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ナノスケール強磁性ドメインを利用した超伝導の微小磁場制御
本研究は,ナノスケール強磁性ドメインをもち,非常に大きな飽和磁化を持つFeTaC高透磁率軟磁性体薄膜と,磁場誘起絶縁体-金属転移を起こす物質や,超伝導体を組み合わせた多層膜を作ることによって,非常に小さな外部磁場によって電気伝導に変化を与え,新しい磁性と電気伝導が結合した物理現象を探索することを目的としている.本年度は,昨年度に引き続き,この研究の基礎となるFeTaCの作成最適条件の探索を既存の装置であるヘリコンスパッターを用いて引き続き行うとともに,ペロフスカイト酸化物やNbの薄膜作成も試みた.その結果,金属膜のスパッターについては,満足できる膜が得られるようになったが,肝心のFeTaCについては,アルファ鉄が析出してしまい,高透磁率軟磁性特性を出すために必要な,アモルファス構造を持つ薄膜の作成には至っていない.これは,ヘリコンスパッターの特性に起因するものであるかもしれないので,現在,センダストなどの他の軟磁性体を用いることも検討している.一方,本研究のもう一つの柱である,偏極中性子反射率計による微小領域磁性をもつ磁性体の表面・界面の評価に関しては,高エネルギー加速器研究機構で進めていた反射率計の設置と初期の性能評価が終了し,本格的な研究を始めることができた.特に本特定研究の中心課題と深く関係する,微小領域の磁性と電気伝導に関しては,界面における非常にわずかな乱れが電気伝導に大きく寄与する,巨大磁気抵抗効果を示す物質であるCo/Cu人工格子の中性子反射率を行って,その乱れの大きさを定量的に評価することに成功し,今後,この分野に大きく貢献できることを実証した.本研究は,ナノスケール強磁性ドメインをもち,非常に大きな飽和磁化を持つFeTaC高透磁率軟磁性体薄膜と,磁場誘起絶縁体-金属転移を起こす物質や,超伝導体を組み合わせた多層膜を作ることによって,非常に小さな外部磁場によって電気伝導に変化を与え,新しい磁性と電気伝導が結合した物理現象を探索することを目的としている.本年度は,昨年度に引き続き,この研究の基礎となるFeTaCの作成最適条件の探索を既存の装置であるヘリコンスパッターを用いて引き続き行うとともに,ペロフスカイト酸化物やNbの薄膜作成も試みた.その結果,金属膜のスパッターについては,満足できる膜が得られるようになったが,肝心のFeTaCについては,アルファ鉄が析出してしまい,高透磁率軟磁性特性を出すために必要な,アモルファス構造を持つ薄膜の作成には至っていない.これは,ヘリコンスパッターの特性に起因するものであるかもしれないので,現在,センダストなどの他の軟磁性体を用いることも検討している.一方,本研究のもう一つの柱である,偏極中性子反射率計による微小領域磁性をもつ磁性体の表面・界面の評価に関しては,高エネルギー加速器研究機構で進めていた反射率計の設置と初期の性能評価が終了し,本格的な研究を始めることができた.特に本特定研究の中心課題と深く関係する,微小領域の磁性と電気伝導に関しては,界面における非常にわずかな乱れが電気伝導に大きく寄与する,巨大磁気抵抗効果を示す物質であるCo/Cu人工格子の中性子反射率を行って,その乱れの大きさを定量的に評価することに成功し,今後,この分野に大きく貢献できることを実証した.
KAKENHI-PROJECT-10130201
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10130201
小学校高学年期における確率概念の形成を促す学習指導の実践研究
不確実な情報に基づいて行われる判断や予測に対して,正しい認識をもって対応することができる人材の育成が叫ばれている。このことは,PISAにおいて,数学的リテラシーの評価問題に中に「不確実性」の領域が設定されていることからも,この能力の必要性が国際的にも重要視されていると考えられる。しかしながら,平成23年から施行される新学習指導要領では,確率概念の形成にかかわる内容として「場合の数」の学習が新たに加わったとはいえ,義務教育の段階における不確実性について学習する機会が十分に保障されたとは言い難いと考えた。そこで,算数科における「観察・洞察力」の内容を見直し,児童の確率概念形成を促す学習指導法の研究及び効果的な学習材の開発を進めることを研究目的とした。そのため,小学校段階における児童の確率概念の実態を把握するとともに,高学年期における確率概念の形成の必要性と確率概念の形成を促すために有効な学習指導の在り方を追究するとともに,概念形成のためにより効果的な学習材の開発を進めていくことを目指して研究を行った。そこで,まず,高学年期の確率判断における誤概念を調査し,生活的概念との関連も含めてヒューリスティックの改善を意図した学習材,遊びの経験に基づく学習材の開発及び学習指導を行った。実態調査では「代表性」と「複合と根元の事象」における誤認知が顕著に見られた。児童が確率判断の基準として典型例や代表例が基底事象として選択されやすいこと,複合事象と根元事象が区別されずに判断されていることが明らかになった。そこで,第6学年の児童を対象に「並べ方と組み合わせ方」の学習を通して,起こりうる事象を落ちや重なりなく調べ上げるための見方・考え方を習得するための授業実践を行った。その後の児童の姿から不確実な事象に対して論理的に判断する姿が見られるとともに,活動を繰り返すことで判断にかかる時間が短縮されるなど判断基準をもとにしながらも直観的・主観的に自己決定する姿が多くなったという結果が得られた。小学校高学年期における確率概念形成のための本実践は,児童の変容から有効であったと考えられる。但し,誤概念の全てが修正されたわけではなく,学習によって変容の余地があることが分かった。更に今後は,小中学校での連携を踏まえたカリキュラム開発の必要性も視野に入れて研究を進めていきたい。不確実な情報に基づいて行われる判断や予測に対して,正しい認識をもって対応することができる人材の育成が叫ばれている。このことは,PISAにおいて,数学的リテラシーの評価問題に中に「不確実性」の領域が設定されていることからも,この能力の必要性が国際的にも重要視されていると考えられる。しかしながら,平成23年から施行される新学習指導要領では,確率概念の形成にかかわる内容として「場合の数」の学習が新たに加わったとはいえ,義務教育の段階における不確実性について学習する機会が十分に保障されたとは言い難いと考えた。そこで,算数科における「観察・洞察力」の内容を見直し,児童の確率概念形成を促す学習指導法の研究及び効果的な学習材の開発を進めることを研究目的とした。そのため,小学校段階における児童の確率概念の実態を把握するとともに,高学年期における確率概念の形成の必要性と確率概念の形成を促すために有効な学習指導の在り方を追究するとともに,概念形成のためにより効果的な学習材の開発を進めていくことを目指して研究を行った。そこで,まず,高学年期の確率判断における誤概念を調査し,生活的概念との関連も含めてヒューリスティックの改善を意図した学習材,遊びの経験に基づく学習材の開発及び学習指導を行った。実態調査では「代表性」と「複合と根元の事象」における誤認知が顕著に見られた。児童が確率判断の基準として典型例や代表例が基底事象として選択されやすいこと,複合事象と根元事象が区別されずに判断されていることが明らかになった。そこで,第6学年の児童を対象に「並べ方と組み合わせ方」の学習を通して,起こりうる事象を落ちや重なりなく調べ上げるための見方・考え方を習得するための授業実践を行った。その後の児童の姿から不確実な事象に対して論理的に判断する姿が見られるとともに,活動を繰り返すことで判断にかかる時間が短縮されるなど判断基準をもとにしながらも直観的・主観的に自己決定する姿が多くなったという結果が得られた。小学校高学年期における確率概念形成のための本実践は,児童の変容から有効であったと考えられる。但し,誤概念の全てが修正されたわけではなく,学習によって変容の余地があることが分かった。更に今後は,小中学校での連携を踏まえたカリキュラム開発の必要性も視野に入れて研究を進めていきたい。
KAKENHI-PROJECT-22907008
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22907008
全身麻酔薬の脳内生理活性ペプチドに及ぼす影響
臨床研究:手術患者を対象に麻酔薬が手術侵襲に対する下垂体ホルモン(ACTH及びバソプレッシン)反応に及ぼす影響を検討した結果、イソフルレン、セボフルレンはこの反応を抑制しないこと、亜酸化窒素は反応を強く抑制することを確認した。さらにベンゾジアゼピンが内分泌ストレス反応に及ぼす影響を検討し、ベンゾジアゼピンであるミダゾラムはセボフルランと併用しても下垂体ホルモン反応には影響しないことが明らかとなった。以上のことから揮発性麻酔薬にはストレス反応抑制効果がないが、亜酸化窒素は強い作用をもつこと、ストレス反応はGABAAの作用を増強しても抑制されないことが明らかとなった。動物実験:亜酸化窒素によるストレス反応抑制効果に脳内オピオイド系が関与するという仮説を検証するために、ウサギの第3脳室から脳脊髄液を持続的に採取し、イソフルレン、ハロセン、亜酸化窒素の投与が脳脊髄液内のメチオニンエンケファリン、ロイシンエンケファリン濃度に与える影響を検討したが、これらのオピオイド濃度は変化しなかった。次にラット開腹刺激モデルを作成した。このモデルではイソフルラン麻酔下で開腹刺激によって、血中ACTH及びカテコラミン濃度が著明に増大すること、亜酸化窒素はその反応を約半分に減少することを確認した。開腹刺激後に脳を取り出し、c-Fos蛋白の発現を免疫組織化学法で検索した結果、第3脳室周囲核群特に室傍核と側頭葉から頭頂葉にかけての大脳皮質にc-Fos蛋白が発現することが明らかとなったが、その発現量については麻酔薬による違いは今のところ明確にはなっていない。現在このモデルを用いてc-Fosの発現部位とオピオイドニューロンの局在との関係を検討中であるが、さらに検討を重ねることで亜酸化窒素によるストレス反応抑制効果に内因性オピオイドが関与するか否かが明らかになることが期待される。臨床研究:我々は揮発性吸入麻酔薬が交感神経及び内分泌ストレス反応を用量依存的に抑制しないことを報告した。一方近年麻酔薬の作用部位として、GABA_Aレセプターの重要性を示すデータが集積しつつある。実際ベンゾジアゼピンは揮発性吸入麻酔薬の作用を増強する。すなわち麻酔薬の最小肺胞濃度(MAC)を低下させることが知られている。そこで揮発性吸入麻酔薬とベンゾジアゼピンの併用が内分泌ストレス反応に及ぼす影響を検討した。その結果、ベンゾジアゼピンであるミダゾラムをセボフルランに併用してもACTH及びバソプレッシンの反応はセボフルラン単独の場合と差がないことが明らかとなった。動物実験:ラットを用いて、挿管全身麻酔下に開腹刺激を加え、同時に採血を行える開腹刺激モデルを作成したこのモデルではイソフルラン麻酔下で開腹刺激によって、人の臨床例と同様に血中ACTH及びカテコラミン濃度が著明に増大することを確認した。さらにイソフルラン1.4%(約1MAC)単独とイソフルラン0.7%と亜酸化窒素70%(合計約1MAC)で麻酔した場合の、開腹刺激に対するACTHの反応の大きさを比較した。その結果、亜酸化窒素を用いた方が用いない場合と比較してACTHの反応の大きさは約半分に減少することが確認できた。臨床研究の結果から亜酸化窒素の持つこのストレス反応抑制効果はGABA系を介するものでないことは明らかである。今後、このモデルを用いて、ストレス反応の抑制効果が亜酸化窒素による脳内オピオイド系の賦活によるものであるか否かを検討していく予定である。臨床研究:手術患者を対象に麻酔薬が手術侵襲に対する下垂体ホルモン(ACTH及びバソプレッシン)反応に及ぼす影響を検討した結果、イソフルレン、セボフルレンはこの反応を抑制しないこと、亜酸化窒素は反応を強く抑制することを確認した。さらにベンゾジアゼピンが内分泌ストレス反応に及ぼす影響を検討し、ベンゾジアゼピンであるミダゾラムはセボフルランと併用しても下垂体ホルモン反応には影響しないことが明らかとなった。以上のことから揮発性麻酔薬にはストレス反応抑制効果がないが、亜酸化窒素は強い作用をもつこと、ストレス反応はGABAAの作用を増強しても抑制されないことが明らかとなった。動物実験:亜酸化窒素によるストレス反応抑制効果に脳内オピオイド系が関与するという仮説を検証するために、ウサギの第3脳室から脳脊髄液を持続的に採取し、イソフルレン、ハロセン、亜酸化窒素の投与が脳脊髄液内のメチオニンエンケファリン、ロイシンエンケファリン濃度に与える影響を検討したが、これらのオピオイド濃度は変化しなかった。次にラット開腹刺激モデルを作成した。このモデルではイソフルラン麻酔下で開腹刺激によって、血中ACTH及びカテコラミン濃度が著明に増大すること、亜酸化窒素はその反応を約半分に減少することを確認した。開腹刺激後に脳を取り出し、c-Fos蛋白の発現を免疫組織化学法で検索した結果、第3脳室周囲核群特に室傍核と側頭葉から頭頂葉にかけての大脳皮質にc-Fos蛋白が発現することが明らかとなったが、その発現量については麻酔薬による違いは今のところ明確にはなっていない。現在このモデルを用いてc-Fosの発現部位とオピオイドニューロンの局在との関係を検討中であるが、さらに検討を重ねることで亜酸化窒素によるストレス反応抑制効果に内因性オピオイドが関与するか否かが明らかになることが期待される。
KAKENHI-PROJECT-13671576
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13671576
全身麻酔薬の脳内生理活性ペプチドに及ぼす影響
手術を受ける患者を対象にイソフルレン、セボフルレン、亜酸化窒素を用いて全身麻酔を行い、手術侵襲に対する下垂体ホルモンの反応を比較検討した結果、イソフルレン、セボフルレンには用量依存性に反応を抑制しないこと、亜酸化窒素はこれらの反応を強く抑制することを確認した。この麻酔薬による抑制効果の違いが脳内オピオイド系に対する作用の違いによるものとの仮説を検証するために、ウサギの第3脳室から脳脊髄液を持続的に採取する系を作成し、イソフルレン、ハロセン、亜酸化窒素を投与し、脳脊髄液内のメチオニンエンケファリン(Met-Enk)、ロイシンエンケファリン(Leu-Enk)をHPLCを用いて測定した。しかしこれらの麻酔薬はウサギの脳脊髄液中のMet-Enk、Leu-Enkの濃度を変化させないことが分かった。手術侵襲時と麻酔薬が脳にあたえる影響をさらに検証するために、ラットを用いた開腹刺激モデルを作成した。このモデルでイソフルラン麻酔下では人の臨床例と同様に開腹刺激によって血中ACTH及びノルアドレナリン濃度が著明に増大すること、亜酸化窒素を併用することでACTHの反応の大きさは約半分に減少することが確認できた。一方コルチコステロンの前投与がノルアドレナリン反応を抑制することが明らかとなった。また開腹刺激後に脳を取り出し、c-Fos蛋白の発現を免疫組織化学法で検索した結果、刺激前に比べて、第3脳室周囲核群特に室傍核と側頭葉から頭頂葉にかけての大脳皮質にc-Fos蛋白が発現することが明らかとなったが、その発現量については麻酔薬による違いは今のところ明確にはなっていない。現在、これらのモデルを用いてc-Fosの発現部位とメチオニンエンケファリンニューロン及びロイシンエンケファリンニューロンの局在との関係を検討中であるが、さらに検討を重ねることで亜酸化窒素によるストレス反応抑制効果に内因性オピオイドが関与するか否かが明らかになることが期待される。
KAKENHI-PROJECT-13671576
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13671576
人間の情報発信を促進する教示エージェントの対話モデル
本研究では,人間を見守り,働きかけ,情報発信を促すような場をつくりだす情報メディアを実現するために,情報学の見地から,教師と生徒のノンバーバルインタラクションをモデリングすることを目的としている.19年度は,18年度の成果をもとに下記の3種類のインタラクションモデルを提案し,具体的な教示シーンにおける評価実験を通してその有効性を確認した.(1)教師エージェントが生徒の様子や物体の認識に失敗した際,生徒の協力を得ることで問題を解決するインタラクションモデルを提案した.自動認識が非常に困難な状況であっても,人間に少し協力してもらうだけで劇的に改善する場面は多い.このモデルは,エージェントの自然な仕草によって,大きな負担をかけずに人間に協力を促す.エージェントとのインタラクションを応用した(=特別な機器を要さない)アプローチであり,そのまま後述の(2)や(3)に応用することができる.(2)教師エージェントが生徒の意図や気持ちを推定するインタラクションモデルを提案した.このモデルは,教師エージェントと生徒のインタラクションを認識し,事前に学習しておいた人間の教師と生徒のインタラクション(=生徒の意図や気持ちに応じた模範教示)から,現在の状況に最も近いものを再現する.心理の推定という難しい問題を,インタラクションの同定と再現という明確な処理に置き換えた点に特徴がある.(3)料理番組等のアシスタントを模したエージェントが,説明に不慣れな教師を支援するインタラクションモデルを提案した.テレビ番組のアシスタントは,説明者に質問や復唱,相槌する等によって上手に情報を引き出している.その知見を教師の言動とアシスタントの言動のif-thenルールとしてエージェントに実装した.評価実験の結果,このような人工無脳的なアプローチでも,説明者の視線を上げたり,説明の数や種類を増やす効果のあることがわかった.本研究では,人間を見守り,働きかけ,情報発信を促すような場をつくりだす情報メディアを実現するために,情報学の見地から,教師と生徒のノンバーバルインタラクションをモデリングすることを目的としている.18年度は,まず物理的な準備として,1.センシング環境の構築,2.エージェント制御インタフェースの構築を行った.また,それらの設備を使って,3.基本的なインタラクションモデルを組み込み,その効果を調べるための評価実験を行った.以下,具体的な内容を報告する.1.センシング環境の構築:過去の研究で開発してきた手認識・動作認識に加えて,色ヒストグラムやSIFTといった画像特徴量を使った物体認識の技術を追加した.SIFTとは,画像の種々の変化に強い特徴量であり,近年注目が集まっている手法である.2.エージェント制御インタフェースの構築:OpenGLを用いて,目線・顔の向き・体の向きの指定と各種表情が制御できるCGエージェントを作成した.また,位置センサで計測した人間の動作を模倣するSony AIBO用制御インタフェースを作成し,Sonyが配布しているAPIでは実現が難しい細やかな動作の生成を行った.3.基本的なインタラクションモデルの組み込み:人間の内部状態とインタラクションの対応関係を調べる予備実験をCGエージェントを用いて行った.これにより,アクション-リアクションの回数が増えるほど,人間がエージェントの反応の遅れを「自分のことを考えてくれている時間」とみなすことが分かった.また,エージェントからのちょっとした働きかけにより,(システムの認識処理への)人間の協力を引き出すモデルを提案した.評価実験により,典型的な状況において,従来は失敗していた認識の5070%が解決されることを示した.本研究では,人間を見守り,働きかけ,情報発信を促すような場をつくりだす情報メディアを実現するために,情報学の見地から,教師と生徒のノンバーバルインタラクションをモデリングすることを目的としている.19年度は,18年度の成果をもとに下記の3種類のインタラクションモデルを提案し,具体的な教示シーンにおける評価実験を通してその有効性を確認した.(1)教師エージェントが生徒の様子や物体の認識に失敗した際,生徒の協力を得ることで問題を解決するインタラクションモデルを提案した.自動認識が非常に困難な状況であっても,人間に少し協力してもらうだけで劇的に改善する場面は多い.このモデルは,エージェントの自然な仕草によって,大きな負担をかけずに人間に協力を促す.エージェントとのインタラクションを応用した(=特別な機器を要さない)アプローチであり,そのまま後述の(2)や(3)に応用することができる.(2)教師エージェントが生徒の意図や気持ちを推定するインタラクションモデルを提案した.このモデルは,教師エージェントと生徒のインタラクションを認識し,事前に学習しておいた人間の教師と生徒のインタラクション(=生徒の意図や気持ちに応じた模範教示)から,現在の状況に最も近いものを再現する.心理の推定という難しい問題を,インタラクションの同定と再現という明確な処理に置き換えた点に特徴がある.(3)料理番組等のアシスタントを模したエージェントが,説明に不慣れな教師を支援するインタラクションモデルを提案した.テレビ番組のアシスタントは,説明者に質問や復唱,相槌する等によって上手に情報を引き出している.その知見を教師の言動とアシスタントの言動のif-thenルールとしてエージェントに実装した.評価実験の結果,このような人工無脳的なアプローチでも,説明者の視線を上げたり,説明の数や種類を増やす効果のあることがわかった.
KAKENHI-PROJECT-18700119
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18700119
免疫機構と自律神経活動の相互関連の季節性変動
神経内分泌系および自律神経系機能の季節変動を検討した。8名の若齢者と6名の高齢者を被験者として,2007年5月,8月,10月と2008年2月のあわせて4回について実験を行った。実験では,40°Cまたは42°Cの湯に両側下腿を30分間浸漬し,この間の核心温,皮膚温,発汗量,皮膚血流量の変化を連続測定した。またこの温熱負荷実験の開始前(一部のホルモンは実験後にも測定)に静脈より採血して,VMA,HVA,5-HIAA,アンジオテンシンII,アルドステロン,レニン活性,ADH,コルチゾル,ACTH,GH,TSH,fT3,fT4,レプチン,IL-6などの濃度を測定した。水温42°Cの下肢温浴では,鼓膜温は夏や春と比較して冬において有意に高値を示した。発汗量は冬や春に比べ夏において早期に発現し,発汗量も有意に多かった。ADHは冬や春と比べ夏において有意に高値を示した。IL-6は,冬に比べ秋と春において有意に低値を示した。ACTHは夏において有意に高値を示した。TSH,fT3,レプチンは男女とも統計的に有意な季節変化を示し,また男女間で有意差があった。以上の結果は,ADH,ACTH,VMA,IL-6などの血中濃度には有意な季節変動があり,暑熱負荷による検討では深部体温と発汗応答に季節差が存在する(夏季における暑熱馴化の成立)ことを証明している。ADHの季節変動は暑熱馴化と関連していることで説明される。その他のホルモンの季節変動の機序についてはストレス,自律神経機能,免疫機能などとの関連が示唆される。寒冷で日照時間が短い高緯度地域(北欧など)では冬季に心的障害の発症が増える傾向があるが,本研究の成果はその成立機序を解明するための生理学的データとして役立つ。本研究は,自然光と温度の季節変動と日内変動が内分泌および自律神経機能に及ぼす影響を検討することを目的とした。16名の若年男子を被験者をとし,2007年から2008年にかけての春夏秋冬で実験を計画している。自律神経機能として,下肢温浴(水温40°Cと42°Cの2条件)による温熱負荷を行い,その前後で核心温,皮膚温,皮膚血流量を測定した。また,内分泌機能のデータとして静脈より採血し,カテコルアミン代謝産物(VMA,HVA,5-HIAA),アンジオテンシンII,アルドステロン,レニン活性(PRA),抗利尿ホルモン(ADH),GH,TSH,fT3,fT4,レプチンを測定した。報告書作製の時点までに2007年12月の冬季実験のみを実施した。その結果は,全被験者とも下肢温浴によりPRA,アンジオテンシンII,HVAは減少した。ADHとアルドステロンは暑熱負荷後上昇した。VMA濃度は変わらなかった。本研究は今後2007年45月,同年78月,同年1011月,2008年45月に同様な実験を実施して季節変動を分析する予定である。したがって今年度内での実験では本研究の最終的目的を達しえない。この研究はヒトの健康維持の目的における温度と光との関係を検討するのに重要であり,本研究完了のおりには,温度と太陽光曝露の自律神経機能への効果が明らかになることが期待される。さらに,自律神経機能と関連した心的障害の季節変動が免疫活性とに関連において解明される可能性があり,温暖地域と寒冷地域間での心的障害の有病率の差を説明できるかもしれない。神経内分泌系および自律神経系機能の季節変動を検討した。8名の若齢者と6名の高齢者を被験者として,2007年5月,8月,10月と2008年2月のあわせて4回について実験を行った。実験では,40°Cまたは42°Cの湯に両側下腿を30分間浸漬し,この間の核心温,皮膚温,発汗量,皮膚血流量の変化を連続測定した。またこの温熱負荷実験の開始前(一部のホルモンは実験後にも測定)に静脈より採血して,VMA,HVA,5-HIAA,アンジオテンシンII,アルドステロン,レニン活性,ADH,コルチゾル,ACTH,GH,TSH,fT3,fT4,レプチン,IL-6などの濃度を測定した。水温42°Cの下肢温浴では,鼓膜温は夏や春と比較して冬において有意に高値を示した。発汗量は冬や春に比べ夏において早期に発現し,発汗量も有意に多かった。ADHは冬や春と比べ夏において有意に高値を示した。IL-6は,冬に比べ秋と春において有意に低値を示した。ACTHは夏において有意に高値を示した。TSH,fT3,レプチンは男女とも統計的に有意な季節変化を示し,また男女間で有意差があった。以上の結果は,ADH,ACTH,VMA,IL-6などの血中濃度には有意な季節変動があり,暑熱負荷による検討では深部体温と発汗応答に季節差が存在する(夏季における暑熱馴化の成立)ことを証明している。ADHの季節変動は暑熱馴化と関連していることで説明される。その他のホルモンの季節変動の機序についてはストレス,自律神経機能,免疫機能などとの関連が示唆される。
KAKENHI-PROJECT-06F06719
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06F06719
免疫機構と自律神経活動の相互関連の季節性変動
寒冷で日照時間が短い高緯度地域(北欧など)では冬季に心的障害の発症が増える傾向があるが,本研究の成果はその成立機序を解明するための生理学的データとして役立つ。
KAKENHI-PROJECT-06F06719
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06F06719
光分解造形法による灌流可能な血管ネットワークを有する三次元組織体の構築
B01班杉浦グループでは、H24-H25年のA02班としての活動の中で開発した「生体組織光分解造形法」とマイクロ流体デバイスを組み合わせ灌流可能な三次元組織体の構築を目指して研究を進めてきた。研究を進める中で、以前の方法では「長期に形状を維持できる固いゲル」を作る際に、細胞毒性が問題となることが確認された。そこで、新たに架橋剤の毒性を低減した「クリック架橋光開裂性架橋剤」を利用することとした。また、培養液の循環を簡便に行うために、「圧力駆動の循環培養システム」を本年度新たに開発した。この循環培養システムに関して論文を1本投稿している。また、循環培養システムの開発において新たな研究展開を着想しており、関連特許を3件出願した。うち1件は国際出願している。関連学会において発表し、第32回化学とマイクロ・ナノシステム研究会での発表において、優秀研究賞を受賞した。これらの「クリック架橋光開裂性架橋剤」と「圧力駆動の循環培養システム」を組み合わせ、「ハイドロゲル包埋培養系の灌流培養システム」を構築した。この手法を用いて、ハイドロゲル中に異なるピッチで流路様の構造を加工し、潅流培養を行ったところ、照射パターンの間隔が1.6 mm以下の場合に細胞の生存率が高いことが確認された。以上の結果より、ハイドロゲル包埋灌流培養系の構造機能の相関を探索する新たな研究ツールが開発されたと考えられる。研究を進める中で開発された「クリック架橋光開裂性架橋剤」と「圧力駆動の循環培養システム」はそれぞれ、領域内共同研究や、領域外の民間企業との共同研究をとおして、がん細胞分離や、創薬のためのデバイスとして応用されており、他の研究領域の研究の発展に波及効果をおよぼすものと考えられる。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。本研究では、申請者らがこれまでに開発してきた「生体組織光分解造形法」と「圧力駆動型灌流培養マイクロ流体デバイス」を組み合わせ、血管様流路構造を有する三次元組織体をマイクロ流体デバイスに形成し、圧力駆動で培養液を灌流するシステムを構築することを目標としている。平成26年度は以下の検討を行った。1)光開裂性架橋剤を合成し、以降の研究に利用した。平成25年度まで使用していた活性エステル型の光開裂性架橋剤ではゲルの成形性の良い条件では細胞毒性が見受けられたため、新たにクリック架橋型の光開裂性架橋剤を合成した。2)マイクロ流体デバイスの加工に関し、細胞を包埋したゲルを光分解造形法で分解し、マイクロ流体デバイス内に導入することのできる開閉型のマイクロチャンバー構造を搭載したマイクロ流体デバイスを加工した。3)マイクロ流体デバイス内で血管様流路構造を有する三次元組織の構築3)マイクロ流体デバイス内で、三次元組織光分解造形法を用いて血管様マイクロ流路を含んだ三次元組織体を形成するための、ゲルの調整条件、光分解条件に関する検討を行い、適切な条件を見出した。一方、マイクロ流路の構造に関して修正すべき点が確認されたので、マイクロ流路の構造については、今後修正していく予定である。4)二光子励起加工実験に関連し、ゲルの調整条件に関する予備実験を行い、二光子励起加工に適した低膨潤性ゲルを調製する調整条件を見出した。B01班杉浦グループでは、H24-H25年のA02班としての活動の中で開発した「生体組織光分解造形法」とマイクロ流体デバイスを組み合わせ灌流可能な三次元組織体の構築を目指して研究を進めてきた。研究を進める中で、以前の方法では「長期に形状を維持できる固いゲル」を作る際に、細胞毒性が問題となることが確認された。そこで、新たに架橋剤の毒性を低減した「クリック架橋光開裂性架橋剤」を利用することとした。また、培養液の循環を簡便に行うために、「圧力駆動の循環培養システム」を本年度新たに開発した。この循環培養システムに関して論文を1本投稿している。また、循環培養システムの開発において新たな研究展開を着想しており、関連特許を3件出願した。うち1件は国際出願している。関連学会において発表し、第32回化学とマイクロ・ナノシステム研究会での発表において、優秀研究賞を受賞した。これらの「クリック架橋光開裂性架橋剤」と「圧力駆動の循環培養システム」を組み合わせ、「ハイドロゲル包埋培養系の灌流培養システム」を構築した。この手法を用いて、ハイドロゲル中に異なるピッチで流路様の構造を加工し、潅流培養を行ったところ、照射パターンの間隔が1.6 mm以下の場合に細胞の生存率が高いことが確認された。以上の結果より、ハイドロゲル包埋灌流培養系の構造機能の相関を探索する新たな研究ツールが開発されたと考えられる。研究を進める中で開発された「クリック架橋光開裂性架橋剤」と「圧力駆動の循環培養システム」はそれぞれ、領域内共同研究や、領域外の民間企業との共同研究をとおして、がん細胞分離や、創薬のためのデバイスとして応用されており、他の研究領域の研究の発展に波及効果をおよぼすものと考えられる。当初の年次計画では、H26年度は、1)光分解性架橋剤の合成、2)マイクロ流路チップの加工、3)マイクロ流路チップ上で血管様流路構造を有する三次元組織の構築、4)二光子励起加工、5)アルギン酸ゲルを利用した加工、を予定していた。
KAKENHI-PUBLICLY-26106726
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光分解造形法による灌流可能な血管ネットワークを有する三次元組織体の構築
1)および2)に関しては、実施する中で問題も発生したが、改善方法を見出して解決し、完了している。3)については見通しが立っている。4)についてもゲルの膨潤という問題が顕在化したが、ゲルの調整条件を検討する中で膨潤度の低いゲルを調整する条件を見出し、今後の検討に使用できると考えている。5)については検討を進めているが、細胞を表面に接着したファイバー状ゲルの分解が難しく、現時点では加工方法の確立の見通しが立っていない。以上の状況から、当初の予定よりやや遅れいていると考えている。27年度が最終年度であるため、記入しない。平成27年度は6)設計パラメーターと肝機能の相関の検証、7)異なる手法で構築した三次元組織との比較、を進める予定であった。これを進めるためには、上記1), 2), 3)を進めておく必要があり、これらについては上述のようにほぼ見通しが立っている。従って、6), 7)については当初の計画通りに進めていく。また、4)についてもH26年度に問題が発生していたが、解決法の見通しが立っているので、二光子励起による加工方法について、H27年度に引き続き検討していく予定である。5)については、顕在化している問題点の解決法の見通しは立っていないが、本研究の本質的な内容とは異なるため、H27年度は6),7)に焦点を絞って研究を進めていく。27年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-26106726
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異文化対応型ビジネスマネジメントに関する研究
日本企業のビジネス・プロセスがボーダレス化するに伴い、異文化対応型のビジネス・マネジメントが不可避となってきた。本研究は、こうした企業構造上の変化を背景とした、日本的管理様式のパラダイムシフトとそこでの異文化マネジメント上の戦略的課題を明確にすることに置かれている。とりわけ、本研究は、企業の「競争優位の心臓部」ともいえる技術開発力と研究開発の国際化がどの程度進展しているのか、どのような国籍の技術者や研究者が関与してきているのかに分析上の焦点を当ててきた。また、研究分担者の桜井は、イランにおける日系企業、ならびに現地企業へのヒアリング調査を通して貴重なイスラム的価値観と経営様式に関する論文を発表している。日本企業のビジネス・プロセスがボーダレス化するに伴い、異文化対応型のビジネス・マネジメントが不可避となってきた。本研究は、こうした企業構造上の変化を背景とした、日本的管理様式のパラダイムシフトとそこでの異文化マネジメント上の戦略的課題を明確にすることに置かれている。とりわけ、本研究は、企業の「競争優位の心臓部」ともいえる技術開発力と研究開発の国際化がどの程度進展しているのか、どのような国籍の技術者や研究者が関与してきているのかに分析上の焦点を当ててきた。また、研究分担者の桜井は、イランにおける日系企業、ならびに現地企業へのヒアリング調査を通して貴重なイスラム的価値観と経営様式に関する論文を発表している。1:日本企業のビジネス・プロセスがグローバルに展開するにつれて、これら日本企業で働く従業員国籍は多様化してきた。本年度は、これら海外国籍の多数の従業員を文化ごとに分類するための基準とその基本的コンセプトを明確にするための理論的ベース構築に当ててきた。そこでは、G.Hofstedeをはじめとして、G.ReddingとB.Steningが編集した,Cross Cultural Management(2003,Edward Elger)Vol.1,Vol.2、に所収されている総計1000頁におよぶ異文化経営に関する論文を代表者および分担者で読み、分類基準に関するコンセプト作りに多くの時間が当てられた。2:暫定的に作成された文化分類基準にそって、2004年3月に研究分担者の桜井が、担当地域の中東イスラム文化圏のイランに行き、調査を行った。対象企業は、松下電器イラン現地法人ならびに現地サプライヤー企業2社であった。2004年度は、この調査研究の有効性を確認したうえで、米国、欧州、アジアの松下電器現地法人へのアンケート送付と現地への調査研究を行う予定である。2004年度には、以下の2点を主に研究調査した。(1)代表的日本多国籍企業のひとつである、松下電器の海外現地法人を対象として、(1)本社の理念とミッションがどのように共有化されているか、(2)およびG.Hofstedeの5つの国民文化の分類軸(「男性度・女性度」、「短期的志向・長期的志向」、「権限格差の大小」、「不確実性の回避の大小」、「個人主義・集団主義」)がどの程度異なるかを調査した。今年度は、調査対象国を中国、タイ、マレーシア、シンガポールとし、これら諸国の松下現地法人13社、およびその他日本企業3社を訪問してインタビュー調査を行った。現在、これらの調査結果を、上記5つの国民化分類指標に依拠して、それぞれ1-5ポイント評価によって、定量化して表にまとめる作業の段階である。また、これらアジアの調査対象松下電器現地法人に対して内容確認のメールのやりとりを行っているところである。今回に調査を通じて、同一企業であるにもかかわらず、国民文化の差異だけではなく部署の違い、ジェンダーの違い、等々が組織文化と交じり合うことによって、同一の質問に対しても多様な受けとめかたと多様な回答が出される結果となった。2005年度の調査は、米国、欧州松下電器現地法人に対して行う予定となっている。これらの調査結果を解析し、AIB (Academy of International Business)のAnnual Conferenceにおいて報告する予定である。(2)データベースJICSTおよびINPADOCを利用して、米国特許および米国発行論文を検索し、エレクトロニクス系多国籍企業22社が研究開発をどこの国で行い、そしてこれらの国がどのような文化圏であるのかを分類した。2005年度は、この分析結果と(1)の国民文化指標とをクロスさせることによって、技術開発力ないし研究開発能力と文化的差異および文化的多様性との関連を明らかにしていく。1:日本企業のビジネス・プロセスがグローバルに展開するにつれて、これら日本企業で働く従業員国籍は多様化してきた。昨年度は、これら海外国籍の多数の従業員を文化ごとに分類するための基準とその基本的コンセプトを明確にするための理論的ベース構築に当ててきた。そこでは、分類基準に関するコンセプト作りに多くの時間が当てられた。2:暫定的に作成された文化分類基準にそって、2004年度には研究分担者の桜井が、担当地域の中東イスラム文化圏のイランに行き、調査を行った。対象企業は、松下電器イラン現地法人ならびに現地サプライヤー企業2社であった。3:2005年度は、上記の文化類型による調査研究の有効性を確認したうえで、アジアの松下電器現地法人への調査研究を行った。それらは、在北京松下電気現地法人5社、タイ松下電器法人1社、マレーシア同現地法人2社、およびシンガポール同現地法人3社、合計11社を訪問し、異文化マネジメントに関するヒアリングを行った。
KAKENHI-PROJECT-15330083
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異文化対応型ビジネスマネジメントに関する研究
特に、「それぞれ固有の文化圏に適合した独自の企業理念とインセンティブシステムを有すべきなのか」、それとも「これら文化圏に共通した普遍的な企業理念やインセンティブシステムがあるのか」を中心に確認した結果、後者を軸に、前者への配慮がなされていること、しかしながら、在中国(北京)現地法人においては、歴史認識に規定された反日意識のために、企業理念もより日本的色彩を薄めた国際的に共感を呼ぶ内容への適応が求められていることが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-15330083
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超撥油性ステンレス鋼表面の創製
防汚性,着氷防止性などの機能を付与できる超撥水性や超撥油性表面を実用金属材料であるステンレス鋼に構築できれば,安全安心で快適な日常生活のみならず,化学プロントや食品プラントにおける操業効率の向上にもつながる。本研究では,ステンレス鋼の化学・電解エッチングと新規なアノード酸化プロセスを組み合わせることにより,表面に階層構造を構築し,水や菜種油を始めとする低表面張力液体を弾く超撥水・超撥油表面を得ることに成功した。本研究は,簡便で工業化が期待できるアノード酸化や電解エッチングなどのウェットプロセスのみで超撥水および超撥油性ステンレス鋼を作製することを目的としている。本年度は,まずステンレス鋼のアノード酸化挙動を詳細に検討した。フッ化物含有有機電解液中においてSUS304およびSUS430の2種類の代表的なステンレス鋼を動電位法によりアノード酸化した。アノード酸化挙動は鋼種により大きく異なり,SUS430では定常電流が160 V程度まで継続して流れたのに対し,SUS304ステンレス鋼では,60 V程度以上で電流が大きく上昇した。40 Vまでアノード酸化した試料の断面TEM観察からSUS304に生成する皮膜はアモルファス構造である一方,SUS430では結晶性酸化物であり,また多孔質層と素地との間にできるバリヤー層もSUS430のほうが2倍ほど厚くなっており,皮膜形態,皮膜の結晶性は鋼材中のNiの有無により大きく変化することが示唆された。また,SUS430では生成電圧により表面形態が変化し,濡れ性制御に重要となる多孔度が生成電圧で制御可能であることが見出された一方,SUS304では表面形態の電圧変化は小さいことがわかった。電解エッチングについては,塩酸ー硝酸混合浴を用いることで,多数のマイクロピットをもつ表面を得ることができた。エッチング時間や電流密度を変化させることでピットサイズやピット密度などの形態制御法を確立することができた。このエッチングとアノード酸化を組み合わせることによりマイクロ・ナノ階層構造表面の構築に成功し,さらにフルオロアルキルコーティングを施すことにより,ヘキサデカンにも濡れない撥油表面を得ることに成功した。ステンレス鋼への多孔質アノード酸化皮膜の生成は,代表者が見だしたものであるが,本研究を通してその生成挙動の理解を深めることができ,電解エッチングを組み合わせることでヘキサデカンにも濡れない表面を構築できたことから,研究は順調に進展していると判断した。本研究では,ウェットプロセスを用いてステンレス鋼表面をマイクロ・ナノ階層構造多孔質化し,その表面を優希コーティングすることによって,水や油に全く濡れない超撥水・超撥油表面の創成をめざした。前年度の研究において,SUS304ステンレス鋼ではアノード酸化皮膜の多孔度が小さく,超撥油表面への応用には多孔度の制御が必要となることが明らかになったので,その検討を中心に研究を行った。先行研究において,ステンレス鋼のフッ化物含有エチレングリコール電解液中におけるアノード酸化には添加する水の量を0.1 mol/L程度に低減する必要があったが,本研究では,水添加量を0.5 mol/Lとしても電流密度を増大させてアノード酸化することで,多孔質皮膜を生成できることを明らかにした。さらに,水添加量を増やすことで,生成した皮膜の化学溶解がアノード酸化中に進行し,多孔度の大きな酸化皮膜を生成できるようになり,撥水・撥油性に有利なアノード酸化皮膜形態とすることが可能となった。また,水添加量を変えることにより皮膜組成にも変化が生じ,クロムが濃縮した皮膜は水添加量が多いほど生成しやすいことが明らかとなった。これを昨年度見出したエッチングと組み合わせることにより超撥油性の改善を確認した。エッチングについても昨年度の塩酸ー硝酸混合浴を用いた電解エッチングに加えて,塩化第二鉄,リン酸,塩酸を含む水溶液を用いた化学エッチング,フッ化水素酸を用いた化学エッチングも適用し,それぞれ特徴的なエッチング形態を示した。ただし,それぞれ表面組成が異なるため,有機コーティングの条件をそれぞれ検討する必要があることが明らかとなった。防汚性,着氷防止性などの機能を付与できる超撥水性や超撥油性表面を実用金属材料であるステンレス鋼に構築できれば,安全安心で快適な日常生活のみならず,化学プロントや食品プラントにおける操業効率の向上にもつながる。本研究では,ステンレス鋼の化学・電解エッチングと新規なアノード酸化プロセスを組み合わせることにより,表面に階層構造を構築し,水や菜種油を始めとする低表面張力液体を弾く超撥水・超撥油表面を得ることに成功した。今後は,アノード酸化皮膜の多孔度の制御を行う手法を確立するとともに,階層構造の最適化を目指す。また,超撥水・超撥油表面の最大の課題である耐久性の付与については,表面の自己修復化の検討を行う。さらに冬場に着雪性の低減効果の確認も行う予定である。表面機能化学超撥油化に必要な有機コーティング剤の検討を計画していたが,当研究室でアルミニウム用に使っていたコーティング剤がステンレス鋼にも有効で問題なく使えることがわかり,コーティング剤の検討以外の研究項目に研究の重点を置くことができたため,次年度繰越が生じている。平成28年度に計画している低着雪表面の研究のための評価方法の確立が必要となっており,そのための費用として次年度使用する予定である。
KAKENHI-PROJECT-15K14171
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K14171
高品位三原色光源実現に向けた青・緑色面発光レーザ
本研究では、GaN面発光レーザーの1高効率・高出力化、2長波長化、3高速変調を目指して進めている。以下に平成30年度の実績を報告する。高効率化に向けて、横方向光閉じ込め構造を有する面発光レーザー、トンネル接合を有する面発光レーザー、そして下部導電性DBRを有する面発光レーザーの三種類の試作を進めた。エッチング条件とSiO2埋め込み条件を最適化することで、段差のないSiO2埋め込み閉じ込め構造の形成が可能になった。トンネル接合を有する面発光レーザーの試作も進め、室温連続動作を当研究グループとして初めて達成した。下部導電性DBRでは、それを有する面発光レーザーとしては世界最高出力となる1.8mWを達成した。来年度、試作を重ねることで、さらなる特性の改善を目指す。長波長化に向けて、AlGaNバリア層をさらに最適化することで、540nmのLED発光として、青色LEDの40%までを達成した。今後は、この成長条件をベースに、GaN基板上に適した活性層成長条件も明らかにしていく。一方、DBR作製において、新しいAlInN/GaInN DBR構造に取り組んだものの、表面平坦性が大きく損なわれることが判明した。反射率が大きく低下する可能性が高く、現時点での実現は困難であると判断した。一方で、前年度に導入したその場反り測定装置を用いることで、DBR成長中に反りの様子、そしてInNモル分率を算出できるようにモデルを構築、実証した。今後は、この両者を用いることで、長波長面発光レーザーを目指す。高速変調に関して、比較的高い電流密度での測定が必要になるが、現状の素子では電極が破壊される課題が明らかになった。絶縁層、電極形成を最適化することで、破壊が抑制された。一方で、変調特性を測定するためには、さらなる改善が必要な状況である。高効率・高出力化では、導電性DBRを有する面発光レーザーとして世界最高出力である1.8mWを達成した。また、トンネル接合を有する面発光レーザーの室温連続動作も実現し、出力や効率の最高値は改善されなかったものの、今後、上述した新しい素子構造の最適化による改善が期待できる。長波長化では、さらなる活性層の改善、DBR形成の再現性向上が実現した。高速変調に関しては、電極破壊が大きな課題となることが新たに判明し、その対策を進めた結果、一定の改善を得た。以上、大きく進展した項目と、あまり進展していない項目がそれぞれ存在することから、平均的におおむね順調に進展している、と判断した。平成31年度は以下の計画に沿って進める予定である。高効率化に対して、段差のない光閉じ込め構造、トンネル接合構造、導電性DBR構造を含む面発光レーザー試作をさらに進める。結果に従って、効果の高い構造をそれぞれ組み合わせて面発光レーザーを試作し、高効率・高出力化を目指す。長波長化に関して、GaN基板上活性層の成長条件も明らかにし、それを踏まえて、470520nm面発光レーザーを形成、そして実現を目指す。その場反り測定装置を十分活用することで、DBR形成、さらには高品質長波長活性層作製を目論む。高速変調に関して、さらなる絶縁層、電極構造・形成の最適化を進め、電極破壊が大幅に抑制された素子を作製するとともに、電極形状を高速変調用に変更した素子も試作、その測定を進め、現状を把握する。本研究では、GaN面発光レーザの「高効率・高出力化」、「長波長化」、「高速変調」を目指して進めている。以下に平成29年度の実績を報告する。高出力化として、波長410nmのGaN面発光レーザにおいて、層構造などの最適化により下部4.2mW、上部1.0mWの計5.2mWの出力を実現した。次年度目標の6mWに近い値を前倒しで実現したことになる。一方、外部微分量子効率は13%のままである。高効率化に向けては横方向閉じ込めとトンネル接合の適用を進めたが、現時点で効率改善にまでは至っていない。一方で、光吸収の少ないGaNトンネル接合が実現した。長波長化に向けて、既存のAlInN/GaNを厚膜化することで、反射中心波長を570nmまで長波長化させたDBRを作製した。その結果、520nmまでは、屈折率から予想される理論反射率に近い測定値が得られたが、570nmでは、比較的大きな反射率の低下が確認された。XAFS法により、AlInNにおけるIn、Al原子ともにウルツ鉱構造における理想的なIII族原子位置を占有していることが明らかになった。活性層の長波長化として、2nm AlGaNキャップ層と高温GaNバリア層の導入により、600nmまでのPL発光と、575nmまでのEL発光を得た。そのEL強度は、青色の場合の1/6程度であった。格子不整合の程度を成長中に測定可能な、その場基板反りモニタを導入し、現在、調整中である。高速変調に関して、測定のためのパルス光特性評価システムを構築した。主に波長450nmのGaN青色レーザを用いて性能確認した結果、パルス発生器評価系で約500MHz、ネットワークアナライザ系で約1GHzまで評価可能であった。高効率・高出力化では、効率は改善されなかったものの、出力は改善され、ほぼ次年度目標を達成しつつある。長波長化もDBRおよび発光波長において500nmを超えるものが形成可能になっている。高速変調に関しては、システムの検証が進んだが素子形成は遅れている。
KAKENHI-PROJECT-17H01055
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H01055
高品位三原色光源実現に向けた青・緑色面発光レーザ
以上、大きく進展した項目と、あまり進展していない項目がそれぞれ存在することから、平均的におおむね順調に進展している、と判断した。本研究では、GaN面発光レーザーの1高効率・高出力化、2長波長化、3高速変調を目指して進めている。以下に平成30年度の実績を報告する。高効率化に向けて、横方向光閉じ込め構造を有する面発光レーザー、トンネル接合を有する面発光レーザー、そして下部導電性DBRを有する面発光レーザーの三種類の試作を進めた。エッチング条件とSiO2埋め込み条件を最適化することで、段差のないSiO2埋め込み閉じ込め構造の形成が可能になった。トンネル接合を有する面発光レーザーの試作も進め、室温連続動作を当研究グループとして初めて達成した。下部導電性DBRでは、それを有する面発光レーザーとしては世界最高出力となる1.8mWを達成した。来年度、試作を重ねることで、さらなる特性の改善を目指す。長波長化に向けて、AlGaNバリア層をさらに最適化することで、540nmのLED発光として、青色LEDの40%までを達成した。今後は、この成長条件をベースに、GaN基板上に適した活性層成長条件も明らかにしていく。一方、DBR作製において、新しいAlInN/GaInN DBR構造に取り組んだものの、表面平坦性が大きく損なわれることが判明した。反射率が大きく低下する可能性が高く、現時点での実現は困難であると判断した。一方で、前年度に導入したその場反り測定装置を用いることで、DBR成長中に反りの様子、そしてInNモル分率を算出できるようにモデルを構築、実証した。今後は、この両者を用いることで、長波長面発光レーザーを目指す。高速変調に関して、比較的高い電流密度での測定が必要になるが、現状の素子では電極が破壊される課題が明らかになった。絶縁層、電極形成を最適化することで、破壊が抑制された。一方で、変調特性を測定するためには、さらなる改善が必要な状況である。高効率・高出力化では、導電性DBRを有する面発光レーザーとして世界最高出力である1.8mWを達成した。また、トンネル接合を有する面発光レーザーの室温連続動作も実現し、出力や効率の最高値は改善されなかったものの、今後、上述した新しい素子構造の最適化による改善が期待できる。長波長化では、さらなる活性層の改善、DBR形成の再現性向上が実現した。高速変調に関しては、電極破壊が大きな課題となることが新たに判明し、その対策を進めた結果、一定の改善を得た。以上、大きく進展した項目と、あまり進展していない項目がそれぞれ存在することから、平均的におおむね順調に進展している、と判断した。平成30年度は以下の計画に沿って進める予定である。高効率化に対して、段差のない光閉じ込め構造、および段差の少ない埋め込みトンネル接合を試みる。いずれも段差があることによって、性能が制限されている、あるいは構造形成が困難になっている現状を考慮した判断である。高出力化に関しては、これまで行っていなかった、光閉じ込めと大口径化の同時導入により、従来の大口径化による発振停止を抑制することで高出力化を実現する目論見である。さらに活性層構造の最適化や、導電性DBRの導入を進め、より赤外面発光レーザに近い理想の構造を我々の標準構造として確立していく。
KAKENHI-PROJECT-17H01055
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H01055
バイオインフォーマティクスによるロイシンリッチリピートの進化、構造、機能の研究
ロイシンリッチリピート(LRR)は、同じまたは似た配列を繰り返すタンデムリピートの一つであり、2万個以上の蛋白質に存在する。多くのLRRは蛋白質やリガンドと相互作用し、動物や植物の自然免疫などの機能に関与している。LRRの繰り返しの長さは20から30アミノ酸残基からなり、8つのクラスが存在する。本研究により、植物にのみ存在するLRRクラスがバクテリアにも存在することを見出し、このLRR遺伝子は植物からバクテリアに水平伝播したことを示した。また。単細胞真核生物とバクテリア由来蛋白質から、これまでLRRモチーフと同定されていない新規なLRRモチーフを見出した。ロイシンリッチリピート(LRR)はロイシンを多く含むタンデムリピートの一つである。LRRはウイルスからヒトまで幅広い生物に、1万4千個以上の蛋白質に存在する。LRRドメインは、蛋白質同士や蛋白質とリガンドの間の相互作用部位として使われ、動物や植物の自然免疫機構などの多様な機能発現に重要な役割を果たしている。LRRは2030アミノ酸残基の長さの繰り返し単位を持ち、分子全体で馬蹄形構造や超ラセン構造をとる。LRRはその後半部分の配列の違いにより、8つのクラスに分類されている。植物蛋白質にのみ存在するとされてきたPlant-Specific LRR (PS-LRR)が、バクテリア由来蛋白質の中にも存在することが明らかになってきている。バイオインフォマティクスの手法を駆使した塩基およびアミン酸配列解析から、PS-LRRをコードする遺伝子において、植物とバククテリアの間のHorizontal gene transfer(HGT)が起こったことを示した。この内容の論文は、本年5月、雑誌Natural Scienceに掲載される。UniProtを含む配列データベースから、バクテリアや下等な単細胞真核生物から新規なLRRクラスを含む蛋白質を見出した。そのデータベースを構築する。このデータを用いてマルチプルアラインメントなどを用いて詳細な配列解析を実行する。その結果、4つの新しいLRRクラスをみいだした。構造、機能についても考察した。現在、論文作成中である。ロイシンリッチリピート(LRR)は、同じまたは似た配列を繰り返すタンデムリピートの一つであり、ウイルスからヒトまで2万個以上の蛋白質に存在する。多くのLRRは蛋白質やリガンドと相互作用し、動物や植物の自然免疫や神経システムの発生などの機能に関与している。また、グラム陰性菌タイプIIIの分泌システム、アポトーシス、オートファジー、mRNAの核輸送、ユビキチンプロセスにも関与している。LRRの繰り返し単位は20から30アミノ酸残基である。この繰り返し単位は、前半部分の保存性がよいHighly conserved segment (HCS)と、後半部分のVariable segment (VS)に分けられる。HCSはLxxLxLxx(C/N)x(x/-)Lの11または12残基からなる。VSのコンセンサス配列の違いにより、8つのクラスが存在する。本研究の目的は、LRRのアミノ酸配列、構造、機能の多様性がどのようにして生まれたかを明らかにすることである。本研究では次の研究成果をあげることができた。1つ目は、植物にのみ存在するPS-LRRがバクテリアにも存在することを見出し、このLRR遺伝子が植物からバクテリアに水平伝播(HGT)したことを示した。2つ目は、単細胞真核生物とバクテリア由来蛋白質から、これまでLRRモチーフと同定されていない新規なLRR(Non-canonical LRRと名付けた)を見出した。Non-canonical LRRのHCSは、VxGx(L/F)x(L/C)xxNxLにより特徴づけられる。また、LRRドメインには、しばしばLRRとは見做されない100残基以上にも渡る長いドメイン(Islandドメイン)が存在する。植物のLRR蛋白質にみられるIslandドメインの特徴を配列解析から明らかにした。ロイシンリッチリピート(LRR)は、同じまたは似た配列を繰り返すタンデムリピートの一つであり、2万個以上の蛋白質に存在する。多くのLRRは蛋白質やリガンドと相互作用し、動物や植物の自然免疫などの機能に関与している。LRRの繰り返しの長さは20から30アミノ酸残基からなり、8つのクラスが存在する。本研究により、植物にのみ存在するLRRクラスがバクテリアにも存在することを見出し、このLRR遺伝子は植物からバクテリアに水平伝播したことを示した。また。単細胞真核生物とバクテリア由来蛋白質から、これまでLRRモチーフと同定されていない新規なLRRモチーフを見出した。ロイシンリッチリピート(LRR)はロイシンを多く含むタンデムリピートの一つである。LRRはウイルスからヒトまで幅広い生物に、1万4千個以上の蛋白質に存在する。LRRドメインは、蛋白質同士や蛋白質とリガンドの間の相互作用部位として使われ、動物や植物の自然免疫機構などの多様な機能発現に重要な役割を果たしている。LRRは2030アミノ酸残基の長さの繰り返し単位を持ち、分子全体で馬蹄形構造をとる。LRRはその後半部分の配列の違いにより、8つのクラスに分類されている。これまで、LRRを含む蛋白質の分子進化の研究はなされているが、各クラス間の分子進化研究は何もなされていない。最近、植物蛋白質にのみ存在するとされてきたPlant-Specific LRR (PS-LRR)が、バクテリア由来蛋白質の中にも存在することが明らかになってきている。我々はバクテリアに存在するPS-LRRの起源について研究を行った。
KAKENHI-PROJECT-23500368
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23500368
バイオインフォーマティクスによるロイシンリッチリピートの進化、構造、機能の研究
我々は11種のバクテリアから20個のPS-LRR蛋白質を見出した。また、そのホモログとして、植物から82個、珪藻から1個のPS-LRR蛋白質を同定し、そのコンセンサス配列はLxxLxLxxNxLSGxIPxxIGxLxxで、バクテリアPS-LRRのコンセンサス配列と良く一致した。任意のアミノ酸が占める"x"位置についても、弱い保存性がみられた。また、古細菌には、PS-LRR蛋白質は全く見られなかった。これらの結果は、PS-LRRをコードする遺伝子において、植物とバククテリアの間のHorizontal gene transfer(HGT)が起こったことが示唆された。これは真核生物と真正細菌との間の"界"を渡るHGTであり、非常に珍しいものである。このHGTが幅広い生物に存在する機構の一つと考えられる。現在、論文投稿中である。研究の目的として、次の3つの研究課題を掲げた。(1)新規なLRRクラスの同定と進化研究:我々の開発した方法を用いて、バクテリアからのLRRを含む蛋白質(LRR蛋白質)に存在する新規なLRRクラスを検出し、データベースを構築する。このデータを用いてマルチプルアラインメントなどを用いて詳細な配列解析を実行する。(2)LRRの水平進化の実証:バクテリアLRR蛋白質に存在する"Plant-specific LRR"ドメインの塩基配列を用いてホモロジー検索を行い、検出された"Plant-specific LRR"ドメインの系統樹を作成し水平進化(HGT)の有無を検証する。(3)新規な巨大LRR超周期の検出と分子進化:LRR-RLKが重複した仮想的な蛋白質のアミノ酸配列をクエリーにしたホモロジー検索を行い、巨大LRR超周期を検出する。また、配列解析を実行し進化のスキームを提案する。(2)の研究は、論文として掲載される。(1)の研究は、現在、論文作成中である。(3)については、配列データの収集を継続している。また、LRRを含むToll様受容体の分子進化について雑誌GENEに掲載された。さらに、植物のLRR蛋白質(non-LRR領域が介在する特徴的なLRRドメインをもつ蛋白質)についての総説がBiomoleculesに掲載された。したがって、おおむね順調に進行していると評価できる。研究の目的として、次の3つの研究課題を掲げた。(1)新規なLRRクラスの同定と進化研究:我々の開発した方法を用いて、バクテリアからのLRRを含む蛋白質(LRR蛋白質)に存在する新規なLRRクラスを検出し、データベースを構築する。このデータを用いてマルチプルアラインメントなどを用いて詳細な配列解析を実行する。:(2)LRRの水平進化の実証:バクテリアLRR蛋白質に存在する"Plant-specific LRR"ドメインの塩基配列を用いてホモロジー検索を行い、検出された
KAKENHI-PROJECT-23500368
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23500368
北海道畑作・畜産農業の冷湿害の要因及び影響解析とリスク回避に関する基礎的研究
1.一時的な過剰水による嫌気条件に耐性のある作物品種を育成するには、その基礎として耐湿性を計測する評価法が確立される必要がある。その基礎的な知見を得る目的で、小麦を素材にして、乾燥ストレス(葉部先端を切りとって新鮮重の10%乾燥制御あるいは高浸透圧水耕液を使った根からの吸水制御)に因る作物の環境ストレスホルモン(エチレン)の感受性計測を行った。10%乾燥制御のときエチレン生成が最大となり、品種間差異も明確となる。品種間差異は、エチレン生合成に関わるアミノシクロプロパンカルボン酸の活性化を司る3個の遺伝子(2B,5B,1A)に支配されている。接触刺激に対する感受性の品種間差異は水分ストレスに類似である。2.標高400mと800mで混播草地の生産量と植生推移を調査したところ、低温多雨となる高地圃ではチモシー主体に混播し、刈り取り時期を遅らせること、低地圃ではオ-チャード主の混播とし、いずれも成長停止温度となる9月中旬までの収穫にとどめることが望ましい。3.冷湿害年産のコーンはでんぷん蓄積に欠け、乾草品質も悪く、草サイレ-ジの養分損失もあって、栄養価が低く、乳牛は粗飼料からのエネルギー摂取が不足した。4.湿性型火山灰地帯に対する湿害対策として、心土破砕時にバ-ク堆肥を鋤込む、いわゆる有材心破を試みたところ、高い効果を認めた。また湧水を伴う地帯の処理工法として、深層暗渠工法による施工実験の結果は、地下水位13mと低く維持され、機械の適期作業を可能にした。5.十勝20市町村の主要畑作物の単収データを基に、対平年単収比の確率分布を計測し、対平年単収比が1.以下となる領域での2次の確率的優越性を読み取ると、地域の自然災害の発生状況に斉合しており、1993年冷湿害の発生確率の推定値も経験的知識に斉合していた。1.一時的な過剰水による嫌気条件に耐性のある作物品種を育成するには、その基礎として耐湿性を計測する評価法が確立される必要がある。その基礎的な知見を得る目的で、小麦を素材にして、乾燥ストレス(葉部先端を切りとって新鮮重の10%乾燥制御あるいは高浸透圧水耕液を使った根からの吸水制御)に因る作物の環境ストレスホルモン(エチレン)の感受性計測を行った。10%乾燥制御のときエチレン生成が最大となり、品種間差異も明確となる。品種間差異は、エチレン生合成に関わるアミノシクロプロパンカルボン酸の活性化を司る3個の遺伝子(2B,5B,1A)に支配されている。接触刺激に対する感受性の品種間差異は水分ストレスに類似である。2.標高400mと800mで混播草地の生産量と植生推移を調査したところ、低温多雨となる高地圃ではチモシー主体に混播し、刈り取り時期を遅らせること、低地圃ではオ-チャード主の混播とし、いずれも成長停止温度となる9月中旬までの収穫にとどめることが望ましい。3.冷湿害年産のコーンはでんぷん蓄積に欠け、乾草品質も悪く、草サイレ-ジの養分損失もあって、栄養価が低く、乳牛は粗飼料からのエネルギー摂取が不足した。4.湿性型火山灰地帯に対する湿害対策として、心土破砕時にバ-ク堆肥を鋤込む、いわゆる有材心破を試みたところ、高い効果を認めた。また湧水を伴う地帯の処理工法として、深層暗渠工法による施工実験の結果は、地下水位13mと低く維持され、機械の適期作業を可能にした。5.十勝20市町村の主要畑作物の単収データを基に、対平年単収比の確率分布を計測し、対平年単収比が1.以下となる領域での2次の確率的優越性を読み取ると、地域の自然災害の発生状況に斉合しており、1993年冷湿害の発生確率の推定値も経験的知識に斉合していた。1.植物のストレスホルモン(エチレン)を指標にして、冷湿害環境の感受性を計測する実験を行って、コムギの品種間には水分ストレス誘導エチレン生成に明確な差のある事、及びその差異は遺伝的で、エチレンの前駆物質であるアミノシクロカルボン酸の合成酵素活性の差による事とが、判明した。2.公共草地の標高差(400M、800M)毎に観測装置を設定して微気象を観測し、混播草地の生産性、植生推移を計測する実験を開始した。継続観測により、気象と植生・生産性を関連つけて、冷湿害に強い草地管理方策を提示する基礎資料とする。3.冷湿害をうけた年の十勝地域の粗飼料成分成績と畜大農場の粗飼料成分分析を基に、冷湿害年における品質差を先ず確認した。その結果、1番刈草361点では品質低下が見られず、牧草サイレ-ジ630点やコーンサイレ-ジ689点では、TDN価の低下が認められた。特にコーンサイレ-ジは冷湿に因る登塾遅れがTDN価低下の要因である。今後飼養成績との関連を研究し改善方策を探る計画である。4.湿性型火山灰地帯に対する湿害対策として、心土破砕と同時にバ-ク堆肥を鋤込む、いわゆる有材心破を実験的に行って観測した結果、地下水位の低下と地温上昇に効果が認められた。湿害対策の1方法を提示するものである。
KAKENHI-PROJECT-06451127
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06451127
北海道畑作・畜産農業の冷湿害の要因及び影響解析とリスク回避に関する基礎的研究
5.十勝20市町村の昭和40年以降の作物別収量データを収集し、内2市町に付いてパイロット研究として平年単収に対する実単収比の分布をロジスティク曲線で近似し、作物毎の確率的優越性の計測と平成5年冷湿害の理論的発生確率の位置を解析した。この結果、豆作は減収率がやや高く確率的には稀に起こる災害であり、イモ、ビ-ト、飼料用コーンは中位の減収率であるが、やや頻繁に起きても止むをえない災害といえ、コムギは減収率が高いが確率的には起こり易い災害とみなす事が出来る。6.これらの研究成果を組み入れて、安定経営の設計や農業支援事業のあり方を引き続き研究する。1.5年前の春に暗渠排水を施工した豊頃町二宮地区の圃場で、排水効果を維持させる目的で、火山灰を充填した有林心土破砕を補助工法として施工して、その成績を追跡調査したところ、施工3年目で無林心破区では排水効果が著しく低下したが、有林心破区では効果が持続した。秋蒔き小麦は、多雨年の6月中旬まで有林心破区で良好な生育を示した。秋期に周期的に降雨のあった平成7年でも大豆がこの区で良好な収穫をもたらした。よって細粒・堅密な沖積土の排水効果の持続には、有林心土破壊砕の併用が有効であると言う知見を得た。2.標高渣(400m、800m)による気象変化と混播牧草の植生や生産性の差異を圃場試験で確認したところ、牧草生育期間の平均温度の差は摂氏1.3度、降水量は73ミリの差があり、高標高地は低温多雨の微気象を持っている。1年草の生産性は46%減となることが判明した。この関係にはチモシー主区とオ-チャード主区との間では有意差はみられなかった。また2番草でも刈り取りの時期による収量は在圃場期間と共に増加するが、葉部枯死率が高くなることが判明した。これらは圃場試験につき3年間の観測で総合判断に導く予定である。3.十勝20町村の昭和40年以降のデータで、平成7年度には主要畑作物の他に野菜作を対象にして、収量の累積密度関数を推計し、作物毎に確率的優越性を検討した。概して野菜作は主要畑作物よりも確率的優越性に優れていることが分かった。4.平成8年にはこれらの総括として、安定経営の設計や農業支援事業のあり方等、方向付けを試みる予定である。1.12品種の小麦を使って水分ストレス誘導ホルモン(エチレン)生成実験を行い、2B、5B、1A染色体上に生成促進遺伝子が座乗していること、生育ステージ別の同実験は品種間に差があること、接触刺激によるエチレン生成実験は、水分ストレス高感受品種に強い反応が現れること、高浸透圧水耕液による根からの吸水制御実験も、乾燥ストレスと同じ結果となること等を確認した。2.混播草地の植生と生産性を学術的観測の基準となっている3年次草地について、標高800mと400mの所で観測した。両試験圃には生育期間における月平均温度差1.51.6°C、降水量差163174mmあって、1番草生産量は、低地圃では高地圃の50(早刈)32(遅刈)%増、植生推移は早刈でメドフェスクが優占し、適期刈あるいは遅刈ではチモシーまたはオ-チャードが優占となり、かつ低地圃で豆科率が高く、乾物中の飼料価も高地圃より勝ることが明らかになった。3.冷害年以降も飼料作物の養分価や品質を追跡調査した結果、1993年の異常気象は、粗飼料品質を著しく低落させていたことが分かり、中でもイネ科乾草の粗タンパク質低下と牧草サイレ-ジ養分価低下が明かであったことが判明した。4.バ-ク材を使用した有材心土破砕の効果試験を行った結果、心土破砕ピッチ60cmの施工区が、降雨後機械作業を可能にする地下水位40cmに到達する時間が最も短く、かつ乾燥密度の変動も最小であるなど、有効性を確認した。
KAKENHI-PROJECT-06451127
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06451127
カルボン酸添加によりガスクロマトグラフィーの感度を上昇させる方法の研究
極性化合物をガスクロマトグラフィー質量分析計(GC-MS)にて測定すると吸着による感度低下を招くため、通常は誘導体化処理を行ってから測定する。我々は、この吸着が注入口のライナーに充填されているグラスウール上で主に起きていることをつきとめ、誘導体化をしなくても溶媒にカルボン酸(ギ酸・酢酸)を添加すると吸着が減少することを見出した。添加するカルボン酸は3%付近で感度・再現性ともに良い値を示し、この迅速・簡便な方法が定量性も十分であることを証明した。極性化合物をガスクロマトグラフィー質量分析計(GC-MS)にて測定すると吸着による感度低下を招くため、通常は誘導体化処理を行ってから測定する。我々は、この吸着が注入口のライナーに充填されているグラスウール上で主に起きていることをつきとめ、誘導体化をしなくても溶媒にカルボン酸(ギ酸・酢酸)を添加すると吸着が減少することを見出した。添加するカルボン酸は3%付近で感度・再現性ともに良い値を示し、この迅速・簡便な方法が定量性も十分であることを証明した。睡眠鎮静薬として用いられ中毒症例も報告されているバルビツール酸類のガスクロマトグラフィー・マススペクトロメトリー(GC-MS)分析は吸着による感度低下を招くが、我々は溶媒にギ酸を添加することによって吸着を減らし感度を上昇させることに成功した。まず、ギ酸または酢酸及びその濃度、注入口温度の測定条件を変化させ分析法の最適化を行った。そして、3%ギ酸(溶媒である酢酸エチル中のギ酸濃度),注入口温度300°Cを選択した。その条件化で行ったアモバルビタール,フェノバルビタール血清抽出物の検量線を作成し、定量分析の正確さを調べた。この意図的に添加されたギ酸同様、抽出によって生じた血清由来の夾雑物もバルビツール酸の感度上昇に寄与することが以前の研究や予備実験により予測できたため、定量の正確さを調べる上でこのマトリックス効果を考慮する必要があると判断し、抽出により生じるマトリックスが大きく異なる2つの抽出法(固相抽出,液-液抽出)も比較検討した。実験結果として、3%ギ酸添加はアモバルビタールとフェノバルビタールの定量を正確で再現性の良いものにすることが証明できた。これは2つの異なる抽出法どちらでも同様の結果が得られた。この証明は、Food and Drug Administrationガイダンスの基準を参照して行った。バルビツール酸類分析の従来からある方法としては誘導体化法が良く用いられているが、化学反応を行うため実験時間が長いことや、その反応が定量的に進行しているかに注意を払う必要があった。このギ酸添加法は、実験時間を大分短縮することができ、正確な定性・定量分析であり、感度も十分満足できるものである。今後、法医学や臨床における薬物分析に好んで用いられると思われる。ガスクロマトグラフィー(GC)の測定において極性のある化合物は吸着による感度低下を引き起こす。そこで、我々は溶媒に酢酸を添加し、対象物質の吸着を減らす方法を提案した(Acetic acid improves the sensitivity of theophylline analysis by gas chromatography-mass spectrometry. J. Chromatogr. B 2007; 846, 240-244)。本研究においては、その方法がバルビツール酸類の定量分析を行うに十分な方法である証明を行った。添加するカルボン酸としてギ酸を用いた。吸着性物質の測定において最も注意を払わなければならないのは、抽出の残留物である夾雑物が感度を上げる効果である。夾雑物が異なってもカルボン酸添加法を用いれば、感度・再現性を向上させることができることを示すために、夾雑物がより少なく抽出される固相抽出と多く抽出される液-液抽出の2通りで実験を行った。最終溶媒が酢酸エチルの場合、より夾雑物の多い液-液抽出の方が良い感度を示した。しかし、溶媒を3%ギ酸酢酸エチルにすると、どちらの抽出でもほぼ同じ良好なレスポンスが得られ、感度・再現性が改善された。この分析法の正確さ・精度を調べたところ、固相抽出、液-液抽出のどちらでも良い値を示した。その他、検量線の相関係数や定量限界なども調べ、論文(Determination of amobarbital and phenobarbital in serum by gas chromatography-mass spectrometry with addition of formic acid to thesolvent. J. Chromatogr. B 2008; 869, 9-15)を発表した。GC-MSで誘導体化をせずに感度・再現性を上昇させる新たな分析法を確立することができた。
KAKENHI-PROJECT-19590669
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19590669
振動分光法によるレ-ザ-・デポジション素過程の解明
金属カルボニル等の有機金属錯体を用いたレ-ザ-・デポジション法(あるいは、レ-ザ-CVD)は、レ-ザ-の高い集光性を利用し、半導体基板に直接サブミクロン・オ-ダ-の回路パタ-ンを作製しうることから、次世代極微細デバイス作製技術の一つとして多くの注目を集めている。このプロセスは本質的には表面が関与した光化学反応過程であり、高度に制御された金属-半導体界面を作製するためには、プロセスを支配している化学反応素過程を明らかにする必要がある。本研究は、表面での化学反応過程の解明にきわめて有効な高度感振動分光法(高分解能電子エネルギ-損失分光法:HREELS)を用いて、表面での金属カルボニルの光分解過程を追超し、光分解反応の素過程、光反応における表面の役割、分解後の金属と半導体基板との界面形成過程を解明しようとするものである。本研究ではまず、強力紫外光源の製作をおこなった。これは、大出力水銀-キセノン・ア-クランプおよび石英レンズ、紫外フィルタ-等の光学系からなるもので、2001000nmの範囲内の任意の波長において幅50100nm、光出力1001000mWの準単色光が得られるものである。これは、連続光源であるが若干の改変により、容易にパルス化することもできる。現在、この紫外光源を超高真空表面解析装置に接続し、表面光化学反応の実験を進めている。本研究における界面での反応現象のミクロ過程解析を通して、半導体マイクロエレクトロニクスの格段の発展の為の金属-半導体界面の化学的基礎知見が得られるものと期待される。金属カルボニル等の有機金属錯体を用いたレ-ザ-・デポジション法(あるいは、レ-ザ-CVD)は、レ-ザ-の高い集光性を利用し、半導体基板に直接サブミクロン・オ-ダ-の回路パタ-ンを作製しうることから、次世代極微細デバイス作製技術の一つとして多くの注目を集めている。このプロセスは本質的には表面が関与した光化学反応過程であり、高度に制御された金属-半導体界面を作製するためには、プロセスを支配している化学反応素過程を明らかにする必要がある。本研究は、表面での化学反応過程の解明にきわめて有効な高度感振動分光法(高分解能電子エネルギ-損失分光法:HREELS)を用いて、表面での金属カルボニルの光分解過程を追超し、光分解反応の素過程、光反応における表面の役割、分解後の金属と半導体基板との界面形成過程を解明しようとするものである。本研究ではまず、強力紫外光源の製作をおこなった。これは、大出力水銀-キセノン・ア-クランプおよび石英レンズ、紫外フィルタ-等の光学系からなるもので、2001000nmの範囲内の任意の波長において幅50100nm、光出力1001000mWの準単色光が得られるものである。これは、連続光源であるが若干の改変により、容易にパルス化することもできる。現在、この紫外光源を超高真空表面解析装置に接続し、表面光化学反応の実験を進めている。本研究における界面での反応現象のミクロ過程解析を通して、半導体マイクロエレクトロニクスの格段の発展の為の金属-半導体界面の化学的基礎知見が得られるものと期待される。
KAKENHI-PROJECT-01650513
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01650513
光機能界面における環境負荷物質のビタミンB12駆動型超効率分解機構
1)酸化チタンの表面にビタミンB12錯体を固定化したハイブリッド触媒を作製し、光駆動型脱塩素化反応の開発に成功した。本反応は、酸化チタン伝導帯の励起電子の還元力(-0.5 vs NHE)を利用しビタミンB12のCo(I)種を生成させ、基質となる有機塩素化合物への求核反応によりアルキル錯体が中間体として生じ、続いてアルキル錯体のコバルト-炭素結合の光開裂により触媒であるCo(II)錯体が再生すると推定される。2)コバルト錯体として、ポルフィリン及びフタロシアニンを用いて上記と同じ反応を行った場合は、触媒の耐久性及びCo(II)/Co(I)の還元電位に問題があり、ほとんど反応は進行しなかった。従って、天然由来のビタミンB12錯体(コリン錯体)が最も本ハイブリッド系に適した触媒であると言える。3)本ハイブリッド触媒を用い、種々の物質変換反応を行った。様々な基質を用いた場合、いずれも効率良く、ラジカル種を中間体とする物質変換反応が進行した。未修飾の酸化チタンを用いた場合や、ビタミンB12錯体に光照射しただけでは反応は全く進行せず、酸化チタンとビタミンB12の複合効果により反応が進行していると言える。4)これらの反応は、従来のBu3SnH/AIBN法の代替法となり、有毒なスズ化合物を必要としないクリーンな光エネルギーを利用した環境適合型物質反応として有望である。5)本ハイブリッド触媒の有効利用を目指し、ガラス基板上への固定化を行った。ビタミンB12錯体は約2x10^<-9>mol/cm^2程度の固定化率でガラス基板上に固定化されていた。ハイブリッド触媒が3次元的に積層されたために、単位面積当たりの固定化量は粉末系の100倍近く向上した。1)二酸化チタンのナノ粒子にビタミンB12誘導体を固定化したB12-TiO_2ハイブリッド触媒の創製に成功した。このB12-TiO_2ハイブリッド触媒について、MSスペクトル、IRおよび電子スペクトルならびに電子顕微鏡観察により表面分析し、ビタミンB12誘導体が10^<-11>mol/cm^2オーダーの密度で固定化されていることを明らかにした。2)上記で作成したB12-TiO_2ハイブリッド触媒をエタノール中で紫外線照射すると、ビタミンB12の中心コバルトがCo(I)に還元されることを見出した。これは、二酸化チタンに紫外線照射した際に生成した正孔と励起電子のうち、励起電子が還元作用を示したものと推察される。一方、正孔は溶媒のエタノールを酸化したものと推察される。この現象は電子スペクトルおよびESRスペクトルにより観測された。3)エタノール中にB12-TiO_2ハイブリッド触媒を懸濁し、有機塩素化合物の1つであるDDTを添加して紫外線照射した。DDTとビタミンB12のCo(I)が反応し、脱塩素化反応が起こり、DDTの分解が観測された。本触媒は、有機ハロゲン化合物の脱ハロゲン化反応に有効であることが明らかになった。4)B12-TiO_2ハイブリッド触媒は、有機ハロゲン化合物の分解反応のみならず、有機合成の触媒としても有効である。基質として、β位にエステル基とフェニル基を有する臭化物を用いて反応したところ、単純還元体とフェニル基転位体が生成した。生成物比は溶媒の種類により異なり、水素原子供与能の小さなベンゾニトリル中ではフェニル基転位体が主生成物として得られた。5)上記のように、B12-TiO_2ハイブリッド触媒は紫外線照射により、有機ハロゲン化物の分解および官能基の1,2-転位反応の触媒として働き、環境適合型触媒として有望である。1)酸化チタンの表面にビタミンB12錯体を固定化したハイブリッド触媒を作製し、光駆動型脱塩素化反応の開発に成功した。本反応は、酸化チタン伝導帯の励起電子の還元力(-0.5 vs NHE)を利用しビタミンB12のCo(I)種を生成させ、基質となる有機塩素化合物への求核反応によりアルキル錯体が中間体として生じ、続いてアルキル錯体のコバルト-炭素結合の光開裂により触媒であるCo(II)錯体が再生すると推定される。2)コバルト錯体として、ポルフィリン及びフタロシアニンを用いて上記と同じ反応を行った場合は、触媒の耐久性及びCo(II)/Co(I)の還元電位に問題があり、ほとんど反応は進行しなかった。従って、天然由来のビタミンB12錯体(コリン錯体)が最も本ハイブリッド系に適した触媒であると言える。3)本ハイブリッド触媒を用い、種々の物質変換反応を行った。様々な基質を用いた場合、いずれも効率良く、ラジカル種を中間体とする物質変換反応が進行した。未修飾の酸化チタンを用いた場合や、ビタミンB12錯体に光照射しただけでは反応は全く進行せず、酸化チタンとビタミンB12の複合効果により反応が進行していると言える。4)これらの反応は、従来のBu3SnH/AIBN法の代替法となり、有毒なスズ化合物を必要としないクリーンな光エネルギーを利用した環境適合型物質反応として有望である。5)本ハイブリッド触媒の有効利用を目指し、ガラス基板上への固定化を行った。ビタミンB12錯体は約2x10^<-9>mol/cm^2程度の固定化率でガラス基板上に固定化されていた。ハイブリッド触媒が3次元的に積層されたために、単位面積当たりの固定化量は粉末系の100倍近く向上した。
KAKENHI-PROJECT-17029050
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17029050
大腸菌人工染色体トランスジェニックマウスを用いたGATA2遺伝子制御解析
本研究では、大腸菌人工染色体(BAC)トランスジェニックマウスを用いることにより、Gata2遺伝子上流77 kbという遠距離に存在するGATA因子結合領域が造血前駆細胞におけるGata2遺伝子のエンハンサーであることを示した。3q21q26症候群にみられる染色体転座/逆位において、このエンハンサーは原がん遺伝子であるEVI1遺伝子に近接する。そこで、このエンハンサーのEVI1遺伝子活性化における貢献を解析するため、3q21q26転座/逆位アリルを再現するBACトランスジェニックマウスを作製し、解析中である。本研究では、大腸菌人工染色体(BAC)トランスジェニックマウスを用いることにより、Gata2遺伝子上流77 kbという遠距離に存在するGATA因子結合領域が造血前駆細胞におけるGata2遺伝子のエンハンサーであることを示した。3q21q26症候群にみられる染色体転座/逆位において、このエンハンサーは原がん遺伝子であるEVI1遺伝子に近接する。そこで、このエンハンサーのEVI1遺伝子活性化における貢献を解析するため、3q21q26転座/逆位アリルを再現するBACトランスジェニックマウスを作製し、解析中である。本研究では、大腸菌人工染色体(BAC)トランスジェニックマウスを用いることにより、GATA2遺伝子上流77kbに存在するエンハンサー領域がGATA2遺伝子を活性化するメカニズムを明らかにすることを目的としている。本年度は、-77領域をloxP配列ではさんだBACトランスジェニックマウスを解析することにより、-77領域が造血前駆細胞においてはGATA2遺伝子のエンハンサーとして働いているが、神経におけるGATA2発現細胞ではエンハンサーとして機能していないことを明らかにした。23年度には、造血細胞および神経細胞におけるクロマチン免疫沈降解析を行い、細胞特異性を決定する機構を明らかにする。さらに、-77kb領域の下流には3q21q26症候群(骨髄異形成症候群/白血病の一種)の切断点が集中していることから、-77kb領域が転座または逆位によってEVI1遺伝子と近接することにより、EVI1遺伝子の発現に影響を与えている可能性が考えられた。そこで、この転座/逆位を再現するBACマウスを作製し、切断点近傍に位置するEVI1遺伝子の活性化に対する-77領域の機能を明らかにする試みを行っている。本年度はBAC結合技術を用いて、3q21q26症候群にみられる染色体逆位を再現するBACクローンの作製に成功した。また、このクローンを用いてトランスジェニックマウスを作製した。このマウスの解析を23年度に行う予定である。網羅的なゲノム解析により、疾患の発症につながるDNA変異が遺伝子の制御領域に次々と発見されている。しかし一方で、その変異による疾患発症機構の解析方法は、未だ十分に開発されていない。本研究では、200kb程度の広範囲なヒトゲノムDNA領域をマウスに導入することのできる大腸菌人工染色体(BAC)トランスジェニックマウスを用いることにより、動物個体レベルでヒト遺伝子制御機構の解析方法を確立することを目的とした。ヒトの骨髄異形成症候群および急性骨髄球性白血病の約2-3%には、3番染色体長腕21領域(3q21)と26領域(3q26)との間の転座または逆位がみられる。これは3q21q26症候群とよばれる。この転座または逆位アリルでは、3q26側のEVI1遺伝子の発現が活性化しており、このことが病態の原因であることがわかっている。この切断点は、前年度に我々がその機能を明らかにしたGATA2遺伝子の77kbエンハンサーの下流に集中していた。そこで、転座または逆位をおこしたアリルでは、77kbエンハンサーがEVI1遺伝子に近接することによって、EVI1遺伝子の転写を活性化しているのではないかという仮説を立てた。これを検証するために、3q21と3q26をそれぞれ含むふたつのBACを結合し、逆位を再現するBACクローンを作製した。このクローンを用いてトランスジェニックマウスを作製したところ、このマウスの造血細胞においてEVI1遺伝子の高発現がみられた。またこのマウスは貧血、血小板増多、また造血組織内の造血幹細胞および造血前駆細胞の増加といった、ヒト3q21q26症候群を再現する表現型を示した。今後、このBACクローンから77kbエンハンサーを除いた構築を作製し、77kbエンハンサーの貢献を明らかにする予定である。
KAKENHI-PROJECT-22790269
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高齢者サービスのマンパワー対策と労働市場の多角的分析
本研究は高齢者福祉サービスの現状を把握し、その高齢者介護ニーズに対して、福祉労働市場がどのようになっているか分析することを目的とする。高齢者福祉サービスは、サービスを必要とする事業者側からのニーズと、福祉専門職が専門性を発揮し福祉労働市場にマンパワーの専門性を提供する側の2者からなる。しかし、民間サービスと異なる点は、サービス単価と国の政策と関連性があることが明らかにされた。本研究は、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)及び在宅サービス事業所にアンケートを通して、福祉職員の退職理由とその就労形態の有無などについて調査分析を行うことを目的とする。具体的には以下の3つの柱を明らかにする。(1)ゴールドプラン以降の福祉マンパワー対策について、その政策の遂行と評価分析を行う。(2)福祉マンパワー対策が雇用確保にどのような効果をもたらしているか考察する。(3)介護福祉士奨学金や退職手当共済法の法整備と、その変遷についての分析を行い、福祉マンパワー対策の実態分析を行う。本研究は高齢者福祉サービスの現状を把握し、その高齢者介護ニーズに対して、福祉労働市場がどのようになっているか分析することを目的とする。高齢者福祉サービスは、サービスを必要とする事業者側からのニーズと、福祉専門職が専門性を発揮し福祉労働市場にマンパワーの専門性を提供する側の2者からなる。しかし、民間サービスと異なる点は、サービス単価と国の政策と関連性があることが明らかにされた。2007年度は、以下の項目を中心に研究を遂行した。社会福祉専門職離職に関する先行研究の分析を「平成18年度・介護労働安定センター」の調査をもとに実施した。同調査と「賃金・労働時間等実態調査報告書」(平成19年度:静岡県商工労働部編)を比較検討し両者の分析を実施した。さらに社会福祉職退職者の中から、訪問介護員17名に面接調査を実施し退職の主たる理由等の聞き取りを実施した。1,「介護労働安定センター」の調査と「賃金・労働時間等実態調査報告書」の分析から、訪問介護系に離職率が高く、その割合は25%以上を占めている。2,離職が高い年齢別では、20歳代が一番高い傾向を示している。3,退職者による面接聞き取り調査から、退職の主たる理由に「夜勤の難しさ」「育児のこと」「変則勤務の難しさ」をそれぞれあげている。4,退職者の共通していた点は、育児等が一段落したら「福祉職」につきたいと考えている者の割合は、80%を超えている。以上の2つの調査から、離職に至った経緯は様々であるが、女性に関する「育児」「家庭の事情」等を直接の理由にする者の割合は高く、「夜勤等がなく日勤のみであれば、退職せず結婚後も就労した」と答えている者の割合は高い。今後の予定では平成20年度に社会福祉事業者側に「雇用に関する問題点」「求人情報の出し方」「雇用対策」全般について面接調査の予定である。2008年度は、これまでの筆者の介護労働の現状をまとめた論文を、科研費出版助成を受け刊行した。さらに、1,社会福祉専門職離職に関する先行研究を基に、施設職員・退職者について13名面接を実施し退職後の追跡調査を実施した。2,施設管理者に対して、職員の定着状況・求人内容休の聞き取りを実施した。この両者の調査から、以下のことが明らかにされた。(1)介護労働の求人状況は、静岡県東部及び西部の郊外にいくに従い、施設では職員確保に大変苦慮している。(2)上記の点は、介護福祉実習や社会福祉士実習を実施した際、実習生の8割は施設への就職を強く勧められている。中には、実習生の実習に要する交通費を全額支給している施設もみられた。(3)退職者による面接聞き取り調査より、居宅事業所においては8割以上の者が退職希望したが、退職しにくい現状が明らかにされた。(4)退職理由に共通していた点は、「育児や家事」「在宅介護」を主たる理由にあげていた。(5)その他として、ヘルパー業務から「社会福祉士養成校」へ進学した者もいた。以上の研究結果から、施設では介護職員の確保に大変苦労している現状にある。この状況は、介護保険後、益々深刻になっていることが明らかにされた。離職に至った経緯は様々であるが、女性に関する「育児」「家庭の事情」等を直接の理由にする者の割合は高い。また、施設の理事長・施設長が直接介護福祉士養成機関へ求人活動に出ている現状下にある。これまでの調査から、福祉マンパワーの現状は地域差があることが明らかにされた。2009年ではこれまでの筆者の介護労働の現状をまとめた論文「日本における終末ケアマネジメントの研究」論文を科研費出版助成を受け刊行した。(課題番号:19530549)さらに、1,社会福祉専門職離職に関する先行研究を基に施設長に対して10名面接を行い退職理由などの調査を実施した。2,施設退職者に対して、職員の定着状況・求人内容の聞き取りを実施した。この両者の調査から、以下のことが明らかにされた。(1)介護労働の求人状況は、静岡県東部及び西部の郊外にいくに従い、施設では職員確保に大変苦労している状況下にある。(2)上記の点は、介護福祉実習や社会福祉士実習指導で施設を訪問した際、実習生の8割は施設への就職を強く勧められている。中には、実習生の実習に要する交通費を全額支給している施設もみられた。
KAKENHI-PROJECT-19530549
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高齢者サービスのマンパワー対策と労働市場の多角的分析
多くの実習生が、施設への就職を薦められている。(3)退職者による面接聞き取り調査より、居宅事業所においては退職希望した時8割以上の者が退職しにくい現状であったことが明らかにされた。(4)退職理由に共通していた点は、女性の福利厚生面が極めて不十分でありその対策が乏しい(5)「(4)」に関して、具体的退職理由として「育児や家事」「在宅介護」を主たる理由にあげている。平成23年度は、高齢者サービスのマンパワー対策について、全国の状況と静岡県内の状況について分析を行った。その結果、高齢者分野で在宅系介護職場の有効求人倍率は近年高騰している。しかし超高齢社会を支えるマンパワーの養成が福祉離れ傾向にある。全国介護福祉士養成校の2009年度入学者定員は定員の45.8%しか入学していない状況下にある。このような状況下で、静岡県内の求人と求職の関係を分析するといずれの月も求職より求人数が高い。・求人数:2011年1月385件、2月250件、3月316件。・求職数2011年1月78件、2月167件、3月114件。■「高齢者施設の従業員の状況」では、全国:「やや不足」3.5%、「不足」10.6%、「やや不足」22.7%。静岡県:「やや不足」3.5%、「不足」11.8%、「やや不足」26.8%。全国平均では、36.8%が職員不足状況にある(介護サービス施設・事業所調査)静岡県では52.1%職員不足状況にあり、平均不足人数は3.2%である。■2007年介護職の静岡県内の平均年収40.7歳:勤続12年3,308,000円(年)■本研究から、今後の福祉職分野・魅力ある職場に向けての取り組みとして、以下の点が考えられる。(1)基本的給与を上げ、給与体系を透明化し開示する。(2)職員の勤務条件、処遇の向上、(3)資格手当を支給する全国的に介護福祉現場は人材不足はますます深刻である。2007年社会福祉法改正で「サービスの質の向上」「利用者の利益の保護」が福祉理念に掲げられているが、介護現場が職員数の確保が難しい状況で質の維持もままならない状況下にある。上記のことをふまえ、本研究を通して今後社会全体で「介護職」が魅力ある職場にするためには、職員の経営参画があげられ、今後の継続課題と筆者は考えている。
KAKENHI-PROJECT-19530549
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途上国教育における「リージョナル」の探求-国際的政策枠組みの理論化に向けた挑戦
本研究の成果は、政治経済社会のグローバリゼーションによって、従来国家(ナショナル)のレベルにおいて主な政策決定がなされてきた教育においても、地域的(リージョナル)なレベルでの政策の立案や実施の重要性が増しつつあることを明らかにしたことである。これらの成果は、様々な国際会議や出版を通じて、日本や国際社会の国際教育交流・協力・連携の実践・政策過程に対して、実際にインプットされた。本研究の成果は、政治経済社会のグローバリゼーションによって、従来国家(ナショナル)のレベルにおいて主な政策決定がなされてきた教育においても、地域的(リージョナル)なレベルでの政策の立案や実施の重要性が増しつつあることを明らかにしたことである。これらの成果は、様々な国際会議や出版を通じて、日本や国際社会の国際教育交流・協力・連携の実践・政策過程に対して、実際にインプットされた。本研究は、グローバル(ユネスコ、世界銀行等)、リージョナル、ナショナル(教育省、内務省等)の教育政策過程において、これまでほとんど研究されてこなかった「リージョナル」レベルに焦点を当て、研究を行うことを目的としている。本研究では、特にアフリカとアジアの2地域に焦点を当て、多種多様な形態を持つリージョナル機関を類分化し、そのナショナルレベルとの関係性を分析する。そして、アフリカ・アジア間で比較、検討を実施した後、国際開放体系下の教育政策過程の理論化を試みる予定である。本年度は初年度にあたり、関係者との連絡調整を行い、研究代表者が既に進めていたアジアに関するフレームワークの研究の対象機関と情報収集項目を確認した(対象機関:アジア開発銀行、東南アジア文部大臣機構、ASEAN大学ネットワーク、ユネスコ・アジア太平洋教育事務局、アジア太平洋経済協力会議、環太平洋大学協会、など)。次いで、同様のフレームワークであアフリカにおけるリージョナルフレームワークを分析するため、現地でフィールド調査を行った(対象機関:アフリカ開発銀行、ユニセフ、アフリカ開発協会)。また、一国の視点からリージョナル機関との関係を調査するため、モルディブ・タイでの調査を実施した。現在は、関連するリージョナル機関のインターネット情報の収集と整理をしており、目的やメンバーシップ、事業などの観点からの分類・分析を進め、グローバル及びナショナルな機関との対比の上でリージョナル機関の機能や特性についての理論的考察を行っている。本研究は、グローバル(ユネスコ、世界銀行等)、リージョナル、ナショナル(教育省、内務省等)の教育政策過程において、これまでほとんど研究されてこなかった「リージョナル」レベルに焦点を当て、研究を行うことを目的としている。本研究では、特にアフリカとアジアの2地域に焦点を当て、多種多様な形態を持つリージョナル機関を類分化し、そのナショナルレベルとの関係性を分析する。そして、アフリカ・アジア間で比較、検討を実施した後、国際開放体系下の教育政策過程の理論化を試みている。本年度は2年度目にあたり、JICA研究所との共同で、研究代表者が既に進めていたアジアにおける指導的大学の国際化に関するサーベイ調査を基に、上記のような理論化のための実証研究を行った。また、アジアに関するフレームワークの研究のために、アジア開発銀行、東南アジア文部大臣機構、ASEAN大学ネットワーク、ユネスコ・アジア太平洋教育事務局におけるインタビュー調査を行った。あわせて、東南アジア文部大臣機構等高等教育地域センター及びJICA研究所とともにバンコクにおいて国際ワークショップを行い、上記機関の代表者を交えて将来のアジアにおける地域的教育政策フレームワークの確立についても議論を行った。また、一国の視点からリージョナル機関との関係を調査するため、マラウィ・モルディブ・タイでの調査を実施した。以上の成果は、国際開発学会、日本比較教育学会、北米比較国際教育学会、世界比較教育学会連合総会などの様々な場で、発表された。本研究は、グローバル(ユネスコ、世界銀行等)、リージョナル、ナショナル(教育省、内務省等)の教育政策過程において、これまでほとんど研究されてこなかった「リージョナル」レベルに焦点を当て、研究を行うことを目的としている。本研究では、特にアフリカとアジアの2地域に焦点を当て、多種多様な形態を持つリージョナル機関を類分化し、そのナショナルレベルとの関係性を分析した。そして、アフリカ・アジア間で比較、検討を実施した後、国際開放体系下の教育政策過程の理論化を試みた。本年度は最終年度にあたり、JICA研究所との協力で行った東アジアの指導的大学に対する質問紙調査のまとめを行い、またアジア開発銀行、東南アジア文部大臣機構などでの調査を行った。一方、アフリカに関しては、アフリカ開発銀行やアフリカ連合、アフリカ大学連合などでの調査を基に、早稲田で開催されたアフリカ教育研究フォーラムにおいて、「アフリカにおけるリージョナルガバナンス」に関するシンポジウムを開催した。また、2012年3月にマレーシア・ペナンで開催された「教育開発のためのアフリカ・アジア大学間対話」において、アフリカ地域とアジア地域を比較するだけでなく、地域ガバナンス相互での地域間協力・交流の可能性について協議を行った。これらの結果は、勁草書房から本年6月に刊行される『アジアの高等教育ガバナンス』及び、Macmillan Palgraveから5月に刊行される『Mobility and Migration of Asian Pacific Higher Education』に掲載される予定である。
KAKENHI-PROJECT-21653094
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21653094
膀胱癌における4N1K-peptideの臨床病理学的意義と進展抑制効果の研究
まず4N1k-peptideを含むTSP-1やTSP-2の生理学的・病理学的特徴や予後との関連を総説として発表した。さらに、癌組織における血管新生の評価方法に注目し、上部尿路癌では、CD31やCD34を用いたmicrovessel density (MVD)よりもCD105で評価したMVDの方が、より病理学的特徴や予後を反映し、同様の結果は前立腺癌組織でも認められることを報告した。次に、癌細胞間質に注目した検討を行ない、TWIST、hemeoxygenase (HO)-1、human antigen-R (HuR)の泌尿器癌における病理学的役割を報告し、本研究の遂行に有用な情報を得た。(血管新生の組織における半定量化に関する検討)検討対象である4N1K-peptideの持つ最も重要な役割は血管新生の抑制である。一方、組織検体における血管新生の定量化については議論が多く、どのような抗体を用いた方がより病態を反映した評価ができるのかもよくわかっていない。そこで我々は、まず膀胱粘膜と同じ尿路上皮であり、その組織が筋層を含めて採取される上部尿路癌で代表的な血管内皮細胞に発現するCD31、CD34、CD105を用いて検討した。その結果、CD105を用い評価した血管新生がその病期や予後と関連することを見出し報告した。このことは、本研究をより正確で臨床的に意義の高いものとする上で重要だと考えられた。(血管新生促進因子の解析)血管新生は、今回の研究対象である4N1K-peptideのような抑制因子と、vascular endothelial growthfactor(VEGF)やcyclooxygenase(COX)-2といった促進因子のバランスによって決まる。そこで我々は、本研究の進行と同時にこれらの血管新生促進因子の発現および機能制御に重要な役割を果たすhuman antigen-R(HuR)の膀胱癌における意義を検討した。その結果、HuRがこれらの分子の発現を制御していることが膀胱癌患者の組織で明らかとなり、4N1K-peptideが最終的に果たす意義を理解する上で重要な情報となった。また、膀胱癌の検討を進めるに当たり、他の泌尿器癌における血管新生の制御や役割を解析し有益な情報を得た。これらの結果は今後の本研究における網羅的検討に有用である。(膀胱癌細胞における4N1K-peptideの発現)現在、膀胱癌患者の病理検体における4N1K-peptideの発現を免疫染色学的手法で検討し、その抗体の特異性を確認した。また、細胞における発現をwestern blotで確認できており、さらに細胞内局在を特定する検討に入った。これらに検討および研究成果は、今後、in vivo、in vitroと複合的な研究を進めていく上で必須である。まず、4N1K-peptideの持つ病理学的役割や臨床的意義について、尿路癌のcell lineであるT24において検討を進めた。その結果、T24は4N1K-peptideを発現していることがわかったものの、このpeptideを含むthrombospondin(TSP)-1の発現は確認できなかった。そこで、4N1K-peptideの配列を含むTSP-2について検討したところ、従来4N1K-peptideとの関連が指摘されてきたTSP-1よりもTSP-2の方が、臨床病理学的に関連する可能性が示唆された。そこで、同様の検討をヒトの膀胱癌組織で行なったところ、やはりTSP-1よりもTSP-2との関連が示唆される結果であった。これらの関係や臨床病理学的な意義については、総説として海外誌に投稿し掲載された。次に、4N1K-peptideを培地に加えることでの膀胱癌のcell lineにおける変化を検討したところ、増殖抑制、アポトーシス誘導ともに有意な変化は見られなかった。さらに詳細に検討を進めると、4N1K-peptideは血清の存在下では容易に分解されることが明らかとなり、単純に培地へ混入して作用させることでは、その生物学的活性が発揮されないと思われた。そこで、我々は、細胞膜の透過性を利用した方法で直接作用させること、より大きな分子であり4N1K-peptide配列を含むTSP-1やTSP-2を培地内に混入させるなどの方法を検討している。現在のところ、その効率的に作用させる方法のさらなる改良を行ない、その具体的な効果について解析中である。まず4N1k-peptideを含むTSP-1やTSP-2の生理学的・病理学的特徴や予後との関連を総説として発表した。さらに、癌組織における血管新生の評価方法に注目し、上部尿路癌では、CD31やCD34を用いたmicrovessel density (MVD)よりもCD105で評価したMVDの方が、より病理学的特徴や予後を反映し、同様の結果は前立腺癌組織でも認められることを報告した。次に、癌細胞間質に注目した検討を行ない、TWIST、hemeoxygenase (HO)-1、human antigen-R (HuR)の泌尿器癌における病理学的役割を報告し、本研究の遂行に有用な情報を得た。現在、膀胱癌患者および膀胱粘膜と同様の性格を持つ上部尿路癌患者における、4N1K-psptideの臨床病理学的意義の解析が進んでいる。同時に、マウスモデルおよび培養細胞における研究も順調に進行しており、当初の予定通りに総合的な進行ができている。培養細胞における4N1K-peptideの役割が、その細胞の性格で異なることがわかってきており、さらに多様な細胞で検討を進める。
KAKENHI-PROJECT-25462487
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25462487
シナプス前性タンパク質のリン酸化によるシナプスおよび脳機能の制御機構の解明
SNAP-25はシナプス前部に発現するタンパク質で、神経伝達物質の放出に必須な役割を果たしている。SNAP-25のSer187はプロテインキナーゼCによってリン酸化を受けるが、その機能的な役割については明らかではなかった。今回プロテインキナーゼCによる神経伝達物質の放出制御にそのリン酸化が必須であり、ストレス応答などの脳機能や、てんかん発作など疾患に深く関わっていることを明らかにした。SNAP-25はシナプス前部に発現するタンパク質で、神経伝達物質の放出に必須な役割を果たしている。SNAP-25のSer187はプロテインキナーゼCによってリン酸化を受けるが、その機能的な役割については明らかではなかった。今回プロテインキナーゼCによる神経伝達物質の放出制御にそのリン酸化が必須であり、ストレス応答などの脳機能や、てんかん発作など疾患に深く関わっていることを明らかにした。PKCによるリン酸化部位であるSer187をAlaに置換したSNAP-25変異マウスはさまざまな興味深い行動異常を示す。SNAP-25は自律神経終末や内分泌細胞にも発現し、さまざまな末梢機能の制御にも関わっている。本年度は摂食やエネルギー代謝の異常を中心に解析を行った。生後1年くらいのホモマウスは痩せており、平均体重は雄で野生の6割程度でしかなかった。野生型マウスの体重は生後15週位までに急激に増加した後もゆっくりと増加するが、変異マウスは生後の急激な体重増加が野生型より小さいのみならず、体重増加が15週付近で停止するという際だった特徴を示した。ホモ変異体では体脂肪の蓄積が極めて貧弱で、下腹部や卵巣や腎臓の周囲の内臓脂肪の発達が悪いことが明らかとなった。この様な内臓脂肪の蓄積が見られない原因を探るため、代謝ケージに入れて飼育を行ったところ摂食や飲水をほとんどしなくなってしまい、1週間以内に実験に用いた全個体が死亡した。この様な拒食傾向は通常の飼育ケージでも見られ、個別飼育した後のしばらくはケージ交換の様な些細な刺激で拒食に陥ることが分かった。ホモ変異体はしばしば自傷行為を行うほか、痙攣発作を起こすことも観察された。以上の結果は、SNAP-25変異マウスではストレス脆弱性が亢進しており、SNAP-25のリン酸化がHPA-axisの機能に重要な役割をはたしていることを唆している。ケージ交換に慣れた後には、ホモ変異体の平均の摂食量は野生型と差が無くなったが、飼育日数と共に体重差が大きくなっていった。以上のことから、ホモ変異体ではエネルギー代謝にも何らかの異常が生じていることが考えられた。SNAP-25にはスブフィジングによって生じたSNAP-25aおよびSNAP-25bの2種類のアイソフォームが存在する。これらのアイソフォームの脳内発現やリン酸化による機能調節の機構の違いを明らかにするため特異抗体を作成し解析を行った。リコンビナントタンパク質を用いて特異性を調べたところ、得られた抗体は他のアイソフォームとは互いに交差製を示さないことが確認された。リコンビナントタンパク質を基準として、成体マウス海馬での発現量を定量的イムノブロット法で調べたところ、SNAP-25bの発現量はSNAP-25aや、様々な組織に普遍的に発現するSNAP-23の10倍であることが明らかとなった。細胞分画法で調べると、SNAP-25bやSNAP-23の膜分画に多く含まれるのに対し、SNAP-25aのかなりの割合が、可溶性分画であるLS2分画に来ることが明らかとなった。PC12細胞を用いて細胞内局在を調べたところ、SNAP-25bは細胞膜に局在するのに対し、SNAP-23やSNAP-25aは細胞質に存在することが明らかとなった。以上のことからSNAP-25の各アイソフォームは脳内で異なる局在を示し、異なる機能を担っていることが明らかとなった。SNAP-25のノックインマウスのストレス脆弱性の機構を調べるため、拘束ストレスを加べたところ、野生型との間に顕著な差が見られないことが明らかとなった。さらに海馬のグルココルチコイドレセプターの発現量をイムノプロット解析で調べたが、やはり顕著な差は認められなかった。以上のことから、ストレス脆弱性の原因はHPA軸の上流にあることが推察された。SNAP-25はシナプス膜に存在するt-SNAREタンパク質で、開口放出によるシナプス前部からの神経伝達物質遊離に必須な役割を果たしている。SNAP-25のSer^<187>がプロテインキナーゼCによってリン酸化されると、神経伝達物質放出機能が促進される。S187Aという1アミノ酸置換によってSNAP-25のリン酸化が起こらないノックインマウスを作成したところ、情動異常などの様々な異常が出現し、SNAP-25のリン酸化が脳内で重要な役割を果たしていることが明らかとなった。てんかん発作を起こすと脳内でSNAP-25のリン酸化が大きく変動することも明らかになっていたが、どのような生理的な機能に伴いSNAP-25のリン酸化が変化するかについては明らかではなかった。今回、野生型マウスを冷水中で拘束ストレスを加えると脳内でSNAP-25のリン酸化が大きく亢進し、ストレスを除くと速やかに元のレベルまで脱リン酸化されることが明らかとなった。SNAP-25のリン酸化の度合には脳内で部域差があり、大脳皮質や海馬、扁桃体では高く小脳では低かった。
KAKENHI-PROJECT-18300127
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シナプス前性タンパク質のリン酸化によるシナプスおよび脳機能の制御機構の解明
さらにストレスを加えた際のリン酸化の亢進も同様の傾向を示した。これに対してプロテインキナーゼCの基質として知られているGAP-43やSNAP-23のリン酸化はストレスを加えてもほとんど変動しなかった。アドレナリンを腹腔内注入するとSNAP-25のリン酸化は大きく亢進した。以上のことから、SNAP-25のリン酸化はストレス時に副腎髄質から放出されるアドレナリン放出が脳にフィードバックされる機能を担っている可能性が明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-18300127
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覚醒時の舌筋力強化で睡眠時の舌沈下を防ぐ新治療法-睡眠時無呼吸患者に対する試み-
「研究の目的」睡眠中、舌筋(特にオトガイ舌筋)が弛緩することで舌根沈下が起き、睡眠時無呼吸のトリガーとなることが知られている。本研究は、覚醒時のオトガイ舌筋をトレーニングで強化させることで、睡眠中の筋弛緩を減じ、無呼吸の発生を抑制させることによって睡眠時無呼吸の重症度を減少させる新たな治療方法の構築および臨床への応用を目指す。「研究実績」1舌の筋力測定と分析:夜間のいびきや日中の眠気から睡眠外来に睡眠時無呼吸を疑い来院した患者に対して研究の協力を依頼し、舌圧測定器を用いて舌の筋力計測を行なった。その後、終夜睡眠ポリグラフ検査を行なった。舌圧(舌の筋力)と睡眠時無呼吸の重症度の解析を行ない、舌筋のトレーニングが必要な対象者の選択を行なった。2舌筋のトレーニング:舌圧値(舌の筋力)が健常者に比べて低下し、睡眠時無呼吸の検査データとの関係から舌の筋肉トレーニングが必要と思われる対象者に対し、研究の必要性を説明し、同意を得られた者について研究を継続した。トレーニング前のデータ収集としてウオッチパッドを用い、睡眠の簡易検査を施行することによってトレーニング前の状態を把握した。その後、対象者の筋力に応じて、適切な舌トレーニング器具(ペコパンダ)を選択し、ペコパンダを用いた毎日のトレーニングを開始した。トレーニング後に再度、ウオッチパッドを用いて睡眠の簡易検査を行い、トレーニングの成果を評価し、その結果について国内外学会において発表を行い、研究論文の投稿を行う。舌圧の測定を行い、睡眠時無呼吸患者の舌圧値について国内外学会において研究発表を行ってきた。また、舌の筋トレーニングが必要な対象者を選択し、筋のトレーニング前の簡易検査を行い、各種データの収集を得られたのち、筋力トレーニングを開始している。トレーニングを行う対象者を増やす。さらにトレーニングの進まない対象者については、トレーニングの継続意思の有無を確認する。今後は、予定数を超えるように対象者の選別を継続し、成果について発表を行う。「研究の目的」睡眠中、舌筋(特にオトガイ舌筋)が弛緩することで舌根沈下が起き、睡眠時無呼吸のトリガーとなる。本研究計画は、覚醒時のオトガイ舌筋を強化させることで、睡眠中の筋弛緩を減らし、無呼吸の発生を抑制させる新しい睡眠時無呼吸症治療法の臨床応用を目指す.舌トレーニング用具を用いて,オトガイ舌筋の強化訓練を行ない,訓練前後で舌圧測定と睡眠検査を施行し,舌沈下の抑制によって無呼吸を減少させる治療方法の構築と臨床応用を目指す.「研究実績」1研究開始前の対応として物品の購入と測定機器のセットアップを行った.ウオッチパットは,健常者および無呼吸が疑われるボランティアによって,夜間の睡眠状態の計測を行った.1日だけの計測の場合は,失敗なく計測可能であった.しかしながら,複数日の計測については,不具合が生じており,現在、その原因を確認中である.JMS舌圧測定器については,不具合なく計測可能であることが確認された.2舌圧データの収集と分析:睡眠外来に通院中の無呼吸症が疑われる患者に研究の協力を依頼し,舌圧の計測,データの蓄積を行っている.舌圧測定後に終夜睡眠ポリグラフ検査を施行した。患者個々の睡眠時無呼吸症の重症度が判明していることから,無呼吸と舌圧との関係,さらに入院時に行った頭部エックス線規格写真で舌の位置を解析を行った.無呼吸症患者の舌圧データから,健常者よりも舌圧の数値が低下していることを証明し,その結果を学会にて発表予定である.対象者について舌圧測定は,順調に進んでいる.今後は,舌の筋力トレーニングの承諾を得られる対象者を選別し,筋力トレーニングを進める予定である.また,ウオッチパッドによる睡眠検査は,複数日についての失敗例について検証を進める.「研究の目的」睡眠中、舌筋(特にオトガイ舌筋)が弛緩することで舌根沈下が起き、睡眠時無呼吸のトリガーとなることが知られている。本研究は、覚醒時のオトガイ舌筋をトレーニングで強化させることで、睡眠中の筋弛緩を減じ、無呼吸の発生を抑制させることによって睡眠時無呼吸の重症度を減少させる新たな治療方法の構築および臨床への応用を目指す。「研究実績」1舌の筋力測定と分析:夜間のいびきや日中の眠気から睡眠外来に睡眠時無呼吸を疑い来院した患者に対して研究の協力を依頼し、舌圧測定器を用いて舌の筋力計測を行なった。その後、終夜睡眠ポリグラフ検査を行なった。舌圧(舌の筋力)と睡眠時無呼吸の重症度の解析を行ない、舌筋のトレーニングが必要な対象者の選択を行なった。2舌筋のトレーニング:舌圧値(舌の筋力)が健常者に比べて低下し、睡眠時無呼吸の検査データとの関係から舌の筋肉トレーニングが必要と思われる対象者に対し、研究の必要性を説明し、同意を得られた者について研究を継続した。トレーニング前のデータ収集としてウオッチパッドを用い、睡眠の簡易検査を施行することによってトレーニング前の状態を把握した。その後、対象者の筋力に応じて、適切な舌トレーニング器具(ペコパンダ)を選択し、ペコパンダを用いた毎日のトレーニングを開始した。トレーニング後に再度、ウオッチパッドを用いて睡眠の簡易検査を行い、トレーニングの成果を評価し、その結果について国内外学会において発表を行い、研究論文の投稿を行う。舌圧の測定を行い、睡眠時無呼吸患者の舌圧値について国内外学会において研究発表を行ってきた。
KAKENHI-PROJECT-17K11788
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覚醒時の舌筋力強化で睡眠時の舌沈下を防ぐ新治療法-睡眠時無呼吸患者に対する試み-
また、舌の筋トレーニングが必要な対象者を選択し、筋のトレーニング前の簡易検査を行い、各種データの収集を得られたのち、筋力トレーニングを開始している。研究に協力していただく対象者の選別を行い,舌筋力トレーニングを開始する.対象者が高齢な場合,筋力トレーニングを継続することが困難な場合も想定される.対象者のモチュベーション向上のために,対象者との連絡を頻繁に行い,進捗状況をチェックする予定である.トレーニングを行う対象者を増やす。さらにトレーニングの進まない対象者については、トレーニングの継続意思の有無を確認する。今後は、予定数を超えるように対象者の選別を継続し、成果について発表を行う。平成29年度に予定していた学会発表に関する費用および翻訳に要する費用については,平成30年度に持ち越しとなった.論文投稿に要する費用については2019年度に持ち越し、論文投稿に当てる。
KAKENHI-PROJECT-17K11788
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SGA性低身長症児と家族のGH療法をシームレスに支える看護支援プログラムの開発
平成30年度は、まず国内外のGH治療を受ける子どもと家族に関する文献検討を行った。GH治療はSGA性低身長症以外に成長ホルモン分泌不全性低身長症やターナー症候群等でも行われ、身長を改善するのみならず子どものQOLの改善にも効果的である。しかし毎日の治療は子どもと家族にとって負担となり治療には痛みも伴うことから、怠薬や治療を中断するケースもみられる。国外の報告では、怠薬防止や治療継続の意欲向上には、子どもと家族が自ら注射器を選択することが効果的であると報告されている。国内の報告では、GH治療の実施者は母親が多いことや治療継続に伴い怠薬が見受けられるといったGH治療を受ける子どもと家族の治療実態に関する報告はあるが、子どもや家族がGH治療をどう受け止め治療に取り組んでいるのか、成長する過程でその受け止めや取り組みに変化はあるのかといった、子どもと家族の体験や思いに言及した報告は少なかった。そこで当初は、GH治療適応疾患を対象に治療開始年齢、GH治療実施の主体者、自己中断の有無、怠薬の有無等について質問紙調査より治療実態を明らかにすることを計画していたが、文献検討の結果をもとに再検討し、GH治療を受けている子どもと家族の療養行動の現状を面接調査より明らかにすることに再計画し、研究計画書を立案した。立案した研究計画書を所属機関の研究倫理委員会に提出し、研究実施の承認を得て、現在、主に小児科クリニックを中心に研究協力者の紹介を依頼している段階である。文献検討、研究計画の再検討、研究計画書の立案、研究倫理委員会での審査に関しては概ね順調に進展したが、小児科クリニック等での研究協力者のリクルートに時間を要している。令和元年度は、面接調査を継続する。面接調査では、自宅でのGH治療の実施状況とそれについての考え、現在の治療の受け止め等について子どもと家族それぞれに面接を行う。これまで市内の小児科クリニックを中心に研究協力者の依頼を進めてきたが、研究を推進するために今後のリクルート状況によっては、市外や道外の小児科クリニックを開拓し、研究協力者の紹介を依頼する。平成30年度は、まず国内外のGH治療を受ける子どもと家族に関する文献検討を行った。GH治療はSGA性低身長症以外に成長ホルモン分泌不全性低身長症やターナー症候群等でも行われ、身長を改善するのみならず子どものQOLの改善にも効果的である。しかし毎日の治療は子どもと家族にとって負担となり治療には痛みも伴うことから、怠薬や治療を中断するケースもみられる。国外の報告では、怠薬防止や治療継続の意欲向上には、子どもと家族が自ら注射器を選択することが効果的であると報告されている。国内の報告では、GH治療の実施者は母親が多いことや治療継続に伴い怠薬が見受けられるといったGH治療を受ける子どもと家族の治療実態に関する報告はあるが、子どもや家族がGH治療をどう受け止め治療に取り組んでいるのか、成長する過程でその受け止めや取り組みに変化はあるのかといった、子どもと家族の体験や思いに言及した報告は少なかった。そこで当初は、GH治療適応疾患を対象に治療開始年齢、GH治療実施の主体者、自己中断の有無、怠薬の有無等について質問紙調査より治療実態を明らかにすることを計画していたが、文献検討の結果をもとに再検討し、GH治療を受けている子どもと家族の療養行動の現状を面接調査より明らかにすることに再計画し、研究計画書を立案した。立案した研究計画書を所属機関の研究倫理委員会に提出し、研究実施の承認を得て、現在、主に小児科クリニックを中心に研究協力者の紹介を依頼している段階である。文献検討、研究計画の再検討、研究計画書の立案、研究倫理委員会での審査に関しては概ね順調に進展したが、小児科クリニック等での研究協力者のリクルートに時間を要している。令和元年度は、面接調査を継続する。面接調査では、自宅でのGH治療の実施状況とそれについての考え、現在の治療の受け止め等について子どもと家族それぞれに面接を行う。これまで市内の小児科クリニックを中心に研究協力者の依頼を進めてきたが、研究を推進するために今後のリクルート状況によっては、市外や道外の小児科クリニックを開拓し、研究協力者の紹介を依頼する。理由:平成30年度は面接調査を計画、実施したが、研究協力者のリクルートに時間を要し、面接調査実施には至らなかったため、謝金が発生しなかった。使用計画:令和元年度も面接調査を継続するため、研究協力者への謝金として使用する予定である。
KAKENHI-PROJECT-18K10440
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生活雑排水処理のための小型酸化池
農山村等下水道の効率的な敷設の困難な地域に適合する小規模分散型処理施設として、酸化池法が注目されている。酸化池法は他の処理法に比較すると、水温、照度等の自然環境条件により処理効率が大きく左右される。わが国等の中緯度地域では季節によっても処理効率が大きく変化する。このため他の処理法との比較検討をする際には、緯度等を考慮しながら、処理効率の季節変動を的確に予測する必要がある。本研究においては、わが国における生活雑排水処理を想定した実験的検討を行う共に、酸化池の効率を決定する大きな要因である藻類の光合成による酸素供給についてモデル化を行った。実験的検討としては、昨年度茨城県新治群八郷町に作成した酸化池の水質の年周変動を継続して測定した。処理水質の年周変動は、集合住宅の雑排水中の汚濁物質の濃度が比較的低いこともあって、さほど大きな変動が測定されず、年間を通じてBOD20[mg/1]程度まで処理することができ、農山村の生活雑排水処理としては酸化池が充分実用になることが示された。この測定において、溶存有機炭素、栄養塩濃度は深さ方向への変化、日周変動が殆ど観測されなかった。これに反し、溶存酸素濃度については、深さ、時刻により大きな変化が観測された。これは藻類の光合成速度が水深、時刻により大きく変化するためと考えられる。この溶存酸素濃度の季節、日周、深さ方向変化を予測する数理モデルを作成した。モデルによる計算結果は八郷町に作成した酸化池の溶存酸素濃度日周変動を良く説明している。本モデルの計算は大型計算機を必要とするものであり、他の処理法と比較を簡単に行えるものではない。故に、ここで作成したモデルの計算結果を簡易な関数で表現し、これをマイコンレベルのモデルに組むことを考えた。このモデルにより酸化池の処理効率を従来のモデルに比べ、簡易に精度良く予測することを可能とした。農山村等下水道の効率的な敷設の困難な地域に適合する小規模分散型処理施設として、酸化池法が注目されている。酸化池法は他の処理法に比較すると、水温、照度等の自然環境条件により処理効率が大きく左右される。わが国等の中緯度地域では季節によっても処理効率が大きく変化する。このため他の処理法との比較検討をする際には、緯度等を考慮しながら、処理効率の季節変動を的確に予測する必要がある。本研究においては、わが国における生活雑排水処理を想定した実験的検討を行う共に、酸化池の効率を決定する大きな要因である藻類の光合成による酸素供給についてモデル化を行った。実験的検討としては、昨年度茨城県新治群八郷町に作成した酸化池の水質の年周変動を継続して測定した。処理水質の年周変動は、集合住宅の雑排水中の汚濁物質の濃度が比較的低いこともあって、さほど大きな変動が測定されず、年間を通じてBOD20[mg/1]程度まで処理することができ、農山村の生活雑排水処理としては酸化池が充分実用になることが示された。この測定において、溶存有機炭素、栄養塩濃度は深さ方向への変化、日周変動が殆ど観測されなかった。これに反し、溶存酸素濃度については、深さ、時刻により大きな変化が観測された。これは藻類の光合成速度が水深、時刻により大きく変化するためと考えられる。この溶存酸素濃度の季節、日周、深さ方向変化を予測する数理モデルを作成した。モデルによる計算結果は八郷町に作成した酸化池の溶存酸素濃度日周変動を良く説明している。本モデルの計算は大型計算機を必要とするものであり、他の処理法と比較を簡単に行えるものではない。故に、ここで作成したモデルの計算結果を簡易な関数で表現し、これをマイコンレベルのモデルに組むことを考えた。このモデルにより酸化池の処理効率を従来のモデルに比べ、簡易に精度良く予測することを可能とした。
KAKENHI-PROJECT-63602510
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63602510
海産白点虫の人工培養法の開発
海産白点虫Cryptocaryon irritansの人工培養法の開発を試み、有効な培養法の確立に成功した。培地としては、魚類培養細胞層の上に細胞培養用培地(ライボヴィッツL-15)、抗生物質(ペニシリン100iu/ml、ストレプトマイシン100ug/ml)、牛胎児血清(10%)を含んだアガロースゲル(アガロース0.22%)を重層した培地を用い、細胞層とゲル層の間に白点虫の感染期幼虫を挿入することで、虫体を寄生期に変態させることができた。虫体はこの培地内で徐々に数は減るものの、4日間で長径200um以上に成長することができた。これらの成長した虫体を海水に移すと、虫体は正常な発達を遂げ、シストを形成した後、細胞分裂を繰り返し、感染期幼虫を放出した。このことにより、C.irritansの生活環が初めて宿主無しに完結させることができた。上記の人工培養法で成長させた虫体を海水中において得た感染期幼虫をブラックモリーに人工的に感染させたところ、約40%の虫体を回収することができた。この値は宿主を用いて得られた虫体の既報の回収率とほぼ同様であり、本培養法で得られた虫体は宿主に十分な感染能力を有することが示された。本研究で開発した培養法を用いることで本虫を正常に発達させることはできたものの、出発材料としては依然として魚に感染させて得た虫体が必要である。将来のワクチン開発、薬剤開発のためには、今後人工培養系だけで虫体を培養・維持するための技術の開発を進める必要が必要である。海産白点虫Cryptocaryon irritansの人工培養法の開発を試み、有効な培養法の確立に成功した。培地としては、魚類培養細胞層の上に細胞培養用培地(ライボヴィッツL-15)、抗生物質(ペニシリン100iu/ml、ストレプトマイシン100ug/ml)、牛胎児血清(10%)を含んだアガロースゲル(アガロース0.22%)を重層した培地を用い、細胞層とゲル層の間に白点虫の感染期幼虫を挿入することで、虫体を寄生期に変態させることができた。虫体はこの培地内で徐々に数は減るものの、4日間で長径200um以上に成長することができた。これらの成長した虫体を海水に移すと、虫体は正常な発達を遂げ、シストを形成した後、細胞分裂を繰り返し、感染期幼虫を放出した。このことにより、C.irritansの生活環が初めて宿主無しに完結させることができた。上記の人工培養法で成長させた虫体を海水中において得た感染期幼虫をブラックモリーに人工的に感染させたところ、約40%の虫体を回収することができた。この値は宿主を用いて得られた虫体の既報の回収率とほぼ同様であり、本培養法で得られた虫体は宿主に十分な感染能力を有することが示された。本研究で開発した培養法を用いることで本虫を正常に発達させることはできたものの、出発材料としては依然として魚に感染させて得た虫体が必要である。将来のワクチン開発、薬剤開発のためには、今後人工培養系だけで虫体を培養・維持するための技術の開発を進める必要が必要である。魚類培養細胞層の上に細胞培養用培地を含んだ軟アガロースゲルを重層し、細胞層とゲル層の間に海産白点虫のセロント(感染幼虫)懸濁液を挿入するという培養系により、海産白点虫を成長させることに成功した。魚体に寄生した場合、十分に成長して宿主を離脱するまでに約3日間要するのに対し、開発した培養系では4-5日間を要した。培養系内で発達した虫体は魚体内のトロホント(寄生期虫体)に比べてやや小さく、長径では7割程度であった。虫体は培養系内では約1割程度がシスト壁を形成しトモント(シスト期虫体)となるものの、ほとんどが最終的には破裂して死亡した。しかし、培養4あるいは5日目の虫体を海水中に移すことにより、80%の虫体をトモントに誘導することができた。また、得られたトモントの80%からセロントの遊出が観察された。このように、宿主を用いることなく人工培養系でセロントからトロホント、トモントそしてセロントと、白点虫のIn vitro培養に世界で始めて成功した。さらに、人工培養系で得たセロントを用いて魚体に対する感染実験を行ったところ、セロントの39%が宿主内で成長し、トモントとして回収された。この値は、魚体を用いて得られたセロントを用いた感染実験の場合の文献値40.4%とほぼ同じである。このことから、人工培養によっても感染力は維持されることが明らかである。培養系をさらに改良するために、ゲル濃度、培養温度について最適化を行った。その結果。ゲル濃度0.25%、培養温度30°Cで最も高い成長速度が得られた白点虫培養法の最適化を図るため、白点虫の餌とする培養細胞ならびに培地について検討した。すなわち、FTM,EPC,GFの3種の上皮性細胞株、L-15,MEM(HEPES添加),BEM(HEPES添加)の3種の細胞用培地を用いた組み合わせで、白点虫を軟アガロースゲル培養を行いその成長と生残を比較した。その結果、FTM細胞、L-15培地の組み合わせが最もよい成績を示した。
KAKENHI-PROJECT-16580145
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16580145
海産白点虫の人工培養法の開発
培養の効率化を目的に、軟アガロースゲル培地から効率的に虫体を回収する方法、シストから遊出したセロントの濃縮法、セロントの培地への接種時期を検討した。その結果、虫体回収法としては、ゲル下に滅菌海水を入れてゲルを海水上に浮かせピペットを用いて虫体を回収する手法、セロント濃縮法としては、マイクロスピン(6000rpm)を用いた短時間(10分間)の遠心での濃縮法が最も効率が高かった。また、培養にはできるだけ新鮮なセロントを用いることが重要であることが判明した。また、培養系のスケールアップをはかり、これまでの6穴プレートに変えて、75-100cm^2のペトリディッシュや角型シャーレでの培養も可能となった。以上の改良により、計算上、100虫体のセロントから出発して、200-300虫体のセロントを作成することができるまでになった。しかしながら、魚を全く使わずに培養系だけで虫体の維持培養にいたるまでには、さらに、いくつかの改良が必要である。また、培養系だけの維持培養は困難なものの、開発した培養系は、白点虫の生理・生態の解明、宿主-寄生体関係の解明、薬剤の開発などの研究に大きな貢献をすると期待される。
KAKENHI-PROJECT-16580145
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16580145
東日本大震災を未就学期に経験した子どもの心身への影響に関する追跡調査
東日本大震災の被災地における親の養育が4-11歳の子どもの臨床的な問題行動に与える影響目的:本研究の目的は2011年に起きた東日本大震災後の養育スタイルが子どもの行動問題に及ぼす影響を調査することである。方法:参加者は、就学前年齢で2011年に被災した子供たちで(n = 163)、データは2012年8月から2013年3月まで、および2014年7月から2015年3月まで(それぞれ地震後2年および4年)に収集したため、評価時の年齢は4-11歳だった。養育スタイルは、被災後2年目の親の関わり、肯定的な子育て、不十分な監視/監督、一貫性のないしつけ、および体罰を測定するAlabama Parenting Questionnaire(APQ:保護者の自記式)で評価した。問題行動は子どもの行動チェックリスト(CBCL:保護者記入式)を使用し、震災後2年目と4年目に内向性尺度、外向性尺度、および総合尺度を評価した。結果:被災2年目の体罰は、被災4年目のCBCL内向性尺度(偏係数:0.78、95%CI:0.12-1.45、p = 0.023)、外向性尺度(偏係数:0.74、95%CI:0.09-1.39、p=0.025)、総合尺度(偏係数:0.85、95%CI:0.16-1.55、p = 0.016)とも悪化した。共変量として、子供の年齢、性別、震災に関連したトラウマの数、母の学歴、きょうだいの数、仮設住宅の入居経験、そして被災2年目のCBCL総合尺度を調整した。他の養育スタイルは子供の問題行動に影響を及ぼさなかった。結論:自然災害後の不適切な養育が、震災から4年後の被災した子どもの問題行動に悪影響を及ぼしていることが示唆された。特に、体罰は子供の問題行動に悪影響を及ぼす。養育に悩んでいる親(特に体罰に至る可能性が高い親)への支援が子どもの健全な養育へ良い影響を与える可能性がある。平成28年度は、被災三県(岩手、宮城、福島)において、被災時に就学前だった子どもおよびその親を対象としデータ採取を行った。まず親への面接調査で、子どものPTSD症状、養育環境、地域環境、学校環境を聴取した。親自身については、質問紙社会環境、子の問題行動、子のPTSD、親のPTSDおよびメンタルヘルス、養育態度、地域のつながり、居住環境、社会経済状況、心理的支援の介入状況、子の遊びの状況を聴取した。また子どもが記入する質問紙では、不安状態・特性、抑うつ性尺度、トラウマ後の成長尺度、について調査した。身体測定では、親子ともに心拍変動を計測し交感神経・副交感神経の活動度とそのバランスを評価した。さらに血圧と握力を測定し、慎重および体重の計測、平衡感覚を評価するため閉眼片足立ちの秒数評価も行った。またそれらに加え子と対面で「トークン分配実験」を行い、時間選好性についてもデータを採取した。予定していた評価は概ね完了された。一部スケジュールに遅延が出ているが、平成29年度のスケジュールに組み込む予定としている。一部の研究協力者所属機関の倫理審査に時間がかかり、調査スケジュールが後ろ倒しとなっていたが、平成28年度内に概ね全ての調査を完了することができた。遅れ分については平成29年度の研究内容に組み込む予定である。平成29年度は現地調査を行った。・親:面接では、生活状況、困りごとについて聴取した。質問紙では親のPTSDにIES-R、抑うつ・不安、子どものトラウマ症状、子どもの問題行動、子どものレジリエンス、養育態度、不適切養育、親のコーピングスタイル、子の気質、思春期における成長に関しての質問、親の社会関係(ーシャルキャピタル、社会的ネットワーク、社会的サポート)、生活習慣、居住環境、心理的支援の介入状況、遊びの状況、心理支援の介入状況、起床・就寝時間、食事習慣、通学している小・中学校名、転居・転校に関する履歴について聴取した。・子ども:面接では、生活状況について聴取し、心拍測定を行った。また宮城と福島では描画を行った。また、質問紙を用いて抑うつ性尺度、自尊感情、児童用コンピテンス尺度、、思春期における成長に関しての質問、幸福感、周りの人との関係、外遊びの状況、TV視聴時間、ゲームの使用時間、学校のソーシャルキャピタル、夢や大事なものについて聴取した。災害に限らず心的外傷が人間の心理に長期的な影響を与えることは言われているが、特に低年齢で曝露した場合にその影響が大きいと考えられている。東日本大震災時点で就学前だった子どものメンタルヘルスを継続追跡している研究は少なく、災害そのものや災害後の環境変化が子どもの暮らし、発達、心理的成長に与える影響を評価できる貴重なデータが取得できている。実際に最年長の子どもが平成29年度が中学1年生になるなど中期的な影響を評価できる年齢まで追跡できており、さらに長期的な継続が必要である。遅れていた平成29年の調査は概ね終えることができたが、データクリーニングと解析に時間を要している。東日本大震災の被災地における親の養育が4-11歳の子どもの臨床的な問題行動に与える影響目的:本研究の目的は2011年に起きた東日本大震災後の養育スタイルが子どもの行動問題に及ぼす影響を調査することである。
KAKENHI-PROJECT-16K19795
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K19795
東日本大震災を未就学期に経験した子どもの心身への影響に関する追跡調査
方法:参加者は、就学前年齢で2011年に被災した子供たちで(n = 163)、データは2012年8月から2013年3月まで、および2014年7月から2015年3月まで(それぞれ地震後2年および4年)に収集したため、評価時の年齢は4-11歳だった。養育スタイルは、被災後2年目の親の関わり、肯定的な子育て、不十分な監視/監督、一貫性のないしつけ、および体罰を測定するAlabama Parenting Questionnaire(APQ:保護者の自記式)で評価した。問題行動は子どもの行動チェックリスト(CBCL:保護者記入式)を使用し、震災後2年目と4年目に内向性尺度、外向性尺度、および総合尺度を評価した。結果:被災2年目の体罰は、被災4年目のCBCL内向性尺度(偏係数:0.78、95%CI:0.12-1.45、p = 0.023)、外向性尺度(偏係数:0.74、95%CI:0.09-1.39、p=0.025)、総合尺度(偏係数:0.85、95%CI:0.16-1.55、p = 0.016)とも悪化した。共変量として、子供の年齢、性別、震災に関連したトラウマの数、母の学歴、きょうだいの数、仮設住宅の入居経験、そして被災2年目のCBCL総合尺度を調整した。他の養育スタイルは子供の問題行動に影響を及ぼさなかった。結論:自然災害後の不適切な養育が、震災から4年後の被災した子どもの問題行動に悪影響を及ぼしていることが示唆された。特に、体罰は子供の問題行動に悪影響を及ぼす。養育に悩んでいる親(特に体罰に至る可能性が高い親)への支援が子どもの健全な養育へ良い影響を与える可能性がある。概ね計画書に記載した通り、平成29年度はに行う。平成28年度のデータクリーニングおよび解析の遅れについては、平成29年度の研究計画に組み込む予定である。今後は一部残った現地調査でデータを補完しながら、並行してデータクリーニングおよび解析をすすめる。また、学会発表等研究成果の発表を行う。平成28年度の研究実施において、調査対象者とスケジュールがマッチせず被災地現地調査で行えなかった地域が23箇所あったため。調査で得たデータのうち、以下のデータの解析が遅れており、補助事業期間の延長を申請するに至った。・生体試料(唾液)からのオキシトシンのデータ解析、・身体測定の中で、心拍データからの交感神経・副交感神経の活動度とそのバランス評価、血圧・握力・身長・体重・平衡感覚の解析、・時間選好率の解析平成28年度に行えなかった調査は、平成29年度に持ち越すこととなりった。「旅費」、「謝金」のうち調査員謝金、「その他」のうち会場借料などを110万円を繰り越し、平成29年度に調査を施行するための費用に充当する予定である。
KAKENHI-PROJECT-16K19795
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配位原子にアルキルペンダントをもつ金属錯体の立体化学とその反応性への効果
配位原子にアルキルペンダントをもつ金属錯体を合成し,その特性について次のことを明らかにすることができた.第一は,エチレンジアミンにアルキルペンダントをつけたN-エチルエチレンジアミンとN-ベンジルエチレンジアミンとのテトラシアノ,テトラアンミンコバルト(III)錯体のN-エチル基,ベンジル基はキレート環に対して擬エクアトリアルに配向しanti構造をとった.これらとbpyまたはphenと白金(II)三元錯体を構築し,N-ベンジルは擬アクシャルに配向し,溶液中で分子内芳香環の間で疎水性相互作用がみられた.さらに,アルキル基の芳香環の数を増やしたN-ナフチルメチル基,N-アンスリルメチル基をもつ白金(II)錯体では溶液中,結晶中のいずれでも-syn構造をとり,分子力場計算によってもこの構造が支持され,芳香環の間の相互作用が増強された.また,濃度依存性から分子間スタッキングについても評価した.この分子内疎水性相互作用は無極性溶媒によって弱められ,尿素などタンパク質変性剤も同様の効果をもつことがわかった.第二は,合成したシアノ鉄(II)錯体の脱水素反応について速度論及び電気化学的測定から調べ,N-アルキル化によって著しく反応性が高まることを利用し,N-ベンジルエチレンジアミン錯体では遂次的に脱水素されモノイミン,ジイミンになることがわかり,はじめてモノイミン錯体を単離できた.第三は,bpyと架橋メチレン鎖長nを15としたN-ω-フェニルアルキルエチレンジアミンとの白金(II)三元錯体を合成し,分子内相互作用はn=1のとき最も強くみられ,さらに種々の芳香族スルホン酸と白金(II)三元錯体の間で分子間疎水性相互作用がn=3のとき強くみられることを明らかにできた.配位原子にアルキルペンダントをもつ金属錯体を合成し,その特性について次のことを明らかにすることができた.第一は,エチレンジアミンにアルキルペンダントをつけたN-エチルエチレンジアミンとN-ベンジルエチレンジアミンとのテトラシアノ,テトラアンミンコバルト(III)錯体のN-エチル基,ベンジル基はキレート環に対して擬エクアトリアルに配向しanti構造をとった.これらとbpyまたはphenと白金(II)三元錯体を構築し,N-ベンジルは擬アクシャルに配向し,溶液中で分子内芳香環の間で疎水性相互作用がみられた.さらに,アルキル基の芳香環の数を増やしたN-ナフチルメチル基,N-アンスリルメチル基をもつ白金(II)錯体では溶液中,結晶中のいずれでも-syn構造をとり,分子力場計算によってもこの構造が支持され,芳香環の間の相互作用が増強された.また,濃度依存性から分子間スタッキングについても評価した.この分子内疎水性相互作用は無極性溶媒によって弱められ,尿素などタンパク質変性剤も同様の効果をもつことがわかった.第二は,合成したシアノ鉄(II)錯体の脱水素反応について速度論及び電気化学的測定から調べ,N-アルキル化によって著しく反応性が高まることを利用し,N-ベンジルエチレンジアミン錯体では遂次的に脱水素されモノイミン,ジイミンになることがわかり,はじめてモノイミン錯体を単離できた.第三は,bpyと架橋メチレン鎖長nを15としたN-ω-フェニルアルキルエチレンジアミンとの白金(II)三元錯体を合成し,分子内相互作用はn=1のとき最も強くみられ,さらに種々の芳香族スルホン酸と白金(II)三元錯体の間で分子間疎水性相互作用がn=3のとき強くみられることを明らかにできた.1.配位子および錯体の調製合成した配位子L=N-ベンジルエチレンジアミン(Been)は新規化合物である。また、光学活性アルキル基としてR-1-(2-ヒドロキシメチル)プロピル基とS-2-ヒドロキシプロピル基を持つ、2,2-ジメチル-1,2-エタンジアミンのジクロロ白金(II)錯体の調整、構造解析を行った(公表ずみ)。[Fe(CN)_4(L)]^<2->,[Fe(CN)_4(L)]^-,[Co(NH_3)_4(L)]^<3+>,[Pt(bipy)(L)]^<2+>,[Pt(phen)(L)]^<2+>錯体は、既に報告した方法に従って合成した。2.溶液および固体状態での構造重水溶液中、[Pt(bipy)(L)]^<2+>[Pt(phen)L]^<2+>錯体の400MHz ^1H NMRスペクトルよりキレート環はN-アルキル基が擬アクシャル配向をとっていることがわかった。さらにBeen錯体では、一方の芳香環ジイミン(bipy,phen)の環の^1Hが著しく高磁場シフトしこれは分子内での芳香環同士の相互作用によるものであることがわかった。水-エタノールから得られた[Pt(bipy)(been)](NO_3)_2・H_2OのX線結晶解析では、N-ベンジル基は二級アミンに擬アクシャル配向しベンジル基のフェニル環と白金の関係はantiをとっていることがわかった。これは、再結晶時にエタノールを用いたためだと思われる。3.配位子脱水素反応のN-アルキル基による反応性の向上前述のテトラシアノ(1,2-ジアミン)鉄(II)
KAKENHI-PROJECT-04640583
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配位原子にアルキルペンダントをもつ金属錯体の立体化学とその反応性への効果
錯体は、脱水素反応を起こしジアミン(I)→モノイミン,(II)→ジイミン鉄錯体,(III)を形成する。Been錯体において、(I)-,(II)-,(III)-鉄(II)錯体の単離に成功した。さらに鉄(II)錯体(I),(II)についてK_3[Fe(CN)_6]による酸化反応速度をジイミンの525nmの吸光度の増加を測定して求めるとv=d[Fe(CN)_4(ジイミン)]/dt=k[Fe^<11>][[Fe^<111>(CN)_6^<3->]][OH^-]で表すことができた。三次速度定数は、(I),(II)錯体でそれぞれ2.09×10^5,1.91×10^5M^<-2>S^<-1>であった。これよりN-ベンジル基の置換により、二級アミン部位での配位子脱水素反応(I)→(II)が加速され、律速段階が(II)→(III)へ移行したためであると考えられる。配位原子にアルキルペンダントをもつ金属錯体を合成し、その特性について次のことを明らかにすることができた。第一は、エチレンジアミンにアルキルペンダントをつけたN-エチルエチレンジアミンとN-ベンジルエチレンジアミンとのテトラシアノ、テトラアンミンコバルト(III)錯体のN-エチル基、ベンジル基はキレート環に対して擬エクアトリアルに配向しanti構造をとった。これらとbpyまたはphenと白金(II)三元錯体を構築し、N-ベンジルは擬アクシャルに配向し、溶液中で分子内芳香環の間で疎水性相互作用がみられた。さらに、アルキル基の芳香環の数を増やしたN-ナフチルメチル基、N-アンスリルメチル基をもつ白金(II)錯体では溶液中、結晶中のいずれでも-syn構造をとり、分子力場計算によってもこの構造が支持され、芳香環の間の相互作用が増強された。また、濃度依存性から分子間スタッキングについても評価した。この分子内疎水性相互作用は無極性溶媒によって弱められ、尿素などタンパク質変性剤も同様の効果をもつことがわかった。第二は、合成したシアノ鉄(II)錯体の脱水素反応について速度論及び電気化学的測定から調べ、N-アルキル化によって著しく反応性が高まることを利用し、N-ベンジルエチレンジアミン錯体では逐次的に脱水素されモノイミン、ジイミンになることがわかり、はじめてモノイミン錯体を単離できた。第三は、bpyと架橋メチレン鎖長nを15としたN-omega-フェニルアルキルエチレンジアミンとの白金(II)三元錯体を合成し、分子内相互作用はn=1のとき最も強くみられ、さらに種々の芳香族スルホン酸と白金(II)三元錯体の間で分子間疎水性相互作用がn=3のとき強くみられることを明らかにできた。
KAKENHI-PROJECT-04640583
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樹木の重力刺激対応とあて材形成機構に関する基礎的研究
8年生メタセコイア(Metasequoia glyptostroboides)実生苗を2週間、45°の角度に傾斜させ、あて材形成を促した。苗木の一部を収穫し、幹からのエチレン放出量とオーキシン(IAA)量の変化を解析したのち、さらに残余の苗木を反対側に傾斜させ、さらに2週間おいてエチレン放出量と内生オーキシン量の変化を調べた。エチレン放出量はガスクロマトグラフ法で、またIAAはガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)法で定量した。さらに仮道管とあて材形成については光学顕微鏡で観察した。この結果、あて材形成とエチレン放出およびIAAの集積は常に傾斜した幹の下部で生じることが分かった。すなわち幹の傾斜を逆にした場合、あて材形成の場が反対方向に変わるのと平行して、エチレン生成とIAA集積の場が移動していくことを確認した。さらにヤマザクラ(Prunus jamasakura)幼植物の伸長成長におけるジャスモン酸メチルの影響について調べ、JA-Meはジベレリンとともに処理すると伸長成長を促進することを見出した。シダレ性および立ち性のサクラにおける内生ジベレリンA1,インドール酢酸およびアブシジン酸の分布についてはシダレ性の伸長帯により多くのGA1およびIAAが存在することをつきとめた。成長開始時におけるカラマツ(Larix kaempferi)形成層内の内生植物ホルモンの変化については、形成層活動と内生植物ホルモンの増減は明確な関係がないことが明らかになった。これらのほか、ハリギリ(Kalopanax pictus)の形成層における紡錘細胞、などについての研究を行い、論文を作成した。あて材形成における植物ホルモンおよびCaの役割を調べた。この実験では、針葉樹はヌマスギ実生苗木を、広葉樹は散孔材樹種であるトチノキ実生苗木を用いた。(A)(1)圧縮あて材形成の人為調節:(1)ヌマスギ2年生苗木の幹を切断し、植物ホルモンを含む組織培養用培地を与えることによって形成層活動を調節し(in vivo培養)、あて材形成と植物ホルモンとの関係を調べた。(2)これらの苗木に45゚の傾斜を与え、あて材形成における植物ホルモンの作用性を調べた。以上の結果、合成培地の供給によって形成層活動がほぼ自由に調節できることを明らかにした。さらに、傾斜は、人為的なin vivo培養下にあっても圧縮あて剤を形成させることがわかった。(2)引張あて材形成の人為調節:トチノキ苗木を用いて引張あて材形成における、オーキシンとジベレリンの役割を調査するため、オーキシン転流阻害剤であるNPA(N-1-Naphthylphthalamic Acid)とオーキシン生理活性阻害剤であるRaphanusaninとMBOAのラノリンペーストを樹皮に直接塗布する方法と、ジベレリンとジベレリン生成阻害剤であるウニコナゾール-Pを側芽へ処理する方法で実験を行った。その結果、NPA処理部は過剰肥大を引き起こすとともに、引張あて材形成を抑制した。これはオーキシンの集積によるものと予想された。またRaphanusaninとMBOAを傾斜樹幹の上側に処理することで成長を抑制することなく、引張あて材形成を抑制した。これらの結果、引張あて材形成はオーキシンが高濃度でも低濃度でも抑制されることが予想された。(B)圧縮あて材形成における重力センリーとしてのCaの作用性解析:上記Λ(a)の条件下で、Caイオン濃度を変えた培地を与える。さらにCaのキレート剤、および生理作用阻害剤を用いて樹体内のカルシウム濃度を制御し、あて材形成に対する影響を調べた。この結果、組織内におけるCaの濃度低下、あるいは生理作用阻害は、細胞壁の構築を強く抑制し、圧縮あて材の形成を阻害することがわかった。8年生メタセコイア(Metasequoia glyptostroboides)実生苗を2週間、45°の角度に傾斜させ、あて材形成を促した。苗木の一部を収穫し、幹からのエチレン放出量とオーキシン(IAA)量の変化を解析したのち、さらに残余の苗木を反対側に傾斜させ、さらに2週間おいてエチレン放出量と内生オーキシン量の変化を調べた。エチレン放出量はガスクロマトグラフ法で、またIAAはガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)法で定量した。さらに仮道管とあて材形成については光学顕微鏡で観察した。この結果、あて材形成とエチレン放出およびIAAの集積は常に傾斜した幹の下部で生じることが分かった。すなわち幹の傾斜を逆にした場合、あて材形成の場が反対方向に変わるのと平行して、エチレン生成とIAA集積の場が移動していくことを確認した。さらにヤマザクラ(Prunus jamasakura)幼植物の伸長成長におけるジャスモン酸メチルの影響について調べ、JA-Meはジベレリンとともに処理すると伸長成長を促進することを見出した。シダレ性および立ち性のサクラにおける内生ジベレリンA1,インドール酢酸およびアブシジン酸の分布についてはシダレ性の伸長帯により多くのGA1およびIAAが存在することをつきとめた。成長開始時におけるカラマツ(Larix kaempferi)形成層内の内生植物ホルモンの変化については、形成層活動と内生植物ホルモンの増減は明確な関係がないことが明らかになった。これらのほか、ハリギリ(Kalopanax pictus)の形成層における紡錘細胞、などについての研究を行い、論文を作成した。木材形成およびあて材形成におけるエチレンの生理作用について、針葉樹(メタセコイア)および広葉樹(トチノキ)の苗木を用いて比較した。
KAKENHI-PROJECT-12460070
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12460070
樹木の重力刺激対応とあて材形成機構に関する基礎的研究
針葉樹は2年生メタセコイア(Metasequoia glyptostroboides)を、広葉樹は3ヶ月生トチノキ(Aesculusturbinata)苗木を用いた。圧縮あて材(針葉樹)および引張あて材(広葉樹)形成を促すために、苗木を45゚に傾斜させた。2週後、苗木を反対側に45゚の角度で傾斜させ、苗木の上下の位置を逆転させた。その後メタセコイアは7週間、トチノキは6週間おいた。その間、傾斜した幹の上下の形成層から発生するエチレンを測定するとともに、幹の横断面から、実験期間中に形成される木部量と、圧縮あて材(メタセコイア)と引張あて材(トチノキ)の量的な計測を顕微鏡によって行った最初の2週間の傾余処理で、メタセコイアの幹の下側におけるエチレン放出量は上側より多かった。一方、トチノキの幹の上側からのエチレン放出量は下側を上回った。反対方向に傾斜させた後、旺盛なエチレン放出を示す部立は逆転し、メタセコイアでは新たな下側からのエチレン放出が活発になった。一方トチノキでは新たな上側からのエチレン放出が増加したさらに木材形成およびあて材の形成は両樹種とも活発なエチレン放出が認められる側で顕著であり、実験前半、後半を通じて、常にメタセコイアでは下側が、トチノキでは上側がそれぞれの反対側に勝った。これらの結果から、エチレンは活発な木材形成とともにあて材形成に重要な役割を果たしていることが予想できる。しかしながらエチレシは形成層における細胞分裂に関与しているのか、あるいは圧縮あて材、もしくは引張あて材の分化に関与しているのかは断定できないため、この点は次年度、検討する必要がある。針葉樹のメタセコイア(Metaseqouia glyptostroboides)苗木を用いて、圧縮あて材形成におけるオーキシンとエチレンの関与について明らかにした。実験には8年生の実生苗木を用いた。6月20日、苗木を45°の角度に傾斜させた。2週間後、傾斜苗木の一部を収穫したのち、残余を反対側に逆転させ、45°の傾斜角で固定した。その後2週間育成し、7月18日にすべて収穫した。幹の一部は組織構造の解析に用い、その他は-80°Cに保存し、内生オーキシン(インドール酢酸=IAA)の定量とエチレン放出量の測定に用いた。オーキシンの分析には、定法による抽出操作ののち、日本女子大学のガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)を用いて定量分析した。組織構造の観察結果から、傾斜をまったく逆に変化させることで、圧縮あて材形成の場が顕著に変化し、常に傾斜した幹の下側で急激な細胞分裂が生じることを確認した。さらに内生IAA量とエチレン放出量についても、幹の傾斜角の逆転とともに変化が認められた。幹を逆転する以前には、下側に位置する幹の形成層付近における内生オーキシン量とエチレン放出量は上側に比べて高い値を示した。一方、幹の逆転処理後には、新たに下側となった部位での急激なIAAとエチレンの増加を確認した。これらの結果から、圧縮あて材形成には、傾斜した幹の下側におけるオーキシンとエチレンの増加が常に不可欠であることが予想された。
KAKENHI-PROJECT-12460070
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2状態構造平衡モデルに基づいたM-フィコリンの異物認識機構の解明
ヒトM-フィコリンの病原体認識には、活性型-不活性型間の2状態構造平衡が重要であるという仮説の検証を通して、その異物認識機構の解明を試みた。その結果、pH依存性2状態平衡の存在を証明し、それに関与する残基の同定に成功した。またM-フィコリンと、C反応性蛋白質との相互作用機構について新たな知見を得た。さらにM-フィコリンのNMR解析のためのBrevibacillus発現系を用いた新規安定同位体標識法の確立に成功した。ヒトM-フィコリンの病原体認識には、活性型-不活性型間の2状態構造平衡が重要であるという仮説の検証を通して、その異物認識機構の解明を試みた。その結果、pH依存性2状態平衡の存在を証明し、それに関与する残基の同定に成功した。またM-フィコリンと、C反応性蛋白質との相互作用機構について新たな知見を得た。さらにM-フィコリンのNMR解析のためのBrevibacillus発現系を用いた新規安定同位体標識法の確立に成功した。フィコリンは自然免疫において、異物認識タンパク質として働く生体防御レクチンの一つであるが、その異物認識機構については不明な点が多い。我々は、ヒトM-フィコリンの異物認識ドメイン(FD1)の構造機能研究から、その多量体形成と、基質結合部位におけるpH依存性の活性型-不活性型間2状態構造平衡が、その自己-非自己識別に重要であるというモデルを提唱している。本研究では、この2状態構造平衡モデルを基にM-フィコリンの異物認識機構を解明することを目的とした。FD1およびその変異体の調製には、グラム陽性菌のBrevibacillus choshinensis分泌発現系を用いた。まずFD1の変異導入実験から、そのpH依存基質結合活性は、His-251、His-284およびHis-297の3残基により制御されていることを明らかにした。また、三量体形成に関わるPhe-127およびLeu-128の変異導入により単量体化したFD1は、三量体FD1に比べ、基質結合能が極めて低いことが分かり、三量体形成が基質親和性を高めることを確認した。続いてFD1の基質結合・解離実験から、FD1は水溶液中で、活性型-不活性型の2状態間で常に交換しており、その平衡状態はpHに依存して変化することを証明した。さらに詳細な情報を得るためには、FD1のNMR解析が不可欠であると考えた。そのためにはFD1の安定同位体標識試料を作成する必要があるため、その方法がまだ未開発であったB. choshinensisによる組換えタンパク質の安定同位体標識法の開発を試みた。その結果、C.H.L.培地を用いることで、均一およびアミノ酸選択的安定同位体標識試料調製法の開発に成功した。この方法を用いて、FD1の均一およびアミノ酸選択的^<15>N標識試料の作成、さらにそれらの^1H-^<15>N HSQC NMRスペクトルの取得にも成功し、現在解析を進めている。フィコリンは、N末端側のコラーゲン様(COL)ドメインとC末端側のフィブリノーゲン様(FBG)ドメインで構成される病原体認識タンパク質である。我々は、ヒトM-フィコリンのFBGドメイン(FD1)の構造機能研究から、M-フィコリン異物認識領域に病原体認識に関わる2状態構造平衡が存在すると予想し、これまでにpH依存性2状態平衡の存在の証明、およびそれに関与するヒスチジン残基の同定に成功した。本年度は、(1)2状態平衡に伴う立体構造およびダイナミクス変化についての知見を得るためのFD1のNMR解析、(2)急性期タンパク質C反応性タンパク質(CRP)との相互作用と病原体認識との関与について解析を試みた。(1)[α-^<15>N]ヒスチジン標識FD1のNMR解析から、基質結合に関与する3残基のヒスチジンのうち、信号帰属が成された2残基の^<15>N化学シフト値には、pHに依存した明確な変化が無く、2状態構造平衡に関する情報を得ることは出来なかった。現在、さらなる条件検討を行っている。(2)CRPとフィコリンは、相互作用することにより、それぞれ個々では認識しにくい病原体を認識・排除するために相補的に働くことが明らかとなってきている。しかし、その相互作用は非常に弱く、詳細な分子機構については明らかではない。我々は、CRPとM-フィコリンの相互作用解析を、非常に弱い相互作用の検出に適しているゾーンアフィニティークロマトグラフィーを用いて解析した。その結果、CRPは、M-フィコリンのFBGドメインとCOLドメインの境界付近に弱く結合し、その結合はCOLドメインがFBGドメインの付け根付近で大きく折れ曲がることでより強くなることが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-20770132
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オプチナ修道院とロシアの精神文化の研究
本研究においては、ロシアの修道性の基礎に「フィロカリア」のスラヴ語訳、祈りの「知恵のいとなみ」、長老制の発達が核になっているという仮説のもとで、それが実際にロシア正教の霊的修行の一環として受容されたことを跡づけることができた。ただ、それが世俗の文化に如何なる形で反映しているかという点については、厖大な史料の整理と考察を要することから、本研究ではロシア・スラヴ派の思想家キレエフスキーの人生にその十全な残照を認めるにとどまった。以下に箇条書きにして整理しておく。1)ロシアの修道性の発達は、聖書に次ぐ第二の聖典とも言うべき「フィロカリア」の導入に端を発していた。パイーシイ・ヴェリチコフスキーの翻訳によってロシアに広まったこの修徳の鑑は、ピョートル大帝以後の修道生活に決定的な指針を与えた。その根本的理念と、翻訳の経緯が明らかにされている。2)東方教会における修道性の基礎をなす祈りの本質は、聖書や聖師父の教義に基づく「知恵のいとなみ」と称される、独特の技法とコスモロジー(世界観)を有するものが主流になっていた。3)ロシアではスラヴ派の始祖と見なされているイワン・キレエフスキーが西欧主義的な思想家から、正教思想家へと転向する過程を、妻ナターリアとオプチナのマカーリイ長老(ナターリアの霊の父)との交流の記録(アルヒーフ史料)に基づいて跡づけた。4)正教会の「長老制」の概念を、聖師父やロシアの長老の著述を利用することによって纏め、更にパイーシイの弟子たちによって受け継がれたロシアにおける長老制の実践の歴史と、それがオプチナ修道院の長老制に繋がる経緯を跡付けた。本研究においては、ロシアの修道性の基礎に「フィロカリア」のスラヴ語訳、祈りの「知恵のいとなみ」、長老制の発達が核になっているという仮説のもとで、それが実際にロシア正教の霊的修行の一環として受容されたことを跡づけることができた。ただ、それが世俗の文化に如何なる形で反映しているかという点については、厖大な史料の整理と考察を要することから、本研究ではロシア・スラヴ派の思想家キレエフスキーの人生にその十全な残照を認めるにとどまった。以下に箇条書きにして整理しておく。1)ロシアの修道性の発達は、聖書に次ぐ第二の聖典とも言うべき「フィロカリア」の導入に端を発していた。パイーシイ・ヴェリチコフスキーの翻訳によってロシアに広まったこの修徳の鑑は、ピョートル大帝以後の修道生活に決定的な指針を与えた。その根本的理念と、翻訳の経緯が明らかにされている。2)東方教会における修道性の基礎をなす祈りの本質は、聖書や聖師父の教義に基づく「知恵のいとなみ」と称される、独特の技法とコスモロジー(世界観)を有するものが主流になっていた。3)ロシアではスラヴ派の始祖と見なされているイワン・キレエフスキーが西欧主義的な思想家から、正教思想家へと転向する過程を、妻ナターリアとオプチナのマカーリイ長老(ナターリアの霊の父)との交流の記録(アルヒーフ史料)に基づいて跡づけた。4)正教会の「長老制」の概念を、聖師父やロシアの長老の著述を利用することによって纏め、更にパイーシイの弟子たちによって受け継がれたロシアにおける長老制の実践の歴史と、それがオプチナ修道院の長老制に繋がる経緯を跡付けた。オプチナ修道院における聖師父著作関係の出版物、19世紀の原典(マイクロ・フィルム)及び現在刊行中の再版本の蒐集を行った。主な収穫としては、オランダで復刻された19世紀のロシア聖師父著作露訳集全57巻の約半分、90年代に再版されたオプチナ修道院他の聖師父著作やロシアの長老制や霊性、長老の伝記、説教、書簡集などである。資料の収集、整理と平行して、研究テーマに関わる文献渉猟、発表を行った(「ロシア正教と禁欲主義の伝統-ロシアにおけるフィロカリアの受容について-」神戸外大論叢、平成11年第3号、神戸市外国語大学)。ここではオプチナ修道院復興以前のロシアの修道性の源流として、パイーシイ・ヴェリチコフスキーによおるビザンツ時代の正教理念の集大成としてのフィロカリア(ドブロトリュービエ)編纂事業の過程やその問題点、更にはこの書がその後のロシアの長老制の発展に果たした役割に関する概観を試みた。それによって、フィロカリアの霊的書物としての意義と、ビザンツ(アトス)とロシア(モルダヴィア)を繋ぐ聖性の系譜がパイーシイの弟子等の人脈によって確立されたことがある程度立証されたものと思われる。また年度末には念願のオプチナ修道院訪問を果たした。復興後十年を経た今、この経験は単に聖地巡礼としての興味もさることながら、将来のロシア正教思想の発展を担うひとつの中心を目のあたりにしたということで、取材によって得られた貴重な資料とともに、多くの精神的刺激を与えてくれたものと思われる。資料面では、昨年度より蒐集を始めたオプチナ修道院出版による聖師父関係の著作集(19世紀の原本をオランダでマイクロ化したもの)の残り半分を入手し、その全貌(全57巻)を知るに至った点が大きい。また現在、オプチナ修道院関係の長老の著作や書簡、また革命以前の研究者による伝記などが精力的に復刻されつつあり、それらを併せて利用するならば、ソ連崩壊後復興された修道院の伝統と相俟って、当該テーマに関心のある研究者にとっては実にタイムリーな研究となることが予測される。
KAKENHI-PROJECT-11610547
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オプチナ修道院とロシアの精神文化の研究
研究面では、パイーシイ・ヴェリチコフスキーとその弟子たちがモルダヴィアで実践していたアトスの禁欲主義的祈りの伝統の内容を明らかにすることが早急に取り組むべき課題となったが、そのささやかな成果として、東方教会に伝わる「知恵の祈り」「イイススの祈り」の伝統がロシアで如何に受け継がれ、その意義が聖書的、更には、奉神礼(エウカリスティア)の構造として如何に理解されているかについて、認識を深めることができた。このパイーシイの活動はアトスとロシアを結ぶ大きな架け橋として評価されているが、彼がモルダヴィアの修道院長として、アトスのヘシカズム運動から何を汲み取ったのかという修道性の根幹に関わる問題を、彼自身が「知恵の祈り」の否定派との間に繰り広げた論争の書から読み解くことによってある程度解明したと思う。そこでは明らかにビザンツから吸収されたものが、ロシアの精神的土壌の中でより民衆的な信仰生活と解け合うことにより、ロシア正教特有の宇宙観を形成した点が強調されている(詳しくは、今春発行予定の神戸外大論叢第51巻4号を参照せよ)。昨年の秋、別の目的でロシアを訪れた際、ある偶然から同種のテーマに携わるロシア人研究者の案内で、再びオプチナ修道院を訪れる機会を持ったが、当地に一週間ほど滞在した折りに、イリイ長老の祝福を得た後、修道士の研究者から幾つかの問題に関する明解な回答を得る幸運に恵まれたことを最後に付け加えておく。昨年度までに蒐集した聖師父文献を整理することを通して、1840年代にモスクワのゴーチェ出版局からかなりまとまった聖師父の翻訳シリーズが出版されていたことを知り、それらが専らロシアにおける正教の教義研究の一翼をになうセルギイ大修道院(所謂モスクワ神学大学)の研究成果となっていることを突きとめた。この流れとは別に、19世紀に復活した長老制のもとでやはり聖師父の出版活動に従事していたのが我々の研究テーマであるオプチナ修道院とその周辺の人々であった。初期スラヴ派の論客として首都の論壇で指導的役割を演ずる傍ら(33年には自己の雑誌『ヨーロッパ人』の停刊処分を受けたものの)、その後、正教徒の魂に益するこれら聖師父文献の計り知れぬ価値に注目し、オプチナの長老マカーリイの霊の子となって、これらの出版活動の中心的存在となったのがイワン・キレエフスキーである。彼はオプチナの長老マカーリイや自分の妻のナターリアの霊の父であった高位聖職者等との交流を通して、18世紀にパイーシイ・ヴェリチコフスキーによってアトスからロシアにもたらされ、その後弟子たちの手によってオプチナに持ち込まれた厖大な聖師父文献の写本(ギリシャ語やスラヴ語のものはロシア語に翻訳する必要があった)をロシアで出版することを企画、実践する。今年度の主たる研究上の成果は、ある意味でロシア人インテリに典型的な転向をとげたキレエフスキーの生涯の様々なエピソードや伝記的事実を、専らオプチナ修道院との関係に絞ってモスクワの古文書館やオプチナの記録に基づいて明らかにし、彼自身の思想展開(西欧派-スラヴ派-正教研究者)を彼の著作集をもとにある程度描き出すことができたことである(「神戸外大論叢第52巻、第5-6号を参照のこと)。この過程において、ロシアの研究者と意見交換を行った他、小生自身のオプチナとの関係も深まったことを特記しておきたい。本研究の最終年度にあたる本年は、ロシア修道性に不可欠な形態としての「長老制」という概念を取り上げ、その概念的な定義や修道生活の実践仁おける
KAKENHI-PROJECT-11610547
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単一分子デバイスの光電子機能
単一分子デバイスに関して光物性及び電子物性を明らかにするため,ナノワイヤーの作製法や観察法,装置開発通して将来の分子エレクトロニクスデバイス実現のためにチオフェンのモノマーを溶解した溶液に電気化学反応を用いた新しい手法で重合し,分子ワイヤーを作製する手法を開発し,走査型トンネル顕微鏡にて個々の分子のトンネル物性を測定した。また,分子細線としてDNAを伸張固定したものに機能性ポリマーや金属を析出させたワイヤーを作製し,原子間力顕微鏡や走査型近接場光学顕微鏡にて形状像,近接場光学物性を測定した。本年度は走査型プローブ顕微鏡について分子エレクトロニクスにおける個々の分子の光物性と電気物性を高分解能に観察可能な装置開発とそれを用いて伸張固定したDNAに金属析出したナノワイヤーを作製したものを高分解能測定し,ナノスケール電子物性と光物性について知見を得た。具体的には装置について金属析出したDNAを観察できるように散乱型の近接場光学顕微鏡を高分解能に観察できるように装置を安定化させた。さらに強誘電体ポリマーにドープすることで強誘電性の特徴が変化する様子を測定し,変化が見られることが分かった。特にAFMとの形態変化にも大きな変化が現れることを観察できた。また光あみでなく,電子物性の測定として導電性や表面電位測定なども行い,ナノワイヤーにおける単一電子デバイスへの展開に関して重要な知見を得ることができた。電気化学を用い液相中で1本の導電性高分子を長さ・密度・方向・形を電気パルス印加により制御しながら大面積に形成させる新しい技術"電気化学エピタキシャル重合"を開発した.この技術はモノマー(分子細線原料)を含んだ電解質溶液中において、ヨウ素原子で表面修飾した原子平坦金属電極にパルス電圧を印加することにより、基板の表面原子配列に沿ってモノマーの逐次的な電解重合を起こさせ単一分子細線を形成させる原理に基づいている.人為的に核を表面上に埋め込み、1分子ワイヤ成長の制御に成功した.チオフェン3量体であるターチオフェン分子(3T)を含む電解質溶液にヨウ素で表面修飾した金(111)基板を浸し電圧パルスを印加し表面核を埋め込む.次にモノマーのみを含む電解質溶液中に核埋込基板を浸し電圧パルスを印加した.驚くべきことに1軸方向に伸びた長いワイヤが生成することが分かった.ほとんどの分子が1軸方向に成長するため成長ワイヤ間での衝突が少ない.このため長いワイヤ成長が可能になったものと考えられる.最長で200nmの長さを持つ分子細線の作成に成功した.この基板の結晶構造は、金(111)に結合したヨウ素原子配列が圧縮六方晶(1軸対称)構造を取っていることが分かった.分子ワイヤがヨウ素原子配列に沿って1軸成長したものと考えられる.この結果は、表面に結合したヨウ素の原子の配列変化により分子細線の配向が制御可能であることを示している.単一分子デバイスに関して光物性及び電子物性を明らかにするため,ナノワイヤーの作製法や観察法,装置開発通して将来の分子エレクトロニクスデバイス実現のためにチオフェンのモノマーを溶解した溶液に電気化学反応を用いた新しい手法で重合し,分子ワイヤーを作製する手法を開発し,走査型トンネル顕微鏡にて個々の分子のトンネル物性を測定した。また,分子細線としてDNAを伸張固定したものに機能性ポリマーや金属を析出させたワイヤーを作製し,原子間力顕微鏡や走査型近接場光学顕微鏡にて形状像,近接場光学物性を測定した。本年度は走査型プローブ顕微鏡について分子エレクトロニクスにおける個々の分子の光物性と電気物性を高分解能に観察可能な装置開発とそれを用いて伸張固定したDNAに金属析出したナノワイヤーを作製したものを高分解能測定し,ナノスケール電子物性と光物性について知見を得た。具体的には装置について金属析出したDNAを観察できるように散乱型の近接場光学顕微鏡を高分解能に観察できるように装置を安定化させた。さらに強誘電体ポリマーにドープすることで強誘電性の特徴が変化する様子を測定し,変化が見られることが分かった。特にAFMとの形態変化にも大きな変化が現れることを観察できた。また光あみでなく,電子物性の測定として導電性や表面電位測定なども行い,ナノワイヤーにおける単一電子デバイスへの展開に関して重要な知見を得ることができた。
KAKENHI-PROJECT-05F05116
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イオン交換反応により炭酸イオンを固定する鉱物の生成機構
本研究では、海洋地殻の3割を越えるとされる超塩基性岩の変質により生成するマグネシウム炭酸塩、特に炭酸イオンをイオン交換反応により結晶構造内に取り込むことのできるハイドロタルサイト族鉱物の生成機構を明らかにし、地球表層部における炭酸イオン固定や二酸化炭素の循環に及ぼす影響を評価することを目的とした。そのため、昨年度の千葉県、徳島県、愛媛県、オマーンに引き続き、北海道幌満かんらん岩を調査し、地質調査および試料、(水、岩石、土壌)採取を行うとともに、雰囲気制御(二酸化他酸素分圧)鉱物変質実験装置による反応実験を継続した。その結果、超塩基性岩の風化や蛇紋岩化に伴う間隙水の高アルカリ化により、ハイドロタルサィト族鉱物は容易に生成し、溶存炭酸イオンはその生成によって固定化されることが判明した。また、生成時に他の陰イオンを取り込んだハイドロタルサイト族鉱物が形成しても、炭酸イオンに対する高い選択性から、生成後もイオン交換反応によって溶存炭酸イオンを固定可能であることが、雰囲気制御鉱物変質実験装置による実験から明らかとなった。間隙水の高アルカリ化は、亀裂に産するブルース石の風化溶解、または透輝石等の含Ca塩基性鉱物の蛇紋岩化によるCaの溶脱によるもので、Mg・Feかんらん岩の風化、溶脱のみでは高アルカリ化せず、単にMgの溶出と鉄酸化・水酸化物の生成にとどまることも判明した。以上のことから、今後、グローバルな炭素循環を考える場合、海洋底に露出して海洋風化に曝される超塩基性岩の分布やその蛇紋岩化の程度、海洋底下における極低温蛇紋岩化作用の有無、間隙に産するブルース石の含有量などの評価が重要であることが明らかとなった。本研究では,海洋地殻の3割を越えるとされる超塩基性岩の変質により生成するマグネシウム炭酸塩,特に炭酸イオンをイオン交換反応により結晶構造内に取り込むことのできるハイドロタルサイト族鉱物の生成機構を明らかにし,地球表層部における炭酸イオン固定や二酸化炭素の循環に及ぼす影響を評価することを目的としている.そのため,本年度は,千葉県安房郡鋸南町南佐久間,徳島県木沢村坂州,愛媛県八幡浜市頃時鼻の蛇紋岩帯とオマーンオフィオライトを研究対象地域とし,地質調査および試料(水および岩石・土壌)採取を行って各種の鉱物学的・地球化学的分析に供した.その結果,蛇紋岩中の細脈や蛇紋岩地帯から出る湧水中で,ハイドロタルサイト族鉱物を含む様々な含水マグネシウム炭酸塩鉱物の産出を認めた.それぞれの鉱物の生成に関して詳細に産状や共生関係を調べたところ,蛇紋岩化作用や蛇紋岩化に伴って生成したブルース石の溶解によって亀裂の空隙水がpH9以上の高アルカリに保たれ,その高pH溶液中に溶存するマグネシウムイオンと炭素イオンの直接沈殿によって生成する鉱物と蛇紋石の不一致溶解によって生成する鉱物に分類されることを明らかとした.また,その時生成する炭酸塩鉱物の種類は反応溶液のpH,二酸化炭素分圧,Mg/Ca比によって決定されることを熱力学的計算から明らかにし,本年度整備した雰囲気制御鉱物変質実験装置による反応実験でも,計算結果を指示するデータが得られ,蛇紋岩化やそれに伴う岩石-水相互作用のいくつかの素過程が明らかになりつつある.本研究では、海洋地殻の3割を越えるとされる超塩基性岩の変質により生成するマグネシウム炭酸塩、特に炭酸イオンをイオン交換反応により結晶構造内に取り込むことのできるハイドロタルサイト族鉱物の生成機構を明らかにし、地球表層部における炭酸イオン固定や二酸化炭素の循環に及ぼす影響を評価することを目的とした。そのため、昨年度の千葉県、徳島県、愛媛県、オマーンに引き続き、北海道幌満かんらん岩を調査し、地質調査および試料、(水、岩石、土壌)採取を行うとともに、雰囲気制御(二酸化他酸素分圧)鉱物変質実験装置による反応実験を継続した。その結果、超塩基性岩の風化や蛇紋岩化に伴う間隙水の高アルカリ化により、ハイドロタルサィト族鉱物は容易に生成し、溶存炭酸イオンはその生成によって固定化されることが判明した。また、生成時に他の陰イオンを取り込んだハイドロタルサイト族鉱物が形成しても、炭酸イオンに対する高い選択性から、生成後もイオン交換反応によって溶存炭酸イオンを固定可能であることが、雰囲気制御鉱物変質実験装置による実験から明らかとなった。間隙水の高アルカリ化は、亀裂に産するブルース石の風化溶解、または透輝石等の含Ca塩基性鉱物の蛇紋岩化によるCaの溶脱によるもので、Mg・Feかんらん岩の風化、溶脱のみでは高アルカリ化せず、単にMgの溶出と鉄酸化・水酸化物の生成にとどまることも判明した。以上のことから、今後、グローバルな炭素循環を考える場合、海洋底に露出して海洋風化に曝される超塩基性岩の分布やその蛇紋岩化の程度、海洋底下における極低温蛇紋岩化作用の有無、間隙に産するブルース石の含有量などの評価が重要であることが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-12740298
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地域生活支援を利用する精神障害者に見られる主観的生活意識に関する日瑞の比較研究
精神障害者の地域生活を支える支援,とりわけサービス利用者と援助者との間でおこなわれる共同意思決定のプロセスについて,スウェーデンの専門職であるパーソナル・オンブズマンの制度と役割を整理し,その機能を日本で展開する可能性について,相談支援専門員を対象にした調査をもとに考察した。両国とも利用者の主観的ニーズと自己決定を最大限尊重しようとする援助者の姿勢は共通であるが,利用者の自己決定を支えるセーフティネットの広がりには違いがある。精神障害者の地域生活を支える支援,とりわけサービス利用者と援助者との間でおこなわれる共同意思決定のプロセスについて,スウェーデンの専門職であるパーソナル・オンブズマンの制度と役割を整理し,その機能を日本で展開する可能性について,相談支援専門員を対象にした調査をもとに考察した。両国とも利用者の主観的ニーズと自己決定を最大限尊重しようとする援助者の姿勢は共通であるが,利用者の自己決定を支えるセーフティネットの広がりには違いがある。2006年10月より完全施行された障害者自立支援法にもとづき,とりわけ精神障害者に対する福祉サービスは大きな岐路をむかえている。精神障害者がどのように各種の支援サービスを意味づけ,どのような意義を感じてそうしたサービスを利用しているのか,そうしたサービスを利用しながら自分の生活をどのように捉えているかという「主観的生活意識」の理解が,施策やサービスを通して何を提供すべきであるかを考える上で重要であると考える。同様に,支援にあたる援助者にとっても,精神障害者の地域生活を支える上で何を重要と考え,それをどのように実践に生かそうとしているかを考え続けることが重要となる。本研究では,1990年代半ばより急激な脱施設化を達成したスウェーデンと日本の両国における比較を通して,精神障害者の主観的生活意識の理解と,援助者がそれをどのように理解するのかを検討するものである。本年度においては,1)精神障害保健福祉施策に関する内外文献を収集し,両国における施策・サービス体系の経緯と現状を整理した。成果は現在執筆中である。2)11月にスウェーデンのヴァルムランド県およびイエテボリ市において,13名のパーソナル・オンブズマン(Personligt Ombud; PO)を対象に面接調査をおこなった。現在スウェーデンの精神障害者支援におけるPOの位置づけとその意義について考察をおこなっている。3)主観的生活意識について,その意味するところを考察した。本人自身が感じているニーズ(主観的ニーズ)が表明されにくい傾向にある精神障害者への支援において,《生命-生活-生涯》に対する《気づき-態度-価値》の総体として「生活意識」を捉え,援助の過程を丁寧に分析することの重要性を示した。今後,さらなる検討をおこなっていく予定である。昨年度に引き続き,地域精神保健福祉サービスを提供する専門職者,およびサービスを利用する精神障害者を対象として,主観的生活意識の理解を深めるべく研究をおこなった。具体的には以下の6点である。1)昨年度実施した,スウェーデンのpersonligt ombudを対象とした面接調査の結果から,スウェーデンの精神障害者の地域生活におけるpersonligt ombudの役割をまとめ論文化した。論文は現在投稿中である。2)2009年11月から12月にかけてスウェーデンのカールスタット大学を訪問し,相互の研究状況を確認するとともに,今後進める作業についての確認をおこなった。あわせて昨年度調査協力を得たpersonligt ombudのオフィスを訪問し,分析結果を報告した。さらに,ノルウェーのヘードマルク大学を訪問し,研究交流をおこなった。3)二文字を中心として,スウェーデンにおける成年後見制度,とりわけグードマンと管財人(forvaltare)の役割について聴き取り調査をおこなった。成果の一端はすでに公表済みである。4)2010年3月に,カールスタット大学で共同プロジェクトを運営しているベンクト・G・エリクソンが来日し,日本での精神障害者地域福祉の現状に関する調査研究の一端として,大阪府の精神障害者福祉施設を訪問し,執筆中の論文についての意見交換をおこなった。5)岩切を中心に,大阪の相談支援専門員を対象とした調査を実施した。スウェーデンで実施した調査と比較可能な形となるよう,分析を進めている。6)主観的生活意識の概念化に関する検討をさらに進めるべく,資料の収集と整理をおこなっている。昨年度に引き続き,地域精神保健福祉サービスを提供する専門職者,およびサービスを利用する精神障害者を対象として,利用者と援助者の共同意思決定のプロセスに関する研究をおこなった。具体的には以下の4点である。1)2010年12月にスウェーデン・カールスタット大学を訪問し,現地の専門誌に投稿する論文(日中活動の場に関する比較研究)について意見交換をおこなった。現在審査中である。2)あわせて,personligt ombud (PO)のオフィスを訪問し,支援を受ける当事者の面接調査をおこなうとともに,意見交換をおこなった。結果は論文にまとめ,現在印刷中である。3)あわせて,スウェーデン・イエテボリの複数の事業所を訪問し,スウェーデンにおける成年後見制度,とりわけグードマン(god man)と管財人(forvaltare),そしてその活動を監督するoverformyndareの役割について面接調査をおこなった。成果の一端は二文字により学会で発表された。4)連携研究者の石田を中心として,日本の相談支援専門員を対象とした面接調査の結果をまとめ,論文化した。現在印刷中である。支援者が精神障害者の自己決定を最大限尊重する姿勢は両国に共通であると言えるが,スウェーデンではより共同自己決定のプロセスを重視したかかわりを志向している。
KAKENHI-PROJECT-20530506
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地域生活支援を利用する精神障害者に見られる主観的生活意識に関する日瑞の比較研究
それはPOが「よりそうことの専門家」としてその身分と役割を保証されていること,日本にくらべて精神障害者を取り巻くセキュリティネットが重層的であることが大きな要因として挙げられる。
KAKENHI-PROJECT-20530506
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20530506
段ボール製ベッドによる東日本大震災避難者の健康被害の改善、防止効果の検討
大災害後には様々な疾患の発症率が上昇する。原因の1つに、避難所での劣悪な環境が挙げられる。その環境を改善するべく、段ボール製ベッドを導入し、効果を調査・検討した。宮城県石巻市の災害避難所で、同意の得られた43名にベッドを導入し、1ヶ月後のフォローが可能であった30名で観察調査を行った。血圧は有意に下降し、複合的動作能力を評価するtimed up & go testでも、有意な改善を認めた。導入前に咳嗽、不眠、腰痛の症状のあった人は、いずれも有意に改善した。健康関連QOL(SF-8)調査では、身体的健康度と精神的健康度の両者で有意な改善が認められた。本ベッドは有効な影響を及ぼす事が示唆された。以前より大災害後には心血管疾患を始めとする様々な疾患の発症率が上昇することが知られている。その原因の1つとして、避難所での劣悪な環境が挙げられる。その環境を少しでも改善するべく、避難所に段ボール製ベッドを導入し、その効果を調査・検討した。宮城県石巻市の災害避難所で、同意の得られた43名に段ボール製ベッドを導入し、1ヶ月後のフォローが可能であった30名で観察調査を行った。血圧は有意に下降した(収縮期血圧前:146mmHg、後:131mmHg(p<0.001)、拡張期血圧前85mmHg、後:77mmHg(p<0.001))。複合的動作能力を評価するtimed up & go testでも、1ヶ月後に有意な改善を認めた(前:8.2秒、後:7.7秒(p<0.01))。血液凝固能を評価する血液d-ダイマーテストでは、被調査者全員では有意な差を認めなかったが、ベッド導入前から高値(0.05ug/ml以上)であった人は、1ヶ月後に低下する傾向を示した(前:1.1ug/ml、後:0.7ug/ml(p=0.063))。導入前に咳嗽、不眠、腰痛の症状のあった人は、いずれも有意に改善した。さらに、さらに、8項目の質問からなるアンケートで、健康関連QOLを評価するSF-8では、8項目中7項目で有意な改善を認めた。しかも、身体的健康度と精神的健康度の両者で有意に改善していた。段ボール製ベッドは安価(原価2,000円程度)で場所をとらず、大量生産が可能であり、かつ丈夫(平均加重で約10トンに耐える)である。よって、得られたデータを併せて考えれば、本ベッドは災害避難所の劣悪な環境にあって、有効な影響を及ぼし得る事が示唆された。大災害後には様々な疾患の発症率が上昇する。原因の1つに、避難所での劣悪な環境が挙げられる。その環境を改善するべく、段ボール製ベッドを導入し、効果を調査・検討した。宮城県石巻市の災害避難所で、同意の得られた43名にベッドを導入し、1ヶ月後のフォローが可能であった30名で観察調査を行った。血圧は有意に下降し、複合的動作能力を評価するtimed up & go testでも、有意な改善を認めた。導入前に咳嗽、不眠、腰痛の症状のあった人は、いずれも有意に改善した。健康関連QOL(SF-8)調査では、身体的健康度と精神的健康度の両者で有意な改善が認められた。本ベッドは有効な影響を及ぼす事が示唆された。大災害後には呼吸器系や心血管系を始めとする様々な疾患発症率の増加が報告されている。その原因の1つとして避難所の劣悪な生活環境が挙げられる。その改善方法の1つとして避難所に段ボール製ベッドを導入することを考えた。ベッドの導入によって健康状態は改善するのか?我々は調査を行った。血圧は収縮期、拡張期ともに導入1ヶ月後に下降した(収縮期圧前146 mmHg、後131 mmHg、拡張期圧前85 mmHg、後77 mmHg。いずれもp<0.001)。下肢の筋力を反映する検査(Timed up & go test)も1ヶ月後に改善した(前8.2秒、後7.7秒、p<0.01)。血液凝固能を反映するD-dimerは、全例での調査では有意な差は無かったが(前0.43 ug/mL、後0.35 ug/mL)、もともと高めの者は1ヶ月後には下降する傾向を示した(前1.13 ug/mL、後0.67 ug/mL、p=0.063)。症状に関するアンケートでは、導入前に咳嗽、腰痛、不眠の症状を持つ避難者は、いずれも有意な差を持って1ヶ月後に改善した。健康関連QOLを評価できるSF-8では、身体的健康の4項目、精神的健康の4項目の全8項目の内、精神的項目の「社会生活機能」を除く7項目で、ベッド導入後に有意な差を持って改善した。以上の結果は、血圧が下がること及びもともとD-dimer(凝固能)の高い者が下がる傾向から、ベッドの導入は心血管系疾患の発症を抑える可能性を示唆している。また、下肢筋力の改善からは、高齢者の筋力低下から来る廃用症候群からの回避を促す可能性が考えられる。さらに、アンケート調査からはベッド導入は身体的な改善に留まらず、精神的な健康状態をも改善する可能性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-24659342
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段ボール製ベッドによる東日本大震災避難者の健康被害の改善、防止効果の検討
【研究実績の概要】に記したごとく、ベッド導入により身体的・精神的な健康状態の改善が確認され、本研究の目的をかなり達成できたと考えている。現在、今までの結果をまとめて英文誌に投稿中である。調査開始直後より、避難者は日々避難所から一般住宅や仮設住宅に移動し、現在、全ての避難所が閉鎖されている。従って、ベッド導入時や導入1ヶ月後の時と同様な調査はできなくなってしまった。しかし、過去の大震災からの報告では、仮設住宅に移った後でも避難者の血液凝固能(D-dimer)の異常が続くことが指摘されている。因って、可能な限り元避難者の血液凝固能などの把握に務めていく予定である。次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせて、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
KAKENHI-PROJECT-24659342
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強い相互作用で探る原子核中の弱い相互作用による遷移
原子核は2種類の核子、つまり陽子と中性子から構成される。その事を特徴付けるのがアイソスピン量子数である。またそれぞれの核子は、スピン量子数を持つ。本研究の主たる対象となるガモフテラー(GT)遷移は、原子核の性質と密接にかかわるこれら2種類の量子数の状態を変化させる働きをするため、原子核の性質を強く反映し、原子核構造研究の為のユニークな情報を提供する。また宇宙での元素合成、例えば中性子星合体におけるニュートリノ起源の元素合成に目を向けた時、弱い相互作用によって起こるGT遷移の果たす役割の大きさに目を見張る。しかし弱い相互そのものを使ってのGT遷移の研究は、その相互作用の弱さ故に絶望的である。そこで一定の条件の下では、強い相互作用で起こる「荷電交換反応」が逆ベータ崩壊のように振る舞い、しかもベータ崩壊の研究ではたどり着けない高励起状態へのGT遷移の研究が可能であることに目をつけた。しかし荷電交換反応では、GT遷移の遷移強度の絶対値が出ない。そこで、a)世界最高分解能が得られる、磁気分析器「グランド・ライデン」を使う荷電交換反応による研究b)アイソスピンに関して対称な不安定核からのベータ崩壊を用いた研究、これら2種類の研究を融合する事により、GT遷移強度の絶対値を得ると共に、原子核に於けるGT遷移の詳細及び全体像を理解しようとしている。更にこの年度では、GT遷移そのものの研究に加え、アイソスピン量子数の観点で類似な遷移となる、電磁相互作用で起こるM1ガンマー遷移との比較の研究を進めた。つまりミクロの世界のすべての現象を支配する三つの力、強、弱、そして電磁相互作用で起こる原子核中の遷移が、どの様にせめぎ合い、かつ調和しながら原子核の構造・原子核内の遷移に寄与しているかを調べている。大阪大学核物理研究センターでの高分解能(3He,t)荷電交換反応実験で得られたデータを、ベータ崩壊の結果、またアイソスピン量子数類似のガンマー崩壊を参照しつつ解析した。原子核におけるガモフテラー(GT)遷移の全体像を掴むための研究を一歩一歩進めている。従来、荷電交換反応によるGT遷移研究において、最もよく知られ、かつ詳しく調べられてきたGT励起は、10MeV程度以上の高い励起エネルギーに見られるGT共鳴(GTR)状態であった。しかしここ数年のデータ解析の蓄積により、このGTRと同程度の強度を持つ「低励起スーパGT状態(LeSGT状態)」の存在を系統的に確立しつつある。(第一報の論文はPhysical ReviewLetters誌に掲載された。)既知の42Ca-->42Scにおけるガモフテラー(GT)遷移強度の第一GT状態への集中に加え、18O-->18F、6He-->6Liの場合に於いても、同様なGT遷移強度の第一GT状態への集中が観測された。本研究の目的であるGT遷移の研究を着実に進める。実験手段として両輪を成すのは、1)荷電交換反応と、2)ベータ崩壊による研究である。それぞれの手段による実験、及びデータ解析を順次行う。研究の継続により、以下の問題の解明を目指している。1)低励起スーパGT状態(LeSGT状態)、及び新たにその存在を認識し始めたanit-LeSGT状態の研究を更に進める。今までの研究により、原子核の荷電スカラー的、及び荷電ベクトル的残留相互作用の「せめぎ合い」のバランスが、原子核GT遷移の励起エネルギー分布を決める重要なカギである事を示しつつある。さらに系統的研究を進めたい。2)2017年に出版したsd-殻核26Mgの論文で示したのは、GT状態の「固有崩壊巾」が、アイソスピン量子数の選択則に依存性にして変化するという事であった。つまりこれを利用する事により、高励起GT状態の、アイソスピン量子数を同定出来る、という事になる。さらに、我々が実現している分解能が、原子核GT状態の固有崩壊巾を調べるのに十分な手段である事も示した。最近の解析の結果、同じくsd-殻核30Siの高励起状態を研究対象の候補と考え始めた。この崩壊巾の知見を、原子核アイソスピン量子数同定の新たな手段として発展させる様、研究を進める。4)ドイツ・ドレスデン工科大学のグループと、原子核を「検出器」として、太陽ニュートリノを効率よく捕まえる為の研究を続けている。適切な原子核をニュートリノ検出器として使う事により、ニュートリノの中性流、荷電流による原子核との相互作用を分離し、かつ効率良く実験的に観測できる可能性を追及する。いままでの、原子核構造の研究の為のGT遷移研究に加え、大阪での荷電交換反応実験のデータを活かし、原子核物理とニュートリノを融合する新たな研究分野を広げたい。宇宙のマクロな骨格は、重力と電磁気力の協調で形成されている。しかしミクロな元素合成に目を向けると、強大な核力(強い相互作用)は当然として、意外にも弱い相互作用の働きが大きい事に目をみはる。超新星爆発や中性子星の融合に伴う高温高密度状態でのニュートリノ起源の元素合成は典型例である。ニュートリノは弱い相互作用のみで元素合成に関与する為、ニュートリノそのものを使っての元素合成研究は、相互作用の弱さ故に絶望的である。さらに陽子過剰核でのrp過程(rapid proton process)元素合成で重要な、弱い相互作用によるベータ崩壊の研究では、半減期から反応速度(遷移強度)の絶対値が決まるが、崩壊測定ゆえに高励起状態への遷移及びその寄与を研究できない。
KAKENHI-PROJECT-15K05104
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K05104
強い相互作用で探る原子核中の弱い相互作用による遷移
そこで強い相互作用で起こる荷電交換反応が逆ベータ崩壊のように振る舞い、しかも高励起状態の寄与も研究可能であることに目をつけた。弱い相互作用で起こる荷電交換遷移で重要なガモフテラー(GT)遷移の詳細を、軽いsd-殻核、巨星の核となる鉄、コバルト、ニッケル等のpf-殻核、またより重い元素からの遷移の詳細を、高分解能荷電交換反応を用い研究し、原子核に於けるGT遷移の全体像を理解しようとしている。しかし強い相互作用で起こる荷電交換反応のみの研究では、GT遷移強度の絶対値の決定において不確定さが残るという難点があった。そこで本研究では、ベータ崩壊の研究で低、中励起状態へのGT遷移強度の絶対値を決め、それを標準とし、荷電交換反応で得られる高分解能を武器に、高励起状態へのGT遷移強度を明らかにしつつある。pf-殻核42Caから始まるGT遷移の研究をまとめた論文がPhysical Review C誌に掲載されたほか、レビュー論文を「原子核研究」誌に書いた。また世界五ヶ所での国際会議での招待講演で、この分野の面白さをアピールした。本研究における両輪は、荷電交換反応実験とベータ崩壊実験である。電気代金高騰で、大阪大学核物理研究センターでの荷電交換反応実験は、次年度の延期となった。一方、H27年6月にスペイン、フランスとの共同研究で、理化学研究所でベータ崩壊実験を行った。現在そのデータの解析が、日本、スペイン、フランス及びチリで進んでいる。また過去のデータの解析から見つかった新しい知見の、物理的意義及びその解釈に関する研究が進みつつある。これは日本、及びイタリア・ミラノ大学の理論研究者とも共同研究する形で進めている。宇宙でのミクロで動的な元素合成に目を向けると、弱い相互作用の働き、その中でも特にガモフテラー遷移(GT遷移)の寄与が大きい。巨星の超新星爆発や中性子星の融合に伴う高温高密度状態でのニュートリノ起源の元素合成はその典型的な例である。しかし弱い相互作用そのものを使っての元素合成研究は、その相互作用の弱さ故に絶望的である。そこで、一定の条件の下では強い相互作用で起こる荷電交換反応が逆ベータ崩壊のように振る舞い、しかも高励起状態への遷移の研究が可能であることに目をつけた。GT遷移の詳細を、この高分解能荷電交換反応と、核破砕装置により生成される不安定核のベータ崩壊実験を用い研究する。原子核に於けるGT遷移の全体像を理解しようとしている。sd-殻核、30SiからのGT遷移の研究のための、高分解能(3He,t)荷電交換反応実験を大阪大学核物理研究センターにおいて行った。更に、二重ベータ崩壊を起こす核として知られる重い原子核である116Cd、116Sn原子核の研究もおこなった。これらの原子核は、、イタリア・ドイツの研究者の注目を集め、国際合同チームでの実験となった。得られた実験のデータ解析を進めている。フランス・GANIL研究所では、大阪において今まで調べてきたpf-殻原子核、58Ni, 60Ni, 62Niのミラー核である陽子過剰pf-殻核のベータ崩壊実験によるGT遷移の研究を行った。
KAKENHI-PROJECT-15K05104
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走査型プローブ顕微鏡内引張り試験装置の開発によるDLC/パーマロイ薄膜の物性評価
本研究では,走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscope:SPM)内引張り試験装置を新開発するとともに,単結晶シリコン(Si)薄膜,ダイヤモンドライクカーボン(DLC)薄膜,パーマロイ薄膜から成る微小寸法試験片に対するマイクロ引張り試験を実施し,同薄膜材料の機械的特性評価を行った.具体的には,SPMを引張り試験における伸び測定装置として用いることにより,マイクロ引張り試験法における欠点であった歪み測定を高精度に実施し,ヤング率を直接測定する手法を確立した.本研究で開発した引張り試験機は,微小送り用PZTアクチュエータ,PZTハウジングケース,小型ロードセルおよび差動変位計から構成されている.とくに,既存のSPM装置寸法の制約上,アクチュエータ自体を試験片軸上に設置することが極めて困難であったため,新たにヒンジ構造を有するハウジングケースを新開発することにより,この種の問題を解決することに成功した.試験片軸方向が[110]方向を有する単結晶Si薄膜試験片に対して,SPM引張り試験を実施した結果,ヤング率160GPaを得た.さらに,SPMの伸びデータをスプライン補間することにより得られたヤング率は,170GPaであった.バルクSiの[110]方向のヤング率が169GPaであることから,SPM引張り試験で高精度にひずみ測定が実施されたと言える.また,Si薄膜試験片の引張り強度は900MPa1.2GPaを示し,バルクSiの約23倍であった.これは,試験片寸法の減少に伴って,試験片に微小欠陥が存在する確率が減少することにより,破壊強度の増加が引き起こされたと考えられる.一方,DLC薄膜:パーマロイ薄膜試験片に対する引張り試験も併せて試みたが,成膜条件の不具合から詳細なデータは得られなかった.同薄膜の機械的特性については,今後の課題として継続研究する予定である.本研究では,走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscope:SPM)内引張り試験装置を新開発するとともに,単結晶シリコン(Si)薄膜,ダイヤモンドライクカーボン(DLC)薄膜,パーマロイ薄膜から成る微小寸法試験片に対するマイクロ引張り試験を実施し,同薄膜材料の機械的特性評価を行った.具体的には,SPMを引張り試験における伸び測定装置として用いることにより,マイクロ引張り試験法における欠点であった歪み測定を高精度に実施し,ヤング率を直接測定する手法を確立した.本研究で開発した引張り試験機は,微小送り用PZTアクチュエータ,PZTハウジングケース,小型ロードセルおよび差動変位計から構成されている.とくに,既存のSPM装置寸法の制約上,アクチュエータ自体を試験片軸上に設置することが極めて困難であったため,新たにヒンジ構造を有するハウジングケースを新開発することにより,この種の問題を解決することに成功した.試験片軸方向が[110]方向を有する単結晶Si薄膜試験片に対して,SPM引張り試験を実施した結果,ヤング率160GPaを得た.さらに,SPMの伸びデータをスプライン補間することにより得られたヤング率は,170GPaであった.バルクSiの[110]方向のヤング率が169GPaであることから,SPM引張り試験で高精度にひずみ測定が実施されたと言える.また,Si薄膜試験片の引張り強度は900MPa1.2GPaを示し,バルクSiの約23倍であった.これは,試験片寸法の減少に伴って,試験片に微小欠陥が存在する確率が減少することにより,破壊強度の増加が引き起こされたと考えられる.一方,DLC薄膜:パーマロイ薄膜試験片に対する引張り試験も併せて試みたが,成膜条件の不具合から詳細なデータは得られなかった.同薄膜の機械的特性については,今後の課題として継続研究する予定である.初年度に当たる今年度は主としてAFM内引張り試験装置の設計および製作を行った.とくに設計に際しては,有限要素法解析を用いて試験片形状およびPZTアクチュエータ用ハウジングケースの形状寸法を決定した.試験片標点部の形状寸法は幅300μm,長さ20003000μm,厚さ0.220μmであり,引張り試験中における曲げ,ねじりの影響を最小限にするため,試験片標点間距離を比較的長く設定している.なお,本研究での主目的が薄膜材料のヤング率およびポアソン比の測定であることから,試験片形状設計におけるFEM解析は弾性解析のみとした.PZTアクチュエータ用ハウジングケースの設計においては,試験片軸上に引張り荷重が負荷される構造にする必要がある.しかし,既存のAFM装置の寸法の制約上,アクチュエータ自体を試験片軸上に設置することが極めて困難であった.そこで本研究では,新たにてこ式ヒンジ構造を有するハウジングケースを提案する事により,この種の問題を解決した.具体的には試験片軸に対して平行にアクチュエータを設置し,アクチュエータに変位が与えられるとその変位の約2倍の変位が試験片軸上に加わる構造となっている.一方,装置システムを作製する上で最も重要なことは,装置自体の重量を可能な限り小さくすることである.これは装置自体がAFM装置のPZTアクチュエータ上に直接取り付けられるためである.本研究では,ハウジングケース取り付けベースと粗動用マイクロステージとを一体化することにより,寸法,重量の低減を図っている.今後は,マイクロマシニングにより作製した微小単結晶シリコン試験片を用いて予備試験を実施した後,DLC等の薄膜材料に対する試験を実施する予定である.
KAKENHI-PROJECT-11650107
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11650107
走査型プローブ顕微鏡内引張り試験装置の開発によるDLC/パーマロイ薄膜の物性評価
本研究では,走査型プローブ顕微鏡内引張り試験装置を新開発するとともに,単結晶シリコン(Si)薄膜,ダイヤモンドライクカーボン(DLC)薄膜,パーマロイ薄膜に対するマイクロ引張り試験を実施し,同薄膜材料の機械的特性評価を行った.具体的には,これまで引張り法における欠点であった歪み測定を,SPMに設置されているAFM機能を用いることにより高精度に実施し,ヤング率を直接測定する手法を確立した.本研究で開発した引張り試験機は,微小送り用PZTアクチュエータ,PZTハウジングケース,小型ロードセルおよび作動変位計を用いて構成している.とくに,既存のAFM装置寸法の制約上,アクチュエータ自体を試験片軸上に設置することが極めて困難であったため,新たにヒンジ構造を有するハウジングケースを提案する事により,この種の問題を解決することに成功した.試験片軸方向が[110]方向を有する単結晶Si試験片に対して,AFM引張り試験を実施した結果,ヤング率160GPaを得た.バルクSiの[110]方向のヤング率が169GPaであることから,高精度にひずみ測定が実施されたと言える.また,引張り強度は平均500MPaを示し,バルクSiの約24倍であった.一方,DLC薄膜の引張り試験の結果,ヤング率は80100GPaを示した.ナノインデンテーション法から算出したヤング率についても100GPa程度であることから,本研究で開発したAFM引張り試験装置でも高精度にヤング率測定できることが確認された.しかしながら,MFM機能を用いたパーマロイ薄膜の試験では,磁区測定には成功したものの,成膜条件の不具合から詳細なデータは得られなかった.同薄膜の機械的特性および,機械的特性が磁気特性に及ぼす影響については,今後の課題として継続研究する予定である.
KAKENHI-PROJECT-11650107
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11650107
動物園における大型類人猿3種の心疾患対策を目指した心拍測定法の開発と予備的解析
大型類人猿の心疾患は、海外で飼育されるゴリラの死亡原因の41%、チンパンジーで38%、オランウータンで20%を占める重大な疾患である。これらの大型類人猿はIUCNが定める絶滅危惧種I類であり、飼育集団の健全な維持管理は保全活動に直結する。一方、国内で飼育されている大型類人猿の心疾患についてほとんど把握できていないため、日常的に実施できる簡易検査法を確立する必要がある。そこで大型類人猿の脈波測定法の開発を目的として、千葉市動物公園において飼育されている3種を対象で心拍測定法を検討した。ゴリラ(3個体)、チンパンジー(3個体)、オランウータン(2個体)を対象に、オペラント条件付けを用いたハズバンダリートレーニングを1回に510分程度、各個体の寝室前で実施し、種ごとの反応や進捗状況を記録した。トレーニングでは、日常の健康管理、脈波測定に必要な「手を出したままの姿勢で静止する」状態を訓練した。3種間で、トレーニングの進捗状況や反応に種差が見られた。チンパンジーはトレーニングに積極的に参加した。これに対しゴリラは、日常の健康管理を目的としたトレーニングについてはある程度習得したが、測定のために姿勢を保つことや、対応者に手を保持されることを習得するのに多くの時間を要した。オランウータンは、トレーニングの習得に最も時間を要した。一方でトレーニングの実施は、動物と飼育者との親密な関係形成に役立った。本計画によって、3種の特性を把握した訓練についての知見を集積できた。訓練を継続することで、動物と訓練者にとってより安全で簡易的な心拍測定技術を構築する。大型類人猿の心疾患は、海外で飼育されるゴリラの死亡原因の41%、チンパンジーで38%、オランウータンで20%を占める重大な疾患である。これらの大型類人猿はIUCNが定める絶滅危惧種I類であり、飼育集団の健全な維持管理は保全活動に直結する。一方、国内で飼育されている大型類人猿の心疾患についてほとんど把握できていないため、日常的に実施できる簡易検査法を確立する必要がある。そこで大型類人猿の脈波測定法の開発を目的として、千葉市動物公園において飼育されている3種を対象で心拍測定法を検討した。ゴリラ(3個体)、チンパンジー(3個体)、オランウータン(2個体)を対象に、オペラント条件付けを用いたハズバンダリートレーニングを1回に510分程度、各個体の寝室前で実施し、種ごとの反応や進捗状況を記録した。トレーニングでは、日常の健康管理、脈波測定に必要な「手を出したままの姿勢で静止する」状態を訓練した。3種間で、トレーニングの進捗状況や反応に種差が見られた。チンパンジーはトレーニングに積極的に参加した。これに対しゴリラは、日常の健康管理を目的としたトレーニングについてはある程度習得したが、測定のために姿勢を保つことや、対応者に手を保持されることを習得するのに多くの時間を要した。オランウータンは、トレーニングの習得に最も時間を要した。一方でトレーニングの実施は、動物と飼育者との親密な関係形成に役立った。本計画によって、3種の特性を把握した訓練についての知見を集積できた。訓練を継続することで、動物と訓練者にとってより安全で簡易的な心拍測定技術を構築する。
KAKENHI-PROJECT-25924007
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地域に根差した食農文化の多様性評価モデルの開発-東アジアの在来品種の維持を中心に
今年度は柑橘(かんきつ)を主な対象として、民俗学および分析科学といった領域から、多様性や機能に関する検討を行った。民俗学の観点では、柑橘の伝承とルーツについて熊本大学文学部の鈴木寛之准教授と連携して現地調査を行った。具体的には、五木村の九年母や八代市の高田みかんについての現地調査を行い、保全や利用の状況、関係する主体に関する情報収集を進めた。その後、2018年9月29日に第2回在来種フォーラムを開催し、生産者や一般市民などへの活動成果の発信を行った。次に、多様性の指標に関しては、2018年12月および2019年3月に食農環境研究会を開催してゲストより、「農作物在来種の利用と保全」「中山間地域における小規模な作物生産と在来品種の利用」といったテーマで講演頂くと共に、分析方法、や調査対象についての情報交換を行った。また、能登半島における食文化、自家採種との関連性について、既に投稿している論文の修正作業を行い、評価モデルについて引き続き検討を進めた。2018年9月には、中国四川省において食農文化についての現地調査を行い四川料理と地域農業の関係性についての情報収集を進めた。国内の伝統野菜に関しては、他に京野菜(スグキ・九条ネギ)、江戸東京野菜に関わる生産者や飲食店などへの現地調査を実施し、生産・利用の特性についてヒアリングを行った。福岡県内の在来品種に関しては、「博多ふるさと野菜」の取り組みを進めてきた藤枝國光氏へのインタビューを進めると共に、久留米市内(北野町)の山汐菜(やましおな)の栽培状況について、引き続き調査した。結果、JAに生産部会があり加工・販売・流通の下支えをしていることや、近隣の学校での給食での提供といった形で、地域の様々な機関が関わることで生産が維持されている状況が明らかになった。(1)熊本・福岡での調査が順調に進展したこと、(2)研究協力者などとのディスカッションの中で、多様な分野から本研究のモデル構築に寄与する情報を得ることができたこと、(3)中国四川省での調査により食文化(特に漢時代に形成された四川料理の文化)と農業との関わりについての基盤情報を収集することができ、食農文化の評価に関して重要な示唆を得たことでが挙げられる。中国での調査について、社会科学院の若手研究者や島根大学の研究者らの協力を得ながら進める。国内調査については、鶴岡市などを候補地とし中国四川省との比較分析を行うこと目標とする。岐阜県内についても、岐阜大学の若手研究者の協力を仰ぎつつ進める。これまで得られた研究成果をとりまとめ、国際コモンズ学会(ペルー)および米国農村社会学会(USA)において発表する予定である。2016年9月に、所属機関(久留米大学経済学部)が連携している中国社会科学院人口と労働経済研究所を訪問し、中国における在来品種の保全や地域農業の在り方に関する情報交換を行った。また、今後の調査実施における協力関係を構築した。国内の調査に関しては、熊本を主な対象として予定していたが、2016年4月に大地震が発生し、県内各所に大きな被害が出たため、上半期に現地調査は行わず、これまでに実施したアンケート調査の分析、論文作成を進めた。また、下半期には2016年に3月に設立された「くまもと在来種研究会」のメンバーと、県内の在来品種の保全と活用に関する調査内容について議論を行い、当面は小国町にある黒菜などを主な対象としていくことを決定し、関係者とのコンタクトを進めた。小国とは別に、山都町東竹原地区で進められている「みさを大豆」の復活、普及活動について、複数回にわたって現地を訪問し、ヒアリングを行った。地域での栽培体制やイベントなど地域活動との関連性について、継続性の観点から分析・評価を行っていく予定である。また、2016年度より、所属機関が福岡県の久留米大学に変わったため、福岡県内の在来品種の調査を進める準備を行った。食農文化の多様性指標に関しては、研究協力者の西川芳昭氏(龍谷大学経済学部教授)や根本和洋氏(信州大学農学部助教)と研究会などで議論を行い、先行研究レビューの内容も踏まえて検討を行った。具体的には、特定の地域あるいは作物などに特化して、モデル地域での調査を進めながら指標を改善していく形で、次年度以降の計画を進めていくことを予定している。国内調査に関して、2016年4月中旬に大地震が発生し、県内各所に大きな被害が出たため、上半期に現地調査は行うことは差し控えた。一方で、現地の研究協力者や熊本在来種研究会のメンバーらとの検討を進め、下半期には予備的な調査を行うことができたため、次年度に阿蘇地域を対象とした本調査を行う基盤を構築することができた。前年度に引き続き、熊本での調査および情報収集を進めた。具体的には、小国町の黒菜、阿蘇の高菜、五木村の赤ダイコンに関する栽培状況や作物の特性について、現地調査や生産者からの聞き取りにより確認することができた。「くまもと在来種研究会」と連動した取り組みでは、2017年7月に在来種セミナーを開催し、阿蘇の農業と在来種の活用に関して、特に世界農業遺産(GIAHS)との関係に着目して議論を行った。補足的ではあるが、熊本地震による地域農業への影響についての情報収集を進めた。福岡県内に関しては、久留米市の「山汐菜(やましおな)」の調査をJAの協力の元で実施すると共に、流通業者などと「くるめ野菜ブランド研究会」を設立し、野菜のブランド化に関する対応策を協議した。
KAKENHI-PROJECT-16K18767
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地域に根差した食農文化の多様性評価モデルの開発-東アジアの在来品種の維持を中心に
また、筑前町や糸島市における在来種の活用を進める生産者・団体とのネットワークを広げた。研究の理論的枠組みに関しては、食農環境研究会を開催し、環境経済学、農村社会学の専門家らと議論を進め、その土台を構築しつつある。特に環境経済学の領域で研究蓄積がある持続可能性をキーワードに、「クリティカル自然資本」の観点から作物の種子をどのように位置づけることができるかを検討した。また、世界における種子保全の動向、知的財産権、伝統知といった観点からのレビューを進めた。最後に海外サイトに関して、中国については久留米大出身の中国人研究者とのネットワークをいかした情報収集と進めた。韓国についてはコモンズ研究を進める研究者とのネットワークを形成することができた。今後は特に済州島をターゲットとして調査をする予定である。海外調査の準備にやや手間取っており、当該年度には現地調査を十分に行うことができなかった。しかし、理論枠組の検討、国内サイトでの調査は確実に進められており、遅れは軽微であるといえる。今年度は柑橘(かんきつ)を主な対象として、民俗学および分析科学といった領域から、多様性や機能に関する検討を行った。民俗学の観点では、柑橘の伝承とルーツについて熊本大学文学部の鈴木寛之准教授と連携して現地調査を行った。具体的には、五木村の九年母や八代市の高田みかんについての現地調査を行い、保全や利用の状況、関係する主体に関する情報収集を進めた。その後、2018年9月29日に第2回在来種フォーラムを開催し、生産者や一般市民などへの活動成果の発信を行った。次に、多様性の指標に関しては、2018年12月および2019年3月に食農環境研究会を開催してゲストより、「農作物在来種の利用と保全」「中山間地域における小規模な作物生産と在来品種の利用」といったテーマで講演頂くと共に、分析方法、や調査対象についての情報交換を行った。また、能登半島における食文化、自家採種との関連性について、既に投稿している論文の修正作業を行い、評価モデルについて引き続き検討を進めた。2018年9月には、中国四川省において食農文化についての現地調査を行い四川料理と地域農業の関係性についての情報収集を進めた。国内の伝統野菜に関しては、他に京野菜(スグキ・九条ネギ)、江戸東京野菜に関わる生産者や飲食店などへの現地調査を実施し、生産・利用の特性についてヒアリングを行った。福岡県内の在来品種に関しては、「博多ふるさと野菜」の取り組みを進めてきた藤枝國光氏へのインタビューを進めると共に、久留米市内(北野町)の山汐菜(やましおな)の栽培状況について、引き続き調査した。結果、JAに生産部会があり加工・販売・流通の下支えをしていることや、近隣の学校での給食での提供といった形で、地域の様々な機関が関わることで生産が維持されている状況が明らかになった。(1)熊本・福岡での調査が順調に進展したこと、(2)研究協力者などとのディスカッションの中で、多様な分野から本研究のモデル構築に寄与する情報を得ることができたこと、(3)中国四川省での調査により食文化(特に漢時代に形成された四川料理の文化)と農業との関わりについての基盤情報を収集することができ、食農文化の評価に関して重要な示唆を得たことでが挙げられる。国内に関しては、熊本および福岡での調査を中心に実施し、必要に応じて金沢や京都など比較地域での調査を検討する。
KAKENHI-PROJECT-16K18767
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無条件の受容の臨床教育学ーハイデガー「共存在」概念を手がかりに
本研究は、M・ハイデガーの「共存在」概念と、精神科医・木村敏の臨床哲学を基に、他者との共存在に際して他者をその「存在」において受け入れる「無条件の受容」の可能性を、臨床的に探究するものである。これは大人と子どもとの教育的共存在の課題であり、そうした共存在を通じて子ども自身が他者との関係において引き受ける課題である。具体的には、ハイデガー研究を通して「共存在と自己存在の両立」可能性を模索するとともに、木村敏の臨床哲学から「臨床性」という視座を得て「共存在と子どもの自己形成の両立」という実践的課題への応答を目指す。本研究は、M・ハイデガーの「共存在」概念と、精神科医・木村敏の臨床哲学を基に、他者との共存在に際して他者をその「存在」において受け入れる「無条件の受容」の可能性を、臨床的に探究するものである。これは大人と子どもとの教育的共存在の課題であり、そうした共存在を通じて子ども自身が他者との関係において引き受ける課題である。具体的には、ハイデガー研究を通して「共存在と自己存在の両立」可能性を模索するとともに、木村敏の臨床哲学から「臨床性」という視座を得て「共存在と子どもの自己形成の両立」という実践的課題への応答を目指す。
KAKENHI-PROJECT-19J23034
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遺伝子発現の量的差違を指標とした、新規病態解析、診断法の確立に関する研究
遺伝性疾患の保因者診断における障壁の一つは、遺伝子産物の構造異常を伴わず、その発現欠如や低下が原因と考えられる症例が相当数存在し、現行の方法では診断できないことである。そこで、我々は遺伝子コード領域の多型(cSNP)を活用し、種々の病態を、原因遺伝子の発現の量的差異、特に発現の誘導や抑制に対する動的変化の差異の見地から解析する方法として、RNA Difference Plot(RDP)法を確立した。すなわち、多型を示すゲノムDNA、並びにmRNAから得たcDNAの同一断片を、蛍光標識プライマーを用いてPCRによりそれぞれ増幅し、塩基配列自動解析装置を用いたSSCP解析により分離し、各増幅産物の量比を測定した。そしてアレル特異的な遺伝子発現量を、PCR反応のサイクル数に依存せず、高い感度で定量することができること、二つのアレルからの発現量の比に関する結果が標準偏差10%以内で測定できることを示した。次にRDP法を用いることにより、c-myc遺伝子の両アレルからの発現量が、健常人の正常リンパ球では、正確に等量であることを示した。この量比は、細胞に血清刺激を与えて、c-myc遺伝子の発現を4倍程度まで誘導しても変化しなかった。このようにRDP法は、アレル特異的な遺伝子発現の高度定量的解析を可能とし、方法が簡便であり、しかもcSNPを示すあらゆる遺伝子が解析可能である等の特長をもつ。従ってRDP解析は、本態性高血圧症等、種々の生活習慣病の原因遺伝子や候補遺伝子の同定、病態解析、保因者診断等に応用可能である。今後個々の症例について発現の誘導や抑制に対する動的変化を含めて検討していく予定である。遺伝性疾患の保因者診断における障壁の一つは、遺伝子産物の構造異常を伴わず、その発現欠如や低下が原因と考えられる症例が相当数存在し、現行の方法では診断できないことである。そこで、我々は遺伝子コード領域の多型(cSNP)を活用し、種々の病態を、原因遺伝子の発現の量的差異、特に発現の誘導や抑制に対する動的変化の差異の見地から解析する方法として、RNA Difference Plot(RDP)法を確立した。すなわち、多型を示すゲノムDNA、並びにmRNAから得たcDNAの同一断片を、蛍光標識プライマーを用いてPCRによりそれぞれ増幅し、塩基配列自動解析装置を用いたSSCP解析により分離し、各増幅産物の量比を測定した。そしてアレル特異的な遺伝子発現量を、PCR反応のサイクル数に依存せず、高い感度で定量することができること、二つのアレルからの発現量の比に関する結果が標準偏差10%以内で測定できることを示した。次にRDP法を用いることにより、c-myc遺伝子の両アレルからの発現量が、健常人の正常リンパ球では、正確に等量であることを示した。この量比は、細胞に血清刺激を与えて、c-myc遺伝子の発現を4倍程度まで誘導しても変化しなかった。このようにRDP法は、アレル特異的な遺伝子発現の高度定量的解析を可能とし、方法が簡便であり、しかもcSNPを示すあらゆる遺伝子が解析可能である等の特長をもつ。従ってRDP解析は、本態性高血圧症等、種々の生活習慣病の原因遺伝子や候補遺伝子の同定、病態解析、保因者診断等に応用可能である。今後個々の症例について発現の誘導や抑制に対する動的変化を含めて検討していく予定である。
KAKENHI-PROJECT-12204114
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政治行政システムと公共利益団体-消費者団体の組織と選好の日米英比較と事例として-
日本、アメリカ、イギリスの消費者団体の組織と選好を検討し、それらを規定するイデオロギー的要因として、政党の配列に示されるイデオロギーは大きな影響を持たないが、とくに消費者利益の他の利益からの自立性という点について、中間集団や市民社会をめぐるイデオロギーがある程度の影響を持つことを検討した。また制度的要因として、各国において行政国家から自立した市民社会のための法人制度や税制が構築されているが、消費者団体の中には、その目的を追求する上で、必ずしも合理的な法人形態を採らないものがあることを検討した。日本、アメリカ、イギリスの消費者団体の組織と選好を検討し、それらを規定するイデオロギー的要因として、政党の配列に示されるイデオロギーは大きな影響を持たないが、とくに消費者利益の他の利益からの自立性という点について、中間集団や市民社会をめぐるイデオロギーがある程度の影響を持つことを検討した。また制度的要因として、各国において行政国家から自立した市民社会のための法人制度や税制が構築されているが、消費者団体の中には、その目的を追求する上で、必ずしも合理的な法人形態を採らないものがあることを検討した。本年度は、日本、アメリカ、オーストラリアで研究を展開した。まず日本では、日米英の政治行政システムや利益団体についての文献調査を進め、計画全体の基盤を作った。また消費者行政の再検討という現実に進展があったため、その動向をフォローした。この進展は、計画の当初では予想できない政策決定のパターンであるため、研究上の仮説も若干修正せざるをえなくなると考える。アメリカでは、8月19日25日にワシントンDCでパブリック・シティズン他の消費者団体を訪問し、聞き取り調査を実施した。また3月17日30日にサンフランシスコでコンシューマー・アクションでの聞き取り調査、オースティンでP・マクラクラン・テキサス大学準教授との研究打ち合わせ、ソルトレイクシティでR・メイヤー・ユタ大学教授との研究打ち合わせなどをした。オーストラリアでは、10月28日11月5日に国際消費者機構の世界大会に出席し、イギリスの消費者協会などの代表に聞き取り調査を実施した。また合わせて、オーストラリア消費者協会など、現地の消費者関連機関を訪問した。以上のように本年度の研究は、基本的なデータ作りをおもな作業としていた。その過程で、仮説や枠組の変更を余儀なくされる部分も出てきているが、各国の政治=政党制と行政=行政国家が、消費者団体の組織および選好の形成にどのような影響を与えているかについて、次年度末には着実に世果を挙げられると考える。本研究の目的は、政治行政システムとしての政党制と行政国家が、公共利益団体の組織と選好にどのような影響を及ぼしているかを、目米英の消費者団体を事例として検討することである。そこで昨年度に米国の消費者団体と国際消費者機構総会を調べたのに続き、本年度は英国の消費者団体と欧州消費者機構について調べた。そしてその過程で、英国では、米国型の社会顧客消費者団体であうWhich?(消費者協会)が依然として大きな影響力を持つ一方で、英国に特徴的な地方団体の連合団体である英国消費者連合が大きく衰退し、また国家顧客消費者団体である英国消費者委員会がコンシューマー・フォーカスへと再編された現状が明らかになった。そして日米英の消費者団体の現状を比較してみると、まず政党制については、政党が包括政党化・脱イデオロギー化した現在では、政党と消費者団体の関係は相対的に中立的なものであることが想定される。しかしその一方で、米英の消費者団体が他の利益団体から相対的に自由に消費者利益を追求しながら、日本では必ずしもそうとは言えない要因として、社会集団間の関係においてイデオロギー的要因があることが想定される。また行政国家については、米国では、社会集団から社会集団への資源の移転回路が直接的に確立されており、行政組織の影響は小さい。また英国では、社会顧客消費者団体と国家顧客消費者団体、あるいは市民社会の側からの消費者団体と行政組織の側からのそれの棲み分けが成立している。そして日本では、法人制度や新消費者行政機構の整備を通じて、消費者団体と行政組織が新たな協調関係に入りつつあることが想定される。
KAKENHI-PROJECT-19530097
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光弾性CTによる流れ場内3次元応力計測技術の開発
流れ場の力学的バランスを調べ未解明の流動現象を解明するためには、非接触で応力を計測することが有益と考えられる。本研究では、蛍光色素を用いた流れ場内応力の非接触計測手法確立を目的としている。本年度は、前年度までに実施した内容を発展させ、画像処理手法を改良することにより、測定精度を向上した。また、矩形ダクト内を流動する乱流場を対象としてPhotobleaching分子タグ法を用いて流れ場内応力を測定した。この際、同条件下の平均流速および乱れをレーザドップラ流速計を用いて測定するとともに、本手法による測定結果と比較し、本手法の計測誤差を評価した。その結果、本手法とレーザドップラ流速計の測定結果の差は数%以下であり、本手法の測定精度が高いことが確認できた。また、2次元計測と3次元計測を実施して比較することにより、2次元測定時の測定誤差も調べた。さらに、本手法の二相流への適用性を調べるため、矩形ダクト内乱流場に気泡を混入させた流れ場に本手法を適用した。その結果、本手法は単相流のみならず分散性二相流にも適用できることを確認するとともに、最適な計測設定条件を検討した。さらに、気相体積流東の異なる気泡流条件で測定を行い、気泡の混入が乱流場内応力分布に及ぼす影響を調べた。なお、本手法により実現した最小空間分解能は50μm以下であり、本手法は流れ場内ミクロスケール現象・構造の解明にも寄与できる可能性が高いことも示せた。未解明の流動現象を解明するために非接触で応力を計測できる手法の構築が望まれている。本研究では、ある種の蛍光色素を含有した液体が光弾性を有する特性を利用し、流動に起因する応力の3次元分布を計測する手法の確立を目的としている。この際、複数の方向から光弾性に伴う干渉縞を観測することにより、流れ場内応力の3次元分布計測を可能とする計測技術の基本原理確立を目指す。本年度は、光源である既設Ar-ionレーザからの光を拡大し、測定場に照射する光学系を設計・製作した。また、光弾性効果により得られる干渉画像を精度良く取得できる光学系を選定・製作した。さらに,測定対象となる矩形ダクト実験装置を製作するとともに,液相流速分布をレーザドップラ流速計により測定し、本実験装置により層流および乱流を含む幅広いレイノルズ数範囲で発達したダクト内速度分布を実現できることを確認した。また、正確に応力を評価するため、Photobleaching分子タグ法を用いた速度勾配計測を実施した。さらに、蛍光色素の光弾性特性に関する基礎実験を実施し、蛍光色素としてローダミンBを用いることにより光弾性が生じること、および光弾性による干渉縞が可視化できることを確認した。また、蛍光色素の濃度が取得画像の鮮明度に及ぼす影響を調べた。また、撮影画像から応力を評価するための基礎式を整理するとともに、画像から応力を評価するプログラムのフレームワークを作成した。流れ場の力学的バランスを調べ未解明の流動現象を解明するためには、非接触で応力を計測することが有益と考えられる。本研究では、蛍光色素を用いた流れ場内応力の非接触計測手法確立を目的としている。本年度は、前年度までに実施した内容を発展させ、画像処理手法を改良することにより、測定精度を向上した。また、矩形ダクト内を流動する乱流場を対象としてPhotobleaching分子タグ法を用いて流れ場内応力を測定した。この際、同条件下の平均流速および乱れをレーザドップラ流速計を用いて測定するとともに、本手法による測定結果と比較し、本手法の計測誤差を評価した。その結果、本手法とレーザドップラ流速計の測定結果の差は数%以下であり、本手法の測定精度が高いことが確認できた。また、2次元計測と3次元計測を実施して比較することにより、2次元測定時の測定誤差も調べた。さらに、本手法の二相流への適用性を調べるため、矩形ダクト内乱流場に気泡を混入させた流れ場に本手法を適用した。その結果、本手法は単相流のみならず分散性二相流にも適用できることを確認するとともに、最適な計測設定条件を検討した。さらに、気相体積流東の異なる気泡流条件で測定を行い、気泡の混入が乱流場内応力分布に及ぼす影響を調べた。なお、本手法により実現した最小空間分解能は50μm以下であり、本手法は流れ場内ミクロスケール現象・構造の解明にも寄与できる可能性が高いことも示せた。
KAKENHI-PROJECT-19656050
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ベトナム・ハノイ36通り地区の景観および居住空間の保存すべき特質
ベトナムの歴史的町並みであるハノイ36通り地区の外観に関しては、1)業種の観光産業化が一段落したこと、2)商業集積の進行が景観に影響をおよぼしていることを明らかにした。居住空間に関しては、3)集合住宅化した町家においては、増改築の可能性の差により、同じ町家内においても居住環境格差を引き起こしていることを明らかにした。また、4)当地区の居住者は、当地区らしさを町並みの構成要素である町家に対してではなく、歴史的建造物や昔ながらの業種が残っている通りに対して感じていることを明らかにした。本年度は初年度であるため、平成25年7月にハノイ市において、カウンターパートであるハノイ建設大学のLoan氏、Hoa氏および、研究対象地を管轄しているハノイ36通り地区保存事務所と、本研究課題開始に際してのミーティングを行った。本研究の日越協働の国際研究組織は、本研究の基礎となる平成1521年に実施したハノイ旧市街保存研究チームと基本的に同じである。そのため、研究目的および日本側の研究方法に対する理解は既に得られている。よって、本ミーティングでは、研究概要、考えられる成果、各年度の活動内容などの確認のほか、今年度のスケジュール調整を行った。本ミーティングの結果を受け、平成25年9月、ハノイ旧市街において現地調査を実施した。調査は、町家の居住空間については、空間構成の現状および住まい方の実態を把握する目的で、15軒の町家に対し、家屋実測調査、住民に対するインタビュー調査を行った。一方、町家の外観については、伝統的デザインおよび現在も継承されているデザインの把握を目的とし、ハノイ市が指定している第1級保存地区内にあるHang Buom通り、Hang Giay通り、Ma May通り、Luong Ngoc Quyen通り、Ta Hien通りの5つの通りにおいて町家のファサード写真撮影を行った。本調査からは、過密居住に起因する上層階への無秩序な増築が下層階の居住環境を劣悪なものにしており、同じ町家内においても居住環境に大きな差が生じていることなどを把握した。また、平成26年3月にはハノイ市において、初年度調査データの共有、次年度調査の内容確認、調査スケジュールの調整を行い、次年度に備えた。本研究チームは、2003年よりハノイ市人民委員会、および市の機関である36通り地区保存管理事務所の協力を得、当地区の保存活用に必要な基礎資料採取を目的とした総合調査を実施してきた。その一環として、13年迄に120軒の町家に対し、実測による図面採取および居住環境に関する調査を行った。そのうえで、これらの採取データを資料とし、14年9月、ハノイ市においてワークショップ"Workshop on Conservation of Hanoi 36 Street, 2014"(以下、WS)を実施した。このWSでは、第1級保存地区であり、且つ過去の調査対象が多く含まれる、LuongNgoc Quyen通り、Hang Giay通り、Hang Buom通り、Ta Hien通りに囲まれたブロックを提案対象とし、ねらいを1これまでの採取データから、当地区の保存すべき特徴を把握したうえで、デザインコードを提案すること。2新しい建物を建てる際の具体的なプランおよびデザインを考え、当地区の将来像を提示すること。3その提案を実現するためのシステムを提案するとした。これまでにも当地区に対しては、ベトナム国内外の機関から保存活用提案がなされ、その一部は実施されてきたが、それらは外国を中心とした専門家や行政主導であり、住民参加は希薄である。また、現在のベトナムにおいては住民参加型WSの開催は難しいといった側面もある。そこで、今回は日本およびベトナムの学生によりWSを実施した。そこから、ベトナムの学生は対象のブロックに対し、専門家や行政とは異なる現実に近い意見や問題意識を有していたものの、住民ではないために限界があること。より現実に即した実践的提案を導き出すためには、実際にそこで暮らす住民が中心的にWSに参加する必要があることを把握し、今後のベトナムにおいける住民参加型WSの重要性を確認した。本研究は、町並みの保存活用を目指すベトナムの歴史都市ハノイ旧市街(通称:36通り地区)の景観および居住空間の保存すべき特質を明らかにし、当該地区の保存活用、景観整備の実践に寄与することを目的としている。具体的には、ハノイ市人民委員会、市の一部署である36通り保存地区管理事務所、およびハノイ建設大学の協力を得、町並みを構成している町家の外観に関しては、1)景観の変容実態を把握する調査、町家の居住空間に関しては、2)空間構成の改造実態および必要とされる空間を把握する調査、3)住まい方調査を実施してきた。本年度は初年度に引き続き、伝統的デザインおよび現在も継承されているデザインの把握を目的とし、平成27年9月、ハノイ市が指定している第1級保存地区内にあるHang Buom通り、Hang Giay通り、Ma May通り、Luong Ngoc Quyen通り、Ta Hien通りの5本の通りにおいて、町家1軒ごとのファサード写真撮影および、商店における取扱商品の見取り調査を実施した。この調査を繰り返すことにより、景観変容の他、通りの店舗化および観光地化の変容実態を明らかにすることができた。また、本年度は最終年度にあたるため、平成28年2月には、ベトナム側カウンターパートに対しこれまでの調査報告およびデータの共有を行うと同時に、これまでの本研究の調査結果および成果をまとめた書籍のベトナム国内での出版に向けた準備に着手した。ベトナムの歴史的町並みであるハノイ36通り地区の外観に関しては、1)業種の観光産業化が一段落したこと、2)商業集積の進行が景観に影響をおよぼしていることを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-25420652
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ベトナム・ハノイ36通り地区の景観および居住空間の保存すべき特質
居住空間に関しては、3)集合住宅化した町家においては、増改築の可能性の差により、同じ町家内においても居住環境格差を引き起こしていることを明らかにした。また、4)当地区の居住者は、当地区らしさを町並みの構成要素である町家に対してではなく、歴史的建造物や昔ながらの業種が残っている通りに対して感じていることを明らかにした。初年度、2年度ともに、計画していた調査、日本建築学会大会梗概集の提出といった一連の事項が、予定通りに遂行されたため。また、ベトナム側カウンターパートと次年度に関する打ち合わせも既に行うなど、次年度の準備にも着手しているため。建築計画・都市計画初年度、2年度と計画通りに研究は進んでおり、これまでに問題は見あたらない。また、ベトナム側カウンターパートとの次年度の計画に関する打ち合わせにおいて、研究内容の確認も行っており、最終年度も当初の計画通りに研究を遂行していく。初年度に行うと計画した調査、日本建築学会大会梗概提出などの一通りが、予定通りに遂行されたため。平成26年9月に実施したハノイ出張の経費精算のため。初年度は計画通りに進んでおり、現時点での問題はない。また、ベトナム側カウンターパートとの次年度の打合せも既に済んでおり、当初の研究計画通りに研究を推進していく。平成27年度8月(予定)のハノイ出張の精算に充当する。平成26年3月下旬のベトナム出張の経費精算のため。平成26年3月下旬のベトナム出張の精算に充てる。
KAKENHI-PROJECT-25420652
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25420652
撥水穴部に保持された気泡部での潤滑剤の滑りを利用したスリップスラスト軸受構造
本軸受では,親水性のスラスト軸受面の一定領域に,気泡が付着し易い撥水性の浅い微小穴を多数設け,それらの穴の内面に強固に保持させた気泡により潤滑剤をスリップさせる領域と,スリップが発生し難い平坦な親水性の棚部を滑り方向に交互に配置し,両領域でのせん断流量差を補うために発生する圧力により荷重を支持する構造を有している.本軸受機能の実現に向けて,本年度(平成30年度)は,最も基礎的な事項である凹状テクスチャ面穴部の性状とせん断場での気泡保持の可能性について検討した結果,以下の内容が明らかになった.1)鏡面の親水性ガラス面の一部に薄い撥水性膜をコーティングした試験片を,微小気泡(φ1020μm)を含有するグリセリン水溶液中に浸漬・振動後,気泡の無い精製水中で振動させた場合には,親水部に付着する気泡はほとんど無く,気泡は撥水領域にのみ付着する.2)上記実験をφ100μm・深さ10μmの撥水穴(サンドブラストで作成した粗い凹み内部だけを撥水処理)を持ち,それを取り囲む棚部が親水性のガラス試験片で実施した場合,約φ15μmの気泡が200μmピッチで設けた全ての凹部に形成・保持される.そしてそれらの気泡径は,精製水中で20分以上にわたって変化せず安定している.3)親水性の相手面との膜厚を10μmとし,30mm/Sの下で滑らした場合でも,撥水凹部の微小気泡は凹部に強く固着し,穴部から排出されたり,成長して広領域での潤滑膜破断を発生させることはない.粗い撥水性凹部の配設により,希望の場所に気泡を安定保持させることが可能になる.また,上記気泡の影響の定量把握のために,潤滑膜の厚さと気泡含有率の双方に影響される超音法での観測結果と,気泡の有無によらず潤滑膜厚さだけを測定できる渦電流法を組み合わせた新しい観測法を本軸受に試験的に適用し,膜厚と気泡含有率の独立観測の可能性を確認した.上記のように,初年度の目標である「凹状テクスチャ面穴部の性状とせん断場での気泡保持の可能性」の確認,ならびに潤滑状態に対する気泡の影響の定量把握にとって不可欠な「超音波法と渦流法を併用した膜厚と気泡含有率の独立同時観測の可能性」を明らかにすることができた.研究では、これら主要項目に加え,気泡を保持させた粗さ面領域と平坦な親水域を交互に配置した軸受構造の可能性についても予備的に調査している.潤滑面側のすべり方向の前半分に気泡との親和性が高く気泡を保持し易い粗い撥水面を,後ろ半分には気泡との親和性が低い親水面を配置したガラス試験片を用い,10μmの間隔を維持して相手側の鏡面親水性ガラス面を15mm/sで滑らせた場合,親水2面間にあった気泡は,滑りとともに下流側出口へと排出されるが,撥水粗さ面の気泡は,滑り後もほぼ滑り前と同じ状態で強固に保持され,下流の親水域へと流れ込むことは無かった.また,その時の摩擦係数は,2面間への気泡の介在により減少し,この傾向は,高いすべり速度の場合ほど顕著に現れる.ただしこれらは,本研究の主目的である微小気泡での結果ではなく,両摺動面を繋ぐφ200μ程度の大型気泡での結果であるが,この状態でも,撥水粗さ面に存在する気泡が摺動により移動しないことは,気泡にせん断流量の調整機能を持たせられる可能性を示唆している.以上のように,平成30年度には,申請時の初年度目標をほぼ達成するとともに,本潤滑面構造での軸受特性の改善の可能性,さらには,両摺動面に繋がり流路を遮る気泡にせん断流量の調整機能を持たせられること等,次年度に繋がる成果も得られており,「おおむね順調に進展している」と判断した.研究実績の概要に示したように,平成30年度には,気泡保持に対する凹状撥水テクスチャ面の有効性と,超音波・渦流併用型の膜厚・気泡含有率同時観測法の可能性を明らかにしたが,定量的な評価には至っていない.今後は,下記の項目について定量的な検討を重ねる必要がある.1)せん断場で強固に気泡を保持できる凹状テクスチャ面の穴部形状と性状::凹部内面(底面を含む)を粗い撥水面にすることで気泡の保持能力が高まることは,既に明らかになっているので,ここでは,凹部の形状(直径や深さ)が保持能力に及ぼす影響を,膜厚やせん断速度を変えながら調査し,各条件での最適値を明らかにする必要がある.また,凹部内面の撥水性の強弱を,撥水剤の種類や表面粗さを変更して調べ,凹部に付けた造成剤からなる種気泡の,せん断に伴う成長や潤滑膜中への排出とその防止に有効な条件を求めなければならない.2)撥水凹状テクスチャ域と平坦な親水域の交互配置型軸受での摩擦特性改善と圧力測定::
KAKENHI-PROJECT-18K03913
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撥水穴部に保持された気泡部での潤滑剤の滑りを利用したスリップスラスト軸受構造
撥水凹部内に留まる気泡上で潤滑剤がスリップする領域と,スリップし難い平坦な親水性の領域との間でのせん断流量の不連続性により発生する圧力により荷重を支持する本軸受の潤滑機構を検証するために,極微小な圧力計により軸受の発生圧力やその分布を明らかにするとともに,負荷容量や摩擦に及ぼす,撥水穴の径や深さ,凹部内面の撥水性の強さ,凹状テクスチャ領域と親水棚部の面積割合の影響について検討する.3)超音法と渦流探傷法を併用した潤滑診断技術による気泡の保持状況や潤滑膜厚測定::上記の基礎実験は,透光性のガラス試験片を用いて行うが,実際の摺動面の多くは非透光性材料(例えば金属や樹脂)からなる.そこで,初年度の成果である超音波・渦流複合探触子を用いて,気泡の保持や成長等の挙動と膜厚の関係を求め,本軸受の好ましい作動条件や軸受特性の改善理由を明らかにする.本軸受では,親水性のスラスト軸受面の一定領域に,気泡が付着し易い撥水性の浅い微小穴を多数設け,それらの穴の内面に強固に保持させた気泡により潤滑剤をスリップさせる領域と,スリップが発生し難い平坦な親水性の棚部を滑り方向に交互に配置し,両領域でのせん断流量差を補うために発生する圧力により荷重を支持する構造を有している.本軸受機能の実現に向けて,本年度(平成30年度)は,最も基礎的な事項である凹状テクスチャ面穴部の性状とせん断場での気泡保持の可能性について検討した結果,以下の内容が明らかになった.1)鏡面の親水性ガラス面の一部に薄い撥水性膜をコーティングした試験片を,微小気泡(φ1020μm)を含有するグリセリン水溶液中に浸漬・振動後,気泡の無い精製水中で振動させた場合には,親水部に付着する気泡はほとんど無く,気泡は撥水領域にのみ付着する.2)上記実験をφ100μm・深さ10μmの撥水穴(サンドブラストで作成した粗い凹み内部だけを撥水処理)を持ち,それを取り囲む棚部が親水性のガラス試験片で実施した場合,約φ15μmの気泡が200μmピッチで設けた全ての凹部に形成・保持される.そしてそれらの気泡径は,精製水中で20分以上にわたって変化せず安定している.3)親水性の相手面との膜厚を10μmとし,30mm/Sの下で滑らした場合でも,撥水凹部の微小気泡は凹部に強く固着し,穴部から排出されたり,成長して広領域での潤滑膜破断を発生させることはない.粗い撥水性凹部の配設により,希望の場所に気泡を安定保持させることが可能になる.また,上記気泡の影響の定量把握のために,潤滑膜の厚さと気泡含有率の双方に影響される超音法での観測結果と,気泡の有無によらず潤滑膜厚さだけを測定できる渦電流法を組み合わせた新しい観測法を本軸受に試験的に適用し,膜厚と気泡含有率の独立観測の可能性を確認した.上記のように,初年度の目標である「凹状テクスチャ面穴部の性状とせん断場での気泡保持の可能性」の確認,ならびに潤滑状態に対する気泡の影響の定量把握にとって不可欠な「超音波法と渦流法を併用した膜厚と気泡含有率の独立同時観測の可能性」を明らかにすることができた.研究では、これら主要項目に加え,気泡を保持させた粗さ面領域と平坦な親水域を交互に配置した軸受構造の可能性についても予備的に調査している.潤滑面側のすべり方向の前半分に気泡との親和性が高く気泡を保持し易い粗い撥水面を,後ろ半分には気泡との親和性が低い親水面を配置したガラス試験片を用い,10μmの間隔を維持して相手側の鏡面
KAKENHI-PROJECT-18K03913
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偏心回転ノズルによる精錬反応装置の撹拌強化に関する研究
本研究では、気泡の分散及び浴内の流動を強化することを目的として、回転L字型浸漬ノズルからのガス吹込み方法を提案した。そして、コールドモデル実験により、種々の回転速度、ガス流量で実験を行い、浴内の撹拌混合に及ぼす影響について調べると共に、従来得られている結果と比較検討し、以下の結論を得た。1.浴内の撹拌混合は、主として浸漬ノズルの回転による円周方向循環流とガス吹込みによる上下方向循環流により行われる。浴内の撹拌混合においてどちらが支配的であるかについては浴深さが混合時間に及ぼす影響により推測することが可能である。しかしながら、全ての実験条件について撹拌動力密度から定量的に推測することは難しく、浴の撹拌混合における両撹拌動力の寄与は条件によりかなり変化する。2.浴直径はDに対する偏心長さの比が0.279の場合、パラメータが浴内の撹拌混合に及ぼす影響は、次式で表される。3.機械撹拌においては、浴深さが浅い場合には従来のガス吹込み撹拌よりも浴内の撹拌混合が良好であるが、浸漬ノズルの回転速度を速くすることによる撹拌混合の強化には限界がある。4.本プロセスにより、浴内に気泡を広く分布させることができた。また、本プロセスは従来のガス吹込み撹拌と同じ十分良い撹拌混合が得られる。ただし、ガス撹拌は、浸漬ノズルの回転速度が速く、浴深さが浅い場合、機械撹拌による良好な混合状態に悪影響を及ぼす。本研究では、気泡の分散及び浴内の流動を強化することを目的として、回転L字型浸漬ノズルからのガス吹込み方法を提案した。そして、コールドモデル実験により、種々の回転速度、ガス流量で実験を行い、浴内の撹拌混合に及ぼす影響について調べると共に、従来得られている結果と比較検討し、以下の結論を得た。1.浴内の撹拌混合は、主として浸漬ノズルの回転による円周方向循環流とガス吹込みによる上下方向循環流により行われる。浴内の撹拌混合においてどちらが支配的であるかについては浴深さが混合時間に及ぼす影響により推測することが可能である。しかしながら、全ての実験条件について撹拌動力密度から定量的に推測することは難しく、浴の撹拌混合における両撹拌動力の寄与は条件によりかなり変化する。2.浴直径はDに対する偏心長さの比が0.279の場合、パラメータが浴内の撹拌混合に及ぼす影響は、次式で表される。3.機械撹拌においては、浴深さが浅い場合には従来のガス吹込み撹拌よりも浴内の撹拌混合が良好であるが、浸漬ノズルの回転速度を速くすることによる撹拌混合の強化には限界がある。4.本プロセスにより、浴内に気泡を広く分布させることができた。また、本プロセスは従来のガス吹込み撹拌と同じ十分良い撹拌混合が得られる。ただし、ガス撹拌は、浸漬ノズルの回転速度が速く、浴深さが浅い場合、機械撹拌による良好な混合状態に悪影響を及ぼす。本研究においては、精錬速度の増加、浴内の温度、濃度分布の均一化を図るため、偏心回転ノズルより水浴中へのガス吹込み実験を行った。偏心回転ノズルから吹込まれた気泡は水浴中に広く分散するため、効率的な撹拌混合が行われる。この結果を定量的に把握するため、トレーサーとしてKC1水溶液を浴中に添加し、電導度計を用いて水浴の電導度の経時変化を測定し、均一混合時間を測定した。また、浴内の分散気泡をビデオカメラにより撮影し、分散気泡の挙動を調べた。実験では、偏心ノズルの回転数、偏心度(ノズル偏心軸と水槽中心間の距離)、ガス吹込み流量を変化させた。偏心回転ノズルからのガス吹込みにより、均一混合時間が短かくなり、浴の撹拌混合が強化されることが明らかになった。すなわち、偏心させない容器中心の回転ノズルからのガス吹込みに比較して、偏心させた回転ノズルからのガス吹込みでは均一混合時間が短かくなる。とくに、精錬反応装置におけるように、H/D(H:浴深さ、D:容器直径)が小さい場合には、ノズルの偏心度を大きくすることにより均一混合時間が著しく短かくなる。また、均一混合時間に対するノズルのガス吹込み口の孔数、方向の影響は小さかった。なお、ノズルの偏心度および回転数が大きくなると、浴の撹拌混合に対するノズル自身の回転による撹拌の寄与が吹込みガスによる撹拌のそれより大きいことが明らかになった。ノズルからの気泡生成に関しては、ガス流量が小さく、ノズル回転数が大きいときには気泡生成頻度が大きくなる傾向があるが、ガス流量が大きくなるとノズルの回転数により、気泡生成頻度はあまり変化しなかった。また、ノズルの偏心回転により気泡が浴中に広く分散することが明らかになった。現在、購入したpH計を用いてNaOH水溶液中へのCO_2ガスの吸収に関する予備実験を行っている。本研究では、気泡の分散及び浴内の流動を強化することを目的として、回転L字型浸漬ノズルからのガス吹込み方法を提案した。そして、コールドモデル実験により、種々の回転速度、ガス流量で実験を行い、浴内の攪拌混合に及ぼす影響について調べると共に、従来得られている結果と比較検討し、以下の結論を得た。
KAKENHI-PROJECT-04650614
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04650614
偏心回転ノズルによる精錬反応装置の撹拌強化に関する研究
1.浴内の攪拌混合は、主として浸漬ノズルの回転による円周方向循環流とガス吹込みによる上下方向循環流により行われる。浴内の攪拌混合においてどちらが支配的であるかについては浴深さが混合時間に及ぼす影響により推測することが可能である。しかしながら、全ての実験条件について攪拌動力密度から定量的に推測することは難しく、浴の攪拌混合における両攪拌動力の寄与は条件によりかなり変化する。2.浴直径Dに対する偏心長さの比が0.279の場合、各パラメータが浴内の攪拌混合に及ぼす影響は、次式で表される。ただし、t_<mix>は混合時間、Qはガス流量、Rは回転速度、Hは浴深さである。3.機械攪拌においては、浴深さが浅い場合には従来のガス吹込み攪拌よりも浴内の攪拌混合が良好であるが、浸漬ノズルの回転速度を速くすることによる攪拌混合の強化には限界がある。4.本プロセスにより、浴内に気泡を広く分布させることができた。また、本プロセスは従来のガス吹込み攪拌と同じ十分良い攪拌混合が得られる。ただし、ガス攪拌は、浸漬ノズルの回転速度が速く、浴深さが浅い場合、機械攪拌による良好な混合状態に悪影響を及ぼす。
KAKENHI-PROJECT-04650614
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Na+輸送性V-ATPaseのイオン共役サブユニット間相互作用の解析
(i)V-ATPaseより(Ntp)Kリングを精製し、これをNa^+存在下結晶化し、多重重原子置換法を使って、2.1Å分解能でその構造を決定した(The Membrane Rotor of The V-Type ATPase from Enterococcushirae. PDB:2BL2)。得られた構造はKザブユニットが対称10量体のリングを形成しており、Kサブユニットは4本の膜貫通ヘリックスで構成されていた。Na^+と考えられる電子密度がヘリックス2-3間のリング側面中央(E^<139>近傍)に存在しており、計10個のNa^+がそれぞれのKサブユニットに同様に結合していた。Na^+結合ポケットは5つの残基(ヘリックス2のL^<61>の主鎖、T^<64>の側鎖、Q^<65>の側鎖、ヘリックス3のQ^<110>の側鎖、ヘリックス4のE^<139>の側鎖)から構成されていた。Na^+結合ポケットはリング疎水性外側面に並んでおり、リング回転によるイオン輸送機構モデルを分子構造から実証したことになる。(ii)9個の各サブユニット遺伝子の欠失株より細胞膜画分を調製し、界面活性剤による可溶化後、グリセロール密度勾配遠心を行って、V_0V_1複合体の形成について調べた。その結果、帰属が不明であったF, Gサブユニットを含めてA, B, C, D, E, F, GサブユニットがV_1部分を構成し、I, KサブユニットがV_0部分を構成することがわかった。この解析の過程でBサブユニットを欠失していても、少なくともA, C, D, I, Kサブユニットから構成される複合体が形成されることがわかり、Aサブユニットが固定子の構築に関わることと考えられた。このようにイオン輸送に関わるNtpK/NtpIサブユニット間の膜内相互作用の解析を、立体構造に基づいて詳細に進める上での研究基盤を整えることができた。(i)V-ATPaseより(Ntp)Kリングを精製し、これをNa^+存在下結晶化し、多重重原子置換法を使って、2.1Å分解能でその構造を決定した(The Membrane Rotor of The V-Type ATPase from Enterococcushirae. PDB:2BL2)。得られた構造はKザブユニットが対称10量体のリングを形成しており、Kサブユニットは4本の膜貫通ヘリックスで構成されていた。Na^+と考えられる電子密度がヘリックス2-3間のリング側面中央(E^<139>近傍)に存在しており、計10個のNa^+がそれぞれのKサブユニットに同様に結合していた。Na^+結合ポケットは5つの残基(ヘリックス2のL^<61>の主鎖、T^<64>の側鎖、Q^<65>の側鎖、ヘリックス3のQ^<110>の側鎖、ヘリックス4のE^<139>の側鎖)から構成されていた。Na^+結合ポケットはリング疎水性外側面に並んでおり、リング回転によるイオン輸送機構モデルを分子構造から実証したことになる。(ii)9個の各サブユニット遺伝子の欠失株より細胞膜画分を調製し、界面活性剤による可溶化後、グリセロール密度勾配遠心を行って、V_0V_1複合体の形成について調べた。その結果、帰属が不明であったF, Gサブユニットを含めてA, B, C, D, E, F, GサブユニットがV_1部分を構成し、I, KサブユニットがV_0部分を構成することがわかった。この解析の過程でBサブユニットを欠失していても、少なくともA, C, D, I, Kサブユニットから構成される複合体が形成されることがわかり、Aサブユニットが固定子の構築に関わることと考えられた。このようにイオン輸送に関わるNtpK/NtpIサブユニット間の膜内相互作用の解析を、立体構造に基づいて詳細に進める上での研究基盤を整えることができた。腸内連鎖球菌Enterococcus hiraeのV-ATPaseは、H^+ではなくNa^+及びLi^+を特異的に輸送する。9種類のサブユニットから構成され、NtpA, NtpBサブユニットがV1触媒頭部の主要サブユニットであり、イオン輸送に直接関わる膜部分V0は、イオン結合ローターを構成するNtpK、輸送通路の形成に関わるNtpIサブユニットからできている。本研究はNtpKとNtpIの構造と機能及びイオン輸送過程におけるこれらのサブユニット間の相互作用を明らかにすることを目的としている。今年度は部位特異的変異導入を用いた分子生物学的解析を中心に行い、以下の結果を得た。V0部分によるイオン輸送にはNtpIの第6膜貫通αヘリックスの必須R573残基とともに、第7膜貫通αヘリックスの膜表面近傍に位置すると推定されるH626及びE634残基が重要な役割を担うことを昨年度指摘した。これらは原核生物型V-ATPaseだけではなく真核生物型V-ATPase NtpI(subunit a)間で共通に保存されている残基である。H626AあるいはE634A置換変異体ではV-ATPase活性が完全に失われたが、これらの変異によりV-ATPase複合体の構築には影響が見られなかったことから、これらの残基は真核細胞V-ATPaseで見られるようなサブユニット間のアセンブリーに関わるのではなく機能性残基であると考えられた。腸内連鎖球菌Enterococcus hiraeのV-
KAKENHI-PROJECT-17570117
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17570117
Na+輸送性V-ATPaseのイオン共役サブユニット間相互作用の解析
ATPaseは、H^+ではなくNa^+及びLi^+を特異的に輸送する。本酵素は9種類のサブユニットから構成され、イオン輸送に直接関わる膜部分V_0は、イオン結合ローターであるNtpK、イオン輸送通路の形成に関わるNtpIサブユニットから構成されていることが示されているが、他のサブユニットについては相互関係など明確ではない。イオン輸送性回転モーター機構を理解するためには、V-ATPaseの全複合体におけるV_0部分の構造上の位置づけを明らかにする必要があるが、現在までのところ本酵素全複合体の結晶化には成功していない。9種類のサブユニットから構成されるV-ATPase複合体の全体像を把握するために、9個の各サブユニット遺伝子の欠失株より細胞膜画分を調製し、界面活性剤による可溶化後、グリセロール密度勾配遠心を行って、V_0V_1複合体の形成について調べた。その結果、帰属が不明であったF, Gサブユニットを含めてA, B, C, D, E, F, GサブユニットがV_1部分を構成し、I, KサブユニットがV_0部分を構成することがわかった。この解析の過程でBサブユニットを欠失していても、少なくともA, C, D, I, Kサブユニットから構成される複合体が形成されることがわかり、Aサブユニットが固定子の構築に関わることと考えられた。V_0部分を含めた本酵素のサブユニット構造の全体像を知る上で、特定サブユニットの欠失複合体の分子形態の解析を進めることが有用なアプローチの一つになると考えられた。
KAKENHI-PROJECT-17570117
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17570117
H.pylori と宿主細胞間の相互作用における細胞内シグナル伝達制御機構と病態
本研究は、H.pylori感染症におけるH.pyloriの宿主細胞へのバクテリアー宿主細胞間接着を介した蛋白質チロシンリン酸化反応を伴った細胞内シグナル伝達機序とその生理的意義を解明することを目的とし、細胞内シグナル伝達における蛋白質-蛋白質の分子間相互作用の認識機序の解析と病原性遺伝子島(PAI)に存在する遺伝子の解析からH.pylori感染症における分子機構明らかにしたいと考えている。今回私たちは、H.pyloriの胃上皮ガン細胞への感染において、H.pylori菌株の違いによる145kDaおよび130-135kDaの蛋白質のチロシンリン酸化の多様性があることを見出し、それらの蛋白質のImmunoblot解析、および35S-Methionine放射性ラベル細胞実験、さらに、その145kDaのチロシンリン酸化蛋白質のアミノ酸シークエンサー解析による部分アミノ酸配列の決定による蛋白質同定および遺伝子変異株を用いたImmunoblot解析を行った。その結果、H.phyori感染によりチロシンリン酸化された145kDaおよび130-135kDaの蛋白質は、宿主細胞由来ではなく、H.pyloriのimmundominant cytotoxin-associated antigenでH.pylori自身が分泌するCagA蛋白質であることを初めて証明した。このチロシンリン酸化CagA蛋白質は感染宿主細胞のLysates中でのみ検出されたことから、H.phlorの推定されているTypeIV蛋白質分泌装置から宿主細胞内へ放出され、細胞内へ放出されたCagA蛋白は宿主細胞由来のチロシンキナーゼによってリン酸化されているものと考えられ、私たちはin vitro kinase assayにおいてnon-receptor protein tyrosine kinaseであるsrc kinaseおよびEGF receptor protein tyrosine kinaseによってCagA蛋白質がリン酸かされることを明らかにした。(J. Exp. Med. 2000, Vol.191,No.4, 593-602)。さらに、私たちは、推定されるリン酸化部位のペプチドを抗原をしたCagAのリン酸化抗体の作成に成功し、その抗体を用いて、H.pylori感染後、リン酸化CagAは細胞骨格蛋白のa-アクチン集積とcolocalyzeし、リン酸化CagA蛋白質は宿主細胞の細胞骨格蛋白質のクロストークに関与していること、およびCagAと共沈してくる蛋白質を得ており、CagA蛋白質が増殖シグナルに関与していることを示唆する。evidenceを得ている。本研究は、H.pylori感染症におけるH.pyloriの宿主細胞へのバクテリアー宿主細胞間接着を介した蛋白質チロシンリン酸化反応を伴った細胞内シグナル伝達機序とその生理的意義を解明することを目的とし、細胞内シグナル伝達における蛋白質-蛋白質の分子間相互作用の認識機序の解析と病原性遺伝子島(PAI)に存在する遺伝子の解析からH.pylori感染症における分子機構明らかにしたいと考えている。今回私たちは、H.pyloriの胃上皮ガン細胞への感染において、H.pylori菌株の違いによる145kDaおよび130-135kDaの蛋白質のチロシンリン酸化の多様性があることを見出し、それらの蛋白質のImmunoblot解析、および35S-Methionine放射性ラベル細胞実験、さらに、その145kDaのチロシンリン酸化蛋白質のアミノ酸シークエンサー解析による部分アミノ酸配列の決定による蛋白質同定および遺伝子変異株を用いたImmunoblot解析を行った。その結果、H.phyori感染によりチロシンリン酸化された145kDaおよび130-135kDaの蛋白質は、宿主細胞由来ではなく、H.pyloriのimmundominant cytotoxin-associated antigenでH.pylori自身が分泌するCagA蛋白質であることを初めて証明した。このチロシンリン酸化CagA蛋白質は感染宿主細胞のLysates中でのみ検出されたことから、H.phlorの推定されているTypeIV蛋白質分泌装置から宿主細胞内へ放出され、細胞内へ放出されたCagA蛋白は宿主細胞由来のチロシンキナーゼによってリン酸化されているものと考えられ、私たちはin vitro kinase assayにおいてnon-receptor protein tyrosine kinaseであるsrc kinaseおよびEGF receptor protein tyrosine kinaseによってCagA蛋白質がリン酸かされることを明らかにした。(J. Exp. Med. 2000, Vol.191,No.4, 593-602)。さらに、私たちは、推定されるリン酸化部位のペプチドを抗原をしたCagAのリン酸化抗体の作成に成功し、その抗体を用いて、H.pylori感染後、リン酸化CagAは細胞骨格蛋白のa-アクチン集積とcolocalyzeし、リン酸化CagA蛋白質は宿主細胞の細胞骨格蛋白質のクロストークに関与していること、およびCagAと共沈してくる蛋白質を得ており、CagA蛋白質が増殖シグナルに関与していることを示唆する。evidenceを得ている。1.本研究は、H.pylori感染によるバクテリアと宿主細胞間の相互作用による細胞-細胞接着を伴った蛋白質リン酸化反応を介した細胞内シグナル伝達制御機構を解析することによって、H.pylori感染症における病態の分子機構を明らかにすることを目的としている。2.今回私たちは、H.pylori感染した胃粘膜上皮癌細胞株(MKN45cellsおよびAGS cells)において、2種のH.pylori標準株では145kDaの蛋白質が、8種の福井臨床株では130-135kDaの蛋白質がチロシンリン酸化されることをin vivoで見出した。
KAKENHI-PROJECT-10670148
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10670148
H.pylori と宿主細胞間の相互作用における細胞内シグナル伝達制御機構と病態
このH.pylori菌種に依存した分子量の異なる蛋白質のチロシンリン酸化は、H.pyloriの各菌種と宿主細胞の1%NonidctP-40で可溶homogenatesをそれぞれin vitroでリン酸化反応させた再構成実験においても、in vivoで得られた結果と同様の145kDaおよび130-135kDaに相当する蛋白質のチロシンリン酸化の多様性が再現された(EHPG'98Workshopにて発表)。さらに、H.pyloriの標準株1種および臨床株2種の1%NP-40homogenatesを既存の精製された非受容体型のsrcチロシンキナーゼおよび受容体型のEGFレセプターチロシンキナーゼを用いてin viroでそれぞれリン酸化反応させたところ、いずれのキナーゼによっても145kDaおよび130-135kDaに相当する蛋白質のチロシンリン酸化が認められた。3. H.pylori感染における145kDaのチロシンリン酸化蛋白質は、これまで「宿主細胞由来」と考えられていたが、今回私達が得たH.pylori菌種に依存した145kDaおよび新規な130-135kDaチロシンリン酸化蛋白質はH.pyloriの「基質蛋白質」であることを示唆しており、それらの蛋白質の精製および同定を行なう計画である。現在、"The Diverse Protein-Tyrosine Phosphorylation of本研究は、H.pylori感染症におけるH.pyloriの宿主細胞へのバクテリアー宿主細胞間接着を介した蛋白質チロシンリン酸化反応を伴った細胞内シグナル伝達機序とその生理的意義を解明することを目的とし、細胞内シグナル伝達における蛋白質-蛋白質の分子間相互作用の組織機序の解析と病原性遺伝子島(PAI)に存在する遺伝子の解析からH.pylori感染症における病態の分子機構明らかにしたいと考えている。今回私たちは、H.pyloriの胃上皮ガン細胞への感染において、H.pylori菌株の違いによる145kDaおよび130-135kDaの蛋白質のチロシンリン酸化の多様性があるこを見出し、それらの蛋白質のImmunoblot解析、および35S-Methionine放射性ラベル細胞実験、さらに、その145kDaのチロシンリン酸化蛋白質のアミノ酸シークエンサー解析による部分アミノ酸配列の決定による蛋白質同定および遺伝子変異株を用いたImmunoblot解析を行なった。その結果、H.pylori感染によりチロシンリン酸化された145kDaおよび130-135kDaの蛋白質は、宿主細胞由来ではなく、H.pyloriのimmunodominant cytotoxin-associated antigenでH.pylori自身が分泌するCagA蛋白質であることを初めて証明した。このチロシンリン酸化
KAKENHI-PROJECT-10670148
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10670148
小児神経疾患における不安定DNA配列異常増幅の直接検出法と遺伝子診断法の確立
不安定DNA配列である(CAG/CTG)nや(CGG/GCC)nを直接検出する方法として、ligation法が報告され、その詳細な条件検討を行ったが、ligation後PCRによる方法では、延長配列の検出感度が悪く、増幅DNAは筋強直性ジストロフィー症やDRLPAの患者細胞においては、検出出来ず、方法として成立しないことが判明した。精神遅滞性疾患における新たな(CAG/CTG)n延長疾患を解明する目的で、ヒト胎児脳cDNAライブラリーから(CAG)5をプライマーとしてPCR法にて(CAGCTG)n配列を有する遺伝子をクローニングし、ホモロジー検索にて既知遺伝子との配列を検討した。その結果、脳に特異的に発現する(CAG)n保有遺伝子を単離同定した。この遺伝子に関して、現在、その発現局在を解析中であり、特定の部位での局在を同定後、疾患との関連を解析予定である。また、不安定DNA配列延長疾患は、その延長程度と臨床重症度が関連することが多く、臨床重症度の推定は遺伝診断の価値を高めることが予想される。従来のPCR法では延長していない正常DNA断片の検出のみであったが、LA-PCRとサザン法の組み合わせにより、延長DNA断片の同定が容易に可能となった。筋強直性ジストロフィー症、DRPLA、MJDで可能であった。一方、脆弱X症候群では、PCR法の検出感度は低かった。不安定DNA配列である(CAG/CTG)nや(CGG/GCC)nを直接検出する方法として、ligation法が報告され、その詳細な条件検討を行ったが、ligation後PCRによる方法では、延長配列の検出感度が悪く、増幅DNAは筋強直性ジストロフィー症やDRLPAの患者細胞においては、検出出来ず、方法として成立しないことが判明した。精神遅滞性疾患における新たな(CAG/CTG)n延長疾患を解明する目的で、ヒト胎児脳cDNAライブラリーから(CAG)5をプライマーとしてPCR法にて(CAGCTG)n配列を有する遺伝子をクローニングし、ホモロジー検索にて既知遺伝子との配列を検討した。その結果、脳に特異的に発現する(CAG)n保有遺伝子を単離同定した。この遺伝子に関して、現在、その発現局在を解析中であり、特定の部位での局在を同定後、疾患との関連を解析予定である。また、不安定DNA配列延長疾患は、その延長程度と臨床重症度が関連することが多く、臨床重症度の推定は遺伝診断の価値を高めることが予想される。従来のPCR法では延長していない正常DNA断片の検出のみであったが、LA-PCRとサザン法の組み合わせにより、延長DNA断片の同定が容易に可能となった。筋強直性ジストロフィー症、DRPLA、MJDで可能であった。一方、脆弱X症候群では、PCR法の検出感度は低かった。1).乳幼児健診において診断された家族制精神遅滞、自閉症例を集積し、それらの患者または家族に対して、脆弱X症候群Aの遺伝子診断を行った。35家系中、脆弱X症候群と診断された者は無く、欧米における頻度よりはるかに低いことが推定された。現在、脆弱x症候群E,Fに関しても膠様に遺伝し診断を進めている。2)ampliligaseによる反復配列異常増幅の直接検出法は感度の点で問題があり、作動しなかった。報告に見るような条件およびその近傍条件では(CAG)nの増幅のバンドは増幅が検出されず、尚、条件の検討が必要である。3)(CAG)nを有するヒトcDNAをヒト脳ライブラリーからPCR法にてクローニングした。多数の遺伝子が(CAG)nを有していることが判明した。databaseを用いての解析により、splicingfactorなどと相同性の高いcDNAが取れており、現在、スクリーニングとすべきcDNAを選択中である。5)脆弱X症候群はA,E,Fと報告されており、FMR-1遺伝子における(CAG)n siteは3カ所となった。FMR-1遺伝子の他の変異によるものが家族制精神遅滞にある可能性を検出中である。不安定DNA配列である(CAG/CTG)nや(CGG/GCC)nを直接検出する方法として、ligation法が報告され、その詳細な条件検討を行ったが、ligation後PCRによる方法では、延長配列の検出感度が悪く、増幅DNAは筋強直性ジストロフィー症やDRLPAの患者細胞においては、検出出来ず、方法として成立しないことが判明した。精神遅滞性疾患における新たな(CAG/CTG)n延長疾患を解明する目的で、ヒト胎児脳cDNAライブラリーから(CAG)5をプライマーとしてPCR法にて(CAGCTG)n配列を有する遺伝子をクローニングし、ホモロジー検索にて既知遺伝子との配列を検討した。その結果、脳に特異的に発現する(CAG)n保有遺伝子を単離同定した。この遺伝子に関して、現在、その発現局在を解析中であり、特定の部位での局在を同定後、疾患との関連を解析予定である。また、不安定DNA配列延長疾患は、その延長程度と臨床重症度が関連することが多く、臨床重症度の推定は遺伝診断の価値を高めることが予想される。従来のPCR法では延長していない正常DNA断片の検出のみであったが、LA-PCRとサザン法の組み合わせにより、延長DNA断片の同定が容易に可能となった。筋強直性ジストロフィー症、DRPLA、MJDで可能であった。一方、脆弱X症候群では、PCR法の検出感度は低かった。
KAKENHI-PROJECT-06557048
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ビンガム粘弾性レオロジー方程式によるグリースの弾性流体潤滑理論とその実験的検証
回転振動式2重円筒レオメータの直動転がり軸受および振動軸の表面性状を改善することによって、より高精度の加振装置を装備した振動式回転2重円筒レオメータを用いて、石けん系の2種類のリチュムグリースのレオロジ特性を実験的に解明した。加振周波数と回転数をともに変化させ、加振振動と応答振動の振幅比および位相差を測定し、膨大な実験データに対して統計的処理を導入しかつ連立多元超越数方程式を多変数ニュートンラフソン法による反復計算を用いて、複素粘性係数と弾性係数を算出し、グリースに対する一般的なビンガム非線形粘弾性4要素レオロジーモデルの降伏応力、2個の粘性係数および2個の弾性係数を実験的に求めた。高分子重合物を添加した潤滑油に対する単純な粘弾性レオロジーモデルに比較して、グリースは複雑な処理を必要とすることを明らかにして、そのレオロジー特性の測定方法を確立することができた。レオロジ特性実験によって求めたレオロジ方程式すなわちコアの有無によって異なるレオロジー方程式を用いて、ころ軸受のような線接触弾性流体潤滑に対する無限幅潤滑理論と玉軸受のような点接触問題に対する有限幅潤滑理論をそれぞれ構築した。すなわち、ビンガム非線形粘弾性4要素レオロジモデルに対して降伏応力テンソルを提案し、かつ流動方向の連成効果が過去と現在のコアの生成と消滅に及ぼす時間的関連を解明した。さらに、コアの形成状況を分類して、それぞれの場合に対するコアの形状の時刻歴を導入方法を解明し、コアが潤滑面間を浮いて流れる場合、コアが壁面に一部付着する場合、コアが潤滑面間を全面的に満たす場合などに対する一般的な潤滑方程式を誘導した。初期値境界値問題のこれらの多元連立非線形偏微分方程式を数値解析し、また実験結果をも検討した結果、線接触問題に比較して、点接触問題ではコアは形成されにくいことが明らかになった。回転振動式2重円筒レオメータの直動転がり軸受および振動軸の表面性状を改善することによって、より高精度の加振装置を装備した振動式回転2重円筒レオメータを用いて、石けん系の2種類のリチュムグリースのレオロジ特性を実験的に解明した。加振周波数と回転数をともに変化させ、加振振動と応答振動の振幅比および位相差を測定し、膨大な実験データに対して統計的処理を導入しかつ連立多元超越数方程式を多変数ニュートンラフソン法による反復計算を用いて、複素粘性係数と弾性係数を算出し、グリースに対する一般的なビンガム非線形粘弾性4要素レオロジーモデルの降伏応力、2個の粘性係数および2個の弾性係数を実験的に求めた。高分子重合物を添加した潤滑油に対する単純な粘弾性レオロジーモデルに比較して、グリースは複雑な処理を必要とすることを明らかにして、そのレオロジー特性の測定方法を確立することができた。レオロジ特性実験によって求めたレオロジ方程式すなわちコアの有無によって異なるレオロジー方程式を用いて、ころ軸受のような線接触弾性流体潤滑に対する無限幅潤滑理論と玉軸受のような点接触問題に対する有限幅潤滑理論をそれぞれ構築した。すなわち、ビンガム非線形粘弾性4要素レオロジモデルに対して降伏応力テンソルを提案し、かつ流動方向の連成効果が過去と現在のコアの生成と消滅に及ぼす時間的関連を解明した。さらに、コアの形成状況を分類して、それぞれの場合に対するコアの形状の時刻歴を導入方法を解明し、コアが潤滑面間を浮いて流れる場合、コアが壁面に一部付着する場合、コアが潤滑面間を全面的に満たす場合などに対する一般的な潤滑方程式を誘導した。初期値境界値問題のこれらの多元連立非線形偏微分方程式を数値解析し、また実験結果をも検討した結果、線接触問題に比較して、点接触問題ではコアは形成されにくいことが明らかになった。回転振動式2重円筒レオメータの直動転がり軸受および振動軸の表面性状を改善することによって、より精度の高い計測を行い、測定結果の統計的処理によって、初年度は石けん系の2種類のリチュムグリースのレオロジ特性を実験的に解明した。グリースに付加する一定応力ならびに加振振動数を変化させ、加振振動と応答振動の振幅比および位相差を測定して、グリースの降伏応力、粘性係数、弾性係数などの物性値を求めて、グリースに対する一般的なビンガム非線形粘弾性レオロジ方程式を明らかにした。グリースのレオロジ特性実験によって求めたレオロジ方程式すなわちコアの有無によって異なるレオロジ方程式ならびに粘弾性特性の記憶現象を配慮するために、潤滑理論の薄膜の仮定を導入することによって、この粘弾性特性に起因する潤滑膜の圧力のみならずビンガム特性に起因するコアの形成に対する記憶現象を明らかにし、過去と現在のコアの形状の時間的関連を解明し、コアの形成状況を分類して、それぞれの場合に対するコアの形状の時刻歴を配慮した方法を明らかにした。次に、コアが潤滑面間を浮いて流れる場合、コアが壁面に一部付着する場合、コアが潤滑面間を前面的に満たす場合などに分類し、滑り方向と幅方向の流れの連成効果とそれぞれの時刻歴を考慮した有限幅潤滑理論に対するより一般的な一連の基礎方程式を導出した。前年度に製作した高制度加振装置を装備した振動式回転2重円筒レオメータによって、本年度はリチュムグリースのレオロジ特性を実験的に解明した。加振周波数と回転数をともに変化させ、加振振動と応答振動の振幅比および位相差を測定し、膨大な実験データに対して統計的処理を導入しかつ連立多元超越数方程式を多変数ニュートンラフソン法による反復計算を用いて、複素粘性係数と弾性係数を算出し、グリースに対する一般的なビンガム非線形粘弾性4要素
KAKENHI-PROJECT-05650150
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05650150
ビンガム粘弾性レオロジー方程式によるグリースの弾性流体潤滑理論とその実験的検証
レオロジーモデルの降伏応力、2個の粘性係数および2個の弾性係数を実験的に求めた。高分子重合物を添加した潤滑油に対する単純な非線形粘弾性4要素レオロジーモデルに比較して、グリースは複雑な処理を必要とすることを明らかにして、そのレオロジー特性の測定方法を確立することができた。ころ軸受のような線接触弾性流体潤滑に対する昨年度の無限幅流体潤滑理論を、本年度は玉軸受のような点接触問題に対して拡張した。グリースのレオロジー特性実験で得られたビンガム非線形粘弾性4要素レオロジモデルを3次元流れに展開するために降伏応力テンソルを提案し、かつ流動方向の連成効果が過去と現在のコアの生成と消滅に及ぼす時間的関連を解明した。さらに、コアの形成状況を分類して、それぞれの場合に対するコアの形状の時刻歴を導入する方法を提示し、コアが潤滑面間を浮いて流れる場合、コアが壁面に一部付着する場合、コアが潤滑面間を全面的に満たす場合などに対する一般的な有限幅流体潤滑理論を確立した。初期値境界値問題のこれらの多元連立非線形偏微分方程式を数値解析し、また実験結果をも検討した結果、線接触問題に比較して、点接触問題ではコアは形成されにくいことが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-05650150
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高速イオン導電酸化物の高温酸素分圧制御下の結晶構造・不定比性と空気極の設計指針
固体酸化物燃料電池の空気極材料の高温の相安定性の解明と,その結果をもとに材料設計の指針の確立を目的として,ペロブスカイト型結晶構造のランタン-ストロンチウム-マンガン系酸化物(La_1-_xSr_x)MnO_3の高温,かつ酸素圧の異なる雰囲気中にて安定な結晶構造と格子定数の温度依存性と酸素不定比性について研究した.実験方法として高温X線回折による結晶構造と不安比性の測定を行った.X線回折は温度と酸素圧の関数として結晶構造と格子定数を調べた.不定比性は精密熱天秤とクーロン滴定を用いて測定した.試料にはストロンチウム含有量の異なるランタン・マンガン酸化物(x=0,0.1,0.3)を用いた.実験は、温度(室温1,000°C)と酸素圧(1-10^<-25>atmO_2)を変えて行った.高温X線回折の結果から,(La_1-_xSr_x)MnO_3の基本構造は温度,酸素圧に関係なく菱面体晶であるが,LaMnO_3では700°C以下,p(O_2)<10^<-15>atmでは斜方晶になり,Sr=0.3の酸化物では900°C以上にて立方晶になる.X線回折の結果から温度-酸素圧-結晶構造の状態図を作成した.格子定数は温度の上昇,ストロンチウム量の増加によって大きくなるが,酸素圧が変わっても格子定数-温度曲線の形は変わらない.格子定数の温度変化から求めた熱膨張率はほぼ12x10^<-6>°C^<-1>であり,酸素圧,ストロンチウム含有量が変わっても熱膨張率はほとんど変わらない.不定比性は,Sr=0,0.2の酸化物はともにp(O_2)>10^<-15>atmO_2では0/M>3の酸素過剰組成であり,10^<-5>>p(O_2)>10^<-15>atmO_2では定比組成,P(O_2)>10^<-15>atmO_2ではO/M<3の酸素不足の組成になる.固体酸化物燃料電池の運転条件下での安定性について検討を行い,材料選択の条件を明らかにした.固体酸化物燃料電池の空気極材料の高温の相安定性の解明と,その結果をもとに材料設計の指針の確立を目的として,ペロブスカイト型結晶構造のランタン-ストロンチウム-マンガン系酸化物(La_1-_xSr_x)MnO_3の高温,かつ酸素圧の異なる雰囲気中にて安定な結晶構造と格子定数の温度依存性と酸素不定比性について研究した.実験方法として高温X線回折による結晶構造と不安比性の測定を行った.X線回折は温度と酸素圧の関数として結晶構造と格子定数を調べた.不定比性は精密熱天秤とクーロン滴定を用いて測定した.試料にはストロンチウム含有量の異なるランタン・マンガン酸化物(x=0,0.1,0.3)を用いた.実験は、温度(室温1,000°C)と酸素圧(1-10^<-25>atmO_2)を変えて行った.高温X線回折の結果から,(La_1-_xSr_x)MnO_3の基本構造は温度,酸素圧に関係なく菱面体晶であるが,LaMnO_3では700°C以下,p(O_2)<10^<-15>atmでは斜方晶になり,Sr=0.3の酸化物では900°C以上にて立方晶になる.X線回折の結果から温度-酸素圧-結晶構造の状態図を作成した.格子定数は温度の上昇,ストロンチウム量の増加によって大きくなるが,酸素圧が変わっても格子定数-温度曲線の形は変わらない.格子定数の温度変化から求めた熱膨張率はほぼ12x10^<-6>°C^<-1>であり,酸素圧,ストロンチウム含有量が変わっても熱膨張率はほとんど変わらない.不定比性は,Sr=0,0.2の酸化物はともにp(O_2)>10^<-15>atmO_2では0/M>3の酸素過剰組成であり,10^<-5>>p(O_2)>10^<-15>atmO_2では定比組成,P(O_2)>10^<-15>atmO_2ではO/M<3の酸素不足の組成になる.固体酸化物燃料電池の運転条件下での安定性について検討を行い,材料選択の条件を明らかにした.
KAKENHI-PROJECT-07239214
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07239214
候補遺伝子アプローチによる筋萎縮性側索硬化症病態関連遺伝子の探索
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は代表的な神経難病である。近年、家族性ALS原因遺伝子が数多く同定され、ALSの病態解明と根治的治療法開発の重要な手がかりになりつつある。しかし、大部分を占める孤発性ALSの関連遺伝子は十分に解明されていない。パーキンソン病とゴーシェ病との関連のように、異なる疾患との関連が遺伝子解析により示される場合がある。本研究では、多数のALS患者のDNA検体を用いて、ALS以外の神経変性疾患、筋疾患、末梢神経疾患の関連遺伝子の網羅的解析を行い、それらの変異とALSとの関連を明らかにする。新たなALS関連遺伝子の同定により病態解明、治療法開発の重要な手がかりを提供できる。筋萎縮性側索硬化症(ALS)は代表的な神経難病である。近年、家族性ALS原因遺伝子が数多く同定され、ALSの病態解明と根治的治療法開発の重要な手がかりになりつつある。しかし、大部分を占める孤発性ALSの関連遺伝子は十分に解明されていない。パーキンソン病とゴーシェ病との関連のように、異なる疾患との関連が遺伝子解析により示される場合がある。本研究では、多数のALS患者のDNA検体を用いて、ALS以外の神経変性疾患、筋疾患、末梢神経疾患の関連遺伝子の網羅的解析を行い、それらの変異とALSとの関連を明らかにする。新たなALS関連遺伝子の同定により病態解明、治療法開発の重要な手がかりを提供できる。
KAKENHI-PROJECT-19K07973
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近世イングランドにおける「君主制の共和国」
本課題は、近世イングランドの統治システムを「君主制の共和国」の視点から再検討することを目標に、(1)革命前夜(1610年代)、(2)革命期(1650年代)、(3)王政復古期(1670年代)に着目し、各時期における民衆の政治参加の特徴とその統治における意義を検討した。そこで明らかになったのは、君主制と共和制あるいはコモンロー的伝統と古典的共和主義の二つの伝統が、併存・接合されつつ展開する様である。また、それらを、内戦期をはさんだ初期・後期ステュアート朝の構造的な問題として連続的に位置づけ直す手がかりを得、近世的な「君主のいる共和国」(および、その反転としての「君主のいない共和国」)の統治構造の理解を深めた。本課題は、近世イングランドの統治システムを「君主制の共和国」の視点から再検討することを目標に、(1)革命前夜(1610年代)、(2)革命期(1650年代)、(3)王政復古期(1670年代)に着目し、各時期における民衆の政治参加の特徴とその統治における意義を検討した。そこで明らかになったのは、君主制と共和制あるいはコモンロー的伝統と古典的共和主義の二つの伝統が、併存・接合されつつ展開する様である。また、それらを、内戦期をはさんだ初期・後期ステュアート朝の構造的な問題として連続的に位置づけ直す手がかりを得、近世的な「君主のいる共和国」(および、その反転としての「君主のいない共和国」)の統治構造の理解を深めた。初年度にあたる22年度は、ICU図書館所蔵のオンライン・リソースEEBOを活用し、また夏季に約4週間の在英史料調査を行い、研究史整理と資料収集に取り組んだ。具体的には、1670年代の「排除危機」の最中に紛糾したシャフツベリ伯裁判とロンドン大陪審に着目し、ホウィグ、トーリの両陣営によるパンフレット、政府文書、書簡などから、事実関係と背景を把握し、事件に対するロンドン市民の反応を検討する手がかりを得た。その中間的成果については、口頭で報告、討議する機会をもった(2010年8月、於英国ケンブリッジ大学クレアホール)。創成期ホウィグの急先鋒、第1代シャフツベリ伯の訴追は、この時期の一連の王権/トーリによる、ホウィグ有力議員の弾劾裁判のひとつである。ロンドンを管轄する刑事裁判所オールド・ベイリに提出された大逆罪の起訴状は、ホウィグのシェリフの権限のもとで招集されたロンドン大陪審によって棄却された。裁判の前後には、証人や陪審の偽証、収賄が取り沙汰され、公開裁判の様子は逐一ロンドン市民の耳目を集めた。また、無罪放免の報に際して焚かれた篝火は、一連の過程の一種のクライマックスをなした。こうしたロンドン民衆の事件への関与や大陪審構成員に関しては、古くは政党政治史への関心から、近年では、「復古危機」の一環としての排除危機とロンドン市民という視点から研究が進んでいるが、陪審制や法廷の機能という着眼点から考察した研究はない。来年度は、ロンドン市民、ホウィグ/トーリ有力議員、王権のせめぎ合いを一次史料にもとづいて検討し、この時期の民衆の政治参加と、そこでの法廷の役割を考察することが重要な課題となる。昨年度に引き続き、近世イングランドにおける統治の問題を「君主制の共和国」の視点から考察した。具体的には、以下の3つの課題に取り組んだ。1)前年度から継続している1670年代「排除危機」下での「シャフツベリ裁判」を切口に、ロンドン市民と大陪審、ホウィグ党との関係について、党派・社会層の対立の構図とそれぞれの言説に注目して分析を進めた。2)また、新たに1650年代、「君主のいない」共和政時代の国制のありかたについて、上記の1670年代との比較の視点から研究を進めた。王でなく王である「護国卿」のもとでの王国統治の再編や、共和制時代の記憶の問題は、初期および後期ステユアート朝の構造的問題と、その展開を考える上で有益であることが再確認された。3)さらに、時期的・地域的な比較の観点からさらに考察を深めるべく、これまでに研究蓄積のあった初期ステユアート朝治下のヨークシャにおける国教忌避者訴追の問題について、事例研究を論文にまとめた(現在、査読誌に投稿中)。同論文では、法廷での言説をもとに、ヨークシャという中央の目の届きにくい辺境地域において州および教区エリートが、地域の合意形成が困難であった国教忌避という新たな「犯罪」にどう対応したのかを分析した。これらの研究遂行にあたっては、オンライン・リソースEEBOやECCO等を活用したほか、夏季に渡英して、英国図書館(British Library)、ケンブリッジ大学図書館(Cambridge University Library)、ボドリアン図書館(Bodleian Library)などを訪問し、資料収集を行った。本研究課題の最終年度にあたる平成24年度は、これまでの調査をもとにした総合的な考察が主要課題となった。1610年代、1650年代、1670年代について行ってきた事例研究をもとに、君主制と共和制、コモンロー的伝統と古典的共和主義、臣民と市民の二つの伝統が、併存・接合されつつ展開する様を確認した。また、それらを内戦期をはさんだ初期・後期ステュアート朝の構造的な問題として、連続的に位置づけ直す手がかりを得、近世的な「君主のいる共和国」(およびその反転としての「君主のいない共和国」)統治のしくみの理解を深めた。
KAKENHI-PROJECT-22720285
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22720285
近世イングランドにおける「君主制の共和国」
その成果の一部は、2013年5月に開催される第63回日本西洋史学会大会小シンポジウムにて報告予定であるほか、論文を準備中である。これらの研究遂行にあたっては、オンライン・リソースEEBOを活用したほか、夏季および冬季に渡英して、この分野で活躍する第一線のイギリス人研究者と意見を交換し、また、英国図書館(British Library)、ケンブリッジ大学図書館(Cambridge University Library)などを訪問して資料調査を行った。これまでの研究実績を有効に生かすことができ、年代別の考察がおおむね順調に進展している。24年度が最終年度であるため、記入しない。当初の構想よりも考察の対象期間が広がった。最終年次にあたる24年度は、各年代のミクロな事例の検証よりも、内戦期をはさんだ初期・後期ステュアート朝下での統治の構造的な問題に重心をおいて、研究成果をまとめてゆきたい。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22720285
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神経組織の成長・分化におけるカルシウム・カルモデュリン系の役割について
神経組織の成長・分化におけるCa制御系の役割を解明する目的で、カルモデュリン(CaM)とその標的酵素であるCaM依存性酵素について研究を行った。1.カルシニュウリン(CaM依存性脱リン酸化酵素以下CaN)に対する単クローン抗体を使用し、ラット脳内における局在を免疫組織化学的に明らかにした。シナプスが豊富に存在する海馬(透明帯・分子層)に多量に存在し、CaNとシナプス機能の相関が強く示された。現在電子顕微鏡レベルの検索が進行中である(Brain Res.投稿準備中)。2.ラット脳の成長と分化に従って出現する新しいCaM結合蛋白質を見いだした。それらの蛋白化学的な性質を検索すると同時に、抗体の作成を行った(Biochem.Biophys.Res.Commur.投稿準備中)。3.CaNの基質特異性と2価金属イオンによる活性化機構を研究した。CaNは蛋白性基質のみならず、リン酸化チロシンや高エネルギー化合物フォスフォエノールピルビン酸をも脱リン酸化する広い基質特異性を持つこと、2価金属イオンによる立体構造の変化が活性化機構に重要な役割を持つことなどを総説としてまとめ報告した(発表論文【◯!1】)。4.神経細胞膜のCa-ATPaseに対する抗体を作成しその局在を検討した。巨視的な局在は顕著ではないが、光顕的には神経細胞に特異的でありグリア細胞には存在しない。また大脳皮質第五層の巨大錐体細胞及びアピカルデンドライトが染色された。以上の知見とCa-ATPaseの役割を総説してまとめ報告した(発表論文【◯!2】)。5.ミトコンドリアに存在するCaMを免疫電顕的に直接に証明した。これによりCaMはマトリックスと内膜表面に局在していることが判明した。我々は既にミトコンドリア内のCaMを分離・精製していたが本研究でミトコンドリアのCaMの生理的重要性がより明らかになった(発表論文【◯!3】)。神経組織の成長・分化におけるCa制御系の役割を解明する目的で、カルモデュリン(CaM)とその標的酵素であるCaM依存性酵素について研究を行った。1.カルシニュウリン(CaM依存性脱リン酸化酵素以下CaN)に対する単クローン抗体を使用し、ラット脳内における局在を免疫組織化学的に明らかにした。シナプスが豊富に存在する海馬(透明帯・分子層)に多量に存在し、CaNとシナプス機能の相関が強く示された。現在電子顕微鏡レベルの検索が進行中である(Brain Res.投稿準備中)。2.ラット脳の成長と分化に従って出現する新しいCaM結合蛋白質を見いだした。それらの蛋白化学的な性質を検索すると同時に、抗体の作成を行った(Biochem.Biophys.Res.Commur.投稿準備中)。3.CaNの基質特異性と2価金属イオンによる活性化機構を研究した。CaNは蛋白性基質のみならず、リン酸化チロシンや高エネルギー化合物フォスフォエノールピルビン酸をも脱リン酸化する広い基質特異性を持つこと、2価金属イオンによる立体構造の変化が活性化機構に重要な役割を持つことなどを総説としてまとめ報告した(発表論文【◯!1】)。4.神経細胞膜のCa-ATPaseに対する抗体を作成しその局在を検討した。巨視的な局在は顕著ではないが、光顕的には神経細胞に特異的でありグリア細胞には存在しない。また大脳皮質第五層の巨大錐体細胞及びアピカルデンドライトが染色された。以上の知見とCa-ATPaseの役割を総説してまとめ報告した(発表論文【◯!2】)。5.ミトコンドリアに存在するCaMを免疫電顕的に直接に証明した。これによりCaMはマトリックスと内膜表面に局在していることが判明した。我々は既にミトコンドリア内のCaMを分離・精製していたが本研究でミトコンドリアのCaMの生理的重要性がより明らかになった(発表論文【◯!3】)。
KAKENHI-PROJECT-60223021
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-60223021
観光と社会関係資本に関する地域社会学的研究
本研究の目的は、岐阜県郡上市八幡町の「郡上おどり」を事例にしながら、伝統文化を活用した観光現象と地元の社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)がどのような関係にあるのか、を明らかにすることにある。この点を明らかにすることを通じて、学術的には構築主義的な観光文化論を乗り越えるとともに、実践的にはマス・ツーリズムとは異なる、地域社会独自の観光戦略のあり方や方向性を指し示す。平成24年度は、昨年度の社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)としての頼母子講の実態の解明をふまえ、伝統文化を活用した観光現象と頼母子講との関係の研究に着手した。具体的には岐阜県郡上市八幡町を事例にしながら、郡上八幡に無数に存在する頼母子講のなかでも観光やまちづくりに貢献したものを取り上げ、頼母子講が郡上八幡の観光にどのような役割を果たしているのか、という側面をフィールドワークした。昨年度も述べたように、現在の郡上八幡での頼母子講は、気の合う仲間で集まって親睦を深める会へと変貌を遂げていた。だがその一方で、あくまでも親睦目的にしながらも、講員どうしでの少額のお金の貸し借りは続けられている。その際、講員たちは、お金の貸し借りを「遊び」でコーティングしながら、「助けるー助けられる」という関係性を曖昧にしていた。このような「偽装としての遊び」という仕掛けをもった頼母子講は、その「遊び」の精神が発揮されることによって、観光の目玉となる伝統文化のイベント(たとえば、昔の盆踊り、芸者を呼び込んでの郡上おどりパレード、郡上おどりでの水中花火大会など)の着想が可能になると同時に、月々の掛け金の一部をイベントの資金に充てるという実行力をともなっている。そうやってなされたイベントは、講員たちのボランティア的行動が「遊び」によってコーティングされているため、「町の観光のために......」といった大義名分を感じさせないように工夫されている。このことは、本研究が目指している、観光現象と伝統文化の“適度な"関係、あるいは、地元住民の生活全体を優先させた観光開発モデルの形成につながっていくのではないか、と考えられる。平成25年度は、社会関係資本と住民主体の観光現象との関係の究明のために、(1)郡上八幡だけでなく他地域との比較研究と、(2)そのような対象への理論的アプローチの確立、という2つの課題に取り組んできた。まず、(1)に対応するために、各地の代表的な祭りや民俗芸能(具体的には、滋賀県長浜市の「曳山祭り」、徳島県徳島市の「阿波踊り」)を巡検するとともに、それらの祭りや民俗芸能のあり方を左右する社会関係資本と、郡上おどりの背後に控える社会関係資本(頼母子講)との比較研究を行った。とくに、長浜祭りをささえる社会関係資本が伝統的なコミュニティ(町組)である一方、阿波踊りをささえる社会関係資本が自発的な結社(連)であり、それらが曳山や踊りを通じて互いに競い合うことで、祭りや踊りをささえると同時に、社会関係資本である町組や連をより強固なものにしていた。また、阿波踊りの場合、それぞれの連が強固な結びつきを示しているがゆえに、踊りの場において観光客がつくる“にわか連"を受け入れる素地ができていた。以上の2地点と郡上八幡を比較すると、郡上八幡の場合、社会関係資本が頼母子講という狭い関係性であるため、住民の手から離れた観光開発に一定の歯止めがかかるものと思われる。次に、(2)に対応するために、社会学・人類学・民俗学分野での理論的・方法論的研究の進展をはかった。そこで注目したのは、地元住民の語りである。これまでの研究では語りをたんなる事実伝達の媒体とみる傾向があったが、本研究ではその豊饒さに注目することで、どのような可能性が開かれるのかを明らかにした。ここでいう語りの豊饒さとは、語ることそのものがひとつのふるまいとなっており、語られた内容の事実検証を無効にさせる水準にあるものである。この水準にある“事実"の究明は、日本民俗学の心意論と共鳴しながらも、現代民俗学的な技法の構築に貢献するであろう。本研究の目的は、岐阜県郡上市八幡町の「郡上おどり」を事例にしながら、伝統文化を活用した観光現象と地元の社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)がどのような関係にあるのか、を明らかにすることにある。この点を明らかにすることを通じて、学術的には構築主義的な観光文化論を乗り越えるとともに、実践的にはマス・ツーリズムとは異なる、地域社会独自の観光戦略のあり方や方向性を指し示す。平成23年度は、本科研の大きな研究テーマである、伝統文化を活用した観光現象と社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)との関係のなかでも特に、社会関係資本としての頼母子講に着目し、その実態の解明に研究を集中した。具体的には岐阜県郡上市八幡町を事例にしながら、この地域の貴重な観光資源である「郡上おどり」とは異なった、地元住民の"たのしみ"を前面に打ち出した「昔おどり」の地元有志たちが中心となった頼母子講のフィールドワークを行った。郡上八幡では、現在でも地元住民のあいだで盛んに頼母子講が行われている。本来、頼母子講とは信頼できる仲間内でお金を出し合い、そのなかの特定の個人に貸し付けるという民間共済組織であったのだが、現在の郡上八幡では仲間で集まって親睦を深める会へと変貌を遂げてきた。しかしながら、親睦目的に変化しても、講員どうしでの少額のお金の貸し借りは続けられる。
KAKENHI-PROJECT-23530662
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23530662
観光と社会関係資本に関する地域社会学的研究
その貸し借りの際、講員たちは、常に酒を酌み交わしながら、集まったお金をめぐって冗談か本気かわからない言い方でセリを行い(例えば、本来伏せられるべき入札金額を自ら大声で言い放つ、など)、仲間と戯れる。このような真偽を宙づりにする遊びこそ、お金の貸し借りにともなう「助けるー助けられる」という関係性を曖昧にしながら、仲間内での相互扶助を円滑に進めている。このような「偽装としての遊び」という仕掛けをもった頼母子講がベースとなって、地元住民の"たのしみ"を重視した伝統文化の継承や観光化を可能になっているとすれば、本研究が目指している、観光現象と伝統文化の"適度な"関係、あるいは、地元住民の生活全体を優先させた観光開発モデルを示すことにつながっていくのではないか、と考えられる。本研究の目的は、学術的には構築主義的な観光文化論を乗り越えるとともに、実践的にはマス・ツーリズムに流されない、地域社会独自の観光戦略のあり方や方向性を指し示すために、伝統文化を活用した観光現象と社会関係資本がどのような関係にあるのか、を明らかにすることであった。この目的から平成24年度の研究実績をふりかえると、社会関係資本である頼母子講の実態解明は進み、それが観光現象とどのように結びついているか、が一定程度明らかになった。それは、上述したように、講員たちが自分たちを含めた地元住民の「遊び」や「楽しみ」を重視した観光イベントの着想を可能するとともに、それを実行するために資金を自分たちで積み立てて準備できる、ということであった。この点において、本研究は、おおむね順調に進展していると評価することができよう。しかし、中心的事例地である郡上八幡での研究は進んでいるのだが、当初計画していた他地域との比較はどうなっているのか、という点が未だに残された課題である。また、昨年度も指摘したことだが、観光現象と社会関係資本の関係への理論的パースペクティブの確立が進んでおらず、今後の研究を展開するうえで、理論的パースペクティブの確立がもう一つの課題となっている。本研究の目的は、学術的には構築主義的な観光文化論を乗り越えるとともに、実践的にはマス・ツーリズムに流されない、地域社会独自の観光戦略のあり方や方向性を指し示すために、伝統文化を活用した観光現象と社会関係資本がどのような関係にあるのか、を明らかにすることであった。この目的から平成23年度の研究実績をふりかえると、郡上八幡における社会関係資本となる頼母子講の実態解明については大きく前進し、一本の論文にまで結実するに至った。この論文では、頼母子講のもつ相互扶助的な性質が、月例会におけるセリ場面での「真偽を宙づりにする遊び」で偽装されており、このような遊びが仲間内だけでなく、町全体にかかわる観光イベントひいては地域づくり運動に及ぶことを指摘した。この点で、民間の社会関係資本の解明から観光現象へ向かう足がかりを得ていると考えられる。しかし、社会関係資本である頼母子講の実態解明は進み、それが現在の郡上八幡での「昔おどり」にゆるやかにつながっていると考えられるものの、頼母子講と観光現象との関係がやや弱く、頼母子講が観光現象とどのように結びついているか、という点が未だに残された課題である。また、社会関係資本や、観光現象と社会関係資本の関係への理論的パースペクティブの確立が進んでおらず、先にあげた頼母子講にかんする論文も、実態解明に傾いている。この点で、今後の研究を展開するうえで、理論的パースペクティブの確立がもう一つの課題となっている。
KAKENHI-PROJECT-23530662
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23530662
正値調和函数の増大度と領域との関係の研究
当研究課題は、正値調和関数の境界付近での増大度が、境界からの距離のべき乗で上下から抑えられるような領域の幾何学的な性質を明らかにすることを最終目標にしている。当該年度は原点を含む一般な領域について、原点からの擬双曲距離と境界からの距離との関係を本質的には変えないような、領域の変形(特に穴開け)を求め、変形した領域上の各種ポテンシャルの考察等、ポテンシャル論的な方法を用いて、変形による正値調和函数の空間の変化を見た。同時に逆方向からのアプローチとして研究代表者が以前に擬双曲距離を用いて特徴付けを与えた内部NTA領域を調べることからも出発した。この内部NTA領域は、調和関数や擬等角写像などの研究を通じて以前から導入され調べられて来たと同じものである。さらのこの擬双曲境界条件を満たす領域は擬双曲距離の指数関数が可積分になるための必要十分条件であることからも、近年注目されている。その結果から正値調和関数のべき乗が可積分になることが導かれ、それと擬双曲境界条件とは同値ではないかと考えられている。ところで正値調和関数については、べき乗が可積分であることと、境界付近での増大度が境界からの距離のべき乗で上下から抑えられることとは非常に近いので、べき乗可積分性との関連からも進めた。また、原点からの擬双曲距離を重み関数と見る観点から重み付きのソボレフ型不等式(特に退化する楕円型偏微分作用素に対するもの)が成り立つ領域との関連も調べた。当研究課題は、正値調和関数の境界付近での増大度が、境界からの距離のべき乗で上下から抑えられるような領域の幾何学的な性質を明らかにすることを最終目標にしている。当該年度は原点を含む一般な領域について、原点からの擬双曲距離と境界からの距離との関係を本質的には変えないような、領域の変形(特に穴開け)を求め、変形した領域上の各種ポテンシャルの考察等、ポテンシャル論的な方法を用いて、変形による正値調和函数の空間の変化を見た。同時に逆方向からのアプローチとして研究代表者が以前に擬双曲距離を用いて特徴付けを与えた内部NTA領域を調べることからも出発した。この内部NTA領域は、調和関数や擬等角写像などの研究を通じて以前から導入され調べられて来たと同じものである。さらのこの擬双曲境界条件を満たす領域は擬双曲距離の指数関数が可積分になるための必要十分条件であることからも、近年注目されている。その結果から正値調和関数のべき乗が可積分になることが導かれ、それと擬双曲境界条件とは同値ではないかと考えられている。ところで正値調和関数については、べき乗が可積分であることと、境界付近での増大度が境界からの距離のべき乗で上下から抑えられることとは非常に近いので、べき乗可積分性との関連からも進めた。また、原点からの擬双曲距離を重み関数と見る観点から重み付きのソボレフ型不等式(特に退化する楕円型偏微分作用素に対するもの)が成り立つ領域との関連も調べた。
KAKENHI-PROJECT-05854003
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05854003
320列MDCTを用いた局所肺機能評価法の開発に関する研究
320列MDCTを用いた63例の全肺吸呼気CTデータから全肺および肺葉でのエアトラッピングを定量的に評価する新しいCT指標(吸収値容量指数、AVI)を考案し検証した。全肺AVIは、1秒率と良好に相関するとともに、これまでのエアトラッピング指標で問題であった呼気レベルの違いによる影響を除外できる可能性をもつことが示された。AVIは慢性閉塞性肺疾患の局所肺機能評価に有力な指標となると考えられた。320列MDCTを用いた63例の全肺吸呼気CTデータから全肺および肺葉でのエアトラッピングを定量的に評価する新しいCT指標(吸収値容量指数、AVI)を考案し検証した。全肺AVIは、1秒率と良好に相関するとともに、これまでのエアトラッピング指標で問題であった呼気レベルの違いによる影響を除外できる可能性をもつことが示された。AVIは慢性閉塞性肺疾患の局所肺機能評価に有力な指標となると考えられた。平成22年度は、57歳男性の正常ボランティアにおけるCT画像データを用いて、局所肺機能解析法の確立を目指して検討を行った。まず、上肺野および下肺野に分けて、急速呼気時に0.35秒ごとの連続スキャンを行ったが、吸気位および呼気位以外の中間位での画像は動きによるアーチファクトのために正確な肺葉容積およびCT値の計測が難しく、1秒量や1秒率を算出することが困難であることが明らかになった。また、16cmのスキャン範囲では、肺葉全体がカバーできないことも判明した。そこで、ダイナミックCTによる手法を断念し、160列ヘリカルスキャン法によって、吸気と呼気の2相の全肺CT画像を撮像し、その変化から局所肺機能を評価する手法に変更した。当初予定していたVIDAシステムでは、肺葉に分葉不全が存在する場合に測定不能となったために、データを別の市販解析ソフトで計測した。深吸気での全肺容量は6004ml(右上葉1145ml.右中葉603ml,右下葉1507ml,左上葉1425ml,左下葉1324ml)で、深呼気では、全肺容量は2613ml(右上葉513ml.右中葉375ml,右下葉558ml,左上葉677ml,左下葉490ml)となった。容量減少量の吸気肺容量に対する比率は、全肺56.5%(右上葉55.2%.右中葉37.8%,右下葉63.0%,左上葉53.2%,左下葉63.0%)で、肺葉ごとに不均一があることが明らかになった。しかし単位容量減少に対する肺野CT値の変化は、全肺3.06HU(右上葉2.79HU.右中葉2.67HU,右下葉3.38HU,左上葉3.19HU,左下葉3.62HU)と比較的一定の値となった。平成23年度は、正常ボランティアでのデータをもとに正常肺のCT指標のばらつきを検討し、さらに、区域レベルでの解析を行う予定である。平成23年度は、前年度に確立した320列面検出器型MDCTのヘリカルスキャン法による全肺吸呼気CTを用いた局所肺機能評価法の検証を行った。対象は正常ボランティア26例、慢性閉塞性肺疾患(COPD)のGOLD1型9例、GOLD2型あるいは3型12例の計47例である。得られた全肺吸呼気CTデータをワークステーションに転送し、市販の解析ソフト(GE社製)を用いて、全肺および肺葉ごとに新しく考案した吸収値容量指数(attenuation volume index, AVI)を計算し、同時に従来用いられてきたエアトラッピングの指標であるピクセル指数(PI)やエアトラッピング率(ATR)も同時に算出し、比較検討した。また全肺におけるこれらの指標と呼吸機能検査における1秒率や1秒量との相関を検討した。1秒率との相関では、AVI,PI,およびATRのいずれの指標も良好な相関を示した(相関係数0.76,-0.85,および-0.72)。しかし、正常群、GOLD1群、GOLD2/3群で平均値と標準偏差から変動係数(variation coefficient, VC)を求めたところ、各群においてPIはAVIよりVCが大きかった。また、肺葉ごとの指標を求めたところ、6葉中4葉でATRは正常群とGOLD1群の間での有意差はなく、また肺葉に関して一定の傾向もみられず、軽度のCOPD変化の検出に問題がある可能性が示された。これに対して、AVIでは正常人においても上葉と下葉の間に指標の有意差がみられ、生理的な局所肺機能の違いも定量的に評価できる可能性が示された。したがって、AVIは被検者の呼吸努力によらずに局所のエアトラッピングを定量的に評価できる有用な指標と考えられた。今後は、この局所肺機能指標を用いて、各肺葉ごとにAVIと中枢気管支の外径や壁肥厚との関係を検討する予定である。平成24年度は、前年度までに確立した320列面検出器型MDCTのヘリカルスキャン法による全肺吸呼気CTを用いた局所肺機能検査の症例を追加し、全肺での呼吸機能との相関、ならびに肺葉ごとのCT指標に関して検証を行った。検討対象は正常ボランティア26例、慢性閉塞性肺疾患(COPD)のGOLD1型16例、GOLD2型あるいは3型21例の計63例である。
KAKENHI-PROJECT-22591327
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22591327
320列MDCTを用いた局所肺機能評価法の開発に関する研究
市販の解析ソフト(GE社製)を用いて、全肺および肺葉ごとに新しく考案した吸収値容量指数(attenuation volume index, AVI)と、従来用いられてきたエアトラッピングの指標であるエアトラッピング率(ATR)を同時に算出した。全肺におけるこれらの指標と1秒率との相関を検討するとともに、新しい指標がエアトラッピング評価において大きな課題である呼気レベルの違いを解決できるかどうか検討するために、肺容量減少率に対するCT指標をボランティア群とCOPD群に分けてプロットし、両者の分離が可能か否かを検討した。1秒率との相関では、AVIおよびATRのいずれの指標も良好な相関を示した(相関係数0.77および-0.78)。ATRでは、肺容量減少率に対する両群の回帰直線がほぼ同一となり、正常者の呼気不良とエアトラッピングの区別が困難であることが明らかとなった。これに対して、AVIでは、両群の回帰直線が分離し、とくに肺容量減少率が小さい場合に正常とCOPDが分離できる可能性が示された。さらに肺葉ごとのAVIの解析では、正常人においても上葉と下葉の間に有意差がみられ(2.73±0.46および3.15±0.55)、エアトラッピングばかりでなく生理的な局所虚脱性の違いも定量的に評価できる可能性が示された。したがって、AVIは被検者の呼吸努力によらずに局所のエアトラッピングあるいは肺虚脱率を定量的に評価できる有用な指標と考えられた。当初想定したダイナミックCTを用いた局所1秒率の評価法の確立には失敗したが、吸呼気全肺ヘリカルCTを用いた肺葉ごとの安定した定量的局所肺機能評価法を確立することができ、その有効性に関する検証もできたため。24年度が最終年度であるため、記入しない。今後は、肺葉ごとの機能指標と高分解能CTによる気管支の形態変化との関係を解析し、COPDにおける中枢気道と細気管支の関与に関する検討を行う予定である。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22591327
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22591327
刺激波形制御による標的神経電気刺激法の開発と脳機能イメージングによる実験的検証
本研究の目的は、中枢神経系において細胞外電極と神経線維との距離や神経線維の直径に対し選択的な刺激法を開発することである。これまでに末梢神経系では刺激の時間波形を制御することで選択的刺激が可能であることが示唆されていたが、中枢神経系に適用された例はなかった。もし中枢神経系においても選択的刺激が可能ならば、臨床医学で利用されている電気刺激法において、安全性向上に寄与するものと期待できる。本研究においては、シミュレーションと動物実験からこの問題に取り組んだ。まず、ヒト頭部の一部を模擬した容積導体にヒト有髄神経の数理モデルを埋め込んだモデルを用いて、ディスク型の電極から電気刺激を与えたときの応答をシミュレーションした。刺激波形は双極の陰極性矩形波、および三角波と三つのバースト波から構成される閾値下前刺激を陰極性矩形波に先行して配置した波形とした。この二つの波形について、電極と神経線維との距離に対する選択性、および神経線維の直径に対する選択性を評価した。その結果、閾値下前刺激を配置した場合には、矩形波刺激と比較して距離および直径選択性が同時に高まることを明らかにした。この現象のメカニズムを説明しうるものとして、閾値下前刺激の期間中に神経線維のカリウムチャネルが開口し、もれ電流が増加することを示した。続いてシミュレーションにより予見された閾値下前刺激の効果を検証するために、マウスの視床皮質スライスに陰極性の矩形波および閾値下前刺激を陰極性矩形波に先行して配置した波形を与えたときの大脳皮質の応答を、フラビン蛋白蛍光イメージング法により観察した。その結果、閾値下前刺激を与えたときは、矩形波刺激と比較して大脳皮質の応答が有意に減弱することを明らかにした。これにより中枢神経系でも選択的動員が可能であることをイメージングにより初めて示唆した。本研究課題は平成26年度が最終年度のため、記入しない。本研究課題は平成26年度が最終年度のため、記入しない。本研究の目的は,中枢神経系において,細胞外電極ー神経線維間の距離や,神経線維の直径に選択的な刺激法を開発することである.これまでに末梢神経系では刺激の時間波形を制御することで選択的刺激が可能であることが示唆されていたが,中枢神経系に適用されてこなかった.もし中枢神経系においても選択的な刺激が可能であるならば,脳深部刺激療法や,術中の皮質・皮質下マッピングなど臨床医学で利用されている電気刺激法の安全性向上に寄与するものと期待できる.本研究においてはシミュレーションと動物実験からアプローチを試みたので報告する.1.シミュレーションー中枢神経系における標的刺激可能な波形の考案ーヒト大脳皮質を模擬した容積導体にヒト中枢神経の数理モデルを配置し,細胞外電極から電気刺激を与えたときの応答をシミュレーションした.刺激波形は双極の陰極刺激(陽極→陰極の順で極性が変化する,陽極の振幅は陰極の振幅よりも小さく,パルス幅が長い), 2つの指数関数を組み合わせた波形とし,それぞれの電極ー神経線維間距離選択性を評価した.その結果,陰極刺激では電極近傍での神経の興奮が抑圧できず,選択的刺激ができなかった.これに対し2っの指数関数を組み合わせた波形の場合には,電極から少し離れたところにある神経線維を選択的に刺激できた.このことから,電極近傍の神経線維を興奮させることなく選択的刺激を行うには,陽極側の刺激を緩やかに上昇させることが重要であると示唆された.2.実験ーマウス脳組織標本を用いた神経活動イメージングによる検証実験ー標的刺激を実験的に検証するため,マウスの脳組織標本を電気刺激しその際の神経活動を可視化することを試みている.刺激の極性,振幅などといった刺激パラメータの変更に伴って,応答する箇所が変化するかどうか神経活動イメージングにより検証している.本研究の目的は、中枢神経系において細胞外電極と神経線維との距離や神経線維の直径に対し選択的な刺激法を開発することである。これまでに末梢神経系では刺激の時間波形を制御することで選択的刺激が可能であることが示唆されていたが、中枢神経系に適用された例はなかった。もし中枢神経系においても選択的刺激が可能ならば、臨床医学で利用されている電気刺激法において、安全性向上に寄与するものと期待できる。本研究においては、シミュレーションと動物実験からこの問題に取り組んだ。まず、ヒト頭部の一部を模擬した容積導体にヒト有髄神経の数理モデルを埋め込んだモデルを用いて、ディスク型の電極から電気刺激を与えたときの応答をシミュレーションした。刺激波形は双極の陰極性矩形波、および三角波と三つのバースト波から構成される閾値下前刺激を陰極性矩形波に先行して配置した波形とした。この二つの波形について、電極と神経線維との距離に対する選択性、および神経線維の直径に対する選択性を評価した。その結果、閾値下前刺激を配置した場合には、矩形波刺激と比較して距離および直径選択性が同時に高まることを明らかにした。この現象のメカニズムを説明しうるものとして、閾値下前刺激の期間中に神経線維のカリウムチャネルが開口し、もれ電流が増加することを示した。
KAKENHI-PROJECT-13J02324
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13J02324
刺激波形制御による標的神経電気刺激法の開発と脳機能イメージングによる実験的検証
続いてシミュレーションにより予見された閾値下前刺激の効果を検証するために、マウスの視床皮質スライスに陰極性の矩形波および閾値下前刺激を陰極性矩形波に先行して配置した波形を与えたときの大脳皮質の応答を、フラビン蛋白蛍光イメージング法により観察した。その結果、閾値下前刺激を与えたときは、矩形波刺激と比較して大脳皮質の応答が有意に減弱することを明らかにした。これにより中枢神経系でも選択的動員が可能であることをイメージングにより初めて示唆した。本研究課題は平成26年度が最終年度のため、記入しない。本研究課題は平成26年度が最終年度のため、記入しない。シミュレーションに関しては,中枢におけるモデルを構築し,考案した波形が従来波形よりも選択性に優れていることを明らかにできた.実験についても,神経活動イメージングを行うための実験系のセットアップを行い,検証実験を随時行うことができた.今後は,選択的刺激の検証実験に注力する予定である.これまでのところ,選択的刺激の効果が認められるような実験データは得られていない.この問題には,構築したモデルを改良し,より選択的な刺激性能の高い刺激波形を考案することで対応していきたい.
KAKENHI-PROJECT-13J02324
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13J02324
近世の朝幕関係と朝廷財政
本研究の課題は、江戸幕府から天皇・朝廷に対して行われた財政的基盤の保障や支援の実態を明らかにし、それを通じて両者の関係(=「朝幕関係」)をより具体的に解明することにある。この点に関する先行研究の蓄積はきわめて薄く、その最大の理由は史料の欠如にあるとされてきた。そこで、本年度はまず、関連する諸史料(財政的基盤でありつづけた諸料地(禁裏料や仙洞料など)や保障・支援に深く関わった武家・公家らの記録など)の調査・閲覧・撮影を重点的に行った。具体的には、東京大学史料編纂所、東京大学総合図書館、宮内庁公文書館、宮内庁書陵部、長崎県島原市本光寺、国立公文書館などに赴いた。対象となった史料を挙げれば、「公武御用記録」・「日申御記」・島原藩松平氏文書・「俊克卿雑記草」・「廻文留」などである。さらに、研究書・史料集の中にも関連するものが一定程度存在することが判明したので、それらの購入も行った。以上によって、少ないといわれてきた当該分野に関する史料を相当数得ることができた。研究基盤の整備が飛躍的に進行したといえる。現在、これらの成果をもとに、「近世中後期の口向役人」(仮題、近世史研究会例会で2012年中に報告予定)などの学会報告や論文の執筆を進めている。なお、申請者は2011年4月1日に日本学術振興会特別研究員(PD)に採用されたが、同年7月1日に、東京大学史料編纂所に就職した。そのため、同年6月30日付でPDを辞退していることを付言しておく。本研究の課題は、江戸幕府から天皇・朝廷に対して行われた財政的基盤の保障や支援の実態を明らかにし、それを通じて両者の関係(=「朝幕関係」)をより具体的に解明することにある。この点に関する先行研究の蓄積はきわめて薄く、その最大の理由は史料の欠如にあるとされてきた。そこで、本年度はまず、関連する諸史料(財政的基盤でありつづけた諸料地(禁裏料や仙洞料など)や保障・支援に深く関わった武家・公家らの記録など)の調査・閲覧・撮影を重点的に行った。具体的には、東京大学史料編纂所、東京大学総合図書館、宮内庁公文書館、宮内庁書陵部、長崎県島原市本光寺、国立公文書館などに赴いた。対象となった史料を挙げれば、「公武御用記録」・「日申御記」・島原藩松平氏文書・「俊克卿雑記草」・「廻文留」などである。さらに、研究書・史料集の中にも関連するものが一定程度存在することが判明したので、それらの購入も行った。以上によって、少ないといわれてきた当該分野に関する史料を相当数得ることができた。研究基盤の整備が飛躍的に進行したといえる。現在、これらの成果をもとに、「近世中後期の口向役人」(仮題、近世史研究会例会で2012年中に報告予定)などの学会報告や論文の執筆を進めている。なお、申請者は2011年4月1日に日本学術振興会特別研究員(PD)に採用されたが、同年7月1日に、東京大学史料編纂所に就職した。そのため、同年6月30日付でPDを辞退していることを付言しておく。
KAKENHI-PROJECT-11J10780
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J10780
高齢者のヒト歯髄細胞からiPS細胞を効率よく樹立するための基礎的検討
本研究では、ヒト歯髄細胞(dental pulp cell;DPC)からiPS細胞誘導を行う過程において、低酸素を限られた期間のみ使用し、その誘導効率を上げることに成功した。この方法は、若年者のDPCのみならず、樹立効率の低い高齢者のDPCにも有用であり、iPS細胞による再生医療を高齢者に用いる上で、自家移植の可能性を高めた。また、この方法は、線維芽細胞を用いた既発表の論文とは低酸素培養の条件(期間)が異なるものであり、細胞により条件の検討が必要であることを示し、iPS細胞研究にも寄与したものと考える。我々は、これまで若年者のヒト智歯から歯髄細胞(Dental Pulp Cell : DPC)を樹立し、DPCが高い増殖・分化能(ステムネス性:幹細胞性)を有し、人工多能性幹細胞(iPS細胞)へ高率に誘導できることを明らかにした。また、高齢者からのDPCは、若年者に比べてはるかに樹立効率が低くステムネス性の維持も困難であったが、低酸素下での培養によりこれらの問題を解決するに至っている。しかし、高齢者から得られたDPCのiPS細胞への誘導効率は極めて低く、再生医療に応用するためには、今後、原因の解明と改善が必要な状況となっている。本研究では、若年者のヒト線維芽細胞からiPS細胞への誘導に特定期間の低酸素培養が有効であったとの報告に注目し、高齢者から得られたDPCで、どの程度の効果が得られるのかを検証するとと伴にiPS細胞化に最適な誘導条件について検討を行い、誘導効率の向上を目指した。昨年度では、DPCからiPS細胞への誘導効率を上昇させる酸素培養条件について検討を行い、従来よりも約47倍のコロニー数を得られる条件を見出した。これは、若年者だけではなく、高齢者にも同様の効果をもたらした。この条件によって得られたiPS細胞は、免疫染色、realtime PCR法、テラトーマ形成、EB形成を行い、従来のiPS細胞と同等の未分化性、多分化能をもつことがわかった。今年度では通常酸素条件と低酸素条件での、iPS誘導における遺伝子変化を探索し、上皮系細胞遺伝子やサイトカイン関連遺伝子の発現量に違いが生じていることが分かった。key遺伝子の同定にまでは至らなかったため、次年度ではメカニズムの更なる探索を行う。これらの研究はiPS誘導、低酸素研究に新たな提言を与えられる可能性がある。我々は、これまで若年者のヒト智歯から歯髄細胞(Dental Pulp Cell : DPC)を樹立し、DPCが高い増殖・分化能(ステムネス性:幹細胞性)を有し、人工多能性幹細胞(iPS細胞)へ高率に誘導できることを明らかにした。また、高齢者からのDPCは、若年者に比べてはるかに樹立効率が低くステムネス性の維持も困難であったが、低酸素下での培養によりこれらの問題を解決するに至っている。しかし、高齢者から得られたDPCのiPS細胞への誘導効率は極めて低く、再生医療に応用するためには、今後、原因の解明と改善が必要な状況となっている。本研究では、若年者のヒト線維芽細胞からiPS細胞への誘導に特定期間の低酸素培養が有効であったとの報告に注目し、高齢者から得られたDPCで、どの程度の効果が得られるのかを検証すると伴にiPS細胞化に最適な誘導条件について検討を行い、誘導効率の向上を目指した。一昨年度まででは、DPCからiPS細胞への誘導効率を上昇させる酸素培養条件について検討を行い、従来よりも約47倍のコロニー数を得られる条件を見出した。これは、若年者だけではなく、高齢者にも同様の効果をもたらした。この条件によって得られたiPS細胞は、免疫染色、realtime PCR法、テラトーマ形成、EB形成を行い、従来のiPS細胞と同等の未分化性、多分化能をもつことがわかった。昨年度では、通常酸素条件と低酸素条件での、iPS誘導における遺伝子変化を探索し、上皮系細胞遺伝子やサイトカイン関連遺伝子の発現量に違いが生じていることが分かった。特にCDH1(E-cadherin)の変化は大きく、これがkey遺伝子の一つではないかと考えられた。今年度は、key遺伝子の更なる探索と、低酸素で作成したiPS細胞の安全性について解析を行う。これらの研究はiPS誘導、低酸素研究に新たな提言を与えられる可能性がある。本研究では、ヒト歯髄細胞(dental pulp cell;DPC)からiPS細胞誘導を行う過程において、低酸素を限られた期間のみ使用し、その誘導効率を上げることに成功した。この方法は、若年者のDPCのみならず、樹立効率の低い高齢者のDPCにも有用であり、iPS細胞による再生医療を高齢者に用いる上で、自家移植の可能性を高めた。また、この方法は、線維芽細胞を用いた既発表の論文とは低酸素培養の条件(期間)が異なるものであり、細胞により条件の検討が必要であることを示し、iPS細胞研究にも寄与したものと考える。我々は、これまで若年者のヒト智歯から歯髄細胞(Dental Pulp Cell : DPC)を樹立し、DPCが高い増殖・分化能(ステムネス性:幹細胞性)を有し、人工多能性幹細胞(iPS細胞)へ高率に誘導できることを明らかにした。また、高齢者からのDPCは、若年者に比べてはるかに樹立効率が低くステムネス性の維持も困難であったが、低酸素下での培養によりこれらの問題を解決するに至っている。
KAKENHI-PROJECT-23792328
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23792328
高齢者のヒト歯髄細胞からiPS細胞を効率よく樹立するための基礎的検討
しかし、高齢者から得られたDPCのiPS細胞への誘導効率は極めて低く、再生医療に応用するためには、今後、原因の解明と改善が必要な状況となっている。本研究では、若年者のヒト線維芽細胞からiPS細胞への誘導に特定期間の低酸素培養が有効であったとの報告に注目し、高齢者から得られたDPCで、どの程度の効果が得られるのかを検証するとと伴にiPS細胞化に最適な誘導条件について検討を行い、誘導効率の向上を目指した。今年度では、DPCからiPS細胞への誘導効率を上昇させる酸素培養条件について検討を行い、従来よりも約47倍のコロニー数を得られる条件を見出した。これは、若年者だけではなく、高齢者にも同様の効果をもたらした。この条件によって得られたiPS細胞は、免疫染色、realtime PCR法、テラトーマ形成、EB形成を行い、従来のiPS細胞と同等の未分化性、多分化能をもつことがわかった。この結果は高齢者のような少ない細胞数からの樹立に有意義であると考えられる。また、既発表の論文とは異なる条件であるため、低酸素研究に新たな提言を与えられる可能性がある。我々は、これまで若年者のヒト智歯から歯髄細胞(Dental Pulp Cell : DPC)を樹立し、DPCが高い増殖・分化能(ステムネス性:幹細胞性)を有し、人工多能性幹細胞(iPS細胞)へ高率に誘導できることを明らかにした。また、高齢者のDPCは、若年者に比べてはるかに樹立効率が低くステムネス性の維持も困難であったが、低酸素下での培養によりこれらの問題を解決するに至っている。しかし、高齢者から得られたDPCのiPS細胞への誘導効率は極めて低く、再生医療に応用するためには、今後、原因の解明と改善が必要な状況となっている。本研究では、若年者のヒト線維芽細胞からiPS細胞への誘導に特定期間の低酸素培養が有効であったとの報告に注目し、高齢者から得られたDPCで、どの程度の効果が得られるのかを検証するとと伴にiPS細胞化に最適な誘導条件について検討を行い、誘導効率の向上を目指した。全研究期間を通じて、我々はDPCからiPS細胞への誘導効率を上昇させる酸素培養条件を検討し、従来よりも約47倍のコロニー数を得られる条件を見出した。これは、若年者だけではなく、高齢者にも同様の効果をもたらした。この条件によって得られたiPS細胞は、免疫染色、realtime PCR法、テラトーマ形成、EB形成を行い、従来のiPS細胞と同等の未分化性、多分化能をもつことがわかった。このメカニズムとして上皮系マーカーであるE-cadherinが関与していた。さらに今年度では、若年者と高齢者のDPCを遺伝子解析し、DPCの未分化性に関与すると思われる遺伝子を見出すに至った。これらの結果は高齢者のような少ない細胞数からの樹立に有意義であると考えられる。また、既発表の論文とは異なる条件であるため、低酸素研究に新たな提言を与えられる可能性がある。口腔外科学歯髄細胞からiPS細胞への誘導に有効な酸素条件を見出すことができ、かつ、それに特徴的な遺伝子変化を見出すことができた。歯髄細胞からのiPS細胞への誘導において、有効な低酸素条件と、そのkey遺伝子となる遺伝子を見出すことができた。さらに、これまでの研究内容を海外科学誌に投稿し、受理、掲載された。iPS細胞への樹立効率を向上させる条件を見出すことができ、主たる目的を達成できつつある。iPS細胞へ樹立効率を向上させたメカニズムについて更なる解析を行う。
KAKENHI-PROJECT-23792328
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繰返し押込み荷重負荷試験によるDLC薄膜の疲労強度の解明
昨年度作成したレーザー変位形を具備した球圧子を用いたインデンテーション試験装置を用い,DLC薄膜を有する単結晶シリコンの押込み荷重-押込み変位関係の測定を行なった.その際,膜厚の影響を調べるために,膜厚の異なる3種のDLC試料を用いた.すべての試料に対して,試験終了後の薄膜と基材の界面状態を調べるために,集束イオンビーム加工装置を用いた試料内部観察を行ない,本試料では薄膜と基材の界面にはく離が生じないことを確かめた.これらの試験結果および観察結果をもとに,有限要素解析を施すことにより,薄膜および界面の強度の解析を行い,き裂は半径方向応力により生じることがわかった.さらに,DLC膜厚が小さいと基材であるシリコンの異方性の影響を受けたき裂が生じ,膜厚が大きくなるとDLCが持つアモルファス構造の影響が顕著となることがわかった.それと同時に,現有のSEAMシステムでは,試験片内部の情報を得るには,精度が十分ではないため,SEAMの電子線照射による試験片からの超音波信号の増幅を行うためのチャージアンプ型増幅回路の作成を行った.SEAMからの超音波信号は非常に微弱で,周波数が高いため,超音波信号検出器であるPZTの信号をトランジスタを用いたヘッドアンプによりインピーダンス変換を行うとともに増幅し,ノイズの影響を受けにくくした.さらに,試料ホルダーと増幅アンプ一体型の信号検出器を作製し,電子線誘起超音波信号の検出精度を向上させた.また,検出した電子線誘起超音波信号を画像化するプログラムを改良することにより,画像の解像度の向上および利便性の向上を行なった.さらに,SEAMの分解能に及ぼす観察条件の検討を行い,電子線断続周波数が高いほど,観察像が鮮明になることがわかった.本年度は,薄膜構造体の強度評価を行うために,球圧子を用いたインデンテーション試験装置の作製を行った.この試験機は,積層圧電セラミックスをアクチュエーターとして採用し,AD/DAボードを介して試験荷重をパソコンから制御できるようにした.また,押込み荷重に対する押込み深さを検出するために,レーザー変位計を取り付け,押込み荷重-変位関係を調べることが出来るようにした.製作した試験機を用いて,ダイヤモンド・ライク・カーボンを蒸着した単結晶シリコンにインデンテーション試験を行い,荷重-変位関係を調べた.その際,薄膜の膜厚の影響を調べるために,膜厚の異なる3種の試料に対して試験を行った.試験終了後の試料に対して,集束イオンビーム(FIB)加工装置により,試料内部の観察を行い,薄膜と基材の界面の様相の観察を行った.その結果,試験に用いたDLC材では,薄膜と基材の界面にはく離が生じないことが確かめられた.試験で得られた荷重-変位関係および薄膜と基材の界面状態の観察をもとに,DLC薄膜構造体の押込み荷重負荷時の応力状態を調べ,薄膜の強度評価を行った.それと同時に,現有のSEAMシステムでは,試験片内部の情報を得るには,精度が十分ではないため,SEAMの電子線照射による試験片からの超音波信号の増幅を行うための増幅回路の試作を行った.SEAMからの超音波信号は非常に微弱で,周波数が高いため,超音波信号検出器であるPZTの信号をトランジスタを用いたヘッドアンプによりインピーダンス変換を行うとともに増幅し,ノイズの影響を受けにくくした.さらに,試料ホルダーと増幅アンプ一体型の信号検出器を作製し,電子線誘起超音波信号の検出精度を向上させた.昨年度作成したレーザー変位形を具備した球圧子を用いたインデンテーション試験装置を用い,DLC薄膜を有する単結晶シリコンの押込み荷重-押込み変位関係の測定を行なった.その際,膜厚の影響を調べるために,膜厚の異なる3種のDLC試料を用いた.すべての試料に対して,試験終了後の薄膜と基材の界面状態を調べるために,集束イオンビーム加工装置を用いた試料内部観察を行ない,本試料では薄膜と基材の界面にはく離が生じないことを確かめた.これらの試験結果および観察結果をもとに,有限要素解析を施すことにより,薄膜および界面の強度の解析を行い,き裂は半径方向応力により生じることがわかった.さらに,DLC膜厚が小さいと基材であるシリコンの異方性の影響を受けたき裂が生じ,膜厚が大きくなるとDLCが持つアモルファス構造の影響が顕著となることがわかった.それと同時に,現有のSEAMシステムでは,試験片内部の情報を得るには,精度が十分ではないため,SEAMの電子線照射による試験片からの超音波信号の増幅を行うためのチャージアンプ型増幅回路の作成を行った.SEAMからの超音波信号は非常に微弱で,周波数が高いため,超音波信号検出器であるPZTの信号をトランジスタを用いたヘッドアンプによりインピーダンス変換を行うとともに増幅し,ノイズの影響を受けにくくした.さらに,試料ホルダーと増幅アンプ一体型の信号検出器を作製し,電子線誘起超音波信号の検出精度を向上させた.また,検出した電子線誘起超音波信号を画像化するプログラムを改良することにより,画像の解像度の向上および利便性の向上を行なった.さらに,SEAMの分解能に及ぼす観察条件の検討を行い,電子線断続周波数が高いほど,観察像が鮮明になることがわかった.
KAKENHI-PROJECT-15760061
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波動場の幾何と解析
非線型波動場の数学的構造の解明を目指し、古典場と量子場に関する様々なモデルについて数学的な研究を行い、自己相似場の数学的理論、ディラック行列の表現の変換と保存量との代数的特徴付け、正準交換変換の弱ワイル表現の構成理論、散乱の順問題と逆問題について新しい理論を構築した。非線型波動場の数学的構造の解明を目指し、古典場と量子場に関する様々なモデルについて数学的な研究を行い、自己相似場の数学的理論、ディラック行列の表現の変換と保存量との代数的特徴付け、正準交換変換の弱ワイル表現の構成理論、散乱の順問題と逆問題について新しい理論を構築した。本年度は非線型波動方程式、非線型シュレディンガー方程式、非線型ディラック方程式を主に研究した。非線型波動方程式については、単独冪自己相互作用の下での自己相似解の存在を研究した。Pecher,肥田野のアプローチでは空間次元を高次元化するのは困難な為、重み付きストリッカーズ評価を導入する事で解決を探求した。その結果球対称性の枠組の下で高次元化に成功した。ローレンツ不変な斉次重み付きストリッカーズ型評価は新しいものである。球対称性を外す試みは現在進行中である。非線型シュレディンガー方程式については、積分型相互作用の下での長時間的挙動を研究した。修正散乱作用素の存在については研究代表者が10年前に証明しているが、初期値問題の解については未解決であった。林・ナウムキンの理論を再構成し、論法を縮小写像の方法に集約する方法を提案する事で、解の長時間的挙動を完全に記述する事が出来た。非線型ディラック方程式については、非線型項の効果を消滅させるデータの構造の研究と空間3次元における有限エネルギー解の大域的存在を研究した。前者についてはデータの構造を、ディラック行列の表現論と新しい不変量との関係を見出す事により、明らかにする事が出来た。後者については球面上のソボレフ空間を導入し、末端型ストリッカーズ評価を得る事で、大域解の存在を証明した。本年度は非線型ディラック方程式系、非線型シュレディンガー方程式、非線型波動方程式、非線型クライン・ゴルドン方程式の研究に加えて、ブシネスク系をはじめとする分散型方程式の研究、アロー・ワイスラー方程式の自己相似解や非線型楕円型方程式の解の挙動に関する研究も行なった。非線型ディラック方程式系については、臨界的函数空間における小さなデータによる大域解の一意的存在を証明した。これは従来の劣臨界版を臨界迄改良したものであり、新たに証明した末端型ストリッカーツ評価による所が大きい。反撥型非線型シュレディンガー方程式については、データの大きさに無関係に、散乱解の第二次近似項の記述に成功した。これでストラウス臨界冪とストラウス劣臨界の数学的機構の区別が明確になった。ブシネスク系では改良ブシネスク方程式と一般ブシネスク方程式の小振幅解の大域的存在を研究し、基礎となる函数空間と相互作用の冪の範囲を大幅に拡大し、従来の結果の改良を行う事が出来た。アロー・ワイスラー方程式の自己相似解の輪郭は、ある非線型楕円型方程式の解となるが、その方程式の研究は常微分方程式的方法と変分的方法に分かれているのが現状であった。本研究では、解の指数函数的減衰に焦点を当て、両者の方法論を結びつけて理解する方法論を打ち出す事に成功した。特に臨界冪p=1+4/nの果たす役割(nは空間次元)について、新しい見方を提示する事が出来た。この方法論は非線型シュレディンガー方程式の定在波を記述する非線型楕円型方程式の解の指数函数的減衰を証明するにも役立った。本年度は非線型波動方程式、非線型シュレディンガー方程式、ブシネスク系の研究に加えて、ボゾン星の動力学を記述する半相対論的ハートリー方程式の研究を行った。非線型方程式については、自己相似解の存在と一意性について研究した。一般の空間の次元では、解の球対称性を課すか、相互作用が優共形的であると云う仮定が今迄では必要であったが、時空斉次的な重みを付けた弱ストリッカーズ評価を新たに導入する事により、5次元以下の空間次元において劣共形的優ストラウス的相互作用を持つ非線型波動方程式は必ずしも球対称的でない自己相似解を持つ事を証明した。非線型シュレディンガー方程式については、全電荷と全エネルギーの保存則を、方程式やデータに対する近似操作を経ずに直接証明する方法論を積分方程式の枠組で打ち立てた。ブシネスク系では改良修正ブシネスク方程式とシュレディンガー方程式との相互作用系を研究した。このモデルに対しては空間が2次元の場合、大きな大域解の存在を証明し、3次元の場合には爆発判定条件を見出した。このモデルはザハロフ系の代用モデルなので、ザハロフ系に関する未解決問題を研究する糸口となると期待される。半相対論的ハートリー方程式に対しては,先行するレンズマンの研究成果を空間次元と相互作用ポテンシャルのクラスについて、大幅に一般化する事に成功した。また、質量消滅極限と質量発散極限において、解がどの様に振舞うのか数学的に記述する事が出来た。本年度は非線型波動方程式、非線型シュレディンガー方程式、半相対論的ハートリー方程式、非線型クライン・ゴルドン方程式の研究を行った。非線型波動方程式、半相対論的ハートリー方程式については、その球対称解の滑らかさと散乱理論を研究した。特に球対称性の下でのストリッカーズ評価に関連する不等式が実際は等式となっている事を発見した。
KAKENHI-PROJECT-16104002
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波動場の幾何と解析
これにより肥田野による不等式の荷重指数が最良である事と、最良定数と荷重指数との関連が明らかになった。更に関連する話題として、球対称函数についてのソボレフの不等式を研究した。ストラウスの不等式の分数冪版を証明し、その最良性を示し、関連する函数空間の埋蔵のコンパクト性を考察した。非線型シュレディンガー方程式については、微分型相互作用をもつ方程式の解の時間大域的存在を研究した。この問題に関して、末端型ストリッカーズ評価を初めて応用する事に成功し、非線型相互作用がポテンシャルで導かれるクラスに対して小振幅解の大域的存在を証明した。これにより、シュレディンガー写像の大域的構成については函数空間の荷重条件が不要である事が明らかとなりKenig等による結果を大幅に拡張する事が出来た。末端型ストリッカーズ評価は2次元では成立しない為、現在2次元の場合について検討している所である。本年度は非線型波動方程式、非線型シュレディンガー方程式、半相対論的ハートリー方程式、非線型クライン・ゴルドン方程式の昨年度迄の研究に引き続き、特別な対称性の下でのソボレフ埋蔵不等式と流体の速度場の滑らかさの研究を行った。非線型クライン・ゴルドン方程式については末端型ストリッカーズ評価の空間2次元の場合を研究した。通常の意味ではこの評価は成立しない為、角度方向の可積分性または滑らかさを考慮した函数空間を新たに導入し末端型ストリッカーズ評価を証明した。これにより二次の相互作用を持つ非線型クライン・ゴルドン方程式の小振幅解の大域的存在を初期データの荷重条件無しで示す事に成功した。また上記末端型ストリッカーズ評価の非相対論的極限として、シュレディンガー方程式に対しても同じ型の末端型ストリッカーズ評価を得た。また、定常波動による未知介在物、空洞、亀裂などの媒質の不連続性や材料係数の同定に関する境界値逆問題と散乱の逆問題の逆解析手法の研究を行った。境界値逆問題については、境界における多重回数の計測データ(即ち多重個のコーシーデータ)より媒質の未知不連続性の同定手続きとして知られるprobe methodとenclosur emethodの改良と完成を目指した。また、その他の同定手続きとして知られるsingular source method, no response testとの関係について研究した。さらにprobe methodの数値実験を行い、その有効性を確認した。また、正準交換関係の既約な弱Weyl表現の(ユニタリ同値を除いての)一意性定理を証明した。離散的固有値をもつハミルトニアンが時間作用素をもつための必要十分条件を確立した。離散スペクトルをもつハミルトニアンの時間作用素について詳しい解析を行った。
KAKENHI-PROJECT-16104002
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プラズマ照射細胞シートとステントの動脈硬化性疾患治療への応用
カーボンナノチューブ(CNT)をコラーゲンスポンジに定着させ、ラット心筋細胞を増殖させると立体状細胞シートを作製することが可能であった。しかしながら、心筋梗塞ラットにおいて、この細胞シートを定着することには成功しなかった。その原因としては、モデルラットを再度開胸して細胞シートを定着する場合に2度目の開胸ではラットの負担が大きいことが示唆された。ステントにCNTとコラーゲンスポンジにラット血管内皮細胞を増殖させた細胞シートを巻き付け増殖させた。この新型ステントを山羊左頸動脈から挿入して1か月後のステントの状態を観察すると血栓などの付着がなく生体適合性が認められた。脳、心筋梗塞などの動脈硬化性疾患治療では、狭窄血管部位を広げるステント留置法があるが、ステント再狭窄の問題などが重要な課題ある。プラズマイオン照射により表面改質処理をしたカーボンナノチューブ(Carbon NanotubeCNT)には通電性があり細胞間連結作用があると考えられる。そこで、脳、心筋梗塞部位再生にCNTを足場にした細胞シートを開発して組織再生とステント表面に表面改質処理CNTを足場にした血管内皮細胞を増殖させたステントを開発を行うことを考えた。本年度は、名城カーボン社製のFH精製タイプ,FHタイプ,APJタイプの三種類のCNTを使用した。分散液は全てH2Oベースとなっている。FHとはFe触媒を使用し,不活性ガスにH2を用いていることから双方の頭文字を取ったものである。APJタイプはArk Plasma Jet法の頭文字が由来である。まず初めに,この三種類のうちどのCNTが最も細胞培養に適しているのか調査を行った。方法は、FH精製タイプ,FHタイプ,APJタイプのCNTをそれぞれ200μlずつカルチャーカバーガラス上に滴下し,ヒータを用いて水分を蒸発させた。その後,スピンコータを用いてエタノール100ulを滴下して風乾させた。この工程は最初の実験操作でCNTが剥離してしまったのでCNTの剥離を抑える目的で追加した。エタノール塗布後,カルチャーカバーガラスを35ml dishの中に入れ,NIH3T3を10000[cells/ml]の濃度で2mlずつ播き込み,定着する様子を観察した。この実験は6回繰り返された。結果は、FH精製タイプのみが確実な細胞の定着が観察された。この結果からFH精製タイプが最も細胞シートあるいはステント表面へ細胞を増殖させるために適していることが明らかとなった。ステント留置法が心筋梗塞などの動脈硬化性疾患治療に施行されているが、梗塞部の組織再生やステント再狭窄の問題などが重要な課題となっている。そのため、26年度にカーボンナノチューブ(Carbon Nanotube、CNT通電性があり細胞間連結作用あり)を使用しステント表面にCNTを足場にした細胞を増殖を検討し増殖効果があることを確認した。今年度は、プラズマを照射することによって親水基を付加し、生体適合性を図るためにプラズマアクテイベーション処理を施したCNTを使用した。カルチャーカバーガラスを35ml dish上の中に入れNIH3T3を10000(cells/ml)の濃度で2mlずつ播きこみ定着する様子を観察した。この実験を6回繰り返したが有意な増殖効果が得られなかった。その原因は、プラズマアクテイベーション処理後のエタノールの使用が原因と考えられた。上記実験を踏まえ、プラズマアクテイベーション処理CNTに優れた細胞接着性をもつコラーゲンスポンジを使用した実験を行ったところ有意な細胞増殖結果が得られた(実験回数1回)。この結果からステント表面に有意な細胞の増殖を行うためには、プラズマアクテイベーション処理CNTとコラーゲンスポンジ使用が有用である結果が明らかとなった。さらに、心筋虚血部位へのプラズマ照射細胞シートの作成を考える上では、プラズマアクテイベーション処理CNTとコラーゲンスポンジ使用が層状のシート状細胞増殖の可能性が得られたので今後も実験回数を増やし、技術的に可能となった心筋梗塞モデルラットを使用し検討する。プラズマを照射することによって親水基を付加し、生体適合性を図るためにプラズマアクテイベーション処理を施したCNTのみの使用による細胞増殖効果は層状増殖(2層以上の厚み)も期待して実験を行ってきたが良好な結果は得られなかった。しかしながら、プラズマアクテイベーション処理CNTに優れた細胞接着性をもつコラーゲンスポンジを使用した実験を行ったところ有意な細胞増殖結果が得られた。今後は、実験回数を増加し検討することが容易であるため。また、コラーゲンスポンジを使用したプラズマ照射細胞シートの心筋梗塞モデルラットへの治療では、心筋梗塞モデルラット作成が困難であったが、ラット解剖学と手術技術の向上によりモデル作成が可能となった。今後は、これまで検討してきたプラズマアクテイベーション処理CNTにコラーゲンスポンジを使用した細胞シートで治療検討が可能であるから。心筋梗塞部位への細胞シート移植、梗塞の原因となる狭窄血管部位を広げるステント留置法が行われてきたが、細胞シートの生着(移植)不良やステント再狭窄問題があるため次世代型の細胞シートあるいは、ステント開発をおこなった。プラズマイオン照射により表面改質処理をしたカーボンナノチューブ(Carbon Nanotube、CNT)には通電性による細胞間連結作用がある。また、円形の多孔質構造を持つコラーゲンスポンジは細胞培養において3次元(立体的)に細胞増殖する培養担体であり親水性が良い。そのため、CNTをコラーゲンスポンジに定着させ、このスポンジにラット心筋細胞を増殖させ立体に状作製することが可能であった。しかしながら、実際の心筋梗塞モデルラットにおいて、この細胞シートを定着することには成功しなかった。
KAKENHI-PROJECT-26610193
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プラズマ照射細胞シートとステントの動脈硬化性疾患治療への応用
その原因としては、モデルラットを再度開胸して細胞シートを定着する場合に2度目の開胸ではラットの負担が大きすぎることが示唆された。また、プラズマイオン照射により表面改質処理をしたステントを、CNTとコラーゲンスポンジさらに血管内皮細胞を増殖させ立体状にした細胞シートに巻き付けた。このようにして作製した新型ステントを山羊左頸動脈から挿入して1か月後のステントの状態を顕微鏡観察した。結果は、血栓などの付着がなかった。そこで、山羊左頸動脈を緩く結紮して狭窄部位を作成しステント挿入しても血栓付着は認められなかった。プラズマイオン照射により表面改質処理をしたCNTをコラーゲンスポンジに付着すると立体状の細胞シートを作製することが可能であったが、ラット心筋細胞を増殖させたシートでの治療効果を心筋梗塞モデルラットで検討すると、手術負荷が大きすぎ治療効果判定が不可能であった。新型ステント効果では、生体適合性は問題なく狭窄部位での有効な効果が期待できると考えられた。カーボンナノチューブ(CNT)をコラーゲンスポンジに定着させ、ラット心筋細胞を増殖させると立体状細胞シートを作製することが可能であった。しかしながら、心筋梗塞ラットにおいて、この細胞シートを定着することには成功しなかった。その原因としては、モデルラットを再度開胸して細胞シートを定着する場合に2度目の開胸ではラットの負担が大きいことが示唆された。ステントにCNTとコラーゲンスポンジにラット血管内皮細胞を増殖させた細胞シートを巻き付け増殖させた。この新型ステントを山羊左頸動脈から挿入して1か月後のステントの状態を観察すると血栓などの付着がなく生体適合性が認められた。CNTとは黒鉛(グラフェン)やダイヤモンド,フラーレンと同様に炭素の同素体の一種である。円筒構造をとっており、側面はグラフェンを丸めたような形であり,先端はフラーレンの半球で塞がれている。CNTには細胞間連結作用があり、FH精製タイプ、FHタイプ,APJタイプの中で、FH精製タイプが最も適していることが確認された。さらに、まだ2回の実験のみであるが、FH精製タイプCNT上に細胞との親和性を持たせるために、プラズマイオン照射による表面改質処理つまりプラズマアクティベーションを用いた官能基形成を試みて細胞増殖実験を試みた。このプラズマアクティベーション処理は、酸素プラズマ中による酸素イオン照射を行い、CNT表面に生体適合に適している官能基(水酸基:OH、カルボキシル基:COOH)を形成させることであるが、FH精製タイプの時よりもさらなる細胞増殖効果を観察しているので、今後この方法で細胞シート及びステント上で実験を行う基礎的方法を確立したため。コラーゲンスポンジは、細胞の足場として生分解性高分子性足場となる。このコラーゲンスポンジは、培養面積の増加や立体的な構造の構築が期待される。また、CNTは炭素の同素体の一種で機械的特性や化学的安定性に優れ,良好な細胞増殖や強固な細胞接着が期待される。
KAKENHI-PROJECT-26610193
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26610193
新書の語彙分析にもとづく特徴の抽出
さまざまなテキストを読んでみると、たとえば、講談社現代新書とブルーバックスではそれぞれに共通な何らかの特徴があり、グループを分けている何らかの特徴があるらしいと直観する。そこで、手はじめに新書を特徴づけている情報は何かを統計的手法を用いて抽出することを試みた。具体的には、次の作業を行った。・講談社現代新書の中の単語の切り出し(材料となるデータは、既に開発されたテキストデータベースに納められているので、本研究では、テキストの磁気データ化の必要はない。)・単語に対する品詞付け・統計分析(汎用コンピユ-タ上のパッケージANALYSTを使用する。○文について文長、1文中の単語数○単語について単語長、頻度表(総単語、品詞別)、品詞の使用割合・分析結果のまとめ分析結果は、グラフ、図表にまとめ、視覚的に特徴をとらえることができるようにした。この結果については、本重点領域研究の報告書に提出した。さまざまなテキストを読んでみると、たとえば、講談社現代新書とブルーバックスではそれぞれに共通な何らかの特徴があり、グループを分けている何らかの特徴があるらしいと直観する。そこで、手はじめに新書を特徴づけている情報は何かを統計的手法を用いて抽出することを試みた。具体的には、次の作業を行った。・講談社現代新書の中の単語の切り出し(材料となるデータは、既に開発されたテキストデータベースに納められているので、本研究では、テキストの磁気データ化の必要はない。)・単語に対する品詞付け・統計分析(汎用コンピユ-タ上のパッケージANALYSTを使用する。○文について文長、1文中の単語数○単語について単語長、頻度表(総単語、品詞別)、品詞の使用割合・分析結果のまとめ分析結果は、グラフ、図表にまとめ、視覚的に特徴をとらえることができるようにした。この結果については、本重点領域研究の報告書に提出した。
KAKENHI-PROJECT-07207243
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07207243
半導体及び金属表面の有機単分子層による不動態化
平成19年度の研究開始より、東北大学、熊本大学及び米国スタンフォード大学の共同研究者と協力して、実験を開始した。平成19年度は、資金配賦から装置の発注、納品を含めて、結局年度末までの時間を要した。平成20年度は、ことに軌道放射光を使った実験が成功し、修飾ケイ素表面の「疎水性」の原動力に関る基礎的な発見ができた。また、アルミニウム表面の不動態化の実験は21年度までかけて、かなりの進展をみた。その特許申請も完了した。赤外吸収分光を用いたケイ素表面の評価法の研究は、試料作成がやや困難であったが、測定したい分子超薄膜(厚さ1nm以下)の信号が、従来にない強い感度で測定できることが確認でき、リン脂質分子など、生体関係の水溶液中吸着分子の検出等新しい応用の道が開けたのは望外の成果である。平成19年度の研究開始より、東北大学、熊本大学及び米国スタンフォード大学の共同研究者と協力して、実験を開始した。平成19年度は、資金配賦から装置の発注、納品を含めて、結局年度末までの時間を要した。平成20年度は、ことに軌道放射光を使った実験が成功し、修飾ケイ素表面の「疎水性」の原動力に関る基礎的な発見ができた。また、アルミニウム表面の不動態化の実験は21年度までかけて、かなりの進展をみた。その特許申請も完了した。赤外吸収分光を用いたケイ素表面の評価法の研究は、試料作成がやや困難であったが、測定したい分子超薄膜(厚さ1nm以下)の信号が、従来にない強い感度で測定できることが確認でき、リン脂質分子など、生体関係の水溶液中吸着分子の検出等新しい応用の道が開けたのは望外の成果である。有機合成的技法により、固体表面を不動態化させる有機単分子層の作製技術を展開させ、半導体表面及び金属表面上の有機単分子層の作成法と観測法を開発することを目指して、具体的には、ケイ素単結晶表面上の2個またはそれ以上の表面ケイ素原子に直接共有結合した炭化水素系の吸着種の為す単層"組織層"を作製や、アルミニウム等の金属表面上に有機単分子層を作製を行い、これら単分子層の不動態化特性を評価し、その微視的構造と物性を明らかにするため、既存の実験装置の適合化や、本研究で新規に開発利用する赤外吸収分光装置の準備を進めている。赤外吸収分光装置を新規に購入し、試料周りの装置部分品等を取り揃えて、測定可能な状況となった。特にこれら全ての実験の基本となる、清浄な水素終端ケイ素単結晶表面の作成法に於いては、清浄化のプロセスを詳細に走査トンネル顕微鏡と高分解能電子エネルギー損失分光法によって追跡し、究極的な酸素フリーの表面がどのようなもの確認する事ができた。また、そのような水素終端表面を反応性ガス中で紫外線照射することにより新たな吸着種を作成する方法を探索した。その結果、特に臭化メチルにおいては、ケイ素基板のドーパント極性がn型かp型かにより、それぞれメチル基か臭素原子が排他的に吸着することが見出された。基板の電子状態が化学反応選択性に明白な差異を及ぼす稀有な例として注目に値する。さらに作成されたメチル吸着種を軌道放射光を用いた光電子分光やX線吸収分光で観測し、メチル基の電子軌道の対称性と励起状態寿命が評価され、メチル吸着種は表面化学的に各種の特徴がある注目すべき吸着種であることが示された。有機合成的技法により、固体表面を不動態化させる有機単分子層の作製技術を展開させ、半導体表面及び金属表面上の有機単分子層の作成法と観測法を開発することを目指して、具体的には、ケイ素単結晶表面上の2個またはそれ以上の表面ケイ素原子に直接共有結合した炭化水素系の吸着種の為す単層"組織層"を作製や、アルミニウム等の金属表面上に有機単分子層を作製を行い、これら単分子層の不動態化特性を評価し、その微視的構造と物性を明らかにするため、既存の実験装置の適合化や、本研究で新規に開発利用する赤外吸収分光装置の準備を進めた。赤外吸収分光装置を新規に購入し、試料周りの装置部分品等を取り揃えて、測定可能な状況となった。本年度は、アルミニウム表面の単分子層による不動態化をめざして、まず清浄表面の作成と清浄表面の酸化プロセス、及び酸化をブロックする表面層の作製を、主としてX線光電子分光法でモニターしながら行っている。イオン化した炭化水素によるボンバードメントで炭素の超薄膜を作製することがでぎた。ケイ素表面の有機単分子層については、各種の軌道放射X線分光によりメチル終端面及びアリルアミン終端面につき、電子状態を介した疎水性の評価が行われ、不動態化の起源を探ることができた。表面の酸化を防止するひとつのアプローチとして、超清浄水素終端ケイ素表面の作製とその初期酸化課程を調べた。不動態化ケイ素ウエハを赤外吸収分光の基板に応用して、生体物質として重要なリン脂質分子の膜内電解反応を振動スペクトルで調べた。これらの成果は実用に結びつく可能性があり、外部発表を一部見合わせて、特許出願を目指している。有機合成的手法により、固体表面を不動態化(化学的に不活性で、実用的に安定に扱える状態にすること)させる有機単分子層の作製技術を進展させ、半導体表面及び金属表面上の有機単分子層の作成法と観測法を開発することを目標として研究を展開した。
KAKENHI-PROJECT-19360024
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19360024
半導体及び金属表面の有機単分子層による不動態化
昨年度までは、試料作製装置や観測装置の組立て・新規立上げ、要素技術の開発等を行い、一応の完成をみた。そして今年度までに以下の成果をあげることができた。(1)ケイ素表面の単分子組織層の作製:ケイ素ウエハ表面上では、既に数々の種類の有機単分子層が作製できたが、最高安定性の不動態化表面を目指して、吸着種同士のクロスリンキング、即ち組織化された吸着層を作製し、振動スペクトルで構造を確認した。(2)ケイ素表面の有機単分子層疎水性相互作用のメカニズムの研究:軌道放射X線光源を用いたX線吸収分光法により、ケイ素終端メチル基が水分子より異常強度の電子的作用を受け、これが疎水性相互作用のひとつの特質であることを確認した。(3)金属アルミニウム表面の有機単分子層による不動態化の研究:今まで殆ど研究されてこなかったアルミニウム表面上の新しい吸着種を各種探索し、ついにチオール系吸着種をクロスリンキングさせることで酸化防止能のある単分子膜の作製に成功した。(4)不動態化ケイ素ウエハを基板として応用して、生体物質として重要なリン脂質分子の膜内電解反応を赤外吸収振動スペクトルで調べた。その結果、不動態化ケイ素ウエハ基板上に展開されたリン脂質膜は生体中と同様に流動性を維持するだけでなく、細胞膜電位程度の電圧印加によって相転移ともいうべき構造変化を行うことが発見された。
KAKENHI-PROJECT-19360024
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19360024
サイトカイン阻害性協調作用による自己抗体産生制御機構の解明
代表的な炎症性自己免疫疾患である膠原病に共通しているのは、自己免疫寛容の破綻であり、自己反応性B細胞による自己成分に対する抗体産生を特徴とする。免疫抑制機構の中心的サイトカインはTGF-βとIL-10の2つであるが、共に免疫に対して促進性にも抑制性にも働くという側面があり、臨床応用への大きなハードルとなっている。本課題において申請者は、TGF-βとIL-10のcombinationによる自己抗体制御機構を解明することを目的とした。平成28年度は、Toll-like receptor(TLR)刺激においてTGF-β、IL-10単独では抗体産生は促進されるが、両サイトカインの共存により抗体産生は完全に抑制されることを示し、解糖系や酸化的リン酸化、アミノ酸代謝など代謝パスウェイに影響のある遺伝子群の抑制および、mTORシグナル伝達系が、TGF-βとIL-10を共添加したLPS刺激B細胞で特異的に抑制されていることを明らかにした。H29年度は、in vitroでもNP-KLH/CFA免疫下におけるTGF-βとIL-10の協調的な液性免疫制御能を検証した。さらにTLR7 agonistであるイミキモドの皮膚への塗布によるSLEモデルマウスにおいても、TGF-βとIL-10は協調して自己抗体産生を著しく抑制した。最終年度である平成30年度は、T細胞特異的TGF-β3コンディショナルノックアウトマウスを用いた検討にて、生体内における液性免疫応答においてもT細胞の産生するTGF-β3が液性免疫制御機構において中心的役割を果たすことをフローサイトメトリーおよび遺伝子発現解析により確認した。さらに、ヒトB細胞においてもTGF-β/IL-10のサイトカインシナジー効果を認めた。以上の検討により、ヒト自己免疫疾患に対するサイトカインコンビネーションセラピーの展開の有用性が示唆された。代表的な炎症性自己免疫疾患である膠原病に共通しているのは、自己免疫寛容の破綻であり、自己反応性B細胞による自己成分に対する抗体産生を特徴とする。免疫抑制機構の中心的サイトカインはTGF-βとIL-10の2つであるが、共に免疫に対して促進性にも抑制性にも働くという側面があり、臨床応用への大きなハードルとなっている。本課題において申請者は、TGF-βとIL-10のcombinationによる自己抗体制御機構を解明することを目的としている。平成28年度は下記の検討を行った。B細胞に対する各種Toll-like receptor(TLR)シグナルの増強は、多彩な自己抗体産生を特徴とする全身性エリテマトーデス(SLE)の発症に関連することが多く報告されている。申請者らは、LPSによるTLR4の各刺激においてTGF-β、IL-10単独では抗体産生は促進されるが、両サイトカインの共存により抗体産生は完全に抑制されることを同定した。LPS刺激下のB細胞にTGF-β、IL-10を単独または共添加し、RNA-sequencingにより各サイトカインが遺伝子発現に与える影響を網羅的に評価したところ、解糖系や酸化的リン酸化、アミノ酸代謝など代謝パスウェイに影響のある遺伝子群の抑制および、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)シグナル伝達系が、TGF-βとIL-10を共添加したLPS刺激B細胞で特異的に抑制されていることが示唆された。ウエスタンブロット法にて確認したところ、ICS条件において4E-BP1を含むmTORC1シグナル伝達系が特異的に抑制されているという結果を得た。このような抑制効果は、mTORC1賦活剤の添加により解除された。これらの結果より、TLR刺激下におけるB細胞活性化をTGF-β3とIL-10が協調的にmTORC1シグナル伝達系制御を介して抑制することが判明した。本年度は、TGF-βおよびIL-10の共存下におけるB細胞への影響および、シグナル伝達経路の同定を目標とした。上述の如く、自然免疫系刺激条件においては、TGF-βまたはIL-10は単独では抗体産生を促進するが、両サイトカインの共存下では強力な抑制効果を認めること、また同経路はmTORC1シグナル伝達系を介することを同定し、当初の目標を達成した。代表的な炎症性自己免疫疾患である膠原病に共通しているのは、自己免疫寛容の破綻であり、自己反応性B細胞による自己成分に対する抗体産生を特徴とする。免疫抑制機構の中心的サイトカインはTGF-βとIL-10の2つであるが、共に免疫に対して促進性にも抑制性にも働くという側面があり、臨床応用への大きなハードルとなっている。本課題において申請者は、TGF-βとIL-10のcombinationによる自己抗体制御機構を解明することを目的としている。平成28年度は、Toll-like receptor(TLR)刺激においてTGF-β、IL-10単独では抗体産生は促進されるが、両サイトカインの共存により抗体産生は完全に抑制されることを示し、解糖系や酸化的リン酸化、アミノ酸代謝など代謝パスウェイに影響のある遺伝子群の抑制および、哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)シグナル伝達系が、TGF-βとIL-10を共添加したLPS刺激B細胞で特異的に抑制されていることを明らかにした。H29年度は、pCAGGS-TGFb1, pCAGGS-TGFb3, pCAGGS-IL10プラスミドベクターを作成し、in vivo実験系における機能解析を中心に行った。その結果、NP-KLH/CFA免疫下においては、in vitroの検討結果と同じく、TGF-βとIL-10の協調的な液性免疫制御能が示された。
KAKENHI-PROJECT-16K09918
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K09918
サイトカイン阻害性協調作用による自己抗体産生制御機構の解明
一方、TGF-βおよびIL-10ブロッキング抗体の投与は抗体産生を増強した。さらにTLR7 agonistであるイミキモドの皮膚への塗布によるSLEモデルマウスにおいても、TGF-βとIL-10は協調して自己抗体産生を著しく抑制した。これらの検討により、ヒト自己免疫疾患に対するサイトカインコンビネーションセラピーの展開の有用性が示唆された。本年度は、TGF-βおよびIL-10の共存による液性免疫免疫制御につき生体内での検証を主眼に置いた。上述の如く、生体内においても自然免疫系刺激条件においては、TGF-βおよびIL-10が共存することが必要であることが示され、SLEモデルマウスにおける自己抗体産生制御機構にも両サイトカインによるシナジー効果が重要であることが明らかとなった。さらに、申請者はTGF-beta3 floxedマウスを独自に作出し、CD4 Creマウスとの交配により、T細胞特異的TGF-β3コンディショナルノックアウトマウスの作成まで完了した。これらの検討により、生体内におけるTGF-βおよびIL-10の機能および治療効果を明らかとし、新たなマウス実験系の構築も行ったことで、当初の目標を達成した。代表的な炎症性自己免疫疾患である膠原病に共通しているのは、自己免疫寛容の破綻であり、自己反応性B細胞による自己成分に対する抗体産生を特徴とする。免疫抑制機構の中心的サイトカインはTGF-βとIL-10の2つであるが、共に免疫に対して促進性にも抑制性にも働くという側面があり、臨床応用への大きなハードルとなっている。本課題において申請者は、TGF-βとIL-10のcombinationによる自己抗体制御機構を解明することを目的とした。平成28年度は、Toll-like receptor(TLR)刺激においてTGF-β、IL-10単独では抗体産生は促進されるが、両サイトカインの共存により抗体産生は完全に抑制されることを示し、解糖系や酸化的リン酸化、アミノ酸代謝など代謝パスウェイに影響のある遺伝子群の抑制および、mTORシグナル伝達系が、TGF-βとIL-10を共添加したLPS刺激B細胞で特異的に抑制されていることを明らかにした。H29年度は、in vitroでもNP-KLH/CFA免疫下におけるTGF-βとIL-10の協調的な液性免疫制御能を検証した。さらにTLR7 agonistであるイミキモドの皮膚への塗布によるSLEモデルマウスにおいても、TGF-βとIL-10は協調して自己抗体産生を著しく抑制した。最終年度である平成30年度は、T細胞特異的TGF-β3コンディショナルノックアウトマウスを用いた検討にて、生体内における液性免疫応答においてもT細胞の産生するTGF-β3が液性免疫制御機構において中心的役割を果たすことをフローサイトメトリーおよび遺伝子発現解析により確認した。さらに、ヒトB細胞においてもTGF-β/IL-10のサイトカインシナジー効果を認めた。以上の検討により、ヒト自己免疫疾患に対するサイトカインコンビネーションセラピーの展開の有用性が示唆された。今後は、生体内における機能解析を行う。具体的には、pCAGGS-TGFb1, pCAGGS-TGFb3, pCAGGS-IL10
KAKENHI-PROJECT-16K09918
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K09918
HIV-1感染細胞が誘導する神経細胞死のプロテオーム解析
HIV-1の複製を強力に抑制する多剤併用療法(HAART)の導入により、HIV-1感染症/AIDSに対する治療効果が著しく向上し、それに伴いHIV脳症発症率の低下も認められるようになった。しかしながら、生涯続けなければならないと考えられている現行のHAARTによって、今後、長期的にみて、このHIV脳症発症率低下が持続されるかは全く不明である。一方、世界に目を向ければ、十分なHAARTを享受できない発展途上国を中心に、HIV感染者が爆発的に増加している現状がある。このような状況から、現在、新たなHIV-1複製阻害薬の開発と共に、HIV脳症の発症機序を明確にし、その予防薬・治療薬の開発を行うことは必要不可欠であると考えられる。昨年度は、HIV-1が関与するヒト由来神経細胞に与える神経障害のin vitroモデルの構築を行い、その特徴づけを行った。本年度はHIV-1を含む培養上清(ウイルス液)を添加することで誘導されるこの神経細胞死と関連するタンパク質を探索するために、神経細胞のプロテオーム解析を行った。その結果、ウイルス液添加によりmanganese superoxide dismutase(Mn-SOD)の発現が著しく亢進することが明らかとなった。このMn-SODの発現は、ウイルス液による神経細胞死と密接な関係があることが示唆された。Mn-SODの誘導には、酸化ストレスが関与することが既に報告されている。また、HIV脳症発症の原因因子にスーパーオキシドアニオンをはじめとした活性酸素の関与が考えられており、実際、HIV脳症患者由来の脳組織中に、活性酸素が存在した証拠を示す多くの報告がある。従って、本in vitroにおけるウイルス液による神経細胞死においても活性酸素による酸化ストレスの関与が考えられる。抗酸化剤として知られるN-acetylcysteineの処理により細胞死の顕著な抑制効果、及びMn-SOD発現誘導の抑制効果が示されなかった。このことは、本in vitro系が単純に抗酸化剤では抑制されない特異な系である可能性があり興味深い。HIV-1の複製を強力に抑制する多剤併用療法(HAART)の導入により、HIV-1感染症/AIDSに対する治療効果が著しく向上し、それに伴いHIV脳症発症率の低下も認められるようになった。しかしながら、生涯続けなければならないと考えられている現行のHAARTによって、今後、長期的にみて、このHIV脳症発症率低下が持続されるかは全く不明である。一方、世界に目を向ければ、十分なHAARTを享受できない発展途上国を中心に、HIV感染者が爆発的に増加している現状である。このような状況から、現在、新たなHIV-1複製阻害薬の開発と共に、HIV脳症の発症機序を明確にし、その予防薬・治療薬の開発は必要不可欠であると考えられる。本年度は、HIV-1が関与する神経障害のin vitroモデルの構築を行い、その特徴づけを行った。その結果、以下に示す結果が得られた。1).HIV-1感染細胞培養上精(supn.)を加えて,3-4日後に細胞死を誘導する遅延性の細胞死誘導活性を示す。2).HIV-1感染細胞supn.を10-1000倍に希釈しても十分に神経細胞死が誘導される。3).HIV-1感染細胞supn.を神経細胞に数時間パルスするだけで十分に細胞死を誘導できる。4).HIV-1感染細胞supn.をパルスし、数日培養した神経細胞の培養上清が,神経細胞死を誘導する活性をもつ。5).この神経細胞死の誘導は,HIV-1の感染をブロックする中和抗体,デキストラン硫酸,CXCR4のアンタゴニスト,あるいはNMDA受容体のアンタゴニストで阻害がかからない。6).この神経細胞にHIV-1は感染しない。7).非感染細胞supn.では細胞死を誘導しない。8).これまでに以上に示した現象の報告はない。このことを踏まえ、平成15年度は特にHIV-1感染細胞supn.を処理した神経細胞におけるプロテオーム解析を行い、特異的な発現の変化が認められるタンパク質群を同定し、その細胞死誘導機構の解明およびそれに基づいた治療薬・予防薬開発のための評価系構築を行う予定である。HIV-1の複製を強力に抑制する多剤併用療法(HAART)の導入により、HIV-1感染症/AIDSに対する治療効果が著しく向上し、それに伴いHIV脳症発症率の低下も認められるようになった。しかしながら、生涯続けなければならないと考えられている現行のHAARTによって、今後、長期的にみて、このHIV脳症発症率低下が持続されるかは全く不明である。一方、世界に目を向ければ、十分なHAARTを享受できない発展途上国を中心に、HIV感染者が爆発的に増加している現状がある。このような状況から、現在、新たなHIV-1複製阻害薬の開発と共に、HIV脳症の発症機序を明確にし、その予防薬・治療薬の開発を行うことは必要不可欠であると考えられる。昨年度は、HIV-1が関与するヒト由来神経細胞に与える神経障害のin vitroモデルの構築を行い、その特徴づけを行った。本年度はHIV-1を含む培養上清(ウイルス液)を添加することで誘導されるこの神経細胞死と関連するタンパク質を探索するために、神経細胞のプロテオーム解析を行った。その結果、ウイルス液添加によりmanganese superoxide dismutase(Mn-SOD)の発現が著しく亢進することが明らかとなった。このMn-SODの発現は、ウイルス液による神経細胞死と密接な関係があることが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-14771288
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14771288
HIV-1感染細胞が誘導する神経細胞死のプロテオーム解析
Mn-SODの誘導には、酸化ストレスが関与することが既に報告されている。また、HIV脳症発症の原因因子にスーパーオキシドアニオンをはじめとした活性酸素の関与が考えられており、実際、HIV脳症患者由来の脳組織中に、活性酸素が存在した証拠を示す多くの報告がある。従って、本in vitroにおけるウイルス液による神経細胞死においても活性酸素による酸化ストレスの関与が考えられる。抗酸化剤として知られるN-acetylcysteineの処理により細胞死の顕著な抑制効果、及びMn-SOD発現誘導の抑制効果が示されなかった。このことは、本in vitro系が単純に抗酸化剤では抑制されない特異な系である可能性があり興味深い。
KAKENHI-PROJECT-14771288
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