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戦前日本の対外政策と国内政治体制の変遷-外務省の対応から- | 本年度はまず、情報系分野との共同研究において行った、第一次世界大戦後の外務省機構について、軍部を含む省外と共有すべき情報を判断する主体が次官人事の変更とともに変遷していたことを明らかにした研究成果が、共著論文として公表された。次に「対外政策」としての海運問題、交渉について、第一次大戦を経て海運業を急成長させた日本が欧州列強により形成されていた従来の国際海運レジームの転換に挑戦し、一度は部分的な達成を遂げながらイギリスとの二国間交渉のなかで挫折していく様相を明らかにした論文が、台湾で出版された学術論文集に中国語で収録、発表された。また2017年10月からは5ヶ月間にわたって、イギリス各地およびオランダでの史料調査(公文書、私文書、企業文書など)に従事した。特に大連、インド、オランダ領東インドで発生した海運問題をめぐる日英、日蘭、英蘭交渉の史料を重点的に調査し、加えてオタワ協定(1932年)前後のイギリスにおける自由/保護主義と海運の議論についても主に個人文書を中心に史料を収集した。その成果から戦間期の海運問題つまり船舶航行をめぐる国家間の対立や調停の本質は、過激な市場競争の是正による経済的政治的協調というよりも、主権国家/属領関係を包摂する、帝国秩序と国際秩序の相克として捉えられるのではないかという考察に至った。以上の視角と日・英・蘭の史料、研究に基づきながらこれまでの成果を体系的に纏めるとともに、積極的な発表(論文投稿)を行っていく。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。本年度は研究計画の目的、内容を踏まえながら、新たに発見した分析視角と課題に沿って史料調査と学会報告を行った。(1)新たな分析視角と課題の発見:1920年代における国際海運原則に着目した修士論文の成果に基づき、二年目の研究課題「通商をめぐる外交交渉、外務省と各政治主体」の検討材料に海運問題を取り上げることとした。また同課題により接近するための準備として本年度は海運政策に焦点を絞り、政党勢力の伸長、各政治主体間の関係変化を把握することを喫緊の課題として再設定するに至った。(2)研究の進展:第一次世界大戦期を対象とし、海運政策の決定、実行における政治過程を明らかにした。国立国会図書館憲政資料室や神戸市文書館が所蔵する各私文書、日本銀行金融研究所所蔵資料、政党機関紙、業界誌などに依拠し、寺内内閣における海運政策が政府・政党関係を反映しており、また裏面では海運問題が政友会の党勢拡張に利用されたことを実証した。これは同時に阪神地方の海運業者による利益欲求実現のための政党利用の場面でもあり、原敬政友会内閣成立の直前に非政府系海運会社と政党が急速に接近していく様子を確認することができた。来年度は、こうした状況に党人官僚の流入、非政府系当業者の政界進出が加わった1920年代の海運政策の立案と外務省による海運原則をめぐる外交交渉の関連を詳細に検討する予定である。「海運と外交」という1帝国日本の維持・拡張2当業者の利益欲求と政党による吸収3省庁間関係、のそれぞれと密接に関連する分析視角を獲得したことで、研究計画書ではやや漠然としていた本研究の手段が明確になったと言える。(3)研究の成果:(2)で得られた成果の一部を、政治経済学・経済史学会の兵器産業・武器移転フォーラム第48回会合において「大正期日本海運政策をめぐる政府内構想の検討」として報告した。新たな分析視角を得たことで本研究の論点がより明確となり、また急遽浮上した課題に対しても史料発掘や学会報告を行うことができた。同時に、当初予定していた国外での関連史料の調査は次年度以降に持ち越すこととなった。本年度は、第一次世界大戦期の海運統制策をめぐる政府・政党・当業者の対立・接近を検討した昨年度の成果を論文化し学術雑誌に投稿した(掲載決定)。さらに国家間関係における海運問題の様相、つまり「対外政策」としての日本海運の性格・構造をより具体的に把握することを目的として、国内およびイギリスロンドンのThe National Archives, British Library,アメリカワシントンDC・メリーランド州のThe National Archivesのでの史料調査を行った。またそれらの成果の一部をもとに東京、台湾での学会報告を行った。具体的な成果は以下の2点である。(1)「沿岸貿易」の定義をめぐる国内外の矛盾:国際学会報告(台北)20世紀初頭において各国の「沿岸貿易」は国際慣習として自国船への限定が容認されていた。日本の外務省記録、ロンドンのイギリス外務省史料に基づき、第一次世界大戦以降の日本は、この「沿岸貿易」の定義-帝国領域内貿易を含むか否か-について、逓信省・外務省の政策目的と構想の相違を起因として、国内法でのそれと、国際法において日本が要求したそれとを矛盾させていたことを指摘した。(2)日本の南方拡張と蘭印における日本船舶の排斥:国内学会報告(東京)イギリス外務省史料より、1920年代以降東南アジア海域への進出を加速させた日本船舶への警戒と対処が、1930年代の蘭領東インド(蘭印)とイギリスの間で議論されていることを発見した。日本の外務省記録と合わせ、日本は蘭印との海運摩擦問題の結果、領域内航路から外国船を排斥するという蘭印の国内法改正を導いたこと、同改正にはイギリスの助言があったこと、(1)で指摘した矛盾に由来する国内外でのダブルスタンダードにより日本は有効な反論をすることができず、海運における保護主義の進展を招いたことを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-15J11293 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15J11293 |
戦前日本の対外政策と国内政治体制の変遷-外務省の対応から- | 各地におけるイギリス外務省史料の調査、アメリカ国務省史料の調査により、1930年代の英米において、日本の海運勢力が帝国日本の東南アジア、南アジアへの拡張の手段、あるいはアジアにおける経済ブロック圏の形成手段として認識されていたことを確認した。そこでは国際法の解釈や国内法の改正による日本海運の抑制が模索されており、また各海域における日本船舶への法的対処は、日本近海、つまり日本と朝鮮、中国(満洲)、台湾との海上交通との関連が常に意識されていた。「海」という法的あるいは具体的空間が戦間期日本の対外関係をいかに規定し得たかを把握するための作業を着々と重ねられていると言える。本年度はまず、情報系分野との共同研究において行った、第一次世界大戦後の外務省機構について、軍部を含む省外と共有すべき情報を判断する主体が次官人事の変更とともに変遷していたことを明らかにした研究成果が、共著論文として公表された。次に「対外政策」としての海運問題、交渉について、第一次大戦を経て海運業を急成長させた日本が欧州列強により形成されていた従来の国際海運レジームの転換に挑戦し、一度は部分的な達成を遂げながらイギリスとの二国間交渉のなかで挫折していく様相を明らかにした論文が、台湾で出版された学術論文集に中国語で収録、発表された。また2017年10月からは5ヶ月間にわたって、イギリス各地およびオランダでの史料調査(公文書、私文書、企業文書など)に従事した。特に大連、インド、オランダ領東インドで発生した海運問題をめぐる日英、日蘭、英蘭交渉の史料を重点的に調査し、加えてオタワ協定(1932年)前後のイギリスにおける自由/保護主義と海運の議論についても主に個人文書を中心に史料を収集した。その成果から戦間期の海運問題つまり船舶航行をめぐる国家間の対立や調停の本質は、過激な市場競争の是正による経済的政治的協調というよりも、主権国家/属領関係を包摂する、帝国秩序と国際秩序の相克として捉えられるのではないかという考察に至った。以上の視角と日・英・蘭の史料、研究に基づきながらこれまでの成果を体系的に纏めるとともに、積極的な発表(論文投稿)を行っていく。一年目に対象とした時期よりややくだり、1政党内閣の成立2新しい国際政治経済秩序の構築、という国内外の枠組みの変化、再構築のなかで、各政治主体がどのような折衝を遂げそれぞれの利益を追及し、あるいは妥協するのかを検討する。引き続き「海運と外交」に着目し、その過程から生み出された海運政策が、戦間期の日本の対外政策といかに関連していくのかにも注意したい。本年度の研究をもとに1930年代の国際海運問題の発生、処理とその余波について考察を進める。日本国内の公文書、私文書、企業史料等の悉皆的調査を継続したうえで、イギリス国内各地の文書館、大学等において史料調査を行い、戦間期の日英(米)関係のなかに海運をより適切に位置付ける。「海運問題」の内容としては国際法、個別具体的事例という異なる二つの次元を取り上げる。その際、中国大陸で発生している問題をめぐる日英対立・協調の動きを充分に踏まえ、「大陸」政策と「海洋」政策によって構成される「帝国日本の対外政策」を描出することを課題として念頭に置きつつ研究を遂行する。 | KAKENHI-PROJECT-15J11293 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15J11293 |
後期ディドロにおける政治論と唯物論哲学の関係についての実証的・包括的研究 | 本年度の研究は、『両インド史』へのディドロの寄稿断章を中心に、所有権・政治・歴史の関係についての議論を考察することに宛てられた。『両インド史』の1770年初版では、ユートピア的理想化をこうむっていた、中国・インカ帝国・イエズス会パラグアイ布教区の叙述は、1780年第三版までにすべてその理想性を否定される。ディドロが主導したこの批判(改稿)の背景には、ケネー以下の「合法的専制」論批判があり、私的所有権を排する統一的・均質的・不変的な政治経済秩序を理想的なものとはみなしえないというディドロの懐疑があった。私的所有権こそ、専制的権力行使から逃れる、個人の自由と個人間の社会的関係の基礎と考えられたのであり、ディドロにおける商業発展による文明化=解放の理念も、黒人奴隷制批判・アメリカ合衆国独立支持も、政治的に自由な主体(市民)の形成には、経済的に独立した所有と勤労の主体形成が前提になるという発想に淵源する。ディドロは、この文明化の歴史的ダイナミズムが「ヨーロッパの拡大」の原初的暴力によって始動したことを良く認識しつつ、すでに不可逆なこの過程のなかに、政治的自由の確立の契機を見出そうとしたのであった。この研究のため、アルゼンチン(パラグアイ布教区所在地)・フランスで資料調査を行った。研究成果は、10月の日本フランス語・フランス語文学会(新潟大学)と2月の日韓セミナー「政治と文学ー18世紀フランスで哲学を書くこと」(京都大学)で口頭発表されたほか、日本語論文2つ(うち1既刊)・フランス語論文1つに結実している。このほかに、フランス語の研究成果として、『両インド史』批評校訂版第二巻(共編・編集協力)と2013年のパリでの「今日におけるディドロと政治」での発表論文が挙げられる。本年度は1760年代後半のディドロの政治的著作における「政治体」論や「後世」論について、フィジオクラットとの「商業の自由」をめぐる議論やファルコネとの交換書簡を中心に研究を進め、他方でフランスにおける『両インド史』関係の資料調査を行う予定だったが、研究は主に1770年代のディドロの政治的著作を中心に進められた。日本語での研究成果としては、ジャンルイジ・ゴッジ著『ドニ・ディドロ、哲学者と政治』(勁草書房2015年11月)が挙げられる。1770年代のディドロの専制批判、ロシアの文明化論、公論への介入の三つの主題を扱う講演集であり、研究代表者は監訳および各講演の解題を担当している。またフランス語論文としては、『両インド史』における海賊についての考察から、ディドロ/レナルの歴史性・出来事性の把握とそれに対応する言説上の選択に焦点を当てた、"Un evenement singulier, ou le "romanesque" en marge del'histoire"、および『両インド史』とレナルの先行する近世ヨーロッパ史叙述を扱う"Raynal auto-compilateur"がある。また2016年2月にはイタリア・ピサ大学で開催された国際シンポジウムで"L'opinion publique selon Raynal"と題した研究発表を行った。このなかでは「公論」によって国民の道徳・軍事・財政動員を図るレナルと、「公論」に依拠して反専制の政治勢力の興隆を目論んだディドロの差異に焦点を当てている。また、フランス・ロデスのアヴェイロン文芸協会では、1780年代にレナルが執筆した『両インド史』改稿のための準備原稿の資料調査を行った。また、2016年3月からは、『両インド史』批評校訂版編集委員会の改組に伴い、3人の共同ディレクターの一人となった。昨年度は本務校での人事選考や他の科研共同研究の成果とりまとめの時期と重なったこともあり、夏期にフランス・ヴァール県タラドー村で予定していた資料調査は断念せざるをえなかった。また、これまでの研究成果のとりまとめに追われたせいもあって、1760年代後半のディドロ著作の検討に多くの時間を割くことは出来ず、むしろ1770年代の『両インド史』への寄稿を中心とする研究に専念せざるをえなかった。ただしその過程で、本研究でも一つの課題となっていたディドロのロシア論についての考察を開始することは出来た。フィジオクラットら同時代の政治経済学者との対質についても、インド会社改廃論、ロシアの文明化論、黒人奴隷制解放論などの個別事例について研究を進めることが出来たことは収穫と言える。また、フランス・ロデスでの『両インド史』関係の資料調査も予定通り行うことが出来ている。本2016年度は当初の計画通り、1770年代のディドロのロシア論(文明化論)を中心に研究を進めた。とりわけ『訓令についての考察』を、エカチェリーナの『訓令』との関係を中心に、後者が典拠としたモンテスキュー『法の精神』とベッカリーア『犯罪と刑罰』、また前者が参照したルトローヌ『訓令の精神』および同時代のフィジオクラシーの政治経済学との間テクスト的関係において把握することに努めた。その結果、とりわけベッカリーアやフィジオクラットの自然権思想に対して、長期の歴史変動の規定性とその都度の特異な政治状況・政治的行為の要請を分節しながら、その双方の交錯を思考するディドロの政治的思考の特質を見極めることができた。 | KAKENHI-PROJECT-15K02078 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K02078 |
後期ディドロにおける政治論と唯物論哲学の関係についての実証的・包括的研究 | また、79月と12月のフランスでの資料調査では、パリ国立古文書館、外務省古文書館、国立図書館とエクス・アン・プロヴァンス海外古文書館で、ディドロ/レナル『両インド史』関係の外交・植民地関係の資料調査を行い、とくに18世紀の植民地論における「文明化」と「所有権」の関係を精査した。さらに9月にはフランス・ヴァール県タラドーで、ピサ大学ジャンルイジ・ゴッジ名誉教授(本研究海外研究協力者)と『両インド史』第四版のための貴重な手稿資料の調査を行った。その結果、当該資料は、おそらく一七八〇年代初頭に、レナルが『両インド史』第三版改稿のための記した原稿の断片を集積してなっていること、その際レナルがディドロの寄稿を改稿せずにそのまま保存していることが明らかに出来た。ほかに『両インド史』批評校訂版協同編集長として、近刊予定の第二巻の修正・校正に携わった。また、18世紀初頭のプロテスタント思想家ピエール・ベールについての論文を発表し、後期ディドロの政治思想についての論文と、レナルにおける公論概念の変遷についての仏語論文を執筆した(2017年度中に刊行予定)。研究初年度に予定していたフランス・タラドーでの資料調査を所有者の都合により本年度に回さざるを得なかったため、本年度予定していたロシア・ペテルブルグでの手稿資料の調査を実現することは出来なかった。したがって、ルトローヌ『訓令の精神』を筆頭とする調査対象の資料に関しては、先行研究に見られる部分的な復刻を参照するにとどまっている。そのため、進捗状況としては、「やや遅れている」と判断した。ただし、この資料調査の遅れにもかかわらず、ディドロのロシア関係の著作に関してはあたう限りの関連文献にあたり、精査に務めることができた。また、タラドーでの資料調査に前後して行ったフランス各地の古文書館での植民地関係の資料調査では、七〇年代のディドロの主要関心事である植民地論・商業論にかんする資料を収集し、知見を広げることができた。今年度はとくにディドロ関係の研究論文を発表することはできなかったが、日本語で発表したベール論は、前年度のフランス南西部での資料調査の副産物である。またディドロ、レナルにかんしても二つの論文が刊行予定であり、共同編集長を務める『両インド史』批評校訂版の続巻も刊行が待たれているため、実質的な研究の進捗状況に大きな問題はないと考える。本年度の研究は1770年代のディドロの二著作『エルヴェシウス論駁』と『両インド史』の三つの版のパラグアイ・イエズス会布教区叙述を対象に進めた。『人間論論駁』は、感覚論と功利主義に基づくエルヴェシウスの教育論=政治論の批判を展開した著作である。ディドロは動物/人間の種差や人間の個体差における身体的=自然的条件の規定性を強調し、あるいは感覚(身体)と判断(思考)の種別性や、機械論的原因と自然的・物理的条件の区別を指摘することでこの批判を敢行するが、その主眼はエルヴェシウスの社会工学的発想に対して政治行為の領域の限界確定を図ることにあった。『両インド史』では、パラグアイ布教区を「野生人の文明化」の成功例とみなし、神権政と共有財産制に基づくユートピアとして提示する1770/74版の肯定的評価を、ディドロが1780年版で覆すことの意味が焦点となった。この評価の反転には、単純再生産を旨とし、政治体全体を統一的秩序に従属させる政治的理想への批判と、特定の主体が一定の計画に基づいて政治体を構成(「立法」・「創設」)しうるとする立場への批判が含意されていた。そこから出発してディドロは、所有権の確立、商品生産と流通の拡大、そして公民的・政治的自由の拡大と連なる歴史過程を発動させる政治行為を「文明化」と呼ぶことになる。 | KAKENHI-PROJECT-15K02078 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K02078 |
神経分化影響を引き起こす低濃度メチル水銀曝露の標的エピゲノム分子の探索 | 近年、胎生期環境と成人期疾患発症との関連が懸念されている。特にメチル水銀は、現在、魚介類摂取を介した胎児への低濃度曝露影響が懸念されている。これまでに低濃度MeHg曝露による神経発達影響とエピゲノム攪乱を見出してきた。本研究は、低濃度MeHg曝露影響を見出したヒトin vitro神経分化系およびマウスin vivo実験系を用い、さらなるエピジェネティクスメカニズムを解明する。特に、1神経突起伸長などの表現型とエピゲノム変化との因果関係2エピゲノム変化によって調節される表現型変化を引き起こす標的遺伝子群の探索3低濃度MeHgの直接的な標的分子の探索の3点について重点的に検討する。近年、胎生期環境と成人期疾患発症との関連が懸念されている。特にメチル水銀は、現在、魚介類摂取を介した胎児への低濃度曝露影響が懸念されている。これまでに低濃度MeHg曝露による神経発達影響とエピゲノム攪乱を見出してきた。本研究は、低濃度MeHg曝露影響を見出したヒトin vitro神経分化系およびマウスin vivo実験系を用い、さらなるエピジェネティクスメカニズムを解明する。特に、1神経突起伸長などの表現型とエピゲノム変化との因果関係2エピゲノム変化によって調節される表現型変化を引き起こす標的遺伝子群の探索3低濃度MeHgの直接的な標的分子の探索の3点について重点的に検討する。 | KAKENHI-PROJECT-19K12341 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K12341 |
細胞間隙経路を介した病原性レンサ球菌の組織侵入機構の解析 | 化膿レンサ球菌が劇症型レンサ球菌感染症のような侵襲性疾患を惹起するためには,初発感染部位である咽頭や皮膚の上皮細胞層を突破する必要がある.我々は本菌がヒトプラスミノーゲン(PLG)存在下において,主にトリセルラータイトジャンクション(tTJ)から上皮バリアを突破する現象を見出した.また,PLGは菌体表層タンパク質であるSENとトリセルリンを繋ぐ分子ブリッジとして機能し,化膿レンサ球菌のtTJへの局在に関与することを明らかにした.これらの研究結果から,化膿レンサ球菌はPLGのトリセルリン結合能を利用することでtTJに局在し,tTJから上皮バリアを突破することが示唆された.劇症型レンサ球菌感染症の発症過程において,A群レンサ球菌は物理バリアである上皮細胞層の細胞間接着分子を傷害し,組織深部へ侵入する.我々はこれまでに,A群レンサ球菌がバリア機能の維持に重要なトリセルラータイトジャンクション(TJ)から上皮バリアを突破する機構を見出した.本研究では,トリセルラーTJにおけるA群レンサ球菌の局在に関与する細菌・宿主因子を同定し,本菌の上皮バリア突破機構との関連性を検証することを目的とした.ヒト咽頭上皮細胞Detroit 562にA群レンサ球菌NIH35株(劇症型感染症由来M28型)を感染させ,共焦点蛍光レーザー顕微鏡で菌体のトリセルラーTJへの局在を観察した.その結果,A群レンサ球菌がプラスミノーゲン(PLG)依存的に,トリセルラーTJへ局在することを確認した.トリセルリンはヒトPLGのレセプターであり,トリセルリン細胞外ループの217番目と252番目のリジン残基がPLGとの相互作用に重要であることを表面プラズモン共鳴解析およびELISAにより明らかにした.また,PLGは菌体表層のStreptococcal surface enolase (SEN)とトリセルリンを繋ぐ分子ブリッジとして機能し,A群レンサ球菌のトリセルラーTJへの局在に関与することを確認した.さらに,野生株の上皮バリア通過能および細胞間接着分子分解能は,SEN変異により著しく抑制された.以上の結果から,A群レンサ球菌は宿主PLGを分子ブリッジとして利用し,トリセルラーTJから上皮バリアを突破することが示唆された.A群レンサ球菌が劇症型レンサ球菌感染症(STSS)を発症させるためには,物理バリアである上皮細胞層を突破する必要がある.実際,咽頭や皮膚に形成される化膿性病変の病理像から,本菌の病原因子による宿主上皮の細胞間接着障害が感染成立に重要であると考えられている.我々は,STSS患者由来の臨床分離株が細胞間接着分子の傷害により,トリセルラータイトジャンクション(TJ)から上皮バリアを突破することを見出した.本研究では,トリセルラーTJにおけるA群レンサ球菌の局在に関与する細菌・宿主因子を同定し,本菌の上皮バリア突破機構との関連性を検証した.A群レンサ球菌はヒトPLG依存的に,トリセルラーTJに局在することを確認した.また,菌体付着部位では細胞間接着を担うZO-1の分解が認められ,菌体がトリセルラーTJから深部に侵入している様子も観察された.一方,トリセルリンノックダウン細胞では,菌体のトリセルラーTJへの局在性が低下した.トリセルリンはヒトPLGのレセプターであり,トリセルリン細胞外ループの217Lysと252LysがPLGとの相互作用に重要であることを明らかにした.また,PLGは菌体表層のStreptococcal surface enolase (SEN)とトリセルリンを繋ぐ分子ブリッジとして機能し,A群レンサ球菌のトリセルラーTJへの局在に関与することを確認した.さらに,野生株の上皮バリア通過能および細胞間接着分子分解能は,SEN変異により著しく抑制された.以上の結果から,化膿レンサ球菌は宿主PLGを分子ブリッジとして利用し,トリセルラーTJから上皮バリアを突破することが示唆された.以上の結果から,A群レンサ球菌は宿主PLGを分子ブリッジとして利用し,トリセルラーTJから上皮バリアを突破することが示唆された.平成27年度の研究計画に基づき,A群レンサ球菌によるトリセルラーTJの破綻と菌体の上皮バリア突破の関連性を明らかにした.また,平成2627年度に行った研究内容は,Scientific Reports2016年1月号に掲載された.従って,本申請課題は順調に進展していると考えられる.ヒトを唯一の宿主とするA群レンサ球菌は,咽頭や皮膚を初発感染部位として,主に咽頭炎や膿痂疹などの局所性化膿性疾患を惹き起こす.タイトジャンクション(TJ)は隣接する上皮細胞間をシールし,外界からの異物の侵入を防御する物理バリアとして機能する.細胞間接着により多角形に縁取りされた上皮細胞の集合体である細胞シートには,2細胞間の接着部位以外に,3つの細胞の角が接するトリセルラーコンタクトが多数存在する.この領域はトリセルラーTJと呼ばれ,主な構成分子としてトリセルリンやLSRが同定されている. | KAKENHI-PROJECT-26462780 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26462780 |
細胞間隙経路を介した病原性レンサ球菌の組織侵入機構の解析 | これまでに,A群レンサ球菌は菌体表層タンパク質であるstreptococcal surface enolase (SEN)のプラスミノーゲン(PLG)結合能を利用して,トリセルラーTJから上皮バリアを突破することを明らかにした.本年度は,SENとPLGの相互作用がPLGの動物種依存的であり,SENはヒトPLGと強く結合することを証明した.また,ヒト大腸粘膜上皮細胞Caco-2をトランスウェルフィルターシステムで培養したin vitro上皮バリアモデルに,野生株とSEN変異株をアピカル部位から感染させ,細菌の下部チャンバーへの到達を上皮バリア通過能として評価した.その結果,A群レンサ球菌はヒトPLG存在下において,高い上皮バリア通過能を示した.さらに,A群レンサ球菌感染細胞におけるZO-1,トリセルリン,オクルディンやE-カドヘリンなどの細胞間接着分子の分解は,SEN変異により著しく抑制した.以上の結果から,A群レンサ球菌は菌体表層タンパク質であるSENと宿主PLGの相互作用を介してトリセルラーTJに局在し,細胞間隙経路から上皮バリアを突破することが明らかになった.化膿レンサ球菌が劇症型レンサ球菌感染症のような侵襲性疾患を惹起するためには,初発感染部位である咽頭や皮膚の上皮細胞層を突破する必要がある.我々は本菌がヒトプラスミノーゲン(PLG)存在下において,主にトリセルラータイトジャンクション(tTJ)から上皮バリアを突破する現象を見出した.また,PLGは菌体表層タンパク質であるSENとトリセルリンを繋ぐ分子ブリッジとして機能し,化膿レンサ球菌のtTJへの局在に関与することを明らかにした.これらの研究結果から,化膿レンサ球菌はPLGのトリセルリン結合能を利用することでtTJに局在し,tTJから上皮バリアを突破することが示唆された.平成26年度の研究計画に基づき,A群レンサ球菌は菌体表層タンパクであるStreptococcal surface enolase (SEN)-プラスミノーゲン-トリセルリンの相互作用を介して,トリセルラーTJから上皮バリアを突破することを明らかにした.現在は,溶血毒素ストレプトリジンSと相互作用する宿主上皮表層分子の検索を進めている.従って,本研究課題は順調に進展していると考えられる.我々はこれまでに,複数の臨床分離株において,溶血毒素の一つであるストレプトリジンS (SLS)がカルシウムイオン依存的な宿主細胞内システインプロテアーゼであるカルパインの活性化を誘導して,上皮細胞間の接着分子であるオクルディンやE-カドヘリンの分解と細胞間隙部位からの菌体の上皮バリア突破が起こることを明らかにしている.今後は,宿主上皮細胞上のSLS受容体を同定する.同定されれば,SLS-受容体複合体から細胞内カルシウム濃度の上昇およびカルパスタチンの分解に至るシグナル伝達経路を解析する.細菌学我々はこれまでに,,溶血毒素による宿主細胞内プロテアーゼの活性化とA群レンサ球菌が産生するカルパインの協調作用が,菌体の上皮バリア突破に重要であることを明らかにした.今後は,溶血毒素ストレプトリジンS (SLS)と相互作用する宿主上皮表層分子を検索する.SLS受容体候補分子が挙がれば,SLS-受容体複合体によるカルパイン活性化シグナル伝達機構を,イムノブロット法,免疫沈降法およびRNA干渉法により解析する.さらに,in vitro実験において病原性が認められた細菌因子について,病態発症への関連性をマウス皮膚感染モデルで検証し,感染防御抗原としての可能性についても検討する.実験動物購入費として確保しておいたが,ノックダウン細胞を用いた系で実験を実施したため,次年度使用額が生じた.当該助成金は平成28年度の研究計画の中で,SLS受容体を同定する際のMS解析受託解析費用として使用する予定である. | KAKENHI-PROJECT-26462780 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26462780 |
衛星観測・大気再解析データの相互比較による堅牢な成層圏大気像の描出 | 本年度は,本研究にも密接に関わるSPARC Reanalysis Inter-comparison Project (S-RIP;成層圏における大気再解析データの比較プロジェクト)の最終報告書を執筆した(Chapter 11 "上部成層圏ー下部中間圏"の一部を分担執筆).上記の報告書には昨年度公表した論文も引用されている.また,最近になって新たに公開された大気再解析データ(ERA-5)を部分的に習得して予備調査を行い,データ特性の把握と今後の解析方法の検討を行った.本研究で対象としていた成層圏大気の再現性について更なる改善が期待でき,今後本格的な解析を行ってこれまでの結果との比較検討を行う予定である.また日本気象学会等に出席し,今後の課題について共同研究者と打ち合わせを行った.本研究は、多種多様な観測データを統合的に解析し、データ間の差異を精緻化してその要因を特定し、観測・物理過程の両者に裏打ちされた堅牢な成層圏大気像を得ることを目的としている。本年度は当初の計画通り、最新の衛星データ(SABER, MLS, GPS)と再解析データ(JRA55, JRA55C, JRA55AMIP, MERRA2, MERRA, ERA-Interim, CFSR)の日変動成分を抽出・解析し、成層圏大気の日変動成分について相互比較を行った。日変動成分は、(1)一日周期・太陽同期成分、(2)半日周期・太陽同期成分、(3)太陽非同期成分、にわけて比較を行った。まず一日周期・太陽同期成分については、再解析データ間に大きな差異は見られない一方、衛星データ(特にSABER)と再解析データ間で、特にの振幅に有意な差があることが明らかになった。続いてその要因の検討も行った。JRA55-family(JRA55, JRA55C, JRA55AMIP)データを比較解析することにより、再解析データにおけるデータ同化過程の影響を見積もった。その結果、これらの影響は小さく、衛星観測データ側に問題がある可能性が排除できない。一方、半日周期・太陽同期成分や太陽非同期成分についてはデータ間の差は小さかった。これらの結果は、再解析比較プロジェクト(S-RIP)の国際学会で発表した。現在投稿論文を執筆中である。本年度の計画は、最新の観測データ・再解析データを用いて、中層大気領域の様々な変数について詳細な比較を行うことであった。今のところ解析変数は気温に限られているが、当初の計画通り、多数のデータを統合的に用いた解析を実施することで問題点が明らかになりつつある。昨年度からの研究を発展させ、7種類の再解析データ(MERRA-2, MERRA, JRA55, JRA55C, JRA55AMIP, ERA-Interim, CFSR)(期間:2006-2012年の7年間)と衛星観測データ(SABER, MLS)を用いて日周期変動に関する解析を行った。具体的には(a)太陽同期一日潮汐、(b)太陽同期半日潮汐、(c)太陽非同期潮汐、の各成分について詳細なデータ間比較を行った。その結果、(a)についてはSABER衛星とその他(再解析・MLS衛星)で上部成層圏に有意な差が見られることが分かった。はっきりした原因は不明だが、これまで観測値として信頼されてきた衛星観測自身に問題がある可能性がある。一方(b-c)については、データセット間で系統的な差は見られないことが明らかになった。さらに、再解析データの大気潮汐の長期変化(1980年-2010年の30年間)についても調べた。その結果、精度の高い衛星観測が始まる以前(2000年以前)のデータは大気モデルへの依存度が強く(つまり、同化される観測データへの依存度が小さく)、再解析データ間のバラつきが相対的に大きくなっていることが明らかになった。この結果は、再解析データを用いたトレンド解析の結果に注意を促すものである。上記の結果はS-RIP(再解析比較の国際プロジェクト)の国際会議で発表を行い(口頭発表)、現在ジャーナル論文を執筆中である。メインターゲットである大気潮汐に関する比較解析を終えた。また、異なる種類のデータを比較することで、見つかった差異(特に上部成層圏における太陽同期成分の振幅)が観測データ側にある可能性が示唆された。論文も近日中に投稿予定である。また解析の中で、"視太陽時(Apparent solar time)の季節変化"という、従来の研究でほとんど考慮されていない要素の重要性が明らかになり、共著論文にまとめた。以上の進捗状況に鑑みて、研究は順調に進展していると判断した。昨年度からの研究の継続で、7種類の再解析データ(MERRA-2, MERRA, JRA55, JRA55C, JRA55AMIP, ERA-Interim, CFSR)(期間:2006-2012年の7年間)と衛星観測データ(SABER, MLS)を用いた日周期変動に関する解析結果をまとめ,国際ジャーナル論文として公表した(Sakazaki, Fujiwara and Shiotani, 2018).成層圏内の日周期成分について,網羅的に調べた初めての論文である.再解析データにおける日周期成分の再現性は,同化されるデータの多い中部成層圏より下層では非常に良いが,上部成層圏よりも上層ではモデル依存性が強い.また,同化されるデータは均一でないため,長期トレンド解析に向かないことも分かった.また,上記の結果を元に,再解析比較プロジェクト(S-RIP)の最終レポート執筆にも貢献した. | KAKENHI-PROJECT-15K17761 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K17761 |
衛星観測・大気再解析データの相互比較による堅牢な成層圏大気像の描出 | さらに,主に成層圏で励起され,地上に伝播する半日周期潮汐の地上気圧シグナルを調べたところ,その位相の正確な同定には視太陽時(Apparent solar time)の季節変化(つまり、太陽の南中時刻の季節変化)を考慮する必要があることが明らかになった。国際ジャーナル論文として公表した(Hamilton and Sakazaki, 2017a)。下部成層圏に伴う東西風の準二年周期変動(QBO)の位相を,過去の火山噴火後の"特異な"夕焼けの観測記録から推定する研究に参画した.この際,1991年ピナツボ山噴火の際の再解析データを用いて,夕焼けの記録から推定した東西風速が妥当であることを検証することができた(この検証に基づき,近代気象観測以前のQBOの位相を, 1883年(Mt. Krakatau),1901年(St. Vincent & Mt. Pelee)の火山噴火の際の夕焼け観測に基づいて推定した)本研究内容に関する総合的な論文を執筆し,国際ジャーナル論文として公表することができた.またそこから派生して明らかになった新たな問題についても論文として公表することができた.さらに上記論文を通じて,現在の衛星観測に問題がある可能性を指摘し,将来の衛星観測計画にあたって注意すべき点を提示することもできた.以上の観点から,計画は順調に進展している.本年度は,本研究にも密接に関わるSPARC Reanalysis Inter-comparison Project (S-RIP;成層圏における大気再解析データの比較プロジェクト)の最終報告書を執筆した(Chapter 11 "上部成層圏ー下部中間圏"の一部を分担執筆).上記の報告書には昨年度公表した論文も引用されている.また,最近になって新たに公開された大気再解析データ(ERA-5)を部分的に習得して予備調査を行い,データ特性の把握と今後の解析方法の検討を行った.本研究で対象としていた成層圏大気の再現性について更なる改善が期待でき,今後本格的な解析を行ってこれまでの結果との比較検討を行う予定である.また日本気象学会等に出席し,今後の課題について共同研究者と打ち合わせを行った.まずは、本年度得られた成果を国際ジャーナル論文として公表する。続いて、衛星データ-再解析データ間に見られる差異の要因を検討する。本年度の研究により、当初の計画で想定していた「再解析データにおけるデータ同化過程」はそれほど重要でないことが明らかになった。今後は観測データ側に問題がある可能性も視野に入れ、さらに別の種類の観測データを使用するなどして要因の検討を進めたい。現在執筆中の論文を完成させジャーナル誌(Atmospheric Chemistry and Physics誌を予定)に投稿する。現在投稿中の論文についても、査読結果に対応した追加解析・原稿修正などを行う。本成果を踏まえ、地球大気衛星観測に求められる要素・精度などを整理し、今後の観測計画等にも貢献したい。上記論文を執筆後に登場した新しいデータセットを解析し,学会の場などを通じて研究協力者と更なる議論を深める予定である.本年度は、別途科研費(特別研究員奨励費)を所持していたため、パソコン機器や書籍・文房具等の一部をそちらで賄うことができたことによる。 | KAKENHI-PROJECT-15K17761 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K17761 |
神経終末内メンブレントラフィックの細胞質タンパク質による制御 | 神経終末内におけるシナプス小胞の開口放出とエンドサイトーシスはサイトゾルタンパク質によって厳密に制御されている。本研究はこれらの過程におけるサイトゾルタンパク質nSec1/Munc18-1、トモシンおよびシナーフィン/コンプレキシンの役割を明らかにする目的で行われ、以下の結果が得られた。(1)伝達物質放出におけるシナーフィンの作用速度を知る目的で、ヤリイカ巨大シナプスのシナプス前末端にシナーフィンのSNARE複合体結合部位のケージド・ペプチドを注入した。UV照射により、このペプチドを瞬間的に活性化すると、SNARE複合体に結合してシナプス小胞の開口放出を阻害する。この阻害速度を測定し、時定数約180ミリ秒を得た。(2)シナーフィン1,2のC末端近くにカゼインキナーゼII(以下CKII)によるリン酸化予想部位(Ser-115)が存在する。このリン酸化の生理的意義を探る実験を開始した。この予想部位を含むリン酸化ペプチドを抗原として、この部位がリン酸化されたシナーフィンに特異的に反応するポリクローン抗体を作製した。CKIIによってリン酸化された組換えシナーフィン1,2のみがこの抗体と反応し、非リン酸化シナーフィン1,2は全く反応しなかった。タンパク質脱リン酸化酵素阻害剤の存在下でラット脳可溶性分画から免疫沈降したシナーフィン1,2のうち、1のみがこの抗体と反応した。したがって脳内にはSer-115がリン酸化されたシナーフィン1が存在する。(3)Cre-LoxP系を用いて、nSec1/Munc18-1およびトモシンの脳部位特異的欠損マウスの作製を行っている。前者についてはヘテロマウスが得られている。1.シナーフィンの作用機構(1)私たちはすでにサイトゾルタンパク質シナーフィン(別名コンプレキシン)が神経伝達物質の放出に重要であることを証明している。本研究ではその作用機序と放出過程における作用のタイミングの解明を目指している。組換えシナーフィンの突然変異体を作製し、SNARE複合体への結合に関与する残基の同定を試みた。結合に重要と考えられるシナーフィン分子中央部分に限定した。グルタチオンーセファローズに固定してこれらの変異体のGST融合タンパク質に脳膜分画抽出物をかけ、結合したSNAREをイムノブロットで検出した。その結果、野性型に比較して、I66T、R67A、K69AおよびY70Sはいずれも結合活性が著しく減少していた。したがってこれらの残基はいずれもSNARE複合体との結合に重要であると考えられる。(2)私たちは以前の研究によって、この部分のペプチドがSNARE間の相互作用には全く影響せず、シナーフィンの特異的アンタゴニストとして働き、神経伝達物質の放出を抑制することを見いだしてる。現在、この部分のcagedペプチドをイカ巨大シナプス前末端に注入後、紫外線のパルス照射によってこのペプチドを活性し、神経伝達物質放出の抑制の時間経過を追究することにより、シナーフィンの作用速度を解析している。2.Munc18-1およびトモシン遺伝子欠損マウスの作製Munc18-1(別名nSec1))およびトモシンはともにサイトゾルタンパク質で、神経伝達物質放出に密接に関与すると考えられるが、その作用機序は未だ確立されていない。本研究では両タンパク質の機能を解明するため、Cre/lox系を使ってこれらタンパク質の遺伝子の脳部位特異的欠損マウスの作製を試みている。現在、相同組換えを起こしたES細胞のスクリーニングを行っている。神経終末内におけるシナプス小胞の開口放出とエンドサイトーシスはサイトゾルタンパク質によって厳密に制御されている。本研究はこれらの過程におけるサイトゾルタンパク質nSec1/Munc18-1、トモシンおよびシナーフィン/コンプレキシンの役割を明らかにする目的で行われ、以下の結果が得られた。(1)伝達物質放出におけるシナーフィンの作用速度を知る目的で、ヤリイカ巨大シナプスのシナプス前末端にシナーフィンのSNARE複合体結合部位のケージド・ペプチドを注入した。UV照射により、このペプチドを瞬間的に活性化すると、SNARE複合体に結合してシナプス小胞の開口放出を阻害する。この阻害速度を測定し、時定数約180ミリ秒を得た。(2)シナーフィン1,2のC末端近くにカゼインキナーゼII(以下CKII)によるリン酸化予想部位(Ser-115)が存在する。このリン酸化の生理的意義を探る実験を開始した。この予想部位を含むリン酸化ペプチドを抗原として、この部位がリン酸化されたシナーフィンに特異的に反応するポリクローン抗体を作製した。CKIIによってリン酸化された組換えシナーフィン1,2のみがこの抗体と反応し、非リン酸化シナーフィン1,2は全く反応しなかった。タンパク質脱リン酸化酵素阻害剤の存在下でラット脳可溶性分画から免疫沈降したシナーフィン1,2のうち、1のみがこの抗体と反応した。したがって脳内にはSer-115がリン酸化されたシナーフィン1が存在する。(3)Cre-LoxP系を用いて、nSec1/Munc18-1およびトモシンの脳部位特異的欠損マウスの作製を行っている。前者についてはヘテロマウスが得られている。 | KAKENHI-PROJECT-16044215 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16044215 |
審美性に富む歯科矯正用ワイヤーの開発 | 歯列矯正治療の初期に用いる弾性率が低く、有効たわみ距離の大きな線材料の開発を目的として研究を行った。今回は、従来より行ってきた重合法の他に、ポリメタクリル酸メチルを加温し、引抜成形する手法を用いた線材料を試作し実験検討を加えた。この結果から、物性特性が最も良好であったPMMAをマトリックス材に選択し、ポリマー系線維、アルミナ線維Si02系ガラス繊維、CPSA系ガラス繊維との複合化を試みた。これらの力学特性を調べるために3点曲げ試験を行ったところ、CPSA系ガラス繊維を強化繊維として用いた複合材では、ガラス繊維体積分率を調整することで、様々な強度特性を発揮させられることがわかった。そこでガラス繊維体積分率を小さくし、弾性率を下げたところ現在治療の初期に用いられている金属線材料と同じ様な特性が得られた。これらの線材料は、透明であり、金属線材料と比較して審美的に優れている。現在の問題点として、たわみ量が大きくなるとガラス繊維が破断し、特性が大きく変化することがある。この点に関しては、分子量の異なるPMMAを用い、ガラス繊維の強度への依存を軽減させることで対応できるものと考えている。一方、CPSA系ガラス繊維をリン酸塩溶液で処理することによりリン酸カルシウム質化合物で被膜された生体材料用ガラス繊維となることが分かっている。今後は、この処理を行なうことにより、生体親和性の高い材料を開発する予定である。また、臨床応用のため耐久性、吸水性、耐熱性、生体毒性などについても検討を加える予鈴である。歯列矯正治療の初期に用いる弾性率が低く、有効たわみ距離の大きな線材料の開発を目的として研究を行った。今回は、従来より行ってきた重合法の他に、ポリメタクリル酸メチルを加温し、引抜成形する手法を用いた線材料を試作し実験検討を加えた。この結果から、物性特性が最も良好であったPMMAをマトリックス材に選択し、ポリマー系線維、アルミナ線維Si02系ガラス繊維、CPSA系ガラス繊維との複合化を試みた。これらの力学特性を調べるために3点曲げ試験を行ったところ、CPSA系ガラス繊維を強化繊維として用いた複合材では、ガラス繊維体積分率を調整することで、様々な強度特性を発揮させられることがわかった。そこでガラス繊維体積分率を小さくし、弾性率を下げたところ現在治療の初期に用いられている金属線材料と同じ様な特性が得られた。これらの線材料は、透明であり、金属線材料と比較して審美的に優れている。現在の問題点として、たわみ量が大きくなるとガラス繊維が破断し、特性が大きく変化することがある。この点に関しては、分子量の異なるPMMAを用い、ガラス繊維の強度への依存を軽減させることで対応できるものと考えている。一方、CPSA系ガラス繊維をリン酸塩溶液で処理することによりリン酸カルシウム質化合物で被膜された生体材料用ガラス繊維となることが分かっている。今後は、この処理を行なうことにより、生体親和性の高い材料を開発する予定である。また、臨床応用のため耐久性、吸水性、耐熱性、生体毒性などについても検討を加える予鈴である。 | KAKENHI-PROJECT-06771982 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06771982 |
遺伝子操作による肝マンナン結合タンパク質の構造と機能に関する研究 | 本研究は代表者らにより初めて見い出された動物レクチンである肝マンナン結合タンパク質(肝MBP)の構造と機能を遺伝子操作技術を用いて解明しようとしたものである。3年間の研究により次の点が明らかとなった。1.ラット肝MBPの全一次構造をcDNA塩基配列を決定することにより明らかにした。分子量32,000の成熟肝MBPはGluをN末端、AspをC末端とする226個のアミノ酸からなり、プレ肝MBPではこのN末端にさらにMetに始まる18個のシグナルペプチドが結合していた。本レクチンのN末端近傍Gly_<20>からSer_<78>まではGlyーXーYの構造が19回繰り返していた。本構造はコラーゲン分子に特徴的な構造であり、本レクチンは分子内にコラーゲン様構造をもつ非常に興味深い構造をもつことが明らかとなった。本レクチンをコラーゲナーゼ消化して得られる分子量約20,000のC末端側ペプチドは糖結合活性を示し、ここに糖結合ドメインが存在することが示された。また、本レクチンをβ-メルカプトエタノールなどで還元すると失活し、空気酸化により活性を回復することから、このC末端近傍に存在するシステインの間にジスルフィド結合が形成され、これが活性発現に必須であることが示された。2.肝MBPの内在性リガンドの同定に成功した。肝マンナン結合タンパク質は肝細胞内でとくに粗面小胞体に局在しており、ここには同時に内在性のリガンドが存在することが示されていた。今回、MBPを固定化したカラムを用いることにより内在性リガンドを単離し、特異的抗体を用いるウエスタンブロットにより検索したところ、これらの内在性リガンドはα_1ー酸性糖タンパク質、α_1マクログロブリン、α_1ーアンチトリプシンなど血清糖タンパク質の生合成中間体およびβーグルクロニダーゼなどのリソソーム酵素を主成分とすることが明らかとなった。本研究は代表者らにより初めて見い出された動物レクチンである肝マンナン結合タンパク質(肝MBP)の構造と機能を遺伝子操作技術を用いて解明しようとしたものである。3年間の研究により次の点が明らかとなった。1.ラット肝MBPの全一次構造をcDNA塩基配列を決定することにより明らかにした。分子量32,000の成熟肝MBPはGluをN末端、AspをC末端とする226個のアミノ酸からなり、プレ肝MBPではこのN末端にさらにMetに始まる18個のシグナルペプチドが結合していた。本レクチンのN末端近傍Gly_<20>からSer_<78>まではGlyーXーYの構造が19回繰り返していた。本構造はコラーゲン分子に特徴的な構造であり、本レクチンは分子内にコラーゲン様構造をもつ非常に興味深い構造をもつことが明らかとなった。本レクチンをコラーゲナーゼ消化して得られる分子量約20,000のC末端側ペプチドは糖結合活性を示し、ここに糖結合ドメインが存在することが示された。また、本レクチンをβ-メルカプトエタノールなどで還元すると失活し、空気酸化により活性を回復することから、このC末端近傍に存在するシステインの間にジスルフィド結合が形成され、これが活性発現に必須であることが示された。2.肝MBPの内在性リガンドの同定に成功した。肝マンナン結合タンパク質は肝細胞内でとくに粗面小胞体に局在しており、ここには同時に内在性のリガンドが存在することが示されていた。今回、MBPを固定化したカラムを用いることにより内在性リガンドを単離し、特異的抗体を用いるウエスタンブロットにより検索したところ、これらの内在性リガンドはα_1ー酸性糖タンパク質、α_1マクログロブリン、α_1ーアンチトリプシンなど血清糖タンパク質の生合成中間体およびβーグルクロニダーゼなどのリソソーム酵素を主成分とすることが明らかとなった。ラット肝マンナン結合タンパク質(MBP)はマンノース・N-アセチルグルコサミンに特異的なレクチンであり、分子量32,000のサブユニットの6量体である。本年度はこのMBPの一次構造を遺伝子操作を利用して決定した。まず、発現ベクター入gt11に組み込んだラット肝cDNAライブラリーを、アフィニティー精製した抗ラットMBP抗体によりスクリーニングし、ラット肝MBPcDNAを単離した。この約850塩基より成るcDNAは、タンパク化学的に決定した肝MBPのN末端構造に対する合成cDNAとハイブリダイズし、肝MBPの全ペプチド部分をコードしていた。そこでこの塩基配列をジデオキシ法により決定し、ついて塩基配列をもとに成熟肝MBPおよびプレ肝MBPの全アミノ酸配列を決定した。成熟肝MBPはGluをN末端AspをC末端とする226個のアミノ酸からなり、プレ肝MBPではこのN末端に更にMetに始まる18個の疎水性アミノ酸に富むシグナルペプチドが結合していた。なお、分子内部には膜貫通タンパク質にみられる疎水性領域はみられなかった。肝MBP分子の一次構造上の最大の特色はN末端半分にコラーゲン様構造をもつことである。すなわちGly20からSer78までの間にGly-X-Yの構造が19回繰り返していた。典型的なコラーゲン分子ではX,Yにプロリン,リジンが多く含まれるが、ここでも同様の特色がみられた。このような一次構造をもつペプチド鎖は二次構造としては折り返し構造をもち、また、3本のペプチド鎖が集まり三重ラセン構造を形成し安定化することが知られている。 | KAKENHI-PROJECT-61480429 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61480429 |
遺伝子操作による肝マンナン結合タンパク質の構造と機能に関する研究 | MBPもこのコラーゲン様部分で三重ラセン構造をとり多量体を形成している可能性が強い。このように分子内にコラーゲン様構造を含むタンパク質は珍らしく、補体成分Clq,アセチルコリンエステラーゼ,コングルチニン,肺の界面活性タンパク質などに知られているのみである。1.昨年度の研究により調製したラット肝マンナン結合タンパク貭(MBP)cDNAをプローグとしてラット肝mRNAのNorthern分析を行なった.その結果,ラット肝MBPのmRNAは3.4kbの主要成分と4.5kbの少量成分からなることが明らかとなった.先に得たラット肝MBPのcDNAは全翻訳領域およびポリA部分を含む874bより成ることから,肝MBPにはalternative splicingにより生じたいく種かのmRNAが存在すること,また,主要成分は非常に長い非翻訳領域をもつことが示された.現在,主要成分の全領域の配列を決定すべく,新たなcDNAを検索している.2.ヒト肝臓より肝MBPを単離し,その性貭を明らかにするとともに,そのアミノ酸配列をcDNA塩基配列より決定した.まず,ヒト肝臓のホモジネートを,ラット肝MBPの調製に用いた方法に従い処理することにより,ヒト肝MBPを均一に精製することができた.本レクチンは分子量290,000で33,000のサブユニットの9量体と推定された.肝臓100gより約0.5mgの精製標品が得られた.次に, λgt11をベクターとするヒト肝臓cDNAライブラリーをラット肝MBPcDNAをプローブとしてスクリーニングすることによりヒト肝MBPcDNAを得,その塩基配列をジデオキシ法により決定した.その結果,このcDNAはポリAで終る1417bより成り, 34bの5′非翻訳領域, 810bの翻訳領域, 537bの3′非翻訳領域から構成されていた.この翻訳領域は270アミノ酸残基をコードしていたが,この21番目から23個のアミノ酸は別にタンパク質化学的に決定した本レクチンのN末端配列と完全に一致していた.また, N末端近傍にはGlyーXーYの繰り返し構造がみられ,ラットの場合同様に分子内コラーゲン様構造をもつことが明らかとなった.なお,ヒト肝MBPはC末端部分に22残基のアミノ酸が余分に存在する特色を示していた.1.ラット肝マンナン結合タンパク質mRNAの多様性昨年度の研究により調製したラット肝マンナン結合タンパク質の全翻訳領域を含むcDNAをプローブとしてラット肝mRNAのノーザン分析を行ったところ、1.0kbの主要成分の他、3.3kbの少量成分の存在が明らかとなった。先に得たcDNAは全翻訳領域およびポリA領域を含む874bより成ることから低分子mRNAに対応するものと考えられる。このmRNAの多様性の意味を探るため、高分子mRNAに対するcDNAの単離を試みた。低分子cDNAをプローブとして別のcDNAライブラリーを検索した結果、全長約3.3kbのcDNA塩基配列を決定することができた。高分子cDNAの翻訳領域732bの配列は低分子cDNAのものと完全に一致していたが、3′側非翻訳領域は長く2403bにも達し、また、5′側非翻訳領域189bの内の5′端90塩基の配列は低分子cDNAのそれと全く異なるものであった。mRNAの多様性を生じる分子機構およびその生理的な意味が注目される。 | KAKENHI-PROJECT-61480429 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61480429 |
プロトン・エレクトロン二重共鳴イメージングの研究 | 0.2テスラPEDRI(Proton Electron Double Resonance Imaging,プロトン・エレクトロン二重共鳴イメージング)用マイクロ波アプリケータを開発するための実験を行った。周波数はNMR 8MHz、EPR 5.6GHzである。NMR RFアプリケータはソレノイドコイル又はバードケージコイルを用いる。EPRマイクロ波アプリケータに要求される性能はCW 5W以上の耐電力があり、約10mm×20mmの平面に均一度の高い磁界を照射し得ることである。本研究では、マイクロ波磁界を上述の平面状試料に集中的に照射するために、アプリケータの基本型はTE_<10>方形導波管とし、(1)切り離し導波管、(2)フランジ付導波管、(3)格子終端TE_<101>空胴共振器、(4)細隙開口導波管の開口部磁界分布を測定した。磁界のピックアップコイルは線径0.3mm、内径1mmの1巻きのコイルで、シュペルトップバランを備えている。実験の結果、次の事柄が明らかになった。(1)切り離し導波管について:導波管開口部中心では磁界強度が最大値の約10分の1程度と低く、導波管壁長辺の中心に磁界が集中し、分布が不均一であることが分かった。磁界の均一度を磁界の最小値/同最大値と定義すると、開口部では0.09、開口部外では0.45である。(2)フランジ付導波管:磁界均一度は、開口部において0.14、開口部外において0.70であり、開口部外、即ち、フランジ面でより均一な分布であることが分かった。(3)格子終端TE_<101>空胴共振器:格子数5本の共振器についての均一度の最良値は0.37である。以上の実験結果からフランジ又は同様な構造の導体に流れるマイクロ波電流によって生じる磁界の利用が望ましいことが明らかになった。0.2テスラPEDRI(Proton Electron Double Resonance Imaging,プロトン・エレクトロン二重共鳴イメージング)用マイクロ波アプリケータを開発するための実験を行った。周波数はNMR 8MHz、EPR 5.6GHzである。NMR RFアプリケータはソレノイドコイル又はバードケージコイルを用いる。EPRマイクロ波アプリケータに要求される性能はCW 5W以上の耐電力があり、約10mm×20mmの平面に均一度の高い磁界を照射し得ることである。本研究では、マイクロ波磁界を上述の平面状試料に集中的に照射するために、アプリケータの基本型はTE_<10>方形導波管とし、(1)切り離し導波管、(2)フランジ付導波管、(3)格子終端TE_<101>空胴共振器、(4)細隙開口導波管の開口部磁界分布を測定した。磁界のピックアップコイルは線径0.3mm、内径1mmの1巻きのコイルで、シュペルトップバランを備えている。実験の結果、次の事柄が明らかになった。(1)切り離し導波管について:導波管開口部中心では磁界強度が最大値の約10分の1程度と低く、導波管壁長辺の中心に磁界が集中し、分布が不均一であることが分かった。磁界の均一度を磁界の最小値/同最大値と定義すると、開口部では0.09、開口部外では0.45である。(2)フランジ付導波管:磁界均一度は、開口部において0.14、開口部外において0.70であり、開口部外、即ち、フランジ面でより均一な分布であることが分かった。(3)格子終端TE_<101>空胴共振器:格子数5本の共振器についての均一度の最良値は0.37である。以上の実験結果からフランジ又は同様な構造の導体に流れるマイクロ波電流によって生じる磁界の利用が望ましいことが明らかになった。活性酸素等の生体フリーラジカル(不対電子を持つ原子または分子)が病気の発症と促進に深く拘わっていることが指摘されている。そのため不対電子の唯一の直接測定法であるESR(Electron Spin Resonance、電子スピン共鳴)法の研究が近年盛んになっている。特に生体のインビボ(生きたままでの)計測の可能なESR法およびその装置の高感度化が、医学、薬学、その他の関連分野から強く要求されている。本研究ではOverhauser効果によるPEDRI(Proton Electron Double Resonance Imaging、プロトン・エレクトロン二重共鳴イメージング)法の高感度化の研究を次の様に行った。(1)電磁波の周波数の変化による感度の違いを正確に把握できるように、これまでに英国アバデイーン大学等で用いられてきた数MHzに替えて、NMR:8MHz、ESR:5.6GHzとした。このことにより、アバデイーン大学の少なくとの10倍の高感度化が達成できる見込みである。これに伴い、パルス成形回路、パルス制御回路、マイクロ波パルス電力増幅器、T/R(送/受信)スイッチ、共振器、低雑音増幅器等に関しての新しい仕様を定めた。(2)中でも特に共振器の性能が研究成果の善し悪しを決定するので、共振器についてはバード・ケージ、ソレノイド、サーフェイス・コイル各共振器に関して理論的、実験的に特性の吟味を行った。その結果、NMRにはバード・ケージ共振器を、ESRにはサーフェイス・コイル共振器を用いることにした。 | KAKENHI-PROJECT-11450157 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11450157 |
プロトン・エレクトロン二重共鳴イメージングの研究 | Proton Electron Double Resonance(プロトン・エレクトロン同時共鳴)はEPR(Electron Paramagnetic Resonance、電子常磁性共鳴)法の高感度化の有力な一方法である。本研究は同方法によるイメージング(Imaging、PEDRI)による生体の高感度化in vivo(生きたままでの)EPR法に関するものである。PEDRIの測定感度はNMR(核磁気共鳴)及びEPR同様に用いる電磁波の周波数が高いほど高くなる。プロトンNMRの周波数を上げることにより高感度化を図ろうとする研究例があるが、本研究は、将来、人体の全身計測を目指しているので、NMR磁束密度は実用的な0.2Tに止め、EPR周波数を上げることによる高感度化を目指している。本研究では直流磁束密度0.2Tの常電導電磁石を用いるので、NMR周波数は8.5MHz、EPR周波数は5.6GHzである。本研究によるPEDRIは電磁波の生体への進入の深さを考慮して腕の皮膚を測定対象としている。現在、NMRパルス出力電力100W、EPRパルス出力電力50Wの小電力PEDRI装置の設計を行っている。装置は、制御及び画像処理部(任意波形synthesyzer、ワークステーション、ラジオ波synthesyzerを含む)、分配器、NMR電力増幅器、T/Rスイッチ・低雑音増幅器、減衰器、EPR電力増幅器、電力計、NMR/EPR共振器、検波増幅器、及び常電導マグネットを用いた繰り返し磁界システムからなっている。共振器は、NMRにはSolenoid coil及びBird cage resonatorを用いる。Solenoid coilの直径及び軸長は各10cmである。Bird cage coilの寸法も直径、軸長共に10cmである。共振尖鋭度Qは約10が得られている。生理食塩水溶液の挿入によりQ値は約30%低下する事が確かめられた。来年度は小電力及び高電力PEDRI装置の実験を行う予定である。0.2テスラPEDRI(Proton Electron Double Resonance Imaging,プロトン・エレクトロン二重共鳴イメージング)用マイクロ波アプリケータを開発するための実験を行った。周波数はNMR 8MHz、EPR 5.6GHzである。NMR RFアプリケータはソレノイドコイル又はバードケージコイルを用いる。EPRマイクロ波アプリケータに要求される性能はCW 5W以上の耐電力があり、約10mm×20mmの平面に均一度の高い磁界を照射し得ることである。本研究では、マイクロ波磁界を上述の平面状試料に集中的に照射するために、アプリケータの基本型はTE_<10>方形導波管とし、(1)切り離し導波管、(2)フランジ付導波管、(3)格子終端TE_<101>空胴共振器、(4)細隙開口導波管の開口部磁界分布を測定した。磁界のピックアップコイルは線径0.3mm、内径1mmの1巻きのコイルで、シュペルトップバランを備えている。実験の結果、次の事柄が明らかになった。(1)切り離し導波管について:導波管開口部中心では磁界強度が最大値の約10分の1程度と低く、導波管壁長辺の中心に磁界が集中し、分布が不均一であることが分かった。磁界の均一度を磁界の最小値/同最大値と定義すると、開口部では0.09、開口部外では0.45である。(2)フランジ付 | KAKENHI-PROJECT-11450157 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11450157 |
CD4+CD25+調節性T細胞を用いた実験的自己免疫性ぶどう膜炎の抑制の試み | 近年、末梢性免疫寛容の誘導メカニズムとして様々なタイプの制御性T細胞の存在が挙げられる。とくにCD4^+D25^+制御性T細胞は正常個体の末梢に生理的に存在するT細胞集団であり、免疫応答を抑制的に制御し、この細胞集団の機能的異常がマウスやヒトにおける自己免疫疾患の発症に関与することが報告されている。以前、我々は抗CD25抗体を用いてCD25陽性T細胞をマウス生体内から除去すると、ぶどう膜網膜炎が自然発症することを証明し、CD4^+CD25^+制御性T細胞が網膜抗原に対するトレランスの誘導に極めて重要な働きをしていることを示した。そこで、本実験ではナイーブなマウスの脾臓より得られた抗原非特異的な内在性CD4^+CD25^+制御性T細胞を養子移入することでヒト難治性ぶどう膜炎の実験モデルである、実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(experimental autoimmune uveoretinitis : EAU)を抑制できるか否か検討を行った。さらにCD4^+D25^+制御性T細胞を移入された群では、抗原に対する細胞性免疫能の抑制がみられ、また抗原刺激によって活性化された脾臓由来T細胞のリンパ球増殖反応も抑制されていた。このように、移入されたCD4^+D25^+制御性T細胞は全身の細胞性免疫能を抑制することでEAUを制御することが明らかとなった。今後、制御性T細胞の養子移入による細胞療法がぶどう膜炎に対する新たな治療法となりうることが期待される。近年、自己免疫疾患における免疫制御メカニズムについてその解明が進み、CD4^+CD25^+のマーカーを発現したT細胞(CD25^+制御性T細胞)が末梢における免疫寛容機構において自己免疫疾患の発症制御に強く関わっていることが証明されている。今回我々は内因性ぶどう膜炎の動物モデルとして知られる実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(以下EAUと略す)に対してCD25^+制御性T細胞の養子移入による抑制効果について検討を行った。2.CD25^+制御性T細胞によるIRBPペプチド特異的遅延型過敏反応の抑制の検討IRBPペプチド免疫後7日目に正常マウスの脾臓より分離したCD4^+CD25^+細胞およびCD25^-細胞を養子移入し免疫後20日目にIRBPペプチド(20μg/マウス)をマウス耳介皮下に接種、翌21日目に耳介の腫脹を測定したところ、CD25^+制御性細胞Tを移入された群においてIRBPペプチドに対する遅延型過敏反応の有意な低下が認められた。3.CD25^+制御性T細胞によるIRBPペプチド特異的T細胞増殖反応の抑制の検討IRBPペプチド免疫後7-10日目に頚部リンパ節を摘出し、single cell suspensionを作成した後、同様のペプチドを用いて刺激加える際naiveなCD25^+制御性T細胞と共培養し、リンパ節細胞の増殖能を検討したところ、IRBPペプチド特異的T細胞の増殖反応が有意に抑制された。以上の結果よりEAUの発症期に移入されたCD25^+制御性T細胞は所属リンパ節に存在する抗原特異的なeffector T細胞を抑制することでぶどう膜炎の軽症化を誘導していると考えられた。近年、末梢性免疫寛容の誘導メカニズムとして様々なタイプの制御性T細胞の存在が挙げられる。とくにCD4^+D25^+制御性T細胞は正常個体の末梢に生理的に存在するT細胞集団であり、免疫応答を抑制的に制御し、この細胞集団の機能的異常がマウスやヒトにおける自己免疫疾患の発症に関与することが報告されている。以前、我々は抗CD25抗体を用いてCD25陽性T細胞をマウス生体内から除去すると、ぶどう膜網膜炎が自然発症することを証明し、CD4^+CD25^+制御性T細胞が網膜抗原に対するトレランスの誘導に極めて重要な働きをしていることを示した。そこで、本実験ではナイーブなマウスの脾臓より得られた抗原非特異的な内在性CD4^+CD25^+制御性T細胞を養子移入することでヒト難治性ぶどう膜炎の実験モデルである、実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(experimental autoimmune uveoretinitis : EAU)を抑制できるか否か検討を行った。さらにCD4^+D25^+制御性T細胞を移入された群では、抗原に対する細胞性免疫能の抑制がみられ、また抗原刺激によって活性化された脾臓由来T細胞のリンパ球増殖反応も抑制されていた。このように、移入されたCD4^+D25^+制御性T細胞は全身の細胞性免疫能を抑制することでEAUを制御することが明らかとなった。今後、制御性T細胞の養子移入による細胞療法がぶどう膜炎に対する新たな治療法となりうることが期待される。 | KAKENHI-PROJECT-17791258 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17791258 |
小型推進機のための低レイノルズ数流れ測定によるノズル効率低下に関する研究 | 本研究では超小型衛星に搭載される小型推進機の小型ノズル部の内部流れの測定を行う.低レイノルズ数流れによるノズル効率低下に関する研究は内部流れの直接測定の困難さから数値計算を中心に行われてきた.その中で,本研究では可視光によるMTV法と樹脂3D造形ノズルを組み合わせたノズル内部流れ分布測定を提案し,小型ノズル内部流れ現象を解明することが研究目的となる.ノズル内部と下流の流速/密度分布測定によってノズル効率低下の要因それぞれの効果に対して定量的な比較を行う.本研究では超小型衛星に搭載される小型推進機の小型ノズル部の内部流れの測定を行う.低レイノルズ数流れによるノズル効率低下に関する研究は内部流れの直接測定の困難さから数値計算を中心に行われてきた.その中で,本研究では可視光によるMTV法と樹脂3D造形ノズルを組み合わせたノズル内部流れ分布測定を提案し,小型ノズル内部流れ現象を解明することが研究目的となる.ノズル内部と下流の流速/密度分布測定によってノズル効率低下の要因それぞれの効果に対して定量的な比較を行う. | KAKENHI-PROJECT-19K23481 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K23481 |
Survivinを標的とした骨髄腫幹細胞に対する新規治療戦略の開発 | 難治性のがんを治癒させるためには、がんの親玉である、がん幹細胞を根絶させる治療戦略が必要である。申請者は、難治性の血液癌である多発性骨髄腫におけるこれまでの研究結果より、Survivinというたんぱく質を抑制することで、骨髄腫のがん幹細胞である骨髄腫幹細胞を根絶させることができるのではないかという仮説を立てた。この仮説に基づき、survivinをターゲットとした新たな治療戦略が、骨髄腫幹細胞に及ぼす効果とそのメカニズムを明らかにすることが本研究の目的である。これらが明らかとなれば、骨髄腫を治癒へ導く新たな治療法を開発できるだけでなく、ほかのがんへの応用も期待できると考える。難治性のがんを治癒させるためには、がんの親玉である、がん幹細胞を根絶させる治療戦略が必要である。申請者は、難治性の血液癌である多発性骨髄腫におけるこれまでの研究結果より、Survivinというたんぱく質を抑制することで、骨髄腫のがん幹細胞である骨髄腫幹細胞を根絶させることができるのではないかという仮説を立てた。この仮説に基づき、survivinをターゲットとした新たな治療戦略が、骨髄腫幹細胞に及ぼす効果とそのメカニズムを明らかにすることが本研究の目的である。これらが明らかとなれば、骨髄腫を治癒へ導く新たな治療法を開発できるだけでなく、ほかのがんへの応用も期待できると考える。 | KAKENHI-PROJECT-19K16857 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K16857 |
糖尿病予測およびiPS細胞移植基盤の確立 | 本研究は、糖尿病の早期予測法の開発と重症糖尿病への再生医療の基盤の確立、の2つを主たる目的として研究を行った。糖尿病患者由来のiPS細胞から作成した膵β細胞はインスリン分泌能・分化のレべル・生存細胞数に違いがあった。また、バイオマーカーとしては、発症早期に特徴的なアミノ酸変化(アラニン、マーカーXの上昇)をきたすことを見出した。エネルギーフラックス検査を行った結果、小児糖尿病群では中心エネルギー代謝系(特にミトコンドリア機能)に異常があることがわかった。iPS細胞から誘導したベータ細胞を糖尿病モデルマウスへ移植し、ミトコンドリア保護薬を用いて治療効果期間を延長する可能性が示唆された。本研究は、1増加傾向にある2型糖尿病の早期予測法の開発、2既に糖尿病になっている患者様の中でも重度の症状を呈する重症糖尿病(1型糖尿病および2型療法を含む)への再生医療を応用した細胞移植治療法の基盤の確立、の2つを主たる目的としている。H27年度(初年度)は、1iPS細胞の樹立、2糖尿病モデルマウス、および3小児生活習慣病患者(2型糖尿病予備群並びに2型糖尿病小児群)を用いた発症を予測するバイオマーカーの検索を行った。まず、小児糖尿病(1型および2型)患者5名(1型3名、2型2名)から血液細胞を分離し、iPS細胞を樹立した。更にこれらのiPS細胞を用いて膵β細胞への誘導をおこなった。糖尿病患者由来のiPS細胞から作成した膵β細胞はインスリン分泌能・分化のレベル・生存細胞数に違いがあった(現在、数を増やして確認中)。これらのことは、小児の糖尿病(1型並びに2型)の病態の一因をあらわしている可能性がある。更に、生活習慣病小児のバイオマーカー検索(アミノ酸プロファイル)を実施した。その結果、マウスで認められた変化が起こる発症早期に特徴的なアミノ酸変化をきたすことを見出した。この変化は、既存の糖尿病のバイオマーカーが変化するさらに早期に変動することがわかった。これらの研究を進めることで、1)糖尿病の予防医学への貢献、2)現時点で実際に臨床応用されている膵島移植治療の技術基盤の向上への貢献、3)iPS細胞を用いた細胞移植治療への貢献、が期待できる。・患者由来iPS細胞の樹立に関しては、小児糖尿病(1型および2型)患者5名(1型3名、2型2名)から血液細胞を分離し、iPS細胞を樹立した。H27年度の計画では5クローンを樹立する計画を立てており、これを達成した。・β細胞の誘導法については、まず、既に我々が確立している方法を用いて(再現性のある方法を用いて)クローン毎(病気ごと)のβ細胞の違いを比較検討した。その結果、クローンによって、β細胞が出現する割合が異なり、負荷(カリウム負荷、糖負荷)によるインスリン分泌能も異なっていることがわかった。小児糖尿病では、1型は自己免疫性疾患でβ細胞自体には異常がないと考えられているが、β細胞自体にも脆弱性がある可能性が示唆された。現在、検査の対象を増やして再現性を確認している。・移植モデルの確立:糖尿病モデル動物としてAKITAマウス(C57BL/6-Ins2 AKITA/J)を用いる。AKITAマウス(ヘテロ)は生後6週目までにはほぼ全てのマウスで血糖500以上を示し、多飲多尿、水腎症、糖尿病性腎症を呈する。1年生存率は50%である。移植後の症状、組織病変の変化、生存率についても評価可能である。この糖尿病マウスへの細胞移植を行った。細胞は、既に我々が樹立している体性幹細胞由来の膵β系細胞を用いた。腹膜、門脈、脾臓、腎被膜における移植効果を検証し、腎被膜が安定した評価には優れていることが示された。・生活習慣病患者におけるアミノ酸プロファイルについては、当初H29年度以降の予定で実施する計画を立てたが、H27年度のデータのみで有意な結果が得られた。すなわち、既存の糖尿病のバイオマーカーに異常をきたす前に特徴的なアミノ酸プロファイルを呈することが示唆された。本研究は、1増加傾向にある1型および2型糖尿病の早期予測法の開発、2既に糖尿病になっている患者の中でも重度の症状を呈する重症糖尿病(1型糖尿病および2型療法を含む)への再生医療を応用した細胞移植治療法の基盤の確立、の2つを主たる目的として実施されるものである。H27年度(初年度)は、1iPS細胞の樹立、2糖尿病モデルマウスおよび3小児生活習慣病(2型糖尿病予備軍並びに2型糖尿病小児群)を用いた発症を予測できるバイオマーカーの解析を行ったが、H28年度は昨年に引き続き小児糖尿病(1型および2型)患者5名(1型3名、2型2名)から樹立したiPS細胞を用いてβ細胞への誘導を行い、細胞機能解析を行った。具体的には、疾患由来iPS細胞から誘導したβ細胞と正常β細胞(正常iPS細胞由来β細胞:タカラバイオ社製)を用いてメタボローム解析を行った。その結果、1型糖尿病患者においては、ある種の特徴的な代謝が阻害されており(未発表データのため非公開)、一方で2型糖尿病患者では逆にこの特異的代謝が促進されていることがわかった。In vitroにおける、これらの結果は、1型糖尿病患者においては単に自己免疫性の細胞破壊だけではなく、細胞自体にも何らかの細胞内代謝機能異常が起こっていることを示唆した。 | KAKENHI-PROJECT-15K09625 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K09625 |
糖尿病予測およびiPS細胞移植基盤の確立 | また、正常iPS細胞由来β細胞を用いて糖尿病マウス(AKITAマウス)への細胞移植を行い、ある程度の血糖上昇抑制効果が得られることがわかった。更に、昨年度にマウスで見出したバイオマーカーについて、発症初期の患者においても変動が見出された。これらの結果は、1)糖尿病の予防医学への貢献、2)膵再生医療への技術移転、3)iPS細胞を用いた細胞移植治療への貢献、が期待される結果となった。・患者由来iPS細胞の樹立について:児糖尿病1型(3名)および2型(2名)からiPS細胞を樹立した(H27年度中に達成)。・β細胞の誘導法について:iPS細胞由来β細胞については、市販のβ細胞を比較検討し、タカラバイオ社製のiPS細胞由来β細胞が最も分化レベルが成熟し、かつ均一な細胞であることがわかったことから、タカラバイオ社の協力をえて、これらをコントロール細胞とした。誘導法についても、これらを比較検討材料として、改善した(H27ーH28年度)。・移植モデル法の確立について:糖尿病モデルマウスとしてAKITAマウス(C57BL/6-Ins2 AKITA/J)を用いたバックグラウンドデータをH27年度までに揃えた。H28年度は、新たにタカラバイオ社製の正常iPS細胞由来β細胞を用いて、腎被膜下への細胞移植実験を行った。その結果、移植後に血糖を50%程度軽減することがわかった。一方で、腎被膜下の移植では、糖負荷への反応が弱く、門脈内移植では良好な反応を示すことが明らかとなった。・マウスで見出されたバイオマーカーが、ヒトでも同様に指標となる可能性があることがわかった。・iPS細胞を用いたメタボローム解析から、新たに病気の原因となる細胞内の機能異常の可能性が示唆されるデータを得た。この結果は、創薬のターゲットとなる可能性があり、更に病気の根本的な問題点を解決できる可能性がある。本研究は、1増加傾向にある2型糖尿病の早期予測法の開発、2既に糖尿病になっている患者様の中でも重度の症状を呈する重症糖尿病(1型糖尿病および2型療法を含む)への再生医療を応用した細胞移植治療法の基盤の確立、の2つを主たる目的として研究を行った。H27年度(初年度)は、1iPS細胞の樹立、2糖尿病モデルマウス、および3小児生活習慣病患者(2型糖尿病予備群並びに2型糖尿病小児群)を用いた発症を予測するバイオマーカーの検索を行った。まず、小児糖尿病(1型および2型)患者5名(1型3名、2型2名)から血液細胞を分離し、iPS細胞を樹立した。更にこれらのiPS細胞を用いて膵β細胞への誘導をおこなった。糖尿病患者由来のiPS細胞から作成した膵β細胞はインスリン分泌能・分化のレベル・生存細胞数に違いがあった。これらのことは、小児の糖尿病(1型並びに2型)の病態の一因をあらわしている可能性があった。H28年度は、更に、生活習慣病小児のバイオマーカー検索(アミノ酸プロファイル)を実施した。その結果、マウスで認められた変化が起こる発症早期に特徴的なアミノ酸変化(アラニン、マーカーXの上昇)をきたすことを見出した。この変化は、既存の糖尿病のバイオマーカーが変化するさらに早期に変動することがわかった。H29年度は、これらの変化の原因を検索した。細胞変化および変化するマーカーは、すべてエネルギー代謝系を反映するものであったことから、エネルギーフラックス検査を行った。その結果、小児糖尿病群では中心エネルギー代謝系(特にミトコンドリア機能)に異常があることがわかった。 | KAKENHI-PROJECT-15K09625 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K09625 |
CAD/CAMポーセレンインレーに応用するレジンセメントに関する研究-セメント層の厚径と辺縁封鎖性および摩耗性との関係- | 我々は、CAD/CAMポーセレンインレーの臨床観察を行い、現段階ではインレー体の適合性に問題があり、間隙をうめるレジンセメントの摩耗が早期より認められることを報告した。そこで本研究では、臨床観察を引き続き行い修復物の経時的変化を観察するとともに、実験的に摩耗試験を行い、セメント層の厚みとレジンセメントの耐摩耗性との関係について検討した。実験1.臨床的研究30歯のCAD/CAMポーセレンインレーの1年経過例について臨床観察を行った。セメントラインの摩耗は、咬合関係の緊密な症例において3カ月、6カ月経過時に1例、1年経過時に3例に認められた。また、直接臨床評価Aの症例のレプリカ模型のSEM観察ではほとんどの症例でレジンセメントの摩耗が認められた。実験2.in vitro摩耗試験フィラー含有量のみを変化させた3種の試作レジンセメント(60,70,80wt%)を用いた。牛歯に形成した箱型窩洞に通法に従いCAD/CAMインレーを作製し、レジンセメントで合着し摩耗試験を行った。レジンセメントの摩耗量は、いずれもインレー体、エナメル質より有為に大きな摩耗量を示した。また、セメント間ではフィラー含有量の多いセメントの方がより高い耐摩耗性を示した。またセメント層の幅を50300mumまで変化させ、セメントの摩耗に及ぼす影響について検討した所、すべてのセメントで、セメント層の幅が広くなると摩耗量が増大するという正の相関が得られた。また各セメント間で比較すると、セメント層の幅が狭いと、60、70、80wt%含有セメントとも摩耗量に明瞭な違いは認められなかったが、セメント層の幅が広くなるとフィラー含有量が耐摩耗性に大きく影響した。以上より、レジンセメントの耐摩耗性を改良するためにはフィラー含有量の増加が効果的であり、またインレー体の適合性を向上させることが最重要であるという結論が得られた。我々は、CAD/CAMポーセレンインレーの臨床観察を行い、現段階ではインレー体の適合性に問題があり、間隙をうめるレジンセメントの摩耗が早期より認められることを報告した。そこで本研究では、臨床観察を引き続き行い修復物の経時的変化を観察するとともに、実験的に摩耗試験を行い、セメント層の厚みとレジンセメントの耐摩耗性との関係について検討した。実験1.臨床的研究30歯のCAD/CAMポーセレンインレーの1年経過例について臨床観察を行った。セメントラインの摩耗は、咬合関係の緊密な症例において3カ月、6カ月経過時に1例、1年経過時に3例に認められた。また、直接臨床評価Aの症例のレプリカ模型のSEM観察ではほとんどの症例でレジンセメントの摩耗が認められた。実験2.in vitro摩耗試験フィラー含有量のみを変化させた3種の試作レジンセメント(60,70,80wt%)を用いた。牛歯に形成した箱型窩洞に通法に従いCAD/CAMインレーを作製し、レジンセメントで合着し摩耗試験を行った。レジンセメントの摩耗量は、いずれもインレー体、エナメル質より有為に大きな摩耗量を示した。また、セメント間ではフィラー含有量の多いセメントの方がより高い耐摩耗性を示した。またセメント層の幅を50300mumまで変化させ、セメントの摩耗に及ぼす影響について検討した所、すべてのセメントで、セメント層の幅が広くなると摩耗量が増大するという正の相関が得られた。また各セメント間で比較すると、セメント層の幅が狭いと、60、70、80wt%含有セメントとも摩耗量に明瞭な違いは認められなかったが、セメント層の幅が広くなるとフィラー含有量が耐摩耗性に大きく影響した。以上より、レジンセメントの耐摩耗性を改良するためにはフィラー含有量の増加が効果的であり、またインレー体の適合性を向上させることが最重要であるという結論が得られた。 | KAKENHI-PROJECT-05771592 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05771592 |
カメラ画像と超音波測距による可搬性を備えた高精度モーションキャプチャシステム | 超音波とカメラを用いて、モーションキャプチャのための3次元トラッキングシステムを構築した。超音波により距離、カメラにより距離方向の鉛直面でのターゲット位置を取得する。提案システムは安価なカメラと超音波送受信機で構成され、非常にコンパクトに実装できる。測位性能向上のため、超音波送信機の位相特性補正を行い、位相補正面をBスプライン関数で補完するという方法を取った。実験の結果RMSEが1.20mm(静止時)、1.66mm(毎秒1m)での3次元トラッキングが可能であることが示せた。これは、最新の高価なモーションキャプチャシステムに匹敵する性能である。奥行き方向の計測を超音波で、その鉛直面方向の2次元位置をカメラで計測することによる高精度モーションキャプチャシステムを提案した。これまでの研究で構築した位相一致法と呼ばれる手法は、3mの測距で0.030mmの標準偏差という極めて高精度の測距が可能である。しかし、超音波のみを用いた3辺測量の場合、基線長(ベースライン)の長さと精度が正の相関となる。つまり、高精度の超音波測距であっても基線長が短ければ3次元位置計測の精度は悪化する。長い基線長システムの大型化を意味するため可搬性に乏しくなるという欠点がある。そこで本研究では超音波測距と画像計測の利点を組み合わせることで、この問題を克服した。提案システムは、安価な小型カメラと超音波送受信機のみのコンパクトな構成(カメラと超音波受信機からなるデバイスの大きさは55mm x 44 mm)である。超音波測距の問題として、超音波送信機の指向性が挙げられる。つまり、送信機の方向によって送信される信号の位相が変動するため、計測値の精度は高いが、誤差を含む測距となる。よって、本研究では、サンプリングされた異なる複数位置のターゲットの距離を事前に計測し、それを基に位相補正曲面を作成した。次に、画像計測で得られる2次元位置から補正面上での測距補正量を計算することで、より正確な3次元位置計測値を得られるようにした。評価実験の結果、静止ターゲットおよび移動ターゲット(1.0m/s)の2乗平均誤差(RMSE)はそれぞれ1.20mm, 1.66mmとなり近年のモーションキャプチャシステムとほぼ同等の性能を示すことを確かめた。超音波とカメラを用いて、モーションキャプチャのための3次元トラッキングシステムを構築した。超音波により距離、カメラにより距離方向の鉛直面でのターゲット位置を取得する。提案システムは安価なカメラと超音波送受信機で構成され、非常にコンパクトに実装できる。測位性能向上のため、超音波送信機の位相特性補正を行い、位相補正面をBスプライン関数で補完するという方法を取った。実験の結果RMSEが1.20mm(静止時)、1.66mm(毎秒1m)での3次元トラッキングが可能であることが示せた。これは、最新の高価なモーションキャプチャシステムに匹敵する性能である。申請者らのグループで構築した位置認識システムは、高精度測距技術に基づく3辺測量により物体の3次元位置を取得する。これまでの研究を通して、センサ間の基線長を小さくすることで、コンパクトな実装かつ一定レベルの精度を実現できることを示した。しかし、以下の点が問題であった。(1)超音波トランスデューサの位相特性:超音波トランスデューサは指向性を持っており、超音波の入射角によって位相特性が変化する。提案測距手法は位相差を時刻基準点とするため、位相特性の変化は測距の誤差に直結する。(2)poorGDOP (Geometric Dilution of Precision)による3次元位置認識精度の限界:GDOP値が高い場合、測距の小さな誤差が3次元位置認識の大きな誤差に増幅される。特に、距離方向(z方向)と鉛直な面(xy平面)での誤差が極めて大きくなる。そこで本研究では、(a)超音波トランスデューサの位相特性の補償、および(b)単眼カメラと超音波による深さ方向の計測の統合という2つの方法を用いることにより、高精度かつコンパクトな3次元モーションキャプチャシステムを提案した。本研究では、複数の入射角での超音波トランスデューサの位相特性を計測し、スプライン関数によって位相補償平面を構築した。カメラによって得られるターゲットの位置(カメラを原点とするターゲットの方向)により、超音波測距の補正を行うと同時に、それと鉛直な面での誤差を小さくする。超音波トランスデューサに周囲にLEDを配置することでコンパクトな視覚的マーカを構成し、その3次元位置を取得する実験を行った。その結果、最新の位置認識システムとほぼ同等の測位精度を示すことを確認できた。平成24年度の研究計画では、まず単眼カメラと超音波センサを用いることで、既存手法で実現されている3次元位置認識精度を実現できるかどうかを確認することを課題とした。LEDを配置することにより視覚的なマーカを構成し、2次元平面(カメラの撮像面)での測位とそれに鉛直な方向の超音波による高精度測距を組み合わせることで、コンパクトかつ正確な位置認識の実現を目指した。実証実験を通して、高精度の測位が実現できることが確かめられた。また、物体の移動に起因するドップラーシフトによって、周波数遷移が発生した場合でも、その補償を行うことで十分に高精度の3次元測位が可能であることが確かめられた。以上は、当該年度の目標として挙げていた事項である。平成25年度は、以下のような研究を推進する。 | KAKENHI-PROJECT-24650076 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24650076 |
カメラ画像と超音波測距による可搬性を備えた高精度モーションキャプチャシステム | (1)周波数分割による測距性能の確認:広帯域送信機の周波数帯域を排他的に分割し、申請者らのグループで開発した位相一致法のバースト波を各々の帯域上で送信するためのハードウェアおよびソフトウェア、さらに受信機で直交検波するためのソフトウェアおよびハードウェアを実装する。現時点では、超音波送受信機の振幅および位相特性が比較的安定している25KHz85KHzを6kHz毎に分割し、最大10個のバースト波を同時に送信する予定である。一方、受信機側では、受信波形をAD変換し、送信波と同じバースト波を用いて直交検波を行う。LOS(Lineof Sight)が確保できれば、狭帯域超音波トランスデューサの場合と同様の測距性能が示せることを確認する。(2)スパートフォン等を対象としたモバイルデバイスでの室内3次元位置認識、モーションキャプチャの実現:研究成果をより分かりやすくデモンストレーションするために、社会に広く普及しているスマートフォンを用いた3次元位置認識、トラッキングシステムを構築する。可聴域と超音波領域をまたぐ周波数帯を利用することで、人間にとって邪魔にならない音響信号での測位を目指す。まずは、スマートフォンのスピーカーおよびマイクロフォンの周波数特性について計測を進める。次に、その特性に応じて適切な周波数帯を決定する。比較的計算パワーが低いデバイスであることを考慮した測位アルゴリズムやそのアプリケーションソフトウェアについて検討と実装を進める。平成24年度は当初予定の通り周波数分割による複数移動体のトラッキングについての検討を進めたが、実装までには至らなかった。そのため、実装に必要な物品を平成25年度に購入することとした。具体的には、広帯域での音響信号を発生させるためのファンクションジェネレータ、アンプ、およびスーパーツィータを購入する。また基板実装のための電子回路素子も併せて購入する。研究協力者の国立情報学研究所橋爪教授との打ち合わせ(東京、札幌)のための旅費、成果発表のための国内外出張のために必要となる旅費を拠出する。また、評価実験補助、データ解析補助のための学生アルバイト謝金、英語論文校正のために予算を執行する。さらには、実験機材搬送等の通信費用を計上する。 | KAKENHI-PROJECT-24650076 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24650076 |
化学シナプスによる情報伝達をターゲットとした神経障害性疼痛発症機構の解明 | 本研究課題では、ボツリヌス毒素(BoNT)の化学シナプスによる情報伝達を抑制する効果を用いて、神経障害性疼痛の発症機序ならびに感覚入力における情報伝達機構を解明することを目的とするものである。平成30年度の研究実施項目に従って進捗し、下記の研究成果を得た。研究項目1)三叉神経節・脊髄神経系・中枢におけるBoNTの膜タンパク質SNAP-25の切断;in vivoの三叉神経節細胞・後根神経節細胞において、SNAP-25の発現を確認することはできた。末梢におけるBoNT投与により、そのSNAP-25の切断を確認するためタンパク質切断認識抗体を用いて様々な条件で検討を行い、末梢に投与されたBoNTによるSNAP-25の切断は、三叉神経節細胞と後根神経節細胞において確認できなかった。研究項目2)神経障害性疼痛モデルにおけるBoNTの侵害受容2次ニューロンへの効果;6週齢ラットの総腓骨神経を結紮し、von Freyfilamentを用いた機械的刺激、およびプランターテストを用いた熱刺激を加え、逃避行動を示す閾値と潜時の測定を行った結果、1次ニューロンと2次ニューロンへBoNTを投与することにより神経障害性疼痛モデルラットにおいて発現する疼痛関連行動を軽減することは認められなかった。またその各投与部位においてBoNTによる興奮伝達の抑制効果を検討するため脊髄における組織学的検討を行った結果、神経障害性疼痛モデルラットにおいて誘発される2次ニューロンの過剰興奮を抑制することは認められなかった。本研究課題では、ボツリヌス毒素(BoNT)の化学シナプスによる情報伝達を抑制する効果を用いて、神経障害性疼痛の発症機序ならびに感覚入力における情報伝達機構を解明することを目的とするものである。平成28年度の研究実施項目に従って進捗し、下記の研究成果を得た。研究項目1)三叉神経節・脊髄神経系・中枢におけるBoNTの膜タンパク質SNAP-25の切断;in vitroにおいて、SNAP-25の切断を確認するため6週齢ラットから摘出した三叉神経節と後根神経節培養細胞にBoNTを直接投与してwestern解析したところ、BoNTを投与することによりSNAP-25を切断することが示された。in vivoにおいて発現を確認できているSNAP-25がBoNTを投与することによる影響を解析中である。研究項目2)神経障害性疼痛モデルにおけるBoNTの侵害受容2次ニューロンへの効果;6週齢ラットの総腓骨神経を結紮し、von Freyfilamentを用いた機械的刺激、およびプランターテストを用いた熱刺激を加え、逃避行動を示す閾値と潜時の測定を行った結果、後根神経節へBoNTを投与することにより神経障害性疼痛モデルラットにおいて発現する疼痛関連行動を軽減することが示された。末梢機械受容器と1次ニューロンの神経終末、そして1次ニューロンと2次ニューロンへBoNTを投与することによる影響、また脊髄における組織学的検討を解析中である。in vitroにおいて、三叉神経節と後根神経節培養細胞にBoNTを直接投与することによりSNAP-25を切断することが示されたことから、予定通りに研究が進んでいると考えられる。本研究課題では、ボツリヌス毒素(BoNT)の化学シナプスによる情報伝達を抑制する効果を用いて、神経障害性疼痛の発症機序ならびに感覚入力における情報伝達機構を解明することを目的とするものである。平成29年度の研究実施項目に従って進捗し、下記の研究成果を得た。研究項目1)三叉神経節・脊髄神経系・中枢におけるBoNTの膜タンパク質SNAP-25の切断;in vitroにおいて、三叉神経節と後根神経節培養細胞においてSNAP-25の切断を確認することができた。in vivoにおいて、三叉神経節細胞においてSNAP-25の発現を確認することはできた。BoNT投与による影響を様々な条件で検討を行っているが、詳細については現在解析中である。研究項目2)神経障害性疼痛モデルにおけるBoNTの侵害受容2次ニューロンへの効果;6週齢ラットの総腓骨神経を結紮し、von Freyfilamentを用いた機械的刺激、およびプランターテストを用いた熱刺激を加え、逃避行動を示す閾値と潜時の測定を行った結果、後根神経節へBoNTを投与することにより神経障害性疼痛モデルラットにおいて発現する疼痛関連行動を軽減することが示された。また末梢機械受容器と1次ニューロンの神経終末へBoNTを投与することにより神経障害性疼痛モデルラットにおいて発現する疼痛関連行動を軽減することが示された。そして現在、1次ニューロンと2次ニューロンへBoNTを投与することによる影響、また脊髄における組織学的検討を解析中である。今年度は実験に使用する神経節細胞の採取・培養・保存に時間を費やした.また,実験条件などの検討を行ったが,結果が不安定であり,実験条件の調整に想定外に時間がかかった.本研究課題では、ボツリヌス毒素(BoNT)の化学シナプスによる情報伝達を抑制する効果を用いて、神経障害性疼痛の発症機序ならびに感覚入力における情報伝達機構を解明することを目的とするものである。平成30年度の研究実施項目に従って進捗し、下記の研究成果を得た。研究項目1)三叉神経節・脊髄神経系・中枢におけるBoNTの膜タンパク質SNAP-25の切断;in vivoの三叉神経節細胞・後根神経節細胞において、SNAP-25の発現を確認することはできた。 | KAKENHI-PROJECT-16K21187 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K21187 |
化学シナプスによる情報伝達をターゲットとした神経障害性疼痛発症機構の解明 | 末梢におけるBoNT投与により、そのSNAP-25の切断を確認するためタンパク質切断認識抗体を用いて様々な条件で検討を行い、末梢に投与されたBoNTによるSNAP-25の切断は、三叉神経節細胞と後根神経節細胞において確認できなかった。研究項目2)神経障害性疼痛モデルにおけるBoNTの侵害受容2次ニューロンへの効果;6週齢ラットの総腓骨神経を結紮し、von Freyfilamentを用いた機械的刺激、およびプランターテストを用いた熱刺激を加え、逃避行動を示す閾値と潜時の測定を行った結果、1次ニューロンと2次ニューロンへBoNTを投与することにより神経障害性疼痛モデルラットにおいて発現する疼痛関連行動を軽減することは認められなかった。またその各投与部位においてBoNTによる興奮伝達の抑制効果を検討するため脊髄における組織学的検討を行った結果、神経障害性疼痛モデルラットにおいて誘発される2次ニューロンの過剰興奮を抑制することは認められなかった。平成29年度の研究実施項目に従い、下記のように進めていく。研究項目3):末梢機械受容器と1次ニューロンの神経終末との間、また1次ニューロンと2次ニューロンの間にある化学シナプスによる情報伝達部位へBoNT/A・Eを投与後、侵害受容入力となる強度の機械的刺激および・熱刺激を加え、疼痛関連行動の観察による行動学的検討、ならびに脊髄におけるc-Fos発現を解析する。今年度は、in vivoにおけるSNAP-25の切断を組織学的検討を予定している。また予備実験から明らかとなっている末梢機械受容器と一次ニューロンの神経終末との間にある化学シナプスによる伝達機構と2次ニューロンの変化について免疫組織学的に検討を予定している。次年度使用額が生じた理由について、in vitroにおける行動学的・組織学的検討に重点を置き実験を行ったため、経費使用の節約となった。平成29年度に計画していた分子生物学的実験を次年度に行うこととしたため。今年度、in vitroにおいて明らかとなった情報伝達部位におけるin vivoの実験を行っていくこと、また研究成果の学会発表を行うことで使用を予定している。 | KAKENHI-PROJECT-16K21187 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K21187 |
自然免疫能賦活化を期待した新規創傷治癒用レジン剤の開発 | 本研究では、活性型ビタミンD3添加による化学的防御機構への影響および,口腔内創傷治癒促進への効果の検討を行った。活性型ビタミンD3を添加することにより、化学的防御機構に関与する抗菌ペプチドの上昇を認め、上皮の分化傾向を示すことが明らかになった。また、活性型ビタミンD3添加軟膏により、創傷治癒の促進がみられた。本結果から活性型ビタミンD3は、口腔粘膜の保護および治癒に有効であることが示唆された。平成24年度では、活性型VitaminD3(VD3)の添加濃度および添加時間におけるmRNAの変化を観察し、VD3添加レジンの濃度および塗布時間を決定した。濃度決定においては、様々な過去の報告を参考にコントロールにはDMSO、VD3は1、10、100nMとして行った。添加時間においては、4、8、24、48、72時間とした。上皮における物理的防御機構であるタイトジャンクションタンパクClaudin-1では、24時間以降に有意な減少がみとめられ、Claudin-4においては8時間および48時間で有意な上昇が認められた。この結果は、平成23年度に行った免疫組織染色の結果を裏付けるものであり、VD3が上皮の分化亢進に関与していることが示唆された。化学的防御機構において、抗菌ペプチドであるヒトβディフェンシン(hBD)-1、2、3およびカセリディシン(LL-37)の発現変化の検討をした。hBD-1は恒常性に発現するペプチドであるがVD3を10nM添加することにより4、48および72時間で有意な上昇を認めた。hBD-2においては10および100nMの8、24、48、72時間で有意な上昇を認めるものの、hBD-3では有意差は認めなかった。LL-37では、全ての濃度において約100倍以上の発現を8時間以降で認めた。平成24年度の結果から、時間培養細胞では約48時間で分化亢進がみられること可能であることが示唆された。ラットの上皮は約3日でターンオーバーされる。そのため48時間が妥当であることが考えられる。VD3の濃度においては、10nMがClaudinおよびhBDで発現変化を多数認めたため、10nMが妥当と考えられた。平成25年度は、レジンに10nMのVD3を添加しラットにおける創傷治癒を観察する予定である。活性型ビタミンD3(VD3)の添加をすることで、上皮における化学的防御機構および物理的防御機構への有効性について研究を行った。化学的防御機構ではβ-defensinおよびLL-37の発現において、有意な上昇が認められた。また、物理的防御機構であるタイトジャンクションのClaudin-1では、24時間以降に有意な減少が認め、Claudin-4は8時間および48時間で有意な上昇が認められた。これまでの研究結果において上皮は有棘層底部ではClaudin-1が発現し、有棘層上部から顆粒層にかけてClaudin-4の発現が有意になることが知られている。このことから、VD3を添加することで化学的防御機能の上昇および、上皮の分化が引き起こることが明らかになった。VD3添加による物理的防御機構上昇の定量化では、経上皮/内皮電気抵抗値(TER)の測定を行った。VD3を添加することで、TERの上昇が認められたことから、VD3が上皮の分化に作用し物理的防御機構に有効であることが示唆された。また、small interfering RNA(siRNA)を使用し、siClaudin-1,4の細胞を作製しTERの測定を行い、上皮におけるClaudinの物理的防御への関与について行った。Claudinをsi化にすることによりTERの低下が認められた。siClaudin-4は、siClaudin-1に比較し、TERの有意な減少をみとめたことから、上皮層において顆粒層に分化亢進することが物理的防御が顕著になることが確認され、Claudin-1に比較しClaudin-4がより強固な上皮間結合に関与していることが明らかになった。そのため、創傷治癒において使用する創傷治癒用レジンにVD3を添加することで、化学的防御機構および物理的防御機構が上昇する可能性が示唆された。本研究では、活性型ビタミンD3添加による化学的防御機構への影響および,口腔内創傷治癒促進への効果の検討を行った。活性型ビタミンD3を添加することにより、化学的防御機構に関与する抗菌ペプチドの上昇を認め、上皮の分化傾向を示すことが明らかになった。また、活性型ビタミンD3添加軟膏により、創傷治癒の促進がみられた。本結果から活性型ビタミンD3は、口腔粘膜の保護および治癒に有効であることが示唆された。平成23年度では、免疫蛍光染色にてヒト正常口腔粘膜上皮においてCludin(CLDN)の発現を観察したところ、CLDN-1は有棘層細胞膜に、またCLDN-4は顆粒層細胞膜にそれぞれ局在を認めたため、CLDNは細胞分化に伴いCLDN-1からCLDN-4へタンパクの発現変化をする可能性が示唆された。また、ヒト角化上皮細胞株(HaCaT)におけるmRNA発現では、活性型ビタミンD3(VD3)添加によりCLDN-1の有意な減少からCLDN-4タンパクへの有意な増加へと発現変化することが明らかになった。さらに、HaCaTにおいて培養細胞においての免疫蛍光染色においての同様の結果を認めた。 | KAKENHI-PROJECT-23593041 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23593041 |
自然免疫能賦活化を期待した新規創傷治癒用レジン剤の開発 | タイトジャンクションのバリアー機能を簡便かつ最も感度よく検出する方法である細胞間経上皮電気抵抗値を測定したところ、VD3を添加することによりの上昇がみられたため、物理的防御機構の向上が認められた。化学的防御機構では、抗菌ペプチドであるVD3添加によるヒト角化上皮細胞株の分化誘導により、抗菌ペプチドであるヒトβディフェンシン(hBD)-1、-2、-3およびカセリディシン(LL-37)の発現変化を観察した。VD3添加および時間経過によりhBD -1、-2およびLL-37の発現が上昇し、VD3による化学的防御機構の亢進が認められた。平成23年度の結果から、VD3添加によるヒト角化上皮細胞の分化誘導は、生体における物理的および化学的防御機構において非常に有用であることが示唆された。実験計画に基づき進行しているため、遅延および不備等の問題は認めない。実験計画に基づき進行しているため、遅延および不備等の問題は認めない。繰り越し金が、59,919円あるが研究試薬購入のため繰り越すこととした。そのため次年度の実験試薬に使用する予定である。今後、平成25年においての研究予定として、1ラット舌下面の創傷に活性型ビタミンD軟膏および接着性レジン塗布後のwound healingを観察する。2活性型ビタミンD含有した接着性レジンの作製を行っていく予定である。また、論文投稿費用としても研究費を使用する予定である。今後、平成24年および25年においての研究予定として、(1)ラット舌下面の創傷に活性型ビタミンD軟膏を塗布。受傷後の細胞分化・細胞毒性の評価(2)ラット舌下面部創傷面に接着性レジンを塗布後の細胞分化・細胞毒性の評価(3)活性型ビタミンDもしくは抗細菌性ペプチドを含有した接着性レジンの作製を行っていく予定である。次年度の実験としては、材料の開発および動物実験が主体となる。そのため、実験動物の購入および接着性レジン作製関連、標本作製関連、免疫染色関連試薬の消耗品関連を購入するため使用する。また、論文投稿費用に使用する。次年度以降の実験としては、in vitroが主体となるため、実験動物の購入および接着性レジン作製関連、標本作製関連、免疫染色関連、In situ hvbridization試薬の消耗品関連を購入するため使用する。 | KAKENHI-PROJECT-23593041 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23593041 |
翻訳後修飾を行う植物タンパク質チロシン硫酸転移酵素の立体構造解析 | タンパク質翻訳後修飾の一つであるチロシン残基の硫酸化は、細菌から植物、ヒトまで広く生物で行われ、様々な生命現象に関わっている。ヒトにおいて、1割以上の分泌蛋白質と膜蛋白質において、チロシン残基が硫酸化修飾されていると推定されており、様々な蛋白質間相互作用の制御への関わりが報告されている。一方、植物においても、成長を制御するペプチドホルモンにチロシン硫酸化が必須であることが知られており、様々な重要な役割を果たしている。この反応は、タンパク質チロシン硫酸転移酵素(Tyrosyl protein sulfotransferase:TPST)によって、硫酸基ドナーとして3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(3'-Phosphoadenosine-5'-phosphosulfate:PAPS)が使われ、触媒される。これまでに、ヒトTPSTの立体構造を基質複合体の立体構造が決定され、その基質認識機構と触媒反応メカニズムが報告されている。チロシン硫酸化は、ヒトでは生体防御やウイルス感染を含めて様々な生命現象に関わる。植物においても、様々な生命現象への関わりが予想されているが、特に植物の成長制御に関与していることが報告されている。本研究は、ヒトと1次構造のまったく異なる植物TPSTの立体構造を決定し、その基質認識機構と触媒反応メカニズムを明らかにすることを目指す。ヒトと植物のTPSTの比較により、蛋白質チロシン硫酸化について、広く生物に一般性を持った理解が期待できる。本年度は、組換えタンパク質としての発現と精製を進め、目的とした結果が得られている状況である。研究はおおむね順調に進展している。今年度の発展が見込まれる。予定通り研究計画を遂行するとともに、さらなる発展を目指して研究を推進したい。タンパク質翻訳後修飾の一つであるチロシン残基の硫酸化は、細菌から植物、ヒトまで広く生物で行われ、様々な生命現象に関わっている。ヒトにおいて、1割以上の分泌蛋白質と膜蛋白質において、チロシン残基が硫酸化修飾されていると推定されており、様々な蛋白質間相互作用の制御への関わりが報告されている。一方、植物においても、成長を制御するペプチドホルモンにチロシン硫酸化が必須であることが知られており、様々な重要な役割を果たしている。この反応は、タンパク質チロシン硫酸転移酵素(Tyrosyl protein sulfotransferase:TPST)によって、硫酸基ドナーとして3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(3'-Phosphoadenosine-5'-phosphosulfate:PAPS)が使われ、触媒される。これまでに、ヒトTPSTの立体構造を基質複合体の立体構造が決定され、その基質認識機構と触媒反応メカニズムが報告されている。チロシン硫酸化は、ヒトでは生体防御やウイルス感染を含めて様々な生命現象に関わる。植物においても、様々な生命現象への関わりが予想されているが、特に植物の成長制御に関与していることが報告されている。本研究は、ヒトと1次構造のまったく異なる植物TPSTの立体構造を決定し、その基質認識機構と触媒反応メカニズムを明らかにすることを目指す。ヒトと植物のTPSTの比較により、蛋白質チロシン硫酸化について、広く生物に一般性を持った理解が期待できる。本年度は、組換えタンパク質としての発現と精製を進め、目的とした結果が得られている状況である。研究はおおむね順調に進展している。今年度の発展が見込まれる。予定通り研究計画を遂行するとともに、さらなる発展を目指して研究を推進したい。 | KAKENHI-PROJECT-16K07273 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K07273 |
機能変異インテグリン導入によるがん細胞遊走能および転移能の解析 | インテグリンを介した細胞接着および細胞内外への情報伝達経路は腫瘍の増大、浸潤および転移能、さらには腫瘍血管新生において中核をなすことが明らかにされつつある。従って、腫瘍増大、浸潤および転移能の分子機構の解明には、その初期のイベントとしてのインテグリンを介した情報伝達機構の解明が必要不可欠であると考えられる。本研究はこの初期イベントを制御すべくβ3インテグリンを中心にその構造-機能連関と情報伝達機構ならびに細胞機能への作用を解明することを目的としており、主として申請者らが新規同定した機能活性化変異および機能欠失変異を中心に解析した。まず機能活性化変異αvβ3(β3Thr562Asp)導入CHO-K1細胞では各種リガンドにたいする接着能が亢進するものの、細胞遊走能は野生型に較べ逆に低下していた。さらにαvの機能部位を同定すべく、βプロペラモデルにおけるW34-1ループおよびW32-3ループにおけるアラニン変異実験によりαvの機能部位としてW32-3ループ内の178Tyrが必須であることを新たに同定した。この機能欠失変異導入によりαvβ3は可溶化リガンド結合能だけでなく、固相化リガンドに対する接着能も消失した。さらにこの機能欠失変異はドミナントネガティブに細胞接着や細胞増殖も抑制するとの成績を得つつあり現在その詳細を解析中である。一方、Integrin-associated protein(IAP)/CD47の機能を明らかにするため機能活性化抗体であるB6H12を用いて解析し、IAPからのシグナルはB細胞株においてlamellipodiaを誘導しβ1インテグリン依存性の細胞遊走能を亢進させること、またその作用はCDC42を介していることを明らかにした。インテグリンを介した細胞接着および細胞内外への情報伝達経路は腫瘍の増大、浸潤および転移能、さらには腫瘍血管新生において中核をなすことが明らかにされつつある。従って、腫瘍増大、浸潤および転移能の分子機構の解明には、その初期のイベントとしてのインテグリンを介した情報伝達機構の解明が必要不可欠であると考えられる。本研究はこの初期イベントを制御すべくβ3インテグリンを中心にその構造-機能連関と情報伝達機構ならびに細胞機能への作用を解明することを目的としており、主として申請者らが新規同定した機能活性化変異および機能欠失変異を中心に解析した。まず機能活性化変異αvβ3(β3Thr562Asp)導入CHO-K1細胞では各種リガンドにたいする接着能が亢進するものの、細胞遊走能は野生型に較べ逆に低下していた。さらにαvの機能部位を同定すべく、βプロペラモデルにおけるW34-1ループおよびW32-3ループにおけるアラニン変異実験によりαvの機能部位としてW32-3ループ内の178Tyrが必須であることを新たに同定した。この機能欠失変異導入によりαvβ3は可溶化リガンド結合能だけでなく、固相化リガンドに対する接着能も消失した。さらにこの機能欠失変異はドミナントネガティブに細胞接着や細胞増殖も抑制するとの成績を得つつあり現在その詳細を解析中である。一方、Integrin-associated protein(IAP)/CD47の機能を明らかにするため機能活性化抗体であるB6H12を用いて解析し、IAPからのシグナルはB細胞株においてlamellipodiaを誘導しβ1インテグリン依存性の細胞遊走能を亢進させること、またその作用はCDC42を介していることを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-12215094 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12215094 |
多重励起パルスと時間分解コヒーレント分光で制御する電子正孔系の量子ダイナミクス | 本研究の目的は、固体中の電子正孔系を複数の光パルスによって制御し、新たな機能を生み出すことである。昨年度に開発した光電流コヒーレント分光システムを利用し、光電流生成過程の研究を行った。まず、低温環境下におけるGaAs結晶の光電流生成過程の研究を行った。測定した光電流の超高速時間応答をフーリエ変換することで、光電流生成に寄与する量子状態のスペクトル分布を得ることに成功した。このスペクトルを解析することで、光電流を発生させる3つの過程が存在することが分かった。これら3つの過程は同時に光電流を生成するために従来の手法では解析が困難であったものであり、本研究によって初めて詳細な過程が解明された。温度に対する依存性を測定することで、アクセプタのイオン化に伴って支配的な光電流生成過程が推移することを明らかにした。また、観測された非発光状態が光電流に大きな寄与を与えていることを明らかにした。次に、太陽電池材料として近年盛んに研究が行われているハロゲン化鉛ペロブスカイトについて、バンドギャップ内局在準位の研究を行った。バンドギャップ内局在準位は発光スペクトルと吸収スペクトルに現れないために観測が困難であり、詳細な物性が理解されていなかった。局在準位を高感度に検出することが可能な光電流コヒーレント分光を用いることで、局在準位が存在することを示し、温度に対する依存性を明らかにした。これらの研究を通して、複数光パルスによる分光法が固体の光学的・電気的特性を明らかにするための有力な手法になること、さらに光電流生成過程を光パルスによって制御できることを示した。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。本研究の目的は、固体中の電子正孔系を複数の光パルスによって制御し、新たな機能を持つ物質の状態を創造することである。本年に行った研究は、多励起子状態の生成実験、位相ロックパルスの作製、位相ロックパルスを用いた制御実験の3点である。まず、電子正孔系の多体相互作用を観測するために、コアシェル型量子ドットの過渡吸収分光を行った。吸収率の過渡的な変化を解析することで、励起強度の増加とともに多体の衝突過程であるオージェ再結合による速い緩和が現れることを観測した。これは、1つの量子ドット中に生成される電子と正孔の数が増加することで、多励起子状態が生成され、オージェ再結合が強く起きることを表している。本研究によって多励起子状態の生成と多体の衝突過程が生じる時間スケール・励起強度を明らかにした。次に、光パルスによる状態制御を行う上で重要になる「2つの励起パルスの相対位相を固定(ロック)する光学系」の作製を行った。フィードバック制御を行うことで、光路長を高精度に安定化させることに成功した。さらに、この位相ロックパルスを用いることで、半導体中に発生する光電流の変化から電子系の状態変化を測定した。試料には典型的な半導体物質であるGaAsを用い、2つの光パルスを入射するタイミングを変えて測定することで、光電流のコヒーレント制御に成功した。コヒーレント制御の振舞いを解析することで、光電流が生成されるメカニズムを明らかにした。本研究の目的は、固体中の電子正孔系を複数の光パルスによって制御し、新たな機能を生み出すことである。昨年度に開発した光電流コヒーレント分光システムを利用し、光電流生成過程の研究を行った。まず、低温環境下におけるGaAs結晶の光電流生成過程の研究を行った。測定した光電流の超高速時間応答をフーリエ変換することで、光電流生成に寄与する量子状態のスペクトル分布を得ることに成功した。このスペクトルを解析することで、光電流を発生させる3つの過程が存在することが分かった。これら3つの過程は同時に光電流を生成するために従来の手法では解析が困難であったものであり、本研究によって初めて詳細な過程が解明された。温度に対する依存性を測定することで、アクセプタのイオン化に伴って支配的な光電流生成過程が推移することを明らかにした。また、観測された非発光状態が光電流に大きな寄与を与えていることを明らかにした。次に、太陽電池材料として近年盛んに研究が行われているハロゲン化鉛ペロブスカイトについて、バンドギャップ内局在準位の研究を行った。バンドギャップ内局在準位は発光スペクトルと吸収スペクトルに現れないために観測が困難であり、詳細な物性が理解されていなかった。局在準位を高感度に検出することが可能な光電流コヒーレント分光を用いることで、局在準位が存在することを示し、温度に対する依存性を明らかにした。これらの研究を通して、複数光パルスによる分光法が固体の光学的・電気的特性を明らかにするための有力な手法になること、さらに光電流生成過程を光パルスによって制御できることを示した。本年度に計画していた研究であるコアシェル型量子ドットの過渡吸収分光を行い、電子正孔系のダイナミクスを解析した。さらに、位相ロックパルスの生成に必要な「光路長を高精度に安定化させた光学系」を新たに作製した。この位相ロックパルスによる状態制御の方法を、光電変換応用において重要な光電流生成の制御に用いた実験を行った。研究が予想よりも進展し、この位相ロックパルスを利用した光電流のコヒーレント制御に成功した。27年度が最終年度であるため、記入しない。室温における光電流の生成過程の解析・制御に成功したが、低温におけるキャリアの挙動については明らかになっていない。 | KAKENHI-PROJECT-14J03855 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J03855 |
多重励起パルスと時間分解コヒーレント分光で制御する電子正孔系の量子ダイナミクス | 今後はまず、低温における光電流の生成機構を明らかにする。また、これまでは2つの光パルスによる制御実験を行ってきたが、励起に用いる光パルスの数を増大させた新たな状態制御を行う。さらに、この位相ロックパルスによる実験を量子ドットに適用し、電子正孔系の状態制御と多体相互作用の光制御を行う。27年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-14J03855 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J03855 |
動力学的震源を活用した地震ハザード評価の新展開 | 本研究では、経験的手法・運動学的手法・擬似動力学的手法・動力学的手法によるシナリオ型の地震ハザードを評価し、多様な震源像が強震動予測に与える効果を定量的に検討することを目的としている。研究成果として、観測事実を説明する想定内の地震動を生成する地震シナリオに、動力学的な知見を加味することにより、想定外の地震動のハザード評価を新たに提示し、ごく稀な強震動生成を支配する断層破壊のメカニズムとその物理を明らかにする。その際、過去の記録の再現を目的とした震源モデルと、将来の予測を意識した多数回の試行による地震動のバラツキ評価のための震源モデルの両者の構築方針について、プロトタイプを作成する。本年度は、震源近傍強震動を生成する内陸地震を対象に、運動学的手法と動力学的手法による震源モデルと強震動シミュレーションに関する研究を展開した。1995年兵庫県南部地震の震災の帯の再現に関しては、その生成メカニズムに関する数値計算を進めた。強震動予測に資する研究としては、震源メカニズムの違いによる応力降下量の研究、強震動パルス生成の研究、これらの震源物理に起因する強震動レベルの研究などを進めた。また、経験的手法・運動学的手法・擬似動力学的手法・動力学的手法のいずれにおいても、内陸地震の地震モーメントと断層面積のスケーリング則の妥当性や、地形・地質学的データの震源モデルへの導入が重要であることが再認識され、これらの精度や安定性を向上させることが、各手法によるシナリオ型の地震ハザード評価の乖離を小さくする方向に貢献することが示唆された。また、正断層と逆断層の震源物理が、想定外の地震動を生成する地震シナリオの開発に貢献する可能性を数値計算により見出した。この他、調査および共同研究推進のための会合を通じて、フランス、米国および韓国の研究者と国際的な研究基盤を構築した。平成29年度が最終年度であるため、記入しない。平成29年度が最終年度であるため、記入しない。本研究では、理工学両面から関心が今なお高く、研究の蓄積が多い1995年兵庫県南部地震を主な対象として、経験的手法・運動学的手法・擬似動力学的手法・動力学的手法によるシナリオ型の地震ハザードを評価し、多様な震源像が強震動予測に与える効果を定量的に検討することを目的としている。本年度は、兵庫県南部地震直後は入手困難であった観測記録等の収集・整理を行うと共に、経験的手法・運動学的手法による想定兵庫県南部地震のハザード評価に着手した。また、擬似動力学的手法による震源モデルを試算した。さらに、次年度以降の擬似動力学的手法・動力学的手法による震源モデル構築に向けた研究動向調査を行った。また、地震発生前の標準的な想定に対して大きな長周期地震動と小さな短周期地震動が観測された2011年東北地方太平洋沖地震や2015年ネパール・ゴルカ地震について、震源メカニズム解明を目的として震源モデルと強震動の観点から解析・整理を行った。その結果、長周期震源と短周期震源を震源物理に基づきモデル化する必要があり、これらの面積と応力降下量、すべり速度時間関数の形状、破壊進展の定量化が地震動をコントロールする主要なパラメータであることが分かった。また、短周期地震動の生成に関わる、強震動生成域の不均質性について解析を実施した。この他、調査および共同研究推進のための会合を通じて、フランスおよびサウジアラビアの研究者と国際的な研究基盤を構築した。初年度において、1995年兵庫県南部地震に関する、強震記録・運動学的および動力学的震源モデル・地下構造モデルの最新版を収集した。また、擬似動力学的手法による震源モデルを試算した。これらを用いることにより、次年度以降、本研究の主題である1995年兵庫県南部地震の地震ハザード評価を実施する環境が整った。本研究では、理工学両面から関心が今なお高く、研究の蓄積が多い1995年兵庫県南部地震を主な対象として、経験的手法・運動学的手法・擬似動力学的手法・動力学的手法によるシナリオ型の地震ハザードを評価し、多様な震源像が強震動予測に与える効果を定量的に検討することを目的としている。研究成果として、観測事実を説明する想定内の地震動を生成する地震シナリオに、動力学的な知見を加味することにより、想定外の地震動のハザード評価を新たに提示し、ごく稀な強震動生成を支配する断層破壊のメカニズムとその物理を明らかにする。その際、過去の記録の再現を目的とした震源モデルと、将来の予測を意識した多数回の試行による地震動のバラツキ評価のための震源モデルの両者の構築方針について、プロトタイプを作成する。本年度は、兵庫県南部地震の経験的手法・運動学的手法によるハザード評価を進めると共に、擬似動力学的手法・動力学的手法による震源モデル構築に向けた調査を継続した。そして、1995年兵庫県南部地震の震災の帯を複数ケース試算した。また、想定外の極大地震動が観測された2016年熊本地震を研究対象に含め、断層モデルの設定とその不均質性、強震動パルス生成メカニズム、動力学モデルの利活用について研究を進めた。また、最終年度の地震ハザード計算に向けて、特性化震源モデルによる地震動再現性について客観的指標を用いて確認すると共に、米国南カリフォルニア地震センターの広帯域地震動プラットフォームSCEC BBPに実装した。この他、調査および共同研究推進のための会合を通じて、フランスおよびサウジアラビアの研究者と国際的な研究基盤の構築を継続した。 | KAKENHI-PROJECT-15H02989 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H02989 |
動力学的震源を活用した地震ハザード評価の新展開 | 本年度は、1995年兵庫県南部地震の震災の帯の再現において重要な要素である、地下構造モデルの評価を複数実施し、震源モデルと地下構造モデルの組み合わせにより生じる地震動の卓越周期と震災の帯の幅を整理した。この結果を踏まえて、兵庫県南部地震の地震ハザード評価を実施する環境が整った。本研究では、経験的手法・運動学的手法・擬似動力学的手法・動力学的手法によるシナリオ型の地震ハザードを評価し、多様な震源像が強震動予測に与える効果を定量的に検討することを目的としている。研究成果として、観測事実を説明する想定内の地震動を生成する地震シナリオに、動力学的な知見を加味することにより、想定外の地震動のハザード評価を新たに提示し、ごく稀な強震動生成を支配する断層破壊のメカニズムとその物理を明らかにする。その際、過去の記録の再現を目的とした震源モデルと、将来の予測を意識した多数回の試行による地震動のバラツキ評価のための震源モデルの両者の構築方針について、プロトタイプを作成する。本年度は、震源近傍強震動を生成する内陸地震を対象に、運動学的手法と動力学的手法による震源モデルと強震動シミュレーションに関する研究を展開した。1995年兵庫県南部地震の震災の帯の再現に関しては、その生成メカニズムに関する数値計算を進めた。強震動予測に資する研究としては、震源メカニズムの違いによる応力降下量の研究、強震動パルス生成の研究、これらの震源物理に起因する強震動レベルの研究などを進めた。また、経験的手法・運動学的手法・擬似動力学的手法・動力学的手法のいずれにおいても、内陸地震の地震モーメントと断層面積のスケーリング則の妥当性や、地形・地質学的データの震源モデルへの導入が重要であることが再認識され、これらの精度や安定性を向上させることが、各手法によるシナリオ型の地震ハザード評価の乖離を小さくする方向に貢献することが示唆された。また、正断層と逆断層の震源物理が、想定外の地震動を生成する地震シナリオの開発に貢献する可能性を数値計算により見出した。この他、調査および共同研究推進のための会合を通じて、フランス、米国および韓国の研究者と国際的な研究基盤を構築した。今後は、経験的手法・運動学的手法・擬似動力学的手法・動力学的手法によるシナリオ型の地震ハザードを評価する。そして、震源物理に基づくモデルから工学的利活用を意識したモデルに至る多様なモデルが、どの程度、地震規模・破壊様式・観測波形や、「震災の帯」を含む面的な地震動分布を説明する能力を有するかを定量的に検討する。最終年度は、経験的手法・運動学的手法・擬似動力学的手法・動力学的手法によるシナリオ型の地震ハザード評価をとりまとめる。そして、兵庫県南部地震の震災の帯はどう変化するのか?を題材に、想定外の地震動を生成する地震シナリオの開発を行う。平成29年度が最終年度であるため、記入しない。平成29年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-15H02989 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H02989 |
口腔内細菌菌体破砕物及び外傷性咬合の歯周ポケット形成への関与の検討 | ラット歯周炎モデルに外傷性咬合を付与した実験を行った。屠殺後、上顎第一臼歯周囲の歯周組織の病理組織学的検討を行い、外傷性咬合の歯周組織破壊への関与を検討した。また、Aggregatibacter actinomycetemcomitans (A. a.)およびStreptococcus aureus (S. a.)による歯周炎誘導実験を行った。組織標本を作製して、病理組織学的検討を行い、口腔内細菌と歯周組織破壊の関係を検討した。ラット歯周炎モデルに外傷性咬合を付与した実験を行った。屠殺後、上顎第一臼歯周囲の歯周組織の病理組織学的検討を行い、外傷性咬合の歯周組織破壊への関与を検討した。また、Aggregatibacter actinomycetemcomitans (A. a.)およびStreptococcus aureus (S. a.)による歯周炎誘導実験を行った。組織標本を作製して、病理組織学的検討を行い、口腔内細菌と歯周組織破壊の関係を検討した。LPSを用いたラット歯周炎モデルに外傷性咬合を付与した実験を行った。1)LPSによる歯周炎誘発と咬合性外傷誘発LPSで免疫感作後、LPSを歯肉溝へ滴下し、同時に臼歯部咬合面に過高なinlayを装着することで外傷性咬合を与えた。その後屠殺し、組織標本を作製して病理組織学的検討を行い、外傷性咬合と歯周組織破壊の関係を検討した。H.E.染色切Jを用いて、セメントエナメル境(CEJ)から接合上皮の根面に接した歯冠側端までの距離をattachment lossとして計測した。また、破骨細胞の同定のため、各群の切片を用いてTRAP染色を行った切片にて、歯槽骨頂部から500 μmの骨面上に存在する多核のTRAP陽性細胞を、破骨細胞として計測した。免疫複合体検出のために、免疫複合体に最初に結合する補体成分であるC1の免疫組織化学的染色を行い、その局在部位を観察した。2)血清抗LPS IgG抗体レベル測定(ELISA法)眼窩下静脈叢から血液サンプルを得た。血清中の抗LPS IgG抗体レベルは各々の血清サンプルを用いてELISA法により測定した。S. a.およびA. a.による歯周炎誘導実験を行った。1)細菌培養S. a.培養:37°Cで嫌気的に24時間培養した。A. a.培養:37°Cで嫌気的に24時間培養した。これらのS. a.およびA. a.を遠心心分離して凍結乾燥した。2)A. a.およびS. a.による歯周炎誘発A. a.およびS. a.の菌体破砕物で免疫感作後、A. a.およびS. a.を歯肉溝へ滴下し、歯周炎を誘発した。組織標本を用いてattachment lossを計測した。2)血清抗S. a.およびA. a. IgG抗体レベル測定(ELISA法)眼窩下静脈叢から血液サンプル中の抗S. a.およびA. a. IgG抗体レベルをELISA法により測定した。LPSを用いたラット歯周炎モデルに外傷性咬合を付与した実験を行った。LPSで免疫感作後、LPSを歯肉溝へ滴下し、同時に臼歯部咬合面に過高なinlayを装着することで外傷性咬合を与えた。その後屠殺し、組織標本を作製して病理組織学的観察のため,各群の切片をヘマトキシリン・エオジン染色(H.E.染色)し、組織学的計測を行った。H.E.染色切片を光学顕微鏡下で撮影し、画像解析処理ソフトImageJを用いて、セメントエナメル境(CEJ)から接合上皮の根面に接した歯冠側端までの距離をattachment lossとして計測した。また、破骨細胞の同定のため、各群の切片を用いてTRAP染色を行った切片にて、歯槽骨頂部の骨面上に存在する多核のTRAP陽性細胞を、破骨細胞として計測した。免疫複合体検出のために、C1qの免疫組織化学的染色を行い、その局在部位を観察した。血清中の抗LPS IgG抗体レベルは各々の血清サンプルを用いてELISA法により測定した。また、S. a.およびA. a.による歯周炎誘導実験を行った。S. a.は37°Cで嫌気的に24時間培養した。A. a.も37°Cで嫌気的に24時間培養した。S. a.およびA. a.の菌体破砕物で免疫感作後、S. a.およびA. aを歯肉溝へ滴下し、歯周炎を誘発した。組織標本を作製してattachment lossを計測した。血清中の抗S. a.およびA. a. IgG抗体レベルは各々の血清サンプルを用いてELISA法により測定した。パラフィン切片上で免疫複合体を検出するには、抗原と補体の免疫染色を通常は行うが、我々が行った過去の実験でLPSと抗LPS IgGを滴下した際に、抗原であるLPSは広範囲に検出されたため、本研究では免疫複合体検出のために、免疫複合体に最初に結合する補体成分であるC1の免疫組織化学的染色を行い、その局在部位を観察した。26年度が最終年度であるため、記入しない。医歯薬学26年度が最終年度であるため、記入しない。免疫複合体形成の確認のための実験結果を分析した結果、期待した差異が対象間で見られなかったため、使用する抗体のスクリーニング及び実験条件の検討が必要となった。 | KAKENHI-PROJECT-24890169 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24890169 |
口腔内細菌菌体破砕物及び外傷性咬合の歯周ポケット形成への関与の検討 | 現在この問題は解決している。追加として線維性コラーゲンの観察を行う予定である。また、細菌による歯周炎誘発モデルに咬合性外傷を誘発させる予定である。 | KAKENHI-PROJECT-24890169 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24890169 |
日台韓の口コミ行動に関する対照研究-医療と観光サービスに対する評価を中心に | 本研究では、日台韓における口コミ行動に注目して、観光地におけるサービスと医療機関について、どのような点をどのように評価して、どのように語るかという点を明らかにすることを目的としている。2017年度後半から県内の外国人観光客を多く受け入れている施設等を訪問して、口コミの影響やその対応、客からの苦情のなどについて調査してきたが、2018年度からは、その結果をもとに、観光客からの日台韓の口コミの傾向を見る予備調査として、県内で日本語を学ぶ台湾と韓国留学生各5名、日本人学生5名に対してインタビューを行った。具体的には、今まで利用したことのある病院とホテルについて詳しく説明してもらった。また、病院や旅行の際のホテルをどのように選ぶか、ネット上のクチコミを利用しているか等についても聞いた。この結果を受け、本調査は2回行うことにした。1回目はよく利用される口コミサイトのデータを分析し、2回目は談話完成式のアンケート調査を行うことにした。まず2019年1月からネット上に掲載されている旅行者の口コミの分析を行った。具体的には、日本、台湾、韓国の3か国で運営されているホテルチェーンの傘下にあるホテルを10社ずつ選定し、2018年の1年間に各国語で投稿されている口コミをそれぞれ収集した。集めた口コミの中から肯定的評価、否定的評価を抽出し、どのような表現を使ってどのような評価が語られているのか等について分類を行った。現在はSPSSによって分析を行っているが、9月には2回目の本調査行っていく予定である。また本研究の結果は、外国人観光客はもちろん、生活者としての外国人が観光地や病院での誤解やトラブルを回避するために役立ていることができると考えており、2019年2月に県の国際交流協会が主催する多文化共生に向けての研修会において予備調査の結果を一部用いて、多文化共生と日本語教育に関する報告を行った。2017年度は育児休業のため研究を中断していたこともあり、予備調査および本調査は2018年に行うこととなったが、育児環境が整わず宿泊を伴う出張が難しい状況であったため、予備調査は日本語学習者および日本語母語話者に対して県内で実施した。また、予備調査の結果から、予備調査を2回に分けて実施することにしたため、台湾および韓国に出向いてのアンケート調査については2019年度の夏に行うことに変更した。当初予期していなかったこととして、研究を中断していた間に台湾の研究協力者が定年を迎え、協力が得られなくなってしまったという問題があったが、これについては、2018年初めから台湾にある姉妹大学に依頼し、研究協力者を探してきた。この影響で本調査の時期は少しずれたが、10月に協力いただける研究者が見つかり、直接会うことでできていないが、通話による情報交換を重ね、2019年1月からの本調査では積極的に助言をもらうことができた。そのおかげで、台湾および韓国での本調査も今後順調に進められることとなった。1回目の本調査は2019年1月から実施した。ネット上の口コミデータを1年分収集するのに、5名の研究補助として学生アルバイトを雇用したが、授業期間中ということもあり、分析ができるまでに少し時間がかかった。現在分析中であるが、この結果を夏にかけて発表できる状態にまとめていくとともに、2回目の本調査が日台韓において9月から実施できるように準備を進めていく。以上のように、研究協力者探しや本調査の方法変更で比較的時間がかかってしまったが、質の高い調査を行うためには重要なことであり、計画の遅れではないと前向きにとらえており、2019年度の計画もおおむね順調進んでいると判断した。2019年9月には、ソウルや台中に出向き調査や学会発表を行い、2020年1月からは論文執筆を進めていきたいと考えている。今後は、1回目の本調査の結果の分析を進め、学会発表に繋げていく。また9月に2回目の本調査を行うことができるよう、日台韓国語でのアンケート作成など準備を進めていく。本調査の結果は、2020年1月までにまとめ、論文執筆を行っていきたい。また、引き続き、医療機関や観光サービスにおける誤解やトラブルを回避するため、研究結果を活かした研修会などを各地で開催していきたい。具体的には、外国人観光客が急激に増えている現在、多くの観光地でトラブルが生じないよう通訳サポーターなどの育成に本研究の結果を活かしていきたい。さらに、本県は外国人の散在地域ではあるものの、生活者としての外国人や外国にルーツをもつ子どもたちが年々増えていて、日本語を支援するボランティア等の養成が求められている。日本語支援員の研修会や日本語教師の養成プログラムの中でも、研究結果が活かせるように工夫していきたい。東京五輪を3年後に控え、グローバル化が急速に進み、海外からの観光客をもてなそうと各地で様々な取り組みが行われている。五輪後は、観光分野はもちろん、医療ツーリズムや医療通訳分野に関わるサービス(医療のインバウンド)の需要がさらに拡大することが期待されている。アジア圏の中でも特に訪日客の多い台湾や韓国は、このようなインバウンド需要の拡大を牽引すると予測でき、本研究では日本、台湾、韓国を研究対象とし、それぞれの口コミ行動の特徴について明らかにすることを目的としている。まず、平成28年度は、文献を整理することに力を入れた。 | KAKENHI-PROJECT-16K02693 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K02693 |
日台韓の口コミ行動に関する対照研究-医療と観光サービスに対する評価を中心に | 口コミは、マーケティング分野でWEB上の口コミ効果や否定的効果に注目する研究が多いが、本研究は言語行動の一つとして口コミを取り上げ、意識調査だけでなく談話分析を行うものであるため、まずは口コミの定義やその違いを明確にしておく必要があるからである。次に、予備調査を行う予定の青森では、台湾と韓国からの来訪客に対してどのようなもてを行い、それらに対し来訪客がどのような感想や不満をもったのかを調査した資料を集めたり、訪日経験のある台湾人および韓国人の日本語学習者に直接話を聞くことで、予備調査の計画を立てるための参考にした。また、インターネットを通じて文字で伝える不満について分析するため、病院およびホテルに関する口コミサイトから肯定的および否定的口コミのデータを収集した。日台韓の満足度や不快の度合は星の数などで示されているのが一般的であるが、全く異なるサイトを安易に比較することはできあ、予備調査や本調査で用いる状況設定について深く検討を行った。最後に9月以降に計画していた予備調査のアンケート作成やアンケート実施については、個人的事情より延期することにしたが、これについては研究機関を延長することで対応する予定である。本研究は、医療機関や観光地におけるサービスに注目し、日本、台湾、韓国の3か国で肯定的および否定的評価に関するアンケートを実施し、口コミ行動の特徴を解明することを目指している。口コミ研究の多くは、インターネットの口コミをそのまま分析するで行われるが、本研究の調査では意識調査に加え、談話完成式テストも行い、口コミの発信の有無や満足度、個人特性との関連性などについても検討する予定である。初年度である28年度は、4月から論文をはじめとする文献を体系的に整理し、9月には予備調査用のアンケートを作成し、1月にはアンケートを実施する予定であった。しかしながら、9月に出産し、育児休暇を取得したことから、アンケートの作成や実施はできなかった。これについては、休暇中の研究期間を延長することで十分に対応できるので、現段階で遅れているとは言えないと判断した。本調査に向け、収集してきた資料などを深く分析するには、十分な時間はとれたこと、研究デザインがしっかりと検討出来たこと、もともと計画していなかったインタビューが実施できたことなどを考慮し、おおむね順調に進展していると評価した。本研究は、日本、台湾、韓国において医療および観光サービスに関する口コミ行動がどのように行われるかについてアンケート調査を行い、各国の口コミ行動の特徴を探ることを目的としている。具体的には、平成28年度は主に文献研究と予備調査、平成29年度には日台韓における本調査を実施、平成30年度には研究成果を発表するという研究計画に沿って進めてきた。しかしながら、平成29年5月まで産前産後および育児休業を取得することになり、研究中断期間が生じたため、研究期間を1年延長する計画に切り替え、本調査は平成30年に実施する予定で準備を整えてきた。具体的な研究内容については、平成28年度には、文献を整理しながら、インターネット上の口コミ表現の分析、予備調査の準備等を実施してきたが、これらを基に、平成29年度は訪日外国人向けのサービスを展開しているホテルや空港、水族館、博物館、商業施設、そして訪日外国人の受け入れを積極的に行っている病院施設を訪問し、インタビュー形式の予備調査を行うとともに、口コミに関する情報収集を行い、研究デザインの改善に努めてきた。 | KAKENHI-PROJECT-16K02693 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K02693 |
複合振動を用いた新しい超音波加工の原理解明に関する研究 | 本研究は,超音波加工の高度化・高精度化を目的として,縦振動とねじり振動の複合振動を用いた超音波加工の原理について検討を行ったものである。検討はソーダライムガラスに対して超音波加工を行った際の加工痕,加工時間などの加工特性を求めることで行った。その結果,複合振動による超音波加工は,ねじり振動により砥粒が加工対象を削り取るように作用することによって加工されていることがわかった。これらより,複合振動の場合の砥粒一粒あたりの加工量は,縦振動のみの場合と比較して増加していることがわかった。したがって,加工速度の向上は,大きなねじり振動を用いて,砥粒の加工量を増加させることが効果的であると考えられる。超音波振動による脆性材料の加工法に,超音波加工と呼ばれる超音波振動をする工具ホーンと砥粒を用いた加工法がある。超音波加工は,脆性材料に対して三次元形状の加工を行うことが出来る数少ない加工方法である。従来,超音波加工は,縦振動のみを用いていたため,加工時間の短縮が困難となっていた。この問題に対して,超音波加工に用いる振動を縦振動とねじり振動を組み合わせた複合振動とすることで,加工時間を従来の約2/3に短縮できること,また,加工精度を向上できることが明らかにされている。しかし,複合振動による超音波加工の原理解明はまだ行われておらず,加工に最適な縦振動とねじり振動の割合についても明らかにされていない。本研究は,複合振動を用いた場合の加工原理の解明によって,更なる加工時間の短縮,及び加工精度の向上を目指している。平成27年度の研究実績は以下の通りである。1.縦振動とねじり振動の割合を変化させることが可能な超音波振動源の作成を行なった。本研究では,複合振動を振動源に斜めの切込みを用いることで得ている。この斜めの切込みの形状に着目し,切込みの深さを変化させることで縦振動とねじり振動の割合を変化させることが可能と考え,切れ込みの深さを変化させた超音波振動源の作成を行なった。そして,その超音波振動源の振動源の振動特性の測定を行い,切れ込みの深さにより縦振動とねじり振動の割合を変化させることが可能なことを明らかにした。2.加工時の加工面における砥粒の動きを観察可能な加工装置の作成を行なった。複合振動による加工時間の短縮,また加工精度の向上は,砥粒の動きが大きく影響していると考えられる。そこで,加工時にハイスピードカメラで砥粒の動きを観察することが可能なプリズムを用いた加工装置の作成を行なった。この装置により,加工時に下部より加工面における砥粒の動きを観察可能にした。当初の平成27年度の研究計画は,縦振動とねじり振動の割合を変化させることが可能な振動源の作成,及び加工時の加工面における砥粒の動きを観察可能な加工装置の作成を行なうことであった。進捗状況としては,振動源の作成,及び加工装置の作成を共に行うことができ,研究は順調に進んでいる。超音波振動による脆性材料の加工法に,超音波加工と呼ばれる超音波振動をする工具ホーンと砥粒を用いた加工法がある。従来,超音波加工は,縦振動のみを用いていたため,加工時間の短縮が困難となっていた。この問題に対して,超音波加工に用いる振動を縦振動とねじり振動を組み合わせた複合振動とすることで,加工時間を従来の約2/3に短縮できること,また,加工精度を向上できることが明らかにされている。しかし,複合振動による超音波加工の原理解明はまだ行われておらず,加工に最適な縦振動とねじり振動の割合についても明らかにされていない。本研究は,複合振動を用いた場合の加工原理の解明によって,更なる加工時間の短縮,及び加工精度の向上を目指している。平成27年度は,加工に用いるための超音波振動源の開発,及び加工装置の作成を行なっている。平成28年度の研究業績としては,縦振動とねじり振動を変化させた場合のソーダライムガラスの加工特性の検討を行なった。平成27年度に開発した超音波振動源を用いて,ソーダライムガラスに対して直径8 mmの穴加工実験を行い,その特性を明らかにした。その結果,加工時間は,縦振動に対してねじり振動が大きい場合に,短縮されることがわかった。また,加工に必要な圧力は,縦振動に対してねじり振動が大きい場合に,減少することがわかった。以上より,縦振動とねじり振動による複合振動を用いることにより,縦振動と比較して,加工時間は短縮し,加工に必要な圧力も減少することがわかった。当初の平成28年度の研究計画は,縦振動とねじり振動の割合を変化させた複合振動を用いた基礎的な加工特性として,加工時間及び加工精度の特性を明らかにすることであった。しかし,加工時間のみの検討となり,加工精度の検討が行えなかった。その原因は,実験による振動源の消耗が激しく,振動源の作成に時間を要したためである。脆性材料の加工法の1つに超音波縦振動する工具ホーンと砥粒を用いた超音波加工法がある。従来の超音波加工は縦振動のみを用いていたため,加工時間の短縮が困難となっていた。この問題に対して,申請者らは縦振動とねじり振動を組み合わせた複合振動を用いた加工を提案しており,また,複合振動を用いることで加工時間が短縮し,加工精度が向上することを明らかにしている。しかし,複合振動による超音波加工の原理解明はまだ行われていない。そこで本研究では複合振動を用いた場合の加工原理の解明によって,更なる加工時間の短縮,及び加工精度の向上を目指している。 | KAKENHI-PROJECT-15K05875 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K05875 |
複合振動を用いた新しい超音波加工の原理解明に関する研究 | 平成29年度の研究業績としては,複合振動を用いた場合の加工原理の解明のために,加工中の砥粒の挙動について観察を行った。観察は平成27年度に開発した各種装置を用い,ソーダライムガラスに対して先端が直径8 mmの工具ホーンを用いて加工を行った際の砥粒の挙動について観察を行った。その結果,縦振動を用いた場合の加工痕は点状または短い線状のものが生じていた。これより,縦振動による加工の際の砥粒は,ハンマリング効果によりソーダライムガラスに衝突していると考えられ,過去の検討と同様の結果となった。一方,複合振動を用いた場合の加工痕は,点状の他に工具ホーンの円周方向に沿うような弧状のものが多く生じていた。これより,複合振動による加工の際の砥粒は,縦振動によるハンマリング効果による衝突とねじり振動により加工対象を削り取る2つの挙動をしていると考えられる。これらより,複合振動を用いた場合の加工は,縦振動と比較して,砥粒1つあたりに加工量が多くなり,加工時間が短縮されたことが考えられる。また,その加工時間の短縮に伴い,加工停滞時の加工精度の悪化を防止し,結果として加工精度も向上したと考えられる。本研究は,超音波加工の高度化・高精度化を目的として,縦振動とねじり振動の複合振動を用いた超音波加工の原理について検討を行ったものである。検討はソーダライムガラスに対して超音波加工を行った際の加工痕,加工時間などの加工特性を求めることで行った。その結果,複合振動による超音波加工は,ねじり振動により砥粒が加工対象を削り取るように作用することによって加工されていることがわかった。これらより,複合振動の場合の砥粒一粒あたりの加工量は,縦振動のみの場合と比較して増加していることがわかった。したがって,加工速度の向上は,大きなねじり振動を用いて,砥粒の加工量を増加させることが効果的であると考えられる。本研究の最終的な目標は,複合振動を用いた場合の加工原理の解明によって,更なる加工時間の短縮,及び加工精度の向上を目指すことである。その目標のために,平成28年度は当初の計画通り以下の検討を行なう。超音波加工において,加工時間や精度は,加工対象やその形状,遊離砥粒等の種々の条件によって大きく変化する。そこで,縦振動とねじり振動の割合を変化させた複合振動を用いた基礎的な加工特性の検討として,超音波振動源の変位振動振幅,加工の際の圧力,及び遊離砥粒の濃度の変化に対する加工時間,及び加工精度の関係を明らかにする。本研究の最終的な目標は,複合振動を用いた場合の加工原理の解明によって,更なる加工時間の短縮,及び加工精度の向上を目指すことである。その目標のために,平成29年度は以下の検討を行なう。1.縦振動とねじり振動の割合を変化させた複合振動を用いた基礎的な加工特性の検討を行なう。平成28年度に引き続き,ソーダライムガラスを用いて,その加工特性を明らかにする。具体的には,平成28年度に検討した条件にて加工精度の検討を行なう予定である。また,複合振動の有意性を明確にするために,縦振動のみを用いた加工特性についても詳細に検討する予定である。2.加工の際の砥粒の動きを観察する。 | KAKENHI-PROJECT-15K05875 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K05875 |
実験用小型淡水魚類卵子の凍結保存:耐凍剤チャンネルの人為的発現によるアプローチ | 魚類卵子を凍結保存するには、サイズが小さくて細胞膜透過性が高い、未熟な未成熟卵子が適している。まず、ゼブラフィッシュのStage III中期卵子の体外成熟培養系を開発した。次いで、Stage III中期卵子に一時的に水・耐凍剤チャンネル(aquaporin 3)を発現させると、成熟率孵化率を低下させずに細胞膜透過性を向上できることを明らかにした。しかし、卵子のガラス化凍結保存には成功しなかった。魚類卵子を凍結保存するには、サイズが小さくて細胞膜透過性が高い、未熟な未成熟卵子が適している。まず、ゼブラフィッシュのStage III中期卵子の体外成熟培養系を開発した。次いで、Stage III中期卵子に一時的に水・耐凍剤チャンネル(aquaporin 3)を発現させると、成熟率孵化率を低下させずに細胞膜透過性を向上できることを明らかにした。しかし、卵子のガラス化凍結保存には成功しなかった。体積が大きい、小型淡水魚の未成熟卵子の凍結保存を成功させるためには、細胞膜の耐凍剤透過性を向上させることが必要である。その方法の一つとして、LHサージ前の早期のゼブラフィッシュ未成熟卵子(LHサージ前卵子)に水・耐凍剤チャンネルであるaquaporin-3(AQP3)のcRNAを注入して一定時間培養することによって、AQP3の細胞膜への蓄積量を増加させることが考えられる。本年度は、まず、LHサージ前卵子を受精率・孵化率に大きな影響を与えることなく正常に体外成熟させる方法の開発を試みた。ゼブラフィッシュLHサージ前卵子を従来から用いられている成熟培養法で体外成熟させた場合は、ほとんど受精・孵化しなかった。そこで、ウシ血清アルブミンを含むアルカリ性の新しい培養液を考案し、高率にLHサージ前卵子を受精・孵化させることができる体外成熟培養系を確立した。現在、この培養系を用いて、LHサージ前卵子の細胞膜により多くAQP3を蓄積させることができるかどうか検討中である。また、未成熟卵子の耐凍剤透過性を向上させるためには、水と耐凍剤の両方を透過するチャンネルよりも、耐凍剤のみを透過するチャンネルを発現させた方が効率がよいのではないかと考えられる。そこで、耐凍剤のみを透過する尿素輸送体の一種であるUT-A2のcRNAを合成して、細胞膜の水・耐凍剤透過性が高いメダカ未成熟卵子に注入して発現させた。その結果、耐凍剤透過性は無処理の未成熟卵子より向上したが、その程度は小さく、AQP3 cRNAを注入した卵子における向上より著しく低かった。現在、他のサブタイプの尿素輸送体が卵子の耐凍剤透過性の向上に有効かどうか検討している。体積が大きい、小型淡水魚の未成熟卵子の凍結保存を成功させるための方法の一つとして、より体積の小さい、未熟な卵子を用いる方法が考えられる。本年度は、まず、未熟で小型の未成熟卵子の体外成熟培養系の開発を試みた。雌ゼブラフィッシュから、Stage III終期卵子(0.650.75mm)より小さい直径0.500.60mmの卵子(Stage III中期卵子)を採取し、26°Cの20%のウシ胎仔血清(FCS)および10IU/mLのeCGを添加した0.5%BSA添加90%LM液(pH9.0)(前培養液)中で6時間培養した。そして、26°Cの1μg/mLの17α-20β-dihydrox-4-pregnen-3-on(DHP)を添加した0.5%BSA添加90%LM(pH9.0)(成熟培養液)で270分間成熟培養した。成熟率(8689%)と授精した後の受精率(5973%)は、前培養なしに直接DHP存在下で成熟培養した場合の成熟率(38%)と受精率(30%)に比べて大幅に向上した。また、一部の受精卵は培養後に孵化した(813%)。したがって、Stage III終期卵子より小さいStage III中期卵子は、正常に体外成熟させることが可能であることがわかった。次に、水・耐凍剤チャンネルであるAQP3のcRNAをStage III中期卵子に注入して前培養液中で6-12時間培養して発現させ、膜透過性が向上するかどうかを調べた。その結果、Stage III中期卵子の水・耐凍剤透過性は、AQP3の発現により約2倍向上することがわかった。そこで、この卵子の成熟率、受精率、孵化率をしらべた結果、いずれもAQP3cRNAを注入しなかった卵子の値と比べて有意な差はみられなかった。AQP3を発現させたStage III中期卵子を用いた小型淡水魚卵子の凍結保存の成功が期待される。昨年度は、ゼブラフィッシュの小型で未熟なstage III中期卵子の体外成熟培養系を開発した。さらに、この卵子に水・耐凍剤チャンネルであるaquaporin 3(AQP3)のcRNAを注入し、成熟率、受精率、孵化率に大きな影響を与えることなく、細胞膜の水透過性と種々の耐凍剤に対する透過性を向上させることに成功した。本年度は、AQP3を発現させたstage III中期卵子の耐凍剤毒性に対する感受性をしらべ、さらにガラス化凍結保存を試みた。 | KAKENHI-PROJECT-19300147 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19300147 |
実験用小型淡水魚類卵子の凍結保存:耐凍剤チャンネルの人為的発現によるアプローチ | 卵子を25°Cの10%プロピレングリコール添加90%LM液に1時間浸しても、AQP3の発現の有無にかかわらず、成熟率、受精率、孵化率はほとんど低下しなかった。したがって、プロピレングリコールはゼブラフィッシュstage III中期卵子の凍結保存に適していると考えられた。しかし、3040%のプロピレングリコールとフィコールおよびシュークロースを含むガラス化保存液PFSに25°Cで13分間浸した場合、AQP3の発現によって膜透過性は向上したものの、成熟率および受精率は著しく低下し、孵化した卵子はいなかった。次に25°CのPFS液で2分間処理してから、クライオループを用いて超急速ガラス化凍結した後に融解した結果、AQP3の発現にかかわらず、全ての卵子は融解後に細胞膜が破裂して死滅した。従って、細胞内氷晶形成による傷害を受けたと推察された。ゼブラフィッシュ卵子の凍結保存を実現するには、膜透過性をさらに向上させて細胞内氷晶形成を抑制する必要があると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-19300147 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19300147 |
原子核構造理論におけるデータ指向アプローチ | 本研究では、原子核殻模型にベイズ統計を導入し、原子核構造理論の不定性を評価することで、理論模型の限界や予言の精度を定量的に議論することを可能とすることを目的としている。原子核構造計算において、原子核殻模型は加速器実験によって得られる低エネルギー励起スペクトルをよく記述する最も有力な手法である。模型を規定するパラメータは、微視的に核力から出発した有効相互作用理論を用いて求められるが、このパラメータは多くの場合実験値を再現する程高精度ではないため、理論計算結果の予言能力を向上させるためにパラメータの現象論的補正が必要となる。ここにパラメータ由来の不定性が生じるが、これまでこの不定性を評価することができなかった。本研究では、原子核殻模型にベイズ統計を導入し、これらの不定性を評価する新たな理論枠組みを構築する。これにより、未計測の実験値が実際に計測された場合のインパクトを評価することを可能とし、将来の実験計画の指針を立てるような新たな手段の確立を目指す。並行して、これらに必要な殻模型計算の高速化や有効相互作用の構築をすすめる。当初は、マルコフ鎖モンテカルロによって、パラメータの不定性を取り込んだ相互作用の集団を構築する予定であったが、最も単純なMetropolice-Hasting法では、マルコフ鎖モンテカルロが定常分布に収束する速度が非常に遅く問題になることが明らかになった。そのため、本研究ではラプラス近似を導入し、安定した分布を得ることに成功した。p殻核(質量数5から16までの原子核)の原子核殻模型計算を例に取り、ベイズ統計における事前分布を一様分布として事後分布として、一定の不定性を許容し実験値を再現するようなハミルトニアンのパラメータセットの統計的な集団を、ラプラス近似を用いて生成した。このハミルトニアン各々に対し、殻模型計算を実行することによって、有効相互作用に含まれるパラメータに由来する不定性を議論することが可能となる。実際に束縛エネルギー、励起エネルギースペクトラムにおけるPhys. Rev. C 98, 061301 (2018)として原著論文を出版した。先行研究として現象論的フィットのみから作られたCohen-Kurath(CKPOT)相互作用による計算結果と、第一原理計算から求められれたIn-medium Similarlity Renormalization Group(IM-SRG)相互作用の結果を比較検討を進めた。CKPOT相互作用においては、導入されていなかったパラメータの質量依存性が有用であることを示した。また、IM-SRGは系統的な実験値とのずれを示しており、改善の余地があることを示した。p殻核では、パラメータの不定性を記述するハミルトニアンを50,000セット用意して、得られた物理量の不定性を議論することができた。しかしながら、同じ物理量を50,000回殻模型計算を実行することになり、そのままより重い原子核の質量領域に適用することは計算量の観点から不可能である。この問題を克服するため、線形近似による不定性評価方法を導入、検討中である。p殻核では有望な結果を示しており、今後sd殻核以降に適用していく。本研究では、ベイズ統計と原子核殻模型に基づいて理論の不定性を評価することで模型の限界や予言の精度を定量的に議論することを可能とすることを目的としている。これにより、原子核物理の指針を立てる新たな手段を確立することを目指す。当該年度では、p殻核(質量数5から16までの原子核)を例に取り、事前分布を一様分布として事後分布として実験値を再現するようなハミルトニアンのサンプリングをマルコフ鎖モンテカルロによって生成する枠組みを構築した。先行研究では、実験値をカイ自乗フィットで再現するように構築されたCohen-Kurath有効相互作用と呼ばれる相互作用が知られている。これを検討したところ、フィットすべき実験値に適切でないデータが含まれていることや、二体行列要素に質量依存性が入っていなことがフィットの精度を悪くしていることが判明した。質量の-0.3乗の因子を、質量依存性として二体行列要素に乗すると、エネルギースペクトル・束縛エネルギーの平均自乗誤差は365keVから231keVに改善した。これらの知見を踏まえ、質量依存性を導入した有効相互作用のランダムウォークを考え、マルコフ鎖モンテカルロによる事後分布を作ることに成功し、理論の不定性を議論した。しかしながら、マルコフ鎖モンテカルロによる最も単純なMetropolice-Hasting法では、マルコフ鎖モンテカルロが定常分布に収束する速度が非常に遅く、100万ステップのオーダーが必要となってしまうという問題が判明した。そのため、事後分布がこの問題をサンプリングにレプリカ交換モンテカルロ法や適応的サンプリング法の検討・適用を進めた。並行して、上記に必要な殻模型計算に関連するコード開発や殻模型計算手法の検討を進めた。p殻核を対象とする殻模型相互作用のベイズ統計による解析を目的として、事後分布を目標分布とするサンプリングをマルコフ鎖モンテカルロ法により実現した。原子核殻模型計算における分布関数はカイ自乗の指数関数とするが、複雑な応答を示すと考えられている。このため、単純なMetropolice-Hasting法ではうまくいかないが、適応的サンプリングやレプリカ交換モンテカルロが有望となることが判明した。これは今後の研究発展の基礎となる有用な知見と考えている。これによって、p殻原子核殻模型計算のハミルトニアン行列要素から生じる理論の不定性の議論が可能となった。 | KAKENHI-PROJECT-17K05433 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K05433 |
原子核構造理論におけるデータ指向アプローチ | また、殻模型計算に必要なコード開発や計算手法の検討は着実に進めており、論文執筆は次年度移行になったが、あわせて(2)順調とした。本研究では、原子核殻模型にベイズ統計を導入し、原子核構造理論の不定性を評価することで、理論模型の限界や予言の精度を定量的に議論することを可能とすることを目的としている。原子核構造計算において、原子核殻模型は加速器実験によって得られる低エネルギー励起スペクトルをよく記述する最も有力な手法である。模型を規定するパラメータは、微視的に核力から出発した有効相互作用理論を用いて求められるが、このパラメータは多くの場合実験値を再現する程高精度ではないため、理論計算結果の予言能力を向上させるためにパラメータの現象論的補正が必要となる。ここにパラメータ由来の不定性が生じるが、これまでこの不定性を評価することができなかった。本研究では、原子核殻模型にベイズ統計を導入し、これらの不定性を評価する新たな理論枠組みを構築する。これにより、未計測の実験値が実際に計測された場合のインパクトを評価することを可能とし、将来の実験計画の指針を立てるような新たな手段の確立を目指す。並行して、これらに必要な殻模型計算の高速化や有効相互作用の構築をすすめる。当初は、マルコフ鎖モンテカルロによって、パラメータの不定性を取り込んだ相互作用の集団を構築する予定であったが、最も単純なMetropolice-Hasting法では、マルコフ鎖モンテカルロが定常分布に収束する速度が非常に遅く問題になることが明らかになった。そのため、本研究ではラプラス近似を導入し、安定した分布を得ることに成功した。p殻核(質量数5から16までの原子核)の原子核殻模型計算を例に取り、ベイズ統計における事前分布を一様分布として事後分布として、一定の不定性を許容し実験値を再現するようなハミルトニアンのパラメータセットの統計的な集団を、ラプラス近似を用いて生成した。このハミルトニアン各々に対し、殻模型計算を実行することによって、有効相互作用に含まれるパラメータに由来する不定性を議論することが可能となる。実際に束縛エネルギー、励起エネルギースペクトラムにおけるPhys. Rev. C 98, 061301 (2018)として原著論文を出版した。先行研究として現象論的フィットのみから作られたCohen-Kurath(CKPOT)相互作用による計算結果と、第一原理計算から求められれたIn-medium Similarlity Renormalization Group(IM-SRG)相互作用の結果を比較検討を進めた。CKPOT相互作用においては、導入されていなかったパラメータの質量依存性が有用であることを示した。また、IM-SRGは系統的な実験値とのずれを示しており、改善の余地があることを示した。今後は、p殻核におけるマルコフ鎖モンテカルロ法のサンプリングを用いて、原子核構造理論の不定性を評価・議論を深め、論文にまとめて発表する予定である。これまでは束縛エネルギー・励起エネルギーを中心に議論してきたが、磁気能率やガモフテラー遷移などの興味深い観測量に対象を広げていく。sd殻核への適用を検討する。 | KAKENHI-PROJECT-17K05433 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K05433 |
ポル・ポト政権後のカンボジアにおける政教関係の解明 | 本研究は、行政資料およびサンガ(僧団)資料の分析によって、ポル・ポト政権後のカンボジアにおける政教関係を明らかにすることを目指した。社会主義からの体制移行にもかかわらず、ポル・ポト政権崩壊後から現在にいたるまでの仏教政策には、信徒の教育やインフラ建設、社会福祉のためにサンガを利用してきたという点において連続性がみられる。僧侶は政策の一部を担うことが期待されており、僧侶もまたそれに応じてきた。国家とサンガの関係性は、世俗権力が仏教に積極的に介入してきたことを示しているものの、介入度の強さは一定しておらず、政治状況と密接に関連していることが明らかになった。本研究は、政府およびサンガ(僧団)上層部によって作成された資料の分析を通して、ポル・ポト政権後のカンボジアにおける政教関係の様相を明らかにすることを目的としている。初年度にあたる平成28年度は、本研究課題の開始以前に実施した調査で収集したデータや文献資料にもとづき、今後の研究推進に向けた課題を明らかにすべく研究成果の発表を行ったほか、カンボジアでの文献収集と聞き取り調査を実施した。具体的には、まず、平成28年9月に開催された日本宗教学会において、先行研究やこれまで収集した資料をもとに考察を行い、研究成果を発表した。その後、平成28年12月から平成29年2月にかけてカンボジアで調査を実施し、首都プノンペンの国立公文書館や仏教研究所、宗教省、情報省などの各種機関での文献資料の収集、全国幹部僧侶会議における参与観察、僧侶や宗教省職員への聞き取りを実施した。文献資料については現在も分析中であるが、「仏教を利用する」という政府の方針がポル・ポト政権崩壊後から現在まで一貫していることが看取される。今回の全国幹部僧侶会議では、仏教教育の整備、青少年への道徳教育、実践の強化、寺院や僧侶に対する管理・規制といった点が現在の主な課題となっていることが見てとれた。また、マハーニカーイ派の僧令では、新たな宗派が生まれることを抑制するため、委員会が任命していない授戒師のもとでの得度を認めないとする内容の記述がみられた。これは、一部の僧侶グループが他国の授戒師のもとで得度し、他国と同様の実践を行っていたことを背景としている。こうした動きからは、国家・サンガ上層部と一部の僧侶グループがせめぎ合う状況にあることがわかる。このような新たな行動を制止し、統制するというサンガ上層部の行為からは、サンガが守るべき「律」よりも自国のサンガの法が優位にあるという現状を確認することができた。平成28年度は、当初の計画通りに研究成果の発表を行い、またカンボジアに渡航して文献資料の収集と聞き取り調査を実施した。カンボジアでは文献資料が適切に保管されていないために収集が非常に困難であり、1980年代の一部の僧令については収集できていない状況にある。しかし、これは想定内のことであり、未収集のものについては次回の渡航時に収集することを予定している。今回の渡航では文献資料の保管状況の把握も目的の一つとしており、さまざまな機関を訪問して文献資料の保管状況の把握と収集に努めた。こうした広範にわたる文献資料の収集の結果、収集を予定していた資料以外の貴重な文献資料を入手し、地方における実践の実態把握のための一助となった。以上の理由により、研究計画はおおむね順調に進んでいるものと評価できる。平成29年度は、本研究課題の最終年度にあたるため、これまで収集してきた全国幹部僧侶年次会議の僧令や会議資料の分析によって仏教政策について検討し、学会および研究会での口頭発表、論文執筆によって研究成果を公開したほか、カンボジアでの調査を実施した。調査では、仏教政策やサンガ(僧団)組織にかかわる文献資料の収集および社会主義体制下の仏教実践・法話に関する実態把握を行った。具体的には、1980年代の仏教政策やサンガの組織運営に関する文献資料、1992年以降に発行された宗教省の年次報告書やサンガに関する法令資料を中心に収集した。また、全国幹部僧侶年次会議の歴史的変遷、サンガ組織の役割についてプノンペン都の幹部僧侶への聞き取りを行い、社会主義体制下の仏教実践や法話の内容についてスヴァーイリエン州の僧侶や在俗信徒への聞き取りを実施した。その結果、収集した文献資料から、社会主義体制下では僧侶に国家建設への協力が求められていたことが確認できた。とりわけ、プロパガンダにおける僧侶の役割は重要であり、仏教儀礼などでの法話を通じて、仏法による道徳教育だけではなく、カンプチア人民革命党の政策や社会主義革命についても在俗信徒に教育することが求められていた。そうした実態を把握するために実施した聞き取り調査では、法話の中で仏法に関する内容とカンプチア人民革命党の支援を要請する内容が同時に説かれていたことが明らかになり、社会主義体制下の仏教政策とそれに応答してきた僧侶の具体的な実践について把握することができた。本研究は、行政資料およびサンガ(僧団)資料の分析によって、ポル・ポト政権後のカンボジアにおける政教関係を明らかにすることを目指した。社会主義からの体制移行にもかかわらず、ポル・ポト政権崩壊後から現在にいたるまでの仏教政策には、信徒の教育やインフラ建設、社会福祉のためにサンガを利用してきたという点において連続性がみられる。僧侶は政策の一部を担うことが期待されており、僧侶もまたそれに応じてきた。国家とサンガの関係性は、世俗権力が仏教に積極的に介入してきたことを示しているものの、介入度の強さは一定しておらず、政治状況と密接に関連していることが明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-16H07035 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H07035 |
ポル・ポト政権後のカンボジアにおける政教関係の解明 | 平成29年度は、サンガと宗教政策に関する文献資料の収集・分析および聞き取り調査を行い、ポル・ポト政権崩壊後の政教関係の具体的な特徴を浮かび上がらせる。具体的には、サンガに関する資料や全国幹部僧侶会議で決定される僧令の内容を検証することで、サンガ上層部の意図の変遷を明らかにする。また、会議資料にみられる仏教についての政治家の発言や宗教政策に関する資料を検証しながら、宗教政策の変遷を探る。そして、これらの研究成果をまとめて、9月に開催される「日本宗教学会」において研究発表を行う。その後、10月にカンボジアに渡航して、首都プノンペンでの文献資料の収集を引き続き実施するとともに、サンガ組織の具体的な運営方法や全国幹部僧侶会議の歴史的変遷について、サンガ上層部の僧侶や宗教省職員への聞き取りを行う。最終的に、これらの研究成果を論文にまとめて学会誌に投稿する。29年度が最終年度であるため、記入しない。文化人類学29年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-16H07035 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H07035 |
子供との動的インタラクションが可能なロボットの実現 | 核家族化,少子高齢化等の影響により,子供の外遊びの機会が減っている.本研究の目的は,子供と動的なインタラクションが可能な生活支援ロボットを実現することである.これが実現すると,屋外環境下においてもロバストに動作可能なロボットが開発されることと,ロボットによる家事支援や伝統的な遊びの継承が可能になる.具体的には,ルールが簡潔で役割が明確に分かれている「だるまさんが転んだ」をテーマに扱った.このテーマを解決することによりロボットの性能評価を明確に行えた.本研究は,以下の2点の実現を目指した.1.屋外で人と「だるまさんが転んだ」遊びが可能な移動ロボットの開発2.複数台のロボットを用いた「だるまさんが転んだ」による人の行動理解・協調制御の実現実験によりシステムの妥当性を確認した.まず,人同士の「だるまさんが転んだ」をビデオで撮影し,観測した.観測の結果,4つの姿勢に分類することが可能なことがわかった.普通に走る姿勢,腕を大きく開いた姿勢,腕を直角に曲げている姿勢,忍者のように交互に左右の足を前に出す姿勢である.本手法は,基本的には,人と同等の大きさのものを人として認識する.そのため,例えば,姿勢によっては,腕を誤検出してしまい,人が1人しか存在しない場合でも,2人や3人とシステムが誤認識する場面が生じた.そこで,認識した物体の幅を比較することにより,胴体を認識することに成功した.また,腕と人の胴体が重なり,切り分けが困難な場合においても,解決する手法を開発した.さらに複数人が重なるオクリュージョンにおいても対応可能な手法を開発した.成果は,ROBOMECH J.に掲載された.本研究室で開発している生活支援ロボットASAHIに「だるまさんが転んだ」のシステムを実装し,ロボカップ@ホームリーグOPLの世界大会に出場した.結果として,Best in Navigation賞を受賞した.核家族化,少子高齢化等の影響により,子供の外遊びの機会が減っている.本研究の目的は,子供と動的なインタラクションが可能な生活支援ロボットを実現することである.これが実現すると,屋外環境下においてもロバストに動作可能なロボットが開発されることと,ロボットによる家事支援や伝統的な遊びの継承が可能になる.具体的には,ルールが簡潔で役割が明確に分かれている「だるまさんが転んだ」をテーマに扱う.このテーマを解決することによりロボットの性能評価を明確に行える.本研究は,以下の2点の実現を目指す.1.屋外で人と「だるまさんが転んだ」遊びが可能な移動ロボットの開発2.複数のロボットを用いた「だるまさんが転んだ」による人の行動理解・協調制御の実現平成28年度は,(I)「屋外で人と「だるまさんが転んだ」遊びが可能な移動ロボットの開発」のために,まず,(I)のサブテーマであるa)屋外環境下において移動可能なロボットの開発とb)屋外環境下におけるロバストな人追従技術の確立を並列に行った.まずは,屋外で移動可能なロボットの開発を行った.申請者の今までの蓄積した技術を応用できるように,本研究室で開発している生活支援ロボットASAHIで用いているPIONEER-3DXという移動ロボットをベースに試作機を開発した.また,申請者がこれまで研究してきたロボットの親和性を向上させるための小型のコミュニケーションロボットである「ロボットアバタ」を配置した.「だるまさんが転んだ」を行う際に,このロボットが,振り向くことや,指差しをすることで,「だるまさんが転んだ」の鬼の役割を示す.これがアウトを判定するサブシステムと連動し,システム全体として機能することを確認した.LRF(レーザ距離センサ)を用いて,「だるまさんが転んだ」を行うにあたり,次の問題点が生じていた.1つ目は,人の胴体と人の腕を間違うことがあることであり,2つ目は腕と胴体の重なり方によっては,追跡する対象者を見失うことである.これに対し,前者に対しては,人の胴体と腕の幅を比較する「幅判定手法」を開発し,対応した.後者に対しては対象者の見失いが生じた時点で,仮の検出点を生成する「重なり判定手法」を開発することで見失いをなくした.また,今までに実現できていなかったロボットの状態(「だるまさんが転んだ」における指差し等)を示すためのロボットアバタを配置し,システムが問題なく機能することを確認している.なお,屋外で移動可能なロボットの開発は,移動ロボットの納期の問題により若干の遅れが生じている.核家族化,少子高齢化等の影響により,子供の外遊びの機会が減っている.本研究の目的は,子供と動的なインタラクションが可能な生活支援ロボットを実現することである.これが実現すると,屋外環境下においてもロバストに動作可能なロボットが開発されることと,ロボットによる家事支援や伝統的な遊びの継承が可能になる.具体的には,ルールが簡潔で役割が明確に分かれている「だるまさんが転んだ」をテーマに扱う.このテーマを解決することによりロボットの性能評価を明確に行える.本研究は,以下の2点の実現を目指す.1.屋外で人と「だるまさんが転んだ」遊びが可能な移動ロボットの開発2.複数数のロボットを用いた「だるまさんが転んだ」による人の行動理解・協調制御の実現平成29年度は,実験によりシステムの妥当性を確認した. | KAKENHI-PROJECT-16K00363 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K00363 |
子供との動的インタラクションが可能なロボットの実現 | まず,人同士の「だるまさんが転んだ」をビデオで撮影し,観測した.観測の結果,4つの姿勢に分類することが可能なことがわかった.普通に走る姿勢,腕を大きく開いた姿勢,腕を直角に曲げている姿勢,忍者のように交互に左右の足を前に出す姿勢である.本手法は,基本的には,人と同等の大きさのものを人として認識する.そのため,例えば,姿勢によっては,腕を誤検出してしまい,人が1人しか存在しない場合でも,2人や3人とシステムが誤認識する場面が生じた.そこで,認識した物体の幅を比較することにより,胴体を認識することに成功した.また,腕と人の胴体が重なり,切り分けが困難な場合においても,解決する手法を提案した.さらに,本研究室で開発している生活支援ロボットASAHIに「だるまさんが転んだ」のシステムを実装し,ロボカップ@ホームリーグOPL(生活支援ロボットを競技形式で競う競技会)の世界大会に出場した.結果として,Best in Navigation賞を受賞した.人同士の「だるまさんが転んだ」をビデオで撮影し,観測した.観測の結果,4つの姿勢に分類することが可能なことがわかった.普通に走る姿勢,腕を大きく開いた姿勢,腕を直角に曲げている姿勢,忍者のように交互に左右の足を前に出す姿勢である.本手法は,LRF(レーザ距離センサ)を用いて,基本的には,人と同等の大きさのものを人として認識する.そのため,例えば,姿勢によっては,腕を誤検出してしまい,人が1人しか存在しない場合でも,2人や3人とシステムが誤認識する場面が生じた.そこで,認識した物体の幅を比較することにより,胴体を認識することに成功した.また,腕と人の胴体が重なり,切り分けが困難な場合においても,解決する手法を提案した.昨年度,移動ロボットの納期が遅れたため,屋外で移動可能なロボットの開発は若干遅れている.核家族化,少子高齢化等の影響により,子供の外遊びの機会が減っている.本研究の目的は,子供と動的なインタラクションが可能な生活支援ロボットを実現することである.これが実現すると,屋外環境下においてもロバストに動作可能なロボットが開発されることと,ロボットによる家事支援や伝統的な遊びの継承が可能になる.具体的には,ルールが簡潔で役割が明確に分かれている「だるまさんが転んだ」をテーマに扱った.このテーマを解決することによりロボットの性能評価を明確に行えた.本研究は,以下の2点の実現を目指した.1.屋外で人と「だるまさんが転んだ」遊びが可能な移動ロボットの開発2.複数台のロボットを用いた「だるまさんが転んだ」による人の行動理解・協調制御の実現実験によりシステムの妥当性を確認した.まず,人同士の「だるまさんが転んだ」をビデオで撮影し,観測した.観測の結果,4つの姿勢に分類することが可能なことがわかった.普通に走る姿勢,腕を大きく開いた姿勢,腕を直角に曲げている姿勢,忍者のように交互に左右の足を前に出す姿勢である.本手法は,基本的には,人と同等の大きさのものを人として認識する.そのため,例えば,姿勢によっては,腕を誤検出してしまい,人が1人しか存在しない場合でも,2人や3人とシステムが誤認識する場面が生じた.そこで,認識した物体の幅を比較することにより,胴体を認識することに成功した.また,腕と人の胴体が重なり,切り分けが困難な場合においても,解決する手法を開発した.さらに複数人が重なるオクリュージョンにおいても対応可能な手法を開発した.成果は,ROBOMECH J.に掲載された.本研究室で開発している生活支援ロボット | KAKENHI-PROJECT-16K00363 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K00363 |
シンクロトロン放射光を利用したX線検査のための代謝機能診断薬の開発 | これまで、核医学検査や核磁気共鳴による検査でしか得られなかった生体の機能情報をX線検査で得ようとする新たな分子イメージングの薬剤開発を行ってきた。機能診断薬開発のための被写体としての妥当性をトレーサー実験により評価した。病態モデル動物の被写体として作成した、ヒト大腸癌由来培養細胞DLD-1移植担癌ヌードマウスに無担体3-[^<125>I]iodo-α-methyl-L-tyrosine([^<125>I]AMT)1.11kBqを尾静脈より投与し、経時的に体内分布を求め、腫瘍集積性を調べた。その結果、[^<125>I]AMTは、投与後60分で周辺筋組織の5.21倍もの高い腫瘍組織集積性を認めた。オートラジオグラフにおいても、腫瘍組織および腎への著明な集積が観察されコールドのAMTを投与した検体は蛍光X線CTの被写体として適当と考えられた。現在、高エネルギー加速器研究機構において安定同位体沃素標識AMTの蛍光X線CTによる撮像を行っている。更に本化合物の腫瘍組織集積機序についてアフリカツメガエル卵母細胞に発現させたアミノ酸トランスポーターを用いて分子生物学的に検討した。その結果、[^<125>I]AMTは、代謝が盛んなヒトの腫瘍細胞で高発現が報告されているトランスポーターhLAT1及びh4F2hcからなるヘテロダイマーの輸送基質であることが判明した。一方、グルコース誘導体BDGの合成に関しては、化合物の生成は確認できたものの精製が難しく製剤化に至っていない。今後、BDGの精製法の確立と量産が期待される。この他、数種の化合物に関して細胞レベルで集積性の検討を始めている。シンクロトロン放射光を利用したX線検査のための代謝機能診断薬の開発の手始めとして、撮影系に申請者らが既に開発した反射型結晶素子を用いたX線位相撮影系を選択し、これによる機能造影剤の評価を病態モデル動物の撮影により行った。X線は、高エネルギー加速器研究機構のARにおいてベンディングマグネット光源装置より放射されるX線エネルギー30keVのシンクロトロン放射光を、非対称シリコン単結晶4枚で空間干渉効果を高めて利用した。画像は増感紙を用いずに乳房撮影用X線フィルムに記録した。被写体として、DLD-1(ヒト大腸癌由来培養細胞)担癌ヌードマウスを作成し、合成および注射液に調製したチロシン誘導体3-iod-α-methyl-L-tyrosine(I-AMT)25mg/kgを投与し5,10,15,30分で屠殺して用いた。いずれの被写体においても造影効果は認められなかった。今後、他の撮影系による評価を行うことが期待される。これまで、核医学検査や核磁気共鳴による検査でしか得られなかった生体の機能情報をX線検査で得ようとする新たな分子イメージングの薬剤開発を行ってきた。機能診断薬開発のための被写体としての妥当性をトレーサー実験により評価した。病態モデル動物の被写体として作成した、ヒト大腸癌由来培養細胞DLD-1移植担癌ヌードマウスに無担体3-[^<125>I]iodo-α-methyl-L-tyrosine([^<125>I]AMT)1.11kBqを尾静脈より投与し、経時的に体内分布を求め、腫瘍集積性を調べた。その結果、[^<125>I]AMTは、投与後60分で周辺筋組織の5.21倍もの高い腫瘍組織集積性を認めた。オートラジオグラフにおいても、腫瘍組織および腎への著明な集積が観察されコールドのAMTを投与した検体は蛍光X線CTの被写体として適当と考えられた。現在、高エネルギー加速器研究機構において安定同位体沃素標識AMTの蛍光X線CTによる撮像を行っている。更に本化合物の腫瘍組織集積機序についてアフリカツメガエル卵母細胞に発現させたアミノ酸トランスポーターを用いて分子生物学的に検討した。その結果、[^<125>I]AMTは、代謝が盛んなヒトの腫瘍細胞で高発現が報告されているトランスポーターhLAT1及びh4F2hcからなるヘテロダイマーの輸送基質であることが判明した。一方、グルコース誘導体BDGの合成に関しては、化合物の生成は確認できたものの精製が難しく製剤化に至っていない。今後、BDGの精製法の確立と量産が期待される。この他、数種の化合物に関して細胞レベルで集積性の検討を始めている。 | KAKENHI-PROJECT-12770498 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12770498 |
「言語力」及び「表現力」を育成する書字教育カリキュラムの開発 | 本研究は、国語科の「文字を書くこと」に関する学習の効率化・最適化を図るために、これまで別立てのカリキュラムとして行われてきた書写学習を、国語の言語活動の学習などと効果的に関わらせ、「言語力」や言語的「表現力」の育成に機能するよう再組織することを目的とする。具体的には、文字・表記・語句等の学習や国語の言語活動と書写学習との関連性を検証し、新たな「書字学習」として組織し直した上で、そのために必要なカリキュラムと教授法の開発を行う。本研究は、国語科の「文字を書くこと」に関する学習の効率化・最適化を図るために、これまで別立てのカリキュラムとして行われてきた書写学習を、国語の言語活動の学習などと効果的に関わらせ、「言語力」や言語的「表現力」の育成に機能するよう再組織することを目的とする。具体的には、文字・表記・語句等の学習や国語の言語活動と書写学習との関連性を検証し、新たな「書字学習」として組織し直した上で、そのために必要なカリキュラムと教授法の開発を行う。 | KAKENHI-PROJECT-19K02753 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K02753 |
神経突起伸長におけるAPCの機能 | 癌抑制遺伝子APC(adenomatou polyposis coli)は、大腸癌の大多数の症例で変異が見出されており、大腸腺腫・癌発症の原因遺伝子であると考えられている。さらに、APCは脳神経系おいて最も高い発現がみられることから、神経細胞の機能に重要な役割を担っていることも示唆されている。さらに、我々がAPC結合蛋白質として見出したAsefとNeurodap1も脳神経系でもっとも高い発現を示すことから神経細胞の機能に重要な役割を果たしている可能性があると考えられる。まず、我々は神経細胞のモデルとして一般的に用いられるPC12細胞を用いて神経細胞におけるAPC/Asef複合体形成の生理的意義を検討した。その結果、APCとAsefの結合を阻害するdominant-negative変異体を強制発現することによりNGF刺激で引き起こされるPC12細胞の神経様突起伸長を強く抑制した。さらに、RNAiによりAPCの発現を阻害するとやはりNGFによる突起伸長が強く阻害されることも見出している。これらの結果から、APC/Asef複合体が突起伸長に重要な働きをしていることが示唆された。また、我々はゴルジ体の重槽構造の維持に重要な膜貫通型のタンパク質GiantinがAPCと複合体を形成することを見出した。さらに、GiantinはAPC/Neurodap1と三者複合体を形成するだけでなく、Neurodap1によるAPCのユビキチン化を促進することも見出した。これらの知見は、APC-Neurodap1複合体の生理的役割をより詳細に理解するうえでの重要な手がかりになったと考えている。我々は、1)APCがRING fingerタンパク質Neurodap1と結合してユビキチン化をうけプロテアソーム依存性に分解をうけること、2)PC12細胞をNGFで刺激するとこのNeurodap1によるAPCの分解が亢進すること、3)APCやNeurodap1の発現をRNAiによって抑制するとNGFによる神経突起伸長が抑制されることを見出し、神経突起伸長におけるAPC、Neurodap1の重要性を明らかにすることを目的として研究を進めてきた。1)Neurodap1によるAPCの分解誘導がNGFによる突起伸長に重要であることを証明するため、APCとNeurodap1の結合を阻害する活性をもつNeurodapのdominant-negative変異体を作製した。これをPC12細胞に発現するとNGFによる突起伸長が阻害されることが明らかとなり、Neurodap1とAPCの結合、ひいてはAPCの分解が突起伸長に重要であることが示唆された。2)さらに、Neurodap1と結合できるがユビキチン化を受けないAPCの変異体の作用を調べ、この変異体によってNGFによる突起伸長が阻害されることを明らかにした。この結果からも、Neurodap1によるAPCのユビキチン化、分解の重要性が確認された。3)1)、2)の実験条件下で、APCのgrowth coneへの集積が低下していることが明らかとなった。APCのNeurodap1の代謝回転増大がgrowth coneへの集積に重要である可能性があると考えられる。4)初代培養小脳神経細胞を用いて、BDNFによりAPCの代謝回転が亢進することを明らかにした。5)Neurodap1ノックアウトマウスの初代培養小脳神経細胞は突起伸長が低下していることを見出した。癌抑制遺伝子APC(adenomatou polyposis coli)は、大腸癌の大多数の症例で変異が見出されており、大腸腺腫・癌発症の原因遺伝子であると考えられている。さらに、APCは脳神経系おいて最も高い発現がみられることから、神経細胞の機能に重要な役割を担っていることも示唆されている。さらに、我々がAPC結合蛋白質として見出したAsefとNeurodap1も脳神経系でもっとも高い発現を示すことから神経細胞の機能に重要な役割を果たしている可能性があると考えられる。まず、我々は神経細胞のモデルとして一般的に用いられるPC12細胞を用いて神経細胞におけるAPC/Asef複合体形成の生理的意義を検討した。その結果、APCとAsefの結合を阻害するdominant-negative変異体を強制発現することによりNGF刺激で引き起こされるPC12細胞の神経様突起伸長を強く抑制した。さらに、RNAiによりAPCの発現を阻害するとやはりNGFによる突起伸長が強く阻害されることも見出している。これらの結果から、APC/Asef複合体が突起伸長に重要な働きをしていることが示唆された。また、我々はゴルジ体の重槽構造の維持に重要な膜貫通型のタンパク質GiantinがAPCと複合体を形成することを見出した。さらに、GiantinはAPC/Neurodap1と三者複合体を形成するだけでなく、Neurodap1によるAPCのユビキチン化を促進することも見出した。これらの知見は、APC-Neurodap1複合体の生理的役割をより詳細に理解するうえでの重要な手がかりになったと考えている。 | KAKENHI-PROJECT-17770156 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17770156 |
銅鏡の受容からみる舶載文物への適応と古墳時代社会の特質 | 日本列島の各地の博物館などに収蔵されている銅鏡を実見して、データベースの作成をおこなった。製作技術という観点から、銅鏡を比較し、銅鏡には製作技術の違いに基づく差があることを具体的に示した。また、出土状況や出土古墳の規模や分布を検討し、系統ごとで日本列島における流通形態が異なること、副葬方法についても相違があることを指摘し、銅鏡に対して多様な生産・流通システムが存在した可能性を述べた。日本列島の各地の博物館などに収蔵されている銅鏡を実見して、データベースの作成をおこなった。製作技術という観点から、銅鏡を比較し、銅鏡には製作技術の違いに基づく差があることを具体的に示した。また、出土状況や出土古墳の規模や分布を検討し、系統ごとで日本列島における流通形態が異なること、副葬方法についても相違があることを指摘し、銅鏡に対して多様な生産・流通システムが存在した可能性を述べた。平成20年度については、研究実施初年度ということもあり、まずは倭鏡についてデータの集成、カード化を実施した。当初予定の範囲については、ほぼカード化・データベース化を完了した。あわせて、さらなる情報収集が必要と考えた資料については、実物資料の閲覧をおこない、写真撮影や図面の作成などを進めた。できるだけ多数の銅鏡を一括して出土した古墳に対象を限定し、さらに重要な資料を数多く所蔵する機関を訪問することで、効率化を図った。こうした資料収集の過程で蓄積した、とくに断面図は、研究目的である倭鏡のデザインと大きさの関係性に迫るうえではきわめて有効な材料となりうる。今後、継続してさらなるデータの蓄積が必要であることも痛感した。さらに、今年度はすでに完了していたデータ収集結果をもとに、論考を発表した。いずれも三角縁神獣鏡にかかわるものである。とりわけ、東海地方をケーススタディとした、地域における銅鏡の受容のあり方について考察を試みた。生産面における分析をふまえて、分布の状況、出土遺構の種類、古墳の規模との関係性、古墳における副葬配置をもとに、地域における銅鏡の受容のあり方についてモデル化をおこなった。また、古墳時代前期において、銅鏡の受容形態に活気がみとめられることを指摘した。さらに、同様の視点で検討対象範囲を日本列島に広げた内容の論考も現在作成中である。平成21年度は、引き続きデータの集成を進めるとともに、さらに論考の作成にとりかかる予定である。平成20年度に作成したデータベースをもとに、全国各地の博物館や資料館、大学、教育委員会などで保管されている資料を可能な限り実見し、写真や図面による記録を進めた。研究機関の変更が生じたため、当初予定のすべてについて資料化を実施することはできなかったが、研究を進行するうえでの支障が出ないように配慮しながら、重要資料を重点的に調査した。そのうえで、得られた調査成果をふまえて、とくに製作技術という観点から、漢鏡、三国鏡、倭鏡について比較検討を実施した。結果として、銅鏡の諸系統にみる製作技術の特徴をこれまで以上にはっきりとあぶるだすことができた。また、出土状況や出土古墳の規模や分布から、系統ごとに日本列島における流通形態が異なること、副葬方法についても相違があることを指摘し、銅鏡に対して多様な生産・流通システムが存在した可能性を述べた。そのうえで、古墳出現期において銅鏡の授受に際していかなる実態を想定しうるかを、地域における古墳の異同から説明することを試みた。とくに、三角縁神獣鏡が一元的な授受によって各地に分配されながらも、出土古墳にみる多様性が存在する背景として、前方後円墳成立期においては、王権と地域とのかかわりがあくまでも文物の授受を基軸としたものであったという事情を想定した。 | KAKENHI-PROJECT-20820056 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20820056 |
マルチモーダル音声コミュニケーションの発達 | 異種感覚の情報の統合過程については,生得的か学習されるものかという個体発生の問題が,古くから研修者の興味を集めてきた。本研究では,マガーク効果を含めた視聴覚音声知覚における統合過程の年齢的変化を調べることにより,この問題を考える手がかりを得ることをにした。被験者は,3歳・7歳・11歳・20歳の4群で,各群10人ずつとした。刺激材料は,日本人話者1人が発話した/ba/と/da/で,視聴覚刺激は,もともとの声と映像の一致した組み合わせの他に,/ba/と/da/の間で映像と音声を入れ替えたものを矛盾刺激として作成した。これらクリアな刺激の他に,刺激を劣化させたものも作成した。音の劣化は,カットオフ周波数730kHzのローパスフィルター,映像の劣化は,口の部分へのモザイク効果によった。それぞれ,単一モダリティだけでの正答率が大学生で80%くらいになるような劣化の程度を予備実験によって決定していた。呈示モダリティには音のみ(明瞭およびローパス劣化),映像のみ(明瞭およびモザイク劣化),およびこれらを組み合わせた4通りの視聴覚条件があった。課題は,話者が何と言ったと感じたかを'ba'か'da'の口頭で答えることであった。単一モダリティ条件では,刺激を劣化させない場合,音の聞き取り,読唇とも同定は正確で,年齢差はなかったが,劣化させた場合,聞き取りも読唇も3歳児が他の年齢よりも有意に悪い成績を示した。AV条件では,音がクリアな場合,マガーク効果の大きさに有意な年齢差はなかった。音が劣化している場合,3歳児の反応が他の年齢群と有意に異なり,3歳児は,一致刺激での視覚による促進効果は大人と同じくらい大きかったのに,矛盾刺激でのマガーク効果は他の年齢群よりも有意に小さかった。以上の結果は,AV一致刺激に対する統合が生得的ないしは極めて早い時期に生じるのに対して,マガーク効果のような不一致刺激に対する統合は読唇能力の発達を待って生じる可能性を示唆している。異種感覚の情報の統合過程については,生得的か学習されるものかという個体発生の問題が,古くから研修者の興味を集めてきた。本研究では,マガーク効果を含めた視聴覚音声知覚における統合過程の年齢的変化を調べることにより,この問題を考える手がかりを得ることをにした。被験者は,3歳・7歳・11歳・20歳の4群で,各群10人ずつとした。刺激材料は,日本人話者1人が発話した/ba/と/da/で,視聴覚刺激は,もともとの声と映像の一致した組み合わせの他に,/ba/と/da/の間で映像と音声を入れ替えたものを矛盾刺激として作成した。これらクリアな刺激の他に,刺激を劣化させたものも作成した。音の劣化は,カットオフ周波数730kHzのローパスフィルター,映像の劣化は,口の部分へのモザイク効果によった。それぞれ,単一モダリティだけでの正答率が大学生で80%くらいになるような劣化の程度を予備実験によって決定していた。呈示モダリティには音のみ(明瞭およびローパス劣化),映像のみ(明瞭およびモザイク劣化),およびこれらを組み合わせた4通りの視聴覚条件があった。課題は,話者が何と言ったと感じたかを'ba'か'da'の口頭で答えることであった。単一モダリティ条件では,刺激を劣化させない場合,音の聞き取り,読唇とも同定は正確で,年齢差はなかったが,劣化させた場合,聞き取りも読唇も3歳児が他の年齢よりも有意に悪い成績を示した。AV条件では,音がクリアな場合,マガーク効果の大きさに有意な年齢差はなかった。音が劣化している場合,3歳児の反応が他の年齢群と有意に異なり,3歳児は,一致刺激での視覚による促進効果は大人と同じくらい大きかったのに,矛盾刺激でのマガーク効果は他の年齢群よりも有意に小さかった。以上の結果は,AV一致刺激に対する統合が生得的ないしは極めて早い時期に生じるのに対して,マガーク効果のような不一致刺激に対する統合は読唇能力の発達を待って生じる可能性を示唆している。異種感覚情報の統合過程については,生得的か学習されるものかという個体発生の問題が,古くから研究者の興味を集めてきた。本研究では,マガーク効果を含めた視聴覚音声知覚における統合過程の年齢的変化を調べることにより,この問題を考える手がかりを得ることをにした。今年度は横断的研究をおこなった。被験者は,3歳・7歳・11歳・20歳の4群で,各群10人ずつとした。刺激は,日本人話者1人が発話した/ba/と/da/で,各2発話ずつで計4個の発話を用いた。視聴覚刺激は,もともとのba(ba),da(da)の一致した組み合わせの他に(カッコ内が視覚刺激),/ba/と/da/の間で映像と音声を入れ替えたもの4個を不一致刺激として作成した。これらクリアな刺激の他に,単一モダリティ条件における天井効果を防ぐため,刺激を劣化させたものも作成した。音の劣化は,カットオフ周波数730kHzのローパスフィルターにより,映像の劣化は,口の部分にモザイク効果をかけることによった。それぞれ,単一モダリティだけでの正答率が大学生で80%くらいになるような劣化の程度を予備実験によって決定していた。 | KAKENHI-PROJECT-10610070 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10610070 |
マルチモーダル音声コミュニケーションの発達 | 呈示モダリティには音のみ(A:clear-A,noisy-Aの2条件),映像のみ(V:cV,nV),音と映像の両方(AV:cAcV,cAnV,nAcV,nAnV)の条件があった。被験者の課題は,呈示された発話を観察して,話者が何と言ったと感じたかを`ba'か`da'の口頭で答えることであった。単一モダリティ条件では,刺激を劣化させない場合,cA,cVともに同定は正確で,年齢による差はみられなかった。しかし,劣化を加えた場合,nA,nVともに3歳児が他の年齢よりも有意に悪い成績を示した。AV条件の結果は,音と映像が一致している場合(AV+)の促進効果と矛盾している場合(AV-)のマガーク効果を,聴覚のみ条件との正答率の差で算出した。その結果,音がクリアな場合,マガーク効果は,cAcVで各群2540%,cAnVで各群ほぼ0%で,年齢による有為な差はなかった。また,Aのみですでに正答率が非常に高いため,AV+での促進効果をみることはできなかった。音にローパスフィルターをかけたnAcVとnAnVでは,3歳児の反応が他の年齢群と有意に異なり,3歳児は,AV+での促進効果は大人と同じくらい大きかったのに,AV-でのマガーク効果は,他の年齢群よりも有意に小さかった。以上の結果は,AV一致刺激に対する統合が生得的ないしは極めて早い時期に生じるのに対して,マガーク効果のような不一致刺激に対する統合は読唇能力の発達を待って生じる可能性を示唆している。異種感覚情報の統合過程については,生得的か学習されるものかという個体発生の問題が,古くから研究者の興味を集めてきた。本研究では,マガーク効果を含めた視聴覚音声知覚における統合過程の年齢的変化を調べることにより,この問題を考える手がかりを得ることをにした。被験者は,3歳・7歳・11歳・20歳の4群で,各群10人ずつとした。刺激材料は,日本人話者1人が発話した/ba/と/da/で,視聴覚刺激は,もともとの声と映像の一致した組み合わせの他に,/ba/と/da/の間で映像と音声を入れ替えたものを矛盾刺激として作成した。これらクリアな刺激の他に,刺激を劣化させたものも作成した。音の劣化はカットオフ周波数730kHzのローパスフィルター,映像の劣化は,口の部分へのモザイク効果によった。それぞれ,単一モダリティだけでの正答率が大学生で80%くらいになるような劣化の程度を予備実験によって決定していた。呈示モダリティには音のみ(明瞭およびローパス劣化),映像のみ(明瞭およびモザイク劣化),およびこれらを組み合わせた4通りの視聴覚条件があった。課題は,話者が何と言ったと感じたかを'ba'か'da'の口頭で答えることであった。単一モダリティ条件では,刺激を劣化させない場合,音の聞き取り,読唇とも同定は正確で,年齢差はなかったが,劣化させた場合,聞き取りも読唇も3歳児が他の年齢よりも有意に悪い成績を示した。AV条件では,音がクリアな場合,マガーク効果の大きさに有意な年齢差はなかった。音が劣化している場合,3歳児の反応が他の年齢群と有意に異なり,3歳児は,一致刺激での視覚による促進効果は大人と同じくらい大きかったのに,矛盾刺激でのマガーク効果はほかの年齢群よりも有意に小さかった。以上の結果は,AV一致刺激に対する統合が生得的ないしは極めて早い時期に生じるのに対して,マガーク効果のような不一致刺激に対する統合は読唇能力の発達を持って生じる可能性を示唆している。 | KAKENHI-PROJECT-10610070 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10610070 |
多工程持ち・セル生産工程に対するICT・IoT化の方策と自動設計法の開発 | 本研究では,多品種少量生産における,手の動きによる作業を中心とする多工程作業に対して,生産性向上と作業ミス削減を継続的に進めるしくみの構築を目的とする.はじめに,手組み作業を中心とする多工程作業に着目し,製品設計情報(図面情報など)から作業設計と工程設計を一貫して行うことで生産工程を自動設計するシステムを開発する.そして,多工程作業・セル生産を対象とする工程のICT・IoT化や自動化を進めるにあたり,作業設計や工程設計から得られた作業情報を利用した複数の視点からのシステム化を検討することで多様な現場に適用できるシステムを開発する.システム開発だけではなく,現実場に適したシステムの設計の方法や導入の方法論も検討する.今年度は研究計画に含まれる,(1)製造対象の製品設計の特徴分析と作業設計,(2)作業設計情報を利用した工程設計,(3)工程分析と工程改善に基づく製造現場のシステム化,に関する各技法とシステムの開発を行った.(1)では部品組み立て作業に対して,CADから部品構造や接続の情報を抽出し,作業の困難さを評価することで作業を容易にする部品組み立て順序を決定する方法を開発した.開発した方法から得られた順序を利用して実機による組み立て作業によって方法の効果を明らかにした.さらに,部品構造から類似製品に対する作業の類似性を評価する方法を提案した.(2)の方法では作業設計の情報から,作業方法の決定と作業時間の見積もりを行う方法と工程設計の方法を組み合わせることで開発を行った.(3)では既存の生産工程に対して工程改善のルールを設定することで工程の基礎設計を行う方法を開発している.基礎設計案について工程設計の最適問題として数理モデルを構築し,設計の自動化法を開発している.これらにより,作業・工程設計の自動化とともに,IoT・自動化システムの自動設計の方法の構築を進めている.申請時における研究対象として,(1)製造対象の製品設計の特徴分析と作業設計,(2)作業設計情報を利用した工程設計,(3)工程分析と工程改善に基づく製造現場のシステム化,(4)工程に対するICT・IoT化,自動化の導入とフィードバックによる生産改善機能,に対する技法とシステムの開発を設定した.今年度はこの中で(1),(2),(3)については理論的な手法および情報システムとして開発を行い,予定する結果が得られており,システムとして完成している.これらの成果は2019年の複数の国際学会で発表予定である.また,(3)の課題では方法は構築しているが,現在,システムの開発を進めている.これらの問題では,申請時点において解決方法の想定ができていなかったが,社会人教育での講義を通して解決法を見つけることができ,現在,IoTシステムとしての開発を進めている.上記の状況から,予定している課題の3/4はほぼ完了しているとともに,IoTに関する社会人教育のコンテンツ作成と参加者の課題回答から,製造現場で問題となる新しい課題(継続的に現場を改善する分析する能力とIoTシステム案を企画設計する能力が不足している点)が明らかとなり,(4)の課題を解決するための有効な情報となると考えられる.(4)の研究に関する多工程持ち作業に対する(ロボットによる)自動化システムの開発および基本設計の自動化システムについても,現在,作業者の作業のビデオデータから動作を抽出して,ロボットの単純作業に置き換える画像解析の開発を進めている.開発が終了すれば,(1)(3)の課題の技術を利用することで,目的とする開発が進められると考えられる.上記の理由から,申請時での課題に対して現在では計画以上に進展していると判断した.残りの2年間では申請時の課題の中で,(3)工程分析と工程改善に基づく製造現場のシステム化,(4)工程に対するICT・IoT化,自動化の導入とフィードバックによる生産改善機能のシステム化を中心に最適解探索のための方法の開発,ICT・IoTシステムと自動化システムの開発を行う.(3)については既存の生産ラインの作業者の作業プロセスを保存したビデオデータから,既存の生産工程に対して工程改善のルールを設定し,工程の基礎設計を行う方法を開発している.その後,基礎設計から,工程設計による数理モデルを構築し,最適問題として工程設計を行う方法の開発を進める.現在,工程内の作業のビデオ情報から作業者の移動,作業の手の動きを抽出し,作業時間や速度,部品配置や工程の配置を分析する処理を開発している.分析後,ボトルネック,まとめ処理などの問題のある工程を選定し,規則に基づき改善を行う処理のシステム化を行う.(4)では多工程持ち作業に対して、作業者の作業の動画から手の動きから腕と手のワイヤーフレーム情報と部品の種類による配置情報を組み合わせることでMTM法による作業手順の自動作成を行うシステムを開発する.そして,この作業手順とワイヤーフレームの情報からロボットおよび自働化装置の動作に置き換えることで,ハンドのリンク機構の設計や簡略化した自動化装置の設計を自動に行う処理を開発する.これらシステムを統合することで,多工程持ち作業を自動化装置に変更できるだけでなく,単純動作の装置の組み合わせに変更することができるため,低コストで汎用性の高いシステムが構築できると考えている. | KAKENHI-PROJECT-18K04606 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K04606 |
多工程持ち・セル生産工程に対するICT・IoT化の方策と自動設計法の開発 | 本研究では,多品種少量生産における,手の動きによる作業を中心とする多工程作業に対して,生産性向上と作業ミス削減を継続的に進めるしくみの構築を目的とする.はじめに,手組み作業を中心とする多工程作業に着目し,製品設計情報(図面情報など)から作業設計と工程設計を一貫して行うことで生産工程を自動設計するシステムを開発する.そして,多工程作業・セル生産を対象とする工程のICT・IoT化や自動化を進めるにあたり,作業設計や工程設計から得られた作業情報を利用した複数の視点からのシステム化を検討することで多様な現場に適用できるシステムを開発する.システム開発だけではなく,現実場に適したシステムの設計の方法や導入の方法論も検討する.今年度は研究計画に含まれる,(1)製造対象の製品設計の特徴分析と作業設計,(2)作業設計情報を利用した工程設計,(3)工程分析と工程改善に基づく製造現場のシステム化,に関する各技法とシステムの開発を行った.(1)では部品組み立て作業に対して,CADから部品構造や接続の情報を抽出し,作業の困難さを評価することで作業を容易にする部品組み立て順序を決定する方法を開発した.開発した方法から得られた順序を利用して実機による組み立て作業によって方法の効果を明らかにした.さらに,部品構造から類似製品に対する作業の類似性を評価する方法を提案した.(2)の方法では作業設計の情報から,作業方法の決定と作業時間の見積もりを行う方法と工程設計の方法を組み合わせることで開発を行った.(3)では既存の生産工程に対して工程改善のルールを設定することで工程の基礎設計を行う方法を開発している.基礎設計案について工程設計の最適問題として数理モデルを構築し,設計の自動化法を開発している.これらにより,作業・工程設計の自動化とともに,IoT・自動化システムの自動設計の方法の構築を進めている.申請時における研究対象として,(1)製造対象の製品設計の特徴分析と作業設計,(2)作業設計情報を利用した工程設計,(3)工程分析と工程改善に基づく製造現場のシステム化,(4)工程に対するICT・IoT化,自動化の導入とフィードバックによる生産改善機能,に対する技法とシステムの開発を設定した.今年度はこの中で(1),(2),(3)については理論的な手法および情報システムとして開発を行い,予定する結果が得られており,システムとして完成している.これらの成果は2019年の複数の国際学会で発表予定である.また,(3)の課題では方法は構築しているが,現在,システムの開発を進めている.これらの問題では,申請時点において解決方法の想定ができていなかったが,社会人教育での講義を通して解決法を見つけることができ,現在,IoTシステムとしての開発を進めている.上記の状況から,予定している課題の3/4はほぼ完了しているとともに,IoTに関する社会人教育のコンテンツ作成と参加者の課題回答から,製造現場で問題となる新しい課題(継続的に現場を改善する分析する能力とIoTシステム案を企画設計する能力が不足している点)が明らかとなり,(4)の課題を解決するための有効な情報となると考えられる.(4)の研究に関する多工程持ち作業に対する(ロボットによる)自動化システムの開発および基本設計の自動化システムについても,現在,作業者の作業のビデオデータから動作を抽出して,ロボットの単純作業に置き換える画像解析の開発を進めている.開発が終了すれば,(1)(3)の課題の技術を利用することで,目的とする開発が進められると考えられる.上記の理由から,申請時での課題に対して現在では計画以上に進展していると判断した.残りの2年間では申請時の課題の中で,(3)工程分析と工程改善に基づく製造現場のシステム化, | KAKENHI-PROJECT-18K04606 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K04606 |
歯髄炎におけるsemaphorin7Aの生理学的機能の解析と臨床応用 | 神経細胞のガイダンス因子であるSemaphorinファミリーに属の1つであるSema7Aは、血管形成、癌浸潤、骨代謝の促進や免疫反応の増強など様々な生理活性を持つことが知られており、象牙芽細胞にも恒常的な発現が報告されている。歯髄に炎症が惹起されると象牙芽細胞が分泌するSema7Aの炎症促進能により、種々の炎症性サイトカインによる炎症カスケードを増悪化している可能性がある。本研究では一部性単純性歯髄炎の状態で、象牙芽細胞が恒常時に発現するSema7Aの発現や機能を抑制することで、歯髄炎の不可逆化を抑制できるのではないかと考え、in vitro、in vivoの実験系を用いて解析する。神経細胞のガイダンス因子であるSemaphorinファミリーに属の1つであるSema7Aは、血管形成、癌浸潤、骨代謝の促進や免疫反応の増強など様々な生理活性を持つことが知られており、象牙芽細胞にも恒常的な発現が報告されている。歯髄に炎症が惹起されると象牙芽細胞が分泌するSema7Aの炎症促進能により、種々の炎症性サイトカインによる炎症カスケードを増悪化している可能性がある。本研究では一部性単純性歯髄炎の状態で、象牙芽細胞が恒常時に発現するSema7Aの発現や機能を抑制することで、歯髄炎の不可逆化を抑制できるのではないかと考え、in vitro、in vivoの実験系を用いて解析する。 | KAKENHI-PROJECT-19K19029 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K19029 |
NMR法によるArfファミリー低分子量G蛋白質構造変換機構の解析 | Arfファミリー低分子量G蛋白質の構造変換分子機構を、特に溶液NMR法から明らかにすることが目的である。そこで、より自由度の高い安定同位体ラベル技術が利用できる無細胞蛋白質合成システムにより、タバコおよびヒト由来のArl8蛋白質を調整し、NMR緩和パラメーターを取得し、解析を行った。さらに、実際の細胞内のような高濃度環境下に適用できる緩和解析法として、従来法の問題を修正した新規拡張Model-free解析法の開発を行った。当研究課題で用いるタバコ由来Arl8サンプルについて、以前は大腸菌大量発現系にて、調整を行っていたが、所属研究室の独自技術である無細胞発現系はより自由度が高く柔軟な安定同位体ラベル調整をすることが期待できることから、この無細胞発現系にてサンプル調整を試み、以前と同様に調整できること、そして緩和測定データの再現性をとることに成功した。また、今後、Arl8サンプルのダイナミクスを解析するに当たって計算科学的手法との連携を予定しているが、そのためには精密な構造情報が必要となる。しかしながら、用いているタバコ由来Arl8については一部のNMRシグナルが消失していることから、困難が予想される。そこで、ヒト由来Arfサンプルについても無細胞発現系にて調整の試みを開始した。ヒト由来のものはヒトそのものの重要性に加えて、機能解析、構造解析ともに、タバコ由来のものより進んでいるため、緩和解析によりダイナミクス情報が明らかになれば、よりインパクトの高い結果が期待できる。近年、分子混雑状態など、より実際の細胞環境に近い状態でのダイナミクス情報を得ることが求められている。そこで、新たに溶液中での近隣蛋白質との蛋白質-蛋白質相互作用を考慮した、緩和解析手法を開発した。今後、これを本研究課題に応用することで、分子混雑環境でのより精密な解析を行うことが可能になり、Arl8構造変換機構の全く新規な動的情報が得られるであろう。当研究課題ではArfファミリー低分子量G蛋白質の構造変換分子機構を解明することを目的としている。平成26年度は、所属研究室の独自技術である無細胞発現系を利用することで、既に調整に成功済みのタバコ由来Arl8サンプルに加えて、ヒト由来Arl8サンプルを調整することに成功した。そして、調整したサンプルのGTPase活性(GTP型構造からGDP型構造へ)をNMRでモニタリングすることに成功した。さらに、そのヒト由来Arl8サンプルのNMR緩和データの取得を試みている。タバコ由来Arl8サンプルのデータと比較することで、これらの構造変換機構の理解が進むことが期待できる。これまで、Arl8サンプル単独ではヒト由来のものはタバコ由来のものに比べてGTPase活性が小さいことが確認できている。蛋白質の実際に働く細胞内は数百mg/ml濃度程度の分子混雑環境にある。蛋白質の動態はそのような分子混雑環境に影響を大きく受けることが予想されるが、現在、このような環境下での蛋白質物性を詳細に調べる実験手法はほとんど存在していない。そこで、本研究代表者はこのような分子混雑環境下に適用可能なNMR緩和解析手法を開発した。平成26年度は、この解析手法をモデル蛋白質に適用することで方法の妥当性の検証を行った。平成27年度は、この手法を調整したヒトもしくはタバコ由来Arl8サンプルに適用することで、分子混雑環境下での動態解析も試みる予定である。当研究課題ではArfファミリー低分子量G蛋白質の構造変換分子機構を、特に溶液NMR法から得られる広範なダイナミクス情報に着目して明らかにすることである。低分子量G蛋白質はGTP結合型とGDP結合型で立体構造を変化させることにより細胞内分子スイッチとして働く。本研究課題提案者は、その構造変化の基盤となるGTP-like - GDP form間構造転移機構が、蛋白質コア領域にゆらぎとして内在していることを明らかにしていた。当研究課題の成果として、所属研究チーム独自技術である無細胞蛋白質合成システムを活用することで、タバコおよびヒト由来Arl8蛋白質の調整に成功した。そして、これらのGTP-like - GDP form間構造転移をミリ-マイクロ秒オーダーのゆらぎが解析できるR2緩和分散法の測定、解析を行った。当研究課題ではGTP-like - GDP form間のような大きな構造変化を起こすミリ-マイクロ秒オーダーのダイナミクスが、局所的な揺らぎを反映するより速いナノ-ピコ秒オーダーのダイナミクスとどのように関連しているかを明らかにすることを目的の一つとしている。蛋白質において、このナノ-ピコ秒オーダーのダイナミクスは、Model-free解析法と呼ばれる方法が広く使われてきた。しかしながら、本研究提案者は、この方法は希薄溶液でのみ有効であり、それ以外では蛋白質分子同士の干渉に由来する修正が必要なことを見出した。実際の細胞内は分子混雑環境にあり、蛋白質分子同士の干渉は不可避である。そこで、問題を克服した新規拡張Model-free解析法を開発した。平成27年度においては、これをArl8蛋白質に適用するべく、新規拡張Model-free解析法のさらなる開発と検討を行った。これにより、蛋白質の濃厚溶液中での振る舞いが明らかになりつつある。今後、実際にArl8蛋白質に適用することで、その構造変換分子機構が細胞内を志向した環境を考慮した系で明らかになると期待できる。Arfファミリー低分子量G蛋白質の構造変換分子機構を、特に溶液NMR法から明らかにすることが目的である。そこで、より自由度の高い安定同位体ラベル技術が利用できる無細胞蛋白質合成システムにより、タバコおよびヒト由来のArl8蛋白質を調整し、NMR緩和パラメーターを取得し、解析を行った。 | KAKENHI-PROJECT-25870372 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25870372 |
NMR法によるArfファミリー低分子量G蛋白質構造変換機構の解析 | さらに、実際の細胞内のような高濃度環境下に適用できる緩和解析法として、従来法の問題を修正した新規拡張Model-free解析法の開発を行った。本研究課題スタート時点で所属研究機関を移動したことで、研究環境に変化が生じた。また、本研究課題にとっても有用である、自らで行っている新規の蛋白質ダイナミクス(NMR緩和)解析手法開発に予想外の大きな進展があったことなどから、当初の研究計画に変更が生じている。構造生物学自らで開発した新規の蛋白質ダイナミクス解析手法は、より実際の細胞環境に近い状態での蛋白質ダイナミクス情報を得る他にはないオリジナルなものである。また、所属研究室は独自の無細胞蛋白質合成技術を有する。これらを本研究課題にも積極的に適応することで、オリジナル性の高い研究アプローチを行っていく。昨年度は研究室を移動したこともあり、サンプル調整やNMRデータの再現性の確認などの準備作業に思ったよりも、時間がかかってしまい、当初に予定していた実験が未だ行えていない。しかしながら、そのような準備作業に関してはようやくめどが立ち、今後は予定していた実験を行うことが可能になると期待できる。一方で、自らで新たに蛋白質ダイナミクス解析に関する手法開発を行い、これは予想を超えた進捗で、今後、本研究課題への貢献が大きく期待できる。本研究課題スタート時点で所属研究機関の移動のあったこと、また、自らで行っている新規の蛋白質ダイナミクス解析手法開発に予想外の大きな進展があったことで、当初の研究計画に変更が生じている。そのために、予定していた試薬等の消耗品購入、海外学会での発表、論文発表を行わなかったために、未使用額が生じている。所属研究室のもつ無細胞技術、自らで新たに開発したNMR緩和解析技術は他にないオリジナルなものである。今後、これらを積極的に使用することで、本研究課題に対して、オリジナル性の高い研究アプローチが行えると思われる。また、近年のin-cell NMRに代表される、より実際の細胞環境に近い状態での観測をという要請も、視野に入れつつ本研究課題を遂行していきたい。本年度に遂行する本研究課題の実験のために使用する試薬等の消耗品の購入や、学会、論文発表等における経費に充てる。研究室移動に伴い、サンプル調整やデータの再現性の確認を行っており、当初の実験の予定に未実施のものがあるため。サンプル調整準備等の環境が整いつつあるため、予定していた実験を順次進めていく。同時に、得られた研究成果の研究発表を行っていく。 | KAKENHI-PROJECT-25870372 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25870372 |
微細構造を制御した新規信号応答性ゲルの分子設計 | 本研究では新しい信号応答性ゲルの創成を目的とし、以下のように目的にアプローチした。i)主鎖に親水性オリゴキシエチレン基とオリゴジメチルシロキサン基を交互に有するポリマー(ポリサイロキシエチレングリコール)の新規合成反応の確立:脱離基としてアミノ基を利用した新しい宿業反応により標記ポリマーの選択的合成反応を確立した。ii)ポリサイロキシエチレングリコール水溶液の温度応答特性解析:親水性のオリゴオキシエチレンセグメントと疎水性のオリゴジメチルシロキサンセグメントを交互に有するポリサイロキシエチレングリコールは低温で水和して水に溶解し、高温で脱水和して相分離する下限臨界共溶温度を有することがわかった。相転移はきわめてシャープで、組成を変化させることにより相転移温度が効率的に制御された。iii)主鎖にジアミンと有機ケイ素を交互にする新規ポリマー(ポリサイラミン)の合成法の確立・リチウムアルキルアミドを触媒としたジアミンとジビニルシラン類のアニオン重付加により、末端に定量的に2級アミノ基を有する標記ポリマーの合成法を確立した。iv)ポリサイラミン水溶液のpH及び温度応答特性解析:ポリサイラミンはアミノ基のプロトン化-脱プロトン化により水溶性が変化するため、pH及び温度応答性の材料であるだけでなく、プロトン化に伴い、分子鎖の運動性が著しく変化する、ゴム弾性転移を示すことがわかった。v)ポリサイラミンゲルの信号応答性挙動の解明:ポリサイラミンの両末端をメタクリルアミド基に変換し、ラシカル反応によりポリサイラミンゲルを調製した。このゲルはプロトン化に伴い、分子鎖が広がって剛直化するため、膨潤して堅くなる、これまでにない信号応答特性を示すことが明らかとなった。また、膨潤状態のゲルを塩基性水溶液に投入すると、ゲル表面が相転移し、極めて安定なスキン層を形成し、数ヶ月間にわたって安定に存在した。これは剛直な内部膨潤ネットワークと表面スキン層内部のプロトン・溶媒交換が極めて起こりにくいため、準安定状態で長時間形を保持できるためと考えられ、信号に対応して薬物放出できる新しい材料として期待される。本研究では新しい信号応答性ゲルの創成を目的とし、以下のように目的にアプローチした。i)主鎖に親水性オリゴキシエチレン基とオリゴジメチルシロキサン基を交互に有するポリマー(ポリサイロキシエチレングリコール)の新規合成反応の確立:脱離基としてアミノ基を利用した新しい宿業反応により標記ポリマーの選択的合成反応を確立した。ii)ポリサイロキシエチレングリコール水溶液の温度応答特性解析:親水性のオリゴオキシエチレンセグメントと疎水性のオリゴジメチルシロキサンセグメントを交互に有するポリサイロキシエチレングリコールは低温で水和して水に溶解し、高温で脱水和して相分離する下限臨界共溶温度を有することがわかった。相転移はきわめてシャープで、組成を変化させることにより相転移温度が効率的に制御された。iii)主鎖にジアミンと有機ケイ素を交互にする新規ポリマー(ポリサイラミン)の合成法の確立・リチウムアルキルアミドを触媒としたジアミンとジビニルシラン類のアニオン重付加により、末端に定量的に2級アミノ基を有する標記ポリマーの合成法を確立した。iv)ポリサイラミン水溶液のpH及び温度応答特性解析:ポリサイラミンはアミノ基のプロトン化-脱プロトン化により水溶性が変化するため、pH及び温度応答性の材料であるだけでなく、プロトン化に伴い、分子鎖の運動性が著しく変化する、ゴム弾性転移を示すことがわかった。v)ポリサイラミンゲルの信号応答性挙動の解明:ポリサイラミンの両末端をメタクリルアミド基に変換し、ラシカル反応によりポリサイラミンゲルを調製した。このゲルはプロトン化に伴い、分子鎖が広がって剛直化するため、膨潤して堅くなる、これまでにない信号応答特性を示すことが明らかとなった。また、膨潤状態のゲルを塩基性水溶液に投入すると、ゲル表面が相転移し、極めて安定なスキン層を形成し、数ヶ月間にわたって安定に存在した。これは剛直な内部膨潤ネットワークと表面スキン層内部のプロトン・溶媒交換が極めて起こりにくいため、準安定状態で長時間形を保持できるためと考えられ、信号に対応して薬物放出できる新しい材料として期待される。新しい信号応答性ゲルを調製するにあたって、平成9年度は以下のように研究を推進した。i)ポリマー合成法の確立:本研究では最終目標として、DDS及び生体適合性を念頭に置いているため、水中で相転移するポリマー合成を推進した。ビニル重合体の代わりに主鎖に親水性-疎水性セグメントを交互に有する新規ポリマーの合成を行う。ゲルとしての運動性を導入するため、疎水部には有機シリコン或いはシリコーンを中心にポリサイラミンおよびポリシロキシエチレングリコールの合成法を追求した。親水性セグメントとしてはオリゴオキシエチレンやオリゴエチレンイミンを採用し、温度応答性と供にpH応答性の導入を試みた。これらの要求を満たすべく材料として3-シラペンテンとエチレンジアミン骨格を交互に有するポリサイラミン誘導体及びオリゴエチレングリコールとオリゴシロキサン骨格を交互に有するポリサイロキシエチレングリコールを合成した。これらのポリマーは温度及びpHによって相転移する信号応答性ポリマーであった。特にポリサイラミンは相転移とともに分子鎖のゴム弾性を著しく変化させる全く新しいポリマーであることが明らかとなった。ii) | KAKENHI-PROJECT-09450365 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09450365 |
微細構造を制御した新規信号応答性ゲルの分子設計 | テレケリックポリマー:上記のようにして得られた信号応答性ポリマーとともに、既存で知られているビニル重合型信号応答性ポリマーも含めて、テレケリックス化を試みた。モデルネットワーク構築のために極めて反応性の高い末端基(ビニル基、アミノ基、イソシアナ-ト基)の導入、新ネットワーク構築のため、異なる官能基の導入(ヘテロテレケリックス)等を試みた。ポリサイラミンはアニオン重付加反応で合成するため、末端にビニルシリル基、2級アミノ基を定量的に導入することが可能であった。さらに2,5-トルエンジイソシアナ-トにより、両末端にイソシアナ-ト基を有するテレケリックポリマーの合成にも成功した。新しい信号応答性ゲルを調製するにあたって、平成10年度は前年度までに得られているポリサイラミンゲルの信号応答特性を追究するとともに、側鎖にアミノ基を有する側鎖型材料を合成し、その信号応答特性に関して比較検討を行った。i)ポリサイラミンのプロトン化度とガラス転位点:ポリサイラミンのガラス転位点を様々なプロトン化度に対して測定し、プロトン化度50%の点でガラス転位点が著しく上昇することを見いだした。ii)ポリサイラミンハイドロゲルの弾性率測定:種々のプロトン化度に対応した膨潤度とともに、膨潤ゲルの弾性率を測定した。ハイドロゲルではプロトン化度50%付近で体積相転移し、10倍以上に膨らむとともの、弾性率が一桁上昇した。これは通常の信号応答性ハイドロゲルが、含水して膨らむとともに柔らがくなるのに対し、全く反対の挙動を示す、初めての例である。iii)側鎖型信号応答性ポリマー及びゲルの調製:3級アミノ基を側鎖に有するポリマーとして、種々ポリメタクリル酸ジアルキルアミノエチル及びポリアクリルアミドジアルキルアミノプ口ピルを合成した。これらpH応答性材料のハイドロゲル特性調製として、電子線架橋を行ったところ、極めて高感度で3次元架橋化が進むことを見いだした。これは電子線に対するアミノ基非共有電子対の高い反応性に起因することが結論づけられた。これら材科の主鎖信号応答型材料との比較に関してさらに検討を進める予定である。新しい信号応答性ゲルを調製するにあたって、本年度は以下のように研究を進めた。i)ポリマー合成法の確立:本研究では最終目標として、DDS及び生体適合性を念頭に置いているため、水中で相転移するポリマー合成を推進する。ビニル重合体の代わりに主鎖に親水性・疎水性セグメントを交互に有する新規ポリマーの合成を行った。ゲルとしての運動性を導入するため、疎水部には有機シリコン或いははシリコーンを中心にポリサイラミンおよびポリシロキシエチレングリコールの合成法を確立した。ii)テレケリックポリマー:上記のようにして得られた信号応答性ポリマーとともに、既存で知られているビニル重合型信号応答性ポリマーも含めて、テレケリックス化を試みた。実際には末端にアクリルアミド基を導入し、下記のようにゲルを調製した。iii)ゲル調製と物性評価:上記i)、ii)で得られた材料からゲル粒子を調製した。水中分散方によりラジカル重合法を用いて100500マイクロメートル程度の微粒子を調製した。 | KAKENHI-PROJECT-09450365 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09450365 |
磁気流体シミュレータによる降着円盤の時間変動とジェット形成機構の解明 | 3次元磁気流体コードを改訂して超並列計算機に実装し、降着円盤の大局的シミュレーションに適用可能にした。このコードを用いてジェット伝播計算を実施し、ジェットと星間ガスの境界に分子ガスの鞘が形成されることを示した。シミュレーション結果から輻射スペクトルを計算するモジュールも実装し、超高光度X線源のスペクトルを再現した。また、降着円盤内部で平均磁場方向が準周期的に反転するダイナモが発生することを示した。3次元磁気流体コードを改訂して超並列計算機に実装し、降着円盤の大局的シミュレーションに適用可能にした。このコードを用いてジェット伝播計算を実施し、ジェットと星間ガスの境界に分子ガスの鞘が形成されることを示した。シミュレーション結果から輻射スペクトルを計算するモジュールも実装し、超高光度X線源のスペクトルを再現した。また、降着円盤内部で平均磁場方向が準周期的に反転するダイナモが発生することを示した。宇宙磁気流体シミュレーションソフトウェアCANSを国立天文台に新たに導入されたスカラー並列計算機に実装し、計算効率を高める方法について秋季天文学会で発表した。近似リーマン解法の一種であるHLLD法に基づく磁気流体シミュレーションエンジンを作成し、各種テストを行った結果を秋季天文学会等で発表した。このコードを国立天文台スカラー並列計算機に実装して降着円盤からのジェット形成の3次元シミュレーションに適用し、2009年春季天文学会で報告した。Flux Limited Diffusion近似に基づく輻射流体コードに逆コンプトン散乱によるコロナ冷却の効果を含めて超臨界降着流の2次元シミュレーションを実施し、強いアウトフローが発生すること、超光度X線源のスペクトルを再現できることを示した。また、シミュレーション結果をもとに、モンテカルロ法によって輻射スペクトルを計算するモジュールを作成した。輻射輸送方程式の1次のモーメント式を用いるMlスキームによる輻射磁気流体コード作成にも着手した。光学的に薄い円盤から厚い円盤への遷移中に形成される磁気圧で支えられた降着円盤の定常モデルを光学的に厚い領域を含む場合に拡張することに成功し、結果をまとめた論文がAstrophysical Journalに掲載が決定した。また、相対論的磁気流体コードの検証に用いることができる相対論的に膨張する磁気ループの自己相似解を求め、英国王立天文学会誌に論文を発表した。共同作業を円滑に進めるため、8月と3月に研究推進会議を千葉大で開催した。研究成果は2008年11月に南京で開催されたEastAsia Numerical Astrophysics Meeting等の国際会議で発表した。近似リーマン解法の一種であるHLLD法に基づく円筒座標系3次元の磁気流体コードを国立天文台のスカラー並列計算機に実装して初期に弱い方位角磁場に貫かれた降着円盤の大局的3次元シミュレーションを実施した。その結果、磁気回転不安定性の成長による円盤磁場の増幅など、従来のコードで得られた結果をほぼ再現できた。その後、div B=0を満たすCT法よりも数値的に安定で実装が容易なdivergence cleaning法に基づく磁気流体コードを実装し、軸対称磁気流体ジェットの伝播、降着円盤の大局的3次元磁気流体シミュレーション等に適用して2010年3月開催の日本天文学会春季年会で発表した。以上により、数値振動が少なく高精度なHLLD法を用いて降着円盤の大局的3次元シミュレーションを実施することが可能になった。分担者の廣瀬はFlux Limited Diffusion (FLD)近似に基づく輻射磁気流体方程式を陰的に解くマトリックスソルバーの並列効率を改善する作業を行った。輻射輸送方程式の1次のモーメント式を解くM1コードの開発も進めた。シミュレーション結果をもとにモンテカルロシミュレーションによって輻射スペクトルを計算するモジュールを実装し、ブラックホール超臨界降着流の輻射流体シミュレーション結果に適用することにより、超光度X線源(ULX)のスペクトルを再現することができた。相対論的ジェット伝播のシミュレーション結果、円盤の一部を取りだした局所3次元輻射磁気流体シミュレーション結果、方位角磁場及びイオン温度と電子温度が異なる効果を考慮した降着円盤の理論モデル等の研究成果を出版した。研究推進会議を千葉大学で2回開催して進捗状況を確認するとともに研究方針について議論した。また、研究成果を各種国際会議で発表した。近似リーマン解法の一種であるHLLD法に基づくカーテシアン座標系及び円筒座標系の3次元磁気流体コードを国立天文台及び東京大学情報基盤センターのスカラー並列計算機に実装して並列効率を高めるチューニングを行った。その結果、空間2次精度の解法の場合には、従来使用してきた修正Lax-Wendroff法のコードの2倍程度の計算時間で数値的振動の少ない計算結果を得ることが可能になった。このシミュレーションエンジンを以前に開発した宇宙磁気流体シミュレーションソフトウェアCANSに実装して各種シミュレーションに適用した。星間ガスの冷却を考慮したジェット伝播シミュレーションの結果、ジェットと中性水素ガスの相互作用によって高温低密度ジェットを鞘状に包む低温高密度領域が形成されることが明らかになった。また、降着円盤の大局的3次元シミュレーションに適用することにより、準周期的な円盤ダイナモが発生する可能性を調べた。その結果、セル境界の値をより高い空間精度で求めて磁場の数値散逸を抑制する必要があることが判明したため、空間5次精度のスキームを実装した。輻射流体計算については輻射流束の時間発展を計算するM1スキームの実装を進めた。光子輸送のモンテカルロ計算を行うことによって輻射スペクトルを求める解析ツールの計算精度を高め、硬X線が強いハードステートから軟X線が強いソフトステートへの状態 | KAKENHI-PROJECT-20340040 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20340040 |
磁気流体シミュレータによる降着円盤の時間変動とジェット形成機構の解明 | 遷移中のスペクトル変化を計算して日本天文学会秋季年会で発表した。コード開発状況と各種磁気流体シミュレーションに適用した計算結果を2010年11月に台北で開催された東アジア数値天体物理学国際会議等で発表した。CANS改訂版の公開に向けて、全体設計の見直しも行った。 | KAKENHI-PROJECT-20340040 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20340040 |
イネの種子登熟過程におけるリン酸貯蔵の分子機構と分子育種 | 種子へのリンの貯蔵を制御している可能性の高い酵素、イノシトール1リン酸合成酵素の発現制御機構を明らかにすることで、種子におけるリン酸貯蔵(フィチン貯蔵)の意義、および役割を明らかにすることを目的として、以下の実験を行った。1.CaMV35Sプロモーターに連結したセンス及びアンチセンスのイノシトール1リン酸合成酵素遺伝子を導入した形質転換イネを作出した。これまでのところ形態異常は見つかっていない。2.イネ成熟種子胚盤から誘導した培養細胞を材料として、イノシトール1リン酸合成酵素遺伝子の糖、リン酸、およびABAに対する応答をノーザンブロット解析により調査した。その結果、本酵素はリン酸には応答しないが、糖及びABAに応答して発現が誘導されることが明らかとなった。糖による応答については、sucroseやglucoseでの誘導が観察されるのに対し、mannitolでは誘導されないことから、浸透圧の変化によって本酵素が誘導されるのではないことが明らかとなった。さらに、糖単独、あるいはABA単独の処理と比較して、糖とABAを同時に処理した場合にイノシトール1リン酸合成酵素の発現が高まることが示され、糖とABAに相乗的効果があることが明らかになった。3.イネのゲノミックライブラリーよりイノシトール1リン酸合成酵素のゲノムクローンを単離し、プロモーター領域の配列を明らかにした。その結果、多くのABA応答配列、種子特異的発現に関与するcis-acting element、及び重金属応答配列の存在が明らかになった。4.イネのイノシトール1リン酸合成酵素プロモーターにGUSレポーター遺伝子を連結したコンストラクトを導入したイネを作出した。同様に、イノシトール1リン酸合成酵素プロモーターにイノシトール1リン酸合成素を連結したコンストラクト導入形質転換イネを作出した。種子へのリンの貯蔵を制御している可能性の高い酵素、イノシトール1リン酸合成酵素の発現制御機構を明らかにすることで、種子におけるリン酸貯蔵(フィチン貯蔵)の意義、および役割を明らかにすることを目的として、以下の実験を行った。1.CaMV35Sプロモーターに連結したセンス及びアンチセンスのイノシトール1リン酸合成酵素遺伝子を導入した形質転換イネを作出した。これまでのところ形態異常は見つかっていない。2.イネ成熟種子胚盤から誘導した培養細胞を材料として、イノシトール1リン酸合成酵素遺伝子の糖、リン酸、およびABAに対する応答をノーザンブロット解析により調査した。その結果、本酵素はリン酸には応答しないが、糖及びABAに応答して発現が誘導されることが明らかとなった。糖による応答については、sucroseやglucoseでの誘導が観察されるのに対し、mannitolでは誘導されないことから、浸透圧の変化によって本酵素が誘導されるのではないことが明らかとなった。さらに、糖単独、あるいはABA単独の処理と比較して、糖とABAを同時に処理した場合にイノシトール1リン酸合成酵素の発現が高まることが示され、糖とABAに相乗的効果があることが明らかになった。3.イネのゲノミックライブラリーよりイノシトール1リン酸合成酵素のゲノムクローンを単離し、プロモーター領域の配列を明らかにした。その結果、多くのABA応答配列、種子特異的発現に関与するcis-acting element、及び重金属応答配列の存在が明らかになった。4.イネのイノシトール1リン酸合成酵素プロモーターにGUSレポーター遺伝子を連結したコンストラクトを導入したイネを作出した。同様に、イノシトール1リン酸合成酵素プロモーターにイノシトール1リン酸合成素を連結したコンストラクト導入形質転換イネを作出した。種子へのリンの貯蔵を制御している可能性の高い酵素、イノシトール1リン酸合成酵素の発現制御機構を明らかにすることで、種子におけるリン酸貯蔵(フィチン貯蔵)の意義、および役割を明らかにすることを目的として、以下の実験を行った。1.CaMV35Sプロモータに連結したセンス及びアンチセンスのイノシトール1リン酸合成酵素遺伝子を導入した形質転換イネを作出した。2.イネ成熟種子胚盤から誘導したカルスを材料として、イノシトール1リン酸合成酵素遺伝子の糖、リン酸、およびABAに対する応答をノーザンブロット解析により調査した。その結果、本酵素はリン酸には応答しないが、糖及びABAに応答して発現が誘導されることが明らかとなった。糖による応答については、sucroseやglucoseでの誘導が観察されるのに対し、mannitolでは誘導されないことから、浸透圧の変化によって本酵素が誘導されるのではないことが明らかになった。3.イノシトール1リン酸合成酵素の糖およびABAに対する応答をin vitroで調査する前提として、また、cis配列を明らかにする目的で、イネのゲノミックライブラリーをスクリーニングし、ポジティブクローンを得た。4.細胞内局在を調べる前提として抗体を作製するため、イノシトール1リン酸合成酵素遺伝子のcDNAを大腸菌発現ベクターに連結し、大腸菌で発現させた。大腸菌よりイノシトール1リン酸合成酵素タンパク質を精製し、抗体作製を業者に委託した。種子へのリンの貯蔵を制御している可能性の高い酵素、イノシトール1リン酸合成酵素の発現制御機構を明らかにすることで、種子におけるリン酸貯蔵(フィチン貯蔵)の意義、および役割を明らかにすることを目的として、以下の実験を行った。1.CaMV35Sプロモーターに連結したセンス及びアンチセンスのイノシトール1リン酸合成酵素遺伝子を導入した形質転換イネを作出した。これまでのところ形態異常は見つかっていない。 | KAKENHI-PROJECT-11660002 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11660002 |
イネの種子登熟過程におけるリン酸貯蔵の分子機構と分子育種 | 2.イネ成熟種子胚盤から誘導したカルスを材料として、イノシトール1リン酸合成酵素遺伝子の糖、リン酸、およびABAに対する応答をノーザンブロット解析により調査した。その結果、本酵素はリン酸には応答しないが、糖及びABAに応答して発現が誘導されることが明らかとなった。糖による応答については、sucroseやglucoseでの誘導が観察されるのに対し、mannitolでは誘導されないことから、浸透圧の変化によって本酵素が誘導されるのではないことが明らかとなった。さらに、糖単独、あるいはABA単独の処理と比較して、糖とABAを同時に処理した場合にイノシトール1リン酸合成酵素の発現が高まることが示され、糖とABAに相乗的効果があることが明らかになった。3.イネのゲノミックライブラリーよりイノシトール1リン酸合成酵素のゲノムクローンを単離し、プロモーター領域の配列を明らかにした。その結果、ABA応答配列、及び糖応答様配列の存在が明らかになった。4.イネのイノシトール1リン酸合成酵素プロモーターにGUSレポーター遺伝子を連結したコンストラクト導入形質転換イネを作出した。 | KAKENHI-PROJECT-11660002 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11660002 |
単離心筋機械負荷操作を用いた心臓の機械電気相互作用の統合生理研究 | 21年度前半は前年度後半に引き続き単離心筋細胞レベルの伸展実験と臓器レベルの機械電気相互作用としてトリ心臓における機械刺激誘発性不整脈実験をおこなった。これらの実験から伸展刺激誘発性不整脈に対するSAKCAチャネル(伸展感受性BKチャネル)や機械受容非選択的陽イオンチャネル(nSAC)などの関与が明らかとなったが、21年度後半はそれらの機械電気相互作用実験結果を心筋細胞数理モデルに統合するためのシミュレーション実験を行った。心筋細胞モデルとしては、Iribe-Kohl-Nobleモデルの電気生理・カルシウム動態モデルを用いた。伸展刺激によるnSACを介したナトリウム流入電流は背景ナトリウム電流のコンダクタンスを変化させることにより再現した。伸展刺激によるSAKCAチャネルを介したカリウム流出電流はMoczydlowskiらのBKチャネルモデルのコンダクタンスを変化させることにより再現した。機械刺激誘発性不整脈はnSACの活性化による脱分極によって誘発されるとされているが、このメカニズムは再現された。また、我々の実験結果に基づき、筋小胞体からのカルシウム放出を機械刺激に伴って増加させたところ、このメカニズムによっても不整脈が誘発されることが示唆された。背景K電流に伸展感受性を持たせた場合は機械刺激誘発性不整脈を抑制したが、我々の実験結果とは異なりSAKCA電流は機械刺激誘発性不整脈を抑制しなかった。現在の所、nSACの分子実態は不明でその数理モデルも確立されていない。背景電流のコンダクタンスを変化させるのみの単純なnSACモデルでは実験結果を完全には再現できなかったものと思われ、さらにnSACの電気生理的特徴を詳細に解明していく必要がある。平成20年度前半は心臓内の力学的不均一性を評価するために、オックスフォード大学のグループとの共同研究により、モルモット心の心房、右室、左室の3領域から単離した心筋細胞の力学的特性を比較検討した。その結果、心房筋細胞は心室筋細胞に比して静的力学特性としての弾性(拡張期末長さ張力関係で表される)が有意に高く、また最大収縮速度や弛緩速度などの動的な力学特性も心房筋の方が速いことが明らかとなった。一方で左右両心室筋間には静的・動的いずれの力学特性も有意な差は認められず、臓器(心室)内における心筋細胞の機械的特性の違いは小さいことがわかった。そこで20年度後半は臓器レベルの機械電気相互作用として、SAKCAチャネル(ヒト心筋遺伝子ライブラリーから新しくクローニングされた進展感受性BKチャネル。生理的な役割はよくわかっていない)を介した現象を、ヒトと共通したSAKCAチャネルが存在するトリ摘出心を用いて詳細に検討した。トリ摘出ランゲンドルフ灌流心の左室腔内に挿入したラテックスバルーンの内容液量を急激に変化させて左室壁を伸展することにより不整脈を誘発した。誘発された不整脈は機械電気相互作用の臓器レベルにおける統合出力であるが、これは多くの機械受容チャネルをブロックするGsMTx-4で阻害され、特異的なBKチャネルブロッカーのIberiotoxin(IbTx)にて増強した。この結果からSAKCAチャネルは他の機械受容チャネルにより引き起こされる機械刺激誘発性不整脈を抑制する効果があるものと思われた。今年度の研究結果はSAKCAチャネルの生体心における役割を示した最初の知見であり、ヒトにおける機械電気相互作用の全容を解明するための重要な研究結果である。また今年度の知見を統合した心筋細胞数理モデルの開発も進んでいる。21年度前半は前年度後半に引き続き単離心筋細胞レベルの伸展実験と臓器レベルの機械電気相互作用としてトリ心臓における機械刺激誘発性不整脈実験をおこなった。これらの実験から伸展刺激誘発性不整脈に対するSAKCAチャネル(伸展感受性BKチャネル)や機械受容非選択的陽イオンチャネル(nSAC)などの関与が明らかとなったが、21年度後半はそれらの機械電気相互作用実験結果を心筋細胞数理モデルに統合するためのシミュレーション実験を行った。心筋細胞モデルとしては、Iribe-Kohl-Nobleモデルの電気生理・カルシウム動態モデルを用いた。伸展刺激によるnSACを介したナトリウム流入電流は背景ナトリウム電流のコンダクタンスを変化させることにより再現した。伸展刺激によるSAKCAチャネルを介したカリウム流出電流はMoczydlowskiらのBKチャネルモデルのコンダクタンスを変化させることにより再現した。機械刺激誘発性不整脈はnSACの活性化による脱分極によって誘発されるとされているが、このメカニズムは再現された。また、我々の実験結果に基づき、筋小胞体からのカルシウム放出を機械刺激に伴って増加させたところ、このメカニズムによっても不整脈が誘発されることが示唆された。背景K電流に伸展感受性を持たせた場合は機械刺激誘発性不整脈を抑制したが、我々の実験結果とは異なりSAKCA電流は機械刺激誘発性不整脈を抑制しなかった。現在の所、nSACの分子実態は不明でその数理モデルも確立されていない。背景電流のコンダクタンスを変化させるのみの単純なnSACモデルでは実験結果を完全には再現できなかったものと思われ、さらにnSACの電気生理的特徴を詳細に解明していく必要がある。 | KAKENHI-PROJECT-20034038 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20034038 |
VpxのC末端領域に存在するポリプロリンモチーフの存在意義と機能解析 | HIV-2特有のタンパクであるVpxはC末端領域に高度に保存された7つの連続するプロリン残基からなる特徴的なモチーフ(ポリプロリンモチーフ: PPM)があり、Vpxの機能に必須であることが知られている。本研究ではVpxのPPMがVpxの機能発現のためにどのような役割を果たしているのかについて解析を行い、以下のことを明らかにしてきた。マクロファージのようなHIV-2増殖にVpxを必要とする細胞でのPPM変異体のウイルス増殖能とVpx PPM変異体の発現量はよく一致していた。また、セルフリーでの転写・翻訳系を用いた研究により、PPMは翻訳過程において、Vpxの発現を促進していることが示された。HIV-2特有のタンパクであるVpxはマクロファージ(MΦ)での増殖に必須であり、逆転写産物の生成以前の過程で機能することが明らかとなっている。VpxのC末端領域にHIV-2/SIVsm系において高度に保存された7つの連続するプロリン残基からなる特徴的なモチーフ(ポリプロリンモチーフ: PPM)があり、Vpxの機能に必須であることが知られている。本研究ではVpxのPPMがVpxの機能発現のためにどのような役割を果たしているのかについて解析を行い、MΦを標的とした抗HIV戦略の基盤の立ち上げを目的としている。現在までに申請者は以下のことを明らかにしてきた。(1)MΦのようなHIV-2増殖にVpxを必要とする細胞でのPPM変異体のウイルス増殖能とVpx PPM変異体の発現量は一致していた。このことは、PPMがVpxの発現を促進する機能を有することを示している。(2)これらPPM変異体の発現量の低下はプロテアソームやリソソーム系でのタンパク分解によるものではなかった。(3)ウサギ網状赤血球抽出液を用いたin vitroでの転写・翻訳系により、Vpx PPM変異体の発現量はin vivoと同様の発現パターンを示した。mRNAの転写量は野生型およびPPM変異体で差はなかったことから、PPMは翻訳過程において、Vpxの発現を促進していることが示された。(4)大腸菌抽出液を用いたin vitro転写・翻訳系においても、PPM変異体の発現量は著しく減少した。(5)種々の異なるサル種から分離されたVpxのPPMについても、PPMがVpxの発現を促進していることを突き止めた。このように、Vpx PPMは真核・原核生物に共通の翻訳機構によりVpxの発現を増強し、またVpx PPMの機能は様々な宿主から分離されたHIV-2/SIV Vpxにおいても保存されていることを示した。HIV-2特有のタンパクであるVpxはC末端領域に高度に保存された7つの連続するプロリン残基からなる特徴的なモチーフ(ポリプロリンモチーフ: PPM)があり、Vpxの機能に必須であることが知られている。本研究ではVpxのPPMがVpxの機能発現のためにどのような役割を果たしているのかについて解析を行い、以下のことを明らかにしてきた。マクロファージのようなHIV-2増殖にVpxを必要とする細胞でのPPM変異体のウイルス増殖能とVpx PPM変異体の発現量はよく一致していた。また、セルフリーでの転写・翻訳系を用いた研究により、PPMは翻訳過程において、Vpxの発現を促進していることが示された。HIV-2特有のタンパクであるVpxはマクロファージ(MΦ)での増殖に必須であり、逆転写産物の生成以前の過程で機能することが明らかとなっている。さらに、Vpxを導入したMΦでは、HIV-1のみならず、マウス白血病ウイルス(MLV)のようなレトロウイルスに対してもウイルス増殖が促進されることが報告され、Vpxは大きな注目を集めている。VpxのC末端領域に高度に保存された7つの連続するプロリン残基からなる特徴的なモチーフ(ポリプロリンモチーフ: PPM)があり、Vpxの機能に必須であることが知られている。本研究ではVpxのPPMがVpxの機能発現のためにどのような役割を果たしているのかについて解析を行い、MΦを標的とした抗HIV戦略の基盤の立ち上げを目的としている。現在までに申請者は以下のことを明らかにしてきた。(1)マクロファージやHSC-F細胞のようなHIV-2増殖にVpxを必要とする細胞でのPPM変異体のウイルス増殖能とVpx PPM変異体の発現量はよく一致していた。このことは、PPMがVpxの発現を促進する機能を有することを示している。(2)これらPPM変異体の発現量の低下はプロテアソームやリソソーム系でのタンパク分解によるものではなかった。(3)ウサギ網状赤血球抽出液を用いたin vitroでの転写・翻訳系により、Vpx PPM変異体の発現量はin vivoと同様の発現パターンを示した。また、mRNAの転写量は野生型およびPPM変異体で差はなかったことから、PPMは翻訳過程において、Vpxの発現を促進していることが示された。(4)大腸菌抽出液を用いたin vitro転写・翻訳系においても、PPM変異体の発現量は著しく減少した。このように、Vpx PPMは真核生物および原核生物に共通の翻訳機構によりVpxの発現を増強することが示された。本研究はVpxのC末端領域にHIV-2/SIVsm系において高度に保存されたPPMがVpxの機能発現のためにどのような役割を果たしているのかについて解析を行い、MΦを標的とした抗HIV戦略の基盤の立ち上げを目的としている。 | KAKENHI-PROJECT-24790443 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24790443 |
VpxのC末端領域に存在するポリプロリンモチーフの存在意義と機能解析 | 過去の報告からVpxと遺伝的に近縁のHIV-1/HIV-2 Vprは細胞内でタンパク分解機構によりHIV-2 Vpxと比較し、比較的短い半減期を有することが知られていた。またVprはそのC末端にPPMを有しないことから、当初はPPM変異体の発現量の低下はプロテアソームやリソソーム系でのタンパク分解によるものと予想していた。しかしながら、現在までにPPMがVpxの発現を翻訳過程において促進することにより、Vpxの発現を増加させる機構を担っていることが明らかになった。このように当初の予想とは異なる結果になったものの、Vpx PPMの機能を明らかにするという研究目的を達成できたことから、本研究は概ね順調に進展していると考えている。当初はPPM変異体の発現量の低下はプロテアソームやリソソーム系でのタンパク分解によるものと予想していたため、研究計画はプロテアソームやリソソーム系でのタンパク分解に関わる宿主因子の同定を予定していた。しかしながら、現在までにPPMがVpxの発現を翻訳過程において促進することにより、Vpxの発現を増加させる機構を担っていることが明らかになった。そのため、今後はVpx PPMがどのようにしてタンパク翻訳を促進しているのかについて詳細な検討をしたいと考える。まず、Vpx PPMの翻訳促進は真核、原核生物共通の分子機構で働いていることが分かっているので、野生型VpxおよびVpx PPM変異体について、真核および原核細胞において免疫沈降実験を行い、野生型Vpx/Vpx PPM変異体間で異なる結合様式を示す因子について、質量分析を行いその因子の候補を同定する。その後、決定した候補因子をsiRNAによりノックダウンさせ、その効果を検証する。以上の研究により、Vpxの非常に特徴的なポリプロリンモチーフがVpxの機能に付与する分子機構を明らかにする。このことはVpxのMΦにおけるHIV増殖促進機構についても重要な知見を与えると考える。該当なし | KAKENHI-PROJECT-24790443 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24790443 |
スルメイカの卵塊形成に関与するムチン型糖タンパク質の生化学的研究 | スルメイカは直径1mにもなる巨大な卵塊を生み、卵塊内の受精卵は1週間ほどで孵化する。本研究ではこの卵塊を包み、卵を保護しているゲル状の膜(主に卵塊膜ムチン)とその前駆体と推定される包卵腺粘質ムチンの諸性状を調べた。1.卵塊膜は約75%以上がムチン型糖タンパク質で、希アルカリ処理で容易に可溶化され、50-60%のエタノールで沈殿として単離された。この卵塊膜ムチンは分子量約300万に及ぶ巨大分子で、タンパク質14%、アミノ糖43%および中性糖43%から成り、アミノ酸の90%以上は、Thr、Pro、Ileが2:1:1のモル比で存在する特異な一次構造をもつ。さらに、包卵腺ムチンと極めて良く類似した諸性状を示す事から、卵塊膜は主に包卵腺ムチンに由来することが判明した。2.次にムチンの糖鎖構造を明らかにするため、包卵腺ムチンの糖鎖を80°C-9時間の気相ヒドラジン分解で切り出し、N-アセチル化の後、主要な中性糖鎖の一つをバイオゲルP-4カラムで単離した。この主要糖鎖の構造を質量分析法とNMR法で調べると、Calの2、4および6位にそれぞれFuc、4-O-Me-Glc(新奇糖成分)および4-O-Me-GlcNAc(新奇糖成分)の結合した特異な分岐4糖で、脊椎動物のムチン糖鎖とは全く異なるユニークな糖鎖であった。なお、この糖鎖はタンパク質部分のThrに結合する糖成分として知られるGalNAcを欠き、ムチン型糖鎖としては異例である。ヒドラジン分解による副分解の可能性があり、今後のさらなる検討が必要であろう。以上のごとく、これまでにほとんど研究例のない無脊椎動物のムチンとして、スルメイカの包卵腺および卵塊膜ムチンの特異な性状を明らかにすることが出来た。スルメイカは直径1mにもなる巨大な卵塊を生み、卵塊内の受精卵は1週間ほどで孵化する。本研究ではこの卵塊を包み、卵を保護しているゲル状の膜(主に卵塊膜ムチン)とその前駆体と推定される包卵腺粘質ムチンの諸性状を調べた。1.卵塊膜は約75%以上がムチン型糖タンパク質で、希アルカリ処理で容易に可溶化され、50-60%のエタノールで沈殿として単離された。この卵塊膜ムチンは分子量約300万に及ぶ巨大分子で、タンパク質14%、アミノ糖43%および中性糖43%から成り、アミノ酸の90%以上は、Thr、Pro、Ileが2:1:1のモル比で存在する特異な一次構造をもつ。さらに、包卵腺ムチンと極めて良く類似した諸性状を示す事から、卵塊膜は主に包卵腺ムチンに由来することが判明した。2.次にムチンの糖鎖構造を明らかにするため、包卵腺ムチンの糖鎖を80°C-9時間の気相ヒドラジン分解で切り出し、N-アセチル化の後、主要な中性糖鎖の一つをバイオゲルP-4カラムで単離した。この主要糖鎖の構造を質量分析法とNMR法で調べると、Calの2、4および6位にそれぞれFuc、4-O-Me-Glc(新奇糖成分)および4-O-Me-GlcNAc(新奇糖成分)の結合した特異な分岐4糖で、脊椎動物のムチン糖鎖とは全く異なるユニークな糖鎖であった。なお、この糖鎖はタンパク質部分のThrに結合する糖成分として知られるGalNAcを欠き、ムチン型糖鎖としては異例である。ヒドラジン分解による副分解の可能性があり、今後のさらなる検討が必要であろう。以上のごとく、これまでにほとんど研究例のない無脊椎動物のムチンとして、スルメイカの包卵腺および卵塊膜ムチンの特異な性状を明らかにすることが出来た。スルメイカは海洋中に直径70100cmの巨大な卵塊を生む。卵塊中の受精卵は1週間ほどで孵化するが、その間はゲル状の卵塊膜で保護されている。この卵塊膜は雌イカの成熟と共に急速に発達する包卵腺の粘質物に由来すると言われている。本研究では卵塊膜の主成分が防御タンパク質のムチン型糖タンパク質であり、その前驅体は包卵腺粘質物中のムチンであることを明らかにした。1.卵塊膜は約75%がムチン糖タンパク質であり、希アルカリ処理(0.4NNaOH,4°C,3日)で可溶化することが出来た。その主要成分は50%エタノールで定量的に沈殿し、超遠心的に単一成分であった。このムチンはタンパク質14%、アミノ糖43%および中性糖43%から成り、アミノ酸の90%以上はトレオニン、プロリン、イソロイシンが2:1:1のモル比で存在する特異な一次構造をもつ。沈降分析と粘度測定から算出した分子量は約320万で、水溶液は著しい粘性を示した。2.包卵腺ムチンは粘質物の希アルカリ処理(0.4NNaOH,4°C,4h)で可溶化し、50%エタノール沈殿で単離された。このムチンは化学組成および高粘性の点で卵塊膜ムチンと良く一致しているが、分子量は多少小さく、約230万であった。 | KAKENHI-PROJECT-08456103 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08456103 |
スルメイカの卵塊形成に関与するムチン型糖タンパク質の生化学的研究 | 3.卵塊膜および包卵腺ムチンに含まれる多量の糖鎖を単離して構造を解明する第一歩として、本年度に備品として購入したヒドラクラブを用い、タンパク質部分と糖鎖をヒドラジン分解で分離することを試みた。現在、分解条件の詳細を検討中であり、次年度には分離した糖鎖の構造解析を試みる。既に、本ムチンには2種類の新奇な糖成分を発見しており、防御タンパク質としての機能と糖鎖構造の関係も調べてみたい。スルメイカは直径1mにもなる巨大な卵塊を生み、卵塊内の受精卵は1週間ほどで孵化する。卵塊はムチン型糖タンパク質を主成分とするゲル状の膜によって保持されており、この卵塊膜は雌イカの成熟と共に急速に発達する包卵腺が分泌する粘質物に由来する。本研究では卵塊膜の主成分であるムチンの糖鎖構造を調べた。1.スルメイカ・ムチンは脊椎動物・ムチンと異なり、その糖鎖は希アルカリ処理によるβ-位離脱反応で切り出すことが出来なかった。そこで、ヒドラジン分解による糖鎖の切り出しを試みた。初めに、標準的な条件である80°C-9時間の気相ヒドラジン分解を行った。遊離した糖鎖はN-アセチル化の後、バイオゲルP-4を用いるゲル濾過で分画した。その結果、中性糖鎖画分の主成分はTLCおよび逆相HPLCで分析すると、ほぼ単一成分であることが判明した。2.この主要糖鎖の構造を質量分析法とNMR法で調べたところ、ガラクトースの2、4および6位にそれぞれフコース、4-O-メチルグルコース(新奇糖成分)および4-O-メチル-アセチルグルコサミン(新奇糖成分)の結合した4糖からなる特異な分岐糖鎖であることが判明した。無脊椎動物のムチンに関する研究はこれまでにほとんど無く、脊椎動物のムチンとは性状を異にするユニークな糖鎖の存在が明らかとなった。3.しかし、ムチン型糖鎖はN-アセチルガラクトサミンを介してタンパク質のトレオニンあるいはセリンとグリコシド結合している。本研究で得た糖鎖はN-アセチルガラクトサミンを欠いており、ヒドラジン分解に問題があるのかも知れない。今後、分解条件の検討を行い、このユニークなスルメイカ・ムチン糖鎖の構造を解明したい。 | KAKENHI-PROJECT-08456103 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08456103 |
神経細胞微小管における神経線維と微小管関連蛋白の結合 | ブタ脳より精製したチュブリン蛋白をtaxol存在下で重合し微小管を形成させ、ウシ脊髄より精製しアルカリフォスファターゼ処理にて脱リン酸化したニューロフィラメントHサブユニット(NF-H)と、ブタ脳より精製した微小管関連蛋白2(MAP2)を、その微小管とインキュベーションし結合させた後、共沈実験を行った。共沈の遠心条件は、微小管及びそれに結合した蛋白は沈殿になるが、遊離のNF-HまたはMAP2は上清に残る強さとした。遠心後の沈殿の蛋白量を、SDS-PAGE上のチュブリン蛋白、NF-H、及びMAP2のバンドをdensitometerにより測定し、チュブリン蛋白のバンドの値をもとに補正して比較した。微小管へNF-H及びMAP2を同時に結合させた場合、結合したNF-Hはチュブリン蛋白を100として9.2、同じくMAP2は6.3であった。微小管へNF-Hのみを結合させた場合は、結合したNF-Hは10.9となった。また、MAP2のみを結合させた場合は、結合したMAP2は6.8となった。この結果よりNF-HとMAP2の微小管上の結合は部分的に競合すると考えられ、結合部位は隣接して存在するか、あるいは一部重なっているものと思われた。しかし、MAP2、NF-Hともその分子形態は線維状の蛋白であり、線維状に伸びた部分により、機械的に他の蛋白の結合が阻害される可能性があり、MAP2あるいはNF-Hの微小管結合部位のみを用いた実験を行う必要がある。この点については、酵素による切断で作製したMAP2の微小管結合部位のフラグメントはニューロフィラメント蛋白と結合することが知られており、微小管へNF-HとMAP2の微小管結合フラグメントを加え共沈実験を行う場合、NF-HとMAP2のフラグメントが結合し沈殿となることが考えられる。今後これらの点を解決する必要があると思われるが、一つの案としては、NF-Hをキモトリプシンでtail domainを残し切断して用いてみる事などが考えられる。ブタ脳より精製したチュブリン蛋白をtaxol存在下で重合し微小管を形成させ、ウシ脊髄より精製しアルカリフォスファターゼ処理にて脱リン酸化したニューロフィラメントHサブユニット(NF-H)と、ブタ脳より精製した微小管関連蛋白2(MAP2)を、その微小管とインキュベーションし結合させた後、共沈実験を行った。共沈の遠心条件は、微小管及びそれに結合した蛋白は沈殿になるが、遊離のNF-HまたはMAP2は上清に残る強さとした。遠心後の沈殿の蛋白量を、SDS-PAGE上のチュブリン蛋白、NF-H、及びMAP2のバンドをdensitometerにより測定し、チュブリン蛋白のバンドの値をもとに補正して比較した。微小管へNF-H及びMAP2を同時に結合させた場合、結合したNF-Hはチュブリン蛋白を100として9.2、同じくMAP2は6.3であった。微小管へNF-Hのみを結合させた場合は、結合したNF-Hは10.9となった。また、MAP2のみを結合させた場合は、結合したMAP2は6.8となった。この結果よりNF-HとMAP2の微小管上の結合は部分的に競合すると考えられ、結合部位は隣接して存在するか、あるいは一部重なっているものと思われた。しかし、MAP2、NF-Hともその分子形態は線維状の蛋白であり、線維状に伸びた部分により、機械的に他の蛋白の結合が阻害される可能性があり、MAP2あるいはNF-Hの微小管結合部位のみを用いた実験を行う必要がある。この点については、酵素による切断で作製したMAP2の微小管結合部位のフラグメントはニューロフィラメント蛋白と結合することが知られており、微小管へNF-HとMAP2の微小管結合フラグメントを加え共沈実験を行う場合、NF-HとMAP2のフラグメントが結合し沈殿となることが考えられる。今後これらの点を解決する必要があると思われるが、一つの案としては、NF-Hをキモトリプシンでtail domainを残し切断して用いてみる事などが考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-06780587 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06780587 |
グルココルチコイドによる組織特異的作用発現のメカニズム〜転写共役因子からの検討〜 | グルココルチコイド(GC)は,細胞質にあるグルココルチコイドレセプター(GR)に結合すると,熱ショック蛋白が解離して核内へ移行し,さらに二量体を形成して,標的遺伝子のGC応答配列(GRE)に結合することによりその遺伝子の転写活性化を引き起こす。そして,GC作用は,ホルモンとそのレセプターGRに加えて,転写共役因子(コアクチベーター)がGRに動員結合することにより,ホルモン作用の強弱が調節されることが示されている。そこでまず初めに,内因性にGRが存在しない腎臓線維芽細胞由来COS-1細胞において,GRE-luciferaseをレポーター遺伝子として用いたTransient transfection assayにより,コアクチベーターの機能を検討した。,デキサメサゾン(DEX)の濃度を上げても,GRを発現させないとGR作用を認めなかった。次に,GRを外因性に発現させてDEX濃度を上昇させると,濃度依存性にGR作用の増加を認めた。そこに,外因性にコアクチベーターSRC-1を過剰発現させると,DEX依存性のGR作用がさらに5-10倍に増強された。しかし,GRとSRC-1を過剰発現させてもDEXを加えないとGR作用は全く消失した。以上の結果より,(1)GR作用の発現にはホルモン,GRおよびコアクチベーターの三者が必須であること,(2)またコアクチベーターは細胞内に内因性に存在するが飽和していないこと,(3)コアクチベーターの細胞内発現量の変化は,GR作用の増幅効果があること,(4)ホルモンがGRに結合しなければコアクチベーター単独ではGR作用を発現できないことが明らかとなった。この結果から,ホルモン処置によりコアクチベーターそのものの発現量が変化すれば,ホルモン作用の発現に大きな影響を与える調節機構となると考えられ,以下の研究を進めた。そこで,本年はin vitroでラット腎メサンジウム細胞を用いてその調節を詳細に検討した。10^<-6>MのDEX処置にてNorthern blotでは24時間後にSRC-1 mRNAレベルのdown-regulationを認めた。さらに,抗SRC-1ペプチド抗体を用いたWestern blotでは約6時間後にSRC-1タンパクのdown-regulationを認めた。GCにより腎臓メサンジウム細胞でコアクチベーターSRC-1の遺伝子転写レベルでのdown-regulationが明らかとなった。しかし,腎臓全体の中でメサンジウム細胞の占める割合は少なく,腎臓全体の約90%を占める尿細管細胞での調節を検討するために,マウス近位尿細管由来MCT-1細胞において同様の検討を行ったところ,10^<-7>10^<-6>MのDEX処置によりタンパクレベルで明らかなSRC-1のdown-regulationを認めた。したがって,in vivoのラット腎臓において認めたSRC-1のdown-regulationは,in vitroにおいても近位尿細管およびメサンジウム細胞においてmRNAおよびタンパクレベルにて確認された。以上の結果を考え合わせると,腎臓においてGC投与に対してその作用が過剰に持続しないように生体防御的にGRおよびコクチベーターのSRC-1がdown-regulationされていることが推察された。今後,SRC-1遺伝子のプロモーター領域にGREが存在するか否かなどの検討により,down-regulationの詳細な機序が明らかになることが期待される。グルココルチコイドは臨床的には,多くの炎症性疾患や免疫アレルギー疾患の治療に広く用いられており,高血圧症などの組織特異的な副作用の発現や,グルココルチコイド抵抗性が生じる機序は不明である。近年,ステロイド受容体による遺伝子転写制御において,受容体とホルモン依存性に結合して,基礎転写因子複合体と受容体の間の橋渡しをする転写共役因子(coactivator,corepressor)がクローニングされ,その病態生理学的役割が注目されている。標的臓器におけるホルモン感受性を調節する因子として,局所のホルモンの濃度や,組織特異的に発現している転写共役因子の発現量が考えられる。多くの転写共役因子はすべての組織にubiquitousに,しかし限られた量が発現していることが報告されている。したがって,リガンド投与により,組織特異的に転写共役因子の発現量が変化すれば組織特異的な作用の原因となりうる。そこで本年度は,in vivoのラットを用いてデキサメサゾン投与時の組織特異的な転写共役因子の発現量を検討した。まず,in vivoのSDラットにデキサメサゾンを経口的または経腹腔的に投与(15mg/kg体重)し,投与4時間,8時間,12時間,24時間,72時間,8日後と経時的にラットを屠殺し,各臓器を摘出した。まず,各時点におけるラット血漿ACTHおよびコルチコステロン濃度は投与前と比べて有意に抑制されており,デキサメサゾンが各ラットに十分量投与されていることを確認した。次に,各時点におけるグルココルチコイド受容体(GR),coactivatorのSRC-1(steroidreceptor coactivator-1),CBP(CREB-binding protein)mRNA量をNorthem blotまたはRT-PCR法にて検討した。その結果,肝臓,腎臓,心臓および胃においてGR mRNAは投与4時間後に著明な低下を認め,以後もとのレベルへ上昇した。そして,coactivatorの発現量では,SRC-1 mRNAは検討した臓器において期間中有意な変化を認めなかったが,興味深いことにCBP mRNAは,腎臓および心臓において投与後4時間後に一過性の有意な減少を認め,以後徐々に上昇した。以上より,coactivatorそのものもグルココルチコイドにより組織特異的なdownregulationを受けること,またcoactivatorの種類によりSRC-1とCBPは異なる発現調節を受けることが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-10770559 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10770559 |
グルココルチコイドによる組織特異的作用発現のメカニズム〜転写共役因子からの検討〜 | 次に,リガンドによるcoactivatorの発現調節が遺伝的に高血圧を発症するラットにおいて違いがあるか検討するために,高血圧自然発症ラット(SHR)および対象としてWKYラットにおいて同様の検討をしたが,有意な差を認めなかった。次のステップとしては,転写共役因子の発現がリガンドにより組織特異的な発現調節が起こる機序を検討する必要があり,in vitroの培養細胞を用いて,グルココルチコイドおよびGR拮抗薬を用いて詳細な発現調節をmRNAレベルのにならず,蛋白レベルでも検討すること,また,GRE(グルココルチコイド応答配列)を含むレポーター遺伝子を用いたtransient transfection assayにて転写活性を測定し,coactivatorの組織特異的な発現量がグルココルチコイド作用に及ぼす機能的解析も行う予定である。グルココルチコイド(GC)は,細胞質にあるグルココルチコイドレセプター(GR)に結合すると,熱ショック蛋白が解離して核内へ移行し,さらに二量体を形成して,標的遺伝子のGC応答配列(GRE)に結合することによりその遺伝子の転写活性化を引き起こす。そして,GC作用は,ホルモンとそのレセプターGRに加えて,転写共役因子(コアクチベーター)がGRに動員結合することにより,ホルモン作用の強弱が調節されることが示されている。そこでまず初めに,内因性にGRが存在しない腎臓線維芽細胞由来COS-1細胞において,GRE-luciferaseをレポーター遺伝子として用いたTransient transfection assayにより,コアクチベーターの機能を検討した。,デキサメサゾン(DEX)の濃度を上げても,GRを発現させないとGR作用を認めなかった。次に,GRを外因性に発現させてDEX濃度を上昇させると,濃度依存性にGR作用の増加を認めた。そこに,外因性にコアクチベーターSRC-1を過剰発現させると,DEX依存性のGR作用がさらに5-10倍に増強された。しかし,GRとSRC-1を過剰発現させてもDEXを加えないとGR作用は全く消失した。以上の結果より,(1)GR作用の発現にはホルモン,GRおよびコアクチベーターの三者が必須であること,(2)またコアクチベーターは細胞内に内因性に存在するが飽和していないこと,(3)コアクチベーターの細胞内発現量の変化は,GR作用の増幅効果があること,(4)ホルモンがGRに結合しなければコアクチベーター単独ではGR作用を発現できないことが明らかとなった。この結果から,ホルモン処置によりコアクチベーターそのものの発現量が変化すれば,ホルモン作用の発現に大きな影響を与える調節機構となると考えられ,以下の研究を進めた。そこで,本年はin vitroでラット腎メサンジウム細胞を用いてその調節を詳細に検討した。10^<-6> | KAKENHI-PROJECT-10770559 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10770559 |
アルドステロンによるENaC異常調節に起因する体液量感受機構破綻の分子メカニズム | 食塩感受性高血圧Dahl(Dahl-S)ラットにおいて、高食塩食摂取により血圧が上昇すること、普通食塩食あるいは低食塩食は血圧には影響を与えないこと、食塩抵抗性Dahl(Dahl-R)ラットでは、高食塩食・普通食塩食・低食塩食のいずれにおいても血圧には影響を与えないことが明らかとなった。Dahl-Sラットにおいて、上皮型ナトリウムチャネル(ENaC)α,βおよび_γサブユニットmRNAの発現は高食塩食摂取により増大すること、ENaCの細胞内トラッフィキングを制御するserum and glucocorticoid-regulated kinase1(SGK1)のmRNAおよびタンパク発現が、Dahl-Sラットにおいては、増大することが明らかとなった。Dahl-Rラットにおいては、ENaCαサブユニットmRNAの発現は高食塩食摂取により低下し、一方低食塩食摂取によりENaCαサブユニットmRNAの発現は低食塩食摂取により増大することが明らかとなった。正常遠位部尿細管上皮細胞において、低浸透圧刺激によりENaC mRNAは増大するが、この増大機構に受容体型チロシンキナーゼが関与して、そのシグナル下流にJNKが関与していることが明らかとなった。これらの細胞内シグナルとしてクロライドイオンが重要な働きを果たしていることも明らかとなった。以上のことから、食塩感受性高血圧症における異常制御機構として、ENaCおよびSGK1の発現制御の破綻があることが明らかとなった。さらにアルドステロンが細胞内ENaCの細胞内局在部位移動速度および局在部位の変化をもたらすことが明らかとなった。腎遠位部尿細管モデル細胞において、アルドステロン非処理の細胞においては、多くのNaCはゴルジ装置に存在し、アルドステロン刺激により、産生されたENaCの多くはERに存在し、管腔側膜上から細胞内へのENaC取り込み速度が低下し、一方細胞内から管腔側膜上への移動速度には変化を及ぼさないことを明らかとした。浸透圧上昇により、ENaCの管腔側膜上から細胞内へ取り込み速度が上昇し、この細胞内に取り込まれたENaCは、ERへのリサイクルされることも明らかとなった。24時間に渡る低浸透圧負荷は、ENaCのβ/γmRNA発現を増強させること、およびこれらのmRNAの発現増強に係わるシグナルとして、p38が関与しているを示した。浸透圧変化によるENaC遺伝子発現制御、またENaCタンパクの細胞内移動制御に係わるSGK1遺伝子発現制御に細胞内カルシウムイオンが関与していることも明らかした。食塩感受性高血圧Dahl(Dahl-S)ラットにおいて、高食塩食摂取により血圧が上昇すること、普通食塩食あるいは低食塩食は血圧には影響を与えないこと、食塩抵抗性Dahl(Dahl-R)ラットでは、高食塩食・普通食塩食・低食塩食のいずれにおいても血圧には影響を与えないことが明らかとなった。Dahl-Sラットにおいて、上皮型ナトリウムチャネル(ENaC)α,βおよび_γサブユニットmRNAの発現は高食塩食摂取により増大すること、ENaCの細胞内トラッフィキングを制御するserum and glucocorticoid-regulated kinase1(SGK1)のmRNAおよびタンパク発現が、Dahl-Sラットにおいては、増大することが明らかとなった。Dahl-Rラットにおいては、ENaCαサブユニットmRNAの発現は高食塩食摂取により低下し、一方低食塩食摂取によりENaCαサブユニットmRNAの発現は低食塩食摂取により増大することが明らかとなった。正常遠位部尿細管上皮細胞において、低浸透圧刺激によりENaC mRNAは増大するが、この増大機構に受容体型チロシンキナーゼが関与して、そのシグナル下流にJNKが関与していることが明らかとなった。これらの細胞内シグナルとしてクロライドイオンが重要な働きを果たしていることも明らかとなった。以上のことから、食塩感受性高血圧症における異常制御機構として、ENaCおよびSGK1の発現制御の破綻があることが明らかとなった。さらにアルドステロンが細胞内ENaCの細胞内局在部位移動速度および局在部位の変化をもたらすことが明らかとなった。腎遠位部尿細管モデル細胞において、アルドステロン非処理の細胞においては、多くのNaCはゴルジ装置に存在し、アルドステロン刺激により、産生されたENaCの多くはERに存在し、管腔側膜上から細胞内へのENaC取り込み速度が低下し、一方細胞内から管腔側膜上への移動速度には変化を及ぼさないことを明らかとした。浸透圧上昇により、ENaCの管腔側膜上から細胞内へ取り込み速度が上昇し、この細胞内に取り込まれたENaCは、ERへのリサイクルされることも明らかとなった。24時間に渡る低浸透圧負荷は、ENaCのβ/γmRNA発現を増強させること、およびこれらのmRNAの発現増強に係わるシグナルとして、p38が関与しているを示した。浸透圧変化によるENaC遺伝子発現制御、またENaCタンパクの細胞内移動制御に係わるSGK1遺伝子発現制御に細胞内カルシウムイオンが関与していることも明らかした。食塩感受性高血圧ラットにおいて、アルドステロンの効果を検証するため、副腎摘出手術を施行することにより、内在性副腎皮質ホルモンの関与を除去した食塩感受性高血圧および食塩耐性正常血圧Dahlラットを作製した。アルドステロンを投与した副腎摘出食塩感受性高血圧Dahlラットおよび食塩耐性正常血圧Dahlラットにおいて、以下の実験を行なった。食塩感受性高血圧症モデル動物のDahl salt-sensitive(DS)と対照のDahl salt-resistant(DR) | KAKENHI-PROJECT-17390057 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17390057 |
アルドステロンによるENaC異常調節に起因する体液量感受機構破綻の分子メカニズム | ラットを用いてアルドステロンによるENaCの発現制御とフラボノイドの作用について検討した。DSラットに高食塩食を摂取させると血圧が著しく上昇するが、フラボノイドであるケルセチンの同時摂取は腎でのENaC発現を抑制して、高食塩食による血圧上昇を有意に抑制した。さらに、副腎摘出したラットに、アルドステロンを腹腔内に注入し、6時間後に腎臓を摘出してENaCの発現やその発現制御に関わる因子の活性を測定した。その結果、DSラットにおいてENaCのalphaサブユニットはアルドステロンの増大に伴って発現が増大したが、betaとgammaサブユニットは発現が減少し、血漿アルドステロン濃度と逆相関した。以上のことから、アルドステロンによるENaCの発現制御異常が食塩感受性高血圧症発症の一因であることが示唆され、食塩感受性高血圧の発症はフラボノイドの摂取によりENaC発現制御を介して抑制されることが示された。食塩感受性高血圧Dahlラットにおいて、高食塩食摂取により血圧が上昇すること、普通食塩食あるいは低食塩食は血圧には影響を与えないことが明らかとなった。また、食塩抵抗性Dahlラットにおいては、高食塩食・普通食塩食・低食塩食のいずれにおいても血圧には影響を与えないことが明らかとなった。食塩感受性高血圧Dahlラットにおいて、上皮型ナトリウムチャネルα,βおよびγサブユニットmRNAの発現は高食塩食摂取により増大することが明らかとなった。また、上皮型ナトリウムチャネルの細胞内トラッフィキングを制御するserum and glucocorticoid-regulated kinase 1のmRNAおよびタンパク発現が、食塩感受性高血圧Dahlラットにおいては、増大することが明らかとなった。食塩抵抗性Dahlラットにおいては、上皮型ナトリウムチャネルαサブユニットmRNAの発現は高食塩食摂取により低下し、一方低食塩食摂取により上皮型ナトリウムチャネルαサブユニットmRNAの発現は低食塩食摂取により増大することが明らかとなった。さらに、正常遠位部尿細管上皮細胞において、低浸透圧刺激により上皮型ナトリウムチャネルmRNAは増大するが、この増大機構に受容体型チロシンキナーゼが関与して、そのシグナル下流にJNKが関与していることが明らかとなった。これらの細胞内シグナルとしてクロライドイオンが重要な働きを果たしていることも明らかとなった。以上のことから、食塩感受性高血圧症における異常制御機構として、上皮型ナトリウムチャネルおよびserum and glucocorticoid-regulated kinase 1の発現制御の破綻があることが明らかとなった。アルデステロンが細胞内ENaCの細胞内における存在部位移動速度および存在部位の変化をもたらすことが明らかとなった。腎遠位部尿細管モデル細胞において、アルドステロン非処理の細胞においては、多くのENaCはゴルジ装置に存在し、アルドステロン刺激により産生されたENaCの多くはERに存在することが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-17390057 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17390057 |
腹部大動脈瘤ステントグラフト内挿術後の諸問題解決を目指すMRIの新戦略 | 腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術によるEVAR(endovascular aortic repair)治療は、その低侵襲性から、近年多用されるようになり、本邦でも2011年以降、開腹直達手術件数を上回る件数が施行されている。それに伴い、エンドリークや脚閉塞などの術後合併症が問題となってきた。本研究ではMRIを用いた4次元流速解析(4DFLOW)を駆使し、EVAR後の合併症の超早期検出と高精度病態解明で、より安全なEVAR実現への道筋を拓くことが目的である。今年度はTypeIIエンドリークの責任動脈の血行動態の特徴について4D FLOWを用いて検討した。EVARを施行した155例の患者のうち107症例でCT angiography(CTA)と4D FLOWが同時期に施行され、一年後の動脈瘤径がCTAで計測された。1週間後の段階で、39症例(36.4%)でtype IIエンドリークが生じていた。その内28症例が1年後にCTAと4D FLOWで再評価された。7症例が動脈瘤の増大を認め(増大群)、21症例は動脈瘤の増大は見られなかった(非増大群)。7日目には, 28症例は4DFLOWにて80本のtype IIエンドリークを検出したが、39本(48.8%)は1年の経過でflowが消失した(一過性)、ところが、41本(51.3%)はflowが持続した(持続群)。持続群のうち、動脈瘤増大群では責任動脈の内部血流のpeak flow velocityとそのamplitudeが有意に大きかった。EVAR後の動脈瘤の予後はtype IIエンドリークの血管内のflow dynamicsを調べることである程度予想ができる可能性があり、それには4DFLOWが有用であることがわかった。臨床的に最も問題となっているEVAR後のtype IIエンドリークについて、4DFLOWを用いた血行動態の評価に成功した。動脈瘤のfateについてもエンドリークの責任動脈の血行動態(peak flowとflow amplitude)とある程度関連性を示唆する所見を得ることができた。更に症例を集積し、その他のendoleakについても有意な結果を得たい。腹部大動脈瘤(AAA)に対するステントグラフトによるEVAR(endovascular aortic repair)治療は、その低侵襲性から、近年多用されるようになり、本邦でも2011年以降、開腹直達手術件数を上回る件数が施行されている。しかし、それに伴い、エンドリーク、脚閉塞による間欠跛行、腎臓等の臓器虚血、臀筋跛行、陰萎、脊髄梗塞等といった術後合併症が問題となってきた。これらの診断には現在は専らX線DSAや造影CTが行われているが、十分な精度とは言えない。本研究ではMRIを用いた4次元流速解析や独自開発の超微量ガドリニウム造影剤漏出検出法を駆使し、EVAR後の合併症の超早期検出と高精度病態解明により、より安全なEVAR実現への道筋を拓くことである。今年度はそのデータ収集の準備を行った。1)学内臨床研究倫理審査委員会から介入研究として承認を得た。2)名古屋大学附属病院においてMRIの撮像プロトコルの最適化を行った。装置はSiemens社の3T MR装置skyraで撮影した。2名の健常ボランティアで、探索的に非造影の4DFLOW撮影を行い、撮像時間10分で4DFLOWの検査が施行できるように、撮像シーケンスを最適化した。三軸の速度イメージから非造影でも比較的良好な血管壁のboundaryが決定でき、segmentationは可能であることがわかり、造影では描出は更に容易であると考えられた。3)名古屋大学附属病院において、EVAR術後の患者を初めてentryし、撮影を施行した。造影剤を用いた3DMRAで4DFLOWの3次元速度ベクトルのsegmentationを行い、flow analysisを行うと共に、造影剤の漏出を検討した。当初計画にある平成29年度の目標をほぼ達成した。腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術によるEVAR(endovascular aortic repair)治療は、その低侵襲性から、近年多用されるようになり、本邦でも2011年以降、開腹直達手術件数を上回る件数が施行されている。それに伴い、エンドリークや脚閉塞などの術後合併症が問題となってきた。本研究ではMRIを用いた4次元流速解析(4DFLOW)を駆使し、EVAR後の合併症の超早期検出と高精度病態解明で、より安全なEVAR実現への道筋を拓くことが目的である。今年度はTypeIIエンドリークの責任動脈の血行動態の特徴について4D FLOWを用いて検討した。EVARを施行した155例の患者のうち107症例でCT angiography(CTA)と4D FLOWが同時期に施行され、一年後の動脈瘤径がCTAで計測された。1週間後の段階で、39症例(36.4%)でtype IIエンドリークが生じていた。その内28症例が1年後にCTAと4D FLOWで再評価された。7症例が動脈瘤の増大を認め(増大群)、21症例は動脈瘤の増大は見られなかった(非増大群)。7日目には, 28症例は4DFLOWにて80本のtype IIエンドリークを検出したが、39本(48.8%)は1年の経過でflowが消失した(一過性)、ところが、41本(51.3%)はflowが持続した(持続群)。 | KAKENHI-PROJECT-17K10398 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K10398 |
腹部大動脈瘤ステントグラフト内挿術後の諸問題解決を目指すMRIの新戦略 | 持続群のうち、動脈瘤増大群では責任動脈の内部血流のpeak flow velocityとそのamplitudeが有意に大きかった。EVAR後の動脈瘤の予後はtype IIエンドリークの血管内のflow dynamicsを調べることである程度予想ができる可能性があり、それには4DFLOWが有用であることがわかった。臨床的に最も問題となっているEVAR後のtype IIエンドリークについて、4DFLOWを用いた血行動態の評価に成功した。動脈瘤のfateについてもエンドリークの責任動脈の血行動態(peak flowとflow amplitude)とある程度関連性を示唆する所見を得ることができた。撮影プロトコルの見直し等により一件毎の検査時間を最適化し、更に検査件数を増やす。更に症例を集積し、その他のendoleakについても有意な結果を得たい。今年度、研究分担者の日程がなかなか合わず、全体会議が十分行えなかったことで研究分担者の旅費の支出が少なかったことが主因と考えられる。このことによる研究の進捗には直接的な影響は無く、今年度の目的を概ね達成したが、次年度、予算と支出の差額が生じないように留意してゆきたい。分担者全員とのミーティングが行えなかったことが理由として考えられます。ネット会議等を利用して、研究計画に齟齬が無いようにしていますが、留意したいと思います。 | KAKENHI-PROJECT-17K10398 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K10398 |
ブライトリム分子雲に於けるSequential Star Formation | 私は、Sugitani et al.(1991,ApJS77)でブライトリム分子雲に於けるトリガーされた星生成の候補としてIRAS点源(遠赤外線源)が付随する44個のブライトリム分子雲を北天でピックアップし、これら天体を近赤外JHK3色イメージング観測を米国キットピーク観測所の1.3m望遠鏡と赤外線カメラ(SQIID)で行った。予備的な解析により、多くの天体で前主系列星のクラスターを発見し、少なくとも6つの天体では電離波面爆縮(radiation-driven implosion)による連鎖的星形成(sequential star formation)の証拠を得た。しかしながら、この段階の観測サンプルはまだ少なく、この連鎖的星形成の重要性はまだよく認識されているとは言えない。そこで、さらにこのような観測例を増やし、ブライトリム分子雲に於ける小さなスケールでのトリガーによる星生成の伝搬に関しての基本的な描像を与えることを目的として、キットピーク観測所のデータの詳しい解析を行った。その結果、さらに5例のsequential star formationの事例を発見した。私は、IRAS点源が付随するブライトリム分子雲の探査を北天と同様にして南天でも行い、45個のIRAS点源が付随するブライトリム分子雲をカタログしている(Sugitani et al.1994,ApJS92)。サンプルを飛躍的に増やすために、これら45天体の近赤外線観測を南半球のセロトロロ天文台の赤外線カメラ(CIRIM)を用いて行った。本格的な解析はこれからであるが、北天と同様に多くの前主系列星のクラスターを発見した。これからの詳しい解析により、ブライトリム分子雲に於ける星形成、特にSequential Star Formationの理解が深まることが大いに期待できる。研究遂行上、大量の近赤外線イメージ・データの解析を効率化するために、大容量のハードディスクを導入した。また、経費の一部はデータ解析の補助のための謝金、その他研究遂行に必要な消耗品などに経費に充てた。私は、Sugitani et al.(1991,ApJS77)でブライトリム分子雲に於けるトリガーされた星生成の候補としてIRAS点源(遠赤外線源)が付随する44個のブライトリム分子雲を北天でピックアップし、これら天体を近赤外JHK3色イメージング観測を米国キットピーク観測所の1.3m望遠鏡と赤外線カメラ(SQIID)で行った。予備的な解析により、多くの天体で前主系列星のクラスターを発見し、少なくとも6つの天体では電離波面爆縮(radiation-driven implosion)による連鎖的星形成(sequential star formation)の証拠を得た。しかしながら、この段階の観測サンプルはまだ少なく、この連鎖的星形成の重要性はまだよく認識されているとは言えない。そこで、さらにこのような観測例を増やし、ブライトリム分子雲に於ける小さなスケールでのトリガーによる星生成の伝搬に関しての基本的な描像を与えることを目的として、キットピーク観測所のデータの詳しい解析を行った。その結果、さらに5例のsequential star formationの事例を発見した。私は、IRAS点源が付随するブライトリム分子雲の探査を北天と同様にして南天でも行い、45個のIRAS点源が付随するブライトリム分子雲をカタログしている(Sugitani et al.1994,ApJS92)。サンプルを飛躍的に増やすために、これら45天体の近赤外線観測を南半球のセロトロロ天文台の赤外線カメラ(CIRIM)を用いて行った。本格的な解析はこれからであるが、北天と同様に多くの前主系列星のクラスターを発見した。これからの詳しい解析により、ブライトリム分子雲に於ける星形成、特にSequential Star Formationの理解が深まることが大いに期待できる。研究遂行上、大量の近赤外線イメージ・データの解析を効率化するために、大容量のハードディスクを導入した。また、経費の一部はデータ解析の補助のための謝金、その他研究遂行に必要な消耗品などに経費に充てた。 | KAKENHI-PROJECT-07740192 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07740192 |
口腔悪性腫瘍における第11番染色体上の共通欠失領域の同定 | ヒト第11番染色体におけるヘテロ接合性(Loss of heterozygosity,LOH)はヒトの様々な癌で既に報告されている。第11番染色体上の癌抑制遺伝子の存在の可能性を検索するために、本研究ではこの染色体に特有な22個のマイクロサテライト・マーカーを使用して、31人の患者から採取した口腔扁平上皮癌組織について精密な欠失地図を作製した。コントロールは同一患者の正常組織を用いた。LOHは25症例中14例で認められた(56.0%)。特に、欠失が多く認められたのはこの染色体の長腕上においてであった。しかも、我々のデーターは異なった2個所の欠失領域の存在を示した。まず、第一の領域は11q23の領域であり、マイクロサテライト・マーカーのD11S939とD11S924の間に3cMにわたって存在した。第二の共通欠失領域は11q25の領域でマイクロサテライト・マーカーのD11S912とD11S910の間に7cMにわたって存在した。これらの結果は口腔悪性腫瘍の発生・進展に関係した癌抑制遺伝子が第11番染色体長腕上に少なくとも2つ以上存在する可能性を示唆した。ヒト第11番染色体におけるヘテロ接合性(Loss of heterozygosity,LOH)はヒトの様々な癌で既に報告されている。第11番染色体上の癌抑制遺伝子の存在の可能性を検索するために、本研究ではこの染色体に特有な22個のマイクロサテライト・マーカーを使用して、31人の患者から採取した口腔扁平上皮癌組織について精密な欠失地図を作製した。コントロールは同一患者の正常組織を用いた。LOHは25症例中14例で認められた(56.0%)。特に、欠失が多く認められたのはこの染色体の長腕上においてであった。しかも、我々のデーターは異なった2個所の欠失領域の存在を示した。まず、第一の領域は11q23の領域であり、マイクロサテライト・マーカーのD11S939とD11S924の間に3cMにわたって存在した。第二の共通欠失領域は11q25の領域でマイクロサテライト・マーカーのD11S912とD11S910の間に7cMにわたって存在した。これらの結果は口腔悪性腫瘍の発生・進展に関係した癌抑制遺伝子が第11番染色体長腕上に少なくとも2つ以上存在する可能性を示唆した。 | KAKENHI-PROJECT-08771844 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08771844 |
永久歯の先天性欠如に関する総合的研究 | 北海道大学、昭和大学、鶴見大学、朝日大学、大阪歯科大学、九州歯科大学、鹿児島大学の7大学における附属病院小児歯科と調査協力施設において、エックス線写真を使用した永久歯の先天性欠如に関する疫学調査を行った。対象者は、資料採得時の年齢が永久歯胚の確認が可能となる7歳以上の小児とした。調査対象者総数は15, 544名(男子7, 502名、女子8, 042名)で、永久歯の先天性欠如者数は1, 568名、発現頻度は10.09%であった北海道大学、昭和大学、鶴見大学、朝日大学、大阪歯科大学、九州歯科大学、鹿児島大学の7大学における附属病院小児歯科と調査協力施設において、エックス線写真を使用した永久歯の先天性欠如に関する疫学調査を行った。対象者は、資料採得時の年齢が永久歯胚の確認が可能となる7歳以上の小児とした。調査対象者総数は15, 544名(男子7, 502名、女子8, 042名)で、永久歯の先天性欠如者数は1, 568名、発現頻度は10.09%であった本研究を中心的に推進する共同研究者の講座を各地域ごとの調査取りまとめ担当とし、その他の大学で協力が得られる小児歯科学講座を研究協力講座として資料を収集中である。全国5ブロックの拠点講座は、北海道大学(北日本地区)、昭和大学・鶴見大学(関東地区)、朝日大学(中部地区)、大阪歯科大学(近畿・中国四国地区)、九州歯科大学・鹿児島大学(九州地区)とした。また、各大学に関係する小児歯科学会員を調査協力施設として5月中に資料収集を完了する予定である。資料は、パノラマおよびデンタルエックス線写真、CTエックス線写真、歯列模型、口腔内写真、診療録などの経年資料を中心に、概ね過去10年以内に採得されたものを使用しており、調査総数は15,000件程度となる見込みである。現在、半数程度の大学から、初年度に作製し配布した記録用OCR紙が返却されて来ており、記載された全資料がそろった段階で一括してOCR記録を読み取り、統計分析のための集計表を作成する予定である。これにより、部位別の欠如歯の出現数に関して、男女別、左右側別、上下顎別、前歯臼歯別、歯種別、欠如歯数別などの項目について、全調査対象数と比較した出現頻度を算出し、先行乳歯の状態(欠如歯,癒合歯,双生歯,矮小歯など)、欠如歯の歯種と発見年齢との関係、欠如部位あるいは欠如歯数と咬合状態との関係、先行乳歯の状態と永久歯の先天性欠如との関係について分析する予定である。また、これらの分析項目に従って、全国と5ブロックの各調査地域においてもそれぞれの結果を算出し、全国と各地域、地域間の特徴について検討する予定である。北海道大学、昭和大学、鶴見大学、朝日大学、大阪歯科大学、九州歯科大学、鹿児島大学の7大学において、エックス線写真を使用した永久歯の先天性欠如に関する合同の疫学調査を行った。総調査人数15,544名(男子7,502名、女子8,042名)のうち、永久歯の先天性欠如は1,568名に確認された。(1)先天性欠如の概要:永久歯先天性欠如者の頻度は10.09%で、歯種別では、下顎左側第二小臼歯が3.26%、下顎右側第二小臼歯が2.84%で下顎第二小臼歯に最も多く認められ、次いで下顎側切歯、上顎第二小臼歯、上顎側切歯の順に多かった。(2)その他の歯の異常:過剰歯が4.99%で最も多く、癒合歯、矮小歯はそれぞれ1.33%、1.43%であった。過剰歯の頻度は、上顎のみでは4.80%、下顎のみでは0.17%、上下顎では0.02%であり、ほとんどが上顎に認められた。また、過剰歯総数865歯のうち820歯(94.80%)は上顎切歯部に存在した。(3)出生年代における比較:全調査対象者のうち生年月日が明確な15,494名について、出生年代別に1985年以前(2,536名)、1986年から1995年(9,737名)、1996年以降(3,221名)の3群に分けて出現頻度を調査した。永久歯の先天性欠如は、各世代でそれぞれ9.62%、10.08%、10.50%であった。過剰歯においては、それぞれ3.76%、4.41%、7.81%であった。(4)性別による比較:永久歯の先天性欠如は、男子が9.13%、女子が10.98%であった。(5)永久歯先天性欠如の歯数別比較:1歯欠如の頻度は5.22%、2歯欠如は2.93%、3歯、4歯および5歯以上では、いずれも1%未満であった。 | KAKENHI-PROJECT-19390532 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19390532 |
受動機構と能動機構を併合したハイブリッド制振機構の統合化最適設計 | 本研究では、受動機構と能動機構を併合したハイブリッド制振装置について、機械構造系と制御系の設計を同時に進め、統合的に考えて最適設計することにより、より高い性能を持つ制振システムの構築を目指している。研究対象の三次元ハイブリッド制振装置では4箇所の支持点に取付けられた4個のアクチュエータで重心のバウンス、ロール、ピツチ方向の3自由度の振動を制御する。ハイブリッド制振装置をモデル化して、H_∞制御則の外乱抑圧問題により制御系を設計することで、伝達関数を所望の特性に整形することができ、高い制振性能を得ることができた。制御器のロバスト性をさらによくするために、混合感度問題を修正した制御器を提案し、低振動数領域での外乱の抑制と高振動数領域での相補感度関数の低減化を同時に試みた。この手法では、制御器の設計時に高振動数での相補感度関数の整形を試行錯誤的に行うことになつたが、共振点での振動を十分抑え、高振動数域の振動も比較的低くすることができる制御器の設計ができた。本研究対象のようにアクチュエータ数が制御対象自由度に対して冗長な系では、各アクチュエータに対する制御力の分配が問題になる。ハイブリッド制振機構の統合化最適設計の一つの問題として、制御力の分配手法について詳細に検討し、制御力の最適分配則を導出した。本研究で検討したロバスト制御理論および制御力の最適分配手法を検証するために、モデル実験装置を作成し、実験を行つた。この実験装置の加振用および能動制振用のアクチュエータには本研究で開発したボイスコイルモータを使用した。実験の結果、重心に関する制御力をリアルタイムでアクチュエータ出力に分配することが可能であることは確認できたが、装置の摩擦や加速度センサのノイズなどの影響で、振動制御の実験については十分な実験精度が得られなかった。この点に関しては、装置の再検討を行うとともに、継続的に実験を進めている。オーバーハング回転軸系の振動制御に本研究対象のハイブリッド制振機構を適用した研究も行っている。さらに、パワーアシスト装置の力制御にも本研究で得られた知見を用いている。本研究では、受動機構と能動機構を併合したハイブリッド制振装置について、機械構造系と制御系の設計を同時に進め、統合的に考えて最適設計することにより、より高い性能を持つ制振システムの構築を目指している。研究対象の三次元ハイブリッド制振装置では4箇所の支持点に取付けられた4個のアクチュエータで重心のバウンス、ロール、ピツチ方向の3自由度の振動を制御する。ハイブリッド制振装置をモデル化して、H_∞制御則の外乱抑圧問題により制御系を設計することで、伝達関数を所望の特性に整形することができ、高い制振性能を得ることができた。制御器のロバスト性をさらによくするために、混合感度問題を修正した制御器を提案し、低振動数領域での外乱の抑制と高振動数領域での相補感度関数の低減化を同時に試みた。この手法では、制御器の設計時に高振動数での相補感度関数の整形を試行錯誤的に行うことになつたが、共振点での振動を十分抑え、高振動数域の振動も比較的低くすることができる制御器の設計ができた。本研究対象のようにアクチュエータ数が制御対象自由度に対して冗長な系では、各アクチュエータに対する制御力の分配が問題になる。ハイブリッド制振機構の統合化最適設計の一つの問題として、制御力の分配手法について詳細に検討し、制御力の最適分配則を導出した。本研究で検討したロバスト制御理論および制御力の最適分配手法を検証するために、モデル実験装置を作成し、実験を行つた。この実験装置の加振用および能動制振用のアクチュエータには本研究で開発したボイスコイルモータを使用した。実験の結果、重心に関する制御力をリアルタイムでアクチュエータ出力に分配することが可能であることは確認できたが、装置の摩擦や加速度センサのノイズなどの影響で、振動制御の実験については十分な実験精度が得られなかった。この点に関しては、装置の再検討を行うとともに、継続的に実験を進めている。オーバーハング回転軸系の振動制御に本研究対象のハイブリッド制振機構を適用した研究も行っている。さらに、パワーアシスト装置の力制御にも本研究で得られた知見を用いている。本研究では、受動機構と能動機構を併合したハイブリッド制振装置について、機械構造系と制御系の設計を同時に進め、統合的に考えて最適設計することにより、より高い性能を持つ制振システムの構築を目指している。研究対象の三次元ハイブリッド制振装置では4箇所の支持点に取付けられた4個のアクチュエータで重心の上下方向の並進振動及び重心を通る2主軸回りのロール、ピッチ方向の傾き振動の3自由度の振動を制御する。制振装置を精密部品の搬送台車などに組み込む時には、搬送物の重量の変化などに対してロバストな制御系が必要になるので、対象系をモデル化して複数のアクチュエータの協調制御が可能であるようなロバスト制御則を構築し、シミュレーションによりその特性を解析した。本研究対象のようにアクチュエータの数が制御対象の自由度に対して冗長な系では、各アクチュエータに対する制御力の分配が問題になるが、これについての研究はほとんど行われていない。ハイブリッド制振機構の統合化最適設計の一つの問題として冗長性のある制御系の制御力の分配について着目し、制御力の分配に擬似逆行列、一般逆行列及び力学的な平衡関係のそれぞれを用いた場合について検討し、制御力の最適分配則を導出した。理論解析と並行して実験装置の試作を行っている。 | KAKENHI-PROJECT-17560208 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17560208 |
受動機構と能動機構を併合したハイブリッド制振機構の統合化最適設計 | 実験装置のアクチュエータとして、電流に対する出力特性が高く、応答遅れの比較的小さいボイスコイルモータを開発・製作した。静的及び動的特性を計測して、解析した結果、試作したボイスコイルモータは所定の特性を持っていることが分かったので、実験装置に組み込み、現在は実験装置の動力学的な特性試験を行っている。本研究では、受動機構と能動機構を併合したハイブリッド制振装置について、機械構造系と制御系の設計を同時に進め、統合的に考えて最適設計することにより、より高い性能を持つ制振システムの構築を目指している。本年度は、主として、ロバスト制御器の改良、モデル実験装置の作成および実験装置への制御器の実装と基本実験を行った。ハイブリッド制振装置を組み込んだ搬送装置のモデルを対象に、H_∞制御則の外乱抑圧問題により制御系を設計することで、伝達関数を所望の特性に整形することができ、高い制振性能を得ることができた。制御器のロバスト性をさらによくするために、混合感度問題を修正した制御器を提案し、低振動数街域での外乱の抑制と高振動数領域での相補感度関数の低減化を同時に試みた。この手法では、制御器の設計時に高振動数での相補感度関数の整形を試行錯誤的に行うことになったが、共振点での振動を十分抑え、高振動数域の振動も比較的低くすることができる制御器の設計ができた。本研究で検討したロバスト制御理論の妥当性を検証するため、および制振対象の自由度に対してアクチュエータの数が多い冗長系に対して本研究で提案した制御力の最適分配手法を検証するために、モデル実験装置を作成し、その特性を調べた。この実験装置は、搬送装置がグリーチング上を走行するときに生じる強制変位加振を模擬した加振装置と加振振動の伝達を低減制御するためのハイブリッド制振装置で構成されている。加振用および能動制振用のアクチュエータには、昨年度開発したボイスコイルモータを使用した。実験の結果、重心に関する制御力をリアルタイムでアクチュエータ出力に分配することが可能であることは確認できたが、アクチュエータの制御出力は予想以上に高くなり、振動が大きくなると実験を続けることができなかった。この点に関しては、再検討を行うとともに、継続的に実験を進めている。さらに加えて、オーバーハング回転軸系の振動制御に本研究対象のハイブリッド制振機構を適用した研究も行っており、良好な制振効果を得ている。 | KAKENHI-PROJECT-17560208 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17560208 |
交通事故における自転車同乗幼児の傷害軽減に関する研究 | 交通事故統計を用いて幼児同乗自転車の関わる事故を調査した。調査の結果、幼児同乗自転車は普通自動車や軽自動車との事故が多く、交差点での出会い頭事故が多く発生していた。また、多くの事故において自転車同乗幼児は頭部や顔部に、幼児同乗自転車の運転者は脚部や腕部に傷害を負っていることが明らかとなった。幼児同乗自転車への自動車の追突事故を再現した衝突実験を行い、衝突時における自転車乗員の挙動を調査した。実験の結果、子供ダミーは自動車に比べて路面との衝突において頭部への衝撃が大きくなった。また、路面への落下の挙動次第ではシートベルトの着用により子供ダミー頭部への衝撃が軽減される可能性が示唆された。研究初年度である平成27年度には、幼児同乗自転車の関わる交通事故の実態を明らかにするために、警察庁交通局によって集約されている交通事故統計データベースを用いて分析を行った。分析の結果、幼児同乗自転車の関わる交通事故により、年間1000人程度の自転車同乗幼児が死傷していることが明らかとなった。事故にあった幼児同乗自転車の運転者は20歳代、30歳代の女性が多くを占めており、幼児同乗自転車の運転者の多くはヘルメットを着用していなかった。一方で、事故により死傷した自転車同乗幼児のヘルメット着用率は年々増加傾向にあり、近年は約4人に1人が着用していた。幼児同乗自転車の関わる交通事故の相手は約8割が普通自動車、軽自動車であり、自動車の危険認知速度は20km/h以下が多く、低速度域における事故が多くを占めていた。幼児同乗自転車の関わる交通事故の状況としては、出会い頭事故、交差点での事故が多いなどの一般の自転車の関わる事故と同様の傾向が認められた。幼児同乗自転車乗員の傷害状況としては、多くの運転者・同乗幼児が路面との接触・衝突により傷害を負っており、運転者は主に脚部や腕部、同乗幼児は主に頭部に傷害を負っていた。また、幼児同乗用自転車の市場調査を行い、自転車の形状、タイヤサイズ、幼児用座席の取付け位置、幼児用座席の形状等についての知見を収集した。以上より得られた、日本における幼児同乗自転車の交通事故の実態と市場における幼児同乗用自転車の傾向を基にして、交通事故時における自転車同乗幼児の傷害状況把握のための実車衝突実験の条件の検討を行った。研究初年度である平成27年度における主な研究計画は、「幼児同乗自転車の交通事故実態の把握」と「実車衝突実験の準備」の2つであり、ともにおおむね計画通り実施した。「幼児同乗自転車の交通事故実態の把握」については、交通事故統計データベースを用いることでマクロ的に調査を行い、幼児同乗自転車の交通事故の特徴を明らかにすることで、計画通り交通事故実態を把握した。「実車衝突実験の準備」については、交通事故統計データベースを用いた調査により、多く発生している事故の状況を明らかにし、衝突形態、衝突速度等の実験条件の検討を行うとともに、自転車同乗幼児の頭部加速度を計測するために必要な実験機材の購入手続きを行った。研究の2年目となる平成28年度には、自動車と人体ダミーを搭載した幼児同乗自転車の実車衝突実験を実施した。交通事故統計データを用いた分析の結果、出会い頭事故が多く発生していたことから、自転車の左側面に自動車の前面が衝突する事故を再現した衝突実験を行った。自転車には成人女性を模擬した人体ダミー(Hybrid-IIIAF05、以下では大人ダミーとする)を乗車させるとともに、リアキャリアに設置した幼児用座席には3歳児を模擬した人体ダミー(Hybrid-III3YO、以下では幼児ダミーとする)を乗車させた。自動車はセダン型の普通乗用自動車を用いて、衝突速度は30km/hとし、自転車との衝突直後に制動させた。幼児用座席に装備されたシートベルトの装着状況および自転車の速度を変化させて複数回の実験を行った。幼児ダミーの頭部内に加速度センサを設置し、衝突時に頭部に発生した加速度を計測するとともに、衝突状況を高速度ビデオカメラ等により撮影し、車両や路面に印象された痕跡等を収集して、知見の蓄積を行った。実験の結果、大人ダミーおよび幼児ダミーは自動車のボンネットに頭部を衝突させ、その後、路面へと投げ出された。幼児ダミーがシートベルトを着用していなかった場合、自動車との衝突により、幼児ダミーは大人ダミーとともに自転車から投げ出された。一方、幼児ダミーがシートベルトを着用していた場合、大人ダミーは自動車との衝突により自転車から投げ出されたが、幼児ダミーは衝突後も幼児用座席に着座した状態であった。幼児ダミーの頭部内に発生した加速度には、頭部が自動車のボンネットおよび路面に衝突した時にピークが観察され、ボンネットとの衝突時に比べて路面との衝突時において頭部へ大きな加速度が発生していた。平成28年度における主な研究計画は、幼児同乗自転車と自動車の実車衝突実験であり、おおむね計画通り実施することができた。条件を変えて複数回の実験を実施し、自動車、自転車、自転車乗員の挙動、自転車同乗幼児ダミーの頭部加速度、衝突により生じた車両の変形、車両や路面に残された痕跡等の各種データを収集した。得られたデータを解析し、幼児同乗自転車の事故に適した交通事故調査技術、自転車同乗幼児の受傷過程、とくに頭部傷害について検討を行った。また、警察庁交通局によって集約されている交通事故統計データベースを用いて、幼児同乗自転車の関わる交通事故の特徴を分析し、雑誌への投稿を行った。研究の最終年度は、引き続き自動車と人体ダミーを搭載した幼児同乗自転車の実車衝突実験を実施した。 | KAKENHI-PROJECT-15K21637 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K21637 |
交通事故における自転車同乗幼児の傷害軽減に関する研究 | 衝突形態としては出会い頭事故および追突事故を模擬し、自転車には成人女性を模擬した人体ダミー(Hybrid-IIIAF05、以下では大人ダミーとする)を乗車させるとともに、ハンドル付近またはリアキャリアに設置した幼児用座席には3歳児を模擬した人体ダミー(Hybrid-III3YO、以下では幼児ダミーとする)を乗車させた。自動車はボンネット車を用いて、衝突速度は約2030 km/hとし、自転車との衝突直後に制動させた。幼児用座席の種類、幼児用座席に装備されたシートベルトの着用状況などを変化させて複数回の実験を行った。幼児ダミーの頭部内には加速度センサを設置し、衝突時に頭部に発生した加速度を計測するとともに、衝突状況を高速度ビデオカメラ等により撮影し、車両や路面に印象された痕跡等を収集して、知見の蓄積を行った。最終年度までに実施した実験の結果をまとめると以下のとおりである。多くの実験形態で大人ダミーおよび幼児ダミーは自動車のボンネットに頭部を衝突させ、その後、路面へと投げ出される挙動となった。幼児ダミーは、シートベルト非着用の場合、自動車との衝突により大人ダミーとともに自転車から投げ出された。一方、シートベルト着用の場合、大人ダミーは自動車との衝突により自転車から投げ出されたが、幼児ダミーは衝突後も幼児用座席に着座した状態で自転車と一体となって投げ出された。幼児ダミーの頭部には自動車のボンネットおよび路面に衝突した時に大きな加速度が発生しており、特に路面との衝突時により大きな加速度が発生していた。また、路面への落下の挙動次第ではシートベルトの着用やヘッドレストの存在により頭部への衝撃が軽減される可能性が示唆された。交通事故統計を用いて幼児同乗自転車の関わる事故を調査した。調査の結果、幼児同乗自転車は普通自動車や軽自動車との事故が多く、交差点での出会い頭事故が多く発生していた。また、多くの事故において自転車同乗幼児は頭部や顔部に、幼児同乗自転車の運転者は脚部や腕部に傷害を負っていることが明らかとなった。幼児同乗自転車への自動車の追突事故を再現した衝突実験を行い、衝突時における自転車乗員の挙動を調査した。実験の結果、子供ダミーは自動車に比べて路面との衝突において頭部への衝撃が大きくなった。また、路面への落下の挙動次第ではシートベルトの着用により子供ダミー頭部への衝撃が軽減される可能性が示唆された。これまでに得られた知見を基にして、人体ダミーを搭載した幼児同乗自転車と自動車の実車衝突実験を実施する。衝突形態、衝突速度等の条件を変えながら複数回の実験を実施し、自動車、自転車、自転車乗員の挙動について高速度カメラにより衝突映像を収集する。また、自転車同乗幼児ダミーの頭部加速度、衝突により生じた車両の変形、車両や路面に残された痕跡等の各種データを収集する。得られたデータを解析し、幼児同乗自転車の事故に適した交通事故調査技術、自転車同乗幼児の受傷過程、頭部傷害について検討を行う。また、引き続き、交通事故統計データの分析を行い、交通事故実態の把握に努めるともに、交通事故に関する各種の知見を収集する。適宜、研究成果をまとめて学会発表等を行う。これまでに得られた知見を基にして、引き続き幼児同乗自転車と自動車の実車衝突実験を実施する。 | KAKENHI-PROJECT-15K21637 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K21637 |
学校組織におけるミドルリーダー研究-アイディア実現過程の質的分析・検証を通して- | (1)研究内容昨年度に引き続き「ミドルリーダー育成」を視野に入れ、下記二つの側面から研究を行った。一つ目は、ミドルリーダーによるアイディア実現事例の分析である。昨年度学会発表を行った二事例の追加調査及び再分析を行い、投稿論文としてまとめた。その結果、学校組織におけるアイディア実現プロセスの概要とともに、学校組織におけるミドルリーダーは、学校組織において生じた課題の内容に応じてその主体が変化する流動的な存在であることが明らかとなった。二つ目は、学校経営研究の方法論検討である。具体的には、従来の学校経営研究で用いられてきたエスノグラフィ等の質的研究方法と、新たな研究方法としてのM-GTAを比較し、その特徴を考察した。その結果、事象の動き(プロセス)を分析対象とするM-GTAは、学校経営の説明と予測を可能とする理論生成が可能であるという特徴をもつ一方で、組織文化といった個々の学校の固有性は捨象せざるをえず、エスノグラフィ等の研究により補完することで、より説明力のある理論が生成される可能性を提示した。(2)研究成果ミドルリーダーによるアイディア実現プロセスに関して、「学校組織におけるナレッジマネジメントー校内授業研究を通じた知識創造プロセスに着目してー」(『九州教育経営学会研究紀要』第19号、2013年6月、pp. 83-91)、及び「学校組織におけるミドル・アップダウン・マネジメントの実際ー運動会の運営をめぐる意思形成過程の検討ー」(『九州教育学会研究紀要』第40巻、2013年9月、pp.65-72)等で言及した。また、本研究課題採用期間に行った研究成果等を整理し、博士論文を執筆した(『学校経営過程研究における方法論の考察ーミドル・アップダウン・マネジメントを視座としたM-GTAによる分析ー』博士学位論文(教育学)、授与大学:九州大学(人環博甲第317号)。研究最終年度である本年度は、昨年度の分析結果を踏まえ、ミドルリーダーによるアイディア実現プロセスの検証を行った。また同時に、学校経営研究を行ううえでの研究方法論も検討した。これは申請時の研究目的に沿うものであり、研究計画は順調に進展したと評価できる。課題採用期間を通じ、ミドルリーダーによるアイディア実現プロセスの概要と、その分析に適する方法論の検討を行うことができた。本研究の知見は、従来ブラックボックスであったミドルリーダー研究及び学校経営プロセス解明の糸口になる可能性をもつ。しかし、本研究はミドルリーダー研究の大枠を示すにとどまり、今後も継続した分析が求められる。例えば、学校規模や職位等がミドルリーダーのアイディア実現に与える影響の有無を検討し、分析結果の精緻化・一般化を図っていきたい。(1)研究内容近年の公立学校では、団塊世代の大量退職と自律的学校経営の推進を背景に、新たなアイディアを創造するミドルリーダーの育成が課題となっている。本研究は上記課題に資する知見産出を目的とするものであり、ミドルリーダー及び周囲の視点からミドルリーダーの力最把握を行い、「アイディア実現主体としてのミドルリーダーのコンピテンシー」抽出を試みる。今年度はこのうち、ミドルリーダーの力量把握を行った。具体的には、質的研究方法の一つであるM-GTA(Modified Grounded Theory Approach)を用いて「ミドルリーダーによるアイディア実現プロセス」を分析した。また、ミドルリーダー自身及び周囲の視点から捉えた「ミドルリーダーの力量」について事例研究を行った。以上の分析を通じ、ミドルリーダーによるアイディア実現プロセスの全体像と、ミドルリーダーに求められる日常的・戦略的な行動の一端が明らかとなった。しかし、分析内容の精緻化については課題が残り、「アイディア実現主体としてのミドルリーダーのコンピテンシー」抽出には至っていない。(2)研究成果ミドルリーダーの力量に関して、「M-GTAを用いた学校経営分析の可能性-ミドル・アップダウン・マネジメントを分析事例として-」(『日本教育経営学会紀要』54号、2012年5月、pp.76-91)で述べるとともに、「学校組織におけるナレッジマネジメント-校内研究を通じた知識創造プロセスに着目して-」(九州教育経営学会84回定例研究会、2012年11月)と「学校組織におけるミドル・アップダウン・マネジメントの実際-運動会の運営をめぐる意思形成過程の検討-」(九州教育学会64回大会、2012年11月)の学会発表を行った。また、現在に至るまでのミドル研究をレビューし、ミドルリーダー育成への着目が不十分である現状を示した(「学校経営におけるミドル論の変遷-「期待される役割」に着目して-」『飛梅論集九州大学大学院教育学コース院生論文集』第13号、2013年3月、(1)研究内容昨年度に引き続き「ミドルリーダー育成」を視野に入れ、下記二つの側面から研究を行った。一つ目は、ミドルリーダーによるアイディア実現事例の分析である。昨年度学会発表を行った二事例の追加調査及び再分析を行い、投稿論文としてまとめた。その結果、学校組織におけるアイディア実現プロセスの概要とともに、学校組織におけるミドルリーダーは、学校組織において生じた課題の内容に応じてその主体が変化する流動的な存在であることが明らかとなった。二つ目は、学校経営研究の方法論検討である。具体的には、従来の学校経営研究で用いられてきたエスノグラフィ等の質的研究方法と、新たな研究方法としてのM-GTAを比較し、その特徴を考察した。 | KAKENHI-PROJECT-12J06284 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12J06284 |
学校組織におけるミドルリーダー研究-アイディア実現過程の質的分析・検証を通して- | その結果、事象の動き(プロセス)を分析対象とするM-GTAは、学校経営の説明と予測を可能とする理論生成が可能であるという特徴をもつ一方で、組織文化といった個々の学校の固有性は捨象せざるをえず、エスノグラフィ等の研究により補完することで、より説明力のある理論が生成される可能性を提示した。(2)研究成果ミドルリーダーによるアイディア実現プロセスに関して、「学校組織におけるナレッジマネジメントー校内授業研究を通じた知識創造プロセスに着目してー」(『九州教育経営学会研究紀要』第19号、2013年6月、pp. 83-91)、及び「学校組織におけるミドル・アップダウン・マネジメントの実際ー運動会の運営をめぐる意思形成過程の検討ー」(『九州教育学会研究紀要』第40巻、2013年9月、pp.65-72)等で言及した。また、本研究課題採用期間に行った研究成果等を整理し、博士論文を執筆した(『学校経営過程研究における方法論の考察ーミドル・アップダウン・マネジメントを視座としたM-GTAによる分析ー』博士学位論文(教育学)、授与大学:九州大学(人環博甲第317号)。現代の公立学校が模索する「ミドルリーダー育成」に資する知見産出を目的とする本研究は、研究計画通りに進展している。研究初年度である本年度は、ミドルリーダーによるアイディア実現に着目して分析を行った結果、ミドルリーダーによるアイディア実現プロセスの全体像と、ミドルリーダーに求められる日常的・戦略的な行動の一端が明らかとなった。これは、申請時の研究の目的に沿うものであり、それゆえ研究計画は順調に進展していると評価できる。研究最終年度である本年度は、昨年度の分析結果を踏まえ、ミドルリーダーによるアイディア実現プロセスの検証を行った。また同時に、学校経営研究を行ううえでの研究方法論も検討した。これは申請時の研究目的に沿うものであり、研究計画は順調に進展したと評価できる。2012年度の研究を通じ、ミドルリーダーによるアイディア実現プロセスの全体像と、ミドルリーダーに求められる日常的・戦略的な行動の一端が明らかとなったが、分析内容の精緻化については課題が残る。また、「アイディア実現主体としてのミドルリーダーのコンピテンシー」抽出には至っていない。そこで今後は、2012年度に示した「ミドルリーダーによるアイディア実現プロセス」を枠組みとした事例研究を行い、分析結果を検証する予定である。そして、上記検証作業を通じ、ミドルリーダー育成に資する「ミドルリーダーのコンピテンシー」の把握を試みる。課題採用期間を通じ、ミドルリーダーによるアイディア実現プロセスの概要と、その分析に適する方法論の検討を行うことができた。本研究の知見は、従来ブラックボックスであったミドルリーダー研究及び学校経営プロセス解明の糸口になる可能性をもつ。しかし、本研究はミドルリーダー研究の大枠を示すにとどまり、今後も継続した分析が求められる。例えば、学校規模や職位等がミドルリーダーのアイディア実現に与える影響の有無を検討し、分析結果の精緻化・一般化を図っていきたい。 | KAKENHI-PROJECT-12J06284 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12J06284 |
パウリ常磁性、臨界揺らぎ、多バンド性がもたらす磁場下の超伝導理論 | 平成30年度は、(1) BCS-BECクロスオーバー域の超伝導体の磁場下の超伝導相図を理論的に調べ、BCS型の、つまり従来型の超伝導体、が示す磁場中相図と大きく異なる点を探る研究、(2)比較的引力の弱いBCS型の超伝導体において、人工的に系の次元性を変えることで、引力が有効的に強いBEC-BCSクロスオーバー域の超伝導体に特有な現象を実現させることができることを理論的に指摘する研究、という2つの成果を主に遂行し、ともにPhysical Review B誌にて論文発表した。(1)については、鉄系超伝導体であるFeSeが実際にBCS-BECクロスオーバー域の系に属するのであれば、前年に指摘したHc2(T)線より高温側に横たわる広い超伝導揺らぎ域があることは同時に、渦糸格子融解転移という真の磁場中超伝導転移線がHc2線のはるか低温側に位置していることを示唆する。今回、この視点を理論的に確認した。しかし、実際のFeSeにおいて磁場中で電気抵抗が消失する線はHc2線のわずか低温側にあり、高磁場側の広い超伝導揺らぎ域の存在と見かけ上の不一致がある。今回のこの研究により、電気抵抗の消失は実験で用いられているサンプル内の線状欠陥による渦糸グラス転移で起きていることが推測される。この描像の確立には他の物理量の測定とその検証が必要である。(2)1粒子の量子力学によると、低次元下するほど引力ポテンシャルによる束縛状態はわずかな引力で形成されやすくなるので、低次元化するほど有効的に引力の強い超伝導につながるはずである。フェルミ超流動のBCS-BECクロスオーバーの文脈内でこの物理を具体的な計算により明らかにし、超格子のサンプルで人工的な圧力印加などにより同じ準2次元超伝導体内でBCS-BECクロスオーバー現象を見ることが可能であることを提唱した。当初の目標が、超伝導域にあるFeSeが示す温度ー磁場相図の理論的理解を進めることであり、その目的は達成できた。2019年度には、2バンド超伝導体であるFeSeにおいて、約0.5Tを超えるとバンドの一方が超伝導に寄与しなくなると考えられる傍証があることから、ゼロ磁場では超伝導揺らぎが顕著とならないという一方で高磁場では単バンドの巨大な揺らぎ現象を示すという描像が成り立つと考えられ、理論的に整理する必要がある。また磁場下での電気抵抗消失の温度が奇妙に高温側にある点を線状欠陥のある渦糸相図という見地から解明するという目標もある。これらの問題を今後明らかにしていく。平成28年度の研究内容は、電子間引力の弱い系における超伝導を良く記述する理論である弱結合理論(BCS理論)では記述が不十分な、引力の強い系における超伝導体における磁場下での超伝導揺らぎの理論を進めることであった。鉄系超伝導体FeSeでは、超伝導ギャップとバンド幅が同程度な強結合超伝導が実現しており、冷却フェルミ原子系の超流動に関連して発展したBCS-BECクロスオーバー域の超伝導に該当する可能性がある。磁場下の強結合超伝導では、粒子数保存の式に現れるボゾン数による寄与に式の上で発散が生じるため、この発散を物理的に理由から回避する、いわゆる繰り込みの操作が必要となる。この困難があるために磁場下の強結合超伝導の一般論はこれまで開発されていなかった。今回、この困難を回避する一方法として、化学ポテンシャルはゼロ磁場下で決まっているというゼロ磁場超伝導転移温度近くの弱磁場域で正しいという条件下で超伝導揺らぎをフルにとり扱う磁場下の強結合超伝導の理論を開発し、進めた。具体的には、磁化や比熱などの熱力学量を計算する手法を開発し、BCS理論に基づく従来の超伝導揺らぎの理論による結果との本質的な違いに主に着目した。鉄系超伝導体FeSeでは、揺らぎによる反磁性磁化の大きさが弱結合理論の結果に比べ一桁以上大きく、多バンド性があるとしても弱結合理論の枠内では理解困難であったが、今回の理論を実行してこの特徴が容易に理解できることがわかった。また、FeSeでは実験的に調査されていないが、最低ランダウレベルスケーリングが強結合域では通常満たされないことが今回の理論によりわかったので、今後実験グループの協力のもとで調査できる問題だと考えられる。本課題申請時点では、BCS-BECクロスオーバー域にある系の超伝導の理論の磁場下の状況への単純な拡張は理論的に困難があることがわかっていたため、困難をうまく回避する手法を見出せたことで、本研究課題を前進させる見通しが得られ、第一段階をクリアできたという印象であった。その後、磁化など物理量の具体的な計算に進み、強結合域の系では最低ランダウ準位スケーリングが成立しないといった、実験的に検証可能な知見を得たことは、当該分野への寄与の主張できる有意義なことであった。ただし、強結合域超伝導体に対する理論を多バンド系に拡張したところまで進められなかった点で不満が残った。次年度に予定していた研究目標が増えたことになる。平成29年度は、(1) BCS-BECクロスオーバー域の超伝導体における超伝導揺らぎの理論に関する成果と、(2) FFLO超伝導相で起こる多重秩序化に関する成果を仕上げ、ともにPhysical Review B誌に論文発表した。 | KAKENHI-PROJECT-16K05444 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K05444 |
パウリ常磁性、臨界揺らぎ、多バンド性がもたらす磁場下の超伝導理論 | (1)については、鉄系超伝導体であるFeSeにおいて、超伝導転移より高温側での異常に広い温度域にわたる、異常に大きな反磁性応答を解明するために、FeSeの特徴である多バンド性を無視してゼロ磁場下でBCS-BECクロスオーバー域に近い状況を設定して、磁場下の超伝導揺らぎをハートリー近似で取り扱い、低磁場域を中心にFeSeに見られる異常に大きな反磁性揺らぎ現象を説明することに成功した。具体的には、FeSeではその磁化・温度曲線が広い磁場領域にわたってゼロ磁場超伝導転移温度近くのある温度で交差するという著しい現象があるが、これをきちんと説明できた点は今回の強結合の仮定に基づく理論的記述がFeSeに対する理論として妥当なものとなっていることを示す事実とみてよいであろう。また、(2)ではd波超伝導対称性を有するパウリ常磁性効果の強いCeCoIn5の高磁場・超伝導相という、FFLO超伝導の典型例と考えられている新奇超伝導相を対象に、d-波対称性と反強磁性との兼ね合いから必然的に生じ得るπトリプレット超伝導秩序の果たす役割を研究し、この系に対する熱伝導測定の実験からみえる相図に関する描像を理論的に裏付けることに成功した。本研究課題の当初の目的であるFeSeにみられる異常現象の一つ、強い超伝導揺らぎ現象、がこの系の電子状態から示唆される特徴である強結合性、つまりBCS-BECクロスオーバー域にあると期待されることにその原因があることが今回、理論的に示せたから。平成30年度は、(1) BCS-BECクロスオーバー域の超伝導体の磁場下の超伝導相図を理論的に調べ、BCS型の、つまり従来型の超伝導体、が示す磁場中相図と大きく異なる点を探る研究、(2)比較的引力の弱いBCS型の超伝導体において、人工的に系の次元性を変えることで、引力が有効的に強いBEC-BCSクロスオーバー域の超伝導体に特有な現象を実現させることができることを理論的に指摘する研究、という2つの成果を主に遂行し、ともにPhysical Review B誌にて論文発表した。(1)については、鉄系超伝導体であるFeSeが実際にBCS-BECクロスオーバー域の系に属するのであれば、前年に指摘したHc2(T)線より高温側に横たわる広い超伝導揺らぎ域があることは同時に、渦糸格子融解転移という真の磁場中超伝導転移線がHc2線のはるか低温側に位置していることを示唆する。今回、この視点を理論的に確認した。しかし、実際のFeSeにおいて磁場中で電気抵抗が消失する線はHc2線のわずか低温側にあり、高磁場側の広い超伝導揺らぎ域の存在と見かけ上の不一致がある。今回のこの研究により、電気抵抗の消失は実験で用いられているサンプル内の線状欠陥による渦糸グラス転移で起きていることが推測される。この描像の確立には他の物理量の測定とその検証が必要である。(2)1粒子の量子力学によると、低次元下するほど引力ポテンシャルによる束縛状態はわずかな引力で形成されやすくなるので、低次元化するほど有効的に引力の強い超伝導につながるはずである。フェルミ超流動のBCS-BECクロスオーバーの文脈内でこの物理を具体的な計算により明らかにし、超格子のサンプルで人工的な圧力印加などにより同じ準2次元超伝導体内でBCS-BECクロスオーバー現象を見ることが可能であることを提唱した。当初の目標が、超伝導域にあるFeSeが示す温度ー磁場相図の理論的理解を進めることであり、その目的は達成できた。 | KAKENHI-PROJECT-16K05444 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K05444 |
固相化プローブを用いる自動DNA診断システムの開発 | 我々は、(1)前処理機能付オートサンプラー、送液用グラジェンター、イナ-ト型高圧ポンプ、サーマルコントローラ、フロー式モニター、フラクションコレクター及びコンピューターから構成される全自動式DNA診断システムのハードウェアを構築し、自動化のための装置、部品類、ソフトウェアなどを整備した。(2)HPLC用の樹脂担体に12b数kb鎖長の核酸プローブを効率良く固相化する技術を確立した。(3)被検DNA断片の末端標識技術を開発し、極微量の標的DNAを蛍光標識プライマーによって特異的にPCR増幅して、高感度検出する技術を確立した。(4)本システムの基本原理を塩基配列特異的熱溶出クロマトグラフ法(SSTEC法)と定めて、本システムの分離・分析条件の評価を行った。その結果、SSTECパターンのピーク位置は、融解温度(Tm値)に一致することが分かり、測定精度は±0.1°C以下と、従来法より十倍以上も高精度であることが判明した。また、分解能が高く、0.2°CのTm値の差は、SSTECパターン上で十分識別可能であった。(5)ウシ性決定遺伝子(bSRY)の一部の塩基配列を固相プローブとして用い、(1)塩基配列の違いに基づくTm値の違い、(2)一塩基変異の及ぼすTm値への影響、(3)変異部位の違いによるTm値の影響などを検討した。その結果、本法では、たとい一塩基の遺伝子変異でも十分検出可能なことが分かった。(6)675及び60塩基のbSRY-DNAプローブを用い、各種DNAポリメラーゼでPCR増幅した試料のSSTEC解析を行った。その結果、フィデリティーの高い酵素ではTm値変化を示さなかったが、675塩基のプローブを用いたTaqポリメラーゼの実験では、増幅回数が多い程Tm値の低下が顕著であった。これは、本法が、ポリメラーゼのフィデリティー解析に応用可能なことを示すものとして興味深い。1.基本ハードウエアを組み立て自動化技術を確立した。(1)HPLCシステム(本研究用に購入した設備)((a)試料注入用のオートサンプラー(電子冷熱式恒温ラック付)、(b)溶離液・反応液輸送用のイナ-ト型ポンプ、(c)送液用グラジェンター、(d)フロー式蛍光モニター、(e)各ユニットを一括コントロールし、かつデータ解析するためのコンピュータ、そして(f)分析結果を表示するためのプリンターを含む)に、サーマルコントローラー(本研究用に購入した設備)を組み込んだ基本システムを構築した。(2)サーマルコントローラーを改造した。カラム内で、PCR増幅反応を行うために、少なくとも3本のカラムをその内部に装着できるヒートブロックを試作し、そのうちの1本をダミ-カラムとし、温度を計測モニターできるように工夫した。(3)カラム圧、カラム温度、流速、流量などの各種試験を行ない、最適化をはかった。(4)被検試料の注入からデータ処理にまで至る、全行程の分析ステップを実施するために必要な、オートサンプラー動作、ポンプ動作、サーマルコントローラー動作などを一括制御するためのコンピュータプログラムを作成した。2.種々の固相化プローブを容易に装脱着する技術を確立した。(1)固相担体にDNA又はRNAを結合することのできる核酸固相化アンカーを調製した。(2)カラム内でのリガーゼ反応、制限酵素反応、DNA合成反応等の最適化条件を検討した。(3)12b数kb程度の任意の配列をもった核酸プローブを核酸固相化アンカーに容易に連結できる技術を開発した。(4)制限酵素切断によって、アンカーからプローブを切り出す技術を確立した。3.蛍光標識プライマーを用いる高感度測定システムを開発した。(1)適当な制限酵素で切断された被検DNA断片の両末端に、蛍光標識リンカーを連結するための末端標識技術を確立した。(2)微小量の標的DNAを蛍光標識プライマーによって特異的にPCR増幅し、蛍光モニターによって検出する技術を確立した。我々は、(1)前処理機能付オートサンプラー、送液用グラジェンター、イナ-ト型高圧ポンプ、サーマルコントローラ、フロー式モニター、フラクションコレクター及びコンピューターから構成される全自動式DNA診断システムのハードウェアを構築し、自動化のための装置、部品類、ソフトウェアなどを整備した。(2)HPLC用の樹脂担体に12b数kb鎖長の核酸プローブを効率良く固相化する技術を確立した。(3)被検DNA断片の末端標識技術を開発し、極微量の標的DNAを蛍光標識プライマーによって特異的にPCR増幅して、高感度検出する技術を確立した。(4)本システムの基本原理を塩基配列特異的熱溶出クロマトグラフ法(SSTEC法)と定めて、本システムの分離・分析条件の評価を行った。その結果、SSTECパターンのピーク位置は、融解温度(Tm値)に一致することが分かり、測定精度は±0.1°C以下と、従来法より十倍以上も高精度であることが判明した。また、分解能が高く、0.2°CのTm値の差は、SSTECパターン上で十分識別可能であった。(5)ウシ性決定遺伝子(bSRY)の一部の塩基配列を固相プローブとして用い、(1)塩基配列の違いに基づくTm値の違い、(2)一塩基変異の及ぼすTm値への影響、(3)変異部位の違いによるTm値の影響などを検討した。その結果、本法では、たとい一塩基の遺伝子変異でも十分検出可能なことが分かった。 | KAKENHI-PROJECT-07557243 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07557243 |
固相化プローブを用いる自動DNA診断システムの開発 | (6)675及び60塩基のbSRY-DNAプローブを用い、各種DNAポリメラーゼでPCR増幅した試料のSSTEC解析を行った。その結果、フィデリティーの高い酵素ではTm値変化を示さなかったが、675塩基のプローブを用いたTaqポリメラーゼの実験では、増幅回数が多い程Tm値の低下が顕著であった。これは、本法が、ポリメラーゼのフィデリティー解析に応用可能なことを示すものとして興味深い。1.試作のDNA診断システムを構築し、自動化のための装置及び部品類を新たに作製する傍ら、自動分析のためのソフトウェアを整備した。(1)サーマルコントローラーとCPUを同期させる装置及びPCR温度出力を減衰させるための装置を作製した。この装置によって、HPLCシステムとサーマルコントローラとが一体化され、完全な自動化システムが実現した。(2)試料をカラム内にトラップするための装置を作製した。この装置によって、試料がカラム内に再現性良くトラップできるようになり、カラム内でのPCR増幅反応が可能となった。(3)カラム内の試料を撹拌する装置を作製した。この装置によって、カラム内でのハイブリダイゼーション反応の効率が上昇した。2.塩基配列特異的熱溶出クロマトグラフ法を確立した。本システムの基本原理を塩基配列特異的熱溶出クロマトグラフ法(SSTEC法)と定めて、本システムの分離・分析条件の評価を行った。その結果、SSTECパターンのピークの位置は、融解温度(Tm値)に一致することが判明し、測定精度は±0.1°C以下と、従来法(hyperchromicity法)より十倍以上も高精度であった。また、分解能が高く、0.2°CのTm値の差は、SSTECパターン上で十分認識可能であった。3.種々のモデル実験系を組み立て、遺伝子変異の解析を行った。既にクローニングしたウシの性決定遺伝子(bSRY)の一部の塩基配列を固相プローブとして用い、種々の合成DNAを試料としてSSTEC解析を行った。そして、(1)塩基配列の違いに基づくTm値の違い、(2)一塩基変異の及ぼすTm値への影響、(3)変異部位の違いによるTm値の影響などを検討した。その結果、本法では、たとい一塩基の遺伝子変異でも十分検出可能なことが判明した。4.ポリメラーゼのフィデリティー解析に応用した。675塩基及び60塩基のbSRY-DNAをプローブとして用い、Taqポリメラーゼの増幅回数の違いによるTm値の変化を調べた。その結果、60塩基では変化がなかったが、675塩基のプローブでは、増幅回数が多い程Tm値の低下が顕著であった。これは、本法がポリメラーゼのフィデリティーを直接解析できることを示すものである。 | KAKENHI-PROJECT-07557243 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07557243 |
「学習空間」の生態学 | 豊かな「学習空間」が「感性」の醸成に必要不可欠であり、その基盤の上に、知的、創造的な展開がなされるとともに、「いのち」や生活の持続性や「幅広さ」が保証される。このことを、学校及び地域における具体的な事例の分析を通じて裏づけることが、本研究のねらいであり特色である。このため、本研究では、さまざまな「学習空間」に、複数のビデオカメラを設置し、人間行動の実態を多方向から連続的に記録、分析し、従来の視点とは異にする立場から望ましい学習条件を探ることを試みた。いわば、本研究は、「裏窓」から見た「学習空間」の生態学である。本研究では、全国規模での実態調査をふまえて、研究の方法と精度を高めるために、とくに、合唱の実施課程に焦点をしぼって事例研究を実施した。1全国規模での実態調査規模、地域性(農漁山村部、都市部)を勘案して、下記の内容に関わる調査(アンケート調査・実地調査)を行ったA「学習空間」の実態(1)物理的空間:生活空間としての校地・校庭・校舎・教室(2)時間的空間:業間時間(遊び時間、休憩時間、放課後)(3)人的空間:対人関係、交流を促す場と機会B「学校・地域運動会」の実態C「合唱関連行事」の実態2中学校における合唱関連行事の準備、実施課程における生徒の行動を複数のビデオカメラにより収録し、その分析を通じて、主題へのアプローチを試みた豊かな「学習空間」が「感性」の醸成に必要不可欠であり、その基盤の上に、知的、創造的な展開がなされるとともに、「いのち」や生活の持続性や「幅広さ」が保証される。このことを、学校及び地域における具体的な事例の分析を通じて裏づけることが、本研究のねらいであり特色である。このため、本研究では、さまざまな「学習空間」に、複数のビデオカメラを設置し、人間行動の実態を多方向から連続的に記録、分析し、従来の視点とは異にする立場から望ましい学習条件を探ることを試みた。いわば、本研究は、「裏窓」から見た「学習空間」の生態学である。本研究では、全国規模での実態調査をふまえて、研究の方法と精度を高めるために、とくに、合唱の実施課程に焦点をしぼって事例研究を実施した。1全国規模での実態調査規模、地域性(農漁山村部、都市部)を勘案して、下記の内容に関わる調査(アンケート調査・実地調査)を行ったA「学習空間」の実態(1)物理的空間:生活空間としての校地・校庭・校舎・教室(2)時間的空間:業間時間(遊び時間、休憩時間、放課後)(3)人的空間:対人関係、交流を促す場と機会B「学校・地域運動会」の実態C「合唱関連行事」の実態2中学校における合唱関連行事の準備、実施課程における生徒の行動を複数のビデオカメラにより収録し、その分析を通じて、主題へのアプローチを試みた本研究は、「豊かな学習空間」が「感性」の醸成に必要不可欠であり、その基盤の上に、知的、創造的な展開がなされるとともに、「いのち」や生活の持続性や「幅広さ」が保証されるものであることを、学校及び地域における具体的な事例の分析を通じて裏づけることをねらいとする研究計画(2年計画)の初年度に該当する。当初の計画に基づき、さまざまな「学習空間」に、複数のビデオカメラを設置し、人間行動の実態を多方向から連続的に記録、分析し、従来の視点とは異にする立場から望ましい学習条件を探るための研究活動を展開した。まず、これまでの先行実績を手がかりに、全国規模で実態調査を進めるとともに、研究の方法と精度を高めるため、全国規模での実態調査を行ない、規模、地域性(農漁山村部、都市部)をふまえて、下記の内容に関わる調査(アンケート調査・実地調査)を行ったA「学校空間」(物理的空間・時間的空間・人的空間)の実態B「学校・地域運動会」の実態C「合唱関連行事」の実態これと並行して、大阪府、滋賀県および富山県の4中学校を対象にして、運動会・合唱関連行事における児童生徒の行動を複数のビデオカメラにより収録し、編輯作業をふまえた分析を行ない、その成果を映像記録としてまとめた(別記研究発表参照)。豊かな「学習空間」が「感性」の醸成に必要不可欠であり、その基盤の上に、知的、創造的な展開がなされるとともに、「いのち」や生活の持続性や「幅広さ」が保証される。このことを、学校及び地域における具体的な事例の分析を通じて裏づけることが、本研究のねらいであり特色である。このため、本研究では、さまざまな「学習空間」に、複数のビデオカメラを設置し、人間行動の実態を多方向から連続的に記録、分析し、従来の視点とは異にする立場から望ましい学習条件を探ることを試みた。いわば、本研究は、「裏窓」から見た「学習空間」の生態学である。本研究では、全国規模での実態調査をふまえて、研究の方法と精度を高めるために、とくに、合唱の実施過程に焦点をしぼって事例研究を実施した。1全国規模での実態調査規模、地域性(農漁山村部、都市部)を勘案して、下記の内容に関わる調査(アンケート調査・実地調査)を行ったA「学習空間」の実態(1)物理的空間:生活空間としての校地・校庭・校舎・教室(2)時間的空間:業間時間(遊び時間、休憩時間、放課後)(3)人的空間:対人関係、交流を促す場と機会B「学校・地域運動会」の実態C「合唱関連行事」の実態 | KAKENHI-PROJECT-10610250 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10610250 |
「学習空間」の生態学 | 2中学校における合唱関連行事の準備、実施過程における生徒の行動を複数のビデオカメラにより収録し、その分析を通じて、主題へのアプローチを試みた。 | KAKENHI-PROJECT-10610250 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10610250 |
モノアミン・セクレチンで制御されるシナプス伝達とその異常 | モノアミン(ノルアドレナリン、ドパミン)とペプチド性修飾物質、セクレチンによるシナプス修飾機構について、小脳核、小脳皮質シナプスを用いて調べた。小脳核種細胞に入力するグルタミン酸シナプスはノルアドレナリン、ドーパミンにより、放出抑制が起こる。この作用には選択的にα2-アドレナリン受容体、ドパミンD2受容体に作用するだけでなく、クロストークにより異種受容体に対しても作用することが明らかになった。また、小脳皮質GABA作動性シナプスにおいて脂質代謝を介したIP3産生とそれに続く細胞内Ca2+上昇を示す新規のシナプス修飾作用を見出した。モノアミン(ノルアドレナリン、ドパミン)とペプチド性修飾物質、セクレチンによるシナプス修飾機構について、小脳核、小脳皮質シナプスを用いて調べた。小脳核種細胞に入力するグルタミン酸シナプスはノルアドレナリン、ドーパミンにより、放出抑制が起こる。この作用には選択的にα2-アドレナリン受容体、ドパミンD2受容体に作用するだけでなく、クロストークにより異種受容体に対しても作用することが明らかになった。また、小脳皮質GABA作動性シナプスにおいて脂質代謝を介したIP3産生とそれに続く細胞内Ca2+上昇を示す新規のシナプス修飾作用を見出した。神経細胞間で営まれるシナプス伝達の異常は個体レベルでどのような異常(病態)として表現されるかを明らかにしたい。そのためには正常な状態で備えられている機能を明らかにして、それらの知見を応用することによって、病態の理解、治療方法の開発に貢献することが出来ると考える。本研究は小脳に焦点をおき、発達障害性疾患である自閉症の病態理解に貢献できる研究を目指している。小脳(小脳皮質と小脳核)シナプスにおけるモノアミンと神経ペプチドであるセクレチンによるシナプス制御機構の解明と発達過程におけるこれらの修飾物質の役割を明らかにすることを第一の目的とし、今年度は小脳核グルタミン酸作動性シナプスのドーパミン(DA)・ノルアドレナリン(NA)による修飾作用を明らかにした。このシナプスではドーパミン受容体(D_2R)とαアドレナリン受容体(α2-ADR)が発現していることが分かった。そして、これら2種類の受容体は共にDAとNAが作用してシナプス制御を行っていることが示唆された。これらの結果からD_2R、α2-ADRをターゲットとする創薬開発基盤に資する結果であると考えられる。以上の結果は現在、論文投稿の準備をしている。また、小脳核におけるセクレチンの作用を検討したが、興奮性あるいは抑制性シナプス両者で、修飾作用を見出すことが出来なかった。今後、小脳皮質に領域を移して、検討をしていく予定である。神経細胞間で営まれるシナプス伝達の異常は個体レベルでどのような異常(病態)として表現されるかを明らかにしたい。そのためには正常な状態で備えられている機能を明らかにして、それらの知見を応用することによって、病態の理解、治療方法の開発に貢献することが出来ると考える。本研究は小脳に焦点をおき、発達障害性疾患である自閉症の病態理解に貢献できる研究を目指している。小脳(小脳皮質と小脳核)シナプスにおけるモノアミンと神経ペプチドであるセクレチンによるシナプス制御機構の解明と発達過程におけるこれらの修飾物質の役割を明らかにすることを目的とした。昨年度は小脳核におけるセクレチンの作用に有意な効果を見出すことが出来なかった。今年度は小脳皮質における作用の詳細を得るために、細胞内情報伝達経路の解明を目指した。これまでセクレチンはcAMPをセカンドメッセンジャーとしたシグナルカスヶードを介して、シナプス修飾を行っていると考えられていたが、今回我々はこれとは別にPLC-IP_3系の情報伝達経路が関与している可能性を薬理学的実験から得た。この修飾作用が小脳のどの分域で起こるのか、発達過程でどのように変化するのかを今後、検討する予定である。神経細胞間で営まれるシナプス伝達の異常は個体レベルでどのような異常(病態)として表現されるかを明らかにしたい。そのためには正常な状態で備えられている機能を明らかにして、それらの知見を応用することによって、病態の理解、治療方法の開発に貢献することが出来ると考える。本研究は小脳に焦点をおき、発達障害性疾患である自閉症の病態理解に貢献できる研究を目指している。これまでの実験でセクレチンによる修飾作用が小脳皮質において、不均一に起こり、その規則性もつかめないままであった。具体的に発達変化や小脳小葉依存的な差異を検討したが、有意な差を認めることが出来なかった。しかし、昨年度に新たな知見として、小脳皮質GABA作動性介在神経細胞の神経終末において、cAMP-PKA系シグナル伝達以外に脂質代謝を介したIP_3産生とそれに続く細胞内Ca^<2+>上昇を示す結果を得た。薬理学的な証拠と共に、今年度は異なる神経伝達経路を介したCa^<2+>動態を明らかにして、新たなシナプス修飾作用を見出すことを目指す。また、神経終末部における何らかのタンパク質発現の不均一性がシナプス修飾作用の不均一性を説明する可能性を考えて、カルシウム、カリウムチャネルの発現パターンとシナプス修飾の関係も明らかにしたい。神経細胞間で営まれるシナプス伝達の異常は個体レベルでどのような異常(病態)として表現されるかを明らかにすることを最終目標とした。そのために正常な状態で備えられている機能の解明と、その知見を応用することによって、病態の理解、治療方法の開発に貢献することが出来ると考えた。 | KAKENHI-PROJECT-21500375 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21500375 |
モノアミン・セクレチンで制御されるシナプス伝達とその異常 | 本研究は小脳皮質に焦点をおき、発達障害性疾患である自閉症の病態理解に貢献できる研究を目指した。これまでの我々の実験でセクレチンによるGABA放出増強作用が小脳皮質において、不均一に起こり、その規則性もつかめないままであった。具体的に発達変化や小脳小葉依存的な差異を検討したが、有意な差を認めることが出来なかった。しかし、新たな知見として、小脳皮質GABA作動性介在神経細胞の神経終末において、cAMP-PKA系シグナル伝達以外に脂質代謝を介したIP3産生とそれに続く細胞内Ca2+上昇を示す結果を得た。すなわち、他研究機関による報告ではPKAによるリン酸化がシナプス増強作用に重要だとされてきたが、PKA阻害薬存在下でもGABA放出増強作用を有することを認めた。また、Ca2+-ATPアーゼ阻害薬によりセクレチンのGABA放出増強作用が有意に抑制されたことから、神経終末におけるCa2+小胞からのCa2+放出がGABA放出増強作用に関与している考えた。これらの結果は、既知のセクレチンを介する情報伝達経路と異なる、新たなシナプス修飾作用の可能性が示された。また、神経終末部における何らかのタンパク質発現の不均一性がシナプス修飾作用の不均一性を説明する可能性を考えて、さらなる神経軸索上の責任部位を同定する必要がある。セクレチンの作用に不均一性が存在しており、今後の研究を円滑に行うために、その規則性を見出そうと試みたために、時間を費やしてしまった。24年度が最終年度であるため、記入しない。小脳皮質GABA作動性介在神経細胞の神経終末において、異なる時間経過で動員される細胞内Ca^<2+>上昇を観察している。この作用は新奇性の高い作用であり、薬理学的な実験をもとに、神経伝達経路を明らかにして、新たなシナプス修飾作用を見出すことを目指す。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-21500375 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21500375 |
新たな疼痛モデルを用いた痛みの発生メカニズム・伝達経路の解明 | 本申請研究の目的としては、各種侵害刺激に対しての反応に差異が認められるMlc1-tTAマウスの解析を通じて、その疼痛関連行動と原因遺伝子を解析することにより、新たな疼痛発生・伝達メカニズムの解明を目指している。昨年度はトランスジーンの染色体への挿入位置の同定を次世代シークエンサーやマイクロアレイ、Real time RT-PCR法を用いて解析した結果、染色体8qB1.1の領域の3つの遺伝子の発現が欠損していることが判明した。本年度はまず、Mlc1-tTAマウスの組織構造をコントロールマウスと比較したところ、骨髄、心臓および骨格筋において構造の変化が認められた。Mlc1-tTAマウスでは炎症反応の低下および骨髄構造に異常が認められることから、次にMlc1-tTAマウスより骨髄マクロファージを採取・培養し、野生型と比較してどのような表現型の変化がみられるのかを検討した。LPS刺激によるサイトカインの発現を検討した結果、IL1betaなど一部のサイトカインの発現が野生型と比べて増加が認められた。また、蛍光ビーズを用いて貪食能を検討した結果、野生型と比べて顕著に貪食能の増加もしくは分解能の減少が認められた。また、同定された3つの遺伝子のそれぞれのノックアウトマウスの疼痛関連行動を検討した結果、そのうちの1つの遺伝子の欠損で痛覚閾値の上昇が認められた。以上の結果より、Mlc1-tTAマウスではマクロファージの機能異常が認められ、その結果、各種侵害刺激に対しての反応の差異が発生していると考えられる。本申請研究の目的としては、各種侵害刺激に対しての反応に差異が認められるMlc1-tTAマウスの解析を通じて、その疼痛関連行動と原因遺伝子を解析することにより、新たな疼痛発生・伝達メカニズムの解明を目指している。本年度は最初にMlc1-tTAマウスの様々な疼痛刺激に対する反応を検討した。Mlc1-tTAマウスは熱刺激(ホットプレート試験、テイルフリック試験、テイルデップ試験)に対しては野生型と比較して差が認められなかったが、機械刺激(Von Freyテスト、paw pressure test試験)に対する感受性の低下が認められた。化学刺激(ホルマリン)に対しては特に第II相の炎症反応の著しい低下が認められた。また、神経障害性疼痛モデルである坐骨神経部分結紮モデルを作製して痛覚過敏に対する反応を検討した結果、Mlc1-tTAマウスでは痛覚過敏が減弱していた。痛覚過敏の形成には炎症が重要であることから、Mlc1-tTAマウスでは炎症反応が弱いことが示唆される。以上の結果より、Mlc1-tTAマウスでは機械刺激に対する感受性の低下と炎症反応の抑制が起こっていることが示唆される。次に、これらの現象はどの様な遺伝子の欠損に起因するのかを調べるため、トランスジーンの染色体への挿入位置の同定を行った。当初、トランスジーンの挿入部位をThermal Asymmetric InterlacedPCR法を用いて検討を行ったが同定が困難だったため、次世代シークエンサーを用いての解析も行った。その結果、染色体8qB1.1および11qDの領域にトランスジーンの挿入が予想された。本年度の予定としては、Mlc1-tTAマウスの疼痛刺激に対する反応の解析とトランスジーンの染色体への挿入位置の同定を計画していたが、おおむね達成された。本申請研究の目的としては、各種侵害刺激に対しての反応に差異が認められるMlc1-tTAマウスの解析を通じて、その疼痛関連行動と原因遺伝子を解析することにより、新たな疼痛発生・伝達メカニズムの解明を目指している。昨年度はMlc1-tTAマウスの様々な疼痛刺激に対する反応を検討した結果、Mlc1-tTAマウスでは機械刺激に対する感受性の低下と炎症反応の抑制が起こっていることが認められた。また、トランスジーンの染色体への挿入位置の同定を次世代シークエンサーを用いて解析した結果、染色体8qB1.1および11qDの領域にトランスジーンの挿入が予想された。本年度は、トランスジーン挿入位置の遺伝子の発現をReal time RT-PCR法を用いて詳細に解析した結果、染色体8qB1.1の領域の3つの遺伝子の発現が欠損していることが判明した。また、Mlc1-tTAマウスでは炎症反応の減弱がみられたため、免疫応答、特にマクロファージ系やT細胞に何らかの異常があると推察される。そこで、マウス骨髄における遺伝子発現をマイクロアレイを用いて解析した結果、上記3つの遺伝子の発現が欠損していること、さらにMlc1-tTAマウスではある特定のシグナルに関与する遺伝子の発現が低下していることが認められた。以上の結果より、トランスジーンにより8qB1.1の領域の3つの遺伝子の発現が欠損することにより、機械刺激に対する感受性の低下と炎症反応の抑制が起こっている可能性が示唆される。本年度の予定としては、トランスジーンにより発現が変化する遺伝子の同定およびマイクロアレイによる遺伝子発現の解析を計画していたが、おおむね達成された。本申請研究の目的としては、各種侵害刺激に対しての反応に差異が認められるMlc1-tTAマウスの解析を通じて、その疼痛関連行動と原因遺伝子を解析することにより、新たな疼痛発生・伝達メカニズムの解明を目指している。昨年度はトランスジーンの染色体への挿入位置の同定を次世代シークエンサーやマイクロアレイ、Real time RT-PCR法を用いて解析した結果、染色体8qB1.1の領域の3つの遺伝子の発現が欠損していることが判明した。本年度はまず、Mlc1-tTAマウスの組織構造をコントロールマウスと比較したところ、骨髄、心臓および骨格筋において構造の変化が認められた。 | KAKENHI-PROJECT-16K08451 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K08451 |
新たな疼痛モデルを用いた痛みの発生メカニズム・伝達経路の解明 | Mlc1-tTAマウスでは炎症反応の低下および骨髄構造に異常が認められることから、次にMlc1-tTAマウスより骨髄マクロファージを採取・培養し、野生型と比較してどのような表現型の変化がみられるのかを検討した。LPS刺激によるサイトカインの発現を検討した結果、IL1betaなど一部のサイトカインの発現が野生型と比べて増加が認められた。また、蛍光ビーズを用いて貪食能を検討した結果、野生型と比べて顕著に貪食能の増加もしくは分解能の減少が認められた。また、同定された3つの遺伝子のそれぞれのノックアウトマウスの疼痛関連行動を検討した結果、そのうちの1つの遺伝子の欠損で痛覚閾値の上昇が認められた。以上の結果より、Mlc1-tTAマウスではマクロファージの機能異常が認められ、その結果、各種侵害刺激に対しての反応の差異が発生していると考えられる。次年度の予定としては、今年度同定された2つの候補領域について詳細に検討する。近隣の遺伝子の発現をReal time RT-PCR法を用いて解析することにより、Mlc1-tTAマウスにおいて発現に異常が認められる遺伝子(標的遺伝子)を同定する。サンプルとする臓器や発達時期に関しては、過去の論文やデータベースを調べてから調整する。Real time RT-PCR法により変化があった遺伝子については、In-situ hybridization法や免疫染色を用いることにより、全身の発現部位や細胞、発現時期などを野生型と比較して詳細に調べる。特に皮膚から大脳皮質感覚野までの疼痛の伝達経路と、骨髄や胸腺などの免疫に関与する臓器に注目して解析する。また、Mlc1-tTAマウスではホルマリン試験において投与30分後の第II相(炎症反応)の低下が認められたことから、免疫応答、特にマクロファージ系やT細胞に何らかの異常があると推察される。そこで、マウス骨髄よりmRNAを採取し、マイクロアレイを用いて発現が変動している遺伝子を探索することにより、標的遺伝子がどのような機能を持つかある程度推測する。Mlc1-tTAマウスにおいて発現に異常が認められる遺伝子(標的遺伝子または準標的遺伝子)が同定された後、その遺伝子のノックアウトマウスを作成する。すでに作成され、譲渡または購入可能な場合は購入する。ノックアウトマウスの作成はCRISPR-Cas9法によるゲノム編集を用いる。次年度の予定としては、最初に3つの遺伝子の発現をIn-situ hybridization法もしくは免疫染色を用いて全身の発現部位や細胞、発現時期などを詳細に調べる。特に疼痛モデルや炎症誘発時において皮膚から大脳皮質感覚野までの疼痛の伝達経路と、骨髄や胸腺などの免疫に関与する臓器に注目して解析する。また、炎症反応の低下が認められたことより、骨髄マクロファージを用いて3つの遺伝子の欠損によりどの様なシグナルが変化しているのかを詳細に解析する。最初に野生型と比較してどのような表現型の変化がみられるのかを検討する。検討する表現型としてはLPS刺激によるサイトカインの発現や貪食能、遊走能を比較検討する。 | KAKENHI-PROJECT-16K08451 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K08451 |
皮膚再生機構の解明-毛包細胞内シグナル伝達機構の解析- | 1回膜貫通型蛋白であるLRIG1は毛隆起の直上に局在する角化幹細胞に発現しており、Wnt-β-catenin経路を恒常的に抑制して幹細胞の維持に働いていることが明らかにできた。また、その細胞外ドメインは酵素的に切断され、パラクライン機構で細胞増殖を制御していることも明らかにした。ARA55/hic-5がケロイドの線維芽細胞で強発現していることを見出し、TGF-β-Smad経路を活性化しコラーゲン合成を促進することを明らかにした。1回膜貫通型蛋白であるLRIG1は毛隆起の直上に局在する角化幹細胞に発現しており、Wnt-β-catenin経路を恒常的に抑制して幹細胞の維持に働いていることが明らかにできた。また、その細胞外ドメインは酵素的に切断され、パラクライン機構で細胞増殖を制御していることも明らかにした。ARA55/hic-5がケロイドの線維芽細胞で強発現していることを見出し、TGF-β-Smad経路を活性化しコラーゲン合成を促進することを明らかにした。毛包の成長期開始に関わる内因性の分子を明らかにするために、Leptin欠損マウス(ob/ob)やLeptin receptor欠損マウス(db/db)における毛周期を検討し、1.db/dbマウスでは第2毛周期への移行が2週間遅れること3.休止期にある正常マウスにLeptinを皮下投与すると成長期を誘導できること4.培養毛乳頭細胞は低酸素条件下で効率的にLeptinを産生すること5.Leptinは培養ヒト角化細胞におけるJAK2およびSTAT3(Y705,S727)のリン酸化、ERKのリン酸化を促進させることを見いだした。Leptin受容体はgp130レセプターファミリーに属するが、我々はstat3が成長期の開始に必須であることを明らかにしており、Leptinは内因性の成長期誘導分子として機能していると考えられた。一方、Leptinは分泌後数十アミノ酸のフラグメントに分解され血中に存在するが、その生理学的な機能は明らかではない。これらのフラグメントの成長期誘導能や角化細胞内STAT3活性化能について検討したところ、22-56のLeptinフラグメントは全長のLeptinと同様に成長期誘導作用を有し、in vitroでも培養ヒト角化細胞におけるJAK2およびSTAT3(Y705,S727)のリン酸化、ERKのリン酸化を促進させた。これらの結果は、Leptinペプチド療法が休止期脱毛症に対する新たな治療法となりうることを強く示唆している。毛包の成長期開始に関わる内因性の分子を明らかにするために、Leptin欠損マウス(ob/ob)やLeptin receptor欠損マウス(db/db)における毛周期を検討し、1. db/dbマウスでは第2毛周期への移行が2週間遅れること2.休止期にある正常マウスにLeptinを皮下投与すると成長期を誘導できること3.培養毛乳頭細胞は低酸素条件下で効率的にLeptinを産生すること4. Leptiril培養角化細胞におけるJAK2およびSTAT3(Y705, S727)のリン酸化、ERKのリン酸化を促進させることなどから、Leptinが内因性の成長期誘導分子として機能していることを明らかにしてきた。一方、Leptinは分泌後数十アミノ酸のフラグメントに分解され血中に存在するが、その生理学的な機能は明らかではない。これらのフラグメントの成長期誘導能や角化細胞内STAT3活性化能について検討した。その結果、1. ob/obマウスにLeptinフラグメント(22-56)を皮下投与すると成長期を誘導できること2.休止期にある正常マウスにLeptinフラグメント(22-56)を皮下投与すると成長期を誘導できること3. Leptinフラグメント(22-56)は培養ヒト角化細胞におけるJAK2およびSTAT3(Y705, S727)のリン酸化、ERKのリン酸化を促進させることを見いだした。これらの結果は、Leptinペプチド療法が休止期脱毛症に対する新たな治療法となりうることを強く示唆している。1.成長期への移行や創傷治癒には毛隆起(Bulge area)に存在する幹細胞が間葉系の毛乳頭細胞や真皮繊維芽細胞(いわゆる幹細胞のニッチ)からのシグナルにより活性化され再生に必要な娘細胞を供給すると考えられている。最近毛包幹細胞のみを単離する方法が確立され特異的な遺伝子群が明らかにされたが、我々はLRIG1という1回膜貫通型蛋白が毛隆起(Bulge area)の直上にあるjunctional zoneに局在する角化幹細胞に特異的に発現していることを明らかにした(Cell Stem Cell.4 : 427-439, 2009)。LRIG1はEGFレセプターを介するシグナルを負に制御しMycの発現を抑制し、表皮と脂腺の恒常性を維持するために機能している。さらにLRIG1のノックアウトマウスではWnt-β-catenin経路が恒常的に活性化し表皮より毛包の異所性新生を認めた。LRIG1はEGFレセプター以外にMetを介するシグナルも負に制御しているが、その細胞外ドメインはADAMプロテアーゼにより切断され、パラクライン機構で細胞増殖を制御していることも明らかにした(Exp Cell Res.317 : 504-512, 2011)。 | KAKENHI-PROJECT-20591345 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20591345 |
皮膚再生機構の解明-毛包細胞内シグナル伝達機構の解析- | 2. ARA55/hic-5は毛乳頭細胞において男性ホルモンレセプター活性を増強する共役因子であるが(J Invest Dermatol.127 : 2302-2306, 2007)、ケロイドの線維芽細胞でも強発現していることを見出し、ステロイドホルモンシグナル経路ではなく、TGF-β-Smad経路を活性化しコラーゲン合成を促進することを明らかにした(J Dermatol Sci.58 : 152-154, 2010)。 | KAKENHI-PROJECT-20591345 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20591345 |
長期介入による大規模高齢者集団の栄養状態改善が余命および活動的余命に及ぼす影響 | 目的:本研究の目的は,地域在宅の自立高齢者の大規模集団を対象とした4年間にわたる栄養状態改善のための介入がその後6年間の生命予後に及ぼす効果を評価することにある。対象と方法:対象は,秋田県南外村(現大仙市)在住の地域在宅高齢者である。栄養状態改善のための介入は,地域高齢者全体に対して1996年から2000年の4年間行った.介入終了後の健康状態の変化の観察は2006年までの6年間行った.分析対象は,介入前1996年総合健康調査に参加した1021人(男性418人,女性603人)のうち,2000年と2006年の追跡調査に参加した者および転帰が確認できた者で構成し,分析数はデータの完備した629人(男性243人,女性386人)である。栄養指標は血清アルブミンを用いた。1996年からの4年間の介入に伴う栄養改善の程度ごとに「維持・低下群」(血清アルブミン変化量25パーセンタイル値(P)0.0g/dL以下,166人),「やや改善群」(同変化量25P値0.00g/dL超,75P値+0.30g/dL未満,333人),および「改善群」(同変化量75P値+0.30g/dL以上,130人)の3群に区分し,介入後6年間(2000年-2006年)の生命予後を比較した。分析は,COX比例ハザードモデルを採用した.結果:得られた結果は以下のとおりである.1)分析対象の介入前1996年時の平均年齢は男性70.8歳,女性71.2歳であった.2)分析対象全体で介入期間に血清アルブミン値平均は4.11から4.27g/dLに有意に増加した.3)介入前1996年の各群の血清アルブミン値は,「維持・低下群」4.18,「やや改善群」4.12,「改善群」4.00g/dLであり,「維持低下群」が最も水準が高く有意な群間差が認められた.一方,介入終了時(2000年)のそれは,「維持・低下群」4.09,「やや改善群」4.31,「改善群」4.42g/dLであり改善群が最も高く有意な群間差が認められた.4)介入終了時(2000年)3群間に男女構成比,年齢,老研式活動能力指標総合点に有意な差は認められなかった.介入終了後の6年間(2000-2006年)に88人(14.0%)が死亡した。5)Cox比例ハザードモデル分析により各群の介入終了後6年間の総死亡リスクを比較したところ「維持・低下群」を基準とした「やや改善群」と「改善群」のハザード比はそれぞれ0.69(0.42-1.12:95%信頼区間),0.47(0.24-0.90)であり,この数値は性,年齢,アルブミン値(1996年),老研式活動能力指標得点(2000年時),運動スポーツ習慣,脳卒中既往,心臓病既往,糖尿病既往,喫煙習慣,飲酒習慣の影響を調整したものである.結論:自立高齢者に対して栄養状態を改善する介入をすることで余命を伸長させ,老化を遅延させることが実証できた。目的:本研究の目的は,地域在宅の自立高齢者の大規模集団を対象とした4年間にわたる栄養状態改善のための介入がその後6年間の生命予後に及ぼす効果を評価することにある。対象と方法:対象は,秋田県南外村(現大仙市)在住の地域在宅高齢者である。栄養状態改善のための介入は,地域高齢者全体に対して1996年から2000年の4年間行った.介入終了後の健康状態の変化の観察は2006年までの6年間行った.分析対象は,介入前1996年総合健康調査に参加した1021人(男性418人,女性603人)のうち,2000年と2006年の追跡調査に参加した者および転帰が確認できた者で構成し,分析数はデータの完備した629人(男性243人,女性386人)である。栄養指標は血清アルブミンを用いた。1996年からの4年間の介入に伴う栄養改善の程度ごとに「維持・低下群」(血清アルブミン変化量25パーセンタイル値(P)0.0g/dL以下,166人),「やや改善群」(同変化量25P値0.00g/dL超,75P値+0.30g/dL未満,333人),および「改善群」(同変化量75P値+0.30g/dL以上,130人)の3群に区分し,介入後6年間(2000年-2006年)の生命予後を比較した。分析は,COX比例ハザードモデルを採用した.結果:得られた結果は以下のとおりである.1)分析対象の介入前1996年時の平均年齢は男性70.8歳,女性71.2歳であった.2)分析対象全体で介入期間に血清アルブミン値平均は4.11から4.27g/dLに有意に増加した.3)介入前1996年の各群の血清アルブミン値は,「維持・低下群」4.18,「やや改善群」 | KAKENHI-PROJECT-15500504 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15500504 |
長期介入による大規模高齢者集団の栄養状態改善が余命および活動的余命に及ぼす影響 | 4.12,「改善群」4.00g/dLであり,「維持低下群」が最も水準が高く有意な群間差が認められた.一方,介入終了時(2000年)のそれは,「維持・低下群」4.09,「やや改善群」4.31,「改善群」4.42g/dLであり改善群が最も高く有意な群間差が認められた.4)介入終了時(2000年)3群間に男女構成比,年齢,老研式活動能力指標総合点に有意な差は認められなかった.介入終了後の6年間(2000-2006年)に88人(14.0%)が死亡した。5)Cox比例ハザードモデル分析により各群の介入終了後6年間の総死亡リスクを比較したところ「維持・低下群」を基準とした「やや改善群」と「改善群」のハザード比はそれぞれ0.69(0.42-1.12:95%信頼区間),0.47(0.24-0.90)であり,この数値は性,年齢,アルブミン値(1996年),老研式活動能力指標得点(2000年時),運動スポーツ習慣,脳卒中既往,心臓病既往,糖尿病既往,喫煙習慣,飲酒習慣の影響を調整したものである.結論:自立高齢者に対して栄養状態を改善する介入をすることで余命を伸長させ,老化を遅延させることが実証できた。目的・背景:報告者らは,大規模介入研究により,地域在宅高齢者の血清アルブミンを増加させ低栄養予防に有効な食生活指針を開発した.本研究の目的は先行の介入研究により表出した地域高齢者集団の身体栄養状態の改善が生命予後と活動的余命に及ぼす影響を更なる介入の継続し観察することにある.対象と方法:対象は,秋田県南外村に在住する66歳以上の地域在宅高齢者全員1427名である.本研究課題の初回調査は2003年7月(以下,2003年調査)に行った.2003年調査は継続介入の効果も評価できるように設計し,医学調査とアンケート調査で構成した.2003年調査には,1316名が参加し参加率は92.2%であった.介入効果の評価変数として,血清アルブミン,ヘモグロビン,血清総コレステロール,HDLコレステロール,15食品群食品摂取頻度,および定期的な運動習慣などを採用した.活動的余命への影響を評価するために,栄養状態改善の進んだ群とそうでない群を設定し,生活機能障害の罹患率の変化を観察比較した.介入プログラム:1)動物性食品摂取の推進,2)油脂類の摂取の推進,3)運動習慣(自己啓発実践型筋肉トーニング,ストレッチ体操)の推進等を網羅した冊子プログラムの対象者全員配布した.加えて,地域健康学習会(10回,参加数約500名),およびボランティア学習会(12回,同約360名)において,プログラムに沿った実践講習会を実施した.結果:2002年7月からの1年間の介入効果を1198名で分析した結果,油脂類の摂取頻度と定期的な運動習慣が有意に増加した.肉類と卵類の摂取頻度の増加も認められたが有意ではなかった.血液指標では血清アルブミン,血清総コレステロール,HLDコレステロール,およびヘモグロビンが有意に増加し,総コレステロー/HDLコレステロール比が有意に低下した.1年間の介入でヘモグロビンの増加(維持含む)した群(男性74歳以下N=203)と低下した群(同N=67)で「一人でどこにでも外出できる者」の割合の変化を比較したところ,2002年時では両群に割合の有意差は認められなかったが,2003年時では増加(維持含む)群では0.5%の増加したのに対し,低下群では3.0%の減少が認められ2003年時では両群に有意差が認められた(p=0.011).なお,両群に年齢差はない. | KAKENHI-PROJECT-15500504 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15500504 |
アポトーシス関連遺伝子を用いた癌遺伝子治療法の開発 | アポトーシス実行機構の最下流に位置するcaspase-3(yama/cpp32)遺伝子を癌に高発現させた後に低容量の抗癌剤を投与することにより、正常細胞の障害を少なく強い抗腫瘍効果を得る新たな癌遺伝子治療法を確立することを目的として研究を行った。まず数種類の癌細胞株にyama/cpp32遺伝子をリポフェクション法にて導入すると、遺伝子発現単独ではアポトーシスを誘導しないものの、抗癌剤であるVPl6を低容量投与するとアポトーシスが激しく誘導された。低容量VP16のみではアポトーシスは誘導されなかったため、yama/cpp32遺伝子がアポトーシス誘導に寄与していることか判明した。また肝癌モデルラットに、adenovirusを用いてyama/cpp32遺伝子に発現させた後に低容量VP16を静脈注入すると、Yamaの活性が上昇し、肝癌細胞にアポトーシスが誘導され、最終的に腫瘍の縮小が見られた。yama/cpp32遺伝子単独や、VP16単独では抗腫瘍効果は得られなかった。同様の抗腫瘍効果は、VP16の代わりに放射線を照射した際にも観察された。一方、yama/cpp32の上流でアポトーシスを抑制するBcl-2を過剰に発現しておくと、yama/cpp32遺伝子導入の効果は見られなかった。従って、yama/cpp32遺伝子を用いた遺伝子治療はBcl-2低発現腫瘍において効果的に機能すると考えられた。アポトーシス実行機構の最下流に位置するcaspase-3(yama/cpp32)遺伝子を癌に高発現させた後に低容量の抗癌剤を投与することにより、正常細胞の障害を少なく強い抗腫瘍効果を得る新たな癌遺伝子治療法を確立することを目的として研究を行った。まず数種類の癌細胞株にyama/cpp32遺伝子をリポフェクション法にて導入すると、遺伝子発現単独ではアポトーシスを誘導しないものの、抗癌剤であるVPl6を低容量投与するとアポトーシスが激しく誘導された。低容量VP16のみではアポトーシスは誘導されなかったため、yama/cpp32遺伝子がアポトーシス誘導に寄与していることか判明した。また肝癌モデルラットに、adenovirusを用いてyama/cpp32遺伝子に発現させた後に低容量VP16を静脈注入すると、Yamaの活性が上昇し、肝癌細胞にアポトーシスが誘導され、最終的に腫瘍の縮小が見られた。yama/cpp32遺伝子単独や、VP16単独では抗腫瘍効果は得られなかった。同様の抗腫瘍効果は、VP16の代わりに放射線を照射した際にも観察された。一方、yama/cpp32の上流でアポトーシスを抑制するBcl-2を過剰に発現しておくと、yama/cpp32遺伝子導入の効果は見られなかった。従って、yama/cpp32遺伝子を用いた遺伝子治療はBcl-2低発現腫瘍において効果的に機能すると考えられた。我々は癌に対する新たな遺伝子治療として、アポトーシス実行機構の最下流に位置するyama/cpp32遺伝子を癌に高発現させ、加えて低容量の抗癌剤を投与することにより、正常細胞の障害を少なく強い抗腫瘍効果を得るシステムを検討している。現在までに、1、遺伝子導入法としてはadenovirusが最も効率が良いこと(HVJ virus,cationic liposome等と比較して)、2、cell lineを用いた実験おいて、yama/cpp32遺伝子導入そのものでは細胞死を誘導しないものの、低容量の抗癌剤を追加投与することにより強力な細胞死誘導効果を発揮すること、3、肝癌モデルラットにおいて、yama/cpp32遺伝子導入3日後に低容量の抗癌剤を投与することにより、細胞死が惹起され腫瘍径が縮小すること、4、抗アポトーシス作用を有するBcl-2蛋白が過剰発現している癌ではyama/cpp32遺伝子導入効果が薄いことが判明した。従って、Bcl-2蛋白が過剰発現している癌を除いてはほぼ全ての癌において、本遺伝子治療法が極めて有効であると考えられた。現在は、yama/cpp32遺伝子導入に加えて放射線治療、免疫治療の補助に追いても癌縮小効果が得られるか否かを検討している。また、Bcl-2蛋白が過剰発現している癌においてもyama/cpp32遺伝子導入が得られるように、Bcl-2の抗アポトーシス効果のメカニズムを検討しているところである。また、癌性腹膜炎等の固形腫瘍以外にも応用しうるか否か検討中である。アポトーシス実行機構の最下流に位置するyama/cpp32遺伝子を癌に高発現させた後に低容量の抗癌剤を投与することにより、正常細胞の障害を少なく強い抗腫瘍効果を得る新たな癌遺伝子治療法を確立することを目的として研究を行った。まず数種類の癌細胞株にyama/cpp32遺伝子をリポフェクション法にて導入すると、遺伝子発現単独ではアポトーシスを誘導しないものの、抗癌剤であるVP16を惹容量投与するとアポトーシスが激しく誘導された。低容量VP16のみではアポトーシスは誘導されなかったため、yama/cpp32遺伝子がアポトーシス誘導に寄与していることが判明した。また肝癌モデルラットに、adenovirusを用いてyama/cpp32遺伝子に発現させた後に低容量VP16を静脈注入すると、Yamaの活性が上昇し、肝癌細胞にアポトーシスが誘導され、最終的に腫瘍の縮小が見られた。yama/cpp32遺伝子単独や、VP16単独では抗腫瘍効果は得られなかった。同様の抗腫瘍効果は、VP16の代わりに放射線を照射した際にも観察された。 | KAKENHI-PROJECT-09671304 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09671304 |
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