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ポリエチレンテレフタレートに骨伝導性を付与する挑戦 | 高分子材料は柔軟性等に優れるが、骨伝導性(骨に接して材料を埋入した際に、骨が材料表面と直接結合する性質)を示す高分子材料は存在しない。表面修飾によって、任意の高分子材料に骨伝導性を付与できるようになれば、臨床医学等への貢献は極めて大きい。また、骨伝導性を示さない材料への骨伝導性の付与は「骨伝導性機序の解明」につながり、「材料と生体との関わり」を解明する鍵の一つになるとも考えられる。研究者は、脊椎ケージとして臨床応用されているポリエーテルエーテルケトン表面をリン酸基修飾すると、骨伝導性を示さないポリエーテルエーテルケトンに骨伝導性が付与されることを見出した。本研究においては、人工腱などで臨床応用されているポリエチレンテレフタレートへの骨伝導性の付与を検討する。ポリエーテルエーテルケトン同様にポリエチレンテレフタレートも直接リン酸化することは不可能である。そのため、ポリエチレンテレフタレート表面のケトン基を還元して水酸基を形成し、さらに水酸基をリン酸化する手法によってリン酸基修飾ポリエチレンテレフタレートが調製できるか否かを検討する。また、リン酸基修飾ポリエチレンテレフタレートが調製できた場合にはリン酸基修飾ポリエチレンテレフタレートおよびリン酸基修飾していないポリエチレンテレフタレート表面で骨芽細胞を培養して、骨伝導性に関係する細胞特性を評価する予定である。本年度は研究計画の初年度として、はポリエチレンテレフタレート表面のリン酸基修飾に関する検討を行った。本年は研究計画の初年度であり、ポリエチレンテレフタレート表面のリン酸基修飾に関する検討を行った。ポリエチレンテレフタレート自体にはリン酸基と直接反応する官能基が存在しないため、PETのケトン基を還元して水酸基とする検討を行った。その結果、水素化ホウ素ナトリウムを用いるとケトン基を還元させて水酸基を形成できることが明らかになった。ケトン基の還元および水酸基の形成はXPSで確認した。次に、水酸基を利用してPET表面にリン酸基を修飾する検討を行った。水酸基形成後のポリエチレンテレフタレートを60°Cの塩化ホスホリルートリエチルアミンージクロロメタン混合溶液に24時間浸漬すると、リン酸基が結合されることが確認された。すなわち、ポリエチレンテレフタレート表面にリン酸基修飾を行う手法が確立できた。本年度の研究の結果、ポリエチレンテレフタレート表面にリン酸基修飾を行う手法が確立できた。今後は、予定通り、リン酸基修飾ポリエチレンテレフタレートが骨伝導性を獲得しているかどうかを、骨芽細胞を用いて細胞レベルで評価を行う。試料としてはリン酸基修飾ポリエチレンテレフタレート、対照としてはリン酸基修飾をしていないポリエチレンテレフタレートを用いる。骨芽細胞は近交系ラットの大腿骨から骨髄細胞の細胞懸濁液を調製し、骨芽細胞様細胞に分化させて調製させる予定であるが、セルラインの使用も検討する。試料表面に細胞懸濁液を播種し、培地中で一定期間培養する。骨芽細胞の初期接着性、細胞増殖、細胞分化マーカーを測定し、リン酸基修飾による骨伝導性付与の可能性を細胞レベルで評価する。高分子材料は柔軟性等に優れるが、骨伝導性(骨に接して材料を埋入した際に、骨が材料表面と直接結合する性質)を示す高分子材料は存在しない。表面修飾によって、任意の高分子材料に骨伝導性を付与できるようになれば、臨床医学等への貢献は極めて大きい。また、骨伝導性を示さない材料への骨伝導性の付与は「骨伝導性機序の解明」につながり、「材料と生体との関わり」を解明する鍵の一つになるとも考えられる。研究者は、脊椎ケージとして臨床応用されているポリエーテルエーテルケトン表面をリン酸基修飾すると、骨伝導性を示さないポリエーテルエーテルケトンに骨伝導性が付与されることを見出した。本研究においては、人工腱などで臨床応用されているポリエチレンテレフタレートへの骨伝導性の付与を検討する。ポリエーテルエーテルケトン同様にポリエチレンテレフタレートも直接リン酸化することは不可能である。そのため、ポリエチレンテレフタレート表面のケトン基を還元して水酸基を形成し、さらに水酸基をリン酸化する手法によってリン酸基修飾ポリエチレンテレフタレートが調製できるか否かを検討する。また、リン酸基修飾ポリエチレンテレフタレートが調製できた場合にはリン酸基修飾ポリエチレンテレフタレートおよびリン酸基修飾していないポリエチレンテレフタレート表面で骨芽細胞を培養して、骨伝導性に関係する細胞特性を評価する予定である。本年度は研究計画の初年度として、はポリエチレンテレフタレート表面のリン酸基修飾に関する検討を行った。本年は研究計画の初年度であり、ポリエチレンテレフタレート表面のリン酸基修飾に関する検討を行った。ポリエチレンテレフタレート自体にはリン酸基と直接反応する官能基が存在しないため、PETのケトン基を還元して水酸基とする検討を行った。その結果、水素化ホウ素ナトリウムを用いるとケトン基を還元させて水酸基を形成できることが明らかになった。ケトン基の還元および水酸基の形成はXPSで確認した。次に、水酸基を利用してPET表面にリン酸基を修飾する検討を行った。水酸基形成後のポリエチレンテレフタレートを60°Cの塩化ホスホリルートリエチルアミンージクロロメタン混合溶液に24時間浸漬すると、リン酸基が結合されることが確認された。すなわち、ポリエチレンテレフタレート表面にリン酸基修飾を行う手法が確立できた。本年度の研究の結果、ポリエチレンテレフタレート表面にリン酸基修飾を行う手法が確立できた。 | KAKENHI-PROJECT-18K19928 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K19928 |
ポリエチレンテレフタレートに骨伝導性を付与する挑戦 | 今後は、予定通り、リン酸基修飾ポリエチレンテレフタレートが骨伝導性を獲得しているかどうかを、骨芽細胞を用いて細胞レベルで評価を行う。試料としてはリン酸基修飾ポリエチレンテレフタレート、対照としてはリン酸基修飾をしていないポリエチレンテレフタレートを用いる。骨芽細胞は近交系ラットの大腿骨から骨髄細胞の細胞懸濁液を調製し、骨芽細胞様細胞に分化させて調製させる予定であるが、セルラインの使用も検討する。試料表面に細胞懸濁液を播種し、培地中で一定期間培養する。骨芽細胞の初期接着性、細胞増殖、細胞分化マーカーを測定し、リン酸基修飾による骨伝導性付与の可能性を細胞レベルで評価する。当初はポリエチレンテレフタレート表面のリン酸基修飾に相当の費用と時間がかかると予測していたが、計画が順調に進行し、また、研究室にある薬品やガラス器具等を使用することで使用額を節約できた。次年度に行う骨芽細胞を用いた骨伝導性に関する因子の検討においては相当の研究経費が想定されるため、節約できた研究経費については次年度の研究経費に充当する。このことによって細胞を用いた実験の回数の増大等が期待され、研究結果の精度の向上などが期待できる。 | KAKENHI-PROJECT-18K19928 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K19928 |
助詞・助動詞・構文・文章構成を観点とした、三代集の表現研究 | 本研究は、古今集的表現と一括される三代集の表現を、助詞・助動詞・構文・文章構成を観点として考察した。その成果として、以下の点をあげることができる。第1に、古今集から後拾遺集および拾遺抄の文末語と句切れのデータベースを、私家版ながら作成し、和歌の表現研究を効率的に行えるようにした。第2に、初句切れの表現構成を明らかにした。第3に、文末「らむ」と句切れとから、倒置的表現による体言止めの歌の形成過程の一端を明らかにした。第4に、三代集各に特徴的な詠歌の場が、「疑問詞......らむ」の用法に差異をもたらすことを明らかにした。第5に、三代集の「......ものは......なりけり」構文の展開を明らかにする端緒を得た。本研究の意義は、助詞・助動詞によって組み立てられる構文という観点の導入によって(複数文から構成される歌では文相互の関係、すなわち文章構成の観点も加わる)、和歌の表現史を、これまでのように自立語(特に名詞)・修辞など、1首中の個々の要素の変遷として捉えるのではなく、1首を表現構成として総体的にとらえたうえで考察できる点にある。本年度は、昨年度完成したデータベースをもとに、本研究に有効な助詞・助動詞・構文・文章構成を抽出する計画であった。そこで着目されたのが、まずは先行研究や予備研究から予測していた、助動詞「けり」「らむ」である。また、研究当初は注目していなかったが、和歌の表現構成を考察する上で、基本的な要素である句切れが、大きな問題として浮上してきた。本年度は、前者の「らむ」と、後者の初句切れとについて考察し、以下の点を明らかにした。1.助動詞「らむ」を文末に有する歌は、万葉集に比較して、古今集では原因・理由の推量を表す用法が多いことは、従来から指摘されていた。しかし、原因・理由の表し方が、万葉集ではほぼミ語法に限定されるのに対して、古今集では接続助詞「ば」による条件節、係助詞「は」の題述構文の節述部分、格助詞「に」などによる連用節などで表現され、多様化する。最初の2つは、いわゆる理知的な古今集の表現の成立に大きく関与している。2.初句切れは新古今集の特徴とされてきたが、その表現的特徴はすでに古今集に見られる。すなわち、初句切れの初句の典型は、体言を含まない述語文節1つで構成される、要求文か感動文かである。そして、第2句以下が、初句の用言の対象や内容となる。述語文節のみで成り立ち、体言を含まない初句は、第2句以下で示される、述語の対象や内容に、焦点を絞ることになる。また、初句の要求文や感動文で示される強い情意は、1首全体の印象を決定づけることにもなる。平安和歌の表現研究は、歌枕・歌ことばなどの自立語と修辞とを対象として、成果をあげてきた。今後は国語の表現を決定的づける助詞・助動詞と、それによって組み立てられる構文、ひいては文章構成を観点とする研究の段階を迎えている。そこで、本研究は、古今集的表現と一括される三代集の表現を、助詞・助動詞・構文・文章構成を観点として、その展開を考察する。本研究の意義は次のようにまとめられる。構文という観点の導入から、和歌の表現史を、自立語・修辞・句切れなどの1首中の個々の要素の変遷としてではなく、1首1首を総体的にとらえたうえで考察できる。それは、これまで自立語・修辞・句切れなどの要素ごとに個別的に理解されてきた和歌の表現史を、まさに和歌の表現そのものの変遷として有機的に関連づけることにもつながる。本年度は、三代集及び拾遺抄と後拾遺集の文末語のデータベースを作成した。国語は、文末に用いられる語の性質で、文の内容や対象に対する作者の態度や判断を知ることができる。そこで、三代集と、拾遺集の母体となった拾遺抄と、三代集の表現を見極めるのに必要と考えられる後拾遺集(八代集の屈折点と位置づけられる)との文末語を調査することとした。さらに、本年度予定していたデータベースの完成が年度途中で実現したため、研究計画を前倒しして三代集の表現の考察に入ることになった。取り上げたのは、初句切れの表現構成と、文末が「らむ」で統括される歌の表現構成とである。初句切れは新古今集の表現の特徴とされるが、初句切れに特徴的な表現の一部はすでに古今集から見られる(もちろん数は少ないのだが)。また、文末「らむ」の歌は、平安時代の和歌を特徴付ける。そうした中で、拾遺集の巻頭歌は、係助詞との関係から特殊な表現と位置づけることができる。前年度の結果から、本年度は「らむ」を文末にもつ歌を考察した。当初の計画では、本年度は、1文構成の歌について考察する予定であったが、予測していた以上に1文構成の歌と2文構成の歌とが密接に関係していることがわかった。そこで、両者を個別に考察するのではなく、関連づけて考察することとした。本年度、明らかにした主な点を、以下に述べる。1.既に指摘されているように、原因推量の「らむ」は古今集で急増し、古今集的表現を代表するものになる。 | KAKENHI-PROJECT-24520259 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24520259 |
助詞・助動詞・構文・文章構成を観点とした、三代集の表現研究 | しかし、後撰集以後次第に減少する。また、原因推量のうち、「なに」「いつ」などの疑問詞を伴う「らむ」は、後撰集で急増し、その後も漸増する。原因推量「らむ」は、既定の事態と確定していない(非定)事態という2つの事態を提示し、既定の事態をもとに非定の事態が推量される。とすれば、「らむ」が疑問詞を伴うということは、非定の事態の具体性を欠くものである。このことと、後撰集以後の原因推量の減少とを考え合わせると、古今集的表現の典型である、原因推量の「らむ」のピークは、古今集であったと仮定される。2.文末に「らむ」を有する歌で、2文構成のものは、「らむ」を第1文にもつ「ーらむ。ー。」、「らむ」を第2文にもつ「ー。ーらむ」の型がある。万葉集では、前者が圧倒的で、その大多数が4句切れであり、初句から第4句と結句とは倒置の関係になる。この場合、結句は補足的なものが目立つ。しかし、古今集以降、3句切れが現れ、第2文(第4句・結句)が第1文(初句から第3句)の推量のもととなる既定の事態という関係が類型化する。この類型は、古今集では主題と解説の倒置として現れる(ただし、古今集では、数は少なく、万葉集のような類型も目立ち、過渡的な様相を示す)が、後撰集と拾遺集では接続語の倒置が中心となる。後拾遺集で、古今集で見られた主題と解説の倒置が定着する。前年度は助動詞「らむ」を文末に含む、1文構成(句切れなし)と2文構成(句切れあり)の歌について考察した。それを受けて、2文構成の歌の表現構成をさらに考究した。その結果、「らむ」を句切れとする歌の典型である、倒置的な歌についての文体・表現、特に万葉集から王朝和歌、そして中世和歌へと移り変わりが明快な、題述関係の倒置について、以下を明らかにした。万葉集で中心となる4句切れの組み立ては、初句から第4句までを背景として、焦点となる第5句に詠嘆が込められるというものである。しかし、古今集や後拾遺集では、前の句と後の句とが、解説と主題の対応であるとともに、推量の対象と既定の事態の対応でもあるという関係に変貌する。ここでは、3句切れが中心になる。後拾遺集では、歌末が係助詞「は」の用例と、体言の用例とに分かれるが、新古今集では歌末に「は」がある用例は1首しか見当たらない。体言止めは、新古今集の特徴的な文体であるから、後拾遺集は新古今集の前段階と位置づけることができきる。また、古今集の「なきわたるかりの涙やおちつらむ/物思ふやどの萩のうへのつゆ」(秋上・221)は、新古今的な文体・表現を先取りしたもの、新古今的な段階に既に到達していたと位置づけられる。この歌が古今集的表現・文体からはずれたものであることは、読み人知らずで撰者時代のものではない可能性が高いこと、同様の文体・表現の「うばたまのわがくろかみやかはるらむ/鏡の影にふれるしらゆき」(物名・460)が、物名の歌で貫之集所収の歌と比較すると、明らかに物名のために作られた、その意味で人為的な歌であることからもわかる。そして、この歌が新古今集的な文体・表現であることは、定家が高く評価したことからも理解できる。次年度(28年度)は、前年度(26年度)のもう1つの結果である、文末「らむ」の1文構成の歌についてまとめたい。助動詞「らむ」で統括される文をもつ和歌においては、1文構成の歌(句切れなしの歌)では題述構文・接続構文、2文構成の歌(句切れありの歌)では倒置的構成などについて、古今集的表現とその展開を明らかにしつつある。しかし、「らむ」は、「らむ」が下接しない部分も推量の対象とするなど、助動詞の中では特殊な性格をもつことから、「らむ」が構成する構文も複雑である。そのため、その分析と考察に時間がかかった。その結果、その他の助動詞についての考察が進んでいない。 | KAKENHI-PROJECT-24520259 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24520259 |
リポカリン型プロスタグランジンD合成酵素の機能解析 | 本研究は、脳内の主要蛋白質であるL-PGDSの機能を原子レベルで解明することで、生体内のL-PGDSをターゲットとした睡眠調節薬やL-PGDSを利用した疎水性有害物質除去薬(解毒剤)、または、アミロイドβ(Aβ)凝集阻害によるアルツハイマー病治療薬などの開発を目指す。L-PGDSとPGH_2(基質)安定誘導体U-46619を結合させ、複合体が溶液中で安定な条件を模索し、NMR測定(約2週間)に十分耐えうる安定な溶液状態を決定後、NMRによりL-PGDS/U-46619複合体の溶液構造を解析した。結果として、L-PGDSは基質結合により構造変化を起こし、基質を厳密に固定することで酵素反応を可能にすることを明らかにした。得られた成果は、学会等で発表した。また、アミロイド繊維形成過程における脳内シャペロンL-PGDSの役割解明のためL-PGDSとAβペプチドの相互作用解析を行った。具体的には、^<15>Nラベル体L-PGDSにAβペプチドを滴下し、それに伴うNMRシグナルの変化を見ることでL-PGDSにおけるAβペプチドの相互作用領域を推定した。L-PGDSがAβペプチドに結合すること、さらに、バレル構造を有するL-PGDSのバレル内部にAβペプチドが結合することが示唆された。本研究は、脳内の主要蛋白質であるL-PGDSの機能を原子レベルで解明することで、生体内のL-PGDSをターゲットとした睡眠調節薬やL-PGDSを利用した疎水性有害物質除去薬(解毒剤)、または、アミロイドβ(Aβ)凝集阻害によるアルツハイマー病治療薬などの開発を目指す。L-PGDSとPGH_2(基質)安定誘導体U-46619を結合させ、複合体が溶液中で安定な条件を模索し、NMR測定(約2週間)に十分耐えうる安定な溶液状態を決定後、NMRによりL-PGDS/U-46619複合体の溶液構造を解析した。結果として、L-PGDSはリガンド結合により構造変化を起こし、そのリガンドの形状に適応する機能があることを明らかにした。さらに、基質と非常に近い構造を持つ誘導体U-46619の結合モデルから詳細な"L-PGDSの基質認識および酵素反応機構"を明らかにした。現在、その内容をまとめ、論文を執筆中である。さらに、L-PGDSの基質結合部位の構造情報を基にL-PGDSの酵素活性阻害剤の探索・評価を行った。得られた成果は、アメリカ生化学会発行のJ.Biol.Chen.誌に発表した。また、アミロイド繊維形成過程における脳内シャペロンL-PGDSの役割解明のためL-PGDSとAβペプチドの相互作用解析を行った。具体的には、^<15>Nラベル体L-PGDSにAβペプチドを滴下し、それに伴うNMRシグナルの変化を見ることでL-PGDSにおけるAβペプチドの相互作用領域を推定した。L-PGDSがAβペプチドに結合すること、さらに、バレル構造を有するL-PGDSのバレル内部にAβペプチドが結合することが示唆された。本研究は、脳内の主要蛋白質であるL-PGDSの機能を原子レベルで解明することで、生体内のL-PGDSをターゲットとした睡眠調節薬やL-PGDSを利用した疎水性有害物質除去薬(解毒剤)、または、アミロイドβ(Aβ)凝集阻害によるアルツハイマー病治療薬などの開発を目指す。L-PGDSとPGH_2(基質)安定誘導体U-46619を結合させ、複合体が溶液中で安定な条件を模索し、NMR測定(約2週間)に十分耐えうる安定な溶液状態を決定後、NMRによりL-PGDS/U-46619複合体の溶液構造を解析した。結果として、L-PGDSは基質結合により構造変化を起こし、基質を厳密に固定することで酵素反応を可能にすることを明らかにした。得られた成果は、学会等で発表した。また、アミロイド繊維形成過程における脳内シャペロンL-PGDSの役割解明のためL-PGDSとAβペプチドの相互作用解析を行った。具体的には、^<15>Nラベル体L-PGDSにAβペプチドを滴下し、それに伴うNMRシグナルの変化を見ることでL-PGDSにおけるAβペプチドの相互作用領域を推定した。L-PGDSがAβペプチドに結合すること、さらに、バレル構造を有するL-PGDSのバレル内部にAβペプチドが結合することが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-09J00652 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09J00652 |
王莽の「新」帝国を創建する標準化改革についての出土文物・文字による研究 | H30年度は本研究の本幹となる、「新」帝国北方・東南・西南・中原の出土文物・文字と文献史料の検証から順調に行うことができた。1)漢と新莽時代に出土した画像石・墓葬・貨幣・印鑑・銅鏡・陶器・石碑・彫刻についての調査を行った。H29年度の研究と比べて、より詳細な器物調査と検証の段階に入っていることはH30年度の研究の特徴だといえる。特に王莽時代の度量衡器や漆器に関する資料に基づいての論文ができた。2)新疆ウィグル自治区は2千年前の漢・新帝国の西域督護府地域であった。そこの出土文物と遺跡についての調査によって、漢と新莽時代の出土した墓葬や同時代の貨幣・印鑑・銅鏡、また陶器・石碑・彫刻、都城遺跡により該当地域における2千年前の実態をリアルに知ることになった。従って、今、「新」帝国の外交と冊封政策についての論考をまとめているところである。3)貴州省は漢代にも多くの少数民族が存在した地域であるが、前漢・新莽・後漢期の漢化した文物と遺跡、特に今回重点的に調査した可楽遺跡の城と銅器などの発見は、王莽の標準化改革についての研究にとって大変有意義な史料となった。4)河南省における漢・新莽帝国の史料調査、特に発掘最中に当たっている漢魏洛陽城遺跡で予測外に未公開の発掘現場を踏査することができ、本研究において多大な史料を得た。直接的に王莽の都改造についての論文の根拠となった。5)H30年度の研究は主に王莽時代の都・度量衡・漆器をめぐって進んだが、成果は1「對戰國秦漢都城的文獻探討」(韓国)仁荷大学校伽耶文化研究所編『伽耶王城を探求』周留城出版社2018;2「秦・西漢容量「石」諸問題研究」『中国史研究』2018年第4期;3「王莽の長安都改造について」河合文化教育研究所『研究論集第14集』2019年;4『亙古漆香ー欣賞傳世漆藝品味傳統文化』2018年である。H30年度の研究は研究計画に従い、順調に進んでいる。事前の資料準備や個所の下調べにより、現地の研究者との連絡がスムーズに行えたこと、大学関係者から様々な協力を得られていることが、研究が順調に進展している理由である。H30年度と同様に、H31年度も計画通り推進する予定である。具体的には以下の通りとする。1.過去2年における中国の西部と黄河地域での調査とは違い、H31年度は、長江流域各省や北方の少数民族自治区における王莽時代の文物調査を行う。とりわけ前漢末後漢初期の文物に着目し、貨幣・銅鏡・印鑑などの調査を重点とする。なお、H31年度までに実地踏査を完了できていない場所は、最終年度に可能な限り調査を実施する。2.研究全体のまとめについて、本研究期間に得られた研究成果に基づいて、王莽の改革が、秦帝国時代の不合理な制度を標準化概念の導入によっていかに統一しようとしたかという視点から、本研究の主題となる「新」帝国における「標準化」政策に関する研究を行う。1)内地と辺地の「標準化」政策関連性や中央政策と地方政策の関係について検証する。2)王莽の標準化政策について、後の中世や近世中国の制度との比較により、「新」帝国における標準化が与えた影響について明らかにする。初年度であるH29年度は本研究の基礎となる、「新」帝国内地出土文物・文字と文献史料との検証から順調に行った。1)王莽「新」帝国内地、すなわち王莽の故郷の河北省大名県を含む地域における出土文物・文字の調査と研究からスタートした。特に王莽時代に営造した副都洛陽の都市構造は、なぜ後に歴代王朝の首都空間構造の原形となったかということを実証し、その王莽の標準化改制との関わりを重点的に調査した。これにより、「新」帝国時代における典型的な「標準化」改革のモデルを確認した。すなわち、王莽は「好是古非今」を出発点として、漢王朝の帝国制度について大改造を初めてから、改革によって標準化的な帝国システムを立ち上げて、失敗もはさんだが、のちの劉秀政権が「因而不改」によって継続したモデルの存在を明らかにした。2)文献と考古両方の史料を整理したうえで王莽の改革によって創った標準化制度は、帝国の「礼楽」(天子の「六宗」・玉牒の封禪・明堂・九廟の礼)、「文学」(古文経・讖学)、「歴数」(符瑞・赤帝の説)、「職官」(三公の号・「稽首」の礼)、「食貨」(租税・限田・斛制)、「方域」(「土中」の制、「両都」の制)、「蕃夷」(賜印の制・辺郡の制)などの新しい制度モデルであるとの新しい説を提出した。3)H29年度の調査・研究の成果は、1「漢元帝以降前漢の「是古非今を好む」 | KAKENHI-PROJECT-17K03133 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K03133 |
王莽の「新」帝国を創建する標準化改革についての出土文物・文字による研究 | 改革についてー新莽復古改革の由来も含めてー」『異文化研究』2018年3月第12号pp26-46;2「光武の新莽に「因りて改めず」についての研究ー「漢承秦制」と同じく「後漢承新莽制」も存在する説の提出ー」『山口大学文学会志』第68巻2018年3月pp1-30である。初年度の研究は研究計画に従い、順調に進んでいる。事前の資料準備や個所の下調べにより、現地の研究者との連絡がスムーズに行えたこと、大学関係者から様々な協力を得られていることが、研究が順調に進展している理由である。H30年度は本研究の本幹となる、「新」帝国北方・東南・西南・中原の出土文物・文字と文献史料の検証から順調に行うことができた。1)漢と新莽時代に出土した画像石・墓葬・貨幣・印鑑・銅鏡・陶器・石碑・彫刻についての調査を行った。H29年度の研究と比べて、より詳細な器物調査と検証の段階に入っていることはH30年度の研究の特徴だといえる。特に王莽時代の度量衡器や漆器に関する資料に基づいての論文ができた。2)新疆ウィグル自治区は2千年前の漢・新帝国の西域督護府地域であった。そこの出土文物と遺跡についての調査によって、漢と新莽時代の出土した墓葬や同時代の貨幣・印鑑・銅鏡、また陶器・石碑・彫刻、都城遺跡により該当地域における2千年前の実態をリアルに知ることになった。従って、今、「新」帝国の外交と冊封政策についての論考をまとめているところである。3)貴州省は漢代にも多くの少数民族が存在した地域であるが、前漢・新莽・後漢期の漢化した文物と遺跡、特に今回重点的に調査した可楽遺跡の城と銅器などの発見は、王莽の標準化改革についての研究にとって大変有意義な史料となった。4)河南省における漢・新莽帝国の史料調査、特に発掘最中に当たっている漢魏洛陽城遺跡で予測外に未公開の発掘現場を踏査することができ、本研究において多大な史料を得た。直接的に王莽の都改造についての論文の根拠となった。5)H30年度の研究は主に王莽時代の都・度量衡・漆器をめぐって進んだが、成果は1「對戰國秦漢都城的文獻探討」(韓国)仁荷大学校伽耶文化研究所編『伽耶王城を探求』周留城出版社2018;2「秦・西漢容量「石」諸問題研究」『中国史研究』2018年第4期;3「王莽の長安都改造について」河合文化教育研究所『研究論集第14集』2019年;4『亙古漆香ー欣賞傳世漆藝品味傳統文化』2018年である。H30年度の研究は研究計画に従い、順調に進んでいる。事前の資料準備や個所の下調べにより、現地の研究者との連絡がスムーズに行えたこと、大学関係者から様々な協力を得られていることが、研究が順調に進展している理由である。H29年度と同様に、H30年度も計画の通り推進する予定である。具体的には以下の通りとする。1.新帝国の西域都護府地域、すなわち前漢以来新たに占領したエリアに対して、「新」帝国が標準化を実施する特徴を見出した方針に従って、実地踏査することにより王莽標準化政策の実像を具体的に解明する。2.漢長城沿線の遺跡調査によって、匈奴・北胡に関する地域の遺跡・文物を調べ、その「新」の標準化政策からの影響はあったかとの課題について集中的に取り組む。3.山東半島と渤海湾そして韓国等を一地域として調査することによって、帝国の標準化制度の実施とその地域特徴を解明する。つまり、新帝国における辺境の国防、外国・外民族との外交政策、また領土経営に関する標準化した新しい政策などを明らかにすることを目的とする。H30年度と同様に、H31年度も計画通り推進する予定である。具体的には以下の通りとする。1.過去2年における中国の西部と黄河地域での調査とは違い、H31年度は、長江流域各省や北方の少数民族自治区における王莽時代の文物調査を行う。とりわけ前漢末後漢初期の文物に着目し、貨幣・銅鏡・印鑑などの調査を重点とする。 | KAKENHI-PROJECT-17K03133 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K03133 |
LED駆動回路の損失を激減させる複合型電力変換器の研究 | 本年度は高効率なLED駆動回路を開発する準備段階として,回路構成の検討とシミュレーションおよび部分的な基礎実験を実施した。まず波形観測装置として,12bit/200MHzの高分解能かつ広帯域なオシロスコープを導入し,微小電圧や微小電流波形を正確に観測できる環境を準備した。次に伝導ノイズを計測するスペクトラムアナライザを導入し,提案回路がどの程度ノイズを低減できるのか定量的な検証ができるよう準備した。続いて回路構成を検討した。具体的には定電流制御回路部について,降圧・昇圧・昇降圧の各種構成を適用し,LED駆動回路としての動作範囲の制約を明らかにした。効率向上のためには変換する電力はできるだけ小さくすべきなので,昇圧または昇降圧の回路構成が適当と判明した。続いて,昇圧チョッパを用いた基礎実験として,入力電流を全波整流波形に整形する制御系をアナログ回路で作成し検証した。本課題は電流制御回路の低損失化,電流バイパス回路の切替制御,最適設計法の確立という3段階に分かれている。本年度は第1段階を完了したので,順調に進展している。次年度は電流バイパス回路の切り替え制御を実現する。先行研究では全アナログで制御していたためノイズの影響が軽微であったが,今回の課題では小容量ながらスイッチング電力変換回路が加わるため,ゲートバイアス回路に重畳されるノイズの影響に配慮して開発を進める。本年度は高効率なLED駆動回路を開発する準備段階として,回路構成の検討とシミュレーションおよび部分的な基礎実験を実施した。まず波形観測装置として,12bit/200MHzの高分解能かつ広帯域なオシロスコープを導入し,微小電圧や微小電流波形を正確に観測できる環境を準備した。次に伝導ノイズを計測するスペクトラムアナライザを導入し,提案回路がどの程度ノイズを低減できるのか定量的な検証ができるよう準備した。続いて回路構成を検討した。具体的には定電流制御回路部について,降圧・昇圧・昇降圧の各種構成を適用し,LED駆動回路としての動作範囲の制約を明らかにした。効率向上のためには変換する電力はできるだけ小さくすべきなので,昇圧または昇降圧の回路構成が適当と判明した。続いて,昇圧チョッパを用いた基礎実験として,入力電流を全波整流波形に整形する制御系をアナログ回路で作成し検証した。本課題は電流制御回路の低損失化,電流バイパス回路の切替制御,最適設計法の確立という3段階に分かれている。本年度は第1段階を完了したので,順調に進展している。次年度は電流バイパス回路の切り替え制御を実現する。先行研究では全アナログで制御していたためノイズの影響が軽微であったが,今回の課題では小容量ながらスイッチング電力変換回路が加わるため,ゲートバイアス回路に重畳されるノイズの影響に配慮して開発を進める。予備部品の購入を次年度に先送りしたため,余剰が発生した。 | KAKENHI-PROJECT-18K13738 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K13738 |
リバーストランスレーショナルアプローチによる動物の脳波による痛み評価法の確立 | 本研究は動物の痛み評価の標準化を目指すもので、脳波を用いて動物に刺激を与えることな評価可能なアルゴリズムを開発する。従来主流である動物の痛みの評価法は刺激に対する動物の行動の変化をとらえるが、患者の苦しみと同様のものを全部は把握しきれていない可能性が考えられた。本研究は動物が自然行動の中で脳波の変化をとらえることで痛みの状態を把握し、鎮痛薬の薬効を定量的に評価できる方法を開発するものである。複数の異なる痛みを生じる動物モデルの経時的な変化を把握するとともに代表的な鎮痛薬での薬効評価に耐えうるか検証する。アルゴリズム開発により、トランスレーショナルな脳波による標準的痛み評価法を確立させる。本研究は動物の痛み評価の標準化を目指すもので、脳波を用いて動物に刺激を与えることな評価可能なアルゴリズムを開発する。従来主流である動物の痛みの評価法は刺激に対する動物の行動の変化をとらえるが、患者の苦しみと同様のものを全部は把握しきれていない可能性が考えられた。本研究は動物が自然行動の中で脳波の変化をとらえることで痛みの状態を把握し、鎮痛薬の薬効を定量的に評価できる方法を開発するものである。複数の異なる痛みを生じる動物モデルの経時的な変化を把握するとともに代表的な鎮痛薬での薬効評価に耐えうるか検証する。アルゴリズム開発により、トランスレーショナルな脳波による標準的痛み評価法を確立させる。 | KAKENHI-PROJECT-19H03751 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H03751 |
命令キャッシュのプログラム制御に関する研究 | スーパスカラやVLIWなどのプロセッサに対する命令セットアーキテクチャにおいて、命令フェッチのための情報をプログラム中に挿入し、これにより命令キャッシュの制御および命令デコーダへのプリフェッチ制御を行い、プログラム内蔵方式におけるボトルネックに対する負荷の軽減をはかろうとするのが本研究である。命令フェッチを制御する命令は、「次にフェッチすべき命令群」を指定する。この種の命令のどれもが基本ブロックの先頭に置かれる。プログラムはコンパイル時に基本ブロック単位で解析されるので、その制御の流れを変更する命令もブロック単位で指定し、かつ、基本ブロックの先頭でその情報をプロセッサに与えるべきという考えを実現したものになっている.本年度の研究では、この方式を採用するアーキテクチャの1つ定義し評価を行った。次のブロックの情報を従来よりも早期に得ることができるプロセッサが、情報を得てから分岐するまでの間に命令キャッシュへのプリフェッチをどの程度行うことができるかについて調べた。このための評価は命令パイプライン・レベルの動作をシミュレートするソフトウエアを用いた。特に命令キャッシュへのプリフェッチは、他のプロセッサの動作と並行して行うことでその効果が現われる。そこで、評価の方法としてプリフェッチにより避けられない命令キャッシュのミスを早期に起こし,どれだけ他の処理と並行してミスの処理が行えるか、つまり、ミス・ペナルティをどれだけ減らすことができるかを調べた.プログラム内蔵方式に基づいた現代のプロセッサはフォン・ノイマン・ボトルネックと呼ばれる問題を持っており、これまでキャッシュ操作命令や投機的ロード命令の実行などによるデータヘの対策が多くとられて来た。しかし、命令に関しては分岐命令とその実行履歴に基づいた処理対策が主であり、効率的な転送に関して改善の余地が残されている。そこで、命令フェッチのための情報をプログラム中に挿入し、これにより命令キャッシュの制御および命令デコーダへのプリフェッチ制御を行い、ボトルネックに対する負荷の軽減をはかろうとするのが本研究である。本年度の研究では、命令フェッチ情報を指定できる命令セットアーキテクチャに基づいたプロセッサにおけるプログラムの挙動と命令キャッシュとの関係調査をおこなった。既存の命令パイプライン・レベルのプロセッサ・シミュレータに変更を加えて、数百キロバイト程度のプログラム実行の動作情報および命令キャッシュに関係する数値情報を得られるようにした。さらに、解析の対象プログラムとして、GNU Cコンパイラの本体(cc1)を選択し、RISC型の通常のプロセッサ用に出力されたcc1のアセンブリ・プログラムから、命令フェッチ制御の可能なアセンブリ・プログラムヘの変換プログラムおよび実行可能な形式へのリンクを行うプログラムを作成して、シミュレーションを行った。このシミュレーションにより、命令フェッチ情報を付加したプログラムの平均基本ブロックサイズ、分岐と命令フェッチおよびキャッシュへのプリフェッチのタイミングの解析を行った。またこれと並行して、命令フェッチ情報を付加するのにより適したあたらしい命令セットアーキテクチャに関する研究を行った。スーパスカラやVLIWなどのプロセッサに対する命令セットアーキテクチャにおいて、命令フェッチのための情報をプログラム中に挿入し、これにより命令キャッシュの制御および命令デコーダへのプリフェッチ制御を行い、プログラム内蔵方式におけるボトルネックに対する負荷の軽減をはかろうとするのが本研究である。命令フェッチを制御する命令は、「次にフェッチすべき命令群」を指定する。この種の命令のどれもが基本ブロックの先頭に置かれる。プログラムはコンパイル時に基本ブロック単位で解析されるので、その制御の流れを変更する命令もブロック単位で指定し、かつ、基本ブロックの先頭でその情報をプロセッサに与えるべきという考えを実現したものになっている.本年度の研究では、この方式を採用するアーキテクチャの1つ定義し評価を行った。次のブロックの情報を従来よりも早期に得ることができるプロセッサが、情報を得てから分岐するまでの間に命令キャッシュへのプリフェッチをどの程度行うことができるかについて調べた。このための評価は命令パイプライン・レベルの動作をシミュレートするソフトウエアを用いた。特に命令キャッシュへのプリフェッチは、他のプロセッサの動作と並行して行うことでその効果が現われる。そこで、評価の方法としてプリフェッチにより避けられない命令キャッシュのミスを早期に起こし,どれだけ他の処理と並行してミスの処理が行えるか、つまり、ミス・ペナルティをどれだけ減らすことができるかを調べた. | KAKENHI-PROJECT-11780199 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11780199 |
細胞弾性で伝わる繊毛メタクロナールウェーブの分子メカニズムと普遍性 | “繊毛"はゾウリムシの体表から高等動物の気管上皮、卵管、脳室上衣細胞等にまで存在する普遍的な器官である。1本1本が独立して運動するにも関わらず、隣接した繊毛は一定の位相差を保ちつつ屈曲を繰返し、効率的に水流を発生する。この細胞表面を伝わる屈曲の波をメタクロナールウェーブと呼ぶ。本研究の大きな目標は、単細胞原生生物ゾウリムシを用いて細胞表層の弾性がどうやってウェーブを伝達させるのか、具体的なメカニズムを明らかにすることであった。ゾウリムシは細胞全身が多数の繊毛に覆われている。ちょうど魚のアジを開きにするように、細胞に切れ目を入れて細胞の開き(細胞シート)を作成することができる。この細胞シートはATP存在下では繊毛打を示す。このため細胞シートを用いれば、メタクロナールウェーブの2次元平面で伝播する様子を観察することが可能となる。我々は、ゾウリムシの繊毛シートでメタクロナールウェーブを詳細に観察したところ、すべての細胞シートで細胞の頭部と口部を発信源としてウェーブが同じ方向に伝播していることに気がついた。そこでメタクロナールウェーブを行っている細胞シートの頭部と口部をそれぞれ切断すると、頭部を切断するとウェーブの伝播が弱くなり、続けて口部を切断するとウェーブがほとんど伝播しなくなった。これらの事実はメタクロナールウェーブが頭部と口部を2つの発信源として伝播することを強く示唆している。この事実は研究計画になかった期待以上の全く新しい発見である。この発見に関して現時点ではまだ論文としてまとめるに至っていないが、今後の展開が大きく期待できる。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。“繊毛"はゾウリムシの体表から高等動物の気管上皮、卵管、脳室上衣細胞等にまで存在する普遍的な器官である。1本1本が独立して運動するにも関わらず、隣接した繊毛は一定の位相差を保ちつつ屈曲を繰返し、効率的に水流を発生する。この細胞表面を伝わる屈曲の波をメタクロナールウェーブと呼ぶ。H25-26新学術運動マシナリー領域公募研究において、代表者らはゾウリムシを用いた実験でメタクロナールウェーブが外液の水流だけではなく、細胞表層の弾性を媒体としても伝達できることを明らかにした。本研究では、(A)細胞表層の弾性を媒体とするメタクロナールウェーブの伝達機構がゾウリムシ以外の高等動物細胞でも機能することを示し、この伝達機構の普遍性を実証する。さらに(B)細胞表層の弾性がどうやってウェーブを伝達させるのか、具体的な分子実体とメカニズムを明らかにする。平成27年度上記(B)に関して、ゾウリムシの細胞をシート上に開裂しそのシートを伸縮させる実験系を開発した。さらに、まだ予備実験段階ながら、伸縮周波数に応じてメタクロナールウェーブの周波数が変化する結果を得た。1次元でしか観察できなかったゾウリムシの細胞伸縮実験系を2次元に拡張させることに成功した。今後平成28年度に、この実験系を用いて大きな飛躍が期待できる。さらに、多細胞での実験を開始することで、普遍性の証明を目指したい。“繊毛"はゾウリムシの体表から高等動物の気管上皮、卵管、脳室上衣細胞等にまで存在する普遍的な器官である。1本1本が独立して運動するにも関わらず、隣接した繊毛は一定の位相差を保ちつつ屈曲を繰返し、効率的に水流を発生する。この細胞表面を伝わる屈曲の波をメタクロナールウェーブと呼ぶ。本研究の大きな目標は、単細胞原生生物ゾウリムシを用いて細胞表層の弾性がどうやってウェーブを伝達させるのか、具体的なメカニズムを明らかにすることであった。ゾウリムシは細胞全身が多数の繊毛に覆われている。ちょうど魚のアジを開きにするように、細胞に切れ目を入れて細胞の開き(細胞シート)を作成することができる。この細胞シートはATP存在下では繊毛打を示す。このため細胞シートを用いれば、メタクロナールウェーブの2次元平面で伝播する様子を観察することが可能となる。我々は、ゾウリムシの繊毛シートでメタクロナールウェーブを詳細に観察したところ、すべての細胞シートで細胞の頭部と口部を発信源としてウェーブが同じ方向に伝播していることに気がついた。そこでメタクロナールウェーブを行っている細胞シートの頭部と口部をそれぞれ切断すると、頭部を切断するとウェーブの伝播が弱くなり、続けて口部を切断するとウェーブがほとんど伝播しなくなった。これらの事実はメタクロナールウェーブが頭部と口部を2つの発信源として伝播することを強く示唆している。この事実は研究計画になかった期待以上の全く新しい発見である。この発見に関して現時点ではまだ論文としてまとめるに至っていないが、今後の展開が大きく期待できる。ゾウリムシ細胞の2次元平面でのメタクロナールウェーブの観察とその2次元平面への伸縮負荷でウェーブ周波数がどのように変わるか定量的な実験を行う。さらに、ウェーブ伝播媒体として、細胞骨格分子セントリンがどのように関わっているかを明らかにするために、セントリン欠損ゾウリムシ細胞を用いて同様の定量的な実験を行う。さらに、ゼノパス胚の細胞群を用いてそこに伝播するメタクロナールウェーブがゾウリムシ同様の特性を示すことを明らかにし、普遍性の証明を行う。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PUBLICLY-15H01323 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-15H01323 |
妊婦・やせ妊婦の低出生体重児出産予防に向けた母体体重管理モデルの構築 | 妊娠期にある女性の非妊時の体格とその後の体重増加量が、新生児出生時体重に及ぼす影響を解析した。褥婦2764名を対象にBMI別に分析を行い、痩せ群では、体重増加量が4.1Kg未満であった場合に、低出生体重児を出産するリスクが17.2倍に,普通群では29.5倍になることが明らかになった。痩せ妊婦では9.1から13.6Kgが、普通体型妊婦では8.0から14.0Kgが、肥満妊婦では4.0から12.0Kgがそれぞれの推奨増加体重であることが示された。妊娠期にある女性の非妊時の体格とその後の体重増加量が、新生児出生時体重に及ぼす影響を解析した。褥婦2764名を対象にBMI別に分析を行い、痩せ群では、体重増加量が4.1Kg未満であった場合に、低出生体重児を出産するリスクが17.2倍に,普通群では29.5倍になることが明らかになった。痩せ妊婦では9.1から13.6Kgが、普通体型妊婦では8.0から14.0Kgが、肥満妊婦では4.0から12.0Kgがそれぞれの推奨増加体重であることが示された。本研究の目的は、母体の非妊時における体格および妊娠期間における体重増加量、生活習慣と、出生した新生児の出生児体重との関連について検討することである。本研究で得られる知見によって、日本人の体格に応じた最適な体重増加量を検出することができ、個人で異なる体格を持つ妊婦が、その体格に応じてどのような体重増加が好ましいのかについて、根拠を示すことができると考えられる。平成22年度は、関連研究のレビュー、および質問紙等の作成を予定した。また全国を7地域(北海道、東北、関東、中部、関西、中国・四国・九州地方)に分割し、参加可能であると回答した施設の中から確率比例抽出法(地点の人口に比例)に沿うように参加施設を決定する予定であった。本年度(平成22年度)は、研究関連レビューを行ったのち、研究説明書および質問票を作成して、所属の倫理委員会の許可を得た。また本研究参加協力施設を得るために、ワムネットから産科・産婦人科を標榜する病院・診療所の全国261施設に依頼文書を送付し、参加協力の申し出のあった28施設を対象施設とした。対象施設における合計年間分娩件数は18000件を超えており、各地域における確立比率抽出法で充分に妊婦からの回収が可能と判断されたため、上記の28施設で本研究を実施することとした。平成23年1月より、上記参加協力施設に対し、研究説明書、自記式質問表をそれぞれの施設における分娩件数に応じて送付し、配布を依頼した。現在、各施設で調査中である。【研究目的】本研究では、妊娠期にある女性の非妊時の体格とその後の妊娠経過における体重増加量が、新生児の出生時体重にどのような影響を及ぼすかを解析することを目的とした。日本人妊婦の妊娠期間の体重増加量を算出することから、近年漸増している低出生体重児の増加を食い止めることができ、胎児期からの生活習慣病対策となることから、医療費抑制に効果があると考えられる。最終的に、妊娠期にある女性に対する生活習慣を含めた体重管理モデルの構築を提案する。【研究方法】全国の出生数に合わせた確率比例抽出法で産科施設を無作為に抽出し、了承の得られた28施設において、分娩を終えた入院中の褥婦4765名を対象に、自記式質問紙を配布した。調査項目は褥婦と新生児の基本的属性、および妊娠期間中の体重増加量とした。分析は対象を18.5>BMI、25>BMI≧18.5、BMI≧25の3群に分けたうえで、重回帰分析およびロジスティック回帰分析を行った。本研究は慈恵大学倫理委員会にて承認を得た。【結果】回収した2923通(回収率61.3%)のうち有効であった2764通(有効回答率94.6%)を分析対象とした。痩せ妊婦では、体重増加量が4.1Kg未満であった場合に、低出生体重児を出産するリスクが17.2倍に,普通体型妊婦では、29.5倍になることが明らかになったが、肥満妊婦では体重増加量はリスクに影響を与えなかった。また、痩せ妊婦では9.1から13.6キログラムが、普通体型妊婦では8.0から14.0キログラムが、肥満妊婦では4.0から12.0キログラムがそれぞれの推奨増加体重であることが示された。推奨増加体重量は、いずれも厚生労働省の推奨値とほぼ同じもしくはやや高めだった。【考察】痩せ妊婦は、妊娠期間中の母体体重増加量が胎児の発育に重要であることを、妊婦健診や保健指導などで周知していくことが重要であると考えられた。23年度が最終年度であるため、記入しない。23年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22792243 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22792243 |
高速無線LAN装置に対する通信環境の改善に関する研究 | 本研究では,高速無線LAN装置が放射する電磁波の特徴を明らかにし,建材等が通信環境に与える影響や,同じ周波数帯を使用する気象レーダー等に無線LAN通信が与える影響,逆に,これらの機器から無線LAN通信が被る影響を把握することで,それらの問題に対する対策法を確立することを目的としている.本年度は,昨年度に検討したアンテナ校正法の高精度化、コンピュータから放射される電磁界の測定と無線LAN装置に与える影響についての検討、屋内伝搬に関する検討を目的としていた。そこで、昨年度に引き続き、高速無線LANで使用される周波数帯である5.15GHz5.25GHzにおける電磁界を,さらに高精度に計測する技術・手法の検討を行い、金属大地面の家教について検討した。また、近年,高速化が著しいコンピュータから放射される電磁界の計測をおこない,高速無線LANで使用する周波数帯に放射される電磁界の特徴について検討した.その結果、コンピュータから放射される電磁界は、一定の時間周期を持って周波数変動しており広い周波数範囲に渡って電磁界を放射していることを明らかにした。さらに、放射はコンピュータに設けられた放熱孔や各種装置を接続するためのコネクタやフロッピーディスクドライブの穴から、特に強く放射されることが分かった。この結果を踏まえ、コンピュータから放射される電磁界の雑音モデルを作り、高速無線LANシステムで使用されている変調方式であるOFDM方式に与える影響について検討した。その結果、周波数変動の速度や変化帯域幅に応じて妨害の程度が変化することを明らかにした。本研究では,高速無線LAN装置が放射する電磁波の特徴を明らかにし,建材等が通信環境に与える影響や,同じ周波数帯を使用する気象レーダー等に無線LAN通信が与える影響,逆に,これらの機器から無線LAN通信が被る影響を把握することで,それらの問題に対する対策法を確立することを目的としている.本年度は,高速無線LAN装置が使用する周波数帯である5.15GHz5.25GHzの周波数帯における通信環境・電磁環境の現状調査を行うこと,並びに,高速無線LAN装置で使用する周波数帯における電磁界を,高精度に計測する技術・手法を確立することを計画していた.そこで,高速無線LAN装置が使用する周波数帯の通信環境・電磁環境を調査するにあたり,測定に使用するアンテナの校正を行った.アンテナの特性は,アンテナに到来する一様電界とアンテナに接続された測定器に生じる電圧との比で定義される「アンテナ係数」で表されるが,要求備品として購入したダブル・リッジド・ガイドアンテナについて,このアンテナ係数を決定する方法について検討し,実際にアンテナ係数を求めた.これによってダブル・リッジド・ガイドアンテナに入射する電界の強度を正確に測定することが可能となった.具体的には,種々の電気・電子機器から放射される電磁妨害波を調べることや,壁面における反射特性を評価すること,屋外における高速無線LAN装置が使用する周波数帯の利用状況を把握すること等が可能となる.今後は,実際に,通信環境・電磁環境の調査を行い,電磁妨害波が生じる電気・電子機器の調査や,通信に影響を与える反射物の調査等を行っていく予定である.本研究では,高速無線LAN装置が放射する電磁波の特徴を明らかにし,建材等が通信環境に与える影響や,同じ周波数帯を使用する気象レーダー等に無線LAN通信が与える影響,逆に,これらの機器から無線LAN通信が被る影響を把握することで,それらの問題に対する対策法を確立することを目的としている.本年度は,高速無線LANで使用される周波数帯である5.15GHz5.25GHzにおける電磁場界を,高精度に計測する技術・手法の検討を行うこと,ならびに,高速無線LAN装置が使用する周波数帯の通信環境・電磁環境の現状調査をおこなうことを目的としていた.そこで,高速無線LAN装置が使用する周波数帯の通信環境・電磁環境を調査するにあたり,昨年に引き続き,測定に使用するアンテナの校正を行った.具体的には,ダブル・リッジド・ガイドアンテナ,対数周期ダイポールアレイアンテナ(LPDA),および,導波管プローブについでであり,いずれのアンテナについても精度良くアンテナ係数が得られることを明らかにした.また,基礎的検討として,従来からの無線LANで使用されている周波数である2.4GHz帯において,電子レンジから放射される妨害電磁波について検討を行い,屋内においては,壁面反射によるマルチパス伝搬により,妨害波の信号レベルが著しく変化することを明らかにした.さらに,近年,高速化が著しいコンピュータから放射される電磁界の計測をおこない,高速無線LANで使用する周波数帯に放射される電磁界の特徴について検討した.今後は,建材等の誘電率の簡易測定法について検討する予定である.本研究では,高速無線LAN装置が放射する電磁波の特徴を明らかにし,建材等が通信環境に与える影響や,同じ周波数帯を使用する気象レーダー等に無線LAN通信が与える影響,逆に,これらの機器から無線LAN通信が被る影響を把握することで,それらの問題に対する対策法を確立することを目的としている.本年度は,昨年度に検討したアンテナ校正法の高精度化、コンピュータから放射される電磁界の測定と無線LAN装置に与える影響についての検討、屋内伝搬に関する検討を目的としていた。そこで、昨年度に引き続き、高速無線LANで使用される周波数帯である5.15GHz5.25GHzにおける電磁界を,さらに高精度に計測する技術・手法の検討を行い、金属大地面の家教について検討した。また、近年,高速化が著しいコンピュータから放射される電磁界の計測をおこない,高速無線LANで使用する周波数帯に放射される電磁界の特徴について検討した.その結果、コンピュータから放射される電磁界は、一定の時間周期を持って周波数変動しており広い周波数範囲に渡って電磁界を放射していることを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-14750201 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14750201 |
高速無線LAN装置に対する通信環境の改善に関する研究 | さらに、放射はコンピュータに設けられた放熱孔や各種装置を接続するためのコネクタやフロッピーディスクドライブの穴から、特に強く放射されることが分かった。この結果を踏まえ、コンピュータから放射される電磁界の雑音モデルを作り、高速無線LANシステムで使用されている変調方式であるOFDM方式に与える影響について検討した。その結果、周波数変動の速度や変化帯域幅に応じて妨害の程度が変化することを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-14750201 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14750201 |
固体の振動現象を支配する群構造の特定 | 固体の振動現象を司る群構造の同定を目的として,本研究では二次元分子の示す非線形振動の対称性解析を行った.数値解析の結果,非線形効果によって基準振動モードの整数倍の角振動数を持つ高調和振動の励起が確認され,その振動対称性は角振動数の係数のパリティに依存し,二つの異なる既約表現が交互に出現することを明らかとした.また,この対称性の選択則は,カラー対称性を備えた磁性点群による予測結果と完全に一致している.このことから,磁性点群を用いた固体の振動対称性の分類が,従来の弾性体に留まらず,そのミクロ極限である分子振動までマルチスケールに適用可能と考えられる.これまで,固体の振動現象は点群と呼ばれる群構造を用いて記述されてきた.これは,固体の示す巨視的な物性はその点群に従うことを要請したノイマンの原理に従うものである.実際,この原理はこれまで微視的な分子振動から巨視的な弾性体の振動に至るまで,振動体の持つ点群対称性に応じて振動モードを分類することを可能としているが,当研究グループによる近年の非線形弾性体に対する共鳴振動解析によって,点群を用いた振動解析は非線形効果によって励起される高調和振動の対称性解析に適用することはできず,これには点群に時間反転操作を加えて一般化した磁性点群の導入が不可欠であることが指摘されている.そこで本研究では,磁性点群を用いた振動対称性が非線形弾性体の共鳴振動解析に限らず,より一般の振動現象についても適用可能であることを検証することを目的としている.今年度は,当初の研究計画に従って,二次元非線形分子に対する振動解析を行った.具体的には,非調和相互作用によって振動する8個の質点からなる二次元分子モデルを考えて,その初期値に線形化したモデルの共鳴振動変位(系の固有ベクトル)を与え,その後の時間発展過程を数値計算によって解析した.その結果,解析を行った全ての振動で非線形効果による高調和振動の励起が確認された.そこで,得られた非線形振動へバンドパスフィルタを施し,基準振動の整数倍の振動数を持った高調和振動を個別に抽出して可視化を行った.その結果,高調和振動の対称性は磁性点群によって予測されたものと完全に一致することが明らかとなった.この結果は,当初の予測通り,振動現象が本質的に磁性点群により支配されることを示す格好の証左である.これは当初の予想通りの研究成果であり,次年度はこの結果を更に深く理解することを目指し,理論的な立場からの研究を進める予定である.今年度は,当初計画していた研究をほぼ予定通り達成することができた.計画の立案段階では,予定外の振動対称性が現れた場合には大きな遅延が生じることを覚悟していたが,幸いなことにそうした心配は杞憂となった.これまで,固体の振動現象は点群と呼ばれる群構造を用いて記述されてきた.これは,固体の示す巨視的な物性はその点群に従うことを要請したノイマンの原理に従うものである.実際,この原理はこれまで微視的な分子振動から巨視的な弾性体の振動に至るまで,振動体の持つ点群対称性に応じて振動モードを分類することを可能としているが,当研究グループによる近年の非線形弾性体に対する共鳴振動解析によって,点群を用いた振動解析は非線形効果によって励起される高調和振動の対称性解析に適用することはできず,これには点群に時間反転操作を加えて一般化した磁性点群の導入が不可欠であることが指摘されている.そこで本研究では,磁性点群を用いた振動対称性が非線形弾性体の共鳴振動解析に限らず,より一般の振動現象についても適用可能であることを検証することを目的として研究を実施した.当初の研究計画に従って,今年度は昨年度までに得られた二次元分子を解析対象とした非線形共鳴振動とその対称性の数値解析結果を基に,既存の理論(量子力学の摂動理論に基づく振動対称性の予測)と,当研究グループによって新しく提案された磁性点群に基づく共鳴振動対称性の分類結果を系統的に比較・検討した.その結果,解析を行った全ての共鳴振動モードにおいて三者が完全に一致することを明らかとした.この結果は,固体の振動現象が磁性点群によって支配されていること,また磁性点群が予測する「カラー(色)」と呼ばれる新しい振動対称性が現実の存在することを意味している.これは,当初の本研究の目的に他ならない.固体の振動現象を司る群構造の同定を目的として,本研究では二次元分子の示す非線形振動の対称性解析を行った.数値解析の結果,非線形効果によって基準振動モードの整数倍の角振動数を持つ高調和振動の励起が確認され,その振動対称性は角振動数の係数のパリティに依存し,二つの異なる既約表現が交互に出現することを明らかとした.また,この対称性の選択則は,カラー対称性を備えた磁性点群による予測結果と完全に一致している.このことから,磁性点群を用いた固体の振動対称性の分類が,従来の弾性体に留まらず,そのミクロ極限である分子振動までマルチスケールに適用可能と考えられる.今年度の研究遂行にあたって,特に大きな問題点は見当たらず,研究計画にも変更は必要としないことから,次年度についても当初の計画通りに研究を進める予定である.本研究にとって,次年度は大きな山場である.次年度は,過去に得られている非線形弾性体(連続体)の共鳴振動現象と,今年度の研究によって得られた非線形分子振動(離散構造体)の共鳴振動現象が,ともに磁性点群によって支配されていることを理論的に示す必要がある. | KAKENHI-PROJECT-16K14117 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K14117 |
固体の振動現象を支配する群構造の特定 | この点こそ本研究が挑戦的萌芽である所以である.今年度の研究成果を最大限に駆使して,磁性点群による振動現象の統一的記述を確立したい.固体力学研究計画時には,今年度後半に大型計算機の購入を予定していた.しかしながら,予定していた計算の一部は既存の計算機でも遂行できたことに加えて,次年度であれば,当初予定よりも性能の高い計算機の購入の目途が立ったことから,計算機の購入(予算200万円程度)を次年度へ先送りすることにした.この予算は,本研究課題の予算総額の大部分を占めることから,支出執行計画は数字上は大きく変更することになった.上記の通り,計算機の購入年度が変更されるため,支出執行計画は大きく修正されるものの,実態としてはその購入を半期先送りしたに過ぎない.また,この円滑な予算運用によって,より高性能な計算機の購入が期待され,当初研究計画への影響もほとんどない.そのため次年度の使用計画としては,当初の計画とは異なって計算機の購入が追加されるが,その他では大きな変更はない. | KAKENHI-PROJECT-16K14117 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K14117 |
PET/CTを活用した免疫チェックポイント阻害剤の血液バイオマーカーの同定 | 私達はFDG PET/CTを用いることで免疫チェックポイント阻害剤ニボルマブの腎細胞癌に対する抗腫瘍効果をリアルタイムで観察できる可能性があることを報告してきました。そこで、FDG PET/CTによって評価した腎癌患者の血液を解析し、ニボルマブによる抗腫瘍効果をリアルタイムに診断できる血液バイオマーカーを同定し、簡便、低コスト、早期に効果判定をする方法を確立するとともに、抵抗性獲得を誘導する蛋白を同定することで効果予測法を確立し、最終的には免疫チェックポイント阻害剤に対する抵抗性獲得メカニズムを標的とした新たな治療法を開発し、進行性腎細胞癌患者の治療成績の向上に繋げたいと考えています。私達はFDG PET/CTを用いることで免疫チェックポイント阻害剤ニボルマブの腎細胞癌に対する抗腫瘍効果をリアルタイムで観察できる可能性があることを報告してきました。そこで、FDG PET/CTによって評価した腎癌患者の血液を解析し、ニボルマブによる抗腫瘍効果をリアルタイムに診断できる血液バイオマーカーを同定し、簡便、低コスト、早期に効果判定をする方法を確立するとともに、抵抗性獲得を誘導する蛋白を同定することで効果予測法を確立し、最終的には免疫チェックポイント阻害剤に対する抵抗性獲得メカニズムを標的とした新たな治療法を開発し、進行性腎細胞癌患者の治療成績の向上に繋げたいと考えています。 | KAKENHI-PROJECT-19K09676 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K09676 |
抗体ライブラリーを用いた全遺伝子産物の網羅的機能構造解析 | 抗体には多種多様な抗原を漏れなく認識するものが必ず含まれているので、抗原-抗体相互作用のレパートリーの中には、生物が有している標的分子認識のほとんど総てが含まれていると考えられる。生体内の機能性分子の標的分子認識の分子機構を抗体ライブラリーを使って網羅的に解析することで、生物の有する標的分子認識機構のインデックスを作成し、それを用いて抗体をプローブとして用いる、機能が未知の遺伝子産物の機能を探索できるストラテジーの開発を行う。また、抗体の抗原認識の分子機構の網羅的解析から得られる知見を基盤に、任意の遺伝子産物に適用可能な抗体分子をプロトタイプとしてする機能制御分子のドラッグデザインアルゴリズムの開発を目的としている。"[抗体]-[抗原]データベース"、"[抗体]-[エピトープ]データベース"、"[抗体機能部位]-[エピトープ]データベース"の構築は順調に進んでおり、28種類の抗原に対する572個の抗体遺伝子の登録を終えている。現在も複数の抗原に対する抗体のスクリーニングは進行中であり、今後も登録データ数を増やしていく予定である。さらに特筆すべきは、抗原(プロテインキナーゼの一種)の機能を調節する抗体が、当該研究で使用している抗体のスクリーニング法で得られたことである(投稿準備中)。このことは、抗体をプロトタイプとして使用するドラッグデザインの第一歩である。"[抗体]-[エピトープ]データベース"の構築に関してはいくつかの抗体-抗原のセットを選択して、エピトープマッピングを開始している。また、"[抗体機能部位]-[エピトープ]データベース"の構築において必須となる、抗体遺伝子からの抗体分子の立体構造モデリングおよび機能部位抽出のために、当該分野の専家との共同研究を模索中である。抗体には多種多様な抗原を漏れなく認識するものが必ず含まれているので、抗原-抗体相互作用のレパートリーの中には、生物が有している標的分子認識のほとんど総てが含まれていると考えられる。生体内の機能性分子の標的分子認識の分子機構を抗体ライブラリーを使って網羅的に解析することで、生物の有する標的分子認識機構のインデックスを作成し、それを用いて抗体をプローブとして用いる、機能が未知の遺伝子産物の機能を探索できるストラテジーの開発を行う。また、抗体の抗原認識の分子機構の網羅的解析から得られる知見を基盤に、任意の遺伝子産物に適用可能な抗体分子をプロトタイプとしてする機能制御分子のドラッグデザインアルゴリズムの開発を目的としている。"[抗体]-[抗原]データベース"、"[抗体]-[エピトープ]データベース"、"[抗体機能部位]-[エピトープ]データベース"の構築は順調に進んでおり、28種類の抗原に対する572個の抗体遺伝子の登録を終えている。現在も複数の抗原に対する抗体のスクリーニングは進行中であり、今後も登録データ数を増やしていく予定である。さらに特筆すべきは、抗原(プロテインキナーゼの一種)の機能を調節する抗体が、当該研究で使用している抗体のスクリーニング法で得られたことである(投稿準備中)。このことは、抗体をプロトタイプとして使用するドラッグデザインの第一歩である。"[抗体]-[エピトープ]データベース"の構築に関してはいくつかの抗体-抗原のセットを選択して、エピトープマッピングを開始している。また、"[抗体機能部位]-[エピトープ]データベース"の構築において必須となる、抗体遺伝子からの抗体分子の立体構造モデリングおよび機能部位抽出のために、当該分野の専家との共同研究を模索中である。 | KAKENHI-PROJECT-13208033 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13208033 |
グローバルと国レベルの政策連関に関するポスト2015年開発アジェンダの研究 | 29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-15F15759 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15F15759 |
高膨張コンクリートを用いたケミカルプレストレス薄板に関する研究 | 建設工事の安全,迅速,無騒音化や,施工時の環境対策、地球規模での森林環境保護などの観点から木製型枠や支保工の代わりに永久型枠を用いる工法が普及し始めている。永久型枠は,木製型枠に比べて高い耐力を持ち,コンクリート打設後に脱型せず,型枠をそのままコンクリート本体として使用する工法である。永久型枠をコンクリートで作製する場合,型枠断面の縮減による軽量化や,自己収縮および乾燥収縮に起因するひび割れ防止の観点から,プレストレス部材とすることが望ましい。そのためには,かぶりが薄くても発錆しないカーボンファイバーをメッシュに配筋し,反りが生じないように均一なプレストレスを導入することが重要となる。コンクリート製PC薄板の作製には,多数のCFRP緊張材を2方向に緊張するため特殊なプレテンション方式の定着が必要となる。このような緊張装置の使用には高度な緊張管理が必要となるため,本研究ではCFRP緊張材の定着装置を必要としないケミカルプレストレスコンクリート(CPC)の適用を検討してきた。その際,弾性係数の低い緊張材を用いて,有効プレストレスを大きくするためには土木学会コンクリート標準示方書で規定される膨張コンクリートのひずみ700μを超えてCFRP緊張材を緊張する必要があり,このような高膨張下でのCPCによるプレストレス導入特性について材料組成,膨張メカニズム,膨張圧,配合,養生,拘束度,ポリマー混入などによる耐久性改善などの面から実験的に検討した。建設工事の安全,迅速,無騒音化や,施工時の環境対策、地球規模での森林環境保護などの観点から木製型枠や支保工の代わりに永久型枠を用いる工法が普及し始めている。永久型枠は,木製型枠に比べて高い耐力を持ち,コンクリート打設後に脱型せず,型枠をそのままコンクリート本体として使用する工法である。永久型枠をコンクリートで作製する場合,型枠断面の縮減による軽量化や,自己収縮および乾燥収縮に起因するひび割れ防止の観点から,プレストレス部材とすることが望ましい。そのためには,かぶりが薄くても発錆しないカーボンファイバーをメッシュに配筋し,反りが生じないように均一なプレストレスを導入することが重要となる。コンクリート製PC薄板の作製には,多数のCFRP緊張材を2方向に緊張するため特殊なプレテンション方式の定着が必要となる。このような緊張装置の使用には高度な緊張管理が必要となるため,本研究ではCFRP緊張材の定着装置を必要としないケミカルプレストレスコンクリート(CPC)の適用を検討してきた。その際,弾性係数の低い緊張材を用いて,有効プレストレスを大きくするためには土木学会コンクリート標準示方書で規定される膨張コンクリートのひずみ700μを超えてCFRP緊張材を緊張する必要があり,このような高膨張下でのCPCによるプレストレス導入特性について材料組成,膨張メカニズム,膨張圧,配合,養生,拘束度,ポリマー混入などによる耐久性改善などの面から実験的に検討した。型枠として使用される木材の代わりにコンクリート薄板を用い、施工後もそのまま部材の一部に使用できる“永久型枠"としてコンクリート薄板の作製を試みた。コンクリートは引張強度が低いため、薄板として用いるには格子状の緊張材に2方向プレストレスを導入して曲げ耐力の改善を図ることが必要となる。この時、土木学会コンクリート標準示方書では一般施工時の膨張ひずみ量を700μ以下と規定しているため、乾燥収縮やクリープなどによって有効プレストレスは消滅する。本研究ではカルシウム系の膨張剤を通常の1.5倍程度で用いて、示方書の規定を越える高い膨張ひずみを発生するコンクリートを高膨張コンクリートと定義し、これを用いてケミカルプレストレスを導入した薄板を作製した。その方法として、弾性係数が鋼線よりも低く、伸び能力の大きいCFRPストランドを緊張材に用いれば緊張力の低下が少ないこと、普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートでは単位膨張剤量96kg/m^3以下の配合であれば、35mm厚さの薄板でプレストレスを合わせた曲げ強度12N/mm^2程度が得られること、膨張ひずみ量3000μ程度まではコンクリートの圧縮強度は顕著な低下を示さないことなどが確認された。しかしながら養生温度や配合の水セメント比によって膨張ひずみの発生量は異なり、高強度かつ高膨張量が得られる条件に付いて今後研究を進める予定である。また、膨張剤の膨張メカニズムや、膨張コンクリートの高流動化などについても民間各社や他の研究機関とも共同で資料調査などを行った。CFRP薄板を永久型枠として高流動コンクリートを打設する際に、1m間隔の支保工で支えるために必要とされるパネルの曲げ耐力12N/mm^2は温度や水粉体比によって著しい変動を生じる。本年度の研究では、温度20°C程度では単位膨張剤量90kg/m^3程度を使用した場合に安定した膨張量が得られ、初期の養生温度を20°C程度と低くし材齢3日程度以後で30°C程度に上げる場合に高い曲げ強度が得られることなどが明かとなった。しかしながら、CFRP緊張材に十分なプレストレスを発生させる膨張ひずみ3000×10^<-6>以上を発生させた場合、その後の乾燥湿潤の繰り返しによってパネル表面に白華を生じることが多く、今後の実用化に関する新たな問題点が提起された。ケミカルプレストレスを用いたPC薄板の長期におけるプレストレスの減退は、パネルコンクリートの強度が十分であればほぼ3割程度の減少で安定し、材齢1年でも目的のプレストレスを維持できることなどを実験的に確認した。 | KAKENHI-PROJECT-10650451 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10650451 |
高膨張コンクリートを用いたケミカルプレストレス薄板に関する研究 | これらのことから、安定したPC薄板を作製するには,材齢初期の温度管理を十分にし、養生温度を段階的に上昇させること、ポリマーディスパージョンなどの添加により水密性の高いコンクリートを作製し、カルシウムの溶出を防ぐなどの改善が必要となることが分かった。過去2年間の実験的検討から,膨張剤とCFRP緊張材とを用いたケミカルプレストレス薄板の実用的製作方法について目途を立ててきた。12年度では化学的膨張作用に起因して生じるセメント硬化体組織の緩みや,使用時の2次エフロレッセンスの発生や耐久性の低下を防止する目的で,ポリマーセメントモルタルとの併用を検討した。使用ポリマーには現在市販されている中から特に強度発現や使用性に優れたSBRラテックス系,アクリル共重合体,エチレン酢酸ビニル系,エチレン酢酸ビニル共重合樹脂,スチレンアクリル共重合樹脂,エチレン酢酸ビニル塩化ビニル共重合樹脂の6種を選び,膨張材量と圧縮及び曲げ強度との関係や膨張作用への弊害などの有無を調べた。その結果,大半の樹脂は10%以下のポリマーエマルジョン添加量に対して,コンクリート強度は高くなることや,ポリマーエマルジョンを添加したコンクリートの材齢初期の膨張ひずみは無添加の場合よりも大きくなること,単位膨張剤量87kg/m^3の場合5N/mm^2程度のプレストレスが導入されること,硬化後に湿潤乾燥を繰り返してもエフロレッセンスの発生が見られないことなどが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-10650451 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10650451 |
精神機能障害を伴う脳血管障害患者の行動科学的学習方法の開発-生活再構築に向けて- | 研究目的精神機能障害を有する中途障害者がよりよく社会復帰するには、新たな学習を必要とする。しかし、認知障害や言語障害を伴うことが多いため、従来の学習方法では困難であることは経験的によく遭遇することである。今回は障害された認知機能やコミュニケーション機能(あわせて精神機能障害とする)を前提としない、行動分析理論を基盤とした学習方法の開発を試みることを研究目的とした。研究方法<第1段階>参加観察法を通して、臨床で精神機能障害患者にどのような方法でアプローチしているのか、を明らかにする。<第2段階>第1段階の結果を踏まえ、シングルケース研究法を通して日記の患者にとっての有効性を検証する。<第3段階>1、2の結果から有効な学習方法を見出す。結果と考察臨床では看護師をはじめとして、ケアスタッフは対象の障害を理解していながらも、自分たちが通常使っている言語を前提としたアプローチを行っていた。障害者の意思疎通の困難さがケアアプローチの阻害因子となり、有効なケアを進めるのが困難な状況であった。しかし、シングルケース研究法を通して、看護師の言動が行動の頻度を高める「強化子」となって、個々の対象の特徴を生かしたアプローチをしたところ、通常のコミュニケーションを用いずに患者は排泄や摂食の自立、さらには積極的に訓練に意欲を示すなどの成果を得た。今回は5事例を対象としたが、いずれも認知機能低下、意欲低下、言語的コミュニケーション障害により全く意思疎通困難な事例であった。これらより、今後「強化子」を用いた「二項強化随伴性」という行動分析の理論を基盤とし、シングルケース研究法を用いて、事例数を重ねていくことにより、従来では社会復帰が困難な患者にとって有効な学習方法を徐々に明らかにできる可能性が示唆された。今後は、ひとりの患者に複数の看護者がケアに当たる臨床上の特徴や多忙さの中で、シングルケース研究法をいかに正確に導入して使用するかが課題と考えられた。本研究の最終目的は、精神的側面の機能障害を有する脳血管障害患者が通常のコミュニケーションを用いることを前提としない応用行動分析の手法を用いた学習プログラムの開発である。初年度に当たる平成13年度の研究目標は、上述した特徴を有する対象の生活動作の習得方法の実態を明確にすることである。方法と結果は以下の通りである。1.研究方法1)対象:I県にあるリハビリテーション医療を主とする病院の回復期病棟に入院中の患者のうち、FIM (Functional Independence Measure)の認知能力得点の中でも、「理解」の得点が2以下の7名を対象とした(聴覚あるいは視覚によるコミニュケーションの理解能力が、基本的欲求についての指示、会話の49%以下を理解している)2)日常生活場面(食事、排尿、排便、移乗、移動)及び訓練場面を通して、コミュニケーション障害を有する対象に対し、看護者及び医療者はどのようにケアや訓練を行い、また、患者はどのように日常生活動作を獲得しているか、を観察した。3)期間:平成13年4月2日から10月17日まで。2.結果対象のコミュニケーション能力が不十分であるが、すべての看護者及び医療者は主に言語的コミュニケーションを通して働きかけようとしていた。この他、補助手段として絵や記号なども用いられていた。習得困難な動作に対しては、繰り返しを通してアプローチされていた。一方、患者の習得状況として、繰り返すことで、遅々とした学習であったが少しずつ習得していた。多くの試行を必要としていた。中でも、特にFIMの理解得点が1点の患者は、学習効果が低く、コミュニケーション能力が大きな障害となっていることが原因と考えられる。かなり重度のコミュニケーション障害を有する対象は、訓練不可能として訓練対象から除外されるケースも2例存在した。このように、コミュニケーション障害があるにもかかわらず、この能力を前提とする学習方法には限界があると考える。昨年度は、精神機能障害を伴う対象が生活動作の習得方法の実態を明らかにした。それらは、医療者も患者も最初は通常のコミュニケーションをベースとした言語的手段を用いて行おうとしていた。しかし対象が理解していないことを知ると、はじめて補助的手段として、ジェスチャや記号・色などと方法を変えてコミュニケーションを試みていた。今年度は、上記の特徴を持った2人の患者を対象にケアを通して患者が物事を学習するプログラムの開発を試みた。[事例1:模倣の導入による排泄の自立]O氏、47歳男性。脳出血により、聴く、読む、話す、書くという言語機能の全てが障害され、日常会話しても理解しているかどうかの判断も困難であった。O氏の排尿はすべて失禁であった。ます、ナースコールを押すと看護師が来ることを実演してみせた。これを繰り返し行うと、次第に押すようになり、何か訴えたいときに押すようになった。次に、2時間毎に排尿誘導をしていたが、コールを押してから看護師がトイレまで排尿誘導をすることを繰り返した。最終段階では、促さなくても、尿意を知らせ、ほぼ失禁もなくなった。この事例は、主に模倣を中心に排尿の自立を図ったケースであった。しかし、段階的に進めることが重要であった。各段階は原則として動作を1つずつ加えていく方法が学習に有効であった。[事例2:三項強化随伴性の法則の導入による感情のコントロール]I氏、48歳男性。脳出血により高次脳機能障害を有し、特に感情のコントロールが困難であった。家人に電話をかけることに執着し、すぐに応じなければ大声でわめいたりした。 | KAKENHI-PROJECT-13877426 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13877426 |
精神機能障害を伴う脳血管障害患者の行動科学的学習方法の開発-生活再構築に向けて- | そこで約束の時間まで我慢できた時には褒めることを強化子として、電話をかける時間を少しずつ延ばしていた。約束の時間までに我慢できたときは、時計を見せ、「○○時間待てましたね」と、周りの看護師みんなで褒めた。次第に、尿意や他のことについても我慢できるまでに行動が変容した。本ケースにおいて、好ましい行動をとるよう言葉による教示を与え、次に好ましい行動が現れたらすぐに褒める、という行動分析の三項強化随伴の法則が有効であった。研究目的精神機能障害を有する中途障害者がよりよく社会復帰するには、新たな学習を必要とする。しかし、認知障害や言語障害を伴うことが多いため、従来の学習方法では困難であることは経験的によく遭遇することである。今回は障害された認知機能やコミュニケーション機能(あわせて精神機能障害とする)を前提としない、行動分析理論を基盤とした学習方法の開発を試みることを研究目的とした。研究方法<第1段階>参加観察法を通して、臨床で精神機能障害患者にどのような方法でアプローチしているのか、を明らかにする。<第2段階>第1段階の結果を踏まえ、シングルケース研究法を通して日記の患者にとっての有効性を検証する。<第3段階>1、2の結果から有効な学習方法を見出す。結果と考察臨床では看護師をはじめとして、ケアスタッフは対象の障害を理解していながらも、自分たちが通常使っている言語を前提としたアプローチを行っていた。障害者の意思疎通の困難さがケアアプローチの阻害因子となり、有効なケアを進めるのが困難な状況であった。しかし、シングルケース研究法を通して、看護師の言動が行動の頻度を高める「強化子」となって、個々の対象の特徴を生かしたアプローチをしたところ、通常のコミュニケーションを用いずに患者は排泄や摂食の自立、さらには積極的に訓練に意欲を示すなどの成果を得た。今回は5事例を対象としたが、いずれも認知機能低下、意欲低下、言語的コミュニケーション障害により全く意思疎通困難な事例であった。これらより、今後「強化子」を用いた「二項強化随伴性」という行動分析の理論を基盤とし、シングルケース研究法を用いて、事例数を重ねていくことにより、従来では社会復帰が困難な患者にとって有効な学習方法を徐々に明らかにできる可能性が示唆された。今後は、ひとりの患者に複数の看護者がケアに当たる臨床上の特徴や多忙さの中で、シングルケース研究法をいかに正確に導入して使用するかが課題と考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-13877426 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13877426 |
高いPEEP負荷によるischemic preconditioningの誘導 | 【方法】ラットに人工呼吸器を装着後、Sham群(n=8), Non-PEEP群(n=8)、High-PEEP群(n=6)に分けて実験した。Sham群は90分の人工呼吸管理を行った。Non-PEEP群では30分の人工呼吸管理後に、腎動脈の遮断・解除による虚血・再灌流(各30分)を行った。High-PEEP群ではPEEP12cmH_2Oをon-off各5分づつ3回負荷後、腎の虚血・再灌流(各30分)を行った。摘出腎を組織学的(HE染色)に比較検討した。【結果】Non-PEEP群High-PEEP群とも、尿細管上皮内における微細な空胞形成が認められたが、2群間に組織学的な差はなかった。【考察】ラット腎の虚血一再灌流後に見られる組織学的変化は、尿細管上皮内における微細な空胞形成と著明な尿細管の拡張・間質浮腫・空胞形成とに分類される(IrmakらUrol Res29 : 190-3, 2001)。今回の結果ではhigh PEEPの再灌流傷害抑制効果を証明する組織学的な変化は捉えれなかった。ischemic preconditioningとしてのPEEP値が十分でなかった可能性と負荷時間が短かった可能性があり、今後の検討課題と考えられる。【結語】highPEEPによるischemic preconditioningの効果は、ラット腎における30分間の虚血・再灌流において認められなかった。ischemic preconditioningの誘導は、虚血再灌流障害による臓器障害を軽減しうる有力な手法として注目されている。ischemic preconditioningは、生体を構成するほぼ総ての重要臓器において報告されている。ischemic preconditioningには、虚血情報シグナルとしての一酸化窒素、アデノシン、bradykinin、calcitonin gene-related peptide(CGRP)、情報増幅器としてのprotein kinase C(PKC)、効果器としてのK(ATP) channel、熱ショック蛋白、抗オキシダント酵素が関与することが明らかにされている。PEEP(Positive End-expiratory Pressure)は、健常生体に様々な変化をもたらすことが明らかになっている。PEEPの生理学的作用の中には、胸腔内圧増加による静脈灌流減少を伴った心拍出量減少による臓器のうっ血・虚血、ischemic preconditioningの虚血情報シグナルであるbradykinin、CGRPの産生増加が含まれている。本研究は、臓器うっ血・虚血をもたらす高いPEEP負荷(15-20cmH_2O)は、生体内臓器(特に肺、肝、消化管、腎)に対する、単純な血流遮断よりも効果的で実用的なischemic preconditioningの誘導法になるとの仮説を証明することを目的とした。これまでの研究期間にPEEPによる肺、肝、消化管、腎に対するischemic preconditioningの誘導の証明を試みた。静脈麻酔(pentobarbital)下にラットに人工呼吸を行った。10分間の持続陽圧換気(PEEP値15,25cmH_2O)と5分間の間欠的陽圧換気(PEEP値0cmH_2O)を3回繰り返した。その後、大動脈を上腸間膜動脈下部で遮断し、肝、消化器(上腸間膜動脈支配領域)、腎に対し虚血を負荷した。各臓器障害度は各臓器の組織学的変化に加え、客観性の高い指標を用いて定量した(肝:GOT、LDH;消化管:LDH;腎:血清クレアチニン)。これまでの研究結果は、15cmH_2OのPEEPを負荷した群においては、対象群に比し、虚血後の血清クレアチニンの上昇がわずかに抑制されることを示している。誘導の最適条件を明らかににする研究を継続中であり、また、他の臓器に対しも、PEEPはischemic preconditioningを誘導するかを検討中である。【方法】ラットに人工呼吸器を装着後、Sham群(n=8), Non-PEEP群(n=8)、High-PEEP群(n=6)に分けて実験した。Sham群は90分の人工呼吸管理を行った。Non-PEEP群では30分の人工呼吸管理後に、腎動脈の遮断・解除による虚血・再灌流(各30分)を行った。High-PEEP群ではPEEP12cmH_2Oをon-off各5分づつ3回負荷後、腎の虚血・再灌流(各30分)を行った。摘出腎を組織学的(HE染色)に比較検討した。【結果】Non-PEEP群High-PEEP群とも、尿細管上皮内における微細な空胞形成が認められたが、2群間に組織学的な差はなかった。【考察】ラット腎の虚血一再灌流後に見られる組織学的変化は、尿細管上皮内における微細な空胞形成と著明な尿細管の拡張・間質浮腫・空胞形成とに分類される(IrmakらUrol Res29 : 190-3, 2001)。今回の結果ではhigh PEEPの再灌流傷害抑制効果を証明する組織学的な変化は捉えれなかった。ischemic preconditioningとしてのPEEP値が十分でなかった可能性と負荷時間が短かった可能性があり、今後の検討課題と考えられる。【結語】highPEEPによるischemic preconditioningの効果は、ラット腎における30分間の虚血・再灌流において認められなかった。 | KAKENHI-PROJECT-12877238 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12877238 |
元素の選択的配置を利用したポリ酸クラスター内での希土類原子発光特性の制御 | 本研究はポリ酸配位子を利用することにより、希土類原子の配位環境を制御し、希土類原子からの発光を制御することを目的とする。本研究で採用する手法の特徴は、ランタノイド収縮に伴う希土類原子のイオン半径の変化と、[P_2W_<17>O_<61>]^<10->配位子の多座配位能およびタングステン酸化物骨格に由来する剛直さとの相乗効果を利用して、それらが形成する錯体の構造変化をもたらす原因を明らかにしようとする点にある。今年度、[P_2W_<18>O_<61>]^<10->配位子を用い、LaEuの6種類の希土類原子との錯体を合成・構造解析を行った。いずれの化合物も希土類原子2原子が[P_2W_<18>O_<61>]^<10->配位子二つを架橋したユニットが、さらにユニット外の希土類原子により連結された一次元構造をとっていた。ところが、LaおよびCeが作るユニットと、Pr, Nd, Sm, Euのつくるユニットとでは構造が異なっていた。結晶構造の詳細な検討の結果、イオン半径の大きなLaおよびCeと同様の構造を、イオン半径が小さなPr, Nd, Sm, Euがとろうとすると、それらが架橋する[P_2W_<18>O_<61>]^<10->配位子同士の衝突が起きることが予想された。一方、イオン半径の小さいため8配位となるPr, Nd, Sm, Euと同様の構造を、イオン半径が大きいため9配位となるLaおよびCeがとろうとすると、新たに加わった9番目の配位子である水分子が、隣接する[P_2W_<18>O_<61>]^<10->配位子と衝突することが予想された。これらの立体的要因が構造変化を引き起こすことが明らかになった。機能性材料として注目を集めている分子性酸化物クラスターであるポリ酸は、希土類元素と錯形成することにより発光や磁性といったさらに新しい機能を獲得する。本研究はポリ酸内の元素を選択的に配置することにより、希土類原子との相互作用を変化させ、その配位環境を制御することにより希土類原子からの発光を制御することを目的とする。本研究で採用する手法の大きな特徴は、[P_2W_<17>O_<61>]^<10->および[P_2Mo_2W_<15>O_<61>]^<10->配位子という電荷及び外形が同一の配位子を用いて合成した一連の希土類錯体を系統的に比較することにより、元素相乗効果による物性変化を抽出し、構造変化をもたらす原因を明らかにする点にある。今年度、[P_2W_<18>O_<61>]^<10->配位子を用いた実験ではLaGdの7種類の希土類原子との錯体を合成し、4種類の構造パターンの化合物が得られた。LaおよびCeの化合物では対カチオンとして用いたNH_4+イオンの濃度に応じて希土類原子の配位数が9のものと8のものの両方が得られた。それに対し、PrGdの化合物では希土類原子の配位数が8のもののみが得られた。また、[P_2Mo_2W_<15>O_<61>]^<10->配位子を用いた実験では、結晶加速度に応じて、導入したMo原子の配置が変化していた。それ同時に、希土類原子との錯体の構造がside-to-side型からhead-to-head型に変化していることが明らかになり、Mo原子の配置によって希土類原子の配位環境を制御できることが明らかになった。本研究はポリ酸配位子を利用することにより、希土類原子の配位環境を制御し、希土類原子からの発光を制御することを目的とする。本研究で採用する手法の特徴は、ランタノイド収縮に伴う希土類原子のイオン半径の変化と、[P_2W_<17>O_<61>]^<10->配位子の多座配位能およびタングステン酸化物骨格に由来する剛直さとの相乗効果を利用して、それらが形成する錯体の構造変化をもたらす原因を明らかにしようとする点にある。今年度、[P_2W_<18>O_<61>]^<10->配位子を用い、LaEuの6種類の希土類原子との錯体を合成・構造解析を行った。いずれの化合物も希土類原子2原子が[P_2W_<18>O_<61>]^<10->配位子二つを架橋したユニットが、さらにユニット外の希土類原子により連結された一次元構造をとっていた。ところが、LaおよびCeが作るユニットと、Pr, Nd, Sm, Euのつくるユニットとでは構造が異なっていた。結晶構造の詳細な検討の結果、イオン半径の大きなLaおよびCeと同様の構造を、イオン半径が小さなPr, Nd, Sm, Euがとろうとすると、それらが架橋する[P_2W_<18>O_<61>]^<10->配位子同士の衝突が起きることが予想された。 | KAKENHI-PROJECT-20036018 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20036018 |
元素の選択的配置を利用したポリ酸クラスター内での希土類原子発光特性の制御 | 一方、イオン半径の小さいため8配位となるPr, Nd, Sm, Euと同様の構造を、イオン半径が大きいため9配位となるLaおよびCeがとろうとすると、新たに加わった9番目の配位子である水分子が、隣接する[P_2W_<18>O_<61>]^<10->配位子と衝突することが予想された。これらの立体的要因が構造変化を引き起こすことが明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-20036018 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20036018 |
自己血管細胞と生分解性材料を用いた組織工学による肺内肺動脈の作成、臨床応用 | 動物実験による至適ポリマー、至適細胞数、至適組織裁断法の探究及び選定を行う。実験動物として子犬を用い、大腿部の静脈片を採取し、そこから自己血管壁細胞の単離、培養を開始した。十分な細胞数が得られれば、生分解性ポリマーのシート(80x80mm)に播種し一週間のポリマー上での培養を継続する。一週間後に細胞を採取した同一動物を全身麻酔下に開胸し、自己の心膜を約50x50mm大で切除した後に、このティッシュエンジニアリングで作成したシートで置換した。コントロール実験として組織断片を播種しないポリマーのみの移植も行う。移植3-12ヶ月後に作成された組織に対して造影検査、生化学的、生力学的、免疫組織学的検討を行う。生化学検査として、組織中コラーゲン、エラスチン、カルシウム濃度の測定を行い、インストロン張力検査機を用いて作成された組織の最大張力を測定し自己の同じ部位の組織と比較検討する。組織学的には免疫染色の手法を用いて内皮細胞の指標である第八因子を染色すると共に細胞間隙の間質蛋白質を染色し自己組織と比較検討する。同種細胞(allogenic)は拒絶反応の因子を排除できないため、細胞は全て自己(autologous)細胞を用いた。<ヒト細胞のin vitro実験>ヒト心膜より採取した平滑筋細胞、線維芽細胞、中皮細胞を用いてポリマー上での増殖能、ポリマーへの接着性、成長因子の影響等の分子生物学的研究をin vitroで行った。2.臨床応用段階的根治手術が予想される初回姑息手術時、約10mm大の心膜片を完全清潔下に採取し、直ちに組織培養液中に浸漬し、手術室内の細胞培養室にて単純裁断法を用いて組織の断片化を行う。播種細胞数は10万個/cm2とし、細胞播種後、約一週間でパッチとして移植手術を行う。術後約1ヶ月後に、心臓超音波検査を行いフォローアップは6ヶ月毎にに心臓超音波検査を用いて形態学的検索及び組織過形成の有無等を経過観察した。動物実験による至適ポリマー、至適細胞数、至適組織裁断法の探究及び選定を行う。実験動物として子犬を用い、大腿部の静脈片を採取し、そこから自己血管壁細胞の単離、培養を開始した。十分な細胞数が得られれば、生分解性ポリマーのシート(80x80mm)に播種し一週間のポリマー上での培養を継続する。一週間後に細胞を採取した同一動物を全身麻酔下に開胸し、自己の心膜を約50x50mm大で切除した後に、このティッシュエンジニアリングで作成したシートで置換した。コントロール実験として組織断片を播種しないポリマーのみの移植も行う。移植3-12ヶ月後に作成された組織に対して造影検査、生化学的、生力学的、免疫組織学的検討を行う。生化学検査として、組織中コラーゲン、エラスチン、カルシウム濃度の測定を行い、インストロン張力検査機を用いて作成された組織の最大張力を測定し自己の同じ部位の組織と比較検討する。組織学的には免疫染色の手法を用いて内皮細胞の指標である第八因子を染色すると共に細胞間隙の間質蛋白質を染色し自己組織と比較検討する。同種細胞(allogenic)は拒絶反応の因子を排除できないため、細胞は全て自己(autologous)細胞を用いた。<ヒト細胞のin vitro実験>ヒト心膜より採取した平滑筋細胞、線維芽細胞、中皮細胞を用いてポリマー上での増殖能、ポリマーへの接着性、成長因子の影響等の分子生物学的研究をin vitroで行った。2.臨床応用段階的根治手術が予想される初回姑息手術時、約10mm大の心膜片を完全清潔下に採取し、直ちに組織培養液中に浸漬し、手術室内の細胞培養室にて単純裁断法を用いて組織の断片化を行う。播種細胞数は10万個/cm2とし、細胞播種後、約一週間でパッチとして移植手術を行う。術後約1ヶ月後に、心臓超音波検査を行いフォローアップは6ヶ月毎にに心臓超音波検査を用いて形態学的検索及び組織過形成の有無等を経過観察した。1.基礎的研究動物実験による至適ポリマー、至適細胞数、至適組織裁断法の探究及び選定を行う。実験動物として子犬を用い、大腿部の静脈片を採取し、そこから自己血管壁細胞の単離、培養を開始した。十分な細胞数が得られれば、生分解性ポリマーの弁付き導管(7X 10mm)に播種し一週間のポリマー上での培養を継続する。一週間後に細胞を採取した同一動物を全身麻酔下に左開胸し、体外循環下に肺動脈弁を完全に切除した後に、主肺動脈をこのティッシュエンジニアリングで作成した導管で置換した。コントロール実験として組織断片を播種しないポリマーのみの移植も行う。移植3-12ヶ月後に作成された組織に対して造影検査、生化学的、生力学的、免疫組織学的検討を行う。生化学検査として、組織中コラーゲン、エラスチン、カルシウム濃度の測定を行い、インストロン張力検査機を用いて作成された組織の最大張力を測定し自己の同じ部位の組織と比較検討する。組織学的には免疫染色の手法を用いて内皮細胞の指標である第八因子を染色すると共に細胞間隙の間質蛋白質を染色し自己組織と比較検討する。同種細胞(allogenic)は拒絶反応の因子を排除できないため、細胞は全て自己(autologous)細胞を用いた。<ヒト細胞のin vitro実験> | KAKENHI-PROJECT-12680845 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12680845 |
自己血管細胞と生分解性材料を用いた組織工学による肺内肺動脈の作成、臨床応用 | ヒト心膜より採取した平滑筋細胞、線維芽細胞、中皮細胞を用いてポリマー上での増殖能、ポリマーへの接着性、成長因子の影響等の分子生物学的研究をin vitroで行っている。2.臨床応用段階的根治手術が予想される初回姑息手術時、約15mm長の末梢静脈片を完全清潔下に採取し、直ちに組織培養液中に浸漬し、手術室内の細胞培養室にて単純裁断法を用いて組織の断片化を行う。播種細胞数は10万個/cm2とし、細胞播種後、約一週間で一弁ハッチとして移植手術を行う。術後約1ヶ月後に、心臓カテーテル、造影検査、心臓超音波検査を行いフォローアップは6ヶ月毎にに心臓超音波検査を用いて形態学的検索及び組織過形成の有無等を経過観察する。1.基礎的研究動物実験による至適ポリマー、至適細胞数、至適組織裁断法の探求及び選定を行う。実験動物として子犬を用い、大腿部の静脈片を採取し、そこから自己血管壁細胞の単離、培養を開始した。十分な細胞数が得られれば、生分解性ポリマーの弁付き導管(7X 10mm)に播種し一週間のポリマー上での培養を継続する。一週間後に細胞を採取した同一動物を全身麻酔下に左開胸し、体外循環下に肺動脈弁を完全に切除した後に、主肺動脈をこのティッシュエンジニアリングで作成した導管で置換した。コントロール実験として組織断片を播種しないポリマーのみの移植も行う。移植3-12ケ月後に作成された組織に対して造影検査、生化学的、生力学的、免疫組織学的検討を行う。生化学検査として、組織中コラーゲン、エラスチン、カルシウム濃度の測定を行い、インストロン張力検査機を用いて作成された組織の最大張力を測定し自己の同じ部位の組織と比較検討する。組織学的には免疫染色の手法を用いて内皮細胞の指標である第八因子を染色すると共に細胞間隙の間質蛋白質を染色し自己組織と比較検討する。同種細胞(allogenic)は拒絶反応の因子を排除できないため、細胞は全て自己(autologous)細胞を用いた。<ヒト細胞のin vitro実験>ヒト心膜より採取した平滑筋細胞、線維芽細胞、中皮細胞を用いてポリマー上での増殖能、ポリマーへの接着性、成長因子の影響等の分子生物学的研究をin vitroで行っている。2.臨床応用段階的根治手術が予想される初回姑息手術時、約15mm長の末梢静脈片を完全清潔下に採取し、直ちに組織培養液中に浸漬し、手術室内の細胞培養室にて単純裁断法を用いて組織の断片化を行う。播種細胞数は10万個/cm2とし、細胞播種後、約一週間で一弁パッチとして移植手術を行う。術後約1ケ月後に、心臓カテーテル、造影検査、心臓超音波検査を行いフォローアップは6ケ月毎にに心臓超音波検査を用いて形態学的検索及び組織過形成の有無等を経過観察する。 | KAKENHI-PROJECT-12680845 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12680845 |
口腔がんにおける重粒子線照射によるp53非依存アポトーシスのメカニズムの解明 | 我々は、これまで変異型p53遺伝子を有するヒト歯肉扁平上皮癌細胞における高LET重粒子線(鉄線および炭素線)とX線の殺細胞効果及びアポトーシス誘導を調査し、重粒子線はたとえ変異型p53遺伝子を有するがん細胞においてもX線と比較して少ない線量で効率的にアポトーシスを誘導し感受性が高くなることを明らかにした。さらに、重粒子線によるアポトーシスはCaspase依存の経路を通っており、Caspase阻害剤を用いた実験によりCaspase8経路ではなくCaspase9経路を選択的に通りCaspase3を活性化しアポトーシスを誘導する可能性があることを明らかにし、炭素線を照射した細胞では、生存シグナルが抑制されることによりアポトーシスが誘導される可能性を考え、生存シグナルのメカニズムを明らかにするため、生存シグナルに関与するタンパク質をwestern blot法にて解析した。X線照射を行った細胞よりも、鉄線を照射した細胞でmTORおよびp70S6さらにCaspase9を抑制するAktが抑制され生存シグナルが抑制されるだけではなく、同時にアポトーシス経路を活性化することを明らかにした。本年度は、さらに放射線照射によって、Akt-mTORシグナル系に関連するタンパク質量は照射2-3時間後をピークにいずれも減少していることを明らかにした。さらに、等線量(2Gy)照射において、X線よりも鉄線を照射した場合の方がAkt、リン酸化Akt、mTOR、rpS6、リン酸化rpS6、Survivinいずれも細胞内タンパク質量が効率的に減少していること、等生存線量(X線:7Gy、鉄線:2Gy)においてもX線よりも鉄線を照射した場合の方がAktが減少しており、それによりアポトーシスが促進されていることが明らかとなった。我々は、これまで変異型p53遺伝子を有するヒト歯肉扁平上皮癌細胞における高LET重粒子線(鉄線および炭素線)とX線の殺細胞効果及びアポトーシス誘導を調査し、重粒子線はたとえ変異型p53遺伝子を有するがん細胞においてもX線と比較して少ない線量で効率的にアポトーシスを誘導し感受性が高くなることを明らかにした。さらに、重粒子線によるアポトーシスはCaspase依存の経路を通っており、Caspase阻害剤を用いた実験によりCaspase8経路ではなくCaspase9経路を選択的に通りCaspase3を活性化しアポトーシスを誘導する可能性があることを明らかにした。本年度は、DNAマイクロアレイを用いX線と比較し炭素線で発現を認める遺伝子の検索を行った。それによりミトコンドリア経路に関する遺伝子のBcl-2がX線照射を行った細胞よりも、炭素線を照射した細胞で有意に抑制されることが明らかとなった。さらに、生存シグナルが抑制されることによりアポトーシスが誘導される可能性を考え、生存シグナルのメカニズムを明らかにするため、生存シグナルに関与するタンパク質をwestern blot法にて解析した。X線照射を行った細胞よりも、鉄線を照射した細胞でmTORおよびp70S6さらにCaspase9を抑制するAktが抑制され生存シグナルが抑制されるだけではなく、同時にアポトーシス経路を活性化することが明らかとなった。我々は、これまで変異型p53遺伝子を有するヒト歯肉扁平上皮癌細胞における高LET重粒子線(鉄線および炭素線)とX線の殺細胞効果及びアポトーシス誘導を調査し、重粒子線はたとえ変異型p53遺伝子を有するがん細胞においてもX線と比較して少ない線量で効率的にアポトーシスを誘導し感受性が高くなることを明らかにした。さらに、重粒子線によるアポトーシスはCaspase依存の経路を通っており、Caspase阻害剤を用いた実験によりCaspase8経路ではなくCaspase9経路を選択的に通りCaspase3を活性化しアポトーシスを誘導する可能性があることを明らかにし、炭素線を照射した細胞では、生存シグナルが抑制されることによりアポトーシスが誘導される可能性を考え、生存シグナルのメカニズムを明らかにするため、生存シグナルに関与するタンパク質をwestern blot法にて解析した。X線照射を行った細胞よりも、鉄線を照射した細胞でmTORおよびp70S6さらにCaspase9を抑制するAktが抑制され生存シグナルが抑制されるだけではなく、同時にアポトーシス経路を活性化することを明らかにした。本年度は、さらに放射線照射によって、Akt-mTORシグナル系に関連するタンパク質量は照射2-3時間後をピークにいずれも減少していることを明らかにした。さらに、等線量(2Gy)照射において、X線よりも鉄線を照射した場合の方がAkt、リン酸化Akt、mTOR、rpS6、リン酸化rpS6、Survivinいずれも細胞内タンパク質量が効率的に減少していること、等生存線量(X線:7Gy、鉄線:2Gy)においてもX線よりも鉄線を照射した場合の方がAktが減少しており、それによりアポトーシスが促進されていることが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-21659472 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21659472 |
膵癌早期診断のための血中アミリン濃度の特異性と感度の検討とアミリン測定法の改良 | 膵癌早期診断のための血中アミリン(IAPP)濃度の感度と特異性をCA19-9の組み合わせで検討した。血中アミリンの測定法を確立した(Am J Pathol 157:2101,2000)。アミリンは血中のプロテアーゼにより容易に分解されることが考えられたので、採血時に血液に添加するプロテアーゼ阻害剤の検討をおこなった。その結果、血液1ml当たり2μg antipain dihydrochloride 25 μg elastainal 0.5μg leupeptin及び0.5EDTA(PIM)を加えた試験管に採血し、直ちに血漿分離して測定まで-80°Cで保存した。このような血漿試料においてIAPPは4°Cで2時間安定であった。一方、一般的にペプチド測定に適用されているアプロチニンとEDTA添加血漿に加えられた合成IAPPの免疫活性は4°C、2時間で16%失われた。健常人のIAPP濃度は1.8-5.93pmol/Lの範囲内にあり、膵癌患者の平均濃度は健常人に比較して有意に上昇していた(7.1±0.9 vs 4.0±0.3pmol/L、p<0.001)。しかし、ラ氏島細胞癌、胆嚢癌、十二指腸乳頭癌、腎癌、及び慢性、急性の膵炎の患者の一部においても高値が見られた。カットオフ値を6pmol/Lとした場合の感度と特典性はそれぞれ47%と73%であった。一方、CA19-9との組み合わせにおいて(CA19-9のcut off値:70IU/ml)いずれかの値がcutoff値以上である場合をポジティブとするとその感度と特異性はそれぞれ85%と63%であった(Clin Chem 47:2071,2001)。さらに、上記測定系と異なった抗原部位を認識するモノクローナル抗体を用いた固相EIAを確立し、同試料を測定した場合も膵癌検出傾向は変わらなかった。このように、IAPPは単独では早期膵癌検出の有用なマーカーではないと結論された。膵癌早期診断のための血中アミリン(IAPP)濃度の感度と特異性をCA19-9の組み合わせで検討した。血中アミリンの測定法を確立した(Am J Pathol 157:2101,2000)。アミリンは血中のプロテアーゼにより容易に分解されることが考えられたので、採血時に血液に添加するプロテアーゼ阻害剤の検討をおこなった。その結果、血液1ml当たり2μg antipain dihydrochloride 25 μg elastainal 0.5μg leupeptin及び0.5EDTA(PIM)を加えた試験管に採血し、直ちに血漿分離して測定まで-80°Cで保存した。このような血漿試料においてIAPPは4°Cで2時間安定であった。一方、一般的にペプチド測定に適用されているアプロチニンとEDTA添加血漿に加えられた合成IAPPの免疫活性は4°C、2時間で16%失われた。健常人のIAPP濃度は1.8-5.93pmol/Lの範囲内にあり、膵癌患者の平均濃度は健常人に比較して有意に上昇していた(7.1±0.9 vs 4.0±0.3pmol/L、p<0.001)。しかし、ラ氏島細胞癌、胆嚢癌、十二指腸乳頭癌、腎癌、及び慢性、急性の膵炎の患者の一部においても高値が見られた。カットオフ値を6pmol/Lとした場合の感度と特典性はそれぞれ47%と73%であった。一方、CA19-9との組み合わせにおいて(CA19-9のcut off値:70IU/ml)いずれかの値がcutoff値以上である場合をポジティブとするとその感度と特異性はそれぞれ85%と63%であった(Clin Chem 47:2071,2001)。さらに、上記測定系と異なった抗原部位を認識するモノクローナル抗体を用いた固相EIAを確立し、同試料を測定した場合も膵癌検出傾向は変わらなかった。このように、IAPPは単独では早期膵癌検出の有用なマーカーではないと結論された。血中アミリンを高感度で精度よく測定するための測定系(RIA)を確立した。本測定法を用いて、健常人(n=22)、膵癌患者(n=30)、他の種々の癌患者(n=10)及び急性、慢性膵炎患者(各n=10)の血中アミリン濃度を測定した。膵癌患者の血中アミリン濃度(mean±SE)は7.13±0.93pMで健常人の血中アミリン濃度(4.01±0.26pM)に比較して、有意に高値を示した。しかし、膵ラ島癌や膵炎患者においても高値を示す症例が見られた。手術可能な時期での早期診断が極めて難しい膵癌の腫瘍マーカーとして、有用であるかどうかを判定するために、膵部門(Mayo Clinic,USA)を訪れた患者群を対象として測定した結果を膵癌(n=30)と非膵癌(n=44)に分けて解析した。検出感度は47%で特異性は73%であった。本RIAで用いた抗体と異なった抗原部位を認識する二つのモノクローナル抗体を用いた固相EIAを確立し、同じ検体を測定した。両測定法での結果の相関は高く(R=0.83)、このEIA法でも膵癌検出傾向は変わらなかった。 | KAKENHI-PROJECT-12672260 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12672260 |
膵癌早期診断のための血中アミリン濃度の特異性と感度の検討とアミリン測定法の改良 | 現在一般に用いられているCA19-9の測定結果と組み合わせて,どちらかがcut off値以上であった場合を陽性とした分析結果では感度85%、特異性は63%であった。血中アミリンは膵癌の腫瘍マーカーとして期待されたが、単独では有力ではなく、他の検査との総合的な診断に用いられるべきと考えられた。一方、1-2年以内に糖尿病を発症した患者群に限れば、検出感度は上がると考えられた。これまでのアミリン測定法には再現性の点で問題があるものが多かったが、本研究で確立した測定法は再現性に問題がなく、精度よく、アミリン研究(アミリンの膵B細胞障害機序の解析、Am J Pathol 157:2101,2000)に用いることが出来た。アミリン(islet amyloid polypeptide : IAPP)の膵癌マーカーとしての有用性を米国Mayo Clinicとの共同研究で検討した(平成12年度)。その結果、健常人に比べて、高濃度の血中IAPPは膵癌患者において検出されたが、切除可能な膵癌の検出感度はCAl9-9よりも低かった(40% vs 75%,P<0.001)。この有用性の低さは血中のプロテアーゼによるIAPPの分解による可能性が否定できなかったので、採血時に血液に添加するプロテアーゼ阻害剤の検討をおこなった。血液1ml当たり2μg antipain dihydrochloride,25μg elastatinal,0.5μg leupeptin及び0.5mgEDTA(PIM)を加えた試験管に採血し、直ちに血漿分離して測定まで-80°Cで保存した。このような血漿試料においてIAPPは4°Cで2時間安定であった。一方、一般的にペプチド測定に適用されているアプロチニンとEDTA添加血漿試料に加えられた合成IAPPの免疫活性は4°C、2時間で16%失われた。PIMを加えた適切な血漿試料を用いてIAPPの膵癌マーカーとしての有用性を再検討した。その結果、健常人のIAPP濃度は1.8-5.93pmol/Lの範囲内にあり、膵癌患者の平均濃度は健常人に比較して有意に上昇していた(7.1±0.9 vs 4.0±0.3pmol/L、P<0.001)。しかし、ラ氏島細胞癌、胆嚢癌、十二指腸乳頭癌、腎癌、及び慢性、急性の膵炎の患者の一部においても高値が見られた。カットオフ値を6pmol/Lとした場合の感度と特異性はそれぞれ47%と73%で、適切に処理された血漿試料を使っても、膵癌の検出のためのIAPPの有用性を有意に上げることは出来なかった。上記の測定系(RIA)と異なった抗原認識部位を検出するEIAで測定した場合と比較しても(両測定法の相関係数は0.83)感度と特異性において差は見られなかった。このように、IAPPは単独では早期膵癌検出の有用なマーカーにはなりえないと結論された。 | KAKENHI-PROJECT-12672260 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12672260 |
視床下部神経内分泌細胞における免疫系情報の受容機構の解析 | 電気生理学的手法ならびにCa^<2+>画像解析法を用いて視床下部視索上核(SON)ニューロンならびに下垂体中葉内分泌細胞へのプロスタグランディン(PG)の作用機構、受容体サブタイプの解析を行い、以下の成績を得た。1.バゾプレシンおよびオキシトシン分泌を亢進するプロスタグランディンE_2(PGE_2)はスライス標本中のSONニューロンにおいて8割以上のニューロンで放電頻度の増加を引き起こした。2.PGF_<2α>およびFPアゴニストであるfluprostenolも同様の興奮作用を示したが、EP,DP,IP,TPアゴニストの作用はこれらに比して弱かった。EP_1アンタゴニストであるSC-51322ならにびEP/FPアンタゴニストであるONO-NT-012はPGE_2の興奮作用に有意な効果を示さなかったのに対し、fluprostenolによる興奮はONO-NT-012で抑制された。3.PGE_2は単離したSONニューロンに直接作用し、非選択的陽イオン電流の活性化を引き起こした。しかしながらPGを介して視索上核ニューロンに興奮性の効果を有すると考えられていたサイトカイン、インターロイキン1β(IL-1β)は直接効果を示さなかった。4.スライスパッチクランプ法を用いてSONニューロンへの自発性シナプス入力を検討したところ、PGE_2はグルタミン酸による興奮性シナプス入力には著明な影響を与えずGABAによる抑制性シナプス入力を選択的に抑制した。5.PGE_2およびPGF_<2α>、FluprostenolはSONニューロンに直接作用し、細胞内Ca^<2+>濃度([Ca^<2+>]i)の上昇を引き起こしたが、インターロイキン1βは直接効果を示さなかった。6.ホールセルパッチクランプ法を用いて中葉細胞の膜電位依存性Ca^<2+>チャネル電流(IBa)を解析したところ、PGE_2は百日咳毒素感受性GTP結合蛋白を介して膜電位依存性Ca^<2+>チャネルを抑制した。電気生理学的手法ならびにCa^<2+>画像解析法を用いて視床下部視索上核(SON)ニューロンならびに下垂体中葉内分泌細胞へのプロスタグランディン(PG)の作用機構、受容体サブタイプの解析を行い、以下の成績を得た。1.バゾプレシンおよびオキシトシン分泌を亢進するプロスタグランディンE_2(PGE_2)はスライス標本中のSONニューロンにおいて8割以上のニューロンで放電頻度の増加を引き起こした。2.PGF_<2α>およびFPアゴニストであるfluprostenolも同様の興奮作用を示したが、EP,DP,IP,TPアゴニストの作用はこれらに比して弱かった。EP_1アンタゴニストであるSC-51322ならにびEP/FPアンタゴニストであるONO-NT-012はPGE_2の興奮作用に有意な効果を示さなかったのに対し、fluprostenolによる興奮はONO-NT-012で抑制された。3.PGE_2は単離したSONニューロンに直接作用し、非選択的陽イオン電流の活性化を引き起こした。しかしながらPGを介して視索上核ニューロンに興奮性の効果を有すると考えられていたサイトカイン、インターロイキン1β(IL-1β)は直接効果を示さなかった。4.スライスパッチクランプ法を用いてSONニューロンへの自発性シナプス入力を検討したところ、PGE_2はグルタミン酸による興奮性シナプス入力には著明な影響を与えずGABAによる抑制性シナプス入力を選択的に抑制した。5.PGE_2およびPGF_<2α>、FluprostenolはSONニューロンに直接作用し、細胞内Ca^<2+>濃度([Ca^<2+>]i)の上昇を引き起こしたが、インターロイキン1βは直接効果を示さなかった。6.ホールセルパッチクランプ法を用いて中葉細胞の膜電位依存性Ca^<2+>チャネル電流(IBa)を解析したところ、PGE_2は百日咳毒素感受性GTP結合蛋白を介して膜電位依存性Ca^<2+>チャネルを抑制した。電気生理学的手法ならびにCa^<2+>画像解析法を用いて視床下部視索上核および下垂体中葉細胞のプロスタグランディン(PG)の細胞内作用機構、受容体サブタイプの解析を行い、以下の成績を得た。1.視床下部視索上核ニューロンにおけるPGの作用:視索上核(SON)にはPGE_2ならびにEP受容体が存在すること、PGE_2がバゾプレシンならびにオキシトシン分泌を促進することが知られている。そこでスライス標本を用いてラットSONニューロンに対するPGE_2の作用を解析したところ、約8割のニューロンにおいてPGE_2は興奮作用を示した。この作用は10^<-10>10^<-6>の範囲で濃度依存性であった。PGE_2以外のPGならびにPG受容体アゴニストで最も顕著な興奮作用を示したのはPGF_2αおよびFPアゴニストであるfluprostenolであり、EP,DP,IP,TPアゴニストの作用はこれらに比して弱かった。さらに単離SONニューロンにおいてホールセルパッチクランプ法によりPGE_2の作用を検討したところ、PGE_2は逆転電位が約-35mVの電流を生じること、この逆転電位はパッチ電極のCI濃度に影響を受けないことが判明した。さらに単離SONニューロンにFura-2を用いたCa^<2+>画像解析法を適用したことろ、PGE_2ならびにfluprostenolにより、著明な細胞内Ca^<2+>濃度の増加が観察された。 | KAKENHI-PROJECT-08457022 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08457022 |
視床下部神経内分泌細胞における免疫系情報の受容機構の解析 | またスライスパッチクランプ法をもちいてSONニューロンへの自発性シナプス入力を検討したところ、興奮性、抑制性シナプス入力ともにPGによって著明な影響を受けないことが判明した。これらの結果により、PGE_2は視索上核においてシナプス後膜に存在するPG受容体に直接作用して、非選択性陽イオンチャネルを活性化し、膜電位の脱分極を引き起こす結果、放電頻度を増加させること、膜電位依存性Ca2+チャネルを活性化して細胞内Ca^<2+>濃度を増加させることが明らかとなった。さらにPGE_2の作用は従来知られていたEP受容体ではなくむしろFP様受容体を介して作用している可能性が示唆された。2.下垂体中葉細胞におけるPGの作用:下垂体中葉細胞にはEP受容体が高密度存在し、PGE_2により、αMSH分泌が抑制されること、細胞内Ca^<2+>濃度が減少することが報告されている。この作用機序を知る目的で、ホールセルパッチクランプ法を用いて中葉細胞の膜電位依存性Ca^<2+>チャネル電流(ICa)におよぼすPGE_2の作用を解析した。PGE_2は濃度依存性にICaを抑制し、この抑制はprepulse(150mV,50ms)百日咳毒素前処置により解除された。さらに同様のICaの抑制がEP1およびEP3アゴニストによってもみられた。これらの結果より、下垂体中葉においてPGE_2はEP1およびEP3受容体、百日咳毒素感受性GTP結合蛋白を介して膜電位依存性Ca^<2+>チャネルを抑制することが示唆された。電気生理学的手法ならびにCa^<2+>画像解析法を用いて視床下部視索上核(SON)ニューロンヘのプロスタグランディン(PG)の作用機構、受容体サブタイプの解析を行い、以下の成績を得た。ラットSONのスライス標本において細胞外記録法を用いてPGE_2の作用を解析したところ、約8割のSONニューロンにおいてPGE_2は興奮作用を示した。この作用は10^<-10>10^<-6>Mの範囲で濃度依存性であった。PGF_<2α>およびFPアゴニストであるfluprostenolも同様の興奮作用を示したが、EP,DP,IP,TPアゴニストの作用はこれらに比して弱いか、無効果であった。またEP1アンタゴニストであるSC-51322ならびにEP/FPアンタゴニストであるONO-NT-012はPGE_2の興奮作用に有意な効果を示さなかったのに対し、fluprostenolによる興奮はONO-NT-012で抑制された。さらに単離SONニユーロンにおいてホールセルパッチクランプ法によリPGE_2の作用を検討したところ、PGE_2は逆転電位が約-35mVの電流を生じること、この逆転電位はパッチ電極のCl^-濃度に影響を受けないことが判明した。さらに単離SONニューロンにFura-2を用いたCa^<2+>画像解析法を適用したところ、PGE_2ならびにfluprostenolにより、著明な細胞内Ca^<2+>濃度の増加が観察された。またスライスバッチクランプ法を用いてSONニューロンヘの自発性シナプス入力を検討したところ、PGE_2はグルタミン酸による興奮性シナプス入力には著明な影響を与えずGABAによる抑制性シナプス入力を選択的に抑制することが判明した。 | KAKENHI-PROJECT-08457022 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08457022 |
セキュアで透過的なIoTエージェントプラットフォームの研究 | H30年度はSecure IoT Agent Platformの高機能化とその機能呼び出しのフレームワーク化を行った。本研究では、特に、IoTで扱うデータをクラウド上で秘匿分散する仕組みを実装した。本機能は、中川+下條によるm-cloud:秘匿分散統計解析手法を応用したもので、データを複数に分割してクラウド上に保存することを特徴とする。クラウド上に安全に保存されたデータは、複数クラウドからの統計情報を集約することで、多数のIoTデバイスから取得されるデータの平均、分散をはじめ、様々な統計指標を正確で誤差なく計算することができる。個々のIoTデバイスが持つデータはプライバシーに関わる情報を有する可能性があり、これらのデータをクラウド上に保存する際に秘匿分散を行うことでプライバシー情報の漏洩リスクを低減する。既存の研究でも報告されている通り、いくつかのサービスでは、プライバシーを確保しつつ、サービス基礎となる統計解析指標を得る手段として同手法は有用である。また、同機能を利用するため、Secure IoT Agent Platformがフレームワークとして利用している透過的クラウドの仕組みを拡張した。デバイス上の開発では、クラウド上で秘匿分散されていることを意識せず、容易かつ直感的な開発によって、秘匿分散統計解析手法のメリットを得られるよう、フレームワーク拡張の設計と実装を行った。本拡張では、デバイスから、クラウド上にデータをアップロードする際、透過的クラウドフレームワークのライブラリ内でデータの分割と複数へのアップロードを自動的に処理することにより、上位層のプログラムの改変を不要としたことが特徴である。本研究の当初計画では、H30年度上期に「エージェントが扱うデータの秘匿分散化」を、また、H30年度下期に「透過的な機能呼び出しのフレームワーク化」を予定していた。H30年度は、おおむね計画通りに研究を進めた。前者の秘匿分散化では、m-cloud:秘匿分散統計解析手法を応用したクラウド上のデータの分割・分散保存と、同手法による統計指標の計算の仕組みを設計・実装した。同研究内容は、COMPSAC 2018及びP2P and overlay研究会でその成果を発表した。後者のフレームワーク化については、前述、秘匿分散化の機能を透過的クラウドの開発フレームワーク内での実装を行うことにより、デバイス上の開発において、秘匿分散を活用するためのオーバーヘッドなしで、その機能を利用できるようにした。より具体的には。透過的クラウドの開発フレームワークのライブラリ内にデータ分割及び分散アップロードの機能を実装し、上位層にはその詳細の仕組みを意識させることなく、秘匿分散手法のメリットを得られるようにした。H31年度はSecure IoT Agent Platformの実用化研究を行う。本研究では、主として(1)実用化に向けたビジネスモデルの検討、および(2)実用化に向けた課題と対応策の検討、に取り組む。前者「実用化に向けたビジネスモデルの検討」では、Secure IoT Agent Platformに関するいくつかの具体的な応用事例を想定し、対象となる企業や事業者へのヒアリングや議論を通して、ビジネスモデルの検討を行う。特に、Secure IoT Agent Platformは、IoTデバイスが有するべき、通信やセキュリティに関する機能をクラウド・プラットフォーム上に置くことで、それらの機能の責任分介点をクラウド上に定義することを特徴とする。その特徴を活かしたサービスの設計と、相応するビジネスモデルの検討が重要と考えている。後者「実用化に向けた課題と対応策の検討」については、前述のビジネスモデル検討で明らかにされる実用化に向けた課題を深掘りし、その整理と対応策の検討を行う。前述の責任分介点の定義の他、クラウド上のデータの所有権、クラウド上のエージェントの管理・運用、セキュリティ、コストと価格、など様々な課題が想定されるが、これらの課題を明らかにしつつ、可能な範囲でその対応策についても検討する。なお、中川はTクラウド研究会でIoTの新ビジネスの検討に関する研究活動を行っているが、同研究会での発表や議論、あるいは実証実験の結果をフィードバックし、本研究を推進していく。本研究では、近年、IoTの重要な課題とされる、IoTデバイスのセキュリティの向上を目的としてIoT Agent Platformを提案した。同アーキテクチャの前提として、まず、物理的なデバイス上に、本来のデバイスの機能とIoTの機能を共存させることについての本質的な課題について、機能としてのスコープ、ライフサイクル、モニタリング・メンテナンス、アップデート、責任分介点など様々な視点から分析し、現状のデバイス開発者の視点でIoT機能を提供することの難しさとリスクについて整理した。特に、物理デバイスを開発・提供する事業者は、歴史的にモノを販売することを主としており、通信や機能を永続的に提供する、というサービスモデルとはまったく異なるため、セキュリティの設計・実装を行うことが極めて難しいことを明らかにした。また、これらの課題を解決するために、IoT Agent Platformを設計し、プロトタイプ実装を行った。同Platformでは、IoTデバイスからインターネットとの通信に関わる機能を分離し、同機能をクラウド上のエージェント上で実現するアーキテクチャを提案した。本アーキテクチャでは、IoTデバイス上での開発モデルとして、透過的クラウド開発フレームワークを応用し、直感的かつ簡単なプログラミングによってAgentとの連携が可能なモデルを提案した。プロトタイプ実装では、スマートホームなどで扱われるIoT家電を想定し、家電が持つ各種のデータをクラウド上のAgentで扱う仕組みを実装し、その有効性を検証した。本質的な課題の整理については、スコープ、ライフサイクル、モニタリング・メンテナンス、アップデート、責任分介点など様々な視点について整理できた。また、基本アーキテクチャについては、IoTデバイスとクラウド上のAgentの機能分担、及びその間の通信モデル及び開発の手法については透過的クラウドの手法を応用する形で提案を行った。同時にプロトタイプ実装を用いて、その基本的な機能について有効性を検証した。 | KAKENHI-PROJECT-17K00123 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K00123 |
セキュアで透過的なIoTエージェントプラットフォームの研究 | H30年度はSecure IoT Agent Platformの高機能化とその機能呼び出しのフレームワーク化を行った。本研究では、特に、IoTで扱うデータをクラウド上で秘匿分散する仕組みを実装した。本機能は、中川+下條によるm-cloud:秘匿分散統計解析手法を応用したもので、データを複数に分割してクラウド上に保存することを特徴とする。クラウド上に安全に保存されたデータは、複数クラウドからの統計情報を集約することで、多数のIoTデバイスから取得されるデータの平均、分散をはじめ、様々な統計指標を正確で誤差なく計算することができる。個々のIoTデバイスが持つデータはプライバシーに関わる情報を有する可能性があり、これらのデータをクラウド上に保存する際に秘匿分散を行うことでプライバシー情報の漏洩リスクを低減する。既存の研究でも報告されている通り、いくつかのサービスでは、プライバシーを確保しつつ、サービス基礎となる統計解析指標を得る手段として同手法は有用である。また、同機能を利用するため、Secure IoT Agent Platformがフレームワークとして利用している透過的クラウドの仕組みを拡張した。デバイス上の開発では、クラウド上で秘匿分散されていることを意識せず、容易かつ直感的な開発によって、秘匿分散統計解析手法のメリットを得られるよう、フレームワーク拡張の設計と実装を行った。本拡張では、デバイスから、クラウド上にデータをアップロードする際、透過的クラウドフレームワークのライブラリ内でデータの分割と複数へのアップロードを自動的に処理することにより、上位層のプログラムの改変を不要としたことが特徴である。本研究の当初計画では、H30年度上期に「エージェントが扱うデータの秘匿分散化」を、また、H30年度下期に「透過的な機能呼び出しのフレームワーク化」を予定していた。H30年度は、おおむね計画通りに研究を進めた。前者の秘匿分散化では、m-cloud:秘匿分散統計解析手法を応用したクラウド上のデータの分割・分散保存と、同手法による統計指標の計算の仕組みを設計・実装した。同研究内容は、COMPSAC 2018及びP2P and overlay研究会でその成果を発表した。後者のフレームワーク化については、前述、秘匿分散化の機能を透過的クラウドの開発フレームワーク内での実装を行うことにより、デバイス上の開発において、秘匿分散を活用するためのオーバーヘッドなしで、その機能を利用できるようにした。より具体的には。透過的クラウドの開発 | KAKENHI-PROJECT-17K00123 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K00123 |
新規アクリル系モノマーの精密構造制御重合法の開発およびその応用 | α-(置換メチル)アクリル酸エステルは、オレフィンのα位に2種類の官能基を有するモノマーである。我々は、そのリチウム反応剤等を用いたアニオン重合が、α位に導入する置換基を設計することにより、イソタクチック特異的に進行することを見いだした。本研究では、このモノマーデザインによる重合の高度な立体制御をさらに発展、応用することにより、以下のことを明らかにした。1.α-位に2級のアミノ基、チオフェン等のヘテロ芳香環、チオエーテル基等、様々な官能基を有するα-(置換)アクリル酸エステルのアニオン重合について検討した結果、いずれもモノマーの構造および重合反応をうまくデザインすることにより、生成ポリマーの構造を高度に制御できることを明らかにした。2.通常、その立体制御が極めて困難であるラジカル重合において、触媒量のルイス酸を添加し、そのモノマーおよび成長末端への配位構造を制御することにより、イソタクチックからシンジオタクチックに至る様々な立体規則性を有するポリマーを合成することに成功した。さらにこの手法を応用し、汎用性モノマーであるアクリルアミド類の重合における高度な立体制御を達成した。3.スチレンのオルト位に光学活性ジアミンを導入したモノマーを設計し、アニオン重合を行なうことにより、生成ポリマーの1次構造のみならず、ポリスチレン誘導体ではこれまで例のない、主鎖の規則的な構造に基づくと考えられるらせん構造等の高次構造制御を達成した。4.α-(置換メチル)アクリル酸エステルの特徴的なモノマー構造に着目し、マクロ環状モノマーを設計、アニオン重合を行うことにより、新規な構造を有するポリ(クラウンエーテル)を構築した。さらにその特徴的な機能について明らかにし、ナノチューブ構造の構築やより高度な機能の創成が可能であることを示した。α-(置換メチル)アクリル酸エステルは、オレフィンのα位に2種類の官能基を有するモノマーである。我々は、そのリチウム反応剤等を用いたアニオン重合が、α位に導入する置換基を設計することにより、イソタクチック特異的に進行することを見いだした。本研究では、このモノマーデザインによる重合の高度な立体制御をさらに発展、応用することにより、以下のことを明らかにした。1.α-位に2級のアミノ基、チオフェン等のヘテロ芳香環、チオエーテル基等、様々な官能基を有するα-(置換)アクリル酸エステルのアニオン重合について検討した結果、いずれもモノマーの構造および重合反応をうまくデザインすることにより、生成ポリマーの構造を高度に制御できることを明らかにした。2.通常、その立体制御が極めて困難であるラジカル重合において、触媒量のルイス酸を添加し、そのモノマーおよび成長末端への配位構造を制御することにより、イソタクチックからシンジオタクチックに至る様々な立体規則性を有するポリマーを合成することに成功した。さらにこの手法を応用し、汎用性モノマーであるアクリルアミド類の重合における高度な立体制御を達成した。3.スチレンのオルト位に光学活性ジアミンを導入したモノマーを設計し、アニオン重合を行なうことにより、生成ポリマーの1次構造のみならず、ポリスチレン誘導体ではこれまで例のない、主鎖の規則的な構造に基づくと考えられるらせん構造等の高次構造制御を達成した。4.α-(置換メチル)アクリル酸エステルの特徴的なモノマー構造に着目し、マクロ環状モノマーを設計、アニオン重合を行うことにより、新規な構造を有するポリ(クラウンエーテル)を構築した。さらにその特徴的な機能について明らかにし、ナノチューブ構造の構築やより高度な機能の創成が可能であることを示した。1.α-置換アクリル酸エステルのラジカル重合における立体制御一般に、ビニルモノマーのラジカル重合において、立体規則性を制御することは極めて困難であり、その制御法の開発は高分子合成の分野において最も重要な研究課題の1つである。Α-(アルコキシメチル)アクリル酸エステルの開始剤として(i-PrOCO_2)_2を用いたラジカル重合において、種々の金属塩の添加効果について検討した結果、金属塩を添加しない場合、アタクチックなポリマーを与えるのに対し、触媒量のZnBr_2(r=71%)、及びSc(OTf)_3(m=69%)が、大きな添加効果を示すことがわかった。本重合系では、これらルイス酸の成長末端あるいはモノマーのα-位の官能基への配位が、立体制御において重要な役割を果たしている。以上、ラジカル重合において添加する金属塩の種類を選ぶことにより、イソタクチックからシンジオタクチックに至るポリマーを作り分けることに成功した。2.α-置換アクリル酸エステルのアニオン重合における立体制御α-位に2級のアミノ基、チオフェン等のヘテロ芳香環、チオエーテル基等を有するα-(置換)アクリル酸エステルのアニオン重合について検討した結果、いずれもモノマーの構造、重合反応系をうまくデザインすることにより、生成ポリマーの構造を高度に制御できることがわかった。例えば、α-位に2級のアミノ基を有するα-(アミノメチル)アクリル酸エステルは、活性なアミノプロトンを有するため、これまでそのアニオン重合については、全く知られていなかった。これに対して、アミノ基上の置換基や開始剤をうまくデザインすることにより、イソタクチックからシンジオタクチックに至る、ビニルポリマー骨格のみからなるポリマーを選択的に得ることが可能となった。1.α-置換アクリル酸エステルのラジカル重合における立体制御およびその制御機構一般に、ビニルモノマーのラジカル重合において、立体規則性を制御することは極めて困難であり、その制御法の開発は高分子合成の分野において最も重要な研究課題の1つである。 | KAKENHI-PROJECT-11450355 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11450355 |
新規アクリル系モノマーの精密構造制御重合法の開発およびその応用 | 我々は、α-(アルコキシメチル)アクリル酸エステルのラジカル重合が、通常アタクチックなポリマーを与えるのに対し、触媒量のルイス酸ZnBr_2、あるいはSc(OTf)_3を添加することにより、シンジオタクチック(r=72%)からイソタクチック(m=69%)に至るポリマーを作り分けることに成功した。さらに本重合系を詳細に検討することにより、その制御機構を明らかにするとともに、ルイス酸触媒のより精密なデザインに基づき、ヘテロタクチシチーに富むポリマーを選択的に得ることにも成功した。2.オルト-置換スチレンのアニオン重合における立体制御我々は、これまでにα-位に種々の官能基を有するα-(置換)アクリル酸エステルのアニオン重合において、官能基のカウンターカチオンへの配位をうまく制御することにより、生成ポリマーの構造を高度に制御できることを明らかにしている。この結果に基づき、スチレン誘導体のアニオン重合における立体制御について検討を行なった。スチレンのオルト位に光学活性ジアミンを導入したモノマーを設計し、アニオン重合を行なうことにより、生成ポリマーの1次構造のみならず、主鎖の規則的な構造に基づくと考えられるらせん構造等の高次構造制御を達成した。これまで安定な1方向巻きのらせん構造を有するポリスチレン誘導体の合成例は全く知られておらず、新規光学活性材料としての応用が期待される。マクロ環状α-(アルコキシメチル)アクリル酸エステルの立体特異性アニオン重合と機能α-(置換メチル)アクリル酸エステルは、オレフィンのα位に2種類の官能基を有するモノマーである。我々は、このα-(置換メチル)アクリル酸エステルの特徴的なモノマー構造に着目し、exo-メチレン基を有する新規マクロ環状モノマーを設計・合成し、その立体特異性重合を行い、さらに得られたポリマーの機能について検討した。ここで得られるポリマーは、マクロ環が主鎖に対して垂直に固定化された構造を有し、その合成例はこれまで知られていない。従って、全く新しいイオン・分子認識能を有するポリマーとしての応用が考えられるだけでなく、その特徴的な構造に基づく新規機能の発現が期待できる。クラウンエーテル型構造を有するマクロ環状モノマーをアニオン重合することにより、種々の立体規則性を有する新規なビニルポリマー、ポリ(クラウンエーテル)が得られた。これらのポリマーのアルカリ金属イオン抽出能の評価を行った結果、環構造および立体規則性の違いによるアルカリ金属イオン抽出能の大きな違いが認められ、さらにこれらのポリマーが従来の側鎖にクラウンエーテルを有するポリマーにはない、特徴的な抽出能を示すことが明らかとなった。また、ポリマーをベシクル二分子膜中に導入し、人工イオンチャンネルとしての機能について検討を行った結果、本研究において合成されたポリマーが、Co^<2+>のイオンチャンネルとしての機能を有することが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-11450355 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11450355 |
RHICエネルギーでの原子核効果の解明とQGP相の研究 | 申請者は、昨年度に引き続き、米国ブルックヘブン国立研究所の相対論的重イオン加速器(RHIC)を用いたPHENIX実験に参加し、2004年度に取得された核子あたり重心系エネルギー200GeVの金・金衝突におけるJ/ψ粒子の収量測定に関する研究を行ってきた。今年度は、昨年度中にPHENIXのPreliminaryな結果として認められた申請者の研究結果を投稿論文とするための最終チェックを行った。全統計量を用いて、電子に対する各種検出器の応答の校正、ラン毎のチェックを行い、電子・陽電子の不変質量分布を算出し、バックグランドを詳細に検証する事でJ/ψを同定し、系統誤差も詳細に見積もった。不変生成断面積を算出するために、検出器の稼動領域や電子に対する検出効率からくるJ/ψ粒子に対するアクセプタンスを、モンテカルロシミュレーションを用いて評価し、昨年度の地点では不十分だった運動量分解能によるSmearingの効果やJ/ψが電子対と光子に変換する効果も考慮し、詳細に評価した。申請者が算出したJ/ψ粒子の不変生成断面積の中心衝突度依存性はPHENIX実験の最終結果として投稿論文に纏められた。得られたJ/ψ収量の中心衝突度依存性から、J/ψ粒子は金・金中心衝突では陽子・陽子衝突から予想される収量の約1/4程度まで抑制されている事が分かった。申請者はJ/ψ収量抑制のモデルを構築し、J/ψはクォーク物質中でカラー遮蔽効果により溶解し、溶解温度はクォーク物質への転移を起こす2.1倍の温度である事を突き止めた。これは最近行われている格子QCD計算といい一致を見ている。この研究は実験結果を通じてJ/ψの溶解温度を算出した最初の結果となり、J/ψがクォーク物質の温度計として有効利用できる可能性を実証した最初の例である。実データの解析やモデル計算に関する一連の研究結果は申請者の博士論文として纏められた。報告者は、米国ブルックヘブン国立研究所の高エネルギー重イオン加速器(RHIC)を用いたPHENIX実験に参加し、昨年度取得された金・金原子核衝突実験のデータ解析を始めた。取得されたデータは数百テラバイトにも及ぶため、同研究所に長期滞在し、同研究所の解析センターで研究を行った。初めに各検出器の校正を行い、電子陽電子の不変質量分布を算出する事でJ/psi粒子を同定した。更に、J/psi粒子の不変生成断面積を算出するために、検出器の有効領域や稼働状況からくる検出効率を、シミュレーションを用いて評価した。この解析状況は毎週のミーティングで報告され、更に今年度の日本物理学会でも報告された。今年度購入したノートパソコンはこれらの発表原稿作成に不可欠であった。また、報告者は高エネルギー重イオン衝突実験で使用される次世代検出器「遷移輻射検出器(TRD)」の開発に参加した。この検出器は2007年から欧州素粒子原子核研究所の大型ハドロン加速器を用いて行われるALICE実験に導入され、飛跡再構成や電子同定を行う重事な検出器である。この実験はRHIC加速器より30倍程大きなエネルギーで重イオンを衝突させるため、QGP相の実現が高確率で期待され、QGP相の特性を研究する上で非常に重要な実験である。報告者は、今年度10月に欧州素粒子原子核研究所で行われた遷移輻射検出器のテスト実験に参加し、電子陽電子の優れた同定アルゴリズムの開発を行い、J/psi粒子の同定能力に関する研究を行った。この研究はPHENIX実験におけるJ/psi粒子測定を研究する上でよい比較研究となった。また、この滞在中に遷移輻射検出に関する出版論文の最終議論が行われた。報告者は米国ブルックヘブン国立研究所の高エネルギー重イオン加速器(RHIC)を用いたPHENIX実験に参加し、2003年度取得された金・金原子核衝突のデータ解析を引き続き行った。取得されたデータ量は数百デラバイトにも及ぶため、同研究所に長期滞在し、同研究所の解析センターで研究を行った。今年度末までに2003年度取得された金・金原子核衝突のデータ再構成が終了し、全統計を用いての研究が可能となった。その高統計のデータを用いて、検出器の校正を再確認し、電子・陽電子を同定し、不変質量分布を算出する事で、J/psi粒子の同定を行った。更にJ/psi粒子の不変生成断面積を算出する為に検出器の有効領域や稼動領域から来る検出効率を、シミュレーションを用いて評価した。更に、算出された不変生成断面積に対する系統誤差を評価し、この結果は、Preliminaryな結果としてPHENIX実験で了承された。この研究では、当研究室の研究者にも補助を依頼し、彼らとの協力の下で完遂された。この結果は、日米合同で行われた物理学会で発表され、他の国際会議やワークショップでも発表された。購入したハードディスクは、解析段階で生成され使用された様々なファイルの保存に使用されている。また報告者は、高エネルギー重イオン実験における次世代検出器「Hadron Blind Detector (HBD)」の開発にも参加している。この検出器は、2007年度からPHENIX実験に導入され、電子・陽電子対を用いたφ、ωという低質量ベクター中間子の同定を効率よく行う検出器であり、J/psi領域のバックグランドも減少される事が期待される。本年度は、このHBDのR&Dの為に、チェンバーの開発や関連部品の購入などを行った。 | KAKENHI-PROJECT-04J11332 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04J11332 |
RHICエネルギーでの原子核効果の解明とQGP相の研究 | この研究は、当研究室の研究員の協力によって行われ、研究成果は日本物理学会で発表予定である。申請者は、昨年度に引き続き、米国ブルックヘブン国立研究所の相対論的重イオン加速器(RHIC)を用いたPHENIX実験に参加し、2004年度に取得された核子あたり重心系エネルギー200GeVの金・金衝突におけるJ/ψ粒子の収量測定に関する研究を行ってきた。今年度は、昨年度中にPHENIXのPreliminaryな結果として認められた申請者の研究結果を投稿論文とするための最終チェックを行った。全統計量を用いて、電子に対する各種検出器の応答の校正、ラン毎のチェックを行い、電子・陽電子の不変質量分布を算出し、バックグランドを詳細に検証する事でJ/ψを同定し、系統誤差も詳細に見積もった。不変生成断面積を算出するために、検出器の稼動領域や電子に対する検出効率からくるJ/ψ粒子に対するアクセプタンスを、モンテカルロシミュレーションを用いて評価し、昨年度の地点では不十分だった運動量分解能によるSmearingの効果やJ/ψが電子対と光子に変換する効果も考慮し、詳細に評価した。申請者が算出したJ/ψ粒子の不変生成断面積の中心衝突度依存性はPHENIX実験の最終結果として投稿論文に纏められた。得られたJ/ψ収量の中心衝突度依存性から、J/ψ粒子は金・金中心衝突では陽子・陽子衝突から予想される収量の約1/4程度まで抑制されている事が分かった。申請者はJ/ψ収量抑制のモデルを構築し、J/ψはクォーク物質中でカラー遮蔽効果により溶解し、溶解温度はクォーク物質への転移を起こす2.1倍の温度である事を突き止めた。これは最近行われている格子QCD計算といい一致を見ている。この研究は実験結果を通じてJ/ψの溶解温度を算出した最初の結果となり、J/ψがクォーク物質の温度計として有効利用できる可能性を実証した最初の例である。実データの解析やモデル計算に関する一連の研究結果は申請者の博士論文として纏められた。 | KAKENHI-PROJECT-04J11332 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04J11332 |
チロシンキナーゼSykが発癌に抑制的に関わる分子機構の解明 | チロシンキナーゼSykは乳癌等を用いた解析によりその悪性化を阻止する作用が報告されたが分子作用機序については未解明である。Sykが発がんとその後の病態に抑制的に関わる分子作用機序を明らかにするため、骨髄微小環境における白血病発症モデルとなる実験系を利用した。フィブロネクチンまたはヒアルロン酸を塗布した培養プレート上で、増殖因子依存性細胞株BAF3および32DをケモカインCXCL12で刺激し、誘導されるシグナル伝達を、細胞接着性、運動性および細胞形態の変化とともに解析した。両細胞株は刺激後すみやかに形態変化をおこし、細胞極性を伴った移動を開始した。すなわち細胞移動の前方側に葉状突起、後方側に細胞が収縮したような構造、uropodが生じた。この変化と呼応してSykの活性化が認められた。そこで野生型およびキナーゼ不活性型、優性抑制型,Sykをこれら細胞株に導入した。Syk野生型の大量発現により刺激前より細胞極性を示す細胞が増加したがキナーゼ不活性型ではそのような効果は得られなかった。また、優性抑制型Sykを発現した場合には、刺激前の細胞移動度が上昇し、細胞極性の形成、典型的なuropodの構造が消失した。この細胞では細胞接着も減少しており、SykがCXCR4により誘導される細胞極性とuropod構造を介した細胞接着の両シグナルの上流で機能することが示唆された。そこで、この機構に関わるシグナル伝達分子としてRho-pathwayの活性化について解析した。野生型細胞株ではCXCL12刺激によりRhoAの活性化型が速やかに上昇したが、優性抑制型Syk発現細胞では上昇が認められなかった。本研究の成果は、チロシンリン酸化を介したケモカインシグナルが、細胞の極性化と接着制御により骨髄微小環境での安定した造血細胞の成熟に寄与する事を示しており、癌悪性化に関わる分子メカニズムの解明に寄与する。チロシンキナーゼSykは乳癌等を用いた解析によりその悪性化を阻止する作用が報告されたが分子作用機序については未解明である。Sykが発がんとその後の病態に抑制的に関わる分子作用機序を明らかにするため、骨髄微小環境における白血病発症モデルとなる実験系を利用した。フィブロネクチンまたはヒアルロン酸を塗布した培養プレート上で、増殖因子依存性細胞株BAF3および32DをケモカインCXCL12で刺激し、誘導されるシグナル伝達を、細胞接着性、運動性および細胞形態の変化とともに解析した。両細胞株は刺激後すみやかに形態変化をおこし、細胞極性を伴った移動を開始した。すなわち細胞移動の前方側に葉状突起、後方側に細胞が収縮したような構造、uropodが生じた。この変化と呼応してSykの活性化が認められた。そこで野生型およびキナーゼ不活性型、優性抑制型,Sykをこれら細胞株に導入した。Syk野生型の大量発現により刺激前より細胞極性を示す細胞が増加したがキナーゼ不活性型ではそのような効果は得られなかった。また、優性抑制型Sykを発現した場合には、刺激前の細胞移動度が上昇し、細胞極性の形成、典型的なuropodの構造が消失した。この細胞では細胞接着も減少しており、SykがCXCR4により誘導される細胞極性とuropod構造を介した細胞接着の両シグナルの上流で機能することが示唆された。そこで、この機構に関わるシグナル伝達分子としてRho-pathwayの活性化について解析した。野生型細胞株ではCXCL12刺激によりRhoAの活性化型が速やかに上昇したが、優性抑制型Syk発現細胞では上昇が認められなかった。本研究の成果は、チロシンリン酸化を介したケモカインシグナルが、細胞の極性化と接着制御により骨髄微小環境での安定した造血細胞の成熟に寄与する事を示しており、癌悪性化に関わる分子メカニズムの解明に寄与する。 | KAKENHI-PROJECT-16021235 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16021235 |
希土類-クロム複合酸化物皮膜による耐熱合金の表面改質に関する研究 | クロムを含む耐熱合金に、希土類、Ti、Zr、などの活性元素を添加すると、酸化性雰囲気における高温耐食性が著しく改善されることが古くから知られている。活性元素の作用機構については十分明らかになってはいないが、酸化によって生成するCr_2O_3皮膜と活性元素の相乗作用によって耐熱性が保たれていることは確かである。従って、活性元素そのものの代わりに、活性元素とクロムを含む複合酸化物皮膜で合金を被覆すれば耐高温酸化性をさらに向上できると考えられる。そこで、本研究においては、電気化学的方法を併用することによりステンレス鋼の表面に活性元素とクロムを含む複合酸化物皮膜を形成する新しい方法を開発するとともに、生成した皮膜の組成および高温における耐酸化性について検討することを計画し、以下の結果を得た。(1)合金を活性元素イオンを含む強酸性のクロム酸溶液に浸漬してカソード分極し、表面に薄いゲル状のコンポジット皮膜を形成したのち熱処理によって酸化物皮膜に転換するという方法でZr-CrおよびTi-Crの複合酸化物皮膜を形成する方法を確立した。クロム含量の異なる数種のFr-Cr合金およびSUS430ステンレス鋼に応用したところ、これらの被覆によってステンレス鋼の高温耐食性が向上することを見出した。(2)電解析出法によって微酸性のLa(III)-Cr(VI)溶液から化学量論組成のLaOH(CrO_4).XH_2D〔X2〕皮膜を形成する方法を見出し、これを熱処理することによってペロブスカイト構造のランタンクロム複合酸化物、LaCrO┣D23、の皮膜が得られた。この方法で、ほかのRCrO┣D23┫D2(R:希土類元素)の組成を持つ安定なペロブスカイト型の酸化物皮膜も形成できる。(3)LaCrO_3皮膜は高温での酸化や腐食に対する高い抵抗性を持ち、高温水蒸気雰囲気におけるSUS304鋼、SUS430鋼などの寿命を通常の10倍以上に延ばすことができる。クロムを含む耐熱合金に、希土類、Ti、Zr、などの活性元素を添加すると、酸化性雰囲気における高温耐食性が著しく改善されることが古くから知られている。活性元素の作用機構については十分明らかになってはいないが、酸化によって生成するCr_2O_3皮膜と活性元素の相乗作用によって耐熱性が保たれていることは確かである。従って、活性元素そのものの代わりに、活性元素とクロムを含む複合酸化物皮膜で合金を被覆すれば耐高温酸化性をさらに向上できると考えられる。そこで、本研究においては、電気化学的方法を併用することによりステンレス鋼の表面に活性元素とクロムを含む複合酸化物皮膜を形成する新しい方法を開発するとともに、生成した皮膜の組成および高温における耐酸化性について検討することを計画し、以下の結果を得た。(1)合金を活性元素イオンを含む強酸性のクロム酸溶液に浸漬してカソード分極し、表面に薄いゲル状のコンポジット皮膜を形成したのち熱処理によって酸化物皮膜に転換するという方法でZr-CrおよびTi-Crの複合酸化物皮膜を形成する方法を確立した。クロム含量の異なる数種のFr-Cr合金およびSUS430ステンレス鋼に応用したところ、これらの被覆によってステンレス鋼の高温耐食性が向上することを見出した。(2)電解析出法によって微酸性のLa(III)-Cr(VI)溶液から化学量論組成のLaOH(CrO_4).XH_2D〔X2〕皮膜を形成する方法を見出し、これを熱処理することによってペロブスカイト構造のランタンクロム複合酸化物、LaCrO┣D23、の皮膜が得られた。この方法で、ほかのRCrO┣D23┫D2(R:希土類元素)の組成を持つ安定なペロブスカイト型の酸化物皮膜も形成できる。(3)LaCrO_3皮膜は高温での酸化や腐食に対する高い抵抗性を持ち、高温水蒸気雰囲気におけるSUS304鋼、SUS430鋼などの寿命を通常の10倍以上に延ばすことができる。本研究は,電気化学的手法により耐熱合金の表面に活性金属(希上類, Zr, Ti, Alなど)-クロム複合酸化物被膜を形成し,高温における合金の耐酸化性を向上することを目的とする.昭和62年度においては,まず鉄-クロム合金であるSUS430鋼を試料としてZr(IV), Ti(IV), La(III), Ce(III), Y(III), Gol(III), Al(III)などを含むクロム算溶液中でカソード分極してコンポジット被膜を形成することを目的として実験を行ない,以下の結果を得た.ZrO(CH_3COO)_2-CrO_3溶液からZrO_2-Cr_2O_3複合酸化物被膜を形成しうることを見出し,生成する被膜の組成とカリード電位との関係を明らかにした.また,被膜を施した試料について,熱サイクル試験および加速酸化試験を行ない,この被膜がSUS430鋼の耐熱性向上に有効であることを明らかにした.Ti(SO_4)_2-CrO_3またはK_2TiO(C_2O_4)_2-Ti(SO_4)_2-CrO_3溶液からTiO_2はCr_2O_3複合酸化物被膜を形成しうる条件を見出し,被膜組成とカソード電位の関係を明らかにした.この被膜によって耐酸化性が向上することもわかったが, Tiの析出量を増すために,さらに検討が必要である.Ce(CH_3COO)_3-CrO_ | KAKENHI-PROJECT-62550508 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62550508 |
希土類-クロム複合酸化物皮膜による耐熱合金の表面改質に関する研究 | 3溶液からCe(III)およびCe(IV)を含む酸化物被膜が得られることを見出しているが, Ceの共析量がまだ十分ではなく,耐酸化性試験の段階には至っていない.4.Al(III)系については極めて有望な溶液を見出しているが, La(III)その他については, Zr(IV)などのようには析出いないことがわかり,溶液組成についてさらに検討中である.前年度においてはZr、Tiなどを含む複合酸化物被膜を形成する方法を確立したが、今年度は、耐熱合金の耐高温酸化性の向上により有用な希土類(Y、Laなど)を含む被合酸化物被膜を形成する目的で研究を行った。前年度の結果をもとに、希土類イオンを含むクロム酸溶液から電解法でコンポジェット被膜を得るため、まず電解条件、次いで、熱処理条件の検討を行い次の結果を得た。(1)PH=23の微酸性のLa(III)-Cr(VI)溶液中で、カソード分極を行うと電極上にLa(III)-Cr(VI)オキシ水酸化物の被膜を形成できる。Zr、Tiなどの場合と異なり、強酸性では希土類元素を多量に共析できない。共存アニオンとして、酢酸イオンは適さないので硝酸塩、アンモニウム塩などの化合物が良い。(2)溶液組成、PH、電解電位、電解時間をコントロールすることによりLaOH(CrO_4)×H_2Oの組成の被膜を再現良く形成できる。(3)熱分析の結果、この水酸化物被膜は大気中600°C付近から熱分解(還元)してペロブスカイト構造のランタンクロム複合酸化物、LaCrO_3、に転換することがわかった。(4)LaCrO_3は、一連の希土類クロム複合酸化物中最も高融点(m.p.2750K)であり、高温での酸化や腐食に対する高い抵抗性を持つのでこの酸化物被覆はステンレス綱の耐高温酸化性の向上に極めて有効である。SUS304およびSUS430綱において、水蒸気を含む大気中で加速酸化試験を行った結果、被覆していないものの10倍以上の長時間酸化しても質量変化がなく、また、900°C20h-室温4hの繰り返し酸化試験でも20回以上耐えうることを見出だした。(5)類似の方法でYCrO_3被膜 | KAKENHI-PROJECT-62550508 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62550508 |
窒化物半導体を用いたTHz帯量子カスケードレーザによる未踏周波数領域の開拓研究 | 我々はテラヘルツ帯量子カスケードレーザ(THz-QCL)における未踏周波数領域5-12 THz帯の開拓を目指して、III族窒化物半導体を用いたTHz-QCLの開発研究を行った。本課題において、RF-MBE法によって熱処理によるドロップレット除去(DETA)法を用いたGaN/AlGaN系QCL構造を作製し、その構造特性及び発光特性を評価した。その結果、DETA法を適用することでQC構造の多周期化が可能になり、かつ構造特性・結晶性が改善することが分かった。また、この方法を用いて作製したTHz-QCL構造の電流注入において、1.42.8 THzのサブバンド間遷移発光に初めて成功した。我々はテラヘルツ帯量子カスケードレーザ(THz-QCL)における未踏周波数領域5-12 THz帯の開拓を目指して、III族窒化物半導体を用いたTHz-QCLの開発研究を行った。本課題において、RF-MBE法によって熱処理によるドロップレット除去(DETA)法を用いたGaN/AlGaN系QCL構造を作製し、その構造特性及び発光特性を評価した。その結果、DETA法を適用することでQC構造の多周期化が可能になり、かつ構造特性・結晶性が改善することが分かった。また、この方法を用いて作製したTHz-QCL構造の電流注入において、1.42.8 THzのサブバンド間遷移発光に初めて成功した。窒化物半導体を用いた未開拓領域5-12THz帯の量子カスケードレーザ(QCL)の開発を課題として、本年度は「高品質厚膜成長のための新しい成長法(DETA法)の導入とその効果の検証」と「高品質GaN基板上GaN/AlGaN系QCL素子構造作製と電流注入」についての研究を行った。成長表面に析出した金属液滴を熱によって蒸発させる成長手法のDETA法を導入したことにより、これまで困難であった精密な原料供給比制御が容易になり、長時間の成膜を要する厚膜成長が可能になった。又、DETA法を用いることで表面、構造特性が改善する効果があることが分かり、結晶の高品質化にも貢献した。高品質GaN基板上に作製したQCL構造への電流注入では、サブバンド間遷移に起因する自然放出光の発光スペクトルを観察することに初めて成功した。電流注入による窒化物半導体からのサブバンド間遷移発光を実証した結果はこれまでに例がなく、世界的に見ても非常に画期的な成果である。現時点で、窒化物半導体QCLから電流注入において自然放出光(スペクトル)が観察された段階である。今後、サブバンド間エネルギー等の窒化物半導体の詳細な物性値等を検証しながらQC構造のディチューニングを行い、設計どおりの周波数での発光を目指す。さらに、今後は本格的にGaN基板やAlNテンプレートを用い、高品質QCL構造の作製・評価(発光・電気特性、メカニズム等)を精力的に進めていき、レーザ発振を実現する。来年度中には、レーザ発振及び発振波長のチューニングを行う予定である。本研究は、量子カスケードレーザ(QCL)としては新しい材料であるIII族窒化物半導体材料を用いて未開拓領域5-12THz帯のQCLを開発することを課題とした。当該年度において、「高品質厚膜成長のための結晶成長技術の開発」と「QCL素子構造の作製とその電流注入評価」を行った。結晶成長技術の開発では、成長表面に析出した金属液滴を熱によって蒸発させながら成長を繰り返す、Droplets Elimination by Thermal Annealing(DETA)法を開発したことによって、これまで困難であった精密な原料供給比制御を容易にし、かつ長時間の成膜を要する厚膜成長を可能にした。また、DETA法を用いることで表面平坦性の向上、転位密度の低減、構造特性の向上に効果があることが分かった。QCL素子構造の作製では、まず高品質GaN基板及びサファイア基板上AlGaNテンプレート上にGaN/AlGaN系量子カスケード構造をRF-MBE法で作製した。この時、原料供給量の厳密な制御を行うことによって、1MLの量子カスケード構造を実現した。その後、デバイスプロセスを行い、表面金属プラズモン導波路型のQCL素子構造を作製した。QCL素子構造への電流注入評価では、サブバンド間遷移発光に起因する1.4-2.8THzまでの発光スペクトルを観察することに成功した。電流注入による窒化物半導体からのサブバンド間遷移発光を実証した結果はこれまでに例がなく、世界的にみても非常に画期的な成果である。 | KAKENHI-PROJECT-22760258 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22760258 |
重大児童虐待事例の精緻な実態と効果的支援の研究 | 重大事例の実態では1心理的虐待の有意な増加、20歳から6歳までの被害児童が突出して多い、3複合した虐待事例が年々増加、4年齢が上がるほど児童が顕在化する困難課題が多様化、5家庭には困難問題が多層的にあり、家族支援の重要さが明らかになった。効果的支援では1関係機関間の連携促進による取組みの変化、2他職種・他機関の連携は、情報共有に加え相互にスキルアップできるシステムの必要性が明らかになった。海外調査では1アメリカは児童虐待対応の入口部分を公的機関が担い、その後は民間機関が対応、2韓国は公的機関と民間機関が連携し、医療・福祉・心理・教育・法律の多種分野で協働していることが分かった。1「名古屋児童虐待研究会」を大学内で12回定期的に開催した。研究会では、1平成24年度の名古屋市重大児童虐待全事例のアンケート調査から得られたデータを、過去の実態調査(平成18・22年度)と比較しながら分析・解明を行った、2詳細な実態をまとめた、31、2から虐待者の4つの特性を見出すことができた。また、それらを基に、名古屋市児童相談所、連携機関等の職員、専門家、市民を対象とした研究会・研修会を開催、学会発表も行った。それらにより、フィードバックを受け、更なる内容の検討を重ね研究を発展させることができた。児相には実務に役立ててもらうために、本研究の概要の改訂版をまとめた資料を作成し、配布した。2申請者が翻訳した『実践ガイドラインー子ども虐待が疑われるケースの司法面接ー』(2012)を、児相での面接に役立てられるよう翻訳内容を送り、活用を図った。3ニューヨーク市で児童虐待からの子どもの保護、子ども・家庭の支援活動を検察、児童保護局、警察等と協働して行っている民間組織のSafe Horizon、他、5ケ所、ウィーンズ区刑事裁判所、Star Track(非行少年の在宅更生のための支援活動)等にインタビュー調査を実施した。裁判所では特別に、「少年法」、「少年事件手続きの実際について」の講義を検察庁付の弁護士から受け、その後庁内の見学、少年事件2事例の裁判傍聴と担当裁判官との意見交換の機会に恵まれた。また、研究協力者の案内でヴァージニア州の刑事裁判所、被虐待児童や非行少年の受入機関であるThe Barry Robinson Centerでヒアリングを行った。得られた資料から、日本や名古屋市との相違点を比較研究し、「アメリカ視察報告」にまとめて、児童相談所や関係機関等の職員、他での研修会で報告した。日本子ども虐待防止学会第21回にいがた大会、名古屋市児童相談所等(本庁・中央・西部)の職員の研修会等で成果を発表、それぞれ貴重なフィードバックを受けた。ニューヨーク市での民間団体、他の視察は、当初の計画以上に内実のあるものになった。重大児童虐待事例の実態から虐待親が持つ4つの特性を導き出すことができた。名古屋市の更なる協力により、計画にはなかったアンケート調査が実施できる見通しが立った。1名古屋市児童相談所(中央・西部)が、平成27年度に受理した児童虐待対応全事例2,362件中、重症度の高い全事例702件について、1アンケート調査を実施、2収集したデータの分析・検討、32に基づき、過去の実態調査(平成18,22,24年度)と比較し、重大事例の実態内容をまとめた。これにより、最新のデータの入手と重大事例の実態特徴の把握や内容を深めることができた。調査に当たっては、所属大学の「人を対象とする研究」に関する倫理審査委員会に計画等審査を申請し、承認を受けた。2韓国(ソウル市)にある児童福祉及び児童虐待防止・保護・支援に関する機関等を10ケ所視察し、1各機関の機能や実践内容、2司法・行政(国・地方自治体)・警察・機関との連携や協働の実際などを学ぶことができた。それぞれが予想していた以上に充実していて、日本の児童虐待取組みに示唆を受ける内容であった。31日本子ども虐待防止学会「第22回学術集会おおさか大会」で「重症度の高い児童虐待事例の実態と効果的支援の研究(1)」、「同(2)」の2つを口頭発表、2上記1,2の内容をまとめ、名古屋市児童相談所職員研修、児童福祉の専門家等の研究会で発表、3『子どもと福祉』第10号に、海外の社会福祉事情第5回「韓国、ソウル市における児童虐待、児童福祉の現状と課題ー10か所の視察等をとおしてー」の投稿、4「死亡事例検証から見た児童虐待の課題」『家庭の法と裁判』9号に投稿して、成果を伝えることができた。4名古屋児童虐待研究会を年度内に26回大学内で開催した。そこでは、1上記13を実施するための準備、2研究者同士の意思疎通や役割分担の取り決め、3内容やまとめの検討等を行ったため、円滑に実践を進めることができた。1重大児童虐待事例のアンケート調査の実施は、当初平成24年度を対象にしていたが、名古屋市児童相談所との連携や信頼関係の構築が進み、協力が得られて、平成27年度も対象に実施することと最新のデータの入手ができた。また、それに基づいた実態内容等の分析・まとめ・考察を行うことができた。2韓国(ソウル市)視察では各機関を訪問し紹介を受けただけでなく、1カンジン区教育支援庁及びカンジン教育福祉センターとの合同セミナー、2ソウル家庭法院の児童虐待対応裁判官及び家庭法院調査官との意見交換会などを2時間にわたって実施し、貴重な情報が入手できた。 | KAKENHI-PROJECT-15K04157 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K04157 |
重大児童虐待事例の精緻な実態と効果的支援の研究 | また、3児童虐待対応の中心的担い手である中央児童保護専門機関及び性的虐待や性犯罪の被害者の医療・福祉・心理・司法等が一体となって支援を行っているひまわり児童センターとは、視察後も研究を視野に入れた継続的交流を持つことができている。2つの機関とは今後の研究課題を推進するために連携し、互いに重要な示唆を受け合う関係の構築が期待できる。今年度の研究では、当初の研究実施計画書では予定していなかった成果が得られた。名古屋市児童相談所の協力で平成27年度に同児相が受理した重大児童虐待事例全ケースの調査(アンケート調査)結果から得られた基礎データを基に「重大児童虐待事例の精緻な実態」と「それに対する職員の対応内容や方法、困難さ」等を、分析しまとめた。次にまとめた内容を、既に本研究の中で行った平成24年度の研究結果と比較考察を行い、加えて平成18年度、同22年度の研究結果も交えて全体を比較しながら、考察を深めた。その結果、最新のデータを基にした成果が得られたこと、それまでに積み重ねた研究と比較することで、重大児童虐事例の実態や児相の対応の変遷が分かるなど内容の深い成果を得ることができた。上記の成果を基に、「重大児童虐待事例の実態」「それらに対する児相の対応」を報告書にまとめ、名古屋市児相職員および同市職員に対し2度にわたって3時間の研修会を開催し、成果を報告した。また、「児童虐待における虐待者の特徴次元と児童相談所職員の対応の困難度ー高リスクレベルのケースを対象として」を論文にまとめ、投稿した。前年度に実施した視察も「韓国(ソウル市)の児童福祉・虐待への取組みー関係機関の視察報告」としてまとめ、研究ノートとして投稿した。本研究の総仕上げとして平成30年1月27日に「韓国と日本の子育て支援ー児童虐待対応を巡って」をテーマに公開国際シンポジュウムを開催、韓国保健福祉部・中央児童保護専門機関から洪昌杓氏を招聘して基調講演、パネルディスカッションを行い、広く成果を公開することもできた。本研究の成果を踏まえて名古屋市から新たな研究依頼を受けることができた。平成30年度から「心理的虐待・ネグレクトが子どもの成長・発達に与える影響を明らかにし、適切なリスク査定につながるリスクアセスメント票の開発」をテーマに、共同研究を進める。重大事例の実態では1心理的虐待の有意な増加、20歳から6歳までの被害児童が突出して多い、3複合した虐待事例が年々増加、4年齢が上がるほど児童が顕在化する困難課題が多様化、5家庭には困難問題が多層的にあり、家族支援の重要さが明らかになった。効果的支援では1関係機関間の連携促進による取組みの変化、2他職種・他機関の連携は、情報共有に加え相互にスキルアップできるシステムの必要性が明らかになった。海外調査では1アメリカは児童虐待対応の入口部分を公的機関が担い、その後は民間機関が対応、2韓国は公的機関と民間機関が連携し、医療・福祉・心理・教育・法律の多種分野で協働していることが分かった。1「名古屋児童虐待研究会」を引き続き開催して、研究内容を深める。2虐待を深刻化させる虐待親の特性、それらがどのように相互に関係し合って深刻化するのかについて考察を深めて、メカニズムを研究し、今年度中に論文にまとめる。3名古屋市から新たに、平成27年度の重大児童虐待全事例のアンケート調査協力が約束されたため、調査の実施と得られたデータの分析・解釈、考察を深める。これにより、計画当初よりも新しい資料が得られるため、研究の精緻化と発展を図る。 | KAKENHI-PROJECT-15K04157 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K04157 |
外視鏡を用いた拡張現実による脳手術ナビゲーションの開発 | 拡張現実型脳手術ナビゲーションを手術用外視鏡(exoscope)に導入することにより、脳内の構造物を外視鏡のモニター上に表示させることにより体内の構造があたかも「透けて」見えるようにする拡張現実による新規手術ナビゲーションの開発を行う。頭部画像をワークステーションに取り込み頭皮および目標物の3次元画像を作成して三鷹光器社製外視鏡モニターに表示させる。模型にて投影誤差が許容範囲内であることを確認したのち、患者頭部と位置合わせを行った状態で視認される病変の位置と、開頭して病変が露出した状態での病変の位置を比較し、その誤差を測定し臨床上の有用性を検討する。拡張現実型脳手術ナビゲーションを手術用外視鏡(exoscope)に導入することにより、脳内の構造物を外視鏡のモニター上に表示させることにより体内の構造があたかも「透けて」見えるようにする拡張現実による新規手術ナビゲーションの開発を行う。頭部画像をワークステーションに取り込み頭皮および目標物の3次元画像を作成して三鷹光器社製外視鏡モニターに表示させる。模型にて投影誤差が許容範囲内であることを確認したのち、患者頭部と位置合わせを行った状態で視認される病変の位置と、開頭して病変が露出した状態での病変の位置を比較し、その誤差を測定し臨床上の有用性を検討する。 | KAKENHI-PROJECT-19K09515 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K09515 |
NOSの補酵素テトラヒドロビオプテリンの敗血症における動態と治療標的としての検討 | 本研究の目的は、敗血症性ショック病態においてテトラヒドロビオプテリン(BH4)とその関連代謝物(以降プテリジンと総称)が体内でどのように変化し、病態にどのような影響を及ぼすかを明らかし、プテリジンが治療(補充・除去)対象となり得るかを検討することである。本年度は、臨床研究による敗血症患者の血中プテリジン濃度の測定と、敗血症動物モデルマウスを用いた経時的な血中プテリジン濃度の測定を行った。臨床研究は目標症例数に達しておらず、来年度も引き続き患者登録を実施しデータを収集していく予定である。これまでに得られているデータより、患者間の差はあるものの、敗血症患者における血中プテリジン濃度が時間経過とともに変化することが明らかとなった。また、その推移は我々が予想した通りであった。今後は、その変化に影響を与えている、もしくは影響を受けている可能性のある項目の解析を並行して進めていく。盲腸結紮穿刺による敗血症モデルマウスを用いた研究では、処置からの経過時間(3、6、12、20、24、36、48、72時間)による血中プテリジン濃度を測定し、敗血症の病態、プテリジンの変化により影響を受ける項目と合わせて解析した。感染からの時間経過と共に血中プテリジン濃度は有意に変化しており、今後はその変化が病態にどのような影響を及ぼしているかを解析していく。合わせて、敗血症モデルマウスに対してBH4を投与することで予後を改善できるかについても検討する。臨床研究における患者登録が計画よりやや遅れている。敗血症性ショックを呈する患者数の減少がその主な理由である。基礎研究に関しては概ね順調である。臨床研究に関しては引き続き患者登録を実施していくが、今後も患者数が想定を下回った場合は、データの解析結果等考慮しながら、研究期間の延長もしくは目標症例数の変更を行う。基礎研究に関しては、来年度に向けて、盲腸結紮穿刺による敗血症モデルラットの作成を開始する。一般的に、マウスとラットとでは盲腸結紮穿刺の手法が異なり、さらに本研究においては循環動態のモニタリング、血液浄化療法の導入に適した重症度のモデル作成が重要である。本研究の目的は、敗血症性ショック病態においてテトラヒドロビオプテリン(BH4)とその関連代謝物(以降プテリジンと総称)が体内でどのように変化し、病態にどのような影響を及ぼすかを明らかし、プテリジンが治療(補充・除去)対象となり得るかを検討することである。本年度は、臨床研究による敗血症患者の血中プテリジン濃度の測定と、敗血症動物モデルマウスを用いた経時的な血中プテリジン濃度の測定を行った。臨床研究は目標症例数に達しておらず、来年度も引き続き患者登録を実施しデータを収集していく予定である。これまでに得られているデータより、患者間の差はあるものの、敗血症患者における血中プテリジン濃度が時間経過とともに変化することが明らかとなった。また、その推移は我々が予想した通りであった。今後は、その変化に影響を与えている、もしくは影響を受けている可能性のある項目の解析を並行して進めていく。盲腸結紮穿刺による敗血症モデルマウスを用いた研究では、処置からの経過時間(3、6、12、20、24、36、48、72時間)による血中プテリジン濃度を測定し、敗血症の病態、プテリジンの変化により影響を受ける項目と合わせて解析した。感染からの時間経過と共に血中プテリジン濃度は有意に変化しており、今後はその変化が病態にどのような影響を及ぼしているかを解析していく。合わせて、敗血症モデルマウスに対してBH4を投与することで予後を改善できるかについても検討する。臨床研究における患者登録が計画よりやや遅れている。敗血症性ショックを呈する患者数の減少がその主な理由である。基礎研究に関しては概ね順調である。臨床研究に関しては引き続き患者登録を実施していくが、今後も患者数が想定を下回った場合は、データの解析結果等考慮しながら、研究期間の延長もしくは目標症例数の変更を行う。基礎研究に関しては、来年度に向けて、盲腸結紮穿刺による敗血症モデルラットの作成を開始する。一般的に、マウスとラットとでは盲腸結紮穿刺の手法が異なり、さらに本研究においては循環動態のモニタリング、血液浄化療法の導入に適した重症度のモデル作成が重要である。施設・共同利用機器等の利用料が見込みより少なく、年度末の時間的な制約の中で物品購入等による調整ができなかったため次年度への繰越しとなった。繰越となった研究費は、物品購入にあてる予定である。 | KAKENHI-PROJECT-18K08894 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K08894 |
準結晶におけるボース凝縮と量子臨界相の探索 | 準結晶は通常の結晶とは異なる独特の構造を持つが、その電子状態は未解明である。本研究課題の目標は、準結晶を特徴づける可能性のある「量子臨界相」の探索とボース凝縮(超伝導など)の探索である。本研究の結果、準結晶と同じ局所構造を持つ近似結晶が加圧とともに量子臨界点に近づくことが明らかとなった。これは、加圧に対し鈍感な準結晶とは質的に異なることを示し、準結晶で発見された量子臨界状態が量子臨界相にあることを強く示唆するものである。また、蔡型クラスターを持つ近似結晶で初めての超伝導体を発見した。一方、超伝導を示す準結晶相の発見には至らなかった。準結晶が超伝導を示しにくい理由の解明は今後の課題である。1.8 GPa程度より高圧になると、Au-Al-Yb近似結晶の交流磁化率に磁気異常の現れることが見出された。これが磁気長距離秩序によるものか、スピングラスによるものかを解明するため、周波数及び外部磁場依存性を測定した。その結果、磁場依存性についてはスピングラス的挙動が観測されたものの、周波数依存性についてはスピングラスに特徴的な様相は見出されなかった。磁気長距離秩序/スピングラスのいずれであるかについては、更なる検討が必要である。Au-Al-Yb準結晶の高圧下物性計測は、これまで1.7 GPa程度の圧力域に留まっていたが、平成26年度においては圧力域が2.3GPaまで拡張された。その結果、予想通り、量子臨界性が不変であることがかなり確からしいものとなってきた。今後は、測定領域をより高圧域まで拡張する。(3)ボース凝縮相を示す準結晶あるいは近似結晶の探索平成26年度には、準結晶と同じ局所構造を持つ近似結晶において、2種類の超伝導物質の探索に成功を収めた。いずれもAu-Ge-Ybの3元系から構成されているが、組成がわずかに異なる。X線構造解析を行ったところ、これら2種類の超伝導体は、蔡型クラスターの最中心部の構造が異なることが判明した。中心部がYbイオンである場合は価数搖動的な磁性を有し、非磁性イオンの4面体である場合は(全体としても)磁性を持たないことが明らかとなった。さらに、磁性を有する場合の方が超伝導転移温度の低いことが明らかとなった。なお、これらは学術雑誌に掲載され、Editor's choiceに選ばれた。今後は、これを起点にして、超伝導を示す準結晶の探索を行う予定である。Au-Ge-Yb系近似結晶において、2つの超伝導物質の発見に成功を収めた。これらの成果を発表した論文は、JPSJ誌のEditor's choiceに選出された。また、それらの超伝導体の1つが(Ybイオンの)価数搖動状態にあることを指摘した。準結晶のボース凝縮に関しては、Al-Mg-Zn系に着目し、研究を進めた。その結果、超伝導になる組成(近似結晶および準結晶)を見出した。もともと、この系は超伝導になることが論文に報告されていたが、その報告結果とは異なる組成において超伝導を示すことを見出した。特に、組成によって超伝導転移温度が大きく変わることを本研究により初めて明らかにした。これらの成果については未だ論文で公表できる段階にはないが、準結晶における超伝導について、研究の新たな方向性が見出された。全体として、準結晶のボース凝縮に関し、新たな知見が得られた。準結晶は通常の結晶とは異なる独特の構造を持つが、その電子状態は未解明である。本研究課題の目標は、準結晶を特徴づける可能性のある「量子臨界相」の探索とボース凝縮(超伝導など)の探索である。本研究の結果、準結晶と同じ局所構造を持つ近似結晶が加圧とともに量子臨界点に近づくことが明らかとなった。これは、加圧に対し鈍感な準結晶とは質的に異なることを示し、準結晶で発見された量子臨界状態が量子臨界相にあることを強く示唆するものである。また、蔡型クラスターを持つ近似結晶で初めての超伝導体を発見した。一方、超伝導を示す準結晶相の発見には至らなかった。準結晶が超伝導を示しにくい理由の解明は今後の課題である。主要研究目的の1つである「蔡型クラスターを持つ超伝導近似結晶」を世界に先駆けて発見し、その磁性と超伝導に相関のあることを示唆する結果を得たことが最大の理由である。但し、超伝導を含め何らかの長距離秩序を持つ準結晶の発見という大きな課題は残されている。強相関電子物性交流磁化率に観測された磁気異常は100mKという極低温であるため、その起源を解明することは容易ではない。今後は、まず圧力を高めることにより転移温度を上げ、次に周波数依存性などを精度よく測定する予定である。H26年度まで用いていた高圧セルに改良を加え、5 GPa程度の圧力域まで加圧可能なセルを作製する。次に、これを用いて、交流磁化率などの測定を行い、量子臨界性が加圧に対し不変であることを実証する。(3)ボース凝縮相を示す準結晶あるいは近似結晶の探索超伝導などの長距離秩序を示す蔡型クラスター準結晶を引き続き探索する。それと並行し、蔡型クラスター以外のクラスター構造を有する準結晶の超伝導探索を行う。 | KAKENHI-PROJECT-26610100 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26610100 |
関西バイオクラスターにおける研究開発ネットワークの構造進化と事業化能力の国際比較 | 日本のバイオクラスターは、その成長に積極的な産学連携政策がとられてきたものの、欧米に比べると研究成果を地域で事業化する能力が低いとされる。本研究は、関西バイオクラスターを対象にしてこの問題を検討した。共同特許に見られる研究開発ネットワークの構造は、経時的なネットワーク分析によると有力な大学・研究機関をハブとするものに転換していた。だが、国際比較すると、中央政府を中心とする産官連携が発達していたが、地域内での横の大手企業、有力大学=中小企業間の連携が弱く、地域的な事業化の仕組みの発達が順調ではない面が見られる。日本のバイオクラスターは、その成長に積極的な産学連携政策がとられてきたものの、欧米に比べると研究成果を地域で事業化する能力が低いとされる。本研究は、関西バイオクラスターを対象にしてこの問題を検討した。共同特許に見られる研究開発ネットワークの構造は、経時的なネットワーク分析によると有力な大学・研究機関をハブとするものに転換していた。だが、国際比較すると、中央政府を中心とする産官連携が発達していたが、地域内での横の大手企業、有力大学=中小企業間の連携が弱く、地域的な事業化の仕組みの発達が順調ではない面が見られる。本年度は、関西バイオクラスターにおける製薬産業の共同特許に関する基本的な構造解析を行うと共に、米国、アジアの代表的なバイオクラスターとその開発機構の持つ役割の特徴の整理を行った。まず、北米での現地調査としては、ウィンスコンシンのWARF、サンディエゴのBIOCOM、CONNECTなどの代表的なバイオテクノロジー・クラスターにおける事業化機関が事業化プロセスに果たす役割についての比較調査を行った。アジアにおいては、台湾の代表的なバイオクラスターのインキュベーションセンター「南港生物科技育成中心」を調査しており、センター間の競争的な関係が存在する等を確認している。神戸市における医療関連機器分野への進出において、産学官の連携がどの程度進んでいるかについて調査を行った。そして関西バイオクラスター政策を研究する国際政治学者Ibata-Arensを招聘し、国際研究ワークショップを開催し、その特性を比較検討した。第二に国際的ベンチャー研究者Howard E.Aldrichを招いて、北米におけるベンチャー企業600社の2年間パネル調査分析結果との比較研究について日本経営学会関西部会において実施した。そして、バイオ産業における公的研究機関シーズの事業化過程の課題を研究者起業と戦略的提携の観点から検討し、バイオベンチャーが非常に特殊で成功確率の厳しい企業プロセスであることを理解した。第三に、バイオテクノロジー領域での産学連携の比較分析を展開した。Eco-system構築における産学技術移転とNTBFs支援策の展開について、アメリカ(=ライフサイエンス分野における大学発ベンチャー企業支援)について、調査を続けている。英仏の産業クラスターを訪問し、科学技術ガバナンス構造について調査した。京都大学WPIプログラム「物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)」と提携し、毎月、文理融合型アカデミック・イノベーション・マネジメント研究会を開催して、COEプログラムを中心に業績算出への効果分析を行った。本年度は、2000年代における関西バイオクラスターにおける産官学の共同特許ネットワークの構造変動についてのネットワーク分析による解析を進めて、主要研究大学を中心とした研究開発ネットワークの形成が進んでいることを確認した。さらに、関西バイオクラスターの構造特性を理解するために、海外のバイオテクノロジー産業関連の主要クラスターを国際比較し、そこでの研究機関,企業、ベンチャー企業間での連携関係についての分析作業を進めた.この分野での公的政策の影響の効果が確認できた。大きく三つの分野での研究活動を行った。第一に、関西バイオクラスターにおける研究開発ネットワークの構造変動解析については、大学中心の構造に変化していることと、産官学連携促進政策の影響が強いことを、製薬分野での共同特許ネットワークの時系列分析を行うことで確認した。科学政策の効果を比較対照するために、21世紀COEプログラムの研究促進効果を調査し、学際分野を除く8分野の分析を進めた。第二に、国際的なバイオ関連産業のクラスターと事業化枠組の比較検討を進めて、フランス等のバイオバレー、イタリアのミランドラ地域に集積する医療用デバイス産業における起業家活動、台湾における台北、高雄地域でのバイオクラスター形成政策等についての比較検討を行った。第三に、バイオ産業における企業家活動の公的支援政策についての研究を進めた。具体的には、日本におけるバイオ産業に関わる公的政策の影響と研究者起業ならびに技術移転の制度変化についての分析を進めると共に、イスラエルのバイオセクター向けVCファンドへの政府ファンドの新たな関わり方について検討した。なお、こうした中間成果は国内では、組織学会、ベンチャー学会等の年次大会で紹介すると共に、海外では、韓国のKASBS(Korean association of Small Business Studies)Conferenceや、仏ストラスブール大学での国際ワークショップ、米国のUSIJ(U.S.-Japan Reserch Institute)におけるセミナーで報告を行った。今年度は、関西バイオクラスターを主にした日本のバイオクラスターにおける産官学の知識移転ネットワークの成長過程について、その分析結果を各国の成長過程と比較すると共に、欧州組織学会大会及びストラスブール大学での研究会で報告し、国際的な批判を受けつつ修正を行ってきた。その際、日本の研究者が特許による技術情報発信について欧米の研究者と違う情報解釈をしていることが欧州側から指摘された。そして、こうした日本の事例を各国のバイオ産業集積と比較した。フランスバイオバレーの事例、台湾での台湾南部科学園区や中央研究院でのバイオテクノロジー開発、イタリア・モデナでの医療機器産業における起業家活動、イスラエルのハイブリッドファンドなどを取り上げ、成長過程及び政策支援政策の意義、産学連携との状況と比較調査を行った。 | KAKENHI-PROJECT-22330114 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22330114 |
関西バイオクラスターにおける研究開発ネットワークの構造進化と事業化能力の国際比較 | 特に、バイオ産業に関わる政策影響と研究者起業のキャリアと新技術事業化の課題について調べ、意味づけを検討した。こうした比較事例研究を基にしつつ、地域イノベーション研究におけるクラスター研究の位置づけを検討し、クラスターの形成、展開のプロセスを企業家活動を鍵概念とし、統一的に説明できる論理を検討した。こうした研究と平行しながら、科学と産業のリンケージについて、実証的な分析と規範的な分析を展開した。実証は、依田がエルゼビア社の学術ナビゲーションサービスであるScopusを用いて、文部科学省の大型研究資金助成事業のさきがけである21世紀COEプログラムの研究成果促進効果の調査を行い、全11分野のうち、学際・複合・新領域・革新的な学術分野を除く、8分野について分析を終了した。規範分析としては、バイオ産業振興にとって重要な臨床研究の利益相反マネジメントにおける、米国の新制度導入の背景とその内容などに関する調査研究を展開した。そうした成果は、2013年6月の京都大学『経済論叢』に収録する予定である。資金的な制約で、製薬分野に限られているが、関西バイオクラスターの共同特許ネットワークの時系列分析については、順調に推移し、地域特性については明らかになってきている。さらに、米国、欧州、アジアの主要クラスターとの比較作業も進んでいる。24年度が最終年度であるため、記入しない。本年度は、最終年度なので、欧州組織学会等での成果報告を行うと共に、プロジェクトの成果を中間とりまとめとして、いくつかの学術雑誌に投稿していきたい。また、それに関連して、フランスや米国などの研究者との最終的な討論と共同研究作業を進めたい。出来るだけ、バイオクラスターにおける産学連携と企業、事業化の枠組みについての比較を進めて、関西バイオクラスターの特性を明らかにしたい。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22330114 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22330114 |
最新宇宙観測結果を用いた宇宙論的磁場の起源、ニュートリノの性質に対する正確な理解 | 平成24年度は、まず、前年度に行ったパリティの破れた初期磁場を起源とするCMB揺らぎの3点相関関数バ(イスペクトル)の詳細な解析を行った。ここで、このシグナルはパリティの破れを含まない磁場から生じるシグナルとは別の分離可能な領域にシグナルを持つ事を示し、パリティの破れた磁場の大きさに対して将来観測から期待される制限を見積もった。次に、このような磁場(ベクトル場)をインフレーション期に作り出すような理論モデルに含まれるベクトル場と曲率揺らぎや重力波との間の相互作用から、特徴的なCMB揺らぎのシグナルが作られる事を示した。これは、上記のようなバイスペクトルではなくパワースペクトル(2点相関関数)に表れる事を示し、自己相関であるにも関わらず負にもなりうる事を発見した。これらの研究をまとめた2本の論文は既に出版されている。ベクトル場から生じる「非ガウス的」観測量はCMB揺らぎだけではない。ベクトル場起源の曲率揺らぎは、理論的に計算される物質揺らぎと実際観測される銀河、銀河団分布の不一致性(バイアス)に特徴的なスケール依存性を生み出す。我々はベクトル場から生じるバイアスパラメータを詳細に計算し、一般的なベクトル場運動項を考えた場合銀河団スケールのバイアスパラメータが必ず負になることを発見した。また、CMBバイスペクトルを用いてベクトル場に付随する方向依存性を特定し、背後の初期宇宙モデルの妥当性を検定する方法論を構築するという研究も行っている。これらの研究をまとめた2つの論文は現在査読中であるが、受理に向け前向きな返事を受け取ったところである。以上の研究は、初期宇宙にベクトル場が存在し得るか否か判断するための新しい観測的指標を提示するものであり、将来観測と比較する事によりその答えが得られるものと期待される。ベクトル場の性質を特定するために、当初の予定であったCMBバイスペクトルを用いた解析のみならず、銀河分布に付随するバイアスのスケール依存性やCMBパワースペクトルなど新しい観測量を用いた解析も行ったため。当初の計画では、N体シミュレーションを用いたニュートリノの性質の制限をメインで行うことになっていたが、これは他の研究グループによって行われたため、計画を変更して引き続き、CMBバイスペクトルを用いた様々な初期宇宙モデルの制限を行う。更に、今年度新たに解析したCMBパワースペクトルや銀河バイアスのスケール依存性などを用いた研究も進展させる。平成22年度は、まず、磁場研究への準備として、一般的な初期揺らぎから作られる宇宙マイクロ波背景放射の揺らぎの3点相関関数(CMBバイスペクトル)の定式化を行った。この表式は、これまでの研究では決して考慮されていない、初期のベクトル、テンソル型摂動によって作られるCMB揺らぎのバイスペクトルの強度成分、偏向成分の情報まで含んでおり、この点において大変オリジナルな成果となっている。完成後直ちに論文にまとめた。次に、上記の表式を用いて宇宙初期磁場から作られるベクトル型CMBバイスペクトルの計算を行い、スペクトル形状の評価を行った。併せて、PLANCK衛星で得られると期待される非ガウス性の大きさの制限値を用いて磁場の大きさの概算を行った。これらの結果はいち早く論文にし、公表している。磁場起源のバイスペクトルは複雑な角度依存性を含んでおりこれまでの研究ではその処理法が明らかではなかったが、我々は適当な数学公式を駆使することでこれを近似なく解いた。この点においてまた独創的な研究成果となり、一連の定式化の手法は別の論文にて公表した。その後、初期磁場起源のテンソル型CMBバイスペクトルの強度成分に対しても、同様の手順で解析的な表式を与え、数値計算を経て出て来た結果を評価する事で、磁場の大きさに対する見積もりを得た。それらも新たに論文にまとめた。この期間に作成した5本の論文はすべて、作成が終了してすぐにarXivにも投稿しており、論文が公表されるまでに結果を世界にいち早く発信している。また、学会でも随時発表しており、これらを通して、我々の研究を認識した国内外の研究者から好評価を受け続けている。平成23年度は、まず、宇宙マイクロ波背景放射揺らぎの3点相関関数(CMBバイスペクトル)を用いた初期磁場の完全な制限を行った。初期磁場起源のCMBバイスペクトルは、ランダムガウス場の6乗の依存性を持っており、その表式に複雑な畳み込み積分を含んでいる。このため、数値計算に莫大な時間がかかってしまい、CMBバイスペクトルのすべての多重極配位におけるシグナルを計算することは実質不可能であった。これを改善すべく、新たに、適当な近似を駆使することで畳み込み積分の量を減らし、すべての多重極配位におけるシグナルを有限時間内に計算できるようにした。このため、初期磁場の制限をする際にすべてのシグナルを用いることが可能となり、先行研究のものより正確な制限値を得ることができた。次に、磁場以外のソースが作るCMBバイスペクトルで、特に、回転対称性の破れや、パリティ対称性の破れを含む非ガウス性から作られるCMBバイスペクトルの計算、解析を行った。私は、前年度に求めたCMBバイスペクトルの一般公式を拡張することでこれを新たに達成し、対称性の破れ特有のシグナルが存在して、それが対称性の破れていないモデルから生じるシグナルとは分離可能であることを証明した。また、初期磁場の生成においても、パリティ対称性の破れを含むシナリオも考えられ、そこから生じるCMBバイスペクトルにはパリティが保存している上記のケースとは分離可能な別のシグナルが表れることを示した。これらの成果を4本の論文にまとめた。そのうちの3本は既に国際論文雑誌に出版されている。 | KAKENHI-PROJECT-10J07477 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J07477 |
最新宇宙観測結果を用いた宇宙論的磁場の起源、ニュートリノの性質に対する正確な理解 | また、国内、国外研究会にも多数出席し、これらの研究を発表している。平成24年度は、まず、前年度に行ったパリティの破れた初期磁場を起源とするCMB揺らぎの3点相関関数バ(イスペクトル)の詳細な解析を行った。ここで、このシグナルはパリティの破れを含まない磁場から生じるシグナルとは別の分離可能な領域にシグナルを持つ事を示し、パリティの破れた磁場の大きさに対して将来観測から期待される制限を見積もった。次に、このような磁場(ベクトル場)をインフレーション期に作り出すような理論モデルに含まれるベクトル場と曲率揺らぎや重力波との間の相互作用から、特徴的なCMB揺らぎのシグナルが作られる事を示した。これは、上記のようなバイスペクトルではなくパワースペクトル(2点相関関数)に表れる事を示し、自己相関であるにも関わらず負にもなりうる事を発見した。これらの研究をまとめた2本の論文は既に出版されている。ベクトル場から生じる「非ガウス的」観測量はCMB揺らぎだけではない。ベクトル場起源の曲率揺らぎは、理論的に計算される物質揺らぎと実際観測される銀河、銀河団分布の不一致性(バイアス)に特徴的なスケール依存性を生み出す。我々はベクトル場から生じるバイアスパラメータを詳細に計算し、一般的なベクトル場運動項を考えた場合銀河団スケールのバイアスパラメータが必ず負になることを発見した。また、CMBバイスペクトルを用いてベクトル場に付随する方向依存性を特定し、背後の初期宇宙モデルの妥当性を検定する方法論を構築するという研究も行っている。これらの研究をまとめた2つの論文は現在査読中であるが、受理に向け前向きな返事を受け取ったところである。以上の研究は、初期宇宙にベクトル場が存在し得るか否か判断するための新しい観測的指標を提示するものであり、将来観測と比較する事によりその答えが得られるものと期待される。平成23年度の研究目標は、CMBバイスペクトルを用いた初期磁場の完全な制限を得ることであったが、これを達成するのみならず、対称性の破れのCMBバイスペクトルへの影響に関する研究も行うことができたため。ベクトル場の性質を特定するために、当初の予定であったCMBバイスペクトルを用いた解析のみならず、銀河分布に付随するバイアスのスケール依存性やCMBパワースペクトルなど新しい観測量を用いた解析も行ったため。当初の計画では、平成24年度は、N体シミュレーションを用いたニュートリノの性質の制限をメインで行うことになっていたが、これは他の研究グループによって行われたため、計画を変更して引き続き、CMBバイスペクトルを用いた様々な初期宇宙モデルの制限を行う。当初の計画では、N体シミュレーションを用いたニュートリノの性質の制限をメインで行うことになっていたが、これは他の研究グループによって行われたため、計画を変更して引き続き、CMBバイスペクトルを用いた様々な初期宇宙モデルの制限を行う。更に、今年度新たに解析したCMBパワースペクトルや銀河バイアスのスケール依存性などを用いた研究も進展させる。 | KAKENHI-PROJECT-10J07477 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J07477 |
音声コミュニケーション時の対人的な認知能力を反映した対話能力の教育評価方式の開発 | 他者との対話場面では,相手がどんな人間なのかということを,常に推し量りながら会話を進めていく。特に,電話などの音声コミュニケーションの場面では,話し方の特徴,また音声そのものが,話者の人柄や性格を推測する上での手がかりとなる。本研究では,1)音声の韻律特徴量と話者の性格印象に関する研究を重点的に進めた。またそれと並行して,2)自己の性格印象と英語学習スタイル,さらに英語の読解・聴解試験成績との関係について実験調査を行った。1)韻律特徴量と性格印象の関係については,発話速度やイントネーションを操作した聴覚実験を行った。高品質な音声合成方式STRAIGHTを用いて韻律特徴量を制御して実験刺激を作成し,音声から想起される話者の性格印象を性格特性5因子モデルに基づいて測定した。その結果,韻律特徴量の大きさと性格特性印象の評価値の間に,U字型,もしくは逆U字型の曲線関係があることを発見した。さらにその曲線形は,性格特性ごとにピーク位置や傾斜が異なることを見出した。この結果から,特性ごとに固有の5つの曲線パターンを統合することで,人物像全体を再構成するという,韻律特徴量と性格印象の関係性モデルを提案した。2)自分の性格印象と英語学習スタイル,英語の読解・聴解試験成績との関係については,大学入試センター試験の筆記試験とリスニングテストを用いたモニター試験を行い,それらの関係を分析した。その結果,自己の性格印象や学習スタイル,総合力や学力パターンとの関係を見出した。これらは,今後,音声学習支援への貢献が期待されるところである。他者との対話場面では,相手がどんな人間なのかということを,常に推し量りながら会話を進めていく。特に,電話などの音声コミュニケーションの場面では,話し方の特徴,また音声そのものが,話者の人柄や性格を推測する上での手がかりとなる。本研究では,1)音声の韻律特徴量と話者の性格印象に関する研究を重点的に進めた。またそれと並行して,2)自己の性格印象と英語学習スタイル,さらに英語の読解・聴解試験成績との関係について実験調査を行った。1)韻律特徴量と性格印象の関係については,発話速度やイントネーションを操作した聴覚実験を行った。高品質な音声合成方式STRAIGHTを用いて韻律特徴量を制御して実験刺激を作成し,音声から想起される話者の性格印象を性格特性5因子モデルに基づいて測定した。その結果,韻律特徴量の大きさと性格特性印象の評価値の間に,U字型,もしくは逆U字型の曲線関係があることを発見した。さらにその曲線形は,性格特性ごとにピーク位置や傾斜が異なることを見出した。この結果から,特性ごとに固有の5つの曲線パターンを統合することで,人物像全体を再構成するという,韻律特徴量と性格印象の関係性モデルを提案した。2)自分の性格印象と英語学習スタイル,英語の読解・聴解試験成績との関係については,大学入試センター試験の筆記試験とリスニングテストを用いたモニター試験を行い,それらの関係を分析した。その結果,自己の性格印象や学習スタイル,総合力や学力パターンとの関係を見出した。これらは,今後,音声学習支援への貢献が期待されるところである。他者との対話場面では,自分が話している相手がどのような人柄の人間なのかということを,常に推し量りながら会話を進行させていく.特に,電話などの音声コミュニケーションの場合には,相手の話し方,音声そのものが,その話し手の人柄・性格を推測するための手がかりとなる。本研究では,このような対人的な認知能力を反映したコミュニケーション能力測定を行うための基礎研究として,音声の時間構造,および基本周波数の変化,すなわち,話す速さの変化や,声の高さ・抑揚の特徴に着目している。本年度は,その中でも特に,音声中の抑揚の特徴が話者のパーソナリティ印象に与える影響について重点的に研究を行った。これまでに実施した聴覚実験では,高品質な音声分析合成方式であるSTRAIGHTを音声刺激の制御に用いた。そして,音声中の抑揚大きさ,すなわち,基本周波数F_0の変動幅を操作して,話し手の性格印象の変化を測定した。また,標準的なアクセントの言語規則を逸脱した,未知のイントネーションで話された音声から想起される話し手の性格印象についても検討を行った.実験では,大学生を対象にして聴覚実験を実施し,性格特性5因子モデルに基づくBig Five Scaleを用いて,その音声から想起される話者の性格印象を測定した。その結果,標準的な音調パターンでは,性格特性ごとにピーク位置や傾斜は異なるが,抑揚の大きさと性格印象の特性値の間に,U字・逆U字型の曲線的な関係が見出された.この各特性に固有な曲線的なパターンを統合する形で,人物像全体を再構成するモデルを提案した。未知のイントネーションの音声については,「音声の自然さ・わかりやすさ」や,多くの性格特性の評価は低いものの,ほんわかした・のほほんとした,といった「のんきさ」などの評価はむしら高かった。さらに,その抑揚が大きくなると「外向性」は上昇し,必ずしも全面的に否定的な印象を生ずる訳ではなく,未知の抑揚に対する心理的な寛容性がみとめられた。これまでに,この実験結果をまとめた研究論文が心理学研究に掲載されたところである。他者との対話場面では、自分が話している相手がどのような人柄の人間なのかということを、常に推し量りながら会話を進行させていく。特に、電話などでの音声コミュニケーションの場面では、話し方の特徴、音声そのものが、話者の人柄や性格を推測するための手がかりとなる。 | KAKENHI-PROJECT-17530499 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17530499 |
音声コミュニケーション時の対人的な認知能力を反映した対話能力の教育評価方式の開発 | 本研究では、このような対人的な認知能力を反映したコミュニケーション能力測定を行うための基礎研究として、音声の時間構造や基本周波数の変化、すなわち、話す速さや休止時間の配分、声の高さや抑揚の特徴に着目した研究を行っている。本年度は、昨年度に引き続き、特に音声のイントネーションに関する研究を重点的に進めてきた。また、コミュニケーション能力の測定には欠かせないリスニングテストの実施方法に関する検討も平行して行った。まず抑揚を対象とした実験を行うため、高品質な音声分析合成方式であるSTRAIGHTを用い、音声の基本周波数F_0を操作した。そして、音調曲線の高低を反転させる処理を行うことにより、未知のイントネーションを具現化した音声刺激の生成に成功した。それらの音声刺激を用いた聴覚実験を行った結果、私たちの未知のイントネーションに対する寛容性、標準的なアクセントや音調パターンから逸脱した音声であっても許容する心理的な柔軟性が見出された。また、実在しない未知のイントネーションであっても、そこに何らかの方言らしさを感じ取り、自分にとって馴染みの薄い地域方言に、その音声を帰属させる傾向があることも見出された。これらの結果は、研究論文としてまとめられ、「音声研究」に掲載されたところである。次に、リスニングテストの実施方法の検討に関しては、大学入試センター試験で採用されている個別音源方式の改良を念頭において実験を進めた。実際に、受験者が個々に機器を操作して試験を受ける形式で実地調査を行ったところである。結果については、「大学入試センター紀要」に掲載される予定である。他者との対話場面では,自分が話している相手がどのような人柄の人間なのかということを,常に推し量りながら会話を進行させていく。特に,電話などでの音声コミュニケーションの場面では,話し方の特徴,音声そのものが,話者の人柄や性格を推測するための手がかりとなる。本年度は,昨年度までに引き続いて,音声の韻律特徴量と話者の性格印象に関する研究を重点的に進めた。またそれと並行して,自分自身の性格特性印象と英語学習スタイル,さらに英語の読解・聴解試験成績との関係について実験調査を行った。まず,音声の韻律特徴量と性格印象の関係性については,音声の時間構造や基本周波数(F_0),すなわち,発話速度や抑揚を操作した実験を行ってきた。実験では,日本で開発された高品質な音声分析合成方式であるSTRAIGHTを用いた。そして,性格特性5因子モデルに基づくBig Five Scaleを使用して,音声から想起される話者の性格印象を測定した。その結果,韻律特徴量を連続的に変化させると,性格特性ごとにピーク位置や傾斜は異なるが,特徴量の大きさと性格印象の特性値の間に,U字・逆U字型の曲線関係が見出された。そこで,特性ごとに固有の5つの曲線パターンを統合する形で,人物像の全体を再構成するモデルを提案した。これらの知見について,今年の国際音響学会議で発表した。次に,自分の性格印象と英語学習スタイル,英語の読解・聴解試験成績との関係については,大学入試センター試験の筆記試験とリスニングテストを用いたモニター試験を行い,それらの関係を分析した。 | KAKENHI-PROJECT-17530499 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17530499 |
時間的・空間的不均一視野における個人の視能力に配慮した明視性評価システムの開発 | 設計者や環境管理者が平易に明視性を診断することのできるツールを提供することを目的として、実効輝度理論を適用し、「視野輝度分布とその時間的変化」「光源および視対象の分光特性」「観察者の年齢や視力」ならびに視野輝度や照明光色の「空間的・時間的変動に対する視的快適性」に配慮した明視性評価システムを提案している。影響要因の関係と重要度を、我々を取り巻いている視野の実態に基づいて整理し、要因間の関係を関数化・標準化し、条件入力から評価出力までの流れを具体的に示している。設計者や環境管理者が平易に明視性を診断することのできるツールを提供することを目的として、実効輝度理論を適用し、「視野輝度分布とその時間的変化」「光源および視対象の分光特性」「観察者の年齢や視力」ならびに視野輝度や照明光色の「空間的・時間的変動に対する視的快適性」に配慮した明視性評価システムを提案している。影響要因の関係と重要度を、我々を取り巻いている視野の実態に基づいて整理し、要因間の関係を関数化・標準化し、条件入力から評価出力までの流れを具体的に示している。設計者や環境管理者が平易に明視性を診断することのできるツールを提供することを目的として、「実効輝度理論を適用し、視野輝度分布とその時間的変化・光源の分光特性・観察者の年齢や視力に配慮した〈明視性評価システム〉の提案」する。影響要因の関係と重要度を、我々を取り巻く視野の実態に基づいて整理し、これまでに得てきた知見の活用と未検討要因に関する実験を行い、要因間の関係を関数化・標準化し、条件入力から評価出力までの流れを具体的に提案することが最終目標である。平成21年度は主に、視力、年齢、散乱源の位置の影響について検討し、以下の知見を得ている。(1)視力の影響を確認するために、比較的視力の低い若齢者8名の視認閾値を測定し、既得の比較的視力の高い若齢者10名のデータと併せて、眼球内散乱光の輝度差弁別閾値への影響について検討を行った。注視点近傍からの散乱源によって生ずる散乱光の影響による輝度差弁別閾値の変化率は、視力が低いほど大きいが、視力1.0以上では差異がない。注視点から10度以上離れた散乱源については視力の影響は殆ど認められない。(2)加齢の影響を検討するために、高齢者5名の視認閾値の測定を行い、視力の等しい若齢者との比較検討を行った。注視点近傍からの散乱源によって生ずる輝度差弁別閾値の変化率には、加齢の影響は認められない。しかし、注視点から10度以上離れた散乱源については、輝度差弁別閾値の変化率は高齢者の方が大きく、は高齢者の方が大きく受けていると考えられる。(3)散乱源の方位による眼球内散乱光への影響について検討を行った。視野上方よりも下方にある散乱源の散乱光量が大きくなる傾向があるが、個人差が大きく、方位性が認められない者もいる。また、若齢者よりも高齢者により明瞭に方位性が認められる傾向がある。設計者や環境管理者が平易に明視性を診断することのできるツールを提供することを目的として、「実効輝度理論を適用し、視野輝度分布とその時間的変化・光源の分光特性・観察者の年齢や視力に配慮した〈明視性評価システム〉の提案」をする。影響要因の関係と重要度を、我々を取り巻く視野の実態に基づいて整理し、これまでに得てきた知見の活用と未検討要因に関する実験を行い、要因間の関係を関数化・標準化し、条件入力から評価出力までの流れを具体的に提案することが最終目標である。平成22年度は主に、多彩な照明光に対応するために、主波長の異なる色光を用いて光源の分光特性による散乱光量の違いを実験的に調べ以下の成果を得ている。(1)視野中心での散乱光量と照明光の分光特性(光色)との関係を明らかにするために、赤、緑、青の有彩色光と白色光を用いて輝度差弁別閾値を測定している。被験者は5名である。閾値は青光で高く、赤光で低いが、視対象が大きくなると光色による違いはなくなる。即ち、視野中心に近いほど分光分布(光色)による眼球内散乱光の違いが大きい。赤光は散乱光が小さく、青光は大きい。(2)視野周辺のグレア源による順応輝度増加量と照明光の分光分布との関係を明らかにするために、赤、緑、青の有彩色光と白色光のグレア源を用いて順応輝度増加量を測定している。被験者は5名である。赤光の方が青光よりも順応輝度の増加は小さい。言い換えると、赤よりも青のグレア源による感度低下の方が大きい。光色による増加量の違いは、グレア源が視野周辺になるほど小さくなる。即ち、視野中心に近いほど分光分布の違いによる眼球内散乱光への影響が大きい。(3)21年度の視力や年齢の眼球内散乱光への影響、視力と明るさ感との関係の分析結果をまとめ、学会に於いて公表している。設計者や環境管理者が平易に明視性を診断することのできるツールを提供することを目的として、「実効輝度理論を適用し、視野輝度分布とその時間的変化・光源の分光特性・観察者の年齢や視力に配慮した<明視性評価システム>の提案」を目的としている。 | KAKENHI-PROJECT-21560612 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21560612 |
時間的・空間的不均一視野における個人の視能力に配慮した明視性評価システムの開発 | 影響要因の関係と重要度を、我々を取り巻く視野の実態に基づいて整理し、これまでに得てきた知見の活用と未検討要因に関する実験を行い、要因間の関係を関数化・標準化し、条件入力から評価出力までの流れを具体的に提案する。本年度は21年度(年齢、視力)、22年度(光源の分光特性)の影響に関する結果をもとに、更に分析をすすめ、実効輝度関数への個人差(主に視力差)、年齢差、方位性(視野輝度分布)、光源種類(分光特性)の組み込み方を検討した。年齢と方位性の交互作用に関して、有用な知見を導いている。さらに、輝度分布の影響に関しては不快グレアと類似した傾向があるという新規知見を得た。時間的変動に関しては、研究代表者の過去の代表的成果である動的順応輝度関数を組み込むことで対応し、さらに変動の視的快適性について検討し、この点も配慮することとした。研究目標通り、視野輝度分布からスタートして、必要条件を入力することで、明視レベルを算出する一連の流れを具体的に提案することが出来た。次の段階の展開研究として、既存のデジタルカメラを利用した輝度分布計測システムに、「明視性の評価関数」を組み込み、対象視野をカメラ撮影することによって明視レベルを算出することのできる明視レベル計測システムの開発があるので、引き続きこの点について研究を進めていきたい。 | KAKENHI-PROJECT-21560612 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21560612 |
動脈硬化・心筋細胞障害成因遺伝子の単離 | 家族性高コレステロール血症(FH)は人類で最も頻度の高い遺伝病で、人では人種に関係なく500に1人の割合で原因遺伝子である低密度リポ蛋白質(LDL)受容体遺伝子に異常がある。LDLに対する受容体の異常により血液中のコレステロール濃度が増加することはLDL受容体経路により理解されるが、血液中のコレステロール濃度の増加によりなぜ動脈硬化が発生し、心筋細胞障害を引き起こすかという謎をLDL受容体経路によって解くことはできない。本研究では、FHのモデル動物であるWHHLウサギを用いて、LDL受容体異常により特異的に異常発現あるいは異常抑圧されているmRNAに対するcDNAを単離し、それを同定し、その機能を明らかにすることにより受容体異常から動脈硬化、心筋細胞障害に至るまでのカスケードを分子レベルで理解する事を目的としている。昭和63年度では、数十万のWHHLウサギの大動脈CDNAライブラリーをスクリーニングすることにより4つのクラスのcDNAを単離した。これらのcDNAを用いたノーザンブロッティングにより、対応するmRNAがWHHLウサギの大動脈で約3倍から6倍活性化されていることが明らかにされた。各クローンの解析は現在進行中であるが、同一のファミリーに属するmRNAであることが今までに明らかにされている。またコレステロールと共に動脈硬化生成には血中のトリグリセリドの増加も関与している。トリグリセリド生合成に重要な機能を果たしている脂肪酸活性化酵素の機能と調節機構を明らかにすることも動脈硬化生成を分子レベルで理解する上で重要である。脂肪酸活性化酵素の機能と代謝調節を明らかにするためにcDNAを単離して、その全構造を決定した。家族性高コレステロール血症(FH)は人類で最も頻度の高い遺伝病で、人では人種に関係なく500に1人の割合で原因遺伝子である低密度リポ蛋白質(LDL)受容体遺伝子に異常がある。LDLに対する受容体の異常により血液中のコレステロール濃度が増加することはLDL受容体経路により理解されるが、血液中のコレステロール濃度の増加によりなぜ動脈硬化が発生し、心筋細胞障害を引き起こすかという謎をLDL受容体経路によって解くことはできない。本研究では、FHのモデル動物であるWHHLウサギを用いて、LDL受容体異常により特異的に異常発現あるいは異常抑圧されているmRNAに対するcDNAを単離し、それを同定し、その機能を明らかにすることにより受容体異常から動脈硬化、心筋細胞障害に至るまでのカスケードを分子レベルで理解する事を目的としている。昭和63年度では、数十万のWHHLウサギの大動脈CDNAライブラリーをスクリーニングすることにより4つのクラスのcDNAを単離した。これらのcDNAを用いたノーザンブロッティングにより、対応するmRNAがWHHLウサギの大動脈で約3倍から6倍活性化されていることが明らかにされた。各クローンの解析は現在進行中であるが、同一のファミリーに属するmRNAであることが今までに明らかにされている。またコレステロールと共に動脈硬化生成には血中のトリグリセリドの増加も関与している。トリグリセリド生合成に重要な機能を果たしている脂肪酸活性化酵素の機能と調節機構を明らかにすることも動脈硬化生成を分子レベルで理解する上で重要である。脂肪酸活性化酵素の機能と代謝調節を明らかにするためにcDNAを単離して、その全構造を決定した。家族性高コレステロール血症(FH)は人類で最も頻度の高い遺伝病で,人では人種に関係なく500に1人の割合で原因遺伝子である低密度リポ蛋白質(LDL)受容体遺伝子に異常がある.コレステロールの運搬体であるLDLに対する受容体の異常により血液中のコレステロール濃度が増加することはLDL受容体経路により理解されるが,血液中のコレステロール濃度の増加によりなぜ動脈硬化が発生し,心筋細胞障害を引き起こすかという謎をLDL受容体経路によって解くことはできない.本研究では,人のFH同様にLDL受容体遺伝子の異常により動脈硬化を引き起こすFHのモデル動物であるWHHLウサギを用いて, WHHLウサギにおいて特異的に異常発現あるいは異常抑圧されているmRNAに対するcDNAを単離し,それを固定し,その機能を明らかにすることにより受容体異常から動脈硬化,心筋細胞障害に至るまでのカスケードを,分子レベルで理解することを目的としている.62年度ではWHHLウサギと正常ウサギの大動脈,心臓,肝臓よりmRNAを分離し,これらのmRNAを鋳型にして数10万100万クローンよりなるcDNAのライブラリーを確立してスクリーニングを開始した.本研究では,減質cDNAプローブをスクリーニングに用いるが, WHHLウサギの大動脈からmRNAを充分得ることができないので,減質cDNAプローブ調製法の改良を現在行っている.また動脈硬化巣では,がん遺伝子や細胞増殖因子の遺伝子が活性化されているとの報告もあり,これら動脈硬化形成に関与していると考えられる遺伝子プローブをも含めてスクリーニングしている所である.既にいくつかの候補が単離されているが,これらについては追試と詳細な解析の段階である. | KAKENHI-PROJECT-62624503 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62624503 |
小児悪性腫瘍の新規治療法の開発:ユーイング肉腫癌遺伝子不活性化タンパク質の同定 | ユーイング肉腫は小児や10代の若年性の骨及び軟部組織に発生する腫瘍である。ヒトcDNA two-hybridライブラリーを持つ酵母でEWS-FLI1との相互作用タンパク質スクリーニングを行ったが、同定できなかった。また、EWS-FLI1に対する共免疫沈降を行った結果、RBM14を同定したが再現性が得られなかった。そこでBioID法を行った結果、相互作用候補タンパク質として、SFPQ、FUS、NONO、PSPC1を同定した。しかし、NanoBitによるEWS-FLI1との相互作用試験では、再現性が得られなかった。現在、Piggybacシステムで相互作用タンパク質の同定を目指している。ユーイング肉腫は小児や10代の若年性の骨及び軟部組織に発生する腫瘍であり、悪性度が高く、転移頻度も共に高い。がん化の原因として、染色体の相互転座による転写活性化部位を持つEWS遺伝子とDNA結合部位を持つFLI1遺伝子の融合遺伝子EWS/FLI1が85%以上の症例で検出される。他にもEWS/ERG、EWS/E1AFなどの組合せもユーイング肉腫で検出される。EWS/FLI1、EWS/ERG、EWS/E1AF遺伝子を酵母で発現させると著しい増殖低下を示すことから、増殖低下を解除する変異体を同定した。その結果、酵母で同定した3種の融合遺伝子の変異部位は、ETSファミリーのFLI1、ERG、E1AFのETSドメインのみに集中しており、HEK293細胞では、EWS/FLI1の転写活性に必要であることを見い出した。本研究では、ETSドメインを介したユーイング肉腫のがん化作用機序の解明のため、ETSドメイン結合タンパク質の同定を行うことを目的とした。研究計画している項目は、酵母とユーイング肉腫細胞を使った1.ETSドメインを標的とする結合タンパク質の同定、2.それらの結合タンパク質のEWS/FLI1に対する増殖及び転写活性を調べることである。ユーイング肉腫細胞を用いたETSドメイン結合タンパク質の同定のために2つのアプローチを行った。一つ目の方法は、Yeast two-hybridによってFLI1のDNA結合領域と相互作用するタンパクのスクリーニングを行った。独立した遺伝子として3クローン同定できた。2つ目の方法は、BioID法を使った。BioIDにEWS-FLI1を融合させ、HEK293にトランスフェクションし、BioIDによりビオチン化された結合タンパク質を質量分析装置で同定した。その結果、多数の結合タンパクを同定することに成功した。平成28年度は、本研究は以下の項目を明らかにすることを目的としていた。1.酵母を用いたETSドメイン結合タンパク質の同定2.ユーイング肉腫細胞を用いたETSドメイン結合タンパク質の同定1.に関しては、EWS及びFLI1ドメインを発現するYeasttwo-hybridベクターに導入し、ヒトcDNAを発現するライブラリーでスクリーニングを行った。3つの独立したクローンを同定することができた。そのうち1つはプロテアーゼの一種であるcathepsin Vであった。2.に関しては、当初FLAGを用いた共免疫沈降を目指したが新しいタンパク相互作用解析ツールであるBioID法を使用した。BioIDにEWS-FLI1を融合させたベクターを作製し、HEK293にトランスフェクションし、ビオチンを添加することで融合タンパクをビオチン化した。ビオチン化したタンパクを質量分析で解析した結果、多数のタンパクを同定することが出来た。これらの中には複合体を形成すると報告されているものが含まれた。特にBioID法では多数のタンパク質を同定することが出来た。ユーイング肉腫は小児や10代の若年性の骨及び軟部組織に発生する腫瘍であり、悪性度が高く、転移頻度も共に高い。がん化の原因として、染色体の相互転座による転写活性化部位を持つEWS遺伝子とDNA結合部位を持つFLI1遺伝子の融合遺伝子EWS/FLI1が85%以上の症例で検出される。他にもEWS/ERG、EWS/E1AFなどの組合せもユーイング肉腫で検出される。研究計画している項目は、酵母とユーイング肉腫細胞を使った1ETSドメインを標的とする結合タンパク質の同定、2それらの結合タンパク質のEWS/FLI1に対する増殖及び転写活性を調べることである。酵母を使った結合タンパク質の同定に関してはスクリーニングの結果、候補遺伝子を同定したが、再現性を得ることができなかった。そこで、方法を変更し、BioID法による結合タンパク同定をHEK293細胞で行ったところ、数種類の結合タンパク質候補を得ることができた。候補タンパク質として、SFPQ、FUS、NONO、PSPC1に着目した。これらの分子はparaspeckle compornentと呼ばれる複合体を形成し、DNA損傷部位に集積していることが知られている。EWS-FLI1はparp1阻害剤に感受性であることが知られており、候補分子との相互作用が予想された。Nanobitを用いた結合試験では候補タンパク質とEWS-FLI1との結合は確認できなかった。そこで、BioID法の感度を上げるために、PiggyBacシステムを用いる系をpuromycin、tet-onのシステムで構築した。構築したベクターにEWS-FLI1、EWS-ERG、EWS-E1AFを発現するベクターを構築し、ユーイング肉腫細胞へ導入した。現在ビオチン化タンパクの解析を行っている。ユーイング肉腫は小児や10代の若年性の骨及び軟部組織に発生する腫瘍である。ヒトcDNA two-hybridライブラリーを持つ酵母でEWS-FLI1との相互作用タンパク質スクリーニングを行ったが、同定できなかった。 | KAKENHI-PROJECT-16K20345 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K20345 |
小児悪性腫瘍の新規治療法の開発:ユーイング肉腫癌遺伝子不活性化タンパク質の同定 | また、EWS-FLI1に対する共免疫沈降を行った結果、RBM14を同定したが再現性が得られなかった。そこでBioID法を行った結果、相互作用候補タンパク質として、SFPQ、FUS、NONO、PSPC1を同定した。しかし、NanoBitによるEWS-FLI1との相互作用試験では、再現性が得られなかった。現在、Piggybacシステムで相互作用タンパク質の同定を目指している。平成28年度に同定した候補タンパク質についてHEK293細胞及びユーイング肉腫細胞株での表現型解析を進めていく。特にBioID法で同定したタンパク質は複合体を形成しているものが同定された。BioID法でスクリーニングした際は、EWS-FLI1と融合する位置がN末端かC末端かで変化する可能性がある。今後は、EWS-FLI1のC末端にBioIDに融合したベクターを作製し新規結合タンパク質を同定する。さらに再現性を確認し、ユーイング肉腫細胞の増殖に関与するのかどうかを検討していく。癌生物学 | KAKENHI-PROJECT-16K20345 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K20345 |
ねじ溝をつけた超砥粒砥石 | 砥石作業面にねじ溝をつけることによって研削抵抗が大幅に減少し,工作物の熱変形や研削焼けの防止に効果があるという通常砥石で得られた結果をもとに,超砥粒砥石にねじ溝を付けて研削性能の向上および高価な超砥粒の有効利用に対する効果について調べた.レジンボンドのcBN砥石に各種溝パターンをつけて比較実験を行った結果,研削抵抗の低減には大きな効果があったが,レジンボンドの砥粒保持力が弱いために研削比および仕上げ面粗さが悪化し,通常砥石で得られたようなねじ溝の顕著な効果が得られなかった.しかし,無気孔タイプのレジンボンド砥石において,研削点への研削液の供給改善におよぼすねじ溝の効果が大きいことがわかった.溝の深さは1.3mm程度で顕著な効果があり,溝を深くし過ぎると溝が研削液で満たされなくなり,かえって冷却効率が低下することを新たに見出した.一方,砥粒保持力の強い電着砥石においては,研削の進行にともなって切れ刃の逃げ面魔耗が増大し,研削抵抗が急激に上昇して砥石寿命となるケースが多い.電着砥石の作業面にねじ溝をつけることによって砥石とワーク間の同時接触切れ刃数が減少し,切れ刃の魔耗が進行しても研削抵抗の増加率が小さく長時間研削が可能で砥石寿命が大幅に延びることを見出した.超砥粒砥石の作業面に経済的にねじ溝を付ける方法を検討し,電着砥石では溝になる部分をマスクして砥粒が着かなくする方法を,またレジンボンド砥石では砥粒層をリボン状にして接着剤で貼り付ける試みを行い,性能および寿命の点で実用に供することができることを確認した.ねじ溝は,研削抵抗の低減や研削液の冷却効果の向上など性能面で顕著な効果があるだけでなく,高価な超砥粒の寿命を延ばすので経済的な効果も大きい.砥石作業面にねじ溝をつけることによって研削抵抗が大幅に減少し,工作物の熱変形や研削焼けの防止に効果があるという通常砥石で得られた結果をもとに,超砥粒砥石にねじ溝を付けて研削性能の向上および高価な超砥粒の有効利用に対する効果について調べた.レジンボンドのcBN砥石に各種溝パターンをつけて比較実験を行った結果,研削抵抗の低減には大きな効果があったが,レジンボンドの砥粒保持力が弱いために研削比および仕上げ面粗さが悪化し,通常砥石で得られたようなねじ溝の顕著な効果が得られなかった.しかし,無気孔タイプのレジンボンド砥石において,研削点への研削液の供給改善におよぼすねじ溝の効果が大きいことがわかった.溝の深さは1.3mm程度で顕著な効果があり,溝を深くし過ぎると溝が研削液で満たされなくなり,かえって冷却効率が低下することを新たに見出した.一方,砥粒保持力の強い電着砥石においては,研削の進行にともなって切れ刃の逃げ面魔耗が増大し,研削抵抗が急激に上昇して砥石寿命となるケースが多い.電着砥石の作業面にねじ溝をつけることによって砥石とワーク間の同時接触切れ刃数が減少し,切れ刃の魔耗が進行しても研削抵抗の増加率が小さく長時間研削が可能で砥石寿命が大幅に延びることを見出した.超砥粒砥石の作業面に経済的にねじ溝を付ける方法を検討し,電着砥石では溝になる部分をマスクして砥粒が着かなくする方法を,またレジンボンド砥石では砥粒層をリボン状にして接着剤で貼り付ける試みを行い,性能および寿命の点で実用に供することができることを確認した.ねじ溝は,研削抵抗の低減や研削液の冷却効果の向上など性能面で顕著な効果があるだけでなく,高価な超砥粒の寿命を延ばすので経済的な効果も大きい.レジンボンドCBN砥石の外周面にダイアモンド砥石を用いて種々のパターンのねじ溝を入れ、クリープフィード研削を行ってそれぞれの研削性能を調べた。その結果、溝の面積率やパターンを適当に選ぶことによって研削抵抗を大巾に減少できることがわかった。さらに研削仕上面あらさや砥石摩耗の面から溝の最適形状を検討した結果、ねじれ角10度、条数10で溝の面積率が5060%のものがクリープフィード研削において最も良い結果を示した。これは、通常のWA砥石で得られた結果と一致しており、溝の面積率をできる限り大きくかつ研削方向に測定した山巾を大きくするという当初のねらいとよく一致するものである。一方、溝による研削液の供給効果を調べるため、溝の深さを0.151.30mmまで種々に変えてクリープフィード研削を行い、研削後の温度上昇を測定して冷却効率を調べた結果、溝深さが約0.25mmで最も高くなり、さらに溝を深くすると逆に冷却効率が低下することを見出した。現在その原因を調べる実験を行っているが、溝の中に研削液が十分に満たされない場合に泡立ちや分布のかたよりを生じ熱伝達が十分になるためと思われる。ねじ溝をつけた超砥粒砥石を低コストで製造するため、リボン状に成型した砥粒層をアルミディスクに接着剤で貼り付ける方法を、砥石メーカの協力を得て行った。耐久試験を行った結果、研削液をかけながらの研削作業で、約10時間後に接着剤がはがれてしまった。現在改善策を検討中である。 | KAKENHI-PROJECT-61850024 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61850024 |
ねじ溝をつけた超砥粒砥石 | 製造コストについては、砥粒の絶対量を少くできる点で有利であるが、従来のプレス、焼成方式にくらべて貼り付け、成型するコストをいかに下げるかが課題であり、今後砥石メーカと検討を加えて行きたい。 | KAKENHI-PROJECT-61850024 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61850024 |
超音波振動を用いた物体軟化装置の開発および応用 | 本研究では超音波振動を用いた物体軟化装置を開発し、衝撃吸収装置およびプレス成形機に応用する。超音波振動を金属などに加えると変形抵抗が減少するBlaha効果と呼ばれる現象が起きる。これまでの研究では、超音波振動を用いて高張力鋼板や炭素繊維強化プラスチックなどを軟化させることにより衝突による衝撃力が軽減することを示してきた。本研究では超音波振動による軟化現象に着目し、より効果的な軟化装置の実現を図る。また、これまで解明されてこなかった超音波振動による衝撃吸収特性を明らかにすると共に、超音波プレス成形機の開発など、超音波振動を用いた物体軟化装置の用途拡大を試みる。本研究では超音波振動を用いた物体軟化装置を開発し、衝撃吸収装置およびプレス成形機に応用する。超音波振動を金属などに加えると変形抵抗が減少するBlaha効果と呼ばれる現象が起きる。これまでの研究では、超音波振動を用いて高張力鋼板や炭素繊維強化プラスチックなどを軟化させることにより衝突による衝撃力が軽減することを示してきた。本研究では超音波振動による軟化現象に着目し、より効果的な軟化装置の実現を図る。また、これまで解明されてこなかった超音波振動による衝撃吸収特性を明らかにすると共に、超音波プレス成形機の開発など、超音波振動を用いた物体軟化装置の用途拡大を試みる。 | KAKENHI-PROJECT-19K04285 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K04285 |
文字のデジタル化とローマ字入力の性質及び日本語の音韻感覚に及ぼす影響の解明 | 本研究は、コンピュータを用いたデジタル変換やそのネットワーク化による文字の読みと書きが、人間の言語使用と存在意識にどのような影響を及ぼすか、また、特にコンピュータにおけるローマ字入力が、日本語の音韻感覚にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的とした。19年度には、コンピュータによる文字のデジタル処理の性質について分析的な解明を行い、文字の入力方式の影響について質問紙調査とインタビュー調査の結果を分析した。具体的には、(1)言語哲学的、言語歴史学的な分析的考察によって、コンピュータによる文字のデジタル処理とそのネットワーク化の性質を解明した。主として文献研究であり、ウォルター・オングの言語歴史学的な研究とマルティン・ハイデガーの技術論を主に参照した。18年度の研究を発展させ、論文を発表した。(2)文字の入力方式(ローマ字入力またはかな入力)と、手書きで書く際の文字の忘却の実態、また、ローマ字入力とかな入力における日本語の音韻感覚に与える差異に関して、大学生を対象に質問紙調査を実施したので、その結果を分析した。ローマ字入力とかな入力における日本語の音韻感覚に与える差異をSD法によって明らかにすることを主な目的にした。(3)複数の大学教員を対象に、コンピュータによる文字の入力方式とその書写行為への影響等に関するインタビュー調査を実施したので、その結果を分析した。(4)以上をもとに、研究報告書を作成した。「文字のデジタル化とローマ字入力の性質及び日本語の音韻感覚に及ぼす影響の解明」は、コンピュータを用いたデジタル変換やそのネットワーク化による文字の読みと書きが、人間の言語使用と存在意識にどのような影響を及ぼすか、また、特にコンピュータにおけるローマ字入力が、日本語の音韻感覚にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的とした。具体的には、(1)言語哲学的、言語歴史学的な考察によって、コンピュータによる文字のデジタル処理とそのネットワーク化の性質を解明する。(2)大学生を対象とする質問紙調査によって、文字の入力方式(ローマ字入力またはかな入力)と、手書きで書く際の文字の忘却の実態を明らかにする。また、ローマ字入力とかな入力における日本語の音韻感覚に与える差異をSD法によって明らかにする。(3)入力方式の変換(ローマ字入力の者はかな入力へ、かな入力の者はローマ字入力へ)の実験を行い、事後のインタビュー調査により、それぞれの入力方式の認知的負荷と日本語の書きとの適性を比較評価する。3年計画の初年度である17年度は言語哲学的、言語歴史学的な考察によって、コンピュータによる文字のデジタル処理とそのネットワーク化の性質を解明することをめざし、M.ハイデガー、W.オング、M.ハイムの論考によって分析を進め、対象の機制をほぼ明らかにした。また、次年度への準備のために、文字の入力と日本語の音韻意識に関して51名対象のアンケート調査と3名対象のインタビュー調査を実施した。これらにより、当初の目的を十分に達成した。「文字のデジタル化とローマ字入力の性質及び日本語の音韻感覚に及ぼす影響の解明」は、コンピュータを用いたデジタル変換やそのネットワーク化による文字の読みと書きが、人間の言語使用と存在意識にどのような影響を及ぼすか、また、特にコンピュータにおけるローマ字入力が、日本語の音韻感覚にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的とした。具体的には、(1)言語哲学的、言語歴史学的な考察によって、コンピュータによる文字のデジタル処理とそのネットワーク化の性質を解明する。(2)大学生を対象とする質問紙調査によって、文字の入力方式(ローマ字入力またはかな入力)と、手書きで書く際の文字の忘却の実態を明らかにする。また、ローマ字入力とかな入力における日本語の音韻感覚に与える差異をSD法によって明らかにする。(3)入力方式の変換(ローマ字入力の者はかな入力へ、かな入力の者はローマ字入力へ)の実験を行い、事後のインタビュー調査により、それぞれの入力方式の認知的負荷と日本語の書きとの適性を比較評価する。3年計画の2年次である18年度は言語哲学的、言語歴史学的な考察によって、コンピュータによる文字のデジタル処理とそのネットワーク化の性質を解明することを目的とし、M.ハイデガー、W.オングM.ハイムの論考によって分析を進め、対象の機制を明らかにした。また、文字の入力と日本語の音韻意識に関して、大学生105名対象のアンケート調査と成人5名対象のインタビュー調査を実施した。これらにより、当初の目的を十分に達成した。本研究は、コンピュータを用いたデジタル変換やそのネットワーク化による文字の読みと書きが、人間の言語使用と存在意識にどのような影響を及ぼすか、また、特にコンピュータにおけるローマ字入力が、日本語の音韻感覚にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的とした。19年度には、コンピュータによる文字のデジタル処理の性質について分析的な解明を行い、文字の入力方式の影響について質問紙調査とインタビュー調査の結果を分析した。具体的には、(1)言語哲学的、言語歴史学的な分析的考察によって、コンピュータによる文字のデジタル処理とそのネットワーク化の性質を解明した。主として文献研究であり、ウォルター・オングの言語歴史学的な研究とマルティン・ハイデガーの技術論を主に参照した。18年度の研究を発展させ、論文を発表した。(2)文字の入力方式(ローマ字入力またはかな入力)と、手書きで書く際の文字の忘却の実態、また、ローマ字入力とかな入力における日本語の音韻感覚に与える差異に関して、大学生を対象に質問紙調査を実施したので、その結果を分析した。ローマ字入力とかな入力における日本語の音韻感覚に与える差異をSD法によって明らかにすることを主な目的にした。(3)複数の大学教員を対象に、コンピュータによる文字の入力方式とその書写行為への影響等に関するインタビュー調査を実施したので、その結果を分析した。 | KAKENHI-PROJECT-17650269 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17650269 |
文字のデジタル化とローマ字入力の性質及び日本語の音韻感覚に及ぼす影響の解明 | (4)以上をもとに、研究報告書を作成した。 | KAKENHI-PROJECT-17650269 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17650269 |
メゾへテロナノコンポジット化による原型炉級耐照射性銅合金の創製 | Cu基材料の強度特性および耐照射性向上に向けて、極低温圧延法を施したCuの強度・延性同時向上メカニズム解明とCuCrZr合金への適用性を明らかにするために、微細組織評価および引張試験を行うとともに、中性子影響を調べた。CuCrZr合金ではCuのような結晶粒の不均質性が得られず、強度と延性の顕著な同時向上現象は発現しなかったが、室温圧延とは異なる黄銅型集合組織が得られ、延性を保持したまま強度の向上が可能であることが示された。また、ナノコンポジット組織を有するODS-Cu合金の開発に向けた新しいMAプロセスの基礎実験として、水冷MA法をCu合金に適用可能であることが示された。本研究では、強度と延性の同時向上のためのメゾ組織制御を目指した極低温圧延法による銅合金の改良とともに、耐照射性の向上が期待できる酸化物分散強化型(ODS)銅合金の開発のためのメカニカルアロイング(MA)プロセスに関する基礎研究を進めた。極低温圧延法による銅合金のメゾ組織制御については、純銅に極低温圧延法を適用した場合の特性変化のメカニズムを微細組織から明らかにし、加えてCuCrZr合金に適用した場合の引張特性に与える影響を室温圧延材と比較し、集合組織の観点からその効果を明らかにした。また、極低温圧延を施したCuCrZr合金において中性子照射試験を行い,今回の照射条件で照射前の良好な引張特性を失わないことがわかった[1]。MAプロセスの最適化に関しては、延性の高い銅の粉末を通常の遊星型ボールミル等でMAすると、容器やボールに付着してしまいMAの進行や粉末の回収が困難であることが知られているものの、新たに導入した水冷型高エネルギーボールミル装置を用いることによって、MA中のポット外部表面温度を約42°Cで定常とすることに成功し、Y2O3を銅中に分解することに成功したと考えられる。一方、粉末は最終的には粒上に凝集してしまったので、今後の粉末の焼結に向けたMA条件の探索が必要である。銅合金への極低温圧延法の適用性評価と特性改善メカニズムの解明を進め、論文が出版準備中である。一方、メカニカルアロイング(MA)法によるODS銅合金の開発については、水冷型MA装置を新規に導入し、その適用性評価を始めた段階である。上記を総合すると、銅合金に対するMA法の条件探索については最終年度において加速が必要であるものの、計画はおおむね順調に進展していると言える。これまでに極低温圧延法によるメゾ組織制御が銅合金の強度特性の向上に効果的であることを示した。最終年度においては、メゾ組織制御に加えて、ナノ酸化物粒子が高密度に分散されたナノ組織制御による銅合金の開発に向けて、酸化物分散強化銅の焼結に必要なメカニカルアロイング(MA)プロセスの最適化、特に難MA性の銅粉末の凝集を防ぐことを目的として、ボールミル運転条件、MA雰囲気、添加元素について系統的に明らかにした。ボールミル運転条件に関しては、水冷と間欠運転を組み合わせることによって、助剤を加えることなく銅粉末単体においてもボールや容器への付着を防ぐことができることが明らかとなった。一方、MA雰囲気を水素混合雰囲気とすることによって、銅粉末凝集がかえって促進されることが明らかとなった。これは、銅粉末表面の酸素がMA雰囲気中の水素によって還元されたため、銅本来の延性が促進されたためと考えられる。また、添加元素をY2O3のみではなく、他の酸化物等と混合添加することによって、銅粉末の凝集が抑制され、効率的にMAプロセスを進めることが可能であることが示された。得られたMA粉末をホットプレス炉によって焼結し、99%以上の密度が得られることも示した。以上の結果より、これまでに困難とされていたボールミルによるMAプロセスによる酸化物分散強化銅の製造に目途を付け、所期の目的を達成した。今後、焼結体の強度特性、熱伝導特性、耐照射性を明らかにする予定である。Cu基材料の強度特性および耐照射性向上に向けて、極低温圧延法を施したCuの強度・延性同時向上メカニズム解明とCuCrZr合金への適用性を明らかにするために、微細組織評価および引張試験を行うとともに、中性子影響を調べた。CuCrZr合金ではCuのような結晶粒の不均質性が得られず、強度と延性の顕著な同時向上現象は発現しなかったが、室温圧延とは異なる黄銅型集合組織が得られ、延性を保持したまま強度の向上が可能であることが示された。また、ナノコンポジット組織を有するODS-Cu合金の開発に向けた新しいMAプロセスの基礎実験として、水冷MA法をCu合金に適用可能であることが示された。今回のMA条件においては,MA試験前後の質量変化から水冷MA法において粉末の全量を回収することができたものの、粉末はmm程度のサイズに凝集しており、ODS銅合金を製造するためには、潤滑剤導入や水素雰囲気MAによる微粉化等の更なるMA条件の探索を進める必要がある。MA条件の最適化後には、北海道大学のプラズマ焼結装置等を活用して、MAした銅合金粉末の焼結を行い、強度特性評価等を進める計画である。核融合材料ヴァーダー・サイエンティフィック製高エネルギー水冷型ボールミルを他の科研費でも使用することとなり合算して購入することにより経費を抑えた。装置消耗品であるメカニカルアロイング用容器やボールの摩耗が発生するため、交換用品の購入に充てる予定である。 | KAKENHI-PROJECT-15K14280 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K14280 |
細胞増殖・分化因子とグリコサミノグリカンとの相互作用の発生・分化に伴う変動 | 発生や分化などに伴って変化する硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)の構造が、その機能、特に細胞増殖。分化因子との相互作用能の変化と相関するのかを明らかにすることを目的として、研究を行なった。また、微量でのGAGの構造解析を可能にするため、高感度構造解析法の開発と、それを利用したオリゴ糖の糖鎖配列決定を行った。1.異なる発生段階のアフリカツメガエル胚よりGAGを調製し、様々な細胞増殖・分化因子との相互作用をBIAcoreを用いて速度論的に詳細に調べた。また、発生段階の異なる胚の産生する硫酸化GAGの鎖長や硫酸化ドメイン構造などについても解析した。発生に伴って、細胞増殖・分化因子との相互作用能や多糖鎖の構造が変化することが明らかになった。2.発生や神経再生の研究に非常によく用いられているモデル動物であるヒドラについて、GAGを精製し、その構造を解析した。また、抗GAG抗体を用いて免疫組織染色を行い、ヒドラの刺胞が抗コンドロイチン抗体473A12で特異的に染色されることを明らかにした。線虫においては、コンドロイチンが細胞質分裂に必須であることが証明されているので、ヒドラにおいてもコンドロイチンが重要な役割を果たしていることが予想される。この研究成果について、現在論文投稿中である。3.GAGの機能と構造の相関を解明するには、微量で構造解析を行うことが不可欠である0そこで、0.1nmol以下でオリゴ糖を構造決定する手法を開発し、イカ軟骨由来のコンドロイチン硫酸Eとサメ軟骨由来のコンドロイチン硫酸Cより八糖や十糖を単離し、これらの構造解析に応用した。その結果、30種類以上の新規構造のオリゴ糖を同定することができ、これらを用いて市販の抗体のエピトープの解析を行なった。この成果は、2報の論文として報告した。発生や分化などに伴って変化する硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)の構造が、その機能、特に細胞増殖。分化因子との相互作用能の変化と相関するのかを明らかにすることを目的として、研究を行なった。また、微量でのGAGの構造解析を可能にするため、高感度構造解析法の開発と、それを利用したオリゴ糖の糖鎖配列決定を行った。1.異なる発生段階のアフリカツメガエル胚よりGAGを調製し、様々な細胞増殖・分化因子との相互作用をBIAcoreを用いて速度論的に詳細に調べた。また、発生段階の異なる胚の産生する硫酸化GAGの鎖長や硫酸化ドメイン構造などについても解析した。発生に伴って、細胞増殖・分化因子との相互作用能や多糖鎖の構造が変化することが明らかになった。2.発生や神経再生の研究に非常によく用いられているモデル動物であるヒドラについて、GAGを精製し、その構造を解析した。また、抗GAG抗体を用いて免疫組織染色を行い、ヒドラの刺胞が抗コンドロイチン抗体473A12で特異的に染色されることを明らかにした。線虫においては、コンドロイチンが細胞質分裂に必須であることが証明されているので、ヒドラにおいてもコンドロイチンが重要な役割を果たしていることが予想される。この研究成果について、現在論文投稿中である。3.GAGの機能と構造の相関を解明するには、微量で構造解析を行うことが不可欠である0そこで、0.1nmol以下でオリゴ糖を構造決定する手法を開発し、イカ軟骨由来のコンドロイチン硫酸Eとサメ軟骨由来のコンドロイチン硫酸Cより八糖や十糖を単離し、これらの構造解析に応用した。その結果、30種類以上の新規構造のオリゴ糖を同定することができ、これらを用いて市販の抗体のエピトープの解析を行なった。この成果は、2報の論文として報告した。発生や分化などに伴って変化する硫酸化グリコサミノグリカンの構造が、その機能、特に細胞増殖・分化因子との相互作用能の変化と相関するのかを明らかにすることを目的として、下記の3項目の研究を行なった。【1】ヘパラン硫酸(HS)の生合成酵素であるEXT1を欠損させたマウスの産生するHSが、野生型のマウスの産生するHSに比べて短いことを既に見い出している。そこで、野生型マウスとEXT1欠損マウスの産生するHSを調製し、それらと様々な細胞増殖・分化因子との相互作用の解析を試みた。しかし、現在、EXT1欠損マウス由来繊維芽細胞の状態が良くなく、解析に十分な量の変異体HSが得られていない。共同研究者のウプサラ大学Kusche-Gullberg博士から再度細胞の供給を受け、実験をやり直す予定である。【2】アフリカツメガエル胚のグリコサミノグリカンの構造の変化が、発生過程で必要な様々な細胞増殖・分化因子との相互作用能をも変化させているのかを明らかにするため、異なる発生段階の胚より調製したグリコサミノグリカンを用いて、細胞増殖・分化因子との相互作用をBIAcoreを用いて速度論的に詳細に調べた。また、発生段階の異なる胚の産生する硫酸化グリコサミノグリカンの鎖長や硫酸化ドメイン構造などについても解析した。発生に伴って、細胞増殖・分化因子との相互作用能や多糖鎖の構造が変化することが明らかになった。この研究成果については、現在論文投稿のための準備中である。【3】発生や神経再生の研究に非常によく用いられているモデル動物であるヒドラについて、グリコサミノグリカンを精製し、その構造を解析した。 | KAKENHI-PROJECT-17590078 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17590078 |
細胞増殖・分化因子とグリコサミノグリカンとの相互作用の発生・分化に伴う変動 | より高等なモデル生物である線虫やショウジョウバエよりも高硫酸化されたコンドロイチン硫酸を含んでいる点が特徴的であった。この研究成果について、現在論文作成中である。発生や分化などに伴って変化する硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)の構造が、その機能、特に細胞増殖・分化因子との相互作用能の変化と相関するのかを明らかにすることを目的として、研究を行なった。また、微量でのGAGの構造解析を可能にするため、高感度構造解析法の開発と、それを利用したオリゴ糖の糖鎖配列決定を行った。1.異なる発生段階のアフリカツメガエル胚よりGAGを調製し、様々な細胞増殖・分化因子との相互作用をBIAcoreを用いて速度論的に詳細に調べた。また、発生段階の異なる胚の産生する硫酸化GAGの鎖長や硫酸化ドメイン構造などについても解析した。発生に伴って、細胞増殖・分化因子との相互作用能や多糖鎖の構造が変化することが明らかになった。2.発生や神経再生の研究に非常によく用いられているモデル動物であるヒドラについて、GAGを精製し、その構造を解析した。また、抗GAG抗体を用いて免疫組織染色を行い、ヒドラの刺胞が抗コンドロイチン抗体473A12で特異的に染色されることを明らかにした。線虫においては、コンドロイチンが細胞質分裂に必須であることが証明されているので、ヒドラにおいてもコンドロイチンが重要な役割を果たしていることが予想される。3. GAGの機能と構造の相関を解明するには、微量で構造解析を行うことが不可欠である。そこで、0.1nmol以下でオリゴ糖を構造決定する手法を開発し、イカ軟骨由来のコンドロイチン硫酸Eとサメ軟骨由来のコンドロイチン硫酸Cより八糖や十糖を単離し、これらの構造解析に応用した。その結果、30種類以上の新規構造のオリゴ糖を同定することができ、これらを用いて市販の抗体のエピトープの解析を行なった。この成果は、2報の論文として報告した。 | KAKENHI-PROJECT-17590078 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17590078 |
大都市圏域の衰退過程に関する日米比較数量分析 | 昭和62年度は,2年計画で進めた本研究の最終年度にあたり,第1年の研究成果を踏まえて,つぎの研究作業を執り行なった.1都市圏人口の動学的変化過程を対象として,「都市圏のライフサイクル仮説」に照らしつつ,日米間の比較分析を行なった.この分析では,米国の大都市圏を人口規模の大きい順に30選び,それらが見せる逆都市化現象の特性を,日本の30大都市圏と比較した.その結果,つぎの諸点が判明した.(1)米国の30大都市圏のうち,約3分の1にあたる9大都市圏が,1970年代後半には逆都市化の状況を見せるに至った.(2)米国の大都市圏が逆都市化段階を迎えるおよそ20年前に,都心部人口の減少が先行的にみられた.(3)ロキシー指標の値を比較すると,日本における30大都市圏人口の変化動向は,米国の30大都市圏人口の変化動向にタイム・ラグを伴なって追随しており,日本の都市圏システムが近い将来逆都市化現象を呈する確率は大きい.2空間的サイクル・モデルの脈絡の中で,わが国の都市圏内ロキシー指標分析と,都市圏間ロキシー指標分析を行なった.その結果,都市圏内地域が見せる空間的ライフ・サイクル現象と,都市圏システムが見せる空間的ライフ・サイクル現象の間には,密接な関係が存在することが明きらかになった.3逆都市化時代をひかえた我が国の都市圏システムを念頭において,的確な都市政策の在り方を具体的に考察した.昭和61年度は、2年計画で執り行なう本研究の第1年次プログラムとして、つぎの作業を進めた。【I】.データ・ファイルの整理1.わが国の86機能的都市圏(FUC)を対象に、『昭和60年国勢調査全国都道府県市区町村別人口(要計表による人口)』に拠り、1985年の人口を市区町村別に積み上げたデータ・ファイルをほぼ完了した。2.3大都市圏(東京,大阪,名古屋FUC)を構成する市区町村をそれぞれのFUCにおける主要鉄道沿線別地域に分類し、当該主要鉄道起点からの距離データを追加したデータ・ファイル(1980年までは人口及び大分類産業別就業地就業者数を含み、1985年は人口のみを含む)を作成した。1.ROXY指標概念の整理及び新たな工夫の案出2.「都市圏ライフサイクル仮説」概念の整理3.上記1及び2の作業結果に基づくROXY指標分析(1)3大都市圏内人口集中化・郊外化現象及び産業集中化・郊外化現象に関するROXY指標分析(2)3大都市圏の主要鉄道沿線別地域(計9地域)における、人口集中化・郊外化現象及び産業集中化・郊外化現象に関するROXY指標分析なお、上記作業は昭和62年度の研究に対する礎石の役割を果たすものであり、昭和62年度末には2年間の研究成果を総合的に纒める予定である。昭和62年度は,2年計画で進めた本研究の最終年度にあたり,第1年の研究成果を踏まえて,つぎの研究作業を執り行なった.1都市圏人口の動学的変化過程を対象として,「都市圏のライフサイクル仮説」に照らしつつ,日米間の比較分析を行なった.この分析では,米国の大都市圏を人口規模の大きい順に30選び,それらが見せる逆都市化現象の特性を,日本の30大都市圏と比較した.その結果,つぎの諸点が判明した.(1)米国の30大都市圏のうち,約3分の1にあたる9大都市圏が,1970年代後半には逆都市化の状況を見せるに至った.(2)米国の大都市圏が逆都市化段階を迎えるおよそ20年前に,都心部人口の減少が先行的にみられた.(3)ロキシー指標の値を比較すると,日本における30大都市圏人口の変化動向は,米国の30大都市圏人口の変化動向にタイム・ラグを伴なって追随しており,日本の都市圏システムが近い将来逆都市化現象を呈する確率は大きい.2空間的サイクル・モデルの脈絡の中で,わが国の都市圏内ロキシー指標分析と,都市圏間ロキシー指標分析を行なった.その結果,都市圏内地域が見せる空間的ライフ・サイクル現象と,都市圏システムが見せる空間的ライフ・サイクル現象の間には,密接な関係が存在することが明きらかになった.3逆都市化時代をひかえた我が国の都市圏システムを念頭において,的確な都市政策の在り方を具体的に考察した. | KAKENHI-PROJECT-61490030 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61490030 |
高エネルギ-密度二次電池用リチウムインタ-カレ-ション負極に関する研究 | 本研究は、高エネルギ-密度二次電池用のリチウム負極が有する欠点を克服するため、これに代替し得るリチウムインタ-カレ-ション負極を開発する目的で、リチウムのインタ-カレ-ション・デインタ-カレ-ションが容易に起こり、かつ十分に負な電位を示す材料を探索し、その電気化学特性を結晶構造と関連付けて検討したものである。得られた知見を総括すると、次の通りである。すなわち、(1)ルチル型、スピネル型あるいは岩塩型構造を有する一連の酸化物について合目的な材料を探索した結果、ルチル型酸化物ではWO_2が、スピネル型酸化物ではCo_3O_4が、また岩塩型酸化物ではCoOがそれぞれ比較的良好な特性を示すことが明らかとなった。(2)WO_2へのリチウムのインタ-カレ-ション・デインタ-カレ-ション曲線では0.6Vと0.8Vの間に相変化に起因する大きな段差が見られた。(3)WO_2ヘリチウムがインタ-カレ-ションするにつれてWO_2格子内の面間隔が広がり、多量のリチウムがインタ-カレ-ションするとWO_2格子のゆがみが生じた。(4)WO_2をリチウム二次電池用負極材料として用いる場合には、電位が0.6Vvs.Li/Li^+以下にならないようにする必要があった。(5)リチウムのインタ-カレ-ション・デインタ-カレ-ションにおいて、比較的低温で調製した結晶化度の低いCo_3O_4は固溶体挙動を示し、比較的高温で調製した結晶化度の高いCo_3O_4は二相挙動を示した。(6)Co_3O_4へのリチウムのインタ-カレ-ション・デインタ-カレ-ションにおいては、サイクル数の増加につれてク-ロン効率が高くなった。(7)インタ-カレ-ションしたリチウムの量がLi_XCo_3O_4におけるx=2を越えて過度に増加すると、Co_3O_4の結晶の骨格が徐々に崩壊した。(8)同様に、インタ-カレ-ションしたリチウムの量がLi_XCoOにおけるx=0.6を越えると、CoOの結晶の骨格が徐々に崩壊した。本研究は、高エネルギ-密度二次電池用のリチウム負極が有する欠点を克服するため、これに代替し得るリチウムインタ-カレ-ション負極を開発する目的で、リチウムのインタ-カレ-ション・デインタ-カレ-ションが容易に起こり、かつ十分に負な電位を示す材料を探索し、その電気化学特性を結晶構造と関連付けて検討したものである。得られた知見を総括すると、次の通りである。すなわち、(1)ルチル型、スピネル型あるいは岩塩型構造を有する一連の酸化物について合目的な材料を探索した結果、ルチル型酸化物ではWO_2が、スピネル型酸化物ではCo_3O_4が、また岩塩型酸化物ではCoOがそれぞれ比較的良好な特性を示すことが明らかとなった。(2)WO_2へのリチウムのインタ-カレ-ション・デインタ-カレ-ション曲線では0.6Vと0.8Vの間に相変化に起因する大きな段差が見られた。(3)WO_2ヘリチウムがインタ-カレ-ションするにつれてWO_2格子内の面間隔が広がり、多量のリチウムがインタ-カレ-ションするとWO_2格子のゆがみが生じた。(4)WO_2をリチウム二次電池用負極材料として用いる場合には、電位が0.6Vvs.Li/Li^+以下にならないようにする必要があった。(5)リチウムのインタ-カレ-ション・デインタ-カレ-ションにおいて、比較的低温で調製した結晶化度の低いCo_3O_4は固溶体挙動を示し、比較的高温で調製した結晶化度の高いCo_3O_4は二相挙動を示した。(6)Co_3O_4へのリチウムのインタ-カレ-ション・デインタ-カレ-ションにおいては、サイクル数の増加につれてク-ロン効率が高くなった。(7)インタ-カレ-ションしたリチウムの量がLi_XCo_3O_4におけるx=2を越えて過度に増加すると、Co_3O_4の結晶の骨格が徐々に崩壊した。(8)同様に、インタ-カレ-ションしたリチウムの量がLi_XCoOにおけるx=0.6を越えると、CoOの結晶の骨格が徐々に崩壊した。 | KAKENHI-PROJECT-01550633 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01550633 |
形式言語を特徴づけるサンプル集合と効率的な学習可能性に関する研究 | 形式言語の質問による学習について,以下の結果を得た.1.代表部分集合をランダムサンプルから効率的に構成する方法昨年までの研究において,単純決定性言語などの文脈自由言語の部分言語族が,所属性質問と代表部分集合と呼ばれる特徴的な記号列集合から効率的に学習可能であることを示した.このとき,代表部分集合をランダムサンプルから効率的に構成できれば,形式言語の学習可能性において新たな展開となる.本研究では,そのような構成が可能となる条件を考察し,以下の定理を得た.定理:学習対象を表すことのできる文法の生成規則の出現確率について,その最小値が既知ならば,単純決定性言語は,所属性質問とランダムサンプルから効率的に学習可能である.また,上記定理における出現確率の最小値を何らかの形で学習者が得ることができれば,より理想的な結果を得られる.そこで,ある特別なサンプル分布の元では,学習者が上記の最小値を予測可能であることを示し,以下の定理を得た.定理:サンプル分布が"規則が連続出現する分布"であるとき,単純決定性言語は,所属性質問とランダムサンプルから効率的に学習可能である.2."やさしい教師"と効率的な学習所属性質問と反例による学習において,反例を正の(もしくは,負の)反例から優先的に与える教師を"やさしい教師"と呼ぶ.このとき以下の定理を得た.定理:単純決定性言語は,所属性質問とやさしい教師から多項式時間厳密学習可能である.以上の各定理および昨年までの研究により,形式言語の学習において,それを特徴づけるサンプル集合と効率的な学習について大きな進歩を得ることができた.計算論的学習理論の中で特に形式言語の質問による学習について,以下の結果を得た.1.単純決定性言語に対する,質問と代表部分集合による,多項式時間厳密学習可能性を示した.これまで,正則言語を実質的に含んだ言語族に対しては,構文木の情報を与えるなど,学習者に極めて有利な条件のもとでの学習可能性しか示されていなかった.本研究の結果は,単純決定性言語という一般性のある言語族に対して,質問と条件づきサンプルのみから効率的に厳密学習可能であることが示せた点で大きな意義がある.2.さらに,質問とランダムサンプリングによる,多項式時間での確率的近似学習を可能にする付加情報を明らかにした.文法推論における確率的近似学習可能性は,過去に示された例が極めて少ないため,それを可能とする付加情報の条件を明らかにすることは意義がある。3.線形言語のある部分言語族に対して,質問と反例による厳密学習アルゴリズムを示し,その時間計算量は,学習対象をあらわす文法のサイズ,反例の最大長,および学習対象をあらわす文法族での等価性判定に要する時間計算量に関する多項式で抑えられることを示した。上記結果で得られたアルゴリズムを線形言語の部分言語族に対して適用することにより得られた結果である.本研究で考察しているアルゴリズムが文法推論において幅広く一般的に適用できることを示している点で有意義である.4.同言語族に対して,質問とランダムサンプリングから多項式時間で確率的近似学習が可能となる十分条件を示した.前項と同様に,単純決定性言語において示された結果を線形言語の部分言語族に対して適用した結果であるが,特に等価性判定問題が効率的に可能か否かに関わらず本手法が適用できることを示した点に大きな意義がある.形式言語の質問による学習について,以下の結果を得た.1.代表部分集合をランダムサンプルから効率的に構成する方法昨年までの研究において,単純決定性言語などの文脈自由言語の部分言語族が,所属性質問と代表部分集合と呼ばれる特徴的な記号列集合から効率的に学習可能であることを示した.このとき,代表部分集合をランダムサンプルから効率的に構成できれば,形式言語の学習可能性において新たな展開となる.本研究では,そのような構成が可能となる条件を考察し,以下の定理を得た.定理:学習対象を表すことのできる文法の生成規則の出現確率について,その最小値が既知ならば,単純決定性言語は,所属性質問とランダムサンプルから効率的に学習可能である.また,上記定理における出現確率の最小値を何らかの形で学習者が得ることができれば,より理想的な結果を得られる.そこで,ある特別なサンプル分布の元では,学習者が上記の最小値を予測可能であることを示し,以下の定理を得た.定理:サンプル分布が"規則が連続出現する分布"であるとき,単純決定性言語は,所属性質問とランダムサンプルから効率的に学習可能である.2."やさしい教師"と効率的な学習所属性質問と反例による学習において,反例を正の(もしくは,負の)反例から優先的に与える教師を"やさしい教師"と呼ぶ.このとき以下の定理を得た.定理:単純決定性言語は,所属性質問とやさしい教師から多項式時間厳密学習可能である.以上の各定理および昨年までの研究により,形式言語の学習において,それを特徴づけるサンプル集合と効率的な学習について大きな進歩を得ることができた. | KAKENHI-PROJECT-16700007 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16700007 |
微生物によるアゾ色素の分解 | 染色工場の廃液より採集した細菌(5種混合)は、アゾ色素のモデル化合物としたOrange16を120ppm濃度まで効率よく脱色分解することができた。また微好気条件とすることで、Orange16を繰り返し脱色することが可能であった。そこでこの中から最も高い脱色能を示した細菌を分離し、Aermonas sp. Aer2-1株と同定した。本細菌のアゾ色素脱色における培養条件を設定し、Orange16の脱色を行ったところ、1200ppmの濃度までは効率的に脱色でき、750ppm濃度では約50時間で完全に脱色した。他方、同様にOrange IIを用いて分離同定したBacillus sp. B42株のアゾリダクターゼを各種クロマトグラフィーによって精製した。精製した酵素は分子量68K Da.のホモダイマーであり、pH6.0から7.0、60°C以下で安定であった。至適反応条件はpH6.5、55°Cであった。本酵素は活性発現に補酵素としてNADPのみを要求した。他のアゾ化合物であるOrange16やNew cossinに高い活性を示したが、Trypan BlueやCongo Red等のジアゾ化合物には作用しなかった。反応速度論的に解析した結果、NADPに対するKmは0.13mM、Orange IIに対するKmは0.1mMであり、Vmは0.15μM/minであり、反応機構はping pong機構であることが示唆された。Bacillus sp. B42株からアゾリダクターゼ遺伝子のクローニングを行った。データーベース上のBacillus cereusの全ゲノム配列を参考に、プライマーを設計しPCR法によって増幅したDNA断片の塩基配列を決定した。その結果得られた3種のDNA塩基配列から予想されるORFのサイズは先に精製した酵素とは異なっていた。得られた3種(azr6,azr8,azr18)を大腸菌によって高発現させた。その中で最も発現量が高かったAzr8について発現産物を精製して酵素の性質を決定した。精製酵素は分子量約23kDaの単量体であり、至適温度55°C、至適pH4.0であった。また酵素は45°Cで完全に失活した。Azr8は補酵素としてNADHが必要であり、さらにFADやMNを添加することで35倍活性が高くなった。基質特性ではMethyl RedやEthyl Redに高い活性を示し、OrangeG、Orange II等のナフタレン環を持つものには活性が弱いかあるいは反応しなかった。ジアゾ化合物にもわずかだが反応した。染色工場の廃液より採集した細菌(5種混合)は、アゾ色素のモデル化合物としたOrange16を120ppm濃度まで効率よく脱色分解することができた。また微好気条件とすることで、Orange16を繰り返し脱色することが可能であった。そこでこの中から最も高い脱色能を示した細菌を分離し、Aermonas sp. Aer2-1株と同定した。本細菌のアゾ色素脱色における培養条件を設定し、Orange16の脱色を行ったところ、1200ppmの濃度までは効率的に脱色でき、750ppm濃度では約50時間で完全に脱色した。他方、同様にOrange IIを用いて分離同定したBacillus sp. B42株のアゾリダクターゼを各種クロマトグラフィーによって精製した。精製した酵素は分子量68K Da.のホモダイマーであり、pH6.0から7.0、60°C以下で安定であった。至適反応条件はpH6.5、55°Cであった。本酵素は活性発現に補酵素としてNADPのみを要求した。他のアゾ化合物であるOrange16やNew cossinに高い活性を示したが、Trypan BlueやCongo Red等のジアゾ化合物には作用しなかった。反応速度論的に解析した結果、NADPに対するKmは0.13mM、Orange IIに対するKmは0.1mMであり、Vmは0.15μM/minであり、反応機構はping pong機構であることが示唆された。Bacillus sp. B42株からアゾリダクターゼ遺伝子のクローニングを行った。データーベース上のBacillus cereusの全ゲノム配列を参考に、プライマーを設計しPCR法によって増幅したDNA断片の塩基配列を決定した。その結果得られた3種のDNA塩基配列から予想されるORFのサイズは先に精製した酵素とは異なっていた。得られた3種(azr6,azr8,azr18)を大腸菌によって高発現させた。その中で最も発現量が高かったAzr8について発現産物を精製して酵素の性質を決定した。精製酵素は分子量約23kDaの単量体であり、至適温度55°C、至適pH4.0であった。また酵素は45°Cで完全に失活した。Azr8は補酵素としてNADHが必要であり、さらにFADやMNを添加することで35倍活性が高くなった。基質特性ではMethyl RedやEthyl Redに高い活性を示し、OrangeG、Orange II等のナフタレン環を持つものには活性が弱いかあるいは反応しなかった。ジアゾ化合物にもわずかだが反応した。染色工業や印刷工業などで多用されるアゾ染料の廃棄物の脱色・分解を生物学的な処理方法で行なうため、効率よく脱色分解する微生物を広く自然界から探索した。 | KAKENHI-PROJECT-13480174 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13480174 |
微生物によるアゾ色素の分解 | アゾ色素はオレンジIIおよびコンゴーレッドを用い、これらを嫌気的および好気的条件下で効率よく脱色・分解する微生物を広く探索した。その結果各種の微生物を単離でき、その中で最も早く脱色できる菌株として細菌1株と糸状菌1株を選抜した。嫌気的条件下でオレンジIIを脱色する細菌はAeromonas sp.Aer2-1株と同定した。他方、好気的条件下でコンゴーレッドを脱色する糸状菌は、Trichoderma sp.HOT11019株と同定した。アゾ色素脱色のための両菌株の培養条件を検討したところ、Aeromonas sp.Aer2-1株は微生物の増殖のために好気的な培養を行い、その後酸素制限下でオレンジIIの脱色を行なう2段階のプロセスが効率的に脱色を行なうことが明らかとなった。脱色の最適条件は12時間好気培養を行なった後、脱色を酸素制限下とすることでオレンジIIを2日間で750ppmの濃度まで完全に脱色することができた。他方、好気的に分解脱色するTrichoderma sp.HOT11019株の最適条件を検討したところ、培養24時間でオレンジII濃度が300ppmまでは完全に脱色した。また繰り返し培養では、最大3時間で90%以上の脱色を示すまでに短縮することができた。アゾ色素分解微生物を得るため、オレンジIIを用いて脱色能を指標にしたスクリーニングを行った。その結果、高いオレンジII脱色活性を示す細菌を分離した。この細菌は胞子形成能を有する好気性桿菌であり、16SrRNA遺伝子との比較からBacillus sp. B29株と同定した。この細菌の生産するアゾ分解酵素の精製を行ったオレンジIIを含む培地で培養した菌体を破砕後、得られた無細胞抽出液を粗酵素とし、DEAE-cellulose、Blue Sepharose CL-6B、Tbyopearl HW-55F、Blue SepharoseCL-6B(2^<nd>)の各カラムクロマトグラフィーにより順次精製を行い、電気泳動的に単一なタンパク質にまで精製した。SDS-PAGEおよびゲルろ過の解析から、この酵素は分子量34kDaのタンパク質ユニットからなるホモダイマーであり、酵素活性の発現には補酵素としてNADPHを要求した。酵素反応は50°Cで最大活性を示し、60°C以下では1時間安定であったが、80°Cでは、完全に失活した。pHによる影響ではpH6.5で最大活性を示し、6.0から7.0の範囲で安定であった。金属イオンに対する影響では、Mn^<2+>で酵素活性が約3倍活性化され、Ag^+,Fe^<2+>で完全に阻害された。各種アゾ化合物に対する特異性では、ジアゾ化合物や芳香環に官能基のないアゾ色素には作用しなかったが、ニューコッシン、オレンジ16などに高い活性があった。速度論的解析によりこの酵素反応はping pong機構に従いオレンジIIおよびNADPHに対するKmは0.10mMと0.13mM、Vmaxは0.15μM/min、36U/mgであった。本年度はアゾリダクターゼ生産菌として分離同定したBacillus sp. B29株のアゾリダクターゼ遺伝子をクローニングして高発現を行った。ショットガンクローニングにより行ったところ、宿主大腸菌の持つ同様の酵素によつてorange IIなどのアゾ色素類を含む寒天培地上ですべての形質転換株のコロニー周辺にハロを生じてしまった。 | KAKENHI-PROJECT-13480174 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13480174 |
膵癌における神経周囲浸潤の臨床病理学的,分子生物学的研究 | 【目的】診断法が進歩し、拡大手術を行っている現在でも、膵癌は予後不良である.その原因に局所再発があり,神経浸潤(PN)の関与が考えられる.PNの研究は膵癌治療成績の向上に必要である.今回,膵癌のPN様式を臨床的,組織学的に検討し報告する.【対象と方法】膵癌切除24症例でPNの程度と組織型,癌間質結合織の多寡,リンパ節転移,累積生存率の相関を検討した.興味ある6症例で5μの完全連続切片を1072枚作成しPN様式を観察した.a)膵内神経にPNを認めたもの.b)PN腺管が神経周囲腔から突出する症例.c)近接する2本の神経束にPNを認めた症例.d)膵内から膵外へPNが連続している症例.e)多数のPNがある症例.f)神経長軸方向にPNのある症例.p53,NCAM,MMP-9,FGF抗体を用い24症例で免疫組織化学染色を行った.【結果】PNは17/24例(70.8%)に見られた.内訳はne0:7,ne1:6,ne2:9,ne3:2例であった.組織型ではpapは3/5例にPNがなく,wellはne0:2/5例,ne1:1例,modは12/41例に認め,程度も高度であった.間質結合織ではmedは3例ともPNがなく,int:8/10例,sci:9/11例に認めた.PNのない7例ともリンパ節転移がなかった.3生率はne0:57.1%,ne1:16.7%,ne2以上では生存がなかった.連続切片の観察では,PNは50本の神経束に見られ,複数癌腺管で形成された.1)PN癌腺管は4/6例は連続したが,2例(4神経束)でスキップした.2)1本の神経束で複数ヶ所でPNは神経外腺管と交通した.3)神経外癌腺管は神経周囲に集塊を形成し神経周囲腔に侵入した.4)神経の分岐,融合に伴ってPNは連続性進展した.5)神経周囲腔から神経束内へ侵入した.6)1癌腺管が2本のPNを来した.7)膵小葉間PNが非連続性に小葉内神経に浸潤した.p53発現は18/24例(75%)であったが,PNと原発巣の差はなかった.NCAM,MMP-9,FGFとPNの関係は明らかでなかった.【結語】PNは膵癌の予後規定因子として重要で,低分化で間質結合織量が増すほど増加した.PNは神経外癌腺管と頻繁に交通した.PNの多くは連続性だが非連続性症例もあり,手術で膵周囲の断端が陰性でも,さらに遠隔の後腹膜,非癌膵実質進展が考えられた.膵周囲の十分な郭清,術中照射等の追加治療が必要と考えられた.【目的】診断法が進歩し、拡大手術を行っている現在でも、膵癌は予後不良である.その原因に局所再発があり,神経浸潤(PN)の関与が考えられる.PNの研究は膵癌治療成績の向上に必要である.今回,膵癌のPN様式を臨床的,組織学的に検討し報告する.【対象と方法】膵癌切除24症例でPNの程度と組織型,癌間質結合織の多寡,リンパ節転移,累積生存率の相関を検討した.興味ある6症例で5μの完全連続切片を1072枚作成しPN様式を観察した.a)膵内神経にPNを認めたもの.b)PN腺管が神経周囲腔から突出する症例.c)近接する2本の神経束にPNを認めた症例.d)膵内から膵外へPNが連続している症例.e)多数のPNがある症例.f)神経長軸方向にPNのある症例.p53,NCAM,MMP-9,FGF抗体を用い24症例で免疫組織化学染色を行った.【結果】PNは17/24例(70.8%)に見られた.内訳はne0:7,ne1:6,ne2:9,ne3:2例であった.組織型ではpapは3/5例にPNがなく,wellはne0:2/5例,ne1:1例,modは12/41例に認め,程度も高度であった.間質結合織ではmedは3例ともPNがなく,int:8/10例,sci:9/11例に認めた.PNのない7例ともリンパ節転移がなかった.3生率はne0:57.1%,ne1:16.7%,ne2以上では生存がなかった.連続切片の観察では,PNは50本の神経束に見られ,複数癌腺管で形成された.1)PN癌腺管は4/6例は連続したが,2例(4神経束)でスキップした.2)1本の神経束で複数ヶ所でPNは神経外腺管と交通した.3)神経外癌腺管は神経周囲に集塊を形成し神経周囲腔に侵入した.4)神経の分岐,融合に伴ってPNは連続性進展した.5)神経周囲腔から神経束内へ侵入した.6)1癌腺管が2本のPNを来した.7)膵小葉間PNが非連続性に小葉内神経に浸潤した.p53発現は18/24例(75%)であったが,PNと原発巣の差はなかった. | KAKENHI-PROJECT-11671207 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11671207 |
膵癌における神経周囲浸潤の臨床病理学的,分子生物学的研究 | NCAM,MMP-9,FGFとPNの関係は明らかでなかった.【結語】PNは膵癌の予後規定因子として重要で,低分化で間質結合織量が増すほど増加した.PNは神経外癌腺管と頻繁に交通した.PNの多くは連続性だが非連続性症例もあり,手術で膵周囲の断端が陰性でも,さらに遠隔の後腹膜,非癌膵実質進展が考えられた.膵周囲の十分な郭清,術中照射等の追加治療が必要と考えられた.【対象と方法】膵癌切除例24症例を対象とし、神経浸潤の程度と組織型,癌間質結合織の多寡,リンパ節転移、累積生存率を検討した.5μ連続切片1072枚作成し浸潤様式を観察した.p53,NCAM,MMP-9,FGF抗体で免疫組織化学染色を行った.【結果】神経浸潤は24例中17例(70.8%)に見られ、ne0:7例,ne1:6例,ne2:9例,ne3:2例.papは3/5例に神経浸潤がなく,wellは2/5例がne0,1例がne1.modは12/41例に認めた.medは3例とも神経浸潤なく,intは8/10例,sciは9/11例に認めた.ne0:7例ともリンパ節転移がなかった.3年生存率はne0:57.1%,ne1:16.7%,ne2以上では生存なし,連続切片で50本の神経束に神経浸潤があった.1)神経浸潤は連続進展が多いが2症例(4神経束)でスキップした.2)同じ神経束で複数カ所でperineural spaceの癌は神経外と交通した.3)神経外腺管は神経周囲に集塊形成しperineuralspaceに侵入した.4)神経分岐、融合に沿って線管が進展した.5)perineural spaceから神経束内へ侵入した.6)1つの腺管が2本の神経に浸潤した.7)膵小葉間神経浸潤がスキップした.p53異常発現は24例中18例に見られ、p53.L.I.の平均:33.7%だが,perineural spaceと原発巣で差はなかった.NCAM,MMP-9,FGFとの有意差なし.【結語】神経浸潤は膵癌予後規定因子として重要で,分化度が下がり癌間質結合織量が増すほど増加した。非連続性進展もあり膵周囲の断端が陰性でも遠隔の後腹膜、非癌膵実質に進展している可能性があり、膵周囲の十分な郭清、術中照射の併用が必要と考えられた.高分化で間質結合織の少ない膵癌は神経叢の郭清が縮小可能と考えられた.【目的】診断法が進歩し,拡大手術を行っている現在でも,膵癌は予後不良である.その原因に局所再発があり,神経浸潤(PN)の関与が考えられる.PNの研究は膵癌治療成績の向上に必要である.今回,膵癌のPN様式を臨床的,組織学的に検討し報告する.【対象と方法】膵癌切除24症例でPNの程度と組織型,癌間質結合織の多寡,リンパ節転移,累積生存率の相関を検討した.興味ある6症例で5μの完全連続切片を1072枚作成しPN様式を観察した.a)膵内神経にPNを認めたもの.b)PN腺管が神経周囲腔から突出する症例.c)近接する2本の神経束にPNを認めた症例.d)膵内から膵外へPNが連続している症例.e)多数のPNがある症例.f)神経長軸方向にPNのある症例.p53,NCAM,MMP-9,FGF抗体を用い24症例で免疫組織化学染色を行った.【結果】PNは17/24例(70.8%)に見られた.内訳はne0:7,ne1:6,ne2:9,ne3:2例であった.組織型ではpapは3/5例にPNがなく,wellはne0:2/5例,ne1:1例.modは12/41例に認め,程度も高度であった.間質結合織ではmedは3例ともPNがなく,int:8/10例,sci:9/11例に認めた.PNのない7例ともリンパ節転移がなかった.3生率はne0:57.1%,ne1:16.7%,ne2以上では生存がなかった.連続切片の観察では,PNは50本の神経束に見られ,複数癌腺管で形成された.1)PN癌腺管は4/6例は連続したが,2例(4神経束)でスキップした.2)1本の神経束で複数ヶ所でPNは神経外腺管と交通した. | KAKENHI-PROJECT-11671207 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11671207 |
導電性高分子の電解重合プロセスのin-situ計測と反応機構解析 | アリニンの電解重合過程でレーザー光を作用電極に照射すると、金属電極上の光照射部位にのみポリマーが析出するという最近見い出した現象について基礎的検討を行うと共に金属電極における空間選択的合成の試みを行った。アリニンは中性条件下では絶縁性膜が電解重合法により生成するが,平滑な金電極を用い,pH7で-0.2+0.8Vvs.SCEで繰り返し掃引すると、電気化学的に不活性の応答を示すようになる。SERS測定用の粗面電極の場合も同様であった。一方、Ar+レーザー(514.5nm,20mW)を照射しながらCVを行うと光照射に伴って膜の成長が生じていることが示され,光照射下で特異的に電気化学的に活性な膜が生じることが分かった。また,FT-SERSスペクトルの電位依存性を検討した結果、アニリンの酸化電位よりもかなり低い電位から、レーザー光照射下で表面吸着アニリンの重合が生じていること、且つ電位が高いほどポリマーの生成量が多いことが分かった。電極表面でのポリマーの生成量とレーザー光の出力との関係を調べたとことろ、両者の間にはほぼ直線関係が認められた。これらのことから、電極表面の単分子層レベルではモノマーの酸化電位以前に重合が行われていること、またその反応が光照射に依存していることが示された。Ar^+レーザーを光源とした二光束干渉により金電極上にレーザー光の干渉パターンを作成し、アニリンの光電解重合を行った結果,レーザー光の干渉縞の間隔と対応した2.5μm間隔ポリアニリンのワイヤーを生成でき、電極反応の空間選択的制御がμmオーダーで可能であることが分かった。アリニンの電解重合過程でレーザー光を作用電極に照射すると、金属電極上の光照射部位にのみポリマーが析出するという最近見い出した現象について基礎的検討を行うと共に金属電極における空間選択的合成の試みを行った。アリニンは中性条件下では絶縁性膜が電解重合法により生成するが,平滑な金電極を用い,pH7で-0.2+0.8Vvs.SCEで繰り返し掃引すると、電気化学的に不活性の応答を示すようになる。SERS測定用の粗面電極の場合も同様であった。一方、Ar+レーザー(514.5nm,20mW)を照射しながらCVを行うと光照射に伴って膜の成長が生じていることが示され,光照射下で特異的に電気化学的に活性な膜が生じることが分かった。また,FT-SERSスペクトルの電位依存性を検討した結果、アニリンの酸化電位よりもかなり低い電位から、レーザー光照射下で表面吸着アニリンの重合が生じていること、且つ電位が高いほどポリマーの生成量が多いことが分かった。電極表面でのポリマーの生成量とレーザー光の出力との関係を調べたとことろ、両者の間にはほぼ直線関係が認められた。これらのことから、電極表面の単分子層レベルではモノマーの酸化電位以前に重合が行われていること、またその反応が光照射に依存していることが示された。Ar^+レーザーを光源とした二光束干渉により金電極上にレーザー光の干渉パターンを作成し、アニリンの光電解重合を行った結果,レーザー光の干渉縞の間隔と対応した2.5μm間隔ポリアニリンのワイヤーを生成でき、電極反応の空間選択的制御がμmオーダーで可能であることが分かった。 | KAKENHI-PROJECT-06226210 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06226210 |
地域医療施設計画のための発生患者数予測方法に関する研究 | 1.研究目的:地域医療施設計画のために、発生患者数を決める要因について、人口構成・地域特性等との関係から明らかにするとともに、そこから得られた推定要素を用いて、任意の地域を医療圏(計画単位としての圏域)として設定した場合に、想定すべき患者数予測方法を示すこと。2.得られた知見・成果(1)患者発生率は年齢階層による差が最も大きく、ある地域内の発生患者数を推定するには、その地域内の人口年齢構成を最も重視すべきである。(2)医療施設で受療する患者の発生率は、医療施設の整備水準の影響を受け、医療施設においても供給が需要を換起する現象が認められた。(3)病類によって受療圏/診療圏が異なり、上記(2)に関連して発生患者数の予測は地域の医療圏を設定したうえで求めるのが、計画のためによく対応したものとなることが確認された。(4)病類別・人口階層別の患者発生率を求め、年齢階層によって発生病類が特徴的であることを示した。(5)病類別ならびに年齢階層による受療圏/診療圏について考察し、両者によるそれらの広がりには特徴的な傾向を示すことを明らかにするとともに、地域内でその状態を示す方法について検討した。(6)なお、発生患者数と地域特性等との関係に関しては、種々の要素について考察を試みたが、上記(1)(2)に匹適するほど影響を与える要素は見つからなかった。従って、発生患者数予測は人口年齢構成と医療施設の整備水準を主たる要素として、受療圏/診療圏を想定して医療圏を定めたうえで、推定を行うのが有効と考えられる。1.研究目的:地域医療施設計画のために、発生患者数を決める要因について、人口構成・地域特性等との関係から明らかにするとともに、そこから得られた推定要素を用いて、任意の地域を医療圏(計画単位としての圏域)として設定した場合に、想定すべき患者数予測方法を示すこと。2.得られた知見・成果(1)患者発生率は年齢階層による差が最も大きく、ある地域内の発生患者数を推定するには、その地域内の人口年齢構成を最も重視すべきである。(2)医療施設で受療する患者の発生率は、医療施設の整備水準の影響を受け、医療施設においても供給が需要を換起する現象が認められた。(3)病類によって受療圏/診療圏が異なり、上記(2)に関連して発生患者数の予測は地域の医療圏を設定したうえで求めるのが、計画のためによく対応したものとなることが確認された。(4)病類別・人口階層別の患者発生率を求め、年齢階層によって発生病類が特徴的であることを示した。(5)病類別ならびに年齢階層による受療圏/診療圏について考察し、両者によるそれらの広がりには特徴的な傾向を示すことを明らかにするとともに、地域内でその状態を示す方法について検討した。(6)なお、発生患者数と地域特性等との関係に関しては、種々の要素について考察を試みたが、上記(1)(2)に匹適するほど影響を与える要素は見つからなかった。従って、発生患者数予測は人口年齢構成と医療施設の整備水準を主たる要素として、受療圏/診療圏を想定して医療圏を定めたうえで、推定を行うのが有効と考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-60550413 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-60550413 |
超音波による射出成形金型内樹脂の凝固状態測定技術の開発 | 本研究では,超音波を使って金型内の樹脂の成形・凝固状態を射出成形中または射出成形直後に,金型の外側から金型を傷つける事なく簡単に測定する方法について検討した.具体的には,超音波による,樹脂の流入状況の検出,金型キャビティ内樹脂の固化状況の検出,樹脂の結晶化度の測定,金型内樹脂圧力の測定,金型の締め付け力変化とばりの検出,について検討した.その結果,以下に示すような結論が得られた.(1)金型キャビティ内に樹脂が流入すると音響インピ-ダンスが変化するため,超音波を金型キャビティに向けて投射して金型キャビティ表面からの反射波の振幅を測定することにより,金型キャビティ内への樹脂の流入を検出できる.(2)高密度ポリエチレンのように,融点付近で音速が大きく変化する樹脂では,固化状態の音響インピ-ダンスと溶融状態の音響インピ-ダンスが大きく異なるために,金型キャビティ内に充填された樹脂の固相と液相との境界面からの超音波反射波を検出できる.さらに,この反射波の時間的変化から,固相の成長挙動や樹脂の厚さ方向の温度分布を求められる.(3)樹脂の温度が一定であるとき,縦波音速と結晶化度の間には一定の関係があり,樹脂の縦波音速を超音波を使って測定すれば,樹脂の結晶化度を非破壊で測定できる.また,焦点型超音波送受信子を使う事により,局所的な結晶化度を測定できる.(4)金型キャビティ表面に金属箔を貼り,その境界面からの超音波反射波の反射波高比から金型キャビティ内の圧力や圧力分布を容易に測定できる.また,金属箔とそれに接触する相手材の接触面あらさや硬さなどを考慮した,圧力と反射波高比の関係を表す実験式が得られた.(5)超音波を金型合せ面に投射する事によって,金型キャビティ内の樹脂の充填・固化にともなった型締力の変化やばりの検出を行うことができる.本研究では,超音波を使って金型内の樹脂の成形・凝固状態を射出成形中または射出成形直後に,金型の外側から金型を傷つける事なく簡単に測定する方法について検討した.具体的には,超音波による,樹脂の流入状況の検出,金型キャビティ内樹脂の固化状況の検出,樹脂の結晶化度の測定,金型内樹脂圧力の測定,金型の締め付け力変化とばりの検出,について検討した.その結果,以下に示すような結論が得られた.(1)金型キャビティ内に樹脂が流入すると音響インピ-ダンスが変化するため,超音波を金型キャビティに向けて投射して金型キャビティ表面からの反射波の振幅を測定することにより,金型キャビティ内への樹脂の流入を検出できる.(2)高密度ポリエチレンのように,融点付近で音速が大きく変化する樹脂では,固化状態の音響インピ-ダンスと溶融状態の音響インピ-ダンスが大きく異なるために,金型キャビティ内に充填された樹脂の固相と液相との境界面からの超音波反射波を検出できる.さらに,この反射波の時間的変化から,固相の成長挙動や樹脂の厚さ方向の温度分布を求められる.(3)樹脂の温度が一定であるとき,縦波音速と結晶化度の間には一定の関係があり,樹脂の縦波音速を超音波を使って測定すれば,樹脂の結晶化度を非破壊で測定できる.また,焦点型超音波送受信子を使う事により,局所的な結晶化度を測定できる.(4)金型キャビティ表面に金属箔を貼り,その境界面からの超音波反射波の反射波高比から金型キャビティ内の圧力や圧力分布を容易に測定できる.また,金属箔とそれに接触する相手材の接触面あらさや硬さなどを考慮した,圧力と反射波高比の関係を表す実験式が得られた.(5)超音波を金型合せ面に投射する事によって,金型キャビティ内の樹脂の充填・固化にともなった型締力の変化やばりの検出を行うことができる.“超音波による射出成形金型内樹脂の凝固状態測定技術の開発"について,本年度は,(1)金型キャビティ内に流入する樹脂の流入・充填状態の検出や流速の測定,(2)固化状況の測定,(3)結晶化度の測定に関して実験的検討を行った.その結果,以下の様な種々の有用な結果が得られた.(1)金型キャビティ内に樹脂が流入すると,金型キャビティ面における超音波の反射率が著しく変化するために,樹脂の流入を超音波反射波の音圧の変化より検出することができる.具体的には,樹脂が流入する前後で,金型キャビティ面における超音波の反射率は約10%程度変化する.また,音圧の変化は,樹脂の物性値より求めることができる.(2)金型キャビティ面における超音波の反射音圧の大きさから,超音波を投射している面積内に樹脂が占める割合を求めることができる.(3)近接した2点の音圧の変化を測定することにより,流入する樹脂の2点間の平均速度を測定することができる.(4)金型キャビティ内で樹脂が固化すると固化層と固化していない層との境界面で超音波が反射し,その反射波形を観測することができる.また,この境界面の位置に応じて,送信波と反射波の時間間隔が変化するため,樹脂の固化層の厚さを求めることができる.つまり,金型キャビティ内の樹脂の固化状態を検出することができる.(5)成形品の結晶化度に応じて成形品の縦波速度や横波速度が変化することが明かとなった.具体的には,結晶化度が高くなると成形品の縦波速度や横波速度が速くなる. | KAKENHI-PROJECT-02555025 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02555025 |
超音波による射出成形金型内樹脂の凝固状態測定技術の開発 | このため,縦波速度や横波速度を測定することによって結晶化度を求められることが分かった."超音波による射出成形金型内樹脂の凝固状態測定技術の開発"に関して,本年度は,(1)金型キャビティ内の金型表面にステンレス箔を貼り,ステンレス箔と金型表面との間の面圧を超音波を使って測定して成形中の金型内樹脂圧力を検出する方法,(2)射出成形中の移動金型と固定金型との合せ面の面圧を超音波を使って測定し金型内の圧力分布の挙動と比較検討すると共に,バリの発生とその大きさを検出する方法について実験的検討を行った.その結果,以下のような種々の有用な結果が得られた.(1)金型内の圧力測定用に金型表面に張り付けるステンレス箔の厚さは超音波の波長の1/3以上であれば金属箔とプラスチックとの境界面からの反射波の影響が殆ど無くなる.(2)圧力測定用のステンレス箔の表面あらさが小さいときは金型表面の硬さやステンレス箔の硬さの測定値に対する影響はない.さらに,表面あらさが小さいほど測定感度はよい.(3)金型とステンレス箔との境界面から反射してくる反射波の波高と圧力の関係を示す実験式が得られ,反射波の波高を測定すれば圧力が求められるようになった.(4)金型合せ面に超音波を投射し,反射波の波高の変化を測定することにより,成形中の金型合せ面の面圧挙動を測定することが出来た.さらに,測定値より成形中の金型キャビティ内の平均圧力が求められ,その平均圧力の挙動から金型キャビティ内のプラスチックの固化状況が推定できた.(5)金型合せ面からの反射波の波高を測定することによってのバリの検出が出来ることが明かとなった.以上のように本年度の研究成果より,金型内の圧力やバリの発生と超音波反射波の波高と関係が明かとなり,波高の値から金型内の圧力の測定やバリの発生の検出が出来ることが分かった. | KAKENHI-PROJECT-02555025 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02555025 |
ジャワ農村の近代化に関する比較社会学的研究 | 元年度における研究実績としては、まず、『インドネシア研究のための文献目録』(1990年3月)の作製がある。これは、インドネシア社会、とりわけジャワ社会における近代化、都市化、さらには人口移動に関する最新の資料・文献を、日本国内の大学および研究期間からはもとより、インドネシア人留学生からの情報提供により収集したもの、さらに現地の関係諸機関より直接入手したものの内、インドネシア語ないし英語にによる文献資料のみを一覧表にしたものである(日本語による文献は、2年度中に整理し、本目録に補完する予定である)。資料は全部で128点あり、著者名及び書名順に並べ整理した。次に、定例研究会の成果としては、上記の資料の内、特にジャワ農村における部落構造に焦点を絞ったものを少しずつ点検していった。現段階では結論的なことは言えないが、これまでの資料の捗猟によれば、ジャワ農村の近代化には次のような二つの要素が含まれていると言えよう。一つは、自立的な地域経済の仕組みが、世界資料主義のシステムの中に取り込まれていくことにより、人びとの経済生活が地域外社会のありように「従属化」するという要素。なお、ここでは経済の領域ばかりか、社会関係の構成までも他律化する傾向を示している。もう一つは、そのような従属化の傾向に対抗するために、伝統的な行動様式ないしは社会関係の強化を志向する「自律化」という要素。ただしこれは、近代化のすべてを拒否するのではなく、その合理的な側面を伝統的な人間関係の枠組みの範囲内で、主体的に洗濯していくという過程でもある。このように、他律化と自律化という相反する二つの要素が、ジャワ農村の近代化を推し進めているが,、全体としては、前者の従属化の勢いが後者を上回っていると言えよう。元年度における研究実績としては、まず、『インドネシア研究のための文献目録』(1990年3月)の作製がある。これは、インドネシア社会、とりわけジャワ社会における近代化、都市化、さらには人口移動に関する最新の資料・文献を、日本国内の大学および研究期間からはもとより、インドネシア人留学生からの情報提供により収集したもの、さらに現地の関係諸機関より直接入手したものの内、インドネシア語ないし英語にによる文献資料のみを一覧表にしたものである(日本語による文献は、2年度中に整理し、本目録に補完する予定である)。資料は全部で128点あり、著者名及び書名順に並べ整理した。次に、定例研究会の成果としては、上記の資料の内、特にジャワ農村における部落構造に焦点を絞ったものを少しずつ点検していった。現段階では結論的なことは言えないが、これまでの資料の捗猟によれば、ジャワ農村の近代化には次のような二つの要素が含まれていると言えよう。一つは、自立的な地域経済の仕組みが、世界資料主義のシステムの中に取り込まれていくことにより、人びとの経済生活が地域外社会のありように「従属化」するという要素。なお、ここでは経済の領域ばかりか、社会関係の構成までも他律化する傾向を示している。もう一つは、そのような従属化の傾向に対抗するために、伝統的な行動様式ないしは社会関係の強化を志向する「自律化」という要素。ただしこれは、近代化のすべてを拒否するのではなく、その合理的な側面を伝統的な人間関係の枠組みの範囲内で、主体的に洗濯していくという過程でもある。このように、他律化と自律化という相反する二つの要素が、ジャワ農村の近代化を推し進めているが,、全体としては、前者の従属化の勢いが後者を上回っていると言えよう。 | KAKENHI-PROJECT-01510122 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01510122 |
極端明暗撮像を可能にするフォトンカウンティング撮像デバイスに関する研究 | 本研究では、極端な明暗差にも対応できる広ダイナミックレンジ特性と超高感度特性とを両立する次世代の撮像デバイスの実現を目的とし、相関多重サンプリングとノイズヒストグラムを用いた熱ノイズ及びRTS(Random Telegraph Signal)ノイズの低減等に関して研究を行ったものである。これらを試作撮像デバイスに適用し、ヒストグラムのメジアンで1.1電子という極めて低雑音の特性、ノイズヒストグラムやトランジスタの駆動電流スイッチングでRTSノイズが低減されることが初めて示された。本研究では、極端な明暗差にも対応できる広ダイナミックレンジ特性と超高感度特性とを両立する次世代の撮像デバイスの実現を目的とし、相関多重サンプリングとノイズヒストグラムを用いた熱ノイズ及びRTS(Random Telegraph Signal)ノイズの低減等に関して研究を行ったものである。これらを試作撮像デバイスに適用し、ヒストグラムのメジアンで1.1電子という極めて低雑音の特性、ノイズヒストグラムやトランジスタの駆動電流スイッチングでRTSノイズが低減されることが初めて示された。本研究では、極端な明暗差にも対応できる広ダイナミックレンジ特性と超高感度特性とを両立する次世代の撮像デバイスの実現を目的としている。本年度は、試作した32倍までの可変利得を持つイメージセンサにおいて、相関多重サンプリングに基づく信号処理を用いて画素内の微小サイズのトランジスタが発生する支配的なノイズ成分であるRTS(Random Telegraph Signal)ノイズを効果的に低減できることを明らかにした。特に、本研究者が提案するRTSノイズの統計的性質に着目した新しい信号処理手法であるHBRR(Histogram-based RTS-noise reduction)法を試作したイメージセンサに適用した結果、サンプリング点数が1点の場合と128点の場合を比較して、約10分の1まで低減できることが明らかになった。また、RTSノイズの電子の捕獲、放出時定数の異なる画素出力に対して適用し、比較的遅い時定数の場合に、その低減効果が大きいことがわかった。その試作結果を踏まえ、RTSノイズがトランジスタのサイズ、チャネル構造によってどのような統計的振る舞いするかを明らかにするため、RTSノイズ評価用イメージセンサ(素子パラメータを変えた多数のリニアイメージセンサを集積)の設計と試作を行い、その基本動作まで確認を行った。これらの成果は、イメージセンサの画素デバイスが発生するRTSノイズを統計的な信号処理によって低減できることを初めて示したもので、学術的にも価値のある成果であるとともに、本処理は、超高感度特性と広いダイナミックレンジを両立できる方式であるため、その効果を試作したデバイスに適用して確認できたことは、本研究課題の最終目標に向けて、大きな前進であると考えられる。本研究では、極端な明暗差にも対応できる広ダイナミックレンジ特性と超高感度特性とを両立する次世代の撮像デバイスの実現を目的としている。本年度は、画素内の微小サイズのトランジスタが発生する支配的なノイズ成分であるRTS(Random Telegraph Signal)ノイズを効果的に低減する手法として、相関多重サンプリングに基づく信号処理とノイズ発生源となるトランジスタに対する駆動電流のスイッチングの組み合わせによるノイズ低減法を提案し、試作によってその効果を確認した。試作したデバイスは、RTSノイズがトランジスタのサイズ、チャネル構造によってどのような統計的振る舞いするかを明らかにすることを目的として、素子パラメータを変えた多数のリニアイメージセンサを集積したものである。試作デバイスの測定の結果、駆動電流のスイッチングと相関多重サンプリングは、トランジスタのチャネル面積の比較的大きい素子においてより効果的であり、全画素内トランジスタのノイズのヒストグラムが、低ノイズ側に集中することが示された。これは、イメージセンサの画素デバイスが発生するRTSノイズがトランジスタに対するスイッチング動作と統計的な信号処理によって低減できることを初めて示したもので、学術的にも価値のある成果である。また、関連する成果として、画素内で1光子により発生した1電子の検出と廃棄の制御が行える新構造に、カラムでの低ノイズの読み出し技術を適用することで、100psに迫る分解能をもった時間分解型イメージセンサが実現できることを示した。これは1電子検出を目的とした本研究の成果を、バイオイメージング等に応用する上での重要な成果であり、実用化により医学や生物学の研究に大きく寄与することができ、社会的にも価値のある成果であると考えられる。本研究では、極端な明暗差にも対応できる広ダイナミックレンジ特性と超高感度特性とを両立する次世代の撮像デバイスの実現を目的としている。本年度は、相関多重サンプリングに基づく信号処理の結果、達成できるノイズレベルの測定結果とトランジスタサイズ、電荷電圧変換ゲインとの関係、並びに画素内のトランジスタを微細化した際のRTS(Random Telegraph Signal)ノイズの理論式に基づき、量子化処理による無雑音電子検出に必要な0.1電子のノイズレベルを実現する条件(1電子あたりの変換利得が3mV)を明らかにした。相関多重サンプリングを適用した試作デバイスにおいて、ヒストグラムのメジアンで1.1電子という極めて低雑音の特性が得られた。また、相関多重サンプリング処理を用いた高感度イメージセンサの試作結果により、RTSノイズに対するノイズ低減効果として、相関多重サンプリング処理によるカットオフ周波数がRTSノイズの遷移周波数を下回る程度にサンプリング回数を増加させたとき、回数の平方根に反比例してノイズが低減される傾向を持つことが示された。これらは、イメージセンサのRTSノイズが信号処理で低減できることを示すものであり、学術的にも価値のある成果である。関連する成果として、画素内で1光子により発生した1電子の検出と廃棄を、電荷排出動作だけで制御する新構造の着想を得、シミュレーションにより1n秒以下で1電子を高速に振り分けることができることが示された。これは1電子検出を目的とした本研究の成果を、バイオイメージング等に応用する上での重要な成果であり、本研究課題の成果を今後の関連研究に発展応用できるものである。 | KAKENHI-PROJECT-19206040 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19206040 |
近代フランスの反ユダヤ主義 | 本研究では、近代フランスにおけるユダヤ人の解放、ユダヤ人の「同化」の進展や反ユダヤ主義、さらに反ユダヤ主義とナショナリズムやファシズムとの関連の解明を目指した。その結果、以下のような結論と見通しを得ることが出来た。1フランス革命前のユダヤ人の解放をめぐる論議では、社団のひとつとしてのユダヤ人共同体の存続を認めた形での解放を説く解放論と、共同体の一切の自立性を否定して個人としてのユダヤ人をフランス・ナシオンに統合するという解放論の二つが存在したが、革命時の「単一不可分の王国(共和国)」の形成という当時の理念を反映して結局後者が選択されることになった。2解放以降、ユダヤ人の社会進出と「同化」が進み、19世紀末以降のユダヤ人の間にはフランス共和国とユダヤ的価値を一体のものとみなすフランコ=ユダイスムが育まれていくが、そのイデオロギー的組織的基礎が第一帝政期の「大サネドラン」の「教義上の決定」と長老会制度の確立にある。3しかし、第二帝政期までのユダヤ人の社会進出には限界があり、本格的に国家中枢に進出出来るようになるのはフランス革命の理念を体現しようとした第三共和政期のことであった。そしてこれがフランコ=ユダイスムを育むと同時に、その後の反ユダヤ主義の重要な背景となった。4上記1と2に関しては、論文や今回の科学研究費報告書としてまとめることが出来たが、3に関しては、今後の研究に資する目的で「反ユダヤ主義の教皇」E.ドリュモンが創刊したLa Libre Paroleの1892年4月から1902年12月の一部の記事一覧を作成して公表したにとどまる。今後さらに研究を進め、その成果を公表することにしたい。本研究では、近代フランスにおけるユダヤ人の解放、ユダヤ人の「同化」の進展や反ユダヤ主義、さらに反ユダヤ主義とナショナリズムやファシズムとの関連の解明を目指した。その結果、以下のような結論と見通しを得ることが出来た。1フランス革命前のユダヤ人の解放をめぐる論議では、社団のひとつとしてのユダヤ人共同体の存続を認めた形での解放を説く解放論と、共同体の一切の自立性を否定して個人としてのユダヤ人をフランス・ナシオンに統合するという解放論の二つが存在したが、革命時の「単一不可分の王国(共和国)」の形成という当時の理念を反映して結局後者が選択されることになった。2解放以降、ユダヤ人の社会進出と「同化」が進み、19世紀末以降のユダヤ人の間にはフランス共和国とユダヤ的価値を一体のものとみなすフランコ=ユダイスムが育まれていくが、そのイデオロギー的組織的基礎が第一帝政期の「大サネドラン」の「教義上の決定」と長老会制度の確立にある。3しかし、第二帝政期までのユダヤ人の社会進出には限界があり、本格的に国家中枢に進出出来るようになるのはフランス革命の理念を体現しようとした第三共和政期のことであった。そしてこれがフランコ=ユダイスムを育むと同時に、その後の反ユダヤ主義の重要な背景となった。4上記1と2に関しては、論文や今回の科学研究費報告書としてまとめることが出来たが、3に関しては、今後の研究に資する目的で「反ユダヤ主義の教皇」E.ドリュモンが創刊したLa Libre Paroleの1892年4月から1902年12月の一部の記事一覧を作成して公表したにとどまる。今後さらに研究を進め、その成果を公表することにしたい。1近代フランスの反ユダヤ主義の背景にはユダヤ人の中央集権的ジャコバン型解放が深くかかわっているというのが、近年精力的にユダヤ人間題に取り組んでいる政治社会学者P.Bimbaumの所説である。そこで私は近代フランスの反ユダヤ主義を考える前提として、大革命時のユダヤ人解放にいたる解放論議を検討することにした。その結果は、昨年度末の「フランス革命前のユダヤ人解放論-『二つの解放の道』」(『立命館文学』第558号1999年2月)、に引き続いて、今年度は、口頭発表「『異邦人』から『国民』へ-大革命とユダヤ人解放」(関西フランス研究会110回例会[1999年4月])と論考「『異邦人』から『国民』へ-大革命とユダヤ人解放」(服部・谷川編『フランス史からの問い』山川出版2000年3月)として発表した。こうした考察を通じて、大革命前には、多元主義的解放の道と中央集権的解放の道の二つのユダヤ人解放論が存在し、前者が優勢であった(弛緩しつつあったとはいえ社団的国家編成原理を反映していた)のだが、大革命時のユダヤ人解放(1791)は、一切の差異を否定した中央集権的国民国家形成とあらゆるものの「再生」を志向する当時の政治文化を反映して、個としてのユダヤ教徒をフランスの国民(ナシオン)に統合するという中央集権的解放となったことを明らかにした。3この他、1999年夏には、フランスのセファルディーの足跡を訪ねてスペイン、フランス南西部、パリを旅する(私費)とともに、ジロンド県の県立文書館でボルドーのユダヤ人関係文書を閲覧し複写した。1フランスのユダヤ人は法的には1791年9月に解放されるが、「同化」が急速に進展するのは19世紀半ばのことである。本年度は、具体的成果として公表するにはいたっていないが、19世紀におけるユダヤ人の「同化」の実態と反ユダヤ主義の関係を中心に研究を進めてきた。 | KAKENHI-PROJECT-11610396 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11610396 |
近代フランスの反ユダヤ主義 | その一環としてPierre Birnbaum, Gregoire, Dreyfus, Drancy et Copernic, dans Pierre Nora(dir.), Les lieux de memoire III.Les France I.Conflits et Partages, Gallimard,1992,pp.561-613の翻訳を行った(ピエール・ノラ編『記憶の場-国民意識の文化=社会史』第1巻、岩波書店[2001年夏頃刊行予定]所収)。また、(プレ)ファシズム思想と反ユダヤ主義との関連が指摘されているが、わが国では数少ないフランス・ファシズム思想研究書である、深澤民司著『フランスにおけるファシズムの形成-ブーランジスムからフェソーまで』(岩波書店、1999年)を書評した。1今年度は19世紀におけるユダヤ人をめぐる法的状況、ユダヤ人の社会移動や社会進出と「同化」の実態を検討した。その結果、(1)第一帝政期に、アルザスのユダヤ人に「恥辱法」が適用されるなど解放からの一定の揺り戻しがあると同時に、「長老会体制」が確立されてユダヤ教徒は初めて全国的な一元的宗教共同体に組織されたこと、(2)ユダヤ人はとりわけ第三共和政のもとで能力主義にもとづくリクルート制度を活用して国家中枢にも進出すると共に、共和国フランスと一体化を強めたこと(「フランコ・ユダイスム」)、(3)19世紀末の反ユダヤ主義台頭の背景の一つとして(2)の要素が介在すること、が明らかになった。3このことは、科研費報告書としてまとめる予定だが、「マイノリティと『公共圏』の砿大-19世紀ユダヤ系フランス人の『同化』と反ユダヤ主義」(「近代欧米における『個』と『共同性』の関係史の総合的研究」研究会[2001年])として口頭でも発表した。この他、P.ビルンボーム「ユダヤ人-グレゴワール、ドレフュス、ド・ランシー、コペルニック街」(ピエール・ノラ編「記憶の場-国民意識の文化=社会史第一巻対立』岩波書店[2002年春刊行予定]所収)の翻訳作業を行った。4また、Archives israelites(1840・1935)などの資料や二次文献を収集するとともに、昨年に引き続いて『ラ・リーブル・パロル』紙のデータ・ベース化の準備を進め、1892-1902年における一部記事の索引を作成し、報告書の一部として公表することにした。 | KAKENHI-PROJECT-11610396 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11610396 |
脂肪とインスリンシグナルのクロストーク -脂肪食感受性糖尿病マウスを用いた解析- | 近年の2型糖尿病の激増に、脂肪過剰摂取が寄与している可能性が考えられている。しかしながら、脂肪過剰摂取により糖尿病を発症する動物モデルはこれまでほとんど報告がなく、病態解明の支障となっていた。私達はインスリン受容体変異(mIR)マウスは高脂肪食(HFD)負荷時にのみ著明な高血糖を示すことを見いだした。このマウス(mIR/HFDマウス)では脂肪組織での脂肪分解亢進と肝臓でのグリセロールからの糖新生亢進により高血糖が誘発されることと、胆汁酸代謝が大きく変化していることが明らかになった。我々はインスリン抵抗性を有するが耐糖能は正常であるmIRマウスに高脂肪食を負荷すると著明な糖尿病が誘導されることを見いだした。これまでの解析の結果から、脂肪組織における脂肪分解の亢進と肝臓における糖新生の亢進が明らかになっていた。本研究ではmIRマウスを用いて高脂肪食負荷がどのように脂肪代謝と糖代謝の破綻をもたらすかを解明することを目指している。平成25年度は、脂肪組織における脂肪分解と肝臓における糖新生を解析し、脂肪分解により発生するグリセロールが高血糖誘発の原因であることを直接的に証明することができた。一方、高脂肪食負荷mIRマウスでは脂肪分解により産生される脂肪酸は高血糖発現には直接的な寄与はなかった。そこで、グリセロールを取り込む肝臓の代謝変化に焦点を当てて解析したところ、解糖系経路の基質の量的な変化が、G6Pase等の酵素の転写制を介して糖代謝のフローを調節していることが明らかになった。一方、脂肪組織の脂肪分解はインスリンにより抑制されるが、通常餌飼育下のmIRマウスではPPARγの発現低下によるホルモン感受性リパーゼとアドレナリン受容体の減少がインスリン抵抗性による脂肪分解亢進が阻止されていた。ところが、高脂肪食負荷mIRマウスではPPARγを介した代償性維持機構が破たんし、過剰なホルモン感受性リパーゼ活性化による脂肪分解が生じ、肝臓でのグリセロールからの糖新生が亢進し、糖尿病が発症することが示された。さらに、肝臓へのグリセロールの流入が増加すると、cell autonomousにG6Paseの転写が誘導され糖新生が亢進することが明らかになった。現在転写レポーターアッセイなどの手法を用いてその分子メカニズムを解明中である。我々は、インスリン受容体変異マウス(mIRマウス)に高脂肪食を負荷すると著明な糖尿病が誘導されることを見いだし、脂肪過剰摂取による糖代謝破綻のメカニズムを解析している。これまでの解析から、1蛋白リン酸化定量解析により、脂肪組織での脂肪分解が亢進していること。2血中や肝臓内の中性脂肪およびグリセロールを測定し代謝動態を解析したところ、本マウスではグリセロールからの糖新生が亢進していることを見出した。平成26年度の解析で、本マウスに野生型の脂肪組織を移植すると血糖値が改善することや、β3アドレナリン受容体特異的アゴニストを用いて脂肪分解を誘導すると、脂肪組織から放出されたグリセロールが肝臓に取り込まれ、糖新生の亢進を介して高血糖が誘発されることが明らかになった。また肝臓のインスリン抵抗性により高血糖が出現する機序を明らかにする目的で肝臓のマイクロアレイ解析を行ったところ、本マウスでは胆汁酸代謝に関わる遺伝子群の発現が変化していることを見出した。すなわち肝臓での脂肪酸合成に関わる複数の酵素の遺伝子発現と脂肪酸取り込み/排泄に関わるトランスポーターの遺伝子発現が大きく変化していた。これらの結果から本マウスの肝臓では胆汁酸が不足していることが予想されたため、食餌中にコール酸を添加したところ本マウスの高血糖は著明に改善し、再摂食時の肝臓における過剰なG6Pase発現が消失することを見出した。今後このメカニズムを解明する予定である。一方、肝細胞株であるFAO細胞にグリセロールを処置したところG6Paseの転写が誘導され、肝細胞はcell autonomousにグリセロールを感知しG6Paseの転写を調節していることが明らかになった。今後転写レポーターアッセイなどの手法を用いてこの転写調節機序についても解析する。私達は、インスリン受容体に機能喪失変異を有するノックインマウス(mIRマウス)に高脂肪食(HFD)を負荷することにより、顕性の糖尿病を発症することを見いだした。HFD負荷により糖代謝が劇的に変化するモデルはほとんどなく、HFD負荷mIRマウス(mIR/HFDマウス)は脂肪過剰摂取による糖尿病の発症機序の解明に有用なマウスモデルと考えられた。平成26年度までの解析の結果から、mIR/HFDマウスでは脂肪組織での脂肪分解が亢進し、脂肪分解により産生されるグリセロールが、肝臓で糖新生の基質として利用され、高血糖が誘発されることを明らかにしていた。さらにグリセロールからの糖新生が亢進するメカニズムを解明する目的で、mIR/HFDマウスの肝臓の網羅的mRNA発現解析を行い、胆汁酸代謝関連遺伝子群の発現量が変化していることを見いだした。そこで、平成27年度には、胆汁酸代謝異常の病態を解明する目的で、質量分析解析によりmIR/HFDマウスの肝臓の胆汁酸を解析した。その結果、mIR/HFDマウスでは総胆汁酸量には変化がなかったものの、その組成が大きく変化していることが明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-25293051 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25293051 |
脂肪とインスリンシグナルのクロストーク -脂肪食感受性糖尿病マウスを用いた解析- | そこでmIR/HFDマウスに胆汁酸を投与し、糖代謝への影響を検討したところ、一次胆汁酸であるコール酸の投与により、mIR/HFDマウスの高血糖と肝臓での糖新生亢進は著明に改善され、胆汁酸代謝が糖尿病の新たな治療標的となることが示された。さらに、野生型マウスより採取した脂肪組織のmIR/HFDマウスへの移植によって高血糖が改善し、肝臓での糖新生も有意に改善した。本研究の結果、脂肪組織と肝臓の臓器間のネットワークの糖代謝制御における重要性が明らかになり、インスリンシグナルは両者の機能制御に必須の役割を果たしていることが明らかになった。近年の2型糖尿病の激増に、脂肪過剰摂取が寄与している可能性が考えられている。しかしながら、脂肪過剰摂取により糖尿病を発症する動物モデルはこれまでほとんど報告がなく、病態解明の支障となっていた。私達はインスリン受容体変異(mIR)マウスは高脂肪食(HFD)負荷時にのみ著明な高血糖を示すことを見いだした。このマウス(mIR/HFDマウス)では脂肪組織での脂肪分解亢進と肝臓でのグリセロールからの糖新生亢進により高血糖が誘発されることと、胆汁酸代謝が大きく変化していることが明らかになった。平成26年度までに、高脂肪食負荷mIRマウスの高血糖が脂肪組織での脂肪分解の亢進と肝臓でのグリセロールからの糖新生の亢進によることを見出していた。そこで、平成26年度はさらに詳細な検討を進め、脂肪分解亢進がPPARγの脱抑制であることと、糖新生の亢進が胆汁酸代謝の異常により引き起こされることを見出した。今後さらに胆汁酸解析を進める予定であり、研究はおおむね順調に進展している。27年度が最終年度であるため、記入しない。代謝生理学平成26年度の解析結果から、肝臓における胆汁酸代謝の異常が高血糖を誘発する重要な因子である可能性があり、胆汁酸代謝の研究を進める必要性が出てきた。既に胆汁酸組成をLC-MS/MS分析するなど新たな解析が必要となっている。さらに胆汁酸組成を規定する腸内細菌の解析なども必要になる可能性もあり、この分野で優れた実績を有する学内外の研究者との共同研究も検討している。今年度は、本研究の目標である高脂肪食による糖代謝の破綻メカニズムについて解析を進め、糖代謝と脂質代謝のかけ橋となる代謝産物であるグリセロールの代謝動態を、脂肪組織と肝臓の両者で解明した。研究の一つの区切りのデータが得られたため、現時点までの結果に基づき論文を投稿中である。本研究で提案している新たな実験も並行して進んでおり、研究はおおむね順調に進展していると考えている。27年度が最終年度であるため、記入しない。本研究では、インスリン抵抗性マウスに高脂肪食を負荷した際に糖代謝が破綻する機序に付いて解析を進めております。そして、申請時に計画した方針に沿って、脂肪組織のリン酸化定量解析、特定の遺伝子の発現定量解析、遺伝子発現の網羅的定量解析を行い、肝臓での胆汁酸代謝制御異常が原因であることをようやく突き止めました。今年度は、いよいよ計画していた代謝基質の質量分析解析や、様々な代謝状況での血液試料の測定に入る準備が出来ました。高額なアッセイキットや受託解析での質量分析解析など、コストのかかる解析に進むことができました。平成26年度から基金分の予算から拠出を始め、最終年度に解析を進め、研究の最終結論を得たいと思っております。 | KAKENHI-PROJECT-25293051 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25293051 |
滋賀県の近現代史における在日朝鮮人・朝鮮に関する基礎研究 | 本研究の目的は、滋賀県の近現代史を、日本の一地方の歴史と植民地朝鮮との連鎖という観点から再検討するものである。本研究において、日本が朝鮮を植民地支配したことは、滋賀県の歴史の歩みにも深く影響を及ぼしていることを検証した。本研究は、滋賀県の近現代における在日朝鮮人の歴史、および滋賀県の近現代史にとって植民地朝鮮が持った意味を明らかにするための基礎的研究を行うことを目的とする。同時にその作業を通じ、「地域」から「世界史」を見通すこと、「地域」における歴史の記憶と忘却の有り様を考察することを目的とする。本研究が扱おうとする問題系は大きく二つある。一つは「地域史」にとっての「外地」という問題、もう一つは「地域史」にとっての在日朝鮮人という問題で、両方とも人やモノの越境が伴う。これらの問題について、6つのサブテーマを設定し、滋賀県という地域に即して実態を解明し、理論的考察を行う。本研究の目的は、滋賀県の近現代史を、日本の一地方の歴史と植民地朝鮮との連鎖という観点から再検討するものである。本研究において、日本が朝鮮を植民地支配したことは、滋賀県の歴史の歩みにも深く影響を及ぼしていることを検証した。本年度は主に次のような研究活動を行った。(1)滋賀県県政史料室における資料調査。公開されている1945年以前の資料を順次閲覧し、朝鮮(人)関係の記載がある資料について写真撮影し目録データを入力した。(2)守山市の江州煉瓦株式会社に関する文献・資料調査および聞き取り調査。戦前の従業員の半数程度は朝鮮人であった等の証言を得る。(3)自治体史執筆委員として閲覧の便宜が得られる旧能登川町関連の資料調査。戦後に朝鮮人団体が提出した請願書等の貴重な資料が見つかる。(4)土倉鉱山に関する文献・資料調査。同鉱山をフィールドワーク対象とした人権研修の講師をする。(5)県内の捕虜収容所跡地を巡るフィールドワークに講師として参加したことがきっかけとし、関運ずる文献・資料の調査を行った。敗戦直前の時期に、滋賀県内には連合軍捕虜収容所が三箇所つくられ、捕虜はすべて内湖干拓事業に従事していた。その中でも小中の湖で捕虜と共に干拓事業に従事した経験のある朝鮮人に聞き取り調査を行った。連合軍捕虜収容所については、本研究申請時には主要なサブテーマとしてとらえていなかったが、興味深い素材であることがわかり、今後も調査を続けたい。(6)本研究をすすめていくにあたり参照すべきと思われる書籍を収集した。(7)申請者の所属大学が所蔵する朴慶植文庫の未整理資科の整理を行った。本年度は主に次のような研究活動を行った。(1)滋賀県県政史料室における資料調査。公開されている1945年以前の資料を順次閲覧し、朝鮮(人)関係の記載がある資料について写真撮影し目録データを入力した。(2)守山市の江州煉瓦株式会社に関する文献・資料調査および聞き取り調査。戦前の従業員の半数程度は朝鮮人であった等の証言を得る。(3)自治体史執筆委員として閲覧の便宜が得られる旧能登川町関連の資料調査。戦後に朝鮮人団体が提出した請願書等の貴重な資料が見つかる。(4)土倉鉱山に関する文献・資料調査。同鉱山をフィールドワーク対象とした人権研修の講師をする。(5)県内の捕虜収容所跡地を巡るフィールドワークに講師として参加したことがきっかけとし、関連する文献・資料の調査を行った。敗戦直前の時期に、滋賀県内には連合軍捕虜収容所が三箇所つくられ、捕虜はすべて内湖干拓事業に従事していた。その中でも小中の湖で捕虜と共に干拓事業に従事した経験のある朝鮮人に聞き取り調査を行った。連合軍捕虜収容所については、本研究申請時には主要なサブテーマとしてとらえていなかったが、興味深い素材であることがわかり、今後も調査を続けたい。(6)本研究をすすめていくにあたり参照すべきと思われる書籍を収集した。(7)申請者の所属大学が所蔵する朴慶植文庫の未整理資料の整理を行った。本年度は、主に次のような研究活動を行った。(1)これまでの研究成果のアウトプットとして、以下のことを行った。河かおる・稲継靖之「滋賀県の近現代史のなかの朝鮮人」『大学的滋賀ガイド』(昭和堂、近刊)を執筆した。甲賀市柏木公民館人権教育講座(館外研修)「戦時中の外国人に対する強制労働」(2011年1月30日)、彦根市立平田小学校校内人権教育職員研修会「朝鮮民族学級設立の歴史的意義とその経緯」(2011年3月7日)、滋賀レイカディア大学第32・33期生必修講座「滋賀県近現代史の中の朝鮮人」(米原校2011年3月10日、草津校2011年3月18日)などの場で、研究成果に基づいて講演した。(2)本研究申請後に関連する重要テーマであると気がついた県内の連合軍捕虜収容所について、引きつづき資料調査を行った。今年度は、国立公文書館における戦争犯罪関係史料調査。滋賀県内の連合軍捕虜収容所関連資料を調査し、能登川の捕虜収容所における「救恤品横領虐待事件」関連資料を探し出した。(3)自治体史執筆委員として閲覧の便宜が得られる旧能登川町関連の資料調査をし、資料編の執筆を行った(継続)。(4)本研究をすすめていくにあたり参照すべきと思われる研究書等の収集と分析を行った。 | KAKENHI-PROJECT-20710193 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20710193 |
滋賀県の近現代史における在日朝鮮人・朝鮮に関する基礎研究 | (5)申請者の所属大学が所蔵する朴慶植文庫の未整理資料の整理を行った。本年度は、主に次のような研究活動を行った。(1)これまでの研究成果のアウトプットとしてまとめた、河かおる・稲継靖之「滋賀県の近現代史のなかの朝鮮人」『大学的滋賀ガイド』(昭和堂、2011年)が出版された。滋賀県高等学校社会科教育研究会・県外研修講師「戦時中の外国人に対する強制労働」(2011年8月2日)、彦根市立城東小学校校内人権教育職場研修講師「在日朝鮮人の差別の歴史に学ぶ「平和の誓」像」(2012年1月11日)、第43回京都市研究集会第4分科会パネラー「新渡日の児童・生徒の教育をめぐって」(2012年2月18日)などの場で、研究成果に基づいて講演した。(2)本研究課題に関連した資料(特に滋賀県の在日朝鮮人に関連した古い新聞記事)のデーターベース化を行った。(3)自治体史執筆委員として閲覧の便宜が得られる旧能登川町関連の資料(本研究課題に関連のある資料)の調査をし、資料編の執筆を行った。現在、本文編の執筆作業を継続中である。(4)本研究をすすめていくにあたり参照すべきと思われる研究書等の収集と分析を行った。(5)申請者の所属大学が所蔵する朴慶植文庫の未整理資料の整理を行った。 | KAKENHI-PROJECT-20710193 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20710193 |
一体型SPECT/CT装置における心電図同期X線CT撮影の減弱補正法の確立 | 外膜と内膜がそれぞれ任意に作動する新しい心臓動態ファントムを構築した。SPECT/CT装置を用い,ファントムの心筋層にTc-99m溶液,心室部に造影剤を入れて心機能評価の検証を行った。今回開発した本ファントムは,ストローク比を任意に変えることで異なる心筋壁の動きや左室容積が可変できる。本ファントムを用いることで多様な臨床条件(心室容積,駆出率,物理的現象)を想定した技術的評価が可能と考えられた。心電図同期心筋SPECT (以下,Gated SPECT)において,現在,心機能指標の評価に使用されている心臓動態ファントムは外側(心外膜,内膜)の大きさが固定で内側(内腔)のみが前後方向に移動する構造であるため,本来の心臓の動きが再現していないことが指摘されていた。本研究では心筋および左室容積を可変できる心臓動態ファントムを新しく開発し,その構成と特徴,およびGated SPECTで算出した各種心機能指標の精度を検討することを目的とした。本ファントムは機動部と心臓部から成り,心臓部は縦隔を想定したアクリルタンクの中に心臓を想定した特殊二層ゴムを装着する。その特殊二層ゴムと心筋,左室容積用の2つのシリンダーを使用し,心筋壁厚が動きとともに変化する心臓動態ファントムを考案した。さらに,本ファントムのGated SPECT撮像を施行後,心機能解析プログラムを用いてLVEF(左室駆出率),EDV(最大拡張末期容積)およびESV(最大収縮末期容積)等の心機能指標を算出し,さらにその理論値と実測値を比較した。その結果,本ファントムは各シリンダーのストロークを変化させることで心筋部および左室容積が可変可能となり,同時に心拍数も3164 bpmまで変化させることができる。また,解析結果の三次元表示により,各心筋壁のwall motionや部分容積効果を評価することができた。実測値と理論値間の相対誤差は,各ストロークでばらつきが生じた。実測値と理論値間でばらつきがみられた要因として,理論値は左室の容積変化のみを計算したものであり,心筋の容積変化による作用を反映できないこと,ゴムとアクリルとの摩擦によるゴムの収縮率の影響の二点が考えられ,今後改良の余地がある。今回,新たに心筋および左室容積を可変できる心臓動態ファントムを開発し,各心機能評価および本ファントムの特徴を明らかにした。平成26年度では心筋および左室容積を可変できる心筋動態ファントムを構築し,実績報告を行った。平成27年度では,心筋および左室容積を可変できる心筋動態ファントムを用い,以下の2点を検証した。1)一体型SPECT/CT装置のCT画像とSPECT画像間の位置合わせ(レジストレーショ)の精度を評価,すなわち,心拍数を変化させ,一体型SPECT/CT装置における心電図同期CT撮影およびSPECT収集と心電図非同期CT撮影およびSPECT収集を行い,CT画像とSPECT画像の位置ズレを検討した。2)一体型SPECT/CT装置のCT画像による減弱補正の精度評価で,一体型SPECT/CT装置において,心拍数を変化させ,1心拍の心電図波形を分割し,各々のCT画像から減弱補正用画像を作成し,それに対応したSPECT収集データに減弱補正を行い精度を検討した。3)医療機器間ネットワークのCT画像による減弱補正の精度を評価した。すなわち,検査室が別のCT装置で,心臓動態ファントムの心拍数を変化させCT撮影を行い,ネットワークで心電図波形に対応したCT画像を一体型SPECT/CT装置の解析装置に転送し,減弱補正をそれに対応したSPECT収集データに行い,その精度を検証した。その結果,セグメント・カウントプロファイルカーブにおいて,心拍数40 beat/minの360度収集は全てのμマップ領域で過大値を示し,180度収集は全ての心拍数・μマップ領域でカウントのバラツキがみられた。以上のことから,心電図同期CT撮影法を用いた減弱補正では,SPECTを360度収集で施行し,基準のμマップ領域を設定して補正する必要があると示唆された。今回の心筋動態ファントムによる個々のCT収集系による減弱補正の実用化の可能性が明らかとなった。平成27年度の研究計画は,一体型SPECT/CT装置のCT画像とSPECT画像間の位置合わせ(レジストレーショ)の精度評価および一体型SPECT/CT装置のCT画像による減弱補正の精度評価である。一体型SPECT/CT装置において,心拍数を40150bpmまで変化させ,1心拍の心電図波形を分割し,各々のCT画像から減弱補正用画像を作成し,それに対応したSPECT収集データに減弱補正を行い精度を検討することができた。核医学装置の種類により,心電図同期SPECTの減弱補正がソフトおよびハード的に施行できない機種もあるが,関連施設の臨床機による動作確認ができたため,順調に進めることができた。本研究では心筋および左室容積可変型のGated SPECT用心臓動態ファントムを開発し,Gated SPECTにより算出されたEDV,ESVおよび左室駆出率(LVEF)などの各心機能指標値の評価を行い,その実用性を検証する。当ファントムの心臓部は,心内膜と心外膜を同時に可変させるため二層構造の伸縮可能な特殊ゴムで構成される。機動部は心筋,左室容積用の2つのシリンダーを装備したダブルポンプ式を新たに採用し,EDV 346-447 mL,ESV 246-346 mLおよびLVEF 0-45%まで可変できる。 | KAKENHI-PROJECT-26460725 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26460725 |
一体型SPECT/CT装置における心電図同期X線CT撮影の減弱補正法の確立 | 低エネルギー高分解能型コリメータを装着したSPECT-CT装置を用い,心拍数,収集時間,R-R間隔を変化させ,画像再構成にはフィルタ補正逆投影法(FBP法)および逐次近似法(3D-OSEM法)を用いた。Gated SPECT施行後,QGS解析プログラムにて心機能指標値を算出した。理論値-SPECT,SPEC-CTおよび理論値-CTの関係は,有意に強い相関がみられたことから算出値は理論値を反映していると考える。心拍数の違いによる各心機能指標値に有意差はなかったことから,一定心拍数では心機能指標値に影響を与えないと考えられる。心筋カウント変化による大きな差はみられなかったことから心機能指標値に影響を及ぼさないことが示された。16分割では8分割に比しEDVは高値,ESVは低値を示し,結果的にLVEFは高値を示した。画像処理フィルターの検討では,遮断周波数が低いと左室容積が過小評価された。画像再構成の違いでは,FBP法に比し3D-OSEM法がEDV,ESVで高値を,LVEFで低値を示した。装置間の比較では,理論値および算出値間で有意な強い正の相関を示したが,装置間差がみられた。今後ファントム作成時の容積の再現性をより高めることにより,心機能指標値の標準化が期待できると思われる。外膜と内膜がそれぞれ任意に作動する新しい心臓動態ファントムを構築した。SPECT/CT装置を用い,ファントムの心筋層にTc-99m溶液,心室部に造影剤を入れて心機能評価の検証を行った。今回開発した本ファントムは,ストローク比を任意に変えることで異なる心筋壁の動きや左室容積が可変できる。本ファントムを用いることで多様な臨床条件(心室容積,駆出率,物理的現象)を想定した技術的評価が可能と考えられた。平成26年度の研究計画は,新型心臓動態ファントムの開発および動作確認である。これまで,予備的な研究で使用されていた市販の核医学専用心臓動態ファントムは,心臓の構造をもとに作成されているが,外側(心筋外膜,中膜,内膜を想定)の大きさが固定で内側(心腔を想定)のみが前後方向に移動する構造であるため,本来の心臓の動きが再現できていないことが指摘されていた。平成26年度では,企業との共同研究が迅速に進み,心臓動態ファントムの外側(心筋外膜,中膜,内膜を想定)と内側(心腔を想定)の動きを本来の心臓の動きに近い心臓動態ファントムが9月に構築できたため,それに付随した予備基礎実験や臨床機による動作確認,心機能評価の検証を順調に進めることができた。平成28年度では,心筋血流および心機能の解析評価を行う。一体型SPECT/CT装置において新型核医学専用心筋動態ファントムで得られた1心拍の心電図波形ごとのCT画像およびSPECT収集データに対して減弱補正を行い,補正後のデータを用いて逐次近似法によるSPECT画像再構成を行い,心筋血流分布を定性画像およびブルズアイ等の定量画像を用い,心筋血流の精度を検証する,さらに,近年行われている心機能解析,すなわち心筋の最大収縮末期容積,最大拡張末期容積,左室駆出率,収縮速度,拡張速度や個々の位相解析により評価する。 | KAKENHI-PROJECT-26460725 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26460725 |
蛋白質のフオールディング異常と神経細胞変性の解析 | 脊髄小脳運動失調症(SCA1)はataxin-1の変異で発症する脳疾患である。トリプレットリピート配列を有するSCA1のQ(Gln)の複成過程で生じるエラーが、poly Q repeatを含んだ異常なataxin-1蛋白質の合成を誘導し、プルキンエ細胞核内に凝集体を形成し、最終的にはその細胞を死に至らしめ、SCA1の発症となる。さらに、正常プリオン蛋白質から異常プリオンへの変換は、プリオン蛋白質の高次構造変化(αへリックスからβシート構造の増大)と考えれれており、脳神経細胞内蛋白質のフォールディング異常が各種脳神経疾患と密接な関連があることが示唆されている。分子シャペロン(以下HSP)は、新規合成蛋白質、モルテングロビュール構造、及び凝集蛋白質の正しいフォールディングに必須の機能を有する蛋白質であり、原核生物においては、GroEL/GroES(HSP60/HSP10)による蛋白質の折りたたみ機構がほぼ解明され、真核生物においても同様の蛋白質フォールディング機構が存在するものと考えられている。この様な各種脳疾患において、HSPが如何なる生理機能を発揮するのかに関して以下の研究を行った。家族性ALSのモデルとして、変異SODのレコンビナントを作製した。A4T変異SODはin vitroで凝集塊を形成したが、HSP90やHSP70存在下では凝集塊形成は阻止された。同様に、DRPLA proteinのレコンビナントを作製した。Q19DRPLAproteinは凝集塊を形成しなかったものの、Q57DRPLAproteinは凝集塊を形成した。HSP90やHSP70存在下では凝集塊形成は阻止された。この様に、分子シャペロンはin vitroで蛋白質変性を抑制することが判明した。現在、エレクトロポレーション法によりラット脳内にHSPを高発現させ、各種脳疾患モデルにおけるHSPの効果をin vivoで直接確認することを試みている。脊髄小脳運動失調症(SCA1)はataxin-1の変異で発症する脳疾患である。トリプレットリピート配列を有するSCA1のQ(Gln)の複成過程で生じるエラーが、poly Q repeatを含んだ異常なataxin-1蛋白質の合成を誘導し、プルキンエ細胞核内に凝集体を形成し、最終的にはその細胞を死に至らしめ、SCA1の発症となる。さらに、正常プリオン蛋白質から異常プリオンへの変換は、プリオン蛋白質の高次構造変化(αへリックスからβシート構造の増大)と考えれれており、脳神経細胞内蛋白質のフォールディング異常が各種脳神経疾患と密接な関連があることが示唆されている。分子シャペロン(以下HSP)は、新規合成蛋白質、モルテングロビュール構造、及び凝集蛋白質の正しいフォールディングに必須の機能を有する蛋白質であり、原核生物においては、GroEL/GroES(HSP60/HSP10)による蛋白質の折りたたみ機構がほぼ解明され、真核生物においても同様の蛋白質フォールディング機構が存在するものと考えられている。この様な各種脳疾患において、HSPが如何なる生理機能を発揮するのかに関して以下の研究を行った。家族性ALSのモデルとして、変異SODのレコンビナントを作製した。A4T変異SODはin vitroで凝集塊を形成したが、HSP90やHSP70存在下では凝集塊形成は阻止された。同様に、DRPLA proteinのレコンビナントを作製した。Q19DRPLAproteinは凝集塊を形成しなかったものの、Q57DRPLAproteinは凝集塊を形成した。HSP90やHSP70存在下では凝集塊形成は阻止された。この様に、分子シャペロンはin vitroで蛋白質変性を抑制することが判明した。現在、エレクトロポレーション法によりラット脳内にHSPを高発現させ、各種脳疾患モデルにおけるHSPの効果をin vivoで直接確認することを試みている。 | KAKENHI-PROJECT-12210033 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12210033 |
競争的資金配分における評価の日米比較 | 本研究の目的は、日米における競争的資金の評価の比較を通して、競争的資金の評価の構造的特徴を解明し、それに根ざしたメタ評価枠組を開発することである。本年度は1既存のメタ評価枠組みの理論的検討:社会的背景、認識論的基盤、理論の整合性などの検討、2日本・米国の実態調査:資金配分母体(学術振興会やNSF等)の公表資料の検討とインタビューを行った。理論的検討の結果は論文「蓋然論理とその評価方法論的検討」(査読中)および発表「競争的資金配分の審査における評価の論理」にまとめた。両者は、研究評価における専門的判断を説明するモデルの構築を扱ったものである。評価研究における基礎理論であり、評価研究における唯一とも言われる科学哲学的基礎を持つ評価論理に関する理論的検討を行っている。上記の国内外の膨大な著作を集める必要が発生し、物品費により多数の文献を購入した。また購入以外にも他大学等から書籍を貸借したり、古い論文を収集した。貸借・収集した文献は電子化し、PC・HDDに保存した。当該年度は、理論的検討を踏まえて、仮説の経験的検証を始めている。しかし、理論的検討の作業があまりにも膨大になってしまった結果、経験的検証はあまり進められなかった。この点が研究実施時計画と比較したときの研究進捗上の大きな問題となってしまった。(抄録なし)本研究の目的は、日米における競争的資金の評価の比較を通して、競争的資金の評価の構造的特徴を解明し、それに根ざしたメタ評価枠組を開発することである。本年度は(1)既存のメタ評価枠組みの理論的検討:社会的背景、認識論的基盤、理論の整合性などの検討、(2)日本・米国の実態調査:資金配分母体(学術振興会やNSF等)の公表資料の検討とインタビューを行った。理論的検討の結果は投稿論文「研究評価の研究動向」(『大学論集』44集)にまとめた。執筆にあたっては、予定されていた評価論に関する文献のみならず、科学社会学や科学哲学といった広範な領域を扱かった。当該の論文は、研究評価に関する分野横断的なレビューを行った、国内最初の論文と思われる。また国際的にもそのようなレビュー論文は管見の限り見当たらない。執筆にあたって、国内外の膨大な著作を集める必要が発生し、物品費により多数の文献を購入した。また購入以外にも他大学等から書籍を貸借したり、古い論文を収集した。貸借・収集した文献は電子化し、PC・HDDに保存した。当該年度後半からは、理論的検討を踏まえて、仮説の経験的検証を始めている。もっぱら政策文書のレビューとインタビューを実施しているが、データ集収と整理のための機材として、ICレコーダーとデータ分析ソフトを購入した。インタビューの結果はPC・HDDに保存している。本年度からは日本のみならずアメリカへの調査を行い、日米比較を行う予定である。日米比較に際して仕様すべき機材などは全て用意してあるため、本年度は効率的に経験的検証が可能となりそうである。本研究の目的は、日米における競争的資金の評価の比較を通して、競争的資金の評価の構造的特徴を解明し、それに根ざしたメタ評価枠組を開発することである。本年度は1既存のメタ評価枠組みの理論的検討:社会的背景、認識論的基盤、理論の整合性などの検討、2日本・米国の実態調査:資金配分母体(学術振興会やNSF等)の公表資料の検討とインタビューを行った。理論的検討の結果は論文「蓋然論理とその評価方法論的検討」(査読中)および発表「競争的資金配分の審査における評価の論理」にまとめた。両者は、研究評価における専門的判断を説明するモデルの構築を扱ったものである。評価研究における基礎理論であり、評価研究における唯一とも言われる科学哲学的基礎を持つ評価論理に関する理論的検討を行っている。上記の国内外の膨大な著作を集める必要が発生し、物品費により多数の文献を購入した。また購入以外にも他大学等から書籍を貸借したり、古い論文を収集した。貸借・収集した文献は電子化し、PC・HDDに保存した。当該年度は、理論的検討を踏まえて、仮説の経験的検証を始めている。しかし、理論的検討の作業があまりにも膨大になってしまった結果、経験的検証はあまり進められなかった。この点が研究実施時計画と比較したときの研究進捗上の大きな問題となってしまった。当初計画では、既存のメタ評価枠組みを理論的に検討する予定であったが、本年度は既存のメタ評価枠組みに留まらず、その背後にある科学論的仮定についても分析したため、理論的検討の射程が予定よりも広がったため、予想以上に時間がとられたから。現在(24年度末)、日本・米国の実態調査:資金配分母体(学術振興会やNSF等)の公表資料の検討とインタビューの結果を論文にまとめている。研究の進捗が遅れている以外には、研究計画の変更や研究遂行上での予想外の問題は取り立てて発生していない。そのため今後の推進方策としては、計画に沿い、研究のスピードを上げて、研究に従事する必要がある。申請者の所属する高等教育開発センターでは、D3の学生には研究以外の仕事の負担を減らし、可能な限り研究に専念させるような体制を整える伝統があるため、本年度はこの与えられた環境を活かして、研究に専心する予定である。(抄録なし) | KAKENHI-PROJECT-12J06990 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12J06990 |
小胞体分子シャペロンによる細胞内蛋白質輸送の制御 | 蛋白質はリボソームで合成された後に、高次構造の形成、複合体形成などを経て、機能的に成熟し、適切な細胞内の場所に輸送されて、機能を発現する。異常蛋白は分解除去され、その蓄積による細胞障害が防止される。こうした過程は蛋白質品質管理機構と呼ばれる。分泌蛋白、膜蛋白の蛋白質品質管理機構は、小胞体において、分子シャペロンと言われる、一群の蛋白が担当する。可溶性小胞体分子シャペロンのカルボキシ末端にはKDELアミノ酸配列があり、小胞体から分泌されてもゴルジ体でKDELレセプターによってこのアミノ酸配列が認識され小胞体に逆輸送される。この小胞体への逆輸送はCOPIと呼ばれる小胞輸送によって担われている。COPI小胞輸送はARF1と言うGTP結合蛋白によって制御されているが、我々は、KDELレセプターがARF1の活性を調節するARF1GAPを介して、COPI小胞輸送を制御していることを明らかにした。また、可溶性小胞体分子シャペロンがリガンドとしてKDELレセプターを活性化する事によってこの制御が行なわれていた。異常蛋白は小胞体の蛋白質品質管理機構を一旦逃れても、小胞体分子シャペロンと会合した状態で分泌され、KDELレセプターによって、小胞体分子シャペロンと共にゴルジ体から小胞体に逆輸送され、分解された。また、KDELレセプターの機能が傷害されると、蛋白質品質管理機構を逃れて、ゴルジ体からさらに細胞表面へと分泌された。従って、KDELレセプターを介してCOPI小胞輸送は小胞体の蛋白質品質管理機構を補完していると考えられた。また、蛋白質品質管理機構の本体である小胞体分子シャペロンはKDELreceptorを介して、COPI小胞輸送を制御しており、COPI小胞輸送と小胞体の蛋白質品質管理機構の強い結びつきが示唆された。蛋白質はリボソームで合成された後に、高次構造の形成、複合体形成などを経て、機能的に成熟し、適切な細胞内の場所に輸送されて、機能を発現する。異常蛋白は分解除去され、その蓄積による細胞障害が防止される。こうした過程は蛋白質品質管理機構と呼ばれる。分泌蛋白、膜蛋白の蛋白質品質管理機構は、小胞体において、分子シャペロンと言われる、一群の蛋白が担当する。可溶性小胞体分子シャペロンのカルボキシ末端にはKDELアミノ酸配列があり、小胞体から分泌されてもゴルジ体でKDELレセプターによってこのアミノ酸配列が認識され小胞体に逆輸送される。この小胞体への逆輸送はCOPIと呼ばれる小胞輸送によって担われている。COPI小胞輸送はARF1と言うGTP結合蛋白によって制御されているが、我々は、KDELレセプターがARF1の活性を調節するARF1GAPを介して、COPI小胞輸送を制御していることを明らかにした。また、可溶性小胞体分子シャペロンがリガンドとしてKDELレセプターを活性化する事によってこの制御が行なわれていた。異常蛋白は小胞体の蛋白質品質管理機構を一旦逃れても、小胞体分子シャペロンと会合した状態で分泌され、KDELレセプターによって、小胞体分子シャペロンと共にゴルジ体から小胞体に逆輸送され、分解された。また、KDELレセプターの機能が傷害されると、蛋白質品質管理機構を逃れて、ゴルジ体からさらに細胞表面へと分泌された。従って、KDELレセプターを介してCOPI小胞輸送は小胞体の蛋白質品質管理機構を補完していると考えられた。また、蛋白質品質管理機構の本体である小胞体分子シャペロンはKDELreceptorを介して、COPI小胞輸送を制御しており、COPI小胞輸送と小胞体の蛋白質品質管理機構の強い結びつきが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-11153203 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11153203 |
日本の女性農業者の生産・再生産領域における無報酬労働の評価に関する研究 | 1997年10月1998年2月に積極的に農業に取り組む農業者の夫妻、生活時間調査およびアンケート調査を自記留置方式で実施し、有効回答生活時間181人アンケート215人を得た。平均年令夫42.4才、妻40.0才。「農業者夫妻の関係」を分析し次のような知見を得た。1生活時間調査結果(1)農業従事日の夫妻の全労働時間(農業労働時間+家事労働時間)は妻は夫より1時間50分長く、生理的生活時間は、妻が1時間短い。農休日にも、全労働時間は夫妻で大差があり、妻の家事労働時間が長く、妻は農休日にも休めない状態にある。(2)夫は家事労働に参加する率も時間も少ない。(3)社会的文化的生活時間は、農業従事日には夫妻共に短い。農休日に妻はリフレッシュできる状態にはない2アンケート調査結果共同参画は妻が農業経営に積極的に参画することで進展しているが、夫の「家庭生活参画」意識は進んでいない。妻の農業労働報酬に関する意識はまだ高くはなく、農業所得を「世帯主名義」を当然と考えている夫は8割である。「明確な職業人自覚」をもつ妻は3割であるが、「妻個人としての納税意識」は低い。介護労働については、意見があいまいである。意見表明に関しては「女性の発言のチャンスが少ない」と4割の女性が感じている。3生産・再生産領域における無報酬労働の評価(1)積極的な農業者夫妻でも、「生産」領域における労働評価を明確にする意識は十分に進んでいない。(2)「再生産労働」である家事労働に対する労働報酬意識は、妻にも夫にも希薄である。(3)「再生産労働」である介護労働の分担・貢献の評価に関する考え方は、家事労働よりさらに曖昧である。全体として、平等なパートナー・シップはまだ十分に進んでいない。調査の実施・結果1997年10月1998年3月三重県および茨城県・長野県内において3040才代生活改善フループ活動をしている妻とその夫の生活時間調査・意識調査を実施した。回収数114カップル228人(回収率74.5%)。内、三重県のサンプル(生活時間調査有効回答113、意識調査有効回答138)について集計分析した。1)生活時間調査<農作業日>:夫は、生理的生活時間11時間20分、農業労働時間8時間56分、家事労働時間11分、社会的文化的生活時間は3時間33分である。これに対して妻は、生理的生活時間10時間21分、農業労働時間5時間57分、家事労働時間5時間2分、社会的文化的生活時間2時間40分である。全労働時間(農業労働時間+家事労働時間)では夫9時間7分に対して、妻10時間59分となり約2時間妻の方が多く働いている。<農休日>:夫は、生理的生活時間11時間51分、農業労働時間43分、家事労働時間1時間22分、社会的文化的生活時間10時間4分である。これに対して妻は、生理的生活時間10時間29分、農業労働時間50分、家事労働時間7時間15分、社会的文化的生活時間5時間26分である。全労働時間では、夫2時間5分、妻8時間5分であり、妻の趣味や研修や社会的な交流の時間が圧迫されている。2)意識調査(1)妻の労働報酬に関する項目では、「農業収入の名義」「農業所得から定期的な取り分」「妻名義の農地」「妻名義の貯金」について、(2)労働条件で「農休日」(3)社会的関係で「各種研究会への積極的参加(4)家事分担等について結果が出ている。1997年10月1998年2月に積極的に農業に取り組む農業者の夫妻、生活時間調査およびアンケート調査を自記留置方式で実施し、有効回答生活時間181人アンケート215人を得た。平均年令夫42.4才、妻40.0才。「農業者夫妻の関係」を分析し次のような知見を得た。1生活時間調査結果(1)農業従事日の夫妻の全労働時間(農業労働時間+家事労働時間)は妻は夫より1時間50分長く、生理的生活時間は、妻が1時間短い。農休日にも、全労働時間は夫妻で大差があり、妻の家事労働時間が長く、妻は農休日にも休めない状態にある。(2)夫は家事労働に参加する率も時間も少ない。(3)社会的文化的生活時間は、農業従事日には夫妻共に短い。農休日に妻はリフレッシュできる状態にはない2アンケート調査結果共同参画は妻が農業経営に積極的に参画することで進展しているが、夫の「家庭生活参画」意識は進んでいない。妻の農業労働報酬に関する意識はまだ高くはなく、農業所得を「世帯主名義」を当然と考えている夫は8割である。「明確な職業人自覚」をもつ妻は3割であるが、「妻個人としての納税意識」は低い。介護労働については、意見があいまいである。意見表明に関しては「女性の発言のチャンスが少ない」と4割の女性が感じている。3生産・再生産領域における無報酬労働の評価(1)積極的な農業者夫妻でも、「生産」領域における労働評価を明確にする意識は十分に進んでいない。(2)「再生産労働」である家事労働に対する労働報酬意識は、妻にも夫にも希薄である。 | KAKENHI-PROJECT-09680057 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09680057 |
日本の女性農業者の生産・再生産領域における無報酬労働の評価に関する研究 | (3)「再生産労働」である介護労働の分担・貢献の評価に関する考え方は、家事労働よりさらに曖昧である。全体として、平等なパートナー・シップはまだ十分に進んでいない。 | KAKENHI-PROJECT-09680057 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09680057 |
ステロイドホルモンの質量分析イメージングによる組織細胞上の直接可視化法の開発 | 本研究はステロイドホルモン産生機構の解明を目的として、組織切片上で直接、ステロイドホルモンを検出する実験系の開発を行った。ステロイドホルモンのより効率的なイオン化法を探索するために、種々のSALDI法や誘導体化法を試み、Girard-T(GirT)試薬を用いた誘導体化によって組織切片上においても強いイオン化シグナルが得られた。そこで、ラット、ウサギ等の副腎組織切片上でGirTによる誘導体化の後、質量分析イメージング解析を行ない、Corticosterone, Progesterone, Cortisol, Aldosterone等の誘導体化ステロイドホルモンが、副腎皮質切片上で検出された。哺乳動物のステロイドホルモンは、主に副腎、性腺で産生され、その産生に影響する疾患は数多いが、ステロイドホルモンの組織/細胞上での直接的な検出、可視化ができないために、ステロイドホルモン産生/保有細胞の同定はそれらの合成酵素群の蛋白質やmRNAを検出することによって間接的に推定されているのみである。本研究は、質量分析イメージング法を用いて、組織/細胞上のステロイドホルモンの直接検出を可能とする方法の開発に挑戦する。平成26年度は、主に代表的ステロイドホルモン6種について、MALDI法、SALDI法を用いた質量分析検出条件を検討した。ステロイドホルモンは、通常のMALDI法に用いるイオン化支援剤(マトリックス)であるDHBやCHCAなどの芳香族有機化合物ではイオン化され難く、検出が困難であった。又、これら有機マトリックスは、ステロイドホルモン検出領域に多量のバックグランドノイズを産出し、解析を困難にした。そこで本研究では、種々の金属ナノ粒子を適用したSALDI/nano-PALDI法を用いたステロイドホルモンの効率的検出条件を検討した。代表的ステロイドホルモンの純試薬6種において、島津社Axima、Bruker社SolarixなどのMALDI機で、種々の金属ナノ粒子をイオン化支援剤として用いて、ステロイドホルモンのイオン化効率の高い物質をスクリーニングした。この際、レーザー波長337/355nm付近に吸収を持つ金属ナノ粒子を中心に検討し、測定は正イオンモードに加えて、負イオンモードでも検出し、ステロイドホルモン検出に適した条件を探索した。酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタンなどの、種々の酸化金属ナノ粒子をイオン化支援剤として用いると、ステロイドホルモンの検出感度が高く、バックグランドノイズも少ないことが明らかになった。又、一般に正イオンモードの方が強く検出された。ステロイドホルモンは、一般にイオン化が困難な化合物とされており、質量分析MALDI法において、通常、マトリックスとして一般的に用いられるCHCAやDHBなどの有機化合物では、マトリックス物質そのものがイオン化されて、低分子領域に多数のバックグランドピークが検出され、ステロイドホルモンを含む低分子領域(m/z: 250-400程度)の解析を困難なものにする。これを克服する手法として、金属ナノ粒子(酸化鉄ナノ粒子など)は、自身はイオン化せずに、他物質をイオン化するマトリックス効果がある(SALDI法/ Nano-PALDI法)ため、種々の酸化金属ナノ粒子を作成して、ステロイドのイオン化効果を検討したところ、低分子領域にバックグランドピークが少ない、ステロイドホルモン群の高S/N比での検出が可能になった。しかし、金属ナノ粒子は、生体内に数多く存在する低分子化合物を非選択的にイオン化するために、ステロイドホルモンのピークのみ、高感度に検出するためには、現時点においてまだ不十分であった。そこで、ステロイドホルモンのイオン化効率を更に高める目的で、ステロイドの誘導体化試薬を、種々、スクリーニングを行なった。これらの誘導体化試薬の中で、Girard Tによるステロイドホルモンのケトン基への誘導体化がステロイドを高効率に誘導体化し、高感度検出が可能となることを見出した。更に、副腎組織切片上で、Girard TによるOn Tissueの誘導体化を行い、引き続き、マトリックスを塗布することによって、質量分析イメージングを行なった。その結果、ウサギ、ラット副腎切片を用いて、コルチゾール、コルチコステロン、プロゲステロンなどを、組織切片上で可視化することができた。ステロイドホルモンの種々の高効率イオン化法の改良を検討する中で、ステロイドホルモンの誘導体化法を検討し、Girard T試薬が高感度にステロイドホルモンをイオン化することを見出し、更に、On Tissue誘導体化法を用いた質量分析イメージング法によって、複数のステロイドホルモンの、組織切片上での可視化陽性結果を得ているため。哺乳動物のステロイドホルモンは、主に副腎皮質、精巣、卵巣で、CYPsやHSDsの連携によって合成・分泌される。これらのステロイドホルモンは、組織切片上で従来の免疫組織化学法などで検出できないために、各々のステロイドホルモン産生部位(細胞)については、それらの最終合成酵素の発現部位を検出することによって、間接的に推定されていた。本研究ではステロイドホルモン産生機構の解明を目的として、質量分析イメージング法を用いて、組織切片上で直接、ステロイドホルモンを検出する実験系の開発を行った。ステロイドホルモンは、質量分析MALDI法のマトリックスとして一般的なCHCAやDHB等の有機化合物を用いると、イオン化効率が悪くピーク強度が低いが、ステロイドホルモンのA環のケトン基に反応するGirard-T(GirT)試薬を用いて、代表的なステロイドホルモン類を誘導体化することにより、強いイオン化シグナルが得られた。 | KAKENHI-PROJECT-26670461 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26670461 |
ステロイドホルモンの質量分析イメージングによる組織細胞上の直接可視化法の開発 | そこで、ラット、ウサギ等の副腎の凍結組織切片(10μm厚)を作成し、スライドグラス上に貼付した切片にGirT試薬を噴霧器でスプレーし(On-Tissue誘導体化)、引き続きCHCAマトリックスを噴霧した後に、質量分析MALDI法スキャンを行い、イメージング検出を行った。その結果、Corticosterone-GirT, Progesterone-GirT, Cortisol-GirT等の誘導体化されたステロイドホルモンのm/z値の質量分析イメージング像が、副腎皮質の束状層と網状層に検出された。この際、超高質量分解能(質量分解能100万)のFT-ICR MS機を用いることによって、予想されるm/z値の±0.001以内の正確さで、これらのイオン化ステロイドホルモンのイメージング検出が達成された。本研究はステロイドホルモン産生機構の解明を目的として、組織切片上で直接、ステロイドホルモンを検出する実験系の開発を行った。ステロイドホルモンのより効率的なイオン化法を探索するために、種々のSALDI法や誘導体化法を試み、Girard-T(GirT)試薬を用いた誘導体化によって組織切片上においても強いイオン化シグナルが得られた。そこで、ラット、ウサギ等の副腎組織切片上でGirTによる誘導体化の後、質量分析イメージング解析を行ない、Corticosterone, Progesterone, Cortisol, Aldosterone等の誘導体化ステロイドホルモンが、副腎皮質切片上で検出された。ステロイドホルモンはイオン化しにくく、質量分析MALDI法の一般的なイオン化支援剤であるDHBやCHCAなどの芳香族有機分子では検出感度が低く、又、ステロイドホルモンを含む低分子(m/z)領域に多くのバックグランドノイズが検出される。これらの問題点を克服するために、新たなイオン化支援剤をスクリーニングし、酸化鉄などの種々の酸化金属ナノ粒子が、ステロイドホルモンを効率的にイオン化すると共に、バックグランドノイズが低く、感度の高い検出が可能となることが明らかになったため。今後は、更に高効率にステロイドホルモンをイオン化する手法を探索し、新たな誘導体化試薬を含めた誘導体化試薬の反応条件検討や、検出に用いるマトリックスの種類や塗布方法に改良を加えて、他のステロイドホルモンを含めて、組織切片上のステロイドホルモンを網羅的に、又、高空間解像度で、検出、可視化する実験系を構築する予定である。内分泌学ステロイドホルモン純試薬において、種々の酸化金属ナノ粒子をイオン化支援剤として用いることによって、効率的にステロイドホルモンの質量分析検出が行われることが明らかになった。今後、更にこれらのナノ粒子の化学修飾を含めて、イオン化支援効率の高い化学物質のスクリーニングを行うと共に、組織切片におけるイオン化支援剤の噴霧/適用条件の検討、ステロイドホルモンを切片上でイオン化しやすい化合物に変換する方法などを組み合わせて、組織切片中のステロイドホルモンの検出を可能にする新たな手法の開発を検討する。最終年度の交付額が今年度の8割と少ないこともあり、今年度中に無理に全額を使用せずに、より有効に予算を活用するために、次年度に繰り越しとして使用するため。年度末において、次年度予算と共により有効に使用するために次年度使用額が生じた。 | KAKENHI-PROJECT-26670461 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26670461 |
障害女性の生きづらさの実態と解消方策の検討―制度の実効性に関する東アジア比較― | 本研究の目的は、障害女性の生きづらさを解消させる制度の効果を探索的に明らかにするとともに、日本の障害女性の生きづらさに対する解消方策を示すことである。そのために、障害女性の生きづらさに影響を与え、かつ日本でも導入される可能性のある制度を持つ韓国・香港において、障害女性への半構造化面接を行い、1.障害女性の生きづらさの実態、2.障害女性の生きづらさの解消に制度が与えた効果について明らかにする。その上で、3.得られた結果を日本の障害女性の事例に当てはめ検討し、解消方策を示す。本研究の目的は、障害女性の生きづらさを解消させる制度の効果を探索的に明らかにするとともに、日本の障害女性の生きづらさに対する解消方策を示すことである。そのために、障害女性の生きづらさに影響を与え、かつ日本でも導入される可能性のある制度を持つ韓国・香港において、障害女性への半構造化面接を行い、1.障害女性の生きづらさの実態、2.障害女性の生きづらさの解消に制度が与えた効果について明らかにする。その上で、3.得られた結果を日本の障害女性の事例に当てはめ検討し、解消方策を示す。 | KAKENHI-PROJECT-19K02047 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K02047 |
副腎髄質からのカテコールアミン分泌におけるアセチールコリン受容体機構の動物種差 | 副腎髄クロム親和性細胞からのカテコールアミン(CA)分泌を介在するアセチールコリン(ACh)受容体タイプには動物種差がある。本研究はこの種差の生理的意義について、ウシとニワトリの受容体機構を比較することにより検討することを企図し、以下の成績を得た。1.ニワトリ副腎クロム親和性細胞における機能的ニコチン受容体の存在ニワトリ副腎分離細胞において、ニコチンは濃度依存性(10^<-7>-10^<-4>M)にCA分泌および細胞内Ca^<2+>濃度(Cai)の上昇を起こした。両反応はヘキサメトニウム(C6)により濃度依存性(10^<-7>-10^<-3>M)に抑制された。またAChの反応はC6により半減し、アトロピンとの併用により消失した。さらに、^3H-a-bungarotoxinを用いた結合実験から、C6感受性の高親和性結合が観察された。これらは、ニワトリ副腎に機能的なNic受容体が存在する薬理学的な証拠であり、ニワトリ副腎ではMus受容体刺激のみがCA分泌を惹起するという従来の報告を覆すものである。2.ニワトリおよびウシ副腎クロム親和性細胞におけるCA分泌、Cai反応、受容体結合能の比較ニワトリ副腎においてメサコリン(10^<-7>-10^<-3>M)は他のMusアゴニストと同様に濃度依存性にCA分泌を起こしたが、ウシ副腎では殆ど影響しなかった。プロテインキナーゼ阻害薬のスタウロスポリン(10^<-9>-10^<-6>M)はすべてのAChアゴニストの効果を抑制したが、ニワトリにおけるMus受容体刺激に対して非常に強い抑制を示した。細胞外Ca^<2+>除去や細胞内Ca^<2+>キレートは両動物種ともNic, Musアゴニストの効果を殆ど消失させた。一方、メサコリンはニコチンと異なり潜時の長い持続性のCai上昇を両動物種で起こしたが、ウシの反応の大きさはニワトリの約1/5であった。両動物とも、外液Ca^<2+>除去はニコチンのCai上昇を消失させたが、メサコリンおよびカフェイン反応は残存した。従って、2種の受容体刺激によるCa^<2+>の動員経路は定性的に両動物で共通であった。両動物とも^3H-QNBによる高親和性結合部位が存在したが、顕著な性質の違いは認められなかった。以上の成績は、副腎が器官として独立している動物種を通して、Nic受容体はCA分泌を介在する主要な受容体であることを示唆する。また、ウシ副腎のMus受容体刺激はCai動員を起こす内部効力が弱く、これがMus受容体刺激がCA分泌に結びつかない原因の一つと考えられる。今回、Mus受容体刺激によるCA分泌機構に蛋白質リン酸化が比較的強く関与する可能性が示唆されたが、これはラットでの報告と全く異なるものであり、ウシのMus受容体機構によるリン酸化の程度を今後検討するべきであると思われた。副腎髄クロム親和性細胞からのカテコールアミン(CA)分泌を介在するアセチールコリン(ACh)受容体タイプには動物種差がある。本研究はこの種差の生理的意義について、ウシとニワトリの受容体機構を比較することにより検討することを企図し、以下の成績を得た。1.ニワトリ副腎クロム親和性細胞における機能的ニコチン受容体の存在ニワトリ副腎分離細胞において、ニコチンは濃度依存性(10^<-7>-10^<-4>M)にCA分泌および細胞内Ca^<2+>濃度(Cai)の上昇を起こした。両反応はヘキサメトニウム(C6)により濃度依存性(10^<-7>-10^<-3>M)に抑制された。またAChの反応はC6により半減し、アトロピンとの併用により消失した。さらに、^3H-a-bungarotoxinを用いた結合実験から、C6感受性の高親和性結合が観察された。これらは、ニワトリ副腎に機能的なNic受容体が存在する薬理学的な証拠であり、ニワトリ副腎ではMus受容体刺激のみがCA分泌を惹起するという従来の報告を覆すものである。2.ニワトリおよびウシ副腎クロム親和性細胞におけるCA分泌、Cai反応、受容体結合能の比較ニワトリ副腎においてメサコリン(10^<-7>-10^<-3>M)は他のMusアゴニストと同様に濃度依存性にCA分泌を起こしたが、ウシ副腎では殆ど影響しなかった。プロテインキナーゼ阻害薬のスタウロスポリン(10^<-9>-10^<-6>M)はすべてのAChアゴニストの効果を抑制したが、ニワトリにおけるMus受容体刺激に対して非常に強い抑制を示した。細胞外Ca^<2+>除去や細胞内Ca^<2+>キレートは両動物種ともNic, Musアゴニストの効果を殆ど消失させた。一方、メサコリンはニコチンと異なり潜時の長い持続性のCai上昇を両動物種で起こしたが、ウシの反応の大きさはニワトリの約1/5であった。両動物とも、外液Ca^<2+>除去はニコチンのCai上昇を消失させたが、メサコリンおよびカフェイン反応は残存した。 | KAKENHI-PROJECT-07760286 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07760286 |
副腎髄質からのカテコールアミン分泌におけるアセチールコリン受容体機構の動物種差 | 従って、2種の受容体刺激によるCa^<2+>の動員経路は定性的に両動物で共通であった。両動物とも^3H-QNBによる高親和性結合部位が存在したが、顕著な性質の違いは認められなかった。以上の成績は、副腎が器官として独立している動物種を通して、Nic受容体はCA分泌を介在する主要な受容体であることを示唆する。また、ウシ副腎のMus受容体刺激はCai動員を起こす内部効力が弱く、これがMus受容体刺激がCA分泌に結びつかない原因の一つと考えられる。今回、Mus受容体刺激によるCA分泌機構に蛋白質リン酸化が比較的強く関与する可能性が示唆されたが、これはラットでの報告と全く異なるものであり、ウシのMus受容体機構によるリン酸化の程度を今後検討するべきであると思われた。 | KAKENHI-PROJECT-07760286 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07760286 |
高感度の感染細胞検出系を用いた狂犬病ウイルスの末梢感染動態の解析 | 本研究は、末梢組織における狂犬病ウイルスの感染動態を解明することを目的とする。最近、研究代表者らは、ウイルスおよびマウスの遺伝子改変技術の併用により、高感度なin vivo感染細胞検出系を確立した上で、新規のウイルス標的細胞が皮下組織に存在することを確認した。そこで本研究では、1)この標的細胞の種類を特定し、2)最先端の組織3Dイメージング法を用いて同細胞が末梢神経への感染に関与するかどうかを検証する。さらに3)同細胞がウイルス潜伏部位である可能性についても検討する。本研究は、末梢組織における狂犬病ウイルスの感染動態を解明することを目的とする。最近、研究代表者らは、ウイルスおよびマウスの遺伝子改変技術の併用により、高感度なin vivo感染細胞検出系を確立した上で、新規のウイルス標的細胞が皮下組織に存在することを確認した。そこで本研究では、1)この標的細胞の種類を特定し、2)最先端の組織3Dイメージング法を用いて同細胞が末梢神経への感染に関与するかどうかを検証する。さらに3)同細胞がウイルス潜伏部位である可能性についても検討する。 | KAKENHI-PROJECT-19H03127 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H03127 |
留学生を起用した理系学生向け医療英語学習用教材・教育カリキュラムの開発 | 本研究は,学部レベルの医学英語教育(「医学英語学習用教材・教育カリキュラム開発」)を推進するためのものである。平成30年度は、模擬授業の実施と研究総括を予定していた。平成28年度の研究成果である学部生・大学院生に対する医学英語教育に関する関連研究、平成29年度の研究成果である交換留学生についての関連研究も加えた研究内容を全て反映して報告書をまとめ、また、実務部分として予定していた平成29年度作成教材を使用した模擬授業を実際に実践した。模擬授業については、受講学生からのフィードバック(予定された授業アンケート)について、評価が非常に高かった。また、最終的なプロダクトについても、医学英語の授業のみならず、今後、北海道大学医学部に来学する交換留学生や、北海道大学医学部から派遣される医学部生が自習用教材として利用できる汎用性の高い教材を開発することができた。本研究の最終総括として、近い将来、数の増加が見込まれる、国籍・バックグラウンド・所属の異なる多様な留学生を起用した、理系学生を広く対象とする持続可能性のある医療英語学習用教材・カリキュラムを開発するという当初の目的については、平成28年度平成30年度の3年間で、基礎的なニーズ調査、教材開発、授業計画・立案まで含めて、概ね、予定通り達成された。研究成果についても、学会発表や学術論文の公表の形でまとめられ、医学教育領域において、国際化にも大きく貢献する内容であると期待された。医学英語に興味・関心のある医歯薬看護系・理工系学生23名を対象者として,フォーカスグループインタビュー(FGI)の手法を用いて4名/グループ×6グループ(1グループのみ3名)でニーズ調査を行った.「医学英語について,どのような内容を身につけたいか」自由記載できる質問紙のついた同意書,並びに,討論を深めるための関連質問を箇条書きにしたインタビューガイドを用意して,必要なデータを収集し,分析を行った.当初の計画通りニーズが抽出されたため,現在,研究成果の発表準備を進めている段階である.本研究は,学部レベルの医学英語教育(医学英語学習用教材・教育カリキュラム開発)を推進するためのものであるが,研究の準備段階で,関係する研究者間で,学部生・大学院生に対する医学英語教育に関する関連研究の基礎データ収集を同時並行で行っていく方が良いとの検討がなされたことから,本調査で得られた研究内容をベースに「学部生に対する卒前医学英語教育の試み」,「大学院生に対する卒後医学英語教育の試み」,「本学医学部の学生が海外実習(研究・臨床)を行うために教育上望む内容」とのテーマで,学会発表3回の関連業績も出された.授業計画立案については,上記の調査で得られたニーズをもとに,医学英語に関するe-learning教材・英会話テキスト教材開発を行うため,本学に在籍する大学院生の協力を得て,授業計画(目的・方法・評価)立案並びに次年度の教材開発のベースとなる資料収集を行った.また,先駆的な医学英語教育を行っている本邦の研究者と学会で情報交換を行い,教材開発のためのノウハウを蓄積した.研究実績の概要に記載されている通りに対象者へのニーズ調査が順調に行われ,かつ,その基礎データ収集を行う段階で関連する研究業績も多く出されたこと,また,学会発表を行った場で先駆的な医学英語教育を行っている研究者から有益な情報を得ることができたことなどから,初年度の成果としては当初の計画以上と考えられたが,研究成果を実際の実務に結びつける上でベースとなる授業計画立案・成功事例の視察の部分については,時間的な問題により十分な成果をあげることができなかったことから,おおむね順調に進展しているとの評価とした.本研究は,学部レベルの医学英語教育(「医学英語学習用教材・教育カリキュラム開発」)を推進するためのものである.平成29年度は,1実務部分として,平成28年度に行ったニーズ調査に基づいて,各国の文化・医療事情や医療英会話授業のe-learningやテキスト教材の製作を行い,模擬授業を計画する予定としており,特に医療英会話テキスト教材については,本学に在籍する複数名の留学生が共同して平成30年度に行う模擬授業の教材開発を行う予定となっていた.また,2研究部分として,平成28年度に収集された基礎データに関する成果について,中間成果報告として学会発表する予定となっていた.1実務部分について,参加可能な留学生数が当初の10名から7名に減ったものの,外国人教員1名や博士課程研究員1名の参加協力を追加で得ることができ,教材製作の予定8ヶ月間のうちの計画検討期間2ヶ月を除く6ヶ月で,関係者全員が毎月集まり,教材について制作及びブラッシュアップを行うことができた.この結果,特に病気の簡単な説明や医療者・患者役に分かれた医療英会話,留学生活の参考となる自由会話に分かれた教材については,医学的知識を有しない理系学生が理解できるような充実した教材が完成し,また,平成30年度の模擬授業に向けても,有識者との意見交換も含めて,実施準備が整った.2研究部分について,日本国内の学生のニーズだけではなく,海外で第2言語として英語を使って医学教育を受けている交換留学生のデータも調査結果として加えた方が研究内容が深まるのではないかとの意見が関係する研究者間で出されたことから,補足データとして本学に交換留学生として来学し実習を行った学生の意見も集めて,合わせて学会発表を行った.平成28年度は,研究成果を実際の実務に結びつける上でベースとなる授業計画立案・成功事例の視察部分について,時間的な問題により十分な成果をあげることができなかったことが問題となっていたが,この部分について,平成29年度に重点的にカバーし,特に,授業計画立案について,複数回,関係者とのミーティングを重ねることで内容を充実させ,問題点を克服できたと考えている. | KAKENHI-PROJECT-16K19168 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K19168 |
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