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繰返しせん断を受ける粘土の強度および変形に関する研究 | 本研究では、種々の条件で圧密した粘土(関東ローム)について一連の繰返し三軸試験を行った。実験は、動的強度と静的強度の比較検討において、K_0正規圧密およびプレロードを加えK_0過圧密状態にした場合の過圧密比の影響について調べた。さらに繰返しせん断破壊に至らなかった供試体について、残留水圧と体積変化およびその後の非排水せん断特性について検討を加えた。本研究で得られた主な成果は以下のようにまとめられる。(1)等方、K_0正規圧密およびK_0過圧密されたロームの場合、非排水繰返しせん断破壊は通常の静的非排水せん断試験より求められる破壊線上で破壊する。(2)軸ひずみと偏差応力の繰返し回数(ε_a=5%,N=20)で定義した動的強度および上限降伏値は、静的強度と比較し、プレロードによる強度増加はあまり期待できない。また上限降伏値とそれに対応する静的強度比は過圧密比の増加とともに減少する傾向にある。したがってプレロードによって静的強度が増加しても、動的強度も同じように増加すると考えるのは危険である。(3)松井、安原らの粘土に関する研究と同様に、残留水圧から求められる有効応力増加量と体積変化の関係は過圧密比等に関係なくユニークな一つの直線で表すことができる。(4)繰返し載荷後の再圧密による強度増加は、K_0正規圧密された供試体については再圧密による有効応力増分に比例して増加する。しかし、K_0過圧密では強度増加は期待できず、ほぼ繰返し載荷前の強度と一致する。これは繰返し載荷による土骨格構造の変化と再圧密による強度増加が丁度一致したためと考える。(5)繰返し載荷後、再圧密された供試体の変形係数(E_<50>)は、たとえ再圧密により強度増加しても繰返し載荷応力の大きいものほどE_<50>は減少する傾向にある。またOCRが大きく、主応力反転の影響を大きく受けるものほど強度や変形係数の低下傾向はより顕著に表れる。本研究では、種々の条件で圧密した粘土(関東ローム)について一連の繰返し三軸試験を行った。実験は、動的強度と静的強度の比較検討において、K_0正規圧密およびプレロードを加えK_0過圧密状態にした場合の過圧密比の影響について調べた。さらに繰返しせん断破壊に至らなかった供試体について、残留水圧と体積変化およびその後の非排水せん断特性について検討を加えた。本研究で得られた主な成果は以下のようにまとめられる。(1)等方、K_0正規圧密およびK_0過圧密されたロームの場合、非排水繰返しせん断破壊は通常の静的非排水せん断試験より求められる破壊線上で破壊する。(2)軸ひずみと偏差応力の繰返し回数(ε_a=5%,N=20)で定義した動的強度および上限降伏値は、静的強度と比較し、プレロードによる強度増加はあまり期待できない。また上限降伏値とそれに対応する静的強度比は過圧密比の増加とともに減少する傾向にある。したがってプレロードによって静的強度が増加しても、動的強度も同じように増加すると考えるのは危険である。(3)松井、安原らの粘土に関する研究と同様に、残留水圧から求められる有効応力増加量と体積変化の関係は過圧密比等に関係なくユニークな一つの直線で表すことができる。(4)繰返し載荷後の再圧密による強度増加は、K_0正規圧密された供試体については再圧密による有効応力増分に比例して増加する。しかし、K_0過圧密では強度増加は期待できず、ほぼ繰返し載荷前の強度と一致する。これは繰返し載荷による土骨格構造の変化と再圧密による強度増加が丁度一致したためと考える。(5)繰返し載荷後、再圧密された供試体の変形係数(E_<50>)は、たとえ再圧密により強度増加しても繰返し載荷応力の大きいものほどE_<50>は減少する傾向にある。またOCRが大きく、主応力反転の影響を大きく受けるものほど強度や変形係数の低下傾向はより顕著に表れる。繰返し応力を受ける粘土地盤の工学的問題を評価するためには、繰返し応力によって残留する過剰間隙水圧を十分に把握することが重要と考えている。平成4年度は手始めとして、繰返し応力を受けることによって累積される過剰間隙水圧による有効応力の低下を調べる。次にこの累積された過剰間隙水圧の消散による再圧密沈下や圧密終了後の強度増加を検討する。以上のように、粘性土地盤の沈下や安定に対する工学的問題として設計に必要な基本パラメータを求める目的で、沖積粘土および関東ロームについて以下の室内実験を実施した。1.等方圧密条件下での静的繰返し非排水三軸試験2.K_0圧密条件下での静的繰返し非排水三軸試験3.等方圧密条件下での動的繰返し非排水三軸試験4.K_0圧密条件下での動的繰返し非排水三軸試験5.上記試験終了後残留水圧による圧密試験および非排水三軸圧縮試験以上の実験より得られた主な知見は以下の通りである。1)繰返し応力によって累積残留する過剰間隙水圧の大きさは載荷重レベルや動的・静的載荷条件に関係なく残留ひずみで規定できそうである。 | KAKENHI-PROJECT-04650444 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04650444 |
繰返しせん断を受ける粘土の強度および変形に関する研究 | 2)残留水圧消散による再圧密沈下量(体積変化)は動的・静的の載荷形式に関係なく残留水圧の大きさによって決まる。また、体積変化と応力減少比(初期圧密応力ー残留水圧)/初期圧密応力)との関係より求められる再圧縮指数C_rは一定で、その大きさは、圧縮指数C_c>再圧縮指数C_r>膨張指数C_sであった。3)再圧密による強度増加は残留水圧と等価な有効応力増分に比例して強度増加する。また非排水三軸圧縮試験より求められるせん断抵抗角は繰返し履歴の影響は受けない。平成5年度では、以上の基礎実験結果を基に、さらに異方圧密および周波数の影響を検討すると共に(繰返し載荷→再圧密)を数回繰り返し行い、残留水圧の変化や再圧密沈下量の増減の検討を加えていく。飽和地盤に繰返し荷重が作用すると間隙水圧が上昇し、有効応力は減少する。砂地盤の場合には間隙水圧がさらに上昇して液状化に至ることもある。粘土地盤の場合には、繰返し載荷によって発生した過剰間隙水圧の一部は、地盤内に残留しその後消散するため圧密沈下の原因になると考えられる。このような飽和粘性土地盤の変形挙動は不明な点も多く繰返し載荷履歴を繰返し受けた場合に発生すると考えられる圧密沈下量は無視しうる大きさか否か明らかでない。当該年度では、等方およびK_0条件で圧密された火山灰質粘性土(関東ローム)について、繰返し三軸圧縮試験を行い、供試体内に残留する過剰間隙水圧の挙動およびその水圧消散による体積変化を調べ、次に再圧密による強度増加特性を検討した。得られた主な成果は、以下の通りである。1.残留水圧消散による再圧密沈下量(体積変化)は、等方およびK_0等の圧密条件によらず残留水圧の大きさによって決まる。また、体積変化と応力減少比((初期圧密応力-残留水圧)/初期圧密応力)との関係より求められる再圧縮指数C_rは一定で、その大きさは、圧縮指数C_c>再圧縮指数C_r>膨張指数C_sであった。2.繰返し載荷による再圧密履歴を受ける度に間隙水圧の残留量は大きく減少し、繰返し載荷の抵抗性が増加する。3.繰返し載荷によって再圧密された場合の強度増加特性は長期圧密による強度増加と類似の傾向にある。現在さらに、同様な実験を過圧密条件についても行い、どの程度のプレロードを加えると繰返し荷重による抵抗性が増加するかを安全性の面からの検討を行なっている。地震時の安定問題で動的強度をどのようにして求め適用していくかについては重要な問題である。粘土の場合、砂と異なり圧密応力条件により繰返し載荷中に発生する発生する過剰間隙水圧の挙動についても不明な点も多く、強度に影響するより多くの因子をもっており複雑である。当該年度の研究では、主にK_0正規圧密およびプレロードを加え過圧密された供試体について繰返し三軸試験を実施して動的挙動の基礎的把握を行い、静的非排水強度と比較検討した。得られた主な研究成果は、以下の通りである。1.繰返しせん断試験より求められる上限降伏値および(ε_p=5%,N=20)で定義した動的強度は、静的強度と比較してプレロードによる強度増加はあまり期待できない。また上限降伏値とそれに対応する静的強度との比は過圧密比の増加とともに減少する傾向にある。したがってプレロードによって静的強度が増加しても、動的強度も同じように増加すると考えるのは非常に危険である。2.K_0正規圧密の場合、繰返しせん断破壊は通常の静的等方圧密CU試験より求められる限界状態線上で破壊する。しかしK_0過圧密の繰返し破壊では、限界状態線を越えたところで破壊に至っている。 | KAKENHI-PROJECT-04650444 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04650444 |
2018年度には,まず,これまでの研究成果として,マッチングに関する実験結果を国内外の査読付き学会にて発表した.学校選択問題は医師と研修先病院のマッチングとまったく同じ構造を持っている.その実験では,被験者の認知能力と彼らへの情報の与え方によって,生徒の学校に対する割当の効率性にどのような差異が生じるかを計測した.この成果は,評価の定まった国際専門誌にて刊行することを目標に,英文校閲を含む原稿の精査を行っている最中であり,近日中の投稿を予定している.また,前年度までに収集したアンケートデータを整理し,医師と初期臨床研修先の病院のマッチングだけではなく,彼らのキャリア形成と医師の就職市場を含む分析を行うための基礎データセットの作成を進めている.次年度からは,これらの成果を基に,重層的なマッチングメカニズムの理論的考察を開始する.その取り組みの端緒として,2018年末には「マッチング理論の社会実装」に関するワークショップを開催し,国内外の参加者にご参加いたただき,多様な意見を拝聴する機会を得た.以上は全体の総括ではあるが,本研究の各班では次の成果が得られた.(1)2004年の初期臨床研修必修化によって,人口あたりの眼科医数の地域差にどのように変化したかを検証した.その結果、臨床研修必修化後は他の専門科に比べて眼科医の地域差は減少したことが判った.(2)マッチング市場において,市場構造が内生的に生じるようなモデルを定式化し,全ての経済主体が正直である部分完全均衡の主体特徴付けを行った.昨年度までに収集したデータには,初期研修後の医師のキャリア開発の観点からみて,医療機関と医師のマッチングに関わる重要な部分について欠落している調査項目があることが判ってきた.そのため,研究成果の公表自体についてはやや遅れ気味ではある.しかし,どのようなデータが必要であるかが明確になったため,今年度には,就職先医療機関に対する医師の選好に関するアンケート調査を実施し,データを追加収集する.実験については,研究成果の公表がなされており,ワークショップ開催による研究者の交流にも寄与している.2018年度に引き続き,2019年度も実証研究に重点をおく.特に,就職先医療機関に対する医師の選好に関するアンケート調査を実施し,医師の就職市場を「再交渉可能な入札モデル」として捉え,マッチングとは異なる構造をメカニズムの観点からのデータ解析にも着手する.昨年度までに収集したデータには,従来のマッチング理論の観点からでは気がつかなかった点があり,医療機関と医師のマッチングに関わる重要な部分について欠落している調査項目があることが判ってきた.2019年度のアンケート調査ではその部分を補いうるデータを収集する.この調査と並行して,医療機関と医師のマッチングに用いられている仕組みの性能を経済実験によって評価する.理論面では,こうした実証研究と経済実験の成果を踏まえた発展的研究を準備する.年度末には,医療経済ワークショップを開催し,研究成果を広く公開するとともに,日本の医療制度に関わる研究者の交流を促進する.このように,本研究では,理論に依拠して設計された制度の事後評価とそのためのデータ収集に重点をおいてきたが,我々研究メンバーは,初期研修における医療機関と医師のマッチングのみならず,その後の医師のキャリア形成に踏み込んだ制度の改善をめざしており,国内外の研究者,医師,病院と共同で,今後も継続して取り組んでいく.本プロジェクトは実証班による調査,実験班による経済実験,理論班による数理モデルの検討からなり,それぞれを担当する班が代表者の統括の下で連携を取り合いながら,研究が進められた.理論研究は,本質的には調査と実験の成果を土台とするため,H29年度には他の研究の方向性とはやや独立に進められたが,医師と研修先病院のマッチングを念頭においた理論モデルにおいて,既存研究の問題点を改善する成果が得られた.調査においては,7名の医師に対するインタビューを事前に行った上で,1000人を越える医師に対するアンケート調査を実施した.そこでは,2004年の医師臨床研修必修化とそれに伴うマッチングの導入,2010年に行われたその修正が医師のキャリア選択にどのような変化をもたらしたかを検証しうる質問項目を用意した.日本では伝統的に医局と呼ばれる組織が医師のキャリアを規定してきたが,最近の医局への加入率の低下がもたらす医療体制の変化は医師のキャリア選択に関する意識と表裏一体である。実験においては、医師と研修先病院のマッチングに実際に用いられている仕組みの性能を被験者の認知能力や彼らに開示される情報によって評価した.この実験は本プロジェクトの準備段階から既に開始されており,理論研究の成果を検証するための実験の仕様について,重要な知見が得られた.以上の成果は既に,それぞれ,論文としてまとめられ,国際学会での発表と査読付き国際専門誌への投稿が準備されている.現行のマッチング制度では,病院間の受入定員が調整されていないため,地域間で研修医の偏在が生じている.この問題に対して,最新の文献では,地域の定員に上限を定めたモデルを構築されたが,医師にとってより望ましい(効率的)マッチングを導けるわけではない.理論班では,上記既存文献の欠点を解消するメカニズムを開発した.H29年度には,実証班が医師側のアンケート調査を実施したので,H30年度にはそのデータを基にしたシミュレーションを実施することで,マッチング制度のより望ましい形を検討する.実証班では,H29年度に行ったアンケート調査のデータを解析しつつ,H30年度に実施する病院側の調査を準備している.H29年度に行った医師側へのアンケートでは,20項目からなる質問に回答がなされ,医師のキャリア選択に関する詳細なデータを収集することができた. | KAKENHI-PROJECT-17H06190 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H06190 |
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実験班では,4つの病院4人の医師からなるマッチング状況をネットワークで接続された計算機を用いた環境において,被験者を医師役として実験を行った.そこでは,現行のマッチング制度が導く特徴的な行動が実際にはどの程度選択されうるかを検証するために,意図的に少ない病院と少ない医師からなる状況を設定した.結果として,理論班の成果を被験者実験によって検証するために必要な実験の仕様を確定することができた.上記3班による研究成果はディスカッション・ペーパーとしてまとめられつつあり,評価の定まった査読付き国際会議での発表を許可されている.以上より,本研究はかなり順調に進展していいるといえる.2018年度には,まず,これまでの研究成果として,マッチングに関する実験結果を国内外の査読付き学会にて発表した.学校選択問題は医師と研修先病院のマッチングとまったく同じ構造を持っている.その実験では,被験者の認知能力と彼らへの情報の与え方によって,生徒の学校に対する割当の効率性にどのような差異が生じるかを計測した.この成果は,評価の定まった国際専門誌にて刊行することを目標に,英文校閲を含む原稿の精査を行っている最中であり,近日中の投稿を予定している.また,前年度までに収集したアンケートデータを整理し,医師と初期臨床研修先の病院のマッチングだけではなく,彼らのキャリア形成と医師の就職市場を含む分析を行うための基礎データセットの作成を進めている.次年度からは,これらの成果を基に,重層的なマッチングメカニズムの理論的考察を開始する.その取り組みの端緒として,2018年末には「マッチング理論の社会実装」に関するワークショップを開催し,国内外の参加者にご参加いたただき,多様な意見を拝聴する機会を得た.以上は全体の総括ではあるが,本研究の各班では次の成果が得られた.(1)2004年の初期臨床研修必修化によって,人口あたりの眼科医数の地域差にどのように変化したかを検証した.その結果、臨床研修必修化後は他の専門科に比べて眼科医の地域差は減少したことが判った.(2)マッチング市場において,市場構造が内生的に生じるようなモデルを定式化し,全ての経済主体が正直である部分完全均衡の主体特徴付けを行った.昨年度までに収集したデータには,初期研修後の医師のキャリア開発の観点からみて,医療機関と医師のマッチングに関わる重要な部分について欠落している調査項目があることが判ってきた.そのため,研究成果の公表自体についてはやや遅れ気味ではある.しかし,どのようなデータが必要であるかが明確になったため,今年度には,就職先医療機関に対する医師の選好に関するアンケート調査を実施し,データを追加収集する.実験については,研究成果の公表がなされており,ワークショップ開催による研究者の交流にも寄与している. | KAKENHI-PROJECT-17H06190 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H06190 |
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非アルコール性脂肪性肝炎の新たな予防戦略:血圧と栄養管理の重要性に関する研究 | 血圧正常(WKY)と高血圧ラット(SHRとSHRSP5/Dmcr)にHFC食を与え、NASH発症の違いを比較した。高血圧ラットには重度のNASHが観察されたが、血圧正常ラットは軽度の変化であった。高血圧動物ではHFC食摂取によりTGFβ/MAPKのシグナルの上昇がみられたが、Nrf2系のシグナルは抑制され、HO-1の発現上昇も抑えられた。SHRラットにHFCと降圧剤を併用し、NASH進展抑制効果を観察した。降圧剤介入はHFC食によるNASHを有意に低下させた。降圧剤はHFC誘導性の肝炎や線維化に関連した分子シグナルの上昇を抑制した。NASHの予防には脂質と血圧コントロールが必要である。自然高血圧易発症ラット(SHR)と高血圧であり、重度線維症進展ラット(SHRSP5/Dmcr)およびこれらの系統元であるが血圧正常ラット(WKY)にHFC食を8週間曝露し、肝臓の炎症・線維症の進展を病理学的、生化学的、分子生物学的(TNFα系、NF-κB系、MAPK系、TGFβ系、Keap1-Nrf2系)に検討した。病理学的には3系統肝に明らかな肝障害の程度の差が認められ、炎症・線維症共にSGRSP5/Dmcr>SHR>WKYであった。WKYでは他の2系統に見られたバルーニングや大脂肪滴および線維症の発現は軽度かほとんど観察されなかった。HFC食による3系統ラット肝臓の炎症シグナリングの影響にも、差異が認められるものと認められないものに大別された。WKY、SHR、SHRSP5/Dmcr3系統に差が認められないが上昇したのは血清のTNFα、肝臓のMAPK系の炎症関連因子であった。WKYに軽度か全く影響がみられないが、しかしSHRとSHRSP5/Dmcrに影響が認められたのはNF-κB系とKeap1-Nrf2系の炎症シグナリング系であった。前者は古典的な炎症系であり、後者は第II相の薬物代謝酵素のHO-1を介してビリルビンの生成に関連するものである。また炎症にかかわるTGFβ1は線維症発症にも関連しており、その発現がWKYでは全く増えないが、SHRとSHRSP5/Dmcrでは明らかに上昇していた。これらの炎症シグナリングへの影響の系統差が炎症や線維症、肝細胞のバルーニング変化等の病理的変化に関連していると解された。血圧の異なる3系統ラット(WKY、SHR、SHRSP5/Dmcr)にHFC食を与えた場合の炎症に関わる分子伝達経路の差異は判明した。血圧単独の影響(CYP7A1、Keap1-Nrf2)もある程度判明したが、血圧と高脂肪-高コレステロールの相互作用はまだ解明されていない。この解明は次年度の課題である。また、線維症進展への分子メカニズムの系統差はTGFβ1を解析したのみで、少し遅れている。これはポスドク雇用が7月であったため、少し実験の進捗が遅れていることに起因するが、解析は間もなく終了するので、問題ない。8週齢の高血圧自然発症ラット(SHR)を4群に分け、対照群、降圧剤のヒドララジン群、ヒドララジンに高脂肪ー高コレステロール食(HFC食)介入群(以下ヒドララジン介入群とする)およびHFC食群とした。16週齢で全群解剖し、血液と肝臓を採取した。血液は血清を分離し、肝臓は一部を病理用にホルマリン固定した残りを、それぞれー80°Cで実験まで保存した。ヒドララジンはHFC投与にかかわらず血圧を20%程度低下させた。ヒドララジン介入はHFC食による血清TNFαを有意に抑制したが、TGFβ値には影響を与えなかった。肝/体重比の増加や血清コレステロール値、ASTやALT,γGTP値の上昇も抑制した。病理的にはHFC食による脂質の蓄積と線維化の上昇を抑制した。HFCによる肝臓の線維性コラーゲン遺伝子(Col1a1)発現を明らかに抑制し、線維芽細胞に含まれるα平滑筋アクチン(αSMA)を抑制傾向にあった。HFC介入による胆汁酸合成(CYP7A1, CYP27A1,CYP8B1, CYP7B1のmRNA)・排泄(血中排泄のMRP3と胆管排泄のBSEPmRNA)・解毒(UGTとSULTのアイソザイムmRNA)にかかわる酵素やプロモーターの変化には影響を与えなかった。UGT2B7mRNAに関しては例外で、ヒドララジン介入はHFC食による低下を抑制していた。このアイソフォームは胆汁酸の解毒に関与しているので、今後UGT活性を測定して、ヒドララジンの胆汁酸解毒作用について考察する予定である。以上の結果は、血圧がNASH進展にかかわっていること、また、降圧剤介入はNASH予防に寄与すること、ヒドララジンの作用機序としてはTNFα下流の炎症シグナルに作用することが想定される。血圧を下げることがNASHの発症・進展を予防することを証明した。降圧剤としては、末梢血管拡張剤のヒドララジンが有効であった。降圧剤のメカニズムとして、TNFαを介した炎症シグナル伝達系にヒドララジンが作用し、NASH発症や進展予防することが明らかとなった。したがってHFC食と降圧剤介入のNASH発症・進展の相互作用のメカニズムを明らかにするという初期の目的は達成できたと考えている。 | KAKENHI-PROJECT-15H04788 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H04788 |
非アルコール性脂肪性肝炎の新たな予防戦略:血圧と栄養管理の重要性に関する研究 | 高血圧易自然発症ラット(SHR)に高脂肪ー高コレステロール食(HFC)と降圧剤(ヒドララジン)を併用し、降圧剤による肝炎・線維症進展抑制効果を観察した。降圧剤はSHRラットの血圧を3050mmhg下げた。降圧剤介入はHFC食による肝腫大、肝臓逸脱酵素(ALT、AST、GGT)の上昇、肝臓や血清の脂質(トリグリセライドとコレステロール)の増加を抑制した。病理的にはバルーニング細胞を減少させ、細胞線維化面積も減少させた。CD68抗体を用いた免疫染色を行ったところ、HFG食群の肝臓にはCD68陽性細胞が線維の周囲に集積していたが、降圧剤は明らかに陽性細胞を減少させた。HFC食群の血清TNFαは著しく上昇していたが、降圧剤はその上昇を著しく減少させた。一方、HFC食は血清TGFβも上昇させたが、降圧剤はその上昇を抑制することはなかった。HFC食は線維合成に関わるCol1A1や血小板由来成長因子(PDGFβR)、α平滑筋アクチン(αSMA)の肝臓での発現を上昇させたが、降圧剤はこれらの発現上昇を抑制した。HFC食は細胞外マトリックスである血清のメタロプロテアーゼインヒビター(TIMP1)やマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)の遺伝子発現を上昇させた。降圧剤はTIMP-1の発現上昇を抑制したが、MMPsに影響を与えることはなかった。このように、降圧剤のヒドララジンはHFC誘導性の肝炎・線維化を抑制(TBFα、CD68、Col1A1、PDGFβR、TIMP-1の発現上昇を抑制)することが明らかとなった。NASH予防には脂質制限も重要であるが、血圧コントロールも忘れてはならないことを示唆するデータである。血圧正常(WKY)と高血圧ラット(SHRとSHRSP5/Dmcr)にHFC食を与え、NASH発症の違いを比較した。高血圧ラットには重度のNASHが観察されたが、血圧正常ラットは軽度の変化であった。高血圧動物ではHFC食摂取によりTGFβ/MAPKのシグナルの上昇がみられたが、Nrf2系のシグナルは抑制され、HO-1の発現上昇も抑えられた。SHRラットにHFCと降圧剤を併用し、NASH進展抑制効果を観察した。降圧剤介入はHFC食によるNASHを有意に低下させた。降圧剤はHFC誘導性の肝炎や線維化に関連した分子シグナルの上昇を抑制した。NASHの予防には脂質と血圧コントロールが必要である。NASHは高血圧や高コレステロール食それぞれ単独では進展しない。降圧剤とHFC食、特に高コレステロールとの組み合わせによってNASHは進展するので、その相互作用についての解明に焦点を当てて研究する。この動物では胆汁酸の生成およびその解毒酵素(薬物代謝酵素の抱合酵素)発現がキーとなるので、降圧剤とコレステロールによって胆汁酸の生成および解毒がどのように修飾されるか明らかにする。第一に胆汁酸を現在開発中の方法で測定すること、第2に胆汁酸合成の主酵素CYP7A1やCYP27A1、また排泄にかかわるトランスポーター(MMP2やBSEP)、解毒であるUGT活性およびそのアイソフォーム(UGT1a3/4)およびSULTの発現と、これらのプロモーターであるCARやPXR等の核内受容体の発現、またNrf2の発現が抑制されているため、同じ薬物代謝酵素の抱合酵素であるHO-1を測定することにより、胆汁酸濃度との関連性を解明し、血圧とコレステロールの相互作用を解明していく。28年度の研究で、降圧剤ヒドララジン介入はTNFα系の炎症を抑制して、NASH発症・進展を予防することが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-15H04788 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H04788 |
糖脂質含有膜における強相関的な集合構造の動的制御と認識機能の解析 | 本研究では生体膜モデルである単分子膜を用いた糖脂質のドメイン構造の形成機構の要因である非共有結合について解析し、脂質膜構造と受容体機能との関連を解析する。これらの実験に基づいて、生体成分の吸着膜の構造制御と高機能化を達成する。さらに、糖鎖と類似の機能を有するペプチド脂質を開発し、糖脂質と同様に脂質膜構造の解析と機能評価を行う。スフィンゴ糖脂質を含んだ脂質組成の気-液界面単分子膜を作製した。単分子膜をマイカ基板などに累積して、脂質膜組成に依存したドメイン構造について原子間力顕微鏡(AFM)を用いて直接観察を行う。糖脂質含有膜をマイカ基板に累積し、気相中および溶液中でのAFMでの集合構造の観察を行ったところ、糖脂質とリン脂質が混ざり合っていないドメイン構造が観察された。そのドメインの形状やサイズは糖脂質やリン脂質の種類に依存していた。これにより、生体膜中においてもグリセロリン脂質とスフィンゴ糖脂質は混ざり合うことなく別々のドメインを形成している可能性を支持していた。糖鎖の認識はペプチドで置き換えることができる。インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)は、宿主細胞の細胞膜のGM3やシアル化ルイスX等の糖脂質を受容体としている。ヘマグルチニンに結合できる糖鎖レプリカペプチドをライブラリーから検索し、インフルエンザウイルスを特異的に吸着する材料や抗ウイルス薬として利用することが期待できる。そこで、ファージライブラリー法を用いてH1型およびH3型ヘマグルチニンに特異的に結合するペプチドのセレクションを行った。これにより二つのヘマグルチニンに結合する共通のペプチド配列が得られた。得られたHAに結合性を有するペプチドをリポソーム表面に固定化したところ、両亜型のインフルエンザウイルスのMDCK細胞への感染を阻害することが見いだされた。本研究では生体膜モデルである単分子膜を用いた糖脂質のドメイン構造の形成機構の要因である非共有結合について解析し、脂質膜構造と受容体機能との関連を解析する。これらの実験に基づいて、生体成分の吸着膜の構造制御と高機能化を達成する。さらに、糖鎖と類似の機能を有するペプチド脂質を開発し、糖脂質と同様に脂質膜構造の解析と機能評価を行う。スフィンゴ糖脂質を含んだ脂質組成の気-液界面単分子膜を作製した。単分子膜をマイカ基板などに累積して、脂質膜組成に依存したドメイン構造について原子間力顕微鏡(AFM)を用いて直接観察を行う。糖脂質含有膜をマイカ基板に累積し、気相中および溶液中でのAFMでの集合構造の観察を行ったところ、糖脂質とリン脂質が混ざり合っていないドメイン構造が観察された。そのドメインの形状やサイズは糖脂質やリン脂質の種類に依存していた。これにより、生体膜中においてもグリセロリン脂質とスフィンゴ糖脂質は混ざり合うことなく別々のドメインを形成している可能性を支持していた。糖鎖の認識はペプチドで置き換えることができる。インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)は、宿主細胞の細胞膜のGM3やシアル化ルイスX等の糖脂質を受容体としている。ヘマグルチニンに結合できる糖鎖レプリカペプチドをライブラリーから検索し、インフルエンザウイルスを特異的に吸着する材料や抗ウイルス薬として利用することが期待できる。そこで、ファージライブラリー法を用いてH1型およびH3型ヘマグルチニンに特異的に結合するペプチドのセレクションを行った。これにより二つのヘマグルチニンに結合する共通のペプチド配列が得られた。得られたHAに結合性を有するペプチドをリポソーム表面に固定化したところ、両亜型のインフルエンザウイルスのMDCK細胞への感染を阻害することが見いだされた。 | KAKENHI-PROJECT-13031070 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13031070 |
血管病発症におけるシグナル伝達機構の解明および分子標的治療法の探索 | 血管平滑筋の異常収縮である血管攣縮は、狭心症、心筋梗塞、脳血管障害などの急性発症で重篤な疾病を引き起こし、上記疾患の合計死亡数は、がんとほぼ並んで我が国の死因の第2位となり、突然死の主因として恐れられているにも拘らず、根本的な治療法が見つかっていない。本研究では新規分子創薬標的探索のため、血管攣縮シグナル『スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)→Fyn→Rhoキナーゼ(ROK)』経路中、プルダウンアッセイと質量分析計によりFyn下流に存在する新規分子paxillinを発見した。更に表面プラズモン共鳴法により、活性型Fynとpaxillinとの結合部位を同定した。血管平滑筋の異常収縮である血管攣縮は、狭心症、心筋梗塞、脳血管障害などの急性発症で重篤な疾病を引き起こし、上記疾患の合計死亡数は、がんとほぼ並んで我が国の死因の第2位となり、突然死の主因として恐れられているにも拘らず、根本的な治療法が見つかっていない。本研究では、細胞接着斑タンパク質paxillinとFynとの相互作用の詳細、およびその相互作用の血管異常収縮制御機構への関与について、解明する。平成27年度にpaxillinとFynとの相互作用の詳細について、2分子の相互作用の部位および活性制御のメカニズムを分子レベルで解明した。平成27年度は以下の研究成果を得た。1. paxillinのN末端とC末端フラグメントを作成し、大腸菌の系で発現・精製した。3.表面プラズモン共鳴法により、活性型FynはpaxillinN末端と結合し、C末端と結合しないことを明らかにした。また、非活性型FynはpaxillinN末端とC末端ともに結合しないことがわかった。4. paxillinのリン酸化について、特異的部位チロシンリン酸化抗体でpaxillinのチロシンリン酸化を調べた。本研究では、細胞接着斑タンパク質paxillinとFynとの相互作用の詳細、および、その相互作用の血管異常収縮制御機構への関与について解明するという目的で、平成27年度は研究計画に沿って研究を遂行できている。具体的には、paxillinのフラグメントを作成し、大腸菌の系で発現と精製も成功した。活性型Fynと非活性型Fynもバキュロウイルス遺伝子発現ベクター系で発現・精製することも成功した。さらに分子レベルでpaxillinとFynとの相互作用の部位を解明した。以上の事より、本研究は概ね順調に進展していると評価した。脳卒中、狭心症、心筋梗塞などの血管病は、合計すると我が国死因の第2位であり、また、突然死の主原因となる致死的難病でもある。血管病治療の突破口を開くため、血管病発症におけるシグナル伝達機構の解明が必須である。本研究では、血管異常収縮の病的シグナル『SPC→Fyn→Rhoキナーゼ』経路の中、Fyn下流新規異常収縮シグナル分子として細胞接着斑タンパク質paxillinを発見した。平成28年度は下記の成果を得た。1.すでに、平成27年度にpaxillinのチロシンリン酸化の変化を調べた結果より、Fynによるpaxillinのチロシンのリン酸化が血管異常収縮に関与しているかを解明するため、paxillinのチロシンリン酸化部位の変異体の作成ができた。2.レンチウイルスを用いて、半永久paxillinノックダウンの血管平滑筋細胞を作成した。血管異常収縮の原因分子であるSPCで刺激して、血管平滑筋細胞収縮を観察、解析ができた。本研究課題について、細胞接着斑タンパク質paxillinとFynとの相互作用が血管異常収縮制御機構への関与を解明するため、まず、分子レベルでpaxillinとFynとの相互作用の部位及びFynによるpaxillinのチロシンのリン酸化を解明した。次に、細胞・組織・生体レベルでpaxillinとFynとの相互作用が血管平滑筋異常収縮に関与するかの証明が必要である。そのため、血管平滑筋細胞を用いて、paxillinをノックダウンし、SPCで刺激すると、収縮を抑制した。こちらの結果より、paxillinが細胞レベルで血管異常収縮に関与することが示唆された。血管平滑筋の異常収縮である血管攣縮は、狭心症、心筋梗塞、脳血管障害などの急性発症で重篤な疾病を引き起こし、上記疾患の合計死亡数は、がんとほぼ並んで我が国の死因の第2位となり、突然死の主因として恐れられているにも拘らず、根本的な治療法が見つかっていない。血管平滑筋の異常収縮のメカニズムを解明するため、血管攣縮の病的シグナル『スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)→Fyn→Rhoキナーゼ(ROK)』経路の中、新規シグナル分子paxillinを同定した。本研究では、paxillinとFynとの相互作用の、血管攣縮への関与のメカニズムについて、2点を解明することを目的とする。1Fyn下流新規異常収縮シグナル分子としてpaxillinと、Fynとの相互作用の詳細の解明。2paxillinとFynとの相互作用の血管攣縮の制御機構への関与についての解明。本研究により、paxillinとFynとの相互作用の、血管攣縮への関与のメカニズムを解明すれば、その相互作用を阻害する分子治療薬を探索・開発し、血管攣縮治療の突破口を開く事ができる。 | KAKENHI-PROJECT-15K18970 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K18970 |
血管病発症におけるシグナル伝達機構の解明および分子標的治療法の探索 | PaxillinとFynとの相互作用を解明するため、まず分子レベルで組換えタンパク質paxillinのフラグメント(大腸菌で発現・精製)と組換えFyn(バキュロウイルスの系で発現・精製)を用いて、表面プラズモン共鳴法による分子間の直接の相互作用解析によりpaxillinとFynの相互作用の部位を解明した。更に、細胞レベルでpaxillinフラグメント1と活性型Fynを同時に過剰発現し、免疫染色でpaxillinフラグメント1と活性型Fynとの細胞内の共局在したことが観察された。今後、生体レベルで血管平滑筋特異的paxillinコンディショナルノックアウト(paxillin CKO)マウスを用いて、paxillinと血管攣縮との関連および機序を解明したい。血管平滑筋の異常収縮である血管攣縮は、狭心症、心筋梗塞、脳血管障害などの急性発症で重篤な疾病を引き起こし、上記疾患の合計死亡数は、がんとほぼ並んで我が国の死因の第2位となり、突然死の主因として恐れられているにも拘らず、根本的な治療法が見つかっていない。本研究では新規分子創薬標的探索のため、血管攣縮シグナル『スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)→Fyn→Rhoキナーゼ(ROK)』経路中、プルダウンアッセイと質量分析計によりFyn下流に存在する新規分子paxillinを発見した。更に表面プラズモン共鳴法により、活性型Fynとpaxillinとの結合部位を同定した。今後、研究計画書の通りに、細胞・組織・生体レベルでpaxillinとFynとの相互作用が血管平滑筋異常収縮に関与するかを証明する。研究はほぼ順調に進行しており、現時点では問題点を見出していない。これから、研究計画の通りに、組織・生体レベルで機能解析を進めたい。分子細胞生理学本年度の実験内容に変更はなかったが、当初予定していた実験試薬の変更により、38,583円未使用額が生じた。本年度の実験内容に変更はなかったが、当初予定していた実験試薬の変更により、5,412円未使用額が生じた。この未使用額については、平成28年度の実験試薬の購入に充てる。この未使用額については、平成29年度の実験試薬の購入に充てる。 | KAKENHI-PROJECT-15K18970 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K18970 |
UAVリモートセンシングによる土砂災害地の即時地質判読 | 2018年度は研究実施計画に従い、液晶波長可変フィルタ(LCTF)カメラを無人航空機(UAV)に搭載し、野外で撮影を行った。カメラの重量が大きく、形状による重量バランスが不均質であるため、空撮を依頼する業者の探索に多くの時間を費やした。最終的に海外と国内において空撮会社を探すことに成功し、国内外でLCTFカメラを用いた空撮を実施することができた。海外では、セルビア共和国の銅鉱山やその周辺の河川沿いで、国内では奈良県香芝市の白い岩盤が露出する景勝地であるどんずるぼうで実施した。当初の予定では秋田県内の地すべり地で実施する予定であったが、業者の検索に時間を要したため、撮影時期には秋田県内に雪が積もり始めてしまっていた。そこで、気候、撮影条件、許可申請、アクセスなどを考慮してどんずるぼうを撮影地とした。セルビアではLCTFカメラで取得する際に携帯用分光分析計でスペクトル特性を採取し、さらに地表面物質を採取しその鉱物組成をXRD分析により実験室で求めた。どんずるぼうでは、試料採取の許可を得ていなかったため、画像の取得のみであったが、LCTFデータのほかに、可視画像、高精度GPSデータ、熱赤外データも併せて取得した。いずれも空撮および画像の取得は成功し、空撮会社との協力体制、今後の緊急時の依頼体制などが確立された。一方で、データは解析の途中である。その中で、セルビアでは高度150mで撮影したため、位置調整が困難であることが判明した。どんずるぼうではそれを受けて、50mの高さで撮影したため、位置調整が可能であり、今後の解析が期待できる。また、可視画像データからは高精度DSMを作成し、画像解析の基盤データとした。どんずるぼうで取得した熱赤外データは岩盤表面の熱分布を示すデータとして、今後応用可能であることが明らかとなった。UAVにLCTFカメラを搭載した空撮を実施するという計画についてはおおむね順調に進展しているが、地すべり地や土砂災害地においての撮影ができていない。これは、この手法がまだ確立していないため、実際の災害地で試すことが危険であると判断したためである。2018年度におおむね順調に空撮ができたため、今後は災害地において調査をしていきたい。一方で、データの解析が進んでいない。これは、LCTFカメラで得られるデータの処理には専門的な知識が必要であり、試行錯誤しながら実施しているためである。2019年度は最終年度であるため、これまでに取得したデータを解析し、成果として国内外で発表し、論文としてまとめていく予定である。また、可能であれば災害地において撮影をしたい。さらに、今後この手法を発展させていくために、UAV空撮業者や土砂災害関係の研究者たちとのネットワークを広げていきたい。土砂災害は地質に依存するため,発生後,迅速に地質を判読する必要がある.近年,立ち入り困難な災害地などで即時に調査できるため無人航空機(UAV)が災害研究に多く利用されている.このUAVに波長分解能が高いハイパースペクトルカメラを搭載した調査により,災害直後の地質判読調査は飛躍的に向上する.本研究では,ハイパースペクトルカメラと同等の波長分解能を持つ安価で軽量な液晶可変フィルタ(LCTF)カメラをUAVに搭載し,土砂災害の即時的な地質分布判読ができるシステムを構築し,災害調査法の発展に寄与することを目的とする.これまでUAVによる災害調査は可視領域の画像や動画取得が主であったが,LCTFカメラは可視領域および近赤領域の画像を高波長分解能で取得することが可能なため、地質判読ができるようになることが期待されている.H29年度はLCTFカメラの立ち上げと基礎データの蓄積を実施した.地表面から採取した土壌試料,標準的な粘土鉱物,岩石,その他標準試料や植生試料を収集し,LCTFカメラで撮影した.現在,実験室内において,撮影の際の取得波長に応じた露出時間,照度の関係を求める試験を実施している.また,撮影した画像は波長ごとに記録されるため,その画像のコンポジット方法や撮影中のずれに対する対応について検討している.一方で,実際のUAVに搭載したLCTFカメラによる画像取得へ向けて,UAVを屋内で飛行する試験を実施した.その際,UAV飛行中にLCTFカメラを操作するためのシステムの構築が必要であることが明らかになり,遠隔操作システムを構築した.また,斜面崩壊の調査対象地の検討を行い,秋田県の由利本荘市,大館市を候補地として現地調査を実施した.これらの方法論や応用・適応分野について秋田県内のイベントにおいて広く一般市民向けに情報発信を行った.2017年度は当初の予定どおり,LCTFカメラを用いた実験実験を実施した.また,2018年度に実施予定のLCTFカメラをUAVに搭載した斜面崩壊地の撮影場所の選定もできた.さらに,LCTFカメラをUAVに搭載して試験飛行できたことは予定よりも早い.しかしながら,LCTFカメラは汎用性のある市販のカメラとは異なり,その操作方法の検討や,得られた画像の処理方法に当初よりも作業が難航している.2018年度は研究実施計画に従い、液晶波長可変フィルタ(LCTF)カメラを無人航空機(UAV)に搭載し、野外で撮影を行った。カメラの重量が大きく、形状による重量バランスが不均質であるため、空撮を依頼する業者の探索に多くの時間を費やした。最終的に海外と国内において空撮会社を探すことに成功し、国内外でLCTFカメラを用いた空撮を実施することができた。 | KAKENHI-PROJECT-17K17613 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K17613 |
UAVリモートセンシングによる土砂災害地の即時地質判読 | 海外では、セルビア共和国の銅鉱山やその周辺の河川沿いで、国内では奈良県香芝市の白い岩盤が露出する景勝地であるどんずるぼうで実施した。当初の予定では秋田県内の地すべり地で実施する予定であったが、業者の検索に時間を要したため、撮影時期には秋田県内に雪が積もり始めてしまっていた。そこで、気候、撮影条件、許可申請、アクセスなどを考慮してどんずるぼうを撮影地とした。セルビアではLCTFカメラで取得する際に携帯用分光分析計でスペクトル特性を採取し、さらに地表面物質を採取しその鉱物組成をXRD分析により実験室で求めた。どんずるぼうでは、試料採取の許可を得ていなかったため、画像の取得のみであったが、LCTFデータのほかに、可視画像、高精度GPSデータ、熱赤外データも併せて取得した。いずれも空撮および画像の取得は成功し、空撮会社との協力体制、今後の緊急時の依頼体制などが確立された。一方で、データは解析の途中である。その中で、セルビアでは高度150mで撮影したため、位置調整が困難であることが判明した。どんずるぼうではそれを受けて、50mの高さで撮影したため、位置調整が可能であり、今後の解析が期待できる。また、可視画像データからは高精度DSMを作成し、画像解析の基盤データとした。どんずるぼうで取得した熱赤外データは岩盤表面の熱分布を示すデータとして、今後応用可能であることが明らかとなった。UAVにLCTFカメラを搭載した空撮を実施するという計画についてはおおむね順調に進展しているが、地すべり地や土砂災害地においての撮影ができていない。これは、この手法がまだ確立していないため、実際の災害地で試すことが危険であると判断したためである。2018年度におおむね順調に空撮ができたため、今後は災害地において調査をしていきたい。一方で、データの解析が進んでいない。これは、LCTFカメラで得られるデータの処理には専門的な知識が必要であり、試行錯誤しながら実施しているためである。2018年度は2017年度に決定した候補地において,UAVにLCTFカメラを搭載して斜面崩壊地の撮影を実施する.前半は,UAV飛行の許可申請や,斜面崩壊地以外の海外における撮影を予定している.海外における撮影において,これまで問題となっていた照度,露出時間,撮影時の波長間の画像のズレなどについて検討し,国内での撮影に備える.2019年度は最終年度であるため、これまでに取得したデータを解析し、成果として国内外で発表し、論文としてまとめていく予定である。また、可能であれば災害地において撮影をしたい。さらに、今後この手法を発展させていくために、UAV空撮業者や土砂災害関係の研究者たちとのネットワークを広げていきたい。実験室内での作業が増えたため,出張や野外調査が当初の予定よりも少なくなったため,次年度使用額が生じた.2018年度は2017年度にできなかった野外調査を実施する予定であるため,そのために次年度使用額を使用する予定である.これまで他の業務により、旅費の使用や謝金の使用に制限があった。そのため、予算申請時の計画に従った予算の執行ができず、次年度使用額が生じた。2019年度は、旅費使用の制限がなくなったため、成果の発表や、調査、研究打ち合わせや研究ネットワークの開拓などに使用していく予定である。 | KAKENHI-PROJECT-17K17613 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K17613 |
日影の身の男たち:戦後日本の軍隊,1945-2005 | 第二次世界大戦後、日本では、軍隊の役割及び「兵士」の意味が大きく変わった。「平和憲法」の制定、教育改革、また強い平和精神の定着により軍への支持は薄れていった。軍隊及び軍隊の理念は、20世紀の後半、世界中で、大きな不信感を持たれるようになったが、日本ほどこの傾向が強く、また永続的だった国はない。この研究は、「日本軍」の戦後の社会史に着目するにあたり、3つのテーマを提示する。第一に、帝国軍と自衛隊の間の組織的、思想的な連続性と断絶性である。第二に、米軍と自衛隊の対等でない同盟関係である。第三に、自衛隊と社会の関係である。自衛隊において目に見える大きな組織的な変化と目に見えない人事的あるいは思想的な連続性が存在したという視点は、今まで論じられてきた日本戦後の政治史と経済史とは異なった新たな歴史的文脈を提示するものと考えている。本研究実績として、自衛隊と米軍と地域社会との関係を探るために次の二つの研究手段をとった。第一に、自衛隊と米軍のやりとりを回顧録、口述歴史、また基地周辺地域でのインタビューによって見直した。この米軍のプレゼンスこそが、自衛隊の存在が不透明である理由の一つであると考えるからである。第二に、地域社会との関係を探る為に、北海道や他の地域で資料収集や隊員および自衛隊関係者とのインタビューを行った。半世紀の間、自衛隊は社会から敵意を受けることなく、関心を持たれず、殆ど尊敬されなかったのが実情であった。組織として、それに対して自衛隊はどういう対策を取ってきたか、また隊員はどういう経験をしてきたか調べた結果、特に災害援助と地域社会への貢献(札幌雪祭りなど)の経過に注目した。第二次世界大戦後、日本では、軍隊の役割及び「兵士」の意味が大きく変わった。「平和憲法」の制定、教育改革、また強い平和精神の定着により軍への支持は薄れていった。軍隊及び軍隊の理念は、20世紀の後半、世界中で、大きな不信感を持たれるようになったが、日本ほどこの傾向が強く、また永続的だった国はない。この研究は、「日本軍」の戦後の社会史に着目するにあたり、3つのテーマを提示する。第一に、帝国軍と自衛隊の間の組織的、思想的な連続性と断絶性である。第二に、米軍と自衛隊の対等でない同盟関係である。第三に、自衛隊と社会の関係である。自衛隊において目に見える大きな組織的な変化と目に見えない人事的あるいは思想的な連続性が存在したという視点は、今まで論じられてきた日本戦後の政治史と経済史とは異なった新たな歴史的文脈を提示するものと考えている。本研究実績として、自衛隊と米軍と地域社会との関係を探るために次の二つの研究手段をとった。第一に、自衛隊と米軍のやりとりを回顧録、口述歴史、また基地周辺地域でのインタビューによって見直した。この米軍のプレゼンスこそが、自衛隊の存在が不透明である理由の一つであると考えるからである。第二に、地域社会との関係を探る為に、北海道や他の地域で資料収集や隊員および自衛隊関係者とのインタビューを行った。半世紀の間、自衛隊は社会から敵意を受けることなく、関心を持たれず、殆ど尊敬されなかったのが実情であった。組織として、それに対して自衛隊はどういう対策を取ってきたか、また隊員はどういう経験をしてきたか調べた結果、特に災害援助と地域社会への貢献(札幌雪祭りなど)の経過に注目した。 | KAKENHI-PROJECT-05F05905 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05F05905 |
レーザピーニングによる3D積層造形金属の疲労強度向上と表面欠陥の無害化 | 本研究では,最先端の表面改質技術であるレーザピーニング(LP)を適用することにより,3D積層造形した金属の疲労強度を向上するとともに,有害な表面欠陥を無害化し高信頼化する技術を構築する。まず,3D積層造形金属の疲労強度特性の評価を行った後,表面欠陥の無害化に対する最適なLP条件を見出す。続いて,LPによる無害化可能な表面寸法の解明を行うとともに,3D積層により生じた表面粗さと表面欠陥の無害化に挑戦する。さらに,3D積層造形材の疲労強度予測方法の構築を行う。これらの成果により,3D積層造形金属の大幅な信頼性向上を達成する。本研究では,最先端の表面改質技術であるレーザピーニング(LP)を適用することにより,3D積層造形した金属の疲労強度を向上するとともに,有害な表面欠陥を無害化し高信頼化する技術を構築する。まず,3D積層造形金属の疲労強度特性の評価を行った後,表面欠陥の無害化に対する最適なLP条件を見出す。続いて,LPによる無害化可能な表面寸法の解明を行うとともに,3D積層により生じた表面粗さと表面欠陥の無害化に挑戦する。さらに,3D積層造形材の疲労強度予測方法の構築を行う。これらの成果により,3D積層造形金属の大幅な信頼性向上を達成する。 | KAKENHI-PROJECT-19H02022 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H02022 |
航空機LiDARによる林内下層植生量推定手法の開発 | 近年水土保全機能や種多様性等の公益的機能増大を目的とした各種間伐事業が急速に行われているが、その有効性や課題を評価するためには、残存木だけでなく、間伐後の侵入・定着が期待される林床の下層植生量の把握が必要である。しかし、林床の下層植生量を広域的かつ迅速に評価する手法は皆無である。そのため、本研究では航空機LiDARによる林内下層植生量推定手法の開発を目指すものである。本年度は、三重県大台町総門山に設定した調査地を対象に航空機LiDAR観測を実施するとともに、対象地内40点において検証データの計測を実施した。また、あわせて現地調査における簡易下層植生被度計測手法について研究を行い、カメラ2台を利用した新たな計測手法について提案を行うとともに、その有効性についても明らかにした。最後に、林内下層植生の生育に関係すると考えられる林分諸量(平均樹高・林内光環境・葉面積指数)について、これまでに観測したLiDARデータ及び現地調査データを用い、その推定手法について検討を行った。その結果、本研究で提案する新たな解析手法("Top Surface解析手法")により、ほぼ自動で林分平均樹高が予測可能であるとともに、その解析により得られる指標は林内光環境・葉面積指数等と有意な相関関係にあり、林内下層植生の侵入及び生育に関係すると考えられる林内の光環境についても、航空機LiDARデータによる自動広域推定が可能であることが示唆された。これらの成果により、従来多大な労力と時間を要した林内光環境の広域マップの作成が、航空機LiDAR観測により短期間で作成可能になるものと考えられる。近年水土保全機能や種多様性等の公益的機能増大を目的とした各種間伐事業が急速に行われているが、その有効性や課題を評価するためには、残存木だけでなく、間伐後の侵入・定着が期待される林床の下層植生量の把握が必要である。しかし、林床の下層植生量を広域的かつ迅速に評価する手法は皆無である。そのため、本研究では航空機LiDARによる林内下層植生量推定手法の開発を目指すものである。本年度は、三重県大台町内及び愛知県豊田市稲武町内の名古屋大学大学院生命農学研究科フィールド教育支援センター稲武フィールド内の調査地を対象に、航空機LiDAR観測データによる林内下層植生被度の推定及び林内下層状態によるレーザーパルス反射特性への影響について検討を行った。また、あわせて現地調査における簡易下層植生被度計測手法について研究を行い、カメラ2台を利用した新たな計測手法の推定精度についても検討をを行うとともに、新たに3Dカメラを利用した森林調査法についても、その有効性を検討した。その結果、本研究で提案する新たな解析手法("Top Surface解析手法")により算出した指標は、林内下層植生被度と相関性は高くないものの、有意な相関関係にあった。しかし、その関係を樹種タイプ別に比較した場合、有意な関係性は認められず、さらなる検討が必要であることが示唆された。そのため、新たに個々の照射レーザーの反射特性を詳細に検討し、従来考えられてきたフットプリントを前提とした反射特性の概念に関して新たな知見が得られた。また、カメラを利用した下層植生被度及び3Dカメラを利用した森林調査法においては、その簡易測定としての有効性を明らかにした。昨年度は、波形記録式航空機LiDARによる観測データのパルス振幅(PI)とパルス幅(PW)から算出されるパルス波形の面積(S)とセンサから反射位置までの距離(L:m)の関係を比較し、両者の関係がほぼS ∝L^-2の関係にあることを明らかにした。これにより、詳細なパルス波形面積の解析におけるLの影響を考慮した解析が必要であると考えられた。そこで今年度は、観測データによるLの影響を考慮した新たな指標を探索するとともに、それらの指標と林床状態の関係について比較検討した。まず、観測点を中心とする直径10mの仮想円形プロットを設定し、観測データをTop Surface解析手法により林冠パルスと林冠下部パルスに分離し、各林冠下部パルス反射位置までの平均距離(Lavg)を求めた。次に、各林冠下部パルスに対応するパルス波形を波形データから抽出し、各パルスの反射強度を(Lavg/L)^2を乗じて基準化した。さらに、抽出した各パルスのTop Surfaceからの標高差の最頻クラス以上を地面パルス(G)、それ未満を下層植生パルス(V)として分離し、それぞれのパルス波形最大反射強度(Pmax)及び波形積算反射強度(Sw)を算出し、下層植生被度(%)との関係を回帰分析により比較検討した単回帰分析の結果、下層植生被度(%)と有意な関係性が認められたのは、平均Sw(V)/Pmax(V)(決定係数=0.15)、平均Sw(G)/Pmax(G)(決定係数=0.32)、下層植生パルス数/全パルス数(決定係数=0.06)、ΣSw(V)/ΣSw(G)(決定係数=0.06)であった。さらに、全指標との重回帰分析(変数選択法)により得られた関係では決定係数は0.42となった。これらのように、高精度とは言えないが、広域的な下層植生被度の推定の可能性を示す重要な結果が得られたものと考えられる。24年度が最終年度であるため、記入しない。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-21580180 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21580180 |
東南アジア熱帯におけるアリが介在した動植物6者共生系の多様性の進化 | アリ植物オオバギ属は,多様な共生者(アリ・カイガラムシ)および寄生者(シジミチョウ・カメムシ・タマバエ・ナナフシ)と緊密な相互作用を持つ.本研究では,この系の著しい種多様化が,寄生者と共生者の対抗的な共進化によってもたらされたという仮説を,7者の系統多様化解析によって検証した.その結果,この7者系は,約2000万年前に起源した植物ーアリ共生が基盤となり,逐次的に他の群集メンバーが参入することで形成されたこと,および寄生者の寄主特異性が極めて高いことが明らかになった.これらの結果は,共生者と寄生者が対抗的な共進化を起こすことで種特異化がすすみ,それが系全体の多様化を促進したことを示唆する.アリ植物オオバギ属は,多様な共生者(アリ・カイガラムシ)および寄生者(シジミチョウ・カメムシ・タマバエ・ナナフシ)と緊密な相互作用を持つ.本研究では,この系の著しい種多様化が,寄生者と共生者の対抗的な共進化によってもたらされたという仮説を,7者の系統多様化解析によって検証した.その結果,この7者系は,約2000万年前に起源した植物ーアリ共生が基盤となり,逐次的に他の群集メンバーが参入することで形成されたこと,および寄生者の寄主特異性が極めて高いことが明らかになった.これらの結果は,共生者と寄生者が対抗的な共進化を起こすことで種特異化がすすみ,それが系全体の多様化を促進したことを示唆する.1.マレー半島の5地点において、熱帯雨林に生息するアリ植物オオバギ属の共生アリを83コロニー採集した、分析の結果、標高1000m以上の地点においては、共生系の維持に必須と考えられていたカイガラムシ類の生息が全く確認できなかった。このことから、高標高地においてはオオバギと共生アリの2者のみによる共生系が構築されていることが判明した。2.共生アリと同時に採集したオオバギ上の寄生昆虫(タマバエ、シジミチョウ、カスミカメムシ)のうち、カスミカメムシ20サンプルに関して飼育実験を行った。その結果、全ての個体がオオバギの生産する栄養体のみ摂食し、他のものを摂食しないことを確認した。この事から、オオバギ上に生息するカスミカメムシは栄養体を盗み取ることに特殊化した寄生者であることが判明した。3.アリ・カイガラムシ・シジミチョウ・タマバエに関して、系統間の遺伝的分化が検出可能な遺伝子マーカーの検索をおこなった。アリは3つの核遺伝子領域、カイガラムシは2つの核遺伝子領域,シジミチョウは3つの核遺伝子領域および3つのミトコンドリア遺伝子領域、タマバエは1つのミトコンドリア遺伝子領域をそれぞれ選定した。4.マレー半島とボルネオ島の13地点から採集したオオバギ共生アリ105コロニーからのサンプルを用いて、核DNAの3遺伝子領域(約1900bp)に基づく分子系統樹を作成した結果、ミトコンドリア系統樹との間で多くの不一致が認められた。核系統樹上の各単系統群は地理的分布域や寄主植物ごとにはまとまらず、寄主オオバギ種の幹表面形質(ワック分泌の有無)ごとにまとまることが明らかになった。1.マレー半島内の7地点において、熱帯雨林に生息するアリ植物オオバギ属の共生アリを132コロニー採集した。標高1000m前後がオオバギ属のアリ植物種の分布上限であること、標高にかかわらず寄生昆虫の生息が認められることが明らかになった。2.寄生昆虫(タマバエ科、シジミチョウ科、カスミカメムシ科)のうち、カスミカメムシ科についてはマレー半島から3種が認められた。ボルネオから得られた4種も含め、これらは全てヒョウタンカスミカメ属の新種であった。4.マレー半島とボルネオ島の13地点から採集したオオバギ共生アリについて、核DNAの8遺伝子領域(約3000bp)に基づく分子系統樹を作成した。ミトコンドリア系統樹とは多くの相違点が認められた。カイガラムシの核DNA系統樹を解析した結果、9つの系統に分かれ、それぞれの系統には単一のカイガラムシ種が対応していることが明らかになった。5.核マイクロサテライトマーカー5遺伝子座を用いて、ボルネオ島のLambir国立公園内において採集された99コロニーの共生アリの遺伝子型を決定しSTRUCTURE解析を行った。その結果、LambirのアリはmtDNA系統と大まかに一致する6つの遺伝的クラスターに分けられ、それぞれが高い寄主植物特異性を示すことが明らかになった。1)サンプリング:マレー半島の3地点(キャメロン、ゴンバック、タイピン)及びボルネオ島の1地点(ランビル)において、オオバギ属植物・アリ・カイガラムシ・シジミチョウ・カメムシ・タマバエのDNA標本を採集した。2)遺伝子マーカーの開発:以下の遺伝子マーカーを新たに開発した。アリ:2つの核遺伝子領域(UB、TOP)、シジミチョウ:2つのミトコンドリア遺伝子領域(CytB、ND5)、カメムシ:1つの核遺伝子領域(28S rDNA)3)分子系統樹の作成:カイガラムシの分子系統樹は9つの系統(種)に分かれ、それぞれの系統は特定グループのオオバギに対して寄主特異性を示すことが明らかになった。シジミチョウでは、2つの遺伝子部位を追加することによって、より頑健な系統樹を示すことに成功した。 | KAKENHI-PROJECT-22255001 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22255001 |
東南アジア熱帯におけるアリが介在した動植物6者共生系の多様性の進化 | カメムシの分子系統樹は8つの系統に分かれ、7新種からなることが判明した。カメムシは種毎に大まかに寄主オオバギ種を違えていることが明らかになった。タマバエの分子系統樹は6つの系統に分かれ、それぞれの系統は特定のオオバギグループに対して寄主特異性を示すことが明らかになった。また複数のタマバエ系統が1種のオオバギ種に寄生する場合があることも明らかになった。アリに関しては新規遺伝子を用いた系統解析が完了しておらず、今後の課題である.4)マイクロサテライト解析:アリのマイクロサテライト解析によって、今まで単一とされていたmtDNA系統が複数のクラスターに分化していること、および、それぞれが異なるオオバギ種群に対し高い特異性を示すことが明らかになった。1.アリ植物オオバギ属に寄生するカスミカメムシについて、これまで得られたサンプルの形態を精査した結果、7新種が含まれることが判明し、記載を行った(Nakatani et al. 2013)。次に8種(2未記載種を含む)38サンプルを用いて、核DNAおよびミトコンドリアDNAの2遺伝子領域(約1000bp)に基づく分子系統樹を作成したところ、古い年代に分岐したオオバギ種に寄生するカメムシ種の分岐は古い年代であることが判明した。さらにオオバギ寄生性カスミカメムシの起源年代は約2000万年前と算出され、アリ植物オオバギ属およびそれに共生するシリアゲアリ属の起源年代とほぼ一致した。2.核DNAのマイクロサテライト部位(5座位)を用いてボルネオ島に分布するアリ植物オオバギ属に共生するシリアゲアリ属の多型解析をおこなった結果、1)アリは6つの遺伝子型に分化していること、2)これらの遺伝子型は既存のmtDNA系統と一致すること、がそれぞれ示された。次にアリ遺伝子型間の交雑は約2%の頻度で起こっていたが、mtDNAの異種間浸透は起こっておらず、mtDNA系統樹の信憑性は高いことが示された。さらにマイクロサテライト解析によって新たに発見されたmtDNA系統内のサブグループが、特定のオオバギ種に対して高い種特異性を示すことが明らかになった。3.アリ植物オオバギ属に共生するカイガラムシ類の核DNA系統樹を作成した結果、カイガラムシは9つの核DNA系統に分かれ、それぞれの系統には単一のカイガラムシ形態種が対応した。カイガラムシ核DNA系統のオオバギ種に対する特異性は、カイガラムシmtDNA系統とオオバギ種の間で報告されていた特異性よりも高いことが示された。1.オオバギ属植物に共生するシリアゲアリ類について、マレー半島における分子系統地理解析、遺伝的多様性解析、および個体群統計学的解析をmtDNAのCOI遺伝子を用いて行なった。その結果、1)マレー半島に分布するアリは5つのmtDNA系統に分かれること、2)それぞれの系統は特徴的な地理分布、標高分布、および寄主植物選好性をもっていること、3)3つのアリ系統において、山岳域の遺伝的多様性が低地のそれよりも高く、この3系統において数十万年前に急激な個体数増加が起こったことがそれぞれ明らかになった。2.熱帯アジアの広域に分布する18種のオオバギから採集した共生シリアゲアリ類について、核DNAの9遺伝子(約5000bp)を用いて分子系統樹を作成した。この核DNA系統樹を先行研究のmtDNA系統樹と比較したところ、複数の不一致点が認められた。合着シミュレーション解析の結果などから、この不一致の要因は種間交雑の影響ではなく不完全な系統ソーティングであることが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-22255001 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22255001 |
鳥類のZ,W性染色体の分子進化に関する遺伝子レベルの解析 | ニワトリのZ,W染色体由来のゲノムDNAクローン、cDNAクローンをプローブとして分類学上広範囲の鳥類種の雌雄のゲノムDNAにハイブリッド形成させることによりZ,W染色体の進化上の保存性と種特異的性の両面を解析することを目的とした。本年度の研究概要は以下の通りである。1)Z染色体の2種の遺伝子IREBP(iron responsive element binding protein)とZOV3(卵巣特異的に発現する新規の免疫グロブリンスーパーファミリータンパク質)のcDNAクローニング、塩基配列決定、染色体上の局在部位決定を行った。これらのcDNAプローブを6目10種の鳥類の雌雄DNAにサザンハイブリダイゼーションさせた結果、いずれの場合もほぼ雄2:雌1の強度のシグナルが得られ、鳥類Z染色体の進化上の保存性が示唆された。2)Z染色体端部のヘテロクロマチンの構成反復DNA配列約13kbを含むゲノムクローンpCHZTH8を得た。この配列は明瞭な内部反復単位を含まず、約30kbを反復単位にするマクロサテライトと考えられる。この配列の一部にはキジ目に共通の部分があるが、大部分はGallus属特有で進化上新しく増幅した配列であることが分かった。3)W染色体由来のゲノムライブラリーからXhoI,EcoRIファミリー配列を含まない約300クローンを選んで、雌雄ゲノムDNAヘスロットブロットハイブリダイゼーションを行い、W染色体特異的非反復配列クローンCW01,CW50を得た。次に、これらをプローブとして雌ゲノムライブラリーを検索し、それぞれを含む約25kbずつの領域をカバーするクローン群を得た。CW01領域中の約0.6kb配列が調べた7目16種の鳥類の全てでW染色体上に保存されていた。CW50領域中にはCpGアイランドが存在した。現在、エキソントラップ法で両領域中のエキソン配列の検索を進めている。ニワトリのZ,W染色体由来のゲノムDNAクローン、cDNAクローンをプローブとして分類学上広範囲の鳥類種の雌雄のゲノムDNAにハイブリッド形成させることによりZ,W染色体の進化上の保存性と種特異的性の両面を解析することを目的とした。本年度の研究概要は以下の通りである。1)Z染色体の2種の遺伝子IREBP(iron responsive element binding protein)とZOV3(卵巣特異的に発現する新規の免疫グロブリンスーパーファミリータンパク質)のcDNAクローニング、塩基配列決定、染色体上の局在部位決定を行った。これらのcDNAプローブを6目10種の鳥類の雌雄DNAにサザンハイブリダイゼーションさせた結果、いずれの場合もほぼ雄2:雌1の強度のシグナルが得られ、鳥類Z染色体の進化上の保存性が示唆された。2)Z染色体端部のヘテロクロマチンの構成反復DNA配列約13kbを含むゲノムクローンpCHZTH8を得た。この配列は明瞭な内部反復単位を含まず、約30kbを反復単位にするマクロサテライトと考えられる。この配列の一部にはキジ目に共通の部分があるが、大部分はGallus属特有で進化上新しく増幅した配列であることが分かった。3)W染色体由来のゲノムライブラリーからXhoI,EcoRIファミリー配列を含まない約300クローンを選んで、雌雄ゲノムDNAヘスロットブロットハイブリダイゼーションを行い、W染色体特異的非反復配列クローンCW01,CW50を得た。次に、これらをプローブとして雌ゲノムライブラリーを検索し、それぞれを含む約25kbずつの領域をカバーするクローン群を得た。CW01領域中の約0.6kb配列が調べた7目16種の鳥類の全てでW染色体上に保存されていた。CW50領域中にはCpGアイランドが存在した。現在、エキソントラップ法で両領域中のエキソン配列の検索を進めている。 | KAKENHI-PROJECT-06273204 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06273204 |
高周期典型元素ラジカルの合成及び化学的特性と電子物性の解明 | ラジカル種は分子内に不対電子を有する化学種として知られており、極めて高い反応性を示すことから、単離は困難とされてきた。しかし、ラジカル中心の立体的保護や、不対電子の非局在化により、その寿命が飛躍的に向上することが明らかにされている。これまでに合成・単離が行われてきた高周期14族元素ラジカルは、どれも環状のπ共役を有するラジカルであり、最も単純な非環状型ラジカルは報告されていなかった。これまで、ケイ素やゲルマニウム、及びスズを中心とするラジカルの合成を行ってきた。これらのラジカルは、どちらも平面構造をしていることを明らかにしている。さらに、電子移動型の酸化還元反応を行った結果、カチオン種・アニオン種が得られ、カチオン・ラジカル・アニオン間の電子状態の違いに起因する構造の変化に関して検討を行ってきた。さらに、ラジカル中心元素を13族元素であるアルミニウムやガリウムに変えた、14族元素ラジカルの等電子体であるアニオンラジカルを合成し、その分子構造の決定にも成功した。本研究では、これまでに得られたラジカルの知見を利用して、分子内に複数のラジカル中心を有するポリラジカルの合成について検討を行った。目的のポリラジカルの合成を指向して、アリール基を置換基に有するシリルラジカルの合成について検討を行った。ジシリル置換のジブロモシランに対し、様々なアリールリチウムを反応させ、ジシリル(アリール)置換ブロモシランを合成した。このブロモシランに対し、カリウムグラファイトを用いて対応するアニオン種を合成し、その単離や構造解析にも成功した。このようにして得られたアニオン種を1電子酸化することにより、対応するラジカルの合成にも成功した。ラジカル種は分子内に不対電子を有する化学種として知られており、極めて高い反応性を示すことから、単離は困難とされてきた。しかし、ラジガル中心の立体的保護や、不対電子の非局在化により、その寿命が飛躍的に向上することが明らかにされている。これまでに合成・単離が行われてきた高周期14族元素ラジカルは、どれも環状のπ共役を有するラジカルであり、最も単純な非環状型ラジカルは報告されていなかった。これまで、ジブロモシランやジクロロゲルミレン・ジオキサン錯体とシリルナトリウムの反応により生じたアニオン種に1電子酸化を行い、対応するシリルラジカル・ゲルミルラジカルの合成を行ってきた。これらのラジカルは、どちらも平面構造をしていることをX線結晶構造解析とESRスペクトルによって明らかにしている。さらに、電子移動型の酸化還元反応を行った結果、カチオン種・アニオン種が得られ、カチオン・ラジカル・アニオン間の電子状態の違いに起因する構造の変化に関して検討を行ってきた。本研究では、中心元素をさらに高周期のスズに置き換えたスタンニルラジカルを合成し、その酸化・還元反応などについて検討した。スズ中心ラジカルは、ジエチルエーテル中ジクロロスタンニレン・ジオキサン錯体とシリルナトリウムとの反応により合成を行った。自的のスタンニルラジカルはヘキサンから再結晶を行い、燈色の柱状晶として得られた。このラジカルは、先に報告したシリルラジカル及びゲルミルラジカルと向様にスズ周りが完全平面構造をしており、不対電子をP軌道に収容したπ型のラジカルであることを明らかにした。このラジカルの1電子酸化反応により、対アニオンとの相互作用のないスタンニルカチオンの合成・単離にも成功した。また、アルカリ金属との還元反応によりアニオン種の合成にも成功しており、おのおのの化学種間での可逆的な変換が可能であることを明らかにした。ラジカル種は分子内に不対電子を有する化学種として知られており、極めて高い反応性を示すことから、単離は困難とされてきた。しかし、ラジカル中心の立体的保護や、不対電子の非局在化により、その寿命が飛躍的に向上することが明らかにされている。これまでに合成・単離が行われてきた高周期14族元素ラジカルは、どれも環状のπ共役を有するラジカルであり、最も単純な非環状型ラジカルは報告されていなかった。これまで、ジブロモシランやジクロロゲルミレン及びジクロロスタンニレンのジオキサン錯体とシリルナトリウムの反応により生じたアニオン種に1電子酸化を行い、対応するシリル、ゲルミル、及びスタンニルラジカルの合成を行ってきた。これらのラジカルは、どちらも平面構造をしていることをX線結晶構造解析とESRスペクトルによって明らかにしている。さらに、電子移動型の酸化還元反応を行った結果、カチオン種・アニオン種が得られ、カチオン・ラジカル・アニオン間の電子状態の違いに起因する構造の変化に関して検討を行ってきた。本研究では、中心元素を13族元素であるアルミニウムやガリウムに置き換えたときに、同様の手法でラジカル種の合成が可能であるかについて検討を行った。三塩化アルミニウムや三塩化ガリウムとシリルナトリウムを、炭化水素溶媒中反応を行うと、アルミニウムやガリウム上にシリル基が3つ導入された中性化合物が得られた。これらをTHF中当量のカリウムミラーを用いて1電子還元を行うと、アルミニウム及びガリウムを中心元素とするアニオンラジカルが得られた。これらのアニオンラジカルは、X線結晶構造解析とESRスペクトルにより結晶中溶液中のどちらの条件でも平面構造をしていることを明らかにした。ラジカル種は分子内に不対電子を有する化学種として知られており、極めて高い反応性を示すことから、単離は困難とされてきた。 | KAKENHI-PROJECT-03J00335 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03J00335 |
高周期典型元素ラジカルの合成及び化学的特性と電子物性の解明 | しかし、ラジカル中心の立体的保護や、不対電子の非局在化により、その寿命が飛躍的に向上することが明らかにされている。これまでに合成・単離が行われてきた高周期14族元素ラジカルは、どれも環状のπ共役を有するラジカルであり、最も単純な非環状型ラジカルは報告されていなかった。これまで、ケイ素やゲルマニウム、及びスズを中心とするラジカルの合成を行ってきた。これらのラジカルは、どちらも平面構造をしていることを明らかにしている。さらに、電子移動型の酸化還元反応を行った結果、カチオン種・アニオン種が得られ、カチオン・ラジカル・アニオン間の電子状態の違いに起因する構造の変化に関して検討を行ってきた。さらに、ラジカル中心元素を13族元素であるアルミニウムやガリウムに変えた、14族元素ラジカルの等電子体であるアニオンラジカルを合成し、その分子構造の決定にも成功した。本研究では、これまでに得られたラジカルの知見を利用して、分子内に複数のラジカル中心を有するポリラジカルの合成について検討を行った。目的のポリラジカルの合成を指向して、アリール基を置換基に有するシリルラジカルの合成について検討を行った。ジシリル置換のジブロモシランに対し、様々なアリールリチウムを反応させ、ジシリル(アリール)置換ブロモシランを合成した。このブロモシランに対し、カリウムグラファイトを用いて対応するアニオン種を合成し、その単離や構造解析にも成功した。このようにして得られたアニオン種を1電子酸化することにより、対応するラジカルの合成にも成功した。 | KAKENHI-PROJECT-03J00335 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03J00335 |
大正・昭和初期中等学校の学校紛擾と教育関係・教育文化に関する歴史社会学的研究 | 本研究は大正・昭和初期中等学校の学校紛擾に焦点をあて、当事者である生徒や教師の動機の理解から出発し、紛擾発生の要因を明らかにする。まず、新聞誌面の検索により、大正・昭和初期における学校紛擾事例の把捉と集計を試みる。続いて、大正・昭和初期紛擾の事例研究を実施する。その際、生徒・教師が直接記した日記や回顧録、自伝といった生活史的資料を収集・活用するとともに、学校関係資料を広く用いて、紛擾発生校の教育文化の特性を検証する。最後に、当時期における教師・生徒関係の特質を理論的に検討し、現代における教育関係の課題を相対化しうる視座を得ようと試みる。本研究は大正・昭和初期中等学校の学校紛擾に焦点をあて、当事者である生徒や教師の動機の理解から出発し、紛擾発生の要因を明らかにする。まず、新聞誌面の検索により、大正・昭和初期における学校紛擾事例の把捉と集計を試みる。続いて、大正・昭和初期紛擾の事例研究を実施する。その際、生徒・教師が直接記した日記や回顧録、自伝といった生活史的資料を収集・活用するとともに、学校関係資料を広く用いて、紛擾発生校の教育文化の特性を検証する。最後に、当時期における教師・生徒関係の特質を理論的に検討し、現代における教育関係の課題を相対化しうる視座を得ようと試みる。 | KAKENHI-PROJECT-19K02561 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K02561 |
細菌の多剤耐性化に関与するインテグラーゼの結晶構造と基質-酵素相互作用の解析 | グラム陰性細菌において、プラスミド性の多剤耐性菌の出現は、薬剤耐性遺伝子の拡散という観点で臨床の現場で問題となっている。このプラスミド上には、薬剤耐性遺伝子の組み換え反応を触媒しているIntegron Integrase(IntI)をコードした遺伝子があり、IntIはプラスミド上に存在する薬剤耐性遺伝子を切り離し、転写活性を高めるためにプロモーター付近に組み込んだり、染色体に組み込む反応を触媒することで、多剤耐性菌の拡散が危惧される酵素である。本研究では、臨床において頻繁に単離されるIntI1を研究対象として、IntI1の精製を行い、X線結晶構造解析を含む物理化学的な手法を用いて、構造機能解析を行うことが目的である。また本研究は、プラスミド性多剤耐性菌の検出法開発において重要である。多剤耐性となったサルモネラ菌、病原性大腸菌などが海外のみならず日本で分離されており、それらの染色体、伝達性プラスミドに多数の薬剤耐性遺伝子を集積したインテグロン構造を有しているものが発見されている。インテグロン構造には、これらの遺伝子の切り取り、挿入を促進させる酵素インテグラーゼ(IntI)の遺伝子が必ず存在する。本研究は伝達性プラスミド上に存在し、細菌の多剤耐性化に関わるIntI1を研究対象として、X線結晶構造解析、物理化学的手法を用いて、原子レベルで基質-酵素認識機構を理解し、その結合力を数値化することで、その酵素の反応機構と基質認識機構を詳細に解明し、多剤耐性化による細菌の自然適応能力を理解することが目的である。平成19年度は、IntI1の大量発現系の構築と精製条件の検討を行った。N末端にHis-Tagを融合させるpET28aにIntI1遺伝子を組み込んだIntI1/pET28aは可溶化に成功しなかった。次に翻訳効率を高め、可溶化を促進させるpCold IIIにIntI1遺伝子を組み込んだところ、可溶化に成功した。しかしIntI1の分子量だけでは精製条件を検討するには難しいと判断し、N末端にHis-Tagを融合させるpColdIにIntI1遺伝子を組み込んだところ、IntI1を発現させた大腸菌BL21(DE3)の超音波破砕時にNaC1が含まれていると、IntI1は可溶化しないことがわかった。現在、IntI1の精製条件を検討中である。グラム陰性細菌において、プラスミド性の多剤耐性菌の出現は、薬剤耐性遺伝子の拡散という観点で臨床の現場で問題となっている。このプラスミド上には、薬剤耐性遺伝子の組み換え反応を触媒しているIntegron Integrase(IntI)をコードした遺伝子があり、IntIはプラスミド上に存在する薬剤耐性遺伝子を切り離し、転写活性を高めるためにプロモーター付近に組み込んだり、染色体に組み込む反応を触媒することで、多剤耐性菌の拡散が危惧される酵素である。本研究では、臨床において頻繁に単離されるIntI1を研究対象として、IntI1の精製を行い、X線結晶構造解析を含む物理化学的な手法を用いて、構造機能解析を行うことが目的である。また本研究は、プラスミド性多剤耐性菌の検出法開発において重要である。 | KAKENHI-PROJECT-19041061 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19041061 |
RACプロテインキナーゼのPH領域を介した活性化機構に関する解析 | RACプロテインキナーゼ(別名PKB、c-Akt)はそのアミノ末端側にプレックストリン相同(PH)領域を有するセリン/トレオニンキナーゼであり、活性触媒領域はプロテインキナーゼC(PKC)に類似している。近年、RACプロテインキナーゼは細胞増殖因子刺激に伴い活性化されたホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3-キナーゼ)により産生される、ある種のPI3リン酸により活性化されることが明らかにされた。我々は、この活性化とは異なるストレス刺激によるRACプロテインキナーゼの活性化機構の存在を明らかにした。すなわち、細胞を高温や高浸透圧条件で処理することによりRACプロテインキナーゼの活性上昇が認められ、また、高温による活性上昇はPI3-キナーゼの特異的阻害剤であるwortmanninにより阻害されず、PI3-キナーゼの働きに非依存的であることが示唆された。さらに、高温により活性化されたRACプロテインキナーゼを細胞より効率的に精製する系を確立し、種々セカンドメッセンジャー分子のRACプロテインキナーゼ活性に対する影響を解析した結果、PH領域結合能を有するPI(4,5)二リン酸が特異的にこの活性を阻害することを明らかにした。今後、細胞増殖因子およびストレス刺激による活性化はいずれもPH領域を必要とすることから、これらの活性制御機構の詳細を明らかにすることを目的とし、PH領域に相互作用する分子の同定などを含め解析を行っていく予定である。RACプロテインキナーゼ(別名PKB、c-Akt)はそのアミノ末端側にプレックストリン相同(PH)領域を有するセリン/トレオニンキナーゼであり、活性触媒領域はプロテインキナーゼC(PKC)に類似している。近年、RACプロテインキナーゼは細胞増殖因子刺激に伴い活性化されたホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3-キナーゼ)により産生される、ある種のPI3リン酸により活性化されることが明らかにされた。我々は、この活性化とは異なるストレス刺激によるRACプロテインキナーゼの活性化機構の存在を明らかにした。すなわち、細胞を高温や高浸透圧条件で処理することによりRACプロテインキナーゼの活性上昇が認められ、また、高温による活性上昇はPI3-キナーゼの特異的阻害剤であるwortmanninにより阻害されず、PI3-キナーゼの働きに非依存的であることが示唆された。さらに、高温により活性化されたRACプロテインキナーゼを細胞より効率的に精製する系を確立し、種々セカンドメッセンジャー分子のRACプロテインキナーゼ活性に対する影響を解析した結果、PH領域結合能を有するPI(4,5)二リン酸が特異的にこの活性を阻害することを明らかにした。今後、細胞増殖因子およびストレス刺激による活性化はいずれもPH領域を必要とすることから、これらの活性制御機構の詳細を明らかにすることを目的とし、PH領域に相互作用する分子の同定などを含め解析を行っていく予定である。 | KAKENHI-PROJECT-08780562 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08780562 |
ヒト細胞培養由来L-cysteineによるカルバペネム系抗菌薬失活効果の解析 | 研究代表者は、平成25-27年度に科研費を受けた研究(基盤研究C [課題番号25461525])及び平成28年度からの本研究で、培養上清中のヒト細胞由来のL-cysteine(Cys)はカルバペネム薬であるIPMの抗菌活性を濃度依存的に失活すること、アミノ酸不含の培養液ではCysは検出されないこと、ウシ胎児血清はIPMの失活効果を減弱することを解明し、Cysは培地成分のL-cystine(LC)を細胞が還元することで新生されることなどを明らかにした。昨年度の研究で、細菌由来のカルバペネム分解酵素の検出法であるCIM testを応用した方法で、Cysは400μMで十分にIPMを失活するが、血清タンパク質存在下では、IPM失活効果を示さないことが判った。そこで平成30年度は、抗菌薬のMIC測定法である微量液体希釈法を応用し、より簡便かつ定量的に抗菌薬に対するCysの効果を評価する系の確立を試みた。すなわちCys 400μM添加培地で従来のMIC法と同様にIPMの大腸菌に対する抗菌活性を評価し、Cys不含の培地の結果と比較検討した。培地としてミュラーヒントン液体培地(MHB)を用いた場合、CysによるIPMの失活効果は観られなかったが、MHBの濃度を1/2、1/4に希釈した場合、MICは各々4倍、64倍に上昇し、CysによるIPMの失活効果が観られた。このことから、CysがMHBに含まれるタンパク質に結合して失活したことが予想されたため、培地をRPMI1640に変えて評価したところ、添加するCys濃度に依存してIPMの失活が観察された。この効果はCys濃度25μMまで観察され、人体の血中遊離Cys濃度でもIPMの失活が起こり得ることが示唆された。またこの方法で評価したところ、Cysは他のカルバペネム薬(MEPM、BIPM、DRPM)に対しても同程度の失活効果を示した。本研究は、様々なヒト由来の培養細胞をある条件で培養すると細胞培養液中の抗菌薬(カルバペネム薬)が失活する現象のメカニズムの解明し、より有効な抗菌薬療法の確立を主な目的としてきた。上記のように、この現象における血清タンパク質の影響とそのメカニズムの解明、Cysのカルバペネム失活効果の評価法の確立という点では、一定の成果を得ることができた。また本研究と関連した研究の成果として、川崎市内の臨床分離菌のカルバペネム薬を含む抗菌薬に対する薬剤感受性のサーベイランスに関して、研究成果をまとめて論文にし、国際的な学術雑誌、学会等で報告することができた。このため達成度としては、(2)のカテゴリーとした。昨年までの研究で、特定の条件で培養した細胞培養液の上清中ではカルバペネム薬が失活すること及び、この現象の大まかな挙動が明確になり、そのメカニズムとして培養細胞がLCを還元してCysを生成することが想定され、さらにCysのIPM失活活性は血清中のタンパク質とCysが結合することにより阻害されることが判った。さらにCysの抗菌薬失活活性を定量化する方法についても目処がたったので、今後は、Cysによるカルバペネム薬の失活活性の詳細を分析するとともに、細胞種や抗菌薬を変えて、その実態を検討し、in vitroの実験系に与える影響以外に、生体内での挙動、やアミノ酸製剤などの注射薬との相互作用などの解明をめざす。このためにMICの10倍濃度(10×MIC)のカルバペネム薬を含む培地中で、Cysを含む細胞培養液を段階的に希釈して添加した上で大腸菌を培養し、カルバペネム薬の活性が10%以下になる希釈倍率を比較検討できる実験系を構築することを考えている。研究代表者は、平成25-27年度に科研費を受けた研究(基盤研究C[課題番号25461525]「ヒト培養細胞のカルバペネム系抗菌薬失活効果の解析」)で、ヒト由来の各種培養細胞の培養上清がカルバペネム薬の抗菌活性を著しく低下させる(失活する)こと、この現象は細胞の培養上清中の細胞由来のL-cysteine(Cys)によって起こることを明らかにした。さらにA549細胞を、Cysを含まない無血清RPMIで培養する実験モデルを用いて培養上清中のCysの挙動を検討し、Cysは培養開始後経時的に増加し、アミノ酸を含まない培養液ではCysは増加しないことなどを明らかにした。またカルバペネム薬を失活する効果は、Cysの濃度依存的で、試薬から調整したCys溶液も培養上清と同程度にIPMを失活することが判った。これらの研究成果を踏まえ、平成28年度から始まる本研究では、まず細胞がどのような過程でCysを新生し細胞培養上清中に放出するかを明らかにすることを試みた。アミノ酸を含まない培地で培養しても、培養液中にCysが産生されないことに着目し、Cysの生合成に関わるアミノ酸であるメチオニン、セリン、Cysの酸化体であるCystine(LC)の有無でCysの産生を調べたところ、1培地中のメチオニンやセリンはCysの産生には影響しないこと、2LCの濃度依存的に培養上清がIPM失活活性を示すこと、3LCの濃度に依存して上清中のCysの濃度は経時的に増加すること、が明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-16K09947 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K09947 |
ヒト細胞培養由来L-cysteineによるカルバペネム系抗菌薬失活効果の解析 | またLC非添加培養液中で培養した細胞上清を回収し、その培養液にLCを後から添加しても、これらの現象は観られず、Cysの新生には細胞の存在が必須であることが判った。また細菌由来のカルバペネム分解酵素であるカルバペネマーゼ検出法の一つであるCIM testを応用し、カルバペネム薬や他系統の抗菌薬に対するCysの効果の評価を試みた。本研究は、様々なヒト由来の培養細胞をある条件で培養すると細胞培養液中の抗菌薬(カルバペネム薬)が失活する現象のメカニズムの解明とより有効な抗菌薬療法の確立を、主な目的としてきた。上記のように、この現象の原因物質の探索という点では、今年度は大きな成果を得ることができたといえる。このため達成度としては、(2)のカテゴリーとした。研究代表者は、平成25-27年度に科研費を受けた研究(基盤研究C課題番号25461525)及び平成28年度からの本研究で、ヒト由来の各種培養細胞の培養上清がカルバペネム薬の抗菌活性を失活する現象は、培養上清中の細胞由来のL-cysteine(Cys)によって起こること、Cysは濃度依存的にIPMを失活すること、アミノ酸を含まない培養液中ではCysは検出されないこと、ウシ胎児血清(FCS)存在下ではIPMの失活効果が減弱することを解明し、さらにCysは、培地中に含まれるCysの酸化体であるL-cystine(LC)を細胞が還元して新生されることを明らかにした。平成29年度は、細菌由来のカルバペネム分解酵素であるカルバペネマーゼ検出法であるCIM testを応用した、カルバペネム薬に対するCysの効果の評価系を確立し、主にこの実験系を用いてCysのIPM不活化効果に対するFCS、主要な血清タンパク質であるアルブミン(ウシ、ヒト)、グロブリン(ヒト)の影響を検討した。Cys 0.4mMを含む培養液中にIPM 10mg/L含有ディスクを浸漬して2時間培養すると、ディスク中のIPMが失活し、阻止円ができなくなるが、ディスクを浸漬する前に、FCSを加えた培地で培養すると、CysのIPM失活効果が培養時間、FCSの濃度に依存して減弱することが判った。FCS20%の培養液中では、FCS添加直後からCysの効果が減弱し、1時間培養後にはIPMの失活がまったく観察されなかった。この現象はアルブミン、グロブリンでも同様にみられ、ヒトアルブミンでは生体の血清中と同程度の濃度で即座にCysのIPM失活効果を阻害することが判った。この現象は培養液中の遊離Cys濃度の減少を伴っており、Cysが血清タンパク質、特にアルブミンと結合することで、IPM失活効果を失うことが示唆された。本研究は、様々なヒト由来の培養細胞をある条件で培養すると細胞培養液中の抗菌薬(カルバペネム薬)が失活する現象のメカニズムの解明とより有効な抗菌薬療法の確立を、主な目的としてきた。上記のように、この現象における血清タンパク質の影響とそのメカニズムの解明という点では、今年度は大きな成果を得ることができたといえる。またこれまでの研究成果をまとめて論文にし、国際的な学術雑誌(in press)、学会等で報告することができた。このため達成度としては、(2)のカテゴリーとした。研究代表者は、平成25-27年度に科研費を受けた研究(基盤研究C [課題番号25461525])及び平成28年度からの本研究で、培養上清中のヒト細胞由来のL-cysteine(Cys)はカルバペネム薬であるIPMの抗菌活性を濃度依存的に失活すること、アミノ酸不含の培養液ではCysは検出されないこと、ウシ胎児血清はIPMの失活効果を減弱することを解明し、Cysは培地成分のL-cystine(LC)を細胞が還元することで新生されることなどを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-16K09947 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K09947 |
漁業の混獲防除に向けた対象生物の行動生理に関する研究 | 21世紀に入り,地球環境保全の意識がますます高まっていくなかで,漁業が生態系に与える影響を最小化するための研究が注目され,混獲投棄の問題を技術的に解決するために漁具選択性の向上や漁具改良に向けた試みが各国,各地で行われてきている。この問題について,対象とする生物種や大きさに対して,混獲投棄されるものとの行動特性の違いを利用した選択漁獲の方法論が1980年代から提案されているが,まだ実際的な応用には至っていない。本研究では,漁具認知過程に関連した感覚機能,そして漁具回避能力に関連した運動特性の2つを取り上げて,対象・非対象の生物種別,並びに成長段階別に検討を行い,混獲防除技術のための基礎資料を得ることを目的に,以下の研究を行った。1)魚類の刺激-反応系に関する行動生理実験として,視覚について,マアジ,サンマ,ウナギを実験魚として,成長にともなう視力の変化や,側線系の構造と機能に関する研究,そして遊泳行動に関して心電図測定を利用した疲労と回復に関する研究を展開し,水温条件別に持続速度と中間速度のレベルを明らかにした。2)底引網漁法に関連して,対象魚の遊泳能力,また,疲労からの回復過程について検討して漁獲過程について考察した。3)定置網漁法について漁獲物の組成と投棄の現状を調査し,持続的な漁業のあり方を取りまとめた。4)ガザミ籠について小型個体の漁獲防除のための逃避口の設計について水槽実験と操業実験を行った5)集魚灯漁法について,漁獲対象生物の視覚生理をもとに,適正な光源利用のあり方をとりまとめた。21世紀に入り,地球環境保全の意識がますます高まっていくなかで,漁業が生態系に与える影響を最小化するための研究が注目され,混獲投棄の問題を技術的に解決するために漁具選択性の向上や漁具改良に向けた試みが各国,各地で行われてきている。この問題について,対象とする生物種や大きさに対して,混獲投棄されるものとの行動特性の違いを利用した選択漁獲の方法論が1980年代から提案されているが,まだ実際的な応用には至っていない。本研究では,漁具認知過程に関連した感覚機能,そして漁具回避能力に関連した運動特性の2つを取り上げて,対象・非対象の生物種別,並びに成長段階別に検討を行い,混獲防除技術のための基礎資料を得ることを目的に,以下の研究を行った。1)魚類の刺激-反応系に関する行動生理実験として,視覚について,マアジ,サンマ,ウナギを実験魚として,成長にともなう視力の変化や,側線系の構造と機能に関する研究,そして遊泳行動に関して心電図測定を利用した疲労と回復に関する研究を展開し,水温条件別に持続速度と中間速度のレベルを明らかにした。2)底引網漁法に関連して,対象魚の遊泳能力,また,疲労からの回復過程について検討して漁獲過程について考察した。3)定置網漁法について漁獲物の組成と投棄の現状を調査し,持続的な漁業のあり方を取りまとめた。4)ガザミ籠について小型個体の漁獲防除のための逃避口の設計について水槽実験と操業実験を行った5)集魚灯漁法について,漁獲対象生物の視覚生理をもとに,適正な光源利用のあり方をとりまとめた。21世紀に向けて地球環境保全の意識がますます高まっていくなかで,漁業のあり方を変えようとする動きが強まってきており,技術的に混獲投棄の問題を解決するために漁具選択性の向上や漁具改良が行われてきている。この問題について,対象とする生物種や大きさに対して,混獲投棄されるものとの行動特性の違いを利用した選択漁獲の方法論が1980年代から提案されているが,まだ実際的な応用には至っていない。そこで,漁具認知過程に関連した視覚機能,そして漁具回避能力に関連した運動特性の2つを取り上げて,対象・非対象の生物種別に,並びに成長段階別に検討を行い,混獲防除技術のための基礎資料を得ることを目的に実験を行った。初年度として,魚類の刺激-反応系を調べるための行動実験,生理実験に主体をおき,視覚機能と運動機能に関してウナギとサケ科魚類を実験魚として研究を進めた。ウナギについては,網膜の錐体密度分布をもとに成長段階別に視力を算出し,成魚でも0.08という低い視力であった。また,同じく成長段階別に遊泳能力を検討し,最大持続速度が環境水温によって変化する傾向を遊泳曲線より求めた。サケ科魚類については,ニジマス・シロザケ・サクラマスの3種について成長にともなう視力の向上する傾向が異なることを確認した。このほかに,旋網と定置網について,乗船調査による混獲投棄の実態について検討を開始した。また,第4回世界水産学会議においてクルマエビの運動生理とトロールの混獲防除技術,並びに集魚灯漁業についての2件の発表を行い,論文を投稿した。その他に,国際漁業経済学会において刺網の混獲防除について,また,タイにおいて開催された国際会議において世界の水産業の現状と混獲防除に関する技術的方策の可能性について講演を行い,それぞれプロシーディングスに公表した。21世紀に入り,地球環境保全の意識がますます高まっていくなかで,漁業が生態系に与える影響を最小化するための研究が注目され,混獲投棄の問題を技術的に解決するために漁具選択性の向上や漁具改良が実践が各国,各地で行われてきている。 | KAKENHI-PROJECT-16380129 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16380129 |
漁業の混獲防除に向けた対象生物の行動生理に関する研究 | この問題について,対象とする生物種や大きさに対して,混獲投棄されるものとの行動特性の違いを利用した選択漁獲の方法論が1980年代から提案されているが,まだ実際的な応用には至っていない。そこで,漁具認知過程に関連した視覚機能,そして漁具回避能力に関連した運動特性の2つを取り上げて,対象・非対象の生物種別,並びに成長段階別に検討を行い,混獲防除技術のための基礎資料を得ることを目的に実験を行った。4年計画の2年目として,初年度に実施した魚類の刺激-反応系に関する行動生理実験を継続し,ウナギ,カワハギ,スルメイカ,サンマについて,視覚の機能を中心に研究を進めてきた。特に今年度はサンマについて集魚灯漁法との関係で実験を展開し,単錐体と双錐体で光刺激の波長別に感度の異なることを明らかしに,また7.5330mmの成長段階別に視力を算出して,成長にともなう視力の向上を確認した。漁業種別には底引網,定置網,カニ籠について漁獲物の組成と投棄の現状を把握するために乗船実験を行い,今後の実験展開のためのフィールド確保に努めてきた。これらの成果について,日本水産学会年会と漁業懇話会,またイタリアローマ市のFAO本部で開催された国際海洋開発協議会漁業技術・魚群行動研究会に出席し,漁業における刺激-反応系に関する講演発表を行うとともに,世界各地での混獲防除に関する研究の状況について情報を収集し,また関係者との意見交換を実施した。21世紀に入り,地球環境保全の意識がますます高まっていくなかで,漁業が生態系に与える影響を最小化するための研究が注目され,混獲投棄の問題を技術的に解決するために漁具選択性の向上や漁具改良の実践が各国,各地で行われてきている。この問題について,対象とする生物種や大きさに対して,混獲投棄されるものとの行動特性の違いを利用した選択漁獲の方法論が1980年代から提案されているが,まだ実際的な応用には至っていない。そこで,漁具認知過程に関連した感覚機能,そして漁具回避能力に関連した運動特性の2つを取り上げて,対象・非対象の生物種別,並びに成長段階別に検討を行い,混獲防除技術のための基礎資料を得ることを目的に実験を行った。実験内容として,当初から実施していた魚類の刺激-反応系に関する行動生理実験を継続し,特にサンマとマアジを実験魚として集魚灯漁法との関係で実験を展開し,光刺激の波長別に光強度と照射時間を変えた実験を行い,網膜運動反応の機構を明らかにした。このほかに,マアジを実験魚として側線系の構造と機能に関する基礎研究を開始した。また,底引網,定置網,カニ籠について漁獲物の組成と投棄の現状,並びにコチを実験魚とした遊泳行動のトロールの漁獲過程の解明と,ガザミ籠の小型個体の漁獲防除のための逃避口の設計について水槽実験と操業実験を行った。これらの成果について,日本水産学会年会と漁業懇話会,またアメリカ合衆国ボストン市でFAOとICES(国際海洋開発協議会)共催の国際シンポジウムに出席し,魚類の視覚生理,コチの遊泳行動,ガザミ籠の今獲防除に関する講演・ポスター発表を行うとともに,世界各地での混獲防除に関する研究の状況について情報を収集し,また関係者との意見交換を実施した。21世紀に入り,地球環境保全の意識がますます高まっていくなかで,漁業が生態系に与える影響を最小化するための研究が注目され,混獲投棄の問題を技術的に解決するために漁具選択性の向上や漁具改良が実践が各国,各地で行われてきている。この問題について,対象とする生物種や大きさに対して,混獲投棄されるものとの行動特性の違いを利用した選択漁獲の方法論が1980年代から提案されているが,まだ実際的な応用には至っていない。 | KAKENHI-PROJECT-16380129 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16380129 |
分子量が制御された高分子を鋳型とする単分子膜の重合 | 本研究の目的は、(1)二次元界面を反応場として、厳密に制御されたモノマーシークエンスと分子量を持つ合成高分子を重合すること、(2)そのようなナノ構造を有する高分子をさらに高次のレベルで組織化し、分子フォトニクス材料などの分子機能性材料を構築しようとするものである。具体的には、核酸高分子を鋳型として厳密に制御されたシークエンスと分子量を持つ合成高分子を得ること、それらの高分子をナノメーターからマイクロメーターにかけたメゾスコピック領域において組織化することである。すでに我々は、核酸塩基の長鎖誘導体が気液界面においてDNA中と同様に選択的な水素結合の相補対を形成することを見いだしている。例えば、オクタデシルアデニンとオクタデシルチミンの等モル混合単分子膜では、Watson-Click型の塩基対がスタックしオクタデシルアクリジンオレンジのような平面性のよい分子をインターカレートすることを明らかにした。さらに、下水相にシングルストランドの核酸ポリマーを添加すると、塩基対単分子膜と核酸ポリマーの間でHoogsteen型の特異的な水素結合による塩基三量体形成がおこることを見いだした。本年度は、シングルストランドの核酸ポリマーを鋳型とした核酸塩基単分子膜の精密重合をめざして、トポタクティックな光重合が知られているジアセチレンを疎水部に有する核酸塩基誘導体を新たに合成し、それらの単分子膜形成と紫外線照射による光重合を検討した。Michael付加反応でそれぞれ9ならびに1位にカルボキシエチル基を導入したアデニンおよびチミンをパラニトロフェノールの活性エステルとし、10,12-pentacosadyn-1-olとイミダゾール存在下でエステル交換し、ジアセチレンをアルキル鎖内に有する核酸塩基誘導体C_<12>DAC_9Ade、C_<12>DAC_9Thyを合成した。単独ならびにこれらの1:1混合物のクロロホルム溶液を気水界面に展開し、表面圧-面積曲線を測定した結果、C_<12>DAC_9Adeは、20°C°において凝縮膜を形成するのに対しC_<12>DAC_9Thyでは膨張膜となり、温度をさげると膨張膜から凝縮膜への相転移が観察された。混合膜にすると崩壊圧の高い凝縮膜となることからアデニンとチミン間での相互作用が示唆される。本研究の目的は、(1)二次元界面を反応場として、厳密に制御されたモノマーシークエンスと分子量を持つ合成高分子を重合すること、(2)そのようなナノ構造を有する高分子をさらに高次のレベルで組織化し、分子フォトニクス材料などの分子機能性材料を構築しようとするものである。具体的には、核酸高分子を鋳型として厳密に制御されたシークエンスと分子量を持つ合成高分子を得ること、それらの高分子をナノメーターからマイクロメーターにかけたメゾスコピック領域において組織化することである。すでに我々は、核酸塩基の長鎖誘導体が気液界面においてDNA中と同様に選択的な水素結合の相補対を形成することを見いだしている。例えば、オクタデシルアデニンとオクタデシルチミンの等モル混合単分子膜では、Watson-Click型の塩基対がスタックしオクタデシルアクリジンオレンジのような平面性のよい分子をインターカレートすることを明らかにした。さらに、下水相にシングルストランドの核酸ポリマーを添加すると、塩基対単分子膜と核酸ポリマーの間でHoogsteen型の特異的な水素結合による塩基三量体形成がおこることを見いだした。本年度は、シングルストランドの核酸ポリマーを鋳型とした核酸塩基単分子膜の精密重合をめざして、トポタクティックな光重合が知られているジアセチレンを疎水部に有する核酸塩基誘導体を新たに合成し、それらの単分子膜形成と紫外線照射による光重合を検討した。Michael付加反応でそれぞれ9ならびに1位にカルボキシエチル基を導入したアデニンおよびチミンをパラニトロフェノールの活性エステルとし、10,12-pentacosadyn-1-olとイミダゾール存在下でエステル交換し、ジアセチレンをアルキル鎖内に有する核酸塩基誘導体C_<12>DAC_9Ade、C_<12>DAC_9Thyを合成した。単独ならびにこれらの1:1混合物のクロロホルム溶液を気水界面に展開し、表面圧-面積曲線を測定した結果、C_<12>DAC_9Adeは、20°C°において凝縮膜を形成するのに対しC_<12>DAC_9Thyでは膨張膜となり、温度をさげると膨張膜から凝縮膜への相転移が観察された。混合膜にすると崩壊圧の高い凝縮膜となることからアデニンとチミン間での相互作用が示唆される。 | KAKENHI-PROJECT-10126201 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10126201 |
グローバル・デバイス・インテグレーション技術の創製 | 本研究では、グローバルデバイスインテグレーション技術において重要である、高誘電率希土類酸化物薄膜のゲート絶縁膜への応用及びプラズマドーピング法による極浅接合形成に関する検討を行った。まず、希土類酸化物薄膜のゲート絶縁膜応用を目的として、Si(100)基板上にMBE法を用いて希土類酸化物薄膜を堆積し、アニール条件、表面処理手法、耐湿性、リーク電流機構などの検討を行った。材料としては、La_2O_3が希土類酸化物の中で最も良好な薄膜特性を示すことを明らかにし、堆積温度250°C、アニール温度400°Cの形成条件を用いることにより、SIO_2換算膜厚1nm程度でSiO_2よりも3桁以上低いリーク電流値を実現した。また、La_2O_3薄膜をゲート絶縁膜に用いたnチャネルMOSFETを作製し、移動度150cm^2/Vs、100mV/decadeが得られた。さらにLa_2O_3をゲート絶縁膜に用いたMOSFETの低周波ノイズ特性を評価した結果、酸素雰囲気中でアニールすることにより窒素雰囲気中でアニールを行なった場合よりも、ノイズレベルを低減できることを明らかにした。次に極浅接合形成技術の確立を目的として、プラズマドーピング法とレーザアニーリング法を組み合わせて、n型Si基板表面に極浅のp型層を形成した。接合の深さとp型層のシート抵抗の評価値として、14nmで600Ω/sqを達成し、極浅かつ低抵抗の観点からこれは現時点でほぼ世界のトップレベルである。また、従来はあまり考慮されてこなかったプラズマドーピングプロセス中での中性ガス成分の寄与に着目し、この現象の発生を明らかにした。これは、今後プラズマドーピング法の制御性の向上のために重要な要因であり、継続的研究が必要である。以上より、将来のデバイスプロセスの高度化および新しいプロセス要求への対応が期待できるプラズマドーピング技術の可能性と有用性を実証できた。本研究では、MBEを用いて様々な高誘電率(High-k)材料に関する検討を行い、ゲート絶縁膜への応用を目指している。昨年度La_2O_3薄膜が、SiO_2換算膜厚1nm程度で非常に低いリーク電流値を示すことを明らかにした。そこで本年度は、更なる希土類酸化物材料の探索と、電気特性向上のための薄膜形成条件の検討を行った。同時に希土類酸化物特有の問題とされている吸湿性に関しての検討を行った。材料としてはPr_2O_3、Sm_2O_3、Eu_2O_3、Gd_2O_3、Dy_2O_3、Yb_2O_3、Lu_2O_3に関して検討した。まず薄膜形成条件の検討としてSi基板表面処理の比較(HF-last、Chemical Oxide)、アニール時間依存性、in-situアニールの効果について検討を行った。Si基板上に0.5nm程度のChemical Oxideを形成した後に薄膜を堆積した場合、HF-lastに比べアニールによる界面層の形成がより抑制され、蓄積容量値の減少が改善でき、同時にリーク電流も低減できることが確認された。またO_2もしくはN_2雰囲気中で、低温(400°C)長時間アニール(20分90分)を行うことにより、若干蓄積容量値が減少するものの、リーク電流を劇的に低減できることを明らかにした。さらに薄膜堆積後、in-situで真空アニールを行うことにより、界面層の成長を抑制しつつ、ヒステリシスの無い良好なC-V特性が得られることが分かった。次に薄膜の吸湿性を評価するために、希土類酸化物薄膜を形成後、加湿容器内(アクリル製-PMMA、ガラス製-PYLEX)に一定時間放置し、電気的特性と表面ラフネスの変化を評価した。その結果、ガラス製容器に比べ、アクリル製容器中で加湿試験を行った場合、大幅な電気的特性の劣化および表面ラフネスの増大が確認された。これは、吸湿による影響だけでなくアクリル容器から放出される有機ガスと希土類酸化物との反応によるものであると考えられる。以上の結果はHigh-k膜形成後のベアウェハによるものであるが、加湿試験前に薄膜上にAl電極を形成することにより、劣化が抑制できることを明らかにした。Sub 10nm極微細CMOSの要素技術の確立を目的として、本年度はこれまで行ってきたMBE法による高誘電率希土類酸化物薄膜の形成に加えて、プラズマドーピング法による極浅拡散層の形成に関する検討を行った。[MBE法による希土類酸化物薄膜の形成]希土類酸化物薄膜の次世代ゲート絶縁膜への応用を目的として、Si基板上に形成したChemical Oxideの効果、希土類酸化物薄膜堆積後の超高真空アニール、さらにSi基板面方位依存性及び希土類酸化物薄膜上への耐熱性金属電極形成に関する検討を行った。MISダイオード特性の評価から、EOT1nm程度でSiO_2よりも数桁低いリーク電流値が再現性良く得られ、さらに超高真空アニール法及びTaN上部電極を用いたPMA法によりフラットバンドシフトを抑制するプロセスを開発した。今後はこれまで検討を行ってきた各技術を集約し、希土類酸化物をゲート絶縁膜に用いたデバイスの作製を行う。[プラズマドーピング法による極浅接合の形成]ヘリコン波プラズマ源を装備したプラズマドーピング装置を用いてボロンのドーピングを行った。 | KAKENHI-PROJECT-13025219 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13025219 |
グローバル・デバイス・インテグレーション技術の創製 | その結果、He/B_2H_6混合ガスをバイアス電圧-60Vにて、as-dopeでのドーピングを1秒30秒の間で時間制御する事で、Dose量2×10^<14>8×10^<14>cm^2、浸透深さ約56nmを達成した。また、常温でB_2H_6ガスを流すだけのガスフェーズドーピング法によるas-dopeでのボロンのドーピングにおいて、Arプラズマ前処理の有無による比較を行ったところ、Dose量が約2桁も異なる結果が得られた。これは、Arプラズマ処理を行う事でBoronが吸着/浸透しやすくなったものと考えられる。これらの実験結果を基に、プラズマドーピング法に関しては、更なるDose量制御・さらには面内均一性を目的として研究を進める予定である。一方、ガスフェーズドーピング法においては、吸着/浸透のメカニズムを解明し、低Dose量制御の可能な技術として確立していく必要がある。本研究では、グローバルデバイスインテグレーション技術において重要である、高誘電率希土類酸化物薄膜のゲート絶縁膜への応用及びプラズマドーピング法による極浅接合形成に関する検討を行った。まず、希土類酸化物薄膜のゲート絶縁膜応用を目的として、Si(100)基板上にMBE法を用いて希土類酸化物薄膜を堆積し、アニール条件、表面処理手法、耐湿性、リーク電流機構などの検討を行った。材料としては、La_2O_3が希土類酸化物の中で最も良好な薄膜特性を示すことを明らかにし、堆積温度250°C、アニール温度400°Cの形成条件を用いることにより、SIO_2換算膜厚1nm程度でSiO_2よりも3桁以上低いリーク電流値を実現した。また、La_2O_3薄膜をゲート絶縁膜に用いたnチャネルMOSFETを作製し、移動度150cm^2/Vs、100mV/decadeが得られた。さらにLa_2O_3をゲート絶縁膜に用いたMOSFETの低周波ノイズ特性を評価した結果、酸素雰囲気中でアニールすることにより窒素雰囲気中でアニールを行なった場合よりも、ノイズレベルを低減できることを明らかにした。次に極浅接合形成技術の確立を目的として、プラズマドーピング法とレーザアニーリング法を組み合わせて、n型Si基板表面に極浅のp型層を形成した。接合の深さとp型層のシート抵抗の評価値として、14nmで600Ω/sqを達成し、極浅かつ低抵抗の観点からこれは現時点でほぼ世界のトップレベルである。また、従来はあまり考慮されてこなかったプラズマドーピングプロセス中での中性ガス成分の寄与に着目し、この現象の発生を明らかにした。これは、今後プラズマドーピング法の制御性の向上のために重要な要因であり、継続的研究が必要である。以上より、将来のデバイスプロセスの高度化および新しいプロセス要求への対応が期待できるプラズマドーピング技術の可能性と有用性を実証できた。 | KAKENHI-PROJECT-13025219 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13025219 |
多光子吸収による窒化物半導体の3次元ナノスケールイメージング | 半導体では歪や欠陥がデバイス性能に直結するため、その影響はこれまで広く研究されてきた。格子欠陥は結晶成長条件や基板、構造に応じて3次元的にスケールの異なる様々な種類が存在する。またヘテロエピタキシャル薄膜で重要となる歪も、結晶内部の局所的な効果をもち、不純物や欠陥とも関連する。したがって歪や欠陥の影響を調べるためには、より詳細な、例えば3次元ナノイスケールメージング等の新しい測定技術が必要とされている。本研究では3次元イメージングを実現するため、非線形光学遷移の利用に着目し、i)バンド端以下の光子エネルギーを利用した2光子吸収(TPA)による3次元イメージングとii)励起子非線形性を用いた歪の高感度検出を実現した。これらの研究成果はGaNだけでなくナノ構造を含む幅広いデバイス物質に応用可能であり、高機能物性評価手法として今後の展開が期待できる。TPAイメージングでは非線形性を利用した高空間分解能をもつ欠陥分布の3次元イメージングに成功した。超短パルスを用いたポンププローブ分光をベースにしているため、デバイス性能評価指数となる二光子吸収係数の情報を取得可能である。またこの吸収係数の分布をもとに、GaN薄膜中では局所的な高密度欠陥準位が存在し、著しく高い吸収係数を示すことを明らかにした。別の縮退FWMをベースとした非線形分光では、高感度歪計測に成功した。電子-正孔対(励起子)の分極回折格子を利用すると、三次の非線形効果により汎用光学評価法と比べて累乗倍の異方性増強が実現される。そのため結晶に内在する不純物や欠陥にもとづく歪の高感度測定が可能となる。複数のGaN試料を用いて装置の性能評価を実施し、分裂エネルギーと強度比から算出される歪と応力を見積もった結果、X線解析装置と同等の歪解析能力を達成していることを明らかにできた。半導体では歪や欠陥がデバイス性能に直結するため、その影響はこれまで広く研究されてきた。格子欠陥は結晶成長条件や基板、構造に応じて3次元的にスケールの異なる様々な種類が存在する。またヘテロエピタキシャル薄膜で重要となる歪も、結晶内部の局所的な効果をもち、不純物や欠陥とも関連する。したがって歪や欠陥の影響を調べるためには、より詳細な、例えば3次元ナノイスケールメージング等の新しい測定技術が必要とされている。本研究では3次元イメージングを実現するため、非線形光学遷移の利用に着目し、i)バンド端以下の光子エネルギーを利用した2光子吸収(TPA)による3次元イメージングとii)励起子非線形性を用いた歪の高感度検出を実現した。これらの研究成果はGaNだけでなくナノ構造を含む幅広いデバイス物質に応用可能であり、高機能物性評価手法として今後の展開が期待できる。TPAイメージングでは非線形性を利用した高空間分解能をもつ欠陥分布の3次元イメージングに成功した。超短パルスを用いたポンププローブ分光をベースにしているため、デバイス性能評価指数となる二光子吸収係数の情報を取得可能である。またこの吸収係数の分布をもとに、GaN薄膜中では局所的な高密度欠陥準位が存在し、著しく高い吸収係数を示すことを明らかにした。別の縮退FWMをベースとした非線形分光では、高感度歪計測に成功した。電子-正孔対(励起子)の分極回折格子を利用すると、三次の非線形効果により汎用光学評価法と比べて累乗倍の異方性増強が実現される。そのため結晶に内在する不純物や欠陥にもとづく歪の高感度測定が可能となる。複数のGaN試料を用いて装置の性能評価を実施し、分裂エネルギーと強度比から算出される歪と応力を見積もった結果、X線解析装置と同等の歪解析能力を達成していることを明らかにできた。本研究では窒化物半導体を対象とした3次元ナノスケールイメージングの開発を進めている。とくにプローブ技術では測定困難な深さ方向のナノスケールイメージングを実現するために、非線形光学遷移を利用した時空間計測技術の確立を目的としている。本年度の研究成果として二つの計測技術について概要を示す。窒化物半導体GaNには成長過程で不純物準位が形成され、光学応答にも大きな影響を及ぼす。顕著な例は黄色発光であり、不純物準位からの発光であることが指摘されてきた。本研究成果において、我々はGaNの多光子遷移過程を調査し、不純物に起因する局在準位の共鳴を過渡吸収スペクトルの中に見出した。多光子発光との関係から、不純物準位への緩和発光確率以上に高い非線形吸収率を有していることを明らかにした。また過渡吸収スペクトルの中に不純物準位からバンド端に至る広い二光子吸収共鳴が存在すること明らかにし、回折限界程度の空間分解能を有する3次元的なイメージングを実現した。また非線形光学過程を利用した別の計測手法として、四光波混合分光(FWM)を利用した高感度歪計測を実現した。A面サファイア基板上GaNを使用し、基板との熱膨張係数差異方性による一軸歪の定量的な光学評価を行った。実験では直線偏光二パルス励起のFWMスペクトルを取得し、そのスペクトル強度の偏光依存性から、二つの励起子共鳴における反相関的な強度変化を観測した。この変化は一軸歪による励起子異方性に対応し、偏光度に着目すると線形分光の10倍の感度増強が実現できた。 | KAKENHI-PROJECT-16310076 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16310076 |
多光子吸収による窒化物半導体の3次元ナノスケールイメージング | これはFWMが振動子強度の4乗に比例することを反映しており、本計測手法の有用性が示された。またスペクトルの偏光依存性には、励起子エネルギーの微小なシフトが観測される。これは交換相互作用による微細構造分裂を反映しており、その分裂幅から歪の大きさを定量的に評価できる。今回用いた試料においては約0.2GPaの一軸歪が見積られた。本研究では窒化物半導体を対象とした3次元イメージングの開発を進めている。とくにプローブ技術では測定困難な深さ方向のナノスケールイメージングを実現するために、非線形光学遷移を利用した時空間計測技術の確立を目的としている。これまでに我々は、GaNの多光子遷移過程を調査し、不純物に起因する局在準位の共鳴を過渡吸収スペクトルの中に見出した。これを利用した回折限界程度の空間分解能を有する3次元的なイメージングを実現した。また非線形光学過程を利用した別の計測手法として、四光波混合分光(FWM)を利用した高感度歪計測を実現し、偏光度に着目すると線形分光の10倍の感度増強が実現できた。これをもとに新しい計測手法としてPCT出願を行い、X線回折と同程度の分解能を持ち、空間分解可能な光学系の作製を企業と共同で開発中である。3次元イメージングにより得られる物性パラメータの幅を広げるために、今年度はさらに過渡回折格子を用いたスピン緩和測定と四光波混合分光の指向性を利用した新しい時空間イメージング技術の開発に着手した。前者に関してはバルク窒化物半導体のスピン緩和がきわめて高速であることを明らかにした。後者に関しては量子ビートの時間分解イメージングに成功し、空間的なマッピングへの道筋を示すことができた。最終年度はこの手法をさらに発展させ、3次元イメージングの可能性について調査していく。本研究では窒化物半導体(GaN)を対象とし、非線形光学遷移を利用した3次元ナノスケールイメージングの開発を進めてきた。これまでに1)多光子吸収を利用した3次元イメージング、2)これによるGaN不純物準位の起源の考察を行い、加えて3)ワイドギャップ固有の励起子非線形性を利用した新しい物性計測手法の開発を行なった。前年度までの成果は学会発表9件(国際会議6件、国内3件)、論文7件(査読有)にまとめた。最終年度は、これらの成果をもとにGaNに対する高機能物性評価の確立を目指して研究を遂行した。主要な成果として、1)多光子吸収と四光波混合を利用したGaN基板の結晶解析、2)開発した計測手法の分解能の見積もり、3)欠陥との相関の明確化を行なった。以下にその成果をまとめる。超短パルスを用いたポンププローブ分光では、欠陥準位を介した多光子吸収を観測することができる。また同一の測定系を使った電子-正孔対(励起子)の分極回折格子を利用すると、三次の非線形効果により汎用光学評価法と比べて累乗倍の異方性増強が実現される。そのため結晶に内在する不純物や欠陥にもとづく歪の高感度測定が可能となる。複数のGaN試料を用いて装置の性能評価を実施し、分裂エネルギーと強度比から算出される歪と応力を見積もった結果、X線解析装置と同等の歪解析能力を達成していることを明らかにした。また同一試料表面で空間分解計測を実施し、欠陥をFIB加工により意図的に配置した試料において、偏光特性強度比が10^<-3>のオーダーで変化することを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-16310076 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16310076 |
生物規範型冗長多自由度ロボットの脚式歩行に関する研究 | 本研究では,1台のロボットが多機能性を有することで高い移動能力を持つマルチロコモーションロボットシステムの実現の第一歩として,2足歩行及び4足歩行といった脚式歩行に着目し,各運動の制御系設計を行っている.本年度は,これまでの研究で提案していた2足歩行のロバスト性を向上させ,高効率かつロバストな3次元歩行の実現を試みた.まず,ロボットを倒立振子でモデル化し,Passive Dynamic Autonomous Control(PDAC)を適用することによりダイナミクスを自律システムとして記述した.次に,歩行のロバスト性を強化するため,両脚支持期を用いた3次元歩行制御を提案した.両脚支持期では,脚の着地直後の状態に応じて倒立振子の軌道が理想軌道の状態と一致するような倒立振子の軌道を設計し,新たな歩行アルゴリズムを構築した.提案された歩行アルゴリズムをシミュレーションによって検証し,両脚支持期によってロボットのダイナミクスが収束軌道に導かれることを確認した.さらに,遊脚伸縮運動を提案した.衝突を伴う離散状態システムとして歩行サイクルを記述し,その平衡点周りでのボアンカレ写像を用いて歩行の安定性を解析した.解析の結果,適切な遊脚伸縮運動を設定することで歩行の安定性を強化することが可能であることを示した.最後に,提案した両脚支持期および遊脚伸縮運動を統合し,実験的検証を行った.実験結果から,提案手法が高い安定性を有し,ZMPに基づく制御手法と比較すると高効率であるという結果が得られた.ZMPに基づく制御手法はバッテリーによる駆動時間が短すぎるといった問題があるため,効率のよい本研究の2足歩行制御手法が2足歩行ロボットにおける代表的な歩行制御手法となる可能性が示された.これらの研究成果を学術雑誌3件,国内外における学会発表5件,図書1件などに発表し,積極的に公表に努めた.本研究では,1台のロボットが多機能性を有することで高い移動能力を持つマルチロコモーションロボットシステムの実現の第一歩として,2足歩行及び4足歩行といった脚式歩行に着目し,各運動の制御系設計を行っている.本年度は,これまでの研究で提案していた2足歩行のロバスト性を向上させ,不整地路面上での3次元歩行の実現を試みた.PassiveDynamic Autonomous Controlを用いた歩行を設計し,設計された歩行の安定性を解析することで,その歩行性能を検証し,本手法がある程度の不整地路面に適応することが可能であることが示された.また,安定化制御器の収束速度を向上させるアルゴリズムを構築することで,未知の不整地路面上での3次元歩行を実現した.また,PDACを用いた手法の利点である高効率性を確認するため,無次元の移動コストの指標を実験データから算出した.その結果,不整地路面での歩行に関しても,これまでに最も成果を挙げているZMPに基づく制御と比較し,点接触を用いたPDACに基づく歩行の効率が良いという結果が得られた.ZMPに基づく制御手法はバッテリーによる駆動時間が短すぎるといった問題があるため,効率のよい本研究の2足歩行制御手法が2足歩行ロボットにおける代表的な歩行制御手法となる可能性が示された.これらの研究成果を学術雑誌1件,国内学会における発表3件,国際会議における発表2件,図書1件など積極的に公表に努めた.本研究では,1台のロボットが多機能性を有することで高い移動能力を持つマルチロコモーションロボットシステムの実現の第一歩として,2足歩行及び4足歩行といった脚式歩行に着目し,各運動の制御系設計を行っている.本年度は,これまでの研究で提案していた2足歩行のロバスト性を向上させ,高効率かつロバストな3次元歩行の実現を試みた.まず,ロボットを倒立振子でモデル化し,Passive Dynamic Autonomous Control(PDAC)を適用することによりダイナミクスを自律システムとして記述した.次に,歩行のロバスト性を強化するため,両脚支持期を用いた3次元歩行制御を提案した.両脚支持期では,脚の着地直後の状態に応じて倒立振子の軌道が理想軌道の状態と一致するような倒立振子の軌道を設計し,新たな歩行アルゴリズムを構築した.提案された歩行アルゴリズムをシミュレーションによって検証し,両脚支持期によってロボットのダイナミクスが収束軌道に導かれることを確認した.さらに,遊脚伸縮運動を提案した.衝突を伴う離散状態システムとして歩行サイクルを記述し,その平衡点周りでのボアンカレ写像を用いて歩行の安定性を解析した.解析の結果,適切な遊脚伸縮運動を設定することで歩行の安定性を強化することが可能であることを示した.最後に,提案した両脚支持期および遊脚伸縮運動を統合し,実験的検証を行った.実験結果から,提案手法が高い安定性を有し,ZMPに基づく制御手法と比較すると高効率であるという結果が得られた.ZMPに基づく制御手法はバッテリーによる駆動時間が短すぎるといった問題があるため,効率のよい本研究の2足歩行制御手法が2足歩行ロボットにおける代表的な歩行制御手法となる可能性が示された.これらの研究成果を学術雑誌3件,国内外における学会発表5件,図書1件などに発表し,積極的に公表に努めた. | KAKENHI-PROJECT-10J06045 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J06045 |
情報流解析による安全性検証に基づく実用的なソフトウェア開発支援 | 本年度は、型検査に基づく情報流解析における制約付き機密度パラメータに関する研究を行った。機密度パラメータは、データ構造の一部を構成するデータの機密度を具体的な機密度ではなくパラメータとして記述するための仕組みであり、データの機密度を定義時ではなく使用時に決定することを可能にする。これにより、一部のデータの機密度のみが異なるデータ構造が必要な場合に、機密度を変えながら大部分が同一の複数のデータ構造を定義しなくてもよい。しかし、機密度パラメータにどのような機密度が指定されても非干渉性を満たしていることが要求されるため、記述できるプログラムに関して柔軟性に欠ける部分があり、この問題の解決を目指した。解決策として、機密度パラメータに対して制約を与える手法を提案した。機密度パラメータに対して制約を満たす機密度が指定された場合に非干渉性が満たされることを検査する型システムを定義し、その健全性を証明した。これにより、機密度パラメータに対して任意の機密度ではなく制約を満たす機密度が指定された場合に限って型付け可能となるようにプログラムを記述すればよいため、プログラム記述の柔軟性が向上する。健全性により、型付け可能なプログラムであれば機密度の高いデータが機密度の低いデータに影響を与えるような不正な情報流を含んでいないことが保証される。これらの成果について国内の会議で発表した。また、論文誌に投稿中である。およそ当初の計画通り進行している。ライブラリとユーザプログラムの情報流解析の統合については完了していないが、制約付き機密度パラメータの応用として解決できると考えている。一方、当初は予定していなかった制約付き機密度パラメータのためのアノテーションについて着手した。次年度についても当初の計画に従って研究を進める。ただし、統合開発環境における情報流解析の実現に関して、既存のツールが特定のコンパイラに依存した実装になっており、統合開発環境のコンパイラに単純に入れ替えられない可能性があり、その場合は独立したツールとして実現する。また、当初は予定していなかった制約付き機密度パラメータに対応した情報流解析の実装方法についても研究を進める。本年度は、オブジェクト指向プログラムを対象とする型検査に基づく情報流解析における機密度のパラメータ化に関する研究を行った。機密度のパラメータ化は、データ構造の一部を構成するデータの機密度を具体的な機密度ではなくパラメータとして記述することである。データ構造に含まれるデータの機密度を構造の定義時ではなく使用時に決定することを可能とする。これにより、データ構造の定義一つから、パラメータに指定する機密度を変更するだけで、含まれるデータの機密度のみが異なる複数のデータ構造を用意できる。従来手法では、個々のデータ構造を個別に定義することが必要であるが、これらの構造は内部のロジックなどデータの機密度以外の要素は同じであることからクローンに相当し、保守性の観点から問題となっている。機密度のパラメータ化によりデータ構造の定義は一つに集約されるため、この問題が解決される。パラメータ化された機密度を持つデータ構造に関して、本年度はパラメータにどのような機密度が指定されても非干渉性が満たされることを検査する型システムを定義し、その健全性を証明した。これにより、プログラムが型付け可能であれば、パラメータに指定される機密度によらず機密度の低いデータが機密度の高いデータに依存するような不正な情報流は存在し得ないプログラムであることを確信できる。これらの成果について国内の会議で発表した。また、論文誌に投稿中である。およそ当初の計画通り進行している。機密度のパラメータ化に関して当初は予想していなかったバリエーションが存在することが判明し、本年度はそのうちの一つについて研究を進めた。その他のバリエーションについては次年度以降に当初の計画の進行と調整しながら研究を進める予定である。本年度は、型検査に基づく情報流解析における制約付き機密度パラメータに関する研究を行った。機密度パラメータは、データ構造の一部を構成するデータの機密度を具体的な機密度ではなくパラメータとして記述するための仕組みであり、データの機密度を定義時ではなく使用時に決定することを可能にする。これにより、一部のデータの機密度のみが異なるデータ構造が必要な場合に、機密度を変えながら大部分が同一の複数のデータ構造を定義しなくてもよい。しかし、機密度パラメータにどのような機密度が指定されても非干渉性を満たしていることが要求されるため、記述できるプログラムに関して柔軟性に欠ける部分があり、この問題の解決を目指した。解決策として、機密度パラメータに対して制約を与える手法を提案した。機密度パラメータに対して制約を満たす機密度が指定された場合に非干渉性が満たされることを検査する型システムを定義し、その健全性を証明した。これにより、機密度パラメータに対して任意の機密度ではなく制約を満たす機密度が指定された場合に限って型付け可能となるようにプログラムを記述すればよいため、プログラム記述の柔軟性が向上する。健全性により、型付け可能なプログラムであれば機密度の高いデータが機密度の低いデータに影響を与えるような不正な情報流を含んでいないことが保証される。これらの成果について国内の会議で発表した。また、論文誌に投稿中である。およそ当初の計画通り進行している。ライブラリとユーザプログラムの情報流解析の統合については完了していないが、制約付き機密度パラメータの応用として解決できると考えている。一方、当初は予定していなかった制約付き機密度パラメータのためのアノテーションについて着手した。次年度以降についても当初の計画に従って研究を進める。ライブラリとユーザプログラムの情報流解析の統合、および統合開発環境における情報流解析の提案について取り組む。これらの進行状況によるが、可能であれば機密度のパラメータ化に関するバリエーションにも取り組む。次年度についても当初の計画に従って研究を進める。 | KAKENHI-PROJECT-17K12666 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K12666 |
情報流解析による安全性検証に基づく実用的なソフトウェア開発支援 | ただし、統合開発環境における情報流解析の実現に関して、既存のツールが特定のコンパイラに依存した実装になっており、統合開発環境のコンパイラに単純に入れ替えられない可能性があり、その場合は独立したツールとして実現する。また、当初は予定していなかった制約付き機密度パラメータに対応した情報流解析の実装方法についても研究を進める。物品費に関して他の予算から多く充当できたため残額が発生した。物品費あるいは出張旅費に充当する予定である。旅費に関して他の予算から多く充当できたため次年度使用額が発生した。物品費あるいは出張旅費に充当する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-17K12666 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K12666 |
精子の機能障害による生殖不全機構の解明 | 本研究は生殖不全機構を解明するために、精細胞に特異的に発現する極めて特徴的なDNA結合タンパク質Protamine1(Prm1)に着目し、ES細胞を用いた遺伝子相同組換え技術により破壊したPrm1遺伝子欠損マウスを用いておこなった。Prm1KOマウスの♂は、染色体の一方を破壊したヘテロの状態で不妊であった。ヒトではPrmの発現低下が不妊に関係しているという知見が報告されており、これらのことからその発現量を維持するためにPrm1遺伝子は両染色体に必要であると推測された。ヘテロ精巣上体尾部由来精子を解析したところ、予想通りその精子核ではDNAが十分に凝縮されていなかった。また光顕観察の結果ヘテロ由来精子はほとんど静止しており、運動能の喪失が不妊の主因であるととがわかった。そこでエネルギー源であるミトコンドリア膜電位をRhodamineを用いて計測したところ有意に低下しており、また電子顕微鏡での観察では鞭毛構造に特徴的な9+2の微小管構造にも異常が見受けられた。これらのことから不妊の主因である運動能の喪失はエネルギー産生系と構造異常の両方によるものであることが明らかになった。この様に、精子発生過程の最終過程で発現するPrm1が単なるDNA結合タンパク質ではなく、代謝や細胞質構造に大きく関わることが本研究によって明らかになった。本研究では生殖不全機構を解明するために、精細胞に特異的に発現し極めて特徴的であるDNA結合タンパク質Protaminel (Prm1)をES細胞を用いた遺伝子相同組換え技術により破壊した、Prm1KO遺伝子欠損マウスを作製し材料として用いた。Prm1KOマウスの♂は、染色体の一方を破壊したヘテロの状態で、不妊となることが明らかとなった。ヒトではPrmの発現低下が不妊に関係しているという知見が報告されており、これらのことからその発現量を維持するためにPrm1遺伝子は両染色体に必要であると推測される。Prm1ヘテロ変異♂マウスの精巣を組織学的に検討した結果、精巣及び精巣上体等はwildマウスと差違が見受けられなかった。しかし精巣上体尾部より精子を抽出しin-vitroでの観察の結果、ヘテロ変異♂マウスの精子はほとんど静止しており、鞭毛が動いている精子もその運動能は極端に低下していることが明らかになった。この事からヘテロ変異♂マウスの精子はそのほとんどが死んでいると考えられた。しかし細胞膜の変化をSYBRとPIの2重染色で行ったが、wildマウスとの差は見受けられなかった。これは先の運動能の消失とは相反する結果である。精子は極端に機能化、分化した細胞であり、リボソームやゴルジ体などはないが、一方ミトコンドリアを大量に含んでいる。そこで鞭毛運動のエネルギー源であるミトコンドリアの活性を計測したところ、ヘテロ変異♂マウスではミトコンドリアの電位が低下している事が明らかとなった。このようにPrm1はヒトの不妊疾患の解析モデルになりうると共に、DNA結合タンパク質がエネルギー生産系との関わりを示唆する興味深い結果が得られた。本研究は生殖不全機構を解明するために、精細胞に特異的に発現する極めて特徴的なDNA結合タンパク質Protamine1(Prm1)に着目し、ES細胞を用いた遺伝子相同組換え技術により破壊したPrm1遺伝子欠損マウスを用いておこなった。Prm1KOマウスの♂は、染色体の一方を破壊したヘテロの状態で不妊であった。ヒトではPrmの発現低下が不妊に関係しているという知見が報告されており、これらのことからその発現量を維持するためにPrm1遺伝子は両染色体に必要であると推測された。ヘテロ精巣上体尾部由来精子を解析したところ、予想通りその精子核ではDNAが十分に凝縮されていなかった。また光顕観察の結果ヘテロ由来精子はほとんど静止しており、運動能の喪失が不妊の主因であるととがわかった。そこでエネルギー源であるミトコンドリア膜電位をRhodamineを用いて計測したところ有意に低下しており、また電子顕微鏡での観察では鞭毛構造に特徴的な9+2の微小管構造にも異常が見受けられた。これらのことから不妊の主因である運動能の喪失はエネルギー産生系と構造異常の両方によるものであることが明らかになった。この様に、精子発生過程の最終過程で発現するPrm1が単なるDNA結合タンパク質ではなく、代謝や細胞質構造に大きく関わることが本研究によって明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-14770859 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14770859 |
培養表皮角化細胞とメラノサイトへの遺伝子導入効率に関する基礎的研究 | 正常ヒト表皮角化細胞、正常ヒトメラノサイトの株化が困難であったため、角化細胞としてヒト食道癌細胞株であるHEC46、ヒトメラノサイト系細胞としてヒト黒色腫細胞株であるMeWo、G361、そしてCOS7の4細胞株を対象とした。導入遺伝子として、Hemoagurutinin(ha)-tagのプラスミド(pCMVha)、ヒト・ゲルソリン(アクチン調節蛋白質、質量90KDa)のcDNAをpCMVhaに組み込んだコンストラクト(pCMVhaGSN)の2種類を用意した。導入されたか否かは、トランスフェクタントから蛋白を抽出し、細胞が産生する、haが結合したゲルソリン(haGSN)がWestern法で抗ha抗体にて検出されるかどうかで判定した。ゲルソリンのマーカーとして、正常皮膚と皮膚悪性黒色腫組織における野生体ゲルソリンを、Western法で抗ゲルソリン抗体(GS-2C4)にて検出し、haGSNと分子量を比較した。リポフェクション法ではCOS7、MeWoでhaGSNを強く検出可能であった。また、エレクトロポレーション法でも、MeWoでhaGSNを強く検出した。HEC46では、両方法において、極めて弱いもののhaGSNのバンドを認めた。本研究で我々は、偶然にもヒト悪性黒色腫組織において、通常の90KDaのゲルソリン以外に、交差反応する約85KDaのバンド(GSNp85)がウエスタンブロット法にて認められることを発見した。本短縮体は、過去に報告が無く、研究の主軸をこの短縮体の一次構造解明へと転じた。ヒト皮膚悪性黒色腫の原発組織ならびに転移組織38検体におけるゲルソリンの発現をウエスタン法で調べたところ、原発巣の陽性率は75.8%、再発・転移巣では100%であった。レベルII以上の厚さではp85の陽性率が有意に上昇し、一次構造は、C末端の欠失した短縮体であることが判明した。正常ヒト表皮角化細胞、正常ヒトメラノサイトの株化が困難であったため、角化細胞としてヒト食道癌細胞株であるHEC46、ヒトメラノサイト系細胞としてヒト黒色腫細胞株であるMeWo、G361、そしてCOS7の4細胞株を対象とした。導入遺伝子として、Hemoagurutinin(ha)-tagのプラスミド(pCMVha)、ヒト・ゲルソリン(アクチン調節蛋白質、質量90KDa)のcDNAをpCMVhaに組み込んだコンストラクト(pCMVhaGSN)の2種類を用意した。導入されたか否かは、トランスフェクタントから蛋白を抽出し、細胞が産生する、haが結合したゲルソリン(haGSN)がWestern法で抗ha抗体にて検出されるかどうかで判定した。ゲルソリンのマーカーとして、正常皮膚と皮膚悪性黒色腫組織における野生体ゲルソリンを、Western法で抗ゲルソリン抗体(GS-2C4)にて検出し、haGSNと分子量を比較した。リポフェクション法ではCOS7、MeWoでhaGSNを強く検出可能であった。また、エレクトロポレーション法でも、MeWoでhaGSNを強く検出した。HEC46では、両方法において、極めて弱いもののhaGSNのバンドを認めた。本研究で我々は、偶然にもヒト悪性黒色腫組織において、通常の90KDaのゲルソリン以外に、交差反応する約85KDaのバンド(GSNp85)がウエスタンブロット法にて認められることを発見した。本短縮体は、過去に報告が無く、研究の主軸をこの短縮体の一次構造解明へと転じた。ヒト皮膚悪性黒色腫の原発組織ならびに転移組織38検体におけるゲルソリンの発現をウエスタン法で調べたところ、原発巣の陽性率は75.8%、再発・転移巣では100%であった。レベルII以上の厚さではp85の陽性率が有意に上昇し、一次構造は、C末端の欠失した短縮体であることが判明した。正常ヒト表皮角化細胞、正常ヒトメラノサイトの株化が困難であったため、まず角化細胞としてヒト食道癌細胞株であるHEC46、ヒトメラノサイト系細胞としてヒト黒色腫細胞株であるMeWo,AKl、そして遺伝子導入のコントロールとしてアフリカミドリザル腎細胞株であるCOS7の4細胞株を遺伝子導入の対象とした。導入遺伝子として我々は、2)ヒト・ゲルソリン(アクチン調節蛋白質、質量90KDa)のcDNAをpCMVHAに組み込んだコンストラクト(pCMVHA-hGSN)の2種類を用意した。導入されたか否かは、pCMVHA-hGSNを導入された細胞から蛋白を抽出し、cDNAを導入されたために細胞が産生する90Kdaのヒト・ゲルソリンがWestern法で抗HA抗体にて検出されるかどうかで判定した。まず作成されたマーカー遺伝子(pCMVHA-hGSN)が導入遺伝子として機能するかどうかを検証するため、COS7に導入を行い、Western法でゲルソリンのバンドを抗HA抗体にて確認した。正常ヒト表皮角化細胞、正常ヒトメラノサイトの株化が困難であったため、角化細胞としてヒト食道癌細胞株であるHEC46、ヒトメラノサイト系細胞としてヒト黒色腫細胞株であるMeWo、G361、そしてCOS7の4細胞株を対象とした。導入遺伝子として、Hemoagurutinin(ha)-tagのプラスミド(pCMVha)、ヒト・ゲルソリン(アクチン調節蛋白質、質量90KDa)のcDNAをpCMVhaに組み込んだコンストラクト(pCMVhaGSN)の2種類を用意した。 | KAKENHI-PROJECT-11671780 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11671780 |
培養表皮角化細胞とメラノサイトへの遺伝子導入効率に関する基礎的研究 | 導入されたか否かは、トランスフェクタントから蛋白を抽出し、細胞が産生する、haが結合したゲルソリン(haGSN)がWestern法で抗ha抗体にて検出されるかどうかで判定した。ゲルソリンのマーカーとして、正常皮膚と皮膚悪性黒色腫組織における野生体ゲルソリンを、Western法で抗ゲルソリン抗体(GS-2C4)にて検出し、haGSNと分子量を比較した。リポフェクション法ではCOS7、MeWoでhaGSNを強く検出可能であった。また、エレクトロポレーション法でも、MeWoでhaGSNを強く検出した。HEC46では、両方法において、極めて弱いもののhaGSNのバンドを認めた。本研究で我々は、偶然にもヒト悪性黒色腫組織において、通常の90KDaのゲルソリン以外に、交差反応する約85KDaのバンド(GSNp85)がウエスタンブロット法にて認められることを発見した。本短縮体は、過去に報告が無く、研究の主軸をこの短縮体の一次構造解明へと転じた。ヒト皮膚悪性黒色腫の原発組織ならびに転移組織38検体におけるゲルソリンの発現をウエスタン法で調べたところ、原発巣の陽性率は75.8%、再発・転移巣では100%であった。レベルII以上の厚さではp85の陽性率が有意に上昇し、一次構造は、C末端の欠失した短縮体であることが判明した。 | KAKENHI-PROJECT-11671780 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11671780 |
膵島特異的遺伝子の発現調節軸に焦点を絞った糖尿病遺伝子の探索 | 膵島特異的機能に関連する遺伝子を網羅的に集積するためにEST in situ hybridizationを確立し,今年度までに特異性の高い発現遺伝子134個(既知43個,未知91個)を同定している。第一段階の遺伝子のうち,機能が明らかな20遺伝子(194/233エクソン)について変異スクリーニングを実施した。その結果,MODYの成因となる遺伝子変異の同定には至っていないが,181SNPを同定することができた。現在,これらのSNPと2型糖尿病の発症との関連を解析している。インスリン分泌と食欲調節との関連についての解析ゲノム配列を用いて特異性の高い遺伝子について,10Kb以内の予測プロモーター配列におけるGREの有無をin siloco解析した。ESTとアレイ解析で2,498個もホルモン合成分泌関連の遺伝子を選別し,さらにgene ontology解析により587個のグルココルチコイド応答遺伝子を得た。rVISTA2.0によるGRE解析により,86個の遺伝子を獲得した。しかし,sgkのみがグルココルチコイド応答性を示した。グルココルチコイド応答遺伝子の解析グルココルチコイド負荷条件により検出した15遺伝子に着目し,3種類がGREを有する候補として選別された(sgk,bc16,pdk4)。プロモーター領域のGC応答配列の転写制御活性はsgkのみに認められたことから,プロモーターを介した直接制御以外のグルココルチコイド調節も生理機能において重要であることが示唆された。さらに,以前に実施されたゲノム全域にわたる感受性遺伝子座のスクリーニングにおいて,気分障害の感受性遺伝子座のマップ領域にsgkが存在したことから,同遺伝子は重要候補と考えられた。現在,SNPハプロタイプを用いた関連解析を進めている。インスリン分泌という膵島特異的機能に関連する遺伝子群を網羅的に集積するために、前年度までに我々はハイスループットなEST in situ hybridizationの系を確立し、独自収集した2万個のラットESTに由来する約1万種類の重複しない配列を用いて膵島の特異的発現について網羅的解析を実施した。その結果、現在までに膵島に特異性の高い発現遺伝子134個(既知43個。未知91個)を同定した。そのうち、機能が明らかな20遺伝子をSNPスクリーニングし、181SNP(新規91個、ミスセンス15個)を同定した。現在、疾患発症との関連を解析している既知のmiRNAに関しては、ヒト474種類とラット234種類について解析を進めており、特に組織特異性が高いと推定されるヒト3配列とラット3配列を中心に進めている。予測miRNAに関しては、ヒト743種類とラット236種類を選択し、ヒト75配列とラット1配列について検討している。インスリン分泌と食欲調節との関連についての解析ラット視床下部のESTも平行して14,000個を集積し、重複しない5,442遺伝子(既知2.858種類、未知2,584種類)のセットを構築した。データベースサーチでどの登録ESTにも合致しない新規遺伝子は1.367種類あり、組織特異性の高い遺伝子群と考えられる。マイクロアレイ解析で得られた膵島プロフィールとの共通性を解析している。ゲノム配列を用いて特異性の高い遺伝子(神経内分泌に関連する遺伝子に特に焦点を当てた)について、10Kb以内のプロモーター配列におけるグルココルチコイド応答配列の有無をin siloco解析し、その結果として91遺伝子を同定した。膵島特異的機能に関連する遺伝子を網羅的に集積するためにEST in situ hybridizationを確立し,今年度までに特異性の高い発現遺伝子134個(既知43個,未知91個)を同定している。第一段階の遺伝子のうち,機能が明らかな20遺伝子(194/233エクソン)について変異スクリーニングを実施した。その結果,MODYの成因となる遺伝子変異の同定には至っていないが,181SNPを同定することができた。現在,これらのSNPと2型糖尿病の発症との関連を解析している。インスリン分泌と食欲調節との関連についての解析ゲノム配列を用いて特異性の高い遺伝子について,10Kb以内の予測プロモーター配列におけるGREの有無をin siloco解析した。ESTとアレイ解析で2,498個もホルモン合成分泌関連の遺伝子を選別し,さらにgene ontology解析により587個のグルココルチコイド応答遺伝子を得た。rVISTA2.0によるGRE解析により,86個の遺伝子を獲得した。しかし,sgkのみがグルココルチコイド応答性を示した。グルココルチコイド応答遺伝子の解析グルココルチコイド負荷条件により検出した15遺伝子に着目し,3種類がGREを有する候補として選別された(sgk,bc16,pdk4)。プロモーター領域のGC応答配列の転写制御活性はsgkのみに認められたことから,プロモーターを介した直接制御以外のグルココルチコイド調節も生理機能において重要であることが示唆された。さらに,以前に実施されたゲノム全域にわたる感受性遺伝子座のスクリーニングにおいて,気分障害の感受性遺伝子座のマップ領域にsgkが存在したことから,同遺伝子は重要候補と考えられた。現在,SNPハプロタイプを用いた関連解析を進めている。 | KAKENHI-PROJECT-18018018 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18018018 |
ユーイング肉腫マウスモデルの樹立と解析 | 前年度、サブクローニングした遺伝子をマウス胎性幹細胞(embryonic stem(ES)cells)に導入し、in vitroでの発現形式の確認を行った。その結果、2つのcell lineで2^<nd> reporter geneの発現(hPLAPの発現(アルカリフォスファターゼ染色で紫色に染色))を確認できた。そしてこれらPositiveなES細胞のcell lineをマウス受精卵に顕微鏡下に注入し、その受精卵を偽妊娠させたメスマウス子宮内に注入し、何とかキメラマウスを誕生させることに成功し、EWS/Fli1融合遺伝子を持つであろうトランスジェニックマウスを誕生させることができた。そして誕生したマウスの耳もしくは尾の切片よりDNAを抽出し、1^<st> reporter gene(βガラクトシダーゼ)の発現(LacZ染色)を確認したところ、どういうわけか発現を認めなかった。そのため、LacZ近辺のプライマーを作成してPCRを行ったところ、バンドを確認できた。次いでCreトランスジェニックマウス(pCX-Cre)とEWS/Fli1トランスジェニックマウスを掛け合わせ、EWS/Fli1の発現を試みたが、2^<nd> reporter gene(hPLAP)の発現が確認できなかった。同様にEWSFli1近辺でプライマーを作成してPCRを行ったところ、バンドを確認できた。さらにEWSFli1蛋白の同定を行ったが、バンドを認めなかった。つまりreportergeneおよびEWS/Fli1の遺伝子は共に存在するがサイレントジーンとなり、2ラインとも発現はしなかった。今後遺伝子発現させるべく、p53ノックアウトマウスとの交配などを検討し解析していきたい。あるいは別のアプローチで腫瘍発現マウスの作成に取り掛かりたい。小児悪性骨軟部腫瘍であるEwing肉腫は、全症例の90%以上に染色体相互転座t(11;22)が生じ、異常な融合遺伝子EWS/Fli-1が産生され、この遺伝子が発癌に関与しているとされる。よって本研究の目的は、EWS/Fli1を導入したEwing肉腫のマウスモデルを樹立し、病態解析および分子標的治療の基礎的研究を推進することである。手始めとしてまず、導入遺伝子のサブクローニングを行った。これまでEWS/Fli1融合遺伝子を導入したトランスジェニックマウスは胎生致死などの理由で樹立の成功例はない。そこで今回、EWS/Fli1とともにCre/loxPシステムを組み込み、胎生期にその遺伝子発現を抑制することを試みることとした。サブクローニングは、loxP間にストップコドンおよびreporter geneとしてβ-ガラクトシダーゼを置き、さらにその後ろにEWS/Fli1融合遺伝子およびsecond reporter geneをおいた。このsecond reporter geneとしてアルカリフォスファターゼ(hPLAP)もしくはEGFPを組み込んで2種類のプラスミド(それぞれiz/APおよびiz/EG)を作成した。そしてこれら作成したプラスミドDNA(iZ/AP、iZ/EG)をマウス胎性幹細胞(embryonic stem(ES) cells)に導入ぐエレクトロポレート),し、G418でセレクションの後、βガラクトシダーゼの発現(LagZ染色にて青色に染まる)が確認できた細胞のみをピックアップした。ついでCreのDNAをさらに細胞導入しsecond reporter geneの発現の確認を行った。,その結果、iZ/AP導入細胞ではLacZ(-)かつhPLAPの発現(アルカリフォスファターゼ染色で紫色に染色)が確認できたものが2ラインだったが、iZ/EGではLacZ(-)で、EGFPの発現(緑色に発光)が確認できたセルラインはなかった。何度か繰り返したが、同様の結果であった。そのため今後、second reporter geneが発現したiZ/AP導入ES細胞のみをマウスembryoに移植すべく準備を進めていく予定である。前年度、サブクローニングした遺伝子をマウス胎性幹細胞(embryonic stem(ES)cells)に導入し、in vitroでの発現形式の確認を行った。その結果、2つのcell lineで2^<nd> reporter geneの発現(hPLAPの発現(アルカリフォスファターゼ染色で紫色に染色))を確認できた。そしてこれらPositiveなES細胞のcell lineをマウス受精卵に顕微鏡下に注入し、その受精卵を偽妊娠させたメスマウス子宮内に注入し、何とかキメラマウスを誕生させることに成功し、EWS/Fli1融合遺伝子を持つであろうトランスジェニックマウスを誕生させることができた。そして誕生したマウスの耳もしくは尾の切片よりDNAを抽出し、1^<st> reporter gene(βガラクトシダーゼ)の発現(LacZ染色)を確認したところ、どういうわけか発現を認めなかった。そのため、LacZ近辺のプライマーを作成してPCRを行ったところ、バンドを確認できた。次いでCreトランスジェニックマウス(pCX-Cre)とEWS/Fli1トランスジェニックマウスを掛け合わせ、EWS/Fli1の発現を試みたが、2^<nd> reporter gene(hPLAP)の発現が確認できなかった。同様にEWSFli1近辺でプライマーを作成してPCRを行ったところ、バンドを確認できた。さらにEWSFli1蛋白の同定を行ったが、バンドを認めなかった。つまりreportergeneおよびEWS/Fli1の遺伝子は共に存在するがサイレントジーンとなり、2ラインとも発現はしなかった。今後遺伝子発現させるべく、p53ノックアウトマウスとの交配などを検討し解析していきたい。あるいは別のアプローチで腫瘍発現マウスの作成に取り掛かりたい。 | KAKENHI-PROJECT-18659439 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18659439 |
インターネットにおける学術漢字の符号化に関する研究 | 1.今年度は、1966年発行朝日・毎日・読売朝夕刊の用語用字調査で1/60の面サンプリングの対象となつた切り抜き記事をイメージでデータベースに記録するプログラムを作成し、朝日新聞について入力作業を行った。本プログラムは、新聞切り抜き記事データをスキャナから読み込み、クライアント・サーバ環境においた2台のパーソナル・コンピュータで実行するシステムである。イメージ情報として新聞記事をデータベースとした目的は、新聞調査のデータ保存の他、漢字と文列データベースの原簿として理容師、校正漏れに対する補助手段とするために設けた。検索処理は、サーバにおいた新聞記事のイメージ・データをクライアンから直接または漢字データベースを介して検索を行う。指定できる検索キ-の種類は、新聞種類、発行月、日、紙面のページ、サンプリング・ブロック番号の5種である。また、画面に表された新聞切り抜き記事は、画面上で拡大、縮小、切り取り、ファイル出力を指定する機能を設けた。検索処理およびイメージの読み込みプログラムは、Visual BasicとVisual Cを使用した。また、データ葉、圧縮記録した。2.朝日新聞記事全文データベースに出現するすべてのゲタ文字「=」を大型汎用計算機で検索し、縮刷版と照らし合わせて実際の紙面での表記を同定した。それらの一覧表を作成したところ、ゲタ文字は、「真正」、「不正」、「隠れ」の3つのタイプに分類できることが明らかになった。不正ゲタ文字と隠れ文字をめぐって、その出現を招いた原因を推論した。3.「英日漢計算機詞彙」(中国科学院)の入力の継続およびファイルの修正を行った。また、上記のファイルに出現する漢字のうち、出現頻度の高い漢字について、一般語(主として小説の言語)における意味・用法を調べ、両者の比較を行った。1.今年度は、1966年発行朝日・毎日・読売朝夕刊の用語用字調査で1/60の面サンプリングの対象となつた切り抜き記事をイメージでデータベースに記録するプログラムを作成し、朝日新聞について入力作業を行った。本プログラムは、新聞切り抜き記事データをスキャナから読み込み、クライアント・サーバ環境においた2台のパーソナル・コンピュータで実行するシステムである。イメージ情報として新聞記事をデータベースとした目的は、新聞調査のデータ保存の他、漢字と文列データベースの原簿として理容師、校正漏れに対する補助手段とするために設けた。検索処理は、サーバにおいた新聞記事のイメージ・データをクライアンから直接または漢字データベースを介して検索を行う。指定できる検索キ-の種類は、新聞種類、発行月、日、紙面のページ、サンプリング・ブロック番号の5種である。また、画面に表された新聞切り抜き記事は、画面上で拡大、縮小、切り取り、ファイル出力を指定する機能を設けた。検索処理およびイメージの読み込みプログラムは、Visual BasicとVisual Cを使用した。また、データ葉、圧縮記録した。2.朝日新聞記事全文データベースに出現するすべてのゲタ文字「=」を大型汎用計算機で検索し、縮刷版と照らし合わせて実際の紙面での表記を同定した。それらの一覧表を作成したところ、ゲタ文字は、「真正」、「不正」、「隠れ」の3つのタイプに分類できることが明らかになった。不正ゲタ文字と隠れ文字をめぐって、その出現を招いた原因を推論した。3.「英日漢計算機詞彙」(中国科学院)の入力の継続およびファイルの修正を行った。また、上記のファイルに出現する漢字のうち、出現頻度の高い漢字について、一般語(主として小説の言語)における意味・用法を調べ、両者の比較を行った。 | KAKENHI-PROJECT-08207122 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08207122 |
境界付き量子一次元系における臨界現象の研究 | 境界付き量子一次元系のうち、可積分系と呼ばれる系に着目し、境界条件が基底状態に及ぼす影響を調べた。境界条件が臨界指数などに及ぼす影響を共形場理論から同定することは、粒子速度をどうやって決定するかなどの問題があり、困難である。そこで、物理量を厳密に計算することが可能である可積分系に注目した。ベーテ仮設法を用い、格子模型である可積分s=1 XXZスピン鎖と場の理論であり超対称サイン・ゴルドン模型の二種類について境界束縛状態についての考察を行った。境界磁場に対応する量が閾値を越えると境界束縛状態が出現することがわかった。また、境界束縛状態のない状態と、それぞれの境界束縛粒子のエネルギーを計算することにより、境界束縛状態存在下での基底状態を決定した。さらに、場の理論において存在する粒子の種類と、その個数間に成立する関係式を導いた。最も軽い粒子(ソリトン)の個数が従うセルフ・コンシステントな方程式を導出し、基底状態と境界励起状態の同定を行った。境界パラメーターに関して解析接続することにより、非線形方程式が励起状態を自然と記述することがわかった。得られた結果は数値計算によって確認を行った。オリジナルな系が持つ対称性に注目し、各区間に見いだされる基底状態と励起状態の間に見い出される物理的な等価性について議論した。系が持つ超対称性に伴い、異なる二つの周期があることがわかった。さらに、この二つの周期は互いに入り混じることなく存在することがわかった。なお、これらの結果は現在執筆中である。今年度の目的であった境界付きの系における臨界現象の解明に向け大きく前進した。境界付き超対称サイン・ゴルドン模型における基底状態の境界条件依存性はほぼ解明し、境界束縛状態についてもその様子が明らかとなった。現在は得られた結果をまとめる段階に入っており、論文執筆中である。今年度得られた成果は各種研究会への参加・発表の際に受けた質疑応答が大変役立った.本年度4月より生産技術研に異動し、複雑系牽取り扱う研究室にて研究員を行っている。複雑系上で計算できる物理量は現時点ではかなり限られているため、可積分系を用いて浸透率等を計算することは、複雑系分野でも意義があることがわかった。また、可積分系におけるある種の極限から得られるウニバーサリティ・クラス等の考え方は、スケール・フリー・ネットワーク上にも応用できると考えている。今後は多分野への応用を目指しながら、可積分系の新たな可能性を探っていきたいと考えている。境界付き量子一次元系のうち、可積分系と呼ばれる系に着目し、境界条件が基底状態に及ぼす影響を調べた。境界条件が臨界指数などに及ぼす影響を共形場理論から同定することは、粒子速度をどうやって決定するかなどの問題があり、困難である。そこで、物理量を厳密に計算することが可能である可積分系に注目した。ベーテ仮設法を用い、格子模型である可積分s=1 XXZスピン鎖と場の理論であり超対称サイン・ゴルドン模型の二種類について境界束縛状態についての考察を行った。境界磁場に対応する量が閾値を越えると境界束縛状態が出現することがわかった。また、境界束縛状態のない状態と、それぞれの境界束縛粒子のエネルギーを計算することにより、境界束縛状態存在下での基底状態を決定した。さらに、場の理論において存在する粒子の種類と、その個数間に成立する関係式を導いた。最も軽い粒子(ソリトン)の個数が従うセルフ・コンシステントな方程式を導出し、基底状態と境界励起状態の同定を行った。境界パラメーターに関して解析接続することにより、非線形方程式が励起状態を自然と記述することがわかった。得られた結果は数値計算によって確認を行った。オリジナルな系が持つ対称性に注目し、各区間に見いだされる基底状態と励起状態の間に見い出される物理的な等価性について議論した。系が持つ超対称性に伴い、異なる二つの周期があることがわかった。さらに、この二つの周期は互いに入り混じることなく存在することがわかった。なお、これらの結果は現在執筆中である。今年度の目的であった境界付きの系における臨界現象の解明に向け大きく前進した。境界付き超対称サイン・ゴルドン模型における基底状態の境界条件依存性はほぼ解明し、境界束縛状態についてもその様子が明らかとなった。現在は得られた結果をまとめる段階に入っており、論文執筆中である。今年度得られた成果は各種研究会への参加・発表の際に受けた質疑応答が大変役立った.本年度4月より生産技術研に異動し、複雑系牽取り扱う研究室にて研究員を行っている。複雑系上で計算できる物理量は現時点ではかなり限られているため、可積分系を用いて浸透率等を計算することは、複雑系分野でも意義があることがわかった。また、可積分系におけるある種の極限から得られるウニバーサリティ・クラス等の考え方は、スケール・フリー・ネットワーク上にも応用できると考えている。今後は多分野への応用を目指しながら、可積分系の新たな可能性を探っていきたいと考えている。 | KAKENHI-PROJECT-11J10068 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J10068 |
認知制御機能の評価・訓練方法の開発に向けた認知神経科学的研究 | われわれの日常生活では、ダイナミックに変化する環境情報が絶えず感覚器から入力される。このような状況では、目標行動に必要な情報だけに注意を向け、不必要な情報は効率的に排除する機能が必要である。このワーキングメモリと呼ばれる機能は日常のスムーズな認知活動に重要であるに違いないが、それならば、ワーキングメモリを客観的に評価し、さらには学習によって向上させる方法を開発することが学術的にも社会的にも重要な課題となるはずである。今年度は、ワーキングメモリの脳内機序を検討するため、昨年度から引き続き、米国のUniversity of Oregonに1年間滞在し、Edward Vogel博士の助言を受けながら、脳波を測るために必要な技術を習得した。脳波実験と事象関連電位の解析を通じて、ワーキングメモリの内容を更新するためには、単に過ぎ去った情報が不必要だと認識するだけでは十分ではなく、外界の情報をリサンプルし、古い情報を上書きすることが必要であると明らかにした。さらには、この更新機能は、記憶容量が高い個人ほど優れていることも明らかになった。成果は、7月には米国でおこなわれたCognitive Science Association for Interdisciplinary Learningにおいて口頭発表し、また、23年度のVision Science Societyでも発表される予定である。また、国際的な神経科学誌への投稿を目標に論文を執筆中である。われわれの日常生活では、ダイナミックに変化する環境情報が絶えず感覚器から入力される。このような状況では、目標行動に必要な情報だけに注意を向け、不必要な情報は効率的に排除する機能が必要である。この制御機能は日常のスムーズな認知活動に重要であるに違いないが、それならば、制御機能を客観的に評価し、さらには学習によって向上させる方法を開発することが学術的にも社会的にも重要な課題となるはずである。今年度はまず、健常成人を対象に認知制御機能の基礎メカニズムを明らかにすることを目標とした。研究では、これまで別の心的機能であると考えられてきた視知覚とワーキングメモリが、容量制約という観点から見たときに、非常に高い類似性を持つことを発見した。この成果はVision Science Society Annual meetingと日本基礎心理学会、日本心理学会で学会発表すると共に、成果の一部をThe Japanese Journal of Psychonomic Science誌に発表した。日常生活において高次認知活動を遂行するためには、目標行動に必要な情報をアクティブに短時間記憶することが必要である。この記憶機能はワーキングメモリと言われるが、保持機能に厳しい制約がある。われわれの日常生活では、ダイナミックに変化する環境情報が絶えず入力されるので、目標行動に必要な情報だけに注意を向け、不必要な情報は効率的にワーキングメモリから排除する機能が必要である。この制御機能は日常のスムーズな認知活動に重要であるに違いないが、それならば、制御機能を客観的に評価し、さらには学習によって向上させる方法を開発することが学術的にも社会的にも重要な課題となるはずである。このような背景のもと、今年度は、ワーキングメモリにおける制御の発達過程に関して調査研究を行った。その結果、小学校児童においては、制御機能は12才程度で成人と同様のレベルに発達することが明らかになった。また、制御機能が発達しているほど、国語や算数、理科社会という主要学科の学業成績が高いという結果も得た。音楽や体育などの科目ではこのような傾向は見られなかった。この成果は日本発達心理学会で学会発表した。また、広汎性発達障害児にも同様の調査を行い、制御機能が選択的に障害を受けていることを明らかにした。さらに、虐待を受けた児童についても同様の調査研究を行い、定型発達児に比して制御機能の発達が遅れていることを明らかにした。この成果は「小児の精神と神経」誌に発表した。われわれの日常生活では、ダイナミックに変化する環境情報が絶えず感覚器から入力される。このような状況では、目標行動に必要な情報だけに注意を向け、不必要な情報は効率的に排除する機能が必要である。このワーキングメモリと呼ばれる機能は日常のスムーズな認知活動に重要であるに違いないが、それならば、ワーキングメモリを客観的に評価し、さらには学習によって向上させる方法を開発することが学術的にも社会的にも重要な課題となるはずである。今年度は、ワーキングメモリの脳内機序を検討するため、昨年度から引き続き、米国のUniversity of Oregonに1年間滞在し、Edward Vogel博士の助言を受けながら、脳波を測るために必要な技術を習得した。脳波実験と事象関連電位の解析を通じて、ワーキングメモリの内容を更新するためには、単に過ぎ去った情報が不必要だと認識するだけでは十分ではなく、外界の情報をリサンプルし、古い情報を上書きすることが必要であると明らかにした。さらには、この更新機能は、記憶容量が高い個人ほど優れていることも明らかになった。成果は、7月には米国でおこなわれたCognitive Science Association for Interdisciplinary Learningにおいて口頭発表し、また、23年度のVision Science Societyでも発表される予定である。また、国際的な神経科学誌への投稿を目標に論文を執筆中である。 | KAKENHI-PROJECT-08J11504 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08J11504 |
形式記法を用いた合目的的な思考外化のための教育方法に関する基礎的研究 | 初学者対象のプログラミング教育の中で論理的文章作成力に必要な1つである「論理力」の養成を行うための教育方法を検討するための基礎的研究を行うことである.プログラミング教育では,初学者がプログラムを作成するまでのプロセスが5段階あると考え,段階ごとにアルゴリズム的思考を用いた教育方法を検討し実践した.結果,アルゴリズム的思考教育を実施した学習者が,実施していない学習者より微小ながらプログラム作成力が上がった.論理的文章教育では,基礎的調査として,論理的文章に必要な「論理力」について,これらに関する書籍のテキストマイニングを行った.結果,段落の構成力が必要であることがわかった.アルゴリズム的思考法を用いて,学習者の思考を外化するための教育方法を探求・実施することを目的としていることから,「アルゴリズム的思考法教育」と「論理的文章教育」の2つの側面からの報告する.まず「アルゴリズム的思考法教育」であるが,この教育においては,問題を与えられてから,アルゴリズムを完成させるまでの問題解決プロセスを細分化し,それぞれの手順において必要な知識・思考を教育する必要がある.このため,アルゴリズム的思考における問題解決プロセスの細分化について検討した.これは,学習者に教授する上で躓き箇所を確認し,それぞれの躓き箇所に対応する教授法略を考案するためである.また,プログラムの初学者を対象としていることから,教授する学習項目の整理を行い,教授内容を変更した.さらに,アルゴリズム的思考法教育で使用している教育ツールの改良を行った.これにより,前年度と比較して,学習者がより難易度の高い問題へ対応できるようになった.「論理的文章教育」であるが,昨年度行った論理的な文章を作成するための書籍のサンプル調査から得た知見の妥当性を確認することを実施した.論理的な文章を書くために必要な要素の1つと考えている「論理力」について,サンプル書籍から必要な要素の分類を行った.さらに,この分類の妥当性を図るために,サンプル書籍と,それらの書籍に共通する参考,引用文献をもとにテキストマイニングを行った.これにより,仮説で上げた論理的文章の中の「論理力」の再分類を行うことができる.「アルゴリズム的思考法教育」では,初級のプログラミング学習者がプログラムを作成する際の過程について,(1)問題の理解と(2)プログラムへの転換に分類した.(1)では(1a)与えられた問題文で何を解くことを求められているかを理解し,(1b)作成するプログラムで得られる結果・出力を考える.また,(2)では(2a)プログラムを記述するために必要な概念について理解し,(2b)これらの概念をプログラムとして記述するための文法や表記方法を用いて,(2c)(1b)で考えた解法を(2a)の概念を用いて再構成する.これらの分類に基づき,各段階での困難さを減少するための課題の設定や支援方法について検討した.支援方法として,「問題の理解」の段階については,学習者の前提知識に合わせて,日常生活や高校までの既習事項をもとに問題文を作成している.また,「結果・解法の考案」の段階については,例示数は2つ以上にし,学習者に誤解を与えないような工夫をしている.「プログラムへの転換」の段階については,「枠組みの知識」の定着のために多くの時間を費やし,各要素のアルゴリズムを読む問題を中心に授業展開した.各回の授業で行っている小テストの結果から,着実に枠組みの知識が獲得できていると考えられる.この検討に基づき,本質的な部分について多くの時間をかけるための指導を実施したところ,一部の能力について向上したことが分かった.プログラミング教育の中で,文章力を養成する取り組みの1つとして.技術文書作成力を養成するために設計書を作成し,それを基に他者がプログラミングし,作成した設計書とプログラムを対象にディスカッションする授業を実施・評価した.授業結果を考察したところ,ディスカッションにおいて,本実践の目的とした,気づきが得られているとみなせるディスカッションが行われていた.初学者対象のプログラミング教育の中で論理的文章作成力に必要な1つである「論理力」の養成を行うための教育方法を検討するための基礎的研究を行うことである.プログラミング教育では,初学者がプログラムを作成するまでのプロセスが5段階あると考え,段階ごとにアルゴリズム的思考を用いた教育方法を検討し実践した.結果,アルゴリズム的思考教育を実施した学習者が,実施していない学習者より微小ながらプログラム作成力が上がった.論理的文章教育では,基礎的調査として,論理的文章に必要な「論理力」について,これらに関する書籍のテキストマイニングを行った.結果,段落の構成力が必要であることがわかった.アルゴリズム的思考法を用いて,学習者の思考を外化するための教育方法を探求・実施することを目的としていることから,「アルゴリズム的思考法教育」と「論理的文章教育」の2つの側面からの報告する.まず「アルゴリズム的思考法教育」であるが,当該年度では,アルゴリズム的思考法教育で使用している教育ツールを,プログラミングの基本構成要素を,学習者に気づきを与えるように改良を施した.これにより,前年度と比較して,学習者がより難易度の高い問題へ対応できるようになった.この教育ツールはWEB上で動作しているが,GoogleAPPSエンジンを利用しており,ネットワークの環境によっては動作の保証がない.また,事前に行った調査によって,トレース機能を充実させることによって,教育効率が上がることが明らかとなっていた. | KAKENHI-PROJECT-23501103 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23501103 |
形式記法を用いた合目的的な思考外化のための教育方法に関する基礎的研究 | これらのことから,当該年度実施したアルゴリズム的思考法教育後,大幅な改良を行なっている.どのような環境下でも,持ち運び可能なサーバを用意することで,ツールの使用が可能となる.「論理的文章教育」であるが,論理的な文章を書くための「書き方」に関する書籍の事前のサンプル調査から,「論理的な文章の共通項があること」,「論理的な思考に関することと,文章技術に関することに分類できること」の2点が明らかになった.このことから,論理的な思考に関することと,文章技術に関すること,それぞれを,サンプル書籍での共通項の洗い出しを行った.これは,高等教育機関での教育だけでなく,社会人学習者に対しても教授する内容を選択し,実施することが可能となる.「アルゴリズム的思考法教育」では,プログラミング初学者がプログラムを作成する過程について,(1a)与えられた問題文で何を解くことを求められているかを理解し,(1b)作成するプログラムで得られる結果出力を考えることが必要であり,(2a)プログラムを記述するために必要な概念について理解し,(2b)これらの概念をプログラムとして記述するための文法の表記法を用いて,(2c) (1b)で考えた解法を(2a)の概念を用いて再構成するという,5つの分類があるとし,分類ごとの支援方法について検討を行ってきた.しかし,(2c)での支援方法について,これまではより多くのアルゴリズムに触れるという支援方法だけであった.そこで,新たな支援方法として,当該年度より文法の導入時とプログラム作成時に,プログラム作成のための大まかな見通しを日本語で記述したものを提示した.この教育方法についての教育効果確認したところ,昨年度に比べ当該年度の学習者が微増ながらアルゴリズムの理解が促進していた,「論理的文章教育」については,文章力を養成する取り組みとして,プログラミング初級者を対象に,詳細設計書を作成させ,その設計書を基に他者がプログラミングし,作成した詳細設計書とプログラムを対象にディスカッションする授業を昨年度に続き当該年度でも実施した.その結果,文章を作成する上で必要な文章技術や論理的な思考についての必要性について気づきをえられている.また,「論理的文章」に関しては,文章作成において必要な力である「論理力」について,文章技術に関する書籍をテキストマイニングツールを用いて分析し,「論理力」に関する調査を行った,結果,「段落の構成」「説明文の記述順」「読み手に合わせた説明順序」「文章構造」「階層構造」が「論理力」と関連したワードとして抽出された.これらは研究計画段階で事前調査した結果と大きく異ならなかった.教育工学「論理的文章教育」で行う予定であった文章構造のパターン要素についての分析を現在行っている.これは昨年度,書籍の調査方法を見直しのために遅れが生じている.「アルゴリズム的思考法教育」で行う予定であった教育実践であるが,プログラミングの基礎を学習した学習者に対するプログラミング力の調査を行い,論理力との関係について考察し,研究報告を行った.しかし,アルゴリズム的思考法教育を実施する教育機関が,当初計画にない教育機関で行うこととなったため,当該年度に予定していたツールの改良では対応できず,さらなる改良と準備が必要となった.この改良は,教育実施機関でネットワーク環境が整っていないため,ネットワークに依存しない形で授業を実施するためのものである.このため,当該年度で研究成果報告ができなかった. | KAKENHI-PROJECT-23501103 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23501103 |
光により変形するフォトクロミック圧電結晶を用いた光電変換 | いくつかのジアリールエテン系フォトクロミック分子が、圧電性を示し得る、中心対称性のない極性結晶構造を形成することを見いだした。また、これらの極性結晶の結晶格子がフォトクロミック分子の光異性化反応に伴い可逆的に変形することを単結晶X線構造解析の結果から明らかにした。チエノピリジン環やキノリン環を有するジアリールエテンが分子間の水素結合あるいはハロゲン結合により異種分子との共結晶を形成したことから、結晶構造を積極的に制御するための非共有結合相互作用としての水素結合やハロゲン結合の有効性が示唆された。フォトクロミック分子の光異性化反応により変形して圧電効果を示す分子結晶(フォトクロミック圧電結晶)を創製することを目的として、極性結晶構造を有するフォトクロミック分子結晶の光反応挙動、ならびにそれに伴う結晶変形と電流発生について検討した。中心対称性がない極性空間群に属し、自発分極を有すると考えられるジアリールエテン系フォトクロミック分子結晶に着目して研究を行った。無色の開環体結晶に紫外光を照射すると、閉環体が生成することにより結晶は青色に変化し、その後可視光を照射すると開環体に戻ることで退色した。紫外光の照射により着色した結晶の顕微偏光吸収スペクトルを測定したところ、入射偏光方向に対するスペクトルの異方性が観測されたことから、フォトクロミック分子の光異性化反応が単結晶相で進行していることが認められた。量子化学計算に基づくシミュレーションにより、開環体と閉環体で電気双極子モーメントが変化することが示唆された。単結晶X線解析により結晶構造の変化を検討したところ、紫外光の照射により閉環体が生成することで格子定数が異方的に変化し、可視光の照射により格子定数がもとに戻ることが観測された。極性結晶構造を有するフォトクロミック分子結晶において、光異性化反応により結晶格子が可逆的に変形することが示唆された。圧電効果を検討するために、測定装置のセットアップと光誘起電流発生の計測を行った。単結晶試料に対して自発分極と平行な方向に電極と金属線を取り付け、エレクトロメーターに接続することで、光照射により生じる電流の測定を試みた。単結晶に紫外光を照射すると過渡的な電流が生じる兆候が見られたが、この現象がフォトクロミック分子の光異性化反応により誘起されているかどうかを見極めるためにはさらに詳細な検討が必要である。フォトクロミック分子の光異性化反応により変形して圧電効果を示す分子結晶(フォトクロミック圧電結晶)を創製することを目的として、フォトクロミック分子結晶の光誘起変形挙動、ならびに新しい極性結晶の構築に向けた新規フォトクロミック分子の合成について検討した。昨年度に検討したフォトクロミック分子結晶に加えて、極性空間群に属する別のフォトクロミック分子結晶について光異性化反応に伴う結晶格子変形を観測した。光照射による結晶格子変形を単結晶X線構造解析により追跡したところ、紫外光照射によるフォトクロミック分子の閉環反応に伴い格子定数が変化し、可視光照射による開環反応に伴い格子定数がもとに戻ることが観測された。この結晶は分子間水素結合の一次元鎖構造を形成しており、結晶格子変形に伴い水素結合一次元鎖が可逆的に伸縮することも示唆された。昨年度検討した例も含めて、極性結晶構造を有するフォトクロミック分子結晶の光誘起変形は一般的に起こり得る現象であることが示唆された。極性結晶を合理的に設計・合成するための新しいフォトクロミック分子骨格として、チエノピリジンを有するジアリールエテンについて検討した。チエノピリジンは分子間水素結合や金属配位結合が可能な窒素原子を含んでおり、結晶構造制御において有効な置換基と考えられる。チエノピリジンを有するジアリールエテン誘導体2種を新規に合成したところ、これらの分子は溶液中で可逆的なフォトクロミズムを示した。また水酸基を有する異種分子と混合して再結晶すると、ジアリールエテンと異種分子とが分子間水素結合を形成した結晶構造が得られた。キラルな異種分子との水素結合を含む2成分結晶を合成することにより、強制的に極性結晶構造を構築することも可能になると期待される。極性結晶構造を有するフォトクロミック分子結晶の光誘起結晶格子変形については、一般的に起こり得る現象であることを明らかにしつつある。また、新たな極性結晶の構築に向けた物質合成にも着手し、分子間水素結合を形成する新しいフォトクロミック分子骨格を設計・合成することで研究対象物質の候補を広げた。これまでに得た光誘起結晶格子変形に関する知見を踏まえて、発生電流の測定系の調整を行いながら、新たに合成する物質も含めて検討することにより、光誘起圧電効果の観測と実証を目指したい。フォトクロミック分子の光異性化反応により変形して圧電効果を示す分子結晶(フォトクロミック圧電結晶)を創製することを目的とした。フォトクロミック分子結晶における分子間ハロゲン結合の導入、ならびに極性結晶構造を有するフォトクロミック分子結晶に対する光照射による電流発生について検討した。フォトクロミック分子結晶の結晶構造制御のための非共有結合性相互作用としてハロゲン結合を検討した。キノリン環を有するフォトクロミック分子とヨードベンゼン誘導体を混合した溶液から再結晶すると、これらの2成分が同一結晶内に含まれた共結晶が形成された。結晶中においてフォトクロミック分子のキノリン環窒素原子とヨードベンゼン誘導体のヨウ素原子の間のコンタクトが観測され、分子間でハロゲン結合が形成されていることが示唆された。この2成分共結晶中において、フォトクロミック分子は反応活性な立体配座をとっており、光異性化反応を示すことが認められた。 | KAKENHI-PROJECT-26410101 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26410101 |
光により変形するフォトクロミック圧電結晶を用いた光電変換 | このようなハロゲン結合を用いて別のキラル分子と共結晶化させることにより、極性結晶構造を強制的に構築することも可能になると考えられる。極性結晶構造を有するフォトクロミック分子結晶について光照射による電流発生の計測を試みた。電極配線を施した単結晶に光を照射すると電流が生じる兆候が見られたがその電流は微小であり、またノイズがあるためシールドの工夫などを試みたが十分には改善されなかった。研究期間内に、極性フォトクロミック分子結晶の光異性化反応に伴い結晶格子が変形することについてはX線結晶構造解析における格子定数の変化から明らかにできたが、結晶格子変形による圧電効果を実証するには至らなかった。圧電効果を明確に検出するためには、大面積の単結晶薄膜を作製することなどが必要と考えている。いくつかのジアリールエテン系フォトクロミック分子が、圧電性を示し得る、中心対称性のない極性結晶構造を形成することを見いだした。また、これらの極性結晶の結晶格子がフォトクロミック分子の光異性化反応に伴い可逆的に変形することを単結晶X線構造解析の結果から明らかにした。チエノピリジン環やキノリン環を有するジアリールエテンが分子間の水素結合あるいはハロゲン結合により異種分子との共結晶を形成したことから、結晶構造を積極的に制御するための非共有結合相互作用としての水素結合やハロゲン結合の有効性が示唆された。フォトクロミック分子結晶の光異性化反応により誘起される圧電効果(光誘起圧電効果)は本研究課題を通じて初めて提案する新概念であり、その実証のためには緻密な実験と考察が必要である。現時点ではまだ実証には至っていないが、極性空間群に属するフォトクロミック分子結晶について光照射による可逆的な異性化反応とそれに伴う結晶変形を観測できたこと、また光誘起電流発生の計測に着手したことにより、まずは初めの1年で第一歩を踏み出せたと考えている。よって、本研究課題はおおむね順調に進展していると評価した。続く2年の研究期間でより詳細な検討を行っていきたい。これまでに光誘起結晶格子変形を観測したフォトクロミック分子結晶に加えて、分子間水素結合を含む2成分結晶なども新規に合成しながら、それらについて検討することで、光誘起圧電効果の観測と実証を目指す。発生電流の測定装置や試料調整法、光照射条件などを検討し、計測精度の向上を図る。圧電効果が観測された場合には、分子構造や結晶構造との相関を検討し、高効率化を試みる。有機光化学電流計測の精度を高めるために、光誘起電流発生の測定装置のセットアップや分子結晶試料などを再検討する。具体的には、電気配線や電気シールドの改善、単結晶試料と電極の良好なコンタクトの獲得、試料断面積の増大、照射光波長の制御による光異性化反応の進行の促進などを試みる。光異性化反応と電流発生の相関を明らかにするために、紫外光と可視光の交互照射による電気応答の可逆性を調べる。研究対象物質としては、平成26年度に検討した分子結晶に加えて、極性空間群に属することが知られている他の分子結晶も検討する。 | KAKENHI-PROJECT-26410101 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26410101 |
超原子価ヨウ素試薬を用いる新規環境調和型反応の開発と触媒的不斉酸化反応への応用 | 平成14年度は、13年度にひき続き、研究実施計画に基づいて超原子価ヨウ素試薬置用いる新規環境調和型反応の開発研究を展開した。申請者は、咋年度、報告したリサイクル型反応剤であるポリマー担持型超原子価ヨウ素試薬poly(diacetoxyiodo)styrene(PDAIB)を用いる水中でのジオール類からラクトン類への酸化反応系を異種アルコール間の反応に応用し、メタノール共存下、種々の1級アルコール類からメチルエステル類への収率の良い直接変換反応を見出した(Synlett,2003,582.)。また、本反応をスルフィド類の酸化反応にも適用し、水中、KBr存在下、PDAISを用いることにより種々のスルフィド類から対応するスルホキシド類への高選択的かつ高収率な変換法を開発することができた(ARKIVOC,2003,inpress.)。一方、水中の反応だけでなく多くの生物活性天然物の基本骨格であるビアリール構造の効果的な構築についても併せて検討した。その結果、フェノールエーテル類に比べ酸化電位が高く(酸化されにくく)、副反応も起こり易いため従来の酸化的手法を用いては低収率でしかビアリール体が得られなかったアルキルアレーン類の2量化反応において、BF_3・Et_2O活性型phenyliodine(III)bis(trifluoroacetate)(PIFA)を低温下で用いることにより、収率の良いビアリールカップリング反応を初めて開発することができた(Tetrahedron Lett.2002,43,9241.)。この他、リサイクルも可能な固体酸触媒、ヘテロポリ酸をPIFAの添加剤として用いることによりフェノールエーテル類の分子内反応によるスピロジエノン類への高効率的な変換反応の開発にも成功している(Chem. Eur. J. 2002,8,5377.)。今後、ポリマー担持型ヨウ素試薬の利用や添加剤、溶媒等の工夫により環境調和型反応への展開を図りたい。平成13年度は、研究目的・研究実施計画に基づきグリーンケミストリーを志向した超原子価ヨウ素試薬を用いる新規環境調和型反応の開発研究を行った。申請者は、まず、ごく最近、報告したリサイクル型反応剤であるポリマー担持型超原子価ヨウ素試薬poly (diacetoxyiodo) styrene(PDAIB)を用いる水中でのアルコール類からケトン類あるいはカルボン酸類への酸化反応をジオールの系に適用し、ラクトン類が収率良く得られることを見出した。また、低温(0°Crt)でのESI-Mass測定により本反応の酸化反応活性種の検出に成功し、I-Br結合を含む超原子価ヨウ素種であることを確認した(Adv. Synth. Catal. 2002,in press.)。また、水中での酸化反応の他の系への適用を種々検討した結果、p-ジメトキシベンゼン類に対して、ポリマー担持型超原子価ヨウ素試薬poly[bis(trifuoroacetoxyiodo)styrene](PBTIS)を用いることにより中性、緩和な条件下で酸化的脱メチル化反応が進行し、p-キノン類を収率良く与えることを見出した(Tetrahedron Lett. 2001,42,6899.)。また、PBTISをBF_3・Et_2O共存下で用いることによりリサイクル型試薬を用いたビアリールカップリング反応が可能になった(Tetrahedron2001,57,345.)。一方、この酸化的ビアリールカップリング反応において、より後処理も簡便でリサイクルも可能な固体酸触媒、ヘテロポリ酸がBF_3・Et_2Oに代用可能であることを明らかにし、収率良くビアリール化合物を得る新たな手法を開発した(Chem. Commun. 2002,450.)。平成14年度は、13年度にひき続き、研究実施計画に基づいて超原子価ヨウ素試薬置用いる新規環境調和型反応の開発研究を展開した。申請者は、咋年度、報告したリサイクル型反応剤であるポリマー担持型超原子価ヨウ素試薬poly(diacetoxyiodo)styrene(PDAIB)を用いる水中でのジオール類からラクトン類への酸化反応系を異種アルコール間の反応に応用し、メタノール共存下、種々の1級アルコール類からメチルエステル類への収率の良い直接変換反応を見出した(Synlett,2003,582.)。また、本反応をスルフィド類の酸化反応にも適用し、水中、KBr存在下、PDAISを用いることにより種々のスルフィド類から対応するスルホキシド類への高選択的かつ高収率な変換法を開発することができた(ARKIVOC,2003,inpress.)。一方、水中の反応だけでなく多くの生物活性天然物の基本骨格であるビアリール構造の効果的な構築についても併せて検討した。その結果、フェノールエーテル類に比べ酸化電位が高く(酸化されにくく)、副反応も起こり易いため従来の酸化的手法を用いては低収率でしかビアリール体が得られなかったアルキルアレーン類の2量化反応において、BF_3・Et_2O活性型phenyliodine(III)bis(trifluoroacetate)(PIFA)を低温下で用いることにより、収率の良いビアリールカップリング反応を初めて開発することができた(Tetrahedron Lett.2002,43,9241.)。 | KAKENHI-PROJECT-13771331 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13771331 |
超原子価ヨウ素試薬を用いる新規環境調和型反応の開発と触媒的不斉酸化反応への応用 | この他、リサイクルも可能な固体酸触媒、ヘテロポリ酸をPIFAの添加剤として用いることによりフェノールエーテル類の分子内反応によるスピロジエノン類への高効率的な変換反応の開発にも成功している(Chem. Eur. J. 2002,8,5377.)。今後、ポリマー担持型ヨウ素試薬の利用や添加剤、溶媒等の工夫により環境調和型反応への展開を図りたい。 | KAKENHI-PROJECT-13771331 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13771331 |
中国とアジア太平洋の多国間地域協力 | 1.中国の対外認識:80年代末冷戦が終焉に向かう中で中国は国際的権力構造が多極化に向かうと考えたが、湾岸戦争を経て「一超多強」との認識が一般的になった。しかし最近では「多極化加速」を主張するものもあり、両者の認識が拮抗している。2.日米安保再認識に対する中国の反応:中国は当初冷静かつ客観的に事態の進展を見守っていたが、次第に日米安保体制が地域的で攻撃的なものに変質し、地域の多極構造を動揺させるとの懸念を表明するようになった。中国はASEAN地域フォーラム等地域の多国間安全保障協力を強化し、二国間同盟の有効性を否定することによって、これに対抗しようとしている。3.米国のアジア太平洋政策:1993年に発足したクリントン政権は、安全保障、経済的繁栄、民主化の促進という三つの対外目標を追及したが、国内中心の政権運営により、目標間のバランスが崩れアジア諸国との摩擦が激化した。しかし、94年春頃から政権内部でも事態の深刻さが認識されバランスの回復が図られた。以後アジアに対してはおおむね妥当な対応をしている。4.東アジアの安全保障状況:東アジアにおいては、分断国家、領土紛争、国内の政治的不安定生、越境汚染、麻薬、不法移民等多様な安全保障上の問題が存在する。他方対応措置の面でも、ASEAN地域フォーラムに代表される多国間安全保障級力が進展する一方で日米、米豪等の同盟関係が強化され、政府間だけでなく、いわゆるトラックIIの会合も頻繁に開かれている。このように多様化した安全保障措置の間の相互関係の調整と処理は、地域安全保障における新たな課題である。1.中国の対外認識:80年代末冷戦が終焉に向かう中で中国は国際的権力構造が多極化に向かうと考えたが、湾岸戦争を経て「一超多強」との認識が一般的になった。しかし最近では「多極化加速」を主張するものもあり、両者の認識が拮抗している。2.日米安保再認識に対する中国の反応:中国は当初冷静かつ客観的に事態の進展を見守っていたが、次第に日米安保体制が地域的で攻撃的なものに変質し、地域の多極構造を動揺させるとの懸念を表明するようになった。中国はASEAN地域フォーラム等地域の多国間安全保障協力を強化し、二国間同盟の有効性を否定することによって、これに対抗しようとしている。3.米国のアジア太平洋政策:1993年に発足したクリントン政権は、安全保障、経済的繁栄、民主化の促進という三つの対外目標を追及したが、国内中心の政権運営により、目標間のバランスが崩れアジア諸国との摩擦が激化した。しかし、94年春頃から政権内部でも事態の深刻さが認識されバランスの回復が図られた。以後アジアに対してはおおむね妥当な対応をしている。4.東アジアの安全保障状況:東アジアにおいては、分断国家、領土紛争、国内の政治的不安定生、越境汚染、麻薬、不法移民等多様な安全保障上の問題が存在する。他方対応措置の面でも、ASEAN地域フォーラムに代表される多国間安全保障級力が進展する一方で日米、米豪等の同盟関係が強化され、政府間だけでなく、いわゆるトラックIIの会合も頻繁に開かれている。このように多様化した安全保障措置の間の相互関係の調整と処理は、地域安全保障における新たな課題である。 | KAKENHI-PROJECT-09205203 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09205203 |
超高強度・超撥水性を有する新規医用材料の開発:含フッ素ポリアミドの合成と特性解析 | 医療領域において、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製人工血管が知られている。しかしながら、PTFEは生体内でねじれによる阻血を生じることがしばしば臨床上の問題とされている。本課題では、PTFEをはじめとする含フッ素ポリマーが有する低強度の欠点を補うため、高強度の特性を有するアラミドと複合化した含フッ素ブロック共重合体を合成することによって、新規な人工血管用材料を創製することを目的とする。この目的に基づき、ブロック共重合体の合成、表面解析及び物性評価を主たる実験計画目標とした。1)含フッ素ブロック共重合体の合成:まず、両末端にアミノ基を有する含フッ素芳香族モノマーを合成し、これと芳香族ジカルボン酸クロリドとを重縮合させ目的とするブロック共重合体の合成を行った[特願2002-252183、J.Polym.Sci.,Part A : Polym.Chem.,41,2840(2003)]。さらに、アラミド部分の鎖長を延伸したブロック共重合体の合成を2段階縮合法により行った(J.Polym.Sci.,Part A : Polym.Chem.,投稿中)。その結果、それぞれ数平均分子量が17,000および20,000以上の高分子量体を得ることに成功した。この共重合体をもとにキャスト法によりフィルム作成を試みた。均一な厚さのフィルムが得られたが、ひびが入りやすい等、十分な強度を有するものではなかった。2)表面特性の解析、物性評価等:表面解析や引張試験等の物性評価を計画していたが、合成およびフィルム作成に多くの時間を要したため、これらの評価には至らなかった。フッ素、アラミド各ブロックの配分調整により適度な強度を有する共重合体の合成は可能であると考えられ、その点を克服することにより、この高分子の人工血管用材料への発展も期待できる。医療領域において、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製人工血管が知られている。しかしながら、PTFEは生体内でねじれによる阻血を生じることがしばしば臨床上の問題とされている。本課題では、PTFEをはじめとする含フッ素ポリマーが有する低強度の欠点を補うため、高強度の特性を有するアラミドと複合化した含フッ素ブロック共重合体を合成することによって、新規な人工血管用材料を創製することを目的とする。この目的に基づき、ブロック共重合体の合成、表面解析及び物性評価を主たる実験計画目標とした。1)含フッ素ブロック共重合体の合成:まず、両末端にアミノ基を有する含フッ素芳香族モノマーを合成し、これと芳香族ジカルボン酸クロリドとを重縮合させ目的とするブロック共重合体の合成を行った[特願2002-252183、J.Polym.Sci.,Part A : Polym.Chem.,41,2840(2003)]。さらに、アラミド部分の鎖長を延伸したブロック共重合体の合成を2段階縮合法により行った(J.Polym.Sci.,Part A : Polym.Chem.,投稿中)。その結果、それぞれ数平均分子量が17,000および20,000以上の高分子量体を得ることに成功した。この共重合体をもとにキャスト法によりフィルム作成を試みた。均一な厚さのフィルムが得られたが、ひびが入りやすい等、十分な強度を有するものではなかった。2)表面特性の解析、物性評価等:表面解析や引張試験等の物性評価を計画していたが、合成およびフィルム作成に多くの時間を要したため、これらの評価には至らなかった。フッ素、アラミド各ブロックの配分調整により適度な強度を有する共重合体の合成は可能であると考えられ、その点を克服することにより、この高分子の人工血管用材料への発展も期待できる。医療領域において、含フッ素高分子の代表例としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製人工血管が知られている。しかしながら、PTFEは生体内でねじれによる阻血を生じることがしばしば臨床上の問題とされている。本課題では、含フッ素ポリマーが有する低強度の欠点を補うため、高強度の特性を有するアラミドと複合化した含フッ素ブロック共重合体を合成することによって、新規な人工血管用材料を創製することを目的とする。本年度は、ブロック共重合体の合成、および表面解析を主たる実験計画目標とした。1)含フッ素ブロック共重合体の合成:含フッ素ブロック共重合体の合成は2段階縮合法によって行った。第一段階では、両末端にカルボキシル基を有する含フッ素モノマーと芳香族ジアミンとをカルボジイミド存在下で反応させ両末端にアミノ基を有する含フッ素芳香族オリゴマーを合成した。反応第二段階では、第一段階目で得られたオリゴマーと芳香族ジカルボン酸クロリドとを重縮合させ目的とするブロック共重合体の合成を行った。第一段階の反応において、両成分の溶媒に対する溶解性の違いから、不均一反応が生じ高分子量体を得ることが困難であった。モノマー中のフッ素含量の制御、反応溶媒の選択、および精製に用いるカラム分離能の向上を図ることにより、第一段階の合成に成功した。現在、第二段階へと進み、高分子量体の合成に取り組んでいる(投稿準備中)。2)表面特性の解析:接触角、ATR FT-1およびX線光電子分光法にて表面解析を計画していたが、合成段階に多くの時間を要したため次年度へと研究計画を変更させた。平成14年度では、得られた共重合体を用いて表面特性解析、バルク解析、および生物学的特性解析を予定している。 | KAKENHI-PROJECT-13480300 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13480300 |
超高強度・超撥水性を有する新規医用材料の開発:含フッ素ポリアミドの合成と特性解析 | 医療領域において、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製人工血管が知られている。しかしながら、PTFEは生体内でねじれによる阻血を生じることがしばしば臨床上の問題とされている。本課題では、PTFEをはじめとする含フッ素ポリマーが有する低強度の欠点を補うため、高強度の特性を有するアラミドと複合化した含フッ素ブロック共重合体を合成することによって、新規な人工血管用材料を創製することを目的とする。本年度は、前年度から継続のブロック共重合体の合成、表面解析及び物性評価を主たる実験計画目標とした。1)含フッ素ブロック共重合体の合成:前年度において合成に成功した両末端にアミノ基を有する含フッ素芳香族モノマーと芳香族ジカルボン酸クロリドとを重縮合させ目的とするブロック共重合体の合成を行った。その結果、数平均分子量17,000程度の高分子量体を得ることに成功した(特願2002-252183、高分子学会予稿集,51,1516 (2002)、J. Polym. Sci.,Part A : Polym. Chem.,投稿中)。この共重合体をもとにフィルム作成を試みたが、一部が剥離するなど十分な強度を有するフィルムの作成は困難であった。そのため現在、より高分子量を有し、かつ十分な力学的強度を有する共重合体の合成を目指し、アラミド部分の鎖長を延伸したブロック共重合体の合成に取り組んでいる(投稿準備中)。2)表面特性の解析、物性評価等:接触角、ATR-FTIRおよびX線光電子分光法による表面解析、引張試験機、DSC等による物性評価等を計画していたが、合成段階に多くの時間を要したため次年度へと研究計画を変更させた。平成15年度では、得られた共重合体を用いて表面特製解析、バルク解析、および生物学的特性解析を予定している。医療領域において、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製人工血管が知られている。しかしながら、PTFEは生体内でねじれによる阻血を生じることがしばしば臨床上の問題とされている。本課題では、PTFEをはじめとする含フッ素ポリマーが有する低強度の欠点を補うため、高強度の特性を有するアラミドと複合化した含フッ素ブロック共重合体を合成することによって、新規な人工血管用材料を創製することを目的とする。本年度は、前年度から継続のブロック共重合体の合成、表面解析及び物性評価を主たる実験計画目標とした。1)含フッ素ブロック共重合体の合成:前年度において合成に成功したブロック共重合体についてフィルム形成が困難であったため、アラミド部分の鎖長を延伸したブロック共重合体の合成を行った。合成は2段階縮合法によって行った。第一段階では、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸クロリドから、両末端にアミノ基を有するアラミドオリゴマーを合成した。第二段階では、第一段階目で得られたオリゴマーと含フッ素ジカルボン酸とを亜リン酸トリフェニル存在下で重縮合させ、目的とするブロック共重合体の合成を行った。その結果、数平均分子量20,000以上の高分子量体を得ることに成功した(特願2002-252183、J.Polym.Sci.,Part A:Polym.Chem.,投稿中)。この共重合体をもとにキャスト法によりフィルム作成を試みた。 | KAKENHI-PROJECT-13480300 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13480300 |
細胞変形と剥離刺激に伴う気道上皮細胞におけるインターロイキン8遺伝子の発現 | 【背景】気管支喘息や慢性気管支炎など種々の炎症性気道疾患において気道上皮細胞は、自ら様々な生理活性物質を産生し、病態を修飾していることが知られている。好中球エラスターゼ(NE)は、気道炎症において、最も重要な気道傷害物質の一つであり、近年、NEは気道上皮の剥離をもたらすだけでなく、好中球遊走活性化物質であるインターロイキン-8(IL-8)の遺伝子発現を誘導することが報告された。しかし、NEによるIL-8遺伝子の発現機序、特に剥離・変形現象とIL-8遺伝子発現との関連については知られていない。【目的】NEによる気道上皮細胞のIL-8遺伝子の発現が、細胞の剥離・変形という現象と関連しているか、否かを検討する。また細胞の剥離・変形による細胞骨格成分のreorganizationが、IL-8遺伝子発現に及ぼす影響について検討する。また、この遺伝子発現の細胞内情報伝達経路について検討する。【方法】無血清培養気道上皮細胞をcell scraperにて機械的に剥離、あるいはNE、トリプシン、EGTA,EDTA処理にて剥離・変形させ、ノーザン法にてIL-8遺伝子発現レベルを検討した。また、培養上清中のIL-8をELISA法にて定量した。同時に、細胞骨格修飾物質、あるいはチロシンキナーゼ阻害剤ゲニスタインで前処置し、IL-8遺伝子発現に及ぼす影響を調べた。【結果】上述したすべての剥離・変形刺激にて、IL-8遺伝子の発現が観察された。又、これらの遺伝子発現は、微小管脱重合阻害剤タキソ-ルで抑制れた。逆に、微小管脱重合剤コルヒチン単独でも気道上皮細胞にIL-8遺伝子発現を誘導した。一方、アクチン脱重合剤サイトカラシンBはNE刺激によるIL-8遺伝子の発現に影響を与えなかった。同様に、上清中のIL-8蛋白量もNE刺激により上昇し、タキソ-ル処理により濃度依存的に抑制された。剥離刺激によるIL-8遺伝子誘導は、ゲニスタイン添加により抑制された。【総括】NE以外の剥離・変形刺激によりIL-8遺伝子発現が誘導されたことから、気道上皮の剥離・変形がNEによるIL-8遺伝子発現に関与している可能性が示唆された。この遺伝子発現には微小管脱重合の関与が示唆された。またチロシンキナーゼは、この遺伝子発現に促進的に働いていると考えられた。炎症性気道疾患において種々のプロテアーゼによる上皮の剥離が観察されており、本研究の結果は気道炎症の成立気序を理解する上で重要なモデルになるものと考えられた。【背景】気管支喘息や慢性気管支炎など種々の炎症性気道疾患において気道上皮細胞は、自ら様々な生理活性物質を産生し、病態を修飾していることが知られている。好中球エラスターゼ(NE)は、気道炎症において、最も重要な気道傷害物質の一つであり、近年、NEは気道上皮の剥離をもたらすだけでなく、好中球遊走活性化物質であるインターロイキン-8(IL-8)の遺伝子発現を誘導することが報告された。しかし、NEによるIL-8遺伝子の発現機序、特に剥離・変形現象とIL-8遺伝子発現との関連については知られていない。【目的】NEによる気道上皮細胞のIL-8遺伝子の発現が、細胞の剥離・変形という現象と関連しているか、否かを検討する。また細胞の剥離・変形による細胞骨格成分のreorganizationが、IL-8遺伝子発現に及ぼす影響について検討する。また、この遺伝子発現の細胞内情報伝達経路について検討する。【方法】無血清培養気道上皮細胞をcell scraperにて機械的に剥離、あるいはNE、トリプシン、EGTA,EDTA処理にて剥離・変形させ、ノーザン法にてIL-8遺伝子発現レベルを検討した。また、培養上清中のIL-8をELISA法にて定量した。同時に、細胞骨格修飾物質、あるいはチロシンキナーゼ阻害剤ゲニスタインで前処置し、IL-8遺伝子発現に及ぼす影響を調べた。【結果】上述したすべての剥離・変形刺激にて、IL-8遺伝子の発現が観察された。又、これらの遺伝子発現は、微小管脱重合阻害剤タキソ-ルで抑制れた。逆に、微小管脱重合剤コルヒチン単独でも気道上皮細胞にIL-8遺伝子発現を誘導した。一方、アクチン脱重合剤サイトカラシンBはNE刺激によるIL-8遺伝子の発現に影響を与えなかった。同様に、上清中のIL-8蛋白量もNE刺激により上昇し、タキソ-ル処理により濃度依存的に抑制された。剥離刺激によるIL-8遺伝子誘導は、ゲニスタイン添加により抑制された。【総括】NE以外の剥離・変形刺激によりIL-8遺伝子発現が誘導されたことから、気道上皮の剥離・変形がNEによるIL-8遺伝子発現に関与している可能性が示唆された。この遺伝子発現には微小管脱重合の関与が示唆された。またチロシンキナーゼは、この遺伝子発現に促進的に働いていると考えられた。炎症性気道疾患において種々のプロテアーゼによる上皮の剥離が観察されており、本研究の結果は気道炎症の成立気序を理解する上で重要なモデルになるものと考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-06770418 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06770418 |
ネットいじめの予防に関する包括的研究 | 本研究では,中高生のネットいじめの実態と予防の検討を行った。研究Iでは,中学生を対象に質問紙調査を行った。中学生1,675名のデータ分析の結果,半年間でのネットいじめの被害者あるいは加害者は約3%であった。また,ネットいじめの被害生徒が,自分に原因を求めがちであり,他の人にあまり話さない傾向があることも示された。研究IIでは,大学生106名,大学院生59名を対象に質問紙調査を行い,高校生当時,被害者あるいは加害者としてとしてネットいじめに関わったものが約6%であることが示された。また研究IIIでは,教員養成系の大学生・大学院生を対象にネットいじめへの対応の講義を行い,講義の内容について検討した。本研究では,中学生・高校生を対象にネットいじめに関する調査研究を行い,1ネットいじめが発現する心理的メカニズムについて検討すること,先行研究やこれまでの教育実践における知見と今回の調査研究によって得られた知見をもとに,2ネットいじめを予防するための心理教育プログラムの開発すること,3ネットいじめに対応できる力のある教員養成のための授業プログラムの開発を行うことの3つを大きな目的としている。これらの目的を達成するために,まず,いじめやネットいじめに関する国内外の文献研究や資料収集を行った。国内の資料収集としては,日本児童青年精神医学会(札幌で開催)に参加したり,名古屋大学や愛知淑徳大学の研究者の助言を受けるなどした。また,国外の資料集としては,ヨーロッパ児童青年精神医学会(ダブリンで開催)に参加したり,海外の研究者の助言をもらうなどした。なお,以前調査した中学生を対象にした調査研究のデータを改めて分析し,日本児童青年精神医学会でネットいじめの実態調査として発表を行った。こららの資料が,ネットいじめを予防するための授業プログラムの開発のための基礎的なデータとなると思われる。次に,中学生・高校生を対象とした調査研究を行ううえで,鳴門教育大学の研究倫理審査委員会にて研究計画について審査を行った。さらに,いくつかの高等学校と調査研究の交渉を行い,調査の許可をいただいた。本年度交渉した高等学校で,平成26年度に調査を行う予定である。さらに,鳴門教育大学の生徒指導関係の講義にて,ネットいじめに関する講義を行った。この内容が,ネットいじめに対応できる力のある教員養成のための授業プログラムのベースの一つとなると考えられる。本研究では,中学生・高校生のネットいじめに関して,1ネットいじめが発現する心理的メカニズムについて検討すること,2ネットいじめを予防するための心理教育プログラムを開発(提案)すること,3ネットいじめに対応する力のある教育養成のためのプログラムを開発することを大きな3つの目的にして,研究をすすめてきた。これらの目的を達成するために,平成26年度は,平成25年度に引き続き,国内外の文献研究や資料収集を行った。具体的には,世界精神医学会(9月にマドリッドで開催),児童青年精神医学会(10月に浜松で開催)に参加し資料収集を行い,参加者たちとの意見交換も行った。また,名古屋大学(金子一史准教授)・明治大学(濱田祥子講師)の研究協力者らから助言をもらい,ネットいじめに関する議論を重ねた。中学生へのネットいじめに関する調査結果の分析や,その分析結果を論文かする作業をさらに進めた。また,高等学校へのネットいじめに関する調査に関しては調査内容を再検討した上で,調査協力校の選定を進めた。さらに,平成25年度に引き続き,鳴門教育大学の研究代表者が担当する生徒指導関連の授業で,ネットいじめを含むいじめへの対応に関する講義(ワークショップ形式)を実施した。なお,今年度は生徒指導関連の授業の中でのいじめに関する内容の位置づけを担当教員間で議論した。そのために,生徒指導関連の授業全体の中でのいじめに関する内容の位置づけをより明確にすることができたと考えている。このことは,ネットいじめに対応する力のある教育養成を行う生徒指導力を育成するうえでは,非常に重要なことである。中高生のネットいじめの発生メカニズムの解明につなげるために,研究期間を通して,主に以下の研究を行った。研究I,研究IIでは,中高生のネットいじめやネットいじめにつながる行動の実態とその心理的背景について検討した。研究Iでは,中学生2010名を対象に質問紙調査を行い,ネットいじめに関する実態について明らかにした。主な調査結果として,調査時から半年くらいの間に,被害者あるいは加害者としてネットいじめに関わった生徒は全体で約3%,ネットいじめのみの経験,ネットいじめられのみ,両方経験があった者がそれぞれ約1%であった。このことから,調査時点での半年という限られた範囲でも,ネットいじめが起こっていることが示唆された。また,ネットいじめを受けた生徒が,自分に原因を求めがちであり,他の人にあまり話さない傾向があることも示された。研究IIでは,大学生106名・大学院生59名を対象に,高校生当時のことについて質問紙調査を実施した。主な結果として,高校生当時,被害者あるいは加害者としてネットいじめに関わった者が約6%,ネットいじめのみが約1%,ネットいじめられのみの経験が約3%,両方経験があった者が約1%であった。研究I,IIで,ネットいじめの実態がある程度示されたため,今後,中高生の語りの分析を行い,発生メカニズムをさらに検討する。そして,先行研究,本研究の研究I,IIなどをもっとに,教員養成系の大学生・大学院生を対象にネットいじめへの対応につながるいじめへの対応について考えるワークを作成し,生徒指導関係の授業中に取り入れた。まだ試行段階だが,生徒の気持ちや教師の気持ちを考えることができる内容にするために,授業感想等を参考にワークの内容を検討した。 | KAKENHI-PROJECT-25780417 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25780417 |
ネットいじめの予防に関する包括的研究 | 今後,ネットいじめの性質にも配慮した内容を検討し,教育効果を長期的に検討していきたい。本研究では,中高生のネットいじめの実態と予防の検討を行った。研究Iでは,中学生を対象に質問紙調査を行った。中学生1,675名のデータ分析の結果,半年間でのネットいじめの被害者あるいは加害者は約3%であった。また,ネットいじめの被害生徒が,自分に原因を求めがちであり,他の人にあまり話さない傾向があることも示された。研究IIでは,大学生106名,大学院生59名を対象に質問紙調査を行い,高校生当時,被害者あるいは加害者としてとしてネットいじめに関わったものが約6%であることが示された。また研究IIIでは,教員養成系の大学生・大学院生を対象にネットいじめへの対応の講義を行い,講義の内容について検討した。ネットいじめに関連する国内外の資料収集や研究協力者との議論,ネットいじめに対応できる力のある教育養成のプログラムの作成については,おおむね順調にすすんでいる。ただし,高校生への質問紙調査の実施については,慎重な配慮を必要とする調査であるため,調査の実施には至っていないのが現状である。今後,調査計画を見直しながら,最大限の配慮を行い,可能な範囲で進めていきたい。発達臨床心理学これまで行ってきた資料収集や研究協力者との議論,中学生への質問紙調査の結果のまとめをすすめ,ネットいじめへの対応策について提案していきたいと考えている。また,資料収集や中学生への質問紙調査の結果と,今後実施する予定である高等学校での質問紙調査の結果をふまえ,ネットいじめへの予防教育プログラム案を作成したいと考えている。また,ネットいじめを含むいじめに対応できる力のある教育養成のための授業プログラムについても,さらに発展できる形で考えていきたい。ネットいじめに関連する国内外の資料収集や,中学生の調査結果のデータ分析,教員養成のための授業プログラムづくりについては,おおむね順調に進行していると思われる。しかしながら,高等学校への調査研究については,生徒たちに侵襲的になる可能性が高い研究であるため,慎重に交渉や質問紙の準備を進めた結果,実際の調査の実施までには至らなかった。今後も生徒たちに最大限の配慮を行いながら,実現可能な方向で調査をすすめていきたいと考えている。本研究課題はネットいじめに関する包括的研究であり,ネットいじめという侵襲性の高いテーマであるため,予定よりも調査内容の検討をより時間をかけて行い,調査協力者・調査依頼先との関係をより慎重に検討するすることが必要であった。そのため,一部の調査内容や調査協力者の確保に当初の予定よりも時間がかかり,遅れが生じた。そのことが,次年度使用額が生じた原因となった。研究の目的については,大きな変更はせずに進めていきたい。しかしながら,対象となる生徒を一番に考える必要があるので,生徒の実態に合わせて,調査対象校の教員と慎重に議論しながら進めていきたいと考えている。 | KAKENHI-PROJECT-25780417 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25780417 |
生体模倣系・疾患治療への応用を目指したタンパク質の動的一分子解析 | 一分子レベルでの解析が可能な実験材料を拡張遺伝子工学の手法を用いて創出し、タンパク質フォールディング現象を、帰納的・動的に表現する。さらには、研究成果を生命現象や具体的な疾病原因の究明と解決に結びつける事を目的とし、以下の項目を設定して研究を行っている。【1】拡張遺伝子工学を利用したタンパク質に関する研究では、BPTI(ウシ膵臓トリプシンインヒビター)の二重蛍光標識と蛍光エネルギー移動(FRET)観察に関連して、拡張遺伝子工学の手法による2重標識を行った。標識を実施することは可能であったが、翻訳効率が極めて低く、一分子レベルでの動的な構造解析には至っていない。今後も引き続いて検討を行う。【2】生体模倣系(リポソーム等)を用いた、複雑系におけるタンパク質相互作用の解析に関しては、ラフト領域特異的なエンドサイトーシス現象を再現できることを示し、論文・学会などで活発な発表を行った。内層脂質膜と外層脂質膜の組成が異なる非対称性脂質2分子膜を備え、当該非対称性脂質2分子膜の膜面内に特定の脂質が偏在したミクロドメイン構造が形成されていることを特徴とする非対称リポソーム作製技術を確立し、特許を出願した。現在、アミロイド症原因タンパク質と、膜との相互作用に関する詳細な実験を行っている。【3】透析アミロイドーシス(ミクログロブリンアミロイド手根管症候群)原因究明と解決に関しては、昨年度出願した関連特許を元に試作品を作製し、臨床試験を行う準備ができている。一分子レベルでの解析が可能な実験材料を拡張遺伝子工学の手法を用いて創出し、タンパク質フォールディング現象を、帰納的・動的に表現する。さらには、研究成果を生命現象や具体的な疾病原因の究明と解決に結びつける事を目的とし、以下の項目を設定して研究を行っている。【1】拡張遺伝子工学を利用したタンパク質に関する研究では、BPTI(ウシ膵臓トリプシンインヒビター)の二重蛍光標識と蛍光エネルギー移動(FRET)観察に関連して、拡張遺伝子工学の手法による2重標識を行った。標識を実施することは可能であったが、翻訳効率が極めて低く、一分子レベルでの動的な構造解析には至っていない。今後も引き続いて検討を行う。【2】生体模倣系(リポソーム等)を用いた、複雑系におけるタンパク質相互作用の解析に関しては、ラフト領域特異的なエンドサイトーシス現象を再現できることを示し、論文・学会などで活発な発表を行った。内層脂質膜と外層脂質膜の組成が異なる非対称性脂質2分子膜を備え、当該非対称性脂質2分子膜の膜面内に特定の脂質が偏在したミクロドメイン構造が形成されていることを特徴とする非対称リポソーム作製技術を確立し、特許を出願した。現在、アミロイド症原因タンパク質と、膜との相互作用に関する詳細な実験を行っている。【3】透析アミロイドーシス(ミクログロブリンアミロイド手根管症候群)原因究明と解決に関しては、昨年度出願した関連特許を元に試作品を作製し、臨床試験を行う準備ができている。一分子レベルでの解析が可能な実験材料を拡張遺伝子工学の手法を用いて創出し、タンパク質フォールディング現象を、帰納的・動的に表現する。さらには、研究成果を生命現象や具体的な疾病原因の究明と解決に結びつける事を目的とし、以下の項目を設定して研究を行っている。【1】拡張遺伝子工学を利用したタンパク質BPTI(ウシ膵臓トリプシンインヒビター)の二重蛍光標識と蛍光エネルギー移動(FRET)観察に関連して、具体的に2重標識を拡張遺伝子工学の手法により導入した。導入に関しては傾向により確認できたが、翻訳効率が極めて低いために、その後の詳細な解析ができていない。【2】二重蛍光標識タンパク質を用いたタンパク質フォールディング・ミスフォールデイングプロセスの動的一分子解析に関しては、カルモジュリン結合タンパク質を用いた系に関しては、フォールディングとアンフォールディングにおける構造変化をFRETで追尾することができた。【3】生体模倣系(リポソーム等)を用いた、複雑系におけるタンパク質相互作用の解析に関しては、リポソーム中でのBPTI構造変化と脂質組成の間に一定の法則を見つけ出すことができている。またナタマメコンカナバリンの凝集と蛍光色素の関連についても興味深い知見が得られている。【4】透析アミロイドーシス(ミクログロブリンアミロイド手根管症候群)原因究明と解決に関しては、患者血清中のプロテアーゼが重要な役割を担っている可能性が示唆され、現在さらなる検討を実施している。一分子レベルでの解析が可能な実験材料を拡張遺伝子工学の手法を用いて創出し、タンパク質フォールディング現象を、帰納的・動的に表現する。さらには、研究成果を生命現象や具体的な疾病原因の究明と解決に結びつける事を目的とし、以下の項目を設定して研究を行っている。【1】拡張遺伝子工学を利用したタンパク質BPTI(ウシ膵臓トリプシンインヒビター)の二重蛍光標識と蛍光エネルギー移動(FRET)観察に関連して、2重標識を拡張遺伝子工学の手法により導入できた。しかし依然として翻訳効率が極めて低いために、その後の詳細な解析ができていない。【2】生体模倣系(リポソーム等)を用いた、複雑系におけるタンパク質相互作用の解析に関しては、膜構造中でのタンパク質の挙動を一分子レベルで観察することができた。現在では、アルツハイマー病の原因であるアミロイドβをモデルとして、膜中での動的な構造変化を観察している。【4】透析アミロイドーシス(ミクログロブリンアミロイド手根管症候群) | KAKENHI-PROJECT-17360395 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17360395 |
生体模倣系・疾患治療への応用を目指したタンパク質の動的一分子解析 | 原因究明と解決に関しては、患者血清中のプロテアーゼが重要な役割を担っている可能性が示唆され、また、そのプロテアーゼの活性化に光が重要な役割を担っていることを明らかにできている。透析手法の改善の可能性が考えられたために、関連特許を出願した。一分子レベルでの解析が可能な実験材料を拡張遺伝子工学の手法を用いて創出し,タンパク質フォールディング現象を,帰納的、動的に表現する。さらには,研究成果を生命現象や具体的な疾病原因の究明と解決に結びつける事を目的とし,以下の項目を設定して研究を行っている。【1】拡張遺伝子工学を利用したタンパク質に関する研究では,BPTI(ウシ膵臓トリプシンインヒビター)の二重蛍光標識と蛍光エネルギー移動(FRET)観察に関連して,拡張遺伝子工学の手法による2重標識は可能であるが,依然,翻訳効率が極めて低く,一分子レベルでの動的な構造解析には至っていない。今後も引き続いて検討を行う。【2】生体模倣系(リボソーム等)を用いた、複雑系におけるタンパク質相互作用の解析に関しては,ラフト領域特異的なエンドサイトーシス現象を再現できることを示し,論文、学会などで発表を行った。内層脂質膜と外層脂質膜の組成が異なる非対称性脂質2分子膜を備え、当該非対称性脂質2分子膜の膜面内に特定の脂質が偏在したミクロドメイン構造が形成されていること.を特徴とする非対称リボソーム作製技術を確立し,特許を出願した。現在,アミロイド症原因タンパク質と、膜との相互作用に関する詳細な実験を行っている。【3】透析アミロイドーシス(ミクログロブリンアミロイド手根管症候群)原因究明と解決に関しては,昨年度出願した関連特許を元に試作品を作製し,臨床試験:を行う準備ができている。 | KAKENHI-PROJECT-17360395 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17360395 |
フォトクロミック分子単結晶表面における光誘起物質移動 | 最近、光誘起表面レリーフ回折格子形成がフォトメカニカル効果のひとつとして注目を集め、基礎・応用両面から興味がもたれている。申請者らは最近、単結晶についても光誘起SRG形成が可能であることを世界に先駆けて実証し、単結晶表面におけるSRG形成に関するいくつかの重要な知見を得てきた。本年度は、物質移動が関連する研究として、昨年度、4-[bis(9,9-dimethylfluoren-2-yl)amino]-azobenzene(BFIAB)を用いて見出した、アモルファス分子ファイバーのフォトメカニカル効果(ファイバーが光照射に伴って屈曲すること、その屈曲方向が、照射する光の偏光方向によって制御できること)について、他のフォトクロミックアモルファス分子材料でも検討を行い、この効果がフォトクロミックアモルファス分子材料に一般的に見られる現象であることを示した。さらに本年度は、昨年度までにすでに開発していたフォトクロミックアモルファス分子材料4-[bis(4-methylphenyl)amino]azobenzene(BMAB)と光に応答しないアモルファス分子材料4,4',4"-tris[3-methylphenyl(phenyl)amino]triphenylamine(m-MTDATA)の混合膜を用いて光誘起SRG形成の検討を行った。その結果、BMAB単独膜に比べてSRG形成能が大幅に向上することを明らかにした。このSRGはBMABのガラス転移温度よりも十分高い55°Cでアニールしても消滅しないことから、光に応答しないm-MTDATA分子がBMABとともに移動したことが示唆される。アゾベンゼン系アモルファス材料を用いる光誘起表面レリーフ回折格子(SRG)形成が注目を集めている。これに対し、申請者はごく最近、4-(ジメチルアミノ)アゾベンゼンの単結晶や4-[ビス(9,9-ジメチルフルオレン-2-イル)アミノ]アゾベンゼン(BFlAB)の酢酸エチルとの共結晶の表面にも光誘起SRG形成が可能であることを明らかにしている。本研究は、さまざまなフォトクロミック化合物について、その単結晶を育成し、それらを用いる光誘起SRG形成を検討して、単結晶を用いる光誘起SRG形成の一般的な特徴を明らかにするとともに、SRG形成機構を解明することを目的としている。本年度は、4-[ビス(9,9-ジメチルフルオレン-2-イル)アミノ]-4'-シアノアゾベンゼン(CN-BFlAB)の単結晶を用いる光誘起SRG形成を検討した。CN-BFlAB単結晶の表面にもレーザー光の干渉露光によってSRGを形成させることができることを示すとともに、SRG形成の書込み光偏光依存性が、CN-BFlABのアモルファス膜における光誘起SRG形成の場合と酷似していることを明らかにした。さらに、この結晶の表面にレーザー光を照射した場合の表面付近のモルフォロジー変化を摩擦力顕微鏡により調べ、この単結晶に光を照射することにより、照射面にアモルファス層が形成されることを示唆する結果を得た。また、光誘起SRG形成とは別に、BFlABを用いてアモルファス分子ファイバーを作製し、そのフォトメカニカル効果を検討した。その結果、このファイバーが光照射に伴って屈曲すること、その屈曲方向が、照射する光の偏光方向によって制御できることを明らかにし、このことがファイバー上で誘起される物質移動の効果に基づくことを示唆する結果を得た。最近、光誘起表面レリーフ回折格子形成がフォトメカニカル効果のひとつとして注目を集め、基礎・応用両面から興味がもたれている。申請者らは最近、単結晶についても光誘起SRG形成が可能であることを世界に先駆けて実証し、単結晶表面におけるSRG形成に関するいくつかの重要な知見を得てきた。本年度は、物質移動が関連する研究として、昨年度、4-[bis(9,9-dimethylfluoren-2-yl)amino]-azobenzene(BFIAB)を用いて見出した、アモルファス分子ファイバーのフォトメカニカル効果(ファイバーが光照射に伴って屈曲すること、その屈曲方向が、照射する光の偏光方向によって制御できること)について、他のフォトクロミックアモルファス分子材料でも検討を行い、この効果がフォトクロミックアモルファス分子材料に一般的に見られる現象であることを示した。さらに本年度は、昨年度までにすでに開発していたフォトクロミックアモルファス分子材料4-[bis(4-methylphenyl)amino]azobenzene(BMAB)と光に応答しないアモルファス分子材料4,4',4"-tris[3-methylphenyl(phenyl)amino]triphenylamine(m-MTDATA)の混合膜を用いて光誘起SRG形成の検討を行った。その結果、BMAB単独膜に比べてSRG形成能が大幅に向上することを明らかにした。このSRGはBMABのガラス転移温度よりも十分高い55°Cでアニールしても消滅しないことから、光に応答しないm-MTDATA分子がBMABとともに移動したことが示唆される。 | KAKENHI-PUBLICLY-21021014 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-21021014 |
サンゴ礁-海草藻場-マングローブ林から構成される複合生態系における環境動態の解析 | 本研究では研究期間の3年間のうち、男年度に器や分析手法などの準備行い、次年度は下記の測線調査と面的調査を通常期および寒冷期に行った。最終年度に当たる本年度は、台風来襲期にあたる高温期の調査を天候に合わせて機動的に遂行し、複合生態系の動態を季節変化を踏まえて総合的に解析した。測線調査マングローブ・海草藻場・サンゴ礁をそれぞれ独立したボックスとして捉え、それらの間の窒素及びリンの収支を定量的に把握することを目的とした現場観測を行った。地形や海草藻場の分布を考慮して観測点を設定し、それぞれの観測点に水温塩分計・流速計を係留して、短期的な連続観測を行なった。同時に採水を行い窒素・リン濃度を分析した。観測された流量及び各形態別の窒素・リン濃度の積から各ボックス間の短期的な窒素・リン収支の特性を明らかにした。面的調査GIS化産業技術総合研究所が開発した気球から、前年度までに撮影した調査海域の画像をもとに、基礎的地理情報データベースを構築した。このデータベース上に、ROVで撮影した画像を、あたかも自身が潜水して見ているように、測線に沿ってビデオ画像が流れるソフトウエアに統合した。さらにこれらの動画つきデータベースを一般にも操作しやすい形に変換し、ホームページで公開した。これらのデータについては英語版も作成し、アメリカの研究者を中心に収集されている世界の藻場状況の日本側データベースとして登録された。堆積物と一次生産者のバイオマーカーおよび安定同位体比分析各生態系における堆積物と一次生産者のバイオマーカーおよび安定同位体比分析の結果から、マングローブ林堆積物に供給される有機物はマングローブ起源であるが、海草藻場の堆積物に供給される有機物もマングローブ起源のものが多いことが推察され、安定同位体比の結果と整合的であった。またサンゴ礁堆積物に供給される有機物は、マングローブ起源や海草起源ではなくサンゴ礁起源であるが、その主要供給生物は軟体部としてのサンゴではなく、他種多様に生息するその他の生物であると推定された。本研究では研究期間の3年間のうち、男年度に器や分析手法などの準備行い、次年度は下記の測線調査と面的調査を通常期および寒冷期に行った。最終年度に当たる本年度は、台風来襲期にあたる高温期の調査を天候に合わせて機動的に遂行し、複合生態系の動態を季節変化を踏まえて総合的に解析した。測線調査マングローブ・海草藻場・サンゴ礁をそれぞれ独立したボックスとして捉え、それらの間の窒素及びリンの収支を定量的に把握することを目的とした現場観測を行った。地形や海草藻場の分布を考慮して観測点を設定し、それぞれの観測点に水温塩分計・流速計を係留して、短期的な連続観測を行なった。同時に採水を行い窒素・リン濃度を分析した。観測された流量及び各形態別の窒素・リン濃度の積から各ボックス間の短期的な窒素・リン収支の特性を明らかにした。面的調査GIS化産業技術総合研究所が開発した気球から、前年度までに撮影した調査海域の画像をもとに、基礎的地理情報データベースを構築した。このデータベース上に、ROVで撮影した画像を、あたかも自身が潜水して見ているように、測線に沿ってビデオ画像が流れるソフトウエアに統合した。さらにこれらの動画つきデータベースを一般にも操作しやすい形に変換し、ホームページで公開した。これらのデータについては英語版も作成し、アメリカの研究者を中心に収集されている世界の藻場状況の日本側データベースとして登録された。堆積物と一次生産者のバイオマーカーおよび安定同位体比分析各生態系における堆積物と一次生産者のバイオマーカーおよび安定同位体比分析の結果から、マングローブ林堆積物に供給される有機物はマングローブ起源であるが、海草藻場の堆積物に供給される有機物もマングローブ起源のものが多いことが推察され、安定同位体比の結果と整合的であった。またサンゴ礁堆積物に供給される有機物は、マングローブ起源や海草起源ではなくサンゴ礁起源であるが、その主要供給生物は軟体部としてのサンゴではなく、他種多様に生息するその他の生物であると推定された。沖縄県石垣市伊土名地先の沿岸域において、1潮汐間の水質・流動の連続観測を行った。マングローブ林-藻場間の潮汐に伴う入退潮量は、上流からの流入水量と比較して大きく、当該水域における物質循環には潮汐が強く影響することが推察された。また、北風が卓越する時期においては、沿岸域の流れ場は潮汐変動に関係なく北から南西方向への流れが卓越していた。上記の結果は、上流域及びマングローブ林内起源の溶存態の負荷は潮汐により前面沿岸域へと輸送されるが、北から南西への沿岸流により周辺水域から速やかに流出されることを示唆するものであった。平行して、マングローブ林流入河川上流部に繁茂する広葉樹などの葉や、河床堆積物を採取した。これらのバイオマーカーを分析することにより、陸域からの有機物供給がマングローブ林内で蓄積・分解される度合いを推定する。海草藻場では、温帯域に共通する唯一の海草であるコアマモを採取し、FSで分析した亜熱帯海草の結果と合わせて、亜熱帯海草と温帯海草とでバイオマーカーに差異があるかを検討する。また、伊土名地先の沿岸域において、海草藻場の範囲を水中ロボットで探索した。その結果、従来藻場と考えられていた範囲よりはるかに沖合いにまで広がっていることが分かった。 | KAKENHI-PROJECT-16201006 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16201006 |
サンゴ礁-海草藻場-マングローブ林から構成される複合生態系における環境動態の解析 | 本年度はこれらの調査とは別に、来年度後半以降に予定している「サンゴ礁-海草藻場-マングローブ林」のどれかが機能していない生態系の対象フィールドを選定すべく、石垣島の主な河川や海岸における予備調査も行った。現在、得られた情報を基に選定作業を進めている。石垣市伊土名地先の沿岸域において水質・流動の24時間連続観測を行い、マングローブ林への流入河川からの負荷は大きな時間変動が無いことを確認した。マングローブ林-藻場間の潮汐に伴う流入出は、時々刻々の値では溶存及び粒子態による寄与が大きいが、一潮汐間での積分値ではリター輸送の寄与が無視できなかった。これに対しサンゴ礁-藻場間の流入出は、時々刻々の値では吹送流による寄与が大きいが、積分値では潮汐による寄与が大きかった。また伊土名地先の沿岸域において、夏季のサンゴ礁-海草藻場の範囲を気球による撮影、水中ロボットによる観察を行い、GIS化のための基礎データを取得した。その際、位置情報をより正確に測定するため、GPSを搭載した気球を取り付けた2連気球による撮影法を開発した。取得した基礎データはFS的にGIS化を試みたが、この際、航跡上のビデオ画像を閲覧できるなど、定性的・感覚的な水中感覚の把握が第三者にも可能になるよう工夫した。さらに、前年度に採取したマングローブより上流の淡水河川域堆積物について、バイオマーカーを分析した。以上の成果は下記のように口頭発表を行った(誌上発表等は次頁)。加藤健、大谷謙仁、根岸明、野崎健、山室真澄、宮本孝之:GPSを取り付けた2連気球によるサンゴ礁海草藻場の撮影.日本サンゴ礁学会第8回大会、2005年11月井上徹教、中村由行、細川真也、内村真之:マングローブ河口域における窒素・リンの収支.第40回日本水環境学会年会、2006年3月本研究では研究期間の3年間のうち、初年度に機器や分析手法などの準備行い、次年度は下記の測線調査と面的調査を通常期および寒冷期に行った。最終年度に当たる本年度は、台風来襲期にあたる高温期の調査を天候に合わせて機動的に遂行し、複合生態系の動態を季節変化を踏まえて総合的に解析した。測線調査マングローブ・海草藻場・サンゴ礁をそれぞれ独立したボックスとして捉え、それらの間の窒素及びリンの収支を定量的に把握することを目的とした現場観測を行った。地形や海草藻場の分布を考慮して観測点を設定し、それぞれの観測点に水温塩分計・流速計を係留して、短期的な連続観測を行なった。同時に採水を行い窒素・リン濃度を分析した。観測された流量及び各形態別の窒素・リン濃度の積から各ボックス間の短期的な窒素・リン収支の特性を明らかにした。面的調査とGIS化産業技術総合研究所が開発した気球から、前年度までに撮影した調査海域の画像をもとに、基礎的地理情報データベースを構築した。このデータベース上に、ROVで撮影した画像を、あたかも自身が潜水して見ているように、測線に沿ってビデオ画像が流れるソフトウエアに統合した。さらにこれらの動画つきデータベースを一般にも操作しやすい形に変換し、ホームページで公開した。これらのデータについては英語版も作成し、アメリカの研究者を中心に収集されている世界の藻場状況の日本側データベースとして登録された。 | KAKENHI-PROJECT-16201006 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16201006 |
広視野ガンマ線カメラの開発及び気球実験によるMeVガンマ線銀河内天体観測 | 私は広視野ガンマ線観測のため、ガス飛跡検出器(TPC)とシンチレーションカメラ(PSA)からなる電子飛跡検出型コンプトンカメラ(ETCC)の開発を行ってきた。本研究の大きな目的のひとつはETCCの撮像性能を強い放射線占領下のため雑音事象の多い宇宙環境である気球高度で実証試験を進める科研費基盤S(代表谷森)を強く推進するため、限られた電力・スペース・重量の条件の中でETCCの大型化を成功させることであった。これについて昨年度までに気球搭載型ETCCのハードウェアを完成させることができた。本年度は、ETCCの基礎性能を調査し、気球高度においてかに星雲を撮像できる要求仕様である有効面積が典型的に0.5cm2以上、角度分解能が半値全巾で10度以下という条件を果たして満たすことを、実験室で密封線源を用いることで測定し、評価を行った。その結果、有効面積は0.7 cm2 @ 356 keV,角度分解能が5.3度@ 662 keVをもつことを確認し、当初の要求仕様を満たす気球搭載型ETCCを制作したことを確認し、これらの成果を論文にまとめた。さらに、宇宙環境に近い気球高度での撮像性能を調べるため、得られた基礎性能のETCCを基に、気球高度での雑音事象、天体から観測される光子数を数値計算することで有意に天体を検出できるか議論した。気球実験の現実的な解を検討し、気球の打ち上げ所の一つであるアメリカフォートサムナー、高度40kmにて1日のフライトを行った場合、かに星雲を6時間程度観測することができ、5σ以上の統計的有意度で検出できることを数値計算により確認した。さらに、ETCCの広い視野を活かしてかに星雲だけでなくCyg X-1とGRO JO422+32も同時に観測が可能であり、7時間の観測時間が見込まれ統計的有意度がやはり5σ以上期待できることを新たに明らかにし、その成果を論文に発表した。当初の目的のひとつである広い視野をもつガンマ線カメラの開発は、気球搭載型を完成させその性能を実験的、シミュレーション、数値計算により確かめることができ、目標を達成した。気球を用いた観測実証試験については、気球打ち上げ場の都合により不可能となったため、事実上遂行不能となったが、地上で可能な限りの撮像実証試験を成功させることで、次世代型のガンマ線カメラによる高エネルギー宇宙物理解明への展望を拓いた。(抄録なし)サブMevから数十MeV領域でのガンマ線天体観測においては、元素合成による核ガンマ線、陽子加速により生成された中性パイ中間子の崩壊による特徴的なスペクトル構造をもつ連続ガンマ線など、MeV領域でしか得られない情報が豊富にあり、高エネルギー宇宙現象の理解に重要である。しかし、他のエネルギー帯域と比較してMeV領域での感度は2桁以上悪く、従来の観測方法を凌駕する技術の確立が長年の課題とされてきた。我々の研究室では、0.1-30MeVのガンマ線に対して、COMPTELの10倍の感度とσ<2度の高撮像能力、3strもの広視野をもつ衛星搭載観測装置の実現を最終目標に、その前段階として気球実験により新しい観測技術の確立へ向け、独自の技術を用いた、ガス検出器とシンチレーションカメラを組み合わせた電子飛跡検出型コンプトンカメラ(以下、ETCC)の開発を進めてきた。平成23年度においては、上記目標において実現のカギとなる感度の向上へ向け、従来の小型ETCCの50倍の有効面積をもつ30cm立方大型ETCCの開発を行い、有効面積が従来の50倍になるための見通しが立つことを明確化し、それら成果を学会にて発表した。具体的には、以下に挙げるとおりである。(1)シンチレーションカメラ従来の60個から72個へ増設を行い、エネルギー較正を行った。(2)Geant4シミュレーションによるシンチレーションカメラ配置の最適化により300keVにおいて従来の1.7倍の有効面積が期待できることを確認した。(3)シミュレーションにより、ガス検出器周辺の物質をアルミ製からPET樹脂製に変更することで検出効率が約1.3倍向上することを突き止め、業者との連携によりまずは小型ETCCで使用するためのガス検出器筐体の設計・制作を行い、これを用いたガス検出器の動作実証に成功した。また冬にはこの結果を基にした気球実験搭載用大型筐体の制作の設計も行った。私は広視野ガンマ線観測のため、ガス飛跡検出器(TPC)とシンチレーションカメラ(PSA)からなる電子飛跡検出型コンブトンカメラ(ETCC)の開発を行ってきた。本年度は、前年度までに行ったプロトタイプ型ETCCの開発で問題となった点を考察し、気球搭載型ETCCの構築を成功させ、2013年3月の日本物理学会にてその結果を報告した。(i)シミュレーションによる検出効率の評価モンテカルロ法を利用した物理過程シミュレータであるGeant4を用い、検出器の動作原理と解析原理を、独自のアイデアで検出の検出器内で起こる物理過程に置き換え、検出効率をシミュレーションした。得られた結果は、本年度夏季までに行われた小型ETCCによる性能評価試験において得られた実験値と20%以内でよく一致し、新しく開発した電子飛跡データ取得法において物理過程を検出器内で正しくとらえていることを明らかにした。(ii)熱環境試験の実施と熱設計の見直し構築した気球搭載型ETCCが気球高度の低温低圧環境下で動作するかを模擬するため、ISAS/JAXA相模原において宇宙研気球グループが所有する真空恒温槽を用いて、熱環境試験を行った。 | KAKENHI-PROJECT-11J00606 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J00606 |
広視野ガンマ線カメラの開発及び気球実験によるMeVガンマ線銀河内天体観測 | その結果、前回行った気球試験の挙動と異なり、-40度以下になると与圧容器を含むシステム全体が冷え過ぎることを新たに発見した。これを分析した結果、問題解決には与圧容器表面の放射率を適切になるよう材料選定すれば有効であることを熱収支モデルの構築により明らかにした。(iii)ガンマ線バースト検出可能性の評価長期の気球フライトでは、ETCCの広視野を活かして突発的に輝く天体現象の観測が期待できる。私はこの点に着目し、これまで観測されたガンマ線バースト(GRB)の光度をもとに気球搭載型ETCCで観測した場合にどの程度観測結果が得られるかを数値計算し、その結果をGRB研究会2012にて報告した。私は広視野ガンマ線観測のため、ガス飛跡検出器(TPC)とシンチレーションカメラ(PSA)からなる電子飛跡検出型コンプトンカメラ(ETCC)の開発を行ってきた。本研究の大きな目的のひとつはETCCの撮像性能を強い放射線占領下のため雑音事象の多い宇宙環境である気球高度で実証試験を進める科研費基盤S(代表谷森)を強く推進するため、限られた電力・スペース・重量の条件の中でETCCの大型化を成功させることであった。これについて昨年度までに気球搭載型ETCCのハードウェアを完成させることができた。本年度は、ETCCの基礎性能を調査し、気球高度においてかに星雲を撮像できる要求仕様である有効面積が典型的に0.5cm2以上、角度分解能が半値全巾で10度以下という条件を果たして満たすことを、実験室で密封線源を用いることで測定し、評価を行った。その結果、有効面積は0.7 cm2 @ 356 keV,角度分解能が5.3度@ 662 keVをもつことを確認し、当初の要求仕様を満たす気球搭載型ETCCを制作したことを確認し、これらの成果を論文にまとめた。さらに、宇宙環境に近い気球高度での撮像性能を調べるため、得られた基礎性能のETCCを基に、気球高度での雑音事象、天体から観測される光子数を数値計算することで有意に天体を検出できるか議論した。気球実験の現実的な解を検討し、気球の打ち上げ所の一つであるアメリカフォートサムナー、高度40kmにて1日のフライトを行った場合、かに星雲を6時間程度観測することができ、5σ以上の統計的有意度で検出できることを数値計算により確認した。さらに、ETCCの広い視野を活かしてかに星雲だけでなくCyg X-1とGRO JO422+32も同時に観測が可能であり、7時間の観測時間が見込まれ統計的有意度がやはり5σ以上期待できることを新たに明らかにし、その成果を論文に発表した。宇宙環境でのMeVガンマ線観測においては、雑音イベントの除去と有効面積をいかに向上させるかが重要課題となる。このうち、我々が開発しているETCCの強力な雑音イベントの除去能力については過去に行われた気球実験により既に実証済みであった。残る有効面積拡張の問題について、平成23年度に行った大型化ETCC開発とシミュレーションで実現の見通しが明確化されたことのインパクトは当初の計画以上の成果である。当該研究において、目標であるでのガンマ線観測気球実験は、気球の打ち上げを管轄する宇宙科学研究所は、北海道大樹町での理学観測気球実験を、近年の気候変化などの厳しい放球条件を理由に実施しない運びとなった。 | KAKENHI-PROJECT-11J00606 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J00606 |
メカノバイオロジーに基づいた即時荷重インプラント補綴の最適設計法の確立 | 本研究では,上顎無歯顎における補綴装置の最適設計を確立するために,非線形連続体による有限要素解析を用いて,インプラントへの待時荷重と即時荷重における骨とインプラント界面の比較を行った.その結果,待時荷重においては,インプラントの長さがインプラント周囲骨に与える影響は小さいが,即時荷重においては,より長さが長いほど,周囲骨に生じる応力を減少させることが可能であることが示唆された.さらに,待時荷重においては,インプラントの本数が周囲骨に与える影響は小さいが,即時荷重においては,本数が少ない場合,周囲骨に生じる応力が大きくなることが示唆された.本研究では,上顎無歯顎における補綴装置の最適設計を確立するために,非線形連続体による有限要素解析を用いて,インプラントへの待時荷重と即時荷重における骨とインプラント界面の比較を行った.その結果,待時荷重においては,インプラントの長さがインプラント周囲骨に与える影響は小さいが,即時荷重においては,より長さが長いほど,周囲骨に生じる応力を減少させることが可能であることが示唆された.さらに,待時荷重においては,インプラントの本数が周囲骨に与える影響は小さいが,即時荷重においては,本数が少ない場合,周囲骨に生じる応力が大きくなることが示唆された.インプラントへの即時荷重後に周囲骨が早期に骨吸収してしまい,オッセオインテグレーションを獲得できないケースが問題視されている.そこで本研究では,先行研究から,骨形成を促進する応力の範囲があるとの仮説を立て,動物実験,模型実験および有限要素法解析によってインプラント周囲骨の変化を形態学的・組織学的に検討することで,骨形成を促進する応力の閾値を明らかにし,CT画像から有限要素モデルを作成し,咬合力に応じた荷重を負荷した際の応力が,骨形成を促進する応力となるようなインプラントの配置,補綴装置の材質などの最適設計法を確立させることを目的とする.本年度は、有限要素モデルの確率するべく、骨量が十分にある上顎無歯顎患者の顎骨CT画像のDICOMデータから、メカニカルファインダー(MechanicalFinder,計算力学研究センター,大阪)を用いて有限要素モデルを作製した。さらにCADソフト(SOLIDWORKS 2011, Dessault systems, France)を用いて作製したインプラントを6本配置し、インプラントと骨との境界条件を2種類設定した。即時荷重を想定したものをcontactとし摩擦係数を0.3,、すでにオッセオインテグレーションを獲得したものに待時荷重を想定したものをbondとし、最遠心に8mmカンチレバーを設定した上部構造の全面に300N、カンチレバー部に100N、前歯相当部に120Nの垂直荷重を負荷した。その結果、すべての即時荷重モデルにおいて待時荷重モデルよりも大きな最大主応力を示し、カンチレバー部への荷重負荷では、最遠心のインプラントに最も高い応力集中が認められた。本年度は、前年度に行った有限要素モデルの確立を引き続き行った。前年度に引き続き、骨量が十分にある上顎無歯顎患者の顎骨CT画像のDICOMデータから、汎用有限要素法ソフトウェアMechanical Finder(version6.2,計算力学研究センター,大阪)を用いて有限要素法モデルを作成した.さらに、CADソフト(SLIDWORKS 2011、Dessault Systems, France))を用いて作成したインプラントを5本、4本と本数を変えて配置し、前年度作成した6本でのモデルと比較するとともに、インプラント1本のモデルを作成して、インプラントの長さを10,13,15,17mmの4種類設定し長さのの影響を比較した。また、インプラントと骨との境界条件を即時荷重の場合と待時荷重の2種類設定した。さらに、荷重の負荷方法を上部構造の全面に300N、カンチレバー部に100N、前歯相当部に120Nの3種類設定した。長さの比較では、待時荷重の場合、どの長さにおいても皮質骨および海綿骨それぞれにおいて最大主応力に長さによる大きな差はながった。即時荷重においては、より長さが長いほど、海綿骨に生じる最大主応力は小さくなった。本数の影響は、待時荷重の場合には、荷重方法によらず、各インプラントに生じる最大主応力に大きな差は見られなかった。即時荷重の場合には、4本のインプラントの前歯相当部に荷重負荷を行った場合、より大きな最大主応力は見られた。歯科補綴学現段階で、有限要素モデル作製方法および解析方法を確立したため、概ね研究は順調に進行していると考えている今後は本数の影響を評価した有限要素モデルの作製および解析を行うと共に、模型実験・動物実験を遂行する予定である。有限要素モデルに関しては、その作製および解析方法を確立しているため、進行に大きな問題はない。また、模型実験および動物実験もこれまで行ってきた手法を応用したものであるため、大きな問題はないと考えている。初年度に予定していた動物実験を次年度に行うこととしたため次年度使用額が生じた次年度に動物実験を行う予定としており、動物(ラビット)の購入およびインプラント・薬品などの購入に使用する計画である | KAKENHI-PROJECT-25861889 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25861889 |
歯周病原菌内毒素の細胞および実験的ペリクルへの付着に関する研究 | 歯周病の病原菌であるグラム陰性菌は、全てその外膜成分として内毒素を保有している。今回実験に供した内毒素は、歯周病原性グラム陰性菌から抽出した。Porphyromonas gingivalis ATCC33277、FDC381、実験動物に強い病原性を示す16-IFI株およびその継〓を繰り返した16-IRT株を用いた。Provotella intermediaは、ATCC25611、ATCC33563株を使用した。Actinobacillss actinomy et-emcomtansはY4株、Fusobacterium nucleatumはATCC25586株、Eikeuella corrodensはFDC1073株を供討した。内毒素であるlipopolysaccharideは、water-phenol法によって抽出した。実験的ペリクルは、ヒドロキシマパタイトビーズを血清あるいは唾液でcoatした。LPSの量は、リムルステストを指標として測定した。抽出LPS標品をSDS-PAGE後、silver染色したところ、P.gingivalisの全ての株、F.nucleatum株のLPSは繰り返しの0-拾原多糖体をもつことから、smooth型のwildタイプに属することがわかった。一方P.intermedia、A.actinomycetemcomitansおよびE.corrodensのLPSは0-拾原多糖体側鎖を持たないことからrough型のLPSに属することがわかった。今まで報告してきたようにrough型のLPSは、供請した動物およびヒトの赤血球を凝集したことを確認できた。また唾液や血清をcoatした実験的ペリクルへの付着は、赤血球凝集能のあるrough型LPSに顕着であった。P.gingivalisのLPSの実験的ペリクルおよびヒドロキシマパタイトへの付着は、ほとんど認められなかった。in vitroの今回の実験結果は、歯周病原性グラム陰性球菌がin vivoでどのような役割りを果たしているかを考えると(1)、菌の歯周局所への定着因子、(2)歯周組織体にセナント質へ吸着して組織障害を起こしていることが考えられる。歯周病の発症と進行に特定のグラム陰性菌が密接に関わっていることを内外の研究者そして私共が明らかにしてきた。本研究は、それらの歯周病原菌が共通して保有し、外膜に存在する内毒素であるlipopolisaccharide(LPS)が細胞ならびに実験的ペリクルに付着する能力があるか否かどうか検討することを目的とした。歯周病原性グラム陰性菌体から温phenolーwater法によってLPSを抽出した。まず細胞への付着能を赤血球凝集能を指標として調べた。ヒト、ヒツジ、ウサギおよびマウス赤血球凝集能を持つLPSは、Bacteroides intermedius(Prevotella intermedia),Bacteroides melaninogenicus、Bacteroides denticola、Capnocytophaga gingivalis,Actinobacillus actino mycetemcomitans、Eikenella corrodensなどから抽出したものであった。これらのLPSは、唾液あるいは血清をcoatingしたヒドロキシアパタイトbeadsいわゆる実験的ペリクルへの付着能も強かった。この血球凝集能や実験的ペリクルへの付着能は、実験系に種々の糖やアミノ酸を加えても影響を受けなかった。LPSをあらかじめプロテア-ゼ、トリプシン、ヒアルロニダ-ゼ、ノイラミニダ-ゼで処理してもその付着能は大きな低下をみなかったが、リパ-ゼおよびホスホライペ-スC処理で完全に消失した。おそらくある種のリピド部分がこれらのLPSの鍵性状を担っていると考えられる。歯周病の発症と進行に特定のグラム陰性桿菌とスピロヘ-タが密接に関わっている。成人性歯周炎では,Porphyromonas gingi Valis.Prevotella intermedia,Bacteroides forsythus,EikenellacorrodensおよびFusobacterium nucleatumが病原菌となっている。さらにActinobacllus actinomycetemcomitansは,若年性歯周炎のみならず成人性歯周炎の病原菌となっている。それらの歯周病原性グラム陰性菌の共通する病原性因子が外膜成分でlipopolysaccharide(LPS)からなる内毒素である。本実験目的は,これらのLPSが歯周局所の細胞に付着するか否かは,その赤血球への付着能を赤血球凝集能の有無によって調べた。上述のグラム陰性菌から温フェノ-ル・水法によって抽出したLPSについて検討した。P.intermedia,E.corrodensおよびA.actinomycetemcomdtansから抽出したLPSは,rougA型のもので全て赤血球凝集能を示した。他P.gingivalisの4株から抽出したLPSは全てsmooth型で赤血球凝集活性は認められなかった。抽出LPSの実験的ペリクルの付着能は,ハイドロキシアパタイトビ-ズを唾液および血滑でcoatしたもので行った。赤血球凝集能と同様にP.intermedia,E.corrodpllsおよびA.actinomycetemycetemcomitansのLPSだけが,唾液および血滑でcoatしたハイドロキシアパタイトビ-ズに付着した。P.gingvalisのLPSは,唾液や血清をcoatしないハイドロキシアパタイトに付着したLPSは,蒸留水で激しく振盪しても離れてこないことがわかった。すなわちいったん付着した内毒素は,歯周局所特に歯面に付着した場合,簡単に離れることなく病原性を発揮するものと考えられる。歯周病の病原菌であるグラム陰性菌は、全てその外膜成分として内毒素を保有している。 | KAKENHI-PROJECT-02454419 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02454419 |
歯周病原菌内毒素の細胞および実験的ペリクルへの付着に関する研究 | 今回実験に供した内毒素は、歯周病原性グラム陰性菌から抽出した。Porphyromonas gingivalis ATCC33277、FDC381、実験動物に強い病原性を示す16-IFI株およびその継〓を繰り返した16-IRT株を用いた。Provotella intermediaは、ATCC25611、ATCC33563株を使用した。Actinobacillss actinomy et-emcomtansはY4株、Fusobacterium nucleatumはATCC25586株、Eikeuella corrodensはFDC1073株を供討した。内毒素であるlipopolysaccharideは、water-phenol法によって抽出した。実験的ペリクルは、ヒドロキシマパタイトビーズを血清あるいは唾液でcoatした。LPSの量は、リムルステストを指標として測定した。抽出LPS標品をSDS-PAGE後、silver染色したところ、P.gingivalisの全ての株、F.nucleatum株のLPSは繰り返しの0-拾原多糖体をもつことから、smooth型のwildタイプに属することがわかった。一方P.intermedia、A.actinomycetemcomitansおよびE.corrodensのLPSは0-拾原多糖体側鎖を持たないことからrough型のLPSに属することがわかった。今まで報告してきたようにrough型のLPSは、供請した動物およびヒトの赤血球を凝集したことを確認できた。また唾液や血清をcoatした実験的ペリクルへの付着は、赤血球凝集能のあるrough型LPSに顕着であった。P.gingivalisのLPSの実験的ペリクルおよびヒドロキシマパタイトへの付着は、ほとんど認められなかった。in vitroの今回の実験結果は、歯周病原性グラム陰性球菌がin vivoでどのような役割りを果たしているかを考えると(1)、菌の歯周局所への定着因子、(2)歯周組織体にセナント質へ吸着して組織障害を起こしていることが考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-02454419 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02454419 |
ブラシノステロイドを介して誘導される新規の全身誘導抵抗性のメカニズムに関する研究 | ブラシノステロイドを介して誘導される病害抵抗性(brassinosteroid-mediated disease resistance, BDR)の誘導機構を解析するために、シロイヌナズナの各種変異株を用いて既知の全身誘導性病害抵抗性との比較を行った。サリチル酸を介して誘導される全身獲得抵抗性(SAR)およびジャスモン酸を介して誘導される抵抗性(WSR)が誘導されない変異株を用いてPseudomonas syringae pv. tomato DC3000の感染実験を行った結果、BDRの誘導にはSAR誘導に機能するNPR1タンパク質およびWSR誘導に機能するEIN2タンパク質を必要とし、BDRはSAR、WSRとは異なる機構により誘導される病害抵抗性であることが明らかとなった。病原菌感染後のPR-1の発現を検討した結果、BDR誘導時には病原菌に対する応答が早められるPriming効果が認められ、これがBDRの病害抵抗性機構に関与していると考えられた。Primingにはエチレンが関与していると予想し、エチレン生合成経路について解析を行った結果、BDR誘導はACOの発現には影響しないが、ACSの発現に影響を及ぼすことが明らかとなり、エチレン生合成前駆体が蓄積している可能性が示唆された。また、BDR誘導に機能する遺伝子を特定することを目的として、BDR誘導処理をした野生株とnpr1変異株における遺伝子発現パターンを比較するために、マイクロアレイ解析を行い、BDR誘導時に発現が誘導または抑制される遺伝子が多数見出された。ブラシノステロイドを介して誘導される病害抵抗性(brassinosteroid-mediated disease resistance, BDR)の誘導機構を解析するために、シロイヌナズナの各種変異株を用いて既知の全身誘導性病害抵抗性との比較を行った。サリチル酸を介して誘導される全身獲得抵抗性(SAR)およびジャスモン酸を介して誘導される抵抗性(WSR)が誘導されない変異株を用いてPseudomonas syringae pv. tomato DC3000の感染実験を行った結果、BDRの誘導にはSAR誘導に機能するNPR1タンパク質およびWSR誘導に機能するEIN2タンパク質を必要とし、BDRはSAR、WSRとは異なる機構により誘導される病害抵抗性であることが明らかとなった。病原菌感染後のPR-1の発現を検討した結果、BDR誘導時には病原菌に対する応答が早められるPriming効果が認められ、これがBDRの病害抵抗性機構に関与していると考えられた。Primingにはエチレンが関与していると予想し、エチレン生合成経路について解析を行った結果、BDR誘導はACOの発現には影響しないが、ACSの発現に影響を及ぼすことが明らかとなり、エチレン生合成前駆体が蓄積している可能性が示唆された。また、BDR誘導に機能する遺伝子を特定することを目的として、BDR誘導処理をした野生株とnpr1変異株における遺伝子発現パターンを比較するために、マイクロアレイ解析を行い、BDR誘導時に発現が誘導または抑制される遺伝子が多数見出された。ブラシノステロイドを介して誘導される病害抵抗性(BDR)の誘導機構を解析するために、シロイヌナズナの各種変異株を用いて既知の全身性抵抗性との比較を行った。サリチル酸を介して誘導される全身獲得抵抗性(SAR)およびジャスモン酸を介して誘導される抵抗性(WSR)が誘導されない変異株を用いてPseudomonas syringae pv.tomato DC3000の感染実験を行った結果、BDRの誘導には、SAR誘導に機能するNPR1タンパク質およびWSR誘導に機能するEIN2タンパク質を必要とすることが明らかとなった。しかし、SAR及びWSRの誘導に欠損を有する他の変異株を用いた解析から、BDRの誘導には、サリチル酸およびジャスモン酸のシグナルを必要としないことが示された。また、野生株においてBDRを誘導した場合に、それぞれSARおよびWSRのマーカー遺伝子であるPR-1及びPDF1.2のいずれもが誘導されなかった。これらのことから、BDRはSAR、WSRとは異なる機構により誘導される病害抵抗性であることが明らかとなった。さらに、病原菌感染後のPR-1の発現を検討した結果、BDR誘導時には病原菌に対する応答が早められるPriming効果が認められ、これがBDRの病害抵抗性機構に関与していると考えられた。また、BDR誘導に機能する遺伝子を特定することを目的として、BDR誘導処理をした野生株とnpr1変異株における遺伝子発現パターンを比較するために、マイクロアレイ解析を行った。ブラシノステロイドを介して誘導される病害抵抗性(BDR)の誘導機構を解析するために、シロイヌナズナの各種変異株を用いて既知の全身性抵抗性との比較を行った。サリチル酸を介して誘導される全身獲得抵抗性(SAR)およびジャスモン酸を介して誘導される抵抗性(WSR)が誘導されない変異株を用いてPseudomonas syringae pv.tomato DC3000の感染実験を行った結果、BDRの誘導にはSAR誘導に機能するNPR1タンパク質およびWSR誘導に機能するEIN2タンパク質を必要とし、BDRはSAR、WSRとは異なる機構により誘導される病害抵抗性であることが明らかとなった。病原菌感染後のPR-1の発現を検討した結果、BDR誘導時には病原菌に対する応答が早められるPriming効果が認められ、これがBDRの病害抵抗性機構に関与していると考えられた。Primingにはエチレンが関与していると予想し、エチレン生合成経路について解析を行った結果、BDR誘導はACOの発現には影響しないが、ACSの発現に影響を及ぼすことが明らかとなり、エチレン生合成前駆体が蓄積している可能性が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-16580034 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16580034 |
ブラシノステロイドを介して誘導される新規の全身誘導抵抗性のメカニズムに関する研究 | また、BDR誘導に機能する遺伝子を特定することを目的として、BDR誘導処理をした野生株とnpr1変異株における遺伝子発現パターンを比較するために、マイクロアレイ解析を行い、BDR誘導時に発現が誘導または抑制される遺伝子が多数見出されたが、現在のところ、これらの中でBDRに特異的に働いていると考えられる抵抗性関連遺伝子の特定には至っていない。 | KAKENHI-PROJECT-16580034 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16580034 |
イオン固定型スルホキシドによるスワン酸化反応の悪臭解決と再利用化への展開 | 新規なイオン固定型メチルスルホキシドC6及びC10を合成開発し、種々のアルコールのSwern酸化反応に適用した結果、目的のアルデヒドやケトンが、反応後の分析操作のみで高収率、高純度で得られた。これらの操作過程で、悪臭は全くしない。また、新規なイオン固定型スルフィドC6及びC10を合成開発し、種々のアルコールのCorey-Kim酸化反応に適用した結果、目的のアルデヒドやケトンが、反応後の分析操作のみで高収率、高純度で得られた。これらの操作過程で、悪臭は全くしない。イオン固定型メチルスルホキシドC6及びC10及びイオン固定型スルフィドC6及びC10は反応後に回収して再利用できることも分かった。Swern(スワン)酸化反応はアルコールの非金属系酸化反応として有機反応で最も頻繁に利用されている手法である。しかし、スワン酸化反応はジメチルスルホキシドが酸化剤として機能するため、反応後、アルデヒドやケトンに加えて、致命的悪臭を放すジメチルスルフィドを副生する。本研究では、アンモニウム基を有する新規なイオン固定型メチルスルホキシドを設計合成した。そして、スワン酸化反応で用いるジメチルスルホキシドをイオン固定型メチルスルホキシドに置き換えることにより、スワン酸化反応でアルコールからアルデヒドやケトンを得るとともに、副生するイオン固定型メチルスルフィドは塩なので気化せずに悪臭を全く生じないこと、イオン固定型メチルスルフィドは塩なので目的生成物であるアルデヒドやケトンの分離精製が容易であること、及びイオン固定型スルフィドは回収してイオン固定型メチルスルホキシドに再生し再利用できること、など種々の重要な点を確立し、国際的学術雑誌に論文として成果を発表するとともに、特許を申請した。また、Core-Kim酸化反応は、ジメチルスルフィドとNCS (N-chlorosuccinimde)を用いたアルコールの非金属系酸化反応であるが、ジメチルスルフィドの悪臭のため、殆ど研究がなされていない。そこで、イオン固定型メチスルスフィドとNCSを用いたアルコールの酸化を検討した結果、アルコールからアルデヒドやケトンを分液操作のみで容易に得るとともに、副生するイオン固定型メチルスルフィドは塩なので気化せずに悪臭を全く生じないこと、及びイオン固定型スルフィドは回収してイオン固定型メチルスルフィドとして再利用できること、など種々の重要な点を確立し、国際的学術雑誌に論文として成果を発表するとともに、特許を申請した。本研究で開発したイオン固定型メチルスルフィドは現在、薬品メーカーからの製品化にも成功した。新規なイオン固定型メチルスルホキシドC6及びC10を合成開発し、種々のアルコールのSwern酸化反応に適用した結果、目的のアルデヒドやケトンが、反応後の分析操作のみで高収率、高純度で得られた。これらの操作過程で、悪臭は全くしない。また、新規なイオン固定型スルフィドC6及びC10を合成開発し、種々のアルコールのCorey-Kim酸化反応に適用した結果、目的のアルデヒドやケトンが、反応後の分析操作のみで高収率、高純度で得られた。これらの操作過程で、悪臭は全くしない。イオン固定型メチルスルホキシドC6及びC10及びイオン固定型スルフィドC6及びC10は反応後に回収して再利用できることも分かった。Swern(スワン)酸化反応はアルコールの非金属系酸化反応として,超原子価ヨウ素(V)であるDess-Martin酸化反応と並び、有機反応で最も頻繁に利用されている手法である。しかし、スワン酸化反応はジメチルスルホキシドが酸化剤として機能するため、反応後、アルデヒドやケトンに加えて、致命的悪臭を放すジメチルスルフィドを副生する。このジメチルスルフィドの悪臭はブチルメルカプタンに匹敵する(ブチルメルカプタンは都市ガスやプロパンガス漏れの検知剤としてppmオーダーで添加され、利用されている)。本研究では、最も困難な箇所は純度の高いイオン固定型スルホキシドを如何に合成するかにあるが、合成効率の視点から、アンモニウム型を陽イオン部分とし、対アニオンはBr-とすることにより、エーテルや水に溶けにくいイオン固定型スルホキシドの性質を有すると判断し、新規なイオン固定型スルホキシドを設計合成した。そして、スワン酸化反応で用いるジメチルスルホキシドをイオン固定型スルホキシドに置き換えることにより、スワン酸化反応でアルコールからアルデヒドやケトンを得るとともに、副生するイオン固定型スルフィドは塩なので気化せずに悪臭を全く生じないこと、イオン固定型スルフィドは塩なので目的生成物であるアルデヒドやケトンの分離精製が容易であること、及びイオン固定型スルフィドは回収してイオン固定型スルホキシドに再生再利用できること、など種々の重要な点をほぼ解決して確立し、国際的学術雑誌に論文として成果を発表するとともに、特許を申請した。さらには、このイオン固定型スルホキシドの有機合成化学的用途を展開、確立し、現在、薬品メーカーから本研究で開発したイオン固定型スルホキシドの製品化を進めている。新規なイオン固定型スルホキシドを設計、合成開発し、種々のアルコールの環境調和型スワン酸化反応に展開し、その有効性と汎用性を確立し、再生再利用を確立した。これらの成果は国際的学術雑誌に論文として発表するとともに、特許を申請した。さらには,本研究で開発したイオン固定型スルホキシドを薬品メーカーからの製品化にも繋げることができたことから、当初の目標を充分に達成している。 | KAKENHI-PROJECT-23655142 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23655142 |
イオン固定型スルホキシドによるスワン酸化反応の悪臭解決と再利用化への展開 | 今後は、合成が容易で、安価なコストで商品化も容易なイオン固定型スルフィドを開発し、Corey-Kim酸化反応試剤として種々のアルコールの環境調和型酸化反応に展開し、その有効性と汎用性を確立し、再生再利用を確立する。これらの成果は国際的学術雑誌に論文として発表するとともに、特許を申請する。さらには,本研究で開発した新規のイオン固定型スルフィドを薬品メーカーからの製品化にも繋げる。新規なイオン固定型スルフィドの合成開発と環境調和型酸化剤としての汎用性の確立には消耗費として試薬、溶媒、及びガラス器具類の補充が必要である。また、合成した化学物質の構造解析等の分析に、千葉大学の分析センターに設置されている核磁気共鳴装置、質量分析装置、元素分析装置、及びX線結晶構造解析装置などによる分析料金が必要である。 | KAKENHI-PROJECT-23655142 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23655142 |
^<31>P-MRSと低酸素細胞イメージングによる腫瘍内再酸素化機構の解析 | 腫瘍の低酸素状態は,放射線抵抗性を誘導するばかりでなく,腫瘍自体の転移や浸潤といった悪性化を引き起こすとされている.腫瘍内の低酸素状態を非侵襲的に評価することにより,癌治療の個別化を図れる可能性が広がる.(1)実験腫瘍を用いて低酸素分画の定量化を種々の方法で試みた.まず始めに,酸素濃度測定用電極を腫瘍内に刺入して実際の酸素濃度を測定した結果,大きな腫瘍では,腫瘍内酸素濃度は有意に低下していた.^<31>P-MRSによる腫瘍内の高エネルギー燐酸代謝は,腫瘍内低酸素状態を間接的に反映するとされている.この方法は感度が高いが,小さな腫瘍では正常組織の信号が混入するためばらつきが大きく,また1g以上の大きな腫瘍では無機燐の信号が大きくなるため詳細なエネルギー代謝の評価は困難であった.次に低酸素細胞マーカーであるβ-D-IAZGPの投与により低酸素細胞分画の評価を行った.シンチグラムを撮像した結果,24時間後に腫瘍に特異的な集積が認められた.腫瘍内の低酸素細胞マーカーの取り込みは血液の約8倍を示し,他臓器に比べ中枢神経への分布が有意に低かった.種々の大きさの腫瘍で,薬剤の取り込みについて見ると,大きな腫瘍は低酸素細胞マーカーの取り込みが有意に高かった.担癌マウスの腫瘍組織に放射線照射を行い,in vitroで放射線感受性を評価した結果,大きな腫瘍は低酸素細胞分画を多く含み,放射線抵抗性であることが明らかとなった.(2)低酸素状態と腫瘍の悪性度との関連を明らかにするために,皿期子宮頸部扁平上皮癌の生検組織を用いて,HIF-1αの発現と放射線治療効果について検討した.5年非再発生存率は,HIF-1陽性群で41.2%,陰性群で75.6%であり,有意な差が認められた.特に遠隔転移率において,強い相関が認められ,HIF-1の発現がIII期子宮頸癌の悪性度と相関があることが明らかとなった.腫瘍の低酸素状態は,放射線抵抗性を誘導するばかりでなく,腫瘍自体の転移や浸潤といった悪性化を引き起こすとされている.腫瘍内の低酸素状態を非侵襲的に評価することにより,癌治療の個別化を図れる可能性が広がる.(1)実験腫瘍を用いて低酸素分画の定量化を種々の方法で試みた.まず始めに,酸素濃度測定用電極を腫瘍内に刺入して実際の酸素濃度を測定した結果,大きな腫瘍では,腫瘍内酸素濃度は有意に低下していた.^<31>P-MRSによる腫瘍内の高エネルギー燐酸代謝は,腫瘍内低酸素状態を間接的に反映するとされている.この方法は感度が高いが,小さな腫瘍では正常組織の信号が混入するためばらつきが大きく,また1g以上の大きな腫瘍では無機燐の信号が大きくなるため詳細なエネルギー代謝の評価は困難であった.次に低酸素細胞マーカーであるβ-D-IAZGPの投与により低酸素細胞分画の評価を行った.シンチグラムを撮像した結果,24時間後に腫瘍に特異的な集積が認められた.腫瘍内の低酸素細胞マーカーの取り込みは血液の約8倍を示し,他臓器に比べ中枢神経への分布が有意に低かった.種々の大きさの腫瘍で,薬剤の取り込みについて見ると,大きな腫瘍は低酸素細胞マーカーの取り込みが有意に高かった.担癌マウスの腫瘍組織に放射線照射を行い,in vitroで放射線感受性を評価した結果,大きな腫瘍は低酸素細胞分画を多く含み,放射線抵抗性であることが明らかとなった.(2)低酸素状態と腫瘍の悪性度との関連を明らかにするために,皿期子宮頸部扁平上皮癌の生検組織を用いて,HIF-1αの発現と放射線治療効果について検討した.5年非再発生存率は,HIF-1陽性群で41.2%,陰性群で75.6%であり,有意な差が認められた.特に遠隔転移率において,強い相関が認められ,HIF-1の発現がIII期子宮頸癌の悪性度と相関があることが明らかとなった.腫瘍の酸素状態を非侵襲的に測定できれば,放射線治療や化学療法といった治療法の選択だけでなく,その最適な投与量や投与間隔を予測する事が可能である.すなわち治療後の組織の再構築や個々の腫瘍細胞の再酸素化を指標とした腫瘍の個別化が可能と考えられ,最も効果的な抗腫瘍効果を得る治療法を選択できる可能性がある.近年,第2,3世代の低酸素細胞マーカーが開発され,生体内の低酸素細胞を非侵襲的に画像化し,定量することが可能となりつつある. | KAKENHI-PROJECT-13670918 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13670918 |
^<31>P-MRSと低酸素細胞イメージングによる腫瘍内再酸素化機構の解析 | 本研究では,これまでの^<31>P-MRSやMRIによるperfusion imageにくわえて,低酸素細胞マーカーによる低酸素細胞イメージングを用いて腫瘍の酸素状態を推定し,腫瘍の再酸素化を指標として生物学的に最適な放射線治療法について模索することを目的とした.マウス移植腫瘍を用いて,種々の低酸素測定法から得られたデータと腫瘍重量との関係を検討した.またそれぞれの方法で定量した値から,推定される放射線感受性について相関関係を算出した.新規低酸素細胞マーカーであるβ-D-IAZGPは血液中の濃度よりも約8倍のマーカーの集積を認め,正常臓器よりも有意な集積が認められた.また腫瘍重量が増加するほどマーカーは良好に集積する傾向が認められた.^<31>P-MRSによるβ-ATP/Pi及びPCr/Piは腫瘍重量が増加するほど低値を示した.またin vivo vitro assayでは腫瘍重量が増加すると放射線抵抗性が誘導されることが明らかとなった.また低酸素細胞マーカーにより放射線照射後の再酸素化を非侵襲的にとらえられる可能性が示唆され,今後の研究課題と考えられた.腫瘍の低酸素状態は,放射線抵抗性を誘導するばかりでなく,腫瘍自体の転移や浸潤といった悪性化を引き起こすとされている.腫瘍内の低酸素状態を非侵襲的に評価することにより,癌治療の個別化を図れる可能性が広がる.このため,実験腫瘍を用いて低酸素分画の定量化を種々の方法で試みた.まず始めに,酸素濃度測定用電極を腫瘍内に刺入して実際の酸素濃度を測定した結果,大きな腫瘍では,腫瘍内酸素濃度は有意に低下していた.^<31>P-MRSによる腫瘍内の高エネルギー燐酸代謝は,腫瘍内低酸素状態を間接的に反映するとされている.この方法は感度が高いが,小さな腫瘍では正常組織の信号が混入するためばらつきが大きく,また1g以上の大きな腫瘍では無機燐の信号が大きくなるため詳細なエネルギー代謝の評価は困難であった.次に低酸素細胞マーカーであるβ-D-IAZGPの投与により低酸素細胞分画の評価を行った.シンチグラムを撮像した結果,24時間後に腫瘍に特異的な集積が認められた.腫瘍内の低酸素細胞マーカーの取り込みは血液の約8倍を示し,他臓器に比べ中枢神経への分布が有意に低かった.種々の大きさの腫瘍で,薬剤の取り込みについて見ると,大きな腫瘍は低酸素細胞マーカーの取り込みが有意に高かった.担癌マウスの腫瘍組織に放射線照射を行い,in vitroで放射線感受性を評価した結果,大きな腫瘍は低酸素細胞分画を多く含み,放射線抵抗性であることが明らかとなった.低酸素状態と腫瘍の悪性度との関連を明らかにするために,III期子宮頸部扁平上皮癌の生検組織を用いて,HIF-1αの発現と放射線治療効果について検討した.5年非再発生存率は,HIF-1陽性群で41.2%,陰性群で75.6%であり,有意な差が認められた.特に遠隔転移率において,強い相関が認められ,HIF-1の発現がIII期子宮頸癌の悪性度と相関があることが明らかとなった. | KAKENHI-PROJECT-13670918 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13670918 |
脳刺激報酬に関与する神経基質ー脳内微小透析法による神経化学的研究ー | 脳内自己刺激現象の発現と維持に関わる神経伝達物質機序の解明を試みた。脳刺激報酬に関与する神経伝達物質の候補としてはド-パミンが最もよく知られている。そこで,まずラットが自己刺激行動を行っている時のド-パミンの変化を脳微小透析法を用いて検索した。自己刺激部位は内側前脳束,透析部位は側坐核とした。ド-パミンとその代謝物質(DOPACとHVA)の細胞外濃度の変化は,自己刺激行動を遂行する前1時間,遂行中1時間および遂行後2時間の計4時間に亘って観察した。その結果,自己刺激行動に伴って側坐核ではド-パミン,DOPACそしてHVAの時間順序で各々が最大40ー60%増加した。さらに,ド-パミンは取り込み阻害剤(Nomifensine)あるいはモノアミン酸化酵素阻害剤(Clorgyline)の前処置によってより著明な増加パタ-ンを示した。なお,パソコンに記憶しておいた自己刺激反応パタ-ンを用いて,同じラットの同じ部位を強制的に刺激した場合にも,自己刺激学習を自発的に行った場合と類似したド-パミンの増加パタ-ンが認められた。以上の結果から,内側前脳束の自己刺激行動に伴って,側坐核ド-パミンニュ-ロンの終末では遊離,再取り込みの増加およびニュ-ロン内代謝の亢進が生ずることが示唆された。つぎに,このような自己刺激行動に伴うド-パミンニュ-ロン活動の部位差について検索した。その結果,側坐核と前頭葉内側部のド-パミンは自己刺激に伴って同様の増加パタ-ンを示したが,線条体のド-パミンの増加はこれらの領域と比べると有意に低いことが示された。したがって,自己刺激行動に伴って中脳ー前頭葉ー辺縁ド-パミンシステムが選択的に賦活化されることが示唆された。最後に,オピオイドアゴニスト投与実験から,オピオイド物質は中脳ー辺縁ド-パミンニュ-ロンに対してその起始部(腹側被蓋野)と終末部(側坐核)において異なる修飾作用を有する可能性が示唆された。脳内自己刺激現象の発現と維持に関わる神経伝達物質機序の解明を試みた。脳刺激報酬に関与する神経伝達物質の候補としてはド-パミンが最もよく知られている。そこで,まずラットが自己刺激行動を行っている時のド-パミンの変化を脳微小透析法を用いて検索した。自己刺激部位は内側前脳束,透析部位は側坐核とした。ド-パミンとその代謝物質(DOPACとHVA)の細胞外濃度の変化は,自己刺激行動を遂行する前1時間,遂行中1時間および遂行後2時間の計4時間に亘って観察した。その結果,自己刺激行動に伴って側坐核ではド-パミン,DOPACそしてHVAの時間順序で各々が最大40ー60%増加した。さらに,ド-パミンは取り込み阻害剤(Nomifensine)あるいはモノアミン酸化酵素阻害剤(Clorgyline)の前処置によってより著明な増加パタ-ンを示した。なお,パソコンに記憶しておいた自己刺激反応パタ-ンを用いて,同じラットの同じ部位を強制的に刺激した場合にも,自己刺激学習を自発的に行った場合と類似したド-パミンの増加パタ-ンが認められた。以上の結果から,内側前脳束の自己刺激行動に伴って,側坐核ド-パミンニュ-ロンの終末では遊離,再取り込みの増加およびニュ-ロン内代謝の亢進が生ずることが示唆された。つぎに,このような自己刺激行動に伴うド-パミンニュ-ロン活動の部位差について検索した。その結果,側坐核と前頭葉内側部のド-パミンは自己刺激に伴って同様の増加パタ-ンを示したが,線条体のド-パミンの増加はこれらの領域と比べると有意に低いことが示された。したがって,自己刺激行動に伴って中脳ー前頭葉ー辺縁ド-パミンシステムが選択的に賦活化されることが示唆された。最後に,オピオイドアゴニスト投与実験から,オピオイド物質は中脳ー辺縁ド-パミンニュ-ロンに対してその起始部(腹側被蓋野)と終末部(側坐核)において異なる修飾作用を有する可能性が示唆された。本年度の研究計画は、(1)オピオイド物質の高感度検出システムの確立と(2)予備実験としてコントロ-ル(脳内自己刺激を行わない)条件下でのド-パミン系とオピエ-ト系との相互作用の有無についての基礎デ-タを収集することであった。このうち,(1)については,バイオプテリン検出用に開発した杉本ら(T.Sugimoto et al,Anal.Biochemy1990,印刷中)の酵素免疫測定法を応用してメチオニンエンケファリンに関する簡便かつ高感度な分析システムを確立するための予備実験を行った。しかし,現段階では,われわれの酵素免疫測定法による最小検出感度は100pgのオ-ダ-に留っている。オピオイド物質(エンケファリン)の細胞外濃度の基礎値は,12pg/sample(線条体;N.T.Maidment et al,Neuroscience,33:549ー557,1989)から1525pg/sample(視床下部;K.M.Kendrick,J.Neurosci Methy34:35ー46,1990)である。したがって,この数pgから数10pgの基礎値を安定して検出するためには,われわれの測定システムの最小検出感度はさらに10倍以上改善される必要があろう。 | KAKENHI-PROJECT-02454491 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02454491 |
脳刺激報酬に関与する神経基質ー脳内微小透析法による神経化学的研究ー | 最近,小崎ら(Y.Kozaki and T.Kumazawa,Env.Med.,34:101ー104,1990)は、酵素免疫測定法を用いたメチオニンエンケァリンの検出感度は0.5pgまで上げることが可能であることを報告している。したがって,より精製された抗体と超高感度発色液の使用などによって,われわれのエンケファリン測定システムの高感度化は十分期待できる。(2)については,予備的な研究で,オピオイドアゴニストの未梢投与によってラット側坐核ド-パミンの細胞外濃度が増加することを確かめた。オピオイドアンタゴニストのド-パミンに対する解果は現在検討中である。脳内自己刺激現象におけるド-パミンとオピオイド物質(エンケファリン)の相互作用について,脳内微小透析法を用いて検索した。実験にはラットを用いた。自己刺激部位は内側前脳束,脳透析部位は側坐核とした。透析液サンプルは,自己刺激行動を遂行する前1時間,遂行中1時間,遂行後2時間の合計4時間に亘って採取した。採取したサンプル中のド-パミンについてはHPLCーECD法,またエンケファリンについては酵素免疫測定法を用いて分析した。その結果,側坐核ド-パミンの細胞外濃度は自己刺激行動に伴って基礎値(遂行前の値)から有意な増大を示し,すでに報告した我々のデ-タと一致していた。しかしながら,側坐核エンケファリンの細胞外濃度値は自己刺激行動遂行前,中,後のいずれにおいても今回用いた酵素免疫測定法では検出不可能であった。そこで,つぎに自己刺激行動に対して促進作用を有することが知られているオピオイドアゴンスト(DAMHG,μーレセプタ-アゴニス)の中脳一辺縁ド-パミンシステムにおよぼす効果について検索した。中脳一辺縁ド-パミンシステムの起始核のある中脳腹側被蓋野とその投射野である側坐核の両部位に脳透析用プロ-ブを植え込んだ。オピエイトアゴニストは透析プロ-ブを通して局所的に投与した。その結果,側坐核ド-パミンの細胞外濃度は腹側被蓋野と側坐核の両投与によっていずれも増加した。しかしながら,ド-パミン代謝物質(DOPACとHVA)は腹側被蓋野の投与により増加,いっぽう側坐核の投与により減少した。以上から,オピオイド物質は中脳一辺縁ド-パミンニュ-ロンに対して,その起始部(中脳腹側被蓋野)と終末部(側坐核)において異なる修飾作用を有することが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-02454491 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02454491 |
大腸菌染色体複製の開始制御の分子機構:開始因子DnaAタンパク質の機能制御機構 | 本研究は、大腸菌における染色体複製の制御機構の解明をめざし、複製開始タンパク質DnaAの活性制御因子を探索し同定することが目的であった。目的とした因子はDnaAタンパク質を特異的に認識して不活性化するタンパク性因子であり、研究代表者が独自に見いだしたものである(Katayama、T.、and Crooke、E.(1995)J.Biol.Chem.270、9265-9271)。この因子によって不活性化されたDnaAタンパク質は、ミニ染色体の試験管内複製反応に対する活性を失っている。目的の因子を精製して同定するため、まず大腸菌の大量培養を行った。次に、DnaAタンパク質の不活性化を指標に、種々の分画法を試みた。最終的に分画に用いた手法は、1.硫安沈殿、2.DE52(Whatman)、3.ヒドロキシアパタイト、4.FPLC mono-Q、5.FPLC superdex200、6.FPLC mono-Pであった。最終分画の段階において、DnaAタンパク質の不活性化と挙動を共にするタンパク性因子を認めることができた。この因子の実体を明らかにするため、自動エドマン分解法によるアミノ酸配列決定を行ったところ、N-末端3残基を明らかにすることができた。現在、さらに多くのアミノ酸配列を知るため、大量精製を行っている。また、本研究を滞りなく進行させるためには、DnaAタンパク質の安定供給体制の確立も重要であった。かつてはDnaAタンパク質は精製が難しくため収量が低く、これが生化学的研究の足かせとなっていた。研究代表者はまず、DnaAタンパク質の大量発現系に根本的な改良を加え、菌体全タンパク質の約15%までDnaAタンパク質が蓄積する系を新たに確立した。さらに精製法にも改良工夫を加え、50gの菌体から10mgのDnaAタンパク質を精製できる実験系を見いだした(未発表)。本研究は、大腸菌における染色体複製の制御機構の解明をめざし、複製開始タンパク質DnaAの活性制御因子を探索し同定することが目的であった。目的とした因子はDnaAタンパク質を特異的に認識して不活性化するタンパク性因子であり、研究代表者が独自に見いだしたものである(Katayama、T.、and Crooke、E.(1995)J.Biol.Chem.270、9265-9271)。この因子によって不活性化されたDnaAタンパク質は、ミニ染色体の試験管内複製反応に対する活性を失っている。目的の因子を精製して同定するため、まず大腸菌の大量培養を行った。次に、DnaAタンパク質の不活性化を指標に、種々の分画法を試みた。最終的に分画に用いた手法は、1.硫安沈殿、2.DE52(Whatman)、3.ヒドロキシアパタイト、4.FPLC mono-Q、5.FPLC superdex200、6.FPLC mono-Pであった。最終分画の段階において、DnaAタンパク質の不活性化と挙動を共にするタンパク性因子を認めることができた。この因子の実体を明らかにするため、自動エドマン分解法によるアミノ酸配列決定を行ったところ、N-末端3残基を明らかにすることができた。現在、さらに多くのアミノ酸配列を知るため、大量精製を行っている。また、本研究を滞りなく進行させるためには、DnaAタンパク質の安定供給体制の確立も重要であった。かつてはDnaAタンパク質は精製が難しくため収量が低く、これが生化学的研究の足かせとなっていた。研究代表者はまず、DnaAタンパク質の大量発現系に根本的な改良を加え、菌体全タンパク質の約15%までDnaAタンパク質が蓄積する系を新たに確立した。さらに精製法にも改良工夫を加え、50gの菌体から10mgのDnaAタンパク質を精製できる実験系を見いだした(未発表)。 | KAKENHI-PROJECT-07780603 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07780603 |
脊随損傷患者の血圧調節失調を克服するためのバイオニック血圧制御システムの開発 | 脊髄損傷(特に頚髄損傷)患者は交感神経の切断により重篤な体位性低血圧に苛まれる。本研究は交感神経の活動を電子的な血管運動中枢で制御(バイオニック血圧制御)することにより、脊髄損傷患者の血圧を安定化させる基盤技術を開発することを目的とする。脊髄損傷患者では皮膚の電気刺激で交感神経が活性化され血圧が上昇する。そこで我々はこの皮膚刺激による血圧応答をアクチュエーターとして利用し、血圧を負帰還情報とするバイオニック血圧制御システムを試作した。バイオニック血圧制御システムは脊髄損傷患者の体位性低血圧を完全に予防することが示された。脊髄(頚髄)損傷患者の重篤な体位性低血圧を克服する低侵襲なバイオニック血圧制御システムの基盤技術の開発を目的にする。申請者は、すでに動物モデルにおける体位性低血圧を防ぐバイオニック血圧制御システムの開発に成功している。しかしながら、このシステムでは腹腔神経叢あるいは脊髄に直接電極を装着し、交換神経を刺激することで血圧制御をおこなった。自律神経は体性入力でも修飾されることが知られていることから、本研究では皮膚刺激をアクチュエーターにした低侵襲なバイオニック血圧制御システムを構築する基盤技術を開発する。脊髄損傷(特に頚髄損傷)患者は交感神経の切断により重篤な体位性低血圧に苛まれる。本研究は交感神経の活動を電子的な血管運動中枢で制御(バイオニック血圧制御)することにより、脊髄損傷患者の血圧を安定化させる基盤技術を開発することを目的とする。脊髄損傷患者では皮膚の電気刺激で交感神経が活性化され血圧が上昇する。そこで我々はこの皮膚刺激による血圧応答をアクチュエーターとして利用し、血圧を負帰還情報とするバイオニック血圧制御システムを試作した。バイオニック血圧制御システムは脊髄損傷患者の体位性低血圧を完全に予防することが示された。【目的】本研究は脊髄損傷患者の重篤な起立性低血圧を克服するバイオニック血圧制御システムの基盤技術の開発を目的とする。申請者は、血圧情報に基づき交感神経を電気刺激することで起立性低血圧を防ぐバイオニック血圧制御システムの開発に成功している。このシステムでは動物実験であったため腹腔神経叢を刺激することで交感神経を刺激した。しかしながら腹腔神経叢は後腹膜に位置するため、臨床的には電極の装着が容易でない。そこで本研究では臨床的に比較的容易かつ低侵襲に交感神経刺激が行える可能性のある体性入力による圧制御を検討した。【結果】動物実験において、皮膚の電気刺激で交感神経活動や血圧変動が誘発できるかどうか検討した。その結果、刺激周波数、電流、パルス幅等を適切に設定することで、安定した交感神経活動の抑制が得られることが明らかなった。九州大学医学研究院倫理委員会の承認を得て、脊損患者の体性入力(電気刺激)に対する血圧変動を計測し、血圧制御に有効な部位、その大きさ、刺激電極の配置、刺激電流の条件(パルス幅、電流値、周波数)を既存の神経刺激装置を用いて求めた。動物実験と同様にエスケープ現象が観察されたため、持続刺激から間欠刺激に変更することで、長時間の安定した血圧応答が得られるようになった。これらの実験で得られた刺激条件を基に、臨床における圧制御に特化した刺激装置の仕様を決定し装置の設計を行った。次年度はこの装置を試作するとともに、この装置を用いた実用性の高い圧制御の実験を行う予定である。【目的】申請者は血圧情報に基づき交感神経を電気刺激することで起立性低血圧を防ぐバイオニック血圧制御システムの開発に成功している。本研究はその基盤技術を利用し脊髄損傷患者(主として頸髄損傷患者)の重篤な起立性低血圧を克服する、バイオニック血圧制御システムの基盤技術の開発を目的とする。【進捗概要】動物実験で成功しているバイオニック血圧制御システムは後腹膜の腹腔神経神叢あるいは脊髄を直接電気刺激することで血圧を制御した。しかしながら、臨床応用のためには体表の刺激で血圧制御できることが望ましい。そのため、初年次には経皮的な電気刺激による血圧制御法を開発するとともに、そのために特化した経皮的電気刺激システムの設計を行った。2年次はこの経皮的電気刺激システムを試作し、電流波形、電流幅、周波数、簡潔刺激条件、刺激部位等の臨床的に重要な刺激条件について、九州大学医学研究院倫理審査委員会の承認をうけて実際の患者で、その最適化を試みた。その結果、適切な刺激条件や部位を用いることで経費的なバイオニック血圧制御システムで、起立性低血圧を10分程度は完全に防ぐことが可能になった。しかしながら、経皮的な電気刺激が血圧を増加させる機序が必ずも明快ではなく、さらなる最適化の可能性を残している。そこで3年次以降は一層の長時間の安定した血圧制御を行うための刺激条件の最適化、および負帰還をかけるための血圧測定法の開発を行い、最終年度の実用化を目指す。【目的】申請者は血圧情報で負帰還をかけて交感神経を電気刺激することで低血圧を防ぐ、バイオニック血圧制御システムの基盤技術開発に成功している。本研究はその基盤技術を利用し脊髄損傷患者(主として頸髄損傷患者)の生活の質と生命予後を著しく悪化させている起立性(体位性)低血圧を克服するバイオニック血圧制御システムの開発を目的とする。【進捗概要】動物実験で成功しているバイオニック血圧制御システムは腹腔神経神叢あるいは脊髄を負帰還電気刺激することで血圧を制御した。しかしながら、臨床応用のためにはできるだけ侵襲を少なくして自律神経を刺激し、血圧を制御することが望ましい。 | KAKENHI-PROJECT-18100006 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18100006 |
脊随損傷患者の血圧調節失調を克服するためのバイオニック血圧制御システムの開発 | そのため、初年-2年次は体表を電気刺激することで脊髄反射を介して交感神経を刺激し、血圧を変動させることができることを明らかにした。3年次は、刺激部位、刺激電極の大きさ、刺激電流波形、電流幅、周波数等の刺激条件について動物実験を行った。さらに九州大学医学研究院倫理審査委員会の承認をうけて脊髄損傷患者で、その応用を試みた。その結果、適切な刺激条件や部位を用いることで経皮的なバイオニック血圧制御システムで、起立性低血圧を防ぐことができることが明らかになった。しかしながら、実用化には30-60分程度の安定した血圧制御が必要であり、そのためにはさらなる刺激部位や刺激条件の最適化が必要である。今後は長時間の安定した血圧制御を行うための刺激条件の最適化、および負帰還をかけるための血圧測定法の開発を行い、最終年度の実用化を目指す。これらの開発実績により先端医療開発特区(スーパー特区)(平成20-24年、代表:砂川賢二)に選定された。【背景・目的】頚髄損傷患者は交感神経遠心路の障害により、深刻な体位性低血圧に苛まれる。そのため受動的な頭位の挙上も低血圧のため制限されQOLは劣悪である。申請者は自律神経系に工学的な手法で介入し、制御理論を駆使して循環を制御するバイオニック心臓病学の基礎研究で多くの実績をあげてきた。本研究は従来の研究成果を元に、頚髄損傷患者の体位性低血圧を非侵襲的に防止するバイオニック血圧制御システムの開発を目指す。【進捗状況】動物実験では瞬時血圧を負帰還しながら交感神経を腹腔神経叢あるいは脊髄硬膜外電極で刺激することで、血圧を制御することができることを示してきた。しかしながら、臨床応用には、さらなる低侵襲化が必須である。そのため、平成18-19年度は体性入力を利用した皮膚の電気刺激による脊髄反射を介した交感神経の活性化制御の可能性を検討した。その結果、非侵襲な皮膚の電気刺激で血圧を変えることができることが明らかになった。平成20-21年度は皮膚の刺激部位、刺激電流の大きさ、周波数、刺激電極の大きさ等について系統的に検索した。その結果、下腹部を中心に最大応答が得られることが明らかになった(知財国際出願)。さらに血圧応答の動的な特性も明らかになり、バイオニック血圧制御に不可欠な生体応答のモデル化ができた。そのモデルをもとに実用機の一次プロトタイプを試作した。プロトタイプを用いた臨床試験により、頚髄損傷患者の頭位を挙上させて誘発される体位性低血圧を当該システムで防ぐことができることが明らかになった。この実績により当該事業は先端医療開発特区(平成20-24年度)に選定された。最終年度は長時間の安定した動作、システムの安全性等、実用化に必要な更なる開発を行う予定である。【背景・目的】頚髄損傷患者は交感神経遠心路の障害により、深刻な体位性低血圧に苛まれる。そのため受動的な頭位の挙上も低血圧のため制限されQOLは劣悪である。申請者は自律神経系に工学的な手法で介入し、制御理論を駆使して循環を制御するバイオニック心臓病学の基礎研究で多くの実績をあげてきた。 | KAKENHI-PROJECT-18100006 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18100006 |
膜輸送体の作動機構の構造基盤の解明 | イオンチャネルに関しては,新規に同定したMg2+チャネルMgtE,TRICチャネル,P2Xチャネルに関して高分解能の結晶構造に基づき,基質認識機構,輸送制御機構を解明した.トランスポーターに関しては,Ca2+/H+交換輸送体CAX,Fe2+排出輸送体FPN,糖の排出輸送体SWEET,ペプチド輸送体POT,アミノ酸排出輸送体YddG,多剤排出輸送体MATE,膜蛋白質の膜組み込みに働くYidCの高分解能構造を決定し,基質認識機構,輸送機構を解明した.また,チャネルロドプシン,光駆動型Na+ポンプKR2の高分解能構造を決定し,光による輸送駆動機構を解明した.Mg2+チャネルMgtEの膜貫通ドメインのみを2.4Å分解能で構造決定し、イオン透過孔中でMg2+は完全6水和状態で認識・結合していることを明らかにした。また、Ca2+カチオン交換体CaCAの結晶構造を2.3Å分解能で決定し、カチオン結合に依存した外向き開口構造・内向き開口構造の変換が起こる動的メカニズムを明らかにした。多剤排出輸送体MATEのアポ構造(中性条件下および酸性条件下)を2形、抗生薬剤ノルフロキサシンとの複合体、特異的阻害性環状ペプチド3種との複合体の結晶構造を最高2.1Åという高分解能で決定し、H+の結合に依存した薬剤の排出機構を解明するとともに、ペプチド創薬の道を開いた。ジペプチド輸送体POTの構造を1.9Å、ジペプチドアナログであるアラフォスファリンとの複合体構造を2.5Åという高分解能で解明し、H+の結合に依存したペプチド取り込み機構を明らかにした。膜タンパク質の膜組み込みに働くYidCの結晶構造を2.4Åで決定することに成功し、1回膜貫通タンパク質の膜組み込み機構を解明した。<Ca2+/H+トランスポーターCAX>Ca2+/カチオン交換輸送体(CaCA)の機能不全は,ヒトにおいて高血圧を惹起する.我々は, Ca2+/H+交換輸送体CAXの結晶構造を2.3Å分解能で決定した結果,コアドメインとゲーティングバンドルから構成されることが明らかになった(Science, 2013).既に発表されているCa2+/Na+交換輸送体の構造が細胞外開構造であったのに対し,本構造は細胞内開構造であった.2つの構造の比較から,CaCAは,ゲーティングバンドルがコアの上の疎水性パッチ上を滑ることにより,ゲーティングへリックスが半回転し,その上の親水性クラスターが,細胞外側の透過孔を向いたり,細胞内の透過孔を向くことを繰り返すことで,細胞外開構造と細胞内開構造の間を構造変化することを明らかにした.さらに,ゲーティングバンドルが滑るための疎水性パッチは,H+やCa2+の結合に依存して形成されることが明らかとなり,陽イオン依存的な構造変換の機構を解明した.<ペプチドトランスポーターPOT>POT (Proton-dependent oligopeptidetransporter)はプロトンの濃度勾配を利用してオリゴペプチドを細胞内に取り込む輸送体である.ヒトのホモログPepT1, 2は,小腸の絨毛細胞において,本来の基質であるペプチドの取り込み以外に,経口摂取した薬剤の血流への取り込みにも働いている.また,POTはMFS(Major Facilitator Superfamily)に属する輸送体であり,内向き開口状態,閉状態,外向き開口状態の3つの構造を繰り返して輸送を行なうことが報告されている.我々は,細菌由来POTに関して,内向き開口状態の構造を1.9Å分解能で解明し,MDシミュレーションと組み合わせることで,アスパラギン酸残基のプロトン化に伴ってジペプチドが結合することで,内腔表面の電荷分布が変化し,内向き開口状態から閉状態に移行する機構を示唆することに成功した(PNAS, 2013).<Ca2+/H+トランスポーターCAX> Ca2+/カチオン交換輸送体(CaCA)の機能不全は,ヒトにおいて高血圧を惹起する.我々は, Ca2+/H+交換輸送体CAXの結晶構造を2.3Å分解能で決定した結果,コアドメインとゲーティングバンドルから構成されることが明らかになった(Science, 2013).既に発表されているCa2+/Na+交換輸送体の構造が細胞外開構造であったのに対し,本構造は細胞内開構造であった.2つの構造の比較から,CaCAは,ゲーティングバンドルがコアの上の疎水性パッチ上を滑ることにより,ゲーティングへリックスが半回転し,その上の親水性クラスターが,細胞外側の透過孔を向いたり,細胞内の透過孔を向くことを繰り返すことで,細胞外開構造と細胞内開構造の間を構造変化することを明らかにした.さらに,ゲーティングバンドルが滑るための疎水性パッチは,H+やCa2+の結合に依存して形成されることが明らかとなり,陽イオン依存的な構造変換の機構を解明した.<YidC>我々はさらに,低分子だけでなく蛋白質の膜輸送を行う輸送体の構造機能研究を発展させてきた.その最後の役者として,膜タンパク質を膜に組み込む膜タンパク質YidCの結晶構造を2.4Å分解能で決定した(Nature, 2014).その結果、脂質内部に開いた親水性の凹みが存在し、その中のアルギニン残基が基質膜蛋白質の細胞外ループ上の負電荷を脂質中で強く引きつける結果、膜組み込みが惹起されるモデルを提唱することに成功した。<鉄排出輸送体 | KAKENHI-PROJECT-24227004 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24227004 |
膜輸送体の作動機構の構造基盤の解明 | >フェロポーチンは細胞外へのFe2+の排出に働き、マクロファージや脾臓細胞が赤血球を分解して生成したFe2+を血中へと還元し、鉄イオンのリサイクルに働く。ペプチドホルモンであるヘプシジンにより機能が制御される。慢性炎症ではヘプシジンの発現が亢進するため、フェロポーチンの働きが抑制され、血中の鉄イオン濃度が下がって、慢性炎症性貧血が引き起こされる。本研究では、フェロポーチンの原核生物ホモログBbFPNの結晶構造を、細胞外開構造と細胞内開構造の両方で解明し、鉄イオンの認識機構、輸送機構、さらにヘプシジンが細胞外開構造を固定することでフェロポーチンの働きを抑制するモデルを提唱した(Nat.Commun., 2015)。<ATP-gated ion channel P2X>P2Xは細胞外のATPが結合するとイオン透過孔が開き、Ca2+を初めとするカチオンを透過するチャネルで、慢性炎症と深く関係する。本研究では、アメーバ由来のP2Xの結晶構造を決定し、脱感作状態の立体構造を初めて明らかにした。さらに、Zn2+でチャネルの機能が抑制される分子機構を初めて解明した(Cell Rep., 2016)。<アミノ酸排出輸送体YddG>細胞内に過剰に存在するアミノ酸は、細胞に取って害となるため、これを排出する輸送体の存在が報告されていた。本研究では、そのアミノ酸排出輸送体YddGがVal, Thr, Glu, Lysと様々なアミノ酸を排出することを、メタボローム解析とリポソームアッセイにより検証し、その結晶構造を2.6A分解能で決定した。YddGはDMT superfamilyに属し、その構造は10本の膜貫通ヘリックスが入れ子に組合わさった、新規構造であった。さらに、基質認識機構、輸送機構を解明し、DMT輸送体の分子進化機構も提唱した(Nature,2016)。イオンチャネルに関しては,新規に同定したMg2+チャネルMgtE,TRICチャネル,P2Xチャネルに関して高分解能の結晶構造に基づき,基質認識機構,輸送制御機構を解明した.トランスポーターに関しては,Ca2+/H+交換輸送体CAX,Fe2+排出輸送体FPN,糖の排出輸送体SWEET,ペプチド輸送体POT,アミノ酸排出輸送体YddG,多剤排出輸送体MATE,膜蛋白質の膜組み込みに働くYidCの高分解能構造を決定し,基質認識機構,輸送機構を解明した.また,チャネルロドプシン,光駆動型Na+ポンプKR2の高分解能構造を決定し,光による輸送駆動機構を解明した.我々は, Ca2+/H+交換輸送体の結晶構造を2.3Å分解能で決定した結果,コアドメインとゲーティングバンドルから構成されることが明らかになった(Science, 2013).Ca2+/H+交換輸送体は,ゲーティングバンドルがコアの上の疎水性パッチ上を滑ることにより,ゲーティングへリックスが半回転し,その上の親水性クラスターが,細胞外側の透過孔を向いたり,細胞内の透過孔を向くことを繰り返すことで,細胞外開構造と細胞内開構造の間を構造変化することを明らかにした.さらに,ゲーティングバンドルが滑るための疎水性パッチは,H+やCa2+の結合に依存して形成されることが明らかとなり,陽イオン依存的な構造変換の機構を解明した. | KAKENHI-PROJECT-24227004 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24227004 |
Interdigitating cellの細胞病理学的研究 | IDC特異モノクローナル抗体作製の試みは今年度も続行してきたが、成人型Histiocytosis Xの患者の病変部より得た増生細胞の膜成分を抗原としたハイブリドーマ細胞の中から、Histiocytosis X細胞の他にリンパ節IDCおよび表皮ランゲルハンス細胞と反応する株MI1を得るのに成功した。このMI1の抗原は、28.5kDの膜蛋白で、これらの細胞の細胞膜および特異顆粒であるBirbeck顆粒の一部に反応する事が電子顕微鏡的にも確認する事が出来た。またこれまでの観察では、発生学的にIDCが骨髄細胞由来であることを示唆する所見を得ていたが、今年度はさらに、茸状息肉症や、最近経験した稀なリンパ節原発の「IDC肉腫」の症例などの病変部組織を免疫組織化学的に検索した結果、増生、増殖している細胞の中に、S100蛋白およびlysozymeの、すなわち血液単球とIDCの双方の細胞マーカーを同時に有している細胞が少数ながら認められた。これは、これらの病変部で両者の移行が起こっていると考えられ、きわめて興味ある所見と考えている。これらは何れも病的状態の組織であるが、正常あるいは生理的状態でも起こり得る可能性を否定できず、今後はその方向からの検索が期待できる。S100蛋白およびlysozymeの分子生物学的解析は、in situ hybridizationによりmRNAの発現を検討しているが、技術的な問題もあり未だ見るべき結果が得られていない。今後もさらに検討を続けていく予定である。またIDCの動態とFollicular dendritic cellおよびMacro phageとの機能的関連の検索は、現在ヌードマウスを用いて検索中である。IDC特異モノクロ-ナル抗体の作製については、生検リンパ節およびIDCの多数出現する病変(皮膚病性リンパ節炎,葺状息肉症,組織球症Xなど)の組織細胞を抗原として試みているが、完全に特異なハイブリド-マ株を得るに至っていない。今後も継続して行なっていく予定である。ヒト胎児におけるIDCの発生分化については、主にリンパ節において、T細胞の出現と同じ時期、即ち胎生912週のリンパ節原基に血液由来の細胞としてIDCが出現する事は観察されており、マ-カ-の検索の上から骨髄細胞の如何なる性格を有する細胞が、その前駆細胞となるかを今後検索する必要がある。in vitroにおけるIDCあるいはランゲルハンス細胞の変化の観察では、リンパ節由来のIDCと思われるS100蛋白陽性の樹状細胞が、経時的に種々のマ-カ-を失ない、特にCD1、CD4などは比較的早期に認められなくなったが、S100蛋白、HLAーDRは長期に保留しつづけることが観察されている。しかし、形態学的には本来の樹状形態が大きく変化し、時間の経過と共に紡錘形、楕円形、円形などと種々の形態を呈し、in vitroでの人工的な変化と考えざるを得ない所見を呈した。組織球症Xから得られたランゲルハンス細胞は、in vitroでその超微形態の特徴であるBirbeck顆粒が減少、消失し、形態学的にもマ-カ-の上からもIDCとの差異のなくなる事が観察されている。IDCの特徴としてのS100蛋白について、分子生物学的に解析しようとin situ bybridizationを試みたがcDNAがようやく入手した段階が今後技術的問題も含めて今後の課題としたい。IDC特異モノクローナル抗体作製の試みは今年度も続行してきたが、成人型Histiocytosis Xの患者の病変部より得た増生細胞の膜成分を抗原としたハイブリドーマ細胞の中から、Histiocytosis X細胞の他にリンパ節IDCおよび表皮ランゲルハンス細胞と反応する株MI1を得るのに成功した。このMI1の抗原は、28.5kDの膜蛋白で、これらの細胞の細胞膜および特異顆粒であるBirbeck顆粒の一部に反応する事が電子顕微鏡的にも確認する事が出来た。またこれまでの観察では、発生学的にIDCが骨髄細胞由来であることを示唆する所見を得ていたが、今年度はさらに、茸状息肉症や、最近経験した稀なリンパ節原発の「IDC肉腫」の症例などの病変部組織を免疫組織化学的に検索した結果、増生、増殖している細胞の中に、S100蛋白およびlysozymeの、すなわち血液単球とIDCの双方の細胞マーカーを同時に有している細胞が少数ながら認められた。これは、これらの病変部で両者の移行が起こっていると考えられ、きわめて興味ある所見と考えている。これらは何れも病的状態の組織であるが、正常あるいは生理的状態でも起こり得る可能性を否定できず、今後はその方向からの検索が期待できる。S100蛋白およびlysozymeの分子生物学的解析は、in situ hybridizationによりmRNAの発現を検討しているが、技術的な問題もあり未だ見るべき結果が得られていない。今後もさらに検討を続けていく予定である。またIDCの動態とFollicular dendritic cellおよびMacro phageとの機能的関連の検索は、現在ヌードマウスを用いて検索中である。 | KAKENHI-PROJECT-03807017 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03807017 |
跡公式を用いた素測地線分布とスペクトル分布に関する研究 | 実階数1の半単純リー群の離散部分群によって与えられる体積有限な双曲多様体において,素測地線の分布とラプラシアンのスペクトルの分布との間には密接な関係があり,各々が多様体(の基本群)を特徴づける重要な要素である.本研究ではこれらの2つの分布をセルバーグの跡公式を用いて関連付けながら調べることで,多様体を特徴づけることを目的としている.本研究期間中には、素測地線定理に付随する極限公式を用いて合同部分群に関するセルバーグゼータ関数の非絶対収束域における値の評価を行った.加えて,ヘッケ作用素に関する跡公式と強い関連性のある2次形式の類数和に関する漸近評価を導いた.平成26年度は、不定値2元2次形式の類数の和に関する新しい漸近公式を導いた。これまでに得られているものは、「すべての」判別式もしくは、「与えられた算術級数に含まれる」判別式に関する和だったが、本研究では、「与えられたペル型方程式が可解である」ような判別式に関する和に対する漸近公式を主要項が明示的な形で導くことができた。このような類数和はヘッケ作用素に関する跡公式に表れるため、length spectrumやラプラシアンのスペクトル分布を調べる際に有用である。また、このような漸近公式は、ペル型方程式の可解性の観点から整数論的にも興味深いと考える。この研究成果については、すでに論文としてまとめ、学術誌に投稿中である。加えて、この年度は代表的な合同部分群に関するセルバーグゼータ関数の実軸上の値の評価も行った。絶対収束域での値はlength spectrumの分布が直接大きく影響しており、とくに主合同部分群に対しては、同部分群の階数が大きくなるごとに急速に小さくなっていることを明らかにした。非絶対収束域での値の評価には素測地線定理の誤差項評価を用いている。数値実験の結果と比較すると、絶対収束域での評価はほぼ最良の評価が得られていると考えられる。この研究成果については、現在論文作成中であり、近い将来、学術誌に投稿する予定である。3次元の合同な数論的多様体については、length spectrumの数論的な表示を導くことができているが、重複度の分布については、誤差項評価について克服すべき点が少なくない。この点を克服でき次第、研究集会での発表、学術誌への投稿を行う予定である。前年度の研究業績であり、国際学術誌に投稿していた、不定値2元2次形式の類数の部分和の漸近的評価の論文については、査読者の指摘により証明に若干の不備が見つかった。その不備はすでに解消され、さらに主結果の系として新たに漸近公式がひとつ得られたので、それらを改めてまとめたうえで、再び国際学術誌に投稿する予定である。また、前年度に得られた成果である、合同部分群に関するセルバーグゼータ関数の実軸上の値の評価も改良することができた。前年度の時点では、非絶対収束域の限られた範囲でのみ評価が行われていたが、非絶対収束域におけるセルバーグゼータ関数を、従来のものとは別の形の素測地線に関する極限公式を用いて記述し、それに素測地線定理の誤差項評価を利用することで、離散的にあらわれる例外的な点を除くすべての実軸上の点において、セルバーグゼータ関数の評価を行うことができた。この成果については、すでに国内の研究集会で発表済みであり、論文にまとめて国際学術誌への投稿する予定である。加えて、モジュラー群とcommensurableな極大な離散群とその合同部分群から得られる非コンパクトなリーマン面と、不定値四元数環の極大な単数群から得られるコンパクトリーマン面に関するlength spectrumが合同部分群と同様に数論的に記述できることがわかった。より明示的な記述が得られ次第、研究集会での発表と学術誌への投稿を予定している。従来の27年度以降の計画としてあげていた2次元双曲多様体におけるlength spectrumの数論的表示の一般化については、現在のところ、モジュラー群とcommensurableな極大な離散群とその合同部分群から得られる非コンパクトリーマン面、および、不定値四元数環の「極大な」単数群から得られるコンパクトリーマン面が、合同部分群と同様に数論的に記述できることがわかった。現在、より明示的な表示を得るために研究中である。一方で、モジュラー群の非合同部分群については、群の構造が合同部分群と異なり、いまだ数論的な表示を得るに至っていない。また、3次元双曲多様体については、虚2次体上のモジュラー群の合同部分群に依って得られる多様体に関するlength spectrumが一般的に数論的にあらわされることがわかった。加えて、実2次体から得られる高階数多様体についても、同様の性質があると考えられるが、明示的な表示を得るには至っていない。スペクトルゼータ関数については満足できる成果が得られているとはいえないが、その一方で、ヘッケ作用素に関する跡公式において有用な類数和に関する漸近公式が得られており、さらに、合同部分群に関するセルバーグゼータ関数の値の評価を実軸上の値を全非絶対収束域に拡張することができた。以上、順調に進展していない部分があった点と期待以上の成果があった点を総合的に判断し、「おおむね順調」の自己評価とする。平成28年度は、モジュラー群に関するセルバーグゼータ関数の非絶対収束域での値の評価を行った。 | KAKENHI-PROJECT-26800020 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26800020 |
跡公式を用いた素測地線分布とスペクトル分布に関する研究 | これまでにもセルバーグゼータ関数の非絶対収束域での値の評価は得られていたが、その評価は、セルバーグ跡公式を用いた、一般的な離散群に関する評価であり、個別の離散群に対してはより精密に評価できると考えられていた。本研究では、モジュラー群に関するlength spectrumの不定値2元2次形式を用いた数論的な表示を用いて素測地線定理の誤差項評価を改良するSoundararajan-Young (2013)の手法と、セルバーグゼータ関数の非絶対収束域での値を素測地線定理の誤差項を用いて記述するJorgenson-Kramer (2002)の手法を組み合わせ、従来のセルバーグ跡公式を用いた評価と最適化することで、モジュラー群に対してセルバーグゼータ関数の非絶対収束域での評価を改良することができた。セルバーグゼータ関数の非絶対収束域での値の評価は、ラプラシアンの固有値の個数をあらわすワイルの公式の誤差項を含め、様々な場面であらわれることが知られている。そのため、本研究成果、およびそれをさらに改良した結果は、関連分野の研究の今後の進展に寄与すること考えられる。加えて、この研究成果はモジュラー群だけでなく、合同部分群への拡張も期待でき、現在取り組んでいるところである。なお、本研究成果はすでに国内の研究集会で発表済みであり、近いうちに国際学術誌へ投稿するべく論文を準備中である。実階数1の半単純リー群の離散部分群によって与えられる体積有限な双曲多様体において,素測地線の分布とラプラシアンのスペクトルの分布との間には密接な関係があり,各々が多様体(の基本群)を特徴づける重要な要素である.本研究ではこれらの2つの分布をセルバーグの跡公式を用いて関連付けながら調べることで,多様体を特徴づけることを目的としている.本研究期間中には、素測地線定理に付随する極限公式を用いて合同部分群に関するセルバーグゼータ関数の非絶対収束域における値の評価を行った.加えて,ヘッケ作用素に関する跡公式と強い関連性のある2次形式の類数和に関する漸近評価を導いた.従来の26年度の研究実施計画と比較すると、非合同部分群に関して、満足できる成果が得られていない。合同部分群の場合には、モジュラー群と商をとって得られる群の上でも、跡の情報がわかりやすかったため、length spectrumの重複度の「数論的な」表示を得ることができた。それに対して、非合同部分群の場合にはモジュラー群との商からえられる群で、跡の情報がそのまま保存されるわけではないため、合同部分群と比較して非常に複雑であることが、満足できる成果が得られていない理由である。3次元多様体についても、誤差項評価において課題を抱えており、やや研究の進展が遅れている状況である。一方で、ヘッケ作用素に関する跡公式と深い関連性をもつ類数和に関する漸近公式が得られた点は、予期しなかった成果である。これによって、ヘッケ作用素に関する跡公式という、新たな視点から今後の研究を進めていく糸口が得られたと考える。また、セルバーグゼータ関数の値についても、予期しなかった成果である。この値については、これまでに、Jorgenson-Kramer (2001)を除き、ほとんど研究がなされていなかった。そのため、26年度に行ったセルバーグゼータ関数の値の評価は、今後の多様体の特徴づけという観点から、重要な研究成果のひとつになりうると考える。以上、当初の計画と比較し、進展が遅れている点もあるが、当初予期していなかった進展も見られることから、総合的に「おおむね順調」の自己評価とする。 | KAKENHI-PROJECT-26800020 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26800020 |
半導体を用いた低エネルギー中性子検出器に関する基礎研究 | 本研究では超流動ヘリウム中での極冷中性子散乱において生じる超冷中性子発生率を定量的に議論するための手段として、超流動ヘリウム中で動作可能な超冷中性子検出器の改良を行った。検出器は表面障壁型のシリコン半導体検出器の表面に濃縮^6LiとTiの多層膜を形成したもので、物質の中性子に対する有効ポテンシャルを極めて0に近づけることによって、長波長の超冷中性子に対して充分な検出効率を実現するものである。初めに本研究以前に開発してきたものについて多層膜の中性子反射率を測定する事によって、どの程度の検出効率が実現されているかを中性子反射率測定で調べたところ、Tiの酸化によって総体としての有効ポテンシャルは充分0に近づいているとは言えず、およそ800Åが検出限界になっていることが判明した。多層膜には酸化防止のための保護層が形成してあるので、Tiの酸化が起こる恐れがあるのは多層膜の形成時と考えられる。多層膜の形成は真空蒸着によって行うのだが、蒸着時の真空度を向上させることによって多層膜内のTiの酸化度を抑える試みを行った。その結果、検出限界は1500Åで1500Åにおける反射率は0.6まで抑えられていることを日本原子力研究所の冷中性子ビームを用いた中性子反射率計で実証した。この結果は既に投稿済みである。なお酸化度自体が0になっているという訳ではないが、上記の性能は超冷中性子の超流動ヘリウム中での直接測定という目的には充分実用となるものである。本研究では超流動ヘリウム中での極冷中性子散乱において生じる超冷中性子発生率を定量的に議論するための手段として、超流動ヘリウム中で動作可能な超冷中性子検出器の改良を行った。検出器は表面障壁型のシリコン半導体検出器の表面に濃縮^6LiとTiの多層膜を形成したもので、物質の中性子に対する有効ポテンシャルを極めて0に近づけることによって、長波長の超冷中性子に対して充分な検出効率を実現するものである。初めに本研究以前に開発してきたものについて多層膜の中性子反射率を測定する事によって、どの程度の検出効率が実現されているかを中性子反射率測定で調べたところ、Tiの酸化によって総体としての有効ポテンシャルは充分0に近づいているとは言えず、およそ800Åが検出限界になっていることが判明した。多層膜には酸化防止のための保護層が形成してあるので、Tiの酸化が起こる恐れがあるのは多層膜の形成時と考えられる。多層膜の形成は真空蒸着によって行うのだが、蒸着時の真空度を向上させることによって多層膜内のTiの酸化度を抑える試みを行った。その結果、検出限界は1500Åで1500Åにおける反射率は0.6まで抑えられていることを日本原子力研究所の冷中性子ビームを用いた中性子反射率計で実証した。この結果は既に投稿済みである。なお酸化度自体が0になっているという訳ではないが、上記の性能は超冷中性子の超流動ヘリウム中での直接測定という目的には充分実用となるものである。 | KAKENHI-PROJECT-07740234 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07740234 |
軟X線・X線CTを用いた栽培植物・家屋害虫のタフォノミーと縄文人の心象の解明 | 九州・関東・中部・東北・北海道の縄文時代遺跡10箇所ほどの圧痕調査を実施した。その中で多量の種実を混入する土器片を10例ほど確認し、その一部をX線CTによって撮影・確認を行った。完形個体ではない、破片化した土器片での潜在圧痕の調査法やその重要性について再認識した。現在論文化を進めている。潜在圧痕の重要性については、佐賀県東畑瀬遺跡での軟X線とX線CTによる悉皆的な調査の成果を論文化して公開した。この論文中での検証は、本科研の課題の1つである大陸系穀物の伝播時期の確定をも射程に入れていたが、結果的には従来の見解(夜臼・山ノ寺式期)に落ち着いた。また、北海道館崎遺跡から検出した縄文時代後期のコクゾウムシ入り土器の紹介と、北海道へのコクゾウムシとクリ栽培の伝播過程と地域による利用堅果類の違いを論文化し公開した。圧痕の成因について昨年度に続きラオスにおいて現地調査を行い、その成因に関する手掛りを得て、これらを論文化した。まだ作業中であるが、2016年度に調査を実施したタイ土器作りムラの土器製作関連試料について、胎土分析を依頼し、混和材とその配列、粒度分析等に関する分析報告を得、土器製作過程での混和での粘土配向(胎土中の向き)についての原則が推定された。集落の大規模化と土器圧痕(栽培植物)比率の関連性・地域性などを検討するために、九州古代種子研究会との共催で、公開シンポジウムを開催した。継続して、低解像度X線による潜在圧痕のデータ解析を実施した。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。各研究目的ごとに以下のような実施状況と成果があった。1.圧痕調査・軟X線・X線CTによる調査:北海道館崎遺跡・鹿児島県一湊松山遺跡・千葉県加曽利貝塚・宮崎県椨粉山遺跡をはじめとする縄文時代を中心とした10遺跡で圧痕調査を実施し、一部は軟X線・X線CTによる調査を実施した。栽培植物の地域的な偏りと種実混入土器の発見などが成果として挙げられる。とくに北海道館崎遺跡では、縄文時代前期末のヒエ入り土器と同後期のコクゾウムシ入り土器を検出でき、これらを報告書に掲載した。潜在圧痕を含む混入個数およびその意義については、論文(英文)投稿・作成中である。2.土器作りの民族調査による土器作り環境と種実・昆虫混入のメカニズムの研究:タイ北部の土器作りの村を訪ね、土器作り環境の調査と試料採集を行った。土器作りの場において穀物の調理屑や家屋害虫が混入する可能性を実物資料によって検証することができた。現在論文作成中。3.X線CTによる種実・昆虫圧痕の検出技術の開発:埼玉県上野尻遺跡におけるオオムギ圧痕候補について軟X線およびX線CTにより撮影・観察を行い、オオムギでないことを検証した。伊川津貝塚のアワ入り土器を軟X線・X線CTで撮影し、その個数を検証した。4.食以外の種実利用・家屋害虫拡散プロセスに関する研究:2本の論文(邦文・英文)を作成し、公開した。5.土器編年(縄文時代晩期)の整備:大陸系穀物圧痕を有する九州地方の晩期土器の調査を行い、編年的な位置づけを行った。これら成果に関しては、その一部を12月に明治大学で開催した研究公開シンポジウムを通じて広く一般の方へも公表した。その他、一般図書や雑誌において、圧痕法研究に関する最新成果を公表した。研究の目的のほとんどは十分かつ円滑に調査が進行し、成果も着実に上がっている。ただし、研究目的の主要な課題である、栽培植物の起源の探求の方法の一つである縄文時代晩期遺跡の軟X線による潜在圧痕の調査が、調査候補資料のリストアップと保管状況確認に時間を要し、実際の調査作業に入れていないためである。ただし、その基礎となる土器の編年的研究のための調査は着実に成果を挙げている。九州・関東・中部・東北・北海道の縄文時代遺跡10箇所ほどの圧痕調査を実施した。その中で多量の種実を混入する土器片を10例ほど確認し、その一部をX線CTによって撮影・確認を行った。完形個体ではない、破片化した土器片での潜在圧痕の調査法やその重要性について再認識した。現在論文化を進めている。潜在圧痕の重要性については、佐賀県東畑瀬遺跡での軟X線とX線CTによる悉皆的な調査の成果を論文化して公開した。この論文中での検証は、本科研の課題の1つである大陸系穀物の伝播時期の確定をも射程に入れていたが、結果的には従来の見解(夜臼・山ノ寺式期)に落ち着いた。また、北海道館崎遺跡から検出した縄文時代後期のコクゾウムシ入り土器の紹介と、北海道へのコクゾウムシとクリ栽培の伝播過程と地域による利用堅果類の違いを論文化し公開した。圧痕の成因について昨年度に続きラオスにおいて現地調査を行い、その成因に関する手掛りを得て、これらを論文化した。まだ作業中であるが、2016年度に調査を実施したタイ土器作りムラの土器製作関連試料について、胎土分析を依頼し、混和材とその配列、粒度分析等に関する分析報告を得、土器製作過程での混和での粘土配向(胎土中の向き)についての原則が推定された。 | KAKENHI-PROJECT-16H01957 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H01957 |
軟X線・X線CTを用いた栽培植物・家屋害虫のタフォノミーと縄文人の心象の解明 | 集落の大規模化と土器圧痕(栽培植物)比率の関連性・地域性などを検討するために、九州古代種子研究会との共催で、公開シンポジウムを開催した。継続して、低解像度X線による潜在圧痕のデータ解析を実施した。本研究の目的は、多量種実・昆虫圧痕混入土器の検出による縄文人の心象の解明、そして大陸系穀物流入時期の解明、の2点である。それらを解決するために、本年度は以下のような調査・研究成果の公開を行った。北海道幸連遺跡群・関東・中部の加曽利貝塚・新羽浅間神社遺跡・上神取諏訪原遺跡、宮崎県内縄文時代早期・後期遺跡、鹿児島県内の南西諸島の縄文時代後期を中心とした遺跡など、北海道・東北・関東・九州地方の縄文時代遺跡を中心に、圧痕調査を実施した。その一部を学会発表および論文で発表した。これらの成果から、多摩ニュータウン遺跡群や東京都下野谷遺跡における集落規模や遺跡立地などの差による縄文時代のマメ類やエゴマなどの栽培植物の出現率の違いについての研究を行い、口頭発表や論文として公開した。また、大分県中津市法垣遺跡の圧痕調査と炭化種実についての報告をまとめ、縄文時代に防虫剤が存在した可能性を提示した。縄文人の心象を探るため、圧痕調査の過程で検出した、エゴマやマメ類などが多量に入った土器片については、軟X線およびX線CTによる撮影を行い、多量種実混入土器の例を蓄積した。大陸系穀物の流入時期の検証については、熊本平野および福岡平野における弥生早期遺跡の土器圧痕調査の成果を論文として公開した。また、北陸地方における初期農耕遺跡の研究を行った。土器作りと圧痕種実・昆虫混入のプロセスを探るため、ラオスの土器作り村における考古学的・民族学的調査を実施した。粘土の保管状況、練り、製作、焼成の過程を実見し、本課題に参考となる知見を得た。大陸系穀物の出現期の問題については、表出圧痕調査では、従来の史観をほぼ変わらない結果を得た。ただし、土器型式・年代・穀物を揃える土器資料はなく、土器の編年観に左右される結果であるため、これらを潜在圧痕を含めて、その教示性について検証する必要がある。この点については現在軟X線を用いた悉皆的な調査を実施中である。縄文人の心象を探るという課題については、多量種実・昆虫圧痕土器の探査が必要である。この点については、調査過程で事例が蓄積されつつある。しかし、多量種実・昆虫圧痕土器が破片化されることで可視化できない事例も存在することは明らかであり、今後は軟X線による悉皆的な調査、それらを簡便に同定する手法の開発が必要である。北部九州市域および福岡市域の晩期土器の軟X線による調査を重点的に実施する。さらには種実・昆虫混入プロセスの解明のために試行的に実施した土器作り村の民族学的調査を拡充させ体系的な調査方法を構築し、調査も拡充させる予定である。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。大陸系穀物の流入時期の解明、縄文人の心象の解明(多量種実・昆虫圧痕土器の研究)という2つの課題とも、土器表面に残る表出圧痕のみでは、十分な検証ができないことが明らかになった。今後は、X線機器による潜在圧痕検出とその同定法の開発が急がれる。この土器圧痕法の新たな手法の開発に重点をおいた研究へシフトしていきたい。そのために、まず、事例研究として、2つの課題に合う遺跡を選定し、軟X線による悉皆調査を試行してみたい。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-16H01957 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H01957 |
塩分・血圧によるレニン遺伝子転写調節機構のin vivo解析 | 循環器・腎疾患におけるレニン・アンジオテンシン(A)系の果たす役割を解明するために、AII受容体(AT1)欠損細胞と非欠損細胞が同一体内に混在するキメラマウスを作成し、AIIの持続注入により誘導される糸球体細胞の増殖を調べた。同一個体で比較すると、AT1欠損細胞で構成される糸球体も、非欠損糸球体も、同程度の増殖細胞を含んでいた。一方、ラットのThy1腎炎において、アンチセンスDNAの導入により片側の腎臓のみでAT1を抑制すると、同側の腎臓のみでメサンジウム細胞の増殖が抑制された。これらは、in vivoにおいては、AII単独では細胞の増殖を誘導することができないが、他の増殖因子が誘導される組織傷害時において、AIIは細胞増殖を増強することを示している。AII産生の最も重要な律速段階を触媒するレニンの遺伝子の転写調節領域をin vivoで解析できるシステムを作ることを計画した。我々が以前に作成したレニン欠損マウスは、レニン遺伝子(Ren1d)の5上流5.5kb断片にlacZを結合させたものを持つが、このマウスの解析により、Ren1d 5.5kbは塩分摂取や血圧に応答する因子のすべてを含むと考えられた。正常あるいは様々な部位に変異をもつRen1d 5.5kbにlacZを結合させたものをマウスES細胞に導入し、キメラマウスでlacZの発現を比較することにより、変異部位の役割を調べることをめざした。導入部位の違いによるlacZ発現への影響をさけるため、Cre-loxPを利用して、染色体の同一部位に導入できるようにデザインした。キメラマウスにおいて、ES由来細胞を同定するため、Ren1d 5.5kbにEGFPを結合させたものも導入した。多数のDNA導入が必要であるが、ES細胞の状態を保持するのが困難なため難航している。循環器・腎疾患におけるレニン・アンジオテンシン(A)系の果たす役割を解明するために、AII受容体(AT1)欠損細胞と非欠損細胞が同一体内に混在するキメラマウスを作成し、AIIの持続注入により誘導される糸球体細胞の増殖を調べた。同一個体で比較すると、AT1欠損細胞で構成される糸球体も、非欠損糸球体も、同程度の増殖細胞を含んでいた。一方、ラットのThy1腎炎において、アンチセンスDNAの導入により片側の腎臓のみでAT1を抑制すると、同側の腎臓のみでメサンジウム細胞の増殖が抑制された。これらは、in vivoにおいては、AII単独では細胞の増殖を誘導することができないが、他の増殖因子が誘導される組織傷害時において、AIIは細胞増殖を増強することを示している。AII産生の最も重要な律速段階を触媒するレニンの遺伝子の転写調節領域をin vivoで解析できるシステムを作ることを計画した。我々が以前に作成したレニン欠損マウスは、レニン遺伝子(Ren1d)の5上流5.5kb断片にlacZを結合させたものを持つが、このマウスの解析により、Ren1d 5.5kbは塩分摂取や血圧に応答する因子のすべてを含むと考えられた。正常あるいは様々な部位に変異をもつRen1d 5.5kbにlacZを結合させたものをマウスES細胞に導入し、キメラマウスでlacZの発現を比較することにより、変異部位の役割を調べることをめざした。導入部位の違いによるlacZ発現への影響をさけるため、Cre-loxPを利用して、染色体の同一部位に導入できるようにデザインした。キメラマウスにおいて、ES由来細胞を同定するため、Ren1d 5.5kbにEGFPを結合させたものも導入した。多数のDNA導入が必要であるが、ES細胞の状態を保持するのが困難なため難航している。本研究では、キメラマウスの腎臓での解析を伴うが、腎臓は心臓や血管に比べてはるかに組織構築の複雑な臓器で、キメラマウスでの解析が困難であると予想され、この点が、全プロジェクトの成否を決定する重要なポイントである。そこで、キメラマウスの腎臓の解析の方法論を確立することを1つの目的に、全身にlacZを発現するROSA26(ROSA)トランスジェニックマウスと1型アンジオテンシン(A)II受容体(AT1)欠損マウスから由来する細胞から構成されるキメラマウス(Agtr1a-/-【tautomer】ROSA)を用いた次のような実験を行った。正常マウスにAIIを投与すると血圧が上昇し、メサンジウム細胞が増殖するが、この増殖はAIIのメサンジウム細胞への直接作用に起因するものか、血圧など全身の環境を反映するものか不明であった。Agtr1a-/-【tautomer】ROSAにAIIを持続注入すると、AT1欠損細胞のみから構成される糸球体も、ROSA細胞のみから構成される糸球体も、同一個体内では同程度の増殖をしめし、その程度は血圧と相関した。したがって、糸球体細胞の増殖はAIIの直接刺激ではなく、体血圧と密接に関係する非局所的要因(例えば、糸球体内圧)が決定しているものと考えられた。上記の実験は、体血圧の調節機構を研究する本プロジェクトの重要性を強調するものであるが、同時にROSAを用いたキメラマウスの腎臓において形態のみから細胞の種類を同定が困難であることを経験させるものでもあった。またROSAマウスの中には、繁殖が低下しているものがあり、また胞胚採取用のROSAマウスコロニーを維持する労力も甚大である。これらの問題を考慮すれば、平滑筋細胞特異的プロモーターで発現されるマーカー遺伝子をES細胞に導入することにより、ES細胞由来の細胞を同定した方が、より効率的であると思われる。 | KAKENHI-PROJECT-12470212 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12470212 |
塩分・血圧によるレニン遺伝子転写調節機構のin vivo解析 | 現在、この実験方法のマイナーな変更に基づきベクターを構築中である。我々の作製したrenin変異マウスは、2つの破壊されたrenin遺伝子(Ren)の間に、5.5kb Ren1^d5′fragment+lacZというレポーター遺伝子が挿入されている。ヘテロマウスを、低塩食、ACE阻害剤、低塩食+ACE阻害剤、ミネラロコルチコイド+NaClで処理した。いずれの条件でも、reninとlacZの発現は同様に増大または抑制された。したがって、この5.5kb Ren1^dは、これらの刺激に対応するreninの転写調節に必要な要素を含んでいることが確認された。ES細胞に上記(A)および(B)を導入した。現在、導入された(B)をCre recombinaseにより(C)と入れ替えている。その結果、(A)と(B)および5種類の(A)と(C)が導入されたES細胞が作製されるが、(B)および5種類の(C)は同一の染色体上に位置に導入される。今後、これらのES細胞からキメラマウスを作製し、ES由来renin産生細胞を示すEGFPが陽性の細胞で、lacZの発現を解析することにより、各elementのin vivoでの重要性を検討する。組織傷害時におけるアンジオテンシン(A)IIの局所組織における直接作用を明らかにするため、ラットのThy1抗体腎炎モデルにおいて、片側腎臓でのみAII抗体受容体(AT1)をアンチセンスDNAを導入することにより抑制させた。同側の腎臓では、メサンジウム細胞の増殖が無治療に比べて約30%減少した。しかし、対側の腎臓や、コントロールDNAを導入した腎臓で、メサンジウム細胞増殖の減少は認められなかった。メサンジウム基質の増大も、AT1アンチセンスDNAの導入された腎臓に特異的に抑制された。これらの結果は、組織傷害時においては、メサンジウム細胞の増殖と細胞外基質の増大は、AIIの局所直接作用によっている事を示唆し、AII持続注入時とは異なったメカニズムの存在が示唆された。レニンの遺伝子の転写調節領域をin vivoで解析するシステムの作成実験においては、マウスES細胞に、Renl^d (5.5kb)-EGFPとRenl^d -lacZを導入し、その後に後者を抜き取り、同部位に変Renl^d -lacZを入れ込む作業を行っている。最低でも4回のトランスフェクションが必要なため、ES細胞の培養期間が長期にわたり、その間ES細胞の性格が変化してしまう技術的な問題点があり、難航している。特にはじめのRenl^d -EGFPを導入する段階で、hygromycinによる選択がうまくされずに、サブクローニングをくり返さざるを得ないのが大きな問題となっている。今後は、選択遺伝子の変更も含めて、DNA導入条件を至適化して、研究を継続してゆきたい。 | KAKENHI-PROJECT-12470212 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12470212 |
緩和ケアリンクナースの教育モデルの開発 | 本研究では、緩和ケアリンクナース等、病院において緩和ケアを推進する役割にある看護師の臨床実践力を高めるために、緩和ケアリンクナース教育モデルを開発する。初年度は、日本における緩和ケアリンクナースの活動実態を明らかにするための文献検討を行った。また、緩和ケア事業サイトの閲覧等により緩和ケアリンクナース教育の現状に関する情報収集を行った。2年目は、海外における緩和ケアリンクナースに関する研究の動向を確認した。国内外の文献検討の結果、緩和ケアリンクナースの緩和ケア推進に対する重大な障壁は、役割と責任が明確に定義されていないことであるとわかった。また、現状では、緩和ケアリンクナースのグッドプラクティスについても明確に示されてはいなかった。これらをふまえ、緩和ケアリンクナースの活動を把握するために1施設(地域がん拠点病院)を視察し、現状と課題を確認した。この施設では、緩和ケアリンクナースの役割は明文化され、周知されていた。役割の内容は多様かつ広範囲で、緩和ケア提供システムを総合的に機能させる意図が示されていた。しかし、明文化された役割の理解は平易でなく、緩和ケアリンクナースが主体的に活動の見通しを立てられるまでには相当の時間と緩和ケアの知識修得を必要としていた。加えて、任期制で役割を遂行することを期待される状況でもある。以上より、緩和ケアリンクナースの緩和ケア実践能力向上を目指した教育モデルを開発するにあたっては、緩和ケアリンクナースに求められる役割をより具体的に示すことが重要である。まず、緩和ケアリンクナースに求められる具体的な役割項目を明らかにするために研究を実施する。現在、調査に向けた準備をしている。今年度予定していた海外文献の検討は完了した。国内外の文献検討の結果、緩和ケアリンクナースの役割や責任が明確に定義されていないことが緩和ケア推進に対する重大な障壁であることがわかり、研究計画の見直しも含めて課題を検討した。その影響で、調査が当初の研究計画より遅れている。今後は、緩和ケアリンクナースに求められる具体的な役割項目を明らかにするための質的研究を行う。専門看護師や認定看護師が緩和ケアリンクナースに期待する役割は何かに焦点をあて、その結果を踏まえ、緩和ケアリンクナースの緩和ケア実践能力向上を目指した教育モデルを検討していく。本研究では、緩和ケアリンクナース等、病院において緩和ケアを推進する役割にある看護師の臨床実践力を高めるために、緩和ケアリンクナース教育モデルを開発する。初年度は、日本における緩和ケアリンクナースの活動実態を明らかにするため、文献検討を行った。また、国内外の学会参加、緩和ケア事業サイト閲覧等により緩和ケアリンクナース教育に関する情報収集を行った。国内の緩和ケアリンクナースに関する看護研究を概観した。年次推移は、2006年から研究が出現し、研究数が最も多いのが2017年、次いで2011年であった。研究種類は、原著論文が7%、解説3%、会議録90%であった。研究内容は、【リンクナースの教育支援】【緩和ケア提供システムの整備】【リンクナースによる緩和ケア実践】【リンクナースシステムの運用】に分類された。これまでは、緩和ケア提供システムとそれを支える人材の育成に関する研究が大半を占めていた。しかし、緩和ケアリンクナースに求められる看護実践能力に関する研究は行われていなかった。そこで、緩和ケアリンクナースの任期・任命制を考慮した役割遂行と緩和ケア実践の活動に焦点を当てた調査を行うことで、緩和ケアリンクナース教育モデル開発の基盤になると考えた。次年度は、病院視察を計画し、緩和ケアリンクナースの看護活動の現状を把握する。また、緩和ケアリンクナースの活動実態に関する調査を進めていく。今年度予定していた文献検討について、国内の文献検討については計画通り遂行したが、海外の文献検討の整理は完了していないため、次年度に引き続き実施することとした。本研究では、緩和ケアリンクナース等、病院において緩和ケアを推進する役割にある看護師の臨床実践力を高めるために、緩和ケアリンクナース教育モデルを開発する。初年度は、日本における緩和ケアリンクナースの活動実態を明らかにするための文献検討を行った。また、緩和ケア事業サイトの閲覧等により緩和ケアリンクナース教育の現状に関する情報収集を行った。2年目は、海外における緩和ケアリンクナースに関する研究の動向を確認した。国内外の文献検討の結果、緩和ケアリンクナースの緩和ケア推進に対する重大な障壁は、役割と責任が明確に定義されていないことであるとわかった。また、現状では、緩和ケアリンクナースのグッドプラクティスについても明確に示されてはいなかった。これらをふまえ、緩和ケアリンクナースの活動を把握するために1施設(地域がん拠点病院)を視察し、現状と課題を確認した。この施設では、緩和ケアリンクナースの役割は明文化され、周知されていた。役割の内容は多様かつ広範囲で、緩和ケア提供システムを総合的に機能させる意図が示されていた。しかし、明文化された役割の理解は平易でなく、緩和ケアリンクナースが主体的に活動の見通しを立てられるまでには相当の時間と緩和ケアの知識修得を必要としていた。加えて、任期制で役割を遂行することを期待される状況でもある。以上より、緩和ケアリンクナースの緩和ケア実践能力向上を目指した教育モデルを開発するにあたっては、緩和ケアリンクナースに求められる役割をより具体的に示すことが重要である。まず、緩和ケアリンクナースに求められる具体的な役割項目を明らかにするために研究を実施する。現在、調査に向けた準備をしている。今年度予定していた海外文献の検討は完了した。 | KAKENHI-PROJECT-17K12107 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K12107 |
緩和ケアリンクナースの教育モデルの開発 | 国内外の文献検討の結果、緩和ケアリンクナースの役割や責任が明確に定義されていないことが緩和ケア推進に対する重大な障壁であることがわかり、研究計画の見直しも含めて課題を検討した。その影響で、調査が当初の研究計画より遅れている。今後は、緩和ケアリンクナースの看護活動に関する実態調査を行う予定である。現在、病院視察の計画を進めており、実態調査と並行し、緩和ケアリンクナース教育モデル開発に向け知見を深める予定である。今後は、緩和ケアリンクナースに求められる具体的な役割項目を明らかにするための質的研究を行う。専門看護師や認定看護師が緩和ケアリンクナースに期待する役割は何かに焦点をあて、その結果を踏まえ、緩和ケアリンクナースの緩和ケア実践能力向上を目指した教育モデルを検討していく。次年度使用額が生じた理由は、データ入力を委託せず人件費が発生しなかったためである。人件費はパソコンや分析ソフトにかかる物品費に充て、残額がわずかに生じたが、今年度使用額は研究計画から逸脱するものではない。次年度使用額が生じた理由は、予定していた調査の遅れにより、データ入力を委託せず人件費が発生せず、物品購入も先送りとなったためである。 | KAKENHI-PROJECT-17K12107 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K12107 |
第二言語のルール学習が母語の高次操作を創出するメカニズムの教育心理学的研究 | 本研究は英語のルール学習場面における母語に関連する「素朴理論」からの干渉とその抑制に注目した研究である。「関係操作的思考」を取り入れたテキストを開発し,そのテキストを用いた英語のルール学習により,日本語の理解の深化が促されるメカニズムを探究した。ルール学習の結果,英語の否定疑問文への応答に対する確信度が上昇していた。日本語の「相対化」に関して,「いいえ」という語の使いやすさは,社会的関係性で変わるという回答が比較的多く選択された。日本語の「自覚化」に関して,はじめは視点がうまく切り替わらず,日本語の使い方の説明過程で混乱が生じたが,その後に視点が切り替えられたと推測できる反応が注目された。本研究は,19年度20年度科学研究費補助金若手研究(B)で示した母語に関連する素朴理論からの干渉とその抑制を含む「英語の応答に関する認知プロセス」の研究を更に発展させることを目指している。3年計画の2年目にあたる今年度の主たる研究目的は,素朴理論からの干渉が予想される英語のルール学習場面で,(1)「視点切り替え」と「関係操作的思考」を組み込んだ教授方略が,異なる構造を持つ課題に対するルールの適用へ影響を及ぼすのかを明らかにすること(2)英語のルール学習において,学習者内で日本語理解の深化が促されるメカニズムを探究することであった。これまでに実施したインタビュー調査の結果をもとに学会発表を行い,心理学研究者との討論を行った。インタビュー調査によって読み物読解中の確信度の推移を調べることができ,英語の否定疑問文への応答に関わる回答が,徐々に確信を持って行えていた様子が伺えた。次に,これまでの討論の結果をふまえて,新たな読み物教材が作成された。この新たな読み物教材の読解による学習前後の変化について,主に量的データとして,質問紙にて調査した。調査結果に基づき,主として(1)読み物読解中に,動作を伴って自身が伝えたい意志を再確認することも取り入れた場合に,英語のルールに基づいた正応答がどの程度見られるか(2)英語と母語である日本語の相対化について回答理由として多く選択されるものはどのような内容かを検討した。さらに日本語に関する自覚化の側面も併せた検討を行っていくことが,次年度の課題として残された。本研究では,平成19年度20年度科学研究費補助金若手研究(B)で示された母語に関連する素朴理論からの干渉とその抑制を含む「英語の応答に関する認知プロセス」の研究を,更に発展させることが目指された。3年計画の3年目にあたる今年度の主たる研究目的は,素朴理論からの干渉が予想される英語のルール学習場面で,1.「視点切り替え」と「関係操作的思考」を組み込んだ教授方略に,「動作を伴って意思を再確認する活動」も取り入れた場合,異なる構造を持つ課題に対するルールの適用へ影響を及ぼすのかを明らかにすること,2.英語のルール学習において,学習者内で日本語理解の深化が促されるメカニズムを,日本語に関する自覚化の側面も併せて探究することであった。新たに実施したインタビュー事例に基づいて研究会発表を行い,心理学研究者との討論を行った。報告した事例の特徴としては(1)読み物の読解直後では,きまりへの確信度も高く,読み物への興味深さも高まっていたこと,(2)ルールの一貫適用が見られた場面の数は,事前と事後の調査で変化が見られなかったこと,(3)日本語の「自覚化」に関連して,日本語による応答の使い分けを説明する場面では,混乱が生じたと推測できる反応が見られたことなどが示された。さらに研究会発表後に実施したインタビューの結果もあわせて,とりわけ,英語のルールを適用できた範囲の変化の有無と,日本語による応答の使い分けを他者に説明する過程に着目して,教育心理学の学会にて発表を行う予定である。本研究は英語のルール学習場面における母語に関連する「素朴理論」からの干渉とその抑制に注目した研究である。「関係操作的思考」を取り入れたテキストを開発し,そのテキストを用いた英語のルール学習により,日本語の理解の深化が促されるメカニズムを探究した。ルール学習の結果,英語の否定疑問文への応答に対する確信度が上昇していた。日本語の「相対化」に関して,「いいえ」という語の使いやすさは,社会的関係性で変わるという回答が比較的多く選択された。日本語の「自覚化」に関して,はじめは視点がうまく切り替わらず,日本語の使い方の説明過程で混乱が生じたが,その後に視点が切り替えられたと推測できる反応が注目された。本研究では,19年度20年度科学研究費補助金若手研究(B)で示した母語に関連する素朴理論からの干渉とその抑制を含む「英語の応答に関する認知プロセス」の研究を更に発展させることが目指される。3年計画の1年目にあたる今年度の主たる研究目的は,素朴理論からの干渉が予想される英語のルール学習場面で,「母語ー第二言語間の視点切り替え」と「関係操作的思考」に注目した教授方略を具体化したテキストを開発することであった。はじめに,先行した探索的調査の量的データを再分析し,学会における発表・討論を通じて情報収集を行った。特に,英語のきまりや変換後の命題を適切に再認できた者の方が日本語や日本文化への興味度が高かったことが伺える点への言及や,「関係操作的思考」に関わるテキスト部分の改善に必要な情報についての資料収集に努めた。次に,学内研究倫理審査委員会の審査を経て,大学院生及び学部生を対象としたインタビュー調査を実施した。 | KAKENHI-PROJECT-23530856 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23530856 |
第二言語のルール学習が母語の高次操作を創出するメカニズムの教育心理学的研究 | インタビュー調査には,「母語ー第二言語間の視点切り替え」と「関係操作的思考(中でも,工藤(2010)の提案における「手がかり化操作」に注目)」を促す働きかけをより具体化するよう改善したテキストが用いられた。インタビュー調査の前には,参加者から文書にて情報提供の承諾を得て,インタビューの情報は量的データ及び質的データとして分析された。テキスト読解中の「回答への確信度」の結果から,英語の否定疑問文への応答に関わる回答が,確信を持って行えるようになっていく様子が伺えた。こららの結果をふまえ,学外研究者との討論を通じて多角的な視点からの考察を可能とするため,学外研究会での発表を行った。成果公表のためにさらなる工夫を行うことが,次年度以降の課題として残された。本研究の2年目の主目的に基づいて,調査結果を学会発表し,その検討結果に基づいて新たな実験を実施できたことは概ね計画に沿って進んだ点である。しかしながら,2年目までの成果を研究論文にまとめられていない課題点をふまえ,総合的には「やや遅れている」と判断した。本研究の3つの主目的のうち,初年度の目的として掲げた「「母語ー第二言語間の視点切り替え」と「関係操作的思考」を具体化したテキストの開発」が,大学院生及び学部生を対象としたインタビュー調査を通じて,概ね達成されたと考えられるため。積極的に成果を公表するために,学会や研究会への積極的な参加とともに,論文として研究成果のとりまとめを行うなど,成果公表のための一層の工夫を行う。より一層広く成果を公表するために,学会や研究会への積極的な参加など,さらなる成果公表のための工夫を行う。該当無し次年度使用額は支払い処理の都合により生じたものであり,研究は当初の計画通り行う。 | KAKENHI-PROJECT-23530856 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23530856 |
ケイ素-遷移金属錯体の合成、構造、反応性および触媒反応への応用 | 独自に開発した二座及び三座キレート型ケイ素配位子前駆体であるヒドロシランを用い、ケイ素一遷移金属錯体の基礎化学の解明及びケイ素-ケイ素結合生成反応の触媒開発を目指し10族遷移金属錯体に焦点をあてて検討した。その結果、ケイ素-10族遷移金属錯体の化学が予想を超えた多様性を持つことを示すとともに触媒開発に重要な知見を得ることに成功した。以下、主な成果を列挙する。・三座型ヒドロシラン(2-SiH_3C_6H_4)_2siH_2と10族遷移金属錯体との反応が、金属の種類や配位子の立体的影響に応じた多様性を示すことを明らかにし、多数の新規シリル錯体を単離し、構造を明らかにした。ニッケル錯体との反応においては、溶液中では四価ニッケルヒドリド構造を、結晶中では二価η^<2->(Si-H)Ni構造を有する世界初の錯体を単離し、X線構造解析や理論科学計算により構造を明らかにした。・二座型ヒドロシラン1,2-C6_H_4(SiMe_2H)(SiH_3)とパラジウム錯=体との反応において、世界初となる5つのケイ素原子が結合したパラジウム中心を含み、5価ともいえる形式酸化数を有する三核および四核パラジウム錯体の単離・構造解析に成功した。・二座型ヒドロシランと白金錯体との反応において、前例の無い反応によりシクロジシロキサン構造を有する二核白金錯体が生成することを見出した。・二座及び三座型ヒドロシランと10族遷移金属のホスフィン錯体との反応においては、ホスフィン配位子及びヒドロシランの立体的効果が反応に極めて大きく影響し、立体障害が小さい場合には複核錯体や高形式酸化数錯体が容易に生成することを明らかにした。一方、立体障害が大きい場合にはケイ素一ケイ素結合生成反応が進行しやすいことを見出し、触媒開発に重要な知見を得た。独自に開発した二座及び三座キレート型ケイ素配位子前駆体であるヒドロシランを用い、ケイ素一遷移金属錯体の基礎化学の解明及びケイ素-ケイ素結合生成反応の触媒開発を目指し10族遷移金属錯体に焦点をあてて検討した。その結果、ケイ素-10族遷移金属錯体の化学が予想を超えた多様性を持つことを示すとともに触媒開発に重要な知見を得ることに成功した。以下、主な成果を列挙する。・三座型ヒドロシラン(2-SiH_3C_6H_4)_2siH_2と10族遷移金属錯体との反応が、金属の種類や配位子の立体的影響に応じた多様性を示すことを明らかにし、多数の新規シリル錯体を単離し、構造を明らかにした。ニッケル錯体との反応においては、溶液中では四価ニッケルヒドリド構造を、結晶中では二価η^<2->(Si-H)Ni構造を有する世界初の錯体を単離し、X線構造解析や理論科学計算により構造を明らかにした。・二座型ヒドロシラン1,2-C6_H_4(SiMe_2H)(SiH_3)とパラジウム錯=体との反応において、世界初となる5つのケイ素原子が結合したパラジウム中心を含み、5価ともいえる形式酸化数を有する三核および四核パラジウム錯体の単離・構造解析に成功した。・二座型ヒドロシランと白金錯体との反応において、前例の無い反応によりシクロジシロキサン構造を有する二核白金錯体が生成することを見出した。・二座及び三座型ヒドロシランと10族遷移金属のホスフィン錯体との反応においては、ホスフィン配位子及びヒドロシランの立体的効果が反応に極めて大きく影響し、立体障害が小さい場合には複核錯体や高形式酸化数錯体が容易に生成することを明らかにした。一方、立体障害が大きい場合にはケイ素一ケイ素結合生成反応が進行しやすいことを見出し、触媒開発に重要な知見を得た。1、三座型ヒドロシラン(2-SiH_3C_6H_4)_2SiH_2を用いたケイ素-10族遷移金属錯体の合成三座型の標記ヒドロシランと0価10族遷移金属錯体との反応を検討した。ニッケル錆体Ni(PEt_3)_2、(Et_2PCH_2CH_2PEt_2)との反応において、溶液中および結晶中で異なる構造を示す興味深いシリルニッケル錯体が生成することを見出した。この錯体は単結晶X線構造解析により、結晶中ではη^2-(Si-H)Ni構造を持つ初めての例となるビス(シリル)η^2-(Si-H)ニッケル錯体であることが明らかとなった。一方、溶液中では、温度可変多核NMRおよび理論計算により4価Ni-H構造を持つ初めての例となるトリス(シリル)ヒドリドニッケル錯体であることを明らかにした(これらの成果はJ.Am.Chem.Soc.誌に投稿中)。一方、ホスフィン配位子をより嵩高いものにした場合、ヒドロシランの分子内反応によりSi-Si結合がニッケル錯体上で形成されることを明らかにした。2、三核ヘキサシリルパラジウム錯体の反応性の解明三核ヘキサシリルパラジウム錯体の大量合成を行い、ヒドロシランとの反応について検討を開始した。1,2-C_6H_4(SiH_3)_2との反応でテトラシリルパラジウム錯体の生成が確認し、さらに詳細を検討中である。 | KAKENHI-PROJECT-15350037 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15350037 |
ケイ素-遷移金属錯体の合成、構造、反応性および触媒反応への応用 | 3、非対称二座型ヒドロシラン1,2-C_6H_4(SiH_3)(SiMe_2H)と10族遷移金属錯体との反応性の解明Ni錯体触媒による1,2-C_6H_4(SiH_3)(SiMe_2H)の脱水素2量化反応を検討し、生成物の構造を各種スペクトル解析により同定を試み、さらにX線構造解析を検討中である。また、白金錯体との反応では、μ-シリレン架橋2量体が容易に生成することを見出した。さらにこの2量体の反応性を検討したところ、わずかな水が存在すると4員環ジシロキサン構造をもつ白金錯体が生成することが分かった。1.非対称二座型ヒドロシラン1,2-C_6H_4(SiH_3)(SiMe_2H)と10族遷移金属錯体との反応性の解明標記ヒドロシランと白金錯体Pt(dmpe)(PEt_3)_2(dmpe=Me_2PCH_2CH_2PMe_2)との反応により生成するμ・シリレン架橋二核四価白金錯体の反応性を検討した。この錯体は溶液中では容易に単核二価白金錯体[{1,2-C_6H_4(SiH_2)(SiMe_2)]}Pt(dmpe)]に解離し、二核錯体との間に平衡が存在する。この平衡混合物を60°C以上に加熱すると^<31>P-NMRにおいて4種類の異なるシグナルを与える新規複核錯体が生成することを見出した。この錯体は単結晶X線構造解析により、前例の無いμ・シリレン架橋二核三価白金錯体であることが分かった。2.三座型ヒドロシラン(2-SiH_3C_6H_4)_2SiH_2を用いたケイ素-10族遷移金属錯体の合成標記ヒドロシランとNi(R_2PCH_2CH_2PR_2)(PEt_3)_2との反応では、ホスフィン配位子上の置換基Rがエチル基の場合四価シリルニッケル錯体が生成し、嵩高いシクロヘキシル基の場合にはヒドロシランの分子内Si-Si結合生成が進行する。そこでこの置換基の効果をさらに詳細に検討した。Ni(PEt_3)_4との反応では-50°C以下で四価錯体が生成した。この錯体に-50°Cでdmpeを反応させると速やかにホスフィン配位子の交換が起こり四価構造は維持された。一方dcpe(=Cy_2PCH_2CH_2PCy_2,Cy=シクロヘキシル)を反応させた場合には、dcpeを持つ四価錯体は観測されず、ホスフィン配位子の交換が起こるとともにSi-Si結合を持つ二価錯体の生成が確認された。この結果は、嵩高いホスフィン配位子が立体効果により四価錯体上でのSi-Si結合生成を促進させることを示唆している。本年度は、3つの課題を主要課題として検討を開始したが、特に「非対称二座型ヒドロシラン1,2-C_6H_4(SiH_3)(SiMe_2H)1と10族遷移金属錯体との反応性の解明および分子間脱水素カップリング反応」において興味深い結果が得られたため、この課題に重点をおいて検討した。ヒドロシラン1と0価パラジウム錯体とを1:1の比で室温で反応させると、予想された{1,2-C_6H_4(SiH_2)(SiMe_2)}Pd^<II>(R_2PCH_2CH_2PR_2) (2a:R=Me, 2b:R=Et)を与えた。この錯体の熱的反応性はホスフィン配位子の立体的な嵩高さに大きく依存し、2bは溶液中160°Cに加熱しても安定であったが、2aは、90°C程度で反応しSi-Si結合生成を伴う脱水素二量化が進行し二核パラジウム(II)錯体が高収率で生成した。これまで類似の10族遷移金属錯体では同様の現象は見いだされていない。 | KAKENHI-PROJECT-15350037 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15350037 |
膵幹/前駆細胞の同定、及び多角的解析による生理的・病的意義の解明 | 膵臓における膵β細胞への分化機構の解明は、患者数が増加の一途を辿っている糖尿病の様々な病態の解明や治療法の開発に繋がることが期待されるが、膵組織特異的幹/前駆細胞(膵幹/前駆細胞)の明確な同定には未だ至っていない。本研究では、高い増殖能を指標に申請者が単離・同定に成功したマウス新生仔膵由来の膵幹/前駆細胞候補細胞を用い、その細胞の分子レベルでの多角的解析及び膵β細胞への分化能の評価を通して、分化機構の解明を目指す。平成22年度は、膵幹/前駆細胞候補細胞の膵β細胞への分化能を評価する目的で、in virtoでの分化誘導を試みた。細胞間接着の変化や様々な液性因子により、インスリン顆粒形成を示唆するジチゾン染色性を認めるようになった。また、インスリン生成の指標となるc-peptideの抗体に対する染色性も示した。さらに、in vitroで膵β細胞へと分化誘導した細胞をストレプトゾシン(STZ)誘発性糖尿病モデルマウスの腎被膜下に移植したところ、一過性ではあるが、血糖値の改善を認めた。これらの結果は、膵幹/前駆細胞候補細胞の膵β細胞への分化能を示唆するものである。この他、マウス成体膵における膵幹/前駆細胞候補細胞の有無について評価した。新生仔膵と同様の細胞表面抗原とフローサイトメーターを用いた解析から、マウス成体膵にも、数は少ないながら類似の細胞が存在することが確認された。免疫組織染色により、成体膵においても、膵幹/前駆細胞候補細胞は新生仔膵と類似した局在を示すことが明らかとなった。現在,in vitroあるいはin vivoで、より効率的に膵β細胞へ分化させる条件を検討中である。より良い分化誘導系の確立は、iPS細胞から分化させた膵β細胞による細胞移植治療や、薬剤等による内因性の膵β細胞分化誘導治療の前提となる、膵β細胞分化機構の解明に繋がることが期待される。膵臓における膵β細胞への分化機構の解明は、患者数が増加の一途を辿つている糖尿病の様々な病態の解明や治療法の開発に繋がることが期待されるが、膵組織特異的幹/前駆細胞(膵幹/前駆細胞)の明確な同定には未だ至っていない。本研究では、高い増殖能を指標に申請者が単離・同定に成功したマウス新生仔膵由来の膵幹/前駆細胞候補細胞を用い、その細胞の分子レベルでの多角的解析及び膵β細胞への分化の評価を通して、分化機構の解明を目指す。平成21年度はまず、膵幹/前駆細胞候補細胞の膵β細胞分化段階を検討する目的で、GeneChipシステムのマイクロアレイやRT-PCRを用い、膵β細胞特異的に発現する遺伝子の発現状態を検討した。これらの知見は単に分化段階の評価になるだけでなく、今後、in vitroでの膵β細胞への分化誘導を試みる上で有用な情報となり得るものである。一方、in vivoにおいては、膵幹/前駆細胞候補細胞から膵β細胞への分化誘導を試みた。糖尿病モデル(STZ投与)マウスの腎被膜下に膵幹/前駆細胞候補細胞を移植し、血糖値および免疫組織染色により評価した。in vivoでの分化誘導では様々な血中因子による膵β細胞分化が期待される。従って、STZマウスの他、野生型をはじめとした様々なマウスで膵β細胞への分化誘導を試みており、引き続き検討を行っている。この他、膵幹/前駆細胞候補細胞の生理的・病的意義を評価する目的で、糖尿病モデルマウス膵における膵幹/前駆細胞候補細胞の有無および局在を検討した。評価は免疫組織染色で行い、膵幹/前駆細胞候補細胞の分離・同定に用いた細胞表面マーカーに対する抗体を使用した。糖尿病モデルマウスにおいて野生型と同様に膵幹/前駆細胞候補細胞が存在するか否かは、今後、薬剤などによる内因性の膵β細胞分化誘導を目指す上で、その前提となる非常に重要な知見となる。膵臓における膵β細胞への分化機構の解明は、患者数が増加の一途を辿っている糖尿病の様々な病態の解明や治療法の開発に繋がることが期待されるが、膵組織特異的幹/前駆細胞(膵幹/前駆細胞)の明確な同定には未だ至っていない。本研究では、高い増殖能を指標に申請者が単離・同定に成功したマウス新生仔膵由来の膵幹/前駆細胞候補細胞を用い、その細胞の分子レベルでの多角的解析及び膵β細胞への分化能の評価を通して、分化機構の解明を目指す。平成22年度は、膵幹/前駆細胞候補細胞の膵β細胞への分化能を評価する目的で、in virtoでの分化誘導を試みた。細胞間接着の変化や様々な液性因子により、インスリン顆粒形成を示唆するジチゾン染色性を認めるようになった。また、インスリン生成の指標となるc-peptideの抗体に対する染色性も示した。さらに、in vitroで膵β細胞へと分化誘導した細胞をストレプトゾシン(STZ)誘発性糖尿病モデルマウスの腎被膜下に移植したところ、一過性ではあるが、血糖値の改善を認めた。これらの結果は、膵幹/前駆細胞候補細胞の膵β細胞への分化能を示唆するものである。この他、マウス成体膵における膵幹/前駆細胞候補細胞の有無について評価した。新生仔膵と同様の細胞表面抗原とフローサイトメーターを用いた解析から、マウス成体膵にも、数は少ないながら類似の細胞が存在することが確認された。 | KAKENHI-PROJECT-21790886 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21790886 |
膵幹/前駆細胞の同定、及び多角的解析による生理的・病的意義の解明 | 免疫組織染色により、成体膵においても、膵幹/前駆細胞候補細胞は新生仔膵と類似した局在を示すことが明らかとなった。現在,in vitroあるいはin vivoで、より効率的に膵β細胞へ分化させる条件を検討中である。より良い分化誘導系の確立は、iPS細胞から分化させた膵β細胞による細胞移植治療や、薬剤等による内因性の膵β細胞分化誘導治療の前提となる、膵β細胞分化機構の解明に繋がることが期待される。 | KAKENHI-PROJECT-21790886 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21790886 |
歯根膜オキシタラン線維の機能的特性の解明-眼球毛様体小帯との比較解析- | 本研究課題は歯根膜を擬似した細胞培養系を用いて歯根膜線維芽細胞軸と太くなったオキシタラン線維のなす角度を明らかにし、機能的な歯根膜オキシタラン線維を構成するために不可欠な微細線維関連分子の中からFibrillin-1の沈着に関与すると思われる分子を同定することが研究目的である。最終年度はこれまで行ってきた微細線維関連分子であるFibulin-5,MAGP-1,LTBP-2の発現抑制実験を行い、昨年度まで得られた結果の再現性を確認した。眼球無色素毛様体上皮細胞はLTBP-2の発現にともないFibrillin-1の沈着を誘導すること、Fibulin-5は全過程において発現がみとめられないこと、MAGP-1はFibrillin-1と共存することを確認した。一方、歯根膜線維芽細胞では、LTBP-2はFibrillin-1の沈着に有意な影響は認められず、Fibulin-5は共存するとともにFibrillin-1の沈着に不可欠であることを確認した。歯根膜線維芽細胞の長軸とFibrillin-1陽性オキシタラン線維の角度もやく80度に収束することも確認できた。これにより機能的オキシタラン線維の形成に必要な分子の候補として歯根膜オキシタラン線維と眼球毛様体オキシタラン線維では発現時期から異なる分子が貢献している可能性が示唆される。特に、歯根膜オキシタランには、MAGP-1が比較的後期に発現し、オキシタラン線維の成熟に関与する可能性がある。歯根膜と目のオキシタラン線維の構成分子の解析を通して機能的な歯根膜オキシタラン線維の形成に関与する分子の同定を目指している。本年度は生化学的分析と形態学的分析により研究を実施した。1.生化学的分析オキシタラン線維の架橋酵素トランスグルタミナーゼに関して、ウェスタンブロット法により非伸展群、伸展群ともにその培養細胞層への沈着が確認された。また、オキシタラン線維の構成分子であるFibrillin-1とFibrillin-2について、歯根膜線維芽細胞ではその構成比率はほぼ同じであるのに対し、目の無色素毛様体上皮細胞では、初期にFibrillin-1の発現が優位で、線維の成熟につれてFibrillin-2の発現および沈着の増加傾向が認められた。MAGP-1に関しては、歯根間線維芽細胞ではFibrillin-1陽性オキシタラン線維に共在するのに対し、目の無色素毛様体上皮細胞ではFibrillin-1陽性オキシタラン線維とは独立して成長する傾向が認められた。Fibulin-5に関しては、歯根膜線維芽細胞ではMAGP-1同様、オキシタラン線維に共在傾向が見られ、目の無色素毛様体上皮細胞では少なくとも培養3週目まではその発現が観察されなかった。LTBP-2に関しては、歯根膜細胞では染色条件が線維の成熟に比例してその沈着が観察できたが、目の無色素毛様体上皮細胞では染色性が低く現在解析中である。2.形態学的解析伸展軸とオキシタラン線維のアングル解析にあたり、それぞれが細胞長軸とのなす角度を測定した。伸展軸と細胞長軸はほぼ直行した。また、オキシタラン線維と細胞長軸はほぼ直行する傾向がみられた。これにより、伸展軸とオキシタランは同方向に再配列すると考えられた。これらの傾向は非伸展群よりも伸展群に顕著であった。歯根膜線維芽細胞と目の無色素毛様体上皮細胞の発現分子の同定とともにその発現および沈着傾向がおおむね把握できたため。歯根膜と眼球のオキシタラン線維の構成分子の解析を通して機能的なオキシタラン線維の形成に関与する分子の同定を目指している。本年度も平成27年度から引き続き、生化学的分析と形態学的分析により研究を実施した。1.生化学的分析:前年度からの課題であったLTBP-2の検出条件の改善について、歯根膜線維芽細胞の培養細胞層からの抽出は高分子画分をカットすることによりクリアにウェスタンブロットで検出する条件が確立できた。その結果、歯根膜線維芽細胞の培養細胞層では培養4週以降のオキシタラン線維の線維束増大に伴い、半定量的解析で増加傾向が顕著に認められた。一方、眼球無色素毛様体上皮細胞の細胞層からは歯根膜の培養層よりも早期の段階で増加傾向が認められ、歯根膜線維芽細胞に比べオキシタラン線維の形成に向けたfibrillinの初期の沈着機構に役割があることが示唆された。その機能解明のためには、今後MAGP-1とともにノックダウンにより機能解析を行う必要がある。2.形態学的解析:伸展軸と線維束を構成するオキシタラン線維のアングル解析により、前年度までに歯根膜線維芽細胞で、細胞の長軸にほぼ垂直に線維が再配列することが示唆されていたが、詳細な解析により約80度にその値が収束することが明らかになった。一方、眼球無色素上皮細胞では、生体ではその方向性が一定であるにもかかわらず、細胞培養系においては上皮細胞とオキシタラン線維の配向にその規則性は認められなかった。引き続き、詳細な解析が必要である。歯根膜線維芽細胞と目の毛様体無色素上皮細胞の発現分子の同定とともにその相違が明らかとなってきたため。歯根膜オキシタラン線維と眼球オキシタラン線維の構成分子の解析を通して、機能的オキシタラン線維の形成に重要な役割を果たす分子を同定することを目的としている。 | KAKENHI-PROJECT-15K11001 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K11001 |
歯根膜オキシタラン線維の機能的特性の解明-眼球毛様体小帯との比較解析- | 平成29年度も平成28年度から引き続き、生化学的分析と組織学的分析を並行して行い、相互に照会しつつ解析を行った。1.生化学的解析:LTBP-2の検出条件が確立できたことにより、眼球無色素毛様体上皮細胞層でのLTBP-2の早期発現の傾向が裏付けられ、LTBP-2がfibrillin-1の沈着、すなわちオキシタラン線維の初期形成に必須であることが明らかとなった。一方、歯根膜線維芽細胞ではLTBP-2はその発現傾向からはfibrillin-1の沈着には有意な影響を及ぼさないことが明らかとなったことから、歯根膜オキシタラン線維は眼球オキシタラン線維と比較してその形成に影響を及ぼす主要分子としてFibulin-5であることが示唆されている。また、MAGP-1は歯根膜線維芽細胞の形成するオキシタラン線維では後期に共在し、眼球無色素毛様体上皮細胞の形成するオキシタラン線維では一部が共在することから、むしろ後期の成熟過程に関与することが示唆された。2.形態学的解析:細胞長軸とオキシタラン線維との関係は、歯根膜線維芽細胞では約80度に収束することが確認された。眼球無色素毛様体上皮細胞ではランダムな配列で規則的な傾向は観察されなかった。また、生化学的解析と並行して行った免疫染色では、眼球無色素毛様体上皮細胞では、Fibulin-5は観察されず、MAGP-1およびLTBP-2は、その一部がfibrillin-1と共在することが観察された。歯根膜線維芽細胞と眼球毛様体上皮細胞に及ぼすFibulin-5, MAGP-1, LTBP-2の影響結果の再現性を確認するための追加実験を行う時間が必要である。本研究課題は歯根膜を擬似した細胞培養系を用いて歯根膜線維芽細胞軸と太くなったオキシタラン線維のなす角度を明らかにし、機能的な歯根膜オキシタラン線維を構成するために不可欠な微細線維関連分子の中からFibrillin-1の沈着に関与すると思われる分子を同定することが研究目的である。最終年度はこれまで行ってきた微細線維関連分子であるFibulin-5,MAGP-1,LTBP-2の発現抑制実験を行い、昨年度まで得られた結果の再現性を確認した。眼球無色素毛様体上皮細胞はLTBP-2の発現にともないFibrillin-1の沈着を誘導すること、Fibulin-5は全過程において発現がみとめられないこと、MAGP-1はFibrillin-1と共存することを確認した。一方、歯根膜線維芽細胞では、LTBP-2はFibrillin-1の沈着に有意な影響は認められず、Fibulin-5は共存するとともにFibrillin-1の沈着に不可欠であることを確認した。歯根膜線維芽細胞の長軸とFibrillin-1陽性オキシタラン線維の角度もやく80度に収束することも確認できた。これにより機能的オキシタラン線維の形成に必要な分子の候補として歯根膜オキシタラン線維と眼球毛様体オキシタラン線維では発現時期から異なる分子が貢献している可能性が示唆される。 | KAKENHI-PROJECT-15K11001 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K11001 |
造血幹細胞・前駆細胞ニッチの形成を調節する分子基盤の解明 | 骨髄に存在する造血幹細胞・前駆細胞の維持に必須の微小環境(ニッチ)であるCAR細胞(ケモカインCXCL12を高発現する細網細胞)に着目し,その形成を調節する分子基盤を解明するために,CAR細胞特異的な遺伝子に注目し,その役割を明らかにすることを目的として研究を行った.その結果,マイクロアレイやRT-PCR法によりCAR細胞特異的に発現する遺伝子のうちCAR細胞の形成およびニッチとしての機能に関与する可能性のある分子が複数同定された.現在は同定した複数の遺伝子について欠損マウスの作成を行い,その表現型の解析中である.造血幹細胞・前駆細胞は骨髄に存在するニッチ(niche)と呼ばれる特殊な微小環境によって維持されていると考えられており,私たちはケモカインCXCL12を高発現する細網細胞(CAR細胞)が,ニッチを構成する特別な間葉系前駆細胞であることを証明した.この知見により,造血・免疫系形成に必須のCAR細胞の形成機構の解明は,免疫系形成の理解のために重要な問題となった.そこで本研究ではCAR細胞の形成を調節する分子基盤を解明するために,CAR細胞特異的な遺伝子に注目し,その役割を明らかにすることを目的として研究を行い,以下のような成果を得た.・CAR細胞の形成および機能を調節する分子機構の解明CXCL12/GFPノックインマウスを用いてCAR細胞と,胎生期の肢芽間充織細胞や,骨芽細胞などの他の間葉系細胞での遺伝子の発現量を比較を行うに先立ち,細胞外マトリクスを除去する手法や骨芽細胞特異的細胞表面マーカーを検討すること等で骨芽細胞をより純化する方法を開発した.そして純化したCAR細胞と肢芽間充織細胞や骨芽細胞からmRNAを抽出し,マイクロアレイやRT-PCR法により発現遺伝子の比較解析を行い,CAR細胞特異的に発現する遺伝子のうちCAR細胞の形成およびニッチとしての機能に関与する可能性のある分子を複数同定した.現在は同定した複数の遺伝子について、欠損マウスの作成を行い、その表現型の解析中である.・CAR細胞の培養による解析CAR細胞の自己複製能や多分化能について解析するためにはシングルセルレベルでCAR細胞を培養する系の確立が重要であったがCAR細胞を蛍光細胞分離装置を用いて分離すると,従来の骨髄細胞の培養条件ではほとんど培養することができなかった.そこでCAR細胞に至適な培養条件の検討を行い,少ない頻度ながらシングルセルレベルでCAR細胞を培養する系が構築されつつある.骨髄に存在する造血幹細胞・前駆細胞の維持に必須の微小環境(ニッチ)であるCAR細胞(ケモカインCXCL12を高発現する細網細胞)に着目し,その形成を調節する分子基盤を解明するために,CAR細胞特異的な遺伝子に注目し,その役割を明らかにすることを目的として研究を行った.その結果,マイクロアレイやRT-PCR法によりCAR細胞特異的に発現する遺伝子のうちCAR細胞の形成およびニッチとしての機能に関与する可能性のある分子が複数同定された.現在は同定した複数の遺伝子について欠損マウスの作成を行い,その表現型の解析中である.造血幹細胞・前駆細胞は骨髄に存在するニッチ(niche)と呼ばれる特殊な微小環境によって維持されていると考えられており,私たちはケモカインCXCL12を高発現する細網細胞(CAR細胞)が,ニッチを構成する特別な間葉系前駆細胞であることを証明した.この知見により,造血・免疫系形成に必須のCAR細胞の形成機構の解明は,免疫系形成の理解のために重要な問題となった.そこで本研究ではCAR細胞の形成を調節する分子基盤を解明するために,CAR細胞特異的な遺伝子に注目し,その役割を明らかにすることを目的として研究を行い,本年度は以下のような成果を得た.・CAR細胞の形成および機能を調節する分子機構の解明CXCL12/GFPノックインマウスを用いてCAR細胞と,胎生期の肢芽間充織細胞や,骨芽細胞などの他の間葉系細胞での遺伝子の発現量を比較を行うに先立ち,細胞外マトリクスを除去する手法や骨芽細胞特異的細胞表面マーカーを検討すること等で骨芽細胞をより純化する方法を開発した.そして純化したCAR細胞と肢芽間充織細胞や骨芽細胞からmRNAを抽出し,マイクロアレイやRT-PCR法により発現遺伝子の比較解析を行い,CAR細胞特異的に発現する遺伝子のうちCAR細胞の形成およびニッチとしての機能に関与する可能性のある分子を複数同定した.・CAR細胞の培養による解析CAR細胞の自己複製能や多分化能について解析するためにはシングルセルレベルでCAR細胞を培養する系の確立が重要であったがCAR細胞を蛍光細胞分離装置を用いて分離すると,従来の骨髄細胞の培養条件ではほとんど培養することができなかった.そこでCAR細胞に至適な培養条件の検討を行い,少ない頻度ながらシングルセルレベルでCAR細胞を培養する系が構築されつつある.おおむね申請時の研究計画に沿って研究が進行している.特にCAR細胞 | KAKENHI-PROJECT-23790533 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23790533 |
造血幹細胞・前駆細胞ニッチの形成を調節する分子基盤の解明 | 特異的に発現する遺伝子のうちCAR細胞の形成およびニッチとしての機能に関与する可能性のある分子を複数同定できたことで,次年度それらの分子の機能を明らかにするための研究へと順調に推移している.またシングルセルレベルでのCAR細胞の培養系が確立されつつあることで,CAR細胞の間葉系前駆細胞としての機能の解明に向けて着実に前進している.前年度に同定されたCAR細胞特異的遺伝子のうち,必須の機能が期待できる転写因子やシグナル受容体等の遺伝子については,CXCL12-GFPノックインマウス由来の胎児線維芽細胞や胎児間葉系細胞から樹立されたCXCL12を発現しない細胞株であるNIH/3T3に強制発現させ,CXCL12や骨芽細胞・脂肪細胞特異的遺伝子の発現を誘導するか否かを明らかにする.これらの遺伝子発現を誘導する遺伝子については,遺伝子欠損マウスを作製し,そのマウスのCAR細胞の形成や造血・免疫細胞のニッチとしての機能について解析する.研究計画を遂行するため,主に実験動物の購入や,抗体やサイトカイン等の試薬,プラスチックディッシュ等の消耗品の購入に使用する.また一部研究費は,申請者が学会等に参加するために適正に使用する. | KAKENHI-PROJECT-23790533 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23790533 |
反応性プラズマ流の機能制御による環境汚染物質の浄化 | 本研究では、電離や解離等の化学反応を伴う反応性プラズマ流の機能性を熱流動場や電磁場と関連づけて制御することにより、地球環境汚染物質の分解や浄化のための基盤技術を確立するために、以下の成果を得た。1.反応速度係数が全く異なる電離と解離反応が共存するアルゴン-窒素非平衡高周波誘導プラズマに関して、7種の化学種の生成・消滅を考慮した多成分モデルによる濃度場および熱流動場解析のための基礎式を新たに提示した。数値シミュレーションにより、窒素原子、窒素原子イオン、窒素分子イオン等の反応化学種の分布は、温度分布に対応するばかりでなく、再循環領域の存在の有無、あるいは、窒素を注入する位置に非常に影響を受けることが明らかになった。2.高周波誘導非平衡アルゴンプラズマに二次ガスとしてヘリウムを注入した場合、注入位置や注入ガイド長さによるヘリウム濃度分布とプラズマ面積およびプラズマ温度分布との相関を実験的に明らかにした。3.非平衡アルゴンプラズマジェット二次ガスとしてヘリウムと反応性窒素を注入した場合、それらの濃度分布と熱流体力学特性およびプラズマパラメータとの相関を明らかにし、特に化学反応過程の影響も検討した。4.溶融灰から高周波誘導プラズマ処理により蒸発・分解と凝縮プロセスより、鉛や亜鉛を回収する技術を確立した。以上、14より環境汚染物質を分解・浄化するには、温度場に強く依存する化学反応を精密に制御することが重要であることを指摘した。本研究では、化学反応を伴うプラズマ流の機能性をマクロおよびミクロの両面から制御することにより地球環境汚染物質の浄化のための基盤技術を確立するために、以下につき実施し、途中成果を得た。1.非平衡アルゴンプラズマジェットおよび高周波誘導非平衡アルゴンプラズマに不活性ヘリウムガスと反応性窒素ガスを混入することによる磁場下での重粒子速度や温度、プラズマパラメータおよび荷電粒子の輸送係数の変化を実験的に明らかにした。特に、磁場下でのヘリウムや窒素の混合・拡散過程と化学反応の有無によるプラズマ特性の被制御性との相関をミクロな観点から明らかにし、化学反応と強く関係している機能性制御の重要性を指摘した。2.反応速度係数の全く異なる電離-再結合および解離-再結合が共存する非平衡高周波誘導窒素プラズマの電磁熱流動解析のための基礎式を誘導した。熱非平衡性を考慮するために二温度モデルを採用し、窒素分子、窒素原子、電子の化学種の数密度を決定するための電離および解離反応式を構成方程式として加え、多成分のモデルの提示をした。現在、スーパーコンピュータを用いて多成分モデルと二温度モデルのハイブリッド化による数値シミュレーション用プログラムコードを作成中である。特に、温度の函数である反応速度係数の取り扱いが困難であることが判明している。本研究では、電離や解離等の化学反応を伴う反応性プラズマ流の機能性を熱流動場や電磁場と関連づけて制御することにより、地球環境汚染物質の分解や浄化のための基盤技術を確立するために、以下の成果を得た。1.反応速度係数が全く異なる電離と解離反応が共存するアルゴン-窒素非平衡高周波誘導プラズマに関して、7種の化学種の生成・消滅を考慮した多成分モデルによる濃度場および熱流動場解析のための基礎式を新たに提示した。数値シミュレーションにより、窒素原子、窒素原子イオン、窒素分子イオン等の反応化学種の分布は、温度分布に対応するばかりでなく、再循環領域の存在の有無、あるいは、窒素を注入する位置に非常に影響を受けることが明らかになった。2.高周波誘導非平衡アルゴンプラズマに二次ガスとしてヘリウムを注入した場合、注入位置や注入ガイド長さによるヘリウム濃度分布とプラズマ面積およびプラズマ温度分布との相関を実験的に明らかにした。3.非平衡アルゴンプラズマジェット二次ガスとしてヘリウムと反応性窒素を注入した場合、それらの濃度分布と熱流体力学特性およびプラズマパラメータとの相関を明らかにし、特に化学反応過程の影響も検討した。4.溶融灰から高周波誘導プラズマ処理により蒸発・分解と凝縮プロセスより、鉛や亜鉛を回収する技術を確立した。以上、14より環境汚染物質を分解・浄化するには、温度場に強く依存する化学反応を精密に制御することが重要であることを指摘した。 | KAKENHI-PROJECT-10875038 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10875038 |
耐糖能障害は悪性新生物罹患の危険因子となりうるか、舟形町疫学研究 | 耐糖能と悪性新生物発症の関連について検討した。舟形町全住民対象の糖尿病検診の4コホートを対象に悪性新生物と耐糖能との関係をがん登録事業の届出票による悪性新生物発症調査を行い、発症をエンドポイントとして、耐糖能3群について検討した。追跡しえた検診者総数は3984名(男性1779,女性2205)、受診時年齢・男性55.1歳±11.7SD,女性54.1歳±12.8。平均観察期間は164.2±61.7ヶ月、登録がん発症は414例。総悪性新生物発症はNGT群に対しDM群では有意差あり(p=0.0489 Logrank)。耐糖能障害は悪性新生物発症の危険因子であることが示唆された。耐糖能と悪性新生物発症の関連について検討した。舟形町全住民対象の糖尿病検診の4コホートを対象に悪性新生物と耐糖能との関係をがん登録事業の届出票による悪性新生物発症調査を行い、発症をエンドポイントとして、耐糖能3群について検討した。追跡しえた検診者総数は3984名(男性1779,女性2205)、受診時年齢・男性55.1歳±11.7SD,女性54.1歳±12.8。平均観察期間は164.2±61.7ヶ月、登録がん発症は414例。総悪性新生物発症はNGT群に対しDM群では有意差あり(p=0.0489 Logrank)。耐糖能障害は悪性新生物発症の危険因子であることが示唆された。山形県舟形町での糖尿病検診の3つのコホート(第1コホート(1990-1992年受検者)、第2コホート(1995-1997年受検者)および第3コホート(2000年-2002年))を対象に悪性新生物発症の有無について調査した。対象者は第1コホートで2534名、第2コホートで2013名おり、約1000名が重複するが、総勢約3500名の対象者となる0アンケートの郵送による調査を検討したが、回収率が低かった場合、本研究の精度の低下が予想されるため、山形県がん登録事業への照会を行った。山形県がん登録事業は1974年から開始されて30数年を経過しているが、1990年以来高水準の登録精度を維持しており、医療機関からの届出票による登録率は全県で約80%である。山形大学医学部倫理委員会の承認を得て、このがん登録事業に登録者照会を行い、舟形町糖尿病検診受検者の悪性新生物発症調査を行っている。現在照合作業中である。他方、食事から摂取される脂肪酸にはリノール酸を代表とするω6系と,エイコサペンタエン酸を代表とするω3系に大別されるが、ω6系の発癌促進効果、およびω3系の発癌抑制効果との関連も指摘されている。血清保存に同意の得られた検診者保存血清を用いて、脂肪酸分画の測定と空腹時血清インスリン濃度の測定を行った。すでに得られている耐糖能の情報とあわせて解析に用いることを検討中である。山形県舟形町での糖尿病検診の3つのコホート(第1コホート(1990-1992年受検者)、第2コホート(1995-1997年受検者)および第3コホート(2000年-2002年))を対象に悪性新生物発症の有無について調査を行った。対象者は第1コホートで2534名、第2コホートで2013名おり、約1000名が重複するが、総勢約3500名の対象者について山形県がん登録事業への照会を行った。山形県がん登録事業は1974年から開始されて30数年を経過しているが、1990年以来高水準の登録精度を維持しており、医療機関からの届出票による登録率は全県で約80%である。山形大学医学部倫理委員会の承認を得て、このがん登録事業に登録者照会を行い、舟形町糖尿病検診受検者の悪性新生物発症調査を行い、照合結果が得られた。そのうち不明部分については可能な限り発症時に受療した医療機関にそのときの病状、症状を文書にて問い会わせ中であるが、情報が不十分なため対象医療機関に直接出向き診断の不明点を解決することも検討している。他方、食事から摂取される脂肪酸のうちリノール酸を代表とするω6系と,エイコサペンタエン酸を代表とするω3系についての測定結果と悪性新生物の発症状況との関連を検索中である。これらをすべて併せてすでに得られている耐糖能の情報とあわせて解析に用いる予定である。山形県舟形町での糖尿病検診の3つのコホート(第1コホート(1990-1992年受検者)、第2コホート(1995-1997年受検者)および第3コホート(2000年-2002年))を対象に悪性新生物発症の有無について調査を行った。対象者は第1コホート第3コホート総勢約3500名の対象者について山形県がん登録事業への照会を行った。 | KAKENHI-PROJECT-20590633 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20590633 |
耐糖能障害は悪性新生物罹患の危険因子となりうるか、舟形町疫学研究 | 山形大学医学部倫理委員会の承認を得て、このがん登録事業に登録者照会を行い、舟形町糖尿病検診受検者の悪性新生物発症調査を行い、照合結果が得られ、解析中である。他方、血栓症・出血性疾患・動脈硬化症等の診断・予防の指標になりうるともされる血清脂肪酸分画比と耐糖能状態との関係について比較検討した。糖尿病検診受診者1815人の脂肪酸分画(ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸(AA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA))を測定し、耐糖能状況と比較した。EPA/AA比は正常型群(平均0.534)に比べ、境界型(0.594)および糖尿病型(0.613)は有意に高値(それぞれp=0.001,p=0.009)。ω3/ω6比(EPA-DHA/ジホモ-γ-リノレン酸・AA)は正常型群(1.10)に比し境界型糖尿病型ともに有意に高値(1.20,1.22,p<0.001,p=0.004)であった。予想に反して、糖尿病群、境界型群で正常型群に比してEPA/AA比・ω3/ω6比は高かった。 | KAKENHI-PROJECT-20590633 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20590633 |
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