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極小部分多様体とその位相的,群論的研究 | ChengーYangのMinkowski空間におけるBernstein問題に関する結果をLorentz空間形において考察し、第2基本形式のノルムの最良な評価を得た。複素空間形の調和Weylテンソルをもつ実超曲面は存在しないことを主張した。これは良く知られたEinstein実超曲面が存在しないという事実の一般化である。複素空間形のBー型実超曲面において第2基本テンソルのノルムは下に有界であることを示し、逆にそのような評価をされる実超曲面はBー型にに限ることを証明した。複素射影空間のC,D,E型実超曲面を特徴づける方程式を求めた。両側不変なRiemann計算を持つコンパクト単純Lie群内のindexが1のコンパクト連結単純Lie部分群が体積の変分にに関して安定になることを証明した。次に両側不変なRiemann計算を持つコンパクト連結Lie群の極大ト-ラスが体積の変分に関して安定になるとき、階数が最大のコンパクト連結部分群も安定になることを示した。また極大ト-ラスが安定なコンパクト連結単純Lie完全に決定した。体k上の量子代数群SLq(2)の代数的座標A=A(SLq(2))の代数的ドラ-ム理論を巡回ホモロジ-を用いて具体的に計算した。3次元定曲率空間のHーdeformableな曲面は平均率が一定であることを証明した。全臍的でない平均曲率一定な曲面がHーdeformableであることは既に知られている。3次元Lorentz空間の平均曲率一定なspaceーlikeな曲面は,Gauss曲率が非正であるか、全たは全臍的であることを示した。さらにそのような曲面の一つであるHyperbolic Cylinderを主曲率によって特徴付けた。ChengーYangのMinkowski空間におけるBernstein問題に関する結果をLorentz空間形において考察し、第2基本形式のノルムの最良な評価を得た。複素空間形の調和Weylテンソルをもつ実超曲面は存在しないことを主張した。これは良く知られたEinstein実超曲面が存在しないという事実の一般化である。複素空間形のBー型実超曲面において第2基本テンソルのノルムは下に有界であることを示し、逆にそのような評価をされる実超曲面はBー型にに限ることを証明した。複素射影空間のC,D,E型実超曲面を特徴づける方程式を求めた。両側不変なRiemann計算を持つコンパクト単純Lie群内のindexが1のコンパクト連結単純Lie部分群が体積の変分にに関して安定になることを証明した。次に両側不変なRiemann計算を持つコンパクト連結Lie群の極大ト-ラスが体積の変分に関して安定になるとき、階数が最大のコンパクト連結部分群も安定になることを示した。また極大ト-ラスが安定なコンパクト連結単純Lie完全に決定した。体k上の量子代数群SLq(2)の代数的座標A=A(SLq(2))の代数的ドラ-ム理論を巡回ホモロジ-を用いて具体的に計算した。3次元定曲率空間のHーdeformableな曲面は平均率が一定であることを証明した。全臍的でない平均曲率一定な曲面がHーdeformableであることは既に知られている。3次元Lorentz空間の平均曲率一定なspaceーlikeな曲面は,Gauss曲率が非正であるか、全たは全臍的であることを示した。さらにそのような曲面の一つであるHyperbolic Cylinderを主曲率によって特徴付けた。 | KAKENHI-PROJECT-02640010 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02640010 |
閉リーマン面上の有理型函数の研究 | 閉リーマン面の研究における中心的課題のひとつである,その上の有理型函数の存在性および等角不変量を介してのリーマン面の分類問題を研究した.(2)誤り訂正符号理論のうちの代数幾何符号に関連して,射影空間内の点の配列に関して研究した.位数qの体上の射影空間内に点集合を与え,さらにその集合と超平面との交点の個数に条件を付してその集合が2つの部分空間の合併であることを示した.これは重み多項式に関連した問題でHomma-Kim-Yooの結果の拡張になっている.(3)全変曲点を多数もつ非特異平面曲線の特徴付けを試み,いくつかの条件下でそれがFermat曲線になることを示した.閉リーマン面の研究における中心的課題のひとつである,その上の有理型函数の存在性および等角不変量を介してのリーマン面の分類問題を研究した.(2)誤り訂正符号理論のうちの代数幾何符号に関連して,射影空間内の点の配列に関して研究した.位数qの体上の射影空間内に点集合を与え,さらにその集合と超平面との交点の個数に条件を付してその集合が2つの部分空間の合併であることを示した.これは重み多項式に関連した問題でHomma-Kim-Yooの結果の拡張になっている.(3)全変曲点を多数もつ非特異平面曲線の特徴付けを試み,いくつかの条件下でそれがFermat曲線になることを示した.本研究では閉リーマン面論における中心的課題のひとつである,有理型函数の存在性を介しての閉リーマン面の分類問題に関する研究を行った.主な研究成果は以下の3点である.1.n次のFermat曲線によって表現される閉リーマン面は6n^2個の自己等角写像をもつが,そのうち位数2の自己等角写像の不動点はWeierstrass点になる.その重さについてTowseは下からの評価を与えたが,我々はnが14以下の場合についてはその評価が最良であることを示した.2.n次のFermat曲線の位数nの自己等角写像の不動点は3n個存在し,それらは全変曲点になる.逆にnが5以上ならば3n個の全変曲点をもつn次非特異平面曲線はFermat曲線に限ると予想されている.本研究では準備段階としていくつかの条件下でこの問題を解いた.すなわち:(1)n+1個の全変曲点が存在しそのうちのn個が一直線にあるようなn次非特異平面曲線はFermat曲線になることを証明した.(2)位数が5以上の自己等角写像をもつn次非特異平面曲線が3n個の全変曲点をもてば,それはFermat曲線になることを証明した.3.誤り訂正符号理論のうちの代数幾何符号に関連して,射影空間内の点の配列に関して研究した.位数qの体上の射影空間内に点集合を与え,さらにその集合と超平面との交点の個数に条件を付してその集合が2つの部分空間の合併であることを示した.これは重み多項式に関連した問題でHomma-Kim-Yooの結果の拡張になっている.閉リーマン面の研究における中心的課題のひとつである,その上の有理型函数の存在性および等角不変量を介してのリーマン面の分類問題を研究する.(2)全変曲点を多数もつ非特異平面曲線の特徴付けを試み,いくつかの条件下でそれがFermat曲線になることを示した. | KAKENHI-PROJECT-12640180 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12640180 |
睡眠時無呼吸症候群の治療法の開発 | 第一に気管音、鼻口気流および心電図をモニターすることにより、在宅でも睡眠中の無呼吸発作と心拍数の変化を検知できる簡易睡眠時無呼吸発作検知装置(アプノモニター)を開発した。気管音はエレクトレット小型マイクロフォンを頸部気管皮膚面に装着して検出し、鼻口気流はサーミスターによった。信号はマイクロコンピューターにより処理し、無呼吸発作および心拍数のトレンド表示を可能とした。情報はすべてディスクにファイルできた。本装置によりこれまで延べ約500例の症例について検討し、このうち睡眠時無呼吸症候群が142例で、無呼吸発作200(回/night)以上の症例が63例であった。本装置は操作が極めて容易でスクリーニング検査用として極めて有用であり国内外の学会発表で高い評価を受けた。第二に睡眠時無呼吸発作検知装置と頤舌筋刺激装置を合体したデマンド型頤舌筋刺激装置による睡眠時無呼吸症候群の治療法を開発した。頤舌筋刺激法に関する基礎的研究は麻酔犬で行ない、duration、0.2msecのパルス波の場合、1020voltの速さで、50Hz以上の刺激周波数で上気道抵抗は最小になることをつきとめた。本装置を実際、閉塞型睡眠時無呼吸症候群に試みた。本装置を使用した睡眠時にはコントロールの睡眠時に比し、無呼吸発作(特に閉塞型の無呼吸発作)が有意に減少し、動脈血酸素飽和度の低下も有意に改善し、睡眠ステージも深くなった。本装置が閉塞型睡眠時無素呼吸症候群の新しい治療法としてその有用性が確かめられたが、いずれも入院患者を対象とした短期使用経験についてであり、長期使用さらには在宅使用の効果については今後の研究課題となった。第一に気管音、鼻口気流および心電図をモニターすることにより、在宅でも睡眠中の無呼吸発作と心拍数の変化を検知できる簡易睡眠時無呼吸発作検知装置(アプノモニター)を開発した。気管音はエレクトレット小型マイクロフォンを頸部気管皮膚面に装着して検出し、鼻口気流はサーミスターによった。信号はマイクロコンピューターにより処理し、無呼吸発作および心拍数のトレンド表示を可能とした。情報はすべてディスクにファイルできた。本装置によりこれまで延べ約500例の症例について検討し、このうち睡眠時無呼吸症候群が142例で、無呼吸発作200(回/night)以上の症例が63例であった。本装置は操作が極めて容易でスクリーニング検査用として極めて有用であり国内外の学会発表で高い評価を受けた。第二に睡眠時無呼吸発作検知装置と頤舌筋刺激装置を合体したデマンド型頤舌筋刺激装置による睡眠時無呼吸症候群の治療法を開発した。頤舌筋刺激法に関する基礎的研究は麻酔犬で行ない、duration、0.2msecのパルス波の場合、1020voltの速さで、50Hz以上の刺激周波数で上気道抵抗は最小になることをつきとめた。本装置を実際、閉塞型睡眠時無呼吸症候群に試みた。本装置を使用した睡眠時にはコントロールの睡眠時に比し、無呼吸発作(特に閉塞型の無呼吸発作)が有意に減少し、動脈血酸素飽和度の低下も有意に改善し、睡眠ステージも深くなった。本装置が閉塞型睡眠時無素呼吸症候群の新しい治療法としてその有用性が確かめられたが、いずれも入院患者を対象とした短期使用経験についてであり、長期使用さらには在宅使用の効果については今後の研究課題となった。2年度の第一の目的である睡眠時無呼吸発作検知装置を使って睡眠時無呼吸症候群の疑われる症例を対象に在宅モニターを行ないスクリーニング検査としてのシステムを確立することであった。前年度に完成をみた在宅睡眠時呼吸モニター(アプノモニター)を利用し、これまで延べ約500例の症例について行なった。このうち睡眠時無呼吸症候群が142例で無呼吸数200以上の症例が63例、無呼吸数31200の症例が79例であった。本装置は操作が極めて容易でスクリーニング検査用として、極めて有用であり国内外の学会発表で高い評価を受けた。第二の目的である睡眠時無呼吸発作検知装置とオトガイ舌筋刺激装置を合体した単一機器のデマンド型オトガイ舌筋刺激装置の開発もほぼその完成を見た。閉塞型睡眠時無呼吸症候群に実際使用し検討した。本装置を使用した睡眠時には、コントロール睡眠時に比し無呼吸発作が有意に減少し、動脈血酸素飽和度の低下も改善し、睡眠ステージも深くなった。本法が閉塞型睡眠時無呼吸症候群の新しい治療法としてその有用性が確かめられたが、いずれも入院患者を対象とした短期使用経験についてであり、長期使用さらには在宅使用の効果については今後の研究課題となった。基礎研究としてのオトガイ舌筋刺激刺激に関する研究については、上気道表面に界面活性剤を塗布して、上気道を閉塞すると、上気道が開放する時のオトガイ舌筋の刺激閾値は低かった。今後、上気道の界面活性剤の塗布が閉塞型無呼吸症候群に対するオトガイ舌筋刺激法の補助的療法として応用可能かどうかについては今後の研究課題である。 | KAKENHI-PROJECT-62870033 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62870033 |
顎下腺再生過程における基礎的研究 | ラット顎下腺再生過程における細胞骨格の変化をに関わる因子が何であるかを検討し、細胞外基質からのシグナルを受ける役割を持つintegrinの同定やそれによる細胞の形に変化を与える細胞骨格が唾液腺再生に影響を与えていることを明らかにした。また、ラット生体外での唾液腺再生細胞の培養が可能になり、今後、その実験系を使用することによって色々なタンパク質の役割解析が可能となってくると思われる。2年目の実験計画は萎縮させた顎下腺の細胞懸濁液からスフェロイド培養を作製し種々の成長因子、chemical inhibitorを添加し腺房細胞の形成にどの様に関与しているかを検索することだった。顎下腺からの細胞懸濁液を種々の細胞数に調整し、96穴U底プレートに播種した。その結果、細胞の集合塊を形成した。HEおよびPAS染色で形態を観察したところU底に接している部位に被膜様に細胞が並んでおり、集合塊中央部にaquaporin5陽性の細胞が観察された。しかし、PI3K、Shh、BMP-4の添加実験を行ったところスフェロイド培養の辺縁部に変化は起きるものの、その部位がなぜそうなるのか未だ不明である。2年目を終了した現在、in vitroでのスフェロイド培養における形態学的位置付けが必要になっている。aquaporin5陽性細胞は存在しているが、その部位が腺房細胞に分化しているのかどうか?また、介在部導管、線条部導管、筋上皮細胞は何処に行ったのか?結紮解除0日目で存在しているduct-like structureがin vitroでそれらの細胞に分化増殖しているのかを確認する必要がある。従って、stem cellのマーカーであるSca-1,c-kit、介在部導管細胞のCK-18、筋上皮細胞のalpha-SMAなどを用いそれらの細胞のin vitroでの存在部位を詳細に検索する必要がある。この形態学的位置付けを終了した後、当初の計画にある添加実験を行う予定である。ラット顎下腺再生過程における細胞骨格の変化をに関わる因子が何であるかを検討し、細胞外基質からのシグナルを受ける役割を持つintegrinの同定やそれによる細胞の形に変化を与える細胞骨格が唾液腺再生に影響を与えていることを明らかにした。また、ラット生体外での唾液腺再生細胞の培養が可能になり、今後、その実験系を使用することによって色々なタンパク質の役割解析が可能となってくると思われる。以上のことより顎下腺再生過程におけるDLSがICDと類似した性質を有し,このDLSから腺房細胞への分化にalpha3-integrin,alpha6beta1-integrinおよびF-actinの局在の変化が関与していると考えられた。顎下腺再生過程におけるF-actinとalpha3-integrinのDLSでの局在はICDでの局在と類似していた。【最終年度に実施した研究の成果】唾液腺のstem cellのマーカーであるSca-1とc-kitを認識する抗体を用い再生過程にある唾液腺における局在を検討した。その結果、両者ともduct-like structureとintercalated ductに認められた。今回確立を目指した結紮された顎下腺から得られた細胞懸濁液からスフェロイド培養し、得られた培養3日目の集合塊をHEおよびPAS染色し、さらにalpha-SMA、CK-18にて免疫染色した。HE染色では96穴U底プレートに沿って一層細胞が並んでおり、その内側に上皮様の細胞塊が認められた。また、中央にはやや紡錘形をしたalpha-SMA陽性細胞が認められた。また、Sca-1とc-kitは集合塊周囲の一層の細胞に認められたが、CK-18に関しては陽性反応は認められなかった。in vitro添加実験では、PI3Kの抑制で細胞集合塊が増大した。【研究期間全体を通じた成果】本研究は、萎縮した唾液腺の再生過程をin vivoとin vitroに関して成長因子の局在および働きを解析することを目的とした。成果としては、in vivoでは計画したすべての成長因子に関してその局在を検索することが出来、学会発表や論文発表にいたる成果を得られた。しかし、in vitroでは萎縮させた顎下腺を細片し酵素処理した細胞懸濁液を用い、培養したところ3日目には細胞集合塊を形成するにいたったがした、形態的にcharacterizationを行うことは困難であった。しかし、in vitroでの成長因子の局在が検索でき、inhibitorの添加実験ではPI3Kの抑制で細胞集合塊がの大きさが増大したという結果が得られた。唾液腺の再生in vitroでの実験系の確立に時間を要している。in vivoでのそれぞれの細胞が、萎縮された顎下腺の細胞懸濁液からスフェロイド培養された際、何処にどのように各細胞が存在するのか精査する必要があるため当初の計画よりもやや遅れている。本研究の1年目は免疫染色を主体とした実験である。ラットの顎下腺萎縮再生モデル作製技術は既に習熟しており、上記に示したように実験ペースは順調に進展していると思います。in vitroでの分化・増殖の確認とin vivoでの腺房細胞、介在部導管等の各組織が何処に存在しているかを詳細に検索する。さらに、予定にある添加実験を行って、in vivoとのデータの比較検討を行う予定である。消耗品購入時に値引きがあり26,283円の繰越金が生じた。次年度使用額は115,296円であり、これは国内旅費の一部で、大学の行事のため予定していた学会に出席できなかったためである。 | KAKENHI-PROJECT-24593011 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24593011 |
顎下腺再生過程における基礎的研究 | 繰り越された金額は次年度の国内学会出席の旅費として使用する予定である。二年目は培養系の実験が多くを占めるため、培養関係の器材や抗体・inhibitor購入に消耗品費を充てる。得られたデータを英語論文として投稿するため翻訳・校閲料を計上した。 | KAKENHI-PROJECT-24593011 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24593011 |
ルミネッセンス法と電子スピン共鳴法を用いた年代測定による旧石器遺跡形成史の解明 | 旧石器遺跡形成過程を解明する上で重要な堆積物およびテフラの年代について、ルミネッセンス法を用いて行った。その成果の一部は、4に挙げるように発表および論文公表を行った。また、文献調査も行った。1旧石器遺跡に関連した堆積物やテフラを調査し、試料採取を行った(広島県向泉川平遺跡および原畑遺跡、群馬人見東向原遺跡など)。2本年度および前年度までに採取した試料を、OSL法による年代測定を行った(東京都下原・富士見町遺跡、北海道忠類ナウマン象化石産出地点、広島県庄原和南原試掘地点、中国河北省虎頭梁遺跡など)。また、従来の多試料法に代わって単試料法を用いて測定を行った。3TL法を用いて、旧石器遺跡の年代推定に必要な鍵層となるテフラの年代測定を行った(浅間山起源のAs-YP、As-BPs、三瓶山起源の緑ヶ丘火砕流堆積物、SI、SUnなど)。4以上の成果について、学会や研究会などで発表を行った。堆積物のOSL法と残存TL差し引き法の測定結果を比較した(日本文化財科学会、奈良教育大学紀要)MA法とSAR法によるOSL測定結果を比較した(日本文化財科学会)北海道忠類ナウマン象化石産出地点の堆積物のOSL測定結果について発表し、テフラ層序や花粉分析などの結果と比較検討を行った(総合地球環境学研究所にて)テフラのTL年代と既報年代の比較を行った(ESR応用計測研究会、ルミネッセンス年代測定研究会)旧石器遺跡形成過程を解明するために、遺跡堆積物および鍵層テフラの年代測定を行い、その一部について、4に挙げるような研究発表を行った。1旧石器遺跡に関連して、試料採取を行った。宮城県賀篭沢遺跡、中国河北省泥河湾地域の旧石器遺跡のほか、兵庫県の山崎断層、また三瓶山起源および姶良起源のテフラについて、遺跡形成を考える上で重要なテフラを採取した。2波長4分割測定装置を用いて石英や長石の線量依存性について検討を行い、油房遺跡のレス堆積物や、岩手県金取遺跡の遺跡形成過程を考える上で重要な北原火山灰などの蓄積線量評価を行った。3試料採取した試料の処理およびルミネッセンス測定を行った。ネパールのヤリ断層に関連した堆積物、油房遺跡、後溝遺跡、島根県原田遺跡、賀篭沢遺跡などの考古遺跡堆積物などや、遺蹟形成過程復原に必要な広域火山灰として北原火山灰、鳴子柳沢火砕流、鳴子荷坂火山灰および御岳伊那テフラ、御岳三岳テフラの熱ルミネッセンス測定を行った。4成果の公表(1)旧石器遺跡形成過程解明のための鍵層テフラのルミネッセンス年代測定の重要性について、岩手県金取遺跡や宮城県山田上ノ台遺跡などの適用例を基に発表した。(日本文化財科学会)(2)波長4分割測定装置で測定した石英および長石の線量依存性とテフラから抽出した石英および中国レス微粒子の蓄積線量を行った結果について発表した。(3)御嶽山の新期活動期の御岳伊那テフラ、御岳三岳テフラおよび御岳第一テフラの熱ルミネッセンス年代測定結果について発表した。(日本第四紀学会)(4)Al_2O_3:Cを用いた土壌中の微弱な放射線量評価について話題提供を行った。(ルミネッセンス年代測定学研究会)5新設された岡山理科大学オープンリサーチセンターにおいて、光ルミネッセンス年代測定を行っていくための実験環境を整備し、3に挙げたような試料の処理を行った。地考古学を念頭においた旧石器遺跡形成過程の復原を最終目的として、遺跡堆積物とともに、鍵層となる広域テフラの光ルミネッセンス(OSL)と熱ルミネッセンス(TL)年代測定を行った。なお、その一部は、3に挙げるような研究発表により公表した。1旧石器遺跡に関連した堆積物などの試料採取を行った。鹿児島県西多羅ヶ迫遺跡において、遺跡を形成する堆積物を、鹿児島湾周辺地域において、鍵層となるテフラを採取した。また、宮城県北部地域において、鳴子、鬼首、安達を起源とするテフラを、栃木・群馬県地域において、浅間山、榛名山、男体山などを起源とするテフラを採取した。さらに、前年度にサンプリングを行った島根県三瓶山周辺において、テフラ巡検を行い、得られたテフラの数値年代とその有効性について検討を行った。2試料採取した年代測定試料の試料処理およびルミネッセンス年代測定を行った。中国河北省油房遺趾、後溝遺趾、韓国萬水里遺蹟、島根県原田遺跡、東京都下原・富士見町遺跡、鹿児島県西多羅ヶ迫遺跡、北海道忠類ナウマン象化石産出地点などの遺跡堆積物や、安達愛島テフラ、三瓶山起源テフラ、池田湖テフラ、桜島薩摩テフラなどの広域テフラをOSLとTL法を用いて年代測定を行った。また、残存TLを考慮したTL年代測定や単試料再現法によるOSL年代測定といった方法を駆使して、得られた数値年代の比較検討を行った。3成果の公表蓄積線量評価の精度を向上させた波長別線量評価法を用いたTL年代測定の結果について発表した(日本文化財科学会)。三瓶給源テフラの年代測定の一部を公表し、旧石器遺跡における三瓶起源テフラの鍵層としての役割についてまとめた(日本文化財科学会)。そのほか、津波堆積物のOSL年代測定結果について、話題提供を行った(ルミネッセンス年代測定研究会)。 | KAKENHI-PROJECT-06J02078 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06J02078 |
ルミネッセンス法と電子スピン共鳴法を用いた年代測定による旧石器遺跡形成史の解明 | 4 OSL素子であるAl_2O_3:Cを測定するために、緑色光を励起光としたOSL測定を試み、青色光を励起光とした場合と同様の結果を得ることができた。旧石器遺跡形成過程を解明する上で重要な堆積物およびテフラの年代について、ルミネッセンス法を用いて行った。その成果の一部は、4に挙げるように発表および論文公表を行った。また、文献調査も行った。1旧石器遺跡に関連した堆積物やテフラを調査し、試料採取を行った(広島県向泉川平遺跡および原畑遺跡、群馬人見東向原遺跡など)。2本年度および前年度までに採取した試料を、OSL法による年代測定を行った(東京都下原・富士見町遺跡、北海道忠類ナウマン象化石産出地点、広島県庄原和南原試掘地点、中国河北省虎頭梁遺跡など)。また、従来の多試料法に代わって単試料法を用いて測定を行った。3TL法を用いて、旧石器遺跡の年代推定に必要な鍵層となるテフラの年代測定を行った(浅間山起源のAs-YP、As-BPs、三瓶山起源の緑ヶ丘火砕流堆積物、SI、SUnなど)。4以上の成果について、学会や研究会などで発表を行った。堆積物のOSL法と残存TL差し引き法の測定結果を比較した(日本文化財科学会、奈良教育大学紀要)MA法とSAR法によるOSL測定結果を比較した(日本文化財科学会)北海道忠類ナウマン象化石産出地点の堆積物のOSL測定結果について発表し、テフラ層序や花粉分析などの結果と比較検討を行った(総合地球環境学研究所にて)テフラのTL年代と既報年代の比較を行った(ESR応用計測研究会、ルミネッセンス年代測定研究会) | KAKENHI-PROJECT-06J02078 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06J02078 |
K_L→π^0vv^^-探索研究のためのクラスター認識トリガーの開発 | 本研究の目的は、K_L→π^0vv^^-探索実験(KEK-E391a)におけるトリガー方式の確立である。中性K中間子(K_L)は主に6個の光子に崩壊するが、K_L→π^0vv^^-崩壊は終状態が2個の光子なので、必要なデータを効率良く収集するためには、検出器に入射した光子数を数えることのできるトリガーが必要である。初年度に於いてトリガー方式を考案した結果、K_L→π^0vv^^-及びK_L→2γは約80%、K_L→2π^0は約30%、K_L→3π^0は約90%の認識率が得られ、我々の要求を満たすことがわかった。次年度では、計画しているKEK中性ビームラインの建設と、その性能を調べるビームサーベイ実験を行った。中性ビームラインはバックグラウンドのコントロールが非常に難しいが、我々の実験の成否を決める極めて重要な部分である。熱中性子fluxに関する測定の結果、ビームのハロー部分では当初の予測とよく一致していることを示した。その他の測定に関しても、シミュレーションとの比較が進められ、全体として良い一致を見たが、ハロー部分の荷電粒子が当初の予想よりも1桁近く多く存在していることが明らかとなった。更にK中間子のfluxを測定するために新たに鉛ガラス検出器を導入して測定を行った。以上の実験と並行して、KEK-E391a実験で使われるメインの検出器であるCsIのビームテストを、KEK-π2ビームラインで行った。その結果エネルギー分解能が1GeV/cで約2%程度であることがわかった。CsIは本実験では真空中において使用されるが、真空中でのテストを1、2本のテストより始め、25本が入るやや大型の真空チェンバーを設計製作し、その導入及び立ち上げを行った。本研究の目的は、K_L→π^0vv^^-探索実験(KEK-E391a)におけるトリガー方式の確立である。中性K中間子(K_L)は主に6個の光子に崩壊するが、K_L→π^0vv^^-崩壊は終状態が2個の光子なので、必要なデータを効率良く収集するためには、検出器に入射した光子数を数えることのできるトリガーが必要である。初年度に於いてトリガー方式を考案した結果、K_L→π^0vv^^-及びK_L→2γは約80%、K_L→2π^0は約30%、K_L→3π^0は約90%の認識率が得られ、我々の要求を満たすことがわかった。次年度では、計画しているKEK中性ビームラインの建設と、その性能を調べるビームサーベイ実験を行った。中性ビームラインはバックグラウンドのコントロールが非常に難しいが、我々の実験の成否を決める極めて重要な部分である。熱中性子fluxに関する測定の結果、ビームのハロー部分では当初の予測とよく一致していることを示した。その他の測定に関しても、シミュレーションとの比較が進められ、全体として良い一致を見たが、ハロー部分の荷電粒子が当初の予想よりも1桁近く多く存在していることが明らかとなった。更にK中間子のfluxを測定するために新たに鉛ガラス検出器を導入して測定を行った。以上の実験と並行して、KEK-E391a実験で使われるメインの検出器であるCsIのビームテストを、KEK-π2ビームラインで行った。その結果エネルギー分解能が1GeV/cで約2%程度であることがわかった。CsIは本実験では真空中において使用されるが、真空中でのテストを1、2本のテストより始め、25本が入るやや大型の真空チェンバーを設計製作し、その導入及び立ち上げを行った。本研究の目的は、K^0_L→π^0νν^^-実験(KEK-E391a)におけるtrigger方式の確立及びtrigger moduleの開発である。中性K中間子(K^0_L)は主に6個の光子に崩壊するが、K^0_L→π^0νν^^-崩壊は終状態が2個の光子なので、必要なデータを効率良く収集するためには、検出器に入射した光子数を数えることのできるtriggerが必要である。Trigger方式としては、550本のCsI calorimeterを31 blockに分割して、signalのあるblockを数えて光子数とするcounting方式(Block Sum方式)を検討対象とした。この方式は既存のmoduleが利用できるため開発が容易であるなどの利点があるが、光子の認識率が低い可能性があるので、シミュレーションで調べる必要がある。そこで本研究では、検出器の詳細なgeometryを考慮したシミュレーションを行い、Block sum方式を使った時の光子の認識率を求めた。その結果、K^0_L→π^0νν^^-及びK^0_L→2γは約80%、K^0_L→2π^0は約30%、K^0_L→3π^0は約90%の認識率が得られ、我々の要求を満たすことがわかった。現在、実際のcounting moduleの開発に着手している。また以上の研究と並行して、CsI calorimeterで使われる光電子増倍管(PMT)の真空特性を調べる実験を行った。KEK-E391A実験では、PMTは10^0Pa程度の真空中で使用するが、PMTの放電特性、及び真空断熱の影響を調べる系統的研究は行われていなかった。 | KAKENHI-PROJECT-11640285 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11640285 |
K_L→π^0vv^^-探索研究のためのクラスター認識トリガーの開発 | そこで我々は専用の真空chamberを制作し、PMTの真空特性を調べる実験を行った。その結果、放電を避けるためにPMTの設置領域は10^0Paより低い真空度が必要であることがわかった。また、真空断熱の影響はPMTを冷却することでCsIの温度上昇は3°C程度に抑えられることわかった。現在は、より効率の良い冷却システムの開発に取り組んでいる。本研究の目的は、K_L->π^0υυ′実験(E39la)におけるtrigger方式の確立であったが、当初よりの計画は、既存の機器にて構成が可能であることがわかった。そこで、研究を更に進め、K中間子ビームラインの建設、その、品質の検証実験を行った。非常に小さな分岐比(10^<-11>)を測定する実験であるため、バックグラウンドを注意深く取り除く必要がある。様々な粒子識別機能を持つカウンタを複数考案し、慎重なビームサーベイを行った結果、バックグラウンドのレベルがシミュレーションで得られていた値を良く再現することがわかり、実験実現に向けて有望な結果を得た。また、積極的にK_Lをとらえる試みも行った。鉛ガラスカウンタを対にして置き前にシンチレータ、後ろに鉛ブロックを設置した後シンチレータと、いった構成の検出器を考案し、K_Lの絶対流束測定を試みた。バックグラウンドとの関連もあり、現在詳細を解析中であるが、大体のビームの特性がわかりつつある。さらに、我々が責任を持つエンドキャップ部のCsIカロリメタについて電子およびパイオンのビームを当てて、そのエネルギー分解能、位置分解能棟の特性を調べた。これは、我々の目的とする過程の終状態が2光子のみであり、エネルギーと位置を正確に知ることが実験の成否の鍵を握ることから重要である。結果として、シミュレーションの予測と大体は一致したが、一部、ずれが見られ、今後の課題となった。 | KAKENHI-PROJECT-11640285 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11640285 |
熱ショック蛋白質HSP90のSV40ラージT抗原との複合体形成の解析 | SV40のLargeT抗原(LT)は、ダブルヘキサマーの多機能酵素である。またLTはHSP70と複合体を形成することから、その高次構造形成にはシャペロン蛋白質の関与が考えられる。そこで、HSP90が細胞内でLTと複合体を形成してLTの局在・高次構造形成・活性等を制御する可能性を考え、以下の実験結果を得た。LTとHSP90とのSDS-PAGE上の分子量はほぼ同一であった。そこで、SV40でトランスフォームした細胞株とそれぞれの親細胞株の粗抽出液から、LTとHSP90を免疫沈降し、免疫複合体に含まれる蛋白質をWestern blottingによって解析した。その結果、COSなどのLT発現細胞でHSP90を免疫沈降するとLTが、またLTを免疫沈降するとHSP90が、共沈降されることがわかった。この共沈降は、LTを発現していないCV1、HeLa細胞では観察されなかった。p53とHSP90とも共沈降は観察されず、また予めP53をimmuno-depleteした細胞粗抽出液でもHSP90とLTとの共免疫沈降が観察された。このことから、HSP90とLTの複合体形成にはp53は無関係であると結論された。HSP90はHSP70やカゼインキナーゼII(CKII)とも複合体を形成している。一方LTもp53もHSP70と複合体を形成し、またLTはCKIIの基質でありp53とCKIIは共免疫沈降することが知られている。おそらく細胞内でこれらの多数の蛋白質が様々な組み合わせで複合体を形成していると考えられる。HSP90のシャペロン様機能を調べるため、HSP90とLTとを精製し、in vitroの再構成の実験を試みた。LTは、温度・ATP依存的にmonomerから6-merを形成した。比較的低温ではHSP90の存在下でATP依存性のLTの6-mer形成が促進された。これらの結果は、細胞内でLTは合成後一過的にHSP90と相互作用して活性型の6-mer形成をしている可能性を示唆している。LTのDNA結合能に対してはHSP90を単にin vitroで加えただけでは影響が見られなかった。SV40のLargeT抗原(LT)は、ダブルヘキサマーの多機能酵素である。またLTはHSP70と複合体を形成することから、その高次構造形成にはシャペロン蛋白質の関与が考えられる。そこで、HSP90が細胞内でLTと複合体を形成してLTの局在・高次構造形成・活性等を制御する可能性を考え、以下の実験結果を得た。LTとHSP90とのSDS-PAGE上の分子量はほぼ同一であった。そこで、SV40でトランスフォームした細胞株とそれぞれの親細胞株の粗抽出液から、LTとHSP90を免疫沈降し、免疫複合体に含まれる蛋白質をWestern blottingによって解析した。その結果、COSなどのLT発現細胞でHSP90を免疫沈降するとLTが、またLTを免疫沈降するとHSP90が、共沈降されることがわかった。この共沈降は、LTを発現していないCV1、HeLa細胞では観察されなかった。p53とHSP90とも共沈降は観察されず、また予めP53をimmuno-depleteした細胞粗抽出液でもHSP90とLTとの共免疫沈降が観察された。このことから、HSP90とLTの複合体形成にはp53は無関係であると結論された。HSP90はHSP70やカゼインキナーゼII(CKII)とも複合体を形成している。一方LTもp53もHSP70と複合体を形成し、またLTはCKIIの基質でありp53とCKIIは共免疫沈降することが知られている。おそらく細胞内でこれらの多数の蛋白質が様々な組み合わせで複合体を形成していると考えられる。HSP90のシャペロン様機能を調べるため、HSP90とLTとを精製し、in vitroの再構成の実験を試みた。LTは、温度・ATP依存的にmonomerから6-merを形成した。比較的低温ではHSP90の存在下でATP依存性のLTの6-mer形成が促進された。これらの結果は、細胞内でLTは合成後一過的にHSP90と相互作用して活性型の6-mer形成をしている可能性を示唆している。LTのDNA結合能に対してはHSP90を単にin vitroで加えただけでは影響が見られなかった。 | KAKENHI-PROJECT-05858105 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05858105 |
NICUにおける看護職のための母乳育児支援ラダー試案の作成 | NICU(新生児集中治療室)に入院する子どもにとって母乳で育てられることは重要であり,NICUにおける母乳育児支援は社会的にも求められている.それゆえNICUで働く看護職が母乳育児を支援する意義は大きいが,母乳育児支援の実践能力を評価するツールはないのが現状である.本研究の目的は,NICUにおける母乳育児支援に特化した能力(知識・技術・態度)を明確化・共通化し,NICUの看護職の母乳育児支援ラダーを開発するための基礎資料とすることである.NICU(新生児集中治療室)に入院する子どもにとって母乳で育てられることは重要であり,NICUにおける母乳育児支援は社会的にも求められている.それゆえNICUで働く看護職が母乳育児を支援する意義は大きいが,母乳育児支援の実践能力を評価するツールはないのが現状である.本研究の目的は,NICUにおける母乳育児支援に特化した能力(知識・技術・態度)を明確化・共通化し,NICUの看護職の母乳育児支援ラダーを開発するための基礎資料とすることである. | KAKENHI-PROJECT-19K24237 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K24237 |
日本における「知覚された組織的支援」研究の展開 | 本研究は日本における「知覚された組織的支援(Perceived Organizational Support:POS)」研究の進展を目指して取り組まれたものである。まず、文献研究を通してPOSに関する先行研究の整理を行った。次に、定性的調査と定量的調査の実施を通じて米国で開発されたPOSの測定尺度の日本での適応可能性と有用性の確認を行った。最後に、定量的調査を通じて時系列データの収集を行い、POSの従業員態度や行動への影響についての検証を試みた。分析結果から、POSが高まると部署メンバーへの知識提供と部署メンバーに対する信頼の促進および離職意思の低下に貢献することが示された。本研究の最終的な目的は、知覚された組織的支援(POS)とその後の職務満足や組織への愛着などの職務態度との関係を解明することである。POSとは「従業員の貢献を組織がどの程度評価しているのか、従業員のwell-beingに対して組織がどの程度配慮しているのかに関して、従業員が抱く全般的な信念」のことである。つまり、POSとは組織による従業員の扱いや取り組みに対する彼ら・彼女らの評価を表した概念である。3年計画の初年度となる平成26年度の主な目的は、POSに関わる先行研究と心理尺度の開発に関する文献レビューをするとともに、インタビュー調査を通じて日本で働く人々がどのような時に組織(会社)からの気遣いや配慮を感じるかに関する知見を蓄積することであった。平成26年度は、主として以下の3つの活動を行った。第1に、POSに関わる先行研究の文献レビューを行い、投稿中であった展望論文を完成させた。その結果、POS研究を日本で展開する際に取り組むべき研究課題が明らかになった。第2に、民間企業で働く人々を対象としたインタビュー調査を実施した。インタビュー調査を通じて、先行研究で提示された質問項目の一部が日本の労働者を対象とした研究においても利用可能であることが確認された。同時に、今後日本で研究を展開する際には新たに追加したほうがよいであろう項目が明らかになった。第3に、本研究の申請に先行して行われたインターネット調査会社を利用した定量的調査の分析を行い、POSとソーシャル・キャピタルとの関係を経験的に確認した。ここでのソーシャル・キャピタルとは「他者から自発的な支援が得られる関係性」のことである。その結果、POSがソーシャル・キャピタルの原因となる傾向が強いという仮説を支持する結果が確認された。3年計画の2年目となる平成27年度は、昨年度の進捗状況ならびに研究成果を勘案して一部計画を変更し、日本の民間企業に雇用されている正社員を対象としたインタビュー調査の実施を中心に行った。並行して、POS関連の先行研究ならびに調査方法や定量調査に関連する文献のレビューを行った。インタビュー調査の主な目的は、日本で働く人々を対象にPOSの形成や向上にかかわる要因を明らかにするとともに、POSを測定するための尺度開発に関する知見を蓄積することにあった。そのために、インタビューでは1どのような時に「この会社は、私の組織に対する貢献を高く評価してくれている」と感じるか、2どのような時に「この会社は、私の精神的・肉体的な健康を気にかけてくれている」と感じるか、3どのような時に「この会社は、一人の人間としての私の幸せをちゃんと考えてくれている」と感じるか、といった質問を中心に実施した。なお、今年度は個人的なネットワークだけではインタビュイーの確保が困難だったためインターネットリサーチ会社を利用した。インタビュー調査を通じて、組織によるどのような扱い(treatment)が日本で働く人々のPOSの形成や向上と関連しているかが明らかになった。同時に、日本で働く人々のPOSを測定するための尺度に関して先行研究の項目のうち使用可能な項目と、新たに追加する必要がある項目についての知見が蓄積された。本年度の実績としては、まず、研究成果を国内での学会にて発表した。また、文献レビューの成果の一つとして海外ジャーナルに近年掲載されたPOSに関する論文の紹介記事が国内の学術雑誌に掲載された。2年目の平成27年度は、初年度の進捗状況をもとに一部計画を変更し1文献レビューの継続、2インタビュー調査の継続、3定量調査の実施、4研究成果の発信、を行う予定であった。計画通り1文献レビューの継続と2インタビュー調査の継続は、おおむね順調に進んだ。一方、3定量調査の実施ならびに4研究成果の発信が遅れており、特に研究成果の整理と外部発信が遅れているため「遅れている」との評価に至った。当初の予定では、3年計画の最終年であった平成28年度は、インタビュー調査の整理に基づき定量調査を実施するとともにこれまでの研究成果を外部に発信することが主な目的であった。しかし、学内業務が想定以上に増加したため、研究の進捗が大幅に遅れ、補助事業期間延長の申請を行った。平成28年度の主な実績は、過去に実施した定量調査で得たデータ(302名)と平成27年度に行ったインタビュー調査のデータ(28名)を用いて、POSの既存尺度の短縮版の作成に取り組んだことである。POSの既存尺度は36項目から構成されており、定量調査を実施する際には回答者に多くの負担を強いることになる。また、既存尺度は米国の労働者を対象に開発された測定尺度であり、必ずしも日本の労働慣行や文化を反映したものではない。そこで、最終的な目的であるPOSと職務態度の関係性を検証するために、日本の労働慣行や文化を反映した測定尺度の作成を試みる必要があった。 | KAKENHI-PROJECT-26780213 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26780213 |
日本における「知覚された組織的支援」研究の展開 | 定量調査ならびに定性調査のデータをもとに分析を行った結果、既存尺度の4項目を用いて、信頼性と妥当性の高い短縮版POS尺度を開発することが可能であることが明らかになった。この研究成果は経営行動科学学会で発表し、さらにワーキングペーパーとしてまとめ現在投稿論文として準備中である。学内業務が想定していたものよりも増加したため研究の進捗が大幅に遅れた。特にインタビュー調査の結果の整理のが遅れたため、インタビュー調査に基づく定量調査が実施できなかったことが遅れているという評価の最大の理由である。最終年度である平成29年度の主な実績は、定量的調査の実施と分析および研究成果の外部発信に取り組んだことである。本研究の最終的な目的である知覚された組織的支援(Perceived Organizational Support:POS)と職務態度との関係を検証するために今回の定量的調査では、日本企業に勤務する非管理職の正社員を対象に3時点の縦断的データの収集を行った。まず、2時点データを用いてPOSと職務態度との因果関係の検証を行った。分析の結果、POSは知識提供ならびに部署への信頼と有意な正の相関が示された。つまり、POSは部署メンバーへの知識提供を促進するだけでなく部署メンバーに対する信頼の醸成にも寄与することが明らかになった。同時に、POSは離職意思と有意な負の相関が示され、POSが離職意思の低下にも寄与することが明らかになった。続いて、3時点データの利点を生かしてインクルージョン風土と結果変数(知識提供、部署メンバーへの信頼、離職意思)との関係におけるPOSの媒介効果の検証を試みた。分析の結果は、POSの媒介効果に関しては部分媒介となり、仮説を完全に支持するものではなかった。これらの結果は、インクルージョン風土と結果変数(知識提供、部署メンバーへの信頼、離職意思)との関係においてPOSとは異なる媒介変数が存在する可能性を示唆するものである。今後の課題として、POSとは異なる媒介変数を追加したより複雑なモデルの検証を行う必要がある。また、最終年度である今年度は研究成果の外部発信にも積極的に取り組んだ。昨年度と同じように研究成果を国内学会で発表するとともにワーキングペーパーとしてまとめ、最終的には学会誌への投稿を行った。今後も追加的な分析と研究成果の外部発信に積極的に取り組むことになる。本研究は日本における「知覚された組織的支援(Perceived Organizational Support:POS)」研究の進展を目指して取り組まれたものである。まず、文献研究を通してPOSに関する先行研究の整理を行った。次に、定性的調査と定量的調査の実施を通じて米国で開発されたPOSの測定尺度の日本での適応可能性と有用性の確認を行った。最後に、定量的調査を通じて時系列データの収集を行い、POSの従業員態度や行動への影響についての検証を試みた。分析結果から、POSが高まると部署メンバーへの知識提供と部署メンバーに対する信頼の促進および離職意思の低下に貢献することが示された。文献レビューは堅調に実施できた。当初計画していたPOS研究と心理尺度の開発に関する文献に加えて定量的な方法論に関してもレビューすることができた。 | KAKENHI-PROJECT-26780213 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26780213 |
Webを利用した上級日本語学習者支援学材の開発-講義の理解とノート・テーキング- | 研究計画に基づき、以下の作業を行った。1教材作成のための素材として、実際に行われた人文系教養科目、社会科学系の講義を計3編録画した。2録画した映像データを内容に基づき35分程度のユニットに分割し、インターネットで配信可能なムービーファイルへの変換作業を行った。ストリーミング用の動画ファイル形式を比較検討した結果、Windows Media Videoを採用することとした。3講義内容の音声の文字化作業を行った。4談話理解のために必要な言語表現、専門用語、一般的な語彙などに分類しながら、内容理解に必要な語彙リストを作成する。以上の作業を経て、http〃www.kisc.meiji.ac.jp/japedu/に「留学生のためのアカデミック・ジャパニース」を開設し、その中に上級日本語学習者(大学生)を対象とする「インターネット・ビデオ授業」のWebサイトを設置した。この日本語学習サイトではビデオクリップと共に語彙・表現リスト、スクリプト、授業資料の閲覧とダウンロードが可能となっており、CGIを使った内容確認テストが行えるように設計してある。また、ノート・テーキングの基礎練習を行うためのワークシートも掲載した。現在、講義スクリプトを基にから、談話の流れを決定付ける言語要素(接続詞、その他の接続表現、指示詞、等)を抽出、談話からみた言語機能の分析を学習項目に反映させると共に、上級日本語学習者の試用を通して、学習者が困難と感じるポイントを確認し、学習システムの有効性を検証しながら改訂・拡充作業を進めた。研究計画に基づき、以下の作業を行った。1教材作成のための素材として、実際に行われた人文系教養科目、社会科学系の講義を計3編録画した。2録画した映像データを内容に基づき35分程度のユニットに分割し、インターネットで配信可能なムービーファイルへの変換作業を行った。ストリーミング用の動画ファイル形式を比較検討した結果、Windows Media Videoを採用することとした。3講義内容の音声の文字化作業を行った。4談話理解のために必要な言語表現、専門用語、一般的な語彙などに分類しながら、内容理解に必要な語彙リストを作成する。以上の作業を経て、http〃www.kisc.meiji.ac.jp/japedu/に「留学生のためのアカデミック・ジャパニース」を開設し、その中に上級日本語学習者(大学生)を対象とする「インターネット・ビデオ授業」のWebサイトを設置した。この日本語学習サイトではビデオクリップと共に語彙・表現リスト、スクリプト、授業資料の閲覧とダウンロードが可能となっており、CGIを使った内容確認テストが行えるように設計してある。また、ノート・テーキングの基礎練習を行うためのワークシートも掲載した。現在、講義スクリプトを基にから、談話の流れを決定付ける言語要素(接続詞、その他の接続表現、指示詞、等)を抽出、談話からみた言語機能の分析を学習項目に反映させると共に、上級日本語学習者の試用を通して、学習者が困難と感じるポイントを確認し、学習システムの有効性を検証しながら改訂・拡充作業を進めた。研究計画に基づき、平成15年度は、以下の作業を行った。1教材作成のための素材として、実際に行われた人文系教養科目、社会科学系の講義を計3編録画した。2録画した映像データを内容に基づき35分程度のユニットに分割し、インターネットで配信可能なムービーファイルへの変換作業を行った。ストリーミング用の動画ファイル形式を比較検討した結果、Windows Media Videoを採用することとした。3講義内容の音声の文字化作業を行った。4談話理解のために必要な言語表現、専門用語、一般的な語彙などに分類しながら、内容理解に必要な語彙リストを作成する。以上の作業を経て、http://www.kisc.meiji.ac.jp/japedu/に「留学生のためのアカデミック・ジャパニーズ」を開設し、その中に上級日本語学習者(大学生)を対象とする「インターネット・ビデオ授業」のWebサイトを設置した。この日本語学習サイトではビデオクリップと共に語彙・表現リスト、スクリプト、授業資料の閲覧とダウンロードが可能となっており、CGIを使った内容確認テストが行えるように設計してある。今後は、講義スクリプトを基にから、談話の流れを決定付ける言語要素(接続詞、その他の接続表現、指示詞、等)を抽出、談話からみた言語機能の分析を学習項目に反映させると共に、上級日本語学習者の試用を通して、学習者が困難と感じるポイントを確認し、学習システムの有効性を検証しながら改訂・拡充作業を進める予定である。なお、この学習サイトについては、2004年8月開催のコンピュータ利用教育協議会(CIEC)主催のPCカンファレンスで口頭発表することが決定している。近年、コンピュータを利用した言語教育(CALL)が注目を浴びている。特に、インターネットの普及に伴い、ウェブを利用した日本語学習システムに関する研究・教材開発も活発に行われるようになってきている。しかしながら、これまで開発が進められてきたシステムは、漢字学習・文法学習・読解などが中心になっていることが多く、しかも大学に在学している上級日本語学習者のニーズに合ったものは必ずしも多いとは言えない。一方、大学に在学する留学生からは、「日常会話には困らないのに、大学の講義が理解できない」、「講義に耳を傾けているとノートが取れない」といった声が絶えない。専門用語に関する知識の欠如ばかりでなく、日本語による講義・講演で多用される表現、接続表現等による談話の展開などに不慣れなこと、テレビの教養番組等と違って、実際の講義では、言い間違いや言い淀みなども多く含まれることなどが学習上の障害となっていると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-15520341 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15520341 |
Webを利用した上級日本語学習者支援学材の開発-講義の理解とノート・テーキング- | このような実状を踏まえ、本研究では、日本語能力試験1級レベルの上級日本語学習者が日本語による講義・講演を聴く際に必要となる日本語力(アカデミック・ジャパニーズ)を高めるためのWeb教材を開発している。この教材の特色は、以下のようにまとめられる。(1)実際に行われた大学での授業・講演の映像と音声を素の生資料を用いる。(2)専門分野への橋渡しとなるよう、学経済学・経営学など社会科学分野の基礎科目を素材とした。(3)CGIを用いたテストやワークシートを用意し、インターネットを通じて提出できるようにした。これにより、遠隔教育用の教材としても活用できる。(4)大学の授業・講演の内容を把握するために必要な言語要素・言語表現のリストを付した。開発したWeb教材については、学内LAN内で限定的な公開をし、改訂作業を行っている。また、2004年8月に開催されたコンピュータ利用教育協議会年次大会(2004PCコンファランス)において教材開発の内容についての報告を行った。研究計画に基づき、以下の作業を行った。1教材作成のための素材として、実際に行われた人文系教養科目、社会科学系の講義を計3編録画した。2録画した映像データを内容に基づき35分程度のユニットに分割し、インターネットで配信可能なムービーファイルへの変換作業を行った。ストリーミング用の動画ファイル形式を比較検討した結果、Windows Media Videoを採用することとした。3講義内容の音声の文字化作業を行った。4談話理解のために必要な言語表現、専門用語、一般的な語彙などに分類しながら、内容理解に必要な語彙リストを作成する。以上の作業を経て、http://www.kisc.meiji.ac.jp/japedu/に「留学生のためのアカデミック・ジャパニーズ」を開設し、その中に上級日本語学習者(大学生)を対象とする「インターネット・ビデオ授業」のWebサイトを設置した。この日本語学習サイトではビデオクリップと共に語彙・表現リスト、スクリプト、授業資料の閲覧とダウンロードが可能となっており、CGIを使った内容確認テストが行えるように設計してある。また、ノート・テーキングの基礎練習を行うためのワークシートも掲載した。現在、講義スクリプトを基にから、談話の流れを決定付ける言語要素(接続詞、その他の接続表現、指示詞、等)を抽出、談話からみた言語機能の分析を学習項目に反映させると共に、上級日本語学習者の試用を通して、学習者が困難と感じるポイントを確認し、学習システムの有効性を検証しながら改訂・拡充作業を進めている。この学習サイトについては、コンピュータ利用教育協議会(CIEC)主催のPCカンファレンスで口頭発表する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-15520341 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15520341 |
HDL新生メカニズムの解明:肝細胞からのpreβHDL産生機構の検討 | HepG2細胞にプロブコール含有LDLを投与し、アポAIによる特異的な細胞脂質の搬出機構を阻害してHepG2細胞からのリポタンパク質新生反応における本経路の寄与を検討した。培養上清をTSKゲルLIPOPROPAK-XLで分離し、それをオンラインで脂質定量を行なった。コントロールLDLを投与したHepG2細胞からはLDL粒子サイズに相当するコレステロール/リン脂質のピークがと大型のHDLに相当するコレステロール/リン脂質のピークが観察された。一方プロブコール含有LDLを投与したHepG2細胞の培養上清を分析すると、LDL粒子の産生量は変化しないがHDL産生が顕著に減少していた。このことからHepG2細胞が産生するHDL粒子はプロブコールによって阻害される機構によってその大部分が産生されることが示唆される。プロブコールを投与したマクロファージ細胞ではアポAIによる細胞コレステロールの搬出のみが特異的に阻害されることは既に報告している。この結果よりプロブコールがアポAIによる細胞コレステロールの特異的な搬出機構の阻害剤であると考えられるので、ここでも同様な阻害効果が期待され、それによりHepG2細胞でのHDLの新生反応はそのほとんどがアポAIによる細胞コレステロールの搬出経路によることが示唆された。タンジール病患者の細胞はアポAIによる細胞コレステロール搬出を消失している。この原因となるタンパク質は細胞表面のABCA1タンパク質である。プロブコールがこのABCA1タンパク質に与える影響を調べる目的で細胞全体のABCA1タンパク質をウエスタンブロッティング法で測定した。その結果ABCA1タンパク質量はHDL新生の阻害されているプロブコール投与HepG2細胞でもコントロールと差が無く、プロブコールがABCA1量へは影響を与えない事が明らかになった。1】マウス肝初代培養細胞を用いたアポAIによる特異的脂質搬出機構の検討マウス初代培養細胞はDennis Vanceの研究室(カナダ・アルバータ大学)で用いられているコラーゲナーゼ法で採取した。コレステロール低下薬であるプロブコール含有チャウで一週間飼育したマウス並びにコントロールマウスの肝初代培養細胞を16時間培養し、分泌されてくるリポ蛋白質をゲル濾過HPLCで分析した。その結果培養上清中には大型HDLの位置にコレステロールのピークが観察され、プロブコール投与マウスではこれが大きく低下していた。この培養時にヒトアポAIを共存させると、コントロールマウスの細胞培養上清中のHDLは上昇した。一方、プロブコール投与マウスの細胞では外因性のアポAIの効果は観察されなかった。2】HepG2細胞を用いたアポAIによる特異的な細胞脂質の搬出機構の検討HepG2細胞をコントロールLDLまたはプロブコール含有LDLと24時間培養後、培養上清に分泌されるリポ蛋白質を観察した。培養上清中のHDLはマウス初代培養細胞と同じくアポAI存在下で容量依存的に上昇し、プロブコール投与細胞ではその90%が消失していた。また外因性のアポAIの効果は観察されなかった。プロブコール投与によりHepG2細胞のHDLが著明に低下した理由を検討する為、培養上清中のアポAIの分泌と、細胞膜画分のABC-A1量をウェスタンブロッティング法にて観察した。HDL産生が大きく低下しているプロブコール導入細胞でも両蛋白質はコントロールと同様に観察された。またRT-PCR法によりアポAI、アポE、ABC-AIの発現を調べたが、これも差が見られなかった。これらの結果より、プロブコールはHDL新生に関わる因子(群)を不活性化させることが推測された。HepG2細胞にプロブコール含有LDLを投与し、アポAIによる特異的な細胞脂質の搬出機構を阻害してHepG2細胞からのリポタンパク質新生反応における本経路の寄与を検討した。培養上清をTSKゲルLIPOPROPAK-XLで分離し、それをオンラインで脂質定量を行なった。コントロールLDLを投与したHepG2細胞からはLDL粒子サイズに相当するコレステロール/リン脂質のピークがと大型のHDLに相当するコレステロール/リン脂質のピークが観察された。一方プロブコール含有LDLを投与したHepG2細胞の培養上清を分析すると、LDL粒子の産生量は変化しないがHDL産生が顕著に減少していた。このことからHepG2細胞が産生するHDL粒子はプロブコールによって阻害される機構によってその大部分が産生されることが示唆される。プロブコールを投与したマクロファージ細胞ではアポAIによる細胞コレステロールの搬出のみが特異的に阻害されることは既に報告している。この結果よりプロブコールがアポAIによる細胞コレステロールの特異的な搬出機構の阻害剤であると考えられるので、ここでも同様な阻害効果が期待され、それによりHepG2細胞でのHDLの新生反応はそのほとんどがアポAIによる細胞コレステロールの搬出経路によることが示唆された。タンジール病患者の細胞はアポAIによる細胞コレステロール搬出を消失している。この原因となるタンパク質は細胞表面のABCA1タンパク質である。プロブコールがこのABCA1タンパク質に与える影響を調べる目的で細胞全体のABCA1タンパク質をウエスタンブロッティング法で測定した。その結果ABCA1タンパク質量はHDL新生の阻害されているプロブコール投与HepG2細胞でもコントロールと差が無く、プロブコールがABCA1量へは影響を与えない事が明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-13770651 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13770651 |
電力需給制御マネージャの構築に関する研究 | 本研究では,研究代表者が開発してきた電力需給制御マネージャを用いて柔軟な形態の分散型電力システムの供給信頼度と最適性を追求することで太陽光発電大量導入環境における電力系統の諸課題を解決する。本マネージャは,既存システムの分散化やシステム再構築あるいは未電化地域のシステム構築を行う際に柔軟に対応できるマネージャであり,部分システム毎に独立させて制御することもできる。初年度ではまず,不確定性に対して「ロバスト」な電力需給制御マネージャの開発を行った。さらに,需要側を制御対象とする考え方は,すなわち,需要家側に導入される太陽光発電の出力抑制およびデマンドレスポンスとして注目されている負荷抑制について,従来の電力需給運用においては考えられていなかったことから,重点項目として実施する。初年度では次の項目について需給マネージャの機能拡充を図った。(a)マネージャの高機能化:将来系統において系統運用計画を策定する場合に,再生可能エネルギー電源による不確定性の影響を勘案した運用計画を策定した。具体的には次の7つの主要コントローラを作成した。(a-1)前日予測部(前日需要予測,前日再エネ発電量予測),(a-2)需給計画部(発電機起動停止計画,蓄電池運用方策),(a-3)実時間予測部,(a-4)需給運用部(発電機実行可能領域計算,負荷配分制御),(a-5)平常時制御部(負荷周波数制御),(a-6)緊急時制御部(電源制限,負荷遮断),(a-7)実出力配分計算部,(b)ロバスト信頼度維持方式の開発:ロバスト信頼度の概念を用いて,不確定性の影響を勘案した運用計画手法を(b-1)ロバスト信頼性条件のモデル化,(b-2)モデル化条件を考慮した最適潮流計算法の開発,(b-3)前日計画法の開発,(b-4)リアルタイム制御法の開発について検討を行った。本研究成果は国内会議,国際会議で報告して広く公表した。初年度の目標である,(a)電力需給マネージャの高機能化については当初予定の予測部・計画部・運用部について実装済みであり,8割程度機能実装が完了している。また,ロバスト信頼度維持方式についてもモデル化および定式化が完了しこちらも当初の予定通り研究が進行している。以上から,初年度は概ね順調に進展していると判断した。次年度では,当初の計画通り,(c)需要レスポンス等の需要端エネルギーマネージメントシステムの構築:具体的には(c-1)蓄電池制御を含むビル管理手法の開発を申請者が所属する大学実験研究棟をモデル化し実施する。なお,発電機,太陽光発電,蓄電池,各種エネルギーモニタなどの設備は既存のものを活用できるため,将来的に提案マネージャを実装し,リアルタイム運用を行うことも視野に入れ,実運用に適した電力需給制御マネージャのパラメータ設定も検討する。さらに,実際には実験困難な(c-2)需要端における太陽光出力抑制,負荷抑制について,電力需給マネージャを用いた最適マネージメントシステムを構築する。最終年度においても計画通り,(d)部分システム最適化と全体システム協調の追求:前年度までに開発するマネージャにおいて,(d-1)黒板情報の共有による分散システムの協調シミュレーション実験,(d-2)黒板情報の更新頻度や内容に関する検討,(d-3)黒板を利用した需要家との価格取引に基づくシステム協調シミュレーション(太陽光抑制,負荷抑制)を検討する。(e)全体総括:項目(d)は部分システムの個別最適化と全体システム協調に関して,シミュレーションをベースに検討を繰り返して方式の改良を行うが,最終的には項目1年目の(a),2年目の(c),そして最終年度に行う(d)がほぼ完了した時点で,仮想マネージャ協調実験を実施し,提案法の供給信頼度維持能力と最適性を検証する計画である。以上,項目(a)(d)の3年間の研究結果を報告書にとりまとめ,新手法の有効性・効率性を示す。以上より,本研究の目的を達成する予定である。本研究では,研究代表者が開発してきた電力需給制御マネージャを用いて柔軟な形態の分散型電力システムの供給信頼度と最適性を追求することで太陽光発電大量導入環境における電力系統の諸課題を解決する。本マネージャは,既存システムの分散化やシステム再構築あるいは未電化地域のシステム構築を行う際に柔軟に対応できるマネージャであり,部分システム毎に独立させて制御することもできる。初年度ではまず,不確定性に対して「ロバスト」な電力需給制御マネージャの開発を行った。さらに,需要側を制御対象とする考え方は,すなわち,需要家側に導入される太陽光発電の出力抑制およびデマンドレスポンスとして注目されている負荷抑制について,従来の電力需給運用においては考えられていなかったことから,重点項目として実施する。初年度では次の項目について需給マネージャの機能拡充を図った。(a)マネージャの高機能化:将来系統において系統運用計画を策定する場合に,再生可能エネルギー電源による不確定性の影響を勘案した運用計画を策定した。具体的には次の7つの主要コントローラを作成した。(a-1)前日予測部(前日需要予測,前日再エネ発電量予測),(a-2)需給計画部(発電機起動停止計画,蓄電池運用方策),(a-3)実時間予測部,(a-4)需給運用部(発電機実行可能領域計算,負荷配分制御),(a-5)平常時制御部(負荷周波数制御),(a-6)緊急時制御部(電源制限,負荷遮断),(a-7)実出力配分計算部, | KAKENHI-PROJECT-18K04081 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K04081 |
電力需給制御マネージャの構築に関する研究 | (b)ロバスト信頼度維持方式の開発:ロバスト信頼度の概念を用いて,不確定性の影響を勘案した運用計画手法を(b-1)ロバスト信頼性条件のモデル化,(b-2)モデル化条件を考慮した最適潮流計算法の開発,(b-3)前日計画法の開発,(b-4)リアルタイム制御法の開発について検討を行った。本研究成果は国内会議,国際会議で報告して広く公表した。初年度の目標である,(a)電力需給マネージャの高機能化については当初予定の予測部・計画部・運用部について実装済みであり,8割程度機能実装が完了している。また,ロバスト信頼度維持方式についてもモデル化および定式化が完了しこちらも当初の予定通り研究が進行している。以上から,初年度は概ね順調に進展していると判断した。次年度では,当初の計画通り,(c)需要レスポンス等の需要端エネルギーマネージメントシステムの構築:具体的には(c-1)蓄電池制御を含むビル管理手法の開発を申請者が所属する大学実験研究棟をモデル化し実施する。なお,発電機,太陽光発電,蓄電池,各種エネルギーモニタなどの設備は既存のものを活用できるため,将来的に提案マネージャを実装し,リアルタイム運用を行うことも視野に入れ,実運用に適した電力需給制御マネージャのパラメータ設定も検討する。さらに,実際には実験困難な(c-2)需要端における太陽光出力抑制,負荷抑制について,電力需給マネージャを用いた最適マネージメントシステムを構築する。最終年度においても計画通り,(d)部分システム最適化と全体システム協調の追求:前年度までに開発するマネージャにおいて,(d-1)黒板情報の共有による分散システムの協調シミュレーション実験,(d-2)黒板情報の更新頻度や内容に関する検討,(d-3)黒板を利用した需要家との価格取引に基づくシステム協調シミュレーション(太陽光抑制,負荷抑制)を検討する。(e)全体総括:項目(d)は部分システムの個別最適化と全体システム協調に関して,シミュレーションをベースに検討を繰り返して方式の改良を行うが,最終的には項目1年目の(a),2年目の(c),そして最終年度に行う(d)がほぼ完了した時点で,仮想マネージャ協調実験を実施し,提案法の供給信頼度維持能力と最適性を検証する計画である。以上,項目(a)(d)の3年間の研究結果を報告書にとりまとめ,新手法の有効性・効率性を示す。以上より,本研究の目的を達成する予定である。当該年度の残額は少額ではあるが,次年度の消耗品購入費として利用する。 | KAKENHI-PROJECT-18K04081 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K04081 |
模擬国連交渉プロセスにおける会話表現分析とコーパスデータベースの構築 | 日本人の英語話者が、大学の国際的な模擬国連で英語のネイティブや外国人と交渉することにおいて、何が欠けているのか、必要なものを理解することを目的とする。1)日本人の英語話者のための交渉に関する英語ELT教材を批判的に評価し、どのような語彙、文法、機能がターゲットとされるか、その理論的根拠とデータソースを見極めた。2)口語コーパスの専門家と協力した学識者とアジア各国のネイティブおよび日本人の英語話者から交渉データを収集し、文法、単語と2語以上のことばの語彙の研究を行った。3)応用会話分析、討論会での相互行為の秩序を研究する分析枠組みを通して、模擬国連の交渉での社会行為について学ぶことができた。1.英語教授教材のネゴシエーションの分析について、2011年度にたてた枠組みと基準をもとに、文科省が承認した中・高校の10種類の一般的な英語教科書に関して分析を完了した。2.会議と授業を含め多くの現場でコーパスに関する模擬国連のネゴシエーションのデータを収集した。以下、4つの国際的な模擬国連会議のコーカス部会でビデオ録画と録音を行った。西出とソープが神戸外大、近畿大学、つくば大学で授業を行い、疑似模擬国連のネゴシエーションのセッションからデータを収集した。静岡大学とつくば大学で模擬国連のための教員教育を行った。また、JUEMUNの外来教員を務め、つくば大学と同志社大学では学生向けの教育活動も行った。西出は東京の国連大学で、ニューヨーク開催の模擬国連の準備のための日本模擬国連学生のアドバイザーを務めた。3.コーパス構築やシステム機能言語学、特定目的英語の専門家に会い、4つの交渉会話言語コーパスとしてのデータの確立・分析のための、また書写のプロセスについても見解を得た。コーパス用の音声・ビデオ資料を書写しており、ネゴシエーションのディスコースの検討に役立てる。4・5.会話とディスコースの分析に関し音声とビデオ資料を書写している。これにはフレデリック・エリクソンの方法論を用いており、話し、聞き、結論を述べる言語的および非言語的行動を示す複合的な書写を行うためのものである。西出はエリクソン博士の15時間のワークショップに出席した。2011年にELT教材の交渉を分析するために作成した枠組みと基準をもとに、文科省認定で最も人気の高い10種類の中学・高校2年生向け英語教科書の分析を完了した。データに関して相互の格付けを行い、その信用性と有効性を高めるよう努めた。2.会議や授業を含めた数多くの場で、我々のコーパスに関する模擬国連の交渉データ収集を継続し、我々の学生の一部も参加した4つの国際模擬国連会議のコーカス部会でビデオ録画と録音を行った。さらに授業(西出とソープが神戸市外大と近畿大学で4月7月、西出が筑波大学で10月11月に実施)での疑似模擬国連の交渉セッションからデータを集めた。特筆すべきは、データのトランスクリプトと会議での交渉の観察で得たデータが、我々のカリキュラムの向上に役だったことである。また、模擬国連に関する教育を、京都外国語大学では複数の大学の客員教員に対し、筑波大学と同志社大学では学生に対し、行った。西出は東京の国連大学で日本模擬国連の学生に対するアドバイザーでもあり、ニューヨークでの模擬国連会議に参加する準備を手助けした。3.データを交渉に使われる4つの言語コーパスに構築し、トランスクリプションのプロセスと会話分析を行うにあたっての観点を得るために、複数の研究者と会った。4&5.視聴覚データに集中したセグメントのトランスクリプトを会話・ディスコース分析に関するF・エリクソンのシステムを用いつつ継続した。西出、立木、ソープはそれぞれ、オーストラリア、アメリカ、イタリア、日本での会議で本研究をもとに発表を行った。日本人の英語話者が、大学の国際的な模擬国連で英語のネイティブや外国人と交渉することにおいて、何が欠けているのか、必要なものを理解することを目的とする。1)日本人の英語話者のための交渉に関する英語ELT教材を批判的に評価し、どのような語彙、文法、機能がターゲットとされるか、その理論的根拠とデータソースを見極めた。2)口語コーパスの専門家と協力した学識者とアジア各国のネイティブおよび日本人の英語話者から交渉データを収集し、文法、単語と2語以上のことばの語彙の研究を行った。3)応用会話分析、討論会での相互行為の秩序を研究する分析枠組みを通して、模擬国連の交渉での社会行為について学ぶことができた。1、収集文献から英語教授教材における交渉を評価するためのデータフレームの開発を行った。現在、このフレームの下でのデータ収集と分析に取り掛かっている。2、61カ国から1,500人の学生が参加し、5日間に渡って21の会合が開催された「ハーバード世界模擬国連会議」において、音声・映像資料を収集した。3、ゼネック西出ローリ(研究代表者)、立木ドナ(共同研究者、神戸市外国語大学)、ソープ・トッド(共同研究者、近畿大学)の3名がその設立を支援した「全日本大学模擬国連会議(JUEMUN)」の第2回大会が平成23年度に神戸市外国語大学において開催され、ゼネック西出ローリが主催者として成功裏に会議を運営した。2日間に渡る同会議において交渉データを収集したほか、高校生・大学生がオブザーバー参加する中で同会議の意義に関する認知度を高めるとともに、JUEMON参加学生のデータを教室での準備作業を通じて収集し、国連安全保障理事会の模擬会議を実施した。4、音声・映像データの文書化プロセスの計画を立案し、データ分析に必要な機器類を購入した。今後、資料分析のための最新のソフトウェアの購入を予定している。 | KAKENHI-PROJECT-23520687 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23520687 |
模擬国連交渉プロセスにおける会話表現分析とコーパスデータベースの構築 | 5、4類型の交渉会話言語コーポラの構築計画に関し、外部専門家との協議を実施した。6、今後、英語での模擬国連会議に向けた教師教育と、学生の自発的なMUNクラブの結成に精力を注ぐ。平成24年のJUEMUN大会では、参加を希望する大学がさらに増え、また外国人学生を擁する高校からの参加も新たに見込んでいる。より多くの日本人学生が国内外のMUNに参加することにより、日本人話者に関するより多くのデータを収集することが可能となる。その理由は、データを収集するはずであった2つの会議に参加できなかったことである。その一つ、11月に中国で開催されるはずであった模擬国連会議は中国政府により選挙を理由に突然、中止され、またオーストリアのウィーンで開催された模擬国連会議に参加を予定していたメンバーは、やむを得ない家族の事情により最終的に参加をとりやめることになった。これに加えて、多くの様々な分野の専門家たちと出会うことにより、データ分析によりふさわしいプロセスをとることを決めたため、予定していたよりも長い時間がかかってしまったこともある。また、ネゴシエーションのコーパスを作るために書写するまでにデータを検討し分析する時間がかなりかかることも挙げられる。なお、文科省の中高校の新しい教育コースは2013年4月に始まるため、2年次の教科書は2012年度にはまだ入手できていない。研究代表者及び研究協力者は、カナダのバンクーバー及び神戸市外国語大学において開催された模擬国連会議において70時間以上のデータの収集を行ったほか、模擬国連に関する出版資料の収集を進めるとともに、会議においてプレゼンテーションの実施やワークショップへの参加を行うなどの活動を行った。平成23年4月開催の世界最大の国際模擬国連会議及びこれに続くいくつかの模擬国連会議に、同年3月に発生した東北大震災の影響で不参加を余儀なくされたため音声言語データの収集量が当初予定に比してやや減少しているほか、英語教授資料に関する分析研究もまだ作業を続行中ではあるが、全体としてはおおむね順調に進展しており、当初の研究到達目標はほぼ達成されている。データ収集のために出席を予定していた模擬国連会議の一部に出席できなかったため、予算が残っている状態である。また、書写するために最良の形式がどれかをまだ決めかねていたため、書写を依頼する作業者を雇っていなかった。データ収集のため、下記の模擬国連に参加予定である。1)ローマ模擬国連会議(ローマ、ルイス・ギド・カーリ大学)では5日間の会議に出席2)日本大学模擬国連(JUEMUN)主催の3日間の国際会議3)つくば大学模擬国連(TEMUN)(つくば大学)3日間に参加4)韓国の模擬国連/ハーバード大学の模擬国連平成24年度は、研究計画の第2年次として、模擬国連会議(MUN)での交渉において用いられる言語とコミュニケーション戦略に関する調査を続行する。 | KAKENHI-PROJECT-23520687 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23520687 |
分裂終期のタバコ培養細胞BY-2より単離した190-kDa MAPの研究 | 細胞周期を分裂終期に同調化したタバコ培養細胞BY-2より得たミニプロトプラストから微小管を調製し、この微小管から、300mM KCl処理によって、190-kDa MAPを含む粗抽出分画を得、これをFPLC-Mono Sカラムにより精製した。この精製した190-kDa MAPをウシの脳由来のMAPを含まない微小管と、インキュベートした後、固定、包埋し、その切片を電子顕微鏡観察したところ、微小管と微小管を架橋するおよそ10nmの構造が認められ、この構造が190-kDa MAPであると考えられた。また、190-kDa MAPは、Mono-Sカラムによる精製段階で、収率が、甚だしく減少したため、この精製190-kDa MAPを抗原とした抗体の作成は諦め、190-kDa MAPの部分的なアミノ酸配列の決定に重点を置いた。190-kDa MAPを含む粗抽出分画をSDS-PAGEにかけたのち、PVDF膜にブロットしCBB染色を行い、目的のバンドを切り出して、アミノ酸シークエンサーにかけたところ、十分な量の蛋白を用いたにも関わらず、PTHアミノ酸の信号が得られず、190-kDa MAPのN末はブロックされているものと判断した。そこで190-kDa MAPを移したPVDF膜をブロテアーゼで処理し分解を試みた。6種類のブロテアーゼを検討したが、いずれも良好でなかったため、CNBrによる分解を行った。分解処理したものを再びSDS-PAGEにかけ、PVDF膜にブロットし、CBB染色をしたところ、分解処理の収率は低かったが、いくつかのバンドが認められた。これを、アミノ酸シークエンサーにかけたが、ペプチドの量が不十分であったため、PTHアミノ酸の信号が弱く、その配列を決定するには至っていない。現在、十分量のペプチドを用いてアミノ酸配列を決定する努力を継続している。細胞周期を分裂終期に同調化したタバコ培養細胞BY-2より得たミニプロトプラストから微小管を調製し、この微小管から、300mM KCl処理によって、190-kDa MAPを含む粗抽出分画を得、これをFPLC-Mono Sカラムにより精製した。この精製した190-kDa MAPをウシの脳由来のMAPを含まない微小管と、インキュベートした後、固定、包埋し、その切片を電子顕微鏡観察したところ、微小管と微小管を架橋するおよそ10nmの構造が認められ、この構造が190-kDa MAPであると考えられた。また、190-kDa MAPは、Mono-Sカラムによる精製段階で、収率が、甚だしく減少したため、この精製190-kDa MAPを抗原とした抗体の作成は諦め、190-kDa MAPの部分的なアミノ酸配列の決定に重点を置いた。190-kDa MAPを含む粗抽出分画をSDS-PAGEにかけたのち、PVDF膜にブロットしCBB染色を行い、目的のバンドを切り出して、アミノ酸シークエンサーにかけたところ、十分な量の蛋白を用いたにも関わらず、PTHアミノ酸の信号が得られず、190-kDa MAPのN末はブロックされているものと判断した。そこで190-kDa MAPを移したPVDF膜をブロテアーゼで処理し分解を試みた。6種類のブロテアーゼを検討したが、いずれも良好でなかったため、CNBrによる分解を行った。分解処理したものを再びSDS-PAGEにかけ、PVDF膜にブロットし、CBB染色をしたところ、分解処理の収率は低かったが、いくつかのバンドが認められた。これを、アミノ酸シークエンサーにかけたが、ペプチドの量が不十分であったため、PTHアミノ酸の信号が弱く、その配列を決定するには至っていない。現在、十分量のペプチドを用いてアミノ酸配列を決定する努力を継続している。 | KAKENHI-PROJECT-06740608 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06740608 |
ヤムイモ類における沈降性アミロプラストを起点とする塊茎形状成立機構の包括的理解 | 本研究者はこれまで、ナガイモ塊茎の頂端部に、重力方向へ沈降するアミロプラストが局在することを発見した。本研究は、この沈降性アミロプラストを起点とするヤムイモ類塊茎の形状成立機構を理解することを目的として実施した。多面的な微細構造解析により、塊茎頂端部の沈降性アミロプラストにおける数、量および分布が、塊茎形状差異の発現に寄与している可能性が示された。更に、塊茎頂端部おけるオーキシンやシグナル伝達物質候補であるCaも塊茎の重力感受・屈性と形態形成に関与していることが示唆され、塊茎形状成立機構の理解を包括的に進める上で有意義な知見が得られた。ヤムイモ類の塊茎形状は、多様性に富み、同一の品種・系統内でさえ均一になりにくい性質を有する。そのため市場価値や収穫作業性を損なう「形の悪い」塊茎が発生し、農業上の問題となっている。申請者はこれまで、ナガイモ塊茎の頂端部に、重力方向へ沈降するアミロプラストが局在することを発見し、これらアミロプラストが塊茎形状の成立に関与している可能性を報告した。本研究の目的は下記の課題を明らかにし沈降性アミロプラストを起点とするヤムイモ類塊茎の形状成立機構を包括的に理解し、塊茎形状制御のための学術基盤を構築することである。[課題1]塊茎頂端部に局在する沈降性アミロプラストと塊茎形状の成立との関係性の明確化:ここでは塊茎形状の異なる複数のヤムイモ類を用いて、沈降性アミロプラストと塊茎形状の成立との関係性を明確化することに取り組んでいる。本年度では、異なる塊茎間で沈降性アミロプラストの分布様式と存在数・量に大きな差異があることが認められ、有用なデータを得ることができた。[課題2]塊茎形状の成立に関わるシグナル伝達の仕組みの検証:本年度では、生長中のナガイモ塊茎を斜めに設置して重力刺激処理し、シグナル伝達物質候補であるCa局在性・存在量の変動を解析した。現在、更に反復実験を行い、データの集積・解析を進めている。[課題3]塊茎形状の成立と植物ホルモンとの関係性の解明:本年では、ナガイモ塊茎を傾斜させて重力刺激処理を行い、塊茎の上方部分と下方部分の間でオーキシン含量に差が生じるのかどうかを検証した。その結果、重力刺激処理による変動性が認められつつある。また、オーキシン輸送体関連の遺伝子の探索し幾つかの候補を見いだした。1年目としては、前述の通り、3つの課題について幾つかの有用なデータを得ることができた。一方で、〔課題2〕のCa局在性・存在量の変動を解析においては、Caの検出は出来るものの、さらに確度の高い解析を行うには、反復を増やして実験し、且つ、処理期間などを調整して進めていく課題がある。また、〔課題3〕では、オーキシンの定量において、オーキシンアッセイキット(Phytodeteck IAA test kit)を用いて測定してきたが、同一処理した試料間で測定値の標準偏差が大きい場合もあったので、高速液体クロマトグラフィー法を用いるなどの測定法の検討も行っている。ヤムイモ類塊茎形状は、多様性に富み、同一の品種・系統内でさえ均一になりにくい性質を有する。そのため市場価値や収穫作業性を損なう「形の悪い」塊茎が発生し、農業上の問題となっている。申請者はこれまで、ナガイモ塊茎の頂端部に、重力方向へ沈降するアミロプラストが局在することを発見し、これらアミロプラストが塊茎形状の成立に関与している可能性を報告した。本研究の目的は下記の課題を明らかにし沈降性アミロプラストを起点とするヤムイモ類塊茎の形状成立機構を包括的に理解し、塊茎形状制御のための学術基盤を構築することである。[課題1]塊茎頂端部に局在する沈降性アミロプラストと塊茎形状の成立との関係性の明確化:ここでは塊茎形状の異なる複数のヤムイモ類を用いて、沈降性アミロプラストと塊茎形状の成立との関係性を明確化することに取り組んでいる。本年度では、異なる形の塊茎を用いて透過型電子顕微鏡観察を実施し、沈降性アミロプラストを含む細胞の内部微細構造的特徴に関するデータが得られた。[課題2]塊茎形状の成立に関わるシグナル伝達の仕組みの検証:本年度では、生長中のナガイモ塊茎を斜めに設置して重力刺激処理し、シグナル伝達物質候補であるCa局在性・存在量の変動を解析した。エネルギー分散型X線分析法を用いて上記重力刺激を与えた塊茎におけるCa局在性・存在量の変動を解析した。更に、重力刺激後の塊茎について、誘導結合プラズマ発光分光法を用いたCa動態調査も進めている。[課題3]塊茎形状の成立と植物ホルモンとの関係性の解明:本年では、形の異なる塊茎や重力刺激処理した塊茎のオーキシン含量を検証した。オーキシンアッセイキットを用いた測定の他、高速液体クロマトグラフィーによる測定方法も取り入れ、重力刺激処理によるオーキシン変動性が認められつつある。またオーキシン輸送体関連の遺伝子について幾つかの候補を見いだした。2年目としては、前述の通り、3つの課題について幾つかの有用なデータを得ることができた。 | KAKENHI-PROJECT-15K07269 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K07269 |
ヤムイモ類における沈降性アミロプラストを起点とする塊茎形状成立機構の包括的理解 | 一方で、〔課題2〕のCa局在性・存在量の変動を解析においては、Caの検出は出来るものの、さらに確度の高い解析を行うには、反復を増やして実験し、且つ、処理期間などを調整して進めていく課題がある。そのため、重力刺激後の塊茎について、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-AES)を用いたCa動態の調査も進めている。〔課題3〕では、オーキシンの定量において、オーキシンアッセイキット(Phytodeteck IAA test kit)を用いて測定してきたが、同一処理した試料間で測定値の標準偏差が大きい場合もあった。そのため、高速液体クロマトグラフィー法を用いるなどの測定法の検討も行い、概ね測定方法の確立に至っている。ヤムイモ類塊茎形状は、多様性に富み、同一の品種・系統内でさえ均一になりにくい性質を有する。そのため市場価値や収穫作業性を損なう「形の悪い」塊茎が発生し、農業上の問題となっている。申請者はこれまで、ナガイモ塊茎の頂端部に、重力方向へ沈降するアミロプラストが局在することを発見した。本研究の目的はこの沈降性アミロプラストを起点とするヤムイモ類塊茎の形状成立機構を包括的に理解し、塊茎形状制御のための学術基盤を構築することである。(1)塊茎形状の異なる複数のヤムイモ類を用いて、塊茎頂端部に局在する沈降性アミロプラストと塊茎形状の成立との関係性の明確化に取り組んだ。本年度は光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡に加え透過型電子顕微鏡観察を実施し、ヤムイモ類塊茎における沈降性アミロプラストを含む細胞は、根冠コルメラ細胞に類似的な内部微細構造を有することが示唆された。また、異なる形の塊茎間では沈降性アミロプラストの量的・分布的形質が異なる微細構造的な関係性が明らかとなった。(2)生長中のナガイモ塊茎を横倒して重力刺激処理し、シグナル伝達物質候補であるCa局在性・存在量の変動をエネルギー分散型X線分析法を用いて解析した。重力刺激処理により、Caは塊茎頂端の皮層から中心柱へ移行する傾向が示唆されたが、更なる詳細なCa動態を解析中である。(3)本年度では、形の異なる塊茎や重力刺激処理した塊茎のオーキシン含量をオーキシンアッセイキットや高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。その結果、形の異なる塊茎間でオーキシン含有量の差異や重力刺激処理によるオーキシン変動性が認められつつある。またオーキシン輸送体関連の遺伝子の発現様式について、供試材料間で差異があることが示唆された。本研究者はこれまで、ナガイモ塊茎の頂端部に、重力方向へ沈降するアミロプラストが局在することを発見した。本研究は、この沈降性アミロプラストを起点とするヤムイモ類塊茎の形状成立機構を理解することを目的として実施した。多面的な微細構造解析により、塊茎頂端部の沈降性アミロプラストにおける数、量および分布が、塊茎形状差異の発現に寄与している可能性が示された。更に、塊茎頂端部おけるオーキシンやシグナル伝達物質候補であるCaも塊茎の重力感受・屈性と形態形成に関与していることが示唆され、塊茎形状成立機構の理解を包括的に進める上で有意義な知見が得られた。〔課題1〕塊茎頂端部に局在する沈降性アミロプラストと塊茎形状の成立との関係性の明確化:では、塊茎頂端部の沈降性アミロプラストを含む柔細胞内の微細構造における種・品種・系統間の共通性および根冠コルメラ細胞との類似性の検証も行う。手法としては、透過型電子顕微鏡による微細構造レベルの観察を行う。また、試料調整では、凍結活断法とオスミウム軟浸法を用いて試料内部を露出した後、走査型顕微鏡で三次元的な高倍率観察も行い、多角的な形態・構造の解析を実施する。 | KAKENHI-PROJECT-15K07269 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K07269 |
細胞表層の精密構造認識と機能制御 | 本研究班においては、生細胞表面に存在している各種の認識素子、例えば糖脂質または糖蛋白の糖鎖、レセプタ-蛋白のシグナル結合部位、各種抗原性分子とそれに対応する抗体などの認識メカニズムを可能な限り精密構造レベルで追及し、得られた情報・知見を基に実細胞間の情報伝達メカニズムを理解する。本研究では単に化合物間の特異的結合にとどまらず、この精密構造認識機能を通して更に細胞の動的機能の制御へ連継させる点に最大の特長がある。主な成果は次のとうりである。人工境界脂質を含んだリポソ-ムと動物細胞を混合することで、生体膜成分をリポソ-ム膜に構造活性な状態で抽出する方法を確立した。例えば赤血球の血液型抗原やB16メラノ-マの接着蛋白質の移行が観察された(砂本)。Nカドヘリンに結合しているαNーカテニンを同定し、この分子が脳を中心とした神経系に分布していることが発見された。さらに、カテニンのチロシンリン酸化によるカドヘリンの活性抑制が明らかにされた(竹市)。ヒト上皮成長因子(hEGF)とEGFレセプタ-との結合に寄与するアミノ酸残基や高次構造の影響が明らかにされた。さらに蛍光性の非天然型アミノ酸を用いることでhEGFとレセプタ-との動的な認識機構についての知見も得られた(横山)。α2ーマクログロブリンはプロテア-ゼとの結合は非常に小さい活性化エネルギ-と大きな活性化エントロピ-を持つ反応であり、蛋白質内を情報が伝わる速度が以外に遅いことが明らかになった(猪飼)。微生物に含まれるエンテロバクチンのモデル化合物としてマクロ環化合物を合成した。この人工レセプタ-はエンテロバクチンと同様に鉄(III)イオンに対して極めて大きな結合定数を有することが明らかになった。また鉄錯体の絶対配置はカテコ-ル近傍に導入したアミノ酸の立体構造に依存していた(久枝)。本研究班においては、生細胞表面に存在している各種の認識素子、例えば糖脂質または糖蛋白の糖鎖、レセプタ-蛋白のシグナル結合部位、各種抗原性分子とそれに対応する抗体などの認識メカニズムを可能な限り精密構造レベルで追及し、得られた情報・知見を基に実細胞間の情報伝達メカニズムを理解する。本研究では単に化合物間の特異的結合にとどまらず、この精密構造認識機能を通して更に細胞の動的機能の制御へ連継させる点に最大の特長がある。主な成果は次のとうりである。人工境界脂質を含んだリポソ-ムと動物細胞を混合することで、生体膜成分をリポソ-ム膜に構造活性な状態で抽出する方法を確立した。例えば赤血球の血液型抗原やB16メラノ-マの接着蛋白質の移行が観察された(砂本)。Nカドヘリンに結合しているαNーカテニンを同定し、この分子が脳を中心とした神経系に分布していることが発見された。さらに、カテニンのチロシンリン酸化によるカドヘリンの活性抑制が明らかにされた(竹市)。ヒト上皮成長因子(hEGF)とEGFレセプタ-との結合に寄与するアミノ酸残基や高次構造の影響が明らかにされた。さらに蛍光性の非天然型アミノ酸を用いることでhEGFとレセプタ-との動的な認識機構についての知見も得られた(横山)。α2ーマクログロブリンはプロテア-ゼとの結合は非常に小さい活性化エネルギ-と大きな活性化エントロピ-を持つ反応であり、蛋白質内を情報が伝わる速度が以外に遅いことが明らかになった(猪飼)。微生物に含まれるエンテロバクチンのモデル化合物としてマクロ環化合物を合成した。この人工レセプタ-はエンテロバクチンと同様に鉄(III)イオンに対して極めて大きな結合定数を有することが明らかになった。また鉄錯体の絶対配置はカテコ-ル近傍に導入したアミノ酸の立体構造に依存していた(久枝)。 | KAKENHI-PROJECT-03236106 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03236106 |
脆性-塑性遷移領域における長石のレオロジーと水の役割の解明 | 本研究では,岩石内部への水の導入と塑性変形の促進との関連性について評価するために岩石変形実験を行った.試料は下部地殻のアナログとして平均粒径が1.5μmの純アノーサイト(An)多結晶体を用いた. Griggs型固体圧変形試験機を用いて,温度900°C,封圧1 GPaで0.5wt%の水を試料内部に導入させながら剪断変形実験を行った.前年度まではAn+シリカリッチメルト5 vol%を試料として用い,同様の実験を行ってきた.本年度ではメルトが無い純An試料の場合で実験を行い,両者の結果を比較することを目的とする.純An試料を用い,剪断歪速度が10^<-4.5>/秒の実験では剪断歪が0.5まで弾性変形し,差応力が約700 MPaで降伏し,塑性変形が開始した.一方メルトを含む試料で同じ剪断歪速度の場合では,弾性変形挙動はほぼ同じであるが,降伏強度は約60 MPaであった.試料内部に導入された含水量を赤外分光法で測定したところ,純An試料では200-300ppm H_2Oであったことに対して,メルト有りの試料では400-600 ppm H_2Oであった.剪断歪速度が10^<-5.0>/秒の実験では,純An試料も約60 MPaで塑性変形が起こった.回収試料の微細組織観察から両試料ともに割れはほとんど見られず,水との反応を示すゾイサイトが見られた.また電子線後方散乱回折法による分析から,両試料ともに結晶定向配列を作らずランダムであった.このことから, An自身の変形機構は粒径依存型クリープが支配的であることが分かる.このように, An^<+5>vol%メルトの試料ではおそらくメルトと粒界に水が導入され,純An試料との含水量の差は200-300ppm程度である.また純An試料よりもその強度が一桁下がる.このように,メルトの有無によって,水の導入に伴う力学強度の違いが明らかになりつつある.(抄録なし)水は岩石鉱物の塑性変形を促進させる他,鉱物間での反応に寄与し,地球内部レオロジーに大きく影響を与える重要な物質である.本研究では,中部下部地殻のレオロジーを支配する長石に注目し,そのレオロジー特性に及ぼす水の効果に焦点を当てた.このことについて本研究は,天然試料の分析,室内変形実験の双方の観点から理解することを目的としている.まず天然の花崗岩質塑性変形岩に含まれる長石集合体領域に注目し,電子顕微鏡による表面形態観察や,後方電子散乱電子回折法(EBSD)による結晶方位測定を行いその変形機構について議論した.また,赤外分光法(IR)測定を行い,水の種類,量,分布について議論した.その結果,長石は溶液-沈澱クリープによって変形したことを明らかにし,変形に関与した水(H_2O流体)は数百ppmと少なく,溶液-沈澱に関与した水は変形時に放出した可能性を示した(Fukuda et al.,印刷中Tectonophysics; Fukuda印刷中Intech).次に水の量,状態と変形機構との関連性を定量的に評価するため岩石変形実験を行った.出発試料は5μm以下の人工灰長石100多結晶体を用いた.この試料はランダムな結晶方位で無水である.固体圧変形試験機を用い,温度900°C,封圧1GPaで試料近傍に蒸留水を添加し,試料中に水を導入した.800MPaの差応力下,10^<-5>/secの歪速度で変形実験を行った.その結果,変形の局所的な集中が見られ,この領域ではEBSD測定から結晶方位はランダムであり,粒径依存型クリープが卓越したことを示唆する.また,IR測定から,高含水量のゾイサイトが生成していることが確認された.このことは外部から水が導入されることによって,長石の粒径依存型クリープによって塑性変形が起こり,同時に反応鉱物が生成したと推察される.水は岩石の塑性変形を促進することが知られているが,岩石周囲に分布した水が岩石内部に導入されるとき,周囲の水の量や,岩石内部への導入過程で生じる含水量分布の不均質性,歪の不均質性などとの関係性については発達する組織も含めて不明な点が多い.そこで本研究では試料周囲に水を分布させ,その量をコントロールし,水が試料内部に導入される過程において,それが力学特性や微細組織の発達へ与える影響について実験的に評価した.3即の粒径からなる灰長石多結晶体と5vo%のシリカリッチなメルトを含む試料について,試料周囲に任意の水の量を分布させて,封圧1GPa,温度900°Cで剪断変形実験を行った.力学強度は,試料周囲の水が0.5wt%のときのみ,顕著な強度の低下を示した.例えば10^<-4.5>/secの勇断歪速度のとき,差応力が50MPa以下で変形したことに対して,同じ勇断歪速度で0.1,0.3wt%の水を分布させたときは水を加えなかったドライの実験結果と同様に差応力は勢断歪が0.5で1000MPaまで上昇し,その後弱化した.そして剪断歪が1,5のとき差応力は800MPaとなった. | KAKENHI-PROJECT-11J03694 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J03694 |
脆性-塑性遷移領域における長石のレオロジーと水の役割の解明 | 回収試料も非常に割れが発達していることが確認され,脆性変形が卓越したことが分かる.一方,0.5wt%の水を加えた実験の回収試料は部分的に割れているところも見られたが,全体としては塑性変形が卓越していた.さらに歪マーカーが部分的に急激に傾いている領域も認められた.つまり,歪の局所化が起こったことが分かる.全ての実験回収試料について赤外分光法分析を実施したところ,水はH_20流体として保持されていることが分かった.また歪マーカーが示す塑性歪の不均質性も含水量分布と関連しており,例えば0.5wt%の水を加えた一つの実験回収試料では,バルクの剪断歪が2であることに対して,歪マーカーが示す剪断歪が5の領域では550ppmであった.一方,同試料内部でも割れが発達している領域は150ppm程度であった.このように,試料に加えた水と試料内部での含水量,その不均質分布と変形機構との関係を評価した.本研究では,岩石内部への水の導入と塑性変形の促進との関連性について評価するために岩石変形実験を行った.試料は下部地殻のアナログとして平均粒径が1.5μmの純アノーサイト(An)多結晶体を用いた. Griggs型固体圧変形試験機を用いて,温度900°C,封圧1 GPaで0.5wt%の水を試料内部に導入させながら剪断変形実験を行った.前年度まではAn+シリカリッチメルト5 vol%を試料として用い,同様の実験を行ってきた.本年度ではメルトが無い純An試料の場合で実験を行い,両者の結果を比較することを目的とする.純An試料を用い,剪断歪速度が10^<-4.5>/秒の実験では剪断歪が0.5まで弾性変形し,差応力が約700 MPaで降伏し,塑性変形が開始した.一方メルトを含む試料で同じ剪断歪速度の場合では,弾性変形挙動はほぼ同じであるが,降伏強度は約60 MPaであった.試料内部に導入された含水量を赤外分光法で測定したところ,純An試料では200-300ppm H_2Oであったことに対して,メルト有りの試料では400-600 ppm H_2Oであった.剪断歪速度が10^<-5.0>/秒の実験では,純An試料も約60 MPaで塑性変形が起こった.回収試料の微細組織観察から両試料ともに割れはほとんど見られず,水との反応を示すゾイサイトが見られた.また電子線後方散乱回折法による分析から,両試料ともに結晶定向配列を作らずランダムであった.このことから, An自身の変形機構は粒径依存型クリープが支配的であることが分かる.このように, An^<+5>vol%メルトの試料ではおそらくメルトと粒界に水が導入され,純An試料との含水量の差は200-300ppm程度である.また純An試料よりもその強度が一桁下がる.このように,メルトの有無によって,水の導入に伴う力学強度の違いが明らかになりつつある.当初,内陸地震の発生領域であったと考えられる福島県阿武隈山地付近の畑川破砕帯中の花崗岩質塑性変形岩の採取する予定であった.しかし同地域は原子力発電事故の影響で立ち入り禁止となった.よって,他地域の剪断帯試料を採取した(領家帯内部剪断帯(大阪府),足助剪断帯(愛知県)).これら地域も本研究の目的である長石のレオロジーと水の効果について考える上で重要な地域であり,研究を進めていく上で大きな支障はない.得られた成果について学会発表を行い,論文を公表した.よって達成度はおおむね順調に進展していると言える.試料周囲に分布した水の量と試料内部へ導入される水の量の関係性や,試料内部での不均質な含水量分布と変形の局所化との関係性について,力学データや組織の発達と合わせて,定量的な関係を構築する試みが進展している.当初の計画通り,おおむね順調に進展している.変形実験では今後は一定温度,封圧条件下(ただしAn100+H_2Oの安定領域;例えば900°C,1GPa)で,一定時間保持することによって,試料内部へ水を十分拡散させ,変形実験を行うことを計画している.つまり,含水量勾配による変形の促進,変化について評価する. | KAKENHI-PROJECT-11J03694 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J03694 |
サーファクタント媒介による緩和Ge薄膜結晶の形成とデバイス応用 | 機能融合デバイス創生を目指し、カーボン(C)をサーファクタント媒介とした、Si基板上の緩和Ge薄膜結晶の形成技術を検討した。界面Si-C結合やSi-CとGe-C結合の同時形成により、ほぼ100%緩和したGe薄膜が形成できることを実証した。さらに、Si(100)表面をSi-C結合の形成を利用してc(4x4)再構成することにより、Ge量子ドットの自己組織的形成に向けた知見を得た。機能融合デバイス創生を目指し、カーボン(C)をサーファクタント媒介とした、Si基板上の緩和Ge薄膜結晶の形成技術を検討した。界面Si-C結合やSi-CとGe-C結合の同時形成により、ほぼ100%緩和したGe薄膜が形成できることを実証した。さらに、Si(100)表面をSi-C結合の形成を利用してc(4x4)再構成することにより、Ge量子ドットの自己組織的形成に向けた知見を得た。本研究では、サーファクタント媒介による緩和Ge薄膜結晶の形成技術を確立する。本年度は3年計画の第2年度として、緩和Ge結晶の薄膜化に向けて、前年度の研究成果により明白となった、Si基板最表面に堆積したサブモノレイヤ(ML)のCとSiとの結合状態のGe成長への影響に関して重点的に検討した。堆積したサブMLのCは基板温度の上昇によりC-C結合からSi-C結合にシフトし、1000°Cでは1/2以上がSi-C結合となり、その結果Geの成長が2次元成長から3次元成長に激変することを示した。この現象はGe吸着原子のC-C結合での核成長とGe拡散長の増大によることを解明し、さらにGe結晶性のC被覆率依存性が成長モードに大きく影響されることを示した。低温でサブMLのCとGeを連続堆積し、Si界面でのC結合反応とGeの結晶化をアニールにより同時進行した場合のGe成長モードを検討した結果、700°Cのアニール処理により結晶性が良好で高密度なドット形成が可能であることを示した。その際のC被覆率とGe堆積膜厚には密接な最適化関係が存在し、多量のCはGe膜中に取り込まれ結晶性を劣化させ、またGe堆積膜厚が過剰でもGeドット密着を生じることを示した。これはSi-C結合反応におけるC-C結合残存とGe堆積膜厚との割合により生じた現象である。これらの結果は、来年度において、Cの介在制御により同一Si基板上に選択的に2次元の緩和Ge薄膜とGe量子ドットの形成を実現しうる手法を開発するための基盤技術として期待され、ニーズに応じて仮想Ge基板とGe光素子をSi基板上に設置する研究に繋がる。本研究では、サーファクタント媒介による緩和Ge薄膜結晶の形成技術を確立する。本年度は3年計画の第1年度として、抵抗加熱と電子ビーム加熱を併用した特殊仕様の半導体薄膜堆積装置を導入し、Ge上にC超極薄膜サーファクタントを積層する手法と、Ge/C積層構造における各層厚の構成が転位発生メカニズムに与える影響を検討した。サーファクタントとして用いるCは0.01から1MLの高精度な薄膜成長制御を行った。超極薄膜サーファクタントとしてのCの堆積では、電子ビームのパルス的照射蒸着と原料セル容器のシャッター開閉を連動制御し、ごく短時間の原料供給を可能とする手法を検討し、0.01MLまでの超極薄膜サーファクタント形成手法を確立した。Ge/C積層構造の各層厚の構成に関しては、検討すべきパラメータの中から、C成長膜厚とその上部のGe膜厚が主要因子であることを示した。これは、サーファクタント媒介による緩和Ge薄膜結晶の形成では、転位を主にGe/Si基板界面に局在化して、結晶欠陥の閉じ込めを狙っているからである。C被覆率によってGeドット成長に代表される3次元成長から2次元のアモルファス層成長や多結晶成長に大幅に変化し、C-Si界面での結合の影響が大きいことが明確になった。これらの結果は、来年度以降、第1層Geの初期成長界面に強い歪み応力を誘引した平坦なGe成長や上層Ge膜への貫通転位伝達抑制などの手法を開発するための基盤技術として期待される。本研究では、サーファクタント媒介による緩和Ge薄膜結晶の形成技術を確立する。本年度は3年計画の最終年度として、サーファクタントであるCの堆積位置依存性を検討した。そのために、C堆積位置をGe/Si界面から離れた位置としたC/Ge/Siの積層構造において、Ge膜厚とC堆積量、さらにはGe堆積温度による成膜初期Geの結晶状態などが、緩和Ge薄膜の結晶性に与える影響を検討した。また、Ge/C/Si積層膜においてC-Si反応温度とGe堆積膜厚を最適化することで、高密度のGe量子ドット形成に関して検討した。C/Ge/Si積層構造からの緩和Ge薄膜の形成においては、成膜したGeの初期結晶状態の影響が極めて大きいことが明らかになった。すなわち、アモルファス状Ge上にCを堆積した場合と多結晶状Ge上にCを堆積した場合では、Ge固相成長に影響するC量が大幅に異なった。アモルファス状Geでは、C≦0.25MLではGeがドット状に凝集し薄膜形成できないのに対して、多結晶状GeではC=0.15MLで緩和Ge薄膜を形成できる。このことはGe初期結晶状態によるC拡散速度の差に起因しており、初期結晶状態がランダムな系では薄膜形成に多量のCを要し、Ge結晶性が劣化することが分かった。 | KAKENHI-PROJECT-24246003 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24246003 |
サーファクタント媒介による緩和Ge薄膜結晶の形成とデバイス応用 | また、多結晶状Geの場合、C-Ge結合により平坦性を向上できるが明確になった。高密度Ge量子ドットの形成に関しては、C=0.25MLの条件において、Si-C反応温度、即ちc(4x4)構造の形成温度の最適化を検討したところ、750°C近辺で最も良好なGeドット形成を確認した。また、その際のGe堆積膜厚としては約3.5nm5nmの範囲においてドット粒径が均一化することを明らかにした。これらの結果は、来年度以降に実施する緩和Ge薄膜と量子ドットの選択的形成技術とデバイス応用を開発するための基盤技術であり、これらの知見が十二分に活かせると考えている。26年度が最終年度であるため、記入しない。半導体工学26年度が最終年度であるため、記入しない。当初の予定通りにSi基板の最表面でのサブMLのCの結合状態を制御して良好なGe薄膜の2次元成長を成長メカニズムの解明とともに進め、Ge吸着原子がCの結合状態によって大きく影響され成長モードが変化することを突き止めた。さらに、CとGeの堆積シーケンスを変更し、Geの量子ドットが形成できることを見出した。これはサーファクタント的に働くCと界面結合でGeの核成長に影響するCを同時に作用させることにより生まれた新しい現象である。以上の事から、当初目的としたサーファクタントの媒介による緩和Geの成長のみならずGeドットにまで展開できた。当初予定の通りに抵抗加熱と電子ビーム加熱を併用した特殊仕様の半導体薄膜堆積装置を導入し、蒸発温度が非常に高温であるCの固形体表面に、電子ビームを当てて昇華させ、サーファクタントとして用いるCを0.01から1MLの高精度に薄膜成長制御できた。その結果、Ge/C積層構造の各層厚の構成に関して、C成長膜厚とその上部のGe膜厚が主要因子であることを示し、C被覆率によってGeドット成長に代表される3次元成長や2次元のアモルファス層もしくは多結晶成長が見られ、C-Si界面での結合の影響が大きいことを明確にした。また、サーファクタント媒介による緩和Ge薄膜結晶の形成において、転位を主にGe/Si基板界面に局在化して、結晶欠陥の閉じ込めを実現できる可能性を示した。緩和Ge薄膜の結晶性向上に向けて、(1)サーファクタントであるCの堆積位置依存性を検討する。そのために、C堆積位置をGe/Si界面から徐々に離れた位置とする。そこで、Ge(2)/C/Ge(1)/Siの積層構造とし、Ge(1)膜厚とC堆積量のGe結晶性への影響を調べる。(2)Ge成長時のSi表面のクリーニング条件による成長モードの変化を検討する。そのために、堆積速度、基板温度、さらにはウエット洗浄とチャンバ内熱処理をパラメータに(1)記載のGe(1)の結晶性が緩和Ge薄膜成長全体に及ぼす影響を調べる。(3)Ge/C/Si積層膜の低温成長とアニール処理により、新たに高密度のGe量子ドット形成の可能性を見出した。そこで、Ge堆積温度と堆積量、C堆積量、アニール温度を最適化し、より微小で高密度なGe量子ドットの作製を検討するとともに、Si/Ge QD/Si構造における量子閉じ込め効果を光学特性により確認する。以上の手法により、数10nm程度で緩和Ge薄膜、さらにはGe量子ドットの結晶成長を実現する。以上のことから、成長界面操作と転位発生メカニズムとの関係を、「サーファクタント媒介」において系統的に実験検討するとともに、物性論的な体系化を行う。 | KAKENHI-PROJECT-24246003 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24246003 |
コミュニティ空間活用による実世界のスキル開発・学習支援研究 | WEB上のコミュニティ空間に、実世界での動作を伴う身体スキルの情報を蓄積し、それを活用する支援環境を設計および構築した。本研究を通じて、個人の身体スキルがコミュニティ空間を媒体として他者に伝播し、コミュニティに属する個人のスキル学習につながる様子が観測された。この中で、身体スキルを表現するには、各種のセンサを用いたメディア処理を適正に実装する必要があり、技術開発も実施した。WEB上のコミュニティ空間に、実世界での動作を伴う身体スキルの情報を蓄積し、それを活用する支援環境を設計および構築した。本研究を通じて、個人の身体スキルがコミュニティ空間を媒体として他者に伝播し、コミュニティに属する個人のスキル学習につながる様子が観測された。この中で、身体スキルを表現するには、各種のセンサを用いたメディア処理を適正に実装する必要があり、技術開発も実施した。本研究では、SNSを通じた他者との交流の中で、身体的スキルトレーニングや実世界での技能開発を対象とした支援環境を開発し、その持続性に着目した運用モデルを提案する。本目的達成のため、平成20年度には、下記の項目について実施した。1 SNSべースシステム構築: SNSの標準的な機能に対しては、開発効率向上のため、オープンソース系のSNSべースシステムを採用した。ただし、べースとなるプログラムから、独自開発機能部分は独立して構築し、SNSとしての基本機能を備えたプロトタイプを開発した。2メディア処理技術開発:映像メディアやGPS・HRM等の情報の可視化、文字情報の処理などを、具体的な対象スキルに応じて加工・分析・表現・伝達する目的のため、これらの処理プログラムを設計し試作した。3コミュニティ成長モデル調査・検討:コミュニティの成長モデルには既に幾つかの典型的な研究も行われているが、本研究の主旨に沿ってそれらを再度見直した。その結果、教育・学習支援の対象を実世界での身体スキルとした場合の、新たな適用モデルについて基本検討を行った。4 SNSにおける動機付け機能の検討:魅力ある他者・コンテンツの存在をいかに柔軟に伝達できるかが、SNSの成功・失敗の鍵である。このため、既存のコミュニティ空間での学習者個々の活動やその繋がりを多面的に調査した。結果、学習者間の動機付けを基に支援方略について検討を行った。本研究では、SNSを通じた他者との交流の中で、身体的スキルトレーニングや実世界での技能開発を対象とした支援環境を開発し、その持続性に着目したSNS運用モデルの提案を目指している。平成21年度に実施した研究内容は下記の3つに整理される。1コミュニティ成長モデルの設計コミュニティ成長モデルは、個対個の関係性に基づく枠組みと、群としての枠組みの両面を考慮する必要がある。このコミュニティ成長モデルを、身体を用いるランニングといった運動技能やプレゼンテーションといった対象に適用して、システムを設計・開発した。また、オンラインコミュニティにコミットするSNS内の個々人の動機付けについても並行して調査を行った。2エージェント設計・開発コミュニティ成長モデルの基本検討および個々のユーザの動機付け法略検討に基づき、ユーザ間交流促進を目的としたエージェント機能を設計した。本エージェントは、SNSベースシステムに対し、システム内部でコンテンツと学習者の行動をモニタして内部モデルを更新し、学習者個々に適応的に行動するべくコンテンツ参照推薦メッセージ機能を実現した。3実証実験コミュニティ型の成長に対する前提実験と、学習者の実世界スキルを開発するための、単体実験およびSNS上での結合実験を計画し、一部試行した。SNS上の実験では、前提実験と単体実験結果を考慮して評価設計を行い、そこに組み込むメディア処理技術の有用性に関しても調査を行った。結果として、複数のスキルに対して異なるメディアを同一SNS内で自由に組み合わせる手法を開発できた。本研究では、SNSを通じた他者との交流の中で、身体的スキルトレーニングや実世界での技能開発を対象とした支援環境を開発し、その持続性に着目した運用モデルを検討した。本研究の狙いとして、(I)学習者間でやりとりされる知識や暗黙的なノウハウがコミュニティ空間の中で機能的に相互交換されるシステム設計と、(II)そのコミュニティを活用したスキル開発への動機付け支援の両面を研究対象としている。特に平成22年度は、最新の研究動向を再度調査するとともに、過年度構築したシステムの改善および、多様なコミュニティに対する個の成長モデルに関する研究を実施した。平成22年度の研究では、具体的な身体知の対象としてはプレゼンテーションスキルやナワトビスキル、およびランニングスキルを扱い、コミュニティ空間として、一般的なSNSに加え、Twitterの利用を行った。これらに対し、三軸加速度センサ、赤外線センサ、心拍センサなど、様々なセンサを通じて得られる身体情報をコミュニティ空間に蓄積、共有する事で、個人のスキル向上に寄与すると同時に、コミュニティ全体のスキル向上にも寄与する様子が見られた。ただし、身体知に関しては、学会等での研究討論においても、一般化を論じる事の難しさが指摘されており、今後の当該分野での継続的な研究展開が必要と考える。なおこれらの研究成果は、学会誌や国際・国内での発表を行うと同時に、組織内のCMS上に、WEB上での情報公開を開始した。 | KAKENHI-PROJECT-20700641 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20700641 |
イオンを含む水の微小孔通過時にみられる特異性に関する研究 | 平成13年度は、5ミクロン程度の微小孔からなるフィルターを通過する流れに溶液中の各種イオンがいかなる効果を与えるかについて、以下の実験を行った。(1)約6ミクロン直径の孔が規則的に開けられたニッケル箔を通して生理食塩水とほぼ濃度が等しい0.9%食塩水を流した。まず、圧力一定の条件で流し時間と共に流量の変化のないことを確認した。これにより塵等による孔の詰まりのないことがわかった。次に、膜(この場合ニッケル箔)の上流下流に電極を置き、上流下流間に2ボルトの電圧をかけた。上流側が正電圧の場合は電圧をかけない場合と比較しても流量に大きな差は見られなかった。しかし、上流側を負電圧とすると流量は徐々に低下し1000秒程度後には流量は電圧をかけない場合の1/31/10に低下し(加える圧力によって異なる)、それ以後はほぼ一定となった。このように、上流側が負の電圧の場合のみ流量の著しい低下がみられた。この原因は、現時点では明確ではないが、イオンの電気泳動等の現象と関係あるものと思われる。なお、この現象は蒸留と脱イオン処理を行った純水ではみられなかった.(2)膜を通る流れのPHの変化を膜をはさんで上流下流にPHメーターを置くことにより調べた。この結果、強酸、強アルカリ水溶液ではPHの変化はなかったけれども、弱酸では小さい変化が、弱アルカリ水溶液では膜通過による明らかなPHの変化がみられた。(1)ニッケル(金属)製フィルターとポリカーボネイト製フィルターについて、各種イオンを含んだ水溶液(0.03mol/l)を流し、圧力損失と流量の関係を調べた。ニッケル製フィルター(孔径6.7μm)について、KOH、NaCl水溶液は蒸留とイオン交換を行った水(以後、純水と記す)に比較しほぼ同程度の圧力損失を示したが、NaOH水溶液は純水の3割増の圧力損失を示し、HCl水溶液も2割近い圧力損失増を示した。一方、孔径5.0μmのポリカーボネイト製フィルターでは、上記の各種水溶液は純水とほぼ同じ圧力損失を与えたが、孔径1.2μmのポリカーボネイト製フィルターでは、上記の全ての水溶液が純水よりも大きな圧力損失を示した。以上のことより、イオン種類の他にフィルターの材質も流動特性に大きな影響を与えることがわかる。(2)純水についてもフィルターの材質の違いにより異なる圧力損失が生じることを実験的に示した。すなわち、純水について異なる孔径により得られた圧力損失と流量の実験値を無次元化し、両フィルターについて比較したところ、ポリカーボネイト製フィルターの方がニッケル(金属)製フィルターよりも大きな流動抵抗を与えることがわかった。(3)フィルターの上流下流に電位差を与え流量特性に対する影響を調べた。これについては、明確な結論が得られていないのでさらに実験範囲を広げる予定である。(4)1mm程度のオリフィスから流出するジェットにレーザー光を当て干渉縞の変化から光学的異方性を調べたが、異方性は見られなかった。しかし、流出ジェット部分が暗くなる等の異常性が観察された。これについてもさらに研究を進める必要がある。平成13年度は、5ミクロン程度の微小孔からなるフィルターを通過する流れに溶液中の各種イオンがいかなる効果を与えるかについて、以下の実験を行った。(1)約6ミクロン直径の孔が規則的に開けられたニッケル箔を通して生理食塩水とほぼ濃度が等しい0.9%食塩水を流した。まず、圧力一定の条件で流し時間と共に流量の変化のないことを確認した。これにより塵等による孔の詰まりのないことがわかった。次に、膜(この場合ニッケル箔)の上流下流に電極を置き、上流下流間に2ボルトの電圧をかけた。上流側が正電圧の場合は電圧をかけない場合と比較しても流量に大きな差は見られなかった。しかし、上流側を負電圧とすると流量は徐々に低下し1000秒程度後には流量は電圧をかけない場合の1/31/10に低下し(加える圧力によって異なる)、それ以後はほぼ一定となった。このように、上流側が負の電圧の場合のみ流量の著しい低下がみられた。この原因は、現時点では明確ではないが、イオンの電気泳動等の現象と関係あるものと思われる。なお、この現象は蒸留と脱イオン処理を行った純水ではみられなかった.(2)膜を通る流れのPHの変化を膜をはさんで上流下流にPHメーターを置くことにより調べた。この結果、強酸、強アルカリ水溶液ではPHの変化はなかったけれども、弱酸では小さい変化が、弱アルカリ水溶液では膜通過による明らかなPHの変化がみられた。 | KAKENHI-PROJECT-12875036 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12875036 |
生命科学教育アニメーション教材の開発とインターネット公開による能動学習支援 | 児童・生徒・学生が能動的に生命科学を学習するためには、わかりやすく興味が持て、考えて理解することを直接支援でき、さらにいつでもアクセスできる教材が必要である。インターネットへの教材公開は、これらの条件をおおむね満たすことのできる好適な手法のひとつと考えられる。そこで、本研究では、生命現象をいくつかの系に分けてモジュール化し、それぞれの系ごとにweb教材を作成してインターネットに公開し、児童・生徒・学生の「自ら考え判断する」生命科学の学習を支援することを目指した。生体制御系のうち、webページやアニメーションが威力を発揮し、児童・生徒・学生の知的好奇心を引き出しやすい学習項目として「免疫・アレルギー」、「循環」、「神経科学」を選んで基幹モジュールとした。また、それらの基盤となる「細胞とは?」、「タンパク合成」、「細胞による物質の食べ込み」をサブモジュールとした。教材のインターネット公開については、その仕様を「ネットワークとパソコンがあれば、どこでも、誰でも教材を使えること」とし、具体的には、a)無料の閲覧ソフトが使用可能であること、b)狭い帯域、またはオフライン環境での利用に対応したversionも用意すること、c)プラットフォームを選ばないことの3点を目標とした。なお、公開に際し、著作権と利用権については、当面、GNU GENERAL PUBLIC LICENSE(GPL)に準拠することとした。原を中心として「免疫・アレルギー」、灰田を中心として「循環」「神経科学」の各基幹モジュールについて、まず、比較的高度な内容を持つアニメーション主体の教材を作成した。サブモジュール教材については、山田と渡辺が作成を担当した。作成した教材を関西医科大学のwebサーバで試験公開し、教材改善のためのレビューをおこなった。また、一部は医学部・看護学部等の生命科学教材として講義・演習に実際に利用して、受講生からのレビューを受けた。。当初は、おもにレビューおよび実験授業用の講義ファイルとして教材を分散させて公開し、次に、これらをひとつのサイトに集約させた。これらの結果をもとに、基幹モジュールとサブモジュールとを組み合わせ、小学校高学年から中学生対象の、親しみやすいかたちとする作業に着手した。現在、「アレルギー」、「補体」、「循環」、「細胞とは?」、「タンパク合成」の各教材を、http://image2.kmu.ac.jp/risu/からインターネットに公開中である。児童・生徒・学生が能動的に生命科学を学習するためには、わかりやすく興味が持て、考えて理解することを直接支援でき、さらにいつでもアクセスできる教材が必要である。インターネットへの教材公開は、これらの条件をおおむね満たすことのできる好適な手法のひとつと考えられる。そこで、本研究では、生命現象をいくつかの系に分けてモジュール化し、それぞれの系ごとにweb教材を作成してインターネットに公開し、児童・生徒・学生の「自ら考え判断する」生命科学の学習を支援することを目指した。生体制御系のうち、webページやアニメーションが威力を発揮し、児童・生徒・学生の知的好奇心を引き出しやすい学習項目として「免疫・アレルギー」、「循環」、「神経科学」を選んで基幹モジュールとした。また、それらの基盤となる「細胞とは?」、「タンパク合成」、「細胞による物質の食べ込み」をサブモジュールとした。教材のインターネット公開については、その仕様を「ネットワークとパソコンがあれば、どこでも、誰でも教材を使えること」とし、具体的には、a)無料の閲覧ソフトが使用可能であること、b)狭い帯域、またはオフライン環境での利用に対応したversionも用意すること、c)プラットフォームを選ばないことの3点を目標とした。なお、公開に際し、著作権と利用権については、当面、GNU GENERAL PUBLIC LICENSE(GPL)に準拠することとした。原を中心として「免疫・アレルギー」、灰田を中心として「循環」「神経科学」の各基幹モジュールについて、まず、比較的高度な内容を持つアニメーション主体の教材を作成した。サブモジュール教材については、山田と渡辺が作成を担当した。作成した教材を関西医科大学のwebサーバで試験公開し、教材改善のためのレビューをおこなった。また、一部は医学部・看護学部等の生命科学教材として講義・演習に実際に利用して、受講生からのレビューを受けた。。当初は、おもにレビューおよび実験授業用の講義ファイルとして教材を分散させて公開し、次に、これらをひとつのサイトに集約させた。これらの結果をもとに、基幹モジュールとサブモジュールとを組み合わせ、小学校高学年から中学生対象の、親しみやすいかたちとする作業に着手した。現在、「アレルギー」、「補体」、「循環」、「細胞とは?」、「タンパク合成」の各教材を、http://image2.kmu.ac.jp/risu/からインターネットに公開中である。 | KAKENHI-PROJECT-14022250 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14022250 |
看護学生の首尾一貫感覚と心理社会的汎抵抗資源の因果関係の解明 | 研究目的は、看護学生の首尾一貫感覚と心理社会的汎抵抗資源の因果関係の解明である。2009年度、2010年度入学生を対象に、臨地実習開始前と終了後に質問紙調査を実施した。130名のデータについて、開始前と終了後について平均値の差の検定(Wilcoxonの符号付順位検定)を行ったところ、教員からのサポートとサポート合計において有意差がみられた。また開始前と終了後における首尾一貫感覚とそれ以外の項目について相関係数を調べたところ、心理社会的学習環境、看護職としての職業的アイデンティティ、家族からのサポート、教員からのサポート、友人からのサポート、ソーシャル・サポートの合計に相関関係がみられた。本研究においては、看護学生の首尾一貫感覚と心理社会的汎抵抗資源の因果関係の解明を目的とし、A大学看護系学科2010年度入学生のうち2012年度後期から臨地実習を開始する学生を対象に、ベースライン調査(臨地実習実施前、2012年7月)と追跡調査1(臨地実習前半(病棟における領域実習)実施後、2013年3月)の2回にわたり自記式質問紙調査を実施した。主たる調査項目は、学生の属性、心理社会的な学習環境、臨地実習に臨む姿勢や臨地実習での体験、看護職としての職業的アイデンティティ、期待されるソーシャル・サポートの強さ、首尾一貫感覚(SOC-29)であった。ベースライン調査における対象数は74名、回収数(回収率)は42名(56.8%)、追跡調査1における対象数は74名、回収数(回収率)は60名(81.1%)であった。主要な結果をベースライン調査、追跡調査1の順で以下に示す。心理社会的な学習環境のスコアは14.52(±2.26)から14.38(±2.19)、看護職としての職業的アイデンティティのスコアは43.10(±9.16)から43.02(±8.25)、期待されるソーシャル・サポートの強さのスコアのうち、家族からのサポートは51.93(±9.45)から53.60(±9.21)、教員からのサポートは41.24(±9.53)から42.8(±10.27)、友人からのサポートは51.83(±10.06)から52.42(±9.01)、首尾一貫感覚(SOC-29)のスコアは115.90(±15.22)から121.17(±19.18)となっていた。また、これらの各項目について平均値の差の検定(Wilcoxonの符号付順位検定)を行ったところ、どの項目にも有意差がみられなかった。2010年度入学生を対象に、追跡調査2(臨地実習終了後、2013年10月)を実施した。主たる調査項目は、学生の属性、心理社会的な学習環境、臨地実習に臨む姿勢や臨地実習での体験、看護職としての職業的アイデンティティ、期待されるソーシャル・サポートの強さ、首尾一貫感覚(SOC-29)であった。対象数は74名、回収数(回収率)は53名(71.6%)であった。心理社会的な学習環境のスコアは、14.83(±1.91)、看護職としての職業的アイデンティティのスコアは43.47(±7.27)、期待されるソーシャル・サポートの強さのスコアのうち、家族からのサポートは54.08(±8.43)、教員からのサポートは41.16(±9.20)、友人からのサポートは52.69(±8.90)、147.76(±21.69)、首尾一貫感覚(SOC-29)のスコアは120.11(±18.37)となっていた。また、これらの各項目について、ベースライン調査(臨地実習開始前)と追跡調査2の平均値の差の検定(Wilcoxonの符号付順位検定)を行ったところ、2009年度入学生のソーシャル・サポートの合計のみ有意差がみられた(p=0.01)。さらに、2009年度入学生と2010年度入学生のベースライン調査を用い、先の各項目について平均値の差の検定(Wilcoxonの順位和検定)を行ったところ、有意差がみられなかった。そこで両者のデータを統合し、平均値の差の検定(Wilcoxonの符号付順位検定)を行ったところ、教員からのサポート(p=0.009)とサポート合計(p=0.019)において有意差がみられた。また、首尾一貫感覚(SOC-29)とそれ以外の項目について相関係数を調べたところ、心理社会的な学習環境は0.322、看護職としての職業的アイデンティティは0.392、家族からのサポートは0.391、教員からのサポートは0.258、友人からのサポートは0.389、ソーシャル・サポートの合計は0.423となっており、いずれについても相関関係がみられた。研究目的は、看護学生の首尾一貫感覚と心理社会的汎抵抗資源の因果関係の解明である。2009年度、2010年度入学生を対象に、臨地実習開始前と終了後に質問紙調査を実施した。130名のデータについて、開始前と終了後について平均値の差の検定(Wilcoxonの符号付順位検定)を行ったところ、教員からのサポートとサポート合計において有意差がみられた。 | KAKENHI-PROJECT-23792553 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23792553 |
看護学生の首尾一貫感覚と心理社会的汎抵抗資源の因果関係の解明 | また開始前と終了後における首尾一貫感覚とそれ以外の項目について相関係数を調べたところ、心理社会的学習環境、看護職としての職業的アイデンティティ、家族からのサポート、教員からのサポート、友人からのサポート、ソーシャル・サポートの合計に相関関係がみられた。本研究においては、看護学生の首尾一貫感覚と心理社会的汎抵抗資源の因果関係の解明を目的とし、A大学看護系学科2009年度入学生のうち2011年度後期から臨地実習を開始する学生を対象に、ベースライン調査(臨地実習実施前、2011年9月)と追跡調査(1)(臨地実習前半(病棟における領域実習)実施後、2012年3月)の2回にわたり自記式質問紙調査を実施した。主たる調査項目は、学生の属性、心理社会的な学習環境、臨地実習に臨む姿勢や臨地実習での体験、看護職としての職業的アイデンティティ、期待されるソーシャル・サポートの強さ、首尾一貫感覚(SOC-29)であった。ベースライン調査における対象数は69名、回収数(回収率)は55名(79.7%)、追跡調査(1)における対象数は67名、回収数(回収率)は58名(86.6%)であった。主要な結果をベースライン調査、追跡調査(1)の順で以下に示す。心理社会的な学習環境のスコアは14.25(SD2.45)から14.71(SD1.95)、看護職としての職業的アイデンティティのスコアは45.29(SD7.11)から45.80(SD7.72)、期待されるソーシャル・サポートの強さのスコアのうち、家族からのサポートは53.81(SD9.01)から53.47(SD9.70)、教員からのサポートは38.31(SD9.59)から42.51(SD9.88)、友人からのサポートは51.94(SD3.36)から54.02(SD7.02)、首尾一貫感覚(SOC-29)のスコアは118.22(SD19.02)から119.98(SD19.74)となっていた。また、これらの各項目について平均値の差の検定(Wilcoxonの符号付順位検定)を行ったところ、教員からのサポート(p=0.003)において有意差がみられた。平成24年度に実施予定であった質問紙調査2(ベースライン調査、追跡調査1)を滞りなく実施することができたこと、また、これら各々についての単純集計や関連についての検定、マッチングしたうえでの平均値の差の検定を行い、共分散構造分析を行ううえでの示唆を得ることができたことにより、おおむね順調に進展していると考えた。平成23年度に実施予定であった質問紙調査(1)(ベースライン調査、追跡調査(1))を滞りなく実施することができたこと、また、これら各々についての単純集計、相関分析、マッチングしたうえでの平均値の差の検定を行い、共分散構造分析を行ううえでの示唆を得ることができたことにより、おおむね順調に進展していると考えた。平成25年度は、2010年度入学生の追跡調査2(9月)を実施予定。2009年度入学生、2010年度入学生毎に、実施した3つの調査のデータを統合し、共分散構造分析を行うことによって首尾一貫感覚と心理社会的汎抵抗資源の因果関係を明らかにしたい。また、2009年度入学生と2010年度入学生の比較も行う予定である。そして、これらにより得られた成果を、順次各種学会等にて発表予定である。平成24年度は、2009年度入学生の追跡調査(2)(9月)、2010年度入学生のベースライン調査(7月)及び追跡調査(1)(3月)を実施予定。今年度をもって2009年度入学生の追跡は終了となる。そのため、各調査の分析を進めるとともに、2009年度入学生を対象に実施した3つの調査のデータを統合し、共分散構造分析を行うことによって首尾一貫感覚と心理社会的汎抵抗資源の因果関係を明らかにしたい。また、2009年度入学生と2010年度入学生の比較も行う予定である。そして、これらにより得られた成果を、順次各種学会等にて発表予定である。 | KAKENHI-PROJECT-23792553 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23792553 |
らせん状のメソ細孔を有するメソポーラスシリカの合成と触媒・分離剤への応用 | カチオン性の官能基を有するシランをシリカ源の一部の共構造規定剤(CSDA)として用いることによってアニオン性界面活性剤を用いて均一かつ極めて規則性の高いメソ細孔の配列を有するメソポーラスシリカ"AMS"シリーズが合成できる。このうち、AMS-3は2次元ヘキサゴナル構造であるが、AMS-3の特別な例としてらせん状の細孔を持つキラルなシリカ多孔体が合成できた。界面活性剤として、ミリストイル-L-アラニン(C_<14>-L-Ala)のNa塩を用い、第四級アンモニウム塩であるN-トリメトキシシリルプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライドをCSDAとして得られるメソポーラスシリカはMCM-41のような2次元六方晶であり、また均一なメソ細孔(2.2nm)と高い比表面積を有していることが分かった。この試料を走査型電子顕微鏡により観察したところ、長さ1-6μm、直径130-180nmの六角柱ロッド状の粒子がねじれた形態をしていた。また、高分解能透過型電子顕微鏡観察により、内部にキラルなメソ細孔が存在しており、その方向は外形のねじれ方向と一致していることが判明した(カット(d))。ただし、現段階ではメソ細孔のねじれ方向は一方のみ(100:0)ではなく、右巻き:左巻き=75:25程度にとどまっている。ミリストイル-D-アラニンを用いると、右巻き:左巻き=25:75となった。この結果から、アミノ酸系光学活性界面活性剤の局所的なキラリティー構造が、細孔構造だけでなく、メソポーラスシリカの形態にまで反映されたものと言える。この物質はラセミ体の光学分割のための吸着分離材料として用いたところ、有意なレベルでの分割が確認できた。カチオン性の官能基を有するシランをシリカ源の一部の共構造規定剤(CSDA)として用いることによってアニオン性界面活性剤を用いて均一かつ極めて規則性の高いメソ細孔の配列を有するメソポーラスシリカ"AMS"シリーズが合成できる。このうち、AMS-3は2次元ヘキサゴナル構造であるが、AMS-3の特別な例としてらせん状の細孔を持つキラルなシリカ多孔体が合成できた。界面活性剤として、ミリストイル-L-アラニン(C_<14>-L-Ala)のNa塩を用い、第四級アンモニウム塩であるN-トリメトキシシリルプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライドをCSDAとして得られるメソポーラスシリカはMCM-41のような2次元六方晶であり、また均一なメソ細孔(2.2nm)と高い比表面積を有していることが分かった。この試料を走査型電子顕微鏡により観察したところ、長さ1-6μm、直径130-180nmの六角柱ロッド状の粒子がねじれた形態をしていた。また、高分解能透過型電子顕微鏡観察により、内部にキラルなメソ細孔が存在しており、その方向は外形のねじれ方向と一致していることが判明した(カット(d))。ただし、現段階ではメソ細孔のねじれ方向は一方のみ(100:0)ではなく、右巻き:左巻き=75:25程度にとどまっている。ミリストイル-D-アラニンを用いると、右巻き:左巻き=25:75となった。この結果から、アミノ酸系光学活性界面活性剤の局所的なキラリティー構造が、細孔構造だけでなく、メソポーラスシリカの形態にまで反映されたものと言える。この物質はラセミ体の光学分割のための吸着分離材料として用いたところ、有意なレベルでの分割が確認できた。 | KAKENHI-PROJECT-17656261 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17656261 |
顆粒球コロニー刺激因子による精神疾患への細胞治療の開発 | 末梢血中の造血幹細胞の増加を介して,脳内の神経新生を増やす新たな治療手段の開発を目指した。初めに,末梢への幹細胞投与と,末梢血中の栄養因子を増加させる効果が明らかとなってきた抗うつ薬を組み合わせることが,難治性の精神疾患モデルに対して,有効な手段となり得る可能性を示した。また,末梢からの細胞の脳内移行について解析を進め,投与細胞が,視床下部近傍のオキシトン/バソプレッシン作用部位の領域に強く集積すること,そして,モデルラットの養育行動変化の解析から,投与細胞が信頼・愛着に基づく社会認知や社会行動を改善している可能性を明らかとし,精神疾患に対する末梢造血幹細胞移植研究の道筋を示した。幹細胞治療は脳の疾患に対しても盛んに研究が行われている。脳病変に幹細胞を到達させる方法として,末梢静脈からの幹細胞移植は侵襲が少ないが,直接脳内に移植する場合と比べて,脳への移行効率が劣る。そこで,移植細胞の脳への移行を向上させる目的で,アテロコラーゲンを用いた検討を行った。慢性アルコール曝露モデルラットを用いた検討において,移植に用いる神経幹細胞を,放射性同位元素([35S]-methionine)にて標識し,ラット尾静脈より移植後の脳内への移植細胞の移行性と脳内分布について調べた。移植40日後に脳組織を取り出し,皮質・海馬・線条体・側脳室下帯に分割後,各脳領域のホモジネートサンプルに含まれる放射活性を測定した。結果,アテロコラーゲンを添加した神経幹細胞を移植した場合に,アテロコラーゲンを用いない群と比較して,移植した細胞の脳内移行率がいずれの脳部位においても向上した。また,アテロコラーゲンがラット神経幹細胞に与える影響に関する,in vitroでの検討では,0.05%以下のアテロコラーゲン濃度で培養神経幹細胞の生存,増殖および遊走能に有意な影響を示さなかった。0.03から0.05%のアテロコラーゲンは,神経幹細胞の神経分化を減少させ,アストロサイトへの分化を増加させた。これらの結果から,中枢神経疾患に対する末梢静脈からの神経幹細胞投与による幹細胞治療において,0.03%未満のアテロコラーゲンは神経幹細胞の機能に影響を与えることなく,神経幹細胞の脳内への移行を向上させることが期待される。近年,うつ病や統合失調症といった精神疾患においても,神経変性疾患の病態と類似した神経回路網の障害による器質的変化が疾患の成立に関わるとの報告が増えている。これまでに我々は,精神疾患に対しても,障害された神経回路網の修復を目的とした神経幹細胞移植が治療法として有用なのではないかと考え,胎児性アルコールスペクトラム障害(妊娠中の飲酒による出生児の障害:FASD)モデルラットに対して,胎児脳由来の神経幹細胞を経静脈的に移植し,多動性と衝動性といった,FASDに特徴的な症状が改善する可能性を示してきた。さらに,現在,脳梗塞に対する自家骨髄移植の臨床試験において,末梢静脈から移植された造血幹細胞が脳内で神経系の細胞に分化することがわかってきたてことから,本研究では,末梢血中の造血幹細胞を増加させることで脳内の神経新生を増やすことができるのであれば,G-CSFの投与によっても造血幹細胞移植と同様の効果が期待できるのではないかと考え研究を進めてきた。初年度,及び2年目において,末梢への幹細胞投与と,末梢血中の栄養因子を増加させる効果が明らかとなってきた抗うつ薬を組み合わせることが,より難治性の精神疾患モデルに対して,有効な手段となり得る可能性を示した。3年目では,残念ながらG-CSFを投与する予備検討までとなったが,末梢からの細胞の脳内移行について解析を進め,投与細胞が,視床下部・扁桃体等のオキシトン/バソプレッシン作用部位の領域に強く集積すること,そして,FASDモデルラットの養育行動変化の解析から,投与細胞がオキシトシン/バソプレッシンシステムを増強し,信頼・愛着・絆に基づく社会認知や社会行動を改善している可能性を明らかとし,末梢造血幹細胞移植研究の道筋を作ることができた。末梢血中の造血幹細胞の増加を介して,脳内の神経新生を増やす新たな治療手段の開発を目指した。初めに,末梢への幹細胞投与と,末梢血中の栄養因子を増加させる効果が明らかとなってきた抗うつ薬を組み合わせることが,難治性の精神疾患モデルに対して,有効な手段となり得る可能性を示した。また,末梢からの細胞の脳内移行について解析を進め,投与細胞が,視床下部近傍のオキシトン/バソプレッシン作用部位の領域に強く集積すること,そして,モデルラットの養育行動変化の解析から,投与細胞が信頼・愛着に基づく社会認知や社会行動を改善している可能性を明らかとし,精神疾患に対する末梢造血幹細胞移植研究の道筋を示した。うつ病や患者において,末梢血中の脳由来神経栄養因子(BDNF)との関連が多く報告されているが,末梢血BDNFがうつ病の病態・治療にどのような意義を持つのかについては明らかにされていない。またインターフェロン治療中にうつ病を合併しやすいことが知られており,うつ病患者の脳内で炎症性サイトカインが増加していることが報告されている。そこでインターフェロン誘発性うつ病における血中BDNFの動態変化を解析した。インターフェロン療法を受けた患者の血清サンプルを解析した結果,インターフェロン治療開始後に,ほぼ全ての患者において,血中BDNFが有意に低下した。そのうち,睡眠障害や食欲不振など,何らかの抑うつ症状を発現した患者では血中BDNFの減少の程度が有意に高かった。 | KAKENHI-PROJECT-23591678 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23591678 |
顆粒球コロニー刺激因子による精神疾患への細胞治療の開発 | 抑うつ症状を呈した患者には抗うつ薬や睡眠薬が使用され,これらの患者では,薬剤投与後に血中BDNFの急激な増加が認められた。また,末梢血BDNFの血液脳関門(BBB)を介しての脳内移行性について,ラットを用いて検討した。ラット尾静脈より蛍光標識したBDNFを投与後に,脳組織切片を作成したところ,末梢血内へ投与したBDNFが,特に海馬歯状回領域でBBBを超えて脳内へ移行し脳の実質細胞に取り込まれていた。以上より,うつ病と末梢血中BDNF低下との相関,また抗うつ薬が末梢血中のBDNFを増加させ,増加したBDNFがBBBを通過して中枢神経系に作用することで症状を改善させている可能性が示唆された。計画した程度には,当該研究に時間を割くことができなかった。精神疾患と再生医療に関連した予備的研究として,アテロコラーゲンが末梢循環より移植した神経幹細胞の脳内移行率を向上させることを明らかにした。しかし,G-CSFを用いた検討には至らなかった。計画した程度には,当該研究に時間を割くことができなかった。サイトカインと精神疾患に関連した予備的研究として,インターフェロンとうつ病に関する研究を行った。しかし,G-CSFを用いた検討には至らなかった。顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の投与が精神疾患の病態を改善させる可能性について,コントロール群,FASDモデル群と,それぞれにG-CSFを投与した群の,計4群を用意する。1コントロール群に対し,胎生期(胎生10-13日)に1日あたり6g/kgのアルコールを母体へ投与し出生した仔を,2FASDモデル群とする。次に,コントロールの生後1ヶ月にG-CSFを投与した,3コントロールーG-CSF群,および,病態モデルにG-CSFを投与した,4FASD-G-CSF群をそれぞれ作成する。G-CSF投与後1ヶ月の時点で,以下の方法により,FASDの代表的な臨床症状である多動性と衝動性,社会性の障害を評価し,G-CSF投与が精神疾患の症状におよぼす治療的な効果についての解析を実施する。次に,G-CSF投与により,循環血中に動員された造血幹細胞が脳内に移行するメカニズムを明らかにするために,骨髄細胞のみをGFP(+)細胞に入れ替えたラットを作製し,G-CSF投与後の脳スライス切片を用いて脳内に移行したGFP(+)細胞を評価・検索する。FASDモデルラットを用いた申請者らのこれまでの検討で,コントロール群に比較して,病態モデル群では,末梢の静脈から注入した幹細胞がより多く脳内へ移行することがわかっている。今回の,骨髄から動因された造血幹細胞の脳移行についての検討でも同様の差異があるかどうか,FASDモデルラットを用いて確認していく。顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の投与が精神疾患の病態を改善させる可能性について,胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)を用いて行動薬理学的に解析するとともに,行動異常改善と結びつく脳内神経回路網変化を検索する。次に,末梢血中の造血幹細胞が脳内に移行する機序の解明と,それによる脳神経系の変化を調べるために,GFP(green fluorescent protein) | KAKENHI-PROJECT-23591678 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23591678 |
聴覚障害児における音楽的表現活動の発達的考察 | 聴覚障害児の音楽的表現活動を明らかにするための一研究として、聾学校に在籍する児童の歌唱場面をビデオカメラにより録音・録画し、児童が歌った「かえるのがっしょう」「すきな歌」を採譜した結果と音響的な分析を通して、聴覚障害児の歌唱について検討した。A聾学校に在籍する聴覚障害児童21名(4年生13人、6年生8人、良聴耳平均聴力レベルは65dBHL130dBHL)の歌った「かえるのがっしょう」のフレーズごとの持続時間、1拍の平均持続時間を算出し、聴覚障害児の歌の時間的側面について検討した。その結果、9名の歌はフレーズによって持続時間に違いがみられた。休符の省略や歌詞の追加がみられ、そのことによりフレーズごとの持続時間が異なったと考えられる。フレーズごとの持続時間を基に1拍の平均持続時間を算出すると、フレーズごとの持続時間に比べ、1拍の平均持続時間はフレーズによる違いが少なく、全フレーズで一定した歌が多かった。歌詞の追加やリズムの違い(休符省略、1拍複数音節)によってフレーズの持続時間は異なっても、曲全体を通して、ある一定の拍で歌われた歌が多かったといえる。さらに、A聾学校小学部2年に在籍する聴覚障害児童5名(良聴耳平均聴力レベルは102dBHL120dBHL)が歌う「すきな歌」と「かえるのがっしょう」を採譜した結果をもとに、重度聴覚障害児の歌にみられるリズムとメロディをみると、同じ児童の歌でも、歌によって音の高さの範囲は異なり、歌や歌詞によって音の高さや高さの進行パタンを変化させていると考えられた。対象児の歌には、フレーズ内で、または歌全体を通して、一定の拍が存在した。拍内でのリズムや音の高さの変化は、歌詞や児童によって異なっており、歌詞(言葉)を拍に当てはめることで様々なリズムや音高の変化が生じていることが示唆された。聴覚障害児における音楽的表現を明らかにしていくために、今年度は、聴覚障害児は実際にどのように歌っているのか、楽しんでいるとすれば、それはどのように表されているのかを詳細に分析した。聾学校に在籍する聴覚障害児童の歌唱場面をビデオカメラによって記録し、歌の採譜、身体の動きの記述による分析を行い、聴覚障害児童の歌唱について検討した。方法及び結果・考察の概要は以下の通りである。対象はA聾学校小学部に在籍する聴覚障害児2年生5名で、良聴耳平均聴力レベルが102120dBHLの重度聴覚障害を有する児童であった。「かえるのがっしょう」の歌詞を提示し個別に歌ってもらった。歌唱終了後、歌ったことについての感想を3段階で評価してもらったところ、全員が「楽しかった」との答えであった。対象児全員が身体の動きを伴わせて歌い、歌に伴って動いた身体部位が、歌全体を通して変化の少ない児童の歌は、比較的音の高さの変化が少なく、音の高さの幅は狭い範囲であった。反対に、音の高さの変化、及び幅が比較的広い範囲であった児童の身体の動きは、より短い単位で動かす部位が異なったり、他の児童に比して頭足の多くの部位を動かす、大きな動きがみられた聴覚障害児童においては、身体の動きと歌唱表現との関連が示唆された。また、擬音語といわれることばの部分のリズムは特徴的で、歌詞によって声の高さやリズムが異なっていることが示された。すなわち、重度聴覚障害児が、歌詞に合せて声の高さを変化させたり、リズムを変えて歌っていること、,聴覚障害児の歌が歌詞と関連して表されることが示唆された。今後は、リズム構造や身体の動きとの関連など、さらに詳細な分析を進めるとともに、対象を広げ発達的な検討を行っていきたい。なお、日本特殊教育学会第41回大会(2003年9月)にて本研究の一部を報告した。聴覚障害児の音楽的表現活動を明らかにするための一研究として、聾学校に在籍する児童の歌唱場面をビデオカメラにより録音・録画し、児童が歌った「好きな歌」の分析を通して、聴覚障害児の歌唱について検討した。対象は、A聾学校小学部に在籍する児童29名(良聴耳の平均聴力レベルは、76dBHL130dBHL)であった。課題は、調査者との個別の場面で好きな歌を歌うことであった。教示は、「すきなうたをうたってください」と書面により提示し、口頭で好きな歌なら何でもよいことを説明した。A聾学校内の一室にデジタルビデオカメラを三脚で設置し、歌唱の様子を録音・録画した。23人が「好きな歌」を歌った。歌われた曲は全部で17曲で、そのうち14曲は、在籍する聾学校の音楽科の授業で扱われた歌(調査時期に扱われていた歌を含む)であった。23人の歌は採譜により楽譜に示された。23人の歌を構成するリズムは、A.歌全体を通して原曲とほぼ同じ、B.部分的に原曲とは別のリズムに置き換え、C.歌全体を通して原曲とは別のリズムで構成されたものに分類された。原曲とは別のリズムを持った歌には、音節毎に均等な音の長さで歌われたものと符点や三連符で表されるリズムで構成されたものとがみられた。歌詞である言葉やその音の発音と関連して、独自のリズムによる歌が表されたと考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-03J00306 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03J00306 |
聴覚障害児における音楽的表現活動の発達的考察 | 各児童の歌の音程の変化は、a.歌全体を通して音程の変化が大きい、b.部分的に音程の変化(短3度以上)がある、c.歌全体を通して音程の変化が少ない(短3度未満)歌がみられた。リズムの独自性や計量の変化の大きさは様々で、それらが組み合わされて表された。多くの児童の歌に共通してフレーズ内のテンポの安定、拍が一定していることが認められた。言葉に独自のリズムや音の高さの変化をつけて歌が表現されていることが示された。聴覚障害児の音楽的表現活動を明らかにするための一研究として、聾学校に在籍する児童の歌唱場面をビデオカメラにより録音・録画し、児童が歌った「かえるのがっしょう」「すきな歌」を採譜した結果と音響的な分析を通して、聴覚障害児の歌唱について検討した。A聾学校に在籍する聴覚障害児童21名(4年生13人、6年生8人、良聴耳平均聴力レベルは65dBHL130dBHL)の歌った「かえるのがっしょう」のフレーズごとの持続時間、1拍の平均持続時間を算出し、聴覚障害児の歌の時間的側面について検討した。その結果、9名の歌はフレーズによって持続時間に違いがみられた。休符の省略や歌詞の追加がみられ、そのことによりフレーズごとの持続時間が異なったと考えられる。フレーズごとの持続時間を基に1拍の平均持続時間を算出すると、フレーズごとの持続時間に比べ、1拍の平均持続時間はフレーズによる違いが少なく、全フレーズで一定した歌が多かった。歌詞の追加やリズムの違い(休符省略、1拍複数音節)によってフレーズの持続時間は異なっても、曲全体を通して、ある一定の拍で歌われた歌が多かったといえる。さらに、A聾学校小学部2年に在籍する聴覚障害児童5名(良聴耳平均聴力レベルは102dBHL120dBHL)が歌う「すきな歌」と「かえるのがっしょう」を採譜した結果をもとに、重度聴覚障害児の歌にみられるリズムとメロディをみると、同じ児童の歌でも、歌によって音の高さの範囲は異なり、歌や歌詞によって音の高さや高さの進行パタンを変化させていると考えられた。対象児の歌には、フレーズ内で、または歌全体を通して、一定の拍が存在した。拍内でのリズムや音の高さの変化は、歌詞や児童によって異なっており、歌詞(言葉)を拍に当てはめることで様々なリズムや音高の変化が生じていることが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-03J00306 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03J00306 |
揮発性吸入麻酔薬が肝細胞の糖代謝と肝細胞内カルシウム動態に及ぼす影響に関する研究 | ラット初代培養肝細胞を用いて,1.揮発性吸入麻酔薬(ハロタン,イソフルラン,セボフルラン)や低酸素が肝細胞の糖代謝に及ぽす影響,2.揮発性吸入麻酔薬が肝細胞内カルシウム濃度に及ぽす影響について検討を行った.1.揮発性吸入麻酔薬や低酸素が肝細胞の糖代謝に及ぽす影響(1)揮発性吸入麻酔薬は肝細胞からの乳酸の放出を濃度依存性に増加させた.(2)揮発性吸入麻酔薬は肝細胞内のグリコーゲン量を減少させ,グルコースの放出量を増加させた.(3)低酸素暴露自体により肝細胞からの乳酸とグルコースの放出が増加するが,この現象に対する揮発性吸入麻酔薬の相加的作用は認められなかった.2.揮発性吸入麻酔薬が肝細胞内カルシウム濃度に及ぽす影響(1)揮発性吸入麻酔薬は濃度依存性に肝細胞内カルシウム濃度を増加させた.(2)その増加はカルシウムチャネルブロッカーであるニッケルの細胞外投与により一部抑制された.(3)ニッケルは揮発性吸入麻酔薬による肝細胞のグリコーゲン分解や乳酸放出を一部抑制した.(4)カルシウムキレート剤(EGTA, BAPTA),カルシウムATPase阻害剤(thapsigargin)は揮発性吸入麻酔薬による肝細胞糖代謝の変化や肝細胞内カルシウム濃度の増加を抑制しなかった.(5)カルシウムイオノフォア(A23187)は肝細胞の糖代謝に影響を及ぽさなかった.以上より,揮発性吸入麻酔薬は培養肝細胞におけるグリコーゲン分解と解糖を促進させ,好気的条件下でも濃度依存性に乳酸の放出を増加させるが、嫌気的条件では低酸素自体による糖代謝の変化に対して相加的作用をもたないことが明らかとなった.また,揮発性吸入麻酔薬が肝細胞のグリコーゲン分解や解糖を亢進させる機序として,細胞内カルシウムの増加が一因を担っている可能性は否定できないが,他のメカニズムが関与している可能性が高いことが示唆された.好気的条件下で揮発性吸入麻酔薬は肝細胞のグルコースと乳酸の放出を促進させる.このとき肝細胞内のグリコーゲン量が減少することから,揮発性吸入麻酔薬はグリコーゲン分解と解糖を促進させるものと考えられる.しかし,嫌気的条件下での影響はまだ明確でない.今年度に行った実験では,より生体に近い形態で,揮発性吸入麻酔薬が肝細胞の糖代謝に及ぼす影響を調べるために,コラゲナーゼ還流法で分離したラットの培養肝細胞を用いて実験を行った.実験はグルコース,インスリン,デキサメサゾンを含むL-15培地で24時間培養し,グルコース5mMを含むHanks液に培地を置換後,37°Cで窒素および揮発性吸入麻酔薬であるハロタンとともに2時間混和した.ハロタンは上清中の濃度が01000μMになるように気化器を用いて調整した.上清中のグルコース濃度,乳酸濃度とpH,肝細胞内グリコーゲン量を測定した.その結果,上清中のグルコース濃度,乳酸濃度,pH,肝細胞内グリコーゲン量にハロタンは濃度依存性の有意な影響を及ぼさなかった.以上のことより,好気的条件と嫌気的条件ではハロタンは,肝細胞の糖代謝に及ぼす影響が異なることが示唆された.従って次年度では,麻酔薬の種類と濃度を変えてさらに調べるとともに,揮発性吸入麻酔薬が肝細胞内のCa濃度変化に及ぼす影響を,蛍光試薬を用いて画像解析を行って調べる予定である.ラット初代培養肝細胞を用いて,1.揮発性吸入麻酔薬(ハロタン,イソフルラン,セボフルラン)や低酸素が肝細胞の糖代謝に及ぽす影響,2.揮発性吸入麻酔薬が肝細胞内カルシウム濃度に及ぽす影響について検討を行った.1.揮発性吸入麻酔薬や低酸素が肝細胞の糖代謝に及ぽす影響(1)揮発性吸入麻酔薬は肝細胞からの乳酸の放出を濃度依存性に増加させた.(2)揮発性吸入麻酔薬は肝細胞内のグリコーゲン量を減少させ,グルコースの放出量を増加させた.(3)低酸素暴露自体により肝細胞からの乳酸とグルコースの放出が増加するが,この現象に対する揮発性吸入麻酔薬の相加的作用は認められなかった.2.揮発性吸入麻酔薬が肝細胞内カルシウム濃度に及ぽす影響(1)揮発性吸入麻酔薬は濃度依存性に肝細胞内カルシウム濃度を増加させた.(2)その増加はカルシウムチャネルブロッカーであるニッケルの細胞外投与により一部抑制された.(3)ニッケルは揮発性吸入麻酔薬による肝細胞のグリコーゲン分解や乳酸放出を一部抑制した.(4)カルシウムキレート剤(EGTA, BAPTA),カルシウムATPase阻害剤(thapsigargin)は揮発性吸入麻酔薬による肝細胞糖代謝の変化や肝細胞内カルシウム濃度の増加を抑制しなかった.(5)カルシウムイオノフォア(A23187)は肝細胞の糖代謝に影響を及ぽさなかった.以上より,揮発性吸入麻酔薬は培養肝細胞におけるグリコーゲン分解と解糖を促進させ,好気的条件下でも濃度依存性に乳酸の放出を増加させるが、嫌気的条件では低酸素自体による糖代謝の変化に対して相加的作用をもたないことが明らかとなった.また,揮発性吸入麻酔薬が肝細胞のグリコーゲン分解や解糖を亢進させる機序として,細胞内カルシウムの増加が一因を担っている可能性は否定できないが,他のメカニズムが関与している可能性が高いことが示唆された. | KAKENHI-PROJECT-12770820 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12770820 |
新興国における、文化の違いを活かしたマネジメント | 前年度の比較事例分析から導出したクロスバージェンス(文化形成)のプロセスモデルについて、モデル構築のためには、定性的な研究のほか、定量分析の厳密な手法で有効性を検証することが不可欠である。したがって当該年度は多国籍企業の子会社の従業員に対して質問票調査を行い実証研究を行った。バイアスを防ぐために回答内容は回答者から申請者へ直接郵送された。その集計結果を統計的に分析した結果として、これまで提示されていたモデルを覆す仮説が生まれた。この仮説は、理論的な観点からも精査を行うなど来年度に更なる検証を行う。並行して事例研究も行った。海外の多国籍企業を訪問し、営業・マーケティング現場において参与しない観察を行った。例えば、ブラジルの中心部および郊外の商品の営業現場を観察してそこから文化や制度についての情報収集に努めた。さらに、海外子会社の経営者層および現場マネジャーへのインタビュー調査も行った。計15時間あまり、現在の事業状況やこれまでの軌跡、現在の課題について伺った。これら通じて先に構築した仮説の妥当性を検証した。さらに、前年度の事例研究の成果について、学会での発表や論文投稿を行うことでモデルをブラッシュアップした。研究成果は組織学会の全国大会、国際ビジネス研究学会の関西部会および各種研究会の場をかりて報告し、意見交換を行った。その成果をまとめた論文は、国際ビジネス研究学会の2018年度の優秀院生賞を受賞した。おおむね当初に立てた計画に沿って進展している。予め論文投稿および学会発表の予定を定めていたため、それらの日程をマイルストーンとすることで遅れもなく進展している。予期せぬ出来事としては、質問票調査の回答率が想定よりも低いことがあった。これについては、Dillman et al., (2001)、Cook et al., (2000)およびKaplowitz et al.,(2004)などの調査設計方法について議論した研究を参照として対策を講じた。具体的には、上記の論文を参考に調査対象企業の条件を再度精査した上て、調査対象企業を拡げたり、部分的に再度質問票を配布したりすることで対応した。参考文献定量研究の成果について、学会での発表および論文掲載を目指す。さらに、一連の研究をまとめてプロセスモデルを導出するための理論研究を行う。理論面から発展させるために、国内外の学会での研究報告および論文発表を行い、意見交換を行う必要がある。具体的には、国際ビジネス研究学会および組織学会にて研究成果を発表して、意見交換を通じて知見を得て、理論を精緻化する。本研究は新興国における文化の違いが子会社マネジメントに及ぼす影響およびそのプロセスについて検討しようとするものである。多国籍企業の海外子会社は2種の文化の影響下に置かれている。立地国の国民文化と多国籍企業としての組織文化の2つの影響下にある。これらが相反する場合には、文化的衝突が生じて、子会社は業績不振やイノベーションの抑制に苛まれる可能性がある。この問題は特に文化的距離の大きい新興国にて観察される。この現象を乗り越えるためには、海外子会社が新たな組織文化を形成するクロスバージェンス・アプローチが提示されている。国の文化と組織文化を折衷した組織文化を、各国の海外子会社が独自に形成するのである。しかしその具体的な形成プロセスモデルは提示されていないため、本研究にて明らかにする。平成29年度は事前の計画通り定性調査を行った。一連の研究は、各海外子会社が文化的差異を活かしながら事業を成功させている日系多国籍企業を対象とし、そのブラジル、メキシコ、中国子会社の定性調査を行った。さらに多国籍企業の組織文化を把握するために、本社国である日本の各階層の経営幹部へのヒアリングを行った。こうして得たデータを、事前に導出していた仮説モデルと比較検討し、複数の子会社の比較事例分析を行うことで仮説モデルを精緻化した。さらにモデルの構築には日本における海外子会社の進化のプロセスモデルについての第一人者の参加する研究会にも出席し意見交換を通じてモデルの精緻化を進めた。事前の計画通り、平成29年度中に定性調査を終え、国内外のジャーナル向けの論文執筆を行っている。前年度の比較事例分析から導出したクロスバージェンス(文化形成)のプロセスモデルについて、モデル構築のためには、定性的な研究のほか、定量分析の厳密な手法で有効性を検証することが不可欠である。したがって当該年度は多国籍企業の子会社の従業員に対して質問票調査を行い実証研究を行った。バイアスを防ぐために回答内容は回答者から申請者へ直接郵送された。その集計結果を統計的に分析した結果として、これまで提示されていたモデルを覆す仮説が生まれた。この仮説は、理論的な観点からも精査を行うなど来年度に更なる検証を行う。並行して事例研究も行った。海外の多国籍企業を訪問し、営業・マーケティング現場において参与しない観察を行った。例えば、ブラジルの中心部および郊外の商品の営業現場を観察してそこから文化や制度についての情報収集に努めた。さらに、海外子会社の経営者層および現場マネジャーへのインタビュー調査も行った。計15時間あまり、現在の事業状況やこれまでの軌跡、現在の課題について伺った。これら通じて先に構築した仮説の妥当性を検証した。さらに、前年度の事例研究の成果について、学会での発表や論文投稿を行うことでモデルをブラッシュアップした。研究成果は組織学会の全国大会、国際ビジネス研究学会の関西部会および各種研究会の場をかりて報告し、意見交換を行った。 | KAKENHI-PROJECT-17J06895 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J06895 |
新興国における、文化の違いを活かしたマネジメント | その成果をまとめた論文は、国際ビジネス研究学会の2018年度の優秀院生賞を受賞した。おおむね当初に立てた計画に沿って進展している。予め論文投稿および学会発表の予定を定めていたため、それらの日程をマイルストーンとすることで遅れもなく進展している。予期せぬ出来事としては、質問票調査の回答率が想定よりも低いことがあった。これについては、Dillman et al., (2001)、Cook et al., (2000)およびKaplowitz et al.,(2004)などの調査設計方法について議論した研究を参照として対策を講じた。具体的には、上記の論文を参考に調査対象企業の条件を再度精査した上て、調査対象企業を拡げたり、部分的に再度質問票を配布したりすることで対応した。参考文献平成29年度が予定通りに進行したため、平成30年度も当初の予定に沿って研究を進める。具体的には、前年度に比較事例分析から導出したプロセスモデルについて、定量分析の厳密な手法を以って有効性を確認する。定量研究の成果について、学会での発表および論文掲載を目指す。さらに、一連の研究をまとめてプロセスモデルを導出するための理論研究を行う。理論面から発展させるために、国内外の学会での研究報告および論文発表を行い、意見交換を行う必要がある。具体的には、国際ビジネス研究学会および組織学会にて研究成果を発表して、意見交換を通じて知見を得て、理論を精緻化する。 | KAKENHI-PROJECT-17J06895 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J06895 |
化学種解析による元素分配の系統的理解に基づく同位体分別の予測と分子地球化学的展開 | 天然試料やその模擬系での元素の分配と化学種を調べ、その化学種の特徴から同位体分別の向きや程度を予測し、いくつかの系で予想に近い同位体分別を観測した。これらの同位体系は、日本初の新しい地球化学ツールとして利用されることが期待される。例えば、溶液中の溶存タングステン酸と水酸化鉄・マンガン酸化物への吸着態との間で同位体分別が起こることを化学種解析から予想し、実際に0.8‰程度の同位体分別を観測した。同様にゲルマニウム、ルビジウムなどで新しい同位体分別系が地球の進化史の解明などで有用であることが示された。また鉄の気化に伴う同位体分別を解明し、エアロゾル中の鉄の起源解析に有効であることを明らかにした。本研究では、地球の様々な系(結晶-メルト系、水-固液界面系など)での元素の分配を化学種解明に基づいて解釈し、新たな地球化学反応や同位体分別系を見出すことで、新しい地球化学的概念や手法を確立することを目指す。このようなアプローチは、分子地球化学(ボトムアップ型の地球化学)的な研究と呼ぶことができ、原子分子の情報に基づいてマクロな物質循環や地球進化の知見を得るという新しい地球化学の方向性を示すものである。このような発想に基いて、平成27-28年度は以下の2件の研究を進めた。(1)火山岩中の石基と斑晶の間での元素の分配を調べ、配位数が変化する元素について化学種と同位体比を測定し、配位数変化に伴う同位体比の変動を調べた。特に亜鉛について、石基と斑晶の亜鉛の化学種を調べたところ、斑晶(オリビン)中では6配位の亜鉛が、石基中では4配位をとりやすいことが分かった。その結果から、亜鉛は石基中で重い同位体比を示す可能性が高い。そこで、それを調べるために、鉱物を溶解し、亜鉛を分離するカラム分離の手法を確立した。これらに基づいて、実際の試料中の亜鉛の分離を進め、MC-ICPMSによる亜鉛同位体比の測定を行う計画である。(2)海洋における元素の固液分配を支配する吸着反応について、これまでの我々の研究から、Moの場合、モリブデン酸から吸着態に変化する際に、4配位から6配位への配位数変化を伴う場合に、大きな同位体分別が起きることが分かっている。このことに基いて、同様の配位数変化を示す系を探索したところ、ゲルマニウムイオンでそのような変化が起きることを示唆する結果を得た。特にCeO2に吸着する際に配位数変化が生じることがXAFS分析より分かったので、この系での固液両相でのゲルマニウム同位体比を今後測定する計画である。上記で示した通り、当初計画にある火山岩中の斑晶-石基間の亜鉛および固液界面系でのゲルマニウムについて、両相で配位数が変化する現象を見つけた。このことに基づいて、固液両相のこれらの元素の同位体比を測定するために、カラム分離による両元素の単離法を確立した。これらの結果や手法の確立に基づき、今年度は実際に同位体比を測定する予定であり、当初計画通り本研究は進展している。ゲルマニウム(Ge)は、ケイ素と類似のイオン半径や化学的性質を持つため、ケイ素と似た地球化学的な挙動を示すことが知られており、Ge/Si比は大陸や海洋のケイ素循環のトレーサーとして利用されている。またGeの同位体比も地球化学的な過程を反映しており、地球化学的な標準物質でδ74/70Ge -4‰-4‰の同位体比をとることが報告されている。PokrovskyらはGeの鉄水酸化鉱物への吸着および共沈によって、固相側が水溶液に比べて1.7-4.4‰程度軽い同位体に富むことを報告している。我々は、これまでに6族元素の鉄およびマンガン(水)酸化鉱物への吸着に伴う四配位から六配位構造への変化によって大きな同位体分別を生じることを、X線吸収端微細構造(XAFS)法と量子化学計算により明らかにしてきた。平成28年度の研究では、Geの吸着に伴う構造変化をXAFS法により調べ、量子化学計算により同位体分別を見積もり、構造変化と同位体分別の関係を明らかにすることを目的として研究を進めた。その結果、Ge K吸収端EXAFSスペクトルの解析から、吸着実験に用いた鉱物に対してGeは、内圏錯体を形成することが示唆された。またXANES解析からフェリハイドライトおよびδ-MnO2に対しては、溶存状態の4配位構造を保ったまま吸着することが分かった。酸化チタンについては、わずかに6配位構造が存在し、酸化セリウムについてはさらに多くの割合で6配位構造が存在することが示唆された。DFT計算の結果、6配位構造の吸着構造では、水溶液に比べて2.5‰程度軽い同位体分別が生じることが予測された。吸着による吸着種の分子構造の変化により同位体分別が生じ、結合距離の変化による同位体分別への寄与が大きいことが分かった。6配位への構造変化によって大きな同位体分別を生じるという、6族元素で見られた傾向と同様の結果が得られた。 | KAKENHI-PROJECT-15H02149 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H02149 |
化学種解析による元素分配の系統的理解に基づく同位体分別の予測と分子地球化学的展開 | 我々は、モリブデンやタングステンを対象にして、これまでに6族元素の鉄およびマンガン(水)酸化鉱物への吸着に伴う四配位から六配位構造への変化によって大きな同位体分別を生じることを、X線吸収端微細構造(XAFS)法と量子化学計算により明らかにしてきた。特に平成28年度の研究では、イオン半径への依存性から配位数として4配位と6配位の両方をとり得て、大きな同位体分別を示す可能性があるゲルマニウムについて研究を進め、実際にそのような変化が生じ得ることを示すことができた。これは新しい同位体分別系を地球惑星科学へ応用する上での重要な基礎的知見となる。平成29年度は、Mn酸化物に対するMoの吸着構造とそれに伴うMoの同位体分別の実験結果を合理的に解釈できる吸着構造モデルを検討するために、量子化学計算を行い、Moが大きな同位体分別を起こす元素的な性質について考察を行った。本研究で提案する吸着構造モデルは、単量体であってもポリモリブデン酸に見られる、末端酸素との短い結合Mo=Oと、そのtrans位の長いMo...O結合を持った歪んだ八面体構造をとる。これらの結合距離はEXAFS解析から報告されているMo-O距離と良い一致を示した。また、この構造を用いて見積もられた吸着に伴う同位体分別の値は1.79‰となり、実験値を良く再現した。この大きな同位体分別は、溶液中では四面体構造のMoがマンガン酸化物への吸着によって歪んだ八面体構造へと変化することが原因と考えられている。歪んだ八面体吸着構造に見られる短い結合(Mo=O)のtrans位の結合が長くなる原因は、trans影響として知られており、trans位にある2つの配位子が中心金属のd軌道を共有することに起因する。このtrans影響はMo(VI)などのd0電子配置の時に最も大きくなる。さらに、d0, d10電子配置の金属(イオン)の酸化物など大きな配位子を持つ化合物の構造は、結晶場の安定化が殆どないため、配位子間の反発が構造決定の主要因となり、四面体構造を取る。また、金属錯体の配位数は中心金属のイオン半径に比例し、その構造を規定する。6族元素Cr(VI), Mo(VI)およびW(VI)のイオン半径(6配位)は0.44 A, 0.59 Aおよび0.60 Aであり、MoおよびWのマンガン酸化物に対する吸着構造は6配位であり、一方で、Crは4配位のまま鉄水酸化鉱物に吸着する。従って、Mo同位体分別の要因は、Mo(VI)がd0電子配置と適切なイオン半径を持つことに起因することが示唆された。天然試料やその模擬系での元素の分配と化学種を調べ、その化学種の特徴から同位体分別の向きや程度を予測し、いくつかの系で予想に近い同位体分別を観測した。これらの同位体系は、日本初の新しい地球化学ツールとして利用されることが期待される。例えば、溶液中の溶存タングステン酸と水酸化鉄・マンガン酸化物への吸着態との間で同位体分別が起こることを化学種解析から予想し、実際に0.8‰程度の同位体分別を観測した。同様にゲルマニウム、ルビジウムなどで新しい同位体分別系が地球の進化史の解明などで有用であることが示された。また鉄の気化に伴う同位体分別を解明し、エアロゾル中の鉄の起源解析に有効であることを明らかにした。既に述べた通り、本研究の当初計画にある火山岩中の斑晶-石基間の亜鉛および固液界面系でのゲルマニウムについて、XAFS法(火山岩についてはマイクロXRF-XAFS法も利用)による化学種分析により、両相で亜鉛(斑晶-石基系)やゲルマニウム(CeO2-水系)について、配位数が変化する現象を見つけた。このことに基づいて、固液両相のこれらの元素の同位体比を測定するために、カラム分離による両元素の単離法を確立した。これらの結果や手法の確立は、予定通り進んでいる。そのため、今年度は実際に同位体比を測定する予定であり、当初計画通り本研究は進展している。この同位体比の分析についても、既にMC- | KAKENHI-PROJECT-15H02149 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H02149 |
朝鮮半島から見た戦後東アジア地域秩序の形成と変容-新たな地域像を求めて | 1970年代の米中和解、日中正常化、朝鮮半島の南北和解と破綻という激変をテーマとした日韓中の研究者によるのシンポジウムを第2.3年目にソウルの高麗大学で、4年目に東京大学で開催した。それが一つの呼び水となり、日中韓シャトル研究会が東京大学現代韓国研究センター、韓国高麗大学アジア問題研究所、中国清華大学国際関係研究所が軸となって定例化され、4年目の「東アジア国際秩序の形成・展開・未来構想」と題するシンポジウム開催となった。また、政府史料の判読困難な手書き部分を活字化した資料集『日韓国交正常化問題資料』(第二期日本側全7巻・韓国側全5巻、第三期日本側全5巻刊行済み、四期分等確定)を発行した。1970年代の米中和解、日中正常化、朝鮮半島の南北和解と破綻という激変をテーマとした日韓中の研究者によるのシンポジウムを第2.3年目にソウルの高麗大学で、4年目に東京大学で開催した。それが一つの呼び水となり、日中韓シャトル研究会が東京大学現代韓国研究センター、韓国高麗大学アジア問題研究所、中国清華大学国際関係研究所が軸となって定例化され、4年目の「東アジア国際秩序の形成・展開・未来構想」と題するシンポジウム開催となった。また、政府史料の判読困難な手書き部分を活字化した資料集『日韓国交正常化問題資料』(第二期日本側全7巻・韓国側全5巻、第三期日本側全5巻刊行済み、四期分等確定)を発行した。戦後史を各国史の寄せ集めではなく東アジアの地域史として把握し論じるための枠組みを、実証研究を踏まえいかに構築するのか。この問題を提起すべく、現代的な課題としての東アジア共同体形成を念頭に置いて、東京大学現代韓国研究センター(姜尚中所長:司会)及び韓国現代日本学会(崔恩鳳梨花女子大学教授:祝辞)と、本プロジェクトとの共催という形の公開シンポジウムを開いた。研究者やマスコミ関係者等を集め、広く一般にも問題提起を行ったことは、合宿に勝って各分担者の意識を深め、研究協力者の裾野を広げるのに貢献した。一般の関心も極めて高く、2010年度が1910年の日韓併合から100年目で韓国文化財返還も脚光をあびたためか、100名以上の参加者があった。他にも、小規模シンジウムを台湾・中国問題が朝鮮半島とどのように関係したのかという論点で立教大学において開催し、また、日本国際政治学会においても、今までの個別具体的事例研究を土台にした同種の問題提起を行った。新たな実証研究に向けた資料収集も、データベースの活用と海外調査によって積極的に敢行した。米国においてはハーバード大学燕京図書館・ワシントンの国立公文書館・レーガン大統領図書館等、韓国においては韓国国会図書館・外交通商部・外交史料館等を訪れ、70年代の朝鮮半島情勢・米韓関係・東アジア地域構想に関する米国側認識・市民社会からの抵抗や民主化の動きを調査した。また、研究分担者のみの研究会を、3度にわたり開催し互いの問題意識を交換しながら、各自が関心を持つ個別具体的事例相互の関係と、ゆるやかな共通枠組みの検討も行った。今後、通常の国際関係論では区別されるところの、国内レベルと国際レベルをまたぐ事例を中心にした実証研究によって、地域を跨ぐ市民社会ネットワークと、冷戦下の各政府間外交との相互作用を主要論点とする方向で研究を進めていく予定である。1970年代にかけての戦後史を各国史の寄せ集めではなく東アジアという地域史として把握し論じること、そのための枠組みを、実証研究を踏まえて構築していくことがプロジェクトの中心である。第二年目は、そうした趣旨の参考になる研究者を招聘した研究会の開催、お互いの今までの研究報告を相互に報告しお互いの問題意識を交換し合うための内部的な研究会の開催、それに各自の新たな問題意識をもとにした各種の学会報告と、それに対応する各種の調査が活発に展開された。国内においては、国立国会図書館、学習院大学東洋文化研究所友邦文庫、神戸市立中央図書館青丘文庫、外務省外交史料館において、1950-70年代にいたる在日朝鮮人、日韓関係、日朝関係資料を中心に調査・収集・公開請求を行った。特に外交史料館で関係資料の公開は近年めざましく進んでおり、必要な手続きを行って新規公開資料の複写を進めた。また、在日朝鮮人関係では、篠崎平治『在日朝鮮人運動』、田中武雄『朝鮮問題について』、日本赤十字社『在日朝鮮人の生活の実態』、『警察時報』、『衆望』、『警察学論集』、『朝鮮研究』、『民主朝鮮』などを収集した。米国においては、ワシントンの国立公文書館において経済協力機関や、国務省経済関係資料を収集し、韓国においては韓国国会図書館・外交通商部・外交史料館等において、70年代の朝鮮半島情勢、米韓関係、東アジア地域構想に関する外交史料、市民社会の側からの抵抗や民主化の動きを伝える新聞・雑誌を調査した。また、韓国政府によって1950-70年代にかけて展開された東アジアの非共産圏外交(台湾・南ベトナムを中心に)に関する文書や、70年代という早期に展開された中ソに向けた共産圏外交と非同盟諸国外交に関する調査を行い、米国と一枚岩とは見なすことが出来ない韓国独自の外交政策の展開が裏付けられるようになり、米中関係の正常化を契機に進んだ南北関係をより立体的に浮かび上がらせることができるようになった。3回の研究会を開催し、そのうち1回は公開シンポジウムの準備をかねて、1970年代の日中関係の変容に関する研究者を招き、朝鮮半島情勢と米中冷戦終結との関係を議論した。1961-62年にわたる日韓交渉に関する資料集全5巻を刊行した。 | KAKENHI-PROJECT-22243018 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22243018 |
朝鮮半島から見た戦後東アジア地域秩序の形成と変容-新たな地域像を求めて | これは、1965年の日韓国交正常化以後においても、日本が関与した慰安婦問題などの「反人道的不法行為」が未決の問題と位置づけられ、解決されていないとされる状態が、いかに継承され、あるいは、いかに新たな問題として発生したのかを実証的に解明する作業の一環である。また、研究成果を広く一般に公開すべく、二つの公開シンポジウムを各種団体との共催で開いた。最初に、2013年9月に東京大学駒場キャンパスで『東アジア国際秩序の形成・展開・未来構想』と題し日中韓の現代史研究者を集め、東京大学現代韓国研究センター・韓国高麗大学アジア問題研究所とともに開催した。1970年代における東アジア国際秩序の形成という問題を、今日の緊張する東アジア国際秩序の起源と位置づけ90年代にも視野を広げて議論した。東アジア冷戦の終焉と朝鮮半島冷戦の持続という、ある種の「逆説」を、1990年代の冷戦終結に伴う東アジア国際政治の変容とともに明らかにする必要性が認識された。第二に、『現代韓国朝鮮学会2013年度研究大会』で「歴史問題解決へ向けてー請求権をめぐる実証研究と国際政治」という共通論題を同学会と共催した。請求権問題について、いかなる論理の衝突、政治的考慮の上に、現在の枠組みが築かれたのか、そして、いかなる問題が、なぜ、積み残されたのかに関しての基本的な事実や、それを整理するための基本的概念や視角を論じた。以上の成果公開と一般からの反応を受け、現在は、研究成果のとりまとめ作業を行っており、1970年代の東アジアにおける国際政治史を歴史として問題提起するものとしていく予定である。第3年目の本年度は、研究発表については、昨年度にメンバーの間で共有された問題意識に立ち、各自の報告を韓国の学会(韓国日本学会、高麗大学アジア問題研究所、東北アジア歴史財団)、および、日本における学会(現代韓国朝鮮学会、日本国際政治学会、日本政治学会等)において個別に行うことを原則とし、それをもって他の研究者からレビューを受ける機会とした。ただ、全体企画として、高麗大学アジア問題研究所との間で日韓中合同シンポジウム「Historical Reflections on Korea-China-Japan Relations」を5月に共催し、本プロジェクトからも、司会者や討論者として参加することで、現代史研究者とのネットワークを拡大した。各種の調査調査も活発であった。国立国会図書館、朝鮮大学校、広島大学、九州大学、外務省外交史料館等において調査を行った。収集された資料としては、『民団大阪40年史』『民団五十年史』『大阪婦人会創立50周年記念史』等があり、外交史料館においては、日韓定期閣僚会談資料、米中接近後の日本の対北朝鮮議員外交に関する公文書の開示請求・複写を行った。また、国会図書館では日韓議連・日朝議連の結成に対する自民党議員の関与に関する雑誌記事・論説の収集、日朝貿易会や協亜物産(日朝貿易の日本側商社)に関する基礎的事実の収集を継続した。昨年までの海外調査で収集された資料を読み込むことによって、1972年の「米中接近」と日中正常化の以後になると、韓国も対中関係正常化を望み始めていたたことや、1970年代の日本の外交・安全保障政策が朝鮮半島や中国情勢の変化との密接な関連のもとに議論されていたことが判明し、朝鮮半島の南北和解の文脈をより立体的に浮かび上がらせることができるようになった。 | KAKENHI-PROJECT-22243018 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22243018 |
高分子の結晶化と高次構造形成 | 1.高分子の結晶化と高次構造形成過程は過冷却度が重要なパラメータとして記述されるので結晶の平衡融点の確立が重要である。ポリスチレンでは従来の値より20Kも高いことが示された。ポリエチレンでは、精密な相図が三重点も含めて決定された。2.ポリスチレンのラメラでは結晶芯が著しく薄く、このラメラの増殖・分岐がラセン転位により起こり、球晶の形成が行なわれることが示された。融液成長の電子顕微鏡による直接観察が初めて行なわれ、結晶-融液界面が薄く成長速度が遅くなっていることが見出された。3.ポリエチレンの融液・溶液成長の精密な実験が行なわれ、単一核成長(レジームI)から多数核成長(レジームII)への転移には六角形からレンズ形への形態変化を伴うことが示された。4.剛直性高分子であるポリパラフェニレンベンゾビスチアゾールとポリテトラフルオロエチレンでは、結晶化温度とモルフォロジーが明らかにされた。すなわち、foldが不可能のため、分子鎖方向に伸びたフィブリルが高次構造であるが、結晶化温度・熱処理温度が高くなると分子鎖に垂直方向に伸びたフィブリルが発達する。5.共重合体として強誘電性高分子であるフッ素系高分子の分極構造が明らかにされた。この構造は世界で初めて観測されたもので、高分子強誘電体が通常の強誘電体と同じカテゴリに入ることが示された。また、PETを含む共重合体の共結晶化が発見された。6.混合系では結晶性と非晶性の高分子の混合系(PEO/PMMA,PVDF/PMMA,PCL/PVME)の結晶化とラメラ構造・球晶が研究され、これらの構造形成に高分子の拡散の効果が重要であることが指摘された。7.結晶の形と厚さについての理論とシミュレーションは実験結果を定性的に再現し、定量的に比較する段階に到達した。本科学研究費補助金の採択内定通知より先に、研究課題と同名の公開シンポジウムが高分子学会主催で11月20・21日に予定されており、研究分担者のほとんどが講師・パネラーとして発表・討論を行なった。しかだって、今年度は新たな研究会は開催せず、共同研究の実施と相互批判を行なった。1.高分子及び鎖状分子の結晶化過程は、融液成長・溶液成長において本質的な違いはなく、過冷却度・結晶化温度をパラメータとして統一的に記述されている。この意味において宇晶の平衝融点の度立が重要である。ポリスチレン対して従来の報告されている値より20Kも高いことで示され、ポリスチレンでのレジーム転移に対して重大な疑問を投げかけた。また伸び切り鎖結晶の形成が注目されているポリエチレンでは、温度・圧力に関する相図が三重点の含めて決定され今後の研究におおいに役立つ成果である。2.融液成長の電子顕微鏡による直接観察がポリスチレンに対して行なわれ、特に膜における成長の特微として、結晶-融液界面に近傍で融液が薄くなっており成長速度の低下をもたらしていることが観察された。さらに高分解能観察が望まれる。ポリスチレンについては、光散乱、広角・小角X線散乱の系統的な研究から、結晶構造、ラメラ構造、球晶組織などの高次構造形成について知見が得られている。3.ポリエチレンの融液成長の精密な実験が行なわれ、単一核成長(レジームI)から紙数核成長(レジーケII)への転移には6角形からレンズへの形態変化を伴うことが示され、計算機シミュレーションをおこなってミクロなモデルを構築した。4.これらの実験結果に対して理論的解釈・批判が行なわれた。5.ブレンド・共重合体の結晶成長、エピタクシー成長については着実な実験的研究が行なわれている。1.高分子の結晶化と高次構造形成過程は過冷却度が重要なパラメータとして記述されるので結晶の平衡融点の確立が重要である。ポリスチレンでは従来の値より20Kも高いことが示された。ポリエチレンでは、精密な相図が三重点も含めて決定された。2.ポリスチレンのラメラでは結晶芯が著しく薄く、このラメラの増殖・分岐がラセン転位により起こり、球晶の形成が行なわれることが示された。融液成長の電子顕微鏡による直接観察が初めて行なわれ、結晶-融液界面が薄く成長速度が遅くなっていることが見出された。3.ポリエチレンの融液・溶液成長の精密な実験が行なわれ、単一核成長(レジームI)から多数核成長(レジームII)への転移には六角形からレンズ形への形態変化を伴うことが示された。4.剛直性高分子であるポリパラフェニレンベンゾビスチアゾールとポリテトラフルオロエチレンでは、結晶化温度とモルフォロジーが明らかにされた。すなわち、foldが不可能のため、分子鎖方向に伸びたフィブリルが高次構造であるが、結晶化温度・熱処理温度が高くなると分子鎖に垂直方向に伸びたフィブリルが発達する。5.共重合体として強誘電性高分子であるフッ素系高分子の分極構造が明らかにされた。この構造は世界で初めて観測されたもので、高分子強誘電体が通常の強誘電体と同じカテゴリに入ることが示された。また、PETを含む共重合体の共結晶化が発見された。6.混合系では結晶性と非晶性の高分子の混合系(PEO/PMMA,PVDF/PMMA,PCL/PVME)の結晶化とラメラ構造・球晶が研究され、これらの構造形成に高分子の拡散の効果が重要であることが指摘された。 | KAKENHI-PROJECT-04302055 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04302055 |
高分子の結晶化と高次構造形成 | 7.結晶の形と厚さについての理論とシミュレーションは実験結果を定性的に再現し、定量的に比較する段階に到達した。今年度は簡単な高分子から複雑な高分子系に研究の重点を置いた。1.剛直性高分子の結晶化がポリパラフェニレンベンゾビスチアゾールとポリテトラフルオロエチレンについて行なわれ、結晶化温度とモルフォロジーが明らかにされた。すなわち、foldが出来ないため、基本的には分子鎖方向に伸びたフィブリルが基本単位と考えられていたが、結晶化温度・熱処理温度が高くなると分子鎖に垂直方向に伸びたフィブリルが発達してくる。これらの結晶成長は伸び切り鎖結晶と基本的に同じである。2.共重合体として強誘電性高分子であるフッ素系高分子の伸び切り鎖結晶の高次構造と分極構造が明らかにされた。このドメイン構造は世界で初めて観測されたもので、高分子強誘電体が通常の強誘電体と同じカテゴリに入ることが示された。また、PETを含む共重合体の共結晶化の事実を発見した。3.混合系(ブレンド)では結晶性高分子と非晶性高分子の混合系(PEO/PMMA,PVDF/PMMA,PCL/PVME)の結晶化とラメラ構造・球晶が研究され、これらの構造形成に高分子の拡散の効果が重要であることが指摘された。4.ポリエチレン・ポリスチレンの融液・溶液成長は電子顕微鏡と小角X線散乱のほか原子間力顕微鏡の観察が行なわれ、結晶化温度に依存するモルフォロジーのほか、一枚の単結晶のセクターによって厚さが異なることが発見され、結晶-非晶界面の厚さ、結晶芯の厚さなど定量化が進んだ。5.結晶の形と厚さについてのシミュレーションは実験結果を定性的に再現し、定量的に比較する段階に達した。 | KAKENHI-PROJECT-04302055 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04302055 |
コンパクトシティ政策の形成・展開と地域再生に関する比較社会学的研究 | 本研究では、LRTを軸にしたコンパクトシティ政策の形成・展開過程とまちづくりに関する分析を行った。フライブルク市等においては、トランジット・モールによる「街の賑わい」効果が顕著であり、パークアンドライドなど総合的な交通政策の実施が特徴的である。富山市は日本で初めての本格的なLRT導入事例であり、計画から実施まで短期で実現したことが特筆されるが、交通政策の「総合性」という点では課題を残している。本研究では、LRTを軸にしたコンパクトシティ政策の形成・展開過程とまちづくりに関する分析を行った。フライブルク市等においては、トランジット・モールによる「街の賑わい」効果が顕著であり、パークアンドライドなど総合的な交通政策の実施が特徴的である。富山市は日本で初めての本格的なLRT導入事例であり、計画から実施まで短期で実現したことが特筆されるが、交通政策の「総合性」という点では課題を残している。本研究の目的は、コンパクトシティ政策の形成・展開過程とその社会的インパクトを比較社会学的に考察することにある。とくに、これまで社会学の分野で十分に扱われてこなかったコンパクトシティ政策について、日本およびドイツ等のヨーロッパ地方都市における事例の比較分析を通して、政策の形成・展開過程における諸主体の合意形成や市民参加、政策の社会的インパクトを解明することを課題とする。初年度に当たる本年度の研究は、主として基礎的調査と関連資料の作成を中心に実施した。まず、コンパクトシティを中心に、EUおよび欧米の主要地方都市におけるサスティナブルシティやアーバンヴィレッジ、トランジットビレッジなどの諸概念/諸政策の展開過程とその特質について、文献資料をつうじた整理と検討を開始した。あわせて、都市工学や都市計画学をはじめとする関連領域の先行研究のレビュー作業を行い、EU諸国のコンパクトシティ政策の枠組みと対象地域の政策動向に関する資料収集とその整理を行った。つぎに、ドイツ・フライブルク市にフランス・ストラスブール市において、コンパクトシティ政策と公共交通政策の展開および現状について、現地での予備調査ならびに資料収集を実施した(9月)。さらに、日本国内の事例(富山県富山市、石川県金沢市など)のまちづくりや都市政策に関する資料収集を開始している。上記の成果を踏まえて、調査に関する暫定的な見取図(比較表)と時系列的な展開図を作成し、次年度の本格調査に向けた作業仮説の検討を進めている。あわせて、地域再生と協働に関する研究論文を作成中である。本研究の目的は、コンパクトシティ政策の形成・展開過程とその社会的インパクトを比較社会学的に考察することにある。これまで社会学の分野で十分に扱われてこなかったコンパクトシティ政策について、日本およびドイツ等の海外地方都市におけるまちづくり事例の比較分析を通して、政策の形成・展開過程における諸主体の合意形成や市民参加、政策の社会的インパクトを解明することを課題とする。本年度の研究は、主として現地調査と関連資料の収集を中心に実施した。まず、昨年度に引き続き、日本国内の事例(富山県富山市、愛媛県松山市)のまちづくりと都市政策に関する資料収集を展開した。とくに、富山市におけるLRT/LRVについて、計画決定から実施に至る政策過程の分析を進めるために、関連するアクターへのインタビュー調査を行った。あわせて、政策による社会的インパクトを解明するために、上記施策と連動して展開している地元のまちづくり活動について、「政策と運動(活動)の相互作用」という視点から活動のリーダー層への聞き取りと、マスメディアの報道資料の収集を実施し、調査結果の分析と整理を行った。つぎに、海外の事例として、ベトナム・ミトー市および周辺地域において、発展途上国の近代化と都市・農村関係の変容、環境悪化や経済格差などの社会問題、ライフスタイルの変化、地域住民組織の動態と機能に関する現地調査を開始した。上記まちづくりと住民活動に関する研究成果の一部は、雑誌論文(1件)と図書(1件)として公表されている。次年度(最終年度)は、各調査対象の補足調査を行ったうえで、事例の類型化と比較分析を進め研究報告をまとめる。本研究の目的は、コンパクトシティ政策の形成・展開過程とその社会的インパクトを比較社会学的に考察することにある。これまで社会学の分野で十分に扱われてこなかったコンパクトシティ政策について、日本および海外の地方都市における地域づくりの事例分析を通して、政策の形成・展開過程における諸主体の合意形成や市民参加、政策の社会的インパクトを解明することを課題としている。本年度の研究は、おもに、海外の事例として、ベトナム・ミトー市および周辺地域を対象に、主として農村地域の近代化と都市・農村関係の変容、ライフスタイルと生業の変化、地域づくりと環境保全、地域住民組織の動態と機能に関する現地調査を実施した。具体的には、リーダー層を中心とする住民への聞き取り調査を行ったうえで、さらに特定地区の全戸(37戸)の代表者を対象とした調査票による意識調査を実施した。その結果、農薬や化学肥料等の多用に伴う地域の生活環境、とくに水路等の水環境の汚染が強く意識されているものの、その管理や改善については役場に委ねる傾向が強い(ただし、20代・30代の若年層では、住民主体で管理すべきとする層も一定程度存在している)、約半数の回答者が主として経済的理由から子どもに農業を継いでほしいと考えていない、地域住民組織(ApやTo)は存在するものの行政の下請け的自な性格が強く、環境管理や地域づくりを担うような自主組織としては機能していない、などの課題が浮かび上がった。上記に関する研究成果の一部は、雑誌論文(1件)にて公表されている。 | KAKENHI-PROJECT-20730338 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20730338 |
化学反応を伴う乱流解析のための迅速混合モデルの研究 | 乱流中での化学反応を高精度で予測することは、工学的にも地球環境保護の観点からも非常に重要である。しかし、様々な反応速度を持つ素反応過程からなる燃焼機内の解析のためには、乱流、混合および反応に何らかのモデル化が必要となる。本研究は、ラグランジュ粒子追跡法を基に筆者らが提案している迅速混合モデルを様々な流れ場に適用し、その定量的精度を調べることを目的とした。まず、二次元せん断層における物質拡散および化学反応を、Masutaniらの実験結果と比較し平均濃度分布、確率密度分布を比較検討した。その結果、本モデルは簡潔で計算が高速であるにもかかわらず、拡散を定性的・定量的に妥当な精度を持っていることが分かった。しかし、比較に際しモデル定数を実験値から同定してるため、せん断層以外の流れ場で定量的精度が維持できるか否か不明であった。そこで、壁乱流にも本モデルを適用した。従来のラグランジュ拡散モデルにおいても、拘束壁の取り扱いについては、十分な研究がなされているとは言えない。通常、乱流スケールを表す時定数を各粒子に持たせ、壁近傍乱流境界層の内部と外部でモデリングの任意定数を調節して、実験値あるいは直接計算結果と比較・検討している。つまり、拡散係数をそれらの任意定数で調節していることになる。よって、壁乱流での混合・拡散問題に迅速混合モデルを導入する事は、新たに拡散の自由度を付加することに相当する。そこで本研究では比較的小スケールの渦拡散を迅速混合モデルで表現し、従来のラグランジュ確率モデルと組み合わせることにより、これまで不可能であった確率密度分布を求めることに成功した。しかし、ここで用いた定数が管内乱流以外に適用可能か否かはなお不明であり、任意定数の同定法には一層の研究が必要である。乱流中での化学反応を高精度で予測することは、工学的にも地球環境保護の観点からも非常に重要である。しかし、様々な反応速度を持つ素反応過程からなる燃焼機内の解析のためには、乱流、混合および反応に何らかのモデル化が必要となる。本研究は、ラグランジュ粒子追跡法を基に筆者らが提案している迅速混合モデルを様々な流れ場に適用し、その定量的精度を調べることを目的とした。まず、二次元せん断層における物質拡散および化学反応を、Masutaniらの実験結果と比較し平均濃度分布、確率密度分布を比較検討した。その結果、本モデルは簡潔で計算が高速であるにもかかわらず、拡散を定性的・定量的に妥当な精度を持っていることが分かった。しかし、比較に際しモデル定数を実験値から同定してるため、せん断層以外の流れ場で定量的精度が維持できるか否か不明であった。そこで、壁乱流にも本モデルを適用した。従来のラグランジュ拡散モデルにおいても、拘束壁の取り扱いについては、十分な研究がなされているとは言えない。通常、乱流スケールを表す時定数を各粒子に持たせ、壁近傍乱流境界層の内部と外部でモデリングの任意定数を調節して、実験値あるいは直接計算結果と比較・検討している。つまり、拡散係数をそれらの任意定数で調節していることになる。よって、壁乱流での混合・拡散問題に迅速混合モデルを導入する事は、新たに拡散の自由度を付加することに相当する。そこで本研究では比較的小スケールの渦拡散を迅速混合モデルで表現し、従来のラグランジュ確率モデルと組み合わせることにより、これまで不可能であった確率密度分布を求めることに成功した。しかし、ここで用いた定数が管内乱流以外に適用可能か否かはなお不明であり、任意定数の同定法には一層の研究が必要である。 | KAKENHI-PROJECT-05750152 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05750152 |
複数原子イオン照射による非線形電子励起効果の研究 | 加速された複数の炭素原子から成るクラスターイオンを薄膜などの物質に照射した際のエネルギー付与と電荷分布および二次電子の収量が、同速の単一イオン入射でのものと異なる効果(「クラスター効果」)に関する研究を行なった。その結果、比較的小さい速度(ボーア速度程度)のときには、イオン1個に換算したエネルギー付与と2次電子収量が、同速の単一イオン入射に比べて抑制されることを理論的に裏付けることができた。加速された複数の炭素原子から成るクラスターイオンを薄膜などの物質に照射した際のエネルギー付与と電荷分布および二次電子の収量が、同速の単一イオン入射でのものと異なる効果(「クラスター効果」)に関する研究を行なった。その結果、比較的小さい速度(ボーア速度程度)のときには、イオン1個に換算したエネルギー付与と2次電子収量が、同速の単一イオン入射に比べて抑制されることを理論的に裏付けることができた。この研究の目的は、複数原子イオンを固体標的に入射したときに誘起される電子励起過程に出現する非線形効果を理論的に調べることである。非線形効果とは、N個の同種粒子を含む複数原子イオン照射下で出現する電子励起効果が、同速の単一イオン入射下でのそれのN倍にならないことを指す。これは、複数原子イオン群の時間・空間的相関や束縛電子の遮蔽効果が電子励起に深く関わるからであり、入射速度や標的膜厚に依存する。この研究で扱う電子励起過程は、イオンのエネルギー損失、2次電子収率、イオンの平均電荷、標的原子の電離などである。今年度は、エネルギー損失と平均電荷に関して珠の実績を得た。入射エネルギー3MeVのC_3^+クラスターが尿素薄膜を通過後に解離したイオンの平均電荷とその空間構造依存性を調べた。これは、日本原子力研究開発機構高崎量子応用研究所(以後、高崎研)のグループによって実験テータが初めて報告されたため、筆者は、高崎研のグループとの討論を経て理論面から解析をすすめた。その結果、C_3^+が線状構造の方が三角構造よりも平均電荷が大きいこと、および、線状構造では両端のイオンの方が真ん中のイオンよりも平均電荷が大きいことの2点について実験結果と一致した。この理論解析には、固体標的中での各イオンの平均電荷をわれわれのクラスター平均電荷理論で評価し、入射粒子間のクーロン爆発のほかに標的物質の電子分極による抵抗力(ウエイク力)を新たに導入した。この成果は、共著論文として発表された。このほか、遮蔽効果に関運して、奈良女子大学のグループと共同で、高速陽子および高速中性水素照射下での炭素薄膜の前方および後方から放出される2次電子収量の実験データを解析して共著論文を作成した。また、標的原子の多重電離についても解析を進めた。今年度は、前年度の研究を発展させるべく、クラスターイオン照射下でのエネルギー付与、電荷分布および二次電子放出における「クラスター効果」に関する研究を進展させた。エネルギー付与に関しては、媒質電子の分極力(ウエイクカ)を新たに取り入れて、1原子あたり0.51MeV程度の炭素クラスターイオンが炭素薄膜を通過したときのエネルギー損失量を計算した。その結果、単一炭素イオンに対する相対エネルギー損失値は、粒子数Nの増加とともに減少するが、N=3と4では差異がないことがわかった。これは、工藤氏らの筑波大学グループによる実験データと非常によく一致している(論文を作成中である)。この結果は、エネルギー損失における「負のクラスター効果」の存在を明確にする意義深いものである。また、平均電荷に関して、電子捕獲と電子損失の断面積から電荷分布を導出する理論の構築に着手し、日本原子力研究開発機構高崎量子応用研究所の斎藤氏のグループが測定した1MeV炭素イオンの電荷分布を、我々の理論でほぼ再現することができた。今後は、クラスターとしての特徴をこの理論に取り込む。この電荷分布と、2原子炭素クラスターのクーロン爆発での散乱角、核間距離との相関も斎藤氏らと共同で解析している。さらに、二次電子放出に関しては、素過程研究の立場から奈良女子大学の小川氏らと共同で、二次電子収量における励起電子の平均自由行程やカスケードの効果、入射荷電状態の影響などを調べ、発表した。また、工藤氏ら実験的に報告したが未解決である「前方での二次電子収量の低下」に関して、定性的には解釈できたので、今後は、定量的な説明を目指す。今年度は、まず、クラスター衝撃下での二次電子放出率の弱線形性について研究した。1原子あたり0.5MeVの入射エネルギーでCn+(n=1-8)イオンを炭素薄膜に照射して、放出された二次電子の収率Y(n)が粒子数nに対して線形よりも弱い依存性Y(n)/Y(1)=1+a(n-1)(a=0.2-0.4)を示す実験データが工藤ら(筑波大)によって報告されていた。この研究では、入射粒子による励起電子の生成、励起電子の出口表面までの伝播、表面ポテンシャルからの脱出、という従来の「3段階過程」に加えて、励起電子が出口表面まで伝播する間にクラスター構成粒子による散乱の抑制効果を取り入れた結果、a=0.2-0.4を示すことができた。次に、クラスターのエネルギー損失に関する弱線形性について研究した。 | KAKENHI-PROJECT-19560050 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19560050 |
複数原子イオン照射による非線形電子励起効果の研究 | 1原子あたり0.5MeV程度の入射エネルギーでCn+(n=1-6)イオンが炭素薄膜を通過したときのエネルギー損失量S(n)の単原子イオン入射のエネルギー損失量S(1)に対する比がS(n)/S(1)=0.94程度まで低下して「負のクラスター効果」を出現させることを示した。この計算では、薄膜中でのクラスター粒子間のクーロン爆発、クラスターの平均電荷の低下、電子分極によるクラスターの変形の効果を取り入れた。ただし、小角多重散乱の寄与は小さかった。クラスターの形状は原子間距離が0.127nmの線状構造を仮定して、クラスター軸と進行方向のなす角を変えて分子動力学法で計算した。上記のエネルギー損失比の値は、実験データとよく一致することがわかった。また、C60フラーレンイオンに対する炭素の阻止能を、イオンの速さがv=0.4-30Vb(Vbはボーア速度)の範囲で計算した結果、クラスター入射に特徴的な速度依存性を見出した。 | KAKENHI-PROJECT-19560050 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19560050 |
看護技術教育のための静脈血採血自習システムの開発 | 看護技術の中でもとりわけ繊細な手技を必要とする血管への注射針の刺入動作は,看護師の経験に依る部分が大きく,言語化が難しい,初学者にとって習得が困難な技術のひとつである.また,学生数に対する教員数,実習時間の不足を一因として卒業までに十分な技術を習得できない問題が指摘されている.そこで本研究では,看護技術教育を支援する自習教材として, AR技術を応用した静脈血採血時の注射針刺入動作の自習システムを開発することを目的とした.生徒に提示する注射針刺入動作の教師データを計測するために,刺入動作の計測に特化したモーションキャプチャシステムを構築した.これにより,一般的に採血のトレーニングに使用されている採血シミュレータの注射パッド表面に対する注射針先端の位置および注射器の姿勢を計測可能とし,刺入位置および刺入角度の解析を可能とした.実空間に配置した採血シミュレータに光学透過型HMDを用いて採血動作の手本を重畳して提示する採血自習システムを開発した.手本は構築した計測システムを用いて収集した教師データを基にCGで作成した.本システムにより,生徒は光学透過型HMDを介して目の前に提示される手本のCGに自らの手を重ねて動きを真似ることで採血技術を自学自習することが可能となった.本研究課題で開発した技術は他の技能教育への転用も可能であり,文章化が困難な専門技能教育の補助教材として活用できると考えている.今後はより効果的なCGの提示方法について検討したい.看護技術の中でもとりわけ繊細な手技を必要とする血管への注射針の刺入動作は,看護師の経験に依る部分が大きく,言語化が難しい,初学者にとって習得が困難な技術のひとつである.また,学生数に対する教員数,実習時間の不足を一因として卒業までに十分な技術を習得できない問題が指摘されている.そこで本研究では,看護技術教育を支援する自習教材として, AR技術を応用した静脈血採血時の注射針刺入動作の自習システムを開発することを目的とした.生徒に提示する注射針刺入動作の教師データを計測するために,刺入動作の計測に特化したモーションキャプチャシステムを構築した.これにより,一般的に採血のトレーニングに使用されている採血シミュレータの注射パッド表面に対する注射針先端の位置および注射器の姿勢を計測可能とし,刺入位置および刺入角度の解析を可能とした.実空間に配置した採血シミュレータに光学透過型HMDを用いて採血動作の手本を重畳して提示する採血自習システムを開発した.手本は構築した計測システムを用いて収集した教師データを基にCGで作成した.本システムにより,生徒は光学透過型HMDを介して目の前に提示される手本のCGに自らの手を重ねて動きを真似ることで採血技術を自学自習することが可能となった.本研究課題で開発した技術は他の技能教育への転用も可能であり,文章化が困難な専門技能教育の補助教材として活用できると考えている.今後はより効果的なCGの提示方法について検討したい. | KAKENHI-PROJECT-16H00384 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H00384 |
アラビア語シソーラスの完成を目ざすアラビア語意味論の研究 | (1)シソーラスの完成と出版平成13年9月14年6月にかけて「アラビア語シソーラス」の作成に専念した。まず、博士論文の段階で収集したアラビア語の語彙項目を、日本語とアラビア語の双方を同じアプリケーション共存できるコンピューターシステムに移し、語彙項目の見出しに日本語訳を付け、シソーラスの索引を作成した。まず、アラビア語の語彙項目の見出し(598項目)に日本語訳を付け、項目の配列と提示順を検討した。また、日本語の『分類語彙表』などを参考しつつ、語彙項目を10類に分けて配列した。そして、それぞれの類に関連する語彙項目を類義と反義の関係を考慮に入れて排列した。そして、語彙項目を提示する順に関しては、関係のある項目がなるべく近くに配置するようにし、各項目に検索しやすいように分類番号を付けた。また、13年分の特別研究員奨励費で、最新のOS搭載のコンピューターを購入し、アラビア語のアルファベット順で並べ替えができ、それぞれの項目にあがっている単語(2万語余り)の索引を作成した。そして、14年分の奨励費を利用し、カイロで調査とデータチェックお行い、分類方針を確定した。「アラビア語シソーラス」は、2002年7月に学習院大学博士論文刊行助成金を受けて刊行した。(2)日本語・アラビア語語彙比較対照研究比較対照研究は、ふたつの部分に分かれる。まず、形態的な面からの比較研究であるが、その研究の成果を10月12日に金沢大学で開催された日本エドワード・サピア協会第17回大会で「日本語・アラビア語の「形容詞類」-プロトタイプ理論の観点から-」という題名で発表した。発表では、さまざまな意見やコメントをいただき、現在は研究発表の内容をなおし、本年3月に論文を投稿する予定である。そして、意味的な面からの対照研究については、6月の日本言語学会で発表する予定である。(1)シソーラスの完成と出版平成13年9月14年6月にかけて「アラビア語シソーラス」の作成に専念した。まず、博士論文の段階で収集したアラビア語の語彙項目を、日本語とアラビア語の双方を同じアプリケーション共存できるコンピューターシステムに移し、語彙項目の見出しに日本語訳を付け、シソーラスの索引を作成した。まず、アラビア語の語彙項目の見出し(598項目)に日本語訳を付け、項目の配列と提示順を検討した。また、日本語の『分類語彙表』などを参考しつつ、語彙項目を10類に分けて配列した。そして、それぞれの類に関連する語彙項目を類義と反義の関係を考慮に入れて排列した。そして、語彙項目を提示する順に関しては、関係のある項目がなるべく近くに配置するようにし、各項目に検索しやすいように分類番号を付けた。また、13年分の特別研究員奨励費で、最新のOS搭載のコンピューターを購入し、アラビア語のアルファベット順で並べ替えができ、それぞれの項目にあがっている単語(2万語余り)の索引を作成した。そして、14年分の奨励費を利用し、カイロで調査とデータチェックお行い、分類方針を確定した。「アラビア語シソーラス」は、2002年7月に学習院大学博士論文刊行助成金を受けて刊行した。(2)日本語・アラビア語語彙比較対照研究比較対照研究は、ふたつの部分に分かれる。まず、形態的な面からの比較研究であるが、その研究の成果を10月12日に金沢大学で開催された日本エドワード・サピア協会第17回大会で「日本語・アラビア語の「形容詞類」-プロトタイプ理論の観点から-」という題名で発表した。発表では、さまざまな意見やコメントをいただき、現在は研究発表の内容をなおし、本年3月に論文を投稿する予定である。そして、意味的な面からの対照研究については、6月の日本言語学会で発表する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-01F00161 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01F00161 |
消費者が感じる牛肉の「やわらかさ」とは?-ISO5492収載用語による接近- | 消費者が感じる牛肉の「やわらかさ」とは、ISO5492収載用語およびISO11036評価基準における「かみ切りやすさ」「変形しやすさ」の2種類の食感で構成されていることが示された。また、牛肉の脂肪交雑(しもふり)は、「かみ切りやすさ」「変形しやすさ」の両方を改善すること、および「かみ切りやすさ」は「Warner-Bratzler剪断力価」と関係が深く、これを用いて客観的な評価が可能であることがそれぞれ示唆された。消費者が感じる牛肉の「やわらかさ」とは、ISO5492収載用語およびISO11036評価基準における「かみ切りやすさ」「変形しやすさ」の2種類の食感で構成されていることが示された。また、牛肉の脂肪交雑(しもふり)は、「かみ切りやすさ」「変形しやすさ」の両方を改善すること、および「かみ切りやすさ」は「Warner-Bratzler剪断力価」と関係が深く、これを用いて客観的な評価が可能であることがそれぞれ示唆された。所内一般パネルを用いた消費者型官能評価を行うため、「かみ切りやすさ」「変形しやすさ」を分離して評価可能な「食感の異なる牛肉サンプル」調製モデルについて初めに検討したところ、当初想定していたモデルでは外観面および衛生面での問題があることが判明した。そこで21年度は当初の予定を変更し、牛肉サンプル調製モデルについて再検討を行った。その結果、内部温度を50°C以上の4種類とし、官能評価直前にサンプル表面を80°Cで1分間処理することで、外観による区別がつきにくくなり、かつ衛生面での問題も無いサンプル調製が可能であった。また、この4種類のサンプルについて、専門家パネルを用いた食感の詳細なプロファイリングを行ったところ、この牛肉サンプル調製モデルにおいては「かみ切りやすさ」と「変形しやすさ」が異なる食感として認知されており、両者の感覚を分離して評価できることが明らかとなった。さらに、専門家パネルにおける食感のプロファイリングに用いる評価用語として、当初想定していたISO5492以外にISO11036評価用語を用いることで、より精密に牛肉の食感を表現できることが判明した。そこで次年度は、今年度確立された条件で消費者型官能評価を行い、消費者の感じる「牛肉のやわらかさ」解明をISO5492およびISO11036の両方の表現用語を用いて行うことが適当と考えられた。また、一般的に牛肉に「やわらかさ」をもたらすとされている脂肪交雑が、ISO5492食感表現用語ではどのような食感をもたらすか解析したところ、脂肪交雑の増加は「かみ切りやすさ」「変形しやすさ」の両方を改善することが示された。21年度までに、専門家パネルにおける食感のプロファイリングに用いる評価用語として、当初想定していたISO5492以外にISO11036評価用語を用いることで、より精密に牛肉の食感を表現できることが判明した。そこで22年度はISO11036において定義された「かみ切りやすさ」「変形しやすさ」評価基準を用いた精密な専門家型定量的食感評価を行うとともに、54名の消費者型パネリストを用いた官能評価を行い、これらサンプルについて個々の消費者の基準で「やわらかさ」「食感の好ましさ」を評価させた。その結果、調理温度を50°Cから92°Cまで上昇させたときに、専門家型官能評価における「かみ切りやすさ」および「変形しやすさ」評点は異なる変化を示した。同じサンプルを用いた消費者型官能評価では、専門家型官能評価において最も「かみ切りやすく」「変形しやすい」と判定された60°Cのサンプルがもっとも「やわらかい」と判定された。このことから、消費者が判断する牛肉の「やわらかさ」には、ISO11036食感評価基準のうち「かみ切りやすさ」「変形しやすさ」の両方が含まれていることが示された。また、外的嗜好マッピングの結果より、消費者の考える牛肉の「やわらかさ」においては、「変形しやすさ」が「かみ切りやすさ」よりも優先的な判断基準となっている可能性が示唆された。さらに「食感の好ましさ」については「やわらかさ」と同様の結果を示した。これらの結果は、今後消費者が感じる「やわらかさ」「食感の好ましさ」を向上させるための牛肉の食感評価及び改善においては、「かみ切りやすさ」と「変形しやすさ」の両方を客観的に評価して改善を図る必要があることを示唆している。 | KAKENHI-PROJECT-21700746 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21700746 |
非断熱ダイナミクスにより創発されるトポロジカル量子現象 | 平成29年度では,(1)超伝導電流の与えるスピントルク, (2)超伝導電流で誘起する非共線的な磁気秩序,(3)空間反転対称性の破れた磁性体におけるマグノン輸送,の三点についての研究および発表を行った。以下,それらの詳細を述べる。超伝導と磁性が絡み合って生じる物理は古くから研究が行われてきたが,近年新しい観点から研究が行われ,更なる注目を集めている。その一つは超伝導をスピントロニクスに応用する試みである。磁性体と超伝導体を接合させることで,特異な応答や磁気モーメントのダイナミクスを実現し,新しいデバイスへの応用を目指す。また,非従来型の超伝導,例えばトリプレットペアやトポロジカル超伝導の実現においても,磁性の役割は注目を集めている。スピンテクスチャを用いることで超伝導準粒子の波動関数のトポロジーを変え,非自明な超伝導状態を実現することができる。このような背景の下,本研究では超伝導とスピンテクスチャが関わりあって生じる量子現象をスピントロニクス応用やトポロジカル現象探索の観点から調べた。(1)では,スピン三重項の超伝導相関がスピン移行トルクにどのような影響を与えるかを微視的な計算により明らかにした。(2)では,近接効果誘起の超伝導をもつ相関金属中で非共線的な磁気秩序を誘起・制御できる方法を提案した。このような磁気秩序は,トポロジカル超伝導を実現する上で重要な役割を果たす。最後に(3)に関して述べる。磁性体中でのマグノン輸送は,スピントロニクスやマグノ二クスから注目を集めている。高嶋氏は,実験グループと協力し,空間反転対称性の破れた磁性体中におけるマグノン輸送現象を調べた。以上の結果は学術論文(4報)として出版し,8件の国内・国際学会での発表(うち招待講演1件)を行った。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。本課題では、バンドやスピンテクスチャがトポロジカル構造をもつときに、動的な外場や揺らぎによって誘起される量子現象を理解することを目的としている。今年度は特に、トポロジカル磁気構造のスキルミオンに着目し、量子揺らぎにより生じる相や超伝導の近接効果により誘起される現象について研究を行った。スキルミオンは、カイラル磁性体などで実験的に観察されている渦状の磁気構造である。従来の研究は、古典スピンの範囲内で議論されており、磁気スキルミオンの量子性については詳しく議論されてこなかった。一方で、近年の実験で数格子長程度のスキルミオンも観測されており、その量子効果の解明は重要であると考えられる。また、スキルミオンは磁気デバイスの候補としても注目されており、新しい制御法や電磁応答の理解は応用の観点からも必要である。今年度は、以下の研究を行った。(i)カイラル磁性体中のスキルミオンの量子状態の理解:数格子長程度のサイズの小さなスキルミオンに着目し、スピンの格子の影響を考慮することで、スキルミオンが実空間上で局在していない「スキルミオン量子液体相」が出現しうることを見出した。(ii)フラストレートした量子スピン模型の基底状態の解析:古典スピン極限でスキルミオン格子を発現する、三角格子上の量子スピン模型に着目し、飽和磁化近傍での基底状態を調べた。励起スペクトルの計算と厳密対角化から、三個のマグノンが束縛された状態が最低励起状態となり、その束縛状態の凝縮により磁気多極子相が生じることを明らかにした。(iii)カイラル磁性体とs波超伝導体の接合系におけるスキルミオンの駆動法の提案:カイラル磁性体中でのスピン軌道相互作用に注目し、超伝導電流を用いたスキルミオンの制御法を明らかにした。上述のように、スキルミオンを安定化する系において、量子揺らぎにより新たに生じる、スキルミオン量子液体相や磁気多極子相を明らかにした。また、カイラル磁性体と超伝導体の接合系における、超伝導電流を用いたスキルミオンの駆動法を明らかにした。一方で、得られた量子相の励起構造や応答現象、接合で生じた超伝導状態の詳細など、未解決の問題が残されており、その解明を今後行う予定である。今年度は,超伝導の近接効果に着目し,磁気モーメントと超伝導電流が絡み合うことで生じる量子現象について研究を行った。電流を用いた磁気モーメントの操作法は,磁気デバイスなどへの応用に向けて精力的に研究されてきた。また,近年,超伝導近接効果をスピントロニクスに用いることが注目されており,スピン・電荷の新しい輸送現象の実現が期待されている。しかし,これまで超伝導電流が磁気モーメントにどのように作用し,どのような現象を与えるかは詳しく調べられていなかった。そこで本研究では, (i)スピントリプレット超伝導電流を用いた磁気スピンの操作法,と(ii)超伝導電流による磁気転移の制御についての研究を行った。より具体的には,以下のとおりである。(i)では,強磁性体とトリプレット超伝導体の接合系を考え,超伝導電流によって生じるスピントルクを解析的な摂動計算により導出した。トルクによって生じる磁壁運動の解析を行い,正常電流によって駆動するときよりも,高効率に駆動できる場合があることを示した。(ii)では,相関電子系と超伝導体の接合系を考え,超伝導電流があるもとでの磁気転移現象を調べた。 | KAKENHI-PROJECT-15J01700 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15J01700 |
非断熱ダイナミクスにより創発されるトポロジカル量子現象 | 超伝導電流による磁気不安定性の計算や,変分計算を用いた磁気相図の導出を行った。また,前年度に行った研究に関して二件の論文を出版し,国際会議で三件の発表(うち招待講1件)を行ったほか,国内研究会・日本物理学会で三件の発表を行った。今年度は超伝導の近接効果に着目し,磁気モーメントと超伝導電流の与える現象について研究を行い,スピントルクや磁気不安定性などを明らかにできた。(i)では,前年度の研究結果を発展させることで,スピンシングレットとトリプレットの両方の場合に関して,超伝導電流を用いたスピントルクを微視的な表式を得ることができた。特に,トリプレット超伝導電流を用いたスピン移行トルクが,正常金属のものと定性的に異なる性質を持つことを微視的に示したのは重要な成果だと考えられる。また,(ii)の磁気転移に関しては,超伝導電流による磁気モーメント間の有効相互作用の変化を明らかにすることができた。これにより,電流を用いた磁気相の新しい制御が可能となる。平成29年度では,(1)超伝導電流の与えるスピントルク, (2)超伝導電流で誘起する非共線的な磁気秩序,(3)空間反転対称性の破れた磁性体におけるマグノン輸送,の三点についての研究および発表を行った。以下,それらの詳細を述べる。超伝導と磁性が絡み合って生じる物理は古くから研究が行われてきたが,近年新しい観点から研究が行われ,更なる注目を集めている。その一つは超伝導をスピントロニクスに応用する試みである。磁性体と超伝導体を接合させることで,特異な応答や磁気モーメントのダイナミクスを実現し,新しいデバイスへの応用を目指す。また,非従来型の超伝導,例えばトリプレットペアやトポロジカル超伝導の実現においても,磁性の役割は注目を集めている。スピンテクスチャを用いることで超伝導準粒子の波動関数のトポロジーを変え,非自明な超伝導状態を実現することができる。このような背景の下,本研究では超伝導とスピンテクスチャが関わりあって生じる量子現象をスピントロニクス応用やトポロジカル現象探索の観点から調べた。(1)では,スピン三重項の超伝導相関がスピン移行トルクにどのような影響を与えるかを微視的な計算により明らかにした。(2)では,近接効果誘起の超伝導をもつ相関金属中で非共線的な磁気秩序を誘起・制御できる方法を提案した。このような磁気秩序は,トポロジカル超伝導を実現する上で重要な役割を果たす。最後に(3)に関して述べる。磁性体中でのマグノン輸送は,スピントロニクスやマグノ二クスから注目を集めている。高嶋氏は,実験グループと協力し,空間反転対称性の破れた磁性体中におけるマグノン輸送現象を調べた。以上の結果は学術論文(4報)として出版し,8件の国内・国際学会での発表(うち招待講演1件)を行った。磁性体と超伝導体の接合系において、磁性体中のスピン軌道相互作用や、スピンテクスチャなどに着目し、実現される新しい超伝導状態や、超伝導を用いたスピンダイナミクスの制御について研究を行う。また、カイラル磁性体と超伝導体との接合系における、超伝導準粒子のトポロジカル構造に着目し、その場合の応答現象を調べることも計画している。今年度の研究結果を論文として出版し,研究発表を行う。そして,以下の2つの方向性で研究を進める予定である。(1)これまでに提案してきた超伝導電流の与えるスピントルクや磁気不安定性に関し,より物質に即した計算を行い,実験的実現を目指したセットアップの提案を行う。 | KAKENHI-PROJECT-15J01700 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15J01700 |
遷移金属含有型転写調節因子による遺伝子発現調節機構に関する研究 | CooA中のヘムは、酸化型、還元型、CO結合型、いずれの状態においても、6配位構造を取っている。還元型CooAとCOを反応させた場合、還元型CooA中のヘムは配位飽和な状態にあるにも関わらず、容易にCOと反応し、CO結合型CooAが生成する。すなわち、COが還元型CooA中のヘムに配位する場合には、二つある軸配位子の内の一方がCOと置換されることにより、CO結合型CooAが生成することになる。COがヘムに配位する際に、軸配位子の解離が起こることにより、ヘム近傍のコンフォメーションが変化することが、^1H-NMRの測定により明かとなった。CO配位に伴う軸配位子の解離により誘起されるヘム近傍のコンフォメーション変化が、最終的にはCooA分子全体のコンフォメーション変化をもたらすことにより、CooAが活性化されるものと考えられる。CooA中に含まれるヘムの軸配位を決定するため、配位性のアミノ酸をアラニン等の非配位性アミノ酸に置換した、変異型CooAを調製し、それらの電子吸収スペクトルを測定した。His、Cys、Metについては、CooA中に存在する、すべての残基について変異を導入した。その他の配位性アミノ酸については、CooAのヘム結合ドメイン(N末端から131残基目までの領域)中に存在するものについて、変異を導入した。変異導入の結果、Cys75およびAsp72に変異を導入した場合、酸化型において電子吸収スペクトルに変化が観測された。His77に変異を導入した場合には、還元型における電子吸収スペクトルに変化が観測された。酸化型において、Cys75がヘムに軸配位していることは、EPR等の測定により確認された。しかし、Asp72については、Asp72がヘムの配位子となっているのか、あるいは、変異導入の二次的影響により電子吸収スペクトルが変化したのか、現時点では確定できていない。CooA中のヘムは、酸化型、還元型、CO結合型、いずれの状態においても、6配位構造を取っている。還元型CooAとCOを反応させた場合、還元型CooA中のヘムは配位飽和な状態にあるにも関わらず、容易にCOと反応し、CO結合型CooAが生成する。すなわち、COが還元型CooA中のヘムに配位する場合には、二つある軸配位子の内の一方がCOと置換されることにより、CO結合型CooAが生成することになる。COがヘムに配位する際に、軸配位子の解離が起こることにより、ヘム近傍のコンフォメーションが変化することが、^1H-NMRの測定により明かとなった。CO配位に伴う軸配位子の解離により誘起されるヘム近傍のコンフォメーション変化が、最終的にはCooA分子全体のコンフォメーション変化をもたらすことにより、CooAが活性化されるものと考えられる。CooA中に含まれるヘムの軸配位を決定するため、配位性のアミノ酸をアラニン等の非配位性アミノ酸に置換した、変異型CooAを調製し、それらの電子吸収スペクトルを測定した。His、Cys、Metについては、CooA中に存在する、すべての残基について変異を導入した。その他の配位性アミノ酸については、CooAのヘム結合ドメイン(N末端から131残基目までの領域)中に存在するものについて、変異を導入した。変異導入の結果、Cys75およびAsp72に変異を導入した場合、酸化型において電子吸収スペクトルに変化が観測された。His77に変異を導入した場合には、還元型における電子吸収スペクトルに変化が観測された。酸化型において、Cys75がヘムに軸配位していることは、EPR等の測定により確認された。しかし、Asp72については、Asp72がヘムの配位子となっているのか、あるいは、変異導入の二次的影響により電子吸収スペクトルが変化したのか、現時点では確定できていない。 | KAKENHI-PROJECT-10129209 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10129209 |
タウレプトン崩壊の精密測定によるステライルニュートリノの探索 | 素粒子物理学の標準理論を超える理論として有力視されているモデルの一つに、標準理論のゲージグループ下ではチャージを持たないフェルミオン、ステライルニュートリノを導入するモデルがある。本研究では、KEKBファクトリーで得られたビッグデータを使ったタウレプトン崩壊の精密測定によって、ステライルニュートリノの探索を行っている。標準理論では、電弱カレントのLorentzstructureはV-A型をとる。レプトン崩壊のパラメータであるMichelパラメータを測定し、標準模型の期待値と比較で、V-A型以外の結合を持つ新物理の寄与を探索することができる。特に、輻射レプトン崩壊(radiative leptonic decay; τ→μννγとτ→eννγ)を用いることで、通常の崩壊では測定できない2種類のMichelパラメータの測定が可能となる。また、τ- →π-l+l-ντという稀崩壊の崩壊幅は、ステライルニュートリノの存在によって、標準理論の期待値を上回る可能性がある。Belle実験で得られた約9億のタウ・反タウ対を含むビッグデータを用いて、データの解析を進めた。スーパーKEKB用前方電磁カロリーメータの要素研究として、純粋CsI結晶+ Wave Length Shifter)+ APDの組み合わせの最適化を行った。電磁カロリーメータの要素開発も進展した。τ- →π-l+l-ντの解析を完了し、結果を出版する。素粒子物理学の喫緊の課題が、標準理論を超える、より根源的な新原理の発見にあることは言を俟たない。ニュートリノ振動の発見は、標準理論のラグランジアンに新自由度の導入を迫る。中でも有力視されている理論モデルは、標準理論のゲージグループ下ではチャージを持たないフェルミオン、ステライルニュートリノを導入するモデルである。短基線ニュートリノ振動の異常やダークマターを説明できる。本研究では、KEKBファクトリーで得られたビッグデータを使ったタウレプトン崩壊の精密測定によって、ステイラルニュートリノの探索を行っている。標準模型では、電弱カレントのLorentzstructureはV-A型をとる。レプトン崩壊のパラメータであるMichelパラメータを測定し、標準模型の予言する値と比較することで、V-A型以外の結合を持つ新物理の寄与を探索ができる。特に、輻射レプトン崩壊(radiative leptonic decay; τ→μννγとτ→eννγ)を用で、通常の崩壊では測定できない2種類のMichelパラメータの測定が可能となる。対生成されたタウレプトンのスピン相関を用いる困難な測定が必要が、測定可能な粒子の全ての運動学的変数とその相関の情報を用いることで感度を最大化する解析手法を開発した。さらに、2018年度から本格運転を開始するスーパーKEKBファクトリーのデータを使った研究を進めている。並行して測定器開発研究も進めている。また本年度は、理論研究者との協力連携体制を強化し、得られた計算値や式を実験シミュレーションに取り込んだ。Belle実験で得られた約9億のタウ・反タウ対を含むビッグデータを用いて、データの解析を進めた。スーパーKEKB用前方電磁カロリメータの開発研究を進めた。特に、純粋CsI結晶+ Wave Length Shifter)+ APDの組み合わせの最適化を行い、低雑音化に取り組んだ。物理解析手法が確立できた。電磁カロリーメータの要素開発も進展した。素粒子物理学の標準理論を超える理論として有力視されているモデルの一つに、標準理論のゲージグループ下ではチャージを持たないフェルミオン、ステライルニュートリノを導入するモデルがある。本研究では、KEKBファクトリーで得られたビッグデータを使ったタウレプトン崩壊の精密測定によって、ステライルニュートリノの探索を行っている。標準理論では、電弱カレントのLorentzstructureはV-A型をとる。レプトン崩壊のパラメータであるMichelパラメータを測定し、標準模型の期待値と比較で、V-A型以外の結合を持つ新物理の寄与を探索することができる。特に、輻射レプトン崩壊(radiative leptonic decay; τ→μννγとτ→eννγ)を用いることで、通常の崩壊では測定できない2種類のMichelパラメータの測定が可能となる。また、τ- →π-l+l-ντという稀崩壊の崩壊幅は、ステライルニュートリノの存在によって、標準理論の期待値を上回る可能性がある。Belle実験で得られた約9億のタウ・反タウ対を含むビッグデータを用いて、データの解析を進めた。スーパーKEKB用前方電磁カロリーメータの要素研究として、純粋CsI結晶+ Wave Length Shifter)+ APDの組み合わせの最適化を行った。電磁カロリーメータの要素開発も進展した。τ- →π-l+l-ντの解析を完了し、結果を出版する。 | KAKENHI-PROJECT-16H02175 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H02175 |
職場におけるモラルハラスメントの立法的規制の調査研究 | 「職場におけるモラルハラスメント(職場のいじめ)」の実態について、民間団体への調査と判例分析によって、深刻な状況と傾向を分析した。ハラスメント規制立法を制定しているフランスとベルギーとEUの立法の実施状況、裁判例やEUの実態などについて調査した。「職場におけるモラルハラスメント」規制立法の基本的な方向性、条件と課題を明らかにした。「職場のモラルハラスメント」問題について、立法的規制と救済制度を制度設計するために、基本的課題を明確にすることを目的として、立法制度の方向性と基本的条件・内容を確定するための研究を実施し、二度の外国出張による資料収集や実態調査を行った。2012年6月13日ー15日にコペンハーゲン大学(デンマーク)で開催された「職場のハラスメント研究国際協会」主催の第8回国際学会に参加し、「職場のモラルハラスメントをなくす会」と共同で、「日本における職場のハラスメントの現状と市民団体の役割」についてポスタープレゼンテーションを行い、日本の現状の情報発信ができた。分科会および全体総会では、各国からの報告や総括討議を通じ、「職場におけるモラルハラスメント」の現状と規制に関する問題状況と立法的規制における課題についての最新の知見を得ることができ、今後の情報交換や研究交流を発展させる可能性と条件を確認できた。2012年9月20日-30日にボルドー第4大学(フランス)比較労働法社会保障法研究所(比較労働リスクプロジェクト)において、EUおよびフランスにおけるモラルハラスメント規制に関する立法動向と判例について、調査研究を行った。文献資料の収集とともに、フランス国立科学研究所(CNRS)の研究者およびEU各国の研究者との研究情報の交換を通じて、モラルハラスメント規制に関する立法的型式についての各国における固有の背景と事情について、特に、平等政策と差別禁止政策との交錯の関係、そこにおけるモラルハラスメント規制政策の位置づけについて、研究動向と情報を収集することができた。フランスにおけるモラルハラスメント規制の判例動向については、使用者責任に関する破棄院民事部および社会部の判決について、労使当事者の側からの法的評価と経営上の位置づけについての意見を収集した。この間の研究成果を論文等で公表した。日本における「モラルハラスメント」関連判例のデータベース化の作業を行った。セクシャルハラスメント関連判例も含めて、約200判例を収集したが、対象事実の認定と因果関係論を中心として、判決内容を精査し、直接的に「モラルハラスメント」に関連する判例を選別する作業を実施した。これにより、約120件の判例データを収集することができた。引き続き、その整理作業を行った。EUおよびフランスにおけるハラスメント規制に関する立法動向と理論動向について、2012年9月に実施した調査研究を続行するとともに、その後の新たな動向に関する情報収集と資料収集を行った。特に、2012年5月のフランス破棄院によるセクシャルハラスメント規定の刑罰規定の違憲判決後の影響と、それを受けた2012年8月年の立法修正に関する資料を収集した。一連の資料収集と理論動向の調査研究によって、「ワーク・ハラスメント」概念を基礎とするハラスメント規制のあり方について理論構成をするための方向性を確認することができた。その作業の一環として、EUおよびヨーロッパ各国における労働環境リスクの実態と理論、それに関する法的制度についての調査研究を行った。モラルハラスメントについても、社会心理的リスクとしての性格と位置づけを明確にすることによって、組織的性格と集団的対応を講じる政策的動向を分析し、法的な視点からする、「労働における社会心理的リスク」概念の法的理念の根拠とモラルハラスメントの相互関係についての調査分析を行った。「職場におけるモラルハラスメント(職場のいじめ)」の実態について、民間団体への調査と判例分析によって、深刻な状況と傾向を分析した。ハラスメント規制立法を制定しているフランスとベルギーとEUの立法の実施状況、裁判例やEUの実態などについて調査した。「職場におけるモラルハラスメント」規制立法の基本的な方向性、条件と課題を明らかにした。「職場のモラルハラスメント」問題について、立法的規制と救済制度のあり方についての基本的課題を明確にし、その制度設計のための基本的な枠組みを構想する目的から、実態調査と先例モデルを調査することにより研究を進めた。社会的規制制度の存在していない日本の実態を把握するため、「職場のモラルハラスメント」対策に取り組む市民団体の活動の実態を調査した。この調査によって、従来の行政機関や企業や労働組合レベルの調査からは明らかにならなかった問題点を明らかにすることができた。「職場のモラルハラスメント」の実態と規制制度の先例的事例を比較調査する目的から、EUレベルにおける労働実態調査と規制制度の調査研究、および立法的規制についてのモデルであるベルギーおよびフランスの立法や社会的規制について調査研究した。EUの労働実態調査については、生活・労働条件改善ヨーロッパ機構が5年ごとに実施してきた「ヨーロッパ労働条件調査」の第1回から第5回までの調査資料を収集した。その分析によって、EUにおいて確認されてきた教訓と成果を明らかにすることができた。この内容の一部は、2012年7月に刊行予定の滋賀大学環境総合研究センター研究年報において、公表する予定である。ベルギーの事例研究では、1996年法、2002年法、2007年法の制定過程やその運用における実情や議論を検討するための資料、労働争訴の手続きと実情についての資料、裁判例に関する資料を収集することができた。フランスの事例研究では、EUにおける社会的当事者の対話と協定化の動向を受けた労使団体の合意化および協定化が、2010年3月協定として結実している経過について、資料を収集し、労働組合と市民団体の動向について、関連する資料を収集した。EUおよびベルギーやフランスの制度や動向の調査研究は、日本での今後の政策化において重要な示唆を与えるものと考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-23530060 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23530060 |
職場におけるモラルハラスメントの立法的規制の調査研究 | 研究計画の最終年度(2013年)までに実施完了しなかった判例のデータベース作成を行った。職場のいじめ事案を網羅するため、ハラスメント行為が対象とされている争訴事件を中心に、公刊されている判例掲載誌に未掲載の判決(約100件)を含め約200件の判決について、事実関係、争点、事実認定、責任等の類型から分類した。このうちの95件について、2014年7月に公刊した「職場のいじめと法規制」(2013年度研究成果として公表)に収録した。最終年度の研究取り纏めのため、比較法研究についての追加的な調査研究のうち、EUにおける労働条件実態調査の第5次調査報告結果の分析やフランスにおける企業段階でのモラルハラスメント規制に関する協定の分析と2012年の憲法院判決の結果によって必要となった労働法典の修正問題について、上記「職場のいじめと法規制」の校正段階において、反映させている。比較法研究の取り纏めにおいて、フランスにおけるモラルハラスメント規制立法の動向を、ミッテラン政権以降の労働改革の動向とモラルハラスメント規制における労働組合の役割の意義の視点から、2015年3月に上梓した「フランスにおける労働組合の代表権能の動揺と再生」の中で、取り上げた。最終年度の研究実施とそれまでの3年間の研究期間全体における研究の遂行によって、比較法研究によってEU、フランスおよびベルギーの諸機関・国における職場のいじめに対する立法的規制の先進的事例を分析し、日本ではじめて体系的に紹介できたこと、「日本における職場のいじめ問題の現状と課題」を明らかにし、特に、「パワーハラスメント(パワハラ)」という用語や概念の問題性を明らかにし、科学的知見と国際的な教訓に立脚した政策と制度の設計や実施を明らかにすることができた。労働法学「研究の目的」においては、「モラルハラスメント」概念によって、「職場のいじめ・ハラスメント」問題を解決する展望を明らかにし、<立法形式・位置づけ>、<規制・救済・制裁>の立法制度の方向性と基本的条件・内容を明らかにするという課題を設け、2012年度には、特に比較研究を実施するとしていた。「職場のハラスメント研究国際協会」の国際学会への出席およびボルドー第4大学比較労働法社会保障法研究所(比較労働リスクプロジェクト)での調査研究を通じて、諸外国の比較制度研究により、「レーバー・ハラスメント」あるいは「ワーク・ハラスメント」の概念による「職場のいじめ」の定義化の動向を明確することができ、日本における概念の混迷状態の解決の方向性を確認することができ、普遍的な理念である「モラルハラスメント」概念による「職場のいじめ」問題の解決の可能性を提示できたことは、貴重な成果である。定義問題を整理し、<立法形式・位置づけ>、<規制・救済・制裁>の立法制度の方向性と基本的条件・内容を明らかにするための基本的な視点の一つを確認することができ、今後の研究の方向性を明らかにできた。 | KAKENHI-PROJECT-23530060 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23530060 |
骨補填材としての吸収性多孔体アパタイト焼結体の開発 | 従来までの水酸化アパタイトに代わり炭酸イオンを含有したアパタイトを新たな焼結原料とすると、焼結体アパタイトは骨アパタイトに類似した溶解性を有し、培養系において破骨細胞による吸収を受けることが示された。また、本焼結体上で骨芽細胞を培養すると、培養基盤(スチロール)に比べ骨様組織が早く生成することが確認でき、本焼結体が骨芽細胞の分化・増殖を助長する環境場を与えやすいことが示唆できた。培養系では焼結緻密体を用いたが、吸収性は多孔体もしくは顆粒状の方が優り、また、密度(マイクロポロシティの量に逆比例)が小さい方が優ることが当然予想できるため、動物実験用試料は静水圧処理をしない、合成後の沈殿泥を乾燥した試料を加熱して得た。この時、乾燥した沈殿泥を先ず粉砕し、粒度調整(300500μm)した後に合成後の原料スラリーを焼結助剤として適度に加え、型形成をした後、試料を焼結し多孔体を得た。このようにして得られた多孔体をラット頭蓋骨に填入し、2及び4週目の組織観察をした。材料を填入しない場合、欠損部には術後4週目でも骨はほとんど生成しないが、本多孔体を填入すると、術後2週目で、正常骨の1/4程度の厚さの幼弱骨が生成し、4週目では填入材料はかなり吸収され、一部の領域の填入部位は正常骨と差異のない骨組織で置換されていた。また、術後初期においても炎症所見は認めがたく、本材料が生体親和性に優れ、かつ、生体内で吸収され得る、極めて有効な骨補填材となり得ることが示唆できた。従来までの水酸化アパタイトに代わり炭酸イオンを含有したアパタイトを新たな焼結原料とすると、焼結体アパタイトは骨アパタイトに類似した溶解性を有し、培養系において破骨細胞による吸収を受けることが示された。また、本焼結体上で骨芽細胞を培養すると、培養基盤(スチロール)に比べ骨様組織が早く生成することが確認でき、本焼結体が骨芽細胞の分化・増殖を助長する環境場を与えやすいことが示唆できた。培養系では焼結緻密体を用いたが、吸収性は多孔体もしくは顆粒状の方が優り、また、密度(マイクロポロシティの量に逆比例)が小さい方が優ることが当然予想できるため、動物実験用試料は静水圧処理をしない、合成後の沈殿泥を乾燥した試料を加熱して得た。この時、乾燥した沈殿泥を先ず粉砕し、粒度調整(300500μm)した後に合成後の原料スラリーを焼結助剤として適度に加え、型形成をした後、試料を焼結し多孔体を得た。このようにして得られた多孔体をラット頭蓋骨に填入し、2及び4週目の組織観察をした。材料を填入しない場合、欠損部には術後4週目でも骨はほとんど生成しないが、本多孔体を填入すると、術後2週目で、正常骨の1/4程度の厚さの幼弱骨が生成し、4週目では填入材料はかなり吸収され、一部の領域の填入部位は正常骨と差異のない骨組織で置換されていた。また、術後初期においても炎症所見は認めがたく、本材料が生体親和性に優れ、かつ、生体内で吸収され得る、極めて有効な骨補填材となり得ることが示唆できた。従来までの水酸化アパタイトに代わり炭酸イオン含有アパタイトを新たな焼結原料とすると、焼結温度が炭酸含有量に比例して低下し、例えば初期炭酸含有量11.8wt%の試料では約750°Cで焼結できることが明らかとなった。X線回析、赤外吸収(IR)スペクトルで焼結体試料を解析すると、アパタイト相以外になんらの相も検出されず、本炭酸含有アパタイトが非化学量論組成でありながら焼結後にはアパタイト単一相となることも確認できた。また、熱重量分析(TG)、IR及び化学分析の結果から、焼結体アパタイト自信が炭酸イオンを含有していることも確認できた。焼結後の炭酸イオン含有量は焼結温度、昇温速度及び保持時間に依存したが、おおむね初期炭酸含有量の半量程度であった。上述の初期炭酸含有量11.8wt%の試料では、その焼結体は約6wt%の炭酸イオンを含有することを意味し、この含有量は骨アパタイトに含有されている炭酸イオン量に匹敵する。酢酸溶液中で溶解挙動を検討すると、本焼結体アパタイトは、比較的溶解度が高いことが知られているリン酸八カルシウ(OCP)、リン酸三カルシウム(β-TCP)及び脱有機骨アパタイトと同程度に溶解しやすいことが確かめられた。破骨細胞を用いた培養系では、本焼結体と骨は吸収されることが確認できたが、焼結水酸化アパタイト並びにβ-TCPでは吸収窩が認められず、本焼結体が、吸収性の点では骨アパタイトに匹敵するものと示唆できた。また、ラット頭蓋骨に本試料の多孔体を填入したところ、填入2週目で正常骨の1/3程度の厚さの幼弱骨が生成し、4週目では填入材料はほぼ完全に吸収され、填入部位は正常骨と差異のない骨組織で置換されていた。また、炎症所見はこの時期では認めがたく、本材料が生体親和性に優れ、極めて有効な骨補填材となり得ることが理解できた。 | KAKENHI-PROJECT-09558124 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09558124 |
骨補填材としての吸収性多孔体アパタイト焼結体の開発 | 従来までの水酸化アパタイトに代わり炭酸イオンを含有したアパタイトを新たな焼結原料とすると、焼結体アパタイトは骨アパタイトに類似した溶解性を有し、培養系において破骨細胞による吸収を受けることが示された。本焼結体の破骨細胞付着性を焼結水酸化アパタイト、βリン酸三カルシウム及び骨片と比較すると、これら材料間には大きな相違はないものの、吸収窩が認められたのは本焼結体と骨片のみであり、本焼結体が、破骨細胞吸収性の点でも骨アパタイトに匹敵することが明となった。βリン酸三カルシウムは生体内吸収性材料との評価が高いが、破骨細胞による吸収は受けにくく、また、培養2日後の試料上の破骨細胞は活性がかなり劣り、死滅した様相を呈するものも多く、本材料の生体材料としての評価には疑問覗せざるをえない結果も同時に得ることができた。培養系では焼結緻密体(静水圧処理後に焼結)を用いたが、吸収性は多孔体もしくは顆粒状の方が優り、また、密度(マイクロポロシティの量に逆比例)が小さい方が優ることが当然予想できるため、動物実験用試料は静水圧処理をしない、合成後の沈殿泥を乾燥した試料を加熱して得た。この時、乾燥した沈殿泥を先ず粉砕し、粒度調整(300500μm)した後に合成後の原料スラリーを焼結助剤として適度に加え、型形成をした後、試料を焼結し多孔体を得た。このようにして得られた多孔体をラット頭蓋骨に填入し、填入2及び4週目の組織観察をした。材料を填入しない場合、欠損部には術後4週目でも骨はほとんど生成しないが、本多孔体を填入すると、術後2週目で、正常骨の173程度の厚さの幼弱骨が生成し、4週目では填人材料はかなり吸収され、填入部位は正常骨と差異のない骨組織で置換されていた。また、術後初期においても炎症所見は認めがたく、本材料が生体親和性に優れ、かつ、生体内で吸収去れ得る、極めて有効な骨補填材となり得ることが示唆できた。従来までの水酸化アパタイトに代わり炭酸イオンを含有したアパタイトを新たな焼結原料とすると、焼結体アパタイトは骨アパタイトに類似した溶解性を有し、培養系において破骨細胞による吸収を受けることが示された。また、本焼結体上で骨芽細胞を培養すると、培養基盤(スチロール)に比べ骨様組織が早く生成することが確認でき、本焼結体が骨芽細胞の分化・増殖を助長する環境場を与えやすいことが示唆できた。培養系では焼結緻密体を用いたが、吸収性は多孔体もしくは顆粒状の方が優り、また、密度(マイクロポロシティの量に逆比例)が小さい方が優ることが当然予想できるため、動物実験用試料は静水圧処理をしない、合成後の沈殿泥を乾燥した試料を加熱して得た。この時、乾燥した沈殿泥を先ず粉砕し、粒度調整(300500μm)した後に合成後の原料スラリーを焼結助剤として適度に加え、型形成をした後、試料を焼結し多孔体を得た。このようにして得られた多孔体をラット頭蓋骨に填入し、填入2及び4週目の組織観察をした。材料を填入しない場合、欠損部には術後4週目でも骨はほとんど生成しないが、本多孔体を填入すると、術後2週目で、正常骨の1/4程度の厚さの幼弱骨が生成し、4週目では填入材料はかなり吸収され、一部の領域の填入部位は正常骨と差異のない骨組織で置換されていた。また、術後初期においても炎症所見は認めがたく、本材料が生体親和性に優れ、かつ、生体内で吸収去れ得る、極めて有効な骨補填材となり得ることが示唆できた。 | KAKENHI-PROJECT-09558124 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09558124 |
コンクリート構造物の高寿命化と信頼性向上に関する産学融合連携型研究 | 1.維持・管理の現状,特に点検技術,健全度評価技術,劣化予測技術,対策工選定に係わる課題の抽出本研究で対象とする劣化を,疲労,塩害,アルカリ骨材反応の3つに分類し,それぞれの劣化について,1)点検技術,2)健全度評価,4)劣化予測,5)対策工における課題を調査した.その結果疲労については,簡易的に軸重を推定するモニタリングシステムが必要であることが明らかとなった.アルカリ骨材反応については,予測手法の適用範囲など予測手法そのものについて明確にされていないという現状が明らかとなった.さらに塩害については,劣化予測のための対策工の客観的なデータベース化が必要であることが明らかとなった.またそれぞれの劣化における健全度評価法についても,合理的な評価が行われていないことが明らかとなった.2.モデル橋を用いての実証抽出された課題について,実橋を用いた実証を行った.まず疲労を呈するA橋について,各種センサを配置しモニタリングシステムの構築と軸重推定のための必要項目の抽出を行った.特にA橋については疲労劣化に対しての補修・補強が随時行われており,これと平行してたわみ計測やひずみ計測等を行い最重要項目の抽出と補修効果の確認を行った.また軸重推定に必要なデータ項目の絞込みを行い,推定システム構築の基礎データを確保できた.アルカリ骨材反応が問題となるB橋に対しても,劣化予測式を踏まえた目視調査を行い問題点を抽出した.また塩害が問題となるC橋については,劣化が生じている補修箇所を目視調査により確認し,追跡調査を行う箇所を選定した.これらの結果は将来的な産学連携プロジェクトへ応用する予定である.1.維持・管理の現状,特に点検技術,健全度評価技術,劣化予測技術,対策工選定に係わる課題の抽出本研究で対象とする劣化を,疲労,塩害,アルカリ骨材反応の3つに分類し,それぞれの劣化について,1)点検技術,2)健全度評価,4)劣化予測,5)対策工における課題を調査した.その結果疲労については,簡易的に軸重を推定するモニタリングシステムが必要であることが明らかとなった.アルカリ骨材反応については,予測手法の適用範囲など予測手法そのものについて明確にされていないという現状が明らかとなった.さらに塩害については,劣化予測のための対策工の客観的なデータベース化が必要であることが明らかとなった.またそれぞれの劣化における健全度評価法についても,合理的な評価が行われていないことが明らかとなった.2.モデル橋を用いての実証抽出された課題について,実橋を用いた実証を行った.まず疲労を呈するA橋について,各種センサを配置しモニタリングシステムの構築と軸重推定のための必要項目の抽出を行った.特にA橋については疲労劣化に対しての補修・補強が随時行われており,これと平行してたわみ計測やひずみ計測等を行い最重要項目の抽出と補修効果の確認を行った.また軸重推定に必要なデータ項目の絞込みを行い,推定システム構築の基礎データを確保できた.アルカリ骨材反応が問題となるB橋に対しても,劣化予測式を踏まえた目視調査を行い問題点を抽出した.また塩害が問題となるC橋については,劣化が生じている補修箇所を目視調査により確認し,追跡調査を行う箇所を選定した.これらの結果は将来的な産学連携プロジェクトへ応用する予定である. | KAKENHI-PROJECT-15631006 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15631006 |
エビデンスに基づく教育実践の在り方 ~学校現場におけるエビデンス活用の工夫~ | 1.具体的内容(1)文献翻訳(2)エビデンス活用のためのフィールドワーク・養老町立東部中学校をフィールドとして、エビデンスを活用した教育実践を試み、それらの成果を、第10回エビデンスに基づく教育研究会にて、口頭発表を行った。(3)国際シンポジウムの企画・開催・研究代表者の所属研究会(エビデンスに基づく教育研究会)を通じ、英国におけるEvidence in Educationプロジェクトを推進している研究者David Gough氏を招待し、研究成果に基づいた国際シンポジウムを2回企画開催した。(平成25年9月13日(土)、平成25年9月20日(土))(4)研究に基づく学会発表・論文執筆・日本ピア・サポート学会にて、英国エビデンス機関の視察について執筆・報告を行った。平成25年新潟コンペンションセンター「エビデンスに基づく教育-英国エビデンス機関の視察報告-」・エビデンスに基づく教育実践の具体を論文としてまとめた。教育実践科学研究センター紀要第14号「プレゼンテーション活動を取り入れた情報モラル教育の効果」pp. 205-2122.意義・重要性。・理論書の翻訳、シンポジウムによる国内外の取り組みの検討、研究論文の執筆などの研究成果に基づき、新しい学問的パラダイム転換が求められている中で、実践に資する研究の方向性や今後の教育研究の在り方について、学校現場から具体的な研究成果を提示した点に社会的インパクトがある。1.具体的内容(1)文献翻訳(2)エビデンス活用のためのフィールドワーク・養老町立東部中学校をフィールドとして、エビデンスを活用した教育実践を試み、それらの成果を、第10回エビデンスに基づく教育研究会にて、口頭発表を行った。(3)国際シンポジウムの企画・開催・研究代表者の所属研究会(エビデンスに基づく教育研究会)を通じ、英国におけるEvidence in Educationプロジェクトを推進している研究者David Gough氏を招待し、研究成果に基づいた国際シンポジウムを2回企画開催した。(平成25年9月13日(土)、平成25年9月20日(土))(4)研究に基づく学会発表・論文執筆・日本ピア・サポート学会にて、英国エビデンス機関の視察について執筆・報告を行った。平成25年新潟コンペンションセンター「エビデンスに基づく教育-英国エビデンス機関の視察報告-」・エビデンスに基づく教育実践の具体を論文としてまとめた。教育実践科学研究センター紀要第14号「プレゼンテーション活動を取り入れた情報モラル教育の効果」pp. 205-2122.意義・重要性。・理論書の翻訳、シンポジウムによる国内外の取り組みの検討、研究論文の執筆などの研究成果に基づき、新しい学問的パラダイム転換が求められている中で、実践に資する研究の方向性や今後の教育研究の在り方について、学校現場から具体的な研究成果を提示した点に社会的インパクトがある。 | KAKENHI-PROJECT-26907020 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26907020 |
シリケート化合物による機能性強誘電体材料の創製と量子ビーム解析 | 近年の革新型畜電池開発において、非晶質を用いた全固体電池の応用に向けた研究が活発である。本研究は結晶化ガラスを母構造にもつシリケート化合物ABSi2O7(A:アルカリ金属, B:Nb5+など)に着目した。ABSi2O7は、BO6-SiO4の多面体頂点共有ネットワークの大きな空隙を有し、空隙内にA+カチオンが配置される構造をもつ。本研究は、中性子回折及び全散乱による量子ビーム解析から非晶質内の多面体ネットワークの規則化プロセスを明らかにし、空隙間にあるA+カチオンの非調和熱振動を精密構造解析により明らかにすることを目的とする。近年の革新型畜電池開発において、非晶質を用いた全固体電池の応用に向けた研究が活発である。本研究は結晶化ガラスを母構造にもつシリケート化合物ABSi2O7(A:アルカリ金属, B:Nb5+など)に着目した。ABSi2O7は、BO6-SiO4の多面体頂点共有ネットワークの大きな空隙を有し、空隙内にA+カチオンが配置される構造をもつ。本研究は、中性子回折及び全散乱による量子ビーム解析から非晶質内の多面体ネットワークの規則化プロセスを明らかにし、空隙間にあるA+カチオンの非調和熱振動を精密構造解析により明らかにすることを目的とする。 | KAKENHI-PROJECT-19K05010 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K05010 |
慢性一酸化炭素合成阻害高血圧モデルの確立と病態解明 | 近年、一酸化窒素NOの多彩な生体内活性が報告され、循環器疾患の成立・進展に広く関与していることが示唆されている。既に、我々はNO合成を慢性的に阻害すると持続性の高血圧が発症することを報告し、その機序として従来考えられていた内皮由来血管拡張性物質EDRFの阻害のみならず、腎交感神経を介した体液性調節機序の存在を明かにした(Hypertension 1994)。更に、種々の高血圧モデルにおいて臓器障害の成立にNOが重要な役割を果していることを報告してきた(Hypertension 1996, Nephron 1996, Circulation 1995)。これらの結果は、NOがEDRFとして局所の血流を調節し、血小板凝集抑制、細胞増殖及び肥大の抑制を行うのみならず、神経伝達物質としての交感神経系に抑制的に働くことにより、高血圧発症、心・腎病変進展に対し防御的に機能することを示唆する。この多彩なNOの生体内活性はその僅か数秒間の半減期による迅速な反応系と、細胞間情報伝達物質でありながら気体であることによる特性に基く部分が大きい。近年、NOと同様に気体でありながらその合成酵素が中枢神経系、血管内皮等に幅広く分布し、細胞内情報伝達物質としてcGMPを共有する一酸化炭素(CO)が注目されつつある。COはNO以上に記憶や自立神経系などで神経伝達物質として重要な役割を有することが示唆されており、最近、HO阻害剤を全身的に急性投与すると血圧上昇を来しそれが脊髄切断により降圧すると報告されるにつれ、COがNOと同様神経性機序を介して血圧調節に働く可能性が示唆されている。我々は、現在CO合成阻害物質を中枢内投与することにより、COの循環調節に果たす役割について検討しており、既にmodelとしては完成した結果を得ている。近年、一酸化窒素NOの多彩な生体内活性が報告され、循環器疾患の成立・進展に広く関与していることが示唆されている。既に、我々はNO合成を慢性的に阻害すると持続性の高血圧が発症することを報告し、その機序として従来考えられていた内皮由来血管拡張性物質EDRFの阻害のみならず、腎交感神経を介した体液性調節機序の存在を明かにした(Hypertension 1994)。更に、種々の高血圧モデルにおいて臓器障害の成立にNOが重要な役割を果していることを報告してきた(Hypertension 1996, Nephron 1996, Circulation 1995)。これらの結果は、NOがEDRFとして局所の血流を調節し、血小板凝集抑制、細胞増殖及び肥大の抑制を行うのみならず、神経伝達物質としての交感神経系に抑制的に働くことにより、高血圧発症、心・腎病変進展に対し防御的に機能することを示唆する。この多彩なNOの生体内活性はその僅か数秒間の半減期による迅速な反応系と、細胞間情報伝達物質でありながら気体であることによる特性に基く部分が大きい。近年、NOと同様に気体でありながらその合成酵素が中枢神経系、血管内皮等に幅広く分布し、細胞内情報伝達物質としてcGMPを共有する一酸化炭素(CO)が注目されつつある。COはNO以上に記憶や自立神経系などで神経伝達物質として重要な役割を有することが示唆されており、最近、HO阻害剤を全身的に急性投与すると血圧上昇を来しそれが脊髄切断により降圧すると報告されるにつれ、COがNOと同様神経性機序を介して血圧調節に働く可能性が示唆されている。我々は、現在CO合成阻害物質を中枢内投与することにより、COの循環調節に果たす役割について検討しており、既にmodelとしては完成した結果を得ている。 | KAKENHI-PROJECT-07770545 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07770545 |
白亜紀中期に生じた海洋生物分布の変革とそのメカニズムの解明 | 【評価】※当該年度における研究への取組研究成果について具体的に評価してください白亜紀中期の太平洋では,熱帯型底生動物の消滅や大規模な入れ替わりが発生していたことが自身のこれまでの研究で明らかになっている.22年度は中生代を代表する遊泳性生物の絶滅頭足類ベレムナイトの白亜紀中期における北太平洋での生物理学的変動,絶滅,faunal turnoverを明らかにする目的で野外調査,室内での分類と群集解析を行なった.研究の結果,北太平洋においてベレムナイトがグローバルな絶滅(白亜紀末)よりも3500万年も前に絶滅していたことがわかった(Iba et al., 2011, Geology).絶滅の要因として寒冷化とベーリング海峡の閉鎖による分断を指摘し,さらにこの絶滅が北太平洋での現生型頭足類(イカ・タコ類)の出現・進化に大きく寄与していたことを示した.イカとタコに代表される現生型頭足類は,現在の海洋において30億トンのバイオマスをもち,海洋における遊泳生物としては脊椎動物に次ぐ大きさである.この頭足類の中生代最大級のターンオーバーは,ベレムナイトを餌とするサメ類などの高次捕食者にも大きな影響を与えたと考えられる.この頭足類における大規模な入れ替わりの背後にある環境変動として,ベーリング海の閉鎖と白亜紀中期におけるクーリングの可能性を指摘した(Iba et al., 2011).すなわち,超大陸の分裂と結合と海洋生物の進化史の強い関係性をしめす仮説を提唱することに成功した。後期白亜紀の北太平洋には広域的に固有の生物群が繁栄し,独自の生物地理区が存在していたことが示唆されてきた.しかしながら,この生物地理区の誕生プロセスの詳細やその環境学的バックグラウンドが明らかにされたことはなかった.この巨大生物地理区の分化プロセスおよびメカニズムの解明は,長時間軸上での進化,海洋生態系の変化,多様性変動を考える上で大きな重要性をもつ.これまで研究を行ってきた北西太平洋に加えて,北東太平洋(北部カリフォルニア)および赤道太平洋域(フィリピン)での地質学的・層序額学的・古生物学的調査/研究を基に,白亜紀を特徴づけた生物群である熱帯型生物群の赤道-北太平洋域での時空変遷パターンを調査した.その結果,熱帯型生物群が赤道-北太平洋域において中期白亜紀に一斉に消滅したことを初めて明らかにした.熱帯型生物群は他海域においては同時期にその分布域や多様性を増しているため,これは赤道-北太平洋における独自のイベントであると結論づけられた.この熱帯型生物群の消滅後に太平洋には固有の生物群が繁栄しており,この消滅イベントが後期白亜紀の固有生物群誕生プロセスを理解するうえで重要であることがわかった.さらに,この消滅現象は底生動物だけではなく,遊泳性生物(ベレムナイト)にも及んでいたことを明確にすることができ,底生遊泳性生物におよぶ大きなバイオイベントの存在が示された.【評価】※当該年度における研究への取組研究成果について具体的に評価してください白亜紀中期の太平洋では,熱帯型底生動物の消滅や大規模な入れ替わりが発生していたことが自身のこれまでの研究で明らかになっている.22年度は中生代を代表する遊泳性生物の絶滅頭足類ベレムナイトの白亜紀中期における北太平洋での生物理学的変動,絶滅,faunal turnoverを明らかにする目的で野外調査,室内での分類と群集解析を行なった.研究の結果,北太平洋においてベレムナイトがグローバルな絶滅(白亜紀末)よりも3500万年も前に絶滅していたことがわかった(Iba et al., 2011, Geology).絶滅の要因として寒冷化とベーリング海峡の閉鎖による分断を指摘し,さらにこの絶滅が北太平洋での現生型頭足類(イカ・タコ類)の出現・進化に大きく寄与していたことを示した.イカとタコに代表される現生型頭足類は,現在の海洋において30億トンのバイオマスをもち,海洋における遊泳生物としては脊椎動物に次ぐ大きさである.この頭足類の中生代最大級のターンオーバーは,ベレムナイトを餌とするサメ類などの高次捕食者にも大きな影響を与えたと考えられる.この頭足類における大規模な入れ替わりの背後にある環境変動として,ベーリング海の閉鎖と白亜紀中期におけるクーリングの可能性を指摘した(Iba et al., 2011).すなわち,超大陸の分裂と結合と海洋生物の進化史の強い関係性をしめす仮説を提唱することに成功した。 | KAKENHI-PROJECT-09J08119 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09J08119 |
等質ラグランジュ部分多様体の対の交叉とFloerホモロジーの研究 | 本研究の目的は、シンプレクティック多様体の中の高い対称性をもつラグランジュ部分多様体のシンプレクティックトポロジーに関する性質の解明である。この種のラグランジュ部分多様体の具体的研究は少なかったが、空間の対称性を利用することにより、複素射影空間の場合を中心に、ラグランジュ部分多様体のホモロジー的剛性、ラグランジアンFloerコホモロジーの計算例、及びハミルトン体積最小性問題への応用が得られた。1.複素射影空間の中の第二基本形式が平行なラグランジュ部分多様体のシンプレクティックトポロジーに関しては、昨年度証明した複素射影空間の整係数1次ホモロジー群が3-torsionである5次元と8次元のラグランジュ部分多様体のホモロジー的剛性の議論を整理し一般化した。その結果、複素射影空間のあるクラスのラグランジュ部分多様体についてFloerコホモロジーの消滅定理を得た。これを利用して、複素射影空間の射影ユニタリ群PU(p)として埋め込まれたラグランジュ部分多様体のFloerコホモロジーをpが奇数の場合とpが2のべきの場合に明示的に与えた。これらの成果はプレプリントSymplectic topology of Lagrangian submanifolds of CPn with intermediate minimal Maslov numbers (arXiv:1401.0777)にまとめた。研究は現在も進行中であるが、まずpが残りの場合の解決を急ぎたい。2.複素旗多様体の実形の交叉とk対称空間の構造から定義される一般化された対蹠集合との関係に関する酒井高司(首都大学東京)、田崎博之(筑波大学)との共同研究については今年度は次の進展があった。複素ベクトル空間の偶数次元の部分空間の系列として得られる複素旗多様体の場合に、四元数部分空間の系列で定義される二つの合同な実旗多様体の交叉を明示的に与えた。特に、交叉が離散的な場合には一般化された対蹠集合になることがわかった。今年度は、本研究課題の一年目として以下の二つの研究成果を得た。一つ目の成果は、先行研究で扱ったコンパクト型エルミート対称空間を含む自然なクラスである複素旗多様体の二つの実形のFloerホモロジーを計算する研究の準備に関するものである。まず、Riemann対称空間の対蹠集合の概念を複素旗多様体の場合に拡張して、その基本的性質を調べた。特に、複素ベクトル空間の部分空間の系列として得られる旗多様体の場合に、二つの合同な実旗多様体の交叉の具体的表示を与え、その交叉が離散的な場合には一般化された対蹠集合になることを示した。これらの結果は、代表者、酒井高司(首都大学東京)、田崎博之(筑波大学)との共同研究により得られ、Advanced Studies in Pure Mathematicsに掲載予定である。二つ目の成果は、複素射影空間の中の第二基本形式が平行なラグランジュ部分多様体のシンプレクティックトポロジーに関するものである。これらの部分多様体は既約な場合には分類されているが、その中で、SU(3)/(Z/3Z)、SU(3)/SO(3)(Z/3Z)の二つのラグランジアンをモデルとするホモロジー的剛性を証明した。この現象は、ラグランジュ部分多様体の低い次数のホモロジーの情報から全ての次数のホモロジーが決まってしまうという現象で、実射影空間をモデルとする場合にSeidel、Biranにより観察されていたものである。また、同様の手法で8次元複素射影空間の中のSU(3)/(Z/3Z)のnon-displaceabilityを証明することができた。研究は現在も進展中であるが、25年度中には関連する結果をまとめ発表する予定である。1.複素射影空間の中の第二基本形式が平行なラグランジュ部分多様体のシンプレクティックトポロジーに関しては、射影ユニタリ群PU(p)として埋め込まれたラグランジュ部分多様体のZ_2係数のFloerコホモロジーについて昨年度未解決であったpが2のべきではない偶数の場合の計算が完了した。この結果を追加して、昨年度まとめたプレプリントの改訂作業を進めた。2.複素旗多様体の二つの実形の交叉に関する酒井高司氏(首都大学東京)、田崎博之氏(筑波大学)との共同研究については、まず実形が合同な場合に交叉が離散的になるための必要十分条件を得て、その離散的な交叉が対称対のWeyl群の軌道として表せ、対蹠集合になることを示した。さらに、井川治氏(京都工芸繊維大学)、奥田隆幸氏(広島大学)を加えた5名による共同研究により、二つの実形が合同とは限らない場合にも結果を拡張した。3.ユークリッド空間内の単位超球面の等径超曲面のガウス写像による像(以下、ガウス像と呼ぶ)は、複素2次超曲面の単調なラグランジュ部分多様体となる。上の項目1で開発した計算手法により、等径超曲面のガウス像の最小Maslov数が3以上の場合、それは複素2次超曲面のハミルトンイソトピーの下でnon-displaceableであることを示した。これは、Hui Ma氏(清華大学)、宮岡礼子氏(東北大学)、大仁田義裕氏(大阪市立大学)との共同研究である。特に、非等質な無限個のnon-displaceableな例が得られたことは特筆すべきことである。4.複素ユークリッド空間内の標準的ラグランジュトーラスはハミルトン体積最小であろう、というOhの予想に対して、ほとんどの標準トーラスでは予想が成立しないことをChekanovの定理を用いて証明した。 | KAKENHI-PROJECT-24740049 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24740049 |
等質ラグランジュ部分多様体の対の交叉とFloerホモロジーの研究 | これは、小野肇氏(埼玉大学)との共同研究である。1.複素射影空間の中のラグランジュ部分多様体のシンプレクティックトポロジーに関して、整係数1次ホモロジー群が3-torsionである場合のホモロジー的剛性、ある種のラグランジュ部分多様体のFloerコホモロジーの消滅定理、その応用として射影ユニタリ群PU(p)の場合のZ_2係数Floerコホモロジーの計算に関する論文を完成させた。この成果はAdvances in Geometryに掲載予定である。2.複素旗多様体の二つの実形の交叉に関して、昨年度得られた交叉の対蹠性を利用してZ_2係数Floerホモロジーの計算を、標準的複素構造のregularityを仮定して実行できた。これは、井川治氏(京都工芸繊維大学)、奥田隆幸氏(広島大学)、酒井高司氏(首都大学東京)、田崎博之氏(筑波大学)との共同研究である。標準的複素構造のregularityの証明が今後の課題として残っている。3.複素射影空間の標準的なトーラス作用に関するラグランジュトーラス軌道は、ハミルトン極小かつハミルトン安定であることが知られている。それらのラグランジュトーラス軌道のほとんどが、3次元以上ではハミルトン体積最小ではないことを証明した。この研究は、小野肇氏(埼玉大学)との共同研究であり、Annals of Global Analysis and Geometryに掲載予定である。本研究の目的は、シンプレクティック多様体の中の高い対称性をもつラグランジュ部分多様体のシンプレクティックトポロジーに関する性質の解明である。この種のラグランジュ部分多様体の具体的研究は少なかったが、空間の対称性を利用することにより、複素射影空間の場合を中心に、ラグランジュ部分多様体のホモロジー的剛性、ラグランジアンFloerコホモロジーの計算例、及びハミルトン体積最小性問題への応用が得られた。項目1について、昨年度の未解決の部分が解決でき、その結果を追加したプレプリント(arXiv:1401.0777)の改訂作業も進行中である。また、昨年度までに行ってきた複素射影空間の場合の研究で開発したBiran氏のスペクトル系列に基づく計算手法が複素2次超曲面にも有効に機能した(項目3)。項目2について、複素ベクトル空間の偶数次元部分空間の系列として得られる複素旗多様体の中に四元数部分空間の系列で定義される実形がある。これと合同な二つの実形の交叉の構造が昨年度の終わりに得られたが、これに関して、酒井氏、田崎氏との共著論文を作成し、Springer Proceedings in Mathematics & Statisticsに発表した。この結果を基盤として、今年度は一般の設定で二つの実形が合同な場合、次いで合同とは限らない場合にはある適切な条件の下で、離散的な交叉の記述がLie群論的に得られた。特に、二つの実形が合同とは限らない場合には、井川氏がHermann作用の軌道を調べるために導入した対称三対の概念で交叉が表現できたことは重要である。項目4は、当初の研究計画では想定していなかった。この成果については小野氏の貢献が大きい。数物系科学項目1について、研究成果が一応の段階に到達したため、27年度は早急にプレプリントの改訂を終え、論文の投稿を急ぐ。 | KAKENHI-PROJECT-24740049 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24740049 |
多次元Brown運動とランダムウォークの漸近解析 | 研究計画調書の研究目的にあるランダムウォークとアルゴリズムより、次の研究に取り組んだ。“象限上の離散ディリクレ問題とランダムウォークのインポータンス・サンプリング"離散ディリクレ問題の解のランダムウォーク表現を用いてその数値解をモンテカルロ法によって求めることはよく知られている。しかし考える領域が有界でないとき注意を要する問題が生じる。本研究ではZ^2の第1象限を領域とし、第1象限の内向きにドリフトのある離散ディリクレ問題のモンテカルロ解の効率化について考察した。もしランダムウォークの出発点が零と異なる境界条件を付与された辺から十分離れているとき、問題の設定からその辺へ到達する事象は所謂レア-・イベントになり精度の高い数値解を効率的に得ることが出来ない。このような場合モデルの確率測度を変換し、その新しい確率測度で問題を記述し直したうえでモテカルロ法を実行することで効率化を実現する事が出来ることがある。この技法はインポータンス・サンプリング法と呼ばれている。我々の問題では所謂“調和変換"(ドリフト変換)で確率測度を変換する。我々は“ベタ-"なモンテカルロ解を与える調和変換を定める基準について考察した。その結果次の事が示された。そのランダムウォークの1ステップの遷移確率から自明な“ベタ-"なモンテカルロ解が得られる場合と、得られない場合に分けることが出来る。得られない場合については新しい確率測度によるモンテカルロ解の分散の“最小化"についての評価が必要となる。この評価の過程に一部ヒューリステックな部分があり完全なものになっていないが、数式処理ソフト“マセマティカ"による数値実験から我々の考察が有効であるとの見通しを得た。我々の考察を完全なものにする事は今後の課題である。そこでは2次元ランダムウォークと、1次元条件付きランダムウォークについてのある種の大偏差原理について調べる事が必要になるものと思われる。研究計画調書の研究目的にあるランダムウォークとアルゴリズムより、次の研究に取り組んだ。“象限上の離散ディリクレ問題とランダムウォークのインポータンス・サンプリング"離散ディリクレ問題の解のランダムウォーク表現を用いてその数値解をモンテカルロ法によって求めることはよく知られている。しかし考える領域が有界でないとき注意を要する問題が生じる。本研究ではZ^2の第1象限を領域とし、第1象限の内向きにドリフトのある離散ディリクレ問題のモンテカルロ解の効率化について考察した。もしランダムウォークの出発点が零と異なる境界条件を付与された辺から十分離れているとき、問題の設定からその辺へ到達する事象は所謂レア-・イベントになり精度の高い数値解を効率的に得ることが出来ない。このような場合モデルの確率測度を変換し、その新しい確率測度で問題を記述し直したうえでモテカルロ法を実行することで効率化を実現する事が出来ることがある。この技法はインポータンス・サンプリング法と呼ばれている。我々の問題では所謂“調和変換"(ドリフト変換)で確率測度を変換する。我々は“ベタ-"なモンテカルロ解を与える調和変換を定める基準について考察した。その結果次の事が示された。そのランダムウォークの1ステップの遷移確率から自明な“ベタ-"なモンテカルロ解が得られる場合と、得られない場合に分けることが出来る。得られない場合については新しい確率測度によるモンテカルロ解の分散の“最小化"についての評価が必要となる。この評価の過程に一部ヒューリステックな部分があり完全なものになっていないが、数式処理ソフト“マセマティカ"による数値実験から我々の考察が有効であるとの見通しを得た。我々の考察を完全なものにする事は今後の課題である。そこでは2次元ランダムウォークと、1次元条件付きランダムウォークについてのある種の大偏差原理について調べる事が必要になるものと思われる。 | KAKENHI-PROJECT-07640334 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07640334 |
小分子RNAによるクロマチン制御を介した生殖ゲノム維持機構の全体像 | ショウジョウバエPIWIタンパク質のうち核に局在するPiwiは、小分子非コードRNAであるpiRNAと複合体を形成し、標的トランスポゾンの転写をH3K9me3修飾やリンカーヒストンH1を介して制御することが知られている。このPiwi-piRNAによるエピゲノム制御がショウジョウバエ生殖ゲノム維持に必須であると考えられているが、そのメカニズムは不明である。本研究はこれを明らかにすべく、平成30年度は、責任因子の同定とその機能解析を中心に進めた。Piwiタンパク質が標的遺伝子をサイレンシングする際に形成する複合体構成因子を同定するために、Piwi-piRNAのヘテロクロマチン形成に必須とされている因子Panoramix (Panx)に対する抗体を作成し、これを用いた免疫沈降実験により新たにNuclear export factor 2 (Nxf2)およびp15/Nxt1がPanxおよびPiwiと複合体を形成することを明らかにした。Nxf2は卵巣特異的に発現し、RNA核外輸送因子Nxf1と類似したドメイン構造をもつことが知られているが、その機能は未知である。ショウジョウバエ個体の解析結果から、Nxf2がPiwiと同様に不妊の原因遺伝子であることを見出した。さらに、Nxf2はPiwi-piRNA経路でH3K9me3修飾およびH1結合量を制御し、標的トランスポゾンを抑制することを示した。また、Nxf2が標的トランスポゾンの転写産物と直截的に相互作用すること、およびこの相互作用がPiwi依存的であることを明らかにした。これらの結果から、PiwiがNxf2-p15およびPanxと形成する複合体が標的トランスポゾンのRNAと結合することでヘテロクロマチン形成が引き起こされるというモデルが考えられる。平成30年度は、新たなPiwi-piRNA制御因子として同定したNxf2およびp15の解析を中心に進め、Nxf2がRNA結合タンパク質であることを示した。Piwi-piRNAの標的認識については不明点が多く、先行研究で示されていたPiwiのChIP-seqデータ等から、Piwiは制御対象ではないゲノム領域にも広く結合している可能性が示唆されてきた。これに対して、本研究で新たに得られた知見を併せて考察すると、ゲノムの様々な領域に結合するPiwiのうち、トランスポゾンに結合したPiwi特異的にNxf2が複合体を形成することで、標的特異的な制御が可能となるという新たなモデルが考えられる。ここで得られた成果と、並行して新学術領域研究で進めていた研究の成果を併せて、現在論文を投稿している。また、本研究を進めるために立ち上げた研究手法を用いて共同研究を進め、その成果が論文として掲載された[Sadahiro et al., Cell Stem Cell (2018)]。平成30年度は、Piwi-piRNAによるトランスポゾンの制御機構に関与する新たな因子としてNxf2並びにp15を新たに同定した。今後はこれらが既知のPiwi-piRNA制御因子とどのように協調し、ゲノム高次構造やエピゲノム修飾に影響するか、メカニズムの解明を中心に進める。また、平成30年度の研究成果からNxf2が新たなRNA結合タンパク質として同定されたため、次年度はPiwi並びにNxf2とRNAとの複合体がどのようなクロマチン構造とリンクするか、ChIRP-MS法とHiC法を組み合わせた新たな手法を用いて解析する。ショウジョウバエPIWIタンパク質のうち核に局在するPiwiは、小分子非コードRNAであるpiRNAと複合体を形成し、標的トランスポゾンの転写をH3K9me3修飾やリンカーヒストンH1を介して制御することが知られている。このPiwi-piRNAによるエピゲノム制御がショウジョウバエ生殖ゲノム維持に必須であると考えられているが、そのメカニズムは不明である。本研究はこれを明らかにすべく、平成30年度は、責任因子の同定とその機能解析を中心に進めた。Piwiタンパク質が標的遺伝子をサイレンシングする際に形成する複合体構成因子を同定するために、Piwi-piRNAのヘテロクロマチン形成に必須とされている因子Panoramix (Panx)に対する抗体を作成し、これを用いた免疫沈降実験により新たにNuclear export factor 2 (Nxf2)およびp15/Nxt1がPanxおよびPiwiと複合体を形成することを明らかにした。Nxf2は卵巣特異的に発現し、RNA核外輸送因子Nxf1と類似したドメイン構造をもつことが知られているが、その機能は未知である。ショウジョウバエ個体の解析結果から、Nxf2がPiwiと同様に不妊の原因遺伝子であることを見出した。さらに、Nxf2はPiwi-piRNA経路でH3K9me3修飾およびH1結合量を制御し、標的トランスポゾンを抑制することを示した。また、Nxf2が標的トランスポゾンの転写産物と直截的に相互作用すること、およびこの相互作用がPiwi依存的であることを明らかにした。これらの結果から、PiwiがNxf2-p15およびPanxと形成する複合体が標的トランスポゾンのRNAと結合することでヘテロクロマチン形成が引き起こされるというモデルが考えられる。平成30年度は、新たなPiwi-piRNA制御因子として同定したNxf2およびp15の解析を中心に進め、Nxf2がRNA結合タンパク質であることを示した。Piwi-piRNAの標的認識については不明点が多く、先行研究で示されていたPiwiのChIP-seqデータ等から、Piwiは制御対象ではないゲノム領域にも広く結合している可能性が示唆されてきた。 | KAKENHI-PROJECT-18H02421 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H02421 |
小分子RNAによるクロマチン制御を介した生殖ゲノム維持機構の全体像 | これに対して、本研究で新たに得られた知見を併せて考察すると、ゲノムの様々な領域に結合するPiwiのうち、トランスポゾンに結合したPiwi特異的にNxf2が複合体を形成することで、標的特異的な制御が可能となるという新たなモデルが考えられる。ここで得られた成果と、並行して新学術領域研究で進めていた研究の成果を併せて、現在論文を投稿している。また、本研究を進めるために立ち上げた研究手法を用いて共同研究を進め、その成果が論文として掲載された[Sadahiro et al., Cell Stem Cell (2018)]。平成30年度は、Piwi-piRNAによるトランスポゾンの制御機構に関与する新たな因子としてNxf2並びにp15を新たに同定した。今後はこれらが既知のPiwi-piRNA制御因子とどのように協調し、ゲノム高次構造やエピゲノム修飾に影響するか、メカニズムの解明を中心に進める。また、平成30年度の研究成果からNxf2が新たなRNA結合タンパク質として同定されたため、次年度はPiwi並びにNxf2とRNAとの複合体がどのようなクロマチン構造とリンクするか、ChIRP-MS法とHiC法を組み合わせた新たな手法を用いて解析する。 | KAKENHI-PROJECT-18H02421 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H02421 |
脳磁場計測によるトップダウン注意の神経メカニズムの解明 | 本年度は、脳磁場計測(MEG)による空間的トップダウン注意の神経メカニズムの解明を目的とした。実験刺激として、ディスプレイの左右に顔と家の画像を呈示し、中央には注視点として+かxのいずれかが呈示された。顔・家画像は常にペアで呈示され、左右の呈示確率はランダムであった。顔、家画像は初年度の研究の刺激と同一であった。実験条件には、顔か家のいずれかに注意を向ける条件(顔注意条件・家注意条件)であった。統制条件として注視点の+とxを弁別する条件を設定した。その結果、顔注意・家注意で両側半球の一次視覚皮質で100ミリ秒、後頭-側頭領域で170ミリ秒、上側頭溝(STS)において、およそ260ミリ秒で有意なMEG反応が見られた。顔注意条件では、顔刺激が呈示された視野に関わらず右半球の後頭-側頭領域の170ミリ秒およびSTSの260ミリ秒のMEG反応が増加した。一方、家注意条件では、右半球のSTSの260ミリ秒の活動のみが上昇した。一次視覚皮質は単純な輝度変化に、後側頭領域は顔や家といった物体の形態処理に、そしてSTSは物体の詳細な処理に関連していることが知られている。本研究の結果は、同一の刺激を見たときでも、顔に対する注意の方が家に対する注意と比べて早期の形態処理の段階から空間的トップダウン注意の影響を受けていることが明らかになった。ヒトにとって顔は社会生活をおくる上で最も重要な刺激であるため、空間的トップダウン注意による顔処理の優位性を反映したものであると考えられる。本研究の結果は、初年度に行った物体的トップダウン注意による神経活動の時間的変化と一致している。これらの結果は物体的・空間的トップダウン注意は同一の神経メカニズムによって実現されていることを示唆するものである。本年度は物体的トップダウン注意の神経機構を解明するため、脳磁場計測装置(MEG)を用いて実験を行った。ヒトのトップダウン注意の実現には、複数の脳活動の時間的変化により実現されることが示唆されているため、トップダウン注意の神経ネットワークを解明する研究においてはMEGの適用が最も適していると考えられる。本実験では前頭-頭頂ネットワークと有線外皮質の活動の関連を、MEGを用いて明らかにしようとした。実験条件の呈示刺激は半透明の顔画像と家画像を重畳させ、被験者はいずれかの刺激の弁別を行った(注意条件)。統制実験では、重畳画像の他に時計画像を挿入し、それに対して可能なかぎり素早く反応を行った。その結果、いずれの条件でも重畳画像の刺激呈示後100、170、230ミリ秒で、それぞれ一次視覚皮質、下側頭皮質、上側頭溝で活動が見られた。注意条件では統制条件よりも、下側頭皮質と上側頭溝の活動強度が有意に大きくなった。活動潜時に変化はなかった。これらの結果から、物体的トップダウン注意は170、230ミリ秒の脳活動に影響を与えることが分かった。また注意条件のみにおいて、数人の被験者は刺激呈示後およそ170ミリ秒で右前頭前野の活動が見られていたが、頭頂皮質の活動を示した被験者は皆無であった。このことは、物体的トップダウン注意には頭頂皮質よりも前頭前野の活動が関わっていることを示唆するのもかもしれない。今後は周波数解析の手法を用いて、前頭前野の活動をさらに浮き彫りにすることを考えている。本年度は、脳磁場計測(MEG)による空間的トップダウン注意の神経メカニズムの解明を目的とした。実験刺激として、ディスプレイの左右に顔と家の画像を呈示し、中央には注視点として+かxのいずれかが呈示された。顔・家画像は常にペアで呈示され、左右の呈示確率はランダムであった。顔、家画像は初年度の研究の刺激と同一であった。実験条件には、顔か家のいずれかに注意を向ける条件(顔注意条件・家注意条件)であった。統制条件として注視点の+とxを弁別する条件を設定した。その結果、顔注意・家注意で両側半球の一次視覚皮質で100ミリ秒、後頭-側頭領域で170ミリ秒、上側頭溝(STS)において、およそ260ミリ秒で有意なMEG反応が見られた。顔注意条件では、顔刺激が呈示された視野に関わらず右半球の後頭-側頭領域の170ミリ秒およびSTSの260ミリ秒のMEG反応が増加した。一方、家注意条件では、右半球のSTSの260ミリ秒の活動のみが上昇した。一次視覚皮質は単純な輝度変化に、後側頭領域は顔や家といった物体の形態処理に、そしてSTSは物体の詳細な処理に関連していることが知られている。本研究の結果は、同一の刺激を見たときでも、顔に対する注意の方が家に対する注意と比べて早期の形態処理の段階から空間的トップダウン注意の影響を受けていることが明らかになった。ヒトにとって顔は社会生活をおくる上で最も重要な刺激であるため、空間的トップダウン注意による顔処理の優位性を反映したものであると考えられる。本研究の結果は、初年度に行った物体的トップダウン注意による神経活動の時間的変化と一致している。これらの結果は物体的・空間的トップダウン注意は同一の神経メカニズムによって実現されていることを示唆するものである。 | KAKENHI-PROJECT-08J01630 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08J01630 |
企業内研究マネジメントにおける構想形成のメカニズム探求 | 日本企業のコーポレートR&Dのパフォーマンスはどうすれば向上するのだろうかというテーマについて,今回の研究では,概念や理論の生成を目的として,フィールドワークをベースとした質的研究を実施した。その結果,過去の共同研究など外部のプレイヤーとの協働経験によって蓄積された,事業エコシステムの知識が,その後の研究構想の形成において重要な役割を果たしていること,企業のコーポレートR&Dにおける他企業や大学との共同研究における研究成果は,コミュニケーションや学習意欲などのような過去に指摘されていた要因よりは,むしろアジェンダ設定のジレンマ問題によって左右されること,および企業内研究の新しい技術の構想形成において,既存技術の担い手が,新しい文脈の中で絶えず自分の知識の価値を反省的に位置付け直していることを示した。日本企業のコーポレートR&Dのパフォーマンスはどうすれば向上するのだろうかというテーマについて,今回の研究では,概念や理論の生成を目的として,フィールドワークをベースとした質的研究を実施した。その結果,過去の共同研究など外部のプレイヤーとの協働経験によって蓄積された,事業エコシステムの知識が,その後の研究構想の形成において重要な役割を果たしていること,企業のコーポレートR&Dにおける他企業や大学との共同研究における研究成果は,コミュニケーションや学習意欲などのような過去に指摘されていた要因よりは,むしろアジェンダ設定のジレンマ問題によって左右されること,および企業内研究の新しい技術の構想形成において,既存技術の担い手が,新しい文脈の中で絶えず自分の知識の価値を反省的に位置付け直していることを示した。企業内研究において研究構想がどのように形成されると,よいプロジェクトになるのか。どのように技術的ブレークスルーが実現し,企業の成長や競争優位の構築に寄与することができるのだろうか。フィールドワークをベースとした質的研究によって,この問いに答えるための概念や理論を生成することが,本研究の目的である.20年度は,その準備としての関連研究のレビューとそれに関する情報収集,日本企業への聞き取り調査,および北米の研究所における参与観察を実施するための準備をすすめてきた.聞き取り調査は,複数の日本企業を対象として実施した.聞き取り調査の結果は現在分析の途上にあり,21年度の継続される.参与観察の準備としては,実際の参与観察先となる研究機関との信頼関係の構築と具体的な観察のあり方についての打ち合わせなを数回にわたり実施してきた。その結果,北米の著名な研究組織における参与観察を21年度に実施できることが決まった.このほか,既存理論との比較をすすめるため,理論的な文献との比較を進めるたほか,米国のAcademy of Managementの年次大会への参加を通じて,同じテーマについて研究している研究者の最先端の研究を吸収した。加えて,参与観察を含む質的研究の方法論についても,同じ方法論を採用している研究者と意見交換を実施し,組織論の質的研究において評価の高い,スタンフォード大学のCenter for Work, Technology, and Organizationと,研究上の協力関係を構築した.企業内研究において研究構想はどのように形成されるのか。フィールドワークをベースとした質的研究によって,この問いに答えるための概念や理論を生成することが,本研究の目的である。この目的から,21年度については,下記のような調査を進めてきた。1聞き取り調査:平成21年度は,アメリカ企業や日本企業の米国研究拠点を中心に聞き取り調査を実施し,主として日本企業と米国の研究所との共同研究のプロセスにおける研究構想の形成のあり方について探索してきた。2参与観察:平成21年度は,大学から半年間の研究専念期間を取得し,北米に滞在した。その間,参与観察の対象となる米国の研究所に滞在し,日本企業との共同研究を中心に観察してきた。この参与観察は,本研究の核となるデータ収集であり,良い構想を頻繁に創出している組織に焦点を当てて,良い構想そのものの形成プロセスだけでなく,良い構想を生むための優秀な研究組織のルーティンや,そこに参加している人々の解釈枠組み,人的ネットワークのあり方などを明らかにすることを狙いとしていた。3理論との比較対象を通じた概念生成:上記の方法で収集されたデータは,コーディングと構造化を経て,既存の理論と比較しながら概念生成に用いられる。データのコーディングと構造化は,質的分析のソフトウェアであるMAXQDAを使用して実施している。また,これと並行して,理論的覚書を作成しながら理論形成をすすめてきた。このほか,既存理論との比較をすすめるため,理論的な文献との比較を進めるため,米国のAcademy of Managementの年次大会への参加を通じて,同じテーマについて研究している研究者の最先端の研究を吸収した。加えて,参与観察を含む質的研究の方法論についても,同じ方法論を採用している研究者と意見交換を実施し,組織論の質的研究において評価の高い,スタンフォード大学のCenter for Work, Technology, and Organizationに滞在し,研究上の協力関係を構築した。日本企業のコーポレートR&Dのパフォーマンスはどうすれば向上するのだろうかというテーマについて,今回の研究では,概念や理論の生成を目的として,フィールドワークをベースとした質的研究を実施した。世界的にも優秀とされている企業内研究所における研究プロジェクトの構想形成プロセスと,その共同研究のプロセスを対象とし,参与観察,およびインタビュー調査を実施し,研究構想の形成過程に影響を与えるような要因を概念化すべく研究を進めてきた。昨年度の成果としては,一昨年度の参与観察によるデータ収集を経て,そのコーディングと概念化,およびインタビュー調査による周辺情報の収集などを進め,学会報告,モノグラフの執筆および論文の執筆を進めてきている。 | KAKENHI-PROJECT-20330081 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20330081 |
企業内研究マネジメントにおける構想形成のメカニズム探求 | その成果として,過去の共同研究など外部のプレイヤーとの協働経験によって蓄積された,エコシステム全体の知識が,その後の研究構想の形成において重要な役割を果たしており,実際に研究や技術開発のパフォーマンスに影響を及ぼしていること,企業のコーポレートR&Dにおける他企業や大学との共同研究における研究成果は,コミュニケーションや学習意欲などのような過去に指摘されていた要因よりは,むしろアジェンダ設定のジレンマ問題,すなわち何を学習するのかわからないにもかかわらず学習すべき対象を自社主導で決めなければならないという問題によって左右されること,および企業内研究の構想形成において技術的レベルで見た「多角化」が起こっていることを指摘したうえで,そこでは,既存技術の担い手が,新しい文脈の中で絶えず自分の知識の価値を回顧的に位置付け直していることを示した。研究の一部は既にヨーロッパの組織学会(EGOS)にて先行して発表しているが,それに加えて,現在モノグラフと2本の報告を用意している。論文のうちの1本は,2011年度のヨーロッパ組織学会に報告予定であり,既に査読を通過している。 | KAKENHI-PROJECT-20330081 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20330081 |
接着・細胞骨格障害性、幼児下痢症大腸菌に関する研究 | 細胞表面への特異的な粘着様式を指標にして、乳幼児から分離した下痢症大腸菌を解析したところ、新しい表現型を示す菌株(D2株)を見いだした。従来の下痢症大腸菌の細胞表面への粘着様式は、localized adherence、aggregative adherence、diffuse adherenceに大別されていたが、D2株は粘着様式は全く新しいもので、clustered adherenceと命名した。D2株は感染表面で細胞のmicrovilliを伸張させ、伸張したmicrovilliで被われてしまうことから、“膜内感染"といった新しい感染様式であると結論した。D2株はさらに、細胞の細胞骨格を形成する蛋白(アクチン)を自身の周囲で重合させ、アクチンカプセルを形成した。アクチンカプセル形成は、D2株を宿主(ヒト)の粘膜局所免疫の攻撃から守り、(小児)腸管粘膜での持続性感染を可能にしている構造であると推定された。同じく小児に持続性下痢を惹起する腸管病原性大腸菌(EPEC;localizedadherenceを示す大腸菌)の場合にも、D2株と同様な“膜内感染"とアクチンカプセル形成を確認っすることができた。“膜内感染"とアクチンカプセル形成は、下痢症大腸菌の重要な感染様式の一つであると考えられる。尚、本研究年度に、インドとバングラデシュを中心に新しい細菌(Vibrio cholerae O139)によるコレラが大流行し、その研究が細菌学領域で緊急の課題となった。本研究費を新型コレラ菌の研究にも使用し、成果を3つの国際誌に発表した。細胞表面への特異的な粘着様式を指標にして、乳幼児から分離した下痢症大腸菌を解析したところ、新しい表現型を示す菌株(D2株)を見いだした。従来の下痢症大腸菌の細胞表面への粘着様式は、localized adherence、aggregative adherence、diffuse adherenceに大別されていたが、D2株は粘着様式は全く新しいもので、clustered adherenceと命名した。D2株は感染表面で細胞のmicrovilliを伸張させ、伸張したmicrovilliで被われてしまうことから、“膜内感染"といった新しい感染様式であると結論した。D2株はさらに、細胞の細胞骨格を形成する蛋白(アクチン)を自身の周囲で重合させ、アクチンカプセルを形成した。アクチンカプセル形成は、D2株を宿主(ヒト)の粘膜局所免疫の攻撃から守り、(小児)腸管粘膜での持続性感染を可能にしている構造であると推定された。同じく小児に持続性下痢を惹起する腸管病原性大腸菌(EPEC;localizedadherenceを示す大腸菌)の場合にも、D2株と同様な“膜内感染"とアクチンカプセル形成を確認っすることができた。“膜内感染"とアクチンカプセル形成は、下痢症大腸菌の重要な感染様式の一つであると考えられる。尚、本研究年度に、インドとバングラデシュを中心に新しい細菌(Vibrio cholerae O139)によるコレラが大流行し、その研究が細菌学領域で緊急の課題となった。本研究費を新型コレラ菌の研究にも使用し、成果を3つの国際誌に発表した。 | KAKENHI-PROJECT-06670306 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06670306 |
Pax遺伝子によって制御される分子の関わる神経発生プロセスの解析 | 本年度の研究では、第一に、Pax6および7に対するモノクローン抗体による免疫化学染色およびin situハイブリダイゼ-ショ法によって、Pax6および7の発現を詳細に検討した。その結果、Pax6は、発生の初期にはレンズ、網膜原器、前脳、神経管の腹側などで発現していたが、発生の進行とともに網膜へと発現が限局し、最後は網膜の神経細胞のサブセットでのみ発現していた。また、Pax7は、発生の初期では中脳、神経管の背側、筋節、前脳域に由来する神経冠細胞などで発現が見られたが、発生の進行とともに、中脳視蓋に発現が限局し、未分化の神経細胞だけでなく分化した視蓋神経細胞で高レベルの発現が続いていた。これらの分子の発現パターンは、これらの分子が、当初に目的とした、神経回路網形成に関与するものであることを支持していると考えられる。次に、Pax遺伝子ファミリーは、ペア-ドボックスモチーフをもつ転写制御因子と考えられる分子であることから、それらの制御する下流分子が、実際に神経回路網形成に関わっている分子であろうと考えられる。このような見地から、Pax6および7の標的遺伝子の探索を行った。それぞれのPax分子を発生の後のステージまで強く発現している組織を用い、固定によってin vivoでPaxと標的DNA領域をクロスリンクし、Pax6および7に対するものクローン抗体を用いた免疫沈降によって、Paxの標的DNAの精製を行った。精製したDNAからライブラリーを作成し、精製したDNA断片のプールをプローブとしてハイブリダイゼーションを行ったところ、いくつかの特異的に濃縮されたDNAクローンが得られた。現在、これらのクローンしたDNA断片の近傍に存在する遺伝子の同定を進めている。本年度の研究では、第一に、Pax6および7に対するモノクローン抗体による免疫化学染色およびin situハイブリダイゼ-ショ法によって、Pax6および7の発現を詳細に検討した。その結果、Pax6は、発生の初期にはレンズ、網膜原器、前脳、神経管の腹側などで発現していたが、発生の進行とともに網膜へと発現が限局し、最後は網膜の神経細胞のサブセットでのみ発現していた。また、Pax7は、発生の初期では中脳、神経管の背側、筋節、前脳域に由来する神経冠細胞などで発現が見られたが、発生の進行とともに、中脳視蓋に発現が限局し、未分化の神経細胞だけでなく分化した視蓋神経細胞で高レベルの発現が続いていた。これらの分子の発現パターンは、これらの分子が、当初に目的とした、神経回路網形成に関与するものであることを支持していると考えられる。次に、Pax遺伝子ファミリーは、ペア-ドボックスモチーフをもつ転写制御因子と考えられる分子であることから、それらの制御する下流分子が、実際に神経回路網形成に関わっている分子であろうと考えられる。このような見地から、Pax6および7の標的遺伝子の探索を行った。それぞれのPax分子を発生の後のステージまで強く発現している組織を用い、固定によってin vivoでPaxと標的DNA領域をクロスリンクし、Pax6および7に対するものクローン抗体を用いた免疫沈降によって、Paxの標的DNAの精製を行った。精製したDNAからライブラリーを作成し、精製したDNA断片のプールをプローブとしてハイブリダイゼーションを行ったところ、いくつかの特異的に濃縮されたDNAクローンが得られた。現在、これらのクローンしたDNA断片の近傍に存在する遺伝子の同定を進めている。 | KAKENHI-PROJECT-06780609 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06780609 |
食道癌におけるresponderとnon-responderのDNA chipによる解析 | 目的:進行食道癌に対する放射線化学療法の有用性は広く認識されているが、その感受性規定遺伝子はまだ確定されていない。すなわち、本研究の目的は食道癌に対する放射線化学療法のresponderとnon-responderに関与する遺伝子解析を網羅的に行うことにある。対象と方法:本研究では放射線化学療法開始前に研究参加の同意を得た進行食道癌症例23例より上部消化管内視鏡下に食道癌部より生検標本を採取した。Arcturus社製PixCell II LCMsystemを用いてLaser Capture Microdissectionにより食道癌細胞のみを選択的に採取し、RNA抽出を行った。癌細胞のtotal RNA量は微量であるがlinear amplificationを施行することで解析可能なmRNA量を得ることができた。これらの食道癌細胞から得られたmRNAを正常食道組織のmRNAを対照としhybiridaizationすることでcDNA microarray(理化学研究所作成、ヒト20K chip)を用いて遺伝子発現を解析し、23例全ての解析を終了した。さらに、結果を放射線化学療法施行後の臨床的効果判定(画像診断、組織学的診断)と予後調査との関連性を解析ソフトを用いて統計学的解析を行った。結果:遺伝子解析により食道癌に対する放射線化学療法のresponderに関与する一定の遺伝子を拾い上げることはできなかった。また、non-responderに関しても同様であった。したがって、学会発表や論文発表は行っていない。一定の遺伝子を拾い上げることができなかった原因とし考えられるのは、(1)RNA抽出時における検体保存や処理が不適切であった。(2)放射線化学療法のdose設定が不適切であったなどが考えられる。考察:進行食道癌に対する放射線化学療法のresponder, non-responderの遺伝子解析の必要性は非常に高く、様々な施設で行われている。しかし、一般臨床に応用できるような結果が得られていないのが現状である。食道癌に対しては外科的切除に替わって放射線化学療法の有用性が指摘されるおり、今後益々responder, non-responderの解析の必要性が高まるものと考えられる。今回の結果を踏まえ、研究してゆく所存である。目的:進行食道癌に対する放射線化学療法の有用性は広く認識されているが、その感受性規定遺伝子はまだ確定されていない。すなわち、本研究の目的は食道癌に対する放射線化学療法のresponderとnon-responderに関与する遺伝子解析を網羅的に行うことにある。対象と方法:本研究では放射線化学療法開始前に研究参加の同意を得た進行食道癌症例23例より上部消化管内視鏡下に食道癌部より生検標本を採取した。Arcturus社製PixCell II LCMsystemを用いてLaser Capture Microdissectionにより食道癌細胞のみを選択的に採取し、RNA抽出を行った。癌細胞のtotal RNA量は微量であるがlinear amplificationを施行することで解析可能なmRNA量を得ることができた。これらの食道癌細胞から得られたmRNAを正常食道組織のmRNAを対照としhybiridaizationすることでcDNA microarray(理化学研究所作成、ヒト20K chip)を用いて遺伝子発現を解析し、23例全ての解析を終了した。さらに、結果を放射線化学療法施行後の臨床的効果判定(画像診断、組織学的診断)と予後調査との関連性を解析ソフトを用いて統計学的解析を行った。結果:遺伝子解析により食道癌に対する放射線化学療法のresponderに関与する一定の遺伝子を拾い上げることはできなかった。また、non-responderに関しても同様であった。したがって、学会発表や論文発表は行っていない。一定の遺伝子を拾い上げることができなかった原因とし考えられるのは、(1)RNA抽出時における検体保存や処理が不適切であった。(2)放射線化学療法のdose設定が不適切であったなどが考えられる。考察:進行食道癌に対する放射線化学療法のresponder, non-responderの遺伝子解析の必要性は非常に高く、様々な施設で行われている。しかし、一般臨床に応用できるような結果が得られていないのが現状である。食道癌に対しては外科的切除に替わって放射線化学療法の有用性が指摘されるおり、今後益々responder, non-responderの解析の必要性が高まるものと考えられる。今回の結果を踏まえ、研究してゆく所存である。1.実験的研究Mouseetoposide感受性乳癌細胞(FM3A)とその耐性変異株を用いてetoposide暴露前後でmRNAを抽出し、各mRNAを鋳型にして、蛍光色素であるCy3,Cy5でlabelingしたcDNAを合成し、Riken mouse 20K arrayにhybridizeし、二蛍光標識法により,2000種の遺伝子について発現profileを作成した。また、etoposide暴露による遺伝子発現profileの変化を経時的に観察し、各段階における遺伝子発現profileの変化についても同様に観察した。抗癌剤耐性獲得に関わる発現が変化する遺伝子群を同定し、主要な遺伝子についてはNorthern blottingにより定量的に発現を調べた。また、proteinレベルでの発現はWestern blottingで確認した。2.臨床的研究進行食道癌の中で他臓器浸潤食道癌、遠隔転移症例などの非切除5症例に対して、放射線化学療法(low dose FP+60Gy)を施行した。Human cDNAmicroarrayを用いて遺伝子解析する目的で治療前に内視鏡的に検体を採取した。今後、解析する予定である。進行食道癌症例の中で他臓器浸潤例、遠隔転移例などの手術非適応例に対し、放射線化学療法(low dose FP+60Gy)を施行した。 | KAKENHI-PROJECT-12671242 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12671242 |
食道癌におけるresponderとnon-responderのDNA chipによる解析 | 患者の同意のもと、治療前に内視鏡的に腫瘍部からの検体を採取しておき、その放射線化学療法後の奏功度を臨床画像的に評価した。生検組織のcDNAmicroarrayによる解析は未だ行えておらず、本年度は臨床的dataの蓄積と検体の採取を行ったにとどまった。現在までに、本研究に関する説明を受け、研究参加の同意を得た進行食道癌症例20例がエントリーされている。放射線化学療法開始前に上部消化管内視鏡下に食道癌部より生検標本を採取し、OCT compoundに包埋保存後、新鮮凍結切片を作成した。Arcturus社製PixCell II LCMsystemを使用し、Laser Capture Mecrodissectionの技術を用いて食道癌細胞のみを選択的に採取し、RNA抽出を行っている。得られる癌細胞Total RNA量は非常に微量なため、当初解析に必凄なRNA量を十分得ることができず、Linear amplificationに関する各種講習会参加や他の研究室での技術指導を受け、RNA抽出の安定した技術を獲得するために時間を要した。得られた微量RNAは共同研究を行っている理化学研究所においてLaser Capture Microdissectionを2回施行することで、現在ではmRNA量を10000倍まで増幅させることができた。これら食道癌細胞から得られたmRNAを正常食道癌組織のmRNAを対照とし、ハイブリダイゼーションを行い、cDNA microarray (理化学研究所作成、ヒト20K chip)を用いて遺伝子発現を解析している。これら、一連の実験操作はtest sampleを用いて基礎検討を重ね、安定した結果が得られるようになったため、現在実際の臨床生検標本数例を用いて解析を開始し、detaを蓄積しているところである。また放射線化学療法施行後の臨床的効果判定(画像診断、組織学的診断)と予後調査を合わせて行っている。進行食道癌に対する放射線化学療法の有用性は広く認識されているが、その感受性規定遺伝子はまだ確定されていない。本研究では、放射線化学療法開始前に研究参加の同意を得た進行食道癌症例23例より上部消化管内視鏡下に食道癌部より生検標本を採取した。OCT compoundに包埋保存後、新鮮凍結切片を作成し、Arcturus社製PixCell II LCM systemを使用し、Laser Capture Microdissectionの技術を用いて食道癌細胞のみを選択的に採取し、RNA抽出を行った。 | KAKENHI-PROJECT-12671242 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12671242 |
「ポスト・オスマン期」におけるパリ都市空間形成と近代建築の萌芽に与えたその影響 | 都市組織の変遷とパリ市による誘導的都市景観創出の試みがパリ市の近代建築の萌芽に及ぼした影響を解明することが最終年度の目的であり、主として次の2つの取り組みを行った:(1)先の2年間(H18-19年度)の継続研究と整理本研究の主フィールドである、パリ市第II区、ボンヌ・ヌーヴェル地区+マイユ地区において、「ポスト・オスマン」期に実現されたオスマン型開設道路計画の詳細を明らかにした。また、その際に試みられたパリ市による誘導的都市景観創出の施策である「ファサード・コンクール」と「規制緩和」が、「工業建築・商業建築」の形成にどのように反映されたかを解明すべく、関連する空間情報(ex.立地、平面・断面形態、ファサードの特徴、建築許可申請時の建築家の意図やパリ市の見解、etc.)を読み取り、GISを用いてデータ化した。一連の作業では、「道路開設許可申請書類一式:Vo-11(パリ古文書館)」と「古きパリ委員会議事録」を主な一次資料とした。(2)新たに見出された研究課題に向けた予備調査本研究を通じて、「ポスト・オスマン」期におけるパリ市による新しい景観形成の取り組みが、パリ市全体へと展開されていった事実が判明した。この動きは、19世紀末のベル・エポックを中心とする華やかな時代を経て20世紀に入ると、「世界大戦」期にかけてその様相を一転させ、国威発揚的なモニュメンタルな政策へと方向転換されていることが分かった。そうしたオスマン失脚以降の都市計画のドラスティックな展開が、ル・コルビュジエやオーギュスト・ペレといった近代建築家達による近代建築・都市計画に重要な影響を及ぼしたことが予見され、その詳細を次期科学研究費申請研究(新規)として詳細に展開すべく、予備調査をIFA(1'Institut francais d' architecture)やパリ市歴史図書館を中心に実施した。初年度として、研究全体の基礎データとなる「ポスト・オスマン期」に実施されたオスマン計画道路開設事業に関する地割組織図(plan du tissu parcellaire)の作成をG I S (地理情報システム)を用いて試みた。研究対象は、オスマンのパリ都市大改造事業に位置づけられながら、その実施が「ポスト・オスマン期」にまでずれ込んだ道路である。そのうち、今年度取り扱うことができたのは、ルーヴル通り(rue du Louwe)延長工事、レオミュール通り(rue Reaumur)延長工:事、そしてオスマンの計画道路ではないが、典型的なポスト・オスマン期の開設道路であるエティエンヌ・マルセル通り(rue Etienne Marcel)である。研究2カ年目にあたるH19年度は、「ポスト・オスマン」期における、パリ市による誘導的都市景観創出の諸実態を明らかにすべく、パリ市第II区、ボンヌ・ヌーヴェル地区+マイユ地区をフィールドとし、次の作業を実施した:(2)パリ市による景観誘導に関して次の資料を分析した。建築物の高さや道路側への張り出しに関する規制緩和(1882、1884、1902年)に関するデクレ、加えて「ファサード・コンクール」(1898-1912年)の理念やその実施、受賞作品に関する報告書・雑誌として、定期刊行物La Revue generale del'architeetureならびにLa Construetion Moderne。(3)こうした規制緩和や「ファサード・コンクール」を通じて、新しい都市景観を模索する上で、パリ市はそれに相応しいと判断する建築には、規制を超えて特別な建築許可を与えていることがわかった。その資料は、「道路開設許可申請書類一式:Vo-11(パリ古文書館Archive de Paris)」に収められている土地所有者・建築家とパリ市との間で請願書や許諾書等の書簡、また、それにあわせて建築許可申請を得るための図面である。都市組織の変遷とパリ市による誘導的都市景観創出の試みがパリ市の近代建築の萌芽に及ぼした影響を解明することが最終年度の目的であり、主として次の2つの取り組みを行った:(1)先の2年間(H18-19年度)の継続研究と整理本研究の主フィールドである、パリ市第II区、ボンヌ・ヌーヴェル地区+マイユ地区において、「ポスト・オスマン」期に実現されたオスマン型開設道路計画の詳細を明らかにした。また、その際に試みられたパリ市による誘導的都市景観創出の施策である「ファサード・コンクール」と「規制緩和」が、「工業建築・商業建築」の形成にどのように反映されたかを解明すべく、関連する空間情報(ex.立地、平面・断面形態、ファサードの特徴、建築許可申請時の建築家の意図やパリ市の見解、etc.)を読み取り、GISを用いてデータ化した。一連の作業では、「道路開設許可申請書類一式:Vo-11(パリ古文書館)」と「古きパリ委員会議事録」を主な一次資料とした。(2)新たに見出された研究課題に向けた予備調査本研究を通じて、「ポスト・オスマン」期におけるパリ市による新しい景観形成の取り組みが、パリ市全体へと展開されていった事実が判明した。この動きは、19世紀末のベル・エポックを中心とする華やかな時代を経て20世紀に入ると、「世界大戦」期にかけてその様相を一転させ、国威発揚的なモニュメンタルな政策へと方向転換されていることが分かった。そうしたオスマン失脚以降の都市計画のドラスティックな展開が、ル・コルビュジエやオーギュスト・ペレといった近代建築家達による近代建築・都市計画に重要な影響を及ぼしたことが予見され、その詳細を次期科学研究費申請研究(新規)として詳細に展開すべく、予備調査をIFA(1'Institut francais d' architecture)やパリ市歴史図書館を中心に実施した。 | KAKENHI-PROJECT-18656183 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18656183 |
トランスポゾンを用いて生殖細胞の増殖・分化メカニズムを探る | 性転換マウスや雌雄キメラマウスの研究から、XX型やXXY型のようにX染色体を複数持つ雄性生殖細胞は誕生後に消滅してしまう。一方で、XO型の雄性生殖細胞は成熟した個体でも精原細胞として存在する。これらのことから、X染色体上に雄性生殖細胞の増殖・分化を阻害している原因領域が存在しているのではないかと考えられた。そこで、本研究では染色体上を動くトランスポゾンを用いて、その原因領域を明らかにしようと試みた。性転換マウスや雌雄キメラマウスの研究から、XX型やXXY型のようにX染色体を複数持つ雄性生殖細胞は誕生後に消滅してしまう。一方で、XO型の雄性生殖細胞は成熟した個体でも精原細胞として存在する。これらのことから、X染色体上に雄性生殖細胞の増殖・分化を阻害している原因領域が存在しているのではないかと考えられた。そこで、本研究では染色体上を動くトランスポゾンを用いて、その原因領域を明らかにしようと試みた。性転換マウスや雌雄キメラマウスの研究から、雄性生殖細胞はXX型の性染色体の組合せを持つと誕生後に消滅してしまうことが明らかになっている。ヒトのクラインフェルター症候群のモデルであるXXY型雄マウスでも同じ現象が見られ、一方で、XO型雄マウスでは精子への分化は起こらないが、成熟した個体でも精原細胞が存在することから、X染色体が2本あることが雄性生殖細胞の増殖・分化に悪影響を及ぼしていると考えられている。申請者はトラップベクターを用いて、X染色体のどの領域が雄性生殖細胞欠失の原因になっているかを突き止める目的で、平成19年度は、(1)トランスポゾンとトランスポゼースを用いだトラップベクターの構築と、(2)SryトランスジェニックES細胞とGS細胞の樹立を試みた。トランスポゼースであるスリーピング・ビューティーが雄性生殖細胞特異的に発現するよう制御するために、プロタミン1プロモーターとカルメジンプロモーターにつなげたベクターを作製した。トランスポゾンを含むトラップベクターは現在、作製中である。トラップベクターを生殖系列に乗せ、迅速に解析できるようにするために、SryトランスジェニックES細胞の樹立を試みたが樹立には至っていない。別の手段として、生殖系列の細胞株であるSryトランスジェニックGS細胞の樹立を試み成功した。次年度は、トラップベクターの作製を引き続き行い、樹立したGS細胞に相同組換によってX染色体上に導入し、X染色体のどの領域が雄性生殖細胞欠失の原因になっているかを明らかにしたい。雌雄キメラマウスを用いた解析によって、誕生するまでの間はXX型であっても、生殖細胞は精巣内に存在すれば、周りの環境に影響を受けXY型と同じように雄の生殖細胞として分化する。しかしながら、誕生後、雄に分化したXX型生殖細胞はXY型が精子へと分化する環境下でも増殖せずに消滅してしまう。このような表現形は雌雄キメラマウスやXX型雄のXX型雄性生殖細胞だけでなく、クラインフェルター症候群のモデルマウスであるXXY型雄の生殖細胞でも同じような傾向がみられ、精原細胞の増殖・分化に2本のX染色体が何らかの阻害効果をもたらしていると考えられた。これらの原因を明らかにするために、トランスポゾンを用いて、ランダムにX染色体の領域を欠損させたXX型生殖細胞を作製し解析を行うために、平成19年度に引き続き、平成20年度もXX型でSryのトランスジーンを持ち雄の表現形を示すES細胞の樹立を試みた。最初、ES細胞が樹立しやすいと言われている129/Sv系統を用いて樹立する予定であったが、性ホルモンの感受性が低いため、過排卵処理を施しても排卵数が少なく129/Sv系統のF1からES細胞を樹立することはできなかった。そこで、性ホルモンに対して感受性の高い別の系統を用いることによって、多数の胚から3ラインのXX型のES細胞を樹立することができた。並行して、ランダムにX染色体の領域を欠損させるために、トランスポゾンを含むトラップベクターの構築も進めたが、今年度中にXX型ES細胞への導入には至らなかった。 | KAKENHI-PROJECT-19700368 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19700368 |
ターゲット特異的シナプス形成を制御する分子群の探索とカルシウム動態の可視化解析 | 中枢、末梢神経系における神経回路網が正常に形成されるためには、個々の神経細胞が適切なターゲット細胞を認識し、適切な位置および時期にシナプスを形成することが重要である。このターゲット特異的なシナプス形成によって、神経系は効率的な神経情報処理を担う回路として機能できると考えられる。本研究課題では、モデル生物線虫の神経系を用い、シナプス形成初期における標的細胞(ターゲット)認識を制御する分子群の同定を試み、その分子メカニズムを解明するとともに、カルシウムイメージングによりシナプス伝達効率の変化を同時に観察することを目指した。17年度までに、NaClに対する化学走性を制御する線虫の感覚神経ASEにシナプス小胞タンパク質VAMPとGFPとの融合タンパク質を発現させ、ASE神経軸索内におけるプレシナプス部位を可視化した形質転換体を作製した。このASE神経がシナプス接続する6種類のポストシナプス神経のうち、上述の化学走性に関わるAIY神経とのシナプス形成が特異的に阻害された突然変異体のスクリーニングを行った。約2000ゲノムのスクリーニングにより、AIYとのシナプス部位に相当するGFPの局在が特異的に消失した突然変異体を単離した。この突然変異体におけるシナプス形成異常が、ASE/AIY間のシナプス特異的であることを、他の複数の神経にGFP融合タンパク質を発現させて確認した。さらに、突然変異体の原因遺伝子のマッピングとクローニングを行い、候補因子を同定した。現在この遺伝子を用いて突然変異体の表現型回復実験、ならびに発現解析を行っており、その結果を基にシナプス形成における標識認識制御因子としたい。またこれらの突然変異体におけるシナプス形成異常が、形態のみでなく生理的にどのような変化をもたらしているのかを、カルシウム感受性蛍光タンパク質を用いた解析により明らかにしている。中枢神経系や末梢神経系における神経回路網が正常に形成されるためには、個々の神経細胞が適切な相手(ターゲット)を認識・区別し、適切な場所・時期においてシナプスを形成することが重要である。このターゲット特異的なシナプス形成によって、神経系は適切な神経情報処理を担う回路として機能できると考えられる。本研究課題ではモデル生物線虫を用い、シナプス形成初期における標的(ターゲット)認識を制御する因子群の同定を試み、その分子メカニズムの解明を目的として研究を行った。シナプス形成におけるターゲット認識に関与する分子を単離するために、線虫の頭部にある感覚神経(ASEと呼ばれる)と、それとシナプス接続し、化学走性を制御する神経回路を形成する介在神経(AIY)との間のシナプスに注目した。ASE神経はNerve ringと呼ばれる線虫の中枢神経系において、AIY神経を含む数種の神経とシナプスを形成する。そこでASE神経のプレシナプス部位をシナプス小胞に局在するVAMPタンパク質とGFPとの融合タンパク質を用いて可視化した線虫を作製し、AIYとのシナプス形成が特異的に異常になったと推測される突然変異体を単離した。得られた突然変異体では、AIYとのシナプスに相当するASE神経軸索内のGFPの蛍光が消滅するのに対して、他の神経とのシナプス部位に相当するGFPの集積はほぼ正常であった。また、これらの2つの神経の活動を生体内でモニターする観察系として、ASEとAIYそれぞれ特異的にカルシウム感受性蛍光タンパク質を発現させた線虫を作製した。今後この突然変異体を用いて、カルシウム動態を含む詳細な表現型解析と原因遺伝子の同定を進めることで、神経細胞間における標的認識の分子メカニズムの解明に迫ることが期待される。中枢、末梢神経系における神経回路網が正常に形成されるためには、個々の神経細胞が適切なターゲット細胞を認識し、適切な位置および時期にシナプスを形成することが重要である。このターゲット特異的なシナプス形成によって、神経系は効率的な神経情報処理を担う回路として機能できると考えられる。本研究課題では、モデル生物線虫の神経系を用い、シナプス形成初期における標的細胞(ターゲット)認識を制御する分子群の同定を試み、その分子メカニズムを解明するとともに、カルシウムイメージングによりシナプス伝達効率の変化を同時に観察することを目指した。17年度までに、NaClに対する化学走性を制御する線虫の感覚神経ASEにシナプス小胞タンパク質VAMPとGFPとの融合タンパク質を発現させ、ASE神経軸索内におけるプレシナプス部位を可視化した形質転換体を作製した。このASE神経がシナプス接続する6種類のポストシナプス神経のうち、上述の化学走性に関わるAIY神経とのシナプス形成が特異的に阻害された突然変異体のスクリーニングを行った。約2000ゲノムのスクリーニングにより、AIYとのシナプス部位に相当するGFPの局在が特異的に消失した突然変異体を単離した。この突然変異体におけるシナプス形成異常が、ASE/AIY間のシナプス特異的であることを、他の複数の神経にGFP融合タンパク質を発現させて確認した。さらに、突然変異体の原因遺伝子のマッピングとクローニングを行い、候補因子を同定した。現在この遺伝子を用いて突然変異体の表現型回復実験、ならびに発現解析を行っており、その結果を基にシナプス形成における標識認識制御因子としたい。またこれらの突然変異体におけるシナプス形成異常が、形態のみでなく生理的にどのような変化をもたらしているのかを、カルシウム感受性蛍光タンパク質を用いた解析により明らかにしている。 | KAKENHI-PROJECT-17700325 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17700325 |
液滴界面を利用した微量VOCのパッシブモニタリング装置の試作 | Dusgptaらの研究をもとに捕集効率の高い液滴法パッシブサンプリング装置を製作し、数回にわたる改良を加えてきた。特に捕集液の送液方法については、流動する液滴界面で捕集するために微細な流量の精度が求められるが、マイクロ単位で吐出可能なパルス吐出プランジャーポンプを用いることにより安定かつ持続した送液が可能となり、サンプリングに適応できるパッシブサンプリング装置として構築することができた。VOCパッシブサンプリング装置の基礎実験として、本装置を用いて大気汚染物質の中でも特に注目されている二酸化窒素を標準ガスとして、風洞実験において捕集条件の最適化、湿度条件等の検討を行った。捕集効率に関わる液滴の直径、捕集液の送液速度、ガスと液滴界面の接触を促すためのファンによる送風速度などの項目について十分な検討を行い、また湿度についても通常の範囲であれば測定可能であるという結果が得られた。このようにして得た最適条件下で、実際の大気環境での測定が可能であることが実験結果として証明された。最適なサンプリング条件を検討した後、近年室内環境の汚染物質として濃度測定の必要性が高まっているVOCを対象ガスとした実験も行い、良好な結果を得た。VOCのひとつであるホルムアルデヒドの測定では、これまでAHMT法やアセチルアセトン法等の吸光光度法による分析が用いられてきたが、本装置と蛍光検出器を用いることで更に高感度な微量物質測定が可能となり、検出限界についても4ppbの値が得られた。Dusgptaらの研究をもとに捕集効率の高い液滴法パッシブサンプリング装置を製作し、数回にわたる改良を加えてきた。特に捕集液の送液方法については、流動する液滴界面で捕集するために微細な流量の精度が求められるが、マイクロ単位で吐出可能なパルス吐出プランジャーポンプを用いることにより安定かつ持続した送液が可能となり、サンプリングに適応できるパッシブサンプリング装置として構築することができた。VOCパッシブサンプリング装置の基礎実験として、本装置を用いて大気汚染物質の中でも特に注目されている二酸化窒素を標準ガスとして、風洞実験において捕集条件の最適化、湿度条件等の検討を行った。捕集効率に関わる液滴の直径、捕集液の送液速度、ガスと液滴界面の接触を促すためのファンによる送風速度などの項目について十分な検討を行い、また湿度についても通常の範囲であれば測定可能であるという結果が得られた。このようにして得た最適条件下で、実際の大気環境での測定が可能であることが実験結果として証明された。最適なサンプリング条件を検討した後、近年室内環境の汚染物質として濃度測定の必要性が高まっているVOCを対象ガスとした実験も行い、良好な結果を得た。VOCのひとつであるホルムアルデヒドの測定では、これまでAHMT法やアセチルアセトン法等の吸光光度法による分析が用いられてきたが、本装置と蛍光検出器を用いることで更に高感度な微量物質測定が可能となり、検出限界についても4ppbの値が得られた。本年度は、従来の基礎検討結果に基づき、液滴界面を利用して微量有害化学物質(VOC、HCHO、NOx、SOxなど)パッシブサンプリングを行うことを目的に、各種標準ガスを用いて現有の風洞実験装置により実験研究を行った。Dasguptaらは、気相成分を液滴中に効率よく捕集させ発色を行い、液滴を直接光学セルとして行い、液滴の見かけの吸光度変化を基に微量定量を行う方法を開発した。この方法での液滴形成の再現性はよく、高精度測定や、流量制御による高度調節が可能で、試薬消費量が少なく、構造的にも比較的簡略である。我々は、以前より柳沢らのパーソナルサンプラーに注目しており、動力を必要とせず、持ち運び容易な小型軽量の化学測定器としてパッシブサンプラーの開発を試みてきた。しかし、高感度・高精度分析には不向きで、微量有害物質の長期巻にわたる連続モニタリングには適さなかった。本研究では、液滴成長に伴う界面発達と表面更新を利用して気相NO_2を定量的に捕集する目的で液滴法パッシブサンプリング装置を試作し、NO_2捕集、NO_2高感度定量に適応するため風洞装置を用いて基礎的に検討した。液滴法パッシブサンプリング装置の開発に当たっては、微量VOC捕集に最適な有機溶媒を選択する事が不可欠で、VOC汚染のない環境条件で実験を行う必要があるため、風洞装置を用いN_2気流下で溶媒選定や液滴形成の実験を行った。液滴法サンプリング部とガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)を接続して、設備備品として装置化するための設計と試作を行った。本研究は、液滴界面を利用する微量有害ガス捕集法とフローインジェクション法(FIA)を効果的に組み合わせ、既存HPLCマイクロポンプの欠点を克服するために開発したコンピュータ制御の新しいパスル吐出プランジャーポンプを適用することにより、インライン完全混合とベースライン安定性に優れたパッシブサンプリング装置の開発研究を行うこと、および液滴法により微量VOCをサンプリングした後、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)へ導入、高感度検出・定量分析する技術を確立することの二点を目的としている。本年度は、前年度に行われた研究を基に、液滴中のパッシブサンプリング捕集した微量VOCを高感度でGC-MSにより分析する定量技術の研究を行った。紫外吸光検出器や蛍光検出器を備えたHPLCによるVOC成分のクロスチェックも同時に実施した。 | KAKENHI-PROJECT-10558085 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10558085 |
液滴界面を利用した微量VOCのパッシブモニタリング装置の試作 | また、室外の大気環境下でパッシブサンプリング装置を用いるには、風速・湿度・温度への配慮が不可欠であるが、室内環境下においては風速の影響はほぼ無視できるので、湿度・温度についてのみ、パッシブサンプリング装置を使用する際の適用条件を検討した。そして、パッシブサンプリング/GC-MS分析装置による微量有害化学物質測定値をクロスチェックした上で、実際の居住環境について実験し、室内環境汚染の解析に適用を試み、人為的変化を予測し防止する上で将来の発展性が高い成果を得る方向で、検討した。Dusgptaらの研究をもとに捕集効率の高い液滴法パッシブサンプリング装置を製作し、数回にわたる改良を加えてきた。特に捕集液の送液方法については、流動する液滴界面で捕集するために微細な流量の精度が求められるが、マイクロ単位で吐出可能なパルス吐出ブランジャーポンプを用いることにより安定かつ持続した送液が可能となり、サンプリングに適応できるパッシブサンプリング装置として構築することができた。VOCパッシブサンプリング装置の基礎実験として、本装置を用いて大気汚染物質の中でも特に注目されている二酸化窒素を標準ガスとして、風洞実験において捕集条件の最適化、湿度条件等の検討を行った。捕集効率に関わる液滴の直径、捕集液の送液速度、ガスと液滴界面の接触を促すためのファンによる送風速度などの項目について十分な検討を行い、また湿度についても通常の範囲であれば測定可能であるという結果が得られた。このようにして得た最適条件下で、実際の大気環境での測定が可能であることが実験結果として証明された。最適なサンプリング条件を検討した後、近年室内環境の汚染物質として濃度測定の必要性が高まっているVOCを対象ガスとした実験も行い、良好な結果を得た。VOCのひとつであるホルムアルデヒドの測定では、これまでAHMT法やアセチルアセトン法等の吸光光度法による分析が用いられてきたが、本装置と蛍光検出器を用いることで更に高感度な微量物質測定が可能となり、検出限界についても4ppbの値が得られた。 | KAKENHI-PROJECT-10558085 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10558085 |
分子キメラを用いたグルタミン酸トランスポータの構造機能相関の解析 | グルタミン酸トランスポータGLT-1はダルタミン酸取り込み阻害薬ジヒドロカイニン酸(DHK)によってそのグルタミン酸取り込みが抑制されるが、他のアイソフォームEAAC1はDHKによって抑制されない。この薬物感受性の違いを利用して、グルタミン酸トランスポータの基質結合部位同定を目的としたキメラ解析を行った。EAAC1とGLT-1のcDNAをタンデム方向に並ぶように一つのプラスミドに組み込み、recA^+の大腸菌を用いた相同組換によりキメラcDNAを得た。キメラ接合点は、あらかじめEAAC1及びGLT-1cDNAからPCRによって得たDNA断片をプローブとしたドットブロットハイブリダイゼーションによって限定した後、DNAシークエンシングによって決定した。キメラcDNAはXenopus卵母細胞に発現させ、DHKに対する感受性を検討した。膜貫通領域6から7にかけての領域を境にDHK感受性が大きく変化し、この領域内にDHK感受性の決定に与る構造が存在することが示唆された。さらに別の観点から基質結合部位同定の手掛かりを得るために、基質選択性の異なるファミリーの未知のメンバーのクローニングを行い、新しいNa^+依存性中性アミノ酸トランスポータASCT2のcDNAを単離した。ASCT2は、側鎖に高度な分枝や芳香環、複素環を持たない中性アミノ酸を高親和性に輸送した。ASCT2は、低親和性ながらグルタミン酸を基質とすることから、同一のファミリーに属するグルタミン酸トランスポータと似た形の基質結合部位を持つことが示唆された。さらに、ASCT2は、二つのNa^+と共役するグルタミン酸トランスポータと異なり、一つのNa^+と共役していた。キメラ解析から得られたDHK結合領域と、ASCT2とグルタミン酸トランスポータの一次構造と機能的性質の比較から得られた基質結合部位に関する情報をもとに、部位特異的変異導入による解析が進行中である。グルタミン酸トランスポータGLT-1はダルタミン酸取り込み阻害薬ジヒドロカイニン酸(DHK)によってそのグルタミン酸取り込みが抑制されるが、他のアイソフォームEAAC1はDHKによって抑制されない。この薬物感受性の違いを利用して、グルタミン酸トランスポータの基質結合部位同定を目的としたキメラ解析を行った。EAAC1とGLT-1のcDNAをタンデム方向に並ぶように一つのプラスミドに組み込み、recA^+の大腸菌を用いた相同組換によりキメラcDNAを得た。キメラ接合点は、あらかじめEAAC1及びGLT-1cDNAからPCRによって得たDNA断片をプローブとしたドットブロットハイブリダイゼーションによって限定した後、DNAシークエンシングによって決定した。キメラcDNAはXenopus卵母細胞に発現させ、DHKに対する感受性を検討した。膜貫通領域6から7にかけての領域を境にDHK感受性が大きく変化し、この領域内にDHK感受性の決定に与る構造が存在することが示唆された。さらに別の観点から基質結合部位同定の手掛かりを得るために、基質選択性の異なるファミリーの未知のメンバーのクローニングを行い、新しいNa^+依存性中性アミノ酸トランスポータASCT2のcDNAを単離した。ASCT2は、側鎖に高度な分枝や芳香環、複素環を持たない中性アミノ酸を高親和性に輸送した。ASCT2は、低親和性ながらグルタミン酸を基質とすることから、同一のファミリーに属するグルタミン酸トランスポータと似た形の基質結合部位を持つことが示唆された。さらに、ASCT2は、二つのNa^+と共役するグルタミン酸トランスポータと異なり、一つのNa^+と共役していた。キメラ解析から得られたDHK結合領域と、ASCT2とグルタミン酸トランスポータの一次構造と機能的性質の比較から得られた基質結合部位に関する情報をもとに、部位特異的変異導入による解析が進行中である。 | KAKENHI-PROJECT-07276235 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07276235 |
若者の趣味的活動についての社会関係資本論的研究 | 本研究は社会関係資本論の枠組において、若者の趣味を仲立ちにした諸関係・諸集団が社会的・政治的な参加に対してどのような関係を持つのかを検討した。東京在住の20代、30代の男女を対象にしたウェブ調査を実施し、得られたデータを統計的な手法によって分析した。具体的には、社会参加・政治参加に関わる項目群を従属変数、趣味的な活動とネットワークに関わる項目群を独立変数として、二変量関係の分析、多変量解析を行なった。その結果、趣味を友人と一緒にすることおよび趣味集団(あるいは二次的結社)への所属は、各種の参加行動に正の関連を持つことが確認された。計画1年目に作成した質問項目をもとにウェブ調査の設計を調査会社のサーベイリサーチ社に依頼し、これを用いて同社の保有するモニターによる調査を行った。都市規模別(10万以上と10万未満の地域に区分)にサンプルを割り当てて、20代、30代の男女に回答を依頼した。結果、1000サンプル程度の回答を回収することに成功した。質問項目は、調査の主目的である趣味活動と社会参加・政治参加に関するもののほか、これに付随して周辺的な人間関係(友人関係、家族関係、地域関係など)に関するもの、自己意識(自己認識や自己評定、自尊感情など)に関するもの、その他の基本属性などからなる。回答結果を整理後、必要なデータのクリーニングを行ない、分析に取りかかった。現在、分析は第一段階であり、次年度にさらに踏み込んだ分析を行なう予定である。計画当初の仮説は、第一に、趣味を通した人間関係は社会関係資本として機能するというもの、第二に、それゆえに趣味縁への参加は、社会的・政治的な参加と正に関連するというものであった。初期段階の分析においてはこれらの仮説は支持される見通しである。ただしこれらは少数の指標を用いたに変量関係によるごく初歩的なものである。例えば、社会関係資本という概念一つとっても、その指標にはいくつかのものが考えられる。指標をより多様化し、複数の変量の間の関係を統制しながら分析を進めることによって、仮説に関するより精細な理解が得られると思われる。ネットモニターを用いて、二段階の調査を行った。第一段階は20代及び30代についての調査。その分析の結果、世代・年齢に反応しそうな項目があることが分かり、第二段階の調査として比較対象として40代及び50代について同様の調査を行った。質問項目を、被説明変数(社会参加・政治参加に関する項目、寛容性に関する項目)と説明変数(基本的属性および集団参加に関わる項目)とに分けて、分析を行なった。その結果、(1)集団参加に関わる項目(各種団体やボランティ活動への参加)および集団の形はとらないものの趣味友人とでもいうべき友人の存在が、社会参加・政治参加と正の関係を持つことが確認された。具体的にいうと、政治的な会話をする相手の数は、趣味友人がいる者、何らかの団体に所属している者、ボランティア活動をしている者において高くなっている。また高校や大学での部活経験もそのような会話相手数と正に関連している。政治的関心、政治的有効性感覚についても同様の傾向が見いだされた。(2)また各種の政治参加・社会参加(署名、政治的消費、デモ、寄付・募金、投書、ネットでの政治討論参加、ネット日記での意見表明、シェア・RTによる意見表明)についても趣味友人、各種団体参加、ボランティア参加などが有意に正の関係を持つことが確認された。また最も基本的な政治参加行動と考えられる投票行動について投票権のあった者についてのみみてみると、これも趣味友人、各種団体参加、ボランティア参加との間に有意に正の関係が見いだされた。(3)さらにそれらの活動の重要な基礎となる各種の制度への信頼もまた、趣味友人の有無、各種団体への参加(さらには参加団体数)、ボランティア参加との間に正の関係が見いだされた。本研究は社会関係資本論の枠組において、若者の趣味を仲立ちにした諸関係・諸集団が社会的・政治的な参加に対してどのような関係を持つのかを検討した。東京在住の20代、30代の男女を対象にしたウェブ調査を実施し、得られたデータを統計的な手法によって分析した。具体的には、社会参加・政治参加に関わる項目群を従属変数、趣味的な活動とネットワークに関わる項目群を独立変数として、二変量関係の分析、多変量解析を行なった。その結果、趣味を友人と一緒にすることおよび趣味集団(あるいは二次的結社)への所属は、各種の参加行動に正の関連を持つことが確認された。若者を中心とした趣味を媒介とするネットワークを社会関係資本として分析するのが本研究の目的である。初年度は、次年度の量的調査の準備として各種関連文献のレビューおよび他の研究者による調査データの二次分析を行った。結果として、若者を対象とする場合、社会人と学生とで大きく異なるようであること、また趣味縁と機能的に等価な各種のネットワーク(友人関係、職場関係)などを視野におさめて比較する必要があること、趣味を介したネットワークが公共的な活動に対して正の効果を持つのみならず、例えば(教育から労働市場への)移行過程においても正の効果を持つこと、社会参加の形態が多様であり質問に工夫が必要であることなどがわかった(例えば計画停電時の節電ゲーム等)。それをふまえ、また先行調査の項目を参照しつつ、調査票の原型を作成した。調査票の構成は以下のようになる。 | KAKENHI-PROJECT-23530653 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23530653 |
若者の趣味的活動についての社会関係資本論的研究 | 1基本的属性についての質問群(性別、年齢、社会経済的な地位に関する諸質問)、2趣味縁に関する質問群(趣味集団への所属、趣味をともに行う友人の有無)、3趣味以外のネットワークについての質問群(友人関係、職場縁、いわゆる相談ネットワーク)、4社会参加に関する質問群(古典的な参加活動、新しいタイプの活動:購買活動を通しての社会参加やネット上での参加など)以上の項目から構成される質問票を用いて10代後半から40代までを対象とした調査を実施することが次年度の課題となる。計画2年目の中心的課題は調査の実施と、初期段階の分析を行なうことであり、これはおおむね達成された。初年度は、二年目の調査実施の準備の年であり、年度末の時点で準備はほぼ完了している。よっておおむね順調に進展していると判断した。本年度の分析は二変量関係を中心とした初歩的なものである。次年度は多変量解析を用いてさらに踏み込んだ分析を行ない、研究上の仮説の妥当性を支える諸条件を精細に検討する。その上で、いくつかの学会、研究会などで成果の一部を発表していく。初年度に作成した調査票を用いて調査を実施し、その分析に当たる予定である。3年目にはその分析結果をもとに各種の学会で報告し、また論文や書籍の執筆に当たる。調査自体はすでに本年度で終了しているので、次年度の研究費は主としてデータの分析、報告・発表にあてられる。これは主にPC等の機器、分析用のソフトウェア、資料整理用の機器、研究会・学会等への旅費を含む。また補足的なインタビュー調査を行なうことも予定しており、そのための謝金も支出する予定である。次年度の中心的な仕事は調査の実施である。調査会社と相談しつつ、都市部で500から700サンプル程度の調査を行う。そのほかに資料やデータの整理に謝金を支出する。 | KAKENHI-PROJECT-23530653 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23530653 |
AIDの構造と機能の解析 | 我々の研究グループは、抗体のクラススイッチ及び体細胞高頻度突然変異の機構に必須であるAIDの機能解析を行うことで抗体分子の多様性が生み出される分子機構の解明を目指している。我々のAID変異体解析の結果からクラススイッチ及び体細胞高頻度突然変異を誘導する際にはAIDと共同して働く因子、コファクターがそれぞれに存在していると考えられるが、現在のところ、このようなコファクターの同定は誰も成功していない。しかし、我々はAIDコファクターの同定を従来使われているyeast two-hybrid法を用い、陽性候補を88遺伝子得ることができた。得られた候補遺伝子をデータベースサーチで選定し、酵母レベル(非生理的条件下)から哺乳類培養細胞レベル(生理的条件下)といった実験段階を経て、得られた候補遺伝子とAIDとの物理的関連、機能的関連を解析している。さらに、in vitroの実験系でAIDコファクターであると決定した遺伝子についてノックアウトマウスを作成し、in vivoでの解析を行う。しかし、酵母レベル(非生理的条件下)から哺乳類培養細胞レベル(生理的条件下)といった実験段階を経ることができた分子が極めて少なく、我々の期待した分子ではないと考えられた。さらなる同定作業が必要となる。コファクターの同定と同時に免疫応答におけるAIDの活性制御のメカニズムの解明も行った。また、抗原を排除する抗体を産生するB細胞は、B細胞表面に数多くの機能分子を発現している。これら、B細胞の活性、抑制を制御する表面分子の解析を行うことも同時に進めて行く。実際にはB細胞の活性、抑制を制御する表面分子のノックアウトマウスの解析を行った。このようにAIDの機能制御解析、B細胞表面分子の両方向からの解析を行うことで高次の免疫反応の分子メカニズムの解明に繋げることができるであろう。我々の研究グループは、抗体のクラススイッチ及び体細胞高頻度突然変異の機構に必須であるAIDの機能解析を行うことで抗体分子の多様性が生み出される分子機構の解明を目指している。我々のAID変異体解析の結果からクラススイッチ及び体細胞高頻度突然変異を誘導する際にはAIDと共同して働く因子、コファクターがそれぞれに存在していると考えられるが、現在のところ、このようなコファクターの同定は誰も成功していない。しかし、我々はAIDコファクターの同定を従来使われているyeast two-hybrid法を用い、陽性候補を88遺伝子得ることができた。得られた候補遺伝子をデータベースサーチで選定し、酵母レベル(非生理的条件下)から哺乳類培養細胞レベル(生理的条件下)といった実験段階を経て、得られた候補遺伝子とAIDとの物理的関連、機能的関連を解析している。さらに、in vitroの実験系でAIDコファクターであると決定した遺伝子についてノックアウトマウスを作成し、in vivoでの解析を行う。また、コファクターの同定と同時に免疫応答におけるAIDの活性制御のメカニズムの解明も行う。抗原を排除する抗体を産生するB細胞は、AIDをいつ発現し、いつまで発現し続けるかということをB細胞の表面分子の解析を行うことで解明していく。このようにAIDの機能制御解析を行うことで高次の免疫反応の分子メカニズムの解析に繋げる。我々の研究グループは、抗体のクラススイッチ及び体細胞高頻度突然変異の機構に必要であるAIDの機能解析を行うことで抗体分子の多様性が生み出される分子機構の解明を目指している。我々のAID変異体解析の結果からクラススイッチ及び体細胞高頻度突然変異を誘導する際にはAIDと共同して働く因子、コファクターがそれぞれに存在していると考えられるが、現在のところ、このようなコファクターの同定は誰も成功していない。しかし、我々はAIDコファクターの同定を従来使われているyeast two-hybrid法を用い、陽性候補を88遺伝子得ることができた。得られた候補遺伝子をデータベースサーチで選定し、酵母レベル(非生理的条件下)から哺乳類培養細胞レベル(生理的条件下)といった実験段階を経て、得られた候補遺伝子とAIDとの物理的関連、機能的関連を解析している。さらに、in vitroの実験系でAIDコファクターであると決定した遺伝子についてノックアウトマウスを作成し、in vivoでの分析を行う。また、コファクターの同定と同時に免疫応答におけるAIDの活性制御のメカニズムの解明も行う。抗原を排除する抗体を産生するB細胞は、AIDをいつ発現し、いつまで発現し続けるかということをB細胞の表面分子の解析を行うことで解明していく。このようにAIDの機能制御解析を行うことで高次の免疫反応の分子メカニズムの解析に繋げる。我々の研究グループは、抗体のクラススイッチ及び体細胞高頻度突然変異の機構に必須であるAIDの機能解析を行うことで抗体分子の多様性が生み出される分子機構の解明を目指している。我々のAID変異体解析の結果からクラススイッチ及び体細胞高頻度突然変異を誘導する際にはAIDと共同して働く因子、コファクターがそれぞれに存在していると考えられるが、現在のところ、このようなコファクターの同定は誰も成功していない。しかし、我々はAIDコファクターの同定を従来使われているyeast two-hybrid法を用い、陽性候補を88遺伝子得ることができた。得られた候補遺伝子をデータベースサーチで選定し、酵母レベル(非生理的条件下)から哺乳類培養細胞レベル(生理的条件下)といった実験段階を経て、得られた候補遺伝子とAIDとの物理的関連、機能的関連を解析している。さらに、in vitroの実験系でAIDコファクターであると決定した遺伝子についてノックアウトマウスを作成し、in vivoでの解析を行う。 | KAKENHI-PROJECT-05J01369 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05J01369 |
AIDの構造と機能の解析 | しかし、酵母レベル(非生理的条件下)から哺乳類培養細胞レベル(生理的条件下)といった実験段階を経ることができた分子が極めて少なく、我々の期待した分子ではないと考えられた。さらなる同定作業が必要となる。コファクターの同定と同時に免疫応答におけるAIDの活性制御のメカニズムの解明も行った。また、抗原を排除する抗体を産生するB細胞は、B細胞表面に数多くの機能分子を発現している。これら、B細胞の活性、抑制を制御する表面分子の解析を行うことも同時に進めて行く。実際にはB細胞の活性、抑制を制御する表面分子のノックアウトマウスの解析を行った。このようにAIDの機能制御解析、B細胞表面分子の両方向からの解析を行うことで高次の免疫反応の分子メカニズムの解明に繋げることができるであろう。 | KAKENHI-PROJECT-05J01369 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05J01369 |
生体膜での脂肪酸ナノスケール解析技術確立による不飽和脂肪酸生理機能発現機序の解明 | 本研究では急速凍結・凍結割断レプリカ標識法を改良することにより、逆転凍結レプリカ脂肪酸標識法を開発し、膜脂質の疎水性領域である各種脂肪酸の微細分布の解析を可能にすることを目的とする。近年、不飽和脂肪酸(UFA)の生体内での増加が発癌、癌転移、精神疾患、インスリン抵抗性の改善など種々の生理機能に関与することがわかってきた。UFAは食物による補給により作用が発揮されることもわかっているが、どのように細胞に作用して機能関与するのかなど作用機序は全く不明である。逆転凍結レプリカ脂肪酸標識法を開発することにより、世界に先駆けて、UFAがもたらす生理的作用の機序解明の基礎的情報を獲得できると確信する。本研究では急速凍結・凍結割断レプリカ標識法を改良することにより、逆転凍結レプリカ脂肪酸標識法を開発し、膜脂質の疎水性領域である各種脂肪酸の微細分布の解析を可能にすることを目的とする。近年、不飽和脂肪酸(UFA)の生体内での増加が発癌、癌転移、精神疾患、インスリン抵抗性の改善など種々の生理機能に関与することがわかってきた。UFAは食物による補給により作用が発揮されることもわかっているが、どのように細胞に作用して機能関与するのかなど作用機序は全く不明である。逆転凍結レプリカ脂肪酸標識法を開発することにより、世界に先駆けて、UFAがもたらす生理的作用の機序解明の基礎的情報を獲得できると確信する。 | KAKENHI-PROJECT-19K22435 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K22435 |
我が国の建築生産における品質管理の史的展開に関する研究 | 本研究は、明治から昭和24年の建設業法制定に至るまでを期間とし、建設業の地位の確立過程を、その資格や行政措置と関係付けて、会計法、警察による請負業の取締り、戦時下における企業統制、終戦儀の民主化社会の中で明らかにするものである。建設業に関する行政措置は、大きく3つの施策とこれに連動する時期に分けることが出来た。第一は、昭和初期までが該当し、明治期の鉄道請負工事の業者資格規定が、その嚆矢であった。また、戦前の、国内行政は、その殆どの取締りは内務省の管轄にあり、地方にあっては警察署がこれを担当してきた。建設業者に対しても警察行政が対応し、各地方庁が規則を制定し、建設業界を取締まってきた。第二は、昭和10年代以降の戦時体制の中での建設業の取締りであり、特殊産業と見做されたために、業界独自の法令は制定されずにいたが、戦時生産を支える産業の性格上、大正末に制定された工業組合法が準用され、業界の体制つくりがなされ、それまでの取締りから業界の統制に政策がシフトされた。また、昭和18年頃には、商工省を中心とした企業統制が建設業界にも波及し企業統合が深化した。また、この時期に、建設業に対する資格や職別のあり方が集中的に議論された。今回は、その中でも建設業取締りを担当した伊藤憲太郎技師の所蔵の資料が、当時の行政側の考え方を知るために貴重なものであった。第三は、戦後の復興と民主化の中で取り組まれた建設業の行政措置であり、内務省の業務を受け継いだ戦災復興院のみならず、戦後経済復興を重点事業とした経済安定本部や占領軍工事の調達に関与していた特別調達庁でも、建設業に関する規制と取締りが行われていた。また、民間団体においては、自主的に建設業法案の検討がなされていた。本研究の知見としては、建設業の取締りの歴史的展開が明らかになった他に、行政側の担当官吏においても、既存法を踏まえ建設業に関する統制策を考えていたことが明らかになった。本研究は、明治から昭和24年の建設業法制定に至るまでを期間とし、建設業の地位の確立過程を、その資格や行政措置と関係付けて、会計法、警察による請負業の取締り、戦時下における企業統制、終戦儀の民主化社会の中で明らかにするものである。建設業に関する行政措置は、大きく3つの施策とこれに連動する時期に分けることが出来た。第一は、昭和初期までが該当し、明治期の鉄道請負工事の業者資格規定が、その嚆矢であった。また、戦前の、国内行政は、その殆どの取締りは内務省の管轄にあり、地方にあっては警察署がこれを担当してきた。建設業者に対しても警察行政が対応し、各地方庁が規則を制定し、建設業界を取締まってきた。第二は、昭和10年代以降の戦時体制の中での建設業の取締りであり、特殊産業と見做されたために、業界独自の法令は制定されずにいたが、戦時生産を支える産業の性格上、大正末に制定された工業組合法が準用され、業界の体制つくりがなされ、それまでの取締りから業界の統制に政策がシフトされた。また、昭和18年頃には、商工省を中心とした企業統制が建設業界にも波及し企業統合が深化した。また、この時期に、建設業に対する資格や職別のあり方が集中的に議論された。今回は、その中でも建設業取締りを担当した伊藤憲太郎技師の所蔵の資料が、当時の行政側の考え方を知るために貴重なものであった。第三は、戦後の復興と民主化の中で取り組まれた建設業の行政措置であり、内務省の業務を受け継いだ戦災復興院のみならず、戦後経済復興を重点事業とした経済安定本部や占領軍工事の調達に関与していた特別調達庁でも、建設業に関する規制と取締りが行われていた。また、民間団体においては、自主的に建設業法案の検討がなされていた。本研究の知見としては、建設業の取締りの歴史的展開が明らかになった他に、行政側の担当官吏においても、既存法を踏まえ建設業に関する統制策を考えていたことが明らかになった。本年度は、建設業の規制が近代国家を確立した明治から、上記の建設業法の確立までどのように展開されたか一連の流れの中でとらえた。これは、既往の研究や文献では、斯分野を扱ったものがほとんどなく、まず始めに建設業を規制する全体像を把握する必要があると判断したことに関係する。そして今年度の研究からは次のような知見が得られた。そもそも建設業は我が国の産業の中で特殊(正当に扱われないという意味で)に扱われ、産業区分も「雑業」に位置していた。歴史的展開では、ます明治の初期にあって、同業者組合の親睦的関係から、いわば民間による自主規制が行われてきた。明治から大正に入ると、同業者組合での規制だけでなく、大手の企業を中心とした近代経営が確立されるようになり、法人格の獲得、会計帳簿の整備や社員の服務規程等が整備されるようになった。また、大正期にあっては市街地建築物法(大正9年)が制定され、建設業もその規則の中に含まれ、内務省関係の事項であるために警察がその管理を行っていた。そして、昭和の10年代に入ると、戦時態勢が避けられず、国家一丸の生産力の向上を果たすために、建設業にあっても統制がとられた。この時期にあってはじめて建設業が国の規制を全面的に受けるようになったといえる。 | KAKENHI-PROJECT-15560539 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15560539 |
我が国の建築生産における品質管理の史的展開に関する研究 | また、国家による建設業の管理は、陸・海軍管理による建設協力会等の斯業の組織化を生み出した。また、昭和に入ると特に労働関係法が建設業にも適用され、財務、経営、技術のほかに安全性も規制の対象となった。これらの歴史的展開をみると昭和25年の建設業法は全く新しい取り組みとは言えず、歴史的経験が生かされたものといえる。今年度の研究は、2つの部分から構成されている。一つは、我が国における建設業取締りの実質的責任者であった旧商工省伊藤憲太郎技師の所蔵していた当時の関係資料が発見されたことから、この資料を用い、従来は全く不明であった建設業所管官庁の変遷を明らかにすることにある。そして、昭和の初期までは警察による取締り規則の中で規制が行われていたが、その後は建設資材の関係で商工省に所管が移り、商工省の後は企画院、軍需省(以上は戦時まで)、戦災復興院、建設院、そして建設省への変遷が解明できた。しかしながら担当官としては一貫して伊藤技師の参画が認められ、事務の継続性は妥当しても、産業としてみた場合には行政的扱いが貧弱であったことが分かる。また、この伊藤資料は、商工省の公開分だけでなく、行政官としての草案を含むのであり、戦前におけるに建築業界を統制する行政上のプロセス(起案、草案、規則制定)の流れの中で、中央官庁間、中央と地方の関係が明らかになった。もう一つの部分は、商工省伊藤技師の資料とも関係するが、企業統制と建設業界の再編に係るもので、終戦までは全国、各県協同組合化によって行われた。周知のように戦時体制に入って重要産業は早々と統制化の道を辿ったが、主要産業に認知されていない建設業は昭和13年に「土木建築請負組合法」が廃案になったことも関係し、かなり遅れて統制が実施された。さらに、統制にあっても、従来独自の調達システムを保持していた陸軍・海軍相互の業者獲得の確執、軍以外の工事担当部局(商工・軍需省)に対する圧力など権力(覇権)関係の網引きの中で協同組合化が推進されてきた。戦時にとられた建設業の統制は、受注と生産の効率化、資材配給により業界を拘束するものであったが、それまでに未産業として看過されてきた斯産業に対する行政指導の立場が確立であったともいえる。このような結果を経て昭和24年の建設業法制定に辿り着いた。本年度は、戦後復興期から「建設業法制定」までを期間として、戦時中までの建設業に対する統制から、どのように、民主化と復興建設の中で、斯産業が扱われてきたか、行政機関の対応、業界団体の活動状況、そして建設業法の制定に至るまでの国会の審議を中心に研究を行った。そして今年度の研究からは次のような知見が得られた。建設業を所管する行政組織にあっては、商工省の該業務を受け継いだ戦災復興院、その後の組織改変による建設院、建設省が主管官庁の主軸であったが、終戦後の産業・経済復興に特化した「経済安定本部」でも、莫大な戦時復興の役割を果たす建設事業を統制する観点から、各種調査が実施され、同本部でも建設業法の草案がつくられていた。また、連合軍工事を担当した「特別調達庁」は、工事発注に対して、建設業者の資格を決定していた。業界団体の活動状況では、都道府県レベルの組合の活動は、建設業の改善化に直接関係なく、全国レベルでの連合会的組織が、新しい建設業の業態を検討し、行政機関に積極的に働きかけていた。内容としては、業界の社会的認知が主であり、片務性からの脱皮を中心に、業界活動を法的に位置付ける「建設業法」や所管官庁の「建設省」設置に対して、自身の組織内で詳しい研究が行われていた。この組織の代表としては、「日本建設工業統制組合」「日本建設工業会」「全国建設業協会」が挙げられる。 | KAKENHI-PROJECT-15560539 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15560539 |
電極電位に応じたイオン液体電気二重層中の物質移動の多角的Operando解析 | 本研究の目的は,イオン液体が形成する電気二重層の中で,電極電位に応じて物質移動がどのように起こるのかをデバイス動作下(Operando)で多角的に解析する実験および計算科学的手法の決定版を確立することである。表面科学的分析に適したイオン液体薄膜が【開いた系】として自由な物質交換と電位制御が保証されたバルク(“物質・電位浴")と接続した系を利用するところに最大の特徴がある。電極電位に応じた金属イオンの空間分布,溶媒和状態の解析から,2次電池性能にとって重要な負極皮膜の解析までを含む,総合的提案である。本研究の目的は,イオン液体が形成する電気二重層の中で,電極電位に応じて物質移動がどのように起こるのかをデバイス動作下(Operando)で多角的に解析する実験および計算科学的手法の決定版を確立することである。表面科学的分析に適したイオン液体薄膜が【開いた系】として自由な物質交換と電位制御が保証されたバルク(“物質・電位浴")と接続した系を利用するところに最大の特徴がある。電極電位に応じた金属イオンの空間分布,溶媒和状態の解析から,2次電池性能にとって重要な負極皮膜の解析までを含む,総合的提案である。 | KAKENHI-PROJECT-19H02687 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H02687 |
医事刑法における被害者の自己答責性の意義 | 医事刑法における被害者(患者)の自己答責性の意義について、特に医師の説明義務と患者の承諾の有効性の問題を中心に検討した。ドイツにおいては、近年、仮定的同意の問題が注目されているが、この法理は論理的にも疑問のあるものであり、法状態が異なる我が国では採用が困難なものであるように思われる。その他、安楽死や遺伝子研究における被害者の自己決定の意義についても検討を行い、この分野における被害者の意思の重要性を再確認した。医事刑法における被害者(患者)の自己答責性の意義について、特に医師の説明義務と患者の承諾の有効性の問題を中心に検討した。ドイツにおいては、近年、仮定的同意の問題が注目されているが、この法理は論理的にも疑問のあるものであり、法状態が異なる我が国では採用が困難なものであるように思われる。その他、安楽死や遺伝子研究における被害者の自己決定の意義についても検討を行い、この分野における被害者の意思の重要性を再確認した。今年度は、治療行為における被害者の自己答責性の意義について検討した。医師による手術などの治療行為は、客観的にみたとき患者の身体的利益を増進するものであるという特殊性を持っており、純然たる法益侵害とは異なった側面があるといわれている。この治療行為の正当化根拠について、以前は正当業務行為(35条)であるとする見解が有力だったが、近年は患者の自己決定を強調する見解が有力になっている。両説の相違は、患者の意思に基づかない専断的治療行為の評価において顕著に表れることになる。正当業務行為説は、患者の同意がなくても医師が治療目的で行う治療は正当業務行為として正当化されるとするが、患者の同意説は、専断的治療行為は特別な場合を除き傷害罪に当たるとするのである。基本的に、患者の同意説の方向性に正しい核心があり、この解釈論的構成の中で被害者の自己答責性が有する意義を明確にすべきであると思われた。その際、メスで体を切るなど治療侵襲そのものに対する被害者の承諾以外に、手術などの失敗のリスクや投薬の副作用の危険に関して、あり得るとは思っていたが大丈夫だろうと考え最終的にはその可能性を心の内で打ち消して手術の実行を許したという被害者態度を「危険引受け」という法概念において捉え、その観点から理論を再構成し、その領域における被害者の自己答責性を考慮していくべきであると考えられる。今後は、その要件などを事案の特殊性を考慮しながら検討し、理論を精緻化していきたいと考えている。なお、今年は、被害者の自己答責性と危険引受けの概念をもう一度再検討するために、この領域の基礎的研究も行った。その成果は、刑法の争点において「危険の引受け」と題して公表した。今年度は、終末期医療、すなわち安楽死や尊厳死との関連で被害者の自己答責性が有する意義について検討した。近年の延命医療技術の進展に伴い、従来からの「安楽死」から、今日では「尊厳死」へ問題の重要性が移ってきている。そこで、自分の生命の終焉について、被害者(患者)が自分の責任でもって死を決断したということを、積極的にあるいは消極的に生命の終結を援助した行為者の処罰との関連で刑法上はどのように評価すべきなのかを詳細に検討した。我が国では、オランダなどのように安楽死を合法化する法律は存在しないが、判例では安楽死が問題になったときに安楽死を正当化する要件が提案されてきた。まず、脳溢血で倒れ激痛を訴える被害者の父に対して、被告人が殺虫剤入りの牛乳を飲ませて殺害した事案では、6要件を満たした場合に安楽死は正当化しうるとされた。ここでは、意思表示の要件は、可能であればある方が望ましいという程度の要件にすぎなかった。これに対して、被告人が、ガンで余命数日の患者に、その長男や妻の要請に従って塩化カリウム製剤を注射して殺害した事案では、4要件を満たした場合に安楽死は正当化されるとされた。この判決では、意思表示について、積極的安楽死の場合は明示のものが要求された。明示の意思表示を要件にすれば、意識不明状態の患者に対する安楽死を正当化する可能性を奪うとする批判もあるが、この問題領域における被害者の意思並びに自己答責性の重要度からすれば、この要件は必要不可欠のものといえるであろう。今後は、この領域における被害者の自己答責性の具体的要件などをさらに検討し、理論を精緻化していきたいと考えている。なお、今年は、被害者の意思の問題と、安楽死などが問題になる生命・身体に対する罪について広く考察するために、この領域の基礎的研究も行った。その成果は、ハイブリッド刑法総論、同各論において公表した。今年は、生殖医療や遺伝子の問題などにおける自己答責的な自己決定の意義について検討を行った。まず、伝統的な堕胎罪と人工妊娠中絶の問題について、日本の現状では、堕胎のほとんどが母体保護法による正当化でまかなわれてしまっており、人工妊娠中絶の95%程度が社会経済的理由による母体の健康への危険を理由としたもので、しかもそれを判断するのは指定医師であって実質上のチェックは皆無という状況なので運用上の濫用が懸念されている。女性(母親)の「生まない自由」という意味での自己決定、プライヴァシーの問題というとらえ方もあるが、堕胎罪の法益はまずもって胎児の生命であることからすると、単純に妊婦の自己答責的な自己決定の問題とは言い難い側面があるので、慎重な議論が必要になると思われた。 | KAKENHI-PROJECT-19730057 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19730057 |
医事刑法における被害者の自己答責性の意義 | つぎに、遺伝子と法的規制の問題について、特に医学的な遺伝子研究とインフォームド・コンセントの法理の関係について検討した。この領域では、医師の説明義務の問題とともに、研究実施前提供試料の活用に関する包括的同意の問題が重要であると考えられる。採取時(前回の研究時)の同意の取り方、説明の仕方と、今回の研究目的が前回の研究目的とどういう関係にあるかなどから同意内容にも十分注意した同意の有効性判断が必要になると思われる。今後は、その他の先端医療と法的規制の問題についても考察を進めていく予定である。なお、今年は、生殖医療や遺伝子の法的規制の問題の根幹にある「有効な同意」の前提となる十分な情報の提供という観点から、医師の説明義務に関して、ドイツにおいて有力な「仮定的同意」の問題の研究も行った。その成果は、立命館法学327・328号に「被害者の仮定的同意について」と題する論文として公表した。 | KAKENHI-PROJECT-19730057 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19730057 |
健康寿命と生活の質を重視した包括的健康指標の開発とその社会経済的要因との関連性 | 1.市区町村別死亡率の地域格差とその社会経済的要因との関連性に関する研究市区町村を単位として全死因による死亡率を算出し、地域の平均収入、学歴失業率、居住面積と死亡率との関連を分析し、低い社会経済的水準と高い死亡率との関連を明らかにした。その関連性は、女性より男性、全人口より75歳未満人口で強いこと、1975年から1995年までを観察すると死亡率と社会経済的要因との関連性は弱くなっていることを示した。2.健康寿命の算出とその関連要因の分析都道府県レベルでは、介護保険認定者を障害者とみなした2000年都道府県生命表を用いて、Disability-free Life Expectancy (DFLE)およびDisability-adjusted Life Expectancy (DALE)を算出した。これらは、一人当たり収入、失業率、高齢者一人暮らし世帯割合、離婚率等と有意な関連が認められた。市区町村レベルでは、同じく介護保険認定者を障害者とみなし、2000年市区町村生命表を用いて近似的なDFLEを算出した。DFLEは一人当たり収入、失業率、高齢者一人暮らし世帯割合、離婚率と有意な関連が認められた。3.個人の健康度とその関連要因平成13年国民生活基礎調査個票を用いて、健康に関連した指標と社会経済的要因との関連を分析した。その結果、各種健康指標は収入、仕事の有無、居住地、婚姻状態と有意な関連が見られることが明らかになった。4.健康の地域格差の健康政策への応用に関する研究1975年から1998年までの市区町村別死亡数から地域の死亡率の格差に伴う過剰死亡率とその経年的変化を観察した。さらに、国レベルの死亡率に関して、ベンチマーク法と外挿法により算出する健康政策の目標値の方法論を開発し、2010年における目標値の算出を試みた。1.市区町村別死亡率の地域格差とその社会経済的要因との関連性に関する研究市区町村を単位として全死因による死亡率を算出し、地域の平均収入、学歴失業率、居住面積と死亡率との関連を分析し、低い社会経済的水準と高い死亡率との関連を明らかにした。その関連性は、女性より男性、全人口より75歳未満人口で強いこと、1975年から1995年までを観察すると死亡率と社会経済的要因との関連性は弱くなっていることを示した。2.健康寿命の算出とその関連要因の分析都道府県レベルでは、介護保険認定者を障害者とみなした2000年都道府県生命表を用いて、Disability-free Life Expectancy (DFLE)およびDisability-adjusted Life Expectancy (DALE)を算出した。これらは、一人当たり収入、失業率、高齢者一人暮らし世帯割合、離婚率等と有意な関連が認められた。市区町村レベルでは、同じく介護保険認定者を障害者とみなし、2000年市区町村生命表を用いて近似的なDFLEを算出した。DFLEは一人当たり収入、失業率、高齢者一人暮らし世帯割合、離婚率と有意な関連が認められた。3.個人の健康度とその関連要因平成13年国民生活基礎調査個票を用いて、健康に関連した指標と社会経済的要因との関連を分析した。その結果、各種健康指標は収入、仕事の有無、居住地、婚姻状態と有意な関連が見られることが明らかになった。4.健康の地域格差の健康政策への応用に関する研究1975年から1998年までの市区町村別死亡数から地域の死亡率の格差に伴う過剰死亡率とその経年的変化を観察した。さらに、国レベルの死亡率に関して、ベンチマーク法と外挿法により算出する健康政策の目標値の方法論を開発し、2010年における目標値の算出を試みた。1.都道府県別・市区町村別死亡率の格差とその背景に関する研究人口動態統計の死亡小票および国勢調査人口を用いて算出した1973年から1998年の都道府県別・市区町村別年齢調整死亡率(全死亡および主要死因別)を用いて分析を行い、以下の結果を得た。(1)系列変化からの回帰式を用いた外挿法および都道府県死亡率を用いたベンチマーク法により2010年の死因別死亡率の目標値を設定する手法を開発した。(2)市区町村別の死亡率の格差より全国の過剰死亡を算出し、予防可能な死亡数を性年齢別に推計し、その時系列変化(1973-1998年)を観察した。(3)市区町村別死亡率と地域の社会経済的指標(収入、学歴、住環境、失業)との関連を分析し、低い社会経済的状況と高い死亡率の関係を明らかにし、社会経済的要因が健康に与えるインパクトを定量化した。2.障害者の割合の都道府県格差とその背景に関する研究健康寿命を算出する基本データとして障害者の割合について、介護保険認定者率を算出し、地域の年齢構成と介護保険認定レベルの影響を検証し、以下の結果を得た。(1)地域の年齢構成を調整してものなお都道府県別の要支援・要介護認定者率に大きな地域各差が存在することを示した。また、介護レベルにより要支援・要介護認定者率の地域格差の傾向が異なることを明らかにした。(2)介護認定者率と死因別死亡率および社会経済的要因の関係を分析し、脳血管痴患死亡率、高齢者世帯率、高齢者独居率等が介護保険認定者率と関連していることを明らかにした。1.市区町村別死亡率の地域格差とその社会経済的要因との関連性に関する研究市区町村を単位として、全死因による死亡率を算出し、地域の平均収入、学歴、失業率、居住面積と死亡率との関連を分析した。 | KAKENHI-PROJECT-14570326 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14570326 |
健康寿命と生活の質を重視した包括的健康指標の開発とその社会経済的要因との関連性 | 結果、低い社会経済的水準と高い死亡率との関連が認められ、その関連性は、女性より男性、全人口より75歳未満人口で強いことが示された。また、1975年から1995年までを観察すると死亡率と社会経済的要因との関連性は弱くなっていた。死因別に分析すると、関連性の低下は主に脳血管疾患の死亡率の低下および死亡率の地域格差の縮小によるものであった。2.健康寿命の算出とその関連要因の分析市区町村レベルでは、同じく介護保険認定者を障害者とみなし、2000年市区町村生命表を用いて近似的なDFLEを算出した。DFLEは、一人当たり収入、失業率、高齢者一人暮らし世帯割合、離婚率と有意な関連が認められた。3.個人の健康度とその関連要因平成13年国民生活基礎調査個票を用いて、健康度として、喫煙、過度の飲酒、がん検診受診、糖尿病羅患を健康に関連した指標とし、収入、仕事の有無、居住地、婚姻状態等との関連を分析した。その結果、各種健康指標は収入、仕事の有無、居住地、婚姻状態と有意な関連が見られることが明らかになった。また、個人の社会経済的要因を調整しても、地域の指標との有意な関連も認められた。さらに、これらの関連性を性・年齢別に詳しく分析すると、性・年齢別に関連性に異なるパターンが認められた。 | KAKENHI-PROJECT-14570326 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14570326 |
微生物共生と癌化 : EBウイルスとピロリ菌の共生が発癌誘導を促進する分子メカニズム | 炎症細胞浸潤が認められるような局所では、Helicobacter pylori(以下:ピロリ菌)とEpstein-Barr virus(以下: EBウイルス)の共局在が認められる。私は、ピロリ菌による慢性胃炎がEBウイルスを活性化し、EBV関連胃がんの発症リスクを高めていると考えた。ピロリ菌によるEBウイルス活性化メカニズムを明らかにすることを本実験の目的とし、まず胃上皮細胞におけるピロリ菌とEBウイルスの二重感染実験を行い、実験的に本現象を再現できるか検討した。まず最初に、ヒト胃上皮細胞由来のAGS細胞において、EBウイルス感染細胞数はピロリ菌存在下で有意に上昇し、EBウイルス由来の潜伏感染関連遺伝子であるEBER1遺伝子もピロリ菌の濃度依存的に上昇することを確認した。続いて、EBウイルスを活性化するピロリ菌の病原因子を解明する為に、まずはピロリ菌の病原毒素であるCagAおよびVacAに焦点をあて、それぞれ又は両遺伝子のノックアウト株の作製を行った。ノックアウト株を用いてEBウイルス感染増強を確かめた結果、野生型と同様にノックアウト株においてもEBウイルス感染率及びEBウイルス由来の潜伏感染遺伝子であるEBNA1遺伝子の発現上昇が認められ、ピロリ菌毒素(CagA, VacA)はEBウイルス感染増強に寄与しないことが明らかになった。しかしピロリ菌LPS、又は大腸菌LPSをAGS細胞に作用させたところ、EBERIならびにEBNAI遺伝子の発現上昇が認められた。これらの結果から、LPSの受容体であるTLR4のシグナルによりEBウイルス感染増強が起きると推察された。EBウイルス関連胃がん発症のプロセスは、LPSを主とする自然シグナル応答の結果引き起こされると考えられる。(抄録なし)炎症細胞浸潤が認められるような局所では、Helicobacter pylori(以下:ピロリ菌)とEpstein-Barr virus(以下: EBウイルス)の共局在が認められる。私は、ピロリ菌による慢性胃炎がEBウイルスを活性化し、EBV関連胃がんの発症リスクを高めていると考えた。ピロリ菌によるEBウイルス活性化メカニズムを明らかにすることを本実験の目的とし、まず胃上皮細胞におけるピロリ菌とEBウイルスの二重感染実験を行い、実験的に本現象を再現できるか検討した。まず最初に、ヒト胃上皮細胞由来のAGS細胞において、EBウイルス感染細胞数はピロリ菌存在下で有意に上昇し、EBウイルス由来の潜伏感染関連遺伝子であるEBER1遺伝子もピロリ菌の濃度依存的に上昇することを確認した。続いて、EBウイルスを活性化するピロリ菌の病原因子を解明する為に、まずはピロリ菌の病原毒素であるCagAおよびVacAに焦点をあて、それぞれ又は両遺伝子のノックアウト株の作製を行った。ノックアウト株を用いてEBウイルス感染増強を確かめた結果、野生型と同様にノックアウト株においてもEBウイルス感染率及びEBウイルス由来の潜伏感染遺伝子であるEBNA1遺伝子の発現上昇が認められ、ピロリ菌毒素(CagA, VacA)はEBウイルス感染増強に寄与しないことが明らかになった。しかしピロリ菌LPS、又は大腸菌LPSをAGS細胞に作用させたところ、EBERIならびにEBNAI遺伝子の発現上昇が認められた。これらの結果から、LPSの受容体であるTLR4のシグナルによりEBウイルス感染増強が起きると推察された。EBウイルス関連胃がん発症のプロセスは、LPSを主とする自然シグナル応答の結果引き起こされると考えられる。(抄録なし) | KAKENHI-PROJECT-13J01636 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13J01636 |
形質転換技術を用いたラン科植物特有の花器官形成機構の解明 | ラン科植物特有の花器官(唇弁,ずい柱,花粉塊など)の形成機構を明らかにするため,デンドロビウム,サギソウ,コチョウランを用いて花器官形成関連の遺伝子を単離し,その発現解析を行った.その結果,花弁形成に関与するクラスB遺伝子の発現パターンがデンドロビウムの花被形態の多様性に関連していることが示唆された.またこれらの遺伝子の機能を明らかにするため,コチョウランに遺伝子導入を行い,形質転換植物を得た.(1)ラン科植物における花器官形成に関わる遺伝子単離と発現解析:3種のラン科植物(コチョウラン,サギソウ,デンドロビウム)からABCDEモデルに関わるMADS-box遺伝子群と花の左右相称性に関わるcycloidea遺伝子について単離・発現解析を行う.またディファレンシャルスクリーニング法などにより,ラン科植物特有の器官(唇弁・ずい柱・花粉塊)形成に関わる遺伝子の単離を試みる.(2)ラン科植物の花器官変異体を用いた遺伝子解析:野生型,変異体のラン科植物を用いて花器官形成関連遺伝子群の発現を比較解析を行い,変異の原因遺伝子の特定を試みる.(3)形質転換技術を用いた花器官形成関連遺伝子群の機能解析:単離された花器官形成関連遺伝子群を発現ベクターにクローニングし,シロイヌナズナとタバコ,コチョウランとデンドロビウムに形質転換する.ラン科植物特有の花器官(唇弁,ずい柱,花粉塊など)の形成機構を明らかにするため,デンドロビウム,サギソウ,コチョウランを用いて花器官形成関連の遺伝子を単離し,その発現解析を行った.その結果,花弁形成に関与するクラスB遺伝子の発現パターンがデンドロビウムの花被形態の多様性に関連していることが示唆された.またこれらの遺伝子の機能を明らかにするため,コチョウランに遺伝子導入を行い,形質転換植物を得た.デンドロビウム属セッコクの野生型ならびにこれら花物の花器官形成関連遺伝子群の発現解析をおこなうため,MADSボックス遺伝子群のクラスB(AP3/DEFおよびPI/GLO)遺伝子とクラスC(AGAMOUS)遺伝子を単離し,それぞれDMAP3A,DMAP3B,DMPI,DMAG1と名付けた.リアルタイムPCRの結果,クラスBのDMAP3AとDMAPIの第1ウォール(外花被)における発現が検出されたことから,これら2遺伝子の転写産物がヘテロダイマーを形成することで,セッコクにおける花弁様外花被を形成していることが考えられる.一方,DMAP3Bは第2ウォール(花弁とリップ)で顕著に高発現していたことから,本遺伝子が第2ウォールの完全な花弁形成に関与していることが示唆された.セッコクでは少なくとも2種類のAP/DEF遺伝子(DMAP3A,DMAP3B)が第2ウォールの器官形成に必要である.また,DMAG1はずい柱で高発現していたことから,本遺伝子の発現がランのずい柱形成に必要であると示唆された.コチョウランから単離された3つのMADS-box遺伝子の各アンチセンスを過剰発現させた形質転換コチョウランをそれぞれ約30個体ずつ作出した.現在,一部のハイグロマイシン耐性PLBから分化がみられ,発根した小植物が得られており,PCR法を用いて遺伝子が導入されていることを確認した.また今後の遺伝子解析に用いるラン科植物の研究材料の収集・作出に関しては,セッコクおよび同属の複数種の多様な花変異個体を収集・育成した.花芽分化させた後のさまざまなステージの花をサンプリングした.またダイサギソウの獅子咲き個体を育成・開花させた後,自家受粉を行い採種した.さらにサギソウの野生型およびがく片が花弁化した変異体`飛翔'を交配し,その後代を作出した.セッコク(Dendrobium moniliforme)から2つのクラスB遺伝子(DMMADS4, DMPI)を単離した.前者はコチョウランのPeMADS4と89%,後者はPeMADS6と94%のホモロジーがあった. RT. PCRの結果,前者は内花被,唇弁,ずい柱で発現し,後者は外花被,内花被,唇弁,ずい柱の全てで発現していた.また両遺伝子共,子房発達時に発現していた.酵母ツーハイブリッド解析により,これら2つの遺伝子はヘテロダイマ-を形成することがわかった.更に,シロイヌナズナを使用した形質転換実験では, DMMADS4の強発現個体の花は野生型と変わらなかったが, DMPIの強発現個体の花は外花被が花弁様に変化した.また,開花期間は野生型よりも長くなった.以上の結果から,セッコクから単離した2つのクラスB遺伝子は花弁の発達と開花期間に関係すると考えられる.コチョウランから単離された3つのMADS-box遺伝子の各アンチセンスを過剰発現させた形質転換コチョウランをそれぞれ約30個体ずつ作出した.現在, 3つの遺伝子から約16個体の発根したハイグロマイシン耐性植物を順化し, PCRで導入遺伝子の確認を行った.またナス科植物であるSolanum fiebrigiiにおいても形質転換体が得られたので,次年度の解析に用いる.サギソウの野生型およびがく片が花弁化した変異体`飛翔'を交配し,その後代を作出した. `飛翔'にみられるがく片の花弁化および側がく片の唇弁化はともに後代に遺伝したので,この形質を他のサギソウ品種に導入することが可能であると考えられた.セッコクおよび同属の複数種の多様な花変異個体を収集・育成した.花芽分化させた後のさまざまなステージの花をサンプリングした. | KAKENHI-PROJECT-19380016 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19380016 |
形質転換技術を用いたラン科植物特有の花器官形成機構の解明 | これらは次年度の解析に用いる.前年度に引き続きセッコク(Dendrobium moniliforme)から2つのクラスB遺伝子(DMAP3AおよびDMAP3B)を単離した。RT-PCRの結果、前者は外花被、内花被、唇弁、ずい柱の全てで発現していた。一方、後者は内花被、唇弁、ずい柱のみで発現していた。更に、シロイヌナズナを使用した形質転換実験では、DMAP3Bの強発現個体の花は野生型と変わらなかったが、前年に得られたDMPIの強発現形質転換体と交配した後代において、久外花被が花弁様に変化し、心皮の発達が阻害されていた。これは、やはり前年に得られたDMMADS4形質転換体とDMPI形質転換体との交配後代で観察された表現形と同じであり、これら3つの遺伝子がセッコクの花器官決定にとって重要な役割を担っていることが示唆された。サギソウからはHrDEF遺伝子の他に新規DEF-like遺伝子2種類(HrDEF2,HrDEF3)のcDNAクローン断片を単離した。コチョウランでは4つのクレードに属するDEF-like遺伝子4つが単離されているが、サギソウからはこのうちの3つのクレードに属するDEF-like遺伝子が単離できた。2008年度に順化した形質転換コチョウランのうち、PhalAG2Aを導入したものが1株開花した。この株はリップ化した花弁(ペロリック)の形態を示したが、組織培養によってもこのような変異が生じることが報告されている。従って、今後他のまだ開花していない個体の花の確認及び分子レベルでの解析を行い、培養で生じた変異なのか導入遺伝子の働きなのかを明らかにする必要がある。セッコクおよび同属の複数種の多様な花変異個体を収集・育成した。花芽分化させた後のさまざまなステージの花をサンプリングした。ダイサギソウの花変異個体を育成し、交配・採種した。 | KAKENHI-PROJECT-19380016 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19380016 |
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