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第三の覚醒系としての室傍核 | 我々はラットの室傍核をさまざまな薬物で刺激することによって、覚醒/あくび反応を誘発した。1覚醒との関連で最近注目されるオレキシンを室傍核に局所投与すると、覚醒/あくび反応が誘発された。2室傍核を局所的に虚血状態にするために、シアンを注入すると、覚醒/あくび反応が誘発された。3動揺病ではあくびが頻発し、酔い止めである抗ヒスタミン薬は副作用として眠気が知られている。ヒスタミンを室傍核に投与するとやはり覚醒/はくび反応が誘発された。4あくびは朝の起床時によくおこる。その誘因は太陽光にあると考えられるので、高照度光を麻酔ラットの目に当てると、覚醒/あくび反応が誘発された。5光によって誘発される覚醒/あくび反応はH1アンタゴニストを脳室内に投与すると、抑制された。組織学的研究では、あくびを頻回に誘発させると、室傍核の小細胞領域にc-fosの発現が増え、二重染色でそれらはCRH陽性細胞であることが示された。以上の結果より、室傍核のCRH細胞がさまざまなストレス刺激で活性化され、それが皮質の賦活を誘発する中継核として機能していることが示された。我々はラットの室傍核をさまざまな薬物で刺激することによって、覚醒/あくび反応を誘発した。1覚醒との関連で最近注目されるオレキシンを室傍核に局所投与すると、覚醒/あくび反応が誘発された。2室傍核を局所的に虚血状態にするために、シアンを注入すると、覚醒/あくび反応が誘発された。3動揺病ではあくびが頻発し、酔い止めである抗ヒスタミン薬は副作用として眠気が知られている。ヒスタミンを室傍核に投与するとやはり覚醒/はくび反応が誘発された。4あくびは朝の起床時によくおこる。その誘因は太陽光にあると考えられるので、高照度光を麻酔ラットの目に当てると、覚醒/あくび反応が誘発された。5光によって誘発される覚醒/あくび反応はH1アンタゴニストを脳室内に投与すると、抑制された。組織学的研究では、あくびを頻回に誘発させると、室傍核の小細胞領域にc-fosの発現が増え、二重染色でそれらはCRH陽性細胞であることが示された。以上の結果より、室傍核のCRH細胞がさまざまなストレス刺激で活性化され、それが皮質の賦活を誘発する中継核として機能していることが示された。1.麻酔・自発呼吸のラット室傍核にオレキシンAを微量局所注入すると、直ちに脳波上で低振幅・速波側へのシフトが出現し、約30秒後に回復した。この覚醒反応は、あくび行動と循環反応(血圧低下)、咀嚼運動を随伴していた。一方、オレキシンBを室傍核に局所投与すると、脳波の覚醒側へのシフトだけが現れ、随伴する反応は認められなかった。以上の結果より、覚醒反応を中継する受容体はOX2である可能性が示唆された。オレキシン細胞は視床下部外側野にあり、脳内のさまざまな領域に軸索を投射し、摂食行動や睡眠・覚醒系に関与している。特に、ナルコレプシーの病態と密接に関与しているとされる。我々のデータは、オレキシン神経の覚醒系への関与が室傍核のOX2受容体を経由して発現していることを示している。この結果は、Behavioral Brain Research 128(2002)に発表された。2.麻酔・自発呼吸のラット室傍核にヒスタミンを微量局所投与すると、上述のオレキシンAの場合と同様に、脳波上で覚醒側へのシフト(低振幅・速波)が直ちに出現し、あくび行動が随伴した。この反応は、H1アンタゴニストを側脳室投与で消失した。視床下部後部(結節乳頭核)にあるヒスタミン神経は覚醒系としての役割が多方面から確立されてきている。今回の我々の実験結果は、ヒスタミン神経が皮質を賦活する経路に、室傍核が含まれることを明らかにしている。本研究はBehavioral Brain Research 134(2002)に発表された。大脳皮質を賦活する脳内システムとして、視床非特殊核を介した背側経路(古典的な脳幹網様体賦活系)と前脳基底部コリン作動性神経を介した腹側経路が明らかにされ、種々の検討がされてきている。後者に対する入力システムとして、青斑核ノルアドレナリン神経、背側縫線核セロトニン神経、後部視床下部のヒスタミン神経、視床下部外側野のオレキシン神経などが知られている。この研究でとりあげた室傍核は、これらの覚醒関連の神経システムには含まれない。しかし、室傍核を刺激するとあくび行動を伴う皮質の賦活が脳波上で観察される。本研究では、ストレス中枢である室傍核が一過性の覚醒反応を仲介する因子(入力系)と、皮質賦活の経路(出力系)について検討を行った。覚醒を誘発する因子としては、ナルコレプシーとの関連で注目されるオレキシン神経からの入力があること(受容体はオレキシン受容体2)、室傍核の虚血刺激(シアン注入)が有効であることから脳循環不全のチェック機構であること、網膜からの光刺激で覚醒が誘発される中継を担っていること、後部視床下部のヒスタミン神経からの入力をH1受容体を介して受けること、などが明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-14570070 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14570070 |
第三の覚醒系としての室傍核 | 室傍核からの出力系としては、CRHニューロンが関与している可能性が強く示唆される結果が得られた(ただし、同時に起こるあくび行動はオキシトシン神経によるものと結論されている)。ただし、CRHニューロンが前脳基底部アセチルコリンに投射して皮質を賦活する可能性は、機能実験でも、組織学的検索でも否定された。おそらくは、脳幹のノルアドレナリン神経を経由した迂回路が関与しているものと推察された。室傍核はストレス中枢として、自律神経、内分泌、情動反応などを発現させるが、皮質に対して一過性の賦活を与え、それは一種の警告反応とみなすことができるかもしれない。 | KAKENHI-PROJECT-14570070 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14570070 |
蛍光イメージングによる血管新生での先導端内皮細胞の一方向性移動の制御機構の解析 | 血管新生は、既存の血管から血管枝が出芽し、新たな血管を構築するプロセスである。本研究課題では、血管新生過程の内皮細胞の移動がどのようにして制御されているのか検討するために、培養細胞およびゼブラフィッシュを用いて蛍光生体イメージング技術により解析を行なった。その結果、先導端に位置する内皮細胞においてVascular endothelial growth factor receptor2 (VEGFR2)がゴルジ装置からモータータンパク質KIF13Bを介して前方に輸送されていることが示唆された。また、内皮細胞の移動には隣り合う細胞同士の接着が重要であることが示唆された。本研究では、血管新生過程において先導端内皮細胞の一方向性移動がどのようにして制御されているのかを明らかにするために、ゼブラフィッシュを用いた蛍光生体イメージング解析を行っている。研究代表者は血管新生因子Vascular endothelial growthfactor (VEGF) / VEGF受容体(VEGFR2)シグナルに注目し、「血管新生過程の先導端内皮細胞ではゴルジに局在するVEGFR2が先導端に選択的に輸送される仕組みがあり、それによりVEGF/VEGFR2シグナルが先導端で強く活性化し、先導端内皮細胞の一方向性移動を促進している」と仮説を立て検証を起こった。移動する内皮細胞のゴルジに局在するVEGFR2が先導端に輸送される機構の存在を同定するために、VEGFR2に蛍光タンパク質を融合したVEGFR2-FPを用いて、VEGFR2の輸送の可視化を試みた。しかし、VEGFR2-FPは内在性のVEGFR2と異なる局在を示したため、VEGFR2の輸送を可視化することができていない。VEGFR2の免疫染色を行うことでゴルジに局在するVEGFR2が先導端へ輸送される機構の同定を試みた。VEGFR2がどのようにして前方に局在しているか検討するため、創傷治癒アッセイにおいて微小管重合阻害剤で処理するとVEGFR2の前方への局在が阻害されたことから、VEGFR2は微小管に沿って前方に輸送されていることが示唆された。生体内において、Vegfr2がどのようにして輸送されているか検討するために、キネシンファミリーKif13baに注目した。kif13baノックアウトフィッシュを樹立し、解析した結果、kif13baノックアウトフィッシュでは中脳静脈の形成が遅延した。今後、kif13baノックアウトフィッシュでは、中脳静脈でVegfシグナルが抑制されているのか検討を行う。先導端内皮細胞では、VEGFR2がどこに局在するのか検討するために、VEGFR2に蛍光タンパク質を融合したVEGFR2-FPの作成を試みた。VEGFR2のC末端やN末端のシグナル配列の下流等蛍光タンパク質を挿入する場所や蛍光タンパク質の種類を検討したが、内在性のVEGFR2とは異なる局在を示した。先導端内皮細胞で細胞表面に局在するVegfr2がVegfAaと結合し、エンドサイトーシスされる様子を可視化することで、細胞膜に局在するVegfr2がどこに多く局在するのか検討するために、VegfAaにmCherryを融合させたVegfAa-mCherryをヒートショックプロモータ下でゼブラフィッシュの全身に発現させた。内皮細胞にVegfAa-mCherryがVegfr2依存的に取り込まれているのを確認した。しかし、VegfAa-mCherryのシグナルが先導端内皮細胞の先端で形成されはじめるか、光シート顕微鏡を用いて観察したが、予想とは異なり、先導端内皮細胞の先導端でVegfAa-mCherryのシグナルが形成され始める様子を観察できなかった。おそらく、VegfAa-mCherryがエンドサイトーシスにより先導端内皮細胞に取り込まれ、エンドソームに蓄積されたVegfAa-mCherryを観察しているためであると考えている。また、VegfAa-mCherryの小胞は先導端内皮細胞内で素早く動いており、また、長時間存在しているため、VegfAa-mCherryのシグナルを観察することで、Vegfr2の局在を間接的に可視化することができなかった。Vegfr2の免疫染色を行うことで、in vivoでのVegfr2の局在の可視化を試みる。血管は、全身に張り巡らされており組織に酸素や栄養を供給することで生体恒常性を維持している。本研究では、血管新生過程において先導端内皮細胞の一方向性移動がどのようにして制御されているのか明らかにするために、血管新生に重要な血管新生因子Vascular endothelial growthfactor (VEGF)/VEGF受容体(VEGFR2)シグナルに注目し、ゼブラフィッシュを用いた蛍光生体イメージング解析を行った。VEGFR2の局在を可視化するために、VEGFR2に蛍光タンパク質を融合したVEGFR2-FPを作成してした。しかし、蛍光タンパク質の種類、融合する場所を変えて検討したが、内在性のVEGFR2と同じ局在を示すものは作成できなかった。VEGFR2の輸送が血管新生に重要か検討するために、VEGFR2を輸送するKif13baノックアウトフィッシュを解析すると、創傷治癒での血管再生が遅延した。in vitroおよびin vivoの結果から、Kif13baによるVEGFR2の輸送が生体内の血管新生に重要であることが示唆された。次に、先導端内皮細胞とそれに続く内皮細胞の挙動を解析することで先導端内皮細胞の一方向性移動がどのように制御されているのか検討した。 | KAKENHI-PROJECT-16H07499 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H07499 |
蛍光イメージングによる血管新生での先導端内皮細胞の一方向性移動の制御機構の解析 | その結果、先導端内皮細胞およびそれに続く内皮細胞は前後極性を形成しながら移動していた。先導端内皮細胞とそれに続く細胞の距離が近いと先導端内皮細胞が移動しやすく、距離が離れていると続く細胞が移動しやすい傾向にあった。細胞間接着が方向性を持った移動に重要か検討するために、細胞間接着分子VE-cadherinをノックダウンすると、先導端内皮細胞の前後極性の形成が阻害され、移動が遅延した。本研究結果により、先導端内皮細胞とそれに続く細胞との細胞間接着が、先導端内皮細胞の前後極性の形成と一方向性移動に重要であることが示唆された。血管新生は、既存の血管から血管枝が出芽し、新たな血管を構築するプロセスである。本研究課題では、血管新生過程の内皮細胞の移動がどのようにして制御されているのか検討するために、培養細胞およびゼブラフィッシュを用いて蛍光生体イメージング技術により解析を行なった。その結果、先導端に位置する内皮細胞においてVascular endothelial growth factor receptor2 (VEGFR2)がゴルジ装置からモータータンパク質KIF13Bを介して前方に輸送されていることが示唆された。また、内皮細胞の移動には隣り合う細胞同士の接着が重要であることが示唆された。これまでに、in vivoにおいてVegfr2がどこに局在するのか検討するために、抗Vegfr2抗体の作成を試みたが、ゼブラフィッシュでVegfr2の免疫染色を行える抗体は作成できていない。先導端内皮細胞のどこにVegfr2が多く局在するのか検討するために、低分子量のタグをC末端に融合させたVegfr2を血管内皮特異的に発現させ、タグの免疫染色を行うことで、Vegfr2の局在を検討する。Vegfr2が特異的な局在を示すのか検討するために、他の受容体型チロシンキナーゼについても同じ方法を用いて可視化を試みる。また、Vegfr2が先導端内皮細胞の先端で活性化しているか検討するために、カルシウムシグナルを指標として、観察を行う。kif13baノックアウトフィッシュでは中脳静脈での血管新生の遅延が見られたが他の組織では血管新生に顕著な影響は見られなかった。kif13baをノックアウトすることにより、genetic compensationが起こり、他のキネシンファミリーの発現が上昇することで血管新生が誘導されている可能性がある。現在、キネシンファミリーに属するkif13a、kif13bbのノックアウトフィッシュを樹立中である。kif13a、kif13ba、kif13bbを同時にノックアウトすることで血管新生が顕著に阻害されるか検討を行う。上記の研究を遂行することで、血管新生過程の先導端内皮細胞で、ゴルジに局在するVegfr2が前方に向かって輸送されているのか、先導端内皮細胞の移動に重要なのか明らかにすることで、血管新生促進因子だけでなく、受容体の輸送制御が血管内皮細胞の移動に重要であるという新規の血管新生制御機能の可能性を提示する。29年度が最終年度であるため、記入しない。細胞生物学29年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-16H07499 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H07499 |
プラズマプロセシング用SiH⊂のラジカル非発光種に関する研究 | Si【H_4】はアモルファスシリコン膜作製に用いられる重要な分子であるが、その電子衝突過程の研究は十分行われていない。本研究の目的は、各種の分光計測法を用いて、Si【H_4】への電子衝突によって生じるラジカル発光種の発光断面積、カスケードを除去した生成断面積、寿命を測定し、更にその結果を利用して、SiHラジカル非発光種の生成断面積を決定することである。本研究は60年度から61年度にかけて行われ、次の成果を得た。1.ビーム法と光子計数法を用いて、Si【H_4】への電子衝突によって生じるラジカル発光種(Si【H^*】,【Si^*】,【H^*】)の発光断面積を0-100evの電子エネルギー領域で決定した。この研究によって、He線を基準として用い、絶対量の測定をせずに、ラジカル種の発光断面積を決定する方法を確立した。2.遅延一致法を用いて、【Si^*】及びSi【H^*】ラジカル発光種からの遷移の発光減衰測定を行い、発光種の寿命、カスケードの寄与の割合を求めた。またこの結果と1の結果を組合せて、【Si^*】(4S,4P,3d,【3P^3】)準位,Si【H^*】(【A^2】△)準位の生成断面積(10ueV)を決定した。この生成断面積は本研究で初めて測定されたものであり、発光断面積と共にプラズマの物性解明を行う際の有用なデータである。3.色素レーザを用いたレーザ誘起蛍光法(LIF法)を利用して、SiH(【A^2】△)に属する個々の振動回転準位の寿命を求めた。4.LIF法及び時間分解分光法を用い、更に13の結果を利用して、SiHラジカル非発光種(【X^2】Π)の電子衝突生成断面積を決定する方法を考え、予備測定を行った。この測定は現在も続行中であるが、今後SIN比の改善レーザ出力の増加を計ることによって、最終的な結果を得ることができると思われる。Si【H_4】はアモルファスシリコン膜作製に用いられる重要な分子であるが、その電子衝突過程の研究は十分行われていない。本研究の目的は、各種の分光計測法を用いて、Si【H_4】への電子衝突によって生じるラジカル発光種の発光断面積、カスケードを除去した生成断面積、寿命を測定し、更にその結果を利用して、SiHラジカル非発光種の生成断面積を決定することである。本研究は60年度から61年度にかけて行われ、次の成果を得た。1.ビーム法と光子計数法を用いて、Si【H_4】への電子衝突によって生じるラジカル発光種(Si【H^*】,【Si^*】,【H^*】)の発光断面積を0-100evの電子エネルギー領域で決定した。この研究によって、He線を基準として用い、絶対量の測定をせずに、ラジカル種の発光断面積を決定する方法を確立した。2.遅延一致法を用いて、【Si^*】及びSi【H^*】ラジカル発光種からの遷移の発光減衰測定を行い、発光種の寿命、カスケードの寄与の割合を求めた。またこの結果と1の結果を組合せて、【Si^*】(4S,4P,3d,【3P^3】)準位,Si【H^*】(【A^2】△)準位の生成断面積(10ueV)を決定した。この生成断面積は本研究で初めて測定されたものであり、発光断面積と共にプラズマの物性解明を行う際の有用なデータである。3.色素レーザを用いたレーザ誘起蛍光法(LIF法)を利用して、SiH(【A^2】△)に属する個々の振動回転準位の寿命を求めた。4.LIF法及び時間分解分光法を用い、更に13の結果を利用して、SiHラジカル非発光種(【X^2】Π)の電子衝突生成断面積を決定する方法を考え、予備測定を行った。この測定は現在も続行中であるが、今後SIN比の改善レーザ出力の増加を計ることによって、最終的な結果を得ることができると思われる。 | KAKENHI-PROJECT-60460120 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-60460120 |
鉄マンガンクラスト層序学の確立―環境変動からプレート運動まで― | 本研究は、鉄マンガンクラストの高時間分解能な化学層序から古環境を系統的に復元する手法として“鉄マンガンクラスト層序学"の確立を目指す。高時間分解能の化学層序から得られる大量の化学組成データを統計学的に解析することで、鉄マンガンクラストを用いた古環境復元の課題であった時間分解能の低さと、形成環境を示す地球化学的トレーサーの少なさを克服することができる。平成30年度においては、鉄マンガンクラストの詳細な化学層序を得るための準備として、鉄マンガンクラストの研磨片作成のための乾式研磨ができる環境の構築と、LA-ICP-MSによる元素マッピングのテストを行った。ストルアス社製の研磨盤及び研磨紙を購入し、所属研究室保有の研磨機と組み合わせることで、乾式研磨が可能となった。また、LA-ICP-MS分析の標準試料として用いるために、JMn-1とNod-P-1の化学組成分析を行った。鉄マンガンノジュールである両標準物質の不均質性と吸水性を考慮して、試料粉末をそれぞれよく混ぜた後、所属研究室のXRFおよびICP-MSで分析を行い、主要元素の合計濃度が酸化物換算で100%になるように化学組成を算出した。化学分析で残ったJMn-1とNod-P-1をハンドプレスで押し固め、LA-ICP-MS用の標準試料とした。これらの準備の後、海洋研究開発機構にてLA-ICP-MSを用いた鉄マンガンクラストの元素マッピングを行った。結果、主要元素からppmオーダーの元素に至るまで、鉄マンガンクラストの成長構造を精度よく示した元素マップの取得に成功した。これによって分析試料の作成から高時間分解能の化学層序の取得までの一連の手順を確立できたため、来年度以降は試料の分析およびデータの解析を進めてゆく。平成30年度は鉄マンガンクラストの詳細な化学層序から古環境を明らかにする事を目的として、以下の調査及び分析を実施した。(1)分析の対象とする試料を様々な地質条件を網羅するように選定した。また、試料が採取された海域の一つである南鳥島沖にて潜航調査を行い、周辺地質や鉄マンガンクラストの産状を確認した。(2)分析試料の加工からLA-ICP-MSによる元素濃度マッピングまでのプロセスを確立した。また、その分析精度も十分であることを確認できたことから、来年度以降は分析に集中して取り組むことができる。(3)自身が筆頭著者の論文が1本国際誌に掲載された。また、新たな論文も投稿間近であることから、研究成果の発表についても好調である。以上より、研究の進捗状況はおおむね順調であると判断する。LA-ICP-MSによる鉄マンガンクラストの元素マッピング分析が可能となったので、今後は試料の分析を進めてゆく。分析予定の試料は、太平洋プレート上の南鳥島沖やシャツキーライズ周辺、フィリピン海プレート上の四国海盆など、海域のバリエーションを確保しており、海域やプレート運動によってたどった軌跡の違いによる化学組成への影響を比較するのに適している。また、南鳥島沖においては、様々な水深(1.05.5 km)から採取された試料を用いることで、水深の違いによる化学組成の変化を捉えることが期待される。それらのLA-ICP-MS分析を進めてゆくと同時に、年代測定のためのOs同位体比測定を行う。Os同位体比は千葉工業大学のMC-ICP-MSを用いて行う予定である。データ解析に用いる統計ソフトのRやMATLABベースのXMapToolsと言ったソフトウェアを習熟し、LA-ICP-MS分析によるデータ習得と並行してそれらの化学組成データの解析を進める。解析には主に独立成分分析を用いる予定である。4月に分析予定の鉄マンガンクラストが採取された南鳥島沖にて調査航海が行われるため、該当海域の地質把握や鉄マンガンクラストの産状観察、追加試料獲得のために参加する。また、8月の国際学会でその時点における研究成果を報告し、研究に対する指摘を得る。本研究は、鉄マンガンクラストの高時間分解能な化学層序から古環境を系統的に復元する手法として“鉄マンガンクラスト層序学"の確立を目指す。高時間分解能の化学層序から得られる大量の化学組成データを統計学的に解析することで、鉄マンガンクラストを用いた古環境復元の課題であった時間分解能の低さと、形成環境を示す地球化学的トレーサーの少なさを克服することができる。平成30年度においては、鉄マンガンクラストの詳細な化学層序を得るための準備として、鉄マンガンクラストの研磨片作成のための乾式研磨ができる環境の構築と、LA-ICP-MSによる元素マッピングのテストを行った。ストルアス社製の研磨盤及び研磨紙を購入し、所属研究室保有の研磨機と組み合わせることで、乾式研磨が可能となった。また、LA-ICP-MS分析の標準試料として用いるために、JMn-1とNod-P-1の化学組成分析を行った。鉄マンガンノジュールである両標準物質の不均質性と吸水性を考慮して、試料粉末をそれぞれよく混ぜた後、所属研究室のXRFおよびICP-MSで分析を行い、主要元素の合計濃度が酸化物換算で100%になるように化学組成を算出した。化学分析で残ったJMn-1とNod-P-1をハンドプレスで押し固め、LA-ICP-MS用の標準試料とした。これらの準備の後、海洋研究開発機構にてLA-ICP-MSを用いた鉄マンガンクラストの元素マッピングを行った。 | KAKENHI-PROJECT-18J21266 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J21266 |
鉄マンガンクラスト層序学の確立―環境変動からプレート運動まで― | 結果、主要元素からppmオーダーの元素に至るまで、鉄マンガンクラストの成長構造を精度よく示した元素マップの取得に成功した。これによって分析試料の作成から高時間分解能の化学層序の取得までの一連の手順を確立できたため、来年度以降は試料の分析およびデータの解析を進めてゆく。平成30年度は鉄マンガンクラストの詳細な化学層序から古環境を明らかにする事を目的として、以下の調査及び分析を実施した。(1)分析の対象とする試料を様々な地質条件を網羅するように選定した。また、試料が採取された海域の一つである南鳥島沖にて潜航調査を行い、周辺地質や鉄マンガンクラストの産状を確認した。(2)分析試料の加工からLA-ICP-MSによる元素濃度マッピングまでのプロセスを確立した。また、その分析精度も十分であることを確認できたことから、来年度以降は分析に集中して取り組むことができる。(3)自身が筆頭著者の論文が1本国際誌に掲載された。また、新たな論文も投稿間近であることから、研究成果の発表についても好調である。以上より、研究の進捗状況はおおむね順調であると判断する。LA-ICP-MSによる鉄マンガンクラストの元素マッピング分析が可能となったので、今後は試料の分析を進めてゆく。分析予定の試料は、太平洋プレート上の南鳥島沖やシャツキーライズ周辺、フィリピン海プレート上の四国海盆など、海域のバリエーションを確保しており、海域やプレート運動によってたどった軌跡の違いによる化学組成への影響を比較するのに適している。また、南鳥島沖においては、様々な水深(1.05.5 km)から採取された試料を用いることで、水深の違いによる化学組成の変化を捉えることが期待される。それらのLA-ICP-MS分析を進めてゆくと同時に、年代測定のためのOs同位体比測定を行う。Os同位体比は千葉工業大学のMC-ICP-MSを用いて行う予定である。データ解析に用いる統計ソフトのRやMATLABベースのXMapToolsと言ったソフトウェアを習熟し、LA-ICP-MS分析によるデータ習得と並行してそれらの化学組成データの解析を進める。解析には主に独立成分分析を用いる予定である。4月に分析予定の鉄マンガンクラストが採取された南鳥島沖にて調査航海が行われるため、該当海域の地質把握や鉄マンガンクラストの産状観察、追加試料獲得のために参加する。また、8月の国際学会でその時点における研究成果を報告し、研究に対する指摘を得る。 | KAKENHI-PROJECT-18J21266 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J21266 |
メディアとしての生活環境色彩の視覚的作用と感覚的作用に関する研究 | 衣・食・住における色彩の意味伝達効果や快適性効果などについて検討した.ファッションカラーにおける誘目性,料理の色彩と嗜好の関係,リビング・カラーと視覚作用などの検討項目について,モニター上に提示した刺激に対する被験者の眼球運動を計測し,視線分析を行った.色彩快適性を考慮した衣食住に関するビジュアルインフォメーションが人間の様々な生活シーンにおけるQOLの向上に寄与することを明らかにした.衣・食・住における色彩の意味伝達効果や快適性効果などについて検討した.ファッションカラーにおける誘目性,料理の色彩と嗜好の関係,リビング・カラーと視覚作用などの検討項目について,モニター上に提示した刺激に対する被験者の眼球運動を計測し,視線分析を行った.色彩快適性を考慮した衣食住に関するビジュアルインフォメーションが人間の様々な生活シーンにおけるQOLの向上に寄与することを明らかにした.生活環境の様々な状況認識にっいては,視覚機能がおよそ90%の情報を処理しており,生活環境色彩はコミュニケーション・メディアとして重要な役割を担っている.本研究は,生活環境色彩の視覚的作用と感覚的作用に関して,衣食住の具体的事例を対象とした実験解析ならびに検証を行い,日常の視覚生活におけるカラーコンフォート(色彩快適性)に寄与することを目的としている.初年度は,「ファッションカラーにおける誘目性」および「色と料理の関係」にっいて,モニター上に提示した刺激に対する被験者の眼球運動を計測し,視線分析を行った.まず,被服の上衣・下衣をモデル化した2色配色の刺激を作製して配色が誘目性におよぼす影響を検討した.色相を基準とした配色では,上衣が暖色の場合,誘目性に差が認められないが,中性色では中差色相の誘目性が,寒色の場合には補色色相の誘目性が顕著に高くなる傾向認められる.明度差を基準とした配色では,明度差4.0以上の対照明度の場合に誘目性が高い.無彩色と有彩色の配色では,対照彩度の誘目性が高く,同一色相による配色では,同一彩度の誘目性が高いことなどが明らかになった.っぎに,ランチョンマット,プレート,ハンバーグ,付け合わせを刺激としてモニター上に提示し,被験者が美味しそうと感じる料理を完成させるプロセスにおける視線分析を行った.料理をハンバーグと規定して行った本研究では,被験者の多くが提示されたアイテムを比較した後に,ランチョンマット→プレート→付け合わせ→ハンバーグの順で料理を完成させた.また,付け合わせの決定と配置に時間をかける(注視時間が長い)被験者が多くみられた.視線の軌跡分析から,被験者が最初に見たアイテムと最終的に完成させた料理には関連性がほとんど認められないことなどが明らかになった.生活環境の様々な状況認識については,視覚機能がおよそ90%の情報を処理しており,生活環境色彩はコミュニケーション・メディアとして重要な役割を担っている.本研究は,生活環境色彩の視覚的作用と感覚的作用に関して,衣食住の具体的事例を対象とした実験解析ならびに検証を行い,日常の視覚生活におけるカラーコンフォート(色彩快適性)に寄与することを目的としている.平成21年度は「色と料理の関係」および「リビング・カラーと視覚作用」について,モニター上に提示した刺激に対する被験者の眼球運動計測を計測し,視線分析を行った.色と料理の関係では,料理のおいしさを決める大きな要素である「盛り付け」に注目した.今年度は,日本料理の盛り付けについて検討を行った.快適度指数を指標に,分割数30のモザイク画像を刺激として採用した.基本色分布ならびに色度分布より,日本料理の盛り付けに関しては白・灰・茶を基本とする色彩構成が多く認められた.被験者は料理を見る際に,視線を料理の中央に停留させる傾向がある.また,被験者が日本料理を「"より"おいしそう」と感じる要因として,アクセントカラー効果があることを明らかにした.リビング・カラーと視覚作用では,リビングルームにおける色彩の快適性について検討を行った.絨毯とソファーの配色について,快適度指数を指標とし,ムーン・スペンサーの色彩調和論の「同一の調和」と「対比の調和」を基に刺激画像を作製した.停留点軌跡分析,アイマーク軌跡分析ならびに停留点時間分析を行った結果,同一色相よりも対比色相の刺激画像を快適とする被験者が多くみられた.被験者は快適性を判断する過程で,リビングルーム内のソファーを見比べている.また,赤紫黄を注視する傾向が認められた.リビングルームの色彩やトーン,色彩の誘目性などが快適性に影響をおよぼすことなどが明らかになった.生活環境の様々な状況認識については,視覚機能がおよそ90%の情報を処理しており,生活環境色彩はコミュニケーション・メディアとして重要な役割を担っている.本研究は,生活環境色彩の視覚的作用と感覚的作用に関して,衣食住の具体的事例を対象とした実験解析ならびに検証を行い,日常の視覚生活における色彩快適性に寄与することを目的としている研究最終年度は,衣生活,食生活,住生活の各領域におけるビジュアルインフォメーションに関する研究を補完し,生活環境における色彩快適性の総括を行った.料理の色彩分析や視覚的に美味しそうと感じる条件などについて検討した結果についてはAIC 2010 InterimMeetingで発表した.ここでは,料理の色彩を画素単位で測定するとともに,視線動向の分析に用いる刺激画像において,形による影響を除外する目的で料理が盛りつけられた写真画像をモザイク加工して実験に供した.その結果,人は料理の色彩構成が近似している場合は色が散在している盛り付けより境界が分かりやすい色で構成された料理のほうを美味しそうと感じる.一方,色彩を統一した盛り付けについては美味しそうと感じない. | KAKENHI-PROJECT-20500668 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20500668 |
メディアとしての生活環境色彩の視覚的作用と感覚的作用に関する研究 | 白や灰,茶などをベースカラーとし,アクセントカラーを効果的に配した料理の盛り付けが視覚的に美味しそうと感じるなどについて明らかにした具体的生活環境色彩事例を対象とした本研究により,身につける色(衣環境),楽しく食べる色(食環境),身の回りの色(住環境)におけるビジュアルインフォメーションが,意味伝達ならびに快適性など,様々な生活シーンにおけるQOL向上に寄与していることを示唆した | KAKENHI-PROJECT-20500668 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20500668 |
若手研究者の養成システムに関する政策研究 | 若手研究者養成のあり方について分析・考察および政策的検討を行うことを目的とする本研究の成果として、ここでは、(1)ポスドク本人の「主体性」の重要性、(2)ポスドクの移動状況、(3)ポスドクからみた研究者養成制度、の3点について報告する。特別研究員採用期間中の研究活動について、人文社会は「自由な発想の元に主体的に設定した課題」が77%に達する一方で、理工系の分野では多くが「指導教員等との相談の上で設定した関心のある課題」となっており、化学分野ではさらに主体性が低下し「所属研究グループのなかで与えられたテーマ」の比率が10%に達している。主体性を特徴とする人文社会では、優れた研究成果に結びつくケースと希薄な指導が結果として失敗をもたらすケースに分極化している。理工系の場合、例えば化学ではテーマが主体的であり指導が綿密に行われるほど研究成果が向上するという明確な関連が観察された。生物分野では、研究テーマの主体性が高いほど研究費の不足度は高まり、優れた研究者との知的交流という点での満足度も低下する。このような研究分野の特性(多様性)は、ポスドク制度の在り方を考えていくうえで決定的に重要な意味を持つ。これまでも日本学術振興会により特別研究員終了者の就職状況調査が行われてきた。今回の調査分析では新たに、特に国内の大学等における非常勤の研究職において、非常に高い頻度で短期間のうちに移動が起こっている事実が明らかになった。上昇移動とはいえないこれらの移動は、研究活動をサポートするための制度と現場のニーズとの間の歪みを反映したものと考えられる。特別研究員制度をはじめとする現在のポスドク制度に対しては、高い期待が寄せられている一方で、制度の不備や問題点を指摘する声も多い。学術分野における世代間の利害対立が表面化しつつある中で、ポスドク制度の在り方に強い影響力をもつ政府審議会等にこれらの声を反映させる仕組みについても考えていく必要があるのではないか。本年度は主として、(1)大学院研究科単位での定員充足状況を把握するためのDB作成、および(2)ポスドク修了後の常勤研究職を得るまでの期間についての実態把握を中心とする作業を実施した。DBについては現在データの確認及び分析を進めているところであり、本概要では、ポスドク修了者のその後についての調査結果を報告する。任期の定めのない従来型の常勤研究職となった者以外にも、研究プロジェクト等を通じてリサーチアシスタントとして雇用されるケースや、あるいは非常勤の研究職、一定の任期の付された研究職など、ポスドク修了者の身分(資格)は非常に多様化しつつある。これらの身分(資格)は、1.常勤か非常勤かポスドクか、2.研究職か研究補助職か、3.任期の有無、という観点から分類することが可能である。身分(資格)の位置づけに応じて給与等の待遇は異なるにもかかわらず、量的な拡充に伴ない、活動内容についてはこれら制度間の実質的な差は希薄化しつつある。その現れとして、ポスドクとして採用された者が当該職を非常勤研究職であると認知されているケースなども観察された。同一の名称でありながら、機関によって位置づけが異なるケースなどもみられる。大学によっては、社会的な認知度が低いポスドクに対して独自の身分を付与するケースもあり、これらの身分(資格)の分類を困難にしている。言い換えれば、これらの身分(資格)間のボーダレス化が進みつつあるといえよう。同時に、短い期間の「つなぎ」としてこれらの身分(資格)が活用されることもあれば、採用期間を終えた後再度これらの身分(資格)を重ねるケース「ポストポスドク」も一部の分野において現れつつある。若手研究者養成のあり方について分析・考察および政策的検討を行うことを目的とする本研究の成果として、ここでは、(1)ポスドク本人の「主体性」の重要性、(2)ポスドクの移動状況、(3)ポスドクからみた研究者養成制度、の3点について報告する。特別研究員採用期間中の研究活動について、人文社会は「自由な発想の元に主体的に設定した課題」が77%に達する一方で、理工系の分野では多くが「指導教員等との相談の上で設定した関心のある課題」となっており、化学分野ではさらに主体性が低下し「所属研究グループのなかで与えられたテーマ」の比率が10%に達している。主体性を特徴とする人文社会では、優れた研究成果に結びつくケースと希薄な指導が結果として失敗をもたらすケースに分極化している。理工系の場合、例えば化学ではテーマが主体的であり指導が綿密に行われるほど研究成果が向上するという明確な関連が観察された。生物分野では、研究テーマの主体性が高いほど研究費の不足度は高まり、優れた研究者との知的交流という点での満足度も低下する。このような研究分野の特性(多様性)は、ポスドク制度の在り方を考えていくうえで決定的に重要な意味を持つ。これまでも日本学術振興会により特別研究員終了者の就職状況調査が行われてきた。今回の調査分析では新たに、特に国内の大学等における非常勤の研究職において、非常に高い頻度で短期間のうちに移動が起こっている事実が明らかになった。上昇移動とはいえないこれらの移動は、研究活動をサポートするための制度と現場のニーズとの間の歪みを反映したものと考えられる。特別研究員制度をはじめとする現在のポスドク制度に対しては、高い期待が寄せられている一方で、制度の不備や問題点を指摘する声も多い。 | KAKENHI-PROJECT-11710134 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11710134 |
若手研究者の養成システムに関する政策研究 | 学術分野における世代間の利害対立が表面化しつつある中で、ポスドク制度の在り方に強い影響力をもつ政府審議会等にこれらの声を反映させる仕組みについても考えていく必要があるのではないか。 | KAKENHI-PROJECT-11710134 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11710134 |
大腿義足使用における異常歩行の解析と義足の改良 | 大腿義足歩行において,遊脚期に義足が大腿部との連結部で回転してしまう大腿義足に特有な現象,ホイップが生じることがある.これは,大腿義足での歩行獲得を遅延させる原因の一つとなり,歩行獲得後においても身体の左右対称性を欠き,また,歩行速度を上げる妨げとなる.このホイップを防止する機構を開発するため,大腿義足に6軸センサを組込み,ホイップが生じる時の義足膝継手の直上に掛かる力(モーメント)の大きさや方向を明らかにした.大腿義足歩行において,遊脚期に義足が大腿部との連結部で回転してしまう大腿義足に特有な現象,ホイップが生じることがある.これは,大腿義足での歩行獲得を遅延させる原因の一つとなり,歩行獲得後においても身体の左右対称性を欠き,また,歩行速度を上げる妨げとなる.このホイップを防止する機構を開発するため,大腿義足に6軸センサを組込み,ホイップが生じる時の義足膝継手の直上に掛かる力(モーメント)の大きさや方向を明らかにした.健常者歩行において、足底が地面についていない遊脚期では下肢は円弧状に振り出しを行っている。しかし、大腿義足ではこのように振り出すと、義足が大腿部との連結部で回転してしまう大腿義足に特有な現象(以下、ホイップ)が生じてしまう。これは、大腿義足と大腿骨が軟部組織を介して連結されており、保持力が大きくないからである。このためユーザは、義足を身体の中心に常に寄せ、地面と垂直に保ち、進行方向に対し平行に振り出すことでホイップを生じないようにしている。これは、大腿義足での歩行獲得を遅延させる原因の一つとなり、歩行獲得後においても身体の左右対称性を欠き、また、歩行速度を上げる妨げとなっている。このため、大腿義足に6軸センサを組込み、ホイップが生じる時の義足膝継手の直上に掛かる力(モーメント)を計測し、大腿部の重心周りに生じる回転モーメントの総和を"ホイップの原因回転モーメント"として求め、その大きさや方向を明らかにすることを目的としている。平成20年度は、大腿義足膝継手の直上に設置することが可能で、かつ、6軸力を計測可能なシステムを構築し、ホイップを生じている大腿義足のユーザの歩行分析を行った。この結果、大腿義足の長軸方向で義足を圧縮または引っ張りカとなるFz成分が計測され、構築したシステムにより遊脚期の判断が可能であることを確かめた。なぜなら、義足が地面に接している立脚期は体重掛かるため圧縮力として計測され、地面から離れる遊脚期は引っ張り力として計測されるからである。また、Fz成分以外の成分のデータも計測可能となった。この結果より、構築したシステムは大腿部の重心周りに生じる回転モーメントを求められることを確かめた。健常者歩行において,足底が地面についていない遊脚期では下肢は円弧状に振り出しを行っている.しかし,大体義足ではこのように振り出すと,義足が大腿部との連結部で回転してしまう大腿義足に特有な現象(以下,ホイップ)が生じてしまう.これは,大腿義足と大腿骨が軟部組織を介して連結されており,保持力が大きくないからである.このためユーザは,義足を身体の中心に常に寄せ,地面と垂直に保ち,進行方向に対し平行に振り出すことでホイップを生じないようにしている。これは,大腿義足での歩行獲得を遅延させる原因の一つとなり,歩行獲得後においても身体の左右対称性を欠き,また,歩行速度を上げる妨げとなっている.このため本研究では,大腿義足に6軸センサを組込み,ホイップが生じる時の義足膝継手の直上に掛かる力(モーメント)を計測し,大腿部の重心周りに生じる回転モーメントの総和を"ホイップの原因回転モーメント"として求め,その大きさや方向を明らかにすることを目的とした.平成20年度は,大腿義足膝継手の直上に設置することが可能で,かつ,6軸力を計測可能なシステムを構築し,ホイップを生じている大腿義足ユーザの歩行分析を行った.この結果,構築したシステムにより遊脚期の判断が可能であることを確かめた.平成21年度は,被験者数を増やし,遊脚期の判断の精度を高めると共に,義足膝継手のアライメントを意図的に変更することでホイップを生じさせ,その大きさや方向,生じる時間等を明らかにした.また,求められた結果より,ホイップ防止機構に必要とされる仕様を検討し,磁気粘性(MR)流体を用いた制御機構が適しているのではないかという結論を得た. | KAKENHI-PROJECT-20700456 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20700456 |
Melt-Casting法によるBi系超電導体の特性改善と電流リードの開発 | 本研究では、まずMelt-Casting法(MCP)で作製したBi2212バルク超電導体にSrSO_4やLi_2CO_3を添加して、その輸送特性を改善した。次に、臨界電流を測定し、その電流分布が交流通電損失に及ぼす影響を明らかにした。電流リードの開発に向けて本研究によって得られた成果は以下の通りである。1.SrSO_4を10wt%添加した直径1cmの円柱状MCP試料によって、50Aを超える臨界電流を実現した。また、800°CでアニールしたMCP試料Bi_2Sr_2CaCu_2Li_<0.2>O_yは91Kで零抵抗を示した。2.MCP試料は表面密度(比重)が高く、中心部に比べ約半分の抵抗率を示していることがわかった。3.超電導電流は試料表面に集中して流れていた。また、MCP試料のn値は78であることがわかった。4.交流通電損失は周波数に無関係なヒステリシス損が支配的であった。断面が7.5×7.5mm^2の正方形MCP試料の交流損失は、超電導電流が一様に流れていると仮定したノリスの理論値よりもかなり小さかった。したがって、損失値の計算には、臨界電流密度分布と試料断面形状を考慮しなければならないことがわかった。これらの事実から、表面に集中している臨界電流密度分布が磁束侵入領域を限定させ、試料全体の交流通電損失を抑えていることを明らかにした。5.交流通電損失と熱伝導による熱流入量を検討し、Melt-Casting法で作製したBi2212バルク超電導体が超電導電力機器の電流リードとして有効に使用できることを明らかにした。本研究では、まずMelt-Casting法(MCP)で作製したBi2212バルク超電導体にSrSO_4やLi_2CO_3を添加して、その輸送特性を改善した。次に、臨界電流を測定し、その電流分布が交流通電損失に及ぼす影響を明らかにした。電流リードの開発に向けて本研究によって得られた成果は以下の通りである。1.SrSO_4を10wt%添加した直径1cmの円柱状MCP試料によって、50Aを超える臨界電流を実現した。また、800°CでアニールしたMCP試料Bi_2Sr_2CaCu_2Li_<0.2>O_yは91Kで零抵抗を示した。2.MCP試料は表面密度(比重)が高く、中心部に比べ約半分の抵抗率を示していることがわかった。3.超電導電流は試料表面に集中して流れていた。また、MCP試料のn値は78であることがわかった。4.交流通電損失は周波数に無関係なヒステリシス損が支配的であった。断面が7.5×7.5mm^2の正方形MCP試料の交流損失は、超電導電流が一様に流れていると仮定したノリスの理論値よりもかなり小さかった。したがって、損失値の計算には、臨界電流密度分布と試料断面形状を考慮しなければならないことがわかった。これらの事実から、表面に集中している臨界電流密度分布が磁束侵入領域を限定させ、試料全体の交流通電損失を抑えていることを明らかにした。5.交流通電損失と熱伝導による熱流入量を検討し、Melt-Casting法で作製したBi2212バルク超電導体が超電導電力機器の電流リードとして有効に使用できることを明らかにした。本研究では、Melt-casting法(MCP)によってSrSO_4を10wt%混合した円柱状のBi2212バルク超電導体を作製し、その導電特性を明らかにした。試料の出発組成は、Bi : Sr : Ca : Cu=2:2:1:2とした。まず、融点の高いSrC0_3,CaCO_3,CuOを秤量・混合し、空気中において950°Cで40時間仮焼した。仮焼粉を粉砕後、融点の低いBi_2O_3を混ぜた。この混合紛(約50g)に対して重量比で10%のSrSO_4を添加・混合し、材料紛とした。この材料粉をアルミナ製のるつぼに入れ、l000°Cで20分間加熱した。液体状になった材料は銅板で作った円筒形の型に流し込んで固めた。銅板を取り除き、円柱状に成形した後、そのバルク体を840°Cで100時問焼結した。最後に結晶粒内の酸素濃度を最適化するために、700°Cで20時間アニール処理し、液体窒素を用いて急冷したものを試料とした。まず、直径約1cmの円柱状試料は液体窒素温度において50Aを超える臨界電流を示した。また、n値は7.9であった。この試料は通常の焼結試料よりも15K程高い82Kで零抵抗を示した。したがって、MCPによって導電特性を大幅に改善することができた。次に、試料中心部では組成比がBi2212とは大きくずれていた。また、交流損失はNorrisの理論値の半分程度であった。これらの結果は、超電導電流が試料表面近くを重点的に流れていることを意味している。今回測定した交流損失は、商用周波数・50Aという条件で単位長さ当り約5mWであり、電流リードによる熱流入という面では無視できるくらい小さい量であった。 | KAKENHI-PROJECT-13650361 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13650361 |
Melt-Casting法によるBi系超電導体の特性改善と電流リードの開発 | 次に本研究では、適量のLi_2CO_3を出発原料に加えるとMCP試料の臨界温度が向上することを明らかにした。添加したLiは熱処理中の超電導相の成長を促進させ、その結果試料の示す零抵抗温度ばかりでなく、オンセット臨界温度も高くなった。800°CでアニールしたMCP試料Bi_2Sr_2CaCu_2Li_<0.2>O_yは90K以上で零抵抗を示した。本研究では、まずMelt-Casting法(MCP)で作製したBi2212バルク超電導体に対する他元素の添加効果を調べた。次に、臨界電流密度分布を測定し、その分布が交流通電損失に及ぼす影響を調べ、MCP試料の輸送特性を明らかにした。今年度の研究によって得られた成果は以下の通りである。1.適量のLi_2O_3を出発原料に加えるとMCP試料の臨界温度が高くなった。添加したLiは熱処理中における超電導相の成長を促進させ、零抵抗温度ばかりでなく、オンセット臨界温度も高くした。800°CでアニールしたMCP試料Bi_2Sr_2CaCu_2Li_<0.2>O_yは91Kで零抵抗を示した。2.MCP試料の表面は密度(比重)が高く、また、中心部に比べて約半分の抵抗率を示した。表面を削った試料の臨界電流を測定した結果、超電導電流は試料の表面に集中して流れていることがわかった。また、その臨界電流密度は100A/cm^2を超えていた。3.断面が7.4×7.5mm^2の正方形試料(長さは120mm)では、電流分布が均一と仮定した場合の交流通電損失の計算値(ノリスの理論値)が測定値よりも非常に大きかった。一方、断面が4.5×13.6mm^2で同じ長さの長方形試料では両者の値にほとんど違いはなかった。これらのことから、正方形試料の中心部分ではfield-free-coreと呼ばれる電流が流れず磁場もほとんどない領域が存在することがわかった。実測した臨界電流密度分布を考慮して正方形試料の交流通電損失を再計算した結果、測定値とよく一致した計算値が得られた。したがって、MCP試料では不均一な電流分布が磁束侵入領域を制限し、そのことが交流損失を抑えていることが明らかになった。本研究では、まずMelt-Casting法(MCP)で作製した矩形Bi2212バルク超電導体の臨界電流値、n値、臨界温度を調べた。次に、臨界電流密度分布を測定し、その分布が交流通電損失に及ぼす影響を調べ、MCP試料の輸送特性を明らかにした。今年度の研究によって得られた成果は以下の通りである。1.断面が4.5×13.6mm^2の矩形試料は液体窒素温度で53.8Aの臨界電流値を示した。この試料のn値は7.7であった。また、零抵抗温度は84Kであった。これらの結果は、MCP試料が基本的な輸送特性において十分に電流リードの母材になることを示している。2.MCP試料の交流通電損失には周波数依存性がなく、ヒステリシス損が支配的であることがわかった。3.断面が4.5×13.6mm^2の矩形試料の交流通電損失は、超電導電流が一様に流れていると仮定したノリスの理論値とほぼ同じであった。一方、断面が7.5×7.5mm^2の正方形試料の交流損失は、理論値よりもかなり小さいことがわかった。4.正方形試料の臨界電流密度分布を測定した結果、超電導電流は表面から1mm以内の領域に集中して流れていることがわかった。実測した臨界電流密度分布と断面形状を考慮して正方形試料の交流通電損失を計算した結果、測定値とよく一致した値が得られた。したがって、MCP試料では表面に集中している電流分布が磁束侵入領域を制限し、交流通電損失を抑えていることが明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-13650361 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13650361 |
エグゼクティブ・コーチングにおけるリーダーの強みと弱みのアプローチの比較研究 | リーダーの能力開発のツールとして注目されているエグゼクティブ・コーチングは、スポーツコーチングと異なりコーチがクライアントに指導やアドバイスはしない。クライアントは自分で目標を設定し、自分の希望するゴールへ到達する責任がある。コーチはその過程をサポートする役割を担う。従って、クライアント自身の能力開発の視点が重要である。本研究課題の目的は、「強みの発達」と「弱みの克服」という相反するアプローチがコーチングのプロセスと結果においてどのような相違をもたらすのか、両アプローチを比較しコーチングの有効性を解明することである。本研究事業の初年度である2018年度は、クライアント自身の能力開発の視点と自己変容を中心テーマとして経営学、キャリア研究、心理学、教育学、スポーツコーチング等の学際的な視点から文献研究と分析を行った。コーチングではクライアント自身の視点がメインではあるが、クライアントに向き合うコーチの姿勢が重要であることが明確になり、隣接分野である心理療法の理論や技法について研究した。特に感情へのアプローチに関してコーチングに応用できることがわかった。また、日本のスポーツコーチングの分野において、近年エグゼクティブ・コーチングの影響を受けていることがわかった。フィードバックを行うコーチングの分析では、自己変容が可能であることが明らかになった。コーチング研究が進んでいるオセアニアの国際学会で研究発表を行い、オーディエンスとのディスカッションから貴重な意見や提案を得ることができた。また、女性の政治リーダーに対するガラスの天井の問題、リーダーが孤独を感じている問題、マインドフルネスの企業での活用等の他参加者の発表からエグゼクティブ・コーチングの学術研究の重要性を再認識することができた。本年度は文献研究により基礎概念を明らかにした上で実践的研究に着手する予定であった。コーチングは経営学、キャリア研究、心理学、教育学、スポーツコーチングをはじめ、脳科学、言語学、コミュニケーション学等他の様々な分野にまたがる学際的学術分野である。研究を進める過程で関連する諸分野へ文献研究を広げる必要があり予定よりも時間を要した。そのため実践的研究に着手するまでに至らなかったが、実践的研究の基盤がより強固になったと考える。今後は学際的文献研究を続けると共に、実践的研究に着手して2つのアプローチの比較研究を推進していく。コーチングは産業においても学術研究においても、欧米豪東南アジアが日本と比較して格段に進んでいるため、国際学会への参加や海外資料調査等を通して研究者や実務家との人的交流を図り、本研究課題に関する最新情報や動向を把握する予定である。リーダーの能力開発のツールとして注目されているエグゼクティブ・コーチングは、スポーツコーチングと異なりコーチがクライアントに指導やアドバイスはしない。クライアントは自分で目標を設定し、自分の希望するゴールへ到達する責任がある。コーチはその過程をサポートする役割を担う。従って、クライアント自身の能力開発の視点が重要である。本研究課題の目的は、「強みの発達」と「弱みの克服」という相反するアプローチがコーチングのプロセスと結果においてどのような相違をもたらすのか、両アプローチを比較しコーチングの有効性を解明することである。本研究事業の初年度である2018年度は、クライアント自身の能力開発の視点と自己変容を中心テーマとして経営学、キャリア研究、心理学、教育学、スポーツコーチング等の学際的な視点から文献研究と分析を行った。コーチングではクライアント自身の視点がメインではあるが、クライアントに向き合うコーチの姿勢が重要であることが明確になり、隣接分野である心理療法の理論や技法について研究した。特に感情へのアプローチに関してコーチングに応用できることがわかった。また、日本のスポーツコーチングの分野において、近年エグゼクティブ・コーチングの影響を受けていることがわかった。フィードバックを行うコーチングの分析では、自己変容が可能であることが明らかになった。コーチング研究が進んでいるオセアニアの国際学会で研究発表を行い、オーディエンスとのディスカッションから貴重な意見や提案を得ることができた。また、女性の政治リーダーに対するガラスの天井の問題、リーダーが孤独を感じている問題、マインドフルネスの企業での活用等の他参加者の発表からエグゼクティブ・コーチングの学術研究の重要性を再認識することができた。本年度は文献研究により基礎概念を明らかにした上で実践的研究に着手する予定であった。コーチングは経営学、キャリア研究、心理学、教育学、スポーツコーチングをはじめ、脳科学、言語学、コミュニケーション学等他の様々な分野にまたがる学際的学術分野である。研究を進める過程で関連する諸分野へ文献研究を広げる必要があり予定よりも時間を要した。そのため実践的研究に着手するまでに至らなかったが、実践的研究の基盤がより強固になったと考える。今後は学際的文献研究を続けると共に、実践的研究に着手して2つのアプローチの比較研究を推進していく。コーチングは産業においても学術研究においても、欧米豪東南アジアが日本と比較して格段に進んでいるため、国際学会への参加や海外資料調査等を通して研究者や実務家との人的交流を図り、本研究課題に関する最新情報や動向を把握する予定である。本年度に学際的文献研究に予定より多くの時間を要し実践的研究の着手に至らなかったため、そのための研究経費を使用しなかった。次年度には実践的研究を行うためこれに使用する計画である。 | KAKENHI-PROJECT-18K01852 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K01852 |
新しい食行動評価指標による肥満小児への保健指導の科学的根拠 | 小児の食行動を新規に考案したイラスト選択法により解析した。結果として、食事への関心、ファーストフードの嗜好、脂質含量、脂肪エネルギー比率は、女子より男子で有意に高値であった。食事への関心スコアは、ファーストフードスコア、エネルギー、脂質含量、脂肪エネルギー比率と順相関した。やせ傾向児の食事への関心スコアは有意に高値であった。このことより、本法により小児の食行動の特徴を簡便に評価できる可能性が示唆された。肥満発症には食行動の偏りが関与するが小児の食行動評価の適切な指標はなかった。前回、「イラスト選択法(食事への関心)」を開発し、小児の食物への関心を簡便に評価する可能性を明らかにした。さらに今回、「イラスト選択法(食事の嗜好)」を作成、食行動の偏りを明らかにし、食行動の指標・肥満発症との関連について検討することを目的とした。食事の嗜好については、小児の好きな食べ物より36種(主食、副菜、主菜、果物、菓子・嗜好飲料、ファーストフード)のイラストから対象児に任意の10個を食間に選択させることにより評価した。選択された10個のイラストの平均エネルギー、平均脂質含量を算出、また含まれている和食の数を「和食嗜好スコア」、ファーストフーの数を「ファーストフード嗜好スコア」とし検定を行った。また、食事への関心については、前回と同様に小児の身辺の対象物36種(食品10個、その他26個)のイラストから対象児に任意の10個を食後に選択させることにより評価し、その中に含まれる食事のイラスト数を「食品選択スコア」とした。食品選択スコアの平均値で上位群と下位群の2群に分け、食事の嗜好との関連を検定した。性差が見られた項目は食品選択スコア(男子3.36±2.17、女子2.24±1.93)、ファーストフード嗜好スコア(男子1.46±0.85、女子0.99±0.83)、平均脂質含量(男子10.23±3.09、女子9.52±3.22)で、男子が女子に比べ有意に高値を示した(p<0.05)。また、食品選択スコアの上位群では下位群に比較して、ファーストフード嗜好スコア、平均エネルギー、平均脂質含量がそれぞれ有意に高値であった(p<0.05)。性差が見られたこと、食品選択スコアとの関連が見られたことより、「イラスト選択法(食事への関心)」は、小児の食行動の特徴の一部を表している可能性が示唆された。小児の食行動を新規に考案したイラスト選択法により解析した。結果として、食事への関心、ファーストフードの嗜好、脂質含量、脂肪エネルギー比率は、女子より男子で有意に高値であった。食事への関心スコアは、ファーストフードスコア、エネルギー、脂質含量、脂肪エネルギー比率と順相関した。やせ傾向児の食事への関心スコアは有意に高値であった。このことより、本法により小児の食行動の特徴を簡便に評価できる可能性が示唆された。【目的】肥満の発症には、摂食エネルギー過多だけでなく、座りがちな生活習慣の形成による消費エネルギー低下も関与している。そこで今回、小児の運動への関心の特徴を明らかにするために、イラスト選択法により運動への興味を評価し、食行動の指標・肥満発症との関連について検討した。【方法】運動への関心をイラスト選択法により評価した。イラスト選択法では、小児の身辺の対象物36種(スポーツなどの運動に関連するもの10個、食品10個、その他16個)のイラストから対象児に任意の10個を選択させ、その中に含まれる運動のイラスト数を「運動選択スコア」とした。調査は食前に実施した。運動選択スコアの平均値で上位群と下位群の2群に分け、食行動・肥満度を比較した。食行動評価は、成人用「食行動質問表」の中から小児に適した21項目を選出し、平易な文章からなる質問表を作成して対象者に回答させた(幼児では保護者が回答)。回答を因子分析し4種の食行動因子を抽出した。肥満度は、身長・体重の測定値と性別年齢別標準体重値より算出した。【結果】運動選択スコアの下位群では上位群に比較して、4種の食行動因子スコアがそれぞれ有意に高値であった(p<0.05)。肥満度+30%以上の群は、肥満度+30%未満の群に比較して、運動選択スコアが有意に低値であった(1.63±1.19、2.89±1.75、p<0.05)。小学校高学年(1012歳)群では、幼児、小学校低学年、小学校中学年の群と比較して運動選択スコアが有意に低値を示した(p<0.01)。【考察】小児の運動への関心が、食行動の特徴・肥満発症・年齢と関連していることが明らかになった。本研究で用いたイラスト選択法は、運動への関心の度合いを測る有効な方法と考えられ、より簡便なスクリーニング法として広く利用できる可能性が示唆された。評価方法として作成しているイラスト選択法について、小児の身辺の対象物36個(食品10個、スポーツなどの運動に関連するもの10個、その他16個)のイラストの選別、イラストの作成、それからチェックシートの作成と修正、妥当性のためのプレテストに時間がかかったため、達成度がやや遅れているといえる。以下の実施方法に従い、調査を実施し分析を行う。1)実施方法イラスト選択法は、学校にて施行する。 | KAKENHI-PROJECT-23792647 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23792647 |
新しい食行動評価指標による肥満小児への保健指導の科学的根拠 | 1人の対象児にそれぞれ食前30分前以内と食後30分以内の2回、チェックシートにマークさせ、食前(空腹時)・食後(満腹時)での「食品選択スコア」の差を比較する。質問紙法は、「イラスト選択法」が食前・後ともすべて終了したあとに実施する。また、肥満の判定については、身長・体重測定値と、村田式係数による性別年齢別身長別標準体重から肥満度を算出する。2)評価方法イラスト選択法による食行動評価と質問紙法について、各スコアの各年齢群、男女別に、平均と標準偏差を求め、食事への関心度と食行動スコアの特徴と、身長と体重から求めた肥満度との関連を検討する。評価方法として作成しているイラスト選択法について、小児の身辺の対象物36個(食品10個、スポーツなどの運動に関連するもの10個、その他16個)のイラストの選別、イラストの作成、それからチェックシートの作成と修正、妥当性のためのプレテストに時間がかかったため、アンケートの印刷、集計処理などがおこなえていない。そのため、平成23年度の残額をアンケート用紙の印刷、アンケート集計の人件費として平成24年度に使用していく。平成24年度の研究費は、当初の予定通り学会参加旅費や研究成果投稿料として使用する。 | KAKENHI-PROJECT-23792647 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23792647 |
ANITA植物群4種の受粉生物学 | 1.チョウセンゴミシ雌花、雄花ともに約1週間の寿命を保ち、柱頭もその間receptiveのように見えた。双翅類と鞘翅類の多種多様な昆虫が有効なポリネーターであるとともに、アザミウマも重要なポリネーターであった。これらのことから、この種はジェネラリスト型の受粉様式を持つと言える。自家和合性があることが分かった。2.マツブサ雄花は1日の寿命、雌花は開花2日目の夕方までに花被片を落下させる。主要なポリネーターはタマバエ(種は未同定)であった。マツブサは雄花の雄蕊群と花被片、及び雌花の花被片をタマバエの産卵場所として提供する共生関係にある。開花期間は2週間以内で、一度に多数の花を咲かせた。タマバエは開花期間中、世代が変わるように見えなかった。3.サネカズラ雄花は1日の寿命、雌花は開花2日目の夕方までに花被片を落下させ、主要なポリネーターはタマバエ(種は未同定)であり、雄花の雄蕊群と花被片、及び雌花の花被片をタマバエの産卵場所として提供する共生関係にある、という点でマツブサと同様に受粉様式をもっていた。しかし、タマバエの種類は明らかに異なる。開花期間は2ケ月に及び、少しずつ花を咲かせた。また、開花初期は雄花のみが開き、雌花は1週間以上後に咲き始めた。タマバエは約10日で世代交代をするので、開花期間中数世代が出現すると思われる。4.シキミ花は両性で、1020日間寿命があり、初めの1/41/5の期間が雌性期、残りが雄性期であった。鞘翅類と双翅類の多種多様な昆虫が主要なポリネーターで、膜翅類の昆虫も受粉に貢献すると思われる。従って、これはジェネラリスト型の受粉様式を持つと言える。自家和合性があることが分かった。1.チョウセンゴミシ雌花、雄花ともに約1週間の寿命を保ち、柱頭もその間receptiveのように見えた。双翅類と鞘翅類の多種多様な昆虫が有効なポリネーターであるとともに、アザミウマも重要なポリネーターであった。これらのことから、この種はジェネラリスト型の受粉様式を持つと言える。自家和合性があることが分かった。2.マツブサ雄花は1日の寿命、雌花は開花2日目の夕方までに花被片を落下させる。主要なポリネーターはタマバエ(種は未同定)であった。マツブサは雄花の雄蕊群と花被片、及び雌花の花被片をタマバエの産卵場所として提供する共生関係にある。開花期間は2週間以内で、一度に多数の花を咲かせた。タマバエは開花期間中、世代が変わるように見えなかった。3.サネカズラ雄花は1日の寿命、雌花は開花2日目の夕方までに花被片を落下させ、主要なポリネーターはタマバエ(種は未同定)であり、雄花の雄蕊群と花被片、及び雌花の花被片をタマバエの産卵場所として提供する共生関係にある、という点でマツブサと同様に受粉様式をもっていた。しかし、タマバエの種類は明らかに異なる。開花期間は2ケ月に及び、少しずつ花を咲かせた。また、開花初期は雄花のみが開き、雌花は1週間以上後に咲き始めた。タマバエは約10日で世代交代をするので、開花期間中数世代が出現すると思われる。4.シキミ花は両性で、1020日間寿命があり、初めの1/41/5の期間が雌性期、残りが雄性期であった。鞘翅類と双翅類の多種多様な昆虫が主要なポリネーターで、膜翅類の昆虫も受粉に貢献すると思われる。従って、これはジェネラリスト型の受粉様式を持つと言える。自家和合性があることが分かった。1.チョウセンゴミシ長野県南佐久郡の3集団で、花の機能維持期間の観察、人為受粉実験、訪花昆虫の行動観察と採取、及び花の紫外線吸収の解析を行った結果、以下のことが判明した。・雌花では、開花直後から約1週間柱頭がreceptiveのように見え、花被片はその期間正常な形状を保った後落下する。雄花では、開花直後から葯が裂開し、数日間は花被片が正常な形状を保ち、その後花被片及び雄蕊ともに落下する。・人為的な自家受粉と他家受粉の実験ではどちらも高率に結実し、自家和合性がある。・花にはハナアブ類と甲虫類が訪れ、その大部分が送粉に有効であるように見える。・雌花、雄花ともに全体が紫外線を強く吸収する。2.マツブサ岐阜県高山市近郊で、花の機能維持期間の観察、訪花昆虫の行動の観察と採取、及び紫外線吸収の解析を行い、以下のことが明らかになった。・雄花は夕方17時19時に開き始めて翌朝までにほぼ完全に開き、その翌日の朝までには花柄から離脱する。雌花は、夕方に花被が緩んでくるが、少し開く少数の花を除き、大部分の花は開くまでは至らない。翌朝までにほぼ完全に開き、その翌日の夕方までに花被片は落下する。・雄花にはタマバエ類とショウジョウバエ類が訪れる。タマバエは開花前に花の先に止まり、開花を待っている。 | KAKENHI-PROJECT-15570077 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15570077 |
ANITA植物群4種の受粉生物学 | 先が開き始めてしばらくすると花の中に入り、雄蕊や花被片に産卵する。タマバエは翌日の完開した花にもよく訪れて産卵する。ショウジョウバエも日中訪れて、同様に産卵する。雌花へはタマバエが訪れて、花被片に産卵する。タマバエは雌花を訪れた個体にもマツブサの花粉が付着していたので、有効な送粉者であると思われる。しかし、ショウジョウバエが雌花に訪れる様子は観察されない。落下した花期間に産み付けられた卵は数日以内に孵化し、幼虫はその組織を食料とする。・雌花、雄花ともに全体が紫外線を強く吸収する。1.サネカズラ岐阜市の4集団での観察と実験の結果、以下のことが判明した。・大部分の個体では、開花当日の夕方までに雄花は全部が落下し、雌花では花被片のみが落下する。すなわち1日花である。少数の個体ではどちらの花も数日間落下しなかったが、生理的な花の寿命は1日のみのように見えた。・主要な訪花昆虫はタマバエ類であるが、ショウジョウバエ類も時々訪れる。タマバエは雄花では雄蕊と花被片に産卵し、雌花では主に花被片に、時に雌蕊にも産卵する。タマバエは雌花を訪れた個体にもサネカズラの花粉が付着していたので、有効な送粉者であると思われる。産み付けられた卵は数日以内に孵化し、幼虫はその組織を食料とする。ショウジョウバエは雄蘂、時に雌蕊にも産卵するが、送粉にはあまり有効でない。・人為的な自家受粉と他家受粉の実験でどちらも結実し、自家和合性がある。・雌花、雄花ともに全体が紫外線を強く吸収する。2.シキミ岐阜県伊自良村での観察の結果、以下のことが判明した。・花は両性で雌性先熟である。すなわち、開花2日目までに雌蘂の花柱・柱頭部は外へ曲がって、内側にある柱頭を露出させる。柱頭が現れたときには既にreceptiveのように見える。3日目に雌蘂は直立してきて、外輪雄蘂が開葯し始める。4日目、雌蘂は完全に直立して互いに密着することにより内側に柱頭部を隠し、雄蘂群は全部開葯する。10日目くらいまでは花被は着いたままである。ただし、この開花進行は気温によって多少変異がある。・ハエ類、甲虫類、ハナバチ類が訪花する。・花は紫外線を強く吸収する。3.チョウセンゴミシ長野県南佐久郡の3集団で、昨年に引き続き、人為受粉実験及び訪花昆虫の行動観察と採取を行った。訪花昆虫の観察では、新たにアザミウマ類の重要性が明らかになった。アザミウマは雄花と雌花の両方を訪れ、雌花を訪れた個体にもチョウセンゴミシの花粉が付着しおり、また訪花個体数が多いことから、重要な送粉者と思われる。1.チョウセンゴミシ長野県南佐久郡の3集団と塩尻市の1集団で、訪花昆虫の種類とそれらの行動に関する調査を行った。特に重要なポリネーターの一員であることが判明したアザミウマについて、その生活史と花との関係を重点的に調べた。その結果、アザミウマは花に産卵することはなく、外部から訪れることが判明した。2.マツブサ高山市と静岡県富士宮市で訪花昆虫の種類とそれらの行動に関する調査を行った。どちらも花に産卵するタマバエが主要なポリネーターであることが確認された。また、タマバエは両集団とも同じ種類であり、この種のタマバエとマツブサは強い共利共生の関係にあることが強く示唆された。3.サネカズラ・岐阜市の野生個体と岐阜大学栽培の個体について、日毎の開花数とその雌雄性について、連続調査を行った。その結果、どの個体も1日に平均数個の花をほぼ2ヶ月に渡って咲かせ続けること、雄花が圧倒的に多く(8割前後)、雌花は遅く開花し始めて、後半に多く咲くことが判明した。・岐阜市、山県市、及び美濃市で人為受粉実験並びに訪花昆虫の種類とそれらの行動に関する調査を行った。どの集団も主要なポリネーターは花に産卵するタマバエであった。 | KAKENHI-PROJECT-15570077 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15570077 |
施設内障害老人の心身の活性化のための動作法適用の試み | 施設内障害老人の現況について2施設を中心に動作現況を調査した結果、補助具なしで単独歩行が可能な者は約7%であり、歩行器、杖等の補助具により単独歩行可能な者は約10%で、単独車椅子移動の者は約6%、残りの約76%は介助による車椅子移動のものとなる。だがこの76%の者の中の約25%は食事、排泄もベッドで行い、実際にはほとんど施設内の移動の機会がない。この数値は2施設を平均化したものであり、施設内老人の平均年齢によって多少の差が認められ、開所からの経年によっても差があることが推定される。補助具使用の単独歩行者2名、介助車椅子移動者2名および移動機会僅少者2名に動作を実施した。その結果、単独歩行者では1名が補助具を使用しなくなり、介助車椅子移動者は車椅子に乗る時に自分で立って車椅子に腰掛けられるようになった。移動機会僅少者は、顕著な動作面での変化は認められなかった。しかし動作法による老人への関わりは動作の改善を目的とするだけではないので日常生活における情動や行動の変化をも期待した。その結果、表情の変化、訓練者のみならず施設職員との関わりにおいても言語的・非言語的応答が改善した。変化の見られなかった老人は、痴呆化が著しくかつ身体が痩せ細っているため動作法適用が難しい事例であったといえる。また、言語的コミュニケ-ションの可否は、動作法適用には大きな要因ではなかったが、体力すなわち身体的な状態は動作法適用上の重要な要因となる。また、動作面での効果は障害発生からの年〓と関係があることが示唆された。以上から老人が自らの身体を自分自身で動かすように援助する動作方法は、障害があるゆえに、自らの動きが制限されている老人の心身の活性化の一助となろう。今後は、動作法適用の適否の検討も必要となる。1.施設(特別養護老人ホ-ム)に在所する85名の老人について日常生活及び動作現況の調査を行ったところ、食事、入浴、排泄について職員による何らかの介助を要する者が100%であった。そのうち、歩行等の動作面では顕著な不自由はないものの痴呆等による問題行動があり行動面での介助を必要とする者は、5%であった。残りの95%は、下肢、上肢のいずれか、または上下肢両方に動作の不自由が認められた。動作不自由がある者のうち25%が食事をベッドでするようなまったくの寝たきりの状態であった。このような寝たきりの老人の8割は、痴呆化がすすんでいた。このような老人は、適切な言語的コミュニケ-ションを持つことに困難があった。食事時間には、介助に依って車椅子で食堂に行き、自分で食事をすることが出来るもののそれ以外はほとんどベッドで寝ている下肢に重い障害のある老人は、動作不自由を持つ者の約40%であった。これらの老人は発語に不自由が認められる者もいるが必ずしも痴呆化している訳ではない。しかし、在所年数が3年を越えると痴呆化が著しくなる。このことは、ホスピタリゼイションの問題としても考えられ得る。施設内老人の対人的関係をみると、約2割の者が相互に交流しているだけである。それ以外の者は、食事、入浴、排泄等の介護を受けるときのみ職員との会話だけが中心となることが多い。面会は、毎日:0%、1週12回:5%、2週1回:約10%、3週1回:約5%、1カ月1回:約25%であった。半分以上の者は、1カ月に1回の面接もないようなこともある。2.以上のような施設内老人の状況から、動作法による動作への働きかけにより、動作の改善とコミュニケ-ションの改善を計るため5ー10名の老人を抽出して、動作法の適用を始めた。その経過及び適用方法、効果等の検討は次年度となる。施設内障害老人の現況について2施設を中心に動作現況を調査した結果、補助具なしで単独歩行が可能な者は約7%であり、歩行器、杖等の補助具により単独歩行可能な者は約10%で、単独車椅子移動の者は約6%、残りの約76%は介助による車椅子移動のものとなる。だがこの76%の者の中の約25%は食事、排泄もベッドで行い、実際にはほとんど施設内の移動の機会がない。この数値は2施設を平均化したものであり、施設内老人の平均年齢によって多少の差が認められ、開所からの経年によっても差があることが推定される。補助具使用の単独歩行者2名、介助車椅子移動者2名および移動機会僅少者2名に動作を実施した。その結果、単独歩行者では1名が補助具を使用しなくなり、介助車椅子移動者は車椅子に乗る時に自分で立って車椅子に腰掛けられるようになった。移動機会僅少者は、顕著な動作面での変化は認められなかった。しかし動作法による老人への関わりは動作の改善を目的とするだけではないので日常生活における情動や行動の変化をも期待した。その結果、表情の変化、訓練者のみならず施設職員との関わりにおいても言語的・非言語的応答が改善した。変化の見られなかった老人は、痴呆化が著しくかつ身体が痩せ細っているため動作法適用が難しい事例であったといえる。また、言語的コミュニケ-ションの可否は、動作法適用には大きな要因ではなかったが、体力すなわち身体的な状態は動作法適用上の重要な要因となる。また、動作面での効果は障害発生からの年〓と関係があることが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-02610058 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02610058 |
施設内障害老人の心身の活性化のための動作法適用の試み | 以上から老人が自らの身体を自分自身で動かすように援助する動作方法は、障害があるゆえに、自らの動きが制限されている老人の心身の活性化の一助となろう。今後は、動作法適用の適否の検討も必要となる。 | KAKENHI-PROJECT-02610058 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02610058 |
胚性幹細胞(ES細胞)からの造血幹細胞誘導システムの構築に関する研究 | ES細胞はほぼ無限に増やせることから、これらの細胞から造血幹細胞だけに分化させる培養系を確立することができれば、造血幹細胞を大量に作り出すことができると考えられる。現在、世界中の多くの研究室でマウスES細胞から移植可能な造血幹細胞の作成が試みられているが、成功していない。本研究では、マウスES細胞を種々の条件下で培養し、同系マウスの長期骨髄再構築能を有する真の造血幹細胞を特異的に誘導する技術を開発する事を目的として行われ以下の成果が得られた。1.マウスAGM領域からクローニングしたストローマ細胞株A9は造血幹細胞が発生する以前の胎生8日の胚体、卵黄嚢細胞から共培養により長期骨髄再構築能を持った造血幹細胞を生み出す能力を持つことが明らかとなった。A9以外に同様の能力をもったストローマ細胞は現在のところ見つかっていない。造血幹細胞になりうる細胞は胎生8日の胚体、卵黄嚢どちらにも存在し、A9上に発現している分子と接触することにより造血幹細胞としての機能を獲得すると考えられた。現在この分子の遺伝子クローニングが進行中である。2.ストローマ細胞との共培養によりES細胞からも造血幹細胞を生み出すことができるか検討した。ES細胞を分化培養系に移した後、中胚葉系のマーカーであるFlk-1陽性、VE-カドヘリン陰性、PECAM-1陰性の中胚葉細胞を分離後、種々のストローマ細胞株と共培養し、致死量放射線照射マウスに移植した。A9と共培養後移植したマウスにおいてFACSでは検出できなかったが、PCRレベルでドナー由来のメッセージが移植後6ヶ月の時点でも観察できた。A9と共培養することによりES細胞から造血幹細胞を生み出すことが可能と考えられ、今後培養条件など検討する予定である。ES細胞はほぼ無限に増やせることから、これらの細胞から造血幹細胞だけに分化させる培養系を確立することができれば、造血幹細胞を大量に作り出すことができると考えられる。現在、世界中の多くの研究室でマウスES細胞から移植可能な造血幹細胞の作成が試みられているが、成功していない。本研究では、マウスES細胞を種々の条件下で培養し、同系マウスの長期骨髄再構築能を有する真の造血幹細胞を特異的に誘導する技術を開発する事を目的として行われ以下の成果が得られた。1.マウスAGM領域からクローニングしたストローマ細胞株A9は造血幹細胞が発生する以前の胎生8日の胚体、卵黄嚢細胞から共培養により長期骨髄再構築能を持った造血幹細胞を生み出す能力を持つことが明らかとなった。A9以外に同様の能力をもったストローマ細胞は現在のところ見つかっていない。造血幹細胞になりうる細胞は胎生8日の胚体、卵黄嚢どちらにも存在し、A9上に発現している分子と接触することにより造血幹細胞としての機能を獲得すると考えられた。現在この分子の遺伝子クローニングが進行中である。2.ストローマ細胞との共培養によりES細胞からも造血幹細胞を生み出すことができるか検討した。ES細胞を分化培養系に移した後、中胚葉系のマーカーであるFlk-1陽性、VE-カドヘリン陰性、PECAM-1陰性の中胚葉細胞を分離後、種々のストローマ細胞株と共培養し、致死量放射線照射マウスに移植した。A9と共培養後移植したマウスにおいてFACSでは検出できなかったが、PCRレベルでドナー由来のメッセージが移植後6ヶ月の時点でも観察できた。A9と共培養することによりES細胞から造血幹細胞を生み出すことが可能と考えられ、今後培養条件など検討する予定である。マウスES細胞から中胚葉細胞だけを誘導にもっとも適した培養条件を検討した。Flk-1陽性、VE-カドヘリン陰性、PECAM-1陰性細胞が中胚葉細胞の指標になることが確認された。ES細胞から誘導した中胚葉細胞を種々のストローマ細胞株と共培養すると、赤血球、マクロファージ、巨核球、肥満細胞など様々な血液細胞が出現した。ストローマ細胞を含まない培地中でもサイトカイン存在下に各種血液細胞が出現した。ES細胞からの造血幹細胞の特異的な誘導の有無を、致死量放射線照射マウスへの移植実験にて検討しているが、現在のところ明らかな骨髄再構築能は認められていない。造血幹細胞は胎生10.5日のマウスAGM領域で発生し、それ以前の卵黄嚢や胚体中には長期骨髄再構築能を持った造血幹細胞は存在しないことが諸家の報告通り確認された。実際、胎生9.5日以前の卵黄嚢や胚体の細胞をいくら多数移植しても生着は全く得られなかった。しかし、これらの細胞をAGM領域からわれわれが樹立したストローマ細胞株(AGMS3)と共培養後移植すると、骨髄はドナー細胞によって完全に置き替わることが明らかとなった。血流が始まる以前の胎生8日の胚体、卵黄嚢細胞をAGMS3と共培養してから移植しても同様に長期骨髄再構築が得られた。他の数種類のストローマ細胞では同様の現象は観察できなかった。以上の結果は造血幹細胞になりうる細胞は胎生8日の胚体、卵黄嚢細胞どちらにも存在し、AGMS3上に発現している分子と一定時間接触することにより造血幹細胞としての機能を獲得すると考えられた。すなわちこのAGMS3は造血幹細胞を生み出す(stem cell genesis)のに必要な分子も発現していると考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-12307017 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12307017 |
胚性幹細胞(ES細胞)からの造血幹細胞誘導システムの構築に関する研究 | ES細胞からの造血幹細胞の誘導にもこの分子が関与している可能性が考えられ実験を行っている。ES細胞はほぼ無限に増やせることから、これらの細胞から造血幹細胞だけに分化させる培養系を確立することができれば、造血幹細胞を大量に作り出すことができると考えられる。現在、世界中の多くの研究室でマウスES細胞から移植可能な造血幹細胞の作成が試みられているが、成功していない。本研究では、マウスES細胞を種々の条件下で培養し、同系マウスの長期骨髄再構築能を有する真の造血幹細胞を特異的に誘導する技術を開発することを目的として行われ以下の成果が得られた。1.マウスAGM領域からクローニングしたストローマ細胞株A9は造血幹細胞が発生する以前の胎生8日の胚体、卵黄嚢細胞から共培養により長期骨髄再構築能を持った造血幹細胞を生み出す能力を持つことが明らかとなった。A9以外に同様の能力を持ったストローマ細胞は現在のところ見つかっていない。造血幹細胞になりうる細胞は胎生8日の胚体、卵黄嚢どちらにも存在し、A9上に発現している分子と接触することにより造血幹細胞としての機能を獲得すると考えられた。現在この分子の遺伝子クローニングが進行中である。2.ストローマ細胞との共培養によりES細胞からも造血幹細胞を生み出すことができるか検討した。ES細胞を分化培養系に移した後、中胚葉系のマーカーであるFlk-1陽性、VE-カドヘリン陰性、PECAM-1陰性の中胚葉細胞を分離後、種々のストローマ細胞株と共培養し、致死量放射線照射マウスに移植した。A9と共培養後移植したマウスにおいてFACSでは検出できなかったが、PCRレベルでドナー由来のメッセージが移植後6ヶ月の時点でも観察できた。A9と共培養することによりES細胞から造血幹細胞を生み出すことが可能と考えられ、今後培養条件など検討する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-12307017 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12307017 |
集計結果および質的資料の社会学的説明モデルの開発 | 集計結果(量的データ)の説明モデルとしては、人口と社会分化(集団数と集団規模)という集計レベルの制約を所与として、その量的制約が、社会関係の取り結びに関する個人選択と規範的作用との関係をどのように条件付けるか、を説明する確率的組合せモデルを開発した。これは平成8年度奨励研究(A)(筆者代表)からの展開である。さらに、社会関係が次々と展開(ないし消滅)していくようなダイナミックなネットワーク形成の側面を取り込むべく、拡張を試みているが、今回の成果としてまとめるには至らなかった。質的資料(質的データ)としては、大学生を対象とした家庭内役割イメージに関する自由記述式の調査データを多角的に分析する中で、質的データの社会学的解読性を高めるいくつかの工夫を試みた。第一の工夫は記述内容のコウディング法である。具体的には記述内容の類似性による分類、役割の性的な非対称性に留意した記述内容のジェンダー性分類、文章の構文や人称に着目した分類等を試み、性別分業意識との関係でそれぞれが異なる意味側面を引き出すことを確認した。第二の工夫は分析方法としてのブール代数アプローチの適用である。これにより、役割イメージのどのような内容が性別分業意識を規定するかの論理関係を析出した他、ブール代数によって役割をフォーマルに定式化し、そのモデルにもとづいて操作化された役割共有度の指標から性別分業意識の賛否が分かれる論点を引き出した。この研究については数名の研究協力者の協力を得ることができ、ある程度まとまった形になったので、研究成果報告書として公表した。平成10年度の研究実績は、大きく次の2点に整理できる。(1).集団間での比率の相違を構造効果の観点から説明する確率的モデル(平成8年度奨励研究(A)で開発)に、社会規範の効果と人びとの選択を組み込んで展開を試みた。これは、集団規模による構造効果を所与としたときに、集団成員が集団内結合(友人選択や結婚)を合理的だと考えるためには、どれくらいの強さの内部結合規範が必要になるかを、モデル解析的に考察したものである。この中途成果は国際社会学会モントリオール大会(1998年夏)で報告し、そこでのコメントや、本補助金のもとでいくつかの大学を訪問して得られた資料・コメントをもとにモデルを改良中である。(2).C.C.Raginのブール代数アプローチを、集団内部および集団間の役割共有度の問題に展開した。役割に、それを構成する要素が階統的に結びついた内部構造を想定し、それをブール式で定式化した。そして、ある役割の内部構造に対する人びとのイメージが必ずしも一致していないときに、当該役割の識別が人びとの間で可能になるための一般的条件を吟味した。役割の内部構造パターンと識別困難性との関係を、数学的な条件式で整理することが目標だが、現在のところはまだそこまで精緻化を進めきれていない。一方で学部学生を対象とした役割イメージに関する簡単な調査を実施し(1998年12月)、そのモデルにもとづいて集団内部および集団間の役割共有度を測定する、という実証的展開を試みた。この中途成果は日本社会分析学会第96回例会(1998年12月)で報告した。いずれの方向性についても、学会報告でのコメントや、本補助金のもとでいくつかの大学を訪問して得られた資料・コメントをもとに、さらに精緻化と展開を企図している。集計結果(量的データ)の説明モデルとしては、人口と社会分化(集団数と集団規模)という集計レベルの制約を所与として、その量的制約が、社会関係の取り結びに関する個人選択と規範的作用との関係をどのように条件付けるか、を説明する確率的組合せモデルを開発した。これは平成8年度奨励研究(A)(筆者代表)からの展開である。さらに、社会関係が次々と展開(ないし消滅)していくようなダイナミックなネットワーク形成の側面を取り込むべく、拡張を試みているが、今回の成果としてまとめるには至らなかった。質的資料(質的データ)としては、大学生を対象とした家庭内役割イメージに関する自由記述式の調査データを多角的に分析する中で、質的データの社会学的解読性を高めるいくつかの工夫を試みた。第一の工夫は記述内容のコウディング法である。具体的には記述内容の類似性による分類、役割の性的な非対称性に留意した記述内容のジェンダー性分類、文章の構文や人称に着目した分類等を試み、性別分業意識との関係でそれぞれが異なる意味側面を引き出すことを確認した。第二の工夫は分析方法としてのブール代数アプローチの適用である。これにより、役割イメージのどのような内容が性別分業意識を規定するかの論理関係を析出した他、ブール代数によって役割をフォーマルに定式化し、そのモデルにもとづいて操作化された役割共有度の指標から性別分業意識の賛否が分かれる論点を引き出した。この研究については数名の研究協力者の協力を得ることができ、ある程度まとまった形になったので、研究成果報告書として公表した。 | KAKENHI-PROJECT-10871032 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10871032 |
肺がん患者における治療前食習慣・腸内細菌とPD-1阻害剤治療の関連について | 免疫チェックポイント阻害剤は、現在行われている肺がん治療の外科治療、薬物治療、放射線治療に続く、第4の治療方法として注目されており、治療方法の狭まる重篤な患者において使用が可能であり、治療選択の幅が広がる。また治療効果の高い治療方法として期待がもたれている。しかし、治療効果については奏功例の効果は高いが、無効例の割合は未だ高く、その原因解明までには至っておらず、治療効果を阻害する要因の解明は緊急の課題である。そこで、本研究では腸内細菌に着目し、治療開始前・治療中の腸内細菌が治療開始前の食生活や治療効果とどのように関連しているか明らかにしていく。免疫チェックポイント阻害剤は、現在行われている肺がん治療の外科治療、薬物治療、放射線治療に続く、第4の治療方法として注目されており、治療方法の狭まる重篤な患者において使用が可能であり、治療選択の幅が広がる。また治療効果の高い治療方法として期待がもたれている。しかし、治療効果については奏功例の効果は高いが、無効例の割合は未だ高く、その原因解明までには至っておらず、治療効果を阻害する要因の解明は緊急の課題である。そこで、本研究では腸内細菌に着目し、治療開始前・治療中の腸内細菌が治療開始前の食生活や治療効果とどのように関連しているか明らかにしていく。 | KAKENHI-PROJECT-19K20201 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K20201 |
分子修飾ナノ粒子を用いた核内受容体を標的とする簡易薬剤スクリーニング法の開発 | 活性化された核内受容体が結合できるペプチドを粒子表面上に修飾することで構築した機能性金ナノ粒子を用いて、核内受容体のリガンドを迅速に評価できるセンサを開発した。本センサは、リガンド結合時における核内受容体の選択的複合体形成を、機能性金ナノ粒子の吸収スペクトル変化で簡便に評価できる。また、30分以内に解析することが可能であり、核内受容体を創薬の標的とした新規薬剤スクリーニング法として期待できる。活性化された核内受容体が結合できるペプチドを粒子表面上に修飾することで構築した機能性金ナノ粒子を用いて、核内受容体のリガンドを迅速に評価できるセンサを開発した。本センサは、リガンド結合時における核内受容体の選択的複合体形成を、機能性金ナノ粒子の吸収スペクトル変化で簡便に評価できる。また、30分以内に解析することが可能であり、核内受容体を創薬の標的とした新規薬剤スクリーニング法として期待できる。核内受容体を分子標的とした医薬開発時での薬剤候補物質のスクリーニング法を、従来法より大幅に迅速・簡便化する為、金ナノ粒子を用いた新規評価法の開発を行った。本年度は、核内受容体結合分子の評価のための機能性金ナノ粒子の構築を行った。金ナノ粒子上に修飾するペプチド配列は、核内受容体に結合するコアクチベータ(SRC-1)に含まれる配列である。コアクチベータペプチド(CLTERHKILHRLLQEGSPSD)をペプチド自動合成機で合成し、N末端のシステインにより、自己組織化単分子膜法(SAM)で金ナノ粒子上に修飾し機能性金ナノ粒子を作成した。SRC-1ペプチド修飾金ナノ粒子の分散特性および構造評価を次の方法で実施した。作成した機能性金ナノ粒子の緩衝液中(pH7.4、HEPES-NaCl)における特性を、UV/Vis吸収スペクトル、動的光散乱粒径測定およびゼータ電位測定により評価した。ナノ粒子の溶液中での分散特性は、粒子表面のゼータ電位に依存する。ゼータ電位を測定した結果およびUV/Vis吸収スペクトルの結果から、核内受容体が機能する溶液条件で分散を維持できることが分かった。また、得られた機能性金ナノ粒子は粒径約25nmであった。さらに、機能性金ナノ粒子上のSRC-1ペプチドの構造評価をCDスペクトル、分子シミュレーションソフトウェアによりおこなった。その結果、結合領域が粒子表面に露出しない可能性が判明した。そのため、PEG分子を導入した新規SRC-1ペプチドを合成し、そのペプチドを修飾した新規機能性金ナノ粒子を構築した。新規に合成したナノ粒子は分散性に優れ、ナノ粒子を用いた新規評価法の構築に期待できる。核内受容体を分子標的とした医薬開発時での薬剤候補物質のスクリーニング法を、従来法より大幅に迅速・簡便化する為、金ナノ粒子を用いた新規評価法の開発を行った。昨年度合成した新規SRC-1ペプチドと核内受容体との結合評価を、免疫評価法および表面プラズモン共鳴測定により行った。その結果、新規に構築したペプチドはアゴニストにより活性化された核内受容体と選択的に結合することが明らかとなった。この新規ペプチドを修飾した金ナノ粒子の分散特性を、動的光散乱粒径測定およびゼータ電位測定およびUV/Vis吸収スペクトルで解析した。その結果から、核内受容体が機能する溶液条件で分散を維持できることが分かった。エストロゲン受容体α(ERα)を分子標的として、リガンド結合時における核内受容体の選択的複合体形成を、機能性金ナノ粒子のスペクトル変化によって評価することができた。また、そのスペクトル変化はリガンドの作用の仕方によって違いがあることがわかった。これはリガンドと結合した核内受容体がリガンド選択的に機能性ペプチドと複合体形成することで、金ナノ粒子の凝集度合いに変化が生じていると考察する。この機能性ペプチドを修飾した金ナノ粒子は、核内受容体のリガンド選択性をスペクトル変化によって評価できるセンサとして機能すると結論した。また、このセンサは、核内受容体とリガンドにラベル化等の標識をする必要が無く、そのうえ、リガンドのアゴニスト活性を30分以内に網羅的な解析することが可能である。これは、現状の評価法と比較して、迅速・簡便化において優位性があり、核内受容体をターゲットとした新規スクリーニング手法として期待できる。 | KAKENHI-PROJECT-21760644 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21760644 |
植物とVA菌根菌との共生を制御する化学因子の解明 | アーバスキュラー菌根(AM)共生におけるAM菌と宿主植物の相互認識機構はほとんど明らかになっていない。AM菌の菌糸は根の近傍に達すると菌糸先端が激しく分岐し、この形態分化はAM菌が最初に示す宿主認識反応と見なされており,根分泌物中に含まれる脂溶性の低分子化合物によって引き起こされることが報告されている。本物質はbranching factor (BF)と呼ばれているものの,これまでに単離・同定がなされていない。そこで、本研究ではミヤコグサとニンジン、ソルガムの根分泌物からBFの精製および構造の解明を目指した。BF活性は新たに開発したGigaspora margaritaの発芽胞子を用いたペーパーディスクアッセイにより評価した。三種類の植物を低リン酸栄養条件下で水耕栽培し、得られた水耕液をDiaion HP-20カラムに通した後,アセトンで溶出して脂溶性の根分泌物を回収した。これを酢酸エチルで抽出したところ,活性はいずれの植物においても中性物質画分のみに見られた。この画分を各種クロマトグラフィーで精製し、ミヤコグサから新規物質である5-デオキシストリゴールを明らかにした。また、ニンジンとソルガム根浸出液に含まれる活性物質がストリゴラクトン類の新規物質であることを併せて明らかにした。5-デオキシストリゴールは1ng/disc30pg/discの範囲でブランチング活性を示した。ストリゴラクトン類は根寄生雑草の種子発芽刺激物質として知られているものである。今回、植物界における普遍的な現象である菌根形成における宿主認識シグナルとしての機能が見出されたことから、根寄生雑草の被宿主植物からも単離されていることも理解できることとなった。アーバスキュラー菌根(AM)共生におけるAM菌と宿主植物の相互認識機構はほとんど明らかになっていない。AM菌の菌糸は根の近傍に達すると菌糸先端が激しく分岐し、この形態分化はAM菌が最初に示す宿主認識反応と見なされており,根分泌物中に含まれる脂溶性の低分子化合物によって引き起こされることが報告されている。本物質はbranching factor (BF)と呼ばれているものの,これまでに単離・同定がなされていない。そこで、本研究ではミヤコグサとニンジン、ソルガムの根分泌物からBFの精製および構造の解明を目指した。BF活性は新たに開発したGigaspora margaritaの発芽胞子を用いたペーパーディスクアッセイにより評価した。三種類の植物を低リン酸栄養条件下で水耕栽培し、得られた水耕液をDiaion HP-20カラムに通した後,アセトンで溶出して脂溶性の根分泌物を回収した。これを酢酸エチルで抽出したところ,活性はいずれの植物においても中性物質画分のみに見られた。この画分を各種クロマトグラフィーで精製し、ミヤコグサから新規物質である5-デオキシストリゴールを明らかにした。また、ニンジンとソルガム根浸出液に含まれる活性物質がストリゴラクトン類の新規物質であることを併せて明らかにした。5-デオキシストリゴールは1ng/disc30pg/discの範囲でブランチング活性を示した。ストリゴラクトン類は根寄生雑草の種子発芽刺激物質として知られているものである。今回、植物界における普遍的な現象である菌根形成における宿主認識シグナルとしての機能が見出されたことから、根寄生雑草の被宿主植物からも単離されていることも理解できることとなった。アーバスキュラー菌根(AM)共生においてAM菌がどのようにして宿主植物を認識するのかほとんど明らかになっていない。AM菌の菌糸は根の近傍に達すると菌糸先端が激しく分岐する。この形態分化はAM菌の宿主認識反応と見なされており,根分泌物中に含まれる脂溶性の低分子化合物によって引き起こされることが分かっている。本物質はAM共生研究者の間でbranching factor(BF)と呼ばれているものの,これまでに単離・同定がなされていない。本研究ではミヤコグサとニンジンの根分泌物からのBFの精製を行った。BF活性は新たに開発したGigaspora margaritaの発芽胞子を用いたペーパーディスクアッセイにより評価した。ミヤコグサおよびニンジンを低リン酸栄養条件下で水耕栽培し、得られた水耕液をDiaion HP-20カラムに通した後,アセトンで溶出して脂溶性の根分泌物を回収した。これを酢酸エチルで抽出したところ,活性は両植物共に中性物質画分のみに見られた。この画分を各種クロマトグラフィーで精製したところ、ミヤコグサとニンジンとでは活性物質の溶出画分が全く異なることから、これら植物が異なるBFを生産することが明らかとなった。ミヤコグサでは160lの水耕液からBFの精製を行い、最終的に逆相ODS HPLC分取により20ng/disc以下で活性を示す精製画分を得た。また、ニンジンも同様に250lの水耕液からBFの精製を行い、最終的に逆相ODS HPLC分取により活性ピークを1つ特定した。しかしながら両者ともに得られた活性物質が極めて微量であったため、スペクトル解析は困難であった。アーバスキュラー菌根(AM)共生におけるAM菌と宿主植物の相互認識機構はほとんど明らかになっていない。AM菌の菌糸は根の近傍に達すると菌糸先端が激しく分岐し、この形態分化はAM菌が最初に示す宿主認識反応と見なされており,根分泌物中に含まれる脂溶性の低分子化合物によって引き起こされることが報告されている。 | KAKENHI-PROJECT-15580097 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15580097 |
植物とVA菌根菌との共生を制御する化学因子の解明 | 本物質はbranching factor (BF)と呼ばれているものの,これまでに単離・同定がなされていない。そこで、本研究ではミヤコグサとニンジンの根分泌物からのBFの精製を行い、構造の解明を目指した。BF活性は新たに開発したGigaspora margaritaの発芽胞子を用いたペーパーディスクアッセイにより評価した。ミヤコグサおよびニンジンを低リン酸栄養条件下で水耕栽培し、得られた水耕液をDiaion HP-20カラムに通した後,アセトンで溶出して脂溶性の根分泌物を回収した。これを酢酸エチルで抽出したところ,活性は両植物共に中性物質画分のみに見られた。この画分を各種クロマトグラフィーで精製したところ、ミヤコグサとニンジンとでは活性物質の溶出画分が全く異なることから、これら植物が異なるBFを生産することが明らかとなった。ミヤコグサの水耕液からBFの精製を行い、最終的に逆相ODS HPLC分取により10pg/disc以下で活性を示すBFを得た。また、ニンジンからも同様に水耕液からBFの精製を行い、最終的に逆相ODS HPLC分取によりBFを分取した。両活性成分について現在構造解析を進めている。 | KAKENHI-PROJECT-15580097 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15580097 |
カルシウム感知受容体による尿酸性化調節機構の解析 | 腎髄質にある太いヘンレの上行脚を用手的に単離した後に、灌流実験を行い、カルシウム感知受容体を介するpH調節機構を解析した。その結果、生理的な重炭酸イオンを含む灌流液の下では、カルシウム感知受容体を刺激する薬剤を投与すると細胞内がアルカリ化されることが分かった。そして、この調節機構はナトリウムイオンには非依存性で、カリウムイオンに依存していることを初めて立証することに成功した。腎髄質にある太いヘンレの上行脚を用手的に単離した後に、灌流実験を行い、カルシウム感知受容体を介するpH調節機構を解析した。その結果、生理的な重炭酸イオンを含む灌流液の下では、カルシウム感知受容体を刺激する薬剤を投与すると細胞内がアルカリ化されることが分かった。そして、この調節機構はナトリウムイオンには非依存性で、カリウムイオンに依存していることを初めて立証することに成功した。我々は、微小単離尿細管灌流法を用いた実験により、腎髄質部の太いヘンレの上行脚(mTAL)の血管側に、カルシウム感知受容体(CaR)作動薬であるネオマイシンを投与すると、細胞内が酸性化されるという現象を報告した。しかしながら、この実験系では、重炭酸イオンを含まない灌流液を用いたので、より生理的な重炭酸イオンを含む灌流液で、再度実験を行った。その結果、従来の我々の報告とは反対に、この実験条件下では、ネオマイシン(0.4mM)を血管側に加えると細胞内がアルカリ化するという新しい事実が判明した。この結果を検証するために追加実験を行い、最終的には重炭酸イオンを含む灌流液下で、定常状態のmTALの細胞内pHは7.17±0.01であり、ネオマイシンを投与すると7.28±0.02まで細胞内がアルカリ化されることがわかった。この結果を受けて、Na-H交換体・H-ATPaseやH-K-ATPaseがmTALにおけるカルシウム感知受容体作動薬投与時の細胞内アルカリ化に関与していないかを確認するため、様々な実験条件下で研究を推し進めた。その結果、ネオマイシン投与によるmTALの細胞内アルカリ化に、Naイオンは関与しておらず、一方、Kイオン非存在下では細胞内アルカリ化が消失することが明らかになった。今後は、Kイオンに依存するCaR作動薬投与時のmTALにおける細胞内アルカリ化現象の詳細を解明するために、研究を継続する予定である。昨年度までに、我々は微小単離尿細管灌流法を用いた実験により、腎髄質部の太いヘンレの上行脚(mTAL)の血管側に、カルシウム感知受容体(CaR)作動薬であるネオマイシンを投与すると、生理的な重炭酸イオンを含む灌流液の下では、細胞内がアルカリ化するということを明らかにした。さらに、灌流液中のNaイオンあるいはKイオンを除いた液を用いて実験を行い、この現象にはNaイオンは関与しておらず、Kイオンに依存しているという事実も見出した。今年度は、CaR作動薬投与時の細胞内アルカリ化に対し、Kイオンが、どのようなメカニズムを介して寄与しているかを明白にするため研究を推し進めた。初めにH^+-K^+-ATPaseの阻害薬であるSch28080を管腔側に投与した際に、細胞内アルカリ化が影響を受けるか否かを確かめた。その結果、ネオマイシン投与前の細胞内pHはiPH7.07±0.02だったが、管腔側に20μmol/lのSch28080存在下にネオマイシンを投与した際はiPH7.08±0.01とほとんど変化がみられず、細胞内アルカリ化が抑制されることがわかった。次年度は、微小単離尿細管灌流法を用いたmTALの解析がほぼ終了したので、集合尿細管などの他の尿細管分節におけるCaRの細胞内pH制御について研究を継続する。また、尿中落下尿細管細胞培養系を用いた腎結石症症例からの尿細管上皮でのCaRの発現や機能異常についての検討を行う予定である。今年度は、腎結石症症例から尿中落下尿細管細胞培養系を用いて、尿細管上皮でのカルシウム感知受容体(CaR)の発現や機能解析を行う予定だった。しかし、個人情報保護の理念を遵守する旨をお話したにも関わらず、御同意を得ることができず、最終的には本研究手法を用いた検討を行うことが出来なかった。一方、昨年度までに微小単離尿細管灌流法を用いて、腎髄質部の太いヘンレの上行脚(mTAL)の血管側に、CaR作動薬投与時の細胞内アルカリ化がKイオンに依存性であることを立証した。今年度は、この事実をさらに裏付けるためにH+-K+-ATPaseの阻害薬であるウアバインを用いた実験を行った。管腔側に1.5mMのウアバイン存在下または非存在下に、血管側に0.4mMのネオマイシンを投与して、その前後の細胞内pHを測定した。その結果、投与前のipHは7.06±0.03で投与後は7.08±0.03とほとんど変化がみられず、ウアバインによってネオマイシンによる細胞内アルカリ化が抑制されることがわかった。なお、今年度はmTAL以外の尿細管分節におけるCaRを介した細胞内pH制御について研究を推し進める予定であったが、細胞活性を維持した状態で尿細管を単離することが予想外に困難だったため、報告に値する十分な検討が出来なかった。 | KAKENHI-PROJECT-20590942 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20590942 |
カルシウム感知受容体による尿酸性化調節機構の解析 | 最終的に、今年度の研究ではCaR作動薬の一つであるネオマイシンをmTALの血管側に添加した際にみられる細胞内アルカリ化は、管腔側に発現しているH+-K+-ATPaseを介したプロトンの分泌亢進によって生じるものと結論付けた。 | KAKENHI-PROJECT-20590942 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20590942 |
上下地震動を受ける単層及び複層立体ラチスドームの崩壊機構の分析と耐震性能評価 | 偏平ドームは曲面構造物のひとつである。この種の構造が上下地震動を受ける場合には、その構造特性によってはドーム中央部にきわめて大きな加速度応答の発生が報告されている。また、この種の構造の耐震安全性の検討手法の整備の必要性が指摘されている。そこで、本研究では、偏平ドームの構造形式のひとつである単層並びに複層立体ラチスドームを対象とした。そしてそれらの上下地震時動的崩壊機構の分析・検討に基づいた耐震性評価のために以下のことを明らかにした。単層ドームの上下地震時の荷重については以下の結果が得られた。1.幾何学的非線形及び両端ピン支持部材の部材座屈の復元力特性を考慮した弾塑性動的解析法の実用解析としての能率性の検討を行ない、解の精度ならびに計算時間に対する効率性を明らかにした。2.動的解析のために設計されたドームの固有振動数ならびに振動モードの分析を行なった。3.本ドームの動的座屈性状を分析するとともにドームを動的崩壊にいたらしめるのに必要な最大加速度を明らかにした。複層ドームの上下地震時の荷重については以下の結果が得られた。1.ドームを崩壊に至らしめるに必要な入力波の最大加速度の算定(崩壊最大加速度)を行った。2.崩壊最大加速度の推定法を提案し、その妥当性の検討も行われた。3.推定法の誘導の過程から算出される崩壊時のドームの耐震性を静的な震度に換算した崩壊静的震度の資料蓄積に基づいた耐震性能評価法を提案した。偏平ドームは曲面構造物のひとつである。この種の構造が上下地震動を受ける場合には、その構造特性によってはドーム中央部にきわめて大きな加速度応答の発生が報告されている。また、この種の構造の耐震安全性の検討手法の整備の必要性が指摘されている。そこで、本研究では、偏平ドームの構造形式のひとつである単層並びに複層立体ラチスドームを対象とした。そしてそれらの上下地震時動的崩壊機構の分析・検討に基づいた耐震性評価のために以下のことを明らかにした。単層ドームの上下地震時の荷重については以下の結果が得られた。1.幾何学的非線形及び両端ピン支持部材の部材座屈の復元力特性を考慮した弾塑性動的解析法の実用解析としての能率性の検討を行ない、解の精度ならびに計算時間に対する効率性を明らかにした。2.動的解析のために設計されたドームの固有振動数ならびに振動モードの分析を行なった。3.本ドームの動的座屈性状を分析するとともにドームを動的崩壊にいたらしめるのに必要な最大加速度を明らかにした。複層ドームの上下地震時の荷重については以下の結果が得られた。1.ドームを崩壊に至らしめるに必要な入力波の最大加速度の算定(崩壊最大加速度)を行った。2.崩壊最大加速度の推定法を提案し、その妥当性の検討も行われた。3.推定法の誘導の過程から算出される崩壊時のドームの耐震性を静的な震度に換算した崩壊静的震度の資料蓄積に基づいた耐震性能評価法を提案した。 | KAKENHI-PROJECT-05750552 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05750552 |
レトロウイルスの複製と細胞のスプライシング機構との関係の解明 | 本研究は、レトロウイルスが、env-mRNAへとスプライスされるはずのRNAを、非スプライスRNAのままでも核から細胞質へ移送している機構を解明することを目的に行なった。マウス白血病ウイルスのGag蛋白を効率よく発現するウイルスベクターを構築する際に、pol領域に2.4kbの欠失をもち、gag及びenvをコードするウイルスGE6.4は、よくGag(並びにEnv)蛋白を発現したが、GE6.4から残存pol-env部分の殆どを欠失し、gagだけをコードするようにしたG3.6では、RNA、蛋白の発現が大きく減少した。この原因として、Env蛋白発現の有無は無関係だったが、GE6.4からスプライスアクセプターを含む441塩基を欠失すると、gag-RNAの発現がG3.6と同じレベルまで低下することが分かった。G3.6のgag遺伝子下流にこの441塩基部分だけを戻すことで、gagをコードする非スプライスRNA量を上昇し、Gag蛋白発現を回復できた。しかし、GE6.4で、この441塩基部分を逆位させても、欠失させた場合と同様にgag発現量が減少したので、この部分はエンハンサーとして機能しているわけではない。核と細胞質とを分けてRNA量を比較したところ、G3.6の非スプライスRNAは、GE6.4に比して、核内に多く留まっていることが分かった。従って、スプライスアクセプターを欠くG3.6のRNAは、核から細胞質への移行が悪く、核内で壊れてしまうため発現量が低下すると結論された。gag遺伝子をneomycin耐性遺伝子に変えた場合には、上のような現象は認められず、スプライスアクセプターの有無に係わらず、非スプライスRNAが効率よく発現した。gag遺伝子が自らのRNA(=非スプライスRNA)発現のためにスプライスアクセプターを必要とすることは、ウイルスが非スプライスとスプライス両方のRNAを発現する上で合理的であると考えられるが、gag遺伝子配列内にそのような決定配列があるのかは今後の検討を要する。本研究は、レトロウイルスが、env-mRNAへとスプライスされるはずのRNAを、非スプライスRNAのままでも核から細胞質へ移送している機構を解明することを目的に行なった。マウス白血病ウイルスのGag蛋白を効率よく発現するウイルスベクターを構築する際に、pol領域に2.4kbの欠失をもち、gag及びenvをコードするウイルスGE6.4は、よくGag(並びにEnv)蛋白を発現したが、GE6.4から残存pol-env部分の殆どを欠失し、gagだけをコードするようにしたG3.6では、RNA、蛋白の発現が大きく減少した。この原因として、Env蛋白発現の有無は無関係だったが、GE6.4からスプライスアクセプターを含む441塩基を欠失すると、gag-RNAの発現がG3.6と同じレベルまで低下することが分かった。G3.6のgag遺伝子下流にこの441塩基部分だけを戻すことで、gagをコードする非スプライスRNA量を上昇し、Gag蛋白発現を回復できた。しかし、GE6.4で、この441塩基部分を逆位させても、欠失させた場合と同様にgag発現量が減少したので、この部分はエンハンサーとして機能しているわけではない。核と細胞質とを分けてRNA量を比較したところ、G3.6の非スプライスRNAは、GE6.4に比して、核内に多く留まっていることが分かった。従って、スプライスアクセプターを欠くG3.6のRNAは、核から細胞質への移行が悪く、核内で壊れてしまうため発現量が低下すると結論された。gag遺伝子をneomycin耐性遺伝子に変えた場合には、上のような現象は認められず、スプライスアクセプターの有無に係わらず、非スプライスRNAが効率よく発現した。gag遺伝子が自らのRNA(=非スプライスRNA)発現のためにスプライスアクセプターを必要とすることは、ウイルスが非スプライスとスプライス両方のRNAを発現する上で合理的であると考えられるが、gag遺伝子配列内にそのような決定配列があるのかは今後の検討を要する。 | KAKENHI-PROJECT-05770206 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05770206 |
自然言語処理の手法を用いた自律的言語学習支援システムの開発と評価 | (1)言語学習タスクとしてのアノテーションワークショップ言語学習タスクとして自然言語アノテーションワークショップをデザインしパイロット調査を実施した。学習者が翻訳とその評価に取り組むことで、言語意識を高めることを目標としている。また、学習の振り返りと実際の成果をデータとして収集できるようにし、継続的に学習状況を把握できるように設計した。この研究についてCALL分野の国際会議で発表を行った。(2)翻訳と言い換えのデータセットの構築ワークショップで使用する翻訳と言い換えのデータセットを構築した。昨年度作成したデータセット構築に用いた機械翻訳手法とは別の手法で言い換えの文対を収集してデータを拡張した。また、翻訳のバリエーションを追加するために人手翻訳も追加した。昨年度構築したデータセットに関して、自然言語処理分野の国際会議併設のワークショップで発表を行った。(3)評価極性分析のためのデータセットの構築句単位で評価極性情報をレビュー文書に付与しデータセットを構築した。この研究については、国内の学会全国大会で発表を行った。単語より長く、文より短い単位で極性を付与することで、学習者の振り返りのエッセイなどからより詳細に学習者の評価を捉えることができるようになると考えられる。学習者の振り返りのエッセイの特徴を抽出する実験とモデル化は今後の課題である。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。(1)学習者の自己評価に使われることばの特徴を調査するためにデータを収集した。英語学習者を対象に、約3ヶ月間、毎週の学習の振り返りエッセイとその週のモチベーションのレベルを収集した。収集したデータを今後、分析・活用するために、前処理を行った。(2)学習支援実践の一部として言語学習ワークショップを実施する計画を立て、そのデザインに着手し、必要なデータを構築した。自然言語処理研究分野の一タスクである「言い換え認識」に使用するコーパスを構築する新手法を提案し、日本語の言い換えコーパスを構築した。本手法は二つのパートからなる。一つは、複数の機械翻訳器を用いて言い換えの候補文対を生成するもので、もう一つは単言語コーパスからランダムに文対を収集するものである。これらの候補文対の単語一致率を用いてサンプリングすることで、バランスのとれたコーパスを構築することができた。このコーパスは自然言語処理の分野でも有用であり、本研究においても重要なデータセットとなる。言語学習ワークショップは二部構成で、「翻訳」と「言い換え(平易化)」のタスクをデザインした。先述のコーパス構築で用いた手法をワークショップに応用する。翻訳タスクに使用する翻訳器に関しては、本タスクにおいて教育効果を最大限に引き出すためにはどのような翻訳器を採用するのが妥当か、現在、実験をしながら選定作業を進めている。(3)自然言語処理分野の著名な国際会議に聴講参加し、他機関の研究者と意見交換を行った。また、次年度に滞在予定の大学を訪問し、研究協力の依頼・相談を行った。さらに、関連する国内のシンポジウム・全国大会等で発表した。本研究は言語学習者の自律性を促進するための言語学習支援システムを開発することが目的である。自然言語処理の手法を用いて言語学習環境をデザインし評価する本研究は、言語教育分野と自然言語処理分野の融合であるが、これらを統合する段階にはまだ十分に到達していない。データの構築に関しては予定を変更して取り組んだため若干全体の進捗に遅れが生じているが、本研究における重要なデータセットを構築することができた。これまでの成果を国内外で発表している(国内シンポジウム・全国大会でのポスター発表が2件、国際会議採択1件)。このように全体的にはおおむね順調に進展しているが、当初の計画からはやや遅れていると判断する。(1)言語学習タスクとしてのアノテーションワークショップ言語学習タスクとして自然言語アノテーションワークショップをデザインしパイロット調査を実施した。学習者が翻訳とその評価に取り組むことで、言語意識を高めることを目標としている。また、学習の振り返りと実際の成果をデータとして収集できるようにし、継続的に学習状況を把握できるように設計した。この研究についてCALL分野の国際会議で発表を行った。(2)翻訳と言い換えのデータセットの構築ワークショップで使用する翻訳と言い換えのデータセットを構築した。昨年度作成したデータセット構築に用いた機械翻訳手法とは別の手法で言い換えの文対を収集してデータを拡張した。また、翻訳のバリエーションを追加するために人手翻訳も追加した。昨年度構築したデータセットに関して、自然言語処理分野の国際会議併設のワークショップで発表を行った。(3)評価極性分析のためのデータセットの構築句単位で評価極性情報をレビュー文書に付与しデータセットを構築した。この研究については、国内の学会全国大会で発表を行った。単語より長く、文より短い単位で極性を付与することで、学習者の振り返りのエッセイなどからより詳細に学習者の評価を捉えることができるようになると考えられる。学習者の振り返りのエッセイの特徴を抽出する実験とモデル化は今後の課題である。予定通り実践を行いデータを収集する。収集したデータを分析するとともに学習プロセスの可視化に取り組む。実践は、日本の英語学習者とデンマークの日本語学習者を対象に自然言語処理の手法を用いた言語学習ワークショップを実施する。アクションリサーチの枠組みで、機械翻訳と言い換えを主に利用しコミュニケーションストラテジーの育成と言語意識を高めることを目的としたワークショップを複数回実施し、データを収集する。この研究成果を国内外の会議で発表し、論文誌への投稿を予定している。学習プロセスの可視化に関しては、最終年度中に当初計画していた方法でできない可能性があるが、再度手法を検討中である。 | KAKENHI-PROJECT-16J07384 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J07384 |
自然言語処理の手法を用いた自律的言語学習支援システムの開発と評価 | 29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-16J07384 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J07384 |
全血を試料とした単剤及び多剤併用時の薬毒物中毒評価に関する基礎データの構築 | 昨年度まで全血中のフェノチアジン化合物を珪藻土カラム(K-Soute)と酢酸エチルの組み合わせで抽出すると化合物が検出できない現象に遭遇した。一方、血清においては、検出されるものの低濃度では検出されない傾向が認められた。珪藻土カラムは、全血を用いた抽出に於いてエマルジョンを形成しない利点があり法中毒学的にも有意義な抽出方法である。本年度は、異なる珪藻土カラム、Chem Elut、EXtrelut NT1、ISOLUTE、K-Soluteを用い、異なる有機溶媒で全血及び血清中のフェノチアジン化合物の抽出を行い結果を比較した。溶出溶媒には、酢酸エチル、メチルt-ブチルエーテル、ジクロロメタン:イソプロパノール(8:2)、ヘキサンー酢酸エチル(9:1)、クロロホルム:メタノール(9:1)を用いた。化合物の分析は、液体クロマトグラフ質量分析計で行った。前年度まで、K-Soluteと酢酸エチルの組み合わせは、フェノチアジン化合物の抽出には不向きであったが、メチルt-ブチルエーテルを用いることで改善が認められた。しかし、同溶媒は、Chem Elutに対して回収率が低いためより多くの溶媒が必要となることが判明した。対象とした珪藻土カラムを用いて全血及び血清中のフェノチアジン化合物を抽出する際には、酢酸エチルとメチルt-ブチルエーテルが有効であることが判明した。一方、全ての珪藻土カラムの抽出後、N-oxide等の酸化された化合物が検出された。入手可能であった酸化物の標準品を用い定量したところ、約10%以下の割合で酸化物が検出された。同定には至らなかったが他の酸化物と思われるピークも検出されたことから、珪藻土カラムを用いてフェノチアジン化合物を抽出する際は、ある程度の割合で化合物が酸化される可能性が示唆された。他の化合物に於いても同様の酸化が惹起される可能性が考えられる。抽出方法の問題点は、本年度で改善されたが回避できない事実も判明した。一方、実際の急性中毒事例は、中毒起因化合物がほぼ限定される傾向にあり、化合物の種類を増やす点に於いて困難である。現在まで集めた全血及び血清中の化合物定量値を用いて解析を実施する。また、代謝物の測定を実施することで、何らかの傾向が認められるか解析を行う予定である。本年度は、当院高度救命救急センターへ搬送された急性中毒患者を対象とした血清及び全血中の中毒起因化合物の分析を行った。試料は、同じ時間に採血された試料を用いて濃度の比較を行った。抽出は、固相抽出で行った。その結果、化合物によって主に3つのパターンに分かけられた。カフェインは、血清と全血の濃度比は、濃度によらずほぼ1であった。また、多くの化合物は、血清の方が全血よりやや高い濃度(12倍の範囲)で検出される傾向があった。これは、濃度に依存しないと思われた。更に、クエチアピンは、低濃度にでは血清の方が高濃度であったが、濃度上昇に伴いほぼ同じ割合に減少する傾向が認められた。また、フェノチアジン系化合物に於いては、全血中濃度が極端に低くなる傾向が認められた。最近の法医解剖試料は、QuEChERS法が薬物抽出に用いられる。また、全血からの薬物抽出には、しばしば珪藻土カラムが用いられる。そこで、QuEChERS法と珪藻土としてK-Soluteを用いて全血からの抽出の比較を行ったところ、QuEChERS法では血清と同じように抽出が可能であった。しかし、K-Soluteでは濃度に関係なく全く検出されなかった。次にメーカーの異なる珪藻土、K-Solute、ChemElut、ISOLUTEを用いて比較したところ、K-Solute以外は、似たような結果が得られた。更に、K-Soluteの抽出液のスキャン分析を試みたところ、フェノチアジン化合物が酸化を受けている可能性が考えられた。そこで、フェノチアジンの酸化代謝物の試薬で確認したところ、現在までN-オキサイド体が確認された。ChemElut、ISOLUTEによる抽出に於いても、N-オキサイドが確認された。また、フェノチアジンの構造上、他の部位も酸化を受ける可能性がある。検出されない原因が酸化によるものか否か、現在、解明を行っている。今年度は、急性薬物中毒患者の搬送症例が例年と比べ極端に少なかったため、データの収集が例年の症例数からの予想より少なかった。これは冬期の寒冷が影響していることに起因すると考えられる。更に薬剤の安全性の問題から、ごく最近、販売を中止した薬剤がある。これも減少した一因と考えられる。一方、集めた薬物データには、化合物としての偏りがあるため、更に多岐にわたるデータの蓄積を行う必要がある。また、フェノチアジン系化合物を珪藻土で抽出する際、製品により異なるデータが得られることが判明した。現在、この点を通常の固相抽出を含めて解明あるいは回避する方法を見つけている。昨年度まで全血中のフェノチアジン化合物を珪藻土カラム(K-Soute)と酢酸エチルの組み合わせで抽出すると化合物が検出できない現象に遭遇した。一方、血清においては、検出されるものの低濃度では検出されない傾向が認められた。珪藻土カラムは、全血を用いた抽出に於いてエマルジョンを形成しない利点があり法中毒学的にも有意義な抽出方法である。 | KAKENHI-PROJECT-17K09278 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K09278 |
全血を試料とした単剤及び多剤併用時の薬毒物中毒評価に関する基礎データの構築 | 本年度は、異なる珪藻土カラム、Chem Elut、EXtrelut NT1、ISOLUTE、K-Soluteを用い、異なる有機溶媒で全血及び血清中のフェノチアジン化合物の抽出を行い結果を比較した。溶出溶媒には、酢酸エチル、メチルt-ブチルエーテル、ジクロロメタン:イソプロパノール(8:2)、ヘキサンー酢酸エチル(9:1)、クロロホルム:メタノール(9:1)を用いた。化合物の分析は、液体クロマトグラフ質量分析計で行った。前年度まで、K-Soluteと酢酸エチルの組み合わせは、フェノチアジン化合物の抽出には不向きであったが、メチルt-ブチルエーテルを用いることで改善が認められた。しかし、同溶媒は、Chem Elutに対して回収率が低いためより多くの溶媒が必要となることが判明した。対象とした珪藻土カラムを用いて全血及び血清中のフェノチアジン化合物を抽出する際には、酢酸エチルとメチルt-ブチルエーテルが有効であることが判明した。一方、全ての珪藻土カラムの抽出後、N-oxide等の酸化された化合物が検出された。入手可能であった酸化物の標準品を用い定量したところ、約10%以下の割合で酸化物が検出された。同定には至らなかったが他の酸化物と思われるピークも検出されたことから、珪藻土カラムを用いてフェノチアジン化合物を抽出する際は、ある程度の割合で化合物が酸化される可能性が示唆された。他の化合物に於いても同様の酸化が惹起される可能性が考えられる。抽出方法の問題点は、本年度で改善されたが回避できない事実も判明した。一方、実際の急性中毒事例は、中毒起因化合物がほぼ限定される傾向にあり、化合物の種類を増やす点に於いて困難である。フェノチアジン系の化合物を抽出する際の最適な方法を検討しているため、これを継続的に行う。臨床データに関しては、継続的にデータの蓄積を行うが、進捗により論文化することを計画している。現在まで集めた全血及び血清中の化合物定量値を用いて解析を実施する。また、代謝物の測定を実施することで、何らかの傾向が認められるか解析を行う予定である。本年度、薬物の抽出方法により定量値が異なる現象が見つかった。特にフェノチアジン系化合物に顕著に認められた。この原因と解決策を見つけるために時間を要しているため本年度中に使用することができなかった。次年度は、この点の解決策を見いだすことを課題の1つに加えて使用する消耗品代に充当する計画である。本年度は、実際の中毒症例数が予測より少なかったため、消耗品として使用できなかった。次年度は、当初の計画に加え、代謝物の分析も実施する予定である。これに関しては、前年度からの繰り越し額を充当する計画である。 | KAKENHI-PROJECT-17K09278 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K09278 |
δ-アミノレブリン酸合成酵素の発現が赤血球分化に果たす役割の解析 | マウス赤白血病(MEL)細胞はジメチルスルフオキシド(DMSO)処理等により赤血球分化を始める。我々はMEL細胞由来でありながら赤血球分化を行なわないDR株を樹立し、赤血球型δ-アミノレブリン酸合成酵素(ALAS-E)が発現していないことを明らかにした。DR細胞ではALAS-E以外のヘム合成系酵素の分化に伴う誘導は認められたが、誘導の程度はMEL細胞の1/3以下であった。さらにβ-グロビンmRNAはMEL細胞では分化誘導と共に50倍以上に増加するにもかかわらず、DR細胞においては1/10以下に低下していた。このことはALAS-Eが発現していないDR細胞ではヘムが減少し、結果として赤血球系の転写因子に異常が起きたことを示している。そこで赤血球系転写因子の代表であるGATA-1を調べてみたが何の異常もなかった。次にNF-E2の大サブユニット(p45)と小サブユニット(p18)の発現を調べたところ、DR細胞ではp45の発現が抑制されていた。そこで、ALAS-Eの発現がp45の発現を調節していることを確かめるために、正常なMEL細胞にALAS-EのアンチセンスRNAを発現させた。その結果、ALAS-Eの発現抑制の程度に比例したヘム合成系諸酵素とβ-グロビンの発現の抑制と、細胞内ヘム濃度の減少が明らかになった。さらにこの細胞系に於てもp-45の発現が著明に抑制されていた。NF-E2はALAS-E以外の赤血球系のヘム合成酵素とグロビンの転写を調節している事が最近明かとなったので、これらの事実から赤血球分化時に於てはALAS-Eの誘導がまず起き、結果として増加したヘムによりNF-E2(特にp45)が誘導され、さらにNF-E2によりALAS-E以外のヘム合成系酵素とグロビンの転写が高まるという正のフィードバック調節が行なわれていることが示された。マウス赤白血病(MEL)細胞はジメチルスルフオキシド(DMSO)処理等により赤血球分化を始める。我々はMEL細胞由来でありながら赤血球分化を行なわないDR株を樹立し、赤血球型δ-アミノレブリン酸合成酵素(ALAS-E)が発現していないことを明らかにした。DR細胞ではALAS-E以外のヘム合成系酵素の分化に伴う誘導は認められたが、誘導の程度はMEL細胞の1/3以下であった。さらにβ-グロビンmRNAはMEL細胞では分化誘導と共に50倍以上に増加するにもかかわらず、DR細胞においては1/10以下に低下していた。このことはALAS-Eが発現していないDR細胞ではヘムが減少し、結果として赤血球系の転写因子に異常が起きたことを示している。そこで赤血球系転写因子の代表であるGATA-1を調べてみたが何の異常もなかった。次にNF-E2の大サブユニット(p45)と小サブユニット(p18)の発現を調べたところ、DR細胞ではp45の発現が抑制されていた。そこで、ALAS-Eの発現がp45の発現を調節していることを確かめるために、正常なMEL細胞にALAS-EのアンチセンスRNAを発現させた。その結果、ALAS-Eの発現抑制の程度に比例したヘム合成系諸酵素とβ-グロビンの発現の抑制と、細胞内ヘム濃度の減少が明らかになった。さらにこの細胞系に於てもp-45の発現が著明に抑制されていた。NF-E2はALAS-E以外の赤血球系のヘム合成酵素とグロビンの転写を調節している事が最近明かとなったので、これらの事実から赤血球分化時に於てはALAS-Eの誘導がまず起き、結果として増加したヘムによりNF-E2(特にp45)が誘導され、さらにNF-E2によりALAS-E以外のヘム合成系酵素とグロビンの転写が高まるという正のフィードバック調節が行なわれていることが示された。血色素合成に必要なヘムとグロビンを協調的に合成調節されることは昔から知られており、また双方の転写調節に関与する赤血球特異的転写因子の存在が最近明かにされてきている。しかしながら、その相互調節の上でヘムとグロビンのいずれが優位にあるのかについてはまだ明かではなかった。そこで、DR-1細胞におけるヘムとグロビンの合成調節の研究を行ない、ヘム合成系の誘導がグロビン遺伝子の発現に必須であること、調節は転写及び転写後の双方のレベルで行われていることを明かにした(Blood、印刷中)。またDR-1細胞を用い、ヘム合成系の最終酵素であるフェロキラターゼmRNAの安定な発現のためにヘムが必須であることを見出した。(Brit.J.Haematol.、印刷中)。一方、正常MEL細胞にALAS-EアンチセンスRNAを導入・発現しそのヘム系に及ぼす影響を観察した。その結果ALAS-Eの発現の減少に伴い、後続するヘム合成系諸酵素の発現が減少することを明かにした。この減少は我々が既にCR-1細胞で観察したものとよく一致している。そこで、その機構を解明するために赤血球特異的転写因子のひとつであるNFE-2に着目し、予備的実験でALAS-Eの減少によるヘム合成の抑制がNFE-2の遺伝子発現を抑制するのではないかという結果を得た。この結果が正しければ、最近NFE-2の結合領域がヘム合成系諸酵素においても存在することが明かにされたので(Regulation of Heme Protein Synthesis,H Fujita,ed.,AlphaMed Press,Ohio,1994)赤血球系ヘム | KAKENHI-PROJECT-05670136 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05670136 |
δ-アミノレブリン酸合成酵素の発現が赤血球分化に果たす役割の解析 | 代謝調節の解明に繋るのではないかと期待される。更に、平成6年度の研究の準備としてALAS-EcDNAを導入・発現したDR-1細胞を作成した。マウス赤白血病(MEL)細胞はジメチルスルフオキシド(DMSO)処理等により赤血球分化を始める。我々はMEL細胞由来でありながらDMSO処理にもかかわらず赤血球分化を行なわないDR株を樹立し、赤血球型δ-アミノレブリン酸合成酵素(ALAS-E)が発現していないことを明らかにした。DR細胞ではALAS-E以外のヘム合成系酵素のDMSO処理後の誘導は認められたが、誘導の程度はMEL細胞の1/3以下であった。さらにβ-グロビンmRNAはMEL細胞では分化誘導と共に50倍以上に増加するにもかかわらず、DR細胞においては1/10以下に低下していた。このことはDR細胞ではALAS-Eが発現していないためにヘムが減少し、その結果として赤血球系の転写因子に何らかの異常が起きたことを示唆している。そこで赤血球系転写因子の代表であるCATA-1の発現を調べてみたが何の異常も認められなかった。次にNF-E2の大サブユニット(p45)と小サブユニット(p18)の発現を調べたところ、DR細胞ではp45の発現が抑制されていることが明らかとなった。そこで、ALAS-Eの発現がp45の発現を調節していることを確かめるために、正常なMEL細胞にALAS-EのアンチセンスRNAを発現させその影響を調べた。その結果、ALAS-Eの発現抑制の程度に比例したヘム合成系諸酵素とβ-グロビンの発現の抑制と、結果としての細胞内ヘム濃度の減少が明らかになった。さらにこの細胞系に於てもp-45の発現が著明に抑制されていることが示された。NF-E2はALAS-E以外の赤血球系のヘム合成酵素とグロビンの転写を調節している事が最近明かとなったので、これらの事実から赤血球分化時に於てはALAS-Eの誘導がまず起き、結果として増加したヘムによりNF-E2(特にp45)が誘導され、さらにNF-E2によりALAS-E以外のヘム合成系酵素とグロビンの転写が高まるという正のフィードバック調節が行なわれていることが示唆された。我々は鉄芽球性貧血においてALAS-Eの発現の異常が起きることを見いだしており、今後この現象と赤血球系転写因子によるヘム代謝調節との関連を明らかにしたい。 | KAKENHI-PROJECT-05670136 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05670136 |
EU統合下の移住女性とケアの政治――仏独伊の事例を手がかりに | 対象3ヵ国では、移住家事労働者は大多数が女性で、労働法上も移民法上も非正規の立場に置かれることが多い。フランスでは、家事労働に特定した移民受入プログラムはない一方で、対人サービス政策が、間接的かつ限定的に、移住家事労働者の就労をフォーマル化し、移住女性の社会統合を促進する。ドイツとイタリアでは、EUの東方拡大が生み出す域内移動空間の二元化のもとで、ケア分野でのインフォーマル雇用の増大と階層化が生み出されている。ヨーロッパ・レベルでは、対人ケア・サービスの産業化に向けた試みがみられるが、その効果は依然限定的である。対象3ヵ国では、移住家事労働者は大多数が女性で、労働法上も移民法上も非正規の立場に置かれることが多い。フランスでは、家事労働に特定した移民受入プログラムはない一方で、対人サービス政策が、間接的かつ限定的に、移住家事労働者の就労をフォーマル化し、移住女性の社会統合を促進する。ドイツとイタリアでは、EUの東方拡大が生み出す域内移動空間の二元化のもとで、ケア分野でのインフォーマル雇用の増大と階層化が生み出されている。ヨーロッパ・レベルでは、対人ケア・サービスの産業化に向けた試みがみられるが、その効果は依然限定的である。本研究は、仏独伊3ヵ国における1移住ケア労働者の制度的位置づけ、2就労状況、3処遇改善・支援活動、さらに4EU/国家/ローカル3層の空間政治を捉えることを目的としている。また、フィリピン人ケア労働者の3ヵ国横断調査をめざしている。2013年度は、1について、1年目の調査で収集されたデータをもとに、3ヵ国の制度比較のための指標や分析枠組に関する検討を行った。2については、(1)フランス:パリ郊外対人サービス事業所調査、同調査を経由してコンタクトを得た移住女性の就労実態、(2)ドイツ:ベルリン、ドルトムントでフィリピン政府とのヘルスケア専門職に関する協定を中心に、その実施状況、就労実態について、(3)イタリア:ミラノ、クレモナ、トリノで、移住ケア労働者の就労、訓練、支援に関する調査を実施した。ミラノではフィリピン・コミュニティへの聞き取り調査を実施した。3と4については、国別調査を進めるかたわら、1年目に実施したILO本部、ならびに欧州委員会に対する調査の第2弾として、欧州労働組合連合(ETUC)など、ヨーロッパ・レベルの労働組合によるILO第189号条約批准キャンペーン、また欧州委員会内務総局に対してEUの移民政策、同じく雇用・社会問題総局に対してPersonal and Household Services振興政策について聞き取り調査を行った。また、4のEU/国家/ローカル3層の空間政治への社会学的接近を進めるため、ブルデューの<界>概念の応用について検討した。第一に、国別調査として、以下の諸事項に関する聞き取り調査を実施した。(1)フランス:パリ市と郊外の対人サービス関連機関に対して、移住女性の就労実態と編入支援状況、並びに労働組合による支援状況。(2)ドイツ:フランクフルトとベルリンでサービス部門労働組合VER.DI、移住女性自助・支援団体等に対して、非正規移住ケア労働者の就労実態と支援活動、並びに高齢者介護施設など7機関に対して、介護保険の運用実態と移住ケア労働者の位置づけ。(3)イタリア:ボルツァーノ、ミラノ、クレモナで、移住ケア労働者の雇用、訓練、支援に関わる団体に対して、活動内容、2000年代の正規化措置や経済危機の影響。第二に、フィリピン人移住ケア労働者横断調査として、ローマのフィリピン大使館、フィリピン人移住女性支援団体等を対象として、近年顕著となっている移住女性の債務問題、第二世代の定着の問題等を調査した。第三に、ヨーロッパ・レベル調査として、ブリュッセルで欧州委員会やシンクタンクに対して、EUの対人サービス分野での政策関心、ならびに研究対象3ヵ国の相互関係について。さらに、ILO国際移民部、ならびに労働部に対して、第189号条約の制定過程、条約採択後の課題等を調査した。本研究は、EU/国家/ローカルの3水準における移住女性とケアをめぐる政治の把握を目指しているが、2012年度の重要な知見として、第189条約採択を機に移住ケア労働者、労働組合、研究者の越境的ネットワークが形成されてきていること、そのなかでフランスの取り組みが先進的位置を占めること等が確認できた。尚、パリ郊外の対人サービス振興協会の協力を得て、派遣・紹介事業所(約90ヵ所)を対象としたアンケート調査を2013年度、実施できる見通しとなった。これによって従来の質的調査を量的調査で補う可能性が開けたことになり、2012年度の大きな成果といえる。最終年度である2014年度は、以下のように補充調査を進めた。(1)まず、3ヵ国調査のうち、フランスについては、社会党政権成立(2012年)以降の対人サービス政策の変化に関する追跡調査を行い、この分野における市場育成と企業進出を後押しする政治的意思が、非営利セクターへの配慮から後退していることが確認できた。このほか、非正規の移住家事労働者に対する労働組合や支援団体の取り組みの違い、パリ郊外における移住女性の介護・家事労働分野での就労実態について補充調査を進めた。ドイツについては、フィリピン人ヘルスケア専門職の受け入れに関する二国間協定(2013年)と選別的移民政策との関係について検討した。また、イタリアについては、移住家事・介護労働者への地域レベルでの公的支援として、職業教育と雇用適正化の2つを確認したが、後者については実効性において限界があることが明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-24252003 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24252003 |
EU統合下の移住女性とケアの政治――仏独伊の事例を手がかりに | (2)ヨーロッパ・レベルでの補充調査としては、欧州食糧農業・観光労働組合連合(EFFAT)、国際労働組合総連合(ITUC)などへの聞き取りや、フランスの個人雇用主団体によるヨーロッパ・レベルでのロビー活動に関して追跡調査を行い、ケア労働と移住労働をめぐるヨーロッパ・レベルでの制度づくりをめぐって、EUを含め、一定の駆け引きがあることを確認できた。(3)フィリピン人家事労働者の横断的調査については、フランスを中心に補充調査を進めた。なお、上記と並行して、海外への成果発信として学会報告2件を実施、さらに日本語による単行本刊行のための準備を進めている。日本でも検討されつつある国家戦略特区での移住家事労働者受け入れに関する政策的課題の解明に役立てられるよう、ヨーロッパにおける移住家事労働者の実態についての知見を共有したい。26年度が最終年度であるため、記入しない。国際社会学26年度が最終年度であるため、記入しない。フランスに関しては、政権交代(2012年)に伴い、移民政策と社会政策双方で変化がみられる。前者については、非正規滞在者に対する正規化措置の条件がやや緩和された。また、後者についていえば、2013年末に全国対人サービス機構が廃止、経済・財務省の管轄下に置かれた。この二つの変化が、移住ケア労働者の就労や処遇にどのような影響を与えたかを鋭意、調査しているところである。こうしたナショナルな水準での変化とは別に、ローカルな水準では、パリ郊外の対人サービス事業所に対する質問紙調査をインターネットで行った。同調査は対人サービス振興協会の支援を受けて実施されたものの回答率が低かったため、方向を転換して、質問紙調査に回答した事業所を中心に、この分野で就労する移住女性の就労状況、学歴、資格などについての個別の聞き取りを進めている。イタリア、そしてドイツについても、ナショナルな水準での制度分析とローカルな水準での移住ケア労働者の就労状況を対比させながら調査を続けている。またイタリアについては、緊縮財政の影響もあり、移住ケア労働者の介護施設での雇用が縮小傾向にあり、地方財政による支援も縮小しつつあることが確認された。EUのレベルについては、第一に、リスボン条約発効(2009年末)により、社会的対話のパートナーとして承認されている欧州労働組合連合(ETUC)が欧州委員会、さらには欧州議会に対して、NGOと協力して、ILO第189号条約批准キャンペーンを行っているが、その実態についての知見を得ることができた。第二に、フランスの対人サービス産業化の試みに関して、1990年代よりEUレベルでもロビー活動が行われてきたこと、また、今日、EUレベルでの産業化への動きがPersonal and Household Services (PHS)として名称を変えて追求されていることなども把握できている。本研究は、2009年に開始した科研プロジェクト「仏伊独における移住家事・介護労働者ー就労実態、制度、地位をめぐる交渉」(旧科研)の後継である。旧科研では、3年間にわたり、(1)国別調査と(2)フィリピン人移住ケア労働者の横断的調査の2つの柱を立てて、3ヵ国のケア労働市場に移住女性がどのように位置づけられているのかを、移民政策と社会政策の両面から検討した。 | KAKENHI-PROJECT-24252003 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24252003 |
近代日本における人的資本蓄積と経済発展―府県別データベースによる実証分析― | 本研究は、近代日本における経済発展に対して、明治維新後に導入された学校教育による人的資本の蓄積が果たした役割を、長期府県別パネルデータを用いて定量的かつマクロ的に明らかにすることを目的としている。かかる目的を達成するため、本年度は、(1)歴史的資料の電子化をより効率的に進めるためのOCR(文字認識)補助アプリケーションの開発、(2)合併・分割が相次いだ明治前期の県域を現在の47都道府県のそれと一致させるための明治期県域変更補正プログラムの開発、(3)初等教育の公衆衛生的な成果についての論文の投稿、を行った。以下、それぞれについて詳述する。(2)については、長期府県別パネルデータを用いる分析の前処理として、「郡」の所属変化を追跡し、郡ごとの人口情報を用いて値を按分することにより府県の境域変更の補正を行うプログラムを開発した。このプログラムにより得られた値は、県民一人頭の変数として使用する分には、十分な精度であり、これまで県域変更により接続が困難であった統計データを用いた長期的な視角による分析が容易に可能となった。これについて、国内学会において口頭発表し助言を得た。(3)については、明治後期(18861909年)を対象とし、「乳児に対する天然痘予防接種率」を公衆衛生水準の指標として、それに対して人的資本の蓄積が与えた影響を分析した。これについて、国際学会において口頭発表し、そこでの助言を踏まえ論文として国際学術雑誌に投稿した。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。本研究は、近代日本における経済発展に対して、明治維新後に導入された学校教育による人的資本の蓄積が果たした役割を、長期府県別パネルデータを用いて定量的かつマクロ的に明らかにすることを目的としている。かかる目的を達成するため、本年度は、(1)研究内容全般に関わる教育水準データベースの拡充、(2)経済水準データベースの拡充、(3)教育の効果として期待される衛生の向上についてのデータベースの拡充、(4)初等教育の経済的成果について(1)及び(2)のデータベースを用いた分析を行った。(1)については、各府県各年度(18731930年)の就学者数をもとに初等教育における平均就学年数を推計するとともに、中等教育における就学者数の粗入力を完了した。(2)については、各府県各年度(18831920年)における職種別賃金から平均賃金を算出するとともに会社資本金についての系列を整備した。(3)については、幼児死亡率を推計することを目的に各府県各年度(18991920年)における出生数、死産数、幼児死亡者数等の粗入力を行った。(4)については、初等教育の導入から完全普及に至る1873年から1920年までを対象とし、その経済的成果をパネルOLSにより分析した。現時点では以下の結論を得ている。第一に教育投資と資本投資は補完関係にあり、両者が結びつくことで生産性の向上に対して有効に作用するものの、どちらか一方だけでは有意に正の効果をもたなかった。第二に義務教育である尋常小学校とそうでない高等小学校の経済的成果を比較した結果、資本投資との補完性は高等小学校の方が強いものの、尋常小学校についても確認された。すなわち義務教育制度の導入が近代日本の経済成長にとり少なからぬ意味を持ったことを示唆する。これらの成果について国際学会(MEA Annual Meeting)において口頭発表を行う機会を得た。近代日本における学校制度の変遷が予想以上に複雑であったこと、本研究で主に使用した『文部省年報』へのアクセス環境が資料修復や工事などの影響を受け悪化したことから、データベースの整備に関しては若干の遅れが見られるものの、年度内にそれぞれの変数について粗入力を完了することができた。また、教育の経済的成果についての実証分析では、義務教育制度の導入の効果を具体的に明らかにすることができ、計画当初から目標としてきた国際学会における研究成果発表の機会を得ることができた。短期かつ早期に初等教育の完全普及を達成した日本の経験を定量的に分析し国際的に発表することには重大な意義があると考えている。以上の理由から、本年度について研究計画はおおむね順調に進展していると判断する。本研究は、近代日本の経済発展に対し、明治維新後に導入された学校教育による人的資本蓄積が果たした役割を、長期府県別パネルデータを用いて定量的かつマクロ的に明らかにすることを目的としている。かかる目的を達成するため、本年度は、(1)研究内容全般に関わる教育水準についてのデータベースの拡充、(2)学校資産及び財政・運営に関するデータベースを整備、(3)公衆衛生に関するデータベースの拡充、(4)初等教育の公衆衛生的な成果について初等教育における平均就学年数と(3)を用いた分析を行った。(1)については、昨年度に引き続き、中等教育も含めた平均就学年数の推計を進めると共に、徴兵検査時の学力検査である「壮丁普通教育程度調査」の電子化を進めた。(2)については、明治初期における学校運営の実態や学校の供給、教育の質について量的に接近すべく、学校財政の歳入・歳出や学校資産、教員給与などの系列を整備した。(3)については、医師数・病院数、衛生支出、伝染病罹患者数などの系列を整備した。(4)については、明治後期(18861909年)を分析対象とし、「乳児に対する天然痘予防接種率」を公衆衛生水準の指標として、その決定要因をパネルOLSにより分析した。現時点では以下の結果を得ている。第一に接種率の主な決定要因は、教育水準と医師数であった。 | KAKENHI-PROJECT-16J06613 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J06613 |
近代日本における人的資本蓄積と経済発展―府県別データベースによる実証分析― | 第二に女性の初等教育の水準が有意に正の効果を持たない一方で、男性の後期の初等教育の水準は有意に正の効果を持っていた。第三に男女の教育水準に差が大きい県、すなわち男性に教育投資を集中させる県で予防接種率がより高かった。これらの結果より、教育から公衆衛生の向上について、教育投資を集中された男性が家長として子供に予防接種を受けさせるという家父長制的な経路の存在が示唆された。本成果について国際学会(25th EBES Conference)において口頭発表を行う機会を得た。データ整備作業などデータベースとして活用できるまでの過程に遅れは見られるものの、各種データベースは確実に充実しており、様々な分析が可能となっている。また、これらのデータベースを用いた教育の公衆衛生的成果についての実証分析では、教育から健康への具体的な経路を明らかにすることができ、国際学会における研究成果の発表にこぎつけた。以上の理由から、本年度について研究計画はおおむね順調に進展していると判断する。本研究は、近代日本における経済発展に対して、明治維新後に導入された学校教育による人的資本の蓄積が果たした役割を、長期府県別パネルデータを用いて定量的かつマクロ的に明らかにすることを目的としている。かかる目的を達成するため、本年度は、(1)歴史的資料の電子化をより効率的に進めるためのOCR(文字認識)補助アプリケーションの開発、(2)合併・分割が相次いだ明治前期の県域を現在の47都道府県のそれと一致させるための明治期県域変更補正プログラムの開発、(3)初等教育の公衆衛生的な成果についての論文の投稿、を行った。以下、それぞれについて詳述する。(2)については、長期府県別パネルデータを用いる分析の前処理として、「郡」の所属変化を追跡し、郡ごとの人口情報を用いて値を按分することにより府県の境域変更の補正を行うプログラムを開発した。このプログラムにより得られた値は、県民一人頭の変数として使用する分には、十分な精度であり、これまで県域変更により接続が困難であった統計データを用いた長期的な視角による分析が容易に可能となった。これについて、国内学会において口頭発表し助言を得た。(3)については、明治後期(18861909年)を対象とし、「乳児に対する天然痘予防接種率」を公衆衛生水準の指標として、それに対して人的資本の蓄積が与えた影響を分析した。これについて、国際学会において口頭発表し、そこでの助言を踏まえ論文として国際学術雑誌に投稿した。平成29年度は以下のように研究を推進する。(1)本年度の研究成果を国際学会で報告するとともに、内容を充実させ国際学術雑誌へ投稿する。(2)本年度に粗入力が完了した変数について整理し、教育及び衛生に関するデータベースのさらなる拡充をはかる。(3)学校資産及び財政に関するデータベースを整備する。(4)これらのデータベースを用いて中等教育の経済的成果などについて分析を行う。平成30年度は以下のように研究を推進する。(1)本年度及び昨年度の研究成果を国際学会で報告するとともに、内容を充実させ国際学術雑誌へ投稿する。 | KAKENHI-PROJECT-16J06613 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J06613 |
エイズに関する健康教育の方法とその有効性について | エイズに関する先行研究文献内容の整理・分析作業を行い、エイズという疾病に対する基礎知識やエイズ患者に対する社会的意識レベルを測定するための実態調査票(小学校低学年児童用、小学校中・高学年児童用、中学生用、高校生用及び大学生用)で作成し、調査を行った。調査票の回収数は、小学校12年生210件、小学校36年生404件、中学校13年生1008件、高等学校12年生269件及び大学34年生318件の計2209件であった。この実態調査の結果、小学校低学年児童から高校生までの間は、学年進行に伴ってエイズに関する基礎知識が増加したが、高校生と大学生ではその回答にほとんど差が認められなかった。一方、エイズ関連団体への寄付行為や介護ボランティア活動への参加といった社会的意識では、小学生から大学生に進むに従い意識の低下が観察された。次にエイズ問題を扱った映像資料の分析では、計31編の資料について、その内容ごとに整理・分析を試みた。その結果、事前事後調査における指導介入資料として、エイズの疾病像や地球規模での蔓延状況、またエイズ患者に対する社会的援助や活動の現状について編集されている資料3編を選んだ。事前事後調査は、先の実態調査における高校生と大学生の中間点として、大学1年生を調査対象として設定し、上記3編の映像資料を用いた介入指導を展開した。本介入指導の有効性の判定にあたっては、エイズ患者に対する社会的意識に重点をあてるとともに、エイズ患者に対するイメージや大学生がエイズについて知りたがっている内容を明らかにするための意識調査票を新たに作成し、判定資料とした。今回の映像資料による指導効果では、エイズという疾病やエイズ患者に対する社会的意識において、肯定的かつ受容的な意識変化が観察され、本介入指導の有効性が示されたものと理解された。エイズに関する先行研究文献内容の整理・分析作業を行い、エイズという疾病に対する基礎知識やエイズ患者に対する社会的意識レベルを測定するための実態調査票(小学校低学年児童用、小学校中・高学年児童用、中学生用、高校生用及び大学生用)で作成し、調査を行った。調査票の回収数は、小学校12年生210件、小学校36年生404件、中学校13年生1008件、高等学校12年生269件及び大学34年生318件の計2209件であった。この実態調査の結果、小学校低学年児童から高校生までの間は、学年進行に伴ってエイズに関する基礎知識が増加したが、高校生と大学生ではその回答にほとんど差が認められなかった。一方、エイズ関連団体への寄付行為や介護ボランティア活動への参加といった社会的意識では、小学生から大学生に進むに従い意識の低下が観察された。次にエイズ問題を扱った映像資料の分析では、計31編の資料について、その内容ごとに整理・分析を試みた。その結果、事前事後調査における指導介入資料として、エイズの疾病像や地球規模での蔓延状況、またエイズ患者に対する社会的援助や活動の現状について編集されている資料3編を選んだ。事前事後調査は、先の実態調査における高校生と大学生の中間点として、大学1年生を調査対象として設定し、上記3編の映像資料を用いた介入指導を展開した。本介入指導の有効性の判定にあたっては、エイズ患者に対する社会的意識に重点をあてるとともに、エイズ患者に対するイメージや大学生がエイズについて知りたがっている内容を明らかにするための意識調査票を新たに作成し、判定資料とした。今回の映像資料による指導効果では、エイズという疾病やエイズ患者に対する社会的意識において、肯定的かつ受容的な意識変化が観察され、本介入指導の有効性が示されたものと理解された。 | KAKENHI-PROJECT-05680086 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05680086 |
高周波高電界パルスがん治療に関する基礎・臨床研究 | 本研究にて、ナノ秒パルス高電界(nsPEF)によるがん細胞へのアポトーシス誘導機構が詳細に解明された。p53不活性のHeLaS3細胞では、nsPEF刺激でCa2+流入が起き、細胞膜周辺部にCERAMIDEが形成される。このことにより、ROSが細胞内部に産生され、小胞体ストレス性のアポトーシス経路が誘導されアポトーシスを引き起こす。さらに、p53活性型の細胞、MCF7やA549では、nsPEFによりBaxが誘導され、ミトコンドリア経路のアポトーシスが引き起こされる。結果、nsPEFはがん細胞もアポトーシスさせることができる。現在、この特性を生かし、動物実験や遺伝子導入実験を行っている。前年度より、nsPEF(ナノ秒パルス高電界)およびIBSEF(高周波高電界)の研究を行った。顕微鏡下イメージング観察により、120ns幅nsPEF(10kV/cm)と300KHz-1MHzのIBSEF(5kV/cm)によるアポトーシス誘導現象は酷似していると推測された。120nsは周波数に換算すると一振幅約500nsになり、2MHzに相当するので、メカニズムが類似しているものと予想された。アポトーシス誘導条件での電界刺激によりHeLaS3細胞では、p53が不活性化しているため、Baxの核内移行が観察された。一方、正常なp53のある細胞では細胞質でのBaxの発現上昇が観察された。この現象により、小胞体とミトコンドリアどちらのアポトーシス経路が優位に働くかを決定していることが示唆された。また、HeLaS3細胞において、電界刺激とCaイオン流入による一過性ROS誘導とその後のBleb形成→Ceramide生成→持続的ROSの生成→ERストレス性アポトーシス誘導において、ある酵素が働いていることを突き止めた。これらのデータをもとに、低ストレス高効率の遺伝子導入法の開発とin vivoでの高効率アポトーシス法の開発を現在立ち上げている。本研究にて、ナノ秒パルス高電界(nsPEF)によるがん細胞へのアポトーシス誘導機構が詳細に解明された。p53不活性のHeLaS3細胞では、nsPEF刺激でCa2+流入が起き、細胞膜周辺部にCERAMIDEが形成される。このことにより、ROSが細胞内部に産生され、小胞体ストレス性のアポトーシス経路が誘導されアポトーシスを引き起こす。さらに、p53活性型の細胞、MCF7やA549では、nsPEFによりBaxが誘導され、ミトコンドリア経路のアポトーシスが引き起こされる。結果、nsPEFはがん細胞もアポトーシスさせることができる。現在、この特性を生かし、動物実験や遺伝子導入実験を行っている。24年度では、ナノ秒パルス高電界(nsPEF:本実験では120ns幅, <12.5kV/cm)が細胞膜に影響して細胞死を誘導する機構を詳細に解析した。HeLaS3細胞では、nsPEF誘導性CeramideやCaイオン流入により、ユビキチンリガーゼであるTRAF-2の活性化が示唆された。また、新規にCaspase-4の断片化(p10)も確認できた。今までの事象から、CeramideやCaイオン流入がERストレス関連IRE-1を介し,TRAF2を活性化させ、NFkB, ASK1, Caspase-4のそれぞれもしくは複数経路を同時に活性化させ、オートファジーやアポトーシスに誘導することが考えられる。さらにp53の有無によるシグナル経路への影響を複数種の細胞を用いて調べた。p53を正常に有するものはミトコンドリア関連のアポトーシス経路が活性化しやすく、そうでないものは小胞体ストレス経路が活性化しやすい傾向を示した。本結果からある複数のタンパク質が核内移動を起こすことでミトコンドリア経路のアポトーシスを回避していることが示唆された。細胞種によってはp53の代わりに代替機構を持つものがあるので、本結果とは異なる細胞もあるかもしれない。さらに精査し、がんの種類別に応じたnsPEFと薬剤を用いた有効的なelectrochemotherapyの条件が見つかると考えられる。さらにバースト正弦波高電界を用いた実験では、300kHzの細胞膜に電界が集中する条件でBleb形成を引き起こす。その際に、ROSの産生が確認された。また、ある特異的阻害剤を用いて、とある経路を遮断することでROSの産生を抑制し、電界による初期ROS産生機構を解明した。加えて、ROSの発生とBleb形成の関係を示唆し、第2のROS産生機構も解明しつつある。現在までの達成度は、おおむね順調である。しかし、所属するCOEにて、COE-RAリーダーとなり、国際学会の運営、所属するCOEに関するイベント、COE関連の博士課程の学生の管理などに多くの時間を割かれたので、本来ならばもう少し研究が遂行できたのかもしれない。また、研究室の運営や学生指導なども増え、論文執筆にも追われているので、前年に比べ研究を行う時間が半分くらいになった。また、いくつかの装置が故障し、自分の管理管轄外でのトラブルが起き、これらの影響も受けた。しかし、幸運なことにほぼ予想した結果が得られたため、進捗に関してはあまり遅くはなっていない。また、予想外の新しい結果も一部得られたため、全体的にかなり良い達成度だと思っている。nsPEFを用いたがん治療研究として、p53有無のシグナル伝達経路の特定を行う。 | KAKENHI-PROJECT-24700499 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24700499 |
高周波高電界パルスがん治療に関する基礎・臨床研究 | 数種類のp53正常型がん細胞にて、阻害剤でp53シグナル経路を抑制し、シグナル伝達に影響がでるかどうかの確認を行う。主にミトコンドリア経路でのアポトーシス回避を行うタンパク質の動態の観察・caspase-4/caspase-3・TRAF2・JNK/c-Junの活性化に関して着目して行う。次に、これらの機構ががん組織内でも同様に起きているかを調べる。ヌードマウスに移植したメラノーマに直接印加するか、もしくは、動物にできているがん組織を取りだし、nsPEFで処理を行い、短期の器官培養を行う。どちらの方法でも免疫系の働きは除外して考えることができる。そこで、形態観察とwestern blotを用いてin vitroの系で比較する。さらに今度は免疫系が正常ながんのモデルマウスを使用して同様のデータを解析し、免疫系の有無による効果を比較できれば良いと考えている。また、IBSEFを用いた研究ではROS発生機序がわかったため、電界刺激によるROS/TRAF2シグナルの活性化が考えられる。IBSEFによってTRAF2やその下流が活性化されているかどうかの確認をする必要がある。もし、TRAF2が活性化しているならば、300KHzでnsPEFと同じシグナルが誘起しているかどうか調べ、メカニズムの詳細を特定する。25年度では、がん細胞の種類ごとの感受性の違いの検討(p53の有無など)を行う。24年度に発見した物理刺激により誘起されるROSとアポトーシスの関係性を詳細に調べ、がん治療として安全かどうかを確かめる。最終的に動物実験用の電極の開発を行い、動物実験・解析を行う環境を整備し、ヌードマウスや正常マウスへ担がんを行い、がん組織への影響の解析を行う。その際、カルシウム増強治療・阻害剤導入治療・免疫活性化療法などのアレンジを行い、低侵襲かつ高効率の治療法を模索する。 | KAKENHI-PROJECT-24700499 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24700499 |
電解溶出法による金属系超軽量ナノポーラスマテリアルの創製 | 本研究で取り扱うNi-Wナノ結晶電析合金は、Ni含有量を増加させると、4000GPaに迫る超高引張強度を示しつつ、加工硬化を伴う塑性変形の発現を確認した。W含有量が20at.%以上になると、ほぼ全面にアモルファス構造を示すが、Ni含有量の増加とともに、サブミクロンレベルの粒組織が見られるようになり、その界面部分は、厚さ2030nm程度のNiが高濃度に偏析したナノ界面組織の形成が見られ、そのサブミクロン粒子内部は、数ナノメータサイズのナノ結晶粒子の集合体構造となるメゾスケールの網目状偏析構造が形成される。これらメゾスケール構造を有する電析Ni-17at.%W合金試料で引張試験片を作製し、その試験片を1規定の希硫酸エッチング液に140時間浸漬してエッチング処理を行い、レーザー顕微鏡により表面状態を観察することによりナノボイド生成の有無を確認した後、引張試験を実施した。Ni-W電析の表面平滑状態は、銅基板上の下地として行う銅電析の厚さによって影響を受けるため、その標準的な厚さ以外、薄くした場合と厚くした場合についても試料を作製し評価した。希硫酸液によるエッチングにより、電析時の表面平滑性の高いNi-W合金ほど、均一な分布のナノボイドの形成が容易であった。数十から数百nm程度のボイドが生成されたと判断された試料について引張破断強度を測定したところ、ボイド形成による破断強度の低下は認められなかった。以上のことから、Ni-rich領域のメゾスケールの網目状偏析構造を意図的に残留させ、サブミクロン粒子内部をナノポーラス化することにより、超軽量、高強度、高延性材料の実現が可能であると考えられ、ナノポーラス構造を有する超軽量合金の開発が可能であると考えられた。本研究では、マイクロ部材用の超軽量・高強度・高触媒機能性等を有する新金属材料として、金属系ナノポーラスマテリアルの開発を目標とする。本研究で取り扱うNi-Wナノ結晶電析合金は、Ni含有量を増加させると、4000GPaに迫る超高引張強度を示しつつ、加工硬化を伴う塑性変形の発現を確認している。透過電子顕微鏡観察によると、W含有量が20at.%以上になると、ほぼ全面にアモルファス構造を示すが、Ni含有量の増加とともに、サブミクロンレベルの粒組織が見られるようになり、その界面部分は、厚さ2030nm程度のNiが高濃度に偏析したナノ界面組織の形成が見られ、そのサブミクロン粒子内部は、数ナノメータサイズのナノ結晶粒子の集合体構造となるメゾスケールの網目状偏析構造が形成されることが明らかとなった。このような、メゾスケールの網目状偏析構造の形成により、軟質のNi-richナノ界面層が変形パスとして作用し、引張塑性変形能と加工硬化性能を発現させると推定している。このメゾスケールの網目状偏析構造を意図的に残留させ、サブミクロン粒子内部をナノポーラス化することにより、超軽量、高強度、高延性材料の実現が可能であると考えられた。本Ni-W合金は、硫酸等の酸化性酸に対して高い耐食性を示すが、この原因としてW原子の存在による不働態皮膜の形成が考えられる。一方、W酸化皮膜はアルカリ雰囲気に容易に優先的に溶解することが明らかとなっている。次年度は、これらの耐食性の差を利用してナノポーラス構造を有する超軽量合金の実現を目指す。本研究では、マイクロ部材用の超軽量・高強度・高触媒機能性等を有する新金属材料として、金属系ナノポーラスマテリアルの開発を目標としている。本研究で取り扱うNi-Wナノ結晶電析合金は、Ni含有量を増加させると、4000GPaに迫る超高引張強度を示しつつ、加工硬化を伴う塑性変形の発現を確認している。透過電子顕微鏡観察によると、W含有量が20at.%以上になると、ほぼ全面にアモルファス構造を示すが、Ni含有量の増加とともに、サブミクロンレベルの粒組織が見られるようになり、その界面部分は、厚さ2030nm程度のNiが高濃度に偏析したナノ界面組織の形成が見られ、そのサブミクロン粒子内部は、数ナノメータサイズのナノ結晶粒子の集合体構造となるメゾスケールの網目状偏析構造が形成されることが明らかとなった。メゾスケール構造を有するNi-17at.%W合金試料を、硝酸を主な成分とした腐食液を用いて腐食試験したところ、直径10nm程度の超微細なピンホール状に腐食が進行した。このことから、酸性の腐食液では、Ni-rich領域が優先的にナノピット状に腐食したものと考えられた。一方、均一な組織を有するNi-20at.%W合金においては、同様の腐食条件では、腐食減量は計測することはできなかった。このような腐食挙動は、アルカリ性の腐食液を用いれば、逆にW-rich領域を腐食させることができると考えられることから、このNi-rich領域のメゾスケールの網目状偏析構造を意図的に残留させ、サブミクロン粒子内部をナノポーラス化することにより、超軽量、高強度、高延性材料の実現が可能であると考えられた。次年度は、これらの耐食性の差を利用してナノポーラス構造を有する超軽量合金の実現を目指す。本研究で取り扱うNi-Wナノ結晶電析合金は、Ni含有量を増加させると、4000GPaに迫る超高引張強度を示しつつ、加工硬化を伴う塑性変形の発現を確認した。 | KAKENHI-PROJECT-20656119 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20656119 |
電解溶出法による金属系超軽量ナノポーラスマテリアルの創製 | W含有量が20at.%以上になると、ほぼ全面にアモルファス構造を示すが、Ni含有量の増加とともに、サブミクロンレベルの粒組織が見られるようになり、その界面部分は、厚さ2030nm程度のNiが高濃度に偏析したナノ界面組織の形成が見られ、そのサブミクロン粒子内部は、数ナノメータサイズのナノ結晶粒子の集合体構造となるメゾスケールの網目状偏析構造が形成される。これらメゾスケール構造を有する電析Ni-17at.%W合金試料で引張試験片を作製し、その試験片を1規定の希硫酸エッチング液に140時間浸漬してエッチング処理を行い、レーザー顕微鏡により表面状態を観察することによりナノボイド生成の有無を確認した後、引張試験を実施した。Ni-W電析の表面平滑状態は、銅基板上の下地として行う銅電析の厚さによって影響を受けるため、その標準的な厚さ以外、薄くした場合と厚くした場合についても試料を作製し評価した。希硫酸液によるエッチングにより、電析時の表面平滑性の高いNi-W合金ほど、均一な分布のナノボイドの形成が容易であった。数十から数百nm程度のボイドが生成されたと判断された試料について引張破断強度を測定したところ、ボイド形成による破断強度の低下は認められなかった。以上のことから、Ni-rich領域のメゾスケールの網目状偏析構造を意図的に残留させ、サブミクロン粒子内部をナノポーラス化することにより、超軽量、高強度、高延性材料の実現が可能であると考えられ、ナノポーラス構造を有する超軽量合金の開発が可能であると考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-20656119 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20656119 |
3D-PETによる心筋血流定量評価法の確立を目指した基礎実験 | 本研究では、3D-PET(Positron Emission Tomography)を用いた、より信頼できる心筋血流の測定手法の確立を目指し、特に測定精度の悪化の原因の一つと考えられるPETの視野外に分布する放射能(特に散乱成分)の影響を基礎的なファントム実験や、非常にリアルな系で行ったシミュレーションを用いて調べた。その結果、危惧された視野外放射能の影響は小さく、特にO-15標識水を用いた血流測定は、その影響が小さいことが示された。本研究では、3D-PET(Positron Emission Tomography)を用いた、より信頼できる心筋血流の測定手法の確立を目指し、特に測定精度の悪化の原因の一つと考えられるPETの視野外に分布する放射能(特に散乱成分)の影響を基礎的なファントム実験や、非常にリアルな系で行ったシミュレーションを用いて調べた。その結果、危惧された視野外放射能の影響は小さく、特にO-15標識水を用いた血流測定は、その影響が小さいことが示された。平成21年度は研究実践計画に従い、はじめに散乱ファントムを用いて、シールドありなしの場合の散乱フラクションを測定した。このシールドは心筋血流定量検査において視野外放射能の影響(特に肝臓からの寄与)を減らすためのものである。シールドの導入で、偶発同時計数の減少は明らかだが、シールドと散乱して散乱同時計数が増加することが考えられる。しかし実験の結果、シールドありなしでほぼ同じ散乱フラクション(48%)が得られた。よってシールドは散乱フラクションを上げずに偶発および散乱同時計数を減らすことが期待できるが、臨床検査においては、シールドの設置は技師への負担等の観点から好ましくない。そこで視野外放射能の影響が定量値に影響を与えるかをシミュレーションによって検討した。まずシミュレーションの妥当性を示す必要があるが、これは散乱フラクションの実験との比較で確認した。ここでは、特に視野外の影響を再現するためには、シミュレーションにおいて、セプタやロッドソース等視野外の構造物も考慮しないと実験を再現しないという新しい知見が得られた。シミュレーションの再現性を確認したのち、情報通信研究機構が開発した数値人体モデルを用いて、非常にリアルな系で0-15の心筋血流定量検査の詳細なシミュレーションを行った。この結果、視野外放射能の影響で5%ほど関心領域の定量値を過大評価する傾向があるが、0-15における血流量は、洗い出しから求められること、この過大評価が心臓領域で一様であったこと、から血流量等の定量値にはほとんど影響がないことが分かった。よって今後はシールドよる偶発同時計数の低減によってどのくらい画質が改善されるかをシミュレーション等で検討したのち、ボランティアによる2D収集、3D収集による心筋血流検査を行い、3D収集のような視野外放射能の影響がある場合でも、正確な定量値が得られることを確認する予定である。平成22年度は主として、シミュレーションによるO-15標識水心筋血流定量PET検査における、視野外放射能の影響を調べた。シミュレーションの妥当性は、散乱ファントムによる散乱フラクションの実験値とシミュレーションの比較によって、昨年度の研究で示した。心臓をPETの視野中心に合わせた場合、肺や肝臓等の心臓と隣接している臓器が高い集積を持ちようになり、さらにそれらの大部分は視野外にある。これらの放射能起源による散乱や偶発同時計数は心筋血流量の定量値に影響があると考えられている。この影響をシミュレーションによって調べた。非常にリアルな系でシミュレーションするために、情報通信研究機構が開発した数値人体モデルをシミュレーションコードGeant4に導入した。その人体モデルにある検査から予測される各臓器の放射能を与え、シミュレーションによる画像を作成した。血流量は心筋の放射能濃度の変化から計算されるが、シミュレーションにおいても検査プロトコルにしたがい、各時間での画像を作成した。そのダイナミック画像から血流量を計算した。ここで、散乱線補正を施した画像、散乱線を取り除いて再構成した画像(これはシミュレーションだからこそできるもので、真の画像とした)を作成した。その結果、視野外にある肝臓や肺に強い放射能がある場合、散乱補正画像は真の画像に比べて過大評価していた。このとこはPET画像の定量値は、視野外に強い放射能がる場合、過大評価することを示している。しかし心筋血流量の定量値はほとんど変化がなかった。これは、視野外放射能の影響は、心筋の放射能度の変化率には影響を与えなかったためと考えられる。平成23年度は主として、昨年度得られた結果の検証および応用を行った。これまでは、シミュレーションを用いてO-15標識水心筋血流定量PET検査における視野外放射能の影響を調べた。シミュレーションの妥当性は、散乱ファントムによる散乱フラクションの実験値とシミュレーションの比較によって一昨年度の研究で示した。心臓をPETの視野中心に合わせだ場合、肺や肝臓等の心臓と隣接している臓器が高い集積を持つようになり、それらの大部分は視野外にある。これらの放射能起源による散乱が心筋血流量の定量値に影響があると考えられているため、この影響を情報通信研究機構が開発した数値人体モデルとシミュレーションコードGeant4により詳細にシミュレーションした。シミュレーションだからこそできる散乱線を除いて再構成した画像(真の画像)と、散乱線補正をした画像との比較を行った。なお画像再構成は市販のPETのソフトウェアを用いている。その結果、昨年度は視野外にある肝臓や肺に放射能がある場合、散乱補正画像は真の画像に比べて過大評価していたと報告したが、画像再構成のオプション(メーカー独自のもので詳細は良く分からない)を変えると、散乱線補正画像は真の画像とほぼ一致し、O-15 | KAKENHI-PROJECT-21791237 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21791237 |
3D-PETによる心筋血流定量評価法の確立を目指した基礎実験 | 標識水心臓PETを模擬した系において、散乱線補正の精度が良いことを示た。また、シミュレーションのダイナミック画像とコンパートメントモデルを用いて心筋血流およびPTF(Perfusable Tissue Fraction:残存潅流組織分画)の定量評価を行った。その結果、心筋血流は、散乱線補正をしなくても真の画像から得られた血流値と同程度の値が得られた。これは血流がトレーサーの洗い出しから計算され、絶対値にあまり影響しないためだと考えられる。しかしPTFについては、散乱線補正をしないと正確な定量値を算出することができない。これはモデル式を考えれば予想できる結果で、PETの定量値(画像の画素値)が正確でないと、PTFの正しい値が得られないことを示している。 | KAKENHI-PROJECT-21791237 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21791237 |
TGFβ/βーcateninシグナルによるT細胞応答・恒常性の制御機構の解明 | TGFβで発現が制御され、Th2型アレルギー炎症を抑制する分子として転写因子Sox4を見いだしました。T細胞特異的Sox4トランスジェニックマウス、T細胞特異的Sox4ノックアウトマウスの解析を行い、Sox4がTh2型アレルギー炎症を抑制していることをin vitro、in vivoの両方で確認しました。今回の実験から、Sox4はTh2型アレルギーのマスター転写因子GATA3に直接結合し、その機能を阻害することでTh2細胞の分化を抑制していることも新たに見いだされました。TGFβで発現が制御され、Th2型アレルギー炎症を抑制する分子として転写因子Sox4を見いだしました。T細胞特異的Sox4トランスジェニックマウス、T細胞特異的Sox4ノックアウトマウスの解析を行い、Sox4がTh2型アレルギー炎症を抑制していることをin vitro、in vivoの両方で確認しました。今回の実験から、Sox4はTh2型アレルギーのマスター転写因子GATA3に直接結合し、その機能を阻害することでTh2細胞の分化を抑制していることも新たに見いだされました。活性化T細胞特異的β-catenin欠損マウス(β-catenin flox/flox x Ox40-Cre Tgマウス)で認められる皮膚炎の自然発症機序について解析を行った。この皮膚炎におけるT細胞の関与を確認するため、T細胞特異的β-catenin欠損マウス(β-catenin flox/flox x CD4-Cre Tgマウス)を作製して解析を行ったところ、このマウスでは皮膚炎の発症が全くみられないことが分かった。さらに、活性化T細胞特異的β-catenin欠損マウスとTCRβ欠損マウスを交配し、αβT細胞の皮膚炎発症への関与を検討したが,TCRβ欠損バックグラウンドの活性化T細胞特異的β-catenin欠損マウスでも皮膚炎の自然発症が認められた。これらの結果は、少なくともαβT細胞はβ-catenin flox/floxx Ox40-Cre Tgマウスの皮膚炎の自然発症には必要ないことを示している。現在、γδT細胞の関与について検討する目的でTCRδ欠損マウスとβ-catenin flox/flox x Ox40-Cre Tgマウスを交配中である。また、T細胞・B細胞がともに存在しないRAG1欠損マウスとの交配も進めており、リンパ球の関与について来年度中に最終的な結論を出す予定である。また、リンパ球以外の細胞がOX40を発現する可能性を考え、皮膚浸潤炎症細胞におけるOX40の発現をFACSで検討したところ、好酸球がOX40を発現していることが分かった。また、TGFβシグナルとβ-cateninの関係について解析を進め、TGFβが腫瘍抑制因子Meninの機能調節を介してβ-catenin結合性転写因子であるTcf7の発現を制御している可能性を新たに見出した。β-cateninのCD4 T細胞老化における役割を解析する目的て、ナイーブCD4 T細胞と老化CD4 T細胞でのβ-catenin結合部位をChIP-シーケンスで網羅的に同定することを試みたが、残念ながら条件設定できなかった。そのため、本年度は、β-cateninと結合しパートナーとして働く転写調節因子Tcf7に着目し研究を進めた。Tcf7の発現は、ナーブCD4 T細胞で高く、老化CD4 T細胞では顕著に低下していた。そこで、CD4 T細胞においてTcf7の発現調節を行い、β-cateninシグナルを調節しうる分子を検索し、腫瘍抑制因子Meninを見いだした。Menin欠損のCD4 T細胞では、抗原刺激後Tcf7の発現が急激に低下した。また、ChIP-シーケンスやChIP-qPCR解析で、Meninの結合がTcf7遺伝子領域で認められ、その結合パターンはヒストンH3K27のアセチル化パターンと相関していた。さらに、MeninのTcf7遺伝子座への結合やヒストンH3K27のアセチル化レベルはCD4 T細胞の老化とともに低下していくことも分かった。これらの結果は、腫瘍抑制因子MeninがTcf7の発現制御を介してβ-cateninシグナル伝達経路の活性を調節しうることを示している。面白いことに、MeninはTGF-β受容体下流のシグナル伝達分子、Smad3の活性化調節に関わることが報告されている。今後は、β-cateninシグナルをMeninとTGF-βによる制御の観点から解析し、T細胞の老化や疲弊、記憶形成へと研究を展開させたい。TGFβ-Tcf7/β-cateninシグナル伝達経路の存在を証明し、Th2細胞の分化とTh2型免疫反応における役割を検討するために解析をおこなった。しかしながら、β-catenin欠損CD4 T細胞においてもTGFβのTh2細胞分化とTh2型免疫反応抑制には変化が見られなかった。そのため、さらにTGFβシグナルの下流に位置し、Th2型免疫反応の抑制に関与する類似の転写調節因子の同定を進め、Sox4を見いだした。Sox4は、Tcf7と類似したタイプのHMG boxをもつ転写因子であり、DNA結合配列も非常に似ている。そこで、T細胞特異的Sox4 Tgマウスを作製し、Th2型免疫反応としてアレルギー気道炎症をモデルに検討したところ、Sox4 TgマウスではTh2型免疫反応が著しく限弱することが分かった。さらに、T細胞特異的Sox4欠損マウスでも同様の解析をおこない、アレルギー性気道炎症の悪化を認めた。 | KAKENHI-PROJECT-23390075 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23390075 |
TGFβ/βーcateninシグナルによるT細胞応答・恒常性の制御機構の解明 | また、Sox4のTh2細胞分化に対する作用についても解析したところ、Sox4がTh2細胞分化のマスター転写因子であるGata3の機能の抑制を介して、Th2細胞の分化を負に制御していることが分かった。以上の結果から、Sox4は、TGFβによって誘導される、Th2型免疫反応の新規抑制因子であることが示された。マウスの交配に時間を要していおり、皮膚炎の解析はやや送れている。しかし、TGFβ下流の新たな標的分子候補として腫瘍抑制因子のMeninを同定しており、新しい方向性を見出すことが出来た。25年度が最終年度であるため、記入しない。申請者のかずさDNA研究所から愛媛大学医学系研究科への異動により、実験を一時期止めざるを得なかった。また、マウスの移動に伴いクリーンアップ作業を行ったため、遺伝子操作マウスの供給が遅れ、研究目的の達成度が遅れている。活性化T細胞に特異的に発現すると考えられていたOX40が、好酸球などにも発現している可能性がでてきたことから、β-cateninが当初考えていた様に、T細胞機能の恒常性維持を行っている可能性は低くなった。しかし、本年度、TGFbが腫瘍抑制因子Meninの機能調節を介してβ-catenin結合性転写因子であるTcf7の発現を制御している可能性を新たに見出したことから、来年度はこの経路の生理的な意義について解析を進める予定である。25年度が最終年度であるため、記入しない。現在も遺伝子操作マウスの供給が遅れているため、レトロウイルスを用いた実験系を当初の予定より多く使って研究を進める。また、繁殖が上手くいかない場合は、再購入も考慮にいれ研究を進める。 | KAKENHI-PROJECT-23390075 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23390075 |
死の社会学的研究 | 社会的行為としての死の研究。医師、看護師、メディカル・ソーシャル・ワーカー、近親者などと死にゆく者との相互作用のなかで、死を観察、分析、研究した。とくに、緩和ケアのありかた、医師と看護師の役割分担、医療スタッフと近親者とのコミュニケーションに焦点をあわせつつ、聞きとり調査をおこない、事例研究をおこなった。制度としての葬儀の研究。国内では、高度成長期以降の葬儀業界のありかたを、葬祭業者の専門職化と資格の制度化を中心に、調査、研究した。また、創価学会で近年注目される友人葬の事例を収集し、研究した。外国では、フランスにおける葬祭業の成立と展開にかんする歴史社会学的研究、中国の客家人の葬儀と死生観の事例研究をおこなった。文化としての追悼の研究。太平洋戦争時における市民から出た大量の死者を追悼する施設の調査・研究に主力を集中した。東京・沖縄・広島における戦争博物館の比較考察、対馬丸記念館の調査・研究がおこなわれた。ほかに、沖縄の陸軍病院壕、周南市回天記念館は、軍人戦死者の追悼施設として追加調査された。死の社会学の全体構想の研究。以上の3部門の研究をふまえ、内外の死の社会学的研究文献の分析・総括をあわせて、死の社会学の体系化が試みられた。全体社会、組織・集団、相互作用、社会制度、文化、パーソナリティ、社会的行為の7つの主要概念の有機的連関を利用して、死の社会学の7部門が構成された。(研究成果報告書、11ページ参照)。社会的行為としての死の研究。医師、看護師、メディカル・ソーシャル・ワーカー、近親者などと死にゆく者との相互作用のなかで、死を観察、分析、研究した。とくに、緩和ケアのありかた、医師と看護師の役割分担、医療スタッフと近親者とのコミュニケーションに焦点をあわせつつ、聞きとり調査をおこない、事例研究をおこなった。制度としての葬儀の研究。国内では、高度成長期以降の葬儀業界のありかたを、葬祭業者の専門職化と資格の制度化を中心に、調査、研究した。また、創価学会で近年注目される友人葬の事例を収集し、研究した。外国では、フランスにおける葬祭業の成立と展開にかんする歴史社会学的研究、中国の客家人の葬儀と死生観の事例研究をおこなった。文化としての追悼の研究。太平洋戦争時における市民から出た大量の死者を追悼する施設の調査・研究に主力を集中した。東京・沖縄・広島における戦争博物館の比較考察、対馬丸記念館の調査・研究がおこなわれた。ほかに、沖縄の陸軍病院壕、周南市回天記念館は、軍人戦死者の追悼施設として追加調査された。死の社会学の全体構想の研究。以上の3部門の研究をふまえ、内外の死の社会学的研究文献の分析・総括をあわせて、死の社会学の体系化が試みられた。全体社会、組織・集団、相互作用、社会制度、文化、パーソナリティ、社会的行為の7つの主要概念の有機的連関を利用して、死の社会学の7部門が構成された。(研究成果報告書、11ページ参照)。研究は4部門で並行しつつ、たがいに連携しておこなわれた。第1部門・社会的行為としての死の研究は、遺家族と医療スタッフを対象として、老人、子ども、成人の死の過程と死後の相互作用の事例調査をおこない、20ケースを完了した。また、阪神淡路大震災の死別体験のインタビュー記録、50ケースを入手し、分析をおこなった。これらの知見にもとづき、調査票調査でつかう調査票を作成したところである。調査票調査は、第2年度におこなう。第2部門・制度として葬儀の研究は、フランスの葬儀の2例の資料の分析をおこなった。また、蒙古人民共和国に調査班を送り、遺体処理と葬儀の実態調査をおこなった。この結果の分析は第2年度におこなう。なお、国内では葬儀産業の調査を進め、葬儀社の従業員を対象として、その仕事や役割意識にかんする聞きとりをおこなった。第3部門・文化としての追悼の研究は、鹿児島県で戦時下に特攻隊の基地がおかれた町の追悼施設を訪問、調査し、戦没者の追悼の心情と論理を分析した。また、阪神淡路大震災の犠牲者のための追悼式典に参与観察をおこない、災害による大量死の追悼の心情と論理を分析した。これらでえられた知見にもとづき、第2年度は沖縄県の戦時下の犠牲者の追悼施設の調査などをおこなう。第4部門・死の社会学の体系の研究は、研究代表者、研究分担者の全員が参加する月例研究会によっておこなわれた。そこでは、上記の3部門の調査・研究の進行にともなう情報の交換と検討がおこなわれ、あわせて関連する主要文献の研究が進められた。また、社会学理論による研究成果の整理、研究方向の見定めなどもはじまっている。第一部門「社会的行為としての死の研究」では、医師、看護師、MSWなどが、患者の死にどのように対処しているかを主題としたケース・スタディを蓄積していった。ホスピス、救急医療など場を特定しての主題の検討も進んだ。また、法学の専門家を招いて交流し、医師配置基準やターミナル・ケアの学際研究をおこなった。あわせて、阪神淡路大震災の震災遺児家庭の死別体験といやしの過程の多面的考察をまとめた。第二部門「社会制度としての葬儀の研究」では、日本、フランス、モンゴルの葬儀の国際比較を継続しながら、新しく、国内の葬儀業者の専門職業化にかんする調査をはじめた。くわえて、宗教学の専門家を招いて、交流し、死者の供養を思想史的に検討した。 | KAKENHI-PROJECT-17203034 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17203034 |
死の社会学的研究 | なお、葬儀・供養研究の現代的展開として、戦争博物館の調査研究に着手し、ヨーロッパ諸国の事例と、国内では東京、沖縄、広島の三館の設立と機能をあきらかにした。第三部門「文化としての追悼の研究」では、初年度の戦没者追悼から対象領域を広げて、ほかに災害、殉教、事故・事件、病気などによる死者の追悼のための施設・行事をも調査・研究した。その結果、現代日本の追悼文化の共通性と各領域の個別性があきらかになってきた。長崎市の原爆資料館と日本二十六聖人記念館、大牟田市などの石炭産業科学館、石炭歴史博物館、高知市の空襲平和祈念碑や特攻白菊隊慰霊の碑、ほか多数の調査。第四部門「死の社会学の体系化の研究」では、上記三部門の知見を、理論社会学の枠組によって総合する作業をおこなった。あわせて、アメリカ社会学における同種の試みを批判的に検討する作業にも着手した。また、新しく、二〇世紀の歴史社会学的研究を基盤にしつつ、大量死の問題を研究し、死の社会学に新局面を開拓した。とくには社会主義、共産主義政権下での大量死を考察して、体制と文化の相乗作用の結果として理解した。社会的行為としての死の研究。医師、看護師、メディカル・ソーシャル・ワーカー、近親者などと死にゆく者との相互作用のなかで、死を観察、分析、研究した。とくに、緩和ケアのありかた、医師と看護師の役割分担、医療スタッフと近親者とのコミュニケーションに焦点あわせつつ、聞きとり調査をおこない、事例研究をおこなった。制度としての葬儀の研究。国内では、高度成長期以降の葬儀業界のありかたを、葬祭業者の専門職化と資格の制度化を中心に、調査、研究した。また、創価学会で近年注目される友人葬の事例を収集し、研究した。外国では、フランスにおける葬祭業の成立と展開にかんする歴史社会学的研究、中国の客家人の葬儀と死生観の事例研究をおこなった。文化としての追悼の研究。太平洋戦争時における市民から出た大量の死者を追悼する施設の調査・研究に主力を集中した。東京・沖縄・広島における戦争博物館の比較考察、対馬丸記念館の調査・研究がおこなわれた。ほかに、沖縄の陸軍病院壕、周南市回天記念館は、軍人戦死者の追悼施設として追加調査された。死の社会学の全体構想の研究。以上の3部門の研究をふまえ、内外の死の社会学的研究文献の分析・総括をあわせて、死の社会学の体系化が試みられた。全体社会、組織・集団、相互作用、社会制度、文化、パーソナリティ、社会的行為の7つの主要概念の有機的連関を利用して、死の社会学の7部門が構成された。(研究成果報告書、11ページ参照)。 | KAKENHI-PROJECT-17203034 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17203034 |
日本人の食事におけるグリセミックインデックスと糖尿病発症に関する疫学研究 | 日本人の食事のグリセミックインデックス(GI)と糖尿病発症の関連を検討した.北陸のある製造業事業所の従業員3,552名(男2,065名,女1,487名)に対して2003年に行った栄養調査の結果から,習慣的な食事のGIを算出した.2003年から2009年までに男性133名,女性31名の新規糖尿病発症を確認した.男性では,GI五分位第1位に対する糖尿病発症リスクは,五分位第5位で1.8倍に有意に上昇していた.女性ではGIと糖尿病発症の間に有意な関連は認めなかった.本研究により,日本人男性において,高GI食が糖尿病発症と関連することが示された.日本人の食事のグリセミックインデックス(GI)と糖尿病発症の関連を検討した.北陸のある製造業事業所の従業員3,552名(男2,065名,女1,487名)に対して2003年に行った栄養調査の結果から,習慣的な食事のGIを算出した.2003年から2009年までに男性133名,女性31名の新規糖尿病発症を確認した.男性では,GI五分位第1位に対する糖尿病発症リスクは,五分位第5位で1.8倍に有意に上昇していた.女性ではGIと糖尿病発症の間に有意な関連は認めなかった.本研究により,日本人男性において,高GI食が糖尿病発症と関連することが示された.今回の研究の対象は,富山県内の某製造業事業所における職域集団を対象とした循環器疾患発症調査を目的としたコホートである。本年度は,平成15年度に行った栄養調査の結果から,食事のグリセミックインデックス(GI),グリセミックロード(GL)を求め,既存の健診データと結合し,糖尿病発症のデータベースを作成した。1.食事調査の解析東京大学医学系研究科佐々木敏教授の協力のもと,平成15年に行った自記式食事歴法質問票(DHQ)から,食事のグリセミックインデックス(GI)・グリセミックロード(GL)値を算出した。2. GI, GLと代謝異常との関連の検討(横断研究)GI, GLの結果と,栄養調査の行われた平成15年度の健診結果を結合し, GI, GLと血糖値やインスリン抵抗性,代謝異常の関連を検討した。この結果,横断研究においては, GI, GLは空腹時血糖値やHbAlc,インスリン抵抗性指数など糖代謝の各種指標との関連は認めなかった。一方で, GLは男女ともにおいてHDLコレステロールと有意な負の関連を, LDLコレステロールと有意な正の関連(女性)または正に関連する傾向(男性)を認めた。3.糖尿病発症の確認平成15年から平成19年までの毎年の健康診断のデータを収集して,現病歴の問診や血液検査から血糖値の情報を確認した。また,糖尿病が疑われるものに対して行われた糖負荷試験の結果を収集・整理した。この結果,対象男女3,385人のうち,平成19年までに141人の新規糖尿病発症を確認した。この結果を健診データと結合し,糖尿病発症データベースを作成した。今回の研究の対象は,富山県内の某製造業事業所における職域集団を対象とした循環器疾患発症調査を目的としたコホートである。本年度は,平成21年度までの健康診断の結果から新規糖尿病発症を確認し,ベースラインの栄養調査の結果と結合し,食事のグリセミックインデックス(GI)・グリセミックロード(GL)値と6年間の糖尿病発症との関連について解析を行った。1.糖尿病発症の確認対象者の平成20年,平成21年の健康診断の病歴や血液検査情報を収集し,昨年度に作成した平成15年から19年までの糖尿病発症データベースに,2年分の結果を追加した。対象者3,552名(男2,065名,女1,487名)において,6年間で164名(男133名,女33名)の新規糖尿病発症を確認した。2.GIと食品摂取の関連の解析(横断研究)自記式食事歴法質問票(DHQ)の結果から,日本人の食事のGIに寄与する食品群の解析を行った。日本人のGIには精白米が大きく寄与し(男62.2%,女53.7%),次いで,パン類,お菓子類,砂糖類,麺類が各々5-10%程度寄与していた。すなわち,日本人では食事による血糖上昇の半分以上が精白米摂取に由来することが示唆された。3.GIと糖尿病発症の関連の解析(縦断研究)GI,GLと糖尿病発症の関連を検討した。男性ではGIが高いものほど糖尿病発症リスクは高く,GI5分位第1位に対する第5位の糖尿病発症ハザード比は約2倍と有意に上昇していた。一方,男性のGL,女性のGI,GLについては糖尿病発症と有意な関連は認められなかった。本研究により,日本人男性において,肥満や糖尿病家族歴などの危険因子とは独立して,高GI食が糖尿病発症と関連することが示された。 | KAKENHI-PROJECT-20790449 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20790449 |
年齢の違いによる脱神経横隔膜の変化と過負荷された横隔膜のトレーナビリティ | 本研究モデルである片側脱神経横隔膜モデルは横隔神経切除により同側の横隔膜は麻痺を生じ不活動となるが,対側の横隔膜が収縮することにより呼吸に同期した間歇的ストレッチが負荷されると考えられている。この現象に着目し,片側脱神経横隔膜モデルを作成,横隔膜に対する変化および年齢の違いによる変化に差が生じるかどうかを生理学的,形態学的,生化学的に分析し,明らかにすることを目的とした。さらに,片側横隔神経切除を行なったラットに対し,トレッドミルによる走行運動を負荷し,脱神経横隔膜へのストレッチ効果を高め,効果の違いを比較検討した。本年度は研究計画に従って,2年齢(老齢)ラットを飼育し,脱神経横隔膜モデルを作製,脱神経横隔膜の変化と過負荷された横隔膜の影響を分析する目的で実施した。老齢ラットにおいては平成18年度よりリタイヤラットを購入,飼育し,当該研究で使用する週齢まで飼育を行なった。予定週齢に達した時点で脱神経横隔膜モデルを作製した。走行運動群には術後1週より本学所有の小動物用トレッドミルを使用し,前年度成熟ラットに行った運動プロトコルを参考に、トレッドミルによる走行運動を開始した。しかし老齢であったため,前年度のプロトコルには応答できず,速度1520m/min,2030分間,傾斜なし,6日/週を4週間の期間中に漸増的に負荷を増大した。なお,老齢ラットにおける運動強度を確認するため走行運動前後における血中乳酸値を追加項目として測定した。その結果4週間の走行運度により血中乳酸値は4.0±1.2から1.8±0.3まで低下し,運動による呼吸循環系へのトレーニング効果があったことを示した。実験終了後,各群の横隔膜を採取し,生理学,組織化学,生化学的特性を分析した。現在詳細な実験結果については分析中であるが,走行運動により単収縮張力は上昇したが,収縮時間や弛緩時間には差が認められなかった。また,形態学的特性ではすべての筋線維において増大を示した。このように走行運動により横隔膜においてはトレーニング効果が認められた。これらについての知見を学科発表および学術論文として公表する予定である。本年度は研究計画に従って,9週齢雄性ラットにおける脱神経横隔膜モデルを作製し,脱神経横隔膜の変化と過負荷された横隔膜の影響を分析する目的で以下のとおり実施した。(1)脱神経横隔膜モデルの作製とトレッドミル走行の実施脱神経モデルは十分に麻酔がかかっていることを確認後,頸部腹側より正中切開し,横隔神経を露出し切除した。術後1週より本学所有の小動物用トレッドミルを使用し,Gilletteらの運動プロトコルを参考に、速度20m/min,40分間,傾斜なし,6日/週,4週間のトレッドミルによる運動負荷を開始した。(2)組織標本の採取と分析実験終了後,各群の横隔膜を採取し,生理学,組織化学,生化学的特性を分析した。当該年度に行なった実験によって得られた知見は,脱神経横隔膜は先行研究と同様にSO線維,FOG線維横断面積の増大が認められた。また走行運動を負荷することにより脱神経横隔膜はFG線維を増大させる傾向が認められた。また,対側のintactな横隔膜は筋線維横断面積に有意な差は認められなかったものの,fastest MHCであるMHC2bやMHC2dに相対的増加の傾向が認められた。(3)サンプル数の追加現在,実験を行なった個体数は6匹であり,予定サンプル数に達するところまで実験を行ない,さらに明確な知見を得る予定である。(4)老齢ラットの飼育老齢ラットにおいては平成18年度より飼育し,当該研究で使用する週齢まで飼育を行なう予定である。使用週齢に達した時点で脱神経横隔膜モデルを作製し,走行運動を実施する予定である。このようなデータの結果を踏まえ最終年度となる平成19年度は老齢ラットに対する知見を得て,年齢の違いが脱神経横隔膜の変化と走行運動による横隔膜のトレーナビリティについてさらに検討を進めたい。本研究モデルである片側脱神経横隔膜モデルは横隔神経切除により同側の横隔膜は麻痺を生じ不活動となるが,対側の横隔膜が収縮することにより呼吸に同期した間歇的ストレッチが負荷されると考えられている。この現象に着目し,片側脱神経横隔膜モデルを作成,横隔膜に対する変化および年齢の違いによる変化に差が生じるかどうかを生理学的,形態学的,生化学的に分析し,明らかにすることを目的とした。さらに,片側横隔神経切除を行なったラットに対し,トレッドミルによる走行運動を負荷し,脱神経横隔膜へのストレッチ効果を高め,効果の違いを比較検討した。本年度は研究計画に従って,2年齢(老齢)ラットを飼育し,脱神経横隔膜モデルを作製,脱神経横隔膜の変化と過負荷された横隔膜の影響を分析する目的で実施した。老齢ラットにおいては平成18年度よりリタイヤラットを購入,飼育し,当該研究で使用する週齢まで飼育を行なった。予定週齢に達した時点で脱神経横隔膜モデルを作製した。走行運動群には術後1週より本学所有の小動物用トレッドミルを使用し,前年度成熟ラットに行った運動プロトコルを参考に、トレッドミルによる走行運動を開始した。しかし老齢であったため,前年度のプロトコルには応答できず,速度1520m/min,2030分間,傾斜なし,6日/週を4週間の期間中に漸増的に負荷を増大した。 | KAKENHI-PROJECT-18700471 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18700471 |
年齢の違いによる脱神経横隔膜の変化と過負荷された横隔膜のトレーナビリティ | なお,老齢ラットにおける運動強度を確認するため走行運動前後における血中乳酸値を追加項目として測定した。その結果4週間の走行運度により血中乳酸値は4.0±1.2から1.8±0.3まで低下し,運動による呼吸循環系へのトレーニング効果があったことを示した。実験終了後,各群の横隔膜を採取し,生理学,組織化学,生化学的特性を分析した。現在詳細な実験結果については分析中であるが,走行運動により単収縮張力は上昇したが,収縮時間や弛緩時間には差が認められなかった。また,形態学的特性ではすべての筋線維において増大を示した。このように走行運動により横隔膜においてはトレーニング効果が認められた。これらについての知見を学科発表および学術論文として公表する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-18700471 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18700471 |
トマトを用いた新型インフルエンザに対する食べるワクチンの生産 | Human Hepatitis E Virus (HEV)のカプシドタンパク質が自己会合したVirus-like particle (VLP)は、消化耐性と腸管免疫誘導活性を持つ、食べるワクチンとして注目されている。インフルエンザの共通抗原であるM2エピトープを融合したHEVのカプシドを、果実特異的なE8プロモーターの制御下で発現する遺伝子組換え栽培トマト(Solanum lycopersicum cv.マイクロトムx愛知ファースト)を作出した。遺伝子組換え植物用の特定網室で栽培することにより、各種の動物実験に資するに十分量の果実を収穫した。Human Hepatitis E Virus (HEV)のカプシドタンパク質が自己会合したVirus-like particle (VLP)は、消化耐性と腸管免疫誘導活性を持つ、食べるワクチンとして注目されている。インフルエンザの共通抗原であるM2エピトープを融合したHEVのカプシドを、果実特異的なE8プロモーターの制御下で発現する遺伝子組換え栽培トマト(Solanum lycopersicum cv.マイクロトムx愛知ファースト)を作出した。遺伝子組換え植物用の特定網室で栽培することにより、各種の動物実験に資するに十分量の果実を収穫した。従来の「食べるワクチン」には、(1)抗原タンパク質の生産量が低い、(2)抗原タンパク質が消化される、(3)粘膜免疫の誘導が困難、という問題点があり、実用化に対する障壁になってきた。本研究では、トマトの果実中に高い濃度で発現させること、胃酸に耐性があって腸管の粘膜免疫を特異的に誘導するウイルス様粒子(VLP: Virus Like Particle、非病原性のカプシドタンパク質にインフルエンザ共通抗原(M2)を融合させたもの)を用いることにより、これらの問題点を克服することを目的とした。筑波大学遺伝子実験センターの遺伝子組換え植物栽培施設を活用し、医学系の共同研究者とのサルを用いた投与実験を行うための材料とするに十分な量のトマト果実を生産することを目標とする。E型肝炎ウイルスのカプシドタンパク質(ORF2)の親水的な領域にM2を融合したcDNAを、トマト果実に特異的なE8プロモーターに接続したコンストラクトを作成、実験室用トマト「品種マイクロトム」の形質転換植物を作出した。比較のためにCaMV(カリフラワーモザイクウイルス)35Sプロモーターを用いたコンストラクトを作成、さらに、タンパク質の蓄積状態を調べるために緑色蛍光タンパク質(ZsGreen)を発現するコンストラクトも作成し、これらの形質転換植物も作出した。タンパク質の発現量をPAGE-ウェスタンブロティングで調べると共に、導入タンパク質の蓄積状態をZsGreenタンパク質の発現により比較解析した。これらの結果、E8プロモーターと35Sプロモーターのそれぞれにおいて、優良な系統を作出することができた。現在、大果の生産品種である「愛知ファースト」と交配し、その一代雑種世代を用いて、環境影響評価試験用網室において、遺伝子組換えトマトの果実を収穫している。従来の食べるワクチンには、(1)抗原タンパク質の生産量が低い、(2)抗原タンパク質が消化される、(3)粘膜免疫の誘導が困難、という問題点があり、実用化に対する障壁になってきた。本研究では、トマトの果実中に高い濃度で発現させること、胃酸に耐性があり、腸管の粘膜免疫を特異的に誘導するウイルス様粒子(VLP: Virus-Like Particle、非病原性のカプシドタンパク質にインフルエンザ共通抗原(M2エピトープ)を融合させたもの)を用いることにより、これらの問題を克服することを目的とした。筑波大学遺伝子実験センターの遺伝子組換え植物栽培施設を活用し、医学系の共同研究者とのサルを用いた投与実験を行うための材料とするに十分な量のトマト果実を生産することを目標とした。ヒトE型肝炎ウイルスのカプシドタンパク質(ORF2)の親水性領域にM2エピトープを融合したcDNAを、トマト果実に特異的なE8プロモーターに接続したコンストラクトを作成、実験室用トマト「品種マイクロトム」の形質転換植物を作出した。比較のためにCaMV(カリフラワーモザイクウイルス)35Sプロモーターを用いたコンストラクトを作成、さらに、タンパク質の蓄積状態を調べるためにレポーター、緑色蛍光タンパク質(ZsGreen)を発現するコンストラクトも作成し、これらの形質転換植物も作出した。タンパク質の発現量を特異的抗体を用いた電気泳動-ウェスタンブロッティングで調べると共に、導入タンパク質の蓄積状態をZsGreenの発現により比較解析した。これらの結果、E8プロモーターと35Sプロモーターのそれぞれにおいて、優良な系統を作出することができた。収穫量を増やす目的で、大果の生産品種である「愛知ファースト」と交雑した一代雑種(F1)を用いて、環境影響評価試験用温室(特定網室)において、遺伝子組換えトマトの果実を収穫した。植物生理、植物バイオテクノロジー、遺伝子リテラシー教育H25年度に達成する目標として、コンストラクトの完成、モデル植物「マイクロトム」の形質転換、カプシドタンパク質の高産生株の選抜、大果品種の閉鎖系網室における栽培、の4点を挙げた。本研究開始前からの蓄積を含めてはいるが、目標はクリアできた。特に、大果品種との交配では、一代雑種を作ることができ、これらの果実をkgのレベルで凍結保存しつつある。今後は、果実中のVLPのタンパク質量を、系統毎に調べる。果実中にVLPが形成されているか、密度勾配遠心で調べるとともに、電子顕微鏡等でVLPの形状を観察する。 | KAKENHI-PROJECT-25660287 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25660287 |
トマトを用いた新型インフルエンザに対する食べるワクチンの生産 | VLPの免疫誘導能の検証として、遺伝子組換え果実の破砕物(トマトジュース)をサル及びマウスに経口投与し、血清中あるいは糞便中から目的とする抗原ペプチドに対するIgG、IgA抗体の検出を試みる(共同研究者による)。また、マイクロトムの形質転換植物系統については、T-DNAの挿入配列の周辺配列の塩基配列解析を行う。さらに、VLPを損なわないトマト加工品作りとして、サルに与えるトマトジュース等を安定的に作出する、トマトの凍結乾燥保存法についても試みる。以上の研究により得られた結果をまとめて、成果の発表を行う。本研究により、異分野を統合した新規の共同研究が発展するきっかけとなることを期待したい。形質転換トマトの栽培試験は年度を越えて引き続き行うため。2年目の研究を推進するため。当初の計画を変更することなく、研究を推進する。 | KAKENHI-PROJECT-25660287 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25660287 |
DNAマイクロアレイに基づく包括的神経疾患遺伝子診断システムの構築 | 本研究の目的は,現在の分子遺伝学の最新の知見を診療に結びつける最善の方法を築きあげることにある.この課題を実現するために,1.resequencing microarrayを用いた,包括的な,変異,および,多型の解析システム,2.独自に設計した,高密度array CGHによる,欠失,挿入,重複などの染色体異常の検出システム,の2つのアプローチを進めている.resequencing microarrayについては,筋萎縮性側索硬化症,パーキンソン病,副腎白質ジストロフィー,家族性痙性対麻痺を中心に解析が進んでおり,変異,多型の網羅的解析システムを構築し,診断に極めて有効であることを示した.array CGHによるアプローチでは,常染色体劣性遺伝性パーキンソン病(AR-JP)に焦点を当て,probeを100-200bpという高密度に実装することにより,欠失,重複を高感度に検出できるシステムを確立した.現在までに,AR-JP症例で299 alleleのPark2遺伝子欠失/重複を同定し,breakpointを塩基配列レベルで決定した.その解析から,欠失が配列依存性に生じているのではなく,染色体上のpositionに依存する形で生じていること,創始者効果は一部にとどまることから,欠失が独立に一定の頻度で生じていることを強く示唆するデータを得た.さらに,120種類の癌細胞株を解析し,31種類のPark2遺伝子の欠失,1種類の重複を見いだし,breakpointを決定した.その結果,Park2遺伝子の欠失/重複はgermline(AR-JP),somatic cell(癌細胞)で,ある部位に集中して生じていること,この部位はcommon fragile siteと呼ばれる領域に一致することから,染色体の不安定性機構の解析という点でも重要な知見をもたらすものと期待される.本研究の目的は,現在の分子遺伝学の最新の知見を診療に結びつける最善の方法を築きあげることにある.この課題を実現するために,1.resequencing microarrayを用いた,包括的な,変異,および,多型の解析システム,2.独自に設計した,高密度array CGHによる,欠失,挿入,重複などの染色体異常の検出システム,の2つのアプローチを進めている.resequencing microarrayについては,筋萎縮性側索硬化症,パーキンソン病,副腎白質ジストロフィー,家族性痙性対麻痺を中心に解析が進んでおり,変異,多型の網羅的解析システムを構築し,診断に極めて有効であることを示した.array CGHによるアプローチでは,常染色体劣性遺伝性パーキンソン病(AR-JP)に焦点を当て,probeを100-200bpという高密度に実装することにより,欠失,重複を高感度に検出できるシステムを確立した.現在までに,AR-JP症例で299 alleleのPark2遺伝子欠失/重複を同定し,breakpointを塩基配列レベルで決定した.その解析から,欠失が配列依存性に生じているのではなく,染色体上のpositionに依存する形で生じていること,創始者効果は一部にとどまることから,欠失が独立に一定の頻度で生じていることを強く示唆するデータを得た.さらに,120種類の癌細胞株を解析し,31種類のPark2遺伝子の欠失,1種類の重複を見いだし,breakpointを決定した.その結果,Park2遺伝子の欠失/重複はgermline(AR-JP),somatic cell(癌細胞)で,ある部位に集中して生じていること,この部位はcommon fragile siteと呼ばれる領域に一致することから,染色体の不安定性機構の解析という点でも重要な知見をもたらすものと期待される.本研究の目的は,現在の分子遺伝学の最新の知見を診療に結びつける最善の方法を築きあげることにある.この課題を実現するために,1.resequencing microarrayを用いた,包括的な,変異,および,多型の解析システム,2.独自に設計した,高密度array CGHによる,欠失,挿入,重複などの染色体異常の検出システム,の2つのアプローチを進めている.resequencing microarrayについては,筋萎縮性側索硬化症,パーキンソン病,副腎白質ジストロフィー,家族性痙性対麻痺を中心に解析が進んでおり,変異,多型の網羅的検出が実現しており,孤発性の疾患の中には,一部に病因となる遺伝子変異の存在を見出している.array CGHによるアプローチでは,常染色体劣性遺伝性パーキンソン病(AR-JP)に焦点を当て,probeを100-200bpという高密度に実装することにより,欠失,重複を高感度に検出できるシステムを確立した.現在までに,AR-JP症例について,133個の欠失,あるいは,重複を同定し,そのbreak pointを塩基レベルで決定した.このような規模の欠失部位の決定は,神経疾患に限らず癌の研究などを含め過去に類のないものである.break pointの塩基配列の解析から,欠失が配列依存性に生じているのではなく,染色体上のpositionに依存する形で生じていること,創始者効果は一部の症例にとどまることから,欠失が独立に一定の頻度でpopulation中で生じていることが強く示唆されるデータを得ている.この部位は,common fragile siteと呼ばれる領域に一致することから,染色体の不安定性機構の解析という点でも重要な知見をもたらすものと期待される.本研究の目的は,現在の分子遺伝学の最新の知見を診療に結びつける最善の方法を築きあげることにある。この課題を実現するために,1.resequencing microarrayを用いた,包括的な,変異,および,多型の解析システム,2.独自に設計した,高密度array CGHによる,欠失,挿入,重複などの染色体異常の検出システム,の2つのアプローチを進めている。 | KAKENHI-PROJECT-18209032 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18209032 |
DNAマイクロアレイに基づく包括的神経疾患遺伝子診断システムの構築 | resequencing microarrayについては,筋萎縮性側索硬化症,パーキンソン病,副腎白質ジストロフィー,家族性痙性対麻痺を中心に解析が進んでおり,変異,多型の網羅的解析システムを構築し,診断に極めて有効であることを示した。array CGHによるアプローチでは,常染色体劣性遺伝性パーキンソン病(AR-JP)に焦点を当て,probeを100-200bpという高密度に実装することにより,欠失,重複を高感度に検出できるシステムを確立した。現在までに,佃-JP症例で299 alleleのPark2遺伝子欠失/重複を同定し,breakpointを塩基配列レベルで決定した。その解析から,欠失が配列依存性に生じているのではなく,染色体上のpositionに依存する形で生じていること,創始者効果は一部にとどまることから,欠失が独立に一定の頻度で生じていることを強く示唆するデータを得た.さらに,120種類の癌細胞株を解析し,31種類のPark2遺伝子の欠失,1種類の重複を見いだし,breakpointを決定した.その結果,Park2遺伝子の欠失/重複germline(AR-JP),somatic cell(癌細胞)で,ある部位に集中して生じていること,この部位はcommon fragile siteと呼ばれる領域に-致することから,染色体の不安定性機構の解析という点でも重要な知見をもたらすものと期待される。 | KAKENHI-PROJECT-18209032 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18209032 |
Polycystic kidney ratを用いた慢性膵炎発症の分子機構の研究 | 膵管の管腔内にはprimary ciliaが存在する。本研究では、primary ciliaが障害されている多発性嚢胞腎症のモデルであるPolycystic kidney(PCK)ラットの膵臓の機能と形態を解析した。PCKラットでは、in vivoの膵液分泌量が減っていたが、アミラーゼ分泌は保たれていた。PCKラットから単離した小葉間膵管では、溶液分泌が亢進していた。単離膵管の管腔内にATPを加えた時の細胞内Ca2+反応は、管腔の灌流方向に依存しており、PCKラットでは逆であった。N-acetylcysteineを用いて粘液を取り除くと、電子顕微鏡でprimary ciliaを観察できた。膵管を含めた管腔組織には、上皮細胞のapical membraneより管腔に突出するprimary ciliaが存在する。本研究は、primary ciliaの機能が障害されている多発性嚢胞腎症のモデル動物であるPolycystic kidney(PCK)ラットの膵臓の機能と形態を解析する。今年度は、以下の研究成果を得た。(1)膵臓をコラゲナーゼ処理した後、実体顕微鏡下で腺房組織を取り除き、膵管樹を単離した。PCKラット膵のmainpancreatic ductの内径は平均180μmと正常ラット(平均100μm)に比べて有意に(p<0.05、n=5)拡張していた。(2)麻酔下にPCKラットの胆膵管にカニュレーションし、胆管を結紮することにより、膵液の分泌を測定した。PCKラットでは、基礎分泌および生理的濃度のセクレチン刺激による膵液分泌量が減っていた。また、基礎分泌時に8cm水柱までの静水圧を加えると、正常ラットでは分泌が停止し、PCKラットでは膵液が逆流した。PCKラットの膵臓では、膵導管細胞機能が障害されており、膵導管はより拡張しやすく機械刺激に対する反応の違いが認められた。(3)実体顕微鏡下で、直径100μmの小葉間膵管を単離した。単離膵管の管腔をN-acetylcysteineを含む溶液でmicroperfusionして粘液層を取り除き、glutaraldehyde液に浸して固定した後、管腔を縦方向に切り開いた。オスミウム染色し、凍結乾燥したサンプルを走査電子顕微鏡で観察した。管腔を観察すると、敷石状に並んだ膵導管細胞の1つ1つから管腔に突出するprimary ciliaを観察することができた。現在、PCKラットと正常ラットで形態を比較している。膵管の管腔内にはprimary ciliaが存在する。本研究では、primary ciliaが障害されている多発性嚢胞腎症のモデルであるPolycystic kidney(PCK)ラットの膵臓の機能と形態を解析した。PCKラットでは、in vivoの膵液分泌量が減っていたが、アミラーゼ分泌は保たれていた。PCKラットから単離した小葉間膵管では、溶液分泌が亢進していた。単離膵管の管腔内にATPを加えた時の細胞内Ca2+反応は、管腔の灌流方向に依存しており、PCKラットでは逆であった。N-acetylcysteineを用いて粘液を取り除くと、電子顕微鏡でprimary ciliaを観察できた。膵管を含めた管腔組織には、上皮細胞のapical membraneより管腔に突出するprimary ciliaが存在する。本研究では、primary ciliaの機能が障害されている多発性嚢胞腎症のモデル動物であるPolycystic kidney(PCK)ラットの膵臓の機能と形態を解析する。今年度は、以下の研究成果を得た。(1)麻酔下にPCKラットの胆膵管にカニュレーションし、胆管を結紮することにより、純粋膵液を採取した。PCKラットでは、基礎分泌および生理的濃度のセクレチン刺激による膵液分泌量が減っていたが、アミラーゼ分泌量は正常ラットと変わらなかった。PCKラットの膵臓では、腺房細胞機能は保たれるが、膵導管細胞機能が障害されていることが分かった。(2)実体顕微鏡下で、直径100μmの小葉間膵管を単離した。一昼夜培養して両端が閉じた膵管を用いて溶液分泌量を測定した。PCKラットの単離膵管では、高濃度のセクレチン刺激による溶液分泌が亢進していた。PCKラットの膵導管細胞では、管腔内圧のメカノセンサー機能が障害されていることを示唆している。(3)単離した膵管の管腔をmicroperfusionし、Fura-2を用いて細胞内Ca2+濃度を測定した。管腔灌流液にATPを加えた時の細胞内Ca2+反応は、管腔の灌流方向(十二指腸側/腺房側から)に依存していた。正常ラットの膵管では、腺房側から灌流した場合の反応が大きかったが、PCKラットでは逆であった。PCKラットの膵導管細胞では、管腔の機械的/化学的刺激に対する反応が変わっていることが分かった。(4)PCKラットの膵では、膵管の拡張と膵管周囲の線維化が見られ、ヒト慢性膵炎に類似した組織所見を示したが、嚢胞は見られなかった。腺房細胞は正常であった。また、膵導管の上皮細胞における水チャネルAQP1の免疫活性が亢進していた。primary ciliaの超微形態を解析するために、PCKラットの膵臓から単離した小葉間膵管の管腔をN-acetylcysteineを含む溶液で灌流して粘液層と取り除き、glutaraldehyde液に浸して固定した後、管腔を縦方向に切り開く。 | KAKENHI-PROJECT-24591010 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24591010 |
Polycystic kidney ratを用いた慢性膵炎発症の分子機構の研究 | オスミウム染色し、凍結乾燥したサンプルを走査電子顕微鏡で観察した。管腔を観察すると、敷石状に並んだ膵導管細胞の1つ1つに、細胞のほぼ中心から管腔内に突出する長さ5ミクロン程度のprimary ciliaを観察することができた。固定前の灌流方向、管腔内のATPおよび圧変化による細胞内カルシウム反応と、primary ciliaの走行と形態(長さ、太さ)との関係を解析中である。Fura-2を用いて、細胞内カルシウム濃度の変化を解析した。管腔内圧を変化させた時の細胞内カルシウム反応は、PCKラットから単離した膵管の方が反応が大きかった。また、管腔内灌流液のカルシウムを除くと、PCKラットから単離した膵管では、自然発生的に細胞内カルシウム振動が観察されたが、正常ラットからの単離膵管では見られなかった。膵臓病学本研究は、primary ciliaの機能が障害されている多発性嚢胞腎症のモデル動物であるPolycystic kidney(PCK)ラットの膵臓の機能と形態を解析する。今年度は、膵導管細胞から管腔に突出するprimary ciliaを、電子顕微鏡を用いて観察することを計画していた。これまでのprimary ciliaの形態の研究は主に培養細胞を使ったものに限られ、本研究も困難が予想されたが、繊細な作業の積み重ねによって、nativeな上皮細胞のprimary ciliaを観察することができた。今年度は、第一に、PCKラットの膵臓外分泌腺の生理機能と形態を解析することを計画していた。生理機能の解析としては、膵液分泌をin vivo(麻酔下の純粋膵液採取)およびin vitro(単離膵管レベルの溶液分泌)で測定することができた。その結果、in vitroでは分泌亢進、in vivoでは分泌低下という逆の結果が得られた。形態については、通常の固定膵組織を光学顕微鏡により観察した。その結果、膵管の拡張と蛇行および周囲の線維化というヒト慢性膵炎に類似の所見が得られた。in vivoの膵液分泌の低下は、拡張した膵管への貯留が原因と推定される。一方、in vitroにおける分泌亢進は、primary ciliaによる管腔内圧のメカノセンサー機能の障害を示唆している。これを確かめるために、管腔をmicroperfusionした単離膵管の細胞内Ca2+濃度を測定し、管腔膜のセンサー機能を評価した。PCKラットの膵導管細胞では、管腔の機械的(灌流方向)および化学的刺激(ATP)に対する反応が変わっていることが分かった。このように、今年度の計画は概ね達成できた。(1)昨年度の研究により可能となった電子顕微鏡によるprimary ciliaの形態の解析を進める。PKHD1変異/fibrocystin機能障害が、primary ciliaの形態(長さ、太さ、角度など)に及ぼす影響を解析する。(2)膵管管腔の機械的刺激に対する膵導管細胞のCa2+応答を解析する。予備実験では、PCKラットから単離膵管では、管腔内圧を生理学的な範囲で変化させた場合に、細胞内Ca2+の過剰応答が見られている。今年度は、apical membraneのCa2+チャネルの活性を比較することにより、この過剰応答のメカニズムを明らかにする。 | KAKENHI-PROJECT-24591010 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24591010 |
医薬品及び環境化学物質のアレルギー発症における代謝活性化の関与とその構造的要因 | 本研究では薬物アレルギー発症における化学物質の代謝活性化の関与、化学構造的要因を明らかにすることを目的とした。薬物アレルギー症状に重要な部位として皮膚に着目し、直接皮膚に使用する香粧品中の保存料であるパラベン類、紫外線吸収剤として使用されるベンゾフェノン類のin vitro代謝反応を明らかにした。さらに、パラベン類のラット肥満細胞を用いたヒスタミン遊離試験にて、種々のパラベン類によりヒスタミン遊離活性が変動することを見出した。医薬品を始めとする化学物質(環境化学物質を含む)を起因とする薬物アレルギーが問題となっている。これまでに重篤な副作用を発症するアンチピリンの抗原化機構に代謝活性化が関与することを明らかにした。しかしながら薬物アレルギー発現における明確なる化学物質の構造的要因を明らかにするには至っていない。本課題は薬物アレルギー発症における化学物質の代謝活性化の関与、化学構造的要因を明らかにすることを目的とした。薬物アレルギー症状に重要な部位として皮膚が挙げられる。香粧品は特性上、直接、皮膚に使用するため、アレルギー性接触皮膚炎などのアレルギー症状が懸念されている。香粧品中の保存料であるパラベン類、紫外線吸収剤として使用されるベンゾフェノン類に焦点をあて研究を展開した。まず代謝活性化の影響を検討する上で重要なパラベン類及びベンゾフェノン類の代謝反応について検討した。パラベン類を各組織のラットミクロソームにて検討を行い、種々のパラベン類により加水分解活性が変動することを報告した。またベンゾフェノン類をラット肝ミクロソームにて検討した結果、種々の新規代謝物を同定し報告した。さらにパラベン類のアレルギー反応及びその化学構造的要因を検討した。種々のパラベン類のラット肥満細胞を用いたヒスタミン遊離試験において、種々のパラベン類によりヒスタミン遊離活性が変動すること、また代謝物であるパラヒドロキシ安息香酸にはヒスタミン遊離作用が認められなかった。またモルモットにおける皮膚感作性試験においては、種々のパラベン類において抗原性が認められたのに対して、代謝物であるパラヒドロキシ安息香酸には抗原性が認めらなかった。これらの報告から、パラベン類のラット肥満細胞からのヒスタミン遊離活性変動には化学構造的要因が関与することが示唆された。本研究では薬物アレルギー発症における化学物質の代謝活性化の関与、化学構造的要因を明らかにすることを目的とした。薬物アレルギー症状に重要な部位として皮膚に着目し、直接皮膚に使用する香粧品中の保存料であるパラベン類、紫外線吸収剤として使用されるベンゾフェノン類のin vitro代謝反応を明らかにした。さらに、パラベン類のラット肥満細胞を用いたヒスタミン遊離試験にて、種々のパラベン類によりヒスタミン遊離活性が変動することを見出した。医薬品を始めとする化学物質(環境化学物質を含む)を起因とする薬物アレルギーが問題となっている。申請者は、これまでに重篤な副作用として薬物アレルギーを発症する医薬品であるアンチピリンの抗原化機構に代謝活性化が関与することを明らかにした。しかしながら薬物アレルギー発現における明確なる化学物質の構造的要因を明らかにするには至っていない。本申請課題は、薬物アレルギーを誘発する化学物質として医薬品及び環境化学物質を広く取り上げ、薬物アレルギー発症における化学物質の代謝活性化の関与、化学構造的要因の全容を明らかにすることを目的とした。本年度は、香粧品中の保存料であるパラベン類に着目して研究を行った。パラベン類は、抗菌作用を有し、保存料として食品、化粧品、医薬品などの様々な製品に使用されており、特に香粧品中では最も頻繁に使用されている保存料である。香粧品の特性上、直接、皮膚に使用するため、接触皮膚炎等のアレルギー症状が懸念されている。パラベン類のアレルギー反応及びその化学構造的要因を検討する目的として、種々のパラベン類のラット皮膚ミクロソームにおける代謝反応の検討を行い、種々のパラベン類により加水分解活性が変動することを見出した。ラット肥満細胞を用いたヒスタミン遊離試験において、種々のパラベン類により、ヒスタミン遊離活性が変動すること、また代謝物であるパラヒドロキシ安息香酸にはヒスタミン遊離活性が認められないことを見出いた。モルモットにおける皮膚感作性試験においては、ブチルパラベンにおいて抗原性が認められたのに対して、代謝物であるパラヒドロキシ安息香酸には抗原性が認められないことを見出した。これらの結果は、種々のパラベン類に抗原性があることを示唆しており、また、活性発現には生体内代謝の影響が小さいと考えられる。対象化学物質を当初は広く捉えていたが、まずは、パラベン類に絞って研究を展開することにより、アレルギー発症に至る構造活性相関、代謝による影響を明らかにすることができ、一定の成果が得られたと考えれる。次年度の研究計画として、紫外線吸収剤を始めとするパラベン類以外の化学物質での検討、薬物アレルギーのマーカーとなりうるサイトカインの活性変動、T細胞への親和性への影響について検討する課題を計画している。さらに、新たにアレルギー反応に関与する各種核内受容体への親和性を検討する課題を加える。本年度はパラベン類に絞って研究を展開したことにより、予定していた研究費を下回ったため、次年度に新たな研究課題を追加することが出来た。次年度は、ルミノメーターの購入することにより、核内受容体への親和性とアレルギー発現との関連に関する研究に着手する。 | KAKENHI-PROJECT-24790126 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24790126 |
可溶性交互共重合ポリイミドを用いる有機電子材料の開発 | 位置特異的反応性をもち,可溶性交互共重合ポリイミドのonepot合成が可能な脂環式二酸無水物Danを用いて,有機エレクトロニクス材料を志向した交互共重合ポリイミドの開発を行った。有機EL材料開発にむけた研究では,精製の困難さやポリマーの低溶解性などの理由から,期間内に目的ポリイミドの合成を達成できなかった。一方,有機トランジスタ用ゲート絶縁材料に適用する研究では,交互共重合ポリイミドを用いた素子がランダム共重合体を用いたものと比較して有意に大きなキャリア移動度を示した。位置特異的反応性をもち,可溶性交互共重合ポリイミドのonepot合成が可能な脂環式二酸無水物Danを用いて,有機エレクトロニクス材料を志向した交互共重合ポリイミドの開発を行った。有機EL材料開発にむけた研究では,精製の困難さやポリマーの低溶解性などの理由から,期間内に目的ポリイミドの合成を達成できなかった。一方,有機トランジスタ用ゲート絶縁材料に適用する研究では,交互共重合ポリイミドを用いた素子がランダム共重合体を用いたものと比較して有意に大きなキャリア移動度を示した。当グループが開発した非対称脂環式スピロ二酸無水物DAnと2種のシアミンとを用いると交互共重合ポリイミドがone-potで容易に合成可能であることを利用して,特異な分子構造に起因した高効率有機EL材料を開発することを目的とした。まず,ホール輸送兼発光部位を有する有機EL材料の開発を目指した。過去の知見に照らし,ホール輸送性と発光性を併せ持つ9,10-ジフェニルアントラセン部位を導入した青色発光交互共重合可溶性ポリイミドの発光の高効率化を試みた。具体的には側鎖に長鎖アルキル基をもったジアミンあるいはスルホ基をもったジアミンをスペーサーとして導入することで,相分離によって1分子内でクロモフォアを適当に引き離すことを検討した。しかしながら,検討した範囲のポリイミドでは固体状態で強く発光するものを得ることはできなかった。次に,ホール輸送性と電子輸送性のジアミンを交互に持つコポリイミドを有機EL材料とすることを検討した。ホール輸送性ジアミンとしてN,N'-Diphenyl-N,N'-bis(4-aminobiphenyl)[1,1'-biphenyl]-4,4'-diamine,電子輸送性ジアミンとして1,3,4-oxadiazole-2,5-diyl-4',4'''-bis[1,1'-Biphenyl]-4-amineを用いることとした。しかしながら,これらのモノマー合成時に1)予期せぬ副反応による著しい収率の低下,2)少量の副生物との分離の困難さという問題点に遭遇し,反応ルートの変更を含めて種々検討したが,結果的にわずかの量しかジアミンを得ることができなかった。それを用いてポリイミドを合成したが,溶解性に乏しく成膜が困難であったため溶解性を付与するべくアルキル鎖を導入した類縁体の合成を試みたが,再度合成上の問題に直面し,期間内に合成を完成させることはできなかった。薄膜型有機トランジスタ(OTFT)において,半導体とゲート絶縁膜との接触面は疎水性の環境が好ましいことが知られている。一方で,高分子ゲート絶縁膜には基板への強い接着性も求められ,その観点からは高分子に極性基が必要となる。そのような要請を満たす高分子材料の候補として両親媒性ポリマーを挙げることができる。申請者らはこれまでに両親媒性交互共重合ポリイミドを合成してきており,このコポリイミドについて系統的に検討を行うことで高性能の有機トランジスタが得られるものと考えた。当初,両親媒性ポリマーとして,スルホ基を側鎖にもつ親水性ジアミンの使用を検討したが,成膜性に問題があったため,その使用を断念し,疎水部分のみを系統的に変えたコポリイミドについて検討を行うこととした。すなわち,長鎖アルキル基を側鎖に持つ芳香族ジアミンであるアルキル3,5-ジアミノベンゾエートと通常のポリイミド合成でよく用いられる(4,4'-ジアミノ)ジフェニルエーテルを用いて,種々の側鎖アルキル基をもった交互共重合ポリイミドならびに対応するランダムコポリイミドを合成し,それらのOTFT用ゲート絶縁膜としての機能を評価した。その結果,1)同じ側鎖鎖長のジアミンを用いた場合,交互共重合体の方がランダム共重合体よりも高いキャリア移動度を示すこと,2)鎖長が短いものよりも長いほうが移動度が高くなる傾向があることを見出した。また,移動度と接触角から求められた表面の極性の問に一定の相関があることも分かった。しかしながら,一部再現性に問題が見出されるなど,ポリマーの構造とOTFTとしての機能の相関についての一般則を得るという最終目標に関しては,今後更なる検討の余地を残した。 | KAKENHI-PROJECT-19550177 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19550177 |
超音波法を用いた画像化手法による断面補修部分の健全度評価に関する研究 | 本研究では断面修復を行ったコンクリート部材の健全度を超音波法で評価した。その結果,コンクリートと補修材料との界面の欠陥を超音波の波形から検出できた。これは,空隙により超音波が反射されるためであり,健全な状態との区別を明確にすることができた。鉄筋が存在する場合,超音波の波形が複雑となるが,測定条件や相対的な比較をすることによって鉄筋下面の欠陥を検出できる可能性を示した。本研究では断面修復を行ったコンクリート部材の健全度を超音波法で評価した。その結果,コンクリートと補修材料との界面の欠陥を超音波の波形から検出できた。これは,空隙により超音波が反射されるためであり,健全な状態との区別を明確にすることができた。鉄筋が存在する場合,超音波の波形が複雑となるが,測定条件や相対的な比較をすることによって鉄筋下面の欠陥を検出できる可能性を示した。本年度は、超音波を用いた非破壊検査手法を適用し,断面修復部分の健全度評価において実験を実施した。コンクリート供試体に断面補修を施して200*200*200mmの供試体を作製した。修復材の違いにより超音波伝播速度や減衰特性が変化することが予想されるため,セメントモルタルおよびポリマーセメントモルタルを使用し,その違いについても検討を行った。補修における下地処理の有無による付着性状の差や,微細なひび割れや剥離をプラスチック板および気泡緩働シートを用いて模擬し,空隙の検出を試みた。また補修部分を載荷装置により強制的に剥離をさせ計測する実験も併せて行った。その結果,以下の結果が得られた。・修復が良好な面では,断面補修材と母材の界面からの小さな反射が見られ,併せてること母材の底面からの反射も併せて検出される。補修材と母材の境界面に欠陥が有る場合には超音波の反射波の振幅が大きくなる。その際に超音波は欠陥部でほとんど反射するため,健全部のような母材底面からの反射波は検出されない。・超音波探触子を一つだけ利用した場合でも計測条件を適切に設定すれば欠陥を検出できること等を示した。コンクリート構造物の維持管理が進められる中で,補修された部分の健全度評価のための検査手法が重要であるのは明白である。しかし,現状では補修後の点検・検査手法についての定量的な手法がないため,本実験で得られた結果の意義は大きい。本年度は,超音波を用いた非破壊検査手法を適用し,鉄筋コンクリートスラブの断面修復後の欠陥箇所の検出について実験を実施した。供試体として,断面補修を施した900×900×150mmの供試体を作製した。断面修復箇所の厚みは約55mmであり,鉄筋は断面補修材の中にかぶり30mmで埋設した。微細なひび割れや剥離を再現するために塩化ビニル板を用いて模擬し,センサを二つ使用する二探触子法とセンサを一つだけ用いる一探触示方によって模擬欠陥の検出を試みた。また鉄筋の影響を検討するために,鉄筋直上での計測や,センサ位置を変更して計測を実施した。今回の実験の範囲で得られた結果を以下に示す。・鉄筋が入っていなければ,厚さ1mmの欠陥であっても検出は可能である。・鉄筋位置よりも深いところに空隙がある場合,空隙からの反射波,底面の反射の有無により,計測条件によっては空隙を検出できる可能性がある。・鉄筋直上での計測する際,一探触子法の計測では鉄筋位置より深いところにある空隙の検出は困難であった。・センサの設置位置の影響は,鉄筋をまたぐ形でセンサを設置することで,欠陥の検出を容易にすることができるのではないかと考えられたが,鉄筋の影響を受けてしまい,欠陥検出は困難であった。・欠陥上にセンサを設置されていれば,空隙の検出は可能である。また,鉄筋の直上を避ければ鉄筋の影響を小さくすることができる。今回の検討により,超音波法を用いて断面補修部分の欠陥を反射波形により視覚的に検出でき,健全度評価の可能性を示すことができた。また,鉄筋が配筋されている箇所での影響を検討することができた。現状では補修後の点検・検査手法についての定量的な手法がないため,本実験で得られた結果は非常に有意義であるといえる。 | KAKENHI-PROJECT-19760304 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19760304 |
発がん性ヘテロサイクリックアミンによる遺伝子損傷とその修飾 | 代表的な発がん性ヘテロサイクリックアミンであるTrp-P-2とその代謝活性化体Trp-P-2(NHOH)を用いて、遺伝子損傷作用の多用性及びそれら活性の修飾因子の検討を行った。Trp-P-2(NHOH)は酸化的分解を受けTrp-P-2(NO)になる。この両者について、λファ-ジの2種の変異株間で生じるDNA組換え頻度に与える影響を調べたところ、5μMTrp-P-2(NHOH)で自然誘発頻度の約5倍に、5μMTrp-P-2(NO)では約3倍に頻度が上昇した。いづれの化合物も細胞内DNA鎖切断を生じることは分っており、この活性との相関性が考えられる。Trp-P-2自身にはこのような活性は見られなかった。Trp-P-2(NHOH)はプロファ-ジ誘発能も示したが、この機構にはSOS応答は寄与していないことを示す知見も得た。λファ-ジ組換え頻度の上昇は、クロロフィリンの同時点火により抑えられ、Ames testやショウジョウバエを用いたテストで得られた結果と一致した。Ames testを用いてTrp-P-2(NHOH)の変位原性に対するクロロフィリン誘導体及びポルフィリン関連色素の抑制作用を比較したところ、中心金属が変わると活性が異なり、鉄、銅、無金属の順に抑制活性が弱くなった。鉄クロリンやヘミンには、Trp-P-2(NHOH)の分解速度を上昇させる活性が強いことが分り、複合体形成による活性阻害と相加効果があると考えられる。クロロフィルについては、抽出原料には無関係にクロレラ2種及びホウレンソウで同程度の活性阻害が、Ames test及びショウジョウバエ翅毛スポットテストで示された。クロロフィリンの抑制機構が、主に変異原物質との複合体形成によることが、クロロフィリンと吸着可能な発がん性芳香族炭化水素ベンゾ(a)ピレン、ジメチルベンツアントラセン及び2-アミノアントラセンのショウジョウバエDNA傷害作用を抑えることから、更に支持された。クロロフィリンは、Trp-P-2以外のヘテロサイクリックアミンのDNA傷害作用も抑制した。代表的な発がん性ヘテロサイクリックアミンであるTrp-P-2とその代謝活性化体Trp-P-2(NHOH)を用いて、遺伝子損傷作用の多用性及びそれら活性の修飾因子の検討を行った。Trp-P-2(NHOH)は酸化的分解を受けTrp-P-2(NO)になる。この両者について、λファ-ジの2種の変異株間で生じるDNA組換え頻度に与える影響を調べたところ、5μMTrp-P-2(NHOH)で自然誘発頻度の約5倍に、5μMTrp-P-2(NO)では約3倍に頻度が上昇した。いづれの化合物も細胞内DNA鎖切断を生じることは分っており、この活性との相関性が考えられる。Trp-P-2自身にはこのような活性は見られなかった。Trp-P-2(NHOH)はプロファ-ジ誘発能も示したが、この機構にはSOS応答は寄与していないことを示す知見も得た。λファ-ジ組換え頻度の上昇は、クロロフィリンの同時点火により抑えられ、Ames testやショウジョウバエを用いたテストで得られた結果と一致した。Ames testを用いてTrp-P-2(NHOH)の変位原性に対するクロロフィリン誘導体及びポルフィリン関連色素の抑制作用を比較したところ、中心金属が変わると活性が異なり、鉄、銅、無金属の順に抑制活性が弱くなった。鉄クロリンやヘミンには、Trp-P-2(NHOH)の分解速度を上昇させる活性が強いことが分り、複合体形成による活性阻害と相加効果があると考えられる。クロロフィルについては、抽出原料には無関係にクロレラ2種及びホウレンソウで同程度の活性阻害が、Ames test及びショウジョウバエ翅毛スポットテストで示された。クロロフィリンの抑制機構が、主に変異原物質との複合体形成によることが、クロロフィリンと吸着可能な発がん性芳香族炭化水素ベンゾ(a)ピレン、ジメチルベンツアントラセン及び2-アミノアントラセンのショウジョウバエDNA傷害作用を抑えることから、更に支持された。クロロフィリンは、Trp-P-2以外のヘテロサイクリックアミンのDNA傷害作用も抑制した。 | KAKENHI-PROJECT-01614525 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01614525 |
肝障害の発生機序における酸素ストレスと微小循環障害の検討 | 肝障害の発生機序における酸素ストレスと微小循環障害の役割について検討する目的で,生体顕微鏡と高感度カメラを利用し,ラットの生体肝および灌流肝における実験モデルにおいて検討した.まず,肝臓の阻血再灌流モデルにおいて,フリーラジカルの発生をhydrogen peroxide感受性蛍光色素(DCF)を用い,肝小葉の中間帯よりフリーラジカルの発生が始まり,小葉中心部へと進展することを明らかにした.そして,この変化がキサンチン酸化酵素の阻害剤やプロスタグランディンE1により抑制されることを明らかにした.次に,ラットに急性のエタノール負荷をし,肝微小循環の変化を蛍光色素を標識した赤血球の流動を肝表面から撮像し、画像解析するにより定量的に計測した。ラット肝類洞を通過する赤血球は、20%エタノールを経胃的に急性投与すると急速に増加をきたし血流の亢進が持続したのに対し、40%エタノール投与では急速な血流増加を一時的に認めた後、60分後には血流速度は投与前値を下回り、高濃度アルコールの急性負荷が肝の微小循環障害を惹起する事を明らかにした。さらに,急性エタノール投与時のラット肝表面の蛍光を観察することにより,中心静脈域においてNADHがもっとも高値となることを示した。また,エンドトキシンによる肝障害モデルにおいて,Rhodamine123の蛍光により肝細胞のミトコンドリアの機能障害が観察され,クッパー細胞においてiNOSが誘導され,NOが放出され肝細胞におけるミトコンドリア機能障害をきたすことを明らかにした。さらに,エンドトキシンによる肝障害はNOの合成阻害剤であるL-NMMAにより初期には血流の増加がみられるが,後には微小循環障害をきたすことを明らかにした。また,エンドセリンの受容体の阻害剤を用いることにより,部分的に微小循環障害が抑制されることにより,エンドセリンも関与していることが明らかとした。肝障害の発生機序における酸素ストレスと微小循環障害の役割について検討する目的で,生体顕微鏡と高感度カメラを利用し,ラットの生体肝および灌流肝における実験モデルにおいて検討した.まず,肝臓の阻血再灌流モデルにおいて,フリーラジカルの発生をhydrogen peroxide感受性蛍光色素(DCF)を用い,肝小葉の中間帯よりフリーラジカルの発生が始まり,小葉中心部へと進展することを明らかにした.そして,この変化がキサンチン酸化酵素の阻害剤やプロスタグランディンE1により抑制されることを明らかにした.次に,ラットに急性のエタノール負荷をし,肝微小循環の変化を蛍光色素を標識した赤血球の流動を肝表面から撮像し、画像解析するにより定量的に計測した。ラット肝類洞を通過する赤血球は、20%エタノールを経胃的に急性投与すると急速に増加をきたし血流の亢進が持続したのに対し、40%エタノール投与では急速な血流増加を一時的に認めた後、60分後には血流速度は投与前値を下回り、高濃度アルコールの急性負荷が肝の微小循環障害を惹起する事を明らかにした。さらに,急性エタノール投与時のラット肝表面の蛍光を観察することにより,中心静脈域においてNADHがもっとも高値となることを示した。また,エンドトキシンによる肝障害モデルにおいて,Rhodamine123の蛍光により肝細胞のミトコンドリアの機能障害が観察され,クッパー細胞においてiNOSが誘導され,NOが放出され肝細胞におけるミトコンドリア機能障害をきたすことを明らかにした。さらに,エンドトキシンによる肝障害はNOの合成阻害剤であるL-NMMAにより初期には血流の増加がみられるが,後には微小循環障害をきたすことを明らかにした。また,エンドセリンの受容体の阻害剤を用いることにより,部分的に微小循環障害が抑制されることにより,エンドセリンも関与していることが明らかとした。肝障害の発生時における酸素ストレスと微小循環障害の役割について、ラット生体肝や灌流肝を実験対象とし、生体顕微鏡と高感度カメラを使用し検討することを試みた。先ず、ラット肝臓の阻血後再灌流の灌流肝モデルにおいて高感度カメラを備えた倒立型生体顕微鏡下に肝表面を観察した。hydroperoxide感受性蛍光色素(DCF)を利用し、肝小葉のzone2における早朝からのフリーラディカルの発生とその後のzone2からzone3への肝障害の進展を明らかにした。そして、それらがキサンチン酸化酵素の阻害剤やプロスタグランディンE1により抑制されることを明らかにした。次にエンドトキシン投与後時の肝障害モデルを作成し、エンドトキシン肝障害においてはKupffer細胞より放出される因子がミトコンドリア障害を惹起し、肝細胞障害性をきたすことを明らかにした。そしてそれがnitric oxide(NO)の合成阻害剤であるL-NMMAの投与により制御されることよりNOによるミトコンドリア障害が関与することを示唆する所見を得た。ラットの生体肝および灌流肝をもちいて,肝障害の発生機序における酸素ストレスと微小循環障害の役割について検討した。ラットに急性のエタノール負荷をし,肝微小循環の変化を蛍光色素を標識した赤血球の流動を肝表面から撮像し、画像解析するにより定量的に計測した。ラット肝類洞を通過する赤血球は、20%エタノールを経胃的に急性投与すると急速に増加をきたし血流の亢進が持続したのに対し、40%エタノール投与では急速な血流増加を一時的に認めた後、60分後には血流速度は投与前値を下回り、高濃度アルコールの急性負荷が肝の微小循環障害を惹起する事を明らかにした。さらに,急性エタノール投与時のラット肝表面の蛍光を観察することにより,中心静脈域においてNADHがもっとも高値となることを示した。 | KAKENHI-PROJECT-05454248 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05454248 |
肝障害の発生機序における酸素ストレスと微小循環障害の検討 | また,エンドトキシンによる肝障害モデルにおいて,Rhodamine123の蛍光により肝細胞のミトコンドリアの機能障害が観察されるが,クッパー細胞においてiNOSが誘導され,NOが放出され肝細胞におけるミトコンドリア機能障害をきたすことを明らかにした。さらに,エンドトキシンによる肝障害はNOの合成阻害剤であるL-NMMAにより初期には血流の増加がみられるが,後には微小循環障害をきたすことを明らかにした。また,エンドセリンの受容体の阻害剤を用いることにより,部分的に微小循環障害が抑制されることより,エンドセリンも関与していることが明らかとした。 | KAKENHI-PROJECT-05454248 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05454248 |
ビッグデータのリアルタイム処理基盤 | 近年ビッグデータの処理が注目されている。これらのリアルタイム処理は従来のソフトウェアでは困難な場合が多く、効率的な計算基盤が必要とされている。本研究では、ビッグデータの複数の実応用を一般化することにより、リアルタイム処理基盤の確立を目指す方針とした。取り組んだ応用は、甲骨文字の認識とそれに基づく文化遺産の整理、高齢者のリアルタイム見守り、水中ドローンによる外来魚の認識、事故などの交通現象のリアルタイム把握、ECサイトのアクセスログの解析による購入可能性の判定の5つである。画像処理、深層学習、バースト検出に特徴をもつ。その結果、ビッグデータの処理基盤の確立への見通しを得た。本研究では、ビッグデータ分析のリアルタイム処理基盤の確立を目指している。そのアプローチとして、GPUやFPGAを用いたハードウェア支援の研究と、リアルタイム制約のもとで最良の結果を得るためのソフトウェアの研究を融合して、ハードウェアとソフトウェアの協調によるビッグデータ分析のプラットフォームを構築することを目指している。平成27年度は初年度として、ハードウェア、ソフトウェアとも基礎的な研究を行い、またこれらと並行して、実ビッグデータへの応用の研究も行った。ハードウェアに関しては、ハッシュを利用したBloom Filterと、非決定性オートマトンを組み合わせたパターンマッチング方式の検討を行った。また、GPUを用いたデータマイニングアルゴリズムとして多次元クラスタリング(CLIQUEアルゴリズム)を取り上げ、その高速化の検討を行った。その結果、ビッグデータ分析におけるハードウェア支援の有効性に関して見通しを得た。また、クラスタリングとパターンマッチング技術を応用して甲骨文字の認識に取り組んだ。甲骨文字は劣化が激しいため従来技術では認識が困難であったが、構成要素に直線が多いという特徴を利用した新しい認識方法を提案し、評価実験により良好な結果が得られた。この成果は、画像電子学会の論文として採録された。ソフトウェアに関しては、イベントの急激な変化を迅速にとらえるリアルタイムバースト検出手法を拡張して、リアタイムでのバースト解析を実現するアルゴリズムについて研究を進めた。また、データ量やデータの特徴に応じて効率よくバーストを解析するためのパラメータの設定方法について検討した。さらにこの手法を拡張して実際のビッグデータに適用するため、マイクロブログやWebアクセスログの収集を開始した。ハードウェアに関しては、フィルタリングやクラスタリングなどビッグデータ処理の基本となるデータマイニングアルゴリズムのハードウェア支援の方式について見通しが得られるとともに、研究成果の応用への適用を進め、甲骨文字認識において従来方式を上回る性能を達成し、順調に成果が出ている。ソフトウェアに関しては、リアルタイムバースト解析手法の研究を進め、実用上の課題の一つであったパラメータの設定方法が明らかになった。また、データ収集のための仕組みを開発し、Webアクセスログおよびマイクロブログの収集を開始した。本研究では、ハードウェアとソフトウェアの協調によるビッグデータ分析のリアルタイム処理基盤の確立を目指している。平成27年度はハードウェア、ソフトウェアの基礎的な研究を行ったが、平成28年度は実ビッグデータの応用の研究を中心に行った。以下の3つの分野において研究を行った。1:平成27年度に引き続いてクラスタリングとパターンマッチング技術を応用した甲骨文字の認識に取り組んだ。27年度の提案方式は認識に関わるパラメータがいくつか存在し、これまでは予備実験や人手作業によりその値を調整していた。28年度は、パラメータをクラスタリングにより自動で決定する手法を提案した。その結果、提案手法の認識率が大幅に向上することを示した。2;高齢者の状況をリアルタイムに見守るため、カメラを設置し、常時撮影した画像の差分を取ることにより人間の動きを検出し、人間の中心点があらかじめ定義した危険エリアにいるときに危険と判断し、対応する動作を行うシステムを提案した。危険かどうかを判断するために、閾値の設定が重要である。本システムでは学習を用いて、自動的に閾値を設定することを目指している。3:イベントの急激な変化を迅速にとらえるリアルタイムでのバースト解析を実現するアルゴリズムの発展として、交通現象のキーワードをリアルタイムに獲得する研究を行った。交通事故などの交通現象の監視には,監視カメラやトラフィックカウンターなどが用いられているが,定点監視であるため監視範囲には限界がある。そこで,マイクロブログを解析し,交通現象に係わる情報取得を補完する方法について研究を進めた。本研究では,交通現象発生時に関連するキーワードがバーストする特性を用いて,リアルタイムバーストアルゴリズムを適用し、交通現象の獲得に有用なキーワードを抽出し,その有効性を評価した。3つの応用分野の実際のビッグデータを用いて、手法の提案および評価実験を行い、それぞれ良好な結果を得た。甲骨文字認識については劣化の激しい画像を含む20個の甲骨文字画像と31種のテンプレートを用いた実験の結果、パラメータ固定の手法の認識率が51.25%であるのに対し、本手法では92.25%に向上した。高齢者見守りについては、トイレにおいて事前に設置した危険領域での危険検出が実現でき、リビングルームにおいて楕円近似の手法を用いて危険検出が実現できた。また、これらの動作をRaspberry Piで実現し、低消費電力であることが示された。交通現象の情報取得については、評価実験を通して、既存のキーワード選定手法をそのまま交通現象の収集に適用した場合の課題である「出現数の少ない未登録のキーワードへ対応できない課題」と「選定したキーワードが恒常的に投稿に含まれる課題」を解消できていることを確認し、提案手法にて選定したキーワードは、リアルタイムな交通現象の獲得に有用であることがわかった。さらに、提案手法により選定されたキーワードの特性を明らかにした。この結果から提案手法は既存手法と組み合わせることが最も有効性が高くなると考えられる。平成29年度は、ビッグデータの応用の研究を中心に行った。以下の5つの分野において研究を行った。 | KAKENHI-PROJECT-15K00163 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K00163 |
ビッグデータのリアルタイム処理基盤 | 1:前年度までの甲骨文字認識の研究をベースに深層学習を用いることにより、高精度な認識率を達成することができた。さらに、甲骨文字認識を発展させて、拓本の時空間データベースを構築した。その検索により潜在的知識を抽出することが可能となり、歴史の整理、経済の推移、気候の変動などの研究への貢献を目指している。2:高齢者を見守るため、画像処理を用いて高齢者の転倒をリアルタイムに検出することを目指す。実験室において模擬転倒を行うことによりデータを収集し、転倒のパターンを分析した。それにより、高齢者の転倒を高い認識率で検出することが実現できた。3:近年、琵琶湖では著しく繁殖してきた外来魚の駆除が大きな課題となっている。本研究は水中自動走行ドローンの開発と共に、外来魚に関するデータの収集、及びリアルタイムで高精度の外来魚の検出を通じて駆除に貢献することを目指している。本年度は、水中ドローンの試作と魚の認識の基礎実験を行った。4:道路網での事故などの監視には,カメラ等の定点監視では監視範囲に限界がある.そこで,SNSの一種であるマイクロブログを解析し,交通現象に関する情報取得を補完する.本研究では,あらかじめキーワードを設定するのではなく、リアルタイムにバーストするキーワードにより,交通現象を効果的に取集可能であることを実験評価した.5:電子商取引においてはユーザの行動情報に基づいたダイレクトマーケティングの重要度が高まっており、これを用いた購入可能性の推定が重要である.本研究ではアクセスログを用いて,リアルタイムバースト検出手法によりユーザの購入可能性を推定する手法を提案した.実サイトのアクセスログを活用して実験を実施し,高精度に判定可能であることを証明した.近年ビッグデータの処理が注目されている。これらのリアルタイム処理は従来のソフトウェアでは困難な場合が多く、効率的な計算基盤が必要とされている。本研究では、ビッグデータの複数の実応用を一般化することにより、リアルタイム処理基盤の確立を目指す方針とした。取り組んだ応用は、甲骨文字の認識とそれに基づく文化遺産の整理、高齢者のリアルタイム見守り、水中ドローンによる外来魚の認識、事故などの交通現象のリアルタイム把握、ECサイトのアクセスログの解析による購入可能性の判定の5つである。画像処理、深層学習、バースト検出に特徴をもつ。その結果、ビッグデータの処理基盤の確立への見通しを得た。ハードウェアに関しては、引き続いてデータマイニングの基本 | KAKENHI-PROJECT-15K00163 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K00163 |
コミュニケーション障害児の「養護・訓練」のためのマルチメディア教育システムの開発 | 本研究は、自閉症児または重度知能障害児を対象とした「養護・訓練」の授業において、コミュニケーションの指導に利用できるようなマルチメディア教育システムを開発することを目的とする。初年度である本年は、数種の教材システムを開発し、それを若干の事例に適用することにより、今後の統合的なシステムの構築のための基礎とすることを研究目的とした。本年度の研究は、(1)自閉症児を対象とした構文指導、(2)知能障害児を対象とした日常概念の形成、(3)重度知能障害児を対象とした形態弁別能力の形成、の3種に及んだ。(1)の研究では、2名の自閉症児を対象に、モニター画面に対応する内容の文を文字パネルスイッチを選択することによって構成する学習を行なった。文字認知や機械操作に優れていることの多い自閉症児にとってこのようなシステムが有効であることが確認された。(2)の研究では、パソコン制御のVTRによる動画を呈示し、学習者は画面をおおうタッチスクリーンに触れることにより選択反応をし、日常概念の学習を行なった。CAI教材における入出力システムの拡大に展望を示すものとなった。(3)の研究では、挿入される形態板の正否をバーコードリーダにより読み取るものであり、重度知能障害児の弁別学習を非常に簡易なシステムにより実現できることを示した。以上3種の研究は、種々の入出力装置をパソコンで制御するマルチメディア教材により、学習者の障害の特性に応じた教育システムの開発が可能であることを示したと思われる。今後、これらの教育システムをさらに発展させつつ、より統合的なものとなるように研究を続けていきたいと考える。本研究は、自閉症児または重度知能障害児を対象とした「養護・訓練」の授業において、コミュニケーションの指導に利用できるようなマルチメディア教育システムを開発することを目的とする。初年度である本年は、数種の教材システムを開発し、それを若干の事例に適用することにより、今後の統合的なシステムの構築のための基礎とすることを研究目的とした。本年度の研究は、(1)自閉症児を対象とした構文指導、(2)知能障害児を対象とした日常概念の形成、(3)重度知能障害児を対象とした形態弁別能力の形成、の3種に及んだ。(1)の研究では、2名の自閉症児を対象に、モニター画面に対応する内容の文を文字パネルスイッチを選択することによって構成する学習を行なった。文字認知や機械操作に優れていることの多い自閉症児にとってこのようなシステムが有効であることが確認された。(2)の研究では、パソコン制御のVTRによる動画を呈示し、学習者は画面をおおうタッチスクリーンに触れることにより選択反応をし、日常概念の学習を行なった。CAI教材における入出力システムの拡大に展望を示すものとなった。(3)の研究では、挿入される形態板の正否をバーコードリーダにより読み取るものであり、重度知能障害児の弁別学習を非常に簡易なシステムにより実現できることを示した。以上3種の研究は、種々の入出力装置をパソコンで制御するマルチメディア教材により、学習者の障害の特性に応じた教育システムの開発が可能であることを示したと思われる。今後、これらの教育システムをさらに発展させつつ、より統合的なものとなるように研究を続けていきたいと考える。 | KAKENHI-PROJECT-63626003 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63626003 |
反強磁性障壁層の挿入によるスピンフィルタ型強磁性トンネル接合の磁気抵抗比の改善 | 強磁性絶縁体EuSを障壁層とした磁気トンネル接合においてはスピンフィルター効果によって磁気抵抗効果が発現すると期待できる。本研究では、強磁性EuS、Ge1-xMnxTe層に反強磁性MnTe層を付与した接合構造を提案し、分子線エピタキシー法を用いた作製条件を明らかにした。また、EuSにTeを添加することによって磁化特性を調整することができた。さらに提案した構造の強磁性/反強磁性層間には明瞭な交換バイアスが生じないことが分かった。フルエピタキシャル・スピンフィルタ強磁性トンネル接合におけるトンネル磁気抵抗比の改善を目的に、反強磁性ワイドギャップ半導体を付加挿入した接合の作製とその評価を目指し、分子線エピタキシー法を用いて各種薄膜の成長実験を行った。初年度の実績により基板をBaF2からInPに変更して薄膜成長を進めた。基板の表面清浄化のための熱処理過程を工夫することにより、所望の単層薄膜に関しては良好な成長を実現できたため、積層構造:Ge1-xMnxTe/ZB-MnTe/EuSを、基板温度や照射蒸気圧等の成長条件を変えながら作製し、反射高速電子線回折及びX線回折を用いた構造評価を行った。しかし、積層構造においては期待しているほどの良質なエピタキシャル膜が得られず、更なる改善が要求される。良好な結果が得られない一要因として、原子配列の観点からInP基板の面方位が成長に影響している可能性があることが分かり、面方位を(100)から(111)に変更することに決め、準備を進めている。リソグラフィによる素子加工に関しては、研究協力者とともにウェットエッチング等の条件について実験的に調べ、おおよその条件に関しては見出すことができた。一方、強磁性層間の磁気結合力と反強磁性膜の膜厚との関係を調べるための磁気光学Kerr効果測定装置の改良については、振動除去と磁場安定性の向上、光学素子の再選定を行い、SN比の改善は進んだが、冷凍機の不調により極低温測定には至っていない。現在、冷凍機が復旧し、評価実験の準備を進めている。フルエピタキシャルなスピンフィルタ強磁性トンネル接合におけるトンネル磁気抵抗比の改善を目的に分子線エピタキシー法を用いて各種薄膜の成長実験を進めた。InP(100)基板上への積層構造の品質向上に向けて、Te照射による基板表面の清浄化を行ってきたが、As照射による清浄化との差異を調べるため、Kセルを追加してAs照射条件下による薄膜成長実験を行った。反射高速電子線回折及び原子間力顕微鏡による表面構造の評価を行った結果、平坦性の向上が見られた。しかし、As雰囲気の残留成分による薄膜品質低下が懸念される結果となった。一方、Te照射条件に加えて、EuSの極薄膜を初期成長させることにより、引き続くGeTe(又はGe1-xMnxTe)薄膜のエピタキシャル性が改善される可能性があることが分かり、詳細を調べている。他方、BaF2(111)基板上にZB-MnTe/ Ge1-xMnxTe積層構造を作製し、良好なエピタキシャル構造であることをX線回折により確認した。磁場中冷却による異常ホール効果測定を低温にて行ったところ、ループシフトは確認できず、両磁性層間に交換バイアスが発現していない可能性があることが分かった。したがって、交換バイアスを伴わない両強磁性層(Ge1-xMnxTe、EuS)間の磁気遮断を実現できる可能性がある。なお、計画していたInP(111)基板上への作製に関しては、基板製造工程に問題が生じたため延期することとなった。強磁性絶縁体EuSを障壁層とした磁気トンネル接合においてはスピンフィルター効果によって磁気抵抗効果が発現すると期待できる。本研究では、強磁性EuS、Ge1-xMnxTe層に反強磁性MnTe層を付与した接合構造を提案し、分子線エピタキシー法を用いた作製条件を明らかにした。また、EuSにTeを添加することによって磁化特性を調整することができた。さらに提案した構造の強磁性/反強磁性層間には明瞭な交換バイアスが生じないことが分かった。フルエピタキシャル・スピンフィルタ強磁性トンネル接合におけるトンネル磁気抵抗比の改善を目的に反強磁性ワイドギャップ半導体を付加挿入した接合の作製とその評価を目指し、分子線エピタキシー法を用いて薄膜成長を行った。当初、基板としてBaF2を予定していたが、その表面に存在するへき開ステップが積層構造の断片化をもたらす可能性が高いことが実験的に明らかになってきたため、基板をInPに変更した。これまで培ったBaF2基板上への成長条件をベースとし、加えて基板の表面清浄化のための熱処理過程を工夫することにより、強磁性層Ge1-xMnxTeの薄膜成長に成功した。熱処理過程においては、処理中におけるTe照射がもたらす基板表面の清浄化効果が高いことが明らかになった。薄膜の構造評価は反射型高速電子回折、X線回折で行い、また異常ホール効果や磁気抵抗の温度依存性の観測から磁気的特性を評価した。また、InP基板上へのEuS薄膜の成長にも成功した。さらに、閃亜鉛鉱型(ZB-) MnTe薄膜の成長条件について、基板温度等を変えながら調べてきた。積層構造を作製するまでには至っていないが、各単層膜の成長条件に関しては比較的十分な知見を得ることができた。 | KAKENHI-PROJECT-23760295 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23760295 |
反強磁性障壁層の挿入によるスピンフィルタ型強磁性トンネル接合の磁気抵抗比の改善 | 一方、強磁性層間の磁気結合力と反強磁性膜の膜厚との関係を調べるために、磁気光学Kerr効果測定装置の改良を進めた。光弾性変調器を導入し、ロックインアンプで増幅することにより、室温にて標準試料の縦Kerr効果を観測できたが、SN比は十分とは言えず、今後さらなる改善に努める必要がある。フルエピタキシャルSF-MTJ:Ge1-xMnxTe/EuS/GeTeにおけるトンネル構造の強磁性層間に反強磁性層を挿入した場合の磁気抵抗効果について調べるために、分子線エピタキシー法を用いて各基本構造を作製し、構造及び磁気特性の評価を行った。反強磁性層の候補として閃亜鉛鉱型MnTeに注目し、BaF2(111)、InP(100)、(111)基板上への成長を行った。MnとTeの照射蒸気圧比及び成長温度を条件として結晶性の評価を行った。高温成長では閃亜鉛鉱型MnTeエピタキシャル膜を比較的容易に得ることができるが、成長温度の低温化に伴いNiAs型MnTeの混晶化が促進されることが分かった。なお、得られた閃亜鉛鉱型MnTeの光学バンドギャップはおよそ3.0 eVとなり、単相膜の品質は良好であった。Ge1-xMnxTe/MnTeの積層構造の作製にはGeTe層とMnTe層の界面拡散によるGe1-xMnxTe層の形成が有効であることを示した。Ge1-xMnxTe/MnTe及びEuS/MnTe界面における磁気的な相互作用をSQUID測定により調べた。その結果、ともに交換バイアスによる明瞭な磁化シフトは現れず、わずかな保磁力変化が見られた。シフトの要因を交換結合によるものであると断言するには至っていない。スピンフィルタートンネル障壁を挿入した積層構造を作製し、ナノテクネット支援(山口大学)を受けてリソグラフィーとドライエッチングによる素子化を行った。電極形成としてIn蒸着並びに銀ペーストによる配線固定を施した。トンネル障壁厚(25nm)及び接合断面積(100250μm2)を変えた試料を作製し、輸送特性の評価を行った。多くの試料の特性は、Simmonsの理論的な非線形特性ではなく、線形な特性を示した。障壁のピンホール形成が主な原因と思われる。電気・電子材料反強磁性層の膜厚を変えた積層構造を作製し、磁気光学効果による磁気特性評価実験を行い、強磁性層間の磁気結合に及ぼす反強磁性層の影響に関する検討については、積層構造を作製するという計画は達成できているが、良質な試料を得られていない。また、磁気光学効果測定装置の改善は進んだが、冷凍機の不調により評価実験には至っていない。以上の理由より、「やや遅れいている」と判断した。一方、素子加工条件の検討については研究協力者の支援のもと、計画通り進んでいる。分子線エピタキシー法による積層構造の作製に関しては、薄膜の成長条件をおおよそ調べることができているが、良好なエピタキシャル性をもつ積層構造は得られておらず、磁気抵抗に対する反強磁性層の挿入効果については知見が得られていない。しかし、基板清浄化や初期成長過程を工夫し、品質改善は確実に進展している。また、素子加工や輸送特性実験については研究協力者の支援のもと、準備が整っている。一方、InP基板の面方位が成長に及ぼす影響を調べるためInP(111)基板を新たに導入することとしたが、メーカーの基板製造工程に問題が生じたため、今年度に実験を進めることはできず、来年度に延期することになった。 | KAKENHI-PROJECT-23760295 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23760295 |
ファイナンス経済学における情報・知識・不確実性と合理的行動 | 大きく分けて二つの研究に取り組んだ.一つは投資家の自信過剰・自信過小が株式価格固有の動きにどのような影響を及ぼすかの研究である.ショート・ポジションの制約は株価に対して非対称な効果を及ぼすことはよく知られているが,自信の程度に差がある投資家が存在するとき,やや異なった状況が現出する.グッド・ニュースは短期的にはモーメンタムを,長期的にはリバーサルを生み出すである.さらに,一般には株価の経路には定性的な影響を及ぼさない,と考えられている株式の供給量が,株価の経路に大きく複雑な影響を及ぼすことも明らかになった.既存研究には見られないこれらの結果は,複雑な株価の動きの理解に貢献するものと思われる.この研究の幅産物として,「合理的な自信過剰」に関する研究も進展した.いま一つの研究は,情報の認知および特性と投資家行動の関係の研究である.この論点は、金融市場の理解にとってとりわけ大きな重要性をもつ.われわれは,実験によって個人の意思決定過程を直接検証する方法を用いた.その際,特に注目したのは情報の信頼性あるいは情報の制度が投資家の投資行動に与える影響である.さらに,個別株式の情報に反する経済全体の情報がいかに評価され,投資家の行動に影響するか,にも関心を払った.現在,実験結果の検証を進めているが,たとえば,情報の質に応じて投資家はどのように意思決定を変えるのか,あるいはどのような情報を利用し,どのような情報を無視するのか,などに関する多くの有用な知見が得られるのではないかと期待している。三つのテーマに取り組んだ.第一の研究は,確信におけるバイアス(biases in confidence)に関連する.このテーマは,近年,経済学でも広く論じられるようになり,さまざまな不確実性のもとでの意思決定における重要性が広く共有されるようになった.特に金融市場においては,意思決定に複雑な情報獲得・処理が関連している.われわれの研究では,確信における誤差に注目し,それがなぜ生じるのか,金融市場で広く見られるのはなぜか,を理論的に明らかにした.この研究は既にdiscussion paperとしてまとめられており,フランス経済学会のConferenceなどいくつかの学会・セミナーで報告あるいは報告の予定になっている.第二も確信に関係しており,金融市場における過大な確信と過小な確信の相互作用がもたらす効果が研究テーマである。過信は人間行動の顕著な特徴として広く知られているが,過小な確信はさほど注目されてこなかった.しかし,ノイズ・トレーダーが存在する金融市場では,情報の質と現実妥当性に不確実性が存在するとき,投資家は過小な確信に陥る可能性がある.過剰と過小な確信をもつ投資家の存在と,ショート・ポジションの制約を考慮することによって,証券価格に見られる特徴のいくつか理論的に説明できる.この研究については,現在,論文にまとめている段階である,第三のテーマは,特に投機色が強い金融市場における,情報の到達時間の不確実性がもたらす効果である.ファンダメンタル・バリューに関する不確実性が基本的に重要なのは言うまでもないが,それ以外のさまざまな不確実性が,投資家の行動に大きな影響を与える可能性があり,情報の到達時間の不確実性もその一つと考えられる.この研究テーマに取りかかったのは最近であり,現在理論モデルの構築を進めている段階である.大きく分けて二つの研究に取り組んだ.一つは投資家の自信過剰・自信過小が株式価格固有の動きにどのような影響を及ぼすかの研究である.ショート・ポジションの制約は株価に対して非対称な効果を及ぼすことはよく知られているが,自信の程度に差がある投資家が存在するとき,やや異なった状況が現出する.グッド・ニュースは短期的にはモーメンタムを,長期的にはリバーサルを生み出すである.さらに,一般には株価の経路には定性的な影響を及ぼさない,と考えられている株式の供給量が,株価の経路に大きく複雑な影響を及ぼすことも明らかになった.既存研究には見られないこれらの結果は,複雑な株価の動きの理解に貢献するものと思われる.この研究の幅産物として,「合理的な自信過剰」に関する研究も進展した.いま一つの研究は,情報の認知および特性と投資家行動の関係の研究である.この論点は、金融市場の理解にとってとりわけ大きな重要性をもつ.われわれは,実験によって個人の意思決定過程を直接検証する方法を用いた.その際,特に注目したのは情報の信頼性あるいは情報の制度が投資家の投資行動に与える影響である.さらに,個別株式の情報に反する経済全体の情報がいかに評価され,投資家の行動に影響するか,にも関心を払った.現在,実験結果の検証を進めているが,たとえば,情報の質に応じて投資家はどのように意思決定を変えるのか,あるいはどのような情報を利用し,どのような情報を無視するのか,などに関する多くの有用な知見が得られるのではないかと期待している。 | KAKENHI-PROJECT-06F06022 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06F06022 |
多次元薄板スプライン補間法による経皮経粘膜薬物送達システムの最適化 | 多次元薄板スプライン補間(Thin-Plate Spline、TPS)を利用する新規最適化法を開発し、各種薬物送達システム(DDS)の設計・最適化に適用した。さらに、最適解予測値の信頼性について、ブートストラップ(Bootstrap、BS)法と自己組織化マップ(Self-OrganizingMap、SOM)を基礎とする新たな評価法を開発し、その有用性を検証した。DDS製剤の処方設計における設計変数と製剤特性間の相関モデル作成プロセスにTPSを導入することで、計測データに実験誤差が含まれる場合にも無理なく補間曲面の同定が可能となり、古典的な応答曲面法に比べ予測精度が格段に向上した最適設計支援システム(RSM-S)を構築することができた。モデル製剤としてテオフィリン含有経口徐放型DDS、ジクロフェナク含有経皮吸収型DDS及びインスリン含有経口粘膜吸収型DDSを選択し、これらDDSの最適設計にRSM-Sを適用した。その結果、いずれのDDSにおいても有効性、安全性及び安定性に関する特性の予測値は実測値と高精度に一致し、RSM-Sの有用性が検証された。RSM-Sで推定された最適解の信頼性を評価するためにBS法の応用を試みた。BS法は標本に対して多数回の復元抽出を行い、これより標本の信頼性評価を行うものである。本研究では、はじめに実験計画法に従って得られたデータセット(オリジナル標本)に対して復元抽出を適用してBS標本を作成した。次にBS標本にRSM-Sを適用してBS最適解を推定し、BS最適解の分布を観察した。その結果、いずれの事例においてもBS最適解の集合は正規分布に従わず、複数の異なるクラスターを構成することが示された。そこで、BS最適解のクラスタリングを目的としてSOMの適用を試みた。上述した3種類のDDSについてBS最適解のSOMクラスタリングを実施した結果、いずれの事例においても最適解の所属するクラスターを明確に識別することができ、これよりRSM-Sで得られた最適解の信頼性評価が可能となった。多次元薄板スプライン補間(Thin-Plate Spline、TPS)を利用する新規最適化法を開発し、各種薬物送達システム(DDS)の設計・最適化に適用した。さらに、最適解予測値の信頼性について、ブートストラップ(Bootstrap、BS)法と自己組織化マップ(Self-OrganizingMap、SOM)を基礎とする新たな評価法を開発し、その有用性を検証した。DDS製剤の処方設計における設計変数と製剤特性間の相関モデル作成プロセスにTPSを導入することで、計測データに実験誤差が含まれる場合にも無理なく補間曲面の同定が可能となり、古典的な応答曲面法に比べ予測精度が格段に向上した最適設計支援システム(RSM-S)を構築することができた。モデル製剤としてテオフィリン含有経口徐放型DDS、ジクロフェナク含有経皮吸収型DDS及びインスリン含有経口粘膜吸収型DDSを選択し、これらDDSの最適設計にRSM-Sを適用した。その結果、いずれのDDSにおいても有効性、安全性及び安定性に関する特性の予測値は実測値と高精度に一致し、RSM-Sの有用性が検証された。RSM-Sで推定された最適解の信頼性を評価するためにBS法の応用を試みた。BS法は標本に対して多数回の復元抽出を行い、これより標本の信頼性評価を行うものである。本研究では、はじめに実験計画法に従って得られたデータセット(オリジナル標本)に対して復元抽出を適用してBS標本を作成した。次にBS標本にRSM-Sを適用してBS最適解を推定し、BS最適解の分布を観察した。その結果、いずれの事例においてもBS最適解の集合は正規分布に従わず、複数の異なるクラスターを構成することが示された。そこで、BS最適解のクラスタリングを目的としてSOMの適用を試みた。上述した3種類のDDSについてBS最適解のSOMクラスタリングを実施した結果、いずれの事例においても最適解の所属するクラスターを明確に識別することができ、これよりRSM-Sで得られた最適解の信頼性評価が可能となった。薬物の経皮経粘膜吸収を改善し臨床応用へと結びつけるためには、信頼性の高い製剤処方最適化手法を開発することが重要である。これまでに報告者らは、人工ニューラルネットワーク(ANN)を利用する最適化手法(RSM-ANN)を開発し、その製剤設計最適化への応用性を検討してきた。ANNは設計変数と製剤特性間の非線形性を近似する上で優れた手法であり、従来の線形応答曲面法(RSM)に比較して良好な結果が得られる。しかし、ANNは本質的にパターン認識の一手法であること、予めユーザーが設定すべきパラメータが非常に多いことなど、解決すべき問題点が多く残されている。本研究では、ANNの問題点を克服し得る最適化手法の開発を試み、多次元スプライン補間の応用について検討した。その結果、重調和スプライン補間に線形多項式近似を加味した薄板スプライン補間(TPS)を導入することによって、データに誤差が含まれる場合にも問題なく補間曲面の同定が可能であることを明らかとし、本手法を組み込んだ最適設計支援システム(RSM-TPS)を開発した。ケトプロフェン含有経皮吸収型ヒドロゲル製剤及びパクリタキセル含有マイクロエマルション製剤を選択し、その作製条件の最適化に適用した結果、両製剤ともに妥当で高精度な最適解を探索することができた。非線形手法に共通の課題として、最適解推定値の信頼性を評価する普遍的な手段がないことが挙げられる。 | KAKENHI-PROJECT-16590035 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16590035 |
多次元薄板スプライン補間法による経皮経粘膜薬物送達システムの最適化 | 本研究では、RSM-TPSにより得られる最適解の信頼性評価法の開発を試み、ブートストラップ法(BS法)を応用することで良好な結果が得られた。BS法は、くり返しを許して標本再抽出を行い、BS標本から予測される複数の最適解(BS最適解)により信頼性を評価しようとするものである。BS法を適用することによって、最適解の精度(δ)と再現性(γ)の推定が可能となり、従来の線形RSMと同様、一般統計量を用いた最適解の信頼性評価が可能となった。さらに、最適解に対する設計変数の重要度を調べる手段としてBS法を応用したleave-one-factor-out(LOFO)法を開発した。これは、全設計変数より1変数を除いたBS標本を作成し、これにRSM-TPSを適用してLOFO-BS最適解を求め、そのδ値及びγ値から当該変数の重要度を推定するものである。上記二製剤にLOFO-BS法を適用した結果、最適解に対する設計変数の重要度が、一般統計量を用いて記述できることが明らかになった。次年度は、過去に報告されたDDSの処方設計・最適化事例を収集し、RSM-TPS法による最適解の探索とBS法による信頼性の評価を行い、RSM-TPS法の応用性と限界を調べる予定である。製剤設計の高効率化や開発コスト削減の要求に対処するためには,新しい予測技術の開発が重要である.本研究では,多次元スプライン補間を利用する新たな最適化法を開発し,経皮経粘膜薬物送達システム(DDS)の設計・最適化に適用することによって,その有用性を評価することを試みた.また,予測された最適解の信頼性について,ブートストラップ(BS)法と自己組織化マップ(SOM)を基礎とする新たな評価法を開発し,その可能性について検討した.重調和スプライン補間に線形多項式近似を加味した薄板スプライン補間(TPS)を利用することにより,計測データに誤差が含まれる場合にも問題無く補間曲面の同定が可能であり,TPSとRSMを融合した新規非線形応答曲面法(RSM-TPS)の開発に道を拓いた.NSAIDSを主薬とする経皮吸収型DDS及び機能性高分子をキャリアとするインスリン経口吸収DDSの作製プロセスにRSM-TPSを適用した結果,いずれの事例も妥当で高精度な最適解を探索することができた.RSM-TPS法で推定される最適解の信頼性を評価するためにBS法の適用を試みた.重複を許して再抽出した複数の標本にRSM-TPS法を適用してBS最適解を推定し,その分布から信頼性が評価できるか否かについて検討した.上記の事例について,BS最適解の分布を調べた結果,いずれのケースもBS最適解の集合は全く正規分布には従わず,BS最適解は複数の異なるクラスターから構成されることが示唆された.そこで,SOMによりBS最適解をクラスター分けし,最適解の所属するクラスターを同定した.その結果,いずれの場合においても最適解の所属クラスターは明確に識別可能であり,これより最適解の信頼性評価が可能であることが示唆された.次年度は,これまでの研究成果を基にRSM-TPSにおける設計変数の重要度を客観的に評価する手法を開発する予定である.薬物送達システム(DDS)の開発研究は投薬技術の最適化を目的とするものであり、その製剤設計は科学的根拠に基づくもめでなければならない。 | KAKENHI-PROJECT-16590035 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16590035 |
老人訪問看護事業に対する潜在看護婦の参加促進・阻害因子の構造に関する研究 | 潜在看護婦(就業意欲のある未就業看護職)の訪問看護への就業意欲と、その促進・阻害因子を把握することを目的として、広島県看護協会のナ-スバンク登録者を対象に調査を行った(配布987名・回収457名・回収率46.3%)。潜在看護婦の特性:得られたサンプルの年齢構成は、20代18.4%・30代58.9%・40代15.8%・50代4.6%・60代2.0%で、98.9%を女性が占めた。医療機関勤務経験者が9割弱、フルタイム勤務継続者が7割存在した。現在の平均離職期間は6.4年(標準偏差5.2年)で、「家庭要因(育児等)」を離職理由とする者が82.5%存在した。参加意欲:勤務形態に関わらす訪問看護を希望した者は46.4%で、パートタイムには40.9%、フルタイムには20.8%の希望があった。またパートタイムでは40.9%のうち15.5%が、フルタイムでは20.8%のうち9.8%が将来も継続する意志を示していた。パートタイムには、全体の約8割が希望、約4割が次年度には就業可能であり、量的即戦力としての意義が認められるが、その継続性はフルタイムより低く、雇用者側に管理スキルが要求される。促進・阻害因子:数量化理論第II類により、個人・家庭・職業因子39変数に対し変数選択を実施した結果、「看護協会主催の訪問看護講習会への意欲の有無」「訪問看護が好きな仕事か否か」「看護基礎教育過程が専門学校か否か」「乳幼児・小学生の有無」の順に高い寄与を示した。また「情報収集」と「アセスメント」の自己スキルも続く寄与率を示したが、これへの自信は訪問看護就業への阻害因子として作用していた。政策的課題:回収率を考慮すると、2割以上の潜在看護婦が好きな仕事として訪問看護への就業意欲をもっている可能性が高い。しかし自己スキルへの不安は大きく、約1ケ月間の訪問看護講習会を受講しようという前向きな姿勢にある。よって、訪問看護技術を獲得していくプロセスへの政策的支援体制が、マンパワー確保上の重要な課題として示唆された。潜在看護婦(就業意欲のある未就業看護職)の訪問看護への就業意欲と、その促進・阻害因子を把握することを目的として、広島県看護協会のナ-スバンク登録者を対象に調査を行った(配布987名・回収457名・回収率46.3%)。潜在看護婦の特性:得られたサンプルの年齢構成は、20代18.4%・30代58.9%・40代15.8%・50代4.6%・60代2.0%で、98.9%を女性が占めた。医療機関勤務経験者が9割弱、フルタイム勤務継続者が7割存在した。現在の平均離職期間は6.4年(標準偏差5.2年)で、「家庭要因(育児等)」を離職理由とする者が82.5%存在した。参加意欲:勤務形態に関わらす訪問看護を希望した者は46.4%で、パートタイムには40.9%、フルタイムには20.8%の希望があった。またパートタイムでは40.9%のうち15.5%が、フルタイムでは20.8%のうち9.8%が将来も継続する意志を示していた。パートタイムには、全体の約8割が希望、約4割が次年度には就業可能であり、量的即戦力としての意義が認められるが、その継続性はフルタイムより低く、雇用者側に管理スキルが要求される。促進・阻害因子:数量化理論第II類により、個人・家庭・職業因子39変数に対し変数選択を実施した結果、「看護協会主催の訪問看護講習会への意欲の有無」「訪問看護が好きな仕事か否か」「看護基礎教育過程が専門学校か否か」「乳幼児・小学生の有無」の順に高い寄与を示した。また「情報収集」と「アセスメント」の自己スキルも続く寄与率を示したが、これへの自信は訪問看護就業への阻害因子として作用していた。政策的課題:回収率を考慮すると、2割以上の潜在看護婦が好きな仕事として訪問看護への就業意欲をもっている可能性が高い。しかし自己スキルへの不安は大きく、約1ケ月間の訪問看護講習会を受講しようという前向きな姿勢にある。よって、訪問看護技術を獲得していくプロセスへの政策的支援体制が、マンパワー確保上の重要な課題として示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-07670441 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07670441 |
市場におけるミクロ・マクロ・ループに注目した考慮集合の周期的変動メカニズム | 消費者意思決定に際して選択対象となるブランドの集合を、考慮集合とよぶ。まず、考慮集合のサイズが、時間経過に従い周期的に増減する現象をデータにより示した。次に、そのメカニズムを考察した。具体的には、1コスト・ベネフィット・アプローチにより、個人の内的変化(考慮集合の変化)を考え、2ミクロ・マクロ・ループに注目し、消費者(ミクロ構成員)の考慮集合の変化による市場(マクロ・システム)の変化(ミクロ→マクロ)と、市場の変化による考慮集合の変化(マクロ→ミクロ)を考えた。すなわち、個人の意思決定が、他者や市場を通じて自身の行動を周期的に変化させるメカニズムを考察した。ここでは、考慮集合(消費者の意思決定に際して、最終的な選択対象となるブランドの集合)に含まれるブランド数(考慮集合のサイズ)が、時間経過に従い周期的に増減する現象を指摘した後、そのメカニズムを考察する。具体的には、(A)コスト・ベネフィット・アプローチにより、個人の内的変化(考慮集合の変化)を考察し、(B)ミクロ・マクロ・ループに注目し、消費者(ミクロ構成員)の考慮集合の変化による市場(マクロ・システム)の変化(ミクロからマクロへ)、同時に、市場の変化による考慮集合の変化(マクロからミクロへ)を考える。すなわち、個人の意思決定が他者や市場に影響を与え、さらに自身に影響を与えることにより、自身の行動を周期的に変化させると考える。平成24年度において、パッケージ財市場から得られたデータを用いて、考慮集合のサイズが周期的に振動する現象を示したこと、また、コスト・ベネフィット・アプローチおよびミクロ・マクロ・ループに依拠した概念モデルを構築したことを受け、平成25年度では、市場をマクロ・システム、消費者・企業をミクロ構成員と捉えたエージェント・ベース・シミュレーション・モデル(ABSモデル)を構築した。そして、計算機実験により、ABSモデルから観察データに合致するデータを生成させた。このとき、生成データは観察データに概ね一致したものの、必ずしも十分とは言えなかった。そこで、今後は、データのクリーニングとモデルのチューニングを実施する予定である。これにより、周期的変動をより的確に把握できること、観察データにより合致したシミュレーション・データを生成できることが期待される。平成24年度においては、考慮集合のサイズが周期的に変動する現象を消費者調査データにより観察した後、先行研究を発展させ、当該現象を説明する概念モデルを構築した。まず、考慮集合として消費者が一定期間に購買した製品数を考え、購買履歴データを用いて考慮集合のサイズを測定した。具体的には、観察データについて季節変動を除去した後、傾向変動を分離し循環変動を抽出した。このとき、パッケージ財6市場について、考慮集合のサイズが周期的に変動することが示された。次に、当該現象を説明する概念モデルを構築した。モデルは、以下の二つから構成される。すなわち、(1)消費者は、意思決定から得られる成果(ベネフィット)とコストをバランスするよう考慮集合のサイズを決定するモデル(コスト・ベネフィット・アプローチ)と、(2)ミクロ構成員(消費者)が、他の構成員(消費者や企業)・市場に影響を与え、それがさらに自分自身に影響を与えることにより、自身の行動を漸進的・周期的に変化させるモデル(ミクロ・マクロ・ループ)である。既存研究では、主に要素還元主義に依拠し、個人の内面に照射する研究などがなされてきた。一方、市場は、多数の消費者や企業(ミクロ構成員)が自由に活動するマクロ・システムである。このため、マーケティング現象を正しく理解するには、ミクロ構成員の振る舞いやその相互作用が、どのようにマクロ・システムを変容させるのか、同時に、マクロ・システムが、どのようにミクロ構成員の振る舞いを変容させるのかを考察する必要がある。要素還元主義に依拠し消費者個人の内面に照射したコスト・ベネフィット・アプローチを、ホーリズムに依拠する自己組織性理論によって拡張することにより、個人の行動変化をマクロ・システム全体の変容から説明(ミクロ現象をマクロから説明)しようとする点で僅かながらも意義があるだろう。ここでは、考慮集合(個人の意思決定に際して、最終的な選択対象となるブランドの集合)に含まれるブランド数(考慮集合のサイズ)が、時間経過に従い周期的に増減する現象を指摘した後、そのメカニズムを考察する。具体的には、まず、(A)コスト・ベネフィット・アプローチにより、個人の内的変化(考慮集合の変化)を考察する。同時に、(B)ミクロ・マクロ・ループに注目し、個人(ミクロ構成員)の考慮集合の変化による市場(マクロ・システム)の変化(ミクロからマクロへのループ)、および市場の変化による個人の考慮集合の変化(マクロからミクロへのループ)に注目することにより、市場全体(マクロ・システム)の変化を考える。すなわち、個人の意思決定が他者や市場に影響を与え、さらに自身に影響を与えることにより、自身の行動を周期的に変化させると考える。具体的には、パッケージ財市場から得られたデータを用いて、個人の考慮集合のサイズが周期的に振動する現象を示した。また、コスト・ベネフィット・アプローチおよびミクロ・マクロ・ループに依拠した概念モデルを提示した後、市場をマクロ・システム、個人・企業をミクロ構成員と捉えたエージェント・ベース・シミュレーション・モデル(ABSモデル)を構築した。そして、計算機実験により、ABSモデルから観察データに合致するデータを生成させた。このとき、生成データは観察データに概ね一致したものの、必ずしも十分とは言えなかった。そこで、今後は、データのクリーニングとモデルのチューニングを実施する予定である。これにより、観察データにより合致したシミュレーション・データを生成することが期待される。考慮集合(消費者の意思決定に際して、最終的な選択対象となるブランドの集合)の形成メカニズムを考察した。 | KAKENHI-PROJECT-24530527 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24530527 |
市場におけるミクロ・マクロ・ループに注目した考慮集合の周期的変動メカニズム | まず、(1)考慮集合(および関連概念である選択集合、想起集合)に関する先行研究をレビューした後、(2)考慮集合に含まれるブランド数(考慮集合のサイズ)が、時間経過に従い周期的に増減する現象をパネル・データにより明らかにした。次に、(3)そのメカニズムを考察した。具体的には、(A)コスト・ベネフィット・アプローチにより、個人の内的変化(考慮集合の変化)を考察し、(B)ミクロ・マクロ・ループに注目し、消費者(ミクロ要素)の考慮集合の変化による市場(マクロ・システム)の変化(ミクロからマクロへの働きかけ)、同時に、市場の変化による考慮集合の変化(マクロからミクロへの働きかけ)を考えた。すなわち、個人の意思決定が他者や市場に影響を与え、さらに、他者や市場を通じて自身に影響を与えることにより、自身の行動(考慮集合のサイズ)が周期的に変化すると考えた。最後に、(4)本メカニズムを表現するモンテカルロ・シミュレーション・モデルを構築し、観察データに合致するよう仮想データを生成させた。もしシミュレーション・データが観察データに合致するならば、当該モデルは、考慮集合の周期的変化のメカニズムのひとつであることになる。両データは一致する傾向にあったものの、観察データの細かな振動を十分に追随できたとは必ずしも言い難かった。今後、シミュレーション・モデルの精緻化に加え、観察データをより適切に加工することなどにより、さらなる改善を図りたい。消費者意思決定に際して選択対象となるブランドの集合を、考慮集合とよぶ。まず、考慮集合のサイズが、時間経過に従い周期的に増減する現象をデータにより示した。次に、そのメカニズムを考察した。具体的には、1コスト・ベネフィット・アプローチにより、個人の内的変化(考慮集合の変化)を考え、2ミクロ・マクロ・ループに注目し、消費者(ミクロ構成員)の考慮集合の変化による市場(マクロ・システム)の変化(ミクロ→マクロ)と、市場の変化による考慮集合の変化(マクロ→ミクロ)を考えた。すなわち、個人の意思決定が、他者や市場を通じて自身の行動を周期的に変化させるメカニズムを考察した。やや遅れているとした理由として、計算機実験によりモデルから生成したデータは、観察データに概ね一致したものの必ずしも十分とは言えなかったことが挙げられる。今後は、データのクリーニング、モデルのチューニングなどを実施することにより改善を図りたい。商学これまで、観察結果および概念モデルに依拠して、ABSモデルを実装した後、計算機実験により観察データに合致するシミュレーション・データを生成することを試みてきた。生成データは概ね観察データに一致したものの、必ずしも十分とは言い難かった。そこで、観察データのスクリーニングとABSモデルのチューニングを行うことにより、改善を図りたい。 | KAKENHI-PROJECT-24530527 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24530527 |
大規模陥没堆積盆地の深部地下構造の解明と地震観測に基づく地震動災害の評価 | 最近の50-100万年間の沈降量が500m以上の「大規模陥没堆積盆地」に属する石狩平野の西部、人口200万に達する札幌都市域を対象として、地質学および物理探査学の方法で深部地下構造(S波速度構造)を推定し、さらに、強震動観測記録の解析から、その構造の地震波への影響を明らかにし、最終的に地震動災害の評価を行なうことが本研究の目的である。平成1011年度における研究成果は以下の通りである。(1)札幌都市域北部の8地点において微動のアレー観測を実施し、推定されたレイリー波の位相速度から、深度約3kmまでのS波速度構造を推定した。この構造は、一部の深層ボーリング調査結果と調和的である。(2)また、関連資料の整理、地質調査の結果、札幌都市域北部の深度約3kmまでの地質断面(南西-北東)を推定した。(3)強震動観測記録の解析から、札幌都市域における地震応答の空間変動を得た。地震応答は、周期ごとに異なった空間変動をしている。これは、深部から浅部の地下構造の空間変動に関係していると考えられる。(4)一部の地域で、推定された構造と強震動記録との関係について検討した。観測された記録は、深度約3kmの地下構造を反映していることがわかった。(5)過去の地震による札幌都市域における詳細な震度分布と地下構造との関係について考察した。今回の研究で残された課題も多い。例えば、札幌都市域の全域にわたって微動探査を行なう予定であったが、北部地域しかできなかった。それは、平成10年度の実験の際に、微動の長周期側のパワーが小さく、そのために平成11年度に同じ地点で再実験を行なわざるを得なかったことによる。最近の50-100万年間の沈降量が500m以上の「大規模陥没堆積盆地」に属する石狩平野の西部、人口200万に達する札幌都市域を対象として、地質学および物理探査学の方法で深部地下構造(S波速度構造)を推定し、さらに、強震動観測記録の解析から、その構造の地震波への影響を明らかにし、最終的に地震動災害の評価を行なうことが本研究の目的である。平成1011年度における研究成果は以下の通りである。(1)札幌都市域北部の8地点において微動のアレー観測を実施し、推定されたレイリー波の位相速度から、深度約3kmまでのS波速度構造を推定した。この構造は、一部の深層ボーリング調査結果と調和的である。(2)また、関連資料の整理、地質調査の結果、札幌都市域北部の深度約3kmまでの地質断面(南西-北東)を推定した。(3)強震動観測記録の解析から、札幌都市域における地震応答の空間変動を得た。地震応答は、周期ごとに異なった空間変動をしている。これは、深部から浅部の地下構造の空間変動に関係していると考えられる。(4)一部の地域で、推定された構造と強震動記録との関係について検討した。観測された記録は、深度約3kmの地下構造を反映していることがわかった。(5)過去の地震による札幌都市域における詳細な震度分布と地下構造との関係について考察した。今回の研究で残された課題も多い。例えば、札幌都市域の全域にわたって微動探査を行なう予定であったが、北部地域しかできなかった。それは、平成10年度の実験の際に、微動の長周期側のパワーが小さく、そのために平成11年度に同じ地点で再実験を行なわざるを得なかったことによる。最近の50-100万年間の沈降量が500m以上の「大規模陥没堆積盆地」に属する石狩低地帯の西部、人口180万に達する札幌都市域を対象として、地質学および物理探査学の方法で深部地下構造(速度構造)を推定し、さらに、強震動観測記録の解析から、その構造の地震波への影響を明らかにし、最終的に地震動災害の評価を行なうことが本研究の目的である。平成10年度における研究実績は以下の通りである。(1)3地点(札幌都市域西部、東部、南部)における500mボアホールと地表での観測記録から、堆積層による地震波の増幅特性を推定した。また、増幅特性の地域性を明らかにした。(2)札幌都市域北部の8地点において微動のアレイ観測を実施し、推定されたレイリー波の位相速度から、深度約2kmまでのS波速度構造を推定した。(3)既存のボーリング地質柱状図、重力異常図と上記微動探査結果をもとに、札幌都市域西部の山地と平野の境界における2次元地下構造(速度構造)を推定した。(4)その山地と平野の境界(盆地端部)による地震動への影響を評価する目的で、境界を横切る3地点に強震動アレイ観測点を新たに展開した。残念ながら、本年度は北海道周辺の地震活動度が低く、震度の大きな記録を得ることができなかった。(5)2次元構造による地震動のシミュレーションと得られた小地震による記録との比較から、その構造の妥当性を検討した。しかし、現時点では、十分な一致を得たとは言い難い。(6)過去の地震によるアンケート震度調査と、簡便な微動測定をもとにした札幌都市域の地震ゾーネーションマップを作成した。 | KAKENHI-PROJECT-10480090 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10480090 |
大規模陥没堆積盆地の深部地下構造の解明と地震観測に基づく地震動災害の評価 | 最近の50-100万年間の沈降量が500m以上の「大規模陥没堆積盆地」に属する石狩平野の西部、人口200万に達する札幌都市域を対象として、地質学および物理探査学の方法で深部地下構造(S波速度構造)を推定し、さらに、強震動観測記録の解析から、その構造の地震波への影響を明らかにし、最終的に地震動災害の評価を行なうことが本研究の目的である。平成11年度における研究実績は以下の通りである。(1)札幌都市域北部の8地点において微動のアレー観測を実施し、推定されたレイリー波の位相速度から、深度約3kmまでのS波速度構造を推定した。この構造は、一部の深層ボーリング調査結果と調和的である。(2)また、関連資料の整理、地質調査の結果、札幌都市域北部の深度約3kmまでの地質断面(南西ー北東)を推定した。(3)強震動観測記録の解析から、札幌都市域における地震応答の空間変動を得た。地震応答は、周期ごとに異なった空間変動をしている。これは、深部から浅部の地下構造の空間変動に関係していると考えられる。(4)一部の地域で、推定された構造と地震動記録との関係について検討した。観測された記録は、深度約3kmの地下構造を反映していることがわかった。(5)過去の地震による札幌都市域における詳細な震度分布と地下構造との関係について考察した。 | KAKENHI-PROJECT-10480090 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10480090 |
地震国における煉瓦組積造耐力壁の耐震性能向上と補強法の開発研究 | 1999年コロンビア地震や2002年エルサルバドル地震などによる建物の被害調査の結果,開発途上国で現在建設中の組積構造建物の耐力壁に多用されている枠組組積造壁体(組積造壁体周辺を場所打ち鉄筋コンクリート造の柱と梁部材等で補強する構造方式)において,粘土焼成れんがや空洞コンクリートプロックによる無補強組積造壁体部分が組積造壁体周辺の場所打ち鉄筋コンクリート造柱から完全に分離・剥落し,上部構造の落下など地震被害を大きくしていることが徐々に明らかになってきた。本研究はこのように組積造壁体が場所打ち鉄筋コンクリート造の枠部材からから分離し脱落するメカニズムを明らかにするとともに,このような現象を防止するための補強法について検討することを目的としている。平成15年度は研究の初年度にあたり,一定軸力下において2方向の水平加力実験が実施できるように,現有の1方向加力実験装置の改良設計と製作を行った。具体的には,現有のジャッキに直交する方向に新たにジャッキを追加し,これら2本のジャッキにより試験体に加力を行うための鉄骨フレームを取り付けた。その後,4体の直交壁を有する3次元組積造壁体試験体を製作し,予備実験として2方向から同時加力により45度方向に変位する水平加力実験を行った。その結果,製作した実験装置の動作確認と修正点を把握することが出来た。また,予備実験ではあったが,2方向載荷実験により得られた枠組組積造壁体試験体の耐力と変形性能を過去に行われた1方向載荷のそれらと比較検討を行った。1999年コロンビア地震や2002年エルサルバドル地震などによる建物の被害調査の結果,開発途上国で現在建設中の組積構造建物の耐力壁に多用されている枠組組積造壁体(組積造壁体周辺を場所打ち鉄筋コンクリート造の柱と梁部材等で補強する構造方式)において,粘土焼成れんがや空洞コンクリートプロックによる無補強組積造壁体部分が組積造壁体周辺の場所打ち鉄筋コンクリート造柱から完全に分離・剥落し,上部構造の落下など地震被害を大きくしていることが徐々に明らかになってきた。本研究はこのように組積造壁体が場所打ち鉄筋コンクリート造の枠部材からから分離し脱落するメカニズムを明らかにするとともに,このような現象を防止するための補強法について検討することを目的としている。平成15年度は研究の初年度にあたり,一定軸力下において2方向の水平加力実験が実施できるように,現有の1方向加力実験装置の改良設計と製作を行った。具体的には,現有のジャッキに直交する方向に新たにジャッキを追加し,これら2本のジャッキにより試験体に加力を行うための鉄骨フレームを取り付けた。その後,4体の直交壁を有する3次元組積造壁体試験体を製作し,予備実験として2方向から同時加力により45度方向に変位する水平加力実験を行った。その結果,製作した実験装置の動作確認と修正点を把握することが出来た。また,予備実験ではあったが,2方向載荷実験により得られた枠組組積造壁体試験体の耐力と変形性能を過去に行われた1方向載荷のそれらと比較検討を行った。 | KAKENHI-PROJECT-15760428 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15760428 |
多様な点突然変異に対応する人工核酸の設計と難治性がん治療への応用 | 1塩基認識能に優れたinchworm型ペプチド核酸(PNA)ーポリエチレングリコール(PEG)コンジュゲート(i-PPC)に複数の塩基(シトシン,アデニン,チミン)と塩基対を形成できるヒポキサンチンを導入し、KRAS遺伝子点突然変異を網羅的に認識することのできるアンチセンス分子を設計・合成する。さらに、合成したi-PPC(Hyp)のがん細胞内への輸送を試み、KRAS遺伝子変異性がん細胞の細胞死誘導効果について検討し、新規の遺伝子治療薬としての可能性について検討する。1塩基認識能に優れたinchworm型ペプチド核酸(PNA)ーポリエチレングリコール(PEG)コンジュゲート(i-PPC)に複数の塩基(シトシン,アデニン,チミン)と塩基対を形成できるヒポキサンチンを導入し、KRAS遺伝子点突然変異を網羅的に認識することのできるアンチセンス分子を設計・合成する。さらに、合成したi-PPC(Hyp)のがん細胞内への輸送を試み、KRAS遺伝子変異性がん細胞の細胞死誘導効果について検討し、新規の遺伝子治療薬としての可能性について検討する。 | KAKENHI-PROJECT-19K05584 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K05584 |
脳神経細胞の力学損傷の定量解析による頭部傷害メカニズムの解明 | 交通事故等により脳へ衝撃が加わった場合の傷害を衝撃実験と圧縮実験により解析した.衝撃実験では31.5rad/sの回転衝撃を加えると傷害が発生する可能性があった.圧縮実験の結果では,ひずみ30%から軸索に断裂が生じ,神経細胞体は楕円形に2倍に伸長した.本研究の結果,脳へひずみ30%以上の外力が発生すると傷害が発生する可能性があることが分かった.本研究では生きた動物を用いたin vitro力学実験と厳密なin vivo衝撃実験の比較解析により,脳神経細胞と神経線維の損傷形態をミクロレベルで解析し,頭部傷害の詳細なメカニズムと傷害発生レベルを明らかにすることを目的としている.3年計画の1年目は,実験動物(豚)を用いて,回転の頭部衝撃に対する傷害を発生させるin vivo動物実験モデルの構築のため,動物実験装置の開発を実施した.組織観察においては,脳が損傷した際に細胞体から出現するにアミロイドβ前駆体蛋白(β-APP)に注目し,免疫組織科学染色を用いることにより,衝撃でβ-APPを検出する方法を検討を実施した.3年計画の2年目にあたる動物による予備実験ではブタ頭部に矢状回転方向の回転を加えた.しかし,最大角速度が13.3rad/sと非常に低い速度しか出力されず,ブタ脳に損傷が発生しなかった.そこで,この結果を踏まえたうえで,本年度は角速度を向上させるために試験機の改良を行い,角速度31.5rad/sと試験機改良前の角速度の比較約2倍以上の角速度を出力することに成功した.次に,頭部回転のin vivo実験を実施し,実験後に動物は筋弛緩剤を投与することで安楽死させた.脳損傷解析は,安楽死させたブタ頭部を開頭して脳を摘出することにより,まずは肉眼により損傷を確認し,角速度と脳損傷の関係より矢状方向頭部回転における脳損傷発生のメカニズムを検討した.なお,本研究の実施にあたっては,日本大学動物実験委員会の倫理承認手続きを実施し,「頭部および胸腹部の傷害メカニズムに関する研究」と題した動物実験倫理委員会の審査を受け,平成23年11月15日に承認番号:AP11E003号として実施承認を得た.本研究では厳密なin vitro実験とin vivo動物実験の比較により,脳神経細胞と神経線維の損傷形態をミクロレベルで解析し,頭部傷害の詳細なメカニズムと傷害発生レベルを明らかにすることを目的としている.3年計画の1年目は実験動物を用いて回転衝撃に対する傷害を発生させるin vivo動物実験のための装置開発を実施した.研究計画の2年目は矢状方向から頭部回転を加えた動物実験を実施した.角速度を31.5rad/sを加えると傷害が発生する可能性があった.なお,本動物実験の実施にあたっては日本大学動物実験委員会の倫理承認を得て実施した.研究計画の最終年度にあたる本年度は,脳組織のミクロレベルの損傷解析として,ひずみ量をパラメータとしたin vitro圧縮実験を実施し,2種類の脳組織染色として蛍光抗体法と酵素抗体法による脳組織の損傷の可視化と定量解析を実施した.その結果,蛍光抗体法では,ひずみ30%から軸索に断裂が生じ,ひずみ40%では毛細血管の神経線維への侵入と圧迫,ひずみ50%では軸索の断裂に加えて細胞核の壊死が観察された.酵素抗体法でも蛍光抗体法による観察と同様の傾向があり,ひずみ30%以上になると,楕円形に変形した神経細胞体が数多く確認された.酵素抗体法による染色の定量解析として,神経細胞体の荷重負荷方向である縦軸方向とそれに水平となる横軸方向の変形比率を縦横比と定め,観察組織中の全ての神経細胞体の縦横比を算出し,縦横比の平均値を求めた.その結果,ひずみ0%における縦横比は真円に近く0.98となったが,ひずみ30%以上では縦横比2.0となり,つまりひずみ30%以上では神経細胞体が2倍に伸長していることが分かった.交通事故等により脳へ衝撃が加わった場合の傷害を衝撃実験と圧縮実験により解析した.衝撃実験では31.5rad/sの回転衝撃を加えると傷害が発生する可能性があった.圧縮実験の結果では,ひずみ30%から軸索に断裂が生じ,神経細胞体は楕円形に2倍に伸長した.本研究の結果,脳へひずみ30%以上の外力が発生すると傷害が発生する可能性があることが分かった.交通事故や転倒での被害軽減のため,生命を維持する重要な器官である頭部の保護対策をさらに進める必要があるが,頭部の傷害基準は1960年代の死体実験に基づいており,傷害評価方法は現在まで進歩していない.コンピュータシミュレーションによる応力解析は進展しているものの,発生する傷害と応力レベルとの定量的な関係や傷害発生のしきい値は分かっておらず,十分な保護対策を講じることができていない. | KAKENHI-PROJECT-23560100 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23560100 |
脳神経細胞の力学損傷の定量解析による頭部傷害メカニズムの解明 | そこで,本研究では生きた動物を用いたin vitro力学実験と厳密なin vivo衝撃実験の比較解析により,脳神経細胞と神経線維の損傷形態をミクロレベルで解析し,頭部傷害の詳細なメカニズムと傷害発生レベルを明らかにすることを目的とする. 3年計画の1年目にあたる本年度は,実験動物(豚)を用いて,回転の頭部衝撃に対する傷害を発生させるin vivo動物実験モデルの構築のため,動物実験装置の開発を実施した.頭部の回転衝撃を与えた研究例において,幼若ブタに対する実験では角速度200rad/s以上回転衝撃を頭部に負荷した際に傷害が発生しており,本研究では成体ブタの実験を行うために最大角速度は300rad/sを設計目標とした装置を試作した.組織観察においては,脳が損傷した際に細胞体から出現するにアミロイドβ前駆体蛋白(β-APP)に注目し,免疫組織科学染色を用いることにより,衝撃でβ-APPを検出する方法を検討を実施した.なお,本研究の実施にあたっては,日本大学動物実験委員会の倫理承認手続きを実施し,「頭部および胸腹部の傷害メカニズムに関する研究」と題した動物実験倫理委員会の審査を受け,平成23年11月15日に承認番号:AP11E003号として実施承認を得た.頭部への回転衝撃を再現するための実験装置の改良を実施しており,傷害を再現する動物実験モデルが構築できている.染色解析については試行中であるが詳細な解析を検討しているところである.以上より,当初の予定をおおむね順調に進展できていると判断している.頭部外傷の中で回転衝撃を再現するために,動物寸法の測定,他の研究例に基づく衝撃エネルギの設定検討,実験装置の製造までを実施できている.また,染色解析についてもその方法について詳細な検討を実施できている.以上より,当初の予定をおおむね順調に進展できていると判断している.脳が損傷した際に細胞体から出現するにアミロイドβ前駆体蛋白(β-APP)に着目し,生きたin vivo状態での実験に免疫組織科学染色解析を適用することにより,頭部衝撃とβ-APPの定量解析を試みる.動物への回転を中心とした衝撃実験を実施し,これによって生じるミクロな脳損傷を観察し,工学的な定量解析を実施する.in vivo実験のための動物や染色解析のための薬品類を購入する.また,衝撃計測用ソフトウエアの保守契約更新を実施する.また,協力関係のあるアデレード大学での研究ディスカッションのための海外渡航を計画し交通費にも充当する.神経細胞や神経軸索の染色解析のための薬品類,衝撃計測用ソフトウエアの導入を実施する.また,実験結果の発表として査読を経て海外での発表を計画しており,交通費にも充当していく. | KAKENHI-PROJECT-23560100 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23560100 |
在日韓国・朝鮮人の定住条件整備に関する基礎的地域研究 | (1)鳥取県在住の韓国・朝鮮人は1632人(平成9年)、外国人全体の50.4%を占める。しかし1945年には18,000が居住していたのであるから、強制連行以来の歴史と減少の経過を通じて、いわゆる「特別の歴史」を明らかにする必要がある。地元新聞、県統計書、その他の史料を通じて、在日の歴史を明らかにした。(2)20才以上948人を対象にして、その生活と意識について民族団体の協力を得てアンケート調査を実施した。有効回答222を項目ごとに集計し、年代別に意識が相違することを解明した。(3)民俗行事は一世を中心に在日家庭で継承されている。しかし日本での実状に合わせるかたちで、冠婚葬祭なども簡略化をよぎなくされ、民族の伝統を維持することが困難になっている現状について、一世に対する面接調査によって明らかにした。(4)三世、四世の子ども世代への民族文化の継承の実態について、二世の母親との面接と山陰朝鮮初中級学校での教育内容の聴取を通じて解明することができた。(5)県内在住の3分の2の者が、「誇りをもって在日として生きぬく」といっている。そのためには何が必要であるかを明らかにするのが本研究の課題であったが、先行研究が皆無に近い現状では、ようやく研究の入口に立つことができたということである。(1)鳥取県在住の韓国・朝鮮人は1632人(平成9年)、外国人全体の50.4%を占める。しかし1945年には18,000が居住していたのであるから、強制連行以来の歴史と減少の経過を通じて、いわゆる「特別の歴史」を明らかにする必要がある。地元新聞、県統計書、その他の史料を通じて、在日の歴史を明らかにした。(2)20才以上948人を対象にして、その生活と意識について民族団体の協力を得てアンケート調査を実施した。有効回答222を項目ごとに集計し、年代別に意識が相違することを解明した。(3)民俗行事は一世を中心に在日家庭で継承されている。しかし日本での実状に合わせるかたちで、冠婚葬祭なども簡略化をよぎなくされ、民族の伝統を維持することが困難になっている現状について、一世に対する面接調査によって明らかにした。(4)三世、四世の子ども世代への民族文化の継承の実態について、二世の母親との面接と山陰朝鮮初中級学校での教育内容の聴取を通じて解明することができた。(5)県内在住の3分の2の者が、「誇りをもって在日として生きぬく」といっている。そのためには何が必要であるかを明らかにするのが本研究の課題であったが、先行研究が皆無に近い現状では、ようやく研究の入口に立つことができたということである。(1)鳥取県在住韓国・朝鮮人20才以上948人を対象に、韓国民団・朝鮮総聯の民族団体の協力を得て郵送方式でもって実態調査を実施。222人から有効回答を得た。回収率23.8%。同じ質問用紙で3年前に島根県下で実施した調査結果と比較検討した。(2)在日の歴史的背景を解明するための資料収集と調査研究を鳥取県立図書館(鳥取市)、文化センター・アリラン(川口市)、韓国文化院(東京都)、青丘文化ホール(大阪市)で行った。(3)在日が保持する「民族性」について、鳥取・島根両県下在住在日一世の訪問調査と、松江市にある山陰朝鮮初中級学校教員からの聞取調査を行い、母国語、年中行事、遊びと絵本など実態を調査。(4)在日の定住条件を調査する目的で、多住地域の一つである島根県吉田村の実態を全員で調査し、併せて鳥取・島根両県の在日関連諸統計を調査した。(1)鳥取県在住韓国・朝鮮人は1632人(平成9年)、外国人全体の50.4%を占める。しかし1945年には18,000人が居住していたのであるから、強制連行以来の歴史と減少の経過を通じて、いわゆる「特別の歴史」を明らかにする必要がある。地元新聞、県統計書、その他の史料を通じて、在日の歴史を明らかにした。(2)20才以上948人を対象にして、その生活と意識について民族団体の協力を得てアンケート調査を実施した。有効回答222を項目ごとに集計し、年代別に意識が相違することを解明した。(3)民俗行事は一世を中心に在日家庭で継承されている。しかし日本での実状に合わせるかたちで、冠婚葬祭なども簡略化をよぎなくされ、民族の伝統を維持することが困難になっている現状について、一世に対する面接調査によって明らかにした。(4)三世、四世の子ども世代への民族文化の継承の実態について、二世の母親との面接と山陰朝鮮初中級学校での教育内容の聴取を通じて解明することができた。(5)県内在住の3分の2の者が、「誇りをもって在日として生きぬく」といっている。そのためには何が必要であるかを明らかにするのが本研究の課題であったが、先行研究が皆無に近い現状では、ようやく研究の入口に立つことができたということである。 | KAKENHI-PROJECT-10430016 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10430016 |
異文化組織における摩擦原因条件を解析する方法論の構築 | 本研究の目的は、多国籍企業や外国人労働者を抱える日本国内の企業等で生じている異文化摩擦に関して、属性等の原因条件から因果関係を分析しうる方法を構築することにある。異文化摩擦を分析するための手法として、質的・量的分析の融合方法を提案した。方法論の完成度が低いため、再度留学生を含む大学生の大学の満足度に関するプレ調査を行った。具体的には、前年度の質問紙調査と、自由回答の欠損を防止することを目的としてWebによる追加調査を行った。被調査者の内訳は、有効回答212名(留学生61名・日本人学生142名・帰国子女9名)、無効回答2名であった。分析内容は、総合満足度と、大学システムに関する質問項目(5段階評価)および自由回答の関連について行った。分析手順は、ステップ0として、大学に対する不満に関する自由回答の上位11項目(学食、キャンパス、授業システム、校舎・教室、図書館、交流、教職員、学生マナー、寮、パソコン、設備)の不満項目ありなしのクロス表を作成した上で量的分析を行った。ステップ1として、ジニ係数(CART)による変数選択、ステップ2として、目的変数と選択された説明変数のクロス表作成、ステップ3として、Quine-McCluskyアルゴリズムによる変数縮約、ステップ4として、サポートルールにより検出されたサブグループの割合チェック、の4段階法を採用した。また、方法論の妥当性を計るために、Aprioriアルゴリズムとの比較考察を行った。今回の分析で、本研究で提唱している方法について、ある程度有効性はみられたものの、自由回答であるテキストが短すぎたという反省点が残った。今後は、長めのテキストを含むデータを取り、要因組合せについて分析する必要がある。また、ラフ集合等の集合理論に関する他手法の利点を取り入れながら効果的な手法を構築していく予定である。本研究の目的は、多国籍企業や外国人労働者を抱える日本国内の企業等で生じている異文化摩擦に関して、属性等の原因条件から因果関係を分析しうる方法を構築することにある。まず、異文化摩擦の動向を見るために日本における外国人労働者の現状分析を行った。1980年代後半から外国人労働者数は年々増加傾向にあり、外国人労働者数も増えている。2002年度の外国人労働者数76万人は、日本で雇用される労働者全体(2002年:5,331万人)の1%以上に相当する。外国人労働者数の増加に伴い、雇用と従業員の間で異文化摩擦も含めて様々な問題が起こっている。日本国内の外国人労働者を抱えている企業の雇用者と従業員の不満に関して、雇用者側の不満は、言語・文化等のコミュニケーション等が上位を占めており、一方、従業員側の不満は、ボーナス・賃金等の金銭問題や社会保険や税金等の社会保障制度が目立つ。すなわち、雇用側の不満は人が、従業員側の不満は物が対象となっており、異文化摩擦は顕在化しにくい問題となっている。異文化摩擦を分析するための手法として、Quine-McCluskyアルゴリズムと信頼区間等の統計的妥当性を組み込み、決定木分析のアルゴリズムであるカイ2乗検定・ジニ係数等を併用する方法を開発中である。本研究の目的は、多国籍企業や外国人労働者を抱える日本国内の企業等で生じている異文化摩擦に関して、属性等の原因条件から因果関係を分析しうる方法を構築することにある。異文化摩擦を分析するための手法として、Quine-McCluskyアルゴリズムと決定木分析のひとつであるCARTのアルゴリズム(ジニ係数)の量的方法と自由解答分析の質的方法を併用する方法を考案した。具体的には、CARTアルゴリズムによって有用な変数を選択した後に、Quine-McCluskyアルゴリズムを用いて変数縮約を行い、疑わしい結果に対して自由回答分析によって妥当性の検討を行うという手順を取った。本調査である企業に調査をする前に、本手法の有効性を探るために留学生を対象にプレサーベイを行った。調査結果の中で、「留学生が抱く日本の大学システムへの不満事項」と「留学生の属性」との因果関係に関して分析を行った。今回は、大学システムに対する不満に関する質問紙調査を都内の某私立大学で実施した。被調査者は、留学生とし、留学生特有の問題であるかどうかを判断するために日本人(帰国子女含む)学生も加えた。被調査者の内訳は、有効回答131名(留学生61名・日本人学生64名・帰国子女6名)、無効回答2名(日本語の質問紙が読めない理由で返却)であった。分析の結果、本手法のある程度の効果はみられたものの、留学生の出身地域や言語等に関する質問項目内容や自由回答の設定に改善の余地があった。これらの改善点と共に、質問紙調査ではご法度とされてきた人種や民族についての属性項目についても、慎重に検討しながら取り入れ、再度プレ調査を施した後に企業調査を行う予定である。本研究の目的は、多国籍企業や外国人労働者を抱える日本国内の企業等で生じている異文化摩擦に関して、属性等の原因条件から因果関係を分析しうる方法を構築することにある。異文化摩擦を分析するための手法として、質的・量的分析の融合方法を提案した。方法論の完成度が低いため、再度留学生を含む大学生の大学の満足度に関するプレ調査を行った。具体的には、前年度の質問紙調査と、自由回答の欠損を防止することを目的としてWebによる追加調査を行った。被調査者の内訳は、有効回答212名(留学生61名・日本人学生142名・帰国子女9名)、無効回答2名であった。 | KAKENHI-PROJECT-16653040 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16653040 |
異文化組織における摩擦原因条件を解析する方法論の構築 | 分析内容は、総合満足度と、大学システムに関する質問項目(5段階評価)および自由回答の関連について行った。分析手順は、ステップ0として、大学に対する不満に関する自由回答の上位11項目(学食、キャンパス、授業システム、校舎・教室、図書館、交流、教職員、学生マナー、寮、パソコン、設備)の不満項目ありなしのクロス表を作成した上で量的分析を行った。ステップ1として、ジニ係数(CART)による変数選択、ステップ2として、目的変数と選択された説明変数のクロス表作成、ステップ3として、Quine-McCluskyアルゴリズムによる変数縮約、ステップ4として、サポートルールにより検出されたサブグループの割合チェック、の4段階法を採用した。また、方法論の妥当性を計るために、Aprioriアルゴリズムとの比較考察を行った。今回の分析で、本研究で提唱している方法について、ある程度有効性はみられたものの、自由回答であるテキストが短すぎたという反省点が残った。今後は、長めのテキストを含むデータを取り、要因組合せについて分析する必要がある。また、ラフ集合等の集合理論に関する他手法の利点を取り入れながら効果的な手法を構築していく予定である。 | KAKENHI-PROJECT-16653040 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16653040 |
細胞周期制御遺伝子を分子標的とした口腔癌治療の基礎研究 | 本研究では、細胞周期制御因子の中でも重要な働きをすると考えられているp27^<KIP1>に注目し、口腔癌での発現を検討した。その結果、p27^<KIP1>の制御因子Skp2,Jab1の過剰発現とp27^<KIP1>の発現低下が口腔癌で生じていることがわかった(Oncology 65, 2003)。また、口腔扁平上皮癌細胞に上皮成長因子(EGFR)の特異的阻害剤を作用させたところ、p27^<KIP1>の発現増強が見られ、細胞周期はG1期に停止し、細胞増殖が抑制され、分子標的治療の可能性が見いだされた(Oral Oncol. 40, 2004)。また、本阻害剤の応用により、実験的舌癌の頸部転移モデルにおいて、転移の抑制効果が見られた(Cancer Lett. 201, 2003)。さらに、本剤の応用で放射線治療効果の増強が認められた(Int.J Cancer, 107, 2003)。一方で、細胞周期の進行に大きく関与するCyclin Dependent Kinase (CDK)に関しても、その特異的阻害剤であるFlavopiridolを用いて、細胞周期の阻害を行うことで分子標的治療への応用を試みた。その結果、Flavopiridolは細胞周期をG1期ならびにG2/M期に停止させ、細胞増殖抑制ならびにアポトーシスを誘導した(Oral Oncol. 39, 2003)。同様の受容体経路の阻害による細胞増殖の抑制はPeroxisome proliferator-activated receptor γに対する阻害剤によっても生じた(Oral Oncol. 39, 2003)。また、その他の分子標的の検索結果で、DNA-PKおよびGRO-1遺伝子の治療応用への可能性が示唆された(Cancer Sci. 94, Oncology in press, 2003)。以上の結果より、これらの薬剤が、細胞周期制御を介した分子標的治療薬になる可能性が示唆された。本研究では、細胞周期制御因子の中でも重要な働きをすると考えられているp27^<KIP1>に注目し、口腔癌での発現を検討した。その結果、p27^<KIP1>の制御因子Skp2,Jab1の過剰発現とp27^<KIP1>の発現低下が口腔癌で生じていることがわかった(Oncology 65, 2003)。また、口腔扁平上皮癌細胞に上皮成長因子(EGFR)の特異的阻害剤を作用させたところ、p27^<KIP1>の発現増強が見られ、細胞周期はG1期に停止し、細胞増殖が抑制され、分子標的治療の可能性が見いだされた(Oral Oncol. 40, 2004)。また、本阻害剤の応用により、実験的舌癌の頸部転移モデルにおいて、転移の抑制効果が見られた(Cancer Lett. 201, 2003)。さらに、本剤の応用で放射線治療効果の増強が認められた(Int.J Cancer, 107, 2003)。一方で、細胞周期の進行に大きく関与するCyclin Dependent Kinase (CDK)に関しても、その特異的阻害剤であるFlavopiridolを用いて、細胞周期の阻害を行うことで分子標的治療への応用を試みた。その結果、Flavopiridolは細胞周期をG1期ならびにG2/M期に停止させ、細胞増殖抑制ならびにアポトーシスを誘導した(Oral Oncol. 39, 2003)。同様の受容体経路の阻害による細胞増殖の抑制はPeroxisome proliferator-activated receptor γに対する阻害剤によっても生じた(Oral Oncol. 39, 2003)。また、その他の分子標的の検索結果で、DNA-PKおよびGRO-1遺伝子の治療応用への可能性が示唆された(Cancer Sci. 94, Oncology in press, 2003)。以上の結果より、これらの薬剤が、細胞周期制御を介した分子標的治療薬になる可能性が示唆された。本研究では、まず、細胞周期制御因子であるp27^<KIP1>の発現について、その発現低下に蛋白分解を介して重要な役割を示すSkp2とJab1の発現との関係ならびに臨床病理学的因子との関連について検討した。口腔癌75例を対象とし、その発現を免疫組織学的ならびにウエスタンブロッティング法を用いて検討した結果、Skp2ならびにJab1の発現との発現は逆相関しており、Skp2ならびにJab1の発現例ではp27^<KIP1>の発現を認めず、逆にSkp2、Jab1の発現を認めないものでp27^<KIP1>の発現を認める傾向にあった。臨床病理学的因子との関係では、p27^<KIP1>の発現低下例、Skp2ならびにJab1の過剰発現例で、頸部リンパ節転移が有意に多く認められ、有意に予後不良であった。Skp2ならびにJab1の発現はp27^<KIP1>の発現低下と関連し、これらの制御因子の異常が口腔癌の進展に関与していると考えられた。この結果より、口腔癌における抑制遺伝子治療のtargetとしてp27^<KIP1>が考えられた。一方、遺伝子導入法として選択したTAT-peptideによる新しい遺伝子産物導入法の導入・発現効率の検討では、TAT-11アミノ酸(YGRKKRRQRRR)をキャリアーとしたTAT-GFP(Green fluorescent protein)を精製した。 | KAKENHI-PROJECT-14370675 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14370675 |
細胞周期制御遺伝子を分子標的とした口腔癌治療の基礎研究 | このTAT-GFPを各種口腔癌細胞に導入し、その導入効率について検討した結果、細胞間で差は認めるものの、すべての細胞において60%以上の細胞でTAT-GFPの導入が確認された。このことから、口腔癌においてTAT-peptideによる新しい遺伝子産物導入法の有用性が示唆された。本年度は、口腔扁平上皮癌において過剰発現し、細胞周期制御遺伝子であるp27^<KIP1>と関連する上皮成長因子(EGFR)に注目した。口腔扁平上皮癌細胞にEGFRの特異的阻害剤を作用させたところ、p27^<KIP1>の発現増強が見られ、細胞周期はG1期停止を生じ、細胞増殖が抑制されたことから、本剤を用いた分子標的治療の可能性について検討した。その結果、EGFRの特異的阻害剤により、細胞周期制御因子であるp27^<KIP1>の発現増強と、p27^<KIP1>の蛋白分解に関与するSkp2とJab1の発現低下を認め、癌の細胞増殖は抑制された(Oral Oncol.40,2004)。また、本阻害剤の応用により、実験的舌癌の頸部転移モデルにおいて、転移の抑制効果が見られた(Cancer Lett.201,2003)。さらに、本剤の応用で放射線治療効果の増強が認められた(Int.J Cancer,107,2003)。一方で、細胞周期の進行に大きく関与するCyclin Dependent Kinase (CDK)に関しても、その特異的阻害剤であるFlavopiridolを用いて、細胞周期の阻害を行うことで分子標的治療への応用を試みた。その結果、Flavopiridolは細胞周期をG1期ならびにG2/M期に停止させ、細胞増殖抑制ならびにアポトーシスを誘導した(Oral Oncol.39,2003)。同様の受容体経路の阻害による細胞周期の抑制はPeroxisome proliferator-activated receptor γに対する阻害剤によっても生じた(Oral Oncol.39,2003)。以上の結果より、これらの薬剤が、細胞周期制御を介した分子標的治療薬になる可能性が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-14370675 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14370675 |
顎骨腫瘍摘出後のオーラルリハビリテーションの研究 | 上顎腫瘍摘出後の上顎欠損患者は、発音・咀嚼障害を余儀なくされる。当科では、術後に義顎を装着して障害されたクチ腔機能の回復をはかっている。しかし、それらの機能回復の程度を客観的に評価するのは難しく、直ちに臨床に応用できる検査法はなかった。なかでも咀嚼機能検査は、義顎装着者に適した検査はなく、我々はATPか粒剤を用いた咀嚼能力測定法を開発した。本法は、被検者にATP下流剤5gを50回咀嚼させ、咀嚼されたATPか粒剤をだ液とともに回収し、その液を2000mlに希釈した後に、その液の一部を採取し分光光度計にてATPの吸光ピークがある259nmで吸光度を測定した。その値の大小を調べた。これを正常人と較べる方法をとった。本法は非常に簡便で、短時間に測定が終了するため、臨床において有用であった。咀嚼能力の大きい者は、ATP顆粒剤を多く咀嚼粉砕し、その吸光度も大きく表示され、患者一人一人の歯芽欠損、欠損、咬合状態によって差異がみられた。本法を顎変形症患者の手術前後に施行し、手術前後の咀嚼能力の変化と、手術後の咀嚼能力の経時的な変化を調べた。その結果、13例において2例をのぞき、術前の2%から26.4%と増加していた。また経時的な変化では、術後に一旦は低下するが、術後6ケ月目頃より回復傾向を示し、1年以上経過すると術前の値よりも増加しているのか認められた。上顎腫瘍摘出後の上顎欠損患者は、発音・咀嚼障害を余儀なくされる。当科では、術後に義顎を装着して障害されたクチ腔機能の回復をはかっている。しかし、それらの機能回復の程度を客観的に評価するのは難しく、直ちに臨床に応用できる検査法はなかった。なかでも咀嚼機能検査は、義顎装着者に適した検査はなく、我々はATPか粒剤を用いた咀嚼能力測定法を開発した。本法は、被検者にATP下流剤5gを50回咀嚼させ、咀嚼されたATPか粒剤をだ液とともに回収し、その液を2000mlに希釈した後に、その液の一部を採取し分光光度計にてATPの吸光ピークがある259nmで吸光度を測定した。その値の大小を調べた。これを正常人と較べる方法をとった。本法は非常に簡便で、短時間に測定が終了するため、臨床において有用であった。咀嚼能力の大きい者は、ATP顆粒剤を多く咀嚼粉砕し、その吸光度も大きく表示され、患者一人一人の歯芽欠損、欠損、咬合状態によって差異がみられた。本法を顎変形症患者の手術前後に施行し、手術前後の咀嚼能力の変化と、手術後の咀嚼能力の経時的な変化を調べた。その結果、13例において2例をのぞき、術前の2%から26.4%と増加していた。また経時的な変化では、術後に一旦は低下するが、術後6ケ月目頃より回復傾向を示し、1年以上経過すると術前の値よりも増加しているのか認められた。当科においては,上顎腫瘍切除後の顎欠損患者の術後には義顎を装置して術後の口腔機能の回復をはかっている.義顎を装着することで回復される口腔機能には,咀嚼機能と構音機能がある.義顎の装着により両機能とも改善されるが,その改善の程度を簡便にかつ客観的に知るのは難しかった.われわれはATP顆粒剤を試料に用いた咀嚼能力測定法を開発した.義顎装着患者にATP顆粒剤5gを50回咀嚼させた.咀嚼されたATP顆粒剤をビーカーに回収し,それを蒸留水にて2000mlに希釈した.その希釈液を十分に撹拌し,その一部を採取濾過し,分光光度計にて259mmでの吸光度を測定した.これを1クールとして, 3クール行ないその平均値をとり,その患者の咀嚼能力とした.咀嚼能力の大きい者はATP顆粒剤を多く咀嚼粉砕し,その吸光度も高く表示される,患者1人1人の口腔状態,顎欠損の大小,歯牙欠損の状態に応じて咀嚼能力が測定できた.このATP吸光度法による咀嚼能力測定法を義顎装着者だけでなく,下顎前突症や上顎前突症の様な顎変形症患者にも応用し手術前後における咀嚼能力の変化も調べてみた.上顎腫瘍摘出後の上顎欠損患者は、発音・咀嚼障害を余儀なくされる。当科では、術後に義顎を装着して障害された口腔機能の回復をはかっている。しかし、それらの機能回復の程度を客観的に評価するのは難しく直ちに臨床に応用できる検査法はなかった。なかでも咀嚼機能検査は、義顎装着者に適した検査はなく、われわれはATP顆粒剤を用いた咀嚼能力測定法を開発した。 | KAKENHI-PROJECT-62480407 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62480407 |
顎骨腫瘍摘出後のオーラルリハビリテーションの研究 | 本法は、被検者にATP顆粒剤5gを50回咀嚼させ、咀嚼されたATP顆粒剤を唾液とともに回収し、その液を2000mlに希釈した後に、その液の一部を採取し分光光度計にてATPの吸光ピークがある259nmで吸光度を測定した。その値の大小を調べた。これを正常人と較べる方法をとった。本法は非常に簡便で、短時間に測定が終了するため、臨床において有用であった。咀嚼能力の大きい者はATP顆粒剤を多く咀嚼粉砕し、その吸光度も大きく表示され、患者一人一人の歯牙欠損、顎欠損、咬合状態によって差異がみられた。本年度は本法を顎変形症患者の手術前後に施行し、手術前後の咀嚼能力の変化と、手術後の咀嚼能力の経時的な変化を調べた。その結果、13例において2例をのぞき、術前の2%から264%と増加していた。また経時的な変化では、術後に一旦は低下するが、術後6ケ月目頃より回復傾向を示し、1年以上経過すると術前の値よりも増加しているのが認められた。 | KAKENHI-PROJECT-62480407 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62480407 |
ヒト細胞でDNA損傷部位にネオセントロメアが形成される機構とその生物学の意義 | 内定年度:2016 | KAKENHI-PROJECT-16K21747 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K21747 |
RuドープLiNbO_3結晶における不揮発性ホログラムの記録機構の研究 | 近年我々が開発した不揮発性ホログラム記録材料であるRu:Fe:LiNbO_3結晶は、(1)高い記録感度、(2)可視光領域でのゲートと記録が可能、(3)定着時のホログラム消去率が小さい、などメモリー材料として魅力的な特徴を有している。一方でこれまでの記録機構では説明のつかない現象も見つかっており、従来とは異なる新しい記録機構によって不揮発性ホログラムが記録されている可能性が示唆されている。本研究ではこのRu:Fe:LiNbO_3結晶におけるフォトリフラクティブ特性及び記録機構を明らかにし、新しい不揮発記録機構のモデル化と、この材料系のさらなる性能改善を目的とした。以下に、本研究で得られた成果をまとめる。1.Fe添加量の異なるRu,Fe:LiNbO_3結晶における吸収スペクトルの考察から、Feは結晶成長後ほぼすべてがイオン化されFe^<3+>の状態でLiNbO_3中に存在する。2.定着時の消去率の小さい要因は、Ruに起因している。3.光誘起吸収変化の起源は、室温で長い寿命を持っていることからスモールポーラロン由来ではなく、不純物準位などのトラップ準位が由来となっている。4.波長530nm付近に見える吸収ピークは光起電力効果に関与していないことから、この吸収はRuの結晶場遷移と考えられる。5.ホログラム記録感度、最大屈折率変化量は、Feの添加量に強く依存し、添加量が多ければ多いほど、感度も屈折率変化も大きくなる。近年我々が開発した不揮発性ホログラム記録材料であるRu : Fe : LiNbO_3結晶は、(1)高い記録感度、(2)可視光領域でのゲートと記録が可能、(3)定着時のホログラム消去率が小さい、などメモリー材料として魅力的な特徴を有している。一方でこれまでの記録機構では説明のつかない現象も見つかっており、従来とは異なる新しい記録機構によって不揮発性ホログラムが記録されている可能性が示唆されている。本研究ではこのRu : Fe : LiNbO_3結晶におけるフォトリフラクティブ特性及び記録機構を明らかにし、新しい不揮発記録機構のモデル化と、この材料系のさらなる性能改善を目的としている。LiNbO_3結晶にドープされたRuイオンに関する報告はこれまでほとんどない。そこで本研究ではまず、基礎物性の測定とモデルの構築に力を入れ研究を行った。具体的には、光起電力電流を青から緑のスペクトル領域で測定し、Ruイオンの光起電力係数を初めて見積もった。一方で、530nm付近に存在する吸収ピークの起源に関する知見も得ることができた。また、2準位モデルを仮定し、フォトクロミズムの過渡応答の測定から、Ruイオン固有のパラメータである再結合定数、光吸収断面積などを見積もった。その結果RuイオンはFeイオンと比べ非常に大きな再結合定数を持つことがわかり、不揮発性ホログラムの定着時にホログラム消去率が小さい理由がRuイオンの大きな再結合定数に由来することが示唆された。これら二つの実験によりホログラム記録のシミュレーションに必要なRuイオンの物質パラメーターはすべて得ることができ、得られたパラメータを用いて不揮発記録のシミュレーションを行ったところ、実際の実験結果とよい一致がみられ、今回得られたパラメータの妥当性が示された。近年我々が開発した不揮発性ホログラム記録材料であるRu:Fe:LiNbO_3結晶は、(1)高い記録感度、(2)可視光領域でのゲートと記録が可能、(3)定着時のホログラム消去率が小さい、などメモリー材料として魅力的な特徴を有している。一方でこれまでの記録機構では説明のつかない現象も見つかっており、従来とは異なる新しい記録機構によって不揮発性ホログラムが記録されている可能性が示唆されている。本研究ではこのRu:Fe:LiNbO_3結晶におけるフォトリフラクティブ特性及び記録機構を明らかにし、新しい不揮発記録機構のモデル化と、この材料系のさらなる性能改善を目的とした。以下に、本研究で得られた成果をまとめる。1.Fe添加量の異なるRu,Fe:LiNbO_3結晶における吸収スペクトルの考察から、Feは結晶成長後ほぼすべてがイオン化されFe^<3+>の状態でLiNbO_3中に存在する。2.定着時の消去率の小さい要因は、Ruに起因している。3.光誘起吸収変化の起源は、室温で長い寿命を持っていることからスモールポーラロン由来ではなく、不純物準位などのトラップ準位が由来となっている。4.波長530nm付近に見える吸収ピークは光起電力効果に関与していないことから、この吸収はRuの結晶場遷移と考えられる。5.ホログラム記録感度、最大屈折率変化量は、Feの添加量に強く依存し、添加量が多ければ多いほど、感度も屈折率変化も大きくなる。 | KAKENHI-PROJECT-16760033 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16760033 |
大規模オンライン生産スケジューリング・システムの開発 | 本研究は、大規模生産スケジューリング問題を多数の小規模問題に離散化することで、各小規模問題を決定木オンライン学習方法で解決することにより、スマート、かつ、ロバストな新型オンライン・スケジューリング・システムを構築することを目的とする。本提案により、これまでかなり計算時間を要した大規模スケジューリング問題が、瞬時に解決可能となり、従って注文新着・変更・機械故障など動的な外乱があっても迅速に対応できるようになるという質的に大きな変化をもたらす。また、これまでフィックスしたスケジューリング・アルゴリズムが、学習によって自己改善していくという新しい知能的なものになる。本研究は、大規模生産スケジューリング問題を多数の小規模問題に離散化することで、各小規模問題を決定木オンライン学習方法で解決することにより、スマート、かつ、ロバストな新型オンライン・スケジューリング・システムを構築することを目的とする。本提案により、これまでかなり計算時間を要した大規模スケジューリング問題が、瞬時に解決可能となり、従って注文新着・変更・機械故障など動的な外乱があっても迅速に対応できるようになるという質的に大きな変化をもたらす。また、これまでフィックスしたスケジューリング・アルゴリズムが、学習によって自己改善していくという新しい知能的なものになる。 | KAKENHI-PROJECT-19K15238 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K15238 |
バースト誤り位置指摘符号 | 本年度は前年度に情報理論国際会議(2002 IEEE International Symposyum on Information Theory)に投稿し採択された1ビット誤り訂正機能を有するバースト誤り位置指摘符号(SEC-BlEL符号)に関する論文発表を同会議が開催されたローザンヌ市(スイス)で発表した。本符号に関しては新たにテンソル積を用いた構成法及びバースト誤り位置指摘符号に検査ビットを付加する構成法が開発された。これらの構成法については現在詳細な評価を行っている途中である。今後は符号限界の導出、復号回路量の計算等の詳細な符号評価を行った後に学術論文としてまとめ、学会誌に投稿する予定である。また、新たな符号として上記符号にランダム2ビット誤り検出機能を付加した符号(SEC-BlEL-DED符号)の構成法を新たに検討した。本符号はごくまれに起こるランダム2ビット誤りを完全に検出する符号であり、SEC-BlEL符号では誤訂正や誤り位置の誤指摘を行ってしまうランダム2ビットに対応した誤り制御能力のより強い符号である。本符号の構成法としてSEC-BlEL符号に検査ビットを付加する手法を開発した。本符号については検討を開始したばかりであるため、さらに符号構成法を検討して検査ビット数のより少ない構成法を開発する必要がある。本符号についても符号構成法の検討の後に学術論文にまとめ、国際会議及び論文誌へ投稿する予定である。本年度は新しい誤り位置指摘機能を有するバースト誤り位置指摘符号を構成した。本符号は符号語中に枠と呼ばれる連続した複数シンボルの集合を複数定義し、バースト誤りが生じた際にその誤りを完全に含む枠を指摘するという機能の符号である。隣接する枠をl-1ビットずつ重ねて配置することにより任意の位置に生じたバースト誤りが位置指摘可能となっている。そのため、符号語をブロック分割してブロック単位で位置指摘を行う従来のバースト誤り位置指摘符号における問題点、すなわちブロック境界で生じたバースト誤りが位置指摘不可能であるという問題点、を本符号は解決している。この位置指摘機能を有する実用的な符号として、1ビット誤りを訂正するバースト誤り位置指摘符号を構成した。この符号の構成法は以前より研究代表者らによって提案されていたが、得られた符号は検査長が長くなるとバースト誤り訂正符号であるファイヤ符号よりも情報長が短くなるという問題点を有していた。今年度構成した符号の検査行列は以前の符号の検査行列に列を付加することによって構成しており、符号長が4分の3倍になっている。さらに、この符号の情報長はファイヤ符号の情報長よりも常に長くなる。この符号の構成法を論文にまとめて情報理論国際会議(2002 IEEE International Symposium on Information Theory, ISIT 2002)に投稿した。本論文は採択され、本年6月にスイスのローザンヌ市で開催される同会議で発表する。今後は、構成法の改良を進めるとともに、計算機シミュレーション等により得られた符号の評価を行う。本年度は前年度に情報理論国際会議(2002 IEEE International Symposyum on Information Theory)に投稿し採択された1ビット誤り訂正機能を有するバースト誤り位置指摘符号(SEC-BlEL符号)に関する論文発表を同会議が開催されたローザンヌ市(スイス)で発表した。本符号に関しては新たにテンソル積を用いた構成法及びバースト誤り位置指摘符号に検査ビットを付加する構成法が開発された。これらの構成法については現在詳細な評価を行っている途中である。今後は符号限界の導出、復号回路量の計算等の詳細な符号評価を行った後に学術論文としてまとめ、学会誌に投稿する予定である。また、新たな符号として上記符号にランダム2ビット誤り検出機能を付加した符号(SEC-BlEL-DED符号)の構成法を新たに検討した。本符号はごくまれに起こるランダム2ビット誤りを完全に検出する符号であり、SEC-BlEL符号では誤訂正や誤り位置の誤指摘を行ってしまうランダム2ビットに対応した誤り制御能力のより強い符号である。本符号の構成法としてSEC-BlEL符号に検査ビットを付加する手法を開発した。本符号については検討を開始したばかりであるため、さらに符号構成法を検討して検査ビット数のより少ない構成法を開発する必要がある。本符号についても符号構成法の検討の後に学術論文にまとめ、国際会議及び論文誌へ投稿する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-13750326 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13750326 |
分布拡大する侵入害虫、ハラアカコブカミキリ幼虫の発育特性の解明 | ハラアカコブカミキリは日本本土への侵入種でありシイタケホダ木の害虫である。本種を産卵から成虫の羽化まで異なる温度で飼育して発育の特性を明らかにした。卵、幼虫及び蛹の発育零点と有効積算温量はそれぞれおよそ12°Cと110日°C、15°Cと610日及び10°C、190日°Cであった。これらの発育零点と有効積算温量を考えると、ハラアカコブカミキリが我が国の非分布地に侵入した場合、定着する可能性が高く、今後十分注意する必要がある。ハラアカコブカミキリはシイタケ栽培用のホダ木の害虫であり、また、日本本土への侵入種である。この幼虫の発育と温度の関係を明らかにするために、孵化直後の幼虫を成虫の羽化まで人工飼料を用いて飼育した。人工飼料の組成は、クヌギ材粉砕物25%、蚕用粉末人工飼料20%、粉末乾燥酵母5%、蒸留水50%ととした。よく混合した人工試料20gを容量100mlの三角フラスコに入れてヘラで固めた後、シリコセンで蓋をして高温高圧殺菌(121°C、20分)した。このように作製した人工飼料に孵化1日以内の幼虫を1頭接種した。その後、全暗条件で17.5°C、20.0°C、25°Cあるいは30°Cで飼育し、蛹化と羽化までの日数を調べた。蛹化するまでの平均期間(幼虫期間)(最短期間ー最長期間)は、17.5°Cでは225日(77日ー295日)、20°Cでは69日(51日ー192日)、25°Cでは57日(48日ー66日)、30°Cでは64日(46日ー79日)であった。蛹期間は、17.5°Cでは26日(25日ー27日)、20°Cでは18日(15日ー21日)、25°Cでは12日(10日ー13日)、30°Cでは10日(7日ー11日)であった。幼虫の発育を見ると25°Cと30°Cでは、平均の幼虫期間は最短発育期間と最長発育期間のほぼ中央であった。しかし、17.5°Cでは平均幼虫期間に対して極端に早く蛹化する個体がみられ、また20°Cでは極端に遅く蛹化する個体がみられた。また、30°Cでの平均幼虫期間は25°Cのそれより長くなった。それに対して蛹では飼育温度が高いほど平均の蛹期間が短くなった。これらからハラアカコブカミキリの蛹の発育は温度で説明できる可能性があるが、幼虫の発育は温度だけでは説明がつかないことが示唆された。ハラアカコブカミキリは日本本土への侵入種でありシイタケホダ木の害虫である。本種を産卵から成虫の羽化まで異なる温度で飼育して発育の特性を明らかにした。卵、幼虫及び蛹の発育零点と有効積算温量はそれぞれおよそ12°Cと110日°C、15°Cと610日及び10°C、190日°Cであった。これらの発育零点と有効積算温量を考えると、ハラアカコブカミキリが我が国の非分布地に侵入した場合、定着する可能性が高く、今後十分注意する必要がある。ハラアカコブカミキリはシイタケ栽培用のホダ木の害虫であり、また、日本本土への侵入種である。本研究では、ハラアカコブカミキリ幼虫(卵から成虫の羽化まで)の高温低温別の発育限界温度、温度別の発育速度(ある発育ステージを終えるまでに必要な日数の逆数)や発育速度からは算出される発育零点(温度と発育速度の回帰式から発育速度が0になる温度、すなわち発育できない温度の目安)及び有効積算温量(ある発育ステージを終えるまでに必要な発育零点以上の温度の積算量)などの発育の特性を明らかにすることを目的としている。予備的な調査でハラアカコブカミキリの卵は15°Cと30°Cでは孵化することを明らかにしている。そこで本年度は、卵を用いて15°C未満の低温域の発育限界温度及び31°C以上の高温域の発育限界温度を明らかにすることを主な目的とした。越冬の終えたハラアカコブカミキリ成虫を採集してクヌギの枯れ枝を与えて飼育、産卵させ、枯れ枝から卵を取り出して供試した。卵を湿った濾紙を敷いたシャーレに入れ、10°Cから14°Cまで、また31°Cから35°Cまで1°C刻みで恒温器に置いた。その結果、14°Cおよび31°Cから34°Cまでの温度で幼虫の孵化を確認した。孵化した幼虫をすでに開発した幼虫飼育用の人工飼料(クヌギ枝粉末25%、蚕用人工飼料20%、乾燥酵母5%、蒸留水50%の混合物20g)に移して15°Cで飼育した。その結果、蛹化した場合があったが、正常に羽化した個体はなかった。ハラアカコブカミキリはシイタケ栽培用のホダ木の害虫であり、日本本土への侵入種でもある。 | KAKENHI-PROJECT-24580234 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24580234 |
分布拡大する侵入害虫、ハラアカコブカミキリ幼虫の発育特性の解明 | 本研究では、ハラアカコブカミキリ幼虫(卵から成虫の羽化まで)の発育零点(温度別飼育試験から算出される発育できない温度の目安)及び有効積算温量(ある発育ステージを終えるまでに必要な発育零点以上の温度の積算量)などの発育の特性を明らかにすることを目的としている。越冬の終えたハラアカコブカミキリ成虫を採集してクヌギの枯れ枝を与えて飼育して産卵させ、産卵されてから1日以内の卵を枯れ枝から取り出して供試した。卵はシャーレに入れた湿ったろ紙の上に置いて孵化させた。孵化した幼虫は成虫の羽化まで人工飼料を用いて飼育した。人工飼料の組成は、クヌギ材粉砕物25%、蚕用粉末人工飼料20%、粉末乾燥酵母5%、蒸留水50%ととした。よく混合した人工試料20gを容量100mlの三角フラスコに入れてヘラで固めた後、シリコセンで蓋をして高温高圧殺菌(121°C、20分)した。このように作製した人工飼料に孵化1日以内の幼虫を1頭接種した。卵、幼虫及び蛹の飼育温度は、15°Cから30°Cまで2.5°C段階にした。幼虫を低温(15°Cから20°C)で飼育した場合、発育期間にばらつきが大きく発育期間の逆数を利用する従来法では発育零点は計算できなかった。そこで、低温部のデータを有効に使える池本・高井法を用いて計算した。17.5°Cでは飼育中の幼虫もあり、暫定的な結果ではあるが、卵、幼虫、蛹のおよその発育零点と有効積算温量は、それぞれ、11.5°Cと110日°C、13.5°Cと710日°C、10.0°Cと185日°Cであった。卵は全ての飼育温度で高率に孵化した。一方、幼虫と蛹では、高率に蛹化、羽化する温度は、それぞれ、20°Cから30°C、20°Cから27.5°Cであり、蛹化や羽化の適温は幼虫や蛹の発育適温と異なる可能性があることが示唆された。農学昨年度のハラアカコブカミキリ卵の発育と温度の解明に続いて、今年度は幼虫と蛹の発育と温度の関係が明らかになったため。15°Cでの幼虫の飼育は次年度行う予定であったが前倒しで行い、15°Cでは成虫まで発育できないことを明らかにしたため。幼虫の発育が温度だけでは説明できない可能性を見出したので、すでに得ている幼虫の重さ(羽化したときの成虫の重さ)も含めて解析する。サンプル数を増やして結果の信頼性を増やすため、各温度での幼虫と蛹の飼育をする。研究実施計画では卵を15°Cから30°Cまで5°C刻みにおいて幼虫の孵化までの日数を明らかにするとともに、孵化した幼虫も同様の温度で飼育して発育までの日数を明らかにする計画であった。しかし、本年度の飼育で15°Cでは成虫まで発育できないことが明らかになったので、幼虫の飼育については、17.5°Cから30°Cまで2.5°C刻みでの飼育を行う。卵については幼虫の飼育温度に加え15°Cでの孵化までの日数を確認する。「該当なし」 | KAKENHI-PROJECT-24580234 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24580234 |
材料の構造階層性と照射のマルチスケール性を踏まえた金属内ヘリウム損傷のモデル化 | 核融合炉や原子炉で使用される材料の照射下挙動に関して,材料の階層構造性や照射プロセスのマルチスケール性を踏まえつつモデル化を行った.そして,照射による材料ミクロ組織変化の予測に必要な方法論を構築した.特に,材料内に形成する欠陥集合体の核生成・成長メカニズムについて,材料学的基盤のしっかりとしたモデルを作り上げた.炉の安全の基本は材料の健全性にあることから,これらの知見は,安全・安心な炉システムの開発に重要である.核融合炉や原子炉で使用される材料の照射下挙動に関して,材料の階層構造性や照射プロセスのマルチスケール性を踏まえつつモデル化を行った.そして,照射による材料ミクロ組織変化の予測に必要な方法論を構築した.特に,材料内に形成する欠陥集合体の核生成・成長メカニズムについて,材料学的基盤のしっかりとしたモデルを作り上げた.炉の安全の基本は材料の健全性にあることから,これらの知見は,安全・安心な炉システムの開発に重要である.原子炉・核融合炉材料内では,放射線の照射によって局所的に高濃度のはじき出し欠陥や不純物原子が生成し,それらが拡散・相互作用することによってミクロ構造・ミクロ組成が変化,さらには,材料機能が劣化する.本研究の目的は,階層構造をもち,かつ,複雑な系である材料の中で起こる,時間的にも空間的にもエネルギー的もマルチスケールな現象-照射損傷プロセス-を予測するためのモデルを考案し,原子炉・核融合炉材料の設計,選択,保全等に寄与することである.本年度は,従来から申請者が分子動力学法やモンテカルロ法等を使って構築してきた金属中のヘリウムバブル核生成・成長に関する新しいモデルを,照射材料内の欠陥蓄積過程評価を行う計算機シミュレーションコード(反応速度論+モンテカルロ法)に導入するための検討を行い,ほぼモデル導入に際しての問題点を明らかにすることができた.これをもとに,継続となる次年度では,具体的な照射条件での蓄積プロセスシミュレーションを行い,実験データとの比較からモデルの妥当性検証を行う.また,系の複雑性をより現実に近づけるための試みとして,2元系材料のボイド核生成・成長に関するモデル化も行った.実際にはSiC材料を例にし,ボイド内の空孔組成について注目したところ,ボイドの成長速度等について,とくにボイドのエネルギー論(ボイドの熱的安定性に対する空孔組成の影響)が重要であることが明らかになった.これは,従来の純金属内のヘリウムバブルの核生成の場合とは異なるものであり,こうした研究から,逆に,純金属内のヘリウムバブル形成に対するヘリウムの効果がうかびあがってきた.さらなる検討を重ね,次年度末には,明確なまとめを行う.核融合炉などの放射線照射場で使われる材料では,中性子などの入射により原子はじき出しが局所的に起こり,このとき生成した格子欠陥が時間をかけながら拡散していく.こうして,局所的な照射の影響が材料全体に徐々にひろがっていく.拡散する欠陥どうしは,やがて反応して集合体を形成するので,材料のミクロ構造が変化し,材料機能が劣化していく.本研究の目的は,原子から連続体までの構造階層をもつ材料という系の中で起こる,時間的にも空間的にもマルチスケールな現象<<照射損傷プロセス>>を,計算機シミュレーション手法による予測を可能にするためのモデルを開発することである.平成20年度は,照射による材料中の欠陥蓄積過程を解析するのに有効な反応速度論式に対して,さまざまな時間・空間スケールのそれぞれにおいて支配的な項を抽出し,それぞれのスケールにおける物理プロセスやそれを解析するための計算機シミュレーション手法の整理を行った.また,異なるスケールどうしをどのようにつないでいくべきか(粗視化と微視化)の考察を行った.こうした検討を,原子力学会誌やプラズマ・核融合学会誌の解説記事としてまとめた.具体的な成果としては(1)金属中のヘリウム損傷を例に,分子動力学法とモンテカルロ法の組み合わせ解析を行い,ヘリウムバブルの核生成・成長プロセスおよびバブル移動のモデル化を行った.これにより,たとえば分子動力学法単独ではシミュレーションすることが不可能なほど長時間の現象(ヘリウムイオン照射による材料表面損傷)をモデル化に成功した.(2)ヘリウムバブル形成をよく知るための参照として,炭化ケイ素中のボイドの核生成・成長についても同様の解析を行った.ヘリウムバブルがバブル内組成に関係なく成長するのに対し,炭化ケイ素中のボイドは空孔組成比を1:1に保ちながら成長した.この研究から,ヘリウムの効果をより理解することができた. | KAKENHI-PROJECT-19560662 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19560662 |
溶接プロセスにおけるアークプラズマ中の金属蒸気挙動と溶融プール形成過程の総合解析 | 本研究は,アーク溶接プロセスの十分な理解と正確な予測の実現を目指し,その動的挙動を数値計算シミュレーションとイメージング分光器による実験観察の双方から総合的に解析した.その結果,溶接熱源となるアーク放電プラズマ中の金属蒸気の種類および密度の動的な空間分布変化,プラズマ温度分布の動的変化,材料への入熱密度分布の動的変化,溶融池形成の時間変化を定量的に明らかにすることに成功した.本研究は,アーク溶接プロセスの十分な理解と正確な予測の実現を目指し,その動的挙動を数値計算シミュレーションとイメージング分光器による実験観察の双方から総合的に解析した.その結果,溶接熱源となるアーク放電プラズマ中の金属蒸気の種類および密度の動的な空間分布変化,プラズマ温度分布の動的変化,材料への入熱密度分布の動的変化,溶融池形成の時間変化を定量的に明らかにすることに成功した.本研究は,溶接プロセスの十分な理解と正確な予測の実現を目指し,アーク溶接プロセスにおけるプラズマ中の金属蒸気の種類および密度の動的な空間分布変化,プラズマ温度分布の動的変化,材料への入熱密度分布の動的変化,溶融池形成の時間変化を定量的に明らかにすることを目的としたものである.平成19年度では,まず,金属蒸気の混入を考慮に入れた,「タングステン電極-アークプラズマ-溶融池-母材」を同時に一体化して計算する静止GTA溶接プロセスの非定常数値解析モデルの構築を試みた.その結果,アーク発生から溶融池が十分に形成される20秒間,金属蒸気密度の動的な空間分布変化,アークプラズマ温度分布の動的変化,材料への入熱密度分布の動的変化,溶融池の動的変化を時間ごとの数値計算シミュレーションとして出力することに成功した.また,本シミュレーション結果と溶融池の溶込み形状(実験結果)を比較した結果,極めてよい一致を示した.さらに,静止GTA溶接プロセスで生じる動的な金属蒸気の挙動とそれに伴うアークプラズマ温度の時間変化を実験的に把握するため,高分解能・高速度アークプラズマ診断システムを構築した.本研究は,溶接プロセスの十分な理解と正確な予測の実現を目指し,アーク溶接プロセスにおけるプラズマ中の金属蒸気の種類および密度の動的な空間分布変化,プラズマ温度分布の動的変化,材料への入熱密度分布の動的変化,溶融池形成の時間変化を定量的に明らかにすることを目的としたものである.平成20年度では,プラズマイメージングシステムを用いて,静止GTA溶接プロセスにおける溶接アーク現象を分光デジタル動画として取り込むことにより,溶融池表面から蒸発してアークプラズマ中に混入する金属原子および金属イオンの動的変化を観察することに成功した,特に,ステンレス鋼を溶接した場合には,合金元素である鉄,クロム,マンガン等が溶融池表面から同時に蒸発してプラズマ中に混入するが,そのダイナミックな挙動をそれぞれの元素ごと,かつ,原子とイオンを分離して観察することに成功した.この結果,ステンレス鋼の静止溶接においては,溶融池表面から主として鉄,クロム,マンガンが蒸発するが,クロムとマンガンはプラズマの旋回流動によってアーク柱を迂回しながらタングステン電極まで到達し,その後,陰極ジェットに乗ってプラズマ中心部に輸送されることが明らかになった.一方,鉄は,ほとんどが陰極ジェットによってアーク外周辺へ吐き出され,プラズマの旋回流動によってタングステン電極の方へ輸送されないことが明らかになった.一方,シールドガスであるアルゴンの原子スペクトルを同じシステムを用いて観察し,Fowler-Milne法を利用することにより、プラズマ温度分布の動的変化を実験的に求めることに成功した.本研究は,溶接プロセスの十分な理解と正確な予測の実現を目指し,アーク溶接プロセスにおけるプラズマ中の金属蒸気の種類および密度の動的な空間分布変化,プラズマ温度分布の動的変化,材料への入熱密度分布の動的変化,溶融池形成の時間変化を定量的に明らかにすることを目的としたものである.平成21年度では,プラズマイメージングシステムを用いて,静止GTA溶接プロセス中に発生する金属蒸気の動的な密度分布測定を実施するため,解析時に必要とされるプラズマ温度分布計測手法を検討した.プラズマ中の原子あるいはイオンが放射する線スペクトルからプラズマ温度を測定する手法として,Fowler-Milne法,ArII/ArI二線強度比法,ArI/ArI相対強度比法の3種類を選定した.個々について計測・解析した結果,ArII/ArI二線強度比法は高精度な温度測定が実行できるもののイオンが十分に存在する高温領域のみに限定され,一方,ArI/ArI相対強度比法は温度測定の誤差が極めて大きく,金属蒸気の密度分布解析には不適切であることが明らかになった.したがって,広範囲な温度領域において比較的精度よく安定して温度測定が実行できるFowler-Milne法が最も本研究の目的に適していることが明らかになった.以上に基づき,プラズマ温度と金属線スペクトルの動的変化を総合的に解析することにより,ステンレス鋼の静止GTA溶接プロセス中に溶融池表面から発生する鉄,クロム,マンガンの空間密度分布の時間変化を測定することに成功した.マンガン,クロム,鉄の順にプラズマ中での蒸気濃度が高く,時間と共に増大することが明らかになった.また,金属蒸気の濃度上昇に伴い,プラズマ温度が徐々に低下することが実験的に初めて明らかにされた.さらに,本実験結果と金属蒸気の混入を考慮した静止GTA溶接プロセスの非定常数値計算シミュレーションを比較することにより,溶接プロセスにおける熱源としてのアークプラズマの役割とそれに及ぼす金属蒸気の影響を明確化した. | KAKENHI-PROJECT-19360333 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19360333 |
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