系統を選んで検討した。その結果、第4染色体の当該領域は、ハバタキと同様に、根の表面積当たりの吸水能力を大きくすることではなく、根の表面積を大きくすることによって吸水能力を大きくしていることが分かった。3.本研究によってイネの光合成速度に大きく影響する根の吸水能力を高めることに関わるDNAマーカーを明らかにできた。今後はこのDNAマーカーを用いて、準同質遺伝子系統を作出し、吸水能力の高いイネを育成するとともに、吸水能力を支配する遺伝子の単離に向けて研究を展開したい。
KAKENHI-PROJECT-19380009
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19380009
青年および成人期女性のアロスタティック負荷と血管健康度に対する女性ホルモンの影響
青年期女性を対象にアロスタティック負荷(AL)、血管健康度(FEI)、食行動、心理指標を検討した。ALとFEIの相関が認められ、慢性ストレス負荷が大きいほど血管は硬いことが示唆された。運動頻度群別比較では食行動と心理指標の有意な相関は運動頻度群別で異なったこと、体型群別比較では隠れ肥満群の食行動はやせ群より不健康なこと、やせ群と標準群に比して隠れ肥満群の慢性ストレス負荷が大きいことが示唆された。青年期女性を対象にアロスタティック負荷(AL)、血管健康度(FEI)、食行動、心理指標を検討した。ALとFEIの相関が認められ、慢性ストレス負荷が大きいほど血管は硬いことが示唆された。運動頻度群別比較では食行動と心理指標の有意な相関は運動頻度群別で異なったこと、体型群別比較では隠れ肥満群の食行動はやせ群より不健康なこと、やせ群と標準群に比して隠れ肥満群の慢性ストレス負荷が大きいことが示唆された。青年期および成人期女性の慢性ストレスと血管の健康度を結ぶ心理・社会・生物的メカニズムを包括的に解明するため、アロスタティック負荷(Allostatic load : AL)、指動脈弾力指数(Finger arterial elasticity index : FEI)、女性ホルモンを測定した。さらに食行動、怒り等の人格特性に関する質問紙調査を実施した。研究1:青年期女性87名を対象にFEI、血清エストラジオール・プロゲステロン、ALを測定し月経周期別に分析した。血清エストラジオールと血清プロゲステロンを制御変数としたALとFEIの偏相関係数は全体で-0.244(p<0.05),分泌期で-0.479(p<0.05)であった。女性ホルモンの影響を除いた場合でもALとFEIとの相関が認められ、ALの値が高いすなわち慢性ストレス負荷が大きいほど血管は硬くなることが示唆された。研究2:青年期後期の男性172名と女性225名を対象に食行動等の質問紙調査をした。食行動の因子構造の男女別比較では、「過食」は男女いずれも見られ、さらに男性で「早食い」が、女性で「外発性」が追加されるという特徴が見られた。大学生版食行動尺度(Eating behavior scale : EBS)によるEBS総合点との相関分析では怒りに関して有意な相関を示した尺度項目が男性に比べ女性の方がやや多いものの、攻撃性、首尾一貫感覚、抑うつ状態、知覚されたストレスでは男女ともほぼ同様の相関であった。研究3:大学生186名を対象に心臓足首血管指数(Cardio Ankle Vascular Index : CAVI)、血清脂質、食行動等を測定した。このうちEBS総合とCAVIの相関は男女いずれも認められなかった。以上より今後は女性ホルモンレベルの分類方法をより厳密にしてFEI、AL、心理社会的影響要因、食行動等の生活習慣の関連を検討していく予定である。青年期および成人期女性の慢性ストレスと血管の健康度を結ぶ心理・社会・生物的メカニズムを包括的に解明するため、食行動、運動習慣、心血管系健康指標および心理指標を調査した。研究1:健康な女性132名(18.8±1.0歳)を対象に体格指数(BMI)と体脂肪率により「やせ群」「標準群」「隠れ肥満群」に分けて検討した。食行動では隠れ肥満群とやせ群の間に有意差(F_<(2,129)>=4.94,p<0.05)が、心血管系リスク集積マーカー値は隠れ肥満群とやせ群、隠れ肥満群と標準群との間に有意差が認められた(F_<(2,129)>=6,76,p<0.05)。隠れ肥満群では食行動はやせ群より不健康であること、やせ群および標準群に比して心血管系に関するリスクが高いことが考察された。研究2:女性69名(18.7±0.9歳〉を対象に食行動、佐々木による簡易型自記式食事歴法質問票(brief-type self administered diet historyquestionnaire : BDHQ)と心理指標を調査した。食行動と怒り(r=O.41.p<0.01)、食行動と攻撃性(r=O.37,p<0.01に有意な相関があること、また望ましくない食行動とショ糖の摂取状況との相関(r=0.41,p<0,01)が認められた。研究3:女性134名を対象に食行動、心血管系健康指標、心理指標を測定し運動頻度群別に分析した。その結果、運動頻度低群では、食行動が運動頻度高群より不健康であること(F_<2,131)>=4.93,p<0.05)、また食行動と怒りとの相関(r=O.33,p<0.05)、食行動と攻撃性との相関(r=0.44,p<0.O1)が認められた、以上の研究成果を踏まえ、今後はアロスタティック負荷に影響する心理社会的影響要因、食行動と運動習慣が血管健康度に及ぼす影響とそれら全体に関わる女性ホルモンの影響について分析を行い、本研究課題の総括をする。【研究1】健康な女性137名(189±1.5歳)を対象に、「やせ群」(N=29)、「標準群」(N=72)、「隠れ肥満群」(N=36)、の3群に分けて分析した。EBS総合では隠れ肥満群とやせ群との間に有意差が認められた(F_<2.134>=3.11,p<0.05)。
KAKENHI-PROJECT-21592855
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21592855
青年および成人期女性のアロスタティック負荷と血管健康度に対する女性ホルモンの影響
AL値は隠れ肥満群とやせ群、隠れ肥満群と標準群の間に有意差が認められた(F_<2.134>=5.01,p<0.01)。これらより隠れ肥満群の食行動はやせ群に比してより不健康であること、AL値の多重比較からは、やせ群と標準群に比して隠れ肥満群の慢性ストレス負荷が大きいことが示唆された。【研究2】健康な女性139名(18.7±0.9歳)を対象に、運動頻度低群(N=61)、運動頻度中等度群(N=43)、運動頻度高群(N=35)に分けて分析した。運動頻度低群でEBS総合とBDHQのショ糖の相関はr=0.52(p<0.01)であった。食行動と怒り、攻撃性、首尾一貫感覚、抑うつ状態、および知覚されたストレスの相関で有意であった項目は運動頻度群により異なっていた。以上より、隠れ肥満群では他の2群に比して、食行動はより不健康で慢性ストレス負荷が大きいものの、運動頻度と食行動や心理指標といった因子を加えた分析が必要であると考えられた。
KAKENHI-PROJECT-21592855
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21592855
表面高機能化ナノ複合蛍光体による生体影響ガスセンサに関する研究
平成29年度までに有効性を見出した、直流スパッタリング法と分散液塗布法を組み合わせた、貴金属ナノ粒子と量子ドットの複合薄膜作製法について、平成30年度には、ガスセンサ応用に適した微細構造を得るために作製条件の最適化を検討した。試作した貴金属・セレン化カドミウム(CdSe)系コアシェル型量子ドット複合薄膜試料の顕微鏡観察と蛍光強度およびスペクトル測定を行ったところ、スパッタリング時間を比較的短く適切に設定すること等により、多孔質性と蛍光強度を共に高く保持した複合薄膜が得られることがわかった。貴金属として、ガス吸脱着特性・触媒機能・プラズモン吸収・局所電場効果を有し、オゾンや揮発性有機化合物の感度を向上させる可能性が考えられる、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、白金・パラジウム合金(Pt-Pd)を用いて、量子ドットとの複合薄膜を作製した。また、比較のために量子ドット単独薄膜を作製し比較検討した。その結果、いずれの薄膜も多孔質であり、特にAu-量子ドット複合薄膜では、薄膜構成粒子(貴金属あるいは量子ドットの凝集体)が最も小さく、空隙も多いことから、ガスとの接触による電子状態の変化を反映した蛍光特性変化が大きくなる可能性が予想された。作製した複合薄膜の蛍光強度とスペクトルを空気中で測定したところ、Ag-量子ドット複合薄膜ではAgナノ粒子の複合化によって蛍光強度は低下したが、Au, Pt, Pt-Pdをそれぞれ量子ドットと複合化した薄膜は明るい蛍光を発した。これらの複合薄膜の蛍光強度あるいはスペクトル変化を用いた、光学式オゾンガスセンシングの実験を開始した。量子ドットの蛍光特性変化を用いた光学式生体影響ガスセンサの研究において、感度向上をもたらすことが期待される貴金属ナノ粒子との複合薄膜の作製条件を適切化した結果、ガスセンシングに適した多孔質構造と高い蛍光強度を両立した複合薄膜を得ることができた。貴金属(Au, Pt, Pt-Pd合金)ナノ粒子とセレン化カドミウム(CdSe)系コアシェル型量子ドットからなる、多孔質構造と強い蛍光強度を両立した複合薄膜について、空気中の生体影響ガス(オゾンや揮発性有機化合物等)と接触した際の蛍光特性(強度・波長・寿命等)の変化を測定・解析する。得られた光学式ガスセンサ特性(感度・応答速度・回復速度等)と薄膜の組成・構造との関係を調べ、応答機構の解明とガスセンサ機能の高度化(高感度化・応答と回復の高速化・ガス識別検知)を図る。省エネや防音のために住宅やオフィスの気密化が進むにつれて、脱臭用等への利用が増えているが一定濃度以上では猛毒となるオゾンや、建物の内装材や建材から放散され、シックハウス症候群や化学物質過敏症の原因となる揮発性有機化合物(Volatile Organic Compound (VOC))に対するセンサへの要望が高まっている。化合物半導体ナノ粒子は量子ドットと呼ばれる高輝度蛍光体であり、表面原子の割合が大きいため、表面状態の僅かな変化によって蛍光強度等が変化する。しかし、この特性をガスセンサに応用する研究開発はほとんど前例がなかった。本研究では、研究代表者らが最近見出した量子ドットの光学的なガスセンサ機能を高度化させ、量子ドットに、ガスとの反応や吸脱着を促進する触媒活性をもつ成分、あるいは蛍光強度増幅とセンサ出力S/N比向上に繋がる局所電場効果等をもつ成分を複合化した表面高機能化材料を作製し、高感度・高速応答を示す蛍光利用型光学式ガス(オゾン、VOC)センサ材料を実現することを目的とする。平成29年度は、表面高機能化光ナノ複合材料として、空気中のppmオーダーの低濃度オゾンに感応して可逆な蛍光強度の消光を示すセレン化カドミウム(CdSe)系コアシェル型量子ドットと、ガス吸脱着特性・触媒機能・プラズモン吸収・局所電場効果を有する貴金属ナノ粒子からなる複合材料の試作を開始し、分散液塗布法とスパッタリング法を組み合わせた作製法が有効であることを見出した。蛍光特性変化を用いた光学式生体影響ガスセンサ機能の発現を目指した表面高機能化ナノ複合材料の作製技術を検討開始した結果、セレン化カドミウム(CdSe)系コアシェル型量子ドットと貴金属ナノ粒子からなる複合材料を得る技術として、分散液塗布法とスパッタリング法を組み合わせた作製法が有効であることを見出した。平成29年度までに有効性を見出した、直流スパッタリング法と分散液塗布法を組み合わせた、貴金属ナノ粒子と量子ドットの複合薄膜作製法について、平成30年度には、ガスセンサ応用に適した微細構造を得るために作製条件の最適化を検討した。試作した貴金属・セレン化カドミウム(CdSe)系コアシェル型量子ドット複合薄膜試料の顕微鏡観察と蛍光強度およびスペクトル測定を行ったところ、スパッタリング時間を比較的短く適切に設定すること等により、多孔質性と蛍光強度を共に高く保持した複合薄膜が得られることがわかった。貴金属として、ガス吸脱着特性・触媒機能・プラズモン吸収・局所電場効果を有し、オゾンや揮発性有機化合物の感度を向上させる可能性が考えられる、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、白金・パラジウム合金(Pt-Pd)を用いて、量子ドットとの複合薄膜を作製した。また、比較のために量子ドット単独薄膜を作製し比較検討した。
KAKENHI-PROJECT-17K05957
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K05957
表面高機能化ナノ複合蛍光体による生体影響ガスセンサに関する研究
その結果、いずれの薄膜も多孔質であり、特にAu-量子ドット複合薄膜では、薄膜構成粒子(貴金属あるいは量子ドットの凝集体)が最も小さく、空隙も多いことから、ガスとの接触による電子状態の変化を反映した蛍光特性変化が大きくなる可能性が予想された。作製した複合薄膜の蛍光強度とスペクトルを空気中で測定したところ、Ag-量子ドット複合薄膜ではAgナノ粒子の複合化によって蛍光強度は低下したが、Au, Pt, Pt-Pdをそれぞれ量子ドットと複合化した薄膜は明るい蛍光を発した。これらの複合薄膜の蛍光強度あるいはスペクトル変化を用いた、光学式オゾンガスセンシングの実験を開始した。量子ドットの蛍光特性変化を用いた光学式生体影響ガスセンサの研究において、感度向上をもたらすことが期待される貴金属ナノ粒子との複合薄膜の作製条件を適切化した結果、ガスセンシングに適した多孔質構造と高い蛍光強度を両立した複合薄膜を得ることができた。セレン化カドミウム(CdSe)系コアシェル型量子ドットをはじめとする各種蛍光量子ドットと、ガス吸脱着特性・触媒機能・プラズモン吸収・局所電場効果がそれぞれ異なる貴金属ナノ粒子等からなる表面高機能化光ナノ複合材料を作製し、空気中のオゾンやVOCによる蛍光特性(強度・波長・寿命等)を測定・解析する。作製した表面高機能化光ナノ複合材料の微細構造を電子顕微鏡等で観察する。得られた光学式ガスセンサ特性(感度・応答速度等)と微細構造の関係を調べることにより、応答機構の解明とガスセンサ機能の高度化(高感度化・高速応答化・ガス識別検知)を図る。貴金属(Au, Pt, Pt-Pd合金)ナノ粒子とセレン化カドミウム(CdSe)系コアシェル型量子ドットからなる、多孔質構造と強い蛍光強度を両立した複合薄膜について、空気中の生体影響ガス(オゾンや揮発性有機化合物等)と接触した際の蛍光特性(強度・波長・寿命等)の変化を測定・解析する。得られた光学式ガスセンサ特性(感度・応答速度・回復速度等)と薄膜の組成・構造との関係を調べ、応答機構の解明とガスセンサ機能の高度化(高感度化・応答と回復の高速化・ガス識別検知)を図る。(理由)初年度である平成29年度は、種々の方法で試作した表面高機能化光ナノ複合材料を比較検討することにより作製方法を探索する計画で実験を開始した。比較的初期段階で、分散液塗布法とスパッタリング法の組み合わせが有効であることが判明し、以後、この方法の最適化を、作製方法の種類拡張よりも優先したので、次年度使用額が生じた。(使用計画)各種の試薬・スパッタリングターゲット・表面形状の異なる基板等を購入して、組成や微細構造の異なる表面高機能化光ナノ複合材料を試作する。また、微細構造の顕微鏡観察等を外注して、研究を加速させる。(理由)ガスセンサ感度や応答・回復速度の向上が見込まれる貴金属・量子ドット複合薄膜の作製技術の条件最適化に向けた検討が順調に進捗し、スパッタリングターゲット、試薬、装置部品等の購入費用を抑えることができた。また、試作した薄膜の微細構造の顕微鏡観察を、共同研究者所有の顕微鏡で行うことができたため、顕微鏡観察の外注費を抑えることができた。これらの理由により、次年度使用額が生じた。(使用計画)ガスセンサ感度の向上と応答機構解明に向けた検討のため、これまで用いてきた平板状のガラス基板に加えて、微細構造・比表面積・化学組成の異なる基板(多孔質基板や分子レベルで平滑な基板等)を購入し、複合薄膜等の試作に使用する。
KAKENHI-PROJECT-17K05957
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K05957
在宅要介護高齢者の排泄機能と介護力のアセスメントに基づく援助方法
尿失禁を有する在宅要介護高齢者の排尿状態と排尿方法、及び家族介護者の介護状況を把握し、排尿方法に関連する要因を明らかにした。高齢者側の要因では「トイレとおむつの併用」の者は「おむつのみ」の者にくらべ、尿意がある者、移動・移乗に伴う一連の動作の自立度が高い者、トイレを認識し正しく使用できる者の割合が有意に高かった。介護者側の要因では有意な関連は認められなかった。目的は、尿失禁を有する在宅要介護高齢者(以下、高齢者)の排尿方法の現状と排尿方法の違いに関連する要因を明らかにすることである。対象は、A県内で介護保険を利用し尿失禁を有する65歳以上の高齢者とその家族介護者(60歳以上)。高齢者は座位保持が不可能なものは除外した。期間は、平成24年9月12月。方法は、研究者が対象者宅を訪問し質問紙による聞き取り調査とした。結果、高齢者の平均年齢は84.5歳(±7.8)、性別は男性8名、女性9名であった。介護者の平均年齢は、73.9歳(±8.2)、性別は男性4名、女性13名であった。高齢者の排尿方法は「おむつ」のみが7名、「トイレとおむつ」が10名で、おむつ交換のタイミングは「定期的である」が13名、「随時である」が3名であった。排尿方法が「おむつ」のみの7名は定期的におむつ交換を受けていた。一方、高齢者の排泄行動は、尿意が「ある」は11名、「ない」は6名、移動と移乗はそれぞれ「自立・一部介助」が13名、「全介助」が4名、座位姿勢保持は「自立・一部介助」が15名、「全介助」が2名であった。トイレでの排泄の有無と介護者に関する要因との関連では、副介護者の有無、受診の有無、仕事の有無、排泄の価値観などの項目においても有意差は認められなかった。トイレでの排泄の有無と高齢者の排泄行動では、尿意の有無、座位姿勢保持では有意差はなく「移動・移乗」において有意差が認められ能力の高いものがトイレでの排尿を行っていた。また、おむつ交換のタイミングと各項目の関連をみた結果、介護者および高齢者いずれにおいても関連は認められなかった。尿意が「ある」11名のうち7名は定期的におむつ交換を受けていた。トイレでの排泄を継続するためには、高齢者の移動動作が重要であることが推察され、尿意や動作能力があっても高齢者の持てる力が発揮された排尿が実施されていない現状が示された。本研究は、尿失禁を有する在宅要介護高齢者(以下、高齢者)の排尿状態と排尿方法、及び家族介護者の介護状況を明らかにし、排尿方法に関連する要因を明らかにすることを目的とした。対象は、A県内で介護保険を利用し尿失禁を有する65歳以上の高齢者と同居する家族介護者(60歳以上)。高齢者の座位保持が不可能な者は除外した。期間:平成24年9月平成25年10月。方法:研究者が対象者宅を訪問し質問紙による聞き取り調査とした。結果:対象者は50組で、高齢者の性別は、男性24人(48.0%)、女性26人(52.0%)、平均年齢は、85.42歳(±7.92)であった。介護者の性別は、男性14人(28.0%)、女性36人(72.0%)、平均年齢は、74.74歳(±8.39)で、続柄は妻が最も多く22人(44.0%)であった。高齢者の排尿方法は「トイレとおむつ」の併用が33人(66.6%)で「おむつ」のみは15人(30.0%)、「トイレ」のみは2人(4.0%)であった。おむつとトイレを併用して排尿する高齢者は、おむつへの一回排尿量は「中等量」「多い」と回答した者が約7割で、トイレへの一回排尿量は「少ない」が約5割であり、適切なタイミングでトイレに誘導されていない可能性があることが示唆された。排尿方法に関連する高齢者の要因では、おむつのみで排尿する者にくらべ、おむつとトイレを併用している者は「尿意」がある者、「移動動作」「移乗動作」「立ち上がり動作」「座位姿勢の保持」の自立度が高い者、「トイレを正しく使用」「トイレを認識」「トイレ場所が理解」できる者が有意に高かった。介護者側の要因では有意な関連は認められなかった。在宅におけるトイレでの排泄は、介護者側の要因より要介護高齢者の身体機能の自立度が影響していることが明らかになった。尿失禁を有する在宅要介護高齢者の排尿状態と排尿方法、及び家族介護者の介護状況を把握し、排尿方法に関連する要因を明らかにした。高齢者側の要因では「トイレとおむつの併用」の者は「おむつのみ」の者にくらべ、尿意がある者、移動・移乗に伴う一連の動作の自立度が高い者、トイレを認識し正しく使用できる者の割合が有意に高かった。介護者側の要因では有意な関連は認められなかった。尿失禁を有する高齢者に関する国内文献を検討した。結果、施設高齢者を対象とした実態調査がほとんどで在宅要介護高齢者を対象としたものはごく少数であった。
KAKENHI-PROJECT-23593442
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23593442
在宅要介護高齢者の排泄機能と介護力のアセスメントに基づく援助方法
施設高齢者を対象とした実態調査は、要介護高齢者の半数以上が尿失禁を有することを明らかにしていた。また、尿失禁を有する高齢者の看護に関する文献は実態調査に比べ非常に少なく、特に在宅要介護高齢者を対象としたものは極めて少数であった。施設高齢者を対象とした看護の文献では、排尿日誌を活用し膀胱機能をアセスメントすることが重要であると述べられており、在宅要介護高齢者に対しても排尿日誌を活用し膀胱機能のアセスメントし援助することが重要であると推測された。このような現状から、尿失禁を有する在宅要介護高齢者の現状と在宅における排尿管理について明らかにする必要があると考えた。そこで、在宅要介護高齢者の排尿方法の現状と訪問看護ステーション、及び居宅介護支援事業所の排尿管理の現状を明らかにすることを目的として自記式質問紙調査を実施した。対象はA県の訪問看護ステーション(以下、訪看)93箇所、居宅介護支援事業所(以下、居宅)417箇所の管理者とし、調査期間は平成23年11月平成24年1月であった。結果、有効回答数は、訪看は41箇所、居宅は139箇所であった。居宅において、事業所が把握している利用者の日中の排尿方法のうち尿失禁を有していると推測される「パットを併用してトイレで排尿」と「オムツに排尿」を合わせると約6割で、尿失禁を有する在宅要介護高齢者は高率であることが推察された。排尿管理に必要な情報として、訪看、及び居宅ともに「尿意の有無」と「家族の介護力」を高率で選択しており在宅の排尿管理において重要なアセスメント項目であると推測された。排尿日誌の活用は、訪看、及び居宅ともに割合は低く、高齢者自身の排尿機能のアセスメントの必要性が示された。24年度は、尿失禁を有する在宅要介護高齢者(以下、高齢者)の排尿方法の現状と排尿方法の違いに関連する要因を明らかにすることを目的とした調査を実施するために、質問紙をを作成した。質問紙の作成においては、高齢者の現在の排尿状況を質問することによって、尿失禁の状態が大まかに分類できるように工夫した。また、今回の調査において重要な介護力を質問する項目では、文献をもとに内容を検討し共同研究者からも意見をもらい質問項目を精選した。24年9月から質問紙による聞き取り調査を実施しており17組の対象者から回答を得ることができた。現在までの回答結果からは、高齢者の移動動作が重要であることが推察され、尿意や動作能力があっても高齢者の持てる力が発揮された排尿が実施されていない現状が示された。現在も聞き取り調査は継続しており、おおむね順調に進んでいると考えている。23年度は、在宅要介護高齢者の排泄状態、排泄行動能力および介護力の関係から排尿障害の実態を明らかにする目的で、在宅要介護高齢者と家族を対象として質問紙に基づいた聴き取り調査を実施する予定であった。しかし、文献検討の結果、尿失禁を有する在宅要介護高齢者を対象とした実態調査、および看護に関する文献は極めて少ない現状であることが明らかになった。本研究は、排尿障害を有する在宅要介護高齢者の割合と現状を明らかにした後、排尿障害の原因をアセスメントし在宅における排尿ケアの方法を考察する予定である。したがって、在宅における排尿管理の現状を把握することは重要であると考えた。そこで、当初の研究計画を修正し、在宅要介護高齢者の排尿方法の現状と訪問看護ステーション、および居宅介護支援事業所の排尿管理の現状を明らかにすることを目的とし、訪問看護ステーション、および居宅介護支援事業所の管理者を対象とした質問紙調査を先に実施することとした。この調査結果では、尿失禁を有する在宅要介護高齢者の割合は高いことが推察でき、本研究の意義が確認できた。また、在宅における排尿管理において重要なアセスメント項目は、「尿意の有無」と「家族の介護力」で、研究計画作成時に推測していた家族の介護力が強く影響していることに裏付けを得ることができた。また、在宅において排尿日誌の活用は少ないことが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-23593442
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23593442
心房細動における自律神経の薬理学的修飾
心房細動の発生・維持の機序として、心房細動の持続に伴う心房の電気生理学的変化(電気的リモデリング)や心房の線維化などの構造的変化(構造的リモデリング)が重要な役割を果たしていることが報告されている一方で、自律神経の関与も示唆されている。しかしながら、心房細動における交感神経や副交感神経の神経量の変化や形態・機能変化に関してはいまだ不明な点が多く、またそれらが心房細動の発生・維持にどのように関与するかは明らかにされていない。本研究では、イヌ孤発性心房細動モデルを用いて、心房細動の細動基質としての自律神経の変化とそれに対する薬理学的修飾としてのα・β遮断薬の効果を検討した。心房高頻度刺激の持続に伴い、心房の電気的リモデリングおよび心房細動誘発性は増加した。抗neurofirament抗体を用いてイヌ心房の自律神経線維を免疫染色では、心房高頻度刺激の持続に伴い、心房内の自律神経線維、特に交感神経線維が増加していることが示された。α・β遮断薬であるカルベジロールを前投与したところ、カルベジロールは心房の電気的リモデリングおよび心房細動誘発性を抑制した。心房細動の発生・維持の機序として、心房細動の持続に伴う心房の電気生理学的変化(電気的リモデリング)や心房の線維化などの構造的変化(構造的リモデリング)が重要な役割を果たしていることが報告されている一方で、自律神経の関与も示唆されている。しかしながら、心房細動における交感神経や副交感神経の神経量の変化や形態・機能変化に関してはいまだ不明な点が多く、またそれらが心房細動の発生・維持にどのように関与するかは明らかにされていない。本研究では、イヌ孤発性心房細動モデルを用いて、心房細動の細動基質としての自律神経の変化とそれに対する薬理学的修飾としてのα・β遮断薬の効果を検討した。心房高頻度刺激の持続に伴い、心房の電気的リモデリングおよび心房細動誘発性は増加した。抗neurofirament抗体を用いてイヌ心房の自律神経線維を免疫染色では、心房高頻度刺激の持続に伴い、心房内の自律神経線維、特に交感神経線維が増加していることが示された。α・β遮断薬であるカルベジロールを前投与したところ、カルベジロールは心房の電気的リモデリングおよび心房細動誘発性を抑制した。孤発性心房細動モデルとして、イヌ心房高頻度刺激モデルを用いた。電気的生理学検査において、2週間の心房高頻度刺激により、心房の有効不応期は有意に短縮し、また心房細動持続時間は有意に延長、心房細動の受攻性も有意に上昇し、本モデルが安定した孤発性心房細動モデルとして妥当であることが示された。心房細動と自律神経のnerve sproutingの変化を検討するため、孤発性心房細動群および対照群において、各々抗neurofirament抗体を用いてイヌ心房の自律神経線維を免疫染色し、その結果を検討した。特に、その中でも交感神経線維に対しては、抗tyrosine hydroxylase抗体を用いて免疫染色を行った。孤発性心房細動モデルでは、対照群に比し、心房内の自律神経線維、特に交感神経線維が増加していることが示された。心房内の副交感神経線維の変化を検討するため、抗choline acetyltransferase(ChAT)抗体を用いての免疫染色を開始しているが、現時点では、孤発性心房細動モデル群と対照群で明らかな差を認めていない。本研究では、イヌ孤発性心房細動モデルを用いて、心房細動に対する自律神経、特に交感神経のnerve sproutingが心房細動の発生・維持に重要である可能性を示した。今後、副交感神経のnerve sproutingをさらに検討し、心房細動と自律神経全体のnerve sproutingの変化を解明できれば、心房細動治療への新たなアプローチにつながると考えられる。またβ遮断薬などの交感神経遮断薬を用いた場合のnerve sproutingの変化と心房細動の関係についても検討することにより、臨床応用が可能になると考えられる。孤発性心房細動モデルとして、イヌ心房高頻度刺激モデルを用いた。電気的生理学検査において、2週間の心房高頻度刺激により、心房の有効不応期は有意に短縮し、また心房細動持続時間は有意に延長、心房細動の受攻性も有意に上昇し、本モデルが安定した孤発性心房細動モデルとして妥当であることが示された。心房細動と自律神経のnerve sproutingの変化を検討するため、孤発性心房細動群および対照群において、各々抗neurofirament抗体を用いてイヌ心房の自律神経線維を免疫染色し、その結果を検討した。特に、その中でも交感神経線維に対しては、抗tyrosine hydroxylase抗体を用いて免疫染色を行った。孤発性心房細動モデルでは、対照群に比し、心房内の自律神経線維、特に交感神経線維が増加していることが示された。心房内の副交感神経線維の変化を検討するため、抗choline acetyltransferase(ChAT)抗体を用いての免疫染色を開始しているが、現時点では、孤発性心房細動モデル群と対照群で明らかな差を認めていない。本研究では、イヌ孤発性心房細動モデルを用いて、心房細動に対する自律神経、特に交感神経のnerve sproutingが心房細動の発生・維持に重要である可能性を示した。
KAKENHI-PROJECT-22790623
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22790623
心房細動における自律神経の薬理学的修飾
今後、副交感神経のnerve sproutingをさらに検討し、心房細動と自律神経全体のnerve sproutingの変化を解明できれば、心房細動治療への新たなアプローチにつながると考えられる。また現在、同モデルにおいてβ遮断薬などの交感神経遮断薬の効果を検討しているが、その際のnerve sproutingの変化と心房細動の関係が明らかになれば、さらなる臨床応用が期待できる。
KAKENHI-PROJECT-22790623
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22790623
アルツハイマー型痴呆におけるアミロイド沈着物の脳細胞に対する影響の検索
本年度の研究として、アミロイドの組織沈着が脳細胞に及ぼす直接影響の検討を実際のATD剖検脳で免疫組織化学的方法を用いて試みた。これまでもアミロイド沈着物の周辺にはグリア細胞の反応性増殖が起こることが知られているが、我々はグリア細胞をその膜成分であるガングリオシドGM1に対する抗体を用いて免疫染色する方法を用いることにより、正常グリア細胞のみならず崩壊したグリアの細胞崩壊産物の分布をも検索し、アミロイド沈着物周囲の細胞変化を詳細に検討した。その結果、老人斑のアミロイドコアを中心としてその周囲に多数の反応性アストログリアが出現しており、これらのグリアがコアの周囲で変性・崩壊を起こし、その崩壊産物が重なり合い、層を形成していることが判明した。このように老人斑形成過程においては、反応性のアストログリアは従来より指摘されているものよりはるかに多く出現しており、増殖と変性崩壊をアミロイド沈着物の周囲で繰り返し起こしていることが判明した。また神経細胞においてはガングリオシドGQ1に対する抗体を用いて検索した結果、やはり老人斑に接する部分で変性崩壊を起こしており、またその崩壊産物がアミロイドbeta/A4蛋白にそって分布していた。このように今回の研究で細胞膜成分に対する抗体を用いることにより細胞崩壊産物の分布が判明し、その結果はアミロイド沈着物に接して細胞変性が生じることを示唆しており、その細胞毒性仮説を実際のATD剖検脳で支持するものであると思われる。今後はさらにこれがアミロイド自体の影響なのか沈着過程に付随する現象によるものなのかを検索していく予定である。本年度の研究として、アミロイドの組織沈着が脳細胞に及ぼす直接影響の検討を実際のATD剖検脳で免疫組織化学的方法を用いて試みた。これまでもアミロイド沈着物の周辺にはグリア細胞の反応性増殖が起こることが知られているが、我々はグリア細胞をその膜成分であるガングリオシドGM1に対する抗体を用いて免疫染色する方法を用いることにより、正常グリア細胞のみならず崩壊したグリアの細胞崩壊産物の分布をも検索し、アミロイド沈着物周囲の細胞変化を詳細に検討した。その結果、老人斑のアミロイドコアを中心としてその周囲に多数の反応性アストログリアが出現しており、これらのグリアがコアの周囲で変性・崩壊を起こし、その崩壊産物が重なり合い、層を形成していることが判明した。このように老人斑形成過程においては、反応性のアストログリアは従来より指摘されているものよりはるかに多く出現しており、増殖と変性崩壊をアミロイド沈着物の周囲で繰り返し起こしていることが判明した。また神経細胞においてはガングリオシドGQ1に対する抗体を用いて検索した結果、やはり老人斑に接する部分で変性崩壊を起こしており、またその崩壊産物がアミロイドbeta/A4蛋白にそって分布していた。このように今回の研究で細胞膜成分に対する抗体を用いることにより細胞崩壊産物の分布が判明し、その結果はアミロイド沈着物に接して細胞変性が生じることを示唆しており、その細胞毒性仮説を実際のATD剖検脳で支持するものであると思われる。今後はさらにこれがアミロイド自体の影響なのか沈着過程に付随する現象によるものなのかを検索していく予定である。
KAKENHI-PROJECT-05770746
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05770746
学童のヘルスプロモーションに関する看護介入プログラムの効果
家族参加を強化した学童の生活習慣改善のための一年間の介入プログラムを行い、その効果を明らかにした。参加者は22組の親子であった。介入直後の変化としては、22名中17名の子どもに改善した生活習慣があり、自己管理能力が高まっていた。7家族では、子どもと親の生活習慣の管理に対する意識が高まり、行動変容が見られた。また、介入前、直後、1年後の3時点の調査結果が得られた10組中4組の子どもは介入直後に生活習慣や肥満度が改善し1年後もそれを維持できていた。5組は介入直後に改善したが、介入1年後にはそれを維持できていなかった。1組は改善しなかった。(1)目的先行研究での反省と文献検討から得られた知見より、学童への個別の介入内容の強化と両親の生活の自己管理能力を高める介入内容の追加の2点を改良し、学童とその親の生活の自己管理能力を高めるための1年間の看護介入プログラムを洗練させる。それを用いて、学童とその両親に介入を行い、学童の自己効力感、サポート感、健康に関する認識、生活行動、肥満度の改善への効果を明らかにするとともに、両親の自己効力感、健康に関する認識、生活行動の改善への影響を明らかにする。また、介入1年後の生活状況を明らかにし、本プログラムの長期効果を評価する。(2)方法(1)調査方法家族参加プログラムを導入し改良した1年間の看護介入プログラムの効果を評価するために、介入プログラム前後に学童の自己効力感、ソーシャルサポートの質問紙調査と健康の定義、健康状態の認識、日常生活行動についての面接調査、及び親の自己効力感の質問紙と健康の定義、健康の認識、日常生活行動についての面接調査(もしくは質問紙調査)を行う。また、長期効果を評価するために介入終了1年後に質問紙調査を行う。(2)介入プログラム学童と親にそれぞれの健康の認識や生活の特徴を踏まえた個人指導(面接あるいは手紙を用いて)、学童に月1回2時間、放課後に栄養・運動についての学習と実践を行う集団指導を行う。介入プログラムの効果の信頼性を高めるために、対象者数を増やす必要があるため、1年間の看護介入プログラムは2クール(平成21年度はA小学校、平成22年度はB小学校)行う。家族参加を強化した学童の生活習慣改善のための一年間の介入プログラムを行い、その効果を明らかにした。参加者は22組の親子であった。介入直後の変化としては、22名中17名の子どもに改善した生活習慣があり、自己管理能力が高まっていた。7家族では、子どもと親の生活習慣の管理に対する意識が高まり、行動変容が見られた。また、介入前、直後、1年後の3時点の調査結果が得られた10組中4組の子どもは介入直後に生活習慣や肥満度が改善し1年後もそれを維持できていた。5組は介入直後に改善したが、介入1年後にはそれを維持できていなかった。1組は改善しなかった。本研究は、平成1819年度に実施した学童の自己管理能力を高める1年間の看護介入プログラムを洗練させ、その効果を明らかにすることを目的としている。平成20年度は、より効果的な看護介入プログラムに洗練させるために追加する要素を決定し、平成21年度以降に介入プログラムを実施・評価できるように準備した。まず、過体重(肥満)の子どもと親への援助方法、生活習慣の改善のための子どもへの援助方法、家族(特に父親)への援助方法についての文献検討を行った。その結果、テレビやゲームの視聴時間の増加が睡眠時間の短縮に影響していること、父親が肥満の子どもにどのように接して良いかわからない状況があり、高度肥満群の父親にコミュニケーション不足を感じている者が多かったこと、父親が積極的に子どもに関わることで子どもの肥満度の軽減が見られていたことが明らかになった。次に、米国Lucile Packard Children'sHospitalのPediatric Weight Control Programの視察と情報収集を行った。そこでは、親子で一緒にできるプログラムを行うことにより、子どものBMI値とともに、親のBMI値の改善への効果も見られていること、親が一生懸命運動する姿を見ることにより子どもの頑張りにつながることがわかった。以上のことから、父親の認識や行動についても調査し、家族の特徴を踏まえた個別の介入を行うこと、従来の介入プログラムに家族で参加できるプログラムを夏休みに実施することの2点を追加し、介入プログラムを作成した。平成21年度にA小学校で新しい介入プログラムを実行する予定である。きらに、対照群として、従来のプログラムを実施し、データ収集を行った。本研究は、平成1819年度に実施した学童の自己管理能力を高める1年間の看護介入プログラムを洗練させ、その効果を明らかにすることを目的としている。1年間の介入プログラムの効果は、短期効果:介入前後に(1)子どもの肥満度、自己効力感、ソーシャルサポート、健康や生活習慣に対する認識や行動、(2)親の自己効力感、健康や生活習慣に対する認識と行動、長期効果:介入終了1年後に子どもと親に短期効果と同様の調査を実施し、比較する。平成21年度は、A小学校で小学36年生8名とその両親を対象に介入プログラムを実施した。月1回の介入プログラムでは、子どもを対象としたものに加え、7月に家族で参加できるプゴグラムを実施した。また、参加中の子どもの様子(肥満度のグラフを含む)や親に協力してほしいこと、介入前の親のアンケート内容から親の生活改善を促す助言を書いた手紙を親に送付した。
KAKENHI-PROJECT-20592597
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20592597
学童のヘルスプロモーションに関する看護介入プログラムの効果
その結果、介入前後の子どもの肥満度は、標準6→7名、軽度肥満1→0名、中等度肥満1→1名に変化した。子どもの生活習慣の変化については、朝食の欠食、間食の回数の減少、睡眠時間の増加が見られた。また、6名が介入プログラムで学んだことを生活に生かせたと答え、その内容は、毎日体重を測るようになった、カロリーの表示を見ておやつを選ぶようになった、カロリーのことを考えて食べるようになった、野菜が食べられるようになった、などであった。一方、親の調査結果では、2名の父親に子どもの健康管理に対する役割意識の高まりが見られ、母親が「自分以外の家族が以前より意識して子どもに声をかけてくれるようになった」、親自身が「意識的に運動を続けている」、「運動についていつも以上に頑張ろうという気持ちになった」、等の親の認識・行動の変化が複数の家族で見られた。また、平成22年度に介入プログラムを実施するB小学校に研究についての説明と協力依頼を行い、了承を得た。本研究は、家族参加プログラムを導入した学童の自己管理能力を高める1年間の看護介入プログラムの効果を明らかにすることを目的とする。短期効果として、介入前後に(1)子どもの肥満度、自己効力感、ソーシャルサポート、健康や生活習慣に対する認識行動、(2)親の自己効力感、健康や生活習慣に対する認識と行動、長期効果として、介入終了1年後に子どもと親に短期効果と同様の調査を実施し、比較する。平成22年度は、B小学校で小学16年生14名とその両親を対象に介入プログラムを実施した。月1回の介入プログラムでは、子どもを対象としたものに加え、家族で参加できるプログラムを1回実施した。また、参加中の子どもの様子(肥満度のグラフを含む)や親に協力してほしいこと、親の生活改善を促す助言を書いた手紙を親に送付した。その結果、介入前後の子どもの肥満度は、標準5→7名、軽度肥満3→3名、中等度肥満5→3名、高度肥満1名→1名に変化した。.介入前後の自己効力感の得点は有意差が見られなかったが、ソーシャルサポートの得点は有意な増加が見られた(P<0.01)。子どもの生活習慣の変化については、運動の頻度の増加、睡眠時間の増加が見られた。また、14名中11名がプログラムで学んだことを生活に生かせたと答え、その内容は、「毎日体重を測るようになった」、「お菓子のカロリー表示を見て買うようになった」、「これ以上食べたらいけない量がわかり量を考えて食べるようになった」、「よく走るようになった」等であった。一方、親の調査結果では、「自分以外の家族が以前より意識して子どもに声をかけてくれるようになった」、「家族参加プログラムに参加して自分が作っている食事の何を改善すればよいかがわかった」等の親の認識・行動の変化が複数の家族で見られた。平成21年度に介入プログラムを実施したA小学校の研究対象者の長期効果を評価するために介入終了1年後の調査を3月に実施した。平成22年度にB小学校で1年間の介入プログラムに参加した14名とその両親を対象に1年後の調査を実施し、2校で実施した家族参加を強化した介入プログラムの短期効果と長期効果について検討した。
KAKENHI-PROJECT-20592597
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20592597
PRRS感染耐過ブタ由来ファージ抗体ライブラリを用いた中和エピトープの探索
PRRSV感染耐過ブタの肺門リンパ節細胞からcDNAを合成し、抗体分子の可変領域をコードするDNA断片を直鎖状に連結した分子(scFv)をファージミドベクターに組み込みライブラリーを作製した。また、ウイルス粒子を抗原とするELISAの系を構築した。作製したライブラリー(約百万クローン)からパンニング法によるスクリーニングを3回試みたが、PRRSV抗原に結合する抗体分子を選択することはできなかった。ブタ繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)は現在、養豚業に最も甚大な経済的被害をもたらしているウイルス性疾患である。妊娠豚及び肥育豚が本ウイルス感染すると繁殖障害、間質性肺炎を伴う発育不良等重篤な病態を呈するが、成豚では呼吸器症状を呈するものの、耐過する事が知られている。また、感染耐過個体から調製した抗体の受身免疫で感染防御可能な事も知られている。感染耐過個体が誘導する抗体を詳細に解析する事でより有効なPRRS抗ワクチンの免疫原を同定するため、耐過個体からファージディスプレイ法による抗体ライブラリーを作製する事を目的とした。弱毒化PRRSウイルスを免疫後、野性型ウイルスの攻撃接種を制御した個体から脾臓、リンパ節細胞及び白血球を調製し、そこから総RNAを抽出した。抗体分子重鎖及び軽鎖可変域をコードするDNA断片をPCR法により増幅、リンカー配列を介して直鎖状に連結した分子を合成した。現在、この分子をファージミドベクターに組み込みライブラリーを作製中である。このライブラリーからウイルス粒子抗原に結合する性質を持つ分子を第一段選抜し、次いでウイルス感染性を中和する性質を持つ分子を選抜する。この分子が認識する抗原決定基を同定する事で、個体感染の文脈においてウイルス複製抑制に真に有用な免疫原を明らかに出来る。この免疫原をワクチンに用いる事で、生ワクチン接種における潜在的問題であるワクチン株の持続感染及び病原性復帰変異の心配のないワクチン開発への道が開かれると期待される。ブタ繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)は現在、現在、養豚業に最も甚大な経済的被害をもたらしているウイルス性疾患である。妊娠豚及び肥育豚が本ウイルス(PRRSV)に感染すると繁殖障害、間質性肺炎を伴う発育不良等重篤な病態を呈するが、成豚では呼吸器症状を呈するものの、耐過する事が知られている。また、感染耐過個体から調製した抗体の受身免疫で感染防御可能な事も知られている。感染耐過個体が誘導する抗体を詳細に解析する事でより有効な抗PRRSVワクチンの免疫原を同定するため、耐過個体からファージディスプレイ法による抗体ライブラリーを作製する事を目的とした。弱毒化PRRSVを免疫後、野性型ウイルスの攻撃接種を制御した個体から脾臓、リンパ節細胞及び白血球を調製し、そこから総RNAを抽出した。抗体分子重鎖及び軽鎖可変域をコードするDNA断片をPCR法により増幅、リンカー配列を介して直鎖状に連結した分子を合成し、ファージミドベクターに組み込みライブラリーを作製した。また、ウイルス粒子を抗原とするELISAの系を構築し、感染ブタの抗体と反応することを確認した。作製したライブラリーからウイルス粒子抗原に結合する性質を持つ抗体分子を第一段選抜し、次いでウイルス感染性を中和する性質を持つ分子を選抜する。この分子が認識する抗原決定基を同定する事で、個体感染の文脈においてウイルス複製抑制に真に有用な免疫原を明らかに出来る。この免疫原をワクチンに用いる事で、生ワクチン接種における潜在的問題であるワクチン株の持続感染及び病原性復帰変異の心配のないワクチン開発への道が開かれると期待される。ブタ繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)は、現在、養豚業に最も甚大な経済的被害をもたらしているウイルス性疾患である。妊娠ブタ及び肥育ブタが本ウイルス(PRRSV)に感染すると繁殖障害、間質性肺炎を伴う発育不良等重篤な病態を呈するが、成ブタでは呼吸器症状を呈するものの、耐過することが知られている。また、感染耐過ブタの血漿から調整した抗体の受動免疫でPRRSVの感染防御が可能な事も知られている。この感染防御抗体分子が認識する抗原決定基を同定する事で、個体感染の文脈においてウイルス複製抑制に真に有効な免疫原を明らかにできると考えた。本研究の目的は、感染耐過ブタに誘導された抗体を詳細に解析することで、より有効な抗PRRSVワクチンの免疫原を明らかにすることである。弱毒化PRRSVを免疫後、野生型ウイルスの攻撃接種を感染防御した成ブタの感染5週後の肺門リンパ節細胞から総RNAを抽出し、オリゴdTをプライマーとしてcDNAを合成した。抗体分子の重鎖および軽鎖(κ鎖およびλ鎖)の可変領域をコードするDNA断片をポリメラーゼ連鎖反応法により増幅し、リンカー配列を介して直鎖状に連結した分子(scFv)を合成した。これをファージミドベクター(pComb3XSS)に組み込みライブラリーを作製した。また、ウイルス粒子を抗原とするELISAの系を構築し、感染ブタの抗体と反応することを確認した。作製したライブラリー(約百万クローン)からウイルス粒子抗原に結合する性質を持つ抗体分子を選択するためにパンニング法による一次スクリーニングを3回試みたが、PRRSV抗原に結合する抗体分子を選択することはできなかった。今後の改善点としては、ELISAで抗体価の高い感染耐過ブタを選択して試みたり、ELISAの反応系や抗体ライブラリーの質とサイズの改善を行うことが考えられる。
KAKENHI-PROJECT-25660226
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25660226
PRRS感染耐過ブタ由来ファージ抗体ライブラリを用いた中和エピトープの探索
PRRSV感染耐過ブタの肺門リンパ節細胞からcDNAを合成し、抗体分子の可変領域をコードするDNA断片を直鎖状に連結した分子(scFv)をファージミドベクターに組み込みライブラリーを作製した。また、ウイルス粒子を抗原とするELISAの系を構築した。作製したライブラリー(約百万クローン)からパンニング法によるスクリーニングを3回試みたが、PRRSV抗原に結合する抗体分子を選択することはできなかった。抗体分子重鎖および軽鎖可変領域をクローニングするにあたり、米国スクリプス研究所が開発したファージミドベクターの分与を受け本研究に用いる予定であったが、授受契約の際に行き違いがあり、入手までに予想以上に時間を要した。また、これを用いてPRRSV感染耐過ブタファージディスプレイ抗体ライブラリー(約百万クローン)から、PRRSV粒子を用いてパンニングを行い1次スクリーニングしたところ、PRRSV粒子に結合する抗体分子は得られなかった。ウイルス学抗体ライブラリーのスケール・ベクターへの組込方等の作製方法や、パンニングによる濃縮ステップの条件検討を詳細に行ってPRRSV抗原に結合する抗体を選択する。そして、そのPRRSVに対する中和活性を測定する解析を行う。これらの検索を通して、感染耐過個体で誘導される「機能的」抗体及びそれらの認識する抗原決定基を同定する。抗体分子重鎖および軽鎖可変領域をクローニングするにあたり、米国スクリプス研究所が開発したファージミドベクターの分与を受け本研究に用いる予定であったが、授受契約の際に行き違いがあり、入手までに予想以上に時間を要した、現在までに授受契約は締結され、ベクターも入手したので、25年度の遅れを取り戻すべく鋭意クローニングを行っている。26年度にブタ繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)感染ブタファージディスプレイ抗体ライブラリー(約百万クローン)から抗PRRSV抗体をELISA法により選択、中和活性を検索した結果を日本ウイルス学会で発表予定であったが、抗PRRSV抗体がELISA法で検出されなかった為、計画を変更し、抗体ライブラリースケール及びパンニングによる濃縮ステップの検討を行う事としたため未使用額が生じた。当初予定通りファージディスプレイ法による抗体ライブラリーを構築、抗ウイルス抗体の選抜、更にウイルス中和活性の検索を通して、感染耐過個体で誘導される「機能的」抗体及びそれらの認識する抗原決定基を同定する。抗体ライブラリーの作製方法やパンニングによる濃縮ステップの条件検討を行ってPRRSV抗原に結合する抗体を選択し、そのPRRSVに対する中和活性を測定する解析を行い、その結果を27年度の日本ウイルス学会で発表することとし、未使用額はその経費に充てる。本研究計画では感染耐過ブタのリンパ球より抗体軽鎖および重鎖可変領域遺伝子を増幅、リンカーDNAで結合したscFvをファージミドベクターに組み込んで抗体ライブラリーを確立する事がその後の研究遂行のために必須である。ファージミドベクターは米国スクリプス研究所から分与を受けたが、分与契約(MTA)締結プロセスが研究代表者の予想を大幅に超え停滞した。最終的にベクターは分与されたが、約8ヶ月の遅れが生じた。これにより研究計画の進行が遅れたため、当初予定した試薬類の購入が遅延した。
KAKENHI-PROJECT-25660226
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25660226
1次元超伝導ー絶縁体転移と自己双対量子デバイスの研究
本研究の背景には、「超伝導1次元における超伝導体の超伝導(S)-絶縁体(I)転移」がある。研究1年目には「超伝導位相スリップと磁束運動」という双対性の立場からNbTiN/MgO細線の輸送特性を解析し、SI転移に関する双対性理論と比較し良い一致を得て、Scientific reportに投稿、掲載された。膜質の均質性を考慮し、基板をMgOから3C-Siに替えることで、極めて特異な負性磁気抵抗がもたらす「磁場誘起超伝導特性」を見出した。2年目は1)この抵抗特性の詳しい解析を行った。細線化が進むと、抵抗(R)-温度(T)特性はブロードになる。その原因は「超伝導転移温度Tc直下で特に著しい熱的位相ゆらぎ」と「充分な低温まで存在する量子的位相揺らぎ」による。磁場(H)下における中間温度領域までは、完全に後者の揺らぎのみが抑えられること、更にある温度以下の低温では、再び抵抗が復活する、いわゆる、reentrant effectの存在が明らかになった。この結果は国際会議等で発表した。2)超伝導細線の途中にメゾスコピックなサイズを島状領域導入し、電圧(V)-電流(I)特性、R(T,H)を調べた。最終年度は、本研究のゴールである「細線の自己双生量子デバイスの検討」に向け研究を行った。超伝導細線・デバイスの可能性を高めるにはS-I転移抵抗Rcが量子面抵抗Rqに近い大きい値を持つ膜の作成が必要となる。本年度は超伝導薄膜がアモルファス構造を取り、高抵抗が期待出来るMoReに注目、更に膜表面酸化を防ぐ目的で窒化膜であるMoReNの作成し、膜抵抗Rの温度、磁場、N濃度依存性、更に超伝導転移温度TcのRsq依存性等、詳しく伝導特性を調べた。その結果、高抵抵抗膜に必要なN濃度等の成膜条件を決めた。予想以上に最適条件サーチに時間がかったため、薄膜の細線化とデバイス化にあと一歩の状況である。研究開始式段階においては、これまでの研究に基づくNbTiN超伝導細線における「超伝導ー絶縁体転移」の実験結果を「超伝導オーダーパラメターの位相スリップと磁束運動」という双対性の立場から解析し、提案されている双対性理論との良い一致を得る事が出来た。この結果は我々が目指す研究目的を遂行する上で、重要な結果を考えている。この論文完成後、「均一な乱雑さ」を有する1次元超伝導ナノワイヤーの作成と評価を当年度の目標とした。従来から15K台の転移温度を有する超伝導Niobium Nitride(NbN)のエピタキシャル2次元膜をMgO基板上に製膜、細線化してきたが、今回NbNとの格子ミスマッチの小さい3C-SiC(シリコンカーバイト、3Cタイプ)基板を選び、成膜、細線化を行った。その結果以下を得た。・RHEED観察から、均質な表面を保証するストリークを観察できた。・XRD観察からは、基板の格子定数を反映したシャープなピークを得、MgO基板上薄膜に比べ、基板の格子定数によくマッチした薄膜作成に成功した。・作成した試料数は限られているが、超伝導細線の電気抵抗の温度・磁場依存性測定を行った。その結果、従来に比べて、巨大な負の磁気抵抗を観察した。本来磁場は超伝導を破壊する働きがあるが、我々の細線では磁場印加と共に、電気抵抗が減少する。これを負の磁気抵抗を呼ぶ。この振る舞いは超伝導細線に本質的な位相スリップへの磁場の効果であることは間違いない。今後、デバイスへと発展させる際の重要な特徴と考えている。超伝導細線作成に関しては、従来からの実績があり、当年度の「高質試料」作成は蒸着基板を目的に適した材料を選び、ほぼ達成することができた。29年の目標である「輸送特性評価」への道筋を確認するため、作成した試料に限り、予備測定を行った。その結果、基板変更に伴うと思われる新たな結果を得た。・MgO基板に比べ、臨界磁場が極めて大きい。・磁場、温度に複雑に依存するが、限られた領域であるが、磁場誘起超伝導現象を見出した。しかし、詳しく解析するには至っていない。本研究の背景には、「超伝導1次元における超伝導体の超伝導(S)ー絶縁体(I)転移」がある。研究1年目には「超伝導位相スリップと磁束運動」という双対性の立場から、SI転移に関する理論と比較し、良い一致を得た。更に試料作成時の基板を選択することで、超伝導特性に特異な磁場効果として「負性磁気抵抗」を見出した。2年目に当たる29年度の実績は以下である。1)この負性抵抗特性の詳しい解析を行った。細線化が進むと、抵抗(R)-温度(T)特性はブロードになる。その原因は「超伝導転移温度Tc直下で特に著しい熱的位相ゆらぎ」と「充分な低温まで存在する量子的位相揺らぎ」による。磁場(H)下での中間温度領域までは、完全に後者の揺らぎのみが抑えられること、及び、更にある温度以下の低温では、再び抵抗が復活する、いわゆる、reentrant effectの存在が明らかになった。2)超伝導細線の途中にメゾスコピックなサイズを島状領域導入し、電圧(V)-電流(I)特性、R(T,H)を調べた。
KAKENHI-PROJECT-16K04877
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K04877
1次元超伝導ー絶縁体転移と自己双対量子デバイスの研究
細線の幅=20nm,細線長=1000nm,途中の島サイズ=100nmx 100nmである。更に、この島数nをn=1,2,3と変化させ、その伝導特性を詳しく調べた。その結果、i)R(H)特性はnに依存するが、磁場に対して非対称な振る舞いを示すことが分かった。ii)低磁場では特徴的磁場依存性が見出された。即ち、負性抵抗ではなく、実質的な負の電圧が観測された。iii)n=1,2,3共に、低温でのR(H)精密測定から、R(H)に振動現象を観測し、概算ではLittle-Parks oscillationに相当すると思われ周期を観測した。29年度の研究目標として、超伝導細線の輸送特性の測定・解明を挙げた。本研究のゴールは細線の自己双生量子デバイスの検討で、「Quantum Phase Slip Transistor」はその1例である。前項・業績の最後にも記したが、超伝導細線の中間構造として「島領域」を配した細線試料での磁場下での輸送特性は顕著な振る舞いを示した。「島構造なし」の場合、オーミックではないが、連続的変化を示す電圧-電流特性に、「島構造」を追加すると、明らかな不連続変化を示す振る舞いが現れた。これは「島領域」に量子的にトラップされた磁束量子数に応じて生じる現象と理解している。このように、最終年度に向け、順調に推移していると判断する。研究成果の公表についても収穫ある年度であった。上記の内容に関しては、「島領域数」依存性、細線幅・長さ依存性、細線に生じる電気抵抗の詳しい温度・磁場・電流依存性を数多くの学会で発表した。材料開発に関しても、将来を見据えた均質な細線試料を念頭に、作成を開始した。電子線リソグラフィー等で細線加工するが、まず2次元超伝導膜の作成、輸送特性の解析が必要となる。本研究では、Nb系に加えて新たに、MoRe, MoRu薄膜に注目し、構造解析、その他に今後の発展が期待される結果を得た。此の一部は論文で公表した。以上の結果は1,2次元系合わせて、国際会議7件、国内会議6件を数えた。本研究の背景には、「超伝導1次元における超伝導体の超伝導(S)-絶縁体(I)転移」がある。研究1年目には「超伝導位相スリップと磁束運動」という双対性の立場からNbTiN/MgO細線の輸送特性を解析し、SI転移に関する双対性理論と比較し良い一致を得て、Scientific reportに投稿、掲載された。膜質の均質性を考慮し、基板をMgOから3C-Siに替えることで、極めて特異な負性磁気抵抗がもたらす「磁場誘起超伝導特性」を見出した。2年目は1)この抵抗特性の詳しい解析を行った。細線化が進むと、抵抗(R)-温度(T)特性はブロードになる。その原因は「超伝導転移温度Tc直下で特に著しい熱的位相ゆらぎ」と「充分な低温まで存在する量子的位相揺らぎ」による。磁場(H)下における中間温度領域までは、完全に後者の揺らぎのみが抑えられること、更にある温度以下の低温では、再び抵抗が復活する、いわゆる、reentrant effectの存在が明らかになった。この結果は国際会議等で発表した。2)超伝導細線の途中にメゾスコピックなサイズを島状領域導入し、電圧(V)-電流(I)特性、R(T,H)を調べた。最終年度は、本研究のゴールである「細線の自己双生量子デバイスの検討」に向け研究を行った。超伝導細線・デバイスの可能性を高めるにはS-I転移抵抗Rcが量子面抵抗Rqに近い大きい値を持つ膜の作成が必要となる。
KAKENHI-PROJECT-16K04877
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K04877
コショウ属の多様性と進化-化学成分に着目して-
1.標本調査、資料収集と同定:平成15年8月に米国のCAS、UCバークレー、東京大学などの植物標本室、17年7月から8月にドイツのミュンヘン植物園、ボン大学附属植物園、ドレスデン工科大学附属植物園にてコショウ属を中心としたコショウ科の標本調査、生植物の調査を行い、資料の分譲を受けた。また、種子島や海外から収集したコショウ属植物、京都府立植物園などの国内の各植物園から分譲されたコショウ属植物もあわせて、系統解析と化学成分検索に用いた。2.系統解析:現在までに入手した資料からDNAを抽出し、核DNAのITS領域の変異に基づく分子系統解析を行った。得られた系統樹では、カワPiper methysticumとタイヨウフウトウカズラP.postelsianumはニュージーランド原産のMacropiper exelsumとともに、他のコショウ属と姉妹群となる単系統群(Macropiper群)として分離した。この群は形態的特徴からMacropiper属に対応するものと考えられ、タイヨウフウトウカズラを含むMacropiper属を独立属とすることを支持する。3.化学成分分析:収集した植物資料からメタノールなどの溶媒で抽出、薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いて特徴ある成分の分析を行った。上記のMacropiper群の3種はTLCにおいてクロロホルムーメタノール(10:1)で展開し、UVの吸収、硫酸噴霧・加熱などの条件で比較したところ極めて類似したパターンを示した。またタイヨウフウトウカズラの主要成分の分離を行った結果、主成分としてフェニルプロパノイドと共にカワラクトン類であるdihydromethysticinが得られ、カワと成分的に共通の特徴を持つ事が判った。またP.flaviflorumの成分解析を詳細に行い、計26種の化合物を単離した。この植物の主成分は酸アミド類でPiperineの含有率が高かった。また新規化合物を含む5種のリグナンを単離した。得られた酸アミド、リグナンの骨格は現在まで、化学成分の検討されたコショウ属の中ではコショウP.nigrumに最も近い成分系であった。これらは系統解析の結果と符合するものである。1.標本調査、資料収集と同定:平成15年8月に米国のCAS、UCバークレー、東京大学などの植物標本室、17年7月から8月にドイツのミュンヘン植物園、ボン大学附属植物園、ドレスデン工科大学附属植物園にてコショウ属を中心としたコショウ科の標本調査、生植物の調査を行い、資料の分譲を受けた。また、種子島や海外から収集したコショウ属植物、京都府立植物園などの国内の各植物園から分譲されたコショウ属植物もあわせて、系統解析と化学成分検索に用いた。2.系統解析:現在までに入手した資料からDNAを抽出し、核DNAのITS領域の変異に基づく分子系統解析を行った。得られた系統樹では、カワPiper methysticumとタイヨウフウトウカズラP.postelsianumはニュージーランド原産のMacropiper exelsumとともに、他のコショウ属と姉妹群となる単系統群(Macropiper群)として分離した。この群は形態的特徴からMacropiper属に対応するものと考えられ、タイヨウフウトウカズラを含むMacropiper属を独立属とすることを支持する。3.化学成分分析:収集した植物資料からメタノールなどの溶媒で抽出、薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いて特徴ある成分の分析を行った。上記のMacropiper群の3種はTLCにおいてクロロホルムーメタノール(10:1)で展開し、UVの吸収、硫酸噴霧・加熱などの条件で比較したところ極めて類似したパターンを示した。またタイヨウフウトウカズラの主要成分の分離を行った結果、主成分としてフェニルプロパノイドと共にカワラクトン類であるdihydromethysticinが得られ、カワと成分的に共通の特徴を持つ事が判った。またP.flaviflorumの成分解析を詳細に行い、計26種の化合物を単離した。この植物の主成分は酸アミド類でPiperineの含有率が高かった。また新規化合物を含む5種のリグナンを単離した。得られた酸アミド、リグナンの骨格は現在まで、化学成分の検討されたコショウ属の中ではコショウP.nigrumに最も近い成分系であった。これらは系統解析の結果と符合するものである。1、標本調査:平成15年8月にアメリカ合衆国カリフォルニア州のカリフォルニアアカデミーオブサイエンスとカリフォルニア大学バークレー校のハーバリウムにてコショウ属を中心としたコショウ科の標本調査を行った。多数の標本を効率よく調査し、記録するために今回はデジタルカメラによる撮影とパソコンによる処理を行った。両ハーバリウムには中南米を中心とする多数のコショウ科の標本が収蔵されていたので、それらを用いて現在まで収集しているコショウ属の標本、化学成分の研究用などの植物資料の同定を行いたいと考えている。東京大学大学院理学系研究科のハーバリウムでも同様の調査を開始している。2、資料収集:摂南大学薬学部附属薬用植物園、東京大学大学院理学系研究科附属植物園で栽培しているコショウ属植物を実験材料として採集した。また北里大学薬学部附属薬用植物園、高知県立牧野植物園、ボゴール植物園で栽培しているコショウ属植物を成分抽出用、DNA抽出用の資料として、さらに栽培用に分譲して頂いた。また牧野植物園が外国から収集してきたコショウ属の植物資料の分譲を受けて化学成分研究用の資料として用いる。3、系統解析:現在までに入手した資料からDNAの抽出、塩基配列の解析を開始している。
KAKENHI-PROJECT-15570088
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15570088