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留学生を起用した理系学生向け医療英語学習用教材・教育カリキュラムの開発 | また,成功事例についても有識者から学会で意見を集めることができた.平成29年度は,平成28年度のデータ収集・分析のような研究部分に重きを置いた内容とは異なり,実務部分(教材開発)がメインであるため,当初の計画以上に何か新たな知見が得られて研究が飛躍的に進展するということはなかったが,当初予定された計画について遅滞なく,全て当初の予定通りの内容で進行することができていることから,進捗状況の評価としてはおおむね順調に進展していると評価できる.本研究は,学部レベルの医学英語教育(「医学英語学習用教材・教育カリキュラム開発」)を推進するためのものである。平成30年度は、模擬授業の実施と研究総括を予定していた。平成28年度の研究成果である学部生・大学院生に対する医学英語教育に関する関連研究、平成29年度の研究成果である交換留学生についての関連研究も加えた研究内容を全て反映して報告書をまとめ、また、実務部分として予定していた平成29年度作成教材を使用した模擬授業を実際に実践した。模擬授業については、受講学生からのフィードバック(予定された授業アンケート)について、評価が非常に高かった。また、最終的なプロダクトについても、医学英語の授業のみならず、今後、北海道大学医学部に来学する交換留学生や、北海道大学医学部から派遣される医学部生が自習用教材として利用できる汎用性の高い教材を開発することができた。本研究の最終総括として、近い将来、数の増加が見込まれる、国籍・バックグラウンド・所属の異なる多様な留学生を起用した、理系学生を広く対象とする持続可能性のある医療英語学習用教材・カリキュラムを開発するという当初の目的については、平成28年度平成30年度の3年間で、基礎的なニーズ調査、教材開発、授業計画・立案まで含めて、概ね、予定通り達成された。研究成果についても、学会発表や学術論文の公表の形でまとめられ、医学教育領域において、国際化にも大きく貢献する内容であると期待された。平成28年度が基礎データ収集で研究部分に重きが置かれているのに対し,平成29年度は,1.各国の文化・医療事情,及び,留学生による教育・研究紹介,2.医学英語の英会話テキスト教材開発といった実務部分(教材開発)に重きが置かれる.すなわち,研究から得られた知見を実際の実務に結びつけて発信できる形にすることが求められる.本研究の直近の見通しとしては,近年のグローバル化の影響により研究代表者の大学に交換留学生として来学する学生が増えていることにより,教材開発を行う環境としては十分な状況にある.初年度,問題となった授業計画立案・成功事例の視察の部分については,すでに研究協力者のスーパーバイズのもと,次年度以降の的確な実施計画を立案済であり,今後の研究計画の変更については特に必要ないことから,平成29年度,30年度とも当初の予定通り,計画を順調に遂行できると考えられる.平成30年度は,模擬授業の実施と研究総括となる.本研究の直近の見通しとしては,以下の通りである. | KAKENHI-PROJECT-16K19168 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K19168 |
ベイズ法を用いたブランケット設計計算用データと精度の推定 | Liの中性子断面積は、核融合炉におけるT生成率の評価に重要であり、正確な評価が望まれている。過去に、T生成率の測定値をもとにLiの評価済み断面積を統計学のベイズ法でadjustすることが幾つか試みられた。Liの中性子断面積は、現在ではT生成率の実験データをある程度再現できるようになったが、体系からの漏洩中性子スペクトルを再現するには精度が不十分だと認識されている。漏洩中性子スペクトルはT生成率等の積分量と比較して、より中性子断面積に関する詳細な情報を含んでいる。したがって、漏洩中性子スペクトルを用いてLiの評価済み断面積をadjustすることは、T生成率の場合よりも評価済み断面積の精度向上に寄与する。ベイズ法で断面積のadjustを行なう場合には、断面積の変化に対する漏洩中性子スペクトルの変化、感度を求めなければならない。T生成率のようなフラックスに関する積分量の感度は一般化摂動法で求められてきたが、漏洩中性子スペクトルの感度の計算には、一般化摂動法が有効でなく、過去に求められた例は少ない。本研究では、天然Li体系からの漏洩中性子スペクトルのLi中性子断面積に対する感度を直接法で求めた。計算に用いた体系は大阪大学強力中性子源OKTAVIANでの実験で用いられている直径120cmのものを用いた。変化させた断面積は【^6Li】(n,t),【^6Li】(n,n),【^7Li】(n,n),【^7Li】(n,n′)【^7Li】(n,n′t),と【^7Li】(n,2n)断面積である。漏洩中性子スペクトルの数百keV以上の領域の感度が強いものとして【^7Li】(n,n),【^7Li】(n,n′),【^7Li】(n,n′t)断面積であることがわかり、T生成率の場合感度の強かった【^6Li】(n,t)断面積は感度が小さく漏洩中性子スペクトルの計算精度の向上に寄与しないことがわかった。また、漏洩中性子スペクトルでLiの断面積をadjustする際には、【^7Li】の弾性散乱と非弾性散乱断面積が主に修正されることがわかった。このadjust方法、それに加え体系実験の誤差を考慮しながら、この結果を設計に利用し精度を検討すべきである。Liの中性子断面積は、核融合炉におけるT生成率の評価に重要であり、正確な評価が望まれている。過去に、T生成率の測定値をもとにLiの評価済み断面積を統計学のベイズ法でadjustすることが幾つか試みられた。Liの中性子断面積は、現在ではT生成率の実験データをある程度再現できるようになったが、体系からの漏洩中性子スペクトルを再現するには精度が不十分だと認識されている。漏洩中性子スペクトルはT生成率等の積分量と比較して、より中性子断面積に関する詳細な情報を含んでいる。したがって、漏洩中性子スペクトルを用いてLiの評価済み断面積をadjustすることは、T生成率の場合よりも評価済み断面積の精度向上に寄与する。ベイズ法で断面積のadjustを行なう場合には、断面積の変化に対する漏洩中性子スペクトルの変化、感度を求めなければならない。T生成率のようなフラックスに関する積分量の感度は一般化摂動法で求められてきたが、漏洩中性子スペクトルの感度の計算には、一般化摂動法が有効でなく、過去に求められた例は少ない。本研究では、天然Li体系からの漏洩中性子スペクトルのLi中性子断面積に対する感度を直接法で求めた。計算に用いた体系は大阪大学強力中性子源OKTAVIANでの実験で用いられている直径120cmのものを用いた。変化させた断面積は【^6Li】(n,t),【^6Li】(n,n),【^7Li】(n,n),【^7Li】(n,n′)【^7Li】(n,n′t),と【^7Li】(n,2n)断面積である。漏洩中性子スペクトルの数百keV以上の領域の感度が強いものとして【^7Li】(n,n),【^7Li】(n,n′),【^7Li】(n,n′t)断面積であることがわかり、T生成率の場合感度の強かった【^6Li】(n,t)断面積は感度が小さく漏洩中性子スペクトルの計算精度の向上に寄与しないことがわかった。また、漏洩中性子スペクトルでLiの断面積をadjustする際には、【^7Li】の弾性散乱と非弾性散乱断面積が主に修正されることがわかった。このadjust方法、それに加え体系実験の誤差を考慮しながら、この結果を設計に利用し精度を検討すべきである。 | KAKENHI-PROJECT-60050052 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-60050052 |
単一細胞の機械的特性評価と遺伝子発現の相関解析用バイオMEMSの基盤構築 | 本研究は、細胞の硬さや粘弾性、変形能などの機械的特性と、機械特性に関連する遺伝子の発現量を対応付け可能とする手法の開発を目的として、マイクロマシニングにより作製するMEMSピンセットを用いた機械特性計測と遺伝子発現解析系への接続を実施した。平成30年度の実施概要は以下である。(1) MEMピンセットの駆動範囲の設計改良と開発: MEMSピンセットのプローブは、これまで3マイクロメートル程度の変位量しかなく、小さなサイズの細胞は捕獲できない場合があった。そこで基本ギャップを16-24マイクロメートルと設計したが、デバイス作製時の装置状態により歩留まりが変わり、適切なギャップを持つデバイスの個数が限られる問題があった。そこで、細胞把持用プローブのバネ構造を大きな変位を得られる形状に設計、デバイスを作製した。(2)単一細胞の機械特性計測・遺伝子発現解析:遺伝子発現解析では、逆転写ポリメラーゼ反応とリアルタイムqPCTを組み合わせたRT-qPCRを用いた。ターゲットとするタンパク質は、細胞骨格の一種であるVimentinと、ハウスキーピング遺伝子のGAPDHを選択した。単一細胞をMEMSピンセットで把持し、共振周波数応答を計測したのち、MEMSのプローブに把持した細胞を細胞溶解液に浸漬した。この溶液について逆転写反応、リアルタイムqPCRにて増幅量を計測した。リアルタイムqPCRの結果では、細胞サンプルのVimentin, GAPDH増幅中に、ネガティブコントロールの蛍光が検出された。確認のため、同じサンプルを、電気泳動により分離・検出したところ、本来は生じない50-100bpからも蛍光が確認された。この原因として、操作中のコンタミネーションが考えられる。上記の手順を数回繰り返したが、同様にネガティブコントロールからの蛍光が検出され、発現量を決定することはできなかった。細胞の硬さ、粘弾性や変形能などの機械特性は、近年改めて注目を集めている。例えば、がんの転移を引き起こすとされている血中循環腫瘍細胞は、組織から血管へ変形しながら浸潤する。遺伝子解析技術の発展により、細胞機械特性に関連するアクチンなどの遺伝子が特定されつつあるものの、細胞機械特性と遺伝子発現の状態について両者を同時に取得することはできなかった、そこで本研究では、細胞の機械特性と関連遺伝子の発現状態を対応付け可能とする手法を開発する。具体的には、マイクロマシニングにより作製したMEMSピンセットを用いて単一細胞の機械特性を計測したのち、細胞をハンドリングし、遺伝子発現解析系へと接続する。本研究の達成によって、既存技術では困難であった細胞の力学特性と遺伝子情報の一対一の相関が議論可能となり、がん転移能と細胞機械特性の関連性解明に貢献する。具体的な個別課題は、以下の通りである。(1)顕微鏡画像を用いてシャーレ内の任意の細胞をMEMSピンセットで把持し、他の場所へ搬送する実験セットアップを構築する。(2)細胞機械特性(例:細胞サイズ,硬さ,粘弾性係数)の測定を行う。MEMSピンセットと液体界面の位置決めと測定条件、適切な測定項目を把握し、再現性のある測定系を確立する。並行して、(3)単一細胞の遺伝子発現解析の条件を最適化する。(4)以上の操作をCTCモデル細胞へ適用する。モデルCTCの機械特性と遺伝子発現状態の関係を調べ、がん悪性度を評価するために最適な細胞機械特性の選定と、判定基準を見いだすことを目指す。平成28年度は、(1)溶液内の細胞をMEMSピンセットにより把持する方法(課題1)、(2)実際の細胞把持・機械特性計測(課題2)、(3)把持・計測した単一細胞を遺伝子発現解析のフローへ繋ぐ方法(課題3)、(4) MEMSピンセットが遺伝子発現解析反応に与える影響(課題3)について検討した。(1)について、細胞を把持するセットアップは、当初予定していた垂直方向からMEMSピンセットをアプローチする方法ではなく、水平方向から挿入するセットアップとした。細胞はリン酸緩衝生理食塩水(PBS溶液)にけん濁させており、市販のシャーレに入れた場合、アプローチ中に、PBS溶液がMEMSピンセットの電極部分に付着する恐れがある。そこで、シリコーンゴムを2枚のカバーガラスで挟みこんで、MEMMSピンセットのプローブを水平方向から挿入できるマイクロチャンバを作製し、細胞の充填・保持に使用した。マイクロチャンバは電動XYZステージに固定し、Labviewソフトウエアにより位置決め制御し、MEMSピンセットのプローブを水平方向から挿入・細胞捕獲した。(2)上記の実験セットアップを使って、前立腺がんセルラインであるPC-3細胞を把持し、MEMSピンセットのプローブ間隔を変えることによって、細胞を圧縮した。急激にプローブ間隔を変えるステップ応答計測を行い、細胞に力を加えるほど、細胞が硬くなる結果を得た。(3)計測後の細胞は、MEMSピンセットで把持したまま、ヒーター上で加熱した細胞溶解液に浸して、細胞内構成物を液中に溶解させた。細胞溶解液ごとマイクロピペットで回収することで、遺伝子発現解析のサンプルとできる。(4)遺伝子発現解析で行う3つの反応(細胞溶解反応,逆転写反応,ポリメラーゼ連鎖反応)を、MEMSピンセットが阻害していないかを実験し、影響を与えないことを確認した。本研究では、細胞の機械的な特徴と機械特性に関連する遺伝子の発現状態を単一細胞レベルにおいて対応付け可能とする手法の確立を目的として研究を実施している。平成29年度の研究計画は、(課題2)MEMSピンセットによる細胞の機械特性測定方法の確立, (課題3)MEMSピンセットにより搬送した単一細胞の遺伝子発現解析条件の探索とした。 | KAKENHI-PROJECT-16K04914 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K04914 |
単一細胞の機械的特性評価と遺伝子発現の相関解析用バイオMEMSの基盤構築 | 課題2については、ステップ応答計測、三角波信号応答計測を行った。前年度の実験において、把持・計測したのちに細胞を解放するステップが難しいことが明らかになったため、この点を解決するために、細胞を把持するプローブ表面の化学修飾・構造改良を検討した。化学処理では、テフロン、パリレンC、MPCポリマー、Pluronic(界面活性剤)を蒸着、塗布等によりコーティングした。構造改良では、MEMSピンセットの作製過程に用いる深堀エッチングのエッチングレートを大きくし、プローブ壁面に溝を形成させることで、凹凸を形成した。それぞれの処理を行ったMEMSピンセットを用いて細胞把持・解放を試したところ、Pluronic処理と、プローブ壁面の構造改良を行ったデバイスにおいて、細胞が解放しやすくなる結果が得られた。課題3については、機械特性に関連する遺伝子のターゲットを、中間径フィラメントであるビメンチン、コントロールをGAPDH(Glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)として用いることとした。予備実験として、複数個の細胞,単一細胞を試料とした定量を試みたが、望みのデータは得られなかったために、さらに実験環境・実験手順を最適化する必要がある。今年度は、計測後の細胞を解放するために行ったプローブ表面処理実験において、有効な処理方法を見いだすことができたので、この後に続く遺伝子発現解析の手順へ、円滑に細胞を搬送できることが見込まれる。遺伝子発現解析のパートでは、コンタミネーションの問題があり、単一細胞スケールでの発現解析の達成、ターゲット遺伝子の複数選定などの詳細な予備実験は達成できていない。予備実験の繰り返しや、手法の最適化を試みる予定である。本研究は、細胞の硬さや粘弾性、変形能などの機械的特性と、機械特性に関連する遺伝子の発現量を対応付け可能とする手法の開発を目的として、マイクロマシニングにより作製するMEMSピンセットを用いた機械特性計測と遺伝子発現解析系への接続を実施した。平成30年度の実施概要は以下である。(1) MEMピンセットの駆動範囲の設計改良と開発: MEMSピンセットのプローブは、これまで3マイクロメートル程度の変位量しかなく、小さなサイズの細胞は捕獲できない場合があった。そこで基本ギャップを16-24マイクロメートルと設計したが、デバイス作製時の装置状態により歩留まりが変わり、適切なギャップを持つデバイスの個数が限られる問題があった。そこで、細胞把持用プローブのバネ構造を大きな変位を得られる形状に設計、デバイスを作製した。(2)単一細胞の機械特性計測・遺伝子発現解析:遺伝子発現解析では、逆転写ポリメラーゼ反応とリアルタイムqPCTを組み合わせたRT-qPCRを用いた。ターゲットとするタンパク質は、細胞骨格の一種であるVimentinと、ハウスキーピング遺伝子のGAPDHを選択した。 | KAKENHI-PROJECT-16K04914 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K04914 |
新規糖質加リン酸分解酵素を活用した機能性オリゴ糖のライブラリー化 | 生体内糖質代謝に関与する糖質加リン酸分解酵素(ホスホリラーゼ)による糖質合成収率は極めて高く、産業上有用な酵素になり得る。しかしながら、既知のホスホリラーゼは14種類のみと報告例が少なく、今後生産可能なオリゴ糖のバリエーション拡大には、新たなホスホリラーゼの発見が必須であった。本研究では様々な生物種のゲノム情報を活用して、これまでに報告例のない新規なホスホリラーゼを見出し、各種酵素の糖受容体特異性を明らかにすることで、新規オリゴ糖のライブラリー化を試みた。まず真正細菌由来のホスホリラーゼ様タンパク質(Cphy1874、Cphy1019)をコードする遺伝子をPCR法により単離し、大腸菌による異種宿主発現系を確立した。Cphy1874はリン酸存在下でグルコース2分子がα-1,3結合したニゲロースを加リン酸分解すること、さらにβ-グルコース1-リン酸(糖供与体)とグルコース(糖受容体)を出発材料とした際はニゲロースを高収率合成することが分かった。本結果により、Cphy1874はこれまでに報告例のない新規加リン酸分解酵素ニゲロースホスホリラーゼであることが明らかになった。Cphy1019については、リン酸存在下で既知のグルコ2糖に対して加リン酸分解活性を示さなかったが、糖質合成反応にてL-ラムノースを糖受容体とした際にのみ合成活性を示した。反応生成物の構造を核磁気共鳴分光法にて確認したところ、3-O-α-D-グルコシル-L-ラムノースであったことから、Cphy1019は新規加リン酸分解酵素3-O-α-D-グルコシル-L-ラムノースホスホリラーゼであることが判明した。今回得られた両新規酵素の詳細な糖受容体特異性を調査することで、これまでに6個の新規α-1,3グルコシルヘテロ2糖の合成に成功している。生体内糖質代謝に関与する糖質加リン酸分解酵素(ホスホリラーゼ)による糖質合成収率は極めて高く、産業上有用な酵素になり得る。しかしながら、既知のホスホリラーゼは14種類のみと報告例が少なく、今後生産可能なオリゴ糖のバリエーション拡大には、新たなホスホリラーゼの発見が必須であった。本研究では様々な生物種のゲノム情報を活用して、これまでに報告例のない新規なホスホリラーゼを見出し、各種酵素の糖受容体特異性を明らかにすることで、新規オリゴ糖のライブラリー化を試みた。まず真正細菌由来のホスホリラーゼ様タンパク質(Cphy1874、Cphy1019)をコードする遺伝子をPCR法により単離し、大腸菌による異種宿主発現系を確立した。Cphy1874はリン酸存在下でグルコース2分子がα-1,3結合したニゲロースを加リン酸分解すること、さらにβ-グルコース1-リン酸(糖供与体)とグルコース(糖受容体)を出発材料とした際はニゲロースを高収率合成することが分かった。本結果により、Cphy1874はこれまでに報告例のない新規加リン酸分解酵素ニゲロースホスホリラーゼであることが明らかになった。Cphy1019については、リン酸存在下で既知のグルコ2糖に対して加リン酸分解活性を示さなかったが、糖質合成反応にてL-ラムノースを糖受容体とした際にのみ合成活性を示した。反応生成物の構造を核磁気共鳴分光法にて確認したところ、3-O-α-D-グルコシル-L-ラムノースであったことから、Cphy1019は新規加リン酸分解酵素3-O-α-D-グルコシル-L-ラムノースホスホリラーゼであることが判明した。今回得られた両新規酵素の詳細な糖受容体特異性を調査することで、これまでに6個の新規α-1,3グルコシルヘテロ2糖の合成に成功している。 | KAKENHI-PROJECT-23880010 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23880010 |
窒化物半導体ナノウォール結晶のヘテロ構造制御と光・電子デバイス応用技術の開発 | 人為的に形状制御が可能な薄膜板状GaNナノ結晶であるGaNナノウォールのRF-MBE選択成長技術を確立し、ナノウォール結晶は貫通転位抑制機構により高品質結晶成長が可能であることを見出した。また、GaNナノウォール上部形状制御技術、InGaN発光層の内在条件と発光特性のナノウォール形状依存性を明らかにした。GaNナノウォールからの室温光励起発振の観測および世界に先駆けてのAlGaN/GaNヘテロ構造ナノFETの動作検証により、光・電子デバイス応用の可能性を実証した。人為的に形状制御が可能な薄膜板状GaNナノ結晶であるGaNナノウォールのRF-MBE選択成長技術を確立し、ナノウォール結晶は貫通転位抑制機構により高品質結晶成長が可能であることを見出した。また、GaNナノウォール上部形状制御技術、InGaN発光層の内在条件と発光特性のナノウォール形状依存性を明らかにした。GaNナノウォールからの室温光励起発振の観測および世界に先駆けてのAlGaN/GaNヘテロ構造ナノFETの動作検証により、光・電子デバイス応用の可能性を実証した。本研究の目的は、研究代表者らが世界に先駆けて開発した新しいタイプの窒化物羊導体ナノ結晶であるGaNナノウォールの結晶成長機構の解明と制御技術の開発、ナノ物性の評価、およびナノ光デバイス(半導体レーザ:LD)とナノ電子デバイス(電界効果トランジスタ:FET)応用の実験的検証を行い、革新的ナノデバイス材料としての可能性を提示することである。研究計画を以下に示す。(1)ヘテロ構造ナノウォールの結晶成長技術の確立(2) GaNナノウォール結晶のMBE法による選択成長機構、貫通転位抑止効果の解明(3) GaN系ナノ結晶の物性評価(格子歪の緩和効果、In組成分布のナノ構造効果)(4) InGaN/GaNナノウォールの可視域光励起発振の検証とInGaN/GaNナノウォールLDの開発初年度は、主に上記(1)および(2)の課題を実施し、計画通りの成果を得た。具体的には、GaNアンプレート上に形成したTi及びTiO_2ナノパターンを選択成長マスクとするMBE法によりGaNナノ結晶を再現性良く成長する条件を把握し、例えば、幅約100nm、間隔30nm程度の超精密規則配列ナノウォールアレイの成長が可能となった。ナノ結晶のサイズによりInGaNの発光色を青から赤まで制御可能であることを見出し、その現象がナノ結晶側面におけるInとGa原子の拡散と脱離を考慮した拡散方程式によりモデル化できることを示した。近赤外領域への応用が期待されるInNについてもMoマスク選択盛.長を用いナノウォールが成長可能であることを示した。また、MOCVD法で成長した膜状InGaN量子井戸をドライエッチングで低損傷加工して作製したナノ構造の発光特性を系統的に評価することにより、ナノ結晶側面での歪緩和効果による発光効率改善効果のナノ結晶サイズ依存性を明らかにした。さらに、初期的ながらナノウォールの光励起発振現象の観測に初めて成功した。本研究は、研究代表者らが世界に先駆けて開発した新しいタイプの窒化物半導体ナノ結晶であるGaNナノウォールの結晶成長機構の解明と制御技術の開発、ナノ物性の評価、およびナノ光デバイス(LD)とナノ電子デバイス(FET)応用の実験的検証を行い、革新的ナノデバイス材料としての可能性を提示することを目的とし、下記(1)(5)の課題を設定し計画を実施している。(1)ヘテロ構造ナノウォールの結晶成長技術の確立、(2)GaNナノウォール結晶のMBE法による選択成長機構と貫通転位抑止効果の解明、(3)GaN系ナノ結晶の物性評価(格子歪の緩和効果、In組成分布のナノ構造効果)、(4)InGaN/GaNナノウォールの可視域光励起発振の検証とInGaN/GaNナノウォールLDの開発、(5)GaN/AlGaNナノウォールの電気伝導特性評価とFET動作の検証初年度の実施課題(1)と(2)に引き続き、第2年度は主に課題(3)と(4)を実施し計画通りの成果を得た。MOCVD法で成長したInGaN/GaN-MQW薄膜結晶を損傷ドライエッチン法でナノウォール、ナノピラー、ナノホール状に加工して発光特性のサイズ依存性を評価した。PL温度依存性と時間分解PLの結果より、ナノ構造サイズの減少に伴って発光効率が向上し短波長シフトするが、120nm以下で歪抑制効果が飽和することが分かった。一方、歪分布シミュレーションから、顕著な歪緩和は表面から20nm程度の領域で生じることを示し、ナノ結晶ではキャリアは再結合確率の低い中心部から再結合確率の高い表面近傍に拡散するモデルを立て、ナノ結晶における高効率発光の一因を解明した。また、ナノウォールを直径1μm程度の六角形リング状に構成したヘキサゴナルナノリングや周期配列InGaN/GaNナノコラムにおける緑色域光励起誘導を初めて実証した。また、規則配列ナノコラムによる緑色LEDを試作し、電流注入型ナノウォールLDの実現に向けた着実な進展を得た。また、横方成長(ELO)による極転位InNナノウォールの成長技術を開発した。 | KAKENHI-PROJECT-21310087 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21310087 |
窒化物半導体ナノウォール結晶のヘテロ構造制御と光・電子デバイス応用技術の開発 | 本研究は、研究代表者らが世界に先駆けて開発した窒化物半導体ナノ結晶であるGaNナノウォールの結晶成長機構の解明と制御技術の開発、ナノ物性の評価、およびナノ光デバイス(LD)とナノ電子デバイス(FET)応用の実験的検証を行い、革新的ナノデバイス材料としての可能性を提示することを目的とし、(1)ヘテロ構造ナノウォールの結晶成長技術の確立、(2)GaNナノウォール結晶のMBE法による選択成長機構と貫通転位抑止効果の解明、(3)GaN系ナノ結晶の物性評価(格子歪の緩和効果、In組成分布のナノ構造効果)、(4)InGaN/GaNナノウォールの可視域光励起発振の検証とInGaN/GaNナノウォールLDの開発、(5)GaN/AlGaNナノウォールの電気伝導特性評価とFET動作の検証、という課題を設定して実施した。初年度に(1)と(2)、第2年度に(3)と(4)を成功裏に実施し、最終年度は(5)ナノウォールFETの作製と動作検証を行って、計画全体において予定通りの成果を得ることができた。以下に最終年度の研究概要を記す。半絶縁性c面GaNテンプレート表面に厚さ5nmのTi膜を堆積し、電子線描画とドライエッチングでナノパターンを形成してGaN層を露出させ、ノンドープGaNを3時間、ノンドープAl_<0.2>Ga_<0.8>Nを20nm成長したところ、極めて選択性の良好なAIGaN/GaNナノウォールFET構造が成長できた。チャネル部は幅120200nm、高さ約1.2μmのナノウォールとし、AlGaN層がナノウォール上部と側面全体を覆っている構造が形成できたことから二次元電子ガスによる高速性も期待される。表面全体にALD法でAl_2O_3絶縁膜を20nm堆積後、ソース、ドレイン、およびゲート電極を形成した。ゲート電極幅は10μmとした。m軸に沿ったナノウォールFETにおいて、I_D-V_<DS>特性(静特性)を評価したところ、ゲート電圧による明瞭なドレイン電流の制御が確認された。これは世界初のAIGaN/GaNナノウォールの実験的検証である。本成果により、AlGaN/GaNナノウォールが電子デバイスに応用可能であることが示された。最終課題である電流注入型ナノウォールレーザの研究は、引き続き基盤研究(B)「InGaN量子構造活性層を内在する超薄膜GaNナノウォール発光デバイスの研究」で実施する計画である。 | KAKENHI-PROJECT-21310087 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21310087 |
培養骨芽細胞を付着させたインプラント材料に対する骨組織応答 | 近年,インプラントが長期間にわたって良好な機能を発揮するためには,直接的骨界面,いわゆるオッセオインテグレーションが優れているとする考え方が普遍的になりつつある。今回我々は,インプラント材料表面に骨芽細胞を実験的に付着させることにより,より早期に,より確実に生物学的骨反応を誘発させ,直接的骨界面を達成できることに着想し,以下の実験を行い,その可能性を検討した。すなわち,Maniatopoulosら(1988)の方法に従い,採取したラット骨髄由来の骨芽細胞を培養後,4種のインプラント材料(チタン合金,ジルコニア,合成ハイドロキシアパタイト,生体ガラス)にこれら細胞を付着させ,それらの材料(実験材料)をラット頭頂骨骨膜下に埋入し,同材料に対する組織の反応を検討した。併せて,骨芽細胞を付着させていない材料(対照材料)に対しても同様の検討を行った。その結果,いずれの実験材料および対照材料周囲組織に炎症性反応はほとんど認められなかったが,皮膚並びに骨膜の張力の影響と思われる一部の骨吸収が材料に接する母床骨表面に認められた。各種実験材料に対する組織反応については,材料間に大きな差異は認められなかったが,合成ハイドロキシアパタイトおよび生体ガラス周囲の実験的に骨芽細胞を付着させた面においては,一層の硬組織の添加が観察され,その範囲は他の2種の材料に比較してより広く認められた。一方,対照材料においては,いずれの周囲においても硬組織の添加はまったく認められず,骨膜を構成する軟組織により被覆されていた。これらのことより,今回実験に用いた各種インプラント材料は組織に良く許容されていること。また,より早期に材料表面に硬組織の添加を図り骨組織との親和性を高めて骨接触を確実に得るためには,骨芽細胞を付着させた材料が有利であることが明らかとなった。近年,インプラントが長期間にわたって良好な機能を発揮するためには,直接的骨界面,いわゆるオッセオインテグレーションが優れているとする考え方が普遍的になりつつある。今回我々は,インプラント材料表面に骨芽細胞を実験的に付着させることにより,より早期に,より確実に生物学的骨反応を誘発させ,直接的骨界面を達成できることに着想し,以下の実験を行い,その可能性を検討した。すなわち,Maniatopoulosら(1988)の方法に従い,採取したラット骨髄由来の骨芽細胞を培養後,4種のインプラント材料(チタン合金,ジルコニア,合成ハイドロキシアパタイト,生体ガラス)にこれら細胞を付着させ,それらの材料(実験材料)をラット頭頂骨骨膜下に埋入し,同材料に対する組織の反応を検討した。併せて,骨芽細胞を付着させていない材料(対照材料)に対しても同様の検討を行った。その結果,いずれの実験材料および対照材料周囲組織に炎症性反応はほとんど認められなかったが,皮膚並びに骨膜の張力の影響と思われる一部の骨吸収が材料に接する母床骨表面に認められた。各種実験材料に対する組織反応については,材料間に大きな差異は認められなかったが,合成ハイドロキシアパタイトおよび生体ガラス周囲の実験的に骨芽細胞を付着させた面においては,一層の硬組織の添加が観察され,その範囲は他の2種の材料に比較してより広く認められた。一方,対照材料においては,いずれの周囲においても硬組織の添加はまったく認められず,骨膜を構成する軟組織により被覆されていた。これらのことより,今回実験に用いた各種インプラント材料は組織に良く許容されていること。また,より早期に材料表面に硬組織の添加を図り骨組織との親和性を高めて骨接触を確実に得るためには,骨芽細胞を付着させた材料が有利であることが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-05671624 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05671624 |
血液網膜関門の破綻を修復する新しい薬剤の開発 | 本研究の目的は,糖尿病網膜症の初期病変および増殖病変に対して,フィブロネクチン由来のPHSRNペプチドがタイトジャンクションを修復し血液網膜関門の破綻を改善する効果を検討し,糖尿病網膜症の網膜血管病変に対する新薬を探索することである。その効果の確認として,2型糖尿病モデルであるラットで網膜病変の変化を検証する。in vivoでは,ラットにおける眼底撮影および蛍光眼底造影検査の方法を確立する目的で,まず対象として11週齢のSprague-Dawleyラット(SDラット)を用いて,眼底写真を撮影し蛍光眼底造影検査を行なった。また,糖尿病モデルとして全身の細小血管異常が報告されている50週齢Goto-Kakizakiラット(GKラット)を用いて同様の検討を行った。眼底写真では,SDラットおよびGKラットの網膜,視神経乳頭および網膜血管が確認できた。蛍光眼底造影検査では,両者とも網膜血管および網膜毛細血管床が確認でき,網膜血管は直線的で径の違いから動静脈が判別可能であった。しかしながら,GKラットにおいて新生血管や無灌流領域など進行した糖尿病網膜症の所見は認められなかった。GKラットにおいては,網膜血管の透過性亢進による造影剤の前房内移行がみられ,また進行した白内障のため眼底写真および蛍光眼底造影検査が撮影不可能であった。したがってより適切な網膜病変出現の時期を探索する必要がある。in vitroでは,マウス脳血管内皮細胞株であるbEnd3細胞を用いて,PHSRNペプチドの血管内皮のタイトジャンクションに対する効果を検討している。本研究の目的は,糖尿病網膜症の初期病変および増殖病変に対して,フィブロネクチン由来のPHSRNペプチドがタイトジャンクションを修復し血液網膜関門の破綻を改善する効果を検討し,糖尿病網膜症の網膜血管病変に対する新薬を探索することである。その効果の確認として,2型糖尿病モデルであるラットで網膜病変の変化を検証する。in vivoでは,ラットにおける眼底撮影および蛍光眼底造影検査の方法を確立する目的で,まず対象として11週齢のSprague-Dawleyラット(SDラット)を用いて,眼底写真を撮影し蛍光眼底造影検査を行なった。また,糖尿病モデルとして全身の細小血管異常が報告されている50週齢Goto-Kakizakiラット(GKラット)を用いて同様の検討を行った。眼底写真では,SDラットおよびGKラットの網膜,視神経乳頭および網膜血管が確認できた。蛍光眼底造影検査では,両者とも網膜血管および網膜毛細血管床が確認でき,網膜血管は直線的で径の違いから動静脈が判別可能であった。しかしながら,GKラットにおいて新生血管や無灌流領域など進行した糖尿病網膜症の所見は認められなかった。GKラットにおいては,網膜血管の透過性亢進による造影剤の前房内移行がみられ,また進行した白内障のため眼底写真および蛍光眼底造影検査が撮影不可能であった。したがってより適切な網膜病変出現の時期を探索する必要がある。in vitroでは,マウス脳血管内皮細胞株であるbEnd3細胞を用いて,PHSRNペプチドの血管内皮のタイトジャンクションに対する効果を検討している。 | KAKENHI-PROJECT-21791685 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21791685 |
シネモード磁気共鳴画像診断による子宮内膜症および月経困難症治療の有効性評価 | 月経痛の重度症例では、シネモードMRIにおいて子宮内膜直下筋層の低信号域の面積が広く、低信号を呈している時間が長かった。収縮が強くなると子宮筋に虚血が生じ、月経痛を引き起こすものと考えられた。また、血清オステオポンチン値が子宮内膜症の重症度や癌化を判定するマーカーとしての有用であった。無作為二重盲検比較試験によってロイコトリエン受容体拮抗剤の新しい内膜症治療薬可能性を示唆した。シネモードMRIと血清オステオポンチンを用いた研究が子宮内膜症重症度及び治療薬の有効性判定に有用である。月経痛の重度症例では、シネモードMRIにおいて子宮内膜直下筋層の低信号域の面積が広く、低信号を呈している時間が長かった。収縮が強くなると子宮筋に虚血が生じ、月経痛を引き起こすものと考えられた。また、血清オステオポンチン値が子宮内膜症の重症度や癌化を判定するマーカーとしての有用であった。無作為二重盲検比較試験によってロイコトリエン受容体拮抗剤の新しい内膜症治療薬可能性を示唆した。シネモードMRIと血清オステオポンチンを用いた研究が子宮内膜症重症度及び治療薬の有効性判定に有用である。子宮内膜症患者5名と健常女性3名を対象にMR撮像を行い、シネモードを作成した。その結果、これまで報告されたように、月経痛を要する女性では不規則な収縮、虚血性変化などが観察された。しかし、当施設のMR機器が平成20年度に新機種に交代する事が明らかとなり、高精度な新機種での解析のほうが有用であることから、パイロット実験に留めることとした。新機種導入後にあらためて検討対象者にMRIシネモードの撮像を行い解析する予定である。一方、子宮内膜症の生化学的重症度判定パラメーターの探索では、8種類のサイトカインとCA125、CA199の測定を行なった。その結果、オステオポンチンが有用であることが判明し、日本子宮内膜症学会、日本産婦人科学会で発表した。臨床的に月経痛が重症であり腹腔鏡手術にて子宮内膜症分類IIIまたはIV期と診断された患者のうち血清保存が可能であった16例について、血清オステオポンチンの値をELISA法で測定した。また、陰性対照は月経痛がない子宮頸部異形成患者16例とし、卵巣癌患者血清16例との比較検討も行った。子宮内膜症患者の血清オステオポンチン値は48.8±11.6ng/ml、陰性対照では40.5±13.5ng/mlであり、有意に高値であった(p=0.03)。卵巣癌患者では154.7±201.1ng/mlであり、子宮内膜症患者と比較すると有意に高値であった(p=0.001)。これまでの研究で、子宮内膜症組織中にオステオポンチンが高発現していることは遺伝子発現解析および免疫組織化学において報告されていたが、ヒト血清中でも有意に高値であることがわかった。その値は卵巣癌において更に高く、子宮内膜症からの発癌に関係している可能性も示唆された。今後の臨床的有用性の検討が期待される。子宮内膜症患者7名と健常女性5名を対象にMR撮像を行い、シネモードを作成した。その結果、これまで報告されたように、月経痛を要する女性では不規則な収縮、虚血性変化などが観察された。ただし、被験者の試験への参加を募るのがなかなか難しく、今後、手術前患者を対象にさらに積極的に症例数を積み重ねたい。シネモードの撮影条件等に関しては、ほぼ確立したので、次年度の症例での解析を期待している。一方、子宮内膜症の生化学的重症度判定パラメーターの探索では、8種類のサイトカインとCA125, CA199の測定を行なった。その結果、オステオポンチンが有用であることが判明し、昨年に引き続き、日本子宮内膜症学会、日本産婦人科学会で発表した。臨床的に月経痛が重症であり腹腔鏡手術にて子宮内膜症分類IIIまたはIV期と診断された患者のうち血清保存が可能であった36例および卵巣癌患者20例および健常対象例20例について、サイトカインであるI1-1,TNFなどとオステオポンチンの値をELISA法で測定した。子宮内膜症患者のサイトカイン値は健常人に比して高い傾向はあるもの、有意差は認められなかった。一方、血清オステオポンチン値は50.8、陰性対照では38.5であり、有意に高値であった(p=0.03)。卵巣癌患者では154.7±201.1ng/mlであり、子宮内膜症患者と比較すると有意に高値であった(p=0.001)。これまでの研究で、子宮内膜症組織中にオステオポンチンが高発現していることは遺伝子発現解析および免疫組織化学において報告されていたが、ヒト血清中でも有意に高値であることがわかった。その値は卵巣癌において更に高く、子宮内膜症からの発癌に関係している可能性も示唆された。今後の臨床的有用性の検討が期待される。これまで、子宮内膜症および月経困難症の重症度、疼痛の強さを客観的に評価する方法がなく、これを新たに確立するためのシネモードMRIを用いる臨床試験を行った。月経痛の重度症例では、T2協調画像における子宮内膜直下筋層の低信号域の面積が広く、低信号を呈している時間が長かった。 | KAKENHI-PROJECT-19591908 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19591908 |
シネモード磁気共鳴画像診断による子宮内膜症および月経困難症治療の有効性評価 | 月経痛の原因は子宮で産生されるプロスタグランジンやロイコトリエンにより子宮筋が収縮することと考えられている。収縮が強くなると子宮筋に虚血が生じ、月経痛を引き起こすものと考えられた。今回シネモードMRIを施行し、月経困難症症例において虚血になっている部分と時間を同時に確認することができることを明らかにした。また、子宮内膜症の重症度を客観的に評価する血清マーカーとしてのサイトカイン(TNFα、IL2,IL6,IL8)およびオステオポンチンの有用性を検討した。測定したサイトカインでは有用なものはなく、オステオポンチンだけが重症度を反映した有意なものであった。さらに、子宮内膜症や月経困難症の原因となるロイコトリエンを標的としたロイコトリエン拮抗剤とプラセボの無作為二重盲検試験を行い、ロイコトリエン拮抗剤が有意に症状を軽減することを明らかにした。今後、シネモードMRIと血清オステオポンチンによる重症度判定をパラメーターとして、ロイコトリエン拮抗剤や既に私たちが有用性を示したEPAならびにその他の子宮内膜症治療薬の更なる臨床的有用性を検討したい。 | KAKENHI-PROJECT-19591908 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19591908 |
会計情報・監査システムの契約理論によるモデル・シミュレーション分析 | 本研究の目的は契約理論を用いて会計システムと監査システムが経済主体のインセンティブを調整するのに果たしている役割を解明することである。まず,現在の代表的な会計システムである発生主義会計が経済主体のインセンティブを調整するのに果たしている役割を解明することを試みた.発生主義会計が優れたパフォーマンスを発揮できる本質的な理由は,1)長期的な性質を持つ企業活動について,その業績を成果と努力の対応という形で1期間で表すことができる,2)企業価値に対する経営者の貢献を示す指標を提供できることである.これは発生主義会計に基づく会計システムのみがもつ特徴である.そのため,株主と経営者との契約で用いられる業績評価指標として発生主義会計に基づく会計情報が用いられることが分かった.つぎに,ABC(Activity Based Costing)/ABM(Actibity Based Management)において,非価値付加活動がインセンティブ問題で果たしている役割を解明することを試みた.非価値付加活動は,本来なら価値に貢献しないという意味で,排除されるべき活動である.しかし,非価値付加活動を間接的にコントロールすることで,事業部長のインセンティブ問題を緩和できることがある.そのため,非価値付加活動は,すべて排除されることなく一部が間接的に認められることがあることを示した.これは,ABC/ABMで非価値付加活動がすべて排除されていないことの理由を示していると考えられる.本年度の研究では,利害関係者としては経営者と株主(事業部長と経営者)の関係のみを考えた.発生主義会計とABC/ABMの本質的特性を検討するためである.当初の目的である経営者,株主,監査人の3者の関係を考察することはできなかった.これは今後の重要な研究課題である.本年度はベースモデルの構築を中心に研究を進めた.ベースモデルの構築にあたって,関連文献のサーベイ(文献2)と企業の会計担当者へのヒアリングを行った.ヒアリングは会計担当者が外部監査・内部監査などに対してどのように対処するのか,その基本的な方針などについて行った.そのヒアリングに基づいてベースモデルの設定の修正を行った(ヒアリングの結果はシミュレーション分析の基礎データともする).ベースモデルについての研究はつぎのようにまとめられる.複数の業務を遂行している労働者に対して,モニタリングを実施するときの最適な方針についての研究を行った(文献1).その結果,業務間に直接の関連がない場合でも,業務をモニタリングする情報システムが独立していなければ,ある業務で生じた変化が情報システムを通して他の業務に影響を与えることが分かった.それを踏まえ,労働者の行う業務に対して複数のコントロール手段(たとえば,規則やモニタリング)があるとき,どのコントロール手段を用いるのが良いのか,あるいはその両方を組み合わせるとすれば,どのような組み合わせ方がよいのかを検討するモデルを構築した(日本会計研究学会第57回大会自由論題報告にて報告).その結果,情報の精度をパラメーターとすると,モニタリング情報の精度が高ければ,モニタリングを主なコントロール手段として利用し,ある水準を超えると別のコントロール手段(たとえば,規則)に切り替えることが最適な組み合わせであることが分かった.なお,構築したモデルのそれぞれについて予備的なシミュレーション分析も行っている.本研究の目的は契約理論を用いて会計システムと監査システムが経済主体のインセンティブを調整するのに果たしている役割を解明することである。まず,現在の代表的な会計システムである発生主義会計が経済主体のインセンティブを調整するのに果たしている役割を解明することを試みた.発生主義会計が優れたパフォーマンスを発揮できる本質的な理由は,1)長期的な性質を持つ企業活動について,その業績を成果と努力の対応という形で1期間で表すことができる,2)企業価値に対する経営者の貢献を示す指標を提供できることである.これは発生主義会計に基づく会計システムのみがもつ特徴である.そのため,株主と経営者との契約で用いられる業績評価指標として発生主義会計に基づく会計情報が用いられることが分かった.つぎに,ABC(Activity Based Costing)/ABM(Actibity Based Management)において,非価値付加活動がインセンティブ問題で果たしている役割を解明することを試みた.非価値付加活動は,本来なら価値に貢献しないという意味で,排除されるべき活動である.しかし,非価値付加活動を間接的にコントロールすることで,事業部長のインセンティブ問題を緩和できることがある.そのため,非価値付加活動は,すべて排除されることなく一部が間接的に認められることがあることを示した.これは,ABC/ABMで非価値付加活動がすべて排除されていないことの理由を示していると考えられる.本年度の研究では,利害関係者としては経営者と株主(事業部長と経営者)の関係のみを考えた.発生主義会計とABC/ABMの本質的特性を検討するためである.当初の目的である経営者,株主,監査人の3者の関係を考察することはできなかった.これは今後の重要な研究課題である. | KAKENHI-PROJECT-10730071 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10730071 |
超越数の研究(解析学を中心として) | 本研究の目的は、解析的手法を用いた超幾何関数、多重対数関数などの特殊関数の代数点における値の算術的性質、特に無理数度や超越度の研究であった.これに関連し3年間にわたって海外共同研究者のG.Rhin、F.Beukers、L.Habsieger各教授を招聘し研究討論を行い活発な意見交換を行うことができた.Gaussの超幾何関数に関しては、その対数微分に対する(n, n-1)Pade近似を、M.Huttner教授とともにexplicitに与えた.数値的な応用については今後の課題である.またかなり強いdiophantus条件を持つ無理数型の概念を導入し、無理数型になりうる関数形を決定し、かつ常にその型を無理数型に持つ実数が非可算個存在するという基本問題を解決した.一般に与えられた実数の無理数型を決定するのは困難な問題であるが、特殊なFredholm型の有理点での値に対してはその型を決定することができた.一方、(3/2)^nの小数部分の研究からは、Ridoutの定理、Mahler数の存在問題、Pisot数へと考察が拡張していったが、有意の結果を得るには至っていない.今後の研究課題である.本研究に関連して各研究分担者は次の結果を得た.齊藤裕は、ある条件下のもとで概均質ベクトル空間のゼータ関数の収束性および代数的明示公式を証明した.永田誠は、SiegelのG関数およびG作用素に関連する多点Pade近似を考察し、G関数の有理値に関する密度評価を得た.桂田昌紀は、あるq級数の漸近展開と奇数点におけるゼータ関数値に関するRamanujanの公式との関係を研究した.天羽雅昭は、ある種の多変数関数方程式の解の値の有理数体上の一次独立性を考察し、その応用としてBezivinの結果を改良した.一般超幾何関数などの特殊関数値に対する算術的性質の研究に関して、ほとんどすべてのパラメータにおける超幾何関数の対数微分に対するPade近似を、Lille大学のMarc Huttner教授との共同研究によって得ることができた.この結果をさらに進展させるべく、一般超幾何関数への拡張、および算術的な応用を目下研究中である.その証明に用いた方法は、モノドロミー理論を用いない初等的方法であり、それだけに一般化がしやすいと考えられるが、一方でモノドロミー理論の専門家のHuttner教授は、Hremiteの古いアイデアに基づき、興味あるアーベル積分系に対するPade近似を最近得ており、これも有力な方法であることが実証された.本研究代表者は最近、「比較的大きな共通因数をすでに持つ場合のPade近似はなかなか改良するのが難しい」という壁を打破する可能性のある、ある非常におもしろい着想を得た.特にWaringの問題と関連しで、(3/2)"の小数部の研究に対する応用が期待できるし、それは代表者の最近の結果である「複素2次元サドル法」の典型的な応用にもなると考えられる.またEulerの定数に対しては、新しい有理数の級数表示を与えることができた.これから算術的性質が導けるかどうか、さらなる考察が必要である.各分担者は、連絡を密に取り合いながら、それぞれの役割分担に応じて本計画に従事している.特に永田は最近、本田-Katzの定理との類推から、G関数の大域的な多項式近似がある意味においてG関数の本質性を表しているのではないかという、非常に興味ある着想のもとに研究を始めている.本研究の目的は、解析的手法を用いた超幾何関数、多重対数関数などの特殊関数の代数点における値の算術的性質、特に無理数度や超越度の研究であった.これに関連し3年間にわたって海外共同研究者のG.Rhin、F.Beukers、L.Habsieger各教授を招聘し研究討論を行い活発な意見交換を行うことができた.Gaussの超幾何関数に関しては、その対数微分に対する(n, n-1)Pade近似を、M.Huttner教授とともにexplicitに与えた.数値的な応用については今後の課題である.またかなり強いdiophantus条件を持つ無理数型の概念を導入し、無理数型になりうる関数形を決定し、かつ常にその型を無理数型に持つ実数が非可算個存在するという基本問題を解決した.一般に与えられた実数の無理数型を決定するのは困難な問題であるが、特殊なFredholm型の有理点での値に対してはその型を決定することができた.一方、(3/2)^nの小数部分の研究からは、Ridoutの定理、Mahler数の存在問題、Pisot数へと考察が拡張していったが、有意の結果を得るには至っていない.今後の研究課題である.本研究に関連して各研究分担者は次の結果を得た.齊藤裕は、ある条件下のもとで概均質ベクトル空間のゼータ関数の収束性および代数的明示公式を証明した.永田誠は、SiegelのG関数およびG作用素に関連する多点Pade近似を考察し、G関数の有理値に関する密度評価を得た.桂田昌紀は、あるq級数の漸近展開と奇数点におけるゼータ関数値に関するRamanujanの公式との関係を研究した.天羽雅昭は、ある種の多変数関数方程式の解の値の有理数体上の一次独立性を考察し、その応用としてBezivinの結果を改良した.本研究計画の中で、まず特殊関数値の算術的性質の研究について、若干の進展があった.解析数論の専門家である近畿大学 | KAKENHI-PROJECT-12440037 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12440037 |
超越数の研究(解析学を中心として) | 九州工学部の金光滋教授から、研究中のオイラーの定数に対する新しい有理級数表示に、古くから知られていた一般ベルヌーイ数が深く関係しているとの指摘をもらい、現在さらに研究を続行している.金光教授との共同研究の形でより重要な成果をあげたい.オイラーの定数の無理数性の研究に附随して、さまざまな関連する問題を追求することになる.次に、長年取り組んでいる(3/2)^nの小数部に関するマーラーの問題、すなわち小数部の下からのeffectiveな評価を与える問題であるが、ineffectiveなRidoutの結果から、多変数多項式がキーポイントになると示唆される.この方向で目下研究を進めている.と同時に一変数多項式のPade近似からのアプローチも組織的に探究している.Beukers-Dubitsukusの結果を改良することが、第一目標である.さらに本年度は海外共同研究者の一人であるGeorges Rhin教授を、2001年11月21日から同年12月7日にわたり招聘した.無理数度、特にリーマンのゼータ関数値の算術的性質に関する最近の研究結果の情報を得るとともに、一次独立度に関する問題を共同で研究することに合意し、現在取り組んでいるところである.これは、Rhin-Violaによる群論的アプローチと本研究代表者によって得られた複素二次元鞍部点法を結び付ける新しい研究方法であり、目下精力的に研究を押し進めている.本年度は海外共同研究者の一人であるFritz Beukers教授を、2002年10月13日から10月26日にわたり招聘した.Beukers教授は、本研究計画の一部である(3/2)^nの小数部分に関する研究において、Pade近似の方法を用いて、画期的な評価を得ることに成功しており、多変数のPade近似に関する問題や、polylogarithm関数や超幾何関数の近似問題について掘り下げた議論ができたことは、今後の研究に向けて有意義であった.また、昨年度に引き続き、Georges Rhin教授とのpolylogarithm関数の特殊値の数論的性質に関する共同研究を続けている.一方、Eulerの定数に関する研究では、引き続き一般Bernoulli数との関係を見い出すべく研究を押し進めている.本年度は、慶応義塾大学における超越数論セミナーに積極的に参加し、多くの知見と、研究分担者である天羽、桂田両氏と研究討論をすることができた.特に、天羽氏による、Fredholm型級数の特殊値の無理数度に関する研究に関連して、一般に無理数型の概念を導入し、どのような条件下で与えられた無理数型を持つ数が存在するのか、という基本的問題を連分数論を用いて解決することができた.また、Ridoutの定理に関連して、除去関数の概念を導入し、metricな性質を研究し、以前のFraenkelの結果を一般化した.現在、これらの論文を執筆中である.本年度は海外共同研究者の一人であるLaurentHabsieger教授を、2003年9月23日から10月4日にわたり招聘した.Habsieger教授は、組み合せ論の専門家であると同時に、本研究計画の一部であるPade近似や(3/2)^nの小数部に関する研究において指導的役割を果たしている.今回、πやπ/ | KAKENHI-PROJECT-12440037 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12440037 |
ドイツ中世盛期・後期における城塞支配権の発展の歴史的意義に関する研究 | 本研究は、1.ドイツ中世盛期の城塞支配権がフランスのシャテルニーと同質的なバン権力であることを多数の城塞を例としつつ究明し、またこの時期をドイツのシャテルニー段階として措定しうること、2.荘園制→城塞支配権=シャテルニー→領国の地方行政組織=アムト制という発展線をなすことを究明する。また究極的な研究目的は、軍事権力、バン権力、荘園支配権等の統合体たる城塞支配権は荘園制の構造転換に対処するために荘園制の再編成を推進すると同時に、新たな構成体たる領国の地方行政組織の基礎をなすという、無視しえない重要な歴史的役割を果たしたこと、つまり歴史における起動力の意味をもつことを究明することである。本研究は、1.ドイツ中世盛期の城塞支配権がフランスのシャテルニーと同質的なバン権力であることを多数の城塞を例としつつ究明し、またこの時期をドイツのシャテルニー段階として措定しうること、2.荘園制→城塞支配権=シャテルニー→領国の地方行政組織=アムト制という発展線をなすことを究明する。また究極的な研究目的は、軍事権力、バン権力、荘園支配権等の統合体たる城塞支配権は荘園制の構造転換に対処するために荘園制の再編成を推進すると同時に、新たな構成体たる領国の地方行政組織の基礎をなすという、無視しえない重要な歴史的役割を果たしたこと、つまり歴史における起動力の意味をもつことを究明することである。 | KAKENHI-PROJECT-19K01246 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K01246 |
脱離基の活性化に基づく不斉求核置換反応の開発 | 【背景】求核触媒は求電子性の基質に対する求核攻撃により、基質-触媒間に共有結合を形成した中間体を経て作用を発現する触媒であり、アシル化などのsp2炭素上での不斉求核触媒を利用した置換反応は、現代の有機合成化学において確立された不斉誘起方法論の一つである。一方、sp3炭素上での置換反応に関しては、ヨウ化物イオンが求核触媒として古くから利用されているものの、不斉反応への展開を可能とする一般的な方法論は存在しない。我々は前年度の研究の過程において、トリクロロアセトイミデートがキラルリン酸と反応し、リン酸エステルを与える副反応を発見している。そこで、系中で生じるリン酸エステルをキラル求電子剤として利用することが可能ならば、リン酸を不斉求核触媒として使用したsp3炭素での不斉置換反応が実現可能であると考えた。【結果】パラメトキシベンジル(PMB)基が温和な酸化条件にて官能基共存性良く除去可能であり、全合成においても汎用されている点を考慮し、PMBトリクロロアセトイミデートを選択し、アルコールのPMB化による速度論的光学分割にて本方法論の妥当性を検証することとした。種々のアルコールを検討した結果、リン酸PMBエステルは窒素原子をノシル基などの電子求引性基で保護したアミノアルコール類に対して高い反応性を示すことが明らかとなった。詳細に不斉反応条件を検討したところ、最大s値32にてアミノアルコール類の速度論的光学分割を達成した。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。本年度はキラルリン酸による脱離基の活性化に基づく分子内不斉SN2'反応の詳細な検討を行った。5員環形成反応において、トシルアミドを求核部位として有する基質では反応性が低いという問題があったため、まずはじめに窒素原子の保護基の検討を行った。その結果、保護基の電子求引性と生成物の収率・エナンチオ選択性には正の相関関係があることが明らかとなり、強力な電子求引基である2,4-ジニトロベンゼンスルホニル基を用いた場合に最も良好な結果が得られた。この結果は触媒が酸として脱離基を活性化するのみならず、塩基として求核部位をも活性化していることを示唆する。続いてビナフチルリン酸触媒のスクリーニングを行った。その結果、BINOL骨格の3,3'位の置換基としては9-アントラセニル基が有効であり、とりわけアントラセンの10位にメシチル基を有する触媒が最適であった。最適化した条件にて本反応の基質一般性を検討したところ、5員環形成においては概ね良好な結果は得られたものの、6員環形成反応は全く進行しなかった。副生成物を精査したところ、興味深いことにリン酸触媒と基質との置換反応で生成したと考えられるリン酸エステルを単離した。つまり比較的遅い6員環形成反応においては、環化反応よりもリン酸触媒との置換反応が優先して進行し、触媒が不活性化していることを示している。尚、生じたリン酸エステルを同一条件に伏しても目的の環化体は得られなかったことから、リン酸が求核触媒として作用している可能性は除外した。今後はこの予期せぬ副反応を利用し、分子間反応に展開する予定である。【背景】求核触媒は求電子性の基質に対する求核攻撃により、基質-触媒間に共有結合を形成した中間体を経て作用を発現する触媒であり、アシル化などのsp2炭素上での不斉求核触媒を利用した置換反応は、現代の有機合成化学において確立された不斉誘起方法論の一つである。一方、sp3炭素上での置換反応に関しては、ヨウ化物イオンが求核触媒として古くから利用されているものの、不斉反応への展開を可能とする一般的な方法論は存在しない。我々は前年度の研究の過程において、トリクロロアセトイミデートがキラルリン酸と反応し、リン酸エステルを与える副反応を発見している。そこで、系中で生じるリン酸エステルをキラル求電子剤として利用することが可能ならば、リン酸を不斉求核触媒として使用したsp3炭素での不斉置換反応が実現可能であると考えた。【結果】パラメトキシベンジル(PMB)基が温和な酸化条件にて官能基共存性良く除去可能であり、全合成においても汎用されている点を考慮し、PMBトリクロロアセトイミデートを選択し、アルコールのPMB化による速度論的光学分割にて本方法論の妥当性を検証することとした。種々のアルコールを検討した結果、リン酸PMBエステルは窒素原子をノシル基などの電子求引性基で保護したアミノアルコール類に対して高い反応性を示すことが明らかとなった。詳細に不斉反応条件を検討したところ、最大s値32にてアミノアルコール類の速度論的光学分割を達成した。詳細な条件検討を行い、研究成果を論文として纏めることができた。また、研究の途中で予期せぬ副反応を見出した。27年度が最終年度であるため、記入しない。脱離基の活性化に基づく置換反応を分子間へと展開する。具体的にはアルコールの速度論的光学分割や多価アルコールの位置選択的修飾を予定している。前年度に得た、ブレンステッド酸触媒とイミダートとの置換反応によってエステルが生成するという知見をもとに基質・触媒を設計する予定である。27年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-14J07965 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J07965 |
リン酸によるスプライシングとmRNA輸送の制御機構 | 1)スプライシング依存的にmRNAに配置されるEJC構成蛋白Aly/REFは、mRNAの核外輸送に大きな役割を果たしていることが知られている。ところがスプライシングを必要としないintron-less遺伝子から転写されたmRNAの核外輸送にもAly/REFが必要であるという大きなジレンマが存在していた。我々はAly/REFの機能に関して新しい知験を見出し、このジレンマを解決できるモデルを樹立した。2)選択的スプライシングは組織・細胞特異的に制御されているが、その"splicing code"の解明は従来の方法では困難であった。我々は組織特異的および発生段階特異的な選択的スプライシングをモニターできるトランスジェニック線虫を作製し、選択的スプライシングの制御因子を同定することに成功した。3)分裂酵母における構成的スプライシングの分子機構を解明するため、エキソンスキッピングを引き起こす温度感受性変異株ods13を分離し、原因遺伝子の解析を行った結果、SF1-U2AF^<59>-U2AF^<23>複合体によるブランチ部位の初期認識と、遺伝子の転写速度が構成的スプライシングの保証機構に重要であることを解明した。また、分裂酵母mRNA核外輸送変異株の解析から、一部のmRNA分子種に関しては核小体が核外輸送に重要な役割を果たしていることを明らかにし、スプライシングとmRNA核外輸送の分子機構解明に貢献した。1)スプライシング依存的にmRNAに配置されるEJC構成蛋白Aly/REFは、mRNAの核外輸送に大きな役割を果たしていることが知られている。ところがスプライシングを必要としないintron-less遺伝子から転写されたmRNAの核外輸送にもAly/REFが必要であるという大きなジレンマが存在していた。我々はAly/REFの機能に関して新しい知験を見出し、このジレンマを解決できるモデルを樹立した。2)選択的スプライシングは組織・細胞特異的に制御されているが、その"splicing code"の解明は従来の方法では困難であった。我々は組織特異的および発生段階特異的な選択的スプライシングをモニターできるトランスジェニック線虫を作製し、選択的スプライシングの制御因子を同定することに成功した。3)分裂酵母における構成的スプライシングの分子機構を解明するため、エキソンスキッピングを引き起こす温度感受性変異株ods13を分離し、原因遺伝子の解析を行った結果、SF1-U2AF^<59>-U2AF^<23>複合体によるブランチ部位の初期認識と、遺伝子の転写速度が構成的スプライシングの保証機構に重要であることを解明した。また、分裂酵母mRNA核外輸送変異株の解析から、一部のmRNA分子種に関しては核小体が核外輸送に重要な役割を果たしていることを明らかにし、スプライシングとmRNA核外輸送の分子機構解明に貢献した。研究目的初期発生において、転写制御のみならず、mRNAのプロセシングや輸送などRNA情報発現系の制御も極めて重要な役割を担っていると考えられる。高次神経系においても、神経細胞の興奮に伴って変化するスプライシングパターンや、シナプスへ動くRNAが観察されているが、その分子機構や生理的意義は不明のままである。すなわち、こうしたRNA情報発現系の時空間ネットワークが、細胞外からどのような分子機構で制御されているのかは、ほとんど未解明のままである。それゆえ本研究では、mRNAプロセシングや動くRNAをシグナル制御する新しいリン酸化酵素カスケードを同定し、RNA情報発現系の時空間ネットワーク制御系を明らかにすることを目指し、SC35, SF2/ASFなどのRS蛋白をリン酸化する酵素群、すなわちClk1, Clk2, Clk3, Clk4, SRPK1, SRPK2, hPRP4などの活性制御機構と基質蛋白の同定を試みている。一連の低分子化合物のスクリーニングの結果、Clk1及びClk4とSRPK1をそれぞれ特異的に阻害する化合物が特定できた。これらの特異的阻害剤や変異体を用いて、Clk1, Clk4, SRPK1, hPRP4などがmRNAプロセシングやmRNA輸送過程で果たす役割を解析中である。また発生などでこれらのリン酸化酵素が果たす役割についても、線虫やアフリカツメガエルを用いて検討中である。転写反応は転写調節因子のSer/Thr/Tyrのリン酸化によって制御されていることが、判明しつつあるが、RNA processingの段階においても、リン酸化反応がRNA結合蛋白群の様々な活性を調節していると予想される。我々は最近、SF2/ASFなどSR蛋白と呼ばれるRNA結合蛋白のSer基をリン酸化する。酵素群に注目し、それらの機能とシグナル制御機構を追求している。SF2/ASFをリン酸化する酵素活性を調べてみると、CDC2、SRPK1&2、CLK1-4、PRP4などがリン酸化する。これらの酵素のkinase domainのアミノ酸配列を比較すると互いに類似性が高く、CGMCファミリー(CDK, GSk-3,MAPK, CLKの頭文字をとってこうよばれている)に属することが判明した。CDK, GSk-3,MAPKなどが細胞内の調節機構として重要な意義を有することが明らかとなりつつあるのと対照的に、CLKやSRPKの機能は全く不明である。我々は、これらのリン酸化酵素がRNA processingの調節に中心的役割を果たすと考え、生化学的解析、遺伝子破壊実験や特異的阻害剤探索などによりその機能の一端を解明しつつある。特に、CLKに関しては、特異的な合成阻害剤TG003が見つかった。 | KAKENHI-PROJECT-14035102 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14035102 |
リン酸によるスプライシングとmRNA輸送の制御機構 | この特異的阻害剤を用いることにより、Clk自身やアデノウイルスElA遺伝子の選択的スプライシングパターンを変えることができる。アフリカツメガエル初期胚にClkを過剰発現させると、重度の形態異常、発生遅延が観察されたが、TG003存在下ではその発生異常が抑制され正常化した。このことはClk依存的な選択的スプライシングの抑制が、正常発生過程にとって必須であることを示唆している。今後、発生過程で選択的スプライシングに関わるシグナル制御機構を解明してゆく予定である。初期発生において、転写制御のみならず、mRNAのプロセシングや輸送の制御も極めて重要な役割を担っていると考えられる。高次神経系においても、神経細胞の興奮に伴ってスプライシングパターンが変化したり、シナプスへ特定のRNAが輸送される現象が観察されているが、その分子機構や生理的意義は不明のままである。リン酸化などの蛋白修飾反応は、転写過程だけでなくmRNAプロセシングや輸送のシグナル制御過程でも重要な役割を果たしていると想定される。ヒトゲノムには現在約700個のRNA結合蛋白質が知られている。我々は特にSRタンパク質およびそのリン酸化制御に着目し、線虫やウイルスを標的に生物学的意義を求めた。SR蛋白質ファミリーはSer-Arg反復配列からなるRSドメインを共通に持ち、このRSドメインのリン酸化は、SRPK、PRP4、Clk等の特定のキナーゼが行う。Clkによるスプライシング制御機構を解析するために、化合物ライブラリーをスクリーニングし、Clk1/StyとClk4を特異的に阻害する化合物TG003を得た。このTG003は試験管内でのSF2/ASF依存的なスプライシングを阻害した。また、細胞内でもSRタンパク質のリン酸化レベルを低下させ、核スペックルの解離を抑制し、Clk1/Sty依存的な選択的スプライシングを抑制した。Clk活性亢進によりスプライシング異常や発生異常が惹起されることから、TG003はそうしたスプライシング異常に起因する疾患に治療薬となる可能性があり、現在、海外の複数の研究グループと共同研究が進行中である。また、隣接するエキソン同士を順次連結する秩序だったスプライシングの分子機構を解明するため、分裂酵母においてエキソンスキッピングを引き起こす変異株を新規スクリーニング系により2種類(ods1,2と命名)分離した。それらの原因遺伝子はRSドメインをもつRNA結合蛋白質U2AF^<59>及びU2AF^<23>をコードしていた。ヘテロ二量体を形成するこれら2種類の因子によるブランチ部位認識がイントロンの認識と順序だったスプライシングに必須であることが示された。1)スプライシング依存的にmRNAに配置されるEJC構成蛋白Aly/REFは、mRNAの核外輸送に大きな役割を果たしていることが知られている。ところがスプライシングを必要としないintron- | KAKENHI-PROJECT-14035102 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14035102 |
パンコムギの異種植物との交雑親和性に関与する遺伝子Kr1の分子的解析 | パンコムギはイネ,トウモロコシと共に世界の3大穀物の一つである.パンコムギの品種改良のためにライムギ属やエギロープス属等の近縁野生植物の有用遺伝子が導入され,耐寒性,病害虫抵抗性,優良なタンパク質といった形質をもつ品種が育成されてきた.しかし,有用遺伝子の導入にあたり,これらの近縁植物とパンコムギとの交雑の難易が問題となってきた.パンコムギのライムギとの交雑親和性は,パンコムギの第5同祖群染色体に座乗するKr遺伝子群に制御されている.Kr遺伝子群はパンコムギの柱頭および子房内で発現して,ライムギの花粉管の柱頭への侵入および伸長を阻害している.本研究は,Kr遺伝子の構造と機能を解明して交雑親和性のメカニズムを明らかにするため,Kr1遺伝子に対応するDNA断片を単離し,クローニングするとともにその塩基配列を決定することを試みたものである.材料として,ライムギとの交雑親和性の高いパンコムギ品種Chinese Spring(遺伝子型kr1)に交雑親和性の低い品種Mara(Kr1)の5B染色体を置換した系統より育成された組換え近交系20系統を用いた.開花期に雌蕊を採取し,交雑親和性の高い系統と低い系統に分け,それぞれのグループの雌蕊をバルクしてmRNAを単離した.逆転写によりcDNAを合成しDD-RAPD法およびDD-AFLP法により多型の検出を試みた.その結果,DD-RAPD法では再現性に問題があり,信頼できる結果は得られなかった.DD-AFLP法の場合,1723のプライマーペアで解析を行った結果,Kr1遺伝子をもつ系統に特異的なcDNA断片を62検出した.このうち,31断片をゲルより回収し,クローニングを行ったところ,24のクローンが得られた.それらについて塩基配列を決定し,相同性検索を行ったところ,シロイヌナズナの因子制御タンパク質,イネのシステイン分解酵素前駆タンパク質と高い相同性を示した.Kr遺伝子は外来の花粉粒を認識し,その花粉管の伸長を阻害している.これらの遺伝子はこの一連のプロセスに関与していることが示唆される.今後さらに,検出された多型断片をノーザン解析し,雌蕊での特異的な発現を検証する.パンコムギはイネ,トウモロコシと共に世界の3大穀物の一つである.パンコムギの品種改良のためにライムギ属やエギロープス属等の近縁野生植物の有用遺伝子が導入され,耐寒性,病害虫抵抗性,優良なタンパク質といった形質をもつ品種が育成されてきた.しかし,有用遺伝子の導入にあたり,これらの近縁植物とパンコムギとの交雑の難易が問題となってきた.パンコムギのライムギとの交雑親和性は,パンコムギの第5同祖群染色体に座乗するKr遺伝子群に制御されている.Kr遺伝子群はパンコムギの柱頭および子房内で発現して,ライムギの花粉管の柱頭への侵入および伸長を阻害している.本研究は,Kr遺伝子の構造と機能を解明して交雑親和性のメカニズムを明らかにするため,Kr1遺伝子に対応するDNA断片を単離し,クローニングするとともにその塩基配列を決定することを試みたものである.材料として,ライムギとの交雑親和性の高いパンコムギ品種Chinese Spring(遺伝子型kr1)に交雑親和性の低い品種Mara(Kr1)の5B染色体を置換した系統より育成された組換え近交系20系統を用いた.開花期に雌蕊を採取し,交雑親和性の高い系統と低い系統に分け,それぞれのグループの雌蕊をバルクしてmRNAを単離した.逆転写によりcDNAを合成しDD-RAPD法およびDD-AFLP法により多型の検出を試みた.その結果,DD-RAPD法では再現性に問題があり,信頼できる結果は得られなかった.DD-AFLP法の場合,1723のプライマーペアで解析を行った結果,Kr1遺伝子をもつ系統に特異的なcDNA断片を62検出した.このうち,31断片をゲルより回収し,クローニングを行ったところ,24のクローンが得られた.それらについて塩基配列を決定し,相同性検索を行ったところ,シロイヌナズナの因子制御タンパク質,イネのシステイン分解酵素前駆タンパク質と高い相同性を示した.Kr遺伝子は外来の花粉粒を認識し,その花粉管の伸長を阻害している.これらの遺伝子はこの一連のプロセスに関与していることが示唆される.今後さらに,検出された多型断片をノーザン解析し,雌蕊での特異的な発現を検証する.本研究は、パンコムギのもつ近縁異種植物との交雑親和性に関与する遺伝子の一つであるKr1について、ディファレンシャル・ディスプレイ法(DD法)により、cDNAを合成し、塩基配列の特性からその機能や同祖遺伝子間の変異の特徴を明らかにしようとするものである。平成12年度は、Kr1遺伝子の座乗する5B染色体に関する組換え近交系の育成と、既存の組換え近交系を利用したDD法によるcDNAの合成を目的に研究を行った。組換え近交系の育成:昨年までに品種Chinese Spring(CS)とCSの5B染色体を品種Hopeの5B染色体に置換した系統との交雑F1を花粉親として、CSモノソーミック5B系統に交配し、その子孫から2n=41のモノソーミック個体を選抜した。今年度は、これらのモノソーミック個体を自殖した後代から2n=42のダイソーミック個体を選抜した。47系統各5個体ずつ播種して染色体を調査し、その中から30系統の近交系を得ることができた。 | KAKENHI-PROJECT-12660003 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12660003 |
パンコムギの異種植物との交雑親和性に関与する遺伝子Kr1の分子的解析 | この操作によって、5B染色体に関してCSとHopeの遺伝的構成が平均して50%であることが期待される近交系が育成された。DD法によるcDNAの合成:品種Maraの5B染色体に関する組換え近交系18系統にライムギを交配したところ9系統が劣勢のkr1を、7系統が優性のKr1をもつことが判明し、2系統が不明であった。これらの系統を優性と劣勢の遺伝子を持つグループに分け、それらの開花期の雌蕊をバルクしてRNAの抽出を行った。各々からmRNAの抽出を行い、逆転写によりcDNAを合成し、12塩基の任意プライマーを用いて多型の有無を検出しているところである。本研究は、パンコムギのもつ近縁異種植物との交雑親和性に関与する遺伝子の一つであるKr1について、ディファレンシャル・ディスプレイ法(DD法)により、cDNAを合成し、塩基配列の特性からその機能や同祖遺伝子間の変異の特徴を明らかにしようとするものである。平成13年度は、Kr1遺伝子の座乗する5B染色体に関する組換え近交系を育成し、それぞれの系統のライ麦との交雑親和性の有無を検定した。また、組換え近交系を利用したDD法によるcDNAバンドを多数えることを目的に研究を行った。1)組換え近交系の育成と交雑親和性検定:Hopeの5B染色体に由来する新たなくみ買え近交系統を30系統育成した。そのうち21系統についてライ麦との交雑親和性を検定した。交雑親和性が60%以上のものが6系統、20%60%の中間的な系統が9系統、20%以下のものが6系統と分離し、明確な境界がなかった。さらに、詳細に検定する必要がある。2)ライムギとの交雑親和性の高いパンコムギ品種Chinese Springに交雑親和性の低い品種Maraの5B染色体を置換した系統と、Chinese Springとを交雑したF1に由来する組換え近交系統18系統を用いて、雌蕊からmRNAを抽出して交雑親和性の高い系統に特有のcDNAバンドを多数得た。これらを再増幅してクローニングし、シークエンスを試みたが、目的とするKr遺伝子に対応すると思われるcDNAを得ることができていない。さらに、クローン数を増やしているところである。パンコムギはイネ、トウモロコシとともに世界の3大穀物の一つである。パンコムギの品種改良のためにライムギ属やエギロープス属等の近縁野生植物の有用遺伝子が導入され、耐寒性、病害虫抵抗性、優良なタンパク質といった形質を持った品種が育成されてきた。しかし、有用遺伝子の導入にあたり、これらの近縁植物とパンコムギとの交雑の難易が問題となってきた。パンコムギのライムギとの交雑親和性は、パンコムギの第5同祖群染色体に座乗するKr遺伝子群に制御されている。Kr遺伝子群はパンコムギの柱頭および子房内で発現して、ライムギの花粉管の柱頭への侵入および伸長を阻害している。本研究は、Kr遺伝子の構造と機能を解明して交雑親和性のメカニズムを明らかにするため、Kr1遺伝子に対応するDNA断片を単離し、クローニングするとともにその塩基配列を決定することを試みたものである。材料として、ライムギとの交雑親和性の高いパンコムギ品種Chinese Spring(遺伝子型kr1)に交雑親和性の低い品種Mara(Kr1)の5B染色体を置換した系統より育成された組換え近交系20系統を用いた。開花期に雌蕊を採取し、交雑親和性の高い系統と低い系統に分け、それぞれのグループの雌蕊をバルクしてmRNAを単離した。逆転写によりcDNAを合成しDD-RAPD法およびDD-AFLP法により多型の検出を試みた。 | KAKENHI-PROJECT-12660003 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12660003 |
マルチチャネル通信を利用した屋内BLE, ZigBee測位の精度向上に関する研究 | 本研究は,BLE(Bluetooth Low Energy)やZigBee(IEEE 802.15.4)などの省電力無線通信技術を用いた屋内測位精度の向上を目的としている.BLEやZigBeeなどの省電力無線通信技術は帯域幅の狭い通信方式であり,屋内環境のような壁や天井などで複雑に反射した電波が入り交じるマルチパス環境においては通信周波数毎に受信特性が大きく変化する「周波数選択性フェージング」の影響を受ける.これを利用し,本研究では無線通信の複数のチャネルで測定した受信信号強度(RSS)を用いて測位精度を向上させる測位方式を提案している.チャネルの切り替えには送受信機間での同期が必須であり通信オーバーヘッドが大きくなることから,WiFiの広帯域信号を複数のZigBeeチャネルで検出してそのRSSから測位を行う方式を開発した.WiFi信号の帯域幅は20MHzあるのに対してZigBeeの帯域幅は2MHzであり,チャネルの間隔を考慮しても1つのWiFiチャネルは4つのZigBeeチャネルと重なっている.これを利用して,同一のWiFi APが送信した信号を複数のZigBeeチャネルで検出してそのRSSを測定することでWiFiチャネル内での信号強度の差を特徴量として取り入れ,測位精度を向上させる.ZigBeeチャネルの切り替えには無線回路の再起動のために一定の時間を要することから,複数のZigBeeチャネルで同一のWiFi信号を測定することはできない.WiFi APの送信するビーコン信号と自律的に同期を取りながら同一のWiFi APから送信された信号のRSSを複数ZigBeeチャネルで測定する技術を開発した.少数のZigBeeセンサノードを用いて実証評価を行った結果,1つのZigBeeチャネルで測定したRSSを用いる場合と比べて測位精度を約15%向上できることを確認した.本研究は異なる無線通信方式の周波数帯域幅の差を利用して測位精度を向上させる技術の開発を行うものである.通信方式の異なる無線機間でのある種の通信を行う技術を開発した上で受信信号強度を測定し,これを用いて測位を行う.当初の予定では初年度は2.4GHz帯を利用するZigBeeノードを用いた測位方式の基盤技術を確立することとなっており,この目標は達成されていることからおおよそ当初の計画通りに進展していると言える.当初計画通り,BLE(Bluetooth Low Energy)などを用いた方式への応用を進める.BLEではチャネルを制御することが困難であることを考慮し,正確なチャネル制御を伴わない形での測位精度向上を目指す.また,BLEのようにチャネルを順次切り替える方式では異種無線を用いずとも疑似的な広帯域信号を得ることができることに着目し,前年度に開発した技術をBLE同士での信号強度測定を利用した測位に応用することも目指す.本研究は,BLE(Bluetooth Low Energy)やZigBee(IEEE 802.15.4)などの省電力無線通信技術を用いた屋内測位精度の向上を目的としている.BLEやZigBeeなどの省電力無線通信技術は帯域幅の狭い通信方式であり,屋内環境のような壁や天井などで複雑に反射した電波が入り交じるマルチパス環境においては通信周波数毎に受信特性が大きく変化する「周波数選択性フェージング」の影響を受ける.これを利用し,本研究では無線通信の複数のチャネルで測定した受信信号強度(RSS)を用いて測位精度を向上させる測位方式を提案している.チャネルの切り替えには送受信機間での同期が必須であり通信オーバーヘッドが大きくなることから,WiFiの広帯域信号を複数のZigBeeチャネルで検出してそのRSSから測位を行う方式を開発した.WiFi信号の帯域幅は20MHzあるのに対してZigBeeの帯域幅は2MHzであり,チャネルの間隔を考慮しても1つのWiFiチャネルは4つのZigBeeチャネルと重なっている.これを利用して,同一のWiFi APが送信した信号を複数のZigBeeチャネルで検出してそのRSSを測定することでWiFiチャネル内での信号強度の差を特徴量として取り入れ,測位精度を向上させる.ZigBeeチャネルの切り替えには無線回路の再起動のために一定の時間を要することから,複数のZigBeeチャネルで同一のWiFi信号を測定することはできない.WiFi APの送信するビーコン信号と自律的に同期を取りながら同一のWiFi APから送信された信号のRSSを複数ZigBeeチャネルで測定する技術を開発した.少数のZigBeeセンサノードを用いて実証評価を行った結果,1つのZigBeeチャネルで測定したRSSを用いる場合と比べて測位精度を約15%向上できることを確認した.本研究は異なる無線通信方式の周波数帯域幅の差を利用して測位精度を向上させる技術の開発を行うものである.通信方式の異なる無線機間でのある種の通信を行う技術を開発した上で受信信号強度を測定し,これを用いて測位を行う.当初の予定では初年度は2.4GHz帯を利用するZigBeeノードを用いた測位方式の基盤技術を確立することとなっており,この目標は達成されていることからおおよそ当初の計画通りに進展していると言える.当初計画通り,BLE(Bluetooth Low Energy)などを用いた方式への応用を進める.BLEではチャネルを制御することが困難であることを考慮し,正確なチャネル制御を伴わない形での測位精度向上を目指す.また,BLEのようにチャネルを順次切り替える方式では異種無線を用いずとも疑似的な広帯域信号を得ることができることに着目し,前年度に開発した技術をBLE同士での信号強度測定を利用した測位に応用することも目指す.H30年度はプロトタイプ実装を用いた中規模な実証評価を行う予定であったが,提案の効果を確認しやすいマルチパス環境としてまずは小規模な場所を選択して実験を行った.少数のノードでの実験を行い,中規模な実験は次年度以降に持ち越すこととしたため次年度への繰り越しが発生した. | KAKENHI-PROJECT-18K18041 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K18041 |
マルチチャネル通信を利用した屋内BLE, ZigBee測位の精度向上に関する研究 | また,投稿論文の査読の大幅な遅れに伴って採録決定後の支払いが年度をまたがってしまったために次年度への繰り越しが発生した. | KAKENHI-PROJECT-18K18041 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K18041 |
細胞核・クロマチン構造のダイナミクスと遺伝子制御 | (1)遺伝子活性化に働くクロマチン構造と動態の解析:遺伝子発現のない状態から転写活性化が起こるモデル系として、ゼブラフィッシュ胚性ゲノム活性化(ZGA; zygotic genome activation)に着目した。本年度は、1024細胞期の胚を出発材料としてChIL(chromatin integration labeling)法の条件検討を行った。ChIL法によるエピゲノム解析のためには、サンプルの固定条件をマイルドに行う必要があるが、ゼブラフィッシュ胚は脆いため通常の条件では胚の形態を維持することが難しいことが分かった。そこで、ゼブラフィッシュ胚の形態を維持しつつChIL法に適用可能な固定条件を検討することで、ChILプローブを用いた染色を行うことが可能となった。(2)遺伝子発現変動に働くクロマチン構造の解析:同一細胞内での遺伝子活性化と抑制化を引き起こすクロマチンポテンシャルの変動を解析するために、マウスES細胞を用いて分化特異的遺伝子と未分化維持遺伝子の単一遺伝子座の解析に着手した。CRISPR/dCas9とMS2システムを組み合わせたROLEXシステムによりNanog遺伝子が標識された細胞にリン酸化型RNAポリメラーゼIIを認識するMintbody(Modification-specific intracellular antibody)の発現を試みた。トランスフェクションの効率が悪かったため、ROLEXシステムに必要な3種類のsgRNAが同時に発現するようなコンストラクトを作製した。(3)遺伝子発現安定化状態でのクロマチン構造と動態の解析:RNAP2-Ser2ph-MintbodyやH3K27me3-Mintbodyを発現する細胞株を作製した。これらの細胞を用いて分化前後でクロマチン構造に関する解析に着手した。ゼブラフィッシュのChIL解析に向けての条件検討が進んだほか、ES細胞や分化誘導可能な細胞へのMintbodyの発現も着実に進んでいる。引き続き、ゼブラフィッシュの解析、培養細胞系での解析を進めるとともに、マウス個体についての解析も行っていく。(1)遺伝子活性化に働くクロマチン構造と動態の解析:遺伝子発現のない状態から転写活性化が起こるモデル系として、ゼブラフィッシュ胚性ゲノム活性化(ZGA; zygotic genome activation)に着目した。本年度は、1024細胞期の胚を出発材料としてChIL(chromatin integration labeling)法の条件検討を行った。ChIL法によるエピゲノム解析のためには、サンプルの固定条件をマイルドに行う必要があるが、ゼブラフィッシュ胚は脆いため通常の条件では胚の形態を維持することが難しいことが分かった。そこで、ゼブラフィッシュ胚の形態を維持しつつChIL法に適用可能な固定条件を検討することで、ChILプローブを用いた染色を行うことが可能となった。(2)遺伝子発現変動に働くクロマチン構造の解析:同一細胞内での遺伝子活性化と抑制化を引き起こすクロマチンポテンシャルの変動を解析するために、マウスES細胞を用いて分化特異的遺伝子と未分化維持遺伝子の単一遺伝子座の解析に着手した。CRISPR/dCas9とMS2システムを組み合わせたROLEXシステムによりNanog遺伝子が標識された細胞にリン酸化型RNAポリメラーゼIIを認識するMintbody(Modification-specific intracellular antibody)の発現を試みた。トランスフェクションの効率が悪かったため、ROLEXシステムに必要な3種類のsgRNAが同時に発現するようなコンストラクトを作製した。(3)遺伝子発現安定化状態でのクロマチン構造と動態の解析:RNAP2-Ser2ph-MintbodyやH3K27me3-Mintbodyを発現する細胞株を作製した。これらの細胞を用いて分化前後でクロマチン構造に関する解析に着手した。ゼブラフィッシュのChIL解析に向けての条件検討が進んだほか、ES細胞や分化誘導可能な細胞へのMintbodyの発現も着実に進んでいる。引き続き、ゼブラフィッシュの解析、培養細胞系での解析を進めるとともに、マウス個体についての解析も行っていく。 | KAKENHI-PLANNED-18H05527 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-18H05527 |
神経伝達機構に及ぼす磁界の影響と磁界の生体応用への有効性と危険性の解析 | 1.強い変動強磁界はHeLa細胞のCa^<2+>-依存性K^+チャネルを介する細胞内K^+流入を部分的に阻害した。高K^+培養液に置き換えた時、細胞内Ca^<2+>濃度は正常細胞の1.4倍に増加したが、この磁界曝露はこのCa^<2+>増加を完全に抑制した。磁界曝露にも関わらず、イオノマイシンの高K^+液への添加は、対照細胞のレベルにまで増加した。しかし、磁界によるK^+細胞内取込みはイオノマイシン添加によって回復しなかった。このK^+取込みの阻害は細胞表面の電気的性質の変化に関係していると考えられる。2.上記と同じ強い変動磁界はクロマフィン細胞へのアセチルコリン、ブラディキニン(BK)、カフェイン、イオノマイシン、及びタプシガルギンの添加により誘導される一過性の細胞内Ca^<2+>増加を有意に阻害した。また、透過性を増大させた細胞へのイノシトール3燐酸(IP3)の添加は、細胞内Ca^<2+>濃度の一過性の増加を引き起こしたが、この増加は磁界曝露により抑制された。ブラディキニン誘導性の細胞内Ca^<2+>濃度増加は0.5時間の曝磁により阻害されるが、磁界の外で1時間置くとこのCa^<2+>増加が回復した。これらの結果はこの磁界曝露が細胞内小胞体からのCa^<2+>放出を阻害させるが、細胞膜BKレセプターへのBK結合およびIP3生成過程には影響を及ぼさないことが示された。3.生きたHeLa細胞の膜蛋白質の構造における極低周波(ELF)正弦波磁界(50Hz,最大41.7-43.6ガウス)の影響を赤外分光法により測定した。1分間の磁界曝露はアミドIの吸収ピークを低波数域にシフト、またアミドIIの吸収を強く低下させ、さらに1600cm^<-1>付近の吸収を増加させた。これらの結果はELF磁界への曝露は可逆的にpeptide linkageのN-Hinplane bending及びC-N stretching vibrationに影響を及ぼし、細胞膜蛋白質のalpha-helix及びbeta-sheetの二次構造を変化させることを示した。。4.また、ELF磁界(60Hz,最大3mT)の曝露はNGFを添加した褐色細胞種由来PC12細胞の分化をさらに増強させた。1.強い変動強磁界はHeLa細胞のCa^<2+>-依存性K^+チャネルを介する細胞内K^+流入を部分的に阻害した。高K^+培養液に置き換えた時、細胞内Ca^<2+>濃度は正常細胞の1.4倍に増加したが、この磁界曝露はこのCa^<2+>増加を完全に抑制した。磁界曝露にも関わらず、イオノマイシンの高K^+液への添加は、対照細胞のレベルにまで増加した。しかし、磁界によるK^+細胞内取込みはイオノマイシン添加によって回復しなかった。このK^+取込みの阻害は細胞表面の電気的性質の変化に関係していると考えられる。2.上記と同じ強い変動磁界はクロマフィン細胞へのアセチルコリン、ブラディキニン(BK)、カフェイン、イオノマイシン、及びタプシガルギンの添加により誘導される一過性の細胞内Ca^<2+>増加を有意に阻害した。また、透過性を増大させた細胞へのイノシトール3燐酸(IP3)の添加は、細胞内Ca^<2+>濃度の一過性の増加を引き起こしたが、この増加は磁界曝露により抑制された。ブラディキニン誘導性の細胞内Ca^<2+>濃度増加は0.5時間の曝磁により阻害されるが、磁界の外で1時間置くとこのCa^<2+>増加が回復した。これらの結果はこの磁界曝露が細胞内小胞体からのCa^<2+>放出を阻害させるが、細胞膜BKレセプターへのBK結合およびIP3生成過程には影響を及ぼさないことが示された。3.生きたHeLa細胞の膜蛋白質の構造における極低周波(ELF)正弦波磁界(50Hz,最大41.7-43.6ガウス)の影響を赤外分光法により測定した。1分間の磁界曝露はアミドIの吸収ピークを低波数域にシフト、またアミドIIの吸収を強く低下させ、さらに1600cm^<-1>付近の吸収を増加させた。これらの結果はELF磁界への曝露は可逆的にpeptide linkageのN-Hinplane bending及びC-N stretching vibrationに影響を及ぼし、細胞膜蛋白質のalpha-helix及びbeta-sheetの二次構造を変化させることを示した。。4.また、ELF磁界(60Hz,最大3mT)の曝露はNGFを添加した褐色細胞種由来PC12細胞の分化をさらに増強させた。牛副腎髄質細胞およびラット褐色細胞腫由来PC12細胞を用いて下記の結果をえた。1.初期培養した副腎髄質細胞にブラディキニン(BK)を添加すると、細胞内小胞体よりCa^<2+>が放出され、細胞内Ca^<2+>濃度が一過性に増加した。この増加は最大1.7及び1.5Tの変動磁界に2時間曝すと、この増加が完全に抑制され、さらにBK濃度を増加させても回復しなかった。 | KAKENHI-PROJECT-11834009 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11834009 |
神経伝達機構に及ぼす磁界の影響と磁界の生体応用への有効性と危険性の解析 | 2.BK添加によりイノシトール3リン酸(IP_3)の生成が増加するが、この生成は磁界曝露により影響を全く受けなかった。しかし、膜透過性増大試薬を前処理した同細胞にIP3を投与すると著しく細胞内Ca^<2+>濃度が増加した。しかし、磁界曝露はこの増加を有意に抑制した。3.カフェインを両細胞に添加すると、いずれもBK添加時と同様に一過性の細胞内Ca^<2+>濃度が増加がみられたが、磁界の曝露により完全に増加が抑制された。4.膜透過性を増大させたPC12細胞にcyclic ADP-ribose(cADPR)を添加すると、IP_3添加時と同様に著しく細胞内Ca^<2+>濃度が増加したが、磁界曝露により部分的に阻害された。5.この部分的な磁界による阻害は、小胞体のレセプターを介さずに細胞内Ca^<2+>増加を引き起こすイオノマイシンやタプシガルギン等の試薬投与時にも生じた。6.また赤外分光法を用いて、磁界曝露により細胞膜蛋白質の構造や膜表面の電気的性質の変化を示唆するデータをえた。以上の結果より、細胞径や細胞膜の電気的性質から考えると、変動磁界曝露によって細胞外に誘導される電流が細胞膜に影響を及ぼし、さらになんらかの機構を介して細胞内小胞体に影響を及ぼすものと考えられる。牛副腎髄質細胞およびラット褐色細胞種由来PC12細胞を用いて下記の結果を得た。1.初期培養した副腎髄質細胞にアセチルコリン(ACh)を添加すると、著しい細胞内Ca^<2+>濃度の増加が見られた。この時、細胞を最大1.5Tの強い変動磁界に2時間曝してもACh添加による一過性のCa^<2+>増加には有意な影響を及ぼさなかった。しかし、培養液からCa^<2+>を除去しEGTAを加えると、このCa^<2+>増加が曝磁により有意に抑制された。これをさらに詳しく調べるため、ニコチンを曝磁させた細胞に添加し、磁界による影響を調べたが、ニコチンに刺激される細胞内Ca^<2+>増加は影響を受けなかった。またムスカリンと同様にイノシトール3燐酸(IP3)の生成を促進させ、細胞内小胞体からのCa^<2+>放出を誘導するブラディキニン(BK)を用いて、磁界の影響をみた。この時、培養液のCa^<2+>の有無に関わらず、一過性のBKに誘導される細胞内Ca^<2+>増加は有意に抑制された。磁界は、細胞膜を介するCa^<2+>流入には影響せず、細胞内小胞体からのCa^<2+>放出を強く抑制することを示した。2.蛍光抗体等を用いて、磁界曝露により影響を受けると考えられる、細胞膜BKレセプター、細胞内小胞体に存在するリアノジンやIP3のレセプターについて調べた。曝磁細胞ではリアノジンとIP3レセプターについては蛍光強度の低下が、ブラディキニンレセプターには影響がないことが観察された。このことは、小胞体上のレセプターの数あるいはアゴニストに対する親和性の低下があると考えられる。3.アセチルコリン誘導性の細胞内Ca^<2+>濃度増加は、磁界内に置いたシャーレの中心部に接着した細胞よりも周辺部の細胞により強い阻害が見られることより、培養液中に誘導される誘導電流が阻害を及ぼしているものと考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-11834009 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11834009 |
メタボロミクス解析を用いた新規過活動膀胱マーカーの探求 | コントロール群としてIPSS(国際前立腺症状スコア)における尿意切迫感スコア0 or 1かつ夜間排尿回数0 or 1の患者26名、過活動膀胱患者としてIPSSにおける尿意切迫感スコア2以上かつ夜間排尿回数2回以上の患者32名を選定した。それぞれの患者から血液サンプルを回収し、このサンプルにおいてメタボロミクス解析を行った。過活動膀胱患者群において高く検出された物質としては、Tetradecanoic acd, Erucic acidを検出した。これらの物質が過活動膀胱の発症に関与しており、新規の診断バイオマーカーとなる可能性がある。現在、過活動膀胱治療薬としては、主に抗コリン薬とβ3受容体作動薬が用いられている。しかし実際の臨床において、これらの薬剤が無効な患者を経験することも少なくない。その一因として、尿意知覚に関わる情報伝達物質の過剰な放出が過活動膀胱の発症メカニズムのひとつである可能性が示唆されている。そこで、我々は尿意伝達にかかわる情報伝達物質をメタボロミクス解析を用いて、過活動膀胱症状に関わる新たな治療ターゲット/バイオマーカーを探求したいと考えている。従来の過活動膀胱治療が、“hyperactivityの抑制"であるのに対し、“hypersensitivityの抑制"という新しい過活動膀胱治療のコンセプトとなり得ると考えている。H26年度は研究対象となるサンプル患者の選定、サンプルの採取を行っている。当院泌尿器科外来受診患者から、排尿症状、排尿障害治療薬の内服状況とその効果などの聞き取りを行い、また文書にて研究参加の同意の意思を確認した。研究参加に同意を得られた患者から順次サンプルの採取を行っている。現時点で研究対象となりうる患者をおよそ120名選定し、これらの患者からIPSS、OABSS、排尿記録をそれぞれ採取し、前立腺体積測定、残尿測定などを行ない、適合患者の選定を進めている。その中から各基準に適合する患者(1.対照群:頻尿のない患者群2.OAB/BPH治療薬にて頻尿が改善した患者群3.OAB/BPH治療薬にて頻尿が改善しない患者群)を選び、血液サンプル、尿サンプルを採取する予定である。ただ各群20名の登録にはもう少し時間が必要である。症例数が当初予定に到達した時点で順次メタボロミクス解析を行っていく予定である。山梨大学医学部附属病院外来受診患者において同意を得られた患者を対象に血液検体を採取する。対象患者は頻尿を主訴に受診した患者で、IPSS、排尿記録などにて頻尿、尿意切迫感を呈する患者。患者各群は以下の2群に振り分ける。コントロール群としてIPSS(国際前立腺症状スコア)における尿意切迫感スコア0 or 1かつ夜間排尿回数0 or 1の患者26名、過活動膀胱患者としてIPSSにおける尿意切迫感スコア2以上かつ夜間排尿回数2回以上の患者32名を選定した。上記患者の血液サンプルを採取し、メタボロミクス解析を行った。研究成果1年齢コントロール群69.6±3.74歳(64-77歳)OAB群72.9±4.23歳(65-79歳)2IPSSスコア尿意切迫感コントロール群0.42±0.50OAB群2.93±0.87夜間排尿回数コントロール群0.73±0.45OAB群3.06±0.983CE-TOFMS、LC-TOFMSを用いておよそ200種類の血液中の代謝産物の測定を行った。その結果、過活動膀胱患者群において有意に高く検出された物質としては、Tetradecanoic acd(m/z値227.202), Erucic acid(m/z値337.313)を検出した。結論これら二つの物質が過活動膀胱の発症に関与している可能性があり、新規の診断バイオマーカーとなる可能性がある。コントロール群としてIPSS(国際前立腺症状スコア)における尿意切迫感スコア0 or 1かつ夜間排尿回数0 or 1の患者26名、過活動膀胱患者としてIPSSにおける尿意切迫感スコア2以上かつ夜間排尿回数2回以上の患者32名を選定した。それぞれの患者から血液サンプルを回収し、このサンプルにおいてメタボロミクス解析を行った。過活動膀胱患者群において高く検出された物質としては、Tetradecanoic acd, Erucic acidを検出した。これらの物質が過活動膀胱の発症に関与しており、新規の診断バイオマーカーとなる可能性がある。メタボロミクス解析において、各群での有意差がでるには20例程度が必要とされているため、各群20例と設定した。しかし基準に適合する患者の選定に難渋しており、十分な症例数を確保できていない。排尿生理学患者の選定を今後さらに進めていき、十分な症例数の確保に努める。また場合によっては症例の適合基準の変更、簡略化など行い、研究の推進を図ることも考慮している。また少数例であっても予備実験としてメタボロミクス解析を行い、候補となりうる物質、バイオマーカー選定の可能性などを探ってみる方針である。今年度は当初設定したサンプル数よりも少なかったため、サンプル処理、メタボロミクス解析は、1サンプル当たりの金額となるため、サンプル処理、メタボロミクス解析にかかる費用が予定よりも小額となった。次年度は今年度に回収できなかったサンプル分が増加するため、当初予定した額よりも増加する見込みである。現時点ではサンプル数は徐々に増加しており、そのため前年度の繰越金をこの増加分のサンプル回収、解析に使用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-26861263 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26861263 |
磁束量子を利用した量子交流電圧標準の研究 | 単一磁束量子デジタル/アナログ変換器と高精度誘導分圧器を組み合わせた量子交流電圧標準プロトタイプの開発を目指す。デジタル/アナログ変換器の研究においては、歩留まり向上のため回路作製プロセスを高度化し、また高精度が期待される新変調方式を提案した。フィルター等の周辺機器を含む誘導分圧器を作製し、電気標準に応用可能な精度を有することを示した。最終目標のプロトタイプの実現には至らなかったが、量子交流電圧標準実現の見通しをつけることができた。単一磁束量子デジタル/アナログ変換器と高精度誘導分圧器を組み合わせた量子交流電圧標準プロトタイプの開発を目指す。デジタル/アナログ変換器の研究においては、歩留まり向上のため回路作製プロセスを高度化し、また高精度が期待される新変調方式を提案した。フィルター等の周辺機器を含む誘導分圧器を作製し、電気標準に応用可能な精度を有することを示した。最終目標のプロトタイプの実現には至らなかったが、量子交流電圧標準実現の見通しをつけることができた。本研究は、単一磁束量子デジタル/アナログ変換器と誘導分圧器を主構成要素とする量子交流電圧標準のシステムの開発を目標とする。平成20年度には以下の成果を得た。(1)デジタル/アナログ変換器の開発:10ビットデジタル/アナログ変換器を試作し、低速機能試験で完全動作を確認できるチップを得た。しかし、10MHz駆動波形合成実験においては、主として測定システムの不調により、目標とする帯域1kHzの正弦波合成には至らなかった。測定システムの不調は被測定回路の規模が増大し測定電流が著しく増加したことに起因すると考えられるため、平成21年度は測定システムの改造を実施する。また、回路方式の検討においては、バイナリコード入力による現行の変調方式では電圧レベル切り替え時の過渡現象による出力電流の流出のため精度低下のおそれがあることを明らかにした。これを改善するために、高出力電流化した新型出力回路を設計試作し基本動作を確認した。回路作製プロセスに関しては、超電導工学研究所との共同研究を開始し、研究効率向上を図るため、作製プロセス共通化の議論を進めた。(2)誘導分圧器の開発:量子交流電圧標準用誘導分圧器のプロトタイプ一号機を試作した。動作確認のために、市販の高精度発信器の出力を分圧し、ジョセフソン接合アレイを外部変調して発生した振幅10mVの正弦波電圧との比較を行った。誘導分圧器の基本動作を確認し、市販の高精度発信器の出力電圧の振幅安定度は1kHz帯において高々三桁程度であることを示した。誘導分圧器を用いた交流電圧の精密昇圧については、システム全体の方式の検討を行い、周辺回路の設計に着手したが実証実験には至らなかった。本研究は、単一磁束量子デジタル/アナログ変換器と誘導分圧器を主構成要素とする量子交流電圧標準のシステムの開発を目標とする。平成21年度には以下の成果を得た。(1)デジタル/アナログ変換器の開発:前年度の研究で明らかになったデジタル/アナログ変換器の変調方式の問題を抜本的に解決するために、バイナリコード入力方式に代わる1ビット変調方式を検討し、パルス密度変調方式を提案した。具体的には、バイナリコード入力方式で用いるパルス数増倍回路の増倍率を可変にしてサンプリングクロック間隔に発生する磁束量子パルスの数を変えることでパルス密度変調符号を生成し、1ビットの電圧増倍回路アレイに入力する。これにより、出力電圧レベル切り替え時の過渡現象に起因するバイアス電流の負荷への流出を大幅に抑制できる。電気通信大学との共同研究により、2ビット版可変パルス数増倍回路を設計・試作し、正常動作を確認した。超電導工学研究所(SRL)との共同研究による回路作製プロセス共通化に関しては、詳細な検討を重ねて回路プロセスの仕様を決定し、デジタル/アナログ変換器構築のための基本回路セルの設計に着手した。また、前年度に問題となった測定システムの不具合を解決して10ビットデジタル/アナログ変換器による波形合成を目指したが、測定システムの改修・再構築に予想以上の時間を要し波形合成の実証には至らなかった。(2)誘導分圧器の開発:前年度に開発した量子交流電圧標準用誘導分圧器の周辺回路を整備した。この誘導分圧器システムを用いて市販高精度電源(キャリブレーター)の出力電圧とジョセフソン素子の出力電圧を比較したが、定量的な誤差の測定には至らなかった。また、量子交流電圧標準の誤差・不確かさの検討のため、単一磁束量子デジタル/アナログ変換器と光パルス駆動ジョセフソン接合アレイの出力電圧の直接比較実験の検討を行った。本研究は、単一磁束量子デジタル/アナログ変換器と誘導分圧器を主構成要素とする量子交流電圧標準のシステムの開発を目標とする。平成22年度には以下の成果を得た。デジタル/アナログ変換器の開発においては、前年度に引き続いて超伝導工学研究所(SRL)との共通プロセスの高度化を進め、セルライブラリを開発した。これを用いて前年度に提案した1ビットパルス密度変調方式の基本構成要素となる可変パルス数増倍回路の開発を行った。電気通信大学との共同研究によりセルベース方式で設計した8倍可変パルス数増倍回路を産総研/SRL共通プロセスにより試作し、正常動作を確認した。さらに、必要素子量が少ない新回路方式を考案し、64倍可変パルス数増倍回路を設計、試作、評価し、正常動作の確認に成功した。この結果に基づき、12ビットデジタル/アナログ変換器を設計し、出力電圧波形精度を詳細に評価した。精度評価の課程において、デルタシグマ変調方式をマルチビット化する新変調方式を発案し、これによりさらに高い精度が期待できることを見出した。 | KAKENHI-PROJECT-20246070 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20246070 |
磁束量子を利用した量子交流電圧標準の研究 | 誘導分圧器の開発においては、誘導分圧器システムによる市販高精度電源(キャリブレーター)の出力電圧とジョセフソン素子の出力電圧の比較では、デジタル/アナログ変換器の開発が予定より遅れたため、定量的誤差の測定には至らなかったが、フィルターなどの周辺回路を整備し交流インピーダンス標準に応用可能な高い精度を有するシステムの開発に成功した。一方、東京都市大学との連携で前述のマルチビットデルタシグマ変調方式の精度を定量的に計算した結果、交流電圧標準応用において画期的な精度向上が可能であることが明らかになった。動作原理実証実験のための測定機器などを整備し、この方式によるデジタル/アナログ変換器の特許出願を準備している。 | KAKENHI-PROJECT-20246070 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20246070 |
膀胱の老化は予防できるか? 加齢膀胱と膀胱血流低下 | 加齢に伴う排尿障害について我々は若年と加齢ラットの膀胱及び尿道機能を比較検討した。膀胱内圧測定では、膀胱の収縮性に違いは見られなかったものの加齢ラットでは残尿が有意に増加していることが分かった。尿道機能の研究では尿道の膀胱収縮時の弛緩は加齢ラットで減弱していることが証明された。組織学的な研究では膀胱の平滑筋は加齢に伴って委縮し、その周囲に線維組織の増生が見られていることが分かった。高齢者では、膀胱の過活動と排尿筋の低活動が同時に存在する現象が見られる。我々の研究で膀胱の機能的及び器質的変化さらには尿道の機能的および器質的変化が伴って加齢に伴う排尿障害が発生することが証明された。膀胱の老化は予防できるか?加齢膀胱と膀胱血流低下のテーマで研究を進めている。加齢に伴う排尿障害、とりわけ残尿量の増加の原因として膀胱の収縮力の低下が原因の1つであることが我々の研究で証明されている。現在加齢に伴う排尿障害の原因として尿道機能に着目しており、加齢モデルラットを用いて、排尿時尿道の弛緩不全が残尿量の増加に寄与すると仮説のもとその研究が進行中である。正常ラットを用いcontrolの膀胱収縮に伴う尿道の弛緩の状態を検証するために、ラットの膀胱および尿道に圧トランスデューサーを挿入しその変化を記録。同様に加齢モデルラットを用い同様の実験で、加齢に伴う尿道機能の変化を確認した。加齢に伴い尿道の弛緩が抑制されることが認められた。この原因として加齢による血流低下に伴う一酸化窒素の低下が尿道の弛緩不全を惹起していることを動物実験でさらに検証している。一酸化窒素のアゴニストとしてLアルギニン投与。アンタゴニストとしてL-NAMEを投与し尿道機能の変化を捉えた。加齢に伴う排尿障害、残尿増加は、虚血によって一酸化窒素の産生が低下が引き起こされ、その結果排尿時の尿道弛緩が抑制されることが原因となる可能性が示唆された。この研究結果については2016年5月9日に国際学会(アメリカ泌尿器科学会)で発表した。加齢に伴う排尿機能の低下の原因について、臓器虚血、一酸化窒素の減少がい一因との仮説に基づき研究を行っているが、排尿機能の一翼を担っている尿道機能に関して一酸化窒素の減少が排尿時の尿道の弛緩を抑制している可能性が示唆された。生理的に排尿時は、膀胱が収縮するとともに尿道が弛緩するが、加齢に伴い尿道の弛緩が抑制されることが示唆された。さらに、その機序として虚血に伴う一酸化窒素の低下が原因と考えているが、尿道弛緩が一酸化窒素のアゴニストであるL-アルギニンの投与によって改善する。さらにアンタゴニストのL-NAMEによって阻害されることが証明された。研究結果は前述の仮説を支持するものであり、今後排尿機能低下の予防に関する研究につながるものである膀胱の老化は予防できるか?加齢膀胱と膀胱血流低下のテーマで研究を進めている。加齢に伴う排尿障害、とりわけ残尿量の増加の原因として膀胱の収縮力の低下が原因の1つであることを我々の研究で証明されている。現在加齢に伴う排尿障害の原因として尿道機能に注目しており、加齢モデルラットを用いて、排尿時尿道の弛緩不全が残尿量の増加に寄与するとの仮説のもとにその研究が進行中である。正常ラットを用いcontrolの膀胱収縮に伴う尿道の弛緩の状態を検証するために、ラットの膀胱および尿道に圧トランスデューサーを挿入し、その変化を記録。同様に加齢モデルラットを用い同様の実験で、加齢に伴う尿道機能の変化を確認した。加齢に伴い尿道の弛緩が抑制されることが認められた。この原因として加齢による血流低下に伴う一酸化窒素の低下が尿道の弛緩不全を惹起していることを動物実験でさらに検証している。一酸化窒素のアゴニストとしてLアルギニン投与。アンタゴニストとしてL-NAMEを投与し尿道機能の変化を捉えた。加齢に伴う排尿障害、残尿増加は、虚血によって一酸化窒素産生の低下が引き起こされ、その結果排尿時の尿道弛緩が抑制されることが原因となる可能性が示唆された。この研究結果については2016年5月9日に国際学会(アメリカ泌尿器科学会)で発表した。また近く論文発表を行う予定である。また、2017年度はより生理的な評価のため覚醒状態での若年および加齢ラットの排尿状態を評価し、その変化について2017年5月12日に国際学会(アメリカ泌尿器科学会)で発表予定である。また、今回の科研費により行われた研究の結果を総合し、さらに論文発表を行う予定である。加齢に伴う排尿機能の低下の原因について、臓器虚血、一酸化窒素の減少が一因との仮説に基づき研究を行っているが、排尿機能の一翼を担っている尿道機能に関して一酸化窒素の減少が排尿時の尿道の弛緩を抑制している可能性が示唆された。生理的に排尿時は膀胱が収縮するとともに尿道が弛緩するが、尿道弛緩が一酸化窒素のアゴニストであるL-アルギニンの投与によって改善する。さらにアンタゴニストのL-NAMEによって阻害されることが証明された。 | KAKENHI-PROJECT-15K01376 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K01376 |
膀胱の老化は予防できるか? 加齢膀胱と膀胱血流低下 | さらに、若年と加齢の尿道機能の比較実験では、加齢に伴って尿道の弛緩が減弱することが示された。研究結果は前述の仮説を支持するものであり、さらに加齢に伴う尿道機能の変化はこれまでほとんど報告のない新しい知見である。今後排尿機能低下の予防に関する研究につながるものである。これまで加齢膀胱と膀胱血流低下のテーマで研究を進めてきた。加齢に伴う排尿障害、とりわけ残尿量の増加の原因として膀胱収縮力の低下が原因の1つであることが我々の研究で証明されている。現在加齢に伴う排尿障害の原因として尿道機能に注目し、加齢モデルラットを用いて、排尿時尿道の弛緩不全が残尿量の増加に寄与するとの仮説のもとにその研究を行ってきた。正常ラットを用いcontrolの膀胱収縮に伴う尿道の弛緩の状態を検証するために、ラットの膀胱および尿道に圧トランスデューサーを挿入し、その変化を記録。同様に加齢モデルラットを用い同様の実験で、加齢に伴う尿道機能の変化を確認した。加齢に伴い尿道の弛緩が抑制されることが認められた。この原因として加齢による血流低下に伴う一酸化窒素の低下が尿道の弛緩不全を惹起していることを動物実験でさらに検証している。一酸化窒素のアゴニストとしてLアルギニン投与。アンタゴニストとしてL-NAMEを投与し尿道機能の変化を捉えた。加齢に伴う排尿障害、残尿増加は、虚血によって一酸化窒素産生の低下が引き起こされ、その結果排尿時の尿道弛緩が抑制されることが原因となる可能性が示唆された。この研究結果については2016年5月9日に国際学会(アメリカ泌尿器科学会)で発表しさらに論文発表を行った。また、2017年度はより生理的な評価のため覚醒状態での若年および加齢ラットの排尿状態を評価し、その変化について2017年5月12日に国際学会(アメリカ泌尿器科学会)で発表を行った。さらに加え尿道機能のさらなる探求のため、尿道平滑筋および尿道括約筋の機能について研究を進め、尿道括約筋は畜尿期のみならず、排尿時に排尿効率を上昇させることが証明され2018年5月19日に国際学会(アメリカ泌尿器科学会)で発表した。また、今回の科研費により行われた研究の結果を統合し、さらに論文発表を行う予定である。加齢に伴う排尿障害について我々は若年と加齢ラットの膀胱及び尿道機能を比較検討した。膀胱内圧測定では、膀胱の収縮性に違いは見られなかったものの加齢ラットでは残尿が有意に増加していることが分かった。尿道機能の研究では尿道の膀胱収縮時の弛緩は加齢ラットで減弱していることが証明された。組織学的な研究では膀胱の平滑筋は加齢に伴って委縮し、その周囲に線維組織の増生が見られていることが分かった。高齢者では、膀胱の過活動と排尿筋の低活動が同時に存在する現象が見られる。我々の研究で膀胱の機能的及び器質的変化さらには尿道の機能的および器質的変化が伴って加齢に伴う排尿障害が発生することが証明された。今後の研究として、現時点で生理学的研究である程度証明された事柄に関して組織学的、生化学的定量実験を追加することにより、その根拠を検証する。また、加齢に伴う変化についてさらなる原因の検索および、虚血、一酸化窒素の役割およびそのほかの要因の解明から、治療的研究へつなげていく予定である。今後の研究として、新たな知見として加齢に伴う排尿時の尿道弛緩が減弱する現象が確認された。さらに結果の内容を追及するため、膀胱と尿道機能の神経学的関係性の研究に発展する予定である。また、現時点である程度証明された事柄に関して組織学的、生化学的定量実験を追加することにより、その根拠を検証する。 | KAKENHI-PROJECT-15K01376 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K01376 |
遺伝子制御ネットワークと数理モデルで見出したマスター遺伝子による子宮内膜症の誘導 | 本研究では、マスター遺伝子候補を子宮内膜間質細胞(ESC)で強制発現し、子宮内膜症に特徴的な細胞機能の変化や遺伝子の発現変化が誘導されるかを検討し、疾患発症のマスター遺伝子として機能しているかを検証する。本研究では、マスター遺伝子候補を子宮内膜間質細胞(ESC)で強制発現し、子宮内膜症に特徴的な細胞機能の変化や遺伝子の発現変化が誘導されるかを検討し、疾患発症のマスター遺伝子として機能しているかを検証する。 | KAKENHI-PROJECT-19K09803 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K09803 |
学説彙纂法文の解釈史(ビザンツ法学・中世ローマ法学・人文主義法学) | 1.研究成果本研究は学説彙纂第一九巻第二章「賃貸借locatio conductioについて」に収められている諸法文につき、ビザンツ法学、中世ローマ法学及び人文主義法学におけるその解釈を明らかにすることが目的であった。この目的達成のため二年間に亘り行ってきた研究の成果は以下の通りである。(1)ビザンツ法学バシリカ法典に付せられた六、七世紀のビザンツ法学者の注釈を見ると、法文の理解及び他の関連法文の参照に関しては、中世ローマ法学のそれと比べて遜色がないこと、興味深い注釈が散見されることを本研究においても確認することができた。(2)中世ローマ法学アックルシウスの『標準注釈』を適宜参照したが、これに関しては概ね他の領域と比べ特に異なるところは見ることができなかった。(3)人文主義法学特にドネッルス『市民法注解』第一三巻第六章から第九章を検討した。ローマ法の賃貸借から近代法での賃貸借、雇傭及び請負への分離の途中の過程におけるドネッルスの整理、体系化への具体的作業を明らかにすることができ、これは大きな収穫であった。2.反省と今後の課題中世ローマ法学については『標準注釈』のみを部分的にしか参照することができなかったことは反省点である。これに対してビザンツ法学については、今後さらに研究を進めていくための十分な基礎を得ることができた。さらに、ドネッルスについて言えば、その叙述を丹念に追いかけた研究として我が国初のものであると言ってもよいものと自負している。今後は、以上の研究を基礎として、引き続き賃貸借を題材に「体系思考の学者」ドネッルスと「釈義的な学者」クヤキウスとの対比を浮き彫りにすることを予定している。1.研究成果本研究は学説彙纂第一九巻第二章「賃貸借locatio conductioについて」に収められている諸法文につき、ビザンツ法学、中世ローマ法学及び人文主義法学におけるその解釈を明らかにすることが目的であった。この目的達成のため二年間に亘り行ってきた研究の成果は以下の通りである。(1)ビザンツ法学バシリカ法典に付せられた六、七世紀のビザンツ法学者の注釈を見ると、法文の理解及び他の関連法文の参照に関しては、中世ローマ法学のそれと比べて遜色がないこと、興味深い注釈が散見されることを本研究においても確認することができた。(2)中世ローマ法学アックルシウスの『標準注釈』を適宜参照したが、これに関しては概ね他の領域と比べ特に異なるところは見ることができなかった。(3)人文主義法学特にドネッルス『市民法注解』第一三巻第六章から第九章を検討した。ローマ法の賃貸借から近代法での賃貸借、雇傭及び請負への分離の途中の過程におけるドネッルスの整理、体系化への具体的作業を明らかにすることができ、これは大きな収穫であった。2.反省と今後の課題中世ローマ法学については『標準注釈』のみを部分的にしか参照することができなかったことは反省点である。これに対してビザンツ法学については、今後さらに研究を進めていくための十分な基礎を得ることができた。さらに、ドネッルスについて言えば、その叙述を丹念に追いかけた研究として我が国初のものであると言ってもよいものと自負している。今後は、以上の研究を基礎として、引き続き賃貸借を題材に「体系思考の学者」ドネッルスと「釈義的な学者」クヤキウスとの対比を浮き彫りにすることを予定している。1.研究内容学説彙纂第19巻第2章に収められている諸法文の中から解釈史の対象として興味深いと思われる法文を選び出すために、またローマの有償貸借契約が体系的、理論的に整理され、これにより同時に近代法の賃貸借・雇用・請負の3類型へと分けられていく歴史の概観を得るために、以下の作業を研究分担者と共同して行った。(1)人文主義法学に属すドネッルスの『市民法注解』第13巻第6章から第9章までを読み、翻訳した。来年度においてさらに検討し、手直しを行った上で、公表する予定である。(2)上記テキストで取り上げられている学説彙纂法文全てについて、同時進行の形で検討を加えた。その際には、対応するバシリカ法典の法文及び注釈、並びにいわゆるアックルシウスの『標準注釈』を参照した。さらに、当該法文についてクヤキウスの解釈を調べるために『省察』も参照したが、これについては十分な検討を行うことができなかった。2.研究成果上記の研究項目に対応する本年度における研究成果として。(1)人文主義法学については、ドネッルスの解釈(と言うよりは体系的叙述)を検討し、当該部分の全訳を行ったので、法文の解釈史を辿る一つの柱を得ることができた。上記の通り、訳文を公表するところまでの見通しが立った。(2)いくつかの法文を選択し、解釈史を辿る作業については、次年度継続して行わざるを得ない。瑕疵ある目的物により損害が発生した場合の貸主の責任、転貸借の場合の第二賃貸人の責任、目的物が窃取された場合の保管責任との関係等について、各時代の解釈をつき合わせる作業を進めていく。1.研究成果本研究は学説彙纂第一九巻第二章「賃貸借locatio conductioについて」に収められている諸法文につき、ビザンツ法学、中世ローマ法学及び人文主義法学におけるその解釈を明らかにすることが目的であった。 | KAKENHI-PROJECT-10620008 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10620008 |
学説彙纂法文の解釈史(ビザンツ法学・中世ローマ法学・人文主義法学) | この目的達成のため二年間に亘り行ってきた研究の成果は以下の通りである。(1)ビザンツ法学バシリカ法典に付せられた六、七世紀のビザンツ法学者の注釈を見ると、法文の理解及び他の関連法文の参照に関しては、中世ローマ法学のそれと比べて遜色がないこと、興味深い注釈が散見されることを本研究においても確認することができた。(2)中世ローマ法学アックルシウスの『標準注釈』を適宜参照したが、これに関しては概ね他の領域と比べ特に異なるところは見ることができなかった。(3)人文主義法学特にドネッルス『市民法注解』第一三巻第六章から第九章を検討した。ローマ法の賃貸借から近代法での賃貸借、雇傭及び請負への分離の途中の過程におけるドネッルスの整理、体系化への具体的作業を明らかにすることができ、これは大きな収穫であった。2.反省と今後の課題中世ローマ法学については『標準注釈』のみを部分的にしか参照することができなかったことは反省点である。これに対してビザンツ法学については、今後さらに研究を進めていくための十分な基礎を得ることができた。さらに、ドネッルスについて言えば、その叙述を丹念に追いかけた研究として我が国初のものであると言ってもよいものと自負している。今後は、以上の研究を基礎として、引き続き賃貸借を題材に「体系思考の学者」ドネッルスと「釈義的な学者」クヤキウスとの対比を浮き彫りにすることを予定している。 | KAKENHI-PROJECT-10620008 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10620008 |
中南米社会における先住民の「他者性」に関する比較研究 | 二年間にわたる研究の過程で、インディヘニスモ文学、個別民族誌など基本的資料の収集や、分析データの作成はもとより、ニカラグア、グアテマラ、メキシコ、米国の先住民運動の指導者と意見交流を行うことができた。木村は、現代インディヘニスモ文学の頂点といわれるペル-のアルゲダスと、メキシコのチアパスを舞台に一連の小説を発表してきたロサリオ・カステリャ-ノスの作品を比較分析し、前者がアンデスの先住民世界を集団として描き出そうとしているのに対し、後者は「インディオの個性」の描出に成功している点でインディヘニスモ文学の質を転換する画期をなすことを指摘した。小林は1994年メキシコ最南部のチアパスで発生した先住民反乱に注目し、反乱勢力の背後に「外部勢力」を探ろうとする解釈は、19世紀の「カスタ戦争」にも見られた「先住民=幼児論」と軌をいつにするものであることを指摘し、先住民の生き残り戦略として、外部世界=「国民社会」との交渉のために非先住民のスポ-クスマンを操っていると解釈できる可能性を指摘した。吉森は、先住民人口がきわめて少ないパラグアイと、先住民人口がきわめて多いグアテマラにおける近代化の過程で、統治者が模索した「民主主義」モデルを比較し、後者においては、多数者である先住民族を排除し、自国にアイデンティティの基盤を求めようとしない「脱国民化」したラディーノやクリオーリョによって「民主主義」概念が支配されてきたことを指摘した。また、2年間にわたって収集したチアパスの先住民反乱に関する資料は、他の研究者と協力して刊行する予定である。二年間にわたる研究の過程で、インディヘニスモ文学、個別民族誌など基本的資料の収集や、分析データの作成はもとより、ニカラグア、グアテマラ、メキシコ、米国の先住民運動の指導者と意見交流を行うことができた。木村は、現代インディヘニスモ文学の頂点といわれるペル-のアルゲダスと、メキシコのチアパスを舞台に一連の小説を発表してきたロサリオ・カステリャ-ノスの作品を比較分析し、前者がアンデスの先住民世界を集団として描き出そうとしているのに対し、後者は「インディオの個性」の描出に成功している点でインディヘニスモ文学の質を転換する画期をなすことを指摘した。小林は1994年メキシコ最南部のチアパスで発生した先住民反乱に注目し、反乱勢力の背後に「外部勢力」を探ろうとする解釈は、19世紀の「カスタ戦争」にも見られた「先住民=幼児論」と軌をいつにするものであることを指摘し、先住民の生き残り戦略として、外部世界=「国民社会」との交渉のために非先住民のスポ-クスマンを操っていると解釈できる可能性を指摘した。吉森は、先住民人口がきわめて少ないパラグアイと、先住民人口がきわめて多いグアテマラにおける近代化の過程で、統治者が模索した「民主主義」モデルを比較し、後者においては、多数者である先住民族を排除し、自国にアイデンティティの基盤を求めようとしない「脱国民化」したラディーノやクリオーリョによって「民主主義」概念が支配されてきたことを指摘した。また、2年間にわたって収集したチアパスの先住民反乱に関する資料は、他の研究者と協力して刊行する予定である。本年度は、3名の研究分担者のテーマに従って、基本的資料の収集、分析データの作成をおこなった。基本的資料としてはインディヘニスモ文学に関する研究論文、個別民族誌などを体系的に収集した。また、ニカラグア、グアテマラ、メキシコの先住民運動の関係者と意見交流をおこない、現地の実情についての知見を得られた。1月以降は、メキシコのチアパス州における先住民反乱に関する生資料の収集をおこない、5,6月にそれをまとめて出版する準備を現在すすめている。木村および小林は、それぞれスペイン、メキシコにおいて研究成果の一部を発表する機会をもつとともに、今後の国外研究者との情報交換のネットワークを築くことができた。木村は、ペルーのバルガス・ジョサ、アルゲダス、メキシコのカルロス・フエンテス、ロサリオ・カスティジャーノ、オクタビオ・パスといった対照的な作風の作家を対象に先住民に対する姿勢の差を摘出する作業をおこなった。吉森は、先住民人口の少ないパラグアイの政治体制と、先住民人口の多いボリビアやグアテマラの政治体制を比較し、動員および参加システムの特徴を明らかにしようとした。小林は、メキシコにおける国家神話と大衆文化の関係を征服の踊りの分析により解明するとともに、中米地域における先住民族の自治獲得運動についての情報収集を続け、運動のもつ可能性と限界を把握しようとした。3名のテーマ研究を調整する作業も現在進行中であり、来年度の研究方針も協議した。前年度に行なった資料の収集ならびに分析をふまえ、本年度は3名の研究分担者のテーマに従った個別研究を進めた。また、チアパスの先住民反乱に関する資料を継続的に収集するとともに、グアテマラならびに米国の先住民運動のリーダーからの聴取を行ない、現地の実情を知ることもできた。木村は、メキシコのロサリオ・カステリャ-ノスの「チアパスもの」のうち『暗闇の儀式』は、カタリーナという女性呪術師の描写に代表されるように、インディオの個性の描出に成功していることを明らかにし、従来は「集団としてインデイオ」を描写する傾向が強かった中南米のインディヘニスモ文学の質を転換する画期的な作品となっていることを指摘した。小林は、先住民反乱における「外部勢力」の存在に対する対極的な評価に注目し、一般に流布している外部勢力による先住民操縦説とは逆に、先住民族の生き残り戦略として先住民が操る「語る偶像」のという戦術が開発れていることを指摘すると同時に、『暗闇の儀式』のなかにも非先住民である作者の思い込みが投影されていることを示唆した。 | KAKENHI-PROJECT-05451087 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05451087 |
中南米社会における先住民の「他者性」に関する比較研究 | 吉森は、グアテマラの近代化の過程において語られてきた「民主主義」は、大多数の先住民族や民衆を除外したクリーオリョによる「国民国家」建設をもくろむ寡頭勢力の独占物であり続け、自国にアイデンティティを求めようとしない「脱国民化」した存在によって一方的に操作されてきた概念であることを明らかにした。また、2年間にわたって収集した先住民運動関係の資料のうち、チアパスの先住民反乱に関する資料は、1995年中に資料集として刊行される予定である。 | KAKENHI-PROJECT-05451087 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05451087 |
幹細胞バンクネットワーク構築と統合情報検索システムの開発 | 2007年にヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)が開発されて以降、現在に至るまで世界中でiPS細胞やES細胞のような幹細胞の樹立が増加し、それらを用いた再生医療への応用研究が大規模に行われビッグデータを産出している。しかしながら、1)世界には多数の幹細胞バンクが存在すること、2)異なるバンクが個々にデータベースを構築しており提供情報が多様である上、記述方法を統一する形式がない、ということから産生された情報(ビッグデータ)の共有・比較のような有効利用の困難さが問題となっている。そこで本研究課題では、再生医療における細胞解析データのための最小情報記述ガイドライン(MIACARM)を用いた国際間細胞バンクネットワークの構築と相互検索システムに取り組んだ。まず、異なる幹細胞バンクで構築されたデータベースで提供される情報項目名の統一を行うため、対象とする日米欧の幹細胞バンクのデータベースで用いられている情報項目を収集・比較し、MIACARMを元に共通項目のマッピングを行い表を作成した。作成した表をクロスリファレンステーブルと呼び、それを中心に幹細胞バンク情報ネットワークの構築を計画した。次に、webAPIを用いた幹細胞情報の自動化統合検索システムの開発を行なった。webAPIを用いることで特定のサーバーにアクセスしデータ取得が可能となり、独自のサーバを持たずに情報の検索が行える。この技術を用いて、提携する幹細胞バンクの細胞情報を格納するデータサーバーからの情報検索用環境の整備を行なった。更にMIACARMを元に作成したクロスリファレンステーブルを用いて、インターネットを通じ、各幹細胞バンクからの情報の一斉検索および検索結果の一覧表示を可能とする検索システムの開発・公開を行なった。2007年にヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)が開発されて以降、現在に至るまで世界中でiPS細胞やES細胞のような幹細胞の樹立が増加し、それらを用いた再生医療への応用研究が大規模に行われビッグデータを産出している。しかしながら、1)世界には多数の幹細胞バンクが存在すること、2)異なるバンクが個々にデータベースを構築しており提供情報が多様である上、記述方法を統一する形式がない、ということから産生された情報(ビッグデータ)の共有・比較のような有効利用の困難さが問題となっている。そこで本研究課題では、再生医療における細胞解析データのための最小情報記述ガイドライン(MIACARM)を用いた国際間細胞バンクネットワークの構築と相互検索システムに取り組んだ。まず、異なる幹細胞バンクで構築されたデータベースで提供される情報項目名の統一を行うため、対象とする日米欧の幹細胞バンクのデータベースで用いられている情報項目を収集・比較し、MIACARMを元に共通項目のマッピングを行い表を作成した。作成した表をクロスリファレンステーブルと呼び、それを中心に幹細胞バンク情報ネットワークの構築を計画した。次に、webAPIを用いた幹細胞情報の自動化統合検索システムの開発を行なった。webAPIを用いることで特定のサーバーにアクセスしデータ取得が可能となり、独自のサーバを持たずに情報の検索が行える。この技術を用いて、提携する幹細胞バンクの細胞情報を格納するデータサーバーからの情報検索用環境の整備を行なった。更にMIACARMを元に作成したクロスリファレンステーブルを用いて、インターネットを通じ、各幹細胞バンクからの情報の一斉検索および検索結果の一覧表示を可能とする検索システムの開発・公開を行なった。 | KAKENHI-PROJECT-17K12777 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K12777 |
新規β-カテニン/TCF標的遺伝子DKK1の解析 | 発癌過程における遺伝子発現制御プログラムの変化の全体像を描くことを最終目的とし、発癌を制御する転写因子(トランスエレメント)及び、転写制御モチーフ(シス・エレメント)の包括的な探索のため、新たに転写因子結合モチーフ、プロモーター等の遺伝子発現制御配列、遺伝子の発現プロファイルデータをイン・シリコ統合し、遺伝子発現制御ネットワークを解析する方法を開発している。これまでにプロモーター配列を考慮にいれベイジアンネットワークを用いたシステムをイン・シリコにおいて構築した。このシステムは、配列解析にから各遺伝子を制御するシスエレメントを予測し、データベースを構築、これら各エレメントの組み合わせにより各遺伝子の発現(各サンプルグループにおいての発現のup-or down-regulation)が規定されるとの仮定のもと、与えられた発現プロファイルデータを説明するために最適なシスエレメントの組み合わせを探索することができる。この方法を乳癌の発現プロファイルデータに適用し、E2F, ETS, NRF1,NFYの結合モチーフが乳癌の悪性度と相関することを見出した。現在の癌についても同様の解析を行っている。またエンハンサー配列データ、3'UTRデータ(miRNA制御モチーフ)についても、同様の手法により、ある程度、解析できることを確認したがまだ不完全なので今後改良を続ける。発癌過程における遺伝子制御プログラムを明らかにするために、ゲノム、トランスクリプトーム、転写因子結合モチーフ情報をイン・シリコで統合、解析する方法としてTEPMAP(Transformation of Expression Profiles to Motif Activity Profiles)法を開発した。この方法は各遺伝子のプロモーター配列と転写制御モチーフ情報からphylogenetic footprinting法とモチーフサーチを組み合わせ、各モチーフのターゲット遺伝子セットを推定、その遺伝子セット発現量からかくモチーフの転写活性量を予測する。この方法を転写因子結合モチーフライブラリー内のすべてのモチーフに適用することにより遺伝子×サンプルの遺伝子発現プロファイル行列をモチーフ×サンプルの転写制御モチーフ活性行列に変換することができる。この転写制御モチーフ活性行列に従来の遺伝子発現プロファイル行列に用いられてきた統計的手法を用いることにより、転写制御ネットワークの包括的な解析が可能となる。その解析の一例として大腸がんの発癌過程で変化する転写制御プログラムの同定を試みた。正常大腸上皮と大腸癌のサンプルのマイクロアレイ実験から得られた発現プロファイルデータにTEPMAP法を適用し、腫瘍サンプルグループで転写活性の上昇が見られるモチーフを探索した結果、E2F, ETS, CREB, MYC等の発癌に関与すると報告のある転写因子の結合モチーフの活性が統計的有意に上昇していることを見出した。以上のことからこのTEPMAP法は転写制御プログラムの解析にとって有望なツールであると考えられた。発癌過程における遺伝子発現制御プログラムの変化の全体像を描くことを最終目的とし、発癌を制御する転写因子(トランスエレメント)及び、転写制御モチーフ(シス・エレメント)の包括的な探索のため、新たに転写因子結合モチーフ、プロモーター等の遺伝子発現制御配列、遺伝子の発現プロファイルデータをイン・シリコ統合し、遺伝子発現制御ネットワークを解析する方法を開発している。これまでにプロモーター配列を考慮にいれベイジアンネットワークを用いたシステムをイン・シリコにおいて構築した。このシステムは、配列解析にから各遺伝子を制御するシスエレメントを予測し、データベースを構築、これら各エレメントの組み合わせにより各遺伝子の発現(各サンプルグループにおいての発現のup-or down-regulation)が規定されるとの仮定のもと、与えられた発現プロファイルデータを説明するために最適なシスエレメントの組み合わせを探索することができる。この方法を乳癌の発現プロファイルデータに適用し、E2F, ETS, NRF1,NFYの結合モチーフが乳癌の悪性度と相関することを見出した。現在の癌についても同様の解析を行っている。またエンハンサー配列データ、3'UTRデータ(miRNA制御モチーフ)についても、同様の手法により、ある程度、解析できることを確認したがまだ不完全なので今後改良を続ける。 | KAKENHI-PROJECT-05J11469 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05J11469 |
緑藻の概日時計をリセットする未知の光受容伝達機構の解明 | 研究代表者は、緑藻クラミドモナスを概日時計研究の新しいモデル生物として確立し、研究を進めてきた。その過程で、時計タンパク質ROC15の分解が光で誘導されることを発見した(Niwa and Matsuo et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2013, 110:13666-71)。この現象は幅広い波長の光で誘導されるが、特に赤色光で強く誘導される。興味深いことに、このような波長特性を示す光受容体はクラミドモナスでは知られておらず、未知の光受容・伝達経路の存在が示唆された。研究代表者は、最近、この経路の解明の手がかりを得た。本研究では、それを発展させ、未知の光受容・伝達経路の全容解明を目指す。今年度は、分離した新規変異体においてROC15の細胞内局在は変化しないが、光依存的リン酸化が起こらないことを明らかにした。また、既知の青色光受容体の変異体において、ROC15の光依存的分解が起こらないことを発見した。さらに興味深いことに、赤色光に対する分解も起こらなかった。それらに加えて、その変異体においては概日リズムの振幅の低下と周期の延長が起こることを明らかにした。これらの結果から、未知の光受容伝達経路の一端が明らかとなった。既知の青色光受容体の変異体において赤色光応答が失われるという予想していなかった結果が得られた。この結果は大変興味深く、さらに詳細な解析を行う必要がある。その解析に注力するため、当初予定していたROC15のリン酸化部位の決定は進めていない。既知の赤色光応答経路の分子であるCSLの変異体において、当該の青色光受容体の解析を行う。これにより、既知の青色光受容伝達機構とCSLの関わる赤色光伝達機構の関係を明らかにする。我々は緑藻クラミドモナスを概日時計研究の新しいモデル生物として確立し、研究を進めてきた。その過程で、時計タンパク質ROC15の分解が光で誘導されることを発見した(Niwa and Matsuo et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2013, 110:13666-71)。この現象は幅広い波長の光で誘導されるが、特に赤色光で強く誘導される。興味深いことに、このような波長特性を示す光受容体はクラミドモナスでは知られておらず、未知の光受容・伝達経路の存在が示唆された。申請者らは、最近、この経路の解明の手がかりを得た。本研究では、それを発展させ、未知の光受容・伝達経路の全容解明を目指す。今年度は、新規スクリーニング方法の検討、csl変異株の表現型の解析、CSL複合体の解析、ROC15リン酸化部位の解析および関連キナーゼの同定を行った。新規スクリーニング方法の検討を除き、計画通り進行している。新規スクリーニング方法に関しては、ROC15-Ble融合タンパク質では、十分な抗生物質耐性が得られないことがわかった。当初の計画通り進行している。新規スクリーニングはうまくいかないことがわかったので、計画書に記載の通り、生物発光によるスクリーニングに変更した。我々は、緑藻クラミドモナスを概日時計研究の新しいモデル生物として確立し、研究を進めてきた。その過程で、時計タンパク質ROC15の分解が光で誘導されることを発見した(Niwa and Matsuo et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2013, 110:13666-71)。この現象は幅広い波長の光で誘導されるが、特に赤色光で強く誘導される。興味深いことに、このような波長特性を示す光受容体はクラミドモナスでは知られておらず、未知の光受容・伝達経路の存在が示唆された。申請者らは、最近、この経路の解明の手がかりを得た。本研究では、それを発展させ、未知の光受容・伝達経路の全容解明を目指す。今年度はROC15とホタルルシフェラーゼの融合タンパク質レポーターを用いて、2つの新しい発見があった。一つは、新規の光応答変異体の分離に成功したことである。この変異体においては赤色光、青色光の応答がいずれも消失していた。また、原因遺伝子の同定にも成功した。原因遺伝子は新規タンパク質をコードしており、アミノ酸配列を解析した結果、緑藻のみに保存されたモチーフを有することがわかった。もう一つの発見は、これまで青色光受容体として知られていたタンパク質が、本研究の対象とする現象においては、赤色光の応答にも必須の役割を果たしていることを明らかにした。これら2つの発見は、いずれも本研究を遂行する上で非常に重要な発見であり、未知の光受容伝達経路の解明につながると期待される。2つの発見があった。これらはいずれも本研究を遂行する上で重要であり、最終年度に本研究を完遂する足がかりとなると期待できるため。研究代表者は、緑藻クラミドモナスを概日時計研究の新しいモデル生物として確立し、研究を進めてきた。その過程で、時計タンパク質ROC15の分解が光で誘導されることを発見した(Niwa and Matsuo et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2013, 110:13666-71)。この現象は幅広い波長の光で誘導されるが、特に赤色光で強く誘導される。興味深いことに、このような波長特性を示す光受容体はクラミドモナスでは知られておらず、未知の光受容・伝達経路の存在が示唆された。研究代表者は、最近、この経路の解明の手がかりを得た。 | KAKENHI-PROJECT-16K07448 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K07448 |
緑藻の概日時計をリセットする未知の光受容伝達機構の解明 | 本研究では、それを発展させ、未知の光受容・伝達経路の全容解明を目指す。今年度は、分離した新規変異体においてROC15の細胞内局在は変化しないが、光依存的リン酸化が起こらないことを明らかにした。また、既知の青色光受容体の変異体において、ROC15の光依存的分解が起こらないことを発見した。さらに興味深いことに、赤色光に対する分解も起こらなかった。それらに加えて、その変異体においては概日リズムの振幅の低下と周期の延長が起こることを明らかにした。これらの結果から、未知の光受容伝達経路の一端が明らかとなった。既知の青色光受容体の変異体において赤色光応答が失われるという予想していなかった結果が得られた。この結果は大変興味深く、さらに詳細な解析を行う必要がある。その解析に注力するため、当初予定していたROC15のリン酸化部位の決定は進めていない。計画書の通り推進する。同定した新規タンパク質の解析、および既知青色光受容体の赤色光応答における役割の解析を進める。ROC15は光に照射後にリン酸化される。この点に関して、それぞれの変異体において解析を行い、各因子がどのステップに関わっているのかを明らかにする。既知の赤色光応答経路の分子であるCSLの変異体において、当該の青色光受容体の解析を行う。これにより、既知の青色光受容伝達機構とCSLの関わる赤色光伝達機構の関係を明らかにする。新規スクリーニング方法の計画変更による新しい発見により、当初の計画から多少の変更が生じたため。次年度の変異体解析にかかる試薬類に使用する。本研究で実施した変異体スクリーニングにより、緑藻特異的な遺伝子の関与が明らかとなった。また、既知の青色光受容体が赤色光応答にも関与するという興味深い結果を得た。これらは予想外であったので、補助事業の目的をより精緻に達成するための研究の実施が必要となり、研究期間の延長を申請した。これらの解析をより早く進めるために、当初予定していたROC15のリン酸化部位の同定を実施しなかったので、次年度使用額が生じた。これは上記の新発見の解析に当てる。生物発光によるスクリーニングへの変更に伴い、当該実験を遂行する技術補佐員を雇用する必要がある。当初の計画に加えて、人件費として計上する。 | KAKENHI-PROJECT-16K07448 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K07448 |
疾患特異的iPS細胞を用いたcryopyrin関連周期熱症候群の病態解析 | Cryopyrin関連周期熱症候群(CAPS)と呼ばれる症候群は、NLRP3遺伝子変異により発症する重篤な疾患で、自己炎症性症候群の一つである。我々は、CAPSの病態解析と創薬のため、体細胞モザイクのCAPS患者2名から患者特異的iPS細胞を樹立した。NLRP3変異陽性クローンと陰性クローンからマクロファージに分化させ、疾患特異的なIL-1β産生、細胞死誘導を確認し、疾患iPS細胞を用いた病態再現と疾患モデリングに成功した。Cryopyrin関連周期熱症候群(CAPS)と呼ばれる症候群は、NLRP3遺伝子変異により発症する重篤な疾患で、自己炎症性症候群の一つである。我々は、CAPSの病態解析と創薬のため、体細胞モザイクのCAPS患者2名から患者特異的iPS細胞を樹立した。NLRP3変異陽性クローンと陰性クローンからマクロファージに分化させ、疾患特異的なIL-1β産生、細胞死誘導を確認し、疾患iPS細胞を用いた病態再現と疾患モデリングに成功した。本研究の目的は、小児の遺伝性発熱症候群・自己炎症性症候群の原因として重要である、Cryopyrin関連周期熱症候群の病態を疾患関連iPS細胞を用いて解析し、診断・治療法の開発を行うことである。本年度は、すでに樹立したNLRP3変異モザイク患者由来のiPS細胞の解析を行った。患者由来のiPS細胞株はトランスジーンのサイレンシングが確認され、未分化マーカーが発現しており、免疫不全マウスに接種することによって、奇形種形成が確認された。これらの細胞を血球系に分化させたところ、クローンによらず血球系への分化が確認された。さらに、マクロファージへ分化させ、その機能を確認している。本年度は、さらにもう一例のモザイク患者からのiPS細胞株樹立も行った。レトロウイルスベクターを用いて遺伝子導入を行い、変異型・正常型双方のiPS細胞株を複数樹立した。本研究の目的は、小児の遺伝性発熱症候群・自己炎症性症候群の原因として重要である、Cryopyrin関連周期熱症候群の病態を疾患関連iPS細胞を用いて解析し、診断・治療法の開発を行うことである。そこで、体細胞モザイクのCryopyrin関連周期熱症候群(CINCA症候群)患者2名から患者特異的iPS細胞を樹立した。NLRP3変異陽性iPSクローンと陰性iPSクローンをそれぞれ複数樹立した。トランスジーンのサイレンシング、奇形腫形成能、未分化マーカー発現などを確認した。iPS細胞株を、OP9上で造血サイトカインなどを加えることにより、造血前駆細胞を経てマクロファージに分化させた。マクロファージは機能的であり、サイトカイン産生・リステリア貧食能・活性酸素産生能などが確認できた。NLRP3変異を持つクローンでは、すべてIL-1βの過剰産生が認められた一方で、変異なしクローンではIL-1β産生は正常であった。変異NLRP3由来クローンでは疾患特異的な細胞死誘導(pyronecrosis)、活性酸素産生も確認できた。マイクロアレイによる発現解析では、両者は極めて類似した発現プロファイルを示しており、体細胞モザイクであることから遺伝的バックグラウンドが共通であることを反映しているものと考えられた。以上より、疾患iPS細胞を用いた病態再現と疾患モデリングに成功した。今後、この細胞を用いて、IL-1βの活性化機構の解明や、NLRP3を阻害する薬物のスクリーニングなどを行ってゆきたい。 | KAKENHI-PROJECT-21890118 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21890118 |
体内細胞毒性アルデヒド、アクロレインが心臓術後高次脳機能障害に与える影響 | 昨年度に引き続き心臓大血管手術25症例において、生体内細胞毒物質である血中アクロレイン濃度と術後高次脳機能障害との関連について研究を行った。患者に研究の説明を行い同意を得た後、麻酔導入前に動脈ラインより動脈血液を採取し、アクロレインの測定を行った。手術前と手術後に5つの神経心理学検査(Mini-mental state examination、Digit symboltest、Digit span test、Trail Makingtest B、かなひろいテスト)を行い術後2つ以上の検査で20%以上スコアの低下が生じた症例を高次脳機能障害症例とした。25例の内4例は術後の神経心理学検査が施行できなかった。21例の症例の内訳は大動脈弁置換が8例、大血管手術が5例、僧帽弁手術が4例、人工心肺を用いない冠動脈バイパス術が4例であった。POCDは6例で起こり、POCDを起こした症例の麻酔前のアクロレイン値は37±12nmol/LとPOCDを起こしていない症例の21±8nmol/Lより高かった(P<0.05)。昨年度と合わせると全症例36例中POCDは10例でアクロレイン平均値は36±11nmol/LとPOCDを起こしてない26例の21±9nmol/Lより優位に高い(P<0.01)。あらかじめ存在する血中アクロレインは術後高次脳機能障害と関連することがこの2年間の結果で分かった。アクロレイン高値は患者の動脈硬化の重症度を見ている可能性があり、患者の術前の動脈硬化の程度との関連で調べると、術前大動脈の重度の石灰化(大動脈壁1/4周以上)との関連性があることがわかった。しかしアクロレインは測定値のばらつきが大きく、今後症例を増やしてPOCD発症のカットオフ値を検討していく必要がある。心臓大血管手術20症例において、生体内細胞毒物質である血中アクロレイン濃度と術後高次脳機能障害との関連について研究を行った。患者に研究の説明を行い同意を得た後、麻酔導入前に動脈ラインより動脈血液を採取し、アクロレインの測定を行った。手術前と手術後に5つの神経心理学検査(Mini-mental state examination、Digit symboltest、Digit span test、Trail Makingtest B、かなひろいテスト)を行い術後2つ以上の検査で20%以上スコアの低下が生じた症例を高次脳機能障害症例とした。20例の内5例は術後の神経心理学検査が施行できなかった。15例の症例の内わけは大動脈弁置換が5例大血管手術が4例、僧帽弁手術が3例、人工心肺を用いない冠動脈バイパス術が3例であった。POCDは4例で起こり、POCDを起こした症例の麻酔前のアクロレイン値は35±13nmol/LとPOCDを起こしていない症例の21±10nmol/Lより高い傾向にあった(P=0.08)。あらかじめ存在する血中アクロレインは術後高次脳機能障害と関連する可能性がある。おそらくアクロレインは動脈硬化の原因物質であるため、その高値は患者の動脈硬化の重症度を見ている可能性がある。まずは動脈硬化とアクロレインとの関連の検討が必要である。またアクロレインはその値のばらつきが大きい。インターロイキン6を同時に測定しアクロレインとの比を検討することで感度が上がることが報告されており現在インターロイキンは解析中である。今後症例を増やして検討を重ねる予定にしている。倫理審査委員会への申請が遅れ、受諾されたのが2016年秋であったため。昨年度に引き続き心臓大血管手術25症例において、生体内細胞毒物質である血中アクロレイン濃度と術後高次脳機能障害との関連について研究を行った。患者に研究の説明を行い同意を得た後、麻酔導入前に動脈ラインより動脈血液を採取し、アクロレインの測定を行った。手術前と手術後に5つの神経心理学検査(Mini-mental state examination、Digit symboltest、Digit span test、Trail Makingtest B、かなひろいテスト)を行い術後2つ以上の検査で20%以上スコアの低下が生じた症例を高次脳機能障害症例とした。25例の内4例は術後の神経心理学検査が施行できなかった。21例の症例の内訳は大動脈弁置換が8例、大血管手術が5例、僧帽弁手術が4例、人工心肺を用いない冠動脈バイパス術が4例であった。POCDは6例で起こり、POCDを起こした症例の麻酔前のアクロレイン値は37±12nmol/LとPOCDを起こしていない症例の21±8nmol/Lより高かった(P<0.05)。昨年度と合わせると全症例36例中POCDは10例でアクロレイン平均値は36±11nmol/LとPOCDを起こしてない26例の21±9nmol/Lより優位に高い(P<0.01)。あらかじめ存在する血中アクロレインは術後高次脳機能障害と関連することがこの2年間の結果で分かった。アクロレイン高値は患者の動脈硬化の重症度を見ている可能性があり、患者の術前の動脈硬化の程度との関連で調べると、術前大動脈の重度の石灰化(大動脈壁1/4周以上)との関連性があることがわかった。しかしアクロレインは測定値のばらつきが大きく、今後症例を増やしてPOCD発症のカットオフ値を検討していく必要がある。2年、3年次の本来の予定症例数は確保できると考える。 | KAKENHI-PROJECT-16K10961 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K10961 |
体内細胞毒性アルデヒド、アクロレインが心臓術後高次脳機能障害に与える影響 | その際、アクロレインの測定は行ったが術後神経心理学検査が施行できない症例を可能な限り減らすことを検討している。患者へのアンケート調査用の費用として郵便代を含めた準備金として金額を確保していた。しかし、アンケートは術後3か月以後に送付予定であったため、2016年度末にアンケート送付可能な症例は8例しかないためアンケート費用が不必要になった。2017年度にアンケート費用として使用予定。 | KAKENHI-PROJECT-16K10961 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K10961 |
広島県における医師の地理的偏在の分析と効果的な医師供給に関する総合的研究 | 広島県内の医師の地理的分布を地理情報システムを用いて調べ、へき地や遠隔地に赴任する医師の特性を明らかにした。また長崎県との比較研究により、医師の絶対数の不足が地理的偏在を悪化させる可能性があることを示した。さらに透析患者の住所情報を組み合わせることにより、県内の透析医療提供体制の地理的不均衡を示した。平成23年度1厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師調査」の調査票(個票)データを用い、広島県内の医師の地理的分布、診療科分布を分析し、各地域および各診療科における不足医師数を算出した。その成果を「広島県における医師数の現状と将来の医師配置に関する報告書」として広島県および厚生労働省に報告した。2上記の個票データから2002年から2008年にかけて広島県および長崎県内いた医師のみ抽出し、都市部⇔非都市部の医師の移動を比較分析した。その成果を以下の2本の原著論文として国際誌に発表した。Matsumoto M, et al. Rural Remote Health2012;12:2085. Matsumoto M, et al. Rural Remote Health2012;12:2027. 3オーストラリアの研究者と学術交流した。平成24年度4特定の医療分野における医師需給バランス格差を調べるため、上記の個票データから広島県内の腎臓内科医の所在地を抽出し、透析患者の所在地のデータとともに地理情報システム上に展開し、県内の透析患者の通院時間格差を調べた。成果は以下の原著論文として国際に発表した。Matsumoto M, et al. Int J Health Geogr 2012;11:285研究成果を日本公衆衛生学会および「社会格差と健康」第六回定例研究交流会シンポジウムで発表した。6ネパールの研究者と学術交流した。広島県内の医師の地理的分布を地理情報システムを用いて調べ、へき地や遠隔地に赴任する医師の特性を明らかにした。また長崎県との比較研究により、医師の絶対数の不足が地理的偏在を悪化させる可能性があることを示した。さらに透析患者の住所情報を組み合わせることにより、県内の透析医療提供体制の地理的不均衡を示した。上述のとおり、広島県内の医師の地理的偏在の分析計画のうち大部分はすでにデータ採取、分析、論文化を終了し、一部はすでに公官庁および学術雑誌に対して発表した。さらにもう一歩進めて、広島県内の特定の分野の医師の地理的偏在についてより深い分析まで行っており、これについても論文化し、平成24年度中には公表予定である。平成23年度に得られた成果を国内外において発表する。また国内外の研究者と協力し、本研究をさらに発展させるための計画を立案する。具体的には、オーストラリアやネパールの地方における医師数と医師分布との関係を、広島県のそれらと比較する研究を計画している。研究成果の国際学会での発表(英国等を予定)、海外の研究との研究会議(ネパールを予定)、国内研究者を招いての研究会議などを行う。また追加分析を行うためのパーソナルコンピュータ、ソフトウェアー等の購入を行う。 | KAKENHI-PROJECT-23790570 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23790570 |
MEMS技術による光通信用高機能デバイスの研究 | MEMS技術により微細な立体構造とマイクロアクチュエータを集積した機能性の高い光通信デバイスを研究した.具体的にはSi自立格子を用いた光フィルタを製作し,格子周期を変調できることを示した.また周期可変のブレーズ格子を実現した.さらにSi細線導波路波長選択スイッチを試作した.光路切り替えマイクロミラースイッチの高機能化のため角度センサの搭載や低電駆動法などを研究した.MEMS技術により微細な立体構造とマイクロアクチュエータを集積した機能性の高い光通信デバイスを研究した.具体的にはSi自立格子を用いた光フィルタを製作し,格子周期を変調できることを示した.また周期可変のブレーズ格子を実現した.さらにSi細線導波路波長選択スイッチを試作した.光路切り替えマイクロミラースイッチの高機能化のため角度センサの搭載や低電駆動法などを研究した.本研究の目的はMEMS技術により微細な立体構造とマイクロアクチュエータを集積した光通信用デバイスを研究することである.具体的には光路の制御のためのマイクロミラー,周期可変格子による機能性の高い光フィルタ,波長と構造の共鳴効果を制御するNEMSフォトニックデバイスを研究した.本年度は,まずシリコンを格子材料に用いて,くし型アクチュエータを組み込んだ周期可変光フイルタを設計製作した.格子周期をサブ波長レベルに小さくすることで,格子面を伝播する光波が格子構造と共鳴することにより,高い反射率の光応答が得られることを明らかにした.格子の周期を変えることで,特定の波長領域において反射率を可変にできることを見出した.光減衰器への応用が可能である.このような自立格子構造で共鳴効果が生じる原因と特性はまだ明らかでないので,格子構造の光応答を電磁波の厳密解法(RCWA)により解析した.計算により実験で得られた結果を説明することができた.さらに,広いパラメータ範囲において解析し,シリコン自立格子の一般的な応答を詳細に明らかにした.格子周期を変えても,選択波長は必ずしも直線的に変化しない場合があることなど高屈折材料を用いた格子の特性を明らかにした.また,光通信の光路切り替えに用いられるマイクロミラーの製作においては,回転角度の検出機構をミラーの回転用ヒンジに組み込んだ方式について研究した.さらにナノ構造の製作においてはフッ化水素の蒸気を用いたドライエッチング装置を改良した.微小な立体可動構造を実現する方法を開発した.MEMS技術では,アクチュエータや立体構造が形成できるので,可変の光通信デバイスや機能の高い光学部品を実現するために有効である.本研究ではMEMS技術とシリコンナノ加工技術を組み合わせ,広帯域の可変格子フィルタや光スイッチを研究した.光通信の自由空間クロスコネクトやADD/DROPに必要なマイクロミラーの高機能化の研究を進めた.マイクロミラーに組込むことができる微小角度センサとしてピエゾ抵抗ひずみセンサを提案し,光路切り替えに閉ループ制御を行う信頼性の高い方式を提案した.シリコンピエゾ抵抗ひずみセンサにおける漏れ電流による感度の低下を改善するため,保護層を導入した改善プロセスを実現した.角度センサのノイズ特性を改善することができた.MEMSとマイクロ光学素子やフォトニック構造を組み合わせることで,機能性の高い光通信デバイスを実現できると考えられる.これまでに共鳴格子の周期をマイクロアクチュエータにより変える方式を提案し,試作した.またシリコン系材料(Si,SiO2,Si3N4など)において周期可変の自立格子の光学応答を理論的に詳細に調べ,フィルタの応答特性を明らかにした.また共鳴格子と基板の距離をマイクロアクチュエータにより変えることで共鳴状態を制御し,選択した波長における出力(反射光)を可変にできるフィルタを設計及び解析し,試作した.厚さ260nmの自立した2次元周期の回折格子を4本の熱型マイクロアクチュエータにより支持した構造である.波長1.5μmにおいて,83%の反射率を得た.また,基板に自立回折格子を近づけることで,反射光を制御できることを確認した.加工装置として水素アニール装置を試作した.シリコン細線を利用したクロスコネクトとして,可動導波路とマイクロアクチュエータを組み合わせた極微小の光スイッチを提案し,理論解析を進め試作した.MEMS技術では,アクチュエータや立体構造が形成できるので,可変の光通信デバイスや機能の高い光学部品を実現するために有効である.本研究ではMEMS技術とシリコンナノ加工技術を組み合わせ,広帯域の可変格子フィルタや光スイッチを研究した.光通信の自由空間クロスコネクトやADD/DROPに必要なマイクロミラーの高機能化の研究を進めた.光通信用デバイスにおいては温度無依存の特性は不可欠な特性である.低電圧駆動のマイクロミラー光スイッチを提案したが,引張応力の必要なヒンジ部に用いた材料(Si3N4)の熱膨張係数が構造部(Si)と異なることより,光路切換えの角度制御において大きな温度依存性を示した.これを改善するために,シリコン材料で結晶化による引張応力を発生するアモルファスシリコンを用いて試作した.これにより100°Cの温度上昇においても温度依存のないミラースイッチを実現した.多波長スイッチを構成し,スイッチの基本動作を確認した.また共鳴格子の周期をマイクロアクチュエータにより変える光フィルタの方式を提案しているが,今回は光通信波長帯域に応答をもつ周期可変の共鳴格子フィルタを製作した.アクチュエータに50Vの電圧を印加することにより自立格子の周期を860nmから875nmに変えることができ,フィルタのピーク波長を1523nmから1531nmまで変化できた.最大反射率は83.7%であった.フィルタ帯域は基板からの反射光のため期待したほどには狭くならなかった.Si基板を取り除いたデバイスを作製し反射特性を測定すると,フィルタ帯域を狭くできることが分かった. | KAKENHI-PROJECT-17068002 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17068002 |
MEMS技術による光通信用高機能デバイスの研究 | これらの結果より,MEMSのアクチュエータを接続することで,広い帯域で波長が選択できるフィルタが可能であることを示した.MEMS技術による高機能光通信用デバイスを実現するため、具体的に、光路の制御のためのマイグロミラー、可変導波路、可変光フィルタ、波長と構造の共鳴を制御するNENSフォトニックデバイスを研究した。具体的には、高機能ミラーの製作においては、アモルフアスシリコンを堆積後に、高温アニーリング処理を行うことにより、ポリシリコンに結晶化させ、堆積収縮により発生する引っ張り応力を利用したねじれバネを用いた。これにより10V程度の低電圧で駆動でき、かつ温度依存性の少ないマイクロミラーを実現できた。製作したミラーを用いて、WDM用の波長選択光スイッチに用いて、スイッチ動作を確認した。可変格子デバイスにおいては、これまでの研究成果に基づいて、周期可変のブレーズのある回折格子を静電マイクロアクチュエータと組み合わせてシリコンマイクロマシニングにより実現した。4レベルのブレーズ格子面を高速原子線により形成した。回折格子の回折効率はブレーズ格子により、従来のものより数倍高められれた。また、アクチュエータの駆動により、数十ナノメータの波長可変範囲を実現した。また、上下可動方式の格子フィルタの製作においては、基板からの反射を低減するために、ナノ粒子の自己配列を用いたエッチングにより、反射防止面を形成したフィルタを実現できた。波長選択フィルタとしてこれまでにない高い性能が得られた。光導波路を用いたスイッチにおいては、これまでに製作した1×1のスイッチを発展させて、1×2のシリコンサブミクロン導波路を製作した。また、シリコンマイクロリング導波路を用いた波長選択アドドロップスイッチを提案し、試作できた。これにより導波路の結合をマイクロアクチュエータにより可変にできる極微の光アドドロップスイッチを実現した。これらの成果により目的の大部分を達成できた. | KAKENHI-PROJECT-17068002 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17068002 |
軟X線領域の光学定数と外部光電効果の研究 | 軟X線領域における光電収率は軟X線の入射角と光子エネルギ-に依存するので、垂直入射の時の値で規格化した相対的光電収率を表現するのにX軸を入射角,Y軸を光子エネルギ-,Z軸を相対的光電収率とする三次元グラフを用いると変化の様相の全体像を視覚的に把握することができ理解し易い。このような三次元表現を可能とするプログラムを開発し,軟X線多層膜光学素子の製作に用いられる物質について,入射角090度,光子エネルギ-1001000のVの領域で,光学定数と電子の平均的脱出深さから相対的光電収率の計算を行い、結果を三次元グラフで表現した。計算の対象とした物質はAu,Pt,W,Mo,Ag,Rh,Al,Si,SiO_2,C,Niの11種である。これらの計算結果はX線結像光学の研究会と公開シンポジウムで発表した。東北大グル-プの実験結果と合致する計算結果となっている。東亜大学工学部で使用中のパソコンPC9801RXに4MBのRAMボ-ドを取付けハ-ドウェアEMS方式で有効記憶容量を増強し,補助記憶装置としては80MBのハ-ドディスクを用いて規模の大きい計算に効果的に対応できるようにした。無停電電源装置で計算中の不時の停電に備え,3.5インチフロッピ-ディスク装置でデ-タ保存の安全性を高めた。計算結果の印刷にはインクジェットプリンタとカラ-プリンタを用いて美しい仕上りが得られた。FORTRANとC言語によるプログラムの開発もこれらに必要なコンパイラの導入によって準備が進んだ。今後の課題は、定量的に利用できる三次元グラフとするためのプログラムの改良,大型計算機を用いたグラフの分解能の向上,基板上の超薄膜,多層膜についての計算と計算結果の三次元グラフによる表現である。軟X線領域における光電収率は軟X線の入射角と光子エネルギ-に依存するので、垂直入射の時の値で規格化した相対的光電収率を表現するのにX軸を入射角,Y軸を光子エネルギ-,Z軸を相対的光電収率とする三次元グラフを用いると変化の様相の全体像を視覚的に把握することができ理解し易い。このような三次元表現を可能とするプログラムを開発し,軟X線多層膜光学素子の製作に用いられる物質について,入射角090度,光子エネルギ-1001000のVの領域で,光学定数と電子の平均的脱出深さから相対的光電収率の計算を行い、結果を三次元グラフで表現した。計算の対象とした物質はAu,Pt,W,Mo,Ag,Rh,Al,Si,SiO_2,C,Niの11種である。これらの計算結果はX線結像光学の研究会と公開シンポジウムで発表した。東北大グル-プの実験結果と合致する計算結果となっている。東亜大学工学部で使用中のパソコンPC9801RXに4MBのRAMボ-ドを取付けハ-ドウェアEMS方式で有効記憶容量を増強し,補助記憶装置としては80MBのハ-ドディスクを用いて規模の大きい計算に効果的に対応できるようにした。無停電電源装置で計算中の不時の停電に備え,3.5インチフロッピ-ディスク装置でデ-タ保存の安全性を高めた。計算結果の印刷にはインクジェットプリンタとカラ-プリンタを用いて美しい仕上りが得られた。FORTRANとC言語によるプログラムの開発もこれらに必要なコンパイラの導入によって準備が進んだ。今後の課題は、定量的に利用できる三次元グラフとするためのプログラムの改良,大型計算機を用いたグラフの分解能の向上,基板上の超薄膜,多層膜についての計算と計算結果の三次元グラフによる表現である。 | KAKENHI-PROJECT-02233205 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02233205 |
インプラント対応3Dマイクロテクスチャ形成に関する基礎研究 | 本報では,生体適合性を支配するチタン表面の微細形状の最適化,およびその生産性を確保する.基礎データを得る目的で,規則的なマイクロテクスチャを高精度に形成するために、(1)生体適合性を確保するためのダイヤモンド工具による直接加工(2)加工能率を重視したマルチローラ加工を対象とした基礎実験を行い、次のような結論を得た.すなわち,(1)ダイヤモンド工具による直接加工:機能評価や仕様決めのためのマイクロテクスチャ形成を目的として,ダイヤモンド工具を用いて,チタン合金を直接に切削加工するときの加工精度向上,とくに溝肩部のバリ抑制について,実験検討している.それによれば,(1)サブミクロン切込み領域のシェイピング加工で,バリやむしれのない良好な微細溝形成ができる.このバリやむしれは,切屑剪断時の溝肩部における引張力により発生する.(2)上記のバリなし加工条件範囲では,加工能率が低い.より高能率な加工条件では,低温切削によるバリ抑制ないしエッチング除去が効果が大きい.(2)マルチローラ加工:個体差に応じたインプラントに対し,多種少量生産ないしは一品生産できる,倣い方式のマルチローラによるマイクロテクスチャ加工技術を提案し,この可能性について実験検討を行った.それによれば,(1)ローラ加工におけるバリ発生メカニズムについて実験解析し、加工面に押し込み様の力がはたらくローラ加工では,歪が広範に及び,相対的にバリを低く抑制できる.(2)±5°までの傾斜面に倣って多条のマイクログルーブが加工可能な追随性の高いマルチ工具ホルダを提案,試作した.(3)ダイヤモンド砥石を用いて,φ0.4mmの微細なローラ工具に対し,1μmエッジ精度の成形研削技術を確立し,同時多条溝加工の可能性を見出した.などを,明らかにしている.本報では,生体適合性を支配するチタン表面の微細形状の最適化,およびその生産性を確保する.基礎データを得る目的で,規則的なマイクロテクスチャを高精度に形成するために、(1)生体適合性を確保するためのダイヤモンド工具による直接加工(2)加工能率を重視したマルチローラ加工を対象とした基礎実験を行い、次のような結論を得た.すなわち,(1)ダイヤモンド工具による直接加工:機能評価や仕様決めのためのマイクロテクスチャ形成を目的として,ダイヤモンド工具を用いて,チタン合金を直接に切削加工するときの加工精度向上,とくに溝肩部のバリ抑制について,実験検討している.それによれば,(1)サブミクロン切込み領域のシェイピング加工で,バリやむしれのない良好な微細溝形成ができる.このバリやむしれは,切屑剪断時の溝肩部における引張力により発生する.(2)上記のバリなし加工条件範囲では,加工能率が低い.より高能率な加工条件では,低温切削によるバリ抑制ないしエッチング除去が効果が大きい.(2)マルチローラ加工:個体差に応じたインプラントに対し,多種少量生産ないしは一品生産できる,倣い方式のマルチローラによるマイクロテクスチャ加工技術を提案し,この可能性について実験検討を行った.それによれば,(1)ローラ加工におけるバリ発生メカニズムについて実験解析し、加工面に押し込み様の力がはたらくローラ加工では,歪が広範に及び,相対的にバリを低く抑制できる.(2)±5°までの傾斜面に倣って多条のマイクログルーブが加工可能な追随性の高いマルチ工具ホルダを提案,試作した.(3)ダイヤモンド砥石を用いて,φ0.4mmの微細なローラ工具に対し,1μmエッジ精度の成形研削技術を確立し,同時多条溝加工の可能性を見出した.などを,明らかにしている.インプラント表面に対する多品種少量加工を前提に,傾斜面に倣ったミクロンサブミクロンの微細溝加工が可能な,等分布荷重制御方式のマイクロテクスチャ創製技術について,実験と解析面から検討する3ヵ年にわたる研究で,本年はその初年度にあたる.これまでに,1,微細溝を形成するための微小な駒状の回転ロールの製作を可能にした.2,微小な回転ロールへの多結晶ダイヤモンド薄膜のコーティングプロセスを確立し,より耐摩耗性の高い回転ロールを開発した.3,有限要素解析により,回転ロールの支持剛性が最適設計された熊手状の軸受を開発した.これら回転ロールが支承された軸受を,動電型アクチュエータの可動軸に固定する工具支持構造としたことにより,制御された定圧荷重を,個々の工具に等分に荷重分散するとともに,加工面の微細な起伏(最大傾斜角3°)にも追随できるようにしており,3次元曲面(自由曲面)への微細溝形成を可能にしている.上記3から成る微細溝形成装置を用いて,これまでに,4本の微細溝を同時加工するグルービングテストを平面状工作物面に対して実施し,1μm±0.1μm深さのマイクログルーブテクスチャ形成が可能なことを確認している.体内に装填されるインプラントには,生体への適合性の高いチタン材(純チタン,チタン合金)が多用されている.このような材質面に加えて,微細凹凸すなわちマイクロテクスチャといった表面の性状によっても,生体適合性が左右されることが、最近の研究で明らかにされつつある.そこで本研究では,個体差に応じた寸法や3次元形状のチタン材表面に対し.グルービング加工,フライカッティングおよびローリング加工により,深さやピッチがサブミクロンミクロンレベルのマイクロテクスチャの形成の可能性について基礎実験を行った. | KAKENHI-PROJECT-14350069 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14350069 |
インプラント対応3Dマイクロテクスチャ形成に関する基礎研究 | その結果,1)個々のマイクロツールを弾性ヒンジ支持したマイクロヒンジアレイ構造のツーリング機構を開発し,グルービング加工およびローリング加工に適用したところ,3D形状への倣い加工が容易で,能率的な形成が可能になること,これに対し,フライカッティングでは,工具・工作物間に複雑かつ超精密な相対制御が要求され,単純形状の工作物面へのマイクロテクスチャ形成に制限されること,2)グルービング加工では,ダイヤモンド工具すくい面へのチタンの拡散による溶着が顕著で,工具形状のテクスチャ形状への転写精度が劣化すること.これに対しフライカッティングでは,溶着を相対的に少なくできるものの,溝肩部には切り屑生成メカニズムに起因してバリが発生〔対溝幅比<5%〕し転写精度の劣化を来すこと.また工具・工作物間の相対速度のないローリング加工においても,工具へのチタンの溶着が無視し得ないこと,3)このチタン溶着は,極低温(<-120°C)の不活性ガス雰囲気中では抑制効果が大きいこと.また工作物表面に極薄の酸化皮膜を形成すること,4)発生したバリの近傍では,加工ひずみが大きく,このためバリ部を選択的にエッチングすることが可能で,ほぼ実用レベルにまでバリ除去が可能であること、などを明らかにした.体内に装填されるTiインプラントの表面形状は,メーカーによって表面処理方法が異なり,いろんなマイクロテクスチャ形状をしている.この表面の微細凹凸形状お生体適合性への影響が,よく議論されているが,まだ定説が得られるまでには至っていない.本研究では,個体差に応じた寸法や3次元形状のチタン材表面に対し,深さやピッチがサブミクロンミクロン領域のマイクロテクスチャ形成を目的として,ラビング加工,ローリング加工およびフライカッティングに対して,その可能性について実験検討している.それによれば,(1)ローリング加工およびラビング加工:自由曲面に定圧倣い加工によりマイクロテクスチャを形成する目的で,微細超硬ロールを用いたローリング加工,およびこのロールの回転を止めて行うラビング加工に対して,加工実験およびFEM解析によりその加工メカニズム解明を行っている.それによれば,サブミクロン領域の微細溝成形における材料の変形挙動には,両者に大差が認められない.一方,ミクロン領域においては,ラビング加工では送り方向に垂直な断面内の溝幅方向に押し開く塑性流動をすること,またローリング加工では,溝深さ方向に押し込む塑性流動をすることにより,微細溝が形威されることなどを明らかにしている.(2)フライカッティングによるインプラントのサンプル試作およびラットへの装埋テスト:第2年度までのフライカッティングの加工実験結果をもとに,ピッチ10μm,溝底角90°の多条V溝のマイクロテクスチャを形成した砲弾型の純チタンサンプルを試作し,ラットに装埋し生体適合性を評価した〔評価;新潟大学歯学部が担当〕.それによれば,マイクロテクスチャサンプルでは,装埋後のかなり初期の段階で,骨生成の核となる兆候が認められ,明らかに有意差のあることが確認された.このことから,マイクロテクスチャ形成による生体適合性が向上すると言える. | KAKENHI-PROJECT-14350069 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14350069 |
表現する組織:イノベーションの実現における芸術・人文学的知識の役割についての研究 | 本研究では、イノベーションの実現における芸術・人文学の役割として、英国の芸術・人文学研究評議会(AHRC)等が助成する、イノベーションに資する芸術・人文学研究・教育事業の調査、芸術・人文学の知見を導入した、イノベーションに関する観察や研究の可能性の探求を行った。その結果、次の三点が明らかになった。第一に、イノベーション研究は、経済的、技術的な観点で進められてきたが、文化的、哲学的な視点を導入することによって、より創造的な議論へと進むことができる。第二に、このような議論を進めるには、芸術・人文学から社会科学を横断し、人とその仕事の社会とのつながりの性質(ビジネス、コミュニケーション、デザイン)や、その質的階層(実践的、知的、創造的)による類型化が必要である。第三に、このように時空間と人の活動の関係性を中心にイノベーションを再考してみることによって、情報技術の高度化に伴う新しい社会科学の役割として、イノベーションを促進する研究実践についての議論も行うことができる。最終年度に当たる2018年度は、研究成果の取りまとめとして、工業化が進んでいた時代とは異なる、インターネットの普及、デジタル技術の進歩、メディアのパーソナル化による、表現の時代のイノベーションについての概念的枠組みを検討した。さらに、本研究を応用し、複雑とされ、学際研究が要請されるような社会的課題に取り組む、情報技術の高度化に見合った社会調査や質的研究の手法について検討した。この手法を通じて、「大学文化(と社会との関係)を変える」ことを目的としたパブリックエンゲージメント事業など、多様な人や組織が関与する、クリエイティブ経済特有の事業に関わる組織や戦略の研究に向けた議論も開始することができた。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成27年度は、1)イギリスのクリエイティブ産業政策の成功要因を、政府の「外」、すなわち、産業、企業、大学、地域の4つの観点から再考した。また、2)平成28年度の課題である、この政策の基本方針を踏まえた概念的枠組みを構築するための予備調査を行った。さらに、3)この枠組みを構築するために必要となる日本企業の事例に関する共同研究を実施した。まず、1)については、文献資料調査およおび現地調査に基づいて、イギリスのクリエイティブ産業政策にかかわる企業や大学、研究者、専門家などにインタビュー調査を行った。具体的には(1)UKTI (英国貿易産業省)が主催したINNOVATE 2015に参加し、政府と企業、産業の関係についてのインタビュー調査を実施した。また、(2)芸術人文学評議会の支援を受けて行われている、知識交流4拠点(大学)の研究者らと議論を重ねた。さらに、(3)文化・メディア・スポーツ省、Nestaにおけるクリエイティブ産業政策をめぐる統計、および実証分析の専門家と意見交換を行った。2)については、クリエイティブ産業政策の基本方針を枠組みとする理論を構築するため、その基礎となる歴史的背景の整理を行った。具体的には、イギリスのアーツ&クラフツ運動およびドイツ表現主義のデザイン界、製造業への波及についての調査を行った。表現主義運動は、イギリスで起きたアーツ&クラフツ運動からの影響も受けているが、ドイツはイギリス以上にその影響が製造業に強く見られる点で注目に値する。3)クリエイティブ産業政策の基本的な方針を踏まえた概念的枠組みを日本企業に示唆を与えうるものとするため、マツダの事例研究を行った。具体的には、マツダにおける魂動デザインをめぐるリーダーシップやデザイナーの思考と実践に関して、インタビュー調査を広島本社およびカリフォルニアのデザインスタジオで実施した。1)イギリスのクリエイティブ産業政策の成功要因を、政府の「外」、すなわち、産業、企業、大学、地域の4つの観点から再考し、その成果の一部を、平成27年度10月に行われた研究・技術計画学会年次大会において発表した。平成28年度中には、論文として投稿する予定である。なお、この政策は、政権の変化によっていまだ変化もあるため、平成28年度以降も調査を重ねる予定である。2)イギリスのクリエイティブ産業政策は、芸術や文化産業の振興策だと思われる事が多いが、実際には、科学、技術、経済を中心とするイノベーション論に対する、アート、文化、芸術の視点を取り入れた考え方であり、芸術人文学の視野と科学的な視点を融合した概念的枠組みが必要である。平成27年6月に行われた組織学会の研究発表大会(一橋大学)にて発表を行い、芸術人文学的な視点と科学的な視点の違いを体感することができ、重要な示唆を得ることもできた。また、イギリスで開催されたINNOVATE UKにおいて、C.P.スノーの「二つの文化」(1959)を解決することがこの政策の目的であることがはっきりと明示されたため、この概念を踏まえた上で、これまでの創造性研究・理論を踏まえた、芸術人文学的な視点に基づく概念的枠組みを構築することがふさわしいことがわかった。二つの文化とは、日本で言えば、文系、理系の違いによって生じる問題であり、最近では、日本企業の問題として指摘されることも増えてきている。3)平成28年3月に発行された一橋ビジネスレビューのケーススタディとして「マツダデザイン“CAR as ART"」を発表することができた。本研究は、デザインに焦点を当てたため、今後の課題としては、デザインとクリエイティブ産業ならびに創造性との関係性を整理する点にあると考えている。平成28年度は、芸術・人文学的知識が製造業など、他産業のイノベーションにもたらす効果・役割に関する概念枠組みを構築することを目的に研究を進めた。 | KAKENHI-PROJECT-15H05394 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H05394 |
表現する組織:イノベーションの実現における芸術・人文学的知識の役割についての研究 | 具体的には、Throsby (2001)の「文化的価値」の構成要素(美的価値/精神的価値/社会的価値/歴史的価値/象徴的価値/本物の価値)と研究方法(図式化/厚い記述/態度分析/内容分析/専門的鑑定)を中心に、延岡(2011)の意味的価値など、技術経営の文脈における同様の議論との接点を探求することによって、芸術・人文学的知識の役割を整理・検討した。方法としては、マツダ等の企業でのインタビュー調査から、多様な研究分野における人の視点・思考・実践の違いとその要因を探求した。また、(A)科学、テクノロジー、経済および、(B)技芸、芸術、文化領域の研究者や企業、その従業者、フリーランスへの聞き取り調査を重ねた。(A)と(B)に属する人々に対する調査及び定量的調査を行うことも予定していたが、研究の進捗状況を鑑み、断念した。結果として、当初計画していた内容では、「二つの文化」つまり、(A)科学、テクノロジー、経済、(B)技芸、芸術、文化領域の違いを整理するにとどまり、本質的な議論を行うことが難しいと判断した。そのため、新たに、「二つの文化」を超えた概念として表現という行為を位置付け、(1)人や組織に知識を創造させる意識と、(2)意識と知識を共創させる知性と感性についての資源とプロセスについての概念的枠組みとして提示することにした。言語、知識、イメージに関する先行研究を整理し、それぞれの構造と創造プロセスについての議論を援用した。そうすることによって、知識創造企業論では論点になっていなかった、知識の内容や質についての議論が可能になることがわかった。平成28年度までに、芸術・人文学的知識が製造業など、他産業のイノベーションにもたらす効果・役割に関する概念枠組みとして、質の高い知識を創造し、イノベーションを実現して、競争優位を確立できる人や組織の意識と、意識と知識を共創させる知性と感性についての内容とプロセスに関する分析単位を明らかにすることができた。既存の創造性研究に対して、英国の「クリエイティブ産業」政策が求める創造性の違いも整理することができた。したがって、芸術人文学並びに社会科学の違いの整理と、その融合による新しい議論が可能な基盤は整備できたと考えている。平成28年までの課題は、概念的枠組みを構築することであったが、その過程において、事例分析と定量調査の可能性についても検討していたため、、平成29年度以降の研究の準備も進めることができた。ただし、研究成果の公表は十分には出来ていないため、平成29年度以降は、積極的に成果の公表も行う。平成29年度は、これまでの研究に限界と矛盾を発見したため、研究の方針の変更を行なった。しかし、年度終了までに、この問題を解決し、これまでのイノベーションの議論を場所中心に考える概念的枠組みを構築し、ブレア政権以降の英国の政府、産業、大学における変化を歴史的、社会的に検討した。これまでは、英国における芸術・人文学の研究や教育が解決しようとしている問題が、自然科学、社会科学、芸術人文学といった学問分野の違いにあると考えていたが、実際には、進歩した技術の性質の変化に対応する人材を育成する方法であることがわかった。 | KAKENHI-PROJECT-15H05394 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H05394 |
戦略的情報システムに支援された在庫管理システムの理論的および実証的研究 | 本年度の研究計画に基ずき、国内主要3社と米国系4航空会社の実態調査と資料収集を行った.その分析を進め、統計資料の分析とデータベース化を行った.統計ソフトを利用して基本統計量の解析をほぼ終えている.これによって得た新たな知見は、1.1980年代後半より消費者が航空チケット価格にたいへん敏感になってきている.これは主に、米国系航空会社の戦略の影響が大きいことを確認した.2.企業外秘であり計算はできなかったが、格安航空チケットの販売比率が伸びていることを示すデータが得られた.3.利益を最大化するための座席の各種チケットの配分方法(例.Economyクラスでも、金額により数種類に別れる.)は需要予測の精度を上げることにより改善の余地がある.言い替えると、その予測こそ、利益最大化のkeyとなる.4.日本の航空行政の規制緩和は、消費者の利益を増大させる.この実態調査とともに、戦略的情報システムのモデルの理論的研究を進めた.数種類ある座席のクラスを一種の資産のクラスととらえ、この資産運用の目標収益率を下回る座席管理の運用パフォーマンスをリスクと定義し、リスク発生に罰金を課すような資産運用モデルを提案し、この最適配分を求めるための計算アルゴリズムを提案した.また、予約のキャンセルがある場合を不確実な選択と考え、最適停止・最適制御としてモデル化し、最適な販売方法を分析した.このモデルによると、キャンセルの確率が収益に及ぼす影響のきわめて大きいことがわかり、上記データ分析による知見3を支持するが、モデルを建てるときの仮定を緩和する方向でより実態にあったモデルを提案する方向で研究を継続している.本年度の研究計画に基ずき、国内主要3社と米国系4航空会社の実態調査と資料収集を行った.その分析を進め、統計資料の分析とデータベース化を行った.統計ソフトを利用して基本統計量の解析をほぼ終えている.これによって得た新たな知見は、1.1980年代後半より消費者が航空チケット価格にたいへん敏感になってきている.これは主に、米国系航空会社の戦略の影響が大きいことを確認した.2.企業外秘であり計算はできなかったが、格安航空チケットの販売比率が伸びていることを示すデータが得られた.3.利益を最大化するための座席の各種チケットの配分方法(例.Economyクラスでも、金額により数種類に別れる.)は需要予測の精度を上げることにより改善の余地がある.言い替えると、その予測こそ、利益最大化のkeyとなる.4.日本の航空行政の規制緩和は、消費者の利益を増大させる.この実態調査とともに、戦略的情報システムのモデルの理論的研究を進めた.数種類ある座席のクラスを一種の資産のクラスととらえ、この資産運用の目標収益率を下回る座席管理の運用パフォーマンスをリスクと定義し、リスク発生に罰金を課すような資産運用モデルを提案し、この最適配分を求めるための計算アルゴリズムを提案した.また、予約のキャンセルがある場合を不確実な選択と考え、最適停止・最適制御としてモデル化し、最適な販売方法を分析した.このモデルによると、キャンセルの確率が収益に及ぼす影響のきわめて大きいことがわかり、上記データ分析による知見3を支持するが、モデルを建てるときの仮定を緩和する方向でより実態にあったモデルを提案する方向で研究を継続している. | KAKENHI-PROJECT-05680347 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05680347 |
骨・軟骨形成における低分子量Gタンパク質Cdc42の機能解析 | 本研究の目的は、骨・軟骨形成における低分子量Gタンパク質Cdc42の機能を明らかにすることで、骨軟骨形成不全などの先天性疾患の原因解明とその予防・治療方法の可能性を探ることである。我々は、軟骨特異的Cdc42遺伝子コンディショナルノックアウトマウスを用い、大腿骨成長板においてCdc42が軟骨細胞の増殖、分化の制御に重要な役割を担っていることを明らかにした。また、Cdc42の欠損が軟骨形成遺伝子の発現を抑制し、結果として軟骨内骨化に影響を及ぼし、海綿骨の形成不全を引き起こすことを明らかにした。Cdc42遺伝子コンディショナルノックアウトマウスがコントロールマウスと比較して低身長で四肢が短縮していたこと、また大腿骨成長板において増殖軟骨層が短縮、肥大軟骨層が肥厚していた原因について解明するために、生後1日齢Cdc42fl/fl;Col2-Creマウスの大腿骨成長板における表現型の組織学解析を行った。具体的には、組織切片作製後、PCNAやpH3などの増殖マーカーの抗体を用いた免疫染色や、BrdUの取り込みにより、増殖軟骨層における細胞増殖について検討を行った。PCNAによる免疫染色の結果、Cdc42遺伝子コンディショナルノックアウトマウスではコントロールマウスと比較して増殖軟骨細胞の増加が認められたが、pH3の免疫染色では変化が認められなかった。また、同様に組織切片を用いて、後期肥大軟骨細胞における細胞死をTUNEL染色によって解析を行ったところ、Cdc42遺伝子コンディショナルノックアウトマウスではコントロールマウスと比較して、増殖軟骨細胞層におけるTUNEL陽性細胞の増加が認められた。次に、Cdc42fl/fl;Col2-Creマウスの大腿骨成長板から軟骨細胞を採取し、軟骨分化・成熟に関与する遺伝子(Sox9、アグリカン、II型コラーゲン、X型コラーゲン、マトリックスメタロプロテアーゼなど)の発現様式を定量的PCR法により解析した。PCRの結果、Sox9、アグリカン、II型コラーゲン、X型コラーゲンの発現はコントロールマウスと比較して低下しており、マトリックスメタロプロテアーゼ13の発言は増加していた。全てまた、海綿骨における破骨細胞の局在を確認するためにTRAP染色を行ったところ、破骨細胞数の低下が認められた。昨年度までの研究では、Cdc42fl/fl ; Col2-Creマウスの肋軟骨から軟骨細胞を採取し、軟骨分化・成熟に関与する遺伝子(Sox9、アグリカン、II型コラーゲン、X型コラーゲン、マトリックスメタロプロテアーゼなど)の発現様式を定量的PCR法によって解析を行ってきた。しかし、Cdc42を欠損させていることから、in vitroの実験系において培養した細胞が、正しく軟骨細胞に分化、成熟しているかは不明瞭である。そこで、今年度の研究では、軟骨細胞をGFPによって標識した新たなコンディショナルノックアウトマウスを作製することで、軟骨細胞を視覚的に確認可能な系の確立を目指した。軟骨でCre遺伝子を発現するトランスジェニックマウス(Col2-Cre Tg)と、mT/mG二重蛍光Creレポーターマウスとを交配し、Cdc42fl/fl ; Col2-Cre ;mTmGマウスを作製し、大腿骨成長板から軟骨細胞を採取し培養を行ったところ、GFP陽性の軟骨細胞を確認できた。この結果をもとに、Sox9、II型コラーゲン、X型コラーゲン、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)13などの遺伝子発現解析を定量的PCR法によって解析を行ったところ、コントロールマウスと比較してCdc42fl/fl ; Col2-Cre ;mTmGマウスでは、各遺伝子の発現が低下していることが明らかになった。この結果により、昨年度までの研究で得られた結果の整合性を得ることができた。本研究の目的は、骨・軟骨形成における低分子量Gタンパク質Cdc42の機能を明らかにすることで、骨軟骨形成不全などの先天性疾患の原因解明とその予防・治療方法の可能性を探ることである。我々は、軟骨特異的Cdc42遺伝子コンディショナルノックアウトマウスを用い、大腿骨成長板においてCdc42が軟骨細胞の増殖、分化の制御に重要な役割を担っていることを明らかにした。また、Cdc42の欠損が軟骨形成遺伝子の発現を抑制し、結果として軟骨内骨化に影響を及ぼし、海綿骨の形成不全を引き起こすことを明らかにした。Cdc42コンディショナルノックアウトマウスで得られた表現型の原因について解明するために予定していたPCNAやpH3などの増殖マーカーのを用いた実験、アポトーシスの確認のためのTUNEL染色を用いた解析、定量的PCR法による各軟骨分化・成熟遺伝子の発現解析は行えており、破骨細胞数の検討も行えた。27年度が最終年度であるため、記入しない。骨・軟骨形成おおむね順調に遂行出来ているので継続していく。27年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-26893271 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26893271 |
メカノストレスに対する糖尿病骨格筋のカルシウムイオン動態 | 糖尿病の予防やその進行を抑制するためには,骨格筋の糖代謝能を正常に保つことが重要である.本研究は糖尿病モデル動物を用いて,筋収縮を繰り返すと疲労の原因となる細胞質のカルシウムイオンが蓄積しやすいことを明らかにした.とくに,カルシウム恒常性と関連する微小血管の血流や酸素運搬に考慮し,それらの細胞内環境が維持されたin vivo実験(生体内モデル)によってこの知見を得ることに成功した.糖尿病が誘発する骨格筋の脆弱性はカルシウムの恒常性が深く関与する.糖尿病の予防やその進行を抑制するためには,骨格筋の糖代謝能を正常に保つことが重要である.本研究は糖尿病モデル動物を用いて,筋収縮を繰り返すと疲労の原因となる細胞質のカルシウムイオンが蓄積しやすいことを明らかにした.とくに,カルシウム恒常性と関連する微小血管の血流や酸素運搬に考慮し,それらの細胞内環境が維持されたin vivo実験(生体内モデル)によってこの知見を得ることに成功した.糖尿病が誘発する骨格筋の脆弱性はカルシウムの恒常性が深く関与する.筋収縮に対する筋細胞内のカルシウム恒常性は,筋疲労や筋損傷と関連している.ところが,糖尿病状態での筋収縮と筋細胞内カルシウム恒常性の関係は明らかではない.【目的】平成22年度は,課題1として,糖尿病ラットは正常ラットと比較してアイソメトリック(ISO)とエキセントリック(ECC)に対する細胞内カルシウム濃度[Ca^<2+>i]の蓄積パターンが異なるという仮説を検証した.【方法】実験はラットの骨格筋観察モデルによるin vivoバイオイメージングによって実施した.糖尿病ラット(DIA, streptozotocin, i.p.)と正常ラット(Cont)の脊柱僧帽筋を対象にカルシウムイメージング(Fura-2AM)によって,電気刺激(100Hz)による50回を1セットとする連続的なISOとECCを5分間の間隔をおいて10セット反復した.各セットの筋収縮後に取得した蛍光画像(340/380nm ratio image)の強度変化から[Ca^<2+>i]蓄積動態を経時的に評価した.【結果と考察】Contにおいて,安静時(収縮前)と比較して有意な[Ca^<2+>i]増加はISOでは収縮負荷6セット,ECCでは1セットから観察され,ECCがISOよりも[Ca^<2+>i]蓄積が有意に高かった.DIAのISO条件は1セットから有意な蓄積が生じ,Contよりも蓄積動態が大きかった.一方,ECC条件ではContよりも蓄積が低いことが観察された.細胞内の[Ca^<2+>i]蓄積には筋小胞体とStretch-activated channelsを介した細胞外からの流入が関与していると考えられる.したがって,本研究結果で示された[Ca^<2+>i]蓄積パターンの違いは,糖尿病の骨格筋では細胞外カルシウム流入量や筋小胞体のカルシウム取り込み能力の変化が生じている可能性を示唆している.【結論】糖尿病はISOおよびECCに対する[Ca^<2+>i]蓄積が正常モデルと異なることが明らかになった.以上のような細胞内カルシウムの恒常性の違いは,糖尿病での筋疲労,筋損傷の特徴を考える際に重要であると考えられる.細胞内に蓄積したカルシウムイオン(Ca^<2+>)は筋の損傷や再生の誘導因子として関与することが考序られる.これまで筋細胞内への流入経路が異なることが示されている伸張性収縮(ECC)負荷ならびに薬理学的作用によって上昇した細胞内Ca^<2+>の経時変化については明らかになっていない.そこで,本年度は,バイオイメージングによりECC終了時から60分間後までの細胞内Ca^<2+>動態とブビカバイン(BVC)付加後のCa^<2+>動態の蓄積パターンを明らかにすることを目的とした.実験にはWistar系雄性ラットを用いた.麻酔下で外科的に露出した脊柱僧帽筋に,Ca^<2+>蛍光指示薬であるFura2-Amを付加し,電気刺激による50回のECC収縮を5分の安静期間をおいて10セット負荷した.筋線維毎に任意の複数箇所の細胞内Ca^<2+>膿度の変化を,ECC収縮負荷後またはBVC付加後から60分間観察した.その結果,ECC後のCa^<2+>蓄積動態は筋線維間で異なり,細胞内Ca^<2+>が有意に上昇した部分では,少なくとも観察した60分間は増加した値が継続された.また,この蓄積は細胞膜伸展に伴って開口するSACチャンネルのプロッカーによって抑制されることを明らかにした.BVC付加後においても有意な一過性のCa^<2+>濃度上昇が観察されたが,60分間で安静値レベルへと回復した.以上のことより,運動誘発性によるCa^<2+>蓄積と薬理的な作用によるCa^<2+>蓄積パターンが異なるごとが明らかにされた.骨格筋サイズはタンパク質の合成・分解比によって調節されている.インスリンの分泌が極度に低下している1型糖尿病は,糖代謝の恒常性破綻を招くと同時にタンパク質合成を抑制し筋萎縮の合併症を引き起こす.これまで,レジスタンス運動が糖尿病性筋萎縮の抑制に対して有効であるということが明らかになっている.近年,レジスタンス運動に筋血流の制限を伴うことによって,筋肥大シグナルが顕著に亢進し効果的な筋肥大が起きるという現象が注目されている. | KAKENHI-PROJECT-22300221 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22300221 |
メカノストレスに対する糖尿病骨格筋のカルシウムイオン動態 | 平成25年度は,筋萎縮の亢進が著しい1型糖尿病ラットモデルを作成し,血流制限を伴った運動が筋肥大シグナルに及ぼす影響を明らかにすることを目的として実験を遂行した.ラットにストレプトゾトシン(45mg/kg)を腹腔内注射し薬理学的投与による1型糖尿病モデルラットを作成した.大腿部にカフを装着して血流制限(カフ圧力: 80 mmHg)を加え,1分後に前脛骨筋に電気刺激によるアイソメトリック収縮(低強度:最大発揮張力の50%)を1分間隔で4セット(20,15,15,15回)負荷した.前脛骨筋を3時間後に摘出し,mTORシグナル経路のリン酸化応答(mTOR,S6K1,S6)をWestern Blottingにより調べた.その結果,血流制限によって,S6のリン酸化が有意に亢進していることが示された(+317%:p < 0.05).一方,運動条件では,血流制限よりもS6のリン酸化の強い亢進が認められた(+520%:p < 0.01).また,血流制限と運動を組み合わせた負荷条件では,運動条件と比較し,そのリン酸化レベルは同程度であった(+560%:p < 0.01).血流制限は,1型糖尿病モデルにおける筋萎縮の抑制に対して有効な処方となる可能性を示した.一方,運動条件では,健常モデルに与えるほどの血流制限の効果は期待されないことを示唆した.糖尿病は様々な代謝疾患を併発する.これには,骨格筋の形態的,機能的な脆弱性が関係しており,筋萎縮やミトコンドリアの機能障害が報告されている.さらに,小胞体やミトコンドリアにおけるカルシウムイオン(Ca2+)放出,取り込みの低下などといった筋細胞内Ca2+恒常性の障害が示唆されている.しかしながら,in vivo環境下において,筋細胞内Ca2+の緩衝能力(Ca2+恒常性機構)に関しての知見は得られていない.24年度では,糖尿病状態の筋細胞は,細胞外から流入するCa2+に対して,細胞内のCa2+放出,緩衝能力が低下しているという仮説を立て,マイクロインジェクションによるCa2+負荷後の筋細胞内Ca2+動態を明らかにした.実験には1012週齢のWistar系雄性ラットを用い,ストレプトゾトシン誘発による1型糖尿病群(DIA)と正常群(CONT)に区分した.測定項目は形態・組織化学的評価,緩衝能力評価とした.形態・組織化学的評価は,組織化学染色法を用いて,筋横断面積,酸化系能力(SDH:コハク酸脱水素酵素)を測定した.緩衝能力評価は,麻酔下で外科的に露出した脊柱僧帽筋に,Ca2+蛍光指示薬であるFura-2を負荷し,単一筋線維にCa2+溶液をマイクロインジェクションによって注入し,注入前30秒,注入後60秒のCa2+経時変化を画像解析によって評価した.インジェクションによるCa2+の上昇率の最大値から90秒時の相対的な差を緩衝率とした.その結果,DIAは,CONTよりも筋横断面積,SDH活性の有意な低値を示し,糖尿病群の筋の萎縮,酸化系能力の低下が示唆された.また,DIAは,CONTよりもインジェクションによるCa2+の上昇率,緩衝率の有意な低値を示した.以上の結果から,in vivo下の糖尿病骨格筋において,細胞内Ca2+の放出,緩衝能力の低下が示唆された.細胞内へのカルシウムイオンの流入経路と消去経路の解明に取り組む予定であった.本研究の観察モデルは数時間までは可能であるものの,伸張性収縮(ECC)負荷モデルの消去経路の解明には,さらに長時間の経時的なプロトコールが必要であることが判明した.そのため,消去経路の解明を目的とした実験を実施することができなかった.25年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22300221 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22300221 |
小児白血病におけるメルカプトプリンによる治療のDNA中代謝物濃度による個別化 | 小児白血病の治療において、主要な治療薬の1つである6-メルカプトプリン(6-MP)は、細胞内に取り込まれた後に、複数の代謝酵素によって代謝を受け、活性代謝物である6-thioguanine nucleotides (6-TGNs)となる。6-TGNsはDNAやRNAに取り込まれ、細胞障害を現す。これまでに、細胞内の6-TGNs濃度の測定について、欧米人の患者において報告があるが、日本人では報告が少ない。さらに、6-MPの代謝物が効果を発現するDNAやRNAへの取り込み量と作用発現については、日本人では報告がない。そのため、DNAに取り込まれたTGNsの濃度を測定する方法を確立することとした。確立したDNA-dTG濃度測定法で、実際に臨床で6-MPを服用した患者から採取したDNAを用い、DNA-dTG濃度の測定を行った。これまでに報告があったDNA-dTG濃度範囲と同様の測定結果が得られた。DNAに取り込まれたTGNsの濃度測定を行う測定系を確立し、Cell lineおよび実際の患者検体で測定可能であることを確認できている。治療効果については、Cell lineを用い、IC50等とDNA-dTGの関連があるかについて、検討する予定である。副作用との関連性については、実際に6-MPにより治療を行なっている患者において、骨髄抑制等の副作用が発現した際の血液よりDNAを採取し、副作用発現の指標となるDNA-dTG濃度を検討する。小児白血病の治療において、主要な治療薬の1つである6-メルカプトプリン(6-MP)は、細胞内に取り込まれた後に、複数の代謝酵素によって代謝を受け、活性代謝物である6-thioguanine nucleotides (6-TGNs)となる。6-TGNsはDNAやRNAに取り込まれ、細胞障害を現す。これまでに、細胞内の6-TGNs濃度の測定について、欧米人の患者において報告があるが、日本人では報告が少ない。さらに、6-MPの代謝物が効果を発現するDNAやRNAへの取り込み量と作用発現については、日本人では報告がない。そのため、DNAに取り込まれたTGNsの濃度を測定する方法を確立することとした。LC-MS/MSでは、0.1pg/μL-20ng/μLの濃度を測定することが可能な検量線を作成した。89株の培養細胞のDNA-dTGを測定し、測定精度は十分であった。確立したDNA-dTG濃度測定法で、実際に臨床で6-MPを服用した患者から採取したDNAを用い、DNA-dTG濃度の測定を行った。これまでに報告があったDNA-dTG濃度範囲と同様の測定結果が得られた。DNAに取り込まれたTGNsの濃度測定を行う測定系を確立し、Cell lineおよび実際の患者検体で測定可能であることを確認できている。治療効果については、Cell lineを用い、IC50等とDNA-dTGの関連があるかについて、検討する予定である。副作用との関連性については、実際に6-MPにより治療を行なっている患者において、骨髄抑制等の副作用が発現した際の血液よりDNAを採取し、副作用発現の指標となるDNA-dTG濃度を検討する。必要とした物品を購入するためには今年度使用額では不足していたため、次年度の使用額と併せて、当該物品を購入することに充当する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-18K06756 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K06756 |
衝撃波と干渉する遷音速せん断流れの三次元構造 | 衝撃波を含む遷音速せん断流れ場の三次元構造および非定常挙動を測定できるレーザ計測法を開発し,衝撃波と干渉する遷音速せん断流れ場として衝撃波-境界層,ならびに衝撃波-自由せん断層の三次元干渉問題に本レーザ計測法を適用して,それらの干渉場における三次元流れ構造および非定常挙動に関する詳細なデータを取得した.その計測データおよび数値シミュレーションから衝撃波を伴う遷音速せん断流れ場の非定常三次元構造を解析し,以下の結果が得られた.レーザ誘起蛍光法による三次元流れ計測システムを用いてスイ-プバンプ付きダクト内遷音速流れ場の三次元温度分布を測定した結果,バンプにより誘起された衝撃波の三次元形状,ダクト壁面における衝撃波の反射形態,境界層のはく離など,遷音速ダクト内での衝撃波と境界層の三次元干渉場における極めて複雑な流れ構造を定量的に明らかにすることができた.本三次元流れ計測システムは,衝撃波と干渉する複雑な遷音速せん断流れ場の有力な三次元診断法であることが分かった.超音速キャビティ流れ場の衝撃波と自由せん断層の干渉開題に,レーザー誘起蛍光法を用いた非定常三次元流れ計測システムを適用して,流れ場の温度の時間平均三次元分布および時間変動を測定した.その結果,キャビティ前縁から生じるはく離せん断層,キャビティ後縁から発生する離脱衝撃波,キゃビティ内の渦など,流れ場の三次元的構造を明らかにすることができた.また,キャビティ内の流れ場には発生原因が異なる三種類の自励振動形態が存在することが明らかになった.衝撃波を含む遷音速せん断流れ場の三次元構造および非定常挙動を測定できるレーザ計測法を開発し,衝撃波と干渉する遷音速せん断流れ場として衝撃波-境界層,ならびに衝撃波-自由せん断層の三次元干渉問題に本レーザ計測法を適用して,それらの干渉場における三次元流れ構造および非定常挙動に関する詳細なデータを取得した.その計測データおよび数値シミュレーションから衝撃波を伴う遷音速せん断流れ場の非定常三次元構造を解析し,以下の結果が得られた.レーザ誘起蛍光法による三次元流れ計測システムを用いてスイ-プバンプ付きダクト内遷音速流れ場の三次元温度分布を測定した結果,バンプにより誘起された衝撃波の三次元形状,ダクト壁面における衝撃波の反射形態,境界層のはく離など,遷音速ダクト内での衝撃波と境界層の三次元干渉場における極めて複雑な流れ構造を定量的に明らかにすることができた.本三次元流れ計測システムは,衝撃波と干渉する複雑な遷音速せん断流れ場の有力な三次元診断法であることが分かった.超音速キャビティ流れ場の衝撃波と自由せん断層の干渉開題に,レーザー誘起蛍光法を用いた非定常三次元流れ計測システムを適用して,流れ場の温度の時間平均三次元分布および時間変動を測定した.その結果,キャビティ前縁から生じるはく離せん断層,キャビティ後縁から発生する離脱衝撃波,キゃビティ内の渦など,流れ場の三次元的構造を明らかにすることができた.また,キャビティ内の流れ場には発生原因が異なる三種類の自励振動形態が存在することが明らかになった.本研究は、衝撃波を含む遷音速せん断流れ場の三次元構造および乱れの状態を明らかにできるレーザ計測法を確立し、工学的に重要な遷音速流れ場の診断法を提供するとともに、圧縮性乱流モデルの構築に資することを目的とする。このため、アルゴンフッ素エキシマレーザを使用し、遷音速流れ場計測法の多角的開発を行うこととした。本年度は主として同レーザにおける紫外ビーム伝送技術習得と蛍光の基礎データ蓄積および可変密度遷音速風洞における供試ダクトの特性調査を行うとともに、数値解析の基礎ソフトウェア作成を行った。本研究において、現在までに得られた結果を以下に述べる。(1)遷音速流れ場の高時間分析能紫外レーザ計測法を確立するため、既設の小形間欠吹出し式風洞用紫外レーザビーム伝送系を設計製作するとともに、可変密度型気体セルを製作し紫外光受光試験を行った。蛍光検出には光電子増倍管を用いたが、流れ場の乱れを測定する場合、光子統計による増倍管出力の揺らぎと流れ場の揺らぎを区別する必要がある。このため、従来よく分かっていなかった紫外用光電子増倍管の光子統計揺らぎのデータ蓄積を行った。(2)衝撃波-境界層の三次元干渉の詳細な構造を調べる目的で、大形の傾斜バンプ付きダクトを製作し、可変密度遷音速風洞内に設置した。本年度は、中心線上の圧力分布と、シュリーレン法による流れ場の可視化を行い、大形ダクト内流れ場の概略を明らかにした。(3)有限体積型陰的緩和法による非定常粘性流れ場の数値解析法を開発した。本年度は、差分格子点数を少なくし、エンジニアリング・ワーク・ステーションによる予備解析を行ったが、従来、本研究グループが行ったアルゴンレーザ蛍光法による傾斜バンプ付き流れ場の様相を、数値解析でほぼ再現できることが確認できた。本研究は、衝撃波を含む遷音せん断流れ場の三次元構造および乱れの状態を明らかにできるレーザ計測法を確立し、工学的に重要な遷音速流れ場の診断法を提供するとともに、圧縮性乱流モデルの構築に資することを目的とする。このため、アルゴンフッ素エキシマレーザを使用し、遷音速流れ場計測法の多角的開発を行うこととした。本年度は主として酸素セルに同レーザを入射した際に得られる蛍光と散乱光のスペクトル解析およびレーザ蛍光法による遷音速循環流計測法開発を行うとともに、数値解析の基礎ソフトウェアを作成中である。 | KAKENHI-PROJECT-07405010 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07405010 |
衝撃波と干渉する遷音速せん断流れの三次元構造 | 本研究の経過と、現在までに得られた結果を以下に述べる。(1)遷音速流れ場の高時間分解能紫外レーザ計測法を確立するため、可変密度型気体セルを製作し紫外光受光試験を行った。とくに本年度は気体セルを用いた迷光除去技術の確立に重点を置き、バッフルプレートと特殊処理したフィルターを開発して、迷光レベルを蛍光および散乱光強度と比較して無視できる程度まで下げることができた。また、紫外分光器による測定を行い、酸素からのスペクトルを分析して、蛍光、レーリー散乱光とラマン散乱光計測し、それらの強度と気体圧力との関係を明らかにした。(2)壁面にキャビティを有する遷音速ダクト内の流れ場をターゲットとし、レーザで誘起された蛍光の時間揺らぎを測定するための技術を開発した。従来、蛍光はCCDカメラで捕らえられていたが、時間分解能を向上させるため、検出器に光電子増倍管を適用したところ、本方法で20kHzまでの振動が計測可能なことが実証された。(3)上記の遷音速ダクト内流れ場が解析できる有限体積型陰的緩和法を用いた非定常粘性流れ場の数値解析法を現在開発中である。前年度までに開発したレーザー誘起蛍光法による三次元流れ計測システムおよび非定常流れ計測システムを用いて,超音速キャビティ内の自由せん断流れ場における温度の時間平均三次元分布および時間変動を測定した.また,LES(Large Eddy Simulation)による非定常三次元数値計算を併せて行い,レーザによる計測結果と数値計算結果から,衝撃波を伴う遷音速自由せん断流れの三次元構造および非定常挙動を解析した.その結果,以下のことが明らかになった.超音速キャビティ前縁から生じるはく離せん断層やキャビティ後縁から発生する離脱衝撃波,キャビティ内の渦など,流れ場の三次元構造を捕らえることができた.また,キャビティ内の流れ場には発生原因が異なる三種類の自励振動が存在することが明らかにされ,本実験の場合,これらの振動の周波数はそれぞれ7kHz,13kHzおよび20kHzであった.20kHzはせん断層内の渦がキャビティ後面に衝突する際に発生する圧力波によってキャビティ内に形成される定在波に起因している.7kHzの振動はキャビティ底面の前面コーナー側に形成される渦構造の発生から消滅までの周期と対応している.13kHzの振動はキャビティ内の後面側および前面側に形成される二つの渦構造の干渉に関連している.さらに,キャビティ前縁からの放出渦を伴うせん断層とキャビティ後面角部が干渉することにより,後面角部で発生する負および正の圧力波がキャビティ内の亜音速部を上流へと伝播し,キャビティ前面角部に到達してせん断層と干渉し,新たな放出渦の形成を促す過程がキャビティ内の20kHzの自励振動メカニズムであること,キャビティ底面の前面コーナー側に形成される渦構造に強い三次元性があり,これがキャビティ流れの渦構造および自励振動過程に大きな影響を及ぼしていることがわかった. | KAKENHI-PROJECT-07405010 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07405010 |
ペスチウイルスの病原性発現の分子機構に関する研究 | 本研究は、ペスチウイルスの病原性発現の分子メカニズムを明らかにすることを目的とする。平成27年度は以下の研究を実施した。I.ウイルスの複製に関与するウイルス蛋白と宿主因子の検索および同定豚コレラウイルスの病原性発現に関与する非構造蛋白NS4BのN末端領域に認めた両親媒性ヘリックスのゲノム複製における役割を調べた。まず、非構造蛋白NS4BのN末端領域の二次構造をコンピュータソフトを用いて予測した。その成績を基に細胞内膜への親和性を膜分画アッセイおよび共焦点レーザー顕微鏡にて解析し、非構造蛋白NS4Bの細胞内膜への親和性に関与するアミノ酸部位を同定した。さらに、リバースジェネティクス法にて作出したレプリコンおよびウイルスを用いて両親媒性のヘリックス構造のウイルス感染環における役割を解析した。その結果、NS4BのN末端領域に認めた両親媒性のヘリックスはウイルスのゲノム複製およびその増殖に必須の構造であることがわかった。次に、非構造蛋白NS4Bと相互作用する蛋白質を哺乳動物ツーハイブリッド法にて検索した。その結果、NS4B蛋白のC末端領域とNS5A蛋白は相互作用することが明らかになった。II.ウイルスの宿主指向性に関与する宿主因子の検索および同定これまでに同じペスチウイルス属の牛ウイルス性下痢ウイルスは、宿主細胞のCD46およびLDLをレセプターとして細胞への侵入の際に利用することが明らかにされている。ブタのCD46と結合すると考えられる領域の近傍に、これまでに同定した豚コレラウイルスの病原性発現に関与するE2分子上のアミノ酸部位が存在した。本年度は、CD46が豚コレラウイルスの宿主指向性を規定する因子であるかを検するため、CRISPR-Cas9システムを用いてCD46を欠損した細胞を樹立することとした。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。本研究は、ペスチウイルスの病原性発現の分子メカニズムを明らかにすることを目的とする。平成25年度は以下の研究を実施した。1.表面糖蛋白E2分子上のウイルスの吸着と侵入に関与する部位の同定豚コレラウイルス弱毒株のE2の分子モデルを生物情報科学の手法を用いて作製し、ウイルスの吸着と侵入に関与する部位を推定した。その結果、これまでに同定した病原性発現に関与するアミノ酸部位は、宿主細胞のウイルスレセプター候補因子と結合する構造の近傍に位置することがわかった。弱毒株のそのアミノ酸部位を強毒株のそれに置換したウイルスを人工的に作出し、ブタの細胞における吸着および侵入効率を解析した。その結果、これらのアミノ酸部位はブタの細胞でのウイルスの吸着と侵入に関与することがわかった。2.ウイルスの「複製複合体」の機能解析および病原性発現に関与する機能領域の同定ウイルスの「複製複合体」の基盤である非構造蛋白NS4Bを認識する抗体を、ウサギにその組換え蛋白を免疫することで作出した。さらに、NS4Bを哺乳動物の細胞で過剰に発現する実験系を確立し、抗体を用いてその局在と経時変化を解析した。その結果、NS4Bは細胞内膜に強い親和性を持つことがわかった。また、ウイルスの「複製複合体」の機能を生物情報科学の手法を用いて推定した結果、新たにNS4BのN末端領域が病原性に関与することが示唆された。そのため、動物接種試験を実施してその領域の病原性への関与を調べたところ、ウイルスの病原性発現に関与することがわかった。3.非構造蛋白Nproの自然免疫抑制能が生体における免疫応答および病原性に及ぼす影響の解析Nproが、局所感染臓器においてI型インターフェロンの産生を抑制することでウイルスの増殖効率を向上させ、病原性発現に関与することを明らかにした。この研究は、目的達成のため当初の計画に加えて実施した。本研究は、ペスチウイルスの病原性発現の分子メカニズムを明らかにすることを目的とする。平成26年度は以下の研究を実施した。1.ウイルスの複製に関与するウイルス蛋白と宿主因子の同定およびその機能解析まずウイルスゲノムの複製効率を評価するために、豚コレラウイルス弱毒株のRNAレプリコンを構築した。RNAレプリコンを用いて、昨年度同定したウイルスの病原性発現に関与する非構造蛋白NS4BのN末端領域のアミノ酸部位がゲノムの複製効率に及ぼす影響を調べた。その結果、NS4BのN末端領域はウイルスゲノムの複製に関与することが分かった。次に、ブタ由来株化細胞をその密度に応じて分画する実験系を確立し、NS4BのN末端領域が局在する膜分画を調べた。その結果、それは膜蛋白に分画された。さらにNS4Bの大部分は小胞体と共局在することから、ペスチウイルスの遺伝子は小胞体で複製されることが示唆された。2.ウイルスの宿主指向性に関与する宿主因子の同定に向けた研究表面糖蛋白E2はウイルスの吸着と侵入に関与すると共に、ウイルスの粒子形成にも関与すると考えられている。そこで、昨年度作出したE2分子上の吸着と侵入に関与する部位のアミノ酸を置換した変異ウイルスを用いて、それらのアミノ酸部位がブタ由来株化細胞におけるウイルスの粒子形成に及ぼす影響を評価した。その結果、それらのすべてはウイルスの粒子形成効率には影響を及ぼさないことが分かった。現在、宿主細胞のウイルスレセプター候補因子を欠損した細胞を作製している。3.ブタから分離されたヒツジのボーダー病ウイルスの性状解析日本で初めてボーダー病ウイルスが分離された。 | KAKENHI-PROJECT-13J01199 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13J01199 |
ペスチウイルスの病原性発現の分子機構に関する研究 | 本来の宿主であるヒツジに対する分離ウイルスの病原性を調べた結果、ブタに対する病原性よりもそれは高いことが分かった。この研究は、目的達成のため当初の計画に加えて実施した。本研究は、ペスチウイルスの病原性発現の分子メカニズムを明らかにすることを目的とする。平成27年度は以下の研究を実施した。I.ウイルスの複製に関与するウイルス蛋白と宿主因子の検索および同定豚コレラウイルスの病原性発現に関与する非構造蛋白NS4BのN末端領域に認めた両親媒性ヘリックスのゲノム複製における役割を調べた。まず、非構造蛋白NS4BのN末端領域の二次構造をコンピュータソフトを用いて予測した。その成績を基に細胞内膜への親和性を膜分画アッセイおよび共焦点レーザー顕微鏡にて解析し、非構造蛋白NS4Bの細胞内膜への親和性に関与するアミノ酸部位を同定した。さらに、リバースジェネティクス法にて作出したレプリコンおよびウイルスを用いて両親媒性のヘリックス構造のウイルス感染環における役割を解析した。その結果、NS4BのN末端領域に認めた両親媒性のヘリックスはウイルスのゲノム複製およびその増殖に必須の構造であることがわかった。次に、非構造蛋白NS4Bと相互作用する蛋白質を哺乳動物ツーハイブリッド法にて検索した。その結果、NS4B蛋白のC末端領域とNS5A蛋白は相互作用することが明らかになった。II.ウイルスの宿主指向性に関与する宿主因子の検索および同定これまでに同じペスチウイルス属の牛ウイルス性下痢ウイルスは、宿主細胞のCD46およびLDLをレセプターとして細胞への侵入の際に利用することが明らかにされている。ブタのCD46と結合すると考えられる領域の近傍に、これまでに同定した豚コレラウイルスの病原性発現に関与するE2分子上のアミノ酸部位が存在した。本年度は、CD46が豚コレラウイルスの宿主指向性を規定する因子であるかを検するため、CRISPR-Cas9システムを用いてCD46を欠損した細胞を樹立することとした。ウイルス蛋白の機能を解析した結果、当初の計画に加えて動物への接種試験を行う必要が生じたため計画を変更したが、おおむね順調に進展している。本年度は、病原性発現に関与するウイルス蛋白の機能を新たに同定し相互作用する宿主因子の一つを同定した。以上から、本研究はおおむね順調に進展している。また得られた成績を国内外の学術集会にて発表し、学術雑誌に投稿している。27年度が最終年度であるため、記入しない。今後は、計画通り病原性発現に関与するウイルス蛋白と相互作用する因子を同定する研究を進める。さらに、新たに同定した機能領域については詳細な解析を実施する。今後は、計画通り病原性発現に関与するウイルス蛋白と相互作用する宿主因子をさらに検索し、同定する研究を進める。27年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-13J01199 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13J01199 |
海馬顆粒細胞前駆細胞の胎生型から生後型ニューロン新生への転換機構の解析 | 脳の大部分では、成体になるとニューロンは新生されないが、海馬では成体になってもニューロンの新生が続いている。この成体ニューロン新生という現象は、傷害された脳組織も再生できるという希望を抱かせる。このいつまでも続くニューロン産生を解明するために、胎生期生後の海馬ニューロン新生の移行期について研究した。我々は胎生期と生後初期で神経前駆細胞の性質が異なることを見出した。その上、ニューロン新生部位周囲の細胞が重要な働きをすることを明らかにした。これらの結果は、海馬の継続的なニューロン新生には、神経前駆細胞の性質の変化や周囲の細胞から分泌されるシグナル分子が関係していることを示している。大脳新皮質など脳の大部分のニューロンは、胎生期に産生され、生後になるとその産生が止まる。しかし、海馬の顆粒細胞は、生後になっても産生が止まらず、成体になるまで産生され続けている。現在、成体海馬のニューロン新生は、再生医療、記憶・学習機構、精神疾患など様々な分野で注目され、精力的に研究されている。本研究では、このニューロン新生の連続性に着目し、胎生期から成体期の海馬で起こるニューロン新生を包括的に理解することを目的とする。今回、胎生後期から生後の各増殖部位における神経幹細胞/前駆細胞の性質を調べたところ、生後0日から1日目の間に、Brain lipd-binding protein (BLBP)+/Glia fibrillary acidic protein (GFAP)-からGFAP+/BLBP+に変化することを見出した。この結果は、顆粒細胞を産生する神経幹細胞/前駆細胞の性質が出生直後に胎生型から成体型に急速に変化することを示している。また、胎生期の大脳新皮質と歯状回に発現する遺伝子を、DNAマイクロアレイにより網羅的に解析した。現在までに、海馬特異的に発現する分子をいくつか同定している。その中で2-3個の遺伝子に注目し、その遺伝子の強制発現ベクターを作製し、それを大脳皮質側に遺伝子導入した。その結果、未熟な神経前駆細胞の維持に働くと思われる分子を見出した。現在、その分子の抗体を用いて胎生期におけるその分子の発現分布を調べている。海馬歯状回の顆粒細胞層では、成体になってもニューロンの新生が例外的に続いている。本研究では、海馬のニューロン新生の連続性に着目し、胎生型から生後型へのニューン新生様式の転換機構を解析している。GFAP-GFPマウスの免疫組織化学的な解析結果から、胎生期のGFAP-GFP陽性神経前駆細胞のほとんどはBLBP(Brain lipid biding protein)陰性であり、生後のGFAP-GFP陽性神経前駆細胞はBLBP陽性であることを明らかにした。このことから、胎生期と生後では、神経幹細胞/前駆細胞の性質や、それらの調節する微小環境が異なると推測した。現在神経幹細胞の起源を知るためにBLBP-CreERマウスを使って解析している。胎生期の海馬歯状回には、ごく少数存在するBLPBP陽性細胞と多数のBLBP陰性細胞(GFAP陽性細胞)が存在する。胎生期と生後初期のBLBP陽性細胞のその後の発生運命を知るために、BLBP-CreERT2マウスとレポーターマウス(Ai9)を掛け合わせ、胎生14-18日目および生後6日目にタモキシフェンを投与し、生後1ヶ月目のBLBP陽性細胞を解析している。現在のところ、一部のマウスの解析しか終わっていないが、傾向として胎生14日目のBLBP発現細胞は顆粒細胞に分化しないが、胎生16日目以降のBLBP発現細胞は顆粒細胞に分化するとの予備的な結果が得られている。これは最初予想した結果とは異なり、胎生期のBLBP発現細胞も、胎生16日以降では顆粒細胞に分化しうることを示している。今後は、さらに解析を続けると共に、胎生16日目のBLBP発現細胞のニューロン分化過程をタイムラプス観察なども含めてさらに観察する予定である。海馬歯状回の顆粒細胞層では、成体になってもニューロンの新生が例外的に続いている。本研究では、海馬のニューロン新生の連続性に着目し、胎生期から生後初期のニューン新生機構を解析している。以前の研究で、我々は、顆粒細胞は、胎生期成体期まで、GFAP陽性神経前駆細胞によって産生されることを明らかにした。また、胎生期のGFAP陽性神経前駆細胞はBLBP(Brain lipid biding protein)を発現していないが、生後になるとBLBPを発現することを明らかにした。このことから、胎生期と生後では、神経幹細胞/前駆細胞の性質や、それらの産生を調節する微小環境が異なると推測した。そのため、BLBP陽性神経幹細胞の発生運命を知るためにBLBP-CreERマウスを使って解析してきたが、結果を詳しく検討したところ、このマウスのBLBPプロモータが正しく作動していないことが明らかになった。この結果から、残念ではあるが、このマウスの使用を停止した。そこで、胎生期生後初期の神経幹細胞/神経前駆細胞の解析は、Tol2システム-RFPとCAX-GFPを用いた解析に切り替えた。このシステムでは、増殖活性の高い前駆細胞と低い前駆細胞を区別して解析できる。また、微小環境因子として、CXCR4/CXCL12分子に注目することにした。 | KAKENHI-PROJECT-25430041 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25430041 |
海馬顆粒細胞前駆細胞の胎生型から生後型ニューロン新生への転換機構の解析 | その結果、分裂活性の高い細胞が生後顆粒細胞層内側に位置することが明らかになった。この位置には神経前駆細胞も存在することから、現在分裂活性のある程度高い細胞が、生後のBLBP陽性神経幹細胞になる可能性を検討している。また、CXCR4分子が、神経前駆細胞の移動や分化に関与することを明らかにした。脳の大部分では、成体になるとニューロンは新生されないが、海馬では成体になってもニューロンの新生が続いている。この成体ニューロン新生という現象は、傷害された脳組織も再生できるという希望を抱かせる。このいつまでも続くニューロン産生を解明するために、胎生期生後の海馬ニューロン新生の移行期について研究した。我々は胎生期と生後初期で神経前駆細胞の性質が異なることを見出した。その上、ニューロン新生部位周囲の細胞が重要な働きをすることを明らかにした。これらの結果は、海馬の継続的なニューロン新生には、神経前駆細胞の性質の変化や周囲の細胞から分泌されるシグナル分子が関係していることを示している。神経幹細胞の起源については、BLBP発現細胞の解析を中心に進んでいるが、その調節因子については、マイクロアレイ解析に係わる共同研究者の都合により遅れている。神経発生学今後はBLBP-CreER;Ai9を中心に胎生期のBLBP発現細胞の発生運命を解析する予定である。できればタイムラプス観察を行いその動態を詳しく解析したい。海馬歯状回の顆粒細胞の神経前駆細胞に関して、胎生期と成体期で性質が異なることを発見したのは一歩前進である。胎生期の海馬と大脳新皮質に発現する分子をマイクロアレイで比較した実験から、海馬の発生に関与すると思われる分子の候補を同定したが、これについては、その分子の機能を十分には解析していない。これは今後の課題である。動物、抗体、試薬などが予想していた量よりも少なくて済んだため。しかし、現在残量が少なく次年度の初めに購入する。生前と生後の神経前駆細胞ではBLBPの発現に違いがあることが明らかになったので、今後は、BLBP-CreERマウスとレポーターマウスを用いて、生前と生後のBLBP発現細胞がそれぞれ将来どのような細胞になるのかを解析する。また、マイクロアレイで同定した候補分子の胎生期における発現分布を詳細に検討するとともに、機能をsiRNAなどを用いて解析する予定である。次年度は最終年度であり、抗体、試薬、培養器具などが次年度の最初に新たに購入するものが多数あるので、その費用として用いる。共焦点レーザー顕微鏡のコンピュータの修理のために使用する予定であったが、修理が遅れたため(ドイツに送られた)、年度内に請求が来なかった。修理金額についてははっきりしなかったが、おおよそ20-50万円ぐらいだとの話だった。現在修理が終わり、56月に修理代が請求されるので、その支払いに使用する。 | KAKENHI-PROJECT-25430041 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25430041 |
骨髄内酸素環境が担う骨代謝制御の役割の解明 | 「骨と腎臓」の機能連関は、生体の低酸素応答の要となる制御基盤である。両臓器を結びつけるホルモンの一つに、エリスロポエチン(Epo)があり、その作用は、単に赤血球の産生亢進だけでなく、造血の場を司る骨の代謝にも関与する。Epoによる骨代謝制御は、破骨細胞による骨破壊の促進を伴う。しかしながら、破骨細胞自身は、Epoの受容体を発現しておらず、その作用は間接的と不明な点が多い。そこで、本研究では、Epoによる骨髄内酸素環境の調節を介した破骨細胞制御の是非を検証する。本年度では、Epoによる破骨細胞形成への影響を生体レベルで明らかにするために、Epo投与マウスを用いたgain of function並びにISAMによるloss of function解析に従事した。その結果、Epo投与マウスは破骨細胞数の増加とともに骨量減少を、一方ISAMは破骨細胞数の減少並びに骨量増加を呈することを見出した。また、Epo投与による骨髄内酸素濃度がどのように変化するかを捉える方法として、イリジウム錯体の酸素プローブBTPDM1を用いた酸素イメージングの実験系を立ち上げた。実際に、マウスが吸入する酸素濃度を20%から95%へ変動させた場合、骨髄内の赤血球系列細胞からのリン光強度が顕著に低下することを観察した。一方、免疫組織化学による方法として、pimoを投与したマウスから骨を単離し、whole mount免疫染色と組織の透明化を併用することで、骨髄内低酸素領域を評価する実験系を立ち上げた。Epo投与マウスでは、骨髄内の低酸素領域が減少することが判明した。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。「骨と腎臓」の機能連関は、生体の低酸素応答の要となる制御基盤である。両臓器を結びつけるホルモンの一つに、エリスロポエチン(Epo)があり、その作用は、単に赤血球の産生亢進だけでなく、造血の場を司る骨の代謝にも関与する。Epoによる骨代謝制御は、破骨細胞による骨破壊の促進を伴う。しかしながら、破骨細胞自身は、Epoの受容体を発現しておらず、その作用は間接的と不明な点が多い。そこで、本研究では、Epoによる骨髄内酸素環境の調節を介した破骨細胞制御の是非を検証する。本年度では、破骨細胞分化に好気的代謝がかかわることを明らかにした。さらに、好気的代謝に伴って産生亢進されるS-アデノシルメチオニンが破骨細胞制御の重要なregulatorとなることを実証した。研究計画通り遂行し、破骨細胞制御における好気的代謝の重要性を明らかにしたため。「骨と腎臓」の機能連関は、生体の低酸素応答の要となる制御基盤である。両臓器を結びつけるホルモンの一つに、エリスロポエチン(Epo)があり、その作用は、単に赤血球の産生亢進だけでなく、造血の場を司る骨の代謝にも関与する。Epoによる骨代謝制御は、破骨細胞による骨破壊の促進を伴う。しかしながら、破骨細胞自身は、Epoの受容体を発現しておらず、その作用は間接的と不明な点が多い。そこで、本研究では、Epoによる骨髄内酸素環境の調節を介した破骨細胞制御の是非を検証する。本年度では、Epoによる破骨細胞形成への影響を生体レベルで明らかにするために、Epo投与マウスを用いたgain of function並びにISAMによるloss of function解析に従事した。その結果、Epo投与マウスは破骨細胞数の増加とともに骨量減少を、一方ISAMは破骨細胞数の減少並びに骨量増加を呈することを見出した。また、Epo投与による骨髄内酸素濃度がどのように変化するかを捉える方法として、イリジウム錯体の酸素プローブBTPDM1を用いた酸素イメージングの実験系を立ち上げた。実際に、マウスが吸入する酸素濃度を20%から95%へ変動させた場合、骨髄内の赤血球系列細胞からのリン光強度が顕著に低下することを観察した。一方、免疫組織化学による方法として、pimoを投与したマウスから骨を単離し、whole mount免疫染色と組織の透明化を併用することで、骨髄内低酸素領域を評価する実験系を立ち上げた。Epo投与マウスでは、骨髄内の低酸素領域が減少することが判明した。今後は、引き続き研究計画通り取り組み、骨髄内酸素環境の実体解明、並びに骨髄内酸素環境と破骨細胞制御との関係性の解明に取り組む。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PUBLICLY-15H01405 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-15H01405 |
旧ソ連中央アジアにおける理論と実践を通した域内連携と比較社会教育学の構築 | 本研究では、中央アジアとヨーロッパで文献収集や聞き取り調査等を行った。特に、Social Pedagogyに関する文献を整理し、その特徴や現況の考察を行うと同時に、中央アジアの社会教育概念、理論、実践での社会教育観の定義や整理を行った。理論に関しては、ロシア等ではヨーロッパのSocial Pedagogyの影響が見受けられるが、Social Pedagogyがソ連期を経て中央アジアに影響を与えているかは、さらに検討が必要である。一方で、実践ではヨーロッパのように中央アジアでも教育と福祉を連結する実践が始められており、教育と福祉の理論と実践を踏まえた比較社会教育学の構築の可能性が解明された。平成27年度は、研究の視点と方法、枠組みの明確化を行った。まず、ヨーロッパ、特にスウェーデンやフィンランド、デンマーク、ドイツなどにおけるSocial Pedagogyについての歴史や現在に関する文献を整理し、その特徴や現在の状況についての考察を行った。同時に、中央アジア諸国における社会教育概念、理論、実践における社会教育観の定義や整理を行った。ロシアなどでは、ヨーロッパにおけるSocial Pedagogyの影響が見受けられる点があるが、Social Pedagogyがソ連期を経て旧ソ連・中央アジアまで影響を及ぼしているかについては、今後さらなる検討が必要である。また、現地調査について、中央アジア諸国に関しては、資料収集とインタビューなどを行い、ヨーロッパのSocial Pedagogyの中央アジアにおけるインパクトや現地の社会教育、生涯学習の現況についての考察を行った。さらに、ヨーロッパの複数国(スウェーデン、フィンランドなど)におけるSocial Pedagogyの研究者らに対する聞き取り調査を行った。具体的には、スウェーデンのSocial Pedagogy研究者に聞き取り調査を行い、スウェーデンや北欧諸国におけるSocial Pedagogyの動向や今後の展望について話を聞くとともに、Social Pedagogyについての研究ネットワークの紹介などもいただいた。また、フィンランドでは、Social Pedagogyに関連するコミュニティ施設の視察を行い、同施設の実践についての検討を行った。フィンランドでは、関連領域の研究者との研究交流も行った。以上、平成27年度は文献収集や整理、現地での調査を通し、ヨーロッパのSocial Pedagogyが中央アジア諸国の社会教育や生涯学習にどのようなインパクトを与えているのかの可能性について考察を行った。必要な資料などが概ね集まりつつあり、また聞き取り調査も実施できているため。平成28年度は、中央アジア・ウズベキスタンにおいて調査を実施した。具体的には、7月にウズベキスタンを訪問し、DVVタシュケント事務所、タシュケント国立ウズベク語・ウズベク文学大学、タシュケント国立法科大学、名古屋大学タシュケント事務所を訪れた。DVVタシュケント事務所では、現在のウズベキスタンにおける成人教育政策や法整備の現状、DVVタシュケント事務所の現在の事業についての資料収集および情報収集を行った。タシュケント国立ウズベク語・ウズベク文学大学では、ウズベキスタンにおける成人教育や生涯学習、地域社会での教育、Social Pedagogyの研究について意見交換を行った。タシュケント国立法科大学および名古屋大学タシュケント事務所では、法整備支援の様子を伺うとともに、ウズベキスタンの地域社会を研究している研究者らと意見交換を実施した。本年度は、中央アジア・ウズベキスタンでの調査をもとに、ウズベキスタンにおける成人教育や生涯学習、Social Pedagogyの理論、実践の双方から、中央アジアの現状を探ることを目指した。成人教育の実践の場では、特に前出のDVVの活動が幅広く展開されており、その活動は教育の領域のみではなく福祉の領域までも広がりつつある。さらなる分析、考察が必要であるが、このDVVの活動の根底には、ドイツで議論されているSocial Pedagogyの理論が存在するのかどうかについて今後検討していきたいと考えている。ウズベキスタンにおける実践の場でも教育と福祉を連結していくような実践の展開が始められていることは非常に重要な点であり、最終年度はこの教育と福祉の点を踏まえながら、比較社会教育学の構築について探求していきたい。中央アジアでの現地調査を実施し、理論と実践の双方からの資料収集や情報収集を行っているため。また、欧州、日本、中央アジアの成人教育や生涯学習、Social Pedagogyなどについての資料収集も進んでいるため。平成29年度は、ドイツの社会教育の実践についての調査を実施した。具体的には、公益有限会社や子どものまち、生産学校を訪問し、社会教育士や自治体の行政職員などに対し、事業の概要や組織、これまでの活動などについての調査を実施した。この調査により、現在のドイツでは社会教育の視点に基づき、移民・難民支援や失業している若者への支援が活発に行われていることが把握できた。ドイツでの調査結果をもとに、中央アジア諸国で類似の実践を行うことが可能か、についての検討を行った。本調査における結果と考察は、科研基盤(B)「社会教育・福祉・コミュニティ支援を統合するシステムと理論、専門職形成の比較研究」(研究代表:松田武雄)の報告書第2集に調査報告として掲載予定である。また、年度末にはウズベキスタンのタシュケント国立ウズベク語・ウズベク文学大学において本課題に関する研究報告を行った。さらに、同大学やウズベキスタン国内の研究者、大学教員などとも研究交流を行い、現在の研究課題や今後の研究交流などについて検討を行った。今年度は研究の最終年度であり、これまでの研究の総括として、関連テーマの論文を執筆予定である。全体の研究期間において実施したドイツやウズベキスタンなどにおける調査、研究交流を通し、今後に続く新たな研究テーマとして、その地域特有の理論や実践はいかに地域外に適用できるのか、といった課題が生まれた。一例として、ドイツの社会教育学の理論や実践は中央アジア諸国にどう適用可能なのか、という課題が挙げられる。この研究テーマをもとに、今後の研究をヨーロッパや中央アジアをフィールドとして継続していきたいと考えている。本研究では、中央アジアとヨーロッパで文献収集や聞き取り調査等を行った。 | KAKENHI-PROJECT-15K17344 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K17344 |
旧ソ連中央アジアにおける理論と実践を通した域内連携と比較社会教育学の構築 | 特に、Social Pedagogyに関する文献を整理し、その特徴や現況の考察を行うと同時に、中央アジアの社会教育概念、理論、実践での社会教育観の定義や整理を行った。理論に関しては、ロシア等ではヨーロッパのSocial Pedagogyの影響が見受けられるが、Social Pedagogyがソ連期を経て中央アジアに影響を与えているかは、さらに検討が必要である。一方で、実践ではヨーロッパのように中央アジアでも教育と福祉を連結する実践が始められており、教育と福祉の理論と実践を踏まえた比較社会教育学の構築の可能性が解明された。平成27年度の調査結果および選出した調査対象機関を踏まえ、中央アジアおよびヨーロッパの社会・成人教育機関への聞き取り調査を行う。ウズベキスタンなどでは地域共同体が社会教育実施の役目を請け負っているため、地域共同体の運営委員会への聞き取り調査等を実施する。その他、ヨーロッパ諸国における成人教育機関についての調査も行う予定である。中央アジアや欧州での調査を継続するとともに、現地での研究成果発表も行う。次年度は最終年度にあたるため、本科研全体の総括を行うとともに、研究成果を論文や報告書、学会発表などの形で公開したいと考えている。社会教育学他用務で参加した調査や国際学会の際に今年度必要な聞き取り調査を実施することができたため、当該年度の費用は次年度に繰り越し、より充実した調査を行うことを目指すため。欧州での調査を調査先の都合により次年度実施することにしたため。また、研究成果公開のための準備(論文の英文化にともなうネイティブチェックなど)を次年度に行うこととしたため。今年度は中央アジアを中心に調査を行う予定である。可能であれば、年2回程度のウズベキスタンを中心とした調査を計画しており、次年度繰り越し分はこの旅費に当てる予定である。調査旅費や通訳謝金、現地調査コーディネート謝金などとして使用するとともに、研究成果公開を行うための経費として使用する予定である(論文の英文化にともなう費用などに使用する)。 | KAKENHI-PROJECT-15K17344 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K17344 |
米国における幼稚園教員養成プログラムのアクレディテーションに関する基礎的研究 | 米国高等教育における幼稚園教員養成プログラムに対するアクレディテーションの制度・運用・実態の側面から、日本における幼稚園教員養成の質の向上に、寄与できる知見を提供することをめざす。そのために、1歴史と経緯の整理、2教職課程アクレディテーション全体における位置づけの整理、3仕組みの明確化、4アクレディテーションの受審の有無が要請する人材の質に与えるインパクトなどの解明を主な目標とする。上記目的・目標を達成するために、(幼稚園)教員養成の関係団体への書面・web・ヒアリング調査、および養成校・養成校の学生・幼稚園教員へのヒアリング調査を行う。米国高等教育における幼稚園教員養成プログラムに対するアクレディテーションの制度・運用・実態の側面から、日本における幼稚園教員養成の質の向上に、寄与できる知見を提供することをめざす。そのために、1歴史と経緯の整理、2教職課程アクレディテーション全体における位置づけの整理、3仕組みの明確化、4アクレディテーションの受審の有無が要請する人材の質に与えるインパクトなどの解明を主な目標とする。上記目的・目標を達成するために、(幼稚園)教員養成の関係団体への書面・web・ヒアリング調査、および養成校・養成校の学生・幼稚園教員へのヒアリング調査を行う。 | KAKENHI-PROJECT-19K02876 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K02876 |
光機能性層状酸化物薄膜の創成と物性 | 本研究では層状金属酸化物をソフトケミカル的手法によって薄膜化し、その物性、構造を評価することによって従来の限界を超えた新規光機能性デバイスの可能性を模索することを目的としている。層状チタン酸の1種であるCs_xTi(2_<-2>/4)□_x/_4O_4のプロトン交換体は、水酸化テトラブチルアンモニウムやエチルアミンの水溶液の中においてチタン酸シートの剥離が可能である。この剥離したシートを基板上にスピンコートすると二次元に配列した層状の薄膜が非常に容易に得られる。この薄膜は層間に有機物であるアミンを含むため熱的安定性に乏しく、それ以上の修飾方法が限定されていたが、水溶液中でイオン交換を行うことにより耐熱性を持たせることに成功した。交換前の薄膜においては、250°C以上の加熱により層間の縮合が起こり、そのイオン交換能が失われる。しかしながら薄膜をCsCl水溶液中で処理することで、層間のアミンがCsイオンに置き換わり、この薄膜は450°Cの加熱後においても層構造を失うことなく、安定であることが確認された。またCs以外にも多種のイオンへの交換が可能であることが確認され、特にNi等においては層間において還元が可能であり、チタン酸シートとNi微粒子を交互に包括した薄膜が得られた。層状ニオブ酸K_4Nb_6O_<17>はその層間が容易に水和するため、湿式粉砕を行うと超微粒子を含む懸濁液が得られ、この懸濁液を基板上にスピンコートし高温で焼成すると結晶成長が起こり、非常に結晶性の良い層状の薄膜が得られる。この薄膜は前者に比較して結晶性、熱安定性の両者で勝っており、イオン交換能においても種々の金属イオンを始め錯体のインターカレーションも可能であることが分かった。また長鎖のアルキルアミンを層間に挿入することで自由に層間距離が変えられることが確認され、この層間距離を広げた薄膜を前駆体として用いることで、Ru(bpy)_3色素などの大きな分子への交換も可能となった。本研究では層状金属酸化物をソフトケミカル的手法によって薄膜化し、その物性、構造を評価することによって従来の限界を超えた新規光機能性デバイスの可能性を模索することを目的としている。層状チタン酸の1種であるCs_xTi(2_<-2>/4)□_x/_4O_4のプロトン交換体は、水酸化テトラブチルアンモニウムやエチルアミンの水溶液の中においてチタン酸シートの剥離が可能である。この剥離したシートを基板上にスピンコートすると二次元に配列した層状の薄膜が非常に容易に得られる。この薄膜は層間に有機物であるアミンを含むため熱的安定性に乏しく、それ以上の修飾方法が限定されていたが、水溶液中でイオン交換を行うことにより耐熱性を持たせることに成功した。交換前の薄膜においては、250°C以上の加熱により層間の縮合が起こり、そのイオン交換能が失われる。しかしながら薄膜をCsCl水溶液中で処理することで、層間のアミンがCsイオンに置き換わり、この薄膜は450°Cの加熱後においても層構造を失うことなく、安定であることが確認された。またCs以外にも多種のイオンへの交換が可能であることが確認され、特にNi等においては層間において還元が可能であり、チタン酸シートとNi微粒子を交互に包括した薄膜が得られた。層状ニオブ酸K_4Nb_6O_<17>はその層間が容易に水和するため、湿式粉砕を行うと超微粒子を含む懸濁液が得られ、この懸濁液を基板上にスピンコートし高温で焼成すると結晶成長が起こり、非常に結晶性の良い層状の薄膜が得られる。この薄膜は前者に比較して結晶性、熱安定性の両者で勝っており、イオン交換能においても種々の金属イオンを始め錯体のインターカレーションも可能であることが分かった。また長鎖のアルキルアミンを層間に挿入することで自由に層間距離が変えられることが確認され、この層間距離を広げた薄膜を前駆体として用いることで、Ru(bpy)_3色素などの大きな分子への交換も可能となった。 | KAKENHI-PROJECT-09237225 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09237225 |
啓蒙主義による宗教理解の再考:モーゼス・メンデルスゾーンとユダヤ啓蒙主義の場合 | 本研究では、啓蒙主義思想の現代における有効性を検証するために、18世紀ドイツのユダヤ啓蒙主義の代表者であるモーゼス・メンデルスゾーンの思想に注目した。啓蒙主義の宗教理解は、一般には、反宗教であったと考えられている。しかし、ユダヤ啓蒙主義のうちには、必ずしも宗教と対立しない、宗教に親和的な潮流が存在した。宗教に親和的な啓蒙主義の特徴を、メンデルスゾーンの政教分離論や律法解釈を中心に考察した。本研究では、啓蒙主義思想の現代における有効性を検証するために、18世紀ドイツのユダヤ啓蒙主義の代表者であるモーゼス・メンデルスゾーンの思想に注目した。啓蒙主義の宗教理解は、一般には、反宗教であったと考えられている。しかし、ユダヤ啓蒙主義のうちには、必ずしも宗教と対立しない、宗教に親和的な潮流が存在した。宗教に親和的な啓蒙主義の特徴を、メンデルスゾーンの政教分離論や律法解釈を中心に考察した。本年の研究実績の成果を以下の二点に分けて報告する。(1)海外調査:10月19日から29日までベルリンとミュンヘンを訪問し、18世紀末のユダヤ啓蒙主義関係の一次資料を閲覧し、現地の研究者へのインタビューをおこなった。特に、ベルリン近郊の都市ポツダムにあるモーゼス・メンデルスゾーン・センターを訪問し、所長のシェープス氏と面会することができたことは極めて有意義であった。科研終了時に刊行する報告書には、シェープス氏の業績の紹介や論文の翻訳も掲載する予定である。(2)論文:『ユダヤ・イスラエル研究』に掲載された論文「近代ユダヤ思想におけるカント主義の問題」では「ユダヤ・カント主義」の全体像を示すことを目指した。近代以降、多くのユダヤ知識人たちは、カント哲学の中にユダヤ教と共鳴するものを見出してきた。当のカント自身はユダヤ教には批判的であったことを思い起こすなら、ユダヤ知識人たちのカントへの関心の高さは注目に値する現象であるといえる。この論文では、ユダヤ知識人たちはカント哲学のどこに親近感をもったのかという問題について、代表的思想家の論文を通して明らかにした。カント哲学は多くのユダヤ知識人にとって近代の象徴であった。カント哲学とユダヤ教の相反的な関係は、近代(啓蒙主義思想)とユダヤ教は共存可能かという問いへと直結している。今年度の研究で特に成果をあげることができた領域は、スピノザとメンデルスゾーンの関係、メンデルスゾーンの政教分離理解、啓蒙主義的なユダヤ教理解の受容史の3つである。以下、研究成果を時系列に沿って報告する。9月に岩波書店から出版された『ユダヤ人と国民国家「政教分離」を再考する』の中の一章「モーゼス・メンデルスゾーンと政教分離」を担当した。この論文の後半では、スピノザとメンデルスゾーンの関係に注目したが、9月に筑波大学で開催された日本宗教学会の中では特にこの点に関連する発表をおこなった。スピノザとは違って、メンデルスゾーンは、律法を、単に政治的なものとしてだけでなく宗教的なものとしても解釈した。ここにスピノザとの大きな違いがあった。岩波書店の『思想10月号』に掲載された「シュトラウスとローゼンツヴァイク-20世紀ユダヤ哲学の系譜-」では、メンデルスゾーンに代表される啓蒙主義的なユダヤ教理解が、次第にユダヤ人たちの間で影響力を失っていった経緯とその理由について言及した。2009年3月には、イスラエルのバル・イラン大学の招待を受けて国際会議「アジアにおける-神教」に出席した。私は、日本人の若手研究者と一緒に「日本におけるユダヤ学の創出」というパネルを立ち上げ、英語で「近代ドイツのユダヤ哲学と近代日本の宗教哲学」という報告をおこなった。報告の中では、メンデルスゾーンにも触れながら、律法や戒律をもつ宗教の存在意義を明らかにした。3月末には報告書を作成し、2年間の研究成果をその中に収録した。 | KAKENHI-PROJECT-19820016 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19820016 |
フェムト秒パルス発生回路の研究 | 1.フェムト秒パルス発生を可能とするヘテロ接合型可変容量ダイオードの設計および試作を行った。まず化合物半導体デバイス設計に実績があるSilvaco社のATLAS/BLAZEソフトを用いて、有限要素法を用いてSI-GaAs上にn-GaAs/p-AlGaAs/n-GaAs構造、SI-InP上にn型InGaAs/SIInAlAs/N-InGaAs構造、サファイア上にn-GaN/SI-AlGaN/n-GaN構造を夫々作成したときのIV特性、CV特性をシミュレーションによって求めサンドイッチされる高バンド幅層の厚さ、層数によってCV特性がどう変わるかを明らかにした。2.次いで実際に、GaAs系、GaN系構造をCVDによって成長し、ホトリソ工程、ドライエッチング工程、オーミック電極形成工程を経てダイオード構造を作りIV特性、CV特性をそれぞれパラメータアナライザ、CVメータを用いて測定し、シミュレーション結果と比較した。この結果、GaAs系、GaN系ともシミュレーション結果と一致したCV特性が実験的に確かめられた。GaAs系ではバンドギャップが狭いためリーク電流が大きい、GaN系では結晶の完成度が低い、GaNとAlGaN間のピエゾ効果による電界誘起効果が見られる等、新しい結果が得られた。この結果を基にして改良型GaN系ヘテロ接合型可変容量ダイオードの設計および試作を行った。3.上記結果を元にGaAs系伝送線路を作成し、光サンプリング法によってフェムト秒パルスを発生・伝播させることに成功した。パルス幅は270フェムト秒のものが得られた。更に将来の超高速LSIのクロックパルスを発生するためのMOSFET可変容量を負荷とする非線形伝送線路を考案し、LSI工程と両立する工程で実際のデバイスを作る設計をし試作を進めている。SPICEによるシミュレーションを行いソリトン集積回路を作ることができる。1.フェムト秒パルス発生を可能とするヘテロ接合型可変容量ダイオードの設計および試作を行った。まず化合物半導体デバイス設計に実績があるSilvaco社のATLAS/BLAZEソフトを用いて、有限要素法を用いてSI-GaAs上にn-GaAs/p-AlGaAs/n-GaAs構造、SI-InP上にn型InGaAs/SIInAlAs/N-InGaAs構造、サファイア上にn-GaN/SI-AlGaN/n-GaN構造を夫々作成したときのIV特性、CV特性をシミュレーションによって求めサンドイッチされる高バンド幅層の厚さ、層数によってCV特性がどう変わるかを明らかにした。2.次いで実際に、GaAs系、GaN系構造をCVDによって成長し、ホトリソ工程、ドライエッチング工程、オーミック電極形成工程を経てダイオード構造を作りIV特性、CV特性をそれぞれパラメータアナライザ、CVメータを用いて測定し、シミュレーション結果と比較した。この結果、GaAs系、GaN系ともシミュレーション結果と一致したCV特性が実験的に確かめられた。GaAs系ではバンドギャップが狭いためリーク電流が大きい、GaN系では結晶の完成度が低い、GaNとAlGaN間のピエゾ効果による電界誘起効果が見られる等、新しい結果が得られた。この結果を基にして改良型GaN系ヘテロ接合型可変容量ダイオードの設計および試作を行った。3.上記結果を元にGaAs系伝送線路を作成し、光サンプリング法によってフェムト秒パルスを発生・伝播させることに成功した。パルス幅は270フェムト秒のものが得られた。更に将来の超高速LSIのクロックパルスを発生するためのMOSFET可変容量を負荷とする非線形伝送線路を考案し、LSI工程と両立する工程で実際のデバイスを作る設計をし試作を進めている。SPICEによるシミュレーションを行いソリトン集積回路を作ることができる。GaAs半絶縁性基板上にn型3000nm、P型1000nm、i-AlGaAs500nm、I-GaAs1000nmをMBE成長しPN接合結晶基板を作製した。又伝送線路ならびにPN接合ダイオード構造を作りこむためのマスクを設計発注した。作製した基板上にこのマスクを用いて、レジスト塗布・露光・現像からなるフォトリソグラフ工程、電子ビーム蒸着・アロイ工程による電極作製、ウェットエッチングによる不要部分の除去工程、感光性ポリイミド塗布による伝送線路形成を行って、GaAs非線形伝送線路を試作した。さらにこの線路の一部に4nmのTi薄膜を蒸着後AFM加工によって約100nm長のTiO2光スリットを設け光導電スイッチを付け加えた。この光スイッチはバイアス電圧10Vで93MΩの抵抗を持ち、光照射時の電界は1MV/cmと推定される。このスイッチに波長780nm、180fs、10mWの超短光パルスを40MHzで印加し、EOサンプリング用の光ブリッジ回路を構成して超短パルスの発生伝播特性を測定した。その結果、光発生だけで310フェムト秒のパルス幅であったものが、非線型性伝送線路を通ることによって290フェムト秒に短縮されることが明らかになった。さらに伝送線路のインピダンス、位相、透過率を40GHzまで測定し、試作した線路の位相速度が1.7x10^10cm/secとなることを確かめた。さらに、高性能伝送線路を達成するため、ヘテロバリアーバラクターダイオード(HVD)をGaAs/GaAlAs系で設計して基板成長を行いフォトリソ工程を行ってダイオードを試作し、その容量電圧特性を測定して、0バイアスで対称な可変容量特性を示すことを確認した。 | KAKENHI-PROJECT-14550335 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14550335 |
フェムト秒パルス発生回路の研究 | これらの結果はカナダ、米国での国際会議で口頭発表すると共に、国内JJAP誌、明星大学理工学部紀要等に発表し高い評価を得ている。フェムト秒パルス発生を可能とするヘテロ接合型可変容量ダイオードの設計および試作を行った。まず化合物半導体デバイス設計に実績があるSilvaco社のATLAS/BLAZEソフトを用いて、有限要素法を用いてSI-GaAs上にn-GaAs/p-AlGaAs/n-GaAs構造、SI-InP上にn型InGaAs/SIInAlAs/N-InGaAs構造、サファイア上にn-GaN/SI-AlGaN/n-GaN構造を夫々作成したときのIV特性、CV特性をシミュレーションによって求めサンドイッチされる高バンド幅層の厚さ、層数によってCV特性がどう変わるかを明らかにした。次いで実際に、GaAs系、GaN系構造をCVDによって成長し、ホトリソ工程、ドライエッチング工程、オーミック電極形成工程を経てダイオード構造を作りIV特性、CV特性をそれぞれパラメータアナライザ、CVメータを用いて測定し、シミュレーション結果と比較した。この結果、GaAs系、GaN系ともシミュレーション結果と一致したCV特性が実験的に確かめられた。GaAs系ではバンドギャップが狭いためリーク電流が大きい、GaN系では結晶の完成度が低い、GaNとAlGaN間のピエゾ効果による電界誘起効果が見られる等、新しい結果が得られている。これらの結果は通信学会研究委員会で発表済み、及びGaN国際会議で発表予定である。又、昨年度実施したGaAsPN接合容量ダイオードを用いたフェムト秒パルス伝播実験結果の一部は応用物理学会欧文誌に発表した。前年度の結果を基にして改良型GaN系ヘテロ接合型可変容量ダイオードの設計および試作を行った。又実際に、この構造をGaN系構造をCVDによって成長し、ホトリソ工程、ドライエッチング工程、オーミック電極形成工程を経てダイオード構造を作りIV特性、CV特性をそれぞれパラメータアナライザ、CVメータを用いて測定し、シミュレーション結果と比較した。更に将来の超高速LSIのクロックパルスを発生するためのMOSFET可変容量を負荷とする非線形伝送線路の基本構造を考案し、LSI工程と両立する工程で実際のデバイスを作る設計をした。 | KAKENHI-PROJECT-14550335 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14550335 |
圧縮性流体方程式系の解の構造の研究 | 2次元外部領域における摩擦項付き非線形波動方程式と非線形熱方程式の初期値境界値問題を考察し,初期値がHardy空間に属する場合に,解の時空間に関するL2有界性を示した.圧縮性Navier-Stokes-Possoin方程式系では,緩和項に付随するパラメーターの消滅による流体力学的極限は退化Drift-Diffusion方程式となることを,単原子気体を含むより広い圧力場の場合に弱解の枠組みで証明した。2次元外部領域における摩擦項付き非線形波動方程式と非線形熱方程式の初期値境界値問題を考察し,初期値がHardy空間に属する場合に,解の時空間に関するL2有界性を示した.圧縮性Navier-Stokes-Possoin方程式系では,緩和項に付随するパラメーターの消滅による流体力学的極限は退化Drift-Diffusion方程式となることを,単原子気体を含むより広い圧力場の場合に弱解の枠組みで証明した。2次元外部領域における波動方程式、摩擦項付き波動方程式および摩擦項付き非線形波動方程式の初期値境界値問題において、初期値がコンパクトな台を持つ場合は解の減衰評価は知られていたが、初期値がコンパクトな台を持たない場合は部分的な結果しか得られていなかった。我々は初期値がHardy空間に属する場合を考え、エネルギー法において、Morawetzの手法とFefferman-Steinの不等式を用いることで、波動方程式の場合は、局所エネルギー減衰評価、摩擦項付き波動方程式の場合は解の減衰評価を得ることに成功した。また、摩擦項付き波動方程式の場合は、初期値がHardy空間に属するとき、解の時空に関するL2空間の正則性を得ることが出来た。これらの結果は熱方程式でも同様の結果が得られる。特に熱方程式の場合は、Hardy空間より広いL1空間に初期値が属する場合は、この正則性の結果は一般には得られない。摩擦項付き非線形波動方程式では、重み付きの非線形構造に着目することで、線形方程式の場合には使わなかったエネルギー評価のある項を使い、Hardyの不等式を用いることで初期値がコンパクトな台を持つ仮定を取り除き、解の減衰評価を得ることに成功した。これらの方法は、2次元全空間の初期値問題に対しても有効である。また、線形粘性弾性体方程式の初期値問題への応用も期待される。さらに、圧縮性Navier-Stokes方程式の初期値問題の解は,定数平衡状態の近くではその第一近似である線形化方程式が双曲型放物型混合方程式であり,特にその密度部分は,線形粘性弾性体方程式を満たすため、圧縮性Navier-Stokes方程式の定数平衡状態の安定性の解析への応用が期待される。全空間における圧縮性Navier-Stokes方程式系の初期値問題、半空間や外部領域における圧縮性Navier-Stokes方程式系の初期値境界値問題では、定数平衡解の安定性のこれまでの研究において、特に、解の時間に関する漸近挙動の研究から、解の拡散波動の現象と広い意味でのホイゲンスの原理の解明が示唆されており、そのため、解の第一近似として現れる線形粘性弾性体方程式と非圧縮性のStokes方程式およびNavier-Stokes方程式の解の時間に関する漸近挙動について解析を行った。線形粘性弾性体方程式の解の時間に関する漸近挙動を解析する上で、まず2次元外部領域における波動方程式の初期値境界値問題、摩擦項付き波動方程式の初期値境界値問題、および摩擦項付き冪乗型の非線形波動方程式の初期値境界値問題を考察し、初期値がHardy空間に属する場合を考え、波動方程式の場合は、局所エネルギー減衰評価、摩擦項付き線形波動方程式の場合は、2次元では臨界である解の時空間に関するL2有界性を得ることが出来た。外部領域における摩擦項付き非線形波動方程式の初期値境界値問題では、2次元外部領域におけるHardyの不等式に対応した、空間に関する重み付きの冪乗型非線形構造に着目し、摩擦項付き線形波動方程式の場合と同様に2次元では臨界となる解の時空間に関するL2有界性を得ることが出来た。このような非線形構造をもつ外部領域における熱方程式、摩擦項付き波動方程式の初期値境界値問題では、解の存在の臨界指数である藤田指数が通常の冪乗型非線形の場合と異なることが予想され、また、これらの方法は、全空間における線形粘性弾性体方程式の初期値問題、さらに、非圧縮性Navier-Stokes方程式の初期値問題や圧縮性Navier-Stokes方程式の初期値問題への応用が期待される。全空間における圧縮性Navier-Stokes方程式系の初期値問題、半空間や外部領域における圧縮性Navier-Stokes方程式系の初期値境界値問題では、定数平衡解の安定性のこれまでの研究において、特に、解の時間に関する漸近挙動の研究から、解の拡散波動の現象と広い意味でのホイゲンスの原理の解明が示唆されており、そのため、解の第一近似として現れる線形粘性弾性体方程式と非圧縮性のStokes方程式およびNavier-Stokes方程式の解の時間に関する漸近挙動について解析を行った。線形粘性弾性体方程式を考察するために、2次元外部領域において、空間に関して重み付きの冪乗型半線形熱方程式の初期値境界値問題を考察し、初期値がHardy空間に属する場合を考え、2次元では臨界である解の時空間に関するL2有界性を得ることが出来た。ここでは、外部領域における、M. Misawa, S. Okamura and T. Kobayashiの摩擦項付き冪乗型半線形波動方程式の初期値境界値問題の結果の拡張に成功し、解の時間大域的存在の臨界指数である藤田指数が、通常の冪乗型非線形の場合と異なることが分かった。 | KAKENHI-PROJECT-22540202 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22540202 |
圧縮性流体方程式系の解の構造の研究 | 気体星の運動や半導体やプラズマの数学モデルにおける圧縮性Navier-Stokes-Possoin方程式系の緩和項に付随するパラメーターの消滅による流体力学的極限は、退化Drift-Diffusion方程式となることが知られており,単原子気体を含むより広い圧力場の場合に,これまで知られていた圧縮性Navier-Stokes方程式の弱解の理論を応用し、改良することでDrift-Diffusion方程式系および退化Drift-Diffusion方程式系への流体力学的極限に対して、数学的に厳密な説明を与えることに成功した。当初の計画の通り、摩擦項付きの非線形波動方程式については研究が進み、線形粘性弾性体方程式についても研究は順調に進んでいる。Stokes方程式および非圧縮性Navier-Stokes方程式の解の構造については、解の空間に関する重み付き評価の研究が進んでおり、また圧縮性Navier-Stokes-Poisson方程式系についても流体力学的極限の研究も順調に進んでいる。24年度が最終年度であるため、記入しない。8月に国際研究集会「Mathematical fluid dynamics and nonlinear wave」、9月に研究集会「非線形の諸問題」を開催予定であり、非線形偏微分方程式および流体の数学解析に関連する研究集会に参加し、流体方程式及び非線形波動方程式等に関連する最新の研究の情報収集を行うと共に、国内外の研究者と討論を行い、研究を推進して行く予定である。特に、研究分担者である梶木屋龍治教授,連携研究者の三沢正史教授、池畠良教授、隠居良行教授等と研究討論を行うことで研究計画を遂行して行く.24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22540202 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22540202 |
病覚伝達の定量的評価を行なうための摘出標本の開発と非麻薬性鎮痛薬のスクリ-ニング | 1.新しい摘出中枢神経標本の開発未梢から脊髄に至るまでの経路を実体顕微鏡で追求できる新生ラット摘出脊髄・伏在神経・皮膚標本を新たに開発した。脊髄と皮膚を別々の潅流槽に固定し、capsaicinなどの発痛物質を皮膚の潅流槽に短時間注入すると、腰髄節前根(L3)から20-100秒間持続する1-4mV脱分極性侵害反射電位が記録された。この反射電位はタキキニン拮抗薬であるspantideにより著しく抑制された。以上の結果は侵害反射の電位発生にSPとNKAが伝達物質として関与することを支持するものであり、また本標本の鎮痛薬の定量的評価研究における有用性を示している。2.摘出脊髄におけるC線維応答の薬理学的性質脊髄・伏在神経標本を用いてC線維刺激強度で伏在神経を電気刺激すると、腰髄節前根に遅い時間経過の脱分極が誘発された。この電位はspantide(4-16μM)で著しく仰制された。このことはSPおよびNKAが伏在神経刺激によるC線維応答に関与していることを示唆している。morphineやdynorphinはこの脱分極を仰制し、その仰制はnaloxoneで回復した。galanin,somatostatinおよびGABAもこの応答を阻害したが、CGRPは増強した。3.タキキニン拮抗薬の受容体特異性の検討タキキニン拮抗薬としてのspantideの薬理学的性質を再検討するために、tetrodotoxin存在下で摘出脊髄標本にタキキニンを適用した。NKAおよびseptideによる前根脱分極はspantideにより競合的に拮抗された。それに対して低濃度(1μM以下)のSPによる脱分極はspantideにより仰制され高濃度(1-10μM)のそれは増強された。この結果はSPが脊髄運動ニュ-ロン上に従来のNK-1,2,3と異なった型の受容体にも作用することを示唆している。4.非麻薬性鎮痛薬のスクリ-ニング摘出脊髄標本を用い、[D-Arg^1,D-Phe(F)^5,D-Trp^<7,9>,Ala^<11>]SPがSP拮抗作用を持つことを見い出し検討を進めている。1.新しい摘出中枢神経標本の開発未梢から脊髄に至るまでの経路を実体顕微鏡で追求できる新生ラット摘出脊髄・伏在神経・皮膚標本を新たに開発した。脊髄と皮膚を別々の潅流槽に固定し、capsaicinなどの発痛物質を皮膚の潅流槽に短時間注入すると、腰髄節前根(L3)から20-100秒間持続する1-4mV脱分極性侵害反射電位が記録された。この反射電位はタキキニン拮抗薬であるspantideにより著しく抑制された。以上の結果は侵害反射の電位発生にSPとNKAが伝達物質として関与することを支持するものであり、また本標本の鎮痛薬の定量的評価研究における有用性を示している。2.摘出脊髄におけるC線維応答の薬理学的性質脊髄・伏在神経標本を用いてC線維刺激強度で伏在神経を電気刺激すると、腰髄節前根に遅い時間経過の脱分極が誘発された。この電位はspantide(4-16μM)で著しく仰制された。このことはSPおよびNKAが伏在神経刺激によるC線維応答に関与していることを示唆している。morphineやdynorphinはこの脱分極を仰制し、その仰制はnaloxoneで回復した。galanin,somatostatinおよびGABAもこの応答を阻害したが、CGRPは増強した。3.タキキニン拮抗薬の受容体特異性の検討タキキニン拮抗薬としてのspantideの薬理学的性質を再検討するために、tetrodotoxin存在下で摘出脊髄標本にタキキニンを適用した。NKAおよびseptideによる前根脱分極はspantideにより競合的に拮抗された。それに対して低濃度(1μM以下)のSPによる脱分極はspantideにより仰制され高濃度(1-10μM)のそれは増強された。この結果はSPが脊髄運動ニュ-ロン上に従来のNK-1,2,3と異なった型の受容体にも作用することを示唆している。4.非麻薬性鎮痛薬のスクリ-ニング摘出脊髄標本を用い、[D-Arg^1,D-Phe(F)^5,D-Trp^<7,9>,Ala^<11>]SPがSP拮抗作用を持つことを見い出し検討を進めている。サブスタンスP(SP)およびニューロキニンA(NKA)は一次知覚ニューロンの中でも細径のC線維中に存在し、刺激に応じて放出され、後角のニューロンに時間経過の遅い電位変化をひきおこすことが知られている。われわれは新生ラットの摘出脊髄、摘出脊髄・伏在神経標本、摘出脊髄・尾標本などを用い、SPによる前根の脱分極、伏在神経により誘発されるC線維反射、あるいは尾にカプサイシンを適用することによって誘発される侵害反射電位がタキキニン拮抗薬であるスパンタイドにより抑制されることを見い出し、痛みの伝達にSPおよびNKAが関与していることを示唆した。しかし、WienrichらによりスパンタイドがSPの作用をむしろ増強するという成績が報告され、タキキニン拮抗薬としてのスパンタイドに疑がかけられた。そこでわれわれはスパンタイドの薬理学的性質を再検討するため、Wienrichらの方法に従い、灌流液にテトロドトキシン(TTX)を加え、シナプス伝達を遮断した条件下で実験を行なった。 | KAKENHI-PROJECT-62870010 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62870010 |
病覚伝達の定量的評価を行なうための摘出標本の開発と非麻薬性鎮痛薬のスクリ-ニング | 新生ラットの脊髄を灌流槽に固定し、灌流系にSP(0.0110μM)、NKA(0.0110μM)、およびNKー1型受容体のアゴニストであるセプタイド(0.0110μM)などを30秒間適用したところ前根から用量依存性の脱分極(14mV)が細胞外吸引電極を介して記録された。NKAおよびセプタイドによる前根脱分極はスパンタイド(12μM)により競合拮抗的に抑制され、そのPA_2は約300nMと算定された。次にSPに対するスパンタイド(416μM)の作用を検討したところ、低濃度(1μM以下)のSPの作用を抑制するが、高濃度(110μM)のSPの作用に対しては無効あるいはむしろ増強する結果が得られた。NKB、ボンベシンもTTX下に前根の脱分極をひき起したが、TTX適用前にくらべて極めて小さい反応(0.10.5mV)であった。以上の結果からスパンタイドは脊髄運動ニューロン上で従来のNKー1、NKー2、あるいはNKー3型とは異った受容体にも作用することが示唆された。1.新生ラット摘出脊髄標本において末梢神経刺激で惹起されるC線維応答の薬理学的性質C線維は遅発痛を伝える役割を果たしているといわれ、後根のC線維の中でSP含有線維は10-30%であることが報告されている。そこで新生ラット摘出脊髄標本において、伏在神経を電気刺激することにより前根に発生する脊髄反射電位を記録し、タキキニン拮抗薬およびその他の内因性物質関連薬物の作用について検討した。強い刺激でL3前根には遅い時間経過の脱分極が誘発された。この脱分極はタキキニン拮抗薬であるspantide(4-16μM)で抑制された。このことはSPおよびNKAが伏在神経刺激によるC線維応答に関与していることを示唆している。〔Met^5〕-enkephalin(0.1-1μM)、dynorphin(0.2μM)およびmorphine(1-2μM)は、この遅い脱分極を抑制し、naloxone(1μM)で抑制は解除された。内因性ペプチドであるgalanin(1-2μM)とsomatostatin(1-2.5μM)もこのC線維応答を阻害したが、これに対して同じく内因性ペプチドであるCGRP(calcitonin gene-related peptide)(0.1-0.5μM)は脱分極を増強した。GABA(20μM)とmuscimol(0.2μM)もC線維応答を抑制し、bicuculline(1μM)はこれに拮抗した。2.タキキニン類で誘発される伝達物質放出の検討侵害刺激により放出される疼痛伝達物質を検討するために、新生ラット脊髄を用いた灌流実験装置を考案した。acetylcholine(ACh)とGABAの放出が、SPの灌流適用によって濃度依存的に増加した。SPによるGABA放出はCa^<2+>除去やTTXで抑制されず、一方SPによるACh放出はCa^<2+>除去およびTTXで抑制された。これらはSPによるGABA放出にキャリア-機構が関与し、SPによるACh放出はCa^<2+>依存性のexocytosisによることを示唆し、両者の放出機構が著しく異なることが分かった。また本装置が疼痛伝達物質の検索に有用であることが分かり、現在他の伝達物質についても探索中である。 | KAKENHI-PROJECT-62870010 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62870010 |
過渡状態における多次元構造の発現と乱流輸送に関する数値診断研究 | 本研究はトロイダル磁場閉じ込めプラズマにおいて発現する空間3次元構造(多次元構造)が輸送にもたらす効果の定量化を目的とする。トーラスプラズマの輸送現象を理解するためには、プラズマ中の空間的に偏在した構造の解明が重要である。様々な局在構造がダイナミクスを伴って存在し、空間多次元構造を持ち得る。本研究では多次元構造のうち、乱流構造から自律的に形成されるものと磁場配位に起因するものの両者を対象とする。3次元磁場構造中で形成される乱流構造に関して、その実験観測描像も含めた解析を行った。LHD実磁場配位のもとでの微視的乱流について、複数のフラックスチューブシミュレーションを組み合わせることで、3次元的に磁場が分布する中での揺動の構造を調べた。イオン温度勾配不安定性の線形成長率及び非線形飽和状態における揺動強度の分布を計算した。LHDにおいてはトロイダル方向の依存性が弱いことが確かめられた。さらにシミュレーション空間から実空間への変換ルーチンを整備することにより、それぞれの揺動が実験的に得られる線積分信号にどれだけの寄与をするか評価を可能とした。また、線積分信号から局所情報を抽出する操作に統計的信号処理技法を適用し、空間非対称性が弱い観測対象に対して、データ再構成を行うことで非対称性が拡大する傾向を見た。一方、イオン温度勾配不安定性の基本的な性質を理解するために、ジャイロ流体モデルを用いて線形解析を行った。有限ラーマ半径効果を含む解析式を導出し、それにより数値解を説明した。磁場配位に対する不安定性の依存性を解析するために、トカマク平衡計算で得られる3次元磁場分布をMHDコードに導入するルーチンを新たに作成した。圧力緩和現象における3次元ダイナミクスを可視化することができる。このように磁場配位由来のプラズマ乱流構造形成を中心として確実に研究を進展させることができた。本研究の目的は、複数のグローバルシミュレーションを通じて、トロイダル磁場閉じ込めプラズマにおいて発現する空間3次元構造(多次元構造)が輸送にもたらす効果を定量化することにある。本年度はジャイロ運動論モデルシミュレーションから得られる微視的乱流の解析へと対象を拡大することができた。そして3次元実磁場配位の効果を評価するためのデータ解析ルーチンを開発、適用することで成果を挙げ、実験観測描像も含めた論文をまとめることができた。さらに多様なプラズマ形状に対する非線形ダイナミクスを評価するためのコード開発も進展している。よって、研究課題に対して多方面にわたるアプローチを順調に進めることができているといえる。本研究ではトロイダル磁場閉じ込めプラズマにおける乱流ダイナミクスについて、1)簡約MHDモデルを用いた物理機構、2)MHDモデルを用いた磁場配位効果、3)実験計測を念頭に置いた数値診断手法の開発に取り組み、それぞれ成果を挙げてきた。2)についてヘリカルプラズマの3次元性という問題に最初から取り組むよりも、トカマクプラズマで発現する3次元構造の磁場配位依存性を検討する方が因果関係の同定に役立つという考えに至った。そのためにトカマク平衡データをMHDコードに導入するルーチンを作成した。本年度は非線形シミュレーションにより、磁場配位からもたらされる不安定モード構造の違いが、非線形的なモード結合とともに分布変化へ与える効果の定量的評価を行う。そして成果を取りまとめる。本研究はトロイダル磁場閉じ込めプラズマにおいて発現する空間3次元構造(多次元構造)が輸送にもたらす効果の定量化を目的とする。トーラスプラズマの輸送現象を理解するためには、プラズマ中の空間的に局在した構造の解明が重要である。様々な局在構造がダイナミクスを伴って存在し、空間多次元構造を持ち得る。本研究では多次元構造のうち、乱流構造から自律的に形成されるものと磁場配位に起因するものの両者を対象とする。効果が顕在化する過渡的な状況の非線形シミュレーションを通じて、輸送への寄与とダイナミクスを明らかにする。本年度は自律的に形成される構造のダイナミクスを重点課題として研究を行った。3場簡約MHD方程式系を用いてドリフト交換型モード乱流を解析し、モード間非線形結合の空間的分布と圧力分布の発展の関係を探った。ここではヘリカルプラズマにおける各有理面を中心に径方向に幅を持って分布する不安定共鳴モードと非線形励起モード群が存在する系を考える。これら多くのモードからの寄与の総和で非線形飽和レベルが保たれる。周期的に変化する空間的に局在した圧力ソース項の変調を加え、特徴的な応答の抽出を行った。変調周期について条件付き平均をとってもなお時間変化の中にアバランチ的な緩和が現れる。その揺動スケールの時間変動に関しては、それぞれの場所で異なる、共鳴モードとの関係が強いことがエネルギー時系列の相関解析からわかった。非線形性による自己維持機構が働く中で、磁場分布に依存する不安定な単一モードがプラズマ応答を主導している様相を明確にすることができた。また、磁場配位に起因する構造のダイナミクスを探る準備として、3次元磁場配位を取り込んだMHDコードの計算実行環境整備も行った。このように本研究で対象とする自律的および磁場配位由来の2種類のプラズマ構造形成について確実に研究を進展させることができた。本研究の目的は、2種類のグローバルMHDシミュレーションを通じて、トロイダル磁場閉じ込めプラズマにおいて発現する空間3次元構造(多次元構造)が輸送にもたらす効果を定量化することにある。本年度は簡約MHDモデルを用いた3次元グローバルシミュレーションにより、半径方向に分布するモード間の非線形結合機構を解析することで、動的な輸送機構を示すことができた。 | KAKENHI-PROJECT-16K06938 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K06938 |
過渡状態における多次元構造の発現と乱流輸送に関する数値診断研究 | さらに3次元形状の解析から、トーラス形状によるバルーニング性と相まって熱輸送に空間構造を伴うことの示唆を得ることができた。また、詳細な実磁場配位の効果を評価するためのシミュレーションコード整備も開始している。よって、研究開始が年度途中であったことを鑑みて初年目は順調に進展したといえる。本研究はトロイダル磁場閉じ込めプラズマにおいて発現する空間3次元構造(多次元構造)が輸送にもたらす効果の定量化を目的とする。トーラスプラズマの輸送現象を理解するためには、プラズマ中の空間的に局在した構造の解明が重要である。様々な局在構造がダイナミクスを伴って存在し、空間多次元構造を持ち得る。本研究では多次元構造のうち、乱流構造から自律的に形成されるものと磁場配位に起因するものの両者を対象とする。効果が顕在化する過渡的な状況の非線形シミュレーションを通じて、輸送への寄与とダイナミクスを明らかにする。自律的に形成される構造のダイナミクスの素過程に関して、新たな発見があったので重点的に研究を進めた。基礎実験装置を想定し、粒子コードを用いて計算した中性粒子分布を3場簡約流体方程式系の抵抗性ドリフト波乱流シミュレーションに導入した。非線形飽和状態で周方向プラズマ流れが励起される。中性粒子の持つ不安定性の減衰力の大きさが空間的に異なると不安定モードの位相構造を変形し非線形応力を生む機構が明らかになった。ここで中性粒子の非一様性が本質的な役割を果たしているが、種々の不安定性減衰力から同様な効果が予想されるので成果は一般的なプラズマ乱流に応用できる。磁場配位に関する構造を探るために、LHD実磁場配位を取り込んだ微視的乱流シミュレーションデータ数値診断ルーチンの整備を行った。そして3次元的揺動分布に対して実験計測を模擬したデータ解析を行った。実験的に得られる線積分信号から局所情報を抽出する操作および統計的信号処理技法の適用により、データ解析手法の成熟を図った。さらに3次元磁場配位を取り込んだMHDコードの計算実行環境整備も進めた。このように本研究で対象とする自律的および磁場配位由来両者のプラズマ構造形成について確実に研究を進展させることができた。本研究の目的は、2種類のグローバルシミュレーションを通じて、トロイダル磁場閉じ込めプラズマにおいて発現する空間3次元構造(多次元構造)が輸送にもたらす効果を定量化することにある。本年度は簡約流体モデルを用いた3次元グローバルシミュレーションにより、半径方向に分布するモード構造のパラメータ依存性とその非線形結合機構を解析することで、輸送に重要な寄与をする動的な構造形成機構を示すことができた。また、詳細な実磁場配位の効果を評価するためのシミュレーションコードやデータ解析ルーチンの整備も進んでいる。データ解析対象に微視的揺動も含め、適用範囲を広げることができている。 | KAKENHI-PROJECT-16K06938 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K06938 |
共役型高度不飽和脂肪酸の生理活性とその酸化安定性 | 紅藻Ptilotapectinataから抽出したポリエン酸イソメラーゼ活性を有する粗酵素を前年度と同様、各種クロマトグラフィーで精製し、SDS-PAGEで単一バンドを与える標品を得た。本標品を使用してアミノ酸組成をで分析したところ、Gly、Asx、Glxが多く、また、N末端からのアミノ酸配列は35残基のアミノ酸(2箇所不明を含む)を決定した。本酵素のN末端の配列は同属の近縁種について最近報告されたイソメラーゼとよく一致し、それ以外ではphytoene dehydrogenase、D-amino acid dehydrogenaseなどのdehydrogenase類と相同性が高かった。代表的な天然共役トリエン酸(α-エレオステアリン酸)を主要構成脂肪酸とするキリ油を飼料に0.5ないし1%添加し、産卵鶏に投与した。共役トリエン酸は産卵率、卵重量、卵黄重量などに影響しなかったが、母鶏の脂肪組織重量が減少し、各組織の脂肪含量も低下した。組織脂質には、共役トリエン酸は蓄積せず、共役ジエン酸が蓄積した。前年度において共役脂肪酸の一種である共役トリエン酸が培養癌細胞に対して強い致死作用を示すことを明らかにした。そこで、本年度はこの点について動物を用いて検討した。実験動物にはラットを用い、アゾキシメタンを投与することでACF(大腸前癌病変)を誘発させた。通常食では、ラット大腸にACFが多数観察されたが、共役トリエン酸を食餌に混合することでACF数は濃度依存的に減少し、共役トリエン酸の抗癌活性が確認された。また、共役トリエン酸をラットあるいはマウスに投与すると、肝臓、脂肪組織などに共役トリエン酸の代謝物である共役ジエン酸が蓄積することも明らかになった。培養細胞を用いた検討により、共役トリエン酸は腸上皮細胞において対応する共役ジエン酸に代謝されることが分かり、こうした代謝物が共役トリエン酸の生理作用を深く関わっていることが示唆された。紅藻Ptilota pectinataから抽出したポリエン酸イソメラーゼ活性を有する粗酵素を前年度と同様、各種クロマトグラフィーで精製し、SDS-PAGEで単一バンドを与える標品を得た。本標品を使用してアミノ酸組成をで分析したところ、Gly、Asx、Glxが多く、また、N末端からのアミノ酸配列は35残基のアミノ酸(2箇所不明を含む)を決定した。本酵素のN末端の配列は同属の近縁種について最近報告されたイソメラーゼとよく一致し、それ以外ではphytoene dehydrogenase、D-amino acid dehydrogenaseなどのdehydrogenase類と相同性が高かった。代表的な天然共役トリエン酸(α-エレオステアリン酸)を主要構成脂肪酸とするキリ油を飼料に0.5ないし1%添加し、産卵鶏に投与した。共役トリエン酸は産卵率、卵重量、卵黄重量などに影響しなかったが、母鶏の脂肪組織重量が減少し、各組織の脂肪含量も低下した。組織脂質には、共役トリエン酸は蓄積せず、共役ジエン酸が蓄積した。前年度において共役脂肪酸の一種である共役トリエン酸が培養癌細胞に対して強い致死作用を示すことを明らかにした。そこで、本年度はこの点について動物を用いて検討した。実験動物にはラットを用い、アゾキシメタンを投与することでACF(大腸前癌病変)を誘発させた。通常食では、ラット大腸にACFが多数観察されたが、共役トリエン酸を食餌に混合することでACF数は濃度依存的に減少し、共役トリエン酸の抗癌活性が確認された。また、共役トリエン酸をラットあるいはマウスに投与すると、肝臓、脂肪組織などに共役トリエン酸の代謝物である共役ジエン酸が蓄積することも明らかになった。培養細胞を用いた検討により、共役トリエン酸は腸上皮細胞において対応する共役ジエン酸に代謝されることが分かり、こうした代謝物が共役トリエン酸の生理作用を深く関わっていることが示唆された。ドコサヘキサエン酸を始めとする高度不飽和脂肪酸からアルカリ異性化法により共役型高度不飽和脂肪酸を調製し、そのガン細胞に対する作用を検討した。その結果、共役型高度不飽和脂肪酸はガン細胞に対して致死作用を示すことが分かった。また、その作用ば共役トリエン構造を有する共役型脂肪酸で顕著なこと及び異性体の種類によって活性が異なることも明らかになった。こうした共役トリエン構造を有する高度不飽和脂肪酸の抗ガン活性については、植物油由来の共役型リソレン酸を用いることで確認した。一方、共役トリエン構造を有する高度不飽和脂肪酸はバルク系で極めて酸化されやすいことが本研究により示された。これらの高度不飽和脂肪酸に対する抗酸化剤としてはカテキンやトコフェロールの水溶性誘導体が効果的であった。ただし、共役トリエン脂肪酸を多く含む植物種子油(ニガウリ種子油)をラットに投与した場合の生体内での脂質過酸化の顕著な亢進は認められなかった。紅藻クシベニヒバ(Ptilota pectinata)から抽出したポリエン酸イソメラーゼ活性を有する粗酵素をゲルろ過、DEAE-Sephadex、ヒドロキシアパタイトカラムを用いて精製し、SDS-PAGEにかけて単一バンドを与えたことからほぼ単離された考えられる標品を得た。本酵素のサブユニツトの分子量は約7万であり、分子量は約15万だったことから、本酵素は2量体からなっているものと考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-13460089 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13460089 |
共役型高度不飽和脂肪酸の生理活性とその酸化安定性 | 本酵素は、炭素数20の高度不飽和脂肪酸に対する活性が高く、5,7,9-位に二重結合をもつ共役トリエン酸を与えた。本酵素によってエイコサペンタエン酸から調製した共役酸は、アルカリ異性化により調製した共役酸と比較して、ガン細胞に対する致死作用に選択性が強く、特定の細胞に対して強い毒性を示した。アルカリ異性化により調製した共役ドコサヘキサエン酸を飼料に1%添加してラットに与えたところ、天然型の脂肪酸よりも血漿脂質を有意に低下させた。共役酸は天然型の脂肪酸よりも組織にはリン脂質には取り込まれず、また、組織に蓄積されないでエネルギー源として代謝されやすかった。アラキドン酸由来のエイコサノイド代謝への影響は、天然型の脂肪酸の方が強かった。紅藻クシベニヒバ(Ptilota pectinata)から抽出したポリエン酸イソメラーゼ活性を有する粗酵素を前年度と同様、各種クロマトグラフィーで精製し、SDS-PAGEで単一バンドを与える標品を得た。本標品を使用してアミノ酸組成をで分析したところ、Gly、Asx、Glxが多いのが特徴だった。また、N末端からのアミノ酸配列は35残基のアミノ酸(2箇所不明を含む)を決定した。本酵素のN末端の配列は同属の近縁種について最近報告されたイソメラーゼとよく一致し、それ以外ではphytoene dehydrogenase、D-amino acid dehydrogenaseなどのdehydrogenase類と相同性が高かった。代表的な天然共役トリエン酸(α-エレオステアリン酸)を主要構成脂肪酸とするキリ油を飼料に0.5ないし1%添加し、産卵鶏に投与した。共役トリエン酸は産卵率、卵重量、卵黄重量などに影響しなかったが、母鶏の脂肪組織重量が減少し、各組織の脂肪含量も低下した。組織脂質には、共役、トリエン酸は蓄積せず、共役ジエン酸が蓄積した。前年度において共役脂肪酸の一種である共役トリエン酸が培養癌細胞に対して強い致死作用を示すことを明らかにした。そこで、本年度はこの点について動物を用いて検討した。実験動物にはラットを用い、アゾキシメタンを投与することでACF(大腸前癌病変)を誘発させた。通常食では、ラット大腸にACFが多数観察されたが、共役トリエン酸を食餌に混合することでACF数は濃度依存的に減少し、共役トリエン酸の抗癌活性が確認された。また、共役トリエン酸をラットあるいはマウスに投与すると、肝臓、脂肪組織などに共役トリエン酸の代謝物である共役ジエン酸が蓄積することも明らかになった。培養細胞を用いた検討により、共役トリエン酸は腸上皮細胞において対応する共役ジエン酸に代謝されることが分かり、こうした代謝物が共役トリエン酸の生理作用を深く関わっていることが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-13460089 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13460089 |
トリルチル型化合物CuSb_2O_6の低次元磁性に関する研究 | 強相関物性を示す化合物の母体物質となるような低次元構造を有する磁性体では,スピン量子効果に由来して,低温の基底状態が非磁性となり,励起状態との間にギャップが開くいわゆるスピンギャップ状態をとるものが幾つか報告され,強相関物性の発現機構に関連して非常に注目されている.本研究の対象となるCuSb_2O_6はトリルチル化合物の一つで,Cuだけに着目すると高温超伝導体La_2Cu0_4と同じ構造を持ち,Cuサイトは2次元正方格子配列をなす.従ってその磁性も2次元的な振る舞いが期待されるにもかかわらず,その帯磁率は50K付近にピークを持ち,BonerとFisherらによる1次元Heisenberg型反強磁性体の理論計算と非常によい一致を示す.さらに8.5Kにおいて磁気相転移によるものと思われる帯磁率の減少を示す.この帯磁率の減少はスピン系が格子系と結合してダイマライズすることによりスピン一重項となる,いわゆるスピンパイエルス転移を起こしている可能性も示唆されていた.単結晶試料を用いて行った中性子線回折実験の結果,磁気ブラッグ反射を観測し,反強磁性長距離秩序であることを確認した。また,低温での磁気構造はb軸方向にスピンが揃う,いわゆるコリニアーオーダーであることが明らかとなり,2次元正方格子の辺方向(J1)と対角線方向(J2)のスピンフラストレーションがこの系で重要であることを明らかにした.このフラストレーションの度合い(J2/J1)により長距離磁気秩序が消失する,いわゆる量子臨界点近傍について,様々な理論的予測がなされており,そのような観点から,SbサイトヘのTa置換,CuサイトヘのZn置換を行い,辺方向及び対角線方向の相互作用の大きさをかえることに成功した.その結果,それらが拮抗する量子臨界点近傍において,長距離磁気秩序の消失とともに,NMRの緩和率測定においてスピンギャップ的な振る舞いが観測される等,新たな実験的知見を得ることができた.強相関物性を示す化合物の母体物質となるような低次元構造を有する磁性体では、スピン量子効果に由来して、低温の基底状態が非磁性となり、励起状態との間にギャップが開くいわゆるスピンギャップ状態をとるものが幾つか報告され、強相関物性の発現機構に関連して非常に注目されている。本研究の対象となるCuSb_2O_6はトリルチル化合物(AB_2O_6)の一つで、ルチル(TiO_2)構造のカチオンサイトにCu^<2+>とSb^<5+>が1:2の比で化学的に秩序配列する構造を持つ。Cuだけに着目すると高温超伝導体La_2CuO_4と同じ構造を持ち、Cuサイトは2次元正方格子配列をなす。従ってその磁性も2次元的な振る舞いが期待されるにもかかわらず、その帯磁率は50K付近にピークを持ち、BonerとFisherらによる1次元Heisenberg型反強磁性体の理論計算と非常によい一致を示す。さらに8.5Kにおいて磁気相転移によるものと思われる帯磁率の減少を示す。本研究では、このCuSb_2O_6化合物の良質試料、特に良質な単結晶を合成し、マクロ・ミクロ両面からの詳細な固体化学的評価により構造および磁性の関連を詳細に調べ、この系を含めた量子効果を伴う低次元磁性について有益な実験的知見を得ることを目的とした。まず、化学輸送法により、1×1×4mm程度の六角柱状の単結晶を得た。この単結晶および粉末試料を用いて^<121>Sbおよび^<123>Sb核の核磁気共鳴測定を零磁場下で行った結果、8.5K以下でSbスペクトルの分裂が見られ、Cuの長距離磁気秩序によるCuサイトの内部磁場の存在が明らかになった。さらに単結晶試料の中性子線回折により、低温における磁気構造を決定することができた。その結果、低温でb軸方向にスピンがそろうコリニアーオーダーであることが明らかになった。これは、2次元正方格子の辺方向と対角線方向のスピンフラストレーションの結果であり、低次元量子スピン系として非常に興味深い結果であると考えられる。強相関物性を示す化合物の母体物質となるような低次元構造を有する磁性体では,スピン量子効果に由来して,低温の基底状態が非磁性となり,励起状態との間にギャップが開くいわゆるスピンギャップ状態をとるものが幾つか報告され,強相関物性の発現機構に関連して非常に注目されている.本研究の対象となるCuSb_2O_6はトリルチル化合物の一つで,Cuだけに着目すると高温超伝導体La_2Cu0_4と同じ構造を持ち,Cuサイトは2次元正方格子配列をなす.従ってその磁性も2次元的な振る舞いが期待されるにもかかわらず,その帯磁率は50K付近にピークを持ち,BonerとFisherらによる1次元Heisenberg型反強磁性体の理論計算と非常によい一致を示す.さらに8.5Kにおいて磁気相転移によるものと思われる帯磁率の減少を示す.この帯磁率の減少はスピン系が格子系と結合してダイマライズすることによりスピン一重項となる,いわゆるスピンパイエルス転移を起こしている可能性も示唆されていた.単結晶試料を用いて行った中性子線回折実験の結果,磁気ブラッグ反射を観測し,反強磁性長距離秩序であることを確認した。また,低温での磁気構造はb軸方向にスピンが揃う,いわゆるコリニアーオーダーであることが明らかとなり,2次元正方格子の辺方向(J1)と対角線方向(J2)のスピンフラストレーションがこの系で重要であることを明らかにした. | KAKENHI-PROJECT-12740364 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12740364 |
トリルチル型化合物CuSb_2O_6の低次元磁性に関する研究 | このフラストレーションの度合い(J2/J1)により長距離磁気秩序が消失する,いわゆる量子臨界点近傍について,様々な理論的予測がなされており,そのような観点から,SbサイトヘのTa置換,CuサイトヘのZn置換を行い,辺方向及び対角線方向の相互作用の大きさをかえることに成功した.その結果,それらが拮抗する量子臨界点近傍において,長距離磁気秩序の消失とともに,NMRの緩和率測定においてスピンギャップ的な振る舞いが観測される等,新たな実験的知見を得ることができた. | KAKENHI-PROJECT-12740364 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12740364 |
「エサの喰い方」の多様化から見た木材腐朽性キノコ類の進化の解明 | 今年度は,白色腐朽菌による材分解の詳細を明らかにするステップとして,腐朽における組織変化を詳細に捉えることで,材分解の多様性を把握することを目的に実験をした。木材腐朽性担子菌の多くは樹種嗜好性を有することに着目し,ブナあるいはスダジイに嗜好性のあるタマチョレイタケ科の菌種を用いて,ブナ及びスダジイ木材片による腐朽試験を実施した。腐朽試験開始から120日までの重量減少率や木材組織の変化を継時的に観察することで,菌種の木材分解特性を調査した。腐朽試験を開始後, 120日目のブナ材の重量減少率を調査した結果,材を著しく分解する菌株と腐朽が進まない菌株に二分し,一方,スダジイ材では菌種や菌株に関わらず,いずれも顕著な分解は起こさず,重量減少率は菌株で大差はなかった。30日毎に腐朽材片の組織観察を行った結果,全ての菌種・菌株は,樹種に関わらず,まず木部繊維の二次壁を分解した。しかし,その後の木材組織の分解パターンは樹種によって異なった。腐朽に伴う分解パターンは,ブナでは重量減少率が高い菌株ほど早期に見られ,一方,スダジイ材では、菌株の重量減少率の差に関わらず同時期に開始していた。また,本研究に供試した菌株は,いずれもリグニン分解酵素活性が認められたものの,各菌株の活性値と重量減少率には相関が無いことも示された。本研究に供試した白色腐朽菌の木材腐朽に関する特性は,菌種や菌株よりも樹種の性質に影響されることが示唆された。また,木材の分解パターンは,種以上のレベルで互いに類似し,また,基質となる樹種に応じて変化することも明らかになった。材腐朽性きのこ類の進化には,エサとしての材資源への適応が大きく影響している事が,近年のゲノム情報を用いた解析からも示唆されている。本研究では,白色腐朽菌から成るタマチョレイタケ科を材料に,未記載種・未検討種を含めた分子系統解析から系統関係の解明し,各種における生態学的・生理学的・組織学的な材分解特性を特徴づける事によって木材腐朽性きのこ類の進化に伴い,「エサの喰い方」の変化・多様化を明らかにし,その多様化を促した原動力を考察することを目的としている。平成27年度は,網羅的種によるタマチョレイタケ科の詳細な分子系統関係の解明に取り組んだ。本科の主要種における核のLSU領域, ITS領域, RPB2領域のDNA配列を決定し,分子系統解析を実施した。その結果,本科における多くの属が多系統群である事が明らかになった。また,次年度以降に実施予定である各菌の生産リグニン分解酵素類の分析に向けた予備実験を行った。培養菌体への反応基質の滴下による検討の結果,当初予定していた培養菌体への試薬(基質)の変色性では,リグニン分解酵素種を正確に判別することが困難であることが明らかになった.平成27年5月中旬平成28年3月末まで特別休暇(産前産後休暇および育児休暇)を取得した。そのため,今年度は実験に従事する事が殆ど出来なかった。本研究では,主要な木材腐朽菌からなるタマチョレイタケ科を材料にその詳細な系統関係と各種の木材腐朽における特性を明らかにし,それらを比較することで,エネルギー獲得における進化傾向や多様化の解明を試みるものである.平成28年度は,国内(鳥取県,兵庫県,長野県)で木材腐朽菌の子実体の収集とそれらの菌株の確立を行うとともに,それらの生態情報としての基質(樹種や発生部位など)情報などの収集を実施した.タマチョレイタケ科22属50種を用い, 3遺伝子領域に基づく分子系統解析を行い,その系統関係を明らかにすることができた.また,子実体の形態的特徴を詳細に検討し,傘表面の菌糸構造などが系統によって異なることが明らかとなり,これは分類上,有用な形質であることが示された.菌の生産するリグニン分解酵素類(リグニンペルオキシダーゼ,マンガンペルオキシダーゼ,ラッカーゼ)とそれらの活性を分析した結果,菌の生産する酵素類と活性は株によって異なり,系統とは相関がないことが明らかになった.また,リグニン酵素の簡易分析法を検討した結果,これまで使用していた酵素生産を促すための液体培地による培養法を用いずとも,高栄養培地で菌体を前培養し,それを移植して培養した寒天培地を用いることで,酵素分析が可能であることが分かった.一方で,菌体培養に用いる培地組成によって,生産されるリグニン分解酵素類は変わらないものの,酵素活性は変化することが明らかとなり,同一の株であっても不安定であった.今年度は目標としていた分子系統関係を明らかにすることができた.また,詳細な形態的特徴も明らかにし,その中で,未同定種の存在や複数属において再編成の必要性が明らかになるなどの分類学的な知見を得ることもできた.木材腐朽に関する特性の1つとして,菌体培養法による各菌の生産するリグニン分解酵素類に着目し,それらの分析を行うことができた.これは来年度に実施目標としていた項目である.結果,系統関係と酵素の生産性や活性とは相関がないという結果を得ることができた.また,分解特性の簡易分析法の確立を目的とした実験を通して,リグニン分解酵素に関するに関する基礎的知見を得ることができた. | KAKENHI-PROJECT-15K18596 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K18596 |
「エサの喰い方」の多様化から見た木材腐朽性キノコ類の進化の解明 | 一方で,各菌の腐朽基質に関する生態情報の収集については,国内の限られた地域でしか実施することができなかったため,「おおむね順調に進展している」とした.本研究では,強力な腐朽力を有する白色腐朽菌で構成されるタマチョレイタケ科菌を材料に,詳細な系統関係と各種の木材分解に関する特性を明らかにすることで,未解明な木材分解様式と系統的な相関を検証する.平成29年度は,木材腐朽における特性の組織学的な検討に関する予備実験を重点的に実施した。一部の種の菌株を用いて,ブナ材片の腐朽分解を実施し,木材組織の分解プロセスとリグニンおよびセルロースの変化を経時的に観察することで特徴づけを試みた。また,来年度の本試験の実施に向け,適正な試験期間を検討したほか,各菌株の腐朽力と分解プロセスとの相関も検証した。その結果,今年度の試験に供試した種については,リグニン分解酵素の活性と同様に菌株レベルで,腐朽力には差があった.しかし,木材の組織学的な分解プロセスについては,種レベルで安定しており,共通性があることが示唆された。さらに,一部の種では材内に厚膜胞子を形成するなど,特徴的な現象も明らかとなった.国内調査を実施し,サンプルの拡充を行った一方で,海外生物資源の国内への移動については断念した.しかし,海外のカウンターパートの協力の下,分子系統解析に使用するための海外産木材腐朽菌のサンプル収集,生態的な調査を実施し,また,現地の研究室で必要な分子実験を実施することで,日本に生物資源を移動することなく, 15標本のLSUおよびITS領域のシークエンス配列し,これらを今後の実験に利用できるようになった。木材腐朽力や分解プロセスを確認するための実験は,菌体に木材片を埋め込んでから120日と長期に渡って継時的に観察するため,多くの種の菌株で実験を行うには,事前に実験系を確立する必要があった。今年度の予備実験を通して,今後の木材分解プロセスを明らかにするための実験系を確立することができた。木材成分であるリグニンとセルロースを染色した上で,木材組織の変化を観察することによって,分解プロセスが種レベルで安定なことや特殊な構造を形成(厚膜胞子)することが確認された。これは,来年度以降の研究における有用な基礎情報であると考えられる。海外産菌株を国内に移動することや,木材分解特性に関するための実験に利用することは最終的に断念したが,海外研究者の協力を得て,タマチョレイタケ科の詳細な分子系統関係を明らかにするために必要なDNA配列のデータは得ることができたことから,「おおむね順調に進展している」と判断した。今年度は,白色腐朽菌による材分解の詳細を明らかにするステップとして,腐朽における組織変化を詳細に捉えることで,材分解の多様性を把握することを目的に実験をした。木材腐朽性担子菌の多くは樹種嗜好性を有することに着目し,ブナあるいはスダジイに嗜好性のあるタマチョレイタケ科の菌種を用いて,ブナ及びスダジイ木材片による腐朽試験を実施した。腐朽試験開始から120日までの重量減少率や木材組織の変化を継時的に観察することで,菌種の木材分解特性を調査した。腐朽試験を開始後, 120日目のブナ材の重量減少率を調査した結果,材を著しく分解する菌株と腐朽が進まない菌株に二分し,一方,スダジイ材では菌種や菌株に関わらず,いずれも顕著な分解は起こさず,重量減少率は菌株で大差はなかった。30日毎に腐朽材片の組織観察を行った結果,全ての菌種・菌株は,樹種に関わらず,まず木部繊維の二次壁を分解した。しかし,その後の木材組織の分解パターンは樹種によって異なった。腐朽に伴う分解パターンは,ブナでは重量減少率が高い菌株ほど早期に見られ,一方,スダジイ材では、菌株の重量減少率の差に関わらず同時期に開始していた。 | KAKENHI-PROJECT-15K18596 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K18596 |
ウイルスによるRNAファクトリーの形成誘導と自然免疫応答 | 宿主に侵入したウイルスRNAは細胞質でRIG-I likereceptor (RLR)によって感知され、抗ウイルス自然免疫応答が誘導されるしかし、RLRがどこでウイルスを感知するかは不明であった。本研究ではウイルス感染がウイルスRNA/蛋白質凝集体を誘導しその中でRLRが感染を感知することを見出し、この凝集体をantiviral stress granule (avSG)と命名した。一方ウイルスはavSG形成を阻害して免疫応答から逃れていることを発見した。多くのウイルス感染では宿主の二重鎖RNAセンサーであるPKRならびにDHX36がavSG形成誘導に重要であることを明らかにした。宿主に侵入したウイルスRNAは細胞質でRIG-I likereceptor (RLR)によって感知され、抗ウイルス自然免疫応答が誘導されるしかし、RLRがどこでウイルスを感知するかは不明であった。本研究ではウイルス感染がウイルスRNA/蛋白質凝集体を誘導しその中でRLRが感染を感知することを見出し、この凝集体をantiviral stress granule (avSG)と命名した。一方ウイルスはavSG形成を阻害して免疫応答から逃れていることを発見した。多くのウイルス感染では宿主の二重鎖RNAセンサーであるPKRならびにDHX36がavSG形成誘導に重要であることを明らかにした。ウイルス感染細胞で形成される顆粒にはRIG-I,MDA5,LGP2、ストレス顆粒のマーカー蛋白質G3BP,TIAR,TIA1,HuR,eIF3,PABP、抗ウイルス蛋白質PKR,OAS,IRase Lが含まれていることが明らかとなった。このうちG3BPとRIG-Iは共沈降で共局在が生化学的に証明できたが、その他の構成物については共沈降が困難であることが判明した。今後化学架橋等の方法によって証明する計面である。ウイルス感染とその他のストレスで顆粒の構成成分が異なるかについては網羅的な解析の系が未だ確立していないが、ウイルス感染の時にのみ凝集するマーカーを得たので、各種ウイルス感染で詳細な検討を行う計画である。eGFP-G3BPを安定に発現した細胞株を得ることが出来たのでそれを用いて生細胞でのRNAファクトリーの消長の解析を開始した。感染後誘導され顆粒が蓄積する場合、顆粒形成が誘導されるがその後消失する場合、それが複数回繰り返される場合等があることが判明した。その分子基盤について解析を計画している。また細胞質に形成される別の顆粒(P-body)についそも蛍光蛋白質票指揮したマーカーを用いる系を立ち上げ、.解析を開始した。G3BP,eIF3のノックダウンをウイルス感染細胞で行なうと顆粒形成、インターフェロン誘導が共に抑制され、両者が機能的に関連していることが明らかとなった。以上の結果はウイルス感染によって形成誘導される顆粒は機能的にもウイルスRNAの感知に重要であることを示唆しており、今後さらに解析を進め、その全貌を明らかにする予定である。各種ウイルスの複製に伴って産生されるウイルス特異的なRNAは細胞質でRIG-I like receptor, RLRによって感知され、抗ウイルス自然免疫応答が誘導される。ウイルスの複製、粒子の構築は細胞質の特定の「場」で起きることが知られているが、どこでRLRがウイルスRNAを認識するかは全く不明であった。我々は、各種ウイルス感染によってRLRが特定の「場」であるRNA/蛋白質凝集体に誘引されること、さらにはウイルスRNAの分解酵素群、RNA代謝制御蛋白質、RNAi関連蛋白質など多くのRNA制御蛋白質群が同様に共局在することを見出した。この凝集体は、酸化、熱などの物理的なストレスによって誘導されるストレス顆粒と共通の構成成分を有することからantiviral Stress Granule (avSG)と命名した。avSGの形成はRLRの活性化、インターフェロン応答に重要であることを明らかにした。一方、多くのウイルスはavSGの誘導を阻害する活性を有しており、インフルエンザAウイルスのNS1はavSGの形成を強く阻害する。またピコルナウイルス属のEMCVとコクサッキーウイルスはその3CプロテアーゼがavSG形成に必須な蛋白質であるG3BP1を切断することによって自然免疫応答を阻害していることを明らかにした。またRNAヘリカーゼであるDHX36はavSG形成を直接誘導するキナーゼPKRの活性化に必要な蛋白質であり、avSGに局在することを明らかにした。以上、ウイルス感染細胞ではウイルスRNAによって誘導される複数の応答が誘導され、それは細胞内の特定の場で起きること、更にシグナル伝達によりその場が次々と移って行くことが明らかとなった。すなわちavSGにおけるRLR活性化、ミトコンドリア上のIPS-1アダプターによるTBK-1/IKKe、IKKの活性化、核における抗ウイルス遺伝子群の活性化、という概要を明らかするものである。各種ウイルスの複製に伴って産生されるウイルス特異的なRNAは細胞質でRIG-I like receptor, RLRによって感知され、抗ウイルス自然免疫応答が誘導される。ウイルスの複製、粒子の構築は細胞質の特定の「場」で起きることが知られているが、どこでRLRがウイルスRNAを認識するかは全く不明であった。我々は、各種ウイルス感染によってRLRが特定の「場」に誘引されること、さらにはウイルスRNAの分解酵素群、RNA代謝制御蛋白質、RNAi関連蛋白質など多くのRNA制御蛋白質群が同様に共局在することを見出した。本年度はRNAファクトリーの構成成分の概要を明らかとした。ウイルス感染はいわゆるストレス顆粒の他、ウイルスの種類によっては細胞質で複製する複製複合体の顆粒の形成を誘導する事を明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-23249023 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23249023 |
ウイルスによるRNAファクトリーの形成誘導と自然免疫応答 | これらの顆粒は形成されるまでの時間が異なっており、自然免疫応答の誘導に関与していることが強く示唆された。幾つかの未知の事実が明らかになってきた。ウイルスRNAの感知はそれのみならず、ウイルスRNAの積極的分解、合成阻害につながることも示唆する結果が示されていることから本研究の重要さが明らかとなってきた。共沈澱などの技術的な課題もあるが、今後条件検討を加えることによって克服したい。25年度が最終年度であるため、記入しない。ストレス顆粒の他にウイルス複製複合体が顆粒状の形成されることを見出し、それらを生細胞で経時的に観察する系を立ち上げることが出来た。このことは大きなブレイクスルーであり、固定細胞では知ることが出来なかったこれらの顆粒の動態を明らかにすることが可能となったため。今後の解析の中心は顆粒形成の分子機構の解明、顆粒構成分子のノックダウンとその結果もたらされる生理的影響へ展開する計面である。また、共沈澱などの技術的な課題もあるが、今後、架橋剤の使用をはじめとする条件検討を加えることによって克服してゆきたい。25年度が最終年度であるため、記入しない。生細胞でのウイルスの複製複合体の可視化、ストレス顆粒の可視化を系統的に行ないその動態を解明する。また、ミトコンドリア上に発現するアダプター分子、IPS-1との局在に関しては当面は固定細胞を用いて検討するが、生細胞での可視化模型の立ち上げにも挑戦する。 | KAKENHI-PROJECT-23249023 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23249023 |
交渉教育のための要素理論の研究-よりよき実践に向けて | 国内でも国際的にも交渉の必要性は増大しているが、一般市民にはその教育と学習の機会は少ない。本研究の課題は、交渉の非専門家や一般市民に交渉教育・学習へのアクセスを広げることである。本研究は、交渉の要素を説明する理論とこれらを解説する実例を組み合わせた要素理論表と「要素・理論・ケースサイクル」法によって、以上の課題の解決を図った。本研究によるよりよい交渉実践の普及が、秩序形成と価値創造を促進することが期待される。本研究は、よりよき交渉実践を支える学際的な教育・研究の基盤形成に向けて、交渉の効果的教育のために交渉の要素を説明する理論を紛争解決学と近隣諸分野から抽出し、さらにその理論を例証するケースを抽出し、これらを総合することによって交渉の要素を分野を超えてわかりやすく説明できる要素理論を明らかにすることを目的とする。1.学際的研究を効果的に行うための研究体制の立ち上げ:定例研究会を計4回実施した。(開催日:平成25年7月20日、10月7日、12月13日、平成26年2月10日)「協働的科学者ー実践家モデル」により、異分野の研究者・法律関係実務家がわかり合える研究体制を立ち上げた。モニタリングオフィサーが、研究過程を随時モニタリングし、わかりやすさを確保することに努めた。情報の共有の効率を高めるため、研究支援者・連携事務局により専用WEBサイトを開設した。2.紛争解決学と近隣諸分野からの理論抽出:紛争解決学および既存の交渉学を基本に、法社会学、経営学、法と経済学、ゲーム理論、外交・政治学、国際取引、民事紛争処理、心理学、情報工学、都市計画、議論・説得・対話理論などの分野から、交渉の教育・学習のための「交渉の7要素」を説明できる理論を抽出した。結果は上記WEBサイトで公表した。3.海外調査による比較検証:「交渉の7要素」とそれを説明する理論およびケース(問題)について、米国カリフォルニア州(Chapman University School of Law)での海外調査によって比較・検証し、研究組織にフィードバックした。本研究は、よりよき交渉実践を支える学際的な教育・研究の基盤形成に向けて、交渉の効果的教育のために交渉の要素を説明する理論を紛争解決学と近隣諸分野から抽出し、さらにその理論を例証するケースを抽出し、これらを総合することによって交渉の要素を分野を超えてわかりやすく説明できる要素理論を明らかにすることを目的とする。1.説得的なケースの作成:定例研究会を計5回実施し、交渉例を収集整理・分析し、「交渉の7要素」とそれを説明する説得的ケース(Case in Point)を作成した。これらをもとに、研究代表者および研究分担者が1交渉の7要素←27要素を説明する理論←37要素と理論を例証する説得的ケースを一覧することができる「要素理論表」を作成するために、定例研究会での検証とWEBサイトでの修正を繰り返した。以上の研究成果は随時、専用WEBサイトに掲載している。2.教育効果の観点から検証:「要素理論表」をもとに、教育学を専門とする研究分担者を中心に、教育学専攻の大学院生らの協力も得て、交渉の要素の理論的説明が交渉教育・学習のために利用可能かの検証をおこなった。3.海外調査による比較検証:「交渉の7要素」とそれを説明する理論および説得的ケース、教育効果の観点から検証についての結果をシンガポール・オーストラリア・アメリカでの海外調査によって比較・検証し、研究組織にフィードバックをおこなった。シンガポール・オーストラリア調査においては本研究の要約を示し、またアメリカ調査においては本研究の要約に加えて「要素理論表」の抜粋を英訳したものを示して聞き取りを行った結果、交渉の要素の理論的説明が交渉教育および交渉学習のために有益であること、さらに本研究の成果としての要素理論表が交渉の教育研究に有用であることが検証できた。本科研の研究は、研究計画に則りおおむね順調に進展している。その理由は下記のとおりである。1.研究組織による定例研究会を計5回実施した(開催日:平成26年6月20日、9月13日、12月12日、12月13日、平成27年3月6日)。昨年度の原則立脚型交渉法の7要素の抽出と海外調査の結果を整理・評価するとともに、交渉の要素を説明する説得的ケース(Case in Point)の収集と作成を行い、研究会における検討結果および各自の研究成果をメンバー専用WEBサイトに掲載した。研究成果は本年度新たに作成した英語版WEBサイトでも公開している。以上により、「説得的なケースの作成」については、おおむね達成されている。また、このケースを組み込んだ「要素理論表」の作成も進行中である。2.交渉の要素の理論的説明が交渉教育・学習のために利用可能かの検証をおこなった。具体的には、「要素理論表」をもとに、研究実績の概要に記載した方法で検証した結果、その有用性が明らかとなった。以上により、「教育効果の観点から検証」については、おおむね達成されている。3.野村美明研究代表が、平成27年2月26日3月4日の日程でNational University of Singapore・The University of Western Australiaを訪問、また平成27年9月11日9月21日の日程でHarvard Law Schoolを訪問し、交渉教育についての意見の聴取や、「交渉の7要素」とそれを説明する理論およびケース(問題)についての比較・検証をおこなった結果、研究実績の欄に記載したような有用性が明らかとなった。以上により、「海外調査による比較検証」について、おおむね達成されている。 | KAKENHI-PROJECT-25245016 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25245016 |
交渉教育のための要素理論の研究-よりよき実践に向けて | 本研究は、よりよき交渉実践を支える学際的な教育・研究の基盤形成に向けて、交渉の効果的教育のために交渉の要素を説明する理論を紛争解決学と近隣諸分野から抽出し、さらにその理論を例証するケースを抽出し、これらを総合することによって交渉の要素を分野を超えてわかりやすく説明できる要素理論を明らかにすることを目的とする。1.研究成果の取りまとめ:定例研究会を4回開催し、研究目的の中心である交渉の要素・ケースと関連付けられた理論について取りまとめた。要素理論表は、[交渉の要素]ー[要素を裏付ける理論]ー[要素をわかりやすく説明するケース]をひとつの表にまとめ、重要部分は英訳し、日本語および英語のWEBサイトで公表した。2.教育実践の実施:都立高校3年生、国立大学生(主に1回生)を対象に教育実践を実施した。2人1組で生徒に交渉を行わせた後、要素理論表(16-3及び1-2)をもとに、生徒に交渉の要素と理論を説明し、再度交渉を行わせることにより、「交渉の要素と理論を教えることで、交渉はよりよくなるか」を検証した。都立高校での教育実践の検証結果は「法と教育学会」第6回学術大会で研究発表を行った。3.セミナーの開催:平成27年11月28日(大阪大学)、12月19日(早稲田大学)でNEGO-Theoryセミナー「よりよい交渉のポイントと理論」を開催、研究の経過及び成果をWEB公開・論文のみならずセミナーにより交渉実務家及び市民に対して双方向的に伝えた。また平成28年2月5日に開催された演劇ワークショップ「件の宣言」の内容は別途WEBサイトを作成した(URLは備考欄に記載)。4.海外調査による比較検証:平成27年9月11日9月21日の日程でアメリカ、平成28年2月29日3月4日の日程で香港を訪問し、補足的な海外調査をおこなった。13月1日と23月3日には香港大学にて交渉セミナーを開催した。国内でも国際的にも交渉の必要性は増大しているが、一般市民にはその教育と学習の機会は少ない。本研究の課題は、交渉の非専門家や一般市民に交渉教育・学習へのアクセスを広げることである。本研究は、交渉の要素を説明する理論とこれらを解説する実例を組み合わせた要素理論表と「要素・理論・ケースサイクル」法によって、以上の課題の解決を図った。本研究によるよりよい交渉実践の普及が、秩序形成と価値創造を促進することが期待される。1.年4回の定例研究会:最終年度となる平成27年度には定例研究会を4回開催し、26年度までの研究を踏まえて、研究目的の中心である交渉の要素・ケースと関連付けられた理論について研究分担者が直接意見交換をする機会を設ける。以上を本研究の計画・方法に従って本研究のWEBサイトでさらに補足し一体化する。これらを要素理論表を中心としたわかりやすいかたちで研究成果を取りまとめる。また、要素理論表の重要部分を抜粋して英訳をし、日本語版とともに本研究のWEBサイトで公表する。2.教育実践の実施:研究協力者および研究支援者の協力を得て、学生(高校生、大学生)を対象に教育実践を実施し、交渉の要素の理論的説明が交渉教育・学習のために利用可能かを検証する。 | KAKENHI-PROJECT-25245016 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25245016 |
還元反応を利用した有機系廃棄物の高効率ガス転換に関する研究 | ポリエチレン(P.E.)とゴミ固形化燃料(RDF)を用いて、ウスタイト(FeO)を還元した際のガス発生挙動および還元挙動を調査した結果、発生する主なガスは共にH_2、COであり、P.E.を配合した試料の最終還元率が33%であったのに対し、RDFを配合した試料の最終還元率は78%となり、RDFを用いた方が高還元率を得ることができた。したがって、プラスチック系一般廃棄物と酸化鉄混合体を加熱することによって還元鉄を得るのと同時に、熱分解するのと同程度のH_2を得ることができる。ポリエチレン(P.E.)とゴミ固形化燃料(RDF)を用いて、ウスタイト(FeO)を還元した際のガス発生挙動および還元挙動を調査した結果、発生する主なガスは共にH_2、COであり、P.E.を配合した試料の最終還元率が33%であったのに対し、RDFを配合した試料の最終還元率は78%となり、RDFを用いた方が高還元率を得ることができた。したがって、プラスチック系一般廃棄物と酸化鉄混合体を加熱することによって還元鉄を得るのと同時に、熱分解するのと同程度のH_2を得ることができる。近年、地球環境問題に対する関心の高まりから、各国で様々な取り組みが進んでいる。2006年における家庭ゴミの内訳として、湿重量比で約46%がプラスチックや紙等の有機系廃棄物であり、その約78%が単純に焼却処分されているのが現状である。現在、製鉄には主として石炭が利用されているが、この石炭を廃プラスチックや有系廃棄物に置き換えることにより、上記で述べた単純に焼却処分されている有機系廃棄物の有効利用ができ、CO_2の排出量を抑えることができる。また、鉄とH_2、COの同時製造が期待されており、有機系廃棄物を還元材として用いた際の、鉄鉱石の還元挙動の詳細を把握することが重要である。そこで本研究では、ポリエチレン(P.E.)とゴミ固形化燃料(RDF)を用いて、ウスタイト(FeO)を還元した際のガス発生挙動および還元挙動を調査した。実験は所定の重量比に混合した試料を、1000°C、1200°Cに保持した縦型電気炉に挿入し、排出ガスの経時変化を四重極質量分析計で測定した。また、同時に湿度計を用いて水蒸気の経時変化を、熱天秤を用いて重量変化をそれぞれ測定した。さらに、実験後の試料を化学分析することで還元率を算出した。その結果、実験温度によらず発生する主なガスは共にH_2、COであることが分かった。また、P.E.を用いた時は約120sでガスの発生がほぼ終了しているのに対し、RDFを用いた時はCO、CO_2、H_2Oの発生が約240sまで持続することも分かった。P.E.を配合した試料の最終還元率が33%であったのに対し、RDFを配合した試料の最終還元率は78%となり、RDFを用いた方が高還元率を得ることができた。さらに、試料中の炭素と酸素のモル比を増加させると、共にガス発生量は増加したが、P.E.を配合した試料の最終還元率が49%であったのに対し、RDFを配合した試料の最終還元率はほぼ100%に達していた。したがって、RDF混合試料の方がC/Oの増加に伴う還元率の増加が著しいと言える。RDF混合試料で高還元率が得られたが、RDFには固定炭素が存在するため、RDFの熱分解時に発生する試料内部の残留炭素によるソリューションロス反応が起こり、COが長時間発生し続けることで、還元雰囲気が持続したためであると考えられる。家庭から排出されるゴミの体積比で約45%を占めているプラスチック類に着目し、代表的なプラスチック系一般廃棄物であるポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、プラスチックが主成分であるゴミ固形化燃料(RDF)の熱分解挙動を調査し、それら廃棄物を還元材として酸化鉄と混合した混合体ブリケットの反応挙動を調査するとともに還元鉄とH_2同時製造の可能性を検討した結果、以下のことが分かった。(1)PE、PP、RDFを1000°C1300°Cで熱分解させると主にH_2やCO、CH_4などの炭化水素系ガスが得られ、熱分解温度が高いほど還元性ガスであるH_2やCOの発生量が増加する。特に、1300°Cでは廃棄物中の水素の67割程度がH_2に転換する。(2)PE、PP、RDFと酸化鉄を混合して作製した酸化鉄混合体を加熱することによって還元鉄を得ることができ、還元温度が上昇するほど高い還元率が得られる。(3)PEとPPでは酸化鉄混合体の表面付近でCH_4の分解が生じ、酸化鉄混合体内部に炭素が残留しにくいため酸化鉄の還元反応が進行しにくい。一方、RDFでは熱分解により多量のチャーが混合体内部に残留するため酸化鉄の還元反応が速やかに進行する。(4)プラスチック系一般廃棄物と酸化鉄混合体を加熱することによって還元鉄を得るのと同時に、プラスチック系一般廃棄物単体を熱分解するのと同程度のH_2を得ることができる。酸化鉄・石炭成型体の伝熱特性をハロゲンフラッシュ法によって、成型体内のガス拡散特性をWicke-Kallenbach法によって測定した。さらに、直接加熱や間接加熱と異なるマイクロ波加熱実験を廃棄物-酸化鉄混合試料を用いて行った結果、以下のことが分かった。 | KAKENHI-PROJECT-19310054 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19310054 |
還元反応を利用した有機系廃棄物の高効率ガス転換に関する研究 | (1)流動度の大きい石炭は鉱石-石炭間が面接触となるため熱拡散率が大きくなり、反応が進行すると鉱石が熱拡散率の大きいFeへ還元されるため熱拡散率がさらに大きくなる。(2)成型体内のガス拡散はKundsen拡散が無視でき、表面拡散の影響も小さいことが分かった。また、反応率の上昇にともない炭材のガス化と酸化鉄中の酸素除去により気孔率が増加するため、CO-CO_2混合ガスの有効拡散係数は上昇し、有効拡散係数はT^<1.50>に比例することが分かった。(3)廃棄物-酸化鉄混合試料を用い、マイクロ波加熱で還元を行ったところ、4分間の加熱で還元率がほぼ100%の還元鉄が得られた。鉄は溶融しており、炭素も析出していた。加熱開始後は短時間で高温域に到達し、それに伴い大量のガスが発生した。発生したガスは反応初期の段階ではCO_2とCH_4も発生はしているが大半をH_2及びCOが占めることから、熱分解、還元、改質が同時に進行していることが分かった。以上の測定結果を基に、熱伝導、拡散、反応、ガス流動を考慮した成型体の非定常数学モデルを開発し、解析を行った結果、実験値と比較的良い一致を示した。しかし、実測値を完全に再現するためには、さらに多くのパラメータを設定する必要があるものと考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-19310054 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19310054 |
高階項書換えシステムの合流性自動検証に関する研究 | 高階項書換えシステムの合流性自動検証のために、様々な書換えシステムの研究を行った。研究成果として、組合せ子の項書換えシステムの多くが強頭部正規化可能性を持たないことを示した。さらに、無限項書換えシステムの強頭部正規化可能性および生成性に対する反証手続きを提案し、反証手続きの正しさを示すとともに、手続きの実装を行った。高階項書換えシステムの合流性自動検証のために、様々な書換えシステムの研究を行った。研究成果として、組合せ子の項書換えシステムの多くが強頭部正規化可能性を持たないことを示した。さらに、無限項書換えシステムの強頭部正規化可能性および生成性に対する反証手続きを提案し、反証手続きの正しさを示すとともに、手続きの実装を行った。合流性を満たす高階項書換えシステムのクラスの拡張・定式化を目標として、組合せ子が持つ書換え規則から成る項書換えシステムの理論的な解析を行った。これらは合流性を満たす代表的な項書換えシステムとして知られている。さらに、項書換えシステムを拡張した無限項書換えシステムの理論的な解析を行った。無限項書換えシステムは、ストリームといった仮想的に無限長として見做されるデータを扱う関数型プログラミシグ言語の計算モデルとして知られている。本年度の具体的な成果は以下のとおりである。1.組合せ子が持つ書換え規則から成る項書換えシステムの強頭部正規化可能性(強収束性)を調査し、組合せ子が持つ書換え規則から成る項書換えシステムの多くは強頭部正規化可能性を持たないことを反例を構成することによって示した。本研究は、第8回情報科学技術フォーラムで報告した。2.無限項書換えシステムに対する強頭部正規化可能性の反証手続きを提案し、その正当性を示した。提案した反証手続きの特徴は、より長い書換え列を可能とする代入から、変数の同一視により正則項(部分項が有限個の無限項)による反例を具体的に構築する点である。従来、このような正則項を利用した強頭部正規化可能性の反証法は知られておらず、提案手法を従来の強頭部正規化可能性の自動証明法と組合せることにより、より強力な強頭部正規化可能性の自動判定法が実現可能である。また、強頭部正規化可能性が成立しない多くの例に対して、提案手法が有効に適用できた。本研究は、第12回プログラミングおよびプログラミング言語ワークショップで報告した。合流性を満たす高階(無限)項書換えシステムのクラスの拡張・定式化を目標として,左線形かつK-開発閉包な項書換えシステムの合流性の理論的な解析を行った.さらに,項書換えシステムを拡張した無限項書換えシステムの理論的な解析を行った.無限項書換えシステムは,遅延リストやストリームといった仮想的に無限長として見做されるデータを扱う関数型プログラミング言語の計算モデルとして知られている.項書換えシステムにおける停止性に対応する基本的な性質として,無限項書換えシステムにおける強頭部正規化可能性(強収束性)があり,その証明法がZantemaやEndrullisらによって報告されている.また,Endrullisらは無限項書換えシステムの部分クラスであるストリーム項書換えシステムを提案し,ある十分条件のもとでのストリームの生成性判定手続きを報告している.本年度の具体的な成果は以下のとおりである.1.強頭部正規化可能性および一般生成性に対する反証手続きを提案した.提案した手続きの基本的なアイデアは,有限表現を持つ無限項である正則項の反例を構成する点にある.2.反証手続きの正しさを示すとともに,手続きの実装を報告した.実験の結果,自動反証法が従来知られていない例について有効であることを確認した.本研究は,現在,学術雑誌に投稿中である.ソフトウェアに対する多様な要求に対して,高機能な関数型プログラミング言語(SML#,Haskell,OCaml等)が提案され,それらのプログラミング言語の基礎理論を与えるものとして高階項書換えシステムが注目されるようになった.昨年度に引き続き,今年度は合流性を満たす高階(無限)項書換えシステムのクラスの拡張・定式化を目標として,項書換えシステムを拡張した無限項書換えシステムの理論的な解析を行った.無限項書換えシステムは,遅延リストやストリームといった仮想的に無限長としてみなされるデータを扱う関数型プログラミング言語の計算モデルとして知られている.項書換えシステムにおける停止性に対応する基本的な性質として,無限項書換えシステムにおける強頭部正規化可能性(強収束性)があり,その証明法がZantemaやEndrullisらによって報告されている.また,Endrullisらは無限項書換えシステムの部分クラスであるストリーム項書換えシステムを提案し,ある十分条件のもとでのストリームの生成性判定手続きを報告している.今年度の具体的な成果は以下のとおりである.1.強頭部正規化可能性および一般生成性に対する反証手続きを提案した.提案した手続きの基本的なアイデアは,有限表現を持つ無限項である正則項の反例を構成する点にある.2.反証手続きの正しさを示ととに,手続きの実装を報告した.実験の結果,自動反証法が従来知られていない例について有効であることを確認した.本研究の成果は,学術雑誌に掲載済みである. | KAKENHI-PROJECT-21700017 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21700017 |
エノキタケ子実体誘導に関与する遺伝子群の機能解析と遺伝子操作系の開発 | 一般に「キノコ」と呼ばれる「担子菌の子実体」ができる仕組みを遺伝子のレベルで解明することを目指した。先ず、エノキタケを材料に用いて、アグロバクテリウムを介した遺伝子導入用バイナリーベクターpFungiwayを構築した。このベクターは、目的遺伝子の高発現あるいはRNA干渉を利用した発現抑制が可能となるように設計した。実際にエノキタケ複核菌糸で発現する2種の遺伝子を用いて、pFungiwayベクターの有用性を確認した。一般に「キノコ」と呼ばれる「担子菌の子実体」ができる仕組みを遺伝子のレベルで解明することを目指した。先ず、エノキタケを材料に用いて、アグロバクテリウムを介した遺伝子導入用バイナリーベクターpFungiwayを構築した。このベクターは、目的遺伝子の高発現あるいはRNA干渉を利用した発現抑制が可能となるように設計した。実際にエノキタケ複核菌糸で発現する2種の遺伝子を用いて、pFungiwayベクターの有用性を確認した。担子菌キノコは食品としても生理活性物質の供給源としても重要である。しかし、一般にキノコと呼んでいる子実体ができる仕組みについては不明な点が多い。そのため、人工栽培によって安定に子実体を作ることができるキノコの種類はごく限られたものである。貴重なキノコを効率よく人工栽培するためには、子実体形成の機構を理解することが重要である。これまでに人工栽培が可能なエノキタケを実験材料に用いて、子実体が形成されるときにのみ特異的に発現する遺伝子を約600個分離した。この中には子実体形成の鍵となる遺伝子が含まれると考えられる。そこで、分離した遺伝子のはたらきを調べるためエノキタケにおける遺伝子操作実験系を開発した。1.エノキタケで使用可能なレポーター遺伝子の検討エノキタケ細胞内で遺伝子の発現量をモニタリングするため、蛍光を発する遺伝子の使用を検討した。アグロバクテリウムを用いて、緑色蛍光タンパク質遺伝子と細菌由来の赤色蛍光遺伝子を導入した結果、後者において明瞭な赤色蛍光を観察できレポーター遺伝子として利用可能であることがわかった。2.遺伝子発現抑制用ベクターの作成子実体形成期に特異的に発現する遺伝子の機能を調べるひとつの手段として、目的遺伝子の配列に相当する二本鎖RNA分子を細胞に導入し、該当遺伝子の発現を強力に抑制するRNA干渉法と呼ばれる方法の適用を検討した。種々の遺伝子に対して、簡便に二本鎖RNA分子を作ることができる汎用性のあるベクターpFungiwayを作成した。このベクターは担子菌キノコを含めて幅広い菌類に使用可能であり、遺伝子機能解明のための強力な実験ツールとして期待できる。今後は、エノキタケの子実体形成に関わる遺伝子の機能解明に用いる予定である。担子菌キノコの子実体ができる仕組みについては不明な点が多い。そのため、人工栽培によって安定に子実体を作ることができるキノコの種類は限られている。貴重なキノコを効率よく人工栽培するためには、子実体形成の機構を分子レベルで理解することが重要である。これまでにエノキタケを実験材料に用いて、子実体形成時に特異的に発現する遺伝子を約600個分離した。この中には子実体形成の鍵となる遺伝子が含まれると考えられる。分離した遺伝子のはたらきを調べるためエノキタケにおける遺伝子操作系の開発を行ってきた。1.実験室内における簡易子実体栽培法の確立管ビン内に作成したおが屑培地にエノキタケ菌糸を十分に生育させたのち、菌掻き、注水、低温処理により子実体形成を誘導し、約40日間で子実体を成熟させる方法を確立した。本手法を遺伝子組換えエノキタケに適用することで、特定遺伝子の発現抑制が子実体形成に与える影響を適切な封じ込め条件を備えた実験室内で確認することが可能となった。2. RNA干渉用バイナリーベクターpFungiwayの有効性確認RNA干渉を利用して特定遺伝子の発現を抑制するために、バイナリーベクターpFungiwayを構築した。エノキタケ複核菌糸における有効性を検証するため,adenosine deaminase growthfactor (ADGF)ファミリー細胞増殖因子に相同なタンパク質をコードするFv-ada遺伝子の発現抑制を試みた。Fv-ada遺伝子を挿入したpFungiwayによる栄養菌糸の形質転換体では,程度の差はあるものの,すべてにおいてFv-ada遺伝子発現が抑制されていることをRT-PCRにより確認した。担子菌キノコの子実体ができる仕組みについては不明な点が多い。そのため、人工栽培によって安定に子実体を作ることができるキノコの種類は限られている。貴重なキノコを効率よく人工栽培するためには、子実体形成の機構を分子レベルで理解することが重要である。これまでにエノキタケを実験材料に用いて、子実体形成時に特異的に発現する遺伝子を約600個分離した。この中には子実体形成の鍵となる遺伝子が含まれると考えられる。分離した遺伝子のはたらきを調べるためエノキタケにおける遺伝子操作系の開発を行ってきた。1.担子菌遺伝子解析用バイナリーベクターpFungiwayシリーズの構築目的遺伝子に対して高発現およびRNA干渉を利用した発現抑制を行うため、アグロバクテリウムを介した遺伝子導入バイナリーベクターpFungiwayシリーズを構築した。このベクターの特徴として、(1)Gatewayテクノロジーにより目的遺伝子を簡便に挿入できること、(2)hygromycin BとG-418耐性遺伝子の2種類の選択マーカー遺伝子を選択できること、(3)導入遺伝子の発現に対して構成的と子実体特異的の2種類のプロモーターを選択できること、が挙げられる。 | KAKENHI-PROJECT-19580086 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19580086 |
エノキタケ子実体誘導に関与する遺伝子群の機能解析と遺伝子操作系の開発 | 2.エノキタケのアセチルキシランエステラーゼ遺伝子発現抑制株の解析エノキタケの子実体形成時に特異的に発現するアセチルキシランエステラーゼ遺伝子を単離し、その全長配列を決定した。続いて、RNA干渉用pFungiwayベクターを用いて、本遺伝子の発現抑制株を作成した。その結果、発現抑制株の菌糸は、ポテトーデキストロース培地上では親株と同程度の成長率を示したのに対し、おがくず培地上では菌糸の成長が著しく遅れた。アセチルキシランエステラーゼは、おがくず培地の栄養源摂取に関わっていることが考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-19580086 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19580086 |
都市部一般住民における代謝性疾患と頚動脈硬化の進展に関する追跡研究 | 市部一般住民における代謝性疾患と頚動脈硬化の進展に関する追跡研究と血管内膜中膜肥厚(IMT)の進展との追跡研究について、生活習慣要因から検討した。正常高値血圧以上で最大IMT値が有意に厚かった。女性の最大IMT値は、血圧と高感度CRP高値との間に交互作用が見られた。また、女性の糖尿病型、男性の境界型以上で平均・最大IMTは有意に厚かった。頸動脈狭窄は血糖が高くなるとリスクが高く、さらに血圧上昇と交互作用が見られた。慢性腎障害は頸動脈硬化の危険因子であり、頸動脈硬化は慢性腎障害の正常高値血圧、高血圧群でさらに進展していた。頸動脈硬化症の予防に、慢性腎障害への進展抑止と血圧のコントロールが重要であるごとがわかった。さらに、追跡研究では頸動脈IMT、特に総頸動脈最大IMTは循環器病発症の予測因子であることが分かった。正常高値血圧、糖尿病型、non-HDLコレステロール高値、喫煙、BMIが保健指導において動脈硬化進展の予防に有効な指標であることが分かった。市部一般住民における代謝性疾患と頚動脈硬化の進展に関する追跡研究と血管内膜中膜肥厚(IMT)の進展との追跡研究について、生活習慣要因から検討した。正常高値血圧以上で最大IMT値が有意に厚かった。女性の最大IMT値は、血圧と高感度CRP高値との間に交互作用が見られた。また、女性の糖尿病型、男性の境界型以上で平均・最大IMTは有意に厚かった。頸動脈狭窄は血糖が高くなるとリスクが高く、さらに血圧上昇と交互作用が見られた。慢性腎障害は頸動脈硬化の危険因子であり、頸動脈硬化は慢性腎障害の正常高値血圧、高血圧群でさらに進展していた。頸動脈硬化症の予防に、慢性腎障害への進展抑止と血圧のコントロールが重要であるごとがわかった。さらに、追跡研究では頸動脈IMT、特に総頸動脈最大IMTは循環器病発症の予測因子であることが分かった。正常高値血圧、糖尿病型、non-HDLコレステロール高値、喫煙、BMIが保健指導において動脈硬化進展の予防に有効な指標であることが分かった。代謝性疾患は循環器疾患の重要な危険因子であり、循環器疾患のさらなる増加が懸念され、循環器疾患の1次予防に関する新たな戦略を構築することの重要性は論を待たない。我が国では、代謝性疾患が動脈硬化の進展にどの様に及ぼすかについて生活習慣要因を含めた追跡研究は極めて少ない。そこで本研究では、都市部一般住民を対象とした吹田研究の2年毎に実施される健診に合わせ、頸動脈エコー検査を行い、代謝性疾患と血管内膜中膜肥厚(IMT)の進展との追跡研究について、生活習慣要因と遺伝要因の両面から合わせて検討する。また、高血圧や慢性腎疾患などの合併症により代謝性疾患がどのように動脈硬化の進展に影響を与えるのか、代謝性疾患の服薬の有無によりIMTの進展に寄与する因子を時系列に総合的に検討し、その予防方法を明らかにし、診療治療ガイドラインに資することを目的とする。頸部IMT値肥厚とその後の循環器病発症との関係では、46,561人年の追跡で、第1四分位を基準に、第4四分位の全脳卒中、脳梗塞、IHDの多変量ハザード比がそれぞれ、平均IMTで2.5、3.7、2.9、Max-IMTで1.9、1.8、2.3であり、頸動脈硬化は脳卒中、IHD発症の予測因子であることが分かった。また、頸部IMT値と血圧カテゴリー別との関係は、女性の正常血圧以上、男性の高血圧で平均IMT値の肥厚が見られ、正常高値血圧以上で最大IMT値の肥厚が見られた。女性の最大IMT値は、血圧が高くなると厚く、さらに高感度CRP高値で肥厚していることがわかった(交互作用P値=0.05)。さらに、頸部IMT値と血糖カテゴリー別との関係は、男性の境界型、糖尿病型、女性の糖尿病型で有意に平均・最大IMTが高値であった。女性の最大IMT値は、血糖が高くなると厚く、さらに高感度CRP高値で肥厚することがわかった。次年度はさらに頸動脈IMTと生活習慣病、生活習慣要因との関係を追跡研究で検討し、頸動脈硬化の進展に寄与するリスク要因を求める。吹田研究で本研究に同意した3,446名を対象とした。頸動脈エコー検査にて内膜中膜複合体厚(IMT)を測定し、平均IMT、最大IMT、狭窄(頸動脈の面積狭窄率≧25%)を頸動脈硬化の指標とした。血清クレアチニン値により糸球体濾過率(eGFR)を計算し、60未満を慢性腎障害(CKD)と定義した。血糖、eGFR(CKD)とIMT・狭窄の関連を、血圧カテゴリーを含むリスク因子にて調整した共分散分散およびロジスティック回帰モデルを用いて解析した。平均・最大IMTは女性DM型、男性境界型、DM型で有意に厚かった。狭窄は血糖正常型に対しDM型でオッズ比1.7、至適血圧群に対し高血圧群で1.5だった。血糖と血圧カテゴリーの狭窄に対する交互作用が有意なことから、血糖と血圧高値が重なると頸動脈硬化がさらに進展していることがわかった。また、最大IMT値はeGFRの低下に伴い、女性では有意に厚く、男性でもその傾向を認めた。25%以上狭窄もeGFRの低下に伴い増加し、eGFR<50群の危険度は1.9倍であった。 | KAKENHI-PROJECT-22390138 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22390138 |
都市部一般住民における代謝性疾患と頚動脈硬化の進展に関する追跡研究 | CKDの有無と血圧カテゴリーの組み合わせの検討では、最大IMT値は、高血圧群で有意に厚く、男性では正常高値血圧・CKD群、女性では高血圧・CKD群で最も厚かった。狭窄は正常高値血圧・高血圧群で多く、CKD群で顕著であった。以上のことより、都市部一般住民において、糖尿病、CKDは頸動脈硬化の独立した危険因子であり、正常高値血圧、高血圧群でさらにIMT値が進展していた。頸動脈硬化症の予防には、血糖、腎機能のコントロールばかりではなく血圧のコントロールが重要であるごとがわかった。代謝性疾患が動脈硬化の進展にどのように関与しているのか、頸動脈エコー検査を用いた研究は殆どない。そこで本研究は、代謝性疾患が頸動脈硬化の進展とどのような関係があるのか追跡研究を行い、今後の動脈硬化予防のための基礎資料にすることを目的とする。男女4564名(平均年齢59.6歳)に頸動脈エコー検査を実施した。平均10.4年追跡し、平均内膜中膜複合体厚(IMT)が1.0mm以上に達したところで動脈硬化進展有と定義した。平均IMT値による動脈硬化進展のリスク評価は、至適血圧を基準に、正常高値血圧で1.4 (1.1-1.8)、高血圧で1.4 (1.2-1.8)、non-HDLが<100mg/dLを基準に、140159mg/dLで2.7 (1.5-4.4)、non-HDL≧160mg/dLで2.5 (1.4-4.7)、喫煙群で1.5 (1.2-1.8)、body mass index (BMI)が1上昇するに連れて1.04 (1.01-1.07)となっていた。一方、IMTの最大値が1.7mm以上に達したところで動脈硬化進展有と定義した。最大IMT値による動脈硬化進展リスク評価は、至適血圧を基準に、正常高値で1.2 (1.0-1.5)、高血圧で1.3 (1.1-1.6)、non-HDL<100mg/dLを基準に、120139mg/dLで1.5 (1.0-2.3)、140159mg/dLで1.9 (1.3-2.7)、non-HDL≧160mg/dLで2.0 (1.4-2.9)、喫煙群で1.3 (1.1-1.6)、正常血糖群を基準にして糖尿病型で1.8 (1.4-2.4)、男性の喫煙者群で1.3 (1.1-1.7)となっていた。以上のことから、正常高値血圧、糖尿病型、non-HDLコレステロール高値、喫煙、BMIが保健指導において動脈硬化進展の予防に有効な指標であることが分かった。軽動脈硬化症や頸動脈の内膜中膜複合体(IMT)に影響を与える代謝性疾患などの危険因子の研究は、海外の学会や国内学会に発表して、論文を投稿するところで、3年目はそれを縦断的にみて頸動脈効果の進展具合との関係を見ていく予定であるので、ほぼ予定通りであるといえる。24年度が最終年度であるため、記入しない。3年目は、2年目に出した成果を踏まえて、縦断データを用いて、代謝性疾患がIMTの進展をより進みやすくするのかどうか検討する。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22390138 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22390138 |
グループホームにおける痴呆性高齢者の生活行動の変化に関する縦断的研究 | 1.デイケアにおける研究デイケアを利用している痴呆性高齢者の心拍反応の解析を行った結果、痴呆の進行にともない、交感神経機能の有意な低下がみられた。また、痴呆軽度群と痴呆重度群に区分し、主要な行動における心拍反応を比較した。その結果、痴呆軽度群と比べ痴呆重度群は、全般的に交感神経機能が低く、特に「介護者との会話」、「レクリエーション」、「テレビをみている」における交感神経機能が有意に低下していた。2.グループホームにおける研究3つのグループホームに入居している痴呆性高齢者の行動観察と心拍反応に関する追跡調査を行った結果、痴呆が中等度の対象者は、「居室で過ごす」において交感神経優位を示した。住環境が良好で痴呆が軽度の対象者は、「居室で過ごす」において副交感神経優位を示し、一方、住環境が悪く痴呆が軽度の対象者は、「居室で過ごす」において交感神経優位を示した。また、痴呆が軽度で攻撃的言動がみられなかった対象者は、「入居者との会話」で副交感神経優位を示し、「介護者との会話」で交感神経優位を示した。痴呆が中等度で攻撃的言動がみられた対象者は、「入居者との会話」及び「介護者との会話」で交感神経優位を示した。一方、痴呆が中等度で攻撃的言動がみられなかった対象者は、「入居者との会話」で副交感神経優位を示し、痴呆の進行にともない「介護者との会話」で副交感神経優位を示した。「調理活動」に関して、痴呆が軽度であり家事能力が高い対象者は、副交感神経優位を示し、痴呆が中等度である対象者は、交感神経優位を示した。以上の結果から、痴呆の程度や攻撃的言動の程度によって、相反する心拍反応が観察された。このことから、痴呆性高齢者に対する環境整備や介護方法の検討を行う上で、行動観察と同時に生理学的指標である心拍反応を用いることは、評価指標として有用であると考えられる。デイケアを利用している痴呆性高齢者22名を対象に、利用者の手作業・椅子に座る・食事・テレビ・レクリエーション等の生活場面を設定し、行動観察と心拍反応の測定を行った。対象者のうち4名においては、心拍変動解析を行った結果、期外収縮が多発していたため分析対象から除外した。分析を行った結果、手作業・椅子に座る・テレビ場面において副交感神経機能の指標として用いられるHF成分が優位であることからリラックス状態にあることが示唆された。また、食事・レクリエーション場面においては、交感神経機能の指標として用いられるLF/HF成分が優位な傾向にあることから緊張状態にあることが考えられた。今後、対象者を増やし、同様の生活場面において測定を行うことにより、痴呆性高齢者の行動特性を把握する生理的指標として、心拍反応が適しているかどうかについて検討する。形態の異なる6つのグループホームに入居している痴呆性高齢者14名を対象に行動観察と心拍反応の24時間連続測定を行った。対象者のうち3名においては、心拍変動解析を行った結果、期外収縮がみられたため分析対象から除外した。行動観察において、対象者の行動・発話内容・発話の相手・行動と発話のみられた場所と持続時間を記録した。追跡可能な対象者に関しては、同様の調査を3ヶ月ごとに実施した。さらに、住環境を評価するスケールを用いて、グループホームの環境状況について評価した。その結果、グループホームの形態や住環境の違いが、対象者の生活行動の変化に影響を与える可能性が示唆された。今後、追跡調査を行うことにより、痴呆性高齢者の生活環境としてどのような住環境が適しているのかについて検討する。デイケアを利用している痴呆性高齢者25名を対象に、デイケアでの行動観察と心電図の周波数解析を行い、生活行動と自律神経系との関連について検討した。HFを副交感神経、LF/HFを交感神経の指標とした。その結果、「手作業」「テレビをみる」では、痴呆レベルに関係なくHFが優位である傾向がみられた。一方、「利用者との会話」では、痴呆レベルと関係なくLF/HFが優位である傾向がみられた。さらに、「レクリエーション」および「介護者との会話」では,一定の傾向がみられず,今後,「レクリエーション」の内容および会話の内容等について更に詳細な検討が必要である。形態が異なるグループホームに入居している痴呆性高齢者14名を対象に行動観察と心電図の24時間連続測定を行った。追跡調査が可能であった7名においては、初回の調査から3ヶ月ごとに同様の調査を行い、痴呆性高齢者の生活行動の継時的変化を明らかにし、生活環境や介護者の関わり方について検討した。調査内容および分析は、デイケアと同様の方法を用いた。分析の結果、痴呆レベルが維持された対象者は「入居者との会話」「家事」「テレビをみる」においてHF優位であり、「介護者との会話」においてLF/HF優位である傾向が認められた。痴呆レベルが低下した対象者は、「家事」においてLF/HF優位である傾向が認められた。「テレビをみる」に関しては、痴呆レベルが低下した対象者においてもHFが優位である傾向が認められた。「介護者との会話」および「入居者との会話」に関しては、痴呆レベルが低下した対象者の中にもHFが優位である対象者も認められた。攻撃的言動がみられた対象者は、「入居者との会話」でLF/HFが優位である傾向が認められた。 | KAKENHI-PROJECT-02J11840 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02J11840 |
グループホームにおける痴呆性高齢者の生活行動の変化に関する縦断的研究 | 今後、追跡調査を行うと同時に、生活環境と対象者の行動および心拍反応との関連についても検討することが必要である。調査を行うにあたり、本人または家族に調査内容について十分な説明を行い、書面において同意を得た。1.デイケアにおける研究デイケアを利用している痴呆性高齢者の心拍反応の解析を行った結果、痴呆の進行にともない、交感神経機能の有意な低下がみられた。また、痴呆軽度群と痴呆重度群に区分し、主要な行動における心拍反応を比較した。その結果、痴呆軽度群と比べ痴呆重度群は、全般的に交感神経機能が低く、特に「介護者との会話」、「レクリエーション」、「テレビをみている」における交感神経機能が有意に低下していた。2.グループホームにおける研究3つのグループホームに入居している痴呆性高齢者の行動観察と心拍反応に関する追跡調査を行った結果、痴呆が中等度の対象者は、「居室で過ごす」において交感神経優位を示した。住環境が良好で痴呆が軽度の対象者は、「居室で過ごす」において副交感神経優位を示し、一方、住環境が悪く痴呆が軽度の対象者は、「居室で過ごす」において交感神経優位を示した。また、痴呆が軽度で攻撃的言動がみられなかった対象者は、「入居者との会話」で副交感神経優位を示し、「介護者との会話」で交感神経優位を示した。痴呆が中等度で攻撃的言動がみられた対象者は、「入居者との会話」及び「介護者との会話」で交感神経優位を示した。一方、痴呆が中等度で攻撃的言動がみられなかった対象者は、「入居者との会話」で副交感神経優位を示し、痴呆の進行にともない「介護者との会話」で副交感神経優位を示した。「調理活動」に関して、痴呆が軽度であり家事能力が高い対象者は、副交感神経優位を示し、痴呆が中等度である対象者は、交感神経優位を示した。以上の結果から、痴呆の程度や攻撃的言動の程度によって、相反する心拍反応が観察された。このことから、痴呆性高齢者に対する環境整備や介護方法の検討を行う上で、行動観察と同時に生理学的指標である心拍反応を用いることは、評価指標として有用であると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-02J11840 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02J11840 |
欧州評議会の言語政策は日本のモデルとなりうるか | 現在ヨーロッパでは、欧州評議会とEUのマクロ政策的イニシアティヴにより、言語政策におけるヨーロッパ共通の枠組みづくりが進められ、大きな成果を挙げている。この研究では、そのプロセスが言語教育はもちろん、EU内の合意形成や歴史的マイノリティに対する政策、移民統合政策等とかかわりながら同時進行していること、それが民主主義による国民国家理念や市場合理主義の超克の試みであること、さらには、そうした成果を日本の言語政策に取り込むには、外国語教育の現場やDiversity Managementといったミクロ的次元から出発すべきことを示した。現在ヨーロッパでは、欧州評議会とEUのマクロ政策的イニシアティヴにより、言語政策におけるヨーロッパ共通の枠組みづくりが進められ、大きな成果を挙げている。この研究では、そのプロセスが言語教育はもちろん、EU内の合意形成や歴史的マイノリティに対する政策、移民統合政策等とかかわりながら同時進行していること、それが民主主義による国民国家理念や市場合理主義の超克の試みであること、さらには、そうした成果を日本の言語政策に取り込むには、外国語教育の現場やDiversity Managementといったミクロ的次元から出発すべきことを示した。まず、日本の外国語教育の現状を、「複[数]言語主義Plurilingualismus」というヨーロッパの視点を念頭に置きながら簡略にまとめて公刊した。欧州評議会の言語政策部の求めに応じて行った講演をもとにしている。(雑誌論文・英文)さらに、日本の大学で外国語教育に携わるオーストリアの研究協力者とともに作成した雑誌論文(カナダとドイツの大学の共同オンライン出版)においても、多言語性という観点から日本の外国語教育政策の歴史を批判的に振り返るとともに、現段階における欧州評議会の言語政策の日本における認知度についても言及した。(雑誌論文・独文)欧州評議会の言語教育政策への対応がどの程度進捗しているかについて、チェコ共和国において聞き取り調査を実施して現状を把握し、また現地の研究者と意見交換を行った。その成果は次年度に公刊する予定である。慶応大学で実施された欧州評議会の言語政策にかかわるシンポジウムに一般の参加者として出席して知見を深めた。複言語主義的な言語政策の日本での可能性に関する討議に加わり、発言を行った。その内容は、同大学の報告書にも掲載される見込みである。さらに、日本独文学会主催の欧州評議会の言語政策に関するワークショップに参加して知見を深めた。国内外の研究者と今後の共同研究の可能性について検討した結果、平成19年度秋ないし平成20年度の春の日本独文学会において欧州評議会の言語政策に関するシンポジウムの開催を目指すこととなった。欧州評議会の言語政策を手がかりとして、次年度に実施される一般市民対象の公開講座を企画立案した。その成果は次年度中に公刊する予定である。「欧州言語ポートフォリオ」を用いた実験授業を実施した。以上に対し、国外の研究者の短期招聘計画は、日程の調整が不調に終わり、次年度以降に延期することとした。学内の他部局の支援を受け、国際シンポジウムを開催できないか、打診をしている段階である。本研究は、ヨーロッパの先端の言語政策に注目し、それが日本のモデルとなりうるかを検討することにある。ヨーロッパでは近年、言語政策の4分野(公用語、地域少数派語、移民言語、外国語教育)においてヨーロッパ共通の政策が展開され、どの分野においても目覚ましい成果が上がっている。中心的役割を果たしているのはEUと欧州評議会である。そこで19年度の研究では、EUとともに欧州評議会の言語政策に注目して以下の課題と取り組んだ。1.欧州評議会の言語政策の全貌と成果を、その時代的背景を含め、分野別および時系列に整理して提示する、2.欧州評議会の提唱する言語政策について、とくに中欧地域での取り組みと成果を調査して報告する、3.その際とくにマイノリティ政策、言語教育の分野での成果に注目する、4.欧州評議会の提唱する指針に基づき、日本の言語政策の現状を記述する。(1.に関する成果)ヨーロッパ共通の言語政策の最新動向について、5月に開催された社会人対象の講演で紹介し、さらにその内容を出発点とする論文を公表した(橋本聡2008)。2007年末にリスボン条約調印等があったためEUに焦点を当てたが、欧州評議会の政策についても多くの箇所で論じた。また日本独文学会の国際誌においてKlema & Hashimoto 2007を発表し、一部の節で1.について論じた。(2.と3.に関する成果)成果公表の準備を行った。とくにチェコ共和国のナショナル・マイノリティ言語の問題と、言語教育分野でのRLDの成果に注目した。(4.に関する成果)Klema & Hashimoto 2007において、欧州評議会の言語政策全般への日本人研究者の関心、受容について論じた。CEFR等の受容に際しては、日欧のコンテクストの違いに注意が必要である旨を述べた。また欧州評議会の外国語教育政策の柱であるCEFRとELPについて、平成20年4月に韓国ドイツ語教育学会において講演を行うための準備を行った。日本におけるCEFR研究を紹介するとともに、日欧の言語政策をモデル化して比較し、ヨーロッパではトップダウン的な施策が可能であるのに対し、日本ではボトムアップ的なアプローチとならざるを得ないことを論じる予定である。またオーストリアのELPを例に取り、ELPが異文化理解教材として適していることも指摘する。現在ヨーロッパでは、欧州評議会のイニシアチヴに見られるように、言語政策におけるヨーロッパ共通の枠組みづくり=標準化が意欲的に進められ、大きな成果を挙げている。 | KAKENHI-PROJECT-18520419 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18520419 |
欧州評議会の言語政策は日本のモデルとなりうるか | しかしそのプロセスは、言語教育政策はもちろん、EU内の合意形成プロセスや歴史的マイノリティに対する政策、移民統合政策等とも密接にかかわり、多分野で多くのアクターによって同時並行的に進行しているため、個別的観点(例えば言語教育)からでは全体像が掴みにくい。そこで本研究では、現在輪郭を整えつつあるそうしたヨーロッパ共通の言語政策の全体像とその本質を把握することを試みた。その際、言語政策の主要分野を「超国家的公用語政策」、「歴史的マイノリティ言語政策」、「移民言語政策」、「異言語教育政策」の4つと措定し、それぞれについて最新の一次資料を網羅的に調査した。その結果明らかとなったのは、ヨーロッパ共通の言語政策が「合理主義」対「民主主義」、「国民国家」対「超国家的次元」、「マクロ」対「ミクロ」という3つの関係によって強く規定され、またそれらによって新たな変化が促されている点である。ヨーロッパの提示する新たな言語政策モデルは、その点を踏まえて日本でも移植を検討すべきである。以上については2つの学会発表等を通じて報告を行い、また現在鋭意、論文化する作業を進めている。 | KAKENHI-PROJECT-18520419 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18520419 |
磁場応答性を目指したヘテロスピンゲル磁石の構築 | 有機スピン源と金属のスピンを用いて得られるヘテロスピン系は、分子磁性体構築に有効な手段である。今回、外部刺激の一種である外部磁場を用いて、得られた磁性体の磁気的性質のオンオフのスイッチングを目指した。スイッチングを達成するために、固体と溶液状態の中間に位置する超分子化合物の一種であるゲルに着目し、ヘテロスピンゲル磁性体による磁気的性質を検討した。その結果、我々が分子設計した有機スピン源とニッケルイオンからなるヘテロスピン一次元鎖錯体から、小さいながらも外部磁場オンオフ間で磁化率の差が見出された。有機スピン源と金属のスピンを用いて得られるヘテロスピン系は、分子磁性体構築に有効な手段である。今回、外部刺激の一種である外部磁場を用いて、得られた磁性体の磁気的性質のオンオフのスイッチングを目指した。スイッチングを達成するために、固体と溶液状態の中間に位置する超分子化合物の一種であるゲルに着目し、ヘテロスピンゲル磁性体による磁気的性質を検討した。その結果、我々が分子設計した有機スピン源とニッケルイオンからなるヘテロスピン一次元鎖錯体から、小さいながらも外部磁場オンオフ間で磁化率の差が見出された。本研究は、固体・結晶状態での物性を中心に発展してきた分子磁性体の分野にソフトマテリアルとしての機能を付与することを目的とした研究である。その手法として、溶液状態と固体・結晶状態の中間に位置するゲルに着目し、ゲル磁性体の構築とこのゲル磁性体が磁場に対して応答することを目指している。分子磁性体の分子設計として、有機のスピンと遷移金属のスピンを用いたヘテロスピン系でのアプローチで行った。本手法は、我々のグループにより数多くの知見を見出しており、特に有機スピンとして三重項カルベンを、遷移金属として高スピンコバルトを用いた系において、一分子で磁石となる単核単分子磁石、複核単分子磁石を構築し発表している。今回ゲル磁性体構築を目的とした場合、ゲル構造特有の一次元ネットワーク構造が必要であるため、ヘテロスピン系を用いた一次元磁性体構築を行った。上述の三重項カルベン、高スピンコバルトを用いた一次元構造を持つ磁性体については、結晶状態で極低温下、遅い磁気緩和が観測され磁石の生成を確認した。この研究成果については、Inorganic Chemistryにおいて報告を行った。また、三重項カルベンの代わりに安定有機ラジカルを用いた系において、コバルト配位子を変えることによって、10種類のヘテロスピン磁性体の構築に成功している。これらの磁気的性質は、極低温下遅い磁気緩和現象がみられており、今後詳細に構造と磁性の相関性について検討を行う。また、コバルト配位子に長鎖アルキル基を導入しゲル化対応可能な配位子を合成した。今後この配位子を用いて安定有機ラジカルとのコバルト錯体を構築し、ゲル化を試みる予定である。また、得られたゲル磁性体について外部磁場のオンオフと磁気的性質の検討を行う。外部刺激に応答して物質の状態変化が誘導され、異なる物性を発現しその現象を解明することは、新しい物質科学を展開していくうえで非常に重要なテーマである。今回の申請課題では、外部刺激である磁場をもちいて分子磁性体の磁気的性質を制御することを目的とした。前年度までの成果として、有機無機のスピンをもつヘテロスピン磁性体について以下の知見を明らかとした。一分子で磁石となる単分子磁石構築をヘテロスピン系で達成している。この際の有機スピンおよび有機スピンをもつπ電子系の役割も明らかとし、それぞれ、量子磁石である単分子磁石の量子トンネル速度を制御すること、π電子系をもちいて無機金属の電子スピンと有機スピンを磁気的相互作用させることであった。これらの知見をもとに、今年度外部磁場に応答する磁性体の構築に着手した。その結果、有機ラジカル前駆体有機物とニッケルを持つ配位子を混合することで、ゲル構造を有する一次元錯体を構築した。光照射を行い有機ラジカル前駆体から有機ラジカルを発生させた後、詳細に磁気的性質を検討した結果、外部磁場に応答した磁性の変化が観測された。しかしながら二つの問題点が新たに発生した。一つは有機ラジカルの不安定性に基づく再現性に関する問題であり、もう一つは外部磁場前後の磁化率の差が小さい、即ち感度に関する問題であった。前者の問題点に関しては、同様な機能を有する安定有機ラジカルを合成し結晶状態ではあるが構造と磁気的性質を明らかとし、論文による報告を行った(Inorganic Chemistry in press)。また、後者の問題点に関しては、磁気異方性の大きな金属を用いることで達成し、未報告結果ではあるが、外部磁場に応答するヘテロスピン系分子磁性体の構築を達成した。これらの研究成果の一部は、招待講演としてMDF International Workshopで発表した。 | KAKENHI-PROJECT-22750131 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22750131 |
バイオリアクタ-の学習制御 | パン酵母培養およびエタノ-ル発酵についてシミュレ-ションおよび実験を行い、繰り返し学習制御の有効性について検討した。まず様々な学習制御アルゴリズムについて理論的検討を行い、外乱除去機能を備えた適応タイプの学習制御が有効であることをシミュレ-ションによって確かめた(論文投稿準備中)、次に小型発酵槽(東京理科器械)を用いた体積1l規模の実験を行い、パン酵母培養の学習制御について検討した。pHおよびDOはセンサ-からの信号を増幅し、ADコンバ-タを介してコンピュ-タ(PC9801)に取り込んだ。エタノ-ル濃度は半導体ガスセンサ-の抵抗値変化からオンライン推定した。エタノ-ル濃度の測定値から、制御アルゴリズムに従って基質流加速度を決定し、DAコンバ-タを介して供給基質の流量調節を行った。実験の結果、1回目の培養に比べて2回目は制御性能に大幅な改善がみられたが、3回目以降は余り改善されなかった。これは培養条件が毎回異なるためと思われ、モデル誤差に対するロバスト性を検討する必要がある。次にエタノ-ル発酵について検討した。まず20°C、30°C、40°Cの各温度について等温回分発酵実験を行った。実験結果をもとにしてモデル化を行い最大原理を適用して最適温度パタ-ンを求めた。これを参考に初期発酵温度を40°Cに保って菌体を増殖させ、その後温度を徐々に20°Cまで下げてエタノ-ルの生成を促す実験を数回行った。その結果、等温発酵に比べて、発酵温度を時間的に変化させると生産性を向上できることが示された。(一部1989年度化学工学秋季大会にて発表)。今後の課題としては(1)培養経験を制御アルゴリズムに反映させるファジ-エキスパ-トシステムの開発。(2)ガスクロ等を利用した高濃度測定可能なオンラインエタノ-ルセンサ-の開発。(3)最適操作パタ-ンを自動的に探索する最適化制御アルゴリズムの開発等が考えられる。パン酵母培養およびエタノ-ル発酵についてシミュレ-ションおよび実験を行い、繰り返し学習制御の有効性について検討した。まず様々な学習制御アルゴリズムについて理論的検討を行い、外乱除去機能を備えた適応タイプの学習制御が有効であることをシミュレ-ションによって確かめた(論文投稿準備中)、次に小型発酵槽(東京理科器械)を用いた体積1l規模の実験を行い、パン酵母培養の学習制御について検討した。pHおよびDOはセンサ-からの信号を増幅し、ADコンバ-タを介してコンピュ-タ(PC9801)に取り込んだ。エタノ-ル濃度は半導体ガスセンサ-の抵抗値変化からオンライン推定した。エタノ-ル濃度の測定値から、制御アルゴリズムに従って基質流加速度を決定し、DAコンバ-タを介して供給基質の流量調節を行った。実験の結果、1回目の培養に比べて2回目は制御性能に大幅な改善がみられたが、3回目以降は余り改善されなかった。これは培養条件が毎回異なるためと思われ、モデル誤差に対するロバスト性を検討する必要がある。次にエタノ-ル発酵について検討した。まず20°C、30°C、40°Cの各温度について等温回分発酵実験を行った。実験結果をもとにしてモデル化を行い最大原理を適用して最適温度パタ-ンを求めた。これを参考に初期発酵温度を40°Cに保って菌体を増殖させ、その後温度を徐々に20°Cまで下げてエタノ-ルの生成を促す実験を数回行った。その結果、等温発酵に比べて、発酵温度を時間的に変化させると生産性を向上できることが示された。(一部1989年度化学工学秋季大会にて発表)。今後の課題としては(1)培養経験を制御アルゴリズムに反映させるファジ-エキスパ-トシステムの開発。(2)ガスクロ等を利用した高濃度測定可能なオンラインエタノ-ルセンサ-の開発。(3)最適操作パタ-ンを自動的に探索する最適化制御アルゴリズムの開発等が考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-01550731 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01550731 |
難治性排尿障害に対する骨髄由来細胞積層型スフェロイドシートによる機能的膀胱の再生 | われわれは、おもに膀胱と尿道からなる下部尿路の再生医療研究を精力的に進めている。膀胱は、尿をためる(蓄尿)機能と尿を排出する(排尿)機能を有しており、その機能が低下、消失すると患者の生活の質が著しく低下する。また、膀胱機能の低下による難治性の蓄尿、排尿障害に対しては、有効な治療がほとんどない。したがって、機能的な膀胱の再生を可能にするTissue Engineeringを基礎とした再生医療は、有望な新規治療となり得る。本研究は、バイオ3Dプリンターを利用した細胞構造体の作製を試みた。さらに、放射線照射によって傷害を与えた膀胱に骨髄由来細胞構造体を移植すると機能的な膀胱が再生することを示した。われわれは、放射線照射によって傷害を与えた膀胱に骨髄由来細胞を移植することによって機能的な膀胱が再生することを報告してきた。骨髄由来細胞の移植方法としては、膀胱組織への直接注入移植や温度応答性培養皿で作製した細胞シートのパッチ移植を行ってきた。しかし、直接注入移植法で用いる骨髄由来細胞は、酵素処理や遠心などの操作によって回収することから、本来の活性が低下している懸念があった。さらに、直接注入移植法の場合、既に傷害を受けた膀胱組織に針を刺し注入することから、傷害を拡大してしまう恐れがあった。一方、温度応答性培養皿を用いて作製した細胞シートのパッチ移植では、シートを構成している細胞の膀胱構成細胞(平滑筋や神経細胞)への分化が認められなかった。われわれは、細胞シートから産出された細胞増殖因子やサイトカインによるパラクリン効果によって膀胱が再生したものと考察した。しかし、単層(一枚の)細胞シート移植では、実臨床での重篤な難治性の排尿障害、例えば、高度な膀胱萎縮をともなうような膀胱では、十分な治療効果が望めないと考えた。そこで、本研究は、実臨床を視野に入れ、より効率的かつ効果的な高機能細胞シート作製を試みた。培養した骨髄由来細胞から細胞凝集体(スフェロイド)を形成し、温度応答性培養皿に播種しスフェロイドシートを作製し、4ー5枚重ね合わせた積層型スフェロイドシートの作製を計画していた。この研究を開始直前に、新規技術であるバイオ3Dプリンターの利用が可能になった。このバイオ3Dプリンターにより、骨髄由来細胞スフェロイドを温度応答性培養皿に播種することなく、直接、積層型スフェロイドシート(構造体)を作製できるようになった。したがって、本研究は、当初の計画を若干変更し、骨髄由来細胞スフェロイド積層型構造体による膀胱再生が可能かどうか検討することとした。当初計画していた骨髄由来細胞からスフェロイドを形成させ、温度応答性培養皿を用いて積層型スフェロイドシートを作製する方法から、バイオ3Dプリンター(レジェノバ、株式会社サイフューズ、委託作製)を利用してスフェロイド積層型構造体の作製へと若干の変更を行った。本年度、われわれは、骨髄由来細胞スフェロイド積層型構造体を作製した。さらに、パイロット試験的な要素があるが、実際に放射線照射傷害膀胱モデルに骨髄由来細胞スフェロイド積層型構造体を移植した。移植2週間目において、移植した構造体は、レシピエント膀胱組織に生着し、構造体を構成している一部の細胞が膀胱平滑筋に分化していることを確認した。さらに、構造体移植により、膀胱機能の一部が改善することを確認した。以上から、当初の計画の変更による研究遂行の遅れや支障もなく、円滑に進めることができた。当初計画していた積層型スフェロイドシートよりもより優れた構造体を作製することに成功し、実臨床をめざした上で、大きな成果を得られたと考える。また、構造体移植による膀胱再生の可能性が示唆されたため、今後の研究が円滑に進む手応えを得た。われわれは、放射線照射によって傷害を与えた膀胱に骨髄由来細胞を移植することによって機能的な膀胱が再生することを報告してきた。骨髄由来細胞の移植方法としては、膀胱組織への直接注入移植や温度応答性培養皿で作製した細胞シートのパッチ移植を行ってきた。しかし、これらの移植法には、克服しなければならないいくつかの課題があった。直接注入移植法では、移植細胞の活性化の低下、既に傷害を受けた膀胱組織に針を刺し注入することによる傷害部位の悪化と拡大の懸念などが挙げられる。一方、細胞シートのパッチ移植では、シートを構成している細胞の膀胱構成細胞(平滑筋や神経細胞)への分化が認められず、また、非常に薄く、脆弱であることが挙げられた。そこで、本研究は、これらの課題を克服するとともに、実臨床への応用を視野に入れ細胞凝集体(スフェロイド)を用いた、より効率的かつ効果的な高機能細胞シート作製を試みた。当初は、温度応答性培養皿の使用を計画していたが、バイオ3Dプリンターの利用が可能になったことから、骨髄由来細胞スフェロイドシートから骨髄由来細胞(積層型)構造体を作製できるようなった。昨年度は、移植2週間後での移植効果の評価を行ったが、本年度は、移植4週間後における評価を行った。放射線照射した膀胱に構造体を移植すると、移植2週間後と同様に、移植した構造体の正着が認められた。構造体を構成している骨髄由来幹細胞から分化した平滑筋細胞は、移植2週間後では認められなかった一部の平滑筋層を再構築していた。さらに、膀胱内圧測定では、構造体を移植しなかった対照群では、著しい頻尿を示していたが、構造体を移植したラットでは、頻尿が認められなかった。残尿量に関しても対照群と比べ有意に低下していた。したがって、構造体移植によって、機能的な膀胱の再生が可能であることが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-15K10622 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K10622 |
難治性排尿障害に対する骨髄由来細胞積層型スフェロイドシートによる機能的膀胱の再生 | バイオ3Dプリンター(レジェノバ、株式会社サイフューズ、委託作製)の利用によって、骨髄由来細胞からスフェロイド形成を経てからの骨髄由来細胞(積層型)構造体の作製を効率よく行えるようになった。作製した構造体を放射線照射して傷害を与えた膀胱に移植すると平滑筋層が再構築され、膀胱機能が正常に近づくことを示した。昨年度の結果(移植2週間後での評価)と比較すると、明らかに膀胱再生が進展していた。以上から、当初の計画の変更による研究遂行の遅れや支障もなく、円滑に進めることができた。われわれは、放射線照射によって傷害を与えた膀胱に骨髄由来細胞を移植することによって機能的な膀胱が再生することを報告してきた(Imamura, etal. Cell Transplantation 2008, Tissue Engineering 2009, 2012, 2015)。骨髄由来細胞の移植方法としては、膀胱組織への直接注入移植や温度応答性培養皿で作製した細胞シートのパッチ移植を行ってきた。しかし、これらの移植法には、克服しなければならないいくつかの課題があった。直接注入移植法では、移植細胞の活性化の低下、既に傷害を受けた膀胱組織に針を刺し注入することによる傷害部位の悪化と拡大の懸念がある。一方、細胞シートのパッチ移植では、シートを構成している細胞の膀胱構成細胞(平滑筋や神経細胞)への分化が認められず、また、薄いことから非常に脆弱であることが挙げられた。そこで、本研究は、これらの課題を克服するとともに、実臨床への応用を視野に入れ細胞凝集体(スフェロイド)を用いた、より効率的かつ効果的な高機能細胞シート作製を試みた。当初は、温度応答性培養皿を利用したスフェロイドシート作製を計画していた。しかし、近年、スフェロイドを積層して立体構造体を作製するバイオ3Dプリンターが開発された。われわれは、そのバイオ3Dプリンターを利用して、骨髄由来細胞スフェロイドから積層型構造体の作製に成功した。本年度までに、放射線照射によって障害を与えた膀胱に骨髄由来細胞積層型構造体を移植することによって、機能的な膀胱が再生することを示してきた。本年度は、これまでの追加実験として、積層型構造体移植によって放射線照射によって生じる膀胱線維化が抑制することを示した。そして、一連の研究成果を論文にまとめ、学術誌、Tissue Engineeringに投稿して、採択された。われわれは、おもに膀胱と尿道からなる下部尿路の再生医療研究を精力的に進めている。膀胱は、尿をためる(蓄尿)機能と尿を排出する(排尿)機能を有しており、その機能が低下、消失すると患者の生活の質が著しく低下する。また、膀胱機能の低下による難治性の蓄尿、排尿障害に対しては、有効な治療がほとんどない。したがって、機能的な膀胱の再生を可能にするTissue Engineeringを基礎とした再生医療は、有望な新規治療となり得る。本研究は、バイオ3Dプリンターを利用した細胞構造体の作製を試みた。さらに、放射線照射によって傷害を与えた膀胱に骨髄由来細胞構造体を移植すると機能的な膀胱が再生することを示した。 | KAKENHI-PROJECT-15K10622 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K10622 |
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