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光学対掌薬物の門脈内吸収と肝臓初回通過効果の速度論的評価に関する研究 | 光学対掌体であるsemotiadil(R体)とlevosemotiadil(S体)はは薬理作用も体内動態特性も大きく異なる。肝臓通過動態を調べたところ肝通過率FHがsemotiadilで2%、levosemotiadilで10%とR体が大きく消失することがわかった。肝通過時間tHはsemotiadilで0.15分でlevosemotiadilで0.20分と有意に異なることが分かった。このことはS体の分布の程度が大きいことを示している。R体は一旦肝組織に分布するとただち肝へ取り込まれ、分布相が観測しにくくなっていると考えられる。これはR体の消失率が大きいことと対応している。5-fluorouracil(5-fu)とそのプロドラッグである5′-deoxy-5-fluorouridine(DFUR)を消化管壁代謝のモデル化合物として採用した。覚醒ラットにDFURを経口投与した場合DFURとして65%が門脈内吸収され、代謝物である5-Fuとして7%門脈に現れることが分かった。また両薬物の門脈への吸収時間はほぼ一致したことより、5-FUがさらに消化管で大きく消失していることが予想された。その後の追加実験でDFURとuridineを併用投与したところDFURからの代謝物である5-FUのFaが減少ずるはずが、逆に大きく増加した。これは前回の実験で予想された5-FUの消化壁での消失をuridineが阻害したものと結論された。BOF-4272はR体とS体からなるラセミ化合物である。この肝臓動態を調べたところ、37°Cと4°Cの2つの温度で灌流液中のBSAの濃度を変化させてBOF-4272の肝消失動態を調べた。4°CではBSAの濃度を変えてもRとS体の消失率が同じなのに、37°CではBSAの濃度とともにR体の消失がS体のそれの二倍に増加する現象が発見された。また4°Cの実験により37°Cでは観測が困難であった平衡分布相の存在を確認できた。つまりBOF-4272の肝藏での大きな消失は一旦、平衡分布相に移行後、連携した取り込み過程により説明できた。光学対掌体であるsemotiadil(R体)とlevosemotiadil(S体)はは薬理作用も体内動態特性も大きく異なる。肝臓通過動態を調べたところ肝通過率FHがsemotiadilで2%、levosemotiadilで10%とR体が大きく消失することがわかった。肝通過時間tHはsemotiadilで0.15分でlevosemotiadilで0.20分と有意に異なることが分かった。このことはS体の分布の程度が大きいことを示している。R体は一旦肝組織に分布するとただち肝へ取り込まれ、分布相が観測しにくくなっていると考えられる。これはR体の消失率が大きいことと対応している。5-fluorouracil(5-fu)とそのプロドラッグである5′-deoxy-5-fluorouridine(DFUR)を消化管壁代謝のモデル化合物として採用した。覚醒ラットにDFURを経口投与した場合DFURとして65%が門脈内吸収され、代謝物である5-Fuとして7%門脈に現れることが分かった。また両薬物の門脈への吸収時間はほぼ一致したことより、5-FUがさらに消化管で大きく消失していることが予想された。その後の追加実験でDFURとuridineを併用投与したところDFURからの代謝物である5-FUのFaが減少ずるはずが、逆に大きく増加した。これは前回の実験で予想された5-FUの消化壁での消失をuridineが阻害したものと結論された。BOF-4272はR体とS体からなるラセミ化合物である。この肝臓動態を調べたところ、37°Cと4°Cの2つの温度で灌流液中のBSAの濃度を変化させてBOF-4272の肝消失動態を調べた。4°CではBSAの濃度を変えてもRとS体の消失率が同じなのに、37°CではBSAの濃度とともにR体の消失がS体のそれの二倍に増加する現象が発見された。また4°Cの実験により37°Cでは観測が困難であった平衡分布相の存在を確認できた。つまりBOF-4272の肝藏での大きな消失は一旦、平衡分布相に移行後、連携した取り込み過程により説明できた。葉酸代謝拮抗薬(抗ガン剤)であるmothotrexatc(MTX)はR体とS体の光学対掌体からなる。光学対掌薬物は物理化学的性質が同一にもかかわらず体内動態が大きく異なる場合がありMTXを光学対掌薬物のモデルとして選んだ。門脈血-体循環血濃度差法をMTX光学異性体に応用して小腸と肝臓による初回通過効果(first-pess effect)を分離評価した。動脈内投与した場合は門脈内濃度と動脈内濃度に差はみられなかった。CLはL体で25nl/min/nigでD体は32nl/min/kgとD体の方が有意に大きかった。またMRTはD体で0.5hr、D体で0.2hrでD体の消失が大きいことがわかった。経口投与ではL体は小腸から吸収されたがD体は吸収されなかった。局所モーメント解析によりL体は小腸から薬17%が門脈へ吸収され、その平均吸収時間が2hr程度、肝通過率が50%であることがわかった。 | KAKENHI-PROJECT-09672187 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09672187 |
光学対掌薬物の門脈内吸収と肝臓初回通過効果の速度論的評価に関する研究 | 肝潅流実験ではL体の通過率が70%D体の通過率が70%で肝消失には差はみられなかったin vivoで通過率が50%であることより肝潅流実験で肝活性が低下していることがわかった。多くの薬物は経口投与される。RowlandとTozerは著書“Chnical Pharmacokinetics,Conceptsand Apphcation"において薬物が消化管から体循環へ吸収されるに際して、腸管腔、腸管壁、および肝臓のそれぞれの局所動態に分けて評価する概念を述べている。本研究室ではこの概念を数値化するために覚醒ラットの体循環血と門脈血を同時採血して、それらにおける薬物濃度差から門脈血への吸収量と吸収速度とおよび肝臓での通過率を求める方法(PS法)を開発して改良を加えてきた。今回のPS法の改良点は薬物を動脈内投与後、一定時間後をおいて経口投与する(DD法)ことにより1匹のラットから門脈吸収、肝臓通過および体循環の局所動態を評価する方法(PS-DD法)を初めて開発した。尿中に100%未変化体として回収される抗生物質cephalexinをモデル薬物としてPS-DD法の妥当性を調べた。その結果cephalexinの門脈吸収率および肝通過率がともに100%となりPS-DD法の妥当性が証明された。次にPS-DD法の有効性を証明するために抗癌剤5-FUをモデル薬物として採用した。その結果5-FUは門脈に70%、肝臓通過率が35%、結果として吸収率が25%と初回通過効果を分離評価できPS-DD法の有効性が証明された。さらに5-FUのプロドラッグである5'-DFURを消化管壁での代謝のモデル薬物としてPS法を適用した。その結果5'-DFURは未変化体および5-FUとして門脈にそれぞれ65%、7%吸収されることがわかりPS-DD法が消化管代謝の評価に有効であることが示された。 | KAKENHI-PROJECT-09672187 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09672187 |
コンビネーション医療機器の革新的評価法の構築 | われわれは骨固定力を強化した体内固定用ネジ:線維芽細胞増殖因子-2(FGF-2)徐放性ハイドロキシアパタイトコーティングスクリュー(Ap-FGFスクリュー)を開発した。世界初の成長因子コンビネーション体内固定用ネジとして医療機器としての承認を目指している。本研究では医師主導治験を行うために、レギュラトリーサイエンスとしてコンビネーション医療機器の革新的評価法を構築する。昨年度までに目標13を達成し、今年度は4に取り組んだ。前向き自主臨床試験として、筑波大学附属病院において「頚椎疾患に対する長範囲後方固定術におけるApーFGFコーティング頚椎椎弓根スクリューの安全性評価のための探索的試験」を開始した。対象患者は頚椎長範囲後方固定術(頭側が第2または第3頚椎かつ尾側が第7頚椎または第1胸椎のもの)の適応となる男女で目標症例数は10例とした。試験期間は全期間における最短期間は1年間、最長期間は1年3ヶ月である。前観察期間は最短1週間程度、最長3ヶ月程度である。入院期間は最短2週間、最長で3ヶ月程度と予想され、後観察期間は術後1年間とした。主要評価項目は、ApーFGF椎弓根スクリューに起因する死亡、骨折、悪性腫瘍、神経障害、術後感染症等の臨床試験中に発生したすべての有害事象の有無とした。筑波大学附属病院輸血部内cell processing factory(CPF)で無菌的にApFGFスクリューコーティングを行った。以上のプロトコールを論文として発表予定である。試験は3症例組み込まれ、現在実施中である。また臨床研究法に対応して、特定臨床研究として申請・承認された(jRCTs031180078)。ワイブル統計法のスクリュー強度固着評価への応用について、家兎モデルを用いた解析を論文にまとめて投稿した。成熟雄日本白色家兎70羽140肢の脛骨近位に経皮的にAp-FGFコーティング(Ap-FGF群)、Apコーティング(Ap群)、nonコーティング(Ti群)チタンスクリューを挿入し4週で抜去し,組織評価(HE染色)で炎症を認めない52羽67肢に対して、スクリュー抜去後の骨組織でスクリューの骨被覆率を計測した.3群を更にFGF (-): Ti+Ap、及びFGF (+): Ap-FGFの2群に纏め検討した.統計学的検討にはt検定およびWeibull分析を用いた.<結果>骨被覆率の平均値はFGF(+):88.6±4.4% (n=35)でFGF(-):83.0±9.5% (n=32)より有意に高かった(p=0.017).FGF(+)群の骨被覆率は0.790.94の狭い範囲に集中するのに対して、FGF(-)群の骨被覆率は0.640.98で低骨被覆率側にすそ野を引く分布であり、骨被覆の不良発生確率が高いことを示した。そこで、骨被覆率63%以下を骨形成不良と定義して骨形成不良出現確率をWeibull分析で求めたところFGF(+):2.7x10-4, FGF(-):0.05(Ti:0.05, Ap:0.06)となった。なおWeibull分布は直線であった。<考察および結論>FGF(+)とFGF(-)の骨被覆の平均値では65%の差であっても骨形成不良出現率ではFGF(+)がFGF(-)の約1/600という低値となる.FGF-2を含むAp-FGFコーティングには安定した骨形成作用があり、スクリュー周囲の骨形成不良のリスク率を大幅に低減できる事が示された.本研究では4つの目標を設定しており、今年度はその1つ目であるワイブル解析による評価法の開発に取り組んだ。コンビネーション製品の評価法開発に資するため、スクリューの固着強度をワイブル分布を用いて解析する手法を試み、当該モデルにおいては評価できることがわかった。論文を作成し、投稿することができた。医療機器の不良品発生率という低確率事象を解析できる手法を見出したことで、今後行う臨床試験でもこの手法を用いることができる可能性が示唆された。次の目標であった凍結乾燥技術の開発、製造法の検討にも取り組み、凍結乾燥後も自主企画を満たすことを確認した。残りの2年で残る2つの課題も解決できる見込みであるため、研究はおおむね順調に伸展していると判断している。われわれは骨固定力を強化した体内固定用ネジ:線維芽細胞増殖因子-2(FGF-2)徐放性ハイドロキシアパタイトコーティングスクリュー(Ap-FGFスクリュー)を開発した。世界初の成長因子コンビネーション体内固定用ネジとして医療機器としての承認を目指している。本研究では医師主導治験を行うために、以下の残る課題を解決しつつ、レギュラトリーサイエンスとしてコンビネーション医療機器の革新的評価法を構築する。1骨粗鬆症において最低保証強度・強度信頼性を明確にする力学試験のWeibull解析による評価法の開発2凍結乾燥技術の開発とその製造法・品質管理法の確立(GMP準拠)3凍結乾燥Ap-FGFスクリューの安全性評価(非臨床)4凍結乾燥Ap-FGFスクリューフィジビリティー試験(臨床)また研究成果を公表することにより我が国のコンビネーション医療機器の開発に資することも目的とする。昨年度までに目標1と2を達成し、今年度は3,4に取り組んだ。 | KAKENHI-PROJECT-16K01434 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K01434 |
コンビネーション医療機器の革新的評価法の構築 | 4の研究で使用する椎弓根スクリューを選定し、その椎弓根スクリューに我々が独自に定めた品質規格を満たすコーティングを施すためのコーティング実証実験を繰り返し、コーティング層の作成手順と手順書を確立した。品質試験についてもより精度を高めるための検討を行い、プロトコールを確定させた。各種QMS文書を作成した。手順書に従って臨床研究用の製品をGMP準拠施設:CPF(Cell Processing Factory)で製造して品質規格を満たすかの検討(プレラン)を行っているところである。計画書で設定した4つの目標のうち2つをすでに達成し、残る2つの課題に取り組んでいる。研究期間は残り1年であるが、成果として臨床研究まで行い、構築された評価法やプロトコールを公開して、企業や他の開発者が参照できるようにし、我が国の革新的コンビネーション医療機器の開発に資することを目指している。研究の計画は期間内に終了できる見込みであることからおおむね順調に進展していると判断した。われわれは骨固定力を強化した体内固定用ネジ:線維芽細胞増殖因子-2(FGF-2)徐放性ハイドロキシアパタイトコーティングスクリュー(Ap-FGFスクリュー)を開発した。世界初の成長因子コンビネーション体内固定用ネジとして医療機器としての承認を目指している。本研究では医師主導治験を行うために、レギュラトリーサイエンスとしてコンビネーション医療機器の革新的評価法を構築する。昨年度までに目標13を達成し、今年度は4に取り組んだ。前向き自主臨床試験として、筑波大学附属病院において「頚椎疾患に対する長範囲後方固定術におけるApーFGFコーティング頚椎椎弓根スクリューの安全性評価のための探索的試験」を開始した。対象患者は頚椎長範囲後方固定術(頭側が第2または第3頚椎かつ尾側が第7頚椎または第1胸椎のもの)の適応となる男女で目標症例数は10例とした。試験期間は全期間における最短期間は1年間、最長期間は1年3ヶ月である。前観察期間は最短1週間程度、最長3ヶ月程度である。入院期間は最短2週間、最長で3ヶ月程度と予想され、後観察期間は術後1年間とした。主要評価項目は、ApーFGF椎弓根スクリューに起因する死亡、骨折、悪性腫瘍、神経障害、術後感染症等の臨床試験中に発生したすべての有害事象の有無とした。筑波大学附属病院輸血部内cell processing factory(CPF)で無菌的にApFGFスクリューコーティングを行った。以上のプロトコールを論文として発表予定である。試験は3症例組み込まれ、現在実施中である。また臨床研究法に対応して、特定臨床研究として申請・承認された(jRCTs031180078)。H29年の予定としてワイブル解析をヒトに埋入されたインプラントのゆるみの評価に応用するため、臨床試験に先立ち、画像解析データを用いる観察研究を計画した。(1)橈骨遠位端骨折で創外固定治療を受けた患者の挿入トルク・抜去トルクという力学データの解析、(2)腰椎後方固定術を受けた患者の椎弓根スクリューの術後掲示的な画像変化を連続変数としてワイブル分布で解析できるか試みる予定とした。また臨床試験に先立ち、アパタイトFGF-2スクリューの凍結乾燥技術とそのQMS文書、手順書の作成にとりかかる。H30年に予定している臨床試験が行えるよう準備を進める。頸椎椎弓根スクリューにアパタイトFGFコーティングを施し、挿入する第1相臨床試験を行う。 | KAKENHI-PROJECT-16K01434 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K01434 |
多値論理関数からなる高次クローン束の構造の研究 | 一般に,κ値論理関数からなるクローン(合成に関して閉じている集合)の全体L_kをκ次クローン束という。2次クローン束についてはすでに構造が完全に解明されているが,3次以上のクローン束についてはまだその構造がほとんどわかっていない。高次クローン束L_k(κ【greater than or equal】3)の構造の解明を主たる目標として本研究を行い,次のような成果をあげた。1.距離空間としてのL_3の構造の研究クローン束L_kに距離を導入し,L_kがコンパクト距離空間となることを示した。さらに,L_3におけるmeetの演算を基にしてL_3からL_2への連続写像を構成し,そのような連続写像のもとで,L_3における極大クローンや集積点をなすクローンがどのようにL_2に写像されるかを調べた。極小クローンの分類がまだ完成していない現状では,極小クローンに関する種々の性質の研究は重要である。本研究では,極小クローンの対(C_1,C_2)について,和集合C_1∪C_2が関数全体を生成するとき(C_1,C_2)をgigantic pairと名づけ,gigantic pairを特徴付ける定理を与えるとともに,ほとんどのκに対しgigantic pairが存在することを示した。一方,それを拡張する形で,いくつかの極小クローンのjoinとして表わされるクローンについての研究を始めた。3.超クローンの研究最近I.G.Rosenbergによって導入された超クローン(hyperclone)について,その濃度に関する研究を行い,集合{0,1}上の超クローンの濃度は連続濃度であることを証明した。これは,通常のクローンの場合,2値のクローンの濃度が可算無限であることと対比すると興味深い結果である。4.部分関数からなる部分クローン束の構造の研究部分クローン束について,(1)meetが射影関数だけからなるクローンになる極大部分クローンの族の濃度と(2)joinが部分関数全体になる極小部分クローンの族の濃度についてそれぞれ研究を行った。これは,L.Haddad,I.G.Rosenberg両教授との共同研究である。一般に,κ値論理関数からなるクローン(合成に関して閉じている集合)の全体L_kをκ次クローン束という。2次クローン束についてはすでに構造が完全に解明されているが,3次以上のクローン束についてはまだその構造がほとんどわかっていない。高次クローン束L_k(κ【greater than or equal】3)の構造の解明を主たる目標として本研究を行い,次のような成果をあげた。1.距離空間としてのL_3の構造の研究クローン束L_kに距離を導入し,L_kがコンパクト距離空間となることを示した。さらに,L_3におけるmeetの演算を基にしてL_3からL_2への連続写像を構成し,そのような連続写像のもとで,L_3における極大クローンや集積点をなすクローンがどのようにL_2に写像されるかを調べた。極小クローンの分類がまだ完成していない現状では,極小クローンに関する種々の性質の研究は重要である。本研究では,極小クローンの対(C_1,C_2)について,和集合C_1∪C_2が関数全体を生成するとき(C_1,C_2)をgigantic pairと名づけ,gigantic pairを特徴付ける定理を与えるとともに,ほとんどのκに対しgigantic pairが存在することを示した。一方,それを拡張する形で,いくつかの極小クローンのjoinとして表わされるクローンについての研究を始めた。3.超クローンの研究最近I.G.Rosenbergによって導入された超クローン(hyperclone)について,その濃度に関する研究を行い,集合{0,1}上の超クローンの濃度は連続濃度であることを証明した。これは,通常のクローンの場合,2値のクローンの濃度が可算無限であることと対比すると興味深い結果である。4.部分関数からなる部分クローン束の構造の研究部分クローン束について,(1)meetが射影関数だけからなるクローンになる極大部分クローンの族の濃度と(2)joinが部分関数全体になる極小部分クローンの族の濃度についてそれぞれ研究を行った。これは,L.Haddad,I.G.Rosenberg両教授との共同研究である。一般に、k値論理関数からなるクローン(合成に関して閉じている集合)の全体Lkをk次クローン束という。2次クローン束についてはこれまでに構造が完全に解明されているが、3次以上のクローン束についてはまだその構造がほとんどわかっていない。本研究では、2次クローン束に関する知識を利用、あるいは、対比させることにより、高次クローン束Lk(k【greater than or equal】3)の構造の解明を行うことを主た10年度には、主に次のような研究を行い、成果をあげた。1.距離空間としての性質を利用するL_3の構造の研究クローン束L_3におけるmeet(∧)の演算を基にしてL_3からL_2への連続写像を構成することができるが、そのような連続写像のもとで、L_3における極大クローンや集積点をなすクローンがどのようにL_2に写像されるかを調べた。これは、L_2の構造を利用することにより、L_3における集積点の分布状況を調べるのが目的である。2. Lkの極小クローンに関する研究極小クローンの分類がまだ完成していない現状では、極小クローンに関する種々の性質の研究は重要である。 | KAKENHI-PROJECT-10640109 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10640109 |
多値論理関数からなる高次クローン束の構造の研究 | 本研究では、極小クローンの対(C_1,C_2)について、和集合C^1∪C_3が関数全体を生成するとき、(C_1,C_2)をgigantic pairと名づけ、gigantic pairを特徴付ける定理を与えた。また、ほとんどのkに対し、gigantic pairが存在することを示した。3.超クローンの研究最近I.G.Rosenbergによって導入された超クローン(hyperclone)について、その濃度に関する研究を行い、集合{0,1}上の超クローンの濃度は連続濃度であることを証明した。これは、通常のクローンの場合、2値のクローンの濃度が可算無限であることと対比すると興味深い結果である。4.直積の埋め込みによる高次クローン束Lkの構造の研究L_2の直積Lk(k【greater than or equal】3)の中に埋め込むことにより、Lkの構造を調べることを目的としているが、これはまだ基礎的な研究を行っている段階11年度には、通常のクローン束L_kについて研究を進めるとともに、部分関数からなる部分クローン束やhyperoperationからなる超クローンに関する研究を行った。1.クローン束L_3の構造の研究超クローンの束の研究と関連させて、いわゆる正則3値論理関数からなるクローンの濃度が連続無限であることを示した。また、L_3からL_2への連続写像のもとでL_3における極大クローンや集積点をなすクローンがどのようにL_2に写像されるかという問題に関する研究も継続中である。昨年度われわれは、極小クローンの対(C_1,C_2)に対しgigantic pairという概念を導入し、gigantic pairを特徴付ける定理を与えるとともにgigantic pairの存在について調べた。今年度はそれを拡張する形で、いくつかの極小クローンのjoinとして表わされるクローンについての研究を行った。3.部分関数からなる部分クローン束の構造の研究部分クローン束について、(1)meetが射影関数だけからなるクローンになる極大部分クローンの族の濃度と(2)joinが部分関数全体になる極小部分クローンの族の濃度についてそれぞれ研究を行った。これは、L.Haddad,I.G.Rosenberg両教授との共同研究である。4.超クローンの研究近年I.G.Rosenbergによって導入された超クローン(hyperclone)について、われわれはすでに、集合{0,1}上の超クローンの濃度は連続濃度であることを証明した。今年度はさらに、Sheffer型hyper-operationが存在するかどうかという問題についての考察を始め、多少の結果を得ている。 | KAKENHI-PROJECT-10640109 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10640109 |
成熟破骨細胞に発現する受容体型チロシンキナーゼTyro-3とその機能解析 | I.Tyro-3のリガンドであるGas6が、どのように成熟破骨細胞の骨吸収活性に直接作用するかを純粋成熟破骨細胞の象牙片上での培養系を用いて検討した。Gas6は0.3nMから有意に破骨細胞の骨吸収活性を促進し、その促進作用はGas6添加6時間ですでに現れ、少なくとも24時間まで持続した。II.ウサギ破骨細胞のcDNAライブラリーから、Tyro-3特異的RT-PCR primerを用いRT-PCRを行いTyro3cDNA断片(650bp)をサブクローニングした。そのウサギTyro-3の塩基配列はヒトおよびラットTyro-3の配列とそれぞれ92%および93%のホモロジーを示した。III.成熟破骨細胞におけるTyro-3の発現を坑Tyro-3抗体を用いた免疫染色で確認した。また、骨組織でのTyro-3の発現パターンを骨芽細胞、単離破骨細胞、血球系細胞を代表して膵細胞および骨髄細胞を用いて、RT-PCRから検索した。その結果、Tyro3の発現は単離破骨細胞にのみ検出され、骨組織における破骨細胞の特異的なTyro3s発現が確認された。さらに、骨髄細胞と骨芽細胞の共存培養系で酒石酸耐性酸ホスファターゼ陽性の破骨細胞様細胞が出現するのと平行してTyro3の発現が認められ、破骨細胞の分化課程においてTyro3の発現は未分化破骨細胞では小さく、成熟するに従って増強することがわかった。IV.Tyro-3を介したGas6の情報が破骨細胞においてどのように伝達されるか、Tyro-3の下流に位置する情報伝達分子は何かを坑phosphotyrosine抗体および坑c-src、坑PI2-kinase、坑FAK抗体を用いて検討した。その結果、Gas6刺激によってc-src,FAKおよびPI3-kinaseのリン酸化が促成された。すなわち、活性化したTyro3jは、c-src,FAKおよびPI3-kinaseと会合し、情報が伝達されると考えられる。V.破骨細胞の骨吸収活性を指示することの出来る株化間質細胞ST2細胞にいて、活性型ビタミンD3および副甲状腺ホルモンの作用によってGas6産生を増強した。いずれのホルモンとも骨吸収促進作用があることから、その機構にGas6/Tyro3が関与することが示唆された。I.Tyro-3のリガンドであるGas6が、どのように成熟破骨細胞の骨吸収活性に直接作用するかを純粋成熟破骨細胞の象牙片上での培養系を用いて検討した。Gas6は0.3nMから有意に破骨細胞の骨吸収活性を促進し、その促進作用はGas6添加6時間ですでに現れ、少なくとも24時間まで持続した。II.ウサギ破骨細胞のcDNAライブラリーから、Tyro-3特異的RT-PCR primerを用いRT-PCRを行いTyro3cDNA断片(650bp)をサブクローニングした。そのウサギTyro-3の塩基配列はヒトおよびラットTyro-3の配列とそれぞれ92%および93%のホモロジーを示した。III.成熟破骨細胞におけるTyro-3の発現を坑Tyro-3抗体を用いた免疫染色で確認した。また、骨組織でのTyro-3の発現パターンを骨芽細胞、単離破骨細胞、血球系細胞を代表して膵細胞および骨髄細胞を用いて、RT-PCRから検索した。その結果、Tyro3の発現は単離破骨細胞にのみ検出され、骨組織における破骨細胞の特異的なTyro3s発現が確認された。さらに、骨髄細胞と骨芽細胞の共存培養系で酒石酸耐性酸ホスファターゼ陽性の破骨細胞様細胞が出現するのと平行してTyro3の発現が認められ、破骨細胞の分化課程においてTyro3の発現は未分化破骨細胞では小さく、成熟するに従って増強することがわかった。IV.Tyro-3を介したGas6の情報が破骨細胞においてどのように伝達されるか、Tyro-3の下流に位置する情報伝達分子は何かを坑phosphotyrosine抗体および坑c-src、坑PI2-kinase、坑FAK抗体を用いて検討した。その結果、Gas6刺激によってc-src,FAKおよびPI3-kinaseのリン酸化が促成された。すなわち、活性化したTyro3jは、c-src,FAKおよびPI3-kinaseと会合し、情報が伝達されると考えられる。V.破骨細胞の骨吸収活性を指示することの出来る株化間質細胞ST2細胞にいて、活性型ビタミンD3および副甲状腺ホルモンの作用によってGas6産生を増強した。いずれのホルモンとも骨吸収促進作用があることから、その機構にGas6/Tyro3が関与することが示唆された。平成10年度I. Tyro-3のリガンドであるGas6の成熟破骨細胞の骨吸収活性に対する作用の解析Tyro-3のリガンドであるGas6が、どのように成熟破骨細胞の骨吸収活性に直接作用するかを純粋成熟破骨細胞の象牙片上での培養系を用いて検討した。純粋成熟破骨細胞はウサギ長管骨から調整した末分画骨細胞をコラーゲンゲル上に播き込み、プロナーゼ、コラゲナーゼなどの酵素硝化の後、純粋破骨細胞のみを回収し、象牙片上で培養した。Gas6は0.3nMから有意に破骨細胞の骨吸収活性を促進し、その促進作用はCas6添加6時間ですでに現れ少なくとも24時間まで持続した。II.ウサギ成熟破骨細胞に発現する受容体型チロシンキナーゼTyro-3遺伝子の塩基配列の解析ラビット破骨細胞のcDNAライブラリーから、Tyro-3特異的RT- | KAKENHI-PROJECT-10671711 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10671711 |
成熟破骨細胞に発現する受容体型チロシンキナーゼTyro-3とその機能解析 | PCR primerを用いRT-PCRを行いTyro-3 cDNA断片(650bp)をサブクローニングした。そのウサギTyro-3の塩基配列はヒトおよびラットTyro-3の配列とそれぞれ92%および93%のホモロジーを示した。また、ラットTyro-3の全長cDNAからキナーゼドメインを削除したドミナント・ネガティブTyro-3の作製を試みたが、フレームシフトを起こしたものしか得られていず、現在もドミナント・ネガティブTyro-3の作製を継続している。III.成熟破骨細胞におけるTyro-3の発現の確認およびその発現に対する各種ホルモン・局所因子の制御成熟破骨細胞におけるTyro-3の発現を抗Tyro-3抗体を用いた免疫染色で確認した。また、Tyro-3の発現は破骨細胞の前駆細胞には存在せず成熟した破骨細胞に強く発現することが明らかとなった。I.破骨細胞の分化過程におけるTyro3の発現。骨組織でのTyro3の発現パターンを骨芽細胞、単離破骨細胞、血球系細胞を代表して脾細胞および骨髄細胞、ポジティブコントロールとして脳を用いて、RT-PCRから検索した。その結果、Tyro3の発現は単離破骨細胞にのみ検出され、骨組織における破骨細胞の特異的なTyro3発現が確認された。さらに、骨髄細胞と骨芽細胞の共存培養系を用いて、破骨細胞の分化段階でのTyro3の発現を検討した。その結果、Tyro3の発現は共存培養系で酒石酸耐性酸ホスファターゼ陽性の破骨細胞様細胞が出現するのと平行してTyro3の発現が認められ、破骨細胞の分化過程においてTyro3の発現は未分化破骨細胞では小さく、成熟するに従って増強することがわかった。このことからもTyro3は成熟破骨細胞のみに発現することが支持された。II.成熟破骨細胞におけるTyro-3を介したGas6の情報伝達機構の解析。Tyro-3を介したGas6の情報が破骨細胞においてどのように伝達されるか、Tyro-3の下流に位置する情報伝達分子は何かを抗phosphotyrosine抗体およびc-srk,PI3-kinase,FAKなどのチロシンキナーゼに対するする抗体を用いて検討した。その結果、Gas6刺激によってc-src,FAKおよびPI3-kinaseのリン酸化が促された。すなわち、活性化したTyro3は、c-src,FAKおよびPI3-kinaseと会合し、情報が伝達されると考えられる。III.骨構成細胞におけるGas6産生に対する調節機構の解析。破骨細胞の骨吸収活性を支持することのできる株化間質細胞ST2におけるGas6の産生能およびその調節機構を分子レベルで解析した。その結果、ST2は活性型ビタミンD3および副甲状腺ホルモンの作用によってGas6産生を増強した。いずれのホルモンとも骨吸収促進作用があることから、その機構にGas6/Tyro3が関与することが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-10671711 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10671711 |
整形外科領域難治性疾患に対する転写調節因子制御を目的とした新規遺伝子療法の開発 | 1.これまでの検討により、ラット、サルを用いたコラーゲン関節炎モデルにおいて関節炎、関節破壊の進行を抑制することができたが、今後ヒトへの臨床応用にむけて準備をすすめている。2.ヒト軟骨培養モデルでIL-1bにより変性刺激を加えた後、NFkBデコイ型核酸医薬を投与することにより、培養軟骨細胞中のアグリカン及びtype2コラーゲンの減少が抑制された。このことより、NFkBデコイの投与によりヒト軟骨の変性、破壊に対して抑制的に働くことが示唆され、関節リウマチ、変形性関節症に対する関節内投与の可能性が期待される。3.これまで関節炎モデル動物において関節内にNFkBデコイを投与することにより、関節炎の抑制効果を示され有効性を確立できてきたが、今後全身投与の可能性を検討するため関節炎モデルマウスに対してNFkBデコイを静脈内投与することにより関節炎の抑制効果を示すかどうかについて検討中である。4. S化した核酸医薬に較べて生体内での安定性を増強する目的で核酸医薬の両端をループ型に処理したリボン型デコイの特性についての検討を行っている。核酸分解酵素や関節液と同時に処理することによりS型二本鎖核酸に較べてリボン型デコイは分解されにいという実験結果が出ている。リボン型デコイは酵素耐性を保持し、生体内での安定性が増強していると考えられる。5.マウス骨肉腫高肺転移細胞株であるLM8を移植した肺転移モデルマウスにおいて経鼻的にNFkBデコイを導入することにより、肺転移巣の総数が有意に抑制され、生存曲線において生存期間が延長した。1.これまでの検討により、ラット、サルを用いたコラーゲン関節炎モデルにおいて関節炎、関節破壊の進行を抑制することができたが、今後ヒトへの臨床応用にむけて準備をすすめている。2.ヒト軟骨培養モデルでIL-1bにより変性刺激を加えた後、NFkBデコイ型核酸医薬を投与することにより、培養軟骨細胞中のアグリカン及びtype2コラーゲンの減少が抑制された。このことより、NFkBデコイの投与によりヒト軟骨の変性、破壊に対して抑制的に働くことが示唆され、関節リウマチ、変形性関節症に対する関節内投与の可能性が期待される。3.これまで関節炎モデル動物において関節内にNFkBデコイを投与することにより、関節炎の抑制効果を示され有効性を確立できてきたが、今後全身投与の可能性を検討するため関節炎モデルマウスに対してNFkBデコイを静脈内投与することにより関節炎の抑制効果を示すかどうかについて検討中である。4. S化した核酸医薬に較べて生体内での安定性を増強する目的で核酸医薬の両端をループ型に処理したリボン型デコイの特性についての検討を行っている。核酸分解酵素や関節液と同時に処理することによりS型二本鎖核酸に較べてリボン型デコイは分解されにいという実験結果が出ている。リボン型デコイは酵素耐性を保持し、生体内での安定性が増強していると考えられる。5.マウス骨肉腫高肺転移細胞株であるLM8を移植した肺転移モデルマウスにおいて経鼻的にNFkBデコイを導入することにより、肺転移巣の総数が有意に抑制され、生存曲線において生存期間が延長した。1.サルコラーゲン関節炎モデルにおいてnaked NFkBデコイ型核酸医薬の関節内連続投与により、組織学的、画像的にも有意に関節破壊の進行が抑制された。FITCラベルした核酸医薬での検討では関節滑膜細胞中の核内に少なくとも1週間は蛍光が認められたことより、1-2週間間隔の投与は適当であると考えられた。NFkBデコイ型核酸医薬2回投与後の、関節滑膜中のTNFaおよびIL-1bの発現はタンパクレベルで有意に抑制されていた。安全性試験として同関節炎モデルを用い、治療的投与量の90倍以上の濃度で繰り返し5回静脈内投与を施行したが、明らかな副作用、毒性の出現は臨床的にも組織学的にも認められなかった。2.ヒト関節リウマチ滑膜細胞中ではE2Fのアップレギュレーションが認められた。ベクターを用い滑膜細胞内へE2Fデコイ型核酸医薬を導入したところ導入効率は約75%程度であった。またE2Fデコイ型核酸医薬を導入により滑膜細胞の増殖は有意に抑制され、関節破壊抑制効果の可能性が示唆された。3.これまで使用してきたS化核酸医薬にくらべより生体内での安定性を増強させる目的で核酸医薬の両端をループ型に処理したリボン型NFkBデコイ型核酸医薬を考案した。ラット破骨細胞誘導系を用いた検討では破骨細胞の誘導および成熟破骨細胞の活性化の抑制効果を認めた。4.マウス骨肉腫高肺転移細胞株であるLM8においてはE2F、NFkBのアップレギュレーションが認められた。E2F、NFkBデコイ型核酸医薬を導入により有意に細胞増殖抑制が認められた。その作用機序においては細胞周期関連遺伝子の発現に差は認められなかったことより別の機序の関与が示唆された。1.今年度はヒトへの臨床応用をふまえ、サルコラーゲン関節炎モデルでのオーバードーズ投与試験を行い、主要臓器での副作用が認められないことが確認された。2.ヒト軟骨細胞培養モデルでIL-1bにより変性刺激を加えNFkBデコイ型核酸医薬を投与すると、培養軟骨細胞中のTNFaおよびIL-1bの遺伝子発現レベルは有意に抑制された。ヒト変形性関節症への応用が期待される。NFkB | KAKENHI-PROJECT-17390417 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17390417 |
整形外科領域難治性疾患に対する転写調節因子制御を目的とした新規遺伝子療法の開発 | デコイ型核酸医薬2回投与後の、関節滑膜中のTNFaおよびIL-1bの発現はタンパクレベルで有意に抑制されていた。3.ヒト関節リウマチ患者よりえられた滑膜組織にE2Fデコイ型核酸医薬を導入し、ヒト関節軟骨と接触させ、SCIDマウスの背部に移植するモデルを確立した。E2Fデコイ型核酸医薬を導入により滑膜組織中の炎症性細胞の増殖は有意に抑制され、パンヌスによる軟骨の浸食は組織学的に有意に抑制された。3.これまで使用してきたS化核酸医薬にくらべより生体内での安定性を増強させる目的で核酸医薬の両端をループ型に処理したリボン型NFkBデコイ型核酸医薬を考案した。ラットコラーゲン関節炎モデルにおいて関節炎発症後足関節にnakedでリボン型NFkBデコイ型核酸医薬を関節内投与したところ、有意に足関節破壊の進行は抑制され、破壊関節局所での多核TRAP陽性細胞の総数も有意に低下し、破骨細胞誘導抑制を介した関節破壊抑制効果がin vivoで証明された.4.マウス骨肉腫高肺転移細胞株であるLM8を移植した肺転移モデルマウスにおいて、経鼻的に核酸医薬を投与する方法を確立した。FITCラベル核酸医薬が肺内にデリバリーされていることが明らかとなった。プレリミナリーな検討では、NFkBデコイ型核酸医薬経鼻的投与においてマウスの生存が有意に延長した。1.これまでの検討により、ラット、サルを用いたコラーゲン関節炎モデルにおいて関節炎、関節破壊の進行を抑制することができたが、今後ヒトへの臨床応用にむけて準備をすすめている。2.ヒト軟骨培養モデルでIL-1bにより変性刺激を加えた後、NFkBデコイ型核酸医薬を投与することにより、培養軟骨細胞中のアグリカン及びtype2コラーゲンの減少が抑制された。このことより、NFkBデコイの投与によりヒト軟骨の変性、破壊に対して抑制的に働くことが示唆され、関節リウマチ、変形性関節症に対する関節内投与の可能性が期待される。3.これまで関節炎モデル動物において関節内にNFkBデコイを投与することにより、関節炎の抑制効果を示され有効性を確立できてきたが、今後全身投与の可能性を検討するため関節炎モデルマウスに対してNFkBデコイを静脈内投与することにより関節炎の抑制効果を示すかどうかについて検討中である。4.S化した核酸医薬に較べて生体内での安定性を増強する目的で核酸医薬の両端をループ型に処理したリボン型デコイの特性についての検討を行っている。核酸分解酵素や関節液と同時に処理することによりS型二本鎖核酸に較べてリボン型デコイは分解されにいという実験結果が出ている。リボン型デコイは酵素耐性を保持し、生体内での安定性が増強していると考えられる。5.マウス骨肉腫高肺転移細胞株であるLM8を移植した肺転移モデルマウスにおいて経鼻的にNFkBデコイを導入することにより、肺転移巣の総数が有意に抑制され、生存曲線において生存期間が延長した。 | KAKENHI-PROJECT-17390417 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17390417 |
臨床応用を目指した腫瘍胎児性アミノ酸トランスポーターの基礎的研究 | 本研究では腫瘍胎児性アミノ酸トランスポーターの一つであるL type amino acid transpoter-1 (LAT1)が犬の腫瘍性疾患において、新たな治療ターゲット分子として有望であるか否かを基礎的観点から検討を行った。LAT1は正常組織と比較して犬血管肉腫、犬悪性黒色腫、犬乳腺腫瘍等でその発現量が高値を示した。また、これらの腫瘍由来株化細胞を用いてLAT1阻害薬による細胞増殖抑制試験を行ったところ、株化細胞の増殖性は阻害薬によって用量依存的に抑制された。以上より、LAT1は犬腫瘍の新たな治療のターゲットに成り得ることが示唆された。<研究目的>L-type amino acidtransporter 1(LAT1)はアミノ酸トランスポーターの1つで、胎生期の細胞で発現し生命活動に必要な分枝アミノ酸や芳香族アミノ酸を細胞内へ供給する重要な役割を果たしている。最近ではヒトの腫瘍においてLAT1の高発現が明らかにされ、所謂、oncofetal proteinの1つと考えられている。LAT1は、活発な細胞活性を維持するために必要となるアミノ酸を腫瘍細胞に供給し、腫瘍細胞の増殖・維持に重要な役割を果たしていることから、LAT1は腫瘍治療のターゲット分子として注目されている。本研究では、獣医学領域におけるLAT1の腫瘍治療ターゲット分子としての有用性について検討する。本年度の研究実施計画は、LAT1阻害薬の有効性の評価を1) In vitro(犬腫瘍由来細胞株)および2) In vivo (実験動物)で行うことである。<本年度の研究成果> 1)犬乳腺腫瘍由来株価細胞(5株)におけるLAT1の発現解析を行った。LAT1 mRNAおよび蛋白発現をreal-time RT-PCRとWestern blotingによって解析したところ、すべての細胞株においてmRNAと蛋白レベルの双方でLAT1発現が確認された。一方、一般正常組織で発現が確認されるLAT2は1細胞株のみで発現が確認された。2)犬乳腺腫瘍由来細胞株を用いて、LAT1阻害薬(BCHとメルファラン)の有効性を評価した。WST-8による細胞増殖性の評価に加え、トリチュウム-ロイシンを用いた細胞内アミノ酸取り込み実験によって検討したところ、阻害薬は用量に依存して細胞の増殖性、アミノ酸取り込み能を抑制した。以上の結果から、LAT1阻害薬はLAT1発現乳腺腫瘍の治療に有効である可能性が示された。<本研究の目的>L-type-amino acidtransporter 1 (LAT1)はアミノ酸トランスポーターの1つで、胎生期の細胞で発現し生命活動に必要な分枝アミノ酸や芳香族アミノ酸を細胞内へ供給する重要な役割を果たしている。最近では人の腫瘍においてLAT1の高発現が明らかにされ、所謂、oncofetal proteinの1つと考えられている。LAT1は活発な細胞活性を維持するために必要となるアミノ酸を腫瘍細胞に供給し、腫瘍細胞の増殖・維持に重要な役割を果たしていることから、LAT1は腫瘍治療のターゲット分子として注目されている。本研究では獣医学領域におけるLAT1の腫瘍治療ターゲット分子としての有用性について検討する。平成27年度の研究実施計画は平成26年度に引き続き、LAT1阻害薬の有効性を1.細胞株(in vitro)と2.実験動物(in vivo)で行うことである。<本年度の研究成果>1. <In vitroの実験系での研究成果>犬悪性黒色腫由来細胞株(5株)についてLAT1の発現解析を行ったところ、すべての細胞株で蛋白およびmRNAレベルでLAT1の高発現が確認された。これらの細胞株のうち1細胞株を用いて、LAT1阻害薬(BCHおよびメルファラン)の効果を検討したところ、阻害薬は細胞の増殖性およびアミノ酸取り込み能を有意に抑制した。これらの結果から、LAT1阻害薬はLAT1が高発現する悪性黒色腫の治療に有効である可能性が示された。2. <In vivoの実験系での研究成果>ヌードマウスに悪性黒色腫由来細胞株を定着させた後、抗がん剤とLAT1阻害薬の併用効果について、腫瘍塊の大きさと腫瘍の全身への広がりの観点から検討した。その結果、LAT1阻害薬併用は腫瘍の大きさと腫瘍の全身への広がりを相乗的に抑制した。当初の予定では、悪性黒色腫(検討済み)に加え、犬肥満細胞腫株化細胞においても同様のin vitroおよびin vivoの検討を行う予定であったが、平成27年度8月1日付で所属大学が変わり、研究環境のセットアップに時間を要した。犬肥満細胞腫株化細胞での検討は現在行っている。<本研究の目的>L-type-amino acidtransporter 1 (LAT1)はアミノ酸トランスポーターの1つで、胎生期の細胞で発現し生命活動に必要な分枝アミノ酸や芳香族アミノ酸を細胞内へ供給する重要な役割を果たしている。最近では人の腫瘍においてLAT1の高発現が明らかにされ、所謂、oncofetal proteinの1つと考えられている。LAT1は活発な細胞活性を維持するために必要となるアミノ酸を腫瘍細胞に供給し、腫瘍細胞の増殖・維持に重要な役割を果たしていることから、LAT1は腫瘍治療のターゲット分子として注目されている。本研究では獣医学領域におけるLAT1の腫瘍治療ターゲット分子としての有用性について検討する。<平成28年度の研究成績の概要>平成26年度の乳腺腫瘍についての解析、平成27年度の悪性黒色腫についての解析に続き、今年度は血管肉腫について検討を行った。1)血管肉腫脾臓組織と血管肉腫 | KAKENHI-PROJECT-26450409 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26450409 |
臨床応用を目指した腫瘍胎児性アミノ酸トランスポーターの基礎的研究 | 由来株化細胞(5株)を用いてLAT1発現を比較解析したところ、血管肉腫組織および株化細胞において正常脾臓組織よりも有意にLAT1の高発現が確認された。2)これらの血管肉腫細胞株(5株)を用いて、LAT1阻害薬(メルファラン)がドキソルビシンの細胞増殖抑制効果に与える影響を検討したところ、LAT1阻害薬はドキソルビシンの効果を有意に増強した。3)予備実験にて、血管肉腫組織においてLAT1とともにエンドセリンの高発現が確認された。そこで、LAT1とエンドセリンの細胞増殖に対する役割の比較検討を行った。株化細胞におけるエンドセリンレセプターの発現解析を行ったところ、エンドセリンAレセプターの発現がBレセプターに比べ優位であることが確認された。そこで、エンドセリンAレセプター拮抗薬を培養液に添加したところ、細胞の増殖が用量依存的に抑制された。本研究では腫瘍胎児性アミノ酸トランスポーターの一つであるL type amino acid transpoter-1 (LAT1)が犬の腫瘍性疾患において、新たな治療ターゲット分子として有望であるか否かを基礎的観点から検討を行った。LAT1は正常組織と比較して犬血管肉腫、犬悪性黒色腫、犬乳腺腫瘍等でその発現量が高値を示した。また、これらの腫瘍由来株化細胞を用いてLAT1阻害薬による細胞増殖抑制試験を行ったところ、株化細胞の増殖性は阻害薬によって用量依存的に抑制された。以上より、LAT1は犬腫瘍の新たな治療のターゲットに成り得ることが示唆された。1)本年度の目標は当初、LAT1阻害薬の有効性の評価を1)In vitro(犬腫瘍由来細胞株)および2) In vivo (実験動物)の双方で行うことを予定していた。In vitro解析の成果は犬乳腺腫瘍由来細胞株において当初の予定通り得ることができた(前述)。In vitro解析はヌードマウス腫瘍移植モデルを用いて現在行っている途中である。2)LAT1阻害作用を有する分子として現在入手可能なものはBCHとメルファランであるが、人医療での使用を目的として特異的阻害薬が開発されている。臨床例での有効性の検討はこの特異的阻害薬の入手が前提となるが、現在のところ入手に至っていない。LAT1阻害薬の前臨床研究として、種々の腫瘍に対する有効性を細胞株やヌードマウスを使った移植モデルで評価することは、有効腫瘍スペクトルを考える上でも重要である。従って、現在行っている評価法を基盤として、多くの種類の腫瘍細胞株を用いて継続実験を行う。現在検討中である犬肥満細胞腫株化細胞に加え犬血管肉腫株化細胞で検討を予定している。(2)LAT1とエンドセリンの関連性について予備実験にて、血管肉腫組織においてLAT1の高発現とエンドセリンの高発現が確認されている。エンドセリンの発現にはHif-1αの関与が明らかにされており、またLAT1発現にもHif-1αの関与が疑われている。 | KAKENHI-PROJECT-26450409 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26450409 |
ヒトリポペプチド抗原提示分子の同定~新たなウイルス制御パラダイムの確立を目指して | 研究代表者はサルエイズモデルを活用し、ウイルスが産生する「脂質修飾ペプチド(リポペプチド)」を標的とした免疫応答の存在を見出し、その免疫応答を担う鍵分子を発見した。本研究においては、サルにおける第二の鍵分子を発見し、この構造を明らかにした。さらにこれら2つのサル分子の解析結果をもとに、同様の働きをもつヒト分子候補を絞り込むことに成功した。さらにヒト分子の解析に適したトランスジェニックマウス作製の研究基盤を確立した。これらの研究は新たなウイルス制御の理解に道を開くものである。すでに同定を完了した2種のアカゲザルリポペプチド提示分子に共有される特質を明らかにし、ヒトリポペプチド提示分子の同定に向けた道筋を得ることができた。まず、我々が世界に先駆けて同定したアカゲザルリポペプチド提示MHC分子Mamu-B*098に加えて(Nature Communications, 2016)、新たなアカゲザルリポペプチド提示分子B*nov2の分子実態を明らかにし、そのX線結晶構造を高い解像度で解明することに成功した(投稿準備中)。さらには特異的T細胞抗原受容体を包含した共結晶構造の情報が得られつつある。これらの解析の結果、リポペプチド提示分子に特有の抗原結合構造とそれを支えるアミノ酸残基の存在が明らかとなった。他方、タンパク質輸送や分子フォールディングを促進する種々の因子を欠損した細胞において、Mamu-B*098やB*nov2を強制発現させ、安定的な細胞表面発現の有無を検証した。これらの解析をもとに、従来の抗原提示分子には見られない細胞生物学的特質が明らかとなってきた。これらのアカゲザルリポペプチド提示分子の特徴を具備したヒトリポペプチド提示分子を絞り込む目的で、ヒトMHCアリルをコードする遺伝子を網羅的に単離し、条件に合致するアリルHLA-nov1を同定した。将来的な展開を見据え、HLA-nov1をベースにしたトランスジーンを構築し、トランスジェニックマウスの作出に成功した。すでにトランスジェニックマウスの仔が多数得られつつあり、タンパク質発現と機能を検証する段階に達した。ヒトリポペプチド提示分子の同定に向けて、基盤となる2種のアカゲザルリポペプチド提示分子に関する細胞学的特質と構造学的特質を、当初の予知通りに明らかにすることができた。さらにこの情報をもとに、ヒトリポペプチド提示分子候補を絞り込み、それを発現したトランスジェニックマウスの作出をほぼ完了する段階に達した。それとともに、この候補分子のX線結晶構造が得られつつあり、次年度の発展的研究への基盤が十分に確立できたと考えられる。エイズウイルスNefタンパク質は、そのN末端グリシン残基がミリスチン酸修飾を受けることによりその機能(宿主免疫抑制)を発揮する。研究代表者はこのミリスチン酸修飾に起因して生成されるリポペプチド抗原が細胞傷害性T細胞の免疫標的となることを見出し、これを担うアカゲザルリポペプチド提示分子(MHCクラス1アリル)を同定した。そのX線結晶構造解析の結果、このアカゲザルリポペプチド提示分子は抗原結合溝において広く疎水性のBポケットを有し、リポペプチドのアシル鎖部分をアンカーとして収納することがわかった。今年度、第二のアカゲザルリポペプチド提示分子を同定しそのX線結晶構造を解明したところ、微細なアミノ酸構築は第一のアカゲザルリポペプチド提示分子と異なるものの、全体として広い疎水性のBポケットを有し、そこにリガンドのアシル鎖を収納することを見出した。またその細胞表面発現が小胞体ポプチドトランスポーターに依存する旧来のペプチド提示MHCクラス1アリルと異なり、これら2つのリポペプチド提示MHCクラス1アリルはペプチドトランスポーター欠損細胞においてもコントロール細胞と同等の細胞表面発現を認めた。以上の結果から、リポペプチド提示分子の特質として、1)広く疎水性のBポケットを有すること、2)ペプチドトランスポーター非依存的に細胞表面発現することを想定するに至った。この想定をもとにヒトMHCクラス1アリルを検証し、有望なヒトリポペプチド提示分子として8つのアリルを絞り込んだ。これらはBポケットのサイズを規定するアミノ酸ポジションにおいて小さな側鎖を有するアミノ酸が配置されており、さらにペプチドトランスポーター欠損細胞株においてもコントロール細胞と遜色のない細胞表面発現を認めた。これらのリコンビナントタンパク質を調整し、モデルリポペプチドリガンドを用いた結合能の評価に着手した。研究代表者はサルエイズモデルを活用し、ウイルスが産生する「脂質修飾ペプチド(リポペプチド)」を標的とした免疫応答の存在を見出し、その免疫応答を担う鍵分子を発見した。本研究においては、サルにおける第二の鍵分子を発見し、この構造を明らかにした。さらにこれら2つのサル分子の解析結果をもとに、同様の働きをもつヒト分子候補を絞り込むことに成功した。さらにヒト分子の解析に適したトランスジェニックマウス作製の研究基盤を確立した。これらの研究は新たなウイルス制御の理解に道を開くものである。上記の通り、研究は順調に進捗しており、当初の計画通りに進めて行く。具体的進路は、以下の2点である。(項目1)ヒトリポペプチド提示分子のX線結晶構造を確定し、リポペプチド結合を支える構造学的特徴を明らかにする。(項目2)ヒトリポペプチド提示分子を発現したトランスジェニックマウスの樹立と解析を進め、リポペプチド提示という機能的観点から個体レベルでの解析を展開する。項目1については、半年以内に完了できると想定している。一方、項目2については、効率的な免疫応答誘起のトライアルが必要と考えられ、1年間を通して種々の可能性を検証する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-16K15517 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K15517 |
ヒトリポペプチド抗原提示分子の同定~新たなウイルス制御パラダイムの確立を目指して | 感染免疫作出したトランスジェニックマウスについて、種々の遺伝子欠損マウスとの大規模な交配を計画していたが、異なるプロモーターを利用した複数のマウスラインが樹立できたため、まずその基本的解析を優先し、交配を次年度に先送りしたため。種々の遺伝子欠損マウスを購入あるいは樹立し、当該トランスジェニックマウスとの大規模な交配を進める。 | KAKENHI-PROJECT-16K15517 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K15517 |
母親に発達障害のある家族への支援プログラムの応用 | 本研究の目的は、自身に発達障害がある母親に対して、母親や家族を支援をするためのビデオを用いたプログラムを、子育て支援の現場において応用するものであり、平成30年度32年度の3年間で完成させるものである。その基本となるプログラムは平成24年度26年度にかけて研究者が作成したものである(科学研究費挑戦的萌芽研究:NO.24653207)。平成30年度は、研究対象となる家族とその子育て支援の現場となる施設として、2つの対象を選んだ。事例1の研究対象家族については、母親と認定こども園からの協力は得られたが、父親はビデオ撮影に拒否感があるとして、実施には至らなかった。この経過を踏まえて、認定こども園に対して本プログラムを実施する場合の課題点などの意見を聴取した。事例2の研究対象家族は、母親が自閉スペクトラム症と診断されており、子どもも自閉スペクトラム症およびADHDとの診断を受け、父親は仕事上不在が続き、実質的には母親が一人で子育てを担っていた。事例2については、家族(母子)に研究の依頼を行った上で、平成30年11月31年2月末までの間に児童発達支援事業所においてビデオ検証を4回実施した。実施に際しては、基本プログラムを参考にしながらも、子ども、母親、および児童発達支援事業所職員らが現実的に実施できるよう内容を変更する形に応用した。具体的には、家庭内に定点カメラを設置し、検証する映像は母子が選び、検証場面にも父親は参加せず、子どもが検証に参加する、という形での応用であった。プログラムの初回と最後には、TK式親子関係テストやPSII育児ストレスインデックスを実施して、親子双方の意識の変化などを確認した。児童発達支援事業所の職員は親子に負担なくプログラムが実施できるよう研究に協力した。また、プログラム終了後には研究者と施設職員は課題や成果について協議を行った。平成30年度の研究がおおむね順調に進展していると判断した理由は、当初の計画通り、研究対象家族を選び、基本プログラムを応用する実験を実際の子育て支援の現場で実施することができたためである。平成30年度は2家族に対してのプログラム実施を試みたが、結果的には1家族への実施に留まった。実施できなかった1家族については、子どもの通う認定こども園から意見聴取を行うことが可能であった。このデータは、今後プログラム実施の応用版作成の参考とする予定である。実験の実施に至った家族(事例2)については、子どもの通う児童発達支援事業所において協力を得ながら、家族のスタイルに合わせた形で基本プログラムを応用することができた。基本プログラムを応用した点は、以下の通りである。1基本プログラムでは研究所内で家族の触れ合いを撮影したが、事2の親子は、実際の生活場面における課題点を振り返ることを希望したため、家庭での映像を使用することとした点。2家庭の事情で父親はプログラムの実施に参加していない点。基本プログラムは、夫婦の相互扶助を高めることを目的としているが、近年の家庭事情は夫婦が揃っている家庭ばかりではなく、ひとり親家庭における課題も多い。このため家族の実情に合わせることを念頭において実験を行った。3ビデオ検証に小学校5年生の子どもを含めて、4者(子ども、母親、児童発達支援事業所の職員、研究者)で実施した点。なお、検証場面での子どもの参加は、自身の意志に添って実施した。これら基本プログラムを応用して実験を行った結果、親子や職員からは、応用プログラムの実施がその後の親子関係の改善に効果があったという意見がもたらされた。本事例の分析やまとめは今後行う予定であるが、年度ごとに1事例のビデオ検証を実施することを計画していたことから、予定通りおおむね順調に進展していると判断した。本年度は、平成30年度に実験を行った事例2の結果をまとめる。実施した親子関係テストの結果から何が読み取れるかという点で分析し、また、事例の経過の分析も加えて、全体を通して得られた内容を、児童発達支援事業所における応用の結果としてまとめる。その際には1基本プログラムのどの点をどのように応用したのか、2児童発達支援事業所の職員が実施する場合の配慮点について、等について具体的に述べる。さらに、本年度は昨年度と種別の異なる子育て支援施設でのプログラムの実施(ビデオ検証))を計画し実行する。具体的には児童養護施設(1施設)への実施を視野に入れて施設側に依頼する。児童養護施設では家族再統合に向けた子育て支援が行われていることから、通常は子どもとは暮らすことができない家族に対して実施することとなる。さらに母親に発達障害があることを踏まえて、本プログラム(ビデオ観察と検証)がどのように応用できるのかを検討する。方法としては、子どもとの面会時にビデオ観察法を実施することが考えられる。または、保護者の意向を尋ねた上で、家庭での一時帰宅時の様子をビデオに撮り、施設に戻った際に、保護者、施設職員とともにビデオ検証を行うことも考えられる。子どもも一緒に検証することが復帰に向けて最適と考えられるならば、その方法も視野に入れることとする。いずれにしても、児童養護施設においては児童指導員や保育士が親代わりとして子どもに接していることから、どのような応用が可能であるのか、或いはどのような点が限界として考えられるのか、施設職員に協力を依頼して、応用の可能性を検討していく予定である。そのためには、施設職員への協力依頼に具体的な説明を行う必要がある。万が一保護者への実施が難しい場合でも、児童養護施設での本プログラム応用案の意見を聴取して、可能な範囲で施設における実施を目指す。 | KAKENHI-PROJECT-18K03164 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K03164 |
母親に発達障害のある家族への支援プログラムの応用 | 本研究の目的は、自身に発達障害がある母親に対して、母親や家族を支援をするためのビデオを用いたプログラムを、子育て支援の現場において応用するものであり、平成30年度32年度の3年間で完成させるものである。その基本となるプログラムは平成24年度26年度にかけて研究者が作成したものである(科学研究費挑戦的萌芽研究:NO.24653207)。平成30年度は、研究対象となる家族とその子育て支援の現場となる施設として、2つの対象を選んだ。事例1の研究対象家族については、母親と認定こども園からの協力は得られたが、父親はビデオ撮影に拒否感があるとして、実施には至らなかった。この経過を踏まえて、認定こども園に対して本プログラムを実施する場合の課題点などの意見を聴取した。事例2の研究対象家族は、母親が自閉スペクトラム症と診断されており、子どもも自閉スペクトラム症およびADHDとの診断を受け、父親は仕事上不在が続き、実質的には母親が一人で子育てを担っていた。事例2については、家族(母子)に研究の依頼を行った上で、平成30年11月31年2月末までの間に児童発達支援事業所においてビデオ検証を4回実施した。実施に際しては、基本プログラムを参考にしながらも、子ども、母親、および児童発達支援事業所職員らが現実的に実施できるよう内容を変更する形に応用した。具体的には、家庭内に定点カメラを設置し、検証する映像は母子が選び、検証場面にも父親は参加せず、子どもが検証に参加する、という形での応用であった。プログラムの初回と最後には、TK式親子関係テストやPSII育児ストレスインデックスを実施して、親子双方の意識の変化などを確認した。児童発達支援事業所の職員は親子に負担なくプログラムが実施できるよう研究に協力した。また、プログラム終了後には研究者と施設職員は課題や成果について協議を行った。平成30年度の研究がおおむね順調に進展していると判断した理由は、当初の計画通り、研究対象家族を選び、基本プログラムを応用する実験を実際の子育て支援の現場で実施することができたためである。平成30年度は2家族に対してのプログラム実施を試みたが、結果的には1家族への実施に留まった。実施できなかった1家族については、子どもの通う認定こども園から意見聴取を行うことが可能であった。このデータは、今後プログラム実施の応用版作成の参考とする予定である。実験の実施に至った家族(事例2)については、子どもの通う児童発達支援事業所において協力を得ながら、家族のスタイルに合わせた形で基本プログラムを応用することができた。基本プログラムを応用した点は、以下の通りである。1基本プログラムでは研究所内で家族の触れ合いを撮影したが、事2の親子は、実際の生活場面における課題点を振り返ることを希望したため、家庭での映像を使用することとした点。2家庭の事情で父親はプログラムの実施に参加していない点。基本プログラムは、夫婦の相互扶助を高めることを目的としているが、近年の家庭事情は夫婦が揃っている家庭ばかりではなく、ひとり親家庭における課題も多い。このため家族の実情に合わせることを念頭において実験を行った。 | KAKENHI-PROJECT-18K03164 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K03164 |
GnRHニューロンにおける形態変動解析のための機能科学的アプローチ | GnRHニューロンの制御に関して近年注目を集めるkisspeptinに対する抗体を作製して、kisspeptin神経の視床下部における神経線維の分布から、その生理作用に関して解析を進めた。Kisspeptin神経線維のGnRH神経細胞体への近傍への投射は稀であり、代わってKisspeptin神経線維は視床下部内の背側弓状核に密な分布が認められた。この領域は下垂体からのプロラクチン分泌を制御するDopamineニューロンが分布する(TIDA neuron)。本研究による形態学的解析結果は、kisspeptin神経線維はTIDA neuronにシナプスを介した連絡があることを示している。また生理学的な応答として、TIDA neuronはkisspeptinに応答した細胞内カルシウムの上昇、神経活動マーカーFosの発現誘導を見出した。以上よりkisspeptinによるDopamine neuronを介したプロラクチン分泌の制御が明らかとなった。更にはプロラクチンの脳内への浸潤によるGnRHニューロンを含めた神経内分泌制御の可能性が期待できる。GnRHニューロンの制御に関して近年注目を集めるkisspeptinに対する抗体を作製して、kisspeptin神経の視床下部における神経線維の分布から、その生理作用に関して解析を進めた。Kisspeptin神経線維のGnRH神経細胞体への近傍への投射は稀であり、代わってKisspeptin神経線維は視床下部内の背側弓状核に密な分布が認められた。この領域は下垂体からのプロラクチン分泌を制御するDopamineニューロンが分布する(TIDA neuron)。本研究による形態学的解析結果は、kisspeptin神経線維はTIDA neuronにシナプスを介した連絡があることを示している。また生理学的な応答として、TIDA neuronはkisspeptinに応答した細胞内カルシウムの上昇、神経活動マーカーFosの発現誘導を見出した。以上よりkisspeptinによるDopamine neuronを介したプロラクチン分泌の制御が明らかとなった。更にはプロラクチンの脳内への浸潤によるGnRHニューロンを含めた神経内分泌制御の可能性が期待できる。平成20年度の実験研究については、GnRHプロモータにEGFP遺伝子を組み込んで開発したトランスジェニクラットを材料として、共焦点レーザ走査顕微鏡を利用して、コンピューター画像処理によって、GnRHニューロン形態の三次元画像の構築と解析を行った。GnRHは主に視索前野に存在するGnRHニューロンによって魔生されている。思春期発動に伴ってGnRHニューロンの形態にも何らかの変化が起っている可能性があるが、その形態的変化に関して十分な検討はなされていない。本研究では、新しいアプローチで思春期前後の視索前野のGnRHニューロンの形態を詳細に検討した。GnRHニューロンは、主に単極性と双極性であり、spine様の突起を持つか否かによってさらにsmooth typeとirregular typeに分けられる。思春期前後の動物のいずれでも、双極性ニューロンにはsmooth typeが多く、単極性ニューロンにはirregular typeが多かった。思春期後の動物では双極性GnRHニューロンが多く見られ、逆に思春期前の動物では単極性のほうが多いことが確認された。GnRHニューロンには、特にirregular typeのGnRHニューロンに多くのspine様が確認された。GnRHニューロンへのシナプス入力を調べるために、Synaptophysin二重蛍光免疫染色を行った。GnRHニューロンへ入力するpresynapticterminalsは主にGnRHニューロンのspineに分布している。思春期発動に伴い、GnRHニューロンへのシナプス入力を増加することが確認された。以上の結果により、動物の成熟に伴いGnRHの機能的活性が上昇するに従って、GnRHニューロンの形態やシナプス形成も変化し、機能的成熟と相関する可能性が示唆された。現在、これらのデータを含む論文を投稿準備中。生殖神経内分泌の中核であるGnRHニューロンへの入力に関して形態学的な検討を行った。GnRHニューロンへの制御入力として、kisspeptinが近年注目を集めている。我々はkisspeptinに対する抗体を作製して、kisspeptin以外のへの交叉反応をNeuropeptide FFを前吸収させることのより除外して、kisspetin神経細胞体、神経線維を特異的に可視化することに成功した。この染色法を用いてGnRHニューロンへのkisspeptin神経線維の連絡を検討したところ、細胞体周囲にkisspeptin神経線維はほとんど検出されなかった。またGnRH神経は正中隆起に投射され、その近傍でkisspeptin神経線維と混在が認められたが、明確な接触は観察し得なかった。この傾向は思春期の前、中、後でも一貫していた。この結果は生理学的、分子遺伝学的に示されている"kisspeptinによるGnRHニューロンの制御"に関して、形態学的にはまだ支持をしえないことを示している。一方Kisspeptin神経線維は背側弓状核に密な分泌が観察された。この領域は下垂体からのプロラクチン分泌を制御するドーパミンニューロンが分布する。Kisspeptin神経線維はドーパミンニューロンとの密な接触が多く観察され、脳室へのkisspeptin注入によりドーパミン神経細胞へのcFosの発現を観察した。以上の結果はkisspeptinから、ドーパミンを介したプロラクチン分泌の制御、更にはプロラクチンの脳内への浸潤によるGnRHニューロンを含めた神経内分泌制御の可能性を示唆している。 | KAKENHI-PROJECT-20500316 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20500316 |
GnRHニューロンにおける形態変動解析のための機能科学的アプローチ | 我々はGnRHニューロンの制御に関して近年注目を集めるkisspeptinに対する抗体を作製して、kisspeptin神経の視床下部における神経線維の分布から、その生理作用に関して解析を進めた。Kisspeptin神経線維は視床下部内の背側弓状核に密な分布が認められた。この領域は下垂体からのプロラクチン分泌を制御するDopamineニューロンが分布する(TIDA neuron)。二重蛍光免疫組織化学によりKisspeptin神経線維はTIDA neuronとの密な接触が多く観察された。さらにSynaptphysin(シナプス構成タンパク)/Tyrosinhydroxylase(Dopamine産生律速酵素)/kisspeptin三重蛍光染色でも3種の輝点は一致が観察された。免疫電子顕微鏡観察では、TIDA neuronの細胞体、樹状突起にkisspeptin神経線維との間にシナプス構造をを見出した。これらの結果はkisspeptin神経からTIDA neuronにシナプスを介した連絡があることを示している。生理学的な応答として、視床下部分散培養系におけるTIDA neuronはkisspeptinに応答した細胞内カルシウムの上昇を見出した。以上の結果はkisspeptinによるDopamine neuronを介したプロラクチン分泌の制御を強く示唆している。更にはプロラクチンの脳内への浸潤によるGnRHニューロンを含めた神経内分泌制御の可能性が期待できる。 | KAKENHI-PROJECT-20500316 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20500316 |
岩盤のゆるみ領域測定のための真空透気試験に関する研究 | 本研究は岩盤のゆるみ領域を測定するための真空透気試験について,(1)試験装置の製作,(2)試験装置の動作確認,(3)ゆるみ領域の評価プログラムの開発,に焦点を絞り基礎的研究を行った。その結果,以下に示す成果を得た。(1)試験装置の製作:岩盤に削孔されたボ-リング孔に挿入する圧力センサ付き真空室を有するパッカ-および圧力,流量等を測定する計測装置を製作した。これらは,現場において使用することを念頭におきハンディなものとした。(2)試験装置の動作確認:ドラムカンに土,または,コンクリ-トをつめた供試体を用いて,装置の動作確認を行った。当初は装置上の不都合がいくつかあったが,改良の結果,実用上問題のない精度で圧力,流量および温・湿度を計測できること,並びに真空室の気密性が確認された。さらに,試験結果を自動収録するためのパソコン用のデ-タ収録プログラムを作成した。(3)ゆるみ領域の評価プログラムの開発:試験結果からゆるみ領域の範囲を推定するプログラムを開発した。まず,亀裂密度の高い岩盤を不均質な多孔質媒体の軸対称3次元場としてモデル化し,測定孔における気圧回復が岩盤のゆるみの大きさおよび範囲によってどのように異なるかを数値解析によって検討した。また,亀裂密度の小さい場合については,2次元の亀裂系モデルを設定し,亀裂開口幅のばらつきを考慮して,気圧回復測定結果に基づくゆるみ有無の判定結果における過誤の危険率を検討した。さらに多孔質地盤における解析手法を用いて,岩盤のゆるみ領域の固有透過度を均質地盤の値として評価する逆解析手法を開発した。以上の研究によって,ゆるみ領域に新しい評価試験法の基礎的なパ-ツができあがったと考えている。今後は,実際への適用を試みながら実用化を図るつもりである。本研究は岩盤のゆるみ領域を測定するための真空透気試験について,(1)試験装置の製作,(2)試験装置の動作確認,(3)ゆるみ領域の評価プログラムの開発,に焦点を絞り基礎的研究を行った。その結果,以下に示す成果を得た。(1)試験装置の製作:岩盤に削孔されたボ-リング孔に挿入する圧力センサ付き真空室を有するパッカ-および圧力,流量等を測定する計測装置を製作した。これらは,現場において使用することを念頭におきハンディなものとした。(2)試験装置の動作確認:ドラムカンに土,または,コンクリ-トをつめた供試体を用いて,装置の動作確認を行った。当初は装置上の不都合がいくつかあったが,改良の結果,実用上問題のない精度で圧力,流量および温・湿度を計測できること,並びに真空室の気密性が確認された。さらに,試験結果を自動収録するためのパソコン用のデ-タ収録プログラムを作成した。(3)ゆるみ領域の評価プログラムの開発:試験結果からゆるみ領域の範囲を推定するプログラムを開発した。まず,亀裂密度の高い岩盤を不均質な多孔質媒体の軸対称3次元場としてモデル化し,測定孔における気圧回復が岩盤のゆるみの大きさおよび範囲によってどのように異なるかを数値解析によって検討した。また,亀裂密度の小さい場合については,2次元の亀裂系モデルを設定し,亀裂開口幅のばらつきを考慮して,気圧回復測定結果に基づくゆるみ有無の判定結果における過誤の危険率を検討した。さらに多孔質地盤における解析手法を用いて,岩盤のゆるみ領域の固有透過度を均質地盤の値として評価する逆解析手法を開発した。以上の研究によって,ゆるみ領域に新しい評価試験法の基礎的なパ-ツができあがったと考えている。今後は,実際への適用を試みながら実用化を図るつもりである。 | KAKENHI-PROJECT-03650408 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03650408 |
超低体温下における循環停止法の安全性確保に関する実験的検討 | 実験的検討として、32°Cから20°Cの段階的低体温下に種々の時間、虚血侵襲を与え、海馬CA1領域の錐体細胞の組織学的な変化および海馬領域での反応について観察した。スナネズミ前脳虚血モデルを用い、5分から120分間両側総頸動脈を遮断した。組織学的検討は虚血あるいはシャム手術後7日目に行った。海馬CA1領域の錐体細胞の遅発性神経細胞死(以下DNDとす)を評価するためにクレシルバイオレット染色とMAP2免疫染色を用いた。またアストロサイトの反応を見るためにGFAP免疫染色を、マイクログリアの反応を観察するためにイソレクチンB4組織染色を用いた。32°C10分間あるいは28°C20分間の前脳虚血では、CA1領域にDNDは起こらなかった。しかし32°C20分間あるいは28°C30分間の虚血では、CA1領域の錐体細胞に高度の変性が起こった。超低体温下においては、24°C60分間あるいは20°C120分間という、今回の実験系においてそれぞれの温度で動物が生存しうる最長の虚血時間を負荷してもCA1領域にDNDは起こらなかった。アストロサイトの反応性の変化は虚血後DNDが起こった動物だけでなく、虚血侵襲を与えたにもかかわらずDNDが誘導されなかった動物の海馬全体において観察された。これに対し反応性マイクログリアの分布は、虚血後DNDが発生した動物のCA1領域に限局して観察された。これらの実験結果は、超低体温法の著明な神経保護効果を示している。また低体温下においても、グリア細胞の反応は虚血侵襲後の神経細胞の生死の過程に重要な役割を果たしていることを示唆している。またこの超低体温法を臨床例における循環停止中の脳保護法として使用し、胸部大動脈瘤手術などを施行し、さらに縦隔悪性腫瘍の拡大手術にも応用し、良好な結果を得た。実験的検討として、32°Cから20°Cの段階的低体温下に種々の時間、虚血侵襲を与え、海馬CA1領域の錐体細胞の組織学的な変化および海馬領域での反応について観察した。スナネズミ前脳虚血モデルを用い、5分から120分間両側総頸動脈を遮断した。組織学的検討は虚血あるいはシャム手術後7日目に行った。海馬CA1領域の錐体細胞の遅発性神経細胞死(以下DNDとす)を評価するためにクレシルバイオレット染色とMAP2免疫染色を用いた。またアストロサイトの反応を見るためにGFAP免疫染色を、マイクログリアの反応を観察するためにイソレクチンB4組織染色を用いた。32°C10分間あるいは28°C20分間の前脳虚血では、CA1領域にDNDは起こらなかった。しかし32°C20分間あるいは28°C30分間の虚血では、CA1領域の錐体細胞に高度の変性が起こった。超低体温下においては、24°C60分間あるいは20°C120分間という、今回の実験系においてそれぞれの温度で動物が生存しうる最長の虚血時間を負荷してもCA1領域にDNDは起こらなかった。アストロサイトの反応性の変化は虚血後DNDが起こった動物だけでなく、虚血侵襲を与えたにもかかわらずDNDが誘導されなかった動物の海馬全体において観察された。これに対し反応性マイクログリアの分布は、虚血後DNDが発生した動物のCA1領域に限局して観察された。これらの実験結果は、超低体温法の著明な神経保護効果を示している。また低体温下においても、グリア細胞の反応は虚血侵襲後の神経細胞の生死の過程に重要な役割を果たしていることを示唆している。またこの超低体温法を臨床例における循環停止中の脳保護法として使用し、胸部大動脈瘤手術などを施行し、さらに縦隔悪性腫瘍の拡大手術にも応用し、良好な結果を得た。虚血性神経細胞死には、激しい障害によって神経細胞が急激に死ぬ壊死(necrosis)と、虚血に対して特に脆弱な神経細胞のグループが、より軽度の障害によって急性の死を免れても数日数週間後に死に至る遅発性神経細胞死(delayed neuronal cell death以下DNDと略す)とが存在する。これまで我々は、一貫して超低体温循環停止法における脳保護に関する研究を続けてきており、スナネズミ前脳虚血モデルを作成し、低体温によって海馬CA1領域のDNDが抑制できることを組織学的に確認していた。今回、同モデルを用いて、虚血性神経細胞障害時における神経細胞周囲のグリア細胞の変化を観察した。GFAP免疫染色を用いて、アストログリアを観察し、この組織のGFAP陽性率(アストログリアの面積比)の画像解析装置によって解析した結果、虚血障害を加えたモデルの脳ではGFAP陽性率が高い(アストログリアが肥大化)ことを確認した。アストログリアは、一般的に神経保護作用を持つといわれている。またその陽性率は脳に加わった虚血障害の程度と正の相関を示した。虚血時低体温の導入によって、このGFAP陽性率は、ある程度の低下をみるが、完全にコントロール(非虚血手術群)レベルまでは低下しなかった。このことは、低体温環境下においてもアストログリアは、虚血障害に反応して肥大化し得る事とともに、低体温処理によってDNDは妨げるものの、アストログリアの肥大化を必要とするような脳への虚血障害を完全には防ぎ得ていない可能性を示していると考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-08671522 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08671522 |
超低体温下における循環停止法の安全性確保に関する実験的検討 | 実験的検討として、32°Cから20°Cの段階的低体温下に種々の時間、虚血侵襲を与え、海馬CA1領域の錐体細胞の組織学的な変化および海馬領域でのグリア細胞の反応について観察した。スナネズミ前脳虚血モデルを用い、5分から120分間両側総頸動脈を遮断した。組織学的検討は虚血あるいはシャム手術後7日目に行った。海馬CA1領域の錐体細胞の遅発性神経細胞死(以下DNDとす)を評価するためにクレシルバイオレット染色とMAP2免疫染色を用いた。またアストロサイトの反応を見るためにGFAP免疫染色を、マイクログリアの反応を観察するためにイソレクチンB4組織染色を用いた。32°C10分間あるいは28°C20分間の前脳虚血では、CA1領域にDNDは起こらなかった。しかし32°C20分間あるいは28°C30分間の虚血では、CA1領域の錐体細胞に高度の変性が起こった。超低体温下においては、24°C60分間あるいは20°C120分間という、今回の実験系においてそれぞれの温度で動物が生存しうる最長の虚血時間を負荷してもCA1領域にDNDは起こらなかった。アストロサイトの反応性の変化は虚血後DNDが起こった動物だけでなく、虚血侵襲を与えたにもかかわらずDNDが誘導されなかった動物の海馬全体において観察された。これに対し反応性マイクログリアの分布は、虚血後DNDが発生した動物のCA1領域に限局して観察された。これらの実験結果は、超低体温法の著明な神経保護効果を示している。また低体温下においても、グリア細胞の反応は虚血侵襲後の神経細胞の生死の過程に重要な役割を果たしていることを示唆している。またこの超低体温法を臨床例における循環停止中の脳保護法として使用し、胸部大動脈瘤手術などを施行し、さらに縦隔悪性腫瘍の拡大手術にも応用し、良好な結果を得た。 | KAKENHI-PROJECT-08671522 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08671522 |
革新的なバイオ医薬創製に向けた分子連結技術の高度化 | 本年度は、研究代表者らが開発したタンパク質連結技術を用いて、ナチュラルキラー細胞表面抗原CD16および2種のがん関連抗原(EGFRおよびHER2)を標的とするヘテロ4量体型三重特異性抗体の調製および機能評価を進めた。まず、大腸菌を用いて組換え抗体を発現させ、金属キレートアフィニティークロマトグラフィーにより目的タンパク質を高純度に精製した。ゲルろ過クロマトグラフィーにより組換え抗体の会合状態を調べたところ、設計通りのヘテロ4量体と考えられるピークが見られたが、2量体と考えられる分子種も同程度存在することがわかった。以前に作製した二重特異性抗体においては、主にヘテロ4量体として存在したことから、新たに2つの抗体可変領域を連結したことによって立体障害が生じ、短鎖ペプチド間の相互作用に影響を与えたと考えている。フローサイトメトリーを用いて、がん細胞への結合を評価した結果、組換え抗体は標的がん細胞に対して特異的に結合することがわかった。表面プラズモン共鳴法(SPR法)を用いて、可溶性CD16に対する結合の速度論的解析を行った結果、結合価が1価の抗体と比較して、解離速度が遅いことがわかった。また、可溶性EGFRを固定化したセンサーチップに対して、組換え抗体を添加した後、さらに可溶性CD16および可溶性HER2を順に添加したところ、すべての場合においてレスポンスの増加が見られたことから、作製した組換え抗体は三重特異性を有すると考えた。作製した組換え抗体は、期待通りの機能を示したが、設計とは異なる分子種が含まれていることがわかったため。抗体可変領域同士の立体障害を緩和するために、ペプチドリンカーの鎖長や配列を検討する。当初の計画よりやや遅れているため、進捗状況に応じて、作製する組換え抗体の絞り込みも検討する。本研究では、研究代表者らが開発した特異的タンパク質連結技術を発展させることによって、優れた機能を発揮するバイオ医薬開発技術を確立することを目的としている。本年度は、ヘテロ4量体を形成する短鎖ペプチドを利用することによって、T細胞表面抗原および2種のがん関連抗原を標的とする三重特異性抗体を新たに設計し、その調製系の構築を進めた。大腸菌を用いて組換え抗体を発現させ、培養上清から金属キレートアフィニティークロマトグラフィーにより精製したところ、高純度な目的タンパク質を得ることができた。フローサイトメトリーを用いて、標的細胞への結合を評価した結果、2種のがん細胞に対する結合は見られたが、T細胞に対する結合は見られなかった。今回設計した組換え抗体では、短鎖ペプチドのヘテロ会合を介して、合計6つの抗体可変領域が連結されるため、可変領域の増加に伴って立体障害が生じ、標的細胞への結合に影響を与えたのかもしれない。現在、原因の究明に向けて検討を進めている。また、ナチュラルキラー細胞表面抗原および2種のがん関連抗原を標的とする三重特異性抗体についても、大腸菌発現系による調製を進めた結果、前述と同様の方法を用いて、目的タンパク質を得ることができた。現在、調製した組換え抗体について、標的細胞に対する結合などの評価を進めており、ナチュラルキラー細胞をエフェクター細胞として用いたがん細胞傷害性の評価も検討している。研究代表者らが開発したタンパク質連結技術を用いて、三重特異性抗体を作製できる可能性を示すことができたと考えているが、作製した組換え抗体は、期待した機能を十分に示さなかったことから、当初計画していた評価に遅れが生じているため。本年度は、研究代表者らが開発したタンパク質連結技術を用いて、ナチュラルキラー細胞表面抗原CD16および2種のがん関連抗原(EGFRおよびHER2)を標的とするヘテロ4量体型三重特異性抗体の調製および機能評価を進めた。まず、大腸菌を用いて組換え抗体を発現させ、金属キレートアフィニティークロマトグラフィーにより目的タンパク質を高純度に精製した。ゲルろ過クロマトグラフィーにより組換え抗体の会合状態を調べたところ、設計通りのヘテロ4量体と考えられるピークが見られたが、2量体と考えられる分子種も同程度存在することがわかった。以前に作製した二重特異性抗体においては、主にヘテロ4量体として存在したことから、新たに2つの抗体可変領域を連結したことによって立体障害が生じ、短鎖ペプチド間の相互作用に影響を与えたと考えている。フローサイトメトリーを用いて、がん細胞への結合を評価した結果、組換え抗体は標的がん細胞に対して特異的に結合することがわかった。表面プラズモン共鳴法(SPR法)を用いて、可溶性CD16に対する結合の速度論的解析を行った結果、結合価が1価の抗体と比較して、解離速度が遅いことがわかった。また、可溶性EGFRを固定化したセンサーチップに対して、組換え抗体を添加した後、さらに可溶性CD16および可溶性HER2を順に添加したところ、すべての場合においてレスポンスの増加が見られたことから、作製した組換え抗体は三重特異性を有すると考えた。作製した組換え抗体は、期待通りの機能を示したが、設計とは異なる分子種が含まれていることがわかったため。当初計画よりやや遅れているため、期待した機能を示さなかった組換え抗体について、原因の究明を進めつつ、もう一方の組換え抗体について、迅速に評価を行う。進捗状況に応じて、作製する組換え抗体を絞り込む必要性も検討する。抗体可変領域同士の立体障害を緩和するために、ペプチドリンカーの鎖長や配列を検討する。当初の計画よりやや遅れているため、進捗状況に応じて、作製する組換え抗体の絞り込みも検討する。 | KAKENHI-PROJECT-17K08368 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K08368 |
自己組織化単分子膜を反応場とした選択的結合切断反応の機構解明 | 化学者の夢の一つとして、内殻電子励起によるサイト選択的化学結合切断反応の研究を行い、その選択性が自己組織化単分子膜(SAM)上において格段に向上することを見出した。本研究の主目的はこの反応の選択性が何故SAM膜上でうまく制御できるかという問いに答えることである。その選択性とSAM膜の主鎖の種類と長さとの関連性を精密に調べることにより、選択性はSAM膜上に生じた反応前駆体の寿命に大きく左右されることが判明し、主鎖の長さを短くして寿命を短くすると、反応性は減少するが、選択性は向上することが判明した。化学者の夢の一つとして、内殻電子励起によるサイト選択的化学結合切断反応の研究を行い、その選択性が自己組織化単分子膜(SAM)上において格段に向上することを見出した。本研究の主目的はこの反応の選択性が何故SAM膜上でうまく制御できるかという問いに答えることである。その選択性とSAM膜の主鎖の種類と長さとの関連性を精密に調べることにより、選択性はSAM膜上に生じた反応前駆体の寿命に大きく左右されることが判明し、主鎖の長さを短くして寿命を短くすると、反応性は減少するが、選択性は向上することが判明した。申請者らは、気相孤立分子系では観測が困難であった元素選択的内殻電子励起によるサイト選択的イオン解離反応が表面分子系で顕著に観測されることを見出してきた。さらに、反応場としてアルカン主鎖長が15(n=15)の自己組織化単分子膜を用いることによりその選択性が格段に向上することも見出してきた。本研究では、何故、自己組織化膜において選択性が向上するのかを、選択性とアルカン主鎖長との関連を精密に調べることによりサイト選択的イオン解離反応の反応機構の全貌を解明することを目的としている。今年度は、以下の研究を実施した。1.主鎖長が21(n=21)の試料を調整し、その選択的イオン解離反応を調べた結果、選択性が予想通りやや低下することを確認した。2.今年度購入した/AFM/STMヘッドによる電気伝導度の測定も行い、n=15の試料に比べてn=21の試料ではその電気伝導度が1桁以上低下していることを確認した。以上の結果は、申請者が表面分子系で選択性が顕著に観測される理由として提案してきた仮説を支持する重要な知見である。申請者らは、内殻励起による特定の結合切断反応の選択性が自己組織化単分子膜(SAM)上において向上することを見出し、その選択性とアルカン主鎖長との関連を精密に調べることによりサイト選択的イオン解離反応の反応機構の全貌を解明することを目的として平成22年度の研究計画を実施した。しかしながら研究執行途上で当初予定したアルカン主鎖長の短いSAM膜より鎖長の長いSAM膜による実験の方が本研究目的を達成するために有効であることが判明し、新試薬の入手に時間を要したため実験研究の遂行に約5カ月の遅延が生じた。以下、平成22年度の研究実績を記述する。1.新試薬を用いた主鎖長が21(n=21)のSAM膜試料の作成とその評価および予備的な実験を広島大学のHiSORにおいて実施し、内殻励起反応の反応確率は向上するが、結合切断反応の選択性は予想通りやや低下することを確認した。2.SAM膜の主鎖中に芳香環を挿入したSAM膜試料の実験も並行して行い、内殻励起による結合切断の選択性が向上することを確認した。主鎖中に芳香環を挿入したことにより、反応部位と基板間の伝導性が増し、励起状態の寿命が短くなったために、選択的な速い反応以外の2次的反応が抑制されたことにより選択性が向上したと結論した。3.理論面からの研究も並行して進めており、上記1、2の実験結果を含めて、申請者がこれまでに提案してきた仮説を支持する新しい重要な知見を見出した。申請者らは、内殻励起による特定の結合切断反応の選択性が自己組織化単分子膜(SAM)上において向上することを見出し、その選択性とアルカン主鎖長との関連を精密に調べることによりサイト選択的イオン解離反応の反応機構の全貌を解明することを目的として、本研究課題の最終年度である平成23年度の研究計画を実施した。以下、平成23年度の研究実績を記述する。1,アルカン鎖(CH2)nのnが15のMHDA-SAMを標準試料として、昨年度までに購入した鎖長の異なる試薬(n=2-21)を用いてSAM膜試料を作成し、内殻励起によるサイト選択的結合切断反応の実験を実施した。その結果、nの増加とともに内殻励起反応の反応確率は向上するが、結合切断反応の選択性はやや低下することを確認した。2.SAM膜の主鎖中に芳香環を挿入したSAM膜試料の実験も並行して行い、内殻励起による結合切断の選択性が向上することを確認した。主鎖中に芳香環を挿入したことにより、反応部位と基板間の伝導性が増し、励起状態の寿命が短くなったために、選択的な速い反応以外の2次的反応が抑制されたことにより選択性が向上したと結論した。3.理論面からの研究も並行して進めており、上記1、2の実験結果は、申請者がこれまでに提案してきた仮説を支持する有力な知見である。 | KAKENHI-PROJECT-21350014 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21350014 |
気管支肺アスペルギルス症の発症機序ならびに病原性因子の解明 | ヒト気管支粘膜"Organ culture"法やマウス慢性肺アスペルギルス症モデル等を用いて気管支肺アスペルギルス症の発症機序ならびに病原性因子に関する検討を行い、以下の成績を得た。1)A.fumigatusの野生株は気管支粘膜の線毛ビ-ト数の抑制と著しい気道線毛上皮傷害を惹起した。走査電顕による観察では、A.fumigatusの菌糸増殖に伴い、線毛の著しい配列の乱れ、線毛上皮細胞のtight junctionの乖離、線毛細胞の剥離脱落、菌糸の上皮下への侵入像を認めた。2)Alkaline protease単独欠損変異株の気道線毛ビ-ト数の抑制作用および気道線毛上皮傷害作用は上記の野生株に比べて有意に軽微であり、Alkaline proteaseが気道線毛上皮傷害作用の一翼を担っていることが示唆された。以上の成績は欧州呼吸器学会(Stockholm,1996.9)及び米国胸部疾患学会(San Francisco,1997.5)で報告し、現在英文論文作成中である。II.A.fumigatus変異株(単一因子欠損株)によるマウス慢性肺アスペルギルス症の病変の検討。A.fumigatus変異株(alkaline proteaseまたはrestrictocinの単一因子欠損株)とその野生株を、当教室で開発したマウス慢性肺アスペルギルス症モデルに使用し、惹起される病変の広がり、病変の性状、生存率の差異などを検討したが、変異株と野生株の間で有意の差が認められなかった。現在さらにalkaline proteaseとrestrictocinの両者欠損株を用いた検討を継続している。III.A.fumigatus培養濾液中の高分子のヒト好中球機能抑制物質および気道線毛上皮傷害物質に関しては、想定される複数の物質(protease活性を有する物質と欠く物質)の分離同定を継続中である。ヒト気管支粘膜"Organ culture"法やマウス慢性肺アスペルギルス症モデル等を用いて気管支肺アスペルギルス症の発症機序ならびに病原性因子に関する検討を行い、以下の成績を得た。1)A.fumigatusの野生株は気管支粘膜の線毛ビ-ト数の抑制と著しい気道線毛上皮傷害を惹起した。走査電顕による観察では、A.fumigatusの菌糸増殖に伴い、線毛の著しい配列の乱れ、線毛上皮細胞のtight junctionの乖離、線毛細胞の剥離脱落、菌糸の上皮下への侵入像を認めた。2)Alkaline protease単独欠損変異株の気道線毛ビ-ト数の抑制作用および気道線毛上皮傷害作用は上記の野生株に比べて有意に軽微であり、Alkaline proteaseが気道線毛上皮傷害作用の一翼を担っていることが示唆された。以上の成績は欧州呼吸器学会(Stockholm,1996.9)及び米国胸部疾患学会(San Francisco,1997.5)で報告し、現在英文論文作成中である。II.A.fumigatus変異株(単一因子欠損株)によるマウス慢性肺アスペルギルス症の病変の検討。A.fumigatus変異株(alkaline proteaseまたはrestrictocinの単一因子欠損株)とその野生株を、当教室で開発したマウス慢性肺アスペルギルス症モデルに使用し、惹起される病変の広がり、病変の性状、生存率の差異などを検討したが、変異株と野生株の間で有意の差が認められなかった。現在さらにalkaline proteaseとrestrictocinの両者欠損株を用いた検討を継続している。III.A.fumigatus培養濾液中の高分子のヒト好中球機能抑制物質および気道線毛上皮傷害物質に関しては、想定される複数の物質(protease活性を有する物質と欠く物質)の分離同定を継続中である。 | KAKENHI-PROJECT-08670664 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08670664 |
動物細胞膜カルジオリピンの機能に関する遺伝生化学的研究 | 平成5年度には、ポリエステル布レプリカ法を用い、カルジオリピン(CL)の生合成前駆体と考えられるホスファチジルグリセロール(PG)の生合成初発反応を触媒するホスファチジルグリセロリン酸合成酵素(PGS synthase)欠損温度感受性変異株(PGS-S)を分離し、その性状解析を行った。その結果、PGS-Sを非許容温度下で培養すると、総リン脂質に占めるPG、CLの割合は野性株の10%、30%に減少し、同時に、ミトコンドリアの形態と機能が異常となることを明らかにした。これらのことから、CLがミトコンドリア機能発現に必須であることが示唆された。平成6年度は、PGS-S細胞のミトコンドリア電子伝達系について検討した。細胞ホモジネートを用いてミトコンドリア電子伝達系の種々の活動を測定した結果、非許容温度で培養したPGS-S細胞ホモジネート中のロテノン感受性NADHオキシダーゼ活性が野性株の約50%に低下していた。さらに、電子伝達系の中でもロテノン感受性NADH-ユビキノンリダクターゼ活性(コンプレックI)が野性株に比べ約1/5に低下していた。PGS-Sの復帰株では野性株と差はなかった。以上の結果から、CLがミトコンドリア電子伝達系で重要な働きをしていることが明らかとなった。PGS-Sを用いてPGP synthase遺伝子のクローニングを試みた。HeLa細胞及びCHO-Kl細胞のゲノムDNA、CHO-Kl細胞のcDNAをCa^<2+>ホスフェート法やリポフェクション法でPGS-S細胞に導入し、非許容温度で増殖するトランスフォーマントの選択を行った。現在のところまだ目的のトランスフォーマントは得られておらず、研究を継続中である。なお、細胞分画法によりPGP synthaseはミトコンドリアに局在することを明らかにすることができた。平成5年度には、ポリエステル布レプリカ法を用い、カルジオリピン(CL)の生合成前駆体と考えられるホスファチジルグリセロール(PG)の生合成初発反応を触媒するホスファチジルグリセロリン酸合成酵素(PGS synthase)欠損温度感受性変異株(PGS-S)を分離し、その性状解析を行った。その結果、PGS-Sを非許容温度下で培養すると、総リン脂質に占めるPG、CLの割合は野性株の10%、30%に減少し、同時に、ミトコンドリアの形態と機能が異常となることを明らかにした。これらのことから、CLがミトコンドリア機能発現に必須であることが示唆された。平成6年度は、PGS-S細胞のミトコンドリア電子伝達系について検討した。細胞ホモジネートを用いてミトコンドリア電子伝達系の種々の活動を測定した結果、非許容温度で培養したPGS-S細胞ホモジネート中のロテノン感受性NADHオキシダーゼ活性が野性株の約50%に低下していた。さらに、電子伝達系の中でもロテノン感受性NADH-ユビキノンリダクターゼ活性(コンプレックI)が野性株に比べ約1/5に低下していた。PGS-Sの復帰株では野性株と差はなかった。以上の結果から、CLがミトコンドリア電子伝達系で重要な働きをしていることが明らかとなった。PGS-Sを用いてPGP synthase遺伝子のクローニングを試みた。HeLa細胞及びCHO-Kl細胞のゲノムDNA、CHO-Kl細胞のcDNAをCa^<2+>ホスフェート法やリポフェクション法でPGS-S細胞に導入し、非許容温度で増殖するトランスフォーマントの選択を行った。現在のところまだ目的のトランスフォーマントは得られておらず、研究を継続中である。なお、細胞分画法によりPGP synthaseはミトコンドリアに局在することを明らかにすることができた。CL生合成欠損変異株(PGS-S)は、ポリエステル布レプリカ法を用い、CLの生合成前駆体と考えられるホスファチジルグリセロール(PG)の生合成初発反応を触媒するphosphatidylglycerophosphate synthase (PGP synthase)の欠損株として分離することに成功した。平成5年度の研究成果は次の通りである。(1)PGS-S株の形態学的研究;親株とPGS-Sの細胞内構造を電子顕微鏡を用いて解析した結果、非許容温度下で培養したPGS-S細胞のミトコンドリアは野性株のものに比べサイズが著しく大きく、電子密度が低く、クリステも異常であることが判明した。これらの結果から、CLがミトコンドリアの構造・機能に必須であることが強く示唆された。(2)PGS-S株のintact細胞における機能異常;PGS-S株は非許容温度下において以下の性質を示した。:(a)グルコースをガラクトースで置換した培地では増殖しない。(b)ATPの産生が低下する。(c)解糖系の活性増加により乳酸の産生が増加する。(d)酸素消費能が低下する。以上の結果は、先の形態学的観察結果とともに、CLがミトコンドリア機能発現に必須であることが明らかにされた。平成5年度には、ポリエステル布レプリカ法を用い、カルジオリピン(CL)の生合成前駆体と考えられるホスファチジルグリセロール(PG)の生合成初発反応を触媒するホスファチジルグリセロリン酸合成酵素(PGS synthase)欠損温度感受性変異株(PGS-S)を分離し、その性状解析を行った。 | KAKENHI-PROJECT-05671862 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05671862 |
動物細胞膜カルジオリピンの機能に関する遺伝生化学的研究 | その結果、PGS-Sを非許容温度下で培養すると、総リン脂質に占めるPG、CLの割合は野性株の10%、30%に減少し、同時に、ミトコンドリアの形態と機能が異常となることを明らかにした。これらのことから、CLがミトコンドリア機能発現に必須であることが示唆された。平成6年度は、PGS-S細胞のミトコンドリア電子伝達系について検討した。細胞ホモジネートを用いてミトコンドリア電子伝達系の種々の活動を測定した結果、非許容温度で培養したPGS-S細胞ホモジネート中のロテノン感受性NADHオキシダーゼ活性が野性株の約50%に低下していた。さらに、電子伝達系の中でもロテノン感受性NADH-ユビキノンリダクターゼ活性(コンプレックI)が野性株に比べ約1/5に低下していた。PGS-Sの復帰株では野性株と差はなかった。以上の結果から、CLがミトコンドリア電子伝達系で重要な働きをしていることが明らかとなった。PGS-Sを用いてPGP synthase遺伝子のクローニングを試みた。HeLa細胞及びCHO-K1細胞のゲノムDNA、CHO-K1細胞のcDNAをCa^<2+>ホスフェート法やリポフェクション法でPGS-S細胞に導入し、非許容温度で増殖するトランフォーマントの選択を行った。現在のところまだ目的のトランスフォーマントは得られておらず、研究を継続中である。なお、細胞分画法によりPGP synthaseはミトコンドリアに局在することを明らかにすることができた。 | KAKENHI-PROJECT-05671862 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05671862 |
発熱植物ザゼンソウの体温調節に関わる温度センシングモジュールの探索と同定 | 一般に植物の体温は外気温の変動とともに変化すると考えられている。しかしながら、寒冷環境で積極的に発熱し、その体温をほぼ一定に調節できるザゼンソウは植物界では希な恒温植物である。このような発熱植物ザゼンソウを対象とした本研究は、「植物はどうやって体温を調節しているのか?」という生物学上の大きな問題を解き明かそうとするものである。一般に植物の体温は外気温の変動とともに変化すると考えられている。しかしながら、寒冷環境で積極的に発熱し、その体温をほぼ一定に調節できるザゼンソウは植物界では希な恒温植物である。このような発熱植物ザゼンソウを対象とした本研究は、「植物はどうやって体温を調節しているのか?」という生物学上の大きな問題を解き明かそうとするものである。 | KAKENHI-PROJECT-19H02918 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H02918 |
有機半導体のドーピングにおける分子レベル構造変化と電子物性改質の相関 | 本研究は、次世代有機エレクトロニクスの重要な要素技術であるドーピングの機構解明を目的とした。このために、構造が均一な高品位有機薄膜を独自に作製し、これにドーピングを施した試料の構造と電子状態をその場で計測する、独自の研究手法を採った。研究対象に、多彩な電子状態変化を示す、アルカリ元素をドープした芳香族分子に特に着目した。いずれもドーピングに伴い分子膜の構造変化と電子状態変化とが誘起され、分子配列変調の重要性が見出された。同時に、未ドープの均一有機薄膜についても、分子配列制御による電子状態や光物性の制御を研究した。以上から、次世代有機材料開発における分子配向の精緻な制御の重要性を明らかにした。本年度は、有機半導体へ金属ドーピングの基礎的研究を行った。ここでは、アルカリ金属ドーピングにより超伝導化が報告されているpiceneやcoronene等の芳香族分子へのKドーピング、絶縁体-金属転移が報告されているphthalocyanine (Pc)分子へのKドーピングを研究対象とした。特に、構造が良く定義された単分子膜にアルカリ金属を添加した系をドープ系のモデルとした。分子レベル構造を走査トンネル顕微鏡で決定し、その電子状態を光電子分光で計測した。両者の比較から、電子状態変化に与えるに分子レベル構造の寄与を解析し、ドーピングによる電子状態改質機構を明らかにした。picene及びcoroneneのKドーピングにおいて、分子膜の構造が大きく変化していることが観察された。この構造変化はpiceneおよびcoronene両者において類似性が見られた。このとき、分子膜の電子状態も変化し、Fermi準位近傍の電子状態密度が増加していることが観測された。この状態変化が系の超伝導化と密接に関連していることを示唆している。一方、PcへのKドープにおいて、一分子当たり1-2原子の添加量の範囲で、K元素が分子間に吸着することで新たな秩序構造を形成することがわかった。しかし、それ以上のドーピングにおいてはKが分子上に吸着し、分子膜が無秩序化することが見られた。一方、電子状態の計測からは、ドーピングに伴い、K由来のあらたな状態密度の形成が確認されたものの、Fermi準位の状態密度には大きな変化はなかった。これはドーピングに由来する系の金属化及び絶縁体化は起こらないことを示す。このため、従来報告されてきた伝導性の変化は、分子膜構造の秩序化-無秩序化による可能性が高いことがわかった。本研究では、低分子系有機半導体のドーピングの解明を目指し、よく定義されたモデル系の確立と、それらを利用し分子レベル構造計測と巨視的電気特性計測とを緊密に関連付けた研究を実施することを目的とする。本研究の初期段階においては、単分子層を対象とした研究を行った。特に、ピセンやコロネン、フタロシアニンなどの芳香族低分子にアルカリ原子を添加した系の単分子層に着目してきた。この系の構造をSTMを用いて分子レベルで明らかにし、対応する電子状態を光電子分光で解析した。これらにより、ドープ系における分子レベル構造と電子状態との強い相関が明らかになった。これを受け、平成27年度においては、モデル系として単分子層より実用素子に適用しやすい多層膜モデルの構築を目指した。このために、ピセンやDNTTなどの分子間力が強く、バルクの結晶性が高い有機半導体分子に着目し、これらを用いて良質の多層膜の作製を試みた。その結果、つぎの二つの観点の発見があった。(1)これらの有機半導体低分子は、無機半導体の知見では理解できない特殊な成長様式を取ることがわかった。両分子は、単分子層を形成したのち、単分子層上に巨大な3D結晶を生成する。この時3D結晶の配向方向が基板表面の結晶を反映することがわかった。これを利用すると高配向の3D結晶膜の実現につながる。(2)一方、このような特異な成長の基板依存性を調べたところ、多くの平坦基板では同様な成長をするが、異方的な構造を持つ表面上では、表面のテンプレート効果を利用することで、4分子層程度の層状成長が可能になることが分かった。この時電子状態はバルクのそれと非常に近いものであることが分かった。現在上記の二点の発見に関する論文を投稿中である。本研究において、単分子層モデルでの経験を活かし、実用素子に適用が容易な多分子層での研究に展開することは、本研究における最も重要なポイントであった。予定通り、そのような展開を実現するとともに、これまでの研究で見落とされてきた、単分子層と多分子層の幾何的配置、電子状態に関する相関が、始めて明らかになったことは、学術的に極めて意義深いものであると考えられる。これまで、電子状態に関してKEKで主に計測を行ってきたが、さらに、分子科学研究所での計測を付加することにより、より深い理解が可能になった。本研究では、低分子系有機半導体のドーピングの解明を目指し、よく定義されたモデル系の確立と、それらを利用し分子レベル構造計測と巨視的電気特性計測とを緊密に関連付けた研究を実施することを目的とする。研究の初期段階においては、モデル系として単分子層を対象とした構造及び電子状態の研究を行った。H28年度においては、よりデバイス応用に近い、多層膜モデル系の構築を行った。このとき、バルクの結晶性が高い有機半導体分子を利用することで、良質の多層膜を作製し、その構造と電子状態の決定を行った。 | KAKENHI-PROJECT-26286011 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26286011 |
有機半導体のドーピングにおける分子レベル構造変化と電子物性改質の相関 | このため、近年注目されている、強い分子間相互作用を示す新規な有機半導体分子群に注目した。第一段階ではこれらの分子の、よく定義された単分子層を作製し、構造と電子状態を決定した。このとき、電子状態の解析において、分子間の強い相互作用に起因した分子軌道状態の重なりや、エネルギー分裂が生じていることを明らかにした。その後、異方的な基板表面を利用すると、これらの分子の良質な多層膜が作製できることを示し、その構造と電子状態を決定した。これらを踏まえ、よく定義された多層膜に金属元素ドーピングを施すことで、良好な多層膜モデル系を作製できる。さらに、このような系の巨視的電気伝導計測のための準備を行ってきた。研究分担者の組織改編の影響で、当初使用予定の装置の稼働が困難となり、急遽別の装置における実験の準備を進め、準備を概ね完了した。ただし、この装置は半導体基板専用装置であり、本装置を用いた実験のためには半導体基板上にモデル系を作製するための検討が必要となる。H28年度においては、単分子層よりデバイス応用に近い、(1)多層膜モデル系の構築と、(2)それを利用した巨視的電気伝導計測の準備とが達成目標であった。(1)に関しては、近年注目されている、強い分子間相互作用を示す新規な有機半導体分子であるDNTTやpicene、sumaneneを用いた良質薄膜の創成研究を行ってきた。ここでは、基板に不活性で平坦な金属(111)面を用いると、強い分子間相互作用力を反映した密な単分子層が形成できた。この単分子層の電子状態と構造とを解析し、原著論文を出版した。しかし、この場合、強い分子間力であるがゆえ、単分子層上に結晶性の三次元巨大結晶が形成され、層状成長が誘起されにくいことが分かった。一方で基板にAg(110)などの異方性の強い結晶表面を利用すると、分子-基板の相互作用が強くなるために、十分密でない疎な単分子層が得られることが分かった。しかし、疎な単分子層上には分子が層状成長できることが分かった。これは単分子層の分子同士が強く結合できていないため、二層目の分子とより強く結合することが可能になっているためであると考えられる。これを利用すると、良質な単一ドメインの多分子膜を得ることができることを示し、現在論文を執筆中である。今後、この系に金属ドープを施すことで、多分子層のドーピングを研究する良好なモデル系が構築できる。(2)に関して、半導体専用超高真空プローバーを用いた実験の準備を行った。今年度はSi表面のIn層を利用し、分子膜作製と電気伝導計測を行ってきた。その第一段階では、In吸着Si表面上に、ドナー及びアクセプタ分子のよく定義された単分子層を形成し、それに伴う基板の表面超伝導転移温度が変化することを発見した。今後はIn吸着Si表面上に(1)で作成したモデル系を準備することで電気伝導計測が可能となる。本年度は、主にフラーレン(C60)の金属内包ドーピングに着目した。ドーパントとしてはLi+イオンを選択し、内包ドーピングによりC60の電子アクセプター性の増大を狙った。本研究では、C60への低速Li+イオンビーム照射によるLi+@C60生成過程の実験的・理論的調査を行った。さらに、この結果を用いて最適化された合成方法により作製したLi+@C60[PF6-] | KAKENHI-PROJECT-26286011 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26286011 |
盛期中世におけるドイツ概念の確立・展開と中世ラテン・ロマンス言語分化の影響 | ドイツ概念は8世紀、まさにフランク王国の成立・解体と神聖ローマ帝国=「ドイツ第1帝国」成立時、ドイツ言語文化史の起点において、中世ラテン語のtheodiscusという形で現れ、ついで10世紀になってから古高ドイツ語のdiutiskという形で現れる。この概念は成立時に専ら言語を対象にし、歴史言語学にいうゲルマン諸語を広く指示した形跡があり、11世紀以降になってようやく国・民族の意で用いられるようになった。歴史言語学にいうゲルマン諸語の特定部分を、しかも複数の方言を統合する形でドイツ概念に包含させる過程は、自然史的な言語史の流れの中で発生したのではなく、むしろそれとは対立する形で、中世国家形成・運営のための言語政策の結果として発生したと思われる。この言語政策の基礎は、中世ラテン語文化とゲルマン語文化との対立と統合過程にあり、文化的に優位であった中世ラテン語文化における言語観こそが、ドイツ概念成立の核をなしたと考えられる。ドイツ概念史は主要には言語事実の問題ではなく、言語意識と言語交通に関わる問題であり、ライン河以東に残留したゲルマン系諸言語文化集団間での共通言語文化圏成立の問題である。ドイツ概念成立時には国有名詞の前提となるような「ドイツ」という具体的で固有の実体が言語意識上存在せず、言語政策の結果として成立したこと、またドイツ概念のその後の確立・展開過程にあってもその性格が払拭され得なかった。言語文化上に統一された実体がなかったからこそ、ドイツ概念の特異性が生まれ、言語政策の必要とその効果があった。ドイツ概念は8世紀、まさにフランク王国の成立・解体と神聖ローマ帝国=「ドイツ第1帝国」成立時、ドイツ言語文化史の起点において、中世ラテン語のtheodiscusという形で現れ、ついで10世紀になってから古高ドイツ語のdiutiskという形で現れる。この概念は成立時に専ら言語を対象にし、歴史言語学にいうゲルマン諸語を広く指示した形跡があり、11世紀以降になってようやく国・民族の意で用いられるようになった。歴史言語学にいうゲルマン諸語の特定部分を、しかも複数の方言を統合する形でドイツ概念に包含させる過程は、自然史的な言語史の流れの中で発生したのではなく、むしろそれとは対立する形で、中世国家形成・運営のための言語政策の結果として発生したと思われる。この言語政策の基礎は、中世ラテン語文化とゲルマン語文化との対立と統合過程にあり、文化的に優位であった中世ラテン語文化における言語観こそが、ドイツ概念成立の核をなしたと考えられる。ドイツ概念史は主要には言語事実の問題ではなく、言語意識と言語交通に関わる問題であり、ライン河以東に残留したゲルマン系諸言語文化集団間での共通言語文化圏成立の問題である。ドイツ概念成立時には国有名詞の前提となるような「ドイツ」という具体的で固有の実体が言語意識上存在せず、言語政策の結果として成立したこと、またドイツ概念のその後の確立・展開過程にあってもその性格が払拭され得なかった。言語文化上に統一された実体がなかったからこそ、ドイツ概念の特異性が生まれ、言語政策の必要とその効果があった。 | KAKENHI-PROJECT-08610508 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08610508 |
新しい定位的クモ膜下出血ラットモデルの作製と血管攣縮の定量的記載 | クモ膜下出血(SAH)に続いておこる遅発性脳血管攣縮については、その病因並びに治療法に関して多大なる研究がおこなわれているが、統一的病態理解が出来上がっていない。従来、臨床的脳血管攣縮を、その特徴的時間経過も含めて再現するモデルとして、犬やサルなどが用いられてきた。しかし小動物モデルを用いることが、維持管理も容易であり、倫理的にも望ましいと思われる。従来ラットを用いたSAHモデルは試みられたことがあるが、技術的にも複雑細密で時間を要し、また攣縮の再現が不安定で、特徴的時間経過の再現という点で問題点が多数あった。これらを解決し、簡便確実な方法でSAHをラット脳に導入して血腫形成を起こし、大量に製作できる攣縮モデルを作成した。脳定位手術装置を用いて正確に脳底槽に自己血を注入する方法を検討確立した。全身ガス麻酔下に定位台に装着し、ドリルで穿頭してウィルス環の動脈近傍に注入針を導いて正確に座標と角度を決定した。多くの試行錯誤を経て刺入目標点の座標や注入量のパラメーターを最適なものに決定した。SAH導入後、3時間後、1日、2日、4日、8日、12日の後に脳を取り出して、血腫残存の状況をチェックした。また血管攣縮の程度を定量観察するために、全身麻酔の後にマイクロアンギオグラフィー用のシリコンラバーを心臓から注入還流した。画定処置の後に脳を取り出して実体顕微鏡を用いて写真撮影して動脈経を観察した。コントロールとしては、人工髄液を注入して同じ期間を経た群を作製、血管攣縮の時間経過を比較検討した。その結果、持続性、遅発性の経過をとった血管攣縮を再現性を持ってラットにおいて確立することができた。直後には攣縮が見られず、注入24時間後においては70%の減少が認められ、また48時間後には69%の減少が認められた。今後、ことに血管攣縮の薬剤治療の検討において、広く研究に貢献することが期待される。クモ膜下出血(SAH)に続いておこる遅発性脳血管攣縮については、その病因並びに治療法に関して多大なる研究がおこなわれているが、統一的病態理解が出来上がっていない。従来、臨床的脳血管攣縮を、その特徴的時間経過も含めて再現するモデルとして、犬やサルなどが用いられてきた。しかし小動物モデルを用いることが、維持管理も容易であり、倫理的にも望ましいと思われる。従来ラットを用いたSAHモデルは試みられたことがあるが、技術的にも複雑細密で時間を要し、また攣縮の再現が不安定で、特徴的時間経過の再現という点で問題点が多数あった。これらを解決し、簡便確実な方法でSAHをラット脳に導入して血腫形成を起こし、大量に製作できる攣縮モデルを作成した。脳定位手術装置を用いて正確に脳底槽に自己血を注入する方法を検討確立した。全身ガス麻酔下に定位台に装着し、ドリルで穿頭してウィルス環の動脈近傍に注入針を導いて正確に座標と角度を決定した。多くの試行錯誤を経て刺入目標点の座標や注入量のパラメーターを最適なものに決定した。SAH導入後、3時間後、1日、2日、4日、8日、12日の後に脳を取り出して、血腫残存の状況をチェックした。また血管攣縮の程度を定量観察するために、全身麻酔の後にマイクロアンギオグラフィー用のシリコンラバーを心臓から注入還流した。画定処置の後に脳を取り出して実体顕微鏡を用いて写真撮影して動脈経を観察した。コントロールとしては、人工髄液を注入して同じ期間を経た群を作製、血管攣縮の時間経過を比較検討した。その結果、持続性、遅発性の経過をとった血管攣縮を再現性を持ってラットにおいて確立することができた。直後には攣縮が見られず、注入24時間後においては70%の減少が認められ、また48時間後には69%の減少が認められた。今後、ことに血管攣縮の薬剤治療の検討において、広く研究に貢献することが期待される。ラットにクモ膜下出血を脳定位手術装置を用いて正確に脳槽に注入する方法を確立した。動物をマスク・ガス全身麻酔下に定位台に装着固定し、穿頭、定位的に注入針の先端を、脳底槽でウイリス環の動脈近傍に挿入した。エバンスブルーで、脳槽、血管の染色が良好となるように確認し、最適パラメータと座標を決定した。動脈カテーテルから採取した自己血を注入することで,クモ膜下出血を導入した。注入が順調に行われ、回復が良好であったものには、明らかな神経症状の出現は認められなかった。1日から12日後まで一定期間経過の後、動物に全身麻酔をかけ、固定液とマイクロアンギオグラフィー用シリコンラバー溶液を心臓より灌流後、脳を取り出し実体顕微鏡を用いて、径の変化を観察した。対照群は、全身麻酔の後、同様の手術操作を行い、人工髄液を注入して同じ期間を経た群とした。Day1,day2においては確実に再現性をもって血管攣縮による狭小化が認められた(p<0.0001)。それぞれN=6の各群でday0からday12まで追跡した結果、脳動脈における血管攣縮の時間経過は、血管断面積でday1,day2で対照群の53%と52%にまで低下し、day4以降は回復した。Day4,day8,day12では、対照群と有意差を見出せなかった。 | KAKENHI-PROJECT-12671378 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12671378 |
新しい定位的クモ膜下出血ラットモデルの作製と血管攣縮の定量的記載 | この時間経過は従来、他の方法でラットに誘導されたクモ膜下出血・脳動脈攣縮のモデルと同様に、犬やサルなどのモデルに比べて、速くて短いものであった。定位的脳手術で脳底槽に血液を注入したラットのモデルでは、死亡率が少なく、均一かつ確実にクモ膜下出血と血管攣縮が導入されることを確立した点で有意義な成果をあげたと考える。今後は薬理学的な反応性や、生化学的なサイクリックヌクレオタイドの含有量や、高エネルギー燐酸含有量の変化を検討していく予定である。クモ膜下出血(SAH)に続いておこる遅発性脳血管攣縮については、その病因並びに治療法に関して多大なる研究がおこなわれているが、統一的病態理解が出来上がっていない。従来、臨床的脳血管攣縮を、その特徴的時間経過も含めて再現するモデルとして、犬やサルなどが用いられてきた。しかし小動物モデルを用いることが、維持管理も容易であり、倫理的にも望ましいと思われる。従来ラットを用いたSAHモデルは試みられたことがあるが、技術的にも複雑細密で時間を要し、また攣縮の再現が不安定で、特徴的時間経過の再現という点で問題点が多数あった。これらを解決し、簡便確実な方法でSAHをラット脳に導入して血腫形成を起こし、大量に製作できる攣縮モデルを作成した。脳定位手術装置を用いて正確に脳底槽に自己血を注入する方法を検討確立した。全身ガス麻酔下に定位台に装着し、ドリルで穿頭してウィルス環の動脈近傍に注入針を導いて正確に座標と角度を決定した。多くの試行錯誤を経て刺入目標点の座標や注入量のパラメーターを最適なものに決定した。SAH導入後、3時間後、1日、2日、4日、8日、12日の後に脳を取り出して、血腫残存の状況をチェックした。また血管攣縮の程度を定量観察するために、全身麻酔の後にマイクロアンギオグラフィー用のシリコンラバーを心臓から注入還流した。固定処置の後に脳を取り出して実体顕微鏡を用いて写真撮影して動脈経を観察した。コントロールとしては、人工髄液を注入して同じ期間を経た群を作製、血管攣縮の時間経過を比較検討した。その結果、持続性、遅発性の経過をとった血管攣縮を再現性を持ってラットにおいて確立することができた。直後には攣縮が見られず、注入24時間後においては70%の減少が認められ、また48時間後には69%の減少が認められた。今後、ことに血管攣縮の薬剤治療の検討において、広く研究に貢献することが期待される。 | KAKENHI-PROJECT-12671378 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12671378 |
ファーストインクラス医薬品創出を促進するイノベーションシステムに関する研究 | 我が国からのファーストインクラス医薬品創出を促進するために、特に大学等公的研究機関の研究成果をベースにした事業化により医薬品開発のイノベーションシステムに関する研究を計量学的手法(ネットワーク分析、テキストマイニング等)を用いて行い、このようなプロジェクトを管理する際の管理手法について日本知財学会の関連誌上で提言を行った。加えて、平行して製薬企業においてファーストインクラス、ベストインクラス医薬品の開発に関わった創薬研究者にインタビューを行い、医薬品開発のイノベーションシステムについて考察を行った。2002年2011年までの全世界での医薬品売上ランキング上位50種の比較分析を行うとともに、各薬剤の基本特許及び基本論文に関して、テキストマイニングを含めた多変量解析を現在行っている。加えて、パテントリザルト社のパテントスコアやbiz cruncherを用いた解析も並行して行うことにより、ネットワーク解析等についても分析を行っている。なお、平成23年度も実施した「創薬ネットワークセミナー」も今年度2回実施し、延べ約200名近い参加を得ることができた。さらに北海道地域の一般市民に対し、webアンケートを用いた「がん治療」に対する意識調査を実施し、市民目線での医療ニーズの顕在化を検討した。この結果については、JJSCに投稿(現在、査読中)を行った。並行して、昨年度供与を受けた「医療ニーズに関する調査」と照らし合わせることにより、医療者と市民の医療ニーズに関するギャップに関して検討を行っていく。このような活動を通して、「アンメットメディカルニーズ」の定義付けを行うことにより、このようなニーズに対して医薬品開発を促進するようなイノベーションシステムをどう構築してよいかについて考察を行っていく。並行して、特許に焦点を置いたライフサイエンス系の産学連携型プロジェクトの新たな評価方法を構築し、実際に北海道大学で進捗しているプロジェクトに適応することにより、その有用性を検証を行った。この評価方法を用いて、他の海外を含めたプロジェクトに適応事例を増やし、一般化を行う計画である。昨年度までの研究成果をもとに、2報の論文の投稿を行った。北海道地域の一般住民に対し、医療ニーズに関するwebアンケートを解析した報告については、リジェクトされたため、再投稿を準備中である。もう1報は採択され、現在印刷中である。また、過去2年間実施してきたアンメットニーズ発掘を目的とした創薬ネットワークセミナーは、2013年10月17日に吾妻安良太先生(日本医科大学呼吸器内科教授)と竹田誠先生(国立感染症研究所ウイルス第三部部長)をお招きし、約100名の参加者とともに議論を行った。昨年度まで2002年から2011年までの全世界での医薬品ランキング上位50種の比較分析を行ってきたが、Kneller, Robert. Nature Reviews Drug Discovery 9 (November) 867-にもあるように、売上上位医薬品だけでなく、過去10年間のFDA承認薬にも対象を拡げ、革新性と売上の関係性やその起源がどの領域(大学等公的研究機関、biotech、大企業)であるかといったより深い分析や考察を行っている。また、実際に本学薬学部の研究成果について、早稲田大学で開催されたリーンローンチパッドを用いた「研究成果の事業化のための顧客開発プログラム」において提案を行い、リーンスタートアップやビジネスモデル構築といった実際の事業化の過程を実践した。このような体験を上記のような定量的研究にフィードバックさせることにより、より実情にあったイノベーションシステムに関する研究を行いたい。我が国からのファーストインクラス医薬品創出を促進するために、特に大学等公的研究機関の研究成果をベースにした事業化により医薬品開発のイノベーションシステムに関する研究を計量学的手法(ネットワーク分析、テキストマイニング等)を用いて行い、このようなプロジェクトを管理する際の管理手法について日本知財学会の関連誌上で提言を行った。加えて、平行して製薬企業においてファーストインクラス、ベストインクラス医薬品の開発に関わった創薬研究者にインタビューを行い、医薬品開発のイノベーションシステムについて考察を行った。2000年2010年までの全世界での医薬品売上ランキング上位50種を比較分析を行うために、Pharma Future誌から各年度ごとの売り上げリストを抽出するとともに、各薬剤の基本特許及び基本論文の検索抽出を行った。このデータをもとに、First in Class医薬品、Best in Class医薬品の区分を行い、今後の分析に供する。加えて、財団法人ヒューマンサイエンス振興財団の協力を得て、「医療ニーズに関する調査」のアンケート調査データを提供していただき、分析を行うことにより本研究の基礎資料とした。また、平成22年度平成23年度にかけて北海道大学病院第3内科の症例検討カンファレンスに、計5回参加するとともに、「創薬ネットワークセミナー」と題して、製薬企業において実際の医薬品開発に携わった経験のある著名研究者を招き、主として病院内医師・研究者を対象に以下の3回の講演会を開催した。1回目:シオノギ創薬研究より新規治療薬への挑戦。2回目:創薬の歴史脂質異常症改善薬へ。3回目:化合物ライブラリーから医薬品開発へ。併せて、臨床研究者と創薬研究者がいつでも議論することができる場として、SNSを設置した。加えて、クレストールの開発に携わった企業研究者にインタビュー調査を行い、First in Class医薬品、Best in Class医薬品の区分け自体の問題点、開発を行う際の薬剤の優位性と市場性の関係性等の助言をいただいた。このインタビューをもとに、今後の本研究の進め方について再検討を行った。研究期間全体を通して、我が国からのファーストインクラス医薬品創出を促進するために、特に大学等公的研究機関の研究成果をベースにした事業化により医薬品開発のイノベーションシステムに関する研究を計量学的手法(ネットワーク分析、テキストマイニング等)を用いて行い、このようなプロジェクトの管理する際の管理手法について日本知財学会の関連誌上で提言を行った。 | KAKENHI-PROJECT-23730336 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23730336 |
ファーストインクラス医薬品創出を促進するイノベーションシステムに関する研究 | 加えて、平行して製薬企業においてファーストインクラス、ベストインクラス医薬品の開発に関わった創薬研究者にインタニューを行い、医薬品開発のイノベーションシステムについて考察を行った。今年度は、昨年度までの研究成果をもとに、2報の論文の投稿を行った。医療ニーズをWebアンケートを行い、解析を行った報告については、リジェクトされたため、論旨を含めて再検討を行っている。2015年度中の採択を目指し準備を行っていく。もう一報は2015年4月21日現在、査読中である。また、過去3年間実施してきたアンメットメディカルニーズ発掘を目的に行ってきた創薬ネットワークセミナーは、2014年7月7日に現在全身用siRNA製剤を日東電工とともに臨床開発中の札幌医科大学の新津洋司郎先生と大阪大学医学系研究科の竹田潔先生をお招きし、約100名の参加者とともに議論を行った。過去3年間のセミナーはいずれもアンケート調査を行っており、今後このようなセミナーの効果がどのようにあったかを分析し、論文投稿を準備する。上記に加えて、北海道大学の実際の研究成果の事業化にコミットし、技術経営的な側面から助言を行うとともに、今後、当該事業化のケースを作成していく予定である。技術経営今年度の主な成果として、北海道地域での大規模アンケート調査が挙げられる。本アンケートは、著者らが作成したアンケート調査票を基に、「がん治療に関する意識調査」と題して、20歳以上の男女1649人に対して、2012年7月19日(木)の14時7月25日(水)23時まで実施した。自由回答を含む25問と同様なアンケートに比べて質問数が非常に多いにも関わらず、回答は1263人から寄せられ、同様のアンケート調査と比べても比較的高い回収率(76.6%)を得られた。この結果については、JJSCに投稿を行った。また、並行して、特許に焦点を置いたライフサイエンス系の産学連携型プロジェクトの新たな評価方法を構築し、実際に北海道大学で進捗しているプロジェクトに適応することにより、その有用性を検証を行い、その内容について、日本知財学会誌に投稿を行い、アクセプトされた。論文投稿後、リジェクトされた点が若干進捗が遅れている点だが、逆に、当初計画していなかった「研究成果の事業化のための顧客開発プログラム」に参加し、実践的研究を行えたことにより、本研究内でひとつのケースを提案できた点が非常に有意義であった。財団法人ヒューマンサイエンス振興財団の協力を得て、「医療ニーズに関する調査」のアンケート調査データを取得することができ、本資料を基礎データとし、様々な解析が可能となった。 | KAKENHI-PROJECT-23730336 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23730336 |
噴火史の視点から火山砕屑物の生成・移動過程を評価した斜面災害リスクマップの開発 | 本研究は、火山噴火史・地形発達史の視点により、斜面上に堆積した火山砕屑物等(降下テフラ,火山灰土,火山砕屑岩,風化火成岩,火山堆積物等)の生成・移動過程等の履歴を考察し、降雨・地震により斜面災害が発生する場所や規模を予測できる手法を提案することが目的である。最終的には、流域毎の土砂流出量・土砂到達距離を考慮した斜面災害リスクマップを開発することを目標とし、以下の4つのサブテーマで構成される。(1)火山噴火史および地形発達史の視点から評価した斜面上の火山砕屑物等の層厚分布,(2)斜面上の火山砕屑物等の地盤工学的特性と斜面崩壊,(3)降雨時および地震時の火山砕屑物等の崩壊・流動シミュレーション,(4)火山砕屑物等の生成・移動過程を評価した斜面災害リスクマップの開発2018年度は,(1)(2)および(3)のサブテーマに焦点を当て複数機関において,阿蘇地域の降下テフラ被覆斜面における豪雨・地震による斜面崩壊の発生場の地形・地質条件,斜面上の火山砕屑物等の層厚分布および地盤工学的特性(物理特性,化学特性,力学特性)などを評価した。具体的には,阿蘇カルデラ北東部地域におけるテフラ層厚分布を考慮した斜面安定解析と崩壊危険地抽出,平成28年熊本地震とその後の降雨によって発生した崩壊地の分布特性,斜面崩壊が発生したすべり面付近の地盤工学的特性(特に粘土鉱物等の風化に注目),熊本地震における南阿蘇村付近の斜面崩壊発生場の要有限要素解析,根系の斜面崩壊抑止効果を評価するための遠心模型実験,火山砕屑物等のスランプ特性等について,明らかにした。サブテーマ(3)については2018年度に検討を開始し,有限要素解を援用した自然斜面内の地下水位上昇量の簡易予測モデルの提案,火山砕屑物等の流動土砂特性を把握するためのスランプ試験・模型実験,およびセル・オートマトンによる流動土砂シミュレーション解析を実施した。本研究は,地形,地質,火山,地盤等を専門とする研究者により組織されており,分野横断的に火山砕屑物等(降下テフラ,火山灰土,火山砕屑岩,風化火成岩,火山堆積物等)の斜面災害リスクマップの開発を目指す融合研究である。2018年度はサブテーマ(1)(2)(3)および(4)について,現地調査,室内実験および解析等を行った。豪雨による斜面崩壊の発生場の地形・地質条件,斜面上の火山砕屑物等の層厚分布,斜面崩壊が発生したすべり面付近の地盤工学的特性,有限要素解を援用した自然斜面内の地下水位上昇量の簡易予測モデルの提案,重力変形する火山灰被覆斜面堆積物の強度特性,火山灰土の流動土砂特性を把握するための模型実験およびセル・オートマトンによる流動土砂シミュレーションの解析等を実施できており,申請時の当初計画どおり以上に順調に推移していると判断できる。引き続き複数機関において現地調査,室内実験および解析等を行い,サブテーマ(1)(2)(3)について研究をさらに進展させ,サブテーマ(4)火山砕屑物等の生成・移動過程を評価した斜面災害リスクマップの開発を目指す。今後は,近年発生した斜面崩壊(2018年7月豪雨での斜面災害,2018年9月胆振東部地震での斜面災害,2018年9月スラウェシ島地震での斜面災害,2018年12月クラカタウ火山での斜面崩壊,2018年マレーシアで発生した斜面崩壊等)についても現地調査を実施し,火山砕屑物等における斜面崩壊の発生機構解明の確度を上げることが必要である。研究代表における研究実施体制としては,室内試験,現地調査,文献収集等を継続して行うことから,学部学生,大学院生,研究生等を研究協力者として雇用し,効果的に実施していく予定である。2019年度は最終年度であるので,3年間の研究成果をとりまとめ,国際的な雑誌に投稿予定である。本研究は、火山噴火史・地形発達史の視点により、斜面上に堆積した火山砕屑物等(降下テフラ,火山灰土,火山砕屑岩,風化火成岩,等)の生成・移動過程等の履歴を考察し、降雨・地震により斜面災害が発生する場所や規模を予測できる手法を提案することが目的である。最終的には、流域毎の土砂流出量・土砂到達距離を考慮した斜面災害リスクマップを開発することを目標とし、以下の4つのサブテーマで構成される。(1)火山噴火史および地形発達史の視点から評価した斜面上の火山砕屑物等の層厚分布,(2)斜面上の火山砕屑物等の地盤工学的特性と斜面崩壊,(3)降雨時および地震時の火山砕屑物等の崩壊・流動シミュレーション,(4)火山砕屑物等の生成・移動過程を評価した斜面災害リスクマップの開発2017年度は,(1)および(2)のサブテーマに焦点を当て複数機関において,阿蘇地域の降下テフラ被覆斜面における豪雨・地震による斜面崩壊の発生場の地形・地質条件,斜面上の火山砕屑物等の層厚分布および地盤工学的特性(物理特性,化学特性,力学特性)などを評価した。具体的には,阿蘇カルデラ内のテフラ被覆斜面堆積物の重力変形のメカニズム,阿蘇カルデラ内の高野尾羽根溶岩円頂丘における斜面崩壊の履歴,斜面崩壊が発生したすべり面付近の地盤工学的特性(特に粘土鉱物等の風化に注目),熊本地震における南阿蘇村付近の斜面崩壊発生場の要有限要素解析,デジタル化した山中式土壌硬度計による強度の不連続性,火山砕屑物等の流動性に関するスランプ特性等について,明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-17H03303 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H03303 |
噴火史の視点から火山砕屑物の生成・移動過程を評価した斜面災害リスクマップの開発 | さらに,サブテーマ(3)についても検討を開始し,有限要素解を援用した自然斜面内の地下水位上昇量の簡易予測モデルの提案,およびセル・オートマトンによる流動土砂シミュレーションの予備的解析を実施した。本研究は,地形,地質,火山,地盤等を専門とする研究者により組織されており,分野横断的に火山砕屑物等(降下テフラ,火山灰土,火山砕屑岩,風化火成岩,等)の斜面災害リスクマップの開発を目指す融合研究である。2017年度はサブテーマ(1)(2)(3)について,現地調査,室内実験および解析等を行った。既に,豪雨による斜面崩壊の発生場の地形・地質条件,斜面上の火山砕屑物等の層厚分布,斜面崩壊が発生したすべり面付近の地盤工学的特性,有限要素解を援用した自然斜面内の地下水位上昇量の簡易予測モデルの提案,およびセル・オートマトンによる流動土砂シミュレーションの予備的解析等を実施できており,申請時の当初計画どおりに順調に推移していると判断できる。本研究は、火山噴火史・地形発達史の視点により、斜面上に堆積した火山砕屑物等(降下テフラ,火山灰土,火山砕屑岩,風化火成岩,火山堆積物等)の生成・移動過程等の履歴を考察し、降雨・地震により斜面災害が発生する場所や規模を予測できる手法を提案することが目的である。最終的には、流域毎の土砂流出量・土砂到達距離を考慮した斜面災害リスクマップを開発することを目標とし、以下の4つのサブテーマで構成される。(1)火山噴火史および地形発達史の視点から評価した斜面上の火山砕屑物等の層厚分布,(2)斜面上の火山砕屑物等の地盤工学的特性と斜面崩壊,(3)降雨時および地震時の火山砕屑物等の崩壊・流動シミュレーション,(4)火山砕屑物等の生成・移動過程を評価した斜面災害リスクマップの開発2018年度は,(1)(2)および(3)のサブテーマに焦点を当て複数機関において,阿蘇地域の降下テフラ被覆斜面における豪雨・地震による斜面崩壊の発生場の地形・地質条件,斜面上の火山砕屑物等の層厚分布および地盤工学的特性(物理特性,化学特性,力学特性)などを評価した。具体的には,阿蘇カルデラ北東部地域におけるテフラ層厚分布を考慮した斜面安定解析と崩壊危険地抽出,平成28年熊本地震とその後の降雨によって発生した崩壊地の分布特性,斜面崩壊が発生したすべり面付近の地盤工学的特性(特に粘土鉱物等の風化に注目),熊本地震における南阿蘇村付近の斜面崩壊発生場の要有限要素解析,根系の斜面崩壊抑止効果を評価するための遠心模型実験,火山砕屑物等のスランプ特性等について,明らかにした。サブテーマ(3)については2018年度に検討を開始し,有限要素解を援用した自然斜面内の地下水位上昇量の簡易予測モデルの提案,火山砕屑物等の流動土砂特性を把握するためのスランプ試験・模型実験,およびセル・オートマトンによる流動土砂シミュレーション解析を実施した。本研究は,地形,地質,火山,地盤等を専門とする研究者により組織されており,分野横断的に火山砕屑物等(降下テフラ,火山灰土,火山砕屑岩,風化火成岩,火山堆積物等)の斜面災害リスクマップの開発を目指す融合研究である。2018年度はサブテーマ(1)(2)(3)および(4)について,現地調査,室内実験および解析等を行った。 | KAKENHI-PROJECT-17H03303 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H03303 |
地球科学的アプローチによる我が国における近世以前の非鉄金属製錬技術の体系化 | 国内各地で調査が進む、生産遺跡、鉱山遺跡から得られる製錬スラグ、鉱石等について科学分析(鉱物同定、化学組成分析、組織観察、鉛同位体分析など)を行う事で、日本の古代近世における非鉄金属製錬(金、銀、銅、鉛、錫)技術の体系化と評価指針の提示を目指した。日本の製錬技術の革新が行われた石見銀山では、銀鉱石に鉛を加えて一次製錬を行うことで銀の生産性を高めていた事が分析データより裏付けられた。また、鉛の供給元となった鉱山を鉛同位体分析値から推定した。これらの手法が、日本の金属製産における原料の産地、製錬プロセス、原料及び製品の流通を把握する上で、有用であることを示した。平成25年度は、新潟県佐渡市鶴子銀山荒町遺跡および吹屋遺跡、上相川集落、福島県会津若松市周辺(石ヶ森鉱山、若松鉱山、桧原金山、加納鉱山、与内畑鉱山、軽井沢銀山)島根県石見銀山、山口県山口市周辺(蔵目喜銅山、一ノ坂銀山)において現地調査を行い、現地の現況の把握と鉱石、製錬滓試料の採取を行った。石見銀山を始めとする戦国時代末江戸期の銀山(久喜銀山、延沢銀山、鶴子銀山、谷口銀山、院内銀山)について、銀鉱石、製錬滓の化学組成分析を行い、鉱石中の鉛/銀比が含銀鉛鉱石(久喜銀山)と輝銀鉱などの銀鉱物を主体とする銀鉱石(石見、延沢、鶴子、谷口、院内)で大きく異なる事、また製錬スラグ中の鉛/銀比が、銀鉱石を製錬した鉱山では鉱石に比べて大きく増加している事から、銀鉱石の一次製錬の際に鉛の添加が行われていた事を科学的な分析に基づき明らかにした。この事は、世界遺産石見銀山に始まる我が国の鉱山技術革新のプロセスの一端を示している。研究成果については、資源素材学会(札幌)、第8回国際古代金属歴史会議BUMA-8(奈良)で報告すると共に、ISIJ-Internationalに投稿した。また、佐渡金銀山で行われていた金銀分離の為の焼金の技術についてもこれまでの研究成果をまとめBUMA-8での報告、ISIJ-Internationalへの投稿をおこなった。また、銀製錬関連試料については、鉛同位体分析による鉛供給地の推定を行う為に、日本各地の鉛鉱山の試料選定をおこない、分析の準備をすすめた。平成26年度は、山口県美祢市長登銅山、島根県石見銀山、福島県軽井沢銀山、新潟県草倉銅山において現地調査を行い、現地の状況の把握と鉱石、製錬滓資料の採取を行った。特に石見銀山では,永久地区を中心とした露頭堀り跡の調査を行い、鉱山開発の初期に採掘された鉱石の種類の把握を行った。また、鉛安定同位体比分析を西日本地域の鉱山52試料:石見銀山(鉱石8、スラグ8)、磯竹鉛山(方鉛鉱)、久喜・大林(鉱石5点、焼窯土1、炭酸鉛1、スラグ2)、小泉鉛山(鉱石1)、佐野鉛山(鉱石1)、多田銀銅山(鉱石2、焼鉱1、スラグ8)、長登銅山(鉱石6、スラグ2)、赤小野(表土1、鉱石1)、百済寺跡(銅板1、銅塊1)について行い、従来の鉛同位体比分析よりも一桁以上精度の高い分析結果を得る事ができた。207Pb/204Pb(縦軸)、206Pb/204Pb(横軸)のプロットでは、それぞれの鉱山の鉱石の値は良く集中した値を示し、スラグの鉛同位体比は、原料鉱石と添加した鉛鉱石の中間に分布する様子が読み取れた。石見銀山の場合、今回の分析試料では、鉛鉱石は久喜ではなく磯竹のものが使われた可能関が高い。成果の一部は資源素材学会2015春季大会にて報告を行った。H27年度は、山口県美祢市長登銅山、島根県大田市石見銀山、山梨県巨摩郡身延町湯之奥金山(茅小屋金山、内山金山)、早川町老平金山において現地調査を行い、現地状況の把握及び鉱石、製錬滓試料の採取を行った。石見銀山については、昨年度採取した永久鉱床及び福石鉱床の開発初期の露頭堀関連試料の分析を行った結果、銀銅鉱石を産出した永久地区の地表に見られる露頭堀では、銅鉱石ではなく、福石鉱床と類似した銀鉱物主体の鉱石を採掘していたことが明らかとなった。湯之奥金山では、茅小屋金山の選鉱テラス、内山金山の選鉱テラス及び坑道採掘跡の鉱石、選鉱ズリ試料の分析を行い、茅小屋金山と内山金山の選鉱ズリが、鉱物組成及び化学組成共に類似している事を明らかにした。また茅小屋金山では対応する採掘跡が見つかっていない事から、内山金山の鉱石の選鉱を行っていた可能性が大きい事を示した。また、鉛同位体比分析では、石見銀山の他、神岡鉱山(長棟鉛山)、別子銅山の鉱石及び製錬滓試料を選定すると共に、西日本地域における基盤岩の鉛同位体比分析データ蓄積のために花崗岩試料23点を入手し、鉛同位体比分析の準備を進めた。研究の成果の一部は、日本鉄鋼協会第171回春季講演大会及び資源素材学会2016春季大会にて報告を行った。 | KAKENHI-PROJECT-25350394 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25350394 |
地球科学的アプローチによる我が国における近世以前の非鉄金属製錬技術の体系化 | 国内各地で調査が進む、生産遺跡、鉱山遺跡から得られる製錬スラグ、鉱石等について科学分析(鉱物同定、化学組成分析、組織観察、鉛同位体分析など)を行う事で、日本の古代近世における非鉄金属製錬(金、銀、銅、鉛、錫)技術の体系化と評価指針の提示を目指した。日本の製錬技術の革新が行われた石見銀山では、銀鉱石に鉛を加えて一次製錬を行うことで銀の生産性を高めていた事が分析データより裏付けられた。また、鉛の供給元となった鉱山を鉛同位体分析値から推定した。これらの手法が、日本の金属製産における原料の産地、製錬プロセス、原料及び製品の流通を把握する上で、有用であることを示した。鉛安定同位体比分析について、非常に精度の高い分析値が得られ、鉱山毎に分解能の高いデータを得る事ができた。これにより、製錬時の原料鉱石、添加した鉛鉱石の産地推定が可能となり、製錬技術の解明に重要な手法になる事を確認した。鉱山技術史、資源工学高精度の鉛安定同位体分析を引き続き行い、産地同定手法の確立を測る。特に石見銀山では、時代の異なるスラグの分析値から、時代毎の鉛の供給元となった鉱山の変遷を明らかにできる事を期待する。また東日本の鉱山についても同位体比分析を進めデータの蓄積を計る日本各地の鉱山跡の現地調査が順調に進み、試料の蓄積が進んでいる。また銀製錬技術について鉛の添加を明らかにできた事、成果の国際誌への投稿を行った事、鉛同位体分析の準備が整った事などにより、次年度に研究を深化させる事が可能となる。平成25年度は銀製錬技術の解明に重点をおいてきており、一定の成果を上げる事ができた。次年度以降も国内の銀山の試料の分析を進める事で、日本全体での鉱山技術の革新の動向をあきらかにする。特に鉛同位体の分析は添加鉛の産地同定に重要である為、重点的に行う。また、銀銅鉱石からの銀の生産については、科学的データによる検証は十分でないため、特に江戸中期以降の鶴子銀山や佐渡金銀山での銀銅鉱石の製錬について試料収集と分析を進める。 | KAKENHI-PROJECT-25350394 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25350394 |
胎児肺におけるカテコラミン産生能およびドパミンレセプターに関する研究 | Wistar系ラット胎仔を使用し以下の知見を得た。1.肺カテコラミン系物質(ドーパ、ドパミン、ノルエピネフリン、エピネフリンおよびドパミンの代謝産物であるDOPAC)濃度を胎児仔血、脳、副腎、羊水中濃度とともに測定し、胎仔肺には上記のカテコラミン系物質がすべて存在するが、各分画の組成比は胎仔血、羊水や他臓器のそれとは異なっていることを認めた。2.胎盤通過性の良好なドーパを経母体的に胎仔に投与し、胎仔肺カテコラミンの動態を検討した結果、ドーパ負荷後は胎仔肺カテコラミン3分画(ドパミン、ノルエピネフリン、エピネフリン)は有意に増加した。12より、胎仔肺にはドパミンを中心とした各種カテコラミン系物質が存在するが、それらは胎仔肺で合成されたもの、すなわち胎仔肺はカテコラミン合成能を有していることを明らかにした。3.ドパミン合成酵素であるdopa decarboxylase(DDC)の胎仔肺における局在を免疫組織染色法により検討した結果、細気管支上皮の一部にDDC陽性細胞を認めた。4.胎齢17日目に母体子宮動脈を結紮し、胎仔に慢性低酸素状態を負荷することにより作成した子宮内発育遅延胎仔(胎齢20日)の肺カテコラミン含量を検討した結果、子宮内発育遅延胎仔の肺カテコラミンは3分画(ドパミン、ノルエピネフリン、エピネフリン)とも正常発育胎仔に比較し有意な高値であった。34より、胎仔肺におけるドパミン合成部位は細気管支上皮であることを証明した。また、胎仔慢性低酸素症では胎仔肺カテコラミンは増加することが明らかとなったが、この事実より、胎児肺カテコラミンは胎児肺において何らかの合目的的生理作用を有し、胎児肺機能(成熟)に関与していると考えられた。Wistar系ラット胎仔を使用し以下の知見を得た。1.肺カテコラミン系物質(ドーパ、ドパミン、ノルエピネフリン、エピネフリンおよびドパミンの代謝産物であるDOPAC)濃度を胎児仔血、脳、副腎、羊水中濃度とともに測定し、胎仔肺には上記のカテコラミン系物質がすべて存在するが、各分画の組成比は胎仔血、羊水や他臓器のそれとは異なっていることを認めた。2.胎盤通過性の良好なドーパを経母体的に胎仔に投与し、胎仔肺カテコラミンの動態を検討した結果、ドーパ負荷後は胎仔肺カテコラミン3分画(ドパミン、ノルエピネフリン、エピネフリン)は有意に増加した。12より、胎仔肺にはドパミンを中心とした各種カテコラミン系物質が存在するが、それらは胎仔肺で合成されたもの、すなわち胎仔肺はカテコラミン合成能を有していることを明らかにした。3.ドパミン合成酵素であるdopa decarboxylase(DDC)の胎仔肺における局在を免疫組織染色法により検討した結果、細気管支上皮の一部にDDC陽性細胞を認めた。4.胎齢17日目に母体子宮動脈を結紮し、胎仔に慢性低酸素状態を負荷することにより作成した子宮内発育遅延胎仔(胎齢20日)の肺カテコラミン含量を検討した結果、子宮内発育遅延胎仔の肺カテコラミンは3分画(ドパミン、ノルエピネフリン、エピネフリン)とも正常発育胎仔に比較し有意な高値であった。34より、胎仔肺におけるドパミン合成部位は細気管支上皮であることを証明した。また、胎仔慢性低酸素症では胎仔肺カテコラミンは増加することが明らかとなったが、この事実より、胎児肺カテコラミンは胎児肺において何らかの合目的的生理作用を有し、胎児肺機能(成熟)に関与していると考えられた。Wistar系ラット胎仔を使用し以下の知見を得た。1.肺カテコラミン系物質(ドーパ、ドパミン、ノルエピネフリン、エピネフリンおよびドパミンの代謝産物であるDOPAC)濃度を胎仔血、脳、副腎、羊水中濃度とともに測定し、(1)胎仔肺には上記のカテコラミン系物質がすべて存在するが、各分画の組成比は胎仔血、羊水や他臓器のそれとは異なっていることを認めた。(2)胎仔肺には胎仔血や副腎に比較し、相対的にドパミンが多量に存在していることを認めた。2.胎盤通過性の良好なドーパ(カテコラミン前駆体)を経母体的に胎仔に投与し、胎仔肺カテコラミンの動態を検討した結果、ドーパ負荷後は胎仔肺カテコラミン3分画(ドパミン、ノルエピネフリン、エピネフリン)は有意に増加した。3.胎仔肺におけるドパミンレセプター検討の予備実験として、ドパミンレセプターが豊富に存在するラット脳で測定し、ラットにおいてもradiolabeled receptor assay法によりドパミンレセプター測定が可能であることを確認した。以上より、胎仔肺にはドパミンを中心とした各種カテコラミン系物質が存在するが、それらは胎仔肺で合成されたもの、すなわち胎仔肺はカテコラミン合成能を有していることを証明した。カテコラミンはホルモンとして副腎髄質において合成・分泌され、さらに脳においては神経伝達物質として作動しているが、胎仔肺における意義は不明である。 | KAKENHI-PROJECT-05671371 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05671371 |
胎児肺におけるカテコラミン産生能およびドパミンレセプターに関する研究 | 平成6年度においては、まず胎仔肺におけるカテコラミン合成部位をカテコラミン合成酵素の局在を検討することにより明らかにし、さらに肺カテコラミンの生理的意義追求のために、肺成熟との関連が注目されている子宮内発育遅延胎仔(IUGR胎仔)をモデルとして、実験的IUGRにおける肺カテコラミン動態を検討する。また、生理作用発現のためには特異的レセプターの存在が必要であるが、ドパミンに注目し、上記3.の予備実験を発展させ、胎仔肺ドパミンレセプターの存在についても検討したい。平成5年度研究において、胎仔肺にはドパミンを中心とした各種カテコラミン系物質が存在し、それらは胎仔肺で合成されたもの、すなわち胎仔肺はカテコラミン合成能を有していることを証明した。平成6年度は引き続きWistar系ラット胎仔を使用し、以下の知見を得た。1.ドパミン合成酵素であるdopa decarboxylase(DDC)の胎仔肺における局在を免疫組織染色法により検討した結果、細気管支上皮の一部にDDC陽性細胞を認めた。しかし、気管支や肺胞上皮、肺間質細胞にはDDC陽性細胞は認められなかった。2.胎齢17日目に母体子宮動脈を結紮し、胎仔に慢性低酸素状態を負荷することにより作成した子宮内発育遅延胎仔(胎齢20日)の肺カテコラミン含量を検討した結果、子宮内発育遅延胎仔の肺カテコラミンは3分画(ドパミン、ノルエピネフリン、エピネフリン)とも正常発育胎仔に比較し有意な高値であった。以上より、胎仔肺におけるドパミン合成部位は細気管支上皮であることを証明した。また、子宮内発育遅延胎仔で得られた結果より、胎仔慢性低酸素症では胎仔肺カテコラミンは増加することが明らかとなったが、この事実より、胎児肺カテコラミンは胎児肺において何らかの合目的的生理作用を有し、胎児肺機能(成熟)に関与していると考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-05671371 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05671371 |
疾患モデルを用いた熱ショック転写因子HSF2が形成する転写複合体の機能解析 | 熱ショック転写因子HSF2について、新たな知見を得た。一部はすでにHayashida, BBRC 2015の論文で発表した。研究代表者は、H3K4をメチル化して遺伝子を活性化するSet1/MLL複合体に不可欠なWDR5タンパク質とHSF2が結合していることを見出した。ハンチントン病マウス(HTT)で重要なalphaB-クリスタリン(CRYAB)のプロモーター上にSet1/MLL複合体は結合するが、これはHSF2依存的であった。HSF2欠損HTTでは顕著に寿命が短縮するが(Shinkawa, Hayashida et al., MBC 2011)今回その機構の一端を示した。熱ショック転写因子HSF2は哺乳類では4種類存在する熱ショック転写因子群の1つであり、神経発生や生殖細胞の分化に関与することが明らかにされていたが、最近、我々のグループによって、温熱ストレスなどによって引き起こされる細胞内蛋白質の変性から細胞を防御する機能を有することも明らかとなった(Shinkawa, Hayashida et al., Mol. Biol. Cell 2011)。平成24度までの若手研究Bの成果において、ヒストンH3K4メチル化複合体の構成因子であるWDR5とHSF2が結合していることがin vitroとin vivoの両方で明らかとなった。今回、alphaB-crystallin (CRYAB)はHSF2のターゲット遺伝子であることから、マウス胎児線維芽細胞(MEF)においてHSF2またはWDR5のノックダウンを行い、温熱ストレスによるCRYABの発現誘導を調べたところ、どちらのノックダウンでも顕著に誘導が抑制された。クロマチン免疫沈降法と定量的PCR法を組み合わせたChIP-qPCR法によって、CRYABプロモーター上におけるWDR5の結合はHSF2依存的であること、HSF2のノックダウンは転写活性化に働くヒストン修飾を低下させることをすでに示しているが、今回、WDR5をノックダウンすると、HSF2の結合が2分の1に低下することもわかった。またヒストン修飾にも同様に影響を与えていた。このほか、マイクロアレイ解析によって、HSF2とWDR5の共通のターゲット遺伝子もすでに同定している。同様にChIP-qPCR法を用いた実験により、HSF2-WDR5複合体には、H3K4メチル化転位酵素MLLを中心とした一連の因子が含まれていることを現在確定しつつある。平成26年度までに作成した2系統のヒトHSF2 (hHSF2)トランスジェニックマウスについて寿命を調べたところ、よりhHSF2を高発現するTg2-8系統において早く死亡する個体が見られたが、その後、hHSF2の発現レベルが低いTg2-2系統においても死亡する個体が出現し、1年後の生存率は、どちらの系統も50%と同じであった。一方、Tg2-2系統は♂♀ともに生まれたが、Tg2-8系統では♂個体しか得られない特徴があった。また、いずれの系統も交配能力が低く、このままでは維持が難しいと考え、背景をこれまでのC57BL/6からICRへと変えたところ、2回バッククロスしただけの個体であっても半年たった現時点でも死亡個体は現れず、また、交配能力も通常のICRと同等であるほか、Tg2-8系統の♀も生まれるようになった。このメカニズムについては解析を行っていないが、近々薬剤を用いたハンチントン病モデルをこれらの系統で作成し、hHSF2による保護効果を調べる予定である。HSF2の転写複合体の解析については大きく前進した。すでに昨年度にHSF2がSet1/MLL複合体に必須の因子であるWDR5と結合していることを見出していたが、WDR5だけでなく、その他のRbBP5、Ash2Lのほか、Set1、MLL1、MLL2とも複合体を形成していることを突き止めた。また、RbBP5とAsh2Lは常にHSF2と結合していたが、H3K4メチル化酵素であるSet1、MLL1、MLL2は遺伝子や条件によって結合する場合と結合しない場合があることを見出した。このほか、WDR5自体に細胞内変性タンパク質の蓄積を抑制する効果があることを発見した。このことは、HSF2が持つ同様の効果がWDR5との結合があることで発揮されている可能性を示唆した。3年間の研究期間において、研究代表者はCorresponding Authorである3本の論文を含む8本の論文発表を行った。ここではその研究成果を、一部未発表のものも含めて記す。癌は言うまでもなく、最も早期に完治の治療法の確立が求められる疾患である。早期に発見できれば5年生存率がほぼ100%に近いものもある一方で、予後が非常に悪いものもある。遠隔転移をきたせば、どの癌であっても極めて予後不良で手術不適応である。そのため、内科的な完治の方法の樹立は早急の課題である。本研究では、代表者が新たな発見を積み重ねてきた熱ショック転写因子2 (HSF2)が、癌細胞においてどのような役割を持つかを調べ、さらに重要な分子機構を解明することに成功した。HSF2は、ヒト子宮頸癌HeLa細胞およびマウス神経芽細胞Neuro-2aの増殖において必須の因子であり、HSF2をノックダウンするとこれらの細胞株の増殖が顕著に抑制された。 | KAKENHI-PROJECT-25430090 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25430090 |
疾患モデルを用いた熱ショック転写因子HSF2が形成する転写複合体の機能解析 | また、HSF2が結合しているタンパク質群の解析から、ヒストンH3リジン4のトリメチル化を担うSet1/MLL複合体の必須因子(Core component)であるWDR5とHSF2が直接結合していること、さらにこのHSF2-WDR5の結合を介してSet1/MLL複合体ともHSF2が結合していることを突き止めた。また、上記の細胞株においてWDR5をノックダウンさせると増殖が顕著に減少し、さらに、WDR5と結合できないHSF2しか発現させないように操作したHeLa細胞とNeuro-2aでも、顕著に増殖が抑制されることを突き止めた。このことは、HSF2が癌細胞の増殖に極めて重要な役割を持つことを示しており、さらにそれがSet1/MLL複合体との結合に依存していることが初めて明らかとなった。熱ショック転写因子HSF2について、新たな知見を得た。一部はすでにHayashida, BBRC 2015の論文で発表した。研究代表者は、H3K4をメチル化して遺伝子を活性化するSet1/MLL複合体に不可欠なWDR5タンパク質とHSF2が結合していることを見出した。ハンチントン病マウス(HTT)で重要なalphaB-クリスタリン(CRYAB)のプロモーター上にSet1/MLL複合体は結合するが、これはHSF2依存的であった。HSF2欠損HTTでは顕著に寿命が短縮するが(Shinkawa, Hayashida et al., MBC 2011)今回その機構の一端を示した。HSF2の転写複合体の解析は予想以上に新たな発見が得られ、非常に順調に進んだだけでなく、新たな発見を生み出す可能性があると考えている。ヒトHSF2のトランスジェニックマウスを用いた実験については、通常個体での寿命の結果と、ハンチントン病マウスと交配させた場合の寿命と両方のデータが得られたが、予想外に、Tg2-8と掛け合わせたハンチントン病マウスで寿命の延長が見られなかった。この点については、今回用いたハンチントン病モデルマウスの寿命が16週と極端に短いものを用いており、効果が強すぎたため、これまで私たちが発表してきたような差を今回は見出せなかったと考えている。メカニズムの研究は順調なため、平成27年度も問題なく進めることを期待している。老化学平成27年度が最後の年度に当たるが、これまで多方面から行ってきた転写複合体のメカニズムの解析については、無理やり複数の方向に研究を広げず、これまでの知見をまとめて再現性などを確認し、平成27年度中にも論文の形で発表できればと思っている。トランスジェニックについては、有効な結果が得られていないが、HSF(熱ショック因子)の研究の歴史の上で、脳でHSFを高発現するマウスを樹立できたのは私が初めてであり、ポジティブなデータではないが、少なくとも複数の結果が得られたことで、当該分野には貢献できたと考えている。最後に薬剤による実験を考えているので、ここで有効な結果が得られればと期待している。WDR5について平成26年度に得られた結果は非常に大きな発見であった。これについてはすでにデータがまとまっており、論文に現時点でのデータを掲載しても良いと考えている。3年間で予定していた研究計画において、研究の進展の影響により、順序が入れ替わっているものがあるが、平成25年度において、平成26年に予定していたWDR5の標的遺伝子群の網羅的解析がすでに実施され、HSF2とWDR5の共通の標的遺伝子が見いだされるという良好な結果が得られた。 | KAKENHI-PROJECT-25430090 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25430090 |
無脊椎動物横絞筋の巨大サルコメアを維持する弾性タンパク質 | 無脊椎動物に存在する巨大サルコメアの横紋構造が,どのようにして維持されているかに関して,構成している弾性タンパク質を中心に研究をおこなった。無脊椎動物であるザリガニのはさみ筋には,静止長が8.3μm,伸びると13μmにおよぶ巨大サルコメアが存在する。そこには脊椎動物(静止長約2.4μm)のコネクチンと同様な働きをする弾性タンパク質が存在し,thick filamentをサルコメアの中央に位置させている。なぜザリガニはさみ筋の弾性タンパク質は脊椎動物の3.5倍もの長さのサルコメアを維持できるのか,を明らかにするために,この弾性タンパク質の全一次構造17,352残基を決定した。解析の結果,脊椎動物コネクチンで伸縮に関与するIgドメイン及びPEVK領域もあったが,まったく新しい繰返し配列(SEK repeat)が存在した。この配列をもとに部位特異抗体を作製し,サルコメア内での局在を調べた結果,分子全体の70%が伸縮に関与していることが分かった(脊椎動物コネクチンは15%)。このタンパク質のcDNAは53kbp,分子量は196万であり,無脊椎動物(Invertebrate)のコネクチンであることから,I-ネクチンと呼ぶことにした。さらに,新規SEK領域の融合タンパク質を調製し,1分子計測により張力を測定した結果,persistence lengthは0.37nmであり,SEK領域は非常に伸びやすい性質であることが示唆された。このことから,無脊椎動物の弾性タンパク質I-コネクチンは,PEVK領域が2つある(脊椎動物は1つ)と共に,脊椎動物には存在しない非常に伸びやすい性質の新しい配列を持つこと,さらにはC末端がA-I junstionに存在することで,脊椎動物の3.5倍もの長さの巨大サルコメアを担うことができると考えられる。無脊椎動物に存在する巨大サルコメアの横紋構造が,どのようにして維持されているかに関して,構成している弾性タンパク質を中心に研究をおこなった。無脊椎動物であるザリガニのはさみ筋には,静止長が8.3μm,伸びると13μmにおよぶ巨大サルコメアが存在する。そこには脊椎動物(静止長約2.4μm)のコネクチンと同様な働きをする弾性タンパク質が存在し,thick filamentをサルコメアの中央に位置させている。なぜザリガニはさみ筋の弾性タンパク質は脊椎動物の3.5倍もの長さのサルコメアを維持できるのか,を明らかにするために,この弾性タンパク質の全一次構造17,352残基を決定した。解析の結果,脊椎動物コネクチンで伸縮に関与するIgドメイン及びPEVK領域もあったが,まったく新しい繰返し配列(SEK repeat)が存在した。この配列をもとに部位特異抗体を作製し,サルコメア内での局在を調べた結果,分子全体の70%が伸縮に関与していることが分かった(脊椎動物コネクチンは15%)。このタンパク質のcDNAは53kbp,分子量は196万であり,無脊椎動物(Invertebrate)のコネクチンであることから,I-ネクチンと呼ぶことにした。さらに,新規SEK領域の融合タンパク質を調製し,1分子計測により張力を測定した結果,persistence lengthは0.37nmであり,SEK領域は非常に伸びやすい性質であることが示唆された。このことから,無脊椎動物の弾性タンパク質I-コネクチンは,PEVK領域が2つある(脊椎動物は1つ)と共に,脊椎動物には存在しない非常に伸びやすい性質の新しい配列を持つこと,さらにはC末端がA-I junstionに存在することで,脊椎動物の3.5倍もの長さの巨大サルコメアを担うことができると考えられる。無脊椎動物であるザリガニのはさみ筋には,静止長が9.3μm,伸びると13μmにおよぶ巨大サルコメアが存在する。そこには脊椎動物(静止長約2.4μm)に存在するコネクチンと似た分子量を持ち同様な働きをする弾性タンパク質が存在し,その弾性でthick filamentをサルコメアの中央に位置させている。なぜ似た分子量で,脊椎動物の4倍もの長さのサルコメアを維持できるのか,が問題になる。本研究では,ザリガニはさみ筋のコネクチン様タンパク質について,その一次構造の違いから巨大サルコメアの構造維持を明らかにしようとしている。これまでの研究でC末端を含む43.5kbpの配列を決めていたので,WalkingとRT-PCR法によりくり返し配列部分やN末端を明らかにし,その全一次構造17,352残基を決定した。その結果,ザリガニはさみ筋コネクチンのcDNAは52kbpであり,分子量は196万であった。このタンパク質は無脊椎動物(Invertebrate)のコネクチンであることから,I-コネクチンと呼ぶことにした。この配列を詳細に検討したところ,分子全体の3/4はPEVKまたはsemi-PEVKという弾性機能を持つ可能性のある配列であり,PEVKが10%しかない脊椎動物コネクチンと比べて大きな差であった。さらに,アミノ酸配列をもとに異なった4カ所に対して抗体を作成し,蛍光抗体法によりサルコメア長と局在の関係を調べた結果,I-コネクチン分子のN端側1/4はZ線付近に存在して伸びることはないのに対し,残りの3/4の部分はサルコメア長と共に伸縮することが示された。無脊椎動物に存在する,脊椎動物の4倍もの長さを持つ巨大サルコメアの横紋構造がどのように維持されているのかを,その弾性タンパク質を中心にして調べている。 | KAKENHI-PROJECT-13440248 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13440248 |
無脊椎動物横絞筋の巨大サルコメアを維持する弾性タンパク質 | これまでの研究で,節足動物の横紋筋に存在する弾性タンパク質I-コネクチンの全一次構造17,352残基を決定した。その結果,脊椎動物コネクチンに存在する構造(Igドメイン及びPEVK領域)もあったが,まったく新しい繰返し配列を持つ領域(SEK repeat)も存在した。また,サルコメア内における局在から,分子全体の3/4は伸縮に関与している可能性があった。そこで,SEK領域の特性を詳細に調べるために,サブピコニュートンレベルの高分解能かつ数十pN以上のレンジに渡っての力測定が可能である分子間力顕微鏡を用いて,この領域のみから構成されたペプチド1分子について伸長測定をおこなった。試料ペプチドはSEK領域の繰返し配列を11個含み,両末端にGSTまたはビオチンを付加することで,基盤またはプローブへ固定できるようにした。この1分子計測の結果,エントロピー弾性に由来すると考えられる張力が観察されたので,worm like chainモデルによるフィッティングを行い,0.38±0.10nm(n=62)のpersistence lengthを得た。この値がアミノ酸1個の主鎖方向の長さとほぼ等しく,SEK領域は全長に渡ってランダムコイルであり、非常に伸びやすい性質であることが示唆された。このことから,無脊椎動物の横紋筋に存在する弾性タンパク質I-コネクチンは,PEVK領域が2つある(脊椎動物は1つ)と共に,脊椎動物には存在しない非常に伸びやすい性質の新しい配列を持つことで,脊椎動物の4倍もの長さの巨大サルコメアを担うことができると考えられる。無脊椎動物に存在する巨大サルコメアの横紋構造が,どのようにして維持されているかに関して,弾性を持つ構造タンパク質を中心に研究をおこなっている。これまでの研究で,ザリガニはさみ閉筋(節足動物横紋筋)の巨大サルコメアに存在するI-コネクチンの全一次構造を決定し,脊椎動物と同様な配列を持つと共に新規配列を持つこと,この新規配列が非常に伸びやすいことを明らかにした。無脊椎動物には節足動物横紋筋だけでなく,環形動物の斜紋筋にも巨大サルコメアがあり,コネクチン様タンパク質が存在することがわかっている。そこで本年度は、環形動物斜紋筋の構造維持に関与する弾性タンパク質の一次構造を明らかにするために、ゴカイ体壁筋1200Kタンパク質のcDNAクローニングをおこなった。その結果、2つの異なるクローンが得られた。一方のクローンは,プロリン(P)・グルタミン酸(E)・バリン(V)・リシン(K)の4種類のアミノ酸に富む配列とイムノグロブリン様のドメインが繰り返し配列された構造であり,他方のクローンはPEVKに富む14アミノ酸からなる新規の繰り返し配列であった。PEVK領域は脊椎動物のコネクチンに存在し、弾性を生み出して筋肉の受動的張力を担っていると考えられている部分である。このことから,この1200Kタンパク質は弾性を持ったコネクチン様タンパク質であり,筋肉の構造の維持に大きな役割を果たしていることが示唆された。無脊椎動物に存在する巨大サルコメアの横紋構造が,どのようにして維持されているかに関して,弾性を持つ構造タンパク質を中心に研究をおこなった。これまでの研究で,ザリガニ閉筋巨大サルコメアに存在するI-コネクチンの全一次構造を決定し,脊椎動物と同様な配列を持つと共に新規配列を持ち,この新規配列が非常に伸びやすいことを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-13440248 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13440248 |
水環境中残留医薬品類の多面的評価と薬理活性の除去性能評価 | 数多くの医薬品成分が水環境中から検出されている。一方で、機器の高精度化に伴い、分析対象を決めたターゲット分析では、上・下水道や環境中で分析対象物質の構造がわずかに変化しただけでも検出できないというジレンマが生じる。このような背景から、分析対象を定めないノンターゲット分析が普及しつつあるが、膨大な検出ピークの同定には時間を要する。そこで本研究では、水環境中に残留する医薬品等の薬理活性物質の俯瞰的評価手法を確立するため、薬理活性を直接検出可能なGタンパク連結型受容体を組込んだin vitroアッセイ(GPCRアッセイ)と、液体クロマトグラフータンデム四重極質量分析計(LC-MS/MS)によるターゲット分析、LCー飛行時間型MS(LC-QTof-MS)による予測スクリーニングを組み合わせた手法の検討を行っている。2018年度は、下水処理場の放流水に対し、3アプローチにより過年度に得られた分析結果を精査するとともに、ターゲット分析の拡充等の以下の検討を行った。GPCRアッセイで確認された拮抗活性値と、ターゲット分析により検出された濃度と検出成分の比活性値との間には、用いるGPCRによっては乖離が確認された。この乖離を埋めるため、ターゲット分析対象外の市販薬の精密質量を用いたLC-QTof-MS分析結果のスクリーニングによる存在予測、対象市販薬の売上調査、活性の定量化(比活性値の測定)、GPCRアッセイにより検出された拮抗活性値に対する寄与と下水処理放流水中の存在が予見されたいくつかの成分について、ターゲット分析による定量方法を確立した。その後、近畿圏の下水処理場より放流水を採取し、ターゲット分析を行い、実試料から検出した。これらの結果より、注視すべき水環境中の薬理活性およびその原因物質、下水処理過程における処理性、下水処理水受水河川における存在実態を提示した。予測スクリーニング結果をもとに、先行研究において開発した約50種の医薬品成分の一斉分析法へこれまでにいくつかの新規物質の追加を検討した。具体的には、先行研究において水環境中から検出された薬理活性の内、特に活性が高かったアンギオテンシンII受容体(AT1)拮抗薬(ARB)成分5種と分解産物1種、ヒスタミン(H)1受容体拮抗薬(H1RB)成分4種、H2受容体拮抗薬(H2RB)成分3種、β受容体拮抗薬(βRB)成分の分解産物1種など合計20成分以上を追加した。予測スクリーニングは、医薬品を中心に、環境中での検出事例がある成分と、その代謝産物など、約450成分の精密質量情報をもとに作成したライブラリーにより行った。ターゲット分析の分析精度の検討を終えた後、下水処理場放流水中の存在実態を把握した。並行して、予測スクリーニングで存在が予見された成分や、ターゲット分析対象に追加した成分について、比活性値を実測した。下水処理水から検出され、かつ比活性値が実測されている成分については、検出濃度と比活性値の積より理論的な活性値(理論値)を算出し、GPCRアッセイにより検出された実測値と比較した。AT1拮抗作用については、ターゲット分析成分と比活性値データの蓄積から、両値に正の相関が確認された。H1とβRB拮抗作用については、両値に未だ大きな乖離が確認された。H1拮抗活性については、2018年度にターゲット分析に追加したepinastineの寄与が大きいことが確認された。atenololやpropranololに代表されるβRB拮抗薬は、ARBのように化学構造が類似していることから、質量分析における共通フラグメントの検出により、βRB拮抗活性に寄与する化学物質の探索を試みた。その結果、これまでに国内では検出事例の無いbisoprololの存在を確認し、標品を用いた検討から、同物質を同定した。過年度までのバイオアッセイでは、主に向精神薬・抗血圧治療薬の標的であるドーパミン受容体(D2)、主に胃酸分泌抑制薬の標的であるムスカリン性アセチルコリン受容体(M1)に対する拮抗活性についても検出されたが、ターゲット分析により定量された検出濃度と、検出成分の活性値をもとにした理論的な活性値(理論値)との間で乖離が確認された。これは、分析対象外の医薬品成分や代謝産物、他の活性化学物質の存在や、交差反応、複合作用などが予想される。そこで、バイオアッセイでは、前年度の調査において高濃度かつ高頻度で検出された薬効分類の活性について、日本での販売実績をもとに当該薬効成分の活性値の測定を引き続き行いつつ、交差反応や複合影響についての情報を収集し、結果を再評価する。予測スクリーニングでは、バイオアッセイを行った試料中の未同定成分の確認を引き続き進める。バイオアッセイ、予測スクリーニングによる成果より、必要に応じてターゲット分析の対象成分を拡充する。バイオアッセイ、ターゲット分析、予測スクリーニングによるアプローチについて、上記の検討を終えた後、下水および下水処理水に対しこれらのアプローチを再度適用し、本手法により、環境中に残留する医薬品の存在実態の把握と、現行下水処理における処理能力の評価を行う。我々が使用する医薬品の成分による水生生物への影響が観測または懸念されている。しかし、現行の研究アプローチは、分析用標準物質が販売されている比較的古い薬剤に対する分析(ターゲット分析)であり、標準物質が販売されていない、または特許が有効な比較的新しい薬剤に対する分析や分解産物に対する分析(予測スクリーニング)ができていない。本研究の目的は、水環境中残留医薬品に起因する問題の解決と今後の影響評価に向け、多面的に残留医薬品の実態を評価することにある。 | KAKENHI-PROJECT-17H00786 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H00786 |
水環境中残留医薬品類の多面的評価と薬理活性の除去性能評価 | 具体的には、これまでの主研究アプローチである対象を決めた機器分析(ターゲット分析)に加え、培養細胞を用い水試料から直接薬理活性を検出できる試験(バイオアッセイ)を実施する。また、バイオアッセイにより残留医薬品の薬効分類を絞り込み、高感度分析機器(四重極飛行時間型質量分析計:QTof-MS)を用いた未同定の薬理活性物質の同定(予測スクリーニング)を試みる。さらに、同定された医薬品または薬理活性物質について、現行の下水処理場における除去性能を実態調査から明らかにする。目的達成に向け、バイオアッセイ、ターゲット分析、予測スクリーニングの3つのアプローチにより研究を遂行する。公共下水処理場や下水処理水の割合が高い河川(桂川、淀川)より水試料を採取し、各アプローチへ供する。並行して、ターゲット分析による下水処理過程における処理性能の把握、バイオアッセイによる活性の定量化(比活性値の測定)、予測スクリーニングによるターゲット分析から漏れている活性物質の存在推定を行う。これらの結果より、注視すべき水環境中の薬理活性およびその原因物質、下水処理過程における処理性、下水処理水受水河川における存在実態を提示する。先行研究において開発した約50種の医薬品成分の一斉分析法へ、いくつかの新規物質の追加検討を行った。具体的には、先行研究において水環境中から検出された薬理活性の内、特に活性が高かったアンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)成分5種、ヒスタミン(H)1受容体拮抗薬(H1RB)成分3種、H2受容体拮抗薬(H2RB)成分3種や、これらの代謝産物を含む関連物質など合計約20成分について検討を行った。分析精度についての検討を終えた後、5カ所の下水処理場と、下水処理水の割合が高い桂川、宇治川、木津川の最下流部、その下流の淀川枚方大橋において表層水を採取し、各成分の存在濃度の把握調査を3回実施した(ターゲット分析)。3回の下水処理場調査のうち1回は、処理工程に沿って試料を採取し、処理性能評価を行った。3回の調査において、一部もしくはすべての下水処理水試料をバイオアッセイに供した。バイオアッセイの結果、ARB、H1RBに関する活性のほか、β受容体拮抗薬(βRB)に関する活性が検出された。ターゲット分析の結果、対象成分約70種の中で、ARB、H1RBが比較的高濃度で検出され、さらにARB分解産物、βRB分解産物もそれぞれ1種が比較的高濃度で検出された。高濃度で検出された成分は、調査を行った河川の最下流部(枚方大橋)でも比較的高濃度で検出された。検出されたARB分解産物、βRB分解産物の生成を確認するため、下水処理場より活性汚泥を採取し、その生成挙動を確認した。予測スクリーニングに向け、ターゲット分析対象成分の標準溶液を、新規導入したQTof-MSで測定し、その特性の把握を試みた。具体的には、イオン化条件や精密質量測定のための校正、結果の解析手順について検討を行った。数多くの医薬品成分が水環境中から検出されている。一方で、機器の高精度化に伴い、分析対象を決めたターゲット分析では、上・下水道や環境中で分析対象物質の構造がわずかに変化しただけでも検出できないというジレンマが生じる。 | KAKENHI-PROJECT-17H00786 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H00786 |
感光材料における色素増感の動的機構の解明 | 本研究では、写真の分光増感における電子移動過程の研究で世界で初めてフェムト秒時間分解蛍光測定を用いて、増感色素の間の励起エネルギー移動と臭化銀への電子注入過程を観察した。1)臭化銀のナノ結晶表面の色素会合体から光誘起電子注入速度を測定した。これはピコ秒からサブピコ秒で起こる極めて速い過程であることを見出した。最も速いもので2x10^<12>s^<-1>程度(即ち0.5ピコ秒程度の短時間で起こる)。2)電子注入速度は臭化銀結晶系({111}面をもつ八面体乳剤と{100}面を持つ立方体)、結晶の大きさ(0.9-0.04μm)、によることを発見した。3)結晶の周りの銀イオン濃度(pAg)などによって変化を大きく受けることを初めて実測し、その原因を考察した。4)色増感色素にある条件を満たす別の色素を共吸着させることによって、増感感度を飛躍的に増大させる技術(強色増感またはスーパーセンシタイゼイション)の微視的な機構を明らかにした。5)感光色素間のエネルギー移動は時間分解蛍光異方性観測を行って、臭化銀のナノ八面体結晶の(111)面に整列した(<110>方向)色素間のエネルギー移動が約100フェムト秒(0.1ピコ秒、速度にして10^<13>s^<-1>の超高速度)で起こることを観測した。本研究では、写真の分光増感における電子移動過程の研究で世界で初めてフェムト秒時間分解蛍光測定を用いて、増感色素の間の励起エネルギー移動と臭化銀への電子注入過程を観察した。1)臭化銀のナノ結晶表面の色素会合体から光誘起電子注入速度を測定した。これはピコ秒からサブピコ秒で起こる極めて速い過程であることを見出した。最も速いもので2x10^<12>s^<-1>程度(即ち0.5ピコ秒程度の短時間で起こる)。2)電子注入速度は臭化銀結晶系({111}面をもつ八面体乳剤と{100}面を持つ立方体)、結晶の大きさ(0.9-0.04μm)、によることを発見した。3)結晶の周りの銀イオン濃度(pAg)などによって変化を大きく受けることを初めて実測し、その原因を考察した。4)色増感色素にある条件を満たす別の色素を共吸着させることによって、増感感度を飛躍的に増大させる技術(強色増感またはスーパーセンシタイゼイション)の微視的な機構を明らかにした。5)感光色素間のエネルギー移動は時間分解蛍光異方性観測を行って、臭化銀のナノ八面体結晶の(111)面に整列した(<110>方向)色素間のエネルギー移動が約100フェムト秒(0.1ピコ秒、速度にして10^<13>s^<-1>の超高速度)で起こることを観測した。写真の色増感は銀塩微粒子上に吸着した色素からの光励起電子移動によって起こる。世界最高の時間分解能を持つフェムト秒蛍光寿命測定装置を主として用いて、色増感機構の超高速ダイナミクスの基礎的研究を行った。すでに工業的には銀塩の結晶系と大きさの制御、過剰に与える銀イオン量の制御、吸着色素の種類、色素会合状態(通常J会合体と呼ばれる特殊な配列状態)の制御、異種添加色素による強色増感(スーパーセンシタイゼーション)など会合状態の制御などを通して、細密性感度、色調、色感、安定性などを向上させてきた。写真工業においては、早い時期にすでにサブミクロンのテクノロジーを達成し、さらに表面マイクロエネルギー制御や表面色素配列技術などを独自に進歩させている。したがって本研究の内容も多岐にわたることとなる。初期段階として流動性ゼラチンに分散させた試料を用いて吸着色素の蛍光寿命の測定を種々の条件で行った。研究の後半(次年度)では実際に近いフィルム上の同一システムの研究を行う予定である。分散システム測定用試料架台を作成した。銀塩の結晶形(立方晶形、斜方晶形)によって原子の現れる面が異なるので、吸着分子の電子環境は異なり、電子移動速度も異なると考えられる。実際、結晶形によって吸着色素の蛍光寿命が異なることを初めて見出し、これが表面マイクロエネルギー条件によるとの仮説で実験結果を説明した。結晶粒子サイズもハロゲン化銀の空間電荷層が伝導帯と荷電子帯エネルギーのバンドベンディングを与え電子移動の速さに影響を与えるものと思われる。実際蛍光寿命の変化が認められた。これらについて現在解析を行っている。写真の色増感は銀塩微粒子上に吸着した色素からの光励起電子移動によって起こる。高性能フェムト秒蛍光寿命測定装置を用いて、色増感機構の超高速ダイナミクスの基礎的研究を行った。この時間より遅い時間分解能の研究はこれまで存在したが、フェムト秒の実験は世界ではじめてである。このことは単に速い実験を行った意義にとどまらない。なぜならば色素増感の初期過程即ち色素間の電子移動と色素から臭化銀への電子移動は主としてフェムト秒からピコ秒の短い時間領域で起こることを本研究によって証明できたからである。 | KAKENHI-PROJECT-12640554 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12640554 |
感光材料における色素増感の動的機構の解明 | 銀塩の結晶系(立方晶系(100面)と斜方晶形(111面))と結晶の大きさ(ナノサイズからサブミクロンサイズ)、過剰に与える銀イオン量(pAg)、色素会合状態(通常J会合体と呼ばれる特殊な配列状態)、異種添加色素による強色増感(スーパーセンシタイゼーション)などと初期過程の関係を本研究によって、初めて明らかにすることが出来た。具体的にはエマルジョン銀塩単結晶に吸着した色素の蛍光寿命の測定を上記の種々の条件で行った。さらに乾燥させたフィルム上の同一システムの研究を行った。このため測定用試料架台を作成した。銀塩の結晶形によって吸着色素の蛍光寿命が異なることを初めて見出した。立方晶形では電子移動が遅く、斜方晶形では速かった。また、(111)面上の実験において蛍光の時間分解異方性実験からエピタキシャル吸着した色素間のエネルギー移動の速さを初めて測定した。結晶粒子サイズ依存性はハロゲン化銀の空間電荷層が伝導帯と荷電子帯エネルギーのバンドベンディングを与え電子移動の速さに影響を与えるものと思われる。後者では電子移動が最速の電子移動速度を与えるエネルギー関係が成り立っているものと推測した。 | KAKENHI-PROJECT-12640554 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12640554 |
高精度比較ゲノム解析を用いた糸状菌のタンパク質分泌生産メカニズムの解明 | 本研究は、トリコデルマ・リーセイのセルラーゼ生産系をモデルとして糸状菌におけるタンパク質分泌生産メカニズムに関する知見を得ることを目的としている。野生株から取得されたセルラーゼ高生産変異株系統樹を対象として、ゲノム配列の比較解析を行い、各変異株において変異が生じていた遺伝子を明らかにした。数種の遺伝子の破壊および変異復帰解析の結果、炭素源異化抑制に関与する転写調節因子Cre1、菌体内βーグルコシダーゼの転写活性化因子BglR、菌体内の主要なβーグルコシダーゼであるBGLIIをコードする遺伝子の変異がトリコデルマ・リーセイのセルラーゼ生産能の向上をもたらしたことが明らかとなった。トリコデルマ・リーセイのセルラーゼ高生産変異株系統の中から,セロビオースやソルボースを炭素源とした時に標準株と比べて極めて高いセルラーゼ生産性を示すPC-3-7株に特に着目して解析を進めている.比較ゲノム解析から見出したアミノ酸変異をともなう変異遺伝子の中から,セルラーゼ高生産化に影響を与えると考えられる3つの遺伝子(βーグルコシダーゼ遺伝子BGLII,転写調節因子BglR,転写抑制因子Cre1)について,変異復帰および遺伝子破壊解析を進めてきた.昨年度までの解析から,PC-3-7においてBGLIIの変異がセルラーゼの高生産に重要である事が示唆されていた.しかしながらPC-3-7株は標準株から6世代の突然変異処理を経た菌株であり,BGLII遺伝子以外の多くの変異の影響を受けていると考えられ,BGLIIのみの影響を正確に評価できていると判断することが困難であった.そこで,BGLII変異の真の影響を解析するために標準株のBGLII破壊および変異導入を行いセルラーゼ生産性に与える影響を解析した.その結果,標準株のBGLII遺伝子の変異によってタンパク質の機能が一部失われることが非常に高いセルラーゼ生産性をもたらすことが明らかとなった.変異型BGLIIの糖転移活性によってセロビオースから生産される物質がセルラーゼの誘導物質である可能性が強く示唆されたことから,どのような物質なのかメタボローム解析を進めている.BglRに関しては,変異のバックグラウンドが少ない標準株で遺伝子破壊の影響をトランスクリプトームの観点から解析を進めている.Cre1の変異に関しては、遺伝子の破壊解析および変異復帰解析の結果を論文として報告した(Biosci. Biotechnol. Biochem. 77(3), 534-543, 2013).これらの成果については,学会にて発表している(7件).これまで、トリコデルマ・リーセイのセルラーゼ高生産変異株系統樹の中から、セロビオースやソルボースを炭素源とした時に標準化部と比べて極めて高いセルラーゼ生産性を示すPC-3-7株に特に着目して解析を進めてきた。比較ゲノム解析から明らかとなった一塩基変異のうち遺伝子内に存在し、なおかつコードするタンパク質のアミノ酸変異をもたらすものについて解析したところ、βーグルコシダーゼII、転写活性化因子BglR、炭素源異化抑制因子Cre1の変異がセルラーゼ高生産化の原因ということを明らかとしてきた。PC-3-7株から得られた変異株PCD-10株は、大規模培養を行った場合にPC-3-7株よりも高い酵素生産性を示すが、フラスコレベルでの生産性はほとんど変わらない。PCD-10株の全ゲノム配列を次世代シークエンサーで解析し、PC-3-7と比較したところ、少なくとも3遺伝子に変異が生じていることが明らかとなった。これらの遺伝子を解析するための遺伝子破壊用もしくは変異復帰用のDNA断片を構築した。トリコデルマ・リーセイにおいてセルラーゼの生産が培養時のpHの影響を受けることが明らかとなっているため、種々のpH条件下における各変異体の酵素生産性を解析した。その結果、標準株においては高pHになるにつれて酵素生産性が低下するのに対してセルラーゼ高生産変異株では高pHにおいても高い酵素生産性を維持していた。この表現型は標準株から取得されたN25株において観察されたため、N25株の全ゲノム配列を解析して標準株と比較した。その結果、100個以上の一塩基変異が見出され、その中でコードするアミノ酸の変異をもたらす遺伝子は少なくとも3遺伝子あることが明らかとなった。これらの成果については学会にて発表している(4件)本研究は、トリコデルマ・リーセイのセルラーゼ生産系をモデルとして糸状菌におけるタンパク質分泌生産メカニズムに関する知見を得ることを目的としている。野生株から取得されたセルラーゼ高生産変異株系統樹を対象として、ゲノム配列の比較解析を行い、各変異株において変異が生じていた遺伝子を明らかにした。数種の遺伝子の破壊および変異復帰解析の結果、炭素源異化抑制に関与する転写調節因子Cre1、菌体内βーグルコシダーゼの転写活性化因子BglR、菌体内の主要なβーグルコシダーゼであるBGLIIをコードする遺伝子の変異がトリコデルマ・リーセイのセルラーゼ生産能の向上をもたらしたことが明らかとなった。これまでに申請者が進めてきたトリコデルマ・リーセイのセルラーゼ高生産変異株系統樹の比較ゲノム解析から、アミノ酸変異をともなう変異遺伝子を数十個同定している。変異株の中でPC-3-7株はセロビオース、ソルボースを誘導炭素源としたときに親株であるKDG-12株と比較して極めて高いセルラーゼ生産性を占めす。KDG-12からPC-3-7の間で生じた変異遺伝子は9個であり、そのうち転写調節因子をコードしている遺伝子に着目した。この転写調節因子は真菌でのみ見られるZn(2)-Cys | KAKENHI-PROJECT-23603002 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23603002 |
高精度比較ゲノム解析を用いた糸状菌のタンパク質分泌生産メカニズムの解明 | (6)タイプDNA結合ドメインを有しており、この転写調節因子をコードする遺伝子の遺伝子破壊実験、変異箇所の回復実験を行ったところ、本因子はセロビオース(セロオリゴ糖)に応答して菌体内のβーグルコシダーゼ群の転写を活性化することが明らかとなり、本因子をBglRと名付けた。この成果は、学会で発表すると共に論文として発表した(Fungal. Genet. Biol. (2012) In press)。PC-3-7で生じていた変異遺伝子のうち別の解析ターゲットとして菌体内βーグルコシダーゼ(BGLII)をコードする遺伝子の変異に着目した。これまで、トリコデルマ・リーセイにおけるセルラーゼの誘導発現において、セルロースから生じたセロビオースが菌体外のβ-グルコシダーゼの糖転移活性によって変換されたソホロースが最終的な誘導物質として働くと考えられていた。しかしながら、菌体内のβーグルコシダーゼであるBGLIIのセルラーゼ誘導における働きは全く明らかにされていなかった。そこでbgl2の破壊実験および変異回復実験を行った結果、復帰株はセロビオースを炭素源としたときのセルラーゼ生産性が低下したことから、セルラーゼ誘導生産にBGLIIが関与していることが明らかとなった。この成果は学会でも発表しており、現在論文投稿準備中である。24年度において,これまでの比較ゲノム解析の結果からトリコデルマ・リーセイのセルラーゼ生産条件において大きな影響を与えている遺伝子を3個の遺伝子を同定するに至った.これにより,当初の計画であったタンパク質高生産化に関与する遺伝子の決定および機能評価を完了した.そのため本年度の達成度は大きいといえる.現在,ロングリードタイプのDNAシーケンサーを用いたゲノム解析も進めており,変異株のゲノムデータの精微化を進めている.また,トランスクリプトーム解析と比較ゲノム解析をリンクさせたデータベースの構築を進めている.23年度において、これまでゲノム配列を決定してきたトリコデルマ・リーセイのセルラーゼ高生産変異株に加えて新たに4株のデータ加えることができた。ショートリードタイプのゲノムシークエンサーを用いたゲノム配列の決定についてはほぼ完了し1塩基多型を中心とした変異点の同定が完了した。この時点で、ある程度その機能が予想されるターゲット遺伝子に対して、予想24年度に計画していた遺伝子破壊、変異回復実験を前倒しで行い、トリコデルマ・リーセイのセルラーゼ生産性に大きな役割を果たす因子であることを明らかにすることができたことから本年度の達成度は大きいといえる。また、マイクロアレイによるトランスクリプトーム解析についても主要な変異株について完了し表現型とリンクさせたデータベースの構築を進めている。ロングリードタイプのDNAシーケンサーを用いて得られたデータと,これまでのショートリードタイプのDNAシーケンシングデータを統合し,SNPおよびIn/Del情報の精密化をはかる.また,当初の研究計画には無かったが,トランスロケーションによるゲノム変異に関しても情報を取得する.このデータベースからタンパク質高生産化に関与する遺伝子を選定する。 | KAKENHI-PROJECT-23603002 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23603002 |
結晶格子の標準的実現と磁場付き推移作用素のスペクトル解析 | 周期性をもつグラフ(有限グラフのアーベル被覆グラフ)を結晶格子という。結晶格子に周期的な磁場がかかっている場合の電子の振る舞いを表す有界自己共役作用素を磁場付き推移作用素という。まず、結晶格子の「磁場付き推移作用素」を定義し、それが妥当な定義であることの証拠として、中心極限定理を得た。即ち、磁場付き推移作用素が時間無限大でユークリッド空間の磁場付きラプラシアンに収束することを示した。更に、このときのユークリッド計量および、極限に現れるベクトル・ポテンシャルの幾何学的意味を明らかにした。次に群のコホモロジーを用いて結晶格子における「磁場」を定義し、磁場付き推移作用素のスペクトルの磁場に関する依存の滑らかさを調べた。磁場付き推移作用素を磁場によって定まるC*環の元と見ることが本質的である。C*環の連続場および、非可換トーラスの微分構造を用いて、磁場に滑らかに依存する自己供役な作用素のスペクトル端は磁場に対してリプシッツ連続性を持つことを示した。また、磁場のないばあい、すなわち結晶格子のランダム・ウォークに関して大偏差原理が成立することを示し、その幾何学的意味をあきらかにした。結晶格子のスケールをゼロに収束させると、有限次元ベクトル空間にバナッハ距離を入れた距離空間にグロモフ・ハウスドルフ収束するが、この極限距離空間と大偏差に現れるレート関数に関係があることを観察し、バナッハ距離が結晶格子の幾何で具体的に求まることを示した。周期性をもつグラフ(有限グラフのアーベル被覆グラフ)を結晶格子という。結晶格子に周期的な磁場がかかっている場合の電子の振る舞いを表す有界自己共役作用素を磁場付き推移作用素という。まず、結晶格子の「磁場付き推移作用素」を定義し、それが妥当な定義であることの証拠として、中心極限定理を得た。即ち、磁場付き推移作用素が時間無限大でユークリッド空間の磁場付きラプラシアンに収束することを示した。更に、このときのユークリッド計量および、極限に現れるベクトル・ポテンシャルの幾何学的意味を明らかにした。次に群のコホモロジーを用いて結晶格子における「磁場」を定義し、磁場付き推移作用素のスペクトルの磁場に関する依存の滑らかさを調べた。磁場付き推移作用素を磁場によって定まるC*環の元と見ることが本質的である。C*環の連続場および、非可換トーラスの微分構造を用いて、磁場に滑らかに依存する自己供役な作用素のスペクトル端は磁場に対してリプシッツ連続性を持つことを示した。また、磁場のないばあい、すなわち結晶格子のランダム・ウォークに関して大偏差原理が成立することを示し、その幾何学的意味をあきらかにした。結晶格子のスケールをゼロに収束させると、有限次元ベクトル空間にバナッハ距離を入れた距離空間にグロモフ・ハウスドルフ収束するが、この極限距離空間と大偏差に現れるレート関数に関係があることを観察し、バナッハ距離が結晶格子の幾何で具体的に求まることを示した。有限グラフのアーベル被覆である無限グラフを結晶格子と言う.正方格子,三角格子,六角格子などの周期性のあるグラフのことで物理に頻繁に現われる大切なグラフである.結晶格子に磁場がかかっている場合の電子の運動は磁場付き推移作用素によって記述できる.結晶格子にはアーベル群が作用するが,磁場付き推移作用素はこのアーベル群と可換ではなく,この非可換性が物事を予想以上に複雑にする.例えば,ユークリッド空間の周期的磁場付きラプラシアンのスペクトル構造は単純で,完全に解析されているのとは対照的に,その離散版である磁場付き推移作用素のスペクトルの構造は磁場が無理数であるときにはカントール集合になる.このスペクトルの磁場に対する依存の仕方は変形量子化理論で用いられる,C環の連続場のアイデアを使う.J. Bellissardは非可換トーラスのK理論を用いて量子ホール効果を説明するなど,C^*環アプローチは有用である.このアイデアを拡張することで結晶格子の磁場付き推移作用素に対して、スペクトルのLipschitz連続性を示した.また,等質化のアイデアで,中心極限定理を得た.極限に現われるユークリッド空間の磁場付きラプラシアンのベクトル・ポテンシャルを群コホモロジーの完全系列の結晶格子の標準的実現を用いて説明した.また,磁場のない場合の結晶格子上のランダム・ウオークの極限定理についても幾何の立場で研究を行っている.正方格子上のランダム・ウォークに関する古典的な極限定理を,結晶格子に拡張することによって,その幾何的な意味合いを解明し,結晶格子の調和写像や,空間としてのグロモフーハウスドルフ収東という全く新しい観点から極限定理を記述することに成功した.周期性をもつグラフ(有限グラフのアーベル被覆グラフ)を結晶格子という。結晶格子に周期的な磁場がかかっている場合の電子の振る舞いを表す有界自己共役作用素を磁場付き推移作用素という。まず、結晶格子の「磁場付き推移作用素」を定義し、それが妥当な定義であることの証拠として、中心極限定理を得た。即ち、磁場付き推移作用素が時間無限大でユークリッド空間の磁場付きラプラシアンに収束することを示した。更に、このときのユークリッド計量および、極限に現れるベクトル・ポテンシャルの幾何学的意味を明らかにした。次に群のコホモロジーを用いて結晶格子における「磁場」を定義し、磁場付き推移作用素のスペクトルの磁場に関する依存の滑らかさを調べた。磁場付き推移作用素を磁場によって定まるC*環の元と見ることが本質的である。C*環の連続場および、非可換トーラスの微分構造を用いて、磁場に滑らかに依存する自己供役な作用素のスペクトル端は磁場に対してリプシッツ連続性を持つことを示した。また、磁場のないばあい、すなわち結晶格子のランダム・ウォークに関して大偏差原理が成立することを示し、その幾何学的意味をあきらかにした。 | KAKENHI-PROJECT-14540057 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14540057 |
結晶格子の標準的実現と磁場付き推移作用素のスペクトル解析 | 結晶格子のスケールをゼロに収束させると、有限次元ベクトル空間にバナッハ距離を入れた距離空間にグロモフ・ハウスドルフ収束するが、この極限距離空間と大偏差に現れるレート関数に関係があることを観察し、バナッハ距離が結晶格子の幾何で具体的に求まることを示した。 | KAKENHI-PROJECT-14540057 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14540057 |
全身性強皮症におけるM4マクロファージの役割 | 強皮症は血管内皮障害および線維化を特徴とする疾患であり、近年M2マクロファージがその病態に重要な役割を果たしていることが明らかとなっている。本研究において着目するM4マクロファージは血小板や形質細胞様樹状細胞から産生されるCXCL4により単球から分化誘導される。CXCL4は、発症早期びまん型SScにおいて優位に上昇し、皮膚硬化、間質性肺病変、肺動脈性肺高血圧症と関連があることが報告された。本研究では、SScのバイオマーカーとして知られているCXCL4により単球から分化誘導されるM4マクロファージと発症早期びまん皮膚型SScの病態との関連性について検討し、新規治療戦略を模索することを目的とする。強皮症は血管内皮障害および線維化を特徴とする疾患であり、近年M2マクロファージがその病態に重要な役割を果たしていることが明らかとなっている。本研究において着目するM4マクロファージは血小板や形質細胞様樹状細胞から産生されるCXCL4により単球から分化誘導される。CXCL4は、発症早期びまん型SScにおいて優位に上昇し、皮膚硬化、間質性肺病変、肺動脈性肺高血圧症と関連があることが報告された。本研究では、SScのバイオマーカーとして知られているCXCL4により単球から分化誘導されるM4マクロファージと発症早期びまん皮膚型SScの病態との関連性について検討し、新規治療戦略を模索することを目的とする。 | KAKENHI-PROJECT-19K24004 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K24004 |
口腔発癌における唾液中上皮増殖因子プロモ-タ-作用に関する研究 | 上皮増殖因子(EGF)は、強力な細胞増殖因子で、マウスでは顎下腺が主要産生臓器で、唾液中にも高濃度に検出される。動物実験系で皮膚・胃・乳腺・膵臓での発癌の促進因子としてEGFが作用する可能性が指摘されているが、口腔癌での効果は明らかにされていない。本研究は、平成元年度に、ハムスタ-頬嚢での発癌に必要な条件を検討し、6週間のDMBA塗布で、頬嚢上皮細胞はイニシエイトされているが、未だ腫瘍形成に至らない段階にあることを確認した。平成2年度では、6週間でDMBAを終了し、次に、顎下腺摘出あるいは顎下腺摘出とヒトEGFであるウロガストロン(UG)投与の頬嚢腫瘍形成に及ぼす影響を検討した。顎下腺を摘出した群としない群との比較で、頬嚢あたりの腫瘍個数に差があり、腫瘍体積でも4倍の差があることから、顎下腺摘出は、腫瘍発生と増殖に抑制的に作用することが明らかとなった。顎下腺摘出後にUGを0.25mg/kg週3回投与すると、顎下腺摘出による腫瘍数の減少が、倍分的に回復することから、頬嚢腫瘍系において顎下腺のEGFが重要な働きをするものと考えられた。今後、EGFと他のプロモ-タ-因子との関連につき研究を発展させる必要があり、平成2年度では、ハムスタ-頬嚢系でプロモ-タ-作用が報告されている単純ヘルペスウイルスに関しても研究を行った。ヒト歯肉の器官培養系でのHSV感染実験で、歯肉組織はHSVの1・2型ともに同様の感受性を示すことが明らかとなった。また、癌の分化療法に用いられるhexamethylene bisacetamide(HMBA)はHSV増殖を促進することによりHSVの再発病変を誘発する可能性が強く示唆された。これらの知見をもとにし、HSV初感染と再発をハムスタ-で成立させ、EGFとの相加・相乗的効果を今後検討する方針である。上皮増殖因子(EGF)は、強力な細胞増殖因子で、マウスでは顎下腺が主要産生臓器で、唾液中にも高濃度に検出される。動物実験系で皮膚・胃・乳腺・膵臓での発癌の促進因子としてEGFが作用する可能性が指摘されているが、口腔癌での効果は明らかにされていない。本研究は、平成元年度に、ハムスタ-頬嚢での発癌に必要な条件を検討し、6週間のDMBA塗布で、頬嚢上皮細胞はイニシエイトされているが、未だ腫瘍形成に至らない段階にあることを確認した。平成2年度では、6週間でDMBAを終了し、次に、顎下腺摘出あるいは顎下腺摘出とヒトEGFであるウロガストロン(UG)投与の頬嚢腫瘍形成に及ぼす影響を検討した。顎下腺を摘出した群としない群との比較で、頬嚢あたりの腫瘍個数に差があり、腫瘍体積でも4倍の差があることから、顎下腺摘出は、腫瘍発生と増殖に抑制的に作用することが明らかとなった。顎下腺摘出後にUGを0.25mg/kg週3回投与すると、顎下腺摘出による腫瘍数の減少が、倍分的に回復することから、頬嚢腫瘍系において顎下腺のEGFが重要な働きをするものと考えられた。今後、EGFと他のプロモ-タ-因子との関連につき研究を発展させる必要があり、平成2年度では、ハムスタ-頬嚢系でプロモ-タ-作用が報告されている単純ヘルペスウイルスに関しても研究を行った。ヒト歯肉の器官培養系でのHSV感染実験で、歯肉組織はHSVの1・2型ともに同様の感受性を示すことが明らかとなった。また、癌の分化療法に用いられるhexamethylene bisacetamide(HMBA)はHSV増殖を促進することによりHSVの再発病変を誘発する可能性が強く示唆された。これらの知見をもとにし、HSV初感染と再発をハムスタ-で成立させ、EGFとの相加・相乗的効果を今後検討する方針である。上皮増殖因子(EGF)は正常細胞の増殖と分化に関与するだけでなく、実験動物に皮下投与した場合、乳癌や皮膚癌の発生を促進することが報告されている。しかし、唾液や尿に多量に含まれるEGFがこれら体液と接する粘膜の発癌過程に関与するか否かは十分検討されておらず、EGFのプロモ-タ-作用についての結論も出ていない。本研究の目標は唾液EGFのプロモ-タ-作用の検証であるが、口腔発癌でのプロモ-ション作用を検定する条件は確立しておらず、また唾液自身に口腔癌に対するプロモ-ション作用があるか否かも不明である。この点で、唾液と同様にEGFを含む尿に関しては、尿中の膀胱発癌促進物質の存在がすでに明らかにされている。そこで、本研究を遂行する第一段階として、(1)口腔発癌のプロモ-ション物質検出条件の設定と並行して、(2)尿中プロモ-タ-物質(Cancer Res 1983:43:1774)のEGFとの関連性を検討した。(2)に対して、ラット尿よりゲル濾過で得た、in vivoにて膀胱発癌を促進する分画につき、ポリアミン合成の律速酵素であるオルニチン脱炭酸酵素(ODC)誘導活性とEGFレセプタ-の競合活性を指標に、各分画について測定を行った。その結果、ODC誘導活性とプロモ-ション作用の強い分画(分子量54Kdと6.1Kd)にEGF活性を認めた。ODC活性は抗EGF抗体で完全に抑制された。 | KAKENHI-PROJECT-01571096 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01571096 |
口腔発癌における唾液中上皮増殖因子プロモ-タ-作用に関する研究 | プロモ-タ-物質検出の一指標としたODC誘導活性の主役は尿中EGFであり、この分画のプロモ-タ-作用にEGFの関与が示唆された。この結果をふまえ、ヒト尿より調整したEGFを用いたEGFを用いた実験を行っている。(1)に関して、dimethylbenzanthvaceneの0.5%溶液をハムスタ-頬襄に週2回で10-12週塗布することで腫瘍形成を確認した。そこで、8週塗布でイニシエ-ション処置を終了し、顎下腺摘出と非摘出の動物の頬襄に90%グリセリンに溶解したEGF(0.2mg/kg)を塗布し、粘膜表面から投与されたEGFの口腔発癌への効果を検討している。上皮増殖因子(EGF)は強力な細胞増殖因子で、マウスでは顎下腺が主要産生臓器であり、唾液中にも高濃度に検出される。シリアンハムスタ-頬襄に9,10ーdimethy1ー1,2ーbenzanthracene(DMBA)を塗布し誘発する口腔発癌系を用いて、顎下腺摘出と顎下腺摘出後のEGF投与の腺瘍形成に及ぼす影響を検討した。6週令ハムスタ-を4群に分け、6週間の0.5%DMBA塗布後、2ー4群には顎下腺摘出手術を行った。その後、1と2群には生食の皮下投与、2群と4群にはそれぞれ、0.025mg/kgと0.25mg/kgのヒトEGFであるウロガストロン(UG)の皮下投与を週3回行った。UG投与8週後に、動物を屠殺し頬襄、胃、肝、腎を摘出した。体重ならびに肝・腎の重量に各群で差をみとめなかった。1ー4群の頬襄あたりの腫瘍数は、3.4,2.1,2.5,3.2であり、1・4群と2群との間で有意差(P<0.05)を認めた。腫瘍体積においても1・4群が高値を示した。更に、前胃腫瘍個数でも、1・4群が2群より高い値を示した。この結果より、顎下腺EGFは、ハムスタ-頬襄ならびに胃腫瘍形成に重要な役割を果すものと考えられた。頬襄腫瘍形成には複数の因子がプロモ-タ-として関与すると思われる。EGFと他の因子の関連につき研究を発展させるため、ハムスタ-頬襄発癌を促進すると報告されている単純ヘルペウスウイルス(HSV)を用いて、口腔HSV感染症に関する研究を行った。ヒト歯肉の器官培養系で、HSVの1・2型ともに同様の感染様式を示した。癌の分化療法に用いられるhexamethylene bisacetamide(HMBA)はHSV増殖を促進することによりHSVの再発病変を誘発する可能性が強く示唆された。これらの知見をもとに、HSV初感染と再発をハムスタ-で成立させ、EGFとの相加・相乗的効果を今後検討する方針である。 | KAKENHI-PROJECT-01571096 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01571096 |
全部床義歯装着者の咀嚼能力と顎堤吸収に関する研究 | 目的および方法:全部床義歯装着者の咬合・咀嚼能力と顎堤吸収との関連を検討するために,本学歯学部附属病院補綴科外来にて,同一術者・材料・術式による全部床義歯を製作・装着し,良好な経過を辿っている高齢無菌顎患者28名(平均年齢75.6±4.8歳)を被験者として,新たに考案した義歯支持基盤レプリカ法により義歯支持基盤面積,体積,平均高さを,咬合力計(日本光電社製)により最大咬合力を,篩分法により咀嚼効率を,CTスキャナにより咬筋断面積を各々測定した.また,若干正常有歯顎者42名(平均年齢25.5±2.4歳)を被験者として,種々の吸収因子が関与しない状態の無歯顎顎堤を想定し,歯肉頬移行部を再現した下顎研究用模型より歯冠部を切除した後に基礎床を製作してレプリカ法による各パラメータを,また,デンタルプレスケール(富士写真フィルム社製)により最大咬合力を測定した.なお,プレスケールの測定値は回帰式により咬合力計のそれに換算した.結果および考察:若干正常有歯顎者の仮想義歯支持基盤を表示するパラメータは全部床義歯装着者の床下支持基盤のそれよりも有意に大きい値を示し,抜歯による廃用性萎縮が顎堤吸収に大きく関与していることが示唆された.全部床義歯装着者の最大咬合力は,加齢に伴い統計学的に有意に低下したが,咬筋断面積の加齢変化には有意差は認められなかった.また,義歯支持基盤面積の増減が咀嚼効率に及ぼす影響は特に大きく,咬合・咀嚼圧が付加される方向に対して直交する面である義歯支持基盤面積が咀嚼機能の確保に重要であることが示唆され,顎堤の保全のためには可及的に大きな義歯床が必要であることが推測された.全部床義歯の支持基盤である顎堤の吸収には,解剖学的因子,新陳代謝的因子,補綴学的因子が関与しているとされているが,その相互関係については未だ明らかにされていない.そこで,本研究は,正常有歯顎者10名,全部床義歯装着者20名を被験者として,義歯支持基盤と最大咬合力および咀嚼効率について検討した.全部床義歯装着者の義歯支持基盤を評価するために,パノラマX線写真より算出された顎堤高さ指数と新たに考案した義歯支持基盤レプリカ法による義歯支持基面積,義歯支持基盤体積を測定した.また,種々の吸収因子が関与しない状態の無歯顎顎堤を想定し,正常有歯顎者の歯肉頬移行部を再現した下顎研究模型より歯冠部を切除した後に,義歯床を製作し,レプリカ法により義歯支持基盤面積と体積を測定した.さらに,プレスケール,日本光電社製咬合力計により最大咬合力および篩分法による咀嚼効率を測定した.得られた結果は以下の通りである.1.全部床義歯装着者において,最大咬合力,義歯支持基盤面積,義歯支持基盤体積の3項目を独立変数,咀嚼効率を従属変数として重回帰分析を行ったところ,独立変数と従属変数との間に有意な相関(R=0.843)が認められ,特に最大咬合力,義歯支持基盤面積は高い偏相関係数を示した.このことは,高い咀嚼機能の発現には,最大咬合力,義歯支持基盤面積が重要な因子となっていることを示唆するものである.2.義歯支持基盤面積,体積について,正常有歯顎者と全部床義歯装着者とを比較したところ,全部床義歯装着者のそれらは正常有歯顎者のそれに比して有意に減少しており,特に,義歯支持基盤体積の減少が著明であった.したがって,支持基盤の評価に用いるレプリカ法が,抜歯により高さ方向を主体とする吸収が生じ,さらに種々の吸収因子の関与によって吸収が進行して行く過程の記録,評価に有用であることが示唆された.目的および方法:全部床義歯装着者の咬合・咀嚼能力と顎堤吸収との関連を検討するために,本学歯学部附属病院補綴科外来にて,同一術者・材料・術式による全部床義歯を製作・装着し,良好な経過を辿っている高齢無菌顎患者28名(平均年齢75.6±4.8歳)を被験者として,新たに考案した義歯支持基盤レプリカ法により義歯支持基盤面積,体積,平均高さを,咬合力計(日本光電社製)により最大咬合力を,篩分法により咀嚼効率を,CTスキャナにより咬筋断面積を各々測定した.また,若干正常有歯顎者42名(平均年齢25.5±2.4歳)を被験者として,種々の吸収因子が関与しない状態の無歯顎顎堤を想定し,歯肉頬移行部を再現した下顎研究用模型より歯冠部を切除した後に基礎床を製作してレプリカ法による各パラメータを,また,デンタルプレスケール(富士写真フィルム社製)により最大咬合力を測定した.なお,プレスケールの測定値は回帰式により咬合力計のそれに換算した.結果および考察:若干正常有歯顎者の仮想義歯支持基盤を表示するパラメータは全部床義歯装着者の床下支持基盤のそれよりも有意に大きい値を示し,抜歯による廃用性萎縮が顎堤吸収に大きく関与していることが示唆された.全部床義歯装着者の最大咬合力は,加齢に伴い統計学的に有意に低下したが,咬筋断面積の加齢変化には有意差は認められなかった. | KAKENHI-PROJECT-06671964 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06671964 |
全部床義歯装着者の咀嚼能力と顎堤吸収に関する研究 | また,義歯支持基盤面積の増減が咀嚼効率に及ぼす影響は特に大きく,咬合・咀嚼圧が付加される方向に対して直交する面である義歯支持基盤面積が咀嚼機能の確保に重要であることが示唆され,顎堤の保全のためには可及的に大きな義歯床が必要であることが推測された.目的および方法:全部床義歯装着者の咬合・咀嚼能力と顎堤吸収との関連を検討するために,本学歯学部附属病院補綴科外来にて,同一術者・材料・術式による全部床義歯を作成・装着し,良好な経過を辿っている高齢無歯顎患者28名(平均年齢75.6±4.8歳)を被験者として,新たに考案した義歯支持基盤レプリカ法により義歯支持基盤面積,体積,平均高さを,咬合力計(日本光電社製)により最大咬合力を,篩分法により咀嚼効率を,CTスキャナにより咬筋断面積を各々測定した.また,若年正常有歯顎者42名(平均年齢25.5±2.4歳)を被験者として,種々の吸収因子が関与しない状態の無歯顎顎堤を想定し,歯肉頬移行部を再現した下顎研究用模型より歯冠部を切除した後に基礎床を製作してレプリカ法による各パラメータを,また,デンタルプレスケール(富士写真フィルム社製)により最大咬合力を測定した.なお,プレスケールの測定値は回帰式により咬合力計のそれに換算した.結果および考察:若年正常有歯顎者の仮想義歯支持基盤を表示するパラメータは全部床義歯装着者の床下支持基盤のそれよりも有意に大きい値を示し,抜歯による廃用性萎縮が顎堤吸収に大きく関与していることが示唆された.全部床義歯装着者の最大咬合力は,加齢に伴い統計学的に有意に低下したが,咬筋断面積の加齢変化には有意差は認められなかった.また,義歯支持基盤面積の増減が咀嚼効率に及ぼす影響は特に大きく,咬合・咀嚼圧が付加される方向に対して直交する面である義歯支持基盤面積が咀嚼機能の確保に重要であることが示唆され,顎堤の保全のためには可及的に大きな義歯床が必要であることが推測された. | KAKENHI-PROJECT-06671964 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06671964 |
ゲノムワイド関連解析に基づく酸性土壌耐性の分子的理解 | 世界の農耕地に広がる酸性問題土壌では、主にアルミニウム(Al)や酸(H+)が作物の生育を阻害する。本研究では、モデル植物シロイヌナズナ約200系統の約20万個の一塩基多型(SNP)とAlおよびH+ストレス耐性の関連解析(ゲノムワイド関連解析:GWAS)を実施した。その結果、両耐性バリエーションについて、それぞれ約70%を説明する100以上の耐性関連遺伝子領域を検出し、新規Al耐性関連遺伝子を同定した。また、主要Al耐性遺伝子リンゴ酸トランスポーターの転写制御領域におけるいくつかの遺伝子多型がAl耐性に関与していることを明らかにした。H24年度はシロイヌナズナ野生株を用いたストレス耐性評価により酸性土壌ストレス耐性のナチュラルバリエーションを評価し,その形質値からゲノムワイド関連解析(GWAS)を実施し,耐性関連候補遺伝子を絞り込んだ具体的には、アルミニウムストレス、酸ストレス、活性酸素ストレス、及びコントロール区で約200系統のシロイヌナズナ野生株を水耕栽培し根長を測定した.ストレス下でのコントロール区に対する根伸長割合から,各系統のストレス耐性レベルを評価してGWASの形質値とした.用いた野生株集団の遺伝的構造をSTRUCTUREまたはPCA解析により評価した.それらの値と根長形質値をTASSELまたはGAPITに導入し,約20万個のSNPとストレス耐性レベルと関連性の高いSNPを推定した.その結果,各ストレスに強く関連した上位のSNPは各ストレスに特異性を示し,アルミニウムストレスや活性酸素ストレス耐性形質に関しては特に強い関連性を示すSNPが観察された.酸ストレス耐性に関しては,著しく高い相関を示すSNPは得られなかった。現在はこれらの遺伝子についてサブ系統や遺伝子破壊株などを用いて詳細な解析を行っている.これらのSNPの他にも高い確率でいくつかの耐性関連SNPが見いだされ,これまでに報告のある耐性遺伝子座近傍のSNPも関連を示し,ストレス耐性形質がポリジーン系によって支配されていることが遺伝的に示唆された.また,相互作用を示すエピスタシスの解析にも取り組みいくつかのペアが有意に検出された.来年度はこれらの位置情報から耐性遺伝子の解析を進める.これまでに、約200系統のシロイヌナズナエコタイプを用いて、酸性土壌耐性(主にアルミニウムストレス耐性、低pHストレス耐性)に関するゲノムワイド関連解析(GWAS)を行い、耐性に関連するゲノム領域(SNP:一塩基多型)を多数検出した。両ストレスにおいて耐性形質と関連性の高いSNP群を比較したところ、それらは互いに異なるSNPであり、この2つのストレス耐性バリエーションに関与する遺伝的主要因は異なることが示唆された。また、遺伝学的背景で分集団に分けた場合、有意な産地間差は確認されなかった。一方、分集団の中で有意に異なる耐性を示すエコタイプは確認された。Al耐性に高い関連性を示したあるSNPの近傍にはAl耐性遺伝子のひとつであるリンゴ酸トランスポーターALMT1が存在した。同遺伝子のプロモーター領域にも関連SNPが検出されたことから、エコタイプ間のプロモーター配列を比較したところ、耐性型エコタイプにはインサートが確認された。また、それらの耐性型エコタイプは感受性エコタイプに比べてALMT1遺伝子発現量が高いことから、そのインサート多型が発現量亢進に関与している可能性が示唆された。一方、その他の既報の耐性遺伝子には特に関連性の高いSNPは検出されなかった。しかし、耐性への関与が報告されていないイオントランスポーターやリン酸化酵素遺伝子などにも関連性の高いSNPが検出され、これらが未解明の耐性機構の一部を担っている可能性がある。今後は、現在整備中の実験材料を使用して、逆遺伝学的手法や、遺伝学的手法によってそれら遺伝子の機能解析を行っていく。農業上重要形質である酸性土壌耐性は、多数の遺伝子に支配されるポリジーン形質である。本研究では、シロイヌナズナを用いた全ゲノムにわたる一塩基多型(SNP)と耐性程度の相関性を調べるゲノムワイド関連解析(GWAS)により、酸性土壌耐性に関わる遺伝子座の網羅的解析と耐性差の仕組みを分子レベルで明らかにすることを目的とした。世界中に分布する約200系統のシロイヌナズナを用いて、酸性土壌で問題となるAl及び低pHストレスに対する耐性を根の生育率により評価した。その結果、Al耐性は低pH耐性に比べて幅広い耐性差を示したことから、Al耐性には効果の大きいまたは複数の遺伝子の寄与が考えられた。また、集団構造解析ではおおまかに6つの地域の分集団に分かれることが示された。分集団間においてAl耐性差は観察されなかったが、分集団内では著しいAl耐性/感受性を示す複数の系統が存在し、自然突然変異体の可能性が示唆された。一方、低pHストレスに関しては、耐性/感受性を示す分集団が観察された。このように遺伝的背景が異なる系統群に関して、根の生育率と約20万SNPsを用いたGWASの結果、ゲノムワイドに有意なSNPが多数検出され、それらは両ストレス耐性間で異なっていた。これらのSNPsの表現型予測能力を評価したところ、Alまたは低pHストレス耐性に関連する140 SNPsまたは160 SNPsによって耐性バリエーションの約70%が説明できることが明らかとなった。有意なSNPにリンクする遺伝子の中には、Al耐性遺伝子リンゴ酸トランスポーター遺伝子AtALMT1が含まれており、そのプロモーターには、耐性と関連のあるトランスポゾンを含む複数の多型が存在した。また、レポーター遺伝子によるプロモーター多型活性試験と系統間の遺伝子発現量解析からAtALMT1プロモーター多型はAl耐性と相関を示すことが明らかにされた。 | KAKENHI-PROJECT-24688009 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24688009 |
ゲノムワイド関連解析に基づく酸性土壌耐性の分子的理解 | 農業上重要形質である酸性土壌耐性は,多数の遺伝子に支配される典型的なポリジーン形質である.本研究では,ゲノムワイド関連解析(GWAS)により,酸性土壌耐性差の原因となっている遺伝子群の同定を試みた.酸性土壌ストレスの主要因であるアルミニウム(Al)とプロトンについて,シロイヌナズナ206系統の耐性を根長により評価し,約20万SNPを用いてGWASを行った.リッジ回帰分析により,約150 SNPにより両耐性形質の約70%が説明されることが示された.また,これらの酸性土壌耐性関連遺伝子座は,塩耐性や過酸化水素耐性に関するGWAS解析により同定された耐性関連遺伝子座とは異なっていた.プロトン耐性関連SNP近傍には,耐性に関連が示唆されている細胞壁安定関連遺伝子やpH恒常性維持に関わる分子シャペロン遺伝子などが検出された.一方,Al耐性では,Al耐性遺伝子リンゴ酸トランスポーターAtALMT1,耐性に関連が示唆されているテルペノイドやカロースの合成遺伝子が存在した.また,AtALMT1プロモーター上の関連SNPを耐性型にもつ系統群は,感受性型に比べて約2倍程度AtALMT1発現量が高く,シロイヌナズナAl耐性への寄与率は40%程度であった.プロモーター多型を組換えたシロイヌナズナを評価したところ,トランスポゾンの挿入が耐性の原因のひとつであることが明らかとなった.しかし,ある分集団内の耐性差はこの変異では説明できなかった.両耐性関連遺伝子の候補について,それぞれ100弱の遺伝子破壊株シロイヌナズナの耐性をスクリーニングしたところ,いくつかの遺伝子破壊株で感受性が確認された.以上のことから,シロイヌナズナのAl耐性差に関与する遺伝子群は,AtALMT1遺伝子の発現制御に関与するものが多いと考えられたが,その他の機構に多くの遺伝子群が関与していることが明らかとなった.また,ほとんど明らかにされていないプロトン耐性に関しても新規耐性遺伝子の関与が示唆された.世界の農耕地に広がる酸性問題土壌では、主にアルミニウム(Al)や酸(H+)が作物の生育を阻害する。本研究では、モデル植物シロイヌナズナ約200系統の約20万個の一塩基多型(SNP)とAlおよびH+ストレス耐性の関連解析(ゲノムワイド関連解析:GWAS)を実施した。その結果、両耐性バリエーションについて、それぞれ約70%を説明する100以上の耐性関連遺伝子領域を検出し、新規Al耐性関連遺伝子を同定した。また、主要Al耐性遺伝子リンゴ酸トランスポーターの転写制御領域におけるいくつかの遺伝子多型がAl耐性に関与していることを明らかにした。これまでに行ったゲノムワイド関連解析(GWAS)から、酸性土壌耐性関連候補遺伝子を同定し、それら上位候補に関してT-DNA挿入遺伝子破壊株の耐性試験を行ったが、耐性または感受性の表現型が十分に得られなかった。その場合、遺伝子機能重複や偽陽性の可能性があるが、目標にしていた多重変異体破壊株作成や、機能重複を抑えて標的遺伝子の発現抑制ができる遺伝子組換え体の作成にやや遅れが生じている。 | KAKENHI-PROJECT-24688009 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24688009 |
歩行における高度踏破性及び頑健性を実現するための筋骨格・神経機構の構成論的解明 | 脳・身体・環境の相互作用から生み出される歩行の高度踏破性及び頑健性を実現するための筋骨格・神経機構の解明を目指し,ヒト・サル・ラットを対象に,計測データから運動機能を明らかにする解析的研究と,神経筋骨格モデルやロボットを用いて機能的役割を明らかにする構成論的研究を行った.その結果,ヒト運動解析では,位相応答曲線を同定して位相調整機構を明らかにし,サル運動解析では,4足・2足歩行での一次・補足運動野の寄与,ラット運動解析では,障害物跨ぎ越し歩行での小脳皮質の寄与を明らかにした.構成論的研究では,ラット神経筋骨格モデルや2脚ロボットを用いて,高度踏破性・頑健性に寄与する神経制御系の役割を検証した.脳・身体・環境の相互作用から生み出される歩行の高度踏破性及び頑健性を実現するための筋骨格・神経機構の解明を目指し,ヒト・サル・ラットを対象に,計測データから運動機能を明らかにする解析的研究と,神経筋骨格モデルやロボットを用いて機能的役割を明らかにする構成論的研究を行った.その結果,ヒト運動解析では,位相応答曲線を同定して位相調整機構を明らかにし,サル運動解析では,4足・2足歩行での一次・補足運動野の寄与,ラット運動解析では,障害物跨ぎ越し歩行での小脳皮質の寄与を明らかにした.構成論的研究では,ラット神経筋骨格モデルや2脚ロボットを用いて,高度踏破性・頑健性に寄与する神経制御系の役割を検証した.脳・身体・環境の動的相互作用から生成される歩行の高度踏破性及び頑健性を実現するための筋骨格・神経機構の解明を目指し,ヒト・サル・ラットを対象に運動計測データに基づいて運動機能を明らかにする解析的研究と,神経筋骨格モデルに基づくシミュレーションを通して機能的役割を明らかにする構成論的研究を行った.ヒトの運動解析では,振動台とトレッドミルを用いて外乱を加えた歩行の運動計測を行った.その結果,外乱前後の運動に位相差が存在し,等位相面を用いて外乱後の復帰過程を記述することで,接地・離地時の位相調整機構を明らかにした.サルの運動解析では,トレッドミル上で四足・二足歩行遂行時の大脳皮質・一次運動野の単一神経細胞活動と体幹・四肢の筋活動を記録した.その結果,一次運動野は運動により生じる律動的な体性感覚を受け取りつつ,皮質下の神経機構で生成される定常的な律動的活動をより高次レベルで環境適応的にオンラインで修飾することが示唆された.ラットの運動解析では,障害物跨ぎ越し歩行での小脳皮質の関与を調べるため,中間部・外側半球部,そしてプルキンエ細胞の活動とその可塑性に寄与する下オリーブ核を破壊した.その結果,中間部では破壊側に跨ぎ越す前・後肢の膝・足関節に過屈曲が見られ,外側半球部では破壊側前肢の爪先軌道が障害された.下オリーブ核では爪先軌道に複数の変曲点が生じ,軌道が著しく障害されることが判明した.シミュレーションでは,既に開発していたラットの後肢筋骨格モデルに,筋活動の協調構造を示す筋シナジーや感覚情報による運動指令の調整を示す位相リセットや肢間協調制御など生理学的知見に基づく神経制御モデルを導入し,障害物跨ぎ越し歩行を行った.その結果,肢間協調制御がより高い障害物の回避,位相リセットが跨ぎ越し後の安定化に寄与することを明らかにした.更に前肢の解剖計測も開始し,全身筋骨格モデルもほぼ完成した.昨年度に引き続き,脳・身体・環境の動的相互作用から生成される歩行の高度踏破性及び頑健性を実現するための筋骨格・神経機構の解明を目指して,ヒト・サル・ラットを対象に運動計測データに基づいて運動機能を明らかにする解析的研究と,神経筋骨格モデルに基づくシミュレーションやロボットを用いて機能的役割を明らかにする構成論的研究を行った.ヒトの運動解析では,外乱を負荷できるトレッドミルを用いて,ランダムな速度外乱が頻繁に入る環境下での計測を行い,位相応答曲線の同定を行った.その結果,ベルトの加速と減速による外乱が,共に遊脚期間を短縮して支持脚期間を延長させるという同一の運動変化を生じさせることが明らかになった.サルの運動解析では,無拘束状態でトレッドミル上を四足と二足で交互に歩行する際の大脳皮質・補足運動野から単一神経細胞活動を記録した.その結果,補足運動野は体幹姿勢と肢のステッピングとの協調的制御に寄与し,前頭葉性歩行障害の病態を説明し得る神経基盤の一つであることが示唆された.ラットの運動解析では,障害物跨ぎ越し歩行での小脳外側半球部片側破壊の影響を調べた.その結果,小脳外側半球部は平面歩行時の前肢及び後肢の制御にはほとんど寄与せず,障害物を最初に跨ぎ越す前肢において,肘関節の運動に関わる筋活動のタイミング制御と爪先の軌道生成に関与することが示唆された.構成論的研究では,昨年度までにヒト歩行解析とロボット実験から明らかにした左右分離型トレッドミル上での適応メカニズムを更に明確にするため,ラットの後肢神経筋骨格モデルのシミュレーションを行った.その結果,左右のベルト速度が異なる特殊な環境でも,生理学的知見に基づく位相リセットにより適応的に歩行を継続でき,左右の位相差やデューティー比などがベルトの速度差に応じて適応的に変化し,ヒトや4足動物で見られる適応と同様の現象が起こることを確認した. | KAKENHI-PROJECT-23360111 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23360111 |
歩行における高度踏破性及び頑健性を実現するための筋骨格・神経機構の構成論的解明 | 昨年度に引き続き,脳・身体・環境の相互作用から生成される歩行の高度踏破性及び頑健性を実現するための筋骨格・神経機構の解明を目指して,ヒト・サル・ラットを対象に運動計測データに基づいて運動機能を明らかにする解析的研究と,神経筋骨格モデルに基づくシミュレーションやロボットを用いて機能的役割を明らかにする構成論的研究を行った.ヒトの運動解析では,左右分離型トレッドミルを用いて,環境の変化に対する適応的運動調整機構を調べた.特に左右ベルトの速度差に応じた脚間位相差やデューティー比の変化について調べ,後述する2脚ロボットの実験結果と比較した.サルの運動解析では,トレッドミル上で4足と2足歩行を交互に行うサルの大脳皮質・一次運動野から単一神経細胞活動を記録し,体幹・四肢からも筋活動を同時に記録した.その結果,歩行中のサルの一次運動野は肢運動の礎となる脊髄神経回路網の律動的活動をオンラインで一歩毎に修飾し,移動に伴う重心の脚間授受を円滑に行うことに寄与することが示唆された.ラットの運動解析では,障害物跨ぎ越し歩行における前肢及び後肢の主要な筋群から筋電図活動を記録解析した.またこの障害物跨ぎ越し歩行において,マウスを対象にして身体性作業記憶を調べるための実験パラダイムを新たに構築した.構成論的研究に関しては,昨年度までに構築してきた神経筋骨格モデルに基づくシミュレーションだけでなく,これまで明らかにされた知見に基づいて2脚ロボットの制御系を設計し,頑健で適応的な歩行を実現した.特に,運動学シナジーに基づく運動計画によって4足から2足歩行へ歩容を連続的に遷移させることを可能にし,運動調整に寄与する位相リセットを用いて安定でロバストな歩容遷移が実現できることを明らかにした.更に,左右分離型トレッドミル上での歩行実験を行い,位相リセットを用いることでヒトと同様の適応機能が生じることを確認した.振動台とトレッドミルを用いたヒトの外乱負荷時の歩行の運動解析や,サル2足歩行時の大脳皮質運動領野からの神経細胞活動の記録や体幹・四肢の筋活動の記録,小脳皮質を一部破壊したラットの障害物跨ぎ越し歩行の運動解析,解剖学データ・神経生理学的知見に基づく神経筋骨格モデルの構築と歩行シミュレーションによる機能的役割の検証など,当初予定していた研究計画が予定通り遂行されており,研究代表者と研究分担者の間で頻繁にミーティングを行い生工連携研究が着実に進められているため.25年度が最終年度であるため、記入しない。振動台やトレッドミルを用いたヒトの外乱負荷時の歩行の運動解析や,サル2足歩行時の大脳皮質運動領野からの神経細胞活動の記録や体幹・四肢の筋活動の記録,小脳皮質を一部破壊したラットの障害物跨ぎ越し歩行の運動解析,解剖学データ・神経生理学的知見に基づく神経筋骨格モデルによる歩行シミュレーションやロボットを用いた機能的役割の検証など,当初予定していた研究計画が予定通り遂行されており,研究代表者と研究分担者の間で頻繁にミーティングを行い生工連携研究が着実に進められているため.本年度と同様に,ヒト・サル・ラットの歩行の運動計測と解析,神経筋骨格モデルに基づく動力学シミュレーションを行い,これまで通り頻繁に研究ミーティングを実施して,生工連携による研究を推進していく.ただし,ヒトの運動計測と解析に関する研究を進めていく上で,統計的解析手法の向上と筋電の計測・解析手法の向上が必要になった.そこでH24年度からは,それぞれ専門的な技術を有する研究分担者を追加する予定である(2人).25年度が最終年度であるため、記入しない。本年度までと同様に,ヒト・サル・ラットの歩行の運動計測と解析,神経筋骨格モデルに基づく動力学シミュレーションやロボット実験を行い,これまで通り頻繁に研究ミーティングを実施して,生工連携による研究を推進していく. | KAKENHI-PROJECT-23360111 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23360111 |
水銀圧入法によるインクボトル構造を有するセメント硬化体中の空隙分離抽出手法の確立 | 空隙の連続性を精緻に把握することができれば、コンクリート中の物質移動機構の解明に大きく貢献すると共に、コンクリート構造物の余寿命予測技術の高度化にも大きく寄与する。本研究は、物質移動に関与する連続性をもった空隙と物質の貯留空間となるインクボトル空隙の分離抽出を可能とする水銀圧入空隙測定手法の確立を目指したものである。本研究では、まず、段階的に水銀の圧入を繰り返した際の累積圧入曲線を重ね合わせると包絡線が描かれることを発見し、この包絡線が物質の移動経路となる連続性を有するキャピラリー空隙網を、また累積圧入曲線のベースアップ分(バイアス分)がインクボトルに閉ざされた空隙を捉えているとの仮説を世界で始めて提唱した。続いて、高圧力領域の圧入曲線においても、直径10nmを基準として累積圧入曲線を重ね合わせると再び包絡線が描けることを発見し、この10nm程度(メゾスケール)のインクボトル空隙は、セメント粒子周りに形成される外部水和生成層のフロント同士が接合することにより、キャピラリー空隙と外部水和生成層の境界に形成される幾何構造との仮説を提唱した。さらに、セメント硬化体中での物質移動経路となる連続性を有するキャピラリー空隙網の分離抽出法について検討し、40nm以上の範囲の包絡線、もしくは、空気泡や凝集体などへの水銀の侵入を示す包絡線からの分岐が生じている範囲の包絡線を、物質の移動経路となる連続性を有するキャピラリー空隙網とみなす判定方法を考案した。そして、物質移動と強い関係を持つと言われるしきい細孔径と空隙量に関する情報を併せ持った累積細孔量曲線の積分値に着目し、異なる養生を行ったセメントペーストの酸素拡散係数および透気係数の測定結果の傾向と比較分析した結果、累積細孔曲線の積分値の空隙指標としての有意性と物質の移動経路となる連続性を有するキャピラリー空隙網の判定基準の妥当性を示した。空隙の連続性を精緻に把握することができれば、コンクリート中の物質移動機構の解明に大きく貢献すると共に、コンクリート構造物の余寿命予測技術の高度化にも大きく寄与する。本研究は、物質移動に関与する連続性をもった空隙と物質の貯留空間となるインクボトル空隙の分離抽出を可能とする水銀圧入空隙測定手法の確立を目指したものである。本研究では、まず、段階的に水銀の圧入を繰り返した際の累積圧入曲線を重ね合わせると包絡線が描かれることを発見し、この包絡線が物質の移動経路となる連続性を有するキャピラリー空隙網を、また累積圧入曲線のベースアップ分(バイアス分)がインクボトルに閉ざされた空隙を捉えているとの仮説を世界で始めて提唱した。続いて、高圧力領域の圧入曲線においても、直径10nmを基準として累積圧入曲線を重ね合わせると再び包絡線が描けることを発見し、この10nm程度(メゾスケール)のインクボトル空隙は、セメント粒子周りに形成される外部水和生成層のフロント同士が接合することにより、キャピラリー空隙と外部水和生成層の境界に形成される幾何構造との仮説を提唱した。さらに、セメント硬化体中での物質移動経路となる連続性を有するキャピラリー空隙網の分離抽出法について検討し、40nm以上の範囲の包絡線、もしくは、空気泡や凝集体などへの水銀の侵入を示す包絡線からの分岐が生じている範囲の包絡線を、物質の移動経路となる連続性を有するキャピラリー空隙網とみなす判定方法を考案した。そして、物質移動と強い関係を持つと言われるしきい細孔径と空隙量に関する情報を併せ持った累積細孔量曲線の積分値に着目し、異なる養生を行ったセメントペーストの酸素拡散係数および透気係数の測定結果の傾向と比較分析した結果、累積細孔曲線の積分値の空隙指標としての有意性と物質の移動経路となる連続性を有するキャピラリー空隙網の判定基準の妥当性を示した。 | KAKENHI-PROJECT-20656073 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20656073 |
低酸素性脳神経細胞障害誘発機構に対する基礎的解明 | 平成14年度の研究ではCyclophilin Dの抑制薬のCyclosporin Jを前脳虚血モデルに投与し、抗虚血作用を解析した。その結果、脳虚血初期にはカルシニューリン活性阻害が必要不可欠でその後効果としてCyclophilin Dの抑制によるミトコンドリアの安定化が必要であるとの結論に至った。低酸素によって誘発される転写因子であるHIF-1αの前駆虚血における海馬での変動は、非薬物投与群において海馬CA1でのみ虚血再灌流24、48時間後にHIF1α蛋白発現の減少を示すがCsA群とFK506群では、mRNAレベルおよび蛋白レベルでのHIF1αの発現減少は認めなかった。以上より、HIF1αの発現抑制にカルシニューリン情報伝達系を介したメカニズムが関与していることが示唆された。平成15□16年度はカルシニューリン/イムノフィリン情報伝達系の低酸素性能神経細胞障害誘発への関与を解析するためにとDNAマイクロアレイによる関連遺伝子の補足と解析、低酸素下での海馬スライスの細胞内およびミトコンドリア内のCa2+濃度解析および低酸素とNa+/Ca2+exchanger発現の連関解析を施行した。DNAマイクロアレイによって14000種類の遺伝子発現を補足し、これらを代表的な9つの発現パターン(PCA)に分類し、クラスター解析にて虚血24時間後にCSA投与で変化せず、非薬物投与で変化する遺伝子パターンとしてPCA6を抽出した。PCA6には363個の遺伝子が含まれることが明らかとなった。ほとんどは機能等が不明の遺伝子であったが、受容体とチャネル関連、転写因子関連、蛋白および酵素、リボゾーム関連蛋白等の遺伝子合計で150個が判明した。また、低酸素下における細胞内およびミトコンドリア内のCa2+濃度は、非薬物投与によって増加し低酸素負荷中止後も持続した。免疫抑制剤のCsAは1mmol-5mmolで細胞内およびミトコンドリアのCa2+濃度上昇を有意に抑制し、0.1および10mmolではその抑制効果が消失した。FK506は0.1mmol-2mmolで有意に細胞内およびミトコンドリアのCa2+濃度上昇を抑制したが0.01mmolではその抑制効果が消失した。これらの結果より各種免疫抑制剤は細胞膜表面のCa2+濃度上昇を抑制することが判明した。さらにCa2+濃度の制御にカルシニューリンが関与している可能性が示唆された。NCX(sodiun-calcium exchanger)の虚血再潅流後の発現の変動は、非薬物投与群では経時的にその発現の減少が認められた。また、免疫制御剤のCsA(10mg/kg i.p.)およびFK506(1mg/kg i.p.)を投与した群ではNCXの経時的な減少は認められず、NCXの発現が維持された。これらの結果より、NCXの発現制御にもカルシニューリン情報伝達系が重要な役割を担っていることが判明した。低酸素性脳神経細胞障害誘発の機序にもカルシニューリン/イムノフィリン情報伝達系が深く関与することが判明した。平成14年度の研究ではCyclophilin Dの抑制薬のCyclosporin Jを前脳虚血モデルに投与し、抗虚血作用を解析した。その結果、脳虚血初期にはカルシニューリン活性阻害が必要不可欠でその後効果としてCyclophilin Dの抑制によるミトコンドリアの安定化が必要であるとの結論に至った。低酸素によって誘発される転写因子であるHIF-1αの前駆虚血における海馬での変動は、非薬物投与群において海馬CA1でのみ虚血再灌流24、48時間後にHIF1α蛋白発現の減少を示すがCsA群とFK506群では、mRNAレベルおよび蛋白レベルでのHIF1αの発現減少は認めなかった。以上より、HIF1αの発現抑制にカルシニューリン情報伝達系を介したメカニズムが関与していることが示唆された。平成15□16年度はカルシニューリン/イムノフィリン情報伝達系の低酸素性能神経細胞障害誘発への関与を解析するためにとDNAマイクロアレイによる関連遺伝子の補足と解析、低酸素下での海馬スライスの細胞内およびミトコンドリア内のCa2+濃度解析および低酸素とNa+/Ca2+exchanger発現の連関解析を施行した。DNAマイクロアレイによって14000種類の遺伝子発現を補足し、これらを代表的な9つの発現パターン(PCA)に分類し、クラスター解析にて虚血24時間後にCSA投与で変化せず、非薬物投与で変化する遺伝子パターンとしてPCA6を抽出した。PCA6には363個の遺伝子が含まれることが明らかとなった。ほとんどは機能等が不明の遺伝子であったが、受容体とチャネル関連、転写因子関連、蛋白および酵素、リボゾーム関連蛋白等の遺伝子合計で150個が判明した。また、低酸素下における細胞内およびミトコンドリア内のCa2+濃度は、非薬物投与によって増加し低酸素負荷中止後も持続した。免疫抑制剤のCsAは1mmol-5mmolで細胞内およびミトコンドリアのCa2+濃度上昇を有意に抑制し、0.1および10mmolではその抑制効果が消失した。FK506は0.1mmol-2mmolで有意に細胞内およびミトコンドリアのCa2+濃度上昇を抑制したが0.01mmolではその抑制効果が消失した。これらの結果より各種免疫抑制剤は細胞膜表面のCa2+濃度上昇を抑制することが判明した。さらにCa2+濃度の制御にカルシニューリンが関与している可能性が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-14370496 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14370496 |
低酸素性脳神経細胞障害誘発機構に対する基礎的解明 | NCX(sodiun-calcium exchanger)の虚血再潅流後の発現の変動は、非薬物投与群では経時的にその発現の減少が認められた。また、免疫制御剤のCsA(10mg/kg i.p.)およびFK506(1mg/kg i.p.)を投与した群ではNCXの経時的な減少は認められず、NCXの発現が維持された。これらの結果より、NCXの発現制御にもカルシニューリン情報伝達系が重要な役割を担っていることが判明した。低酸素性脳神経細胞障害誘発の機序にもカルシニューリン/イムノフィリン情報伝達系が深く関与することが判明した。低酸素性脳神経細胞障害は、その重要性にも拘わらず発症機序は不明な点が多く残されている。そこで、平成14年度の研究ではラット虚血再潅流モデルを用いて1)神経細胞内脱リン酸化酵素であるカルシニューリン情報伝達系に関する遺伝子発現をDNA chipを用いて包括的に捕捉した。この結果、1,4000個の遺伝子の中から特に受容体に関与する遺伝子が重要な役割を担うことがpreliminary dataとして示唆された。また、Cyclophilin Dを介したMPTによるミトコンドリア機能不全の機序解明は、MPTの開孔を特異的に抑制するCyclosporin J (CSJ)を用いて、その抗虚血効果をRat前脳虚血モデルで検討した。CSJは濃度依存性に、(20mg/kg、30mg/kg)遅発性神経細胞死を抑制し、Cyclophilin Dを介する情報伝達系の神経細胞死における役割の重要性が明らかとなった。また、低酸素性反応因子(HIF)の虚血による経時的変動をin situ hybridyzationで解析したところ、虚血1時間後にHIF1αの増加が海馬CA1で認められ、その後、消失するが、24-48時間後に再度遺伝子発現がみられ、72時間後には消失した。今後は、虚血にともなう低酸素状態で発現した遺伝子の中から、カルシニューリン/イムノフィリン情報伝達系と関連が深いと思われる遺伝子を選出して解析を行い、低酸素性反応因子(HIF)に関与する情報伝達系の解析も併せて行うことを検討している。平成15年度の研究では低酸素下における細胞内およびミトコンドリア内のCa2_+濃度を海馬スライスを用いて測定し、各種免疫抑制剤(CsA(サイクロスポリンA)およびFK506)のCa2_+濃度増加に対する抑制効果を検討した。CsAは1μmol-5μmolで細胞内およびミトコンドリアのCa2_+濃度上昇を有意に抑制し、0.1および10μmolではその抑制効果が消失した。FK506は0.1μmol-2μmolで有意に細胞内およびミトコンドリアのCa2_+濃度上昇を抑制したが0.01μmolではその抑制効果が消失した。これらの結果より各種免疫抑制剤は細胞膜表面のCa2_+受容体とミトコンドリアに作用して細胞内およびミトコンドリアのCa2_+濃度上昇を抑制することが判明した。また、DNA chipによる遺伝子解析実験は、CsA投与群と非投与群の間における遺伝子発現の違いを経時的に解析を行った。約14,000の遺伝子発現に差を認めた。特に、Preliminaryには受容体の遺伝子Heat Shock蛋白、ミトコンドリアおよびリボソーム機能に関連した遺伝子等の発現の増強が認められた。DNA chipによる解析はさらなる実験の継続を要するものと思われた。 | KAKENHI-PROJECT-14370496 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14370496 |
リンドウ科リンドウ亜連の系統分類 | DNA解析に用いるため、すでに抽出ずみのDNAを保有している中国産のリンドウ科リンドウ亜連の植物に加え、ツルリンドウ、テングノコズチ、ハナヤマツルリンドウ、トウヤクリンドウなどを国内で採集して新たにDNA抽出を行った。当初の計画ではrbcL遺伝子やmatK遺伝子の分析を行う予定であったが、最近になって発表された論文により、18S-25SrDNAのITS領域の塩基配列の解析が、リンドウ科の系統解析に有効かつ簡便であることが示唆されたので、この領域を解析することとした。抽出ずみのDNAを材料とし東京都立大学牧野標本館の機器を利用してITS領域の増幅を行った後、本研究費で備品として購入したオートシークエンサーで塩基配列の決定を行った。得られた塩基配列を、すでに知られている他種の塩基配列とともにコンピューターで比較解析し、系統樹を作成した。この結果、従来リンドウ属の1節として認められていたStenogyne節はツルリンドウ属およびCrawfurdia属と単系統群をなすことが高い確率で支持され、従来のリンドウ属は側系統群であることが明らかとなった。ツルリンドウ属を含む単系統群は種子が明らかな3面を持つという派生形質でまとめられる可能性がある。雄しべの先端が上に曲がる性質も同時に派生したかも知れないが、Crawfurdia属では失われている。この単系統群の中で、ツルリンドウ属とCrawfurdia属が単系統となり、つる性という派生形質でまとめられる。ツルリンドウ属は朔果をもつものと液果をもつものを含めて単系統にまとまったが、系統樹の解像度が低く、液果を持つものの単系統性は検証できなかった。その他の属間の系統関係については従来の結果と矛盾がなかった。DNA解析に用いるため、すでに抽出ずみのDNAを保有している中国産のリンドウ科リンドウ亜連の植物に加え、ツルリンドウ、テングノコズチ、ハナヤマツルリンドウ、トウヤクリンドウなどを国内で採集して新たにDNA抽出を行った。当初の計画ではrbcL遺伝子やmatK遺伝子の分析を行う予定であったが、最近になって発表された論文により、18S-25SrDNAのITS領域の塩基配列の解析が、リンドウ科の系統解析に有効かつ簡便であることが示唆されたので、この領域を解析することとした。抽出ずみのDNAを材料とし東京都立大学牧野標本館の機器を利用してITS領域の増幅を行った後、本研究費で備品として購入したオートシークエンサーで塩基配列の決定を行った。得られた塩基配列を、すでに知られている他種の塩基配列とともにコンピューターで比較解析し、系統樹を作成した。この結果、従来リンドウ属の1節として認められていたStenogyne節はツルリンドウ属およびCrawfurdia属と単系統群をなすことが高い確率で支持され、従来のリンドウ属は側系統群であることが明らかとなった。ツルリンドウ属を含む単系統群は種子が明らかな3面を持つという派生形質でまとめられる可能性がある。雄しべの先端が上に曲がる性質も同時に派生したかも知れないが、Crawfurdia属では失われている。この単系統群の中で、ツルリンドウ属とCrawfurdia属が単系統となり、つる性という派生形質でまとめられる。ツルリンドウ属は朔果をもつものと液果をもつものを含めて単系統にまとまったが、系統樹の解像度が低く、液果を持つものの単系統性は検証できなかった。その他の属間の系統関係については従来の結果と矛盾がなかった。DNA解析に用いるため、すでに抽出ずみのDNAを保有している中国産のリンドウ科リンドウ亜連の植物に加え、ツルリンドウ、テングノコズチ、ハナヤマツルリンドウ、トウヤクリンドウなどを国内で採集して新たにDNA抽出を行った。当初の計画ではrbcL遺伝子やmatK遺伝子の分析を行う予定であったが、最近になって発表された論文により、18S-25SrDNAのITS領域の塩基配列の解析が、リンドウ科の系統解析に有効かつ簡便であることが示唆されたので、この領域を解析することとした。抽出ずみのDNAを材料とし東京都立大学牧野標本館の機器を利用してITS領域の増幅を行った後、本研究費で備品として購入したオートシークエンサーで塩基配列の決定を行った。得られた塩基配列を、すでに知られている他種の塩基配列とともにコンピューターで比較解析し、系統樹を作成した。この結果、従来リンドウ属の1節として認められていたStenogyne節はツルリンドウ属およびCrawfurdia属と単系統群をなすことが高い確率で支持され、従来のリンドウ属は側系統群であることが明らかとなった。ツルリンドウ属を含む単系統群は種子が明らかな3面を持つという派生形質でまとめられる可能性がある。雄しべの先端が上に曲がる性質も同時に派生したかも知れないが、Crawfurdia属では失われている。この単系統群の中で、ツルリンドウ属とCrawfurdia属が単系統となり、つる性という派生形質でまとめられる。ツルリンドウ属は朔果をもつものと液果をもつものを含めて単系統にまとまったが、系統樹の解像度が低く、液果を持つものの単系統性は検証できなかった。その他の属間の系統関係については従来の結果と矛盾がなかった。 | KAKENHI-PROJECT-08454276 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08454276 |
始原的隕石マトリックスを構成する微細鉱物粒子の形成と進化 | (1)炭素質コンドライトの暗色包有物の中から,地球の砂岩堆積層にしばしば見られる皿状組織と極めて似たものを発見した。これは,46億年前の微惑星中で水の流動と微粒子の堆積作用があったことを直接示唆する初めての証拠と言える。その解析にもとづいて,我々は,炭素質コンドライトの母天体(太陽系生成直後にできた微惑星)において,水の流動に伴う微粒子の流動化現象があったというモデルを提出した。(2)マーチソンCM隕石の5GPaから50GPaにおよぶ一連の衝撃回収実験に成功し,その圧力範囲でマーチソン隕石がどのように変化するかを調べた。その結果,これまで不明であったCM隕石の衝撃効果の定量的見積もりが行えるようになった。さらに,マーチソン隕石において,20-25GPaからマトリックス部分が細分化と溶融を起しはじめ,また同時に揮発性成分(おもにH_2O)の急激な気化と膨張を起すことによって,隕石がカタストロフィックに崩壊することがわかった。このことは,25GPa以上の衝撃圧力を受けたCM隕石がなぜ存在しないのか,という隕石学の大きな謎に一つの解答を与えたことになる。(3)コンドリュール・リムは,コンドリュールが原始星雲中に存在したとき,周りにあった塵をその表面に付着させてできたと一般的に考えられている。しかし,我々は,ヴィガラノ隕石の中から層状ケイ酸塩に富むコンドリュール・リムを発見し,その詳しい研究を通して,リムが隕石母天体における変成作用と角れき岩化作用によって形成された証拠を数多く見い出した。この結果にもとづいて,リムの隕石母天体成因モデルを提出した。(1)炭素質コンドライトの暗色包有物の中から,地球の砂岩堆積層にしばしば見られる皿状組織と極めて似たものを発見した。これは,46億年前の微惑星中で水の流動と微粒子の堆積作用があったことを直接示唆する初めての証拠と言える。その解析にもとづいて,我々は,炭素質コンドライトの母天体(太陽系生成直後にできた微惑星)において,水の流動に伴う微粒子の流動化現象があったというモデルを提出した。(2)マーチソンCM隕石の5GPaから50GPaにおよぶ一連の衝撃回収実験に成功し,その圧力範囲でマーチソン隕石がどのように変化するかを調べた。その結果,これまで不明であったCM隕石の衝撃効果の定量的見積もりが行えるようになった。さらに,マーチソン隕石において,20-25GPaからマトリックス部分が細分化と溶融を起しはじめ,また同時に揮発性成分(おもにH_2O)の急激な気化と膨張を起すことによって,隕石がカタストロフィックに崩壊することがわかった。このことは,25GPa以上の衝撃圧力を受けたCM隕石がなぜ存在しないのか,という隕石学の大きな謎に一つの解答を与えたことになる。(3)コンドリュール・リムは,コンドリュールが原始星雲中に存在したとき,周りにあった塵をその表面に付着させてできたと一般的に考えられている。しかし,我々は,ヴィガラノ隕石の中から層状ケイ酸塩に富むコンドリュール・リムを発見し,その詳しい研究を通して,リムが隕石母天体における変成作用と角れき岩化作用によって形成された証拠を数多く見い出した。この結果にもとづいて,リムの隕石母天体成因モデルを提出した。1.CV隕石からのDish structureの発見:ヴィガラノCV隕石の暗色包有物の中に,地球の砂岩堆積層にみられる皿状構造(Dish structure)と類似の組織を発見した。皿状構造は砂の粒間を水が通り抜けるとき,砂が流動化を起こすことによって形成される組織である。それゆえ,CV隕石中にこの組織が発見されたことは,CV隕石母天体中に水が存在し流動を起こしていたことを示唆しており,暗色包有物は水質変成を受けてできたという我々の解釈を支持している。さらに,この発見は,CV隕石母天体中で水の流れによる微粒子の流動化現象が怒ったこと,またそれにともなう堆積作用があったことを強く示唆しており,46億年前の微惑星でそのような現象があったことを示す最初の証拠である。2.CM隕石の衝撃回収実験:炭素質コンドライト母天体の衝撃変成作用を解明する目的で,マ-チソンCM隕石の衝撃回収実験を行い,回収試料をSEMを用いて詳細に調べた。与えた衝撃圧力は,5,10,20,25,30,35,40GPaであり,特に20GPa以上の高圧力領域では,この種の隕石がどのような変化を示すかは殆ど知られていない。今回の研究によって,コンドリュールの偏平が衝撃で起こることが初めて確かめられ,その偏平率は衝撃圧力の大きさにほぼ正比例して大きくなることがわかった。また,20GPaでマトリックスの局所溶融が始まり,40GPaで全溶融にいたることがわかった。その他にもこれまで未知であった衝撃圧力に対するCM隕石の鉱物学的,科学的変化の詳細が明らかになってきた。1. CM隕石の衝撃回収実験:炭素質コンドライト(C隕石)母天体の衝撃変成作用を解明する目的で,マーチソンCM隕石の衝撃回収実験を行ってきた。今年度は,さらに高圧力(40-50GPa)での実験を行うとともに,母天体の衝撃時の加熱の影響を見積もるために,熱力学的計算をおこなった。 | KAKENHI-PROJECT-09440187 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09440187 |
始原的隕石マトリックスを構成する微細鉱物粒子の形成と進化 | その結果,マーチソン隕石の衝撃変化には20-25GPaあたりに大きなthresholdがあることが結論される。この圧力以下では,マーチソンはどうにかもとの組織を保っているが,これ以上になると,組織はカタストロフィックに崩壊し,大規模な溶融が起こりはじめ,脱ガスとガスの膨張が劇的に進行することがわかった。したがって,CM隕石母天体に,25GPa以上の衝撃圧力が加わると,物質は細かく粉砕され,衝撃圧力解放と同時に起こる爆発的な膨張によって吹き飛ばされ,隕石としては生き残れないと考えられる。小惑星帯にCタイプの小惑星が多いにもかかわらず,地球上で回収されるC隕石が少ないのはなぜかはこれまで大きな謎とされてきたが,今回の結果はこの問題に一つの解答を与えたと言える。2.コンドリュール・リムの成因:コンドリュール・リムは,原始星雲のダストが集積してできたと一般的に考えられている。しかし,我々は,ヴィガラノCV隕石のコンドリュール・リムに層状ケイ酸塩からなるものを発見し,その中に,水質変成の証拠を数多く見い出した。このことは,リムが隕石母天体でできたことを示唆しており,これまでの定説に新たな疑問を投げかけている。1.層状ケイ酸塩に富むコンドリュール・リムの成因:始原的コンドライトのコンドリュールの多くは,微細な鉱物粒子(径<10μm)から成る,厚さが50-200μmのリムに覆われている。リムは,コンドリュールが原始星雲中に存在したとき,周りの麈をその表面に付着させてできたと一般的に考えられている。しかし,代表者らは,ヴィガラノCV3隕石の中から,層状ケイ酸塩に富むリムを発見し,リムとそれが囲むコンドリュールの間に大規模な物質の交代,移動,破壊,そして元素の再分配を伴う水質変成作用の証拠を見い出した。このような変成作用は原始星雲中でガスとの反応では起こり得ない。これは,母天体の表層におけるプロセスに一般的に見られるものである。この結果,代表者らは,コンドリュールとそれを囲むリムは,隕石母天体での,衝撃による角礫石化作用によってできたクラスト(岩片)だというモデルを提出した。これは,リムが母天体で形成されたことを示す初めてのモデルである。2.アエンデCV隕石の衝撃回収実験:炭素質コンドライト(c隕石)の衝撃変成作用を解明する目的で,我々は一連の衝撃回収実験を行っている。今年度は,アエンデCV3隕石の衝撃回収実験を行った。今回の実験の特徴は,試料に二度,同一方向から衝撃圧力(10-20GPa)を加えたことと,さらに試料を高温(300と600°C)に熱して衝撃圧力を加えたことである。このように人工的に衝撃を与えた試料と,天然で衝撃を受けた隕石との詳細な比較を行った。その結果,二度衝撃を与えたアエンデ試料の組織は,天然で衝撃を受けた隕石のものと非常によく似ているのに対し、高温で衝撃を与えた試料の組織は,我々が知るいかなる隕石のものとも異なることがわかった。このことは,天然で衝撃圧を受けたc隕石は,その母天体が比較的低温で複数回の衝撃圧を受けた可能性が高いことを示唆している。 | KAKENHI-PROJECT-09440187 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09440187 |
マンガビジネスの進化に関する実証研究-国際比較を通じた創造的事業システムの解明- | 日本のマンガの事業システムの変化については,連携の範囲が拡大したこと,連携がより強固になったことが解明された.事業システムの国際比較に関しては,国によってマンガビジネスの発展段階や流通制度,政府の規制などが異なっているため,事業間の連携の程度や方法に違いがみられた.国際競争力を生み出す事業システムの構築可能性については,事業システムの国際比較で明らかになった違いから,国内外での事業展開を連動させる事業システムの構築には,進出国への適応を考慮する必要があると考えられる.日本のマンガの事業システムの変化については,連携の範囲が拡大したこと,連携がより強固になったことが解明された.事業システムの国際比較に関しては,国によってマンガビジネスの発展段階や流通制度,政府の規制などが異なっているため,事業間の連携の程度や方法に違いがみられた.国際競争力を生み出す事業システムの構築可能性については,事業システムの国際比較で明らかになった違いから,国内外での事業展開を連動させる事業システムの構築には,進出国への適応を考慮する必要があると考えられる.本研究の目的は,マンガの国際競争力を生み出す創造的事業システムを,国際比較を通じて解明することである.今回の科学研究費で明らかにしたいのは,(1)日本のマンガの事業システムの進化の解明,(2)日本と海外のマンガの事業システムの比較,(3)国際競争力を生み出す事業システムの構築可能性を検討することである.今年度に実施したのは,(1)マンガビジネスの事業領域に関する2次資料にもとづく分析範囲の明確化,(2)分析の対象となる企業の選定およびパイロット調査,(3)パイロット調査にもとづく分析枠組みの構築である.(1)については,分析範囲を拡大しなければならないことが明らかになった.本研究はこれまで,コミックとアニメ,キャラクター商品にかかわる事業をマンガビジネスと定義し,マンガのビジネスシステムを分析してきた.しかしながら,2000前後を境に,インターネットを活用したメディアの多様化や,それに伴う事業領域の拡大など,マンガビジネスを取り巻く環境は変化している.そこで,ゲームや実写ドラマ・映画などマンガビジネスが波及する事業領域および,既存の分析対象であったコミックとアニメについてもインターネットを活用した事業も分析対象に加えることにした.(2)と(3)については,ビジネスシステムおよびビジネス・アーキテクチャに関する先行研究の検討や,マンガビジネスにかかわる企業のパイロット調査により,複数の事業からなるマンガビジネスを分析するには,ビジネスシステムの評価や設計原理,システムの「切り分け方」と「つなぎ方」の視点が必要であることが明らかになった.今年度の研究成果については,論文にして発表されている.本研究の目的は,マンガの国際競争力を生み出す創造的事業システムを,国際比較を通じて解明することである.今回の科学研究費で明らかにしたいのは,1.日本のマンガの事業システムの進化の解明,2.日本と海外のマンガの事業システムの比較,3.国際競争力を生み出す事業システムの構築可能性を検討することである.今年度は,昨年度に実施した(1)マンガビジネスの事業領域に関する2次資料にもとづく分析範囲の明確化,(2)分析の対象となる企業の選定およびパイロット調査,(3)パイロット調査にもとづく分析枠組みの構築を踏まえて,(1)マンガビジネスにおける電子化に関する調査および分析,(2)電子化に伴った既存事業の変化に関する調査および分析を行った.明らかになったのは,以下の3点である.[1]電子化は事業によって進捗の程度が異なること,[2]電子化は同一事業であっても,企業の規模や戦略によって異なること,[3]電子化が既存の事業システムに及ぼす影響として,利害関係者の増加による事業間関係の変化や,それに伴う権利関係の複雑化や利益配分方法の変化などが明らかになった.[1]については,出版事業が従来の紙媒体と並行し電子書籍に着手するのに対し,映像事業ではテレビの地上デジタル化のように一元化が進んでいる.[2]については,大手出版社と中小の出版社では電子化の取り組みに差がみられる.[3]では,通信事業者や電機メーカーなど,新たに加わった利害関係者によって,マンガビジネスの構造が複雑に変化していることが明らかになった.本研究の目的は,マンガの国際競争力を生み出す創造的事業システムを,国際比較を通じて解明することである.研究のステップとしては,(1)日本のマンガの事業システムの進化の解明,(2)日本と海外のマンガの事業システムの比較,(3)国際競争力を生み出す事業システムの構築可能性を検討することである.(1)については,国内のマンガビジネスは2000年前後を境に,(1)インターネットの普及たともなうメディアの多様化,(2)コンテンツとしての事業領域の拡大と波及,(3)国内外における著作権保護への対応に関する変動がみられる.これらの変動にともなって,事業システムにみられた変化は,第1に,連携の範囲が拡大したこと,第2に,連携がより強固になったことである.たとえば,マンガ以外のコンテンツ制作にもみられる「製作委員会」方式は,事業リスクの分散を可能にしている.コミックを素材にしたマンガビジネスの展開では,テレビアニメやキャラクター商品事業から,実写のドラマや映画,企業CM等でのキャラクター使用など,事業領域を拡大することで,リスクを分散させながら,相乗効果を生み出している.つまり,1作品に関連する事業あるいは企業の数を増やすことは,作品の露出を増やし収益を高めると同時に,1事業あるいは1社あたりのリスクを低減させていることが解明された.また,著作権保護に関しても,出版や映像の業界団体の取り組みが加速されていることも明らかになった. | KAKENHI-PROJECT-21530375 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21530375 |
マンガビジネスの進化に関する実証研究-国際比較を通じた創造的事業システムの解明- | (2)については,国によってマンガビジネスの発展段階や流通制度,政府の規制などが異なっているため,事業間の連携の度合いや方法に違いがみられた.(3)については,(2)の違いから,国内外での事業展開を連動させる事業システムの構築には,進出国への適応を考慮する必要があると考えられる. | KAKENHI-PROJECT-21530375 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21530375 |
高齢者の多様なバランス制御方略を考慮した転倒危険因子の解明と介入プログラムの開発 | 健常高齢者の安静立位足圧中心(CoP)動揺について、その時空間パターンにおける個人差を、複数の要約統計量を用いて検討した。要約統計量には、CoPの標準偏差および平均速度を用いた。その結果、CoP標準偏差と平均速度には、被験者間に、相関のない、同程度のばらつきが観察された。また、CoP標準偏差はCoP動揺における低周波成分(0-0.5 Hz)と強く相関し、CoP平均速度はCoP動揺における中・高周波成分(0.5-1.5 Hz)と強く相関することが明らかになった。これらの結果は、加齢にともなう立位バランスの不安定化には、大きく、CoP動揺の低周波成分が顕在化するタイプ、中・高周波成分が顕在化するタイプ、の2つがあることを意味する。今年度はさらに、立位バランスが不安定化する神経学的要因について、制御の主働筋である下腿三頭筋にストレッチ刺激を加え、立位バランス制御に対する事後効果を検討することによって検討した。被験者(若齢健常者)は、25度の足関節背屈ストレッチ刺激(3分間)の後、5分間の安静立位姿勢を保持した。その結果、ストレッチ直後(約15秒後まで)に、身体重心加速度に1 Hz近傍の特徴的な変調が観察され、その背景には、I群からのフィードバックが関与していることが示唆された。今回1 Hz近傍に観察された身体重心加速度の変調は、上述のCoP動揺における中・高周波成分の増大と類似するものであり、本研究から得られた一連の知見は、立位バランスの加齢変化を生じさせる神経メカニズムについてのヒントを与えるものであると考えられる。当該年度までの目標として、高齢者の立位動揺パターンを類型化し転倒リスクとの関連を明らかにすること、バランス能力の加齢変化を生じさせる神経メカニズムを明らかにすること、を掲げていた。これらの目標は概ね達成できたたが、どのような立位動揺パターンが転倒リスクと関連しているのかは、まだ明らかにできていない。今後はさらに大きな規模の高齢者を対象として、立位動揺の測定と転倒に関する質問紙調査を合わせて実施することによって、転倒リスクと関連する立位動揺パターンについて明らかにする計画である。当該年度は、健常若齢者を対象として、安静立位時における多関節協調のタイミングやパターンについての検討を実施した。その結果、安静立位中に不規則に生じる微小転倒局面においては、近位関節から遠位関節(股関節→膝関節→足関節)の順に関節角度変位が生じていることが明らかとなった。その一方で、関節トルクの発揮タイミングには三関節間に殆ど差がないことも明らかとなった。さらに、いずれの関節においても関節角度変位ー関節トルク間には明確な関係性が見出されなかったのに対し、全ての関節において身体重心変位ー関節トルク間に二峰性の"drop and catch"パターンが観察された。以上の結果は、股関節における角度変位が身体の微小転倒に関する最も早い求心性情報を提供しうること、ヒトの神経系が個々の関節運動ではなく、身体重心の運動に応じて関節トルクを変調していることを示唆するものである。これらは、立位バランス制御能力の加齢変化を検討していく上で、重要な知見といえる。当該年度は、健常若齢者を対象として、立位バランス制御における関節間協調についての基礎的な知見を得ることに注力したため、当初予定していた高齢者を対象とした大規模な測定を実施することができなかった。健常高齢者の安静立位足圧中心(CoP)動揺について、その時空間パターンにおける個人差を、複数の要約統計量を用いて検討した。要約統計量には、CoPの標準偏差および平均速度を用いた。その結果、CoP標準偏差と平均速度には、被験者間に、相関のない、同程度のばらつきが観察された。また、CoP標準偏差はCoP動揺における低周波成分(0-0.5 Hz)と強く相関し、CoP平均速度はCoP動揺における中・高周波成分(0.5-1.5 Hz)と強く相関することが明らかになった。これらの結果は、加齢にともなう立位バランスの不安定化には、大きく、CoP動揺の低周波成分が顕在化するタイプ、中・高周波成分が顕在化するタイプ、の2つがあることを意味する。今年度はさらに、立位バランスが不安定化する神経学的要因について、制御の主働筋である下腿三頭筋にストレッチ刺激を加え、立位バランス制御に対する事後効果を検討することによって検討した。被験者(若齢健常者)は、25度の足関節背屈ストレッチ刺激(3分間)の後、5分間の安静立位姿勢を保持した。その結果、ストレッチ直後(約15秒後まで)に、身体重心加速度に1 Hz近傍の特徴的な変調が観察され、その背景には、I群からのフィードバックが関与していることが示唆された。今回1 Hz近傍に観察された身体重心加速度の変調は、上述のCoP動揺における中・高周波成分の増大と類似するものであり、本研究から得られた一連の知見は、立位バランスの加齢変化を生じさせる神経メカニズムについてのヒントを与えるものであると考えられる。当該年度までの目標として、高齢者の立位動揺パターンを類型化し転倒リスクとの関連を明らかにすること、バランス能力の加齢変化を生じさせる神経メカニズムを明らかにすること、を掲げていた。これらの目標は概ね達成できたたが、どのような立位動揺パターンが転倒リスクと関連しているのかは、まだ明らかにできていない。 | KAKENHI-PROJECT-17K01479 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K01479 |
高齢者の多様なバランス制御方略を考慮した転倒危険因子の解明と介入プログラムの開発 | 今後は、当該年度に得られた研究成果を原著論文として出版するための執筆作業を進めると同時に、多くの高齢者に研究に参加してもらえるようなフィールドを確保し、バランス能力の測定を実施する計画である。今後はさらに大きな規模の高齢者を対象として、立位動揺の測定と転倒に関する質問紙調査を合わせて実施することによって、転倒リスクと関連する立位動揺パターンについて明らかにする計画である。当該年度は多くの旅費(海外学会出張)が発生し、当初計画していた機材を購入することができなかったため、次年度使用額が生じた。上記の機材は次年度以降に購入する計画である。測定のフィールドを確保するために時間を要しており、当初計画していた実験が実施できていないためである。フィールドが確保でき次第、機材を購入し、実験を実施する計画である。 | KAKENHI-PROJECT-17K01479 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K01479 |
インドネシア農村部での予防・健康増進転換への協働的看護活動モデル開発 | 研究目的は、予防・健康増進転換期にあるインドネシア農村部での予防・健康増進活動強化に向け保健・看護人材教育強化のための地域保健・看護活動モデルをインドネシア国研究者と開発することであった。研究活動として1.県保健医療関係者から地域保健問題の聞き取り2.増加する高血圧症を持つ住民の予防・健康増進ニーズ調査3.調査結果についてのヘルスワーカーとの意見交換、4.看護教育カリキュラムの見直しを実施した。結果から農村部での予防・健康増進強化のため、看護基礎教育で非感染症対策の教育を増やし、看護継続教育の機会を提供し、他職種連携教育の機会を増やすことを含む地域保健看護強化モデル試案を提言した。研究目的は、予防・健康増進転換期にあるインドネシア農村部での予防・健康増進活動強化に向け保健・看護人材教育強化のための地域保健・看護活動モデルをインドネシア国研究者と開発することであった。研究活動として1.県保健医療関係者から地域保健問題の聞き取り2.増加する高血圧症を持つ住民の予防・健康増進ニーズ調査3.調査結果についてのヘルスワーカーとの意見交換、4.看護教育カリキュラムの見直しを実施した。結果から農村部での予防・健康増進強化のため、看護基礎教育で非感染症対策の教育を増やし、看護継続教育の機会を提供し、他職種連携教育の機会を増やすことを含む地域保健看護強化モデル試案を提言した。本研究の目的は、インドネシア(イ国)の保健施策「Healthy Indonesia 2025」に向け、保健プログラム実施上課題がある農村部における予防・健康増進の保健・看護活動モデルをイ国研究パートナーと協働的に開発し、提言することである。初年度は、既存情報を収集し、イ国において、非感染症疾患が大きな健康課題であり、イ国研究チーム(国立イスラム大学)と共に、農村部の成人住民の面接調査を行った。さらに、農村部の地域保健のステークホルダー及び住民への面接調査をイ国研究者と、現地(インドラマユ)の大学の研究者と共に実施した。結果:1.農村部の県保健局長、医療施設長、看護職、大学保健科学部教員、小学校長の9名の協力を得た。情報から:1)県保健局のビジョンとして「自立した公正な健康的な地域」を目指していること、2)地域保健ニーズは、母子保健、感染症、HIV/AIDS、非感染性疾患であること、3)看護基礎教育カリキュラムは地域保健の6つの役割を含むように開発されていた。2.農村部の保健センターで「高血圧」と診断を受けた壮年住民24名の調査では、1)予防・健康増進行動として、食行動、身体活動、休息、禁煙、ストレス管理、健康情報探究、ヘルスケア探究、地域の人々のケア、神への義務遂行といった行動を実践していると報告された。2)予防・健康増進行動の動機として、行動信念、コンピテンス、宗教サポート、過去の経験、ソーシャル・サポート、保健システムからのサポートが報告された。また実践しない理由として、個人・社会・環境的障害が報告された。この予備調査の結果から、農村部の高血圧と診断を受けた住民の予防・健康増進行動認知モデル試案を作成した。この結果を基に、成人への非感染症、特に高血圧に対する認識と予防・健康増進の認識に関する本調査票を開発し、来年度本調査を実施する。研究成果の概要(和文):本研究の目的は、インドネシア国の保健施策「Healthy Indonesia 2025」に向け、実施上課題が残る農村部における「予防・ヘルスプロモーション(健康増進)」の地域保健・看護活動モデルをインドネシア国研究パートナーと協働的に開発し開発することであった。2年目は、初年度に行った調査から抽出された健康課題ー農村部の対象地域の住民で非感染症特に高血圧と診断された住民の予防・健康行動とその影響要因について質問調査を行い、その予防・健康行動のモデルを構築した。調査には447名の地域住民が参加し、共分散構造分析を行った。その結果、住民の食生活行動に情報探索行動と環境的な障壁が影響し、運動行動に信仰が、そして、禁煙には保健医療従事者やヘルスボランティアのサポートが影響していた。農村部での保健情報が限られている課題が抽出された。加えて、この地域の看護人材の教育内容の分析をインドネシア国研究パートナーと行った。看護教育課程上では、非感染症は大きな地域の保健問題となっているものの、成人保健的な観点の科目あるいは、地域看護学では、健康課題が大きくなっている集団(非感染症患者やHIV/AIDS患者)への焦点化が不足している状況であった。これらの調査結果から、インドネシア国農村部における予防・健康転換への地域保健看護強化モデルを提言した。これらの結果は、対象地域の保健局長や病院長、地域保健センター、保健科学部の大学教員等へ説明し、さらに地域保健活動を促進するために、1)看護人材の教育課程内容の見直し、2)増加しつつある健康問題(非感染症、HIV/AIDS)の集団への予防・健康増進を推進できる公衆衛生看護職への継続教育の強化、3)他職種間の連携による新たな活動のための教育プログラムを提言した。看護学・地域看護学当初の計画以上に進展の理由には、インドネシア国の研究者のリーダーシップによるところが大きい。イ国の研究者は、出身地ということもあり、農村部のインドラマユの県保健の行政官、および現地大学の研究者との関係ができており、受け入れ先の理解を得やすく、研究に協力的であった。これらのイ国研究者の調査受け入れ体制が、日本側の研究チームの受け入れの良さに反映した。加えて、地域住民の研究協力が計画以上にスムーズであった。 | KAKENHI-PROJECT-25671025 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25671025 |
インドネシア農村部での予防・健康増進転換への協働的看護活動モデル開発 | この地域では、すでに非感染症等の問題意識があり、予防・健康増進プログラム開発の必要性を考えておりの、本研究活動の申し出であったため、研究チームの受け入れ、協力活動が計画以上に進展した理由と考えている。今後の研究推進方策としては、イ国研究者、フィールドのステークホルダー、住民代表とのコミュニケーションをフォーラム等の場で確保し、関係者の問題意識を行動変容につながるよう研究活動を進める。具体的には、予備調査のデータ分析を基に、この地域全域の成人の非感染症ー特に高血圧症ーに対する認識とその予防・健康増進行動に関して、イ国研究チームと共に質問紙を開発し、本調査を実施する。本調査は、7月から8月に行う予定であるが、その際に、研究フィールドのステークホルダーへの研究の経過報告、および今後の予定を説明して研究活動を開始する。この調査により、平成25年度の成果である、「イ国農村部の成人の高血圧予防・健康増進行動認知モデル」を検証する。加えて、その本調査結果は、本地域およびイ国研究者の大学で住民を含む、関係者でフォーラムを開催し、発表し、フォーラムの場で、非感染症の予防・健康増進プログラムを提言、評価し改善し、実行化の筋道を明らかにする予定である。年末・年始にかけ実施したインドネシアにての情報収集・調査において、インドネシア通貨であるルピアと円の換算より、端数が出たため。少額であったため研究に変更なし。次年度、支出予定の費用とあわせて使用する。 | KAKENHI-PROJECT-25671025 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25671025 |
保型表現のε-因子と分岐成分の導手 | フェルマ予想(FLT)の様な数論の問題は,非常に広範で深い理論を駆使して研究される。FLTの証明をも含み, 70年代より数論研究の支柱たり続けているLanglandsプログラムに沿って,比較的小さい群U(3)の場合に,その分岐表現と付随するL-/ε-因子を研究した。方針は, L-関数を上の群を対称性にもつ保型形式という"関数"の積分変換で表示し,その積分の分岐因子をホイタッカー関数を通じて明示的に研究する。U(3)が実Lie群/p-進不分岐群の場合には,期待通りの性質を持つホイタッカー関数を同定出来た。フェルマ予想(FLT)の様な数論の問題は,非常に広範で深い理論を駆使して研究される。FLTの証明をも含み, 70年代より数論研究の支柱たり続けているLanglandsプログラムに沿って,比較的小さい群U(3)の場合に,その分岐表現と付随するL-/ε-因子を研究した。方針は, L-関数を上の群を対称性にもつ保型形式という"関数"の積分変換で表示し,その積分の分岐因子をホイタッカー関数を通じて明示的に研究する。U(3)が実Lie群/p-進不分岐群の場合には,期待通りの性質を持つホイタッカー関数を同定出来た。1.本研究の目的は,「保型L-関数の局所理論の再構築」である。即ち,比較的小さい群U(3), GSp(4)の保型L-関数に対し,その分岐L-因子/ε-因子を,数論の局所的/大局的問題への応用に耐えうるレヴェルにまで明示的に研究する。本年度の研究計画は,次の通り;(A)積分表示の局所関数等式からε-因子と"解析的導手"を取り出し,(B)表現の分岐度合を計る"代数的導手"との関係を解明する。2.八月京都大学に於いてWorkshopを執り行い,基本となる群GL(n)の場合に,知られている結果の分析と拡張に当たっての問題点/その解決方針等について,本課題共同研究者を含む国内の専門家と研究討議を行った。(A)については,GL(prime)の場合に,Godement-Jacquet積分から"解析的導手"を計算した。U(3)のSteinberg表現の場合には,Whittaker関数の明示公式及びそのゼータ積分による標準L-関数の分岐因子は得られたが,経絡作用素の計算で研究が停滞している。井草局所ゼータに帰着されるべきとの方針で継続中である。(B)については,分岐度合を測るコンパクト群からのアプローチを継続した。GL(Prime)の場合には,条件付きでは知られていた過去の結果に一致することが確かめられた。3.研究分担者の研究成果は,以下の通りである。森山は,GSp(4 ; R)の場合にWhittaker模型の一意性についての結果を得た。宮内は,p-進U(3)の場合に超カスプ表現がWhittaker模型を持つ条件を同定した。また安田は,Galois表現のε-因子について論文を公表した。1.本研究の目的は,「保型L-関数の局所理論の再構築」である。即ち,比較的小さい群U(3),GSp(4)の保型L-関数に対し,その分岐L-因子/ε-因子を,数論の局所的/大局的問題への応用に耐えうるレヴェルにまで明示的に研究する。本年度の研究計画は,次の通り;(A)積分表示の局所関数等式からε-因子と"解析的導手"を取り出し、(B)表現の分岐度合を計る"代数的導手"との関係を解明する。2.十一月白馬に於けるWorkshopにMcNamara氏を招聘し,被覆群GL(η)のWhittaker関数の明示公式について,解説と拡張についての示唆を受けた。上WSを含む多々の研究集会に於いて,本課題共同研究者を含む国内外の専門家と研究討議を行った。(B)については,U(3)の場合に分岐度合を測る良いコンパクト群族が,宮内により提唱された。彼は,この族から定まる"良い"Whittaker関数の存在と一意性を示した。(A)については,Gelbart-PS積分が期待される関数等式を持ち,宮内の示したWhittaker関数に対し,ε-因子が取り出せることが判った。このε-因子が,定数倍("根数")を除いて,望まれる形であることも判明し,"解析的導手"の候補が定まった。"根数"の問題については,次年度への継続課題とする。3.研究分担者の研究成果は,以下の通りである。森山は,GSp(4;R)の場合にBessel-Whittaker模型について研究した。宮内は,P-進U(3)の場合に上(B)に基づき"代数的導手"の候補を見付けた。また安田は,Galois表現のL-/ε-因子のHecke固有値による表示を得た。1.本研究の目的は,「保型L-関数の局所理論の再構築」である。即ち,保型L-関数に対し,その分岐L-因子/ε-因子を,数論の局所的大局的問題への応用に耐えうるレヴェルにまで明示的に研究する。以下の(A)(B)を比較的小さい群U(3)に対して,研究実施する計画であった。 | KAKENHI-PROJECT-21540017 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21540017 |
保型表現のε-因子と分岐成分の導手 | (A)積分表示の局所関数等式からε-因子と"解析的導手"を取り出し,(B)表現の分岐度合を計る"代数的導手"との関係を解明する。2.一月数理研での研究集会に於いて,U(3)のH-periodの観点からこれまで得られた成果を報告講演した。また,相対跡公式アプローチと我々の方法積分表示を比較検討するために,三月岡山大学にてWork Shopを開催し,二方法の利点/不利点の明確化と今後の問題について討議した。(A)については,無限素点上での対応する結果:Gelbart-PS積分の実局所new vectorを同定した。U(3)が不分岐な場合に,宮内は解析的導手を取り出すことに成功し,研究集会で報告した。(B)については,宮内は昨年までの結果を,U(3)が分岐群の場合にも,ほぼ拡張した。3.宮内は,彼の"代数的導手"と"解析的導手"が一致することを不分岐U(3)に対して示した。安田は,Hecke固有値による表示を論文公表した。森山は,GSp(4)のBessel-Whittaker模型についての結果を論文公表した。 | KAKENHI-PROJECT-21540017 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21540017 |
多発性骨髄腫における特異的染色体異常とmyc,bcl2遺伝子再構成の関連 | 多発性骨髄腫63例と形質細胞性白血病4例の計67例を対象として,染色体分析を行った.15例でbcl2遺伝子の再構成について検索した.また,これらの成績と臨床デ-タの関連性を検討した.(1)形質細胞性腫瘍20例で染色体異常を検出した(30%).多発性骨髄腫(MM)9例,白血性骨髄腫(LM)8例,形質細胞性白血病(PCL)3例である.病期の進行した症例や特殊型で染色体異常の頻度が高く,体腔液蓄留例では4/5,LMは8/8,PCLでは3/4,皮膚腫瘤からは1/1であった.四倍体域の染色体異常は3例(異常例の15%)でみられ,おのおの腹水の貯留した白血化例,白血化例,PCLであった.症例3では短期培養法では正常核型であったが,LPSを添加する培養法を行い異常核型が検出できた.(2)構造異常は14q,1q,6q,7q,11qに多く,とくに14qの異常は10例(染色体異常例の63%)でみられ,すべて14q32を切断点てする14q+であった.残りの構造異常の切断点は一定していなかった.ドナ-不明のものが多く4例,t(6;14)によるものが2例,t(14;18)によるものが2例,t(3;14),t(7;14)が各1例であった.No.1染色体の構造異常は11例でみられ,うち8例は14q+も同時に持っていた.(3)2例はANLL(M2)を合併し,うち1例では共通する異常としてmonosomy7,der(11)t(11p;13q),der(16)t(2q;16p)が認められた.(4)t(14;18)を認めた症例を含む5例でbcl2遺伝子の再構成について検索し,何れも胚細胞型を示した.また,染色体分析はできなかったがbcl2を検索できた10例も胚細胞型であった.(5)染色体分析時の病期は16例中14例が病期IIIであった.LMは5/7,PCLでは2/2,MMでは2/7に14q+を検出し,白血比例とPCLで頻度が有意に(p<0.05)高かった.LDHが高値の8例では全例14q+を検出したが,LDH正常の8例では7例が14q+以外の異常であり,LDH高値と14q+には有意の相関があった(p<0.01).染色体異常の種類と診断からの生存期間に相関はみられなかった.多発性骨髄腫63例と形質細胞性白血病4例の計67例を対象として,染色体分析を行った.15例でbcl2遺伝子の再構成について検索した.また,これらの成績と臨床デ-タの関連性を検討した.(1)形質細胞性腫瘍20例で染色体異常を検出した(30%).多発性骨髄腫(MM)9例,白血性骨髄腫(LM)8例,形質細胞性白血病(PCL)3例である.病期の進行した症例や特殊型で染色体異常の頻度が高く,体腔液蓄留例では4/5,LMは8/8,PCLでは3/4,皮膚腫瘤からは1/1であった.四倍体域の染色体異常は3例(異常例の15%)でみられ,おのおの腹水の貯留した白血化例,白血化例,PCLであった.症例3では短期培養法では正常核型であったが,LPSを添加する培養法を行い異常核型が検出できた.(2)構造異常は14q,1q,6q,7q,11qに多く,とくに14qの異常は10例(染色体異常例の63%)でみられ,すべて14q32を切断点てする14q+であった.残りの構造異常の切断点は一定していなかった.ドナ-不明のものが多く4例,t(6;14)によるものが2例,t(14;18)によるものが2例,t(3;14),t(7;14)が各1例であった.No.1染色体の構造異常は11例でみられ,うち8例は14q+も同時に持っていた.(3)2例はANLL(M2)を合併し,うち1例では共通する異常としてmonosomy7,der(11)t(11p;13q),der(16)t(2q;16p)が認められた.(4)t(14;18)を認めた症例を含む5例でbcl2遺伝子の再構成について検索し,何れも胚細胞型を示した.また,染色体分析はできなかったがbcl2を検索できた10例も胚細胞型であった.(5)染色体分析時の病期は16例中14例が病期IIIであった.LMは5/7,PCLでは2/2,MMでは2/7に14q+を検出し,白血比例とPCLで頻度が有意に(p<0.05)高かった.LDHが高値の8例では全例14q+を検出したが,LDH正常の8例では7例が14q+以外の異常であり,LDH高値と14q+には有意の相関があった(p<0.01).染色体異常の種類と診断からの生存期間に相関はみられなかった. | KAKENHI-PROJECT-01570692 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01570692 |
多発性骨髄腫における特異的染色体異常とmyc,bcl2遺伝子再構成の関連 | 現在まで55例の形質細胞性腫瘍の染色体分析をおこなった。うち3例でbcl2遺伝子の再構成を検索した。1.内訳は多発性骨髄腫51例、形質細胞性白血病(PCL)3例、形質細胞腫(PCM)1例である。2.16例で染色体異常を検出した。(29%)。病期の進行した症例や特殊型で染色体異常の頻度が高く、体腔液貯留例では4/5、白血化例では3/3、PCLでは2/3、PCMでは1/1と、70100%の頻度であった。四倍体域の染色体異常は4例(異常例の25%)でみられ、おのおの胸水貯留例、白血化例、PCL、PXMであった。3.骨髄血にPWMを添加する培養系で9例のIgG骨髄腫を分析した。2例でクロ-ン性の異常を検出でき、1例では非クロ-ン性の異常であった。いずれも短期培養では正常核型であった。LPSを添加する培養系では7例の骨髄腫を分析し、1例でクロ-ン性の染色体異常を検出した。この症例では数的異常だけがみられ、核型は54、XY,+3、+3、+6、+7、+11、+15、+16、+19であった。IL6を添加する培養系では5例の骨髄腫を分析したが、異常は検出できなかった。4.構造異常は14q、6q、1q、1q、7q、11qに多く、おのおのが染色体異常に関与した回数は、9、7、6、5、5、5回であった。14qの異常は9例(染色体異常例の56%)でみられ、すべて14q32を切断点とする14q+であった。残りの構造異常の切断点は一定していなかった。5.14q+のdonorは不明のものが多く5例、t(6;14)によるものが2例、t(14;18)とt(3;14)が各1例であった。6.Bcl2遺伝子の再構成を3例(うち2例はdonor不明の14q+をもっていた)で検討したが、bcl2はgerm-lineであった。多発性骨髄腫55例と形質細胞性白血病3例、計58例の染色体分析を行った。材料は骨髄細胞、末梢血、体腔液、あるいは細切した腫瘍組織で、細胞数を1x10^6/mlに調整後、15%胎児牛血清を加えたRPMI1640培地で培養した。病期I、II期の症例では50ー200μg/mlのPWM、50ー100μg/mlのCowan I、20ー80μg/mlのLPS、10ー100U/mlのrーIL6を培地に添加した。骨髄材料で正常核型のみの症例は解析から除外した。多発性骨髄腫5例でbcl2の再構成を検討するため2.8kb EcoーRIーHind III mbrをプロ-ブとしてSouthen blottingをおこなった。1.多発性骨髄腫7例、白血性骨髄腫7例、形質細胞性白血病2例で異常核型が検出された。病期の進行した症例や特殊型で染色体異常の検出されるものが多く、体液貯留例では4/5、白血性骨髄腫では7/7、形質細胞性白血病では2/3、皮膚腫瘤からは1/1であった。染色体数のモ-ドが4倍体域にみられた症例は3例(異常例の19%)で、腹水の貯留した白血化例、白血化例、形質細胞性白血病であった。刺激因子や増殖因子を添加した培養系においても異常核型の検出頻度をかわらなかったが、多発性骨髄腫の1例でLPS添加培養でのみ異常核型が同定された。2.染色体異常のうち構造異常は14q、1q、6q、7q、11qに多くみられた。特に14qの異常は10例(染色体異常例の63%)にみられ、すべて14q32バンドを切断点とする構造異常であった。14q+を示す構造異常のドナ-染色体としてはt(6;14)が2例、t(14;18)が2例、t(3;14)およびt(7;14)が各1例で、残りの4例については同定できなかった。1番染色体の構造異常は11例にみられたが、切断点は一定せず、また8例では同時に14q+もみられた。3.bcl2遺伝子再構成についてはt(14;18)を示した1例を含む5例で検討したがいずれも胚細胞型を示した。多発性骨髄腫8例と形質細胞性白血病1例の染色体分析を追加し,10例でbc12の再構成の有無を検索した.また,臨床成績を整理し細胞遺伝子学的所見との関連性を検討した.(2)10例でbc12の再構成を検討したが,全例が胚細胞型を示した.(3)染色体分析時の病期は16例中14例が病期III,病期IとIIが各1例であった. | KAKENHI-PROJECT-01570692 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01570692 |
電気分極の電界効果により傾斜する酸化物強誘電体のバンド構造の研究 | 近年,新規強誘電体デバイスとしてメモリが提案され,その動作原理がバンド傾斜構造を用いて解釈されている。バンド傾斜する方向は電気分極向きに対応するため,電子の能動的な移動が制御可能なシステムとなる。本研究では,分極向きが揃ったエピタキシャルな強誘電体酸化物薄膜をパルスレーザー堆積法により合成し,その試料に対し分極方向への深さスキャン可能な角度分解硬X線光電子分光実験によるバンド傾斜の直接観測を試みる。バンド傾斜観測に成功すれば,強誘電体の分極形成機構がバンド傾斜を特徴とする電子構造から解明でき,強誘電体中の特異な電子挙動を使ったメモリの精密設計が可能となる。近年,新規強誘電体デバイスとしてメモリが提案され,その動作原理がバンド傾斜構造を用いて解釈されている。バンド傾斜する方向は電気分極向きに対応するため,電子の能動的な移動が制御可能なシステムとなる。本研究では,分極向きが揃ったエピタキシャルな強誘電体酸化物薄膜をパルスレーザー堆積法により合成し,その試料に対し分極方向への深さスキャン可能な角度分解硬X線光電子分光実験によるバンド傾斜の直接観測を試みる。バンド傾斜観測に成功すれば,強誘電体の分極形成機構がバンド傾斜を特徴とする電子構造から解明でき,強誘電体中の特異な電子挙動を使ったメモリの精密設計が可能となる。 | KAKENHI-PROJECT-19K05271 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K05271 |
ハイブリッドフォトニック結晶ファイバによる高効率コヒーレント光の発生 | ・四光波混合によりファイバ中で励起光からシグナル光とアイドラ光を生じる.励起光の波長によりシグナル光とアイドラ光の発生する波長を制御できる.特に正常分散波長領域にある励起光を入射させるとアイドラ光は中赤外よりも長波長に発生する.また、アイドラ光には、励起光のスペクトルが転写されるため、周波数コムを入射すれば、中赤外からテラヘルツ領域にかけて周波数コムが得られ、精密分光分析に応用が可能になる.広い領域で周波数コムを発生領域可変で発生させることが可能な技術はこれまではない.そこで波長分散特性を用いてアイドラ光の発生を解析するための非線形シュレディンガー方程式によるシミュレーションを進めた.その結果、連続光およびパルス光、さらには周波数コムを入射したときに発生するアイドラ光を解析できる解析手法を確立し、中赤外域にアイドラ光を発生させるための最適ファイバ構造の検討を進めた.・2μm帯に零分散波長をもつカルコゲナイドフォトニック結晶ファイバを作製して、その波長分散を考慮し、開発した非線形シュレディンガー方程式による四光波混合によるアイドラ光の発生解析を行った.その結果、2μm帯の励起により4μmを超える波長域にアイドラ光が発生できることを明らかにした.実際、カルコゲナイドフォトニック結晶ファイバを用いて実験的検証を行った結果、4.2μmにアイドラ光が発生することを実証した.光ファイバを用いて4μmを超える波長域においてアイドラ光を発生した例はこれまでにはなく、初めて得られた結果である.さらに長波長の光を発生させるためのファイバ設計を進めた.・また、テルライトガラスやカルコゲナイドガラスがテラヘルツ領域の透過特性の評価を進め、それらガラスがテラヘルツ領域で透過域を有することを確認した.透過特性の定量化およびガラス組成依存性を解明していく.・正常分散波長領域にある励起光を入射させると広い波長域で四光波混合によりファイバ中で励起光からシグナル光とアイドラ光を生じる.特に、アイドラ光には、励起光のスペクトルが転写されるため、周波数コムを入射すれば、中赤外からテラヘルツ領域にかけて周波数コムが得られ、精密分光分析に応用が可能になる.広い領域で周波数コムを発生領域可変で発生させることが可能な技術はこれまではなかったが、波長分散特性を用いてアイドラ光の発生を解析するための非線形シュレディンガー方程式によるシミュレーション手法の開発手法を確立し、研究を進めた.・2μm帯に零分散波長をもつカルコゲナイドフォトニック結晶ファイバを作製して、その波長分散を考慮し、開発した非線形シュレディンガー方程式による四光波混合によるアイドラー光の発生解析を行い、2μm帯の励起により4μmを超える波長域にアイドラ光が発生できることを明らかにした.実際、カルコゲナイドフォトニック結晶ファイバを用いて実験的検証を行った結果、4.2μmにアイドラ光が発生することを実証し、開発した解析手法の妥当性を検証した.さらに光ファイバを用いて4μmを超える波長域においてアイドラ光を発生した例はこれまでにはなく、初めての結果を得た.・テルライトガラスやカルコゲナイドガラスがテラヘルツ領域の透過特性の評価を進めた.透過域を有することを確認することができた.今後のテラヘルツ光の発生特性の解析に途がつけられたと考えている.これまでのファイバ構造とアイドラ光発生のための波長分散特性の相関に関する解析結果を基に、アイドラ光発生による中赤外からテラヘルツ領域でのコヒーレント光の発生を検証する.そのために必要な下記の項目の研究を推進する.(1)アイドラ光発生のための波長分散特性を実現するために必要なハイブリッドPCFを実現する.(2)1から2μmの近赤外光パルスを入射させ、中赤外からテラヘルツ領域でのコヒーレント光発生を実現する.(1)の研究では、ハイブリッドPCFのコア・クラッド素材として、カルコゲナイド・テルライトガラス(Ge-Ga-Sb-S・TeO2-ZnO-Bi2O3-Li2O)、カルコゲナイド・カルコゲナイドガラス(AsSe・AsS)、テルライト・フォスフォテルライトガラス(TeO2-La2O3-WO3-MoO3-Na2O・TeO2-ZnO-Na2O-P2O5)、テルライト・フォスフェイトガラス(TeO2-Bi2O3-Na2O-ZnO・P2O5-ZnO-Na2O-K2O)等の組み合わせが考えられる.それらガラスの組み合わせで0.2以上の屈折率差が実現でき、ハイブリッドPCFの素材として使用できる。組成による屈折率分散の変化を測定しつつ、最適組成を見極め、アイドラ光発生のための波長分散特性を実現するために必要なハイブリッドPCFを実現する.(2)の研究では、1から2μmの波長域でフェムト秒からピコ・ナノ秒域の光パルスを発生させる光ファイバレーザを組み立てており、それらを光源として中赤外からテラヘルツ領域でのコヒーレント光発生を検証する.発生波長とファイバ構造との相関を検証し、テラヘルツ領域でのアイドラ光の発生を目指す.・四光波混合によりファイバ中で励起光からシグナル光とアイドラー光を生じる.励起光の波長によりシグナル光とアイドラー光の発生する波長を制御できる.特に正常分散波長領域にある励起光を入射させるとアイドラー光は中赤外よりも長波長に発生する. | KAKENHI-PROJECT-17K18891 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K18891 |
ハイブリッドフォトニック結晶ファイバによる高効率コヒーレント光の発生 | また、アイドラー光には、励起光のスペクトルが転写されるため、周波数コムを入射すれば、中赤外からテラヘルツ領域にかけて周波数コムが得られ、精密分光分析に応用が可能になる.広い領域で周波数コムを発生領域可変で発生させることが可能な技術はこれまではない.そこで波長分散特性を用いてアイドラー光の発生を解析するための非線形シュレディンガー方程式によるシミュレーション手法の開発を進めた.その結果,連続光およびパルス光、さらには周波数コムを入射したときに発生するアイドラー光を解析できる解析手法を確立した.・2μm帯に零分散波長をもつカルコゲナイドフォトニック結晶ファイバを作製して,その波長分散を考慮し,開発した非線形シュレディンガー方程式による四光波混合によるアイドラー光の発生解析を行った.その結果,2μm帯の励起により4μmを超える波長域にアイドラー光が発生できることを明らかにした.実際,カルコゲナイドフォトニック結晶ファイバを用いて実験的検証を行った結果,4.2μmにアイドラー光が発生することを実証した.光ファイバを用いて4μmを超える波長域においてアイドラー光を発生した例はこれまでにはなく,初めての結果を得た.・また,中赤外光発生の手法として,高次ラマン散乱による中赤外光発生を検討した.1.5μm帯励起によるAsS系のカルコゲナイド光ファイバによる5次のラマン散乱により2.6μmの発生を確認した.カルコゲナイド光ファイバを用いた5次のラマン散乱の観測は初めてであり,本現象を利用して中赤外光発生のための励起光が得られることを示した.・正常分散波長領域にある励起光を入射させると広い波長域で四光波混合によりファイバ中で励起光からシグナル光とアイドラ光を生じる.特に、アイドラー光には、励起光のスペクトルが転写されるため、周波数コムを入射すれば、中赤外からテラヘルツ領域にかけて周波数コムが得られ、精密分光分析に応用が可能になる.広い領域で周波数コムを発生領域可変で発生させることが可能な技術はこれまではなかったが,波長分散特性を用いてアイドラー光の発生を解析するための非線形シュレディンガー方程式によるシミュレーション手法の開発手法を確立し,今後の研究の基礎を築いた.・2μm帯に零分散波長をもつカルコゲナイドフォトニック結晶ファイバを作製して,その波長分散を考慮し,開発した非線形シュレディンガー方程式による四光波混合によるアイドラー光の発生解析を行い,2μm帯の励起により4μmを超える波長域にアイドラー光が発生できることを明らかにした.実際,カルコゲナイドフォトニック結晶ファイバを用いて実験的検証を行った結果,4.2μmにアイドラー光が発生することを実証し,開発した解析手法の妥当性を検証した.さらに光ファイバを用いて4μmを超える波長域においてアイドラー光を発生した例はこれまでにはなく,初めての結果を得た.・新たに中赤外光発生の手法として,高次ラマン散乱による中赤外光発生を検討し, 1.5μm帯励起によるAsS系のカルコゲナイド光ファイバによる5次のラマン散乱により2.6μmの発生を確認した.カルコゲナイド光ファイバを用いた5次のラマン散乱の観測は初めてであり,本現象を利用して中赤外光発生のための励起光が得られることを示し,今後の研究に利用できることを示した.・四光波混合によりファイバ中で励起光からシグナル光とアイドラ光を生じる.励起光の波長によりシグナル光とアイドラ光の発生する波長を制御できる.特に正常分散波長領域にある励起光を入射させるとアイドラ光は中赤外よりも長波長に発生する. | KAKENHI-PROJECT-17K18891 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K18891 |
発生における遺伝子の空間的・時間的発現パターンと染色体のダイナミクス | カタユウレイボヤの初期胚を用いて、発生におけるゲノムのメチレーションの役割を調べた。具体的にはカタユウレイボヤの受精直後の卵にゲノムDNAのメチレーションを阻害する薬剤である5-aza-2'-deoxycytidine(5-aza-Cdr)を作用させてメチレーションを阻害し、発生に異常が起きることを確認した。受精したカタユウレイボヤの卵を培養する海水に5-aza-Cdrを1μM以上になるように溶解し発生を観察すると、神経胚になるあたりから正常胚と比較して発生に遅延が見られ、正常胚が尾芽胚になる頃には発生が停止する。その後培養し続けると、細胞死が起こり胚は死に到る。正常尾芽胚と正常胚が尾芽胚となる時間の実験胚の両者のサンプルからゲノムDNAを抽出し、メチル化されたシトシンの部分でDNAを切断する酵素であるMcrBCで処理すると、5-aza-Cdrで処理したサンプルは正常胚のサンプルに比べて切断部位が減少していることが確認された。つまり、ゲノムのメチレーション阻害によって5-aza-Cdr処理胚ではゲノムのメチル化部位が減少しており、5-aza-Cdrの影響によりメチレーションが阻害されたことが確かめられた。よって、5-aza-Cdrによる発生異常はDNAのメチレーションパターンの変化による転写産物の種類や量の変化によって引き起こされているものと考えられた。この転写産物の変化を調べるため、次に正常胚が尾芽胚となる同じ時期のメッセンジャーRNAを抽出し、カタユウレイボヤのオリゴアレイを用いて転写産物の比較を行った。現在その解析を進めている。カタユウレイボヤの初期胚を用いて、発生におけるゲノムのメチレーションの役割を調べた。具体的にはカタユウレイボヤの受精直後の卵にゲノムDNAのメチレーションを阻害する薬剤である5-aza-2'-deoxycytidine(5-aza-Cdr)を作用させてメチレーションを阻害し、発生に異常が起きることを確認した。受精したカタユウレイボヤの卵を培養する海水に5-aza-Cdrを1μM以上になるように溶解し発生を観察すると、神経胚になるあたりから正常胚と比較して発生に遅延が見られ、正常胚が尾芽胚になる頃には発生が停止する。その後培養し続けると、細胞死が起こり胚は死に到る。正常尾芽胚と正常胚が尾芽胚となる時間の実験胚の両者のサンプルからゲノムDNAを抽出し、メチル化されたシトシンの部分でDNAを切断する酵素であるMcrBCで処理すると、5-aza-Cdrで処理したサンプルは正常胚のサンプルに比べて切断部位が減少していることが確認された。つまり、ゲノムのメチレーション阻害によって5-aza-Cdr処理胚ではゲノムのメチル化部位が減少しており、5-aza-Cdrの影響によりメチレーションが阻害されたことが確かめられた。よって、5-aza-Cdrによる発生異常はDNAのメチレーションパターンの変化による転写産物の種類や量の変化によって引き起こされているものと考えられた。この転写産物の変化を調べるため、次に正常胚が尾芽胚となる同じ時期のメッセンジャーRNAを抽出し、カタユウレイボヤのオリゴアレイを用いて転写産物の比較を行った。現在その解析を進めている。 | KAKENHI-PROJECT-04J61619 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04J61619 |
太陽対流層の線型安定性に対する回転の影響 | 対流局に対する回転の影響を調べる前に,ベースとなる対流層の構造をおさえる必要があり,以下の様な考察を行った.太震学からわかっている,深い対流局を与えるモデルとしては,局所モデルの場合,混合距離を大きくせねばならず,その場合には非局性が無視出来ない.非局所混合距離理論として,最も完成されているものは,中国の熊氏によるものである.この理論は乱流速度の自乗平均,温度ねらぎの自乗平均,両者の相関の3変数に対して各々2階の非線型連立微分方程式からなる.通常の精度の良い差分で解を求めようとしたが,数値不安定を示し,収束解が得られず,前進差分,後退差分の混用で解を得た.結果は,対流局の底に熱溜めが作られ,準断熱的になる.そこで,適当な式の変形と,境界条件の組み入れ方に工夫をする事で,やっと正常な収束解が得られた.それによれば,熱溜りは発生せず,それを解消する様に深い対流局モデルに移行した.そこで問題になるのはLiの問題である.観測によれば,太陽Liの存在量はかなり消滅しているが残存している.得られた対流局モデルでLi元素の破壊局への拡散による滅少を調べたが,短時間で残存もなく壊棄してしまう.そこで考えられるのは,対流局の性質として重い元素を下局へは拡散しにくい性質があると予想して,従来考えられた事のない,対流局の圧力効果によって,元素拡散へ抵抗が働くと考え,定式化した.その結果,抵抗値は圧力ゆらぎと速度の相関に比例する事がわかった.この事は,圧力が高い下局へは元素拡散しにくく,圧力の下がる外局に拡散し易い事を意味している.この結果は,青色巨星内の元素分布や, 1987A超新星の親星の円部構造にも関連した結果と考え,国際会議で発表した.対流局に対する回転の影響を調べる前に,ベースとなる対流層の構造をおさえる必要があり,以下の様な考察を行った.太震学からわかっている,深い対流局を与えるモデルとしては,局所モデルの場合,混合距離を大きくせねばならず,その場合には非局性が無視出来ない.非局所混合距離理論として,最も完成されているものは,中国の熊氏によるものである.この理論は乱流速度の自乗平均,温度ねらぎの自乗平均,両者の相関の3変数に対して各々2階の非線型連立微分方程式からなる.通常の精度の良い差分で解を求めようとしたが,数値不安定を示し,収束解が得られず,前進差分,後退差分の混用で解を得た.結果は,対流局の底に熱溜めが作られ,準断熱的になる.そこで,適当な式の変形と,境界条件の組み入れ方に工夫をする事で,やっと正常な収束解が得られた.それによれば,熱溜りは発生せず,それを解消する様に深い対流局モデルに移行した.そこで問題になるのはLiの問題である.観測によれば,太陽Liの存在量はかなり消滅しているが残存している.得られた対流局モデルでLi元素の破壊局への拡散による滅少を調べたが,短時間で残存もなく壊棄してしまう.そこで考えられるのは,対流局の性質として重い元素を下局へは拡散しにくい性質があると予想して,従来考えられた事のない,対流局の圧力効果によって,元素拡散へ抵抗が働くと考え,定式化した.その結果,抵抗値は圧力ゆらぎと速度の相関に比例する事がわかった.この事は,圧力が高い下局へは元素拡散しにくく,圧力の下がる外局に拡散し易い事を意味している.この結果は,青色巨星内の元素分布や, 1987A超新星の親星の円部構造にも関連した結果と考え,国際会議で発表した. | KAKENHI-PROJECT-62540192 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62540192 |
Heegaard理論を用いた結び目の研究 | Heegaard理論を通して,3次元閉多様体内の結び目・タングルがもつ位相的および幾何的性質に関する研究を行った.主な研究成果は次の通りである.(1) Heegaard理論の観点から自由タングルを考察することにより,2-タングル分解に関する森元の定理の主張を部分的に拡張した.(2)タングルにもトンネル数やブリッジ数の概念を導入し,結び目のそれらを評価する不等式を得た.(3)任意に高いHempel距離を許容する橋分解をもつ結び目が任意に与えられた3次元閉多様体内に存在することを示した.(4)本質的タングル分解に関する小沢の定理がある意味で拡張不可能であることを示した.【結び目の複雑度に関する研究】結び目の複雑さを表すHempel距離と種数gのHeegaard曲面に対するb-橋分解,これを(g,b)-分解とよぶ,に関する研究を市原一裕氏(日本大学)と共同で行い,次を示した:任意に与えられた3次元閉多様体M,非負整数g,自然数b,nに対して, Hempel距離がnより大きい(g,b)-分解をもつM内の結び目が自明な例外を除いて存在する.先行研究からの大きな改良点は,本定理では多様体が任意に与えられるところにある.応用として,任意の自然数t,m≦t+1を満たす任意の非負整数mに対して,トンネル数tでmeridional destabilizing numberがmとなるような3次元球面内の結び目の存在定理が得られた.同時に,本研究をさらに推進するためには,やはりタングルに関する詳細な考察が不可欠との考えに至る.【タングルに関する研究】タングルとは境界付きコンパクト3次元多様体Nと,N内に適切に埋め込まれた1次元多様体Tとの組(N,T)であり,主に結び目の構成要素として知られている.今年度は本研究課題である「Heegaard理論を用いた結び目の研究」を基盤として,同理論を用いて自由タングルの考察に関する考察を行った.【結び目のレンズ空間手術に関する研究】レンズ空間手術予想の解決へ向けて,対象をトンネル数1の結び目,すなわち,結び目外部空間が種数2のHeegaard分解を許容する結び目によるデーン手術とし,この操作によりHeegaard種数が落ちるための条件を改良した.Heegaard理論を通して,3次元閉多様体内の結び目・タングルがもつ位相的および幾何的性質に関する研究を行った.主な研究成果は次の通りである.(1) Heegaard理論の観点から自由タングルを考察することにより,2-タングル分解に関する森元の定理の主張を部分的に拡張した.(2)タングルにもトンネル数やブリッジ数の概念を導入し,結び目のそれらを評価する不等式を得た.(3)任意に高いHempel距離を許容する橋分解をもつ結び目が任意に与えられた3次元閉多様体内に存在することを示した.(4)本質的タングル分解に関する小沢の定理がある意味で拡張不可能であることを示した.【結び目の複雑度に関する研究】3次元球面内の結び目の複雑さを表す指標のひとつとして,ブリッジ数brg()やトンネル数tnl()といった概念が良く知られている.結び目の連結和によるこれらの振る舞いは国内外の多数の研究者によって研究され,完全ではないもののある程度の解明がなされている.一方,3次元球面内の結び目は,それと4点で交わる2次元球面により,2つのタングルに分解される.本研究では,各タングルに対してもブリッジ数やトンネル数という概念を導入し,これらによって結び目のブリッジ数やトンネル数がどのように評価できるかについて考察を行った.当該年度の成果としては,まず次の不等式を得た.結び目Kが2つのnタングルT,T'に分解されるとき,次の式が成立する:さらに,不等式(2)については,結び目の複雑さを計るために既に導入済みの概念,meridional destabilizing numberを用いれば,より良い評価式を得ることができることも分かった.実際,森元結び目はこの改良された評価式の等号を成立させる例となっている.【結び目のレンズ空間手術に関する研究】レンズ空間手術予想の解決へ向けて,対象をトンネル数1の結び目,すなわち,結び目外部空間が種数2のHeegaard分解を許容する結び目によるデーン手術とし,この操作によりHeegaard種数が落ちる場合の特徴付けを行った.【結び目のレンズ空間手術に関する研究】においては,当初の計画よりも若干の遅れを感じている.一方,【結び目の複雑度に関する研究】では,新たな概念の導入が成功し,申請時点とは少し異なった観点からの研究の可能性が芽生えている.以上より,総合的に判断して,研究はおおむね順調に進展していると考える.【結び目のレンズ空間手術に関する研究】においては,次年度も同様の手法を用いて研究を継続する.また,【結び目の複雑度に関する研究】では,当該年度で得られた成果のさらなる発展を目指す.いずれの研究テーマも,国内外の研究集会や各種セミナー等で発表を行い,できるだけ多くの研究者から意見・助言を得ることで今後の研究を推進させる.該当なし | KAKENHI-PROJECT-24740041 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24740041 |
弾性波動解析を援用したカスタマイズド衝撃弾性波非破壊評価システムの提案 | 本研究では、コンクリート構造物の調査に幅広い適用性を有する衝撃弾性波法において、計測対象である実構造物の条件に応じて計測・評価方法をカスタマイズする「カスタマイズド衝撃弾性波非破壊評価システム」を構築した。具体的には、トンネル覆工コンクリート、道路橋RC床版、橋梁PC桁を対象に実構造物のコンクリート部材をモデル化した上で、衝撃応答解析により1弾性波の入力方法、2弾性波の受信方法、3波形分析方法の最適な組み合わせ方法を決定した。その後、供試体での計測結果と解析モデルでの結果の照合からシステムの改良を行い、実構造物における検証により「カスタマイズド衝撃弾性波非破壊評価システム」の有効性を評価した。評価対象(I:トンネル覆工コンクリート、フーチング等の部材厚さ、II:道路橋RC床版内部に生じる水平ひび割れ、III:橋梁PC桁のPCグラウト充填状況)ごとに、検討すべき範囲(部材諸元・欠陥情報等)を明確にした。その後、弾性波動解析プログラムを作成し、この解析結果と供試体実験での確認実験に基づき、本評価システムの適用範囲を明らかにした。1評価対象IIIIごとの検討範囲の整理:評価対象IIIIごとに検討範囲(部材諸元・欠陥情報)を文献調査、あるいは研究連携先(東海旅客鉄道株式会社他)へのヒヤリングを行い検討範囲を明確にした。2評価対象IIIIに対応した基本実験供試体の製作および計測による弾性波挙動の把握:評価対象IIIIごとに基本実験供試体を製作した。また、弾性波入力の再現性を改善するため複数の鋼球を入力でき、打撃時の衝突速度がコントロールできる打撃装置の部分試作を行った。3評価対象IIIIに対応した基本解析モデルでの弾性波挙動の把握と弾性波動解析プログラムの試作および適用範囲の明確化:上記2の基本実験供試体の解析モデルを作成し、汎用的な衝撃応答解析により供試体での計測結果と基本解析モデルでの計算結果との対応関係を把握した。またヘルツの接触理論に基づく弾性波入力方法、要素設定、弾性波境界条件等の検討を行った。次に1で整理した評価対象IIIIの検討範囲に対して解析モデルを作成し、弾性波挙動を把握した。本年度は、通常の衝撃弾性波法では評価が困難な対象に対して、弾性波動解析により弾性波入力・受信・波形分析方法の改善を行い、評価対象の種々の条件に対して最適な弾性波の入力・受信・波形分析方法を確定することのできる「カスタマイズド衝撃弾性波非破壊評価システム」の構築に着手した。1基本解析モデルを用いた弾性波入力・受信・波形分析方法の改善「弾性波動解析」により、従来の標準的な仕様の衝撃弾性波法で評価が困難なものに分類されたものについて、弾性波の入力方法(打撃方法、鋼球直径、打撃位置)、弾性波の受信方法(センサの設置位置および数)、波形分析方法(波形処理、周波数分析方法)の改良を行った。2「カスタマイズド評価システム」の構築1において改善した「弾性波入力・受信・波形分析方法」を用いて、製作した基本実験供試体を対象に計測を行った。ここで、供試体のコンクリート内部欠陥に関する情報を把握するため、サーモグラフィ装置を用いた測定を併せて行った。その結果、「カスタマイズド評価システム」の有効性を供試体レベルで検証できた。最終年度は,提案した手法の有効性を検証するため,評価対象に該当する実構造物での計測を行い,本評価システムの有効性の評価,評価精度を向上するためのシステムへのフィードバックを行い,「カスタマイズド評価システム」の改善を行った.1実構造物における「カスタマイズド評価システム」の有効性の検証対象とした実構造物は道路橋RC床版であり,まず,鋼板接着補強されたRC床版の損傷を模擬した実大供試体を作製し,手法の有効性の評価を行った.次に,「カスタマイズド評価システム」の実構造物への有効性の検証を行った.供用後40年以上経過した鋼板接着補強したRC床版を対象に,鋼板のはく離状態,床版内に生じる曲げひび割れ,水平ひび割れの評価を行った.本システムでの評価結果の精度や確からしさを把握するために,複数の検査手法による評価結果と照合し,本システムの実構造物に対する有効性の検証を行った.さらに,本システムの評価精度を向上するため,得られた評価結果と同様の条件で弾性波動解析を行い,「カスタマイズド評価システム」のパラメータの調整を行うなどして,評価精度の向上方法を検討した.2「カスタマイズド評価システム」の改善前年度までに構築した「カスタマイズド評価システム」に対して,1で得られた実構造物での有効性の検証結果,および得られた評価結果と同様の条件で行われた弾性波動解析によるパラメータの調整結果を反映し,「カスタマイズド評価システム」の改善を行った.本研究では、コンクリート構造物の調査に幅広い適用性を有する衝撃弾性波法において、計測対象である実構造物の条件に応じて計測・評価方法をカスタマイズする「カスタマイズド衝撃弾性波非破壊評価システム」を構築した。具体的には、トンネル覆工コンクリート、道路橋RC床版、橋梁PC桁を対象に実構造物のコンクリート部材をモデル化した上で、衝撃応答解析により1弾性波の入力方法、2弾性波の受信方法、3波形分析方法の最適な組み合わせ方法を決定した。その後、供試体での計測結果と解析モデルでの結果の照合からシステムの改良を行い、実構造物における検証により「カスタマイズド衝撃弾性波非破壊評価システム」の有効性を評価した。当初の計画通り、基本解析モデルを用いた弾性波入力・受信・波形分析方法の改良を行うとともに、製作した基本実験供試体を対象にした計測から「カスタマイズド評価システム」の有効性の検証を行った。27年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-25289132 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25289132 |
弾性波動解析を援用したカスタマイズド衝撃弾性波非破壊評価システムの提案 | 土木工学コンクリート工学維持管理工学非破壊検査本年度までに提案してきた手法の有効性を検証するため、今後、以下の研究を推進する。1実構造物における「カスタマイズド評価システム」の有効性の検証「カスタマイズド評価システム」の実構造物への有効性の検証を行う。本システムでの評価結果の精度や確からしさを把握するために、計測点で削孔を行い、内部のひび割れの発生状況やその位置を把握する。本システムでの評価結果と実態とを比較することにより、本システムの実構造物に対する有効性の検証を行う。ここで、本システムの評価結果が良好ではない場合は、再度、弾性波動解析を行い、本システムによる評価結果が向上するための方法(フィードバック)も検討する。2「カスタマイズド評価システム」の提案本年度までに行ってきた「カスタマイズド評価システム」の構築と、1で行う提案した手法の実構造物での有効性の検証の成果をまとめ、「カスタマイズド評価システム」を提案する。当初の計画通り、評価対象(I:トンネル覆工コンクリート、フーチング等の部材厚さ、II:道路橋RC床版内部に生じる水平ひび割れ、III:橋梁PC桁のPCグラウト充填状況)ごとに、検討すべき範囲(部材諸元・欠陥情報等)を明確にし、弾性波動解析プログラムを作成し、この解析結果と供試体実験での確認実験に基づき、本評価システムの適用範囲を明らかにした。27年度が最終年度であるため、記入しない。次年度に計画している実構造物における「カスタマイズド評価システム」の有効性の検証および「カスタマイズド評価システム」の提案を行うにあたり、次年度使用額が発生した。27年度が最終年度であるため、記入しない。本年度実施した衝撃応答解析に基づき、従来の標準的な衝撃弾性波法で評価が困難な対象について明確になったため、今後以下の研究を推進する。4基本解析モデルを用いた弾性波入力・受浸・波形分析方法の改善:弾性波の入力方法(打撃方法、鋼球直径、打撃位置)、弾性波の受信方法(センサの設置位置および数)、波形分析方法(波形処理、周波数分析方法)の改良を行う。5「カスタマイズド評価システム」の構築:4において改善した「弾性波入力・受浸・波形分析方法」を用いて2で製作した基本実験供試体を対象に計測を行い、「カスタマイズド評価システム」の有効性を供試体レベルで検証する。「カスタイマイズド評価システム」を実構造物へ適用した結果により、評価結果をより向上させるためのフィードバックを行う必要があるケースが生じ得るため、再度、高度な波形分析を行うために使用する波形分析プログラミングソフト(Matlab)を各研究機関で維持する。また、昨年度に引き続き「周波数応答がフラットなポータブル型の各種センサ(加速度/速度/変位センサ)」の試作を行う予定である。27年度が最終年度であるため、記入しない。次年度以降、基本解析モデルを用いた弾性波入力・受信・波形分析方法の改善、「カスタマイズド評価システム」の構築(平成26年度)を計画しており、実構造物における「カスタマイズド評価システム」の有効性の検証、「カスタマイズド評価システム」の提案(平成27年度)を計画しており、次年度使用額が発生した。 | KAKENHI-PROJECT-25289132 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25289132 |
完備離散付値環上の格子におけるAuslander-Reiten理論の研究 | 以下,整環は完備離散付値環O上の対称的整環とする.[1]整環の安定ARクイバーの形状は未だに未知なことが多く,具体的な代数についても決定することが困難である.そこで,まずtame表現型の基本モデルである対称Kronecker代数のHeller格子を含む安定AR連結成分の構造論について研究を行った.まず,非周期的な連結成分について,論文を推敲し掲載が決まった.論文発表時からの進展は以下の通りである:劣加法的関数の候補となる関数Dを与えた.特に,関数Dが劣加法的にならない可能性のある連結成分はHeller格子を含むような連結成分のみであり, Heller格子の周辺に関して劣加法的であれば,関数Dは劣加法的であることを示した.これの応用として,一般の整環に剰余体をテンソルして有限表現型であれば,ループを持たないHeller格子を含む連結成分のtree classは有限Dynkinグラフとなるという結果を得た.これは, Brauer tree代数の場合にも適用できる一般的な主張となっている.周期的な連結成分について, Heller格子を含む連結成分を全てその構造論を与えた.これについては論文を発表し,現在投稿中である.先の関数Dを用いることで,対称Kronecker代数のHeller格子を含む連結成分のtree classはすべてA_{∞}であることを証明した.これは,非特異点型の整環の非周期な連結成分を決定した初めての具体例である.[2]有木氏と加瀬氏との共同研究において,連結成分のループの非存在を主張していたが,周期が1の連結成分にはループが存在する可能性があることを指摘した.このとき,ループが存在すればhomogeneous tubesの端に付値(1,1)で現れることも示している.翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。以下,整環は完備離散付値環O上の対称的整環とする.[1]整環の安定ARクイバーの形状は未だに未知なことが多く,具体的な代数についても決定することが困難である.そこで,まずtame表現型の基本モデルである対称Kronecker代数のHeller格子を含む安定AR連結成分の構造論について研究を行った.まず,非周期的な連結成分について,論文を推敲し掲載が決まった.論文発表時からの進展は以下の通りである:劣加法的関数の候補となる関数Dを与えた.特に,関数Dが劣加法的にならない可能性のある連結成分はHeller格子を含むような連結成分のみであり, Heller格子の周辺に関して劣加法的であれば,関数Dは劣加法的であることを示した.これの応用として,一般の整環に剰余体をテンソルして有限表現型であれば,ループを持たないHeller格子を含む連結成分のtree classは有限Dynkinグラフとなるという結果を得た.これは, Brauer tree代数の場合にも適用できる一般的な主張となっている.周期的な連結成分について, Heller格子を含む連結成分を全てその構造論を与えた.これについては論文を発表し,現在投稿中である.先の関数Dを用いることで,対称Kronecker代数のHeller格子を含む連結成分のtree classはすべてA_{∞}であることを証明した.これは,非特異点型の整環の非周期な連結成分を決定した初めての具体例である.[2]有木氏と加瀬氏との共同研究において,連結成分のループの非存在を主張していたが,周期が1の連結成分にはループが存在する可能性があることを指摘した.このとき,ループが存在すればhomogeneous tubesの端に付値(1,1)で現れることも示している.翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-18J10561 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J10561 |
ハロルド・ラスキにおける「社会民主主義」概念の再検討 | 平成24年(2012年)度は、修士論文以来のテーマであるH・ラスキの政治思想研究をさらに進展させ、その内容を学会報告および投稿論文の形で公表した。第一に、修士論文の対象であった1920年代ラスキの主権国家論(多元的国家論)を、とりわけカトリック教会と労働組合に着目しながら投稿論文にまとめ、『政治思想研究』に掲載した。ラスキの初期国家論の本格的検討はこれまでなされてこなかった分野であり、本論文では、ラスキの初期著作の内実は重厚な中世教会史研究であったこと、労働組合への着目はむしろ1930年代以降のラスキの関心であったことなどを示した。第二に、ラスキの思想変遷を追う形で考察対象の時代をあらため、1930年代におけるラスキのソ連認識、ファシズム認識を対象として、その時代的変容を考察した。ラスキの共産主義認識は長らく冷戦構造の地場のなかで捉えられ、その評価も冷戦的発想によって二分されてきたが、当研究では1930年代の新聞コラムや同時代的評論の実証的な読解の下、ラスキのソ連認識の好意的変容の過程を思想史的に描写した。当研究の内容は『年報政治学2012-H』に掲載された。第三に、1940年代におけるラスキの「同意革命論」を取り上げ、社会思想史学会第37回研究大会にて報告した。ラスキ「同意革命論」は、第二次大戦期における総力戦体制と政治的危機意識の蔓延を、そのままイギリスの社会主義化につなげようとしたラスキの政治実践であり、結果的には失敗におわったこの試みについて、「学者/知識人の政治関与」の視点から再評価を試みた。その他、金沢大学の仲正昌樹先生が編者となった、学部生向けの政治思想史の教科書『政治思想の知恵』(法律文化社、2013年)に、「ベンサム」を寄稿した。平成24年(2012年)度は、二つの投稿論文、一つの分担執筆論文を活字化することができたので、研究のアウトプットという点ではおおむね満足のできるものであった。本年度はそれに加えて、さらに博士論文の構成執筆に従事した。平成25年(2013年)度の最も重要な研究目標は、なにより博士論文の完成である。これまでの投稿論文を連続させて再構成する形で、現在すでに基本的な骨組みは完成しており、今後、論証の強化や文章の推敲などを進めていく予定である。第二に、博士論文提出後の研究テーマとしては、ラスキ以降のイギリス左翼思想、具体的には1960年以降に雑誌『ニュー・レフト・レビュー』を中心に活躍したイギリス・ニュー・レフトの思想の同時代的文脈と現代的意義を、思想史的に考察したいと考えている。平成23年度は、修士論文で検討したラスキの初期理論とりわけ多元的国家論の理論構造の分析を進め、ラスキの先行研究の欠落を埋める努力をした。ラスキの多元的国家論についてはこれまで、労働組合への着目による国家の相対化を目指したものという通説が支配的であったが、ラスキの初期著作の綿密な読解を通して、初期ラスキがキリスト教会に関心をむけ、国家とキリスト教の領域区分を眼目としていたことを明らかにした。その成果を論文「初期ハロルド・ラスキの『多元的国家論』をめぐる再検討-教会論と労働組合論の位相」にまとめ、政治思想学会編『政治思想研究(第12号)』(2012年5月刊行)に投稿し、掲載された。同論文は政治思想学会研究奨励賞を受賞した。同時に、研究対象を徐々に中期ラスキに以降させ、ファシズムや共産主義など1930年代の支配的イデオロギーとラスキの思想変遷の関係についても考察を行った。中期から晩年にかけてのラスキは、ソ連体制やマルクス主義へ接近した「赤い知識人」とされてきたが、同時代の著作やパンフレットに秘められた政治的含意を読解しながら、ラスキによるソ連評価が同時代の社会主義者とは異なり、あくまで個人の道徳的自律や自由権に依拠したものであることを示した。その成果を論文「ラスキにおける『二つの全体主義』認識の変容と自由民主政への批判的省察」にまとめ、日本政治学会編『年報政治学(2012年度第11号)』に投稿し、現在同論文は査読中である。平成24年(2012年)度は、修士論文以来のテーマであるH・ラスキの政治思想研究をさらに進展させ、その内容を学会報告および投稿論文の形で公表した。第一に、修士論文の対象であった1920年代ラスキの主権国家論(多元的国家論)を、とりわけカトリック教会と労働組合に着目しながら投稿論文にまとめ、『政治思想研究』に掲載した。ラスキの初期国家論の本格的検討はこれまでなされてこなかった分野であり、本論文では、ラスキの初期著作の内実は重厚な中世教会史研究であったこと、労働組合への着目はむしろ1930年代以降のラスキの関心であったことなどを示した。第二に、ラスキの思想変遷を追う形で考察対象の時代をあらため、1930年代におけるラスキのソ連認識、ファシズム認識を対象として、その時代的変容を考察した。ラスキの共産主義認識は長らく冷戦構造の地場のなかで捉えられ、その評価も冷戦的発想によって二分されてきたが、当研究では1930年代の新聞コラムや同時代的評論の実証的な読解の下、ラスキのソ連認識の好意的変容の過程を思想史的に描写した。当研究の内容は『年報政治学2012-H』に掲載された。 | KAKENHI-PROJECT-11J10451 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J10451 |
ハロルド・ラスキにおける「社会民主主義」概念の再検討 | 第三に、1940年代におけるラスキの「同意革命論」を取り上げ、社会思想史学会第37回研究大会にて報告した。ラスキ「同意革命論」は、第二次大戦期における総力戦体制と政治的危機意識の蔓延を、そのままイギリスの社会主義化につなげようとしたラスキの政治実践であり、結果的には失敗におわったこの試みについて、「学者/知識人の政治関与」の視点から再評価を試みた。その他、金沢大学の仲正昌樹先生が編者となった、学部生向けの政治思想史の教科書『政治思想の知恵』(法律文化社、2013年)に、「ベンサム」を寄稿した。交付申請書に記載した「研究計画」に照らせば取り扱うべきラスキのテーマ群をそれなりに論文化することができている。しかし複数の投稿論文の作成と、それらを博士論文にまとめる校正作業への時間と集中力に配分に苦慮している。平成24年(2012年)度は、二つの投稿論文、一つの分担執筆論文を活字化することができたので、研究のアウトプットという点ではおおむね満足のできるものであった。本年度はそれに加えて、さらに博士論文の構成執筆に従事した。平成24年度は、第二次大戦期ラスキの政治実践、いわゆる「同意革命論」について雑誌『相関社会科学』へ、ラスキの社会民主主義概念について社会思想史学会編『社会思想史研究』へ論文投稿を予定している。その上で、それらを全体的に構成して博士論文の最終的な校正作業に入る。平成25年(2013年)度の最も重要な研究目標は、なにより博士論文の完成である。これまでの投稿論文を連続させて再構成する形で、現在すでに基本的な骨組みは完成しており、今後、論証の強化や文章の推敲などを進めていく予定である。第二に、博士論文提出後の研究テーマとしては、ラスキ以降のイギリス左翼思想、具体的には1960年以降に雑誌『ニュー・レフト・レビュー』を中心に活躍したイギリス・ニュー・レフトの思想の同時代的文脈と現代的意義を、思想史的に考察したいと考えている。 | KAKENHI-PROJECT-11J10451 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J10451 |
材料科学におけるデータ駆動型探索技術の確立 | 連携研究者である触媒科学研究者グループとの共同研究を通して、さまざまな実際の不均一系触媒のデータに対するインフォマティクス展開研究を行った。まず、メタン酸化カップリング反応を主とした触媒の実報告データ3種類を用いて触媒活性の機械学習予測およびその機械学習予測を代理モデルとした触媒探索を念頭においた最適化計算(次にテストすべき触媒の組成・構造・条件などの提示)を逐次実験計画として構築した。特に共同研究では深層学習を適用するには事例数が十分ではなく、ランダムフォレスト・勾配ブースティング木・エクストラツリーズなどの木アンサンブル手法の有効性を定量的にも感覚的にも得ることができた。これらの結果は連携研究者とともに論文として準備中である。また、触媒の理論計算を用いて触媒の特徴づけとして有効な因子を探索する研究においても機械学習を活用し、特に木アンサンブル学習に基づく変数重要度および回帰分析などを通して共同研究を進め、その成果も論文として発表を行い、また2件を準備中である。全体として特に不均一系触媒の設計や探索において機械学習やデータ科学をどのように活用できるかという見込みや問題を明確にすることができ、各機会に得られた知見などに関する講演なども行った。また、世界的にこうしたインフォマティクスを活用した材料探索や材料開発が盛んに研究されるようになってきており、連携研究者を含むグループで技術動向の調査を行っている。おおむね実施計画に従い研究をすすめられており、成果発表も行うことができた。研究の過程で得られたさまざまな新しい技術問題や視点を活用して、引き続き研究を進める予定である。本課題では、現在までに得られたデータに基づいて合理的、効率的、かつ、網羅的に候補物質を絞り込むデータ駆動型の帰納的な探索技術の確立を目指す。特に、時間のかかる精密な電子状態計算や実験を伴わず、機械学習のみに基づいて超高速な物性予測をデータ駆動で行うための枠組みとベストプラクティスの体系化を目標とする。本年度は、メタン酸化カップリング反応や水性ガスシフト反応における多元不均一触媒の解析について次の3つの観点で研究を行った。(1)二元系触媒のd-band centerなど触媒活性と相関することが知られており従来は電子状態計算により計算してきた量をデータ駆動で予測した場合の定量的解析、(2)より直接的に触媒活性と相関がある吸着エネルギーの電子状態計算とその結果のデータ駆動予測での定量的解析、(3)メタン酸化カップリング反応などの実際の実験による触媒活性の文献報告値のデータを活用した触媒組成や反応条件の定量的解析。特に、データ自体のクオリティコントロール、機械学習手法や記述子の選択に関する評価、サンプル数がどの程度あればどの程度の精度が得られるかの定量評価など、多角的な解析を行った。得られた結果は論文としてまとめ各々出版された。研究協力者の北海道大学触媒化学研究所の研究者とは定期的に打合せを行い、民間企業からの排ガス浄化のデータや、新たな文献データの収集など、新たなデータや対象についても検討、整備を行っており、次年度でこれらのデータや問題について研究がさらに展開できる計画である。計画していた研究課題について研究実績の概要で述べたとおり一定の成果が得られた。また論文やブックチャプターとしても採択、出版され、またアメリカ化学会の年会にinviteされ「Machine Learning for Catalysis Research」のセッションで講演も行った。連携研究者である触媒科学研究者グループとの共同研究を通して、さまざまな実際の不均一系触媒のデータに対するインフォマティクス展開研究を行った。まず、メタン酸化カップリング反応を主とした触媒の実報告データ3種類を用いて触媒活性の機械学習予測およびその機械学習予測を代理モデルとした触媒探索を念頭においた最適化計算(次にテストすべき触媒の組成・構造・条件などの提示)を逐次実験計画として構築した。特に共同研究では深層学習を適用するには事例数が十分ではなく、ランダムフォレスト・勾配ブースティング木・エクストラツリーズなどの木アンサンブル手法の有効性を定量的にも感覚的にも得ることができた。これらの結果は連携研究者とともに論文として準備中である。また、触媒の理論計算を用いて触媒の特徴づけとして有効な因子を探索する研究においても機械学習を活用し、特に木アンサンブル学習に基づく変数重要度および回帰分析などを通して共同研究を進め、その成果も論文として発表を行い、また2件を準備中である。全体として特に不均一系触媒の設計や探索において機械学習やデータ科学をどのように活用できるかという見込みや問題を明確にすることができ、各機会に得られた知見などに関する講演なども行った。また、世界的にこうしたインフォマティクスを活用した材料探索や材料開発が盛んに研究されるようになってきており、連携研究者を含むグループで技術動向の調査を行っている。おおむね実施計画に従い研究をすすめられており、成果発表も行うことができた。(3)の文献データの解析については、出版データにおける条件の不均一性や計測値のばらつき、組成データとしての性質、データ全体としては多数の元素を含むため特徴次元の増大の対処、現在得られているデータに基づく材料探索へ向けての方法論の精査など、様々な検討課題が得られており、それらを一つづつ検討していく計画である。研究の過程で得られたさまざまな新しい技術問題や視点を活用して、引き続き研究を進める予定である。計画していた人件費・謝金用途(短期支援員の雇用)ができなかった分の剰余分であり、次年度の短期支援員補助分あるいは旅費などに利用する計画である。 | KAKENHI-PROJECT-17K19953 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K19953 |
数学としての数学史研究 | 2008年は、和算の最高峰をきわめた関孝和の没後300年にあたり、日本数学学会員の中で和算研究を行っている人たちを中心に数々の記念行事が行われた。中でも研究代表者と中国及びヨーロッパでの同時代の数学の研究で知られる劉鈍とエバハルト・クノップロッホが中核となって組織した記念数学史国際会議は同時代の世界の中での和算の優位を確定した。科研費補助金の大半は600ページに及ぶこの会議録の作成に費やされたが、数学書の出版社として最も名高いシュプリンガー社の一冊として他に負けないものを作ることができた。関孝和の最大の貢献は連立代数方程式の一般解法を初めて確立したことであり、ヨーロッパで同様の研究が発表された時より80年前のことである。しかし、わが国では同時代に競争者がいて田中由真は関とちかう行列式を使う方法と一見行列式とは無関係な別の方法の二つを発表している。今回関と田中の行列式は定義は違うものの同じであること、及び田中のもう一つの方法も19世紀英のシルヴェスターの結果に帰着できることを示した。以上に関連して、関はよい先生であったかもしれないが偉大な数学者であったというほんのこれっぽちの証拠もないという主張を持ち続けた三上義夫の言明に根拠がないことを示した。-大成算経巻之-の割り算「見一算」の計算例と「古今算法記」及び「塵劫記」の同様な計算例を比較し、専門書とされる前二者の方がより教育的な配慮がされていることを発見した。本研究の第一の目標は、『大成算経』等の江戸期日本数学の成果を体系的に述べた基本的文献に対して、以後これに基づいてそれらの研究が行えるような信頼度の高い校訂本を作成することであった。關孝和・建部賢弘・建部賢明が28年もの歳月をかけて書いたとされる20巻本『大成算経』については、巻之四『三要』39丁及び巻之十『形法』48丁を"Seki, Founder of Modern Mathematics in Japan"の付録として出版、これとは別に全体の四分の一になる最初の5巻を京都大学数理解析研究所講究録の一冊として出版した。これには関流和算の入門書として使われてきた『解見題之法』・『解隠題之法』・『解伏題之法』の書き下し文も含まれる。これらはいずれも世界最初の校訂本の出版である。残る『大成算経』15巻も同様の形で出版される予定である。以上と並行して、2008年夏に開かれた関孝和没後300年を記念した数学史国際会議の会議録を編集、製版を行い、2013年にシュプリンガー東京社から、関孝和三百年再記念数学史国際会議会議録"Seki, Founder of Modern Mathematics in Japan"として出版した。普通数学はオリエントで始まり、アレキサンドリアを経て中東に渡り、インドの零を加えて、ヨーロッパに戻り、現在につながると考えられているが、実際の歴史は全く異なるものであることを示した。2008年は、和算の最高峰をきわめた関孝和の没後300年にあたり、日本数学学会員の中で和算研究を行っている人たちを中心に数々の記念行事が行われた。中でも研究代表者と中国及びヨーロッパでの同時代の数学の研究で知られる劉鈍とエバハルト・クノップロッホが中核となって組織した記念数学史国際会議は同時代の世界の中での和算の優位を確定した。科研費補助金の大半は600ページに及ぶこの会議録の作成に費やされたが、数学書の出版社として最も名高いシュプリンガー社の一冊として他に負けないものを作ることができた。『大成算経』全20巻約九百丁の校訂本を出版することが第一の目標であったが、残念ながらこれは果たせなかった。この本は関孝和の『解伏題之法』(1683)によって連立代数方程式の補助変数消去の一般理論ができあがり、これを最終の手段として当時の全数学の代数化を企て、実行した結果を詳細に記述したものである。弟子の建部賢明、賢弘の協力を得28年かけて書かれたという。未だに出版されたことはない。これは真に驚嘆すべき著作であって、これまであまり研究されずに来たのは人間業ではついてゆけなかったためであろう。研究代表者は1998年東京理科大学理学研究科に理数教育専攻が新設されたとき研究課題の一つとして取り上げ、2006年に退くまでに7人の学生が修士論文の一部として10巻分の校訂本を作ってくれた。その後は科学研究費補助金などの援助を得て、今では全巻の校訂本が直ちに印刷機に掛けられるInDesignファイルとしてできている。それが出版社を見つけられないでいるのは我が国ジャーナリズムおよびそれを支える専門家達の関乃至は研究代表者に対する極めて低い評価に原因がある。三上義夫は1914年D.E. Smithとの共著で「関は良い教師で旧来の方法を改良したことは認められるが、偉大な数学者、画期的な理論の発見者というこれっぽっちの証拠もない。」と断言し、生涯その意見を変えなかった。関たちの研究をよりよく理解するには、関西にいてこれに対抗した数学者達の研究も欠かせない。特に、田中由真の「算学紛解」全8巻が重要である。今回ここでの行列式を使わない終結式の計算に数学的証明を与えることができた。 | KAKENHI-PROJECT-23540124 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23540124 |
数学としての数学史研究 | 「この研究で第一の目標としたのは、関孝和、建部賢弘、賢明兄弟の三人が天和三年(1683)より28年をかけて書いたとされる20巻本「大成算経」の校合本を出版することであったが、これまでの成果は、目録および最初の4巻の本文の印刷原稿をまとめたのに止まる。これは森本光生氏の校閲を経て、全文の音義に代えて関孝和編「解伏題之法」の書き下し文をそえて京都大学数理解析研究所講究録の一冊として出版される予定である。これでも実現すれば「大成算経」の最初の出版となる。東アジアでの数学書は、士大夫をめざす人々のためのものと民衆のためのものに判然と分れ、従って政権の移動と共に前者の伝が絶えることなどが起こっていたが、この本あるいは江戸時代の他の数学書を見れば、わが国では全く事情が異なることが判る。その意味では19世紀以降の欧米の数学論文と似た性格をもつ。しかし、ギリシャ以来の伝統を欠くため、論証に厳密性を欠く所が多い。その欠を補うため、出発点は江戸時代の知識にとどめ、その上に今日の検証に耐える証明を与えるようにしている。「大成算経」には約20の異本が知られているが良本といえるものは多くない。現在はそのうちの4つばかりを選んで異同を調べて校合をしているだけである。一度出版されれば困難になる。その他の本との校合は今がチャンスで時間が無駄になることは決してない。フーリエとケルヴィン卿の地球の熱歴史の研究の歴史もかなり調べたのであるが、昨年は東日本震災の影響で発表の機会を失ってしまった。これも発表できる段階までもってゆきたい。当初の計画通りとはいえないが、大成算経」校合本の作成と併行して、はじめからの研究目標であったフーリエとヘヴィサイドの業績、特にベッセル関数を用いた展開による偏微分方程式の研究を評価する仕事に着手したい。『大成算経』の校訂本の出版については、森本光生氏の尽力で京都大学数理解析研究所の共同研究の記録として同研究所の講究録のシリーズの中で出版できる見通しがついたので、その準備に力をそそぐ。そして、世間が関たち江戸時代の数学に対するわれわれの研究を認めてくれるようになれば、始めの予定通り研究の対象をフーリエやへヴィサイドに移してゆきたい。大成算経校合本の印刷原稿の作成、その他研究論文の作成並びにそれらを発表するための費用にあてる。『熱の解析的理論』の翻訳の出版、フーリエの『熱の解析的理論』の翻訳に解説を添えて出版する。翻訳そのものは東京理科大学大学院理学系研究科理数教育専攻の学生であった西村重人君の修士論文(2001)として全巻完成している。 | KAKENHI-PROJECT-23540124 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23540124 |
カルシトニン受容体の機能、及びその異常によるヒト疾患の分子病理学的研究 | 1.ヒトカルシトニンレセプター(CTR)遺伝子のポリモルフィズムについて昨年度発見したCTRcDNAの1377番目のポリモルフィズムの分布を日本人由来の腫瘍細胞8株と白人由来の腫瘍細胞9株を用いて調べた。その結果、日本人ではCのタイプが、白人ではTのタイプが多く、両者の間には有意な差が見られた。この結果より、CTR遺伝子のポリモルフィズムの分布は人種により異なることが明らかとなった。2.日本人におけるCTR遺伝子のポリモルフィズムと乳癌との関係についての解析乳癌の発生にはいろいろなファクターやいくつかの遺伝子が関与していると言われているが,これまで乳腺におけるカルシトニン(CT)またはその受容体の機能についての報告はない.しかしながら,乳癌由来の培養細胞株であるT47DとMCF7でカルシトニンレセプター(CTR)が多量に産生され,実際CTRcDNAのクローニングがT47Dを用いて行われている.さらに、妊娠中や授乳中に血中CTの上昇が見られミルク中のCTも非常に高いことが報告されている。これらのことから,我々は,CTとCTRは乳腺の増殖や分化の調節に関与しているのではないかと考えている.また,近年レセプターのポリモルフィズムと疾患との関係が明らかにされてきている(乳癌とエストロゲンレセプターやビタミンDレセプターと骨粗しょう症など).我々は以前にCTR遺伝子の1377番目にポリモルフィズムが存在していることを報告している.そこで,CTR遺伝子のポリモルフィズムと乳癌との関連について乳癌組織46サンプルと正常組織50サンプル(コントロール)のDNAを用いて調べた.その結果,コントロールと乳癌組織および乳癌患者の血球のCTRgenotypeの間で有意な差を認めなかった.さらに,乳癌の組織型について調べた.その結果,PapilotubularとSolid-tubularおよびScirrhous carcinomaのCTR genotypeの間で有意な差を認めなかった.以上の結果より,日本人においてCTRのポリモルフィズムは乳癌発生のための遺伝的リスクとはならないことが明らかとなった.1.ヒトカルシトニンレセプター(CTR)遺伝子のポリモルフィズムについて昨年度発見したCTRcDNAの1377番目のポリモルフィズムの分布を日本人由来の腫瘍細胞8株と白人由来の腫瘍細胞9株を用いて調べた。その結果、日本人ではCのタイプが、白人ではTのタイプが多く、両者の間には有意な差が見られた。この結果より、CTR遺伝子のポリモルフィズムの分布は人種により異なることが明らかとなった。2.日本人におけるCTR遺伝子のポリモルフィズムと乳癌との関係についての解析乳癌の発生にはいろいろなファクターやいくつかの遺伝子が関与していると言われているが,これまで乳腺におけるカルシトニン(CT)またはその受容体の機能についての報告はない.しかしながら,乳癌由来の培養細胞株であるT47DとMCF7でカルシトニンレセプター(CTR)が多量に産生され,実際CTRcDNAのクローニングがT47Dを用いて行われている.さらに、妊娠中や授乳中に血中CTの上昇が見られミルク中のCTも非常に高いことが報告されている。これらのことから,我々は,CTとCTRは乳腺の増殖や分化の調節に関与しているのではないかと考えている.また,近年レセプターのポリモルフィズムと疾患との関係が明らかにされてきている(乳癌とエストロゲンレセプターやビタミンDレセプターと骨粗しょう症など).我々は以前にCTR遺伝子の1377番目にポリモルフィズムが存在していることを報告している.そこで,CTR遺伝子のポリモルフィズムと乳癌との関連について乳癌組織46サンプルと正常組織50サンプル(コントロール)のDNAを用いて調べた.その結果,コントロールと乳癌組織および乳癌患者の血球のCTRgenotypeの間で有意な差を認めなかった.さらに,乳癌の組織型について調べた.その結果,PapilotubularとSolid-tubularおよびScirrhous carcinomaのCTR genotypeの間で有意な差を認めなかった.以上の結果より,日本人においてCTRのポリモルフィズムは乳癌発生のための遺伝的リスクとはならないことが明らかとなった.カルシトニンレセプター(CTR)の生理機能を明らかにすることを目的にラットの腎におけるCTRのm-RNAの局在を調べた。さらに遺伝性甲状腺髄様癌発生モデル動物であるWAGラットとコントロールラットについてCTRmRNAの局在比較を行った。その結果、CTR mRNAは近位尿細管で検出されたが遠位尿細管や集合管では検出されなかった。CTR mRNAはWistarラットでは腎皮質内側部に、WAGラットでは腎皮質外側部に強いシグナルが検出された。これはBouizarらにより報告されたR1標識CTをプローブとして用いたWistarラットとWAGラットにおけるbindingsite assayの結果と一致していた。本法によりWistarラットとWAGラットではCTRの局在が異なり、両系のラット腎においてCT-CTR作用発現に差があることが推察された。2.ヒトカルシトニンレセプター(CRT)遺伝子の対立遺伝子の多様性について数種類のヒト培養細胞株と組織を用いてCTR cDNAの1377番目のヌクレオチドにCとTのvariationが存在することを明らかにした。これにより147番目のアミノ酸がプロリン型とロイシン型のCTRが存在することになる。147番目のアミノ酸が位置する細胞内ドメイン4にはprotein kinase Aによってリン酸化をうける可能性のある配列が存在することより、2つのCTRの違いが細胞内シグナル伝達に影響をもたらすことが推測できた。また、日本人にはC/Cの遺伝子型が多かった。 | KAKENHI-PROJECT-07807023 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07807023 |
カルシトニン受容体の機能、及びその異常によるヒト疾患の分子病理学的研究 | 1.ヒトカルシトニンレセプター(CTR)遺伝子のポリモルフィズムについて昨年度発見したCTRcDNAの1377番目のポリモルフィズムの分布を日本人由来の腫瘍細胞8株と白人由来の腫瘍細胞9株を用いて調べた。その結果、日本人ではCのタイプが、白人ではTのタイプが多く、両者の間には有意な差が見られた。この結果より、CTR遺伝子のポリモルフィズムの分布は人種により異なることが明らかとなった。2.日本人におけるCTR遺伝子のポリモルフィズムと乳癌との関係についての解析乳癌の発生にはいろいろなファクターやいくつかの遺伝子が関与していると言われているが,これまで乳腺におけるカルシトニン(CT)またはその受容体の機能についての報告はない.しかしながら,乳癌由来の培養細胞株であるT47DとMCF7でカルシトニンレセプター(CTR)が多量に産生され,実際CTR cDNAのクローニングがT47Dを用いて行われている.さらに、妊娠中や授乳中に血中CTの上昇が見られ、ミルク中のCTも非常に高いことが報告されている。これらのことから,我々は,CTとCTRは乳腺の増殖や分化の調節に関与しているのではないかと考えている.また,近年レセプターのポリモルフィズムと疾患との関係が明らかにされてきている(乳癌とエストロゲンレセプターやビタミンDレセプターと骨粗しょう症など).我々は以前にCTR遺伝子の1377番目にポリモルフィズムが存在していることを報告している.そこで,CTR遺伝子のポリモルフィズムと乳癌との関連について乳癌組織46サンプルと正常組織50サンプル(コントロール)のDNAを用いて調べた.その結果,コントロールと乳癌組織および乳癌患者の血球のCTR genotypeの間で有意な差を認めなかった.さらに,乳癌の組織型について調べた.その結果,PapilotubularとSolid-tubularおよびScirrhous carcinomaのCTR genotypeの間で有意な差を認めなかった.以上の結果より,日本人においてCTRのポリモルフィズムは乳癌発生のための遺伝的リスクとはならないことが明らかとなった. | KAKENHI-PROJECT-07807023 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07807023 |
インターセックスにおける遺伝子異常の解析と新生児診断・早期治療への試み | インターセックス患者(尿道下裂を伴うXX男性3名,真性半陰陽1名,混合型生殖腺不全症3名,男子小子宮を伴った尿道下裂10名,Reinfenstein症候群5名,精巣性女性化症候群4名)の外性器の培養皮膚線維芽細胞を用いこれらの患者のAR(andorogen receptor)が温度不安定性の異常をもつことを証明した.現在これらの症例の内,Reinfenstein症候群では兄弟,従兄弟例,両家系の母親,祖母にExon D,codon 709,GがAに点突然変異を引き起こしglutamineがlysineにアミノ酸置換を起こしていた.lysineはglutamineに比較して親水性が高くこれが本症例における温度不安定性の原因と考えられた.また他のReinfenstein症候群の1例ではExon G,Codon826のTからAに点突然変異が認められphenylalanineからtyrosineへのアミノ酸置換が生じていた.このアミノ酸置換も疎水性から親水性への置換であり現時点ではアミノ酸の疎水性から親水性への置換がReinfenstein症候群におけるARの温度不安定性の原因と推察している.混合型生殖腺不全症3名の内1名もAR遺伝子のエクソンB,C,D,E,F,G,Hの配列を決定し,Exon B,Codon539のGがA(GlycineからArginineへのアミノ酸置換)に点突然変異を起こしていた.Exon BはDNA結合領域であるためposttranscriptional processingに障害があると考えられる.全例のAR遺伝子解析終了後,上記インターセックス患者外性器の皮膚線維芽細胞のAR遺伝子解析を行なう.これによりARの温度不安性をもたらす遺伝子を同定する.これまでの実験結果からインターセックス患者での外性器の異常はARレベルの異常が関与していることは明確である.阪神大震災のために計画が大幅に遅れたが現時点では上記の症例の塩基配列の決定は進行しつつあるので,近い将来インターセックス患者の新生児期に遺伝子工学的手法を用いて患者のAR遺伝子に質的異常(温度不安定性)を起こす変異を確実に診断し,患児の両親の同意(informed consent)を得た後,早期(生後数カ月以内)に大量のアンドロゲンを投与し,将来起こる思春期における外性器発達の基礎作りをする可能性を探る.インターセックス患者(尿道下裂を伴うXX男性3名,真性半陰陽1名,混合型生殖腺不全症3名,男子小子宮を伴った尿道下裂10名,Reinfenstein症候群5名,精巣性女性化症候群4名)の外性器の培養皮膚線維芽細胞を用いこれらの患者のAR(andorogen receptor)が温度不安定性の異常をもつことを証明した.現在これらの症例の内,Reinfenstein症候群では兄弟,従兄弟例,両家系の母親,祖母にExon D,codon 709,GがAに点突然変異を引き起こしglutamineがlysineにアミノ酸置換を起こしていた.lysineはglutamineに比較して親水性が高くこれが本症例における温度不安定性の原因と考えられた.また他のReinfenstein症候群の1例ではExon G,Codon826のTからAに点突然変異が認められphenylalanineからtyrosineへのアミノ酸置換が生じていた.このアミノ酸置換も疎水性から親水性への置換であり現時点ではアミノ酸の疎水性から親水性への置換がReinfenstein症候群におけるARの温度不安定性の原因と推察している.混合型生殖腺不全症3名の内1名もAR遺伝子のエクソンB,C,D,E,F,G,Hの配列を決定し,Exon B,Codon539のGがA(GlycineからArginineへのアミノ酸置換)に点突然変異を起こしていた.Exon BはDNA結合領域であるためposttranscriptional processingに障害があると考えられる.全例のAR遺伝子解析終了後,上記インターセックス患者外性器の皮膚線維芽細胞のAR遺伝子解析を行なう.これによりARの温度不安性をもたらす遺伝子を同定する.これまでの実験結果からインターセックス患者での外性器の異常はARレベルの異常が関与していることは明確である.阪神大震災のために計画が大幅に遅れたが現時点では上記の症例の塩基配列の決定は進行しつつあるので,近い将来インターセックス患者の新生児期に遺伝子工学的手法を用いて患者のAR遺伝子に質的異常(温度不安定性)を起こす変異を確実に診断し,患児の両親の同意(informed consent)を得た後,早期(生後数カ月以内)に大量のアンドロゲンを投与し,将来起こる思春期における外性器発達の基礎作りをする可能性を探る.インターセックス患者(尿道下裂を伴うXX男性3名、真性半陰陽1名、混合型生殖腺不全症3名、男子小子宮を伴った尿道下裂10名、Reinfenstein症候群4名、精巣性女性化症候群4名)の外性器の培養皮膚線維芽細胞を用いこれらの患者のAR(andorogen receptor)が温度不安定性の異常をもつことを証明した。また培養皮膚線維芽細胞のSRY(Sex determining region Y)遺伝子を含むY染色体上の座位(PABY,SRY,DYZ3,DYS139,DYS132,DYS1,DYZ1)もポリメラーゼ遺伝子増幅法(PCR)により調べた(25名の内10名)。現在これらの症例の内、Reinfenstein症候群の1名についてAR遺伝子をriverse transcriptase-PCR法を用いて増幅し、PCR産物をベクターに組み込み当大学に設置されているABA373ADNAシークエンサー(Applied Biosystems社製)にてシークエンス解析を行い、AR遺伝子のエクソンB、C、Eの配列を決定した。 | KAKENHI-PROJECT-06671622 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06671622 |
インターセックスにおける遺伝子異常の解析と新生児診断・早期治療への試み | 現時点では他のエクソン(A、D、F、G、H)の遺伝子配列とReinfenstein症候群の残りの3名のエクソン(B、C,D、E、F、G、H)の遺伝子配列を決定しつつある。現時点までの遺伝子解析ではエクソン内に突然変異は認めていない。Reinfenstein症候群全例のAR遺伝子解析終了後、上記インターセックス患者外性器の皮膚線維芽細胞のAR遺伝子解析を行なう。これによりARの温度不安性をもたらす遺伝子を同低する。これまでの実験結果からインターセックス患者での外性器の異常はARレベルの異常が関与していることは明確である。阪神大震災のために計画が遅れたが、この報告の時点( 1995年3月10日)では実験を再開することが出来ている。インターセックス患者(尿道下裂を伴うXX男性3名,真性半陰陽1名,混合型生殖腺不全症3名,男子小子宮を伴った尿道下裂10名,Reinfenstein症候群5名,精巣性女性化症候群4名)の外性器の培養皮膚線維芽細胞を用いこれらの患者のAR(andorogenreceptor)が温度不安定性の異常をもつことを証明した.現在これらの症例の内,Reinfenstein症候群では兄弟,従兄弟例,両家系の母親,祖母にExon D, codon 709, GがAに点突然変異を引き起こしglutamineがlysineにアミノ酸置換を起こしていた.lysineはglutamineに比較して親水性が高くこれが本症例における温度不安定性の原因と考えられた.また他のReinfenstein症候群の1例ではExon G, Codon 826のTからAに点突然変異が認められphenylalanineからtyrosineへのアミノ酸置換が生じていた.このアミノ酸置換も疎水性から親水性への置換であり現時点ではアミノ酸の疎水性から親水性への置換がReinfenstein症候群におけるARの温度不安定性の原因と推察している.混合型生殖腺不全症3名の内1名もAR遺伝子のエクソンB, C, D, E, F, G, Hの配列を決定し,Exon B, Codon 539のGがA(GlycineからArginineへのアミノ酸置換)に点突然変異を起こしていた.Exon BはDNA結合領域であるためposttranscriptional proccessingに障害があると考えられる.全例のAR遺伝子解析終了後,上記インターセックス患者外性器の皮膚線維芽細胞のAR遺伝子解析を行なう.これによりARの温度不安性をもたらす遺伝子を同定する.これまでの実験結果からインターセックス患者での外性器の異常はARレベルの異常が関与していることは明確である. | KAKENHI-PROJECT-06671622 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06671622 |
符号化開口法を用いたHMDの被写界深度拡大 | 本研究の目的は,HMDに対して符号化開口技術を用いて利用者が結像した像を見ることのできる範囲である被写界深度を拡大することである.具体的には,光学式透過型HMDを用いて眼球の前に符号化開口を設置し,この開口形状と注視点の奥行きに対応した点広がり関数により予め提示画像を鮮鋭化する手法を開発した.開発手法の有効性を確認するために,奥行きが一定の注視位置で提示像を視認可能なシステムを試作した.小規模な被験者実験では,光学透過型HMDにフィルムで作成した符号化開口を設置し,点光源を提示した上で,被験者がHMDの被写界深度外を注視した際に,開口形状が視認できることを確認した.平成27年度は,(1)眼前符号化開口を用いた提示像鮮鋭化法の開発,および(2)注視位置を固定した実証システムの試作,を順に実施した.(1)眼前符号化開口を用いた提示像鮮鋭化法の開発:(1-1)符号化開口形状の決定:Zhouらの手法を参考にして,眼前に設置し提示画像の鮮鋭化を行うために適切な符号化開口形状を検討した.HMDに適した開口径から幾つかの符号化開口形状に対して,その特性を調べた.符号化開口はプラネタリウム投影機用フィルムに印刷することで必要な制度と不透明性を達成し,鮮鋭化効果の確認ができた.具体的には,静止画,奥行きを固定した状態,平面対象という条件下で,符号化開口がある場合とない場合の比較を行い,小規模な被験者実験により有効性を確認した.(1-2)目のPSFを考慮した提示像の鮮鋭化:鮮鋭化はL. Zhang and S. Nayarの手法を参考にする.網膜上の像は,提示像に符号化開口形状のパターンが畳み込まれただけでなく,実際は目本来のPSFも影響しており,この検討が必要であったが目のPSFの近似方法として等方なガウスカーネルを用いて被験者実験を行ったところカーネルサイズと奥行きが理論値に近いことを確認した.実験では,複数の奥行きにおいて目の焦点ボケとガウスフィルタによりボカした像とを比較した.研究自体は概ね計画通り実施できたが,本予算で購入予定だったオートレフケラトメーターは,基盤Bの予算にて購入を予定していた視線検出器が大幅に安く必要な性能を満たす新機器の入手が可能であることが判明したので,予算枠の大きな基盤Bで購入することにし,より性能の高いものを入手した.そのため本予算は本年度その他の必要経費を執行するにとどめた.本研究の目的は,Head-Mounted Display (HMD)に対して符号化開口技術を用いて利用者が結像した像を見ることのできる範囲である被写界深度を拡大することである.上記目的に対して本年度は(2)注視位置を固定した実証システムの試作,(3)被験者実験による被写界深度拡大の効果を確認することが計画であった.以下,それぞれの実績概要を説明する.(2)注視位置を固定した実証システムの試作:被写界深度の拡大が観測できるシステムを構築した.利用者の視界内で注視方向および奥行きが大きく変化しないという簡単化された条件下において効果を確認できるシステムを構築した.具体的には、被験者が特定の奥行きを注視した上で,それとは異なる奥行きに表示面が配置されるようにディスプレイを設置した.眼前に、符号化開口の設置上で画像の鮮鋭化を行った場合にのみディスプレイに表示された何らかのパターンが焦点ボケせずに視認できる構造にした.(3)被験者実験による被写界深度拡大の確認:被写界深度が拡大されていることを確認できる評価法を検討し,提案法の有効性が確認できる実験法を設計した.本実験では、上記実証システムにおけるディスプレイ上と注視ターゲット上に異なるパターンを提示し,両パターンが同種のものであるか否かを被験者に回答させる方法とした.一方で,裸眼時の被写界深度の外に配置されたディスプレイの表示内容が視認できるかどうかを評価し,鮮鋭化画像を提示し符号化開口を設置する提案法の方が,それらを行わない従来法に比べて有意に高い確率で視認性が向上することは確認できなかった.研究実績で述べた通り,当初計画では本年度中に(2)注視位置を固定した実証システムの試作,および,(3)被験者実験による被写界深度拡大の確認を実施する予定であったが,本年度は実証システムの試作および被験者実験法の設計のみにとどまった.昨年度メキシコで開かれた国際会議で本研究成果の一部を展示する際に機器の輸出入でトラブルが生じ遅延したことと当該機器が故障したため,使用できない状態が半年近く続いたことによる.そのため本年度計画していた研究課題の実施が遅れた.本研究の目的は,光学シースルー型の個人用ディスプレイであるヘッドマウントディスプレイにおいて利用者が結像した像を見ることのできる範囲である被写界深度を拡大することである.具体的には,眼球の前に符号化開口を設置し,この開口形状と視線追跡器により検出した注視点の奥行きに対応した点広がり関数により予め提示画像を鮮鋭化しておくことで,ヘッドマウントディスプレイの被写界深度外を利用者が注視していても,目的とする像を視認することができることを確認する.本研究では,ヘッドマウントディスプレイに比較的簡易な加工を施すことで,利用者が注視する奥行きに応じて生じる焦点ボケを解消する画像を提示するディスプレイシステムを実現した.目的達成のための具体的な研究課題の1つとして,瞳孔の前に符号化開口を設置する手法の実装法を提案した. | KAKENHI-PROJECT-15K12084 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K12084 |
符号化開口法を用いたHMDの被写界深度拡大 | 本実装法では,光学式透過型ヘッドマウントディスプレイのCG画像の提示部分にプラネタリウム用のフィルムで作成した符号開口を設置する.符号化開口の形状は従来研究においてカメラの撮像素子上で最適性が保証されているものを用いた.開口形状と眼球との距離から網膜上での点広がり関数を算出し,これを用いて提示像を予め鮮鋭化する.実際の実験では符号化開口を設置する筐体を3Dプリンタで作成し,焦点を合わせることができないはずの奥行きにディスプレイを配置した上で提示像が視認できるかを確認した.小規模な被験者実験において,フィルムの設置の有無で提示像の視認性の向上を確認した.本研究の目的は,HMDに対して符号化開口技術を用いて利用者が結像した像を見ることのできる範囲である被写界深度を拡大することである.具体的には,光学式透過型HMDを用いて眼球の前に符号化開口を設置し,この開口形状と注視点の奥行きに対応した点広がり関数により予め提示画像を鮮鋭化する手法を開発した.開発手法の有効性を確認するために,奥行きが一定の注視位置で提示像を視認可能なシステムを試作した.小規模な被験者実験では,光学透過型HMDにフィルムで作成した符号化開口を設置し,点光源を提示した上で,被験者がHMDの被写界深度外を注視した際に,開口形状が視認できることを確認した.平成28年度は,(2)注視位置を固定した実証システムの試作,を継続して実施し,(3)被験者実験による被写界深度拡大の確認,を行う.(2)注視位置を固定した実証システムの試作:実証実験のためのシステムを試作する.本システムでは,被験者の片目の前に符号化開口を配置する.この符号化開口形状に合わせて先鋭化された画像をディスプレイに表示した上で,注視ターゲットに注視させる.注視ターゲットは,ハーフミラーで鏡像を生成し,ディスプレイよりも奥,もしくは手間に結像するよう構成する.この状態で符号化開口がなければ焦点ボケが生じて見えないはずのディスプレイの像が視認できるかどうかを研究課題(3)の被験者実験により検証する.ディスプレイとしては,画素密度が網膜上換算で網膜の中心窩の分解能を超えるか近い高密度ディスプレイ(スマートフォンのディスプレイなど)を使用する.(3)被験者実験による被写界深度拡大の確認:被験者実験では,上記実証システムにおけるディスプレイ上と注視ターゲット上に異なるパターンを提示し,両パターンが同種のものであるか否かを被験者に回答させる方法を検討している.パターンとしては様々な白布の表面のテクスチャを写真撮影し使用することを検討している.この理由は,カーテンのカタログなど生地の質感をサンプルと比較する類の作業に類似しており有用性を示しやすいこと,白い布であれば色による効果を今回の実験では無視できること,繊維の極めて細かいパターンが含まれており画像の鮮鋭化の効果が高いと予想されること,などである.他にも,人工パターン(チャープ信号),文書,顔,Hybrid Image3)などで試す予定である. | KAKENHI-PROJECT-15K12084 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K12084 |
オラリティを核とする共在や共感の質の定量評価と介入応用 | オラリティを核とする共在や共感の質を、実生活空間での脳活動計測データにより定量化し、ニューロフィードバック手法を応用してコミュニケーションや対面的社会関係の支援システムの構築を行うことが本研究の目的である。平成30年度は以下の脳活動計測実験を開始した。健康な右利きの大学生および大学院生を被験者とし、互いに同性で面識のない5名を1組として、大学の専攻に基づき学問上の興味の異なるグループと近似したグループを3組ずつ形成した。グループ毎に日常生活上の興味や関心と近い話題と遠い話題を3つずつ選定し、指定した話題に関して5分間×6セッションの集団会話をさせた。集団会話中の背外側前頭前野,背内側前頭前野の活動変化を超小型近赤外分光装置によって計測した。得られた脳血流データについて、被験者間の同一脳領域,被験者内の脳領域間の脳同調をGranger causality解析で評価した。各セッション後に直前の集団会話における会話満足度と集団雰囲気に関する内観評価を収集し、オラリティの質を反映する定性的評価指標とした。加えて、個人差解析の為に心理質問紙による性格指標(5因子性格,共感性,社交不安,全般性不安,社会的スキル)の収集および認知機能検査(実行機能,エピソード記憶,作業記憶,処理速度,注意)を実施した。現在までに取得済みの行動データを解析した結果、興味関心の高い話題について会話している時ほど会話満足度が高く、集団雰囲気が好意的に評価される傾向が示された。また、会話分析の結果から興味関心の高い話題ほどグループ内の平均発話時間が長い一方で平均発話回数には差がない傾向が観察された。引き続きデータの収集および解析を進め、会話満足度および集団雰囲気と脳同調指標との関係を明らかにし、脳活動計測データによるオラリティの質の定量化について妥当性を検証する予定である。倫理委員会の実験承認に時間がかかった。実験パラダイム設定の予備実験にも想定以上の時間を要した。引き続きデータの収集および解析を進め、会話満足度および集団雰囲気と脳同調指標との関係を明らかにし、脳活動計測データによるオラリティの質の定量化について妥当性を検証する。また、脳同調情報を可聴化し、集団のオラリティを高めるシステムを構築し、その効果を認知科学的に検証する。オラリティを核とする共在や共感の質を、実生活空間での脳活動計測データにより定量化し、ニューロフィードバック手法を応用してコミュニケーションや対面的社会関係の支援システムの構築を行うことが本研究の目的である。初年度である平成29年度は、オラリティを核とする共在や共感の質の定量評価法の開発を目指すため、以下の実験計画を策定し、東北大学大学院医学系研究科倫理委員会の承認を得た。健康な右利きの大学生を被験者とし、認知特性や学問上の興味の異なるグループと近似したグループを形成し、日常生活上の興味や関心と近い話題、遠い課題についてグループ討議をさせ、その間の背外側前頭前野、背内側前頭前野の活動変化を超小型近赤外分光装置によって計測する。得られた脳血流データを、被験者間の同一脳領域、同一被験者の脳領域間の活動の関係(同調)を、Granger causality解析で評価する。集団間での共感・共鳴に関する指標として背内側前頭前野の脳活動の有意な同期割合を、言語的思考パターンの同調の指標として、大脳左半球の背外側前頭前野の同期割合を計測し、定性的評価指標(共感や共鳴の内観等)との相関を評価する。また個人内での言語的思考と共感性の同調を背内側、背外側前頭前野の領域間の同期割合で評価することにより、コミュニケーション場面における個人の認知特性との相関、それがコミュニケーション場面におけるオラリティに与える相互的影響を検討する。また、計測に必要な超小型NIRS装置を購入し、脳領域間の活動の関係(同調)をGranger causality解析で評価するシステムを実装した。平成30年度に本実験を開始する予定である。倫理委員会承認に約4か月を要したが、無事に承認され、本実験を開始する準備はすべて整い、予定通りに研究は進行している。オラリティを核とする共在や共感の質を、実生活空間での脳活動計測データにより定量化し、ニューロフィードバック手法を応用してコミュニケーションや対面的社会関係の支援システムの構築を行うことが本研究の目的である。平成30年度は以下の脳活動計測実験を開始した。健康な右利きの大学生および大学院生を被験者とし、互いに同性で面識のない5名を1組として、大学の専攻に基づき学問上の興味の異なるグループと近似したグループを3組ずつ形成した。グループ毎に日常生活上の興味や関心と近い話題と遠い話題を3つずつ選定し、指定した話題に関して5分間×6セッションの集団会話をさせた。集団会話中の背外側前頭前野,背内側前頭前野の活動変化を超小型近赤外分光装置によって計測した。得られた脳血流データについて、被験者間の同一脳領域,被験者内の脳領域間の脳同調をGranger causality解析で評価した。各セッション後に直前の集団会話における会話満足度と集団雰囲気に関する内観評価を収集し、オラリティの質を反映する定性的評価指標とした。加えて、個人差解析の為に心理質問紙による性格指標(5因子性格,共感性,社交不安,全般性不安,社会的スキル)の収集および認知機能検査(実行機能,エピソード記憶,作業記憶,処理速度,注意)を実施した。現在までに取得済みの行動データを解析した結果、興味関心の高い話題について会話している時ほど会話満足度が高く、集団雰囲気が好意的に評価される傾向が示された。 | KAKENHI-PROJECT-17KT0056 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17KT0056 |
オラリティを核とする共在や共感の質の定量評価と介入応用 | また、会話分析の結果から興味関心の高い話題ほどグループ内の平均発話時間が長い一方で平均発話回数には差がない傾向が観察された。引き続きデータの収集および解析を進め、会話満足度および集団雰囲気と脳同調指標との関係を明らかにし、脳活動計測データによるオラリティの質の定量化について妥当性を検証する予定である。倫理委員会の実験承認に時間がかかった。実験パラダイム設定の予備実験にも想定以上の時間を要した。コミュニケーション場面における個人の認知特性との相関、それがコミュニケーション場面におけるオラリティに与える相互的影響を検討したのちに、平成31年度にはオラリティの質のニューロフィードバックシステムを試作し、コミュニケーション支援システムの開発を目指す。健常な右利き大学生を被験者とし、同様にグループ討議課題を遂行させる。グループ討議中に、それまでの研究で最適化した聴覚フィードバック情報を、実験室内のBGMとして流し、被験者には「より脳同期が強まるよう、会話中になんらかの努力を行うように」と指示をする。フィードバック効果の評価は、内観調査や脳同期確率の経時変化によって行う。引き続きデータの収集および解析を進め、会話満足度および集団雰囲気と脳同調指標との関係を明らかにし、脳活動計測データによるオラリティの質の定量化について妥当性を検証する。また、脳同調情報を可聴化し、集団のオラリティを高めるシステムを構築し、その効果を認知科学的に検証する。倫理委員会承認に時間をとられたため、本実験開始が平成30年度になってしまったため。今年度は実験に必要な機器購入は終えて、解析システム構築も終了したため、すぐに予定の実験を開始できる。実験計画の遅れにより謝金等の使用額が予定よりも少なくなった。しかし平成31年度は予定通り研究を遂行する準備を終えているため、研究費も予定の全額を使用する。 | KAKENHI-PROJECT-17KT0056 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17KT0056 |
倍数化を伴う二型花柱性から雌雄同株性への進化過程の解明 | 本研究では二型花柱性を主とするアカネ科ボチョウジ属において、雌雄異花同株を含む特異な性表現を有する可能性が考えられたナガミボチョウジについて、その性表現と繁殖の実態を明らかにし、その進化的背景を解明することを目的として調査を進めた。その結果、ナガミボチョウジは雌雄異花同株や雌株等を集団内に含む雑居性という複雑な性表現を有し、主にハエ類やハチ類により送粉されていることが明らかになった。近縁種との系統関係にはなお不明な部分が残されたものの、最も近縁で側所的に生育するボチョウジが4倍体であることなどを考慮すると、8倍体に倍数化したことが現在見られる性表現の進化に関与した可能性が考えられた。本研究は、ナガミボチョウジに見られる雌雄同株性が二型花柱性の祖先種からどのように進化したのかについて、倍数性や送粉者との関係から解明することを目的としている。本年度は、下記4つの項目について研究を進めた。1)系統関係と性表現の進化経路を明らかにするために、日本と近隣国に分布する近縁種のDNAサンプルの採集と性表現の調査を実施した。2)近縁種の倍数性を明らかにするために、染色体調査用の挿し木、実生の収集、及びフローサイトメトリによるDNA含有量測定を実施した。3)倍数性起源を探るためのDNAマーカーの開発を実施した。4)ナガミボチョウジと推定母種であるボチョウジの種間関係を探るため、交雑現象と土壌による棲み分けを調査した。現在までに琉球列島全域の15集団から挿し木・実生とDNAサンプルを収集しており、順次DNA抽出と染色体の調査を進めている。現在のところ、これまで報告のあった染色体数がすべての集団で確認されている。また、近縁種であるオガサワラボチョウジ、コウトウボチョウジについては、機能的二型花柱性を有することを確認した。DNAマーカーとして、一般的に用いられる中立マーカーのほか、いくつかのシングルコピー遺伝子が解析に有効であることがわかってきた。いくつかの集団でナガミボチョウジとボチョウジの種間交雑が確認されたが、F1不稔であることが推測された。ナガミボチョウジはアルカリ土壌に、ボチョウジは酸性土壌に生育していることがわかってきた。本研究は祖先的に二型花柱性を有するボチョウジ属において、現在ナガミボチョウジ等にみられる雌雄同株性がどのように進化してきたのかについて、倍数性や送粉者との関係から解明することを目的としている。本年度は前年度に引き続き、日本と近隣国に分布する近縁種のサンプリングを進めるとともに、DNAマーカーの絞り込みを行った。さらに、いくつかの近縁種について、新たに性表現を明らかにし、雌雄同株性の進化的背景を探索した。またボチョウジとナガミボチョウジの種間関係、土壌適応の違いに関する実証的な試験を継続している。さらに採集したサンプルについてはDNA抽出を行い、系統解析及び、染色体の由来を明らかにする遺伝的解析の準備を進めた。DNAの解析については、マーカーの絞り込みが進んできたものの、本解析までまだ進んでおらず、やや進展が遅れている。また倍数性のテストについても、本来使用予定だったフローサイトメータの不調などがあり、若干遅れている。一方でサンプリング、および近縁種の生態的調査は順調に進んでいる。その中でもハワイ諸島の8倍体とみられるいくつかの種がleaky dioeciousであることがわかり、ナガミボチョウジの雌雄同株性進化と同様の現象が近縁種でも生じている可能性が示唆された。これらの結果の一部は論文、学会大会において順次発表している。本研究は祖先的に二型花柱性を有するボチョウジ属において、現在ナガミボチョウジ等に見られる雌雄同株性がどのように進化してきたかについて、倍数性や送粉者との関係から解明することを目的としている。本年度は、雌雄同株性の実態を明らかにする調査とデータのまとめを実施したのに加え、DNAマーカーの開発とDNA解析を実施した。また前年度に加え、新たに数種の近縁種の性表現を明らかにし、雌雄同株性の進化的背景を探索した。これらのうち、近縁種の性表現と、ナガミボチョウジの雌雄同株性の実態に関しては論文にまとめて投稿している。さらに、母親種と考えられる近縁種ボチョウジの土壌適応の関係、及び発芽・種子休眠特性の予備的実験を実施した。予定していた実験のうち、特に分子データの部分で実験の遅れが生じている。これは倍数性を解析するための分子マーカー開発に幾つかの問題がみつかり時間要していることと、年度前半の半年間海外に研究者代表者が在外研究員として派遣されていた事により実験を実施できなかったためである。しかし、近縁種の性表現とナガミボチョウジの性表現に関する実態のまとめや、近縁種ボチョウジとナガミボチョウジを簡易的に識別する分子マーカーの開発等着実に進んでいる部分もある。本研究は祖先的に二型花柱性を有するボチョウジ属において、現在ナガミボチョウジに見られる雌雄異花同株性がどのように進化してきたかについて、倍数性や送粉者との関係、近縁種の性表現と系統関係、さらには同所的に分布する近縁種との種間関係から解明することを目的としていた。本年度は、ナガミボチョウジの雌雄同株性の実態を明らかにする調査のデータ解析を実施し、論文を執筆し投稿した(査読中)。 | KAKENHI-PROJECT-26840130 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26840130 |
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