title
stringlengths
0
199
text
stringlengths
3
3.18k
id
stringlengths
23
32
url
stringlengths
56
65
消化管における上皮細胞増殖因子(EGF)前駆体の生理的、病態的意義に関する研究
これらにすでに所有している抗ヒトEGF抗体をくわえた3種類の抗体の組み合わせでサンドイッチ型EIAを調整し、湧永製薬から提供されたヒト高分子EGFをスタンダ-ドとして測定系を検定した。しかし、蛍光強度は最大約3倍にとどまり、このため、競合阻害反応による酵素標識免疫吸着法でも測定系を検討したが、所期の感度を得るに至らなかった。以上より、高分子EGFのEIA系の確立にはさらにアフイニテイの高い抗体の調整を現在検討中である。2.高分子EGFの局在に関する免疫組織学的検討抗体I、IIを用いABC法により、まずラットの顎下腺、膵蔵、肝蔵、腎蔵、胃、十二指腸、大腸について染色を試みた。しかし、いずれの臓器とも染色像は得られず、その原因として高分子EGFに対する両抗体のcross-reactivityの欠如もしくは抗体の組織へのlow affinityなどが推測てれた。ABC法の信頼性に関しては、所有している抗ヒトペプシノ-ゲンIおよびII抗体でラット顎下腺とヒト胃について染色を行ない検定した。その結果、ヒト胃の主細胞には明瞭な染色像が得られ、ABC法の手法には問題ないと判断している。つぎに、ヒトに正常腎蔵と顎下腺では、抗体IIによって腎蔵の血管内膜細胞、尿細管上皮および間質、顎下腺では腺管と間質に陽性所見が得られた。現在この染色像が高分子EGFであることの同定を進めている。
KAKENHI-PROJECT-63480204
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63480204
子宮内膜症発症・内膜症性嚢胞癌化に関わる腟細菌叢のメタゲノム解析
体内細菌叢が各種疾患と関連することが明らかになり、メタゲノム解析は非常に注目されている。本邦では子宮内膜症の若年化や、子宮内膜症が前駆病変の卵巣明細胞癌の増加が報告されており、そのために若年者の卵巣癌死亡率は欧米よりも高い。子宮内膜症と月経血逆流・腹腔内免疫系と密接な関連及び、性交開始の若年化・Sex Partnerの増加という若年女性の性行動の変化という二つの観点から、申請者は子宮内膜症の若年化と腟細菌叢との関連性を想定した。そこで本研究では、子宮内膜症、明細胞腺癌発症のリスク因子となる細菌群の特定を試みることが目的である。まず初めにヒトの腟内細菌叢と婦人科疾患との関連を検討するために準備段階として日本人と韓国人の腟内細菌叢を解析した。日本人女性計67人の腟内分泌液からDNA抽出し、次世代シークエンサーIonPGMで16S rRNA遺伝子領域をシークエンスして細菌叢データを得た。また、MiSeqによりシークエンスを行った韓国人542人のデータも使用した。これをGenomeSyncを使った独自の高解像度ゲノム解析にかけ、さらにMultiExperiment Viewer(MeV)を用いて細菌種分布のクラスタリング解析を行った。種レベルで細菌叢を比較解析した結果、日本人サンプルでは細菌種分布に基づき少なくとも6、人数が少ないものを合わせると9つのクラスターに分けられた。このうちLactobacillus属が優占するクラスターは人数が最大で、韓国人でも同様であり、Simpsonの多様度指数は他のクラスターよりも低かった。一方、Lactobacillus inersは例外的に多くのクラスターに含まれていた。疾患群ごとのクラスター組成を調べたところ、がんの病態になるとPrevotella biviaが優占するクラスターJ6の割合が増える傾向が見られた。我々はすでに予備実験を行い、日本人と韓国人を対象に腟細菌叢の多様性解析を行い、6つのグループに症例を分類できることを第41回日本分子生物学会2018 (横浜)にて発表を行っている(演題名:次世代シークエンサーを用いたヒト腟内細菌叢の多様性解析)。本研究は、共同研究者の持つ方法にて検査方法は確立していることから、子宮内膜症、明細胞腺癌患者の腟帯下をできるだけ多く採取することを試みる。体内細菌叢が各種疾患と関連することが明らかになり、メタゲノム解析は非常に注目されている。本邦では子宮内膜症の若年化や、子宮内膜症が前駆病変の卵巣明細胞癌の増加が報告されており、そのために若年者の卵巣癌死亡率は欧米よりも高い。子宮内膜症と月経血逆流・腹腔内免疫系と密接な関連及び、性交開始の若年化・Sex Partnerの増加という若年女性の性行動の変化という二つの観点から、申請者は子宮内膜症の若年化と腟細菌叢との関連性を想定した。そこで本研究では、子宮内膜症、明細胞腺癌発症のリスク因子となる細菌群の特定を試みることが目的である。まず初めにヒトの腟内細菌叢と婦人科疾患との関連を検討するために準備段階として日本人と韓国人の腟内細菌叢を解析した。日本人女性計67人の腟内分泌液からDNA抽出し、次世代シークエンサーIonPGMで16S rRNA遺伝子領域をシークエンスして細菌叢データを得た。また、MiSeqによりシークエンスを行った韓国人542人のデータも使用した。これをGenomeSyncを使った独自の高解像度ゲノム解析にかけ、さらにMultiExperiment Viewer(MeV)を用いて細菌種分布のクラスタリング解析を行った。種レベルで細菌叢を比較解析した結果、日本人サンプルでは細菌種分布に基づき少なくとも6、人数が少ないものを合わせると9つのクラスターに分けられた。このうちLactobacillus属が優占するクラスターは人数が最大で、韓国人でも同様であり、Simpsonの多様度指数は他のクラスターよりも低かった。一方、Lactobacillus inersは例外的に多くのクラスターに含まれていた。疾患群ごとのクラスター組成を調べたところ、がんの病態になるとPrevotella biviaが優占するクラスターJ6の割合が増える傾向が見られた。我々はすでに予備実験を行い、日本人と韓国人を対象に腟細菌叢の多様性解析を行い、6つのグループに症例を分類できることを第41回日本分子生物学会2018 (横浜)にて発表を行っている(演題名:次世代シークエンサーを用いたヒト腟内細菌叢の多様性解析)。本研究は、共同研究者の持つ方法にて検査方法は確立していることから、子宮内膜症、明細胞腺癌患者の腟帯下をできるだけ多く採取することを試みる。初年度は、すでに研究計画申請承認前よりも前に行っていたパイロット研究の結果の分析・検討とサンプルの収集を中心に行っていたために経費が予想よりも少なくて済んだ。次年度には採集されたサンプルを用いた分析、論文投稿費用、学会報告を行うことに繰越金を充当する予定である。
KAKENHI-PROJECT-18K09274
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K09274
FT-ICRによるシリコンクラスターの化学反応と構造制御
1991年に発見されたカーボンナノチューブは炭素原子の6員環と5員環で編まれたネットワーク構造をもち,単層のナノチューブ(SWNT : single-walled carbon nanotube)と,複数のチューブが入れ子状になった多層ナノチューブ(MWNT : multi-walled carbon nanotube)の2種類に分類される.カーボンナノチューブはその幾何学的構造に基づく,様々な物理・化学的性質から新しい材料としての応用が期待されており,ナノテクノロジーの代表的な新素材である.一例を挙げると,電子素子,平面型ディスプレーなどのための電界放出電子源,走査型プローブ顕微鏡の探針,熱伝導素子,高強度材料,導電性複合材料やガス吸蔵材として利用するための応用研究も活発に行われている.一方,SWNTsの大量生成に関してはCVD法やHiPco法による生成に期待が持たれており,本研究室でもアルコールを炭素供給源とした新合成法ACCVD法を確立している.しかしながらその成長過程に関しては不明な点が多く,高品質なSWNTsを生成するためには基礎的な研究が必要である.CVD法では触媒として遷移金属が広く用いられるが,最近では単一種の金属を用いるよりも混合金属を触媒として用いるほうが,より効果的な触媒作用を得ることが分かってきた.そこで本研究ではカーボンナノチューブに対して非常に効率的な鉄・コバルト混合金属の触媒機構を理解するため,混合クラスターの生成機構を主に調べ,アルコールとの反応に関しても調べた.カーボンナノチューブは炭素原子の6員環と5員環で編まれたネットワーク構造をもち,単層のナノチューブ(SWNT : single-walled carbon nanotube)と,複数のチューブが入れ子状になった多層ナノチューブ(MWNT : multi-walled carbon nanotube)の2種類に分類される.カーボンナノチューブはその幾何学的構造に基づく,様々な物理・化学的性質から新しい材料としての応用が期待されており,ナノテクノロジーの代表的な新素材である.一方,SWNTsの大量生成に関してはCVD法やHiPco法による生成に期待が持たれており,本研究室でもアルコールを炭素供給源とした新合成法ACCVD法を確立している.しかしながらその成長過程に関しては不明な点が多く,高品質なSWNTsを生成するためには基礎的な研究が必要である.CVD法では触媒として遷移金属が広く用いられるが,鉄,コバルト,ニッケルなどの遷移金属は他の反応分野でも使われており,クラスターレベルでの研究も多く進められている.しかしながらサイズの大きなクラスターは生成自体が困難であり,世界中で行われている研究の多くが10量体以下の小さなクラスターに関する研究である.そこで本研究では,既存の研究より一回り大きなサイズであり,またACCVD法での実際の触媒サイズを念頭に置いた遷移金属クラスターとエタノールとの素反応について実験をおこない,その反応機構を探った.遷移金属クラスター(Fe, Co, Ni)とエタノールの反応では,反応速度定数が定性的に同じ様相を示し,更に原子番号の順にシフトすることから価電子による影響が考えられる.コバルトクラスターとエタノールの同位体実験に成功し,脱水素反応で脱離する水素原子を特定できた.1991年に発見されたカーボンナノチューブは炭素原子の6員環と5員環で編まれたネットワーク構造をもち,単層のナノチューブ(SWNT : single-walled carbon nanotube)と,複数のチューブが入れ子状になった多層ナノチューブ(MWNT : multi-walled carbon nanotube)の2種類に分類される.カーボンナノチューブはその幾何学的構造に基づく,様々な物理・化学的性質から新しい材料としての応用が期待されており,ナノテクノロジーの代表的な新素材である.一例を挙げると,電子素子,平面型ディスプレーなどのための電界放出電子源,走査型プローブ顕微鏡の探針,熱伝導素子,高強度材料,導電性複合材料やガス吸蔵材として利用するための応用研究も活発に行われている.一方,SWNTsの大量生成に関してはCVD法やHiPco法による生成に期待が持たれており,本研究室でもアルコールを炭素供給源とした新合成法ACCVD法を確立している.しかしながらその成長過程に関しては不明な点が多く,高品質なSWNTsを生成するためには基礎的な研究が必要である.CVD法では触媒として遷移金属が広く用いられるが,最近では単一種の金属を用いるよりも混合金属を触媒として用いるほうが,より効果的な触媒作用を得ることが分かってきた.そこで本研究ではカーボンナノチューブに対して非常に効率的な鉄・コバルト混合金属の触媒機構を理解するため,混合クラスターの生成機構を主に調べ,アルコールとの反応に関しても調べた.
KAKENHI-PROJECT-02J07658
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02J07658
小学校高学年および中学校技術分野における先端技術の教材化と標準モデルの開発・評価
小学校高学年から中学生までを対象として,子どもたちが先端技術を直接体験することができる安価な教材を開発した。具体的には,マイクロコントローラを搭載した自律走行型ロボットの標準仕様ともいうべきものを開発した。基礎的なセンサは標準装備,ロボットの機構部分の製作は自由度が大きく,子どもの発想力を生かせる形のものを検討した。開発した教材については教育現場等で実践を行い,その効果について評価を行った。小学校高学年から中学生までを対象として,子どもたちが先端技術を直接体験することができる安価な教材を開発した。具体的には,マイクロコントローラを搭載した自律走行型ロボットの標準仕様ともいうべきものを開発した。基礎的なセンサは標準装備,ロボットの機構部分の製作は自由度が大きく,子どもの発想力を生かせる形のものを検討した。開発した教材については教育現場等で実践を行い,その効果について評価を行った。先端的な科学技術の基礎を子どもたちに教えようとするとき,その技術を取り込んだコンパクトな標準的な教材があれば,指導者の大きな助けとなると期待されることから,本研究では,先端技術を教材化して扱いやすい形で普及することを目的とし,特に,小学校高学年から中学生までを対象として,一貫して先端技術を学べるような,子どもたちが先端技術を直接体験することができる安価な教材の開発・評価・普及を目指している。この研究では,小学校および中学校において,教材として利用可能なロボットの標準仕様ともいうべきものを開発するため,具体的には,マイクロコントローラ搭載で自律走行が可能なビークル型ロボットで,基礎的なセンサは標準装備,ロボットの機構部分の製作は自由度が大きく,子どもの発想力を生かせる形としたい。いずれもプロトタイプを試作した後,研究室レベルで必要数を製作して,子どもたちに教材として授業実践を行い,有効性の評価とそれに基づいた改良を行い広く教材としての普及を考えている。そのため平成19年度は,ロボットのハードウェアの製作を中心に行なった。具体的には,(1)教材として参考になると考えられる市販ロボットの調査,(2)ロボットに盛り込むべき内容についての意見交換及び検討,(3)ロボットの基本設計(子どもたち自身によるフレーム・外形等のデザイン・製作可能性の検討等も含む),(4)ロボットの基本部分の製作,などを中心に検討を行い,継続して研究を行っている。先端的な科学技術の基礎を子どもたちに教えようとするとき,その技術を取り込んだコンパクトな標準的な教材があれば,指導者の大きな助けとなると期待されることから,本研究では,先端技術を教材化して扱いやすい形で普及することを目的とし,特に,小学校高学年から中学生までを対象として,一貫して先端技術を学べるような,子どもたちが先端技術を直接体験することができる安価な教材の開発・評価・普及を目指している。この研究では,小学校および中学校において,教材として利用可能なロボットの標準仕様ともいうべきものを開発するため,具体的には,マイクロコントローラ搭載で自律走行が可能なビークル型ロボットで,基礎的なセンサは標準装備,ロボットの機構部分の製作は自由度が大きく,子どもの発想力を生かせる形としたい。プロトタイプを試作した後,研究室レベルで必要数を製作して,子どもたちに教材として授業実践を行い,有効性の評価とそれに基づいた改良を行い広く教材としての普及を考え,平成20年度は,ロボットのハードウェアの製作と子どもたちにも簡単に扱えるソフトウェアの製作を中心に行なった。具体的には,(1)ロボットに盛り込むべき内容についての意見交換及び検討,(2)ロボットの基本設計(子どもたち自身によるフレーム・外形等のデザイン・製作可能性の検討等も含む),(3)ロボット本体といくつかのセンサユニットの製作,(4)子どもたちにも簡単に扱えるロボット動作用プログラミングソフトウェアの製作などを中心に行い,今後の教育場面での実践に備えて継続して研究を行っている。先端的な科学技術の基礎を子どもたちに教えようとするとき,その技術を取り込んだコンパクトな標準的な教材があれば,指導者の大きな助けとなると期待されることから,本研究では,先端技術を教材化して扱いやすい形で普及することを目的とし,特に,小学校高学年から中学生までを対象として,一貫して先端技術を学べるような,子どもたちが先端技術を直接体験することができる安価な教材の開発・評価・普及を目指している。この研究では,小学校および中学校において,教材として利用可能なロボットの標準仕様ともいうべきものを開発するため,具体的には,マイクロコントローラ搭載で自律走行が可能なビークル型ロボットで,基礎的なセンサは標準装備,ロボットの機構部分の製作は自由度が大きく,子どもの発想力を生かせる形のものを考えている。プロトタイプを試作した後,研究室レベルで必要数を製作して,子どもたちに教材として授業実践を行い,有効性の評価とそれに基づいた改良を行い広く教材としての普及を考え,平成21年度は,最終年度であるため,前年度に製作したロボットのハードウェア,および開発したソフトウェアを用いて,子どもたちに授業実践を行なった。具体的には,(1)教材として製作したロボットおよび開発したソフトウェアについての意見交換・検討,(2)実践案の作成と評価方法の開発,(3)製作したロボットを用いた子どもたちに対する実践と評価,などを中心に行い,20人程度の規模であるがそれなりの評価を得た。また,今後,更に大きな規模での実践に備えて研究を継続している。
KAKENHI-PROJECT-19530795
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19530795
都市公園の平面形態における形式分析
初年度は、事例研究の対象を日本国内における戦前の都市公園に限定したうえで、平面形態を(1)形態要素、(2)形態構成、(3)形態構造の3つの段階において分析した。その結果、戦前の小公園の平面構成は、平面形態を構成する軸の数とそれによって分割される図形の輪郭形態によって分類することが可能であること、さらに公園の中に植栽された樹木群と諸施設の配置形態の分析から、空間軸の象徴的表現、空間輪郭の明示、空間の等質化、空間機能の直接的・間接的表示などの形態構成上の特徴が抽出された。また、形態の求心性と拡散性、完結性と部分拡張性、外部閉鎖性と内部拡張性などが、形態構造的な概念として特定できた。第2年度は、初年度において実施した研究の成果から得られた平面形態の分析方法論を用いて、3つの異なる種類の都市公園を対象としたケ-ススタディを実施した。まず、台東区の小公園における平面形態の改変構造では、改修による形態要素と形態構成の変化は著しいが、それらは開園当初の平面形態が有していた構造的特徴に規定されるかたちで生じていることが明らかとなった。つぎに、防災公園の平面形態の特徴としては、空間に求められている機能の特殊性ゆえに、形態要素と形態構成のありかたに重点をおいた整備がなされている。しかし、どの事例においても、形態構成のヒエラルキ-を生成するために形態要素の配置を改変することによって、構造を形成する余地は十分にのこされていることが確認された。さらに、平面形態における「地域性」の演出手法を検討した国内の18の事例では、形態要素、形態構成、形態構造のいずれのレベルにおいても、「地域性」を意図したデザインのありかたを抽出することが可能であった。形態要素には素材と工法が、形態構成には公園の立地特性が、形態構造には公園敷地外部への視覚の延伸が、それぞれ対応しているものと推察された。初年度は、事例研究の対象を日本国内における戦前の都市公園に限定したうえで、平面形態を(1)形態要素、(2)形態構成、(3)形態構造の3つの段階において分析した。その結果、戦前の小公園の平面構成は、平面形態を構成する軸の数とそれによって分割される図形の輪郭形態によって分類することが可能であること、さらに公園の中に植栽された樹木群と諸施設の配置形態の分析から、空間軸の象徴的表現、空間輪郭の明示、空間の等質化、空間機能の直接的・間接的表示などの形態構成上の特徴が抽出された。また、形態の求心性と拡散性、完結性と部分拡張性、外部閉鎖性と内部拡張性などが、形態構造的な概念として特定できた。第2年度は、初年度において実施した研究の成果から得られた平面形態の分析方法論を用いて、3つの異なる種類の都市公園を対象としたケ-ススタディを実施した。まず、台東区の小公園における平面形態の改変構造では、改修による形態要素と形態構成の変化は著しいが、それらは開園当初の平面形態が有していた構造的特徴に規定されるかたちで生じていることが明らかとなった。つぎに、防災公園の平面形態の特徴としては、空間に求められている機能の特殊性ゆえに、形態要素と形態構成のありかたに重点をおいた整備がなされている。しかし、どの事例においても、形態構成のヒエラルキ-を生成するために形態要素の配置を改変することによって、構造を形成する余地は十分にのこされていることが確認された。さらに、平面形態における「地域性」の演出手法を検討した国内の18の事例では、形態要素、形態構成、形態構造のいずれのレベルにおいても、「地域性」を意図したデザインのありかたを抽出することが可能であった。形態要素には素材と工法が、形態構成には公園の立地特性が、形態構造には公園敷地外部への視覚の延伸が、それぞれ対応しているものと推察された。初年度は、事例研究の対象を日本国内における戦前の都市公園に限定して実施した。具体的には、東京の日比谷公園、震災復興52小公園ならびに大阪、京都、神戸においてこの時期に開園された3つの都市公園である。これらの都市公園の平面形態を(1)形態要素、(2)形態構成、(3)形態構造の3つの段階において分析を行ない、以下の知見を得た。・震災復興小公園の平面構成は、平面形態を構成する軸の数とそれによって分割される図形の輪郭形によって分類することが可能である。その結果、「空間連結型」、「分節シンメトリ-型」、「一体シンメトリ-型」、「空間分節型」、「重複型」の5つのタイプを見いだすことができた。・公園の中に設置された樹木群と諸施設の配置形態の分析から、空間軸の象徴的表現、空間輪郭の明示、空間の等質化、空間機能の直接的・間接的表示、といった形態構成上の特徴が抽出された。・形態構成上の特徴が、一つの公園空間の内部に共存している状態を説明する形態構造的な概念として、形態の求心性と拡散性、完結性と部分拡張性、外部閉鎖性と内部拡張性、という3対の対立項を指摘することができた。・日比谷公園の平面形態は、全体を小公園のコラ-ジュとして理解することが可能であり、各部分の平面形態においては上記のような分析手法が有効であることが確認された。しかし、全体的な平面形態におけてる要素、構成、構造間の関係は、周辺の都市空間の変容と関連づけて分析する必要があることが確認された。
KAKENHI-PROJECT-02660023
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02660023
都市公園の平面形態における形式分析
・戦前の大阪、京都において設計された都市公園では、敷地の立地する地域の固有性が強調される傾向が強く、震災復興小公園や日比谷公園のような特徴を明確に指摘することはできなかった。第2年度は、初年度において実施した研究の成果が得られた平面形態の分析方法論を用いて、下記の3つの異なる種類の都市公園を対象としたケ-ススタディを実施した。1.台東区の小公園における平面形態の改変構造:震災復興公園として戦前に設置され、東京都台東区に現存する小公園を対象として、戦後数次にわたって実施された改修において、オリジナルな平面形態が改変される過程をトレ-スした。その結果、改修による形態要素と形態構成の変化は著しいが、それらは開園当初の平面形態が有していた構造的特徴に規定されるかたちで生じていることが明らかとなった。2.防災公園の平面形態の特徴:関東地方の12か所を対象とした分析を実施した。震災時の一時非難場所として整備されてきた防災公園は、空間に求められる機能の特殊性ゆえに、形態要素と形態構成のありかたに重点をおいて整備がなされている。このため、日常の利用を想定した明確な形態構造・空間構造の把握は困難である。しかし、どの事例においても、形態構成のヒエラルキ-を生成するために形態要素の配置を改変することによって、構造を形成する余地は十分にのこされていることが確認された。3.平面形態における「地域性」の演出手法:日本国内の18の事例を対象に、「地域性」のデザイン的演出手法を平面形態から読み取る分析を行った。その結果、形態要素には素材と工法が、形態構成には公園の立地特性が、形態構造には公園敷地外部への視覚の延伸が、それぞれ対応しているものと推察された。
KAKENHI-PROJECT-02660023
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02660023
アジサイの花房型を制御する遺伝子の単離
本研究はアジサイの花房型の制御に関与する遺伝子の単離目的としている.本年度は,Subtractive Hybridization法により額咲き型花房で特異的に発現する遺伝子を探索するとともに,花房型制御遺伝子の機能及び発現時期の解明のために,額咲き型と手まり咲き型の栄養生長の比較を行った.Hydrangea macrophylla品種`ブルースカイ'(額咲き型)と, `ブルースカイ'から芽条変異により発生した手まり咲き変異枝の挿し木株(手鞠咲き型)を供試した.挿し木後40日目の発根率に関しては,花房型間で有意な差は認められなかった.鉢上げ後5ヶ月目の葉数についても大きな違いは認められなかった.しかし節間長に関しては,額咲き型が手まり咲き型に比べて有意に大きかった.一方,手まり咲き型は額咲き型に比べて,地際部からの側枝の発生が多い傾向が認められた.昨年度に引き続きSubtractive Hybridizationを行った.昨年度行った方法に関して,サブトラクト後のPCR増幅のためのアダプター配列について改良を行った.またハイブリダイゼーション温度について,マーカーを用いて特異性が最も高い適温を探索した結果,昨年度より5°C高い65°Cに設定した.サブトラク卜処理により得られた処理液をPCRで増幅し増幅産物をクローニングしたところ,1000-1500bpの長さの5個のクローンが単離された.これらの塩基配列を解析したところ,これらのうち4個は機能不明の未知の遺伝子であり,残り1個はcalreticulin遺伝子と相同性が高かった.今後,これらのクローンについてノーザン解析を行っていくとともに,さらにいくつかの発達ステージの花芽を用いてSubtractive Hybridizationを行い,花房型に特異的な遺伝子の探索を行っていく必要がある.本研究はアジサイの花房型の制御に関与する遺伝子の単離を目的としている.本年度は、額咲き型花房で特異的に発現する遺伝子を単離するために、Subtractive Hybridization法を行った.Hydrangea macrophylla品種'ブルースカイ'(額咲き型)と,'ブルースカイ'から芽条変異により発生した手まり咲き変異枝の挿し本株(手鞠咲き型)を供試した.額咲き型の花芽を0.03g、手まり咲き型の花芽を0.3gに調整し、それぞれmRNAを抽出した.磁性ビーズの付いたdTプライマーで逆転写を行い,磁性ビーズ付きのcDNA(アンチセンス鎖)を作成した.額咲き型では、このアンチセンス鎖のcDNAを鋳型として、センス鎖のcDNAを作成した.額咲き型のセンス鎖cDNAと手まり咲型のアンチセンス鎖cDNAをハイブリダイズした.ハイブリダイズにより2本鎖となったcDNAを磁石を用いて除去し、ハイブリダイズされなかった額咲き型のセンス鎖cDNAを回収した.このハイブリダイズ処理を5回行った後、ハイブリダイズされなかった額咲き型cDNAを含む溶液を用いてPCRを行った.PCR産物の電気泳動を行った結果、5002000bpの間に5本のバンドが得られた.今後、これらの増幅産物について塩基配列を決定しノーザン解析を行っていく予定である.また同様の手法で、手まり咲き型{こ特異的に発現する遺伝子についても調査する.アジサイにおけるカルスを経由した植物体再生系の確立を試みた.葉身と胚軸のいずれからもカルスは誘導されたが、葉身由来のカルスからの植物体の再生はほとんどみられなかった.胚軸を外植体として用いた場合、0.5mg・1^<-1>NAA添加培地で誘導したカルスを0.1mg・l^<-1>NAAと1mg・l^<-1>BAを添加した培地で培養すると、33%のカルスで不定芽が形成された.本研究はアジサイの花房型の制御に関与する遺伝子の単離目的としている.本年度は,Subtractive Hybridization法により額咲き型花房で特異的に発現する遺伝子を探索するとともに,花房型制御遺伝子の機能及び発現時期の解明のために,額咲き型と手まり咲き型の栄養生長の比較を行った.Hydrangea macrophylla品種`ブルースカイ'(額咲き型)と, `ブルースカイ'から芽条変異により発生した手まり咲き変異枝の挿し木株(手鞠咲き型)を供試した.挿し木後40日目の発根率に関しては,花房型間で有意な差は認められなかった.鉢上げ後5ヶ月目の葉数についても大きな違いは認められなかった.しかし節間長に関しては,額咲き型が手まり咲き型に比べて有意に大きかった.一方,手まり咲き型は額咲き型に比べて,地際部からの側枝の発生が多い傾向が認められた.昨年度に引き続きSubtractive Hybridizationを行った.昨年度行った方法に関して,サブトラクト後のPCR増幅のためのアダプター配列について改良を行った.またハイブリダイゼーション温度について,マーカーを用いて特異性が最も高い適温を探索した結果,昨年度より5°C高い65°Cに設定した.サブトラク卜処理により得られた処理液をPCRで増幅し増幅産物をクローニングしたところ,1000-1500bpの長さの5個のクローンが単離された.これらの塩基配列を解析したところ,これらのうち4個は機能不明の未知の遺伝子であり,残り1個はcalreticulin遺伝子と相同性が高かった.今後,これらのクローンについてノーザン解析を行っていくとともに,さらにいくつかの発達ステージの花芽を用いてSubtractive Hybridizationを行い,花房型に特異的な遺伝子の探索を行っていく必要がある.
KAKENHI-PROJECT-15780028
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15780028
体内時計による脂肪細胞分化始動調節に着目した生活習慣病の発症機序の解明
これまでに、肥満糖尿病(ob/ob)マウスの内臓脂肪組織では、時計遺伝子Dbpの転写調節領域におけるヒストンアセチル化が低下しており、HDAC阻害薬(Entinostat)を投与するとDbp遺伝子の発現およびob/obマウスのインスリン感受性が改善することを見出している。平成28年度に行った検討において、Entinostatを投与したob/obマウスでは脂肪細胞の分布が小さい細胞径へシフトすること、この変化はDBPタンパクの増加を介したPpar-γ(脂肪細胞分化のレギュレーター)の発現上昇に起因し、ob/obマウスの血中アディポネクチン量が増加することを明らかにした。平成30年度では、Entinostatの作用がob/obマウスに特異的なものであるか検証を行った。野生型のB6マウスにEntinostatを投与しても、DBP発現量や脂肪細胞径分布、さらにインスリン感受性に変化を認めなかった。また、3T3-L1細胞にEntinostatを添加して脂肪細胞誘導処置を施しても、その影響は認めなかった。これらの結果は、Entinostatによるマウスのインスリン感受性改善には、ヒストン低アセチル化のような特殊環境条件が必要であることを示唆するものである。並行して実施しているヒト内臓脂肪組織を用いた検討では、対象者からの試料収集を終了し、最終解析を行っている。ヒト内臓脂肪組織(特に大網脂肪組織)内のDbp遺伝子のヒストンアセチル化レベルおよびDbp mRNA発現量は、糖尿病患者の方が非糖尿病患者よりも低値である傾向を認めている。現在、大網脂肪組織中Dbp mRNA発現量と相関性を認める血中因子の探索を行っている。実験動物および培養細胞を用いた基礎研究については、その成果をまとめて海外学術雑誌にて発表した。平成30年度には、国際共同研究加速基金(国際共同研究強化、課題番号17KK0198)に基づく事業遂行のために、2018年6月から12月の期間に米国共同研究機関にて研究を行った。本課題については、国内研究協力者の支援をうけて研究を継続実施したが、ヒト内臓脂肪を用いた研究を当初のスケジュール通りに遂行することができなかった。【基礎研究】当初の計画に従い、内臓脂肪組織特異的にDBP発現を低下させた遺伝子改変マウスの作製を行い、インスリン感受性調節における脂肪組織内DBPの重要性を検証する。【ヒト試料研究】回収したヒト内臓脂肪組織を用いた検討を継続する。Dbp発現異常の機序解明に取り組むと共に、内臓脂肪内DBP発現量を反映する血中バイオマーカーの探索も行っていく。これまでに肥満糖尿病(ob/ob)マウスの精巣上体脂肪組織を用いた検討および培養細胞を用いた検討から、PAR-bZIP時計遺伝子は脂肪細胞分化の起点であると推測された。平成28年度ではまず、脂肪細胞の細胞径分布について正常マウスとob/obマウスで比較した結果、ob/obマウスにおける細胞径分布のピークは正常マウスよりも大であった。HDAC阻害薬であるMS275をob/obマウスに投与すると、前駆脂肪細胞におけるDBP発現量が増加し、脂肪細胞の細胞径分布のピークは小さい細胞径へシフトした。さらに、MS275は血中アディポネクチン濃度を上昇させob/obマウスのインスリン感受性を有意に改善した。これらの事から、MS275投与により前駆脂肪細胞内から脂肪細胞への分化が促進し、アディポネクチンを分泌する小型の脂肪細胞が増加したものと考えられた。前駆脂肪細胞内でDBPの発現調節を受ける脂肪細胞分化関連因子を探索したところ、Ppar-γのアイソフォームであるPppr-γ1svが候補に挙がった。ob/obマウスの前駆脂肪細胞におけるPppr-γ1sv mRNA発現量およびPpar-γ遺伝子の5'上流におけるDBP結合量は、いずれも正常マウスと比較して有意に小であった。MS275をob/obマウスに投与すると、前駆脂肪細胞内のPppr-γ1sv mRNA発現量およびDBP結合量は有意に上昇した。したがって、マウスの精巣上体脂肪組織内の前駆脂肪細胞において、PAR-bZIP時計遺伝子であるDBPはPppr-γ1svの転写を促進することにより脂肪細胞への分化を誘導することが示唆された。マウスを用いた基礎研究において、PAR-bZIP時計遺伝子により誘導される脂肪細胞分化のレギュレーター因子を見出せるか否かが、平成28年度における大きな課題であった。当初は分子生物学的手法を用いた網羅的な解析を予定していたが、文献的調査において候補分子(Ppar-γ1sv)が見出された。さらに、この遺伝子の上流にはPAR-bZIP時計遺伝子の応答配列が存在しており、MS275をob/obマウスに投与することでこの配列へのDBP結合量が増加していることを明らかにすることができた。臨床研究においては、自治医科大学医学部消化器外科学部門および人体病理学部門の協力の得て、ヒト内臓脂肪組織サンプルの収集を進めた。糖尿病および非糖尿病患者の大網脂肪をそれぞれ10例以上、腸間膜脂肪もそれぞれ10例以上を収集することができた。以上より、基礎研究および臨床研究とも当初の計画通りに進行している。肥満糖尿病(ob/ob)マウスの内臓脂肪組織では、時計遺伝子Dbpの転写調節領域におけるヒストンアセチル化が低下しており、HDAC阻害薬(Entinostat)を投与するとDbp遺伝子の発現およびob/obマウスのインスリン感受性が改善することを見出している。
KAKENHI-PROJECT-16K18954
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K18954
体内時計による脂肪細胞分化始動調節に着目した生活習慣病の発症機序の解明
平成28年度に行った検討において、Entinostatを投与したob/obマウスでは脂肪細胞の分布が小さい細胞径へシフトすること、この変化はDBPタンパクの増加を介したPpar-γ(脂肪細胞分化のレギュレーター)の発現上昇に起因することが推察された。平成29年度では、内臓脂肪細胞内のDBP発現上昇の影響について検討を加えた。Entinostat投与群において、小さい細胞径の脂肪細胞が増加したことにより、ob/obマウスの血中アディポネクチン量が増加し、さらに骨格筋におけるIRS-1のリン酸化も促進していることを明らかにした。これらの結果は、Entinostatによりob/obマウスのインスリン感受性が改善した結果を支持するものである。このEntinostatの影響は、マウスの活動期初期において顕著であった。また、DBP発現とPpar-γの転写活性の関連を明らかにするため、siRNAによりDbp発現をノックダウンした3T3-L1細胞を用いた。その結果、脂肪細胞への分化成熟期においてPPAR-γタンパク発現量および脂肪細胞への分化が抑制されることを明らかにした。さらに、ヒト内臓脂肪組織を用いた検証も並行して行った。ヒト内臓脂肪組織(特に大網脂肪組織)内のDbp遺伝子のヒストンアセチル化レベルおよびDbp mRNA発現量は、糖尿病患者の方が非糖尿病患者よりも低値である傾向を認めている。現在解析の中途であるが、ヒト内臓脂肪組織においても、ob/obマウスと同様の時計遺伝子発現異常が認められると推測される。実験動物および培養細胞を用いた基礎研究については、その成果をまとめて海外学術雑誌に現在投稿中である。ヒト内臓脂肪を用いた研究については、検出力のある解析が実施できる試料数が回収できており、平成30年度内に成果をまとめていく計画である。これまでに、肥満糖尿病(ob/ob)マウスの内臓脂肪組織では、時計遺伝子Dbpの転写調節領域におけるヒストンアセチル化が低下しており、HDAC阻害薬(Entinostat)を投与するとDbp遺伝子の発現およびob/obマウスのインスリン感受性が改善することを見出している。平成28年度に行った検討において、Entinostatを投与したob/obマウスでは脂肪細胞の分布が小さい細胞径へシフトすること、この変化はDBPタンパクの増加を介したPpar-γ(脂肪細胞分化のレギュレーター)の発現上昇に起因し、ob/obマウスの血中アディポネクチン量が増加することを明らかにした。平成30年度では、Entinostatの作用がob/obマウスに特異的なものであるか検証を行った。野生型のB6マウスにEntinostatを投与しても、DBP発現量や脂肪細胞径分布、さらにインスリン感受性に変化を認めなかった。また、3T3-L1細胞にEntinostatを添加して脂肪細胞誘導処置を施しても、その影響は認めなかった。これらの結果は、Entinostatによるマウスのインスリン感受性改善には、ヒストン低アセチル化のような特殊環境条件が必要であることを示唆するものである。並行して実施しているヒト内臓脂肪組織を用いた検討では、対象者からの試料収集を終了し、最終解析を行っている。
KAKENHI-PROJECT-16K18954
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K18954
高度言語理解のための意味・知識処理の基盤技術に関する研究
本研究は、文解析研究で成功してきた手法、すなわち、巨大な文書集合を使った機械学習技術と記号処理アルゴリズムとを融合する手法を、意味・文脈・知識処理に適用することで、言語処理技術にブレークスルーをもたらすことを目標として研究を遂行した。この結果、(1)言語理論に基づく深い文解析の高速で高耐性なシステムの開発、(2)意味・知識処理のための大規模付記コーパス(GENIAコーパス)の構築と公開、(3)深い文解析の結果を用いた固有名、事象認識などの意味・知識処理手法の開発、(4)大規模なテキスト集合の意味・知識処理を行うためのクラウド処理用ソフトウェアシステムの開発、において世界水準の成果を上げた。(2)で構築されたGENIAコーパスは、生命科学分野でのテキストマイニング研究のための標準データ(Gold Standard)として、国際コンペティション(BioNLP09、BioNLP11)の訓練・テスト用のデータとして、採用された。また、(1)の研究成果と機械学習とを組み合わせた(3)の成果は、これらのコンペティションで高い成績を収めている。また、(1)と(4)の成果により、Medlineの論文抄録データベース(2千万件、2億超の文)からの事象認識と固有名認識を数日で完了できることを実証した。その成果は、意味処理に基づく知的な文献検索システム(MEDIE)として公開されている。本研究は、過去10年間、文解析研究で成功してきた手法、すなわち、巨大な文書集合からの機械学習技術と記号処理アルゴリズムとを融合する手法を、意味・文脈・知識処理に適用することで、言語処理技術にブレークスルーをもたらすことを目標とする。このために、テキストへの意味アノテーション付与、分野オントロジーの自動構築、意味・知識に基づく文解析手法、資源共有型の分散計算機環境の構築、の研究を行う。本研究は、文解析研究で成功してきた手法、すなわち、巨大な文書集合を使った機械学習技術と記号処理アルゴリズムとを融合する手法を、意味・文脈・知識処理に適用することで、言語処理技術にブレークスルーをもたらすことを目標として研究を遂行した。この結果、(1)言語理論に基づく深い文解析の高速で高耐性なシステムの開発、(2)意味・知識処理のための大規模付記コーパス(GENIAコーパス)の構築と公開、(3)深い文解析の結果を用いた固有名、事象認識などの意味・知識処理手法の開発、(4)大規模なテキスト集合の意味・知識処理を行うためのクラウド処理用ソフトウェアシステムの開発、において世界水準の成果を上げた。(2)で構築されたGENIAコーパスは、生命科学分野でのテキストマイニング研究のための標準データ(Gold Standard)として、国際コンペティション(BioNLP09、BioNLP11)の訓練・テスト用のデータとして、採用された。また、(1)の研究成果と機械学習とを組み合わせた(3)の成果は、これらのコンペティションで高い成績を収めている。また、(1)と(4)の成果により、Medlineの論文抄録データベース(2千万件、2億超の文)からの事象認識と固有名認識を数日で完了できることを実証した。その成果は、意味処理に基づく知的な文献検索システム(MEDIE)として公開されている。本研究は、過去10年間、文解析研究で成功してきた手法、すなわち、巨大な文書集合からの機械学習技術と記号処理アルゴリズムを融合する手法を、意味・文脈・知識処理に適用することで、言語処理技術にブレークスルーをもたらすことを目標とする。このため、テキストへの意味アノテーション付与、分野オントロジーの自動構築、意味・知識に基づく文解析手法、資源共有型の分散計算機環境の構築、の研究を行う。平成18年度は、プロジェクトの初年度として、分散計算機環境の基盤となるクラスターの構築を行うとともに、以下の研究成果を上げた。1.事象アノテーション:生命科学での標準オントロジーであるGO(Geneontology)に基づき37の事象カテゴリを設定し、これを使ってMEDLINE論文抄録(1,000)に事象アノテーションを行った。9,000文に対して、34,000の事象をアノテートしたものであり、質・量の両面で同種の試みをリードする成果になっている。2. GENIAコーパスと分野オントロジーのリンク: GO、UMLS、Mesh、BioPAXなど、標準となるオントロジーと文書アノテーションのために我々が開発したGENIAオントロジーとの相互リンクを確立した。これは、次年度以降の知識処理研究の基礎となる。3.文解析システムの高度化、高効率化:英文解析器(Enju)の高速化を行い、従来比50倍の速度向上を得た。また、意味・知識処理に不可欠な分野適応技術の枠組みを設定し、生命科学文献における解析精度を86.39%から90.15%に向上させることに成功した。この2つの技術は、次年度以降、意味・知識を導入した言語処理を行う基盤となる。4.分野適応と文書アノテーション:能動型の機械学習(Active Learning)をPOSタガーに適用することで、10分の一のアノテーション文書でほぼ同じ性能(精度98.5% vs 98.4%)が達成できることを確認した。この成果をより複雑度の高いタスク(Shallow/Deep Parsing, NER、ERなど)に適用していくことが、来年度以降の課題となる。本研究は、文解析研究で有効であった機械学習技術と記号処理アルゴリズムとを融合する手法を、意味・文脈・知識処理に適用することで、高度な言語処理技術の構築を目指している。
KAKENHI-PROJECT-18002007
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18002007
高度言語理解のための意味・知識処理の基盤技術に関する研究
このために、テキストヘの意味・文脈アノテーション付与、分野オントロジーの自動構築、意味・知識に基づく文解析手法、資源共有型の分散計算機環境の構築の研究を行う。平成19年度は、初年度に構築した分散計算機環境の基盤を本格的な言語処理研究に活用することで、以下の研究成果を上げた。1.意味・文脈情報のアノテーション:初年度に第一版を構築した生命科学の事象アノテーション結果をGO、UMLS、Meshなどの標準オントロジーとリンクし、世界に公開した。また、文脈処理研究の基盤データとして、論文抄録からフルペーパに対象を拡張し、文を超えた共参照関係のアノテーションを付与した。2.テキストからの知識抽出:生命科学論文からの知識抽出タスクとしてタンパク質相互作用の抽出を行い,開発中の英文解析器の結果と機械学習手法(ME)の結合で世界最高水準の抽出結果(59%)を得た。このことは,テキストから知識へ写像において深い文構造解析が有効であることを示すものとなった。3.大域的構造の解析: 1の結果を活用して共参照関係認識プログラムを構築し,用語意味クラスと深い構造解析の結果を活用するモデルを構築した。このモデルは,平成20年度以降の研究でさらに詳細化される文脈処理モデルの基礎となる。4.大規模テキスト処理の計算環境: MEDLINE抄録データベース(16百万抄録)に対して,用語意味認定,構文解析,関係抽出のすべての処理を数時間で完了できるシステムを構築した。一週間の時間と人手によるジョブ管理が数時間の自動処理に置き換えられたことは,本プロジェクトの大きな成果である。5.機械翻訳の予備実験:意味・知識処理の研究成果を統合する日中機械翻訳システムのプロトタイプを構築.特に専門用語の意味辞書を自動構築する実験を行い,すぐれた結果を得た。本研究は、機械学習技術と記号処理アルゴリズムとを融合した手法を、意味・文脈・知識処理に適用することで、高度な言語処理技術の構築をめざしている。このために、本格的な意味知識処理を含む高度言語処理にとって必要な3つの基盤、(1)構造に関する理論と確率・機械学習の理論を有機的に統合した理論、(2)大規模な意味・知識リソース、(3)大規模データを処理する計算環境を確立した上で、(4)意味・知識処理技術の研究を系統的に行うことを目的としている。また、研究成果の有効性を実証できる応用システムとして、(5)生命科学分野のテキストマイニングと高品質機械翻訳のシステムの開発を同時進行的に行なっている。平成20年度は、以下の研究をおこなった。1.深い文解析と意味知識処理:深い文解析を本格的な情報抽出(タンパク質相互作用の抽出)に適用し、従来のシステムの精度を格段に向上させた。深い解析が情報抽出に有効との結果を世界で最初に実証した。2.系列tagging学習器:隠れ変数を使った機械学習を言語処理へ適用し、深い文解析の速度を20倍向上させるとともに、固有名認識などの意味処理タスクでも、世界最高水準のパフォーマンスを達成した。3. GENIA
KAKENHI-PROJECT-18002007
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18002007
C1化合物・シアンからの有用物質生産プロセスの開発
大きく別けて[I]と[II]の2つの実験を行った。[I]Pseudomonas ovalisから(シアンとアミノ酸が縮合し)ニトリルを合成する酵素(β-シアノアラニン合成酵素)の精製標品アミノ酸配列の情報をもとに、本菌の染色体DNAに対しPCR反応を行った。本PCR反応により増幅したDNA断片(約700bp)をプローブとして、サザンハイブリダイゼーションでポジティブな約2kpのDNA断片を取得し、全塩基配列を決定した。次に、大腸菌におけるβ-シアノアラニン合成酵素の発現を検討した結果、多量のβ-シアノアラニン合成酵素が発現し、最適条件下では可溶性タンパク質の約40%を占めるに至った。続いて、ニトリラーゼとβ-シアノアラニン合成酵素を組み合わせたKCNからのアミノ酸合成実験を行った。Rhodococcus rhodochrous K22のニトリラーゼとP.ovalisのβ-シアノアラニン合成酵素の構造遺伝子をそれぞれlacプロモーターの下、大腸菌で発現させた結果、両酵素とも可溶性タンパク質として発現した。本両酵素含有粗抽出液をKCNとO-acetyl-L-serineを含む系に添加し反応させたところ、速やかにKCNからβ-シアノアラニンが生成した後、Aspの生成が認められた。[II]ニトリルヒドラターゼとβ-シアノアラニン合成酵素を組み合わせたシアンからのアミノ酸合成実験を行った。すなわち、放線菌R.rhodochrous J1のニトリルヒドラターゼ遺伝子プロモーターの下流にニトリルヒドラターゼとPseudomonasのβ-シアノアラニン合成酵素の遺伝子を連結した発現プラスミドを構築し、R.rhodochrous ATCC12674で発現させた。得られた形質転換体の無細胞抽出液をHCNとO-アセチル-L-Serを含む系に添加し反応させたところ、速やかにKCNからβ-シアノアラニンが生成し、最終生成物であるAsnの生成が認められた。一方、β-シアノアラニン合成酵素遺伝子だけを導入した大腸菌形質転換体が本酵素を大量に生成することを認め、本無細胞抽出液から精製した本酵素と、(別にR.rhodochrousJ1から精製した)ニトリルヒドラターゼをともに使用して実験を行ったところ、KCNとO-アセチル-L-Serからβ-シアノアラニンが生成し、その後、比較的収率よくAsnへ変換された。このように、Cl化合物であるKCNを利用して有用なアミノ酸を合成できる系を確立した。大きく別けて[I]と[II]の2つの実験を行った。[I]Pseudomonas ovalisから(シアンとアミノ酸が縮合し)ニトリルを合成する酵素(β-シアノアラニン合成酵素)の精製標品アミノ酸配列の情報をもとに、本菌の染色体DNAに対しPCR反応を行った。本PCR反応により増幅したDNA断片(約700bp)をプローブとして、サザンハイブリダイゼーションでポジティブな約2kpのDNA断片を取得し、全塩基配列を決定した。次に、大腸菌におけるβ-シアノアラニン合成酵素の発現を検討した結果、多量のβ-シアノアラニン合成酵素が発現し、最適条件下では可溶性タンパク質の約40%を占めるに至った。続いて、ニトリラーゼとβ-シアノアラニン合成酵素を組み合わせたKCNからのアミノ酸合成実験を行った。Rhodococcus rhodochrous K22のニトリラーゼとP.ovalisのβ-シアノアラニン合成酵素の構造遺伝子をそれぞれlacプロモーターの下、大腸菌で発現させた結果、両酵素とも可溶性タンパク質として発現した。本両酵素含有粗抽出液をKCNとO-acetyl-L-serineを含む系に添加し反応させたところ、速やかにKCNからβ-シアノアラニンが生成した後、Aspの生成が認められた。[II]ニトリルヒドラターゼとβ-シアノアラニン合成酵素を組み合わせたシアンからのアミノ酸合成実験を行った。すなわち、放線菌R.rhodochrous J1のニトリルヒドラターゼ遺伝子プロモーターの下流にニトリルヒドラターゼとPseudomonasのβ-シアノアラニン合成酵素の遺伝子を連結した発現プラスミドを構築し、R.rhodochrous ATCC12674で発現させた。得られた形質転換体の無細胞抽出液をHCNとO-アセチル-L-Serを含む系に添加し反応させたところ、速やかにKCNからβ-シアノアラニンが生成し、最終生成物であるAsnの生成が認められた。一方、β-シアノアラニン合成酵素遺伝子だけを導入した大腸菌形質転換体が本酵素を大量に生成することを認め、本無細胞抽出液から精製した本酵素と、(別にR.rhodochrousJ1から精製した)ニトリルヒドラターゼをともに使用して実験を行ったところ、KCNとO-アセチル-L-Serからβ-シアノアラニンが生成し、その後、比較的収率よくAsnへ変換された。このように、Cl化合物であるKCNを利用して有用なアミノ酸を合成できる系を確立した。Pseudomonas ovalisから(シアンとアミノ酸が縮合し)ニトリルを合成する酵素(β-シアノアラニン合成酵素)の精製標品のN末端及び内部アミノ酸配列の情報をもとに作製したプライマーを用いて、本菌の染色体DNAに対しPCR反応を行った。本PCR反応により増幅したDNA断片(約700bp)をプローブとして、新たに染色体DNAに対してサザンハイブリダイゼーションを行い、約3kbのDNA断片を取得したが、目的の遺伝子の全長を含まないことが判明した。
KAKENHI-PROJECT-09556018
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09556018
C1化合物・シアンからの有用物質生産プロセスの開発
そこで、得られた約3kb中の構造遺伝子の領域(約680bp)を新たにプローブとしてサザンハイブリダイゼーションを行った結果、全長を含む約2kbのDNA断片を取得した。本DNA断片をpBluescriptに挿入し、全塩基配列を決定した結果、本酵素は323アミノ酸から成り、分子量34,263であることが推定された。次に、大腸菌におけるβ-シアノアラニン合成酵素の大量発現の実験を行った。本酵素構造遺伝子の塩基配列をもとにプライマーをデザインしてPCR反応を行い、増幅したDNA断片をpUC18に挿入したプラスミドを構築し、大腸菌での発現を検討した。その結果、多量のβ-シアノアラニン合成酵素が発現し、最適条件下では可溶性タンパク質の約40%を占めるに至った。本酵素を精製し、吸収スペクトルを測定した結果、典型的なPLP酵素であることが判明した。従って、補酵素PLPの結合部位の決定を試みた結果、本酵素の43Lysine残基にPLPが結合していることが明らかになった。さらに、ニトリラーゼとβ-シアノアラニン合成酵素を組み合わせたシアンからのアミノ酸合成実験を行った。本年度は、ニトリルヒドラターゼとβ-シアノアラニン合成酵素を組み合わせたシアンからのアミノ酸合成実験を行った。すなわち、放線菌Rhodococcus rhodochrous J1の(ニトリルをアミドに変換する酵素)ニトリルヒドラターゼ遺伝子プロモーターの下流にニトリルヒドラターゼとPscudomonasのβ-シアノアラニン合成酵素の遺伝子を連結した発現プラスミドを構築し、Rhodococcus rhodochrous ATCC12674で発現させた。得られた形質転換体の無細胞抽出液をSDS/PAGEで解析した結果、(αとβのヘテロなサブユニットから構成される)ニトリルヒドラターゼとともに、β-シアノアラニン合成酵素が可溶性タンパク質として、大量に発現することを認めた。続いて、得られた形質転換体の無細胞抽出液をシアンとO-アセチル-L-セリンを含む系に添加し反応の経過を追ったところ、速やかにシアンからβ-シアノアラニンが生成し、続いて、最終生成物であるアスパラギンの生成が認められた。一方、β-シアノアラニン合成酵素遺伝子だけを導入した大腸菌形質転換体が本酵素を大量に生成することを認めた。本無細胞抽出液から精製した本酵素と、(別にRhodococcus rhodochrous J1から精製した)ニトリルヒドラターゼをともに使用して実験を行ったところ、シアンとO-アセチル-L-セリンからβ-シアノアラニンが生成し、その後、比較的収率よくアスパラギンヘ変換された。このように、C1化合物であるシアンを利用して有用なアミノ酸を合成できる系を確立した。
KAKENHI-PROJECT-09556018
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09556018
地域中小医療機関間の医療安全知財バンクおよび教育システムの構築のための研究
平成2429年にわたり、山梨県内の医療安全のノウハウを集め、医療安全eラーニング教材を製作した。本教材は60項目完成した。印刷用副教材はライトノベル形式で20話、対話形式10話完成した。医療安全ポスター集も制作した。医療安全教育普及の研修会を合計7回開催した。7度学会発表をした。そのうち平成28年11月開催の第11回医療の質・安全学会学術集会では参加187演題中上位3題となる「ベストプラクティス賞(優秀賞)」を受賞した。学術論文は5本執筆された。本取り組みは山梨日日新聞、雑誌『ドクターズプラザ』にも取り上げられた。第13回日本e-Learning大賞では特別部門賞候補にエントリーされた。【1】コンテンツの配布および整備i)昨年度に作成し、CD-Rにて、安全知財バンクおよびそれを利用した医療従事者教育システムに関し、昨年度、山梨医療安全研究会に依頼して募集がされた参加施設に配布を行い、その対象施設の新人看護師が実施したコンテンツ合計20について、改めて内容を見直し、適宜修正を加えた。ii)それをCD-Rに収め、上記施設および新規参加施設に配布した。iii)上記参加施設から新たにコンテンツの材料(主にPowerPointファイル)を募集し、それをもとに新たに12個のコンテンツを製作した。iv)その12個のコンテンツも、2回に分け、CD-Rに収め上記施設に配布した。【2】コンテンツ制作協力者に謝金を支出した。【3】医療安全知財バンクを利用した教育方法の改良についての検討:山梨医療安全研究会や、上記参加施設教育担当者等と打ち合わせの上、行った。新人看護師に使用してもらうため、施設の担当者やプリセプターが果たす役割、知識確認のための試験方法などを決定した。【4】その他:上記のコンテンツすべてを修了した新人に対し、修了証を発行した。本取り組みに関して、平成25年11月23日に東京都江東区で開催された第8回医療の質・安全学会学術集会にて、「新人看護師教育のための医療安全eラーニング教材開発プロジェクト(OQT9)」という演題名で講演発表をした。さらに、平成26年3月1日に甲府市で開催された山梨医療安全研究会第9回大会で発表をした。【1】、ITハード環境整備:インターネット上のWEBサーバを導入した。コンテンツ製作用アプリケーションを導入した。【2】、医療安全知財バンクおよびそれを利用した医療従事者教育システムへの参加施設募集:参加対象施設は山梨県内の医療機関とし、山梨医療安全研究会に依頼して募集した。15施設程集まった。【3】、コンテンツ製作者の養成:コンテンツ製作者となる人材に対し、コンテンツ制作の研修会を2度開催した。【4】、コンテンツの整備(医療安全知財バンクの整備):i)eラーニングや電子教材の利用に関する文献を調査した。ii)上記参加施設からコンテンツの材料(主にPowerPointファイル)を募集した。iii)コンテンツを合計20製作し、3度に分けてCD-Rによる配布を行った。iv)コンテンツ制作協力者に謝金を支出した。【5】、医療安全知財バンクを利用した医療従事者教育方法の検討:山梨医療安全研究会や、上記参加施設教育担当者等と打ち合わせの上、行った。新人看護師に使用してもらうため、施設の担当者やプリセプターが果たす役割、知識確認のための試験方法などを決定した。【6】、医療安全知財バンクの運用・職員教育を開始した。上記施設において新人看護師教育で使用した。上記20コンテンツ(知識確認試験を含む)を修了した新人に対し、修了証を発行した。本取り組みに関して、平成25年3月9日に甲府市で開催された山梨医療安全研究会第8回大会で発表をした。【1】コンテンツの配付および整備i)昨年度に作成し、CD-Rにて、安全知財バンクおよびそれを利用した医療従事者教育システムに関し、昨年度、山梨医療安全研究会に依頼して募集がされた産科施設に配布をおこない、その対象施設の新人看護師および他の職員の実施したコンテンツ合計33について、改めて内容を見直し、適宜修正を加えた。ii)それをCD-Rに収め、上記施設および新規参加施設に配布した。iii)上記参加施設から新たにコンテンツの材料(主にPower Pointファイルおよび院内マニュアル)を募集し、それをもとに新たに10のコンテンツを制作した。iv)その10のコンテンツも、2回に分け、CD-Rに収め、上記施設に配布した。【2】教材の使用方法について使用希望者に対して研修会を行った。【3】コンテンツ制作協力者に謝金を支出した。【4】医療安全知財バンクを利用した教育方法の改良についての検討:山梨医療安全研究会や、上記参加施設教育担当者等と打ち合わせの上、行った。新人看護師に使用してもらうため、施設の担当者やプリセプターが果たす役割、知識確認のための試験方法などを決定した。【5】その他:上記のコンテンツすべてを終了した新人看護師・他の職員に対し、修了証を発行した。本取り組みに関して、平成26年11月22日に千葉県千葉市で開催された第9回医療の質・安全学会学術集会にて、「新人看護師教育のための医療安全eラーニング教材開発プロジェクト・OQT9(3年目)」という演題名で講演発表をした。さらに、平成27年3月7日に山梨県甲府市で開催された山梨医療安全研究会第10回大会で発表をした。また、医療安全ヴィジュアル教材「明るくポジティブ医療安全メヂカルめぢ子医療安全奥義集」を製作した。
KAKENHI-PROJECT-24790519
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24790519
地域中小医療機関間の医療安全知財バンクおよび教育システムの構築のための研究
【1】コンテンツの配付および整備i)安全知財バンクおよびそれを利用した医療従事者教育システムに関し、昨年度、山梨医療安全研究会を通じて参加施設に対しCD-Rにて配布を行い、その対象施設の新人看護師および他職員の実施したコンテンツ合計43について、改めて内容を見直し、適宜修正を加えた。さらに、医療安全に関わる倫理的・法的問題に関する教材「ANZENむじ子めぢ子-看護の倫理と法を学ぶ-」(全20話)をライトノベル形式で作成した。ii)以上をCD-Rに収め、上記施設および新規参加施設に配布した。iii)参加施設から新たにコンテンツの材料(主にPower Pointファイルおよび院内マニュアル)を募集し、それをもとに11のコンテンツを制作した。iv)それを2回に分け、CD-Rに収め、上記施設に配布した。【2】教材を利用しての医療安全教育を促進するべく「組織としての効率的な医療安全教育の構築」と題した研修会を行った。【3】コンテンツ制作協力者に謝金を支出した。【4】教育方法の改良についての検討:山梨医療安全研究会や、上記参加施設教育担当者や弁護士等と打ち合わせの上、行った。新人看護師が効率的に学習できるよう、施設の担当者やプリセプターが果たす役割、知識確認のための試験方法、効率的な配布方法や施設内教育プログラムへの導入方法等について検討した。【5】その他:上記のコンテンツすべてを修了した新人看護師・その他の職員に対し、修了証を配布するよう各施設に依頼した。本取り組みに関して、平成27年11月2223日に千葉県千葉市で開催された第10回医療の質・安全学会学術集会にて、「新人看護師教育のための医療安全eラーニング教材開発プロジェクト・OQT(4年目)」という演題名で講演発表をした。プロジェクトの情報発信ツールとして「山梨OQT医療安全eラーニング」Facebookページを開設した。新人看護師向けの医療安全教育のeラーニングコンテンツが50以上作成され、かつ倫理と法に関わる内容の教材も20作成され、医療安全知財バンクおよびそれを利用した医療従事者教育システムの参加施設で前年度より広く利用されている。当初予定していなかった内容の教材作成も可能となり、新人看護師以外の多くの対象者に活用されている。医療安全に関わる倫理的・法的問題に関する教材については一層充実した内容を、新人看護師に限らないテキスト形式で作成している。当初計画のみで見積もる本研究の達成度は90%を超えている。アンケート調査やeラーニングコンテストへの応募は平成28年度中に行う。【1】コンテンツの配付および整備i)医療安全知財バンクを整備しながら、研究開始から最終年度まで具体的な教材コンテンツを作成し、各年CD-Rにて希望施設に配布した。作成コンテンツは本教材(教材数60)および副教材(ライトノベル形式「ANZENむじ子めぢ子看護の法と倫理を学ぶ!」全20話、対話形式「むじ子&めぢ子さらっと学ぶ医療安全と倫理と法」全10号)である。
KAKENHI-PROJECT-24790519
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24790519
乳幼児期における適応方略としての自己主張行動に関する研究
乳児期の自己主張は,身体的方略から言語的方略へ変化し、そうした背景には,言語能力,社会性といった発達的な要因が関係していると考えられているが,その変遷過程自体は明らかにされていない。本研究では、乳児期の子ども達の自己主張行動と言語発達、社会的行動発達、愛着行動との関連を明らかにするために、自己主張方略が身体的方略から言語的方略へシフトを促進させるメカニズムを検討した。その結果、養育者に愛着行動が示せることが、身体的方略から言語的方略への重要な要因であることが示された。乳児同士でいざこざがおきると、子どもたちは言語的主張行動よりも身体的行動を用いることが多い。発達ととともに、身体的主張行動から言語的な主張行動へシフトしていくが、それらの発達メカニズムは明らかでない。そこで、本取組は、乳児期の子ども達のいざこざ場面での身体的主張行動及び言語的主張行動と、子どもの言語面及び社会面での発達、そして、子どもと保育者との愛着状態との関連を探り、身体的方略から言語的方略へのシフトを促進させるメカニズムを検討した。調査は、保育園の1歳児と2歳児クラスの担当保育士に、乳児同士のいざこざ場面の記録と、子どもの「理解言語」「表出言語」「対子ども社会性/友達との協調行動」「対成人社会性/大人との関係」に関する発達査定、そして、担当保育者との愛着関係(「保育者に対する信頼・良好な関係」「保育者に対する依存性」「活動性・社会性」)の査定を依頼した。調査の結果、いざこざ場面に参加することが多い子どもは、理解言語、表出言語がある程度発達しており、保育者に対する信頼・良好な関係が築かれていることがわかった。また、身主張行動が特に多い子どもは、保育者に対する依存性が高く、保育者に自分に関心をもってもらいたい気持ちが高い傾向が強いこと、言語的主張行動が多い子どもは、保育者と離れて活動できることや、保育者に対する信頼性が高いことがわかった。以上より、身体的主張行動から言語的主張行動へのシフトには、保育者との愛着関係がKEYであると考えられる。乳児期のいざこざ場面での対処行動は、身体的主張行動から言語的主張行動へ移行すると推測されているが、その発達過程は明らかではない。本研究では、乳児期の子どもたちのいざこざ場面での交渉方法が身体的主張行動から言語的主張行動へ移行することを確め、身体的から言語的主張行動へ移行するメカニズムを検討した。その結果、1歳クラスでは身体的主張行動が多く、2歳クラスになると言語的主張行動へ移行することが実証された。また、いざこざ関与数の高い子どもと少い子どもの言語発達及び子どもと保育者との愛着関係(保育者との信頼関係、保育者への依存性、保育者と一定距離はなれて自分で活動する行動傾向)を比較したところ、保育者と子どもの信頼関係は高低群ともに良好だが、高群は低群より理解言語と表出言語の発達が進んでいることがわかった。いざこざが多い子どもには、身体的主張行動が多い子どもと言語的主張行動が多い子どもがいることから、両群を比較したところ、身体的主張行動の多い子どもは、保育者に対する依存性が高く、言語的主張行動の多い子どもは、保育者と離れて行動できる活動性が高いことがわかった。これらのことは、乳児がいざこざ場面に参加するようになるには、理解言語、表出言語がある程度発達していることが必要だが、身体的主張行動から言語的主張行動へ発達するには、子どもは保育者に自分に関心をもってもらいたい依存性がある程度満たされ、保育者と離れ自分のペースで活動できるようになることが重要であり、保育者との愛着関係がKEYであることが示唆された。乳児期の自己主張は,身体的方略から言語的方略へ変化し、そうした背景には,言語能力,社会性といった発達的な要因が関係していると考えられているが,その変遷過程自体は明らかにされていない。本研究では、乳児期の子ども達の自己主張行動と言語発達、社会的行動発達、愛着行動との関連を明らかにするために、自己主張方略が身体的方略から言語的方略へシフトを促進させるメカニズムを検討した。その結果、養育者に愛着行動が示せることが、身体的方略から言語的方略への重要な要因であることが示された。本取組の目的は、乳児期の集団保育においてよくみられるかみつき行動を、背景にある言語や社会性の発達及び愛着との関連から捉え、乳幼児期の対人関係における適応性を発達的観点から検討することである。調査1乳幼児期の子どもの愛着と言語・社会性発達を測定する尺度の選定対人葛藤場面の解決方略に関与すると予想される、子どもの愛着の状態と言語・社会性発達を測定する尺度を選定した。妥当性及び簡便性を重視した結果、言語・社会性発達に関しては、「KIDS(キッズ)乳幼児発達スケール」を、愛着に関しては「乳幼児-保育者間の愛着測定乳児院版(立元・西山・田爪, 2000)」を使用することにした。調査2乳幼児用対人葛藤場面解決方略のチェックリストの作成保育園及び乳児院に所属する03歳の乳幼児を対象に、対人葛藤場面の事例を収集し、保育士の先生方が簡便に使うことができる対人葛藤場面チェックリストを作成した。チェックリストは、葛藤場面の発生原因、状況、解決方略を選択式で回答する形式である。
KAKENHI-PROJECT-23601030
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23601030
乳幼児期における適応方略としての自己主張行動に関する研究
乳児期の子どもの言語・社会性発達と愛着状態が対人葛藤場面の解決方略とどのように関連するのかについて、対象者(保育園・乳児院)、愛着の程度、発達測度(言語発達、社会性)を独立変数、解決方略(頻度、内容)を従属変数として因果関係を求めることにより、乳幼児期の子ども達の対人葛藤場面解決方略が身体的なものから言語的なものへシフトするメカニズムを明らかにすることができると考えている。自分の思いが通らない葛藤場面において乳児期の子ども達がとる主張行動は、かみつきやひっかくといった身体的方略を自己主張の方法としてとることが多い。発達に伴い、身体的方略から言語的な方略へと変化するとされているが、その変遷過程自体は明らかにされていない。従来、かみつき行動は、問題行動と捉えられたり、愛着の問題と解釈されたりすることが多く、特に、高い養護ニーズをもつ子どもが生活している乳児院等の子どもについては、発達的な要因よりも愛着の問題がクローズアップされがちである。本年度は,保育園と乳児院の子ども達を対象に,自己主張方略が身体的方略から言語的方略へシフトを促進させるメカニズムを比較検討した。身体的・言語的自己主張行動と言語発達、社会的行動発達、愛着行動との関連を調べた結果、保育園の子ども達も,乳児院の子ども達も,養育者に愛着行動が示せることが、身体的方略から言語的方略への重要な要因であることが示された。発達心理学平成24年度に予定していた保育園を対象とした調査を実施し、いざこざ場面での身体的主張行動及び言語的主張行動と、子どもの言語及び社会発達、愛着との関連を検討することができたため。平成23平成24年度までに予定していた調査までは実施済であるが、平成25年度実施を予定していた保育園と乳児院を対象とした調査が、秋から冬にかけて感染症が流行したため、調査実施が困難となったため。平成23年度に予定していた愛着及び言語・社会性発達に関する評定尺度の選定と、対人葛藤場面解決方略のチェックリストの作成を概ね完了できたため。平成25年度は、乳児院に在籍する子どもたちを対象に、いざこざ場面での身体的主張行動及び言語的主張行動と、子どもの言語及び社会発達、愛着との関連を検討する予定である。平成26年度、改めて保育園と乳児院の1歳児クラスにおいて、身体的自己主張方略が増加する時期と、増加後発生頻度が減少した時期を区別し、2つの時期間での身体的自己主張方略と言語発達及び愛着との関係を検討する予定である。また、本取組の成果を報告書としてまとめる。平成24年度は、乳児期の子どもの言語・社会性発達及び愛着の状態と対人葛藤場面の解決方略との関連を検討する調査1乳児期の子どもの言語・社会性発達及び愛着の査定H市の保育園に在籍する生後12ヶ月36ヶ月児計70名、H市の乳児院に在籍する生後12ヶ月36ヶ月児約40名を対象に「KIDS(キッズ)乳幼児発達スケール」と「乳幼児-保育者間の愛着測定乳児院版(立元・西山・田爪, 2000)」を実施する。発達検査は1年に2回実施する。調査2対人葛藤場面での解決方略との関連調査1を依頼したH市保育園乳児クラスの担当保育士及びH市の乳児院の担当保育士に対人葛藤場面解決方略のチェックリストを依頼する(1年間に2回)。記録を元に、解決方略の内容・頻度をデータ化し、発達的変化を捉える。新たに保育園1園、乳児院1園、計2園が、研究協力園となる可能性が高い。概ね予定通りであるが、新たに2つの乳児院が研究対象園となるため、データ整理に必要な物品や謝金が当初よりも必要となる。平成25年度実施を予定していた保育園と乳児院を対象とした調査が、秋から冬にかけて感染症が流行したため、調査実施が困難となったため。
KAKENHI-PROJECT-23601030
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23601030
有機リン化合物及びその誘導体の誘電物性
1.最近の2,6-ジメトキシフェルニ基(以下phi基と略記)を含む強求核性有機リン化合物phi_3P=Y(Y=S,Se)等の結晶構造が明かになりつつある。phi_3P=S,H_2O^<1,2)>とphi_3P=Se,H_2O^<2)>の結果から、phi_3P=Yは、1)Ph_3P=Yに比べてP-Y距離が長いこと、及び2)メトキシ酸素とリンの距離が、酸素とリンのファンデルワールス半径和よりも短いことがわかった。この結果は、酸素からリンへの直接的電子供与によりP-Y結合がP^+-Y^-に分極し、Y上の電子密度が上がって求核性がPh_3P=Yに比べて上昇したと解釈できる。有機リン化合物及びその誘導体{phi_3P=Y(Y=O,S,Se)及びphi_3As、phiY'Y'phi(Y'=S,Se,Te)等}の誘電物性研究の第一段階として、結晶構造が未知であったphi_3As及びphiSSphiのX線構造解析及び溶液・固体状試料の誘電測定プローブの作製、溶液状試料に対する測定を行った。2.phi_3As及びphiSSphi^<3)>は構造決定が完了し、Ph_3As及びPhSSPhとの比較検討を行っている。3.phi_3P=Y(Y=O,S)の分子分極率をPh_3P=Y(Y=O,S)と比較するためにこれらのベンゼン溶液の誘電率を、当補助金により導入した誘電率測定器と自作した簡易電極により実測した。現段階では、phi_3P=Y溶液の誘電率の濃度依存性とPh_3P=Yのそれとの間には、現在のところ顕著な差は見いだされていない。4.固体有機ヘテロ元素化合物のための誘電率測定用プローブの作製が完了した。参考文献2)日本化学会第66秋季年会講演予稿集(関学大)1993,P166,3B316.3)日本結晶学会予稿集(学習院大)1993,P25,18P-11.1.最近の2,6-ジメトキシフェルニ基(以下phi基と略記)を含む強求核性有機リン化合物phi_3P=Y(Y=S,Se)等の結晶構造が明かになりつつある。phi_3P=S,H_2O^<1,2)>とphi_3P=Se,H_2O^<2)>の結果から、phi_3P=Yは、1)Ph_3P=Yに比べてP-Y距離が長いこと、及び2)メトキシ酸素とリンの距離が、酸素とリンのファンデルワールス半径和よりも短いことがわかった。この結果は、酸素からリンへの直接的電子供与によりP-Y結合がP^+-Y^-に分極し、Y上の電子密度が上がって求核性がPh_3P=Yに比べて上昇したと解釈できる。有機リン化合物及びその誘導体{phi_3P=Y(Y=O,S,Se)及びphi_3As、phiY'Y'phi(Y'=S,Se,Te)等}の誘電物性研究の第一段階として、結晶構造が未知であったphi_3As及びphiSSphiのX線構造解析及び溶液・固体状試料の誘電測定プローブの作製、溶液状試料に対する測定を行った。2.phi_3As及びphiSSphi^<3)>は構造決定が完了し、Ph_3As及びPhSSPhとの比較検討を行っている。3.phi_3P=Y(Y=O,S)の分子分極率をPh_3P=Y(Y=O,S)と比較するためにこれらのベンゼン溶液の誘電率を、当補助金により導入した誘電率測定器と自作した簡易電極により実測した。現段階では、phi_3P=Y溶液の誘電率の濃度依存性とPh_3P=Yのそれとの間には、現在のところ顕著な差は見いだされていない。4.固体有機ヘテロ元素化合物のための誘電率測定用プローブの作製が完了した。参考文献2)日本化学会第66秋季年会講演予稿集(関学大)1993,P166,3B316.3)日本結晶学会予稿集(学習院大)1993,P25,18P-11.
KAKENHI-PROJECT-05750736
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05750736
配偶者看取り後の独居高齢者のQOL構築プロセスと地域ケアシステムの国際比較研究
配偶者看取り後の独居高齢者のQOLを再構築するプロセスを検討し、効果的な地域ケアシステムを明らかにする目的で、北欧のフィンランド、スウェーデンと日本の比較研究を行った。配偶者看取り後の独居高齢者の生活の再構築には、1.立ち直りに向かうプロセスをたどる、2.気持ちが揺らぎながら生活を継続している、3.さらに気持ちの落ち込みがみられるの3つのタイプの共通の特徴がみられた。独居高齢者の支援に、3ヶ国とも別居家族のサポートが重要だった。北欧では教会におけるサポートが重要であり、また心身の不調を早期に把握し、対応する予防訪問が有効だった。日本でも、高齢者への予防訪問を制度化する必要性がある。配偶者看取り後の独居高齢者のQOLを再構築するプロセスを検討し、効果的な地域ケアシステムを明らかにする目的で、北欧のフィンランド、スウェーデンと日本の比較研究を行った。配偶者看取り後の独居高齢者の生活の再構築には、1.立ち直りに向かうプロセスをたどる、2.気持ちが揺らぎながら生活を継続している、3.さらに気持ちの落ち込みがみられるの3つのタイプの共通の特徴がみられた。独居高齢者の支援に、3ヶ国とも別居家族のサポートが重要だった。北欧では教会におけるサポートが重要であり、また心身の不調を早期に把握し、対応する予防訪問が有効だった。日本でも、高齢者への予防訪問を制度化する必要性がある。本研究の目的は、1.配偶者看取り後の独居高齢者のQOLを心身の状況と生活状況から把握する。2.配偶者看取り後の独居高齢者のQOLを構築するプロセスを1)介護満足感、2)悲嘆、3)対処行動、4)支援体制の4側面から検討する。3.配偶者看取り後の独居高齢者のQOLを高めるための効果的な地域ケアシステムを明らかにすることである。北欧のデンマーク、スウエーデン、フィンランドの3ヶ国において、現地の高齢者の配偶者看取り後の生活と意識に関する訪問面接調査及び、看護師、社会サービス職員、高齢者ケアの専門家から、独居高齢者を支える地域ケアシステムに関する聞き取り調査を行った。また、北欧と日本との地域ケアシステムを比較するために、日本の配偶者看取り後の独居高齢者を支援するシステムに関する検討を行った。1.デンマークでは、法的基盤による75歳以上のすべての高齢者への予防訪問が、配偶者看取り後の独居高齢者の自立した生活を維持するために、健康状態のアセスメント、社会サービスの紹介などにおいて重要な機能を果たしていることが明らかとなった。2.スウエーデンでは、日本に比べて別居家族との日々の交流が多く、配偶者看取り後の独居高齢者の支えとなっていた。また、24時間ケアサービス体制と、食料品などの日用品の配達サービスによる支援が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。3.フィンランドでは、配偶者を介護中の家族介護者のサポートグループが配偶者看取り後も独居高齢者の精神的支えとなっていた。また、教会に所属するチヤーチナースによる遺族支援のグループ活動や、個別訪問、相談が配偶者看取り後の高齢者の支援で重要な役割を果たしていることが明らかとなった。以上から、日本においても、高齢者全般への予防訪問の実施、配偶者の介護中から家族介護者支援グループ活動の充実化を図ることの重要性が示唆された。本研究の目的は、配偶者看取り後の独居高齢者の、1.心身の状況と生活状況を把握する。2.QOLを構築するプロセスを1)介護満足感、2)悲嘆、3)対処行動、4)支援体制の4側面から検討する。3.QOLを高めるための効果的な地域ケアシステムを明らかにすることである。北欧のスウエーデン、フィンランド、日本の3ヶ国において、配偶者看取り後の独居高齢者の生活と意識、浮沈図を用いたQOLに関する訪問面接調査及び、看護師、社会サービス職員、高齢者ケアの専門家から、独居高齢者を支える地域ケアシステムに関する聞き取り調査を行い、比較検討した。1.フィンランドでは、モデル事業による75歳以上の高齢者全数への予防訪問が、配偶者看取り後の独居高齢者の自立した生活の維持、うつ状態、認知症の早期発見、早期医療へのアクセス、社会サービスの紹介などにおいて重要な機能を果たしていることが明らかとなった。さらに、フィンランドでは、家族介護者のサポートグループが配偶者看取り後も独居高齢者の精神的支えとなっていた。また、教会に所属するチャーチナースによる遺族支援のグループ活動や、個別訪問、相談が配偶者看取り後の独居高齢者の支援で重要な役割を果たしていることが明らかとなった。2.スウエーデンでは、日本に比べて即居家族、友人との電話等による日々の精神的交流が多く、配偶者看取り後の独居高齢者の支えとなっていた。また、24時間ケアサービス体制と、食料品などの日用品の配達サービスによる支援が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。3.3ヶ国において、男性の独居高齢者で家事能力が低い場合、在宅生活の維持が困難であった。以上から、配偶者看取り後の独居高齢者の支援には、高齢者全数への予防訪問の実施、家族介護者支援グループ活動の継続化、家事能力支援、生活再構築の支援、精神的支援の重要性が示唆された。本研究の目的は、配偶者看取り後の独居高齢者の、1.心身の状況と生活状況を把握する。2.QOLを構築するプロセスとQOLを高めるための効果的な地域ケアシステムを明らかにすることである。
KAKENHI-PROJECT-17406030
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17406030
配偶者看取り後の独居高齢者のQOL構築プロセスと地域ケアシステムの国際比較研究
北欧のスウエーデン、フィンランド、日本の3ケ国において、配偶者看取り後の独居高齢者の生活と意識、浮沈図を用いたQOLに関する訪問面接調査及び、看護師、社会サービス職員、高齢者ケアの専門家から、独居高齢者を支える地域ケアシステムに関する聞き取り調査を行い、比較検討した。1.フィンランドでは、75歳以上の高齢者全数への予防訪問が、配偶者看取り後の独居高齢者の自立し生活の維持、うつ状態、認知症の早期発見、早期医療へのアクセス、社会サービスの紹介などにおいて重要な機能を果たしていることが明らかとなった。2.スウエーデンでは、75歳以上の高齢者への予防訪問の重要性が指摘され、2008年1月より、数箇所の県において開始され、今後全国的な実施体制づくりが推進され、85歳以上などの全数訪問も視野に入れた活動が展開されつつあることが明らかとなった。予防訪問により、配偶者看取り後の独居高齢者の早期把握と適切な支援が可能になることが明らかとなった。さらに、スウエーデンでは、在宅ホスピスチームの医師や看護師による看取り後の家族への訪問が、配偶者看取り後の独居高齢者への精神的支援として重要であることが明らかとなった。3.3ケ国において、男性の独居高齢者で家事能力が低い場合、在宅生活の維持が困難であった。以上から、配偶者看取り後の独居高齢者の支援には、高齢者全数への予防訪問の実施、家族介護者支援グループ活動の継続化、家事能力支援、生活再構築の支援、精神的支援の重要性が示唆された。本研究の目的は、配偶者看取り後の独居高齢者の、1.心身の状況と生活状況を把握する。2.QOLを構築するプロセスとQOLを高めるための効果的な地域ケアシステムを明らかにすることである。北欧のスウエーデン、フィンランドにおいて、看護師、社会サービス職員、高齢者ケアの専門家から、独居高齢者を支える地域ケアシステムに関する聞き取り調査を行い、また日本では配偶者看取り後の独居高齢者の生活と意識、浮沈図を用いたQOLに関する訪問面接調査を行い、検討した。配偶者看取り後の独居高齢者の心身の状況とその地域支援においては、1.配偶者看取り後、時系列な経過とともに、気分が上向きになる事例、揺れ動ごく事例、気分が下向きになる事例の3つのパターンがあることが明らかになった。1.フィンランドでは、看取り後2ヶ月までは訪問看護師及び地区看護師の役割が重要であった。その後は地区の教会を中心としたセルフヘルプグループの支援が重要であった2.スウエーデンでは、県や、市町村の保健師が相互に連携を取りながら継続支援をすること、フィンランド同様教会を基盤とした活動が重要であることが明らかとなった。以上から、配偶者看取り後の独居高齢者の支援には、保健師などの専門門職者による支援が重要であると共に、北欧では、教会を基盤としたセルフヘルプグループが重要であり、わが国でも地域を基盤としたセルフヘルプグループ活動の活性化を促す必要性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-17406030
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17406030
マウス胚中胚葉系組織の発生と分化における転写制御因子δEF1の機能
ニワトリの水晶体特異的に発現するδ-クリスタリンのエンハンサーに結合する因子として同定されたδEF1は、エンハンサー活性に必要なエレメントをアクチベータ-と競合することにより、その発現を負に制御している。δEF1はN末端側とC末端側にZnフィンガー、その中央にホメオドメイン様配列を有している。δEF1がそのC末端側Znフィンガーによって結合するCACCTという配列は、あるbHLH型のアクチベータ-タンパクの結合する配列、E2-box(CACCTG)と重複しており、δEF1がE2-boxを介した転写活性化に対する抑制因子として働き、組織形成過程を広く制御していることが推測されている。また現在までに4種類のδEF1ホモローグがそれぞれ別の遺伝子発現制御領域に結合する転写抑制因子として同定されている。マウス胚発生過程においてδEF1は、筋肉系、神経系の他、多くの器官の間充織細胞や胸腺において発現している。我々はδEF1の生体内での機能を個体レベルで解析する目的で、ジーンターゲティングによりδEF1のDNA結合に重要であるC末端側のZnフィンガーを欠損したδEF1変異マウスを作製した。δEF1ヘテロ変異マウス同士の交配から得られた胎仔の遺伝子型を調べたところ、ホモ変異マウスの多くは、生後2日以内に死亡することが明かとなった。組織学的な解析から、ホモ変異マウスではT細胞分化の場である胸腺の縮小が観察された。このことをさらに検討するために、18.5日胚の胸腺細胞(thymocyte)を解析したところ、ホモ変異マウスでは胸腺細胞数が野生型の約1/10に減少していた。さらにFACS(Fluorescence activated cell sorter)による解析からホモ変異マウスの胸腺においては、野生型と比較してCD4+/CD8+のマーカーを持つプレT細胞の細胞集団が相対的に減少していた。さらに、一部の生残した成体ホモ変異マウスにおいても免疫系の異常が観察された。それらの個体のリンパ球を解析したところ、ホモ変異マウスではCD4-/CD8+T細胞が減少していることが明かとなった。現在、他のT細胞分化マーカーを用いて、ホモ変異マウスにおけるT細胞をさらに検討中である。ニワトリの水晶体特異的に発現するδ-クリスタリンのエンハンサーに結合する因子として同定されたδEF1は、エンハンサー活性に必要なエレメントをアクチベータ-と競合することにより、その発現を負に制御している。δEF1はN末端側とC末端側にZnフィンガー、その中央にホメオドメイン様配列を有している。δEF1がそのC末端側Znフィンガーによって結合するCACCTという配列は、あるbHLH型のアクチベータ-タンパクの結合する配列、E2-box(CACCTG)と重複しており、δEF1がE2-boxを介した転写活性化に対する抑制因子として働き、組織形成過程を広く制御していることが推測されている。また現在までに4種類のδEF1ホモローグがそれぞれ別の遺伝子発現制御領域に結合する転写抑制因子として同定されている。マウス胚発生過程においてδEF1は、筋肉系、神経系の他、多くの器官の間充織細胞や胸腺において発現している。我々はδEF1の生体内での機能を個体レベルで解析する目的で、ジーンターゲティングによりδEF1のDNA結合に重要であるC末端側のZnフィンガーを欠損したδEF1変異マウスを作製した。δEF1ヘテロ変異マウス同士の交配から得られた胎仔の遺伝子型を調べたところ、ホモ変異マウスの多くは、生後2日以内に死亡することが明かとなった。組織学的な解析から、ホモ変異マウスではT細胞分化の場である胸腺の縮小が観察された。このことをさらに検討するために、18.5日胚の胸腺細胞(thymocyte)を解析したところ、ホモ変異マウスでは胸腺細胞数が野生型の約1/10に減少していた。さらにFACS(Fluorescence activated cell sorter)による解析からホモ変異マウスの胸腺においては、野生型と比較してCD4+/CD8+のマーカーを持つプレT細胞の細胞集団が相対的に減少していた。さらに、一部の生残した成体ホモ変異マウスにおいても免疫系の異常が観察された。それらの個体のリンパ球を解析したところ、ホモ変異マウスではCD4-/CD8+T細胞が減少していることが明かとなった。現在、他のT細胞分化マーカーを用いて、ホモ変異マウスにおけるT細胞をさらに検討中である。
KAKENHI-PROJECT-06680718
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06680718
汎用動画像符号化に対応できる動きベクトルへの情報埋め込み方式に関する研究
本研究ではH. 264/AVCの符号化方式に基づく情報埋め込み手法について検討した。イントラ予測における二つの埋め込み手法とインター予測における一つの手法を提案した。実際に6種類の動画像に対し評価実験を行い、ビットレートに対する情報埋め込み量や画質劣化、演算量の関係について明らかにした。イントラ予測とインター予測の手法を組み合わせることで、より多くの情報を埋め込むことができることが分かった。本研究ではH. 264/AVCの符号化方式に基づく情報埋め込み手法について検討した。イントラ予測における二つの埋め込み手法とインター予測における一つの手法を提案した。実際に6種類の動画像に対し評価実験を行い、ビットレートに対する情報埋め込み量や画質劣化、演算量の関係について明らかにした。イントラ予測とインター予測の手法を組み合わせることで、より多くの情報を埋め込むことができることが分かった。本研究は、本研究代表者が提案した動画像の動きベクトルに情報を埋め込む手法において、それに適した動きベクトルの変更やマクロブロック(以下MB)選択の方法を実験的に明らかにし、埋め込みによる画質変化を定量的に把握することを目的としている。情報を埋め込むべき動きベクトルの選択と変更は、絶対値誤差の総和(SAD ; Sum of Absolute Difference)を用いることとした。すなわち、従来動画像符号化においては最小のSADを示す動きベクトルが選ばれるが、これを故意に異なる動きベクトルに変更するという埋め込み方式を想定し、画質に影響が出にくい変更基準について検討した。またMBの選択については、量子化後の差分画像に周波数成分が残っているMBに選択的に埋め込みを行うこととした。複数の動画像に対し情報埋め込みを行った結果、PSNRの劣化は最大でも30番目に小さいSADを用いたときの0.52dB程度となり、10番目、20番目のSADと比べてもほぼ差がないことが分かった。復号誤り率についても低いSADが数%の誤りを生じるのに対し、30番目では1%以下に抑えられることが分かった(3Mbps時。ビットレートで多少増減)。また本手法のSAD選択を工夫し、1MBに複数のビットを埋め込む実験も併せて行った。実験の結果復号誤り率は増加するものの、画質の劣化は4ビット埋め込み時でも1dB程度であり十分な画質が保たれていることが分かった。さらに、H.264/AVCにおいて、フレーム間の動きベクトルだけでなくフレーム内のイントラ予測が符号化効率向上の重要な要素となっている点に着目し、新たな情報埋め込みについて検討した。評価実験により、動画像中のより複雑な領域に対して行われる4×4MB予測において、その予測モードの変更を情報埋め込みに用いることが有効であることを突き止めた。その重要性を考慮して、次年度以降、本研究では動きベクトルによる埋め込みとイントラ予測による埋め込みの手法を併せて検討し、評価実験によりそれぞれの性能を明らかにすることとした。本研究は、本研究代表者が提案した動画像の動きベクトルに情報を埋め込む手法において、それに適した動きベクトルの変更方法を実験的に明らかにするとともに、H.264/AVCや高フレームレートの動画像におけるより高度な埋め込み方式について検討を行い、埋め込みによる画質変化を定量的に把握することを目的としている。前年度の研究を受け、H.264/AVCのフレーム内予測およびフレーム間予測において有効な情報埋め込み方式について検討を行った。フレーム内予測では、4×4マクロブロック(以下MB)予測における9つの予測モード方向に着目し、埋め込み時に元のモードと類似した方向性を持つモードに変更する手法を提案し、15fps、10秒間、180kbpsのCIF動画像において約2.7kbpsの埋め込み量を実現した。また4×4MB予測と排他的に行われる16×16MB予測を強制的に4×4MB予測に変更することにより最大68%の情報埋め込み量の増加を確認した。次にフレーム間予測においては、H.264/AVCにおいてフレーム間予測が対象フレームより過去の数フレームの情報を用いて行われることに着目し、参照フレームの偶奇を限定し、その偶奇の選択による情報埋め込みを行う手法を提案した。情報埋め込み量はシーケンス毎に平均して3.5kbps(ビットレート180kbps時)となり、イントラ予測時の埋め込みと組み合わせることで5.010.0kbpsの情報埋め込み量を実現することができ、画質の劣化も従来法と比べ1.0dB程度に抑えられていることがわかった。さらに高フレームレート動画像への応用については、120fpsで動作可能な256×256画素の撮像素子を利用し、画像入力系を構築した。本システムでは撮像したデータをA/D変換し、そのディジタル画像信号が高速インタフェースを介してコンピュータに取り込まれる。さらに、その画像信号についてOPENCVを活用してリアルタイムに処理する環境を整えた。本研究は、本研究代表者が提案した動画像の動きベクトルに情報を埋め込む手法において、選択的に変更する動きベクトルのインデックス(指標)を定めるマクロブロックの最適性を実験的に明らかにし、埋め込みに伴って生じる画質を主観評価実験によって把握することを目的としている。昨年度までに動きベクトルのインデックス変更よりもマクロブロックのサイズを変更する方が有効であることがわかったので、本年度は主として、両者を併用した場合の効果を調査、検討した。まず、動きベクトルを用いた情報埋め込みにおける動きベクトル・インデックス変更とマクロブロックサイズ変更の併用による効果を検討した。昨年度の研究により判明した、情報埋め込みのためのマクロブロックサイズの拡大が有効であるとの研究結果をもとに、動きベクトルのインデックスの変更を併用することにより高度な情報埋め込み方法の検討を行った。
KAKENHI-PROJECT-21500179
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21500179
汎用動画像符号化に対応できる動きベクトルへの情報埋め込み方式に関する研究
具体的には、マクロブロックが大きい場合の動きベクトルのインデックス変更方法の改善を行った。また、このことに伴う増加符号量の抑制を検討した。その結果、提案法は、128kbpsのビットレートにおいて埋め込み量が3.2kbps6kbpsで、従来法よりも1.82.2倍に増加した。イントラ予測だけでなくインター予測への埋め込みを行うことで、埋め込み可能な領域を増やし、埋め込み量の限界値を引き上げることができた。反面、画質はΔPSNRで-0.77-0.36dBまで低下した。従来法はビットレートが大きくなるとΔPSNRが高くなり、埋め込み量はあまり変化しなかった。それに対し、提案法はビットレートが大きくなると、ΔPSNRがあまり変化せずに埋め込み量が増加することが判明した。さらに、昨年度完成した高速撮像システムを用い、120fpsで256×256画素の動画像を撮像するとともに、高速画像に対する情報の埋め込みの可能性について初期的な検討を行った。
KAKENHI-PROJECT-21500179
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21500179
マトリックス感応性高分子を用いるオンチップ試料前処理
自律的な分離・分析を可能にするマイクロ分析のための流路システムの構築をめざして、試料中に含まれる成分や外部からの簡単な刺激によって流れの駆動が誘引されたり、分離が制御される仕組みの可能性ついて検討した。簡便な流れ制御の方式として、温度感応性高分子であるポリ(パーイソプロピルアクリルアミド)薄膜をシランカップリング処理と水系高分子重合によってガラス上に被覆した流路の濡れを温度によって制御することによる溶液マニピュレーションを試みた。その結果、温度勾配に起因する濡れ性の勾配によって水溶液を移動させることができたのみならず、サンドブラスト加工によって作製された微細な凹凸を持つ流路においては温度による親永性⇔擾水性制御が可能となり、流路における溶液の分配が可能となった。従来、マイクロ分析システムにおいては、送液にはポンプや電気浸透流を、溶液分配には精密加工による弁や電気浸透流などによる送液をコンピューター制御によって複雑に制御しており、これによってマイクロ分析システムが膨大な支援システムを必要としていた。これに対して本方式では、流路の一部分にペルチェ素子やヒーター線を配置し、数ワットの直流電流の極性や強度を調節することによって高分子水溶液の相転移温度である32°Cを境に加温・冷却するだけで溶液を流路の任意の場所に送ることが可能となった。次に、化学物質による制御方法として、温度感応性高分子合成時にカルボン酸やアミンを含むモノマーと共重合させることによって、塩及ぴ界面活性物質の添加によって親水⇔疎水性変化を起こすことができる物質感応性高分子を調製できた。これにより、マトリックス成分の有無により、微量成分の保持挙動を制御する可能性が開けたが、温度による親水・疎水変化に比べて物質濃度による応答性を大きくすることが難しく、実用化には更なる検討が必要である。試料成分によって自律的な分離・分析を可能にするマイクロ分析のための流路システムの前提として、流路自体が持つ制御機能を外部からの簡単な刺激によって駆動する方式の実現について検討した。その方策として、温度感応性高分子であるポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)薄膜をシランカップリング処理と水系高分子重合によってガラス上に被覆した流路の濡れを温度によって制御することによる溶液マニピュレーションを試みた。その結果、温度勾配に起因する濡れ性の勾配によって水溶液を移動させることができたのみならず、サンドブラスト加工によって作製された微細な凹凸を持つ流路においては温度による親水性⇔撥水性制御が可能となり、流路における溶液の分配が可能となった。従来、マイクロ分析システムにおいては、送液にはポンプや電気浸透流を、溶液分配には精密加工による弁や電気浸透流などによる送液をコンピューター制御によって複雑に制御しており、これによってマイクロ分析システムが膨大な支援システムを必要としていた。これに対して本方式では、流路の一部分にベルチェ素子やヒーター線を配置し、数ワットの直流電流の極性や強度を調節することによって高分子水溶液の相転移温度である下部臨界温度32°Cをまたいで加温・冷却するだけで溶液を流路の任意の場所に送ることが可能となった。次に、化学物質による制御方法として、温度感応性高分子合成時にカルボン酸やアミンを含むモノマーと共重合させることによって、塩及び界面活性物質の添加によって親水⇔疎水性変化を起こすことができる物質感応性高分子を調製することができた。さらに、棟や多価アルコールに対して親和性を持つホウ酸基やカルシウムなどの金属イオンと結合するキレート性官能基を導入することによってこれらの物質がマトリックス成分である試料に対して感応しうる分離材料への可能性が拓けた。自律的な分離・分析を可能にするマイクロ分析のための流路システムの構築をめざして、試料中に含まれる成分や外部からの簡単な刺激によって流れの駆動が誘引されたり、分離が制御される仕組みの可能性ついて検討した。簡便な流れ制御の方式として、温度感応性高分子であるポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)薄膜をシランカップリング処理と水系高分子重合によってガラス上に被覆した流路の濡れを温度によって制御することによる溶液マニピュレーションを試みた。その結果、温度勾配に起因する濡れ性の勾配によって水溶液を移動させることができたのみならず、サンドブラスト加工によって作製された微細な凹凸を持つ流路においては温度による親水性⇔撥水性制御が可能となり、流路における溶液の分配が可能となった。従来、マイクロ分析システムにおいては、送液にはポンプや電気浸透流を、溶液分配には精密加工による弁や電気浸透流などによる送液をコンピューター制御によって複雑に制御しており、これによってマイクロ分析システムが膨大な支援システムを必要としていた。これに対して本方式では、流路の一部分にペルチェ素子やヒーター線を配置し、数ワットの直流電流の極性や強度を調節することによって高分子水溶液の相転移温度である32°Cを境に加温・冷却するだけで溶液を流路の任意の場所に送ることが可能となった。次に、化学物質による制御方法として、温度感応性高分子合成時にカルボン酸やアミンを含むモノマーと共重合させることによって、塩及び界面活性物質の添加によって親水⇔疎水性変化を起こすことができる物質感応性高分子を調製できた。これにより、マトリックス成分の有無により、微量成分の保持挙動を制御する可能性が開けた。自律的な分離・分析を可能にするマイクロ分析のための流路システムの構築をめざして、試料中に含まれる成分や外部からの簡単な刺激によって流れの駆動が誘引されたり、分離が制御される仕組みの可能性ついて検討した。簡便な流れ制御の方式として、温度感応性高分子であるポリ(パーイソプロピルアクリルアミド)
KAKENHI-PROJECT-16655028
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16655028
マトリックス感応性高分子を用いるオンチップ試料前処理
薄膜をシランカップリング処理と水系高分子重合によってガラス上に被覆した流路の濡れを温度によって制御することによる溶液マニピュレーションを試みた。その結果、温度勾配に起因する濡れ性の勾配によって水溶液を移動させることができたのみならず、サンドブラスト加工によって作製された微細な凹凸を持つ流路においては温度による親永性⇔擾水性制御が可能となり、流路における溶液の分配が可能となった。従来、マイクロ分析システムにおいては、送液にはポンプや電気浸透流を、溶液分配には精密加工による弁や電気浸透流などによる送液をコンピューター制御によって複雑に制御しており、これによってマイクロ分析システムが膨大な支援システムを必要としていた。これに対して本方式では、流路の一部分にペルチェ素子やヒーター線を配置し、数ワットの直流電流の極性や強度を調節することによって高分子水溶液の相転移温度である32°Cを境に加温・冷却するだけで溶液を流路の任意の場所に送ることが可能となった。次に、化学物質による制御方法として、温度感応性高分子合成時にカルボン酸やアミンを含むモノマーと共重合させることによって、塩及ぴ界面活性物質の添加によって親水⇔疎水性変化を起こすことができる物質感応性高分子を調製できた。これにより、マトリックス成分の有無により、微量成分の保持挙動を制御する可能性が開けたが、温度による親水・疎水変化に比べて物質濃度による応答性を大きくすることが難しく、実用化には更なる検討が必要である。
KAKENHI-PROJECT-16655028
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16655028
耳石安定同位体比分析と海洋データ同化モデルによるマイワシの環境履歴推定手法の開発
日本の水産重要魚種マイワシの資源変動要因の解明に向けて、マイワシの回遊履歴を推定する手法を開発した。まず、水温を制御した水槽で飼育したマイワシ稚魚の耳石中の酸素安定同位体比(δ18O)を超微量炭酸塩分析システムMICAL3cで分析し、マイワシ耳石δ18Oと経験水温との関係式を世界で初めて提示した。次に、マイワシの生息海域における海水中のδ18Oと塩分との関係式を決定した。以上の関係式を海洋データ同化モデルFRA-ROMS上でランダムに遊泳する個体ベースモデルに導入することで、加入に重要な発生後半年間のマイワシの回遊履歴を実測データを基盤として10日の時間解像度で推定する手法を開発した。本研究課題は、マイワシの発生後約1年間の輸送・回遊履歴を10日単位で推定し、その経路上の水温や動物プランクトン現存量等の環境因子のうち、各成長段階で成長速度に影響を与える環境因子を特定することを目的とする。そのため、期間中に、1マイワシの耳石に含まれる酸素安定同位体比の分析によりマイワシの経験水温履歴を1°C/10日の解像度で推定するスキームの開発、2推定した経験水温履歴と高精度海洋データ同化モデルからマイワシの輸送・回遊経路を10日単位で推定するスキームの開発、3上記のスキームを過去に遡って適用して、各種観測データ及び高解像度海洋生態系モデルの出力を利用して、マイワシの成長速度に影響を与える環境因子の特定、を行う。平成27年度は、まず、三つの水温帯で飼育したマイワシ稚魚の耳石および飼育海水の酸素安定同位体比を分析し、マイワシの経験水温と耳石中の酸素安定同位体比との間の回帰式を世界で初めて得ることができた。この式はOda et al. (2016)で提示されている、野外採集個体の耳石縁辺の酸素安定同位体比と採集時の水温の関係を説明できるものであったため、野外個体にも適用可能であると判断できる。次に、マイワシが分布する黒潮域、黒潮親潮移行域、親潮域における海水中の酸素安定同位体比を分析して、この値が塩分との間に強い相関関係があり、塩分から海水の酸素安定同位体比を精度良く推定できることを見出した。以上により、超微量炭酸塩分析システムMICAL3cでは1015日、自動分析システムDELTA V Plusでは1040日という高い時間解像度で、マイワシの耳石中の酸素安定同位体比から経験水温履歴を推定することが可能となり、上記1の目的をほぼ達成した。当初の計画では、平成27年度は、1マイワシ耳石試料の採集及び成長速度による個体群の分類、2マイワシ各個体群の耳石中の酸素安定同位体比の分析、3海洋データ同化モデルによるマイワシ分布域の推定、を行う予定であった。1については、従来の調査から継続して、黒潮域、黒潮続流域、黒潮・親潮移行域、北海道東方亜寒帯域においてマイワシ仔稚魚、幼魚の現場採集を行うとともに、既往の耳石試料を輪紋解析して、成長速度による個体群の分類を行い、所期の計画通りに進行した。2については、現場採集した試料だけでなく、新たに水温制御された環境で飼育実験を行い、耳石中の酸素安定同位体比と経験水温との関係を日本のマイワシについては初めて定量的に示し、回帰式を提示した点は、当初の計画で想定された以上の成果である。また、現場採集した試料についても過去3年分のデータを解析しており、各年の個体群の特徴も抽出できた点も当初の計画では次年度実施する内容であったため、想定された以上に進展しているものと判断される。3については、現時点では単年度分のみであるが、マイワシ耳石中の酸素安定同位体比について、化学分析した値と高精度海洋同化モデルFRA-ROMSの海面水温・塩分再解析値をもとに上記の回帰式から推定した値とを比較対照することにより、10日程度の時間解像度でマイワシの回遊分布域を再現する手法の基盤を構築した。この点は、所期の計画通りに進行した。以上を総合すると、当初の計画以上に進展していると判断できる。本研究課題は、マイワシの発生後約1年間の輸送・回遊履歴を10日単位で推定し、その経路上の水温や動物プランクトン現存量等の環境因子のうち、各成長段階で成長速度に影響を与える環境因子を特定することを目的とする。そのため、期間中に、1マイワシの耳石に含まれる酸素安定同位体比の分析によりマイワシの経験水温履歴を1°C/10日の解像度で推定するスキームの開発、2推定した経験水温履歴と高精度海洋データ同化モデルからマイワシの輸送・回遊経路を10日単位で推定するスキームの開発、3上記のスキームを過去に遡って適用して、各種観測データ及び高解像度海洋生態系モデルの出力を利用して、マイワシの成長速度に影響を与える環境因子の特定、を行う。平成28年度は、まず、27年度に提示した飼育稚魚の酸素安定同位体比と経験水温との関係式の普遍性を確認するために、2015年と2016年に黒潮続流域で採集した変態開始前の仔魚の耳石酸素安定同位体比を超微量炭酸塩分析システムMICAL3cで分析した。その結果、仔魚の酸素安定同位体比は、昨年度提示した関係式から外れており、むしろ、無機炭酸塩の同位体平衡の関係式(Kim et al. 2007)に近かった。
KAKENHI-PROJECT-15H04541
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H04541
耳石安定同位体比分析と海洋データ同化モデルによるマイワシの環境履歴推定手法の開発
これは変態以降働き始める何らかの生理的な効果が、マイワシ耳石の酸素安定同位体比に影響を与えていることを示唆するものであり、28年度に得られた特に顕著な成果である。続いて、上記の関係式と海洋データ同化モデルとを組み合わせたマイワシの回遊分布域を再現する手法について、平成27年度に構築した基盤モデルをもとに、回遊分布域を絞り込む手法を開発した。当初の計画では、平成28年度は、1マイワシ耳石の酸素安定同位体比によるマイワシの輸送・回遊履歴を推定するスキームの高度化、2海洋データ同化モデルによるマイワシ分布域の推定、を行う予定であった。1については、27年度に開発したスキームが、発生後50日120日の輸送・回遊履歴に焦点を当てていたのに対して、28年度は、生残に重要とされる発生後50日以前の変態前の仔魚期の輸送・回遊履歴の推定手法の確立を目指した。そこで、27年度に提示した飼育稚魚の酸素安定同位体比と経験水温との関係式の妥当性を確認するために、2015年と2016年に中央水産研究所が黒潮続流域で採集した変態開始前の仔魚の耳石酸素安定同位体比を超微量炭酸塩分析システムMICAL3cで分析した。この時、仔魚の耳石がごく微量のため、耳石全体をまとめて分析にかけ、得られた酸素安定同位体比と仔魚採集場所での水温との関係を整理した。その結果、仔魚の酸素安定同位体比は、27年度に提示した関係式から外れており、仔魚期と稚魚期では関係式が明瞭に異なっており、輸送・回遊履歴の推定には、成長段階に応じた関係式の適用が必要なことが明らかになった。2については、平成27年度に構築した基盤的手法の改良を行った。27年度の手法は、マイワシ耳石中の酸素安定同位体比について、化学分析した値と中央水産研究所の高精度海洋同化モデルFRA-ROMSの海面水温・塩分再解析値をもとに上記の回帰式から推定した値とを比較対照するだけであった。28年度は、仔魚期は完全受動輸送、稚魚期は任意の方向へ体長の3倍(既往研究で確認されている最大遊泳速度)で泳がせることにより、日ごとの最大分布範囲を推定し、輸送・回遊分布範囲の絞り込みを行った。この手法を、2010年以降について適用した。以上を総合すると、当初の計画通りにおおむね順調に進展していると判断できる。本研究課題は、マイワシの回遊経路を10日単位で推定し、その経路上において各成長段階で成長速度に影響を与える環境因子を推定することを目的とする。平成29年度は、前年度までに解明したマイワシ耳石の酸素安定同位体比と経験水温との関係式、並びに海水中の酸素安定同位体比と塩分との関係式に海洋データ同化モデルFRA-ROMSを組み合わせたマイワシの回遊経路推定モデルの高度化を実施した。前年度までの回遊経路推定モデルでは、回遊推定分布域について経度方向の絞り込みが十分できなかったが、マイワシの最大遊泳速度として、既往研究にもとづいて体長×3 (m/s)の制限を新たに設定したところ、経度方向に5度10度の範囲に回遊推定分布域を絞り込むことができた。このモデルを、耳石酸素安定同位体の分析を実施した2010年以降に適用したところ、各年度とも秋季北海道東方沖の幼魚の採集場所に応じて経路が有意に異なることが分かった。この手法は、個体群ごとのマイワシの回遊経路を現実の経験水温をベースとして実証的に初めて推定するものであり、発生後約半年間の回遊経路を10日の時間解像度で推定することができる。現在、推定された各経路上の水温や動物プランクトン現存量等の環境因子のうち、各成長段階で成長速度に影響を与える可能性の高い環境因子の推定解析を実施しており、マイワシ加入量変動の要因特定に不可欠な生残過程の解明にブレークスルーをもたらすことが期待される。
KAKENHI-PROJECT-15H04541
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H04541
第一次世界大戦初期ハプスブルク帝国の疎外化過程
第一次世界大戦初期のハプスブルク帝国では、一方で総力戦体制に向けて諸政策が取られたが、他方で難民、敵性自国民、捕虜兵など総力戦体制から排除された人々を抱え込むことになった。第一次世界大戦初期のハプスブルク帝国では、一方で総力戦体制に向けて諸政策が取られたが、他方で難民、敵性自国民、捕虜兵など総力戦体制から排除された人々を抱え込むことになった。2008年9月に予定通りオーストリア・ウィーン市にある国家文書館で第一次世界大戦時兵庫県青野原に設置された捕虜収容所展示会を行った。捕虜が製作した作品や日本およびオーストリアで保存されている関係資料を展示し、神戸大学交響楽団捕虜の演奏会を再現した。展示会はオーストリアの新聞でも報道され、展示会の開会式にはオーストリアの歴更関係者を中心に100名以上の参加を見て、関心の高さが窺がえた。開会式の基調講演では青野原に収用され捕虜を通じて見える日本、ハプスブルク帝国、国際関係について述べ、捕虜研究を関係する国の研究者が共同して行うことの意義を明らかにした。ドイツ語のカタログも作成し、見学者の用に供した。オーストリアに収容されたロシア、セルビア、イタリアの捕虜兵に関する史料、ロシアで子虜になって後に解放されたオーストリア兵に関する史料、第一次世界大戦の残留捕虜兵にする史料の収集もオーストリア国家文書館で行い、研究の基礎的作業がきく進展した。2008年10に岡山大学で行われた独文学会の第一次世界大戦時日本に置かれた捕虜収容所に関するシンポジウムで青野原取容所の特性について報告し、日本の捕虜収容所の総合的研究に寄与した。予定通り、2009年11月7日に東京・青山のドイツ文化会館で青野原俘虜収容所に関する講演会・演奏会を開催し、11月12日から21日まで東京・麻布のオーストリア大使館で展示会を開催した。習志野の市民グループの協力も得て、日本の第一次世界大戦における捕虜収容所体系における青野原収容所の位置づけを一つのテーマとして企画した。日本経済新聞の文化蘭でとりあげられるなど、社会的にも注目されるという大きな成果があった。グラーツ大学で青野原収容所のオーストリア捕虜兵を初めとして第一次世界大戦の捕虜問題を研究しているヘルムート・ヘードル氏をお招きして、グラーツを州都とするシュタイヤーマルク州における第一次世界大戦期難民収容所に関する情報の交換を行った。青野原収容所のハプスブルク帝国捕虜兵は、帝国の在外捕虜兵のほぼ1万分の一にすぎない。しかもハプスブルク帝国は自国民の捕虜兵とほぼ同数の外国人捕虜兵を自国内に抱えていた。さらに戦場になった地域からは大量の難民が出、国内各地で長期にわたって収容をれた。また「敵性」自国民も収容されており、こうした総力戦から除外された人びとの目から見た第一次世界大戦「非総力戦論」を構築している。2010年78月には、ウィーンのオーストリア国家文書館を訪れ、第一次世界大戦初期の自国民収容に関する史料調査を行った。そのうち特にガリツィア難民を当初収容し、イタリア系難民を収容したシュタイアーマルク州ワグナ市の収容所跡を視察し、聞き取り調査を行った。またシュタイアーマルク州文書館で関連する史料の調査を行った。その間、ハンガリー軍事史博物館を訪ね、シベリア及び日本で第一次世界大戦期捕虜だったハンガリー兵、またハンガリーで捕虜収容所に収容されていた協商諸国兵に関する史料の調査を行った。またチェコ共和国の軍事史文書館も訪問し、第一次世界大戦時、オーストリア・ボヘミア地方に置かれた捕虜収容所、およびシベリアでチェコ軍団管轄化に置かれた捕虜収容所に関する史料調査を行った。これらの調査研究を成果を踏まえ、2010年12月に京大人文研で行われたシンポジウム「第一次世界大戦研究の焦点をどこに定めるのか」において「非総力戦としての第一次世界大戦-収容所から見た「総力戦」-」と題して報告を行い、パネラーを務めた。この報告に基づき、人文書院より『ユーラシア収容所群島-総力戦から排除された人びとの第一次世界大戦-』を出版し、本科研の成果を社会に発信する予定である。
KAKENHI-PROJECT-20520644
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20520644
京都府行政文書を中心とした近代行政文書についての史料学的研究
今年度は、主として3つの柱で研究を行った。第1に、京都府行政文書の紙質と劣化状態に関する調査のまとめである。概要調査と詳細調査について、それぞれの結果をまとめ、両者をクロスさせて検討を行った。年代ごとの簿冊数と劣化状態の調査を行い、簿冊の残存度を推計し、あわせて劣化の緊急度の年代的特徴を割り出した。第2に、行政文書の史料学的研究について、府県行政文書の多様性に留意しつつその構造と秩序について議論を行った。中央国家機関の行政文書と府県行政文書の共通点・相違点を明らかにし、府県行政文書の特質と行政文書全体に占める位置について一定の共通理解に達した。国家行政と末端町村の間に介在する府県行政がもたらす文書の多様性と史料的重要性が再確認された。今後の課題として、郡役所や出張所発出文書などの位置づけと保存をどうするかが浮かび上がった。第3に、文化財としての行政文書の保存と修復の問題について、研究会を重ねて議論し、劣化状態のレベルに応じた修復方法の基準を提示した(報告書)。以上の研究成果を研究者・文書館関係者に公開すべく、2007年8月26日にシンポジウム「未来への遺産-重要文化財「京都府行政文書」の保存と活用-」(於:キャンパスプラザ京都)を開催した。国立公文書館高山正也理事の基調報告「公文書の保存と活用の意義-過去は未来を語る」ののち、「近代行政文書研究の諸課題」、「近代史研究と行政文書」、「文化財としての京都府行政文書」、「近代行政文書のための保存科学」、「近代行政文書の保存と修復」の5本のパネル報告を行った。全国各地から約150名の参加をえて、活発な意見交換を行った。当日の議論については全史料協『記録と史料』第18号(2008年3月)に、特集として紹介されている。今年度は、主として3つの柱で研究を行った。第1に、京都府行政文書の紙質と劣化状態に関する調査のまとめである。概要調査と詳細調査について、それぞれの結果をまとめ、両者をクロスさせて検討を行った。年代ごとの簿冊数と劣化状態の調査を行い、簿冊の残存度を推計し、あわせて劣化の緊急度の年代的特徴を割り出した。第2に、行政文書の史料学的研究について、府県行政文書の多様性に留意しつつその構造と秩序について議論を行った。中央国家機関の行政文書と府県行政文書の共通点・相違点を明らかにし、府県行政文書の特質と行政文書全体に占める位置について一定の共通理解に達した。国家行政と末端町村の間に介在する府県行政がもたらす文書の多様性と史料的重要性が再確認された。今後の課題として、郡役所や出張所発出文書などの位置づけと保存をどうするかが浮かび上がった。第3に、文化財としての行政文書の保存と修復の問題について、研究会を重ねて議論し、劣化状態のレベルに応じた修復方法の基準を提示した(報告書)。以上の研究成果を研究者・文書館関係者に公開すべく、2007年8月26日にシンポジウム「未来への遺産-重要文化財「京都府行政文書」の保存と活用-」(於:キャンパスプラザ京都)を開催した。国立公文書館高山正也理事の基調報告「公文書の保存と活用の意義-過去は未来を語る」ののち、「近代行政文書研究の諸課題」、「近代史研究と行政文書」、「文化財としての京都府行政文書」、「近代行政文書のための保存科学」、「近代行政文書の保存と修復」の5本のパネル報告を行った。全国各地から約150名の参加をえて、活発な意見交換を行った。当日の議論については全史料協『記録と史料』第18号(2008年3月)に、特集として紹介されている。今年度は3つの柱で研究を行った。第1に、京都府行政文書の紙質と劣化状態に関する調査基準の決定である。七月下旬に研究分担者・協力者の全体会議を行い、調査項目と調査票について議論した。国立公文書館の紙質調査の先例を検討しながら、暫定的な調査票を作成した。調査票については、調査の過程で発生した問題を解決しながら漸次改良を加えた。全体会議の際、紙質の判定方法について専門家の協力を得る必要があることを確認し、10月に元興寺文化財研究所の金山正子氏と東京文化財研究所の加藤雅人氏に紙質調査方法について助言と提言をいただいた。12月下旬には、第2回の全体会議を行い、これまでの調査の成果と改良された調査票および今後の調査方針について議論した。第2に、京都府行政文書の紙質と劣化状態に関する実際の調査である。調査にあたっては、補助員を毎月平均5名程度雇用した。約500点の調査サンプルを抽出し、05年8月から06年2月まで調書をとって劣化状態を把握することに努めた。単眼鏡によって紙質を判定し劣化状態を記録し、また典型的な劣化状態をランク付けするためにデジタル画像を集積していった。現在のところ35%程度の調査を終えたところである。第3に、他府県の行政文書の調査である。9月に山口県公文書館と宮崎県文書センター、12月に滋賀県県民情報室、06年2月に沖縄県公文書館・沖縄県立図書館を訪問し、行政文書の保存と劣化状態についての調査を行った。いずれにおいても書庫内見学と調査の後、行政文書の保存方法と修復について意見交換を行った。
KAKENHI-PROJECT-17320101
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17320101
京都府行政文書を中心とした近代行政文書についての史料学的研究
これとは別に、06年1月に埼玉県立文書館、2月に東京都公文書館の行政文書について、史料群としての残存状況と劣化状態について調査を行った。今年度も3つの柱で研究を行った。第1に、京都府行政文書の紙質と劣化状態に関する調査である。作業は、概要調査と詳細調査に分かれて行った。前者は、前簿冊の劣化状態の概要を見積もる作業である。後者については、昨年度決定した紙質の基準や劣化状態の項目評価項目に基づいてサンプル調査を行った。調査結果をデータベースとして記録し、活用するためにプログラムを構築し試行した。また、紙質のph測定を試行し、今後の酸性紙化調査の方針を定めた。データの活用方法と調査目的にあわせた利便性の追求が来年度の課題として浮かび上がった。第2に、行政文書の史料学的研究を進めた。丹後震災関係の簿冊に焦点を絞り、残存史料群の構成、保存の歴史的条件、史料価値などについて検証を行った。被災地の行政文書も調査し、府と町村文書の関連性、それを媒介する出張所発出文書の位置などが明らかになった。その成果について代表者が記者発表を行い、概要は京都新聞ほか、各社新聞の京都欄に掲載された。第3に、他府県の行政文書の調査である。滋賀県庁文書を重点的に調査し、残存状況について京都府行政文書との比較を行った。滋賀県庁文書は内容的には京都府文書より網羅的に残存していることが判明した。山口県文書の保存・劣化状態については、研究協力者の山崎氏から12月の全体研究会で報告を得ることができた。今後の保存・修復のあり方について討論し、問題点を整理した。劣化状態のランク分けとそれに応じた具体的な修復作業のあり方を提示するという課題を見いだした。今年度は、主として3つの柱で研究を行った。第1に、京都府行政文書の紙質と劣化状態に関する調査のまとめである。概要調査と詳細調査について、それぞれの結果をまとめ、両者をクロスさせて検討を行った。年代ごとの簿冊数と劣化状態の調査を行い、簿冊の残存度を推計し、あわせて劣化の緊急度の年代的特徴を割り出した。第2に、行政文書の史料学的研究について、府県行政文書の多様性に留意しつつその構造と秩序について議論を行った。中央国家機関の行政文書と府県行政文書の共通点・相違点を明らかにし、府県行政文書の特質と行政文書全体に占める位置について一定の共通理解に達した。国家行政と末端町村の間に介在する府県行政がもたらす文書の多様性と史料的重要性が再確認された。今後の課題として、郡役所や出張所発出文書などの位置づけと保存をどうするかが浮かび上がった。第3に、文化財としての行政文書の保存と修復の問題について、研究会を重ねて議論し、劣化状態のレベルに応じた修復方法の基準を提示した(報告書)。以上の研究成果を研究者・文書館関係者に公開すべく、2007年8月26日にシンポジウム「未来への遺産-重要文化財「京都府行政文書」の保存と活用-」(於:キャンパスプラザ京都)を開催した。国立公文書館高山正也理事の基調報告「公文書の保存と活用の意義-過去は未来を語る」ののち、「近代行政文書研究の諸課題」、「近代史研究と行政文書」、「文化財としての京都府行政文書」、「近代行政文書のための保存科学」、「近代行政文書の保存と修復」の5本のパネル報告を行った。全国各地から約150名の参加をえて、活発な意見交換を行った。当日の議論については全史料協『記録と史料』第18号(2008年3月)に、特集として紹介されている。
KAKENHI-PROJECT-17320101
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17320101
夜間の高速走行を伴う路線トラック運転労働の循環機能及び自律神経機能に及ぼす影響
中年路線トラック運転手の循環器系への影響を作業・労働負担の要因との関連で検討した。対象者としては、正常血圧と高血圧(境界域を含め)(高血圧群)の50才前後の運転手を選び、1運行3日間の調査を行なった。夜間の高速道路の運転により、深夜から早朝にかけての血圧値は、運転前半の24時以前の血圧に較べて下がりきれず、場合によっては上昇する例も認められた。これは走行による血圧上昇によると考えられた。一運行の血圧変動の特徴は復路における収縮期血圧、拡張期血圧とも往路における血圧変動のパタ-ンとは異なっている点、復路での到着直後の血圧は往路での到着時に較べても上昇が認められた点であった。これらの特徴は正常血圧群に較べて高血圧群に大きく表れ、しかも復路の到着時の収縮期血圧値の分散は往路のそれに較べ有意に大きい値が得られた。また仮眠時間の長短において血圧値の差異も認められた。フリッカ-検査や各種のパフォ-マンス検査では経時的に機能低下への方向を示し、又疲労自覚症状や身体局所の訴え項目数も走行時間の経過と共に大きな値を示していた。自覚症状の訴え数では正常血圧群の方が高血圧群より大きい傾向が認められた。調査では通常通りの走行速度・休憩(自由走行)と約80km/hでの定時走行を同一運転手におこなわせ、走行速度の違いによる循環器系への影響差も検討した。血圧値では走行速度による差異は認められなかった。これは中型バスでの走行実験において測定・検討した、一心拍毎の血圧値と走行速度との関係と同様な結果であった。中年路線トラック運転手の循環器系への影響を作業・労働負担の要因との関連で検討した。対象者としては、正常血圧と高血圧(境界域を含め)(高血圧群)の50才前後の運転手を選び、1運行3日間の調査を行なった。夜間の高速道路の運転により、深夜から早朝にかけての血圧値は、運転前半の24時以前の血圧に較べて下がりきれず、場合によっては上昇する例も認められた。これは走行による血圧上昇によると考えられた。一運行の血圧変動の特徴は復路における収縮期血圧、拡張期血圧とも往路における血圧変動のパタ-ンとは異なっている点、復路での到着直後の血圧は往路での到着時に較べても上昇が認められた点であった。これらの特徴は正常血圧群に較べて高血圧群に大きく表れ、しかも復路の到着時の収縮期血圧値の分散は往路のそれに較べ有意に大きい値が得られた。また仮眠時間の長短において血圧値の差異も認められた。フリッカ-検査や各種のパフォ-マンス検査では経時的に機能低下への方向を示し、又疲労自覚症状や身体局所の訴え項目数も走行時間の経過と共に大きな値を示していた。自覚症状の訴え数では正常血圧群の方が高血圧群より大きい傾向が認められた。調査では通常通りの走行速度・休憩(自由走行)と約80km/hでの定時走行を同一運転手におこなわせ、走行速度の違いによる循環器系への影響差も検討した。血圧値では走行速度による差異は認められなかった。これは中型バスでの走行実験において測定・検討した、一心拍毎の血圧値と走行速度との関係と同様な結果であった。
KAKENHI-PROJECT-02807060
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02807060
子供達に安全な麻酔を目指して~発達期マーモセットにおける全身麻酔薬の影響
脳の発達期にある小児が全身麻酔を受けると学習障害のリスクが高まることが報告された。マーモセットの新生児期に全身麻酔薬を投与し脳内での神経細胞死が増加するかどうかを目的に調べた。結果としてアポトーシスした細胞は大脳皮質の他に大脳白質にも存在していた。以上より神経細胞死のみならず神経細胞以外の細胞死の増加についても検討が必要であることが分かった。脳の発達期にある小児が全身麻酔を受けると学習障害のリスクが高まることが報告された。マーモセットの新生児期に全身麻酔薬を投与し脳内での神経細胞死が増加するかどうかを目的に調べた。平成25年度は平成24年度に引き続きマーモセットの新生児に全身麻酔薬の投与を行った。全身麻酔中の採血については尾動脈の採血と心腔内採血を組み合わせて行った。マーモセットの新生児にセボフルレンを5時間投与した。全身麻酔中は経皮的酸素飽和度、心電図、非観血的血圧測定をモニターした。全身麻酔投与中止後速やかにマーモセットは覚醒した。全身麻酔投与後インキュベーターにて3時間の経過観察を行った。3時間の経過観察後、高容量のペントバルビタールを腹腔内投与し脳の潅流固定を行った。採取した脳より凍結式滑走型スライサーを用いて脳スライスを作成した。Cleaved caspase-3の免疫染色とKluver-Barrera染色を行い、組織学的検索を行った。当初は大脳皮質のアポトーシスの増加を予測した。Cleaved caspase-3陽性のアポトーシスした細胞は脳の皮質のみならず白質でも見られた。神経細胞は脳の皮質に存在し、白質には神経細胞の線維の他にオリゴデンドロサイトも存在する。2013年にアカゲザルの新生児に全身麻酔薬(イソフルレン、プロポフォール)を投与すると脳白質でのオリゴデンドロサイトのアポトーシスが増加することが報告された。当初の予測とは異なる結果が得られたため計画を変更し、オリゴデンドロサイトの成熟を考慮しオリゴデンドロサイトと神経細胞のアポトーシスについて組織学的検討を行っている。脳の発達期にある小児が全身麻酔を受けると学習障害のリスクが高まることが報告された。マーモセットの新生児期に全身麻酔薬を投与し脳内での神経細胞死が増加するかどうかを目的に調べた。結果としてアポトーシスした細胞は大脳皮質の他に大脳白質にも存在していた。以上より神経細胞死のみならず神経細胞以外の細胞死の増加についても検討が必要であることが分かった。霊長類であるマーモセットに全身麻酔薬を投与し、発達期の神経細胞への全身麻酔薬の影響を調べることが本研究の目的である。本年度は免疫学的手法を用いて全身麻酔薬の影響を調べることとした。マーモセットとの結果の比較を念頭にラットでも実験を行った。これまでの報告と同様に生後7日齢のラットに6時間の麻酔薬投与を行った。麻酔薬投与後脳の潅流固定を行い、切片を作製した。免疫染色を行い麻酔薬非投与群(コントロール群)と麻酔薬投与群を比較した。麻酔薬投与群はコントロール群に比べ、少なくとも大脳皮質の第2層から3層に神経細胞死(アポトーシス)の増加が認められ、これまでの報告と一致した結果が得られた。ラットでの麻酔薬投与実験を基に生後3日齢のマーモセットにセボフルレン3%、5時間の投与を行った。麻酔薬投与中は酸素飽和度、心電図、血液ガス分析、直腸温による体温測定を行った。酸素飽和度、心電図、体温のモニターは可能であった。温水マットの使用により体温は保持された。採血は麻酔薬投与2時間では可能であったが、その後は困難であった。麻酔薬投与終了後、速やかにマーモセットは覚醒した。その後経口にて人工乳を投与し、3時間経過を観察した。経過観察後高容量のペントバルビタールを投与し脳の潅流固定を行った。潅流固定された脳から切片を作製した。免疫染色を行いアポトーシスが生じているか解析中である。麻酔中の採血方法と効率の良い切片の作製法についても検討中である。以上の2点について改善し、引き続き実験を続けていく。霊長類であるマーモセットに全身麻酔薬を投与し、発達期の神経細胞への全身麻酔薬の影響を調べることが本研究の目的である。従来から行われている免疫学的手法では神経細胞死(アポトーシス)が指標とされている。本研究では生後間もないマーモセットに麻酔薬を投与し神経細胞のアポトーシスが増加すれば、次に電気生理学的手法を用いて神経細胞の機能への影響を調べる計画である。まず免疫学的手法を用いたマーモセットの実験系を作成することとした。マーモセットとの結果を比較することを念頭に、並行してラットでも実験を行ってみた。ラットについては麻酔薬投与、脳の潅流固定、脳の切片作製、免疫染色まで一連の実験系がおおまかに作成できた。マーモセットでは現在実験系を作成している段階である。麻酔薬投与中の採血法と効率の良い切片作製法について検討中である。この二つが改善されれば実験系としてほぼ完成と考えられる。実験系の確立のために、麻酔中の採血方法と効率の良い切片作製法について検討中である。採血法としては静脈へのカテーテル挿入から毛細管採血を含めて検討を行う。
KAKENHI-PROJECT-24791630
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24791630
子供達に安全な麻酔を目指して~発達期マーモセットにおける全身麻酔薬の影響
この二つが改善されれば神経細胞のアポトーシスの増加について麻酔薬非投与群(コントロール)と麻酔薬投与群の比較に進む。この結果を基に次年度の実験計画を引き続き行うことが可能と考える。マーモセットの麻酔管理に必要な麻酔回路、採血キット、血液ガス分析カートリッジ、セボフルレン、免疫組織学的に評価するために必要な薬物、薬理学的試験に必要な薬物、論文添削別刷代、学会参加費に使用する計画である。
KAKENHI-PROJECT-24791630
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24791630
多チャネル音響再生のための拡散音のレンダリングに関する研究
マルチチャネル音響の臨場感には、直接音がもたらすオブジェクト臨場感と、拡散音がもたらすフィールド臨場感があり、高臨場感音響再生では、どちらの臨場感も欠かすことができない。マルチチャネル音響コンテンツを、本来とは異なるチャネル数や異なるスピーカ配置で再生するために、音響レンダリングの手法が用いられる。従来のレンダリング法は、チャネルの方向に基づいて行うものであったため、オブジェクト臨場感はうまく再現できたが、フィールド臨場感を損なうという問題があった。本研究では、フィールド臨場感を最大限維持するため、拡散音に適したレンダリング法の研究開発を行い、主観評価実験により、その性能を評価する。マルチチャネル音響の臨場感には、直接音がもたらすオブジェクト臨場感と、拡散音がもたらすフィールド臨場感があり、高臨場感音響再生では、どちらの臨場感も欠かすことができない。マルチチャネル音響コンテンツを、本来とは異なるチャネル数や異なるスピーカ配置で再生するために、音響レンダリングの手法が用いられる。従来のレンダリング法は、チャネルの方向に基づいて行うものであったため、オブジェクト臨場感はうまく再現できたが、フィールド臨場感を損なうという問題があった。本研究では、フィールド臨場感を最大限維持するため、拡散音に適したレンダリング法の研究開発を行い、主観評価実験により、その性能を評価する。
KAKENHI-PROJECT-19K12078
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K12078
糖尿病の発症機序に関する研究:特にインスリン分泌の異常動態の分析
1.糖尿病患者の両親の解析:30歳以前に発病した糖尿病患者44名(【I】型16名,【II】型28名)の両親に100g糖負荷試験を行った。【II】型糖尿病の両親では39%が糖尿病,12%がIGT,【I】型糖尿病の両親では9%が糖尿病,9%がIGTで、【II】型の方が高率であった。インスリン分泌低下者の比率は【I】型の親では43%,【II】型の親では66%であり、耐糖能正常者のみについてみると各33%,35%であった。【II】型糖尿病では両親がともに低反応者である場合が多く(58%)、【I】型では片親のみが低反応の場合が多かった(67%)。両病型ともインスリン分泌低下には遺伝的背景がうかがわれるが両病型で遺伝様式は異ると考えられる。2.異常インスリン患者家系の分析:異常インスリン症の発端者の膵からえたインスリンでは正常インスリン:異常インスリンの比はほぼ等モルであるが、異常インスリンの方が代謝速度が遅く血中に蓄積する結果,高インスリン血症を来すことがわかった。アミノ酸分析の結果,インスリン分子の異常部位はA鎖3位で、バリンがロイシンに置換されていることが明らかとなった。また異常インスリンの尿への排せつは著しく低下していることがわかった。3.ヒトプロインスリンのラジオイムノアッセイの開発とプロインスリン分泌動態:ヒトプロインスリンでモルモットを免疫し、6匹中1匹でインスリン,C-ペプチドと交差反応しないヒトプロインスリン特異抗体がえられ、これを用いて高感度のラジオイムノアッセイ系を開発した。未治療糖尿病患者ではプロインスリン値は上昇しインスリンに対する比率も上昇した。糖負荷後のプロインスリン上昇反応は軽症中等症の糖尿病患者では増加し、これは膵B細胞が過大な刺激を受けている状態を表しているものと考えられた。1.糖尿病患者の両親の解析:30歳以前に発病した糖尿病患者44名(【I】型16名,【II】型28名)の両親に100g糖負荷試験を行った。【II】型糖尿病の両親では39%が糖尿病,12%がIGT,【I】型糖尿病の両親では9%が糖尿病,9%がIGTで、【II】型の方が高率であった。インスリン分泌低下者の比率は【I】型の親では43%,【II】型の親では66%であり、耐糖能正常者のみについてみると各33%,35%であった。【II】型糖尿病では両親がともに低反応者である場合が多く(58%)、【I】型では片親のみが低反応の場合が多かった(67%)。両病型ともインスリン分泌低下には遺伝的背景がうかがわれるが両病型で遺伝様式は異ると考えられる。2.異常インスリン患者家系の分析:異常インスリン症の発端者の膵からえたインスリンでは正常インスリン:異常インスリンの比はほぼ等モルであるが、異常インスリンの方が代謝速度が遅く血中に蓄積する結果,高インスリン血症を来すことがわかった。アミノ酸分析の結果,インスリン分子の異常部位はA鎖3位で、バリンがロイシンに置換されていることが明らかとなった。また異常インスリンの尿への排せつは著しく低下していることがわかった。3.ヒトプロインスリンのラジオイムノアッセイの開発とプロインスリン分泌動態:ヒトプロインスリンでモルモットを免疫し、6匹中1匹でインスリン,C-ペプチドと交差反応しないヒトプロインスリン特異抗体がえられ、これを用いて高感度のラジオイムノアッセイ系を開発した。未治療糖尿病患者ではプロインスリン値は上昇しインスリンに対する比率も上昇した。糖負荷後のプロインスリン上昇反応は軽症中等症の糖尿病患者では増加し、これは膵B細胞が過大な刺激を受けている状態を表しているものと考えられた。
KAKENHI-PROJECT-60480276
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-60480276
超伝導熱線流速計の開発
本研究では,将来,超高レイノルズ数(10^7以上)流れに適用可能となる様な超小型・高速応答性を特徴とする超伝導薄膜型熱線流速計の開発を目指した基礎研究と,そこで試作された超伝導薄膜型熱線流速計を応用した超流動ヘリウム相からの蒸発現象の計測が行われた.本誌作品は,超流動ヘリウム相からの蒸発現象の計測の目的で本研究者等により自家開発されている高感度・高応答性の薄膜型超伝導温度センサを基にして超伝導熱線流速計を作成し,蒸発ガス相の流速を計測する事を試みた.以下その成果を記述するa)超伝導熱線流速計の試作:超小型,高速応答性,超高感度といった性能上の特徴を有するに加え,フランスで開発されたものとは,超伝導材料をニオブ薄膜からSn+Au薄膜に変えることにより,より低温側へ広がった適用温度範囲(1.5K2.5K)をもつ点で異なっている.b)試作された超伝導熱線流速計の校正方法の開発:ヘリウム蒸気流を用いた校正装置(風洞)を開発し,これを用いた校正方法を開発した.つまり,実際の応用では,温度変動のある場での速度測定となるので,温度計測を併用することにより,ソフト的に温度効果を除去し純粋に流速計測を実現した.c)超流動ヘリウム自由界面からの蒸発に際しての蒸気流速測定(蒸発相の気体論的振る舞いとHe II自由界面近傍における超流動流体力学的振る舞いの両方に関する研究):d)試作品の評価:センシングエレメントの経年変化(酸化と結晶構造変化)の低減法=酸化防止コーティングとアニーリング,についても考察する.本研究では,将来,超高レイノルズ数(10^7以上)流れに適用可能となる様な超小型・高速応答性を特徴とする超伝導薄膜型熱線流速計の開発を目指した基礎研究と,そこで試作された超伝導薄膜型熱線流速計を応用した超流動ヘリウム相からの蒸発現象の計測が行われた.本誌作品は,超流動ヘリウム相からの蒸発現象の計測の目的で本研究者等により自家開発されている高感度・高応答性の薄膜型超伝導温度センサを基にして超伝導熱線流速計を作成し,蒸発ガス相の流速を計測する事を試みた.以下その成果を記述するa)超伝導熱線流速計の試作:超小型,高速応答性,超高感度といった性能上の特徴を有するに加え,フランスで開発されたものとは,超伝導材料をニオブ薄膜からSn+Au薄膜に変えることにより,より低温側へ広がった適用温度範囲(1.5K2.5K)をもつ点で異なっている.b)試作された超伝導熱線流速計の校正方法の開発:ヘリウム蒸気流を用いた校正装置(風洞)を開発し,これを用いた校正方法を開発した.つまり,実際の応用では,温度変動のある場での速度測定となるので,温度計測を併用することにより,ソフト的に温度効果を除去し純粋に流速計測を実現した.c)超流動ヘリウム自由界面からの蒸発に際しての蒸気流速測定(蒸発相の気体論的振る舞いとHe II自由界面近傍における超流動流体力学的振る舞いの両方に関する研究):d)試作品の評価:センシングエレメントの経年変化(酸化と結晶構造変化)の低減法=酸化防止コーティングとアニーリング,についても考察する.本研究は,超伝導薄膜型熱線流速計の開発と,それの超流動ヘリウム相からの蒸発現象の計測への応用を目的としており,今年は次の項目に関する研究を行った.a)校正および基礎実験用ヘリウム蒸気風洞の基礎開発を行った.これは,加熱によるHe IIの蒸発蒸気を作動流体として用いるもので,作動原理上,温度と圧力の安定性に優れ,温度2K5Kのヘリウム蒸気流が得られることが分かり,この方式で校正用風洞が校正できることが確かめられた.b)超伝導熱線流速計プローブ部(センシングエレメント)試作の第1段階として,クォ-ツ細線芯材を用い,その表面の一部に薄膜成膜を行ないエレメント化する技術の開発を超伝導温度計を例として成功裡に行った.その成果として,経年劣化の原因が確かめられ,その対策法が理解された.また,第2段階では薄膜積層タイプの開発へと進むが,それへ向けた基礎データの蓄積のため,ミクロな薄膜構造の観測,成分分析,臨界電流値などの詳しい測定が行われた.c)試作された超伝導熱線流速計を応用すべき,超流動ヘリウム自由界面からの蒸発現象についても,基礎研究の立場から実験がなされた.これは,第2音波熱パルス(熱衝撃波)を超流動ヘリウム自由界面に入射し,これを熱入力として起こる自由界面からの蒸発現象を調べるものである.レーザーホログラフィー干渉計や圧力計測によるデータ,数値計算結果等を総合することにより,蒸発現象の気体力学的側面と蒸発波面伝播における衝撃波伝播現象としての側面,さらに第2音波熱パルスの超流動ヘリウム自由界面での反射特性といった超流動流体力学の側面から調べられ,いくつかの学会発表及び論文発表を行った.本研究では,将来,超高レイノルズ数(10^7以上)流れに適用可能となる様な超小型・高速応答性を特徴とする超伝導薄膜型熱線流速計の開発を目指した基礎研究と,そこで試作された超伝導薄膜型熱線流速計を応用した超流動ヘリウム相からの蒸発現象の計測が行われた.
KAKENHI-PROJECT-09555299
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09555299
超伝導熱線流速計の開発
本誌作品は,超流動ヘリウム相からの蒸発現象の計測の目的で本研究者等により自家開発されている高感度・高応答性の薄膜型超伝導温度センサを基にして超伝導熱線流速計を作成し,蒸発ガス相の流速を計測する事を試みた.以下その成果を記述するa)超伝導熱線流速計の試作:超小型,高速応答性,超高感度といった性能上の特徴を有するに加え,フランスで開発されたものとは,超伝導材料をニオブ薄膜からSn+Au薄膜に変えることにより,より低温側へ広がった適用温度範囲(1.5K2.5K)をもつ点で異なっている.b)試作された超伝導熱線流速計の校正方法の開発:ヘリウム蒸気流を用いた校正装置(風洞)を開発し,これを用いた校正方法を開発した.つまり,実際の応用では,温度変動のある場での速度測定となるので,温度計測を併用することにより,ソフト的に温度効果を除去し純粋に流速計測を実現した.c)超流動ヘリウム自由界面からの蒸発に際しての蒸気流速測定(蒸発相の気体論的振る舞いとHeII自由界面近傍における超流動流体力学的振る舞いの両方に関する研究):d)試作品の評価:センシングエレメントの経年変化(酸化と結晶構造変化)の低減法=酸化防止コーティングとアニーリング,についても考察する.
KAKENHI-PROJECT-09555299
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09555299
Tensions and borders of national and regional identity in the Mekong: A comparative study of politics and ideology in school curricula
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-17H07187
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H07187
血管内皮細胞における機械受容チャネルの研究
本研究によって下記の結果を得た。1・低浸透圧による機械刺激低浸透圧処理による機械刺激を期待する場合、細胞膜伸展の度合いを評価しなければならない。接着細胞において体積増加による細胞膜の伸展の度合いを定量するために膜に蛍光色素を取り込ませ標識しリアルタイム共焦点レーザー顕微鏡を用いて縦断層面の経時的変化(z-t)の観察をした。その結果、低浸透圧刺激による膜伸展の時間経過を定量的に測定することができた。また従来、浮遊細胞系で報告されている調節性体積減少を確認することができた。2・シリコン膜による機械刺激従来の方式では伸展刺激時に焦点面がずれ、振動が大きい等のデメリットがあり、顕微鏡観察・電気生理学的手法は困難であった。本研究では従来法に改良を加え伸展時に焦点面がずれたり振動が少ない装置を開発した。現在、1・2の方法を駆使して定量的に機械刺激を与え機械受容チャネルを活性化し、生じる電気生理学的現象をパッチクランプ法にて記録している。本研究によって下記の結果を得た。1・低浸透圧による機械刺激低浸透圧処理による機械刺激を期待する場合、細胞膜伸展の度合いを評価しなければならない。接着細胞において体積増加による細胞膜の伸展の度合いを定量するために膜に蛍光色素を取り込ませ標識しリアルタイム共焦点レーザー顕微鏡を用いて縦断層面の経時的変化(z-t)の観察をした。その結果、低浸透圧刺激による膜伸展の時間経過を定量的に測定することができた。また従来、浮遊細胞系で報告されている調節性体積減少を確認することができた。2・シリコン膜による機械刺激従来の方式では伸展刺激時に焦点面がずれ、振動が大きい等のデメリットがあり、顕微鏡観察・電気生理学的手法は困難であった。本研究では従来法に改良を加え伸展時に焦点面がずれたり振動が少ない装置を開発した。現在、1・2の方法を駆使して定量的に機械刺激を与え機械受容チャネルを活性化し、生じる電気生理学的現象をパッチクランプ法にて記録している。
KAKENHI-PROJECT-06770029
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06770029
感性駆動型ヒューマン・マシン・インタフェースシステムの開発
本研究では,人と機械とのインタラクティブコミュニケーションをより人にやさしく実現するために,機械が人の表情を認識し,その表情に対して音声で応答する,人の感性を考慮したヒューマン・マシン・インタフェースシステムの構築と評価を目的とした.今年度は,前年度までに構築したヒューマン・マシン・インタフェースシステムに対する評価を行った.本システムでは,表情認識における誤認識を考慮し,顔表情から分析されたユーザの感情に応じて,コンピュータからユーザに対して音声で働きかける.その際に,出力される音声データが,ユーザの表情に対して適当かを実験により評価した.評価実験では,ユーザの表情に対しての「適切さ」,出力された音声データの「分かりやすさ」,ユーザの「癒され度合い」の3点から,ユーザとコンピュータとの円滑なコミュニケーションにおける本システムの有用性を検討した.さらに,「人にやさしい」インタフェースシステムの構築において,顔表情における感性特性の利用の有効性を検証した.その結果として,本システムが人と機械とのインタラクティブコミュニケーションの実現に貢献できることを示した.なお,得られた研究成果については,国際会議にて発表し,さらには学術論文誌へ掲載した.顔表情の感性特性を利用した表情認識手法の開発を目的に以下の研究を行った.1.顔や顔器官の形状を自動抽出する手法を提案し,各形状の特徴点を自動的に求めて,特徴点に基づいた顔表情や顔器官の特徴を利用した表情分析を試みた.(1)佐藤美恵,渡辺光司,羽島一夫,大須賀美恵子,春日正男:自動似顔絵生成のためのマハラノビス距離を利用した形状抽出、映像情報メディア学会誌,第57巻11号,2003,pp.1534-1542(2)鈴井智史,渡辺光司,佐藤美恵,春日正男,羽島一夫:顔器官における感情別特徴を利用した表情自動認識手法,映像情報メディア学会年次大会,13-6,20032.端的に顔や表情の特徴を表現できる似顔絵に着目して,顔や表情の認識とコミュニケーションに関する感性情報の分析を試みた.(1)佐藤美恵,大園恵美,春日正男,羽島一夫,白松直樹:似顔絵の描き手の画風に基づいた表情生成手法,感性工学研究論文集,第3巻2号,2003,pp.37-40(3)谷藤誠,佐藤美恵,羽島一夫,春日正男:顔特徴点を利用した似顔絵自動生成の検討,第5回日本感性工学会,2003,p.713.感性情報を考慮して,顔表情や顔器官の特徴と人間の基本感情に関する感性データベースを利用した,表情認識のための感性情報処理に基づく簡易な推論手法を提案した.(1)尚〓軼,鈴井智史,佐藤美恵,春日正男:表情自動抽出を利用するインタラクティブコミュニケーションの検討,映像情報メディア学会HCS・メディア工学研究会,2003,pp.13-18.本研究は,人と機械とのインタラクティブコミュニケーションをより人にやさしく実現するために,機械が人の表情を認識し,その表情を考慮して人に音声で応答する,人の感性を考慮したヒューマン・マシン・インタフェースシステムの構築を目的に以下を行った.1.ヒューマン・マシシ・インタフェースシステムへの実装を考慮して,入力顔の角度や,顔特徴の抽出精度にロバストな表情認識手法を提案した.そして,表情認識の結果に基づき,ユーザの感情状態を推定し,ユーザの表情を"喜び","怒り","悲しみ","驚き"の4表情に分類した.2.人の基本感情に対応する音声データベースの構築を目的に,端的に顔や表情の特徴を表現できる似顔絵に着目して,"喜び","怒り","悲しみ","驚き"の表情顔の似顔絵を利用し,表情分析とコミュニケーションに関する感性情報の取得を試みた.3.表情認識の際に生じる誤認識を考慮した,人の基本感情に応答する言葉を音声で保存した音声データベースを構築した.そして,音声データベースからユーザの表情に対応する適当な音声データの出力を検討した.最後に,ユーザの表情に対しての「適切さ」,出力された音声データの「分かりやすさ」,ユーザの「癒され度合い」の3点から構築した音声データベースについて検証実験を行った.さらに,ヒューマン・マシン・インターフェースシステムとして有用性を評価し,本システムが人と機械とのインタラクティブコミュニケーションの実現に貢献できることを示した.本研究では,人と機械とのインタラクティブコミュニケーションをより人にやさしく実現するために,機械が人の表情を認識し,その表情に対して音声で応答する,人の感性を考慮したヒューマン・マシン・インタフェースシステムの構築と評価を目的とした.今年度は,前年度までに構築したヒューマン・マシン・インタフェースシステムに対する評価を行った.本システムでは,表情認識における誤認識を考慮し,顔表情から分析されたユーザの感情に応じて,コンピュータからユーザに対して音声で働きかける.その際に,出力される音声データが,ユーザの表情に対して適当かを実験により評価した.評価実験では,ユーザの表情に対しての「適切さ」,出力された音声データの「分かりやすさ」,ユーザの「癒され度合い」の3点から,ユーザとコンピュータとの円滑なコミュニケーションにおける本システムの有用性を検討した.さらに,「人にやさしい」インタフェースシステムの構築において,顔表情における感性特性の利用の有効性を検証した.その結果として,本システムが人と機械とのインタラクティブコミュニケーションの実現に貢献できることを示した.なお,得られた研究成果については,国際会議にて発表し,さらには学術論文誌へ掲載した.
KAKENHI-PROJECT-15700178
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15700178
負イオン磁化プラズマ中フローシアー不安定性の体系的解明
磁化プラズマ中に自己励起する電子反磁性ドリフト波不安定性が,正イオンの沿磁力線フロー速度シアー(平行シアー)及び負イオン種の導入から受ける影響を実験的に観測した.具体的な成果を以下に記す.1.熱電子源を前年度の六硼化ランタン(LaB_6)塗布型からタングステン(W)直熱型熱陰極に改良し,前年度よりも高い負イオン交換率n_-/n_+を有するプラズマ中でのドリフト波実験を可能にした.2.負イオン交換率が10%を超える領域においては,さらなる負イオンの導入が平行シアー変調ドリフト波の成長率を減少させることを初めて実験的に観測した.さらに,負イオン交換率が50%を超えると,波動は完全に抑制され,プラズマが安定化することを観測した.3.負イオン交換率に依存せず,平行シアーにより波動は抑制されることを観測した.4.ドリフト波の軸方向波数は極めて小さく,プラズマ物理研究の初期段階よりその測定の困難さが問題となってきたが,今回Y型プローブによる新たな波数評価法を提案し,その手法により実際の軸方向波数k_<ll>/2πが0.51m^<1>であることを検出した.5.米国West Virginia大学で開発されたΓ型プローブを導入し,ドリフト波の周方向モードを観測した.その結果,周方向モードは平行シアー及び負イオン交換率に依存せずに常にm=3であることが明らかとなった.6.実験的に観測した軸方向波数及び周方向モードの値を用いて,波動の成長率及び周波数の理論値を計算した結果,実験において観測されたドリフト波の平行シアー・負イオン交換率依存性は,運動論的線形不安定性の理論でほぼ説明されることが明らかとなった.7.上述の実験とは逆の平行シアー強度を与えた場合,D'Angeloモードなる流体不安定性が励起されることが1960年代より予測されているが,そのモードが本実験系では励起されないことを発見した.1.現有の完全電離カリウム(K)プラズマ源を用い,六フッ化硫黄(SF_6)ガスを使用した負イオンプラズマの生成を行った.沿磁力線正イオンフロー速度シアーのみを選択的に生成・制御するためには,分割型Kイオン源に加え非分割型の電子源が必要である.電子源として酸化物熱陰極を使用したところ,SF_6ガスの導入により熱陰極からの熱電子放出が抑制されることを観測した.2.新たに作成した六硼化ランタン熱陰極を用いた結果,SF_6ガスの導入による熱電子放出の抑制が起こらず,安定した負イオンプラズマの生成及び負イオン-正イオン密度比の制御が可能となった.また,プラズマ中の空間電位の半径方向一様化による,負イオン-正イオン密度比の空間一様性を達成した.すなわち,負イオン濃度の空間分布といった複雑な要素を有さない,基礎実験のための理想的な実験系の構築に成功した.3.分割型ホットプレート異バイアス印加法により,沿磁力線正イオンフロー速度シアーの発生及び高精度の制御を負イオンプラズマ中において達成した.これは,イオンエネルギーアナライザーを用いたイオンフローの観測により実証した.4.この負イオンプラズマ中において,沿磁力線正イオンフロー速度シアーにより特徴的に励起される低周波揺動の観測を行った.揺動は主に2種類の周波数の成分(波動1:1kHz,波動2:5kHz)が検出された.波動1はプラズマ半径方向の広い範囲で観測されたが,波動2は主に密度勾配が大きなプラズマ周辺領域において顕著に観測された.負イオン-正イオン密度比の上昇に伴い,波動1はフロー速度シアー強度に依らず安定化する傾向を見せたが,波動2はシアー強度の小さい領域において不安定化する傾向を見せた.5.磁化プラズマ中のフロー速度シアー駆動不安定波動の運動論的解析を行い,波動1はケルビン-ヘルムホルツ不安定性,波動2はドリフト波不安定性である可能性を示した.前年度に構築した理想的な負イオンプラズマ実験系を用い,沿磁力線正イオンフロー速度シアーにより駆動されるドリフト波不安定性の特性が負イオンから受ける影響の詳細を調査した.1.負イオン交換率(プラズマ中の電子と負イオンの置換率)の上昇に伴い,不安定性の揺動レベルが上昇することが確認された.さらにこのとき,ドリフト波不安定性が励起される平行シアー強度範囲が正・負両方向に拡張する現象が観測された.これらの結果から,プラズマ中の負イオン導入が,シアー駆動支配下のプラズマの不安定化を促進させることが明らかとなった.2.負イオンプラズマ中の電流駆動型ドリフト波不安定性の理論解析を線形領域で行い,実験結果との比較・検討を行った.この理論によると,平行シアー強度の増加も負イオン交換率の増加も共に,ドリフト波位相速度の沿磁力線方向成分を増加させる効果があることが示された.結果として,不安定性を励起するシアー強度の変化について実験と線形理論で定性的な相違があることが明らかとなった.3.ドリフト波不安定性の周波数スペクトルを観測した結果,ある平行シアー強度範囲において鋭利なスペクトルから広帯域なスペクトルへと遷移し,さらなるシアー強度の上昇により再び鋭利なスペクトルへと遷移する様子を観測した.この現象は,負イオン及び平行シアーが共存するときにのみ観測され,一般的に揺動レベルの強い場合に発生した.
KAKENHI-PROJECT-04J02954
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04J02954
負イオン磁化プラズマ中フローシアー不安定性の体系的解明
従って,このスペクトルのブロード化は「負イオン」及び「平行シアー」の2つの事象に起因する非線形効果の発現により,元は正弦波的であった線形領域の波動が,乱流様のスペクトル特性を呈するようになったと考えることができる.従って,「実績2.」に示された線形理論と実験結果との差異についても,非線形効果が顕著化した結果であると説明できる.今回得られた結果により,当該の研究が非線形波動・乱流の研究に貢献する可能性が示された.磁化プラズマ中に自己励起する電子反磁性ドリフト波不安定性が,正イオンの沿磁力線フロー速度シアー(平行シアー)及び負イオン種の導入から受ける影響を実験的に観測した.具体的な成果を以下に記す.1.熱電子源を前年度の六硼化ランタン(LaB_6)塗布型からタングステン(W)直熱型熱陰極に改良し,前年度よりも高い負イオン交換率n_-/n_+を有するプラズマ中でのドリフト波実験を可能にした.2.負イオン交換率が10%を超える領域においては,さらなる負イオンの導入が平行シアー変調ドリフト波の成長率を減少させることを初めて実験的に観測した.さらに,負イオン交換率が50%を超えると,波動は完全に抑制され,プラズマが安定化することを観測した.3.負イオン交換率に依存せず,平行シアーにより波動は抑制されることを観測した.4.ドリフト波の軸方向波数は極めて小さく,プラズマ物理研究の初期段階よりその測定の困難さが問題となってきたが,今回Y型プローブによる新たな波数評価法を提案し,その手法により実際の軸方向波数k_<ll>/2πが0.51m^<1>であることを検出した.5.米国West Virginia大学で開発されたΓ型プローブを導入し,ドリフト波の周方向モードを観測した.その結果,周方向モードは平行シアー及び負イオン交換率に依存せずに常にm=3であることが明らかとなった.6.実験的に観測した軸方向波数及び周方向モードの値を用いて,波動の成長率及び周波数の理論値を計算した結果,実験において観測されたドリフト波の平行シアー・負イオン交換率依存性は,運動論的線形不安定性の理論でほぼ説明されることが明らかとなった.7.上述の実験とは逆の平行シアー強度を与えた場合,D'Angeloモードなる流体不安定性が励起されることが1960年代より予測されているが,そのモードが本実験系では励起されないことを発見した.
KAKENHI-PROJECT-04J02954
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04J02954
ニホンザルの老化に伴う認知能力と社会行動の変化に関する研究
ニホンザルを対象として、老化に伴う認知能力の低下のプロセスと社会行動の変化を実験と行動観察によって明らかにすること、人口学的資料から老体の社会的存在意義を探ること、また、進化的にヒトに近縁のゴリラについても加齢に関係した社会行動の変容を明らかにすることが、本研究の目的である。1.野外集団を対象とした研究:老齢オスは数年以上に渡り特定のメスとの親和的な社会関係を持続しており、これが自身の社会的順位の維持に役立っていると推測される。年齢に関係なく、娘、孫娘、姉妹などの近縁メスとの関わりが相対的に高い頻度で維持されたが、その中で、高齢メスほど自分の末娘との親和的関わりを特段に多くする傾向が顕著であった。他方、冬季に限って高齢メスには非血縁の0歳齢、1歳齢個体との身体接触が多く、寒さへの対応と推定された。2.老齢メスを対象とした学習実験:野外では25歳を超えると生存が極めてまれになるが、飼育環境下で35歳になるメスの空間記憶能力を実験的に調べた。25歳までの個体では、空間記億能力の減衰は見られなかったが、25歳以上の個体については年齢と共にその能力が減衰することが顕著であった。しかし、そのような高齢個体でも訓練の継続で学習が促進することも確認できた。3.高順位の母から生まれた子どもの生後1年間の生存率は、祖母が生存している場合には、生存していない場合に比べ、有意に高くなった。低順位の母から生まれた子の生存に、祖母の存在は影響しなかった。4.ゴリラの社会行動:11歳の娘が出産をしても、新生体を地面に置くなどの不適切な行動をした。しかし、その娘の母が新生体を抱き上げ、さらに娘に手渡すこと、抱くことを促す行動が確認できた。母が幼体の行動発達を促す足場作りをすることがゴリラやマカク類のサルで確認されているが、この事例はおとなの間でも足場作りが成立をすることをはじめて記録した事例であった。ニホンザルを対象として、老化に伴う認知能力の低下のプロセスと社会行動の変化を実験と行動観察によって明らかにすること、人口学的資料から老体の社会的存在意義を探ること、また、進化的にヒトに近縁のゴリラについても加齢に関係した社会行動の変容を明らかにすることが、本研究の目的である。1.野外集団を対象とした研究:老齢オスは数年以上に渡り特定のメスとの親和的な社会関係を持続しており、これが自身の社会的順位の維持に役立っていると推測される。年齢に関係なく、娘、孫娘、姉妹などの近縁メスとの関わりが相対的に高い頻度で維持されたが、その中で、高齢メスほど自分の末娘との親和的関わりを特段に多くする傾向が顕著であった。他方、冬季に限って高齢メスには非血縁の0歳齢、1歳齢個体との身体接触が多く、寒さへの対応と推定された。2.老齢メスを対象とした学習実験:野外では25歳を超えると生存が極めてまれになるが、飼育環境下で35歳になるメスの空間記憶能力を実験的に調べた。25歳までの個体では、空間記億能力の減衰は見られなかったが、25歳以上の個体については年齢と共にその能力が減衰することが顕著であった。しかし、そのような高齢個体でも訓練の継続で学習が促進することも確認できた。3.高順位の母から生まれた子どもの生後1年間の生存率は、祖母が生存している場合には、生存していない場合に比べ、有意に高くなった。低順位の母から生まれた子の生存に、祖母の存在は影響しなかった。4.ゴリラの社会行動:11歳の娘が出産をしても、新生体を地面に置くなどの不適切な行動をした。しかし、その娘の母が新生体を抱き上げ、さらに娘に手渡すこと、抱くことを促す行動が確認できた。母が幼体の行動発達を促す足場作りをすることがゴリラやマカク類のサルで確認されているが、この事例はおとなの間でも足場作りが成立をすることをはじめて記録した事例であった。20歳を超えたニホンザルは繁殖能力が低下し、老ザルと言われる。このニホンザルを対象として、老化に伴った認知能力の低下のプロセスと社会行動の変化を実験と行動観察によって明らかにすることが、本研究の目的であった。1.野外集団を対象とした長期縦断的研究:過去8年間にわたり社会行動が縦断的に記録されている中心部成体オスの成体メスとの社会関係の記録を継続して行った。中心部成体オスの年齢は9歳から25歳までの広範囲であり、老齢オスは成体オスよりも体力的に劣ることは自明であるが、メス、特に高順位メスとの親和的関係を持続させていた。さらに、老齢オス間でも長期の親和的関係を維持していた。これらの安定した社会関係が、成体オスの順位上昇を阻み、結果的に高位老齢オスの順位安定に結びついていた。2.老齢メスを対象とした学習実験:過去5年間にわたり、実験室で飼育されている老齢ニホンザルメスを対象として空間認知に関する実験を継続的に行っている。今年度も、同様に同じ個体に対して実験を行った。30歳を超えた老齢メスにおいて、昨年度に比べて極端な学習成績の低下が確認された。しかし、野外集団でも生存が極めて稀な25歳から30歳までの個体でもそのような成績の低下は認められなかった。3.野外集団での老齢個体の社会関係に関する観察と飼育
KAKENHI-PROJECT-11610078
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11610078
ニホンザルの老化に伴う認知能力と社会行動の変化に関する研究
老齢メスでの学習実験を次年度でも行い、比類のない長期縦断的研究を継続する。これが老化に伴う認知の減衰プロセスを明らかにすることに結びつく。20歳を超えたニホンザルは繁殖能力が低下し、老ザルと言われる。このニホンザルを対象として、老化に伴う認知能力の低下のプロセスと社会行動の変化を実験と行動観察によって明らかにすること、さらに、人口学的資料から老体の社会的存在意義を探ること、また、ニホンザルよりも進化的にヒトに近縁のゴリラについても加齢に関係した社会行動の変容を明らかにすることが、本研究の目的である。野外集団を対象とした研究:老齢オスは数年に渡り持続している特定のメスとの親和的な社会関係を持続しており、さらに、交尾期においても、特定のメスとの交尾関係が確認された。繁殖に結びつくかどうかは不明であるが、交尾期、非交尾期を通して、親和的な関係を特定の複数のメスと維持することが、老齢オスの順位維持に貢献していると考えられた。高位メスは老齢になっても、依然として、若い高齢のメスと同等の毛づくろい関係などを維持していたが、下位メスは老齢になると、孤立傾向が著しかった。すなわち、老化のプロセスは社会的順位によって異なることが明瞭であった。老齢メスを対象とした学習実験:野外では生存が極めてまれな25歳を超える年齢層のメスの空間記憶能力が、25歳までのメスよりも著しく衰えることがわかった。さらに、30歳を越えるメスの当該の能力は、一層の低下が認められた。他方、毎年継続的な学習訓練を受けていると、同様の能力は、加齢にも関わらず実験開始時の能力が維持される可能性が強いことが縦断的研究から明らかになりつつある。ゴリラの社会行動:11歳の娘が出産をしたとき、その母が孫を抱くなどの養育行動を示した。また、娘が新生体を地面に置くと、母が手を差し出し、その孫を下から押し上げ、娘の胸に押し戻した。これは「教育」と命名すべき行動である。この年長の母が示した娘への行動は、年長個体の教育行動として評定してよいかもわからない。20歳を超えたニホンザルは繁殖能力が低下し、老ザルと言われる。このニホンザルを対象として、老化に伴う認知能力の低下のプロセスと社会行動の変化を実験と行動観察によって明らかにすること、人口学的資料から老体の社会的存在意義を探ること、また、ニホンザルよりも進化的にヒトに近縁のゴリラについても加齢に関係した社会行動の変容を明らかにすることが、本研究の目的である。野外集団を対象とした研究:老齢オスは数年に渡り特定のメスとの親和的な社会関係を持続している。しかし、交尾期においては、別のメスとの持続的な交尾を伴った関係が確認された。射精を伴う交尾を確認したが、繁殖に結びつくかどうかは不明である。高位メスは老齢になっても、依然として、若い高齢のメスと同等の毛づくろい関係などを維持していたが、下位メスは老齢になると、孤立傾向が著しかった。すなわち、老化のプロセスは社会的順位によって異なることが明瞭であった。また、高位のメスが祖母として生存していることは、その孫の生後1年間の生存に有利に働くことも確認された。老齢メスを対象とした学習実験:野外では25歳を超えると生存が極めてまれになるが、飼育環境下で35歳になるメスの空間記憶能力を実験的に調べた。当該の能力は、若い個体に比べて極めて劣っているが、それでも学習が促進することも確認された。また、毎年継続的な学習訓練を受けていると、同様の能力は、25歳を超えても実験開始時の能力が維持される可能性が強いことが縦断的研究から明らかになりつつある。
KAKENHI-PROJECT-11610078
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11610078
熊本地震における医療支援活動の振り返りと、今後への提言
本年度は医師を対象にアンケート調査を行った。九州全県の県医師会の協力を得て、各県の会員を中心に送付した。送付数10,014、回収総数2,866、約30%の回収率であり、うち60%余りが診療所に属し、幅広い経験年数、様々な専門分野の方々が回答していた。回答者の14.7%は熊本県内が仕事先だった。回答者の13.6%が支援に参加した経験があり、その約半分(49.1%)は、医療機関での診療支援活動を行っていた。災害支援活動のための準備状況について、熊本の医師(K群)は、九州他県の医師(O群)と比べ、有意に高い割合で肯定的に答えていた。周囲のサポートについても、K群は肯定的に答えていた。支援の参加に重要、影響を与えると思われる要因について、O群はK群と比べ所属組織の方針、上司の理解、同僚の協力など、様々な周囲の要因について"とても思う"と答えた人の割合が多かった。支援に参加するために、支給、準備されるべきものについて、違いはなかった。今後の支援活動について、自然災害に対しては、地震を除き、K群とO群で、支援についての意思に明らかな違いを認められなかった。人為災害も、テロを除いてK群とO群に回答の違いはなかった。自然災害と比べ人為災害への支援に参加する可能性は、高くないと思われた。今後の災害発生時、支援に行くことが可能な長さについて、3日以内が40%、一週間以内を加えると計80%であった。これは、実際に支援に行った人の経験と、大きな違いはなかった。K群はO群と比べて、積極的に災害支援に参加する意思を示していた。K群はO群と比べて、積極的に災害支援に参加する意思を示していた。自然災害の被災経験者の割合も高く、これらは熊本地震を経験した影響による可能性があろう。また医師としての経験年数が浅いと、より積極的に支援に参加する結果となった。本年度行ったアンケート調査では、十分な数、内容の、データを得ることが出来た。今後は、本年度得られたデータを基に、より詳細な解析、検討を進め、関係学会(国際学会)での発表や、論文へのまとめを行う予定である。平成29年度は、先行研究の調査、研究遂行手順の確認、研究対象としての参加者リクルート手順の確認や協力依頼、調査内容の確認と決定、また調査質問用紙の作成を行った。本研究調査への協力を依頼する予定の熊本県医師会の担当者と、医師会会員への研究協力のためのリクルートを行う手順等について、討議を行ってきた。さらに本研究の研究協力者として、国立病院機構災害医療センター災害医療部福島復興支援室、小早川義貴医師の協力を新たに得て、質問内容の検討や質問用紙作成を行った。予定していた医師会会員への研究参加のためのリクルートに時間がかかり、やや進捗は当初の計画が遅れている。現在、調査用紙、質問用紙等の準備が終わり、学内の倫理委員会へ申請する準備を整えているところである。本年度は医師を対象にアンケート調査を行った。九州全県の県医師会の協力を得て、各県の会員を中心に送付した。送付数10,014、回収総数2,866、約30%の回収率であり、うち60%余りが診療所に属し、幅広い経験年数、様々な専門分野の方々が回答していた。回答者の14.7%は熊本県内が仕事先だった。回答者の13.6%が支援に参加した経験があり、その約半分(49.1%)は、医療機関での診療支援活動を行っていた。災害支援活動のための準備状況について、熊本の医師(K群)は、九州他県の医師(O群)と比べ、有意に高い割合で肯定的に答えていた。周囲のサポートについても、K群は肯定的に答えていた。支援の参加に重要、影響を与えると思われる要因について、O群はK群と比べ所属組織の方針、上司の理解、同僚の協力など、様々な周囲の要因について"とても思う"と答えた人の割合が多かった。支援に参加するために、支給、準備されるべきものについて、違いはなかった。今後の支援活動について、自然災害に対しては、地震を除き、K群とO群で、支援についての意思に明らかな違いを認められなかった。人為災害も、テロを除いてK群とO群に回答の違いはなかった。自然災害と比べ人為災害への支援に参加する可能性は、高くないと思われた。今後の災害発生時、支援に行くことが可能な長さについて、3日以内が40%、一週間以内を加えると計80%であった。これは、実際に支援に行った人の経験と、大きな違いはなかった。K群はO群と比べて、積極的に災害支援に参加する意思を示していた。K群はO群と比べて、積極的に災害支援に参加する意思を示していた。自然災害の被災経験者の割合も高く、これらは熊本地震を経験した影響による可能性があろう。また医師としての経験年数が浅いと、より積極的に支援に参加する結果となった。本年度行ったアンケート調査では、十分な数、内容の、データを得ることが出来た。本年度は、倫理委員会の審査後、調査用紙の配布、回収、及び結果集計の後、解析を行い、専門学会での発表、および専門誌への論文投稿を行う。
KAKENHI-PROJECT-17K19822
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K19822
熊本地震における医療支援活動の振り返りと、今後への提言
今後は、本年度得られたデータを基に、より詳細な解析、検討を進め、関係学会(国際学会)での発表や、論文へのまとめを行う予定である。本研究の中心であるアンケート調査を行うための費用が掛かるために、次年度使用額が生じている。本年度得られたデータを基に、より詳細な解析、検討を進め、関係学会(国際学会)での発表、英語論文へのまとめを行う予定である。
KAKENHI-PROJECT-17K19822
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K19822
ニュートリノ相互作用を規定する対称性の解明
ニュートリノの非常に小さな質量の獲得には弱い相互作用をしない右巻きニュートリノがその根本にあると考えられており、右巻きニュートリノの質量の起源がニュートリノ質量起源の本質である。本研究では、初期宇宙で起こった右巻きニュートリノに質量を生成する真空の相転移により生成される重力波観測を通じて、重い右巻きニュートリノの質量起源となる高エネルギー領域でのニュートリノの相互作用を規定するゲージ対称性を解明する。ニュートリノの非常に小さな質量の獲得には弱い相互作用をしない右巻きニュートリノがその根本にあると考えられており、右巻きニュートリノの質量の起源がニュートリノ質量起源の本質である。本研究では、初期宇宙で起こった右巻きニュートリノに質量を生成する真空の相転移により生成される重力波観測を通じて、重い右巻きニュートリノの質量起源となる高エネルギー領域でのニュートリノの相互作用を規定するゲージ対称性を解明する。
KAKENHI-PUBLICLY-19H05091
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-19H05091
衛星搭載風ライダーによる風高度分布観測の空間分解能最適化に関する研究
衛星搭載ドップラー風ライダーより高い空間分解能をもち、かつ、技術的に開発可能なDWLによる複数シナリオの風データを疑似的に作成(シミュレート)し、データ同化実験を行うことによって数値予報へのインパクトについて調べ、数値予報に最適な衛星搭載DWLの空間分解能について明らかにする。そのために、高い空間分解能を有する気象場(疑似真値場)とエアロゾル場の構築とDWL衛星シミュレータとデータ同化システムの高度化を図る。衛星搭載ドップラー風ライダーより高い空間分解能をもち、かつ、技術的に開発可能なDWLによる複数シナリオの風データを疑似的に作成(シミュレート)し、データ同化実験を行うことによって数値予報へのインパクトについて調べ、数値予報に最適な衛星搭載DWLの空間分解能について明らかにする。そのために、高い空間分解能を有する気象場(疑似真値場)とエアロゾル場の構築とDWL衛星シミュレータとデータ同化システムの高度化を図る。
KAKENHI-PROJECT-19K04849
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K04849
早期胃癌におけるヘリコバクター・ピロリの関与
早期胃癌(m+sm)73例(男/女=49/24:3581才、平均62.9才:分化型/未分化型=46/27)を検討対象とした。1、H.pylori感染率および菌分布培養陽性あるいは血中抗体価陽性例をH.Pylori感染関連症例とし、分化型(44/46=95.7%)未分化型(27/27=100%)と、強い相関がみられた。菌分布は、分化型(一/体部のみ分布/全体分布=8/16/22)未分化型(2/4/21)と未分化型で胃内に広く菌が分布していた。癌巣周囲の菌分布は30-50才までは両者に差がなく、60才より分化型で有意に癌周囲の菌分布が低下した。2、背景粘膜の萎縮度分化型、未分化型を比較すると、幽門部の萎縮度、腺境界、Pepsinogen I/II比いずれも分化型の方が萎縮の進展がみられた。しかし、幽門部の萎縮腸上皮化生の程度をみると、未分化型でも中等度以上の変化があり、いずれの型においてもある程度の萎縮が背景にみられる事が判明した。また、癌巣周囲の萎縮腸上皮化生も分化型93.5%、未分化型63.0%に確認でき、30-50才までは両者に差はみられなかった。3、H.pylori株の特性(1)空胞化毒素活性は分離された菌の33/45(73.3%)(分化型/未分化型=76.9/68.4%)と差がみられなかった。この頻度は、萎縮性胃炎患者由来株の活性陽性率と同等であった。(2)vacAタイピングは、そのほとんどがs1/m1 type、cagAはほとんどの株に陽性であった。以上の結果から、本邦におけるH.pylori分離株はほとんどが空胞化毒素産生株で障害性の強い株である。今回のアッセイ系での毒素産生率は萎縮性胃炎分離株と同等であった。一方、胃癌の背景をみると分化、未分化いずれも中等度以上の萎縮を背景としており、いずれの癌でも、萎縮化生性変化が引き起こされる過程にH.pyloriが強く関連している可能性が導き出せた。早期胃癌(m+sm)73例(男/女=49/24:3581才、平均62.9才:分化型/未分化型=46/27)を検討対象とした。1、H.pylori感染率および菌分布培養陽性あるいは血中抗体価陽性例をH.Pylori感染関連症例とし、分化型(44/46=95.7%)未分化型(27/27=100%)と、強い相関がみられた。菌分布は、分化型(一/体部のみ分布/全体分布=8/16/22)未分化型(2/4/21)と未分化型で胃内に広く菌が分布していた。癌巣周囲の菌分布は30-50才までは両者に差がなく、60才より分化型で有意に癌周囲の菌分布が低下した。2、背景粘膜の萎縮度分化型、未分化型を比較すると、幽門部の萎縮度、腺境界、Pepsinogen I/II比いずれも分化型の方が萎縮の進展がみられた。しかし、幽門部の萎縮腸上皮化生の程度をみると、未分化型でも中等度以上の変化があり、いずれの型においてもある程度の萎縮が背景にみられる事が判明した。また、癌巣周囲の萎縮腸上皮化生も分化型93.5%、未分化型63.0%に確認でき、30-50才までは両者に差はみられなかった。3、H.pylori株の特性(1)空胞化毒素活性は分離された菌の33/45(73.3%)(分化型/未分化型=76.9/68.4%)と差がみられなかった。この頻度は、萎縮性胃炎患者由来株の活性陽性率と同等であった。(2)vacAタイピングは、そのほとんどがs1/m1 type、cagAはほとんどの株に陽性であった。以上の結果から、本邦におけるH.pylori分離株はほとんどが空胞化毒素産生株で障害性の強い株である。今回のアッセイ系での毒素産生率は萎縮性胃炎分離株と同等であった。一方、胃癌の背景をみると分化、未分化いずれも中等度以上の萎縮を背景としており、いずれの癌でも、萎縮化生性変化が引き起こされる過程にH.pyloriが強く関連している可能性が導き出せた。(結果)1997年までに、早期胃癌(m+sm)73例を検討しえた。方法論に基づいて、切除標本から濾紙を用いて粘液を採取、内視鏡的フェノールレッド法に準じて、H.pyloriの分布および癌巣との関係、胃粘膜萎縮との関係を検討した。赤変部位は培養で菌の有無を確認し、また血清IgG抗体価にても感染の有無を検索した。歯の障害因子として、培養された菌の空胞化毒素に注目し、Hela細胞に対する空胞化の有無を検討した。以上の症例において、H.pylori陽性率は95.9%(分化型93.5%,未分化型100%)と、癌との間に強い関連がみられた。
KAKENHI-PROJECT-09670526
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09670526
早期胃癌におけるヘリコバクター・ピロリの関与
未分化型癌では分化型癌に対し、背景胃粘膜萎縮が弱いものの、幽門部組織に中等度の萎縮腸上皮化生性変化が認められた。また、癌と接する周囲粘膜組織にも分化型、未分化型ともに多くの症例で、中等度以上の萎縮脇上皮化生変化が確認された。一方、分化型癌においては、未分化型に比べ、H.pylori分布が有意に限局、縮小される傾向を認めた。菌の障害因子として、現在までの検討では、空胞化毒素活性が、分化型20/26(76.9%)、未分化型13/19(68.4%)に認められた。(考察)癌の組織型にかかわらず、高いH.pylori陽性率で、かつ背景の胃粘膜および癌周囲の胃粘膜に中等度以上の萎縮腸上皮化生性変化が認められる事から、H.pyiorlは胃癌発生における初期の萎縮腸上皮化生形成の段階に強くかかわっているのではないか、という事が示唆された。また、空胞化毒素活性陽性率は、萎縮性胃炎由来株とほぼ同程度であり、H.pyloriの有する空胞化毒素が、萎縮の進展から発癌へも関与する可能性が示唆された。今後、さらに、その他の障害因子の検討、および癌症例と年齢性をマッチさせた群における空胞化毒素活性ならびにその他の障害因子について、検討を要すると考えられた。早期胃癌(m+sm)73例(男/女=49/24:35-81才、平均62.9才:分化型/未分化型=46/27)を検討対象とした。1、H.pylori感染率および菌分布培養陽性あるいは血中抗体価陽性例をH.pylori感染関連症例とし、分化型(44/46=95.7%)未分化型(27/27=100%)と、強い相関がみられた。菌分布は、分化型(-/体部のみ分布/全体分布=8/16/22)未分化型(2/4/21)と未分化型で胃内に広く菌が分布していた。癌巣周囲の菌分布は30-50才までは両者に差がなく、60才より分化型で有意に癌周囲の菌分布が低下した。2、背最粘膜の萎縮度分化型、未分化型を比較すると、幽門部の萎縮度、腺境界、Pepsinogen I/II比いずれも分化型の方が萎縮の進展がみられた。しかし、幽門部の萎縮腸上皮化生の程度をみると、未分化型でも中等度以上の変化があり、いずれの型においてもある程度の萎縮が背景にみられる事が判明した。また、癌巣周囲の萎縮腸上皮化生も分化型93.5%、未分化型63.0%に確認でき、30-50才までは両者に差はみられなかった。3、H.pylori株の特性(1)空胞化毒素活性は分離された菌の33/45(73.3%)(分子型/未分化型=76.9/68.4%)と差がみられなかった。この頻度は、萎縮性胃炎患者由来株の活性陽性率と同等であった。(2)vacAタイピングは、そのほとんどがs1/m1 type、cagAはほとんどの株に陽性であった。以上の結果から、本邦におけるH.pylori分離株はほとんどが空胞化毒素産生株で障害性の強い株である。今回のアッセイ系での毒素産生率は萎縮性胃炎分離株と同等であった。一方、胃癌の背景をみると分化、未分化いずれも中等度以上の萎縮を背景としており、いずれの癌でも、萎縮化生性変化が引き起こされる過程にH.Pyloriが強く関連している可能性が導き出せた。
KAKENHI-PROJECT-09670526
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09670526
生物学的モニタリングにおける高分解能核磁気共鳴の利用の研究
高分解能核磁気共鳴スペクトル法の医学への応用については、急速に装置が普及してきたため、広範囲に検討をされている分野であるが、予防医学の方面では現在の所報告はほとんど見あたらない。その理由の一つに感度の問題がある。高磁場の採用により感度は飛躍的に向上してきたが、微量代謝成分を定量出来るほどには達していない。第二にシグナルの帰属の問題がある。装置が汎用化したとはいっても微量成分の帰属には高度な知識と技術を必要とする。これらの問題点を解決するための方策を今回は追求してきた。NMRのピークの帰属をする方法の一つに、常磁性のプローブを用いる方法がある。2価のイオンとして影響が局在して観測できるプローブとしてNi(II)を用いた。また、特定の機能をもつ常磁性プローブとしてCr(III)ATPを用いた。これによりピルビン酸キナーゼのヒスチジン残基のうち2価イオンの結合部位と、ATP結合部位の近傍に存在するものを特定することが出来た。さらに、緩和時間T_1を測定することにより、ヒスチジンC-2プロトンとの距離を計算することができた。高分解能核磁気共鳴スペクトル法の医学への応用については、急速に装置が普及してきたため、広範囲に検討をされている分野であるが、予防医学の方面では現在の所報告はほとんど見あたらない。その理由の一つに感度の問題がある。高磁場の採用により感度は飛躍的に向上してきたが、微量代謝成分を定量出来るほどには達していない。第二にシグナルの帰属の問題がある。装置が汎用化したとはいっても微量成分の帰属には高度な知識と技術を必要とする。これらの問題点を解決するための方策を今回は追求してきた。NMRのピークの帰属をする方法の一つに、常磁性のプローブを用いる方法がある。2価のイオンとして影響が局在して観測できるプローブとしてNi(II)を用いた。また、特定の機能をもつ常磁性プローブとしてCr(III)ATPを用いた。これによりピルビン酸キナーゼのヒスチジン残基のうち2価イオンの結合部位と、ATP結合部位の近傍に存在するものを特定することが出来た。さらに、緩和時間T_1を測定することにより、ヒスチジンC-2プロトンとの距離を計算することができた。
KAKENHI-PROJECT-05807034
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05807034
認知機能改善に焦点を当てた認知行動的技法に基づく抑うつの再発予防プログラムの検討
今年度は,うつ病の再発をもたらす認知的脆弱性(認知機能障害,および認知的反応性)に関して,認知神経科学的観点からの実験的-縦断的検討を行った。具体的には,昨年度に引き続き,(a)神経心理学的手法を用いて認知機能障害を検討した研究1(山本・菅谷・嶋田, 2011, Yamamoto & Shimada, 2011, Yamamoto & Shimada, in press),(b)うつ病に特異的な認知機能障害のアセスメント測度の整備を行った研究2(under review),(c)神経生理学的・認知心理学的手法を用いて認知機能障害を検討した研究3(山本・菅谷・嶋田・熊野,2011)を実施し,今年度は新たに(d)脆弱性が抑うつ症状の増大に及ぼす影響を縦断的に検討した研究4(under review)を遂行した。研究13の結果は,昨年度に報告した結果を支持するものであり,研究1の結果から,大うつ病エピソードを経験した者においては,未経験者に比べ,認知機能が有意に低いことが確認され,特に高次な認知機能において顕著であった。また,研究2の結果から,本研究課題で作成したアセスメント測度が,大うつ病エピソード経験者の認知的脆弱性の測定にとって有用であることが示唆された。さらに,研究3の結果,大うつ病エピソード経験者のみにおいて,感情刺激に対する特異的な脳波活動が確認され,意識下において自動的に生起する認知的処理過程が脆弱性生起の背景にある可能性が示唆された。これらの脆弱性の影響を縦断的に検討した研究4の結果,本研究で測定した認知的脆弱性が抑うつ症状の増大に及ぼす影響性が確認され,うつ病の再発にこれらの脆弱性が大きな影響を及ぼすことが示唆された。以上の研究成果は,うつ病再発をもたらす脆弱性の病態構造,および再発に至るメカニズムを理解するための有用な知見の一助になると考えられ,再発予防を目的とした介入方法を検討するうえで非常に意義深いと考えられる。当初の目的であった研究はすべて滞りなく遂行され,研究目的であった(a)「認知機能の低下が抑うつ症状に及ぼす影響の検討」,および(b)「再発の脆弱性となる認知機能の背景メカニズムに焦点を当てた,臨床心理学的介入方法の考察」を期間内に行えたため。今後は,うつ病患者をはじめとした臨床データを用いた検討を行うことで,本研究知見の精緻化,および応用可能性について,さらなる考察が可能になると考えられる。そして,こうした研究成果に基づいて,認知的脆弱性に焦点を当てた臨床心理学的介入方法を検討することで,うつ病の再発予防を目的とした新たなアプローチ方法の構築につながることが期待される。今年度は,大うつ病エピソードを経験した者が有する認知機能障害に関して,先行研究の広範なレビューを行うとともに,認知神経科学的観点からの実験的検討を行った。具体的には,大うつ病性障害寛解者における認知機能障害の有無を考察した論文を概観し,国内学術雑誌に発表した(山本他,2011)。その上で,(a)神経心理学的手法を用いて認知機能障害を検討した研究1(海外学術雑誌に投稿中),(b)うつ病に特異的な認知機能障害のアセスメント測度の整備を行った研究2(データ収集中),(c)生理的・認知心理学的手法を用いて認知機能障害を検討した研究3(データ収集中)を実施した。研究1の結果から,大うつ病エピソードを経験した者においては,未経験者に比べ,認知機能が有意に低いことが確認され,特に高次な認知機能において顕著であった(山本・嶋田,2010a, b, Yamamoto & Shimada, submitted)。また,研究2の予備的解析の結果から,本研究課題で作成しているアセスメント測度が,うつ病寛解者の認知機能の測定にとって鋭敏であることが示唆された。さらに,研究3の予備的解析の結果,エピソード経験者のみにおいて,感情刺激に対する特異的な情報処理反応が脳波指標から確認された。以上の研究成果は,大うつ病エピソード経験者の認知機能障害の性質を理解する際において,有用な知見の一助となると考えられ,うつ病の再発をもたらすプロセスを考察する上で意義深いと考えられる。これらの成果は,当初の計画の基礎となる部分であり,次年度につながる研究を遂行したと判断できる。今年度は,うつ病の再発をもたらす認知的脆弱性(認知機能障害,および認知的反応性)に関して,認知神経科学的観点からの実験的-縦断的検討を行った。具体的には,昨年度に引き続き,(a)神経心理学的手法を用いて認知機能障害を検討した研究1(山本・菅谷・嶋田, 2011, Yamamoto & Shimada, 2011, Yamamoto & Shimada, in press),(b)うつ病に特異的な認知機能障害のアセスメント測度の整備を行った研究2(under review),(c)神経生理学的・認知心理学的手法を用いて認知機能障害を検討した研究3(山本・菅谷・嶋田・熊野,2011)を実施し,今年度は新たに(d)脆弱性が抑うつ症状の増大に及ぼす影響を縦断的に検討した研究4(under review)を遂行した。研究13の結果は,昨年度に報告した結果を支持するものであり,研究1の結果から,大うつ病エピソードを経験した者においては,未経験者に比べ,認知機能が有意に低いことが確認され,特に高次な認知機能において顕著であった。
KAKENHI-PROJECT-10J06038
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J06038
認知機能改善に焦点を当てた認知行動的技法に基づく抑うつの再発予防プログラムの検討
また,研究2の結果から,本研究課題で作成したアセスメント測度が,大うつ病エピソード経験者の認知的脆弱性の測定にとって有用であることが示唆された。さらに,研究3の結果,大うつ病エピソード経験者のみにおいて,感情刺激に対する特異的な脳波活動が確認され,意識下において自動的に生起する認知的処理過程が脆弱性生起の背景にある可能性が示唆された。これらの脆弱性の影響を縦断的に検討した研究4の結果,本研究で測定した認知的脆弱性が抑うつ症状の増大に及ぼす影響性が確認され,うつ病の再発にこれらの脆弱性が大きな影響を及ぼすことが示唆された。以上の研究成果は,うつ病再発をもたらす脆弱性の病態構造,および再発に至るメカニズムを理解するための有用な知見の一助になると考えられ,再発予防を目的とした介入方法を検討するうえで非常に意義深いと考えられる。当初の目的であった研究はすべて滞りなく遂行され,研究目的であった(a)「認知機能の低下が抑うつ症状に及ぼす影響の検討」,および(b)「再発の脆弱性となる認知機能の背景メカニズムに焦点を当てた,臨床心理学的介入方法の考察」を期間内に行えたため。今後は,うつ病患者をはじめとした臨床データを用いた検討を行うことで,本研究知見の精緻化,および応用可能性について,さらなる考察が可能になると考えられる。そして,こうした研究成果に基づいて,認知的脆弱性に焦点を当てた臨床心理学的介入方法を検討することで,うつ病の再発予防を目的とした新たなアプローチ方法の構築につながることが期待される。
KAKENHI-PROJECT-10J06038
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J06038
コミュニティ・オリエンテーション:教育プログラムの開発及び影響要因の探索
本研究の目的は、多様な保健課題に医療・健康増進の両面から対応するフィジーの保健師が地域の情報を効果的に収集・分析し、分析された情報を活かして活動を行う能力、即ちコミュニティ・オリエンテーションを向上するために教育プログラムを開発・検証することである。教育プログラムは本研究に先立ち開発されたコミュニティ・オリエンテーションを測定する尺度を用いて行う。当初計画に基づき、1)ワーキンググループの結成、2)教育プログラムに関するニーズ調査、3) 2016年度調査の分析を行った。以下、概略を記述する。1)フィジー保健省公衆衛生部長、疫学/統計局長、看護部長及び看護管理職、フィジー大学看護学部長等が参加し、教育プログラム検討会を行った。保健省幹部より「多くの海外研究に協力したが教育プログラムとして成果を還元する研究は初めて」との賞賛を得て、研究への協力が了承された。議論の結果、プログラム案が決定された。当初計画では試験運用のためにに保健師のみを対象としたが、保健省の希望から伝達講習をするために指導者も対象とすることとなった。次に、保健省看護部長等からなるワーキンググループが結成され、プログラム試行時の運営実施方法が決定された。教育プログラム案および評価方法について有識者からスーパーバイズを受けた。2)保健師管理者および現任教育担当官、保健師を対象としたインタビューにより、1現在の現任教育はWHO、JICA等のドナーが主催する生活習慣病等の課題プログラムに関する内容で本研究のようにプログラムを管理する研修は行われていなかったこと、2地域の情報を活用して事業化することについては苦手意識が強い等、本教育プログラムへのニーズが高いことが確認された。また、フィジー大学看護学部においても教育プログラムの導入を希望された。3)2016年度調査の調査を分析し、結果を学会発表において報告した。2017年度の計画は記述の通り、1)ワーキンググループの結成、2)教育プログラムに関するニーズ調査、3) 2016年度調査の分析であった。本研究に関係するフィジー側関係者から研究への理解および協力を得ることができ、上記計画は全て終了することができた。また、有識者の助言も得て実行可能で効果の高い教育プログラムを作成することができた。フィジー大学看護学部長を巻き込んだことにより、現役の保健師のみではなく、看護学生にも波及する可能性も高まった。研究プログラム試行に先立ち、フィジー保健省の倫理審査に時間がかかることが予測されたが、プログラム試行に先立ち検討会を開催したことにより倫理委員長の理解が促進され、遅延することなく審査が終了した。以上より教育プログラムに関する準備が滞りなくすべて整ったことより、本研究はおおむね順調に進展していると言える。当初の研究計画に従い、コミュニティ・オリエンテーションを向上させる教育プログラムを実施し、その効果を検討するために、以下の研究の推進方策を進める。フィジーに渡航し、保健師、指導者を対象として教育プログラムを開催する予定である。教育プログラム前にコミュニティ・オリエンテーションに対する認識・実施の程度について、教育プログラム後には認識の変化について質問紙調査を実施する予定である。影響要因に関しては教育プログラムの中でフォーカスグループディスカッション手法を用いてデータを収集し、分析する予定である。研究で得られた成果を国内外の学会および学術雑誌にて報告する予定である。本研究の目的は、多様な保健課題に医療・健康増進の両面から対応するフィジーの保健師が地域の情報を効果的に収集・分析し、分析された情報を活かして活動を行う能力、即ちコミュニティ・オリエンテーションを向上するために教育プログラムを開発・検証することである。教育プログラムは本研究に先立ち開発されたコミュニティ・オリエンテーションを測定する尺度を用いて行う。当初計画に基づき、1)ワーキンググループの結成、2)教育プログラムに関するニーズ調査、3) 2016年度調査の分析を行った。以下、概略を記述する。1)フィジー保健省公衆衛生部長、疫学/統計局長、看護部長及び看護管理職、フィジー大学看護学部長等が参加し、教育プログラム検討会を行った。保健省幹部より「多くの海外研究に協力したが教育プログラムとして成果を還元する研究は初めて」との賞賛を得て、研究への協力が了承された。議論の結果、プログラム案が決定された。当初計画では試験運用のためにに保健師のみを対象としたが、保健省の希望から伝達講習をするために指導者も対象とすることとなった。次に、保健省看護部長等からなるワーキンググループが結成され、プログラム試行時の運営実施方法が決定された。教育プログラム案および評価方法について有識者からスーパーバイズを受けた。2)保健師管理者および現任教育担当官、保健師を対象としたインタビューにより、1現在の現任教育はWHO、JICA等のドナーが主催する生活習慣病等の課題プログラムに関する内容で本研究のようにプログラムを管理する研修は行われていなかったこと、2地域の情報を活用して事業化することについては苦手意識が強い等、本教育プログラムへのニーズが高いことが確認された。また、フィジー大学看護学部においても教育プログラムの導入を希望された。3)2016年度調査の調査を分析し、結果を学会発表において報告した。2017年度の計画は記述の通り、1)ワーキンググループの結成、2)教育プログラムに関するニーズ調査、3) 2016年度調査の分析であった。本研究に関係するフィジー側関係者から研究への理解および協力を得ることができ、上記計画は全て終了することができた。また、有識者の助言も得て実行可能で効果の高い教育プログラムを作成することができた。フィジー大学看護学部長を巻き込んだことにより、現役の保健師のみではなく、看護学生にも波及する可能性も高まった。
KAKENHI-PROJECT-17H07223
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H07223
コミュニティ・オリエンテーション:教育プログラムの開発及び影響要因の探索
研究プログラム試行に先立ち、フィジー保健省の倫理審査に時間がかかることが予測されたが、プログラム試行に先立ち検討会を開催したことにより倫理委員長の理解が促進され、遅延することなく審査が終了した。以上より教育プログラムに関する準備が滞りなくすべて整ったことより、本研究はおおむね順調に進展していると言える。当初の研究計画に従い、コミュニティ・オリエンテーションを向上させる教育プログラムを実施し、その効果を検討するために、以下の研究の推進方策を進める。フィジーに渡航し、保健師、指導者を対象として教育プログラムを開催する予定である。教育プログラム前にコミュニティ・オリエンテーションに対する認識・実施の程度について、教育プログラム後には認識の変化について質問紙調査を実施する予定である。影響要因に関しては教育プログラムの中でフォーカスグループディスカッション手法を用いてデータを収集し、分析する予定である。研究で得られた成果を国内外の学会および学術雑誌にて報告する予定である。
KAKENHI-PROJECT-17H07223
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H07223
有機カチオントランスポーターOCT2の内在性機能プローブ探索および生理機能の解明
トランスポーターは医薬品の体内動態における重要な決定因子であり、その阻害による薬物間相互作用の発生リスクを早期に把握するための方法論の開発は、医薬品開発の加速および安全性担保のために重要である。申請者は、腎排泄型の内在性代謝物であるN1-methyladenosine(m1A)について、有機カチオントランスポーターOCT2およびMATE2-Kが尿細管取り込み・排出を担うことを実験動物レベルで明らかにしてきた。そこで、m1Aがこれらの薬物トランスポーターの機能を反映するプローブとして利用できる可能性を検討すべく、研究を遂行した。初年度の具体的な成果として、m1Aの腎排泄におけるOCT2/MATE2-Kの特異性を、腎臓の取り込みトランスポーターOATsの安定発現細胞や、排出トランスポーターBCRP、P-gpのノックアウトマウスを用いた実験から明らかにした。また、チロシンキナーゼ阻害剤がOCT2を阻害しうるとの報告に基づき、パゾパニブ、エルロチニブの投与患者の検体を収集したが、投与前後で血漿中m1A濃度の有意な上昇は認められなかった。このことは、両薬物の蛋白結合率の高さから、遊離型濃度としてOCT2を阻害する血漿中濃度に達していなかったことが原因と考えられた。他方、トランスポーターの機能を左右する要因として、発現量の個人差も重要である。既報のゲノムワイド関連解析では、m1Aの血清中濃度はOCT2の遺伝子変異のみと相関し、その中にエキソンおよびプロモーター中の変異は含まれていなかった。レポーターアッセイの結果、イントロン中で当該の変異が集中する1kbp程度の領域がエンハンサー活性をもつことがわかり、責任転写因子を探索中である。また、3'非翻訳領域中の変異周辺に結合しうるmicroRNAの発現ベクターおよび定量系を作製し、OCT2の発現に及ぼす影響を検証中である。m1AがOCT2/MATE2-Kのプローブとして利用できる可能性を検討するため、動物実験・臨床データを積み上げ、現在のところ優れた選択性を示すことを確認し、国際誌への論文投稿を行った。アミノ酸置換を伴うOCT2の変異体については、m1Aの輸送能が野生型と同等であることが確認されたことから、当該の変異に着目したヒト臨床試験は行わないこととした。また、MATE阻害剤ピリメタミンの用量漸増試験についてプロトコルを策定し、今夏実施予定である。他方、m1Aの血清中濃度に関するゲノムワイド関連解析のデータをもとに、OCT2の発現制御を担っている可能性のある遺伝子領域を新規に見出した。薬物動態の個人差を司る要因を新たに明らかにすべく、責任転写因子やmicroRNAの同定に向けて引き続き研究を推進する。MATE阻害剤ピリメタミンの用量漸増試験を製薬企業との共同研究により実施する。OCT2およびMATEの選択的な基質薬であるメトホルミンを同時投与し、AUCおよび腎クリアランスの変動をm1Aと比較評価する。また、m1Aの血漿中濃度推移および尿中排泄のデータについて数理モデル解析を行い、ピリメタミン投与による動態変動を再現できるようなin vivo阻害定数を算出するとともに、その阻害定数を用いてメトホルミンの動態変動を再現できるか否かを検証する。試験に先立ち、メトホルミンを基質とした場合とm1Aを基質とした場合とで、ピリメタミンのMATE2-K阻害定数がほぼ同等であることを、トランスポーター安定発現細胞を用いた取り込み試験で確認している。OCT2の発現制御に関しては、エンハンサー領域の各変異により結合能が変動しうる転写因子をTranscription factor Affinity Prediction(TRAP)解析によって検索し、レポーターアッセイやゲルシフトアッセイを行うことで、責任転写因子の同定を目指す。また、3'非翻訳領域を組み込んだOCT2の安定発現系を樹立し、候補microRNAの共発現がOCT2の発現量に及ぼす影響を確かめる。さらに、OCT2を内因性に発現しているヒト腎臓由来細胞株に当該の変異を導入し、OCT2の発現量が変動するか否かを検証する。トランスポーターは医薬品の体内動態における重要な決定因子であり、その阻害による薬物間相互作用の発生リスクを早期に把握するための方法論の開発は、医薬品開発の加速および安全性担保のために重要である。申請者は、腎排泄型の内在性代謝物であるN1-methyladenosine(m1A)について、有機カチオントランスポーターOCT2およびMATE2-Kが尿細管取り込み・排出を担うことを実験動物レベルで明らかにしてきた。そこで、m1Aがこれらの薬物トランスポーターの機能を反映するプローブとして利用できる可能性を検討すべく、研究を遂行した。初年度の具体的な成果として、m1Aの腎排泄におけるOCT2/MATE2-Kの特異性を、腎臓の取り込みトランスポーターOATsの安定発現細胞や、排出トランスポーターBCRP、P-gpのノックアウトマウスを用いた実験から明らかにした。また、チロシンキナーゼ阻害剤がOCT2を阻害しうるとの報告に基づき、パゾパニブ、エルロチニブの投与患者の検体を収集したが、投与前後で血漿中m1A濃度の有意な上昇は認められなかった。このことは、両薬物の蛋白結合率の高さから、遊離型濃度としてOCT2を阻害する血漿中濃度に達していなかったことが原因と考えられた。他方、トランスポーターの機能を左右する要因として、発現量の個人差も重要である。既報のゲノムワイド関連解析では、m1Aの血清中濃度はOCT2の遺伝子変異のみと相関し、その中にエキソンおよびプロモーター中の変異は含まれていなかった。
KAKENHI-PROJECT-18J15304
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J15304
有機カチオントランスポーターOCT2の内在性機能プローブ探索および生理機能の解明
レポーターアッセイの結果、イントロン中で当該の変異が集中する1kbp程度の領域がエンハンサー活性をもつことがわかり、責任転写因子を探索中である。また、3'非翻訳領域中の変異周辺に結合しうるmicroRNAの発現ベクターおよび定量系を作製し、OCT2の発現に及ぼす影響を検証中である。m1AがOCT2/MATE2-Kのプローブとして利用できる可能性を検討するため、動物実験・臨床データを積み上げ、現在のところ優れた選択性を示すことを確認し、国際誌への論文投稿を行った。アミノ酸置換を伴うOCT2の変異体については、m1Aの輸送能が野生型と同等であることが確認されたことから、当該の変異に着目したヒト臨床試験は行わないこととした。また、MATE阻害剤ピリメタミンの用量漸増試験についてプロトコルを策定し、今夏実施予定である。他方、m1Aの血清中濃度に関するゲノムワイド関連解析のデータをもとに、OCT2の発現制御を担っている可能性のある遺伝子領域を新規に見出した。薬物動態の個人差を司る要因を新たに明らかにすべく、責任転写因子やmicroRNAの同定に向けて引き続き研究を推進する。MATE阻害剤ピリメタミンの用量漸増試験を製薬企業との共同研究により実施する。OCT2およびMATEの選択的な基質薬であるメトホルミンを同時投与し、AUCおよび腎クリアランスの変動をm1Aと比較評価する。また、m1Aの血漿中濃度推移および尿中排泄のデータについて数理モデル解析を行い、ピリメタミン投与による動態変動を再現できるようなin vivo阻害定数を算出するとともに、その阻害定数を用いてメトホルミンの動態変動を再現できるか否かを検証する。試験に先立ち、メトホルミンを基質とした場合とm1Aを基質とした場合とで、ピリメタミンのMATE2-K阻害定数がほぼ同等であることを、トランスポーター安定発現細胞を用いた取り込み試験で確認している。OCT2の発現制御に関しては、エンハンサー領域の各変異により結合能が変動しうる転写因子をTranscription factor Affinity Prediction(TRAP)解析によって検索し、レポーターアッセイやゲルシフトアッセイを行うことで、責任転写因子の同定を目指す。また、3'非翻訳領域を組み込んだOCT2の安定発現系を樹立し、候補microRNAの共発現がOCT2の発現量に及ぼす影響を確かめる。さらに、OCT2を内因性に発現しているヒト腎臓由来細胞株に当該の変異を導入し、OCT2の発現量が変動するか否かを検証する。
KAKENHI-PROJECT-18J15304
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J15304
疎粒度並列処理向き共有メモリ型計算機構に関する研究
本研究では、非数値処理の分野で再帰的なアルゴリズムを含む並列処理を効率よく実行することができる実行系の実現を目的とした。研究の方針としては、複数の並列実行中のプロセスにデータを分散させるのは困難であることから、データは共有する方針とし、また、そのまま実すると、実行の時間単位が小さくなってしまう細粒度のプロセスを効率よく実行できることのできる計算機構を設計し、実現した。具体的には、コンパイラというプログラム言語の変換系の内部処理を並列化することを題材として使用することにし、実際に、PL/0言語のコンパイラの動的なプロセス生成アルゴリズムに関して、これまでに行ってきた細粒度並列処理のアルゴリズムの動作の測定をシミュレータ上で行い、実行時にオーバヘッドとなっている部分を解析した。この結果に基づいて、プロセスの管理に関するオーバヘッドとアルゴリズムに起因するオーバヘッドに分けて分析した。さらに、この結果に基づいて、プロセスを“疎に"割り付ける疎粒度並列処理の方式の設計および、アルゴリズムの記述の方式を設計し、この方式に基づいて、実際に、PL/0コンパイラの意味処理部を再設計し、新しいコンパイラを実現して、コンパイラの意味処理における疎粒度並列処理の効果について評価を行い、新しい方式の有用さを確認した。本研究では、非数値処理の分野で再帰的なアルゴリズムを含む並列処理を効率よく実行することができる実行系の実現を目的とした。研究の方針としては、複数の並列実行中のプロセスにデータを分散させるのは困難であることから、データは共有する方針とし、また、そのまま実すると、実行の時間単位が小さくなってしまう細粒度のプロセスを効率よく実行できることのできる計算機構を設計し、実現した。具体的には、コンパイラというプログラム言語の変換系の内部処理を並列化することを題材として使用することにし、実際に、PL/0言語のコンパイラの動的なプロセス生成アルゴリズムに関して、これまでに行ってきた細粒度並列処理のアルゴリズムの動作の測定をシミュレータ上で行い、実行時にオーバヘッドとなっている部分を解析した。この結果に基づいて、プロセスの管理に関するオーバヘッドとアルゴリズムに起因するオーバヘッドに分けて分析した。さらに、この結果に基づいて、プロセスを“疎に"割り付ける疎粒度並列処理の方式の設計および、アルゴリズムの記述の方式を設計し、この方式に基づいて、実際に、PL/0コンパイラの意味処理部を再設計し、新しいコンパイラを実現して、コンパイラの意味処理における疎粒度並列処理の効果について評価を行い、新しい方式の有用さを確認した。
KAKENHI-PROJECT-05680263
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05680263
心筋分化過程における心筋細胞表面マーカーの探索とその機能解析
本研究の目的は、ES細胞から心筋細胞へ分化する過程における分化段階や細胞系列の異なる心筋細胞を区別することが可能な細胞表面マーカーを同定・解析し、これらのマーカーにより選別した心筋細胞の心筋再生への可能性を検討することである。ネオマイシンにより心筋細胞が選別可能なマウスES細胞ライン(Nkx2.5/NeoR ES細胞ライン)を用い、早期心筋分化マーカーの一つであるNkx2.5が欠損したES細胞由来心筋細胞(分化17日目)において発現レベルが有意に変化する遺伝子群をすでに同定した。Nkx2.5は心臓前駆細胞に発現し心筋分化を促進するため、同遺伝子群は心筋分化に伴って発現変化し、分化段階を区別できるマーカーである可能性があることから、同遺伝子群のうち細胞表面蛋白について心筋分化過程における発現変化をin votro ES細胞分化系とマウス胎生心で確認した。分化8日目までの胚様体において、Tgfβreceptor 3は36日目、Edg7は6日目において野生型ES細胞群に比べNkx2.5欠損ES細胞群でrealtime PCRの発現レベルの低下を認めた。また、胎生9.5日マウス心のin situ hybridizationにおいても、両遺伝子は心臓に発現し、Nkx2.5欠損マウスで発現レベルの低下を認めた。これらの結果から、両遺伝子は発生段階の心筋細胞においてNkx2.5依存的に発現変化する細胞表面マーカーである可能性が示唆された。今後は、EACSを用いてES細胞由来心臓前駆細胞における両遺伝子発現の解析、陽性細胞群の単離・培養、生着条件の検討を行い、心筋細胞における細胞表面マーカーとしての意義、心筋再生への可能性についてさらに検討を進める。本研究の目的は、ES細胞から心筋細胞へ分化する過程における分化段階や細胞系列の異なる心筋細胞を区別することが可能な細胞表面マーカーを同定・解析し、これらのマーカーにより選別した心筋細胞の心筋再生への可能性を検討することである。ネオマイシンにより心筋細胞が選別可能なマウスES細胞ライン(Nkx2.5/NeoR ES細胞ライン)を用い、早期心筋分化マーカーの一つであるNkx2.5が欠損したES細胞由来心筋細胞(分化17日目)において発現レベルが有意に変化する遺伝子群をすでに同定した。Nkx2.5は心臓前駆細胞に発現し心筋分化を促進するため、同遺伝子群は心筋分化に伴って発現変化し、分化段階を区別できるマーカーである可能性があることから、同遺伝子群のうち細胞表面蛋白について心筋分化過程における発現変化をin votro ES細胞分化系とマウス胎生心で確認した。分化8日目までの胚様体において、Tgfβreceptor 3は36日目、Edg7は6日目において野生型ES細胞群に比べNkx2.5欠損ES細胞群でrealtime PCRの発現レベルの低下を認めた。また、胎生9.5日マウス心のin situ hybridizationにおいても、両遺伝子は心臓に発現し、Nkx2.5欠損マウスで発現レベルの低下を認めた。これらの結果から、両遺伝子は発生段階の心筋細胞においてNkx2.5依存的に発現変化する細胞表面マーカーである可能性が示唆された。今後は、EACSを用いてES細胞由来心臓前駆細胞における両遺伝子発現の解析、陽性細胞群の単離・培養、生着条件の検討を行い、心筋細胞における細胞表面マーカーとしての意義、心筋再生への可能性についてさらに検討を進める。
KAKENHI-PROJECT-22790704
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22790704
非線形偏微分方程式の解の精度保証付き数値計算法に関する研究
本年度の研究により,過去得られた楕円型方程式に関する結果を,より実用度の高いものに改良・拡張した.具体的には以下の項目の研究を行った.1.与えられた非線形偏微分方程式を,超関数理論に基づく弱形式に変形する.更にNewton-Likeな手法を用い,適当なHilbert空間上の不動点問題に同値変形を行う.この際,より効率よい定式化を提案した.2.検証結果の反復の過程で不動点定理の条件が満たされ,解の存在が計算機内で保証されるアルゴリズムを導く.計算機内では,有限要素法をもとに区間演算の性質に留意しながら近似解の決定,検証を行う反復解の計算,および射影によって生じる誤差評価を行った.3.また,検証プログラムの高速化と効率化の検討,およびその実用性の評価を行なった.具体的には,設備備品として購入したパーソナルコンピュータを用い,内積およびノルムの評価を数式処理システムで行い,結果を汎用性のある組み込み関数として作成した.4.丸め誤差を考慮した数値計算への適用として,精度保証付きライブラリによる解の精度保証を微分不能項を含む非線形MHD方程式に適用し,解の存在検証に成功した.今後の研究としては,これまでに得られた非線形楕円型方程式の解の精度保証計算を,Navier-Stokes方程式の定常解の精度保証に適用することを行う予定であり,既に線形化版であるStokes方程式の有限要素解に対するa priori/aposterioriな誤差評価の定式化に関する考察に着手している.本年度の研究により,過去得られた楕円型方程式に関する結果を,より実用度の高いものに改良・拡張した.具体的には以下の項目の研究を行った.1.与えられた非線形偏微分方程式を,超関数理論に基づく弱形式に変形する.更にNewton-Likeな手法を用い,適当なHilbert空間上の不動点問題に同値変形を行う.この際,より効率よい定式化を提案した.2.検証結果の反復の過程で不動点定理の条件が満たされ,解の存在が計算機内で保証されるアルゴリズムを導く.計算機内では,有限要素法をもとに区間演算の性質に留意しながら近似解の決定,検証を行う反復解の計算,および射影によって生じる誤差評価を行った.3.また,検証プログラムの高速化と効率化の検討,およびその実用性の評価を行なった.具体的には,設備備品として購入したパーソナルコンピュータを用い,内積およびノルムの評価を数式処理システムで行い,結果を汎用性のある組み込み関数として作成した.4.丸め誤差を考慮した数値計算への適用として,精度保証付きライブラリによる解の精度保証を微分不能項を含む非線形MHD方程式に適用し,解の存在検証に成功した.今後の研究としては,これまでに得られた非線形楕円型方程式の解の精度保証計算を,Navier-Stokes方程式の定常解の精度保証に適用することを行う予定であり,既に線形化版であるStokes方程式の有限要素解に対するa priori/aposterioriな誤差評価の定式化に関する考察に着手している.
KAKENHI-PROJECT-06740167
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06740167
東部インドネシアスラウェシにおける海民バジョの「起源説」をめぐる文化人類学的研究
バジョは、東南アジアに広く拡散居住する海民の一派である。インドネシア東部スラウェシでは、他集団の王家にまつわる口頭伝承の内容と王家の家系図に重なるバジョ起源説が語られる。バジョ起源説は、バジョと他集団の関係、さらにはバジョアイデンティティを強化する語りである。本研究では、人類学的参与観察と歴史学的な史料調査を併せて行うことにより、バジョの実態と歴史的記録/記憶を解明し、過去現代に続く海域社会におけるバジョと他集団との関係構築過程、およびバジョアイデンティティ形成の様相を捉えることを試みる。最終的には、スラウェシのバジョを複眼的に捉えたバジョ民族誌を執筆することを目指す。バジョは、東南アジアに広く拡散居住する海民の一派である。インドネシア東部スラウェシでは、他集団の王家にまつわる口頭伝承の内容と王家の家系図に重なるバジョ起源説が語られる。バジョ起源説は、バジョと他集団の関係、さらにはバジョアイデンティティを強化する語りである。本研究では、人類学的参与観察と歴史学的な史料調査を併せて行うことにより、バジョの実態と歴史的記録/記憶を解明し、過去現代に続く海域社会におけるバジョと他集団との関係構築過程、およびバジョアイデンティティ形成の様相を捉えることを試みる。最終的には、スラウェシのバジョを複眼的に捉えたバジョ民族誌を執筆することを目指す。
KAKENHI-PROJECT-19J13965
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19J13965
脂肪酸栄養と情動-脳内アナンダミドレベルを指標として
マリファナの主成分であるΔ9THCに対する受容体の内因性リガンドN-arachidonoyl-ethanolamide(アナンダミドanandamide、AEtA)、2-arachidonoylglycerol(2-AG)の量的変動を知り、さらには種々の精神疾患・行動異常に対する脂肪酸栄養の効果とアナンダミド産生の関連を明らかにすることを最終目標として、本研究を開始した。以下に研究成果を記載する。1.同一サンプルからのAEtA、2-AGの分離定量法の検討;両内因性リガンドとも、脂質抽出画分から、TCL-HPLC(GLC)により分離定量できるが、TLC上では、ほぼ同一の位置に分離されるため、同一サンプルから同時に両者を定量することは困難であった。しかしながら、内部標準物質、TLC展開溶媒を工夫することにより、2次元TLC上で両者を初めて分離することに成功した。2.ラット食餌脂肪酸によるΔ9THC受容体内因性リガンドレベルの変化;ラットに次のような食餌を与え、2週間飼育した後の腎臓及び脳のAEtA、2-AG量を調べた。A群(コントロール);無脂肪食+ラード10%、B群;無脂肪食+リン脂質型DHA10%、C群;無脂肪食+トリグリセリド型DHA10%、D群;トリグセリド型リノール酸10%、その結果、BCD群ともに各臓器中のリン脂質の脂肪酸レベルにおいては、食事中の脂肪酸構成に見合った変化がみられたが、アラキドノイルグリセロールにはほとんど変化がみられなかった。しかし、脳のAEtAは、DHA食(B、C群)を与えることで低下した。3.アナンダミドの分離において、TLC上の非常に近い位置に、細胞内のシグナル伝達に関わる脂質メディエーターの一つと考えられている。セラミドが分離されてきた。このセラミドについて、微量定量を目指し、種々検討した結果、同様の蛍光HPLCによる各分子種の分離定量法を確立することができた。4.DHAによりTNF誘導のアポトーシスが抑制されることがわかった。マリファナの向精神性作用の主成分であるΔ9THCに対する受容体の内因性リガンドとしてN-arachdoroyl-ethanolamide(アナンダミドanandamide、AEtA)が同定され、「脳内マリファナ」として世界的な注目を集めた。また最近、第二のΔ9THC受容体内因性リガンドとして、2-arachidonoylglycerol(2-AG)も同定された。これらの内因性リガンドが実際に生体内でどのように機能しているかに関しては、多くの不明な点が残されているが、これらがいずれもアラキドン酸代謝物(エイコサノイド)であったことは、食事中のn-6/n-3脂肪酸比により中枢神経系の働きが変化する可能性を示している。以上のような背景から、食餌中n-6脂肪酸/n-3脂肪酸比によるアナンダミド及び2-arachidoylglycerolの量的変動を知り、さらには種々の精神疾患・行動異常に対する脂肪酸栄養の効果とアナンダミド産生の関連を明らかにすることを最終目標として、本研究を開始した。以下に本年度の研究成果を記載する。1.同一サンプルからのAEtA、2-AGの分離定量法の検討;両内因性リガンドとも、脂質抽出画分から、TLC-HPLC(GLC)により分離定量できるが、TLC上では、ほぼ同一の位置に分離されるため、同一サンプルから同時に両者を定量することは困難であった。しかしながら、内部標準物質、TLC展開溶媒を工夫することにより、2次元TLC上で両者を初めて分離することに成功した。またこの方法により、従来AEtAの蛍光HPLCによる定量時においてみられた妨害物質をほぼ完全に除くこともできた。2.ラット食餌脂肪酸によるΔ9THC受容体内因性リガンドレベルの変化;ラットに次のような食餌を与え、2週間飼育した後の腎臓及び脳のAEtA、2-AG量を調べた。A群(コントロール);無脂肪食+ラード10%、B群;無脂肪食+リン脂質型DHA10%、C群;無脂肪食+トリグリセリド型DHA10%、D群;トリグリセリド型リノール酸10%。その結果、BCD群ともに各臓器中のリン脂質の脂紡酸レベルにおいては、食事中の脂肪酸構成に見合った変化がみられたが、アラキドノイルグリセロールにはほとんど変化がみられなかった。しかし脳のAEtAは、DHA食(B,C群)を与えることで低下した。マリファナの主成分であるΔ9THCに対する受容体の内因性リガンドN-arachidonoyl-ethanolamide(アナンダミドanandamide、AEtA)、2-arachidonoylglycerol(2-AG)の量的変動を知り、さらには種々の精神疾患・行動異常に対する脂肪酸栄養の効果とアナンダミド産生の関連を明らかにすることを最終目標として、本研究を開始した。以下に研究成果を記載する。1.同一サンプルからのAEtA、2-AGの分離定量法の検討;両内因性リガンドとも、脂質抽出画分から、TCL-HPLC(GLC)により分離定量できるが、TLC上では、ほぼ同一の位置に分離されるため、同一サンプルから同時に両者を定量することは困難であった。しかしながら、内部標準物質、TLC展開溶媒を工夫することにより、2次元TLC上で両者を初めて分離することに成功した。
KAKENHI-PROJECT-10878014
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10878014
脂肪酸栄養と情動-脳内アナンダミドレベルを指標として
2.ラット食餌脂肪酸によるΔ9THC受容体内因性リガンドレベルの変化;ラットに次のような食餌を与え、2週間飼育した後の腎臓及び脳のAEtA、2-AG量を調べた。A群(コントロール);無脂肪食+ラード10%、B群;無脂肪食+リン脂質型DHA10%、C群;無脂肪食+トリグリセリド型DHA10%、D群;トリグセリド型リノール酸10%、その結果、BCD群ともに各臓器中のリン脂質の脂肪酸レベルにおいては、食事中の脂肪酸構成に見合った変化がみられたが、アラキドノイルグリセロールにはほとんど変化がみられなかった。しかし、脳のAEtAは、DHA食(B、C群)を与えることで低下した。3.アナンダミドの分離において、TLC上の非常に近い位置に、細胞内のシグナル伝達に関わる脂質メディエーターの一つと考えられている。セラミドが分離されてきた。このセラミドについて、微量定量を目指し、種々検討した結果、同様の蛍光HPLCによる各分子種の分離定量法を確立することができた。4.DHAによりTNF誘導のアポトーシスが抑制されることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-10878014
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10878014
ボレピン骨格を主とする新規メカノフルオロクロミック材料の創出
外部からの応力に対し発光色が変化する現象はメカノフルオロクロミズム(MFC)と呼ばれ、センサーやデバイスなどの機能性材料への応用が期待されている。研究代表者が過去に合成したボレピンと呼ばれる骨格を含む有機化合物では、2つの異なる固体状態で、それぞれ赤色と青色の発光色を示した。本研究は、この骨格を基にした新しい化合物の合成と物性の評価を行い、発光特性を詳細に調査することで、革新的な発光性を示す分子材料の、新しい分子設計のコンセプトを得ることが目的である。外部からの応力に対し発光色が変化する現象はメカノフルオロクロミズム(MFC)と呼ばれ、センサーやデバイスなどの機能性材料への応用が期待されている。研究代表者が過去に合成したボレピンと呼ばれる骨格を含む有機化合物では、2つの異なる固体状態で、それぞれ赤色と青色の発光色を示した。本研究は、この骨格を基にした新しい化合物の合成と物性の評価を行い、発光特性を詳細に調査することで、革新的な発光性を示す分子材料の、新しい分子設計のコンセプトを得ることが目的である。
KAKENHI-PROJECT-19K15543
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K15543
網膜神経節細胞の細胞死の分子機構の解明とその実験的遺伝子治療に関する研究
(1)ラット網膜虚血・再潅流障害における細胞死の検討ラット網膜に虚血再潅流障害を惹起し、アポトーシスを起こしている細胞に発現する遺伝子産物について検討を行った。1)ラット網膜では、網膜内層の細胞死にcaspase-3が網膜外層の細胞死にcaspase-1が深くかかわっていることが明らかとなった。2)一方、同じ虚血・再潅流障害であっても、水平細胞では細胞周期関連遺伝子であるP16INK4の発現が認められ、ネクローシスの形態を示すが、アマクリン細胞ではP16INK4は発現せず、アポトーシスの像を示すことを見いだした。3)虚血・再潅流障害では、再潅流時に活性酸素が発生し、この活性酸素が障害の主役を担っている可能性を示した。(2)ラット網膜虚血・再潅流障害における神経節細胞の細胞死の検討ラット上丘に蛍光色素を注入し、網膜神経節細胞を逆行性にラベルした。アポトーシスを起こす網膜神経節細胞ではAP-1遺伝子が発現していること、caspase-1,caspase-3の発現は殆ど認められないが、caspase-2の発現が認められることを見いだした。また、BDNFを投与すると、網膜神経節細胞の細胞死が抑制されることが分かった。この系では、BDNFは、AP-1遺伝子のひとつであるc-Junの発現を低下させることなくcaspase-2の発現を抑制することが明らかとなった。(3) RCSラット変性網膜に対する遺伝子治療の試み網膜変性症を発症するRCSラットを材料にアデノウイルス関連ウイルスをベクターにした実験的遺伝子治療を試みた。RCSラットでは網膜視細胞のアポトーシスが発生するが、代表的なアポトーシス抑制遺伝子であるBcl-xLを組み込んだAAV-Bcl-xLを網膜下に注入したところ、処置群では網膜視細胞は有意に保存されていた。(1)ラット網膜虚血・再潅流障害における細胞死の検討ラット網膜に虚血再潅流障害を惹起し、アポトーシスを起こしている細胞に発現する遺伝子産物について検討を行った。1)ラット網膜では、網膜内層の細胞死にcaspase-3が網膜外層の細胞死にcaspase-1が深くかかわっていることが明らかとなった。2)一方、同じ虚血・再潅流障害であっても、水平細胞では細胞周期関連遺伝子であるP16INK4の発現が認められ、ネクローシスの形態を示すが、アマクリン細胞ではP16INK4は発現せず、アポトーシスの像を示すことを見いだした。3)虚血・再潅流障害では、再潅流時に活性酸素が発生し、この活性酸素が障害の主役を担っている可能性を示した。(2)ラット網膜虚血・再潅流障害における神経節細胞の細胞死の検討ラット上丘に蛍光色素を注入し、網膜神経節細胞を逆行性にラベルした。アポトーシスを起こす網膜神経節細胞ではAP-1遺伝子が発現していること、caspase-1,caspase-3の発現は殆ど認められないが、caspase-2の発現が認められることを見いだした。また、BDNFを投与すると、網膜神経節細胞の細胞死が抑制されることが分かった。この系では、BDNFは、AP-1遺伝子のひとつであるc-Junの発現を低下させることなくcaspase-2の発現を抑制することが明らかとなった。(3) RCSラット変性網膜に対する遺伝子治療の試み網膜変性症を発症するRCSラットを材料にアデノウイルス関連ウイルスをベクターにした実験的遺伝子治療を試みた。RCSラットでは網膜視細胞のアポトーシスが発生するが、代表的なアポトーシス抑制遺伝子であるBcl-xLを組み込んだAAV-Bcl-xLを網膜下に注入したところ、処置群では網膜視細胞は有意に保存されていた。本年度は、(1)ラット網膜神経節細胞の単離培養と(2)ラット網膜虚血潅流モデルにおける神経細胞死のメカニズムに関する検討を研究の中心とした。(1)に関しては、パニング法を用いた培養系の確立に成功した。しかしながら、回収できる細胞数が十分ではなく、得られた細胞を用いての細胞死のメカニズム解析は十分には進行していない。一方、(2)に関しては、網膜進展標本を用いたTUNEL法の確立に時間がかかったが、十分に再現性よく、死細胞を同定できる条件が決まった。この系を用いて虚血再潅流モデルにおけるAP-1遺伝子の発現、caspasefamily proteaseの発現、BDNFによる細胞死抑制とその過程におけるAP-1遺伝子発現との関連についていくつかの新知見を得た。すなわち、網膜神経節細胞(上丘より蛍光色素を注入して確認)の細胞死にあたり、c-Jun遺伝子産物の発現が認められる。BDNF硝子体投与により、細胞死は約半分に抑制されるが、この時、c-Jun遺伝子産物を発現している細胞数の減少は認められなかった。一方、caspase-1,caspase-2,caspase-3の発現についても検討した。虚血再潅流障害においては、caspase-1,caspase-3の発現は殆ど認められなかったが、caspase-2陽性細胞は、再現性良く認められた。BDNF投与により、caspase-2陽性細胞数は有意に減少した。この結果から、網膜神経節細胞の細胞死にcaspase-2が関与していること、BDNFの神経保護作用の一部はcaspase-2の発現抑制によるものであることが分かった。
KAKENHI-PROJECT-10470361
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10470361
網膜神経節細胞の細胞死の分子機構の解明とその実験的遺伝子治療に関する研究
昨年度に引き続いてラットを用いてin vivo modelにおける神経細胞死、あるいは網膜神経節細胞死について検討した。本研究の最終目標は、緑内障における網膜神経節細胞の細胞死のメカニズムを明らかにし、実験的遺伝子治療の途を開くことであるが、本年度までは網膜における神経細胞死そのものを実験的に検討することが主眼となっている。現在、緑内障モデルの作成を行っているが、このモデルについての報告は来年を予定している。(1)ラット網膜虚血・再潅流障害における細胞死の検討ラット網膜に虚血再潅流障害を惹起し、アポトーシスを起こしている細胞に発現する遺伝子産物について検討を行った。1)ラット網膜では、網膜内層の細胞死にcaspase-3が網膜外層の細胞死にcaspase-1が深くかかわっていることが明らかとなった。2)一方、同じ虚血・再潅流障害であっても、水平細胞では細胞周期関連遺伝子であるP16INK4の発現が認められ、ネクローシスの形態を示すが、アマクリン細胞ではP16INK4は発現せず、アポトーシスの像を示すことを見いだした。3)虚血・再潅流障害では、再潅流時に活性酸素が発生し、この活性酸素が障害の主役を担っている可能性を示した。(2)ラット網膜虚血・再潅流障害における神経節細胞の細胞死の検討ラット上丘に蛍光色素を注入し、網膜神経節細胞を逆行性にラベルした。アポトーシスを起こす網膜神経節細胞ではAP-1遺伝子が発現していること、caspase-1,caspase-3の発現は殆ど認められないが、caspase-2の発現が認められることを見いだした。また、BDNFを投与すると、網膜神経節細胞の細胞死が抑制されることが分かった。この系では、BDNFは、AP-1遺伝子のひとつであるc-Junの発現を低下させることなくcaspase-2の発現を抑制することが明らかとなった。(3)RCSラット変性網膜に対する遺伝子治療の試み網膜変性症を発症するRCSラットを材料にアデノウイルス関連ウイルスをベクターにした実験的遺伝子治療を試みた。RCSラットでは網膜視細胞のアポトーシスが発生するが、代表的なアポトーシス抑制遺伝子であるBcl-xLを組み込んだAAV-Bcl-xLを網膜下に注入したところ、処置群では網膜視細胞は有意に保存されていた。
KAKENHI-PROJECT-10470361
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10470361
ニュートリノ観測に拠る超新星内の流体不安定性の解明
超新星から放出されるニュートリノのシグナルを用いて爆発の仕組みに迫る研究を行った。以下論文ごとに紹介する。研究の大部分は終了しているものの、論文執筆は今後というものも多くある。Takiwaki et al. 2016:高速自転している星が重力崩壊した場合の超新星爆発の様子を数値シミュレーションで調べた。驚くべきことに原始中性子星が歪み、その歪みがスクリューのようにものをかき混ぜエネルギーの輸送を助けるという、これまでは考えられていなかった爆発メカニズムが発見された。ここから来るニュートリノは原始中性子星の自転周期に対応した時間変動を持つ。その結果は論文にまとめている最中である。Nakamura et al. 2016:超新星が爆発する際に生じる、ニュートリノと重力波と光を時系列に整理しその光度と観測可能性について議論した。ニュートリノの観測は特に原始中性子星ができた瞬間を特定するために重要になることを指摘した。この時刻を元に重力波の解析等が行われる。Kuroda et al.2016:定在降着衝撃波不安定性が起きたときの重力波シグナルについて述べた論文である。このモデルにおいてニュートリノと重力波の相関解析で何が分かるのかについては次の論文にて詳しく議論する。Sotani and Takiwaki 2016:数値シミュレーションをバックグラウンドにして線形摂動を与えることで、その原子中性子星が放出する重力波の周波数を議論した。ニュートリノの観測から原始中性子星の温度の時間進化が分かるため、その情報を統合することで原始中性子星の質量と半径の進化が分かる可能性がある。これは原子核の状態方程式を制限することにもつなげることができる。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。本研究の目的は,超新星爆発から生じるニュートリノ放射を観測してやることで,大質量星の重力崩壊のダイナミクスを探ることである.本年度の一つ目の成果は,超新星爆発から生じるニュートリノ,重力波,光の情報を一つのモデルから決め,それらの3つの信号を整合的にとりあつかったモデルの下で,それらの信号を同時観測することで生まれるシナジーを研究したことである.本結果は既に論文にまとめられ,査読中である.二つ目の成果は,星の中心コアが高速自転している場合について,そこから生じるニュートリノの信号を観測することで自転周期を決定できることを明らかにしたことである.本結果はそもそもこれまで考え落とされていた機構で爆発するため,そもそも流体の運動が面白い.流体の結果のみを論文にまとめ,投稿した.現在査読中である.受理され次第,ニュートリノ信号に関する論文の執筆に移りたい.この成果は,次世代のニュートリノ観測機器である,ハイパーカミオカンデの白書においても使用されている.ニュートリノの信号を正確に見積もるためには,シミュレーションの高精度化も欠かすことができない.本年度はこれまで使っていたIDSAという手法をアップデートし,さらにより仮定の少ないM1クロージャースキームの開発にも成功した.これまでの計算も,第一原理計算とおよそコンシステントだったが,新スキームでは第一原理計算をほぼ再現するところまで来ている.これらのスキームを用いることで,今後はニュートリノ信号をより正確に予想できるだろう.本年度は梶田教授がニュートリノ振動でノーベル賞を受賞した.そのせいか,一般向けの講演でもニュートリノの性質について尋ねられることが多かった.今回の計算結果を元に,もし我々の銀河内で超新星爆発が起これば,不思議なニュートリノの性質がより一層分かることを説明した.論文投稿まで順調に進んだので.超新星から放出されるニュートリノのシグナルを用いて爆発の仕組みに迫る研究を行った。以下論文ごとに紹介する。研究の大部分は終了しているものの、論文執筆は今後というものも多くある。Takiwaki et al. 2016:高速自転している星が重力崩壊した場合の超新星爆発の様子を数値シミュレーションで調べた。驚くべきことに原始中性子星が歪み、その歪みがスクリューのようにものをかき混ぜエネルギーの輸送を助けるという、これまでは考えられていなかった爆発メカニズムが発見された。ここから来るニュートリノは原始中性子星の自転周期に対応した時間変動を持つ。その結果は論文にまとめている最中である。Nakamura et al. 2016:超新星が爆発する際に生じる、ニュートリノと重力波と光を時系列に整理しその光度と観測可能性について議論した。ニュートリノの観測は特に原始中性子星ができた瞬間を特定するために重要になることを指摘した。この時刻を元に重力波の解析等が行われる。Kuroda et al.2016:定在降着衝撃波不安定性が起きたときの重力波シグナルについて述べた論文である。このモデルにおいてニュートリノと重力波の相関解析で何が分かるのかについては次の論文にて詳しく議論する。Sotani and Takiwaki 2016:数値シミュレーションをバックグラウンドにして線形摂動を与えることで、その原子中性子星が放出する重力波の周波数を議論した。ニュートリノの観測から原始中性子星の温度の時間進化が分かるため、その情報を統合することで原始中性子星の質量と半径の進化が分かる可能性がある。これは原子核の状態方程式を制限することにもつなげることができる。研究結果は出ているので,論文にまとめる作業を精力的に行いたい.28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-15H01039
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-15H01039
複製フォーク停止に応答するチェックポイントキナーゼによるユビキチンシステム制御
ファンコニ貧血は骨髄不全,高発がん性, DNAクロスリンク修復欠損を特徴とする遺伝性疾患である.本研究ではDNA損傷後誘導されるFANCI蛋白質のリン酸化が, DNA修復に重要なFANCD2蛋白質モノユビキチン化の分子スイッチとして機能することを明らかにした.現在, FANCIリン酸化が上流のコア複合体(ユビキチンE3リガーゼ)の活性をいかなるメカニズムで制御するのか,検討を進めている.ファンコニ貧血は骨髄不全,高発がん性, DNAクロスリンク修復欠損を特徴とする遺伝性疾患である.本研究ではDNA損傷後誘導されるFANCI蛋白質のリン酸化が, DNA修復に重要なFANCD2蛋白質モノユビキチン化の分子スイッチとして機能することを明らかにした.現在, FANCIリン酸化が上流のコア複合体(ユビキチンE3リガーゼ)の活性をいかなるメカニズムで制御するのか,検討を進めている.ファンコニ貧血に関わる遺伝子群はファンコニ経路を形成し、DNAダメージシグナリングとDNA修復において重要な役割を果たしている。キーファクターであるFANCD2は他のFA遺伝子群の形成するFAコア複合体によりDNAダメージ誘導とS期における複製ストレスによってモノユビキチン化され活性化する。このモノユビキチン化の活牲化メカニズムを探るため、以下の検討を行った。1.チェックポイントキナーゼであるChk1/2の欠損細胞においてFANCD2のモノユビキチン化は多少低下するものの、ほぼ正常に誘導された。2.FANCD2はATM/ATRキナーゼによりリン酸化されると思われるサイト(S/TQモチーフ)をいくつも持っている。進化上保存されたモチーフを中心に、10のモチーフをアラニンに変換した変異体を作成したが、それでも正常にモノユビキチン化され、またFANCD2欠損細胞のシスプラチン感受性を相補できた。3.FANCEのリン酸化サイトの変異体もきちんと機能することがわかった。4.FANCIのモノユビキチン化サイト近傍の6つのS/TQモチーフのアラニン変異体はFANCI欠損を相補できず、また同モチーフのホスホミミック変異体は構成的にFANCD2とFANCIのモノユビキチン化を誘導した。これらの実験結果は、FANCIリン酸化がFANCD2のモノユビキチン化のスイッチとして働くことを強く示している。チェックポイントキナーゼであるATMとATRは、ゲノム傷害を検知し下流のエフェクター群を活性化する最上流のキナーゼと考えられている。ATR変異細胞(Seckel症候群細胞)やATRノックダウンでD2モノユビキチン化が低下するため、FA経路の上流にあるのはおそらくATRキナーゼであると考えられている。しかし、実際にどのFA分子がFA経路活性化に必須なリン酸化基質なのかは不明であった。我々は、新規に同定されたFANCI遺伝子のモノユビキチン化サイト近傍のS/TQクラスタードメインの進化上保存された6つのリン酸化サイトに注目した。そしてFANCI欠損細胞に、リン酸化不能型(Ax6)とリン酸化ミミック型(Dx6)のFANCI変異体を発現させ、FANCI蛋白質のリン酸化こそがコア複合体活性化の引き金を引くことを明らかにした(Nat Struct Mol Biol. 2008 Nov; 15 (11): 1138-46.)。実際、Dx6の発現で、構成的なFANCD2、FANCIモノユビキチン化とフォーカス形成が観察された。FANCIのリン酸化とそれによるコア複合体の活性化の分子機構を明らかにするためには、FANCIリン酸化に伴う分子間相互作用の変化を捕まえる必要がある。そこで、既知のヒトFA分子(BRCA2以外)をすべて酵母2-ハイブリッドベクターにクローニングし、総当たり戦でヒトFANCIとの相互作用について検討を行い、あらたにFANCIとFANCLの相互作用を見いだした。したがって、FANCIのリン酸化によってFANCD2がE3リガーゼであるFANCLの近傍に位置することによりFANCD2のモノユビキチン化がスタートするものと考えている。今後、このモデルをさらに検証してゆきたい。
KAKENHI-PROJECT-19390087
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19390087
P.gingivalisのペプチドグリカンを応用した歯周病診断法の開発
本研究の目的は、歯周病原性細菌のペプチドグリカンの分子生物学的特性を応用した歯周病診断法を開発することである。結果:歯周病原性細菌の一つであるP.gingivalisの染色体DNAから大腸菌の遺伝子をプローブとしてコロニーブロッティング法によりクローニングを行なった。その結果、ペプチドグリカン合成酵素の一つであるMurC protein(UDP-N-acetylmuramate alanine ligase)をコードするmurC geneを単離することに成功した。この酵素は、ペプチドグリカンの合成初発酵素である。Sangerのdideoxy法により約2.5kbの全塩基配列を決定した。その結果、1371pbのopen reading frameとその上流と下流に部分的なopen reading frameが見出された。3歯周病診断法への応用MurCproteinは細胞骨格成分であるペプチドグリカンを合成する酵素であり、その生合成が阻害されると、細菌自身が生育することができなくなる。したがって、P.gingivalisや他の歯周病原性細菌のペプチドグリカン合成にかかわる遺伝子群を研究することにより歯周病の新たな診断法あるいは治療法につながると思われる。現在、以上の結果をまとめており、投稿予定である。本研究の目的は、歯周病原性細菌のペプチドグリカンの分子生物学的特性を応用した歯周病診断法を開発することである。結果:歯周病原性細菌の一つであるP.gingivalisの染色体DNAから大腸菌の遺伝子をプローブとしてコロニーブロッティング法によりクローニングを行なった。その結果、ペプチドグリカン合成酵素の一つであるMurC protein(UDP-N-acetylmuramate alanine ligase)をコードするmurC geneを単離することに成功した。この酵素は、ペプチドグリカンの合成初発酵素である。Sangerのdideoxy法により約2.5kbの全塩基配列を決定した。その結果、1371pbのopen reading frameとその上流と下流に部分的なopen reading frameが見出された。3歯周病診断法への応用MurCproteinは細胞骨格成分であるペプチドグリカンを合成する酵素であり、その生合成が阻害されると、細菌自身が生育することができなくなる。したがって、P.gingivalisや他の歯周病原性細菌のペプチドグリカン合成にかかわる遺伝子群を研究することにより歯周病の新たな診断法あるいは治療法につながると思われる。現在、以上の結果をまとめており、投稿予定である。
KAKENHI-PROJECT-06772020
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06772020
過去の薪炭林利用と丘陵地の景観変遷に関する研究
宮城県北西部旧花山村(現栗原市)の丘陵地において、以下の項目に関する調査を行った。1.湿原堆積物による過去1500年間の植生変遷の復元丘陵地内に位置する大沼湿原の堆積物に関する分析から、過去1500年間の植生変遷を明らかにした(吉田・西城,2005)。その結果は、この地域の森林植生が約360年前にブナ-イヌブナを主とする落葉広葉樹林からコナラ-ミズナラの二次林へと変化したことを示している。以上のことから、この地域では、約360年前以降、森林植生に対する人為の影響が強まったことが明らかとなった。2.丘陵地内にみられる炭焼き窯跡の分布および使用年代に関する調査過去の薪炭林利用の痕跡である炭焼き窯跡の分布を大沼湿原周辺において調査し、窯底を埋める堆積物中の炭化木片の年代測定を行った。その結果、炭焼き窯が使用されていたのは約280年前以降であることが判明した。この事実と上記花粉分析の結果から、約360年前に起った森林植生の二次林化は、藩政期における木炭生産を要因とするものであったことが推定された。この内容は、2005年度東北地理学会秋季大会にて発表した。3.森林植生の現況とその成立過程に関する調査森林植生の現況とその成立過程について、景観生態学的観点からの解析を試みた。その結果、植物社会学的手法によって8タイプの森林群落が抽出され、個々の種組成や構造は微地形、および当該地域の農林鉱業や生活様式の歴史的変遷と密接に関わっていることが把握できた。その成果は、次頁に示す論文(平吹・中條,2006)にまとめたほか、第53回日本生態学会において発表した。宮城県花山村の丘陵地において、研究テーマに沿う現地調査を計8回実施した。また現地調査で採取した各種試料の分析を行った。主要な調査・研究項目は次の通りである。(1)丘陵内にみられる大沼湿原の堆積物に関する調査と花粉分析。(2)丘陵斜面内における炭焼き窯跡の分布調査。(3)炭焼き窯跡およびその周辺の地形測量。(4)炭焼き窯の窯底を埋める堆積物の記載と年代測定。以下、調査・研究結果の概要を記す。まず丘陵地内に位置する大沼湿原の堆積物に関する分析から、過去1500年間の植生変遷が明らかとなった。その結果、花山村の丘陵地の森林植生が、約360年前にブナ-イヌブナを主とする落葉広葉樹林からコナラ-ミズナラの二次林へと変化したことが判明した。また同じ丘陵地において炭焼き窯跡の分布を調査したところ、多数の窯跡を確認することができた。そのうち、2つの窯跡において窯底を埋める堆積物の調査を行い、堆積物中の炭化木片の年代測定を行った。その結果、2つの炭焼き窯はいずれも190280年前頃に使用されたものであることがわかった。花山村では藩政期から本格的な木炭生産が始まったと言われているが、植生変遷より推定された360年前の二次林化、200300年前に使用されていた炭焼き窯跡の存在は、この見解と調和的である。すなわち藩政期には木炭生産に伴う森林植生への人為的干渉が起こっていたことが、植生および地形に関するデータから裏付けられた。以上の研究成果のうち、上記(1)・(2)については、日本地理学会の2004年度秋季学術大会(9月25日広島大学)にて口頭発表を行った。また発表内容の一部を雑誌「季刊地理学」に投稿し、現在印刷中である。宮城県北西部旧花山村(現栗原市)の丘陵地において、以下の項目に関する調査を行った。1.湿原堆積物による過去1500年間の植生変遷の復元丘陵地内に位置する大沼湿原の堆積物に関する分析から、過去1500年間の植生変遷を明らかにした(吉田・西城,2005)。その結果は、この地域の森林植生が約360年前にブナ-イヌブナを主とする落葉広葉樹林からコナラ-ミズナラの二次林へと変化したことを示している。以上のことから、この地域では、約360年前以降、森林植生に対する人為の影響が強まったことが明らかとなった。2.丘陵地内にみられる炭焼き窯跡の分布および使用年代に関する調査過去の薪炭林利用の痕跡である炭焼き窯跡の分布を大沼湿原周辺において調査し、窯底を埋める堆積物中の炭化木片の年代測定を行った。その結果、炭焼き窯が使用されていたのは約280年前以降であることが判明した。この事実と上記花粉分析の結果から、約360年前に起った森林植生の二次林化は、藩政期における木炭生産を要因とするものであったことが推定された。この内容は、2005年度東北地理学会秋季大会にて発表した。3.森林植生の現況とその成立過程に関する調査森林植生の現況とその成立過程について、景観生態学的観点からの解析を試みた。その結果、植物社会学的手法によって8タイプの森林群落が抽出され、個々の種組成や構造は微地形、および当該地域の農林鉱業や生活様式の歴史的変遷と密接に関わっていることが把握できた。その成果は、次頁に示す論文(平吹・中條,2006)にまとめたほか、第53回日本生態学会において発表した。
KAKENHI-PROJECT-16650226
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16650226
女性に親和的なテクノロジーの探求と新しいヘルスケア・システムの創造
11月に日本生命倫理学会でシンポジウムを企画し(シンポジウムテーマ「生殖技術における弱者とは誰か」)、インドの商業的代理出産をめぐる法規制や実態について、研究代表者が報告を行った。1月に東京で「国境を超える身体とツーリズム」というテーマで公開講演会を実施し、3名の演者に報告を依頼した(粟屋剛・岡山大、柘植あつみ・明治学院大、出口顕・島根大)。報告の内容を生殖テクノロジーとヘルスケアを考える研究会のホームページに掲載し、閲覧できるようにした。2月に第8回研究会を東京で開催し10名が報告を行った(小椋宗一郎、Christine Levy、小宅理沙、白井千晶、森脇健介、日比野由利、杵淵恵美子、小門穂、林千章)。9月に第9回研究会を東京で開催し8名が報告を行った(小椋宗一郎、島薗洋介、野辺陽子、日比野由利、松浦由美子、南貴子、森脇健介、林千章)。昨年から今年度にかけての研究会での議論の成果は論文集として刊行された(日比野由利・柳原良江編著『テクノロジーとヘルスケア-女性身体へのポリティクス-』生活書院)。研究会活動の他、研究員・牧由佳の協力を得てブログ(生殖テクノロジーとヘルスケアを考える研究会[防備録]http://azuki0405.exblog.jp/)で生殖医療関係の記事の要約・紹介を随時公表しており、現在までに200件以上の記事、10,000件ほどの訪問者を数えた。研究代表者は、アジアへの生殖ツーリズム現象に注目し、インド、タイ、マレーシアなどで調査を行い、その成果の一部を論文として公表した。2009年12月に第1回研究会(於東京)を開催し14名が報告を行った。また「生殖テクノロジーとヘルスケアを考える研究会」を組織し、研究会のホームページとメーリング・リストを立ち上げた。3月に第1回公開講演会「生殖をめぐる欲望と倫理と宗教」を開催し、島薗進「生殖補助医療は女性の幸福を増進するか?」/安藤泰至「生命操作システムにおける『見えざるもの』-生殖技術を中心に-」が報告された(於金沢)。3月にイタリアとフランスの生殖補助医療に関するテーマで第2回共催研究会を開催した(於東京)。4月に中絶をテーマに第3回研究会を開催した(於金沢)。6月に第2回公開講演会を開催し、齋藤有紀子(北里大学)「医療における女性の自己決定」、斎藤加代子(東京女子医科大学附属遺伝子医療センター)「遺伝子医療の現場から女性にかかわる医療として」が報告された。また、講演会の後、第4回研究会を開催し、4名が報告を行った(於金沢)。7月に中絶と水子供養をテーマに第5回研究会(於金沢)を開催した。7月に、出生前診断をテーマに第6回共催研究会(於東京)を開催した。9月に第7回研究会を実施し10名が報告を行った。不妊治療、中絶技術、出生前診断などの生殖テクノロジー、あるいは女性の身体やリプロダクションに関わりが深いテーマで研究会や公開講演会を実施し議論を重ねたことにより、次年度以降の共同研究の準備が整った。また、科研の成果の一部として、研究会のメンバーの原稿をとりまとめ、2011年春に論集(仮『テクノロジーとヘルスケア-女性身体へのポリティクス』執筆者12名)として出版予定である。11月に日本生命倫理学会でシンポジウムを企画し(シンポジウムテーマ「生殖技術における弱者とは誰か」)、インドの商業的代理出産をめぐる法規制や実態について、研究代表者が報告を行った。1月に東京で「国境を超える身体とツーリズム」というテーマで公開講演会を実施し、3名の演者に報告を依頼した(粟屋剛・岡山大、柘植あつみ・明治学院大、出口顕・島根大)。報告の内容を生殖テクノロジーとヘルスケアを考える研究会のホームページに掲載し、閲覧できるようにした。2月に第8回研究会を東京で開催し10名が報告を行った(小椋宗一郎、Christine Levy、小宅理沙、白井千晶、森脇健介、日比野由利、杵淵恵美子、小門穂、林千章)。9月に第9回研究会を東京で開催し8名が報告を行った(小椋宗一郎、島薗洋介、野辺陽子、日比野由利、松浦由美子、南貴子、森脇健介、林千章)。昨年から今年度にかけての研究会での議論の成果は論文集として刊行された(日比野由利・柳原良江編著『テクノロジーとヘルスケア-女性身体へのポリティクス-』生活書院)。研究会活動の他、研究員・牧由佳の協力を得てブログ(生殖テクノロジーとヘルスケアを考える研究会[防備録]http://azuki0405.exblog.jp/)で生殖医療関係の記事の要約・紹介を随時公表しており、現在までに200件以上の記事、10,000件ほどの訪問者を数えた。研究代表者は、アジアへの生殖ツーリズム現象に注目し、インド、タイ、マレーシアなどで調査を行い、その成果の一部を論文として公表した。
KAKENHI-PROJECT-21200026
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21200026
第6の味覚、脂肪の味を感受する受容体の諸臓器における発現
マウスを用いて、(1)脂肪の投与実験、(2)脂肪酸受容体の局在の免疫組織化学的検索、(3)脂肪酸受容体のmRNAのリアルタイムPCRを行っている。(1)ラード(固形)をペレットに混ぜてマウスに自由に摂食させる群、コーン油(液体)をボトルに入れ、水を入れたボトルと2ボトルにして、マウスに自由に飲水させる群、およびそれらの対照群を作り、体重、肝重量を測定した。また舌、肝臓、腸管(回腸および結腸)および視床下部の組織を採材して、脂肪酸受容体の動態を対照群と比較した。結果、ラードおよびコーン油投与群は対照群と比較して統計学的に有意に対照群より体重および肝重量の増加を認めた。免疫組織化学的検索では、脂肪酸受容体の局在にラードもしくは油自由接種群で、その局在に差は認めなかった。現在定量的PCR(リアルタイムPCR)で、舌、肝臓、腸、および視床下部における脂肪酸受容体のmRNAの定量的観察を行っている。また、上記実験と平行してラットを用いて発生学的研究を行っている。これは他の味(甘味、旨味、苦味など)と比較して、脂肪味の感受がどのようなタイミングで行われるかを解明しようとするものである。これも胎生期から成体にかけて、どのように発達していくか、現在観察の途中である。現在実験をほぼ予定通り遂行中である。現在実験を行っていると同時に、出てきた結果について解析中である。ほぼ予定通り遂行中なので、今後も予定通り振興する予定である。味覚は従来、甘味、旨味、苦味、酸味、塩味の5つが基本味であるとされてきたが近年、脂肪にも味があるとされるようになってきた。甘味受容体、旨味受容体、苦味受容体といった味覚受容体は舌以外にも多くの臓器に存在することが知られている。一方で、近年になって見つけられた脂肪味に関しては、未だに全身臓器での正確な分布およびその作用は十分に解明されていない。そこで本研究は供試動物として雄のC57BL/6Jマウス15匹を用いて、長鎖脂肪酸に対する受容体、すなわちG-protein coupled receptor (GPR) 40、GPR 113、GPR 120およびCluster of differentiation 36 (CD36)のmRNA量の多臓器分布を、Real-Time PCRにより定量的に検索、GPR113とGPR120は免疫組織化学的に観察した。結果、PCRにおいて、これら4種類の脂肪酸受容体は、舌(有郭乳頭、茸状乳頭)、下顎腺、涙腺、網膜、十二指腸、結腸、膵臓、肝臓、腎臓(皮質、髄質)のうち多くの臓器で発現していた。GPr40は涙腺、網膜および有郭乳頭には発現が認められなかった。Gpr40は膵臓、Gpr113は有郭乳頭、Gpr120は結腸、Cd36は腎臓において他臓器よりも有意に高い発現量を示した。免疫組織化学的検索ではGPR113は盲腸、膵臓など、GPR120は十二指腸および結腸の基底顆粒細胞、網膜の杆体視細胞と錐体視細胞層、精巣上体、陰茎、涙腺や下顎腺の星状筋上皮細胞、腎臓などで陽性を示した。これらの結果より、これまで報告されている以外にも多くの組織に肪酸受容体が分布していることを明らかにした。また、GPR120が分布しているといった報告が無い腎臓、涙腺、下顎腺でも本研究では免疫組織化学的検索で陽性を示した。さらにqPCRの結果、Gpr120の存在を確認した。おおむね順調だが、予想していた結果と異なった結果が一部得られた。たとえば唾液腺においては腺細胞に発現することを予想していたが、平滑筋に分布していた。そこで、追試が必要となり、やや遅れを生じた。マウスを用いて、(1)脂肪の投与実験、(2)脂肪酸受容体の局在の免疫組織化学的検索、(3)脂肪酸受容体のmRNAのリアルタイムPCRを行っている。(1)ラード(固形)をペレットに混ぜてマウスに自由に摂食させる群、コーン油(液体)をボトルに入れ、水を入れたボトルと2ボトルにして、マウスに自由に飲水させる群、およびそれらの対照群を作り、体重、肝重量を測定した。また舌、肝臓、腸管(回腸および結腸)および視床下部の組織を採材して、脂肪酸受容体の動態を対照群と比較した。結果、ラードおよびコーン油投与群は対照群と比較して統計学的に有意に対照群より体重および肝重量の増加を認めた。免疫組織化学的検索では、脂肪酸受容体の局在にラードもしくは油自由接種群で、その局在に差は認めなかった。現在定量的PCR(リアルタイムPCR)で、舌、肝臓、腸、および視床下部における脂肪酸受容体のmRNAの定量的観察を行っている。また、上記実験と平行してラットを用いて発生学的研究を行っている。これは他の味(甘味、旨味、苦味など)と比較して、脂肪味の感受がどのようなタイミングで行われるかを解明しようとするものである。これも胎生期から成体にかけて、どのように発達していくか、現在観察の途中である。現在実験をほぼ予定通り遂行中である。現在実験を行っていると同時に、出てきた結果について解析中である。現在の方針を続けるとともに例数を増やす予定である。また当初の実験計画通り実験を推進する予定である。ほぼ予定通り遂行中なので、今後も予定通り振興する予定である。
KAKENHI-PROJECT-16K07995
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K07995
第6の味覚、脂肪の味を感受する受容体の諸臓器における発現
実験が予定よりやや遅れ気味であったことから、使用金額も予定額に達しなかった。購入する予定だった消耗品を、当初の予定(アメリカからの輸入品であるThermo Fisher Scientific、高価)から日本製(東洋紡、安価)に変更するなどして、節約に努めた。現在実験中なので、消耗品の使用量は当初の予定通りだと推定される。次年度は昨年度の分まで使用する予定である。
KAKENHI-PROJECT-16K07995
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K07995
薄型柔軟素材で被覆された多関節ロボットの力学特性の解明
本申請課題では,薄型柔軟素材で被覆された多関節ロボットの設計論を確立するために,以下の事項を検討する.・平成31年度/令和1年度:ロボットと被覆素材との摺動特性の解明・令和2年度:被覆素材と物体との摺動特性の解明・令和3年度:実ロボットへの適用/性能評価ロボットと被覆した素材との摺動特性の評価するために,力学モデルを構築する.本研究では,真空包装技術を利用することで,シリアルリンクロボットを樹脂フィルムで被覆する.封入する液量がロボットの運動性能に影響を与えていることをモデルと実機実験から検討する.本申請課題では,薄型柔軟素材で被覆された多関節ロボットの設計論を確立するために,以下の事項を検討する.・平成31年度/令和1年度:ロボットと被覆素材との摺動特性の解明・令和2年度:被覆素材と物体との摺動特性の解明・令和3年度:実ロボットへの適用/性能評価ロボットと被覆した素材との摺動特性の評価するために,力学モデルを構築する.本研究では,真空包装技術を利用することで,シリアルリンクロボットを樹脂フィルムで被覆する.封入する液量がロボットの運動性能に影響を与えていることをモデルと実機実験から検討する.
KAKENHI-PROJECT-19K04317
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K04317
胎生期における心拍動開始機序の解明
ラット胎仔の心拍動開始時期に、心臓原基から得た心筋細胞でカルシウムチャネル電流を観察した。この電流はペースメーカー電位の範囲で活性化するので、自動能を形成すると思われた。さらに心拍動開始前後に、該当チャネルの遺伝子の発現が増大し、タンパク分子の生成が確認されたことから、このカルシウムチャネル(Cav1.3)が心拍動開始の決定権を握っていると考えられた。ラット胎仔の心拍動開始時期に、心臓原基から得た心筋細胞でカルシウムチャネル電流を観察した。この電流はペースメーカー電位の範囲で活性化するので、自動能を形成すると思われた。さらに心拍動開始前後に、該当チャネルの遺伝子の発現が増大し、タンパク分子の生成が確認されたことから、このカルシウムチャネル(Cav1.3)が心拍動開始の決定権を握っていると考えられた。本研究は、「心臓はいつどのように動き出すのか?」という根本的な疑問の解明を目的としている。本年度は、心拍動が開始されるラット胎生10.0010.15日目の心臓原基において、自発的かつ継続的な活動電位発生の引金を引く"キー電流"の責任タンパクの検索を分子生物学的に行った。RT-PCR法およびin-situハイブリダイゼーション法により、興奮の開始時期において心臓の興奮収縮連関の枢軸をなすL型カルシウムチャネルのイオン通路を構成するα1サブユニットのサブタイプに変化を捕まえた。すなわち、α1Cサブユニットは興奮開始直後に発現が増大するのに対し、α1Dサブユニットは興奮開始直前に発現が増大することである。静止膜電位を形成するカリウムチャネルの遺伝子や、他の組織で自動性に関与するとされるIfチャネルなどのタンパク発現については、この時期にほとんど増減しないことが分かった。したがって、"キー電流"の候補はα1Dサブユニットにより形成されるL型カルシウムチャネルのサブタイプであると考えられる。そこで、膜電位感受性蛍光色素を用いた心臓発生領域全体の電気生理学的検討を計画し、これによりα1Dサブユニットと興奮発生との関連を明らかにすることにした。本年度はそのための新たな測定機器の整備・調整を行い、カルシウム蛍光色素との同時測定が可能となった。これにより心拍動開始時の興奮収縮連関の機構を解明できるデータを得られる状態となり、準備が完了した。次年度に本格的な測定、検討を開始する予定である。本研究は、「心臓はいつどのように動き出すのか?」という根本的な疑問の解明を目的としている。本年度は、心拍動が開始されるラット胎生10.0010.15日目の心臓原基において、自発的かつ継続的な活動電位発生の引金を引く"キー電流"の責任タンパクの検索を分子生物学的に行った。RT-PCR法およびin-situハイブリダイゼーション法により、"キー電流"はα1Dサブユニットにより形成されるL型カルシウムチャネルのサブタイプであると考えられる。この研究の過程で心拍動開始時には、カルシウムトランジェントの開始が、心筋収縮の開始に先行することが明らかとなった。このタイミングのズレは、収縮タンパクが未成熟であることが関係していると考えられたので、心拍動開始時期の収縮タンパクの変化について、引き続きRT-PCR法とin-situハイブリダイゼーション法により検討をくわえた。この研究により、心拍動開始時期のトロポニンIは胎児型として報告されていたサブタイプのみが発現し、成体型は全く発現していないことが分かった。これがカルシウムトランジェント開始と心拍動開始のズレの原因となる可能性が考えられた。一方、膜電位感受性蛍光色素を用いた心臓発生領域全体の電気生理学的検討を計画し、これによりα1Dサブユニットと興奮発生との関連を明らかにすることにしたが、カルシウム蛍光色素と膜電位感受性色素の同時測定をするための蛍光指示薬負荷の条件設定が困難であった。そこで、今後は心拍動開始直後の心筋細胞のパッチクランプを行い膜電流を直接測定し、選択的阻害薬を用いてチャネルが機能していることを示す計画を先行させる予定である。これにより、α1Dサブユニットにより形成されるL型カルシウムチャネルが心拍動開始のキーであることを証明できると考えている。本研究は、「心臓はいつどのように動き出すのか?」という根本的な疑問の解明を目的としている。前年度までの研究により、心拍動が開始されるラット胎生10.0010.15日目の心臓原基において、自発的かつ継続的な活動電位発生の引金を引く“キー電流"はα1D型カルシウムチャネルであると考えられた。そこで、心拍動開始時期に実際にα1D型カルシウムチャネルがタンパク分子として存在するかどうかを、ウエスタンブロット法により確認した。この時期の心臓原基は、0.4×0.05ミリと非常に小さいため、通常のウェスタンブロットでは、検出が不可能であった。そこで、新たに開発された高感度ウエスタンブロット法を導入し、検討を加えた。その結果、この時期の心臓原基にα1D型カルシウムチャネルが一定量発現していることが確認された。ただし、その分子量は遺伝子全長から計算されるものより少なく、このことから心臓原基においては、タンパク分子発現後にタンパク分解酵素によりC末端が切り離されて存在していることが明らかとなった。そこで、切り離されているα1D型カルシウムチャネルが、実際に機能しているかどうかを、胎生11日目の心臓原基から単離した心臓原基細胞にパッチクランプ法を適用し、膜電流を測定した。
KAKENHI-PROJECT-22500365
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22500365
胎生期における心拍動開始機序の解明
結果としてー40mV以上で活性化するα1C型カルシウムチャネルに加えて、ー60mV以上で活性化する内向きカルシウム電流を検出し、これがα1D型カルシウムチャネルによる電流であると考えられた。本研究により、新たに導入した微少量ウエスタンブロット法を用いることにより、心拍動開始時期の心臓原基のウエスタンブロットが可能であることが証明できた。また、実際にα1D型カルシウムチャネルが分子として存在し、機能していることが明らかとなり、心拍動開始のキー電流であることが確実となった。当初計画のうち、電位感受性蛍光色素を用いた研究は困難になっているが、同時に計画したパッチクランプ法を用いることで、克服できる見通しである。また、分子生物学的検討の途上に、収縮タンパクにおける新たな知見を見いだしたことなどから、「心拍動開始機構の解明」という研究目的に対しては確実に前進していると考えられる。24年度が最終年度であるため、記入しない。心臓発生領域に完全に限定した分子生物学的検討を遂行するために、新たに微量ウエスタンブロット法を用いて、遺伝子だけでなく、タンパク分子の側面からα1Dサブユニットにより形成されるL型カルシウムチャネルの意義を明らかにすることにした。また、このチャネル選択的な阻害薬が見いだされたことから、より簡便で確実な方法により研究を遂行できる状況となった。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22500365
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22500365
相変態による自己制振および励振効果をもつスマート材料開発のための基礎研究
相変態,変形による熱発生と相まって振動制御現象は複雑化するものと考えられるため,相変態による振動制御のメカニズムの解明,振動制御現象の発生条件等を検討するためには数値シミュレーションによるアプローチが有効である.本研究では,マルテンサイト変態を生じる材料としてTRIP鋼を選び,強制振動下における振動試験を行い,数値シミュレーション結果の妥当性を評価する.さらに,巨視的構成式を用いた数値シミュレーション結果に基づいて,振動制御に最適な微視組織をセル・オートマトン法を用いて求める.これらの結果を総合し,TRIP鋼の自己振動制御機能の発現を目指し,振動制御機能を最適化するよう材料設計への指針を得る.今年度は申請時に計画した"シミュレーション結果の妥当性の検証と自己振動制御効果の実現化"を行う"実験系"および"セル・オートマトン法による自己振動制御効果を持つ最適組織形態の検討"を行う"微視セル・オートマトンシミュレーション系"を遂行した.前年度においてシミュレートした結果を踏まえて,実際にスプリットホプキンソン棒試験機を用いて衝撃引張,圧縮試験を行った.この際,実験は外部機関保有の施設の実験装置により行った.同時に,今回申請の体積抵抗率測定装置によりマルテンサイト相体積分率の時刻暦応答,ならびに温度を一定とするため恒温槽を試作し,熱電対により温度も併せて測定した.温度,変形速度等,試験条件を変化させた一連の試験により,TRIP鋼の自己振動制御効果を調査した.加えて,前年度作成した組織形成シミュレーション用基本プログラムにより初期結晶方位の異なる場合の組織形成シミュレーションを行い,マルテンサイト相の微視組織は母相の初期結晶方位にかなり依存することを明らかにした.また,Voronoi多角形分割により多結晶を表現する組織形成シミュレーション用基本プログラムを作成した.相変態による振動制御のメカニズムの解明,振動制御現象の発生条件等を検討するためには数値シミュレーションによるアプローチが有効である.マルテンサイト変態のひずみ速度依存性,変態に伴って発生する変態ひずみ及び熱膨張ひずみを考慮した巨視的変態-熱弾粘塑性型構成式を導入した本研究室で既に開発済みの有限要素解析コードを,振動問題が扱えるよう動的陽解法を用いた有限要素解析コードを開発した.開発したコードを用いて,時刻暦応答解析,周波数応答解析,過渡応答解析等,様々な動的振動解析を様々な温度、変形速度条件のもとで行い,逐次データを蓄積した.すなわち,TRIP鋼の固有振動数に等しい強制加振力を外力として加え,変態とともに発生する固有振動数の変化を,温度,変形速度条件による変化を検討した.また,過渡応答解析により,温度,変形速度の変化に伴う振動吸収特性の変化を調査した.このように,その蓄積データを整理することによって,相変態による自己制振および励振効果の発生条件ならびにその発現メカニズムを明らかにした.加えて,以下の内容の組織形成シミュレーション用基本プログラムを作成した.まず,結晶塑性理論に基づいた変態-弾結晶粘塑性構成式を導出した.それを有限要素法に導入した上で,矩形微視領域を定義し,その領域を正方形セルによりさらに分割する.Gibbsの自由エネルギーを定義し,マルテンサイト相とオーステナイト相の自由エネルギー差がある一定値に達すると変態が発生するという条件を設け,その条件を満たした正方形セルはマルテンサイト相に変態するというルールによりシミュレーションを行うよう作成した.相変態,変形による熱発生と相まって振動制御現象は複雑化するものと考えられるため,相変態による振動制御のメカニズムの解明,振動制御現象の発生条件等を検討するためには数値シミュレーションによるアプローチが有効である.本研究では,マルテンサイト変態を生じる材料としてTRIP鋼を選び,強制振動下における振動試験を行い,数値シミュレーション結果の妥当性を評価する.さらに,巨視的構成式を用いた数値シミュレーション結果に基づいて,振動制御に最適な微視組織をセル・オートマトン法を用いて求める.これらの結果を総合し,TRIP鋼の自己振動制御機能の発現を目指し,振動制御機能を最適化するよう材料設計への指針を得る.今年度は申請時に計画した"シミュレーション結果の妥当性の検証と自己振動制御効果の実現化"を行う"実験系"および"セル・オートマトン法による自己振動制御効果を持つ最適組織形態の検討"を行う"微視セル・オートマトンシミュレーション系"を遂行した.前年度においてシミュレートした結果を踏まえて,実際にスプリットホプキンソン棒試験機を用いて衝撃引張,圧縮試験を行った.この際,実験は外部機関保有の施設の実験装置により行った.同時に,今回申請の体積抵抗率測定装置によりマルテンサイト相体積分率の時刻暦応答,ならびに温度を一定とするため恒温槽を試作し,熱電対により温度も併せて測定した.温度,変形速度等,試験条件を変化させた一連の試験により,TRIP鋼の自己振動制御効果を調査した.加えて,前年度作成した組織形成シミュレーション用基本プログラムにより初期結晶方位の異なる場合の組織形成シミュレーションを行い,マルテンサイト相の微視組織は母相の初期結晶方位にかなり依存することを明らかにした.また,Voronoi多角形分割により多結晶を表現する組織形成シミュレーション用基本プログラムを作成した.相変態,変形による熱発生と相まって振動制御現象は複雑化するものと考えられるため,相変態による振動制御のメカニズムの解明,振動制御現象の発生条件等を検討するためには数値シミュレーションによるアプローチが有効である.本研究では,マルテンサイト変態を生じる材料としてTRIP鋼を選び,強制振動下における振動試験を行い,数値シミュレーション結果の妥当性を評価する.
KAKENHI-PROJECT-14750068
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14750068
相変態による自己制振および励振効果をもつスマート材料開発のための基礎研究
さらに,巨視的構成式を用いた数値シミュレーション結果に基づいて,振動制御に最適な微視組織をセル・オートマトン法を用いて求める.これらの結果を総合し,TRIP鋼の自己振動制御機能の発現を目指し,振動制御機能を最適化するよう材料設計への指針を得る.今年度は申請時に計画した"シミュレーション結果の妥当性の検証と自己振動制御効果の実現化"を行う"実験系"および"セル・オートマトン法による自己振動制御効果を持つ最適組織形態の検討"を行う"微視セル・オートマトンシミュレーション系"を遂行した.前年度においてシミュレートした結果を踏まえて,実際にスプリットホプキンソン棒試験機を用いて衝撃引張,圧縮試験を行った.この際,実験は外部機関保有の施設の実験装置により行った.同時に,今回申請の体積抵抗率測定装置によりマルテンサイト相体積分率の時刻暦応答,ならびに温度を一定とするため恒温槽を試作し,熱電対により温度も併せて測定した.温度,変形速度等,試験条件を変化させた一連の試験により,TRIP鋼の自己振動制御効果を調査した.加えて,前年度作成した組織形成シミュレーション用基本プログラムにより初期結晶方位の異なる場合の組織形成シミュレーションを行い,マルテンサイト相の微視組織は母相の初期結晶方位にかなり依存することを明らかにした.また,Voronoi多角形分割により多結晶を表現する組織形成シミュレーション用基本プログラムを作成した.
KAKENHI-PROJECT-14750068
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14750068
オリゴマー相互作用の真時間での解析による陽イオンポンプの分子機作解明
Na^+,K^+-ATPaseへの基質の結合とリン酸化及びイオン輸送にともなう構造変化の関係を解析する目的で、本酵素に蛍光プローブを導入し、リガンド添加にともなう蛍光変化を測定し、その結果からAcP添加での蛍光増加は、PLP修飾酵素標品では見かけのEP形成を、AP2PL修飾酵素標品ではEP形成の後の現象を反映している。ATP添加後のEP形成の後に起きる蛍光変化は、PLPが結合した酵素へのATPの結合を反映しているのか、ATPからEPが形成される60%の酵素とPLPが結合した酵素との相互作用を反映している可能性がある。内在性tyrosine kinaseでリン酸化されたH^+,K^+-ATPase標品をTPCK・Trypsinで限定分解し、リン酸化部位を含むペプチド断片をゲル濾過及び逆相HPLCで分離精製したところ、Insulinより低分子量の2種類の放射性ピークが得られた。各ピークに相当する画分をアミノ酸シークエンサーで分析した結果、得られた配列はα鎖のN末端部に相当し、Tyr^<10>に加え、Tyr7もリン酸化部位であることが新たに判明した。また、得られたN末端部のペプチドはいずれもMet^1が欠損しており、成熟したH^+,K^+-ATPaseのα鎖にはMet^1が存在しない可能性が示唆された。更に、リン酸化の度合いが異なるH^+,K^+-ATPase標品を出発材料として、同様の方法により最終的に得られる2種類のピークの量比の変動を観察した結果、内在性のtyrosine kinaseによってTyr^<10>,Tyr^7の順にリン酸化されることが示された。電気ウナギ(eel)の電気器官の細胞膜上には、その発電作用に直接関わるナトリウムチャネルと共にNa^+,K^+-ATPaseを多く発現している。このためNa^+,K^+-ATPaseの反応機構の解析に用いられてきた。しかし、eelの電気器官に発現するNa^+,K^+-ATPaseのアミノ酸配列はまだ報告されていない。Na^+,K^+-ATPaseの反応機構を議論する上で、用いる酵素のタンパク質レベルでの知見は重要と考えられる。今回、eelの電気器官からmRNAを分離し、Na^+,K^+-ATPaseのαサブユニットをコードするcDNAのクローニングを行いその塩基配列を決定した。rat Na^+,K^+-ATPase α1のC末端領域やく700bpをプローブとして用い、常法に従ってクローニングを行った。完全長のクローンが得られなかったため、さらに5'-RACE法により5'末端領域をコードするクローンを単離した。得られたcDNAは全長3732bpからなり1009残基のアミノ酸をコードしていた。FITC、ピリドキサールリン酸、BIPMなど、哺乳類由来のNa^+,K^+-ATPaseの構造変化の解析に用いられていることが明らかになった。現在、これらの試薬にて標識したeelのNa^+,K^+-ATPaseの構造変化に基づく蛍光強度変化についてブタ腎臓から調整したNa^+,K^+-ATPaseとの比較を試みている。Na^+,K^+-ATPaseへの基質の結合とリン酸化及びイオン輸送にともなう構造変化の関係を解析する目的で、本酵素に蛍光プローブを導入し、リガンド添加にともなう蛍光変化を測定し、その結果からAcP添加での蛍光増加は、PLP修飾酵素標品では見かけのEP形成を、AP2PL修飾酵素標品ではEP形成の後の現象を反映している。ATP添加後のEP形成の後に起きる蛍光変化は、PLPが結合した酵素へのATPの結合を反映しているのか、ATPからEPが形成される60%の酵素とPLPが結合した酵素との相互作用を反映している可能性がある。内在性tyrosine kinaseでリン酸化されたH^+,K^+-ATPase標品をTPCK・Trypsinで限定分解し、リン酸化部位を含むペプチド断片をゲル濾過及び逆相HPLCで分離精製したところ、Insulinより低分子量の2種類の放射性ピークが得られた。各ピークに相当する画分をアミノ酸シークエンサーで分析した結果、得られた配列はα鎖のN末端部に相当し、Tyr^<10>に加え、Tyr7もリン酸化部位であることが新たに判明した。また、得られたN末端部のペプチドはいずれもMet^1が欠損しており、成熟したH^+,K^+-ATPaseのα鎖にはMet^1が存在しない可能性が示唆された。更に、リン酸化の度合いが異なるH^+,K^+-ATPase標品を出発材料として、同様の方法により最終的に得られる2種類のピークの量比の変動を観察した結果、内在性のtyrosine kinaseによってTyr^<10>,Tyr^7の順にリン酸化されることが示された。電気ウナギ(eel)の電気器官の細胞膜上には、その発電作用に直接関わるナトリウムチャネルと共にNa^+,K^+-ATPaseを多く発現している。このためNa^+,K^+-ATPaseの反応機構の解析に用いられてきた。しかし、eelの電気器官に発現するNa^+,K^+-ATPaseのアミノ酸配列はまだ報告されていない。Na^+,K^+-ATPaseの反応機構を議論する上で、用いる酵素のタンパク質レベルでの知見は重要と考えられる。今回、eelの電気器官からmRNAを分離し、Na^+,K^+-ATPaseのαサブユニットをコードするcDNAのクローニングを行いその塩基配列を決定した。
KAKENHI-PROJECT-07044049
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07044049
オリゴマー相互作用の真時間での解析による陽イオンポンプの分子機作解明
rat Na^+,K^+-ATPase α1のC末端領域やく700bpをプローブとして用い、常法に従ってクローニングを行った。完全長のクローンが得られなかったため、さらに5'-RACE法により5'末端領域をコードするクローンを単離した。得られたcDNAは全長3732bpからなり1009残基のアミノ酸をコードしていた。FITC、ピリドキサールリン酸、BIPMなど、哺乳類由来のNa^+,K^+-ATPaseの構造変化の解析に用いられていることが明らかになった。現在、これらの試薬にて標識したeelのNa^+,K^+-ATPaseの構造変化に基づく蛍光強度変化についてブタ腎臓から調整したNa^+,K^+-ATPaseとの比較を試みている。
KAKENHI-PROJECT-07044049
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07044049
単位制高等学校の社会的機能に関する実証的研究
わが国の高校教育は準義務化し、「多様な」生徒を受け入れる教育機関となっている。それに加えて、とくに公立高校の「活性化戦略」として、高校教育改革が積極的に展開されるようになっている。学校間連携などの履修方法や教授・学習方法の改革、あるいは特別非常勤講師の採用など、さまざまな動きが見られる。なかでも、単位制高校の創設は、硬直化した従来の高校教育のあり方を弾力化する方策として注目を集めている。本研究では、各高校の先導的実践を踏まえながら、単位制高校の社会的機能について理論的・実証的な検討を加えるものである。そうしたなかで、単位制高校の多様な実像が浮かび上がるとともに、高校教育改革の本質を探る手がかりが得られた。たとえば、(1)単位制高校は中学時に「不登校」を経験した生徒が再び「学び」を始めるひとつのきっかけを提供していること、(2)その一方で、現代社会の構造に絡めとられることによって「単位制高校」が一時的な「生徒収容機関」となる危険性があること、などである。また、単位制高校の一タイプである「総合学科」は次年度には42校にまで増える予定であるが、すでに一部の高校では従来の「総合選択制」への「縮減」が起こりつつある。しかも、そうした「効率化」を行なう高校ほど社会的威信が高いという矛盾が生じている。高校教育改革の「局所化」は、既存の構造を拡大再生産するにすぎない。したがって、高校教育改革はもっと根本的な転換へと軌道修正される必要がある。単位制高校の社会的機能を探ることで、高校教育改革の巨視的な意味合いを見定めることができた。わが国の高校教育は準義務化し、「多様な」生徒を受け入れる教育機関となっている。それに加えて、とくに公立高校の「活性化戦略」として、高校教育改革が積極的に展開されるようになっている。学校間連携などの履修方法や教授・学習方法の改革、あるいは特別非常勤講師の採用など、さまざまな動きが見られる。なかでも、単位制高校の創設は、硬直化した従来の高校教育のあり方を弾力化する方策として注目を集めている。本研究では、各高校の先導的実践を踏まえながら、単位制高校の社会的機能について理論的・実証的な検討を加えるものである。そうしたなかで、単位制高校の多様な実像が浮かび上がるとともに、高校教育改革の本質を探る手がかりが得られた。たとえば、(1)単位制高校は中学時に「不登校」を経験した生徒が再び「学び」を始めるひとつのきっかけを提供していること、(2)その一方で、現代社会の構造に絡めとられることによって「単位制高校」が一時的な「生徒収容機関」となる危険性があること、などである。また、単位制高校の一タイプである「総合学科」は次年度には42校にまで増える予定であるが、すでに一部の高校では従来の「総合選択制」への「縮減」が起こりつつある。しかも、そうした「効率化」を行なう高校ほど社会的威信が高いという矛盾が生じている。高校教育改革の「局所化」は、既存の構造を拡大再生産するにすぎない。したがって、高校教育改革はもっと根本的な転換へと軌道修正される必要がある。単位制高校の社会的機能を探ることで、高校教育改革の巨視的な意味合いを見定めることができた。
KAKENHI-PROJECT-07710212
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07710212
「日中の地方自治実質化のための政策法務に関する総合的比較研究」
今年度は昨年に引き続き、関連文献の収集・分析と研究調査結果の分析などを行った。その上、日本の諸学説・理論の展開を参考にし、中国との差異も視野に入れながら、民主主義と基本的人権尊重の理念の実現を目指す地方自治の原理・原則を中国憲法への導入可能性について検討した。他方、地方自治の実質化の手段としての政策法務に着目し、自治体法務合同研究会(全国規模)、九州自治体法務研究会や福岡政策法務研究会での議論などを通して、自治体政策法務の現状・あり方を把握することができ、政策法務の課題を究明した。政策法務は地方自治を実現するための自主的な法システムの積極的な設計・運用である。その中で、自治立法権の活用がもっとも重要であるため、自治立法権に重点をおき、条例制定権・自治基本条例をめぐる理論と実践問題について分析・検討を行った。その成果は、研究代表者木佐が委員長となって検討した北九州市の自治基本条例報告書、飯塚市議員有志勉強会などを通して、自治立法過程及び行政実務に反映されている。その他、研究代表者の研究成果は、別掲研究成果欄の通りである。分担者・洪英は、研究代表者と協議の上、まず、憲法の視点から憲法学一般、及び地方自治の基礎理論の研究も行った。分担者は、日本憲法学の全体的発展趨勢・課題について研究した上、下記の研究成果欄に記入した諸論文や翻訳文の公表などをした。これらの基礎研究と同時に、本研究課題の研究も進めた。学術誌での公表という段階には至っていないが、「憲政の視点から地方自治理念に対する新たな考察」、「中国における地方自治の実施可能性とその憲政的基礎」、「日本における自治立法権の理論と実践」、「政策法務の視点から見る中国の地方立法権」などの論文原稿・研究レポートができており、中国と日本で公表するための補充・訂正作業を行っている。2008年度には、主に、研究テーマに関する資料収集、実態調査、文献の整理などを行い、その上、調査報告・論文などを中国の学術誌に発表した。1、研究の基礎になる、地方自治に関する基本的な原理理論の補強を目的とし、憲政の視点から、民主主義と人権尊重の理念の実現を目指す地方自治の実質化に関する日本における資料を収集したうえ、網羅的に通読し、読書メモなどの形に整理した。2、中国の地方自治・地方分権改革に関する最新文献、資料の収集を行い、地方自治研究に関する最新動向を把握し、比較研究の基礎を築いた。3、中日における地方自治の実施現状を把握するため、実態調査を行った。(1)中国で自治条例の制定が一番早い吉林省延辺朝鮮族自治州に行き、自治立法権の運用・実態について、調査し、資料収集を行った。(2)日本では、九州自治体法務研究会への参加などを通し、自治体公務員との交流及び研究会での自治基本条例の制定過程などの報告を通し、自治基本条例の制定状況等の実態の把握がある程度できた。4、真の法治国家的地方自治の実現へのアプローチとして、政策法務が重要視されている。政策法務の重要な一環である公務員の「法務教育」について、現地での調査などを通して、「中日地方公務員の法教育研修に関する比較」という論文を『中国司法』(第105期、2008年9月)にて発表した。5、政策法務を実施するため、公務員の法的素質と法に基づく行政のレベル並びに政策法務能力が問われている。中国の公務員の法的意識・素養に関するアンケート調査を踏まえ、「中国における社会変革と公務員の法意識-公務員の法意識に関するアンケート調査の分析を中心に」という論文を中国の学術誌『河南省政法幹部管理学院学報』(2009年2月号)にて発表した。6、研究テーマに関連する中国の学者の論文を翻訳し、『自治研究』(第84巻第2・5・7号)に掲載。今年度は昨年に引き続き、関連文献の収集・分析と研究調査結果の分析などを行った。その上、日本の諸学説・理論の展開を参考にし、中国との差異も視野に入れながら、民主主義と基本的人権尊重の理念の実現を目指す地方自治の原理・原則を中国憲法への導入可能性について検討した。他方、地方自治の実質化の手段としての政策法務に着目し、自治体法務合同研究会(全国規模)、九州自治体法務研究会や福岡政策法務研究会での議論などを通して、自治体政策法務の現状・あり方を把握することができ、政策法務の課題を究明した。政策法務は地方自治を実現するための自主的な法システムの積極的な設計・運用である。その中で、自治立法権の活用がもっとも重要であるため、自治立法権に重点をおき、条例制定権・自治基本条例をめぐる理論と実践問題について分析・検討を行った。その成果は、研究代表者木佐が委員長となって検討した北九州市の自治基本条例報告書、飯塚市議員有志勉強会などを通して、自治立法過程及び行政実務に反映されている。その他、研究代表者の研究成果は、別掲研究成果欄の通りである。分担者・洪英は、研究代表者と協議の上、まず、憲法の視点から憲法学一般、及び地方自治の基礎理論の研究も行った。分担者は、日本憲法学の全体的発展趨勢・課題について研究した上、下記の研究成果欄に記入した諸論文や翻訳文の公表などをした。これらの基礎研究と同時に、本研究課題の研究も進めた。
KAKENHI-PROJECT-08F08008
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08F08008
「日中の地方自治実質化のための政策法務に関する総合的比較研究」
学術誌での公表という段階には至っていないが、「憲政の視点から地方自治理念に対する新たな考察」、「中国における地方自治の実施可能性とその憲政的基礎」、「日本における自治立法権の理論と実践」、「政策法務の視点から見る中国の地方立法権」などの論文原稿・研究レポートができており、中国と日本で公表するための補充・訂正作業を行っている。
KAKENHI-PROJECT-08F08008
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08F08008
消化器癌における腫瘍間質から見た抗癌剤耐性のメカニズムの解明とその克服
PD-L1は腫瘍自体や間質に発現し、免疫寛容に関連した重要な分子である。胃癌に対してPD1、PDL1阻害薬が治療として使用されつつあり、これら分子の寡多が治療効果に関連することがわかってきたものの、これら薬剤は静脈投与であり,末梢血液中のPD-L1 mRNA発現の意義は不明である。胃癌133例を対象とし,末梢血液中のPD-L1 mRNAの発現を定量RT-PCR法にて評価した。PD-L1 mRNA発現において切除症例と切除不能症例を比較すると切除不能症例が有意に高値(P<0.0001)であった。T因子と病期と有意の相関を認めた.PD-L1高発発現群の予後は有意に予後不良であった。近年の抗がん剤や分子標的薬剤の併用により、難治と考えられていた高度進行消化器癌化療が奏効し、画像上腫瘍の消失を経験するようになってきたが、切除してもその切除標本に腫瘍の遺残が見られることが多い。これら治療抵抗性の臨床検体から得られた腫瘍群は幹細胞様のキャラクターや生物学的悪性度の高い性質を持っていることが予想されているが、実際消化器癌臨床例で検討した報告は少ない。一方、化療耐性を獲得した腫瘍において腫瘍間質(ニッチ)の環境も通常と大きく異なっており、宿主が有する抗腫瘍免疫機能に対して負に採用することが指摘されており、遺残腫瘍の維持、増殖に腫瘍間質の要因も強く関わっていることが報告されている。今回われわれは消化器癌症例でしばしば経験される化学療法中、治療後の残存腫瘍とその腫瘍間質のキャラクターを解析することで、これら化療により遺残、再燃した難治性腫瘍の制御・克服に向けた新たな治療戦略として研究を開始した。研究対象は化療を行った後、奏効を確認して切除を行った進行胃癌62例の腫瘍及び腫瘍間質の癌幹細胞マーカーと免疫抑制マーカーの発現を組織生検で検討した。各症例の化療評価はCR2例、PR37例、SD11例、PD12例であった。幹細胞のマーカーとしてZEB-1、NRF-2を、免疫抑制性マーカーとしてfoxp3陽性細胞の浸潤を免疫組織学的に検討した。NRF-2陽性症例は陰性症例に比較して有意に予後不良であり、化療奏効程度と負の関連を認めた。現在腫瘍及び腫瘍間質のPDL-1陽性と化療奏効程度を検討中である。胎児期に発現するnonclassical HLA抗原のうちHLA-Fの乳がんでの発現を検討し、乳がんでの免疫抑制性マーカーの一つであることを英文論文に報告した(Pathol Int. 2015 Nov;65(11):569-74)。現在、代表者は大学から離れており、研究分担者と研究協力者と連携しながら実験を遂行し、これを学会発表や論文作成に向けて結果の考察などフィードバックを適宜行っている。昨年終了した前回の研究課題で形成されたデータに基づいた論文も作成され、現在投稿中である。このように研究の進行はやや遅れているものの成果は確実に得られている。近年の抗がん剤や分子標的薬剤治療の進歩により、切除不能高度進行消化器癌化療が奏効し、画像上腫瘍の縮小がみられ、根治切除可能症例が散見されるようになってきた。その切除標本に腫瘍の遺残が見られ、この腫瘍は繰り返す化療後の遺残腫瘍は治療抵抗性の腫瘍であり、いったん遺残細胞が治療耐性を獲得した病変であり、転移再発を来す場合、これら細胞が原因となりうる。この遺残病変こそ化療効果のない生物学的悪性度のもっとも高い腫瘍群とみなされ、幹細胞様のキャラクターや生物学的悪性度の高い性質を持っていることが予想されるものの、実際消化器癌臨床例で検討した報告は少ない。一方、化療耐性を獲得した腫瘍において腫瘍間質(ニッチ)の環境も通常と大きく異なっており、宿主が有する抗腫瘍免疫機能に対して負に採用することが指摘されており、遺残腫瘍の維持、増殖に腫瘍間質の要因も強く関わっていることが予想される。昨今、immunocheck point阻害薬がメラノーマや肺癌で著効し、臨床上、使用できるようになってきた。消化器癌でも化学療法耐性切除不能胃癌に著効することが示され、治療薬の選択肢の一つとなりうる。腫瘍間質における炎症細胞上のPD1やPDL1発現程度と抗PD1抗体の治療効果と強く関連することが報告されており。この高額な薬剤のレスポンダーの拾い上げに癌間質の情報が有用である可能性が指摘された。今回われわれは消化器癌症例でしばしば経験される化学療法中、治療後の残存腫瘍とその腫瘍間質(特に腫瘍間質に浸潤した免疫担当細胞)のキャラクターを解析することで、これら化療により遺残、再燃した難治性腫瘍の制御・克服に向けた新たな治療戦略を立てていきたいと研究を開始した。研究対象は化療を行った後、奏効を確認して切除を行った進行胃癌62例の腫瘍及び腫瘍間質の癌幹細胞マーカーと免疫抑制マーカーの発現を組織生検で検討した。各症例の化療評価はCR2例、PR37例、SD11例、PD12例であった。幹細胞のマーカーとしてZEB-1、NRF-2を、免疫抑制性マーカーとしてfoxp3陽性細胞の浸潤を免疫組織学的に検討した。NRF-2陽性症例は陰性症例に比較して有意に予後不良であり、化療奏効程度と負の関連を認めた。現在再発を含めた予後の解析を行っている。
KAKENHI-PROJECT-15K10109
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K10109
消化器癌における腫瘍間質から見た抗癌剤耐性のメカニズムの解明とその克服
テーマに関連した実験を学会発表や論文作成に向けて結果の考察などフィードバックを適宜行っている。昨年終了した前回の研究課題で形成されたデータに基づいた論文も作成され、現在投稿中である。成果は確実に得られており、消化器外科学会で発表予定である。PD-L1は腫瘍の免疫逃避機構を担う重要な免疫チェックポイント分子として知られており,胃癌においてはこの分子をターゲットにした免疫療法がセカンドライン治療を中心に臨床的に施行されており、その有効性が示唆されている.さらに胃癌間質におけるPD-L1発現とその治療効果についての関連性が示唆されつつある.一方で,ニボルマブの投与は静脈経路であり、血中のPD-L1 mRNA発現の影響が示唆されているものの、その臨床的意義について検討した報告はない。今回われわれは当科にて治療を行った胃癌133例を対象とし,治療前に末梢血液を採取した.白血球分画でのmRNAを抽出してPD-L1 mRNAの発現は定量RT-PCR法にて評価した(内因性のハウスキーピング遺伝子としてGAPDHを使用した).PD-L1 mRNA発現において切除症例と切除不能症例を比較すると切除不能症例が有意に高値(P<0.0001)であった.一方,PD-L1 mRNA発現と臨床病理学的因子との関係では,腫瘍深達度(P=0.002)およびステージ(P<0.001)と相関を認めた.さらに末梢血液中PD-L1高発発現群の予後は,低発現群に比較して有意に予後不良であった(P<0.0001).胃癌における末梢血液中のPD-L1 mRNA発現は,腫瘍の悪性度や予後を予測する上で重要な免疫マーカーとなる可能性が示唆された.今後はニボルマブ投与症例におけるPDL1陽性症例での治療効果を検討する予定である。PD-L1は腫瘍自体や間質に発現し、免疫寛容に関連した重要な分子である。胃癌に対してPD1、PDL1阻害薬が治療として使用されつつあり、これら分子の寡多が治療効果に関連することがわかってきたものの、これら薬剤は静脈投与であり,末梢血液中のPD-L1 mRNA発現の意義は不明である。胃癌133例を対象とし,末梢血液中のPD-L1 mRNAの発現を定量RT-PCR法にて評価した。PD-L1 mRNA発現において切除症例と切除不能症例を比較すると切除不能症例が有意に高値(P<0.0001)であった。T因子と病期と有意の相関を認めた.PD-L1高発発現群の予後は有意に予後不良であった。昨年のASCOでPD1阻害薬が化学療法後の切除不能胃癌の多施設共同大規模III相試験で著効することが示された。さらに、本薬剤をいったん投与すると、その効果が持続的であり、新しい免疫療法としての特性が示された。このように腫瘍および腫瘍間質を標的としたPD1やPDL1などimmunocheck point阻害薬が近い将来消化器癌でも使用できるようになってくることが予想される。本研究がそういった症例の臨床背景や薬剤の治療効果判定に利用できるようにさらに研究を重ねていきたい。昨今immunocheck point阻害薬がメラノーマや肺癌で使用されるようになり、化学療法耐性切除不能胃癌に著効することが示された。腫瘍間質における炎症細胞上のPD1やPDL1発現が治療効果と強く関連することが報告されており、化学療法後の腫瘍間質の情報はますます重要となることが予想される。
KAKENHI-PROJECT-15K10109
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K10109
Zymomonas属細菌細胞表層のアルコ-ル耐性構造の解析
2.Z.mobilisのホスファチジルエタノ-ルアミン(PE)完全欠損変異株を単離して、本菌の3つのメチル化反応(PE→PMME→PDME→PC)がただ1つの酵素によって触媒されていることを遺伝学的に明らかにした。現在は、本精製酵素のN末端アミノ酸配列を決定し、その情報からDNAペロ-ブを化学合成した後、大腸菌-pUCプラスミド系のコロニ-ハイブリダイゼイションによって本酵素遺伝子をクロ-ニングしようとしている。3.Z.mobilisのテトラヒドロキシバクテリオホッパン(THBH)完全欠損変異株をナイスタチン抵抗株として単離した。本変異株のTHBH含有量は親株のそれに比べて約20%までに減少した。本変異株のアルコ-ル耐性は保持されていたが、高濃度グルコ-ス耐性は低下していた。4.Z.mobilisのナイスタチン抵抗株のなかからTHBH含有量が親株に比べて約3倍に増加したTHBH増量変異株を単離した。本変異株とTHBH欠損変異株のTHBHとその誘導体(グルコサミンTHBHとエ-テル型THBH)の定量分析の結果は、THBHが両誘導体の直接の前駆脂質とは考え難く、むしろ、THBHのtetrahydroxypentane側鎖と両誘導体のtrihydroxypentenyl glucosamineおよびtrihydroxypentenyl carbocyclic pseudopentoseの側鎖は、それぞれ独立してhopane骨格へ導入されることが示唆された。2.Z.mobilisのホスファチジルエタノ-ルアミン(PE)完全欠損変異株を単離して、本菌の3つのメチル化反応(PE→PMME→PDME→PC)がただ1つの酵素によって触媒されていることを遺伝学的に明らかにした。現在は、本精製酵素のN末端アミノ酸配列を決定し、その情報からDNAペロ-ブを化学合成した後、大腸菌-pUCプラスミド系のコロニ-ハイブリダイゼイションによって本酵素遺伝子をクロ-ニングしようとしている。3.Z.mobilisのテトラヒドロキシバクテリオホッパン(THBH)完全欠損変異株をナイスタチン抵抗株として単離した。本変異株のTHBH含有量は親株のそれに比べて約20%までに減少した。本変異株のアルコ-ル耐性は保持されていたが、高濃度グルコ-ス耐性は低下していた。4.Z.mobilisのナイスタチン抵抗株のなかからTHBH含有量が親株に比べて約3倍に増加したTHBH増量変異株を単離した。本変異株とTHBH欠損変異株のTHBHとその誘導体(グルコサミンTHBHとエ-テル型THBH)の定量分析の結果は、THBHが両誘導体の直接の前駆脂質とは考え難く、むしろ、THBHのtetrahydroxypentane側鎖と両誘導体のtrihydroxypentenyl glucosamineおよびtrihydroxypentenyl carbocyclic pseudopentoseの側鎖は、それぞれ独立してhopane骨格へ導入されることが示唆された。1.本研究課題の研究計画の1つとして、Z.mobilisの表層特異脂質、テトラヒドロキシバクテリオホッパン(THBH)、と本菌のアルコール醗酵との関係およびその生合成経路を遺伝学的に明らかにした。(1)Z.mobilisST44からTHBH欠損変異株(N103)をナイスタチン抵抗株として単離した。欠損変異株はTHBHの著しい減少に伴ってホッパノール含量が増加した。このことは本菌のTHBHがホッパノールを経て生合成されることを示唆した。(2)THBH復帰変異株(R103)を、欠損変異株の低下した塩耐性の回復を指標として単離した。欠損及び復帰変異株のアルコール醗酵能や塩耐性および高濃度グルコース耐性能の実験結果は、本菌のTHBHがアルコール醗酵に関連する浸透圧耐性に深く関与していることを示した。2.本研究課題を遺伝子工学的に解明するための基礎研究として、Z.mobilisのロイシン生合成系に関与するβ-インプロピルマレート脱水素酵素(β-IPMD)遺伝子を単離し、その塩基配列を決定した。(1)Z.mobilis染色体DNAをSauBAI部分分解DNA断片をpBR322-E.coliC600のショットガンクローニング法でβ-IPMD遺伝子を単離した。ササジハイブリダイジョイションで本遺伝子が該菌由来であることを確認した後、外来DNA断片を2.6Kbにサブクローニングした。(2)クローニングしたDNA断片から、β-IPMD遺伝子をコードする1047bpのオープンリーデングフレームを解読した。開始コドンの上流8-12bpにSD配列(AGGAG)を認めたが、Z.mobilisコンセンサス配列の-10および-35領域は確認することができなかった。本遺伝子のアミノ酸レベルにおける他のβ-IPMD遺伝子との相同性は、S.cerevisiae47%、C.utilis53%、B.coagulans53%、I.thermophilus49%であった。コドン使用頻度をZ.mobilisの他の遺伝子と比べた場合、Leu,AsnおよびArgにおいて異なっていた。2.Z.mobilisのテトラヒドロキシバクテリオホッパン(THBH)完全欠損変異株をナイスタチン抵抗株として単離した。本変異株のTHBH含有量は親株のそれに比べて約20%までに減少した。本変異株のアルコ-ル耐性は保持されていたが、高濃度グルコ-ス耐性は低下していた。
KAKENHI-PROJECT-63560100
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63560100
Zymomonas属細菌細胞表層のアルコ-ル耐性構造の解析
3.Z.mobilisのナイスタチン抵抗株のなかからTHBH含有量が親株に比べて約3倍に増加したTHBH増量変異株を単離した。本変異株とTHBH欠損変異株のTHBHとその誘導体(グルコサミンTHBHとエ-テル型THBH)の定量分析の結果は、THBHが両誘導体の直接の前駆脂質とは考え難く、むしろ、THBHのtetrahydroxypentane側鎖と両誘導体のtrihydroxypentenyl glucosaminneおよびtrihydroxypentenyl carbocyclic pseudopentoseの側鎖は、それぞれ独立してhopane骨格へ導入されることが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-63560100
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63560100
磁性マイクロビーズを用いた肝細胞癌ラジオ波焼灼療法における焼灼範囲拡大の検討
H17年度は、(1)磁性マイクロビーズ・油性造影剤懸濁液動注後のラジオ波焼灼療法(RFA)施行による焼灼範囲拡大の評価と、(2)安全性の検証を中心に研究を行う予定であったが、昨年度MRI造影剤である超常磁性体酸化鉄(SPIO)を用いてRFA焼灼範囲が拡大する傾向を認めたため、引き続きSPIOを用いた焼灼範囲拡大の研究を主に行った。方法は以下の如くである。(1)ウサギにSPIOの一種であるフェルカルボトランを通常量投与した群と、倍量投与した群、生食のみ投与した群の3群に分け、それぞれ全身麻酔下にRFAを施行する。(2)RFA後屠殺し、MRIを撮影して焼灼範囲の体積を画像から測定する。(3)MRI撮影後、解剖を行い、肉眼的な焼灼範囲の測定と、組織学的検討を行う。(4)上記の実験を各群5羽ずつ施行し、焼灼範囲を比較検討する。結果:MRI画像より算出した焼灼体積は、フェルカルボトランを投与した群において、生食を投与した群よりも有意に大きかった(フェルカルボトラン通常量群:12.3±1.9cm^3、倍量群:12.3±3.4cm^3、生食群:5.9±1.1cm^3)。また、解剖時に焼灼範囲の割面から計測した焼灼横径もフェルカルボトラン群で増大傾向を認めた(通常群:24.8±3.6mm、倍量群:26.7±3.6mm、生食群:24.5±2.1mm)。これより、フェルカルボトラン投与後にRFAを施行することによって、より広範囲な焼灼範囲が得られる可能性が示唆された。また、研究過程でRFAの焼灼範囲得を規定する他の因子について検討した結果、ICGテストの結果が悪いほど焼灼範囲が拡大することを見出した。H16年度は、(1)磁性マイクロビーズ・油性造影剤懸濁液の作成と安全性の検証、(2)家兎VX2肝癌モデルを用いた磁性マイクロビーズ動注後の腫瘍および肝組織内分布の評価を行う予定であったが、まずMRI造影剤として現在臨床応用されており、安全性が確立されている、超常磁性体酸化鉄(SPIO)を用いたラジオ波焼灼療法(RFA)における焼灼範囲拡大の基礎的研究を行った。SPIOも酸化鉄コロイドからなる磁性体であるため、ラジオ波誘電加温時に特異的な熱を発生することが予想された。そこで、実際我々が行った基礎的研究は、以下の通りである。1.生食を門脈から環流した豚肝と、SPIO(フェルカルボトラン)の生食溶液を門脈から環流した豚肝をそれぞれ金属容器の中に入れ寒天で固め、RFAモデルを作成する。2.各々のモデルを超音波ガイド下で、冷水環流型ラジオ波電極を刺入し焼灼する(1個の豚肝につき5カ所ずつ)。3.焼灼範囲を超音波画像と割面で計測することによって評価し、比較検討する。今まで5個ずつの豚肝を用いて施行した上記実験の結果では、SPIO溶液で環流した豚肝にRFAを施行した方が、生食のみで環流したものよりも焼灼範囲が拡大する傾向を認めている。磁性マイクロビーズ・油性造影剤懸濁液が臨床応用できなかった場合でも、SPIO溶液で代用できる可能性があり、今後も安全性の確認やRFA時の効果的投与法について基礎的研究を継続する予定である。H17年度は、(1)磁性マイクロビーズ・油性造影剤懸濁液動注後のラジオ波焼灼療法(RFA)施行による焼灼範囲拡大の評価と、(2)安全性の検証を中心に研究を行う予定であったが、昨年度MRI造影剤である超常磁性体酸化鉄(SPIO)を用いてRFA焼灼範囲が拡大する傾向を認めたため、引き続きSPIOを用いた焼灼範囲拡大の研究を主に行った。方法は以下の如くである。(1)ウサギにSPIOの一種であるフェルカルボトランを通常量投与した群と、倍量投与した群、生食のみ投与した群の3群に分け、それぞれ全身麻酔下にRFAを施行する。(2)RFA後屠殺し、MRIを撮影して焼灼範囲の体積を画像から測定する。(3)MRI撮影後、解剖を行い、肉眼的な焼灼範囲の測定と、組織学的検討を行う。(4)上記の実験を各群5羽ずつ施行し、焼灼範囲を比較検討する。結果:MRI画像より算出した焼灼体積は、フェルカルボトランを投与した群において、生食を投与した群よりも有意に大きかった(フェルカルボトラン通常量群:12.3±1.9cm^3、倍量群:12.3±3.4cm^3、生食群:5.9±1.1cm^3)。また、解剖時に焼灼範囲の割面から計測した焼灼横径もフェルカルボトラン群で増大傾向を認めた(通常群:24.8±3.6mm、倍量群:26.7±3.6mm、生食群:24.5±2.1mm)。これより、フェルカルボトラン投与後にRFAを施行することによって、より広範囲な焼灼範囲が得られる可能性が示唆された。また、研究過程でRFAの焼灼範囲得を規定する他の因子について検討した結果、ICGテストの結果が悪いほど焼灼範囲が拡大することを見出した。
KAKENHI-PROJECT-16790380
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16790380
東日本大震災における仮設期から復興期の高齢者等の居住環境に関する研究
1.仮設住宅閉鎖期における空間及びコミュニティのマネジメント研究1ー1.阪神・淡路大震災と中越地震の事例調査:関連資料収集、インタビュー調査を行った。前者では居住者が少数になっても仮設住宅の集約は殆ど実施されず、そのことがコミュニティ維持を困難なものにし団地内治安の低下につながり、後者では仮設住宅の集約が行われたが、閉鎖期の仮設住宅から仮設住宅への引っ越しは心理的な負担となったことが明らかになった。1ー2.東北三県の現状調査:被災市町村の訪問や各自治体が発信する情報の収集から把握した。仮設住宅を建設した東北三県39市町村のうち15市町村が仮設住宅を閉鎖し集約する方針を示し、中でも釜石市と大船渡市は閉鎖方針の基本的な考え方と具体的な閉鎖時期の計画案を発表していた。そこで釜石市担当者へインタビューを実施した結果、被災者の反応は総論賛成各論要調整であることがわかった。本研究計画を策定した2013年に想定した状況よりも、現在の復興の進捗は全体的にやや遅れている。2.陸前高田市における高齢者向け復興住宅の計画支援および実践研究2ー1.定例ワークショップ:2013年度からスタッフや地元高齢者を対象にワークショップを開いてきたが、本年度も引き続き2か月に1度程度の頻度で開催し意見を収集した。その過程で用途計画がサ高住だけでなく、デイサービスセンター(以下DS)と訪問介護事業所を併設するという計画へ変化していった。2ー2.既存DSの利用者とスタッフの使われ方調査:上述のような計画変更のため、居住者の住まい方調査に類するDSの使われ方調査を前倒しして行った。調査方法は非参与型の行動観察で、利用者数が同数程度の平日のうち2日間を選定し、調査員2名体制で実施した。結果、利用者数に対して狭いこと(特に浴室)、狭いなりに家具を使った上手い設え、一斉午睡の習慣などが特徴として挙げられた。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。1.仮設住宅閉鎖期における空間及びコミュニティのマネジメント研究1ー1.阪神・淡路大震災と中越地震の事例調査:関連資料収集、インタビュー調査を行った。前者では居住者が少数になっても仮設住宅の集約は殆ど実施されず、そのことがコミュニティ維持を困難なものにし団地内治安の低下につながり、後者では仮設住宅の集約が行われたが、閉鎖期の仮設住宅から仮設住宅への引っ越しは心理的な負担となったことが明らかになった。1ー2.東北三県の現状調査:被災市町村の訪問や各自治体が発信する情報の収集から把握した。仮設住宅を建設した東北三県39市町村のうち15市町村が仮設住宅を閉鎖し集約する方針を示し、中でも釜石市と大船渡市は閉鎖方針の基本的な考え方と具体的な閉鎖時期の計画案を発表していた。そこで釜石市担当者へインタビューを実施した結果、被災者の反応は総論賛成各論要調整であることがわかった。本研究計画を策定した2013年に想定した状況よりも、現在の復興の進捗は全体的にやや遅れている。2.陸前高田市における高齢者向け復興住宅の計画支援および実践研究2ー1.定例ワークショップ:2013年度からスタッフや地元高齢者を対象にワークショップを開いてきたが、本年度も引き続き2か月に1度程度の頻度で開催し意見を収集した。その過程で用途計画がサ高住だけでなく、デイサービスセンター(以下DS)と訪問介護事業所を併設するという計画へ変化していった。2ー2.既存DSの利用者とスタッフの使われ方調査:上述のような計画変更のため、居住者の住まい方調査に類するDSの使われ方調査を前倒しして行った。調査方法は非参与型の行動観察で、利用者数が同数程度の平日のうち2日間を選定し、調査員2名体制で実施した。結果、利用者数に対して狭いこと(特に浴室)、狭いなりに家具を使った上手い設え、一斉午睡の習慣などが特徴として挙げられた。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-14J06855
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J06855
小型水中ロボットと写真測量を用いた水中3D地図作成技術の確立
小型水中ロボット(sROV)を用いた水中3D地図作成技術の確立を、1撮影技術の確立、2データ精度検証、3環境計測技術の検証の3つの点から進めているが、本年度においては特に2において進捗があった。調査は主に潮位差の大きい山口県の秋穂湾において実施した。干潮時にUAV(ドローン)や手撮りによって冠水していない海岸をカメラ撮影し、これによって得られたモデルを教師として、満潮時にsROVにおける水中の撮影によって得られたモデルの精度を検証した。結果としてsROVによる測量によって概ね良い精度が得られた。満潮に近い時間帯においてsROVによる撮影を実施したのは礫等の対象物とsROVの距離が大きい方が、撮影範囲が大きくとれ対象物を欠損なく写真に収められるからである。一方で、潮位の高い時間は限られているため、大きな対象物を撮影した際には異なる撮影日の写真を合わせて解析し3Dモデルを作成することも実施した。しかし、同日の写真のみでモデル化した方が光条件や水の濁度の条件が均質なため、精度の高いモデルが作成できる。結果的に調査を進めるに際して、撮影条件をなるべく変えずに欠損のない写真を効率よく撮影するという困難があった。年度内に測量の計算を終える予定であったが、機体の制御や撮影に際して克服すべき課題もあり時間を要したので、計算時間を節約するために3Dモデルはやや粗い精度のものを実行するに止まっている。新年度においてはモデル作成時の計算精度をあげてモデルの精度検証を実施したいと考える。現地調査においてカメラのセッティングや測量に適した時間帯での測量に当初の予定よりも時間を要したため。昨年度の調査において主要な調査は終了したため、本年度は必要に応じて補足的な調査を実施し、成果発表をすることに専心する予定である。小型水中ロボット(sROV)を用いた水中3D地図作成技術の確立を、1撮影技術の確立、2データの精度検証、3環境計測技術への応用可能性の検証、の3つの観点から進めたが、特に1と3においては進捗があった。まず、1の撮影技術であるが、3D地図を作成するには対象の写真を欠損なく連続的に撮ることが必要である。対象を撮影するための測線を波や風の影響を受けにくい方向に設置する、カメラを極低速で移動させることで大幅に改善した。また、航行するsROVが波の影響を受けにくく、航行位置を目測で確認できる深度等の調整も改良し、この点でも撮影技術は改善した。一方で、複数台のカメラを同時に運用することも試みたが、現場において作業量が増大してしまう手間が予想外に大きかったためこの手法は導入せずに代わりに測線を多く取る(往復して何度も対象を撮影する)ことで対応した。また、3については淡水の湖沼と海岸で調査を進め、礫が多い環境や砂浜、水草、海藻といった様々な場や対象のモデル化も進めた。水面まで繁茂している水草はsROVでは撮影が困難であったので、UAV(ドローン)を同時に用いて撮影することで対応した。2は観測精度の確認されているUAVとsROVの観測を同じ地点に適用し、比較検討しているが、観測はしたものの解析途中である。また、UAVとsROV両者の適した撮影条件を見極めて両者を撮影対象ごとに使い分けるなどして、精度の高い水中3D地図作成についても今後観測や検討を進めていく予定である。これまでに海岸部や湖沼において計測を実施した。撮影技術の確立や様々な対象のモデル化については比較的順調に研究が進んでいるが、精度検証についてはやや作業が遅れている。小型水中ロボット(sROV)を用いた水中3D地図作成技術の確立を、1撮影技術の確立、2データ精度検証、3環境計測技術の検証の3つの点から進めているが、本年度においては特に2において進捗があった。調査は主に潮位差の大きい山口県の秋穂湾において実施した。干潮時にUAV(ドローン)や手撮りによって冠水していない海岸をカメラ撮影し、これによって得られたモデルを教師として、満潮時にsROVにおける水中の撮影によって得られたモデルの精度を検証した。結果としてsROVによる測量によって概ね良い精度が得られた。満潮に近い時間帯においてsROVによる撮影を実施したのは礫等の対象物とsROVの距離が大きい方が、撮影範囲が大きくとれ対象物を欠損なく写真に収められるからである。一方で、潮位の高い時間は限られているため、大きな対象物を撮影した際には異なる撮影日の写真を合わせて解析し3Dモデルを作成することも実施した。しかし、同日の写真のみでモデル化した方が光条件や水の濁度の条件が均質なため、精度の高いモデルが作成できる。結果的に調査を進めるに際して、撮影条件をなるべく変えずに欠損のない写真を効率よく撮影するという困難があった。年度内に測量の計算を終える予定であったが、機体の制御や撮影に際して克服すべき課題もあり時間を要したので、計算時間を節約するために3Dモデルはやや粗い精度のものを実行するに止まっている。新年度においてはモデル作成時の計算精度をあげてモデルの精度検証を実施したいと考える。現地調査においてカメラのセッティングや測量に適した時間帯での測量に当初の予定よりも時間を要したため。測量の精度検証についての作業の速度を今後は進めつつ、研究を推進したいと考える。また、現地観測からデータ解析まで予定よりも時間を要することがわかりつつあるので、当初計画のようにかなり多くの地点で観測を実施するのはあまり適切ではない。むしろ1地点ごとに質の高い観測を実施し、きちんと解析・データ検証をすることで研究を推進したいと考える。
KAKENHI-PROJECT-17K18534
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K18534
小型水中ロボットと写真測量を用いた水中3D地図作成技術の確立
昨年度の調査において主要な調査は終了したため、本年度は必要に応じて補足的な調査を実施し、成果発表をすることに専心する予定である。大きな理由は予定よりも野外調査の回数が少なかったことによる。野外調査では測量を実施したが、測量を実施するにあたって欠損データが生じてしまう問題が発生していた。そこで、測量対象を変えてデータを集めるよりも機材の運用手法を工夫してあまり場の条件を変えずに調査を実施したほうが有効だと判断したためである。次年度は調査体制が整ったため初年度よりも円滑に予算を執行できる予定である。様々な水中環境での調査を進め取得データをワークステーションにて速やかに解析する。調査が予定よりも時間を要したため解析作業の時間が十分に確保できなかったため、当初予定であった研究機関を2年から3年に延長した。3年目最終年度では2年度までに終了していない調査の実施及び論文作成時の英文校閲料、論文投稿料、学会発表への渡航費用に用いる予定である。
KAKENHI-PROJECT-17K18534
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K18534
ユーザの分布が時空間上で非均質な無線ネットワークにおけるリアルタイム制御法の研究
将来の無線ネットワークで展開されるミリ波通信, NOMA,基地局間協調といった多様な技術の効率的な設計・運用のため,空間確率過程を用いたモデリング手法である「確率幾何」による理論的な性能評価が近年盛んに行われているが,その多くがユーザの分布の時空間上における均質性を仮定している.しかし,膨大な数のユーザへ所望の通信品質を提供するためには,空間上に非均質に分布するユーザのダイナミクスに追従するネットワーク制御が必要となる.本研究では,確率幾何による通信品質の理論解析に基づき,ユーザの分布が時空間上で非均質な無線ネットワークにおけるリアルタイムな最適制御法の確立を目指す.将来の無線ネットワークで展開されるミリ波通信, NOMA,基地局間協調といった多様な技術の効率的な設計・運用のため,空間確率過程を用いたモデリング手法である「確率幾何」による理論的な性能評価が近年盛んに行われているが,その多くがユーザの分布の時空間上における均質性を仮定している.しかし,膨大な数のユーザへ所望の通信品質を提供するためには,空間上に非均質に分布するユーザのダイナミクスに追従するネットワーク制御が必要となる.本研究では,確率幾何による通信品質の理論解析に基づき,ユーザの分布が時空間上で非均質な無線ネットワークにおけるリアルタイムな最適制御法の確立を目指す.
KAKENHI-PROJECT-19K14981
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K14981
記憶モデルとしてのキンドリング(小脳歯状核がてんかん焦点形成に果す役割)
我々はキンドリングモデルを用いて小脳歯状核が大脳の神経系可塑性にどのように関連するか検索した。ネコを用いて一側歯状核を破壊した破壊群と対照群でキンドリング発展過程、後放電の持続時間、自発性棘波の数を比較検討した。その結果,小脳機能が健全であった対照群より一側歯状核破壊群で棘波の出現が早く多いがその後むしろ減少し,キンドリングの後半では対照群より少なくなるという結果を示す。歯状核破壊群の二次側海馬ではむしろ棘波数が増大した。小脳機能の健全でない場合二次焦点形成が促進される結果となった。小脳の抑制系の一部である歯状核が損傷されているとより全般化に至りやすく,二次的てんかん原性病変を作りやすいという結果となった。この結果は小脳が大脳皮質での焦点形成に強く関わっていることを示唆する。扁桃核キンドリングの際の両側腹側海馬内の細胞外液中のグルタメートはキンドリング発作時にその発展過程と一致して放出が増大する。発作後数分-10分後には基礎値に戻る。第2-3段階では左右共,基礎値の約3.5倍に上昇し,刺激後1分から3分まで有意な上昇を示した。第5段階では約5倍に上昇していた。GABAはこれに対して発作後緩やかに上昇し数時間にわたってその変化は持続し,GABAレベルは第3段階で基準値の1.5倍で,第5段階では2.5倍になっていた。初期の段階では次の刺激前には基準値に復するが,後半になるともはや基準値に復さなくなった。これらのグルタメートの放出の増大とGABAの変化は,てんかん原性ならびにけいれん準備性に,本質的に関わっていると見做しうる。GABAの増大は歯状回などの入力部での抑制の増強をもたらし,結果的に海馬歯状回の顆粒細胞は低活動性の状態であり,出力部での異常なグルタメートの放出は一旦興奮が生じた場合のフィードバックの欠如を来たし,両者が相俟って過同期性に関与するものと考えられる。我々はキンドリングモデルを用いて小脳歯状核が大脳の神経系可塑性にどのように関連するか検索した。ネコを用いて一側歯状核を破壊した破壊群と対照群でキンドリング発展過程、後放電の持続時間、自発性棘波の数を比較検討した。その結果,小脳機能が健全であった対照群より一側歯状核破壊群で棘波の出現が早く多いがその後むしろ減少し,キンドリングの後半では対照群より少なくなるという結果を示す。歯状核破壊群の二次側海馬ではむしろ棘波数が増大した。小脳機能の健全でない場合二次焦点形成が促進される結果となった。小脳の抑制系の一部である歯状核が損傷されているとより全般化に至りやすく,二次的てんかん原性病変を作りやすいという結果となった。この結果は小脳が大脳皮質での焦点形成に強く関わっていることを示唆する。扁桃核キンドリングの際の両側腹側海馬内の細胞外液中のグルタメートはキンドリング発作時にその発展過程と一致して放出が増大する。発作後数分-10分後には基礎値に戻る。第2-3段階では左右共,基礎値の約3.5倍に上昇し,刺激後1分から3分まで有意な上昇を示した。第5段階では約5倍に上昇していた。GABAはこれに対して発作後緩やかに上昇し数時間にわたってその変化は持続し,GABAレベルは第3段階で基準値の1.5倍で,第5段階では2.5倍になっていた。初期の段階では次の刺激前には基準値に復するが,後半になるともはや基準値に復さなくなった。これらのグルタメートの放出の増大とGABAの変化は,てんかん原性ならびにけいれん準備性に,本質的に関わっていると見做しうる。GABAの増大は歯状回などの入力部での抑制の増強をもたらし,結果的に海馬歯状回の顆粒細胞は低活動性の状態であり,出力部での異常なグルタメートの放出は一旦興奮が生じた場合のフィードバックの欠如を来たし,両者が相俟って過同期性に関与するものと考えられる。小脳歯状核が大脳の神経可塑性にどのように関与しているか扁桃核キンドリングモデムを用いて調べた。ラットでは一側小脳菌状核を予め破壊しておくと、扁桃核キンドリングの行動面の変化が促進されるが、キンドリングにともなう後放電の持続時間の増加、及び扁桃核における自発性てんかん性発射の数の増加はわずかであるのを報告している。今回、ネコを用いて、一側小脳菌状核を破壊した破壊群と対照群とで行動面のキンドリング発展過程、後放電の持続時間、てんかん性発作波の出現について比較検討した。11匹のネコを対照群と破壊群にわけ、扁桃核・海馬・視床腹外側核・小脳菌状核に電極を装着した。左小脳歯状核を電気破壊し、右扁桃核の電気刺激を行った。結果:1、キンドリングの進展過程:小脳菌状核一側破壊群の5/6と対照群の1/5において最初の刺激で2段階が認められたが、全経過で比較すると、有意差を認めなかった。2、後放電の持続時間:有意差を認めず。3、対照群のキンドリング完成時の脳波について、刺激側及び対側扁桃核に高頻度に棘波の出現を認めた。
KAKENHI-PROJECT-05454313
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05454313
記憶モデルとしてのキンドリング(小脳歯状核がてんかん焦点形成に果す役割)
一側歯状核破壊群では、全般化するまでは刺激側扁桃核の棘波が多いが、全般化すると対側に棘波の出現が多くなり、刺激側ではむしろ少ない傾向を認めた。この変化は、扁桃核・海馬共に共通して認められた。4、対照群と破壊群の一次側扁桃核と海馬の棘波数を比較すると、有意差を認めなかった。5、対照群と破壊群の二次側扁桃核の棘波数を比較すると、破壊群で二次側の棘波数が多い傾向はあるものの、有意ではなかった。6、対照群と破壊群の二次側海馬の棘波数を比較すると、破壊群の棘波数が多かった。7、棘波数を一次側と二次側で比較すると、対照群では有意に一次側が多いが、破壊群で一次側と二次側の棘波数に差を認めなかった。これらの結果より、左歯状核破壊が右扁桃核キンドリングにおいて二次焦点形成を有意に促進した。また、種族差の存在が示唆された。1.大脳扁桃核キンドリングを用いて小脳歯状核が大脳の神経可塑性にどのように関与しているか調べた。ラットとネコでは一側小脳歯状核を、予め破壊しておくと、扁桃核キンドリングの発展過程に及ぼす影響が異なるが、何れも初期の段階では促進傾向が認められた。後放電の持続時間でも種属差を認めた。左歯状核破壊が右扁桃核キンドリングにおいて二次焦点形成を優位に促進した。2.一側小脳破壊動物を用いて、メタアンフェタミンを投与し、回転運動がどのように変容しているか検索したが、明瞭な一側優位の回転を示すには至らなかった。3.発作発現の生物学的基盤に関連して、微小透析を用いて、キンドリング発作時のグルタメートをラット腹側海馬で両側性に測定すると、(1)扁桃核キンドリングに際し、グルタメートの放出が発作と一致して増大し、発作終了後急速に回復する、(2)その程度はキンドリングの段階が進展する程、グルタメート放出両が増大するのを観察出来た。しかしながら、各刺激毎の発作前のベースラインの値は発作前と変わらず、発作発現には関与するがけいれん準備性との関連は更に検討する必要がある。4.発作時のGABAの動態を微小透析法で検索し、刺激側、反対側の腹側海馬で、第1回キンドリング刺激では全く変化しないが、3段階で発作と一致して増大し、最終段階の5段階では更に増大する。これらの変化は発作後80分以上持続し、刺激前のベースラインに戻らず、発作間欠期でも、次第に、増大するのが観察された。このGABAの変化はけいれん準備性と関連するものであろう。向後海馬のグルタメートのレセプターがどのような動態に変化しているのか組織化学的に、また、分子生物学的に追求したい。我々はキンドリングモデルを用いて小脳歯状核が大脳の神経系可塑性にどのように関連するか検索した。ネコを用いて一側歯状核を破壊した破壊群と対照群でキンドリング発展過程、後放電の持続時間、自発性棘波の数を比較検討した。その結果,小脳機能が健全であった対照群より一側歯状核破壊群で棘波の出現が早く多いがその後むしろ減少し,キンドリングの後半では対照群より少なくなるという結果を示す。歯状核破壊群の二次側海馬ではむしろ棘波数が増大した。小脳機能の健全でない場合二次焦点形成が促進される結果となった。小脳の抑制系の一部である歯状核が損傷されているとより全般化に至りやすく,二次的てんかん原性病変を作りやすいという結果となった。この結果は小脳が大脳皮質での焦点形成に強く関わっていることを示唆する。扁桃核キンドリングの際の両側腹側海馬内の細胞外液中のグルタメートはキンドリング発作時にその発展過程と一致して放出が増大する。発作後数分-10分後には基礎値に戻る。第2-3段階では左右共,基礎値の約3.5倍に上昇し,刺激後1分3分まで有意な上昇を示した。第5段階では約5倍に上昇していた。
KAKENHI-PROJECT-05454313
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05454313
エンドセリンを標的とした非ウイルス遺伝子治療法と血管病変、血管作動性に関する研究
遺伝子導入による治療の可能性を探るため、血管攣縮や収縮作用に極めて重要であるエンドセリン(ET)を選択し、その受容体遺伝子を標的とした。まず、in vitroの研究として冠動脈内皮細胞を用い、そのET-B型受容体のアンチセンスオリゴを細胞へ導入し、その発現を抑制できるかを検討した。その遺伝子導入法としては、新しい方法である超音波とマイクロバブル法を用いた。また、従来の高濃度による導入法、リポフエクタミンによる導入法、および以前から取り組んでいた、合成ペプチドdiC18-Gly-apoE(dpGapoE)を使用した導入法を併せて行い比較検討した。dpGapoEは、LDL受容体と結合するアポ蛋白Eの129-169のペプチド合成物のN末端をパルミチック酸でアシル化し、さらにグルシンでアルキル化し、よりコンデンスさせ、LDL受容体に結合しやすくしたものである。超音波とマイクロバブル法の最適条件は、超音波を1W、10%duty cycle、10secで使用し、アンチセンスの濃度は、900nM、マイクロバブル量は、50μlであった。この条件下でアンチセンスオリゴの導入率は、25±2%(そのうち生細胞へは、22±2%、すでに死亡した細胞へは、3±2%)であった。その導入率は、高濃度法(7.3±5%)より高率であったが、リポフェクタミン法(69±5%)よりも低率であった。DpGpoEを用いた場合、導入率40%程度だった。超音波とマイクロバブル法の利点としては、リポフエクタミン法に比べて、操作が簡便で、短時間に終了すること、費用も高価なリボフエクタミンに比べ格安であることが挙げられるが、超音波による導入後に、フローサイトメーターにて陽性細胞のみを分別するなど、重なる改良で導入率の向上をはかる必要があると思われた。遺伝子導入による治療の可能性を探るため、血管攣縮や収縮作用に極めて重要であるエンドセリン(ET)を選択し、その受容体遺伝子を標的とした。まず、in vitroの研究として冠動脈内皮細胞を用い、そのET-B型受容体のアンチセンスオリゴを細胞へ導入し、その発現を抑制できるかを検討した。その遺伝子導入法としては、新しい方法である超音波とマイクロバブル法を用いた。また、従来の高濃度による導入法、リポフエクタミンによる導入法、および以前から取り組んでいた、合成ペプチドdiC18-Gly-apoE(dpGapoE)を使用した導入法を併せて行い比較検討した。dpGapoEは、LDL受容体と結合するアポ蛋白Eの129-169のペプチド合成物のN末端をパルミチック酸でアシル化し、さらにグルシンでアルキル化し、よりコンデンスさせ、LDL受容体に結合しやすくしたものである。超音波とマイクロバブル法の最適条件は、超音波を1W、10%duty cycle、10secで使用し、アンチセンスの濃度は、900nM、マイクロバブル量は、50μlであった。この条件下でアンチセンスオリゴの導入率は、25±2%(そのうち生細胞へは、22±2%、すでに死亡した細胞へは、3±2%)であった。その導入率は、高濃度法(7.3±5%)より高率であったが、リポフェクタミン法(69±5%)よりも低率であった。DpGpoEを用いた場合、導入率40%程度だった。超音波とマイクロバブル法の利点としては、リポフエクタミン法に比べて、操作が簡便で、短時間に終了すること、費用も高価なリボフエクタミンに比べ格安であることが挙げられるが、超音波による導入後に、フローサイトメーターにて陽性細胞のみを分別するなど、重なる改良で導入率の向上をはかる必要があると思われた。血管病変は血管内皮で産生、放出される種々の血管作動性物質の様々な関与により成立するが、中でも血管弛緩因子としてのプロスタサイクリン(PGI_2)や一酸化窒素(NO)、血管収縮因子としてのトロンボキサンA_2やエンドセリン(ET)が重要であり、それぞれに病態生理学的研究がなされている。現在知られている血管収縮因子の中で最も強力で長時間作用する血管作動性物質であるETは、高血圧症、血管攣縮に重要な役割を演じることが明らかにされ、病態生理学的にも細胞増殖および遊走作用など動脈硬化症発症、進展に関与すると示唆されている。血管の生理学的作用は、十分な量の循環血液を末梢組織へ供給することにある。動脈硬化症はその血管の生理作用を胞弱化させ、結果的に内腔の狭窄、収縮弛緩反応の異常を引き起こす。高血圧症はこの過程を更に悪化させる。そこで本研究ではET遺伝子、又はET受容体遺伝子を標的として、それを操作することにより、血管トーヌスを減少させ、その治療戦略が高血圧症+動脈硬化症の治療法として利用可能か否かを検討したい。遺伝子治療の方法として遺伝子の運び屋:ベクターとして、私達は合成ペプチドdiC_<18>-Gly-apoEを用いた。これはLDL-受容体と結合するアポ蛋白Eの129-169のペプチド合成物のN末端をパルミチック酸でアシル化し,さらにグリシンでアルキル化し、よりコンデンスさせLDL受容体に結合しやすくした。これにtargetとしてET1/2アンチセンスを結合し、ET1/2アンチセンス-apoE peptide complexを用いる。現在、以前合成したペプチドが不足しているため、diC_<18>-Gly-apoE(dpGapoE)ペプチド合成に関する研究を行っている。
KAKENHI-PROJECT-11670724
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11670724
エンドセリンを標的とした非ウイルス遺伝子治療法と血管病変、血管作動性に関する研究
エンドセリン-1(ET-1)は内皮細胞と平滑筋細胞に分泌される強力的な血管収縮因子である。その発現は動脈硬化症及び冠内皮機能障害等で増大され、不安定動脈硬化プラークの破裂を惹起し、急性冠イベントを起こしうる。従って、ET-1をコーディングする遺伝子は明らかに冠動脈硬化症(CHD)の候補遺伝子である。本年度実施した実験、下記2項目について報告する。その1:diC18-Gly-apoE(dpGapoE)ペプチドとpreproendothelin-1に対するアンチセンスオリゴの培養細胞導入実験は現在進行中である。その2:ET-1遺伝子に1塩基置換によるアミノ酸変異(SNP)Lys198Asn(K198N)多型は肥満患者での血圧の上昇と関連する。エンドセリン-1遺伝子によるpreproendothelin-1の合成は各種ホルモンと血管因子がGATA-2とAP-1などの転写因子とET-1遺伝子プロモータとの結合を調節することによって調節される。患者対照研究において、ET-1遺伝子多型とCHDの関係及び通常の冠危険因子の影響を検討した。対象は冠動脈造影術によって診断された486名CHDを有する患者と210名有さない者(対照者)。ET1-K198N多型はRFLP法によって同定した。対象全体では、TT,GT,とGG型の頻度は9.5%,39.1%,と54.1%であり、Hardy-Weinberg平衡より予測した頻度と一致した。CHD患者群では、対照群と比し、男性の割合が多く(M/F:379/107vs.112/98)、糖尿病(33.7%vs.19.1%)と喫煙者(59.7%vs.38.6%)の発生率が有意に高かった。CHD患者群と対照群の間に、GG,GT,TTの頻度分布は有意差がなかったが、糖尿病を有する喫煙者では、CHD患者群のT alleleの頻度は29.0%で、対照群の9.5%より有意に高く(p<0.01)、年齢と性別で補正後、T allele保有者(TT+TG)のCHDリスクはGG型保有者の5.4倍(95%Cl:2.3-14.8)であった。以上の結果は、ET-1遺伝子をターゲートに遺伝子治療を行う時に、環境因子との絡みを考える必要があると示唆した。遺伝子導入による治療の可能性を探るため、血管攣縮や収縮作用に極めて重要であるエンドセリン(ET)を選択し、その受容体遺伝子を標的とした。まず、in vitroの研究として冠動脈内皮細胞を用い、そのET-B型受容体のアンチセンスオリゴを細胞へ導入し、その発現を抑制できるかを検討した。その遺伝子導入法としては、新しい方法である超音波とマイクロバブル法を用いた。また、従来の高濃度による導入法、リポフエクタミンによる導入法、および以前から取り組んでいた、合成ペプチドdiC18-Gly-apoE(dpGapoE)を使用した導入法を併せて行い比較検討した。dpGapoEは、LDL受容体と結合するアポ蛋白Eの129-169のペプチド合成物のN末端をパルミチック酸でアシル化し、さらにグルシンでアルキル化し、よりコンデンスさせ、LDL受容体に結合しやすくしたものである。超音波とマイクロバブル法の最適条件は、超音波を1W、10%duty cycle、10secで使用し、アンチセンスの濃度は、900nM、マイクロバブル量は、50μlであった。
KAKENHI-PROJECT-11670724
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11670724
インターネットにおけるトラヒックの計測・解析と制御方法の提案・評価
コンテンツネットワーキングおよびそのアーキテクチャを研究課題としており,ネットワーク計測およびトラフィック解析に関する研究を行っている.この研究課題に関連して,今年度は商用P2P-TVシステムの大規模計測実験を実施し,その実験結果から大規模な商用P2P-TVシステムの特徴とインターネットトラフィックへの影響を明らかにした.また,今年度は,コンテンツネットワーキングに関する研究のほかに,次世代ネットワークの研究にも取り組み,Internet of Thingsと呼ばれる分野にも貢献した.Internet of Thingsの分野では,東京大学によって気象情報収集のためにアジア各地に設置された"Live-e!"センサーネットワークシステムにより収集された大規模データの解析を目的としたJSPS/CNRSの共同研究プロジェクトに参画した.本共同研究プロジェクトの目的は二つの要素からなる.一つ目は,ヒートアイランド現象などの微視的な気象現象や台風などの巨視的な気象現象の調査をすることであり,二つ目は,故障や消費電力といったセンサー機器に関する新しい情報モデルを構築し,センサーネットワークをフューチャーインターネットの新しいアプリケーションクラスと位置づけトラフィックモデルを提供することである.なお,今年度遂行したコンテンツネットワーキングとセンサーネットワークの二つの研究分野を結びつけるため,センサーネットワークやコンテンツネットワークなど多種多様なネットワークにおいて,コンテンツ配送を実現するポテンシャルを秘めた新しい手法として,information-centric networkに取り組み始めている.研究期間中に,著名な査読付き学術論文誌への掲載および学会における研究発表を行うことができた.そのほか,WIDEプロジェクト(代表:江崎浩)内の研究者との共同研究を遂行するとともに,スペインの以前の共同研究者との共同研究を継続できた.さらに,本研究期間の成果により,The University of Lorraineの准教授に着任することができた.研究期間は終了しているが,コンテンツネットワーキングについての研究を継続する予定である.より詳細には,Internet of Thingsの研究分野において,インターネットへ接続されたすべてのオブジェクトから収集されたコンテンツに焦点をあてている.この新しい研究トピックとして,フューチャーインターネットにおけるコンテンツ配送のクリーンスレートなアプローチであるinformation-centric networkに取り組む.さらにこの分野においての日仏間の協力関係を維持・強化していく予定である.本年度の研究実施計画として,既存研究の調査及び既存システムの問題点の抽出と整理を挙げた.この結果として,研究の焦点は次の3つのトピックとなっている.1.コンテンツネットワーク,2.センサーネットワーク,3.インターネットトラフィックにおける異常検出.それぞれについて,今年度の研究成果を以下にまとめた.1.コンテンツ配信ネットワークの新しいアーキテクチャモバイルデバイスとユーザのソーシャルネットワーク利用の広がりにより,コンテンツ配布の観点において,インターネットは現在とても重要な変化を迎えている.この広がりを利用し,我々は未来のコンテンツ配信サービスの新しいアーキテクチャと通信の枠組みのデザインを目的とするUrban-sanプロジェクトを提案した.また,これを2010年4月15日のANR/JSTのプロジェクト二次募集に投稿した.目標として,人々のいる場所と行動を考慮した,状況に関連のあるコンテンツを効果的に生み出すのに必要な技術革新を生み出すことを挙げる.このプロジェクトは,Telecom Sudparis,マリーキュリー大学,大阪大学,東京大学が関わる.2.Live E!センサーネットワークのトラフィック解析Live E!は学術界と産業界をまたぐ日本の研究プロジェクトである.このプラットフォームはアジアの国々に設置された気象センサーによって構成され,気温や湿度と言った環境情報を集めている.我々は,このLive E!のトラフィックを解析し,センサの故障や異常を検出するモデルを得ることを目指している.更に,近くのセンサが同じデータを送信することを防ぐことにより,ネットワーク全体の通信コストを減少させることを目指している.このプロジェクトはENS-Lyonと東京大学の間のJSPS/CNRSプロジェクトの一部となる.3.インターネットトラフィック中の異常検出トラフィックにおける異常検出はインターネットのユーザにとって重要なセキュリティの問題である.ネットワークトラフィック中の異常を検出する統計的な手法はいくつか存在しているが,その中でも有望な手法としてスケッチ及びマルチスケールガンマモデルを用いた手法を挙げる.このプロジェクトは,現実のネットワークトレースを解析することにより,この手法を使用する上で必要なパラメータを適切に調節することを目的としている.そして,我々はこの手法の有効性を確認するため,他のデータセットにもこの手法を適用し評価を行う.コンテンツ配送システムおよびそのアーキテクチャを研究課題としており,より詳細にはピア・ツー・ピア技術による動画のライブストリーミング(P2P-TV)に焦点をあて研究を遂行した.この研究課題に関連した今年度の成果を以下にまとめる.1.商用アプリケーションの隠れた特性を推測し,P2Pネットワークの全体的な特性を明らかにするため.P2P-TVのトラヒックの解析を行った.この研究はP2P-TVのシステム設計者にとってアーキテクチャを改善するために有用であり,また,インターネットサービスプロバイダにとって,これらのアプリケーションが彼らの提供するネットワーク及びインターネット全体に対し与える影響を評価するためにも有用である.2.The Universitat Polytecnica of Catalunya(バルセロナ,スペイン)との共同研究で,ドメイン間のライブストリーミングの性能改善に役立つ,コアとエッジの分離を基にしたCoreCastと言う新しいアーキテクチャを定義した.このCoreCastアーキテクチャは既に実装及び評価が行われており,この結果,このCoreCastアーキテクチャはドメン間トラフィックを削減することが実証された.3.東京大学によってアジア各地に気象情報の収集のために設置された"Live E!"センサネットワークの調査を目的としたJSPS/CNRSの共同研究プロジェクトに参画した.この研究では故障しているセンサの検出,故障しているセンサのデータの復元の方法の検討,処理時間やネットワーク帯域などのリソースの消費を抑えることなどを目的としている.また,このセンサネットワークのアーキテクチャ全体の改善もこの研究の目的の一つとなっている.コンテンツネットワーキングおよびそのアーキテクチャを研究課題としており,ネットワーク計測およびトラフィック解析に関する研究を行っている.
KAKENHI-PROJECT-09F09718
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09F09718
インターネットにおけるトラヒックの計測・解析と制御方法の提案・評価
この研究課題に関連して,今年度は商用P2P-TVシステムの大規模計測実験を実施し,その実験結果から大規模な商用P2P-TVシステムの特徴とインターネットトラフィックへの影響を明らかにした.また,今年度は,コンテンツネットワーキングに関する研究のほかに,次世代ネットワークの研究にも取り組み,Internet of Thingsと呼ばれる分野にも貢献した.Internet of Thingsの分野では,東京大学によって気象情報収集のためにアジア各地に設置された"Live-e!"センサーネットワークシステムにより収集された大規模データの解析を目的としたJSPS/CNRSの共同研究プロジェクトに参画した.本共同研究プロジェクトの目的は二つの要素からなる.一つ目は,ヒートアイランド現象などの微視的な気象現象や台風などの巨視的な気象現象の調査をすることであり,二つ目は,故障や消費電力といったセンサー機器に関する新しい情報モデルを構築し,センサーネットワークをフューチャーインターネットの新しいアプリケーションクラスと位置づけトラフィックモデルを提供することである.なお,今年度遂行したコンテンツネットワーキングとセンサーネットワークの二つの研究分野を結びつけるため,センサーネットワークやコンテンツネットワークなど多種多様なネットワークにおいて,コンテンツ配送を実現するポテンシャルを秘めた新しい手法として,information-centric networkに取り組み始めている.研究期間中に,著名な査読付き学術論文誌への掲載および学会における研究発表を行うことができた.そのほか,WIDEプロジェクト(代表:江崎浩)内の研究者との共同研究を遂行するとともに,スペインの以前の共同研究者との共同研究を継続できた.
KAKENHI-PROJECT-09F09718
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09F09718
外因性神経調節ペプチドの受容機構の神経回路学的解明
これまで抗不安薬や抗うつ薬のスクリーニングにマウス等のげっ歯類が使用され行動学的評価法の基盤が確立している。一方、ショウジョウバエは、神経回路研究のモデル生物として優れているが、行動学的評価法の基盤が確立されていない。そこで我々は、まず、ショウジョウバエを用いた簡便な行動学的解析法を確立した。具体的には、ショウジョウバエの飼育バイアルから餌を取り除いた後に、サンプルを溶解した水を自由摂取させ、96穴マイクロプレートに移動し、その行動をビデオカメラで撮影し、一定時間の行動を測定する。Grooming, Walking, No movementの3つに状態に分類し、それぞれの時間を合計した。この新しく確立したショウジョウバエの行動学的評価法を用いて、各種ペプチドの投与効果を検討した。その結果、大豆の主要な貯蔵種子タンパク質であるβコングリシニン(CG)の酵素消化により生成する10残基ペプチドβCG(323-333)が、後肢のグルーミングを促進することが明らかとなった。これまで、後肢のグルーミングにはドーパミンD1受容体の活性化が関与していることが報告されている。そこで、βCG(323-333)の後肢グルーミング促進作用にD1受容体が関与しているかD1ノックアウトハエを用いて検討した。その結果、野生型において認められるβCG(323-333)による後肢グルーミング促進作用は、D1ノックアウトハエでは消失した。したがって、βCG(323-333)による後肢グルーミング促進作用には、D1受容体の活性化が関与していることが明らかとなった。βCG(323-333)は、D1受容体に直接結合しないことから、内因性のドーパミン放出を亢進し、ドーパミンD1受容体を活性化していると考えられる。これらの研究成果の一部は国際英文誌Biochemical and Biophysical Research Communications (Karim et al. 2018; 499(3): 454-458)に発表した。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。生体内には数多くのペプチドホルモンや神経ペプチドが存在し多彩な生理作用を示すことが明らかとなっている。これらは前駆体タンパク質の酵素消化により分解され、活性型になることが知られている。これまで我々は、このような前駆体タンパク質と見なされていなかった食品タンパク質を酵素分解して得られた消化物から多彩な生理活性ペプチドが生成することを発見した。特に最近、マウス行動試験により抗不安様作用(精神的ストレス緩和作用)や抗うつ様作用(意欲向上作用)を示す食品由来、すなわち外因性の生理活性ペプチドを数多く見出している。中には、医薬品に匹敵する低用量で、かつ、経口投与で有効な生理活性ペプチドが存在することを明らかにしている。また、経口投与により食欲抑制作用や逆に食欲促進作用を示すペプチドも見出している。さらに本研究課題では、これらの外因性の神経調節ペプチドの作用機構について神経回路学的に解明することを目標とする。本年度(約3ヶ月)は、ショウジョウバエ研究に必要な装置と試薬を購入し、生理活性ペプチドの情動行動や摂食行動に及ぼす影響を評価する実験系を立ち上げた。ショウジョウバエ研究に必要な装置と試薬を購入し、生理活性ペプチドの情動行動や摂食行動に及ぼす影響を評価する実験系を立ち上げた。これまで我々は、食品タンパク質を酵素分解して得られた消化物から、多彩な生理活性ペプチドが生成することを見出してきた。最近、ペプチド構造ー活性相関情報と酵素消化物の一斉分析情報を活用することにより、効率的な生理活性ペプチドの探索が可能となった。実際、マウス行動試験により情動調節作用を示す一群の食品由来ペプチドが存在することを明らかにした。さらに、これらの外因性の生理活性ペプチドがどのような神経回路を介して生理活性を示すかについて、全脳レベルでの神経回路解析が進み、神経回路の解析に適しているショウジョウハエを用いて検討した。恒温・恒湿の条件で、さらに、明暗サイクルを調節できるインキュベーターを使用し、ショウジョウバエによる行動実験を実施した。サンプルは水に溶解し、絶水後に与え、自発的に飲水させせた。本溶液は青色に着色してあり、飲水により腹部が青色になるため、飲水を確認できる。また、飲水後、マイクロプレートにハエを移動させ、行動を観察した。抗不安薬のジアゼパム投与により行動変化が認められた。さらに、食品由来の情動調節ペプチドについて検討したところ、グルーミングを変化させることが判明した。インキュベーターの温度・湿度・明暗サイクルを調節できるようになり、安定したデータが得られるようになった。また、食品由来ペプチドの中でハエの行動を変化するものを見出した。これまで抗不安薬や抗うつ薬のスクリーニングにマウス等のげっ歯類が使用され行動学的評価法の基盤が確立している。一方、ショウジョウバエは、神経回路研究のモデル生物として優れているが、行動学的評価法の基盤が確立されていない。そこで我々は、まず、ショウジョウバエを用いた簡便な行動学的解析法を確立した。具体的には、ショウジョウバエの飼育バイアルから餌を取り除いた後に、サンプルを溶解した水を自由摂取させ、96穴マイクロプレートに移動し、その行動をビデオカメラで撮影し、一定時間の行動を測定する。Grooming, Walking, No movementの3つに状態に分類し、それぞれの時間を合計した。この新しく確立したショウジョウバエの行動学的評価法を用いて、各種ペプチドの投与効果を検討した。
KAKENHI-PROJECT-15F15394
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15F15394
外因性神経調節ペプチドの受容機構の神経回路学的解明
その結果、大豆の主要な貯蔵種子タンパク質であるβコングリシニン(CG)の酵素消化により生成する10残基ペプチドβCG(323-333)が、後肢のグルーミングを促進することが明らかとなった。これまで、後肢のグルーミングにはドーパミンD1受容体の活性化が関与していることが報告されている。そこで、βCG(323-333)の後肢グルーミング促進作用にD1受容体が関与しているかD1ノックアウトハエを用いて検討した。その結果、野生型において認められるβCG(323-333)による後肢グルーミング促進作用は、D1ノックアウトハエでは消失した。したがって、βCG(323-333)による後肢グルーミング促進作用には、D1受容体の活性化が関与していることが明らかとなった。βCG(323-333)は、D1受容体に直接結合しないことから、内因性のドーパミン放出を亢進し、ドーパミンD1受容体を活性化していると考えられる。これらの研究成果の一部は国際英文誌Biochemical and Biophysical Research Communications (Karim et al. 2018; 499(3): 454-458)に発表した。マウスにおいて神経調節作用を示す生理活性ペプチドがショウジョウバエにおいてどのような行動変化を示すのかを検討する。薬理学的検討により作用経路を解明する。マウスでは、多くの情動調節ペプチドはGABAニューロンに、摂食ペプチドはNPYニューロンに作用することから、これらのニューロンに着目する。また、ショウジョウバエでは、細胞特異的な発現パターンを有するGAL4エンハンサートラップ系統を使用することにより、膨大な神経細胞のごく一部をラベル化し、特定の遺伝子をノックダウン、または過剰発現することができる。本システムを用いて、外因性の生理活性ペプチドの作用を抑制あるいは増強するニューロンを特定し、作用点を明らかにする。新たに見出したペプチドのグルーミング促進作用の作用機構を解明する。GAL4エンハンサートラップ系統を使用し作用機構を明らかにする。マウスにおいてメディエーターとして作用する内因性リガンド受容体のノックアウトハエを用いて証明する。情動関連遺伝子ノックアウトジョウバエの準備を進めており、今後、これらを使用して作用機構を解析する。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-15F15394
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15F15394