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日本のサポーティング・インダストリーの競争力強化に向けた研究 | 平成30年度は、主に文献やデータを検証してグローバルな競争が激化する中での日本(及び東アジア諸国)の基盤産業の位置付けを再検討するために研究を進めてきた。さらに、その研究成果の一部を広く社会に発信することに注力した。具体的に述べれば、本年度は上記の研究に基づき、学会発表1回(藤川健(2018)「金型産業における競争・分業構造ー東アジア優位産業の研究ー」『アジア経営学会第25回大会』〔同志社大学〕)、並びに公開講座1回(藤川健(2018)「中小ものづくり企業の生き残り戦略」公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構研究戦略センター主催『ひょうご講座2018』〔兵庫県民会館〕)を行った。なお、学会報告で行った内容は査読論文として投稿中である。平成31年度は、日本の基盤産業である金型産業の国際競争力を位置付けるため、躍進する東アジア諸国(韓国と中国)の競争力と対比することに努めた。さらに、そのような競争力の概念をブラッシュアップするため、アジア諸国を対象とした経営学・経済学の研究蓄積が豊富になされている関連学会で発表する機会も得た。以上のことから、本年度は本研究のテーマである国内の基盤産業の競争力強化に資する有益な示唆を得ることができたと考えている。次年度は、一国単位の競争力の議論に留まらず、金型産業をより精緻化(プラスチック、プレス、鍛造、鋳造用などの型種別の特徴を精査)した上で幅広くフィールドワークを実施し、アジア諸国の有力な金型製造企業を対象にした個別の企業レベルにおける競争力の実態を把握する予定である。平成30年度は、主に文献やデータを検証してグローバルな競争が激化する中での日本(及び東アジア諸国)の基盤産業の位置付けを再検討するために研究を進めてきた。さらに、その研究成果の一部を広く社会に発信することに注力した。具体的に述べれば、本年度は上記の研究に基づき、学会発表1回(藤川健(2018)「金型産業における競争・分業構造ー東アジア優位産業の研究ー」『アジア経営学会第25回大会』〔同志社大学〕)、並びに公開講座1回(藤川健(2018)「中小ものづくり企業の生き残り戦略」公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構研究戦略センター主催『ひょうご講座2018』〔兵庫県民会館〕)を行った。なお、学会報告で行った内容は査読論文として投稿中である。平成31年度は、日本の基盤産業である金型産業の国際競争力を位置付けるため、躍進する東アジア諸国(韓国と中国)の競争力と対比することに努めた。さらに、そのような競争力の概念をブラッシュアップするため、アジア諸国を対象とした経営学・経済学の研究蓄積が豊富になされている関連学会で発表する機会も得た。以上のことから、本年度は本研究のテーマである国内の基盤産業の競争力強化に資する有益な示唆を得ることができたと考えている。次年度は、一国単位の競争力の議論に留まらず、金型産業をより精緻化(プラスチック、プレス、鍛造、鋳造用などの型種別の特徴を精査)した上で幅広くフィールドワークを実施し、アジア諸国の有力な金型製造企業を対象にした個別の企業レベルにおける競争力の実態を把握する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-18K01761 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K01761 |
歴史地震・津波記録の理工学的手法による検証と発生機構の推定の研究 | およそ100年ごとの間隔で発生していることが、歴史記録から判明している東海地震・.海地震、三陸沖の巨大地震、およびそれらに誘発されたと考えられる内陸直下の地震について、歴史記録の収集、現地調査、および理工学的考察を経て、発生機構にいたる研究を推進した。海溝型巨大地震として1707年宝永地震、1854年安政東海・.海地震、および古代に発生した869年貞観三陸地震などを検討した。内陸直下の地震としては1596年文禄豊後地震、1828年文政越後三条地震、1812年文化神奈川地震、1855年安政江戸地震などを研究した。およそ100年ごとの間隔で発生していることが、歴史記録から判明している東海地震・.海地震、三陸沖の巨大地震、およびそれらに誘発されたと考えられる内陸直下の地震について、歴史記録の収集、現地調査、および理工学的考察を経て、発生機構にいたる研究を推進した。海溝型巨大地震として1707年宝永地震、1854年安政東海・.海地震、および古代に発生した869年貞観三陸地震などを検討した。内陸直下の地震としては1596年文禄豊後地震、1828年文政越後三条地震、1812年文化神奈川地震、1855年安政江戸地震などを研究した。南海沖のフレート境界面のすべりによって起さた、宝氷地震(1854)、安政東海地震(1854)、安政南海地震(1854)、および相模トラフのプレート境界面のすべりによって生じたと考えられる元禄南関東地震(1703)について、新たに舌文書史料が多数発掘きれ、既知史料の知識とあわせて、三都道府県別の詳細震度・津波被害データベースを作成した。元禄地震による伊豆半島東岸の伊東市で、標高17mmの所まで海水が及んでいたことが新たに判明し、津波の数値計算を行う石結果、元禄地震め駿河湾内の滑り分布は、西半分ですべり量の大きなアスペリティーがないと説明できないことが明らかとなった。分担者のうち中西、および草野は、京都・大阪での近世の都市を襲った災害事象としてこの2つの大都市の街区の詳細震度を明らかにした。首都圏を襲った歴史地震のうち、文化9年(1812)に神奈川地震と呼ぶべき、大きな内陸地震があったことが明らかとなり、現在の横浜市の中心部で、震度6強から7に達する強い揺れが起きていたことが明らかとなった。天阪府交野市の山間部に存在した、小松寺という寺院に由来する平安時代の記録が発掘され、生駒断層の活動によると見られる地震が2,3度あったこと、およびそれらが、南海地震と前後する年代に起きていることが解明された。江戸時代に起きた宝永地震(1707)および安政東海地震(1854-la)、および安政南海地震(1854-b)による、山岳地域の斜面崩壊と、一それに伴う河川閉塞・新湖出現事例が10件程度見つけられた。東海地震・南海地震など海溝型地震の災害発生の形態の一つとして注目すべきである。平成21年度に行なった研究歴史上の東海地震・南海地震のアスペリティーを考慮した断層モデルの構築である。研究代表者・都司は,主として既収集の地震史料にもとづいて,地震にともなって起きた事象(人の死傷,家屋の倒壊,液状化,地盤変動,火災の発生,交通の遮断,津波の浸水と被害などの事象)について1件としてエクセルによるデータベースを作成した.また、GMTによる震度分布図の作成、歴史上の東海地震・南海地震に伴う地変、津波の浸水標高の分布を解明した。史料編纂所・佐藤は用いた史料の素性と信頼性,時代背景,参考とすべき文献,史料発掘,毛筆体の原文書の解読,意味の理解などについての情報を提供する.また,新資料発掘の現地調査を実施した.京都大学の中西、および大谷大学の草野は、主として南海地震の資料調査の解明と,断層モデルの整合性を検討した。さらに、江戸時代以前の明応東海地震(1498)、正平南海地震(1361)など、古い時代の東海地震、南海地震の記録を、京都・奈良を含む古い時代の記録が多く保存されている近畿地方を中心として史料調査、および考察を行なった.平成22年度に行なったのは、研究歴史上の東海地震・南海地震・および歴史上に発生した内陸地震のアスペリティーを考慮した断層モデルの構築である。研究代表者・都司は,主として既収集の地震史料にもとづいて,地震にともなって起きた事象(人の死傷,家屋の倒壊,液状化,地盤変動,火災の発生,交通の遮断,津波の浸水と被害などの事象)について1件としてエクセルによるデータベースを作成した.また、GMTによる震度分布図の作成、歴史上の東海地震・南海地震、安政江戸地震、および首都圏で発生した地震として文化9年(1812)の詳細震度分布、伴う地変、および海洋型の地震については津波の浸水標高の分布を解明した。史料編纂所・佐藤は用いた史料の素性と信頼性,時代背景,参考とすべき文献,史料発掘,毛筆体の原文書の解読,意味の理解などについての情報を提供する.また,新資料発掘の現地調査を実施した京都大学の中西、および大谷大学の草野は、主として南海地震の資料調査の解明と,断層モデルの整合性を検討した。江戸期の東海地震、南海地震、およびそれによって誘発された内陸地震の記録を、京都・奈良を含む古い時代の記録が多く保存されている近畿地方を中心として史料調査、および考察を行なった.とくに、草野は安政伊賀上野 | KAKENHI-PROJECT-20310102 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20310102 |
歴史地震・津波記録の理工学的手法による検証と発生機構の推定の研究 | 地震(1854)の最大被災地となった三重県上野市、安政東海地震(1854)、宝永地震(1707)の津波被災地となった和歌山県田辺市、広川町などで、詳細な現地調査を行った。以上のデータに基づき、いくつかの歴史地震について、断層面とその面上のアスペリティーの推定をおこなった。たとえば、安政南海地震(1854)の場合には、高知県須崎市のすぐ沖合いの海域に大きな滑りがあったことが解明された。 | KAKENHI-PROJECT-20310102 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20310102 |
熱帯の火山灰土壌における簡易リン肥沃度評価方法の構築とジャガイモ生産性の向上 | 本研究の目的は、土壌診断技術の普及が進んでいない熱帯の火山灰土壌地帯において作物が利用可能な有効態リン酸量と土壌固有のリン固定力を示すリン酸吸収係数の簡易推定技術を構築することである。熱帯の火山灰土壌の多くが高地に存在し、冷涼かつ十分な降水量が得られるため作物の収量ポテンシャルは高いが現状の生産性は極めて低い。これまで、火山灰土壌で作物の収量制限因子となるリンを供給するためにリン酸肥料や家畜ふん尿の施用が行なわれてきた。しかし、適切な施用量を決定するための土壌診断技術は普及しておらず、簡易かつ低コストで利用可能な分析技術の開発および導入が喫緊の課題である。本研究の目的は、土壌診断技術の普及が進んでいない熱帯の火山灰土壌地帯において作物が利用可能な有効態リン酸量と土壌固有のリン固定力を示すリン酸吸収係数の簡易推定技術を構築することである。熱帯の火山灰土壌の多くが高地に存在し、冷涼かつ十分な降水量が得られるため作物の収量ポテンシャルは高いが現状の生産性は極めて低い。これまで、火山灰土壌で作物の収量制限因子となるリンを供給するためにリン酸肥料や家畜ふん尿の施用が行なわれてきた。しかし、適切な施用量を決定するための土壌診断技術は普及しておらず、簡易かつ低コストで利用可能な分析技術の開発および導入が喫緊の課題である。 | KAKENHI-PROJECT-19K15948 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K15948 |
コクサッキーウイルスB群生ワクチンに関する研究 | コクサッキーウイルスは種々の病気の原因として知られている。コクサッキーウイルスB4型(CB4)は弱年性糖尿病の原因である可能性があり、CBに対するワクチン開発の基本的研究が必要である。CB4分離株の糖尿病誘発性はSJL/Jマウスへのウイルス感染後24日後の低血糖の出現と感染後期の高血糖によって調べた。新鮮分離株は低血糖の誘起性により2つのタイプに分れる。SJL/Jマウスに感染後初期に低血糖を起こすウイルスはさらに2つのgroupに分れる。すなわち腺房細胞のみに感染するものと腺房細胞にもランゲルハンス島細胞にも感染するものである。SJL/Jマウスに低血糖を起こし、ランゲルハンス島細胞にも感染する1つの株をvirulent株として選んだ。この株は他の系統のマウスにも低血糖を起こすが腺房細胞にしか感染しない病原性のないウイルスをvirulent株の感染に先だって接種すると、マウスは低血糖の出現から免れる。種々の証拠が以下の考えを支持している。1)糖尿病誘発性はウイルスの病原性と宿主の遺伝的な要素によって決まる。2)非病原性ウイルスは病原性ウイルスに対するワクチンとして使用することができる。3)生ワクチン候補株のField trialに先だって、膵臓のダメージ以外の病原性を検討しなければならない。コクサッキーウイルスは種々の病気の原因として知られている。コクサッキーウイルスB4型(CB4)は弱年性糖尿病の原因である可能性があり、CBに対するワクチン開発の基本的研究が必要である。CB4分離株の糖尿病誘発性はSJL/Jマウスへのウイルス感染後24日後の低血糖の出現と感染後期の高血糖によって調べた。新鮮分離株は低血糖の誘起性により2つのタイプに分れる。SJL/Jマウスに感染後初期に低血糖を起こすウイルスはさらに2つのgroupに分れる。すなわち腺房細胞のみに感染するものと腺房細胞にもランゲルハンス島細胞にも感染するものである。SJL/Jマウスに低血糖を起こし、ランゲルハンス島細胞にも感染する1つの株をvirulent株として選んだ。この株は他の系統のマウスにも低血糖を起こすが腺房細胞にしか感染しない病原性のないウイルスをvirulent株の感染に先だって接種すると、マウスは低血糖の出現から免れる。種々の証拠が以下の考えを支持している。1)糖尿病誘発性はウイルスの病原性と宿主の遺伝的な要素によって決まる。2)非病原性ウイルスは病原性ウイルスに対するワクチンとして使用することができる。3)生ワクチン候補株のField trialに先だって、膵臓のダメージ以外の病原性を検討しなければならない。 | KAKENHI-PROJECT-58870036 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-58870036 |
「協同的な学び」による幼児教育・保育実践の質に関する研究 | 初年度として、研究の全体像の検討を行った。第一には、園長を対象としたアンケート調査の検討を行った。予備調査の結果を参考に、先行研究を手掛かりにしながら、あらためて調査内容の検討を行った。5回程度の研究会を行った。その後、アンケートを完成させ、倫理申請の手続きを行った。そして、調査先の検討を行い、先方とのやりとりを行い、配布を行った。配布先は東京・神奈川・千葉の公立・私立の幼稚園・保育所・認定こども園の園長とする。約3000か所を目標に配布を行う。第二には、文献研究として、子ども主体の協同的な学びに関する先行研究の調査を行った。日本保育学会の保育学研究掲載の論文を中心に検討会を行った。その中で、子ども主体の協同的な学びの研究動向について検討した。第三には、アンケート調査の結果を受けて行う、質的研究の方向性について検討を行った。基本的には、アンケート調査の質問項目を手掛かりに質的調査を行うこととした。また、協同的な学びを行っている園でのインタビュー調査および集まり場面の映像記録による研究の方法の検討を行った。アンケート調査を初年度に実施予定であったが、アンケート作成に時間をかけて検討を行った。また、かなりの分量の調査を行うために、依頼先とのやりとりに大きく時間を割くことになった。さらに、倫理申請にも時間を要した。以上のことから、やや遅れが生じることになった。第2年度は、すでにアンケートの配布を始めているので、年内を目安にその回収と集計を行う。その結果を発達心理学会で発表することを検討している。また、その結果を受けて、質的調査(インタビューおよび映像記述)を行う。質的調査についても年度内にデータを集め、検討を行う。それと並行して、協同的な学びの先行研究も行う。初年度として、研究の全体像の検討を行った。第一には、園長を対象としたアンケート調査の検討を行った。予備調査の結果を参考に、先行研究を手掛かりにしながら、あらためて調査内容の検討を行った。5回程度の研究会を行った。その後、アンケートを完成させ、倫理申請の手続きを行った。そして、調査先の検討を行い、先方とのやりとりを行い、配布を行った。配布先は東京・神奈川・千葉の公立・私立の幼稚園・保育所・認定こども園の園長とする。約3000か所を目標に配布を行う。第二には、文献研究として、子ども主体の協同的な学びに関する先行研究の調査を行った。日本保育学会の保育学研究掲載の論文を中心に検討会を行った。その中で、子ども主体の協同的な学びの研究動向について検討した。第三には、アンケート調査の結果を受けて行う、質的研究の方向性について検討を行った。基本的には、アンケート調査の質問項目を手掛かりに質的調査を行うこととした。また、協同的な学びを行っている園でのインタビュー調査および集まり場面の映像記録による研究の方法の検討を行った。アンケート調査を初年度に実施予定であったが、アンケート作成に時間をかけて検討を行った。また、かなりの分量の調査を行うために、依頼先とのやりとりに大きく時間を割くことになった。さらに、倫理申請にも時間を要した。以上のことから、やや遅れが生じることになった。第2年度は、すでにアンケートの配布を始めているので、年内を目安にその回収と集計を行う。その結果を発達心理学会で発表することを検討している。また、その結果を受けて、質的調査(インタビューおよび映像記述)を行う。質的調査についても年度内にデータを集め、検討を行う。それと並行して、協同的な学びの先行研究も行う。アンケート調査が遅れたことにより、アンケートで使用する予定のものが使用されませんでした。さらに、アンケート調査の遅れにより、次の質的調査への移行が遅れ、質的調査のための準備がなされませんでした。以上のこと等から、次年度使用額が発生しました。なお、使用計画としては、アンケート集計実施に伴い、アルバイトを採用して調査を完成させるとともに、質的研究に伴う物品を購入する。 | KAKENHI-PROJECT-18K02496 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K02496 |
分子鋳型法によるキラルプラズモニック材料の創製 | 原子や分子の集積を利用するボトムアップ的手法は、超微細な構造体を大量合成できるため注目されている。中でも湿式化学合成には、ナノ材料を簡便な操作で作製できるという特長がある。しかしながら、ナノ構造の複雑な制御が困難であり、作製できる形状が非常に限られるという課題がある。そこで、本研究では独自の分子鋳型法を用いた湿式化学合成により、様々な形状の金ナノワイヤーを選択的に合成する手法の確立を目指す。特に、従来の湿式化学合成では作製が困難であった、キラルならせん状金ナノワイヤーについて、「形態制御の自由度」と「生産性」を両立した合成法を開発する。原子や分子の集積を利用するボトムアップ的手法は、超微細な構造体を大量合成できるため注目されている。中でも湿式化学合成には、ナノ材料を簡便な操作で作製できるという特長がある。しかしながら、ナノ構造の複雑な制御が困難であり、作製できる形状が非常に限られるという課題がある。そこで、本研究では独自の分子鋳型法を用いた湿式化学合成により、様々な形状の金ナノワイヤーを選択的に合成する手法の確立を目指す。特に、従来の湿式化学合成では作製が困難であった、キラルならせん状金ナノワイヤーについて、「形態制御の自由度」と「生産性」を両立した合成法を開発する。 | KAKENHI-PROJECT-19K23595 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K23595 |
乳癌の微小環境におけるエストロゲンシグナル制御機構の解析 | 乳癌の発生、進展に重要なエストロゲン受容体(ER)はエストロゲンだけでなく増殖因子によるリン酸化を介した経路など複数のシグナルカスケードによって活性化され、その制御は癌細胞をとりまく微小環境に依存する。また、閉経後の乳癌では腫瘍周辺の間質線維芽細胞がアロマターゼを発現し、局所的にエストロゲンを供給することからこれを標的としたアロマターゼ阻害剤が開発され広く施行されている。われわれは多様化するホルモン療法の奏効性予測を目指し、ERE(estrogen responsive element)を転写調節領域に繋いだGFP遺伝子をヒト乳癌細胞MCF-7に安定導入してエストロゲンシグナルのレポーター細胞株を樹立し、乳癌の間質線維芽細胞が示す総合的なER活性化能をGFPの発現により個々の症例について定量する系を開発した。その結果、間質線維芽細胞によるER活性化能は1)個々の症例によって異なること、2)閉経後に発症した乳癌では閉経前より高いこと、3)Grade 3の乳癌ではGrade 1、2より著しく低いことを明らかにした。今年度はER活性化能の高い群では微小環境において重要であることが報告されたα-smooth muscle actin(α-SMA)の発現の高い間質線維芽細胞ほどER活性化能も高い傾向にあることを明らかにした。さらに、微小環境中にはEREを介さないシグナルによる増殖促進活性があることが示唆されたため、乳癌組織の上清を用いてMCF-7-E10乳癌細胞に対する増殖促進活性を検討した結果、1)抗エストロゲン剤では阻害されない増殖促進活性を示す症例があること、2)腫瘍径の大きな乳癌ではこの活性が高いこと、3)抗体による解析から少なくともその一部にHGFが関与すること、4)HGF濃度と増殖促進活性は相関することを明らかにした。今後は個々の症例に適切な治療の選択を目指し、間質線維芽細胞の特性の解明を研究課題とする。乳癌の発生、進展に重要なエストロゲン受容体(ER)はエストロゲンだけでなく増殖因子によるリン酸化を介した経路など複数のシグナルカスケードによって活性化され、その制御は癌細胞をとりまく微小環境に依存する。また、閉経後の乳癌では腫瘍周辺の間質線維芽細胞がアロマターゼを発現し、局所的にエストロゲンを供給することからこれを標的としたアロマターゼ阻害剤が開発され広く施行されている。われわれは多様化するホルモン療法の奏効性予測を目指し、ERE(estrogen responsive element)を転写調節領域に繋いだGFP遺伝子をヒト乳癌細胞MCF-7に安定導入してエストロゲンシグナルのレポーター細胞株を樹立し、乳癌の間質線維芽細胞が示す総合的なER活性化能をGFPの発現により個々の症例について定量する系を開発した。その結果、間質線維芽細胞によるER活性化能は1)個々の症例によって異なること、2)閉経後に発症した乳癌では閉経前より高いこと、3)Grade 3の乳癌ではGrade 1、2より著しく低いことを明らかにした。今年度はER活性化能の高い群では微小環境において重要であることが報告されたα-smooth muscle actin(α-SMA)の発現の高い間質線維芽細胞ほどER活性化能も高い傾向にあることを明らかにした。さらに、微小環境中にはEREを介さないシグナルによる増殖促進活性があることが示唆されたため、乳癌組織の上清を用いてMCF-7-E10乳癌細胞に対する増殖促進活性を検討した結果、1)抗エストロゲン剤では阻害されない増殖促進活性を示す症例があること、2)腫瘍径の大きな乳癌ではこの活性が高いこと、3)抗体による解析から少なくともその一部にHGFが関与すること、4)HGF濃度と増殖促進活性は相関することを明らかにした。今後は個々の症例に適切な治療の選択を目指し、間質線維芽細胞の特性の解明を研究課題とする。乳癌における治療の奏効性予測および発症、進展のメカニズムの解明に向けて乳癌の微小環境が制御するエストロゲンシグナルを総合的に解析する系の開発を目指している。はじめにエストロゲンシグナル活性の指示細胞としてERE(estrogen responsive element)-GFPを安定導入した乳癌細胞株MCF-7-E10を作製し、個々の症例について乳癌の間質細胞の機能を解析した。その結果、間質細胞が誘導するエストロゲン受容体(ER)活性化能は症例によって大きく異なり間質細胞にも個性のあることを明らかにした。本年度は臨床病理学的なデータを解析し、間質細胞が誘導するエストロゲンシグナル活性と予後因子との相関を解析した。ERの発現の有無とは有意な相関は認められなかったが、間質細胞によるER活性化能の高い症例は閉経前より閉経後に多く認められた。これは閉経後に発症する乳癌では腫瘍周辺の間質細胞がエストロゲン代謝のkey enzymeであるのアロマターゼを発現し局所的にエストロゲンを供給することが発症の大きな要因であるとする従来の報告と一致する。GradeについてはGrade 3の乳癌の間質細胞によるER活性化能がGrade 1、2より著しく低く、Gradeが進むと癌細胞は周辺の間質細胞から自立して増殖している可能性が示唆された。一方、間質細胞が産生する因子についてはタンパクアレイ解析により、種々のケモカインの産生を認めたが、エストロゲンシグナルとのクロストークが報告されているEGFやIGF-1の産生は解析した症例で認められなかった。 | KAKENHI-PROJECT-17591364 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17591364 |
乳癌の微小環境におけるエストロゲンシグナル制御機構の解析 | 来年度は乳癌組織の上清を用いて間質細胞も含めた乳癌の微小環境によるエストロゲンシグナル活性および癌細胞に対する増殖促進作用をさらに総合的に解析する。乳癌の微小環境では腫瘍周辺の脂肪間質細胞がエストロゲン代謝のkey enzymeであるアロマターゼを発現し局所的にエストロゲンを供給することが知られている。また、リン酸化を介してエストロゲン受容体を活性化する増殖因子など種々の因子が微小環境におけるエストロゲンシグナルを制御している。われわれはERE (estrogen responsive element)を転写調節領域に繋いだGFP遺伝子をヒト乳癌細胞株MCF-7に安定導入してエストロゲンシグナルのレポーター細胞株MCF-7-E10を樹立し、乳癌の問質細胞が示す総合的なエストロゲン受容体活性化能を個々の症例について可視化して定量する系を開発した。この系を用いて解析した結果、間質細胞によるエストロゲンシグナルの強度は個々の症例によって大きく異なり、閉経後に発症した乳癌の間質細胞は閉経前より高い活性を示すこと、また、Grade3の低分化の乳癌ではGrade1、2より著しく低いことを明らかにした。今年度はホルモン療法奏効性予測への応用を目的とし、GFPの定量システムの自動化を行った。また、低分化の乳癌ではEREを介さないシグナルによる増殖促進機構の存在が示唆されたため、乳癌組織の上清を用いて微小環境によるMCF-7-ElO乳癌細胞に対する増殖促進活性を検討した。その結果、抗エストロゲン剤では阻害されない増殖促進活性を示す症例が多く認められ、抗体による解析から少なくともその一部にHGFが関与することが判明した。この活性は他のヒト乳癌細胞株T47Dに対しても同様に認められたがヒト子宮頸癌細胞株HeLaでは認められなかった。以上の結果から乳癌の微小環境にはエストロゲンとともにエストロゲン受容体陽性乳癌細胞に対して増殖を促進する因子が存在することが示唆された。来年度はこの増殖促進機構について臨床病理学的な因子との相関も含めて検討する。乳癌の発生、進展に重要なエストロゲン受容体(ER)はエストロゲンだけでなく増殖因子によるリン酸化を介した経路など複数のシグナルカスケードによって活性化され、その制御は癌細胞をとりまく微小環壌に依存する。また、閉経後の乳癌では腫瘍周辺の間質線維芽細胞がアロマターゼを発現し、局所的にエストロゲンを供給することからこれを標的としたアロマターゼ阻害剤が開発され広く施行されている。われわれは多様化するホルモン療法の奏効性予測を目指し、ERE(estrogen responsive element)を転写調節領域に繋いだGFP遺伝子をヒト乳癌細胞MCF-7に安定導入してエストロゲンシグナルのレポーター細胞株を樹立し、乳癌の間質線維芽細胞が示す総合的なER活性化能をGFPの発現により個々の症例について定量する系を開発した。その結果、間質線維芽細胞によるER活性化能は1)個々の症例によって異なること、2)閉経後に発症した乳癌では閉経前より高いこと、,3)Grade3の乳癌ではGrade1、2より著しく低いことを明らかにした。今年度はER活性化能の高い群では微小環境において重要であることが報告されたα-smooth muscle actin (α-SMA)の発現の高い間質線維芽 | KAKENHI-PROJECT-17591364 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17591364 |
MHC関連遺伝子群の解析 | 本研究は、我々が発見したMHCクラスI関連遺伝子MR1の解析を進め、またMR1を含めたMHCファミリー全体の分子進化の理解を進展させることを目的とする。1)MHCクラスI関連遺伝子MR1の解析:(1)MR1遺伝子の遺伝子構造:ヒト及びマウスMR1遺伝子は、各々20、17kb以上の長さに渡ってexonが存在することが明らかになった。基本的な構造は、古典的MHCクラスI遺伝子と類似していることが判明した。MR1は、現在までに知られているMHCクラスI(関連)遺伝子の中で、最長の遺伝子構造を有している。(2)MR1蛋白とβ_2-microglobulinとの相互作用:MR1蛋白に対する特異的抗体を用いた免疫沈降反応実験により、MR1とβ2-microglobulinとの相互作用が明らかになった。2)MHCクラスI(関連)分子の分子進化:これまでに我々は、最も原始的な有顎脊椎動物である軟骨魚類から典型的なMHCクラスI遺伝子の単離に成功した(Immunity7,777-790,(1997))。この軟骨魚類MHCクラスI分子を基に、脊椎動物における古典的MHCクラスI分子の保存性について詳細な解析を行なった。軟骨魚類MHCクラスI分子のペプチド結合領域は、哺乳類に類似した環境を保持していることが推測された。また、T細胞レセプターとMHCクラスI分子の相互作用面における基本的特質は、脊椎動物の進化上早期に確立していたことが明らかとなった。また、MR1遺伝子がCD1と同様に染色体重複機構で現在のMHC領域から別れたとすると、MR1に保持されている古典的MHCクラスI分子との部分的共通性は、脊椎動物進化の初期に起こったと予想される重複以前に確立していたと推測された。本研究は、我々が発見したMHCクラスI関連遺伝子MR1の解析を進め、またMR1を含めたMHCファミリー全体の分子進化の理解を進展させることを目的とする。1)MHCクラスI関連遺伝子MR1の解析:(1)MR1遺伝子の遺伝子構造:ヒト及びマウスMR1遺伝子は、各々20、17kb以上の長さに渡ってexonが存在することが明らかになった。基本的な構造は、古典的MHCクラスI遺伝子と類似していることが判明した。MR1は、現在までに知られているMHCクラスI(関連)遺伝子の中で、最長の遺伝子構造を有している。(2)MR1蛋白とβ_2-microglobulinとの相互作用:MR1蛋白に対する特異的抗体を用いた免疫沈降反応実験により、MR1とβ2-microglobulinとの相互作用が明らかになった。2)MHCクラスI(関連)分子の分子進化:これまでに我々は、最も原始的な有顎脊椎動物である軟骨魚類から典型的なMHCクラスI遺伝子の単離に成功した(Immunity7,777-790,(1997))。この軟骨魚類MHCクラスI分子を基に、脊椎動物における古典的MHCクラスI分子の保存性について詳細な解析を行なった。軟骨魚類MHCクラスI分子のペプチド結合領域は、哺乳類に類似した環境を保持していることが推測された。また、T細胞レセプターとMHCクラスI分子の相互作用面における基本的特質は、脊椎動物の進化上早期に確立していたことが明らかとなった。また、MR1遺伝子がCD1と同様に染色体重複機構で現在のMHC領域から別れたとすると、MR1に保持されている古典的MHCクラスI分子との部分的共通性は、脊椎動物進化の初期に起こったと予想される重複以前に確立していたと推測された。 | KAKENHI-PROJECT-10167224 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10167224 |
歯周炎罹患歯肉局所におけるアルツハイマー病関連遺伝子の発現亢進を探る | 対象者:新潟大学医歯学総合病院を受診し、重度慢性歯周炎患者と診断されインフォームドコンセントの得られた患者14名、非歯周炎患者14名。試料採取:歯周外科時に歯周ポケット底相当部上皮および結合組織を採取。対照群として、健常者の智歯抜歯時あるいは矯正の便宜抜歯時に炎症のない歯肉を同様に採取し。試料はRNA安定化溶液に24時間浸漬後(-80°Cにて保存する。組織解析用試料は4%PFAに24時間浸漬固定後PBSに保存。qRT-PCR解析: RNA iso(TaKaRa)を用いてtotal RNAを抽出、PrimeScriptTM RT reagent Kit (TaKaRa)を用いた逆転写酵素反応によりcDNAを合成する。cDNAは、-20°Cにて凍結保存する。試料の数が十分に確保された後、ABI PRISM 7900HT (Applied Biosystem Inc)を用いて、APP, IL-1beta, C1QAについて、特異的プライマーを用いてqRT-PCRを行う。得られた結果はβ-actinで補正し、comparative threshold cycles (Ct法)にて定量する。免疫組織学的解析ミクロトームにて5μmに薄切しパラフィン切片を作製し、脱パラフィン、脱水後にヘマトキシリン-エオジン(H-E)染色を行う。免疫染色にはH-E染色した切片の連続切片を用いて、1次抗体に抗APPポリクローナル抗体(Chemicon社)を用いるH-E所見および免疫組織所見は同一部位を写真撮影し、APPの歯肉組織中での局在を解析する。これまで、順調に解析を進め、中間報告を学会発表し、結果を論文にまとめたところである。1)対象者:新潟大学医歯学総合病院を受診し、重度慢性歯周炎患者と診断されインフォームドコンセントの得られた患者15名、非歯周炎患者15名。2)試料採取:歯周外科時に歯周ポケット底相当部上皮および結合組織をKubotaらの方法(J Periodontol, 2008)に準じて採取。対照群として、健常者の智歯抜歯時あるいは矯正の便宜抜歯時に炎症のない歯肉を同様に採取し。試料はRNA安定化溶液に24時間浸漬後(-80°Cにて保存する。組織解析用試料は4%PFAに24時間浸漬固定後PBSに保存。免疫組織学的解析:ミクロトームにて5μmに薄切しパラフィン切片を作製し、脱パラフィン、脱水後にヘマトキシリン-エオジン(H-E)染色を行う。免疫染色にはH-E染色した切片の連続切片を用いて、1次抗体に抗APPポリクローナル抗体(Chemicon社)を用いるH-E所見および免疫組織所見は同一部位を写真撮影し、APPの歯肉組織中での局在を解析する。これまで、順調に解析を進めている。これまで、APPはAD組織以外での報告は少なく、創傷の治癒や腫瘍組織での報告があるのみであり、本研究において、我々は歯周炎罹患歯肉局所での発現細胞の局在同定と更にはその発現量が有意に上昇していることを初めて報告した(Kubota et al, Archs Oral Biol 2014)。APP, IL-1beta, C1QAは、相互に協調して機能しておりこれら遺伝子の発現解析は、慢性炎症による歯周炎組織破壊と原因不明な加齢関連炎症性疾患であるADとのつながりを考える上できわめて貴重な結果をもたらすことが期待され、更なる研究を行う意義がある。現在、APPの関わるネットワーク遺伝子について更に範囲を広げて追加研究しており、これまでの解析結果を学会発表準備中である。その後、結果を国際専門雑誌に投稿予定である。これまで、APPはAD組織以外での報告は少なく、創傷の治癒や腫瘍組織での報告があるのみで、本研究では歯周炎罹患歯肉局所での発現細胞の局在同定、更にその発現量が有意に上昇していることを初めて報告した(Kubota et al, Archs Oral Biol 2014)。APP, IL-1beta, C1QAは、相互に協調して機能しておりこれら遺伝子の発現解析は、慢性炎症による歯周炎組織破壊と原因不明な加齢関連炎症性疾患であるADとのつながりを考える上できわめて貴重な結果をもたらした。既にPLOSONE2016をはじめADと歯周炎の関連論文に多数引用されている。APPの関わるネットワーク遺伝子について更に範囲を広げて追加研究を行い、中間成果を国際学会(EuroPerio 8 2015)にて報告した。APP, IL-1beta, C1QAタンパク発現責任細胞の同定および炎症歯肉組織中局在の検索:ヒト重度慢性歯周炎歯肉中のAPPのタンパク質の局在について特異抗体を用いた免疫組織科学的手法を用いて解析した。サンプルは、今後の追加解析に備えて適宜追加している。通法によりパラフィン包埋後、5ミクロン薄切切片を作成してHE及び免疫組織学的染色用に保存している。これまで順調に解析を進め、APP発現細胞同定の時点で中間結果をまとめ、国内外の学会で報告すると共に第一報(Archs Oral Biol 2014)をパブリッシュした。歯周病学更なる解析のために、試料のサンプリングを継続し適宜RNA、パラフィンブロックとして保存する。 | KAKENHI-PROJECT-24593119 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24593119 |
歯周炎罹患歯肉局所におけるアルツハイマー病関連遺伝子の発現亢進を探る | 第1報で得られた、「歯周炎罹患歯肉組織中におけるAPP, IL1beta, C1QA遺伝子発現の上昇とマクロファージによるAPP産生」が、実際のアルツハイマー病の病理と結びつくのか?あるいは、慢性炎症共通の発現動態なのか?アミロイドの関与は?などについて明らかにしていきたい。具体的には、既に実験を開始しているが、第1報で用いた試料中にAPP調節遺伝子群:Neprilysin,アスパラギン酸プロテアーゼ、BACE1, ADAM-10, 17, ADAMTS-1とその最終産物でありアルツハイマー病の主因子であると考えられているAmyloid betaがどの程度歯周炎局所で発現しているのか?明らかにする。本継続研究は、本研究課題である「アルツハイマー病関連遺伝子の発現亢進を探る」の重要な検証となる。最終年度として、本研究成果をまとめ6月の歯周病国際学会にて報告して国際専門誌に投稿する予定である。重度慢性歯周炎患者14名、非歯周炎患者14名の解析を終了した。試料は、今後の更なる解析に備えRNA安定化溶液に24時間浸漬後(-80°Cにて保存する。組織解析用試料は4%PFAに24時間浸漬固定後PBSに保存している。2)免疫組織学的解析5μmに薄切パラフィン切片を作製し、ヘマトキシリン-エオジン(H-E)染色及び免疫染色用に保存している。1次抗体に抗APPポリクローナル抗体(Chemicon社)を用い、その染色成功した。H-E所見および免疫組織所見は同一部位を写真撮影し、APPの歯肉組織中での局在を解析した。また発現細胞についてCD68を用いた二重線色を行った。これまで、順調に解析を進め、中間報告を国内外で学会発表・結果を論文にまとめ、すでに第一報がパブリッシュされたため。試料のサンプリングは、順調に出来ている。計28サンプルをRNA安定化溶液に24時間浸漬後-80°Cにて保存している。組織解析用試料は良い資料があれば追加サンプリングを予定している。qRT-PCR解析:これまで28例につき解析済み免疫組織学的解析:ミクロトームにて5μmに薄切しパラフィン切片を作製し、脱パラフィン、脱水後にヘマトキシリン-エオジン(H-E)染色を行う。免疫染色にはH-E染色した切片の連続切片を用いて、1次抗体に抗APPポリクローナル抗体(Chemicon社)を用いるH-E所見および免疫組織所見は同一部位を写真撮影し、APPの歯肉組織中での局在を解析する。これまで、順調に解析を進めているが、更なるサンプルの追加を予定している。当該年度は、研究が順調に推移し、第1報のデータが得られた時点でまとめと論文執筆を中心に費用を割いたため、予定していた実験経費はより少なくてすんだこと。更に予定していた学会発表を、データの集積を待って次年度に繰り越したため旅費が削減された。次年度は、国際学会の発表があるため物品費及び旅費がかかるため経費を節約し繰り越した。更なる解析のために、試料のサンプリングを継続し適宜RNA、パラフィン切片として保存する。第1報で得られた歯周炎罹患炎症組織中におけるAPP, IL-1beta, C1QA遺伝子発現の上昇とMacrophagesによるAPPの産生が、実際歯周炎とアルツハイマー上を結びつけるのか?そのネットワークに神経細胞は関わるのか研究を継続する。 | KAKENHI-PROJECT-24593119 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24593119 |
リンドウ園芸用種における種・品種分化,特に花色素および染色体に関する研究 | 1.花色および花色素に関する調査には、リンドウの園芸品種、Gentiana trifloraとG.scabraの選抜系統、G.triflora自生系統、G.属の外国種、計61種類を収集し供試した。(1)花色は、植物色票による色相は紫青色紫赤色の範囲に分布し、青色系とピンク色系に大別された。色差計による色相はそれぞれ狭い範囲に分布し、彩度は広範囲に及んだ。(2)アントシアニン組成は、青色系では、delphinidin系色素からなる3タイプ(IIII)およびdelphinidin系とcyanidin系の両色素からなる2タイプ(IV、V)に、ピンク色系ではcyanidin系色素からなるIタイプに分類された。(3)青色系のIタイプの品種について4種類のアントシアニンが精製され、同定の結果、これらはdelphinidinの配糖体であり、含有率が最大の色素はgentio-delphinであった。(4)青色系の花弁のビロード感について細胞組織学的に観察した結果、表皮細胞の形状との間に関連性は認められなかった。(5)花色と花色素の遺伝的究明を目的とした調査では、3種類の花色(青、ピンク、白)の品種、系統間で交配実験を行い、種子の特性を調査し、実生植物を育成したが、研究年度内には開花には至らず、供試材料の準備に留まった。2.細胞学的調査には、園芸品種、G.trifloraとG.scabraの選抜系統、G.triflora自生系統、G.属の外国種を収集し供試した。(1)染色体数は上記2種の選抜系統(14種類)は同種の既報告と同様、二倍体であり、園芸品種(14品種)は、11品種は二倍体、2品種は三倍体であった。外国種(13種類)は既報告と異なる6種および未報告の3種のデータを得た。(2)花粉稔性は、G.triflora自生系統では7系統中2系統に、また、上記2種の選抜系統の一部に、かなりの固体間差異がみられた。園芸品種(14種類)および外国種(13種)では、大部分各1個体の調査結果であるが、花粉稔性には品種・種間で著しい差異が観察された。1.花色および花色素に関する調査には、リンドウの園芸品種、Gentiana trifloraとG.scabraの選抜系統、G.triflora自生系統、G.属の外国種、計61種類を収集し供試した。(1)花色は、植物色票による色相は紫青色紫赤色の範囲に分布し、青色系とピンク色系に大別された。色差計による色相はそれぞれ狭い範囲に分布し、彩度は広範囲に及んだ。(2)アントシアニン組成は、青色系では、delphinidin系色素からなる3タイプ(IIII)およびdelphinidin系とcyanidin系の両色素からなる2タイプ(IV、V)に、ピンク色系ではcyanidin系色素からなるIタイプに分類された。(3)青色系のIタイプの品種について4種類のアントシアニンが精製され、同定の結果、これらはdelphinidinの配糖体であり、含有率が最大の色素はgentio-delphinであった。(4)青色系の花弁のビロード感について細胞組織学的に観察した結果、表皮細胞の形状との間に関連性は認められなかった。(5)花色と花色素の遺伝的究明を目的とした調査では、3種類の花色(青、ピンク、白)の品種、系統間で交配実験を行い、種子の特性を調査し、実生植物を育成したが、研究年度内には開花には至らず、供試材料の準備に留まった。2.細胞学的調査には、園芸品種、G.trifloraとG.scabraの選抜系統、G.triflora自生系統、G.属の外国種を収集し供試した。(1)染色体数は上記2種の選抜系統(14種類)は同種の既報告と同様、二倍体であり、園芸品種(14品種)は、11品種は二倍体、2品種は三倍体であった。外国種(13種類)は既報告と異なる6種および未報告の3種のデータを得た。(2)花粉稔性は、G.triflora自生系統では7系統中2系統に、また、上記2種の選抜系統の一部に、かなりの固体間差異がみられた。園芸品種(14種類)および外国種(13種)では、大部分各1個体の調査結果であるが、花粉稔性には品種・種間で著しい差異が観察された。1.新たに収集した材料を含め,合計40サンプルについて下記の実験を行った.内訳は、園芸品種または選抜系統(エゾリンドウとリンドウ由来)18,エゾリンドウに自生系統14,欧州からの導入種8である.花色素分析1)生花弁の花色を,日本園芸植物色票を用いて調査し,色差計による測定を行ったその結果,前者では,色相範囲は青色と赤色の間であった.後者では,L*a*b(1976)の表色方法を用い,供試材料の色相は,青色系はh=310330°,桃色系はh=330335°のそれぞれ狭い範囲に分布し,彩度は広範囲に及んだ.2)アントシアニン組成の調査は,アントシアニジンの分析結果に基づいて,クロマトグラム上のピーク(相対量が10%以上)構成の比較により行った.その結果,供試材料は4つのタイプに分けられた. | KAKENHI-PROJECT-07456013 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07456013 |
リンドウ園芸用種における種・品種分化,特に花色素および染色体に関する研究 | さらに,花色との関連をみると、青色系はデルフィニジン系色素のみの,またはデルフィニジン系とシアニジン系の両色素のアントシアニン組成からなる3タイプ,桃色系の材料はシアニジン系色素からなる1タイプであった.3)エゾリンドウの自生植物中に,桃色系の1系統が見出された.また,エゾリンドウ由来の青色系の1品種はほかのエゾリンドウとは異なるアントシアニン組成を示した.4)花色素の遺伝様相の調査は,青色系,桃色系および白色系の系統または品種を供試し,自殖および各色の系統間で交雑を行った.その結果得られた種子は播種し、後代植物を育成中である.細胞学的調査花粉稔性の調査を行った.エゾリンドウの自生系統は2系統でやや低い稔性の個体を含み,そのほかは正常な稔性を示した.エゾリンドウとリンドウの選抜系統では5096%の範囲で個体により異なったが,低い数値は栽培環境の影響とも考えられた.園芸品種では種間雑種由来品種がかなり低い花粉稔性であった.欧州からの導入種は,低い,中程度,正常の数値を示した.1.供試材料は、新たに園芸品種または系統の青色系と桃色系13サンプルを収集した。2.花色素分析1)生花弁の花色は、日本園芸植物色票と色差計を用いて調査を行った。その結果、供試植物の色相は青色と赤色の間の狭い範囲に分布したが、彩度は広範囲に及び、また青色系と桃色系に区別された。2)アントシアニン組成は、アントシアニジンの同定と共にHPLCを用いて分析を行った。その結果、供試材料はアントシアニン組成について4つのタイプに分けられ、花色との関連を見ると、青色系の材料はデルフィニジン系色素のみ、またはデルフィニジン系とシアニジン系の両色素からなる3タイプ、桃色系の材料はシアニジン系色素からなる1タイプであった。3)花色素の遺伝様式の調査は、平成7年度の交雑(青色系、桃色系、白色系の系統または品種の自殖、各色系の系統間交雑)で得た実生植物を育成中である。なお、交雑親個体の花色素分析は終了した。種内および種間の多数の組合せについて交雑を行ったゆえ、採種種子数のほかに、種子の形状、発芽率の調査を併せて行った。3.青色系品種のうち、花弁がビロード感を有して花色が鮮明な2品種と外国種1種について、花弁の表皮細胞をパラフィン切片法により観察した.その結果、ビロード感の有無と表皮細胞の形状との間に明らかな関連は認められなかった。4.染色体数の調査は昨年度までに収集した外国種9種について行い、このうち4種は従来の報告のない種であった。1.供試材料は、新たに園芸品種および外国種の8サンプルを収集した。2.花色と花色素の調査1)生花弁の花色を,日本園芸植物色票と色差計を用いて調査を行った。その結果,両方法による色相は平成7、8年度に調査したサンプルの範囲内に分布した。2)アントシアニン組成は、アントシアニジンの同定とともにHPLCを用いて分析を行った。平成7、8年度に調査したサンプルも加えて詳細に検討した結果、供試材料はアントシアニン組成について6タイプに分けられた。青色系では、デルフィニジン系色素からなる3タイプと、デルフィニジン系とシアニジン系の両色素からなる2タイプ、ピンク色系ではシアニジン系色素からなる1タイプであった.3)青色系の品種および系統の多くはデルフィニジン系色素からなる1タイプに属した。このタイプの品種についてアントシアニンの精製と同定を行った。その結果、4種類のアントシアニンが精製、同定され、そのうちゲンチオデルフィンが最大含有率を示した。4)花色と花色素の遺伝様式の調査では、実生個体数の少ない交配組合せを中心に再度、交配を行い、採種した。これまでに得られた実生植物は本年度内には開花に至らず、本調査の供試材料の準備に留まった。 | KAKENHI-PROJECT-07456013 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07456013 |
糖鎖クラスタの立体構造計算法の開発とワクチン設計への応用 | 細胞表面の糖鎖は、クラスタを形成して個々の糖鎖分子では成し得ない高度な細胞認識を実現している。ウィルス表面糖鎖を認識するワクチンの開発も進められているが、糖鎖構造は複雑かつ柔軟性が高いため、糖鎖クラスタの立体構造情報はほとんど得られていない。本研究では、拡張アンサンブル法を用いた糖鎖計算技術に基づいた糖鎖クラスタの立体構造計算法を開発し、それを用いてウイルス表面糖鎖のクラスタ構造を解明し糖鎖クラスタの認識モデルを創出する。細胞表面の糖鎖は、クラスタを形成して個々の糖鎖分子では成し得ない高度な細胞認識を実現している。ウィルス表面糖鎖を認識するワクチンの開発も進められているが、糖鎖構造は複雑かつ柔軟性が高いため、糖鎖クラスタの立体構造情報はほとんど得られていない。本研究では、拡張アンサンブル法を用いた糖鎖計算技術に基づいた糖鎖クラスタの立体構造計算法を開発し、それを用いてウイルス表面糖鎖のクラスタ構造を解明し糖鎖クラスタの認識モデルを創出する。 | KAKENHI-PROJECT-19K12229 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K12229 |
シュルレアリスムとアヴァンギャルドの方法論における主体の位置について | 研究の最終年度となる平成26年度には、シュルレアリスムの方法論と対比させるかたちで、さまざまなアヴァンギャルドの実践をめぐる分析をすすめた。とりわけ、昨年度からひきつづいて、フランスのポップ・アートの一潮流として知られるフィギュラシオン・ナラティヴ運動についての調査と検討を行った。シュルレアリスム以降の美術について、フィギュラシオン・ナラティヴなどを介して、広範な視覚文化の問題とともに再考する昨年度以来の研究は、論文「マンガ表現と絵画の境界をどう考えるかフィギュールという接点」(鈴木雅雄編『マンガを「見る」という体験フレーム、キャラクター、モダン・アート』所収)にまとめられた。また、フィギュラシオン・ナラティヴをめぐるさらなる実証的調査の成果は、表象文化論学会における口頭発表「フィギュラシオン・ナラティヴはシュルレアリスムとどのように接しているのか」によって公にした。また、今年度はさらに、さまざまなアヴァンギャルドの実践と比較するなかであきらかになってきた、シュルレアリスムの方法論(とりわけオートマティスム)における主体性の特質についても考察を深めた。その成果は、平成27年3月に東京大学に提出された博士論文「アンドレ・ブルトンにおけるオートマティスムの概念とその変遷」にも部分的に反映されている。また、シンポジウム「声と文学」(第二回)において、「オートマティスムはだれのもの?ブルトン、電子音声現象、初音ミク」という標題で行った発表も、この研究成果の一部をなしている。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。平成24年度には、シュルレアリスムとアヴァンギャルドの方法論の双方について、具体的な分析をすすめることができた。とりわけ、昨年度以前に提出を済ませていたものではあるが、シュルレアリスムにおけるオートマティスムの概念をめぐる総論「理論の見る夢オートマティスムの歴史」の校正作業をすすめ、岩波書店の『思想』誌(平成24年10月号)に発表した。この論文は、オートマティスムという語彙について歴史的に検討することによって、シュルレアリスムの方法論のもつ思想的意義をあきらかにしたものである。また、このオートマティスム研究の成果を、現代文化の分析に適応することも試みた。「怖がったのはだれの心叫びのオートマティスムについて」(『ユリイカ』、2013年2月号)は、その成果である。いっぽう、アヴァンギャルドの方法論については、とりわけ絵画論の面で具体的な成果があった。横尾忠則をめぐる論考「絵の意味を問うのはなにのためか」(『ユリイカ』、2012年11月号)では、アヴァンギャルドにおけるコラージュの方法論についての考察を発表することができた。また、「多島海のタブロー絵画的マンガ論のために」(『ユリイカ』、2013年3月臨時増刊号)と題した論文は、前衛美術をめぐる言説と海外のマンガ批評の言説を結びあわせることによって、現代美学にもあらたな視点をひらこうとした試みである。さらに、アヴァンギャルドとシュルレアリスムの双方の芸術実践にかかわった、エジプトのジョルジュ・エナンという作家についても、昨年度以来の研究をつづけた。この成果は、水声社より刊行中の「シュルレアリスムの25時」シリーズの一巻として、近刊の予定である。平成25年度には、エジプトにおけるアヴァンギャルドとシェルレアリスムの主導者の一人である、ジョルジュ・エナンの詩作をめぐる調査・分析を継続した。その成果は、水声社の「シュルレアリスムの25時」シリーズの一巻である、『ジョルジュ・エナン追放者の取り分』にまとめて出版した。エナンの詩作にたいする包括的な分析は、シュルレアリスムのテクストとアヴァンギャルドの言語実験を並列的に論じることによってシュルレアリスムの言語的条件を明らかにしようとする本研究課題を、具体的に進展させる意義があった。また、日本においてはほとんど先行研究の存在していなかったエジプト・シュルレアリスムにたいする調査をすすめるなかで、シュルレアリスムの国際性をめぐる言説が、各地域のシュルレアリスム運動とときには対立しながら成りたってきたことが、あらためて理解された。その国際性と地域性の関係については、平成25年度のフランス語フランス文学会関東支部大会において発表を行った。シュルレアリスムとアヴァンギャルドの詩作上の方法論についてはさらに「現代詩にとってシュルレアリスムの課題とはなにか」と題する短期連載を『現代詩手帖』誌において行い、瀧口修造やイヴ・ボヌフォワなどの詩作について具体的な検酎を行った。また、シュルレアリスム美学の問題をマンガと対比させて検討する研究を深め、その成果は『ユリイカ』誌上の論考や、早稲田大学での公開ワークショップ「マンガ的視覚体験をめぐって」での口頭発表において公にした.このような調査をとおして、シュルレアリスムとアヴァンギャルドの方法論にたいする具体的な分析を深め、両者を比較して論じるための準備をすすめることができた。研究の最終年度となる平成26年度には、シュルレアリスムの方法論と対比させるかたちで、さまざまなアヴァンギャルドの実践をめぐる分析をすすめた。とりわけ、昨年度からひきつづいて、フランスのポップ・アートの一潮流として知られるフィギュラシオン・ナラティヴ運動についての調査と検討を行った。 | KAKENHI-PROJECT-12J08076 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12J08076 |
シュルレアリスムとアヴァンギャルドの方法論における主体の位置について | シュルレアリスム以降の美術について、フィギュラシオン・ナラティヴなどを介して、広範な視覚文化の問題とともに再考する昨年度以来の研究は、論文「マンガ表現と絵画の境界をどう考えるかフィギュールという接点」(鈴木雅雄編『マンガを「見る」という体験フレーム、キャラクター、モダン・アート』所収)にまとめられた。また、フィギュラシオン・ナラティヴをめぐるさらなる実証的調査の成果は、表象文化論学会における口頭発表「フィギュラシオン・ナラティヴはシュルレアリスムとどのように接しているのか」によって公にした。また、今年度はさらに、さまざまなアヴァンギャルドの実践と比較するなかであきらかになってきた、シュルレアリスムの方法論(とりわけオートマティスム)における主体性の特質についても考察を深めた。その成果は、平成27年3月に東京大学に提出された博士論文「アンドレ・ブルトンにおけるオートマティスムの概念とその変遷」にも部分的に反映されている。また、シンポジウム「声と文学」(第二回)において、「オートマティスムはだれのもの?ブルトン、電子音声現象、初音ミク」という標題で行った発表も、この研究成果の一部をなしている。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。シュルレアリスムとアヴァンギャルドの双方の方法論について比較検討することが、本研究の主眼であった。現段階で、シュルレアリスムの主要な方法概念であるオートマティスムについての分析と評価をほぼ終えつつあり、比較検討のための準備は、おおむね順調に進展していると言っていい。シュルレアリスムの言語的条件について再考するという目的に沿って、現在までにシュルレアリスムとアヴァンギャルドの方法論について具体的な検討を積みかさねることができた。計画どおりには分析しえなかった資料もあるが、エジプト・シュルレアリスムについての調査など予定以上に進展した分野もあり、計画はおおむね順調に進展している。今後は、アヴァンギャルドの方法論についての具体的分析を、さらにすすめてゆきたい。とりわけ、アヴァンギャルド文学における草稿資料を調査し、それらにあらわれる記述主体の位置について、検討をおこなう予定である。また、本研究を総括するために、シュルレアリスムとアヴァンギャルドの方法概念の比較検討についても、平成25年度から着手したい。今後は、現在までに調査の及ばなかった資料にたいする検討をすすめ、アヴァンギャルドの言語実験にたいする分析を深め、そこにあらわれる記述主体の位置について、あらためてシュルレアリスムと対比させながら研究を行う予定である。また、本研究を総括するため、具体的な分析結果をまとめた上で、シュルレアリスムの言語的条件を主題とした論文をまとめたい。 | KAKENHI-PROJECT-12J08076 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12J08076 |
エネルギーに関する重点領域の総括的研究 | 「総括班」は「エネルギー重点領域研究」を総括するとともに、「運営委員会」、「研究計画委員会」、「問題検討小委員会」及び「評価委員会」を置き、研究の企画・運営・評価を行ってきた。その成果は次のとおりである。a.「総括班」1.以下のように総括班会議を開催した。(1)第1回昭和63年5月31日、霞山会館<1>63年度の活動方針の検討<2>刊行物の検討<3>各研究班の63年度研究実施計画の審議(2)第2回昭和63年10月15日、霞山会館<1>各研究班の研究進捗状況報告、討論<2>英文アブストラクト集、英文論文集刊行について審議<3>64年度研究計画の検討(3)第3回平成元年2月3日、虎の門パストラル<1>63年度研究成果の検討<2>「昭和63年度研究計画概要」を刊行<3>「昭和63年度研究成果概要」を刊行<4>News-letter Vol.2No.14を刊行<5>英文アブストラクト集を刊行<6>連絡班代表会議を6回開催し、次のような事項について審議した。〔1〕各研究班の研究進捗状況ならびに63年度研究成果報告会開催について〔2〕「CO_2問題」の研究について〔3〕後期3年間の研究計画について〔4〕「評価法」問題検討小委員会の発足について。b.「研究計画委員会」16課題の研究計画について検討した。c.「問題検討小委員会」(1)「エネルギーと環境」では、地球規模のCO_2問題について研究討論。また総括班で懇談会を開き、今後の研究計画、研究組織のあり方について審議を行った。(2)「評価法」がエネルギー技術・研究評価の統一的方法論の検討を目的として本年度より発足。各分野の研究者から成るグループを組織し、2回の研究会を開催した。d.「評価委員会」3名の評価委員が、研究の進め方、研究目的の達成度などをチェックし、今後の研究の実施・計画の立案に助言を与えた。「総括班」は「エネルギー重点領域研究」を総括するとともに、「運営委員会」、「研究計画委員会」、「問題検討小委員会」及び「評価委員会」を置き、研究の企画・運営・評価を行ってきた。その成果は次のとおりである。a.「総括班」1.以下のように総括班会議を開催した。(1)第1回昭和63年5月31日、霞山会館<1>63年度の活動方針の検討<2>刊行物の検討<3>各研究班の63年度研究実施計画の審議(2)第2回昭和63年10月15日、霞山会館<1>各研究班の研究進捗状況報告、討論<2>英文アブストラクト集、英文論文集刊行について審議<3>64年度研究計画の検討(3)第3回平成元年2月3日、虎の門パストラル<1>63年度研究成果の検討<2>「昭和63年度研究計画概要」を刊行<3>「昭和63年度研究成果概要」を刊行<4>News-letter Vol.2No.14を刊行<5>英文アブストラクト集を刊行<6>連絡班代表会議を6回開催し、次のような事項について審議した。〔1〕各研究班の研究進捗状況ならびに63年度研究成果報告会開催について〔2〕「CO_2問題」の研究について〔3〕後期3年間の研究計画について〔4〕「評価法」問題検討小委員会の発足について。b.「研究計画委員会」16課題の研究計画について検討した。c.「問題検討小委員会」(1)「エネルギーと環境」では、地球規模のCO_2問題について研究討論。また総括班で懇談会を開き、今後の研究計画、研究組織のあり方について審議を行った。(2)「評価法」がエネルギー技術・研究評価の統一的方法論の検討を目的として本年度より発足。各分野の研究者から成るグループを組織し、2回の研究会を開催した。d.「評価委員会」3名の評価委員が、研究の進め方、研究目的の達成度などをチェックし、今後の研究の実施・計画の立案に助言を与えた。 | KAKENHI-PROJECT-63603013 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63603013 |
学習に寄与するLMSログ可視化の研究 | 本研究では、eポートフォリオ、SNS、LMSといった複数システムのデータにもとづいて、学習履歴を多面的に分析する方法について検討した。LMSの学習履歴とIRデータ(具体的には学習意識調査アンケート)を融合させた分析や、SNSの学修コミュニティのネットワーク分析を試み、異なった種類のシステムが学習者の行動や状態、学習のさまざまな側面についての情報をもたらしてくれることが明らかになった。しかし、これらをどのように連携させればよいかまではまだ明らかになっておらず、これは今後の課題である。平成25年度は、交付申請書に記載した三つの研究目的「1.授業可視化プラットフォームの完成」「2.授業可視化プラットフォームの公開とコミュニティ公開」「3.授業可視化プラットフォームの拡張」のうち、3について主に実施した。LMS (Learning Management System)での学習履歴の分析から始まった本研究を、eポートフォリオやSNS (Social Network System)へ拡張を試みた。交付申請書では、研究代表者はSNS/eポートフォリオの実践をしないことになっているが、広島大学で運用するeポートフォリオの管理に関わることになったため、計画を変更した。まず、オープンソースのeポートフォリオシステムであるMaharaでの、学生の学習記録(活動記録)のデータの保存形式について調査し、可視化手法としてどのようなものが適切であるかを検討した。eポートフォリオにおいては、LMSのテストなどのように教員から数値で客観的に評価される要素がほとんどなく、学生自身が保存した成果物の数や量、コメントの数、また学生の活動の頻度などを示す記録が主要なものとなる。この場合、因果関係を探るような可視化ではなく、全体を俯瞰し自己の位置を確認できるような可視化が有効である。次に、eポートフォリオ、SNS、LMSといった複数システムのデータに基づいて、学習履歴を多面的に分析する方法について検討した。LMSの学習履歴とIRデータ(具体的には学生意識調査アンケート)のを融合させた分析や、SNSの学習コミュ二ティのネットワーク分析を試み、異なった種類のシステムが学習者の行動や状態、学習のさまざまな側面についての情報をもたらしてくれることが明らかになった。しかし、これらをどのように連携させればよいかまではまだ明らかになっておらずこれは今後の課題である。本研究では、eポートフォリオ、SNS、LMSといった複数システムのデータにもとづいて、学習履歴を多面的に分析する方法について検討した。LMSの学習履歴とIRデータ(具体的には学習意識調査アンケート)を融合させた分析や、SNSの学修コミュニティのネットワーク分析を試み、異なった種類のシステムが学習者の行動や状態、学習のさまざまな側面についての情報をもたらしてくれることが明らかになった。しかし、これらをどのように連携させればよいかまではまだ明らかになっておらず、これは今後の課題である。研究実績平成24年度の研究計画は1.授業可視化プラットホームVisPの拡張(a.データベース連携機能の拡充b.他システムとの連携機能の開発)ならびに2.学生のための可視化情報の検討、であった。1aのデータベース連携機能の拡充に関しては、eポートフォリオシステムへの対応を中心に実施した。eポートフォリオシステムは現在急速に利用が広がりつつあるツールで、授業だけでなく学習者個人に焦点をあてたシステムであり、本研究の目的である「学習者に有用な可視化」という観点からもその対応は必要なものである。取りかかりの具体システムとして、オープンソースで国内でも広く利用が進みつつあるMaharaを対象に、利用の形態やデータベースの構造などを考慮し、データ連携のための開発に着手した。平成25年度以降、実際のデータを使って教員学生に有用な可視化手法を検討し、他のeポートフォリオシステムへも応用可能な結果が出ればと期待している。1bの他システムとの連携機能の開発については、まだ一般的に利用されている認証連携システムであるShibbolethやOAuthの調査を開始した段階で、開発としては進んでいない。平成25年度以降エフォート量を調整し進めていきたい。2の学生ための可視化情報の検討については、掲示板への書き込みなど学生相互のやりとりを複雑ネットワークの手法を用いて分析し、その結果を可視化することを検討している。平成24年度は、社会資本の概念をネットワークへ導入し分析を精緻化することを検討した。最終年度は、eポートフォリオデータの可視化についての検討を行いいくつかの試作を行った。学生自身の学修状況を可視化して本人に提示するものとして、eポートフォリオシステムが適していることがわかった。学生がeポートフォリオで入力したデータを可視化するだけではなく、LMS (Learning Management System)やSIS (Student Information System)由来のデータも統合して可視化できるとよい。そのためのシステム連携について検討をはじめた。実装については今後の課題である。本研究では授業可視化プラットフォームの充実を目指していた。同システムのデータベース連携機能の拡充に関しては、eポートフォリオシステムへの対応を中心に実施した。eポートフォリオシステムは現在急速に利用が広がりつつあるツールで、授業だけでなく学習者個人に焦点をあてたシステムであり、本研究の目的である「学習者に有用な可視化」という観点からもその対応は必要なものである。取りかかりの具体システムとして、オープンソースで国内でも広く利用が進みつつあるMaharaを対象に、利用の形態やデータベースの構造などを考慮し、データ連携のための開発をおこなった。Maharaでの、学生の学習記録(活動記録)のデータの保存形式について調査し、可視化手法としてどのようなものが適切であるかを検討した。 | KAKENHI-PROJECT-24501135 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24501135 |
学習に寄与するLMSログ可視化の研究 | eポートフォリオにおいては、LMSのテストなどのように教員から数値で客観的に評価される要素がほとんどなく、学生自身が保存した成果物の数や量、コメントの数、また学生の活動の頻度などを示す記録が主要なものとなる。この場合、因果関係を探るような可視化ではなく、全体を俯瞰し自己の位置を確認できるような可視化が有効であることがわかった。また、eポートフォリオ、SNS、LMSといった複数システムのデータにもとづいて、学習履歴を多面的に分析する方法について検討を開始した。教育工学目標である「授業プラットフォームの拡張」について、データの性質や利用の方法を考えシステムとしての拡張はほぼ必要なく、可視化手法の開発だけでうまくいきそうなことが明らかになった。可視化手法の開発については、複数システムやデータの組み合わせの場合も含めて順調にすすんでいる。「研究実績の概要」欄にあげた3件について、2番目の他システムとの連携開発については、認証連携機能の開発→可視化結果を提示するAPIの開発と進む予定だったが、まだ実施がすすんでいない。平成26年度が最終年度であるので、未完成な部分のシステム実装を進め、開発した可視化手法とともに成果発表をおこない、システムの利用者を増やすための環境を完成させる。これにより、次年度以降のコミュニティの拡大につなげていく予定である。「やや遅れている」状態だが、特に技術的な問題が発生しているわけではないので、当初計画書の方針通り研究を推進していく。具体的には、まず他システムとの連携機構を開発、広島大学で運用しているBlackboardや共同研究者が運用するMoodleなどのLMSと実際にログデータのやりとりをして、可視化結果を提供できる所まですすめたい。さらに、可視化モジュールを複数開発し、学習者がより深く学んだり、モチベーションを高く保つために有用な可視化結果とはどんなものかについて、授業実践を通して検証する。3/31に帰国した海外出張で、飛行機が遅延したため乗り換えに間に合わず、航空会社からの返金処理が行われた。それに関連する事務処理が間に合わず、航空機運賃の平成25年度経費での支払いができなかったため。前期の航空機運賃として、全額そのまま平成26年度に支払いがされる。他システムとの連携システムを構築するため、Linuxサーバ(30万円)を一台購入する。研究打ち合わせおよび情報収集・成果発表などのための国内旅費20万円、情報収集・成果発表などのための海外旅費50万円、その他資料収集及び消耗品などのため10万円を使用する予定。 | KAKENHI-PROJECT-24501135 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24501135 |
RNA 干渉を応用した角膜ヘルペスの新しい治療法の開発 | 角膜ヘルペスとは単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染による角膜疾患であり、再発を繰り返す扱い難い眼疾患の一つである。その治療薬には現在アシクロビル眼軟膏が第一選択薬として使用されている。本研究は角膜ヘルペスに対し水溶性でかつ安全な治療薬の開発を試みた。1)DNAポリメレース遺伝子発現の抑制を狙いDNAポリメレースを規定する遺伝子配列をよく検索し、HSVに特徴的な21塩基配列の部を選択し、二本鎖RNA (dsRNA)を合成した。これは21塩基対からなるsiRNAであり、理論的にはDNAポリメレース遺伝子発現を抑制する。角膜ヘルペス感染防止実験として、兎角膜にHSVを接種し1時間後から、A群はsiRNA点眼液を、B群は対象として溶解液を点眼し、HSV接種48時間後の病像を点数方式で比較判定した。残念ながら両群とも樹枝状潰瘍を形成し、siRNA点眼液には感染防止効果は認められなかった。次に角膜ヘルペス治療実験として、兎角膜にHSVを接種し48時間後から、C群はsiRNA点眼液を、D群は対象として溶解液を点眼した。5日間の治療後に両群の病像を点数方式で比較判定した。残念ながら両群とも地図状潰瘍を形成しており、siRNA点眼液に治療効果は認められなかった。我々が開発中のC. OXT-G点眼液と欧米で市販されているtrifluorothymidine (TFT)点眼液との治療効果を比較した。兎角膜にHSVを接種し樹枝状潰瘍の出来た48時間後から0.1%C. OXT-G点眼液群、1%TFT点眼液群と生理食塩水点眼群に分け4日間治療した。その結果、C. OXT-G点眼液とTFT点眼液は同等の優れた治療効果を示した。研究中のC. OXT-Gは、角膜ヘルペスの新しい水溶性治療薬になり得るものと判断した。角膜ヘルペスとは単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染による角膜疾患であり、再発を繰り返す扱い難い眼疾患の一つである。その治療薬には現在アシクロビル眼軟膏が第一選択薬として使用されている。本研究は角膜ヘルペスに対し水溶性でかつ安全な治療薬の開発を試みた。1)DNAポリメレース遺伝子発現の抑制を狙いDNAポリメレースを規定する遺伝子配列をよく検索し、HSVに特徴的な21塩基配列の部を選択し、二本鎖RNA (dsRNA)を合成した。これは21塩基対からなるsiRNAであり、理論的にはDNAポリメレース遺伝子発現を抑制する。角膜ヘルペス感染防止実験として、兎角膜にHSVを接種し1時間後から、A群はsiRNA点眼液を、B群は対象として溶解液を点眼し、HSV接種48時間後の病像を点数方式で比較判定した。残念ながら両群とも樹枝状潰瘍を形成し、siRNA点眼液には感染防止効果は認められなかった。次に角膜ヘルペス治療実験として、兎角膜にHSVを接種し48時間後から、C群はsiRNA点眼液を、D群は対象として溶解液を点眼した。5日間の治療後に両群の病像を点数方式で比較判定した。残念ながら両群とも地図状潰瘍を形成しており、siRNA点眼液に治療効果は認められなかった。我々が開発中のC. OXT-G点眼液と欧米で市販されているtrifluorothymidine (TFT)点眼液との治療効果を比較した。兎角膜にHSVを接種し樹枝状潰瘍の出来た48時間後から0.1%C. OXT-G点眼液群、1%TFT点眼液群と生理食塩水点眼群に分け4日間治療した。その結果、C. OXT-G点眼液とTFT点眼液は同等の優れた治療効果を示した。研究中のC. OXT-Gは、角膜ヘルペスの新しい水溶性治療薬になり得るものと判断した。角膜ヘルペスとは単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染による角膜疾患であり、再発を繰り返す扱い難い眼感染症の一つである。その治療薬には現在アシクロビル眼軟膏が第一選択薬として使用されている。しかし軟膏であるため点入後しばらく見難く、不快感を訴えたり、点状表層角膜症をきたすことがある。そこで本研究は角膜ヘルペスに対し、水溶性でかつ安全な治療薬の開発をするものである。RNA干渉とは二本鎖RNAにより配列特異的に遺伝子発現を抑制するものである。我々はこれを応用し、HSVのチミジンキナーゼの遺伝子発現を抑え、その結果としてHSVの増殖を抑え治療に繋げようと試みた。1)1128の塩基からなるチミジンキナーゼを規定する遺伝子配列をよく検索し、siRNA配列設計を行った。RISC形成能およびヒト・マウス・ラット遺伝子に対するオフターゲット作用の面から、我々は5種類のsiRNAを特異的に選択し作成した。例えばsense strandとしてGCUACUGCGGGUUUAUAUAGA,そのantisense strandとしてUAUAUAAACCCGCAGUAGCGUを作成した。この他sense strand : GUACCCGAGC???UGACUUACとantisense strand : AAGUCAUCGG???GGGUACGU, sense strand : CAUAUCGGGG???CGUUAUUUとantisense strand : AUAACGUGUC??? | KAKENHI-PROJECT-18591923 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18591923 |
RNA 干渉を応用した角膜ヘルペスの新しい治療法の開発 | GAUAUGGG, sense strand : GUUCGCGCGA???UAUCGUCUとantisense strand : ACGAUAUCGU???GCGAACCC, sensestrand : GUUCGCGCGA???UAUCGUCUとantisense strand : ACGAUAUCGU???GCGAACCCである。なお?の部はパテントの関係で公表を差し控えさしていただく。2)VERO細胞とHSVのPH株(1型)を用いて、in vitroレベルでの上記5種類のsiRNAのウイルス増殖阻止曲線を描いている所である。5ug以下で抗HSV作用を発揮することを期待している。またその作用を示すものを次の動物実験に持って行く計画で進んでいる。3)本番の動物実験が出来るように、予備実験を行い、我々の動物実験系統が正常に働くことを確認した。すなわち5匹の兎の両眼角膜にガラス毛細管を用いてHSVのPH株を接種した。HSV接種48時間後、全ての角膜に樹枝状潰瘍が形成されていた。その後右眼はアシクロビル眼軟膏を1日5回点入し、左眼は対象として基剤で治療した。治療4日後、アシクロビル眼軟膏を用いた方は樹枝状潰瘍は消失していたが、基剤を用いた方は大きな地図状角膜潰瘍となっていた。この結果我々の動物実験系統が正常に働くことが確認出来、上記in vitroの結果が出次第、このin vivoの実験に取り組む段階となっている。角膜ヘルペスとは単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染による角膜疾患であり、再発を繰り返す扱い難い眼疾患の一つである。その治療薬には現在アシクロビル眼軟膏が第一選択として使用されている。しかし軟膏であるため点入後しばらく見難く不快感があり、また点状表層角膜症をきたすことがある。そこで本研究は、角膜ヘルペスに対し水溶性でかつ安全な治療薬の開発を試みた。家兎の角膜にHSVを接種し48時間後、人と同じような樹枝状角膜潰瘍を形成した後、0.1%carbocyclic oxetanocin G(C.OXT-G)点眼液群、1%trifluorothymidine(TFT)点眼液群ならびにコントロールとして生理食塩水群に分けて、それぞれ1日10回点眼治療し経過を観察した。治療効果は病像に応じた点数方式にて比較検討した。その結果、研究中の新しいC.OXT-G点眼液は、欧米で市販されているTFT点眼液と同等の治療効果を示し、かつ細胞毒性などの副作用を示さなかった。両点眼液群は、治療4日後には樹枝状角膜潰瘍は消失し、両薬剤とも優れた治療効果を示した。一方生理食塩水を点眼したコントロール群は、大きな地図状角膜潰瘍を形成していた。これら実験結果から、研究中の新しいC.OXT-Gは、角膜ヘルペスの新しい治療薬になり得るものと判断した。こん他特殊なオリゴヌクレオシドを用いた点眼液でも、同様な実験が進行中である。 | KAKENHI-PROJECT-18591923 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18591923 |
二次元以外の異なる次元性物質から理解する鉄系超伝導 | 新しい発現機構の可能性から鉄系超伝導が注目を集めている。本研究では鉄系超伝導の発現機構の解明に向けて、空間次元性の異なる物質からのアプローチを基に研究を行った。その結果、一次元梯子型物質AFe2X3 (A = K, Rb, Cs, Ba; X = S, Se, Te)において磁気構造を群論的解析により求め、BaFe2S3に対する圧力印加により世界で初めて鉄系梯子型物質で超伝導状態を誘起することに成功した。また、低次元物質に特徴的な磁気揺らぎの温度依存性や磁気励起を観測し、希釈によって磁気秩序が完全に抑えられることを発見した。本研究は鉄系超伝導の発現機構の解明に向けて、空間次元性の異なる物質からのアプローチを特色としている。初年度は以下の事柄について研究を進めた。(1) AFe2X3 (A = K, Rb, Cs; X = S, Se, Te)であらわされる鉄系梯子型物質は、FeX4四面体が二束梯子を形成している。FeX4が二次元正方格子を持つ鉄系超伝導体の一次元類似化合物である。この物質は他の鉄系超伝導体母物質とは異なり、絶縁体である。我々は梯子型物質について中性子粉末回折から常圧での磁気構造を群論的解析により求め、圧力印加によりバンド幅制御型の金属絶縁体転移を引き起こすことに成功した。さらに高圧印加下では超伝導状態を誘起することにも成功した。この成果は現在Nature Materialsに投稿中である。(2)鉄系梯子型物質のうち、BaFeSe3はブロック型の磁気構造を、CsFe2Se3はストライプ型の磁気構造を取ることが分かっている。これら二つの希釈効果を調べることにより、磁性の変化を系統的に追跡する事を目指した。その結果、新たな二段転移を経て新たな磁気構造を取る濃度領域が存在すること、低温まで完全に磁性を抑制することができることを発見した。この成果は現在Physical Review Bに投稿中である。(3) BaFe2Se3について単結晶合成を行い、それらを複数軸立て(1.4 g)することで非弾性中性子散乱実験を行った。実験はアメリカOak Ridge国立研究所SNSのHYSPEC分光器を用いて行った。測定の結果、室温に置いても磁気散漫散乱由来の磁気励起が高エネルギーまで存在すること、低温では急峻なスピン波励起が見られること、磁気励起のQ依存性から高い低次元性が存在していることが分かった。この結果について現在解析を進めている。最終年度は以下の事柄について研究を進めた。1: AFe2X3 (A = K, Rb, Cs; X = S, Se, Te)で表される鉄系梯子型物質のうち、BaFe2S3について中性子粉末回折から常圧での磁気構造を群論的解析により求め、圧力印加により金属絶縁体転移を引き起こすことに成功した。さらに高圧印加下では世界で初めて鉄系梯子型物質で超伝導状態を誘起することに成功した。この成果は現在Nature Materialsに掲載された。2:鉄系梯子型母物質のうち、BaFeSe3はブロック型の磁気構造を、CsFe2Se3はストライプ型の磁気構造を取ることが分かっている。これら二つの希釈効果を調べることにより、新たな二段転移を経て新たな磁気構造を取る濃度領域が存在すること、低温まで完全に磁性を抑制することができることを発見した。この成果は現在Physical Review Bに掲載された。3: BaFe2Se3では中性子散乱から磁気転移温度は255 Kであることがわかっている。一方、メスバウアー測定では230 K以下から10 Kまで徐々にシグナルが変化する振る舞いが観測されており、幅広い温度領域にわたった磁気秩序の形成が考えられる。そこで、これらよりも時間領域が遅いプローブであるmuSRを使って磁気転移の様子を観測したところ、およそ36 Kで磁気転移することがわかり、磁気転移が幅広い温度領域に渡ることを示した。4:希釈系Ba1-xCsxFe2Se3について、圧力効果を調べた。20 GPa程度まで印加しても両母物質は絶縁体のままであるが、中間濃度領域の試料において絶縁体-金属転移の誘起に成功した。特にx = 0.25の試料は中性子散乱で磁気反射が見られず、磁性が完全に抑えられているので、今後中性子非弾性散乱により磁気励起を調べていく。新しい発現機構の可能性から鉄系超伝導が注目を集めている。本研究では鉄系超伝導の発現機構の解明に向けて、空間次元性の異なる物質からのアプローチを基に研究を行った。その結果、一次元梯子型物質AFe2X3 (A = K, Rb, Cs, Ba; X = S, Se, Te)において磁気構造を群論的解析により求め、BaFe2S3に対する圧力印加により世界で初めて鉄系梯子型物質で超伝導状態を誘起することに成功した。また、低次元物質に特徴的な磁気揺らぎの温度依存性や磁気励起を観測し、希釈によって磁気秩序が完全に抑えられることを発見した。現在までほぼ計画通りに実験を進めている。特に、BaFe2Se3の磁気揺動について三軸分光器、後方散乱、中性子スピンエコー法を用いて網羅的に調べる予定であり、中性子実験のプロポーザルは受理されていたが、2015年前半現在、研究用原子炉JRR-3の再稼働が遅れており、実験が遂行できていない。 | KAKENHI-PROJECT-26800175 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26800175 |
二次元以外の異なる次元性物質から理解する鉄系超伝導 | これについては今後、海外の実験施設にプロポーザルを提出し実験を行う予定である。物性物理学まずは鉄系梯子型物質で問題となっている、常磁性状態から磁気秩序状態への緩やかな移り変わりの謎を解くために中性子散乱実験を行う。具体的にはBaFe2Se3にたいして、三軸分光器、後方散乱、中性子スピンエコー法を用いてエネルギー分解能を変えながら磁気反射を追うことで、磁性の特徴的な時間スケールを明らかにする。また、相補的にミューオンスピン緩和実験を行うことも計画している。CaFe4As3については非弾性中性子散乱を適用できるように大型の単結晶育成に取り組む。この系は11系との類似点があり、非整合整合一時転移が軌道由来の可能性もあるので、これを明らかにするために高磁場磁化過程測定を計画している。また、平成26年度に購入したアーク溶解炉などを用いて、常圧での梯子型超伝導状態誘起を目指して積極的に新物質開発を行っていく。 | KAKENHI-PROJECT-26800175 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26800175 |
3次元多様体とその基本群の研究 | 研究の目的は3次元多様体上の種々の構造と基本群の関係を明らかにすることである。これに関して、3次元多様体の基本群の表示と幾何学的群論、3次元多様体の基本群のリー群への表現空間の位相などの研究が行われている。我々は、3次元多様体上の種々の構造に着目して、ラミネーションや葉層構造、3次元多様体への群作用、亜群作用のダイナミクスとの関係、3次元多様体の基本群がさまざまな形で円周の同相群や曲面の同相群に作用する様子などを特に重点的に研究し、今年度は、そのまとめをおこなった。自由群の外部自己同型群の有限部分群については、キュラー-ツィンマーマンにより、自由群と同じ階数を持つ有限グラフへ作用することが知られていたが、その作用が効果的である条件がワン-ツィンマーマンにより知られていた。これにより、自由群の外部自己同型群の有限部分群の最大位数の評価が得られていたが、さらに有限可換部分群に対しそれを精密に評価し、最大位数を与える外部自己同型の有限可換部分群の性質を明らかにした。それらは、位数2または4の群の直積となる。また、自由群の外部自己同型群の巡回部分群の最大位数を評価した。これは、リーマン面のモジュライ空間の研究と深い関係があり、その関係についても研究をまとめた。サーストンの双曲的3次元多様体の理論を整理し検討するとともに、結び目のザイフェルト曲面の研究をまとめた。このような研究の中で、チェッカーボード曲面として構成した曲面の圧縮性の判定についての結果を得た。また、様々な結び目についてのデーン手術によって得られる3次元多様体の情報を得ることが出来た。この論文は、出版予定である。これらの研究に関連して、包志強は、大阪で行われた「Jorgensen理論に関係した擬フックス穴あきトーラス群」の研究集会で国内の研究者と研究交流を行い研究上の議論を深めた。また、東京大学大学院数理科学研究科では「リーマン面に関係するトポロジー」研究集会で、Curvature Flow of Circle Packing Metrics on Surfacesという題目の講演をおこなった。さらに、トポロジー火曜セミナー、葉層構造のセミナー等に出席し、東京近辺の教員、大学院生、研究員と3次元多様体とその基本群についての研究交流を深めた。研究の目的は3次元多様体上の種々の構造と基本群の関係を明らかにすることである。これに関して、3次元多様体の基本群の表示と幾何学的群論、3次元多様体の基本群のリー群への表現空間の位相などの研究が行われている。我々は、3次元多様体上の種々の構造に着目して、ラミネーションや葉層構造、3次元多様体への群作用、亜群作用のダイナミクスとの関係、3次元多様体の基本群がさまざまな形で円周の同相群や曲面の同相群に作用する様子などを特に重点的に研究した。自由群の外部自己同型群の有限部分群については、キュラー-ツィンマーマンにより、自由群と同じ階数を持つ有限グラフへ作用することが知られていたが、その作用が効果的である条件がワン-ツィンマーマンにより知られていた。これにより、自由群の外部自己同型群の有限部分群の最大位数の評価が得られていたが、さらに有限可換部分群に対しそれを精密に評価し、最大位数を与える外部自己同型の有限可換部分群の性質を明らかにした。それらは、位数2または4の群の直積となる。また、自由群の外部自己同型群の巡回部分群の最大位数を評価した。これは、リーマン面のモジュライ空間の研究と深い関係があり、その関係についても研究した。このことについては、東京大学におけるリーマン面に関連する位相幾何学研究集会で発表した。サーストンの双曲的3次元多様体の理論を整理し検討するとともに、結び目のザイフェルト曲面の研究を行った。このような研究の中でチェッカーボード曲面として構成した曲面の圧縮性の判定についての結果を得た。また、様々な結び目についてのデーン手術によって得られる3次元多様体の情報を得ることが出来た。これらの研究に関連して、包志強氏は、山形市で行われたトポロジーシンポジウムや早稲田大学での研究集会で国内の研究者と研究交流を行うとともに、北京大学のBoju Jiang氏、Haibo Duan氏と研究連絡を行い研究上の議論を深めた。また、東京大学大学院数理科学研究科ではトポロジー火曜セミナー、葉層構造のセミナー等に出席し、東京近辺の教員、大学院生、研究員と3次元多様体とその基本群についての研究交流を深めた。研究の目的は3次元多様体上の種々の構造と基本群の関係を明らかにすることである。これに関して、3次元多様体の基本群の表示と幾何学的群論、3次元多様体の基本群のリー群への表現空間の位相などの研究が行われている。我々は、3次元多様体上の種々の構造に着目して、ラミネーションや葉層構造、3次元多様体への群作用、亜群作用のダイナミクスとの関係、3次元多様体の基本群がさまざまな形で円周の同相群や曲面の同相群に作用する様子などを特に重点的に研究し、今年度は、そのまとめをおこなった。自由群の外部自己同型群の有限部分群については、キュラー-ツィンマーマンにより、自由群と同じ階数を持つ有限グラフへ作用することが知られていたが、その作用が効果的である条件がワン-ツィンマーマンにより知られていた。 | KAKENHI-PROJECT-03F03189 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03F03189 |
3次元多様体とその基本群の研究 | これにより、自由群の外部自己同型群の有限部分群の最大位数の評価が得られていたが、さらに有限可換部分群に対しそれを精密に評価し、最大位数を与える外部自己同型の有限可換部分群の性質を明らかにした。それらは、位数2または4の群の直積となる。また、自由群の外部自己同型群の巡回部分群の最大位数を評価した。これは、リーマン面のモジュライ空間の研究と深い関係があり、その関係についても研究をまとめた。サーストンの双曲的3次元多様体の理論を整理し検討するとともに、結び目のザイフェルト曲面の研究をまとめた。このような研究の中で、チェッカーボード曲面として構成した曲面の圧縮性の判定についての結果を得た。また、様々な結び目についてのデーン手術によって得られる3次元多様体の情報を得ることが出来た。この論文は、出版予定である。これらの研究に関連して、包志強は、大阪で行われた「Jorgensen理論に関係した擬フックス穴あきトーラス群」の研究集会で国内の研究者と研究交流を行い研究上の議論を深めた。また、東京大学大学院数理科学研究科では「リーマン面に関係するトポロジー」研究集会で、Curvature Flow of Circle Packing Metrics on Surfacesという題目の講演をおこなった。さらに、トポロジー火曜セミナー、葉層構造のセミナー等に出席し、東京近辺の教員、大学院生、研究員と3次元多様体とその基本群についての研究交流を深めた。 | KAKENHI-PROJECT-03F03189 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03F03189 |
積層セラミック磁気回路を用いたMEMS発電機の開発 | 本研究の目的は5mm角程度の小型な電磁誘導式発電機の開発にある。平成30年度の到達目標は前年度に明らかになった設計等の問題点を改善することおよび組み合わせた発電機の研究成果のまとめである。改善においてはタービン機構のロータについて主に行った。前年度までの研究ではタービンロータを平面型からリム型とし、さらに軸受け機構に小型ボールベアリングを導入することで29万回転の高回転を実現した。しかし、リム型としたことで羽の先端が細くなることから破損につながり回転数の低下も確認された。また、作動流体を流入することで回転を得るが、回転直後の空気だまりが回転低下や破損の原因となると考えられた。改善方法としてロータ形状と排気口について有限要素法により解析を行い新たな設計を行った。これにより破損しにくくなりタービン機構の長寿命化を図った。磁気回路については磁石の着磁方向に合わせた形状での開発を行っていたが、小型でより高出力が望める三相交流型が望ましいといえる。また、開発を行った小型電磁誘導式発電機はIoT機器などに代表される小型機器への電源供給として期待できる。このことから実用化を念頭に作動流体の選定を行うこととした。作動流体の供給とエネルギーの効率的利用を行うことからランキンサイクルに組み込むことを想定した。ランキンサイクル発電を用いることにより廃熱を利用した小型発電機を開発することが可能となる。特に本研究では100°C以下の低温熱源で利用可能とするため低沸点媒体を作動流体として回転実験まで行い、約15万回転を得ることができた。以上の成果をまとめた結果を国際学会および著書にまとめ成果報告とした。また、シリコン微細加工技術であるMEMS工程と小型受動素子作製技術である積層セラミック技術を組み合わせることの有用性について具体的な活用方法を含めて示すことができた。本研究では5mm程度と小型な電磁誘導式発電機の研究開発を行う。本年度の研究計画では、電磁誘導式発電機の回転機構を担う部分であるタービンの開発について小型軸受機構であるベアリングを導入したエアタービン発電機の設計・開発を目的としていた。これまでの研究では軸受に空気軸受機構を用いていたが、空気軸受機構では回転時のロータが偏心運動を示すことから高速回転を抑制していると考えられる。そこで、ベアリングを導入し回転時の偏心運動を抑制する設計とした。作製したエアタービン部品は、IC作製技術を基本としたシリコン微細加工技術であるMEMS工程を用いた。また、ベアリングは内部に配置すると組み立て時の誤差が大きくなり挿入空気の漏洩につながることから、タービン機構の上部に配置し軸を通して回転ロータおよび磁石をタービン内部に配置する設計とした。作製したタービンで回転実験を行った結果、流入空気の流量を毎分1.0リットル、圧力0.3MPaの圧搾窒素により毎分22,700回転の回転動作を得た。また、回転時の軸の挙動を観察した結果、偏心運動の抑制が確認できた。また、偏心運動の同様の条件で空気軸受を用いたタービンの回転実験を行った結果は毎分18,000回転であったことからも、回転時の偏心運動が抑制され回転数が向上したと考えられる。また、もう一つの目的として磁気回路の一体化における検討も挙げる。空気軸受を採用したエアタービンではロータの回転時の摩擦を軽減するためにロータ下部に浮上用の流路を形成する必要があった。しかし、磁石がロータ下に接着していることから磁気回路と磁石の距離が広くなり磁束の漏洩が課題となっていた。しかし、本設計では軸とベアリングを用いることで回転部分であるロータが軸に支えられている。そのため、磁石周辺に機構部品を形成する必要がなくなることからヨークで導入する磁気回路が有効であることがわかった。本年度の目的は小型軸受機構を導入したエアタービン機構の設計と試作であった。この設計・試作を通して導入における問題点や課題の明確化も目的とした。また、これまでの設計では磁気回路に組み合わせるために部品が複雑化し挿入圧搾空気のリーク等の問題が懸念されたことから、試作をすることで設計の最適化もおこなった。設計においては内部に軸受機構を導入した設計と上部に導入した設計をそれぞれ試作・回転実験を行った。その結果から、内部に導入した設計では組み立て時に組み立て誤差が生じやすく回転動作を妨げることが分かった。また、上部に配置した軸受機構は組み立てが容易でありまた回転動作の確認が容易であることが分かった。しかし、軸受機構が上部に一つのみであると軸が振れてしまうことも明らかになったことから軸を支える軸受機構は上下の2点とすることが必要であることがわかった。また、磁気回路との一体化においては軸機構を導入したことから回転部分であるロータと磁石を一体化する必要がなくなるため設計における自由度が増えたといえる。本研究の目的は5mm角程度の小型な電磁誘導式発電機の開発にある。平成29年度の研究計画のうち、1つ目は電磁誘導式発電機の出力低下に大きく影響する磁気回路の磁束漏洩の減少を目的としていた。これについては前年度に行ったタービンの回転機構における小型ベアリングの導入が深く関係する。これまでの空気軸受型のタービンでは回転部であるロータと磁石は一体になっている必要があったが、これにより磁石の下部に流路層を形成する必要があり、磁石と磁気回路のギャップが問題となっていた。これについてベアリングを導入したことによりロータと磁石の位置関係を軸を介して自由に設計できるようになった。 | KAKENHI-PROJECT-16K18055 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K18055 |
積層セラミック磁気回路を用いたMEMS発電機の開発 | そのため、磁気回路形状について径方向に着磁した磁石と面方向に着磁した磁石の双方で設計・解析・検討を行った。径方向着磁の磁石についてはタービン下部から張り出した状態の磁石を取り囲むように磁気回路を配置する構造を検討した。また、面方向着磁の磁石についてはこれまでと同様に磁石下部に磁気回路を設置したが、流路を形成する必要がなくなったことからギャップをこれまでより狭くすることができた。それぞれの磁気回路において効率化のためにコイル部だけでなく磁束を導入するような設計を検討した。具体的には、囲い込み型磁気回路には磁石に対してコイル部まで磁束を誘導する凸形状の磁性体を形成し、閉磁路となる設計とした。磁石下部に形成した磁気回路は磁石上部に漏洩する磁束を誘導するために磁性ヨークを磁石上部に取り付け、閉磁路に似た設計とした。それぞれ磁場解析を行った結果、磁石からの磁束が磁気回路に導入されていることが分かったが、円盤状の磁石に対して曲面をもつ誘導部の形成が必要なことも明らかになった。さらに、回転機構の改善としてこれまでの平面翼ではなくリム型のタービン翼を導入することで最大回転数29,000rpmを得た。平成29年度の研究の目的はエアタービン機構と組み合わせるための磁気回路の設計・試作と積層セラミック磁気回路の作製プロセスについての研究であった。また、磁気回路の設計については磁場解析を行うことも目標としていた。これについて磁束を導入するための設計・解析を行い、それに基づき試作を行った。エアタービンの機構において高速回転化の設計がスムーズに行えたことから、本年度の目標であった単相発電機のみではなく三相発電機についても磁気回路の検討が可能となったことから本件は当初の計画よりも進呈しているといえる。また、積層セラミック磁気回路の作製プロセスにおいては磁束誘導部の設計と形成について有効性を明らかにすることができたが、低抵抗化および磁束損失の抑制については検討する要素がまだあるといえる。これについては異種成形について特に議論する必要がある。また、先に述べたタービン機構の高速回転化には前年度に明らかになったベアリング機構の導入方法の改善に加え、回転部であるロータの翼形状についても検討行った。これによりこれまでのMEMSの特徴であった平面構造を持つ形状ではなく、リム型とすることでより効率的に回転することが分かった。これにより29万回転を実現したことから今後は起電力等を考慮する必要があることも明らかとなった。本研究の目的は5mm角程度の小型な電磁誘導式発電機の開発にある。平成30年度の到達目標は前年度に明らかになった設計等の問題点を改善することおよび組み合わせた発電機の研究成果のまとめである。改善においてはタービン機構のロータについて主に行った。前年度までの研究ではタービンロータを平面型からリム型とし、さらに軸受け機構に小型ボールベアリングを導入することで29万回転の高回転を実現した。しかし、リム型としたことで羽の先端が細くなることから破損につながり回転数の低下も確認された。また、作動流体を流入することで回転を得るが、回転直後の空気だまりが回転低下や破損の原因となると考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-16K18055 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K18055 |
緊急生命維持装置組込用血液ポンプの開発研究 | 緊急生命維持装置への組込用の血液ポンプとして、値流体解析を基にしたトルコンポンプ本体の設計・試作およびトルコンポンプ駆動装置の試作を行い、流量差圧特性試験および溶血特性試験を行った。流量差圧特性については十分な性能を有し、また、特定条件下では溶血特性についても市販の物よりも性能のよいポンプが実現でき、緊急生命維持装置への組込用の血液ポンプとして、臨床応用に耐え得る性能を持つポンプが実現できた。緊急生命維持装置への組込用の血液ポンプとして、値流体解析を基にしたトルコンポンプ本体の設計・試作およびトルコンポンプ駆動装置の試作を行い、流量差圧特性試験および溶血特性試験を行った。流量差圧特性については十分な性能を有し、また、特定条件下では溶血特性についても市販の物よりも性能のよいポンプが実現でき、緊急生命維持装置への組込用の血液ポンプとして、臨床応用に耐え得る性能を持つポンプが実現できた。本研究では、ハンディタイプの緊急生命維持装置の実用化を目指して、ハンディタイプの緊急生命維持装置に適した新たな血液ポンプとして、人工肺との接続に適した入出力ポートを持つトルコンポンプの開発を行う。今年度はトルコンポンプの数値流体解析、構造決定モデルの試作、構造決定用ポンプのin vitro試験を行った。トルコンポンプの数値流体解析はトルコンポンプの3次元モデルを作成し、コンピュータシミュレーションによりポンプ流量を変えつつポンプ内の流速分布・圧力分布・シアストレス分布などについて計算を行った。ポンプ内部で流体が回転に伴い渦を巻く様子が見られ、摩擦ポンプ同様に低流量かつ高揚程なポンプであることが示された。また澱み等は見られず、ポンプ室の入口から出口までに数回から十数回の渦が巻いており、抗血栓性・溶血特性ともに優れた性能を持ちうることが示された。トルコンポンプの数値流体解析の結果を受け、構造決定モデルを試作し、構造決定用ポンプのin vitro試験を行った。構造決定モデルでは回転羽への動力伝達は、Vリングを用いてシャフトをシールし、モーター軸と直結することで実現した。またポンプ室内部は抗血栓性・溶血特性の向上のため鏡面研磨を行った。模擬循環回路を用いてポンプ特性試験を行ったところ、回転数1600rpmで圧負荷500mmHgに対して81/min以上の流量が得られた。また通常使用状態である圧負荷350mmHg・流量51/minは回転数1300rpm以下で実現できた。牛血を用いて圧負荷100mmHg・流量51/minで溶血試験を行ったところ、回転数は730rpmとなり、NIH(normalized index of hemolysis)は0.0017となり、溶血特性は市販の遠心ポンプの5分の1程度まで下げられていることが示された。本研究では、ハンディタイプの緊急生命維持装置を実用化を目指して、ハンディタイプの緊急生命維持装置に適した新たな血液ポンプとして、人工肺との接続に適した入出力ポートを持つトルコンポンプの開発を行う。平成22年度はポンプ駆動系の試作、完成モデルの試作、完成モデルでの試験を行った。ポンプ駆動系に関しては、流量・差圧に関して51/minで350mmHg以上と高い出力が要求されていることを鑑みて、100W以上のモーターを用いて実現した。また、患者の状況により必要とする補助量は大きく変動するため、容易に回転数を調節するためコンソールを作製し、10rpm単位で回転数調整を実現するとともに、過負荷の発生などモーター側の情報表示も実現した。また、駆動力の伝達には血液回路がモーターから容易に分離できるように、マグネットカップリングを用いて実現した。トルコンポンプは定回転で高い出力が得られるため、その駆動に際して大きなトルクが必要となる。そこで、カップリング用のマグネットにネオジムを用い、十分なカップリング力を得られるようにした。各々で開発したポンプ、マグネットカップリング、モーター、コンソールを組み合わせて差圧流量特性試験および溶血試験を行った。流量差圧に関しては昨年度の研究で得られた成果同様、回転数1300rpmで流量51/min、差圧350mmHgを実現できた。また、マグネットカップリングに関しては、出力を上げたり、急激に変動させたりしても脱調することなく駆動力の伝達が行えていた。溶血試験に関しては差圧が低い状態ではNIHが0.0017と低い結果が得られたが、差圧を350mmHgと高くしたところ、NIHは0.14と非常に高い値となった。この原因としてはモーターの発熱によるものと考えられる。血栓形成に関しては熱によるものと思われる血栓が一部で見られたが、モーターの発熱の影響がない場合には、ポンプ内に血栓は見られず、抗血栓性に関して十分な性能を有していることが確認できた。 | KAKENHI-PROJECT-21791763 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21791763 |
多様体上の微分作用素のなす空間の幾何学、コスティックスの特異点理論およびストルム理論 | 本研究では、群不変な量子化問題についての研究を行った。第一には、射影変換不変量子化問題である。多様体がアフィン対称接続を持つ場合に射影的に不変な量子化の方法を具体的に与えることに成功した。第二は、擬リーマン多様体の上に、共形不変シュワルツ微分を定義する方法をあたえた。シュワルツ微分の定式化については、多くの結果があるが、ここでは、多様体の微分可能同型写像全体の無限次元群に対する1-コサイクル(対照共変テンソルに作用する微分作用素へ値をもつ)として理解するアプローチである。第三には、開リーマン面の上の正則ベクトル場の射影不変なコサイクルの構成である。円周上の滑らかなベクトル場全体のなすり一環についてのコホモロジーはよく知られているが、それを高次元への拡張を試みた。その第一歩として、開リーマン面について研究を行った。これによって、今まで知られていない不変量が構成できた。第四は、滑らかな多様体の上の微分作用素のモジュールと微分同相写像のなす無限次元群のコホモロジーについての関連性を研究したことである。多様体の余接バンドルのシンプレクティック構造を使って、多様体の微分同相写像のなす無限次元群の線形微分作用素の空間に値をもつ1-コホモロジーの構成を行った。そのほか、射影変換不変な多次元シュワルツ微分の研究、フィンスラー関数による共形不変な量子化の方法についての研究を展開している。本研究では、群不変な量子化問題についての研究を行った。第一には、射影変換不変量子化問題である。多様体がアフィン対称接続を持つ場合に射影的に不変な量子化の方法を具体的に与えることに成功した。第二は、擬リーマン多様体の上に、共形不変シュワルツ微分を定義する方法をあたえた。シュワルツ微分の定式化については、多くの結果があるが、ここでは、多様体の微分可能同型写像全体の無限次元群に対する1-コサイクル(対照共変テンソルに作用する微分作用素へ値をもつ)として理解するアプローチである。第三には、開リーマン面の上の正則ベクトル場の射影不変なコサイクルの構成である。円周上の滑らかなベクトル場全体のなすり一環についてのコホモロジーはよく知られているが、それを高次元への拡張を試みた。その第一歩として、開リーマン面について研究を行った。これによって、今まで知られていない不変量が構成できた。第四は、滑らかな多様体の上の微分作用素のモジュールと微分同相写像のなす無限次元群のコホモロジーについての関連性を研究したことである。多様体の余接バンドルのシンプレクティック構造を使って、多様体の微分同相写像のなす無限次元群の線形微分作用素の空間に値をもつ1-コホモロジーの構成を行った。そのほか、射影変換不変な多次元シュワルツ微分の研究、フィンスラー関数による共形不変な量子化の方法についての研究を展開している。 | KAKENHI-PROJECT-00F00270 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-00F00270 |
サイトカイン補充遺伝子療法のための自殺遺伝子を介した細胞レベルでの調節法の開発 | 長期に亘る注射を必要とするサイトカイン療法では患者の精神的・肉体的苦痛が大きく、遺伝子治療によりサイトカインを体内で持続発現させる方法の確立が期待される。その際、遺伝子発現のレベルでサイトカイン産生量を調節することは現状ではまだ困難であり、細胞レベルでの調節が鍵となる。ヘルペスウイルス・チミジンキナーゼ(HSV-tk)遺伝子を自殺遺伝子としてサイトカイン遺伝子と共に線維芽細胞に導入しておき、プロドラッグのガンシクロビル投与により細胞を破壊する方法では、必ずしも満足のいく結果は得られていない。そこで本研究では、新規自殺遺伝子としてアポトーシス誘導遺伝子のFas/エストロゲン受容体キメラ遺伝子MfasER(Fas受容体のアポトーシス誘導に必須な領域とエストロゲン受容体のリガンド結合領域のキメラ蛋白質をコードする遺伝子)を利用することを試みた。MfasERベクター(pCMXMfasER)を導入したマウス線維芽細胞(L929)では、エストロゲン処理によりアポトーシスが短時間で効率良く誘導されることが、形態学的観察、XTTアッセイによる細胞増殖動態の検討、DNAの断片化の検出(細胞質分画から抽出したDNAのアガロースゲル電気泳動、細胞質中のヒストン結合DNA断片を検出するCell Death Detection ELISA)により確認された。そこで、さらにG-CSF発現ベクター(BCMGSNeo-GCSF)を導入しておくと、エストロゲン処理により細胞死が誘導され、それに伴って培養上清中の単位時間当たりのG-CSF産生量が急速に低下すること、即ち、G-CSF産生量の細胞レベルでの調節が可能であることが判明した。また、従来のHSV-tk/ガンシクロビル法との比較実験により、反応が速やかであること、細胞周期に関係なく細胞を破壊できることなど、本システムが幾つかの利点を有することが明らかとなった。長期に亘る注射を必要とするサイトカイン療法では患者の精神的・肉体的苦痛が大きく、遺伝子治療によりサイトカインを体内で持続発現させる方法の確立が期待される。その際、遺伝子発現のレベルでサイトカイン産生量を調節することは現状ではまだ困難であり、細胞レベルでの調節が鍵となる。ヘルペスウイルス・チミジンキナーゼ(HSV-tk)遺伝子を自殺遺伝子としてサイトカイン遺伝子と共に線維芽細胞に導入しておき、プロドラッグのガンシクロビル投与により細胞を破壊する方法では、必ずしも満足のいく結果は得られていない。そこで本研究では、新規自殺遺伝子としてアポトーシス誘導遺伝子のFas/エストロゲン受容体キメラ遺伝子MfasER(Fas受容体のアポトーシス誘導に必須な領域とエストロゲン受容体のリガンド結合領域のキメラ蛋白質をコードする遺伝子)を利用することを試みた。MfasERベクター(pCMXMfasER)を導入したマウス線維芽細胞(L929)では、エストロゲン処理によりアポトーシスが短時間で効率良く誘導されることが、形態学的観察、XTTアッセイによる細胞増殖動態の検討、DNAの断片化の検出(細胞質分画から抽出したDNAのアガロースゲル電気泳動、細胞質中のヒストン結合DNA断片を検出するCell Death Detection ELISA)により確認された。そこで、さらにG-CSF発現ベクター(BCMGSNeo-GCSF)を導入しておくと、エストロゲン処理により細胞死が誘導され、それに伴って培養上清中の単位時間当たりのG-CSF産生量が急速に低下すること、即ち、G-CSF産生量の細胞レベルでの調節が可能であることが判明した。また、従来のHSV-tk/ガンシクロビル法との比較実験により、反応が速やかであること、細胞周期に関係なく細胞を破壊できることなど、本システムが幾つかの利点を有することが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-07274260 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07274260 |
中隔・海馬コリン神経系の投射様式と変性過程の解析 | 学習・記憶に関わる中隔-海馬コリン神経の機能、投射様式、変性過程を解析した。1)ニューロン核内のアセチルコリンACh合成酵素(ChAT)の機能を解析したところ、ChATはACh神経関連遺伝子の転写調節に関わることが明らかとなった。2)ウイルスベクターを用いて、ラットの内側中隔ACh神経の投射様式を解析した。3)中枢性ACh神経の神経伝達に関係するカベオリン1の発現を海馬傷害フットで検討したところ、活性化ミクログリアに発現誘導が認められた。ACh神経伝達への関与は実証できなかった。学習・記憶に関わる中隔-海馬コリン神経の機能、投射様式、変性過程を解析した。1)ニューロン核内のアセチルコリンACh合成酵素(ChAT)の機能を解析したところ、ChATはACh神経関連遺伝子の転写調節に関わることが明らかとなった。2)ウイルスベクターを用いて、ラットの内側中隔ACh神経の投射様式を解析した。3)中枢性ACh神経の神経伝達に関係するカベオリン1の発現を海馬傷害フットで検討したところ、活性化ミクログリアに発現誘導が認められた。ACh神経伝達への関与は実証できなかった。本研究では、GFPと膜移行タンパク質ペプチドを組み込んだウイルスベクターを内側中隔核に微量注入してコリン作動性ニューロンの単一細胞描出を行い、その投射様式を解析する。次いでコリン傷害モデル動物を用いて、コリン神経変性の過程を解析する、この目的達成のために本年度は、主に基礎研究を行い、若干の知見を得た。(1)予備実験としてラットの内側中隔核に順行性トレーサーPHA-Lを注入し、これを免疫組織化学的に検出することによって、注入部位による海馬への投射様式の違いを検討した。またアセチルコリン作動性ニューロンのマーカーであるコリンアセチル基転移酵素の免疫組織化学法との二重染色を行ない、内側中隔核アセチルコリン細胞とウイルスベクターの同時検出のための基礎データとした。(2)海馬の受容野の解析のために、CGRPやネトリンGの免疫組織化学法を行い、海馬での局在を検討した。(3)内側中隔核へのウイルスベクターの注入実験を開始した。(4)前脳基底部のコリン作動性ニューロンの機能を知るためには、投射様式とともにその動態の解析が重要である。コリンアセチル基転移酵素はアセチルコリン合成に関係するばかりでなく、核内にも存在することが知られている。そこで核内のコリンアセチル基転移酵素の機能を探求した。その結果、核内のアセチルコリン合成酵素が、高親和性コリントランスポーター遺伝子の転写を活性化することを見いだし、報告した。本研究の目的は、(1)緑色蛍光タンパク質GFPと膜移行タンパク質ペプチドを組み込んだウイルスベクターを内側中隔核に微量注入してコリン作動性ニューロンの単一細胞描出を行い、その投射様式を解析すること、及び(2)コリン傷害モデル動物を用いて、同様の解析を行い、コリン神経変性の過程を解析することである。この目的達成のために本年度は、昨年度に引き続き、基礎研究を行い、若干の知見を得た。1)前年度に引き続き、ラットの内側中隔核へウイルスベクターを注入し、アセチルコリン作動性ニューロンの単一神経細胞描出を試みた。アセチルコリン作動性ニューロンのマーカーであるコリンアセチル基転移酵素ChATに対する免疫組織化学法を用いて、内側中隔核アセチルコリン細胞とウイルスベクターの同時検出を行い、単一ニューロンの描写が可能なラットを選択した。投与量、投与後の生存期間など、至適条件の決定を行った。単一ニューロンの描写が可能であったラットの個体数を増やしながら、解析可能な個体について、連続切片を作成し解析を行っているところである。2)認知障害を呈するコリン傷害モデル動物は、アルツハイマー病のモデルとして有用である。コリン傷害モデル動物におけるコリン神経変性過程の解析に平行して、コリンアセチル基転移酵素ChATを過剰発現させたヒト神経幹細胞をコリン傷害モデル動物の海馬や髄腔内に移植した。これらの動物では認知障害の改善が認められた。本申請研究の基礎データとして報告した(Park D,Matsuo A,et al.,2012)。本研究は、前脳基底部アセチルコリン作動性ニューロン、とくに内側中隔ー海馬投射コリン神経系の投射様式と変性過程を検討することを目的とした。この目的のために、緑色蛍光タンパク質GFPと膜移行タンパク質ペプチドを組み込んだウイルスベクターを内側中隔核に微量注入してコリン作動性ニューロンの単一細胞描出を試み、その投射様式を解析した。次いでコリン傷害モデル動物を用いて、コリン神経変性の過程を解析した。最終年度である本年度は以下の研究を行った(1)内側中隔核へSindvisウイルスベクターを微量注入した。2日後、灌流固定の後、脳を取り出し、クリオスタット切片を作成した。GFPの蛍光観察の後、抗GFP抗体を用いて免疫染色を行った。内側中隔アセチルコリン作動性ニューロンの終末は、主にアンモン角の上昇層と左右体細胞層・放射状層に分布し、吻ー尾側、内ー外側方向に部位局在的な投射傾向が観察された。今後、さらに例数を増やして定量的に解析する予定である。(2)前脳基底部コリン神経系の変性過程を検討するために、カイニン酸全身投与による海馬傷害ラットを作製した。中枢性コリン神経の神経伝達にはカベオラ関連タンパク質であるカベオリン1が関与することが示唆されている(L. Gioiosa et al., 2008)。 | KAKENHI-PROJECT-22500308 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22500308 |
中隔・海馬コリン神経系の投射様式と変性過程の解析 | そこで、カイニン酸モデルラットの海馬と大脳皮質の切片を用いて、カベオリン1の発現変化を検討した。予想に反して、カベオリン1免疫活性は海馬ニューロンには観察されなかった。海馬傷害ラットでは、海馬や大脳皮質の活性化ミクログリアに強く発現が誘導された。アセチルコリン神経伝達への関与は検出できなかったが、組織修復へのカベオリン1の関与を示唆する所見として、報告した。単一ニューロン描出のための条件設定を行ったが、同じ注入条件を用いても、単一ニューロン感染に成功する確率が低く、解析可能な個体数の確保に時間がかかっている。24年度が最終年度であるため、記入しない。単一コリン作動性ニューロンの解析に適したラットの個体数を増やし、解析を進める。また、前年度の解析で、注入後の生存期間を長くすると、コリン細胞死が起こることが判明している。したがって、生存期間の長さを変化させて、コリン神経の変性過程を追究する。また、これに平行して、前年度に作成したコリン傷害モデルラットを用いて、ウイルスベクターの注入を進める。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22500308 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22500308 |
男性における尿路性器・咽頭・肛門のHPV感染率についての疫学調査 | 咽頭と尿路のHPV感染の疫学調査では、尿道炎男性患者213例を対象に咽頭うがい液と尿検体を採取し、HPV検出率を検討した。HPV検出率は、咽頭18.3%、尿検体22.1%であった。次に、一般男性における尿路性器HPV感染率についての疫学調査では、823例の一般健常者を対象、亀頭擦過検体および尿検体HPV陽性率は、亀頭22.8%、尿5.8%であり、尿路に比較し亀頭のHPV感染率が高かった。最後に、80例のMSM患者(HIV陽性率93%)における肛門・尿路HPV感染の疫学調査では、HPV検出率は肛門検体88.7%、尿検体48.0%であった。男性においてもHPV感染は蔓延していると考えられた。今回の検討では、1)男性における咽頭と尿路のHPV感染の比較・疫学調査2)MSM患者における肛門HPV感染と尿路HPV感染の比較・疫学調査3)日本人一般男性における尿路性器感染率についての疫学調査の3つを平行して行った。1)男性における咽頭と尿路のHPV感染の比較・疫学調査では、尿道炎にて受診した男性患者213例を対象に咽頭うがい液と尿検体を採取し、液状細胞診の手法を用いてDNAを採取、HPV検出率について比較検討を行った。HPV検出率はうがい液18.3%、尿検体22.1%であった。うがい液、尿検体ともにHPV16型の検出率が最も高く、それぞれ37%、27%であった。尿道炎というハイリスク患者における咽頭のHPV感染率は尿路と同等であった。咽頭癌とHPV感染との関連性が示唆されてつつある昨今としては興味深い結果であったと思われる。2)MSMにおける肛門HPV感染と尿路HPV感染の比較・疫学調査では、MSM患者101例を対象に肛門スワブによう擦過検体と尿検体を採取した。HIV陽性率が98%と特殊な集団であったがHPV検出率は88%、尿検体41%と非常に高く、1)での検討と比較して、非MSM尿道炎男性に比べ尿路におけるHPV検出率は高かった。MSM男性における肛門癌とHPV感染との関連性が指摘されており、本結果は少なくともMSM男性に対してHPVワクチンを推奨すべき結果であることを示唆していると思われた。3)日本人一般男性における尿路性器感染率についての疫学調査は、泌尿器科外来を受診した692例の男性患者を対象とし、陰茎におけるHPV検出率を検討したところ、HPV検出率は24.1%であり、その危険因子はクラミジア感染症、性行為パートナー数であった。日本人男性においても性行為を通じて無症候性HPV感染が生じていることが分かった。今回の検討では、1)男性における咽頭と尿路のHPV感染の比較・疫学調査、2)MSM患者における肛門HPV感染と尿路HPV感染の比較・疫学調査、3)日本人一般男性における尿路性器感染率についての疫学調査の3つを行った。1)男性における咽頭と尿路のHPV感染の比較・疫学調査では、尿道炎にて受診した男性患者213例を対象に咽頭うがい液と尿検体を採取し、HPV検出率を検討した。HPV検出率は、うがい液18.3%、尿検体22.1%であった。尿道炎というハイリスク集団において咽頭にも尿路と同等のHPV感染が生じていることが判明した。2)MSM患者における肛門HPV感染と尿路HPV感染の比較・疫学調査では、80例を対象に肛門の擦過検体および尿検体を採取し、HPV検出率を比較するとともに、細胞診検体も作成し、パパニコロウ染色を行ってベセスダ分類に従い異形細胞について評価した。HPV陽性率は肛門検体88.7%、尿検体48.0%であった。一方、肛門細胞診はNILM 14例、ASC-US 40例、ASC-H 2例、LSIL 21例、HSIL 3例であった。近年、肛門癌とHPV感染との関連が強く指摘されており、特にMSMの肛門HPV感染による異型細胞の出現は、これらの関連性を支持する結果であった。3)日本人一般男性における尿路性器感染率についての疫学調査では、823例の一般健常男性を対象に亀頭擦過検体および尿検体を収集し、HPV検出率を検討した。HPV陽性率は、亀頭検体22.8%、尿検体5.8%であり、尿路に比較し亀頭検体のHPV感染率が高かった。年齢層別HPV感染率は、性器では2050歳代で高く年齢が上がるごとに漸減傾向であった。一方、尿路では若年者に比べ40-50歳代に高く外性器の分布と異なる分布を示した。咽頭と尿路のHPV感染の疫学調査では、尿道炎男性患者213例を対象に咽頭うがい液と尿検体を採取し、HPV検出率を検討した。HPV検出率は、咽頭18.3%、尿検体22.1%であった。 | KAKENHI-PROJECT-26861261 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26861261 |
男性における尿路性器・咽頭・肛門のHPV感染率についての疫学調査 | 次に、一般男性における尿路性器HPV感染率についての疫学調査では、823例の一般健常者を対象、亀頭擦過検体および尿検体HPV陽性率は、亀頭22.8%、尿5.8%であり、尿路に比較し亀頭のHPV感染率が高かった。最後に、80例のMSM患者(HIV陽性率93%)における肛門・尿路HPV感染の疫学調査では、HPV検出率は肛門検体88.7%、尿検体48.0%であった。男性においてもHPV感染は蔓延していると考えられた。男性における咽頭と尿路のHPV感染の比較・疫学調査、MSMにおける肛門HPV感染と尿路HPV感染の比較・疫学調査、日本人一般男性における尿路性器感染率についての疫学調査の3つのいずれにおいても順調に検体収集が施行できており、順調にHPV解析が進んでいる。日本人男性の咽頭、性器、尿路に無症候性HPV感染が約20%程度にしょうじており、また、MSM患者の肛門では約90%と高頻度にHPV感染が検出されていた。諸外国では男性におけるHPV感染に関する疫学調査が進んでおり、現在、約80か国において男性に対してもHPVワクチンの使用が認可されている。日本においては、副作用の問題でHPVワクチンの接種は中断されているものの、その問題が解決されれば、H男性に対する接種を考慮すべき1つのエビデンスになり得るものと考えている。一方、HPV感染と、その病原性(発癌の可能性)について言及するため細胞形態観察に関してはまだ行ておらず、今後、進めていきたい。尿路性器感染症1日本人男性を対象とした性器および尿路のHPV感染率に関する研究において、症例数をさらに集め(目標は1000例)、解析を行う。検体採取は東京、金沢市内のいくつかの病院にて現在も行われており、現在は800例超えの検体が集まっている。また、結果を国内および海外の学会にて発表し、論文化を目指す。2MSMを対象とした肛門、性器のHPV感染率に関する検討では、現在、100例超えの検体が集まっている。さらに検体を集めたうえで解析を進める。目標は150例と設定している。また、前述した通り、HIV陽性のMSM患者の肛門検体におけるHPV感染率は極めて高く、パパニコロウ染色を行って細胞形態を観察し、女性の子宮癌検診と同様にHPV感染細胞や異型細胞の有無について評価を行う予定である。国際学会に参加した際の旅費を、余裕をもって多めに見積もった分のわずかな残りである。検体回収は順調に進んでいるので、成果発表を行うためのHPV学会の旅費に計上する。 | KAKENHI-PROJECT-26861261 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26861261 |
障がいをもつ乳幼児の食べ方と発達を理解した指導・評価プログラム開発 | 2019年度は,児童発達支援(通所型)事業所で働く保育士を対象に在籍児に対して,専門家による食べる機能の発達支援の必要だと感じる度合いを調査した.調査領域は,食形態,姿勢,食具,食べ方,マナーの6領域である.各領域ごとに6段階評価した.得られた資料を機能訓練士のかかわりの有無,自園調理給食園と業者委託給食園に分けて検討した.調査対象事業所は10か所,対象児132人の平均月齢51.48ヵ月である.対象児のうち発達障害が106人(80.3%)であった.機能訓練士が常勤職の施設は2施設,非常勤の施設は6施設,機能訓練士がいない施設は2施設である.機能訓練士による食べる機能の直接訓練を実施している施設は5施設である.自園調理園は3施設,業者委託給食園は5施設,残る2施設は,弁当持参する施設である.結果,姿勢,食具,マナー,偏食領域は,食形態,食べ方領域に比べて,専門家による食べる機能の発達支援を必要だと感じている領域であった.また,機能訓練士による直接的な訓練を直接的な訓練を実施していない施設に比べて,実施している施設において,専門家による支援の必要性を強く感じる領域は,6領域のうち,食形態,食べ方,食具であった.これに対して,偏食については支援の必要性を感じる度合いが低かった.業者委託給食園と自園調理給食園では,評価の差はなかった.考察専門的な支援を必要と感じる領域は姿勢,食具,マナー,偏食の4領域で,食形態,食べ方といった口腔機能に関する領域ではなかった.この結果は,口腔機能評価の難しさがあると考えられた.偏食についての捉え方は機能訓練士の有無で異なった.この結果は心理社会的な問題や感覚特性として偏食を理解する視点を持ったためと考えらた.業者給食と自園調理に差はなく,業者において障がい児に適した食知識を持ち,顔の見える関係である自園調理と同じ工夫がされていたと思われた.障がいを持つ乳幼児の食べ方と発達を理解した指導・評価を目的とした研究課題であるが,現状把握にとどまっている.自治体の規模など地域行政の違いや施設の役割が地域によって異なることが要因として考えられる.食べる機能は,口腔運動,対人コミュニケーション,動作や姿勢保持,道具の操作といった身体活動が伴う包括的な能力である.したがって,評価と指導を行う環境として療育施設といった制約の多い環境よりも「家庭」に視点を移すことが必要であった.研究の遅延要因として,地域での各施設の役割が異なる多様性が調査資料結果に影響し,評価から支援がシステムとして定着することはかえって実情と乖離を生むことに気が付かされた.今後,家庭を支援する視点をもって取り組む必要がある.家庭の食環境について調査研究する必要がある.これまで家庭を調査した研究では,「子どもの食についてのなやみ」研究が主であった.例えば,偏食,小食,よくかまないなど親の視点からの調査である.これらの研究の視点は,「養育者の子に対する期待」に達していない子どもの姿を示しているに過ぎない.ここに欠けているのは,親がどのような年齢の子どもに対して,どのような食べる機能を要求しているかという養育者を対象とした意識である.食べる機能は,食べる行為そのものと食事場面を構成する人や物を含む環境,そして,その場で展開する人間関係まで広げた包括的な概念である.したがって,養育者が幼児の食事と口腔運動・姿勢保持・食具の使用に配慮しているかを理解する必要がある.障害を持つ乳幼児の食に関する包括的予防的なプログラム作成に際し,現状把握を目的に愛知県下の特別支援学校小学部,保育園・幼稚園・子ども園・発達支援センターに対し,1)外部専門家の利用2)食事指導環境3)教員の教育環境を調査した.平成28年度は特別支援学校小学部の結果を分析した.特別支援学校へは調査票を2部送付した.【結果】回収率87%回答者54名(管理職18人,主任11人,担任16人,栄養/食育担当7人,その他2人).管理職の回答を資料とした.生徒の障害は知的障害のみ28%,重症心身障害22%,発達障害+知的障害17%で,このうち摂食嚥下機能支援は25%で実施していた.教員(管理職)は,誤嚥に対する不安(72%),食事に関する困り感(55%)を持っていた.相談を受けた経験は全体の77%であった.この状況で1)生徒個人に対する教員主導の指導は11.1%,平均88%で外部専門家(ST/PT/OT,歯科医師/歯科衛生士,小児科/栄養士)からの助言を受ける機会はない.2)食指導環境は,給食の形態が統一(31%),食具を共有(37%),椅子・机を共有(38%)と3040%で共有していた.一方で,個人に対して柔軟な対応も(手元加工・弁当などの持ち込み:88%)可能であった.3)教員は,生徒の食事に関心があり(61%),その中で公費等にて講習会参加できる環境にいるのは50%であった.過去2年に学内研修を実施した割合は39%であった.【考察】学校は集団生活の場であり,医療現場と異なる目的や目標が設定される.摂食嚥下指導の危険性や重要性,教員が抱く困り感,不安を考慮すると外部専門家の利用は少ない.米国では他職種チームで教育現場の状況に即した摂食嚥下指導を実施し(Homer,2016),支援システムが根付き始めている. | KAKENHI-PROJECT-16K04850 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K04850 |
障がいをもつ乳幼児の食べ方と発達を理解した指導・評価プログラム開発 | 障害種別の愛知県・特別支援学校の現状をふまえたシステム構築が必要である.平成28年度は,実態把握のアンケートを実施することであった.アンケートは,12月を目途に実態を把握するアンケート調査内容の作成・アンケートの実施,アンケートの集計を実施した.平成29年1月3月で分析する予定であったが,この分析は,特別支援学校のみにとどまった.公立保育園・公立幼稚園・公立子ども園・療育施設等へのアンケート調査の分析が終了していない.これは,特別支援学校の分析結果を踏まえて,一般保育園等の分析を実施する予定だったことから生じた遅延である.特別支援学校の結果は,平成29年の日本摂食嚥下リハビリテーション学会で報告予定.平成28年度・平成29年度の成果として,幼児・児童の食べる機能の発達に関する問題は,定型発達児・障害児に共通性があること,それらは,摂食嚥下機能,姿勢,偏食であること,次に,教育機関の問題として,研修等の実績が少ないこと,教員・保育士の判断で子どもの食環境が決められ,それに対するガイドライン等がないことがあげられる.H29度は,試案作成を行い,その試案を運用した.試案は,障害児通所支援と保育所等訪問支援を実施している施設(以下施設)での給食場面で,保育士が児に対して抱く課題意識を把握できるように構成した.試案は,保育士に対して質問紙によるスクリーニングとした.内容は,昨年度の実績から障がいをもつ幼児・生徒の問題として,食形態,姿勢制御能力,食具の使用能力,偏食,マナー,食べ方があげられたことを基に作成した.課題意識の度合いを5段に設定し,択一選択する方法をとった.質問紙の実施方法及びその結果:対象は,名古屋市・三河地区以外の施設のうち,調査協力を得られた6園を対象であった.在籍する園児すべてに対して質問紙を実施し,141児分を回収した.有効回答は132通で,これを基に,4つの基準で23名に絞った.23名のうち協力をその後断ってきた2施設(3名),保護者からの同意撤回2名,対象児死亡・転居等で訪問できなかった2名を除く計16名を理学療法士・言語聴覚士が直接訪問した.給食場面を録画した資料を基に保育士が実施した質問紙と同じ質問紙に対して理学療法士・言語聴覚士が回答した.加えて保育士の児への関わり,食事支援環境(食具・姿勢・コミュニケーション・食形態)について別個に評価した.質問紙調査の結果を施設ごとに分析した結果,在籍児の種がい種別に施設間の差はなかった.年齢は,平均51.8か月であった.姿勢・マナー・偏食の3項目に施設間の評価差はなかった.障害児通所支援と保育所等訪問支援を実施している施設(以下施設)からの回答・養育者からの承諾確認,対象児の健康状態や園の行事等の事情が重なり,訪問日程調整が難航し,予定期間を1か月としたが,実際は3か月を要した.さらに,最終的に園に訪問できたのは2018年2月であったために,資料整理分析にまで至らなかった.収集した画像資料数が予測数を下回っている.映像資料の分析では,機材の煩雑な使用法を獲得に時間を要した.2019年度は,児童発達支援(通所型)事業所で働く保育士を対象に在籍児に対して,専門家による食べる機能の発達支援の必要だと感じる度合いを調査した.調査領域は,食形態,姿勢,食具,食べ方,マナーの6領域である.各領域ごとに6段階評価した.得られた資料を機能訓練士のかかわりの有無,自園調理給食園と業者委託給食園に分けて検討した. | KAKENHI-PROJECT-16K04850 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K04850 |
生物ロコモーションの通底原理から拓くマルチテレストリアルロボットの設計論 | 本研究では,環境に呼応して這行や遊泳,飛行などの異なるロコモーション様式を自己組織的に発現する,広大な稼働環境領域を有するマルチテレストリアルロボットの具現化を目指した.具体的には,「生物は,いかなるロコモーション様式であっても,周囲環境から足がかり(scaffold)を効果的に獲得して,それらから反力を得て推進している」というシンプルな基本原理に基づき, 1)二次元シート状の身体構造を有するヒラムシをモデル生物とした,這行と遊泳を自律的に実現するシート型ロボットの開発,2)陸ヘビが示す這行と海ヘビが示す遊泳の背後にある制御原理の共通性のシミュレーションによる検証,を行った.本研究では,環境に呼応して這行や遊泳,飛行などの異なるロコモーション様式を自己組織的に発現する,広大な稼働環境領域を有するマルチテレストリアルロボットの具現化を目指した.具体的には,「生物は,いかなるロコモーション様式であっても,周囲環境から足がかり(scaffold)を効果的に獲得して,それらから反力を得て推進している」というシンプルな基本原理に基づき, 1)二次元シート状の身体構造を有するヒラムシをモデル生物とした,這行と遊泳を自律的に実現するシート型ロボットの開発,2)陸ヘビが示す這行と海ヘビが示す遊泳の背後にある制御原理の共通性のシミュレーションによる検証,を行った.生物は,自身の身体が持つ膨大な自由度を巧みに協調させることにより,環境適応的かつ多様な振る舞いを生み出している.この発現機序の解明を目指して,これまでは歩行や這行といった特定のロコモーション様式を採り上げて議論がなされてきた.しかしながら,このような個別論的な考察が,さまざまなロコモーション様式に通底する発現機序の本質を捉えることを阻害していた可能性は否めない.そこで本研究では,「いかなるロコモーション様式であっても,周囲の環境から「足がかり(scaffold)」を効果的に獲得して,それらから反力を得て推進する」という,いわば原点回帰のシンプルな基本原理に基づいた議論を展開する.そして,このような基本原理に立脚する意義を,環境の力学的特性に呼応して這行や遊泳,飛行を発現可能な,広大な稼働環境領域を有するマルチテレストリアルロボットの具現化を通して示す.具体的には,ヒラムシと呼ばれる扁平動物をモデル生物として採り上げ,ヒラムシが這行運動時と遊泳運動時に環境からどのように反力を得て効果的に推進力を得ているかを行動観察実験などを通して調べた.次に,得られた行動観察実験結果に基づいて,環境変化に呼応して這行運動と遊泳運動を切り替え可能な自律分散制御則のモデル化を行った.その結果,ヘビの這行運動を表現しうる曲率微分制御を二次元に拡張し,さらに環境内の足がかりから効果的に推進力を得るための姿勢をつくり出す反射を組み合わせることが重要であることが理解できた.生物は,自身の身体が持つ膨大な自由度を巧みに協調させることにより,環境適応的かつ多様な振る舞いを生み出している.この発現機序の解明を目指して,これまでは歩行や這行といった特定のロコモーション様式を採り上げて議論がなされてきた.しかしながら,このような個別論的な考察が,さまざまなロコモーション様式に通底する発現機序の本質を捉えることを阻害していた可能性は否めない.そこで本研究では,「いかなるロコモーション様式であっても,行動主体の動きに伴って周囲の環境から返ってくる力覚情報,つまり「手応え」が推進に利するものかどうかを即座に峻別して,推進に利する手応えは積極的に活用する(以下,手応え制御と呼ぶ)」という,いわば原点回帰の作業仮説に立脚した.最終年度は前年度に引き続き,一次元ひも状の身体を持つヘビ型の行動主体を採り上げ,手応え制御の実装方策を考察した.その結果,いくつかの数理モデルのアイデアを得た.このうち,曲率微分制御をベースとしたモデルの妥当性を検証するために,流体中で流体塊からの手応えを活用できるかどうかをシミュレーションした結果,力学的に妥当な運動パターンを生成することができた.このことは,陸ヘビと海ヘビの運動生成メカニズムに高い共通性があることを示唆しており,生物学的にも興味深い知見であると期待される.システム工学本年度は特に一次元ひも状という単純な身体構造を持つヘビに着目し,ヘビが示す周囲の環境から「足がかり」を効果的に獲得して推進力を得る振る舞いの考察を行った.その結果,単純な反射機能と自律分散制御則の組み合わせにより実現できることを確認した.いかなる生物ロコモーションであれ,周囲の環境内の「足がかり」から反力を得て推進している.本年度の考察は,このような生物ロコモーションの核となる原理を見出したと考えられ,研究の初年度にこのような考察ができたことの学術的意義大きいと判断する.今後は,這行と遊泳の違いについての理論的・実験的考察を進める.これまでの研究から,這行運動における「足がかり」を活用したロコモーションや身体のくねらせ方に関する研究を進めてきたが,遊泳においての有効性は依然として明らかではない.そこで,ヤツメウナギを研究している生物学者や,流体力学を考慮したシミュレーション技法に詳しい専門家らと相談しながら,這行と遊泳の共通点を明らかにしていきたい.初年度は理論的研究が主体となり,これに伴って当初予定していた実験用ロボットのプロトタイプ製作を次年度に行うことにしたため.また次年度に国外会議への参加予定が入ったので,旅費を確保するため.ロボット実機に必要な小型高性能モータの購入や,国外会議への旅費に用いる予定である. | KAKENHI-PROJECT-25630175 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25630175 |
原子クラスターにおけるカオス的イオン化機構の解明 | 超音速ジェット中に生成した、水銀・ネオン2原子クラスター(HgNe)をレーザー2色2光子共鳴法によってイオン化し、イオン化スペクトルの測定を行った。リフレクトロン型飛行時間質量分析器を用いることによって、生成したイオン種を高質量分解能で検出し、単一質量イオン種についてのイオン化スペクトルを得ることができた。測定されたスペクトルには、HgNeのイオン化限界付近(83880-84020cm^<-1>)で振動自動イオン化によるシャープな構造が見いだされた。低エネルギー分解能測定(δν=0.7cm^<-1>)によって観測された主なピークは、フランクコンドン的に明るい、イオンコアの振動量子数がv^+=2,3のイオン化限界に収斂するd-リュードベリ系列に帰属された。さらにレーザーキャビティ内エタロンを用いた高エネルギー分解能測定(δν=0.05cm^<-1>)によって、それぞれのピークは複雑な共鳴構造を持つことが見いだされた。例えば、v^+=2リュードベリ系列の一つのピークは、フランクコンドン的に暗く、より準位密度の高いv^+=1リュードベリ系列との結合によっていくつかの小ピークにわかれる。イオン化スペクトルにおけるこのような階層構造は、光励起によって生成したv^+=2イオンコアを持つリュードベリ状態が、電子とイオンコアの衝突によるエネルギーの授受によって、v^+=1のリュードベリ状態に遷移し、最終的にv^+=0のイオンを生成する過程の存在を示唆している。半古典的に考えた場合、電子とイオンコアのエネルギーの授受は。衝突の際のイオンコアの振動の位相に依存するので、イオン化過程がストカスティックなものとなることが予想されている。多チャンネル量子欠損理論を用いたより詳細なスペクトルの解析によって、量子系におけるカオスのふるまいを探ることができると考えられる。超音速ジェット中に生成した、水銀・ネオン2原子クラスター(HgNe)をレーザー2色2光子共鳴法によってイオン化し、イオン化スペクトルの測定を行った。リフレクトロン型飛行時間質量分析器を用いることによって、生成したイオン種を高質量分解能で検出し、単一質量イオン種についてのイオン化スペクトルを得ることができた。測定されたスペクトルには、HgNeのイオン化限界付近(83880-84020cm^<-1>)で振動自動イオン化によるシャープな構造が見いだされた。低エネルギー分解能測定(δν=0.7cm^<-1>)によって観測された主なピークは、フランクコンドン的に明るい、イオンコアの振動量子数がv^+=2,3のイオン化限界に収斂するd-リュードベリ系列に帰属された。さらにレーザーキャビティ内エタロンを用いた高エネルギー分解能測定(δν=0.05cm^<-1>)によって、それぞれのピークは複雑な共鳴構造を持つことが見いだされた。例えば、v^+=2リュードベリ系列の一つのピークは、フランクコンドン的に暗く、より準位密度の高いv^+=1リュードベリ系列との結合によっていくつかの小ピークにわかれる。イオン化スペクトルにおけるこのような階層構造は、光励起によって生成したv^+=2イオンコアを持つリュードベリ状態が、電子とイオンコアの衝突によるエネルギーの授受によって、v^+=1のリュードベリ状態に遷移し、最終的にv^+=0のイオンを生成する過程の存在を示唆している。半古典的に考えた場合、電子とイオンコアのエネルギーの授受は。衝突の際のイオンコアの振動の位相に依存するので、イオン化過程がストカスティックなものとなることが予想されている。多チャンネル量子欠損理論を用いたより詳細なスペクトルの解析によって、量子系におけるカオスのふるまいを探ることができると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-08740446 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08740446 |
Wntシグナル伝達系を負に制御するNLKの癌における細胞生物学的機能の解明 | 1)NLKによるβ-カテニン-TCF複合体の転写能抑制に関する検討NLKによるβ-カテニン-TCF複合体の転写能抑制は必ずしも特異的ではなく、NLKによってp53やNF-κBなど他の転写因子も抑制されることを見出した。NLKによる転写抑制は何らかのリン酸化反応が関与すると考えられた。2)NLKの転写共役因子の制御についての検討NLKがCBPのC/H3領域を験管内でリン酸化しうることを確認している。また、C/H3領域をふくむHATドメインのC末の領域が欠失することによってNLKによる転写抑制が認められなくなることを観察した。3)抗NLK抗体の作成大腸菌を用いて組み換えNLK蛋白質を産生させ、精製後、同蛋白質を用いてウサギを免疫して抗NLK抗体を生成したヒト病理組織標本を用いた免疫組織科学染色においては更なる条件決定を行っている段階である。4)細胞生物学的解析テトラサイクリン耐性遺伝子プロモーターによって組み換え遺伝子が誘導可能な高分化型大腸癌細胞DLD-1細胞(DLD-1 Tet-on)を用いてNLKおよびその活性欠損型変異NLK(NLK-K155M, NLK-C425Y)を発現誘導する系を樹立した。細胞増殖能を解析したところ、NLKの野生型を発現させた株のみ増殖抑制が認められ、軟寒天培地を用いた足場依存性増殖能も低下した。5)分子遺伝学的解析ヒト大腸癌細胞株、脳腫瘍細胞株からゲノムDNAを抽出し、ヒトNLK遺伝子のPCR-SSCP解析を行ったが、病的な変異は認めなかった。「まとめ」NLKはその機能がTCF/LEFのリン酸化を介したWntシグナル伝達系の抑制に留まらず、多数の転写因子の抑制的制御に関わっている可能性が高い。特にCBP/p300をはじめとする転写共役因子がその標的である可能性が示唆されているが、さらなる検討を要する。NLKのモデル動物における遺伝学的研究においてはNLKは分化誘導する転写因子の抑制的発現制御に直接または間接的に関わっており、哺乳類においても同様の機構が存在する可能性が我々の実験で示されたと考えられる。これらの転写抑制機能と細胞周期の関係や、NLKの発現と細胞の分化の抑制などの関連をこれから追究したい。また、培養細胞系ではNLKの発現依存性に増殖抑制が起こったが、この増殖抑制が生体内でも認められるのか否かも検討する必要がある。1)NLKによるβ-カテニン-TCF複合体の転写能抑制に関する検討NLKによるβ-カテニン-TCF複合体の転写能抑制は必ずしも特異的ではなく、NLKによってp53やNF-κBなど他の転写因子も抑制されることを見出した。NLKによる転写抑制は何らかのリン酸化反応が関与すると考えられた。2)NLKの転写共役因子の制御についての検討NLKがCBPのC/H3領域を験管内でリン酸化しうることを確認している。また、C/H3領域をふくむHATドメインのC末の領域が欠失することによってNLKによる転写抑制が認められなくなることを観察した。3)抗NLK抗体の作成大腸菌を用いて組み換えNLK蛋白質を産生させ、精製後、同蛋白質を用いてウサギを免疫して抗NLK抗体を生成したヒト病理組織標本を用いた免疫組織科学染色においては更なる条件決定を行っている段階である。4)細胞生物学的解析テトラサイクリン耐性遺伝子プロモーターによって組み換え遺伝子が誘導可能な高分化型大腸癌細胞DLD-1細胞(DLD-1 Tet-on)を用いてNLKおよびその活性欠損型変異NLK(NLK-K155M, NLK-C425Y)を発現誘導する系を樹立した。細胞増殖能を解析したところ、NLKの野生型を発現させた株のみ増殖抑制が認められ、軟寒天培地を用いた足場依存性増殖能も低下した。5)分子遺伝学的解析ヒト大腸癌細胞株、脳腫瘍細胞株からゲノムDNAを抽出し、ヒトNLK遺伝子のPCR-SSCP解析を行ったが、病的な変異は認めなかった。「まとめ」NLKはその機能がTCF/LEFのリン酸化を介したWntシグナル伝達系の抑制に留まらず、多数の転写因子の抑制的制御に関わっている可能性が高い。特にCBP/p300をはじめとする転写共役因子がその標的である可能性が示唆されているが、さらなる検討を要する。NLKのモデル動物における遺伝学的研究においてはNLKは分化誘導する転写因子の抑制的発現制御に直接または間接的に関わっており、哺乳類においても同様の機構が存在する可能性が我々の実験で示されたと考えられる。これらの転写抑制機能と細胞周期の関係や、NLKの発現と細胞の分化の抑制などの関連をこれから追究したい。また、培養細胞系ではNLKの発現依存性に増殖抑制が起こったが、この増殖抑制が生体内でも認められるのか否かも検討する必要がある。 | KAKENHI-PROJECT-13216110 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13216110 |
凍結型大口径ラバルサンプラーによるゆるい砂の良質不撹乱試料採取法の実用化 | 砂地盤の液状化判定と抑止工法の選定のために、高度な力学モデルと数値解析手法が提案されている。高度な力学モデルを用いるためには、高品質の不撹乱砂試料を用いた室内実験がぜひとも必要である。原位置より不撹乱砂試料を採取するために、凍結サンプリング手法が推奨されているが、この手法は非常に高価で時間がかかることが知られている。一方、チューブサンプリングは、凍結サンプリングに比べて経費・時間の面で非常に優位であるが、得られた試料の品質が凍結試料に比べてかなり低い。本研究では、このような社会的・技術的現状に鑑み、直径208mmの凍結型大口径ラバルサンプラーによるゆるい砂の良質不撹乱試料採取法の提案と現場実証を実施した。実用化するために、大阪市東淀川区のゆるい砂地盤について、凍結型大口径ラバルサンプラー、チューブサンプリングによる比較試料採取を行い、それぞれのサンプリング技術による乱れの程度を検討した。また同時に、PS検層、RIコーンおよびDilatometerによる原位置試験を実施した。その結果、細砂から粗砂までの広範囲の粒度の砂について、比較的均質な砂試料が採取できた。採取した試料は、今後さまざまな室内実験を通じて、その品質が調査される予定である。砂地盤の液状化判定と抑止工法の選定のために、高度な力学モデルと数値解析手法が提案されている。高度な力学モデルを用いるためには、高品質の不撹乱砂試料を用いた室内実験がぜひとも必要である。原位置より不撹乱砂試料を採取するために、凍結サンプリング手法が推奨されているが、この手法は非常に高価で時間がかかることが知られている。一方、チューブサンプリングは、凍結サンプリングに比べて経費・時間の面で非常に優位であるが、得られた試料の品質が凍結試料に比べてかなり低い。本研究では、このような社会的・技術的現状に鑑み、直径208mmの凍結型大口径ラバルサンプラーによるゆるい砂の良質不撹乱試料採取法の提案と現場実証を実施した。実用化するために、大阪市東淀川区のゆるい砂地盤について、凍結型大口径ラバルサンプラー、チューブサンプリングによる比較試料採取を行い、それぞれのサンプリング技術による乱れの程度を検討した。また同時に、PS検層、RIコーンおよびDilatometerによる原位置試験を実施した。その結果、細砂から粗砂までの広範囲の粒度の砂について、比較的均質な砂試料が採取できた。採取した試料は、今後さまざまな室内実験を通じて、その品質が調査される予定である。 | KAKENHI-PROJECT-07555151 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07555151 |
シナプス形成におけるカドヘリン分子の機能解析 | 興奮性シナプスは軸索のvaricosityと樹状突起のspineとの間の細胞間接着構造であり、その形成・維持過程には接着分子が重要な役割を果たしている。代表的な接着分子であるカドヘリン分子はシナプスに局在し、シナプス形成に必要である事が知られている。一方、シナプス構造の維持におけるカドヘリン分子の働きについては知見が少なく、本研究では維持過程におけるカドヘリン分子の機能解析をすすめている。シナプスは接着構造を形成している一方で、spineは分単位の非常に速い形態変化をしている事が知られる。そこで、シナプスの接着構造がどのように保持されているかを確かめるため、海馬スライス培養中の互いに接触している軸索のvaricosityと樹状突起のspineの形態変化を同時に観察した。まず、それぞれの構造を区別して観察するために、CA3領域錐体細胞のvaricosityをローダミンデキストランでラベルし、更にCA1領域錐体細胞のspineをGFPでラベルした。ラベルされたvaricosityとspineの形態は2光子励起蛍光顕微鏡を用いて同時に検出することができた。次に相互に接触している2つの構造の経時観察を行ったところ、varicosityとspineは互いに速い形態変化を起こしながらも接着を保っていた。さらに、強い電気刺激を与えることで樹状突起の形態を大きく変化させたときでも、大部分のvaricosityは樹状突起との接触を維持したままであった。これらの結果からシナプスを形成しているvaricosityとspineは接着構造を維持しつつ形態変化を起こす事が明らかになった。現在、N-cadherinの接着を阻害するように設計されたペプチドを海馬スライス培養に作用させたときにシナプス構造の経時観察を同様に行い、シナプスの接着構造に変化が起きるか解析している。シナプスは細胞間接着構造であり、その形成・維持過程には接着分子が重要な役割を果たしていると考えられる。代表的な接着分子であるN-cadherin分子はシナプスに局在することが知られ、シナプス形成におけるN-cadherin分子の局在変化と接着機能について解析を進めている。N-cadherin分子は細胞間で機能しているため分散培養よりも組織培養の方がin vivoでの機能を反映すると考え、海馬スライス培養を用いて実験を行っている。スライス培養でのシナプス分子の動態を検出するため、組換えアデノウイルスによる遺伝子導入と神経細胞特異的にCrerecombinaseを発現するトランスジェニックマウスを組み合わせることで神経細胞特異的に遺伝子発現を起こす系を確立した。この方法でGFP分子を発現させて2光子顕微鏡で観察するとスパインなどの樹状突起上の微細構造を観察することができた。また、シナプス後肥厚部(PSD)に局在するPSD-95とGFPの融合分子のタイムラプス観察を行うことで、PSD構造の形成・リモデリングを検出することができた。従ってこの手法はin vivoに近い状態での分子の働きを調べるにおいて有用であると考えられる。次に、シナプス形成時のN-cadherin分子の局在変化を検出するため、N-cadherinとGFPの融合分子をスライス培養に発現させて観察を行った。しかしながら、この融合分子は繊維芽細胞では接着部位への局在を示したが、スライス培養においては神経細胞の接着構造への局在を再現することはできなかった。現在、N-cadherinの翻訳を阻害するように設計したアンチセンスオリゴヌクレオチドを、GFP分子を発現している神経細胞に注入することで、N-cadherinの接着機能がシナプスの形態に及ぼす影響についての実験を進めている。興奮性シナプスは軸索のvaricosityと樹状突起のspineとの間の細胞間接着構造であり、その形成・維持過程には接着分子が重要な役割を果たしている。代表的な接着分子であるカドヘリン分子はシナプスに局在し、シナプス形成に必要である事が知られている。一方、シナプス構造の維持におけるカドヘリン分子の働きについては知見が少なく、本研究では維持過程におけるカドヘリン分子の機能解析をすすめている。シナプスは接着構造を形成している一方で、spineは分単位の非常に速い形態変化をしている事が知られる。そこで、シナプスの接着構造がどのように保持されているかを確かめるため、海馬スライス培養中の互いに接触している軸索のvaricosityと樹状突起のspineの形態変化を同時に観察した。まず、それぞれの構造を区別して観察するために、CA3領域錐体細胞のvaricosityをローダミンデキストランでラベルし、更にCA1領域錐体細胞のspineをGFPでラベルした。ラベルされたvaricosityとspineの形態は2光子励起蛍光顕微鏡を用いて同時に検出することができた。次に相互に接触している2つの構造の経時観察を行ったところ、varicosityとspineは互いに速い形態変化を起こしながらも接着を保っていた。さらに、強い電気刺激を与えることで樹状突起の形態を大きく変化させたときでも、大部分のvaricosityは樹状突起との接触を維持したままであった。これらの結果からシナプスを形成しているvaricosityとspineは接着構造を維持しつつ形態変化を起こす事が明らかになった。現在、N-cadherinの接着を阻害するように設計されたペプチドを海馬スライス培養に作用させたときにシナプス構造の経時観察を同様に行い、シナプスの接着構造に変化が起きるか解析している。 | KAKENHI-PROJECT-02J10988 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02J10988 |
マイクロ多孔体内蒸発メニスカス観察に基づく自律温度制御型ループヒートパイプの開発 | 本研究では、自律的に高精度温度制御が可能なループヒートパイプ(LHP)の開発を目的とし、特にLHP蒸発器の相変化を伴う多孔体内気液熱流動の解明および蒸発器最適設計方法の構築などを目指してきた。今年度は昨年度の滞在研究(IMFT)で構築したポアネットワークモデルを用いたLHP蒸発器3次元解析を名古屋大学情報基盤センターの計算機で実行できる環境を構築した。多孔体材料(熱伝導率、空隙特性)、作動流体、蒸発器形状を変化させた数百パターンの計算を行い、LHP熱性能におけるウィック熱伝導率、気液界面形状、作動流体の物性、ウィック形状、マイクロギャップ(蒸発器ケースとウィックとの隙間)などの影響を解析的に明らかにした。特にウィック形状を変化させた解析により、蒸発器ケースーウィックーグルーブの共有する三相界線長さという性能を支配する新たなパラメータを導くことができ、軸方向に周方向グルーブを加えた3次元形状を有するウィックを製作し、LHP実験により有効性を実証した。しかし、三相界線を長くするためグルーブをマイクロオーダーの幅まで細くしたところ、性能が低下し、3次元マイクログルーブ形状に関しては今後の課題となった。これまでの解析は仮想的な多孔体空隙配置を仮定したものであったが、実際の形状を用いた解析により高精度化を図るため、空間分解能0.27 μmを有するX線CTにより多孔体の内部構造の観察を行い、空隙構造の三次元再構築を行った。さらに多孔体構造解析を行い3次元空隙回路網を作成した。解析結果は、実際の多孔体ネットワークを用いた解析や粒子的手法を用いた直接解析などに利用可能であると考えられ、さらなる解析の高精度化が達成され得るものである。最後に本研究をまとめた学位論文「マルチスケール気液二相熱流動解析に基づくループヒートパイプ熱輸送機構の解明と高性能化に関する研究」(名古屋大学)が受理された。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。本研究の目的は、航空宇宙分野の次世代熱制御技術として期待されるループヒートパイプ(LHP)の高精度自律温度制御化であり、具体的には自律的フィードバックを用いLHPのリザーバ容積をコントロールすることにより、対象機器の高精度温度制御を行う完全パッシブな多機能型LHP技術の確立である。研究方法および内容は、【1】蒸気アシストギャップの有効性検証実験と最適化理論の構築、【2】相変化熱流動過程の詳細なモデル構築、【3】封入量とリザーバ容積の最適設計理論構築、【4】パッシブフィードバックLHP構築と性能評価の4つに分けられ、今年度は【1】、【2】に関連するLHP蒸発器熱流動解析モデルの構築を行った。LHP蒸発器熱流動解析モデルを構築するため、多孔体内熱物質輸送に関して長期に渡って研究しているトゥールーズの研究所IMFTに平成25年9月から平成26年3月まで滞在し、解析研究を行った。蒸発器の多孔体ウィック内の詳細な熱流動を考慮するため、ポアネットワークモデルを用いたマイクロスケールの3次元多孔体内気液二相流解析モデルを新たに構築した。実験にて使用している多孔体の空孔径分布とフィッティングされた分布関数を用い空孔径を発生させ、低熱流束下における多孔体が液で満たされた状態、高熱流束下における加熱面直下での沸騰により多孔体に蒸気が存在する状態の二つの流動形態およびその遷移に関してモデル化を行った。この解析により、多孔体が液で満たされた場合、多孔体に蒸気が存在する状態の二つの蒸発器熱伝達特性が明らかになった。これにより、ギャップの最適化設計理論の構築および蒸発器高精度温度制御性の基礎が確立できたと言える。将来的には、構築したモデルを応用することで、非定常熱流動や、気液界面ヒステリシスなどのより複雑な現象を解析することができると考えている。本研究では、自律的に高精度温度制御が可能なループヒートパイプ(LHP)の開発を目的とし、特にLHP蒸発器の相変化を伴う多孔体内気液熱流動の解明および蒸発器最適設計方法の構築などを目指してきた。今年度は昨年度の滞在研究(IMFT)で構築したポアネットワークモデルを用いたLHP蒸発器3次元解析を名古屋大学情報基盤センターの計算機で実行できる環境を構築した。多孔体材料(熱伝導率、空隙特性)、作動流体、蒸発器形状を変化させた数百パターンの計算を行い、LHP熱性能におけるウィック熱伝導率、気液界面形状、作動流体の物性、ウィック形状、マイクロギャップ(蒸発器ケースとウィックとの隙間)などの影響を解析的に明らかにした。特にウィック形状を変化させた解析により、蒸発器ケースーウィックーグルーブの共有する三相界線長さという性能を支配する新たなパラメータを導くことができ、軸方向に周方向グルーブを加えた3次元形状を有するウィックを製作し、LHP実験により有効性を実証した。しかし、三相界線を長くするためグルーブをマイクロオーダーの幅まで細くしたところ、性能が低下し、3次元マイクログルーブ形状に関しては今後の課題となった。これまでの解析は仮想的な多孔体空隙配置を仮定したものであったが、実際の形状を用いた解析により高精度化を図るため、空間分解能0.27 μmを有するX線CTにより多孔体の内部構造の観察を行い、空隙構造の三次元再構築を行った。さらに多孔体構造解析を行い3次元空隙回路網を作成した。 | KAKENHI-PROJECT-13J00148 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13J00148 |
マイクロ多孔体内蒸発メニスカス観察に基づく自律温度制御型ループヒートパイプの開発 | 解析結果は、実際の多孔体ネットワークを用いた解析や粒子的手法を用いた直接解析などに利用可能であると考えられ、さらなる解析の高精度化が達成され得るものである。最後に本研究をまとめた学位論文「マルチスケール気液二相熱流動解析に基づくループヒートパイプ熱輸送機構の解明と高性能化に関する研究」(名古屋大学)が受理された。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。今年度構築した解析モデルを利用することで、ギャップの最適化設計理論の構築および蒸発器高精度温度制御性の基礎が確立できたと言え、おおむね予定通りに研究進展しているといえる。平成26年度は、【2】相変化熱流動過程の詳細なモデル構築、【4】パッシブフィードバックLHPの構築と性能評価を行う。【2】では特に、蒸発を伴う多孔体気液二相流れの観察実験および相変化熱流動モデル構築を行う。実験装置構築の際、管路系器具、センサ、x線CT施設の利用料などが必要となり、解析では大学のスーパーコンピューターの利用料が必要となる。【4】では、容積可変式リザーバを取り付けたパッシブフィードバックLHP実験を行い、性能評価を行う。 | KAKENHI-PROJECT-13J00148 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13J00148 |
新マウスモデルを用いての、男性不妊症の免疫遺伝学的研究 | 我々が開発した新マウスEAOモデルはその誘導にアジュバンドの併用を必要としない故に、EAOの発症機序や免疫遺伝学的感受性を、純粋に精巣自己抗原の免疫系による認識の問題として解析することを可能にした。研究1.(1)本型EAOの誘導に対する疾患感受性には著しい系統差が存在し、高感受性系、低感受性系、および抵抗性系の3群に分類できた。EAO感受性は、特定のH-2ハプロタイプとの間に明瞭な相関性を示さなかった。(2)F1ハイブリッドマウスを用いた解析では、交配に用いる親マウスの系統により、高感受性を支配する遺伝子が優性に遺伝するF1と、抵抗性の方が優性に遺伝するF1とがあることが明らかとなった。(3)抵抗性F1ハイブリッド-(C3H/HexDBA/2)F1および(DBA/2xC3H/He)F1マウス-と感受性系C3H/He親マウスとの戻し交配分析(backcross analysis)を行った結果、DBA/2マウスのEAO抵抗性が戻し交配マウスにおいても、F1マウスの場合と同様、優性に発現し、感受性系と抵抗性系との1:1分離比は認められず、複数の遺伝子支配の可能性が示唆された。研究2.細胞養子移入系を用い、低感受性系・抵抗性系マウスのEAO不応答の成因について、(1)エフェクター細胞生成に欠陥があるのか、(2)サプレッサー細胞活性の誘導にもとづくものか、(3)レシピエントの受身反応性に欠陥があって移入されたエフェクター細胞の効果が発揮され得ないのか、について検討した。(1)低感受性系C3H/HeJまたは抵抗性系DBA/2,C3H/Bikiマウスを同系TCで感作し、感作後21日に採取した脾細胞1x10^7個を、高感受性系C3H/Heマウスに養子移入してもEAOの発症をみなかった(エフェクター細胞の生成の欠陥)。(2)あらかじめ同じ感作脾細胞の充分数(3x10^7個)を移入しておいた正常C3H/HeマウスにTC感作を行ったが、EAO発症は阻害されなかった(サプレッサー細胞の誘導は認められない)。他方、(3)C3H/Heマウスから得られたEAO惹起能のある感作脾細胞を、C3H/HeJマウスに移入した場合にはEAOの受身伝達は可能であったが、C3H/Bikiマウスには同じエフェクター細胞を移入してもEAOの受身伝達は達成されなかった。我々が開発した新マウスEAOモデルはその誘導にアジュバンドの併用を必要としない故に、EAOの発症機序や免疫遺伝学的感受性を、純粋に精巣自己抗原の免疫系による認識の問題として解析することを可能にした。研究1.(1)本型EAOの誘導に対する疾患感受性には著しい系統差が存在し、高感受性系、低感受性系、および抵抗性系の3群に分類できた。EAO感受性は、特定のH-2ハプロタイプとの間に明瞭な相関性を示さなかった。(2)F1ハイブリッドマウスを用いた解析では、交配に用いる親マウスの系統により、高感受性を支配する遺伝子が優性に遺伝するF1と、抵抗性の方が優性に遺伝するF1とがあることが明らかとなった。(3)抵抗性F1ハイブリッド-(C3H/HexDBA/2)F1および(DBA/2xC3H/He)F1マウス-と感受性系C3H/He親マウスとの戻し交配分析(backcross analysis)を行った結果、DBA/2マウスのEAO抵抗性が戻し交配マウスにおいても、F1マウスの場合と同様、優性に発現し、感受性系と抵抗性系との1:1分離比は認められず、複数の遺伝子支配の可能性が示唆された。研究2.細胞養子移入系を用い、低感受性系・抵抗性系マウスのEAO不応答の成因について、(1)エフェクター細胞生成に欠陥があるのか、(2)サプレッサー細胞活性の誘導にもとづくものか、(3)レシピエントの受身反応性に欠陥があって移入されたエフェクター細胞の効果が発揮され得ないのか、について検討した。(1)低感受性系C3H/HeJまたは抵抗性系DBA/2,C3H/Bikiマウスを同系TCで感作し、感作後21日に採取した脾細胞1x10^7個を、高感受性系C3H/Heマウスに養子移入してもEAOの発症をみなかった(エフェクター細胞の生成の欠陥)。(2)あらかじめ同じ感作脾細胞の充分数(3x10^7個)を移入しておいた正常C3H/HeマウスにTC感作を行ったが、EAO発症は阻害されなかった(サプレッサー細胞の誘導は認められない)。他方、(3)C3H/Heマウスから得られたEAO惹起能のある感作脾細胞を、C3H/HeJマウスに移入した場合にはEAOの受身伝達は可能であったが、C3H/Bikiマウスには同じエフェクター細胞を移入してもEAOの受身伝達は達成されなかった。 | KAKENHI-PROJECT-05671319 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05671319 |
活火山地域の人間のための工学-火山工学の確立- | 本研究は活火山地域で居住する人間が安全で快適な生活を営むために工学が果たすべき役割を明らかにし,新たな学問領域である火山工学を構築することを目的としている。そのため本研究は火山学,地盤工学,砂防学,資源工学,土木計画学,災害心理学,公衆衛生学を専門とする研究者によって組織されている。これらの研究者が火山と人間との接点で生じている問題を抽出し,それらの問題をどのように解決することができるかという視点から日本のみならずフィリピン,インドネシアの活火山地域を事例として取り上げている。研究実績の概要は次のようである。・1988年十勝岳噴火を事例として取り上げ,周辺住民を対象としたアンケート調査を行い,噴火時の住民心理の実態,避難・帰宅意向の関係構造を検討した。また,1926年の泥流災害の実態について砂防学の立場から検討を加えた。・2000年有珠山噴火を事例として取り上げ,地盤の変状調査を行い,地殻変動にともなう構造物支持地盤の水平変位,せん断ひずみ分布に関する検討を行った。また,噴火初動期の防災対策に関する調査,周辺市町の行政担当者の聞き取り調査,周辺住民を対象としたアンケート調査,ウェブページを用いた情報発信の実態調査を行い,検討を加えた。・2000年駒ヶ岳噴火を事例として取り上げ,被害の実態と防災対策について検討を加えた。・岩手山と事例として取り上げ,地域連携型防災対策を中心に系統的かつ総合的な火山防災指針の作成について検討を加えた。・焼岳の火山活動履歴を調査し,防災対策について検討を加えた。・雲仙普賢岳を事例として取り上げ,噴火から10年が経過した島原地域の復興・振興に関するアンケート調査,火山観光に関する観光客・市民の意識調査を行った。また,降下火山灰調査を行い,火山灰調査の応用的意義について検討を加えた。・フィリピンピナツボ火山を事例として取り上げ,噴火後10年間に実施された災害対策について検討を加えた。伊豆諸島三宅島については現地調査を行った。これらの成果を元に火山工学の領域を明確にすることができた。本研究は活火山地域で居住する人間が安全で快適な生活を営むために工学が果たすべき役割を明らかにし,新たな学問領域である火山工学を構築することを目的としている。そのため本研究は火山学,地盤工学,砂防学,資源工学,土木計画学,災害心理学,公衆衛生学を専門とする研究者によって組織されている。これらの研究者が火山と人間との接点で生じている問題を抽出し,それらの問題をどのように解決することができるかという視点から日本のみならずフィリピン,インドネシアの活火山地域を事例として取り上げている。研究実績の概要は次のようである。・1988年十勝岳噴火を事例として取り上げ,周辺住民を対象としたアンケート調査を行い,噴火時の住民心理の実態,避難・帰宅意向の関係構造を検討した。また,1926年の泥流災害の実態について砂防学の立場から検討を加えた。・2000年有珠山噴火を事例として取り上げ,地盤の変状調査を行い,地殻変動にともなう構造物支持地盤の水平変位,せん断ひずみ分布に関する検討を行った。また,噴火初動期の防災対策に関する調査,周辺市町の行政担当者の聞き取り調査,周辺住民を対象としたアンケート調査,ウェブページを用いた情報発信の実態調査を行い,検討を加えた。・2000年駒ヶ岳噴火を事例として取り上げ,被害の実態と防災対策について検討を加えた。・岩手山と事例として取り上げ,地域連携型防災対策を中心に系統的かつ総合的な火山防災指針の作成について検討を加えた。・焼岳の火山活動履歴を調査し,防災対策について検討を加えた。・雲仙普賢岳を事例として取り上げ,噴火から10年が経過した島原地域の復興・振興に関するアンケート調査,火山観光に関する観光客・市民の意識調査を行った。また,降下火山灰調査を行い,火山灰調査の応用的意義について検討を加えた。・フィリピンピナツボ火山を事例として取り上げ,噴火後10年間に実施された災害対策について検討を加えた。伊豆諸島三宅島については現地調査を行った。これらの成果を元に火山工学の領域を明確にすることができた。 | KAKENHI-PROJECT-12895012 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12895012 |
電極材料を目的としたZnTe光半導体の湿式電解 | 有機溶媒中及び溶融塩中における電気化学的手法を用いてZnTe光半導体皮膜の生成プロセスについて検討を行った。有機溶媒中におけるTe化合物の溶解度が低いため拡散律速になりやすく,電析電位と電解液中濃度は皮膜の組成に強く影響を及ぼした。プロトン性の溶媒と非プロトン性の溶媒によりTeの挙動に変化が見られたが,ZnTeの成膜にはZnがUPDを生じる条件が有効であり,さらに電解液中のZn : Te比が10:1のときに単体ZnTeを得ることができた。特に炭酸プロピレン溶媒中の10mM ZnCl_2-1mM TeCl_4浴が有効であった。しかし,Teが高濃度比の場合,あるいは低濃度比の場合にはZnTeと単体Teが共析した。水溶液中でのZnTeの電解の場合にも有効なZn^<2+>/Te^<4+>濃度比が存在したことから,UPDを利用した化合物半導体の生成には最適なイオン濃度比が存在するといえる。しかし,その理由についてTe化合物の析出という観点から検討したが,溶液中のイオンの賦存状態によるものなのか,UPD析出のメカニズムによるものなのか,現時点では不明である。表面性状,電気的特性の向上を目的に,炭酸プロピレン浴中からのCuのドーピングについて検討したところ,0.01mM CuCl_2の添加により,単相ZnTe皮膜が得られ,そのXRDピークは無添加のものよりも鋭く,また,表面もより平滑化し,キャリア密度も向上した。TeCl_2溶融塩の蒸気を用いたZn基板上置換法によるZnTeの生成を試みた。有機溶媒中,溶融塩中の電解法と比べ析出速度が著しく速く結晶性に富んだものが得られたが,平滑性は有機溶媒中のものには及ばなかった。有機溶媒中及び溶融塩中における電気化学的手法を用いてZnTe光半導体皮膜の生成プロセスについて検討を行った。有機溶媒中におけるTe化合物の溶解度が低いため拡散律速になりやすく,電析電位と電解液中濃度は皮膜の組成に強く影響を及ぼした。プロトン性の溶媒と非プロトン性の溶媒によりTeの挙動に変化が見られたが,ZnTeの成膜にはZnがUPDを生じる条件が有効であり,さらに電解液中のZn : Te比が10:1のときに単体ZnTeを得ることができた。特に炭酸プロピレン溶媒中の10mM ZnCl_2-1mM TeCl_4浴が有効であった。しかし,Teが高濃度比の場合,あるいは低濃度比の場合にはZnTeと単体Teが共析した。水溶液中でのZnTeの電解の場合にも有効なZn^<2+>/Te^<4+>濃度比が存在したことから,UPDを利用した化合物半導体の生成には最適なイオン濃度比が存在するといえる。しかし,その理由についてTe化合物の析出という観点から検討したが,溶液中のイオンの賦存状態によるものなのか,UPD析出のメカニズムによるものなのか,現時点では不明である。表面性状,電気的特性の向上を目的に,炭酸プロピレン浴中からのCuのドーピングについて検討したところ,0.01mM CuCl_2の添加により,単相ZnTe皮膜が得られ,そのXRDピークは無添加のものよりも鋭く,また,表面もより平滑化し,キャリア密度も向上した。TeCl_2溶融塩の蒸気を用いたZn基板上置換法によるZnTeの生成を試みた。有機溶媒中,溶融塩中の電解法と比べ析出速度が著しく速く結晶性に富んだものが得られたが,平滑性は有機溶媒中のものには及ばなかった。化合物半導体はバルクの作製、あるいは乾式法による皮膜作製が主流であった。しかし、S,Se,Teなどのカルコゲンは水溶液中から析出可能であることから、カルコゲナイド化合物半導体皮膜の湿式コーティングが研究されるようになった。これまで、水溶液中からのCuInSe_2およびZnTeなど光化合物半導体皮膜の析出と皮膜特性について評価を行ってきたところ、アンダーポテンシャルデポジション(UPD)による析出メカニズムであること、および析出温度が高いほど化合物の結晶性が良好であることがわかった。そこで、有機溶媒を用いることにより結晶性が向上し、光特性の良好な皮膜の作製を試みた。金属イオンの溶解度の観点から比誘電率の高い有機溶媒を選定し、また、沸点の高さからそれぞれ数種類の有機溶媒を選定した。水溶液を用いた場合と比べ、炭酸プロピレン溶媒を用いた場合、組成、表面形態、結晶性の良好なZnTe皮膜の電解析出が可能であった。また、採用する有機溶媒の種類によっては、UPD析出であったり、そうでなかったりすることが判明した。有機溶媒とUPD析出との関係については現在検討中である。UPD析出により化合物を生成させる場合、電解条件、特に、化学両論組成に近いZnTe化合物皮膜生成の電位幅が広くなることが分かった。電析したZnTe皮膜の組成は,水溶液中のイオン濃度比および電解電位により決まり,さらに電解温度が高い方が結晶性の良い電析膜が得られるこから沸点の高い有機溶媒や溶融塩を用いて検討を行っている。応用面から考えると,皮膜組成はもちろんのこと,緻密で平滑な表面性状であること,電気抵抗が低いこと,結晶粒が大きいことなどが挙げられる。 | KAKENHI-PROJECT-15360399 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15360399 |
電極材料を目的としたZnTe光半導体の湿式電解 | 有機溶媒中からの電析では,平滑さ緻密さの良好な皮膜が得られるようになった。ZnTe皮膜の電気抵抗を下げる目的で同時電析によるCuのドープを行ったところ,皮膜中のCu濃度が数%の場合電析皮膜の表面性状が更に平滑化されることがわかった。しかし,電解浴中のCuイオン濃度が高くなると,皮膜中のCu濃度が増加し,ZnTe皮膜が形成されないことがわかった。結晶粒の大きさから見ると,有機溶媒を用いた場合と比べ溶融塩を用いた方が大きい粒径を持つものが得られるが,平滑性は劣るため,更に検討が必要である。有機溶媒中及び溶融塩中における電気化学的手法を用いてZnTe光半導体皮膜の生成プロセスについて検討を行った。有機溶媒中におけるTe化合物の溶解度が低いため拡散律速になりやすく,電析電位と電解液中濃度は皮膜の組成に強く影響を及ぼした。ZnのUPD状態によるZnTeの生成が有効であり,電解液中のZn:Te比が10:1のときに単体ZnTeを得ることができたが,Teが高濃度比の場合,あるいは低濃度比の場合にはZnTeと単体Teが共析した。特に炭酸プロピレン溶媒中の10mM ZnCl_2-1mM TeCl_4浴が有効であった。水溶液中でのZnTeの電解の場合にも有効なZn^<2+>/Te^<4+>濃度比が存在したことから,UPDを利用した化合物半導体の生成には最適なイオン濃度比が存在するといえる。しかし,その理由についてTe化合物の析出という観点から検討したが,溶液中のイオンの賦存状態によるものなのか,UPD析出のメカニズムによるものなのか,明確な答えはわからなかった。表面性状,電気的特性の向上を目的に,炭酸プロピレン浴中からのCuのドーピングについて検討した。1mM CuCl_2を添加するとZnのUPDは阻害され,Te, Cu, Cu_2Teが析出した。0.01mM CuCl_2の添加により,単相ZnTe皮膜が得られ,そのXRDピークは無添加のものよりも鋭く,また,表面もより平滑化し,キャリア密度も向上した。TeCl_2溶融塩の蒸気を用いたZn基板上置換法によるZnTeの生成を試みた。有機溶媒中,溶融塩中の電解法と比べ析出速度が著しく速く結晶性に富んだものが得られたが,平滑性は有機溶媒中のものには及ばなかった。 | KAKENHI-PROJECT-15360399 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15360399 |
機能性ポリマーコロイドによるマイクロレンズ型有機EL素子の実現 | ポリマー電着法による有機電界発光(EL)素子作製プロセスの確立を目指し、一層型発光層を構成するホール輸送性化合物及び電子輸送性発光型化合物のコロイドを作製した。作製したコロイドをそれぞれ電気泳動させ、あらかじめレジストを用いて、作製したITO電極上の開口部に付着堆積させること(電着法)により発光層を作製した。さらに、得られた発光層の上部に陰極を作製し、電界を加えたところ、電界発光が認められた。ポリマー電着法による有機電界発光(EL)素子作製プロセスの確立を目指し、一層型発光層を構成するホール輸送性化合物及び電子輸送性発光型化合物のコロイドを作製した。作製したコロイドをそれぞれ電気泳動させ、あらかじめレジストを用いて、作製したITO電極上の開口部に付着堆積させること(電着法)により発光層を作製した。さらに、得られた発光層の上部に陰極を作製し、電界を加えたところ、電界発光が認められた。ポリマー電着法による有機電界発光(ED素子作製プロセスを確立するため、一層型発光層からなるポリマーブレンド型EL素子に着目した。そこで、高輝度発光や高効率のキャリア輸送機能を有する発光層を電着法により形成できるポリマーコロイドを新規に作製し、単一発光層のポリマー型EL素子の開発を行った。1。電子輸送・発光型ポリマーコロイド(C1)の調製:電子輸送・発光性基としてAlq3錯体を修飾したビニル基型機能性モノマーを合成する予定で検討を始めたが、合成が困難であった。そのため、急遽、同じ電子輸送・発光性基である白金錯体を用いた合成方法の検討を行い、少量ながら化合物を得ることに成功した。2。正孔輸送型ポリマーコロイド(C2)の調製:ビニルカルバゾール、アクリル酸ブチル、メタクリル酸2-ジエチルアミノエチルをトルエンに溶かし、重合開始材として、アゾビスイソブチロニトリルを用いて5時間加熱還流を行った。仕込み比は、ビニルカルバゾール78%、他11%で行った。再沈殿法(溶媒トルエン、アルコール)により、残存モノマーを除去することにより、ホール輸送型ポリマー(P2)を得た。得られたポリマーの同定は、赤外分光法、1H-核磁気共鳴法(NMR)および13C-NMRを用いて行った。さらに、水中にて、乳酸を用いた乳化処理により、正孔輸送型ポリマーコロイド(C2)とした。3。ホール輸送型ポリマーコロイド(C2)の電着:C2溶液中にITO透明電極を陰極、ステンレスまたは白金(Pt)板を正極として電気化学反応を行ったところ、ITO透明電極上に密着性に優れた析出膜(ホール輸送型ポリマー)を得た。正孔輸送型ポリマーコロイドを作製したのは当該研究が初めてであり、さらに、正孔輸送性ポリマーを水中から得たのは世界で初めてである。ポリマー電着法による有機電界発光(EL)素子作製プロセスを確立するため、一層型発光層からなるポリマーブレンド型EL素子に着目した。そこで、高輝度発光や高効率のキャリア輸送機能を有する発光層を電着法により形成できるポリマーコロイドを新規に作製し、単一発光層のポリマー型EL素子の開発を行った。1.電子輸送・発光型ポリマーコロイド(C1)の調製電子輸送・発光性基である白金錯体を用いた合成方法の検討を行い、この白金錯体を側鎖に持つビニル基型機能性モノマーを合成した。2.正孔輸送型ポリマーコロイド(C2)の調製新規正孔輸送型ポリマーコロイドを調製するために、トリフェニルアミンを有するビニルモノマーを合成した。さらに、大量合成法の検討により、大量合成に成功した。3.ポリマーコロイドを用いた単一発光層型EL素子の作製(1) AlQ_3(電子輸送性発光分子:顔料)の水分散電子輸送・発光型ポリマーコロイド(C1)の調製が遅れているので、これまで困難とされているAlQ_3の水分散を昨年度調製したカルバゾール型ポリマーを用いて行った。その結果、AlQ_3を含むポリマーコロイドを作製することができた。(2)作製したポリマーコロイドを用いた単一発光層のポリマー型EL素子の作製AlQ_3を含むポリマーコロイドに、ITO透明電極を陰極、ステンレスまたは白金(Pt)板を正極として電気化学反応を行ったところ、ITO透明電極上に密着性に優れた析出膜を得た。さらに、フッ化セシウム(電子注入層)およびアルミニウム(陰極)をそれぞれ蒸着し、ポリマー素子を作製した。大気下にて、印可電圧が4060Vのときに、瞬間的な発光が複数回見られた。「ポリマー電着法による有機電界発光(EL)素子作製プロセスの確立」と「マイクロレンズ型EL素子」を同時に実現するために、一層型発光層からなるポリマーブレンド型EL素子に着目し、マイクロレンズ型EL素子の概念と作製指針を構築する。本研究では、ポリマー電着法による有機電界発光(ED素子作製プロセスを確立するため、一層型発光層からなるポリマーブレンド型EL素子に着目した。そこで、高輝度発光や高効率のキャリア輸送機能を有する発光層を電気化学反応により形成できるポリマーコロイドを作製し、単一発光層からなるレンズ形状のポリマー型EL素子の開発を行った。(1)AlQ3(電子輸送性発光分子:顔料)の水分散体の作製カルバゾール型ポリマーによるAlQ3の水分散ポリマーコロイドを作製した。(2)作製したポリマーコロイドを用いた単一発光層のレンズ形状ポリマー型EL素子の作製 | KAKENHI-PROJECT-21550178 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21550178 |
機能性ポリマーコロイドによるマイクロレンズ型有機EL素子の実現 | まず、マイクロレンズ型EL素子を作製するため、あらかじめレジストを用いて、ITO電極上に、100μmφの円形開口部を100μmの間隔で配列した電極パターンをフォトリソグラフィ法により作製した。次に、AlQ3を含むポリマーコロイドに、ITO透明電極を陰極、ステンレスまたは白金(Pt)板を正極として電気化学反応を行った。その結果、開口部のみに有機発光膜を作製することに成功した。さらに、得られた有機層の上部に、順次、電子注入層としてCsF、陰極としてA1を蒸着することで、電界発光素子を作製した。作製した素子に、電界を加えたところ、開口部のみから電界発光を確認した。 | KAKENHI-PROJECT-21550178 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21550178 |
自律神経均衡の破綻が招く心筋梗塞病態の増悪機序の解明と積極的是正による病態制御 | 近年の基礎・臨床研究によって、心臓迷走神経刺激による心不全予後改善効果が明らかとなり、心不全病態における副交感神経活動の重要性とその意義、および作用機序の解明が求められている。本研究では「心不全病態における自律神経均衡の破綻が予後不良の主因である」という仮説のもと、その自律神経均衡を標的とした新規治療法の開発と予防対策の確立を到達目標に掲げ、自律神経活動を基軸とした心不全病態の包括的理解と、破綻した自律神経均衡を積極的に是正することによる心不全病態の改善を目指す。上記仮説を検証するための動物モデルとして以下の3実験群を作製する。・心臓迷走神経切除による心臓特異的コリン作動系非働化マウス(vagotomized mouse, VM)VM作製直後の安静時心拍数の増加は再現性に乏しい上に、VMにおける心筋梗塞(MI)モデル作製後の心不全病態に大きな差は認められなかったため、検証モデルの再考が必要であった。そこで、研究計画に従って、アセチルコリン受容体阻害剤(Atropine)投与によるコリン作動系非働化マウスとアセチルコリン分解酵素阻害剤(Donepezil)投与によるコリン作動系賦活化マウスを作成した。現在、各実験群において心筋梗塞モデルを作製し、心不全の病態評価を行っている。本事業の初年度が延長事業との同時遂行であったのために、進捗状況はやや遅れたものとなっていた。本年度、研究計画に沿った研究方法の修正もあったため、元の研究計画に追いつくには至っていない。研究計画に従い、コリン作動系の賦活化および非働化薬剤を継続的に経口投与することによって研究目的に適う実験群を得る。それぞれにおいて心筋梗塞モデルを作製し、急性期、および慢性期における心機能を多角的に評価する。近年の基礎・臨床研究によって、心臓迷走神経刺激による心不全予後改善効果が明らかとなり、心不全病態における副交感神経活動の重要性とその意義、および作用機序の解明が求められている。本研究では「心不全病態における自律神経均衡の破綻が予後不良の主因である」という仮説のもと、その自律神経均衡を標的とした新規治療法の開発と予防対策の確立を到達目標に掲げ、自律神経活動を基軸とした心不全病態の包括的理解と、破綻した自律神経均衡を積極的に是正することによる心不全病態の改善を目指す。上記仮説を検証するための動物モデルとして以下の3実験群を作製する。・心臓迷走神経切除による心臓特異的コリン作動系非働化マウス(vagotomized mouse, VM)うち、VMの安静時心拍数はWTに比べて有意に増加することが確認され、モデルが正しく作成されていることを示すことができた。現在、神経機能の評価を検討中である。また、WTでは心筋梗塞(MI)モデル作成後1週間の間に心破裂により高い死亡率を示すことを明らかにしており、それに対して心臓迷走神経切除の影響を検討する目的で、VMにおけるMI術後1週間の経過を観察中である。科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金(基盤研究(C))・課題番号(25461059)の補助事業期間を1年間延長した。平成28年度は、本事業と並行して延長事業も遂行したため、本事業の現在までの達成度はやや遅れている。近年の基礎・臨床研究によって、心臓迷走神経刺激による心不全予後改善効果が明らかとなり、心不全病態における副交感神経活動の重要性とその意義、および作用機序の解明が求められている。本研究では「心不全病態における自律神経均衡の破綻が予後不良の主因である」という仮説のもと、その自律神経均衡を標的とした新規治療法の開発と予防対策の確立を到達目標に掲げ、自律神経活動を基軸とした心不全病態の包括的理解と、破綻した自律神経均衡を積極的に是正することによる心不全病態の改善を目指す。上記仮説を検証するための動物モデルとして以下の3実験群を作製する。・心臓迷走神経切除による心臓特異的コリン作動系非働化マウス(vagotomized mouse, VM)VM作製直後の安静時心拍数がWTに比べて有意に増加することが確認されたが、WTおよびVMにおける心筋梗塞(MI)モデル作製後の心不全病態に大きな差は認められなかった。モデルが正しく作製されていることを安静時心拍数以外で評価することが必要であると思われる。平成28年度は、本事業と延長事業(学術研究助成基金助成金・基盤研究(C)・課題番号25461059)とを並行して遂行したため、進捗状況はやや遅れたものとなっていた。本年度は、研究計画に沿って事業を進めたが元の研究計画に追いつくには至っていない。近年の基礎・臨床研究によって、心臓迷走神経刺激による心不全予後改善効果が明らかとなり、心不全病態における副交感神経活動の重要性とその意義、および作用機序の解明が求められている。本研究では「心不全病態における自律神経均衡の破綻が予後不良の主因である」という仮説のもと、その自律神経均衡を標的とした新規治療法の開発と予防対策の確立を到達目標に掲げ、自律神経活動を基軸とした心不全病態の包括的理解と、破綻した自律神経均衡を積極的に是正することによる心不全病態の改善を目指す。上記仮説を検証するための動物モデルとして以下の3実験群を作製する。・心臓迷走神経切除による心臓特異的コリン作動系非働化マウス(vagotomized mouse, VM)VM作製直後の安静時心拍数の増加は再現性に乏しい上に、VMにおける心筋梗塞(MI)モデル作製後の心不全病態に大きな差は認められなかったため、検証モデルの再考が必要であった。 | KAKENHI-PROJECT-16K09441 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K09441 |
自律神経均衡の破綻が招く心筋梗塞病態の増悪機序の解明と積極的是正による病態制御 | そこで、研究計画に従って、アセチルコリン受容体阻害剤(Atropine)投与によるコリン作動系非働化マウスとアセチルコリン分解酵素阻害剤(Donepezil)投与によるコリン作動系賦活化マウスを作成した。現在、各実験群において心筋梗塞モデルを作製し、心不全の病態評価を行っている。本事業の初年度が延長事業との同時遂行であったのために、進捗状況はやや遅れたものとなっていた。本年度、研究計画に沿った研究方法の修正もあったため、元の研究計画に追いつくには至っていない。今後は、平成28年度の研究実施計画にある1.モデル作製とその有用性の評価、および2.心筋梗塞急性期および慢性期における心機能の多角的評価(うち急性期実験)を継続するとともに、平成29年度の研究実施計画に沿って、2.心筋梗塞急性期および慢性期における心機能の多角的評価(うち慢性期実験)を実施する。まず、作製したモデルの評価法を再検討し、研究目的に適う実験モデルを得る。それが難しいようであれば、研究計画・方法の「研究遂行上の問題と対応」に記したように、薬剤投与により研究目的の達成に適した実験群を得たうえで、心筋梗塞急性期および慢性期における心機能の多角的評価を実施する。研究計画に従い、コリン作動系の賦活化および非働化薬剤を継続的に経口投与することによって研究目的に適う実験群を得る。それぞれにおいて心筋梗塞モデルを作製し、急性期、および慢性期における心機能を多角的に評価する。本年度は延長事業が最終年度であったため、延長事業の研究経費を優先的に使用した。加えて、動物実験に必要な実験器具や消耗品等は延長事業と本事業の両事業において共通して使用することができ研究経費を削減することができた。これにより、本事業の研究経費の残額を次年度に繰り越した。平成28年度は延長事業が最終年度であったため、延長事業の研究経費を優先的に使用した。また、動物実験に必要な実験器具や消耗品等は延長事業と本事業の両事業において共通して使用することができたため研究経費を削減することができた。したがって、本年度も本事業の研究経費に残額が生じ、それを次年度に繰り越した。動物実験に必要な実験器具や消耗品等は延長事業と本事業の両事業において共通して使用することができたため研究経費を削減することができた。したがって、本事業の研究経費に残額が生じたため、それを次年度に繰り越した。次年度は、モデル作製用の実験動物および小動物用手術器具類に加えて、本事業の遂行に必要な試薬や実験器具類の購入費と、分子生物学的解析に必要な各種抗体やRT-PCRキット、遺伝子やタンパク質の単離・精製キットなどの購入費としての使用を計画している。 | KAKENHI-PROJECT-16K09441 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K09441 |
レベル2落石作用を考慮した落石防護工の強靭で安心な性能設計法の提案 | 小規模な落石に対する落石対策工法は,従来型の道路際に設置される落石防護柵や斜面設置型の防護柵に大別される.近年,落石防護構造は様々な構造形式のものが開発されており,多様性,経済性,施工性に関する研究が進められており,適応するエネルギーレンジに関しても細分化されてきている.50KJというエネルギーレンジに対応した防護フェンスのついての性能照査を行った.実験結果による性能確認に加え,FEM解析による実験結果の再現を行いその精度を検証している.最終的にいろいろな条件での解析を行い性能設計解析的にも性能設計が可能であることを示した.ロックシェッドなどの落石防護構造物は,作用時間の極めて短い衝撃的作用を局所的に受ける構造物である.その構造形式および使用材料はさまざまなものがあるが,一般に敷砂を用いた衝撃緩衝材を落石衝突が予想される面に設置していることが多い.しかしながら,設計は衝撃荷重を静的荷重に置き換えて行われることが多く,実際の対落石性能と大きく異なっていることが指摘されている.このような状況のなか,衝撃挙動について統一的な解釈を得ていないことも問題として挙げられる.本研究では上記の問題に対して,敷砂緩衝材に重錘落下実験を行い,その緩衝特性を明らかとし,そのあと同様の緩衝材を設置したH鋼単純ばりへの重錘落下実験を行っている.本研究は構造部材の最大変位について設計に応用可能で簡便な照査方法を検討し,いくつかの曲げ変形推定方法について示した.敷砂緩衝材を用いたサンドタンク上への重錘落下実験を行い,その緩衝特性を明らかした.そのあと同様の緩衝材を設置した各種H鋼単純ばりへの重錘落下実験を行った.本研究は構造部材の最大変位について設計に応用可能で簡便な照査方法を示すことを目的としており,これらの実験結果を用いて構造挙動,特に曲げ変形についてのいくつかの推定方法について検討した.これは防護構造物の性能設計を行う上での重要な方法を示唆している.緩衝材のないハードな衝撃を受けるはりの衝撃挙動と限界状態を解明するため,各種のスパンの鋼はりに対して衝撃実験を遂行した.また,より防護工に近い構造としてラーメン構造に対し,衝撃実験を行った.衝撃荷重,はりの変位とひずみを測定するとともにカメラによる全体挙動を測定し,衝撃挙動を明らかにした.静的試験も行っている.また,経年劣化や設計予想を超える衝撃荷重を受けたRC構造物の補修補強問題も,現在の日本医於けるインフラストラクチャーの重要な問題である.本研究では各種補強方法について検討を行った.その一つとして炭素繊維の利用について検討した.この方法は,現存の構造物に適用し易いといった長所ともともとひび割れを有する構造物の補修・補強後の状況を直接目視で把握できるといった特徴を有している.このように実構造を意識し,施工性も考えてRCはり下面を溝切りし,連続炭素繊維を用いて実際に補修・補強を行った.静的載荷試験ならびに衝撃載荷試験を行い,その性能について明らかにした.防護構造物は,緩衝材を有しているため,その挙動は一般医複雑であり,性能設計を行う上で不明な点が多い.しかしながら,本研究では,緩衝材だけの問題,構造物を挙動が比較的安定している鋼構造への直接衝撃と部材によるへ挙動の変動が比較的大きなRC構造への直接衝撃,緩衝材を有する構造物への比較的ソフトな衝撃を分けて行い,各々の特徴を分離して合理的に明らかにすることができた.また,補修・補強も視野に入れ,施工しやすく管理しやすい方法についても非常に有用な成果を得ることができた.種々の衝突条件に対する構造物の曲げ変形量に関し十分な推定結果を与える方法を得るに至っていないことも問題として挙げられおり,敷砂緩衝材に重錘落下実験を行い,その緩衝特性を明らかとし,そのあと同様の緩衝材を設置したH鋼単純ばりへの重錘落下実験を行った.構造部材の最大変位について設計に応用可能で簡便な照査方法を示すことを目的として,これらの実験結果を用いていくつかの曲げ変形推定方法について検討した.構造物上ではなく剛基礎上の緩衝材の静的載荷試験と衝撃載荷試験結果より,緩衝材の緩衝能力と作用荷重の基本的モデルを構築した.砂緩衝材の高い緩衝能力とその限界について検討を行った.また,性能設計を行う上で重要である落石の設計条件を正確に予想するための,数値解析による斜面における落石運動シミュレーション手法を発展させた.その結果斜面の木立などの植生を考慮できるようにし,落石予測の一般化を可能にした.経年劣化や設計予想を超える衝撃荷重を受けた防護構造物の維持管理,補修・補強をいかに合理的かつ効率的に行うかは重要な問題である.そこで,炭素繊維ストランド(CFS)で強化された鉄筋コンクリートばりの一連の衝撃試験を実施して,そのような鉄筋コンクリートばりの実際の応答に対する効果を確認した。実験手順を詳細に説明するだけでなく,亀裂パターン,反力,最大変位などの動的挙動の主な特徴を分析し,合理的な比較を行っている.数値解析では,はりの構成モデルと接触条件の信頼できる仮定が適切に採用され,シミュレーションの結果は実験の結果をよく再現できることを示した.CFSで強化された鉄筋コンクリートばりは,静的および衝撃荷重下での曲げ能力を改善できることを確認した. | KAKENHI-PROJECT-16K06462 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K06462 |
レベル2落石作用を考慮した落石防護工の強靭で安心な性能設計法の提案 | 防護構造物は安全側の設計が行われエネルギーでの安全率は30倍程度あると言われてきたため,実構造では設計荷重相当荷重を受けても塑性変形は生じない.性能設計においては真の性能が求められるため,人命を救い防護機能を果たすような建築限界を侵さない範囲での防護工の変形は許容されるべきと考えられる.比較的大きな変位構造部材の最大変位について設計に応用可能で簡便な照査方法を示すことを目的として,いくつかの曲げ変形推定方法について緩衝材の緩衝能力と作用荷重の基本的モデルを具体的に提示しその推定の精度も明確にできた.また,防護構造物の維持管理,補修・補強を目的に,炭素繊維ストランド(CFS)で補強した用いた鉄筋コンクリートはりについて静的荷重および衝撃荷重を対象に具体的に実験を行い,その優れた効果を検証することができた.また,理論解析およびFEMによる解析による方法によっても実験結果の比較により検証と妥当性を確認できた.小規模な落石に対する落石対策工法は,従来型の道路際に設置される落石防護柵や斜面設置型の防護柵に大別される.近年,落石防護構造は様々な構造形式のものが開発されており,多様性,経済性,施工性に関する研究が進められており,適応するエネルギーレンジに関しても細分化されてきている.50KJというエネルギーレンジに対応した防護フェンスのついての性能照査を行った.実験結果による性能確認に加え,FEM解析による実験結果の再現を行いその精度を検証している.最終的にいろいろな条件での解析を行い性能設計解析的にも性能設計が可能であることを示した.ロックシェッドなどの落石防護構造物は,作用時間の極めて短い衝撃的作用を局所的に受ける構造物である.その構造形式および使用材料はさまざまなものがあるが,一般に敷砂を用いた衝撃緩衝材を落石衝突が予想される面に設置していることが多い.しかしながら,設計は衝撃荷重を静的荷重に置き換えて行われることが多く,実際の対落石性能と大きく異なっていることが指摘されている.このような状況のなか,衝撃挙動について統一的な解釈を得ていないことも問題として挙げられる.本研究では上記の問題に対して,敷砂緩衝材に重錘落下実験を行い,その緩衝特性を明らかとし,そのあと同様の緩衝材を設置したH鋼単純ばりへの重錘落下実験を行っている.本研究は構造部材の最大変位について設計に応用可能で簡便な照査方法を検討し,いくつかの曲げ変形推定方法について示した.防護構造物の実際の性能設計に向け,衝撃荷重に対する損傷・変形推定方法を提案する予定である.そのためには,さらに字家kんを行うとともに,解析的なシミュレーションによる懸賞も行う予定でsる.妥当性が検証したシミュレーションより,防護工の性能設計を具体的に行う方法を検討し提案する予定である.なお,炭素繊維を使用した補修・補強効果についても実験的に検討を進めるとともに解析的にも検討し各種構造の補修・補強効果を解明し,さらに施工性が良く,長寿命化させる方法を提案する予定である.実際の防護工に於ける設計に向け,緩衝材を有する防護工のレベル2落石に対する合理的で信頼できる性能設計の基づく設計方法の具体的な検討を行う.剛な防護工設計方法において,大きな塑性変形レベルまで考慮する極めて革新的なものである.実際の剛な防護構造物に対して,このような要求性能に応じた合理的な設計方法を示す.また,落石防護細柵などの柔な構造に対して実験と解析を行い性能設計の実際についての検証,妥当性の確認例も示す予定である. | KAKENHI-PROJECT-16K06462 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K06462 |
顕熱フラックスの乱れに影響する傾斜地水田群の風および日射特性に関する研究 | 研究2年目にあたるH30年度は,対象となる宮崎県日南市酒谷の坂元棚田にて,田植え終了直後の6月中旬より稲刈り直前の9月末まで,シンチロメータによる顕熱フラックスの観測,風速の計測を行った.しかし,記録装置の不具合に加えて相次ぐ台風の襲来でデータの欠測が多くなり,解析に支障が出てしまった.けれども,1月より別途LPWA通信方式による気象観測装置を設置して12月まで毎日データを送信するシステムを導入したため,こちらで毎日の気温・日射・風等の観測値を得ることができた.さらに水源流域の流量観測値を元に気候変動を想定した流出現象が棚田の水収支や熱収支に与える影響を検討するための解析を行った.データの取得に問題はあったものの,H30年度の主要な研究成果として次のような知見を得ることができた.全天写真を用いた坂元棚田における詳細な日照時間,とくに日出時刻の特性に基づいて,棚田で顕熱が発生する時間との関連性を解析した.その結果,平地水田の顕熱フラックス発生時刻に比べて,棚田では90分ほど発生時刻が遅くなっており,これは主に日出時刻に起因することがわかった.くわえて,日出直前の圃場の水分状況にも左右されることが示唆された.棚田の灌漑水源となっている谷川に流出現象をTOPMODELで再現し,これにd4PDFのデータを入力値として用いたシミュレーションを実施した.さらに流域の供給持続曲線を算出し,渇水時の流域の水分状況を分析した.その結果,温暖化によって将来渇水時の流況がより厳しくなる可能性がわかった.このことは棚田への灌漑水量の供給が困難になることをしめし,結果として棚田の熱収支に大きく影響することが示唆された.傾斜地水田における水田毎の日出・日照時間に関する定量化ができたことから,顕熱フラックスの生起に関する分析を進めることができた.ただ,データの欠測によりやや解析が不十分なところが出てしまったが,研究の進捗としてはおおむね順調ととらえている.初年度の解析をより発展させた傾斜地水田群の水収支に関する知見も蓄積されてきたので,これを実際の熱収支へと関連させられるように解析を進めていきたい.最終年度にむけて,これまでに得られた成果を論文として公表していきたい.くわえて,データの取得状況が思わしくなかったので,これを解決してしっかりと顕熱フラックス,そして風の解析を行っていきたい.そして結露量等との関連性の分析を深めていきたい.また,傾斜地水田群の潜熱フラックスの時間的特性に深く関わる灌漑水源の流出特性に関する知見が深まったので,これを傾斜地水田群の熱収支との具体的な関連に結びつけていき,研究に厚みを持たしていきたいと考えている.研究初年にあたるH29年度は,対象となる宮崎県日南市酒谷の坂元棚田にて,田植えが終了後の6月末から稲刈り直前の10月まで,シンチロメータによる顕熱フラックスの観測,結露量および非常の微風速の計測,全天写真の観測をおこなった.圃場の微気象データより熱収支特性の解析,全天写真より圃場毎の天空率の算出と解析,さらに新たに灌漑取水源にてこれまでに計測してきた渓流水位の計測値を用いて谷川の流出解析を行った.主要な研究成果として以下の2点が得られた.1つ目は,棚田内の約1500箇所にて観測した全天写真より圃場毎の天空率を算出し,石垣の影響による天空率の減少,棚田周辺の山・尾根による天空率の減少を定量化し,詳細な天空率分布を算出した.またこれに基づいて圃場の一による日照時間差を算出し,日射量特性を定量的に示した.これらの結果は学会発表するとともに論文として報告した.2つ目は,棚田の灌漑水源となっている谷川にてこれまでに観測してきた水位データを詳細に解析し,さらにTOPMODELを適用して流出解析を行った.加えて,温暖化予測データセットであるd4PDFを利用して,今後の灌漑水への影響を検討した.その結果,灌漑期間中に急激に渓流水が低下し,灌漑が困難になる状況が発生しうることが明らかになった.これは棚田の水収支と深く関連し,それは灌漑期の蒸発散量(潜熱フラックス)に影響し,最終的に熱収支にも係わるもので,これを示すことが出来たことは大きな成果である.研究目的に掲げていた傾斜地水田における水田毎の日出・日照時間に関する定量化を初年度に完了することが出来た.これに基づいて次の課題である結露量等との関連性に望むことが出来る.また,傾斜地水田群の潜熱フラックスの時間的特性に深く関わる水収支に関して新しい展開がうまれたので,これを活かしていきたい.ただ,本研究で重要な位置を占めるシンチレーションの観測について,観測期間中に落雷によって機器が故障してしまった.現在修理中ではあり当初の予定通りには行かない可能性がでてきているが,これ以外で研究目的に迫れる課題がいくつかあるため十分にリカバリーできると考えている.研究2年目にあたるH30年度は,対象となる宮崎県日南市酒谷の坂元棚田にて,田植え終了直後の6月中旬より稲刈り直前の9月末まで,シンチロメータによる顕熱フラックスの観測,風速の計測を行った.しかし,記録装置の不具合に加えて相次ぐ台風の襲来でデータの欠測が多くなり,解析に支障が出てしまった.けれども,1月より別途LPWA通信方式による気象観測装置を設置して12月まで毎日データを送信するシステムを導入したため,こちらで毎日の気温・日射・風等の観測値を得ることができた. | KAKENHI-PROJECT-17K08006 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K08006 |
顕熱フラックスの乱れに影響する傾斜地水田群の風および日射特性に関する研究 | さらに水源流域の流量観測値を元に気候変動を想定した流出現象が棚田の水収支や熱収支に与える影響を検討するための解析を行った.データの取得に問題はあったものの,H30年度の主要な研究成果として次のような知見を得ることができた.全天写真を用いた坂元棚田における詳細な日照時間,とくに日出時刻の特性に基づいて,棚田で顕熱が発生する時間との関連性を解析した.その結果,平地水田の顕熱フラックス発生時刻に比べて,棚田では90分ほど発生時刻が遅くなっており,これは主に日出時刻に起因することがわかった.くわえて,日出直前の圃場の水分状況にも左右されることが示唆された.棚田の灌漑水源となっている谷川に流出現象をTOPMODELで再現し,これにd4PDFのデータを入力値として用いたシミュレーションを実施した.さらに流域の供給持続曲線を算出し,渇水時の流域の水分状況を分析した.その結果,温暖化によって将来渇水時の流況がより厳しくなる可能性がわかった.このことは棚田への灌漑水量の供給が困難になることをしめし,結果として棚田の熱収支に大きく影響することが示唆された.傾斜地水田における水田毎の日出・日照時間に関する定量化ができたことから,顕熱フラックスの生起に関する分析を進めることができた.ただ,データの欠測によりやや解析が不十分なところが出てしまったが,研究の進捗としてはおおむね順調ととらえている.初年度の解析をより発展させた傾斜地水田群の水収支に関する知見も蓄積されてきたので,これを実際の熱収支へと関連させられるように解析を進めていきたい.今後の方策としては,初年度に定量化が完了した詳細な天空率・日射量情報をもとに圃場の結露に関する時空間的特性の実態に迫っていく.シンチレーションの計測に関しては落雷による機器の故障という不測の事態に陥っているが,本研究では風の特性や,蒸発散量,水収支といった他のアプローチから水田の熱収支に迫ることが可能であるので,本年はこれらの観点から検討を加えていく予定である.また,初年度新しい展開として,傾斜地水田群の潜熱フラックスの時間的特性に深く関わる灌漑水源の流出特性をおこなった.次年度以降はこれも新しい研究のアプローチとして加え,研究に厚みを持たしていきたいと考えている.最終年度にむけて,これまでに得られた成果を論文として公表していきたい.くわえて,データの取得状況が思わしくなかったので,これを解決してしっかりと顕熱フラックス,そして風の解析を行っていきたい.そして結露量等との関連性の分析を深めていきたい.また,傾斜地水田群の潜熱フラックスの時間的特性に深く関わる灌漑水源の流出特性に関する知見が深まったので,これを傾斜地水田群の熱収支との具体的な関連に結びつけていき,研究に厚みを持たしていきたいと考えている. | KAKENHI-PROJECT-17K08006 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K08006 |
老齢ザルの認知機能測定法の簡便化に関する基礎研究 | (1)研究成果の概要高齢者の認知機能を速やかに、かつなるべく簡便な方法で測定し、脳神経の生物化学的変性を予測するためのシステムを開発するための基礎研究をサル類を用いて行うことであった。従来のWGTAを用いた方法は、脳機能障害の検出に数ヶ月を有し、スクリーニングテストとしては有効ではない。われわれの開発した修正型指迷路は、1-2週で実験を終了することができ、飼育ケージで一度に複数個体に実施することができる点でも画期的である。今回の実験によりその有効性が強く示唆された。今後WGTAとの交差検査、脳血流検査による検証が実施されることになろう。(2)WGTAをもちいた老齢ザルの記憶方略の検証老若両群とも転移課題を重ねるにしたがって課題獲得に要する試行数は減少したが、老齢群の学習セットの獲得は、若齢群よりも遅かった。転移課題において老齢ザルの顕著な成績の低下が確認されたということは、既得ルールの応用を困難にしているのは固執傾向だけではないことを明らかにした。さらに、老若両年齢群で、反応刺激の位置が見本刺激に近接するほど、再認の成績は低下した。老齢ザルと若齢ザルは、いずれも反応すべき刺激の位置を展望的に符号化していることが示唆された。反応刺激の位置が基本課題とは反対の方向に呈示されると(すなわち行動方略が無効になる事態では)、老齢群のみ再認の成績が低下した。老齢ザルの位置再認は、身体的な定位行動/展望的な符号化という、行動・認知方略に依存しており、それを使用できたばあいのみ、若齢ザルと同程度の再認が可能であることが示唆された。(3)修正型指迷路課題をもちいた簡便な空間認知能力テストエラーボックス付きの4段指迷路課題について被験体数を増やしたところ、ステップがあがるに従って、老齢ザルの成績が統計的に有意に低下し、この課題が高次脳機能の低下を検出するのに有効な手段であることが示唆された。今後、WGTA成績との比較、脳血流量の変化との比較について検討を進めるられる。(1)研究成果の概要高齢者の認知機能を速やかに、かつなるべく簡便な方法で測定し、脳神経の生物化学的変性を予測するためのシステムを開発するための基礎研究をサル類を用いて行うことであった。従来のWGTAを用いた方法は、脳機能障害の検出に数ヶ月を有し、スクリーニングテストとしては有効ではない。われわれの開発した修正型指迷路は、1-2週で実験を終了することができ、飼育ケージで一度に複数個体に実施することができる点でも画期的である。今回の実験によりその有効性が強く示唆された。今後WGTAとの交差検査、脳血流検査による検証が実施されることになろう。(2)WGTAをもちいた老齢ザルの記憶方略の検証老若両群とも転移課題を重ねるにしたがって課題獲得に要する試行数は減少したが、老齢群の学習セットの獲得は、若齢群よりも遅かった。転移課題において老齢ザルの顕著な成績の低下が確認されたということは、既得ルールの応用を困難にしているのは固執傾向だけではないことを明らかにした。さらに、老若両年齢群で、反応刺激の位置が見本刺激に近接するほど、再認の成績は低下した。老齢ザルと若齢ザルは、いずれも反応すべき刺激の位置を展望的に符号化していることが示唆された。反応刺激の位置が基本課題とは反対の方向に呈示されると(すなわち行動方略が無効になる事態では)、老齢群のみ再認の成績が低下した。老齢ザルの位置再認は、身体的な定位行動/展望的な符号化という、行動・認知方略に依存しており、それを使用できたばあいのみ、若齢ザルと同程度の再認が可能であることが示唆された。(3)修正型指迷路課題をもちいた簡便な空間認知能力テストエラーボックス付きの4段指迷路課題について被験体数を増やしたところ、ステップがあがるに従って、老齢ザルの成績が統計的に有意に低下し、この課題が高次脳機能の低下を検出するのに有効な手段であることが示唆された。今後、WGTA成績との比較、脳血流量の変化との比較について検討を進めるられる。(1)WGTAによる老齢ザルの記憶戦略の調査の結果と考察(1)老齢は初期の段階から実験に集中していて、一貫して課題解決のための正しいアプローチをとることができた。対して、初期の段階で非老齢は実験そのものへの集中力を欠き、課題に取り組むスタートが老齢よりも遅れた。(2)WGTAの結果をまとめると、(a)老齢ザルの学習能力の低下はみられなかった。(b)老齢ザルの学習過程の行動には、非老齢とは異なるパターンがあり、習得に効果的な方略として働いていた。(3)観察された手がかり的行動が「記憶するため」に重要であると推察できる。つまり、記憶保持を老齢が特有の方法で行っており、彼女らが劣化した何らかの能力を補うような行動的戦略を用いているということである。(2)改良型指迷路による空間認知能力テストの結果と考察エラーボックス付きの4段迷路を作った。その結果、装置の仕組みを理解しているらしいことがわかった。しかし、サルは比較的容易に1段目をクリアーするが、2段目が非常にむずかしい。 | KAKENHI-PROJECT-11610087 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11610087 |
老齢ザルの認知機能測定法の簡便化に関する基礎研究 | それが、餌を1段目と反対方向へ移動するという課題の難しさなのか、1段目に落としてももう1段落とさなければ報酬がもらえないという、強化の遅延もしくはいわゆる2次的強化のために難しいことがはっきりしないことがわかった。(1)WGTAを用いた老齢ザルにおける位置再認課題の獲得と転移(結果と考察)(1)問題1:ある程度の記憶を要求する課題の獲得に老弱のちがいはあるのか。問題2:老齢ザルは一度獲得したルール(学習セット)を他の刺激条件場面にも適応できるのか。(2)問題1を探るために場所型遅延非見本合わせ課題と用いて検討した。また、問題2を探るため7種の場所型遅延非見本合わせ課題を用いて検討した。(3)結果は以下の通りである。(a)老齢ザルにおいて、獲得段階から自演時間が挿入された「位置再認課題」の学習能力は低下している。遅延をともなわない位置課題では獲得に差がないことから、記憶の負荷が老齢ザルの課題獲得を困難にした要因であると考えられる。(b)老齢ザルにおいて、位置再認課題の転移(学習セット形成)はみられたが、その速度は遅い.老齢ザルは次元内転移にもかかわらず初期の課題では再獲得に時間がかかったことから、老齢ザルの認知機能は若干の呈示条件の変化にも脆弱であり、獲得した課題の情報は限られた条件場面に依存した限定的なものであることが示唆された。(2)改良型指迷路による空間認知能力テスト(結果と考察)エラーボックス付きの4段迷路課題においては、老若に差はでなかった。遅延時間をともなう指迷路に改良することになった。(1)WGTAをもちいて老齢ザルの記憶方略を検証する(結果と考察)(1)問題1:老齢ザルは、課題解決場面でどうして固執傾向があるのか。問題2:老齢ザルは、位置再認課題で身体的定位が使えない場合にどのように反応するのか。(2)問題1を探るために、老齢ザルが既得ル-ルを応用できないのは固執傾向以外の要因によると仮定し、逆転課題のみでなく、固執の要因の除外した連続転移課題を用いて、位置再認の学習セットを検討した。問題2を探るために、位置による遅延非見本合わせ課題を基本にしたテスト課題(見本刺激に対する反応刺激の位置を操作した条件)を課し、見本刺激に対する反応刺激の位置の近接と方向の効果を調べた。(3)結果は以下のとおりである。(a)両群とも転移課題を重ねるにしたがって課題獲得に要する試行数は減少したが、老齢群の学習セットの獲得は、若齢群よりも遅かった。転移課題において老齢ザルの顕著な成績の低下が確認されたということは、既得ルールの応用を困難にしているのは固執傾向だけではないことを明らかにした。(b)老若両年齢群で、反応刺激の位置が見本刺激に近接するほど、再認の成績は低下した。老齢ザルと若齢ザルは、いずれも反応すべき刺激の位置を展望的に符号化していることが示唆された。反応刺激の位置が基本課題とは反対の方向に呈示されると(すなわち行動方略が無効になる事態では)、老齢群のみ再認の成績が低下した。老齢ザルの位置再認は、身体的な定位行動/展望的な符号化という、行動・認知方略に依存しており、それを使用できたばあいのみ、若齢ザルと同程度の再認が可能であることが示唆された。(2)改良型指迷路課題をもちいた空間認知能力テスト(結果と考察)エラーボックス付きの4段指迷路課題について被験体数を増やしたところ、ステップがあがるに従って、老齢ザルの成績が統計的に有意に低下し、この課題が高次脳機能の低下を検出するのに有効な手段であることが示唆された。早い段階で、WGTA | KAKENHI-PROJECT-11610087 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11610087 |
波長計測限界を超えた超音波計測法とその男性不妊症診断への応用 | 本研究では,まず,精細管と類似した線状物質で実験し,超音波の反射波のピーク周波数が直径の逆数に比例すること及びその画像化の方法が国際雑誌に採択された,この方法では,可視化に必須の時間-周波数解析の手段として,短時間フーリエ変換(STFT)を用いていた.次に,周波数分解能と時間分解能が窓幅によりトレードオフの関係となるSTFTにおける問題を解決する手段として連続ウェーブレット変換を用いて,細線状物質に超音波広帯域アレイプローブを適用し,得られた波形からその直径および位置情報の可視化が可能なシステムを提案した.結果としてこの方法で直径・位置の両計測が良好に行えることを明らかにした.本研究の目的は、超音波の反射周波数から非侵襲で精細管の径を予測するシステムを開発することである。具体的には、睾丸の表面から検得られる反射超音波のエコーを用いて睾丸内の精細管の直径、位置、特徴を計測し、精子回収可能精細管を予測する方法を研究する。平成27年度は、管状組織については、超音波反射周波数によってその位置と直径を計測できる原理を用いて目的とする径を有する精細管の有無、位置、特徴を非侵襲的で計測するシステムの開発を行った。本研究では、従来使用されていた短時間フーリエ変換(STFT)の代わりに連続ウエブレット(CWT)変換を用いた方法を開発した。STFTは周波数分解能と時間分解能がトレードオフの関係にあり、直径と位置を正確に導出することが難しい。CWTは周波数分解能と時間分解能の両立が可能である。現在までに、精細管の精子回収可能群の直径は300μm程度、不可能群の直径は100μm程度であることが分かっている。本研究では、精細管と類似した極細線状物質として、直径165μm、185μm、260μm、285μmのナイロン糸を用いて、超音波広帯域アレープローブを適用した実験を行った。得られた波形からその直径と位置をの可視化が可能なシステムを開発した。評価実験の結果、CWTを用いた本方法は、窓幅128,256のSTFTの方法と比較すると、周波数分解能と時間分解能(位置分解能)の両方の問題が解決でき、直径と位置の両方を精度よく可視化できるシステムを開発研究できた。本研究の目的は、超音波の反射周波数から非侵襲で精細管の径を予測するシステムを開発することである。具体的には、睾丸の表面から検得られる反射超音波のエコーを用いて睾丸内の精細管の直径、位置、特徴を計測し、精子回収可能精細管を予測する方法を研究する。平成27年度は、以下のような実験を実施し、成果を得た。(1)従来の研究で使用されていた短時間フーリエ変換の代わりに、連続ウェブレット変換を用いた方法を開発して、直径165μm、185μm、260μm、285μmのナイロン糸に適用し、その位置と直径の同時計測に成功した。このようにして連続上ウエブレット変換を用いた、画像方法を開発できた。(2)実際のヒトの摘出睾丸を用いて実験を行った。測定対象は石川病院で摘出された後,一旦冷凍され,解凍された睾丸とした。測定には2MHzアレイプローブ(公称周波数2MHz,素子数32)を用いた。アレイプローブを徐々にプローブ長軸に対して垂直の方向に動かしながら,その断面の超音波データを取得した。得られた超音波データから,Bモード画像を作成した。そして、周波数的特性を確かめるため得られたデータを一定範囲で区切り、そのエリア内の合計が最も強い周波数を代表周波数として画像化した結果、睾丸内に1MHzから4MHzの変化を認めた。これにより、ヒトの摘出睾丸に対しても、周波数から精細管の太さを認識できる可能性を確認できた。不妊症のうち,男性側に原因を持つ割合は約48 %を占めている.男性不妊症の症状の1つとして精液中に精子を全く確認できない無精子症がある.無精子症には,輸送性あるいは生産性の問題がある.生産性問題の患者は根本的な治療が不可能とされている.しかし,この患者の場合でも睾丸切開により精巣組織の一部を切除し,切除した組織から精子を採取する方法がある.現在は,精子が回収可能かどうかの判断は,精巣組織中に存在する精細管の太さによって判定される.精子回収が可能な精細管の直径は250-300μmであり,不可能な直径は150μm未満とされている.本研究では,超音波装置で精細管の直径を計測し,患者の手術の可否を決定できるシステムの開発を行う.平成27年までの研究で,線状物質に対する反射波のピーク周波数が直径の逆数に比例することを明らかにした.本年度は,この特性およびファジイ推論に基づく可視化を論文としてまとめ,IEEEの論文として受理された.平成27年までの研究では,短時間フーリエ変換(STFT)を用いていたが,STFTでは,周波数分解能と時間分解能が窓幅によりトレードオフの関係となる.すなわち,直径を詳細に測定するために周波数分解能を上げると,空間分解能が下がる.そこで平成28年度は,STFTにおける上記トレードオフ問題を解決する手段として,連続ウェーブレット変換を用いた.これは周波数分解能と時間分解能を両立した時間-周波数解析が可能である. | KAKENHI-PROJECT-15K15586 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K15586 |
波長計測限界を超えた超音波計測法とその男性不妊症診断への応用 | ここでは,精細管と類似した極細線状物質に超音波広帯域アレイプローブを適用し,得られた波形からその直径及び位置情報の可視化が可能なシステムを提案した.実験結果としてSTFTを適用する場合は直径判別もしくは物質位置特定のいずれか一方が低精度となるが,本方法では直径・位置の両計測が良好に行えた.本研究では,まず,精細管と類似した線状物質で実験し,超音波の反射波のピーク周波数が直径の逆数に比例すること及びその画像化の方法が国際雑誌に採択された,この方法では,可視化に必須の時間-周波数解析の手段として,短時間フーリエ変換(STFT)を用いていた.次に,周波数分解能と時間分解能が窓幅によりトレードオフの関係となるSTFTにおける問題を解決する手段として連続ウェーブレット変換を用いて,細線状物質に超音波広帯域アレイプローブを適用し,得られた波形からその直径および位置情報の可視化が可能なシステムを提案した.結果としてこの方法で直径・位置の両計測が良好に行えることを明らかにした.平成28年度は、以下で研究を推進する。(1)平成27年度に開発した連続ウエブレット変換を用いた精細管の有無その位置の判定システムに性能を評価する。そして、このシステムと従来使用していた短時間フーリエ変換を用いたシステムの比較を行い、男子不妊症診断のためのシステムとして、両方のシステムの利点と欠点を明らかにする。(2)実際のヒトの摘出睾丸を用いた実験を行う。この際、短時間フーリエ変換を用いたシステムと連続ウエブレット変換を用いたシステムの両方を用いて、どちらがより鮮明に画像化できるか検証する。(3)我々の発見した原理は精細管だけでなく、他の人体組織例えば肺の細管、胆管、血管、卵管、等に応用可能であり、新しい管状組織計測超音波周波数技術として大きく成長する可能性があるため、現在の糸状の物質による実験の他、穴の開いたチューブ状の物質に対しても実験を行う。(4)球状の組織の直径が超音波周波数によって判定可能かどうかの基礎実験を開始する。もし、これに対しても同様な結果が得られれば、球状物資の硬さや大きさの判定が正確に可能になり、卵胞診断などの医学的応用はもちろん他にも様々な分野で応用が可能となる。情報工学 | KAKENHI-PROJECT-15K15586 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K15586 |
ビジョンチップの応用展開 | 研究代表者らは、ビジョンチップと呼ぶ超高速集積化視覚情報処理チップを開発し、従来のビデオレート(30Hz)での処理に比べて格段に高速化された視覚情報(1kHz)を用いた高速ビジュアルフィードバックの有効性を唱えてきており、これまでの応用システム開発からその基礎は固まり、実社会への応用を目指す新たなフェーズに入った。そこで、本研究では新たな応用展開の基軸として、高速ビジョンによりリアルタイムに人間の動作を認識する高速ビジュアルインターフェイスと、顕微鏡画像をフィードバックすることで微小対象制御を行う高速マイクロビジュアルフィードバックとに注力し、新たな応用分野として革新的なシステムの構築を目指すとともに、当該分野の発展に大きく寄与することを目指すものである。研究代表者らは、ビジョンチップと呼ぶ超高速集積化視覚情報処理チップを開発し、従来のビデオレート(30Hz)での処理に比べて格段に高速化された視覚情報(1kHz)を用いた高速ビジュアルフィードバックの有効性を唱えてきた。これまでの成果からその基礎は固まり、実社会への応用を目指す新たなフェーズに入ったが、高速ビジョンの特徴を活かした応用用途を開拓するためには既存のマシンビジョンとは違ったアプローチが必要である。本研究では、新たな応用展開の基軸として、高速ビジョンによりリアルタイムに人間の動作を認識する高速ビジュアルインターフェイスと、顕微鏡画像をフィードバックすることで微小対象制御を行う高速マイクロビジュアルフィードバックとに注力し、これらの理論的特徴から応用実験までを包括的に研究することで、両者の基盤技術を構築すると同時に、共通の特徴を解明することを目的とする。研究代表者らは、ビジョンチップと呼ぶ超高速集積化視覚情報処理チップを開発し、従来のビデオレート(30Hz)での処理に比べて格段に高速化された視覚情報(1kHz)を用いた高速ビジュアルフィードバックの有効性を唱えてきており、これまでの応用システム開発からその基礎は固まり、実社会への応用を目指す新たなフェーズに入った。そこで、本研究では新たな応用展開の基軸として、高速ビジョンによりリアルタイムに人間の動作を認識する高速ビジュアルインターフェイスと、顕微鏡画像をフィードバックすることで微小対象制御を行う高速マイクロビジュアルフィードバックとに注力し、新たな応用分野として革新的なシステムの構築を目指すとともに、当該分野の発展に大きく寄与することを目指すものである。本年度は開発するシステム設計要件を整理して,要求仕様としてまとめた。さらに,(A)高速ビジュアルインターフェイスと(B)高速マイクロビジュアルフィードバックとの両方で使用する共通研究基盤となる高速ビジョン用アルゴリズムの開発環境を構築し,その上での基本動作を確認した。1.共通基盤の構築まず開発するシステム群の設計要件を整理し,それらに要求される仕様をまとめた。また,今後の研究開発の基礎的な環境として,超並列,超高速ビジョンシステムの動作環境を整備した。当初,シミュレータの構築を想定していたが,仕様検討の結果から当面は既存のビジョンチップで開発を行うほうが効率的と判断したため,既存のビジョンチップについて開発環境を整えた。2.高速ビジュアルインターフェイス開発のための基礎検討既存のビジョンチップがもつ高速性による処理の単純化という利点を保ちつつ,携帯機器への搭載も許容するコンパクトなシステムの実現を目指して,ヒューマンインターフェイス用ビジョンチップシステムのアーキテクチャ設計を行った。また,画像センサを用いて人間の運動を計測するための環境を構築し,アルゴリズム開発の準備を行った。さらに,実際にこの環境で人間の動きを計測し,画像センサをインターフェイスに応用した場合の特性を評価した。3.高速マイクロビジュアルフィードバックシステムの開発準備広範囲かつ高速に動作するXYZステージの仕様検討,策定を行った。その結果,既存のステージによる評価実験を先に行い,その結果に基づいて特注を行ったほうがよいとの結論に達したため,まずは既存のXYZステージと顕微鏡を組み合わせるための冶具を設計し,これらを組み合わせて対象の位置を制御しながら画像を計測できる環境を整えた。また,既存のビジョンチップシステムを顕微鏡に取り付け,照明強度等の撮像条件を評価し,微細な試料の画像が取得できる環境を整備した。1.高速ビジュアルインターフェイス:人間の動作認識アルゴリズムの開発平成19年度に開発した、超並列・超高速ビジョンシステムの動作環境を用いて、人間の動作を認識するアルゴリズムを開発した。特に、柔軟な布などの変形する媒介物を介して人間の動作を認識する手法や、マーカーを用いて人間の動作を認識する手法など、人間が触れる物体を見て間接的に人間を認識する手法に注目して開発を行った。また、実際にこれらの手法の原理的な有効性を、簡単な試作システムを構築して基礎的な実験を行い確認した。2,高速マイクロビジュアルフィードバックシステム:実証用システム構築平成19年度の仕様検討・策定に従ってXYZ自動ステージの選定を行った。次に光学顕微鏡に高速ビジョンシステムと、選定されたXYZ自動ステージとを組み合わせ、高速に計測した顕微鏡画像によって視野や対象位置の制御ができる実証用システムを構築した。精子の鞭毛のように非常に高い周波数で運動する対象を観察するためには、高いフレームレートで記録した画像が必要となることが判明したため、ビジョンシステムとしては、外部に画像を出力して記録できることが重要となることがわかった。そこで、このようなニーズにもこたえられるよう、外部に高いフレームレートで画像を転送する方式の高速ビジョンシステムを採用した。次に、特に遊泳する微生物の追跡を応用に想定して、システム全体を制御するための基礎的なソフトウェアを開発した。3,マイクロ世界と実世界とを統合したインタラクションシステムの構築マイクロ世界の対象はその微小さゆえに、観察者である人間が視覚以外の触覚や力覚などで対象を認識することは難しく、観察者にとって対象が実在しているという感覚が薄くなる傾向にある。 | KAKENHI-PROJECT-19100002 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19100002 |
ビジョンチップの応用展開 | そこで、ローバー型のロボットを微小な対象の運動に従って制御し、あたかも観察者自身が小さくなって対象と同程度の大きさになったかのようなインターフェースシステムを試作し、ローバー型ロボットに遊泳するゾウリムシと同じ運動をさせることに成功した。本年度は,(A)高速ビジュアルインターフェイスと(B)高速マイクロビジュアルフィードバックの2つについて,応用開発に向けたセンシング手法,システム設計,プロトタイプ試作を行った.(A)高速ビジュアルインターフェイス前年度に開発したビジョンシステム上に実際にアルゴリズムを実装して動作を確認し,それを用いた基礎的な応用実験を行った.A-1)ビジョンシステム上に,平成20年度に開発した画像処理アルゴリズムを実装し,その動作確認を行った.A-2)実際にビジョンシステムを用いて人間の動作の認識を行わせ,ヒューマンインターフェイスとしての基礎的な特性を評価した.A-3)人間の3次元的な運動に対応可能な複数のビジョンチップによる多眼高速ビジョン画像処理アルゴリズムの開発を行った.A-4)高速ビジュアルインターフェースのプロトタイプを試作し,その効果を検証した.(B)高速マイクロビジュアルフィードバック顕微鏡画像処理手法の構築を優先的に行い,前年度までに構築したシステムを用いて実験的にその有効性を検証した.また,手振れ補正顕微鏡の実現へ向けた,手振れ補正機構の基礎的検討を行った.B-1)顕微鏡の浅い被写界深度を解決する,高速画像に対応する高速オートフォーカスアルゴリズムを開発した.B-2)構築したシステムと,平成20年度に開発したフォーカシングアルゴリズムを組み合わせて,具体的な対象(微生物等)に対して高速オートフォーカスを実現した.B-3)小型ビデオ顕微鏡を構築し,それに既存の高速ビジョンを取り付け,人間の手ぶれの特性を計測・評価する.B-4)小型顕微鏡の手振れ補正機構の原理について,機械的・光学的の両面から検討した.本年度は,(A)高速ビジュアルインターフェイスと(B)高速マイクロビジュアルフィードバックの2つについて,前年度までに研究開発した高速センシングシステムを用いて、具体的な応用システムの構築を行った。(A)高速ビジュアルインターフェイス本年度は、3次元認識のために多眼化に向けたセンシング手法を検討する予定だったが、システムの小型化が難しいことが判明したとともに、対象を限定することで少ない高速ビジョンで高度な3次元認識が可能であることが分かったため、その認識手法の構築と応用システムの試作を行った。A- | KAKENHI-PROJECT-19100002 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19100002 |
持続的生態系サービス管理を実現する実践的構想と協働管理システムの環境社会学的検討 | 本研究で以下が明らかになった。1)生態系サービス管理においては、生態系からサービスが「引き出される」プロセスと、サービスが分配されるプロセスは峻別する必要がある。2)制度、アクセスの権利、知識、技術、文化やそれらの未来への潜在性は、各ステイクホルダーにとっての生態系サービス管理におけるフレーミングを構成する。3)各ステイクホルダーのフレーミングによって判断される個別の合理性の将来予測(算段)は、管理システムのレジリエンスに影響する。4)持続的な生態系サービス管理のためには、そうした未来の個別的および社会的合理性を発展させるために「場(place)のマネジメント」という実践的な構想が必要である。本研究の核となる生態系サービスの生成と持続に関する駿河湾のサクラエビ漁業の「プール制」成立過程に関する事例研究を進めることができた。サクラエビ漁業における「プール制」の成立過程については、現地調査の成果から田子の浦港ヘドロ問題や富士川火力発電所計画などの公害闘争を通じた危機感や漁業者同士の連帯が大きな要因となっていることが示された。特に田子の浦ヘドロ問題に関しては国会審議でも取り上げられるなど全国的にも大きくクローズアップされており、富士市の市民グループとの連携が行われたりするなどの特徴的な運動が展開されていたことが示され、それに従事した漁業者にも影響していることが示唆された。また、富士川火力発電所計画に関してもそれ以前にサクラエビの産卵地が特定され、それに対する影響が具体的に懸念されたことが漁業者の一致した運動につながったことも示唆されている。一方、これらが「プール制」という資源管理システムと具体的にどう接続されるかという点については、当時漁業者集団を主導し、その後の「プール制」導入に大きな影響を与えた数名の漁業者が軒並み故人となっていることなど調査上の課題も浮上した。しかし、「プール制」の外部としての生態系サービスの生成である台湾における漁業・加工技術の移転についての調査が前倒しで行うことが出来たなどの計画以上の進展もあった。また、サブフィールドについても現地調査や資料収集を進めており、比較研究へのバックアップも整えている。昨年度から引き続き、本研究の核となる生態系サービスの生成と持続に関する駿河湾のサクラエビ漁業に関する事例研究を進めることができた。サクラエビ漁業、特に「プール制」と呼ばれる出漁と漁獲についての共同操業と、収益を漁業者間で等しい割合で分配する特殊な制度の成立前後の時期についてのインタビューや、資料の収集と分析、また理論構築のためのヒントの探究を進めた。具体的には「プール制」の成立には田子の浦ヘドロ問題や富士川火力発電所などの一連の駿河湾周辺における公害問題の発生が、大きな外的要因となっていることが明らかになったほか、富士市周辺における公害に対する市民活動の隆盛と連携もそれを促進した間接要因にもなっていることが、資料的にも確認された。一方で、そうした外的要因だけでなく、それ以前の時期に、漁業の技術革新が発生し、漁業者間の競争の激化したことや、他の湾内漁業の経営悪化などの内的要因の存在も示唆されるようになった。また、プロセスとしても、幾人かの先駆的な漁業者が試行しているなどの詳しい状況が少しづつ明らかになりつつある。また、遠州灘・浜名湖の同時代的な沿岸漁業や、宮崎県綾町における森林や河川などの他の生態系サービスに関する変遷も調査し、比較研究の基盤を整えている。一方、こうした漁業管理が漁業者自身によって構築されるプロセスにおける政府(自治体)の役割や専門家(科学知)の役割についてはまだ調査が本格的には進められていない。当時をよく知る関係者に故人が多いことや一部では資料の散逸も見られるため調査上の課題もある。しかし、こうした要因やプロセスが明らかになることによって、コミュニティベースの漁業管理(生態系サービス管理)の可能性や、環境汚染等の外的要因に対するレジリエンスの発動要件などの分析が理論研究と共に可能になり、より普遍的な生態系サービスの生成と持続の実証的な理論構築に近づいた。本研究の核となる駿河湾・サクラエビ漁業の漁業管理に関する事例研究を進めることができ、結果の分析に着手することができた。依然として関係者が故人となっている例が多いことや、一部での資料の散逸などの課題が存在しているが、多面的な資料調査などを企画し、フォローができるように努めている。その結果として、生態系サービスの生成や持続に関しての実証的な理論構築の基盤を整えつつある。また、一部の成果は学会報告などを行った。昨年度から引き続き、本研究の核となる生態系サービスの生成と持続に関する駿河湾のサクラエビ漁業に関する事例研究を進めることができた。前年度に明らかになった1.現・富士市を中心とした公害問題の発生といった外的要因と、2.漁業における技術革新や過当競争などの内的要因、3.そして自然環境との関係に対する各主体のフレーミングを中心に調査が進んだ。具体的には従来、表面的には公害等の外的要因や漁業者間の内的要因についても技術革新や過当競争などが注目される傾向があったが、特に公害では「駿河湾」という場が焦点になったのに対して、プール制確立以降では、「漁業の経営」にフレーミングが移行する事が顕著にみられた。このフレーミングは漁業者間におけるそれが公害等の外的要因に対する対応にも影響した可能性が判明した。この成果は国際学会International Symposium on Society and Resource Management (ISSRM)においても報告を行った。 | KAKENHI-PROJECT-26590089 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26590089 |
持続的生態系サービス管理を実現する実践的構想と協働管理システムの環境社会学的検討 | また、遠州灘・浜名湖の同時代的な沿岸漁業や、宮崎県綾町における森林や河川などの他の生態系サービスに関する変遷の調査、農業土木における環境配慮についての共同研究などから、当事者自身が得ている「地域知」ともいえるローカルな知の活用の効果やその活用が実現する要件についての知見も得られた。特に制度や予算、公共事業に関与する専門家側の認識など「ガバメント」の対応に大きな課題が存在する。以上から、コミュニティベースの漁業管理(生態系サービス管理)の可能性や、環境汚染等の外的要因に対するレジリエンスの発動要件などの分析が理論研究と共に可能になり、より普遍的な生態系サービスの生成と持続の実証的な理論構築に近づいたと考えられる。本研究で以下が明らかになった。1)生態系サービス管理においては、生態系からサービスが「引き出される」プロセスと、サービスが分配されるプロセスは峻別する必要がある。2)制度、アクセスの権利、知識、技術、文化やそれらの未来への潜在性は、各ステイクホルダーにとっての生態系サービス管理におけるフレーミングを構成する。3)各ステイクホルダーのフレーミングによって判断される個別の合理性の将来予測(算段)は、管理システムのレジリエンスに影響する。4)持続的な生態系サービス管理のためには、そうした未来の個別的および社会的合理性を発展させるために「場(place)のマネジメント」という実践的な構想が必要である。本研究の核となる駿河湾・サクラエビ漁業資源管理に関する事例調査を進展させることが出来た。当時の漁業者のリーダーが軒並み故人であるなどの課題も浮上しつつあるが、台湾への技術移転の調査が計画を前倒して実現するなど計画以上の進展も見せた。このように、生態系サービスの生成と持続に関する社会的なダイナミズムの一端が明らかになりつつある。次年度は最終年度になるため、調査を継続しつつも研究成果の発表をつうじて本研究の到達点を見定めるとともに、今後の課題の整理および次の研究プロジェクトの準備につなげたい。事例研究の成果を分析し、生態系サービスの生成と持続に関する実証的な理論構築につなげるための検討を進めるほか、研究成果については、国際学会でも報告し、成果の国外に対する発信も行う。また、台湾等を念頭にした国際的な技術移転の調査については、より広範な研究課題の発見につながっているため、別途研究プロジェクトを立ち上げることも含めて発展的な検討を行いたい。環境社会学駿河湾・サクラエビ漁業の事例研究の深化を目指す。キーパーソンが故人などの調査上の課題については行政や漁連などの資料調査を強化して当時の状況の立体的な復元を目指す。また、台湾調査についても継続して行い国際共同研究としての基盤づくりにも新しく注力する。理論研究についても進展を目指す。当時を知る関係者に故人が多かったなど、インタビュー可能なインフォーマントが当初の計画よりも少なく、結果的にテープ起こしのための費用が少なかったため。今年度の国際学会発表のため、研究分担者との綿密な打ち合わせを行うための旅費および英文の校閲費用として使用する。 | KAKENHI-PROJECT-26590089 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26590089 |
合成単鎖DNAのよるヒト末梢リンパ球および扁桃リンパ球IgE産生抑制の試み | IgE産生はIL-4とCD40Ligandの2つのシグナルによってB細胞から誘導され、IFN-γやIL-12にて抑制的に働くことが証明されている。われわれは、結核菌由来DNA:MY-1が、内因性IFN-γとIL-12を強く誘導し、IgE産生を抑制することを見いだした。MY-1自身はヒト末梢単核球に対して細胞毒性を示さず、細胞生存率や細胞増殖率には影響を及ぼさなかった。MY-1はIgEへのクラススイッチ誘導を抑制するが、スイッチしてしまったB細胞よりのIgE産生は抑制できなかった。次に、より高率にIgE産生を抑制する目的で、MY-1を断片化しもっともIgE産生を抑制する塩基配列を求めることとした。すでに、MY-1のIFNγ誘導における活性部位はパリインドローム構造を中心に持つ30塩基であり、パリインドローム構造の前半3塩基のバリエーション、すなわち計64(4x4x4)種類の塩基対のなかでも10種類にて著しくIFNγ産生が起こることが判明していた。そこでその10種類と増強しなかった1種類の計11種類でIgE産生を検討した。その中でCGTACGを含む塩基はもっとも高い抑制を認めた。そこで、このパリインドローム構造が本当に重要であるのかどうか、4番目の塩基Aを他の塩基に変えてIgE産生を調べてみた。するとCGTTCGの塩基配列がもっともIgE産生を抑制した。抗IFNγ抗体と抗IL-12抗体の添加によって、MY-1と同様に完全にIgE産生抑制を阻止できなかったが、約60-70%のIgE産生抑制を阻止した。すなわちMY-1とこのCGTTCGの30塩基は同様の機序でIgE産生を抑制しているものと考えられた。さらに興味深いことにCpGモチーフには種特異性がありマウスに効果のあるCpGモチーフでは、ヒトB細胞ではあまり反応しなかった。IgE産生はIL-4とCD40Ligandの2つのシグナルによってB細胞から誘導され、IFN-γやIL-12にて抑制的に働くことが証明されている。われわれは、結核菌由来DNA:MY-1が、内因性IFN-γとIL-12を強く誘導し、IgE産生を抑制することを見いだした。MY-1自身はヒト末梢単核球に対して細胞毒性を示さず、細胞生存率や細胞増殖率には影響を及ぼさなかった。MY-1はIgEへのクラススイッチ誘導を抑制するが、スイッチしてしまったB細胞よりのIgE産生は抑制できなかった。次に、より高率にIgE産生を抑制する目的で、MY-1を断片化しもっともIgE産生を抑制する塩基配列を求めることとした。すでに、MY-1のIFNγ誘導における活性部位はパリインドローム構造を中心に持つ30塩基であり、パリインドローム構造の前半3塩基のバリエーション、すなわち計64(4x4x4)種類の塩基対のなかでも10種類にて著しくIFNγ産生が起こることが判明していた。そこでその10種類と増強しなかった1種類の計11種類でIgE産生を検討した。その中でCGTACGを含む塩基はもっとも高い抑制を認めた。そこで、このパリインドローム構造が本当に重要であるのかどうか、4番目の塩基Aを他の塩基に変えてIgE産生を調べてみた。するとCGTTCGの塩基配列がもっともIgE産生を抑制した。抗IFNγ抗体と抗IL-12抗体の添加によって、MY-1と同様に完全にIgE産生抑制を阻止できなかったが、約60-70%のIgE産生抑制を阻止した。すなわちMY-1とこのCGTTCGの30塩基は同様の機序でIgE産生を抑制しているものと考えられた。さらに興味深いことにCpGモチーフには種特異性がありマウスに効果のあるCpGモチーフでは、ヒトB細胞ではあまり反応しなかった。IgE産生はInterleukin-4とT細胞上のCD40Ligandの2つのシグナルによってB細胞から誘導され、Interferon-γ(IFN-γ)、IL-12にて抑制的に働くことが証明されている。結核菌(BCG)由来のDNA、MY-1はIFN-γ誘導が高いことが判明している。そこで各種濃度のMY-1をIgE産生系に添加し、IgEの産生を抑制するかどうか検討した。その結果、MY-1の濃度上昇に伴いIgEの産生が有意に抑制された。IgEの抑制率は症例によりばらつきは認められたが、80%の症例において50μg/mlのMY-1濃度で有意にIgE産生抑制が認められた。培養した後の培養上清中のIFNγは亢進していた。抗IFNγ抗体と抗IL-12抗体の添加は、MY-1のIgE産生抑制を部分的に解除させた。MY-1の構成成分を断片化することにより、6塩基からなる30塩基のDNAがIFNγをもっとも産生させることが判明した。そこで、この30塩基の単鎖DNAを出発点にし、それぞれの塩基配列部分を少しずつ変更することによって、もっともIgE産生を抑制する合成DNAを決定した。その結果、IgE産生抑制においては活性中心の6塩基が人工的に合成したCGTACGパリインドローム構造では効果的ではあったが、パリインドローム構造を崩したCGTTCGの構造がもっともIgE産生を抑制することが判明した。 | KAKENHI-PROJECT-11671675 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11671675 |
合成単鎖DNAのよるヒト末梢リンパ球および扁桃リンパ球IgE産生抑制の試み | IgE産生はIL-4とCD40Ligandの2つのシグナルによってB細胞から誘導され、IFN-γやIL-12にて抑制的に働くことが証明されている。われわれは、結核菌由来DNA : MY-1が、内因性IFN-γとIL-12を強く誘導し、IgE産生を抑制することを見いだした。MY-1自身はヒト末梢単核球に対して細胞毒性を示さず、細胞生存率や細胞増殖率には影響を及ぼさなかった。MY-1はIgEへのクラススイッチ誘導を抑制するが、スイッチしてしまったB細胞よりのIgE産生は抑制できなかった。次に、より高率にIgE産生を抑制する目的で、MY-1を断片化しもっともIgE産生を抑制する塩基配列を求めることとした。すでに、MY-1のIFNγ誘導における活性部位はパリインドローム構造を中心に持つ30塩基であり、パリインドローム構造の前半3塩基のバリエーション、すなわち計64(4x4x4)種類の塩基対のなかでも10種類にて著しくIFNγ産生が起こることが判明していた。そこでその10種類と増強しなかった1種類の計11種類でIgE産生を検討した。その中でCGTACGを含む塩基はもっとも高い抑制を認めた。そこで、このパリインドローム構造が本当に重要であるのかどうか、4番目の塩基Aを他の塩基に変えてIgE産生を調べてみた。するとCGTTCGの塩基配列がもっともIgE産生を抑制した。抗IFNγ抗体と抗IL-12抗体の添加によって、MY-1と同様に完全にIgE産生抑制を阻止できなかったが、約60-70%のIgE産生抑制を阻止した。すなわちMY-1とこのCGTTCGの30塩基は同様の機序でIgE産生を抑制しているものと考えられた。さらに興味深いことにCpGモチーフには種特異性がありマウスに効果のあるCpGモチーフでは、ヒトB細胞ではあまり反応しなかった。 | KAKENHI-PROJECT-11671675 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11671675 |
企業組織のなかの技術者に関する社会学的研究―日本の製造業における生産技術者― | 本研究では、製造業における企業内技術者に焦点を当てている。特に実際の技術開発における技術者という主体の実践活動が、生産現場の労働者や同僚の技術者、上司といった他者との関係性のなかで、またそれらの諸主体を統括する組織制度や実際に取り扱われる技術といった様々な要素の相互関係のなかで、どのような社会的文脈のもとでどのように発現しているのかを、実証的/理論的に説明しょうとするものである。平成24年度は具体的な事例として対象をソニー一社における過去の技術開発活動に絞り、企業のなかの技術者の主体的行動を中心とした具体的な事例を探索・調査し、この結果、デジタルオーディオ技術の事業化の事例が極めて有用であることを発見し、この事例研究はフランスで行われたEBHAでのカンファレンスでも報告を行った。一方、社会において技術がいかなるメカニズムによって生起・発展していくのかという諸論争について、特に社会構成主義的な諸研究を再検討した。このなかで、これらの議論における「行為主体」に関する言及の極端な少なさが明らかとなった。これは、社会構成主義が科学技術においては文脈上、決定論的な議論への対抗理論としての性質を持っていたゆえに、「行為主体」という概念についても非本質主義的な定義に留まらざるを得なかったのだということが明らかとなった。本研究では、こうした論争の性質上、十全に議論されてこなかった技術者という主体について、批判的実在論という立場から社会構成主義を再考察したDave Elder-Vassによる、実在論的因果効力理論を参照し、検討を行った。この結果、「規範サークル」という概念がこの技術者の主体性を発揮する一つの重要なキーワードとして有効であることが明らかとなった。この理論・実証の両面からのアプローチにより、技術者等主体を社会理論の枠組みの中で議論する土台が形成されたことは間違いない。本研究は、製造業における技術者像とその専門的役割が、現場の労働者・企業組織・技術のなかにあって、どう変化しているのかを実証的/理論的に説明するものである。平成22年度は社会理論と実証の二つの側面から土台作りを行った。まず社会理論においては、文献調査を通して既存理論の整理を行った。哲学・社会学における「技術の社会学」の潮流は社会構成主義にある。例えば技術の社会学を掲げるバイカーらもこの「技術の社会的構成」を前提としており、技術の哲学を掲げる村田は応用倫理の立場から技術の理論的枠組みの最前線として社会構成主義を位置づけている。しかし、これらの技術論は総じて、構築主義に対する批判を前に議論が停滞しており、新たな枠組みによる理論的発展が必要である。また、実証においては、歴史/聞き取り調査という二つの側面から対象への接近を試みた。歴史研究では、既存の技術者像に関する歴史研究を整理し、また海外で日本の電機産業の歴史的資料の収集を行った。この結果、現代日本の技術者像はハード製品(船や自動車、電気製品)に従事する技術者を取り扱ったものが多く、それらは経営者層の戦略にただ従属する技術者というより、むしろ主体的に製品開発を主導するミドル層として描かれていることが明らかとなった。ただ、こうした技術者像はハード的であり、ソフトに関連する技術者に対しては必ずしも整合的ではない可能性がある。こうした課題が浮上したため、聞き取り調査ではシステムLSI技術者に注目することとした。システムLSIの設計技術は最終的にハードとして落とし込まれるものの、設計行為自体は極めてソフト的であり、この点でハードとソフトの両特性をもつため、対象として理想的である。理論構成を再考したことから、実証研究対象の具体的選定・接近までに時間を要したが、今後の研究を進める上で、理論的にも実証的にも盤石な体制を整えることができたといえる。本研究は、製造業における技術者像とその専門的役割が、現場の労働者・企業組織・技術のなかにあって、どう変化しているのかを実証的/理論的に説明するものである。平成23年度は、(1)電子情報技術学会SWoPPにおけるBoF企画の開催、(2)社会政策学会での報告、(3)経営史学会での報告、(4)組織科学への論文投稿を行った。(1)は、平成22年度に調査対象として設定したシステムLSIの設計技術者が集う討論会の企画運営に関わり、そこで用いるアンケートを担当することで、分析に必要なデータを収集する予定であった。しかし企画・運営の過程でアンケート内容の大幅な変更を余儀なくされ、討論会の企画運営は成功したものの、期待したデータを収集できなかった。(2)は、(1)での経験と失敗を踏まえ、半導体技術者の研究を一区切りさせるため、行為主体性と立場実践に関する社会理論を半導体産業の技術者分析に応用する試みについて報告した。(3)は、刊行されているソニーの技術者のインタビュー記録を事例として、技術開発の現場に、技術者の創造的活動を許容する「遊び」(余裕という意味合い)の文化があり、これが技術者の主体的活動を促した要因として作用したことを主張した。(4)は、技術革新プロセスに関する構成主義的な説明に対して、技術者の行為主体性を、行為者の「立場実践」として捉えることで、歴史的な時間展開の文脈に行為者が介入する仕組みが説明可能となり、技術革新プロセスの説明にこの説明枠組みを加える必要があることを主張した。以上、平成23年度は、技術者の行為主体性のメカニズムの分析を中心に理論・実証の両面で大きな進展があった。平成23年度はこの枠組みを用いて、戦後成長した電機企業のなかでも技術者の独創性という点で多くのエピソードが存在するソニーを対象として、1946年から1982年までの技術者の活動を実証分析する。 | KAKENHI-PROJECT-10J10584 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J10584 |
企業組織のなかの技術者に関する社会学的研究―日本の製造業における生産技術者― | 本研究では、製造業における企業内技術者に焦点を当てている。特に実際の技術開発における技術者という主体の実践活動が、生産現場の労働者や同僚の技術者、上司といった他者との関係性のなかで、またそれらの諸主体を統括する組織制度や実際に取り扱われる技術といった様々な要素の相互関係のなかで、どのような社会的文脈のもとでどのように発現しているのかを、実証的/理論的に説明しょうとするものである。平成24年度は具体的な事例として対象をソニー一社における過去の技術開発活動に絞り、企業のなかの技術者の主体的行動を中心とした具体的な事例を探索・調査し、この結果、デジタルオーディオ技術の事業化の事例が極めて有用であることを発見し、この事例研究はフランスで行われたEBHAでのカンファレンスでも報告を行った。一方、社会において技術がいかなるメカニズムによって生起・発展していくのかという諸論争について、特に社会構成主義的な諸研究を再検討した。このなかで、これらの議論における「行為主体」に関する言及の極端な少なさが明らかとなった。これは、社会構成主義が科学技術においては文脈上、決定論的な議論への対抗理論としての性質を持っていたゆえに、「行為主体」という概念についても非本質主義的な定義に留まらざるを得なかったのだということが明らかとなった。本研究では、こうした論争の性質上、十全に議論されてこなかった技術者という主体について、批判的実在論という立場から社会構成主義を再考察したDave Elder-Vassによる、実在論的因果効力理論を参照し、検討を行った。この結果、「規範サークル」という概念がこの技術者の主体性を発揮する一つの重要なキーワードとして有効であることが明らかとなった。この理論・実証の両面からのアプローチにより、技術者等主体を社会理論の枠組みの中で議論する土台が形成されたことは間違いない。当初は実態分析を含めた、より現在の技術者の実態が過去からの文脈の中でいかに変化しているかを明らかにするという戦略であったが、これを質的・量的調査から明らかにすることが難しいことが段階的に明らかとなってきた。ただ、これに代わる実証として、過去の技術者の実態を歴史的に分析することで、現在の技術者がいかなる実態にあるかを相対的に浮き彫りにすることができるという見通しが立ってきた。よって現在はその実証の途上にある。したがって、当初の計画以上にということにはならないが、おおむね順調に進展しているといえる。調査の関係上、実証の調査対象を「システムLSIの設計技術者の実態」から「ソニーの過去の製品開発技術者に関する実態」へと変更した。このため、平成24年度は、歴史的観点から以下の三つを中心に研究を遂行する第一に、事業化を実現しうるような行為主体性とそれらを許容する組織の論理に着目する。特に、プレイステーションを全社レヴェルの事業にまで押し上げた久多良木健に着目し、技術者の行為主体性がいかなる組織的な文脈のなかで実現したのかを考察する(投稿済みの論文を精緻化する、という形ですすめる。)第二に、市場動向のなかで製品開発をする企業における、行為主体性について考察する。 | KAKENHI-PROJECT-10J10584 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J10584 |
偏光視を利用した昆虫のナビゲーションの動的神経モデリング | 一般に昆虫は天空の偏光パターンから方向を検出する。しかし、天空でパターンを形成し、かつ天候や太陽高度によって時々刻々と変化する偏光刺激が、脳内でどのように符号化されているのかについては未解明な点が多い。本研究は、生物学的および天文学的データを用いた動的シミュレーションにより、その実体を明らかにすることが目的である。まず、複眼に存在する偏光受容領域に関する形態学的データから作成したセンサーマップを用い、実際の偏光パターン情報の入力様式を解析した。加えて、脳内の偏光感受性ニューロンの応答特性をも含めたニューラルネットワークについて、これらの入力に対する方向検出の精度を検証した。一般に昆虫は天空の偏光パターンを利用して方向を検出することが良く知られており、脳の中心複合体領域に脳内コンパスの機能があると考えられている。しかし、天空でパターンを形成し、かつ天候や太陽高度によって時々刻々と変化する偏光刺激が、脳内コンパスによってどのように符号化されているのかについては未解明な点が多い。そこで本研究では、生物学的および天文学的データを用いた動的シミュレーションにより、偏光情報の感覚器および脳内の偏光感受性ニューロンにおける符号化の実態を明らかにすることを目的としている。今年度はシミュレーションに必要な生物学的データの取得を行った。昆虫は複眼背側にある特別な領域(Dorsal rim area, DRA)で偏光を検出する。DRAに含まれる視細胞では微絨毛の並びに偏光なe-ベクトルを持つ偏光が効率よく吸収される。そこで、ミツバチやコオロギの複眼のTEM写真を元にDRA全体にわたる視細胞の形態を調べ、e-ベクトル方向の検出能を算出した。また、これまでに報告されているDRAの視細胞の偏光かんどや角度感度のデータからそぞれの視細胞の受容野についての網羅的な解析を行った。今年度は当初の予定通り、昆虫の偏光受容センサーの生物学的なデータを網羅的に取得することができた。また、偏光パターンの動的モデルに関しては、既存のものをシミュレーションに導入できることを確認できた。これらより、おおむね順調に進展していると判断した。一般に昆虫は天空の偏光パターンを利用して方向を検出することが良く知られており、脳の中心複合体領域に脳内コンパスの機能があると考えられている。しかし、天空でパターンを形成し、かつ天候や太陽高度によって時々刻々と変化する偏光刺激が、脳内コンパスによってどのように符号化されているのかについては未解明な点が多い。そこで本研究では、生物学的および天文学的データを用いた動的シミュレーションにより、偏光情報の感覚器および脳内の偏光感受性ニューロンにおける符号化の実態を明らかにすることを目的としている。今年度は、昨年度取得した複眼の背側に存在する偏光受容領域(Dorsal rim area, DRA)に関する形態学的データに基づいてセンサーマップを作成し、シミュレーションに用いる入力層を作成した。DRAに含まれる視細胞では、その微絨毛の並びに平行なe-ベクトルを持つ光が効率的に吸収される。そのため、DRA領域全体にわたる視細胞の形態とその応答の生理学的特性から、DRAを介して入力する偏光情報の理論値を算出することができる。そこで、DRAに含まれる視細胞の微絨毛の配列が異なる複数の昆虫種において、それぞれに対応するセンサーマップを構築し、天空の偏光パターンを刺激として用いた時の全体としての入力について、シミュレーションによる解析を行った。現在は、時刻(太陽高度)による偏光パターンの変化によって、入力する刺激の質がどのように変化するのかについて解析中である。昨年度取得したデータを元に、当初の予定通りシミュレーション作業をすすめられている。偏光システムへの入力情報の時間的変動については、すでに解析ができる見通しが立っている。また来年度に向けてすすめる予定である、脳内の偏光感受性ニューロンの応答も含めたネットワークモデルについても、共同研究者との打ち合わせがすすんでいる。これらより、おおむね順調に進展していると判断した。一般に昆虫は天空の偏光パターンを利用して方向を検出することが良く知られており、脳の中心複合体領域に脳内コンパスの機能があると考えられている。しかし、天空でパターンを形成し、かつ天候や太陽高度によって時々刻々と変化する偏光刺激が、脳内コンパスによってどのように符号化されているのかについては未解明な点が多い。そこで本研究では、生物学的および天文学的データを用いた動的シミュレーションにより、偏光情報の感覚器および脳内の偏光感受性ニューロンにおける符号化の実体を明らかにすることを目的としている。今年度は、昨年度までに作成した、複眼の背側に存在する偏光受容領域(Dorsal rim area, DRA)に関する形態学的データから作成したセンサーマップを用いて、実際の偏光パターン情報がどのように入力するのかについて解析を行った。DRAに含まれる視細胞では、その微絨毛の並びに平行なe-ベクトルを持つ光が効率的に吸収される。そのため、DRA領域全体にわたる視細胞の形態とその応答の生理学的特性から、DRAを介して入力する偏光情報の理論値を算出することができる。そこで、サバクアリ、コオロギといった、異なるセンサーマップを有する昆虫種において、これらの入力の比較を行った。また、脳内の偏光感受性ニューロンの応答特性をも含めたニューラルネットワークに対して、これらのセンサーマップを入力層とした際の符号化についてもシミュレーションを行い、現在解析をすすめている。一般に昆虫は天空の偏光パターンから方向を検出する。 | KAKENHI-PROJECT-15KT0106 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15KT0106 |
偏光視を利用した昆虫のナビゲーションの動的神経モデリング | しかし、天空でパターンを形成し、かつ天候や太陽高度によって時々刻々と変化する偏光刺激が、脳内でどのように符号化されているのかについては未解明な点が多い。本研究は、生物学的および天文学的データを用いた動的シミュレーションにより、その実体を明らかにすることが目的である。まず、複眼に存在する偏光受容領域に関する形態学的データから作成したセンサーマップを用い、実際の偏光パターン情報の入力様式を解析した。加えて、脳内の偏光感受性ニューロンの応答特性をも含めたニューラルネットワークについて、これらの入力に対する方向検出の精度を検証した。シミュレーションに必要なデータは揃いつつあるので、今後はこれらのデータを用いたシミュレーション作業を開始する。すでに共同研究者が用いている偏光感受せニューロンのニューラルネットワークモデルを拡張し、今回のデータを導入していく予定である。異なる昆虫種における入力情報の比較解析をすすめ、それぞれの採餌行動やナビゲーションの特性も含めて総合的な分析を行う。また脳内の偏光感受性ニューロンの応答特性が詳細に調べられているコオロギについては、ネットワークモデルを脳内神経も含めたものに拡張し、中枢レベルでの情報処理機構について考察する予定である。神経行動学シミュレーションに用いるワークステーションの選定が年度内にできなかったため、購入を延期した。また、同様のシミュレーションを行っている海外の共同研究者を訪れて意見交換をする予定であったが、当該研究者の異動があったため、訪問を延期した。国内で行われた国際学会の機会を利用して、共同研究者との打ち合わせを行ったことにより旅費を節約することができたため、その分を消耗品費にまわすことができた。ワークステーションの購入、海外の共同研究者訪問、ともに次年度に実施する計画であるため、予定通り経費を支出する予定である。来年度はより計算量の多いシミュレーションがを行う必要があるため、計算機の改良のために支出する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-15KT0106 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15KT0106 |
昇圧因子アンギオテンシンIIのタイプ2受容体を介した卵巣での新奇生理機能の探索 | アンギオテンシンAll(All)はレニン・アンギオテンシン系(RA系)の最終産物として、血圧や体液量調節に重要なペプチドである。その受容体はタイプ1(AT1)、タイプ2(AT2)に分類される。既知のAllの生理機能は全てAT1によって担われており、AT2の生理機能は全く不明である。8年前申請者らは、卵巣膜画分に現在のAT2受容体に相当する新奇のAll受容体を同定した。また卵巣顆粒膜細胞の初代培養系を用いて、細胞がアポトーシスを起こす際、AT2が著しく増加することを見出した。本研究では、卵胞閉鎖時に伴う顆粒膜細胞のアポトーシスにおけるAT2の役割を解明するための土台となる、下記に示すような幾つかの知見を得た。(2)PMSG処理をした顆粒膜細胞においてアポトーシスの進行に重要と考えられているBax、p53のmRNAレベルの増加が観察され、逆にアポトーシスの抑制に関与するBcl-XLは変動しなかった。アンギオテンシンAll(All)はレニン・アンギオテンシン系(RA系)の最終産物として、血圧や体液量調節に重要なペプチドである。その受容体はタイプ1(AT1)、タイプ2(AT2)に分類される。既知のAllの生理機能は全てAT1によって担われており、AT2の生理機能は全く不明である。8年前申請者らは、卵巣膜画分に現在のAT2受容体に相当する新奇のAll受容体を同定した。また卵巣顆粒膜細胞の初代培養系を用いて、細胞がアポトーシスを起こす際、AT2が著しく増加することを見出した。本研究では、卵胞閉鎖時に伴う顆粒膜細胞のアポトーシスにおけるAT2の役割を解明するための土台となる、下記に示すような幾つかの知見を得た。(2)PMSG処理をした顆粒膜細胞においてアポトーシスの進行に重要と考えられているBax、p53のmRNAレベルの増加が観察され、逆にアポトーシスの抑制に関与するBcl-XLは変動しなかった。 | KAKENHI-PROJECT-07660391 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07660391 |
小胞体関連分解を担うタンパク質複合体の全容解明とその標的タンパク質の同定 | 小胞体は、膜タンパク質や分泌タンパク質の合成および成熟の場であると同時に、その過程で生じた異常タンパク質を積極的に分解する機能(ERAD)を備えている。本研究では、ERADに関与する小胞体膜タンパク質複合体(ERAD複合体)を空間的・時間的に解析することにより、小胞体の秩序維持システムの詳細に迫ることを目的とした。特に、小胞体ストレスタンパク質HerpとDerlin-13に着目して解析を進めた。前年度に、ERAD複合体は複数種存在し、それらが小胞体ストレスによって変化することを見出し、さらに、Derlin-3欠損マウスは正常に誕生するが、Derlin-1およびDerlin-2欠損マウスは胎性致死となることを明らかにした。そこで今年度は、それらが致死となる胚発生時期の特定を試みた。Derlin-1あるいはDerlin-2のヘテロ欠損マウス同士を交配させ、妊娠マウスから摘出した胚を解析したところ、Derlin-1のホモ欠損マウスは胎齢8.5日まで成長することができず、それ以前に発生が止まって致死となることがわかった。一方、Derlin-2のホモ欠損マウスでは、胎齢8.5日の時点で胚の痕跡さえ見られず、胎齢6.5-7.5日にはすでに致死となっていることがわかった。つまり、マウスの胚発生において、Derlin-2が最も早い時期に必須であり、続いてDerlin-1が重要であること、そしてDerlin-3は必須でないことが明らかになった。本研究の成果により、ERADが胚発生においてどのような役割を果たしているのか、あるいはERAD関連タンパク質がERAD以外の細胞機能にも寄与しているのではないか、といった新たな課題が浮き彫りになった。小胞体は、膜タンパク質や分泌タンパク質の合成および成熟の場であると同時に、その過程で生じた異常タンパク質を積極的に分解する機能(ERAD)を備えている。本研究では、ERADに関与する小胞体膜タンパク質複合体(ERAD複合体)を空間的・時間的に解析することにより、小胞体の秩序維持システムの詳細に迫ることを目的としている。特に、小胞体ストレスタンパク質HerpとDerlin-13に着目し、生化学・分子生物学・細胞生物学的手法で解析する。2年計画の1年目である今年度は、野生型マウス胚性線維芽細胞および臓器から調製した小胞体画分を生化学的および免疫化学的に分析することで、ERAD複合体の構成因子が複数種存在することや、それらが小胞体ストレスによって質的および量的に変化することを見出した。つまり、小胞体ストレスが負荷されていない通常の状態ではHerpとDerlin-2、HRD1の3者を同時に含む複合体が恒常的に存在しており、小胞体ストレスが負荷されると、HerpとHRD1の相互作用が増強されるとともに、ストレスで強く発現誘導されるDerlin-3がHerpを含むERAD複合体の構成成分になることを明らかにした。さらに、Herpノックアウトマウスを利用した解析で、ERAD複合体にはHerpが関与するものとしないものがあることを明らかにした。一方、3種のDerlinノックアウトマウスの作製を試み、Derlin-1およびDerlin-2の完全欠損マウスは胎生期に致死となること、Derlin-3完全欠損マウスは見かけ上、正常に誕生することが明らかになった。これらの知見をもとに、次年度には、Derlin欠損マウスを積極的に利用することにより、ERAD複合体の生理機能や構成成分の違いによる機能分担、各構成因子の分子機能等を明らかにしたい。小胞体は、膜タンパク質や分泌タンパク質の合成および成熟の場であると同時に、その過程で生じた異常タンパク質を積極的に分解する機能(ERAD)を備えている。本研究では、ERADに関与する小胞体膜タンパク質複合体(ERAD複合体)を空間的・時間的に解析することにより、小胞体の秩序維持システムの詳細に迫ることを目的とした。特に、小胞体ストレスタンパク質HerpとDerlin-13に着目して解析を進めた。前年度に、ERAD複合体は複数種存在し、それらが小胞体ストレスによって変化することを見出し、さらに、Derlin-3欠損マウスは正常に誕生するが、Derlin-1およびDerlin-2欠損マウスは胎性致死となることを明らかにした。そこで今年度は、それらが致死となる胚発生時期の特定を試みた。Derlin-1あるいはDerlin-2のヘテロ欠損マウス同士を交配させ、妊娠マウスから摘出した胚を解析したところ、Derlin-1のホモ欠損マウスは胎齢8.5日まで成長することができず、それ以前に発生が止まって致死となることがわかった。一方、Derlin-2のホモ欠損マウスでは、胎齢8.5日の時点で胚の痕跡さえ見られず、胎齢6.5-7.5日にはすでに致死となっていることがわかった。つまり、マウスの胚発生において、Derlin-2が最も早い時期に必須であり、続いてDerlin-1が重要であること、そしてDerlin-3は必須でないことが明らかになった。本研究の成果により、ERADが胚発生においてどのような役割を果たしているのか、あるいはERAD関連タンパク質がERAD以外の細胞機能にも寄与しているのではないか、といった新たな課題が浮き彫りになった。 | KAKENHI-PROJECT-20059039 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20059039 |
環境及び併存疾患がIgG4関連疾患の発症進展に与える影響 | IgG4関連疾患(IgG4-RD)の発症要因にはアレルギー、悪性腫瘍、食事など環境要素の関連が報告されているが明らかではない。腎病変は無症候性に進行することが多く、受診時にすでに高度の腎不全に至っている症例がよく経験される。本研究ではこれを他大学との共同研究に発展させ、環境要素とIgG4-RD発症の関連、潜在的な腎不全の原因としてのIgG4-RDが占める割合を明らかとする。これらの結果からIgG4-RDの病態解明、及び予防医学的介入に関する基礎知見の構築を目指す。昨年度能登地区で200名のデータを追加し、能登地区1200名、長崎五島地区において2000名の地区住民の健康・疾病に関するデータベースを構築した。この内能登地区で1183名が解析され、平均IgG4値は43.5mg/dl(2256mg/dl)、IgG4高値は33名(3.1%)認められた。IgG4高値は男性に多い傾向があり、IgE高値が有意に相関した。前年度認められたeGFR低下との有意な相関関係は認められなくなったが、IgG4値135mg/dl以上はe-GFR 77.9ml/ml、IgG4値135mg/dl未満は83.7ml/minとIgG4値が高いと腎機能が低い傾向(p=0.135)は認められた。10例を精査した所、水腎症を伴う慢性腎臓病、動脈周囲炎、後腹膜線維症を合併した1例を認め、IgG4-RD疑診群と診断された。五島地区ではビーズアレイ法でIgG4を測定し、IgG4換算値135mg/dl以上は2.6%であり、長崎県においてもIgG4高値はeGFR低下と相関する傾向が認められた。石川県一般人口におけるIgG4値はアレルギー素因、腎機能低下、男性と関連し、IgG4関連疾患の特徴と類似していた。また、石川と長崎でのIgG4高値例の比率は類似しており、本邦での地域差は少ないと考えられた。1地区住民の健康・疾病に関するデータベースの構築:能登地区において1200名規模、長崎五島地区において2000名規模のデータベースが構築され、それぞれ1183名、1000名のデータが解析されている。2 IgG4高値と関連する環境要因の検討:能登地区症例1183名についてがんやアレルギー疾患、免疫学的な血液データ、血圧や肥満度、栄養摂取量など本研究で得られたすべての要因について、IgG4値との関連が単変量解析された。能登地区の解析ではIgG4高値はIgE高値と相関が認められ、多変量解析でもIgEが関連していた。悪性腫瘍、動脈硬化、生活習慣などの要因は関連が認められなかった。能登地区、五島地区ともに腎機能低下と関連する傾向が認められた。3各地区におけるIgG4高値割合と関連する環境要因の比較:能登地区ではIgG4高値は3.1%認められた。五島地区でのIgG4高値症例は2.6%であった。この結果はスペインの既報(1.2%)と比較すると明らかに高いと思われ、本邦においてIgG4関連疾患の報告が多いことと関連する可能性がある。五島地区の症例についてIgEをビーズアレイ法により追加測定し、今後五島地区でもIgG4とIgEに関連があるのか解析予定である。4 IgG4高値症例におけるIgG4-RDの診断:IgG4 135mg/dL以上の症例について病院受診を促し、IgG4-RDについて二次精査を行った。能登地区18例中11例を精査した所、水腎症を伴う慢性腎臓病、動脈周囲炎、後腹膜線維症を合併した1例を認め、IgG4-RD疑診群と診断された。能登地区で15例、五島地区では30例のIgG4高値症例が未精査であり、今後二次精査を行う予定である。データベースの構築は、同一集団に対して長期的に行われる。2019年度についてもIgG4高値症例データベース構築を継続し、IgG4高値例について追跡調査を行う。これにより同一症例におけるIgG4値の自然変動、および経過でIgG4-RDを発症するかどうかについても検討を行う。本研究のデータ構築の一部は2013年より行われており、能登地区、五島地区を併せて既に3年分、2000名を超えるIgG4を含めた臨床検査値のデータベースが構築されている。したがって本研究を遂行することで少なくとも6年間、2000名のIgG4値、腎機能を含めたIgG4-RDに関連する臨床データの蓄積を行うことが可能となる。これによりIgG4高値が長期的なIgG4-RDの発症及びCKD発症リスクとなるかどうかの評価を行う。また、二次精査受診率を高めることにより、より正確なIgG4-RDの疫学データを構築する。特に腎不全症例において、その腎不全の要因が何によるのかを明らかとすることにより、IgG4-RDが腎不全の直接の原因となっているのかを明らかとする。五島地区においても二次精査をすすめる。2019.4.17.に金沢大学と長崎大学でミーティングを行った。ビーズアレイとネフェロメトリーの相関についてブリーフレポートを作成し、その上でまずここまでの横断的な結果を論文とする予定である。能登地区の症例についてはゲノム情報がすでに取り入れられており、自己免疫性膵炎で報告がなされている特定のSNPとIgG4高値とにおいて関連がないか検討する。 | KAKENHI-PROJECT-17K09083 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K09083 |
環境及び併存疾患がIgG4関連疾患の発症進展に与える影響 | IgG4関連疾患(IgG4-RD)は多臓器に炎症・腫瘤性病変を形成する全身性疾患である。発症要因にはアレルギー、悪性腫瘍、食事など環境要素の関連が報告されているが明らかではない。腎病変は無症候性に進行することが多く、受診時にすでに高度の腎不全に至っている症例がよく経験される。本研究ではこれを他大学との共同研究に発展させ、環境要素とIgG4-RD発症の関連、潜在的な腎不全の原因としてのIgG4-RDが占める割合を明らかとする。これらの結果からIgG4-RDの病態解明、及び予防医学的介入に関する基礎知見の構築を目指す。我々は昨年度400名のデータを追加し、能登地区で1000名、長崎五島地区においては2000名の地区住民の健康・疾病に関するデータベースを構築した。この内能登地区で569名が解析され、平均IgG4値は44.3mg/dl(3254mg/dl)であった。IgG4高値は男性が有意に多く、多変量解析にて収縮期血圧低下、eGFR低下、IgE高値が有意に相関した。IgG4値135mg/dl以上は18名(3.2%)認められ、この内10例を精査した所、水腎症を伴う慢性腎臓病、動脈周囲炎、後腹膜線維症を合併した1例を認め、IgG4-RD疑診群と診断された。五島地区ではIgG4換算値135mg/dl以上は2.6%であり、IgG4高値はeGFR低下と相関する傾向が認められた。石川県一般人口におけるIgG4値はアレルギー素因、腎機能低下、男性と関連し、IgG4関連疾患の特徴と類似していた。569人中1名でIgG4-RD疑診を認め、これまで考えられていたより本疾患は頻度が多い可能性があると考えられる。また、石川と長崎でのIgG4高値例の比率は類似しており、本邦での地域差は少ないと考えられた。該当年度における目標及び進捗は以下の通りである。1地区住民の健康・疾病に関するデータベースの構築:能登地区において1000名規模、長崎五島地区において2000名規模のデータベースが構築され、それぞれ569名、1000名のデータが解析されている。2 IgG4高値と関連する環境要因の検討:能登地区症例569名についてがんやアレルギー疾患、免疫学的な血液データ、血圧や肥満度、栄養摂取量など本研究で得られたすべての要因について、IgG4値との関連が単変量解析された。能登地区の解析ではIgG4高値は男性、IgE、腎機能低下と相関が認められ、多変量解析でもIgE、腎機能低下が関連していた。悪性腫瘍、動脈硬化、生活習慣などの要因は関連が認められなかった。3各地区におけるIgG4高値割合と関連する環境要因の比較:能登地区ではIgG4高値は3.2%認められ、有意に男性であることと関連が認められたが、この関連は長崎地区では認められなかった。五島地区でのIgG4高値症例は2.6%であった。五島地区でのIgGおよびRASTについては長崎地区では未解析である。4 IgG4高値症例におけるIgG4-RDの診断:IgG4 135mg/dL以上の症例について病院受診を促し、IgG4-RDについて二次精査を行った。能登地区18例中10例を精査した所、水腎症を伴う慢性腎臓病、動脈周囲炎、後腹膜線維症を合併した1例を認め、IgG4-RD疑診群と診断された。長崎地区では30例のIgG4高値症例が認められており、今後二次精査を行う予定である。IgG4関連疾患(IgG4-RD)の発症要因にはアレルギー、悪性腫瘍、食事など環境要素の関連が報告されているが明らかではない。 | KAKENHI-PROJECT-17K09083 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K09083 |
珪酸化合物曝露による作業関連疾患予防のためのチェックリスト作製の試み-とくにHLA型との関連について | ギリシャ・ローマ時代には既に、珪酸silicaの粉じんを吸収すると人に健康障害が起こることが知られていたという。1914年にBramwellらが、珪肺症とSystemic sclerosis(SSc)の合併を報告して以来、珪酸や珪酸塩化合物曝露と自己免疫疾患の合併が知られる様になった。私共は、珪肺症患者の血清を調べたところ、その70%以上に自己抗体が検出された。新しく確認された自己抗体には、topoisomerase I,β-tubulin,Fas,Fas ligand等に対する抗体や、ANCA,pemphigus抗体等も含まれる。これらの自己抗体を持つ個人の遺伝的素因について調べるため(本人のプライバシーの侵害や社会的不利益等を伴う可能性が今のところ考えられない)HLA class IIについてのタイピングを行ってみると、特定のalleleやHaplotypeと関連の強い自己抗体が多数あることが判明した。抗-topoisomerase I自己抗体陽性者を例に挙げると、日本人ではHLA DQB1に^※0402など^※04をもつ人が多く、白人では異なったalleleと相関すること、これらの共通点を調べると、DQB1ドメインの14番目のアミノ酸がメチオニン、30番目がタイロシン、57番目がアスパラギン酸、77番目がスレオニンである場合であることが判明し、報告した。以上の如く、新しく検出された自己抗体各々についても詳細な解析を行っており、これらをリスト化することにより、就業時の適性判断と作業関連疾患予防に役立ちうるものと考える。ギリシャ・ローマ時代には既に、珪酸silicaの粉じんを吸収すると人に健康障害が起こることが知られていたという。1914年にBramwellらが、珪肺症とSystemic sclerosis(SSc)の合併を報告して以来、珪酸や珪酸塩化合物曝露と自己免疫疾患の合併が知られる様になった。私共は、珪肺症患者の血清を調べたところ、その70%以上に自己抗体が検出された。新しく確認された自己抗体には、topoisomerase I,β-tubulin,Fas,Fas ligand等に対する抗体や、ANCA,pemphigus抗体等も含まれる。これらの自己抗体を持つ個人の遺伝的素因について調べるため(本人のプライバシーの侵害や社会的不利益等を伴う可能性が今のところ考えられない)HLA class IIについてのタイピングを行ってみると、特定のalleleやHaplotypeと関連の強い自己抗体が多数あることが判明した。抗-topoisomerase I自己抗体陽性者を例に挙げると、日本人ではHLA DQB1に^※0402など^※04をもつ人が多く、白人では異なったalleleと相関すること、これらの共通点を調べると、DQB1ドメインの14番目のアミノ酸がメチオニン、30番目がタイロシン、57番目がアスパラギン酸、77番目がスレオニンである場合であることが判明し、報告した。以上の如く、新しく検出された自己抗体各々についても詳細な解析を行っており、これらをリスト化することにより、就業時の適性判断と作業関連疾患予防に役立ちうるものと考える。珪肺症患者に合併する自己免疫疾患を中心に、珪酸および珪酸塩化合物による免疫異常を惹起するリスクファクターを、可能な限り列挙して、できれば系統的にまとめることを目的とする。現在までに、200名程の珪肺症患者について、本人の同意を得て末梢血液の供与を受け、各種自己抗体の有無とHLAタイピング(HLAclassIIについて)を行って来た。珪肺症に合併するとの報告が認められない幾つかの自己抗体、抗トポイソメラーゼ抗体、ANCA、pemphigus抗体、抗ss-A、抗ss-B抗体、抗βおよびγ-tubulin抗体などが、かなり高率に合併することを認めたので、一部を発表し、一部は発表準備中である。これらの患者について、各自己抗体を伴うリスクファクターを調べるため、性別、年令、曝露年数等の他に、HLA型との関連について検討中である。一部の自己抗体は、HLADQB1の型に関連し、今までの報告以外にも日本人特有の型に関連することが判明して、現在報告中である。HLA分子はT細胞に抗原提示をする上で不可欠であり、この部分のアミノ酸組成の差すなわちHLA型の差によってリンパ球活性化物質の結合能が異なり、免疫反応に差が出るものと思われる。HLAタイピングは臓器移植のドナーにもレシピエントにも行われる検査であり、この測定データが個人の不利(又は有利)をもたらすことは今のところ考えられない。従って、珪酸曝露に伴って出現する自己抗体とHLA型について更にデータ解析を進めており、強い関連性がみられる因子についてはリスクファクターの一つとして、新職員にチェックを行い、リスクファクターと思われる因子を一つ以上持っている場合には、曝露の少ない作業に配属する等の処置をとって疾病予防に役立つことを目標としてまとめを行っている。ギリシャ・ローマ時代には既に、珪酸silicaの粉じんを吸収すると人に健康障害が起こることが知られていたという。1914年にBramwellらが、珪肺症とSystemic sclerosis(SSc)の合併を報告して以来、珪酸や珪酸塩化合物曝露と自己免疫疾患の合併が知られる様になった。私どもが、珪肺症患者の血清を調べたところ、その70%以上に自己抗体が検出された。新しく確認された自己抗体には、topoisomerase I,β-tubulin,Fas,Fas ligand等に対する抗体や、ANCA,pemphigus抗体等も含まれる。 | KAKENHI-PROJECT-11670355 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11670355 |
珪酸化合物曝露による作業関連疾患予防のためのチェックリスト作製の試み-とくにHLA型との関連について | これらの自己抗体を持つ個人の遺伝的素因について調べるため(本人のプライバシーの侵害や社会的不利益等を伴う可能性が今のところ考えられない)HLA class IIについてのタイピングを行ってみると、特定のalleleやHaplotypeと関連の強い自己抗体が多数あることが判明した。抗-topoisomerase I自己抗体陽性者を例に挙げると、日本人ではHLA DQB1に^※0402など^※04をもつ人が多く、白人では異なったalleleと相関すること、これらの共通点を調べると、DQB1ドメインの14番目のアミノ酸がメチオニン、30番目がタイロシン、57番目がアスパラギン酸、77番目がスレオニンである場合であることが判明し、報告した。以上の如く、新しく検出された自己抗体各々についても詳細な解析を行っており、これらをリスト化することにより、就業時の適性判断と作業関連疾患予防に役立ちうるものと考える。 | KAKENHI-PROJECT-11670355 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11670355 |
複雑乱流場の多次元画像解析システムの構築 | 本研究では、複雑な流れ場を高精度に多次元解析するための画像計測技術の開発および、速度とスカラ量を同時に計測する技術の開発を行い、複雑乱流場の画像解析システムを構築した。画像解析システムでは、取得画像から高精度で多次元の複合情報を抽出するためのソフトウエアを開発した。Particle Imaging Velocimetry(PIV)とParticle Tracking Velocimetry(PTV)を対象として、疑似的な可視化画像を用いたアルゴリズムの改善と検証を行うことにより、乱流計測における計測精度の向上をはかった。可視化システムの構築においては、瞬時の広域の流れ場からの空間情報を、高解像度かつ高感度に画像化して取得するための、高出力ダブルパルスYAGレーザ、高解像度相関カメラ、画像解析用ホストコンピュータおよび大容量画像メモリからなるハードウエアシステムを構築した。さらに、流れ空間の速度とスカラー量を同時に計測するためのPIVとLaser Induced Fluorecence(LIF)法とを結合させた、速度場・スカラ場の同時計測技術を確立した。構成した解析システムを、容器内の自励振動流れに適用し、高精度LDV計測との比較・検証によりその測定精度を確認した。ついで、ローブノズルからの混合噴流に本システムを適用して、複雑な流れ場の空間構造やそのメカニズムの解析が本システムにより高精度に実行できることを確認した。これらの解析技術は、数値解析技術との融合により複雑流れ場をハイブリッドに解析システムするための次世代流体解析システムの基礎となるものである。本研究では、複雑な流れ場を高精度に多次元解析するための画像計測技術の開発および、速度とスカラ量を同時に計測する技術の開発を行い、複雑乱流場の画像解析システムを構築した。画像解析システムでは、取得画像から高精度で多次元の複合情報を抽出するためのソフトウエアを開発した。Particle Imaging Velocimetry(PIV)とParticle Tracking Velocimetry(PTV)を対象として、疑似的な可視化画像を用いたアルゴリズムの改善と検証を行うことにより、乱流計測における計測精度の向上をはかった。可視化システムの構築においては、瞬時の広域の流れ場からの空間情報を、高解像度かつ高感度に画像化して取得するための、高出力ダブルパルスYAGレーザ、高解像度相関カメラ、画像解析用ホストコンピュータおよび大容量画像メモリからなるハードウエアシステムを構築した。さらに、流れ空間の速度とスカラー量を同時に計測するためのPIVとLaser Induced Fluorecence(LIF)法とを結合させた、速度場・スカラ場の同時計測技術を確立した。構成した解析システムを、容器内の自励振動流れに適用し、高精度LDV計測との比較・検証によりその測定精度を確認した。ついで、ローブノズルからの混合噴流に本システムを適用して、複雑な流れ場の空間構造やそのメカニズムの解析が本システムにより高精度に実行できることを確認した。これらの解析技術は、数値解析技術との融合により複雑流れ場をハイブリッドに解析システムするための次世代流体解析システムの基礎となるものである。本研究は、流れ場の複合情報を高精度に解析するために、光画像計測技術と数値解析技術との融合をはかり、複雑流れ場のハイブリッド解析システムを構築する。本年度は、広域流れ場の乱流量とスカラー量をけいそくするための多元情報解析システムを構成し、速度・濃度の同時計測のための基礎的なデータベースを作成した。すなわち、1)YAGレーザを光源にして、入力部を高解像度カメラ、処理部をワークステーションとする多元画像解析システムを構成した。このとき、YAGレーザとビデオ信号を同期させ、流れ場の可視化画像を直接、および光学フィルタを介して2台のカメラに取り込み、それぞれ速度計測、スカラー計測を行うシステムとした。速度計測にはPIV(Particle Image Velocimetry)をスカラー計測にはLIF(Laser Induced Fluoresence)を用いることとし、これを高精度の解析システムとして動作させるため以下の検証を行った。2)濃度あるいは温度などのスカラー計測に対するトレーサの選択と、これを用いた不確かさを解析を行った。本システムがスカラー計測に対して十分な精度を持つことを確認した。同時に、3)LES(Large Eddy Simulation)により複雑乱流場を解析し、PIVで用いる画像解析アルゴリズムを評価した。本システムでは、画像解析アルゴリズムに速度の空間解像度が高い濃度相関法を採用した。LESのシミュレーション結果を用いて、擬似的なトレーサ粒子による可視化画像を作成した。本システムで用いるレーザ・ライト・シートの照明を想定してシート内の粒子輝度に分布を与え、粒子の空間密度、粒子サイズ、観察窓のサイズ、画像の入力時間間隔あるいは面外速度の大きさなどの主要なパラメーターについて系統的な定量評価をおこなった。各パラメータに対する最適条件を明らかにした。4)これら基礎データをデータベース化した。本研究では、複雑な流れ場を高精度に多次元解析するための画像計測技術の開発および、速度とスカラ量を同時に計測する技術との開発を行い、複雑乱流場の画像解析システムを構築した。画像解析システムでは、取得画像から高精度で多次元の複合情報を抽出するためのソフトウェアを開発した。Particle Iamging Velocimetry(PIV)とParticle Tracking Velocimetry(PTV)を、疑似的な可視化画像を用いたアルゴリズムの改善と検証を行うことにより、乱流計測における計測精度の向上をはかった。可視化システムの構築においては、高解像度で高感度に、瞬時の広域の流れ場からの空間情報を画像化して取得するための高出力ダブルパルスYAGレーザ、高解像度相関カメラ、画像解析用ホストコンピュータおよび大容量画像メモリからなるハードウェアシステムを構築した。 | KAKENHI-PROJECT-10355009 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10355009 |
複雑乱流場の多次元画像解析システムの構築 | さらに、流れ空間の速度とスカラー量を同時に計測するためのPIVとLaser Induced Fluorecence(LIF)方途を結合させた、速度場・スカラ場の同時計測技術を確立した。構成した解析システムを、容器内の自励振動流れに適用し、高精度LDV計測との比較・検証によりその測定精度を確認した。ついで、ロープノズルからの混合噴流に本システムを適用して、複雑な流れ場の空間構造やそのメカニズムの解析が本システムにより高精度に実行できることを確認した。これらの解析技術は、数値解析技術との融合により複雑流れ場をハイブリッドに解析システムするための次世代流体解析システムの基礎となるものである。 | KAKENHI-PROJECT-10355009 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10355009 |
「情動のしなやかさ」を育てる発達環境の検討 | 【目的】本研究では、乳児期から縦断的に観察をしてきた11組の親子が、小学校入学という生活形態の変化の局面でどのような社会-情動的な連続性を示すのかを明らかにすることを目的としている。とりわけ、困難な事態でも他者と調和的でpositiveな対処行動を示せる場合を「情動のしなやかさ」と概念化し、この側面と乳幼児期の母子のpositiveな情動を伴う相互交渉との関係性を検討した。そこで、家庭(母親)と幼稚園(回想的評価)・小学校の担任教師との間での子どもの見方がどれほど一貫しているか、つまり、家庭と学校という異なる社会的状況からの期待にどれほど適応的であるかを調べた。【方法】(1)母親、幼稚園・小学校担任教諭への社会・情動的傾向質問紙、(2)家庭で家族、友達とパズルを解く際の社会情動行動の観察。【主な結果】乳幼児期の母子のpositiveな相互交渉が家庭外での適応と関係するという期待に反して、家庭(母親)と幼稚園・小学校では期待される社会情動行動が違っていた。母親では扱いにくい子は「感情爆発型の子」で、期待されるのは困難な場面での情動統制であった。一方、幼稚園・小学校の教師では情動表出が曖昧で、反応が鈍い「分かりにくい子」が指導しにくく、期待されるのは葛藤場面で肯定的な情動に切り替えられる子だった。しかも、これらの特徴は家庭と学校とで独立で、とりわけ、「感情表出」、「欲求不満への肯定的対処」は、母親では重視されなかった。実際、乳児期からポジティヴな社会情動傾向で一貫していた対象児は、担任教師には学校での適応が低く評価される傾向にあった。したがって、このような家庭での発達傾向と教師の期待との相違は、家庭から家庭外の世界(小学校)へという生態圏移行での適応の困難を生む要因のではないかと考えられる。<目的>いわゆる「切れやすい子ども」が増加しているといわれる今日の社会状況の中で、「情動のしなやかさ」はどのような発達環境で育つのかを乳児期から幼児期にかけての「遊び心ある対人交渉」の縦断的観察から明らかにしようとすることである。そこで、かつて、親・兄姉との家庭内での戯れ合いを「ビデオ育児日記法」によって、生後半年から2歳まで縦断的に観察した1995年生まれの子どもたち20名のうち、現在でも協力を得られる状態にある12名について、小学校入学後の適応状態を調査することにした。<今年度の実施内容>今年度は、その内の早生まれの半数6名を対象として、次の尺度について調査を行った。1.母親面接:(1)回想的評定これまでに起きた家族の出来事について話してもらい、印象的な順に順位付けをしてもらう。(2)育児の楽しさ調査対象児の育児について、a.全体的印象・感想、b.印象的な思い出、c.嬉しかったこと、d.大変だったこと(3)最近の対象児の社会・情動的特性の評価CBQ、2.幼稚園・小学校担任教諭への面接対象児の社会・情動的特性の評価3.対象児面接:幼稚園、小学校での適応状態、仲間関係についての口頭での自由回答4.対象児行動観察:親子・同胞とパズルをしている場面、及び、友達とパズルをしている場面を親にお願いをして、ビデオ録画してもらった。これらの尺度を通して、親子ともに、どのような困難な状況をどのように乗り越え、どれほどそれを肯定的にとらえて語る傾向にあるかを評価する。さらに、乳児期に得られたデータとの相関関係を明らかにする。これらの分析については、次年度に行う予定である。【目的】本研究では、乳児期から縦断的に観察をしてきた11組の親子が、小学校入学という生活形態の変化の局面でどのような社会-情動的な連続性を示すのかを明らかにすることを目的としている。とりわけ、困難な事態でも他者と調和的でpositiveな対処行動を示せる場合を「情動のしなやかさ」と概念化し、この側面と乳幼児期の母子のpositiveな情動を伴う相互交渉との関係性を検討した。そこで、家庭(母親)と幼稚園(回想的評価)・小学校の担任教師との間での子どもの見方がどれほど一貫しているか、つまり、家庭と学校という異なる社会的状況からの期待にどれほど適応的であるかを調べた。【方法】(1)母親、幼稚園・小学校担任教諭への社会・情動的傾向質問紙、(2)家庭で家族、友達とパズルを解く際の社会情動行動の観察。【主な結果】乳幼児期の母子のpositiveな相互交渉が家庭外での適応と関係するという期待に反して、家庭(母親)と幼稚園・小学校では期待される社会情動行動が違っていた。母親では扱いにくい子は「感情爆発型の子」で、期待されるのは困難な場面での情動統制であった。一方、幼稚園・小学校の教師では情動表出が曖昧で、反応が鈍い「分かりにくい子」が指導しにくく、期待されるのは葛藤場面で肯定的な情動に切り替えられる子だった。しかも、これらの特徴は家庭と学校とで独立で、とりわけ、「感情表出」、「欲求不満への肯定的対処」は、母親では重視されなかった。実際、乳児期からポジティヴな社会情動傾向で一貫していた対象児は、担任教師には学校での適応が低く評価される傾向にあった。したがって、このような家庭での発達傾向と教師の期待との相違は、家庭から家庭外の世界(小学校)へという生態圏移行での適応の困難を生む要因のではないかと考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-13610149 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13610149 |
「情動のしなやかさ」を育てる発達環境の検討 | ◎目的本研究は、乳児期から縦断的に観察をしてきたケースを対象として、小学校入学という環境の変化への対処性の個人差から、「情動のしなやかさemotional suppleness」を育てる親子の遊戯的なやりとりの意義を明らかにしようとする。ここで、情動のしなやかさとは、困難な事態で他者と調和的でポジティヴな情動行動を示し、困難な事態を一つ「出来事」として楽しめる情緒性をいう。つまり、困難な事態での遊戯創発力ないし「遊び心」の発露として構想されている。この視点から本研究では、乳幼児期の母子の戯れ合いの個人差が遊び心を育てる環境の違いとして、小学校入学後の新しい環境への適応状態、つまりこの時点での情動のしなやかさといかに関連しているかを検討する。◎方法<対象児>先行研究で生後半年から2歳まで縦断的に観察した子どもとその母親のうち、本研究でも協力を得られた11組。<調査方法>1.母親の情緒性:(1)家族の出来事、(2)育児の自己評価ついての聞き取り面接。2.対象児の社会・情動的傾向:母親、幼稚園・小学校担任教諭の評定。3.対象児の小学校での適応状態:通学の楽しさ、仲間関係について聞き取り面接。4.対象児の情緒性の観察:(1)家族、(2)友達とのパズル場面。◎結果と考察主な結果は以下である。(1)情動表出の一貫性:乳児期と小1時点での微笑・笑いの相対的頻度の個人差は11名中7名で母子ともに一貫していた。(2)乳児期に母子ともに微笑・笑いの相対頻度の高かった3名は、小1時点でのその場に適した情動の制御も高く、乳児期に母子ともに低かった4名は情動制御も低い傾向にあった。(3)しかし、小1時点でよく笑う子は、怒りの表出も高い傾向が認められた。したがって、情動表出の明示性に一貫した個人差があることと同時に、乳児期の母親の遊戯的な情動表出は、その後の子どもの情動制御に効果のあることが示唆される。 | KAKENHI-PROJECT-13610149 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13610149 |
定向性進化の原理を利用したアミノ基転移酵素の基質特異性の変換 | Directed evolution(進化分子工学)により、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼのβ-分枝鎖アミノ酸に対する触媒効率が、野生型酵素と比較して、約200万倍増大した変異型酵素を得た。進化した酵素には、計17アミノ酸残基に変異がみられた。興味深いことに、その17残基のうち、基質と直接相互作用が可能な位置に存在するものは1残基のみであった。他の残基に関しては、どのような機構で基質結合に影響を与えるのかは全く不明であった。そこで、進化した酵素とバリン類似物質との複合体の構造をX線結晶解析により調べた。その結果、17残基の変異により・酵素のドメイン構造とサブユニット間の配置が変化している。・それにより、基質結合部位を含む活性部位の構造が変化している。ことが判明した。変異残基・構造変化・活性変化の間の関係を詳しく解析するために、・変異残基の多くが立体構造上3つのクラスターを形成していることに着目し、各クラスターを様々な組み合わせで持つ全8種の変異型酵素を作製した。・各変異型酵素の活性等、酵素学的諸性質を調べ、野生型酵素やATB17と比較した。・各変異型酵素の構造をX線結晶解析により調べ、野生型酵素やATB17と比較した。その結果、定向進化の過程で導入された変異が、どのような機構により本酵素のβ-分枝鎖アミノ酸基質に対する活性を上昇させるのかが、明らかになりつつある。1. Directed evolution(進化分子工学)により、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼのβ-分枝鎖アミノ酸に対する触媒効率が、野生型酵素と比較して、約200万倍増大した変異型酵素を得た。過去十数年にわたるタンパク質工学の研究において、これほど顕著な基質特異性の変換を達成した例はなく、Directed evolutionが方法論的にいかに強力であるかを裏付けている。2.進化した酵素には、計17アミノ酸残基に変異がみられた。興味深いことに、その17残基のうち、基質と直接相互作用が可能な位置に存在するものは1残基のみであった。他の残基に関しては、どのような機構で基質結合に影響を与えるのかは全く不明であった。3.進化した酵素とバリン類似物質との複合体の構造をX線結晶解析により調べた。Directed evolutionによって得られた酵素の立体構造の解明は、本例が最初である。その結果、17残基の変異により1)酵素のドメイン構造とサブユニット間の配置が変化していた。2)それにより、基質結合部位を含む活性部位の構造が変化していた。ことが判明した。4.現在、変異残基・構造変化・活性変化の間の関係を詳しく解析中である。Directed evolution(進化分子工学)により、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼのβ-分枝鎖アミノ酸に対する触媒効率が、野生型酵素と比較して、約200万倍増大した変異型酵素を得た。進化した酵素には、計17アミノ酸残基に変異がみられた。興味深いことに、その17残基のうち、基質と直接相互作用が可能な位置に存在するものは1残基のみであった。他の残基に関しては、どのような機構で基質結合に影響を与えるのかは全く不明であった。そこで、進化した酵素とバリン類似物質との複合体の構造をX線結晶解析により調べた。その結果、17残基の変異により・酵素のドメイン構造とサブユニット間の配置が変化している。・それにより、基質結合部位を含む活性部位の構造が変化している。ことが判明した。変異残基・構造変化・活性変化の間の関係を詳しく解析するために、・変異残基の多くが立体構造上3つのクラスターを形成していることに着目し、各クラスターを様々な組み合わせで持つ全8種の変異型酵素を作製した。・各変異型酵素の活性等、酵素学的諸性質を調べ、野生型酵素やATB17と比較した。・各変異型酵素の構造をX線結晶解析により調べ、野生型酵素やATB17と比較した。その結果、定向進化の過程で導入された変異が、どのような機構により本酵素のβ-分枝鎖アミノ酸基質に対する活性を上昇させるのかが、明らかになりつつある。 | KAKENHI-PROJECT-10780427 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10780427 |
光学的非接触全視野計測法による建設構造物のマルチスケール損傷診断法の開発 | 構造物の構造健全度を診断するためには、構造物に空間的に分布したミクロからマクロに至るまでのマルチスケールでの変形・ひずみデータを計測することが必要となる。本研究ではそのための実用的計測法として、光学的計測法の高精度、非接触、全視野計測が可能というメリットに注目し、デジタル画像相関法、電子スペックルパターン干渉計測、棒状スキャナ、レーザードップラ速度計などの光学的手法を用いてロバスト性の高い計測・解析システムを開発した。構造物の構造健全度を診断するためには、構造物に空間的に分布したミクロからマクロに至るまでのマルチスケールでの変形・ひずみデータを計測することが必要となる。本研究ではそのための実用的計測法として、光学的計測法の高精度、非接触、全視野計測が可能というメリットに注目し、デジタル画像相関法、電子スペックルパターン干渉計測、棒状スキャナ、レーザードップラ速度計などの光学的手法を用いてロバスト性の高い計測・解析システムを開発した。本研究では、建設構造物の構造健全性診断の際に必要となるミクロからマクロまでのマルチスケールでの変形・ひずみデータを容易に計測する実用的方法として、光学的計測法の高精度、非接触、全視野計測が可能というメリットに注目し、悪環境下での計測が可能なロバスト性の高い計測・解析システムを開発することを目標に研究を進めた。研究実績の概要を下に示す。(1)小型軽量で操作性の良いラインセンサタイプの全視野(全方向)ひずみ計測装置の開発および高精度なひずみ解析プログラムの開発を行った。また、施工管理および維持管理のための検査装置としての適用範囲を調べた。(2)光学的手法を用いて、(a)異方性FRP複合材の振動・応力計測および接着不良等の欠陥検知、(b)き裂を有するエポキシ樹脂片の圧縮破壊の計測・解析、(c)コンクリート硬化過程における収縮の計測・解析、(d)短繊維補強RC梁のせん断耐力、(e)塩害・アルカリ骨材反応による模擬試験体のコンクリートの劣化メカニズムの解明、などを実施し、適用性と有用性を検証した。(3)コンクリート構造物の検査・診断にあたってコア抜き調査ではドリルで鉄筋を傷つけてしまうことがある。そこで、小口径ドリルで削孔し、より小径のコアを採取し、内部を内視鏡で確認する微破壊検査に注目して、構造物検奪用スキャナを用いたコンクリートの変状検査法について検討した。(4)三次元計測・解析システムの精度を確認するために、実測可能な煙突構造物を対象として、レーザードップラ速度計を用いて振動計測を行い、構造物の常時微動計測によるヘルスモニタリングへの適用可能性について検討した。本研究では、建設構造物の構造健全性診断の際に必要となるミクロからマクロまでのマルチスケールでの変形・ひずみデータを容易に計測する実用的方法として、光学的計測法の高精度、非接触、全視野計測が可能というメリットに注目し、悪環境下での計測が可能なロバスト性の高い計測・解析システムを開発することを目標に研究を進めた。研究実績の概要を下に示す。(1)小型軽量で操作性の良いラインセンサタイプの全視野ひずみ計測装置を試作し、高精度なひずみ解析プログラムを開発した。精度検証のため、通常の材料試験において歪ゲージ法と比較した。さらに、コンクリート施工管理への適用性について検証実験を行った。(2)テレセントリックレンズを装着したカメラによる変位/ひずみの全視野計測装置の開発を行うとともに、コンクリート構造物のひずみ計測のフィールド実証試験を行った。(3)デジタル画像相関法(DIC)等の光学的計測法を用いて計測を実施した。顕著な計測結果として、RCはりの斜めひび割れの発生から進展に至る状況が明確に捉えることができた。また、軸圧薄肉円筒シェルの座屈挙動において一番難解な座屈モードの選択性、すなわち、座屈前のバルジング型の変形状態からダイヤモンド型座屈変形状態へ分岐する現象が明確に捉えらることができた。(4)棒型スキャナを開発し、80年供用RC桁の現況調査のため、ドリル削孔しフィールド実験を行った。中性化試験、内部のひび割れ状況などを調査することができることを検証した。(5)平和祈念像の3D計測データを用いてFE地震応答解析するシステムを構築した。レーザードップラ速度計を用いて固有振動計測を実施した。本計測・解析システムの構築により3Dデジタル情報をデータベース距して構築するこ遊ができ、維持管理電子カルテとしての有用性が期待される。 | KAKENHI-PROJECT-19360205 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19360205 |
高精度時間測定LSIの宇宙実験への応用と開発研究 | 本研究は、我々が開発してきた高精度TDC(Time to Digital Converter)集積回路技術を基に、高エネルギー実験及び宇宙環境実験で使用可能な計測用LSIの開発研究を目的としている。このLSIは温度、衝撃、放射線等の影響に対し充分な信頼性を持つ必要が有る。完成したLSIは、将来の水星周回軌道実験BepiColombo探査機(2013年打ち上げ予定)等への搭載を目指している。昨年度試作を行なった、TSMC社CMOS 0.18umプロセスを使用した2段式PLL(Phase Locked Loop)回路方式の要素回路試験チップは、I/Oバッファ部のミスにより充分な成果を得る事が出来なかったが、沖電気(株)のCMOS 0.15umSOI(Silicon-On-Insulator)プロセスによるTEG(Test Element Group)チップではピクセル検出器や放射線試験用トランジスタアレイ等の動作に成功し、東北大学サイクロトロンRIセンターでの陽子線照射により、10^<15> proton(100Mrad)という高線量においてもバックゲート電圧の調整により動作することが確認され、宇宙での使用にも問題がないことがわかった。SOIプロセスは今後のLSIの主流になると考えられることと、耐放射線性、高温動作、低消費電力等高エネルギー物理実験/宇宙実験に適した特性を持ち、今後有望な技術と考えられる。また同時に準備を行なっていた、既開発の東芝0.3umプロセスのTDC(TMC304)は、本年夏打ち上げ予定の月探査衛星SELENEに搭載されており、無事に動作し興味深いデーターを送ってくることを期待されている。本研究は、我々が開発してきた高精度TDC(Time to Digital Converter)集積回路技術を基に、高エネルギー実験及び宇宙環境実験で使用可能な計測用LSIの開発研究を目的としている。このLSIは温度、衝撃、放射線等の影響に対し充分な信頼性を持つ必要が有る。完成したLSIは、将来の水星周回軌道実験BepiColombo探査機(2013年打ち上げ予定)等への搭載を目指している。昨年度試作を行なった、TSMC社CMOS 0.18umプロセスを使用した2段式PLL(Phase Locked Loop)回路方式の要素回路試験チップは、I/Oバッファ部のミスにより充分な成果を得る事が出来なかったが、沖電気(株)のCMOS 0.15umSOI(Silicon-On-Insulator)プロセスによるTEG(Test Element Group)チップではピクセル検出器や放射線試験用トランジスタアレイ等の動作に成功し、東北大学サイクロトロンRIセンターでの陽子線照射により、10^<15> proton(100Mrad)という高線量においてもバックゲート電圧の調整により動作することが確認され、宇宙での使用にも問題がないことがわかった。SOIプロセスは今後のLSIの主流になると考えられることと、耐放射線性、高温動作、低消費電力等高エネルギー物理実験/宇宙実験に適した特性を持ち、今後有望な技術と考えられる。また同時に準備を行なっていた、既開発の東芝0.3umプロセスのTDC(TMC304)は、本年夏打ち上げ予定の月探査衛星SELENEに搭載されており、無事に動作し興味深いデーターを送ってくることを期待されている。本研究は、我々が開発してきた高精度TDC (Time to Digital Converter)集積回路技術を基に、高エネルギー実験及び宇宙環境実験で使用可能な超高精度時間計測LSIを開発する事を目的としている。このLSIは温度、衝撃、放射線等の影響に対し充分な信頼性を持ち、数十ps/bitの分解能を達成する必要が有る。完成したTDC LSIは実際の観測機器との接続試験を行い、実証データを取得し、水星周回軌道実験BepiColombo探査機等への搭載を目指している。(我々の提出したBepiColomboでのプラズマ観測装置の案は、昨年認められた。)製造技術には最新のCMOS 0.18umプロセスを使用し、2段式PLL (Phase Locked Loop)という新回路方式を使用する事により、50ps以下にまで時間分解能を上げる予定である。本年度は、このプロセスによるチップ試作を2回行い、回路設計、レイアウト設計技術の取得と、TDCの基本性能の確認を行った。また2段式PLL回路方式を特許出願し、その後2004年10月にローマで開催されたIEEE Nuclear ScienceSymposiumにおいて口頭発表を行った。また、東京都立大学理学部RI施設のCo60ガンマー線照射施設を利用して、ガンマー線に対する放射線耐性の予備試験を行い、CMOS 0.18umプロセスのガンマー線に対する耐性について結果を得る事が出来た。この実験では法政大学工学部藤田実研究室の方々に協力をいただいた。本研究は、我々が開発してきた高精度TDC(Time to Digital Converter)集積回路技術を基に、高エネルギー実験及び宇宙環境実験で使用可能な計測用LSIを開発する事を目的としている。このLSIは温度、衝撃、放射線等の影響に対し充分な信頼性を持つ必要が有る。完成したLSIは実際の観測機器との接続試験を行い、実証データを取得し、水星周回軌道実験BepiColombo探査機(2013年打ち上げ予定)等への搭載を目指している。SOIプロセスは今後のLSIの主流になると考えられることと、耐放射線性、高温動作、低消費電力等高エネルギー物理実験/宇宙実験に適した特性を持ち、今後有望な技術と考えられることから、SOIプロセスへのTDC回路の移植や、基板を放射線検出器として利用したピクセル検出器への応用も検討した。また、東北大学サイクロトロンRIセンターでシリコン検出器に対する陽子線照射を行い、測定系の整備を行なうと共に耐放射線性試験の実験方法の確立に努めた。 | KAKENHI-PROJECT-16340081 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16340081 |
高精度時間測定LSIの宇宙実験への応用と開発研究 | 本研究は、我々が開発してきた高精度TDC(Time to Digital Converter)集積回路技術を基に、高エネルギー実験及び宇宙環境実験で使用可能な計測用LSIの開発研究を目的としている。このLSIは温度、衝撃、放射線等の影響に対し充分な信頼性を持つ必要が有る。完成したLSIは、将来の水星周回軌道実験BepiColombo探査機(2013年打ち上げ予定)等への搭載を目指している。昨年度試作を行なった、TSMC社CMOS 0.18umプロセスを使用した2段式PLL(Phase Locked Loop)回路方式の要素回路試験チップは、I/Oバッファ部のミスにより充分な成果を得る事が出来なかったが、沖電気(株)のCMOS 0.15umSOI(Silicon-On-Insulator)プロセスによるTEG(Test Element Group)チップではピクセル検出器や放射線試験用トランジスタアレイ等の動作に成功し、東北大学サイクロトロンRIセンターでの陽子線照射により、10^15proton(100Mrad)という高線量においてもバックゲート電圧の調整により動作することが確認され、宇宙での使用にも問題がないことがわかった。SOIプロセスは今後のLSIの主流になると考えられることと、耐放射線性、高温動作、低消費電力等高エネルギー物理実験/宇宙実験に適した特性を持ち、今後有望な技術と考えられる。また同時に準備を行なっていた、既開発の東芝0.3umプロセスのTDC(TMC304)は、本年夏打ち上げ予定の月探査衛星SELENEに搭載されており、無事に動作し興味深いデーターを送ってくることを期待されている。 | KAKENHI-PROJECT-16340081 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16340081 |
高年初産婦とその夫に対する出産前教育プログラムの開発と検証 | 1.高年初産婦に対する研究成果、文献検討に基づいて、高年初産婦とその夫に特化した妊娠期の看護介入プログラムを出産前両親教育として考案した。既に作成したガイドブックの要点を示したe-Learning用の映像教材を開発し、出産前両親教育をネット配信する準備をした。スマホ・ネット配信する映像教材の作成においてはモニター調査を行い、最終版(全5回の講座)を完成した。2.ランダム化比較試験デザイン(RCT)の研究計画を立案した。本研究の実施体制のマネジメントのために、ロジスティックスを検討し構築した。3.研究代表者の所属施設と研究協力施設の倫理審査委員会に立案した研究計画を申請し承認を得た。RCTのため、UMIN(大学病院医療情報ネットワーク)臨床試験登録システムに登録してから研究を開始した。4.平成31年1月より、2つの研究協力施設において、研究参加者の抽出条件に合致した者に対して研究参加依頼を開始した。対照群は沐浴のe-Learning用の映像教材を受講する群である。参加同意を確認した後に、無作為に対照群、介入群に分けて、それぞれのe-Learning用の映像教材を出産前に夫婦に提供し、受講を依頼する。夫婦ともに妊娠後期受講前、妊娠後期受講後、産後1か月、産後4か月時に縦断してデータ収集をする計画である。3月中旬までに67部配布し、約3割(22組)から同意が得られ、無作為に2群に割り付けて、各々の出産前教育プログラムを配信し、出産前データを収集している。両群100組で研究参加夫婦200組確保を目指しているため、追加でもう一施設、研究協力を依頼中である。5.システマティックレビュープロトコールもアジアに焦点を絞り、JBI Database of Systematic Reviews and Implementation Reportsに再投稿し、2019年1月30日に採択された。当初の計画通り、平成31年1月より、2つの研究協力施設において、研究参加者の抽出条件に合致した者に対して研究参加依頼を開始できた。3月中旬までに67部配布し、約3割(22組)から同意が得られ、無作為に2群に割り付けて、それぞれの出産前教育プログラムを配信し、出産前データを順次収集できている。1月から研究参加者の募集を始めたばかりであるが、2つの研究協力施設のうち1つの施設の研究参加候補者となる高年初産婦が予測より少なく、配布部数と研究参加者数が伸びていない。研究参加夫婦は両群ともに100組で全体で200組確保を目指しているため、追加でもう一施設、研究協力を依頼中である。これまでの2施設と同様に、研究参加者募集をする中で、毎月ごとに施設ごとに依頼数と研究参加者を把握する。縦断研究であるので、最後までドロップアウトしないように、研究参加者への研究依頼を丁寧にきめ細かく行う。1.高年初産婦に対する研究成果、文献検討に基づいて、高年初産婦とその夫に特化した妊娠期の看護介入プログラムを出産前両親教育として考案した。既に作成したガイドブックの要点を示したe-Learning用の映像教材を開発し、出産前両親教育をネット配信する準備をした。スマホ・ネット配信する映像教材の作成においてはモニター調査を行い、最終版(全5回の講座)を完成した。2.ランダム化比較試験デザイン(RCT)の研究計画を立案した。本研究の実施体制のマネジメントのために、ロジスティックスを検討し構築した。3.研究代表者の所属施設と研究協力施設の倫理審査委員会に立案した研究計画を申請し承認を得た。RCTのため、UMIN(大学病院医療情報ネットワーク)臨床試験登録システムに登録してから研究を開始した。4.平成31年1月より、2つの研究協力施設において、研究参加者の抽出条件に合致した者に対して研究参加依頼を開始した。対照群は沐浴のe-Learning用の映像教材を受講する群である。参加同意を確認した後に、無作為に対照群、介入群に分けて、それぞれのe-Learning用の映像教材を出産前に夫婦に提供し、受講を依頼する。夫婦ともに妊娠後期受講前、妊娠後期受講後、産後1か月、産後4か月時に縦断してデータ収集をする計画である。3月中旬までに67部配布し、約3割(22組)から同意が得られ、無作為に2群に割り付けて、各々の出産前教育プログラムを配信し、出産前データを収集している。両群100組で研究参加夫婦200組確保を目指しているため、追加でもう一施設、研究協力を依頼中である。5.システマティックレビュープロトコールもアジアに焦点を絞り、JBI Database of Systematic Reviews and Implementation Reportsに再投稿し、2019年1月30日に採択された。当初の計画通り、平成31年1月より、2つの研究協力施設において、研究参加者の抽出条件に合致した者に対して研究参加依頼を開始できた。3月中旬までに67部配布し、約3割(22組)から同意が得られ、無作為に2群に割り付けて、それぞれの出産前教育プログラムを配信し、出産前データを順次収集できている。1.妊産婦に対する健康教育へのe-Learning利用の文献検討を行ったが、本領域の知見は少なく、妊娠期から夫を巻き込んだ出産前教育が重要であることが明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-17H01612 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H01612 |
高年初産婦とその夫に対する出産前教育プログラムの開発と検証 | 2.高年初産婦とその夫への先駆的な出産前教育の考案に向けて、高年初産婦に限らず、初産婦に対する出産前教育の効果検証研究成果についてシステマティックレビュー(SR)をする必要があると考え、2017年7月、研究計画を変更した。SRプロトコールの作成、SRの実施、SR成果からコンテンツ追加を行う必要が生じ、計画に遅延が生じた。平成29年8月にSRプロトコールを完成させ、JBI Database of Systematic Reviews and Implementation Reportsに8月に投稿した。当初の予定では2017年12月には採択され、2018年2月にはSRを終了して、2018年3月にその成果を今回の出産前教育プログラムのコンテンツに追加する予定であった。2回の査読を得て2018年1月に再々投稿したが、最終的には採択されなかった。同時並行して、作成したSRプロトコールに従って試行的にSRをしたところ、新たな有効なコンテンツは抽出されなかった。3.出産前両親教育計画の検討、映像教材や媒体について検討を行った。媒体としては、私達の「高年初産婦に特化した子育て支援ガイドラインの評価研究」で作成した、高年初産婦用子育て生活ガイドブック(健やかで楽しい子育て生活へのガイドブック)を出産前両親教育のe-Learning教材のテキストとして使用できるように2018年3月に改訂した。e-Learning配信する映像についてもテキストと並行して、PCだけではなくスマートフォンにも配信する映像教材として検討し、2018年7月にサンプル動画(全5回の講座)を作成することができた。SRにより、新たな有効なコンテンツは抽出されなかったため、コンテンツの追加はしないことにした。そして、出産前両親教育計画の検討、映像教材や媒体について検討を行った。媒体としては、私達の「高年初産婦に特化した子育て支援ガイドラインの評価研究」で作成した、高年初産婦用子育て生活ガイドブック(健やかで楽しい子育て生活へのガイドブック)を出産前両親教育のe-Learning教材のテキストとして使用できるように2018年3月に改訂した。2017年度にはe-Learning配信する映像についてもテキストと並行して、PCだけではなくスマートフォンにも配信する映像教材として検討したため、2018年7月にサンプル動画を作成することができたので、2017年度の当初の計画より若干遅れたが、2018年度には遅れを取り戻すことができた。1月から研究参加者の募集を始めたばかりであるが、2つの研究協力施設のうち1つの施設の研究参加候補者となる高年初産婦が予測より少なく、配布部数と研究参加者数が伸びていない。研究参加夫婦は両群ともに100組で全体で200組確保を目指しているため、追加でもう一施設、研究協力を依頼中である。これまでの2施設と同様に、研究参加者募集をする中で、毎月ごとに施設ごとに依頼数と研究参加者を把握する。縦断研究であるので、最後までドロップアウトしないように、研究参加者への研究依頼を丁寧にきめ細かく行う。2018年夏にはこのガイドブックの要点を示したe-Learning用の映像教材を開発し、出産前両親教育をネット配信する準備をした。スマホ・ネット配信する映像教材の作成においてはモニター調査を8月から行い、最終版を完成した。 | KAKENHI-PROJECT-17H01612 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H01612 |
CO2固定酵素ルビスコの機能発現最適化による光合成の機能改良 | 好熱性シアノバクテリアThermosynechococcuselongatus BP1が光合成で利用するルビスコはSynechococcus elongatus PCC7942を含む常温性シアノバクテリアのルビスコよりも熱安定性が高く、さらにCO2識別能が1.5倍高いことを明らかにした。これは好熱性シアノバクテリアルビスコのO2反応性が抑制されていることを意味する。このO2反応性を抑制するための好熱性シアノバクテリアルビスコにおける構造とアミノ酸残基の同定を試みた。シアノバクテリアのルビスコは触媒部位を含むラージサブユニット8個と触媒反応には直接関わらないスモールサブユニット8個からなる16量体で機能している。T. elongatusルビスコのラージサブユニットとスモールサブユニットのどちらが低O2反応性に関わっているかを解析するために、T. elongatusルビスコとS. elongatusルビスコ間でルビスコのサブユニットをワップさせたキメラルビスコを大腸菌で発現させ、酵素特性を解析した。その結果、常温性シアノバクテリアルビスコラージサブユニットに好熱性スモールサブユニットが会合することで、常温性シアノバクテリア野生型ルビスコよりも熱安定性が高くなるとともに、CO2識別能力も高くなった。また、逆に好熱性シアノバクテリアルビスコラージサブユニットに常温性スモールサブユニットが会合することで、熱安定性が低くなるとともに、常温性シアノバクテリア野生型ルビスコよりもCO2識別能力が低くなった。これらの結果から、シアノバクテリアルビスコにおいてスモールサブユニットが、熱安定性とCO2識別能力に関わることを明らかにし、O2反応性抑制に関与していることを明らかにした。これらの研究成果は、日本農芸化学会2018年度大会で発表を行った。研究実績の概要に記した通り、本研究目的であるルビスコのO2反応性抑制を施すための構造を明らかにしたことから、おおむね順調に進展していると自己評価した。今年度までに、好熱性シアノバクテリアルビスコが常温性シアノバクテリアのルビスコよりも熱安定性が高く、さらにO2反応性が抑制されている原因がスモールサブユニット上にあることを明らかにした。そこで今後、好熱性シアノバクテリアルビスコと常温性シアノバクテリアルビスコ間でルビスコのサブユニットをワップさせたキメラルビスコのCO2・O2親和性や反応速度などの詳細な酵素特性を解析するとともに、好熱性シアノバクテリアのルビスコスモールサブユニットのどの構造領域がこれら特性に深く関わっているのかを明らかにするために、構造活性相関解析を行う。また、ルビスコにおけるスモールサブユニットの機能を明らかにするために、スモールサブユニットを取り除いたラージサブユニットのみから構成されるルビスコを作製し、その酵素特性を解析する。シアノバクテリアルビスコの研究で得られたO2反応性技術を高等植物ルビスコへ応用するために、タバコルビスコの大腸菌機能発現系を構築し、O2反応性抑制変異を導入した変異ルビスコの酵素特性を解析する。さらに、ルビスコの活性化をルビスコアクチベースがどのように達成しているのかを明らかにするために、シアノバクテリアが有するルビスコスモールサブユニットにルビスコアクチベース様ドメインが融合した機能未知タンパク質の機能解析を行う。好熱性シアノバクテリアThermosynechococcuselongatus BP1が光合成で利用するルビスコはSynechococcus elongatus PCC7942を含む常温性シアノバクテリアのルビスコよりも熱安定性が高く、さらにCO2識別能が1.5倍高いことを明らかにした。これは好熱性シアノバクテリアルビスコのO2反応性が抑制されていることを意味する。このO2反応性を抑制するための好熱性シアノバクテリアルビスコにおける構造とアミノ酸残基の同定を試みた。シアノバクテリアのルビスコは触媒部位を含むラージサブユニット8個と触媒反応には直接関わらないスモールサブユニット8個からなる16量体で機能している。T. elongatusルビスコのラージサブユニットとスモールサブユニットのどちらが低O2反応性に関わっているかを解析するために、T. elongatusルビスコとS. elongatusルビスコ間でルビスコのサブユニットをワップさせたキメラルビスコを大腸菌で発現させ、酵素特性を解析した。その結果、常温性シアノバクテリアルビスコラージサブユニットに好熱性スモールサブユニットが会合することで、常温性シアノバクテリア野生型ルビスコよりも熱安定性が高くなるとともに、CO2識別能力も高くなった。また、逆に好熱性シアノバクテリアルビスコラージサブユニットに常温性スモールサブユニットが会合することで、熱安定性が低くなるとともに、常温性シアノバクテリア野生型ルビスコよりもCO2識別能力が低くなった。これらの結果から、シアノバクテリアルビスコにおいてスモールサブユニットが、熱安定性とCO2識別能力に関わることを明らかにし、O2反応性抑制に関与していることを明らかにした。これらの研究成果は、日本農芸化学会2018年度大会で発表を行った。研究実績の概要に記した通り、本研究目的であるルビスコのO2反応性抑制を施すための構造を明らかにしたことから、おおむね順調に進展していると自己評価した。今年度までに、好熱性シアノバクテリアルビスコが常温性シアノバクテリアのルビスコよりも熱安定性が高く、さらにO2反応性が抑制されている原因がスモールサブユニット上にあることを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-17H03964 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H03964 |
CO2固定酵素ルビスコの機能発現最適化による光合成の機能改良 | そこで今後、好熱性シアノバクテリアルビスコと常温性シアノバクテリアルビスコ間でルビスコのサブユニットをワップさせたキメラルビスコのCO2・O2親和性や反応速度などの詳細な酵素特性を解析するとともに、好熱性シアノバクテリアのルビスコスモールサブユニットのどの構造領域がこれら特性に深く関わっているのかを明らかにするために、構造活性相関解析を行う。また、ルビスコにおけるスモールサブユニットの機能を明らかにするために、スモールサブユニットを取り除いたラージサブユニットのみから構成されるルビスコを作製し、その酵素特性を解析する。シアノバクテリアルビスコの研究で得られたO2反応性技術を高等植物ルビスコへ応用するために、タバコルビスコの大腸菌機能発現系を構築し、O2反応性抑制変異を導入した変異ルビスコの酵素特性を解析する。さらに、ルビスコの活性化をルビスコアクチベースがどのように達成しているのかを明らかにするために、シアノバクテリアが有するルビスコスモールサブユニットにルビスコアクチベース様ドメインが融合した機能未知タンパク質の機能解析を行う。 | KAKENHI-PROJECT-17H03964 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H03964 |
頭部位置決めロボット椅子を用いたX線テレビによる咀嚼運動の研究 | 咀嚼運動時の顎口腔系の動態の検査にX線テレビが果たす役割は大きい。ただし、X線撮影は一般に撮影方向の規格化や撮影位置の再現性が重要であり、これまで頭位を決めるために外耳道、鼻根部、前頭部などを機械的に固定してきた。しかし、この固定は操作に時間がかかるばかりでなく、頭部の生理的な運動を拘束するという本質的な問題があった。本研究の目的は咀嚼運動時の頭部のX線テレビ撮影のために非生理的な頭部の固定無しで座位において頭位を自動的に位置決めするシステムを完成し、歯科補綴学的立場から咀嚼と顎口腔系の動態とを関連させる研究するためのものであった。研究の結果、咀嚼運動時の頭位の変化を自動的に調整できる5自由度ロボット椅子がハードおよびソフトの面において完成し、従来と比べてX線テレビ撮影が格段に効率的に行なうことができ、多くの患者に使用することができるようになった。また、頭位の規格化ができるようになっために咀嚼運動のX線テレビによる規格撮影も可能になった。さらに、顎口腔機能検査におけるデジタルサブトッラクション撮影の応用も行ないやすくなった。研究レベルでは、精度の高い顎関節部の下顎頭の運動の撮影も可能になり、その成果についてはすでにME学会などに報告した。国内外にはX線テレビの撮影時に頭位の規格化することができるこのような装置は皆無である。これから歯科補綴領域のみならず顎口腔機能の生理学的な動態診断にかかわるすべての領域に役立つ基礎的研究と考えられるので、本システムを使ったX線テレビによる研究が進展するものと期待している.なお、この頭部位置決めロボット椅子を用いて撮影した咀嚼運動,発音,下顎の運動状態のX線テレビ動画像は平成8年度の新潟大学放送公開講座「かむこと,のむこと,たべること-咀嚼の科学-」の第1回と第3回の講座でBSNテレビ放送局において昨年末に放送され、好評を得た.咀嚼運動時の顎口腔系の動態の検査にX線テレビが果たす役割は大きい。ただし、X線撮影は一般に撮影方向の規格化や撮影位置の再現性が重要であり、これまで頭位を決めるために外耳道、鼻根部、前頭部などを機械的に固定してきた。しかし、この固定は操作に時間がかかるばかりでなく、頭部の生理的な運動を拘束するという本質的な問題があった。本研究の目的は咀嚼運動時の頭部のX線テレビ撮影のために非生理的な頭部の固定無しで座位において頭位を自動的に位置決めするシステムを完成し、歯科補綴学的立場から咀嚼と顎口腔系の動態とを関連させる研究するためのものであった。研究の結果、咀嚼運動時の頭位の変化を自動的に調整できる5自由度ロボット椅子がハードおよびソフトの面において完成し、従来と比べてX線テレビ撮影が格段に効率的に行なうことができ、多くの患者に使用することができるようになった。また、頭位の規格化ができるようになっために咀嚼運動のX線テレビによる規格撮影も可能になった。さらに、顎口腔機能検査におけるデジタルサブトッラクション撮影の応用も行ないやすくなった。研究レベルでは、精度の高い顎関節部の下顎頭の運動の撮影も可能になり、その成果についてはすでにME学会などに報告した。国内外にはX線テレビの撮影時に頭位の規格化することができるこのような装置は皆無である。これから歯科補綴領域のみならず顎口腔機能の生理学的な動態診断にかかわるすべての領域に役立つ基礎的研究と考えられるので、本システムを使ったX線テレビによる研究が進展するものと期待している.なお、この頭部位置決めロボット椅子を用いて撮影した咀嚼運動,発音,下顎の運動状態のX線テレビ動画像は平成8年度の新潟大学放送公開講座「かむこと,のむこと,たべること-咀嚼の科学-」の第1回と第3回の講座でBSNテレビ放送局において昨年末に放送され、好評を得た. | KAKENHI-PROJECT-08672232 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08672232 |
北海動移住と定養過程の社会学的研究 | 上湧別屯田兵村、当麻屯田兵村の社会移動とその歴史的展開について検討し、入隊前の職業・学歴が入隊後の位階決定に大きく作用していることが判明した。明治25年時の屯田兵の社会経済的背景が詳細に解明できたことは、大きな収穫であった。しかも屯田兵解体後の社会移動に関しては、この軍隊時代の位階の影響が大きく、経済的地位の上下は、明治・大正期ともこれによって決定されていた。さらに職業間移動についても、下士官層は早い時期から頻繁に職業、地域移動を繰返し、知的労働力を求める北海道労働市場の需要に応じて、村長をはじめとする管理職部門に進出し、地域移動も周辺町村を中心に旭川・道内市部に移動している特徴があった。一方、1等兵・2等兵などの兵卒層は転業しても農業、自営業といった独立部門に進出し、職業移動は水面的で、周辺部農村への狭い地域間移動に留った。このように軍隊時代の位階に応じて両極に分れた職業間地域間移動の発見が本研究の成果であった。さらに北海道は移動型社会であるといわれているが、その実態を検討すべく、Y開放性系数を当麻屯田兵とその2世について検討したところ、0.6の開放性系数が算出され、明治・大正・昭和前期の3期間、すでに当麻が移動型社会であることが実証された。なお、これと並行して政治的地位の問題についても、歴史的検討がなされた。平川もまた屯田兵村を扱い、屯田戸主の家的側面を解明すると同時に逆に擬制的親子関係である養子制度が、動動化する屯田兵村のなかで、禁止されていた土地所有権移転を裏側からサポ-トする役割を果していたことを、検討している。さらに櫻井のライフヒストリ-研究は、北星学園女教師について詳細な事例分析をしており、一般化は今後の課題であるが、一事例を追求したことは、この面でのパイオニアとして注目されてよい。上湧別屯田兵村、当麻屯田兵村の社会移動とその歴史的展開について検討し、入隊前の職業・学歴が入隊後の位階決定に大きく作用していることが判明した。明治25年時の屯田兵の社会経済的背景が詳細に解明できたことは、大きな収穫であった。しかも屯田兵解体後の社会移動に関しては、この軍隊時代の位階の影響が大きく、経済的地位の上下は、明治・大正期ともこれによって決定されていた。さらに職業間移動についても、下士官層は早い時期から頻繁に職業、地域移動を繰返し、知的労働力を求める北海道労働市場の需要に応じて、村長をはじめとする管理職部門に進出し、地域移動も周辺町村を中心に旭川・道内市部に移動している特徴があった。一方、1等兵・2等兵などの兵卒層は転業しても農業、自営業といった独立部門に進出し、職業移動は水面的で、周辺部農村への狭い地域間移動に留った。このように軍隊時代の位階に応じて両極に分れた職業間地域間移動の発見が本研究の成果であった。さらに北海道は移動型社会であるといわれているが、その実態を検討すべく、Y開放性系数を当麻屯田兵とその2世について検討したところ、0.6の開放性系数が算出され、明治・大正・昭和前期の3期間、すでに当麻が移動型社会であることが実証された。なお、これと並行して政治的地位の問題についても、歴史的検討がなされた。平川もまた屯田兵村を扱い、屯田戸主の家的側面を解明すると同時に逆に擬制的親子関係である養子制度が、動動化する屯田兵村のなかで、禁止されていた土地所有権移転を裏側からサポ-トする役割を果していたことを、検討している。さらに櫻井のライフヒストリ-研究は、北星学園女教師について詳細な事例分析をしており、一般化は今後の課題であるが、一事例を追求したことは、この面でのパイオニアとして注目されてよい。平成2年度は、当麻、秩父別の屯田兵村を中心に移住者の定着過程と社会移動に焦点を当て、資料の収集、コンピュ-タ-への入力、デ-タクリ-ニングにエネルギ-を注力した。歴史社会学的分析がテ-マであることから、屯田兵800名、一般移住者6000名を上回るデ-タの時系列別入力には想像以上の手間を要したが、ともかく次年度4月には分析に入る手はずは整えることができた。それに加えて、すでにコンピュ-タへ入力済みの野付、牛相之内、端野の屯田兵600名、既発表の湧別屯田兵村400名との比較研究ができるようになっただけでなく、定着率の高い当麻、野付牛2兵村と、移動率が高い秩父別をはじめとする他兵村との対比による条件分析が可能となったことも大きい。特に当麻兵村では400名中約200名の入植前における持参金、学歴、職業、特技に関するデ-タが入手でき、社会移動に関する新しい解析手法の適用が期待できる。研究分担者の平川も琴似屯田兵村を手がけ、入植前後における家族的要因と擬制的「家」制度の解明に当たっている。他方、北海道移住者送出上位県の送出事情については、府県レベルの史料収集に努め、富山、石川、宮城についてはある程度の町村別デ-タを入手することができ、年次別府県統計の分析については研究分担者の都築が新しい分析手法の開発に当たっている。 | KAKENHI-PROJECT-02301020 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02301020 |
北海動移住と定養過程の社会学的研究 | また、高重は、香川県について個別研究を進め、米村は香川県手深謝のライフヒストリ-を日記分析によって進めている。ただ、ライフヒストリ-研究はさらに3ないし4ケ-スを拾い上げる必要があり、平成3年度の課題として残されている。平成3年度は、入力した当麻、秩父別のデ-タクリ-ニングに3か月を費して分析に入った。分析に際して東大計算機センタ-を活用し、できる限り新しい統計分析手法、ことに、エヴェント・ヒストリ-手法を使用して社会移動の移動率を明らかにし、さらにそれを第一次線型モデルに投入し、社会・経済的背景を究明することにした。さらに、当麻屯田兵村の開村から昭和12年に至る歴史的展開を事例分析のやり方でもって歴史社会学的に解明することにした。また、その間、当麻屯田兵の多い中国・四国各県のデ-タも収集し、屯田兵の入隊前の社会経済的背景の解明に資するよう努力した。分析に際して流通経済大学の都築助教授の協力を得た。また、当麻屯田兵村の歴史的史料の収集に北海道大学助教関孝敏の協力を得ることができた。平川は,平成2年度に調査した士族屯田兵村である琴似における戸田戸主制度と家とのかかわりを取りあげ、土地移動との養子制度に焦点をあて、養子という擬制的親子関係を設定することによって禁じられた土地の所有権移転の問題をカムラ-ジュしている実態を解明することにした。櫻井は、本年度の研究に精力を集中し、北海道移住者のライフヒストリ-の事例として北星女学校教師を取りあげ、丹念な聞取り調査を行ない。ライフコ-スとの関連で、人生の転機であるキリスト教との出会い、母の影響等を詳細に研究した。 | KAKENHI-PROJECT-02301020 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02301020 |
電波利用機器安全性評価のためのSAR推定法に関する研究 | 本年度は、昨年度に提案した誘電体内部の電磁界推定手法をもとに、より実用的な応用について検討した。具体的には、提案した手法をよりSAR評価としての実用に近い、複雑形状を持つ損失性の誘電体内部の電磁界分布の推定に適用した。まず、人体頭部の形状をしたモデルを用意し、その近傍に微小ダイポールを波源として置いた場合の電磁界シミュレーションを行った。そして、シミュレーションによって得られた誘電体外部の電磁界から内部の電磁界を推定するよう、推定法を適用した。その結果、昨年度の場合と同様、誘電体内部での電磁界損失による精度の低下が見られたが、昨年度と同様に同じ比誘電率と形状をもつ非損失性誘電体の推定値を初期値として用いる手法を適用することで、精度を改善できることを確認した。また、損失性媒質に対する精度の改善手法として、本年度はデバイスの放射電力を用いる手法を考案した。本手法は、推定する等価電流を、反射係数などの測定から得られるデバイスの放射電力と整合するよう補正する手法である。この手法は、昨年度提案した初期値を変更する手法に比べて非損失の誘電体を用意する必要がなくなり、測定がより容易になると考えられる。本年度はこの手法で、人体形状の損失性誘電体を用いた時に精度が改善できることをシミュレーションによって確認した。さらに、より高周波の場合や、測定対象の誘電体が大型となることを想定して、本年度は電磁流分布の推定高速化についても検討した。そして、Multilevel Fast Multipole Method (MLFMM)と同様の原理を用いることにより、全計算時間の多くを占める行列要素の計算高速化が可能であることを確認した。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。本研究の目的は、電磁流分布再構成法を応用した、電磁波比吸収率(SAR)の非侵襲な測定手法を開発することである。本年度は、再構成法を用いて、半波長ダイポールアンテナの近傍に設置された誘電体表面の電磁流を再構成する問題に取り組んだ。この問題では、ダイポールアンテナと誘電体によって放射・散乱される電磁波から、ダイポールアンテナを囲う閉曲面上と誘電体表面の等価電磁流分布を推定する。まず、シミュレーションにおいてダイポールアンテナの近傍に誘電体球を設置し、それらによって放射・散乱される電磁界を球面上で計算した。計算結果より、従来広く用いられていたDual Equation Formulation (DEqF)手法によって電磁流分布を再構成することを検証したが、アンテナと誘電体の間の領域において精度が著しく低下する問題を発見した。これに対し、DEqFに誘電体表面での電磁界連続条件を加える手法を考案し、同手法によって電磁流を精度よく推定することに成功した(国際会議において発表)。さらに、より安定した再構成が可能となるPMCHW形式による定式化を応用し、さらに、プローブ補正法の導入により再構成法を任意のプローブアンテナによる測定で用いることを可能とした。同手法の有効性は、シミュレーションと実測において確認した(国内学会で発表)。さらに、人体ファントムと同様、損失のある誘電体の表面電磁流分布の再構成について検討した。ここで、損失のある誘電体の場合、内部での電磁波エネルギーの吸収によって推定の精度が低下することを発見した。その解決策として、精度よく推定が行える非損失性誘電体の推定結果を推定の初期値として利用する手法を新たに考案し、損失のある誘電体球面状の電磁流分布を精度よく推定することに成功した(論文誌において発表)。本年度は、アンテナ単体からの放射電磁界から、アンテナを囲う閉曲面上の等価電磁流を再構成する手法の実装・検討を予定としていた。この目的に対し、Dual Equation Formulationを用いて再構成法を実装し、同手法によって等価電磁流が精度よく推定できることを実験・シミュレーションの両者によって確認した。さらに本年度は、よりSAR測定としての応用に近い、ダイポールアンテナ近傍に比較的単純な形状を持つ誘電体が設置された問題に取り組んだ。この問題においては、DEqFに誘電体表面の電磁界連続条件を加えることで、電磁流分布を精度よく推定することに成功した。再構成法の有効性は実験とシミュレーションにおいて確認された。また、損失のある誘電体に対しては、精度が低下する問題が発見されたが、非損失な誘電体の再構成結果を初期値として応用することで、精度の向上が実現できた。本手法の有効性はシミュレーションによって確認された。以上のように、本年度における研究活動は当初の計画以上に進展したといえる。本年度は、昨年度に提案した誘電体内部の電磁界推定手法をもとに、より実用的な応用について検討した。具体的には、提案した手法をよりSAR評価としての実用に近い、複雑形状を持つ損失性の誘電体内部の電磁界分布の推定に適用した。まず、人体頭部の形状をしたモデルを用意し、その近傍に微小ダイポールを波源として置いた場合の電磁界シミュレーションを行った。そして、シミュレーションによって得られた誘電体外部の電磁界から内部の電磁界を推定するよう、推定法を適用した。その結果、昨年度の場合と同様、誘電体内部での電磁界損失による精度の低下が見られたが、昨年度と同様に同じ比誘電率と形状をもつ非損失性誘電体の推定値を初期値として用いる手法を適用することで、精度を改善できることを確認した。また、損失性媒質に対する精度の改善手法として、本年度はデバイスの放射電力を用いる手法を考案した。 | KAKENHI-PROJECT-17J07461 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J07461 |
電波利用機器安全性評価のためのSAR推定法に関する研究 | 本手法は、推定する等価電流を、反射係数などの測定から得られるデバイスの放射電力と整合するよう補正する手法である。この手法は、昨年度提案した初期値を変更する手法に比べて非損失の誘電体を用意する必要がなくなり、測定がより容易になると考えられる。本年度はこの手法で、人体形状の損失性誘電体を用いた時に精度が改善できることをシミュレーションによって確認した。さらに、より高周波の場合や、測定対象の誘電体が大型となることを想定して、本年度は電磁流分布の推定高速化についても検討した。そして、Multilevel Fast Multipole Method (MLFMM)と同様の原理を用いることにより、全計算時間の多くを占める行列要素の計算高速化が可能であることを確認した。本年度に研究した誘電体表面の等価電磁流分布の再構成手法は、誘電体を人体ファントムに、ダイポールアンテナを通信デバイスに置き換えることによって、通信デバイスによって人体内部に発生する電磁界分布の評価に応用することができる。そのため、本研究の目的とするSAR再構成へと応用することが可能である。次年度には、これまで単純形状としていた誘電体を人体ファントムに置き換え、シミュレーション・実験により本手法の有効性をより現実的に検討する予定である。また、人体ファントムは複雑な構造をもつため、再構成手法の計算負荷が大きく上昇することが予想される。Multilevel Fast Multipole Methodなどを用いた計算負荷軽減方法などについても検討する予定である。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-17J07461 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J07461 |
国際的買収による世界市場への参入とその動学的影響 | 1.研究期間中、毎年3回以上研究ワークショップを開催し、他の予算と共催で通算30名を超える国際経済学・産業組織・経済動学の研究者を招聘して論文報告を行った。2.英文図書「Sino-Mexican TradeRelations--Challenges and Opportunities」をSpringer-Verlag社に出版する予定である。3.プロジェクトメンバーは、個別・または共同研究の両面において、研究成果を国際コンファレンスにて発表し、5年間のプロジェク期間中に、5本を越える国際学術雑誌(査読つき)に論文を掲載した。4.一部の研究成果は整理が終わる次第、学術雑誌に掲載する予定である。今年度は企業の海外買収について資料集収、事例調査、リスク分析などを行いました。特に発展途上国の企業が先進国のブランドを買収する事例から、ブランド造りの一戦略と考えて研究を行いました。不完全情報の下で、リスク面で検討すると、質のよくない企業を買収するや買収されるなど、ブランド造りにならないことがわかりました。近年、成功しているケースは、中国のLenovo社がIBMパソコンを買収、吉利社がVolvo自動車を買収、インドのTata社がJaguarを買収、トルコのYildiz社がGodivaを買収などが有名であります。また、2012年12月1日に神戸大学でThe 6^<th>、Japan-Taiwan Contract Theory Workshopを主催しました。日本と台湾から契約理論や買収などの研究を行っている学者を招聘し、論文の発表などを行いました。詳しくは下記に参照:研究代表者は今年度“International mergers and pollution concerns"について、研究を行った。最近の20年、中国の経済発展に伴い、Smogや黄砂など汚染が日本まで飛んでくる。本研究はこの現状を考慮したうえで、環境のリスクと企業の海外合弁などの関係を調べ、厚生への影響などを分析した。分担者は環境の規制などの直接投資や越境合弁への影響について、研究を行った。貿易の輸送費も考慮するうえ、規制の緩和などの政策を分析した。今年度は主にInternational mergersとmultimarket linkagesについて、研究を行ってきた。Merger後に、一つの市場だけではなく、他の関連市場にも影響が発生するので、多数市場を同時に分析することが必要になる,たとえば、最終財市場と部品市場など。また、昨年にひつ続き、越境汚染の研究も継続している。1.研究期間中、毎年3回以上研究ワークショップを開催し、他の予算と共催で通算30名を超える国際経済学・産業組織・経済動学の研究者を招聘して論文報告を行った。2.英文図書「Sino-Mexican TradeRelations--Challenges and Opportunities」をSpringer-Verlag社に出版する予定である。3.プロジェクトメンバーは、個別・または共同研究の両面において、研究成果を国際コンファレンスにて発表し、5年間のプロジェク期間中に、5本を越える国際学術雑誌(査読つき)に論文を掲載した。4.一部の研究成果は整理が終わる次第、学術雑誌に掲載する予定である。研究代表者と分担者は、この課題に関連の論文4本が英文の学術雑誌にRevise要請されて、近いうちに論文を改訂して、出版させる予定である。28年度が最終年度であるため、記入しない。国際経済学27年度は、研究代表者は中国で海外企業を合弁した企業をInterviewする予定で、研究分担者はモデルの完成と政策Implicationを究明する予定である。企業調査一部が終わって、データ整理とモデルつくり中で,Projectの全体構想はさまざまの研究会で発表している。また、Workshopも積極的に開催した。28年度が最終年度であるため、記入しない。研究分担者の残額。28年度が最終年度であるため、記入しない。しばらくの間、モデル構築に入ります。今後、今までの成果を発展し、データとcase studiesを補充して、理論モデルをもって一般的に拡大する予定である。Workshopはいつも通り積極的に開催する予定である。海外学会参加。28年度が最終年度であるため、記入しない。平成25年度経費と合わせて使用する。平成25年度は、企業の国際買収の経済モデルの構築とその分析を行うため、企業の国際買収に関する調査を行い、コンファレンス等でその研究成果に関する報告を行う予定であった。しかし、国際買収に関する国内外での調査のための準備が遅れ、調査のための旅費や謝金への支出が予定を下回った。平成26年度も引き続き、企業の国際買収の経済モデルの構築とその分析を行うため、企業の国際買収に関する調査を行い、コンファレンス等でその研究成果に関する報告を行う予定である。繰り越した研究費は、企業の国際買収に関する最新の研究の情報を収集し、それを整理するための旅費や謝金として執行する計画である。 | KAKENHI-PROJECT-24330079 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24330079 |
光ファイバーによるシンチレータ光検出の系統的研究 | 高エネルギー物理学の重要な検出器の一つであるシンチレーションカウンターは、シンチレーターからの微弱な光を適当なライトガイドを通して光電子増倍管に導くものである。この時のライトガイドとしては従来、プラスチックを棒状、板状又は特殊な加工を施したものが利用されてきたが、実験装置の複雑化と共に、ライトガイドの形態に柔軟性を持つものが求められてきている。我々は柔軟性を持つフライトガイドとして、光ファイバーに着目した。一般に、光ファイバーは、強い光を通すには適しているが、シンチレーター光のような微弱な光を通すには不向きであると思われてきた。しかしながら、我々の基礎的な研究によれば、例えば厚さ5mmくらいのシンチレータ光でも十分に通すことが出来、ライトガイドとして必要な条件を満足していることが明らかになった。この実績を基に、光ファイバーのライトガイドとしての有効性に関して、より系統的な研究を行った。主たる項目は以下の通りである。1.光ファイバーによるライトガイドの製作。2.プリアレプ、その他の電子回路の製作。3.データ収集・解析システムの開発・整備4.光ファイバー、シンチレーターの放射線損失の測定。5.光ファイバーの形状に対する出力信号変化の系統的研究。6.粒子飛行時間(TOF)カウンターとしての、時間分解能向上に対する効果の研究。これらの研究を通して、光ファイバーは、高エネルギー実験で用いられる場合、耐放射性があり、形状の変化にもあまり影響されず、有効であることがより明らかとなった。又、TOFの時間分解能向上に関しては当初予想程には明確な結果が得られず、今後さらに研究を続けたい。高エネルギー物理学の重要な検出器の一つであるシンチレーションカウンターは、シンチレーターからの微弱な光を適当なライトガイドを通して光電子増倍管に導くものである。この時のライトガイドとしては従来、プラスチックを棒状、板状又は特殊な加工を施したものが利用されてきたが、実験装置の複雑化と共に、ライトガイドの形態に柔軟性を持つものが求められてきている。我々は柔軟性を持つフライトガイドとして、光ファイバーに着目した。一般に、光ファイバーは、強い光を通すには適しているが、シンチレーター光のような微弱な光を通すには不向きであると思われてきた。しかしながら、我々の基礎的な研究によれば、例えば厚さ5mmくらいのシンチレータ光でも十分に通すことが出来、ライトガイドとして必要な条件を満足していることが明らかになった。この実績を基に、光ファイバーのライトガイドとしての有効性に関して、より系統的な研究を行った。主たる項目は以下の通りである。1.光ファイバーによるライトガイドの製作。2.プリアレプ、その他の電子回路の製作。3.データ収集・解析システムの開発・整備4.光ファイバー、シンチレーターの放射線損失の測定。5.光ファイバーの形状に対する出力信号変化の系統的研究。6.粒子飛行時間(TOF)カウンターとしての、時間分解能向上に対する効果の研究。これらの研究を通して、光ファイバーは、高エネルギー実験で用いられる場合、耐放射性があり、形状の変化にもあまり影響されず、有効であることがより明らかとなった。又、TOFの時間分解能向上に関しては当初予想程には明確な結果が得られず、今後さらに研究を続けたい。 | KAKENHI-PROJECT-63540218 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63540218 |
3.0テスラ磁気共鳴画像による細分化脳容量計測と老化 | 年齢と性によって8つのグループに分けられた健康な大人のT1強調の磁気共鳴映像は,脳体積変化を分析するために得られた.ボクセル・ベースの容積測定(VBM)において,より少ない灰白質ボリュームは,40代の女性と比較した50代の女性で,両側の海馬に観察された.しかし,男性での40代対50代,50代対60代,60代対70代の比較,女性での50代対60代,60代対70代の比較で,それを観察することはできなかった.我々の研究の結果は,閉経が海馬ボリューム縮小と関係している可能性を示唆した.年齢と性によって8つのグループに分けられた健康な大人のT1強調の磁気共鳴映像は,脳体積変化を分析するために得られた.ボクセル・ベースの容積測定(VBM)において,より少ない灰白質ボリュームは,40代の女性と比較した50代の女性で,両側の海馬に観察された.しかし,男性での40代対50代,50代対60代,60代対70代の比較,女性での50代対60代,60代対70代の比較で,それを観察することはできなかった.我々の研究の結果は,閉経が海馬ボリューム縮小と関係している可能性を示唆した.人の脳が老化することを核磁気共鳴画像(MRI)によるvoxe1-basede morphometry(VBM)を用いて検証した論文は数多く存在し,海馬の萎縮に関する報告も数多く存在するが,閉経との関係を論じたものはない.我々は,エストロゲンホルモン療法による脳神経保護作用に着目し,閉経によるエストロゲン分泌量の低下が,海馬萎縮に影響していることを示唆する報告を既に行った.これまでの先行研究では、直線、もしくは2次曲線などで近似して結果を分析しているため、ホルモン変化による影響やある年代に特異的に生じる現象を見つけ出すことができなかった.我々は、先行研究に比較し非常に多い、2000例を超える健常人画像を利用することで、狭い年齢幅での解析を可能にし、先行研究では報告されていないホルモン変化による影響などを捕らえることを第1の目的とする.また,これまでの報告のほとんどがT1強調画像を用いたものであり、T2強調画像、拡散強調画像など,異なるコントラストを持った情報を利用し,多方向から検証することを第二の目的とする.現時点で,約1600名のデータベース化が終了し,年代ごと・閉経前後を群間比較して,海馬の容積変化をMRI-TIWI画像解析から捉えた.閉経後において海馬の萎縮が加速されている現象を捉えたことで,認知症患者の割合が女性に多い原因証明の一助になると考える.また,認知機能テストの一種である指標(ミニメンタルステート検査: MMSE,ウェクスラー成人知能検査: WAIS)と容積の解析を終了し,報告準備中である.それに加え,解析手法で問題となる,装置依存性や画像前処理に関する検討も進めている.MRIを用いた健常人における脳容積と老化の関係に対するこれまでの研究手法は、直線、もしくは2次曲線などで近似して結果を分析している。サンプル数が少ない統計解析では、このような手法で結果を分析するしかなかった。しかし、我々は、膨大なサンプル数、3.0テスラ高空間分解能画像を用いて統計力を増すことで、今まで統計学的に証明できなかった脳容積変化を分析することができると考えた。そこで、40歳代から70歳代の男女における、約1400例の健常人からMRI-T1強調画像を取得し、脳容積のデータベース化を行った。その後、閉経と脳容積との因果関係をVBMにより分析したところ、他のグループ間での変化量に比較し、40歳代女性と50歳代女性のグループ間の変化量が大きく、閉経時期と関連した海馬萎縮を示唆することができた。その他の領域(前頭葉、側頭葉、小脳など)における関連性は認められなかった。3.0テスラ高空間分解能画像による、膨大な健常人画像を利用し、年代ごとにグループ分けした、これまで例がない解析手法を採用したことによりこの現象を明らかにできたと考えている。閉経と関連の深いエストロゲンと脳容積・機能に関する論文は報告されているが、閉経との関連を示唆したのは我々の報告が初めてと思われる。エストロゲンに関連した脳神経保護作用、アルツハイマー型認知症などの論文は数多く報告されているが、その関連性については議論の余地が残されているのが現状である。我々が行った研究により、この関連性を明らかにするための情報が一つ加えられたと考える。 | KAKENHI-PROJECT-20790883 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20790883 |
不安の増大要因としての否定的認知・記憶傾向を測定する検査の開発 | 〈目的〉否定的あるいは肯定的に偏った認知・記憶傾向を数量的に測定できる簡便な検査を開発することを目的として、本研究では、肯定的および否定的単語の提示と再認の課題を用いた検査を作成し、その信頼性および妥当性を検討した。〈方法と結果〉形容(動)詞191語の肯定的・否定的印象について40名の大学生に評定させ、肯定語と否定語を20語ずつ選出し、それらを半数ずつ含んだ2つの単語リストA・Bを作成した。検査は、肯定語と否定語を各10語提示し、1分後にチェックリストから10語を選択させる再認の手続きで実施した。短大生307名に、A・B2セットの検査を実施したところ、否定(肯定)語の選択率において、検査間に中程度の相関(r=0.43)が見出された。また、大学生148名に、この選択的記憶検査とCAS不安検査を併せて実施したが、両テスト間に有意な関係は見出せなかった。次に、選択的記憶への心身の状態の影響を検討するため、単語の提示から再認までの間に簡単な暗算をする緊張状態と、自律訓練法をする弛緩状態とで、大学生198名に選択的記憶検査を実施した。結果として、緊張(弛緩)状態において否定(肯定)語が有意に多く再認された(t=3.12,P<.01)。〈考察〉本研究において作成された2セットの選択的記憶検査の間に相関関係が見出されたことから、選択的記憶にはある程度一貫した個人の特性があることが示唆された。しかし、選択的記憶検査とCAS不安検査との併存的妥当性は検証されず、また、緊張状態と弛緩状態とで結果に差がみられたことから、肯定的・否定的記憶傾向は、安定した個人の特性というよりも、検査実施時の心身の状態の影響を受けやすいものであることが示された。〈目的〉否定的あるいは肯定的に偏った認知・記憶傾向を数量的に測定できる簡便な検査を開発することを目的として、本研究では、肯定的および否定的単語の提示と再認の課題を用いた検査を作成し、その信頼性および妥当性を検討した。〈方法と結果〉形容(動)詞191語の肯定的・否定的印象について40名の大学生に評定させ、肯定語と否定語を20語ずつ選出し、それらを半数ずつ含んだ2つの単語リストA・Bを作成した。検査は、肯定語と否定語を各10語提示し、1分後にチェックリストから10語を選択させる再認の手続きで実施した。短大生307名に、A・B2セットの検査を実施したところ、否定(肯定)語の選択率において、検査間に中程度の相関(r=0.43)が見出された。また、大学生148名に、この選択的記憶検査とCAS不安検査を併せて実施したが、両テスト間に有意な関係は見出せなかった。次に、選択的記憶への心身の状態の影響を検討するため、単語の提示から再認までの間に簡単な暗算をする緊張状態と、自律訓練法をする弛緩状態とで、大学生198名に選択的記憶検査を実施した。結果として、緊張(弛緩)状態において否定(肯定)語が有意に多く再認された(t=3.12,P<.01)。〈考察〉本研究において作成された2セットの選択的記憶検査の間に相関関係が見出されたことから、選択的記憶にはある程度一貫した個人の特性があることが示唆された。しかし、選択的記憶検査とCAS不安検査との併存的妥当性は検証されず、また、緊張状態と弛緩状態とで結果に差がみられたことから、肯定的・否定的記憶傾向は、安定した個人の特性というよりも、検査実施時の心身の状態の影響を受けやすいものであることが示された。 | KAKENHI-PROJECT-05710061 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05710061 |
ユニタリ群上の保型形式の数論的研究:分岐理論と大域的応用 | 1.本研究の目的は、ユニタリ群上の保型形式のフーリエ成分の数論的性質を表現論的手法を使って調べることである。即ち、調べるべき保型形式が生成する表現のホイタッカー模型の研究である。数論研究には、精緻な局所理論の研究が不可欠であるが、これは無限素点上の局所理論と有限分岐素点上のそれに分けられる。前者即ち、実Lie群U(2,1)の一般化ホイタッカー関数の明示公式及びそのゼータ積分は、既に筆者により研究されていた。後者については、p-進群U(3)の任意のgeneric表現に対して、p-進ホイタッカー関数の明示公式を経由しないゼータ積分の研究が、昨年度の成果として報告されている。本年度の研究計画は、(A)明示公式のp-進アナログの構成(B)上記の数論・分岐理論への自然な応用であった。2.(A)については、準分裂U(3)のSteinberg表現の明示項式及びそのゼータ積分による標準L-関数の分岐局所因子は、既に得られている。(B)については、ゼータ積分の局所関数等式からp-進γ-因子を同定すべく、井草局所ゼータに関連付けることで、切断のintertwinerによる像の研究を行った。これらについて、2005年12月上智大学、2006年1月数理解析研究所、2006年2月九州大学に於いて、現行方法の問題点と残された場合への拡張について近隣分野の研究者と討議した。3.将来に残された課題として、"分岐の導手"の研究がある。これについては、現在depth 0表現の場合に、有限Lie群の表現に帰着して研究する計画が進められている。1.保型形式の数論的性質を調べる上で、フーリエ展開は基本的かつ重要である。本研究の目的は、ユニタリ群U(n,1)上の保型形式のフーリエ成分を表現論的手法を使って調べることである。即ち、調べるべき保型形式が生成する表現のホイタッカー模型の研究である。数論的性質の研究には、精緻な局所理論の研究が不可欠であるが、これは無限素点上の局所理論と有限分岐素点上のそれに分けられる。前者即ち、実Lie群U(2,1)の一般化ホイタッカー関数の明示公式及び一意性定理は、既に筆者により得られていた。本年度の研究計画は、(A)p-進アナログの構成、及び分岐の考察(B)上記の数論への自然な応用であった。2.(A)については、準分裂p-進群U(3)の任意のgeneric表現に対して、ゼータ積分を計算し、標準L-関数の分岐局所因子を得た。(B)については、織田・古関両氏が10年前に行った研究を再検討・深化させることで、無限局所γ-因子、及びその局所関数等式を得、(A)と併せて標準L-関数の大域関数等式を示した。これらの結果は、2004年12月ウィーン大学、2005年1月数理解析研究所に於いて、発表された。3.将来に残された課題として、"分岐の導手"の研究がある。今回(A)に於いて、p-進ホイタッカー関数の明示公式を経由せず、その漸近挙動による方法で分岐局所因子を計算した為、当初の目論見であった"new vector"と局所ε-因子の関係の研究が残された。また、Eisenstein級数の研究については、来年度への繰越とする。1.本研究の目的は、ユニタリ群上の保型形式のフーリエ成分の数論的性質を表現論的手法を使って調べることである。即ち、調べるべき保型形式が生成する表現のホイタッカー模型の研究である。数論研究には、精緻な局所理論の研究が不可欠であるが、これは無限素点上の局所理論と有限分岐素点上のそれに分けられる。前者即ち、実Lie群U(2,1)の一般化ホイタッカー関数の明示公式及びそのゼータ積分は、既に筆者により研究されていた。後者については、p-進群U(3)の任意のgeneric表現に対して、p-進ホイタッカー関数の明示公式を経由しないゼータ積分の研究が、昨年度の成果として報告されている。本年度の研究計画は、(A)明示公式のp-進アナログの構成(B)上記の数論・分岐理論への自然な応用であった。2.(A)については、準分裂U(3)のSteinberg表現の明示項式及びそのゼータ積分による標準L-関数の分岐局所因子は、既に得られている。(B)については、ゼータ積分の局所関数等式からp-進γ-因子を同定すべく、井草局所ゼータに関連付けることで、切断のintertwinerによる像の研究を行った。これらについて、2005年12月上智大学、2006年1月数理解析研究所、2006年2月九州大学に於いて、現行方法の問題点と残された場合への拡張について近隣分野の研究者と討議した。3.将来に残された課題として、"分岐の導手"の研究がある。これについては、現在depth 0表現の場合に、有限Lie群の表現に帰着して研究する計画が進められている。 | KAKENHI-PROJECT-16740016 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16740016 |
数学的方法の活用過程に関する新しい研究方法論の開発研究:計量言語学の視点から | 数学の授業において,どのようにして学習者達に数学的方法の活用を促すことができるかを明らかにする目的で,本研究は,(A)再現性の検証可能性が確保された研究方法論の開発と,(B)その方法論に基づいた授業実践論の構築に取り組んだ.現在までのところ,そうした授業実践論を科学的に構築する方法論が十分に議論されていない.この状況を打破するためにも,科学哲学的な反省を踏まえた授業実践論の新しい研究方法論の開発が重要であると考えられる.こうした考え方の下,本年度は,研究計画に則って試験的な教授実験を繰り返し実施した.なお,当初の研究計画では,そうした試験的な教授実験を繰り返した後,翌年度にそうした教授実験の実際を反省し,研究方法論の開発に繋げる予定であった.しかし,実際に教授実験を繰り返す中で想定よりも早く研究方法論開発のアイディアが整理できたため,翌年度に予定していた研究方法論の開発についても並行して合わせて取り組んだ.結果として,本年度は次のような成果を得た.(1)具体的な教授実験として,中学2年生に対する連立方程式の指導,中学2年生に対する1次関数の指導を新たに行うとともに,本研究開始前に既に取り組んでいた中学1年生に対する1次方程式の指導,中学1年生に対する反比例の指導,中学1年生に対する数学的説明の指導の記録を改めて分析し直し,それぞれの指導内容をどのように指導することができるかについて示唆を得るとともに,研究方法論開発に向けた具体的な事例を得た.(2) (1)の成果の反省を踏まえながら考察を展開することで,研究計画段階で研究方法論のアイディアとして着目していた計量言語学的手法が,推論主義と呼ばれる新興の哲学と組み合わせることにより,単なる言語分析を越え,より有用な教育的分析として活用できるという見通しを得た.当初の研究計画では,本年度は,試験的な教授実験を繰り返し実施するだけで,具体的な研究方法論の開発は次年度以降の研究課題とする予定であった.しかしながら,研究計画書の作成段階ではまだあまり注目されていなかった推論主義と呼ばれる新しい哲学が,数学教育研究や科学教育研究,あるいは,一般の教育哲学の領域において,前年度の後半から本年度にかけて,一気に注目度を増してきた.哲学的反省を踏まえた研究方法論開発を主軸とする本研究において,そうした教育研究における哲学的研究の進展は無視できない.そのため,推論主義に関する動向を精査しながら,並行して実施していた試験的な教授実験の成果をその推論主義の視点で分析し直すこととした.本年度は,結果として,そのことが実りある成果を次々と生み出すことに繋がった.当初の研究計画では,本年度は,研究成果を7月と2月にそれぞれ投稿論文としてまとめる予定であったが,実際には投稿論文を7本執筆し,投稿にまで至ることができた.投稿した7本のうち2本を除いては現在のところまだ査読中であり,社会的評価はまだ定まっていないが,研究の進捗状況の評価としては計画以上に進展しているといっても過言ではないであろう.当初の研究計画においては,研究方法論を開発していくためのアイディアとして,計量言語学的手法に着目するという点にその多くを依拠していた.本年度,計量言語学的手法を教育分析に用いることは試験的に始めており,学会発表も行うことができた.研究計画の大筋は当初の想定通り遂行できているので,次年度も試験的な教授実験や試験的な計量言語学的分析を繰り返しながら,体系的な研究方法論を開発するための基礎資料を得ていく予定である.数学の授業において,どのようにして学習者達に数学的方法の活用を促すことができるかを明らかにする目的で,本研究は,(A)再現性の検証可能性が確保された研究方法論の開発と,(B)その方法論に基づいた授業実践論の構築に取り組んだ.現在までのところ,そうした授業実践論を科学的に構築する方法論が十分に議論されていない.この状況を打破するためにも,科学哲学的な反省を踏まえた授業実践論の新しい研究方法論の開発が重要であると考えられる.こうした考え方の下,本年度は,研究計画に則って試験的な教授実験を繰り返し実施した.なお,当初の研究計画では,そうした試験的な教授実験を繰り返した後,翌年度にそうした教授実験の実際を反省し,研究方法論の開発に繋げる予定であった.しかし,実際に教授実験を繰り返す中で想定よりも早く研究方法論開発のアイディアが整理できたため,翌年度に予定していた研究方法論の開発についても並行して合わせて取り組んだ.結果として,本年度は次のような成果を得た. | KAKENHI-PROJECT-18K13162 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K13162 |
数学的方法の活用過程に関する新しい研究方法論の開発研究:計量言語学の視点から | (1)具体的な教授実験として,中学2年生に対する連立方程式の指導,中学2年生に対する1次関数の指導を新たに行うとともに,本研究開始前に既に取り組んでいた中学1年生に対する1次方程式の指導,中学1年生に対する反比例の指導,中学1年生に対する数学的説明の指導の記録を改めて分析し直し,それぞれの指導内容をどのように指導することができるかについて示唆を得るとともに,研究方法論開発に向けた具体的な事例を得た.(2) (1)の成果の反省を踏まえながら考察を展開することで,研究計画段階で研究方法論のアイディアとして着目していた計量言語学的手法が,推論主義と呼ばれる新興の哲学と組み合わせることにより,単なる言語分析を越え,より有用な教育的分析として活用できるという見通しを得た.当初の研究計画では,本年度は,試験的な教授実験を繰り返し実施するだけで,具体的な研究方法論の開発は次年度以降の研究課題とする予定であった.しかしながら,研究計画書の作成段階ではまだあまり注目されていなかった推論主義と呼ばれる新しい哲学が,数学教育研究や科学教育研究,あるいは,一般の教育哲学の領域において,前年度の後半から本年度にかけて,一気に注目度を増してきた.哲学的反省を踏まえた研究方法論開発を主軸とする本研究において,そうした教育研究における哲学的研究の進展は無視できない.そのため,推論主義に関する動向を精査しながら,並行して実施していた試験的な教授実験の成果をその推論主義の視点で分析し直すこととした.本年度は,結果として,そのことが実りある成果を次々と生み出すことに繋がった.当初の研究計画では,本年度は,研究成果を7月と2月にそれぞれ投稿論文としてまとめる予定であったが,実際には投稿論文を7本執筆し,投稿にまで至ることができた.投稿した7本のうち2本を除いては現在のところまだ査読中であり,社会的評価はまだ定まっていないが,研究の進捗状況の評価としては計画以上に進展しているといっても過言ではないであろう.当初の研究計画においては,研究方法論を開発していくためのアイディアとして,計量言語学的手法に着目するという点にその多くを依拠していた.本年度,計量言語学的手法を教育分析に用いることは試験的に始めており,学会発表も行うことができた.研究計画の大筋は当初の想定通り遂行できているので,次年度も試験的な教授実験や試験的な計量言語学的分析を繰り返しながら,体系的な研究方法論を開発するための基礎資料を得ていく予定である.データ処理や英文校正の外部業者委託費用が,割引サービスの適用等によって当初の予定よりも格安で済ませることができた.現在,研究計画が当初の想定以上に進展しているため,当初の予定よりもさらに論文を執筆し,当初の予定以上に英文校正を受ける機会が増えると思われる.次年度使用額は,この費用に充てる. | KAKENHI-PROJECT-18K13162 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K13162 |
Subsets and Splits
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