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倍数化を伴う二型花柱性から雌雄同株性への進化過程の解明
またDNAマーカーを用いたナガミボチョウジと周辺種の系統解析・集団遺伝的解析を実施した。また母親種と考えられる近縁種ボチョウジとの系統関係と土壌適応の差など、種間関係について調査を進めた。さらに、昨年度に加え新たに数種の近縁種の性表現を調査して、雌雄同株性の進化的背景を探索した。そして琉球列島に分布するボチョウジ属3種(ナガミボチョウジ・ボチョウジ・シラタマカズラ)の種子休眠・発芽特性の実験を実施した。ナガミボチョウジは、多くの花が雄花か雌花という単性花をつけるが、稀に両性花を作ることもわかった。株としては雌株・雌雄異花同株を中心として、雄株や両全性株を同一集団に含む雑居性であることがわかった。DNAによる系統解析では、第一にナガミボチョウジとボチョウジの近縁性が示され、さらにそれらが中国大陸またはフィリピン等の東南アジアからやってきたことが示唆されたが、周辺種のサンプルが足りないためにその起源を特定するには至らなかった。ナガミボチョウジは、8倍体であるが、少なくとも4倍体であるボチョウジが片親であることが想定された。ナガミボチョウジの倍数性が、ボチョウジの単純倍数化による同質倍数体であるか、ボチョウジと第三種との交雑由来の異質倍数体である可能性があり、現在ゲノムデータを解析して、その起源の解明を試みている。本研究では二型花柱性を主とするアカネ科ボチョウジ属において、雌雄異花同株を含む特異な性表現を有する可能性が考えられたナガミボチョウジについて、その性表現と繁殖の実態を明らかにし、その進化的背景を解明することを目的として調査を進めた。その結果、ナガミボチョウジは雌雄異花同株や雌株等を集団内に含む雑居性という複雑な性表現を有し、主にハエ類やハチ類により送粉されていることが明らかになった。近縁種との系統関係にはなお不明な部分が残されたものの、最も近縁で側所的に生育するボチョウジが4倍体であることなどを考慮すると、8倍体に倍数化したことが現在見られる性表現の進化に関与した可能性が考えられた。初年度に進めるべき材料のサンプリングと解析用のDNAマーカーの開発が計画通り順調に進んでいる。また、ナガミボチョウジと推定母種であるボチョウジの種間関係を、交雑現象と土壌適応の違いという2点から調査している。ナガミボチョウジがどのように種分化したのかという問いについて、分子と生態の両面から迫りつつある。また不確定であった近縁数種の性表現についても明らかにすることができた。これらの結果の一部は論文、学会大会にて順次発表している。今後は絞り込んだマーカーを用いたDNA解析を精力的に進めるとともに、倍数性の実験も外注も含めて加速させる予定である。具体的には、DNAによる近縁種を含めた系統解析、集団ごとの倍数性の解析、新規開発マーカーを用いた染色体セットの由来の解明を進める。また、サンプリングできていない一部の集団について、サンプリングを進め、解析する。さらに、近縁種の性表現の解析も進めることで、系統内における雌雄同株性の進化経路に関する背景をより詳細に解明する。分子系統解析のデータ不足分を収集し、解析のまとめを行う。倍数性についても全体の情報を整理し、DNA含有量等の情報を順次論文として出版していく予定である。更に雑種が見られることが判明している沖縄島の2集団に於いて、雑種のスクリーニング、交雑の実態調査、送粉者と繁殖干渉の実験を予定している。
KAKENHI-PROJECT-26840130
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26840130
水素結合性強相関ゲル膜の創製と動的結合制御による生体膜類似物質輸送
本研究では,新たに水素結合性の強相関分子としてトリエトキシシランを有する新規な核酸塩基誘導体を合成し,それとポリビニルアルコール(PVA)とのゾルーゲル反応によって水素結合性キャリヤーを有する強相関ゲル膜を調製した。さらに,得られた水素結合性強相関ゲル膜と透過物質との水素結合形成能を動的制御することによって,生体膜の能動輸送を模倣した物質輸送(上り坂輸送)を試みた。その結果,以下のような成果が得られた。1.ゾルーゲル法を利用した水素結合性強相関ゲル膜の調製末端にトリエトキシシランを有するウラシル誘導体とポリビニルアルコール(PVA)とのゾルーゲル反応によって,従来よりも多量に水素結合性キャリヤーを有する強相関ゲル膜を調製することができた。また,その際に水素結合性キャリヤーを効率よく導入する膜調製条件も明らかにした。2.水素結合性強相関ゲル膜と核酸塩基類との水素結合形成能の検討得られたウラシル導入ゲル膜に対する核酸塩基類の吸着量測定を行った結果,中性付近のpHで最も高い吸着量を示し,酸性およびアルカリ性条件下では急激に吸着量が減少した。3.水素結合性強相関ゲル膜による核酸塩基の上り坂輸送外部溶液中のpH差を駆動力としてウラシル導入ゲル膜により核酸塩基類の上り坂輸送を行った結果,ウラシルと相補的水素結合を形成するアデニンは上り坂輸送されたが,水素結合を形成しないシトシンは上り坂輸送されなかった。4.核酸塩基類の上り坂輸送挙動に及ぼす輸送条件の影響膜を介したpH差によって核酸塩基類の上り坂輸送量は大きく変化し,酸性側pHを中性付近に近い条件で行うと最も効率よくアデニンの上り坂輸送が可能になった。したがって,膜を介して一方でアデニン吸着量の高い条件で,もう一方をアデニン吸着量の低い条件で輸送実験を行った場合に,最も大きな輸送量を示した。本研究では,新たに水素結合性の強相関分子を合成し,ゾル-ゲル法を利用することによって水素結合性強相関ゲル膜を創製した。さらに,得られた強相関ゲル膜と透過物質との水素結合形成能を外部刺激で動的制御することによって,生体膜の能動輸送を模倣した物質輸送(上り坂輸送)を試みた。その結果,以下のような成果が得られた。1.ゾル-ゲル法を利用した水素結合性強相関ゲル膜の調製末端にトリエトキシシランを有するウラシル誘導体とポリビニルアルコール(PVA)とのゾル-ゲル反応によって,効率よくウラシルを導入した水素結合性強相関ゲル膜を調製することができた。2.水素結合性強相関ゲル膜と核酸塩基類との相互作用の検討得られたウラシル導入ゲル膜と核酸塩基類との相互作用を解明するため,様々な条件下で核酸塩基類の吸着量測定を行った。その結果,相補的水素結合によってアデニンはウラシル導入ゲル膜内に選択的に吸着されることがわかった。また,その吸着量はpHに大きく影響され,水素結合阻害剤である尿素を添加すると著しく吸着が阻害された。3.水素結合性強相関ゲル膜による核酸塩基の上り坂輸送外部溶液中のpHを変化させることによって輸送物質とキャリヤーとの相互作用を制御し,本研究で得られたウラシルが導入された水素結合性強相関ゲル膜を用いて核酸塩基類の上り坂輸送を行った。その結果,ウラシルと相補的水素結合を形成するアデニンのみが濃度勾配に逆らって上り坂輸送された。また,その導入したウラシルキャリアー濃度に応じてアデニン輸送量も変化した。しかし,水素結合を形成しない核酸塩基はウラシル導入ゲル膜によってほとんど輸送されなかった。本研究では,新たに水素結合性の強相関分子としてトリエトキシシランを有する新規な核酸塩基誘導体を合成し,それとポリビニルアルコール(PVA)とのゾルーゲル反応によって水素結合性キャリヤーを有する強相関ゲル膜を調製した。さらに,得られた水素結合性強相関ゲル膜と透過物質との水素結合形成能を動的制御することによって,生体膜の能動輸送を模倣した物質輸送(上り坂輸送)を試みた。その結果,以下のような成果が得られた。1.ゾルーゲル法を利用した水素結合性強相関ゲル膜の調製末端にトリエトキシシランを有するウラシル誘導体とポリビニルアルコール(PVA)とのゾルーゲル反応によって,従来よりも多量に水素結合性キャリヤーを有する強相関ゲル膜を調製することができた。また,その際に水素結合性キャリヤーを効率よく導入する膜調製条件も明らかにした。2.水素結合性強相関ゲル膜と核酸塩基類との水素結合形成能の検討得られたウラシル導入ゲル膜に対する核酸塩基類の吸着量測定を行った結果,中性付近のpHで最も高い吸着量を示し,酸性およびアルカリ性条件下では急激に吸着量が減少した。3.水素結合性強相関ゲル膜による核酸塩基の上り坂輸送外部溶液中のpH差を駆動力としてウラシル導入ゲル膜により核酸塩基類の上り坂輸送を行った結果,ウラシルと相補的水素結合を形成するアデニンは上り坂輸送されたが,水素結合を形成しないシトシンは上り坂輸送されなかった。4.核酸塩基類の上り坂輸送挙動に及ぼす輸送条件の影響膜を介したpH差によって核酸塩基類の上り坂輸送量は大きく変化し,酸性側pHを中性付近に近い条件で行うと最も効率よくアデニンの上り坂輸送が可能になった。
KAKENHI-PROJECT-14045266
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14045266
水素結合性強相関ゲル膜の創製と動的結合制御による生体膜類似物質輸送
したがって,膜を介して一方でアデニン吸着量の高い条件で,もう一方をアデニン吸着量の低い条件で輸送実験を行った場合に,最も大きな輸送量を示した。
KAKENHI-PROJECT-14045266
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14045266
ウッドルフ鉱微結晶の微生物生成系を利用した坑廃水処理技術への挑戦
青森県内の旧鉱山坑道内の廃水路において、水質測定及び底質試料の採取を行った。調査した坑廃水の性状として、pH 6.66.7、水温1516°C、DO 3.15.8 mg/L、溶存Fe、Mn、Znをそれぞれ0.10.4 mg/L、2227 mg/L、6.48.2 mg/L含有していた。一般的に、これらの濃度レベルでMnおよびZnイオンが含まれる培養液ではマンガン酸化菌の活性は大きく阻害されるが、水路内では黒色のマンガン酸化物が堆積し、マンガン酸化が進行していた。マンガン酸化物はナノシート構造をもつバーネス鉱様または含亜鉛マンガン酸化物鉱物であるウッドルフ鉱様で、マンガン酸化物中には亜鉛がMnに対するモル比で1020%含まれていた。底質試料から全DNAを抽出し、16S rRNA遺伝子をPCR増幅後(515F/806Rプライマー)にアンプリコン解析を行い、微生物群集構造を調査した。その結果、鉄、硫黄、メタン、窒素化合物の循環に関与すると推察される多様な細菌および古細菌が検出された。また、以前に代表者が別の環境試料から分離したマンガン酸化細菌(U9-1i株)とよく一致する配列が検出された。さらに、マンガン酸化菌の分離を試みた結果、この配列を有するマンガン酸化細菌が分離され、坑廃水中のマンガン酸化に関与している可能性が示された。U9-1i株を用いた培養試験によって、本菌のマンガン酸化活性は高濃度Mnイオンおよび低濃度Znイオン等により強く抑制されることが示された。しかし、予め低濃度Mnイオンを含む培地で繰り返し培養しておくと馴養的な効果が現れ、高濃度MnイオンやZnイオンの存在下でもマンガン酸化が進行することが明らかになった。このため、坑廃水路内でも同様の効果により生物的なマンガン酸化反応が進行している可能性が考えられた。坑廃水路中で生成するマンガン酸化物の性状とマンガン酸化細菌の関与について明らかにした。さらにモデル微生物(U9-1i株)を用いた培養試験により、マンガン及び亜鉛の共存下でもマンガン酸化が進行し得るとの新しい知見を見出したことから、坑廃水内でのマンガン酸化物生成過程について、当初の目標を十分に達成する成果が得られている。微生物群集構造の解析では、坑廃水路内の微生物生態として、鉄、硫黄、メタン、窒素化合物の循環機能をもつこと、U9-1i近縁種がマンガン酸化細菌の一つとして働いていることが示唆され、坑廃水の元素循環に関与する微生物群集を特徴付けることができた。このことから研究は順調に進んでいると考えている。有機物の外部供給がほとんどない坑廃水路内において、従属栄養性のマンガン酸化細菌を含む微生物群集がどのような炭素フローをもつのかを明らかにすることは極めて重要な課題である。このため、微生物群集における炭素の供給源の解析を進める。また、ラボスケールの接触酸化型バイオリアクターを構築し、模擬坑廃水または実廃水を連続流入させて除マンガン処理に及ぼす運転条件(滞留時間、金属イオン濃度、炭素源添加の有無)の影響を解析する。槽内で生成するマンガン酸化物の構造特性を解析するとともに、微生物群集構造も調査する。最後に、坑廃水中におけるウッドルフ鉱微結晶の微生物生成系に関して研究総括するとともに、水処理への適用性を評価する。青森県内の旧鉱山坑道内の廃水路において、水質測定及び底質試料の採取を行った。調査した坑廃水の性状として、pH 6.66.7、水温1516°C、DO 3.15.8 mg/L、溶存Fe、Mn、Znをそれぞれ0.10.4 mg/L、2227 mg/L、6.48.2 mg/L含有していた。一般的に、これらの濃度レベルでMnおよびZnイオンが含まれる培養液ではマンガン酸化菌の活性は大きく阻害されるが、水路内では黒色のマンガン酸化物が堆積し、マンガン酸化が進行していた。マンガン酸化物はナノシート構造をもつバーネス鉱様または含亜鉛マンガン酸化物鉱物であるウッドルフ鉱様で、マンガン酸化物中には亜鉛がMnに対するモル比で1020%含まれていた。底質試料から全DNAを抽出し、16S rRNA遺伝子をPCR増幅後(515F/806Rプライマー)にアンプリコン解析を行い、微生物群集構造を調査した。その結果、鉄、硫黄、メタン、窒素化合物の循環に関与すると推察される多様な細菌および古細菌が検出された。また、以前に代表者が別の環境試料から分離したマンガン酸化細菌(U9-1i株)とよく一致する配列が検出された。さらに、マンガン酸化菌の分離を試みた結果、この配列を有するマンガン酸化細菌が分離され、坑廃水中のマンガン酸化に関与している可能性が示された。U9-1i株を用いた培養試験によって、本菌のマンガン酸化活性は高濃度Mnイオンおよび低濃度Znイオン等により強く抑制されることが示された。しかし、予め低濃度Mnイオンを含む培地で繰り返し培養しておくと馴養的な効果が現れ、高濃度MnイオンやZnイオンの存在下でもマンガン酸化が進行することが明らかになった。このため、坑廃水路内でも同様の効果により生物的なマンガン酸化反応が進行している可能性が考えられた。坑廃水路中で生成するマンガン酸化物の性状とマンガン酸化細菌の関与について明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-18K19880
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K19880
ウッドルフ鉱微結晶の微生物生成系を利用した坑廃水処理技術への挑戦
さらにモデル微生物(U9-1i株)を用いた培養試験により、マンガン及び亜鉛の共存下でもマンガン酸化が進行し得るとの新しい知見を見出したことから、坑廃水内でのマンガン酸化物生成過程について、当初の目標を十分に達成する成果が得られている。微生物群集構造の解析では、坑廃水路内の微生物生態として、鉄、硫黄、メタン、窒素化合物の循環機能をもつこと、U9-1i近縁種がマンガン酸化細菌の一つとして働いていることが示唆され、坑廃水の元素循環に関与する微生物群集を特徴付けることができた。このことから研究は順調に進んでいると考えている。有機物の外部供給がほとんどない坑廃水路内において、従属栄養性のマンガン酸化細菌を含む微生物群集がどのような炭素フローをもつのかを明らかにすることは極めて重要な課題である。このため、微生物群集における炭素の供給源の解析を進める。また、ラボスケールの接触酸化型バイオリアクターを構築し、模擬坑廃水または実廃水を連続流入させて除マンガン処理に及ぼす運転条件(滞留時間、金属イオン濃度、炭素源添加の有無)の影響を解析する。槽内で生成するマンガン酸化物の構造特性を解析するとともに、微生物群集構造も調査する。最後に、坑廃水中におけるウッドルフ鉱微結晶の微生物生成系に関して研究総括するとともに、水処理への適用性を評価する。
KAKENHI-PROJECT-18K19880
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K19880
歯原性上皮細胞および歯髄細胞を用いた歯質再建のための細胞療法の開発
歯髄の保存は歯のlongevityにとっても重要であり、失われた歯髄の再生は最も注目されている話題のひとつである。我々は歯髄組織のみならず、象牙質やエナメル質の再生も視野に入れた独創的な再生法の研究を行っている。すなわち、歯髄の幹細胞から歯髄細胞、象牙芽細胞、エナメル芽細胞を誘導し、断髄処置などで失われた歯髄だけでなく、歯質(エナメル質、象牙質)をも再建するという新しい発想の治療法の開発を目指している。今回、まずエナメル質の再建の基礎的研究として、ラット切歯を用いたアメロブラスト細胞株クローンの樹立を試みた。その結果、野生型ラット由来のクローン180種、そしてエナメル質形成不全ラット由来の細胞クローン70種を確立することができた。さらに、これらのクローンを用いてアメロブラストへの分化、誘導法を検討した。その結果、アデニンヌクレオチド誘導体6BAPで処理し、アメロジェニン産生を指標とする、「アメロブラスト分化誘導プロトコール」を確立することができた。また、歯髄組織における幹細胞を採取することを目標に、ラット歯髄細胞を分離し、FACSを用いてside population(幹細胞)分画の存在を確認した。なお、歯髄組織から分離した細胞株を、βグリセロホスフェイトとアスコルビン酸で石灰化させるプロトコールも確立しており、象牙質再建への足がかりを築いている。また、歯髄や歯質の再建に寄与する重要な細胞基質成分であるsyndecan分子群の分布状況も免疫組織学的に確認している。今後、歯髄組織から得られた幹細胞を分化誘導し、象牙芽細胞、エナメル芽細胞へと分化させる方法を確立するとともに、アメロブラストおよび歯髄幹細胞を細胞シート化し、これによるエナメル質と象牙質の再建法の確立を目指す。歯髄の保存は歯のlongevityにとっても重要であり、失われた歯髄の再生は最も注目されている話題のひとつである。我々は歯髄組織のみならず、象牙質やエナメル質の再生も視野に入れた独創的な再生法の研究を行っている。すなわち、歯髄の幹細胞から歯髄細胞、象牙芽細胞、エナメル芽細胞を誘導し、断髄処置などで失われた歯髄だけでなく、歯質(エナメル質、象牙質)をも再建するという新しい発想の治療法の開発を目指している。今回、まずエナメル質の再建の基礎的研究として、ラット切歯を用いたアメロブラスト細胞株クローンの樹立を試みた。その結果、野生型ラット由来のクローン180種、そしてエナメル質形成不全ラット由来の細胞クローン70種を確立することができた。さらに、これらのクローンを用いてアメロブラストへの分化、誘導法を検討した。その結果、アデニンヌクレオチド誘導体6BAPで処理し、アメロジェニン産生を指標とする、「アメロブラスト分化誘導プロトコール」を確立することができた。また、歯髄組織における幹細胞を採取することを目標に、ラット歯髄細胞を分離し、FACSを用いてside population(幹細胞)分画の存在を確認した。なお、歯髄組織から分離した細胞株を、βグリセロホスフェイトとアスコルビン酸で石灰化させるプロトコールも確立しており、象牙質再建への足がかりを築いている。また、歯髄や歯質の再建に寄与する重要な細胞基質成分であるsyndecan分子群の分布状況も免疫組織学的に確認している。今後、歯髄組織から得られた幹細胞を分化誘導し、象牙芽細胞、エナメル芽細胞へと分化させる方法を確立するとともに、アメロブラストおよび歯髄幹細胞を細胞シート化し、これによるエナメル質と象牙質の再建法の確立を目指す。
KAKENHI-PROJECT-17659598
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17659598
複合材料の振動測定による物性計測および欠陥検出に関する研究
振動測定による欠陥検出に関して2つの研究を進めた。まず、繊維束破断、層間はくりなどの欠陥を含んだガラスロービング複合材料を成形し、その静的特性、振動特性を測定し、欠陥による機械的性質の変化との関係を調べた。とくに粘弾性特性、エネルギ損失係数の測定に重点を置き、これについては機械技術研究所との共同研究を行った。その結果、欠陥の存在によって弾性率は必ず低下するが、欠陥の種類によっては、損失係数の変化する場合と、変化しない場合のあることが明らかとなった。このことから逆に欠陥の種類を同定することが可能である。この研究結果の一部は第24回FRPシンポジウムに於いて発表した。二つ目の研究としてウィスカ/プラスチック系複合材料を取り上げ、界面破壊によって生じる欠陥を動的特性の変化から検出することを現在研究中である。振動測定による欠陥検出に関して2つの研究を進めた。まず、繊維束破断、層間はくりなどの欠陥を含んだガラスロービング複合材料を成形し、その静的特性、振動特性を測定し、欠陥による機械的性質の変化との関係を調べた。とくに粘弾性特性、エネルギ損失係数の測定に重点を置き、これについては機械技術研究所との共同研究を行った。その結果、欠陥の存在によって弾性率は必ず低下するが、欠陥の種類によっては、損失係数の変化する場合と、変化しない場合のあることが明らかとなった。このことから逆に欠陥の種類を同定することが可能である。この研究結果の一部は第24回FRPシンポジウムに於いて発表した。二つ目の研究としてウィスカ/プラスチック系複合材料を取り上げ、界面破壊によって生じる欠陥を動的特性の変化から検出することを現在研究中である。
KAKENHI-PROJECT-06650757
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06650757
カルシニューリンとの拮抗的関係を利用したマップキナーゼ経路の分子遺伝学的解析
1.マップキナーゼ経路を制御する新規RNA結合蛋白質Rnc1の発見:カルシニューリンのKO表現型を相補する多コピー抑圧遺伝子の一つを単離し,配列決定をしたところ,酵母からヒトまで高度に保存されたKHドメインを持つ新規RNA結合蛋白質をコードしていた。Rnc1の遺伝子をノックアウトするとPmk1マップキナーゼの燐酸化が亢進している事が確認された。また、このRNA結合蛋白質は、Pmk1マップキナーゼを抑制すると思われるPmp1マップキナーゼホスファターゼのmRNAと結合する事が示された。Rnc1KO株ではPmp1mRNAが不安定である事も示された。さらに,Pmk1はRnc1を直接燐酸化し,燐酸化されたRnc1は燐酸化されていないRnc1よりも強くPmp1mRNAに結合し,安定化することが明らかになった。この結果,mRNAの増加は転写制御だけではなく,mRNAの安定性制御という別のメカニズムの存在が明らかになった。2.zincfinger型転写因子Prz1の同定:カルシニューリンの下流で働く転写因子Prz1を同定した。さらにカルシニューリンの下流にPrz1を介する経路と介さない経路があり,マップキナーゼと括抗するのはPrz1を介さない系であることも明らかにした。3.ユビキチンホメオスターシスとストレス応答に関与するLub1の発見:ストレス感受性を指標としたスクリーニングによりlub1遺伝子を発見したlub1遺伝子KO細胞は,細胞内ユビキチン量が著しく低下したことから,lub1遺伝子はユビキチン代謝に重要な役割を果たすことが示された。1.マップキナーゼ経路を制御する新規RNA結合蛋白質Rnc1の発見:カルシニューリンのKO表現型を相補する多コピー抑圧遺伝子の一つを単離し,配列決定をしたところ,酵母からヒトまで高度に保存されたKHドメインを持つ新規RNA結合蛋白質をコードしていた。Rnc1の遺伝子をノックアウトするとPmk1マップキナーゼの燐酸化が亢進している事が確認された。また、このRNA結合蛋白質は、Pmk1マップキナーゼを抑制すると思われるPmp1マップキナーゼホスファターゼのmRNAと結合する事が示された。Rnc1KO株ではPmp1mRNAが不安定である事も示された。さらに,Pmk1はRnc1を直接燐酸化し,燐酸化されたRnc1は燐酸化されていないRnc1よりも強くPmp1mRNAに結合し,安定化することが明らかになった。この結果,mRNAの増加は転写制御だけではなく,mRNAの安定性制御という別のメカニズムの存在が明らかになった。2.zincfinger型転写因子Prz1の同定:カルシニューリンの下流で働く転写因子Prz1を同定した。さらにカルシニューリンの下流にPrz1を介する経路と介さない経路があり,マップキナーゼと括抗するのはPrz1を介さない系であることも明らかにした。3.ユビキチンホメオスターシスとストレス応答に関与するLub1の発見:ストレス感受性を指標としたスクリーニングによりlub1遺伝子を発見したlub1遺伝子KO細胞は,細胞内ユビキチン量が著しく低下したことから,lub1遺伝子はユビキチン代謝に重要な役割を果たすことが示された。
KAKENHI-PROJECT-15024244
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15024244
左右反転立体音響を用いた人間の環境適応性の脳機能解析
本研究の目的は,左右の聴空間が反転した特殊環境をウェアラブルに創出し,その環境への持続的な接触下での脳活動を追うことで,人間がもつ環境適応機能のメカニズムに迫ることである.平成30年度には,平成29年度に行った左右反転立体音響の特性評価と段階的順応現象の追試の結果に基づいて,左右反転立体音響における視聴覚統合モデルの獲得と定着の検討を引き続き行った.具体的には,実験参加者がこの特殊環境に対して約1ヶ月間にわたって接触していた際に取得した脳計測データの解析を進めた.平成29年度と同様に脳計測は,左右いずれかに出現する視覚手掛かりと音の組み合わせに対して一致か不一致かを実験参加者が弁別する視聴覚照合課題,および積極的な弁別をしないように別課題を行う視聴覚サイモン課題下で行われた.両課題における左右の一致と不一致に対する脳活動を比較したところ,視聴覚照合課題でのみ,約1週目で生じる主観的な違和感の減少と相関する誤差伝播に固有な脳リズムの変容,約2週目で生じる手指の応答性の遅れと相関する意思決定に固有な脳リズムの増大などが観測された.よって,空間情報に関する明示的な視聴覚統合は約1週目から段階的に新たな統合モデルに従うようになるが,潜在的な視聴覚統合は通常の統合モデルに従い続け,遅れて新しい統合モデルの影響を受けるようになる可能性が支持された.また新しいモデルと通常のモデルの切り替えが必要な状況下における視聴覚統合モデルの選択と利用の検討から,約2週目でモデル選択を誤りやすくなることが分かりつつある.特殊環境から通常環境へと戻した際の還元過程やその後の再順応過程に注目することで,視聴覚統合モデルの消失と再獲得についての検討も始めており,平成31年度の研究に備えることができた.研究期間の2年目である平成30年度においては,当初の予定通り,ウェアラブルデバイスを用いて構築した左右反転立体音響への約1カ月にわたる接触過程を多角的に調べ,視聴覚統合モデルの獲得と定着の詳細な検討を行った.特に明示的な視聴覚統合が生じる視聴覚照合課題と潜在的な視聴覚統合が生じる視聴覚サイモン課題に対する脳計測データの解析を進め,行動と脳活動の双方の側面から両統合の相違を明らかにできた.また,新しい統合モデルと通常の統合モデルの切り替えが必要な状況を創出し,視聴覚統合モデルの選択と利用についても併せて検討を行うことができた.更には,左右反転立体音響の聴空間から通常の聴空間へと戻した際の還元過程や左右反転立体音響の聴空間へと再移行した際の再順応過程を調べることによって,視聴覚統合モデルの消失と再獲得についても検討を始めることができた.研究計画の通り,その詳細な検討は平成31年度に引き続き行う予定である.人間がもつ環境適応機能のメカニズムを解明する上で重要な知見が得られたことから,平成30年度の計画は概ね順調に実施できたと言える.平成31年度においては,平成30年度に得られた予備的な知見に基づいて,左右反転立体音響の聴空間から通常の聴空間へと戻した際の還元過程や左右反転立体音響の聴空間へと再移行した際の再順応過程を引き続き調べ,視聴覚統合モデルの消失と再獲得の詳細を明らかにする予定である.必要に応じて,視聴覚統合モデルの選択と利用についても併せて検討を行う.また,視聴覚統合モデルに関する知見の一般性を検証するために,手指に関する特殊触空間を実現し,この空間への接触過程における視触覚統合モデルの動態を調べて,視聴覚統合モデルの動態と比較する.ただし,この特殊触空間への接触期間や方法は,実験が可能な範囲で状況に応じて調整する.最後に,これまでに得られた全ての知見に基づいて,人間の環境適応機能のメカニズムを総合的に考察する.脳機能計測手法については,目的や使用機会に応じて適宜選定し,当初の研究計画通りに進める.本研究では,右側(左側)から来た音が左耳(右耳)で聞こえる音響のような自然には存在し得ない特殊な感覚空間を人工的に創り出し,その空間への順応過程の脳活動を追うことで,人間が有する環境適応機能のメカニズムに迫ることを目的としている.平成29年度においては,第1に左右反転立体音響の特性評価と段階的順応現象の確認を行った.具体的には,先行研究で作成した高精度の左右反転立体音響を実現するウェアラブルデバイスについて,音源定位の精度や遅延等の特性を精緻に評価し,その妥当性を示した.また先行研究と照らし合わせ,このデバイスを連続装着することで生じる主観的な違和感の減少や手指の応答性の変化の存在を確認し,同時に生起する視聴覚連合野における脳リズムのカップリングや聴覚野における誘発応答の強度変化が観測されることを確認した.第2に,左右反転立体音響における視聴覚統合モデルの獲得と定着の検討を行った.具体的には,左右反転立体音響への約1ヶ月間に亘る順応過程において,視聴覚照合課題と視聴覚サイモン課題に対する脳計測データを扱った.両課題共に,左耳または右耳に聴覚刺激を,左視野または右視野に視覚刺激をランダムに同時呈示し,視聴覚照合課題では,実験協力者に視聴覚刺激の左右の一致/不一致を弁別して貰うのに対して,視聴覚サイモン課題では,無関係な特徴の一致/不一致を弁別して貰うようにした.両課題の左右の一致/不一致に対する脳活動の比較によって,統合モデルの獲得と定着の段階においては,空間情報に関する明示的な視聴覚統合は新しいモデルに従い,潜在的な視聴覚統合は通常のモデルに従うことが分かりつつある.
KAKENHI-PROJECT-17K00209
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K00209
左右反転立体音響を用いた人間の環境適応性の脳機能解析
この検討は平成30年度にも引き続き行う予定であり,今後の研究に備えることができた.研究期間の初年度である平成29年度においては,先行研究でウェアラブルデバイスを用いて構築した高精度の左右反転立体音響の特性評価とその音響への段階的順応現象の確認を行い,実験システムの妥当性と順応に伴う諸現象の再現性を当初の予定通りに検証することができた.また,左右反転立体音響への順応過程で行った視聴覚照合課題と視聴覚サイモン課題に対する脳計測データを解析することで,視聴覚統合モデルの獲得と定着について検討し,空間情報に関する明示的な視聴覚統合と潜在的な視聴覚統合の様相の違いを明らかにできた.研究計画の通り,この検討は平成30年度にも引き続き行う予定であり,順応時間に注目して詳細を明らかにしていく.得られた知見は,人間が有する環境適応機能のメカニズム解明の基礎となるものであり,平成29年度の計画は概ね順調に実施できたと言える.本研究の目的は,左右の聴空間が反転した特殊環境をウェアラブルに創出し,その環境への持続的な接触下での脳活動を追うことで,人間がもつ環境適応機能のメカニズムに迫ることである.平成30年度には,平成29年度に行った左右反転立体音響の特性評価と段階的順応現象の追試の結果に基づいて,左右反転立体音響における視聴覚統合モデルの獲得と定着の検討を引き続き行った.具体的には,実験参加者がこの特殊環境に対して約1ヶ月間にわたって接触していた際に取得した脳計測データの解析を進めた.平成29年度と同様に脳計測は,左右いずれかに出現する視覚手掛かりと音の組み合わせに対して一致か不一致かを実験参加者が弁別する視聴覚照合課題,および積極的な弁別をしないように別課題を行う視聴覚サイモン課題下で行われた.両課題における左右の一致と不一致に対する脳活動を比較したところ,視聴覚照合課題でのみ,約1週目で生じる主観的な違和感の減少と相関する誤差伝播に固有な脳リズムの変容,約2週目で生じる手指の応答性の遅れと相関する意思決定に固有な脳リズムの増大などが観測された.よって,空間情報に関する明示的な視聴覚統合は約1週目から段階的に新たな統合モデルに従うようになるが,潜在的な視聴覚統合は通常の統合モデルに従い続け,遅れて新しい統合モデルの影響を受けるようになる可能性が支持された.また新しいモデルと通常のモデルの切り替えが必要な状況下における視聴覚統合モデルの選択と利用の検討から,約2週目でモデル選択を誤りやすくなることが分かりつつある.特殊環境から通常環境へと戻した際の還元過程やその後の再順応過程に注目することで,視聴覚統合モデルの消失と再獲得についての検討も始めており,平成31年度の研究に備えることができた.研究期間の2年目である平成30年度においては,当初の予定通り,ウェアラブルデバイスを用いて構築した左右反転立体音響への約1カ月にわたる接触過程を多角的に調べ,視聴覚統合モデルの獲得と定着の詳細な検討を行った.特に明示的な視聴覚統合が生じる視聴覚照合課題と潜在的な視聴覚統合が生じる視聴覚サイモン課題に対する脳計測データの解析を進め,行動と脳活動の双方の側面から両統合の相違を明らかにできた.また,新しい統合モデルと通常の統合モデルの切り替えが必要な状況を創出し,視聴覚統合モデルの選択と利用についても併せて検討を行うことができた.
KAKENHI-PROJECT-17K00209
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K00209
経口投与可能な腎排泄性薬剤の消化管吸収機構と変動性評価
薬物のバイオアベイラビリオティ(F)に個体間変動がある場合、薬物動態パラメーターである経口クリアランス(CL/F)と見かけの分布容積(V/F)の間には正の相関が観察される。本研究では、免疫抑制薬ミゾリビンとβ遮断薬ビソプロロールの臨床薬物動態試験を行い、母集団薬物動態解析の手法を用いて、CL/FとV/Fの相関の有無を評価した。その結果、小児腎移植患者においてミゾリビンのFに個体差があること、また循環器疾患患者においてビソプロロールのFに個体差があることが明らかとなった。医薬品を適正に使用するにあたっては、薬物血中濃度と薬効・副作用の関係を定量化するとともに、薬物動態変動機構を明らかにし、患者個々に投与設計を行うことが必要である。腎排泄性薬剤の腎クリアランスは、クレアチニンクリアランスを指標として簡便に計算可能であり、一般的に静脈内投与後の血中濃度予測性も比較的良好である。しかし申請者は、経口免疫抑制薬ミゾリビンの体内動態に極めて大きな個体差があることを明らかにし、その主要因は消化管吸収率(バイオアベイラビリティ)の個体差であることを解明した。そして申請者は、「経口投与が可能な少なくとも一部の腎排泄性薬剤は、消化管吸収過程が体内動態変動の主要因となっており、消化管吸収に係わるトランスポーター蛋白の発現・機能変動が薬物吸収の個体差に関与する」との作業仮説を立て、「経口投与可能な腎排泄性薬剤の消化管吸収機構と変動性評価」を進展させる。平成25年度は、治療のためにビソプロロールを服用中の患者を対象とした臨床試験を実施するとともに、培養ヒト腸上皮LS180細胞を用いてビソプロロールの消化管吸収機構を評価した。その結果、ビソプロロールの経口クリアランスと見かけの分布容積との間に強い正の相関があることを明らかにした。すなわち、ビソプロロールの体内動態の個体差には、患者の腎機能に加え、バイオアベイラビリティ(F)の個体差が関与していることを明らかにした。ビソプロロールは初回通過代謝をほとんど受けないことから、Fの個体差は消化管吸収の個体差を反映している。そこで、LS180細胞を用いて、ビソプロロールの消化管吸収機構を評価したところ、ビソプロロールの取り込みには、未同定ではあるもののH+/有機カチオン対向輸送系が関与することが明らかとなり、このトランスポーターの活性・発現の変動がビソプロロールの体内動態の個体差に関与していると考えられた。薬物のバイオアベイラビリオティ(F)に個体間変動がある場合、薬物動態パラメーターである経口クリアランス(CL/F)と見かけの分布容積(V/F)の間には正の相関が観察される。本研究では、免疫抑制薬ミゾリビンとβ遮断薬ビソプロロールの臨床薬物動態試験を行い、母集団薬物動態解析の手法を用いて、CL/FとV/Fの相関の有無を評価した。その結果、小児腎移植患者においてミゾリビンのFに個体差があること、また循環器疾患患者においてビソプロロールのFに個体差があることが明らかとなった。医薬品を適正に使用するにあたっては、薬物血中濃度と薬効・副作用の関係を定量化するとともに、薬物動態変動機構を明らかにし、患者個々に投与設計を行うことが必要である。腎排泄性薬剤の腎クリアランスは、クレアチニンクリアランスを指標として簡便に計算可能であり、一般的に静脈内投与後の血中濃度予測性も比較的良好である。しかし申請者は、経口免疫抑制薬ミゾリビンの体内動態に極めて大きな個体差があることを明らかにし、その主要因は消化管吸収率(バイオアベイラビリティ)の個体差であることを解明した。そして申請者は、「経口投与が可能な少なくとも一部の腎排泄性薬剤は、消化管吸収過程が体内動態変動の主要因となっており、消化管吸収に係わるトランスポーター蛋白の発現・機能変動が薬物吸収の個体差に関与する」との作業仮説を立て、「経口投与可能な腎排泄性薬剤の消化管吸収機構と変動性評価」を進展させる。平成24年度は、concentravie nucleoside transporter (CNT) 1および2を強制発現させた細胞を用いて取り込み実験を行い、ミゾリビンは低親和性ながらもCNT1とCNT2の両方によって取り込まれることが明らかとなった。また、健常成人を対象とした臨床試験を実施し、ミゾリビンの消化管吸収率に及ぼす食塩摂取の影響を検討した。その結果、ミゾリビンの消化管吸収率は食塩摂取によって有意に増加し、CNT1およびCNT2の活性/発現変動によって消化管吸収が変化する可能性があると考えられた。免疫抑制薬ミゾリビンは、水溶性が高く脂質膜を透過し難いものの、小腸に発現する核酸トランスポーターで輸送されるため経口投与が可能であり、体内で殆ど代謝を受けずに尿中に排泄することが知られている。そのため従来より患者の腎機能が体内動態の変動要因とされてきた。一方近年、腎移植患者におけるミゾリビンの累積尿中排泄率(=消化管吸収率=バイオアベイラビリティ)に大きな個体差があることが報告され臨床的に注目されている。バイオアベイラビリティ(F)の大きな変動は、体内動態パラメーターである経口クリアランス(CL/F)と見かけの分布容積(V/F)に正の相関を生じさせる筈である。そこで本研究では、健常成人および小児腎疾患患者におけるミゾリビンの体内動態を母集団薬物速度論(NONMEM)の手法を用いて解析した。
KAKENHI-PROJECT-24590181
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24590181
経口投与可能な腎排泄性薬剤の消化管吸収機構と変動性評価
その結果、健常成人のデータ解析に当たっては、NONMEMで当初から使われてきたFirst-order(FO)法による解析では不十分であり、より精度が高いFirst-order conditional estmation(FOCE)法を使用するとこが必要であること、またCL/FとV/Fに強い正の相関が認められることが明らかとなった。一方、ミゾリビンの消化管急速度が遅い小児腎疾患患者のデータ解析に当たっては、FOCE法ではflip-flopが問題となるため、さらに精度が高いLaplacian法を使用することが必要であること、またCL/FとV/Fに強い正の相関が認められることが明らかとなった。以上の結果より、ミゾリビンのバイオアベイラビリオティの個体間変動が、患者における体内動態の変動要因となっているものと考えられた。薬物動態学本年度の研究成果を原著論文に纏め公表するとともに、学会発表を行ったことから、本年度の研究は、おおむね順調に進展していると考えられる。本年度の研究成果を原著論文に纏め公表するとともに、学会発表を行ったことから、本年度の研究はおおむね順調に進展していると考えられる。腎排泄性有機カチオンの小腸吸収機構解析:本研究の直接の対象とはしていないが、申請者らの研究室では現在も新規な薬剤2種類について、小児における薬物動態試験が企画・実施中である。その一つは抗不整脈薬フレカイニドを対象としたものであるが、この薬剤も腎排泄性であるものの消化管吸収機構は未だ不明である。そこで、ビソプロロール、フレカイニド、ジソピラミドなど、複数の腎排泄性の有機カチオンの消化管吸収機構を比較・検討する予定である。また、遺伝子導入・ノックダウン細胞を用いて、未同定のH+/有機カチオン対向輸送系の実体を解明することを試みる。1.ビソプロロールの臨床薬物動態変動性評価:2005年に公表した循環器疾患患者40名におけるビソプロロールの血中濃度データを再解析したところ、経口クリアランス(CL/F)と見かけの分布容積(V/F)の間に強い正の相関があり、バイオアベイラビリティ(F)にかなりの個体間変動があるとの知見を得ている。本研究では新たに約40例の患者を募り、薬物服用前・後の2点の血中濃度を測定し、母集団薬物動態解析を行う。Fに及ぼす食事や併用薬の影響、あるいは加齢や心機能・腎機能の影響などを評価する。2.ミゾリビンの小腸吸収機構解析:これまでにATP Binding Cassette(ABC)トランスポーターが、ミゾリビンの消化管吸収障壁として機能しているとの知見を得ていることから、赤血球や培養腸上皮LS180細胞の膜ゴーストを用いてミゾリビンの細胞外排出機構を解析する。さらに、種々のABCトランスポーター発現膜ベジクルを用いて、ミゾリビンの細胞外排出輸送に対する各蛋白の寄与を評価する。今年度の研究はおおむね順調に進展したが、1,335円の次年度使用額が生じた。次年度の研究費は、薬物定量および培養細胞等を用いた基礎実験を行うための消耗品の購入に充てる予定である。今年度の研究はおおむね順調に進展したが、26円の次年度使用額が生じた。次年度の研究費は、遺伝子診断、薬物定量、および培養細胞等を用いた基礎実験を行うための消耗品の購入に充てる予定である。
KAKENHI-PROJECT-24590181
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24590181
呼吸鎖電子伝達系阻害作用に基づく新しい抗腫瘍性物質の創製
9-Methoxystrobilurin Kの1,5-ベンゾジオキセピン骨格から伸張するエーテル側鎖部位の構造をゲラニル基に変換した新しい誘導体を合成し、その各種生物活性について検討した。その結果、9-Methoxystrobilurin Kが有効性を示す6種類の真菌に対しては、全く抗菌活性を示さなかったが、ヒト前骨髄性白血病細胞由来のHL60細胞に対しては、9-Methoxystrobilurin Kとほぼ同等の増殖阻害活性を示すことが明らかになった。これにより、β-メトキシアクリレート抗生物質の構造活性相関研究において、抗真菌活性の分離に初めて成功するとともに、細胞種選択的な増殖阻害剤を創出するにあたっての重要な知見を得ることに成功した。9-Methoxystrobilurin Kの9-10位間に含まれるメチルエノールエーテル構造の安定化を目的として、この部位にベンゼン環を導入した誘導体を合成し、その各種生物活性について検討した。その結果、抗真菌活性および腫瘍細胞増殖阻害活性のいずれについても、9-Methoxystrobilurin Kより若干低下することが明らかになった。この活性低下の原因について計算化学的に検討したところ、ベンゼン環のオルト位の水素原子と二重結合上の水素原子との立体反発により、1,5-ベンゾジオキセピン骨格の空間配置が大きく変化することにより、標的タンパクであるCytochrome bとの結合親和性が損なわれていることを強く示唆する結果を得た。今後はオルト位に水素原子をもたないピリジン環を導入した新たな誘導体を合成し、この点について確認する予定である。本年度は9-Methoxystrobilurin K(1)の特徴的な化学構造の一つである1,5-ベンゾジオキセピン骨格と、そこから伸張する嵩高いエーテル側鎖部位を構造変換した各種誘導体の合成を行い、それらの各種生物活性について評価した。その結果、1,5-ベンゾジオキセピン骨格上の2つのメチル基を除去した新規誘導体にも、1とほぼ同等の腫瘍細胞増殖阻害活性および抗真菌活性が認められることが明らかになった。一方、1の末端エーテル側鎖部位の構造をプレニル基とした誘導体では、1を上回る強力な腫瘍細胞増殖阻害活性を示すことが明らかとなったが、各種病原性真菌に対する抗真菌活性に関しては、活性強度、活性スペクトルとも、1との大きな差違は認められなかった。これらのエーテル側鎖部位は、内在性のリガンドであるユビキノールのイソプレン側鎖に相当すると考えられるため、この部位をさらに鎖長の長いゲラニル基とした化合物を合成したところ、抗真菌活性は完全に消失したが、腫瘍細胞増殖阻害活性は上述のプレニル基をもつ誘導体とほぼ同等であった。これは、ヒト由来の細胞に対して選択的な増殖阻害作用を示すβ-メトキシアクリレート抗生物質を創出した初めての例になるものと考えられる。したがって次年度以降においては、化合物の化学的な安定性の向上を含めた構造活性相関のさらなる追求により、従来とは全く異なる作用機序をもつ新しい抗腫瘍剤の開発に繋げていきたいと考えている。9-Methoxystrobilurin Kの1,5-ベンゾジオキセピン骨格から伸張するエーテル側鎖部位の構造をゲラニル基に変換した新しい誘導体を合成し、その各種生物活性について検討した。その結果、9-Methoxystrobilurin Kが有効性を示す6種類の真菌に対しては、全く抗菌活性を示さなかったが、ヒト前骨髄性白血病細胞由来のHL60細胞に対しては、9-Methoxystrobilurin Kとほぼ同等の増殖阻害活性を示すことが明らかになった。これにより、β-メトキシアクリレート抗生物質の構造活性相関研究において、抗真菌活性の分離に初めて成功するとともに、細胞種選択的な増殖阻害剤を創出するにあたっての重要な知見を得ることに成功した。9-Methoxystrobilurin Kの9-10位間に含まれるメチルエノールエーテル構造の安定化を目的として、この部位にベンゼン環を導入した誘導体を合成し、その各種生物活性について検討した。その結果、抗真菌活性および腫瘍細胞増殖阻害活性のいずれについても、9-Methoxystrobilurin Kより若干低下することが明らかになった。この活性低下の原因について計算化学的に検討したところ、ベンゼン環のオルト位の水素原子と二重結合上の水素原子との立体反発により、1,5-ベンゾジオキセピン骨格の空間配置が大きく変化することにより、標的タンパクであるCytochrome bとの結合親和性が損なわれていることを強く示唆する結果を得た。今後はオルト位に水素原子をもたないピリジン環を導入した新たな誘導体を合成し、この点について確認する予定である。
KAKENHI-PROJECT-14771314
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14771314
太平洋とインド洋における海面変動の比較研究
本研究の目的は、太平洋とインド洋に分布する島島と両洋に面する大陸縁辺部において地形・地質・古生態学調査を行い、完新世(最近1万年間)の海面変動の広域的な特徴を明らかにし、地球物理学的な解析と比較してマントルの粘性分布を決定することである。昨年度までの研究と現地調査により、太平洋中部とインド洋西部の島島についてはかなりのデ-タを集めることが出来たので、本年度はインドネシア中部(スンバ島)・マレ-シア西岸・フィジ-・オ-ストラリア東岸などで現地調査、資料の収集、現地研究者との研究連絡を行った。その結果、インドネシア・スンバ島では完新世中期の離水サンゴ(マイクロアト-ル)と離水ノッチ(海抜2m以下)が観察されたが、バリ島の海岸では離水地形は分布していないので、現在の海面が完新世におけるもっとも高い海面と推定される。インドネシアでは島ごとにテクトニクスに地域性があるので、今後も調査を続ける必要がある。マレ-シア西岸では広い地域にわたって海岸平野が発達し、完新世中期(約5000年前)には現在より海面が約3mほど高く、この地域が大陸縁辺部として特徴を示することがわかった。フィジ-では補足的な現地調査と試料の採取を行ない、採取試料の放射性炭素年代測定を行ない、過去8000年間における海面変化曲線を描いた。オ-ストラリア海洋科学研究所を訪問し、サンゴの年輪年代学についての共同研究を始めることを決めた。今までの現地調査と文献調査によって得られた太平洋とインド洋における完新世海面変化のデ-タに基づき、マントルの粘性分布についてのモデルを求めた。またそれに基づき、日本列島および世界各地における後氷期海面変化のシミュレ-ションを行った。本研究では太平洋とインド洋を調査地域としたが、調査範囲が非常に広いので現地調査はまだ完了していないが、HIPAC計画(Hidro Isostasy of the Pacific Project)の初期の目的はかなり果たすことが出来たので、1981年度から開始した海外学術調査による一連の現地調査は本年度で一度中断することとする。本研究の目的は、太平洋とインド洋に分布する島島と両洋に面する大陸縁辺部において地形・地質・古生態学調査を行い、完新世(最近1万年間)の海面変動の広域的な特徴を明らかにし、地球物理学的な解析と比較してマントルの粘性分布を決定することである。昨年度までの研究と現地調査により、太平洋中部とインド洋西部の島島についてはかなりのデ-タを集めることが出来たので、本年度はインドネシア中部(スンバ島)・マレ-シア西岸・フィジ-・オ-ストラリア東岸などで現地調査、資料の収集、現地研究者との研究連絡を行った。その結果、インドネシア・スンバ島では完新世中期の離水サンゴ(マイクロアト-ル)と離水ノッチ(海抜2m以下)が観察されたが、バリ島の海岸では離水地形は分布していないので、現在の海面が完新世におけるもっとも高い海面と推定される。インドネシアでは島ごとにテクトニクスに地域性があるので、今後も調査を続ける必要がある。マレ-シア西岸では広い地域にわたって海岸平野が発達し、完新世中期(約5000年前)には現在より海面が約3mほど高く、この地域が大陸縁辺部として特徴を示することがわかった。フィジ-では補足的な現地調査と試料の採取を行ない、採取試料の放射性炭素年代測定を行ない、過去8000年間における海面変化曲線を描いた。オ-ストラリア海洋科学研究所を訪問し、サンゴの年輪年代学についての共同研究を始めることを決めた。今までの現地調査と文献調査によって得られた太平洋とインド洋における完新世海面変化のデ-タに基づき、マントルの粘性分布についてのモデルを求めた。またそれに基づき、日本列島および世界各地における後氷期海面変化のシミュレ-ションを行った。本研究では太平洋とインド洋を調査地域としたが、調査範囲が非常に広いので現地調査はまだ完了していないが、HIPAC計画(Hidro Isostasy of the Pacific Project)の初期の目的はかなり果たすことが出来たので、1981年度から開始した海外学術調査による一連の現地調査は本年度で一度中断することとする。
KAKENHI-PROJECT-01041019
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01041019
住宅の躯体内部通気が室内空気環境に与える影響
都市環境や住生活の変化に伴う窓開放習慣の衰退,省エネルギーや新建材普及を背景としたシックハウスの対策のために,内装材料配慮や換気設備導入が行われた。本研究ではさらに,床下や天井裏で発生した汚染物質が隙間経由で室内に侵入し室内空気汚染を生ずるメカニズムを,実態調査,実験,シミュレーションで明らかにした。また,シックハウス対策による化学物質使用抑制は,カビ等の生物汚染の要因となるため,床下や壁中のカビ汚染の実態把握や室内侵入の危険性も示した。本研究では,住宅の躯体内部通気が室内空気環境に与える影響について,防腐剤・防蟻剤・カビなどの内部汚染源及び汚染物質の挙動と室内空気質への影響に注目して,実証的に取り組むために,以下の5つの研究を行う。研究1 :主要な住宅構法における内部通気ネットワークの実態調査研究2 :主要な住宅構法における内部通気ネットワークの定量化研究3 :内部通気の年間推移の数値実験研究4 :内部空間内の気流性状の数値実験研究5 :内部空間の換気・気流による内部結露とカビ発生環境の調査・実験以上により,我が国の住宅の特徴である内部通気が室内空気環境に与える影響を把握し,その対策の必要性及び対策の指針を示す。都市環境や住生活の変化に伴う窓開放習慣の衰退,省エネルギーや新建材普及を背景としたシックハウスの対策のために,内装材料配慮や換気設備導入が行われた。本研究ではさらに,床下や天井裏で発生した汚染物質が隙間経由で室内に侵入し室内空気汚染を生ずるメカニズムを,実態調査,実験,シミュレーションで明らかにした。また,シックハウス対策による化学物質使用抑制は,カビ等の生物汚染の要因となるため,床下や壁中のカビ汚染の実態把握や室内侵入の危険性も示した。■研究1は、分担者:大澤元毅が担当した。18年度は、既往の住宅構法に関する設計施工指針等の設計図書(旧省エネルギー基準施工指針、次世代省エネルギー基準施工指針、改正建築基準法等)の文献調査を行う。また、一般住宅供給者の設計図面及びアンケート調査結果、国土交通省による2000年度からの室内空気環境に関する全国実態調査結果を活用して、構法、換気方式などに注目して内部通気に関する統計分析を行い、内部通気が室内空気環境に与える可能性に関する基礎的データを得た。■研究2は、代表者:林基哉が担当した。18年度は、在来構法による部分スライスモデルの設計・試作を行い、同圧法による通気ネットワーク自動測定システムを製作し、部分スライスモデルを用いて、測定精度、時間等の検証を行った。■研究3は、代表者:林基哉と分担者:本間義規が担当した。18年度は、内部空間を含む多数室ネットワークモデルプログラムの検証を、スライスモデル、実大モデルを用いて実施した。■研究4は、分担者:本間義規が担当した。18年度は、特に繊維系断熱材を対象とした熱・湿気・空気移動に関する流体解析シミュレーション技術を構築するための文献調査を行った。模型レベルにおける内部通気性状をトレーサーカス法による実験の計画を検討した。■研究5は、分担者:長谷川兼一が担当した。18年度は、在来構法の実在住宅10件を対象とした実測調査を行い,床下,小屋裏,壁体の内部空間における温湿度,カビ量,MVOC濃度を測定した。■研究1は、分担者:大澤元毅が担当した。19年度は、18年度に引き続き一般住宅供給者の設計図面及びアンケート調査結果、国土交通省による2000年度からの室内空気環境に関する全国実態調査結果を活用して、構法、換気方式などに注目して内部通気に関する統計分析を20年度に継続して行い、内部通気が室内空気環境に与える可能性に関する検討を行った。■研究2は、代表者:林基哉が担当した。19年度は、在来構法による部分スライスモデルの設計を行い、6体の部分スライスモデルを製作した。■研究3は、代表者:林基哉と分担者:本間義規、長谷川兼一が担当した。19年度は、内部空間内での通気性状とカビの挙動のメカニズム把握のために、部分スライスモデルと粉体を用いた実験を行い、カビの挙動のシミュレーションの可能性に関する基礎的な予備実験を行った。■研究4は、分担者:本間義規が担当した。19年度は、内部空間内での通気と気流性状の把握の基礎検討として、気流シミュレーションプログラムの選定作業を行った。■研究5は、代表者:林基哉、分担者:長谷川兼一、本間義規が担当した。19年度は、18年度から継続して在来構法の実在住宅10件と、新たに6件を加えた対象について床下、小屋裏、壁体の内部空間におけるカビ数を測定し、年間のカビ数の推移と、室内、内部空間、外気との相関性を把握した。■研究1は、分担者:大澤元毅が担当した。20年度は、19年度に引き続き一般住宅供給者の設計図面及びアンケート調査結果、国土交通省による2000年度からの室内空気環境に関する全国実態調査結果を活用して、構法、換気方式などに注目して内部通気に関する統計分析を行い、内部通気が室内空気環境に与える可能性をまとめた。■研究2は、代表者:林基哉が担当した。19年度に製作した部分スライスモデルの隙間分布測定を実施し、隙間ネットワークを完成させた。■研究3は、代表者:林基哉と分担者:本間義規、長谷川兼一が担当した。19年度は、内部空間内での通気性状とカビの挙動のメカニズム把握のために、部分スライスモデルと粉体を用いた実験を行い、床下から室内空間への粉体の侵入性状を確認する手法を検討した。
KAKENHI-PROJECT-18360276
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住宅の躯体内部通気が室内空気環境に与える影響
■研究4は、分担者:本間義規が担当した。19年度は、内部空間内での通気と気流性状の把握の基礎検討として、気流シミュレーションプログラムの適応の可能性を確認した。■研究5は、代表者:林基哉、分担者:長谷川兼一、本間義規が担当した。19年度から継続して在来構法の実在住宅16件を対象に床下,小屋裏,壁体の内部空間におけるカビ数を測定し、年間のカビ数の推移と、室内、内部空間、外気との相関性を把握した。住宅の躯体内部通気が室内空気環境に与える影響について,内部汚染物質の挙動と室内空気質への影響に注目し,以下の研究を行った。主要な住宅構法における内部通気ネットワークの実態調査では,工務店などを対象にしたアンケート調査結果の分析によって,在来木造を中心に,断熱気密工法の実施状況を把握した。主要な住宅構法における内部通気ネットワークの定量化では,スライスモデルを製作して隙間量を測定し,基本的な工法に関するデータを整備した。内部通気の年間推移の数値実験では,構法及び換気方式が異なるシミュレーションによって,それぞれの場合の隙間通気及びIAQの年間特性を把握した。内部空間内の気流性状の数値実験では,シミュレーションプログラムの基礎的な検証を模型実験によって行った。内部空間の換気・気流による内部結露とカビ発生環境の調査・実験では,数十嫌の住宅における床下及び壁内のカビ数の実測を行い,これらの内部空間のカビ汚染が室内空気質(IAQ)に与える可能性関する知見を得た。以上によって,隙間ネットワークを介した内部空間(床下,壁内,天井裏)からの汚染物質の侵入によるIAQへの影響が確認され,建物設計・換気設計において考慮すべき新たな要素となった。また,生物汚染に関しては,壁内や床下からのカビの室内侵入があり,特に床下についてはカビ数が多い事例があり,注目する必要性が示された。床下のカビ汚染の憂慮すべき実態把握が行われたことから,床下からの汚染物質挙動に注目して,とりまとめを行う。また,内部空間内の気流性状の数値実験を行った。
KAKENHI-PROJECT-18360276
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中英語聖人伝における女性表象に関する読者論的考察-『南部英語聖人伝』を中心に-
本年度は、研究課題として挙げた『南部英語聖大伝(The South English Legendary)における女性表象の中でも、14世紀以降多く書かれるようになるイギリス自国の女性聖人に焦点を当て、前年度に行った写本の調査をもとに議論をまとめ、その成果の一部を発表した。2012年7月には、リーズ大学で開催された第19回Intenational Medieval Congressでは、Medieval Feminist Scholarshipによる'Following of Gender (or Not) in the Middle Ages'のセッションの一パネルとして発表した。後援学会とセッションの趣旨から、これまで行ってきた写本の調査に加え、ジェンダー/セクシユアリティの観点から、聖大伝テクストに描かれた中世イングランド・ウェールズの5人の聖女の表象について、古典期の処女殉教聖人と比較考察を行った。これまで中世の女性の聖性・霊性の典型とされてきた処女殉教聖人伝から、本研究課題が注目する中世イギリスの聖女であった女子修道院長聖女が、それらを下地としつついかに異なる形を描き出そうとしているか提示した。また、中世研究の分野では大規模な学会に出席・参加したため、同じ分野の海外の研究者らの助言を仰ぐことができた。7月には学会終了後に、ロンドン大学の研究者と面会し、研究課題について、具体的な資料を持参して話し合った。また大英図書館にて、本研究で主なコーパスとして挙げている,『南部英語聖人伝』写本1点とそれに関連する写本数点の調査と一部テクストの転写を行った。秋には、昨年度末より転写を行っていた慶應義塾大学図書館所蔵のHopton Hall MSの校訂版を学内の論文誌に共著で発表した。本写本は、研究課題が対象ととしている、中世後期イングランドの俗語(中英語)で書かれた宗教文学作品の読者について考える点でも、有益な視点を得たと考えている。また、本テクストは未刊行ヴァージョンでもあるため、校訂版として発表できた意義は大きいと考えている。本年度は、研究課題として挙げた『南部英語聖人伝』(The SouthEnglishLegendary)における女性表象の中でも、13世紀以降多く書かれるようになるイギリス自国の女性聖人に焦点を当て、写本の調査やテクスト分析を行った。イギリス本国で生まれた聖人が俗語で書かれた聖人伝に、古典期の聖人とともに収められているのは、『南部英語聖人伝』の大きな特徴の一つであり、近年関心が集まりつつある中世イングランドにおけるローカルな聖人崇敬の議論に、『南部英語聖人伝』という他の聖人伝テクストと比べあまり研究されてこなかった作品を通して、新たな一側面を提示することができると期待している。国内の学会や論文誌への発表を行い、来年度以降の海外での成果発表に向けて、イギリスの大学図書館で文献調査を実施した。5月に日本英文学会では、古典期の一つの聖女表象である異性装の聖女に関する研究発表を行った。また、8月に行われた西洋中世学会開催のポスターセッションにて、研究課題の経過報告をした。なお、現在中世イングランドの女性のリテラシーに関する論文を執筆し、投稿中である。9月には2週間ほどイギリスの大学図書館で、写本調査と文献収集を行った。ケンブリッジ大学図書館とロンドン大英図書館では、研究対象である『南部英語聖人伝』写本のうち、イギリスの聖人・聖女伝を含む数点を調査した。さらに、ケンブリッジ大学図書館では、『南部英語聖人伝』に収められたイギリスの聖女伝を論じる上で、比較対象となりうる未刊行テクストを収めた写本を調査することもできた。同地では、多くの画像資料を入手したため、今後未刊行テクストの転写を行い、研究の成果の一部としてまとめる予定である。イギリス滞在中には、文献収集のみならず、現地の研究者に面会し、さまざまな助言や指導を仰ぐことができた。本年度は、研究課題として挙げた『南部英語聖大伝(The South English Legendary)における女性表象の中でも、14世紀以降多く書かれるようになるイギリス自国の女性聖人に焦点を当て、前年度に行った写本の調査をもとに議論をまとめ、その成果の一部を発表した。2012年7月には、リーズ大学で開催された第19回Intenational Medieval Congressでは、Medieval Feminist Scholarshipによる'Following of Gender (or Not) in the Middle Ages'のセッションの一パネルとして発表した。後援学会とセッションの趣旨から、これまで行ってきた写本の調査に加え、ジェンダー/セクシユアリティの観点から、聖大伝テクストに描かれた中世イングランド・ウェールズの5人の聖女の表象について、古典期の処女殉教聖人と比較考察を行った。これまで中世の女性の聖性・霊性の典型とされてきた処女殉教聖人伝から、本研究課題が注目する中世イギリスの聖女であった女子修道院長聖女が、それらを下地としつついかに異なる形を描き出そうとしているか提示した。また、中世研究の分野では大規模な学会に出席・参加したため、同じ分野の海外の研究者らの助言を仰ぐことができた。7月には学会終了後に、ロンドン大学の研究者と面会し、研究課題について、具体的な資料を持参して話し合った。また大英図書館にて、本研究で主なコーパスとして挙げている,『南部英語聖人伝』写本1点とそれに関連する写本数点の調査と一部テクストの転写を行った。秋には、昨年度末より転写を行っていた慶應義塾大学図書館所蔵のHopton Hall MSの校訂版を学内の論文誌に共著で発表した。本写本は、研究課題が対象ととしている、中世後期イングランドの俗語(中英語)で書かれた宗教文学作品の読者について考える点でも、有益な視点を得たと考えている。
KAKENHI-PROJECT-11J01615
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J01615
中英語聖人伝における女性表象に関する読者論的考察-『南部英語聖人伝』を中心に-
また、本テクストは未刊行ヴァージョンでもあるため、校訂版として発表できた意義は大きいと考えている。本年度は、未刊行テクストを多く含む『南部英語聖人伝』の写本体系を明らかにし、一次資料にあたることを目標とした。実際、本年度中にイギリスへ文献調査に行き、大英図書館・ケンブリッジ大学図書館で該当する写本を調べることができた。また、『南部英語聖人伝』のみならず、比較対象となりうる聖人伝写本の調査も進めることができ、新たな視点からテクスト分析を行うことができると期待される。平成24年度は、前年度に行った研究の成果報告として、7月に英国リーズ大学で行われる中世研究の国際学会International Medieval Congressでの発表が決定している。『南部英語聖人伝』におけるイギリス自国の聖女伝について、女性表象やジェンダー研究の視点から発表を行う予定である。また、中英語聖人伝を専門にしているイギリスの研究者のもとで研究するための準備を、長期の海外研究を視野に入れて進めている。
KAKENHI-PROJECT-11J01615
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中国のグローバル環境負荷構造の変動と北東アジア地域の多国間環境政策のシステム分析
平成11年度では、過去2年間の研究成果を受けて、中国、日本、韓国、極東ロシアという日本海を囲む多国間の海洋環境保全の具体的な政策課題を水質汚濁に注目して、政策分析を行った。すなわち、中国を軸とする北東アジア地域の環境負荷構造の変化に対応した環境負荷評価モデルを開発し、中国、韓国、極東ロシア、日本(日本海沿岸部)における産業、農業、家計からの水質汚濁負荷量(COD)を具体的に推定した。そして、その推定された汚濁負荷量の構造的な特徴から、北東アジアにおける経済のグローバル化と越境水質汚染の増加,中国の環境管理政策特に水質管理政策,水質汚濁負荷量モデルを用いた北東アジアの水質汚濁負荷量(COD)の排出量推定及びその構造変化などを分析し、北東アジアにおける多国間の水質汚濁と資源保全の環境政策を提言した。水質汚濁負荷構造からみると、日本と韓国は産業の高度産業化とライフスタイルの変化がほぼ終了したか、あるいは,進行中で、北東アジアにおける古典的な水質汚濁負荷(有機性汚濁)の悪化への影響は漸減しているが、一方で、有害化学物質、放射性廃棄物等の増加が予想される。中国では、産業廃水と生活排水は今後も大きく増加し、河川の古典的な水質汚濁はますます深刻化することが想定される.また、極東ロシアと北朝鮮も経済の回復につれて水質汚濁負荷量の増加が予想できる.従って,北東アジアの大陸附属海の水質汚濁の防止と資源保全のためには、1)海洋汚染の状況の共通認識の育成、2)環境保全技術の移転,3)地域海洋汚染の防止への相互支援、等にむけて、海洋環境保全管理ネットワーク等による北東アジアの多国間の環境政策の協調、とりわけ、観測網と情報交換が早急に確立され、かつ、有効に機能することが最重要である。平成11年度では、過去2年間の研究成果を受けて、中国、日本、韓国、極東ロシアという日本海を囲む多国間の海洋環境保全の具体的な政策課題を水質汚濁に注目して、政策分析を行った。すなわち、中国を軸とする北東アジア地域の環境負荷構造の変化に対応した環境負荷評価モデルを開発し、中国、韓国、極東ロシア、日本(日本海沿岸部)における産業、農業、家計からの水質汚濁負荷量(COD)を具体的に推定した。そして、その推定された汚濁負荷量の構造的な特徴から、北東アジアにおける経済のグローバル化と越境水質汚染の増加,中国の環境管理政策特に水質管理政策,水質汚濁負荷量モデルを用いた北東アジアの水質汚濁負荷量(COD)の排出量推定及びその構造変化などを分析し、北東アジアにおける多国間の水質汚濁と資源保全の環境政策を提言した。水質汚濁負荷構造からみると、日本と韓国は産業の高度産業化とライフスタイルの変化がほぼ終了したか、あるいは,進行中で、北東アジアにおける古典的な水質汚濁負荷(有機性汚濁)の悪化への影響は漸減しているが、一方で、有害化学物質、放射性廃棄物等の増加が予想される。中国では、産業廃水と生活排水は今後も大きく増加し、河川の古典的な水質汚濁はますます深刻化することが想定される.また、極東ロシアと北朝鮮も経済の回復につれて水質汚濁負荷量の増加が予想できる.従って,北東アジアの大陸附属海の水質汚濁の防止と資源保全のためには、1)海洋汚染の状況の共通認識の育成、2)環境保全技術の移転,3)地域海洋汚染の防止への相互支援、等にむけて、海洋環境保全管理ネットワーク等による北東アジアの多国間の環境政策の協調、とりわけ、観測網と情報交換が早急に確立され、かつ、有効に機能することが最重要である。
KAKENHI-PROJECT-10112201
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10112201
植物病原ウイルス媒介昆虫のウイルス相互作用タンパク質の探索
作物のウイルス病の多くは植物吸汁性農業害虫によって媒介される。植物ウイルス媒介昆虫は世代時間が短く増殖率が高いため、農薬耐性を発達させやすく農業生産に甚大な被害を及ぼすことがある。吸汁性昆虫は微小で解析しづらいため、これまで媒介昆虫とウイルスの相互作用に関する知見はあまり得られていない。近年、遺伝子配列情報が整備されてきたトビイロウンカと、トビイロウンカ体内でも増殖する植物病原ウイルスを材料に用いて、酵母ツーハイブリッド法で各種ウイルスタンパク質と相互作用する昆虫側タンパク質の探索をおこなった。イネグラッシースタントウイルスの非構造タンパク質のなかに、トビイロウンカの細胞骨格関連タンパク質と相互作用すると思われるものがあるとことがわかった。さらに研究の過程でイフラウイルス科の新規ウイルスがトビイロウンカに感染していることを見出した。作物のウイルス病の多くは植物吸汁性農業害虫によって媒介される。植物ウイルス媒介昆虫は世代時間が短く増殖率が高いため、農薬耐性を発達させやすく農業生産に甚大な被害を及ぼすことがある。吸汁性昆虫は微小で解析しづらいため、これまで媒介昆虫とウイルスの相互作用に関する知見はあまり得られていない。近年、遺伝子配列情報が整備されてきたトビイロウンカと、トビイロウンカ体内でも増殖する植物病原ウイルスを材料に用いて、酵母ツーハイブリッド法で各種ウイルスタンパク質と相互作用する昆虫側タンパク質の探索をおこなった。イネグラッシースタントウイルスの非構造タンパク質のなかに、トビイロウンカの細胞骨格関連タンパク質と相互作用すると思われるものがあるとことがわかった。さらに研究の過程でイフラウイルス科の新規ウイルスがトビイロウンカに感染していることを見出した。イネラギットスタントウイルス(Rice ragged stunt virus, RRSV,レオウイルス科・オリザウイルス属)はイネとトビイロウンカの両者で増殖できる。近年、東南アジアでトビイロウンカの発生量が増大するに伴い、RRSVによる被害が増加し問題となっている。RRSVは10本に分節した二本鎖RNAをゲノムとしている。各分節ゲノム(Seg1-Seg10)の中にウイルスタンパク質をコードするORFを持つ。ウイルスタンパク質と相互作用するトビイロウンカタンパク質の探索を行う目的で、RRSVのタンパク質をタグタンパク質(GST)に融合させたものを大腸菌で発現・精製した。それらに「トビイロウンカ磨砕液を加えてGST精製用担体で回収されたタンパク質の同定を行ったところ、Seg6,Seg7,Seg9由来のGST融合タンパク質についてはそれ自身がコードするタンパク質が結合していた。Seg9はウイルス粒子のスパイクタンパク質をコードしており、ウイルス粒子表面に突起する構造物を構成するために多量体を形成する性質を有すると考えられた。レオウイルスでは感染細胞中でウイルス複製の場となるviroplasm、あるいはウイルスの移行に関与するチューブ状の構造物を形成するため多量体を作ることが知られている。Seg6とSeg7はそれらに関連する多量体形成能をもつタンパク質をコードすると考えられた。ウイルスタンパク質自身で会合する性質を有しており、GSTプルダウン法では虫体のタンパク質の探索が困難と考えられたため、次に、yeast two hybrid法による相互作用昆虫タンパク質の探索を行うためにトビイロウンカのpoly (A) RNAを精製してcDNAライブラリーを構築した。今後はこのライブラリーを使用して、各セグメントにコードされるウイルスタンパク質をベイトとしたスクリーニングを行う予定である。イネラギッドスタントウイルス(rice ragged stunt virus,RRSV)はレオウイルスの一種でトビイロウンカが媒介する。RRSVのゲノム2本鎖RNAは10本(S1S10)に分節している。そのうちのS10,S9,S7,S6にコードされるタンパク質(P10,P9,P7,P6)のcDNAをクローニングし、酵母ツーハイブリッド法によりそれらに結合するトビイロウンカのタンパク質を探索した。トビイロウンカ幼虫からmRNAを抽出してオリゴd(T)プライマーでcDNAを合成後、常法によりライブラリを作成してClontech社のMachmaker Gold Yeast Two-Hybrid Systemでスクリーニングを行った。その結果、P10,P9をベイトに使用した場合は有効な相互作用タンパク質遺伝子は得られなかったが、P6からは27株のrpS13遺伝子を含む二倍体株が得られた。プラスミドに含まれていたcDNA配列はいずれもrpS13のC末側であり、真核生物リボソームの結晶構造からこの領域は60Sサブユニットとの境界面に位置すると考えられる。酵母ツーハイブリッドスクリーニングにおいて、リボソームタンパク質は非特異的反応を起こしやすいとも言われている。実際にRRSV P6とトビイロウンカrpS13タンパク質が結合することを確認するために、精製用MATタグ配列を付加したP6タンパク質とFLAGタグ配列を付加したrPS13タンパク質を大腸菌で発現後、精製した。MAT-P6タンパク質をビーズに付加した状態でrpS13タンパク質のプルダウン実験を行ったところ、rpS13タンパク質がRRSV P6タンパク質に結合することが確認された。界面活性剤の存在下でタンパク質間の相互作用を検出するファーウエスタンブロット法では両者の結合は検出できないことから、両者の相互作用は強いものではないと考えられる。また、P6タンパク質を精製用ビーズから溶出させると緩衝液中で不溶化し、タンパク質合成に及ぼす影響など以後の解析に用いることができないため、今後はトビイロウンカのさらに他のタンパク質の探索を行う。
KAKENHI-PROJECT-22580062
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22580062
植物病原ウイルス媒介昆虫のウイルス相互作用タンパク質の探索
イネグラッシースタントウイルス(RGSV)は6分節の一本鎖RNAゲノムで、12個のタンパク質をコードする。このうち、P1, P2, P3, P4, P5, P6, PC3, PC5の8種のタンパク質について酵母ツーハイブリット(Y2H)法にてこれらと相互作用するトビイロウンカタンパク質の探索を行った。PC1, PC2, PC4, PC6については分子量が大きい、あるいは既報論文により植物内の移行に関与することが判明しているため除外した。オリゴ(T)とランダムプライマーでそれぞれ作成したトビイロウンカcDNAライブラリーを含む酵母プレイ株を用いて、各ウイルスタンパク質により数百個から数十個の陽性株を取得した。各株からPCR増幅したcDNA断片をシーケンス後にアセンブルして得られたコンティグ配列をBLAST検索してトビイロウンカタンパク質を同定した。その結果、RGSVのタンパク質に対し計約100種類の相互作用する可能性のあるトビイロウンカタンパク質を同定できた。詳細な相互作用解析に進む前に、Y2H探索において自律活性化能をもつトビイロウンカタンパク質を排除する目的で、ウイルスタンパク質のcDNAを挿入しない状態で得られる偽陽性株を調べたところ、Lipophorin、Titin, ATP synthetase oligomycin sensitivity conferral protein, Lamininには活性化能があることが判明した。媒介ウイルスとウンカ類の相互作用については、これまで昆虫側の分子が不明なため、具体的に分子を同定してのウイルスー昆虫間相互作用解析は困難だった。本成果により、ウイルスと相互作用する可能性があるトビイロウンカタンパク質のリストを得ることができた。今後、ウイルスが媒介虫の何を利用して媒介されるのか、より具体的に解析することが可能になる。酵母ツーハイブリット実験で陽性となったトビイロウンカタンパク質とウイルスタンパク質の機能解析に進む際に、大腸菌で発現させたRRSVタンパク質の可溶分画を使用しているが、RRSVタンパク質には不溶化や自己会合する性質をもつものが多く、解析を進めるには支障も生じている。RRSVと同じくトビイロウンカ体内で増殖するイネグラッシースタントウイルス(rice grassy stunt virus,RGSV)も使用することにより、媒介ウイルスのタンパク質と相互作用するトビイロウンカタンパク質の探索はさらに進めることが出来る。24年度が最終年度であるため、記入しない。RRSVと同じくトビイロウンカにより媒介されるが、コードされるタンパク質の分子量が比較的小さいものが多いRGSVも使用して、トビイロウンカの相互作用タンパク質の探索を進める。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22580062
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22580062
骨髄幹細胞(前駆脂肪細胞)の前立腺癌への影響:シグナル伝達の網羅的解析
今回、ヒト前立腺癌cell lineと前駆脂肪細胞を用い、シグナル伝達について検討した。コラーゲンゲルで前立腺細胞と成熟細胞で、液性因子作用と接触因子作用を検討する条件で3次元培養を行った。LNCaPでは液性因子と細胞接触が増殖促進に必要であること、PC-3では細胞接触作用が細胞分化に必要であること、DU145では液性因子と細胞接触が増殖促進と細胞分化に必要であるが示唆された。cDNA microarrayの結果、前立腺特異的発現PSGR2とintegrinの発現が有意であり、その関与が示唆された。今回、ヒト前立腺癌cell lineと前駆脂肪細胞を用い、シグナル伝達について検討した。コラーゲンゲルで前立腺細胞と成熟細胞で、液性因子作用と接触因子作用を検討する条件で3次元培養を行った。LNCaPでは液性因子と細胞接触が増殖促進に必要であること、PC-3では細胞接触作用が細胞分化に必要であること、DU145では液性因子と細胞接触が増殖促進と細胞分化に必要であるが示唆された。cDNA microarrayの結果、前立腺特異的発現PSGR2とintegrinの発現が有意であり、その関与が示唆された。我々は、すでに『研究基盤(B)(2)08457426』、研究基盤(C)(2)13671657』、『若手研究(B)(16709918)』で3次元培養の研究を行っており、間質細胞が癌細胞株に増殖と分化度の増加に関与していることと検討した。さらに当科徳田が前立腺癌と脂肪細胞との3次元培養の結果、増殖分化度の増加に、さらに増殖因子との関係を明らかにした。今回、ヒト前立腺癌cell lineと前駆脂肪細胞を用い、シグナル伝達異常について、検討した。1.平面培養下で前駆脂肪細胞3T3-L1を成熟脂肪細胞へと誘導し、その培養環境下で、前立腺癌細胞をコラーゲッゲル3次元培養を行い、液性因子作用の検討を行った。しかし、誘導した成熟細胞は、プレートより剥がれる状況となり、成果が得られなかった。ここで、誘導後、前立腺癌細胞とコラーゲンゲル3次元培養を行ったが、成熟脂肪細胞は長期に培養すると脂肪滴は減少し、成果が得られなかった。2.次にラット骨髄から得た前駆脂肪細胞も上記のごとく、成熟脂肪細胞へ誘導できたが、こちらも、上記と同様であったため、成熟細胞を用いることとした。3.コラーゲンゲルで前立腺細胞と成熟細胞で、液性因子作用と接触因子作用を検討する条件で各種3次元培養を行った。その結果、LNCaPでは、液性因子作用と細胞接触作用が増殖促進に必要であること、PC-3では、液性因子作用よりは細胞接触作用が必要であること、DU145では、液性因子作用と細胞接触作用が増殖促進と細胞分化を誘導したことが示唆された。4.混合培養したLNCaPを用いて、cDNAmicroarrayを行ったところ、有意に発現上昇した遺伝子、数種を確認した。現在、解析を行っている。5.また、脂肪細胞の宿主の問題もあり、倫理委員会の承認を得て、手術で得たヒト成熟脂肪細胞を用い、解析を行っている。我々は、すでに『研究基盤(B)(2)08457426』、研究基盤(C)(2)13671657』、『若手研究(B)(16709918)』で3次元培養の研究を行っており、間質細胞が癌細胞株に増殖と分化度の増加に関与していることと検討した。さらに当科徳田が前立腺癌と脂肪細胞との3次元培養の結果、増殖分化度の増加に、さらに増殖因子との関係を明らかにした。平成19年度の中途報告では、ヒト前立腺癌cellineと前駆脂肪細胞を用いシグナル伝達異常について、検討した結果、液性因子作用と細胞接触作用が癌細胞増殖促進と細胞分化誘導に必要であると報告した。今回、脂肪細胞の宿主の問題もあり、倫理委員会の承認を得て、手術で得たヒト成熟脂肪細胞を用い、検討した。1.コラーゲンゲルで前立腺細胞とヒト成熟細胞で、液性因子作用と接触因子作用を検討する条件で各種3次元培養を行った。ラット骨髄から得た前駆脂肪細胞から誘導した成熟脂肪細胞を用いた結果と同様に増殖促進と細胞分化を誘導した。2.上記で得られた癌細胞をゲルより分離し、蛋白、mRNAを抽出した。Westernblot法にて、蛋白活性を検討したところ、LNCaP細胞でPSGR2とIntegrineの蛋白活性が増強し、DU145ではIntegrineの蛋白活性が増強していた。3.現在、上記遺伝子についてmRNAlevelでの解析と行っている。4.今後、液性因子についてELISE法で解析を行う予定である。5.現在、PSGR2を導入した前立腺癌細胞を作成中である。(1)平成20年度と同様にヒト脂肪細胞と前立腺癌細胞株の混合培養を引き続き施行した。(2)ラット骨髄から得た前駆脂肪細胞から誘導した成熟脂肪細胞を用いた結果と同様に増殖促進と細胞分化を誘導することを確認した。(3)混合培養より分離したLNCaPを用いて、cDNA microarrayを行った。ANGTP1(血管新生関連遺伝子)は約270倍、TXNRD1(酸化ストレス関連遺伝子)は約130倍、MTERF(ミトコンドリア転写関連因子)は約100倍と著明に上昇している遺伝子も多数確認した。中でも細胞間接着と液性因子に注目してみると有意に発現上昇した遺伝子としてIL6とIntegrin関連遺伝子を、さらに前立腺特異的発現遺伝子PSGR2をも確認した。
KAKENHI-PROJECT-19791115
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骨髄幹細胞(前駆脂肪細胞)の前立腺癌への影響:シグナル伝達の網羅的解析
PSGR2はcontrol群に比べ約5倍、IL6は約4倍と上昇、Integrin関連遺伝子の中のITGB8が約4倍と上昇していた。(4)今回のcDNA microarray結果より発現レベルが上昇していた遺伝子のうち、細胞間接着と液性因子に関与する遺伝子について検討した。液性因子としてはIL6、細胞接着に関与するものとしてIntegrinについてそれぞれの蛋白レベルの検討に加え、前立腺特異的発現遺伝子PSGR2の蛋白レベルの検討を行った。LNCaP細胞ではPSGR2とIntegrinの蛋白活性が数倍増強し、DU145細胞ではIntegrinの蛋白活性僅かであるが増強していた。また、ELISA法で培養液中の液性因子の検討では、IL6が僅かであるが増加していた。Pca細胞ではいずれも未確認であり、上記に加え再度検する余地がある。(5) PSGR2遺伝子を導入した前立腺癌細胞株の作成を行う予定であったが、安定した細胞株の樹立の成功に至らなかった。こちらも更なる今後の検討が必要である。
KAKENHI-PROJECT-19791115
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水素ガスを用いた肺移植後虚血再灌流傷害への新たな治療法の開発
抗酸化作用を持つ水素ガスを吸入させることにより,肺移植後の虚血再灌流傷害を軽減することをラット肺移植実験モデルで証明してきた.本研究では,水素を肺移植後虚血再灌流傷害に対する新たな治療法とし人体に応用を目指すことを目的とした.施設倫理委員会の承認のもと,肺移植後患者に水素ガスを投与を開始した.現在現在データを蓄積中である.また水素の臓器保護効果の分子メカニズムを解明のために細胞実験系を用いた検討も開始した.抗酸化作用を持つ水素ガスを吸入させることにより,肺移植後の虚血再灌流傷害を軽減することをラット肺移植実験モデルで証明してきた.本研究では,水素を肺移植後虚血再灌流傷害に対する新たな治療法とし人体に応用を目指すことを目的とした.施設倫理委員会の承認のもと,肺移植後患者に水素ガスを投与を開始した.現在現在データを蓄積中である.また水素の臓器保護効果の分子メカニズムを解明のために細胞実験系を用いた検討も開始した.肺移植患者に対する水素吸入の臨床試験に向けて,水素ガス接続可能人工呼吸器システムの予備実験を行い,プロトタイプのシステムを構築した.水素4%,窒素96%の混合ガスを吸気ラインに接続するため,人工呼吸器での酸素濃度,換気量の設定が正しく反映されなくなる.そのため人工呼吸器の設定値と,実際の酸素濃度・換気量の解離を検証し,換算表を作成した.これにより臨床試験の実施が可能となったため,施設の倫理委員会へ申請し,現在承認待ちである.倫理委員会承認が得られれば,肺移植後,集中治療室にて人工呼吸管理中で,吸入酸素濃度が比較的低い状態でも呼吸状態が安定した患者に対し,1.3%の水素ガス吸入を24時間継続的に投与する臨床試験を開始する予定である.当研究室では水素が細胞内のNrf2シグナルを介して,抗酸化作用を示すことを証明した.さらなる水素分子の作用メカニズムの検証のため,Nrf2シグナル活性化が体外から検出可能なマウスを導入し,動物実験系,摘出肺からの細胞培養実験系の確立に現在務めている.昨年度より準備を進めていた,水素ガス接続可能人工呼吸器システムが完成した.当施設の倫理委員会へ申請し,承認を得られたため,肺移植後患者に対する水素ガス吸入の臨床試験を開始した.酸素濃度が70%未満で呼吸管理が可能となった肺移植直後の患者に対し,1.3%水素ガスを24時間吸入させ,臨床での水素ガス吸入が安全に施行可能であることを確認した.水素ガスの虚血再灌流傷害軽減効果については,現在症例とデータを蓄積中である.水素による臓器保護効果のメカニズムを検討するため,水素ガスを用いた細胞培養実験系を確立し,Nrf2シグナルと中心とした,細胞内シグナルへの作用の検討を開始した.また細胞内でのROS発生の中心であるミトコンドリアに対する水素の反応を検討するため,細胞外リフラックスアナライザーを用いたミトコンドリア機能評価系を確立中である.さらにin vitro実験で得られた結果を検証するため,マウス肺門クランプ虚血再灌流傷害モデルを確立し,データを蓄積を開始した.26年度が最終年度であるため、記入しない。呼吸器外科26年度が最終年度であるため、記入しない。水素接続可能人工呼吸システムの構築,検証に予想以上の時間を要した.25年度に臨床試験の開始には至らなかったが,施設の倫理委員会へ申請は終了した.また水素の抗酸化作用のメカニズムを検証するための基礎実験系の確立にも時間を要している.現在系を立ち上げるための予備実験中であり,さらにマウスを用いた動物実験系の準備もすでに開始している.集中治療室での臨床試験が安全に遂行することが確認された後,水素投与可能な麻酔器システムを構築し,移植手術中に水素投与を目指す.水素作用メカニズムの基礎実験系,動物実験系を確立すると同時に,マウス肺移植実験モデルの確立の準備を開始している.
KAKENHI-PROJECT-25893118
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噴流層の技術を応用した石炭のガス化装置の開発に関する基礎的研究
本研究は、流動層方式と氣流層方式の中間のガス化温度が適用可能な噴流層の技術を石炭のガス化に応用することによって、従来のガス化炉に比べて反応速度、熱効率、炉材などの点で経済的により有利なガス化装置を開発することを目的としている。本年度は、昨年度までの通常型噴流層の技術をさらに発展させた2段粒子層方式のジェット噴流層装置を新たに開発し、ガス化温度の高温化によって炭素転化率と冷ガス熱効率の向上をめざして部分酸化法による太平洋炭のガス化実験をおこない以下の結果を得た。1.炭素転化率は、ジェット噴流層温度が1200K以上で約85%となり、層上下部の温度差の減少による層平均温度の増加のため通常型噴流層で得られた転化率より約10%高い値となり、またガス化温度が約1400Kの場合でも灰の融着によるトラブルが起らないなど、所期の目的が達成された。2.生成ガスの組成は、ガス化温度が1200K以上でほぼ一定の値となり、水素が約45%、一酸化炭素が約29%、炭酸ガスが約19%、メタンが約4%で、その総発熱量は約11〔MJ/N【m^3】〕である。3.二段粒子層方式の本ガス化技置から排出する生成ガス温度は約1000Kと低く、従って約79%の高い冷ガス熱効率が得られた。4.ガス化剤中の水蒸氣分圧が高いほど生成ガス中の水素濃度が増加するが、これは上段流動層で主にシフト反応が起こるためで、水素を主製品とするガス化の場合には本方式の2段粒子層が有効であることが示唆された。5.小型固定層反応器を用いて太平洋炭のガス化反応の速度を実験的に検討し、反応速度が石炭中の炭素の未反応率に対し極大値を有することを認め、1つの極値を有する速度式を導出することによって実験結果を精度よく表現できることを示した。本研究は、流動層方式と氣流層方式の中間のガス化温度が適用可能な噴流層の技術を石炭のガス化に応用することによって、従来のガス化炉に比べて反応速度、熱効率、炉材などの点で経済的により有利なガス化装置を開発することを目的としている。本年度は、昨年度までの通常型噴流層の技術をさらに発展させた2段粒子層方式のジェット噴流層装置を新たに開発し、ガス化温度の高温化によって炭素転化率と冷ガス熱効率の向上をめざして部分酸化法による太平洋炭のガス化実験をおこない以下の結果を得た。1.炭素転化率は、ジェット噴流層温度が1200K以上で約85%となり、層上下部の温度差の減少による層平均温度の増加のため通常型噴流層で得られた転化率より約10%高い値となり、またガス化温度が約1400Kの場合でも灰の融着によるトラブルが起らないなど、所期の目的が達成された。2.生成ガスの組成は、ガス化温度が1200K以上でほぼ一定の値となり、水素が約45%、一酸化炭素が約29%、炭酸ガスが約19%、メタンが約4%で、その総発熱量は約11〔MJ/N【m^3】〕である。3.二段粒子層方式の本ガス化技置から排出する生成ガス温度は約1000Kと低く、従って約79%の高い冷ガス熱効率が得られた。4.ガス化剤中の水蒸氣分圧が高いほど生成ガス中の水素濃度が増加するが、これは上段流動層で主にシフト反応が起こるためで、水素を主製品とするガス化の場合には本方式の2段粒子層が有効であることが示唆された。5.小型固定層反応器を用いて太平洋炭のガス化反応の速度を実験的に検討し、反応速度が石炭中の炭素の未反応率に対し極大値を有することを認め、1つの極値を有する速度式を導出することによって実験結果を精度よく表現できることを示した。
KAKENHI-PROJECT-60045004
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-60045004
黒潮親潮混合域における暖水・冷水渦の時空構造と稚仔魚の輸送生残に関する研究
初年度には、既往の海洋観測資料の統計的解析を中心に研究を進めた。その結果、(1)黒潮続流から、北側の黒潮親潮移行域に黒潮系暖水が張り出すが、その動態を指標とする等温線は、衛生画像と漁船、貨物船等による半旬週単位の表面水温分布図を用いて、必要な精度で決定可能であること、(2)黒潮続流の蛇行の第一の峰から北に張り出した黒潮系暖水の北縁の緯度変化には、2030日と50日前後に卓越周期があり、この周期は本州南方の黒潮前線波動の周期とほぼ一致することが明らかになった。また、初年度から第二年度にわたって、研究船の白鳳丸、淡青丸および東京と苫小牧間を週2往復する定期航路船による現場観測を展開し、これに加えて生態系数値シミュレーションによる解析を行った。研究船による観測の結果、(3黒潮続流の蛇行の峰付近におけるCTDとADCPによる流速の横断面には、北縁と南縁寄りに流速のダブル・ピークが見られ、(4)北上暖水の起源には、黒潮続流の流軸中の300-400m深の水がなっていること、(5)等密度面に沿う運動と、渦位保存の仮定に基いて求めた水粒子は、高気圧性曲率が増加する黒潮続流の蛇行の峰の西側と、東側の両方で、反時計回りに放出されやすく、漂流ブイの流跡の挙動とも一致すること等が明らかになった。また定期航路船による連続的な観測からは、道南、三陸、常磐沖の春季ブルーミングの発生時期およびその機構の地理的な違いが明らかになった。本年度は、気象庁発行の海洋旬報と漁業情報サービスセンター発行の5日毎(1994年よリ7日毎)の漁海況速報の表面水温分布と、函館海洋気象台発行の144゚E線における四季の南北断面観測に関する海洋速報を用いた、既往の観測資料の統計的解析と、数値シュミレーションによる解析を中心にして研究を進めた。その結果、これまでに以下のことが明らかになった。(1)黒潮続流の北縁前線から北側の混合水域に侵入する黒潮系暖水の張り出しの動態を指標する等温線を決めることが表面水温マップを用いて必要な精度で可能であることがわかった。(2)黒潮続流の準定常蛇行流路の第1の峰(144゚E付近)から北に張り出した厚さ50100mの黒潮系暖水の北縁の緯度変化には、2030日と50日前後に卓越周期があり、この周期は本州南方の黒潮前線および沿岸域における水温や流速、潮位変動の周期とほぼ一致する。(3)黒潮続流の準定常蛇行流路の第2の峰(150゚E付近)からは、年13回程度の頻度で、比較的大規模な暖水が、北西に切離され、三陸・常磐沖の暖水塊や釧路沖の暖水塊に暖水を補給したり、それ自体で小暖水塊を形成することがわかった。(4)栄養塩類と植物プランクトンの生産を入れた暖水塊の数値シュミレーションモデル実験からは、越冬して密度が重くなった暖水塊に、新しくやや密度の小さな新しい暖水が比較的大規模に補給される場合、暖水塊の周辺部に湧昇を伴う低気圧性擾乱が発生し、暖水塊周辺部での基礎生産の促進に寄与することが明らかにされた。初年度には、既往の海洋観測資料の統計的解析を中心に研究を進めた。その結果、(1)黒潮続流から、北側の黒潮親潮移行域に黒潮系暖水が張り出すが、その動態を指標とする等温線は、衛生画像と漁船、貨物船等による半旬週単位の表面水温分布図を用いて、必要な精度で決定可能であること、(2)黒潮続流の蛇行の第一の峰から北に張り出した黒潮系暖水の北縁の緯度変化には、2030日と50日前後に卓越周期があり、この周期は本州南方の黒潮前線波動の周期とほぼ一致することが明らかになった。また、初年度から第二年度にわたって、研究船の白鳳丸、淡青丸および東京と苫小牧間を週2往復する定期航路船による現場観測を展開し、これに加えて生態系数値シミュレーションによる解析を行った。研究船による観測の結果、(3黒潮続流の蛇行の峰付近におけるCTDとADCPによる流速の横断面には、北縁と南縁寄りに流速のダブル・ピークが見られ、(4)北上暖水の起源には、黒潮続流の流軸中の300-400m深の水がなっていること、(5)等密度面に沿う運動と、渦位保存の仮定に基いて求めた水粒子は、高気圧性曲率が増加する黒潮続流の蛇行の峰の西側と、東側の両方で、反時計回りに放出されやすく、漂流ブイの流跡の挙動とも一致すること等が明らかになった。また定期航路船による連続的な観測からは、道南、三陸、常磐沖の春季ブルーミングの発生時期およびその機構の地理的な違いが明らかになった。初年度には、既往の海洋観測資料の統計的解析を中心に研究を進めた。
KAKENHI-PROJECT-08454129
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08454129
黒潮親潮混合域における暖水・冷水渦の時空構造と稚仔魚の輸送生残に関する研究
その結果、(1)黒潮続流から、北側の黒潮親潮移行域に黒潮系暖水が張り出すが、その動態を指標する等温線は、衛星画像と漁船、貨物船等による半旬週単位の表面水温分布図を用いて、必要な精度で決定可能であること、(2)黒潮続流の蛇行の第一の峰から北に張り出した黒潮系暖水の北縁の緯度変化には、2030日と50日前後の卓越周期があり、この周期は本州南方の黒潮前線波動の周期とほぼ一致することが明らかになった。また、初年度から第二年度にわたって、研究船の白鳳丸、淡青丸および東京と苫小牧間を週2往復する定期航路船による現場観測を展開し、これに加えて、生態系数値シミュレーションによる解析を行った。研究船による観測の結果、(3)黒潮続流の蛇行の峰付近におけるCTDとADCPによる流速の横断面には、北縁と南縁寄りに流速のダブル・ピークが見られ、(4)北上暖水の起源には、黒潮続流の流軸中の300-400m深の水がなっていること、(5)等密度面に沿う運動と、渦位保存の仮定に基いて求めた黒潮続流中の水粒子は、高気圧性曲率が増加する黒潮続流と蛇行の峰の西側と、東側の両方で、反時計回りに放出されやすく、漂流ブイの流跡の挙動とも一致すること等が明らかになった。また定期航路船による連続的な観測からは、道南、三陸、常磐沖の春季ブルーミングの発生時期およびその機構の地理的な違いが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-08454129
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08454129
腎臓および肺の線維化を左右するユビキチン制御の解明
ユビキチン依存性分解は極めて重要な細胞内の量的制御システムであり、細胞及び個体の恒常性維持に必須である。その異常や破綻は癌、神経変性疾患等の疾患と深く関係するが、慢性腎障害や間質性肺炎等の組織線維化を伴う疾患との関連は不明の点が多く、重要課題である。本研究ではそこに関与するE3リガーゼとその基質の同定と制御機構の解析を目指した。その結果腎障害で癌抑制RBファミリーのp130RB2タンパクが著明に増加する知見を得た。それの分子機構を解析するため、線維化の細胞モデル系である上皮間葉転換(EMT)の系を用いて解析した。その結果、MCF10AのTGF-beta刺激によるEMT誘導においても早い時期にp130RB2タンパクが蓄積されるがmRNAレベルでなく、p130タンパクの分解が抑制されている事がわかった。またp130と結合するE3リガーゼ数種および脱ユビキチン化酵素をIP-MS法で同定した。一方で転写因子GATA3はT細胞の分化に重要であるが、肺の線維化にも関与している。我々はSCF型E3リガーゼであるFbw7によってユビキチン依存的に認識、分解を受ける事、その認識に必要なリン酸化部位と責任キナーゼがcyclin A-CDK2であることを見いだした。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。[目的、背景]ユビキチン依存性分解は極めて重要な細胞内タンパク質の量的制御システムである。さらにユビキチン研究の発展により、結合する様々なユビキチン鎖によって、分解だけでなく基質タンパク質の運命を決定することも示唆されてきた。一方でユビキチンシステムの異常が癌、神経変成疾患、免疫疾患に関与することが示唆されている。しかしながらユビキチンシステムと関係するヒト疾患の全容は明らかになっていない。慢性腎障害や間質性肺炎等の組織線維化を伴う疾患は不明の点も多く、難治疾患である。我々はこれまでの解析で慢性腎障害進行にp27/Skp2経路の関与を報告してきた。さらに癌抑制遺伝子産物p130RB2の蓄積が観察され、本研究ではp130RB2の蓄積の詳細とユビキチンシステムによる制御機構を解析することで、p130RB2の発現量制御機構と腎障害進行、線維化の関連を明らかにする。[研究方法、結果]マウスUUO腎障害モデルを用いた解析で、p130RB2のmRNAには変動がないが、p130RB2タンパク質が早期に蓄積することが確認された。この点についてSkp2KOマウスでも野生型マウスと大きな差がないことからSkp2以外のE3リガーゼの変動が関与していることが示唆された。そこで培養細胞にHA-p130を強制発現させ免疫沈降物を高感度質量分析計で解析し、結合タンパク質を同定した。その結果数種のE3リガーゼが結合タンパク質として同定された。これらのE3候補についてsiRNAを用いたノックダウンによりp130RB2が蓄積するかで評価した。その結果、E6APおよびCul4のノックダウンによりp130RB2が蓄積することが判明した。ユビキチン依存性分解は極めて重要な細胞内の量的制御システムであり、細胞及び個体の恒常性維持に必須である。その異常や破綻は癌、神経変性疾患等の疾患と深く関係するが、慢性腎障害や間質性肺炎等の組織線維化を伴う疾患との関連は不明の点が多く、重要課題である。本研究ではそこに関与するE3リガーゼとその基質の同定と制御機構の解析を目指した。その結果腎障害で癌抑制RBファミリーのp130RB2タンパクが著明に増加する知見を得た。それの分子機構を解析するため、線維化の細胞モデル系である上皮間葉転換(EMT)の系を用いて解析した。その結果、MCF10AのTGF-beta刺激によるEMT誘導においても早い時期にp130RB2タンパクが蓄積されるがmRNAレベルでなく、p130タンパクの分解が抑制されている事がわかった。またp130と結合するE3リガーゼ数種および脱ユビキチン化酵素をIP-MS法で同定した。一方で転写因子GATA3はT細胞の分化に重要であるが、肺の線維化にも関与している。我々はSCF型E3リガーゼであるFbw7によってユビキチン依存的に認識、分解を受ける事、その認識に必要なリン酸化部位と責任キナーゼがcyclin A-CDK2であることを見いだした。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。腎障害モデルにおけるp130RB2の蓄積がタンパクレベルで起こり、そのE3はSkp2以外であることがわかった。さらに質量分析計をもちいた結合タンパク質の解析基盤にp130RB2のE3候補を2種見いだした。これはほぼ計画通りで、研究はおおむね順調であると判断している。H25年度の研究により、E6APおよびCul4がp130RB2の新たなE3候補であることがわかった。今後は実際にこれらがp130RB2と結合するか、ユビキチン依存的な分解を起こすか等、さらに詳細な解析を行いp130RB2の新たなE3を同定する。さらに線維化に関与するかを解析する。
KAKENHI-PUBLICLY-25112508
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-25112508
呼吸運動との協調を伴う周期的道具使用動作の「巧みさ」の発達
道具使用場面における課題の難易度と全身の協応状態との関係を明らかにするために、実験参加者の課題遂行時における「測定圧力中心分布」を、重心動揺計(ひずみゲージ式変換器:LUB-5OKB-P 4台、計装用コンディショナ:WGA-67OB-O 4台から構成)によって測定した。実験参加者の課題は「ハサミ(全長165mm,刃渡り75mm)の開閉運動」とし、ハサミの開閉運動(ヒンジ部における角度変化)を村田製作所製トリマポテンショメータ(PVS1A)によって計測した。大学生(すべて右利き)を被験者とし、楽な呼吸を行いながらもっとも好ましい速度で、しかし実際には紙を切らずに空中でハサミを開閉する条件(A条件)、および、楽な呼吸を行いながらもっとも好ましい速度で、A4版上質コピー用紙の長辺の縁を「およそ1cmの深さで、できるだけ細かく、ほぼ一定の間隔で短冊状に切り込むこと」を繰り返す条件(B条件)とに分けて実験を行った。重心動揺計から得られた波形データ(30秒間分)について、再帰性定量化分析(Recurrence Quantification Analysis)における3つの指標(%REC,%DET,MAXLINE)によって評価した。その結果、特に「%DET値」において、A条件<B条件となることがあきらかとなった。この結果は、ハサミを単に空中で開閉しているときとよりも、ハサミを使って紙を切るという注意を要する課題を遂行しているときに、全身の協調状態に関して、より決定論性の強い状態が構築されていることを示している.呼吸運動は重心の変動に影響を与える要因の一つであるが、呼吸運動を含む全身の協調状態は、道具使用場面において、課題に即して目的的に変化することが示唆された.道具使用場面での巧緻性と呼吸運動との協調関係を明らかにするための実験を行った.呼吸運動にともなう胸部の拡張/収縮をAMI製Inductotraceシステムによって,また,ハサミ(全長165mm,刃渡り75mm)の開閉運動(ヒンジにおける角度変化)を村田製作所製ポテンショメータによって計測した.サンプリング周波数は100Hzとした.10名の大学生(すべて右利き)を被験者とし,楽な呼吸を行いながらもっとも好ましい速度で,しかし実際には紙を切らずに空中でハサミを開閉する条件(A条件:6名),楽な呼吸を行いながらもっとも好ましい速度で,A4版上質コピー用紙の長辺の縁を「約10mmの深さで,できるだけ細かく,一定の間隔で,短冊状に切り込むこと」を繰り返す条件(B条件:4名)に分けて実験を行った.実験から得られた波形データ(20秒間分,2000点)について,相互再帰性定量化分析における3つの指標(%REC,%DET, MAXLINE)によって評価した.その結果,「MAXLINE値」において,A条件<B条件となることがあきらかとなった(t(8)=2.76,p<.05).これは,ハサミを単に空中で開閉しているときよりも,ハサミを使って紙を切る課題を遂行しているときの方が,呼吸運動とハサミの開閉運動との間に,より決定論性の強い協調関係が構築されていることを示している.これは,呼吸運動が,その本来の目的である換気活動だけでなく,その自律性を失わない範囲においては,課題に応じて他の活動を支持する場合があることを示唆していると考えられる.道具使用場面における課題の難易度と全身の協応状態との関係を明らかにするために、実験参加者の課題遂行時における「測定圧力中心分布」を、重心動揺計(ひずみゲージ式変換器:LUB-5OKB-P 4台、計装用コンディショナ:WGA-67OB-O 4台から構成)によって測定した。実験参加者の課題は「ハサミ(全長165mm,刃渡り75mm)の開閉運動」とし、ハサミの開閉運動(ヒンジ部における角度変化)を村田製作所製トリマポテンショメータ(PVS1A)によって計測した。大学生(すべて右利き)を被験者とし、楽な呼吸を行いながらもっとも好ましい速度で、しかし実際には紙を切らずに空中でハサミを開閉する条件(A条件)、および、楽な呼吸を行いながらもっとも好ましい速度で、A4版上質コピー用紙の長辺の縁を「およそ1cmの深さで、できるだけ細かく、ほぼ一定の間隔で短冊状に切り込むこと」を繰り返す条件(B条件)とに分けて実験を行った。重心動揺計から得られた波形データ(30秒間分)について、再帰性定量化分析(Recurrence Quantification Analysis)における3つの指標(%REC,%DET,MAXLINE)によって評価した。その結果、特に「%DET値」において、A条件<B条件となることがあきらかとなった。この結果は、ハサミを単に空中で開閉しているときとよりも、ハサミを使って紙を切るという注意を要する課題を遂行しているときに、全身の協調状態に関して、より決定論性の強い状態が構築されていることを示している.呼吸運動は重心の変動に影響を与える要因の一つであるが、呼吸運動を含む全身の協調状態は、道具使用場面において、課題に即して目的的に変化することが示唆された.
KAKENHI-PROJECT-16730368
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生体影響計測と個人差を考慮した非線形数理モデルの構築によるAR酔い原因の特定
近年、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)の利用が拡大しつつある。しかし、AR視聴の場合、視環境がこれまでの立体映像視認時とは異なる。本年度は、AR環境下における立体映像の視認方法や制作基準に関する基礎的な知見を得ることを目的とし、AR環境下における立体映像視認時の背景映像の視野狭窄および映像を投影する現実の背景の変化が、生体にどのような影響を与えるのかについて実験的に検討を行った。透過型ヘッドマウントディスプレイを用いて、実験および測定を行った。実験で使用した立体映像は、背景映像上を球体が準周期的に往復運動をするものを用いた。また、本年度は立体映像の視認方法を評価するため、2タイプの映像を用いて、実験を行った。2つの映像間の違いは、背景映像の視野狭窄の有無のみであり、準周期的に往復運動する球体の動きは同じである。実験では、重心動揺、心電図、脳血流量の同時計測を行い、映像間の比較をすることで、背景映像の視野狭窄の有無について検証した。重心動揺の解析結果から、視野狭窄のある映像の視認時に動揺が小さくなるということが確認できた。動揺が小さくなるということは、映像酔いの危険が少ないということであり、AR環境下では、背景映像に視野狭窄のある映像の方が安全であるという可能性が示唆された。心電図の解析結果から、AR環境下における視野狭窄は自律神経系に大きな影響を及ぼさないという結果が得られた。脳血流量の解析結果から、視野狭窄が脳血流に及ぼす影響がみられた。今年度実施した実証実験を踏まえて、数理解析および統計解析を行った結果、基礎的知見が少ないAR視聴時の生体の状態について、一定の結果が得ることができた。また、次年度以降に行う予定であった実験や解析にも着手しており、いくつかの研究成果につながっている。さらに、予備実験の段階で出てきた結果から、新たな知見も出てきており、今後の研究を進める上で重要なヒントも得られている。若年健常者を対象にスマートグラスを装用させ、視野領域のサイズの影響について、実験的評価を進めて行く。今年度の実験結果についても、より詳細な解析を進めていく。また、照度の影響についても前述の実験において検討する予定である。さらに、今年度の研究結果から、AR環境下においては、背景の変化は生体に影響を及ぼさない可能性を示唆された。そのため、背景の変化については、より変化に差があるものを用いて、その際の生体に及ぼす影響を検討していく。近年、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)の利用が拡大しつつある。しかし、AR視聴の場合、視環境がこれまでの立体映像視認時とは異なる。本年度は、AR環境下における立体映像の視認方法や制作基準に関する基礎的な知見を得ることを目的とし、AR環境下における立体映像視認時の背景映像の視野狭窄および映像を投影する現実の背景の変化が、生体にどのような影響を与えるのかについて実験的に検討を行った。透過型ヘッドマウントディスプレイを用いて、実験および測定を行った。実験で使用した立体映像は、背景映像上を球体が準周期的に往復運動をするものを用いた。また、本年度は立体映像の視認方法を評価するため、2タイプの映像を用いて、実験を行った。2つの映像間の違いは、背景映像の視野狭窄の有無のみであり、準周期的に往復運動する球体の動きは同じである。実験では、重心動揺、心電図、脳血流量の同時計測を行い、映像間の比較をすることで、背景映像の視野狭窄の有無について検証した。重心動揺の解析結果から、視野狭窄のある映像の視認時に動揺が小さくなるということが確認できた。動揺が小さくなるということは、映像酔いの危険が少ないということであり、AR環境下では、背景映像に視野狭窄のある映像の方が安全であるという可能性が示唆された。心電図の解析結果から、AR環境下における視野狭窄は自律神経系に大きな影響を及ぼさないという結果が得られた。脳血流量の解析結果から、視野狭窄が脳血流に及ぼす影響がみられた。今年度実施した実証実験を踏まえて、数理解析および統計解析を行った結果、基礎的知見が少ないAR視聴時の生体の状態について、一定の結果が得ることができた。また、次年度以降に行う予定であった実験や解析にも着手しており、いくつかの研究成果につながっている。さらに、予備実験の段階で出てきた結果から、新たな知見も出てきており、今後の研究を進める上で重要なヒントも得られている。若年健常者を対象にスマートグラスを装用させ、視野領域のサイズの影響について、実験的評価を進めて行く。今年度の実験結果についても、より詳細な解析を進めていく。また、照度の影響についても前述の実験において検討する予定である。さらに、今年度の研究結果から、AR環境下においては、背景の変化は生体に影響を及ぼさない可能性を示唆された。そのため、背景の変化については、より変化に差があるものを用いて、その際の生体に及ぼす影響を検討していく。本年度末に予定していた研究打ち合わせが中止になったため、使用額の変更が生じた。中止になった研究打ち合わせは翌年度当初に行う予定である。
KAKENHI-PROJECT-18K11417
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植物ウイルスのモレキュラータクソノミーシステムの確立のための基盤的研究
プラス鎖の1本鎖RNAゲノムの長形ウイルスには棒状、ひも状の2種類があり、さらに理化学的性状、生物学的性状の違いにより、棒状ウイルスにはtobravirus、furovirus、tobamovirus group等が、ひも状ウイルスにはcarlavirus、potexvirus、capilovirus、potyvirus、closterovirus group等がある。後者のひも状ウイルスのうち、carlavirus、potexvirus、potyvirus groupについては近年ウイルスゲノムRNAのcDNA cloningと塩基配列の決定等によりゲノム構造がかなり明らかになり、これらの成果の多くは従来の分類体系に反映されるようになった。しかしながらclosterovirus groupや、capilovirus groupに関してはゲノム構造に関する知見がこれまでほとんど無かった。とくにclosterovirus groupについては生物学的および理化学的性状の観点から見て多種多様な性質を持ったウイルスが分類されておりその再検討の必要なことが近年指摘されていた(Ahmd et al.,1983)。一方、capillovirus groupもclosterovirus groupから最近分離設立されたが(Milne et al.,1988:四方ら、1988:Brown,1989)、closterofirusの一部メンバーとゲノムサイズ、媒介者不明等の点で共通する性質も持っており、両ウイルスグループについては一括して分類を再構築することが必要であると考えられていた。本研究は、以上のような見解のもとに、ウイルス粒子の形態や、生物学的性状を用いた類縁関係に基づく既成の分類法から発展させて、植物ウイルスのモレキュラータクソノミーシステムの確立を目的として、新たに独自の基盤的研究を行った。その結果当初の目的通りの結果が得られた。プラス鎖の1本鎖RNAゲノムの長形ウイルスには棒状、ひも状の2種類があり、さらに理化学的性状、生物学的性状の違いにより、棒状ウイルスにはtobravirus、furovirus、tobamovirus group等が、ひも状ウイルスにはcarlavirus、potexvirus、capilovirus、potyvirus、closterovirus group等がある。後者のひも状ウイルスのうち、carlavirus、potexvirus、potyvirus groupについては近年ウイルスゲノムRNAのcDNA cloningと塩基配列の決定等によりゲノム構造がかなり明らかになり、これらの成果の多くは従来の分類体系に反映されるようになった。しかしながらclosterovirus groupや、capilovirus groupに関してはゲノム構造に関する知見がこれまでほとんど無かった。とくにclosterovirus groupについては生物学的および理化学的性状の観点から見て多種多様な性質を持ったウイルスが分類されておりその再検討の必要なことが近年指摘されていた(Ahmd et al.,1983)。一方、capillovirus groupもclosterovirus groupから最近分離設立されたが(Milne et al.,1988:四方ら、1988:Brown,1989)、closterofirusの一部メンバーとゲノムサイズ、媒介者不明等の点で共通する性質も持っており、両ウイルスグループについては一括して分類を再構築することが必要であると考えられていた。本研究は、以上のような見解のもとに、ウイルス粒子の形態や、生物学的性状を用いた類縁関係に基づく既成の分類法から発展させて、植物ウイルスのモレキュラータクソノミーシステムの確立を目的として、新たに独自の基盤的研究を行った。その結果当初の目的通りの結果が得られた。本研究では、研究分担者が二つのグループに分かれ、そのひとつはククモウイルスのように古くから研究が行われ、植物ウイルスの中では最もその性状に関するデータの揃ったウイルスグループの一つであり、分類学的にもコンセンサスの得られた分類学的位置づけのなされているウイルスグループを担当し、もう一つのグループは、カピロウイルスのように、まだ全く遺伝子レベルでの情報の報告されていない新グループのウイルス群を担当した。これにより、既存のモレキュラータクソノミーに於ける問題点の発掘と再点検を行い、既成の分類群に新たなタクソノミーシステムを実験的に応用する事をその目的とした。平成5年度の研究実績の概要は以下の通りである。I.ククモウイルスまずククモウイルスの代表ウイルスであるキュウリモザイクウイルスの東南アジア産分離株(都丸)、アブラナ科系統分離株(高浪)、CS・NS・pepo・FT・Y等の分離株(古澤)を同定し、生物学的性質・RNAゲノム組成・血清学的性質を調べ、増殖・精製し、その理化学的性状を調べた(都丸・古澤・高浪)。次いで、これらのウイルスのゲノムRNAを精製したのち、RNA3のcDNAを合成し、クローニングした(古澤・高浪)。これらのクローンを用いて、RNA3の塩基配列を決定した(古澤・高浪)。この塩基配列を元に、他のウイルスとの比較解析を行った(都丸・古澤・高浪)。II.カピロウイルスまずカピロウイルスに分類されているリンゴステムグルービングウイルス・ポテトウイルスTを増殖・精製し、その理化学的性状を調べた(土崎・高橋・難波)。次いで、両ウイルスのゲノムRNAを精製、cDNAを合成し、クローニングした(高橋・難波)。これらのクローンを用いて両ウイルスの塩基配列を決定した(高橋・難波)。ククモウイルスの代表ウイルスであるキュウリモザイクウイルスの東南アジア産分離株(都丸)、アブラナ科系統分離株、CS・NS・pepo・FT・Y等の分離株(古澤)を同定し、生物学的性質・RNAゲノム組成・血清学的性質を調べ、増殖・精製し、その理化学的性状を調べた。また、ゲノムRNAを精製、RNA1,2,3のcDNAを合成し、クローニングし、塩基配列を決定した。
KAKENHI-PROJECT-05304013
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植物ウイルスのモレキュラータクソノミーシステムの確立のための基盤的研究
この塩基配列を元に、他のウイルスとの比較解析を行い、国内外に発生する他のククモウイルスおよびそれ以外のウイルスの各分離株の生物学的性状・遺伝子構造・遺伝子の機能に関する既報及び未報告のデータを集めた。また、カピロウイルスに分類されているリンゴステムグリービングウイルス(ASGV)・potato virus T(PVT)を増殖・精製し、その理化学的性状を調べ、ゲノムNAを精製RNAを合成し、クローニングした。そして、両ウイルスの塩基配列を決定した。キャピロウイルスに関する海外のデータを集め、整理した。また、キャピロウイルス以外のウイルスのデータを集め、得られたデータをもとに、各遺伝子領域を用いて、系統学的な解析を行った。その結果、ASGVのゲノムには大きなORF1とその中央より3′端末寄りに小さなORF2が一つあることがわかった。一方PVTには互いに末端が少しずつ重複した3つのORFが存在することが明らかになり、ASGVとPVTは互いに全く異なった遺伝子構造を持つことが明らかとなった。この成果により、ASGVはCapillovirus属のタイプ種に、一方PVTはこのグループから外し、代わりにTrichovirus属を新たに設立し、これと遺伝子構造の類似していることが明らかとなったリンゴクロロティックリーフスポットウイルスをタイプ種として一緒に分類することを提案し、国際ウイルス分類委員会において承認された。
KAKENHI-PROJECT-05304013
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高圧キセノンガスを用いたニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊の探索
昨年度に引き続き、ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊探索のための検出器開発を行った。本検出器は高圧キセノンガスを用いたTime Projection Chamber(TPC)であり、電離信号を光信号に変換して読み出す特徴的な信号読み出し機構によって高いエネルギー分解能を達成することが期待できる。今年度は小型試作検出器による測定・性能評価を行いつつ、次期フェーズである大型試作機の設計及び製作を行った。特に信号読み取り機構の設計は本検出器の性能を決める上で非常に大切な要素である。高圧キセノンガスを導入した小型試作検出器にチェッキングソースを当て、様々な電場条件で得られた結果を元にシミュレーションを行い、様々な形状の候補の中から十分な性能が期待できる設計・仕様を決定した。また大型試作機およびさらに将来の大型検出器の組み立てにあたり、検出器要素をユニット化し大型化および多チャンネル化を容易とする設計を行った。ユニット化された検出器を実際に制作し、コミッショニングを行うことで初信号を得ることに成功した。さらに、本科研費による3年間の研究結果の発表として2件の国際学会に参加し、口頭発表にて成果発表を行った。本科研費は今年度で終了となるが、本プロジェクト自体は他科研費などにより研究を継続するため、引き続き検出器開発および開発した検出器によるニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊探索を行う予定である。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊の探索は、ニュートリノがマヨラナ性を有するか否かを決定するために重要な実験である。ニュートリノがマヨラナ性をもつことで、ニュートリノの極端に軽い質量を自然に説明できるモデルが有り、また、物質優勢宇宙の起源についての大きなヒントともなり得るために、非常に注目されている。ニュートリノがマヨラナ性をもつ場合にのみニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊が起こりうる。これを観測することが本研究の目的であるが、この崩壊は非常に稀であるために、発見には高エネルギー分解能、大質量を兼ね備えた検出器が必須であり、それらをかね備えた高圧キセノンガス検出器を開発している。28年度の研究では、容積0.7L程の小型の試作機を用いて高いエネルギー分解能が達成できるかどうかの性能評価を行った。解析の方法や検出器の改良を行い、その性能を大きく向上させることができた。また、放電が原因でうまく電圧がかけられない問題が深刻であったが、検出器内部から電源に至るまで、あらゆるところに対して放電対策を施すことで目標の電場を形成させることができるようになり、結果として二重ベータ崩壊のQ値に換算して1%を下回るエネルギー分解能(FWHM)を達成した。これにより、開発している検出器のコンセプトが間違っていないことが示された。また、大型化のノウハウを獲得するために、より大型の試作機の制作にもとりかかった。29年度の稼働を目指して、圧力容器や検出器の構造の設計を開始している。小型の試作機による性能評価について、検出器と解析方法の改良及び、放電対策を徹底しすることで、その性能を大幅に向上させることができた。4気圧のキセノンガスを使用し、57Coより放出される122keVのガンマ線を用いて性能評価を行い、二重ベータ崩壊のQ値に換算して0.8%(FWHM)のエネルギー分解能を達成した。また、次期大型試作機の開発も同時に行っており、28年度は検出器を収める圧力容器の設計や検出器部分の仕様の決定、構造の検討を行った。制作は現在進めており、29年度中の稼働を目指している。高圧キセノンガスを用いたTPC開発の基礎原理確立を目的として、φ10cm×9cm程度の小型の試作TPCを開発し、性能評価を行った。開発した試作検出器の運用の際、圧力容器に封入するキセノンガスの純度が悪く、信号量が減衰することが問題となっていた。私はキセノンガス系統の循環、純化設備を整え、ガス純度の向上に貢献した。その結果、光量の増加および安定化に成功した。また、開発した検出器は数十kVもの高電圧を圧力容器内部で用いるが、放電が度々起こり、まともに測定が出来ない状況となりつつあった。そこが私は検出器を構成している各要素から電源に至るまでの全てのコンポーネントを細かく調べ、問題があった箇所については適宜対策を行う、または部品の再制作を行うことでこの問題に対処した。2017年度の前半に上述の設備の問題点の改善に取り組んだ後、年度後半では標準ガンマ線源を用いた検出器の性能評価を行った。ガス圧を8気圧とし、350keVのエネルギーのガンマ線を放出する線源を用いた性能評価を行った。取得したデータには適切なカット、補正をかけることで良い性能の実証に成功した。これらのカットや補正については、一昨年度までの研究で確立していた手法に加えて、ガス圧やエネルギーが増加したことに起因する新しい問題にも対処できる補正などをいくつか開発し適用している。これらの解析手法の更新により、350keVのピークに対して、エネルギー分解能2.54% (FWHM)を達成した。小型試作検出器での原理実証及び性能評価を終えた次のステージとして、φ30cm×30cm程度の大型の試作検出器の開発も行っている。2017年度は、大型試作検出器を格納する圧力容器の設計を行い、メーカーとの綿密な打ち合わせを経て製作を行った。
KAKENHI-PROJECT-16J09462
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高圧キセノンガスを用いたニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊の探索
昨年度前半は、予想外の放電に悩まされ、研究が思うようには進まなかった。放電箇所の特定とその修復を繰り返すことで地道に対応をおこなったが、中には部品の再製作を余儀なくされた箇所もあり、業者の納期の都合で1ヶ月以上新たなデータ取得が出来ない期間などもあった。しかし、これらの努力により、昨年度の7月には放電の問題は大きく改善され、新たにデータを取得することが可能な状態となった。新たにデータを取得するにあたり、一昨年度から比べてガス圧を2倍の8気圧まで増やし、より高いエネルギー事象の性能評価を行った。このガス圧の増大および観測エネルギーの増大から、光検出器MPPCの非線形性などの新たな問題がいくつか浮上した。これらの問題に対しても、データを精査することで適宜適切なカットや補正を開発し、適用した。これらのカットや補正の開発には日々精力的に取り組み、幾度となく改良を重ねたことによって、350keVの事象に対しても良い性能を発揮することを示すことが出来た。さらに511keVのエネルギー事象に対する性能評価を行うべく研究を行っているが、昨年度はその実施には至らなかった。また、次期大型試作検出器の開発も進めており、昨年度は検出器を格納する圧力容器の設計、発注を行った。これらから総合的に判断し、概ね順調に進展していると評価した。昨年度に引き続き、ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊探索のための検出器開発を行った。本検出器は高圧キセノンガスを用いたTime Projection Chamber(TPC)であり、電離信号を光信号に変換して読み出す特徴的な信号読み出し機構によって高いエネルギー分解能を達成することが期待できる。今年度は小型試作検出器による測定・性能評価を行いつつ、次期フェーズである大型試作機の設計及び製作を行った。特に信号読み取り機構の設計は本検出器の性能を決める上で非常に大切な要素である。高圧キセノンガスを導入した小型試作検出器にチェッキングソースを当て、様々な電場条件で得られた結果を元にシミュレーションを行い、様々な形状の候補の中から十分な性能が期待できる設計・仕様を決定した。また大型試作機およびさらに将来の大型検出器の組み立てにあたり、検出器要素をユニット化し大型化および多チャンネル化を容易とする設計を行った。ユニット化された検出器を実際に制作し、コミッショニングを行うことで初信号を得ることに成功した。さらに、本科研費による3年間の研究結果の発表として2件の国際学会に参加し、口頭発表にて成果発表を行った。本科研費は今年度で終了となるが、本プロジェクト自体は他科研費などにより研究を継続するため、引き続き検出器開発および開発した検出器によるニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊探索を行う予定である。29年度中に大型試作機の開発を完了し、性能を評価する。また、得られたデータとシミュレーションを照らし合わせ、検出器の理解を深める。具体的には、バックグラウンドの量と源を特定し、最終的に開発する検出器の開発の際に問題となるであろう箇所を炙り出す。また、大型試作機の開発を通じて、大量チャンネルの光検出器の制御や高電圧の取扱に対するノウハウを獲得する。引き続き小型試作検出器の性能評価を進める。
KAKENHI-PROJECT-16J09462
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国際共同制作テレビドキュメンタリーのアジア的価値の生成過程に関する民族誌学的研究
メディア産業の知・権力と番組制作者の解釈枠組みに関して、国際共同制作テレビドキュメンタリーをディスコース実践の問題として捉え、番組制作過程の「行為実践/表象する知・権力」の双方に対して、メディア人類学の視点から多角的に民族誌的な調査と番組内容の分析を平行して行った。よって補助金は、主に上記の研究を遂行するための内外における資料収集と聞き取り調査に当てられた。1.欧米のメディア人類学が、メディア研究全体のなかで大きな成果を収めた、マスメディア・システムを特定の言明を儀礼化する儀礼的エージェントとして見なす近年の民族誌的研究について、その意義や成果を確認し、その成果を論文として発表した。2,英国映画協会(BFI)において、国立映画テレビ放送アーカ'イブス(NFTVA)でのBSC(放送番組基準委員会)に関する資料収集。BBCにおいて、EPUの編集方針、プロデューサー・ガイドラインに関する聞き取り調査を行った。またロンドン大学の「アジアメディアプロジェクト」関連の資料調査をシンガポールの南洋工科大学において行った。3.米国のワシントンDCとメリーランド、さらにマレーシアにおいて、次のような資料調査と聞き取り調査を行った。共同製作者:『ミニドラゴンズ』の制作過程、日本語版へのコメント、ゲートキーパーの役割等の聞き取り調査。米国放送図書館(ABL)および国立公共放送アーカ'イブス(NPBA):放送倫理と第三者機関。米国議会図書館:連邦通信委員会(FCC)と公共放送制度である。4.以上の成果を踏まえて、論文を執筆するとともに、批判的ディスコース分析による調査結果の分析を進めている。本研究課題より派生したメディア言説と国家理念の問題に関して、基盤研究C(一般)による共同研究「新聞広告・読書欄にみる東南アジア域内世論の相互仮響」モデル構築」と題する研究を企図し、準備を進めている。メディア産業の知・権力と番組制作者の解釈枠組みに関して、国際共同制作テレビドキュメンタリーをディスコース実践の問題として捉え、番組制作過程の「行為実践/表象する知・権力」の双方に対して、メディア人類学の視点から多角的に民族誌的な調査と番組内容の分析を平行して行った。よって補助金は、主に上記の研究を遂行するための内外における資料収集と聞き取り調査に当てられた。1.欧米のメディア人類学が、メディア研究全体のなかで大きな成果を収めた、マスメディア・システムを特定の言明を儀礼化する儀礼的エージェントとして見なす近年の民族誌的研究について、その意義や成果を確認し、その成果を論文として発表した。2,英国映画協会(BFI)において、国立映画テレビ放送アーカ'イブス(NFTVA)でのBSC(放送番組基準委員会)に関する資料収集。BBCにおいて、EPUの編集方針、プロデューサー・ガイドラインに関する聞き取り調査を行った。またロンドン大学の「アジアメディアプロジェクト」関連の資料調査をシンガポールの南洋工科大学において行った。3.米国のワシントンDCとメリーランド、さらにマレーシアにおいて、次のような資料調査と聞き取り調査を行った。共同製作者:『ミニドラゴンズ』の制作過程、日本語版へのコメント、ゲートキーパーの役割等の聞き取り調査。米国放送図書館(ABL)および国立公共放送アーカ'イブス(NPBA):放送倫理と第三者機関。米国議会図書館:連邦通信委員会(FCC)と公共放送制度である。4.以上の成果を踏まえて、論文を執筆するとともに、批判的ディスコース分析による調査結果の分析を進めている。本研究課題より派生したメディア言説と国家理念の問題に関して、基盤研究C(一般)による共同研究「新聞広告・読書欄にみる東南アジア域内世論の相互仮響」モデル構築」と題する研究を企図し、準備を進めている。今年度は、公共放送のテレビドキュメンタリーにおける「種族主義」的表現の類型化のプロセスを人類学的に明らかにするために、「番組制作過程」の調査、および「放送倫理と第三者機関」に関する研究を行った。よって今年度の補助金は、主に上記の研究を遂行するための海外における資料収集と聞き取り調査、そして関連資料の購入に当てられた。1.英国において、「番組制作過程」に関するグラスゴーメディアグループのGreg Philoらの研究動向、Ethnic Minorities and Mediaに関する研究資料などの資料調査を行った。2.NHKおよびBBCにおいて、「放送倫理と第三者機関」に関する局内の制度や運用について聞き取り調査を行った。BBCプロデューサーガイドラインについては、実務者から資料提供を受けた。英国映画協会(BFI)の国立放送図書館において、英国を中心としたITC/BSCから通信・放送を融合した規制機関OFCOM(Office of Communications)の報告書の検討、および公共サービス放送と文化的多元性について調査した。3.「番組資料分析」については、当初予定していた「ミニドラゴンズ」が番組制作から10年以上経過し、海外版の制作資料や関係者に直接あたることが困難となっている。よって内容分析と現在調査可能な国内の対象者へ研究範囲を限定しつつ、調査手順と対象について再検討をしている。4.シンガポールのアジアメディア情報センター(AMIC)において各国研究者からの聞き取りから今後、日本を含むアジア太平洋州においても、放送アーカイブの構築への動きや学際的なメディア研究組織の形成など、文化とメディアに関する研究が大きく発展しそうなことが分かった。「番組制作過程」とマイノリティ問題、および「放送倫理と第三者機関」については、本年度の各成果の投稿準備中である。今年度は、メディア産業の知・権力と番組制作者の解釈枠組みのディスコース実践の問題として捉え、番組制作過程の「行為実践/表象する知・権力」の双方に対して、メディア人類学の視点から多角的に民族誌的な調査と番組内容の分析を平行して行った。よって今年度の補助金は、主に上記の研究を遂行するための海外における資料収集と聞き取り調査に当てられた。
KAKENHI-PROJECT-16520508
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16520508
国際共同制作テレビドキュメンタリーのアジア的価値の生成過程に関する民族誌学的研究
1.欧米のメディア人類学が、メディア研究全体のなかで大きな成果を収めた、マスメディア・システムを特定の言明を儀礼化する儀礼的エージェントとして見なす近年の民族誌的研究について、その意義や成果を確認し、その成果を論文として発表した。2.米国のワシントンDCとメリーランド、さらにマレーシアにおいて、次のような資料調査と聞き取り調査を行った。共同製作者:『ミニドラゴンズ』の制作過程、日本語版へのコメント、ゲートキーパーの役割等の聞き取り調査。米国放送図書館(ABL)および国立公共放送アーカイブス(NPBA):放送倫理と第三者機関。米国議会図書館:連邦通信委員会(FCC)と公共放送制度である。3.以上のような調査研究の成果を踏まえて、論文を執筆するとともに、批判的ディスコース分析による調査結果の分析を進めている。また、本研究課題より派生した質的研究法に関して、共同研究「学際的な質的研究法の体系化と方法論教育への展開に関する調査研究」と題する研究を企図し、研究代表者として準備を進めている。
KAKENHI-PROJECT-16520508
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触認識に関する発達的研究
糖尿病などの病因により高年令における中途失明が増加している今日、彼らの知的活動を補助する目的で文字情報を伝達しうる多様な手段を考えて行かなければならない。しかし、触パターン知覚に関する我々の研究においては、以前から高令者の触パターン知覚が若年令より劣り、困難であることが指摘されていた。この研究においては、幼年から70代の高齢者まで幅広い年齢層の人々を被験者として、ドット状で表示される機械的なひらがな文字、紙の上に表示される浮上り線文字ひらがな、いわゆるオプタコン素子を用いて表示される0から9までの数字の触覚的な読み取り実験を行った。これらは能動能モードと受動能モードの両触知覚的モードを含むもので、結果は盲人の結果とも比較された。晴眼被験者は皆、触覚によってパターンを把握するような経験は以前にはなく、盲人よりは成績が劣ったが、10代20代の若年者の成績はこれを大差はなかった。それ以降年令が高くなるにつれて成績は顕著に悪くなり、多くの時間がかかるのに、しかも間違いが多かった。文字の大きさも最大で7種類を用意して検討したが、小さな文字の場合には高齢者はほとんど読むことが出来なかった。この劣化は能動触においてばかりではなく、受動触においても顕著であったことから、単に老化によって触覚が鈍化するとか、触運動的なモーター・コントロールがうまく行かなくなるといった原因によるのではなく、より高次レベルで個々の触情報をまとめて文字をイメージし、長期記憶内の文字情報と照合するといった作業レベルで変化が起っているのであろうということを予測させた。糖尿病などの病因により高年令における中途失明が増加している今日、彼らの知的活動を補助する目的で文字情報を伝達しうる多様な手段を考えて行かなければならない。しかし、触パターン知覚に関する我々の研究においては、以前から高令者の触パターン知覚が若年令より劣り、困難であることが指摘されていた。この研究においては、幼年から70代の高齢者まで幅広い年齢層の人々を被験者として、ドット状で表示される機械的なひらがな文字、紙の上に表示される浮上り線文字ひらがな、いわゆるオプタコン素子を用いて表示される0から9までの数字の触覚的な読み取り実験を行った。これらは能動能モードと受動能モードの両触知覚的モードを含むもので、結果は盲人の結果とも比較された。晴眼被験者は皆、触覚によってパターンを把握するような経験は以前にはなく、盲人よりは成績が劣ったが、10代20代の若年者の成績はこれを大差はなかった。それ以降年令が高くなるにつれて成績は顕著に悪くなり、多くの時間がかかるのに、しかも間違いが多かった。文字の大きさも最大で7種類を用意して検討したが、小さな文字の場合には高齢者はほとんど読むことが出来なかった。この劣化は能動触においてばかりではなく、受動触においても顕著であったことから、単に老化によって触覚が鈍化するとか、触運動的なモーター・コントロールがうまく行かなくなるといった原因によるのではなく、より高次レベルで個々の触情報をまとめて文字をイメージし、長期記憶内の文字情報と照合するといった作業レベルで変化が起っているのであろうということを予測させた。32×32本の固定型ソレノイド素子をマトリックス状に配列した触覚刺激装置を用いて、大・中・小と大きさの異なる平仮名46文字を触読させた。盲人高校生5名は初め平仮名の文字名を表現できず苦労したが、触読はさすが速く正確で、晴眼者とは雲泥の差を示した。閉眼晴眼者に関しては幼年から老人まで6つの年令群それぞれに5名のデータを集め、正答率・触読時間・混同マトリックスについて分析を試みた。このうち、中・高・大の学生層は比較的成績が良かったが、年少児の場合には意欲を維持させること自体が困難であった。また壮年以上の年令層では個人差が大きく、全体に正答率・触読時間ともに顕著に劣るという特徴が認められた。また今後の触文字認知に役立てるため平仮名46文字間の混同されやすさをクラスター分析にかけて明らかにした。高齢者において触知覚の成績が劣るということは、病変による中途失明者の増加傾向が認められる今日、彼らの触知覚の困難を如何にして軽減するかについての基礎的研究の重要性をあらためて痛感させた。このような発達的変化の原因を更に明確にするためには、触覚的な感度の変化、時系列的な触刺激の統合や記憶像との照合過程に生ずる発達的変化などに関する精密な研究が必要とされる。そのための次年度の継続研究の準備として、素子間隔をずっと縮めた振動方式の触覚刺激素子を購入し、駆動部を独自に設計して、コンピュータ・コントロールのためのインターフェースを行い、現在ソフト開発に取り組んでいる。
KAKENHI-PROJECT-61510062
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触認識に関する発達的研究
昨年度の研究に於て"ひらがな"の能動触に顕著な加齢の効果が認められ,使用したマトリックス状の文字の中では大きな文字ほど速く正確に触読できることが判明した.本年度は,この能動触モードで,更に詳細に文字の大きさの効果を検討するため,立体コピーによって7種の大きさの異なる浮き上がり文字の"ひらがな"を用意し,晴眼被験者(大学生)と盲人高校生との結果を比較した.文字高は最大で約170mm角,最小が55mm角である.文字が小さくなるにつれて可読時間が増し,正答率は下がるという結果が得られたが,両者を総合すると,可読できると言える最小の文字は,晴眼者では訓練なしで22mm角程度であるので,何回かの訓練を行えば12mm角位の更に小さな文字も実際に触読できるようになるものと思われた.盲人のデータは未だ出そろっていないが,現在までの結果では,日頃点字などで能動触に慣れているので更に小さい文字でも触読できるようである.本年度の研究のもう一つの軸を成すテーマは,受動触においても加齢の効果が認められるか否かを吟味することであった.そのために,素子間隔が2mmと密に配列された新ため触パターン表示素子を入手し,回路図を検討しながら自作の中間基板を開発すると共に,ディスプレイと基板とを接触するコネクターとインター・フェースとを作製して,独自にパソコン(RC-9801VX)からのコンピュータ・コントロールに成功した.このディスプレイに300msの速度で左人差指の右から左の方向に列毎に任意の数字を流し, 7才から78才までの晴眼者と盲人高校生に触読させた,その結果,受動触においても顕著な加齢の効果が認められた.今後,速度を変化させてこのディスプレイによる受動触の最適の速度を検討したり,アルファベットやカタカナ,ひらがなの研究も行い,加齢の効果とその原因を追求して行く計画である.
KAKENHI-PROJECT-61510062
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低放射化バナジウム合金の高温強度向上と低温照射脆化抑制の両立
低放射化バナジウム合金V-4Cr-4Tiの高温強度向上と低温照射脆化抑制の両立を図るため、微量Y添加と高Cr化を組み合わせたV-(6, 10)Cr-4Ti-0.15Yを試作した。高温強度と低温脆性を評価するためにそれぞれ高温引張試験とシャルピー衝撃試験を実施した。その結果、V-10Cr-4Ti-0.15YはV-4Cr-4Tiと同程度の高温強度を有し、過去のV-10Cr-4Tiと比較して良好な低温衝撃特性を示した。高Cr化による固溶強化によって微量Y添加による高温強度の低下を補うことができると示唆された。V-10Cr-4Ti-0.15Yの加工プロセスでは中間焼鈍処理が必要になったことから、Y添加合金においても高Cr化により圧延加工性は劣化する。圧延加工性を損ねること無くVを強化する方法としてTa添加に着目した。V-4Cr-4Tiは優れた低温脆性を有することから、最適な合金組成として位置付けられている。そこで、低温脆性を損ねることが無い許容範囲内において、Vの合金成分の一部をTaで置換することで、V-4Cr-4Tiの更なる高温高強度化を試みることを目的とした。アーク溶解炉にて(V,Ta)-4Cr-4Tiを試作した。溶解後のインゴットは冷間圧延が可能であったことから、Ta置換は加工性を損ねること無く、V-4Cr-4Tiを強化できると言える。引張試験の結果から、室温及び高温においてTa量を増やすに従い、強度は上昇する傾向がある。しかしながら、Taを15at%置換した(V85,Ta15)-4Cr-4Tiは室温での伸びが著しく低下した。微細組織観察から、(V92,Ta8)-4Cr-4TiではV-4Cr-4Ti合金と類似した析出物が観察されたが、(V85,Ta15)-4Cr-4Tiでは析出物が非常に多く、組織一面に観察された。これらの多量な析出物が延性を低下させた原因であると考えられる。また、過度な材料強化は低温脆化を促進させるため、今後はシャルピー衝撃特性とクリープ特性を評価することで、最適なTa量を求める必要がある。低放射化バナジウム合金V-4Cr-4Tiの高温強度向上と低温照射脆化抑制の両立を図るため、微量Y添加と高Cr化を組み合わせたV-(6, 10)Cr-4Ti-0.15Yを試作した。高温強度と低温脆性を評価するためにそれぞれ高温引張試験とシャルピー衝撃試験を実施した。その結果、V-10Cr-4Ti-0.15YはV-4Cr-4Tiと同程度の高温強度を有し、過去のV-10Cr-4Tiと比較して良好な低温衝撃特性を示した。高Cr化による固溶強化によって微量Y添加による高温強度の低下を補うことができると示唆された。V-10Cr-4Ti-0.15Yの加工プロセスでは中間焼鈍処理が必要になったことから、Y添加合金においても高Cr化により圧延加工性は劣化する。圧延加工性を損ねること無くVを強化する方法としてTa添加に着目した。V-4Cr-4Tiは優れた低温脆性を有することから、最適な合金組成として位置付けられている。そこで、低温脆性を損ねることが無い許容範囲内において、Vの合金成分の一部をTaで置換することで、V-4Cr-4Tiの更なる高温高強度化を試みることを目的とした。アーク溶解炉にて(V,Ta)-4Cr-4Tiを試作した。溶解後のインゴットは冷間圧延が可能であったことから、Ta置換は加工性を損ねること無く、V-4Cr-4Tiを強化できると言える。引張試験の結果から、室温及び高温においてTa量を増やすに従い、強度は上昇する傾向がある。しかしながら、Taを15at%置換した(V85,Ta15)-4Cr-4Tiは室温での伸びが著しく低下した。微細組織観察から、(V92,Ta8)-4Cr-4TiではV-4Cr-4Ti合金と類似した析出物が観察されたが、(V85,Ta15)-4Cr-4Tiでは析出物が非常に多く、組織一面に観察された。これらの多量な析出物が延性を低下させた原因であると考えられる。また、過度な材料強化は低温脆化を促進させるため、今後はシャルピー衝撃特性とクリープ特性を評価することで、最適なTa量を求める必要がある。
KAKENHI-PROJECT-15K18308
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高等植物の茎長形成における3量体Gタンパク質の役割
恒常的に活性型αサブユニット遺伝子(αQL)を導入した形質転換イネの解析野生型の種子の縦方向の長さを1とすると、αQL形質転換体のそれは、1.2倍になった。αサブユニット欠損株d1は、野生型の0.5倍である。αQLの結果は、イネ3量体Gタンパク質は特定の組織の縦方向の伸長を正に制御することを裏づけた。加えて、このαQL形質転換体の半種子は、ジベレリン非存在下でも、αアミラーゼを合成していた。αアミラーゼとその転写因子GAMybの存在量を、RT-PCR法にて解析した。GAMybは、ジベレリン非存在下でも、野生型、d1、αQL形質転換体、いずれも、一定量のGAMyb mRNAを蓄積していた。一方、αQL形質転換体だけが、ジベレリン非存在下で、αアミラーゼmRNAを蓄積していた。この結果は、3量体Gタンパク質αサブユニットが、転写因子であるGAMybを活性化してαアミラーゼの転写を開始する過程に関与することを示した。今後の方針として、(1)GAMybの核移行に3量体Gタンパク質が関与するか否かを詳細に検討することが必要であろう。GAMyb-GFPなどを用いて、αQLに依存したGAMyb-GFPの核移行の検討を行いたい。(2)胚乳組織でαQLがジベレリン情報伝達の正の制御因子であることが示されたので、このαQLを利用して、地上部におけるαQLに依存した、遺伝子産物の同定を行う。現在、d1に、デキサメタゾン誘導型αQLを組み込んだ形質転換イネの作出を進めている。恒常的に活性型αサブユニット遺伝子(αQL)を導入した形質転換イネの解析野生型の種子の縦方向の長さを1とすると、αQL形質転換体のそれは、1.2倍になった。αサブユニット欠損株d1は、野生型の0.5倍である。αQLの結果は、イネ3量体Gタンパク質は特定の組織の縦方向の伸長を正に制御することを裏づけた。加えて、このαQL形質転換体の半種子は、ジベレリン非存在下でも、αアミラーゼを合成していた。αアミラーゼとその転写因子GAMybの存在量を、RT-PCR法にて解析した。GAMybは、ジベレリン非存在下でも、野生型、d1、αQL形質転換体、いずれも、一定量のGAMyb mRNAを蓄積していた。一方、αQL形質転換体だけが、ジベレリン非存在下で、αアミラーゼmRNAを蓄積していた。この結果は、3量体Gタンパク質αサブユニットが、転写因子であるGAMybを活性化してαアミラーゼの転写を開始する過程に関与することを示した。今後の方針として、(1)GAMybの核移行に3量体Gタンパク質が関与するか否かを詳細に検討することが必要であろう。GAMyb-GFPなどを用いて、αQLに依存したGAMyb-GFPの核移行の検討を行いたい。(2)胚乳組織でαQLがジベレリン情報伝達の正の制御因子であることが示されたので、このαQLを利用して、地上部におけるαQLに依存した、遺伝子産物の同定を行う。現在、d1に、デキサメタゾン誘導型αQLを組み込んだ形質転換イネの作出を進めている。
KAKENHI-PROJECT-14036227
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食品中の金属キレート能を有するメラノイジンの分離と精製
メラノイジンの試料としてコーヒー,醤油およびグルコースとグリシンから調製したモデル系メラノイジンを試料とした。(1)金属キレート能の測定セファデックスG-100,10およびHPLC用GPCカラムTSK-G3000PWを用いて、FeSO4,CuSO4,ZnSO4を含むpH4酢酸緩衝液(0.01M)により平衡化した。各試料をクロマトグラフィーにかけ、紫外および可視部吸収で検出しながら溶出液を分画した。画分中の金属濃度を原子吸光により測定した。その結果、キレート金属量の測定値はセファデックスG-100<G-10<G-3000PWの順におおきくなった。即ち、拡散起こりにくい条件を選ぶことが必要であった。モデルメラノイジンとコーヒーの金属にたいするキレート能の順序はCu>Fe>Znであった。(2)金属キレート形成による沈澱を利用して、、コーヒー成分の中からキレート能の高い成分を分離した。亜鉛とキレートさせることにより約2%の成分が沈澱した。この沈澱成分は後述の金属キレートカラムによりキレート能の強い成分を含むことがしめされた。(3)金属キレートセファローズ6Bカラムによりメラノイジンの分離をした。溶出はpH7.65リン酸緩衝液から開始し、pH5迄グラジエントに降下させ最後にEDTAにより金属をカラムから離脱させながら溶出をした。405nmの吸光度で検出した褐色色素は、モデルメラノイジンと醤油の場合、Zn-カラムにたいして殆どアフィニテーを示さず、Fe-カラムに対してはpH7.65で吸着する成分とEDTAで溶出する2成分にわかれた。成分の分離を目的にした場合、Cu-カラムが最適であり、4成分に分離した。メラノイジンの試料としてコーヒー,醤油およびグルコースとグリシンから調製したモデル系メラノイジンを試料とした。(1)金属キレート能の測定セファデックスG-100,10およびHPLC用GPCカラムTSK-G3000PWを用いて、FeSO4,CuSO4,ZnSO4を含むpH4酢酸緩衝液(0.01M)により平衡化した。各試料をクロマトグラフィーにかけ、紫外および可視部吸収で検出しながら溶出液を分画した。画分中の金属濃度を原子吸光により測定した。その結果、キレート金属量の測定値はセファデックスG-100<G-10<G-3000PWの順におおきくなった。即ち、拡散起こりにくい条件を選ぶことが必要であった。モデルメラノイジンとコーヒーの金属にたいするキレート能の順序はCu>Fe>Znであった。(2)金属キレート形成による沈澱を利用して、、コーヒー成分の中からキレート能の高い成分を分離した。亜鉛とキレートさせることにより約2%の成分が沈澱した。この沈澱成分は後述の金属キレートカラムによりキレート能の強い成分を含むことがしめされた。(3)金属キレートセファローズ6Bカラムによりメラノイジンの分離をした。溶出はpH7.65リン酸緩衝液から開始し、pH5迄グラジエントに降下させ最後にEDTAにより金属をカラムから離脱させながら溶出をした。405nmの吸光度で検出した褐色色素は、モデルメラノイジンと醤油の場合、Zn-カラムにたいして殆どアフィニテーを示さず、Fe-カラムに対してはpH7.65で吸着する成分とEDTAで溶出する2成分にわかれた。成分の分離を目的にした場合、Cu-カラムが最適であり、4成分に分離した。
KAKENHI-PROJECT-61560136
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妊娠期のヨウ素摂取による出生児甲状腺機能・発育への影響調査のための疫学的検討
妊娠期の適切なヨウ素摂取は、母体のみならず出生児の正常な発達に重要である。しかし、現時点でヨウ素の長期的な摂取量を反映するバイオマーカーの検証例が少ないことから、本研究では、妊婦における長期的なヨウ素摂取のバイオマーカーの検討を行った。妊娠期に同一対象者から複数回のサンプリングより得られた尿中ヨウ素の測定値を用い、級内相関係数(ICC)を算出し定量的な評価を行ったところ、妊娠期間中のスポット尿中濃度は、妊娠期間のヨウ素摂取傾向をある程度反映した指標であることが示唆された。また、より再現性の高い評価(ICC≧0.75)を行うには、妊娠期間中3回以上のサンプリングを行うことが望ましいと考えられた。妊娠期の適切なヨウ素摂取は、母体のみならず出生児の正常な発達に重要である。しかし、現時点でヨウ素の長期的な摂取量を反映するバイオマーカーの検証例が少ないことから、本研究では、妊婦における長期的なヨウ素摂取のバイオマーカーの検討を行った。妊娠期に同一対象者から複数回のサンプリングより得られた尿中ヨウ素の測定値を用い、級内相関係数(ICC)を算出し定量的な評価を行ったところ、妊娠期間中のスポット尿中濃度は、妊娠期間のヨウ素摂取傾向をある程度反映した指標であることが示唆された。また、より再現性の高い評価(ICC≧0.75)を行うには、妊娠期間中3回以上のサンプリングを行うことが望ましいと考えられた。妊娠期の適切なヨウ素摂取は、母体のみならず出生児の正常な発達に重要である。しかし、現時点でヨウ素の長期的な摂取量を反映するバイオマーカーの検証例が少ないことから、本研究では、ヨウ素摂取の長期的なバイオマーカーの検討を行い、さらに日本人妊婦を対象としたヨウ素摂取の実態調査およびヨウ素摂取と甲状腺機能および児の発達へのとの関連について調査を行っている。平成25年度は、熊本県内の2つの医療機関において本研究への協力を依頼し、研究協力機関でのリクルート・サンプリング手順、サンプル回収保管等の体制を構築した。また、同時に、尿中ヨウ素の分析条件の最適化のため、測定機器の分析条件の検討を行い、分析環境が整った。ヨウ素摂取のバイオマーカーの検討のため、1つの医療機関において、妊娠期の全健診時の余剰尿のサンプリングと質問票による調査を開始し、リクルートおよびサンプリングが進行中である。また、他方の医療機関においては、本年4月よりリクルートが開始されることが決定した。尿中ヨウ素測定においては標準添加法を採用するため、添加量決定のための仮測定を順次進めているが、本測定については、測定値の変動要因を極力排除するため、サンプリング終了後一斉に行う予定である。クレアチニン濃度および比重の測定は、サンプリングと並行して実施しており、現在順調に進んでいる。また、すでに回収の済んでいる質問票によるヨウ素摂取量調査において、本研究対象者の食品からのヨウ素摂取の推定量は、既往研究における日本人のヨウ素摂取量と同程度であることを確認した。今後は、サンプリングが終了し次第、長期のヨウ素摂取バイオマーカーとしての尿中ヨウ素濃度の適用性を検証するとともに、妊娠期のヨウ素摂取状況と出生時データとの関連の有無について統計解析による評価を行う。妊娠期の適切なヨウ素摂取は、母体のみならず出生児の正常な発達に重要である。しかし、現時点でヨウ素の長期的な摂取量を反映するバイオマーカーの検証例が少ないことから、本研究では、ヨウ素摂取の長期的なバイオマーカーの検討を行い、さらに日本人妊婦を対象としたヨウ素摂取の実態調査およびヨウ素摂取と甲状腺機能および児の発達へのとの関連について調査を行っている。平成26年度は、ヨウ素の長期的な摂取量を反映するバイオマーカーとして、尿中ヨウ素濃度の適用性を検証した。妊婦計18名に妊娠期間中に複数回の尿サンプリングを行い、対象者18名中14名において、妊娠期間に10回のスポット尿が得られた。各10回計140サンプルの尿中ヨウ素濃度の中央値は330 ug/g-cre (42-8700 ug/g-cre)であった。得られた尿中ヨウ素濃度の個人内・個人間変動より級内相関(ICC)を算出したところ、ICC=0.56となり、Rosnerらが定義している「fair to good reproducibility」(0.4≦ICC<0.75)に該当した。以上のことから、妊娠期間中のスポット尿中ヨウ素濃度は、妊娠期間約10ヶ月のヨウ素摂取傾向をある程度反映していることが示唆された。また、2回ないし3回のサンプリングにより、妊娠期におけるヨウ素摂取指標としてより再現性の高い評価ができると考えられた。今後、妊婦のヨウ素摂取傾向と児の発育との関係について調査する際に、尿中ヨウ素濃度を用いる場合には、1回ないし複数回のスポット尿を用いて評価を行うことが可能であると考える。また本調査では、平成26年度より新たな医療機関に研究協力を依頼し、リクルートおよびサンプリングを継続中である。今後は、妊娠期のヨウ素摂取状況と出生時データとの関連について評価を行っていく。26年度が最終年度であるため、記入しない。公衆衛生学26年度が最終年度であるため、記入しない。研究協力機関におけるリクルート開始時期に変更が生じたため、リクルートおよびサンプリングがやや遅れている。しかしながら、研究実施体制の構築は既に完了しており、現時点で対象者への説明同意は問題なく進んでいる。また、分析条件等の検討は終了し、サンプリングが完了次第測定できる環境が整っている。今後は順調に計画が進む予定である。
KAKENHI-PROJECT-25893186
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25893186
妊娠期のヨウ素摂取による出生児甲状腺機能・発育への影響調査のための疫学的検討
今年度も引き続きリクルートを進め、研究協力者の増加に努めるとともに、先にリクルートを開始した医療機関におけるサンプルや収集したデータをもとに、妊娠期のヨウ素摂取の長期的なバイオマーカーの検討を進める。またこれらの成果については、学会や学術雑誌にて発表を行う。
KAKENHI-PROJECT-25893186
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培養血管内皮細胞における腫瘍細胞由来血管新生因子の分離および同定
1.ヒト血管内皮細胞の培養をできるだけin vivoを反映する条件で行うためマトリックスの検討を行い臍帯静脈血管内皮細胞の場合はヒト胎盤由来コラーゲンに良好な増殖が見られた。このコラーゲンは大量に容易に調整できるうえにヒトであることからよりin vivoに近い条件で培養ができた。この細胞の増殖には血清のほかに増殖因子が必要でありシャーレにコラーゲンをcoatingするとECGSかFGFのどちらか一方で良いことが判明した。2.血管内皮細胞が産生するプロスタサイクリンは強い抗凝集作用を持ち動脈硬化の予防に深く関与している。in vitroの細胞培養系においても10PDLから産生能は減少を始め22PDLから急激に減少した。in vivoで同じような結果が見られており寿命を持つヒト内皮細胞はプロスタサイクリン産生能に限っていえばin vivoの状態を反映している。3.in vitroの血管新生の系を開発するためまず細胞増殖促進因子をがん細胞培養液から検索したが、顕著な促進効果をみることができなかった。おそらく作用を調べている期間が3日間で短いためと思われる。ヒトの血管内皮細胞は、倍加時間が長いので、1週間以上は続けて加えて調べる必要がある。培養液の効果が臍帯静脈内皮細胞と、体網微小血管内皮細胞で必ずしも同じでない。また偶然ではあるが微小血管内皮細胞に血管が新生できたことからもこの内皮細胞を使って転移のin vitroのアッセイ系を確立していく予定である。またがん細胞培養液の増殖因子の固定が今後の課題である。4.胃癌の手術時に大量に手に入ることができる体網の正常微小血管内皮細胞が長期に培養できるようになったことは、血管新生の機序を検討するうえで画期的なことである。今年度は培養系を詳細に検討できなかったので来年度の課題として残された。1.ヒト血管内皮細胞の培養をできるだけin vivoを反映する条件で行うためマトリックスの検討を行い臍帯静脈血管内皮細胞の場合はヒト胎盤由来コラーゲンに良好な増殖が見られた。このコラーゲンは大量に容易に調整できるうえにヒトであることからよりin vivoに近い条件で培養ができた。この細胞の増殖には血清のほかに増殖因子が必要でありシャーレにコラーゲンをcoatingするとECGSかFGFのどちらか一方で良いことが判明した。2.血管内皮細胞が産生するプロスタサイクリンは強い抗凝集作用を持ち動脈硬化の予防に深く関与している。in vitroの細胞培養系においても10PDLから産生能は減少を始め22PDLから急激に減少した。in vivoで同じような結果が見られており寿命を持つヒト内皮細胞はプロスタサイクリン産生能に限っていえばin vivoの状態を反映している。3.in vitroの血管新生の系を開発するためまず細胞増殖促進因子をがん細胞培養液から検索したが、顕著な促進効果をみることができなかった。おそらく作用を調べている期間が3日間で短いためと思われる。ヒトの血管内皮細胞は、倍加時間が長いので、1週間以上は続けて加えて調べる必要がある。培養液の効果が臍帯静脈内皮細胞と、体網微小血管内皮細胞で必ずしも同じでない。また偶然ではあるが微小血管内皮細胞に血管が新生できたことからもこの内皮細胞を使って転移のin vitroのアッセイ系を確立していく予定である。またがん細胞培養液の増殖因子の固定が今後の課題である。4.胃癌の手術時に大量に手に入ることができる体網の正常微小血管内皮細胞が長期に培養できるようになったことは、血管新生の機序を検討するうえで画期的なことである。今年度は培養系を詳細に検討できなかったので来年度の課題として残された。
KAKENHI-PROJECT-61015105
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61015105
細胞分化可塑性を規定する染色体高次構造の解析
「細胞の分化能力」を染色体の高次構造の制御という観点から明らかにすることが本研究の目標である。多能性幹細胞の重要な性質の一つである多分化能の本質は、幹細胞で発現していない遺伝子群が分化刺激に対して、適切に転写を開始できることにある。したがって、多能性幹細胞で発現していない分化関連遺伝子群がどのような制御を受けて転写を開始する準備を整えているのかを知ることは重要であるが、解析はほとんど進んでいない。本研究では、多能性幹細胞において、分化関連遺伝子群の転写制御領域の染色体高次構造を同定し、その制御メカニズムを明らかにすることにより、幹細胞の重要な性質を規定する根本原理に迫ることを目的とした。前年度までに、染色体高次構造解析により、分化関連遺伝子の特徴であるバイバレント修飾をプロモーター領域にもつ遺伝子群が3次元空間上で、近傍に位置しやすいということを明らかにした。本年度は、我々の染色体高次構造解析と公共データベースに存在する核内部の染色体位置データを統合して解析することにより、体細胞初期化過程において、核膜の近傍に存在するバイバレント遺伝子は、核の中心へ移動することを示した。解析過程で、種々の網羅的解析に関するプログラムの開発も行なっている。また、機能阻害実験により、PRC1、PRC2、TrxG複合体が、多能性幹細胞において、バイバレントプロモーターの3次元空間上での集合に必要であることを示した。これらの結果は、エピジェネティック修飾と染色体の空間配置や高次構造が密接に関連し、分化関連遺伝子が外部刺激に対して素早く応答できるように制御されていることを示唆するものである。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。「細胞の分化能力」を染色体の高次構造の制御という観点から明らかにすることが本研究の目標である。多能性幹細胞の重要な性質の一つである多分化能の本質は、幹細胞で発現していない遺伝子群が分化刺激に対して、適切に転写を開始できることにある。したがって、多能性幹細胞で発現していない分化関連遺伝子群がどのような制御を受けて転写を開始する準備を整えているのかを知ることは重要であるが、解析はほとんど進んでいない。本研究では、多能性幹細胞において、分化関連遺伝子群の転写制御領域の染色体高次構造を同定し、その制御メカニズムを明らかにすることにより、幹細胞の重要な性質を規定する根本原理に迫ることを目的とする。本年度は、ある特定の注目する染色体領域と相互作用する領域を一度に高精度で同定するためMultiplexed 3C-seq法の開発を行なった。さらに、本手法を用いて、体細胞初期化前後で分化関連遺伝子群の染色体高次構造を決定した。結果、初期化前後で遺伝子の発現が認められない領域においても、大きく染色体の構造が変化する場合があることが観察された。また、種々のバイオインフォマティクスによる解析により、多能性幹細胞において、分化関連遺伝子の特徴であるバイバレント修飾をプロモーター領域にもつ遺伝子群が3次元空間上で近傍に位置しやすいということを明らかにした。この観察は、多能性幹細胞では、外部からの分化刺激に対して素早く応答するため分化関連遺伝子群が3次元空間レベルで制御されている可能性があることを示唆している。本年度は、Multiplexed 3C-seq法の開発を行ない、独自のパイプラインを構築することによって体細胞初期化前後における分化関連遺伝子群の染色体高次構造を同定した。また、多能性幹細胞における分化関連遺伝子群の染色体高次構造の特徴も見出しており、初年度の目標は達成できている。「細胞の分化能力」を染色体の高次構造の制御という観点から明らかにすることが本研究の目標である。多能性幹細胞の重要な性質の一つである多分化能の本質は、幹細胞で発現していない遺伝子群が分化刺激に対して、適切に転写を開始できることにある。したがって、多能性幹細胞で発現していない分化関連遺伝子群がどのような制御を受けて転写を開始する準備を整えているのかを知ることは重要であるが、解析はほとんど進んでいない。本研究では、多能性幹細胞において、分化関連遺伝子群の転写制御領域の染色体高次構造を同定し、その制御メカニズムを明らかにすることにより、幹細胞の重要な性質を規定する根本原理に迫ることを目的とした。前年度までに、染色体高次構造解析により、分化関連遺伝子の特徴であるバイバレント修飾をプロモーター領域にもつ遺伝子群が3次元空間上で、近傍に位置しやすいということを明らかにした。本年度は、我々の染色体高次構造解析と公共データベースに存在する核内部の染色体位置データを統合して解析することにより、体細胞初期化過程において、核膜の近傍に存在するバイバレント遺伝子は、核の中心へ移動することを示した。解析過程で、種々の網羅的解析に関するプログラムの開発も行なっている。また、機能阻害実験により、PRC1、PRC2、TrxG複合体が、多能性幹細胞において、バイバレントプロモーターの3次元空間上での集合に必要であることを示した。これらの結果は、エピジェネティック修飾と染色体の空間配置や高次構造が密接に関連し、分化関連遺伝子が外部刺激に対して素早く応答できるように制御されていることを示唆するものである。1.バイオインフォマティクスを用いた染色体高次構造に関連する因子の同定すでに申請者が行っているトランスクリプトーム解析と比較することによって、転写とゲノム構造における関連性を検討する。また、すでにpublishされている種々の転写因子結合部位のデータを用いてゲノムの構造変化と転写因子の結合の間にどのような関係性があるのかを詳細に解析する。
KAKENHI-PUBLICLY-15H01352
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細胞分化可塑性を規定する染色体高次構造の解析
また、ヒストン修飾やDNAメチル化についても既に多くのデータが蓄積されているので、公開されているデータを利用し、様々なエピジェネティック修飾と高次構造の関連性を調べる。さらに、特定のゲノム構造を持つ領域に保存されたDNA配列が存在するかをin silicoの解析により明らかにする。2.空間制御因子の細胞運命変換に及ぼす影響の検討上記で同定した空間制御因子が、ゲノム高次構造さらには細胞運命変換過程にどのような影響を与えるのかを強制発現や機能阻害実験により明らかにする。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-15H01352
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固有log smooth底変換logホッジ理論とアーベル多様体の退化
当該研究は近年注目を集め始めている、複素解析的なlog幾何、特にlogホッジ理論における基本的かつ重要と思われるいくつかの問題を対象としている。補助金が交付されてきた期間に梶原健氏、加藤和也氏との共同で次のような成果を得た。1.log Bettiコホモロジー論における固有log smooth底変換定理(予想)について、応用上重要な場合を含むいくつかの部分結果を得た。(くわしくは昨年の報告書参照)2.複素数体上のlogアーベル多様体の定義とlogホッジ構造との同等性について。昨年度までは特別なbaseの場合を研究していたが、今年度、logホッジ理論の創始者である加藤和也氏の参加により、全く一般のbaseでもlogアーベル多様体が定義でき、logホッジ構造との同等性が説明できそうであることがわかった。これはこの方向での期待されうる最善の結果であり、当初の目的どおり、加藤氏のlogアーベル多様体の定義の正当性を支持する結果でもある。3.代数的なlogアーベル多様体の定義とモジュライのコンパクト化加藤氏はさらに、代数的なlogアーベル多様体の定義をも与え、それによってアーベル多様体のモジュライのファルティングスとチャイによるコンパクト化が得られることもほぼ証明した。これはこの研究の当初の目的には含まれていなかったが、log幾何創設当初からの課題であり、現在細部を検討中であるが、完成すれば、アーベル多様体の退化の研究にとっても大きな影響をもつと考えられる。log幾何学の長年の夢の実現ともいえ、期待をもっている。当該研究は、近年注目を集め始めている、複素解析的なlog幾何、特にlogホッジ理論における基本的かつ重要と思われるいくつかの問題を対象としている。初年度は梶原健氏との共同で次のような成果を得た。1 log Beit:コホモロジーじおける固有log smooth底変換定理(予想)について以下の事実が確かめられた。(1)一般semistable射については正しい。((4)のGD予想の部分的に解くことによって証明される。)(2)baseがlog smoothのときは正しい。((1)(2)の臼井三平氏の局所自明性定理の帰結の一般化である。)(3)algebraicで、いくつかの仮定を課せ正しい。(log GAGAGを拡張して使う。)(4)一般の場合もあるtopologyの命題(GD予想)が正しければ正しい。2.複素数位上のlogアーベル多様体の定義とlogホッジ構造との同等性について(1)baseがlogpoimted diskのときに主に研究し、logアーベル多様体を、logマンフォード構成によって得られるあるvaluafive log spaceとして定義すると、logホッジ構造との同等性が得られたりであることがわかった。(2)上記(1)は、logアーベル多様体、logホッジ構造の両者を、従来の、退化したアーベル多様体、退化したホッジ構造の理論の枠組で捉え直すことによって証明される見通しがたった。この現象は、従来の退化理論がlogの枠組で再解釈できるということの実例とも考えられる。(3)次年度の課題としては、上記の証明を完結し、さらにbaseを一般的にすることが重要である。例えば、baseをlog pointした場合、従来のホッジ理論の枠組では捉えられない対象となりうるのかどうかは興味深い課題である。当該研究は近年注目を集め始めている、複素解析的なlog幾何、特にlogホッジ理論における基本的かつ重要と思われるいくつかの問題を対象としている。補助金が交付されてきた期間に梶原健氏、加藤和也氏との共同で次のような成果を得た。1.log Bettiコホモロジー論における固有log smooth底変換定理(予想)について、応用上重要な場合を含むいくつかの部分結果を得た。(くわしくは昨年の報告書参照)2.複素数体上のlogアーベル多様体の定義とlogホッジ構造との同等性について。昨年度までは特別なbaseの場合を研究していたが、今年度、logホッジ理論の創始者である加藤和也氏の参加により、全く一般のbaseでもlogアーベル多様体が定義でき、logホッジ構造との同等性が説明できそうであることがわかった。これはこの方向での期待されうる最善の結果であり、当初の目的どおり、加藤氏のlogアーベル多様体の定義の正当性を支持する結果でもある。3.代数的なlogアーベル多様体の定義とモジュライのコンパクト化加藤氏はさらに、代数的なlogアーベル多様体の定義をも与え、それによってアーベル多様体のモジュライのファルティングスとチャイによるコンパクト化が得られることもほぼ証明した。これはこの研究の当初の目的には含まれていなかったが、log幾何創設当初からの課題であり、現在細部を検討中であるが、完成すれば、アーベル多様体の退化の研究にとっても大きな影響をもつと考えられる。log幾何学の長年の夢の実現ともいえ、期待をもっている。
KAKENHI-PROJECT-10740008
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その場観察・解析ナノメカニカルラボによるナノ薄膜の破壊機構と寸法効果の解明
本研究では,基板から自立した厚さ100 nmオーダーの金属薄膜(ナノ薄膜)を対象として,制御された力学的負荷条件下において,き裂先端などの応力集中場における変形・破壊のその場観察と微視的構造解析が可能なその場観察・解析ナノメカニカルラボを開発し,これを基に実験・観察・解析を通じて,ナノ薄膜の破壊機構と強度の支配力学の解明を試みた。その結果,銅ナノ薄膜において,膜厚の減少に伴い破壊じん性が低下する膜厚効果,き裂前方の入込み・突出し状損傷を経由して進展する疲労き裂進展機構,疲労き裂開閉口の存在と疲労き裂進展特性に及ぼす影響,およびアルミニウムナノ薄膜のクリープ特性に及ぼす膜厚効果等を明らかにした。本研究では,基板から自立した厚さ100 nmオーダーの金属薄膜(ナノ薄膜)を対象として,制御された力学的負荷条件下において,き裂先端などの応力集中場における変形・破壊のその場観察と微視的構造解析が可能なその場観察・解析ナノメカニカルラボを開発し,これを基に実験・観察・解析を通じて,ナノ薄膜の破壊機構と強度の支配力学の解明を試みた。その結果,銅ナノ薄膜において,膜厚の減少に伴い破壊じん性が低下する膜厚効果,き裂前方の入込み・突出し状損傷を経由して進展する疲労き裂進展機構,疲労き裂開閉口の存在と疲労き裂進展特性に及ぼす影響,およびアルミニウムナノ薄膜のクリープ特性に及ぼす膜厚効果等を明らかにした。本研究では,厚さが10nm100nmオーダーの金属薄膜(ナノ薄膜)を対象として,制御された力学的負荷条件下において,き裂先端などの応力集中場における変形・破壊のその場観察と微視的構造解析が可能となるその場観察・解析ナノメカニカルラボを開発し,これを基に実験・観察・解析による破壊機構の解明を通じて,ナノ薄膜の強度の支配力学を明らかにすることを目的とする。ここでは,基本的な強度・破壊じん性のみならず,クリープ強度や疲労強度における寸法効果を,微視的な変形・破壊機構に着目して解明する。本年度は,薄膜の破壊過程のその場観察と微視的構造解析が可能となるその場観察・解析ナノメカニカルラボの開発に着手し,電子顕微鏡を核としたその場観察システムを開発・導入した。本システムは,高分解能電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)と微細結晶構造解析装置(EBSD装置)を組合せたものであり,これによりナノ薄膜の形態と結晶構造の解析が可能になった。さらに,本システム内で稼働させる薄膜用力学実験装置の設計を行った。一方,膜厚以外の縦・横寸法をmmオーダーまでの任意の寸法とした自立ナノ薄膜試験片の作製技術を確立するとともに,銅ナノ薄膜試験片に対する引張試験,破壊じん性試験,および疲労き裂進展試験を実施し,薄膜の機械的特性に及ぼす膜厚の影響に関する基礎的な検討を実施した。その結果,厚さ100nm800nmの銅薄膜の破壊じん性には膜厚効果が存在し,膜厚の低下にともないじん性が低下することを明らかにした。また,厚さ500nmの銅薄膜では,疲労負荷によりき裂が進展し,疲労き裂進展に応力比効果が見られることを明らかにした。なお,この成果は高い評価を受け,日本機械学会M&M材料力学カンファレンスにおいて優秀講演表彰を受けた。本研究では,厚さが100 nm500 nmオーダーの金属薄膜(ナノ薄膜)を対象として,制御された力学的負荷条件下において,き裂などの応力集中場における変形・破壊のその場観察と微視構造解析が可能となるその場観察・解析ナノメカニカルラボを開発し,これを基に実験・観察・解析による破壊機構の解明を通じて,ナノ薄膜の強度の支配力学を明らかにすることを目的とする。本年度は,その場観察・解析ナノメカニカルラボに,極低繰返し速度の疲労試験が可能となるソフトウェアを新たに開発・導入することにより,準静的引張負荷に加えて極低繰返し速度の疲労負荷条件下において薄膜の破壊過程のその場観察と微視的構造解析が可能となるナノメカニカルラボに高度化させた。これを用いてナノ薄膜試験片の破壊じん性試験,および極低繰返し速度の疲労試験を実施して,薄膜の強度特性に及ぼす膜厚の影響を明らかにした。得られた結果をまとめると以下の通りである。(1)破壊じん性の膜厚効果:銅ナノ薄膜のその場観察破壊じん性試験を実施し,安定き裂進展開始時のき裂開口変位が膜厚の低下に伴い減少することを明らかにした。(2)疲労き裂進展特性:疲労き裂のその場観察により,膜厚500 nmの銅ナノ薄膜では低応力比においてき裂閉口が生じること,さらにき裂閉口を考慮した有効応力拡大係数範囲により応力比によらず疲労き裂進展速度を整理できることを明らかにした。さらに,膜厚の低下に伴い疲労き裂進展が加速する膜厚効果が存在した。(3)疲労き裂発生特性:疲労き裂発生過程の高倍率観察と微視構造解析に基づく応力解析により,ナノ薄膜の疲労き裂発生機構を解明し,疲労き裂発生強度を力学的に評価した。疲労き裂は,分解せん断応力が高くかつ膜厚方向に貫通できるすべり系で生じること,疲労発生強度はバルク材に比べて大きいこと,を明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-23246026
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23246026
その場観察・解析ナノメカニカルラボによるナノ薄膜の破壊機構と寸法効果の解明
本研究では,厚さが10 nm100 nmオーダーの金属薄膜(ナノ薄膜)を対象として,制御された力学的負荷条件下において,き裂先端などの応力集中場における変形・破壊のナノメートルオーダのその場観察と構造解析が可能となるその場観察・解析ナノメカニカルラボを開発し,これを基に実験・観察・解析による破壊機構の解明を通して,ナノ薄膜の強度の支配力学を明らかにすることを目的とする。ここでは,基本的な強度・破壊じん性のみならず,クリープ強度や疲労強度における寸法効果を,微視的な変形・破壊機構に着目して解明する。本年度は,高分解能電界放射型走査電子顕微鏡(FESEM)と微細結晶構造解析装置(EBSD装置)からなるその場観察装置内で稼働させる薄膜用力学試験装置を製作して,その場観察・解析ナノメカニカルラボを完成させた。さらに,厚さ100 nmと500 nmの自立銅薄膜試験片に対する疲労き裂進展試験を実施した。FESEMによる局所破壊過程観察とEBSDナノ結晶構造解析を併用することにより,ナノ薄膜では疲労き裂先端前方にバルクにおいて疲労き裂発生過程で生じる入込み・突出しが双晶境界に沿って形成され,それらが合体してき裂が進展することを明らかにし,バルク材とは異なる疲労き裂進展機構を呈することを示した。さらに,膜厚が薄くなると疲労き裂進展抵抗が低下する膜厚効果の存在を明らかにした。これらの成果に関する一連の講演発表は高い評価を受け,日本材料学会第61期学術講演会優秀講演発表賞,日本材料学会関西支部ポスター支部長賞,および日本材料学会第31回疲労シンポジウム優秀研究発表賞を受賞した。さらに,塩化ナトリウム基板に対する高温EB蒸着と犠牲層エッチングを用いた手法により,銅および金の単結晶自立ナノ薄膜試験片を作製する技術を開発した。.本年度に計画していた(1)その場観察・解析ナノメカニカルラボの開発,(2)自立ナノ薄膜の作製,および(3)ナノ薄膜の基本特性評価,について交付申請書の計画通り進めることができた。25年度が最終年度であるため、記入しない。本年度に計画した(1)その場観察・解析ナノメカニカルラボの開発,(2)自立ナノ薄膜の作製,および(3)ナノ薄膜の基本特性評価,について交付申請書の計画通り進めることができた。具体的な達成状況は以下の通りである。(1)前年度に設計した薄膜用力学実験装置を実際に製作するとともに,基本的な動作を確認した。この結果,本研究の遂行に不可欠であるナノ薄膜試験片のチャッキング,mNオーダーの荷重の負荷,変形や破壊のその場観察,およびEBSDによるナノ構造解析が問題なく実施できることを確認した。(2)これまでは樹脂層を犠牲層として金属薄膜を製膜後に犠牲層エッチングにより自立薄膜試験片を作製しており,金属ナノ薄膜に対して熱処理等を実施するには耐熱性に限界があったため,室温下で製膜したナノ薄膜を対象として実験を行っていた。本年度は,耐熱性の高い塩化ナトリウム基板を犠牲層として用いて自立ナノ薄膜試験片を作製する手法を確立した。この手法を用いることにより,超高真空ベース圧力下において基板温度500°Cまでの高温下で製膜が可能となり,例えばエピタキシャル成長による単結晶薄膜の作製や多結晶薄膜に対する焼鈍等の熱処理を行えるようになった。これにより,内部構造を制御した自立ナノ薄膜試験片を用いて,ナノ薄膜の強度発現機構や破壊の力学的支配因子をより詳細に解明できる技術基盤を確立した。(3)銅ナノ薄膜の破壊じん性について,き裂進展の詳細な観察により,き裂進展機構とその膜厚依存を明らかにした。疲労き裂進展特性に関しては,下限界近傍特性,応力比効果,膜厚効果を明らかにした。なお,き裂閉口現象の有無をはじめとする破壊機構の詳細については未解明である。
KAKENHI-PROJECT-23246026
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23246026
木質文化財の現場調査を目的とした新規手法の基礎的研究
木質文化財の調査は、その起源や歴史的背景、木材選択をはじめとして様々な知見を齎す。しかし木質文化財は文化財であるがゆえ破壊が禁じられており、非破壊手法が求められてきている。本研究では非破壊かつオンサイトでの樹種識別を可能とする手法の開拓として、近年様々な分野で活用されている近赤外分光法(FTーNIR)を活用した樹種識別について、手法の基礎的研究を行った。その結果、現生のニヨウマツ類(アカマツとクロマツ)では心材部分を用いることで識別が可能であった一方、歴史的古材のアカマツとクロマツではでは判別不可という結果がでるなど、課題も見つかった。その原因解明のためにも継続した研究の必要性が見出された。木質文化財の樹種調査においては、多くの場合に遊離片の採取が禁じられており、このことが、木質文化財の調査の格差、ひいては知見の格差を生んできている。中でも木彫像における樹種や年代調査は、特に困難な分野となっている。そのような背景を鑑み、オンサイトかつ非破壊で樹種識別ならびに年代調査が可能となる、新規手法の確立を目的とした。そのために、ポータブル型FTーNIRによる現場でのオンサイト調査を可能とするべく、まずは卓上型FTーNIRによる検討を行ってきた。研究代表者が所属する京都大学生存圏研究所材鑑調査室所蔵の有用樹種標本を活用し、FTーNIRによる樹種・年代解析を行うべく、現生材ならびに歴史的古材のFTーNIRスペクトルデータの蓄積を行ってきた。特に、古代の木彫像に使用されていることが多かったカヤやヒノキ、スギ、アスナロといった針葉樹をはじめとして、クスノキ・ケヤキ・ハリギリといった広葉樹、ならびに建造物にも使用されるアカマツ・クロマツについてもデータの蓄積を行ってきた。その結果これまでに現生材では計10種におけるFTーNIRスペクトルの判別分析により、樹種ごとの分類が可能となった。一方、アカマツ・クロマツについては、現生材については検量線の獲得も成功し、方法論・解析法の深化も可能となったものの、その検量線を歴史的古材には適用できない、すなわち古材の識別には適用できないことも判明したことから、樹種それぞれについての、経年変化によるFTーNIRスペクトルの挙動変化と原因追究を重点的に行っているところである。木質文化財は、そのものが持つ歴史的背景の解明ならびに保存管理のためにも、その樹種調査に重きが置かれている。しかし、有機物である木質文化財では、調査のための遊離辺の採取などは固く禁止されており、そのことが情報の解明の障壁となってきている。また、文化財の調査ではオンサイトでの調査の必要性が増しており、新規手法の確立が必須となっている。そこで、ポータブル型FTーNIRによる樹種調査法を検討してきた。研究代表者が所属する京都大学生存圏研究所材鑑調査室の木材標本を活用し、FTーNIRによる樹種ならびに年代解明を行うべく、木彫像や建造物に多く使用されてきた針葉樹・広葉樹のスペクトルデータの蓄積をおこなった。その結果、これまでに約10種の現生材については、FTーNIRスペクトルの判別分析により樹種ごとの分類が可能とできた。特にアカマツ・クロマツについては、本年度論文にまとめたとおり現生材では樹種分類が可能であったが、検量線を古材に適応しても樹種分類が不可能であったことから、経年劣化によるFTーNIRデータの挙動解明と追求に力を入れているところである。木彫像、建造物をはじめとした木質文化財の樹種調査では、国の重要文化財に指定されているものも多く、識別に必要な木片の採取が禁じられている場合が多い。このことが、木質文化財に使用されている樹種の体系的な調査の障壁となってきた。このような背景を鑑みて、オンサイトかつ非破壊手法である樹種識別法ならびに年代調査法の新たな確立を目指してきた。そのために、ポータブル型FTーNIRの適用を導入するため、まずは卓上型FTーNIR装置による検討を行った。研究代表者が所属する京大生存圏研究所材鑑調査室に保存されている標準試料ならびに歴史的古材標本を活用し、針葉樹・広葉樹約10種において、NIRスペクトルデータの蓄積ならびにスペクトルの二次微分、検量線構築といった処理を加えて判別分析を行ってきた。その結果、現生材についてはヒノキ・カヤ・ニヨウマツ類・スギ・モミ・ケヤキ・ハリギリ・クリ・クスノキといった様々な樹種について、例えばヒノキとカヤ、ケヤキとハリギリなど、材質が類似した樹種の判別が可能であることをつきとめた。一方で、歴史的古材については、特にニヨウマツ類として一括りにされることの多いアカマツとクロマツ2者の判別が困難であることが判明した。現生材のアカマツとクロマツは分類が可能であることから、古材では経年劣化による吸着水の変動などが識別にマイナスに働いていることが推察された。しかしながら、波長領域を狭めた判別分析などを検討するなど、方法論や解析法の深化につとめ、現在も継続して、古材の識別調査への適用をすすめている。なお、年代推定のためのスペクトルデータの活用は、基礎的データを蓄積している段階である。木質文化財の調査は、その起源や歴史的背景、木材選択をはじめとして様々な知見を齎す。しかし木質文化財は文化財であるがゆえ破壊が禁じられており、非破壊手法が求められてきている。
KAKENHI-PROJECT-24780169
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木質文化財の現場調査を目的とした新規手法の基礎的研究
本研究では非破壊かつオンサイトでの樹種識別を可能とする手法の開拓として、近年様々な分野で活用されている近赤外分光法(FTーNIR)を活用した樹種識別について、手法の基礎的研究を行った。その結果、現生のニヨウマツ類(アカマツとクロマツ)では心材部分を用いることで識別が可能であった一方、歴史的古材のアカマツとクロマツではでは判別不可という結果がでるなど、課題も見つかった。その原因解明のためにも継続した研究の必要性が見出された。材鑑調査室の木材標本のNIRデータの蓄積については順調に進んでいる。木彫像に使用されることの多い樹種についても、判別分析が成功している。またアカマツ・クロマツといったニヨウマツ類の樹種調査については、共同研究者との論文をだすことができた。文化財科学徐々にNIRスペクトルによる判別分析が進んでいることから、ポータブル型NIR装置によるデータ蓄積をすすめていく。また未だに検量線モデルが確立できていない古材についての、経年変化の挙動をより解明していく。それにより、オンサイトでのポータブル型NIR装置の活用を予定している。材鑑調査室に保存されている標準試料および歴史的古材のNIRデータの獲得・蓄積については、順調に進んでおり、特にヒノキ・カヤ・アスナロなどをはじめとした木彫像に使用されることの多い樹種については、判別分析に成功している。ニヨウマツ類における樹種識別については共同研究者との論文もほぼ投稿できる段階にまできている。本年度、産休・育休に入ったため、研究が中断したため。現在、現生材についてはある程度NIRスペクトルを用いた判別分析が進んできたことから、ポータブル型NIRの導入を進める。一方、未だ検量線モデルが確立できていない歴史的古材については、経年変化に応じたスペクトル変化の要因を突き止めることで、NIRによる識別を検討する。その進展に合わせて、実際の博物館といったオンサイトでのポータブル型NIR装置の活用を進める予定である。次年度、育児休暇より復帰し次第、ポータブル型NIR装置の導入などを行う予定である。初年度は、ポータブル型NIRによる樹種識別に向けて、従来より研究室に設置してあった卓上型NIR装置を用いた、標準試料の基礎的データの獲得と蓄積、ならびに解析が主な研究内容となったことから、当初予定していた予算よりも低い金額での業務の遂行が可能となった。次年度以降は、初年度に獲得した基礎的データを活用して、あたらに導入する予定のポータブル型NIR装置を用いた樹種識別がメインとなってくる他、歴史的古材における基礎的データの蓄積に向けた実地調査やサンプリング、ならびに試料精製の補助を手伝ってもらうための人件費などに予算をあてることで、飛躍的な研究を進めていきたいと考えている。ポータブル型NIR装置での古材の樹種調査を可能とした上で、これまでに協力体制を築いてきている各地の博物館へ出向き、オンサイト調査を順次進めていく予定である。
KAKENHI-PROJECT-24780169
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24780169
高圧下において部分溶融が及ぼす岩石レオロジーへの影響
マントル全域の超高圧力を再現でき、大歪変形実験(ねじり試験)を可能とする変形試験機の必要性とその重要度を鑑み、当初の予定とは異なるがダイヤモンドアンビルセルを改良した回転式ダイヤモンドアンビルセル(回転式DAC)の開発にエフォートを割いた。昨年度に予定していた通り、回転式ダイヤモンドアンビルセルでの変形実験中に応力測定を行えるようにSPring-8での開発、そして高温実験を可能にするために回転式DAC専用の真空チャンバー(+外熱式ヒーター)の導入を行った。これにより変形実験中にXRDによる応力測定と、1000 Kまでの高温実験が可能となった。これによって、変形実験装置に必要な高圧、高温、歪(歪速度)の測定と制御、応力測定の要素が全て揃ったことになり、改良は必要なものの、変形実験装置として完成したと言える。この回転式DACを用いて、ブリッジマナイトとフェロペリクレースの2相系の変形実験を行なった。実験条件として室温、圧力=26-85 GPaである。歪については試料が円柱型のねじり試験であるため、幅があるが最大で歪10ほどまでの解析を行なった。各条件における微細組織の観察を行なったところ、弱相であるフェロペリクレースの連結度は歪の大きさに比例する傾向が見出された。これはブリッジマナイトと比較し、フェロペリクレース(30vol%)が十分に弱く、全体の系の力学特性を支配する可能性を示唆している。SPring-8(BL47XU)においてX線その場観察によって取得された変形実験中のブリッジマナイトとフェロペリクレースの応力データについても、先行研究(e.g., Girard et al., 2016)と同様にブリッジマナイトが優位に強度が大きいことを示した。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。部分溶融実験部分溶融が変形に及ぼす影響を調べるため、まずD-DIAで静水圧における部分溶融実験を行った。これはどのようなサンプルを用いれば部分溶融度がどれくらいになるか、そして部分溶融したサンプルの変形実験に適したセルを考察するためである。サンプルにはサンカルロスオリビンと玄武岩(JB1)を7wt%混合したパウダーを用いた。実験条件は1200ー1300度, 3ー4 GPa, 3時間keepした。回収した試料らをFE-SEMによって観察したところ、全ての実験試料においてオリビンの粒界にメルトポケットが確認された。溶融した部分をトレース、解析すると、メルトフラクションは4.5 %だった。非常に高圧のため幾つかメルトが連結している箇所も確認された。これはYoshino et al. (2007)で報告されているメルトの濡れ角が圧力に依存するという性質と調和的である。回転ダイヤモンドアンビルセルダイヤモンドアンビルセルを改良することで、超高圧(100 GPa以上)において大歪の変形実験を可能とする回転ダイヤモンドアンビルセル(rDAC)の開発に着手した。rDACでは従来のダイヤモンドアンビルと同じ方法で加圧し、それに加え上部アンビルは独立して回転するようになっている。これによってサンプルには無限に歪(ねじり変形)を加えることができる。歪速度に関しては新しく開発したギアボックス(製作PRETECH)によってコントロールできる。実現できる歪速度は10^-6ー10^-3 (s^-1)である。rDACを用いた変形実験はSPring-8において行われ、X線ラミノグラフィーによって変形するサンプルのその場観察が可能である。すでに137 GPaでの超高圧大歪変形実験を成功させた。以上の開発についてはすでにまとめられ論文に出版されている(Nomura, Azuma et al., 2017)。当初の予定とは異なるが、超高圧での大歪み変形実験が行える試験機の必要性を感じ、回転ダイヤモンドアンビルセルの開発に着手した。これによって、これまで技術的に不可能であった超高圧100GPa以上での大歪変形実験を成功させたことについては一定の評価が出来ると考える。本開発では既存のダイヤモンドアンビルセルを改良することで、サンプルにねじり変形を加えられる機構を備えつけた。そして歪速度においては新しく開発したギアボックス(制作PRETECH)によってコントロールできるようにした。このように既存の変形実験装置ではなく、装置自体を開発するという積極的な取り組みができたことに関して、当初の研究計画よりも価値ある1年目になったと言える。部分溶融した鉱物の変形実験に関しては、ルーチンで変形実験を行える目処が立ちつつある。実験中の部分溶融度や、微細組織(ぬれ角等)に関してもほぼ当初予定していたものが実現できている。開発していた回転式ダイヤモンドアンビルセル(DAC)のダイヤモンドアンビルとサンプルの間でスリップが起きていることが明らかになった。これを解決すべくダイヤモンドアンビル先端の形の最適化を行った。その結果、スリップは改善され、ギアボックスの回転速度から算出されるサンプルの歪速度と実際に観測される歪速度との差を非常に小さいものにすることができた(Azuma et al., 2018)。回転DACを用いて、下部マントル物質のブリッジマナイトとフェロペリクレースの2相系で高圧条件(30-120 GPa)における変形実験を行った。回収された試料の微細組織をFE-SEMによって観察を行ったところ、どの圧力条件下でもブリッジマナイトに比べフェロペリクレースが大きく変形し、連結している微細組織が観察された。
KAKENHI-PROJECT-16J02747
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高圧下において部分溶融が及ぼす岩石レオロジーへの影響
一方でブリッジマナイト粒子の楕円体フィッティングを行ったところ、その形状は出発物質とあまり変わらず、フェロペリクレースが全体の変形を支配していることが示唆された。当初の予定であったD-DIAを用いた変形実験のための斜めせん断変形と縦せん断変形実験のセル開発を行い、実際に部分溶融実験(3-4 GPa, 1100-1250°C)に用いた。しかし、縦せん断については安定した変形実験を長時間行うことが難しく、方向転換を余儀なくされている。斜めせん断セルについては、安定して変形実験を行えるセルに改良することができたので、今後は縦せん断変形ではなく斜めせん断による変形実験に注力し行う。1年度目に報告していた実験中に鉄が析出する問題については銀パラジウム合金のカプセルを用いることで解決することができた。実験後回収された試料の微細組織については1200°C、4GPa、メルトフラクション4%においてもメルトの連結(濡れ角=0°)が局所的とはいえ確認された。新しい高圧変形試験機(回転式ダイヤモンドアンビルセル)の開発という挑戦的な研究への取り組みについては、順調に進んでおり、すでにSPring-8において実際の高圧鉱物を用いた変形実験を数多く行うことができた。実験結果についても、これまでにない下部マントル物質の変形微細組織(フェロペリクレースの連結)が観察することができ、興味深い結果が出始めている。温度コントロールについても、試験機専用の高温チャンバーの設計や導入に向けての打ち合わせが進んでおり、年内(採用第3年度目)には回転式ダイヤモンドアンビルセルを用いた高温での変形実験を予定している。今後下部マントルレオロジーを明らかにするために、役立っていくことが期待される研究開発である。部分溶融の変形実験についてはあまり上手く進んでいない。特に当初予定していた変形実験セルにおいて、大歪を実現するための縦せん断セルでの変形実験についてセル開発を続けていたが、方向転換をする必要があり、従来の変形実験で用いられてきた斜めせん断変形実験を行うことになるだろう。3年目ではSPring-8でのAEを導入した斜めせん断変形実験を行い、本来の予定であるメルトを含む岩石変形とせん断不安定をAE測定によって考察を行う。マントル全域の超高圧力を再現でき、大歪変形実験(ねじり試験)を可能とする変形試験機の必要性とその重要度を鑑み、当初の予定とは異なるがダイヤモンドアンビルセルを改良した回転式ダイヤモンドアンビルセル(回転式DAC)の開発にエフォートを割いた。昨年度に予定していた通り、回転式ダイヤモンドアンビルセルでの変形実験中に応力測定を行えるようにSPring-8での開発、そして高温実験を可能にするために回転式DAC専用の真空チャンバー(+外熱式ヒーター)の導入を行った。これにより変形実験中にXRDによる応力測定と、1000 Kまでの高温実験が可能となった。これによって、変形実験装置に必要な高圧、高温、歪(歪速度)の測定と制御、応力測定の要素が全て揃ったことになり、改良は必要なものの、変形実験装置として完成したと言える。この回転式DACを用いて、ブリッジマナイトとフェロペリクレースの2相系の変形実験を行なった。
KAKENHI-PROJECT-16J02747
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過誤支配防止を目的とした組織工学的末梢神経再生の研究
末梢神経では神経線維の再生もさることながら、過誤支配をいかに抑制することができるかが、機能的回復にとって重要な問題である。神経の機能的再生率をさらに向上させる必要があることから、人工神経チューブ内に封入する足場と再生促進物質としての単核球の役割を研究した。当初期待したゼラチンスポンジは足場素材として不適であることが判明した。また、神経再生の初期過程でのワーラー変性に着目し、これを促進させることが成長円錐、軸索の伸長に有効であり、その主役を演ずるマクロファージを供給する末梢血単核球の移植を行うことが機能的再生に有効であると思われたが、単核球を移植しないモデルとの成績の差はなかった。末梢神経のうち顔面神経や反回神経は、過誤支配をいかに抑制することができるかが、機能的回復にとって重要な問題である。本年度は人工神経チューブの足場素材の作製・検討と各人工神経を用い反回神経再生の比較検討を施行した。1.人工神経チューブの足場素材の検討改良型PGA(ポリグリコール酸)チューブの作製:従来のPGAチューブは、チューブ内腔にコラーゲンスポンジを封入したものであるが、コラーゲンは神経組織再生に対し、足場を提供するが軸索の伸長方向に制限を加える可能性がある。軸索の伸長方向で自由度の高い足場となると予想されるゼラチンスポンジを封入した改良型PGAチューブを作製し、神経の機能的再生の比較をした。内腔にゼラチンスポンジ(ゼルフォーム/スポンゼル)を充填したものを2種類作製した。スポンゼルの方がゼルフォームより構造上、密度が高く規則性が高かった。2.反回神経の機能的再生の検討:ビーグル犬(計n=12、各群n=3)を用い、輪状軟骨下端から1cm下方で反回神経を1cm切除し、この部分を従来型、改良型PGAチューブZ/S(Z:ゼルフォーム充填/S:スポンゼル充填)、自家神経移植(切除した反回神経を再移植)で再建した。機能的再生の検討は、ファイバーで声帯の動きの回復を経時的に観察、最終評価は反回神経再建後半年目に施行。3.結果は、改良型PGAチューブZとSではあまり差が無いが、従来型と比較してわずかに良い結果であった。自家神経移植は全例再生を認めなかった。最終評価まで至っていない症例が3例あり、今後の検討を要するものである。末梢神経のうち顔面神経や反回神経は、一つの神経の中に異なる筋や拮抗作用を示す筋を支配する神経線維が含まれている。このため神経再生が進んでも過誤支配が発症しやすく、顔面神経では病的共同運動を、反回神経では声帯麻痺が生じることになる。したがって、末梢神経では神経線維の再生もさることながら、過誤支配をいかに抑制することができるかが、機能的回復にとって重要な問題である。これまでにわれわれは、PGAチューブを開発し、イヌを用いた動物実験で反回神経の再生に取り組み、約1cmの機能的再生(世界初)に成功している。Kanemaru S,2003神経が傷害されたあと、その支配器官(筋)からは、一定の期間何らかの再生神経誘導因子が出されるものと思われる。その誘導に従って、軸索が伸長できれば過誤支配は防止できる可能性がある。したがって、過誤支配防止のためには、再生神経誘導因子が分泌されているうちに、いち早く軸索の再生を完了させる必要がある。そのためには適切な再生の条件を整え、できる限り再生を促進させることが、重要であると考えられる。本年度の研究では、神経再生過程を促進させ過誤支配を抑制させるために、人工神経チューブの足場素材の検討として、ゼラチンスポンジの有用性を検討した。しかし予想に反しゼラチンスポンジを封入したシリコンチューブでの神経再生では、最終的に何も封入しないチューブ単独の方が組織学的に良好であるという結果が出た。すなはち、ゼラチンスポンジは、神経再生の足場としては不適切な可能性があり、本研究全体の見直しを迫られることとなった。末梢神経のうち顔面神経や反回神経は、一つの神経の中に異なる筋や拮抗作用を示す筋を支配する神経線維が含まれている。このため神経再生が進んでも過誤支配が発症しやすく、顔面神経では病的共同運動を、反回神経では声帯麻痺が生じることになる。したがって、末梢神経では神経線維の再生もさることながら、過誤支配をいかに抑制することができるかが、機能的回復にとって重要な問題である。これまでにわれわれは、PGAチューブを開発し、イヌを用いた動物実験で反回神経の再生に取り組み、約1cmの機能的再生に成功している。神経が傷害されたあと、その支配器官(筋)からは、一定の期間何らかの再生神経誘導因子が出されるものと思われる。その誘導に従って、軸索が伸長できれば過誤支配は防止できる可能性がある。したがって、過誤支配防止のためには、再生神経誘導因子が分泌されているうちに、いち早く軸索の再生を完了させる必要がある。そのためには適切な再生の条件を整え、できる限り再生を促進させることが、重要であると考えられる。本年度の研究では、ゼラチンスポンジに単核球を入れたシリコンチューブを用いて、神経再生実験を施行してみたが、やはり前年度の研究結果同様、ゼラチンスポンジは神経再生の足場として不適切な素材であるという可能性高いという結果に至った。ゼラチンスポンジは、神経再生の足場として不適切であるとの研究結果から、研究全体の見直しを迫られることになったため。
KAKENHI-PROJECT-25462698
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過誤支配防止を目的とした組織工学的末梢神経再生の研究
末梢神経のうち顔面神経や反回神経は、一つの神経の中に異なる筋や拮抗作用を示す筋を支配する神経線維が含まれている。このため神経再生が進んでも過誤支配が発症しやすく、顔面神経では病的共同運動を、反回神経では声帯麻痺が生じることになる。したがって、末梢神経では神経線維の再生もさることながら、過誤支配をいかに抑制することができるかが、機能的回復にとって重要な問題である。これに対して、われわれが開発した動物実験で、人工神経(コラーゲン封入型のPGAチューブ)での神経再生がある程度有効であることを報告してきた。しかし、その機能的再生率を上げるためには、神経再生の促進因子としてより良い足場と成長因子などが必要と考え、足場としてゼラチンスポンジ、促進物質としての単核球投与を実験の柱として、ラットの腓骨神経の再生実験を行った。しかし、少なくともゼラチンスポンジはコラーゲンよりも神経再生の足場としては適していないことが判明し、研究全体の見直しを行った。そこで、再びコラーゲン封入型のPGAチューブを用いてそれに単核球の封入を行い、イヌ反回神経の再生を試みた。しかし、これまで施行してきた単核球を封入しない場合との成績比較でそれを上回る好成績を上げることができなかった。本実験は4頭のイヌしか用いていないためにデータのばらつきが生じた可能性もあるため、本研究助成期間は終了したが、引き続き実験を行っていく予定である。末梢神経では神経線維の再生もさることながら、過誤支配をいかに抑制することができるかが、機能的回復にとって重要な問題である。神経の機能的再生率をさらに向上させる必要があることから、人工神経チューブ内に封入する足場と再生促進物質としての単核球の役割を研究した。当初期待したゼラチンスポンジは足場素材として不適であることが判明した。また、神経再生の初期過程でのワーラー変性に着目し、これを促進させることが成長円錐、軸索の伸長に有効であり、その主役を演ずるマクロファージを供給する末梢血単核球の移植を行うことが機能的再生に有効であると思われたが、単核球を移植しないモデルとの成績の差はなかった。ゼラチンスポンジは、神経再生の足場としては不適切な可能性があり、本研究全体の見直しを迫られることとなったため。1.ゼラチンスポンジに替えコラーゲンを封入したPGAチューブを用い、これに障害神経変性の初期過程で重要な役割を果たすと考えられる、単核球の移植を行い、末梢神経再生を試みる。2.PGAチューブに単核球の移植に加え、成長因子(b-FGF、IGF)などの投与を行い、その効果を検討する。再生医療1.障害された末梢神経の初期再生過程であるワーラー変性をより効率的に推進させる目的でPGAチューブに単核球移植を行い神経再生効果を検討する。2.人工神経(PGAチューブ)に封入する調節因子として、IGF,b-FGFなど現在臨床応用可能な調節因子の効果の検討する。25年度内に改良版人工神経の作製ならびに、それらを用いた神経再生ならびに単核球移植による神経再生を行う予定であったが、改良版人工神経に充填するゼラチンの種類を2種類用い、その違いや神経再生の比較検討を行ったため、単核球移植による神経再生が出来なかった。当初予想した研究計画の見直しが必要となったため新たな実験計画にしたがい、実験に必要な薬剤・機器などの購入に充てる予定である25年度の研究でもっと神経再生足場として良好と思われる人工神経を用いて以下の実験を行う。
KAKENHI-PROJECT-25462698
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往診型居室内地震危険度ゾーニング評価システムの開発
地震時の室内散乱に起因する死傷者低減を目的として、事前に居室内の地震時危険性を評価し、安全な暮らしを提案するシステムを構築することを本研究の目的に、3年間研究を継続してきた。上記の目的を達成するために、以下の3点をサブテーマとして掲げた。1.居住室内における人的被害発生のプロセスのモデル化2.上記モデルの具体的防災・減災対策への応用法の検討3.往診型危険度評価システムの提案初年度においては上記サブテーマ1を主体に、室内散乱発生プロセスとその評価方法について提案した。次年度はサブテーマ2の観点から、散乱状況下における人間の災害回避能力について研究を進めた。最終年度はサブテーマ2をさらに掘り下げ、室内での安全性を、揺れている最中の危険度とその後の避難・対応に際しての危険度の2面から評価し、いわば室内の地震時における時系列展開において総合的に評価する方法に発展させ、それを多くの事例を用いて方法論の検証を試み、さらに、平時の住まい方と安全性との調和性について考察を行った。すなわち、室内の防災を実際の暮らしという側面から見直す方法論を展開した。往診型システムとしての条件を1)現場密着型診断ができること、2)住人の個性(住まい方、ライフスタイル)を取り込んだ評価ができること、3)住人が必要とする情報をわかりやすい形で提供できること、を目標にシステムを実現した。本研究は、地震時の室内散乱に起因する人的被害の軽減を目的として、その危険性を事前に評価するためのシステム開発を目的としたものである。その達成のために以下の3点をサブテーマとして掲げている。1.居住室内における人的被害発生のプロセスのモデル化2.上記モデルの具体的防災・減災対策への応用法の検討3.往診型危険度評価システムの提案本年度はその初年度に当たり、主として上記1の地震時の室内散乱実態表現モデルの構築を以下の手順に則り行った。1.地震時の居室内での心的被害例の収集1993年釧路沖地震、1993年北海道南西沖地震、1994年北海道東方沖地震について聞き取りおよびアンケートにより、居室内での家具等の散乱実態および人間行動軌跡を平面プラン上にかつ時系列的に収集した。2.人的被害発生連関モデル構築のための整理上記の試料を基に、居住空間広さ・部屋別用途・室内家具配置等の環境要因が人的被害発生危険性にいかに関与するかの要因分析を行った。次年度は今年度の成果を発展的に進めるほか、上記2のサブテーマが主研究テーマとなる。そのための手順として、1.モデルによる危険度評価法の定式化2.評価結果の可視表示化さらに、サブテーマ3を実行するための準備として、往診型室内危険度評価システムの仕様の検討おも開始する予定にある。地震時の室内散乱に起因する死傷者低減を目的として、事前に居室内の地震時危険性を評価し、安全な暮らしを提案するシステムを構築することを本研究の目的に、3年間研究を継続してきた。上記の目的を達成するために、以下の3点をサブテーマとして掲げた。1.居住室内における人的被害発生のプロセスのモデル化2.上記モデルの具体的防災・減災対策への応用法の検討3.往診型危険度評価システムの提案初年度においては上記サブテーマ1を主体に、室内散乱発生プロセスとその評価方法について提案した。次年度はサブテーマ2の観点から、散乱状況下における人間の災害回避能力について研究を進めた。最終年度はサブテーマ2をさらに掘り下げ、室内での安全性を、揺れている最中の危険度とその後の避難・対応に際しての危険度の2面から評価し、いわば室内の地震時における時系列展開において総合的に評価する方法に発展させ、それを多くの事例を用いて方法論の検証を試み、さらに、平時の住まい方と安全性との調和性について考察を行った。すなわち、室内の防災を実際の暮らしという側面から見直す方法論を展開した。往診型システムとしての条件を1)現場密着型診断ができること、2)住人の個性(住まい方、ライフスタイル)を取り込んだ評価ができること、3)住人が必要とする情報をわかりやすい形で提供できること、を目標にシステムを実現した。地震時におけるわが国の顕著な特徴として、家屋が無傷でも室内が散乱することに起因する死傷者が極めて多いことがあげられる。これの軽減を目的として、居室内の地震時危険性を評価するシステムを構築することが本研究の目的である。本研究は平成6年度を初年度に3カ年の研究期間を設定しており、本年度は2年目にあたる。3カ年間に上記の目的を達成するために、以下の3点をサブテーマとして掲げている。1.居住室内における人的被害発生のプロセスのモデル化2.上記モデルの具体的防災・減災対策(わが家の居住室環境改善法)への応用法の検討3.往診型危険度評価システムの提案初年度(平成6年度)は上記目的のサブテーマ1「居住室内における人的被害発生のプロセスのモデル化」を中心に、主に室内散乱発生プロセスを追った。本年度はこれを発展的に進め、主として散乱状況下における人間の災害回避能力について研究を進めた。成果は日本建築学会構造系論文報告集に発表した。この成果は、上記サブテーマ2「モデルの防災・減災対策への応用」に直接的に関与する。すなわち、地震時の危険空間が初年度のモデルにより、回避空間が本年度のモデルにより具体的に示すことができ、両者のオーバーラップにより室内安全空間構成法が示されたことになる。さらに、最終年度に予定されている現場的に簡易に室内危険度が評価できるシステム構築に向け、関連アプリケーションの整備を行った。
KAKENHI-PROJECT-06555165
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往診型居室内地震危険度ゾーニング評価システムの開発
地震時の室内散乱に起因する死傷者低減を目的として、事前に居室内の地震時危険性を評価し、安全な暮らしを提案するシステムを構築することを本研究の目的に、3年間研究を継続してきた。上記の目的を達成するために、以下の3点をサブテーマとして揚げた。1.居住室内における人的被害発生のプロセスのモデル化2.上記モデルの具体的防災・減災対策への応用法の検討3.往診時危険度評価システムの提案初年度においては上記サブテーマ1を主体に、室内散乱発生プロセスとその評価方法について提案した。次年度はサブテーマ2の観点から、散乱状況下における人間の災害回避能力について研究を進めた。最終年度はサブテーマ2をさらに掘り下げ、室内での安全性を、揺れている最中の危険度とその後の避難・対応に際しての危険度の2面から評価し、いわば室内に地震時における時系列展開において総合的に評価する方法に発展させ、それを多くの事例を用いて方法論の検証を試み、さらに、平時の住まい方と安全性との調和性について考案を行った。すなわち、室内の防災を実際の暮らしという側面から見直す方法論を展開した。往診型システムとしての条件を1)現場密着型診断ができること、2)住人の個性(住まい方、ライフスタイル)を取り込んだ評価ができること、3)住人が必要とする情報をわかりやすい形で提供できること、を目標にシステム実現に努力した。データ入力方法にまだ若干の改善の余地を残すものの、2)3)の条件はほぼ当初の目標を達成していると評価できる。
KAKENHI-PROJECT-06555165
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組換えRTXトキシンを用いた次世代細菌感染症ワクチンの基礎研究
1.組換えRTXタンパク質(rApx)の大腸菌での発現系の確立と精製方法の検討(1)発現に用いるプロモーターの検討種々のプロモーターを用いてrApxタンパク質を大腸菌K-12株内で発現させた結果、本遺伝子は、lacのプロモーターにより最も高度に発現することが明らかになった。(2)rApxの精製方法の検討rApxを発現した大腸菌内では、本タンパク質は細胞質内に封入体として存在した。そこで、この封入体を回収し、可溶化することによって、高純度のrApxタンパク質を得ることができた。2.実験小動物でのrApxの免疫原性(1)免疫賦活剤(アジュバント)の検討モルモットを用い、rApx免疫時のアジュバントについて、抗体応答を指標に検討した。その結果、無水マンニトールオレイン酸エステルを主成分としたオイルアジュバントがrApxの免疫に適していることが明らかになった。(2)モルモットでのrApxに対する抗体応答rApxを上記アジュバントと混合後、モルモット筋肉内に注射した。その抗体応答をドット・ブロット法により調べた結果、注射後4週目をピークとした抗体上昇が認められた。さらに、この血清は本タンパク質の生物活性である溶血性を阻止した。(3)マウスでの感染防御試験rApxタンパク質25μgをマウス腹腔内に免疫し、2週後にActinobacilluspleuropneumoniae血清型1の菌株で攻撃した。その結果、免疫群はすべて生残したのに対して、緩衝液をだけ免役した対照群はすべて死亡した。このことから、rApxタンパク質による免疫はマウスに対して高度な感染防御能を付与しうることが明らかになった。3.まとめ本研究によって、rApxを大腸菌中に効率よく発現しうる系が確立できた。また、実験小動物を用いた試験により本抗体が高い免疫原性を有することがあきらかになり、本菌感染症における組換えコンポーネントワクチン実用化の可能性が示された。1.組換えRTXタンパク質(rApx)の大腸菌での発現系の確立と精製方法の検討(1)発現に用いるプロモーターの検討種々のプロモーターを用いてrApxタンパク質を大腸菌K-12株内で発現させた結果、本遺伝子は、lacのプロモーターにより最も高度に発現することが明らかになった。(2)rApxの精製方法の検討rApxを発現した大腸菌内では、本タンパク質は細胞質内に封入体として存在した。そこで、この封入体を回収し、可溶化することによって、高純度のrApxタンパク質を得ることができた。2.実験小動物でのrApxの免疫原性(1)免疫賦活剤(アジュバント)の検討モルモットを用い、rApx免疫時のアジュバントについて、抗体応答を指標に検討した。その結果、無水マンニトールオレイン酸エステルを主成分としたオイルアジュバントがrApxの免疫に適していることが明らかになった。(2)モルモットでのrApxに対する抗体応答rApxを上記アジュバントと混合後、モルモット筋肉内に注射した。その抗体応答をドット・ブロット法により調べた結果、注射後4週目をピークとした抗体上昇が認められた。さらに、この血清は本タンパク質の生物活性である溶血性を阻止した。(3)マウスでの感染防御試験rApxタンパク質25μgをマウス腹腔内に免疫し、2週後にActinobacilluspleuropneumoniae血清型1の菌株で攻撃した。その結果、免疫群はすべて生残したのに対して、緩衝液をだけ免役した対照群はすべて死亡した。このことから、rApxタンパク質による免疫はマウスに対して高度な感染防御能を付与しうることが明らかになった。3.まとめ本研究によって、rApxを大腸菌中に効率よく発現しうる系が確立できた。また、実験小動物を用いた試験により本抗体が高い免疫原性を有することがあきらかになり、本菌感染症における組換えコンポーネントワクチン実用化の可能性が示された。
KAKENHI-PROJECT-06760291
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06760291
胃癌術後の予後を規定する因子の解析:術後炎症反応とMDSCを標的とした癌免疫療法
【術後M-MDSCと臨床病理学的因子との関連性】根治手術が可能であった胃癌患者から、術前、POD1、POD3、POD7と血液を採取し、CD15+細胞・CD14+細胞、CD4+細胞、CD8+細胞およびM-MDSC(CD14+、CD33+、CD11b+、HLA-DR-)をフローサイトメトリーで解析した。術前血液を採取した75症例の解析では、術前の%M-MDSCは、pStageが高いほど有意に高かった。また同時に腫瘍組織内免疫細胞が抽出可能であった21症例の解析では、末梢血中の%M-MDSCは腫瘍組織内のTAM頻度と相関することが分かった。経時的に血液採取可能であった32症例の検討では、M-MDSCは術後急性期に著明に増加する一方で、制御性T細胞(Treg)に関しては、術後急性期において大きな変化は認めなかった。この結果は、術後急性期においてMDSCを評価することが重要であることを示唆する。術後に増加する単球と術後に増加するM-MDSCは強い相関関係があり、術後に増加した単球は、M-MDSCである可能性があった。当院で根治切除を行った胃癌278例(後ろ向き解析)では、術後に増加した単球数が多いほど予後不良であった。多変量解析においても、独立した予後規定因子であった。【術後M-MDSCの最も抑制機能を持った分画の同定】術後急性期に増加するM-MDSCをソーティングし、CD8+陽性細胞と共培養すること、IFNγの分泌能が低下することを確認した。またM-MDSCにおいて、アルギネース・IDOが有意に高発現していた。以上の結果から、術後急性期に増加するM-MDSCは抑制機能を有し、予後に影響を与える可能性があり、治療標的となりうると考えられた。しかし、細分画化するマーカの同定(治療標的分子)、既報のM-MDSCを対象とした薬剤検討までは行えていない。【術前・術後のPBMC・TILの分離、当日測定および凍結保存】【術後M-MDSCと臨床病理学的因子との相関解析】根治手術が可能であった胃癌患者より、術前、POD1、POD3、POD7と血液を採取し、骨髄系細胞(CD15+細胞・CD14+細胞)、リンパ球(CD4+細胞、CD8+細胞)およびM-MDSC(CD14+、CD33+、CD11b+、HLA-DR-)をフローサイトメトリーで解析した。1術前血液を採取した75症例の解析では、術前の%M-MDSC(M-MDSCのCD14+細胞に占める割合)は、pStageが高いほど有意に多かった。また同時に腫瘍組織内免疫細胞が抽出可能であった21症例の解析では、末梢血中の%M-MDSCは腫瘍組織内の腫瘍関連マクロファージ(TAM)の頻度と相関することが分かった。2経時的に血液採取可能であった32症例の検討では、%M-MDSCは術後急性期に著明に増加し、その増加割合はpStageや手術侵襲との関連性を認めた。一方で、リンパ球上の免疫関連分子やMDSCと同じく抑制性免疫細胞の一つである制御性T細胞(Treg)に関しては、術後急性期において大きな変化は認めなかった。この結果は、術後急性期においては骨髄系の抑制性免疫細胞であるMDSCを評価することが重要であることが示唆された。今後、症例を集積するとともに、予後との関連性および治療介入可能なMDSC増加に関わる因子の検討を行っていく。【術後M-MDSCの最も抑制機能を持った分画の同定】術後急性期に増加するM-MDSCをソーティングし、CD8陽性細胞(CFSEラベル下)と共培養することでM-MDSCの抑制機能を確認した。今後、保存PBMCを用いて細分画化するマーカの同定に着手する。【保存PBMC・血清を用いた治療標的の検索】同時測定が望ましいと考え、サンプル回収が終了した後に着手する予定としている。症例集積は順調に進んでおり、MDSCと臨床病歴学的因子・腫瘍組織内免疫細胞との関連性に関しては、検討を行った。MDSCの抑制機能評価もCD8陽性細胞(CFSEラベル下)を用いた系で行っている。今後、MDSCの術後増加に関わる治療介入可能な臨床因子を探索する必要があるが、現在のペースで症例集積が進めば、検討可能と考える。平成29年度に行う予定であった保存PBMCおよび血清の網羅的に解析に関しては、まだ行っていない。しかし、解析するためのサンプルは保存されており、いつでも解析可能な状況である。薬剤介入による影響は、現時点では症例数が少ないため、検討困難な状況である。こちらに関しては、症例集積に努めていく。【術後M-MDSCと臨床病理学的因子との関連性】根治手術が可能であった胃癌患者から、術前、POD1、POD3、POD7と血液を採取し、CD15+細胞・CD14+細胞、CD4+細胞、CD8+細胞およびM-MDSC(CD14+、CD33+、CD11b+、HLA-DR-)をフローサイトメトリーで解析した。術前血液を採取した75症例の解析では、術前の%M-MDSCは、pStageが高いほど有意に高かった。また同時に腫瘍組織内免疫細胞が抽出可能であった21症例の解析では、末梢血中の%M-
KAKENHI-PROJECT-17K16552
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胃癌術後の予後を規定する因子の解析:術後炎症反応とMDSCを標的とした癌免疫療法
MDSCは腫瘍組織内のTAM頻度と相関することが分かった。経時的に血液採取可能であった32症例の検討では、M-MDSCは術後急性期に著明に増加する一方で、制御性T細胞(Treg)に関しては、術後急性期において大きな変化は認めなかった。この結果は、術後急性期においてMDSCを評価することが重要であることを示唆する。術後に増加する単球と術後に増加するM-MDSCは強い相関関係があり、術後に増加した単球は、M-MDSCである可能性があった。当院で根治切除を行った胃癌278例(後ろ向き解析)では、術後に増加した単球数が多いほど予後不良であった。多変量解析においても、独立した予後規定因子であった。【術後M-MDSCの最も抑制機能を持った分画の同定】術後急性期に増加するM-MDSCをソーティングし、CD8+陽性細胞と共培養すること、IFNγの分泌能が低下することを確認した。またM-MDSCにおいて、アルギネース・IDOが有意に高発現していた。以上の結果から、術後急性期に増加するM-MDSCは抑制機能を有し、予後に影響を与える可能性があり、治療標的となりうると考えられた。しかし、細分画化するマーカの同定(治療標的分子)、既報のM-MDSCを対象とした薬剤検討までは行えていない。当初平成29年度に行う予定であった保存PBMCおよび血清の網羅的解析を、今後行っていき、治療標的を探索していく。臨床病理学的因子との関連性を更に解析し、治療介入を検討する。また薬剤投与によるMDSCへの影響に関しても、薬剤投与症例を漏らさず集積することで、解析可能症例数を目指していく。本年度の研究に必要な物品は購入している。次年度使用額および翌年度分の請求額に関しては、併せて保存している免疫細胞および血清の網羅的解析、サンプル(血液および腫瘍組織)の処理、免疫細胞の抑制機能assayに用い、いづれも消耗品にあてる予定としている。
KAKENHI-PROJECT-17K16552
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塵肺症及び粉塵暴露と肺癌の多発に関する研究
近年、岡山県の東南部、東備地域では、肺癌の過剰死亡が報告されている(昭和61年から平成2年までの5年間の市町村別標準化死亡比で、備前市・1.22、日生町・1.80)。そこで岡山県保健福祉部、厚生省統計情報部、岡山県東備保健所の協力を得て、この地域(備前市・日生町・佐伯町・和気町・吉永町)の死亡小票を調査し、肺癌発生に及ぼすじん肺症の影響の程度の推定を症例対照研究の手法で試みた。死亡小票は上記5市町の昭和63年から平成5年までのものを利用した。症例対照研究は、肺癌死亡症例を症例群とし、対照群に胃癌とその他の癌による死亡症例を選んだ。暴露の指標はじん肺所見の記載を採用した。分析対象は、40才以上の男性に限った。死亡時の年齢で層別し、各々の層をマンテル・ヘンツェル法で統合し、調製オッズ比を求めた。胃癌を対照疾患としたときの年齢調整オッズ比は1.41(95%信頼区間0.57-3.52)、胃癌と肺癌以外の癌を対照疾患としたときには2.22(同1.63-4.65)、肺癌以外の全癌を対照疾患としたときには1.97(同0.99-3.89)であった。いずれも、じん肺患者における肺癌の過剰死亡を示唆し、これまでの日本でのコホート研究の結果に一致している。しかし、今回は暴露の指標を、死亡小票のじん肺所見の記載に頼っているため、Nondifferential misclassificationなどのバイアスが考えられ、今後より良い推定値を得るためにさらに研究が必要であると考える。また、今回は年齢以外の交絡要因の情報、例えば喫煙歴に関する情報などは得られていないので、この点に関しても、今後更に検討が必要である。近年、岡山県の東南部、東備地域では、肺癌の過剰死亡が報告されている(昭和61年から平成2年までの5年間の市町村別標準化死亡比で、備前市・1.22、日生町・1.80)。そこで岡山県保健福祉部、厚生省統計情報部、岡山県東備保健所の協力を得て、この地域(備前市・日生町・佐伯町・和気町・吉永町)の死亡小票を調査し、肺癌発生に及ぼすじん肺症の影響の程度の推定を症例対照研究の手法で試みた。死亡小票は上記5市町の昭和63年から平成5年までのものを利用した。症例対照研究は、肺癌死亡症例を症例群とし、対照群に胃癌とその他の癌による死亡症例を選んだ。暴露の指標はじん肺所見の記載を採用した。分析対象は、40才以上の男性に限った。死亡時の年齢で層別し、各々の層をマンテル・ヘンツェル法で統合し、調製オッズ比を求めた。胃癌を対照疾患としたときの年齢調整オッズ比は1.41(95%信頼区間0.57-3.52)、胃癌と肺癌以外の癌を対照疾患としたときには2.22(同1.63-4.65)、肺癌以外の全癌を対照疾患としたときには1.97(同0.99-3.89)であった。いずれも、じん肺患者における肺癌の過剰死亡を示唆し、これまでの日本でのコホート研究の結果に一致している。しかし、今回は暴露の指標を、死亡小票のじん肺所見の記載に頼っているため、Nondifferential misclassificationなどのバイアスが考えられ、今後より良い推定値を得るためにさらに研究が必要であると考える。また、今回は年齢以外の交絡要因の情報、例えば喫煙歴に関する情報などは得られていないので、この点に関しても、今後更に検討が必要である。
KAKENHI-PROJECT-06770260
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Densanin AおよびBの合成研究
昨年度の研究活動で含窒素大員環を含む二環式化合物(1)を合成したことを報告したが、その合成前駆体である化合物の合成には再現性の低さやその工程数に問題を抱えていた。またその後の化合物(1)からMannich反応によるピロリジン環構築では保護基として用いていたMOM基の脱保護が進行することが明らかになった。さらに生じた水酸基はマンニッヒ反応系中にて生じる活性中間体であるアシルイミニウムカチオンと反応し、N,O-アセタールを与える。このことからMOM基の除去によって所望の環化反応の進行が阻害されている可能性があった。そこで短工程化の検討を行いつつ、MOM基より化学的に安定なベンジル基で水酸基を保護した化合物を合成した。これにより、再現性の確保および収率の改善にもつながった。そして得られた基質を用いて、Mannich反応によるピロリジン形成の検討を行った。その結果、種々の反応条件においてもベンジル基は脱保護されなかったが、所望の環化反応も一切進行しなかった。そこでアゾメチンイリドを用いた[3+2]-環化付加反応によるピロリジン環の構築を試みることにした。基質としては合成中間体であるシクロヘプテノンに対して適用した。その結果、所望のピロリジン環構築を達成した。今回得られた化合物はDensanin類の基本骨格をおおよそ構築できていることがわかる。本研究で得られた知見はDensanin類の全合成に大いに役立つことが期待できる。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。デンサニンAおよびBの主骨格の7員環と共通大員環の構築を行った。まずディールズアルダー反応によってシクロヘキセン(6員環構造)を簡便に構築したのち、シクロプロパン化反応(3員環構築)と加熱による3員環構造の開環によって、環を拡大し7員環構造を構築した。その後、脱ブロモ化反応と1,2-付加反応によって大員環の架橋鎖に相当する炭素鎖の導入をした。得られた化合物のTBSエーテル部位を一炭素増炭しつつノシルアミドへと変換した。続いてPCCを用いたアリルアルコールの酸化的転位反応によって不飽和ケトンを得た。次に酸素原子の保護基を除去し分子内光延反応を行うことで共通含窒素大員環を構築した。Ns基を安定なTs基へと変換し、ニトロメタンの1,4-付加反応による第四級炭素の構築を行った。この際、あらかじめ構築した大員環の架橋鎖が立体障害となることで、高立体選択的かつ高収率にて不斉第四級炭素の構築に成功した。その後、アセタール部位を含むカーバメートへと導き、加熱することでオキサゾロン環の構築に成功している。【現在および今後の検討】現在までにデンサニンAおよびBの構造の約70%構築に成功しており、ピロリジン環(B環)の構築を検討している。これはオキサゾロンを酸性条件にすることでアシルイミニウム塩が生成し、立体障害の少ないexo面からマンニッヒ反応が進行することで、ピロリジンが得られると想定している。最後にケトンのα位にカルボニル等価体を導入し、アミンからの環化と酸化反応によってピロール環を構築することで、共通鍵中間体を合成する予定である。ピロリジン環構築反応は研究計画通りに進行せず、迂回策を講じる必要があったが、研究は順調に進展している。昨年度の研究活動で含窒素大員環を含む二環式化合物(1)を合成したことを報告したが、その合成前駆体である化合物の合成には再現性の低さやその工程数に問題を抱えていた。またその後の化合物(1)からMannich反応によるピロリジン環構築では保護基として用いていたMOM基の脱保護が進行することが明らかになった。さらに生じた水酸基はマンニッヒ反応系中にて生じる活性中間体であるアシルイミニウムカチオンと反応し、N,O-アセタールを与える。このことからMOM基の除去によって所望の環化反応の進行が阻害されている可能性があった。そこで短工程化の検討を行いつつ、MOM基より化学的に安定なベンジル基で水酸基を保護した化合物を合成した。これにより、再現性の確保および収率の改善にもつながった。そして得られた基質を用いて、Mannich反応によるピロリジン形成の検討を行った。その結果、種々の反応条件においてもベンジル基は脱保護されなかったが、所望の環化反応も一切進行しなかった。そこでアゾメチンイリドを用いた[3+2]-環化付加反応によるピロリジン環の構築を試みることにした。基質としては合成中間体であるシクロヘプテノンに対して適用した。その結果、所望のピロリジン環構築を達成した。今回得られた化合物はDensanin類の基本骨格をおおよそ構築できていることがわかる。本研究で得られた知見はDensanin類の全合成に大いに役立つことが期待できる。ピロリジン環構築とピロール環構築が達成できれば、デンサニンAおよびBの世界初の合成が可能になるだろう。ピロリジン環構築も解決されつつあるので、今後は当初の計画通り研究を進めていく予定である。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-17J07229
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肺癌の癌遺伝子ASH1およびCLCP1の機能解析
神経内分泌分化肺癌は小細胞癌や一部の大細胞癌からなる高悪性度肺癌であり,この細胞分化と癌悪性化との関連が注目されている。神経内分泌分化肺癌の生存と増殖が,神経内分泌分化の規定因子ASHIの構成的発現に依存性を示すことを報告した。更に,このASH1の機能解析を進めたところ,ASHIが神経内分泌分化を誘導すると共に,培養下での足場非依存性増殖の促進や,移植腫瘍での増殖促進・組織型の変化を誘導することが判明した。又,その分子機序として,ASHIがE-カドヘリンやWntシグナル抑制因子DKK1等の癌抑制遺伝子の発現を抑制し,βーカテニン経路の活性化を誘導することを見出した。実際の肺癌検体の遺伝子発現プロファイルの検討から,これらASH1で発現抑制される遺伝子群は,小細胞肺癌で高頻度に発現低下しており,実際の神経内分泌分化肺癌の発症に関与することが示唆された。このASHIによる遺伝子発現抑制の分子機序を検討したところ,転写抑制性の修飾であるピストンH3の脱アセチル化とK27メチル化がプロモーター領域に誘導されることが判明し,又,ASHlとHDAC分子との結合も確認され,ASH1がHDACを標的遺伝子領域にリクルートしヒストン脱アセチル化を誘導し,発現抑制していると考えられた。更にH3K27メチル化についてChIP-on-chip解析にて,網羅的に検討したところ,ASH1により発現抑制される遺伝子群ほぼ全てでH3K27メチル化修飾が誘導され,ASHIがH3K27メチル化を介して発現制御することが強く示唆された。又,ASHIの標的遺伝子群の中で,ASHIにより誘導される細胞間接着の低下を担う新規遺伝子を同定し,新たな癌抑制遺伝子候補と考え,更に詳細を解析中である。転移関連がん遺伝子CLCPlに関しても,細胞運動能を促進し,SEMA4Bにより制御されることを報告し,更に検討を進めている。神経内分泌分化肺癌は小細胞癌や一部の大細胞癌からなる高悪性度肺癌であり、この特殊な細胞分化と癌悪性化との関連が注目されている。我々はこのような肺癌の生存と増殖が、肺における神経内分泌分化の規定因子ASH1の構成的発現に依存性を示すことを報告した。その分子機序の解明を目指し、神経内分泌分化を有しない肺腺癌細胞株にASH1を導入したところ、浸潤転移に係わる足場非依存性が顕著となり、更に、マウス移植腫瘍では、肺腺癌から神経内分泌分化肺癌の組織型への顕著な変化が誘導され、腫瘍増殖も促進した。また、このような形質変化の分子機序として、ASH1が癌抑制遺伝子のE-カドヘリンやWntシグナル抑制因子DKK1の発現を抑制することを見出し、更にその発現制御の分子機序として、ASH1が特異なパターンの抑制性ピストン修飾を誘導することを明らかにした。今後このピストン修飾の分子機序を解明するとともに、ASH1による遺伝子発現制御により引き起こされるシグナル経路異常を明らかにし、神経内分泌分化肺癌の治療戦略へと繋げていく予定である。このASH1機能の研究は、細胞分化を規定する遺伝子の構成的発現に対する癌細胞の依存性という、新しいパラダイムへ発展することが期待できる。同時に新規転移関連遺伝子CLCP1の機能の解析も進めた。CLCP1を高発現している高転移1生肺癌細胞株で、CLCPIをノックダウンしたところ、細胞運動能の著明な低下が見られ、CLCP1が細胞運動能を促進することが判明した。又、ファージディスプレイ法を用い、CLCP1のリガンドとして癌関連遺伝子Semaphorin4B (SEMA4B)を同定した。CLCP1とSEMA4Bは、細胞表面で共局在し相互作用するが、その相互作用によりCLCP1のプロテアソーム依存性分解が誘導された。今後このCLCP1-SEMA4B相互作用の詳細と、リガンド依存性のCLCP1分解の制御機構を検討し、CLCP1の機能を調整する新規転移抑制治療へ発展させたい。神経内分泌分化肺癌は小細胞癌や一部の大細胞癌からなる高悪性度肺癌であり,この細胞分化と癌悪性化との関連が注目されている。神経内分泌分化肺癌の生存と増殖が,神経内分泌分化の規定因子ASHIの構成的発現に依存性を示すことを報告した。更に,このASH1の機能解析を進めたところ,ASHIが神経内分泌分化を誘導すると共に,培養下での足場非依存性増殖の促進や,移植腫瘍での増殖促進・組織型の変化を誘導することが判明した。又,その分子機序として,ASHIがE-カドヘリンやWntシグナル抑制因子DKK1等の癌抑制遺伝子の発現を抑制し,βーカテニン経路の活性化を誘導することを見出した。実際の肺癌検体の遺伝子発現プロファイルの検討から,これらASH1で発現抑制される遺伝子群は,小細胞肺癌で高頻度に発現低下しており,実際の神経内分泌分化肺癌の発症に関与することが示唆された。このASHIによる遺伝子発現抑制の分子機序を検討したところ,転写抑制性の修飾であるピストンH3の脱アセチル化とK27メチル化がプロモーター領域に誘導されることが判明し,又,ASHlとHDAC分子との結合も確認され,ASH1がHDACを標的遺伝子領域にリクルートしヒストン脱アセチル化を誘導し,発現抑制していると考えられた。
KAKENHI-PROJECT-18012057
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18012057
肺癌の癌遺伝子ASH1およびCLCP1の機能解析
更にH3K27メチル化についてChIP-on-chip解析にて,網羅的に検討したところ,ASH1により発現抑制される遺伝子群ほぼ全てでH3K27メチル化修飾が誘導され,ASHIがH3K27メチル化を介して発現制御することが強く示唆された。又,ASHIの標的遺伝子群の中で,ASHIにより誘導される細胞間接着の低下を担う新規遺伝子を同定し,新たな癌抑制遺伝子候補と考え,更に詳細を解析中である。転移関連がん遺伝子CLCPlに関しても,細胞運動能を促進し,SEMA4Bにより制御されることを報告し,更に検討を進めている。
KAKENHI-PROJECT-18012057
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18012057
炎症後色素沈着の病態解明と新規治療法の開発:モデルマウスを使用した解析
患者のQOLを著しく低下させる露出部の炎症後色素沈着(PIH)について、我々は独自で開発したヒト型皮膚を持つ遺伝子改変マウス(hk14SCF Tg-HRMマウス)を使用して、PIHモデルマウスを作成し、その病態解析を集学的に行うとともに、病態に基づいた新規治療法の開発とこれまでの既存の治療法についてその有効性を検証する。患者のQOLを著しく低下させる露出部の炎症後色素沈着(PIH)について、我々は独自で開発したヒト型皮膚を持つ遺伝子改変マウス(hk14SCF Tg-HRMマウス)を使用して、PIHモデルマウスを作成し、その病態解析を集学的に行うとともに、病態に基づいた新規治療法の開発とこれまでの既存の治療法についてその有効性を検証する。
KAKENHI-PROJECT-19K08742
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K08742
内軟骨性骨化と下顎頭軟骨のメカニカルストレス応答におけるOdz3の機能解析
脊椎動物の骨格のほとんどは内軟骨性骨化によって形成されるが、その分子制御機構の全容は未だ明らかではない。本研究では、Odz3が内軟骨性骨化を制御する因子であると推論し、その発現と機能の解析を軟骨細胞様細胞株ATDC5を用いて行った。その結果、軟骨細胞分化の亢進に伴い、Odz3発現は減少した。また、Odz3の発現をノックダウンしたところ、Sox9の発現が亢進した。これらの結果から、Odz3は軟骨細胞の分化を抑制的に制御する機能を有することが示唆される。脊椎動物の骨格のほとんどは内軟骨性骨化によって形成されるが、その制御機構の全容は未だ明らかとなっていない。Odz3は、下顎頭および長管骨の軟骨と軟骨細胞様細胞株ATDC5において発現すること、ノックアウトマウスで骨格異常が認められることから、軟骨分化への関わりが示唆されるが、その詳細は不明である。本研究では、Odz3が内軟骨性骨化を制御する因子であると仮説を立て、その発現と機能の解析を行った。昨年度は、マウス由来軟骨細胞様株ATDC5の軟骨細胞分化過程におけるOdz3発現パターンをリアルタイムPCRにより定量的に解析し、その結果Odz3は培養初期に高い発現を示し、経時的に発現が減少することが明らかとなった。今年度の実験では、ATDC5におけるOdz3の発現パターンを、軟骨細胞分化初期の細胞イベントである間葉系細胞凝集において発現することが知られる、N-cadherinおよびN-CAMの発現パターンと比較した。その結果、ATDC5培養系においてN-cadheriとN-CAMは、Odz3と類似する発現パターンを示した。これらの成果から、軟骨細胞分化過程において、Odz3は間葉系細胞凝集を促進的に制御する一方、その後の軟骨細胞の分化を抑制的に制御する機能を有することが示唆される。正常な軟骨細胞分化は、促進的および抑制的制御が最適なバランスを保つことにより達成される。促進的制御因子としては、Sox9、5、6をはじめとする多種の因子が知られているが、抑制的制御因子としてはAP-2αなど限られた因子が報告されるに止まっている。本研究は、Odz3による軟骨分化の新規抑制的制御機構を解明する一助となる点で意義がある。脊椎動物の骨格のほとんどは内軟骨性骨化によって形成されるが、その分子制御機構の全容は未だ明らかではない。本研究では、Odz3が内軟骨性骨化を制御する因子であると推論し、その発現と機能の解析を軟骨細胞様細胞株ATDC5を用いて行った。その結果、軟骨細胞分化の亢進に伴い、Odz3発現は減少した。また、Odz3の発現をノックダウンしたところ、Sox9の発現が亢進した。これらの結果から、Odz3は軟骨細胞の分化を抑制的に制御する機能を有することが示唆される。脊椎動物の骨格のほとんどは内軟骨性骨化はによって形成されるが、その制御機構の全容は未だ明らかとなっていない。Odz3は、下顎頭および長管骨の軟骨と軟骨細胞様細胞株ATDC5において発現すること、ノックアウトマウスで骨格異常が認められることから、軟骨分化への関わりが示唆されるが、その詳細は不明である。本研究は、Odz3が内軟骨性骨化を制御する因子であると推論し、その機能解析を行う。マウス由来軟骨細胞様株ATDC5の軟骨細胞分化過程におけるOdz3F発現パターンをリアルタイムPCRにより定量的に解析した。その結果、Odz3は培養初期に高い発現を示し、経時的に発現は減少した。一方、軟骨細胞分化を促す転写因子であるSox9および、軟骨基質であるtype II collagenとaggrecanは培養用初期には低い発現を示し、経時的に発現は上昇した。この結果から、Odz3は軟骨細胞分化の初期の段階で強く発現し、分化の制御に関与することが示唆された。今後、in vivoでの軟骨発生過程におけるOdz3の発現解析と、in vitroにおけるOdz3発現抑制が軟骨細胞分化に及ぼす影響の解析を行うことにより、内軟骨性骨化ににおけるOdz3の機能を明らかにし、得られた成果を論文発表する予定である。当該年度に得られた成果により、in viroでの軟骨細胞分化過程におけるOdz3の定量的な発現様式が明らかとなり、軟骨細胞分化におけるOdz3の機能の推論が可能となった。これらの成果は、今後の機能解析の方向性を具体的なものとする点で意義がある。また、今後得られる成果と併せて、軟骨形成不全症、Apert症候群などの先天性骨系統疾患や、顎関節のみならず全身関節の変形性関節症の発症メカニズムの解明、およびそれらの新規治療法の開発へとつながる可能性があり、人類の健康増進に寄与する点で大きな意義を持つ。レンチウイスルベクターを用いたOdz3のRNAiの至適条件の検索に、当初予定より時間を要しているため。今後以下の以下の計画で研究を推進する。1.胎生期の内軟骨性骨化の過程におけるOdz3とCTGFの発現パターンの変化を解析するため、胎生12.5、15.5、および18.5日マウスの大腿骨部の組織切片を作製し、in situ hybridizationによりOdz3とCTGF、および間葉系細胞マーカーtype I collagen、各種軟骨細胞マーカーtype II collagen、Indian hedgehog (IHH)、およびtype X collagenの発現パターンを比較検討する。3. Odz3 siRNAをコードしたレンチウイスルを、ATDC5に感染させる。
KAKENHI-PROJECT-23792411
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23792411
内軟骨性骨化と下顎頭軟骨のメカニカルストレス応答におけるOdz3の機能解析
細胞からトータルRNAおよびタンパク質を精製し、リアルタイムPCRおよびウエスタンブロットによりOdz3発現のノックダウンを確認した後、それらの試料を用いて1.で解析した各種マーカーの発現への影響を解析する。また、軟骨基質産生への影響を、アルシアンブルー染色により評価する。4. Odz3発現ベクターをATDC5に遺伝子導入する。遺伝子導入細胞のセレクションを行った後、得られた細胞を軟骨細胞分化培地を用いて培養する。細胞からトータルRNAおよびタンパク質を精製し、リアルタイムPCRおよびウエスタンブロットによりOdz3の過剰発現を確認した後、それらの試料を用いて1.で解析した各種マーカーの発現への影響を解析する。また、軟骨基質産生への影響を、アルシアンブルー染色により評価する。5. 10週齢雄性ラットの下顎頭に外科的にエラスティックバンドを装着し、同部への120 gの圧迫力を7日間負荷する。4%パラホルムアルデヒドを用いて灌流固定した後に顎関節部を摘出し、通報に従いパラフィン包埋する。組織切片を作製して、H-E染色、トルイジンブルー染色、in situ hybridizationによる解析を行う。次年度直接経費1500千円のうち、実験動物購入に100千円、各種in vivoとin vitroの実験に用いる試薬購入に800千円、実験器具購入に300千円を物品費として計上し、成果発表旅費100千円と調査研究旅費100千円をとして計上し、その他として研究成果投稿料100千円を計上した。
KAKENHI-PROJECT-23792411
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23792411
オスのアメリカザリガニは対オス、対メスで異なる闘争戦略を取る
最終年度は1)オスが相手の性別を化学的信号によって本当に識別しているのか、そしてもしそうならば、化学信号が含まれているはずの尿成分に雌雄・優劣・抱卵非抱卵メスの間に違いがあるのか、2)相手の社会的地位はパートナー選択にどのような意味を持っているのか、この2点に関し、行動及び化学解析を行った。1)オス並びに抱卵前および抱卵メスの尿をサンプリングし、その尿スペクトルの違いを核磁気共鳴装置(NMR)を用いて化学成分の比較分析を行った。オス・メスの尿中にそれぞれ特異的ピークが確認でき、また抱卵中のメスの尿にも他のオスや非抱卵メスには見られない独特のピークを観察できた。2)メスは配偶相手として強いオスを選択するのか、また勝者のオスは自分は強いとアピールする何らかの化学信号を放っているのか、行動解析より明らかにした。闘いに勝利した勝者のオス、闘争未経験のオス、及び闘いに敗れた敗者のオスとメスをペアリングして、交尾に至った割合を比較した。すると、優位オスとメスの間の交尾率は80%と高かったが、劣位オスとメス間の交尾率も65%以上と高く、両者の間には統計学的に有意な違いは見られなかった。つまりメスは勝者・敗者というオスザリガニの社会的地位には無頓着なことが判明した。このことは優位・劣位オスの尿をサンプリングし、その尿スペクトルの違いを核磁気共鳴装置(NMR)を用いて化学成分の比較分析を行っても、両者の成分の間に明確なパターンの違いが見られなかったことからも確認できる。実際に劣位オスを再び別のザリガニとペアリングした際、相手がオスだと、自ら相手に接近することはなく、ひたすら相手から遠ざかろうと後退行動を示すのに対し、相手がメスだと、積極的に自分の方からメスにアプローチし、多くの場合、交尾にまで至った。初年度は、オスザリガニの対オス・対メスにおける闘争戦略の違いをビデオ・エソグラム解析し、行動学的に明らかにした。そこで一か月以上単独隔離飼育しておいたザリガニを用い、ほぼ同じ体サイズのオス同士、オスと抱卵前・抱卵中のメスという組み合わせで、3045分間ペアリングし、その際の闘争の様子をビデオ撮影し、複数の行動要素に分類して秒単位で回数・時間を解析、エソグラムを作成して、一連の闘争パターンの流れを定量的に把握した。1)オス同士のペアリングでは両者の間に複数回の激しいファイトが起こり、明白な優劣関係が成立した。闘争に勝利し優位となったオス個体は、低い姿勢のまま相手に接近するアプローチから、姿勢誇示ディスプレーを示しながら劣位ザリガニを追いかけまわすアタックにその接近行動が切り替わった。オスと抱卵前のメスのペアリングでは、メスザリガニはオスに対し、消極的な応答しか示さず、ほとんどの場合、1回前後の短いファイトだけが起こり、すぐに優劣が成立した。優劣成立後もオスはゆっくりとアプローチでメスに近づき、交尾の算段をし、実際約半数のペアで交尾行動が観察された。抱卵メスとペアリングしたオスはほとんど闘争しようとせず、メスからの一方的な攻撃のみが観察された。2)ペアリング15分間、1530分間のオスザリガニが示したアプローチ、アタックの回数を比較すると、オス同士のペアリングでは闘争勝利個体のアプローチ数が6.8から6.8回なのに対し、アタック数は0.1から12.9回と有意に増加したのに対し、抱卵前メスとのペアリングではアプローチが5.7から5.3、アタックが0.5から1.5と接近行動の切り替えが全く見られず、抱卵中メスとのペアリングではアプローチが1.7から2.9、アタックが0.9から0.2回とオスからはほとんど仕掛けないことが確認できた。今回、計画1)オスザリガニは対オス、対メスでどのような闘争戦略をとっているのか?、そして、計画3)メスの生理的状態の変化はオスの闘争戦略にどのような影響を及ぼすのか?解き明かそうと考えていた2つの研究目的について、当初の研究計画どおり、概ね順調に研究を遂行することができた。オスはオスに対してと全く異なる闘争戦略で、メスに接していることを定量的に明確に証明できた。またこの結果はメスもその生理的状態によって異なった闘争戦略をとっており、闘争戦略が生殖戦略と密接にリンクしていることを強く示唆し、次年度以降の詳細な研究ビジョンを組み立てることができた。今年度は(1)オスが相手の性別を本当に識別可能なのか、(2)もしそうならば、相手のどのような情報を手掛かりに性別を知っているのか、主に行動解析した。1)被験者のオスに、オス・メスを同時に呈示し、被験者のオスの振舞いをまず詳細に解析した。縦長の水槽の片隅両端にオスとメスそれぞれを拘束した状態で同時に呈示し、もう一方端から被験者のオスザリガニをリリースし、被験者の定位状況を解析した。その結果、被験者のオスザリガニの75%以上が最初にオスに向かって接近行動をしめすことがわかり、統計学的に有意な違いがあった。その後オスは対峙した相手オスを威嚇するような振舞いを示し、実際に闘争に発展するケースも観察され、自由に動ける被験者個体が勝利した。被験者はその後拘束されたメスの方へ接近し、相手に交尾を促した。
KAKENHI-PROJECT-16K07432
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オスのアメリカザリガニは対オス、対メスで異なる闘争戦略を取る
また、抱卵メスと非抱卵メスを呈示し、被験者に二者を選択させたところ、75%位のオスは最初に非抱卵メスに定位した。このように、オスは相手の性別およびその生理的状態を識別していることが明らかになった。2)そこで、オスは相手のどのような感覚情報を頼りに相手の性別を識別しているのか、感覚遮断実験を行って解析した。まず遮断前に一度オス・メスの二者選択実験を行った後、視覚情報遮断のため、左右両方の複眼を黒エナメルで塗り、不透明なキャップを取り付けオーバーナイトさせた。次の日、再びオス・メスの二者選択実験を行ったところ、視覚遮断前後でオス選択は共に75%以上と違いは見られなかった。一方、匂い化学情報検出の受容器が存在する小触角切断前後でのオスザリガニのオス選択率は75%から40%以下へと有意に低下し、さらにオス・メスの尿をしみ込ませたスポンジ呈示に対して、75%以上の確率でオス尿を選択したことから、尿中に含まれる化学物質が雌雄識別の信号となっていることが明らかとなった。今回、当初の研究目的(2)相手のどのような感覚信号を頼りに、オスは相手の性別や生理的状態を認知しているのか、行動生理学的に明らかにする、に関し、当初の研究計画どおり、概ね順調に研究を遂行することができ、オスは尿から放出される何らかの化学物質を頼りに、相手の性別を識別していることを明確に示すことができた。最終年度は1)オスが相手の性別を化学的信号によって本当に識別しているのか、そしてもしそうならば、化学信号が含まれているはずの尿成分に雌雄・優劣・抱卵非抱卵メスの間に違いがあるのか、2)相手の社会的地位はパートナー選択にどのような意味を持っているのか、この2点に関し、行動及び化学解析を行った。1)オス並びに抱卵前および抱卵メスの尿をサンプリングし、その尿スペクトルの違いを核磁気共鳴装置(NMR)を用いて化学成分の比較分析を行った。オス・メスの尿中にそれぞれ特異的ピークが確認でき、また抱卵中のメスの尿にも他のオスや非抱卵メスには見られない独特のピークを観察できた。2)メスは配偶相手として強いオスを選択するのか、また勝者のオスは自分は強いとアピールする何らかの化学信号を放っているのか、行動解析より明らかにした。闘いに勝利した勝者のオス、闘争未経験のオス、及び闘いに敗れた敗者のオスとメスをペアリングして、交尾に至った割合を比較した。すると、優位オスとメスの間の交尾率は80%と高かったが、劣位オスとメス間の交尾率も65%以上と高く、両者の間には統計学的に有意な違いは見られなかった。つまりメスは勝者・敗者というオスザリガニの社会的地位には無頓着なことが判明した。このことは優位・劣位オスの尿をサンプリングし、その尿スペクトルの違いを核磁気共鳴装置(NMR)を用いて化学成分の比較分析を行っても、両者の成分の間に明確なパターンの違いが見られなかったことからも確認できる。実際に劣位オスを再び別のザリガニとペアリングした際、相手がオスだと、自ら相手に接近することはなく、ひたすら相手から遠ざかろうと後退行動を示すのに対し、相手がメスだと、積極的に自分の方からメスにアプローチし、多くの場合、交尾にまで至った。二年目は特にオスザリガニの相手の性別識別能に関し、特に重点的に解析を進めていく方策である。予備実験から、被験者のオスに対して、拘束オス・メスを同時に呈示した場合、オスは決まってまずオスへ接近し闘争を行うこと、そして、闘争決着後メスへ定位することを確認しており、視覚・においといった化学感覚のどちらの信号が実際に性識別に使われているのか、視覚・化学感覚それぞれの感覚信号を遮断し、定位選択実験を行う。
KAKENHI-PROJECT-16K07432
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アスパラギン酸プロテアーゼとその遺伝子の構造と機能に関する研究
1.ペプシノーゲン(ヒト、ブタ、ラット)及びプロキモシン(コウシ)の生合成前駆体を単離、同定し、N末端シグナル配列の全構造を決定した。2.ヒト胃ペプシノーゲンA及びCアイソザイム(6種)及びSlow Moving Protease、サル前立腺ペプシノーゲンC様前駆体酵素、スッポン胃ペプシノーゲン(9種)、カエル食道ペプシノーゲン(2種)、マグロ胃ペプシノーゲン(3種)を分別単離し、分子的、酵素的諸性状を詳細に比較検索した。3.蛋白化学的手法によりニホンザル胃ペプシノーゲンA及びC、マグロペプシノーゲン主成分、Rhizopusペプシン、クロコウジカビ・プロクターゼAの全一次構造、ならびにヒトペプシノーゲンA及びCアイソザイム、カエルペプシノーゲン、Scytalidium lignicolumプロテアーゼAの部分構造を決定した。また、遺伝子構造解析によりヒトペプシノーゲンCの全一次構造、cDNA構造解析からラットペプシノーゲンCおよびスッポンペプシノーゲンの全一次構造を推定した。4.ヒトペプシノーゲンA及びCアイソザイム、その他各種動物ペプシノーゲン(サル、ブタ等多数)の活性化機構を詳細に比較解析し、活性化機構モデルを提出した。5.Site-directed mutagenesis法により、ブタペプシノーゲンの各種変異体を大腸菌で発現させ、活性部位の2個のAsp及びN末端の重要性を示した。6.ヒト及びラットペプシノーゲンCの遺伝子構造を決定し、ヒトC遺伝子は染色体6に存在することを示した。また、ヒトペプシノーゲンA遺伝子は3個あり、少くとも2個は同一DNA上に近接して存在することを示した。7.ラット及びヒトペプシノーゲン遺伝子の発現と低メチル化度との間に正の相関があること、胃粘膜の核分画に25Daの転写制御因子が存在し、遺伝子の5′上流域と結合することを示した。1.ペプシノーゲン(ヒト、ブタ、ラット)及びプロキモシン(コウシ)の生合成前駆体を単離、同定し、N末端シグナル配列の全構造を決定した。2.ヒト胃ペプシノーゲンA及びCアイソザイム(6種)及びSlow Moving Protease、サル前立腺ペプシノーゲンC様前駆体酵素、スッポン胃ペプシノーゲン(9種)、カエル食道ペプシノーゲン(2種)、マグロ胃ペプシノーゲン(3種)を分別単離し、分子的、酵素的諸性状を詳細に比較検索した。3.蛋白化学的手法によりニホンザル胃ペプシノーゲンA及びC、マグロペプシノーゲン主成分、Rhizopusペプシン、クロコウジカビ・プロクターゼAの全一次構造、ならびにヒトペプシノーゲンA及びCアイソザイム、カエルペプシノーゲン、Scytalidium lignicolumプロテアーゼAの部分構造を決定した。また、遺伝子構造解析によりヒトペプシノーゲンCの全一次構造、cDNA構造解析からラットペプシノーゲンCおよびスッポンペプシノーゲンの全一次構造を推定した。4.ヒトペプシノーゲンA及びCアイソザイム、その他各種動物ペプシノーゲン(サル、ブタ等多数)の活性化機構を詳細に比較解析し、活性化機構モデルを提出した。5.Site-directed mutagenesis法により、ブタペプシノーゲンの各種変異体を大腸菌で発現させ、活性部位の2個のAsp及びN末端の重要性を示した。6.ヒト及びラットペプシノーゲンCの遺伝子構造を決定し、ヒトC遺伝子は染色体6に存在することを示した。また、ヒトペプシノーゲンA遺伝子は3個あり、少くとも2個は同一DNA上に近接して存在することを示した。7.ラット及びヒトペプシノーゲン遺伝子の発現と低メチル化度との間に正の相関があること、胃粘膜の核分画に25Daの転写制御因子が存在し、遺伝子の5′上流域と結合することを示した。1)ニホンザルペプシノーゲンA(374残基)およびプロガストリックシン(373残基)の完全一次構造をタンパク化学的手法により決定した。前者は典型的A型ペプシノーゲンでヒトおよびブタペプシノーゲンAと各々94%,86%の相同性を示した。一方、後者はサルペプシノーゲンAと比較して相同性は49%であり、異なるタイプのペプシノーゲンであることが明確になった。プロガストリックシンの一次構造決定はこれが最初である。また、魚類ペプシノーゲン(主にマグロ)の分別、精製を進めた。2)サル骨格筋カテプシンDを精製し、等電点電気泳動により複数成分からなることを明らかにした。これらの成分について酸化インスリンB鎖に対する基質特異性を調べ、有意の差異があることを示した。3)Rhizopus chinensis(くものすかび)のアスパラギン酸プロテアーゼの完全一次構造(325残基)をタンパク化学的手法により決定した。本酵素はブタペプシンと27%,ペニシロペプシンと36%の相同性を有し、同一租先タンパク質から進化したものと結論される。4)ラットペプシノーゲンcDNAの塩基配列を主にジデオキン法により分析し、その全一次構造を決定した。本ペプシノーゲンは376残基からなり、C型ペプシノーゲン(プロガストリックシン)に属すると考えられる。サルプロガストリックシンと70%の相同性を示す。
KAKENHI-PROJECT-60440103
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アスパラギン酸プロテアーゼとその遺伝子の構造と機能に関する研究
5)ラットおよびヒトペプシノーゲン遺伝子を單離、クローン化し、その塩基配列決定を進めた。6)ラットペプシノーゲン全長鎖cDNAの大腸菌での発現の基礎的検討を進めた。7)ヒト、ブタ、ラットのプレペプシノーゲンおよびコウシプレプロキモシンのN末端シグナルペプチドの一次構造を明らかにした。1.ペプシノーゲンの構造と機能に関する比較生化学的研究の一環として、魚類(マグロ)、は虫類(スッポン)および両生類(食用ガエル)の胃ペプシノーゲンの分別、精製と性状の比較検索を進めた。マグロからは3種のペプシノーゲンを単離し、N末端域一次構造、ペプスタチン等の特異的阻害剤の影響等を比較解析した。この結果、3種のチモーゲンは、哺乳類のA型とC型ペプシノーゲンの中間的性状を有することが判明した。スッポンからは9種のチモーゲンを單離し、同様な解析から、2種はA型,4種はC型,3種はそれらの中間の性質を持つことを明らかにした。また、カエルからは4種のチモーゲンを單離した。2.ヒト胎盤由来のDNAを用いてコスミドライブラリーを調製し、ラットプレペプシノーゲンCのcDNAをプローブにして、ヒトプレペプシノーゲンCの遺伝子DNAを單離、クローン化した。その塩基配列を分折した結果、本遺伝子は約10.7kbの長さを持ち、9個のエクソンと8個のイントロンから構成されていること、また、翻訳領域は総アミノ酸残基数388個をコードし、16残基のシグナルペプチド、43残基の活性化ペプチドおよび329残基のペプシン部分からなることが判明した。エクソンとイントロンの数および蛋白質の一次構造上でのエクソン・イントロンの境界の位置は、すでに本研究者らが明らかにしたヒトプレペプシノーゲンAの場合と完全に一致した。3.上述のスクリーニングの際に得られたプレペプシノーゲンAクローンの詳細な制限酵素地図解折を行ない、2個の構造的に非常に類似した遺伝子が近接して連鎖していることを明らかにした。この両遺伝子は従来知られている遺伝子とも類似しており、ヒトのプレペプシノーゲンA遺伝子は少なくとも3個存在することが明らかとなった。1.くものすかびアスパラギン酸プロテアーゼであるRhizopusペプシンの2種のアイソザイムを等電点電気泳動により單離し,各々の一次構造解析を行なった.この結果,両者間に8ヶ所のアミノ酸置換があることが判明し,各アイソザイムの全一次構造が決定された.2.ブタとサルのペプシノーゲンAの活性化機構を比較解析し,活性化の初期には分子内活性化が必須であるが,全体的活性化には分子間活性化反応が主に寄与すること,また一段階および多段階活性化の様想に顕著な種属差があることを示した.3.ヒト胃粘膜より非ペプシン型酸性プロテアーゼであるslow-moving proteaseを分別,單離し,基質特異性,免疫交差性,Nー末端アミノ酸配列等を換索し,カテプシンDよりはカテプシンEに近い分子種であり,一次構造的にはペプシンA等と相同性があることを示した.4.ラット胃ペプシノーゲンCの遺伝子を單離,クローン化し,その全エクソン(9個)と周辺の塩基配列を決定した.エクソン,イントロンの数と配列は,ヒトペプシンノーゲンAおよびC遺伝子の場合と同様であった.5′上流域の配列はヒトペプシノーゲンCの場合と似ているが,ラットにのみGCボックスおよびグルココルチコイドワルモンレセプター結合部位のコア配列がみられた.
KAKENHI-PROJECT-60440103
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自己免疫糖尿病における抗カルシオリピン-β_2グライコプロテインI抗体の機能解析
[目的]Insulin dependent diabetesmellitus(IDDM)モデル動物であるnon-obese diabetic(NOD)マウスにおいて血栓症を引き起こすとされている抗カルジオリピン抗体(aCL)が血清中に出現することを明らかし、さらにaCLの機能を解析し、糖尿病性血管合併症の病態との関連を解明する。[方法と結果]1.雌性NODマウスより経時的に血清を採取し、ELISA法にてaCLを測定した。(1)aCLはNODマウスの血清中に認められ、さらに加齢および高血糖により抗体価の増加が認められた。(2)aCLの対応抗原はカルジオリピンおよびbeta2-glycoprotein I(GPI)一カルジオリピン複合体であった。以上の結果よりNODマウスにおけるaCLは糖尿病性血管合併症の憎悪因子の一つとなる可能性が示唆された。2.雌性NODマウスの脾臓よりリンパ球を分離し、RNAを抽出してリコンビナントファージ抗体システムを用いてリコンビナントaCLを作製した。[今後の計画]1.抗カルジオリピン抗体の凝固活性機能を解析する。2.抗カルジオリピン抗体の抗原エピトープおよび凝固線溶活性部位を解析する。3.作製した抗体をNODマウスに投与し実験的に血管合併症の発症を試みる。以上の項目について今後検討する予定である。[目的]Insulin dependent diabetesmellitus(IDDM)モデル動物であるnon-obese diabetic(NOD)マウスにおいて血栓症を引き起こすとされている抗カルジオリピン抗体(aCL)が血清中に出現することを明らかし、さらにaCLの機能を解析し、糖尿病性血管合併症の病態との関連を解明する。[方法と結果]1.雌性NODマウスより経時的に血清を採取し、ELISA法にてaCLを測定した。(1)aCLはNODマウスの血清中に認められ、さらに加齢および高血糖により抗体価の増加が認められた。(2)aCLの対応抗原はカルジオリピンおよびbeta2-glycoprotein I(GPI)一カルジオリピン複合体であった。以上の結果よりNODマウスにおけるaCLは糖尿病性血管合併症の憎悪因子の一つとなる可能性が示唆された。2.雌性NODマウスの脾臓よりリンパ球を分離し、RNAを抽出してリコンビナントファージ抗体システムを用いてリコンビナントaCLを作製した。[今後の計画]1.抗カルジオリピン抗体の凝固活性機能を解析する。2.抗カルジオリピン抗体の抗原エピトープおよび凝固線溶活性部位を解析する。3.作製した抗体をNODマウスに投与し実験的に血管合併症の発症を試みる。以上の項目について今後検討する予定である。
KAKENHI-PROJECT-07770350
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07770350
尿失禁のある高齢者への個別的な排尿援助方法の開発と睡眠障害の改善に関する研究
本研究は,尿失禁のある高齢者への実用的な排尿援助方法の開発と夜間睡眠の改善を目的として,施設入所の高齢者を対象に,非侵襲性の超音波膀胱容量スキャナと排尿センサーを用いて残尿量と排尿パターンを把握し,ADLや認知機能,QOLとの関連を検討した.また,アクチグラフを用いて夜間睡眠モニタリングを行い,尿失禁の睡眠への影響とともに,排尿動作や認知機能,QOLとの関連を検討した.これらの結果を基に,個別的な排尿援助計画や用手的な残尿量減少法,排尿動作支援を試行し,尿失禁回数や睡眠状態,日中活動量の変化等について介入効果を検証した.残尿量と尿失禁の関連では,分析対象者46名のうち58.7%に尿失禁があり,失禁あり群が有意に残尿量が多く,尿失禁あり群ではADL得点は低いことが示され,失禁の評価とともに身体機能の評価が重要であることが明らかとなった.また,残尿量とQOLとの関連では,残尿量が多いほどQOL得点は低く,残尿による不快感が影響を与えているものと思われた.尿失禁,残尿量の睡眠への影響では,尿失禁あり群や残尿量100ml以上群は100ml以下群に比べ,平均眠エピソードおよび最長の睡眠エピソードが有意に短かった.尿失禁あり群は認知機能を評価するMMSE得点が失禁なし群に比べ有意に低かった.尿失禁や残尿量,ADL,睡眠状況などは相互に関連していることが示唆された.本研究における詳細な失禁の有無と残尿量の把握により,各個人の排尿における残尿量と尿失禁の関連やそれらに影響する要因を検討することができた.これらの結果から,尿失禁のある高齢者の睡眠状態の改善しQOLを高めるための排尿援助として,個々の排尿パターンやADLに応じた排尿誘導や支援とともに,残尿量を減少する排尿リハビリテーションプログラムの開発の必要性が明らかになった.本研究は,尿失禁のある高齢者への実用的な排尿援助方法の開発と夜間睡眠の改善を目的として,施設入所の高齢者を対象に,非侵襲性の超音波膀胱容量スキャナと排尿センサーを用いて残尿量と排尿パターンを把握し,ADLや認知機能,QOLとの関連を検討した.また,アクチグラフを用いて夜間睡眠モニタリングを行い,尿失禁の睡眠への影響とともに,排尿動作や認知機能,QOLとの関連を検討した.これらの結果を基に,個別的な排尿援助計画や用手的な残尿量減少法,排尿動作支援を試行し,尿失禁回数や睡眠状態,日中活動量の変化等について介入効果を検証した.残尿量と尿失禁の関連では,分析対象者46名のうち58.7%に尿失禁があり,失禁あり群が有意に残尿量が多く,尿失禁あり群ではADL得点は低いことが示され,失禁の評価とともに身体機能の評価が重要であることが明らかとなった.また,残尿量とQOLとの関連では,残尿量が多いほどQOL得点は低く,残尿による不快感が影響を与えているものと思われた.尿失禁,残尿量の睡眠への影響では,尿失禁あり群や残尿量100ml以上群は100ml以下群に比べ,平均眠エピソードおよび最長の睡眠エピソードが有意に短かった.尿失禁あり群は認知機能を評価するMMSE得点が失禁なし群に比べ有意に低かった.尿失禁や残尿量,ADL,睡眠状況などは相互に関連していることが示唆された.本研究における詳細な失禁の有無と残尿量の把握により,各個人の排尿における残尿量と尿失禁の関連やそれらに影響する要因を検討することができた.これらの結果から,尿失禁のある高齢者の睡眠状態の改善しQOLを高めるための排尿援助として,個々の排尿パターンやADLに応じた排尿誘導や支援とともに,残尿量を減少する排尿リハビリテーションプログラムの開発の必要性が明らかになった.【目的】予備調査や先行研究において、妥当性が確証されているBladderScan^<TM>BVI3000(以下、膀胱スキャン)との比較から、排尿パターンの測定のために開発された尿量モニタゆりりん(以下、ゆりりん)の妥当性および特徴を検討する。ゆりりんは24時間膀胱内排尿測定ができ、定時と残尿測定機能がある。【方法】健康な20歳代女性9名を対象に、両機器を用いて、排尿前の膀胱内尿量および排尿量を24時間連続3日間、臥位・座位・立位で測定した。【結果】両機器ともに膀胱内尿量と実測排尿量には強い正の相関があり、測定値は測定体位によって異なっていた。実測排尿量と測定値の誤差を体位別にみた場合、ゆりりんでの測定値の誤差は各体位で有意差がなかった。一方、膀胱スキャンでの測定値の誤差は臥位・座位で差はなかったが、座位・立位、臥位・立位で有意差を認め、立位での測定値は実測排尿量より高い値を示した。ゆりりんは、比較的小型で携帯に便利な反面、24時間の測定中には体動によりプローブの位置がずれてしまうことがあった。臥位では膀胱内尿量を適切に測定できることが確認できたが、座位・側臥位では適切に感知できない場合もあった。【考察】
KAKENHI-PROJECT-17390589
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17390589
尿失禁のある高齢者への個別的な排尿援助方法の開発と睡眠障害の改善に関する研究
両機器ともに、膀胱内尿量と実測排尿量には強い正の相関が認められたことから、ゆりりんは膀胱スキャンと同等の妥当性がある機器と考える。ゆりりんは、24時間の膀胱内尿量が把握でき、測定値は体位による差がないため、どの体位においてもほぼ正確に測定できるが、プローブ固定の課題があるため使用する際に注意を要する。【結論】膀胱スキャン及びゆりりんは、膀胱内尿量測定において妥当性のある機器であることが示されたため、今後は施設入所高齢者の個々に応じた排泄援助につなげていく必要がある。【目的】先行研究の結果,信頼性と妥当性が確認できたBladder Scan^<TM>刑BVI3000(以下,膀胱スキャナ)を用いて,本年度は,施設入所中の尿失禁のある認知症高齢者を対象に,尿失禁と残尿量の実情を把握し,排尿パターンやADL,認知機能,QOL,睡眠との関連を分析する.【方法】(1)認知症疾患治療病棟およびグループホームに入院・入所中の高齢者女性54名を対象に,排尿ごとに尿失禁の有無の把握を行い,さらに,膀胱スキャナを用いて,平日の5日間,排尿直後に残尿量測定を行った.また,尺度により,ADL,認知機能(MMSE),QOL評価を行った.(2)老人保健施設の認知症高齢者14名を対象に同様の調査を行い,オムツ使用者には排尿センサー装置で,約3日間の尿失禁モニタリングとアクチウォッチによる睡眠モニタリングを行い,睡眠への影響【結果】(1)分析対象者46名のうち58.7%に尿失禁があり、頻度は様々であった。残尿量測定では,失禁あり群の方が有意に残尿量が多いことが示された.また,尿失禁・残尿量に対し,ADL,認知機能,QOLを独立変数として回帰分析を行った結果,尿失禁の有無にはADLが,残尿量にはQOLが影響していることが明らかとなった.(2)については、現在分析中である.【考察】詳細な失禁の有無と残尿量の把握により,各個人の排尿における残尿量と尿失禁の関連を検討することができた.尿失禁あり群ではADL得点は低いことが示され,尿失禁の評価とともに身体機能の評価が重要であることが明らかとなった.また,残尿量とQOLとの関連では,残尿量が多いほどQOL得点は低く,残尿による不快感が影響を与えているものと思われる.【結論】認知症高齢者においても,尿失禁あり群で有意に残尿量が多いことが明らかになり,ADL,QOLとの関連も明らかになった.今後は尿失禁および睡眠モニタリングによる解析結果と参加観察による排尿動作に関する身体機能を追加測定し,個々の対象者に応じた排尿援助法を検討する予定である.【目的】昨年度の結果を踏まえて、本年度は施設入所高齢者の実態を多様に把握するために、脳梗塞後遺症などで身体機能障害をもつ高齢者の多い介護老人保健施設において、尿失禁と残尿量夜間睡眠の実態を把握し、排尿パターンや認知機能、排尿関連動作、QOLとの関連を分析する【方法】老人保健施設および長期療養型医療施設に入所している60歳以上の女性70名。残尿量の測定には、"携帯型超音波膀胱容量測定機"を用いて対象者の排尿直後に3日間、排尿毎に施行した。その際、尿意のないオムツ着用者は"おむつセンサー"を用いて排尿直後を確認した。身体機能(ADL)の評価にはBIとFIM、認知機能の評価にはMMSEのスケールを用いた。また、睡眠活動は腕時計型のアクティグテフを、QOLの評価には日本語版認知症QOL評価スケールを用いて評価した。【結果】分析対象者65名のうち72%に尿失禁が、33.8%に100ml以上の残尿が認められた。残尿量は尿失禁群やADLが低い群で有意に多く、残尿量とBMI、FIM、BIとはそれぞれ弱い負の相関があった。QOL得点は尿失禁群で低く、残尿量と弱い負の相関があった。
KAKENHI-PROJECT-17390589
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腎がん細胞のND1発現低下が細胞内ROSと転移増殖能へ与える影響の検討
本研究は、腎細胞癌ND1変異と非再発生存率の相関をみた臨床的検討、腎細胞癌手術検体におけるND1遺伝子発現量およびタンパク発現量をみた基礎的検討を基盤として、腎細胞癌の増殖、転移および癌細胞内のROS過剰蓄積におけるND1サブユニットの役割の解明を目的とする。本年度は、異なる腎細胞癌細胞株におけるND1遺伝子変異と遺伝子発現の比較を行うため、RCC4/vector alone, RCC4/VHL, ACHN, Caki2, 786-Oの5種の細胞株を用いて、サンガーシークエンスおよびリアルタイムPCRを行った。シークエンス結果は、リファレンス配列と比較した。リファレンス配列はアクセッションナンバーNC012920とAF346985を使用した。5種類の細胞株のうちRCC4/vector alone, RCC4/VHL, ACHN, Caki2に遺伝子変異を認め、RCC4/vector aloneとRCC4/VHLにT3398CおよびA3796Gの共通の変異を認め、ACHNとCaki2にA3480Gの共通の変異を認めた。Mitomap(https://www.mitomap.org/foswiki/bin/view/Main/WebHome)を用いたデータベース検索で、A3480Gは大腸結腸癌で同様の変異の報告を認めたが、T3398CおよびA3796Gに関しては癌との関連報告は認めなかった。5種の細胞株を比較したリアルタイムPCRの結果では、ACHNの遺伝子発現量が最も多く、Caki2の発現量が最も少ないことが分かった。残りの細胞株に関しては同程度の発現量であった。腎細胞癌におけるND1遺伝子変異および発現増加が浸潤、転移といった癌の悪性挙動に与える影響の足掛かりとなる成果を得られた。本年度にND1蛋白の発現量と細胞内ROSの測定を行う予定であったが、研究室の実験環境の整備に時間がかかり、進捗に遅れが出た。上記5種類の細胞株を用いて、ND1蛋白発現量比較と細胞内ROSの計測を行う。また、ND1高発現の細胞株を同定後、ND1遺伝子のノックダウンを行い、増殖能への影響を観察する。本研究は、腎細胞癌ND1変異と非再発生存率の相関をみた臨床的検討、腎細胞癌手術検体におけるND1遺伝子発現量およびタンパク発現量をみた基礎的検討を基盤として、腎細胞癌の増殖、転移および癌細胞内のROS過剰蓄積におけるND1サブユニットの役割の解明を目的とする。本年度は、異なる腎細胞癌細胞株におけるND1遺伝子変異と遺伝子発現の比較を行うため、RCC4/vector alone, RCC4/VHL, ACHN, Caki2, 786-Oの5種の細胞株を用いて、サンガーシークエンスおよびリアルタイムPCRを行った。シークエンス結果は、リファレンス配列と比較した。リファレンス配列はアクセッションナンバーNC012920とAF346985を使用した。5種類の細胞株のうちRCC4/vector alone, RCC4/VHL, ACHN, Caki2に遺伝子変異を認め、RCC4/vector aloneとRCC4/VHLにT3398CおよびA3796Gの共通の変異を認め、ACHNとCaki2にA3480Gの共通の変異を認めた。Mitomap(https://www.mitomap.org/foswiki/bin/view/Main/WebHome)を用いたデータベース検索で、A3480Gは大腸結腸癌で同様の変異の報告を認めたが、T3398CおよびA3796Gに関しては癌との関連報告は認めなかった。5種の細胞株を比較したリアルタイムPCRの結果では、ACHNの遺伝子発現量が最も多く、Caki2の発現量が最も少ないことが分かった。残りの細胞株に関しては同程度の発現量であった。腎細胞癌におけるND1遺伝子変異および発現増加が浸潤、転移といった癌の悪性挙動に与える影響の足掛かりとなる成果を得られた。本年度にND1蛋白の発現量と細胞内ROSの測定を行う予定であったが、研究室の実験環境の整備に時間がかかり、進捗に遅れが出た。上記5種類の細胞株を用いて、ND1蛋白発現量比較と細胞内ROSの計測を行う。また、ND1高発現の細胞株を同定後、ND1遺伝子のノックダウンを行い、増殖能への影響を観察する。
KAKENHI-PROJECT-18K09180
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積雪寒冷地における近年の暖冬少雪傾向と流域水循環への影響
(1)北海道北部の多雪山地流域では、精度の良い水文・気象観測が十数年間にわたり継続されている。これらのデータを用いて各年の流域水収支を計算し、流域貯留量の年々変動を調べた。また、気温を変数とした積雪・融雪ルーチンとタンクモデルを用いた流出・貯留ルーチンからなる流域水収支モデルを構築し、積雪貯留量の変動が流減水収支に及ぼす効果を検討した。近年、日本各地に暖冬少雪傾向があると言われるが、この地域ではそのような傾向が見られるのか、また、その場合には流減水循環にどのような影響が現れるのかを、このモデルを用いて考察した。モデル計算の結果、積雪貯留量の大きな年々変動は単に冬期降水量ばかりに依存するのではなく、積雪期や融雪期の気温にも大きく依存することが示された。また、積雪貯留量の大小が夏期渇水期の河川流出高に及ぼす影響は小さいことが明らかになった。(2)上と同じ流域において、全融雪期間にわたって流域内における水及び化学物質の収支を明らかにし、その上で地中での流出過程を考察した。融雪水・混ざり水・地下水から成る3成分モデルによってハイドログラフ分離を行なった結果、地下水の流出寄与分は全融雪期間にわたって約40%とほぼ一定に保たれ、このために、融雪期における流域内での化学物質収支は流出過多になることが明らかにされた。(3)隣接する2つの森林小流域において融雪期の流出特性を比較した。2つの流域は面積・形状・地質・植生・土壌特性がよく類似しているにもかかわらず、土壌層に顕著な違いがあるために流出特性にもその影響が明瞭に現れた。また、土壌層が特に厚い内部小流域が流出の非ソースエリアとなるため、見かけ上は同じ流域面積でも実質的には異なることが明らかにされた。(1)北海道北部の多雪山地流域では、精度の良い水文・気象観測が十数年間にわたり継続されている。これらのデータを用いて各年の流域水収支を計算し、流域貯留量の年々変動を調べた。また、気温を変数とした積雪・融雪ルーチンとタンクモデルを用いた流出・貯留ルーチンからなる流域水収支モデルを構築し、積雪貯留量の変動が流減水収支に及ぼす効果を検討した。近年、日本各地に暖冬少雪傾向があると言われるが、この地域ではそのような傾向が見られるのか、また、その場合には流減水循環にどのような影響が現れるのかを、このモデルを用いて考察した。モデル計算の結果、積雪貯留量の大きな年々変動は単に冬期降水量ばかりに依存するのではなく、積雪期や融雪期の気温にも大きく依存することが示された。また、積雪貯留量の大小が夏期渇水期の河川流出高に及ぼす影響は小さいことが明らかになった。(2)上と同じ流域において、全融雪期間にわたって流域内における水及び化学物質の収支を明らかにし、その上で地中での流出過程を考察した。融雪水・混ざり水・地下水から成る3成分モデルによってハイドログラフ分離を行なった結果、地下水の流出寄与分は全融雪期間にわたって約40%とほぼ一定に保たれ、このために、融雪期における流域内での化学物質収支は流出過多になることが明らかにされた。(3)隣接する2つの森林小流域において融雪期の流出特性を比較した。2つの流域は面積・形状・地質・植生・土壌特性がよく類似しているにもかかわらず、土壌層に顕著な違いがあるために流出特性にもその影響が明瞭に現れた。また、土壌層が特に厚い内部小流域が流出の非ソースエリアとなるため、見かけ上は同じ流域面積でも実質的には異なることが明らかにされた。北海道北部の多雪小流域では,10数年間に渡り継続的に水文・気象観測が行われている.本研究では,これらの観測結果から水収支の動向を明らかにし,長期的な流域貯留量の変動を推定した.また,気温を変数とした水収支モデルを構築し,積雪貯留量が流域水収支に及ぼす影響を明らかにすることを試みた.近年,日本各地に暖冬小雪傾向があると言われるが,この地域ではそのような傾向が見られるのか,また,そういった場合に流域水循環にどのような影響が見られるのかを,このモデルを用いて考察した.得られた水文・気象観測データから10数年に渡る降水量,流出量,蒸発量の各水収支成分の変動と,地下貯留,積雪貯留による流域貯留量の変化の傾向を明らかにした.流域貯留量は,降水が少なく蒸発散が盛んな7月に数10mmと最低となり,降水量が増加する9月頃から増加を始め100mmを越える.貯留量はそれが減少しないまま積雪期を迎え,融雪期直前までの間に多い時で1000mm近いピーク値を示し,融雪期には急激に減少する.このような貯留量変化パターンは,時期的には多少の違いがあるものの,各年に等しくみられた.流域内最大積雪貯留量は,1988年から1999年までの間,約400800mmと2倍もの変動が見られた.以上の結果に基づき,気温を変数とした積雪・融雪ルーチン,タンクモデルを用いた流出・貯留ルーチンからなる水収支モデルを構築した.このモデルでの計算結果から,積雪貯留量の大きな年々変化は冬期降水量ばかりによるのではなく,降水の雨雪判別と融雪開始のタイミングを決定する積雪期・融雪期の気温にも大きく依存していることが示された.また,積雪貯留量の大小が夏期渇水期の流出高に及ぼす影響を推定することができた.
KAKENHI-PROJECT-11680522
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11680522
積雪寒冷地における近年の暖冬少雪傾向と流域水循環への影響
(1)北海道北部の多雪山地流域では、精度の良い水文・気象観測が十数年間にわたり継続されている。これらのデータを用いて各年の流域水収支を計算し、流域貯留量の年々変動を調べた。また、気温を変数とした積雪・融雪ルーチンとタンクモデルを用いた流出・貯留ルーチンからなる流域水収支モデルを構築し、積雪貯留量の変動が流域水収支に及ぼす効果を検討した。近年、日本各地に暖冬少雪傾向があると言われるが、この地域ではそのような傾向が見られるのか、また、その場合には流域水循環にどのような影響が現れるのかを、このモデルを用いて考察した。モデル計算の結果、積雪貯留量の大きな年々変動は単に冬期降水量ばかりに依存するのではなく、積雪期や融雪期の気温にも大きく依存することが示された。また、積雪貯留量の大小が夏期渇水期の河川流出高に及ぼす影響は小さいことが明らかになった。(2)寒冷積雪地域では冬期間中の酸性降下物のほとんどが積雪内に蓄積され、融雪初期にこれらが濃縮されて融雪水とともに流出する。このため、河川水・湖沼水のpHが一時的に急低下し、陸水生態系に深刻な影響を与えている。しかし、融雪水が地表に到達してから河川に流出するまでの過程に関する研究は、依然として不十分なままである。そこで(1)と同じ流域において、全融雪期間にわたって流域内における水及び化学物質の収支を明らかにし、その上で地中での流出過程を考察した。融雪水・混ざり水・地下水から成る3成分モデルによってハイドログラフ分離を行なった結果、地下水の流出寄与分は全融雪期間にわたって約40%とほぼ一定に保たれ、このために、融雪期における流域内での化学物質収支は流出過多になることが明らかにされた。(1)北海道北部の多雪山地流域では、精度の良い水文・気象観測が十数年間にわたり継続されている。これらのデータを用いて各年の流域水収支を計算し、流域貯留量の年々変動を調べた。また、気温を変数とした積雪・融雪ルーチンとタンクモデルを用いた流出・貯留ルーチンからなる流域水収支モデルを構築し、積雪貯留量の変動が流域水収支に及ぼす効果を検討した。近年、日本各地に暖冬少雪傾向があると言われるが、この地域ではそのような傾向が見られるのか、また、その場合には流域水循環にどのような影響が現れるのかを、このモデルを用いて考察した。(2)寒冷積雪地域では冬期間中の酸性降下物のほとんどが積雪内に蓄積され、融雪初期にこれらが濃縮されて融雪水とともに流出する。このため、河川水・湖沼水のpHが一時的に急低下し、陸水生態系に深刻な影響を与えている。しかし、融雪水が地表に到達してから河川に流出するまでの過程に関する研究は、依然として不十分なままである。そこで(1)と同じ流域において、全融雪期間にわたって流域内における水及び化学物質の収支を明らかにし、その上で地中での流出過程を考察した。(3)隣接する2つの森林小流域において融雪期の流出特性を比較した。2つの流域は面積・形状・地質・植生・土壌特性がよく類似しているにもかかわらず、土壌層に顕著な違いがあるために流出特性にもその影響が明瞭に現れた。また、土壌層が特に厚い内部小流域が流出の非ソースエリアとなるため、見かけ上は同じ流域面積でも実質的には異なることが明らかにされた。
KAKENHI-PROJECT-11680522
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電気化学的手法による鉄系超伝導体の超伝導化
近年発見された鉄系超伝導体の中で、鉄カルコゲナイド超伝導体(11系)は、最も単純な結晶構造を有する。11系は線材応用上重要となる上部臨界磁場が高く、構成元素の数も少ないため、高磁場下での超伝導線材応用が期待されている。これまでに電気化学合成のみの試料では、電気抵抗測定においてゼロ抵抗を示す試料は得られていなかった。前年度は、基板を溶液に浸した際に、溶液が基板表面に及ぼす影響に着目した。化学量論通りの試料を得るには、浸漬させてからのロスタイムをなくすことが重要であることを見出し、合成直後の試料において、初めてゼロ抵抗を観測することに成功した。本年度は、線材応用を目指す上で、銅酸化物系超伝導線材の下地基板として使用されているRABiTSテープを用いて、良質なFeSe試料が得られる条件の探索を行った。反応時間を5分間に固定し、溶液温度と印加電圧値を様々に変えた際に得られた結果を相図としてまとめた。溶液温度が70、80°Cの領域において、結晶性の高いFeSeが得られた。これは、溶液温度を上げることで、電気化学の反応速度が増大し、結晶成長が促進され、より結晶性の良い試料が得られていることを示している。また、EDX測定の結果から、試料の組成比は印加電圧値によって系統的に制御でき、結晶性の良い試料が得られた70°Cにおいて、約-1.1 VにおいてFe:Seの比が1:1に近づくことが明らかとなった。さらに、これまでのITO基板と比べ、RABiTSテープを用いた方が、基板自身の標準酸化還元電位の違いから、副反応が起きにくいより低い電圧値で目的相のFeSeが合成できることを見出した。本研究から、電気化学法を用いることで、熱処理を施さずにFeSe超伝導体テープ線材が簡便で安価に作製できる可能性を示している。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。近年発見された鉄系高温超伝導体の中で、鉄カルコゲナイド超伝導体(11系)は、最も単純な結晶構造を有する。11系は構成元素の数が少なく、毒性の高いAsなどを含まないことから線材など応用面でも多くの注目が集まっている。FeSeは、高圧下で超伝導転移温度(Tc)が37 Kまで急激に上昇する。最近では、Kなどのアルカリ金属や有機物を層間に挿入することでもTcが3040 K付近まで上昇することが報告されている。本年度は、FeSeは2元素のみで構成されていることに着目し、電気化学的にFeSeを堆積させる研究を行った。FeSeを電気化学的に堆積させるうえで、溶液温度を変えた場合の結晶成長の条件探索を行った。その結果、溶液温度が70°Cの時に最も結晶性の良いFeSe単相が得られ、磁化測定から約8Kで超伝導転移を確認した。この結果は論文としてまとめ、Journal of the Physical Society of Japanへ投稿した。また、トルコでの国際会議SATF2016において、これらをまとめた成果で招待講演を行った。これまでは、試料と基板との密着性の低さや結晶粒の結合性の低さから、電気抵抗測定においてゼロ抵抗を示す試料は得られていなかった。今回得られた合成条件を基に、FeSeを堆積させる基板として(001)配向したRABiTSテープを用いて条件の探索を行ったところ、結晶粒間の結合性のよい試料が堆積される条件を見出し、約8Kで超伝導転移後、約3Kでゼロ抵抗を示す試料を合成することに成功した。本成果については論文投稿予定である。FeTeS試料から電気化学的に過剰鉄を取り除き、超伝導を発現させる研究を行ってきている。また、電気化学的手法によるFeSe超伝導体の合成において、溶液温度を変えた場合の結晶成長の条件探索を行った。その結果、溶液温度が70°Cの時に最も結晶性の良いFeSe単相が得られ、磁化測定から約8Kで超伝導転移を確認した(Journal of the Physical Society of Japanへ投稿中)。また、今回得られた合成条件を基に、FeSeを堆積させる基板として(001)配向したRABiTSテープを用いて条件の探索を行ったところ、結晶粒間の結合性のよい試料が堆積される条件を見出し、約8Kで超伝導転移後、約3Kでゼロ抵抗を示す試料を合成することに成功した(論文投稿予定)。電気化学的に堆積させたFeSe超伝導体において、合成後の熱処理なしでゼロ抵抗を示す試料を合成することに成功した初めての報告である。近年発見された鉄系超伝導体の中で、鉄カルコゲナイド超伝導体(11系)は、最も単純な結晶構造を有する。11系は線材応用上重要となる上部臨界磁場が高く、構成元素の数も少ないため、高磁場下での超伝導線材応用が期待されている。これまでに電気化学合成のみの試料では、電気抵抗測定においてゼロ抵抗を示す試料は得られていなかった。本年度は、基板を溶液に浸してから電圧を印加するまでの浸漬時間が基板と試料に与える影響に着目し、ゼロ抵抗を示す試料の合成を試みた。電圧を印加せずに基板のみを溶液に浸して、基板表面のEDXによる組成分析を行ったところ、電圧を印加する前の段階で、基板表面にSe膜が堆積されることを見出した。
KAKENHI-PROJECT-16J05432
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J05432
電気化学的手法による鉄系超伝導体の超伝導化
また、浸漬時間を様々に変えて合成した試料の組成分析を行ったところ、浸漬時間が伸びるほど試料の組成比がFe:Se=1:1からずれていくことが明らかとなり、化学量論通りの試料を得るには、浸漬時間をなくすことが重要であることを見出した。その結果、浸漬時間が0秒の試料において、約8.4 Kで超伝導転移が見られ、約2.5 Kでゼロ抵抗を観測することに初めて成功した。また、浸漬時間と超伝導特性の間には相関があり、浸漬時間が伸びるほど、超伝導は抑制される傾向が得られた。この手法を応用すれば、“リールToリール"で連続的にFeSe超伝導テープ線材作製可能となるだけでなく、Kなどのアルカリ金属を電気化学的にインターカレートすることでより超伝導特性の高いテープ線材を作製することも可能となる。このように、電気化学的手法のみで、鉄カルコゲナイド超伝導体の合成と高性能化が行え、簡便で低コストな超伝導テープ線材の作製が期待できる。当初の予定では、最終年度に行う予定であった電気化学合成によるFeSe超伝導体の合成を予定よりも前倒しで行うこととなった。29年度は、電気化学的手法によるFeSe超伝導体の合成において、溶液温度を変えた場合の結晶成長の条件探索を行った。その結果、溶液温度が70°Cの時に最も結晶性の良いFeSe単相が得られた。また、基板を溶液に浸してから電圧を印加するまでの浸漬時間が伸びるほど試料の組成比が化学量論比からずれ、超伝導が阻害されることを見出した。また、浸漬時間を抑制することで、約8.4 Kで超伝導転移が見られ、約2.5 Kでゼロ抵抗を観測することに初めて成功した。アニールなどの熱処理を施していない電気化学合成のみの試料においてゼロ抵抗を観測した初めての例である。一連の研究結果をまとめたものは論文として、Journal of the Physical Society of JapanとSolid State Communicationsに掲載された。近年発見された鉄系超伝導体の中で、鉄カルコゲナイド超伝導体(11系)は、最も単純な結晶構造を有する。11系は線材応用上重要となる上部臨界磁場が高く、構成元素の数も少ないため、高磁場下での超伝導線材応用が期待されている。これまでに電気化学合成のみの試料では、電気抵抗測定においてゼロ抵抗を示す試料は得られていなかった。前年度は、基板を溶液に浸した際に、溶液が基板表面に及ぼす影響に着目した。化学量論通りの試料を得るには、浸漬させてからのロスタイムをなくすことが重要であることを見出し、合成直後の試料において、初めてゼロ抵抗を観測することに成功した。本年度は、線材応用を目指す上で、銅酸化物系超伝導線材の下地基板として使用されているRABiTSテープを用いて、良質なFeSe試料が得られる条件の探索を行った。反応時間を5分間に固定し、溶液温度と印加電圧値を様々に変えた際に得られた結果を相図としてまとめた。溶液温度が70、80°Cの領域において、結晶性の高いFeSeが得られた。これは、溶液温度を上げることで、電気化学の反応速度が増大し、結晶成長が促進され、より結晶性の良い試料が得られていることを示している。また、EDX測定の結果から、試料の組成比は印加電圧値によって系統的に制御でき、結晶性の良い試料が得られた70°Cにおいて、約-1.1 VにおいてFe:Seの比が1:1に近づくことが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-16J05432
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J05432
多糖類・脂質マイクロ分散系の作出と大腸送達システムの構築
薬物送達システム(DDS)においては、目的成分を目的部位に的確に送達するための材料設計が必要である。経口摂取においては胃で分解されずに、小腸や大腸に送達可能な壁材を利用することになる。小腸送達システムについては多くの実用化例があるが、大腸送達システムは確立されていない。本研究は難消化性糖類を壁材とする新規大腸送達システムの構築、難消化性多糖類の微粉砕化技術の開発、またビーズミル等による微粒化や界面工学的処理により、親水性部と疎水性部を有する脂質のマイクロ分散系の作出と、包含する機能性成分が胃や小腸で分解吸収を受けずに大腸まで送達されるシステムの構築を目指した。キノア由来のスターチを用いることで、スターチ粒子を含有する水中に安定な油滴分散系を得ることができた。酪酸を経口投与して直接大腸に送り届ける手法として、酪酸・キトサン混合液で調製した固形物粒子を、常温で固化して油をカプセル化する方法が有力であることを示した。健康を促進する成分として注目を浴びている食物繊維の加工研究として、微細化を試み、微高pHの水溶液でニンジンを煮沸処理し、粉砕することでサブミクロンの大きさの粒子を作製できることが示された。薬物送達システム(DDS)においては、目的成分を目的部位に的確に送達するための材料設計が必要である。経口摂取においては胃で分解されずに、小腸や大腸に送達可能な壁材を利用することになる。小腸送達システムについては多くの実用化例があるが、大腸送達システムは確立されていない。本研究は難消化性糖類を壁材とする新規大腸送達システムの構築、難消化性多糖類の微粉砕化技術の開発、またビーズミル等による微粒化や界面工学的処理により、親水性部と疎水性部を有する脂質のマイクロ分散系の作出と、包含する機能性成分が胃や小腸で分解吸収を受けずに大腸まで送達されるシステムの構築を目指した。キノア由来のスターチを用いることで、スターチ粒子を含有する水中に安定な油滴分散系を得ることができた。酪酸を経口投与して直接大腸に送り届ける手法として、酪酸・キトサン混合液で調製した固形物粒子を、常温で固化して油をカプセル化する方法が有力であることを示した。健康を促進する成分として注目を浴びている食物繊維の加工研究として、微細化を試み、微高pHの水溶液でニンジンを煮沸処理し、粉砕することでサブミクロンの大きさの粒子を作製できることが示された。経口摂取においては胃で分解されずに、小腸や大腸に送達可能な壁材を利用することになる。小腸送達システムについては多くの実用化例があるが、大腸送達システムは確立されていない。本提案は難消化性糖類を壁材とする新規大腸送達システムの構築が必要とされる。ほとんどの栄養素は小腸で吸収されるが、大腸送達の例として、酪酸を検討した。酪酸は大腸の蠕動運動の促進に貢献する効果を持っている。高濃度で酪酸の大腸送達をめざして5%の酪酸水溶液を調製した。小腸で酪酸吸収を防ぐため難消化性多糖類のキトサンを混合して、酪酸・キトサン水溶液を作製し、水溶液とトリパルミチンを高温乳化してW/Oエマルションを作製し、固体化後、細かく砕きサンプルとした。油相としてトリパルミチンの他にミリスチン酸も用いた。酪酸水溶液にキトサンを5%の割合で混合し、作製した固形物を小片化して、高温融解したトリパルミチンやミリスチン酸に浸し、すぐに取り出してサンプルとした。これらの調製サンプルを用いて胃モデル液や小腸モデル液を用いた消化実験を行った。酪酸量は不純物を取り除いた後にHPLCを用いて分析した。W/Oエマルションのサンプルが小腸消化終了時に溶出した酪酸量が多いが、胃消化時に3割ほど溶出してしまった。油相に分解されにくいミリスチン酸を使用した場合は、消化後も酪酸は溶出しなかった。キトサン混合物サンプルは胃消化後に10%ほど溶出し、小腸消化後の残存酪酸量は40%程度であった。酪酸を経口投与して胃および小腸を通り抜けて直接大腸に送り届ける手法として、酪酸水溶液にキトサンを5%の割合で混合して作成した固形物粒子を、常温で固化して油をカプセル化する方法が有力であることが示された。さらに効率化した大腸送達システムの検討を続けている。経口摂取においては胃で分解されずに、小腸や大腸に送達可能な壁材を利用することになる。小腸送達システムについては多くの実用化例があるが、大腸送達システムは確立されていない。本提案は難消化性糖類を壁材とする新規大腸送達システムの構築が必要とされる。昨年度は大腸送達の例として、酪酸を検討し、酪酸にキトサンを混合して作成した固形物粒子を、常温で固化して油をカプセル化する方法が有力であることを示した。今年度は、油をスターチ粒子で安定化する手法について検討をおこなった。スターチは親水性を示すが、表面改質により疎水性を付与することができる。これは、次の段階として難消化性スターチの利用を考えた予備検討である。すなわち、難消化性スターチに由来する物質で内包することで、大腸送達を可能とするものである。
KAKENHI-PROJECT-21380075
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多糖類・脂質マイクロ分散系の作出と大腸送達システムの構築
表面改質としては、スターチ粒子へのアルケニル官能基の付与と、得られた粒子を用いた乳化特性を検討した。スターチ粒子を、オクテニルこはく酸無水物のエタノール溶液に浸漬し、その表面特性の変化を解析した。得られた改質デンプン粒子を乳化剤として、予備乳化(ポリトロン乳化機、5,000rpm,5分)および高圧乳化(マイクロフルイダイザー、20-160MPa)を用いて、油/水分散系の作出を試みた。コーンスターチを用いた場合、FT-IRスペクトル分析により処理時間が増やしても-OH基から-C=0基への変換が十分起こらなかった。これはpHや温度条件のさらなる検討が必要である。スターチの種類により異なり、キノア由来のスターチを用いた場合、30wt%のスターチ粒子を含有する水中に、ドデカンの安定な乳化分散系を得ることができ、より高い圧力条件下でより小さい分散系を作出することができた。今後はさらに効率的なスターチ改質法の検討と体内動態特性の解明を図る。経口摂取においては胃で分解されずに、小腸や大腸に送達可能な壁材を利用することになる。小腸送達システムについては多くの実用化例があるが、大腸送達システムは確立されていない。これまで大腸送達の例として、酪酸を検討し、酪酸にキトサンを混合して作成した固形物粒子を、常温で固化して油をカプセル化する方法が有力であること、また油をスターチ粒子で安定化する手法について検討を進めてきた。今年度は、酪酸を高含量で溶解した水相を油相(大豆油やパームステアリン)に分散系の作出をまず検討した。数100ナノスケールの粒子径をもつ安定な分散系の作出が可能であることを明らかにした。あわせて、体内摂取後も安定性の高い食物繊維の微細化について検討した。食物繊維は健康を促進する成分として注目を浴びており、加工研究も行なわれているが、詳細な微細化研究はみられない。そこで繊維質を含む野菜や未利用資源の湿式粉砕を行い、前処理条件、粉砕条件と微細化物特性(粒度分布、粘度、粒子の形状)の関係を明らかにした。試料としてニンジン、ゴボウ、等を用いて、煮沸処理が微細化特性に与える影響と異なるpH条件での煮沸処理が微細化特性に与える影響についてマスコロイダーとナノマイザーを用いて粉砕を行った。煮沸処理の影響は特にニンジンでみられた。ナノマイザー処理後の粒子径10μm以下の割合が煮沸したニンジンの方が40%多くなった。その他の試料では、顕著な違いはみとめられなかった。異なるpH条件での煮沸処理が与える影響では、特にニンジンで見られた。pH9、pH10の水溶液中で煮沸処理したニンジンはナノマイザー処理後の粒子径1μm以下の割合が全量になった。以上食物繊維含量だけでなく、粒子の形状も微細化特性に影響している可能性を示した。また微高pHの水溶液でニンジンを煮沸処理し、粉砕することでサブミクロンの大きさの粒子を作製できることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-21380075
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細胞膜機能と骨代謝動態からみたメタボリックシンドロームの病態生理
本研究では高血圧での慢性腎臓病(CKD)と細胞膜機能異常との関連を検討した。高血圧患者の赤血球膜fluidityは正常血圧群に比し低下していた。また、estimated-glomerular filtration rate(eGFR)が低いほど膜fluidityは減少し、eGFRと膜fluidityの低下は酸化ストレスの増加や血漿nitric oxide代謝産物の減少と有意に相関した。一方、高齢女性高血圧患者の骨塩含量は正常血圧群に比し減少していた、以上からCKDによる膜機能調節機構や骨代謝動態が高血圧やメタボリックシンドロームの成因に一部関与すると考えられた。本研究においては、細胞膜の物理的性質の検討として、電子スピン共鳴ならびにスピンラベル法を用い高血圧患者の細胞膜fluidityを測定し、その調節を各種血管内分泌因子との関連から考察した。高血圧患者の赤血球膜fluidityは正常血圧者に比し有意に低下していた。既に我々は酸化ストレスの指標のひとつである血中8-iso-prostaglandin F2alpha値は高血圧群で正常血圧群に比し有意に高値であり、赤血球膜fluidityの悪化やNO代謝産物の低下と有意に相関することを報告した。この成績は酸化ストレスが高血圧の膜機能調節に重要な役割を果たす可能性を示唆するものと考えられる。一方、adipocytokineのひとつであるadiponectin (ADN)の血中濃度は高血圧群で有意に低下していた。また血中AND濃度の減少しているほど、赤血球膜fluidityは悪化していた。さらに血中ADN濃度は血中8-iso-prostaglandin F2alpha値と有意に逆相関した。このことはADNが酸化ストレスに対して拮抗的に作用し膜fluidityを改善する作用を有するが、高血圧ではその効果が減弱していることを示すものと考えられる。以上から肥満に関連した血管内分泌因子が高血圧の細胞膜機能に重要な影響を及ぼし、それらの調和破綻がメタボリックシンドロームの心血管病の成因に一部関与する可能性が示唆された。本研究においては高血圧によるchronic kidney disease (CKD)と微小循環障害との関連を、細胞膜機能異常や酸化ストレス、内皮機能不全を中心に検討した。高血圧患者の赤血球膜fluidity (microviscosityのreciprocal value)を電子スピン共鳴法にて測定すると高血圧患者の赤血球膜fluidityは正常血圧群に比し低下(膜microviscosityが悪化)し、estimated-glomerular filtration rate(eGFR)が低いほど膜fluidityの減少度は大であった。General riskfactorを補正後も、eGFRは膜fluidityの独立した予測因子であると考えられた。また、eGFRと膜fluidityの低下は酸化ストレスの増加や血漿nitric oxide (NO)代謝産物の減少と有意に相関した。これらの成績は、腎機能低下が酸化ストレスや内皮機能不全を介して赤血球膜のrheologic behavior異常や微小循環障害を惹起する可能性を示唆する。以上から、高血圧によるCKDは膜機能調節に重要な役割を果たし、腎硬化症に関連する血管内分泌因子の調和異常が心血管病変の成因に一部関与すると考えられる。本研究では高血圧での慢性腎臓病(CKD)と細胞膜機能異常との関連を検討した。高血圧患者の赤血球膜fluidityは正常血圧群に比し低下していた。また、estimated-glomerular filtration rate(eGFR)が低いほど膜fluidityは減少し、eGFRと膜fluidityの低下は酸化ストレスの増加や血漿nitric oxide代謝産物の減少と有意に相関した。一方、高齢女性高血圧患者の骨塩含量は正常血圧群に比し減少していた、以上からCKDによる膜機能調節機構や骨代謝動態が高血圧やメタボリックシンドロームの成因に一部関与すると考えられた。メタボリックシンドロームの基盤には内臓脂肪の蓄積があり、高血圧や心血管病変の成因となるが、その機序は明らかではない。本研究では高血圧を主体としたメタボリックシンドローム患者の細胞膜流動性(fluidity)を電子スピン共鳴法にて測定し、その調節機序を各種血管内分泌因子との関連から考察した。高血圧患者の赤血球膜fluidityは正常血圧者に比し有意に低下(膜microviscosityは悪化)していた。この成績は高血圧においてrheologic behaviorの異常からmicrocirculationの障害が惹起意される可能性を示唆するものと考えられる。さらに酸化ストレスの指標のひとつである血中8-iso-prostaglandin F2alpha (8-isoPGF2alpha)値は高血圧群で正常血圧群に比し有意に高値であり、赤血球膜fluidityの悪化やnitric oxide (NO)代謝産物濃度の低下と有意に相関した。以上から酸化ストレスと内皮機能不全が高血圧の膜機能調節に重要な役割を果たし、メタボリックシンドロームに関連した血管内分泌因子の異常が心血管病変の成因に一部関与するものと考えられた。電子スピン共鳴法によるメタボリックシンドローム患者の赤血球膜fluidityの測定は順調に行われている。血管内皮機能のバイオマーカーである血漿nitric oxide (NO)代謝産物濃度や、酸化ストレスのマーカーである血漿8-iso-prostaglandin F2alpha濃度、ならびにadipocytokineのひとつである血漿adiponectin濃度についても安定した定量が可能である。そしてこれら因子の関連性、ならびにそれらの膜機能に及ぼす影響と作用メカニズムについて解析をすすめている。一方、メタボリックシンドローム患者の骨塩含量(bone mineral density)の測定についても、dual energy X-ray absorptiometric methodを用いて順調に測定を続けている。
KAKENHI-PROJECT-23590901
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細胞膜機能と骨代謝動態からみたメタボリックシンドロームの病態生理
電子スピン共鳴法によるメタボリックシンドローム患者の細胞膜流動性(fluidity)の測定は順調に行われている。また酸化ストレスのマーカーとしての血中8-iso-prostaglandin F2alphaや、内皮機能のマーカーである血中nitric oxide (NO)代謝産物濃度についても安定した定量が可能である。そしてこれら因子の関連性、ならびにそれらの膜機能に対する影響と作用メカニズムについて解析中である。一方、メタボリックシンドローム患者の骨塩含量の測定についてもdual energy X-ray absorptiometric methodを用いて順調に測定を続けている。本研究では、メタボリックシンドロームの成因である肥満、糖尿病ならびに高血圧の関連を細胞膜レベルの変化からみるため、メタボリックシンドローム患者を対象として、その細胞膜機能を電子スピン共鳴法にて測定し、インスリンやレプチン、アディポネクチンなどの血管内分泌因子の膜機能に及ぼす影響をCa代謝機構との関連から検討する。さらに動脈硬化病変や冠動脈疾患、慢性腎臓病(CKD)の発症に細胞膜機能異常やこれら内分泌因子がどのように関与するか考察する。また、メタボリックシンドロームにおいて骨代謝動態ならびに全身のCa-balanceと血管病変との関連(骨血管相関)を詳細に解析し、メタボリックシンドロームの統合的な解明のみならず、その治療や合併症の予防に役立てる。本研究では、メタボリックシンドロームの成因である肥満、糖尿病ならびに高血圧の関連を細胞膜レベルの変化からみるため、引き続きメタボリックシンドローム患者を対象として、その細胞膜機能を電子スピン共鳴法にて測定し、インスリンやレプチン、アディポネクチンなどの血管内分泌因子の膜機能に及ぼす影響をCa代謝機構との関連から検討する。さらに動脈硬化病変や冠動脈疾患、慢性腎臓病(CKD)の発症に細胞膜機能異常やこれら内分泌因子がどのように関与するか考察する。さらにメタボリックシンドローム患者の骨塩含量を測定することによって、全身のCa代謝異常がその病態にいかに関与するか考察を加える。メタボリックシンドロームは動脈硬化、脳血管障害、虚血性心疾患、慢性腎臓病(CKD)の危険因子として注目されているが、その血管病変の特徴は明らかではない。そこでメタボリックシンドロームの動脈硬化、血管病変の臨床像を明らかにするため、メタボリックシンドローム患者の脳血管障害の特徴をMRAにて、また冠動脈病変の特徴をmulti-detector CT (MDCT)にて評価する。
KAKENHI-PROJECT-23590901
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花成ホルモン・フロリゲンを起点とする花形成の「鍵と鍵穴」相互作用の解明
フロリゲン(正体はFTタンパク質)は植物の花芽分化を開始させる因子である。すなわち植物の生殖を開始する最初の決断を下すマスタースイッチであり、花の中で行われる生殖過程のすべてはフロリゲンから始まると言える。また、フロリゲンによる花芽形成のタイミングがずれると、適切な相手からの花粉が届かなくなるため生殖の障壁となり、同時に、従来出会わなかった別の種の花粉が受粉する機会が増えて「新種誕生」が促進される。しかし、こうした過程を制御するフロリゲンの分子機能の全体像や、特にフロリゲンが生殖過程の「鍵と鍵穴」として振る舞うプロセスの分子実態は未解明である。本研究の目的は、フロリゲンを起点として生殖過程が開始される過程における「鍵と鍵穴」の分子機構を解明することである。この目的のために、本研究では、フロリゲンによる花芽分化の「鍵と鍵穴」のイメージング、フロリゲンによるエピゲノム・リプログラミングの実態解明、及び新種誕生を再現した染色体間相互作用の解析を実施する。本年度はフロリゲンが茎頂メリステムの細胞間を移動する過程をライブイメージングで捉える実験系を構築し、その移動速度をはじめて算出することに成功した。また、これまでにフロリゲンの標的遺伝子は茎頂メリステムの最外層から発現を開始するが、このメカニズムがフロリゲン受容体が茎頂メリステムの最外層で発現しているためであることを明らかにした。茎頂メリステムに到達後のフロリゲンがどのように花芽分化を開始させるのか、分子レベルの解析も実施している。本年度はフロリゲン到達前後の茎頂メリステムのエピゲノム解析を生殖細胞との関連に焦点を当てて詳細に行った。その結果、フロリゲンによる成長層転換と生殖細胞におけるエピゲノム・リプログラミングとを接続する変化を見出すことができた。本年度はフロリゲンの受容体が茎頂メリステムにどのように分布しているのかを明らかにすることができた。この分布パターンが、フロリゲンによる最初の遺伝子発現の活性化を担っていることも明らかにした。またフロリゲンの細胞間輸送を直接可視化する実験系も開発し、これによる組織間の輸送の違いをライブイメージングによって捉えることに成功した。フロリゲンによるエピゲノム・リプログラミングでは、これまで生殖過程でもっとも顕著にリプログラミングが観察される生殖細胞分化過程との比較検討を行った。その結果、生殖細胞におけるエピゲノム・リプログラミングをフロリゲンによるリプログラミングが部分的に先行して遂行していることを明らかにした。これまで生殖細胞におけるエピゲノム・リプログラミングは生殖細胞の分化前後を起点として開始されてきたが、この起源がフロリゲンによる花芽分化のタイミングにまで遡れる可能性をはじめて提示した結果と言える。フロリゲンのイメージング:これまでにフロリゲンが茎頂メリステムに到達して標的遺伝子を活性化させる最初期の振る舞いを明らかにしてきた。フロリゲンはその後茎頂メリステム内部で濃度勾配を形成し、この勾配が正常な花序構造の形成に重要であると考えられる。しかしこの濃度勾配を形成するメカニズムは未知である。これまでの発生学的な知見からいくつかの植物ホルモンがこの過程を制御する可能性が考えられる。そこで本年度は植物ホルモンのイメージングを可能にするレポーター系統を確立し、茎頂メリステムにおいて植物ホルモンの情報伝達がフロリゲンの局在とどのように関連するのかを検討する。フロリゲンのエピジェノミクス:フロリゲンが茎頂メリステムに到達すると、DNAメチル化のゲノムワイドなリプログラミングを引き起こすことが明らかとなった。またこの変化が生殖細胞におけるリプログラミングを部分的に先取りしていることを明らかにした。これまでにゲノムDNAのエピジェネティックな状態を表す修飾の中でDNAメチル化を明らかにしたので、これ以外のエピジェネティックマークの解析を行う。フロリゲン(正体はFTタンパク質)は植物の花芽分化を開始させる因子である。すなわち植物の生殖を開始する最初の決断を下すマスタースイッチであり、花の中で行われる生殖過程のすべてはフロリゲンから始まると言える。また、フロリゲンによる花芽形成のタイミングがずれると、適切な相手からの花粉が届かなくなるため生殖の障壁となり、同時に、従来出会わなかった別の種の花粉が受粉する機会が増えて「新種誕生」が促進される。しかし、こうした過程を制御するフロリゲンの分子機能の全体像や、特にフロリゲンが生殖過程の「鍵と鍵穴」として振る舞うプロセスの分子実態は未解明である。本研究の目的は、フロリゲンを起点として生殖過程が開始される過程における「鍵と鍵穴」の分子機構を解明することである。この目的のために、本研究では、フロリゲンによる花芽分化の「鍵と鍵穴」のイメージング、フロリゲンによるエピゲノム・リプログラミングの実態解明、及び新種誕生を再現した人工合成異質倍数体におけるフロリゲン機能の解析を実施する。本年度は、フロリゲンによる花芽分化の「鍵と鍵穴」のイメージングでは、フロリゲンと標的遺伝子の二重形質転換イネの整備と、フロリゲンの下流で花芽分化を遂行する因子のレポーター系統を作成した。フロリゲンによるエピゲノム・リプログラミングでは、茎頂メリステムのエピゲノム解析を実施し、情報解析を実施した。また、少数(3-5個)のメリステムでエピゲノム解析を実施する実験系を開発した。人工合成異質倍数体におけるフロリゲン機能の解析では、異質倍数体植物のコムギからほぼ全てのFTホメオログを同定し、合成倍数体とその両親においてFTの発現が変化することを明らかにした。
KAKENHI-PLANNED-16H06466
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-16H06466
花成ホルモン・フロリゲンを起点とする花形成の「鍵と鍵穴」相互作用の解明
フロリゲンによる花芽分化の「鍵と鍵穴」のイメージングでは、フロリゲンと標的遺伝子の二重形質転換イネの整備と、フロリゲンの下流で花芽分化を遂行する因子のレポーター系統を作成した。フロリゲンHd3aとGFPの融合遺伝子を自身のプロモータで発現するコンストラクトと、ジーンターゲティングにより作成したフロリゲン標的遺伝子のレポーター系統の二重形質転換イネ、植物ホルモンのレポーター系統、細胞骨格、原形質連絡等を可視化する系統を作成した。またこれらのイメージングのために共焦点レーザー走査顕微鏡を導入した。メリステムの観察には自家蛍光と蛍光タンパク質由来の蛍光を分離する必要があるが、これを高精度、高速で可能な顕微鏡を導入して観察できる条件を構築した。フロリゲンによるエピゲノム・リプログラミングでは、茎頂メリステムのエピゲノム解析を実施し、情報解析を実施した。また、少数(3-5個)のメリステムでエピゲノム解析を実施する実験系を開発した。情報解析では、新規に導入したエピゲノム解析サーバによって高度な解析を実施可能なシステムを構築した。これにより、局所的なDNAメチル化の変化(DMR)を同定し、トランスポゾントの位置関係を網羅的に同定することができた。人工合成異質倍数体におけるフロリゲン機能の解析では、異質倍数体植物のコムギからほぼ全てのFTホメオログを同定し、合成倍数体とその両親においてFTの発現が変化することを明らかにした。Pyromarkシステムを活用することでcDNAプール中のFTの各ホメオログの比率を計測する手法を開発し、これによって倍数体の合成前後におけるFTホメオログ間の発現比率の変化を明らかにすることができた。フロリゲン(正体はFTタンパク質)は植物の花芽分化を開始させる因子である。すなわち植物の生殖を開始する最初の決断を下すマスタースイッチであり、花の中で行われる生殖過程のすべてはフロリゲンから始まると言える。本研究では、フロリゲンを中心とした「鍵と鍵穴」の実体を分子レベルで解明することを目的としている。すなわちフロリゲン(鍵)と受容体(鍵穴)の相互作用、フロリゲンを含む転写複合体(鍵)と標的遺伝子の活性化(鍵穴)、及びフロリゲンがsmall RNA(鍵)を介したエピゲノム制御(鍵穴)を誘導する制御である。(1)フロリゲンと受容体が花芽分化を誘導するメカニズムの解明:フロリゲンを中心とした「転写因子複合体とその標的遺伝子」による「鍵と鍵穴」の機能については、アンチフロリゲンを介した機能制御の分子実態を領域内共同研究によって解明した(Plant Cell Physiol. 2018)。フロリゲンは茎頂メリステムに到達する際に茎の中で二段階の障壁を順に突破していることを発見した。さらに花芽分化の際に実際の形態形成上の変化を引き起こす植物ホルモンのイメージング系を開発した。これらのレポーターを用いて東山班との領域内共同研究によって二光子励起顕微鏡を用いた深部観察も実施し、フロリゲンの機能における「転写因子複合体とその標的遺伝子」による「鍵と鍵穴」活性化の時空間的な分子作動実態を解明することができた。(2)フロリゲンの機能における「低分子RNAとエピゲノム」の「鍵と鍵穴」
KAKENHI-PLANNED-16H06466
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レオペクシー性高分子液体の粘弾性に関する研究
本研究の目的は、大多数の液体とは逆に、流動の変形速度の増加に伴って粘度の増加するレオペクシー性高分子液体の探索およびそのような液体の特性の精密な記述法の確立であった。まず探索に関しては、すでに周知のポリビニルアルコール類似の構造の多数の高分子の溶液について粘度の測定を行い、ある種の多糖類と硼酸ナトリウムの水溶液でレオペクシー挙動が検出されることを確認した。一方、末端に水酸基やカルボキシル基を持ち溶液中で会合することが期待される物質については、いずれも通常の非ニュートン粘度しか観測されなかった。最も典型的なレオペクシー性液体であるポリビニルアルコール-硼酸ナトリウム水溶液については、動的粘弾性、定常および非定常流動でのレオロジー特性の詳細な測定を行ったが、その際本研究費で購入したディジタルレコーダーを活用することにより、効率よい測定を遂行することができた。これらのデータに基づいて、レオペクシー性高分子液体の流動特性を表す構成方程式を初めて導くことができた。また同じ溶液について動的光散乱測定を行い、光散乱から得られる緩和時間がレオロジー的に求められるものと一致すること、この緩和が拡散緩和ではなくて構造緩和であることなどを明らかにした。これらの結果から、このような高分子液体中では、高分子鎖が単純にからみ合って運動が束縛されるのではなくて、鎖どうしが水素結合によって相当時間にわたって結合して網目構造を形成していることが明らかになった。本研究の目的は、大多数の液体とは逆に、流動の変形速度の増加に伴って粘度の増加するレオペクシー性高分子液体の探索およびそのような液体の特性の精密な記述法の確立であった。まず探索に関しては、すでに周知のポリビニルアルコール類似の構造の多数の高分子の溶液について粘度の測定を行い、ある種の多糖類と硼酸ナトリウムの水溶液でレオペクシー挙動が検出されることを確認した。一方、末端に水酸基やカルボキシル基を持ち溶液中で会合することが期待される物質については、いずれも通常の非ニュートン粘度しか観測されなかった。最も典型的なレオペクシー性液体であるポリビニルアルコール-硼酸ナトリウム水溶液については、動的粘弾性、定常および非定常流動でのレオロジー特性の詳細な測定を行ったが、その際本研究費で購入したディジタルレコーダーを活用することにより、効率よい測定を遂行することができた。これらのデータに基づいて、レオペクシー性高分子液体の流動特性を表す構成方程式を初めて導くことができた。また同じ溶液について動的光散乱測定を行い、光散乱から得られる緩和時間がレオロジー的に求められるものと一致すること、この緩和が拡散緩和ではなくて構造緩和であることなどを明らかにした。これらの結果から、このような高分子液体中では、高分子鎖が単純にからみ合って運動が束縛されるのではなくて、鎖どうしが水素結合によって相当時間にわたって結合して網目構造を形成していることが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-06651051
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06651051
放射光を用いた微小焦点単色X線による超拡大マニモグラフィー
乳がんの早期発見にはX線写真(マンモグラフィー)が最も有効であるが、マンモグラムに要求される画質は、微細病変が描出できる高品質の画質が要求される。本研究は、大型放射光(SPring-8及びAccumulation Ring)を利用した、微小焦点(0.05mm以下)の蛍光X線源の開発をおこなうこと、ならびにそれを用いてコーンビーム単色X線による超拡大マンモグラフィーの基礎的検討を行うことを目的とする。平成15年度は、以下の研究を行った。(1)蛍光X線源の改良(豊福、徳森、兵藤)平成1314年度に開発した微少焦点蛍光X線源に改良を加え、焦点サイズ最小10ミクロンの線源を開発した。また、ビーム軸合わせ時間の短縮と、ビーム状態遠隔通知システムを開発した。(2)線源の諸特性の測定(豊福、徳森、松本、吉田,鬼塚)この線源の諸特性(エネルギースペクトル、MTF、線量等)を高エネルギー加速器研究機構のARリングを用いて調べた。その結果、満足すべき所得性が得られた。(3)画像処理の検討(大喜、宇山)画像処理について検討を行い、画質改善、表示等の各種ソフト開発を行った。これにより、従来よりも局画質の画像を得ることができた。(4)ファントム撮影(東田、豊福、徳森、吉田)AR放射光を用いて、各種ファントム撮影を行った。その結果、拡大率10倍の良好な超拡大撮影画像が得られた。(5)画像評価(東田、松本、吉田、寺嶋)放射光単色X線源と臨床用マンモグラフィ装置によるファントム画像の画質評価を行った。(6)学会発表(全員)平成15年度に開催される関係国際学会、国内学会で成果発表を行うとともに情報交換を行った。乳がんの早期発見にはX線写真(マンモグラフィー)が最も有効であるが、マンモグラムに要求される画質は、微細病変が描出できる高品質の画質が要求される。本研究は、大型放射光(SPring-8及びAccumulation Ring)を利用した、微小焦点(0.05mm以下)の蛍光X線源の開発をおこなうこと、ならびにそれを用いてコーンビーム単色X線による超拡大マンモグラフィーの基礎的検討を行うことを目的とする。平成15年度は、以下の研究を行った。(1)蛍光X線源の改良(豊福、徳森、兵藤)平成1314年度に開発した微少焦点蛍光X線源に改良を加え、焦点サイズ最小10ミクロンの線源を開発した。また、ビーム軸合わせ時間の短縮と、ビーム状態遠隔通知システムを開発した。(2)線源の諸特性の測定(豊福、徳森、松本、吉田,鬼塚)この線源の諸特性(エネルギースペクトル、MTF、線量等)を高エネルギー加速器研究機構のARリングを用いて調べた。その結果、満足すべき所得性が得られた。(3)画像処理の検討(大喜、宇山)画像処理について検討を行い、画質改善、表示等の各種ソフト開発を行った。これにより、従来よりも局画質の画像を得ることができた。(4)ファントム撮影(東田、豊福、徳森、吉田)AR放射光を用いて、各種ファントム撮影を行った。その結果、拡大率10倍の良好な超拡大撮影画像が得られた。(5)画像評価(東田、松本、吉田、寺嶋)放射光単色X線源と臨床用マンモグラフィ装置によるファントム画像の画質評価を行った。(6)学会発表(全員)平成15年度に開催される関係国際学会、国内学会で成果発表を行うとともに情報交換を行った。乳がんの早期発見にはX線写真(マンモグラフィー)が最も有効であるが、マンモグラムに要求される画質は、微細病変が描出できる高品質の画質が要求される。本研究は、大型放射光(SPring-8及びAccumulation Ring)を利用した、微小焦点(0.05mm以下)の蛍光X線源の開発をおこなうこと、ならびにそれを用いてコーンビーム単色X線による超拡大マンモグラフィーの基礎的検討を行うことを目的とする。平成13年度は、以下の研究を行った。(1)蛍光X線源の検討(豊福、徳森、兵藤)拡大率510倍の超拡大撮影に要求される線源設計に関するコンピュータシミュレーションをおこなった。また、既設の蛍光X線源の焦点サイズを小さくすることが必要不可欠であるので、現在の蛍光X線源(焦点サイズ1.0mm)に以下の改造を行った。・マイクロビームの軸あわせを効率よく行うビームアラインメントシステムを開発する。(2)検出系の検討(豊福、徳森、大喜、宇山、鬼塚)イメージングプレート、フラットパネル検出器等の単色X線に対する特性(空間分解能、濃度分解能、感度のエネルギー特性など)について、文献的に検討した。また、ファントムからの直接線及びコンプトン散乱線をシミュレートし、ファントムに入射させる単色X線の最適エネルギーについて検討を加えた。(3)画質評価方法の検討(東田、吉浦、河津、寺嶋)Spring-8における2回の実験でファントム撮影を行い、各種の解像度ファントム、検体ファントム、およびマンモグラフィ用ファントム等による画質評価方法の検討を行った。乳がんの早期発見にはX線写真(マンモグラフィー)が最も有効であるが、マンモグラムに要求される画質は、微細病変が描出できる高品質の画質が要求される。
KAKENHI-PROJECT-13470186
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放射光を用いた微小焦点単色X線による超拡大マニモグラフィー
本研究は、大型放射光(SPring-8及びAccumulation Ring)を利用した、微小焦点(0.05mm以下)の蛍光X線源の開発をおこなうこと、ならびにそれを用いてコーンビーム単色X線による超拡大マンモグラフィーの基礎的検討を行うことを目的とする。平成14年度は、以下の研究を行った。(1)装置の製作(豊福、徳森、兵藤)平成13年度で改造した微少焦点蛍光X線源の特性を高エネルギー加速器研究機構のARリングを用いて調べるとともに、検出器系、撮像システム、データ処理系とを連携させる制御装置の開発を行った。(2)画像処理の検討(大喜、宇山)画像処理について検討を行い、表示アプリケーションの作成を行った。(3)画質評価方法の検討(東田、吉浦、河津)画質評価、特に解像度を評価するためのMTF測定方法について検討し、最適と思われる方法を確立した。(4)ファントム試作(吉浦、河津)画質評価の為のファントムの試作を行った。(5)学会発表平成14年度に開催された日韓ジョイント医学物理学会(ソウル)、ならびに国内学会で関連する研究成果発表を行うとともに情報交換を行った。乳がんの早期発見にはX線写真(マンモグラフィー)が最も有効であるが、マンモグラムに要求される画質は、微細病変が描出できる高品質の画質が要求される。本研究は、大型放射光(SPring-8及びAccumulation Ring)を利用した、微少焦点(0.05mm以下)の蛍光X線源の開発をおこなうこと、ならびにそれを用いてコーンビーム単色X線による超拡大マンモグラフィーの基礎的検討を行うことを目的とした。平成15年度は、以下の研究を行った。(1)蛍光X線源の改良(豊福、徳森、兵藤)平成1314年度に開発した微少焦点蛍光X線源に改良を加え、焦点サイズ最小10ミクロンの線源を開発した。(2)線源の諸特性の測定(豊福、徳森、松本、吉田,鬼塚)この線源の諸特性(エネルギースペクトル、MTF、線量等)を高エネルギー加速器研究機構のARリングを用いて調べた。(3)画像処理の検討(大喜、宇山)画像処理について検討を行い、画質改善、表示等の各種ソフト開発を行った。(4)ファントム撮影(東田、豊福、徳森、吉田)AR放射光を用いて、各種ファントム撮影を行った。(5)画像評価(東田、松本、吉田、寺嶋)放射光単色X線源と臨床用マンモグラフィ装置によるファントム画像の画質評価を行った。(6)学会発表(全員)平成15年度に開催された関係国際学会、国内学会で成果発表を行うとともに情報交換を行った。
KAKENHI-PROJECT-13470186
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子育て世代の潜在看護師に対する復職準備教育の開発と検証
本研究の目的は、年単位のブランクを要する子育て世代の看護師に対する復職準備教育を検討することであり、迎え入れる側の看護管理・教育担当者と、復職する看護師側の双方にインタビュー調査と質問紙調査を行った。看護管理・教育担当者は、復職後の看護師には即戦力を求め、臨床で学ぶ姿勢やスタッフと良好な関係を築くことなど、態度面も重視していた。看護師の復職準備期間には復職のための情報を得ることや、家族の協力体制を整えることが挙げられ、復職に向けた知識や技術を獲得するラーニングよりも、過去の経験にとらわれないように意識的に既知の知識や習慣を捨て去るアンラーニングや学ぶ姿勢が復職後に必要であることが示唆された。2010年に全国の病院看護部を対象とした調査結果で、潜在看護師の復職研修は最短で半日、最も多いのが1日と短い状況であったことから、潜在看護師は実際に部署配属後に何らかの指導を受けながら次第にその環境に馴染んでいることが推測された。このことより本研究の第一段階として、潜在看護師の復職時に実際の看護単位で関わる管理者または教育担当者を対象に「潜在看護師の復職状況ー臨床からみた教育的課題ー」をテーマとしてインタビューガイドをもとに半構成的インタビューを行った。子育てを経て数年単位のブランクがある看護師が、医療の安全・看護の質を担保しつつ、復職する中でどのような課題があるのか、復職後の看護業務の状況、復職前に優先される継続教育の内容などについて、4名の対象者からデータを収集し、意味のある項目を重要アイテムとして質的に内容を分析した。インタビューの中で語られた潜在看護師は、いずれも【子育てを終えて数年のブランク】の後に復職した看護師であり、中には10年以上のブランクがある者もいた。看護部の受け入れ状況では、【即戦力を求めている】ので【新人看護師のようにはいかない】が主任をプリセプター役として【相談しやすいよう】にあてていたり、潜在看護師が【話す機会を設ける】など【看護部の教育体制を整えて迎えようとする】状況が語られた。しかし、潜在看護師は【看護基礎教育】や【潜在前の臨床経験】など【個人の背景がさまざまに異なる】ことや、本人が復職後の【仕事をどのようにとらえているか】という感覚の違いから【スタッフと馴染めない】などの状況もある。いずれ復職を考えているならば、看護学生向けの雑誌を読むなど【潜在期間中の学習】や、看護協会などで【基本的な技術を得てから復職する】などの【復職に向けた準備】も必要であり、復職後は【年齢や経験に関係なく声を掛け合う】ことができることが重要である。潜在看護師の復職は、看護職員確保対策の1つとして注目されるものであるが、新人看護職員の入職とは異なり即戦力が求められているために、復職に踏み切れない潜在看護師も相当数いることが予測される。昨年度のインタビュー調査では、潜在看護師の復職については新人看護職員と同様にはいかないとしながらも、相談しやすいような看護部の教育環境を整えて看護師を迎えている状況であることがわかった。また一方で復職する潜在看護師自身が復職に向けた準備が不十分なままであることや、仕事のとらえ方についての問題点についても指摘された。これらの結果をもとに、全国の病院1,000施設を病床数で層化抽出し、看護部で潜在看護師の復職教育に関わる看護管理者または看護部教育担当者1名に対して質問紙を自作し無記名郵送調査を行った。調査の内容は、病院施設の特徴や入職・離職の状況など属性の他、病院看護部の受け入れとしての潜在看護師の入職状況や研修、配属時の配慮事項、復職して臨床に馴染むために必要なことなどを中心に、育児休業明けの復職や配属変更のローテーションとも対比する構成とした。回収数は212(21.2%)あり、現在分析を進めている。今後は、当事者である看護師を対象に、復職に向けて準備した内容や復職後に臨床に馴染むために何をしたのか、復職準備に関する内容について無記名質問紙郵送調査を行い、準備教育の骨子となる事項を明らかにする。看護職員の確保を進めるために、潜在看護職員を含めた離職中の看護師の復職を支援することは急務の課題であり、平成26年6月には「医療介護総合確保推進法」が公布された。本研究でも特に子育て世代の離職看護師に対して復職の準備教育の検討を行っている。昨年度は全国の病院1,000施設の、看護管理者または看護部教育担当者1名に対して、復職支援と復職教育についての無記名質問紙郵送調査【調査1】を行い、214の回答を得た(回収率21.4%)。結果、育児休業明けの看護師(以下、育休明けとする)・他施設からブランクの後復職した看護師(以下、潜在看護師とする)とも「本人の希望」を配慮している施設は約8割あったが、育休明けでは次いで「夜勤免除(71.6%)」「勤務時間(60.1%)」であるのに対し、潜在看護師は「業務内容(48.8%)」「人間関係(45.1%)」、「夜勤免除」については23.8%と低い割合で、即戦力としての人材を求めていることが伺われた。さらに、経験のある診療科に復職した潜在看護師について、自施設ローテーション看護師よりも「医療事故」「感染防止」「病態理解」「看護技術」「連絡報告」「接遇」など全ての項目で、大変であると回答する率が高く、復職教育の必要性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-25463384
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子育て世代の潜在看護師に対する復職準備教育の開発と検証
復職がスムーズにいくための要素について、育休明けでは、「施設のサポート体制(87.9%)」「自身のサポート準備(87.8%)」であるのに対し、潜在看護師では「臨床で学ぶ姿勢(97.0%)」「臨床の雰囲気(92.8%)」「復職者の人柄(93.5%)」と、異なる要素が挙げられていた。さらに【調査2】で当事者に対する無記名質問紙郵送調査を実施し、87施設、441名の育休明け・潜在看護師から回答を得た。復職についての現状、潜在期間中に看護師自身が努力すべき課題、復職後の研修の状況や課題について分析を進めている。当初の計画では、病院看護部を対象とした調査結果から、復職準備教育の内容と方法を立案し、子育て世代の潜在看護師に対して復職準備教育を実施し、評価を得ていく予定であった。しかし、潜在看護師の復職研修時間を問うた結果で、075日という回答が得られるなど、復職研修のとらえ方に差が大きく、曖昧であり、復職教育の課題が明確になりにくかった。そのため、復職を果たした当事者である復職看護師に対してさらに質問紙調査を実施し課題を明確にする必要があると判断し、復職者を対象とした全国調査を追加実施した。高齢化を背景に、潜在看護師の復職支援の動きが高まっている。看護師の多くは女性であり、出産・育児で年単位のブランクを有する者も多い。本研究は、そのような子育て世代の離職看護師に対する復職の準備教育の検討を行うものである。平成28年度は【調査2】で1年以上のブランクを有し復職した対象者に対する無記名質問紙郵送調査を実施し、87施設、441名から回答を得た。有効回答は184名(41.7%)。全員女性で、平均年齢34.7±5.0歳、復職前の臨床経験は平均108.6±60.0ヶ月であった。ブランクは平均28.9±34.3ヶ月、ブランクの理由は出産・育児が173名(94.0%)で最も多かった。看護技術項目で、復職直後に「かなり大変」「大変」と答えた割合が高い項目は、「特徴的な処置の介助」64.2%、「特徴的な疾患・病態」56.9%、「医療事故防止」54.1%、「基本的な疾患・病態」51.6%で、現在では「特徴的な疾患・病態」33.7%、「特徴的な処置の介助」32.7%、「基本的な疾病・病態」26.2%、「医療事故防止」25.5%であった。復職からの期間で対象者を区切り、復職後1年未満者(n=121)、復職後半年未満者(n=81)、復職後3ヶ月未満者(n=60)、復職後2ヶ月未満者(n=37)で各々の復職直後と現在の困難感を比較した結果、復職後2ヶ月未満者の「特徴的な疾病・病態」を除く各々の復職期間において看護実践のすべての項目で有意差が認められた。潜在看護師が復職直後に困難に感じていることは、疾患・病態の理解や特徴的な処置の介助だけではなかった。「医療事故防止」は経験があっても比較的困難感が高く、患者の安全を守る真摯な思いを抱いて復職に臨んでいることが推測された。復職後の職場定着と質の高い安全な看護を提供するためにも、フォローアップ研修や交流会など積極的に企画していく必要がある。当初の計画では、病院看護部を対象としたインタビュー調査および質問紙調査から、復職準備教育の内容と方法を立案し、子育て世代の潜在看護師に対して復職準備教育を実施し、評価を得ていく予定であった。しかし、復職研修についてのとらえ方が対象者個々で曖昧であり、集合研修やOJT、指導体制など多方面にわたっているため復職教育の課題が明確になりにくかった。
KAKENHI-PROJECT-25463384
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X線被爆のない三次元セファログラムの開発と臨床応用
本年度の研究計画はMRIから、デジタルデータを出力しワークステーションに入力、さらに三次元解析ソフトを介して、画像構築を行うこと(平成12年度報告)に加え、咽頭扁桃肥大による上咽頭気道の狭窄の観察を行い、さらに最終目的のMRI画像による3次元セファログラムの開発を行うことである。その準備研究として、MRI検査における口腔内の金属による障害陰影像(以下メタルアーチファクトとする)が画像診断に及ぼす影響について検討した。MRI装置による矯正装置の磁性体アーチファクトの基礎的なファントーム実験,および異なる使用コイルを用いた臨床例の顎関節MRI撮像より,矯正装置を装着した状態で顎関節部の描出の可能性について検討し,以下の結果を得た。1)すべての矯正装置およびワイヤーは,MR画像上に0.411.9cmの大きさで磁性体アーチファクトを生じた。2)矯正治療患者の顎関節のMRI検査は,使用している矯正装置の種類によって臨床的診査に耐え得る画像の撮像が可能であった。よって矯正治療中にMRI検査を行う必要がある症例では,磁性体によるメタルアーチファクトの出現を避けるためバンド付メタルブラケットおよびチューブの使用が臨床において有効であると示唆された。また、このMRI画像による三次元表示の歯科矯正学への応用を検討するため、画像構築された画像について種々の計測を行った。とくに顔面軟組織の中で最近注目されている咽頭扁桃肥大に着目し、三次元セファログラムの臨床応用を試みた。研究結果より、咽頭扁桃の肥大は年少者群(0-9歳)においてすべてに認められた。冠状断MR撮像の咽頭扁桃占有度分類においては年少者群(0-9歳)の咽頭扁桃の肥大度が大きく、成人群(20歳以上群)では逆に咽頭扁桃の肥大度は小さかった。また咽頭扁桃の肥大が顕著な場合では鼻咽頭気道の狭窄が有意に認められた。さらにMRI画像とセファログラム画像との重ね合わせから顎顔面硬組織と軟組織の評価が可能となった。本年度の研究計画はMRIから、デジタルデータを出力しワークステーションに入力、さらに三次元解析ソフトを介して、画像構築を行うこと(平成12年度報告)に加え、咽頭扁桃肥大による上咽頭気道の狭窄の観察を行い、さらに最終目的のMRI画像による3次元セファログラムの開発を行うことである。その準備研究として、MRI検査における口腔内の金属による障害陰影像(以下メタルアーチファクトとする)が画像診断に及ぼす影響について検討した。MRI装置による矯正装置の磁性体アーチファクトの基礎的なファントーム実験,および異なる使用コイルを用いた臨床例の顎関節MRI撮像より,矯正装置を装着した状態で顎関節部の描出の可能性について検討し,以下の結果を得た。1)すべての矯正装置およびワイヤーは,MR画像上に0.411.9cmの大きさで磁性体アーチファクトを生じた。2)矯正治療患者の顎関節のMRI検査は,使用している矯正装置の種類によって臨床的診査に耐え得る画像の撮像が可能であった。よって矯正治療中にMRI検査を行う必要がある症例では,磁性体によるメタルアーチファクトの出現を避けるためバンド付メタルブラケットおよびチューブの使用が臨床において有効であると示唆された。また、このMRI画像による三次元表示の歯科矯正学への応用を検討するため、画像構築された画像について種々の計測を行った。とくに顔面軟組織の中で最近注目されている咽頭扁桃肥大に着目し、三次元セファログラムの臨床応用を試みた。研究結果より、咽頭扁桃の肥大は年少者群(0-9歳)においてすべてに認められた。冠状断MR撮像の咽頭扁桃占有度分類においては年少者群(0-9歳)の咽頭扁桃の肥大度が大きく、成人群(20歳以上群)では逆に咽頭扁桃の肥大度は小さかった。また咽頭扁桃の肥大が顕著な場合では鼻咽頭気道の狭窄が有意に認められた。さらにMRI画像とセファログラム画像との重ね合わせから顎顔面硬組織と軟組織の評価が可能となった。本年度の研究計画は本学付属病院放射線科に設置されているMRIから、デジタルデータを出力し、ワークステーションに入力し、さらに現在市販されている三次元解析ソフトを応用して、画像構築を行うことである。その準備研究として、顎顔面部及び口腔領域のMRI検査では口腔内の金属による障害陰影像(以下メタルアーチファクトとする)が画像診断に及ぼす影響について検討した。このメタルアーチファクトへの対処が三次元セファログラムの開発の大きな障害となっている。本研究から0.5TeslaのMRI装置によるSpin echo法のプロトン密度強調像にて,メタルアーチファクトの基礎的なファントーム実験を実施した。本研究で使用したMRI装置は静磁場強度0.5TeslaのFLEXART(東芝メディカル社製)で,撮像にはファントームが入るbodyコイルを用いた。撮像法は,2次元フーリエ変換(2DFT)によるSpin echo法のプロトン密度強調像(TR/TE:1500/25)であり,撮像領域(FOV)25.0×25.0cm,スライス厚5.0mm,Matrix256×256,加算回数1回とした。MR画像上にメタルアーチファクトは低信号域の周囲に高信号域を伴って出現し,本研究では,ウインドレベル,ウインド幅による変化がない高信号域間の距離をCathode Ray Tube(CRT)上で付属のプログラムを用いて計測した。メタルアーチ
KAKENHI-PROJECT-12672015
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12672015
X線被爆のない三次元セファログラムの開発と臨床応用
ファクトの大きさは,金属材料の量と磁化率に依存し,磁化率は主に材料中に含まれる強磁性体(主にFe,Co,Ni)の含有量と静磁場強度によって規定され,強磁性体含有率および静磁場強度が大きいほど増大した。患者の頭全体を覆う大きな頭部専用コイルの場合には,頭のあらゆる部分からの信号を受信するため,撮像領域(FOV)外からの信号がaliasing artifactsとなる。現在、ワークステーションへの転送と三次元構築について上記のメタルアーチファクトの修正を含め研究を行っている。本年度の研究計画はMRIから、デジタルデータを出力しワークステーションに入力、さらに三次元解析ソフトを介して、画像構築を行うこと(平成12年度報告)に加え、咽頭扁桃肥大による上咽頭気道の狭窄の観察を行い、さらに最終目的のMRI画像による3次元セファログラムの開発を行うことである。その準備研究として、MRI検査における口腔内の金属による障害陰影像(以下メタルアーチファクトとする)が画像診断に及ぼす影響について検討した。MRI装置による矯正装置の磁性体アーチファクトの基礎的なファントーム実験,および異なる使用コイルを用いた臨床例の顎関節MRI撮像より,矯正装置を装着した状態で顎関節部の描出の可能性について検討し,以下の結果を得た。1)すべての矯正装置およびワイヤーは,MR画像上に0.411.9cmの大きさで磁性体アーチファクトを生じた。2)矯正治療患者の顎関節のMRI検査は,使用している矯正装置の種類によって臨床的診査に耐え得る画像の撮像が可能であった。よって矯正治療中にMRI検査を行う必要がある症例では,磁性体によるメタルアーチファクトの出現を避けるためバンド付メタルブラケットおよびチューブの使用が臨床において有効であると示唆された。また、このMRI画像による三次元表示の歯科矯正学への応用を検討するため、画像構築された画像について種々の計測を行った。とくに顔面軟組織の中で最近注目されている咽頭扁桃肥大に着目し、三次元セファログラムの臨床応用を試みた。研究結果より、咽頭扁桃の肥大は年少者群(0-9歳)においてすべてに認められた。冠状断MR撮像の咽頭扁桃占有度分類においては年少者群(0-9歳)の咽頭扁桃の肥大度が大きく、成人群(20歳以上群)では逆に咽頭扁桃の肥大度は小さかった。また咽頭扁桃の肥大が顕著な場合では鼻咽頭気道の狭窄が有意に認められた。さらにMRI画像とセファログラム画像との重ね合わせから顎顔面硬組織と軟組織の評価が可能となった。
KAKENHI-PROJECT-12672015
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12672015
自動車運転シミュレータを用いた高齢運転者の運転特性の診断システムの開発
平成4,5年度の2年間で研究を実施し,以下の成果が得られた。平成4年度に実施した高齢者へのアンケート調査から(1)高齢者が自らの意志で運転を断念する年齢は,85%が現実に運転している年齢に5歳を加えた年齢まで運転する。(2)ペーパードライバー率が年齢の低い高齢者程低いことが分かり,公共交通機関の早期整備が期待出来ない地方都市では高齢化の進展と共に益々車の運転による移動が増える。また,自動車運転シミュレータによる高齢者と若齢者の運転技術では(3)曲線半径が100m以下の場合に運転技術に差が現れる。(4)曲線半径が500m以下ではハンドルの微調整は行われず,800m以上の半径で微調整が行われることがスペクトル解析の結果分かった。(5)カーブの曲がりにくさの一対比較では,曲線半径50m以下でのウエイトが200mに比べて運転者平均で5倍あり,200m以上でのウエイトの変化がないことから,一般道では200m以上の半径を確保すれば良いことが示された。平成5年度にはシミュレータの画像処理アルゴリズムを高速道路についても適用出来るように改良して,高齢者と生産年齢者について調査を行った結果からは,(6)曲線半径が100m以下での走行速度の加減速度変動(アクセレレーションノイズ)は被験者間で大きな較差を示し,一対比較の結果とも一致した。2年間の研究から,自動車運転シミュレータを(7)高齢者の運転技術を評価することが可能,(8)曲線半径を中心に幾何構造上の問題点を明らかにすることが出来るシステムに改良できた。今後の課題は,交通量の影響を評価できるシステムに改良する必要があることが分かった。平成4,5年度の2年間で研究を実施し,以下の成果が得られた。平成4年度に実施した高齢者へのアンケート調査から(1)高齢者が自らの意志で運転を断念する年齢は,85%が現実に運転している年齢に5歳を加えた年齢まで運転する。(2)ペーパードライバー率が年齢の低い高齢者程低いことが分かり,公共交通機関の早期整備が期待出来ない地方都市では高齢化の進展と共に益々車の運転による移動が増える。また,自動車運転シミュレータによる高齢者と若齢者の運転技術では(3)曲線半径が100m以下の場合に運転技術に差が現れる。(4)曲線半径が500m以下ではハンドルの微調整は行われず,800m以上の半径で微調整が行われることがスペクトル解析の結果分かった。(5)カーブの曲がりにくさの一対比較では,曲線半径50m以下でのウエイトが200mに比べて運転者平均で5倍あり,200m以上でのウエイトの変化がないことから,一般道では200m以上の半径を確保すれば良いことが示された。平成5年度にはシミュレータの画像処理アルゴリズムを高速道路についても適用出来るように改良して,高齢者と生産年齢者について調査を行った結果からは,(6)曲線半径が100m以下での走行速度の加減速度変動(アクセレレーションノイズ)は被験者間で大きな較差を示し,一対比較の結果とも一致した。2年間の研究から,自動車運転シミュレータを(7)高齢者の運転技術を評価することが可能,(8)曲線半径を中心に幾何構造上の問題点を明らかにすることが出来るシステムに改良できた。今後の課題は,交通量の影響を評価できるシステムに改良する必要があることが分かった。平成4年度には(1)豊田市在住の65歳以上の高齢者約1500人のアンケート調査、(2)高齢者(65歳以上)5名及び生産年齢者(2533歳)5名による実車とシミュレータによる運転特性調査を実施した。その結果(1)高齢者が運転を断念する年齢は現在の年齢に5歳を加えた年齢とするものが50%ある。(2)ペーパードライバー比率が男性62%女性95%となっており、今後はモータリゼーションの洗礼を受けた世代が高齢化を向かえることもあり、ペーパードライバー比率は低下し、多くの高齢者が運転することになることが分かった。一方、高齢者と生産年齢者による実車とシミュレータによる運転特性調査から、両者の技術の差が(3)曲線半径が100m以下の場合に表われ(4)坂路や人家の密集地にも表われる。(5)アクセレレーションノイズの大きさは数量化理論の分析からも運転技術を評価する指標であることが示された。曲線半径とハンドル操作角の変動とのスペクトル解析からは(6)曲線半径が500m以下ではハンドルの操作の微調整は行なわれず、800m以上の曲線半径で微調整のための変動があることが分かった。この事実は従来の考えを覆えず知見である.カーブの曲がりにくさを一対比較でみると(7)曲線半径が50mのウエイトが被験者平均で0.5であるのに対し、200mで0.1と低下し、これ以上の曲線半径では一定となることも分かった。以上の結果から、曲線部の行での運転技術はアクセレレーションノイズの値からは100mの曲線が限界でこれ以上では運転技術に被験者間で差が表われる.一方、一対比較からは200m以下で差が表われることが示され、シミュレータによる数値と運転車の意識で半径100mの差が表われた。来年度では多くの被験者を対象に評価値が安定するモデルの構築を行う予定である。平成4、5年度の2年間で研究を実施し、以下の成果が得られた。平成4年度に実施した高齢者へのアンケート調査から
KAKENHI-PROJECT-04555133
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04555133
自動車運転シミュレータを用いた高齢運転者の運転特性の診断システムの開発
(1)高齢者が自らの運転を断念する年齢は、85%が現実に運転している年齢に5歳を加えた年齢まで運転する。(2)ペーパドライバー率が年齢の低い高齢者程低いことが示され、公共交通機関の早期整備が期待出来ない地方都市では高齢化の進展と共に益々車の運転による移動が増える。また、シミュレータによる高齢者と生産年齢者の運転技術結果からは、(3)曲線半径が100m以下の場合に技術の差が現れる。(4)曲線半径が500m以下ではハンドルの微調整は行われず、800m以上の半径で微調整が行われることがスペクトル解析の結果分かった。(5)カーブの曲がりにくさの一対比較では、曲線半径50m以下でのウエイトが200mに比べて運転者平均で5倍あり、200m以上でのウエイトの変化がないことから、一般道では200m以上の半径を確保すれば良いことが示された。平成5年度にはシミュレータの画像処理アルゴリズムを高速道路についても適用出来るように改良して、高齢者と生産年齢者について調査を行った結果からは、(6)曲線半径が100m以下での走行速度の加減速度変動(アクセレレーションノイズ)は被験者間で大きな較差を示し、一対比較の結果とも一致した。2年間の研究から、自動車運転シミュレータを(7)高齢者の運転技術を診断評価することが可能、(8)曲線半径を中心とした幾何構造上の問題点を明らかにすることが出来るシステムに改良できた。今後の課題は、交通量の影響を評価できるシステムに改良する必要があることが分かった。
KAKENHI-PROJECT-04555133
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超短期間の筋力トレーニングが神経筋機能に及ぼす影響
超短期間の筋力トレーニングが,神経筋機構に及ぼす影響について検討することが本研究の目的である.本年度は昨年度行った4日間の筋力トレーニング前後における,等速性膝伸展動作中の大腿四頭筋の神経筋活動の結果を分析することであった.8名の成人男性が等速性膝伸展による角速度120゚/secにおける等速性膝伸展運動を,休息日をはさむ5日間のうち4日間行った.コントロール群として8名の成人男性が実験に参加して,トレーニング群と同様に前後の測定のみを行った.測定の前後に角速度0゚/sec,60゚/sec,120゚/sec,240゚/secの等速性最大筋力発揮中の大腿直筋,外側広筋および内側広筋から表面筋電図を記録した.表面筋電図は角速度が設定した角速度に達した部分におけるroot mean square(RMS)を計算した.表面筋電図の電極貼付部位を2回の測定で同一とするため,マジックで印をつけておいた.等速性膝伸展力に関しては,昨年度の報告のようにいずれの角速度においても有意な筋力の増加は認められなかった.一方,表面筋電図については測定に用いた全ての角速度の等速性膝伸展運動においても,RMSが増加する(41.5±46.6%から9.8±21.6%)ものの有意な変化ではなかった.しかしながら,個人的に見てみるとRMSが50%から100%程度の増加を示す被検者もおり,用いた被検者全体としてのトレーニング効果は認められなかったものの,個人的には著しい神経筋機能の向上が認められた者も見受けられた.以上の結果は,本研究で用いた超短期間の筋力トレーニングは,有意な筋力増加や表面筋電図の増加を引き起こすには至らなかったが,今後の研究につながる重要な知見が得られたことは評価すべきであると考えている.筋力トレーニングの初期の筋力の増加は主に神経系因子の改善によるものであることが示されている.しかしながら,トレーニングを開始してどのくらいの期間で筋力の有意な増加が生じるのか,またそれが神経系の改善によるものであるのかどうかについては,十分に明らかにされていない,研究代表者の先行研究において,2週間で9日間の角速度120度/秒での等速性膝伸展による筋力トレーニングの結果,測定に用いて比較的広範囲の魚速度(0度/秒から240度/秒)の筋力において有意な増加が認められた.しかしながら,トレーニング中の記録を見てみると,トレーニングを開始しておよそ4日目に筋力の増加がほぼプラトーに達していた.このことは筋力トレーニングのごく初期に先に見られたような筋力変化が生じていることを示唆している.このような研究の背景のもと,本研究では4日間のトレーニングが等速性膝伸展筋力に及ぼす影響について検討した.被検者は成人男性15名でトレーニング群8名とコントロール群7名にランダムに分けた.トレーニングは角速度120度/秒の最大努力での膝伸展運動を一日当たり10回.7セット(セット間に1分休息)行うものであった.トレーニングの前後に角速度0,60,120,240度/秒での等速性膝伸展筋力を測定した.その結果,両群においていずれの角速度の筋力でも有意な変化は認められなかった.これはおそらく被検者のほとんどが体育専攻学生である,普段から比較的活動レベルが高いため,トレーニング効果が出にくかったものと思われる.来年度は被検者の選択を十分に考慮して実験を行うことを考えている.超短期間の筋力トレーニングが,神経筋機構に及ぼす影響について検討することが本研究の目的である.本年度は昨年度行った4日間の筋力トレーニング前後における,等速性膝伸展動作中の大腿四頭筋の神経筋活動の結果を分析することであった.8名の成人男性が等速性膝伸展による角速度120゚/secにおける等速性膝伸展運動を,休息日をはさむ5日間のうち4日間行った.コントロール群として8名の成人男性が実験に参加して,トレーニング群と同様に前後の測定のみを行った.測定の前後に角速度0゚/sec,60゚/sec,120゚/sec,240゚/secの等速性最大筋力発揮中の大腿直筋,外側広筋および内側広筋から表面筋電図を記録した.表面筋電図は角速度が設定した角速度に達した部分におけるroot mean square(RMS)を計算した.表面筋電図の電極貼付部位を2回の測定で同一とするため,マジックで印をつけておいた.等速性膝伸展力に関しては,昨年度の報告のようにいずれの角速度においても有意な筋力の増加は認められなかった.一方,表面筋電図については測定に用いた全ての角速度の等速性膝伸展運動においても,RMSが増加する(41.5±46.6%から9.8±21.6%)ものの有意な変化ではなかった.しかしながら,個人的に見てみるとRMSが50%から100%程度の増加を示す被検者もおり,用いた被検者全体としてのトレーニング効果は認められなかったものの,個人的には著しい神経筋機能の向上が認められた者も見受けられた.以上の結果は,本研究で用いた超短期間の筋力トレーニングは,有意な筋力増加や表面筋電図の増加を引き起こすには至らなかったが,今後の研究につながる重要な知見が得られたことは評価すべきであると考えている.
KAKENHI-PROJECT-18650187
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建築目地防水に関わる早期劣化診断と寿命管理技術の開発
実建物でシーリング目地の接着性を評価できる方法の開発を目的とし、シーリング目地の非破壊試験方法の開発と適用可能性について検討を行った。次の研究成果が得られた。1圧入試験において、圧入深さが5mmを超えた時点から剥離割合の影響が圧入荷重により確認できたが、目地深さによって圧入荷重は異なった。2金属製の半円形治具を圧入させる事によりシーリング目地の剥離状況を非破壊で判定でき、既存の引張試験の結果とも相関性があることを示した。3現場で実施可能な非破試接着性判定方法の開発を行うためには、既存の試験方法との相関性を検討しながら、材料・設計要因や試験機側の要因を考慮して試験法を構築する必要がある。本研究では建築目地防水に関わる早期劣化診断と寿命管理技術の開発を行うことで,漏水の防止と目地の耐久性向上を図り,以下の項目を検討する。1.シーリング目地故障の要因調査:シーリング目地が損傷する要因を設計・施工・管理の観点から検討する。2.非破壊試験機の開発:非破壊でシーリング目地の故障・劣化診断できる試験機を開発する。3.非破壊試験方法の提案:提案する非破壊試験機の妥当性と適用範囲を検討するため,シーリング材断面,劣化条件を変えて実験を行い,既存の試験方法との比較検討を行う。4.非破壊試験方法の適用方法の検討:非破壊試験機を用いて劣化診断を実施し,非破壊試験方法の適用方法や適切な診断法を提示する。平成26年度では,シーリング目地故障について調査し,シーリング材施工時に影響を受ける初期故障要因と,耐久性に係わる中長期故障の要因に分けて分析を行った。その結果,シーリング材と部材間の接着面で不具合数が最も多く,目地接着不良に対する評価を行うための非破壊試験方法の提案が重要であることを示した。また,シーリング目地非破壊試験機の開発を中心に研究を進め,非破壊で試験可能かどうかを検討するために,円形の治具を作製し,接着不良を再現した試験体を用いて静的圧入試験を実施し,シーリング目地の圧入荷重と圧入深さとの関係を求めた。また,試作した非破壊試験機を用いて,シーリング材の強度及び目地形状の影響の検討を行なった。その結果,非破壊予備試験では,シーリング目地形状の違いによって試験結果が異なり,試験条件により非破壊試験法の適用範囲を考える必要があると考えられた。これら成果については,「シーリング目地の非破壊接着性試験法の検討」と題して,日本建築学会関東支部研究報告集I(pp121-124,2015.3.2)で研究成果発表を行った。シーリング目地の故障は、接着面からの剥離が全体の約半分を占めており、シーリング目地の維持保全の観点から、現場で定期的に接着性を含めたシーリング目地の耐久性を簡便に判定できる方法も必要と考えられる。そこで本研究では、実建物でシーリング目地の接着性を非破壊で評価できる方法の開発を目的とし、平成27年度は1シーリング目地に特殊な治具を圧入して目地の剥離部分を検出できるか,2非破壊試験方法としての適用可能性と診断に必要な条件について検討を行った。現場で施工されたシーリング材の接着性を非破壊で調べるためASTM C 1176-11の試験方法を参考とし,本研究では次の剥離判定方法について検討を行った。試験に使用した圧入用治具は直径50mm厚さ5mmの半円形とし,この治具を用いて1mm/minの速度でシーリング材に徐々に治具を圧入し、その時の圧入深さと圧入荷重を測定した。また,既存の引張試験結果との比較検討を行った。以下の研究成果が得られた。1.圧入試験において、圧入深さが5mmを超えた時点から剥離割合の影響が圧入荷重により確認できたが、目地深さによって圧入荷重は異なった。これよりシーリング材モジュラス,断面寸法に応じた非破壊試験条件を設定する必要があると考えられた。2.目地深さ10mmも15mmも圧入荷重と引張荷重は概ね比例関係であった。これより,金属製の半円形治具を圧入させる事によりシーリング目地の剥離状況を非破壊で判定でき、既存の引張試験の結果とも相関性があることを示し,本試験方法を現場で適用できる可能性を見出した。3.現場で実施可能な非破試接着性判定方法の開発を行うためには、既存の試験方法との相関性を検討しながら、材料・設計要因や試験機側の要因を考慮して試験法を構築する必要がある。実建物でシーリング目地の接着性を評価できる方法の開発を目的とし、シーリング目地の非破壊試験方法の開発と適用可能性について検討を行った。次の研究成果が得られた。1圧入試験において、圧入深さが5mmを超えた時点から剥離割合の影響が圧入荷重により確認できたが、目地深さによって圧入荷重は異なった。2金属製の半円形治具を圧入させる事によりシーリング目地の剥離状況を非破壊で判定でき、既存の引張試験の結果とも相関性があることを示した。3現場で実施可能な非破試接着性判定方法の開発を行うためには、既存の試験方法との相関性を検討しながら、材料・設計要因や試験機側の要因を考慮して試験法を構築する必要がある。研究計画に対する研究達成度について,平成26年度の目標である3つの評価指標と達成度の根拠は以下の通りである。評価項目1:「シーリング目地故障の要因調査:
KAKENHI-PROJECT-26889070
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建築目地防水に関わる早期劣化診断と寿命管理技術の開発
シーリング目地が損傷する要因を設計・施工・管理の観点から検討するとともに,改善点を提示する。」に対する達成度の根拠:シーリング材施工時に影響を受ける初期故障要因と,耐久性に係わる中長期故障の要因に分けて分析を行った。その結果,施工に関する要因は初期故障に大きく影響を与えるとともに,中長期的にはシーリング材と部材間の接着面での不具合を引き起こす原因となることが分かった。このため,シーリング目地の管理の観点から,本研究で提案する非破壊試験法の適用が重要であることを示した。評価項目2,「非破壊試験機の開発:シーリング目地の表面の強度・変位量等による物理量を利用して,非破壊でシーリング目地の故障・劣化診断できる試験機を開発する。」に対する達成度の根拠:非破壊試験機の測定部を模した円形の治具を作製し,接着不良を再現した試験体を用いて静的圧入試験を実施した。評価項目3:「非破壊試験方法の提案:提案する非破壊試験機の妥当性と適用範囲を検討するため,試験室内でシーリング材断面,劣化条件を変えて実験を行い,既存の試験方法との比較検討を行う。」に対する達成度の根拠:試作した非破壊試験機を用いて,シーリング材の強度及び目地形状の影響の検討を実測し,既存の引張試験結果との相関性について評価し,本非破壊試験の適用範囲について考察した。以上より,平成26年度に設定した研究計画は十分に達成していると判断された。27年度が最終年度であるため、記入しない。建築防水平成27年度の研究については,平成26年度に得られた結果を基に,以下の項目について研究を実施していく。1.シーリング目地非破壊試験機の開発:シーリング目地長手方向に計測可能な移動接触型非破壊試験機を製作し,既存試験とのデータの置き換えも可能な応力・変形計測システムを提案する。具体的には,以下の方法で非破壊試験機を開発する。1移動可能な非破壊試験機:屋外使用を想定した持ち運び可能な試験機とする。2荷重検出部:目地方向に移動しながら荷重を検出できるローラー式治具とする。3変位検出部:所定の変位に設定し,ローラーから伝達される荷重を安定的に計測する。4加圧方法:ローラー式治具に一定の加圧力が発生可能なガス圧式機構とする。特に,現場で本試験機を使用でき,短時間にシーリング目地の強度や耐久性の状況を確認できる方法を提案する。2.シーリング材の強度及び目地形状の影響の検討:新たに製作する非破壊試験機を用いて,材料強度・劣化度及び目地形状を変えた実験を実施し,本試験法で得られる試験結果と,既存の引張接着性試験結果との相関性を評価することで,非破壊試験法としての信頼性をさらに高めていく。シーリング目地試験体の条件は,シーリング材の目地幅と目地深さ,目地の接着状態とする。非破壊試験機の試験変数は,目地幅に対するローラー厚さ比,ローラーの負荷移動速度,圧入深さとする。この試験体と非破壊試験機の条件の相関関係を求め,シーリング目地の非破壊試験法に適用できる範囲を検討する。3.非破壊試験の適用方法の提示:シーリング目地診断において,現場で非破壊試験機を用いて試験し,その結果が平成26年度の室内試験(非破壊試験,引張試験)とどのような関係があるのかを比較検討する。非破壊診断の妥当性を検討するために,通常の1次・2次診断(目視観察,指触観察)と3次診断(硬度試験,引張試験)との比較も行う。27年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-26889070
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ギラン・バレー症候群の自己抗原認識における粘膜免疫組織とCD1bの役割
1.ギラン・バレー症候群患者血漿からのIgG抗ガングリオシド抗体精製ギラン・バレー症候群患者血漿をプロテインAカラムを用いて,IgG抗GM1抗体を分離精製した.サブクラスは,以前からギラン・バレー症候群で検出されることが報告されているIgG1およびIgG3であった.2.モノクローナル抗ウサギCD1b抗体の作成ウサギCD1b分子のcDNAを基に合成したKeyhole Limpet Hemocyanin付加ペプチドをマウスに免疫し,モノクローナルの抗ウサギCD1b抗体を作成した.ウサギ末梢血を抗原にしたウエスタン・ブロットでは,きれいな単一のバンドが得られたが,残念ながらフローサイトメトリーによる樹状細胞表面のCD1との反応性は,非常に弱かった.すなわち,立体構造の認識をしない抗体が産生されたと考えられたため,この系はここで中止した.3.ギラン・バレーモデルウサギの作成Yukiら(Ann Neurol 2001)のプロトコールに従って,ウサギを牛脳ガングリオシドで3週おきに免疫し,症状観察・血漿採取・末梢血単核球のRNA抽出を経時的に行った。ELISAにより血漿抗GM1抗体価の推移を調べたところ,免疫開始19日目から抗GM1抗体価は上昇し,死亡したウサギ#1ではIgG抗GM1抗体が最高力価になった2日後,回復したウサギ#2では14日後に発症した.また,ウサギCD1遺伝子塩基配列を基にプライマーを設計し,CD1 mRNA発現の変化をサブクラスごとにRT-PCRで解析した.その結果,グループ1 CD1 (CD1a1,a2,b) mRNAの発現はGBS発症と共に減少し,死亡したウサギでは検出不能となった.回復したウサギでは,グループ1 CD1 mRNA発現はほぼ免疫前の値となった.CD1dのみを有するマウスではGBSモデル作成が成功しなかったが,グループ1 CD1がB細胞上に発現しているウサギGBSモデルは確立された.GBS発症との相関が見られたことから,グループ1 CD1は自己抗体産生に関与している可能性が示唆された.(第78回日本細菌学会および2005 Meeting of the Peripheral Nerve Societyにて発表予定である).1.ギラン・バレー症候群患者血漿からのIgG抗ガングリオシド抗体精製ギラン・バレー症候群患者血漿をプロテインAカラムを用いて,IgG抗GM1抗体を分離精製した.サブクラスは,以前からギラン・バレー症候群で検出されることが報告されているIgG1およびIgG3であった.2.モノクローナル抗ウサギCD1b抗体の作成ウサギCD1b分子のcDNAを基に合成したKeyhole Limpet Hemocyanin付加ペプチドをマウスに免疫し,モノクローナルの抗ウサギCD1b抗体を作成した.ウサギ末梢血を抗原にしたウエスタン・ブロットでは,きれいな単一のバンドが得られたが,残念ながらフローサイトメトリーによる樹状細胞表面のCD1との反応性は,非常に弱かった.すなわち,立体構造の認識をしない抗体が産生されたと考えられたため,この系はここで中止した.3.ギラン・バレーモデルウサギの作成Yukiら(Ann Neurol 2001)のプロトコールに従って,ウサギを牛脳ガングリオシドで3週おきに免疫し,症状観察・血漿採取・末梢血単核球のRNA抽出を経時的に行った。ELISAにより血漿抗GM1抗体価の推移を調べたところ,免疫開始19日目から抗GM1抗体価は上昇し,死亡したウサギ#1ではIgG抗GM1抗体が最高力価になった2日後,回復したウサギ#2では14日後に発症した.また,ウサギCD1遺伝子塩基配列を基にプライマーを設計し,CD1 mRNA発現の変化をサブクラスごとにRT-PCRで解析した.その結果,グループ1 CD1 (CD1a1,a2,b) mRNAの発現はGBS発症と共に減少し,死亡したウサギでは検出不能となった.回復したウサギでは,グループ1 CD1 mRNA発現はほぼ免疫前の値となった.CD1dのみを有するマウスではGBSモデル作成が成功しなかったが,グループ1 CD1がB細胞上に発現しているウサギGBSモデルは確立された.GBS発症との相関が見られたことから,グループ1 CD1は自己抗体産生に関与している可能性が示唆された.(第78回日本細菌学会および2005 Meeting of the Peripheral Nerve Societyにて発表予定である).
KAKENHI-PROJECT-16790492
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16790492
遺伝的アルゴリズムによる多次元ディジタルフィルタの最適設計
1.分母分離形2次元ディジタルフィルタの周波数領域における最適設計問題を単純遺伝的アルゴリズムによって定式化した.最適化問題のコーディングにおいて,分母分離形伝達関数の分母の極の半径と偏角,および分子の係数をそれぞれ30ビットの遺伝子として表現し,これらを一つなぎにして染色体を構成した.2.上述の表現のもとで単純遺伝的アルゴリズムによって2乗誤差評価関数の最適化を行い,フィルタ設計が可能であることを確認し,またこの方法は従来法より近似誤差が小さいことを明らかにした.3.以上の設計手法を周波数領域の誤差の絶対値和,最大値,空間領域の誤差の2乗平均などの場合に対して拡張し,実際に2次元フィルタが設計可能であることが確認された.4.遺伝的アルゴリズムによる分母分離形フィルタの設計において,突然変異率を指数関数的に減少させる方策を取り入れ,収束誤差と収束時間の減少を目指した.この結果,これまでの手順の結果よりもより小さい近似誤差でフィルタを設計することが可能となった.5.これまでに検討した遺伝的アルゴリズムによるフィルタ設計を分母非分離形(一般形)フィルタに適用した.ここでは,フィルタの安定性を判別するために,単位インパルス応答の絶対値和を用いた.この結果,分母非分離形に対してもフィルタの設計が可能となった.ただし,分母非分離形フィルタの安定性の判別の難しさのために,設計精度は分母分離形よりも幾分劣る結果となった.1.分母分離形2次元ディジタルフィルタの周波数領域における最適設計問題を単純遺伝的アルゴリズムによって定式化した.最適化問題のコーディングにおいて,分母分離形伝達関数の分母の極の半径と偏角,および分子の係数をそれぞれ30ビットの遺伝子として表現し,これらを一つなぎにして染色体を構成した.2.上述の表現のもとで単純遺伝的アルゴリズムによって2乗誤差評価関数の最適化を行い,フィルタ設計が可能であることを確認し,またこの方法は従来法より近似誤差が小さいことを明らかにした.3.以上の設計手法を周波数領域の誤差の絶対値和,最大値,空間領域の誤差の2乗平均などの場合に対して拡張し,実際に2次元フィルタが設計可能であることが確認された.4.遺伝的アルゴリズムによる分母分離形フィルタの設計において,突然変異率を指数関数的に減少させる方策を取り入れ,収束誤差と収束時間の減少を目指した.この結果,これまでの手順の結果よりもより小さい近似誤差でフィルタを設計することが可能となった.5.これまでに検討した遺伝的アルゴリズムによるフィルタ設計を分母非分離形(一般形)フィルタに適用した.ここでは,フィルタの安定性を判別するために,単位インパルス応答の絶対値和を用いた.この結果,分母非分離形に対してもフィルタの設計が可能となった.ただし,分母非分離形フィルタの安定性の判別の難しさのために,設計精度は分母分離形よりも幾分劣る結果となった.本年度の成果:1.分母分離形2次元ディジタルフィルタの周波数領域における最適設計問題を単純遺伝的アルゴリズムによって定式化した.最適化問題のコーディングにおいて,分母分離形伝達関数の分母の極の半径と偏角,および分子の係数をそれぞれ30ビットの遺伝子として表現し,これらを一つなぎにして染色体を構成した.2.上述の表現のもとで単純遺伝的アルゴリズムによって2乗誤差評価関数の最適化を行い,フィルタ設計が可能であることを確認し,またこの方法は従来法より近似誤差が小さいことを明らかにした.例えば,低域通過特性を近似するために,(4,4)次の伝達関数を用いる場合,遺伝的アルゴリズムの世代更新数は479回であり,計算時間は6.79時間(100MIPSの計算機による),2乗平均誤差は9.64%であった.この方法の計算時間は従来法より極めて長いが,誤差は従来法の約1/2である.3.以上の設計手法を周波数領域の誤差の絶対値和,最大値,空間領域の誤差の2乗平均などの場合に対して拡張し,実際に2次元フィルタが設計可能であることが確認された.次年度の課題:提案手法を2次元の分母非分離形に拡張し,最適化の実験を行うとともに,3次元以上のディジタルフィルタに拡張・一般化し,提案手法の性能限界,利点,問題点を明らかにする.本年度は,遺伝的アルゴリズムによる分母分離形2次元ディジタルフィルタの最適設計に関する設計能力を詳細に検討し,かつこれを分母非分離形の場合に適用し,その設計能力を評価した.1.遺伝的アルゴリズムによる分母分離形フィルタの設計において,突然変異率を指数関数的に減少させる方策を取り入れ,収束誤差と収束時間の減少を目指した.この結果,昨年の結果よりもより小さい近似誤差でフィルタを設計することが可能となった.2.分母分離形フィルタの設計の評価関数において,振幅特性だけではなく,位相(群遅延)特性もいれることで,線形位相に近いフィルタの近似を行った.この結果,線形位相に近いフィルタを設計することが可能となった.3.これまでに検討した遺伝的アルゴリズムによるフィルタ設計を分母非分離形(一般形)フィルタに適用した.ここでは,フィルタの安定性を判別するために,単位インパルス応答の絶対値和を用いた.この結果,分母非分離形に対してもフィルタの設計が可能となった.ただし,分母非分離形フィルタの安定性の判別の難しさのために,設計精度は分母分離形よりも幾分劣る結果となった.
KAKENHI-PROJECT-05650341
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低酸素性がん細胞に対する放射線増感剤の開発と効果に関する研究
1.ニトロ系増感剤imidazole系以外に、nitro-benzene,-pyrimidine,-pyridine,-thiazole,-triazole系の多数の化合物を合成し、thymine水溶液中でのthymine-glycole産生量でまずscreeningし、ついでV79細胞での増感能をみた。in vitroで有効な化合物をin vivoで検定したがその多くは急速な代謝のためin vivo活性は低く、imidazole系、triazole系に有望な物質が得られた。とくにtriazole系では、中枢神経系移行性の低い増感物質があり、in vivo assayでも有効性を認めたが、misonidazoleより優れているとはいい難かった。またnitrofurazan系もin vivoでの有効性は低かった。nucleoside型側鎖をもつnitroimidazoleは、動物レベルでもmisonidazoleより高い毒性効果比が得られ、nitroimidazole側鎖置換体の開発が有用と考えられた。2,非ニトロ系増感剤3.膜活用物質phonothiazine系膜活用物質については、大腸菌に対する増感効果が軽い温度処理によって著しく増強し、また少量のmisonidazoleの併用で相乗効果が得られる事を見出した。1.ニトロ系増感剤imidazole系以外に、nitro-benzene,-pyrimidine,-pyridine,-thiazole,-triazole系の多数の化合物を合成し、thymine水溶液中でのthymine-glycole産生量でまずscreeningし、ついでV79細胞での増感能をみた。in vitroで有効な化合物をin vivoで検定したがその多くは急速な代謝のためin vivo活性は低く、imidazole系、triazole系に有望な物質が得られた。とくにtriazole系では、中枢神経系移行性の低い増感物質があり、in vivo assayでも有効性を認めたが、misonidazoleより優れているとはいい難かった。またnitrofurazan系もin vivoでの有効性は低かった。nucleoside型側鎖をもつnitroimidazoleは、動物レベルでもmisonidazoleより高い毒性効果比が得られ、nitroimidazole側鎖置換体の開発が有用と考えられた。2,非ニトロ系増感剤3.膜活用物質phonothiazine系膜活用物質については、大腸菌に対する増感効果が軽い温度処理によって著しく増強し、また少量のmisonidazoleの併用で相乗効果が得られる事を見出した。
KAKENHI-PROJECT-60010065
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