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中空型生物酸化接蝕担体の浄化機能評価に関する研究 | 担体の材料・形状による微生物の付着性・増殖性の差異を評価し、第2に接触微生物膜の増殖特性並びに低減特性を、生物膜厚さと基質低減速度から解析し、第3に増殖微生物群の低減化機構の明確化(原生動物の役割・嫌気性分解作用など)を視覚的に捉えて定量化し、必要担体量や形状に関する合理的な設計基準の作成に寄与することを目指した。第1点については、基礎実験を実施し、別添報告書のごとく、7種類の単体について昨日を評価し、成果を論文にまとめ、審査中である。第2点については、人工下水を用いた実験から、汚泥の増殖速度、担体からの剥離速度、自己分解速度並びに浮遊性汚泥の増減の挙動について、これら因子の相互関連を解析し、具体的な数値でそれぞれの機能を表示し、成果を論文としてまとめ、審査中である。第3点については、最終報告書に記載のごとく、付着生物が増殖する担体の顕微鏡写真を撮り、接触担体上に生育する汚泥の脱水素酵素活性を計測するための汚泥の染色法を活用し、活性のある汚泥の存在場所を特定し、かつ存在量を定量化する努力を試み、把握が困難な付着性汚泥量を定量化する手法の開発を進めた。これらにより、生物接触担体のあるべき姿や付着微生物量を定量化するための基礎技術を開発出来たものと思う。 | KAKENHI-PROJECT-16560486 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16560486 |
ポテンシャル傾斜型樹状球形高分子を活用した新しい光増感触媒の開発 | 長寿命電荷分離への挑戦人工電荷分離系として未踏の長寿命電荷分離状態達成に向けて、亜鉛ポルフィリンをコアに持つフェニルアゾメチンデンドリマーの高世代化を試みた。コアユニットを従来のフェニルポルフィリン型からビフェニルポルフィリン型へと拡張することによって高収率で第5世代の合成に成功した。以上は剛直タイプデンドリマーの高世代化に向けた合成戦略として極めて重要な位置付けであり、新規なDense-Shell型高分子の設計指針としても大きな意味を持つ。本デンドリマーを光増感剤として光誘起電子移動により電荷分離形成を試みた結果、見かけ寿命は15msまで到達した。新しい光増感触媒としての展開亜鉛ポルフィリンを励起色素とした色素増感型光導電素子を作製し、本デンドリマーの電荷分離機能に基1づく光増感特性について検証を行った。バインダー樹脂(ポリカーボネート)にデンドリマー及び電子輸送担体を均一分散して製膜し、膜厚、電子ドリフト移動度、相分離などの条件を一定化することによって、各世代デンドリマーにおける光導電特性より、キャリア(電子)発生効率の定量的評価を実施した。結果として明確な高世代化に伴う高効率化(第4世代で20倍)が観測され、本デンドリマーが光増感能の向上に大きく寄与できることが判明した。バインダー樹脂を排した超薄膜(d=30nm)の作製にも成功し、極めて高速応答かつ高感度の光応答デバイス作製に成功した。本研究で得られた知見は、光導電素子のみならず、有機薄膜太陽電池等のエネルギー変換素子の高効率化へも大きな可能性を示唆している。既に確認されている、亜鉛ポルフィリンがコアのフェニルアゾメチンデンドリマーを用いた長寿命・高効率の電荷分離について、その原理検証を行う目的で新たにナフタレンジイミドをコアに持つデンドリマーを合成した。同定はNMR、MALDI-TOF-MSより行った。UV-visスペクトルを用いた滴定実験により、従来のデンドリマーと同様に内側の層からの段階的な錯形成が進行することを確認した。本デンドリマーに亜鉛ポルフィリンを添加し、光励起に伴うデンドロンを隔てた電子移動を生起させた場合、長寿命を達成しているポルフィリンコアの系とは逆向きの電子透過をすることになる。このようにして生成した電荷分離状態(ラジカルイオン対)の寿命・量子収率はポルフィリンコアの系に比べて下回った。電子移動速度定数の定量的な評価より、デンドリマーの世代数増加に伴い、ポルフィリンコアの系では電荷分離を促進し、逆にナフタレンジイミドコアの系では抑制する効果を突き止めた。以上の結果は当初予想していたデンドリマーの電子密度勾配による、電荷分離の方向制御を支持する。また、分子軌道計算より求めたイミン窒素上の電子密度(Mulliken Charge Population)は内側から外側への段階的で連続的な勾配を示した。すなわち、電子密度の勾配と電荷分離の向きが揃った順勾配の系では大幅に電荷分離が促進され、反対向きとなった逆勾配の系では抑制されることが明らかとなった。この電荷分離は特定のアニオン種(Cl^-,Br^-等)の共存によっても促進される。この効果は配位性の強いアニオンが電荷分離によって生成したカチオンラジカルデンドリマーに包摂され、安定化される効果であると考えられる。長寿命電荷分離への挑戦人工電荷分離系として未踏の長寿命電荷分離状態達成に向けて、亜鉛ポルフィリンをコアに持つフェニルアゾメチンデンドリマーの高世代化を試みた。コアユニットを従来のフェニルポルフィリン型からビフェニルポルフィリン型へと拡張することによって高収率で第5世代の合成に成功した。以上は剛直タイプデンドリマーの高世代化に向けた合成戦略として極めて重要な位置付けであり、新規なDense-Shell型高分子の設計指針としても大きな意味を持つ。本デンドリマーを光増感剤として光誘起電子移動により電荷分離形成を試みた結果、見かけ寿命は15msまで到達した。新しい光増感触媒としての展開亜鉛ポルフィリンを励起色素とした色素増感型光導電素子を作製し、本デンドリマーの電荷分離機能に基1づく光増感特性について検証を行った。バインダー樹脂(ポリカーボネート)にデンドリマー及び電子輸送担体を均一分散して製膜し、膜厚、電子ドリフト移動度、相分離などの条件を一定化することによって、各世代デンドリマーにおける光導電特性より、キャリア(電子)発生効率の定量的評価を実施した。結果として明確な高世代化に伴う高効率化(第4世代で20倍)が観測され、本デンドリマーが光増感能の向上に大きく寄与できることが判明した。バインダー樹脂を排した超薄膜(d=30nm)の作製にも成功し、極めて高速応答かつ高感度の光応答デバイス作製に成功した。本研究で得られた知見は、光導電素子のみならず、有機薄膜太陽電池等のエネルギー変換素子の高効率化へも大きな可能性を示唆している。 | KAKENHI-PROJECT-17750134 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17750134 |
カーボンナノチューブのTHz光領域の光学応答とTHz光発生・検出に関する研究 | 高純度に分離精製された半導体および金属単層カーボンナノチューブにおいて、THz光領域から紫外光領域までの吸収スペクトルの測定を行った。金属カーボンナノチューブでは0.06eV付近に幅の広い吸収帯が観測された。これは、金属単層カーボンナノチューブがバンドルを作ることによって生じた擬ギャップや、アームチェア型以外の「金属」チューブが持つ小さなギャップがその起源であることが考えられる。一方、高純度半導体試料でも同様のエネルギー値にピークを持つ幅の広い吸収帯が観測されたが、その起源は金属チューブと異なり、ナノチューブ中の欠陥によるギャップ内遷移によるものと考えられる。高純度に分離精製された半導体および金属単層カーボンナノチューブにおいて、THz光領域から紫外光領域までの吸収スペクトルの測定を行った。金属カーボンナノチューブでは0.06eV付近に幅の広い吸収帯が観測された。これは、金属単層カーボンナノチューブがバンドルを作ることによって生じた擬ギャップや、アームチェア型以外の「金属」チューブが持つ小さなギャップがその起源であることが考えられる。一方、高純度半導体試料でも同様のエネルギー値にピークを持つ幅の広い吸収帯が観測されたが、その起源は金属チューブと異なり、ナノチューブ中の欠陥によるギャップ内遷移によるものと考えられる。今年度は、1)3次非線形感受率の測定、2)単層カーボンナノチューブの位相緩和時間の測定、3)THz領域の光学スペクトル測定、を行った。1.単層カーボンナノチューブがバンドル状になっている薄膜試料や、孤立しているミセル化試料について、3次の光学非線形感受率χ^<(3)>の測定を行い、孤立化している試料では、バンドル試料に比べて性能指数Imχ^<(3)>/αが一桁以上大きいことを明らかにした。また、性能指数にはチューブ直径依存性があり、直径の大きなチューブほど大きな値を示すことを明らかにした。2.単層カーボンナノチューブの位相緩和時間(T_2)の測定を行った。位相緩和時間には、試料依存性、温度依存性、励起光強度依存性があった。孤立試料ではバンドル試料に比べて長い位相緩和時間を示した。また、高温、強励起下ほど短い位相緩和時間になった。温度依存性や励起光強度依存性は、位相緩和時間が励起子-格子相互作用や励起子-励起子相互作用によって支配されていることを示している。また、非線形性能指数の増大に位相緩和時間も関わっていることがわかった。3. 95%以上の高純度で分離された半導体および金属ナノチューブの薄膜を作製して、その紫外、可視、近赤外およびTHz領域の吸収スペクトルの測定を行った。THz領域では金属チューブが半導体チューブに比べて大きな吸収を示したが、その振る舞いは単純なDrudeモデルでは説明できないことがわかった。今年度は、1)高純度分離試料の緩和時間の測定、および、2)高純度分離試料のTHz領域の光学スペクトル測定、を行った。1.高純度分離単層カーボンナノチューヴ薄膜試料において、ポンプ・プローブ分光法および縮退四光波混合法により、単層カーボンナノチューブの分布緩和時間(T_1)、位相緩和時間(T_2)の測定を行った。特に、孤立チューブとバンドル試料の緩和時間を比較し、バンドル試料ではチューブ間の緩和が緩和ダイナミクスに重要な寄与をしていることを明らかにした。また、半導体高純度試料中でのチューブ間緩和と周りを金属チューブで取り囲まれた半導体チューブの緩和を比較することにより、半導体-半導体チューブ間、および半導体-金属チューブ間の緩和を測定した。その結果、半導体-金属間の緩和が、半導体間に比べて大きいことがわかった。2.95%以上の高純度で分離された半導体および金属ナノチューブの薄膜の吸収スペクトルを1meVから6eVまでの広い範囲で測定した。金属チューブにはTHz領域に大きな吸収帯があらわれた。この振る舞いは、単純なDrudeモデルや、微小金属が誘電対中に存在するときに現れる局在表面プラズモン共鳴では説明できず、理論的に予測されていた非アームチェアー型金属チューブ固有の小さなバンドギャップや、金属チューブがバンドルを作ることによって現れる偽ギャップによる効果であると考えられる。単層カーボンナノチューブのテラヘルツ(THz)光領域の光学応答を調べ、単層カーボンナノチューブをパルスTHz光の発生や検出へと応用するための基礎的な知見を得ることを目的として研究を行った。研究期間(平成20年度22年度)に得られた結果は以下のとおりである。1)金属と半導体を分離させた高品質な薄膜を作製し、それ近赤外可視光領域の吸収スペクトルから、試料の評価を行った。その結果、95%以上の純度で金属と半導体を分離した高品質な薄膜試料を得ることに成功した。2)上記試料の赤外領域のスペクトルを測定するために、FTIR、FT-FIRを用いた吸収スペクトル測定と、時間分解THz分光測定を行い、これらの試料の広帯域吸収スペクトルを得た。この結果、金属試料では0.06eV付近に幅の広い吸収帯が観測された。これは、金属単層カーボンナノチューブがバンドルを作ることによって生じた擬ギャップや、アームチェア型以外の「金属」チューブが持つ小さなギャップがその起源であることが考えられる。一方、高純度半導体試料でも同様のエネルギー値にピークを持つ幅の広い吸収帯が観測されたが、その起源は金属チューブと異なり、ナノチューブ中の欠陥によるギャップ内遷移によるものと考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-20540321 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20540321 |
カーボンナノチューブのTHz光領域の光学応答とTHz光発生・検出に関する研究 | 3)高純度半導体薄膜上に高周波スパッタにより金電極を付け、THz光伝導アンテナを試作した。半導体単層カーボンナノチューブの第2遷移の吸収帯(800nm)にフェムト秒パルス光を入射させることにより、伝導度が変化することを確認した。しかし、アンテナ電極間の抵抗値が十分に高くなく、実際にTHz光の発生を確認するには至らなかった。 | KAKENHI-PROJECT-20540321 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20540321 |
自閉スペクトラム症の児童にソーシャルシンキングは教えられるか? | 本研究は、知的障害のない自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder: ASD)に対して児童期から実施できる、ソーシャルシンキングのプログラムの開発を行い、その有効性を検討することを目的とする。ソーシャルシンキングとは、米国でミシェル・ガルシア・ウィナーによって開発され、人が他者と関わる際にどのようにふるまうべきかについて考えることであり、また、自分自身のふるまい方に他者が与える影響、自身の言動に対する他者の応答、および自分自身の感情、について考えるための枠組みである。心の理論の障害、中枢性統合の脆弱性、実行機能の障害など、ASDの認知障害仮説に基づき、楽しいアクティビティを通してスモールステップで体験的にソーシャルシンキングを指導するための多様なカリキュラムがある。本研究では、それら多様なカリキュラムを参考にしながら、他者の視点取得について基軸となるものを抽出し、パッケージ化する。本研究において、2018年度に開発したプログラムは、1回90分全6回で構成され、46名の少人数グループで実施する。セラピストは、リーダーが1名、コリーダーが2名の計3名である。『きみはソーシャル探偵』(ミシェル・ガルシア・ウィナー著,稲田・三宅訳,2016)の絵本あるいは作成したワークシートを用いて、また各回の内容に応じたグループワークやゲームを取り入れながら、授業形式で実施する。2018年度は、ASDの児童4名を対象として予備的な検討を実施し、ワークシートおよび実施マニュアルの改訂を行い、2019年度の本試験の準備が整った。ソーシャルシンキングのプログラムの効果検証のための本試験は2019年度に予定しており、2018年度は当初の計画通り、プログラムを開発し、予備調査を実施し、本試験への準備が整った。2018年度は、ソーシャルシンキングの中核的なガイドラインである「Thinking About You and Thkinking About Me」の日本語翻訳が完了した(稲田・黒田監訳,2018)。これにより、共同研究者や研究協力者にもソーシャルシンキングの概念の共有が容易になった。2018年度は、ソーシャルシンキング以外にプログラムの中に他者の視点取得を促す内容を知るために、PEERSプログラムの研修に参加した。複数の指導方略を検討した上で、1回90分全5回で構成され、46名の少人数グループで実施するプログラムを開発した。小学4年生および小学5年生の4名(男:女=1:3)を対象として、予備的に全5回を実施した。プログラム実施後、参加児童およびその保護者からはポジティブな意見・感想・報告があった。その結果、ワークシートや実施マニュアルの改良点が明確になり、修正を行った。効果判定の指標の選定は完了し、対象同定のための自閉症診断検査第2版(Autism Diagnostic Observation Schedule Second Edition:pectrum disorderADOS-2)の実施者養成も順調に進展している。2019年度の本試験に向けて、準備がおおむね整った。2019年度は、開発したプログラムの本試験を実施し、その有効性を検討することが目的となる。(方法)参加者:介入群は病院や障害児支援施設より紹介を受ける予定で、12名程度。対照群も同数予定している。手続き:1回90分で全5回とする。帝京大学または関連研究施設で実施する。効果判定指標:プログラムの前後および1ヶ月後に、保護者に対人応答性尺度(Social Responsiveness Scale:SRS)を実施する。児童に各回の理解度を尋ねるとともに、ソーシャルシンキングダイナミックアセスメントを実施する。ソーシャルシンキングダイナミックアセスメントとは、他者の視点取得スキルについてのインフォーマルなアセスメント手法であり、プログラムに関連する部分を抽出して実施する。効果判定が、フォーマルアセスメント、インフォーマルアセスメントの両側面からなされることにより、より多面的な評価が可能となる。本研究は、知的障害のない自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder: ASD)に対して児童期から実施できる、ソーシャルシンキングのプログラムの開発を行い、その有効性を検討することを目的とする。ソーシャルシンキングとは、米国でミシェル・ガルシア・ウィナーによって開発され、人が他者と関わる際にどのようにふるまうべきかについて考えることであり、また、自分自身のふるまい方に他者が与える影響、自身の言動に対する他者の応答、および自分自身の感情、について考えるための枠組みである。心の理論の障害、中枢性統合の脆弱性、実行機能の障害など、ASDの認知障害仮説に基づき、楽しいアクティビティを通してスモールステップで体験的にソーシャルシンキングを指導するための多様なカリキュラムがある。本研究では、それら多様なカリキュラムを参考にしながら、他者の視点取得について基軸となるものを抽出し、パッケージ化する。本研究において、2018年度に開発したプログラムは、1回90分全6回で構成され、46名の少人数グループで実施する。セラピストは、リーダーが1名、コリーダーが2名の計3名である。『きみはソーシャル探偵』(ミシェル・ガルシア・ウィナー著,稲田・三宅訳,2016)の絵本あるいは作成したワークシートを用いて、また各回の内容に応じたグループワークやゲームを取り入れながら、授業形式で実施する。2018年度は、ASDの児童4名を対象として予備的な検討を実施し、ワークシートおよび実施マニュアルの改訂を行い、2019年度の本試験の準備が整った。ソーシャルシンキングのプログラムの効果検証のための本試験は2019年度に予定しており、2018年度は当初の計画通り、プログラムを開発し、予備調査を実施し、本試験への準備が整った。 | KAKENHI-PROJECT-18K13212 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K13212 |
自閉スペクトラム症の児童にソーシャルシンキングは教えられるか? | 2018年度は、ソーシャルシンキングの中核的なガイドラインである「Thinking About You and Thkinking About Me」の日本語翻訳が完了した(稲田・黒田監訳,2018)。これにより、共同研究者や研究協力者にもソーシャルシンキングの概念の共有が容易になった。2018年度は、ソーシャルシンキング以外にプログラムの中に他者の視点取得を促す内容を知るために、PEERSプログラムの研修に参加した。複数の指導方略を検討した上で、1回90分全5回で構成され、46名の少人数グループで実施するプログラムを開発した。小学4年生および小学5年生の4名(男:女=1:3)を対象として、予備的に全5回を実施した。プログラム実施後、参加児童およびその保護者からはポジティブな意見・感想・報告があった。その結果、ワークシートや実施マニュアルの改良点が明確になり、修正を行った。効果判定の指標の選定は完了し、対象同定のための自閉症診断検査第2版(Autism Diagnostic Observation Schedule Second Edition:pectrum disorderADOS-2)の実施者養成も順調に進展している。2019年度の本試験に向けて、準備がおおむね整った。2019年度は、開発したプログラムの本試験を実施し、その有効性を検討することが目的となる。(方法)参加者:介入群は病院や障害児支援施設より紹介を受ける予定で、12名程度。対照群も同数予定している。手続き:1回90分で全5回とする。帝京大学または関連研究施設で実施する。効果判定指標:プログラムの前後および1ヶ月後に、保護者に対人応答性尺度(Social Responsiveness Scale:SRS)を実施する。児童に各回の理解度を尋ねるとともに、ソーシャルシンキングダイナミックアセスメントを実施する。ソーシャルシンキングダイナミックアセスメントとは、他者の視点取得スキルについてのインフォーマルなアセスメント手法であり、プログラムに関連する部分を抽出して実施する。効果判定が、フォーマルアセスメント、インフォーマルアセスメントの両側面からなされることにより、より多面的な評価が可能となる。2018年度は所属先の異動により、研究協力体制の再構築にやや時間を要したため、人件費の使用開始が遅れた。一方で、2019年度は、本試験を実施するため、研究をコーディネートする科研費研究員相当の雇用が必要と考え、2018年度後期からは次年度を見据え、人件費を使用せずに計画的に繰り越した。よって、2019年度は繰り越し分と当初予定していた予算と合わせ、今年度は満額使用予定である。また旅費に関しては、予定していた海外の学会参加も次男(当時4歳)の急病により参加を見送った(キャンセル料は自己負担)。 | KAKENHI-PROJECT-18K13212 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K13212 |
ジフルオロシクロプロパンを鍵中間体とする環境調和型物質変換法の創製 | 有機分子に一つまたは二つのフッ素、あるいはフルオロアルキル基を導入すると、ユニークな機能、物性の発現が期待できることから、含フッ素化合物の医薬、農薬等の生理活性物質、あるいは特徴ある機能を持った有機材料への応用が期待されており、ファインケミカルズや材料科学の分野での有機フッ素化学の利用が近年、益々活発になってきている。しかし、一般の有機合成化学の著しい進展に比べ、含フッ素有機分子の効率的な合成法の開発はまだ充分ではない。それはフッ素の強い電子求引性のため、含フッ素化合物の合成には炭素と水素の化学として発展してきた有機化学の従来の方法論はそのままでは使えない場合が多く、また出発原料となる工業一次製品である含フッ素化合物の種類も極めて限られているためである。そこで、含フッ素化合物の合成研究においては、限られた出発物質の多様な活性化とそれを活用した合成法の開発、複雑な分子を合成するための合成中間体(合成ブロック)の構築が求められているところである。このような観点から、含フッ素反応活性種の新しい創出法の開発やそれらの活性種の反応の制御の仕方を明らかにしながら、有機フッ素化合物合成の基本体系の確立を日指した研究を行ってきた。具体的には、ハロジフルオロアルカン酸およびその誘導体を出発原料として有用な合成ブロックとして期待される含フッ素シクロプロパン誘導体を合成し、さらにそれを鍵中間体として、フッ素の特異性とシクロプロパン環の高い歪みエネルギーの特異性を充分活かすことに基づいた種々のより付加価値の高い有機フッ素化合物への変換法を開発した。ここで出発原料として用いたハロジフルオロアルカン酸は安全で取り扱いが容易であり、環境保全の立場から好ましい含フッ素化合物である。有機分子に一つまたは二つのフッ素、あるいはフルオロアルキル基を導入すると、ユニークな機能、物性の発現が期待できることから、含フッ素化合物の医薬、農薬等の生理活性物質、あるいは特徴ある機能を持った有機材料への応用が期待されており、ファインケミカルズや材料科学の分野での有機フッ素化学の利用が近年、益々活発になってきている。しかし、一般の有機合成化学の著しい進展に比べ、含フッ素有機分子の効率的な合成法の開発はまだ充分ではない。それはフッ素の強い電子求引性のため、含フッ素化合物の合成には炭素と水素の化学として発展してきた有機化学の従来の方法論はそのままでは使えない場合が多く、また出発原料となる工業一次製品である含フッ素化合物の種類も極めて限られているためである。そこで、含フッ素化合物の合成研究においては、限られた出発物質の多様な活性化とそれを活用した合成法の開発、複雑な分子を合成するための合成中間体(合成ブロック)の構築が求められているところである。このような観点から、含フッ素反応活性種の新しい創出法の開発やそれらの活性種の反応の制御の仕方を明らかにしながら、有機フッ素化合物合成の基本体系の確立を日指した研究を行ってきた。具体的には、ハロジフルオロアルカン酸およびその誘導体を出発原料として有用な合成ブロックとして期待される含フッ素シクロプロパン誘導体を合成し、さらにそれを鍵中間体として、フッ素の特異性とシクロプロパン環の高い歪みエネルギーの特異性を充分活かすことに基づいた種々のより付加価値の高い有機フッ素化合物への変換法を開発した。ここで出発原料として用いたハロジフルオロアルカン酸は安全で取り扱いが容易であり、環境保全の立場から好ましい含フッ素化合物である。有機分子に一つまたは二つのフッ素、あるいはフルオロアルキル基を導入すると、ユニークな機能、物性の発現が期待できることから、含フッ素化合物の医薬、農薬等の生理活性物質、あるいは特徴ある機能を持った有機材料への応用が期待されており、ファインケミカルズや材料科学の分野での有機フッ素化学の利用が近年、益々活発になってきている。しかし、一般の有機合成化学の著しい進展に比べ、含フッ素有機分子の効率的な合成法の開発はまだ充分ではない。それはフッ素の強い電子求引性のため、含フッ素化合物の合成には炭素と水素の化学として発展してきた有機化学の従来の方法論はそのままでは使えない場合が多く、また出発原料となる工業一次製品である含フッ素化合物の種類も極めて限られているためである。このような観点から、我々は入手容易で安全な試薬であるハロジフルオロアルカン酸およびその誘導体を出発原料とした反応の開発を行ってきた。本科学研究費による研究ではクロロジフルオロアルカン酸を出発原料として有用な合成ブロックとして期待される含フッ素シクロプロパン誘導体を合成し、さらにそれを鍵中間体として、種々のより付加価値の高い有機フッ素化合物への変換法の検討を行った。まず、フェニル基とホルミル基が置換したジフルオロシクロプロパンの合成を行った。このジフルオロシクロプロパンのホルミル基を反応点として、ケイ素ラジカルとの反応を行い、反応溶液を求電子剤で処理したところ、シクロプロパン環の開裂とともにラジカル種と求電子種が同時に導入された生成物が得られた。この結果を基に含フッ素シクロプロパンの新しい合成ブロックとしての地位の確立を目指している。シクロプロパンは最小員環炭化水素として様々な有機化学的特徴を有しており、これまでに多くの有機化学的研究が行われてきた。しかし、gem-ジフルオロシクロプロパンの合成と反応に関する研究例は少なく、まだ未開拓なところ、魅力的なところが多数残っている。そこで、フッ素の特異性とシクロプロパン環の高い歪みエネルギーの特異性を充分活かすことに基づいた新しいタイプの有用有機反応の開発を行った。本研究ではまず,種々の置換基を有するフェニル基とホルミル基が置換したジフルオロシクロプロパンの合成を行った。 | KAKENHI-PROJECT-14540547 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14540547 |
ジフルオロシクロプロパンを鍵中間体とする環境調和型物質変換法の創製 | このジフルオロシクロプロパンのホルミル基を反応点として、ケイ素ラジカルとの反応を行い、反応溶液を求電子剤で処理したところ、シクロプロパン環の開裂とともにラジカル種と求電子種が同時に導入された生成物が得られた。すなわち、本反応を利用することにより、カルボニル基のβ位に二つのフッ素原子を有する化合物が容易に合成できるようになった。また、反応条件を変えることにより、フッ素原子を一つ有するα、β不飽和アルデヒドやケトンも合成できた。カルボニル基はさらに他の官能基への変換が可能であることから、ここで合成された化合物は種々の含フッ素化合物の合成中間体となる。有機化合物のある特定部位をフッ素で置換すると、フッ素の極性、疎水性、立体的要因から、他の元素からでは得られない非常にユニークな生理活性、物性、機能性等を発現できることが期待できることから、ここで開発したジフルオロ、モノフルオロ有機分子の合成法は有機材料やファインケミカルの分野の応用が期待できる。 | KAKENHI-PROJECT-14540547 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14540547 |
液晶ディスプレーを用いた光学画像処理装置を応用した固液界面の高分解能電顕観察 | 固液界面の原子構造を直接的に観察するには、高分解能電子顕微鏡法が最も有力な方法であるが、この方法では目的の試料がマトリックス中に埋め込まれていると、目的物質の結晶格子像とマトリックスの結晶格子像が重なって観察されてしまう。そこで、得られた高分解能像をフーリエ変換し、不要な物質の逆格子点を取り除き、逆フーリエ変換するという方法がある。これまでこの方法は、デジタルコンピュータを用いて行われてきたが、その場観察に必要な変換速度が得られなかった。これに対して光学変換を用いて行う方法があり、近年の液晶ディスプレイデバイス(LCD)の発展により非常に安価な装置を用いて同等の機能が構成できる可能性が出てきた。この方法の優れた点は、画像の処理にほとんど時間を必要とせずその場観察に応用できる点である。本研究ではLCDを用いて光学変換機能を持つシステムを開発した。その結果(1)LCDを用いて、高分解能電子顕微鏡像のフーリエ変換を行うことに成功した。(2)そのフーリエ変換像を逆フーリエ変換して、実空間像に戻すことに成功した。これにより、高分解能電子顕微鏡像のその場フーリエ変換と、それに操作を加えて実空間像に戻すために必要な技術的開発が完成した。しかし、開発過程で様々な問題点が明らかになった。光学変換像は、光学系の球面収差等に敏感で、これらの影響が大きく出てしまい、十分な解像度が得られなかった。また、光学系を支える、専用のフレームを用いなかったので、軸ずれによる光学系の非点収差が拡大してしまった。市販されている高密度、多画素LCDすべて、カラー用のもので単色光であるレーザー光を用いると、実効画素数が3分の1に減ってしまい、十分な回折角が得にくいことがわかった。これらの問題点は、予算が当初申請額の3分の2に圧縮されたので、当初計画していた部品を購入することが出来ず、すべて1ランク下の部品を用いなければなかったことに起因している。このため、光学レンズはジャンク部品を用いねばならず、光学系を支える、専用のフレームを作成するだけの予算がなかった。その結果、当初設計の性能には至らなかった。しかし、今回用いた部品は、すべて安価な家庭用日用品であり、この程度の部品で基礎実験として十分な成果が得られた。それぞれに関して、専用の部品を調達することが出来れば、実用的な性能を発揮する装置を作ることが出来ることが実証された。固液界面の原子構造を直接的に観察するには、高分解能電子顕微鏡法が最も有力な方法であるが、この方法では目的の試料がマトリックス中に埋め込まれていると、目的物質の結晶格子像とマトリックスの結晶格子像が重なって観察されてしまう。そこで、得られた高分解能像をフーリエ変換し、不要な物質の逆格子点を取り除き、逆フーリエ変換するという方法がある。これまでこの方法は、デジタルコンピュータを用いて行われてきたが、その場観察に必要な変換速度が得られなかった。これに対して光学変換を用いて行う方法があり、近年の液晶ディスプレイデバイス(LCD)の発展により非常に安価な装置を用いて同等の機能が構成できる可能性が出てきた。この方法の優れた点は、画像の処理にほとんど時間を必要とせずその場観察に応用できる点である。本研究ではLCDを用いて光学変換機能を持つシステムを開発した。その結果(1)LCDを用いて、高分解能電子顕微鏡像のフーリエ変換を行うことに成功した。(2)そのフーリエ変換像を逆フーリエ変換して、実空間像に戻すことに成功した。これにより、高分解能電子顕微鏡像のその場フーリエ変換と、それに操作を加えて実空間像に戻すために必要な技術的開発が完成した。しかし、開発過程で様々な問題点が明らかになった。光学変換像は、光学系の球面収差等に敏感で、これらの影響が大きく出てしまい、十分な解像度が得られなかった。また、光学系を支える、専用のフレームを用いなかったので、軸ずれによる光学系の非点収差が拡大してしまった。市販されている高密度、多画素LCDすべて、カラー用のもので単色光であるレーザー光を用いると、実効画素数が3分の1に減ってしまい、十分な回折角が得にくいことがわかった。これらの問題点は、予算が当初申請額の3分の2に圧縮されたので、当初計画していた部品を購入することが出来ず、すべて1ランク下の部品を用いなければなかったことに起因している。このため、光学レンズはジャンク部品を用いねばならず、光学系を支える、専用のフレームを作成するだけの予算がなかった。その結果、当初設計の性能には至らなかった。しかし、今回用いた部品は、すべて安価な家庭用日用品であり、この程度の部品で基礎実験として十分な成果が得られた。それぞれに関して、専用の部品を調達することが出来れば、実用的な性能を発揮する装置を作ることが出来ることが実証された。 | KAKENHI-PROJECT-07750749 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07750749 |
J.S.ミル研究 | J・S・ミルの『論理学体系』(1843年)の研究を集中的に行った。具体的には、ミルが『論理学』の中で構想したものの未完に終わったエソロジー(性格学)について、思想体系を念頭に置きながら、その意義を検討する研究を行った。これまでの研究においては、性格学は、経済学との関連で言及されることが多かった。たしかに経済学における応用的役割(現実を考慮した理論の修正)は、性格学の重要な役割のひとつであったが、そのような議論はしばしば、それが性格学の主要な目的であったという主張に横滑りしがちであった。申請者の見解では、性格学の重要性は、そのような役割にとどまらないものであり、この科学は、いわゆる「精神の危機」後のミルの人間観から引き出され、思想体系のなかで重要な意義を持つべきものであった。このような観点から具体的には以下の3点について考察した。第一に、『論理学』をその出版以前からのミルの性格形成理論への関心との関連で検討することで、性格学と、その前提となる人間観や社会観との連関を考察した。第二に、コントとの文通を検討することで、性格学が、直接的にはコントとの論争において社会静学の基礎として構想されたことを明らかにし、思想体系における位置づけを考察した。第三に、この科学に表現されたミルの実践的な問題意識を、人間観や社会観との連関を考慮しつつ、明らかにした。性格学は社会静学の基礎を担うことからだけでなく、より実践的な点からも重要な科学であった。つまりそれは、教育の科学的基礎をも担うべきものであった。この研究の成果に基づき以下の口頭発表を行い、さらに論文としてまとめる予定である。・経済学史学会全国大会2003年5月24日於京都同志社大学「J・S・ミルのエソロジーについて」・日本公益(功利)主義学会2003年7月13日於大阪大阪歯科大学「J・S・ミルと性格形成の科学」また論文「J・S・ミルとアメリカ-思想形成期における意義-」、『思想』(岩波書店、2003年9月号)を発表した。今年度の補助金は、上記の研究を遂行するための、主に(1)ミル研究および、関連する近代イギリス社会思想に関する書物の購入、(2)ロンドン大学におけるミルに関する文献・資料の収集および調査、に充てられた。今年度は、J・S・ミルの『論理学体系』(1843年)出版以前の思想形成期の研究を集中的に行い論文として公表した。今年度の補助金は、主に(1)ミル研究および、関連する近代イギリス社会思想に関する書物の購入、(2)連合王国ロンドン大学におけるミルに関する文献・資料の収集および調査、(3)情報機器の購入、に充てられた。執筆した論文は、「J・S・ミルと文明の概念」および「J・S・ミルとアメリカ-思想形成期における意義」である。前者では、1830年代に獲得され、その後一貫してミルの社会認識の基礎を提供した「文明」概念の形成過程とその意義について論じた。文明という概念は、当時のヨーロッパ思想界においてしばしば用いられたタームであったが、思想家によって内実が大きく異なるものであった。そこでミルの文明概念を、その形成過程における他の思想家からの影響関係から検討するとともに、成立した文明概念を他の代表的な思想家のものと比較することで、その独自の意義を明確にすることができた。本論文は、『調査と研究』(京都大学)25号、2002年10月、に掲載された。後者では、同じく、1830年代のミルの議論のうち、ミルが文明社会認識を獲得する上で重要な素材となったアメリカについての議論を、文明概念やデモクラシー概念との関わりから論じるとともに、その認識を同時代の文脈の中で詳細に検討することで、その独自なアメリカ観の特徴と意義を抽出することができた。すなわち、ミルはアメリカとイギリスの共通点と差異に着目することで、貴族なきデモクラシーであるアメリカは多数の暴政に傾斜する危険を持つが、イギリスは貴族が多数の暴政への防波堤となることで、むしろアメリカ以上にデモクラシーに適合的な状態にある、という特徴的な議論を展開することで、多数の暴政を引き合いに出していた改革反対派に対抗し、改革支持の論陣を張っていたことを明らかにした。本論文は、『思想』(岩波書店)に2003年中に掲載されることが決定している。J・S・ミルの『論理学体系』(1843年)の研究を集中的に行った。具体的には、ミルが『論理学』の中で構想したものの未完に終わったエソロジー(性格学)について、思想体系を念頭に置きながら、その意義を検討する研究を行った。これまでの研究においては、性格学は、経済学との関連で言及されることが多かった。たしかに経済学における応用的役割(現実を考慮した理論の修正)は、性格学の重要な役割のひとつであったが、そのような議論はしばしば、それが性格学の主要な目的であったという主張に横滑りしがちであった。申請者の見解では、性格学の重要性は、そのような役割にとどまらないものであり、この科学は、いわゆる「精神の危機」後のミルの人間観から引き出され、思想体系のなかで重要な意義を持つべきものであった。このような観点から具体的には以下の3点について考察した。第一に、『論理学』をその出版以前からのミルの性格形成理論への関心との関連で検討することで、性格学と、その前提となる人間観や社会観との連関を考察した。 | KAKENHI-PROJECT-02J01315 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02J01315 |
J.S.ミル研究 | 第二に、コントとの文通を検討することで、性格学が、直接的にはコントとの論争において社会静学の基礎として構想されたことを明らかにし、思想体系における位置づけを考察した。第三に、この科学に表現されたミルの実践的な問題意識を、人間観や社会観との連関を考慮しつつ、明らかにした。性格学は社会静学の基礎を担うことからだけでなく、より実践的な点からも重要な科学であった。つまりそれは、教育の科学的基礎をも担うべきものであった。この研究の成果に基づき以下の口頭発表を行い、さらに論文としてまとめる予定である。・経済学史学会全国大会2003年5月24日於京都同志社大学「J・S・ミルのエソロジーについて」・日本公益(功利)主義学会2003年7月13日於大阪大阪歯科大学「J・S・ミルと性格形成の科学」また論文「J・S・ミルとアメリカ-思想形成期における意義-」、『思想』(岩波書店、2003年9月号)を発表した。今年度の補助金は、上記の研究を遂行するための、主に(1)ミル研究および、関連する近代イギリス社会思想に関する書物の購入、(2)ロンドン大学におけるミルに関する文献・資料の収集および調査、に充てられた。 | KAKENHI-PROJECT-02J01315 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02J01315 |
モノクロナール抗体を用いた新しい糸球体腎炎進行因子の同定 | 進行性腎炎に共通する腎細胞反応に関連した抗原分子(腎炎進展因子)を同定する為に、ヒト糸球体細胞で免疫したBALB/Cマウスより腎炎組織と特異的に反応するモノクロナール抗体(MAb)作製を試み以下の結果を得た。1)MAb、1F3の作製と腎炎における1F3分子の免疫組織学的変化の検討ヒト糸球体細胞で免疫したBALB/Cマウスよりクローン1F3を選別した.1F3が認識する抗原分子(1F3分子)は、正常腎では糸球体上皮とボウマン嚢上皮の細胞膜表面にのみ存在するが、重症の腎炎では線維性半月体細胞や尿細管萎縮細胞に1F3分子が強く発現していることが観察された。特に尿細管萎縮の程度と尿細管1F3分子の発現の程度は、統計学的に密接に関連していた(P<0.001)。2)1F3分子の生化学的・生物学的特徴の検討ヒト単離糸球体を用いた1F3で免疫沈降法を行ったところ、1F3分子は分子量125KDaのシングルポリペプチド(還元下条件)であることが判明した。ついで1F3結合immuno-affinity columnにてその1F3分子を精製し、気相シークエンサーにてN末端アミノ酸配列を分析した。19個のアミノ酸配列が得られ既知の分子とのホモロジー検索の結果、1F3分子はヒトインテグリンα3サブユニットのN末端アミノ酸配列に酷似していた。3)腎炎患者の血液、尿中の腎炎進展因子の質的、量的変化の検索腎炎診断法の確立を目的として、腎炎患者から同意を得た上で採血した血液、尿中の1F3分子をELISA法にて測定した。健常人の尿中の1F3分子レベルを正常コントロール値とすると、紫斑病腎炎、急性腎炎の尿中には高レベルの1F3分子が排泄されていた。慢性腎炎の代表疾患であるIgA腎症の一部にも有為な1F3分子の排泄増加を確認した。血中の1F3分子は健常人並びに腎炎患者共にELISA法では検出できなかった。今後、腎炎での組織障害の程度と尿中1F3分子レベルとの関係を検討し臨床診断法への応用を目指したい。進行性腎炎に共通する腎細胞反応に関連した抗原分子(腎炎進展因子)を同定する為に、ヒト糸球体細胞で免疫したBALB/Cマウスより腎炎組織と特異的に反応するモノクロナール抗体(MAb)作製を試み以下の結果を得た。1)MAb、1F3の作製と腎炎における1F3分子の免疫組織学的変化の検討ヒト糸球体細胞で免疫したBALB/Cマウスよりクローン1F3を選別した.1F3が認識する抗原分子(1F3分子)は、正常腎では糸球体上皮とボウマン嚢上皮の細胞膜表面にのみ存在するが、重症の腎炎では線維性半月体細胞や尿細管萎縮細胞に1F3分子が強く発現していることが観察された。特に尿細管萎縮の程度と尿細管1F3分子の発現の程度は、統計学的に密接に関連していた(P<0.001)。2)1F3分子の生化学的・生物学的特徴の検討ヒト単離糸球体を用いた1F3で免疫沈降法を行ったところ、1F3分子は分子量125KDaのシングルポリペプチド(還元下条件)であることが判明した。ついで1F3結合immuno-affinity columnにてその1F3分子を精製し、気相シークエンサーにてN末端アミノ酸配列を分析した。19個のアミノ酸配列が得られ既知の分子とのホモロジー検索の結果、1F3分子はヒトインテグリンα3サブユニットのN末端アミノ酸配列に酷似していた。3)腎炎患者の血液、尿中の腎炎進展因子の質的、量的変化の検索腎炎診断法の確立を目的として、腎炎患者から同意を得た上で採血した血液、尿中の1F3分子をELISA法にて測定した。健常人の尿中の1F3分子レベルを正常コントロール値とすると、紫斑病腎炎、急性腎炎の尿中には高レベルの1F3分子が排泄されていた。慢性腎炎の代表疾患であるIgA腎症の一部にも有為な1F3分子の排泄増加を確認した。血中の1F3分子は健常人並びに腎炎患者共にELISA法では検出できなかった。今後、腎炎での組織障害の程度と尿中1F3分子レベルとの関係を検討し臨床診断法への応用を目指したい。進行性腎炎に共通する腎細胞反応に関連した抗原分子(腎炎進展因子)を同定する為に、ヒト糸球体細胞で免疫したBALB/Cマウスより腎炎組織と特異的に反応するモノクロナール抗体(MAb)作製を試み以下の結果を得た。ヒト糸球体細胞で免疫したBALB/Cマウスより、蛍光抗体法(1F)にて進行する腎炎に見られる半月体形成細胞や尿細管萎縮細胞と特異的に反応するクローン1F3を選別した。1F3が認識する抗原分子(1F3分子)は、正常腎では糸球体上皮とボウマン嚢上皮の細胞膜表面に存在し、他の腎構成成分や諸臓器には発現は見られず極めて臓器・組織特異性の高い分子であった。2)腎炎における1F3分子の免疫組織学的変化の検討種々の小児腎炎組織を用い、1Fや免疫電顕法にて1F3分子の存在様式や量的変化を詳細に検討した結果、重症の腎炎に見られる線維性半月体細胞や尿細管萎縮細胞に1F3分子が強く発現していることが観察された。 | KAKENHI-PROJECT-08670894 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08670894 |
モノクロナール抗体を用いた新しい糸球体腎炎進行因子の同定 | 特に尿細管萎縮の程度と尿細管1F3分子の発現の程度は、統計学的に密接に関連していた(P<0.001)。3)1F3分子の生化学的・生物学的特徴の検討ヒト単離糸球体を^<35>S-methionineにて代謝標識した後可溶化し1F3で免疫沈降法を行ったところ、1F3分子は分子量125KDaのシングルポリペプチド(還元下条件)であることが判明した。ついで培養ヒト糸球体細胞の可溶化上清より1F3結合immuno-affinity columnにてその1F3分子を精製し、これを膜フィルターに転写し気相シークエンサーにてN末端アミノ酸配列を分析した。19個のアミノ酸配列が得られ既知の分子とのホモロジー検索の結果、1F3分子はヒトインテグリンα3サブユニットのN末端アミノ酸配列に酷似していた。今後、培養ヒト糸球体細胞よりcDNAライブラリーを作製し、1F3分子のアミノ酸配列より求めたオリゴヌクレオチドや1F3抗体をプローブとして1F3分子を規定する全cDNAクローニングを行なうと共に、尿中1F3分子の排泄量を1F3抗体を用いたELISA法にて測定し腎病変との関係を検討する予定である。進行性腎炎に共通する腎細胞反応に関連した抗原分子(腎炎進展因子)を同定する為に、ヒト糸球体細胞で免疫したBALB/Cマウスより腎炎組織と特異的に反応するモノクロナール抗体(MAb)、1F3を作製し、1F3が認識する分子の生化学的解析を行うと共に腎炎患者の尿中1F3分子の測定を試み以下の結果を得た。1)MAb,1F3が認識する腎炎進展因子(1F3分子)の生化学的解析ヒト単離糸球体を1F3を用いた免疫沈降法で分析した結果、1F3分子は分子量125KDaのポリペプチドであることが判明した。ついで1F3結合immuno-affinity columnにてその1F3分子を精製したあと、膜フィルターに転写し気相シークエンサーにてN末端のアミノ酸配列を分析した。19個のアミノ酸配列が得られ、この結果に基づき既知の分子とのホモロジー検索を行ったところ、1F3分子はヒトインテグリンα3サブユニットのN末端アミノ酸配列に酷似していた。2)腎炎患者の血液、尿中の腎炎進展因子の質的、量的変化の検索非侵襲的な腎炎診断法の確立を目的として、腎炎患者から同意を得た上で採取した血液、尿中の1F3分子をELISA法にて測定した。健常人の尿中の1F3分子レベルを正常コント-ロル値とすると、紫斑病腎炎、急性腎炎の尿中には高レベルの1F3分子が排泄されていた。慢性腎炎の代表疾患であるIgA腎症の一部にも有為な1F3分子の排泄増加を確認した。血中の1F3分子は健常人並びに腎炎患者共にELISA法では検出できなかった。今後、腎炎での組織障害の程度と尿中1F3分子レベルとの関係を検討し臨床診断法への応用を目指したい。 | KAKENHI-PROJECT-08670894 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08670894 |
肝発癌に寄与する肝炎ウイルス変異と宿主多様性 | 肝炎ウイルス感染から肝癌への進展には著しい個人差があり,それにはウイルス側・宿主側の両因子が関与している.本研究では,肝炎ウイルス変異の解析と共に,宿主側因子,特に炎症・線維化に関わるサイトカイン遺伝子の調節領域に存在するSNPの解析により,肝病態進展,特に肝発癌リスクの個人差を解明し,実際の治療に貢献することを目的としている.本研究の実績として,1)インフォームドコンセントが得られたB型およびC型肝炎患者白血球DNAサンプルを約1,000名分収集し,臨床データなどを含むSNP解析用データベースを構築し,約500名分を匿名化処理した.また,新たな匿名化処理方法についても考案した.2)B型肝癌患者におけるB型肝炎ウイルス塩基配列,特にHBx遺伝子の塩基配列につき解析した結果,日本人に最も多いゲノタイプCにおいて,HBxのコドン38のアミノ酸置換が肝癌と有意に関連していることを見出した.3)のべ約40症例のC型肝炎ウイルスコア遺伝子塩基配列を決定し,インターフェロン治療例において,コア蛋白のC端側のアミノ酸置換がNF-κBを介したインターロイキン8プロモーターの活性化能を変化させ,肝炎の活動度を規定することを明らかにした.4)C型肝炎ウイルスコア蛋白,B型肝炎ウイルスX蛋白,デルタ型肝炎ウイルスLHDAgが宿主である肝細胞,特にシグナル伝達機構に及ぼす影響を明らかにした.5)280症例のC型肝炎患者につき,サイトカイン,代謝酵素遺伝子多型につき解析し,インターロイキン1β遺伝子プロモーター領域の-31とUGT1A7遺伝子の低活性ハプロタイプが肝癌と関連していることを見出した.6)376症例の輸血歴を有するC型肝炎患者につき,172遺伝子,394SNPsの解析を行い,肝癌と関連している遺伝子群を見出し,肝癌関連ハプロタイプを同定した.肝炎ウイルス感染から肝癌への進展には著しい個人差があり,それにはウイルス側・宿主側の両因子が関与している.本研究では,肝炎ウイルス変異の解析と共に,宿主側因子,特に炎症・線維化に関わるサイトカイン遺伝子の調節領域に存在するSNPの解析により,肝病態進展,特に肝発癌リスクの個人差を解明し,実際の治療に貢献することを目的としている.本研究の実績として,1)インフォームドコンセントが得られたB型およびC型肝炎患者白血球DNAサンプルを約1,000名分収集し,臨床データなどを含むSNP解析用データベースを構築し,約500名分を匿名化処理した.また,新たな匿名化処理方法についても考案した.2)B型肝癌患者におけるB型肝炎ウイルス塩基配列,特にHBx遺伝子の塩基配列につき解析した結果,日本人に最も多いゲノタイプCにおいて,HBxのコドン38のアミノ酸置換が肝癌と有意に関連していることを見出した.3)のべ約40症例のC型肝炎ウイルスコア遺伝子塩基配列を決定し,インターフェロン治療例において,コア蛋白のC端側のアミノ酸置換がNF-κBを介したインターロイキン8プロモーターの活性化能を変化させ,肝炎の活動度を規定することを明らかにした.4)C型肝炎ウイルスコア蛋白,B型肝炎ウイルスX蛋白,デルタ型肝炎ウイルスLHDAgが宿主である肝細胞,特にシグナル伝達機構に及ぼす影響を明らかにした.5)280症例のC型肝炎患者につき,サイトカイン,代謝酵素遺伝子多型につき解析し,インターロイキン1β遺伝子プロモーター領域の-31とUGT1A7遺伝子の低活性ハプロタイプが肝癌と関連していることを見出した.6)376症例の輸血歴を有するC型肝炎患者につき,172遺伝子,394SNPsの解析を行い,肝癌と関連している遺伝子群を見出し,肝癌関連ハプロタイプを同定した.肝炎ウイルス感染から肝癌への進展には著しい個人差があり,それにはウイルス側・宿主側の両因子が関与している.本研究では,肝炎ウイルス変異の解析と共に,宿主側因子,特に炎症・線維化に関わるサイトカイン遺伝子の調節領域に存在するSNPの解析により,肝病態進展、特に肝発癌リスクの個人差を解明し,実際の治療に貢献することを目的としている.本年度の実績として,1.インフォームドコンセントが得られたB型およびC型肝炎患者白血球DNAサンプルを約580名分収集し,臨床データなどを含むSNP解析用データベースを構築し,385名分を匿名化処理した.2.B型肝癌患者におけるB型肝炎ウイルス塩基配列の解析を開始した.特にHBx遺伝子の塩基配列につき優先して解析している.ゲノタイプ別のアミノ酸置換に加え,新たにグルーピング可能なアミノ酸置換を同定した.3.のべ約40症例のC型肝炎ウイルスコア遺伝子塩基配列を決定後,コア遺伝子を発現ベクターにクローニングし,インターロイキン8プロモーターの活性化能につき比較検討した.コア蛋白のC端側のアミノ酸置換により,NF-κBを介したインターロイキン8プロモーターの活性化能が変化し,しかも病態と関連することを明らかにした.4.280症例のC型肝炎患者につき,インターロイキン1β,インターロイキン1レセプターアンタゴニスト,TNFα,UGT1A7遺伝子多型につき解析し,インターロイキン1β遺伝子-31とUGT1A7遺伝子のコドン129/131が肝癌と密接に関連していることを見出した.5.185症例の輸血歴を有するC型肝炎患者につき,新たに300か所以上のSNP解析を開始した. | KAKENHI-PROJECT-14570449 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14570449 |
肝発癌に寄与する肝炎ウイルス変異と宿主多様性 | 今後,B型肝炎においては主にウイルス側因子を,C型肝炎においては主に宿主側因子の解析を展開させていく予定である肝炎ウイルス感染から肝癌への進展には著しい個人差があり,それにはウイルス側・宿主側の両因子が関与している.本研究では,肝炎ウイルス変異の解析と共に,宿主側因子,特に炎症・線維化に関わるサイトカイン遺伝子の調節領域に存在するSNPの解析により,肝病態進展,特に肝発癌リスクの個人差を解明し,実際の治療に貢献することを目的としている.平成15年度の実績として,1)インフォームドコンセントが得られたB型およびC型肝炎患者白血球DNAサンプルを新たに約400名分,合計約1,000名分収集し,臨床データなどを含むSNP解析用データベースを構築し,新たに約120名分,合計約500名分を匿名化処理した.また,新たな匿名化処理方法についても考案した.2)B型肝癌患者におけるB型肝炎ウイルス塩基配列,特にHBx遺伝子,プレコアストップコドン,コアプロモーターの塩基配列につき解析した.その結果,日本人に最も多いゲノタイプCにおいて,HBxのコドン38のアミノ酸置換が肝癌と有意に関連していることを見出した.3)C型肝炎ウイルスコア蛋白,B型肝炎ウイルスX蛋白,デルタ型肝炎ウイルスLHDAg,A型肝炎ウイルスVP3蛋白が宿主である肝細胞,特にシグナル伝達機構に及ぼす影響を明らかにした.4)280症例のC型肝炎患者につき,サイトカイン,代謝酵素遺伝子多型につき解析し,インターロイキン1β遺伝子プロモーター領域の-31とUGT1A7遺伝子の低活性ハプロタイプが肝癌と関連していることを見出した.5)376症例の輸血歴を有するC型肝炎患者につき,172遺伝子,394SNPsの解析を行い,肝癌と関連している遺伝子群を見出し,肝癌関連ハプロタイプを同定した. | KAKENHI-PROJECT-14570449 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14570449 |
中心体数制御異常を通じたボーエン病の病態形成メカニズムの解析とモデルマウスの作製 | 中心体は母・娘中心小体と中心体周辺物質から構成されるオルガネラであり、1細胞周期あたり1回のみ複製されるように厳密にコントロールされている。中心体複製のコントロールが外れ、ゲノムDNAの複製周期と中心体の複製周期が乖離すると、多極分裂や細胞質分裂異常が生じ、複製したゲノムを正確に娘細胞に分配することができなくなり、癌細胞の発生または悪性化を招くと考えられている。今回、娘中心小体を特異的に染色する抗体を作成し、ヒトボーエン病臨床検体において、母・娘中心小体を別々に染色することに成功した。結果、ボーエン病組織において中心体複製異常が存在することが明らかとなった。母・娘中心小体がそれぞれほぼ同数増えていたことから、ボーエン病組織における中心体複製異常が細胞質分裂の失敗により起こっていることが示唆された。さらに、ボーエン病モデルマウスとして、中心体制御キナーゼであるAurora Aの皮膚特異的過剰発現マウスを作成した。本欠損マウスでは、基底細胞層に多核の細胞を生じ、その多核細胞では中心体の複製異常が観察され、ボーエン病の組織学的異常を反映したモデルマウスであると考えられた。中心体は母・娘中心小体と中心体周辺物質から構成されるオルガネラであり、1細胞周期あたり1回のみ複製されるように厳密にコントロールされている。中心体複製のコントロールが外れ、ゲノムDNAの複製周期と中心体の複製周期が乖離すると、多極分裂や細胞質分裂異常が生じ、複製したゲノムを正確に娘細胞に分配することができなくなり、癌細胞の発生または悪性化を招くと考えられている。今回、娘中心小体を特異的に染色する抗体を作成し、ヒトボーエン病臨床検体において、母・娘中心小体を別々に染色することに成功した。結果、ボーエン病組織において中心体複製異常が存在することが明らかとなった。母・娘中心小体がそれぞれほぼ同数増えていたことから、ボーエン病組織における中心体複製異常が細胞質分裂の失敗により起こっていることが示唆された。さらに、ボーエン病モデルマウスとして、中心体制御キナーゼであるAurora Aの皮膚特異的過剰発現マウスを作成した。本欠損マウスでは、基底細胞層に多核の細胞を生じ、その多核細胞では中心体の複製異常が観察され、ボーエン病の組織学的異常を反映したモデルマウスであると考えられた。ボーエン病組織を用いた免疫組織染色にて、中心体制御マスターキナーゼであるAuroraAキナーゼの発現変化について検討した。多核のclumping cellにおいてAurora Aキナーゼの過剰発現が見られた。一方、多核化していない腫瘍細胞および正常ケラチノサイトではAurora Aキナーゼの発現は見られなかった。次にこれらの細胞での中心体数異常について検討を加えた。正常ケラチノサイトおよび多核化していない腫瘍細胞においては中心体数の異常は見られなかったが、clumping cellではほぼ必ず中心体数の増加が見られた。すなわち、clumping cell出現のメカニズムとして、細胞質分裂の失敗による多核化と多中心体化が起こっている事が強く示唆された。一方、様々な細胞周期制御蛋白質の異常について、ボーエン病病理組織を用いた組織染色により検討した。検討した16のボーエン病組織の約半数ではRb+p53-の一層の基底細胞様の細胞と、Rb-p53+の有棘細胞様の細胞の2種類の細胞から腫瘍が構成されているパターンが見られた。残り半数ではRb+p53-の基底細胞様の細胞が見られず、ほぼ全ての腫瘍細胞がRb-p53+であった。しかしp53が+ではあるもののp53の下流にあるp21も+であり、p53は機能を失っていないと考えられた。一方、p16染色ではほぼ全ての腫瘍細胞が陽性に染まっており、ボーエン病腫瘍細胞はcell senescenceの状態にあると考えられた。中心体は母・娘中心小体と中心体周辺物質から構成されるオルガネラであり、1細胞周期あたり1回のみ複製されるように厳密にコントロールされている。中心体複製のコントロールが外れ、ゲノムDNAの複製周期と中心体の複製周期が乖離すると、多極分裂や細胞質分裂異常が生じ、複製したゲノムを正確に娘細胞に分配することができなくなり、癌細胞の発生または悪性化を招くと考えられている。今回、娘中心小体を特異的に染色する抗体を作成し、ヒトボーエン病臨床検体において、母・娘中心小体を別々に染色することに成功した。結果、ボーエン病組織において中心体複製異常が存在することが明らかとなった。母・娘中心小体がそれぞれほぼ同数増えていたことから、ボーエン病組織における中心体複製異常が細胞質分裂の失敗により起こっていることが示唆された。さらに、これまで臨床検体中の各細胞がどのような細胞周期にあるかを調べる適当な方法は存在しなかったが、今回の母・娘中心子染色法により、1つ1つの細胞が、G1期、SG2期、G2後期のどの細胞周期にあるかをヒト臨床検体中で区別することを可能とした。本手法はボーエン病のみならず、様々なガン組織に応用可能な方法である。さらに、ボーエン病モデルマウスとして、中心体制御キナーゼであるAurora Aの皮膚特異的欠損マウスを作成した。本欠損マウスでは、基底細胞層に多核の細胞を生じ、その多核細胞では中心体の複製異常が観察され、ボーエン病の組織学的異常を反映したモデルマウスであると考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-20591330 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20591330 |
ロシア国家経済文書館所蔵機密解除ソ連経済資料の調査と研究 | 1.研究課題本研究プロジェクトは、ロシア国家経済文書館との国際共同研究である。3カ年計画の出発点において二つの課題が設定されている。同文書館所蔵の1993年に機密解禁されたソ連邦国家経済文書を実地に調査と資料収集を行うこと、および、これらの資料を用いてソ連社会主義の実体解明を行うことである。2.実地調査と資料収集ロシア国家経済文書館の全面的な協力を得て、平成12年14年、毎年約2週間、ソ連社会主義研究の第1級の資料であるソ連邦中央統計局資料、ソ連邦国家計画委員会資料、ソ連邦財務省資料を中心にして資料調査と収集を行った。収集した資料は総計10万点前後になると思われる。ロシア連邦レベルの国家文書館との直接の協力関係も、ソ連邦時代の国家機密資料の実地調査も、そしてその大がかりな収集も、日本ではおそらく珍しい事例である。3.ソ連社会主義の国際共同研究ロシア国家経済文書館資料にもとづいたソ連社会主義の次の実証研究に取り組んだ。(1)ロシア国家経済文書館とソ連国家経済資料、(2)ソ連中央アジア諸国の産業発展過程、(3)両大戦間期北樺太石油コンセッションと日露関係、(4)中央アジアの石油・天然ガスパイプライン配備状況とソ連邦崩壊後の問題、(5)ロシアソヴェト連邦農業人民委員部の農業発展展望計画と計画化の最初の経験、(6)ソ連自動車工業における接収ドイツ製設備・科学技術成果の利用、(7)ネップ期ロシアにおける貨幣税制改革、(8)ソ連統計の史的再検討。1.研究課題本研究プロジェクトは、ロシア国家経済文書館との国際共同研究である。3カ年計画の出発点において二つの課題が設定されている。同文書館所蔵の1993年に機密解禁されたソ連邦国家経済文書を実地に調査と資料収集を行うこと、および、これらの資料を用いてソ連社会主義の実体解明を行うことである。2.実地調査と資料収集ロシア国家経済文書館の全面的な協力を得て、平成12年14年、毎年約2週間、ソ連社会主義研究の第1級の資料であるソ連邦中央統計局資料、ソ連邦国家計画委員会資料、ソ連邦財務省資料を中心にして資料調査と収集を行った。収集した資料は総計10万点前後になると思われる。ロシア連邦レベルの国家文書館との直接の協力関係も、ソ連邦時代の国家機密資料の実地調査も、そしてその大がかりな収集も、日本ではおそらく珍しい事例である。3.ソ連社会主義の国際共同研究ロシア国家経済文書館資料にもとづいたソ連社会主義の次の実証研究に取り組んだ。(1)ロシア国家経済文書館とソ連国家経済資料、(2)ソ連中央アジア諸国の産業発展過程、(3)両大戦間期北樺太石油コンセッションと日露関係、(4)中央アジアの石油・天然ガスパイプライン配備状況とソ連邦崩壊後の問題、(5)ロシアソヴェト連邦農業人民委員部の農業発展展望計画と計画化の最初の経験、(6)ソ連自動車工業における接収ドイツ製設備・科学技術成果の利用、(7)ネップ期ロシアにおける貨幣税制改革、(8)ソ連統計の史的再検討。本研究は、日本の旧ソ連経済・ロシア経済の研究者とロシア国家経済文書館による国際共同研究である。その課題は二つである。一つは、同館所蔵の機密解禁されて間もない中央統計局資料とゴスプラン資料についてそのコンテンツ調査と資料リスト整備を行うこと。もう一つは、ソ連社会主義の枠組みが形成・確立された1920年代と30年代に基本的な研究視点を据えて、これら資料に依拠してソ連型計画化とその社会経済的特質、工業化戦略とその地域展開の特質、戦前期日露関係などについて共同研究を実施することである。平成12年度は、共同研究態勢編成強化と旧ソ連邦アジア部調査に主力が傾注された。1平成12年8月に、日本側研究者4名がモスクワを訪問して、資料調査と研究打ち合わせを行った。滞在期間を通して、共通研究課題、個人別研究課題、研究成果の発表時期と公表スタイルなどをめぐる緊張した討論が続けられた。2モスクワから新たに2名の研究協力者を得ることができ、研究陣容が強固となった。すでにロシア語による2本の研究報告が提出済みである。3平成12年10月下旬から11月初旬にかけてモスクワから2名が訪日して、共同研究と研究打ち合わせを実施した。滞在期間中に「ロシア国家経済文書館所蔵国家資料の機密解除とソ連社会主義再検討の可能性」をテーマにして、一橋大学と岡山大学の二カ所で国際セミナーを開催し、ロシア側参加者2名が問題提起報告を行った。また、再度、共同研究の深化と展開促進をめぐって討論を行った。本研究は、ロシア国家経済文書館との共同研究プロジェクトである。1.日本側研究者4名がモスクワを訪問してロシア国家経済文書館の全面的な協力のもとに資料の調査と収集を行った。同時に、研究課題、研究スタイル、研究成果の公表スタイルなどをめぐる緊張した討論が昨年同様に行われた。2.ロシア国家経済文書館からA・ミニューク氏を日本へ招聘して、共同研究と研究打ち合わせを実施した。あわせて、公開セミナーを岡山大学と一橋大学の二カ所で開催した。ミニューク氏の本共同研究による新知見の提示は、参加した日本側専門研究者の大きな関心を引いた。 | KAKENHI-PROJECT-12572018 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12572018 |
ロシア国家経済文書館所蔵機密解除ソ連経済資料の調査と研究 | ミニューク氏は、ソ連邦の巨大な工業生産力と軍事力を支えた国産運搬手段の製造技術と製造設備に対するドイツの自動車製造技術と接収設備の関与を明らかにした。同時に、アメリカの自動車製造技術の与えたインパクトをあわせ明らかにした。3.文書館所蔵資料の調査・収集作業に平行して、同資料に依拠する研究が進められている。自動車産業に関するミニューク氏の研究,(A4版76枚)、国民経済計画化の初期経験としての1920年代の農業経済発展計画に関するチューリナ女史の研究(A4版72枚)、村上隆氏による石油利権を通したネップ期の利権問題の研究(A4版35枚)が提出された。4.第3年度目の平成14年度は、文書館における資料調査収集作業を継続しつつ、資料研究による研究論考を全員が完成し公表することを課題としている。1.課題本研究プロジェクトは、ロシア国家経済文書館との国際共同研究である。その課題は、同文書所蔵の機密解禁されたソ連邦中央統計局資料とソ連邦国家計画委員会資料についてその調査・収集・目録作成を行うこと、および、ソ連社会主義が形成確立された1920年代と30年代に焦点を当てて、これら資料に依拠してソ連型計画化の実際とその社会経済的特質について今日的視点から再考することの二つである。2.資料の調査・収集平成14年8月に、ロシア国家経済文書館を訪問して資料の調査収集と研究打ち合せを行った。ロシア国家経済文書舘の新副館長ジョークテフ博士が共同研究に加わることになった。3.収集資料の研究運用、資料開示、目録検索3年間にロシア国家経済文書館で調査し複写入手した多量の資料はすべて再複製して源河研究室、西村研究室、村上研究室、岩崎研究室に配置され運用されている。それとは別途に、研究分担者西村可明教授が本研究プロジェクトに先行して収集してきた同文書舘資料と含めて一橋大学経済研究所資料室で閲覧に供している。また、フォンド第1562のソ連邦中央統計局資料についてはパソコンによる検索運用が可能となっている。4.研究課題の実施平成14年11月2日10日、ジョークテフ氏が来日して、岡山大学と一橋大学の二カ所で国際ワークショップを開催した。「ネップ湖ロシアにおける貨幣・税制改革」をテーマとして行った氏の報告は、ネップの多重構造の社会経済的特質を緻密に描写していて、従来のどのネップ観とも異なる。本研究プロジェクトの課題である「ソ連社会主義の再検討」へのアプローチの新境地を開くものである。個別に発表され始めた各人の研究論考とは別途に成果を学術図書として刊行することを課題としている。 | KAKENHI-PROJECT-12572018 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12572018 |
現職教員と連携した「主権者教育」教材作成プログラム | 本研究の大きな目標は、1主権者教育の教材不足を解消するために、現場教員と連携して「主権者教育教材」を作成する。2教育現場で課題となっている「中立」性の担保、「教員の発言の範囲」など、主権者教育推進上ネックとなっている問題を理論的に解決する。の2点である。初年度は、主権者教育に関する課題等を調査し、理論的な解決策を研究することを目標に、イギリスの「シティズンシップ教育(特に、シティズンシップ教育の「ナショナルカリキュラム化」や「論争問題へのアプローチ」)、ドイツの「政治教育(特に、「ボイテルスバッハ・コンセンサスの理論的背景」「ボイテルスバッハ・コンセンサスの具体的運用状況」)の現状を視察した。研究2年目にあたる本年度は、主権者教育に造詣の深い研究者から「主権者教育教材に適した材料や話題の提供」を受け、教材作成を行った。具体的には、「主権の行使と民主主義との関係」「立憲主義と選挙権」などのテーマについて、研究者から高校生を対象とした「主権者教育教材」向けの話題の提供を応募者や現職教員(研究協力者)が受け、内容を「教材」化し、出来上がった教材を研究者とともに主権者教育教材として適切か検討・修正を行う「主権者教育教材作成ワークショップ」を3回実施した。招聘した研究者は、佐々木毅東京大学名誉教授、宍戸常寿東京大学教授、服部高宏京都大学教授の3名であった。その後、研究協力者が勤務校で作成した教材を使って授業実践を行い、教材のさらなるブラッシュアップを図った。主権者教育に造詣の深い研究者から「法教育教材に適した材料や話題の提供」を受け、3回、教材作成ワークショップを行い、教材作成は順調に進行したが、研究協力者の授業を参観することがあまり出来なかった。主権者教育の教材作成は順調に進んでいるので、次年度も作成ワークショップを開催したい。また、研究協力者の授業にも積極的に参加し、教材のブラッシュアップを行う。さらに、研究の最終年度にあたるので「研究成果発表会」を開催する。本研究の目的は、研究者と現場教員が連携した「主権者教育教材」作成と、作成した教材を利用した「主権者教育プログラム」を開発し、全国の教育現場に発信することにある。その目的達成のため、本年度は、研究体制の確立と理論研究の推進に重点を置いて研究を行った。具体的には、大きく次の3点の成果があった。1点目は、いわゆる「主権者教育」の先進国であるイギリス、ベルギー、ドイツを訪問したことである。特にイギリスとドイツでは中学校や高等学校を訪問し、授業参観や教員との意見交換などを行うことができた。そして、それぞれの国の主権者教育も実践や、実践を支える理論を視察したり資料等の収集を行い、「シティズンシップ教育」や「政治教育」の現状を具体的に把握することが出来たことである。2点目は、これまで出版・公表されてきた「主権者教育教材」を収集し、その手法などを分析して、本研究における教材作成に利用できるよう準備を行うことが出来たことである。また、国内各地で実践されている主権者教育の先進的な取り組みなどを視察し、主権者教育の現状や課題を把握することが出来たことである。3点目は、次年度以降開始する「主権者教材作成ワークショップ」で講義をしていただく研究者(研究協力者)への依頼や趣旨説明、各地で開催するワークショップの核になる現場教員への依頼や会場の確保が出来たことである。その依頼等の際に、現場教員と意見交換を行い、各地の主権者教育の現状と課題を確認し、ワークショップのテーマや運営に関する要望交換など、ワークショップの具体的な準備が進んだ点である。次年度以降は、ワークショップを開催し、そこで作成された教材を実際に授業を行ってもらい、改善・発信を行っていく予定である。本年度の研究は、「研究体制の確立と理論研究の推進、教材作成・実践・修正」が目的であった。「研究体制の確立と理論研究の推進」については、主権者教育の先進国での実践事例や理論を把握することが出来たこと、また、国内の先進事例を研究し、今後の研究方針を確立することが出来た。「教材作成・実践・修正」については、研究者への依頼等は順調に進んだが、現場教員への依頼等が遅れたため、「教材作成ワークショップ」の準備までしか進展しなかった。次年度以降、教材作成ワークショップを早めに開催し、実践を積んでいきたい。本研究の大きな目標は、1主権者教育の教材不足を解消するために、現場教員と連携して「主権者教育教材」を作成する。2教育現場で課題となっている「中立」性の担保、「教員の発言の範囲」など、主権者教育推進上ネックとなっている問題を理論的に解決する。の2点である。初年度は、主権者教育に関する課題等を調査し、理論的な解決策を研究することを目標に、イギリスの「シティズンシップ教育(特に、シティズンシップ教育の「ナショナルカリキュラム化」や「論争問題へのアプローチ」)、ドイツの「政治教育(特に、「ボイテルスバッハ・コンセンサスの理論的背景」「ボイテルスバッハ・コンセンサスの具体的運用状況」)の現状を視察した。研究2年目にあたる本年度は、主権者教育に造詣の深い研究者から「主権者教育教材に適した材料や話題の提供」を受け、教材作成を行った。 | KAKENHI-PROJECT-17K04883 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K04883 |
現職教員と連携した「主権者教育」教材作成プログラム | 具体的には、「主権の行使と民主主義との関係」「立憲主義と選挙権」などのテーマについて、研究者から高校生を対象とした「主権者教育教材」向けの話題の提供を応募者や現職教員(研究協力者)が受け、内容を「教材」化し、出来上がった教材を研究者とともに主権者教育教材として適切か検討・修正を行う「主権者教育教材作成ワークショップ」を3回実施した。招聘した研究者は、佐々木毅東京大学名誉教授、宍戸常寿東京大学教授、服部高宏京都大学教授の3名であった。その後、研究協力者が勤務校で作成した教材を使って授業実践を行い、教材のさらなるブラッシュアップを図った。主権者教育に造詣の深い研究者から「法教育教材に適した材料や話題の提供」を受け、3回、教材作成ワークショップを行い、教材作成は順調に進行したが、研究協力者の授業を参観することがあまり出来なかった。主権者教育に造詣の深い研究者に本研究の趣旨を説明し、「主権者教育教材に適した材料や話題の提供」の依頼と会場等の手配は終了しているので、早期に現職教員と「主権者教育教材作成ワークショップ」を開催していく。作成した教材は、現職教員(研究協力者)の勤務する実践校で授業を実施してもらう予定である。また授業実施後、アンケートなどにより生徒の変容や授業効果などの検証を行い、その結果をうけて、再度、教材の修正を行い、完成度を高めていく予定である。主権者教育の教材作成は順調に進んでいるので、次年度も作成ワークショップを開催したい。また、研究協力者の授業にも積極的に参加し、教材のブラッシュアップを行う。さらに、研究の最終年度にあたるので「研究成果発表会」を開催する。今年度の郵送費で二重の請求を行ってしまったため、その費用「620円」を次年度の助成金と合わせて使用したいと思います。なお、「二重請求」は悪意ではなく、宅配便を出したコンビニで発行された「領収書」に、その根拠として宅配便の「配送先などの用紙(領収書と書いてあります)」を一緒につけて提出してしまったためです。研究協力者の授業参観にあまり多く参加できなかったため次年度使用額が発生した。次年度は積極的に参加していくと同時に、「研究成果発表会」で使用していきたい。 | KAKENHI-PROJECT-17K04883 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K04883 |
超分子ヒーター温熱発現性足場材で骨再生を時空間制御する | カーボンナノチューブ(CNT)は生体透過性に優れる近赤外線(NIR)により温熱発現性を有する。我々はCNTを配合した外装式(貼付)ゲルによるNIR誘導温熱刺激で、硬組織の再生・再建が促進することを報告してきた。この温熱効果をさらに効率化するために再生用足場材自体に光熱発現性を装備させることを着想した。そこで本研究では骨伝導能を有するDNA/プロタミン複合体にCNTをコンジュゲートし、骨再生足場材自体に光で制御温熱を発現する超分子ヒーター機能を装備する。これにより、施術部位に近赤外線を照射すると足場材自体が温熱発現して骨再生を加速促進できる新規の光機能性足場材の開発を行う。カーボンナノチューブ(CNT)は生体透過性に優れる近赤外線(NIR)により温熱発現性を有する。我々はCNTを配合した外装式(貼付)ゲルによるNIR誘導温熱刺激で、硬組織の再生・再建が促進することを報告してきた。この温熱効果をさらに効率化するために再生用足場材自体に光熱発現性を装備させることを着想した。そこで本研究では骨伝導能を有するDNA/プロタミン複合体にCNTをコンジュゲートし、骨再生足場材自体に光で制御温熱を発現する超分子ヒーター機能を装備する。これにより、施術部位に近赤外線を照射すると足場材自体が温熱発現して骨再生を加速促進できる新規の光機能性足場材の開発を行う。 | KAKENHI-PROJECT-19K10197 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K10197 |
新生分泌系蛋白の高次構造再編及び輸送シグナル認識に関する研究 | 小胞体内におけるタンパク質の立体構築の形成と管理の機構を解明するために、生化学的な手法を用いた研究と、イメージングを用いる光学的手法の双方からのアプローチを行った。前者の成果として、先に異常分子の分解を糖鎖認識を介して促進する因子として同定したEPEMの作用機序の解明の過程で、この蛋白がcalnexinと安定複合体を形成することを見いだし、更に基質である糖タンパクのプロセッシングに伴って引き渡しを行うことを示した。また、ジスルフィド結合の再編の機構を明らかにするために、複雑な4次構造を形成し数多くのジスルフィド結合を持つ分泌蛋白fibrinogenを新たにモデル分子として用いて、解析を行い、特に、小胞体から排除できない異常な構造を作った場合の処理機構について明らかにした。また、顕微鏡を用いたアプローチとして、1分子レベルでの分子の挙動の解析が可能となる性質を利用した蛍光相関分光法(FCS)を応用する試みを行った。その結果、これまで記述されたことのないランダムな拡散の強い抑制が、分子のfoldabilityに関連することを明らかにした。また。生きた細胞内での2分子間の相互作用をリアルタイムでモニターするために、このFCSと関連した蛍光共相関分光法を用いて、mRFPとGFPとで生細胞で解析が可能なことを示した。ただし、mRFPの蛍光強度の不足のため、より明るくflickeringの少ないものが必要とされることが示された。更に、単一分子レベルでの小胞体内の解析を進めることにより、現在、小胞体ネットワーク内での糖タンパク質の1個の分子の動きを可視化することに成功し、小胞体内腔においてN型糖鎖を持つものには特有のダイナミクス制御機構が備わっていることを見いだしている。なおプロ体を認識する蛋白の同定については、得られた候補蛋白の機能について明確な証拠が得られず、さらなる検討が必要となった。小胞体内におけるタンパク質の立体構築の形成と管理の機構を解明するために、生化学的な手法を用いた研究と、イメージングを用いる光学的手法の双方からのアプローチを行った。前者の成果として、先に異常分子の分解を糖鎖認識を介して促進する因子として同定したEPEMの作用機序の解明の過程で、この蛋白がcalnexinと安定複合体を形成することを見いだし、更に基質である糖タンパクのプロセッシングに伴って引き渡しを行うことを示した。また、ジスルフィド結合の再編の機構を明らかにするために、複雑な4次構造を形成し数多くのジスルフィド結合を持つ分泌蛋白fibrinogenを新たにモデル分子として用いて、解析を行い、特に、小胞体から排除できない異常な構造を作った場合の処理機構について明らかにした。また、顕微鏡を用いたアプローチとして、1分子レベルでの分子の挙動の解析が可能となる性質を利用した蛍光相関分光法(FCS)を応用する試みを行った。その結果、これまで記述されたことのないランダムな拡散の強い抑制が、分子のfoldabilityに関連することを明らかにした。また。生きた細胞内での2分子間の相互作用をリアルタイムでモニターするために、このFCSと関連した蛍光共相関分光法を用いて、mRFPとGFPとで生細胞で解析が可能なことを示した。ただし、mRFPの蛍光強度の不足のため、より明るくflickeringの少ないものが必要とされることが示された。更に、単一分子レベルでの小胞体内の解析を進めることにより、現在、小胞体ネットワーク内での糖タンパク質の1個の分子の動きを可視化することに成功し、小胞体内腔においてN型糖鎖を持つものには特有のダイナミクス制御機構が備わっていることを見いだしている。なおプロ体を認識する蛋白の同定については、得られた候補蛋白の機能について明確な証拠が得られず、さらなる検討が必要となった。1.分泌系で構造形成に失敗したものは、小胞体に繋留される。この過程には、細胞毒性の強い凝集体を細胞外に排出しないというよく知られた目的だけではなく、凝集体の形成をできる限り押さえて環境が許せばfoldingできるような構造を維持する、という機構も含まれる。チロシナーゼ構造形成の温度感受性を利用して、そのfolding過程の解析を蛍光相関分光法による単分子レベルで行うことにより、この機構には新生分子のブラウン運動レベルでの抑制も含まれることを明らかにした。このランダムな動きの抑制は、蛍光消光を利用したFRAPでは検出されず、新たなダイナミクスの制御機構と考えられる。(投稿中)2.正しい構造形成ができない糖タンパク質の分解を促進する因子としてEDEMを報告してきた。その作用は、Mannose8Bを特異的に認識すると考えられるが、品質管理全体での役割は明らかではなかった。今回、EDEMはcalnexinとそれぞれの膜貫通部を介して結合することを様々なキメラ蛋白やin vitroでの実験によって証明し、ついでカルネキシンとの関連をkineticalに解析すると、カルネキシンとの相互作用が解消されない蛋白(α1アンチトリプシンNullHongKong変異体)をEDEMが受け取って、プロテアーゼによる分解系につなげることを報告した。(Science,299,1394)3.calnexinのレクチンドメインと膜貫通部を欠損した分子は嚢胞性繊維症の主な分子病因F508の小胞体への繋留を緩和することを報じた。(FEBS Lett526,87)4.ゴルジ体においてプロドメインの切断を行うPACE4Aのautocatalyticな活性化にC端側の領域が重要であることを報じた。(BBRC290:878) | KAKENHI-PROJECT-14380295 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14380295 |
新生分泌系蛋白の高次構造再編及び輸送シグナル認識に関する研究 | 1.分泌系において新生蛋白質がterminal misfoldingになることを防ぐ機構として、ランダムな速い(サブミリ秒レベル)動きを抑制するための装置が存在することを報告した。これは蛍光相関分光法(FCS)の新生蛋白質成熟化過程分析のための初めての応用であり、同時に、その結果を、より遅い動きの解析手法である蛍光消光回復法(FRAP)の解析結果と比較することで、小胞体には能動的な動きの機構が存在することを示唆した。2.フィブリノーゲン6量体の形成には、ヘテロ3量体から6量体への変換が律速段階となり、それはErp57が特異的に促進することを示した。3.フィブリノーゲンのγサブユニットを単独で発現すると、サブユニット集合が出来ないのでterminal misfoldingを行い、分解される。その過程を解析することで、ミスフォールドした蛋白が、選択的に小胞体からリソソームに運ばれる機構が存在し、その受容体と思える蛋白質が示唆された。すなわち、terminal misfoldingが起こり、しかもそれが小胞体での逆行輸送・プロテアソームでの分解を受けれないような巨大凝集体を形成する場合にはその受容体に結合して、小胞体から輸送により排除するための装置が存在することが示唆された。4.小胞体内での品質管理機構におけるマンノーストリミングの役割を解明するためにマンノシダーゼIの過剰発現によるアンチトリプシン変異体(nullHongKong)の分解を解析したところ、予想通りにこの酵素がタイマー的な役割を果たすものの、EDEMとは作用機序が異なることを報告した。 | KAKENHI-PROJECT-14380295 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14380295 |
マウス胚細胞における相同的組み替えを用いたインスリン遺伝子欠損マウスの作製 | 我々は胎児発育を考える上でインスリンの代謝調節、分化、増殖などの作用が重要であることに着眼し、インスリン欠損トランスジエニックマウスを用いることにより、インスリンと胎児発育との関連について検討しようとしている。現在ラットを用いてインスリン遺伝子1および11の2つについて妊娠・授乳期の変化について検討し、研究成果の一部を国際誌に投稿中である。今後、マウス胚幹細胞における相同的組み替えを用いてインスリン1あるいはインスイン11の欠損マウスを作製し、さらにそのマウスを妊娠させることにより胎児の発育について検討する予定である。我々は胎児発育を考える上でインスリンの代謝調節、分化、増殖などの作用が重要であることに着眼し、インスリン欠損トランスジエニックマウスを用いることにより、インスリンと胎児発育との関連について検討しようとしている。現在ラットを用いてインスリン遺伝子1および11の2つについて妊娠・授乳期の変化について検討し、研究成果の一部を国際誌に投稿中である。今後、マウス胚幹細胞における相同的組み替えを用いてインスリン1あるいはインスイン11の欠損マウスを作製し、さらにそのマウスを妊娠させることにより胎児の発育について検討する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-07671776 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07671776 |
プログラミング的思考の育成カリキュラムの開発-就学前~小学校の接続を焦点として- | 日本では2020年から小学校において「プログラミング教育」が必修となる。日本における「プログラミング教育」は、論理的思考を身に着けるための教育と位置づけられている。幼稚園教育要領も「思考力・判断力」の育成を掲げているが、就学前のプログラミング的思考の育成のためのカリキュラムや指導書は不足している。そこで、本研究では、「プログラミング的思考を育成するカリキュラムの開発」を目的とし、就学前小学校の接続期を焦点としたカリキュラム開発を行う。その際、国内外のプログラミング教育の実態調査から得た知見を分析し、幼稚園教育要領・学習指導要領を踏まえた系統的なカリキュラムの開発をする。日本では2020年から小学校において「プログラミング教育」が必修となる。日本における「プログラミング教育」は、論理的思考を身に着けるための教育と位置づけられている。幼稚園教育要領も「思考力・判断力」の育成を掲げているが、就学前のプログラミング的思考の育成のためのカリキュラムや指導書は不足している。そこで、本研究では、「プログラミング的思考を育成するカリキュラムの開発」を目的とし、就学前小学校の接続期を焦点としたカリキュラム開発を行う。その際、国内外のプログラミング教育の実態調査から得た知見を分析し、幼稚園教育要領・学習指導要領を踏まえた系統的なカリキュラムの開発をする。 | KAKENHI-PROJECT-19K03060 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K03060 |
ドイツ近代刑法史-とくに19世紀前葉の刑法理論及び刑事立法の現代的意義 | 1872年ドイツ帝国刑法典成立の前史を形成したドイツ普通法時代は、百花撩乱の様相を呈していた学説とともに、1813年バイエルン刑法典、1851年プロイセン刑法典など、ドイツ・ラント刑法典の立法活動の隆盛期でもあった。つまり、南ドイツの雄バイエルンや北ドイツの雄プロイセンを初めとして他のラントにおいても、近代的な刑法典を起草するべく多大の努力と紆余曲折が重ねられていたのである。これらのラント刑法典の中でも、1872年帝国刑法典に対して明白かつ絶大な影響を与えたのが1851年プロイセンラント刑法である。このことは、プロイセンを中心とした統一が1867年北ドイツ同盟を生み、また、統一的刑法典編纂の動きを急速に結実させていった、という歴史的経緯と決して無縁ではない。かくして、1851年プロイセンラント刑法典が1872年帝国刑法典に対して与えた影響は明白かつ絶大なものであり、両者間に実質的相違は殆ど存在しないと言っても過言ではない。我が国の刑法典の原典ともいうべきドイツ帝国刑法典及びドイツ刑法理論の貞髄を理解・考究するにあたっては、1851年プロイセンラント刑法典成立の過程を実証的に克明に研究・解明することが特に肝要なる所以である。プロイセン刑法典の改正作業の時期は、第1改正期、第2改正期及びそれ以降に区分されることが多い。第1改正期は、司法大臣ダンケルマンによって改正作業の礎が築かれ、更にカンプツの独断的な主導によりカンプツ色の濃い草案(1833年及び1836年)が起草された時期であり、それに対して、第2改正期は、枢密院が改正作業に直接乗り出し、枢密院の下の委員会や本会議において合議が重ねられ、1840年の直属委員会草案を経て、1843年の枢密院草案の起草に至るまでの時期である。これらの時期には、それぞれに特徴があることが判明した。1872年ドイツ帝国刑法典成立の前史を形成したドイツ普通法時代は、百花撩乱の様相を呈していた学説とともに、1813年バイエルン刑法典、1851年プロイセン刑法典など、ドイツ・ラント刑法典の立法活動の隆盛期でもあった。つまり、南ドイツの雄バイエルンや北ドイツの雄プロイセンを初めとして他のラントにおいても、近代的な刑法典を起草するべく多大の努力と紆余曲折が重ねられていたのである。これらのラント刑法典の中でも、1872年帝国刑法典に対して明白かつ絶大な影響を与えたのが1851年プロイセンラント刑法である。このことは、プロイセンを中心とした統一が1867年北ドイツ同盟を生み、また、統一的刑法典編纂の動きを急速に結実させていった、という歴史的経緯と決して無縁ではない。かくして、1851年プロイセンラント刑法典が1872年帝国刑法典に対して与えた影響は明白かつ絶大なものであり、両者間に実質的相違は殆ど存在しないと言っても過言ではない。我が国の刑法典の原典ともいうべきドイツ帝国刑法典及びドイツ刑法理論の貞髄を理解・考究するにあたっては、1851年プロイセンラント刑法典成立の過程を実証的に克明に研究・解明することが特に肝要なる所以である。プロイセン刑法典の改正作業の時期は、第1改正期、第2改正期及びそれ以降に区分されることが多い。第1改正期は、司法大臣ダンケルマンによって改正作業の礎が築かれ、更にカンプツの独断的な主導によりカンプツ色の濃い草案(1833年及び1836年)が起草された時期であり、それに対して、第2改正期は、枢密院が改正作業に直接乗り出し、枢密院の下の委員会や本会議において合議が重ねられ、1840年の直属委員会草案を経て、1843年の枢密院草案の起草に至るまでの時期である。これらの時期には、それぞれに特徴があることが判明した。本研究の当初の全体目的は、ドイツ帝国刑法典の生成の過程につき、18世紀後期-19世紀前期に展開された普通法時代のドイツ刑法理論及び各ラントの様々の立法を素材にして、直接資料を駆使して実証的に分析・考証を加えることにあった。現代刑法学の底に潜む氷山の海面下の部分の探求こそ、普遍的な刑法学を構築する上で重要であり必要であると考えたからである。当時の特筆すべき立法は、1794年プロイセン普通ラント法であるが、本法は、近代的刑法とは未だ言い難く、近代的な刑法の成立は、その後の立法の発展を俟たなければならなかった。従って、立法的にも、19世紀初頭から19世紀後葉の帝国刑法典成立までの時期に対する考察が極めて重要であり、現代刑法学の深い考察にとって不可欠である。即ち、19世紀前葉におけるドイツ・ラント刑法の沿革、特に、結果的に帝国形法典と化した1851年プロイセン邦刑法典の立法過程に対する研究は重要である。そこで、本研究は、まず具体的に、1851年プロイセン形法典の系譜・沿革に焦点をあて、文献・立法資料を渉猟・駆使することによって、緻密かつ実証的に分析・考究することに向けられている。 | KAKENHI-PROJECT-05802008 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05802008 |
ドイツ近代刑法史-とくに19世紀前葉の刑法理論及び刑事立法の現代的意義 | プロイセン・ラントにおいては、1820年代に本格的な刑法改正の動きが現実化し、1828年草案、1830年草案、1833年修正草案、1836年修正草案、1840年枢密院直属委員会草案、1843年枢密院草案、1845年修正草案、1847年草案、1851年草案などが、相次いで起草されていることが、第1次的資料を入手・検討することによって確認された。その中には、理由書や審議録等の立法資料が公表されているものもある。それらの資料に基づき、従来とくに関心を抱いてきた「公共危険犯」とよばれる一群の犯罪を手掛かりとして、現在、1836年草案まで考察を進めている(なお、後掲論文参照のこと)。本研究の目的は、ドイツ帝国刑法典の生成の過程につき、18世紀後期-19世紀前期に展開された普通法時代のドイツ刑法理論及び各ライントの様々の立法を素材にして、直接資料を駆使して実証的に分析・考証を加えることにあった。当時に特筆すべき立法は、1794年プロイセン普通ライト法であるが、本法は、近代的刑法とは未だ言い難く、近代的な刑法の成立は、その後の立法の発展を俟たなければならなかった。従って、立法的にも、この時期から帝国刑法典成立までの時期に対する考察が極めて重要であり、現代刑法学の深い考察にとって不可欠である。即ち、19世紀前葉におけるドイツ・ラント刑法の沿革、特に、結果的に帝国刑法典と化した1851年プロイセン邦刑法典の立法過程に対する研究は重要である。本研究は、このことにつき、プロイセン邦における数次のライト刑法草案及びそれをめぐる当時に立法資料などの直接的な文献・立法資料を渉猟・駆使することによって、実証的に解析を加えることに努めた。新たに入手し利用した資料は、当時の種々の理論書のほか、今船復刻された「19世紀ドイツラント刑法典編纂史料」、「プロイセンラント法改正史料」や、ゼロックスコピーやマイクロフィルムで入手したプロイセンライント刑法1828年草案から同1850-1851年草案に至るまでの全草案及び理由書や、枢密院及び身分制議会などにおける種々の審議録などである。これらの資料に基づく研究は、帝国刑法典の原型となった1851年プロイセン刑法典の立法史及びその背景にある刑法史に関して、新たな視点と知見を与えるものであった。 | KAKENHI-PROJECT-05802008 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05802008 |
データフローアーキテクチャ方式超高性能マイクロ波シミュレーション専用計算機の開発 | 電磁界シミュレーションの産業応用への効率的な活用技術開拓を目途し,ターンアラウンドタイムが短く即応性があり試行錯誤的な製品設計にも利用可能なポータブルHPC技術の有力な方式として専用計算機の方法に着目し,これを市販のFPGA基板にて実現する方式の検討を行った.とりわけ,本研究計画ではマイクロ波シミュレーションをターゲットとしたFDTD法専用計算機の開発を行った.既にデータフローアーキテクチャに基づく超高性能計算が可能な回路方式は提案しており,本計画では,実用利用に耐えうるマシンとすべく,数値モデルに対する柔軟性,大規模計算のための領域分割機能の実装を検討し,実用化に向けた具体的な進展を得た.ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)技術の一つの可能性として専用計算機の方法を検討してきた.とりわけ,CAD用パソコン等の製品開発に直結し実用利用可能なポータブルHPC技術の確立を目途し,マイクロ波シミュレーションをターゲットとしたFDTD法専用計算機の開発を行ってきた.FDTD法に潜在する並列処理性を最大限に生かし従来機を大きく上回る性能を実現すべく,データフローアーキテクチャ方式の計算機システムを提案し,その上で,専用計算機という方法の最大の課題の一つである柔軟に様々な数値モデルを取扱える方式にすべく,複雑な数値モデル形状,任意の媒質・吸収境界条件分布の設定を可能にする設計が行われた.そして,実用化のための専用計算機方式のもう一つの大きな課題である大規模問題の取扱いを実現するため,研究計画初年度タスクとして,まず,現行方式でのハードウェアリソースの使用効率の大幅な改善を検討した.具体的には,真空の計算と吸収境界の計算回路を共通化したため,計算する離散化空間のほとんどを占めている真空領域の計算で約半分のハードウェアが未使用になっている問題を改善すべく,次の2方式を検討した.(1)真空領域の計算回路をデフォルトとし,その倍の演算回路を必要とする吸収境界の計算では,2つの真空グリッドを合せて使う方式とし,未使用ハードウェアリソースをほぼゼロに削減する.(2)未使用ハードウェアリソースの削減は行わず,その未使用部分を有効活用すべく,新たに分散性媒質の計算もサポートするよう改良する.これらの検討結果を比較し,とりわけ,(1)の方式は回路が極端に複雑となり今後の領域分割法等の導入の大きなオーバヘッドになりうること,(2)の方式はシミュレーションツールとしてより広い応用が可能になることを鑑み,後者の方式を採用し次年度の計画もこれをベースに進めることとした.研究計画初年度における直近の重要な検討課題であったハードウェリソース使用効率向上の改良では,当初は,上述(1)の真空領域の計算回路をベースにする方式を中心に検討を進め,実際,詳細回路も設計し,ほぼ未使用リソースをゼロにできることが確認でき,加えて,従来の倍の速度で計算できるという利点があることも新たに判明したものの,その一方で,上述のとおり,詳細回路,動作方式および単位格子間インタフェースは極めて複雑となり,LSI記述言語は約8倍ものサイズになってしまうこともわかった.一方,並列して検討を行っていたプラズマのマクロモデルなどで用いる分散媒質を計算するための回路は,現行方式の未使用ハードウェアリソース部分をうまく流用することで,ハードウェアサイズを増やすことなく,かつ,単位格子のFDTD法計算回路部分のみに改造箇所を限定でき,極めてスムーズに導入できることも判明した.(1)の方式の欠点である回路の複雑さやLSI記述言語のサイズ自体は,あくまで開発時の煩雑さであり,実際の利用に際しては特に支障はないものの,将来的な機能拡張やメンテナンスのしやすさの観点からは大きな負荷となることが予想され,かつ,分散媒質中のマイクロ波シミュレーションというより広い応用が可能となることを考慮すると,(2)の方式の採用が得策と判断しこちらを用いることとした.とりわけ,これにより,ホストPCからのダウンロード情報やデータフォーマットは,現行方式のものがそのまま使えるため,次年度に予定していた工程が大幅に短縮できることとなり,初年度のもう一つのタスクと位置付けていたものの未着手であったFPGA実装作業分以上に進捗が得られる見通しとなった.ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)技術の一つの可能性として専用計算機の方法を検討してきた.とりわけ,CAD搭載のパソコンのような製品開発環境に直結し,実用的に利用可能なポータブルHPC技術の確立を目途し,マイクロ波シミュレーションをターゲットとしたFDTD法専用計算機の開発を行ってきた.FDTD法に潜在する並列処理性を最大限に生かし従来機を大きく上回る性能を実現すべく,データフローアーキテクチャ方式の計算機システムを提案し,その上で,専用計算機という方法の最大の課題の一つである,柔軟に様々な数値モデルを取扱えるようにする機能の実現をめざし,複雑なモデル形状,任意の媒質・吸収境界条件分布の設定を可能にする設計が行われた.そして,実用化のための専用計算機方式のもう一つの大きな課題である大規模問題の取扱いを実現するため,研究計画中間年度のタスクとして,領域分割法により計算する機能の実装を検討した.FDTD法の領域分割計算を専用計算機で実現するには,大別し,・計算機システムを複数のLSIをI/Oピンを介し直結し構成し,個々のLSIに一つのサブ領域の計算を担当させ連動並列処理で計算する.・計算機システムは原則単体のLSIで構成し,逐次,処理するサブ領域との接続を切換えることにより一つのLSIで領域分割計算を実現する.の2方式が考えられる. | KAKENHI-PROJECT-15K06008 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K06008 |
データフローアーキテクチャ方式超高性能マイクロ波シミュレーション専用計算機の開発 | 前者は,複数LSIで並列処理するためより高い計算性能が望める一方で,決められた以上のサイズの数値モデルは扱うことができないという問題があり,それに対し,後者の方式は,原則計算性能は単体LSIのもの以上には向上せず,さらにサブ領域間でのデータ交換機能が非常に複雑な回路になることが予想されるものの,さまざまな領域サイズに柔軟に対応できるという利点があり,実用的な観点から本研究計画ではこの後者の方式を採用しこれをベースに進めることとした.本研究計画全体として最も大きな課題の一つであった,データフローアーキテクチャの専用計算機において,どのようにして大規模問題を計算できる機能を実装するかに関する検討を本格的に実施した.現存の最もハイエンドFPGAですら使用可能な回路規模は数メガロジックエレメントであり,これは,本研究で開発しているデータフローアーキテクチャ回路に換算して,高々概ね20×20グリッド程度しか搭載できないことになるため,限られたLSIのハードウェアリソースで大規模計算を実現するには,領域分割計算の機能を実装させる必要があり,計算するサブ領域を順次切替えるなどの複雑な処理をホストからの指示がなくてもFPGA内の回路で自動的にスケジューリングして行えるしくみを検討した.とりわけ,領域分割法に伴い付加的に生じるサブ領域間のデータ交換処理が計算全体の性能劣化につながらないよう工夫する必要があったが,交換するサブ領域境界のデータのコピーを格納しておくバッファ領域を新たに設け,これをグリッド空間の計算と連動して動作させることにより,サブ領域間のデータ交換処理に伴う付加的なクロックを完全にゼロ,すなわち,これに伴う性能劣化は一切生じない方式を考案した.また,この回路をVHDLでコーディングし論理シミュレーションで妥当な動作が行わることも確認した.これにより,FPGAのメモリブロック容量が許す限り大規模なグリッド空間を1つのFPGAで処理できる見通しがたった.電磁界シミュレーションの産業応用への効率的な活用技術の開拓を目途し,PCなどの電子製品設計環境に直結でき,かつ,ターンアラウンドタイムが短く即応性があり試行錯誤的な製品設計にも利用可能なポータブルハイパフォーマンスコンピューティング技術の有力な方式として,専用計算機の方法に着目し,これを市販のFPGA基板にて手軽に実現する方式の検討を行った.とりわけ,本研究計画では,産業応用の場でも比較的要望の強いマイクロ波シミュレーションを最初の例に,これをターゲットとしたFDTD(時間領域差分)法専用計算機の開発を行った.すでに,研究計画開始時点で,データフローアーキテクチャに基づいた超高性能計算が可能な回路方式を提案し,標準的なハードウェア記述言語であるVHDLにより回路設計を行い,また,回路シミュレーションによりマイクロ波シミュレータとしての動作確認まで完了させており,本計画では,これらの基本設計を,実用利用に耐えうるよう大幅な改良を行った.具体的には,以下を重点的に検討し実現可能性の確証が得られた.(1)シミュレーションをより高性能化・大規模化するのための基本回路の効率化(2)マイクロ波シミュレーションの適用範囲を拡大すべく分散媒質を取扱う回路の実装解析領域外側のみで使われほとんどの計算で未使用状態になっている吸収境界条件用の回路を流用し回路サイズを増加させるなくプラズマ等の分散媒質を取扱う機能を追加した. | KAKENHI-PROJECT-15K06008 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K06008 |
微小機械要素の特性評価と動的環境強度に関する基礎的研究 | マイクロマシンの実用化は,機械としての信頼性確保,ひいてはそれを構成する微小機械要素の信頼性の上に初めて成り立つものである。本研究課題においては,ミクロンメータサイズの機械的特性およびその環境強度特性を評価するために,微小な動的荷重を精度良く負荷することの可能な微小材料機械的特性評価装置を開発し,Si単結晶微小片持ちはりの破壊強度と疲労強度に及ぼす微小切欠きと水環境効果,および高強度・高弾性繊維であるアラミド繊維の疲労強度特性に及ぼす環境効果について検討を加えた。Si単結晶微小機械要素では集束イオンビーム(FIB)装置により導入したサブμmオーダの微小切欠きにより破壊強度が低下すること,また,破壊は切欠きを起点として発生した後,(lll)面に沿ってき裂が進展して最終破壊に至ることを明らかにした。併せて,空中において繰返し荷重下の疲労試験を行ったところ,nmオーダにおいても疲労損傷や破壊挙動は観察されず,空中では疲労を生じないものと結論された。一方,水環境中においては,動的荷重と水環境の影響により(lll)面に沿ったnmオーダのき裂状損傷が生じて,空中強度からの水環境中強度が低下し,その低下は水に浸漬される時間が長いほど大きくなった。また,アラミド繊維に対しては,真空中と大気中での片振り疲労試験を実施し,金属材料に比較するとS-N曲線の傾きは小さく耐疲労特性に優れていること,また,真空中疲労強度は大気中疲労強度に比べて大きくなり,しかも引張強度特性とは逆の環境依存性を示すことを明らかにした。さらに,空中放置処女材,真空放置処女材,および大気中および真空中疲労試験を中断して,繊維表面性状を原子間力顕微鏡を用いてnmオーダで詳細に観察して,破壊機構に対して考察を加えた。マイクロマシンの実用化は,機械としての信頼性確保,ひいてはそれを構成する微小機械要素の信頼性の上に初めて成り立つものである。本研究課題においては,ミクロンメータサイズの機械的特性およびその環境強度特性を評価するために,微小な動的荷重を精度良く負荷することの可能な微小材料機械的特性評価装置を開発し,Si単結晶微小片持ちはりの破壊強度と疲労強度に及ぼす微小切欠きと水環境効果,および高強度・高弾性繊維であるアラミド繊維の疲労強度特性に及ぼす環境効果について検討を加えた。Si単結晶微小機械要素では集束イオンビーム(FIB)装置により導入したサブμmオーダの微小切欠きにより破壊強度が低下すること,また,破壊は切欠きを起点として発生した後,(lll)面に沿ってき裂が進展して最終破壊に至ることを明らかにした。併せて,空中において繰返し荷重下の疲労試験を行ったところ,nmオーダにおいても疲労損傷や破壊挙動は観察されず,空中では疲労を生じないものと結論された。一方,水環境中においては,動的荷重と水環境の影響により(lll)面に沿ったnmオーダのき裂状損傷が生じて,空中強度からの水環境中強度が低下し,その低下は水に浸漬される時間が長いほど大きくなった。また,アラミド繊維に対しては,真空中と大気中での片振り疲労試験を実施し,金属材料に比較するとS-N曲線の傾きは小さく耐疲労特性に優れていること,また,真空中疲労強度は大気中疲労強度に比べて大きくなり,しかも引張強度特性とは逆の環境依存性を示すことを明らかにした。さらに,空中放置処女材,真空放置処女材,および大気中および真空中疲労試験を中断して,繊維表面性状を原子間力顕微鏡を用いてnmオーダで詳細に観察して,破壊機構に対して考察を加えた。マイクロマシンの実用化は,機械としての信頼性確保,ひいてはそれを構成する微小機械要素の信頼性の上に初めて成り立つものである。本研究課題においては,マイクロマシンサイズの機械的特性およびその環境強度特性を評価するために,微小な動的荷重を精度良く負荷することの可能な環境質制御微小材料機械的特性評価装置を開発し,析出硬化型ステンレス鋼,ベリリウム銅,およびμmオーダの直径を有するアラミド繊維(E.I.du Pont社Kevlar 49)の引張試験および疲労試験を実施した。析出硬化型ステンレス鋼,ベリリウム銅においては平板ジグにより,またアラミド繊維の場合はポリエステル製のタブを使用することにより,マイクロエレメントの引張試験や疲労試験が精度良く行えることを確認した。さらに,アラミド繊維に対しては,真空中と大気中での片振り疲労試験を実施し,金属材料に比較するとS-N曲線の傾きは小さく耐疲労特性に優れていること,また,真空中疲労強度は大気中疲労強度に比べて大きくなり,しかも引張強度特性とは逆の環境依存性を示すことを明らかにした。さらに,空中放置処女材,真空放置処女材,および大気中および真空中疲労試験を中断して,繊維表面性状を原子間力顕微鏡を用いてnmオーダで詳細に観察して,破壊機構に対して考察を加えた。さらに,Si単結晶微小機械要素に対しては,集束イオンビームを用いてnmオーダの切欠きを精度よく賦与することか可能であることを示し,先に開発した微小材料機械的特性評価装置を用いて,曲げ強度に及ぼす微小切欠きの影響を検討した。この結果,μmオーダの微小機械要素では,通常のmmオーダの機械要素では特に問題とはならないnmオーダの微小切欠き効果により曲げ強度が低下することを明らかにした。マイクロマシンの実用化は,機械としての信頼性確保,ひいてはそれを構成する微小機械要素の信頼性の上に初めて成り立つものである。 | KAKENHI-PROJECT-09450048 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09450048 |
微小機械要素の特性評価と動的環境強度に関する基礎的研究 | 本研究課題においては,ミクロンメータサイズの機械的特性およびその環境強度特性を評価するために,微小な動的荷重を精度良く負荷することの可能な微小材料機械的特性評価装置を開発し,今年度はSi単結晶微小片持ちはりの破壊強度と疲労強度に及ぼす微小切欠きの影響と水環境効果について検討した。その結果,集束イオンビーム(FIB)装置により導入したサブμmオーダの微小切欠きにより破壊強度が低下すること,また,破壊は切欠きを起点として発生した後,(lll)に沿ってき裂が進展して最終破壊に至ることを明らかにした。併せて,空中において繰返し荷重下の疲労試験を行ったところ,疲労破壊挙動は観察されず,また試験片表面や切欠き部を走査型原子間力顕微鏡を用いて詳細に観察しても,疲労を生じる金属材料などで観察される突き出しや入り込みなどの疲労損傷はnmオーダでも観察されなかった。したがってSi単結晶微小機械要素は空中では疲労を生じないものと結論された。さらに,水環境中において疲労荷重を負荷したところ,空中強度からの水環境中強度が低下し,その低下は水に浸漬される時間が長いほど大きくなった。この時,試験片表面を走査型原子間力顕微鏡を用いて詳細に観察したところ,水環境下では局部的腐食を生じ,その部分で(lll)面に沿ったき裂状損傷が生じていることが観察された。したがって,水環境中では,動的応力と水環境の相乗効果により(lll)面に沿ったき裂状損傷が生じ,その部分の応力集中がある限界値を越えると最終破壊にいたるものと考えられた。このように,微小機械要素ではとくに通常の機械要素では無視されるような微小切欠きによっても強度が低下すること,また,環境効果が大きく現れることが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-09450048 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09450048 |
アメリカ演劇におけるメソッド・アクティングの受容、発展および影響 | 本研究は演技教育者リー・ストラスバーグの演技論「メソッド」を歴史的な文脈を踏まえ、その理論を多角的に考察することを目標としている。前年度はストラスバーグの演技論および演技教育では、演出家が演技教育者のモデルとされている点に注目することで「メソッド」の理論的な特徴を明らかにしたが、本年度は、演出家制度についてより理解を深め、具体的な影響関係の考察を行うべく、ストラスバーグが自身に強い影響を与えた人物として挙げる演出家エドワード・ゴードン・クレイグの研究に着手した。クレイグの唱えた「超人形」論を従来解釈されてきたような俳優論としてではなく、絶対的な権力を有する演出家が前提とされた演出家論として解釈することを手掛かりに、1910年代に出版されたクレイグの著作の再解釈を行い、ストラスバーグへの影響を考察するとともに、より広く19世紀以降の演出家制度の出現へのアプローチの端緒を開くことができた。また上記の研究の過程で、その演出家の理念には過去の演劇に対する特有の歴史認識が伴うという構造を突きとめた。クレイグは過去の演劇や劇場についての調査を行い論考を複数執筆したが、同様の傾向はストラスバーグの著作にもみられる。この構造の解明は、実際に観ることのできなかった演劇あるいは演技の記述はいかにして可能なのか、もはや観劇経験が不可能であるにもかかわらずなぜ魅かれてしまうのかといった、表現媒体自体が記録媒体としての性質をもたない舞台芸術においていまなお問われるべき課題に対し、批評的な視座を提供するだろう。2019年2-3月には英国へ赴き、大英図書館やロンドン図書館にて、出版部数の限られた書簡集をはじめとするクレイグに関する資料収集行った。研究の進展にともない、アメリカ演劇におけるストラスバーグの演技論の形成や受容、影響から、より広範に、演出家制度の出現以降の西洋演劇におけるストラスバーグの演技論の特殊性の探求へと必然的に力点が移行し、新たな資料収集と解読に多くの時間が割かれたため、残念ながら成果の公表には至らなかった。しかし、資料収集を精力的に行い、クレイグの著作の分析によっていくつかの主要な問題系を抽出し、ストラスバーグを広範な文脈において論じる視座を用意するという本研究の課題を達成したと考えられるため、研究自体はおおむね順調に進展していると判断した。これまでの研究によって二つの問題系、すなわち19世紀以降の演出家制度および演劇の歴史叙述がストラスバーグを広範な文脈において論じるさいに不可欠であることが判明した。来年度は、前者に関しては前年度から引き続き、エドワード・ゴードン・クレイグの著作および実践における演出家概念の分析を通して、ストラスバーグへの影響関係のより鮮明な解明とともに、演出家という役職およびその理念の持つ歴史的な特異性を把握する。また同時に本年度の研究の過程で浮上してきた歴史叙述の問題については、主にクレイグとストラスバーグの著作を中心として適宜同時期の演出家による歴史叙述との比較を交えて研究を進めることによって、なぜ過去の演劇の叙述が要請されたのか、そこでいかなる方法が採られているのか、それによって何をもたらそうとしたのかといった一連の問いを吟味しつつ、演出家の理念と歴史叙述が取り結ぶ関係性を検討することが課題である。その過程で得られた成果は随時、口頭発表あるいは論文で公表する。平成29年度は、平成28年度に提出した修士学位論文以後の課題であった西洋演劇史におけるストラスバーグの演技論の特殊性を明確にするため、特に演出家の出現に注目し研究を進めた。そして日本演劇学会においてその成果をもとに発表を行った。19世紀以降の西洋演劇における演出家の登場を前提とし、かつ演出家を教育上のモデルとする演技教育について論じる際には、演出家や演出に対する歴史的および理論的な把握が必要と考えられる。それは演技教育者ストラスバーグについて論じる際に基礎的でありかつ重要な視点といえる。そこで本年度は、ストラスバーグが自身の理論が負う人物として挙げる、E・D・クレイグ(『演劇の芸術について』)やA・アルトー(『演劇とその分身』)など従来の演劇制度を批判し演出家の必要性を説いた理論家の演劇論の精読を集中的に行った。この研究で得られた知見は、それをもとにした演技教育者と俳優の関係への考察として、日本演劇学会の研究集会における発表に活かされた(「他者の眼差しのもとの二重性ーストラスバーグのメソッド」、2017年11月5日)。発表で取り上げたのはストラスバーグの演技論において問題となっている俳優の内面とそれを眼差す者との関係、つまり俳優の内面における感情の生起を誰がいかにして判断するのかということである。この俳優への眼差しの問題は、ハリウッド映画におけるストラスバーグの演技論受容を分析する際のひとつの有効なアプローチを提示している。また同時にそれは俳優に訓練と演出を施す演出家という主題に由来する問題でもあり、ここに演技論における一つの問題系を抽出することが可能となった。今後の研究を進めるにあたって基礎的な視座を確保することができ、これはストラスバーグの演技論分析のみならず他の演技論との比較を行う際にも資すると思われる。今年度は海外での資料収集は満足に行うことができなかったが、国内で入手可能な資料の収集と研究自体に進展が見られたため、全体的にみて研究はおおむね順調に進んでいると判断した。本研究は演技教育者リー・ストラスバーグの演技論「メソッド」を歴史的な文脈を踏まえ、その理論を多角的に考察することを目標としている。 | KAKENHI-PROJECT-17J00741 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J00741 |
アメリカ演劇におけるメソッド・アクティングの受容、発展および影響 | 前年度はストラスバーグの演技論および演技教育では、演出家が演技教育者のモデルとされている点に注目することで「メソッド」の理論的な特徴を明らかにしたが、本年度は、演出家制度についてより理解を深め、具体的な影響関係の考察を行うべく、ストラスバーグが自身に強い影響を与えた人物として挙げる演出家エドワード・ゴードン・クレイグの研究に着手した。クレイグの唱えた「超人形」論を従来解釈されてきたような俳優論としてではなく、絶対的な権力を有する演出家が前提とされた演出家論として解釈することを手掛かりに、1910年代に出版されたクレイグの著作の再解釈を行い、ストラスバーグへの影響を考察するとともに、より広く19世紀以降の演出家制度の出現へのアプローチの端緒を開くことができた。また上記の研究の過程で、その演出家の理念には過去の演劇に対する特有の歴史認識が伴うという構造を突きとめた。クレイグは過去の演劇や劇場についての調査を行い論考を複数執筆したが、同様の傾向はストラスバーグの著作にもみられる。この構造の解明は、実際に観ることのできなかった演劇あるいは演技の記述はいかにして可能なのか、もはや観劇経験が不可能であるにもかかわらずなぜ魅かれてしまうのかといった、表現媒体自体が記録媒体としての性質をもたない舞台芸術においていまなお問われるべき課題に対し、批評的な視座を提供するだろう。2019年2-3月には英国へ赴き、大英図書館やロンドン図書館にて、出版部数の限られた書簡集をはじめとするクレイグに関する資料収集行った。研究の進展にともない、アメリカ演劇におけるストラスバーグの演技論の形成や受容、影響から、より広範に、演出家制度の出現以降の西洋演劇におけるストラスバーグの演技論の特殊性の探求へと必然的に力点が移行し、新たな資料収集と解読に多くの時間が割かれたため、残念ながら成果の公表には至らなかった。しかし、資料収集を精力的に行い、クレイグの著作の分析によっていくつかの主要な問題系を抽出し、ストラスバーグを広範な文脈において論じる視座を用意するという本研究の課題を達成したと考えられるため、研究自体はおおむね順調に進展していると判断した。来年度は今年度得られた演出家に関する理論的理解をさらに深めつつ、それに基づきストラスバーグの演技論研究を進める。同時に、20世紀転換期に東欧からニューヨークへ移住したユダヤ系移民らの演劇活動に関する研究に着手する。ユダヤ系移民であるストラスバーグはイディッシュ演劇からそのキャリアを開始し、戦前の活動はユダヤ系移民のコミュニティを土台としている。彼らや彼女らはいかなる仕方でストラスバーグに影響を与えたのかもしくは与えなかったのか、そしてその理由はどこに求められるのか。本年度はその調査にもとづきストラスバーグとの比較研究も行い、彼の出自と演劇そして演技の関係について考察を行う。それらの研究の成果がまとまり次第、日本演劇学会での研究発表や、『演劇学論集』(日本演劇学会)や『アメリカ太平洋研究』(東京大学アメリカ太平洋地域研究センター)などの研究誌への論文投稿を行う予定である。上記したように本年度は海外での資料収集は充分に遂行できていなかったため、来年度は休暇中に海外渡航し資料を収集することを予定している。これまでの研究によって二つの問題系、すなわち19世紀以降の演出家制度および演劇の歴史叙述がストラスバーグを広範な文脈において論じるさいに不可欠であることが判明した。 | KAKENHI-PROJECT-17J00741 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J00741 |
透過型レーザー血流計と色差計を用いた乳歯外傷歯の変色に関する客観的検討 | 外傷受傷歯に生じた、乳歯歯冠色変化および歯髄血流量を客観的に評価する目的で色彩色差計と透過型レーザー血流計を用い、本研究を3年に渡って行ったところ、以下の結論を得た。色差計では1)光学的配慮を行っても上でも写真や肉眼的な歯冠色の診断は困難である、2)外傷による歯冠変色は画一的でない、3)肉眼的な臨床所見と歯冠色の変化と相関性はなく外見的からの診断は適切ではない、4)歯冠色の変化はX線所見よりも早い時期に発症する、5)X線所見の変化と歯冠色の変化では関連が見られた、6)変色が見られたものでも退色し元の歯冠色に戻るものもある、7)犬歯など歯冠表面の弯曲が強いものでは測定誤差が大きく診断に用いるには適切ではない、8)装置の改良により深部組織の測色も可能となったが浅部ど大きな相違は見られなかった。レーザー血流計からでは1)他の手法では計測不可能な受傷直後の時期でも計測が可能である、2)歯髄の生死の判別には有効であった、3)プローブの改良により操作性の向上が見られた、4)測定値に日動変動が多少見られる、5)乳歯では根の状態にかかわらず波形に差が認められなかった、6)永久歯では根の状態により波形に差が見られた、7)色差計と同様に歯冠の厚みや歯髄形態などにも影響され、同一人以外との比較には考慮を有することが考えられる、8)安定した測定を行う上では患児の協力が不可欠である。以上より、適切な見解,処置方法が得られていない変色歯の診断方法について検討を行った結果、既存の方法よりも客観的な臨床診断が行えることが可能となった。外傷受傷歯に生じた、乳歯歯冠色変化および歯髄血流量を客観的に評価する目的で色彩色差計と透過型レーザー血流計を用い、本研究を3年に渡って行ったところ、以下の結論を得た。色差計では1)光学的配慮を行っても上でも写真や肉眼的な歯冠色の診断は困難である、2)外傷による歯冠変色は画一的でない、3)肉眼的な臨床所見と歯冠色の変化と相関性はなく外見的からの診断は適切ではない、4)歯冠色の変化はX線所見よりも早い時期に発症する、5)X線所見の変化と歯冠色の変化では関連が見られた、6)変色が見られたものでも退色し元の歯冠色に戻るものもある、7)犬歯など歯冠表面の弯曲が強いものでは測定誤差が大きく診断に用いるには適切ではない、8)装置の改良により深部組織の測色も可能となったが浅部ど大きな相違は見られなかった。レーザー血流計からでは1)他の手法では計測不可能な受傷直後の時期でも計測が可能である、2)歯髄の生死の判別には有効であった、3)プローブの改良により操作性の向上が見られた、4)測定値に日動変動が多少見られる、5)乳歯では根の状態にかかわらず波形に差が認められなかった、6)永久歯では根の状態により波形に差が見られた、7)色差計と同様に歯冠の厚みや歯髄形態などにも影響され、同一人以外との比較には考慮を有することが考えられる、8)安定した測定を行う上では患児の協力が不可欠である。以上より、適切な見解,処置方法が得られていない変色歯の診断方法について検討を行った結果、既存の方法よりも客観的な臨床診断が行えることが可能となった。乳歯歯冠色および歯髄血流量を客観的に評価する目的で、外傷受傷歯に発症した歯冠変色について色彩色差計と透過型レーザー血流計用いを本研究を遂行したところ、以下の結論を得た。1、色彩計を用いた歯冠色の測定および光学的配慮を行った上での写真上からの比色乳歯歯冠色は個人差、組織の厚み、歯面の彎曲度の相違などによって異なっている。そこで同一個人内の形態、色彩が比較的類似している左右同名歯(上顎乳中切歯)を対象歯として測定を行った。外傷による歯冠変色歯の測定と受傷を受けていない同名歯との間の色差では、受傷直後には左右間で明瞭に差が認められたものでも、経時的に色差が減少しているものがあった。これに対し初期には余り大きな差が認められなかったにもかかわらず、大きな差となったものもあり、歯冠変色が画一的に起こっているのではないことが示唆された。さらに光学的配慮を行った写真上からの肉眼的比色では、色差が明瞭には判別できないものもあり、この結果から、写真や肉眼的な外見上からの変色歯の診断は困難であることが示唆された。2、透過型レーザー血流計を用いた歯髄血流の測定および末梢血流との比較今回開発した透過型レーザー血流計を用い、比較の為測定した手指末梢血流を同期的に計測したことにより、透過型プローブを使用することによって反射型血流計に生じる周囲の歯肉血流などのノイズを排除した歯髄血流が測定できた。これにより電気歯髄診断器では判別が不可能であった受傷直後の歯髄の生死判断が可能となった。しかし、対象児の安静が必要であること、測定プローブが大きすぎることなどにより完全にこれらの問題点を解決するまでには至っていない。次年度は測定プローブの改良、色差計との相関などについてX線的な考察なども踏まえ、検討を行っていく所存である。 | KAKENHI-PROJECT-10671951 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10671951 |
透過型レーザー血流計と色差計を用いた乳歯外傷歯の変色に関する客観的検討 | 外傷受傷歯に生じた、乳歯歯冠変化および歯髄血流量を客観的に測定する目的で色彩色差計と透過型レーザー血流計を用い、昨年度に引き続き本研究を行ったところ、次の結論を得た。色差計を用いた歯冠色の測定では、診断に際して撮影したX線所見と色差計の測色値との間には関連が認められ、また、長期的な観察を行った症例では、X線所見の変化に相関して色差にも変化が認めてれた。しかし、肉眼的な所見を測色値は必ずしも一致せず、色変化は外見からでは判断することが困難であることを裏付けた。さらにこれに随伴して調査を行ったX線所見と臨床所見とでは、必ずしもX線の所見が臨床症状を表していないものも認められた。透過型レーザー血流計を用いた歯髄血流の測定では、昨年度に比較し、測定プローブの小型化を推進し、操作性の向上がなされた。本年度は、歯根の完成度と測定値の関係、測定値の日動変動、測定幅の意味するものなどについて検討を行い、多少の知見を得た。しかし、いまだ体動に対する問題点は解決されておらず、これに対する考案を検討中である。現在まで数多くの症例について、横断的に検討を行うことが出来た.しかし、縦断的な検討を行い得たものは少なく、また期間も短い物が多い。次年度は最終年度でもあり、これらの点の検討を行って行く所存である。 | KAKENHI-PROJECT-10671951 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10671951 |
無顎類口腔腺分泌液における新規の生理活性物質の探索 | もっとも原始的な脊椎動物である寄生性の無顎類口腔腺分泌液について、初めてタンパク質から低分子までを網羅的に分析し新規の生理活性物質を探索した。その結果、血管収縮にかかわる新規カルシウムチャネル阻害タンパク、血液凝固を阻止する線溶酵素、および機能未知の低分子を見いだし、それぞれクローン化、構造解析を実施するとともに、進化的考察をおこなった。これらの物質が血圧調節や血栓治療などに応用される可能性も示した。もっとも原始的な脊椎動物である寄生性の無顎類口腔腺分泌液について、初めてタンパク質から低分子までを網羅的に分析し新規の生理活性物質を探索した。その結果、血管収縮にかかわる新規カルシウムチャネル阻害タンパク、血液凝固を阻止する線溶酵素、および機能未知の低分子を見いだし、それぞれクローン化、構造解析を実施するとともに、進化的考察をおこなった。これらの物質が血圧調節や血栓治療などに応用される可能性も示した。約5億年前に分化した現存するもっとも原始的な脊椎動物である無顎類(円口類)のヤツメウナギは大型の魚類や海棲ほ乳類に外寄生し、一対の発達した口腔腺(buccal glands)から血液凝固阻止因子を分泌、吸血することが知られている。このことは1927年にScience誌に報告され,魚類学の教科書にもかならず記載されているが、奇妙なことに、その本体はまったく研究されていない。我々は日本産のカワヤツメ(Lethenteron japonicum)の口腔腺分泌液を調べ、やはりヒトの血液凝固時間を延ばす作用があることを見いだした。また、タンパク成分をゲル濾過により分離し、分子量16万の血清アルブミンと相同なタンパクと分子量2万5千のタンパクが主成分であることを見いだした。さらに強い青色の蛍光を示す酸性の低分子が多量に含まれることを見いだした。本年度の研究では、まず、分子量2万5千のタンパクの化学構造をペプチドの配列分析によりほぼ75%を決定し、全体の構造を口腔腺の全RNAからのcDNAクローニングにより明らかにした。その結果、これが蛇毒などは虫類毒に見られるCRISP(cysteine-rich secretory protein)ファミリーに属するタンパクであることがわかった。特にメキシコ毒トカゲの毒成分であるリアノジン受容体チャネルのプロッカーと相同性が高いことが示された。ラット尾動脈平滑筋の小片をもちいた筋収縮阻害実験の結果、このタンパクはリアノジン受容体の阻害活性は無く、電位作動性のLタイプカルシウムチャネルのブロックにより、血管の平滑筋収縮を阻害する新しいカルシウムチャネル阻害タンパクであることが明らかになった。これは血管収縮による宿主の止血反応を抑制して吸血を容易にしているものと推定された。ホモロジーモデリングによる立体構造は蛇毒CRISPと類似するが、ヤツメCRISPには多くの挿入配列があり、これがループアウトしてチャネル阻害特異性を決めていることが示唆される。寄生性のヤツメウナギの口腔腺分泌液には古くよりlamphredinとよばれる血液の抗凝固活性物質などが知られているが、その生化学的本体は未だ明らかでない。昨年度の研究では、まず、分子量2万5千のタンパクについて,これが新規の電位作動性のLタイプカルシウムチャネルのブロッカーであることを明らかにした。本年度の研究では血液凝固阻止活性の本体の解析を実施し,まず口腔腺液のゲルろ過分画における血液凝固阻止活性の分布を検討した。また本研究の実施過程で中国の研究者グループが口腔腺液にフィブリノーゲン分解活性があることを報告したため,この点も検討した。その結果,我々もカワヤツメロ腔腺液によってフィブリノーゲン3本鎖のうちAα鎖、Bβ鎖が特異的に分解されることを確認した。また、ゲルろ過フラクションでは160kDaのアルブミンよりかなり低分子側の画分において、顕著なフィブリノーゲン分解活性が認められた。このフィブリノーゲン分解活性はキレート剤のみが阻害したため、メタロプロテアーゼによると推測された。また2価金属イオンのうちCa^<2+>およびMg^<2+>の添加によってフィブリノーゲン分解活性が回復した。既知のメタロプロテアーゼはすべてZn^<2+>(一部にCo^<2+>)を要求するが,口腔腺のプロテアーゼでは亜鉛の添加は無効であり,Ca^<2+>あるいはMg^<2+>依存性の全く新しいメタロプロテアーゼであることが予想される。この活性を持つゲルろ過画分のアミノ酸配列分析ではアルブミンの断片、クレアチンキナーゼ、サイトケラチンなどと一致する配列を見いだした。今後さらに高度な精製やcDNAクローニングにより新規メタロプロテアーゼの存在を明らかすることができると期待される。 | KAKENHI-PROJECT-19510214 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19510214 |
広帯域ストリームデータの安定伝送を支える協調連携型ネットワーク解析システム | ネットワークの広帯域化に伴い,8K/4K超高精細映像のストリームデータを扱うアプリケーションの普及が見込まれている.広帯域でリアルタイム性を持つストリームデータは,伝送状況の影響を非常に受けやすく,安定運用のためには輻輳等の原因箇所の特定が不可欠である.このため提案者は,低遅延で描画表示が可能なover 100Gbps対応の高精度ネットワークモニタ装置と複数装置の連携により問題個所を特定するシステムを開発した.これを様々な8K/4K非圧縮広帯域映像伝送トライアルでの使用を通して,有効性を評価した.本研究では,広帯域ストリームデータを対象に,障害発生の問題箇所を自動的に絞り込む検査分析機能と詳細なパケットキャプチャ情報を基にポスト解析を行う機能を実現する.平成26年度は,システム全体の機能連携に向けた基本検討とリアルタイム分析処理系の拡充を目指して,具体的なアプリケーションとして、over10Gbpsの広帯域ストリームデータ伝送と,OpenFlow等のSDNで制御されたネットワーク上でのGbpsクラスのストリーム伝送における多面的な観測系を取り上げ、具体的な障害時の機能連携シナリオ等の作成を行い,システム化の検討を進めた.over10Gbpsの広帯域ストリームデータアプリケーションに関しては,H26.2の情報通信研究機構(NICT)の雪祭り実験イベントにおいて,8K超高精細映像(24Gbps)を遠隔伝送・蓄積配信するトライアルに参加する機会を得て,この中で,over10Gbps対応のトラヒックモニタのプロトタイプ装置を市販並列処理ボードの応用により開発し評価を進め対外発表に繋げた.これを発展させてパケット解析ノードの1つとして組み入れ,H27.2のNICTの雪祭りイベントの中で実験使用した.NICTのStarBED3の複数台のノードを利用し8K映像蓄積・配信機能を仮想化し,データを多地点に配信する取り組みの中で多面的なトラヒック監視を実現し,関連成果と共に報道発表した.SDNで制御されたネットワークにおける多面的な観測については,H26.11の米国で行われたSC14展示会で複数の日米間の太平洋ラインを含めて10箇所程度を多面的に観測する系を作成し,1秒程度の遅延で可視化し,1.5Gbpsのハイビジョンを非圧縮で伝送する場合の障害箇所を明らかにした.またオペレータがその結果を使ってOpenFlow制御により使用するパスを切り替える実験を行い,公表した.本研究では,広帯域ストリームデータを対象に,障害発生の問題箇所を自動的に絞り込む検査分析機能と詳細なパケットキャプチャ情報を基にポスト解析を行う機能を実現する.前年度から高精度測定の具体的なアプリケーションの1つとして進めた8K超高精細映像(24Gbps)を対象とした広帯域映像ストリーム伝送・蓄積配信については,内外から様々な反響があり,本研究で開発した高精度測定装置が,デバッグや評価データ収集のために活躍した.2015.6のInterop Tokyo 2015の実験においては,NICTのStarBED3を使ったマルチレート仮想サーバの伝送状況を可視化するために利用し,Best of Show Award「ShowNetデモンストレーション部門グランプリ,サイエンス部門審査員特別賞」の受賞に繋がった.また,2015.11のSC16や2016.2のNICT雪まつり実験においても,本研究のリアルタイム分析処理システムを利用した評価実験を進め,研究会で公表した.このような状況を踏まえて,平成27年度の目標であるポスト解析のプロトタイピングと並列手法についても,当初の目標を上回るover10Gbpsの広帯域映像ストリームを対象にした多地点のポスト解析に取り組む事で,Interopの際の8K/4Kマルチレート仮想サーバの同期配信性能やマルチキャストネットワーク制御の動作を明らかにして研究会で公表した他,ポスト解析に必要な処理量についての評価を進めた.さらに高精度ネットワーク処理ノード間でのデータ共有方式の検討・実装を行いperfSONARとの比較により処理性能の評価を進めた.また障害時の検査分析の自動化に向けて,遠隔の任意の回線を動的に選択してキャプチャデータを解析ノードに集約する手段として,市販スイッチのタッピングデータの集約機能を利用したプロトタイプの作成を行った.本研究の目的は,(1)ノードの協調連携による検査分析の自動化方式,(2)伝送状況を多面的に分析しリアルタイムに可視化する機能,(3)高精度時刻情報が付与されたキャプチャデータから該当フローを抽出し相関を取る事で,時間軸での原因追究を可能とするポスト解析機能の検討である.各項目について,現状の進捗と今後の展開を整理する.(1)については,現状までに多地点で映像伝送プロトコルの解析(L7)からパケット伝送特性(L2)を解析実行し,1つの表示装置に集約し画面上に一覧の形で表示し,どの区間が障害を起こしているかを可視化できるシステムが実現できているため,今後は本システムの評価を行うと共に,本年度進めた検査対象の回線の動的選択およびキャプチャ機能を使い,検査分析の自動化および,必要な解析ノードの自動割り当てを行うプロトタイプに発展させる.(2)については,H26年度に作成した高精度ネットワーク測定装置が,8K/4K映像伝送・蓄積配信の実験においてover10Gbpsの広帯域映像の伝送状況を低遅延で可視化できる成果となった.また本年度は,処理ノード間のプロトコルの検討に向けて,高精度ネットワーク測定装置間でのデータ共有方式の提案とプロトタイプによる実装を行った. | KAKENHI-PROJECT-26330121 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26330121 |
広帯域ストリームデータの安定伝送を支える協調連携型ネットワーク解析システム | 今後現状のperfSONARプロトコルとの連携を含めた定量的な評価を進める.(3)については,本年度over10Gbpsのポスト解析を実施し,多地点の高精度測定装置の膨大なキャプチャデータの処理を行うために,時間軸での相関を取りながら解析する簡易ツールを作成した.現状は1台のPCサーバのみでの処理を行っているが,今後並列計算リソースを利用した解析処理に発展させる.本研究では,広帯域ストリームデータを対象に,障害発生の問題箇所を自動的に絞り込む検査分析機能と詳細なパケットキャプチャ情報を基にポスト解析を行う機能を実現する.本年度も8K超高精細映像を題材として,以下のように実現した.(1)ノードの協調連携による検査分析の自動化:上位レイヤの解析機能として,RTPパケットのリアルタイム解析機能を実装し,シーケンス番号の異常検出などを障害報告条件として指定できるようにした他,複数の測定装置で収集した障害情報を汎用ログ収集システム(fluentd)の枠組みを使って集約する事で,障害発生区間の特定を行う機能を実装した.(2)伝送状況の多面的な分析とリアルタイム可視化機能: 8K超高精細映像を扱う事によりover 100Gbpsの回線容量を並列に同時解析する必要性が生じた.このような多地点の高速パケットキャプチャ機構を実現するために,市販の汎用スイッチのタッピングデータの集約機能を用いて,任意の複数回線のキャプチャデータからヘッダ情報を抽出し,これを特定ポートに集約し,一括で処理するモニタ機能を再設計した.集約部では,一括での解析処理を行う必要があるため,高速処理性能が要求されるが,このために,Intel DPDKを使って解析処理にCPUの特定コアを占有させる事により,over 100Gbpsのキャプチャ・分析性能を達成した他,トラヒック表示・障害表示のGUIリアルタイム可視化を実現した.本システムを2017NICT雪まつり実験において利用し,有効性を検証した.(3)高精度時刻情報に基づくポスト解析機能:上記の可視化システムにおいて,過去の任意の時間からのデータをリアルタイムで可視化する機能を付与し,キャプチャ地点毎の障害前後のトラヒックの状況を可視化する事で,問題点の追究を可能とした.ネットワークの広帯域化に伴い,8K/4K超高精細映像のストリームデータを扱うアプリケーションの普及が見込まれている.広帯域でリアルタイム性を持つストリームデータは,伝送状況の影響を非常に受けやすく,安定運用のためには輻輳等の原因箇所の特定が不可欠である.このため提案者は,低遅延で描画表示が可能なover 100Gbps対応の高精度ネットワークモニタ装置と複数装置の連携により問題個所を特定するシステムを開発した.これを様々な8K/4K非圧縮広帯域映像伝送トライアルでの使用を通して,有効性を評価した.高速可視化方式の検討およびリアルタイム解析エージェントの検討の一環として, over 10Gbpsクラスのパケットモニタを題材に検討を加速する事ができた.over 10Gbpsのモニタ | KAKENHI-PROJECT-26330121 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26330121 |
ステロイドホルモンによる両生類の性決定機構の解明 | 両生類(ツチガエル)の性はステロイドホルモンによって転換する。アンドロゲン(雄化ステロイドホルモン)がはたらくにはその受容体(AR)に結合することが必要である。ツチガエルのAR遺伝子は性染色体にある。Z染色体のZ-ARは正常に発現するがW染色体のW-ARは殆ど発現しないため、Z-AR遺伝子はツチガエルの雄化に有利であると考えられる。そこで、Z-AR遺伝子を雌(ZW)胚に導入して性が転換するかどうかを調べた。その結果、Z-ARの導入により雌の性が不完全ではあるが転換し卵精巣を形成した。本研究は、脊椎動物でAR遺伝子が性決定に深く関わっていることを世界で初めて示した。両生類(ツチガエル)の性はステロイドホルモンによって転換する。アンドロゲン(雄化ステロイドホルモン)がはたらくにはその受容体(AR)に結合することが必要である。ツチガエルのAR遺伝子は性染色体にある。Z染色体のZ-ARは正常に発現するがW染色体のW-ARは殆ど発現しないため、Z-AR遺伝子はツチガエルの雄化に有利であると考えられる。そこで、Z-AR遺伝子を雌(ZW)胚に導入して性が転換するかどうかを調べた。その結果、Z-ARの導入により雌の性が不完全ではあるが転換し卵精巣を形成した。本研究は、脊椎動物でAR遺伝子が性決定に深く関わっていることを世界で初めて示した。脊椎動物の性は性染色体に局在する遺伝子、所謂"性決定遺伝子"によって決まると考えられている。哺乳類ではSRY,鳥類のニワトリではDMRT1、魚類のメダカではDMYが見いだされ、性決定遺伝子は多様であることが分かってきた。しかし、性決定遺伝子によって性が決まるとされる脊椎動物でも種によってはステロイドホルモンの投与および環境の変化で比較的容易に性が変わる。今までの研究では孵化温度や体の大きさで性が決まる場合には性決定遺伝子が関与せず、ステロイドホルモンが重要な因子の一つと考えられている。事実、ステロイドホルモンを投与すると簡単に性が転換する動物もいる。性決定遺伝子で性が決まるメダカでもステロイドホルモンによって性が変わる。両生類でも幼生にステロイドホルモンを投与すると性が転換する。これらの事実は、脊椎動物の性決定にステロイドホルモンが深く関与することを示している。当研究室における今までの結果から、ツチガエルyの性決定時期に、(1)ステロイド合成酵素遺伝子が発現すること、(2)未分化性腺に酵素蛋白が存在すること、(3)未分化性腺で実際にステロイドホルモンが合成され、雄ではテストステロンが、雌ではエストロゲンが多く合成されること、(4)アンドロゲン受容体(AR)遺伝子はZ,W性染色体上にありW染色体のARは殆ど発現しないこと、などを見出している。本研究は、ツチガエルをの性決定がステロイドホルモンに依ることを実証するため、RをZW胚に導入したトランスゲニックカエルを作製してARが雄決定遺伝子かどうかを明らかにすることにある。そこで、AR導入用のDNAコンストラクトを作製してツチガエル卵に導入した。その結果、遺伝子の導入には成功したが導入胚数が少なく、ARが雄決定遺伝子かどうか断定するまでに至っていない。次年度は導入胚数を増やしそれを実証する予定である。研究材料のツチガエルは同一種でありながらXY型かZW型の性決定様式をもつユニークなカエルである。この2つの性決定様式は性染色体の逆位と、その後の集団間の交配で生まれたと考えられている。最近、我々はツチガエル性染色体の逆位領域にARはアンドロゲン受容体遺伝子が存在すること、また、ZZ胚とZW胚の発現比は2:1であることを見出した。このことは、このカエルの性決定及び性分化にステロイドホルモンが大きな影響を及ぼしている事ことを示している。本研究は、(1)両生類(ツチガエル)の性(雄)がアンドロゲンとその受容体で決まること、(2)AR遺伝子、(3)CYP17[アンドロステンジオン(AD)合成酵素]遺伝子の転写調節因子を明らかにすること、及び(4)W染色体のAR(W-AR)が致死遺伝子かどうかを明らかにする。ことにある。これらが実証できれば、アンドロゲンによる性決定のしくみが明らかになる可能性があり、脊椎動物の性決定分子機構の解明に大きく貢献すると思われる。本年度の成果を以下に述べる。まず、(1)については、AR遺伝子を受精卵に導入したTG幼生の作製を作製してアンドロゲン添加或は未添加水で飼育した。TG幼生をアンドロゲン添加水で飼育するとZW胚は本来の生殖腺である卵巣ではなく精巣を形成した。この事実はツチガエルの性決定がアンドロゲンとその受容体(AR)で決まる事を見事に示している。ステロイドホルモンとその受容体が性決定に関わる事を世界で初めて示した。(2)(3)は、AR遺伝子及びCYP17[アンドロゲン前駆体合成酵素]遺伝子の転写調節因子を明らかにすることにあるが、そのために1細胞cDNAライブラリーの作製が必要である。この研究課題を開始して2年間でタイターの高いライブラリーを作製する事に成功した。現在、1細胞で発現する遺伝子の解析を行なっている。「研究目的」脊椎動物の性は(1)遺伝的要因、(2)環境的要因、或は(3)社会的要因のいずれかで決まる。爬虫類では(2)の卵の孵化温度、魚類では(3)の体の大きさで性が決まる種もある。 | KAKENHI-PROJECT-22370027 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22370027 |
ステロイドホルモンによる両生類の性決定機構の解明 | またこれらの因子とは別に、脊椎動物の多くの種では、ステロイドホルモンによって性が転換する。本研究は、ステロイドホルモンによる両生類(ツチガエル)の性決定機構の解明を目的とする。特に、ツチガエルではアンドロゲンとその受容体(AR)が性決定に重要な役割を果たすことを示す。「研究成果」当研究室の研究によって、ツチガエルの性染色体にあるAR遺伝子は、Z染色体のAR(Z-AR)は正常に発現するが、W染色体の(W-AR)は退化していて殆ど発現しないため、雄(ZZ)と雌(ZW)胚のARの発現比が2:1になることを示した。このZ-ARの発現比は生殖腺の雄化(精巣形成)に有利である。そこで、Z-AR遺伝子をツチガエル受精卵に導入して発生させると雌(ZW)が性転換して精巣を形成すると考え、Z-AR遺伝子を導入したトランスゲニックツチガエルを作製した。Z-AR遺伝子を800個の受精卵に導入後、変態完了期まで飼育し、Z-AR遺伝子導入個体の生殖腺を分子及び細胞・組織レベルで解析した。その結果、Z-AR遺伝子を導入した9つの雌個体が不完全ではあるが性転換して卵精巣を形成した。卵精巣は内部形態から3つのタイプに分けられた。不完全性転換雌(ZW)幼生をテストステロン含有水で飼育すると変態後に雄(ZZ)の精巣と全く区別がつかない精巣(ZW)を形成した。「意義・重要性」Z-AR遺伝子導入カエルを作製し、アンドロゲンとその受容体(AR)が脊椎動物の性決定に関わることを世界で初めて示した。この研究成果は、性決定遺伝子とは独立した性決定のしくみを世界で初めて示したもので脊椎動物の性決定機構の解明に大きく役立つと思われる。脊椎動物の性は遺伝的、環境的、及び社会的要因で決まる。多くの脊椎動物の性は遺伝的、即ち受精時の性染色体の組み合わせで決まると考えられ、多くの研究者が性染色体上の性決定遺伝子の特定に多くの力を注いできた。しかし、現在までに発見されている性決定遺伝子は哺乳類や魚類のメダカなど数種でで見つかっているにすぎない。しかも性決定遺伝子は一つではなく、種で異なり多様と考えられるようになった。一方、環境的或は社会的要因による性決定では性決定遺伝子が関与しないと考えられる。また、魚類、両生類及び爬虫類の多くの種では、ステロイドホルモンによって性が転換する。性転換は性染色体の遺伝子が関与しない。つまり性決定の主役は性決定遺伝子だけではなくステロイドホルモンも主役になり得る。ツチガエルでは性染色体にAR遺伝子があり、W染色体のARは殆ど発現しない。従って、雌雄(ZZ/ZW)の発現比は2:1になる。この比はアンドロゲンが雄化に関わるため、雄にも雌にも有利である。本研究は、ステロイドホルモンが性決定因子と考え、(1)両生類(ツチガエル)の性(雄)がアンドロゲンとその受容体(AR)で決まることをトランスゲニックカエルの作製によって実証すること、(2)ステロイドホルモン合成酵素遺伝子の発現調節機構を明らかにすることにある。本年度の研究で、Z-ARをツチガエル受精卵に導入し変態時期まで育てた雌(ZW)カエルの生殖腺が部分的性転換を起すことを見いだした。部分的性転換は幼生の飼育水にテストステロンを加えると完全に性が転換する(投稿中)。 | KAKENHI-PROJECT-22370027 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22370027 |
福島第一原子力発電所事故を教訓とした大規模緊急広域避難対策に関する社会情報学研究 | 東京電力福島第一原子力発電所事故は世界的にも初めての大規模緊急広域避難である。本研究はこの事故を教訓とし、1大規模緊急広域避難の諸動をあらかじめ予測し、避難時の混乱を低減させること、2大規模緊急広域避難にける災害情報の適切な伝達内容・手法など情報提供方策について明らかにすることを目的とする。申請者らが東京電力福島第一原子力発電所事故に関して、これまで調査を実施し取得してきた避難に関する既存のデータに加え、緊急時のShadowEvacuationについて調査を実施し、これらを統合して、東京電力福島第一原子力発電所事故における避難状況をデータセントリックな視座から全体的に把握する。ここから原子力発電所事故のみならず、首都直下地震、南海トラフ巨大津波などの大規模緊急広域避難の防災・減災策を社会情報学的視座から考察するものである。本年度は、昨年度に引き続き、福島原発事故の調査を継続して実施している。過去の調査では十分に実態が把握されていない、20km圏外の住民において避難勧告・指示がなくとも避難をおこなった緊急時の自主避難(自主的避難)「Shadow Evacuation」についての検討を継続し、また、浪江町を中心として、行政組織そのものの避難における課題についても実証調査を進めた。また、今年度より、立地県および隣接県における原子力防災の現状についてのヒアリング調査を開始している。来年度にはこれを完成させ、現状の広域避難を含めた原子力防災の現状を明らかにする予定である。実施予定であった関連するヒアリング、調査票調査を進めることができた。得られた調査データ、あらたなヒアリング結果などを前提に分析・論文化を進めていく。東京電力福島第一原子力発電所事故は世界的にも初めての大規模緊急広域避難である。本研究はこの事故を教訓とし、1大規模緊急広域避難の諸動をあらかじめ予測し、避難時の混乱を低減させること、2大規模緊急広域避難にける災害情報の適切な伝達内容・手法など情報提供方策について明らかにすることを目的とする。申請者らが東京電力福島第一原子力発電所事故に関して、これまで調査を実施し取得してきた避難に関する既存のデータに加え、緊急時のShadow Evacuationについて調査を実施し、これらを統合して、東京電力福島第一原子力発電所事故における避難状況をデータセントリックな視座から全体的に把握する。ここから原子力発電所事故のみならず、首都直下地震、南海トラフ巨大津波などの大規模緊急広域避難の防災・減災策を社会情報学的視座から考察するものである。本年度は、過去の調査では十分に実態が把握されていない、20km圏外の住民において避難勧告・指示がなくとも避難をおこなった緊急時の自主避難(自主的避難)「Shadow Evacuation」についての検討をすすめた。具体的には、福島県内の双葉8町村以外の市町村において、東京電力福島第一原子力発電所事故後に一時的に避難したが、既に自宅に戻っている人について人数、状況などを把握するための基礎的データを収集するための調査を実施した。来年度、これを集計し、東京電力福島第一原子力発電所事故後の避難の量的な全体像の推計を行うものである。また、浪江町を中心として、行政組織そのものの避難における課題についても実証調査を進めた。初年度実施予定だった調査票調査が回収まで順調にすすんだ東京電力福島第一原子力発電所事故は世界的にも初めての大規模緊急広域避難である。本研究はこの事故を教訓とし、1大規模緊急広域避難の諸動をあらかじめ予測し、避難時の混乱を低減させること、2大規模緊急広域避難にける災害情報の適切な伝達内容・手法など情報提供方策について明らかにすることを目的とする。申請者らが東京電力福島第一原子力発電所事故に関して、これまで調査を実施し取得してきた避難に関する既存のデータに加え、緊急時のShadow Evacuationについて調査を実施し、これらを統合して、東京電力福島第一原子力発電所事故における避難状況をデータセントリックな視座から全体的に把握する。ここから原子力発電所事故のみならず、首都直下地震、南海トラフ巨大津波などの大規模緊急広域避難の防災・減災策を社会情報学的視座から考察するものである。本年度は、昨年度に引き続き、過去の調査では十分に実態が把握されていない、20km圏外の住民において避難勧告・指示がなくとも避難をおこなった緊急時の自主避難(自主的避難)「Shadow Evacuation」についての検討をすすめた。具体的には、福島県内の双葉8町村以外の市町村において、東京電力福島第一原子力発電所事故後に一時的に避難したが、既に自宅に戻っている人について人数、状況などを把握するための基礎的データを収集するための調査を得て、その集計作業をおこなった。現在、東京電力福島第一原子力発電所事故後の避難の量的な全体像の推計を行っている。昨年度に引き続き、浪江町を中心として、行政組織そのものの避難における課題についても実証調査を進めた。また、今年度より、新潟県柏崎刈羽原子力発電所における広域避難についても検討をはじめた。今年度、実施予定であった調査票調査の集計を行った。また関連するヒアリング、調査票調査を進められた。東京電力福島第一原子力発電所事故は世界的にも初めての大規模緊急広域避難である。本研究はこの事故を教訓とし、1大規模緊急広域避難の諸動をあらかじめ予測し、避難時の混乱を低減させること、2大規模緊急広域避難にける災害情報の適切な伝達内容・手法など情報提供方策について明らかにすることを目的とする。申請者らが東京電力福島第一原子力発電所事故に関して、これまで調査を実施し取得してきた避難に関する既存のデータに加え、緊急時のShadowEvacuationについて調査を実施し、これらを統合して、東京電力福島第一原子力発電所事故における避難状況をデータセントリックな視座から全体的に把握する。 | KAKENHI-PROJECT-16H01757 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H01757 |
福島第一原子力発電所事故を教訓とした大規模緊急広域避難対策に関する社会情報学研究 | ここから原子力発電所事故のみならず、首都直下地震、南海トラフ巨大津波などの大規模緊急広域避難の防災・減災策を社会情報学的視座から考察するものである。本年度は、昨年度に引き続き、福島原発事故の調査を継続して実施している。過去の調査では十分に実態が把握されていない、20km圏外の住民において避難勧告・指示がなくとも避難をおこなった緊急時の自主避難(自主的避難)「Shadow Evacuation」についての検討を継続し、また、浪江町を中心として、行政組織そのものの避難における課題についても実証調査を進めた。また、今年度より、立地県および隣接県における原子力防災の現状についてのヒアリング調査を開始している。来年度にはこれを完成させ、現状の広域避難を含めた原子力防災の現状を明らかにする予定である。実施予定であった関連するヒアリング、調査票調査を進めることができた。調査票調査の集計、それを基にした推計をすすめていく。得られた調査データ、あらたなヒアリング結果などを前提に推計、モデル化を進めていく。得られた調査データ、あらたなヒアリング結果などを前提に分析・論文化を進めていく。 | KAKENHI-PROJECT-16H01757 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H01757 |
移植気道のリモデリング機構の解明:上皮間葉移行現象に着目した新たな試み | 移植気道の組織学的経時的検討から線維化に先立つ上皮の劇的な形態変化の中で上皮間葉移行(EMT)が生じている可能性を示唆する所見を得た。一方、遺伝子組換えマウスを用いた検討では、線維化を引き起こす線維芽細胞の大半はレシピエント由来であるという結果を得た。移植臓器線維化過程に上皮の何らかの関与はあると推察されるが、移植片を機能廃絶からrescueするためにはレシピエント骨髄由来細胞の線維芽細胞への分化をブロックすることが重要だと示唆する成果である。移植気道の組織学的経時的検討から線維化に先立つ上皮の劇的な形態変化の中で上皮間葉移行(EMT)が生じている可能性を示唆する所見を得た。一方、遺伝子組換えマウスを用いた検討では、線維化を引き起こす線維芽細胞の大半はレシピエント由来であるという結果を得た。移植臓器線維化過程に上皮の何らかの関与はあると推察されるが、移植片を機能廃絶からrescueするためにはレシピエント骨髄由来細胞の線維芽細胞への分化をブロックすることが重要だと示唆する成果である。上皮間葉移行(Epithelial-mesenchymal transition : EMT)という現象が、臓器機能廃絶の一因となる線維化現象や癌の浸潤過程などで認められている。肺移植においても、長期的な予後を不良にしている線維化を主体としたBronchiolitis obliterans syndrome (BOS)という現象にEMTが関与しているとされる。我々の圏的は、移植気道のremodelingに如何にEMTが関与しているかを明らかにし、当該経路の薬物的修飾によって移植片を機能拒絶よりrescueすることにある。気道remodelingのモデルとしてはマウスの同所性もしくは異所性気管移植がしばしば使用されており、我々は、major histocompatibility complex mismatch pairであるBalb/c→B6のマウスの組み合わせで同所性気管移植をマイクロサージェリー手技にて行い、気道上皮下層の線維化・リモデリングを経時的に観察、再現性を確認した。また、免疫染色を用いて、α-SMA、E-cadherin、ZO-1等の上皮・繊維芽細胞マーカーの発現・分布の経時的変化の観察を開始した。今後、EMTが組織学的に確認可能な時点を明らかにすることが可能と考えており、それが明らかとなればその時点での組織の遺伝子発現解析に着手し、気道が線維化に至るメカニズムが明らかとなれば、当該経路への薬物的修飾によって移植片を拒絶よりrescueすることが可能と考えている。上皮問葉移行(Epithelial-mesenchymal transition: EMT)という現象が、臓器機能廃絶の一因となる線維化現象や癌の浸潤過程などで認められている。肺移植においても、長期的な予後を不良にしている線維化を主体としたBronchiolitis obliterans syndrome(BOS)という現象にEMTが関与しているとされる。我々の目的は、移植気道のremodelingに如何にEMTが関与しているかを明らかにし、当該経路の薬物的修飾によって移植片を機能拒絶よりrescueすることにある。気道remodelingのモデルとしてはマウスの同所性もしくは異所性気管移植がしばしば使用されており、我々は、major histocompatibility complex mismatch pairであるBalb/c→B6のマウスの組み合わせで同所性気管移植をマイクロサージェリー手技にて行い、気道上皮・上皮下層の線維化・リモデリングを観察した。その後、採取した移植気道に免疫染色を行い、EMTマーカーであるαSMAやE-Cadherinの発現が上皮内において経時的に変化することを発見した。中でも上皮内に間葉系マーカーであるαSMAの発現上昇を再現性をもって認めたことは、傷害を受けた上皮が問葉系細胞に移行することを示唆しており、重要な発見であると考えた。それに基づきEMT関連転写因子であるZEB1,SIP1等に関しても免疫染色を行い経時的変化を検討した。マウス主要組織適合性抗原ミスマッチペア(BALB/c, C57BL/6)を用い実体顕微鏡下に同所性気管移植を行った。術後、著しい炎症細胞浸潤・上皮の偽重層化→上皮細胞の剥離→炎症鎮静化・気道上皮扁平化→気道上皮下の線維化が完成、という一連の経過が観察された。術後2日目10日、14日、28日目の各移植片に上皮系マーカーであるE-Cadherin、間葉系マーカーであるα-SMAの免疫組織染色を施行したところ術後7日目(移植片全体の炎症細胞浸潤と上皮の偽重層化が最も著しい時期)の移植片において上皮内α-SMA陽性細胞の出現とその細胞におけるE-Cadherinの減弱が認められた。このことは上皮が傷害を受けた頃に上皮間葉移行(EMT)が起こる可能性を示唆していた。この結果を得て我々は移植気道の線維化におけるEMT関与の可能性を別の方法で示したいと考えた。線維化の主役は線維性物質を産生する線維芽細胞である。移植気道の線維化においてはこの線維芽細胞の起源がEMTを介したドナー上皮細胞であるのかもしくはレシピエントの骨髄由来間葉系細胞であるのかという点において長らく議論があるのだが、異系移植ペアの一方にgreen fluorescent protein(GFP)全身発現マウスを用いることにより線維芽細胞がドナー由来かレシピエント由来かを組織学的に解明することとした。C57BL/6のGFPマウスとnaïve BALB/c | KAKENHI-PROJECT-22591560 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22591560 |
移植気道のリモデリング機構の解明:上皮間葉移行現象に着目した新たな試み | マウスのペアで同様の移植を行い術後28日目の気道上皮下線維化層におけるGFP発現の有無を調べた。結果、この検討においては線維芽細胞の大半はレシピエントに由来することが判明した。前半の経時的変化の組織学的検討より上皮と間質の間にはcross-talkがあると考えられるが、最終的な状態においての線維芽細胞はレシピエント由来のものであることが本研究より明らかとなった。研究室自体がゼロからのスタートであったが、平成24年4月現在、平成24年度7月の国際移植学会(The 24th International Congress of The Transplantation Society)での研究成果の発表が既に決定している。2年間(平成22,23年度)の助走期間を経て平成24年度に研究成果がまとまるというおおむね順調な進展である。24年度が最終年度であるため、記入しない。組織レベルで確認した気管上皮内におけるEMTマーカー発現の経時的変化について、逆転写Realtime-PCRを用いた定量的確認を行う。また一方で、移植ペアの片方にEGFPマウスを用いることにより、線維芽細胞の起源を明らかにする予定である。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22591560 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22591560 |
ヘテロニッケラサイクルを経由する水素移動型炭素―炭素結合形成反応 | 不飽和化合物とニッケル(0)より生じるニッケラサイクルにおいて、β-水素脱離、続く還元的脱離により、環状ニッケル中間体から鎖状の有機化合物が得られる。反応は、炭素-炭素結合形成反応以外にもエステル類を与える炭素-酸素結合形成反応にも適用できる。特に、2種類のアルデヒドから選択的に1種類のエステルを与える交差反応はニッケラサイクルを経由することにより可能となる反応である。不飽和化合物とニッケル(0)より生じるニッケラサイクルにおいて、β-水素脱離、続く還元的脱離により、環状ニッケル中間体から鎖状の有機化合物が得られる。反応は、炭素-炭素結合形成反応以外にもエステル類を与える炭素-酸素結合形成反応にも適用できる。特に、2種類のアルデヒドから選択的に1種類のエステルを与える交差反応はニッケラサイクルを経由することにより可能となる反応である。本研究では、酸化的環化を鍵過程とし水素の移動を伴いながら新しい炭素-炭素結合ができる反応の開発を目的とした。平成21年度は、ヘテロニッケラサイクルを鍵中間体とする単純アルケンの直接共役付加の実現を目指し研究を行ってきた。鍵となる量論反応は既に準備段階において、分子内反応ではあるものの実際に進行することを確かめていた。これを足がかりに、研究の展開を行った。本量論反応を、触媒反応へと展開するにあたり分子内反応での検討を行った。目的とする反応は、高収率で進行するものの非常に高い反応温度を必要とした。これは、酸化的環化を進行させるために必要なη^2:η^2-型の反応中間体が安定すぎるためであると考え、分子間反応での検討を行った。この際には、シリンジポンプを使用し時間をかけてエノンを滴下する必要があったものの目的とする反応を高効率で進行させることに成功した。特に、2-プロペニルフェニルケトンとスチレン類との反応は非常に収率がよく、71-99%の収率で目的とする化合物を与えた。しかし、3-ペンテン-2-オンを用いた場合には、反応時間が長くなり、収率の低下も観測された。これは、酸化的環化に必要なニッケルからの電子の流れ込みが減少する為であると考えている。同様に、2-プロペニルフェニルケトンと1-オクテンや1-デセンとの反応においても反応時間が長くなり、収率の低下も観測された。これは、1-オクテンや1-デセンの配位力が2-プロペニルフェニルケトンに比べて非常に弱いため、エノンと同時にニッケルに配位出来ないためであると考えられる。現時点では、適用できる基質に制限があるものの本反応は、アルケンの炭素-水素結合がエノンへと共役付加する原子変換効率100%の反応であり、またビニル基を共役付加させるのにビニルメタルを必要としない画期的な反応である。新しい分子変換手法の開発は、有機合成化学の大きな柱となる非常に重要な課題である。そのため、以前から活発に反応開発が行われてきた。現在も広く利用されている反応の多くに共通する重要な点は、「原子変換効率」が高いことである。実際に反応効率を向上させることが可能であっても、原子変換効率を向上させることは難しい。そのために、新反応・新手法を開発する際には、可能な限り原子変換効率が高い反応であることが望ましい。申請者は低原子価ニッケルに対してカルボニル化合物、イミン、ニトリルなどが配位しやすいことに着目し、酸化的環化や酸化的付加によりニッケラサイクルを効率よく単離・同定するとともに触媒反応への展開を行ってきた。平成22年度は、エノンニ分子とアルキン-分子との[2+2+2]環化付加反応についての研究を展開した。この反応では、4つの不斉炭素を有するシクロヘキセン誘導体が高収率で得られる。また、生成可能な8種類の化合物のうち1種類のみを選択的に与える。また、水素移動型反応としては、ニッケル錯体触媒によるアルデヒドの二量化エステル合成反応の開発を行った。本反応は、脂肪族アルデヒド、芳香族アルデヒドの両方に対して有効に作用する。また、反応速度定数は、アルデヒドの濃度に対してゼロ次でありアルデヒドの配位は律速段階に影響を与えていない。ここに示した反応は、原子変換効率が100%である。これは、研究目的に合致した成果が上がっているものと考えられる。さらに、シクロプロピルケトンとニッケル錯体との反応において生じる反応中間体の反応性がその配位形式により大きく影響を受けていることを明らかにした。この知見を基に新たな触媒反応を開発することが可能となった。本研究課題である「ヘテロニッケラサイクルを経由する水素移動型炭素ー炭素結合形成反応」においては、これまでに合成あるいは発生方法を確立したヘテロニッケラサイクルを反応中間体とする種々の触媒反応についての検討を行った。本年度においては、特にアルデヒドをアルケンとニッケルとの分子内酸化的環化反応を鍵過程とするヒドロアシル化反応についての検討を行った。本反応の鍵中間体となるオキサニッケラサイクルは2004年に量論反応における合成を達成していた。そのため、触媒的分子内ヒドロアシル化反応へと展開することは研究をより意義深いものに昇華させる重要な鍵である。本ニッケラサイクルを鍵中間体とする反応においては、反応機構的にも脱カルボニル化反応等の副反応が完全に抑制されることが期待される。実際に、同様の分子内ヒドロアシル化反応をロジウムやルテニウムなどの既知触媒にて実施した際には、相当量の脱カルボニル化反応が進行する事が報告されている。 | KAKENHI-PROJECT-21245028 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21245028 |
ヘテロニッケラサイクルを経由する水素移動型炭素―炭素結合形成反応 | これらの事実は、本研究におけるニッケル錯体触媒による分子内ヒドロアシル化反応が斬新かつ意義深い反応となることを強く示唆している。しかしながら、そのニッケル錯体の熱安定性から触媒反応への展開は未だ達成されていなかった。そこで本年度は、触媒反応に使用する配位子を数多く合成し触媒条件の再検討を行った。その結果、量論反応では非常に良い結果を与えたPCy3やIPr配位子を用いた場合には低収率であったものの、IButやIAdなどの嵩高く塩基性の高い配位子を用いる事で非常に高い収率にて反応を実現する事ができた。さらに、期待通りに脱カルボニル化反応を完全に抑制することができた。これは錯体化学アプローチから予測した触媒設計が有用であることを示している物と考えられる。環状ニッケル錯体を鍵中間体とする触媒反応の開発を行った。従来のヒドロアシル化反応では、アシルメタル中間体を経由するために脱一酸化炭素が副反応として進行する。そのために触媒の失活や目的とするケトンが得られないなどの問題が避けられなかった。本研究課題において開発したアルケンの分子内ヒドロアシル化反応においては、アシルメタル中間体を経由しないために、脱一酸化炭素が起こらない。そのために、いずれの反応においても高収率で目的とする環状ケトンが高収率で得られた。また、6員環ケトンであるテトラロン誘導体も非常に高い収率で得られた。6員環ケトン類は従来の遷移金属触媒を用いての反応では、非常に容易に脱一酸化炭素が進行するために合成が困難であるとされてきた。環状ニッケル錯体を中間体とする本反応ではこれが可能になった。さらに、本反応においても反応中間体の解明を行うために量論反応を検討した。この際には、ニッケル反応中間体の二量化錯体が単離された。この錯体そのものは、触媒サイクルの外側に存在していると考えられるが、実際の反応中間体の構造を反映していいるものと考えている。また、アルキンとイミンとの反応においてはNHC配位子をもちいることで、これまでは不可能であったアルキンとイミンとの組み合わせにおいても対応するジヒドロピリジンが生成物として得られることをみいだした。2007年に発表した窒素上にSO2Phが置換している反応とは異なり、反応の律速段階は二分子目のアルキンが挿入する段階である事が量論反応により明らかとなった。このように、基質の違いにより反応の律速段階が変わる可能性は以前より知られていたが、実際に錯体反応により明らかにした例は殆どなく珍しい例であると考えられる。現在までに概ね順調に進展しているものと考えている。錯体触媒合成に関しては、その設計段階に多少の試行錯誤が必要ではあったものの思い通りの錯体触媒が設計できた。ただし、新たな錯体触媒が示した新反応に関してはその反応機構解析に時間を要した。これは、本研究課題の成果を最大にするためには必要不可欠なプロセスで有り、今後の展開に期待がもたれる。25年度が最終年度であるため、記入しない。これまでに、得られた知見をもとに新たな研究展開を目指す。具体的には、ニッケル原子のβ位に水素以外の元素を導入すること事で新たな反応の開発を目指したい。そのためには、効率のよい原料合成法の確立を行う。 | KAKENHI-PROJECT-21245028 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21245028 |
膵臓癌治療法確立のための膵臓癌浸潤転移機構のシグナル伝達系の解明 | 2) TGF-β_1の膵癌における役割の検討:現在まで、手術によって得られた膵癌組織21例と慢性膵炎13例、組織学的に正常であった膵組織5例のパラフィン包埋組織においてTGF-β_1とそのI型レセプター、II型レセプターの発現を、それぞれ、ポリクローナル抗体を用いて免疫染色にて検索し、比較検討した。その結果、正常膵組織では、膵管上皮でTGF-β_1とレセプターの発現を認めたが、間質細胞では認めなかった。膵癌の癌細胞と慢性膵炎の膵管上皮細胞においては、TGF-β_1とレセプターの免疫染色陽性細胞数は同程度に認められ、全て同時に発現を認めた例もそれぞれ81.8%と76.2%と同程度であった。間質細胞におけるTGF-β_1とI型レセプター発現は膵癌において、慢性膵炎に比し高い発現傾向が認められ、特にII型レセプターの間質発現は膵癌において有意に高かった(p<0.05)。間質におけるTGF-β_1とレセプターの同時発現例は。膵癌で57.1%と慢性膵炎で40%であった。この実験結果から、TGF-β_1とそのレセプターの膵癌間質での高頻度の発現は、癌間質反応による線維化(desmoplasia)と炎症による線維化の相違を反映している可能性が示唆された。このように、TGF-β_1とそのレセプターが膵癌間質において強く発現していることを明らかにした。2) TGF-β1の膵癌における役割の検討:現在まで、手術によって得られた膵癌組織21例と慢性膵炎13例、組織学的に正常であった膵組織5例のパラフィン包埋組織においてTGF-β1とそのI型レセプター、II型レセプターの発現を、それぞれ、ポリクローナル抗体を用いて免疫染色にて検索し、比較検討した。その結果、正常膵組織では、膵管上皮でTGF-β1とレセプターの発現を認めたが、間質細胞では認めなかった。膵癌の癌細胞と慢性膵炎の膵管上皮細胞においては、TGF-β1とレセプターの免疫染色陽性細胞数は同程度に認められ、全て同時に発現を認めた例もそれぞれ81.8%と76.2%と同程度であった.間質細胞におけるTGF-β1型レセプター発現は膵癌において、慢性膵炎に比し高い発現傾向が認められ、特にII型レセプターの間質発現は膵癌において有意に高かった(p<0.05)。間質におけるTGF-β1とレセプターの同時発現例は。膵癌で57.1%と慢性膵炎で40%であった。この実験結果から、TGF-β1とそのレセプターの膵癌間質での高頻度の発現は、癌間質反応による線維化(desmoplasia)と炎症による線維化の相違を反映している可能性が示唆された。このように、TGF-β1とそのレセプターが膵癌間質において強く発現していることを明らかにしたが、TGF-β1によって抑制されている可能性のあるMnSODについては、現在同一症例において免疫染色にて蛋白の発現とRT-PCRによってmRNAの発現を検索中である。2) TGF-β_1の膵癌における役割の検討:現在まで、手術によって得られた膵癌組織21例と慢性膵炎13例、組織学的に正常であった膵組織5例のパラフィン包埋組織においてTGF-β_1とそのI型レセプター、II型レセプターの発現を、それぞれ、ポリクローナル抗体を用いて免疫染色にて検索し、比較検討した。その結果、正常膵組織では、膵管上皮でTGF-β_1とレセプターの発現を認めたが、間質細胞では認めなかった。膵癌の癌細胞と慢性膵炎の膵管上皮細胞においては、TGF-β_1とレセプターの免疫染色陽性細胞数は同程度に認められ、全て同時に発現を認めた例もそれぞれ81.8%と76.2%と同程度であった。間質細胞におけるTGF-β_1とI型レセプター発現は膵癌において、慢性膵炎に比し高い発現傾向が認められ、特にII型レセプターの間質発現は膵癌において有意に高かった(p<0.05)。間質におけるTGF-β_1とレセプターの同時発現例は。膵癌で57.1%と慢性膵炎で40%であった。この実験結果から、TGF-β_1とそのレセプターの膵癌間質での高頻度の発現は、癌間質反応による線維化(desmoplasia)と炎症による線維化の相違を反映している可能性が示唆された。このように、TGF-β_1とそのレセプターが膵癌間質において強く発現していることを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-09770342 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09770342 |
慢性骨髄性白血病進展に関わるアポトーシス制御遺伝子とc-kit遺伝子 | 白血病発症の分子生物学的解析をテーマに研究した。、特に慢性骨髄性白血病(CML)の発症およびCMLの病期進展を分子生物学的手法により細胞レベルで解析・解明することを目的とした。主たる解析遺伝子は白血病細胞のc-kitおよびcalpastatin相同遺伝子である。近年癌抑制遺伝子とされるp51/p63遺伝子、bcl-2,bcl-x,DCC遺伝子も研究のテーマとして本研究に組み入れ、白血病細胞株を樹立し癌抑制遺伝子とされるp73遺伝子の解析も行った。白血球増多が高度のCML症例でstem cell factor(SCF)のレセプターであるc-kit遺伝子に突然変異があることがわかった。この症例では発症およびCML病期進展にc-kit遺伝子の傍細胞膜直下のcodon 541および564に異常を示す。Ba/F3マウス細胞にこの異常c-kit遺伝子を導入し、その機能解析を行ったところtyrosin kinase活性に若干の亢進がみられこれが白血病発症、進展に関与していることを突き止めた。p51/p63遺伝子もCML病期進展に関与し、異常となってくることが判明した。mRNAのisoformもp51-α,-β,-γが存在し、白血病細胞ではp51αの発現がほとんどであり現在機能解析中である。遺伝子変異解析では病期進展にDNA結合領域に点突然変異が集中していた。calpastatin相同遺伝子はなおその異常の機能を解析中である。白血病発症の分子生物学的解析をテーマに研究した。、特に慢性骨髄性白血病(CML)の発症およびCMLの病期進展を分子生物学的手法により細胞レベルで解析・解明することを目的とした。主たる解析遺伝子は白血病細胞のc-kitおよびcalpastatin相同遺伝子である。近年癌抑制遺伝子とされるp51/p63遺伝子、bcl-2,bcl-x,DCC遺伝子も研究のテーマとして本研究に組み入れ、白血病細胞株を樹立し癌抑制遺伝子とされるp73遺伝子の解析も行った。白血球増多が高度のCML症例でstem cell factor(SCF)のレセプターであるc-kit遺伝子に突然変異があることがわかった。この症例では発症およびCML病期進展にc-kit遺伝子の傍細胞膜直下のcodon 541および564に異常を示す。Ba/F3マウス細胞にこの異常c-kit遺伝子を導入し、その機能解析を行ったところtyrosin kinase活性に若干の亢進がみられこれが白血病発症、進展に関与していることを突き止めた。p51/p63遺伝子もCML病期進展に関与し、異常となってくることが判明した。mRNAのisoformもp51-α,-β,-γが存在し、白血病細胞ではp51αの発現がほとんどであり現在機能解析中である。遺伝子変異解析では病期進展にDNA結合領域に点突然変異が集中していた。calpastatin相同遺伝子はなおその異常の機能を解析中である。白血病発症の分子生物学的解析をテーマに研究した。特に慢性骨髄性白血病(CML)の発症およびCMLの臨床血液像の違いを分子生物学的手法により細胞レベルで解析・解明することを目的とした。主たる解析遺伝子は白血病細胞のc-kitおよびR3-2遺伝子である。CML80症例(慢性期48症例、移行・急性期32例)にてc-kit遺伝子細胞膜直下領域をPCR-SSCP法および、塩基配列決定法にて突然変異を解析した。CML慢性期7症例で遺伝子変異が観察された。このうち6症例はcodon541ATG(Met)→CTG(Leu)を1症例はcodon564AAT(Asn)→AAG(Lys)の遺伝子変異が観察された。これらの変異例では白血球増多が高度の傾向が認められ、急性期パターンも非典型的であった。このc-kit遺伝子に突然変異が生理学的に白血病を発症してくるのかin vitroおよびマウスにて検討したところ、in vitroにて弱いBaf3細胞増殖能を認めたが、マウスには腫瘍を形成しなかった。R3-2遺伝子はCML急性期で高発現されている症例が多く、一部の症例で分子量が変化しているのをつきとめた。白血病発症の分子生物学的解析をテーマに研究した。特に慢性骨髄性白血病(CML)の発症およびCML臨床血液像の違いを分子生物学的手法により細胞レベルで解析・解明することを目的とした。主たる解析遺伝子は白血病細胞のc-kitおよびR3-2遺伝子である。CML80症例(慢性期48症例、移行・急性期32例)にてc-kit遺伝子細胞膜直下領域をPCR-SSCP法および、塩基配列決定法にて突然変異を解析した。CML慢性期7症例で遺伝子変異が観察された。このうち6症例はcodon541 ATG(Met)→CTG(Leu)を1症例はcodon564 AAT(Asn)→AAG(Lys)の遺伝子変異が観察された。これらの変異例では白血球増多が高度の傾向が認められ、急性期パターンも非典型的であった。このc-kit遺伝子に突然変異が生理学的に白血病を発症してくるのかin vitroおよびマウスにて検討したところ、マウスには腫瘍を形成しなかった。in vitro Baf3細胞増殖能はcodon564 AAT(Asn)→AAG(Lys)c-kitを発現させるとwild c-kitに比べ増殖能が亢進したが、完全なるIL3自立増殖能ほどではなかった。 | KAKENHI-PROJECT-11671018 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11671018 |
慢性骨髄性白血病進展に関わるアポトーシス制御遺伝子とc-kit遺伝子 | codon541はwild c-kitに比べほとんど同じ増殖能であり、ポリモルフィズムの可能性が考えられた。c-kit変異はCML発症に関わる症例があるものの、頻度は低率であり、病型に影響を与えている可能性が考えられた。R3-2遺伝子はcalpastatin類似遺伝子でありCML急性期で高発現されている症例が多く、一部の症例で分子量が変化していた。なお、CML症例でp51/p63遺伝子変異が観察され現在検討中である。 | KAKENHI-PROJECT-11671018 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11671018 |
形態と機能画像法による脳変性疾患の統合的解析とその臨床応用 | パーキンソニズムや認知症をきたす変性疾患、多発性硬化症などを対象にMR拡散テンソル画像での白質変性、限局性の脳の萎縮、脳血流等画像情報解析したところ、認知障害をきたす疾患においては認知機能と関連する線維の変性を生じ、また複数の構造画像情報を基に識別解析をすることよって鑑別の可能性を示した。パーキンソニズムや認知症をきたす変性疾患、多発性硬化症などを対象にMR拡散テンソル画像での白質変性、限局性の脳の萎縮、脳血流等画像情報解析したところ、認知障害をきたす疾患においては認知機能と関連する線維の変性を生じ、また複数の構造画像情報を基に識別解析をすることよって鑑別の可能性を示した。この研究は様々な変性疾患を対象に、MRI・脳血流SPECTの検査を行い、MR拡散テンソル画像での白質変性、皮質あるいは白質の萎縮、磁化率強調画像、脳血流SPECTを臨床情報と合わせ、一定のプロトコールに従って検査をし、画像解析することで、各モダリティーの結果を比較し、また経時的変化の評価やfollow upの指標も提示することが目的である。MRI検査では軸位断T1,T2強調画像、冠状断FLAIRなどのルーチンのシークエンスに加え、拡散テンソル画像、磁化率強調画像、形態計測のための3DT1のvolume dataを撮像した。また脳血流SPECTではテクネシウム(^<99m>Tc)-L, L-ethyl cysteillate dimmer(ECD)を静注し、SPECTを撮影した。初年度では25例のアルツハイマー病、30例のパーキンソン病、5例の皮質基底核変性症でMRIと脳血流SPECTの検査を行った。また5例の筋萎縮性側索硬化症、4例の筋ジストロフィー病のMRI検査を行った。それぞれの症例のMRI形態計測の下準備として、SPMのソフトにて灰白質、白質、脳脊髄液のsegementationを施行した。MRI拡散テンソルではDTI Studioのソフトにて全脳のFA map,MD mapを作成し、今後normal data baseと有意差を比較検討するための準備を行った。MRI磁化率強調画像の視覚的評価を、各症例の歯状核、赤核、黒質、淡蒼球、被殻、尾状核、運動皮質で行い、スコアーをつけた。脳血流SPECTでは大脳の脳血流量を測定し、定量と定性の画像を作成した。まだ疾患によっては症例数が少ないものもあるが、さらに検査を進め、来年度は症例のみならず経時的な検査数も増加する見込みで、横断的および縦断的評価と解析を進める予定である。この研究は様々な変性疾患を対象に、MRI・脳血流SPECTの検査を行い、画像解析することで、各モダリティーの結果を比較し、また経時的変化の評価やfollow upの指標も提示することが目的である。MRI検査ではシークエンスに加え、拡散テンソル画像、磁化率強調画像、形態計測のための3DT1のvolume dataを撮像した。また脳血流SPECTではテクネシウム(^<99m>Tc)-L,L-ethylcysteinate dimmer(ECD)を用いた。現在まで30例のアルツハイマー病、30例のパーキンソン病、10例のMSA-P、9例のMSA-C、4例のDLB、7例の皮質基底核変性症でMRIと脳血流SPECTの検査を行った。また7例の筋萎縮性側索硬化症、5例の筋ジストロフィー病のMRI検査を行った。それぞれの症例のMRIの3DT1WIをSPMのソフトにて灰白質、白質、脳脊髄液のsegementationを施行した。MRI拡散テンソルではDTI Studioのソフトにて全脳のFA map,MD mapを作成した。MRI磁化率強調画像の視覚的評価を、各症例の歯状核、赤核、黒質、淡蒼球、被殻、尾状核、運動皮質で行い、スコアーをつけた。脳血流SPECTでは大脳の脳血流量を測定し、定量と定性の画像を作成した,また今年度より新しい3TのMRI機種が導入され、従来の1.5Tでは撮影できなかった非侵襲的脳血流測定法ASL(arterial spin labeling)の検査も追加するべく、そのシークエンスの設定を行った。Psudocontinuous方を用い、定量化を試みる。今年度は5人の被検者で撮影する時期や頭部のとパルスをかける角度を変えても再現性があることが確認された。今後同一被検者で脳血流SPECTを行いパトラック法にて血流を測定し、定量化の指標とする。また新しい機種での正常データ蓄積も同時に行う。この研究は様々な変性疾患を対象に、MRI・脳血流SPECTの検査を行い、画像解析することで、各モダリティーの結果を比較し、また経時的変化の評価やfollow upの指標も提示することが目的である。MRI検査ではシークエンスに加え、拡散テンソル画像、磁化率強調画像、形態計測のための3DT1のvolume dataを撮像した。また脳血流SPECTではテクネシウム(^<99m>Tc)-L,L-ethyl cysteinate dimmer(ECD)を用いた。現在まで30例のアルツハイマー病、33例のパーキンソン病、12例のMSA-P、9例のMSA-C、7例のDLB、7例の皮質基底核変性症でMRIと脳血流SPECTの検査を行った。また12例の筋萎縮性側索硬化症、7例の筋ジストロフィー病のMRI検査を行った。 | KAKENHI-PROJECT-21591589 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21591589 |
形態と機能画像法による脳変性疾患の統合的解析とその臨床応用 | それぞれの症例のMRIの3DT1WIをSPMのソフトにて灰白質、白質、脳脊髄液のsegementationを施行した。MRI拡散テンソルではDTI Studioのソフトにて全脳のFA map,MD mapを作成した。MRI磁化率強調画像の視覚的評価を、各症例の歯状核、赤核、黒質、淡蒼球、被殻、尾状核、運動皮質で行い、スコアーをつけた。脳血流SPECTでは大脳の脳血流量を測定し、定量と定性の画像を作成した。さらに23年度は3TのMRI機種も導入され、従来の1.5TMRIでは撮像できなかった非侵襲的脳血流測定法ASL(arterial spin labeling)の検査を、psudocontinuaus法を用いて定量化することを正常コントロールで信頼できるデータを得られることを確認し、本年度5例のDLB患者と13例の多発性硬化症患者のデータを取得することができた。最終年度は認知症、パーキンソニズムをきたす変性疾患や多発性硬化症など、4年間で集積したMRIデータを中心に解析を行った。MRI拡散テンソルではtract specific analysisにてターゲットの繊維をFA値、MD値を算出した。また非侵襲的脳血流測定法ASL(arterial spin labeling)の検査をpsudocontinuaus法を用いて測定した。いずれも3D volume detaを用いてVBM(voxel based morphometry)にて灰白質のvolumeの解析も行った。16例の進行性核上性麻痺Richardson syndrome (PSP-RS)と正常群と比較したところ、鉤状束のFA値が正常と比して優位に低下し、また鉤状束と下縦束のMD値が優位に上昇していた。またVBMの体積比較においては、正常と比べて前頭葉下面優位の皮質の委縮を認めた。これらの結果よりこれらの変性や委縮が認知機能の低下の原因である可能性が示唆された。また27人の多発性硬化症にて、同様に正常群とASLにて脳血流を比較・解析したところ、両側の視床が正常と比較して優位に低下していた。大脳半球の血流低下は互いに相殺され、各大脳血流低下部位がそれぞれ投射線維が集合する視床にも遠隔効果が表れて血流低下をきたし、有意差をきたしたものと思われる。またDWIの手法を用いて脳室内の温度測定も行ったが、正常群との有意差は出なかった。18例の多系統萎縮症小脳型(MSA-C)と12例の多系統萎縮症パ-キンソン型(MSA-P)と正常群にてtract specific analysisとVBMを用いてdiscriminant analysis techniquesを行ったところ、0.89の識別率を得ることができ、様々な解析値を組み合わせることで正診率向上に寄与できるものと思われる。24年度が最終年度であるため、記入しない。臨床、MRI等の画像検査を施行し、画像のデータ解析を行う。今年度は最終年度であるために、データ蓄積は上半期で終了し、画像処理、解析とまとめを中心に行う。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-21591589 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21591589 |
魚病細菌Listonella anguillaraのプロテイナーゼの新しい機能 | 魚病細菌Listonellaanguillaraの病原性決定因子の一つに細胞外プロテアーゼがある。しかし、これまではどのようなプロテアーゼが産生され、それらがどのような生理機能を担っているのかについてはほとんど報告がなかった。本研究では、本菌のプロテアーゼが宿主の炎症反応誘発に関わっているのではないか、という仮説のもとに、酵素の気質特異性からその機能を明らかにすることを目的に研究を行った。まず本菌の多数の株についてプロテアーゼ産生プロフィールを基質特異性に基づいて調べたところ、複数のプロテアーゼが産生されていた。そのうち、多くの菌が産生したBoc-LSTR-MCA水解酵素に焦点をあてた。この酵素を精製したところ、メタロプロテアーゼであり、既報ではあるが、機能については不明の酵素であると考えられた。本研究ではこのメタロプロテアーゼの機能を解析した。本酵素が選択的に水解する基質Boc-LSTR-MCAは抗凝血因子の一つactivated protein Cの基質であることから、本酵素が同様の作用を持つことが示唆された。抗凝血反応系に関与するプロテアーゼ群用の基質を用いてアッセイしたところ、本プロテアーゼはactivated protein Cと同様の作用でFactor Vを不活性化することが明らかになった。その結果、Factor VaはFactor Xaとコンプレックスを作ってプロトロンビンをトロンビンへ変換する触媒機能が低下する。そして最終的に血液凝固反応が起きにくくなったと考えられた。本研究では、さらに、ニジマスを使ったin vivoと、MCA基質を使ったin vitroの実験から、本酵素はハ-ゲマン因子の様な働きをして血管の透過性を上げることもわかった。このように、本研究ではL.anguillaraのプロテアーゼの新しい生理機能を解明することができた。現在2、3報目を論文に作成中である。魚病細菌Listonellaanguillaraの病原性決定因子の一つに細胞外プロテアーゼがある。しかし、これまではどのようなプロテアーゼが産生され、それらがどのような生理機能を担っているのかについてはほとんど報告がなかった。本研究では、本菌のプロテアーゼが宿主の炎症反応誘発に関わっているのではないか、という仮説のもとに、酵素の気質特異性からその機能を明らかにすることを目的に研究を行った。まず本菌の多数の株についてプロテアーゼ産生プロフィールを基質特異性に基づいて調べたところ、複数のプロテアーゼが産生されていた。そのうち、多くの菌が産生したBoc-LSTR-MCA水解酵素に焦点をあてた。この酵素を精製したところ、メタロプロテアーゼであり、既報ではあるが、機能については不明の酵素であると考えられた。本研究ではこのメタロプロテアーゼの機能を解析した。本酵素が選択的に水解する基質Boc-LSTR-MCAは抗凝血因子の一つactivated protein Cの基質であることから、本酵素が同様の作用を持つことが示唆された。抗凝血反応系に関与するプロテアーゼ群用の基質を用いてアッセイしたところ、本プロテアーゼはactivated protein Cと同様の作用でFactor Vを不活性化することが明らかになった。その結果、Factor VaはFactor Xaとコンプレックスを作ってプロトロンビンをトロンビンへ変換する触媒機能が低下する。そして最終的に血液凝固反応が起きにくくなったと考えられた。本研究では、さらに、ニジマスを使ったin vivoと、MCA基質を使ったin vitroの実験から、本酵素はハ-ゲマン因子の様な働きをして血管の透過性を上げることもわかった。このように、本研究ではL.anguillaraのプロテアーゼの新しい生理機能を解明することができた。現在2、3報目を論文に作成中である。 | KAKENHI-PROJECT-06806022 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06806022 |
健康に与えるロコモティブシンドロームの影響に関する研究 | 65歳以上の人口が全人口の1/5を占めるまでになり、高齢者の健康寿命延命が喫緊の課題であり、要介護・要支援者数を増加させる原因の骨粗鬆症、変形性関節症・脊椎症や筋量減少等の運動器疾患および衰弱の発生増を早期に予測する客観的評価指標開発が急務である。また国民の3人に1人が65歳以上になると予想される2025年問題を目前に控え、地域の自主性に基づいた地域包括ケアシステム構築を基盤とした運動や栄養の効果的な介入プログラムの開発も求められている。そのエビデンスと確立したプログラムが未確立であるため、本研究によりロコモティブシンドロームの客観的な評価方法を開発し、効果的な介入方法についても検討する。65歳以上の人口が全人口の1/5を占めるまでになり、高齢者の健康寿命延命が喫緊の課題であり、要介護・要支援者数を増加させる原因の骨粗鬆症、変形性関節症・脊椎症や筋量減少等の運動器疾患および衰弱の発生増を早期に予測する客観的評価指標開発が急務である。また国民の3人に1人が65歳以上になると予想される2025年問題を目前に控え、地域の自主性に基づいた地域包括ケアシステム構築を基盤とした運動や栄養の効果的な介入プログラムの開発も求められている。そのエビデンスと確立したプログラムが未確立であるため、本研究によりロコモティブシンドロームの客観的な評価方法を開発し、効果的な介入方法についても検討する。 | KAKENHI-PROJECT-19K11299 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K11299 |
環境教育装置としての動物園の機能解析 | 3か年計画の最終年度として、参加者が環境エンリッチメントをおこなう趣旨の教育プログラムを動物園3園(よこはま市動物園、野毛山動物園、熊本市動植物園)において実施した。環境エンリッチメントを教育プログラムとして活用することによって、プログラム参加者のみならず、一般来園者の滞在時間が延長される効果が得られた。一連の研究から、動物園来園者の滞在時間が1分以下という非常に短いことが明らかとなった。従って、通常の展示では環境教育に必要な情報を来園者が得ることは難しい。環境エンリッチメントは、一般来園者に見る上で注目すべき点(行動、生態など)を与える役割を果たすことで、来園者の滞在時間が引き延ばされたと考えられた。動物が、本来の行動レパートリーと時間配分を発現できるための環境エンリッチメントは、動物福祉の観点からだけでなく、効果的な環境教育の実践として普及に努めるべきとの結論を得た。加えて、GPSを用いた来園者行動調査から、休憩場所で54.1%を過ごすことが明らかとなった。夏暑く、冬寒く、休む場所が限られているという多くの動物園で見られる空間的特徴は、来園者にとって快適な空間とは言えない。入場口周辺での滞在も多く見られ、動物園の空間配置が来園者の行動、ひいては環境教育の効果に影響を与えうることが新たに分かった。本研究において日本で初めて実施されたGPSを用いた動物園での来園者行動調査は、様々な方面での活用が期待される技術でもある。展示される動物と来園者の行動をさらに詳細に検討することで、動物にも人間にも福祉的配慮のある、教育効果の高い動物園作りを推進するべきである。チンパンジーは5施設99個体、シロクマは1施設2個体、アフリカゾウは1施設2個体の行動観察を実施した。展示技法による行動の差異をチンパンジーの飼育施設間で、種差について3種の間で行動を比較した。チンパンジーでは、採食、社会交渉の時間配分が展示技法によって最も大きく変化した。休息はどの施設でも主要な活動で、展示技法に寄らず約65%を占めた。3種間では、採食/休息/異常行動が大きく変化した。チンパンジーは、時間配分が多い順に休息、採食、異常行動だった。シロクマでは休息、異常行動、採食、アフリカゾウでは採食、異常行動、休息の順だった。また、アフリカゾウの観察は1施設だったが、給餌条件の効果についても検討した。同量の食物を1日1回給餌する条件と2回給餌する条件とで行動を比較した。1回給餌において採食時間が長く、異常行動は短くなった。反対に、2回給餌では採食時間が短くなり、異常行動が長くなった。以上から、展示技法は動物の行動や活動性に影響を与え、同じ展示技法だとしても給餌などの飼育条件を操作するといった環境エンリッチメントによって行動が変化することが分かった。展示技法や環境エンリッチメントをどのように実施するかは、観客の興味や動物の理解にも影響を与えることが示唆された。今年度の調査結果をもとに、来年度は動物の行動や活動性と観客の興味や動物の理解の程度について調査を実施する。観客の動物観に関するアンケート調査、観客の滞在行動調査、展示動物の行動調査の3つをおこなう。こうした調査によって、動物園で環境教育を効果的に実施するための展示技法や教育手法の開発につなげる。本年度は、国内5ヶ所の動物園において飼育されている哺乳類2種(チンパンジーとヒグマ)の行動観察、展示形態についての調査を実施した。また、教育効果についての客観的な指標とするため、哺乳類2種の展示場前に来園者が滞在する時間を測定した。環境エンリッチメントを実演する教育プログラムを実施しているときとしていない場合とで滞在時間を比較した。教育プログラム実施時、環境エンリッチメントによって対象動物の活動性は高まった。滞在調査は2200人の来園者を対象とした。その結果、ヒグマよりもチンパンジーで教育プログラム実施時の滞在時間が大幅に引き延ばされた。また、滞在する来園者数は動物種の効果よりも、大きな通路に面していたり、分かりやすいといった展示場の配置の効果を強く受けた。これらのことは、施設の構造や配置は来園者数に、動物への関心は滞在時間によって評価できることを示している。本結果から展示技法は来園者の数のみで評価することができず、滞在時間のような観客の行動についても加味する必要があることが示唆された。動物園の教育的な役割を高めるには、滞在時間を引き延ばすような展示が必要と言えるだろう。国内の動物園で来園者2200名を対象とした調査はほとんど例がなく、21年度中に学術論文として報告する予定である。また、20年度の成果にもとづき、動物種、動物飼育展示場の構造、来園者の園内空間利用、展示場の滞在時間に関する行動調査を実施し、さらなる知見の集積に務める。3か年計画の最終年度として、参加者が環境エンリッチメントをおこなう趣旨の教育プログラムを動物園3園(よこはま市動物園、野毛山動物園、熊本市動植物園)において実施した。環境エンリッチメントを教育プログラムとして活用することによって、プログラム参加者のみならず、一般来園者の滞在時間が延長される効果が得られた。一連の研究から、動物園来園者の滞在時間が1分以下という非常に短いことが明らかとなった。従って、通常の展示では環境教育に必要な情報を来園者が得ることは難しい。 | KAKENHI-PROJECT-19650225 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19650225 |
環境教育装置としての動物園の機能解析 | 環境エンリッチメントは、一般来園者に見る上で注目すべき点(行動、生態など)を与える役割を果たすことで、来園者の滞在時間が引き延ばされたと考えられた。動物が、本来の行動レパートリーと時間配分を発現できるための環境エンリッチメントは、動物福祉の観点からだけでなく、効果的な環境教育の実践として普及に努めるべきとの結論を得た。加えて、GPSを用いた来園者行動調査から、休憩場所で54.1%を過ごすことが明らかとなった。夏暑く、冬寒く、休む場所が限られているという多くの動物園で見られる空間的特徴は、来園者にとって快適な空間とは言えない。入場口周辺での滞在も多く見られ、動物園の空間配置が来園者の行動、ひいては環境教育の効果に影響を与えうることが新たに分かった。本研究において日本で初めて実施されたGPSを用いた動物園での来園者行動調査は、様々な方面での活用が期待される技術でもある。展示される動物と来園者の行動をさらに詳細に検討することで、動物にも人間にも福祉的配慮のある、教育効果の高い動物園作りを推進するべきである。 | KAKENHI-PROJECT-19650225 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19650225 |
悪性胸膜中皮腫の浸潤に注目した治療標的分子の網羅的探索研究 | 悪性胸膜中皮腫の浸潤にかかわる分子を同定するため、まず高浸潤能を有する細胞株を樹立し、親株と遺伝子発現プロファイルを比較することによって、浸潤にかかわる可能性のある遺伝子群を抽出した。うち、複数株で親株と比較し発現抑制のみられた遺伝子Xに注目した。遺伝子Xの発現抑制で増殖能、遊走能に変化はないものの浸潤能が亢進し、in vivoにおいても同所移植モデルマウスの生存期間が短縮し、遺伝子Xが膜性胸膜中皮腫の格好の標的分子となりえる可能性が示唆された。悪性胸膜中皮腫の浸潤にかかわる分子を同定するため、まず高浸潤能を有する細胞株を樹立し、親株と遺伝子発現プロファイルを比較することによって、浸潤にかかわる可能性のある遺伝子群を抽出した。うち、複数株で親株と比較し発現抑制のみられた遺伝子Xに注目した。遺伝子Xの発現抑制で増殖能、遊走能に変化はないものの浸潤能が亢進し、in vivoにおいても同所移植モデルマウスの生存期間が短縮し、遺伝子Xが膜性胸膜中皮腫の格好の標的分子となりえる可能性が示唆された。悪性胸膜中皮腫は遠隔磯器への転移は比較的稀で、周辺臓器への浸潤を特徴とする。周辺臓器への浸潤は病期の進行だけでなく、拘束性障害による呼吸困難や疼痛などによりQOLを阻害する主たる要因である。本疾患に対しては胸膜肺全摘術、放射線療法、化学療法もしくはこれらを組み合わせた集学的治療が行われているが、その成績は十分なものではなく、新たな治療法の開発が急務となっている。本研究では悪性胸膜中皮腫の特徴である"浸潤"に注目し、悪性胸膜中皮腫細胞の周辺臓器への浸潤に関わる分子を同定し、そのメカニズムの解明と浸潤を標的とした新たな治療法開発を目的としている。これまでの検討で、in vivoで造腫瘍能のあるヒト悪性胸膜中皮腫細胞MSTO-211H,NCI-H290,Y-Meso-14について、親株と比較し浸潤能の高い細胞株(MSTO-211H/Inv3,NCI-H290/Inv5,Y-Meso-14/Inv3)をすでに樹立している。また、DNAマイクロアレイを用いて、これらの細胞株の網羅的遺伝子発現解析を行い、浸潤能亢進との関連が示唆される遺伝子群を同定している。さらに、これらの遺伝子群の中から3組の細胞株にて共通して発現が変動している遺伝子に注目し、遺伝子導入、siRNA法にて高発現もしくは発現抑制株を作成し、in vitroで浸潤能の変化を検討している。昨年度までに網羅的遺伝子発現解析により同定された遺伝子のなかに実際に悪性胸膜中皮腫細胞株の浸潤能に関わる遺伝子がみられることを確認している。方法論としての有用性が証明されたことから本年度はさらに未解析の遺伝子について同様の検討を行い、さらには安定高発現株もしくは安定発現抑制株を作成し、これらの細胞株をSCIDマウスの胸腔内に接種し、生存期間や浸潤様式を親株と比較検討する予定である。悪性胸膜中皮腫は遠隔臓器への転移は比較的稀で、周辺臓器への浸潤を特徴とする。周辺臓器への浸潤は病期の進行だけでなく、拘束性障害による呼吸困難や疼痛などによりQOLを阻害する主たる要因である。本疾患に対しては胸膜肺全摘術、放射線療法、化学療法もしくはこれらを組み合わせた集学的治療が行われているが、その成績は十分なものではなく、新たな治療法の開発が急務となっている。本研究では悪性胸膜中皮腫の特徴である"浸潤"に注目し、悪性胸膜中皮腫細胞の周辺臓器への浸潤に関わる分子を同定し、そのメカニズムの解明と浸潤を標的とした新たな治療法開発を目的としている。昨年度、invivoで造腫瘍能のあるヒト悪性胸膜中皮腫細胞MSTO-211H,NCI-H290,Y-Meso-14について、親株と比較し浸潤能の高い細胞株(MSTO-211H/Inv3,NCI-H290/Inv5,Y-Meso-14/Inv3)を樹立し、これらの細胞株の網羅的遺伝子発現解析にて、浸潤能亢進との関連が示唆される遺伝子群を同定している。さらに、これらの遺伝子群の中から3組の細胞株にて共通して発現が変動している遺伝子に注目し、遺伝子導入、siRNA法にて高発現もしくは発現抑制株を作成し、in vitroで浸潤能の変化を検討した。検討を行った複数の候補遺伝子の中で、細胞外マトリクスに関係する遺伝子Xについては、実際に悪性胸膜中皮腫細胞株の浸潤能に関わる遺伝子がみられることを確認した。現在安定高発現株もしくは安定発現抑制株を作成し、これらの細胞株をSCIDマウスの胸腔内に接種し、生存期間や浸潤様式を親株と比較検討を行っておりその後論文での報告を予定している。 | KAKENHI-PROJECT-22700882 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22700882 |
脊髄慢性圧迫による脊髄症発症における局所脊髄血流量に関する研究 | 1)Wistar rat(体重250300g)を用い、全身麻酔下に第5・6頸椎椎弓下に膨張性ポリマーを挿入して局所脊髄圧迫を作成した。急性脊髄損傷のないことを確認した上で、3週ごとに自発性運動量を回転式運動量測定ケージで、また強制運動能力をトレッドミルならびに傾斜姿勢維持測定板にて計測した。自発運動量はこの24週では変化は見られないが、強制運動量は圧迫開始後17週より低下し始め、進行性に悪化した。2)動物は術後3、6、9、12、24週の各時点に屠殺した。経心灌流固定ののち全脊髄を摘出し、スライサーにて圧迫部位を含む連続切片を作成した。脊髄前角においてNGFおよびBDNF活性を免疫組織学的に検討した。成長したラットの運動神経細胞ではほとんど存在しないとの報告が多いNGF活性が脊髄前角細胞数にほぼ平行して変化していることが確認された。3)各群とも別グループの動物を準備し、術後3、6、9、12、24および48、72週の各時点にautoradiography法を行った。すなわち、100μCi/kg体重の14C-IAPを30秒間で静注し、注入終了と同時に屠殺。全脊髄を摘出し、直ちに急速凍結した。これより厚さ20μmの凍結切片を作製し、得られたautoradiogramを解析したところ、いずれの時点においても脊髄前角の血流低下が示唆された。4)各群ともさらに別グループの動物を準備し、上記の各時間に屠殺する。経心灌流固定ののち全脊髄を摘出し、パラフィン包埋後圧迫部位を含む連続切片を作成する。H-E染色ののち形態学的に検討した。前角細胞は圧迫開始後9週から減少し始め、24週後には60%程度にまで減少した。1)Wistar rat(体重250300g)を用い、全身麻酔下に第5・6頸椎椎弓下に膨張性ポリマーを挿入して局所脊髄圧迫を作成した。急性脊髄損傷のないことを確認した上で、3週ごとに自発性運動量を回転式運動量測定ケージで、また強制運動能力をトレッドミルならびに傾斜姿勢維持測定板にて計測した。自発運動量はこの24週では変化は見られないが、強制運動量は圧迫開始後17週より低下し始め、進行性に悪化した。2)動物は術後3、6、9、12、24週の各時点に屠殺した。経心灌流固定ののち全脊髄を摘出し、スライサーにて圧迫部位を含む連続切片を作成した。脊髄前角においてNGFおよびBDNF活性を免疫組織学的に検討した。成長したラットの運動神経細胞ではほとんど存在しないとの報告が多いNGF活性が脊髄前角細胞数にほぼ平行して変化していることが確認された。3)各群とも別グループの動物を準備し、術後3、6、9、12、24および48、72週の各時点にautoradiography法を行った。すなわち、100μCi/kg体重の14C-IAPを30秒間で静注し、注入終了と同時に屠殺。全脊髄を摘出し、直ちに急速凍結した。これより厚さ20μmの凍結切片を作製し、得られたautoradiogramを解析したところ、いずれの時点においても脊髄前角の血流低下が示唆された。4)各群ともさらに別グループの動物を準備し、上記の各時間に屠殺する。経心灌流固定ののち全脊髄を摘出し、パラフィン包埋後圧迫部位を含む連続切片を作成する。H-E染色ののち形態学的に検討した。前角細胞は圧迫開始後9週から減少し始め、24週後には60%程度にまで減少した。1)Wistar rat(体重250300g)を用い、イソフルレンによる全身麻酔の下、第5・6頸椎椎弓下に膨張性ポリマーを挿入して局所脊髄圧迫を作成した。急性脊髄損傷のないことを確認した上で、3週ごとに自発性運動量を回転式運動量測定ケージで、また強制運動能力をトレッドミルならびに傾斜姿勢維持測定板にて計測した。自発運動量はこの24週では変化は見られないが、強制運動量は圧迫開始後17週より低下し始め、進行性に悪化した。2)動物は術後3、6、9、12、24週の各時点に屠殺した。経心灌流固定ののち全脊髄を摘出し、スライサーにて圧迫部位を含む連続切片を作成する。脊髄前角において、choline acetyltransferase(ChAT)活性を免疫組織学的に検討した。ChAT活性は、脊髄前角細胞数にほぼ平行して変化していた。3)各群とも別グループの動物を準備し、上記の各時間にSakuradaらの方法によりautoradiographyを得た。すなわち、100μCi/kg体重の14C-IAPを30秒間に静し、注入終了と同時に屠殺。全脊髄を摘出し、直ちに急速凍結した。これより厚さ20μmの凍結切片を作製し、スライドグラスにマウントして風乾、これより得られるautoradiogramを解析したところ、脊髄前角の血流低下が示唆された。なお、採血サンプルのradioactivityから局所脊髄血流量を算出する予定であったが、屠殺(断頭)後脊髄摘出までの時間制限を克服できず、定量化は現在難航している。4)各群ともさらに別グループの動物を準備し、上記の各時間に屠殺する。 | KAKENHI-PROJECT-14571328 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14571328 |
脊髄慢性圧迫による脊髄症発症における局所脊髄血流量に関する研究 | 経心灌流固定ののち全脊髄を摘出し、パラフィン包埋後圧迫部位を含む連続切片を作成する。H-E染色ののち形態学的検討を行った。脊髄前角細胞は圧迫開始後9週から減少し始め、24週後には60%程度にまで減少した。1)Wistar rat(体重250300g)を用い、イソフルレンによる全身麻酔の下、第5・6頸椎椎弓下に膨張性ポリマーを挿入して局所脊髄圧迫を作成した。急性脊髄損傷のないことを確認した上で、自発性運動量を回転式運動量測定ケージで、また強制運動能力をトレッドミルならびに傾斜姿勢維持測定板にて計測した。圧迫開始後17週より低下し始めた強制運動量は、さらに進行性に悪化した。2)動物は術後48、72週の各時点に屠殺した。経心灌流固定ののち全脊髄を摘出し、スライサーにて圧迫部位を含む連続切片を作成する。脊髄前角において、choline acetyltransferase (ChAT)活性を免疫組織学的に検討した。ChAT活性は、脊髄前角細胞数にほぼ平行して変化していた。3)各群とも別グループの動物を準備し、術後3、6、9、12、24および48、72週の各時点にSakuradaらの方法によりautoradiographyを得た。すなわち、100μCi/kg体重の14C-IAPを30秒間に静し、注入終了と同時に屠殺。全脊髄を摘出し、直ちに急速凍結した。これより厚さ20μmの凍結切片を作製し、スライドグラスにマウントして風乾、これより得られるautoradiogramを解析したところ、脊髄前角の血流低下が示唆された。なお、採血サンプルのradioactivityから局所脊髄血流量算出は屠殺(断頭)後脊髄摘出までの時間制限を克服できず、定量化は断念した。4)各群ともさらに別グループの動物を準備し術後48、72週の各時点に屠殺した。経心灌流固定ののち全脊髄を摘出し、パラフィン包埋後圧迫部位を含む連続切片を作成する。H-E染色ののち形態学的検討を行った。脊髄前角細胞は著明な減少を呈した。 | KAKENHI-PROJECT-14571328 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14571328 |
入浴死の病態解明と死因診断法の開発:各病態モデルによる検討から実務応用に向けて | われわれは入浴死の病態解明を目的として研究を進めており,まずは浴槽内溺死を確実に診断する方法の確立を目指している。これまで温水溺死モデルを用いた検討により,温水溺死では肺における水チャネルaquaporin 5 mRNA(aqp5)発現が低下し,熱ショック蛋白HSP70ファミリーに属するhspa5発現が逆に増加することを報告してきた。今回は,複数の指標に基づく診断法を確立するために,HSP27ファミリーに属するhspb1,HSP90ファミリーに属するhsp90aa/abといった他のHSPファミリーの発現についても検討を加えた。その結果,hspb1発現は温水溺死群で有意に高値を示したが,加温のみの対照群でも未処置(加温・溺水なし)の対照群と比較して有意に高値を示した。一方,hsp90aa/ab発現は,加温のみの対照群では有意な変化がみられず,温水溺死群のみで高値を示した。そこで次に,動物モデルでの検討で温水溺死診断への有用性の可能性が示されたaqp5,hspa5, hsp90aa/ab発現について,実際の浴槽内溺死剖検例の肺を試料として同様の検討を行った。その結果,aqp5発現は浴槽内溺死(4例),河川内溺死(4例)で対照(4例)と比較して有意に低値を示し,hspa5及びhsp90aa/ab発現はいずれも浴槽内溺死のみで有意に高値を示した。以上の動物実験,実際の剖検試料を用いた検討の結果からaqp5発現の低下,hspa5及びhsp90aa/ab発現の上昇は,実際の浴槽内溺死例における法医学的診断マーカーとなる可能性が示唆されたと考える。まず,温水溺死モデルを用いた検討によって,予想以上に複数の有用な指標が同定された。また,それらについて実際の剖検試料を用いた検討でも同様の結果が得られ,浴槽内溺死の分子生物学的な診断法確立に向けて大きく進展したといえる。今後温度条件を細かく分けて検討することで,剖検例では検討できない湯温との関係を明らかにしたい。また,入浴死の死因の一つと考えられるうっ血性心不全,熱中症の各モデルを作製し,今回有用性が示唆された指標について検討を行うことで,分子生物学的な鑑別診断法を開発したい。われわれは入浴死の病態解明を目的として研究を進めており,まずは浴槽内溺死を確実に診断する方法の確立を目指している。これまで温水溺死モデルを用いた検討により,温水溺死では肺における水チャネルaquaporin 5 mRNA(aqp5)発現が低下し,熱ショック蛋白HSP70ファミリーに属するhspa5発現が逆に増加することを報告してきた。今回は,複数の指標に基づく診断法を確立するために,HSP27ファミリーに属するhspb1,HSP90ファミリーに属するhsp90aa/abといった他のHSPファミリーの発現についても検討を加えた。その結果,hspb1発現は温水溺死群で有意に高値を示したが,加温のみの対照群でも未処置(加温・溺水なし)の対照群と比較して有意に高値を示した。一方,hsp90aa/ab発現は,加温のみの対照群では有意な変化がみられず,温水溺死群のみで高値を示した。そこで次に,動物モデルでの検討で温水溺死診断への有用性の可能性が示されたaqp5,hspa5, hsp90aa/ab発現について,実際の浴槽内溺死剖検例の肺を試料として同様の検討を行った。その結果,aqp5発現は浴槽内溺死(4例),河川内溺死(4例)で対照(4例)と比較して有意に低値を示し,hspa5及びhsp90aa/ab発現はいずれも浴槽内溺死のみで有意に高値を示した。以上の動物実験,実際の剖検試料を用いた検討の結果からaqp5発現の低下,hspa5及びhsp90aa/ab発現の上昇は,実際の浴槽内溺死例における法医学的診断マーカーとなる可能性が示唆されたと考える。まず,温水溺死モデルを用いた検討によって,予想以上に複数の有用な指標が同定された。また,それらについて実際の剖検試料を用いた検討でも同様の結果が得られ,浴槽内溺死の分子生物学的な診断法確立に向けて大きく進展したといえる。今後温度条件を細かく分けて検討することで,剖検例では検討できない湯温との関係を明らかにしたい。また,入浴死の死因の一つと考えられるうっ血性心不全,熱中症の各モデルを作製し,今回有用性が示唆された指標について検討を行うことで,分子生物学的な鑑別診断法を開発したい。 | KAKENHI-PROJECT-18K10133 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K10133 |
ヘムオキシゲナーゼによる網膜障害防御機構の解明 | 虚血再灌流障害モデルの網膜では、ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)のmRNAおよび蛋白は虚血後6時間で増加し始め、12時間、24時間でピークとなったのに対してHO-2のmRNAおよび蛋白は変化がみられなかった。免疫染色においてHO-1は虚血後24時間でミュラー細胞に発現が認められ、HO-2は多くの網膜の細胞に発現がみられた。正常コントロール眼に比べて虚血後24時間においてTUNEL陽性細胞数すなわちアポトーシスを来した細胞の数は有意に増加していたが、S-100陽性細胞数すなわちミュラー細胞数に有意な変化はみられなかった。虚血後12時間、24時間においてHO-1特異的siRNA投与後のHO-1蛋白の発現はGFP siRNA投与後に比べて減少していた。免疫染色においてもHO-1 siRNA投与によりHO-1の発現が抑えられていた。24時間後のS-100陽性細胞数はHO-1 siRNA投与により有意に減少していた。HO-1 siRNA投与眼の虚血後24時間の網膜では網膜内層の浮腫、多数の炎症細胞の浸潤がみられた。網膜内のED-1陽性細胞数すなわちマクロファージ数はHO-1 siRNA投与により有意に増加していた。14日後、HO-1 siRNA投与眼では著明に網膜が障害され、その層構造は破壊されていた。以上の結果より、網膜虚血-再灌流障害においてHO-1はミュラー細胞に誘導された。また、網膜虚血-再灌流障害においてミュラー細胞数の減少はみられなかった。しかし、HO-1の誘導を阻害するとミュラー細胞数の減少がみられたので、HO-1がミュラー細胞の生存に関与していると考えられた。さらに炎症細胞の増加と網膜の破壊がみられたので、ミュラー細胞に誘導されるHO-1がミュラー細胞自身だけでなく網膜全体に対して保護的役割を果たしている可能性も考えられた。また、HO-1の活性化薬剤であるヘミンを虚血前に投与すると、TUNEL陽性細胞は有意に減少し、網膜厚も有意に厚かった。ERGによる機能評価でも有意に障害は軽減された。虚血再灌流障害モデルの網膜では、ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)のmRNAおよび蛋白は虚血後6時間で増加し始め、12時間、24時間でピークとなったのに対してHO-2のmRNAおよび蛋白は変化がみられなかった。免疫染色においてHO-1は虚血後24時間でミュラー細胞に発現が認められ、HO-2は多くの網膜の細胞に発現がみられた。正常コントロール眼に比べて虚血後24時間においてTUNEL陽性細胞数すなわちアポトーシスを来した細胞の数は有意に増加していたが、S-100陽性細胞数すなわちミュラー細胞数に有意な変化はみられなかった。虚血後12時間、24時間においてHO-1特異的siRNA投与後のHO-1蛋白の発現はGFP siRNA投与後に比べて減少していた。免疫染色においてもHO-1 siRNA投与によりHO-1の発現が抑えられていた。24時間後のS-100陽性細胞数はHO-1 siRNA投与により有意に減少していた。HO-1 siRNA投与眼の虚血後24時間の網膜では網膜内層の浮腫、多数の炎症細胞の浸潤がみられた。網膜内のED-1陽性細胞数すなわちマクロファージ数はHO-1 siRNA投与により有意に増加していた。14日後、HO-1 siRNA投与眼では著明に網膜が障害され、その層構造は破壊されていた。以上の結果より、網膜虚血-再灌流障害においてHO-1はミュラー細胞に誘導された。また、網膜虚血-再灌流障害においてミュラー細胞数の減少はみられなかった。しかし、HO-1の誘導を阻害するとミュラー細胞数の減少がみられたので、HO-1がミュラー細胞の生存に関与していると考えられた。さらに炎症細胞の増加と網膜の破壊がみられたので、ミュラー細胞に誘導されるHO-1がミュラー細胞自身だけでなく網膜全体に対して保護的役割を果たしている可能性も考えられた。また、HO-1の活性化薬剤であるヘミンを虚血前に投与すると、TUNEL陽性細胞は有意に減少し、網膜厚も有意に厚かった。ERGによる機能評価でも有意に障害は軽減された。虚血再灌流障害モデルの網膜では、ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)のmRNAおよび蛋白は虚血後6時間で増加し始め、12時間、24時間でピークとなったのに対してHO-2のmRNAおよび蛋白は変化がみられなかった。免疫染色においてHO-1は虚血後24時間でミュラー細胞に発現が認められ、HO-2は多くの網膜の細胞に発現がみられた。正常コントロール眼に比べて虚血後24時間においてTUNEL陽性細胞数すなわちアポトーシスを来した細胞の数は有意に増加していたが、S-100陽性細胞数すなわちミュラー細胞数に有意な変化はみられなかった。虚血後12時間、24時間においてHO-1特異的siRNA投与後のHO-1蛋白の発現はGFP siRNA投与後に比べて減少していた。免疫染色においてもHO-1 siRNA投与によりHO-1の発現が抑えられていた。24時間後のS-100陽性細胞数はHO-1 siRNA投与により有意に減少していた。HO-1 siRNA投与眼の虚血後24時間の網膜では網膜内層の浮腫、多数の炎症細胞の浸潤がみられた。網膜内のED-1陽性細胞数すなわちマクロファージ数はHO-1 siRNA投与により有意に増加していた。 | KAKENHI-PROJECT-16591743 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16591743 |
ヘムオキシゲナーゼによる網膜障害防御機構の解明 | 14日後、HO-1 siRNA投与眼では著明に網膜が障害され、その層構造は破壊されていた。以上の結果より、網膜虚血-再灌流障害においてHO-1はミュラー細胞に誘導された。また、網膜虚血-再灌流障害においてミュラー細胞数の減少はみられなかった。しかし、HO-1の誘導を阻害するとミュラー細胞数の減少がみられたので、HO-1がミュラー細胞の生存に関与していると考えられた。さらに炎症細胞の増加と網膜の破壊がみられたので、ミュラー細胞に誘導されるHO-1がミュラー細胞自身だけでなく網膜全体に対して保護的役割を果たしている可能性も考えられた。虚血再灌流障害モデルの網膜では、ヘムオキシゲナーゼー1(HO-1)のmRNAおよび蛋白は虚血後6時間で増加し始め、12時間、24時間でピークとなったのに対してHO-2のmRNAおよび蛋白は変化がみられなかった。免疫染色においてHO-1は虚血後24時間でミュラー細胞に発現が認められ、HO-2は多くの網膜の細胞に発現がみられた。正常コントロール眼に比べて虚血後24時間においてTUNEL陽性細胞数すなわちアポトーシスを来した細胞の数は有意に増加していたが、S-100陽性細胞数すなわちミュラー細胞数に有意な変化はみられなかった。虚血後12時間、24時間においてHO-1特異的siRNA投与後のHO-1蛋白の発現はGFP siRNA投与後に比べて減少していた。免疫染色においてもHO-1 siRNA投与によりHO-1の発現が抑えられていた。24時間後のS-100陽性細胞数はHO-1 siRNA投与により有意に減少していた。HO-1 siRNA投与眼の虚血後24時間の網膜では網膜内層の浮腫、多数の炎症細胞の浸潤がみられた。網膜内のED-1陽性細胞数すなわちマクロファージ数はHO-1 siRNA投与により有意に増加していた。14日後、HO-1 siRNA投与眼では著明に網膜が障害され、その層構造は破壊されていた。以上の結果より、網膜虚血-再灌流障害においてHO-1はミュラー細胞に誘導された。また、網膜虚血-再灌流障害においてミュラー細胞数の減少はみられなかった。しかし、HO-1の誘導を阻害するとミュラー細胞数の減少がみられたので、HO-1がミュラー細胞の生存に関与していると考えられた。さらに炎症細胞の増加と網膜の破壊がみられたので、ミュラー細胞に誘導されるHO-1がミュラー細胞自身だけでなく網膜全体に対して保護的役割を果たしている可能性も考えられた。また、HO-1の活性化薬剤であるヘミンを虚血前に投与すると、TUNEL陽性細胞は有意に減少し、網膜厚も有意に厚かった。ERGによる機能評価でも有意に障害は軽減された。 | KAKENHI-PROJECT-16591743 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16591743 |
レアメタルとその工業への応用:日本の鉱物戦略とバリュー・チェーンの評価 | 27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-13F03310 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13F03310 |
障害学生のための支援教育プログラムの教育的評価に関する総合的研究-健常学生の自己効力感を指標として- | この研究は、特別支援教育の普及とともに、障害学生と健常学生との交流の機会の増加が期待されるにも関わらず、障害学生を支援する健常学生の数が非常に少ない現状に鑑み、健常学生による障害学生支援システム構築のための教育プログラム開発の基礎資料を得ることを意図して行われた。まず平成15年度の研究では、障害条件の異なる身体障害学生との交流に対する健常学生の抵抗感の意識構造に及ぼす障害条件と対人場面との影響が相対的に検討された。その結果、尺度上での4対人場面(交友関係場面・自己主張場面・交流での当惑場面・統合教育場面)に関しては、交流対象となる刺激人物の4障害条件(視覚、聴覚、運動、健康)を通して共通の回答パターン(共通性)が見られる反面、個々の対人場面では、各障害条件で特有の回答パターン(特異性)が認められた。平成16年度の研究では、実際に健常学生が経験した障害者などとの自主的な接触が、3障害条件(視覚、聴覚、運動)の大学生との交流に対する健常学生の抵抗感にどのような影響を及ぼしたかを考察した。その結果、障害者への関心度と障害のある友人の効果は、「交友関係場面」での抵抗感を弱めるのに対し、町中での援助行動は「自己主張場面」での抵抗感を弱める傾向が強かった。一方、ボランティア活動では過去の経験に負の成果が認められた。また、「交友関係場面」では刺激人物の障害条件と友人の障害種別との間に,対応関係が示唆された。平成17年度の研究では障害学関連講義が障害学生と交流することに対する健常学生の抵抗感にどのような効果を及ぼすかを検討した。その結果、「交友関係場面」では一部の障害条件でしか講義効果は見られなかったが、「自己主張場面」では講義効果は3障害条件でみられた。また、当該講義満足の効果は聴覚障害でしか見られなかったが、他の障害学関連講義受講の効果は、3障害条件で認められた。この研究は、特別支援教育の普及とともに、障害学生と健常学生との交流の機会の増加が期待されるにも関わらず、障害学生を支援する健常学生の数が非常に少ない現状に鑑み、健常学生による障害学生支援システム構築のための教育プログラム開発の基礎資料を得ることを意図して行われた。まず平成15年度の研究では、障害条件の異なる身体障害学生との交流に対する健常学生の抵抗感の意識構造に及ぼす障害条件と対人場面との影響が相対的に検討された。その結果、尺度上での4対人場面(交友関係場面・自己主張場面・交流での当惑場面・統合教育場面)に関しては、交流対象となる刺激人物の4障害条件(視覚、聴覚、運動、健康)を通して共通の回答パターン(共通性)が見られる反面、個々の対人場面では、各障害条件で特有の回答パターン(特異性)が認められた。平成16年度の研究では、実際に健常学生が経験した障害者などとの自主的な接触が、3障害条件(視覚、聴覚、運動)の大学生との交流に対する健常学生の抵抗感にどのような影響を及ぼしたかを考察した。その結果、障害者への関心度と障害のある友人の効果は、「交友関係場面」での抵抗感を弱めるのに対し、町中での援助行動は「自己主張場面」での抵抗感を弱める傾向が強かった。一方、ボランティア活動では過去の経験に負の成果が認められた。また、「交友関係場面」では刺激人物の障害条件と友人の障害種別との間に,対応関係が示唆された。平成17年度の研究では障害学関連講義が障害学生と交流することに対する健常学生の抵抗感にどのような効果を及ぼすかを検討した。その結果、「交友関係場面」では一部の障害条件でしか講義効果は見られなかったが、「自己主張場面」では講義効果は3障害条件でみられた。また、当該講義満足の効果は聴覚障害でしか見られなかったが、他の障害学関連講義受講の効果は、3障害条件で認められた。15年度においては、本研究の第1目的である「『汎用型自己効力感尺度(GSSEBISD)』における回答傾向が「一般性」なのか、「特異性」なのか」を中心に検討を行った。さらに、どのような決定因が支援意欲を強めるのに有効かについても一部検討を行った。これらの目的を達成するため、視覚障害、聴覚障害、運動障害、健康障害の4障害条件に対応して研究代表者が改訂した自己効力感尺度(すなわち、GSSEBISD)及び障害者観尺度それぞれに含まれる2下位尺度、計4下位尺度を用い658名の大学生に質問紙調査を実施した。各下位尺度の信頼性と因子的妥当性は心理統計的に十分な結果を示しており、GSSEBISD及び障害者観尺度は汎用性の高い尺度であることが確認された。4障害条件別の4下位尺度、計16尺度に関する因子分析の結果では、特定の対人場面を表す下位尺度に関し、4障害条件が共通の因子負荷量を示す「当惑関係」「自己主張」「統合教育」という3因子に分類された。このことから、自己効力感尺度及び障害者観尺度に対する健常学生の回答は、障害条件による特異的影響よりは、特定の尺度内容により障害条件の影響が共通化するような一般的影響に依存していることが明らかとなった。しかし下位尺度別に障害条件を比較すると、視覚と聴覚の障害条件よりは、運動と健康の障害条件の方が回答が受容的であり、尺度内容の影響を除くと、障害条件の特異的影響も見られることが示された。一方、上記3因子と個人的要因 | KAKENHI-PROJECT-15530616 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15530616 |
障害学生のための支援教育プログラムの教育的評価に関する総合的研究-健常学生の自己効力感を指標として- | (障害者への関心度、性別、援助経験)との関連では、「当惑関係」因子は3要因と、「自己主張」因子は性別と関連が認められたが、「統合教育」因子はどの要因とも関連が認められなかった。また、下位尺度別では、障害者と直接交流することに関する尺度は、一貫して関心度と援助経験の影響が見られたが、性別の影響は下位尺度により異なっていた。本年度の研究では,障害学生との交流に対する健常学生の抵抗感を軽減させる方策を立てる前提として,様々な障害を有する学生との交流に対し健常学生が示す抵抗感と障害者との自主的な接触方法の違いとの関連に着目し,その関連を解明するため,569名の健常学生(男子228名,女子341名)に質問紙調査を実施した。河内(2004)が作成した「交友関係」と「自己主張」の尺度の交流対象となる刺激人物の障害条件は,「視覚」「聴覚」「運動」「健常」の4条件とした。また,障害者との自主的な接触方法として,町中での一時的な援助行動(「助力」),家事の手伝いなどの親密な援助行動(「親密」),ボランティア活動(「支援」),障害者との友人関係(「友人」)を選び,それに障害者への関心度(「関心」)を加えた。両尺度の4障害条件を基準変数に,五つの接触方法を説明変数とした数量化理論I類の結果によると,刺激人物の障害条件とは関係なく,「関心」の変数では関心の強い者が,「助力」の変数では援助頻度の多い者が両尺度で,また「交友関係」尺度では「友人」の変数で障害のある友人のいる者が障害学生との交流に対し抵抗感が弱かった。また,友人の有する障害種別と刺激人物の4障害条件との間には障害内容に応じた関連のあることが認められた。これに対し,「支援」の変数では「聴覚」の障害条件でしか両尺度とも関連が認められなかった。現在活動している者は抵抗感が弱かったものの,過去の経験者は未経験者よりも抵抗感が強く,従来の研究では報告されていない負の援助成果が見出された。一方,「親密」の変数では,両尺度のどの障害条件でも関連は認められず,抵抗感の弱いことと援助行動など障害者との自発的な接触とが単純な関係にないことも明かとなった。以上のことから自発的な接触経験の有効性とともに負の援助成果についても考慮しなければならないことを指摘した。本研究は、障害学関連講義が、障害学生との交流に対する健常学生の自己効力感に及ぼす効果を解明することを目的とした。調査1では、講義内容が類似しているが、受講対象者が人間学とそれ以外の専攻学生に分かれている2つの講義を選び、2005年2月の最後の授業と2005年4月の最初の授業に出席した学生のうち調査に同意した441名に質問紙調査を実施した。使用した「交友関係」尺度と「自己主張」尺度の刺激人物の障害種別は、視覚障害、聴覚障害、運動障害及び非障害である。4障害条件別の尺度得点を、最後の授業と最初の授業での専攻学科別に比較したところ、「交友関係」尺度では人間学専攻生の方が自己効力感が強かったが、講義効果は、視覚障害の刺激人物の場合しか見出されなかった。これに対し、「自己主張」尺度では全ての障害条件で講義後に自己効力感が強くなった。一方、専攻別の差はどの障害条件でも見出されなかった。調査2では、最後の授業で調査に参加した223名の健常学生を対象に、各障害条件の尺度別に障害学関連講義への満足度と、障害学関連講義の科目数の自己効力感に及ぼす影響を考察した。その結果、両尺度と受講した科目数の多い学生の方が自己効力感が強かったが、講義満足度の影響については聴覚障害でしか見出されなかった。 | KAKENHI-PROJECT-15530616 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15530616 |
引き分けの精神誌 | 我と敵との関係形式である「同調」と「競争」が交錯するなかで、二つが統合されたとき、「引き分け」が成立する。「相打ち」は引き分けであり、エントレインメントである。互いの「同型同調」による予期に基づいた「応答同調」が一致したということである。古流剣術においては、「捨て身」の相打ちを覚悟することによって勝ちを得た。潜在的に敵に対してギリギリまで同型同調することで、敵の動きを適確に「読み」、相手を引き込んだ、自分に有利なエントレインメントにしてしまうのである。もう一つの引き分けは、「相ヌケ」である。相ヌケは、「彼我一体」となり、両者武装解除となるものである。この「彼我一体」の状況もエントレインメントを指している。敵と我とは一心同体であり、両者同じことを思い、両者互いを予期し合っている。互いの動静は一つであり、鏡に向かって影を映しているようである。市川は、同型的な同調と応答的同調が「たえまなく交錯し、入り交い、あるいはまれな瞬間にだが、一致している」(『精神としての身体』)と述べるが、「彼我一体」はこの両同調の一致の瞬間に相当すると考えられる。同型同調によって予期した敵の動き(意)と、応答同調によってなそうとしている我が動き(意)ー敵の同型同調によって予期された我が動き(意)でもあるーが一致しているのである。この「彼我一体」から生じた拮抗状態で勝とうとすれば負けてしまい、勝とうとしなければ負けることはない。ここから、二つの方向性が開ける。一つは、あくまでも決着をつけようとするものである。顕在的な応答同調に打って出る。二つは勝負を超越しようとするもの(両者引き分けて拮抗状態を解くというもの)であり、相ヌケに相当するだろう。こうした「同調」と「競争」との交錯のなかに「引き分け」を見出していくことは、武術だけでなく他の競技文化における「場」の生成に即した視点である。「引き分けは兵法である」という言説をあきらかにしていくのが主眼であった。柳生新陰流に典型的に見られる「相手に働かせて勝つ」というような戦い方は、現代剣道のなかにも、「後の先」「先々の先」の重視として受け継がれTおり、大相撲における横綱や大関に求められる「安易に仕掛けない慎重な戦い方」に通じている。「仕掛けるが不利」ゆえに、お互いが仕掛けられずに「引き分け」となる状況が生じてくる。これは「術理」をふまえた兵法であった。将棋における先手後手同型の「総矢倉」や攻撃を受けきる「風車戦法」などは、勝つことより負けないこと・攻めないことを信条とし、すべての駒を「受け」に使って相手の攻め疲れを誘発する戦略であり、そこでは流れが「千日手」による「引き分け」へと導かれる。囲碁では、「貪り」や「大勝ち」狙いは戒められ、相手との調和を保っていき、結果として僅差で勝つことが理想とされる。「二人の対局者が相互に応答しながら、相手の出方(着手)に依存してこちらの次の着手が決まる。囲碁ゲームは、相互依存的に自己発展するシステムである」(菅野礼司『半田道玄の囲碁哲学と科学的自然観』)。「引き分け兵法」は、こうした「勝ちに固執せず、引き分けでもよい」とする消極的なものに限らない。上記のように、引き分けを目指すことによって、より確率高く勝利を得るという積極的な意味を持つ兵法も存在するのである。それは、「競争」を本質とする競技文化に「同調」を取り入れることによってもたらされるものである。こうして、兵法としての「引き分け」のさらなる意味を加えることができたということで、一つの進展を見たと言える。将棋の「後手番」の戦略、「手番を渡す」という戦法は、まさに武術に通じている。将棋の定跡や囲碁の定石は、敵と同調しながら調和を保っていく戦い方である。それらは、局面局面において両者にとって最善とされるパターン化された打ち方・指し方である。それは、お互い了解し合っているパターンであり、それに随えばある局面では互角の結果が生じる。両者彼我一体となって進み両者を含んだ流れを理解していく。相手と自分が反発していない「調和」状態が形成されていくが、どこかでそのパターンから外れて「実力」勝負となる。しかし、いきなり「調和」を崩す手を出すと、「勝手読み」となり、手痛い反撃を食らう。強引に攻めたり、受けを間違えると、調和が崩れどちらかの突破口になる。連歌は、「前句」に「付句」を加えることによって成立するが、この「前句」と「付句」は互いに独立した意味内容を持ちながらも、意味の連続性を保持している。前句・付句それぞれがなす意味表現には、「個」としての主張(競争)と互いに対する「同調」が同時的に存在するのである。蹴鞠では、相手が受け取り易いようにパスする同調性と、「うるわしく蹴り上げて」高度さを競う競争的性が交錯する。歌合は、左右に分かれて歌の優劣を競う競技文化とされているが、単純な「競争」ではなく、「対照の妙、調和の妙を味わう」(徳原茂美『歌合の成立と展開』)「歌合の場を形成する人々の互譲協和の精神」(萩谷朴 | KAKENHI-PROJECT-16K01624 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K01624 |
引き分けの精神誌 | 『平安朝歌合大成十』)、すなわち「同調」の精神に支えられていた。スポーツにおいても、同調を取り入れることによって相手をよく見ながらじっくり対応することは、重要な意味を持つ。競争と同調が統合されると、引き分けへの途が生じるのである。それは、大相撲の「立ち合い」における「阿吽の呼吸」「合気」が、互いの呼吸を合わせながらもなおかつ互いが自分の呼吸をぶつけ合うことで成立するのと同じである。剣術・剣道においては、相手との関係性に基づくことが、技術の本質を為すということである。相手との関係性を無視し自分のパターンで打つことは、相手にすぐ読まれてしまう。相手を誘い、相手に錯覚させることで優位な関係性を形成し、技をはなつ。ここに、「後の先」「先々の先」が重要視される根拠がある。また、その関係性のなかでは、「攻防一致」が尊重される。受ける太刀は、そのまま直ちに打つ太刀でなければならないということで、勝負はつくが、相討も多い。剣術は「相討をもって、至極の幸いとなす」とされてきた。このいわゆる「捨て身」になる修行が各流派においてなされてきた。一刀流の「切り落し」、尾州柳生の「あばら三寸」、その他「割り面」「切り割り」「丸橋」などである。そしてこの「捨て身」の技術が洗練されたところに、「彼我一体」の技がある。柳生新陰流の「転」「合撃」「十文字勝」「迎え」等がそれであり、剣道にも「敵に従ふの勝」として伝承された。「一刀斉先生剣法書」の「彼と我と一体にして」の部分は、明治以降多くの剣法書に引用され、理想の境地とされていく。剣術は、本来「対立」という関係性を本質としていると言わざるを得ないが、その対立に反する「同調」という関係性を持ち込むことで、勝利の確率を上げようとしたと考えられる。この「彼我一体」になるというのは、「無心」「無我」になるということに究極は結びついていく。生死を忘れ、敵味方無く、勝敗なく、心地安らかであれば、自在に変化に応じることができるとされた。主体が客体と対立するような主体である限り、物の真相は現れてこない。認識主体は、「脱自敵主体」に転成する必要がある。こうした技の思想のなかで、彼我対立がなくなり、勝負の決着に拘泥しない「引き分け」の境地も推奨されてきたと考えられるのである。28年度は、「引き分けは兵法である」という言説の歴史社会的背景を明らかにするところに主眼があった。柳生新陰流に典型的にみられる「相手に働かせて勝つ」というような戦いの伝統が、現在の剣道のなかにも主流とは決して言えないが、垣間みられる。五段までは直線的な攻撃の強さをもって可であるが、六段以上になると、「後の先」や「先先の先」が重視されるようになる。これは、相撲において本来大関や横綱になると、安易に仕掛けない慎重な戦い方が求められていたことにも通じている。「仕掛けるが不利」ゆえに、お互いが仕掛けられずに「引き分け」となる状況が生じてくる。すなわち、これ「術裡」をふまえた「兵法」であることになる。こうした兵法の考え方を、柔道や合気道、また他の競技文化にも推察できる可能性をしっかりと見据えることができたように考えられる。例えば「将棋」に「風車戦法」というのがある。これは、すべての駒を「受け」に使って相手の攻め疲れを誘発する作戦であり、相手の無理な攻めにつけこんで反撃するものであるが、相手次第で「千日手」による「引き分け」を目指すことにもなる。こうした兵法は、勝ちに固執せず、「引き分けでもよい」とするものであり、それゆえに相手が仕掛けるのを待てるのである。 | KAKENHI-PROJECT-16K01624 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K01624 |
植物細胞起源の49KDa Apyraseの分子構造と細胞内局在機構の解明 | エンドウなどの芽生えの全タンパク質の2-5%含まれる植物の49kDa Apyraseは、相反する複数の局在を持つ多局在性の酵素である。本研究は、植物Apyraseの50年の研究歴史のなかで、分子構造と局在について総合的な知見を与えようとするものである。Apyraseの分離精製法を確立し抗Apyrase抗体を作製して、多局在性をしらべた結果、研究者ごとに異なる局在を統一的に解釈することに成功した。そして、次に単一の遺伝子産物であるApyraseが、どのような分子構造をし、どのように多局在性を示すかの分子機構の解明をおこなった。遺伝子やタンパク質の構造、分子修飾などを生化学、分子生物学、および分子細胞生物学的手法を用いて明らかにした。エンドウでは事実上一つのApyrase遺伝子が芽生えの初期段階で誘導・発現することを明らかにし、これが、分子修飾を受けて多数のアイソタイプを生じるメカニズムについて考察し、リン酸化によるアイソタイプの生成が、酵素活性の調節や局在を決める重要なステップのひとつであることを示唆した。Apyraseの等電点アイソタイプの分離方法の確立のみならず、酵素活性のIEFアイソタイプごとの違いをあきらかにした研究はこれがはじめてである。このタンパク質はリン酸化によると考えられる5つの近接した等電点アイソタイプからなり、それらの存在比と細胞内分布が器官、発芽ステージにより異なることを明らかにし、さらにこれらの近接するアイソタイプの分離法を確立し、各アイソタイプごとの分子構造ならびに酵素活性を解明した。これらの成果は、米国植物生物学会で2回発表され、また4編の国際的学術論文にまとめられた。エンドウなどの芽生えの全タンパク質の2-5%含まれる植物の49kDa Apyraseは、相反する複数の局在を持つ多局在性の酵素である。本研究は、植物Apyraseの50年の研究歴史のなかで、分子構造と局在について総合的な知見を与えようとするものである。Apyraseの分離精製法を確立し抗Apyrase抗体を作製して、多局在性をしらべた結果、研究者ごとに異なる局在を統一的に解釈することに成功した。そして、次に単一の遺伝子産物であるApyraseが、どのような分子構造をし、どのように多局在性を示すかの分子機構の解明をおこなった。遺伝子やタンパク質の構造、分子修飾などを生化学、分子生物学、および分子細胞生物学的手法を用いて明らかにした。エンドウでは事実上一つのApyrase遺伝子が芽生えの初期段階で誘導・発現することを明らかにし、これが、分子修飾を受けて多数のアイソタイプを生じるメカニズムについて考察し、リン酸化によるアイソタイプの生成が、酵素活性の調節や局在を決める重要なステップのひとつであることを示唆した。Apyraseの等電点アイソタイプの分離方法の確立のみならず、酵素活性のIEFアイソタイプごとの違いをあきらかにした研究はこれがはじめてである。このタンパク質はリン酸化によると考えられる5つの近接した等電点アイソタイプからなり、それらの存在比と細胞内分布が器官、発芽ステージにより異なることを明らかにし、さらにこれらの近接するアイソタイプの分離法を確立し、各アイソタイプごとの分子構造ならびに酵素活性を解明した。これらの成果は、米国植物生物学会で2回発表され、また4編の国際的学術論文にまとめられた。トウモロコシにおいてアピレースの存在を調べる一方で、アラスカエンドウのアピレースの大量精製を行い、結晶解析に必要な基礎データを収集し結晶化を試みた。協力者の畑安雄助教授(京都大学)による結晶化実験で、分子量の分散が観察された。このアピレースのペプチド構造並びにこれをコードする遺伝子とその転写産物の多様性を調べたところ、多様なリン酸化や糖鎖、ミリスチン酸化サイトなど、タンパク質分子の多様化につながるモチーフが多数存在するとともに非常によく似た2つの遺伝子産物の存在も明らかとなった(論文1)。そこで次の3つの選択肢:1.そのまま結晶化を行う、2.アイソタイプを分離する、3.単分散な発現タンパク質を生産する、が提案された。これらをさらに検討するため、米国の共同研究者のもとでMild Toff Massにより、アピレースの基本的な分子型を調べた。その結果、4つの分子種が存在し、これらはすベて同じアピレースであることが確認されたが、互いに異なった分子修飾をうけていることも明らかとなり、現在詳細を解析中である。また、精製タンパク質画分を2次元電気泳動で分析すると、pI6.1,6.3,6.6の3種にわかれ、pIが6.1のものはpI6.3のものよりわずかに分子量が大きいことも判明し、またこれらの存在量はpI6.3のものが1番多いが他の2つとの差はあまり大きくなかった。これらのことより選択肢1は放棄し選択肢2と3を検討中であり、予備的には3つのアイソタイプをアニオン交換カラムにより分離できることがわかった。これらの知見は現在論文にまとめており、また今年のProvidence(Rhode Island,USA)で開かれる米国とカナダ合同の植物生理学会大会で発表する。また、このような研究が、植物細胞質の遺伝子発現のダイナミズム(Cytomics)の解明に重要であることを論じた論文を今年1月に出版した(論文2)。エンドウ49KDaアピレース精製標品にはMild Toff Massによる分析で分子量の似通った4つの分子種が存在し、また精密な2次元電気泳動では、pI5.82、6.05、6.30、6.55および6.80の少なくとも5つのアイソタイプが存在した。 | KAKENHI-PROJECT-12660296 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12660296 |
植物細胞起源の49KDa Apyraseの分子構造と細胞内局在機構の解明 | このうちpI6.05が約20%、6.30が約35%および6.55が約25%であった。アニオン交換カラムを用いて、塩化カリウム濃度勾配に加えゆるいpH勾配(pH76.7-8.5)をかけることによりこれら5つの極めて近接した等電点をもつアイソタイプが分離精製され、主要なpI6.30,および6.55のものにおいて80-90%の純度であった。また、我々が明らかにしたアピレースペプチド上に存在する4種、17箇所のリン酸化サイトの段階的リン酸化が関与している可能性が、この等電点の分布の間隔から示唆された。これらのアイソタイプの酵素活性、すなわちAMP, ADP, ATP, GTP, CTP, TTPおよびUTPの加水分解活性を測定したところ、いずれもAMPは分解せずADP、ATPおよび他のヌクレオシド3リン酸を加水分解した。中でも、pI6.05、6.30,および6.55のアイソタイプの酵素活性がずばぬけて高くこれらが生化学的にみても重要な分子種であることが確認された。pI6.05と6.55のアイソタイプはCTPの分解活性が最も高い。ところが、pI6.35のものはUTPに対して最大の活性を示し、また他のヌクレオシド3リン酸とADPに対する分解活性がより平均化し最も基質特異性が低いうえに平均活性が最も高いApyraseであることがわかった。このような同一遺伝子産物からのApyraseの等電点アイソタイプの分離方法の確立のみならず、酵素活性のIEFアイソタイプごとの違いをあきらかにした研究はこれがはじめてである。ATP-diphosphohydrolase (apyrase, EC 3.1.6.5)はNTPやNDPをNMPに分解する酵素で、植物においては核から細胞壁まで多様な局在と機能が報告されており、その分子機構の解明を進めてきた。本年度は免疫電子顕微鏡法のみならず蛍光抗体法やGFP融合タンパク質の発現で局在を調べた結果、細胞下画分の分析で推定されていたように、細胞内に広く分布していることを確認した。また、蛍光抗体法とGFPによる蛍光観察のイメージはおおよそ一致し、繊維状構造や核の周辺に集中的に存在したり、細胞質全体にパッチ状に分布するなどの結果がえられた。これらは免疫電子顕微鏡の結果とも合致するものあった。また、このApyraseは発芽の後期(器官分化直前)に発現する、典型的な発芽誘導酵素であることがわかった。分子構造の解析では、前年に確立した方法で分離したアイソタイプのC末端のアミノ酸配列を解析した。この結果、Apyraseの少なくとも主要な3つのアイソタイプでC末端の8アミノ酸が同じように切除されていることがわかり、質量分析データーと合わせて詳しく検討した結果、エンドウの49 kDa ApyraseはN-末端がわで21アミノ酸が切除され、合計29アミノ酸分短い成熟ペプチドになっていることが判明した。シグナルペプチドが切除されていることから、このApyraseは移動のどこかの過程で膜を透過した可能性がある。C末端側の8アミノ酸の切除は、ApyraseがもっともC末端側にもつモチーフである、DNA結合(あるいは細胞骨格結合ともいわれている) | KAKENHI-PROJECT-12660296 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12660296 |
簡易自律型システムの最適化に関する共同実験学習と教育効果に関する研究 | 本研究では,工学分野やビジネス分野における共同学習を成立させるための教育環境と学習デザインに関する検討と開発を行った.まず,簡易自律型システムを活用したシステムの最適化に関する学習方法や合理的な意思決定に関する学習モデルを提案して,授業実践を通して教育効果の測定を行った.次に,インターネットやテレビ会議システムを活用した共同学習についても検討を行った.英国の高等学校との学生間交流を行い,学習コミュニティのあり方について研究を進めた.本研究では,工学分野やビジネス分野における共同学習を成立させるための教育環境と学習デザインに関する検討と開発を行った.まず,簡易自律型システムを活用したシステムの最適化に関する学習方法や合理的な意思決定に関する学習モデルを提案して,授業実践を通して教育効果の測定を行った.次に,インターネットやテレビ会議システムを活用した共同学習についても検討を行った.英国の高等学校との学生間交流を行い,学習コミュニティのあり方について研究を進めた.本研究では,工学教育の分野やビジネス教育で情報通信を使った取り組みについて研究を行い,有効性の高い遠隔教育のあり方や学習サポート環境について検討を進める.まず,試作ロボットや既存のロボット等の自律型システムを利用した学習カリキュラムや学習コンテンツについて検討をする.さらに授業実践を通して教育効果の測定を行う.また,このようなシステムを使った共同学習をデザインして,カリキュラムベースにのせる方法について研究を行う.特に,外国との共同学習にどのように活用することができるかを検討する.今年度は特に下記の内容について検討を行った.1.最適教材の制作・検討学習を効率的に進めるためには,学習者に最適な教材提示をすることが必要であり,そのためのシステム開発を行った.AHPを用いた教材提示方法について研究を行い,Webシステムの開発を行った.また,ロボットカー等の自律システムを教材とした最適化に関する授業を行い,教育効果を測定した.その結果,最適化や意思決定に対する正しい知識が身につき,他の学習者の発表を聞いて自分の発表内容を修正する力や意見を相手にわかりやすく説明する力がついたと考えることができるようになったことがわかった.2.共同学習の形態に関する研究課題解決学習にどのようなグループ活動を取り入れることが教育効果を上げることができるかを検討した.学習活動の途中に各自の活動を評価する場面(自己評価)と,お互いの活動を評価する場面(他者評価)を取り入れることで,学習効果を上げることができることが分かった.共同学習については,ネットワークを通して遠隔で共同学習を行うことを前提とした.英国の高等学校との学生間交流を行い,テレビ会議を使った日常的なコミュニケーションを継続して行った.科学・技術に関する知識,技能を育成することを目的として学生間交流を通して共同学習ができるように検討を行った.本研究では,簡易型自律システムを活用して,工学教育の分野やビジネス分野で有効性の高い遠隔教育のあり方や共同学習方法について検討を進める.さらに,システムを使った共同学習をデザインして,カリキュラムベースにのせる方法について研究を行う.特に,外国との共同学習にどのように活用することができるかを検討する.1.最適教材の改善・評価昨年度は主に簡易自律システムを教材として,授業を通して教育効果を測定した.その結果,学習を効果的に行うことが可能であることがわかったが,課題解決をするための学習方法のバリエーションが少ないことが判明した.そこで,学習デザインの改善を図り,授業を通して教育効果を測定し,改善を図ることができた.2.遠隔教育のための教育システムの開発簡易ロボット等の自律型システムを使った授業は効果的であるが,教育現場での活用を進めるためには,Webを利用して遠隔で使用できることが必要となる.そこで,システムの遠隔操作による活用方法について検討を行った.2.共同学習の形態に関する研究昨年度から継続で,インターネットやテレビ会議システムを活用した共同学習について検討を行った.英国の高等学校との学生間交流を行い,コミュニティのあり方について研究を進めた.さらに,学習者が他者の国際交流活動を支援するによって,ICTスキルやコミュニケーションスキルを高めることが可能かどうかを調査した.本研究では,インターネットやテレビ会議システムなどの情報通信の教育利用の有効性に着目して,工学分野やビジネス分野における共同学習を成立させうための教育環境に関する検討と開発を行った.まず,簡易自律型システムを利用した学習デザインについて検討をした.次に,システムの最適化に関する学習や合理的な意思決定に関する学習モデルを提案して,授業実践を通して教育効果の測定を行った.さらに,遠隔制御システムの可能性や,小・中学校での活用の可能性を研究するとともに,外国との共同学習にどのように活用することができるかを検討した.特に,平成21年度は下記の項目を中心に研究を進め,報告を行った.1.簡易制御システムや遠隔システムの活用および海外との共同学習に関する検討(1)効果的な学習コンテンツを開発して学習デザインを検討した.これまでの教育活動に加え,最適化学習の効果を高めるために,学習結果に対する評価式を導入して,簡単に学習評価をできるようにした.さらに,高専のみならず,小学校や中学校向けのコンテンツに関する検討および教育実践を行い,本システムが汎用性の高いものであることを確認した.(2)これまでに開発したシステムおよび学習教材を使って,海外の学校との共同学習の実践を行った.H21年度は他者支援という概念を導入して課題解決型学習活動を取り入れた,また,自己評価や他者評価を継続的に行い,学習効果を上げることができた.2.本研究の学習効果に関する総合的な評価(1)本研究で開発した制御環境や学習支援環境を活用した学習によって得られた学習効果に関する総合的な分析・評価を行った.その結果,他者への説明能力,自己分析能力,自己表現能力が身についたことがわかった. | KAKENHI-PROJECT-19500844 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19500844 |
簡易自律型システムの最適化に関する共同実験学習と教育効果に関する研究 | (2)本研究の成果を報告書として冊子にまとめ,関係者に配布した. | KAKENHI-PROJECT-19500844 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19500844 |
高機能性糖関連薬物の設計と合成 | 17年度の研究成果はほぼ計画通り挙げられ、以下に要約する。1)新規糖尿病薬のリード化合物と成りうる二糖天然物であるコヨローサに焦点を絞り、合成に必要な2糖間のエーテル結合構築法を確立できた。4種の糖の組み合わせで2糖の6,6-エーテル類縁体10種を合成した。生物評価によるとコヨローサの化学構造は修正する必要がある。それと関連して他の糖間でエーテル結合した類縁体の合成も含めて新規各種エーテル糖の合成も達成できた。2)今までに含窒素糖関連類縁体の効率よい合成法が達成できた。この合成法は窒素含有糖の強力なβ-グルコシダーゼ阻害活性等に関連した薬物の創製を行った。また、硫黄などを含む新しい糖鎖構造構築や未知のアザ糖のジー及びトリサッカライド等の合成も検討した。3)1位にメチル基が導入されたα-型グリコシドの合成法が達成できたので、この合成方法を利用して5糖鎖のガン転移阻止作用が期待されるPI-88類縁体の合成に応用拡大を図った。4)環境調和型の有機合成反応の開発を目指して金属配位子を担持させたポリアクリルアミド系鎖状高分子の合成とその有効性を確認した。関連して、これら両親媒性高分子触媒の機能としての有効性を検討し、他の金属とのハイブリッド型触媒を分子設計しその有機化学反応への応用を検討した。17年度の研究成果はほぼ計画通り挙げられ、以下に要約する。1)新規糖尿病薬のリード化合物と成りうる二糖天然物であるコヨローサに焦点を絞り、合成に必要な2糖間のエーテル結合構築法を確立できた。4種の糖の組み合わせで2糖の6,6-エーテル類縁体10種を合成した。生物評価によるとコヨローサの化学構造は修正する必要がある。それと関連して他の糖間でエーテル結合した類縁体の合成も含めて新規各種エーテル糖の合成も達成できた。2)今までに含窒素糖関連類縁体の効率よい合成法が達成できた。この合成法は窒素含有糖の強力なβ-グルコシダーゼ阻害活性等に関連した薬物の創製を行った。また、硫黄などを含む新しい糖鎖構造構築や未知のアザ糖のジー及びトリサッカライド等の合成も検討した。3)1位にメチル基が導入されたα-型グリコシドの合成法が達成できたので、この合成方法を利用して5糖鎖のガン転移阻止作用が期待されるPI-88類縁体の合成に応用拡大を図った。4)環境調和型の有機合成反応の開発を目指して金属配位子を担持させたポリアクリルアミド系鎖状高分子の合成とその有効性を確認した。関連して、これら両親媒性高分子触媒の機能としての有効性を検討し、他の金属とのハイブリッド型触媒を分子設計しその有機化学反応への応用を検討した。1、新規糖尿病薬のリード化合物と成りうる二糖天然物であるコヨローサに焦点を絞り、合成に必要な2糖間のエーテル結合構築法を確立できた。4種の糖の組み合わせで2糖の6,6-エーテル類縁体10種を合成した。生物評価によるとコヨローサの化学構造は修正する必要がある。関連する他のエーテル糖の合成もほぼ達成できた。2、含窒素糖関連類縁体の効率よい合成法の確立とその構造解明がほぼ解明されたので、酸素以外の複素原子を含む新しい糖鎖構造構築をも視野に入れて研究を展開してきた。3、新たに、1位にメチル基が導入されたグリコシドの合成研究に着手し、α-D-1-メチルグルコシドの合成法が確立できた。エキソ-1-メチレン糖に直接カルボカチオンを発生させ別の糖を攻撃させてグリコシドを構築する方法である。各種の糖及び位置(2,3,4,6-各位置)でのグルコシル化が可能になり新しい糖鎖構築法が達成できた。4、3で確立した方法はα-グリコシドのみが得られるので、この合成法をガン転移阻止作用が期待されるPI-88のメチル類縁体の合成へ応用して、その基本骨格の合成が達成できた。5、新しい疑似糖として検討してきた効率良いオルトエステルの合成法は、適用応用拡大が図られ、全く新規なシクリトール合成法を提供することができた。この方法は医薬創製の立場から過血糖抑制薬の合成にも応用することが可能となり、ボグリボース及び関連エピマーの合成に転換すること検討している。6、環境調和型の有機合成反応系の新規確立も計画通り展開できた。17年度の研究成果はほぼ計画通り挙げられ、以下に要約する。1)新規糖尿病薬のリード化合物と成りうる二糖天然物であるコヨローサに焦点を絞り、合成に必要な2糠間のエーテル結合構築法を確立できた。4種の糖の組み合わせで2糖の6,6-エーテル類縁体10種を合成した。生物評価によるとコヨローサの化学構造は修正する必要がある。それと関連して他の糖間でエーテル結合した類縁体の合成も含めて新規各種エーテル糖の合成も達成できた。2)今までに含窒素糖関連類縁体の効率よい合成法が達成できた。この合成法は窒素含有糖の強力なβ-グルコシダーゼ阻害活性等に関連した薬物の創製を行った。また、硫黄などを含む新しい糖鎖構造構築や未知のアザ糖のジー及びトリサッカライド等の合成も検討した。 | KAKENHI-PROJECT-16590013 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16590013 |
高機能性糖関連薬物の設計と合成 | 3)1位にメチル基が導入されたα-型グリコシドの合成法が達成できたので、この合成方法を利用して5糖鎖のガン転移阻止作用が期待されるPI-88類縁体の合成に応用拡大を図った。4)環境調和型の有機合成反応の開発を目指して金属配位子を担持させたポリアクリルアミド系鎖状高分子の合成とその有効性を確認した。関連して、これら両親媒性高分子触媒の機能としての有効性を検討し、他の金属とのハイブリッド型触媒を分子設計しその有機化学反応への応用を検討した。 | KAKENHI-PROJECT-16590013 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16590013 |
哺乳時における乳児の舌運動計測に基づく異常吸啜検出アルゴリズムの構築 | 本研究では,哺乳行動に関する臨床を支援するために,吸啜時における舌が乳首に与える力のリアルタイム計測システムの開発し,新生児を対象とした計測および異常吸啜検出アルゴリズムの構築を行った.具体的には,片持ち梁形式の小型力センサを多点に内蔵し,乳首表面にかかる力を立体的に計測できる人工乳首を開発して,乳首下部から上顎に向けて主たる力が加わっていること,吸啜は1秒間に2回程度行われていることを明らかにした.また,舌運動の解析を試みた結果,経口哺乳が確立した乳児では舌の蠕動様運動が見られる一方,確立していない乳児では確認できなかった.さらに,これらの要素を自動抽出できるシステムを構築した.わが国の出生数103万人(2013年)のうち,約10%が出生体重2500g未満の低出生体重児であり,増加の一途をたどっている.低出生体重児は,母乳や人工乳を哺乳する「哺乳行動」に課題を抱えている割合が多く,健やかな成長の妨げとなるほか,時には生命の維持にも関わる.このような背景から,哺乳行動の詳細を解明することが急務であるが,実際は不明な点が多い.2013年度における課題では,乳児が哺乳時において乳首を吸啜する動作に着目し,舌が人工乳首の表面に接触する部位に多数の力センサを設けた人工乳首を開発して,舌が人工乳首に与える力をマルチポイントで時系列的に計測できるセンサシステムを構築することを目的とした.本システムは,正六角柱の3つの側面に力センサを縦列に2個ずつ配置し,合計6個の力センサを内蔵したセンサユニットにエラストマ製の中空の人工乳首を装着して構成されている.センサの静特性について,0Nから3.92Nまで0.49Nずつ加重し,続いて0Nまで0.49Nずつ荷重を減じた際の出力電圧を計測した結果,ヒステリシスは0.12%2.83%であった.また,動特性について,1つの力センサの伝達ブロックに3.92Nの荷重を加え,それを瞬時に取り除いた際の応答時間を計測することで評価した結果,出力最大電圧の90%から10%に達するまでの時間は,0.5ms1.8msであった.これらより,本システムは計測に十分な性能を有していることを確認した.正期産児3名に対して計測を行った結果,1)各センサからの力の信号を得たこと,2)吸啜周期が推定可能であったこと,3)舌は乳首下部に主たる力を与えていることが判明した.乳児は,吸啜反射により出生後まもなくから母親の乳首を口腔内に取り込み,乳汁を摂取することが可能となる.しかし,母親の乳首から直接乳汁を摂取することが困難な乳児について,吸啜不良の原因は明らかにされていない点が多い.本研究では,舌と乳首の接触力を直接計測することで舌運動の推定を試み,吸啜良好・不良それぞれの特徴を抽出することを目標としている.前年度において,舌が人工乳首の表面に接触する部位に多数の力センサを設けた人工乳首を開発して,舌が人工乳首に与える力をマルチポイントで時系列的に計測できるセンサシステムを構築することに成功した.その結果,舌が与える主たる力は乳首下部に集中していることが判明した.2014年度においてはこの結果を踏まえ,該当箇所に2つの力センサを備えた哺乳瓶型舌運動機能評価システムを構築した.本システムでは力センサの堅牢性の確保,力点変位の防止を目指し,圧力変換器の感圧点に直径3mmのステンレス鋼球を接触させる力センサ形態を採用した.これによって,鋼球に与えられた力は圧力変換器に点接触し,舌が人工乳首に与える鉛直方向の力を直接計測することが可能となった.開発したセンサユニットには中空エラストマ製の人工乳首を装着し,それを乳児に咥えさせて計測を行う.また,本システムには液晶画面を備えており,各センサからの時系列信号,舌の蠕動様運動の有無を速やかに提示できる機能を有している.被験児3名に対して計測を行った結果,母親の乳首から直接乳汁を摂取することが可能な乳児において舌の蠕動様運動を示す波形が得られ,通常必要な乳汁の全量を哺乳瓶から摂取している乳児における舌運動との差異が示された.また,本システムの携帯容易性を確認したと共に,臨床現場での使用について,従来のPCシステムと比較して各種データの視認性が優位であることが示された.乳児は,原始反射の一つである吸啜反射により,出生後まもなくから母親の乳首を口腔内に取り込み,乳汁を摂取することが可能となる.しかし,母親の乳首から直接乳汁を摂取することが困難な乳児について,吸啜不良の原因は明らかにされていない点が多い.本研究では,舌と乳首の接触力を直接計測することでした舌運動の推定を試み,吸啜良好・不良それぞれの特徴を抽出することを目標としている.現在までに,舌が人工乳首の表面に接触する部位に多数の力センサを三次元的に設置した人工乳首を開発し,舌が人工乳首に与える力をマルチポイントで時系列的に計測できるセンサシステムを構築することに成功した.その結果,舌が乳首を包み込むように支え,蠕動運動を行うことが明らかとなった.さらに,主たる力は上顎に対して垂直方向にかかることが判明した.2015年度においては,より詳細な舌運動の解析を行うために,舌が蠕動する際に生じる隆起部の移動速度について検討した. | KAKENHI-PROJECT-25420421 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25420421 |
哺乳時における乳児の舌運動計測に基づく異常吸啜検出アルゴリズムの構築 | 具体的には,縦3mm,横10mm,厚さ0.3mmのステンレス薄板を梁とした片持ち梁構造の力センサを3つ,縦12mm,横70mm,厚さ3mmのステンレス板に縦列に配置し,中空エラストマー製の人工乳首を装着してセンサユニットを構築し,乳児の口腔内に挿入して舌ー人工乳首の接触力を計測した.被験児は,経口哺乳が確立している乳児2名と,経口哺乳が確立していないため経管栄養を併用している乳児2名である.計測の結果,前者においては隆起部の移動速度が等速傾向にあり比較的遅く,後者においては減速傾向にあり速かった.特に後者では,各センサに接触するタイミングがほぼ同じで,乳首全体を舌で押し込むような動きであることが推定された.これまでの研究において,1)小型力センサを複数かつ立体的に中空人工乳首の内部に配置して,舌ー人工乳首の接触力を多点で時系列的に計測できるセンサシステムを構築したこと,2)1)を用いて健常児に対する計測を試みたところ,上顎に対して垂直方向に大きな力が加わることが判明したこと,3)臨床においても効率よく計測体制を整えることができるよう,力センサの堅牢性の確保と力点変異の防止が可能な,圧力変換器の感圧点にステンレス鋼球を接触させるタイプのセンサ部を開発し,それを哺乳瓶型筐体にパッケージングした計測器を開発したこと,4)これらのセンサシステムを用いて健常児および吸啜不良を示す児に対して計測を行ったところ,舌の蠕動様運動に明らかな差が生じていることが明らかとなった.これらの成果について,本年度は特に4)を中心に,電気学会論文誌に査読付き学術論文として投稿,採録されたほか,平成27年電気関係学会関西連合大会においても発表し,システムの開発,評価,さまざまな乳児に対する計測と考察に関する研究成果発表を成し得たところから,おおむね順調に進展していると判断した.乳児が母乳や人工乳を摂取する包括的な動きを哺乳行動という.乳児は,ヒトの原始反射の1つである吸啜反射によって,出生直後から哺乳行動が可能となるが,吸啜時における口腔運動については,そのメカニズム等明らかになっていない部分が多い.さらには,母親の乳首や人工乳首から直接乳汁を摂取することが困難な児については,吸啜不良である原因が不明であるケースも少なくない.本研究では,吸啜時における舌と乳首の接触力を直接計測し,そのデータから舌運動を推定することで吸啜良好および不良の特徴を抽出することを目的としている.現在までに,舌が人工乳首の表面に接触する部位に多数の力センサを設置した舌ー乳首接触力の直接計測システムの構築を行い,舌が乳首を包み込むように支えて蠕動様運動をを行うこと,主たる力は硬口蓋に対して垂直方向にかかることを明らかにした.さらに,経口哺乳が確立している乳児群と経管栄養を併用している乳児群に対して,舌が蠕動する際に生じる隆起部の移動速度を基にした運動を推定した結果,経管栄養を併用している場合,乳首全体を舌で押し込むような動きが生じている可能性を示した.これらの研究結果から,2016年度では硬口蓋に対して垂直方向における舌の力と総乳汁摂取量を計測し,力の計測結果から算出したパラメータ群を用いて母乳摂取量の推定が可能であるか,重回帰分析を試みた.力の計測については,片持ち梁型力センサを2個内蔵した人工乳首を用いた.目的変数である母乳摂取量は,1gまで計測可能なベビースケールを用いて,母乳摂取前後の体重の差で計測した.分析の結果,力の最大値と吸啜周期について母乳摂取量との関連性が強く見いだされ,乳児の舌の力を計測するだけで母乳摂取量が推定できる可能性が示された. | KAKENHI-PROJECT-25420421 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25420421 |
住宅の自然換気特性と気密性能の選定方法に関する研究 | 住宅の気密性能の実態調査、自然換気特性に影響を及ぼす上空の風の性状、隙間をモデル化した独立住宅を対象とした自然換気量と外部風向風速、室内外温度差の関係に関する実大実験を行い、独立住宅の自然換気特性を明らかとし、住宅の気密性能の選定を行う際の資料を蓄積した。新築住宅では気密性能のグレードは相対的に高く、隙間の有効開口面積で2cm^2/m^2以下の住宅が多く、住宅の気密化が進行している。気密性能は加圧法、減圧法の両方で測定を行ったが、両者の差は大きな違いは見られなかった。上空風の鉛直分布の実測調査をドップラーソーダ風速計を用いて行ったが、鉛直分布のべき指数は0.20.8と極めて大きな範囲に分布しておりばらつきが大きい事が明らかとなった。海岸から風が吹く場合と市街地から風が吹く場合ではべき指数に違いが見られ、海岸から吹く場合の方が平均的にはべき指数が小さくなる傾向が見られるが、両者ともばらつきが大きく風速や大気の安定度によってべき指数は変化すると考えられる。住宅の自然換気量は室内外の温度差と外部風速に影響されるが、風の強い地域では内外の温度差よりも外部風速の影響を強く受けることが明らかとなった。気密性能と室内に生じる上下温度差の関係を明らかとし、気密性能が向上に伴う自然換気量の減少に対しては、機械換気の導入など自然換気の現象を補う何らかの設備が必要である。住宅の気密性能の実態調査、自然換気特性に影響を及ぼす上空の風の性状、隙間をモデル化した独立住宅を対象とした自然換気量と外部風向風速、室内外温度差の関係に関する実大実験を行い、独立住宅の自然換気特性を明らかとし、住宅の気密性能の選定を行う際の資料を蓄積した。新築住宅では気密性能のグレードは相対的に高く、隙間の有効開口面積で2cm^2/m^2以下の住宅が多く、住宅の気密化が進行している。気密性能は加圧法、減圧法の両方で測定を行ったが、両者の差は大きな違いは見られなかった。上空風の鉛直分布の実測調査をドップラーソーダ風速計を用いて行ったが、鉛直分布のべき指数は0.20.8と極めて大きな範囲に分布しておりばらつきが大きい事が明らかとなった。海岸から風が吹く場合と市街地から風が吹く場合ではべき指数に違いが見られ、海岸から吹く場合の方が平均的にはべき指数が小さくなる傾向が見られるが、両者ともばらつきが大きく風速や大気の安定度によってべき指数は変化すると考えられる。住宅の自然換気量は室内外の温度差と外部風速に影響されるが、風の強い地域では内外の温度差よりも外部風速の影響を強く受けることが明らかとなった。気密性能と室内に生じる上下温度差の関係を明らかとし、気密性能が向上に伴う自然換気量の減少に対しては、機械換気の導入など自然換気の現象を補う何らかの設備が必要である。住宅の気密性能の向上やシェルター性能の変化に伴い、住宅の換気系各手法の確立が強く求められている。換気設計の中で機械換気に関する研究、開発は数多く行われているが、自然換気に関しては設計手法、換気量の算出の詳細が明らかとなっているとは言い難い状況である。この原因は主に外部環境の把握(特に風向風速と換気量の関係)が困難であるためであるが、本研究の成果によりある程度明らかとなった。室内外温度差、外部風速と換気量の関係は、風の強い地域では外部風速の影響が支配的であり内外温度差と換気量には殆ど相関が見られなかった。日本海地域は冬季の季節風が卓越し強風が吹くので、開口部の設置に際しては注意が必要である。気密性能と換気量、室内に生じる上下温度差の関係は、気密性能が向上すると換気量はほぼ隙間の有効開口面積に比例して減少すること、上下温度差も隙間の有効開口面積の減少に伴い少なくなることが明らかとなった。更に、気密性能の向上は室間の温度差を少なくすることにも効果が高いと考えられ、室内の熱環境を改善する上で重要な要素であると考えられる。気密性能の向上は換気量の減少を引き起こすので、室内の空気環境の観点からは不利であり、自然換気量の減少を補うための機械換気設備の設置が必要不可欠であると考えられる。住宅の気密性能の実態調査、自然換気特性に影響を及ぼす上空の風の性状、隙間をモデル化した独立住宅を対象とした自然換気量と外部風向風速、室内外温度差に関係に関する実大実験を行い、独立住宅の自然換気特性を明らかとし、住宅の気密性能の選定を行う際の資料を蓄積した。新築住宅では気密性能のグレードは相対的に高く、隙間の有効開口面積で2cm^2/m^2以下の住宅が多く、住宅の気密化が進行している。気密性能は加圧法、減圧法の両方で測定を行ったが、両者の差は大きな違いは見られなかった。上空風の鉛直分布の実測調査をドップラーソーダ風速計を用いて行ったが、鉛直分布のべき指数は0.20.8と極めて大きな範囲に分布しておりばらつきが大きく事が明らかとなった。海岸から風が吹く場合と市街地から風が吹く場合ではべき指数に違いが見られ、海岸から吹く場合の方が平均的にはべき指数が小さくなる傾向が見られるが、両者ともばらつきが大きく風速や大気の安定度によってべき指数は変化すると考えられている。住宅の自然換気量は室内外の温度差と外部風速に影響されるが、風の強い地域では内外の温度差よりも外部風速の影響を強く受けることが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-08455266 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08455266 |
住宅の自然換気特性と気密性能の選定方法に関する研究 | 気密性能と室内に生じる上下温度差の関係を明らかとし、気密性能が向上すると室内の上下温度分布も小さくなることを明らかとした。但し、気密性能の向上に伴う自然換気量の減少に対しては、機械換気の導入などの自然換気の現象を補う何らかの設備が必要である。 | KAKENHI-PROJECT-08455266 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08455266 |
大腸及び膵臓発がんにおけるオステオポンチンとそのがん特異的分子の生理的役割の解析 | ラット及びマウスの大腸化学発がんモデルとハムスター及びマウスの膵臓発がんモデルの腫瘍組織において、OPNaの顕著な発現上昇が認められた。OPN欠損が大腸発がんに及ぼす影響は明らかではなかったが、マウス膵臓発がんモデルにおいてはOPN欠損により発がん率及び発生個数の減少が認められたことから、OPNが一部のがんへの進展、浸潤等に関与しており、発がん抑制のターゲットとなりうることが示唆された。ラット及びマウスの大腸化学発がんモデルとハムスター及びマウスの膵臓発がんモデルの腫瘍組織において、OPNaの顕著な発現上昇が認められた。OPN欠損が大腸発がんに及ぼす影響は明らかではなかったが、マウス膵臓発がんモデルにおいてはOPN欠損により発がん率及び発生個数の減少が認められたことから、OPNが一部のがんへの進展、浸潤等に関与しており、発がん抑制のターゲットとなりうることが示唆された。本研究では、大腸及び膵臓発がん過程におけるオステオポンチン(OPN)及びスプライスバリアントの発現を動物モデルを用いて調べ、その役割について検討する。本年度は、膵臓発がんにおけるOPNa及びOPNcの発現をハムスターのBOP誘発化学発がんモデルと遺伝子改変マウスモデルを用いて解析した。膵臓組織におけるOPN遺伝子発現を解析した結果、BOP非投与ハムスターの正常膵臓でも、OPNaの発現は認められるが、BOP投与群の非がん部膵臓組織ではその発現が上昇し、がん組織では顕著な発現上昇が見られた。一方、OPNcは、がん組織でのみ発現が認められた。マウスモデルでは、正常コントロールマウスの膵臓におけるOPNaの発現に比べ、膵臓に病変のあるK-ras変異体発現マウスで顕著な上昇が見られた。また、OPNcの発現はK-ras変異体発現マウスでのみ認められた。免疫染色によるOPN蛋白質発現解析の結果、正常膵臓でも腺房細胞全体に低レベルの発現が見られ、ハムスターでは腺房細胞やランゲルハンス島でやや高い発現が見られた。がん組織では、がん細胞および間質の線維芽細胞で発現しており、マクロファージで強い発現が認められた。マウスの正常膵臓では腺房細胞での弱い発現に加え、腺房中心細胞や介在部、小葉内導管で強い発現が認められた。K-ras変異体発現マウスでは、腺房細胞がダクトに化生を起こす時に発現が高まり、PanIN-1や2のレベルのmucinousなダクトではいったん発現が低下した。そしてさらに異型度が増してPanIN3になると再度発現が上昇する様子が観察された。現在、スプライスバリアント特異的抗体を作成中であり、今後、組織中でOPNcを発現している細胞の同定を行なう予定である。本研究では、大腸及び膵臓発がん過程におけるオステオポンチン(OPN)及びスプライスバリアントの発現を動物モデルを用いて調べ、その役割について検討する。本年度は、大腸発がん過程におけるOPNの発現の解析及びOPN欠損の大腸発がんへの影響の検討と、膵臓発がんにおけるOPN欠損の影響の解析を行なった。1.ラット及びマウスにおけるAOM誘発大腸発がん実験において得られた大腸の正常粘膜および腫瘍におけるOPNおよびスプライシングバリアントの遺伝子発現を解析した結果、ラットでは非がん部粘膜でもOPNaの発現は認められ、がん組織では顕著な発現上昇(50倍以上)が見られた。一方、OPNbはがん組織でのみ発現が認められ、OPNcの発現は認められなかった。マウスモデルでは非がん部粘膜ではOP Na,b,cの発現はいずれも認められず、がん組織でOPNaの発現のみ認められた。2.OPN(+/+),OPN(+/-),OPN(-/-)の各遺伝子型のマウスに大腸発がん物質であるAOMを10mg/kg体重の用量で週1回、6週間腹腔内投与し、約半年後に大腸の前がん病変及び腫瘍の発生状況について解析し、OPN欠損が大腸発がん過程に及ぼす影響を調べた。前がん病変のaberrantcryptfoci(ACF)の生成数に有意差はなく、大腸腫瘍の発生率はOPN(+/+)に比べOPN(+/-),OPN(-/-)でやや低かったが有意差は認められなかった。OPN欠損マウスと野生型マウスとの比較解析で、OPNの大腸発がんにおける影響は明らかではなかったが、膵臓発がんにおいてはがんの進展への関与が示唆されたことから、平成24年度は、膵臓における微小病変の発生状況の解析及びがん組織を用いた膵臓発がん過程におけるOPNの下流因子の解析を行なった。2.がん組織を用いた、膵臓発がん過程におけるOPNの下流因子の解析:上記動物実験の25週齡時のマウス膵臓組織における遺伝子発現の違いをcDNAアレイ解析によって調べ、さらに半定量的RT-PCR解析を行なった。OPNの発現はK-ras(+/G12D)ptf1(+/Cre)OPN(+/-)では3分の1程度に減少し、K-ras(+/G12D)ptf1(+/Cre)OPN(-/-)では発現が認められないことを確認した。これに伴い、浸潤等に関わるMMP7、MMP2、MMP13、接着等に関わるGja1(Cx43)、増殖や抗アポトーシスに関わるCOX-2、Bcl-2、cyclinD1の発現の低下が認められた。以上より、膵臓発がん過程においてOPNは前がん病変の発生には必須ではないが、がんへの進展、浸潤等に関与しており、OPNの発現抑制によりがんの進展が抑制されることが示唆された。予定していた動物実験は完了し、解析も順調に進んでいる。 | KAKENHI-PROJECT-22590371 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22590371 |
大腸及び膵臓発がんにおけるオステオポンチンとそのがん特異的分子の生理的役割の解析 | 24年度が最終年度であるため、記入しない。OPN欠損マウスを用いた解析で、大腸発がんにおける影響は明らかではなかったが、膵臓発がんにおいてはがんの進展への関与が示唆されたことから、平成24年度は、がん組織・培養細胞を用いて膵臓発がん過程におけるOPNの下流因子の同定を行なう。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22590371 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22590371 |
細胞周期調節因子aurora2による消化器癌浸潤・転移機構の解明 | 【目的】近年新しい細胞周期調節因子として、serine/threonine kinase domainを持つaurora 2(AUR2)が同定された。本研究では消化器癌におけるaurora 2遺伝子の発現を検索し、臨床病理学的因子との相関から癌の浸潤・転移機構との関連について検討した。【対象と方法】消化器癌治癒切除症例201例(食道癌53例、胃癌72例、大腸癌76例)を対象とした。切除標本の癌部(T)および健常部(N)の組織よりRNAを抽出し、aurora2特異的primerを用いてRT-PCR法にてmRNAの発現を検索した。発現を半定量化するため、内部コントロールのGAPDHで補正した後、T/N比を計算した。【結果】T/N比1.1以上を陽性とすると、食道癌で27/53例(51%)、胃癌38/72例(53%)、大腸癌36/76例(47%)が陽性例であった。食道癌においては、リンパ節転移は陽性群86%、陰性群76%と陽性群に多いものの有意差は認めず他の臨床病理学的因子との相関もなかった。胃癌においては、リンパ節転移は陽性群71%、陰性群38%で陽性群に有意にリンパ節転移が多かった(p<0.01)。大腸癌においては、リンパ節転移が陽性群64%、陰性群18%で陽性群が有意に多く(p<0.01)、リンパ管侵襲も陽性群69%、陰性群30%で陽性群に有意に多く認めた(p<0.01)。またDukes分類でも、陽性群に有意に進行例が多かった(p<0.01)。予後についての検討では、食道癌においては、陽性群、陰性群で特に差は認められなかった。胃癌においては、5年生存率で陽性群32%、陰性群62%で陽性群の予後が不良な傾向にあったが、有意差は認めなかった(p=0.065)。大腸癌においては、陽性群66%、陰性群93%であり、陽性群で有意に予後不良であった(p<0.05)。【考察】aurora 2発現は、胃癌、大腸癌において、リンパ節転移に関連する因子であり、特に大腸癌においては、新しい予後規定因子と考えられた。【目的】近年新しい細胞周期調節因子として、serine/threonine kinase domainを持つaurora 2(AUR2)が同定された。本研究では消化器癌におけるaurora 2遺伝子の発現を検索し、臨床病理学的因子との相関から癌の浸潤・転移機構との関連について検討した。【対象と方法】消化器癌治癒切除症例201例(食道癌53例、胃癌72例、大腸癌76例)を対象とした。切除標本の癌部(T)および健常部(N)の組織よりRNAを抽出し、aurora2特異的primerを用いてRT-PCR法にてmRNAの発現を検索した。発現を半定量化するため、内部コントロールのGAPDHで補正した後、T/N比を計算した。【結果】T/N比1.1以上を陽性とすると、食道癌で27/53例(51%)、胃癌38/72例(53%)、大腸癌36/76例(47%)が陽性例であった。食道癌においては、リンパ節転移は陽性群86%、陰性群76%と陽性群に多いものの有意差は認めず他の臨床病理学的因子との相関もなかった。胃癌においては、リンパ節転移は陽性群71%、陰性群38%で陽性群に有意にリンパ節転移が多かった(p<0.01)。大腸癌においては、リンパ節転移が陽性群64%、陰性群18%で陽性群が有意に多く(p<0.01)、リンパ管侵襲も陽性群69%、陰性群30%で陽性群に有意に多く認めた(p<0.01)。またDukes分類でも、陽性群に有意に進行例が多かった(p<0.01)。予後についての検討では、食道癌においては、陽性群、陰性群で特に差は認められなかった。胃癌においては、5年生存率で陽性群32%、陰性群62%で陽性群の予後が不良な傾向にあったが、有意差は認めなかった(p=0.065)。大腸癌においては、陽性群66%、陰性群93%であり、陽性群で有意に予後不良であった(p<0.05)。【考察】aurora 2発現は、胃癌、大腸癌において、リンパ節転移に関連する因子であり、特に大腸癌においては、新しい予後規定因子と考えられた。【目的】治療前から生検組織を得られる消化管癌において,組織中の遺伝子診断による癌の悪性度評価の意義は大きい.われわれは1998年に同定された細胞周期調節因子であるaurora2に注目し,そのoncogeneとしての作用を明らかにしてきた.今回消化管癌におけるaurora2の発現と臨床病理学的因子や長期予後との関連について調べ,癌悪性度診断におけるaurora2発現の意義を検討した.【対象と方法】 | KAKENHI-PROJECT-12671232 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12671232 |
細胞周期調節因子aurora2による消化器癌浸潤・転移機構の解明 | 1994年4月から96年10月までの間に手術を施行した食道癌53例,胃癌72例,大腸癌76例を対象とした.aurora2mRNAの発現は,腫瘍組織と正常粘膜の新鮮標本から抽出したRNAを用いてRT-PCR法で調べ,GAPDHで補正したaurora発現量のT/N比が1.0を超えるものを発現陽性とした.また治癒切除後3年以上経過した症例について予後調査を行った.【結果】aurora2mRNA発現は食道癌の51%(27/53),胃癌の53%(38/72),大腸癌の47%(36/76)と各消化管癌の約半数に認め,その多くはT/N比が10を超え腫瘍特異的に発現していた.た.臨床病理学的にaurora2発現陽性群と陰性群を比較すると,胃癌ではリンパ節転移率が陽性群71%(27/38),陰性群38%(13/34)で,陽性群は陰性群に比べ有意にリンパ節転移を多く認めた(p<0.01).しかし病期・組織型・腫瘍径・深達度・リンパ管侵襲・脈管侵襲は両群間に差はなかった.大腸癌でもリンパ節転移率は陽性群64%(23/36),陰性群18%(7/40)で,陽性群は有意にリンパ節転移が多く(p<0.01),リンパ管侵襲も陽性群69%(25/36),陰性群30%(12/40)で,陽性群に有意に多く認めた(p<0.01).しかし食道癌においてはリンパ節転移は陽性群86%(18/21),陰性群76%(4/13)で両群間に差はなく,所属リンパ節群別に比較しても差はなかった.また他の臨床病理学的因子も両者に差はなかった.予後についてみると大腸癌の3年無再発生存率はaurora2発現陽性群67%,陰性群89%であり,陽性群は有意に予後不良であった(p<0.05).胃癌でも大腸癌と同様に陽性群の予後不良の傾向がみられたが,食道癌では両群間に差はなかった.【結語】消化管癌においてaurora2の発現は癌組織の約半数に認めた.また胃癌・大腸癌ではaurora2の発現はリンパ節転移と関連し,陽性例の予後は不良であった.これよりaurora2の発現により胃癌・大腸癌の悪性度評価,特にリンパ節転移の新しい指標になり得ると考えられた.【目的】近年新しい細胞周期調節因子として、serine/threonine kinase domainを持つaurora2(AUR2)が同定された。本研究では消化器癌におけるaurora2遺伝子の発現を検索し、臨床病理学的因子との相関から癌の浸潤・転移機構との関連について検討した。【対象と方法】消化器癌治癒切除症例201例(食道癌53例、胃癌72例、大腸癌76例)を対象とした。切除標本の癌部(T)および健常部(N)の組織よりRNAを抽出し、aurora2特異的primerを用いてRT-PCR法にてmRNAの発現を検索した。発現を半定量化するため、内部コントロールのGAPDHで補正した後、T/N比を計算した。【結果】T/N比1.1以上を陽性とすると、食道癌で27/53例(51%)、胃癌38/72例(53%)、大腸癌36/76例(47%)が陽性例であった。食道癌においては、リンパ節転移は陽性群86%、陰性群76%と陽性群に多いものの有意差は認めず他の臨床病理学的因子との相関もなかった。胃癌においては、リンパ節転移は陽性群71%、陰性群38%で陽性群に有意にリンパ節転移が多かった(P<0.01)。大腸癌においては、リンパ節転移が陽性群64%、陰性群18%で陽性群が有意に多く(P<0.01)、リンパ管侵襲も陽生群69%、陰性群30%で陽性群に有意に多く認めた(P<0.01)。またDukes分類でも、陽性群に有意に進行例が多かった(P<0.01)。予後についての検討では、食道癌においては、陽性群、陰性群で特に差は認められなかった。胃癌においては、5年生存率で陽性群32%、陰性群62%で陽性群の予後が不良な傾向にあったが、有意差は認めなかった(P=0.065)。大腸癌においては、陽性群66%、陰性群93%であり、陽性群で有意に予後不良であった(P<0.05)。【考察】 | KAKENHI-PROJECT-12671232 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12671232 |
シティズンシップの政治思想史に向けて ジョン・ロックにおける政治的成員資格の概念 | 研究目的との関連1:第一の目的「シティズンシップの思想史および理論における定説の修正・刷新」との関連において、本年度の実績は、研究方法を確立し、研究範囲を大筋で確定することにあった。前年度の(申請書類内の)研究計画で提示した方法を、論文「ロックにおける政治的成員資格」および学会報告(社会思想史学会)で詳細に展開した。重要な成果は、考慮すべき思想史的文脈を特定した点にある。第一に、社会契約説とsubjectship(臣民の地位)との関連性。第二に、古典的な市民的美徳の理念から、ロックに見られる商業的な市民意識への転換。第二の文脈は、前年度の研究計画では重視していなかった。しかし同論文では、ロックの市民意識の独創性を解明することが、国家の「成員members」と「臣民subject」にかんする彼の学説にも新たな角度から光を当てる可能性を提示した。双方の文脈に同時に着目することは、初期近代に特有のシティズンシップの概念(古典的および近代的概念のいずれにも還元されない)を解明することに寄与すると思われる。研究目的との関連2:第二の目的「市民/非市民の境界づけをめぐる規範的諸前提の再考」にかんして本年度のうちに成果を出すことは、当初は想定していなかった。しかし副次的成果として、日本および米国の外国人・移民政策にかんする論文および学会報告を、本年度中に発表した。これらの成果は、一次的には、現代の非正規移民にたいする政策の経験的研究である。しかし二次的には、形式的シティズンシップ(法的地位)と事実上のシティズンシップ(社会参加)との矛盾という理論的かつ思想史的な問題に取り組むにあたって、その現代的文脈の調査として、本研究にも寄与する成果といえる。研究実施計画との関連:ほぼ第一年次の実施計画どおりに、本年度の研究を進めることができた。詳細は「現在までの進捗状況」のとおり。資料収集の状況:一次資料のうち出版されているもの、および重要な二次文献を、予算が許すかぎり購入した。ロックの文献は、生前未公刊の手稿についてもかなりの部分が出版されているが、それでも手稿そのものの写しを閲覧すべきと思われるものについては、7月にボドリアン図書館(オックスフォード大学)および大英図書館(ロンドン)で実施した資料調査により、手稿の写しを手に入れている。他方で、一次文献のうち他の著者によるものは、非常勤講師として勤めている早稲田大学の図書館(EEBOにアクセス可能)で、随時取得している。こうして、必要な資料のうち大半は、すでに入手しているか、またはアクセス可能な図書館で所蔵を把握できている。研究推進の状況:一次文献の分析について、ロックの出版された文献は、すでにおおむね目をとおし、どの部分に詳細な分析が必要であるかの見当はつけている。他の著者によるものは、参照すべき著者の選別をおおむね完了しているものの、文献の精読は部分的にしか進んでいない。とはいえ、おおむね当初の計画どおりに進んでいると言える。くわえて、国際学会John Locke Conference(7月、オックスフォード)、またジョン・ロック研究会(9月、日本大学商学部)、イングランド啓蒙研究会(年度中に計6回)に参加した。その成果はとくに、認識論、科学哲学、宗教思想、倫理学など、他分野におけるロック研究の成果について知見を広められたことにある。シティズンシップは、政治や社会のみならず、人間本性および道徳観にも関係する観念であるため、こうした他分野の研究成果に通暁することも、本研究において重要である。研究発表の状況:研究論文2本を公開し、学会報告2本を遂行した。そのうち、本研究の進展にとくに寄与したものは、研究論文1本、学会報告1本である。資料収集の計画:一次文献のうちロックのものはほぼ揃えたが、出版された手稿についてオリジナルの確認の必要が生じた場合、所蔵の図書館への複写依頼をつうじて入手する。その他の著者による一次文献は、アクセス可能な図書館で必要なものをカバーできる見通し。二次文献は今後も必要におうじて購入または複写する。研究推進の計画:一次文献の方法的な精読をさらに進める。方法については、前述の「研究実績の概要」に記載のとおり。研究成果は、後述の研究発表に反映される見通しである。研究発表の計画:国際学会John Locke Conference(7月、ヘルシンキ)での報告はすでにアクセプトされている。くわえて、国内学会における投稿論文を2本、報告を2本、計画している。研究目的との関連1:第一の目的「シティズンシップの思想史および理論における定説の修正・刷新」との関連において、本年度の実績は、研究方法を確立し、研究範囲を大筋で確定することにあった。前年度の(申請書類内の)研究計画で提示した方法を、論文「ロックにおける政治的成員資格」および学会報告(社会思想史学会)で詳細に展開した。重要な成果は、考慮すべき思想史的文脈を特定した点にある。第一に、社会契約説とsubjectship(臣民の地位)との関連性。第二に、古典的な市民的美徳の理念から、ロックに見られる商業的な市民意識への転換。第二の文脈は、前年度の研究計画では重視していなかった。しかし同論文では、ロックの市民意識の独創性を解明することが、国家の「成員members」と「臣民subject」にかんする彼の学説にも新たな角度から光を当てる可能性を提示した。 | KAKENHI-PROJECT-18K12699 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K12699 |
シティズンシップの政治思想史に向けて ジョン・ロックにおける政治的成員資格の概念 | 双方の文脈に同時に着目することは、初期近代に特有のシティズンシップの概念(古典的および近代的概念のいずれにも還元されない)を解明することに寄与すると思われる。研究目的との関連2:第二の目的「市民/非市民の境界づけをめぐる規範的諸前提の再考」にかんして本年度のうちに成果を出すことは、当初は想定していなかった。しかし副次的成果として、日本および米国の外国人・移民政策にかんする論文および学会報告を、本年度中に発表した。これらの成果は、一次的には、現代の非正規移民にたいする政策の経験的研究である。しかし二次的には、形式的シティズンシップ(法的地位)と事実上のシティズンシップ(社会参加)との矛盾という理論的かつ思想史的な問題に取り組むにあたって、その現代的文脈の調査として、本研究にも寄与する成果といえる。研究実施計画との関連:ほぼ第一年次の実施計画どおりに、本年度の研究を進めることができた。詳細は「現在までの進捗状況」のとおり。資料収集の状況:一次資料のうち出版されているもの、および重要な二次文献を、予算が許すかぎり購入した。ロックの文献は、生前未公刊の手稿についてもかなりの部分が出版されているが、それでも手稿そのものの写しを閲覧すべきと思われるものについては、7月にボドリアン図書館(オックスフォード大学)および大英図書館(ロンドン)で実施した資料調査により、手稿の写しを手に入れている。他方で、一次文献のうち他の著者によるものは、非常勤講師として勤めている早稲田大学の図書館(EEBOにアクセス可能)で、随時取得している。こうして、必要な資料のうち大半は、すでに入手しているか、またはアクセス可能な図書館で所蔵を把握できている。研究推進の状況:一次文献の分析について、ロックの出版された文献は、すでにおおむね目をとおし、どの部分に詳細な分析が必要であるかの見当はつけている。他の著者によるものは、参照すべき著者の選別をおおむね完了しているものの、文献の精読は部分的にしか進んでいない。とはいえ、おおむね当初の計画どおりに進んでいると言える。くわえて、国際学会John Locke Conference(7月、オックスフォード)、またジョン・ロック研究会(9月、日本大学商学部)、イングランド啓蒙研究会(年度中に計6回)に参加した。その成果はとくに、認識論、科学哲学、宗教思想、倫理学など、他分野におけるロック研究の成果について知見を広められたことにある。シティズンシップは、政治や社会のみならず、人間本性および道徳観にも関係する観念であるため、こうした他分野の研究成果に通暁することも、本研究において重要である。研究発表の状況:研究論文2本を公開し、学会報告2本を遂行した。そのうち、本研究の進展にとくに寄与したものは、研究論文1本、学会報告1本である。資料収集の計画:一次文献のうちロックのものはほぼ揃えたが、出版された手稿についてオリジナルの確認の必要が生じた場合、所蔵の図書館への複写依頼をつうじて入手する。その他の著者による一次文献は、アクセス可能な図書館で必要なものをカバーできる見通し。二次文献は今後も必要におうじて購入または複写する。研究推進の計画:一次文献の方法的な精読をさらに進める。方法については、前述の「研究実績の概要」に記載のとおり。 | KAKENHI-PROJECT-18K12699 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K12699 |
唾液腺発生時における細胞間接着分子の解析 | 口腔乾燥症は難治性疾患の一つであり、疾患特異的な治療法は開発されていない。投与薬剤の副作用、口呼吸、シェーグレン症候群、放射腺治療の後遺症、老化、糖尿病、更年期障害などが原因とされ、誰にでも起こりうる身近な疾患である。唾液分泌機能の低下は様々な臨床症状を引き起こし著しいQOLの低下を招く。対処療法が治療の主体であり、唾液分泌の回復や唾液腺の再生に関する研究は重要である。本研究では、組織・器官の構造と機能を形成・維持し、シグナル伝達に関与する細胞間接着分子ネクチンに着目し、唾液腺の発生・維持におけるこれらの機能を分子レベルで解明し、再生医療の進歩に貢献したいと考える。口腔乾燥症は難治性疾患の一つであり、疾患特異的な治療法は開発されていない。投与薬剤の副作用、口呼吸、シェーグレン症候群、放射腺治療の後遺症、老化、糖尿病、更年期障害などが原因とされ、誰にでも起こりうる身近な疾患である。唾液分泌機能の低下は様々な臨床症状を引き起こし著しいQOLの低下を招く。対処療法が治療の主体であり、唾液分泌の回復や唾液腺の再生に関する研究は重要である。本研究では、組織・器官の構造と機能を形成・維持し、シグナル伝達に関与する細胞間接着分子ネクチンに着目し、唾液腺の発生・維持におけるこれらの機能を分子レベルで解明し、再生医療の進歩に貢献したいと考える。 | KAKENHI-PROJECT-19K16475 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K16475 |
胆汁酸ミセル溶液中におけるコレステロール溶存分布及びその分子活性ー胆石形成及び脂質吸収の機序に関する生理的意義ー | 胆石成因の解明のため、胆汁中における胆汁脂質濃度、コレステロール(CH)の溶存分布形式やその分子活性及び胆汁蛋白濃度と、CH結晶析出時間(NT)との相関を検討した。CH系肝石症患者と肝胆道系疾患以外(主に胃癌)で開腹術を施行した際、胆嚢胆汁を採取し、37°Cに保ち、以下の2種類の濾過胆汁を用い実験した。(1)0.22μm濾過膜でCH結晶を除いた胆汁を比較した。この濾過胆汁中の胆汁脂質(胆汁酸、CH、燐脂質)の濃度、CH飽和度及びCH分子活性を、胆石症と肝胆道系疾患以外の患者で比較すると有意差は存在しなかった。総胆汁蛋白濃度にも有意差を認めなかった。一方、NTは胆石症において有意(P<0.05)に短縮していた。(2)CHの運搬体の一つであるvesicleが、ミセルと比べ、大きさ及び分子量が1020倍である事を利用し、分子量30万cut-offのXMー300濾過膜を用いると、より大きいvesicleが除去されると考え、この濾過が与える影響を検討した。有胆石群及び無胆石群で、XMー300濾過胆汁のNTを比較すると、濾過により胆石症のNTは延長し、2群間で有意差が消失した。この濾過操作により、胆石症胆汁中のCHと燐脂質は、コントロールと比較し、多量cut-offされ、CHで有意差を認めた。胆汁酸の濾過率は同程度であった。胆汁蛋白濃度は、2群間で有意差は存在しなかったが、胆石症においてのみ、XMー300濾過で有意に減少した。vesicleやや糖蛋白が除去又は減少した結果と考えられる。各々の濾過胆汁中のCH分子活性は、胆石の有無を識別できなかった。結論:(1)総胆汁蛋白濃度でなく、XM-300にて除去される蛋白が、NTを促進させる。(2)胆石症患者の胆嚢胆汁中には、CHを有意に多く含むvesicleが存在し、このvesicleの除去によりNTの延長を認める。(3)CH分子活性は、CH飽和度と同様、胆石の有無を識別できる脂標にはならない。胆石成因の解明のため、胆汁中における胆汁脂質濃度、コレステロール(CH)の溶存分布形式やその分子活性及び胆汁蛋白濃度と、CH結晶析出時間(NT)との相関を検討した。CH系肝石症患者と肝胆道系疾患以外(主に胃癌)で開腹術を施行した際、胆嚢胆汁を採取し、37°Cに保ち、以下の2種類の濾過胆汁を用い実験した。(1)0.22μm濾過膜でCH結晶を除いた胆汁を比較した。この濾過胆汁中の胆汁脂質(胆汁酸、CH、燐脂質)の濃度、CH飽和度及びCH分子活性を、胆石症と肝胆道系疾患以外の患者で比較すると有意差は存在しなかった。総胆汁蛋白濃度にも有意差を認めなかった。一方、NTは胆石症において有意(P<0.05)に短縮していた。(2)CHの運搬体の一つであるvesicleが、ミセルと比べ、大きさ及び分子量が1020倍である事を利用し、分子量30万cut-offのXMー300濾過膜を用いると、より大きいvesicleが除去されると考え、この濾過が与える影響を検討した。有胆石群及び無胆石群で、XMー300濾過胆汁のNTを比較すると、濾過により胆石症のNTは延長し、2群間で有意差が消失した。この濾過操作により、胆石症胆汁中のCHと燐脂質は、コントロールと比較し、多量cut-offされ、CHで有意差を認めた。胆汁酸の濾過率は同程度であった。胆汁蛋白濃度は、2群間で有意差は存在しなかったが、胆石症においてのみ、XMー300濾過で有意に減少した。vesicleやや糖蛋白が除去又は減少した結果と考えられる。各々の濾過胆汁中のCH分子活性は、胆石の有無を識別できなかった。結論:(1)総胆汁蛋白濃度でなく、XM-300にて除去される蛋白が、NTを促進させる。(2)胆石症患者の胆嚢胆汁中には、CHを有意に多く含むvesicleが存在し、このvesicleの除去によりNTの延長を認める。(3)CH分子活性は、CH飽和度と同様、胆石の有無を識別できる脂標にはならない。コレステロールの消化管における吸収機序として,ミセルと平衡状態にあるミセル間液相から粘膜上皮細胞に取り込まれる事,又胆石形成(コレステロール結晶の析出)は,胆汁中のvesicleから起るという事が判明しつつある現在,コレステロールの胆汁酸ミセル溶液中における溶存分布状態を知る事は,コレステロール吸収の調節や,胆石生成機序の解明の面から重要と考えられる.1)胆汁中蛋白の主要成分であるアルブミンが,モデル胆汁中におけるコレステロールの溶存能及び分子活性に与える影響を検討し,抱合胆汁酸やレシチンが存在すると,非抱合型胆汁酸においてみられるアルブミンの影響が緩和される事が判明した.2)胆汁酸ミセル溶液中における,コレステロールのミセル内及びミセル間液相への分布を検索し,ミセル間液相には,コレステロールの水への最大溶存能を,はるかに上回るコレステロールが存在し,その機序及び生理的意義に関し投稿中である. | KAKENHI-PROJECT-62570609 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62570609 |
胆汁酸ミセル溶液中におけるコレステロール溶存分布及びその分子活性ー胆石形成及び脂質吸収の機序に関する生理的意義ー | 3)経口的胆石溶解剤として胆汁酸が用いられているが,種々の胆汁酸ミセル溶液において,コレステロールの分子活性が異なる事が判明し,胆汁酸の種類によりコレステロールの動態が影響される事が明らかである.4)臨床的に手術時に採取した患者胆汁中の,コレステロールの溶存分布形式や分子活性及びコレステロールの結晶析出時間が胆石の種類により異なる事が判明し,病態の解明を試みている.モデル胆汁中に溶存したコレステロールの分子活性とNucleation Timeは正の相関があり,コレステロール胆石症胆汁中においても同様であった.コレステロール結晶析出に影響を与えると考えられる諸因子の影響についても,現在検討中である.胆石成因の解明のため、胆汁中における胆汁脂質濃度、コレステロール(CH)の溶存分布形式やその分子活性及び胆汁蛋白濃度とCH結晶折出時間(NT)との相関を検討した。CH系胆石症患者と肝胆道系疾患以外(主に胃癌)で開腹術を施行した胆嚢胆汁を採取し、37°Cに保ち、以下の2種類の濾過胆汁で実験した。(1)0.22μm濾過膜でCH結晶を除いた胆汁を比較した。この濾過胆汁中の胆汁脂質(胆汁酸、CH、燐脂質)の濃度、CH飽和度及びCH分子活性を、胆石症と肝胆道系疾患以外の患者で比較すると有意差は存在しなかった。胆汁蛋白濃度にも有意差を認めなかった。一方、NTは胆石症において有意(P<0.05)に短縮していた。(2)CHの運搬体の一つであるvesicleがミセルと比べ、大きさ及び分子量が1020倍である事を利用し、分子量30万cut-offのXM-300濾過膜を用いると、より大きいvesicleが除去されると考え、この濾過が与える影響を検討した。有胆石群及び無胆石群で、XM-300濾過胆汁のNTを比較すると、濾過により胆石症のNTは延長し、有意差が消失した。この濾過操作により、胆石症胆汁中のCHと燐脂質は、コントロールと比較し多量cut-offされ、CHで有意差を認めた。胆汁酸の濾過率は同程度であった。胆汁蛋白濃度は、2群間で有意差は存在しなかったが、胆石症においてのみ、XM-300濾過で有意に減少した。vesicleや糖蛋白が除去又は減少した結果と考えられる。各々の濾過胆汁中のCH分子活性は、胆石の有無を識別できなかった。結論:(1)総胆汁蛋白濃度でなく、XM-300にて除去され得る蛋白が、NTを促進させる。(2)胆石症患者の胆嚢胆汁中には、CHを有意に多く含むvesicleが存在し、このvesicleの除去によりNTの延長を認める。(3)CH分子活性は、CH飽和度と同様、胆石の有無を識別できる指標にはなりえない。 | KAKENHI-PROJECT-62570609 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62570609 |
量子ビーム架橋タンパク質の構造および生成メカニズムの解明 | 量子ビーム架橋タンパク質ゲルは低毒性かつ耐熱性を有することから、再生医療・創薬における細胞の足場材料や、脳内にとどまらず迅速に腎排泄可能な新規MRI造影剤の母材に応用されている。一方で、量子ビーム照射量によりタンパク質ゲルの物性(保水性、大きさ、硬さ)を制御できるメカニズムは、いまだ明らかにされていない。本研究では、アミノ酸組成を調節したモデルタンパク質に量子ビームを照射し、作製したタンパク質ゲルを詳細に分析することで、量子ビームによるタンパク質の物性変化の要因を解き明かす。本研究成果により、先行する応用研究が進展し、再生医療・創薬分野の発展に量子ビーム照射技術が大きく寄与することができる。量子ビーム架橋タンパク質ゲルは低毒性かつ耐熱性を有することから、再生医療・創薬における細胞の足場材料や、脳内にとどまらず迅速に腎排泄可能な新規MRI造影剤の母材に応用されている。一方で、量子ビーム照射量によりタンパク質ゲルの物性(保水性、大きさ、硬さ)を制御できるメカニズムは、いまだ明らかにされていない。本研究では、アミノ酸組成を調節したモデルタンパク質に量子ビームを照射し、作製したタンパク質ゲルを詳細に分析することで、量子ビームによるタンパク質の物性変化の要因を解き明かす。本研究成果により、先行する応用研究が進展し、再生医療・創薬分野の発展に量子ビーム照射技術が大きく寄与することができる。 | KAKENHI-PROJECT-19K12653 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K12653 |
GPCRを介する食物繊維によるメタボリック症候群抑制仮説の検証 | Gタンパク質共役型レセプターGPCR41が短鎖脂肪酸をリガンドとし、肥満遺伝子レプチンの発現を亢進させることが発見された。従って、難消化性である食物繊維によるメタボリック症候群抑制作用は、食物繊維から生成する短鎖脂肪酸がGPCR41を介してレプチン産生を亢進させるために発現する可能性が考えられた。本研究では、実験動物に食物繊維を与えると、脂肪組織のGRP41、レプチン遺伝子の発現量が増加することを観察し、上記の可能性が示唆された。Gタンパク質共役型レセプターGPCR41が短鎖脂肪酸をリガンドとし、肥満遺伝子レプチンの発現を亢進させることが発見された。従って、難消化性である食物繊維によるメタボリック症候群抑制作用は、食物繊維から生成する短鎖脂肪酸がGPCR41を介してレプチン産生を亢進させるために発現する可能性が考えられた。本研究では、実験動物に食物繊維を与えると、脂肪組織のGRP41、レプチン遺伝子の発現量が増加することを観察し、上記の可能性が示唆された。2004年、テキサス大学サウスウェスタン医学センターの柳沢正史らは、Gタンパク質共役型レセプター(GPCR : G-protein coupled receptor)の一つであるGPCR41のリガンドが驚くべきことに短鎖脂肪酸であり、脂肪細胞株や脂肪組織由来の初代培養細胞において、短鎖脂肪酸がGPCR41に結合してレプチンの発現を亢進させることを発見した。この発見は、食物繊維が有するメタボリック症候群抑制作用の分子機構を解明する強力な手掛であると考えられ、私達は、"難消化性である食物繊維は、消化管下部において腸内細菌によって資化されて短鎖脂肪酸を産生し、腸管から吸収された短鎖脂肪酸がGPCR41に結合するとレプチン遺伝子の転写を促進してレプチン産生を亢進させ、食物繊維による一連のメタボリック症候群抑制作用が発現する"、と推論した。本研究の目的は、上記の仮説を検証することである。飼料摂取量は、5%セルロース含有高CHOL飼料では低下しなかったが、5%ペクチン含有高CHOL飼料で有意に低下した。脂肪組織のleptin遺伝子の発現量は、有意差は無いものの5%セルロース含有高CHOL飼料で低下し、5%ペクチン含有高CHOL飼料では増加した。2004年、テキサス大学サウスウェスタン医学センターの柳沢正史らは、Gタンパク質共役型レセプター(GPCR : G-protein coupled receptor)の一つであるGPCR41のリガンドが驚くべきことに短鎖脂肪酸であり、脂肪細胞株や脂肪組織由来の初代培養細胞において、短鎖脂肪酸がGPCR41に結合してレプチンの発現を亢進させることを発見した。この発見は、食物繊維が有するメタボリック症候群抑制作用の分子機構を解明する強力な手掛であると考えられ、私達は、"難消化性である食物繊維は、消化管下部において腸内細菌によって資化されて短鎖脂肪酸を産生し、腸管から吸収された短鎖脂肪酸がGPCR41に結合するとレプチン遺伝子の転写を促進してレプチン産生を亢進させ、食物繊維による一連のメタボリック症候群抑制作用が発現する"、と推論した。本研究の目的は、上記の仮説を検証することである。実験動物SD系雄ラットに、蛋白質源をカゼインとするセルロース含有無コレステロール飼料、セルロースあるいはペクチン含有高コレステロール飼料の何れかを与えた。脂肪組織のGRP41遺伝子の発現量は、ペクチン含有高コレステロール飼料で増加した。このことより、ペクチンの生理作用に、GPCR41が関与する可能性が示唆された。2004年、テキサス大学サウスウェスタン医学センターの柳沢正史らは、Gタンパク質共役型レセプター(GPCR: G-protein coupled receptor)の一つであるGPCR41のリガンドが驚くべきことに短鎖脂肪酸であり、脂肪細胞株や脂肪組織由来の初代培養細胞において、短鎖脂肪酸がGPCR41に結合してレプチンの発現を亢進させることを発見した。この発見は、食物繊維が有するメタボリック症候群抑制作用の分子機構を解明する強力な手掛であると考えられ、私達は、“難消化性である食物繊維は、消化管下部において腸内細菌によって資化されて短鎖脂肪酸を産生し、腸管から吸収された短鎖脂肪酸がGPCR41に結合するとレプチン遺伝子の転写を促進してレプチン産生を亢進させ、食物繊維による一連のメタボリック症候群抑制作用が発現する"、と推論した。本研究の目的は、上記の仮説を検証することである。実験動物SD系雄ラットに,5%セルロース含有無コレステロール飼料、5%セルロース含有高コレステロール飼料,5%ペクチン含有高コレステロール飼料の何れかを投与した。脂肪組織のGRP41遺伝子の発現量は、5%セルロース含有高CHOL飼料で約半分に低下したが、5%ペクチン含有高CHOL飼料では増加した。同様に、脂肪組織のleptin遺伝子の発現量は、有意差は無いものの5%セルロース含有高CHOL飼料で約半分に低下し、5%ペクチン含有高CHOL飼料では増加した。以上の結果より、ペクチン摂取により脂肪組織でのGPR41とleptin遺伝子の発現量が並行して変動する傾向が認められた。私たちが予想した仮説を指示する実験結果が得られた。24年度が最終年度であるため、記入しない。平成22、23年度の研究結果を吟味し、平成24年で得られると期待される研究結果と併せて、私たちの仮説を総合的に考察する。 | KAKENHI-PROJECT-22650183 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22650183 |
GPCRを介する食物繊維によるメタボリック症候群抑制仮説の検証 | 24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22650183 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22650183 |
神経細胞におけるTrkB受容体の拡散運動制御と機能の1分子解析 | 卵胞ホルモン(女性ホルモン)のエストロゲンは、前脳基底部コリン作動性(BFC)神経細胞に作用し、脳皮質の機能に大きな影響を与えることが知られている。一方、神経成長因子(nerve growth factor=NGF)、脳由来神経栄養因子(Brain-derived neurotrophic factor=BDNF)は、それぞれ、神経細胞上の受容体tropomyosin-relatedkinase AまたはB (TrkA or B)に結合し、BFC神経細胞でも、その生存・成長・シナプスの機能充進などを支持している。さらに今までの研究から、エストロゲンは、NGF-TrkA系やBDNF-TrkB系のシグナルに様々な影響を与えることが分かってきている。そこで本研究では、これらのシグナル系の働く過程と機構の解明を1分子イメジングで解明し、さらに、それらに対するエストロゲンの影響を明らかにすることを目的としている。昨年度は、TrkAおよびTrkB受容体の細胞上での1分子イメジング・1分子追跡を行い、細胞外からNGF刺激を入れる前の定常状態でも2量体が形成されること、リガンド添加後に2量体の寿命が大きく伸びることを見出した。さらに、TrkA受容体と同時に、その下流シグナル分子の低分子量Gタンパク質Rasの1分子追跡を行ない、今まで仮定されていたような長時間の相互作用は起こらないことが分かった。本年度は、さらに、これらの結果が、エストロゲンの添加によって影響されるかどうかを調べた。しかし、少なくともPC12の系では、エストロゲンの効果は見いだされなかった。将来的には、脳のBNC初代培養細胞を用いてこれらの実験を繰り返し、エストロゲンの効果を調べる必要がある。(抄録なし)卵胞ホルモン(女性ホルモン)のエストロゲンは、前脳基底部コリン作動性(BFC)神経細胞に作用し、脳皮質の機能に大きな影響を与えることが知られている。一方、脳由来神経栄養因子(Brain-derived neurotrophic factor; BDNF)は、BNC神経細胞上の受容体tropomyosin-related kinase B (TrkB)に結合し、BFC神経細胞の生存・成長・シナプスの機能亢進などを支持している。さらに今までの研究から、エストロゲンは、BDNF-TrkB系のシグナルに様々な影響を与えることが分かってきている。そこで本研究では、BDNF-TrkBシグナル系の働く過程と機構の解明を1分子イメジングで解明し、さらに、それらに対するエストロゲンの影響を明らかにすることを目的としている。具体的には、以下の3点の解明を進めている。(1)TrkB受容体の神経細胞上での熱拡散運動とそれに対する制御、BDNF結合後の変化を明らかにする。(2)TrkB受容体の下流分子と受容体との相互作用を調べ、それに対するエストロゲンの効果を検討する。(3)これらの変化が起こる機構を解明する。本年度は、TrkB受容体の細胞上での熱拡散運動を調べた。そのため、まず、受容体に特異的に結合し、かつ、生理活性に影響を与えないラベル法の確立をおこなった。量子ドット、抗体のFab標識、蛍光性タンパク質の融合などの方法を試し、蛍光タンパク質とTrkB受容体の融合タンパク質を、神経細胞と類似点の多いPC12細胞に発現させる方法が、最もうまくいった。この方法を用いて、TrkB受容体の動きを1分子イメジングで追跡することに成功した。次に、大脳皮質からの初代培養細胞を用いて、本来の細胞系で同様の実験をおこなったが、これは発現が難しく、まだ成功していない。卵胞ホルモン(女性ホルモン)のエストロゲンは、前脳基底部コリン作動性(BFC)神経細胞に作用し、脳皮質の機能に大きな影響を与えることが知られている。一方、神経成長因子(nervegrowthfactor=NGF)、脳由来神経栄養因子(Brain-derived neurotrophic factor=BDNF)は、それぞれ、神経細胞上の受容体tropomyosin-related kinase AまたはB(TrkA or B)に結合し、BFC神経細胞でも、その生存・成長・シナプスの機能亢進などを支持している。さらに今までの研究から、エストロゲンは、NGF-TrkA系やBDNF-TrkB系のシグナルに様々な影響を与えることが分かってきている。そこで本研究では、これらのシグナル系の働く過程と機構の解明を1分子イメジングで解明し、さらに、それらに対するエストロゲンの影響を明らかにすることを目的としている。具体的には、以下の3点の解明を進めている。(1)TrkAおよびTrkB受容体の神経細胞上での熱拡散運動とそれに対する制御、リガンド結合後の変化を明らかにする。(2)受容体の下流分子と受容体との相互作用を調べ、それに対するエストロゲンの効果を検討する。(3)これらの変化が起こる機構を解明する。本年度は、TrkAおよびTrkB受容体の細胞上での1分子イメジング・1分子追跡を恒常的に再現性よく行うことに成功した。その結果、2量体および多量体形成、それらに対するリガンドの影響がわかってきた。定常状態でも2量体が形成されること、リガンド添加後に2量体の寿命が大きく伸びることを見出した。さらに、受容体と低分子量Gタンパク質Rasとの相互作用を調べたが、長時間の相互作用は見出されないという、今までの常識を覆す結果が得られた。卵胞ホルモン(女性ホルモン)のエストロゲンは、前脳基底部コリン作動性(BFC)神経細胞に作用し、脳皮質の機能に大きな影響を与えることが知られている。 | KAKENHI-PROJECT-11F01796 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11F01796 |
神経細胞におけるTrkB受容体の拡散運動制御と機能の1分子解析 | 一方、神経成長因子(nerve growth factor=NGF)、脳由来神経栄養因子(Brain-derived neurotrophic factor=BDNF)は、それぞれ、神経細胞上の受容体tropomyosin-relatedkinase AまたはB (TrkA or B)に結合し、BFC神経細胞でも、その生存・成長・シナプスの機能充進などを支持している。さらに今までの研究から、エストロゲンは、NGF-TrkA系やBDNF-TrkB系のシグナルに様々な影響を与えることが分かってきている。そこで本研究では、これらのシグナル系の働く過程と機構の解明を1分子イメジングで解明し、さらに、それらに対するエストロゲンの影響を明らかにすることを目的としている。昨年度は、TrkAおよびTrkB受容体の細胞上での1分子イメジング・1分子追跡を行い、細胞外からNGF刺激を入れる前の定常状態でも2量体が形成されること、リガンド添加後に2量体の寿命が大きく伸びることを見出した。さらに、TrkA受容体と同時に、その下流シグナル分子の低分子量Gタンパク質Rasの1分子追跡を行ない、今まで仮定されていたような長時間の相互作用は起こらないことが分かった。本年度は、さらに、これらの結果が、エストロゲンの添加によって影響されるかどうかを調べた。しかし、少なくともPC12の系では、エストロゲンの効果は見いだされなかった。将来的には、脳のBNC初代培養細胞を用いてこれらの実験を繰り返し、エストロゲンの効果を調べる必要がある。外国人特別研究員のZsombor Koszegi博士が、非常に集中して研究に取り組んだため、野心的と思われた研究が、順調に進んだ。1分子レベルで熱拡散運動を調べることで、2量体や多量体が観察でき、シグナル機構の研究を進めるための基礎ができた。今後の予定として、(1)大脳皮質からの初代培養細胞を用いてTrkB受容体の動きを1分子イメジングで追跡し、脳由来神経栄養因子(Brain-derivedneurotrophic factor; BDNF)の結合後の変化を明らかにし、(2)(2)TrkB受容体の下流分子と受容体との相互作用を調べ、それに対するエストロゲンの効果を検討し、その変化の機構を解明すること、をおこない、本研究を発展させる。Trk受容体、その下流シグナル分子であるGrb2,SOS,Rasをすべて1分子イメジング・1分子追跡を行う。可能な時には、2種分子の同時追跡を行い、分子間相互作用を調べる。それらの方法によって、以下の解明研究をおこなう。(1)Trk受容体の下流分子の動態とTrk受容体との相互作用、それらのNGF,BDNFを結合させたあとの変化、を1分子レベルで解明する。(2)これらの分子群の動態や分子間相互作用が、NGF,BDNF,エストロゲンによってどのように影響されるか、どのような機構で起こるかを解明する。(抄録なし) | KAKENHI-PROJECT-11F01796 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11F01796 |
界面を利用したアシンメトリー二次元ナノ結晶の創製と電子移動制御 | 本研究では、遷移金属ジカルコゲナイド(TMDC)やグラフェンといった二次元結晶を化学気相蒸着法(CVD)により作製し、様々な異種表面との相互作用によって構造が歪んだ非対称二次元結晶を開発する。得られた非対称結晶の電気化学的特徴を精査し、水素発生・水素貯蔵電極材料といった機能性エネルギー変換材料を創製する知見を得る。平成29年度は、金単結晶金属表面にTMDCであるMoS2やMoSe2をそれぞれCVD合成する技術を確立し、金属表面形状がTMDCの歪み誘起に影響を与えること、歪み誘起により電子状態が半導体的から金属性の物性に変調することを明らかにした。平成30年度はこの知見を基にし、電子物性が変調されたTMDCの電気化学水素発生能について評価を行った。その結果、電子物性が変調されたTMDC/金単結晶電極の水素発生過電圧は、変調されていないTMDC/Au多結晶電極のそれよりも正電位側にシフトすることを見出し、非対称結晶化によって発現する電子状態変調によって水素発生反応の高活性化が可能であることを明らかにした。また、グラフェンを金単結晶表面に作製する技術を確立、圧縮歪みをもつグラフェンが形成していること、水素発生反応が起きる電位において圧縮歪みが一部、解消されることを明らかにした。このような特徴とグラフェンのもつ選択的プロトン透過能を考慮した結果、水素発生反応下においてグラフェンを透過したプロトンが金表面上で水素に還元、グラフェンの水素分子に対する不透過能によって歪みが緩和したグラフェンとAu界面に水素ガスが貯蔵されることを見出した。以上、様々な二次元結晶を金属表面上に作製し構造歪みをもつ非対称二次元結晶を作製することで、電子状態変調やエネルギーキャリアの貯蔵が可能であることを明らかにし、二次元結晶を用いた新しいエネルギー変換材料創製の基礎的知見を得た。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。本研究では、錯体金属を二次元的に拡張した遷移金属ジカルコゲナイド(TMDC)結晶を化学気相蒸着法(CVD)により作製し、様々な異種表面との相互作用により歪んだ結晶構造をもつ、エネルギーバンド構造も変調された非対称結晶TMDCを創製することを試みる。得られた非対称結晶TMDCの電気化学水素発生触媒能について精査し、高性能な水素発生電極触媒を創製する知見を得る。今年度は、金属表面に、TMDCであるMoS2やMoSe2をそれぞれCVD合成する技術を確立し、金属表面形状がTMDCの歪み誘起に与える影響について精査した。それぞれのTMDCを多結晶Au表面上に合成する技術を確立した。得られた試料について、ラマン分光および走査型トンネル顕微鏡(STM)によって精査した結果、それぞれのTMDCには、金属接触による歪み誘起や電子状態変調の効果は観察されなかった。一方、Au(111)単結晶表面上にこれらTMDCをそれぞれ合成した場合、TMDCの面外方向のみに歪みが誘起することをラマン分光法により明らにした。STM測定から、(111)表面ーTMDC界面での格子不整合性による特異的な相互作用が、局所的に歪みを誘起していることを明らかにした。また、トンネル分光法により電子状態について評価した結果、従来の半導体的性質とは異なり、バンドギャップが大幅に狭まり、金属性の電子物性を有することも明らかにした。以上、結晶金属表面上にTMDCを構築することで、TMDC結晶を非対称化しその電子状態を制御可能である基礎的知見が得られた。初年度において、異種金属表面との接触による幾何・電子構造が変調された非対称結晶TMDCを構築することに成功したこと、また、非対称化の機構についても実験的に明らかにすることができた。本研究では、遷移金属ジカルコゲナイド(TMDC)やグラフェンといった二次元結晶を化学気相蒸着法(CVD)により作製し、様々な異種表面との相互作用によって構造が歪んだ非対称二次元結晶を開発する。得られた非対称結晶の電気化学的特徴を精査し、水素発生・水素貯蔵電極材料といった機能性エネルギー変換材料を創製する知見を得る。平成29年度は、金単結晶金属表面にTMDCであるMoS2やMoSe2をそれぞれCVD合成する技術を確立し、金属表面形状がTMDCの歪み誘起に影響を与えること、歪み誘起により電子状態が半導体的から金属性の物性に変調することを明らかにした。平成30年度はこの知見を基にし、電子物性が変調されたTMDCの電気化学水素発生能について評価を行った。その結果、電子物性が変調されたTMDC/金単結晶電極の水素発生過電圧は、変調されていないTMDC/Au多結晶電極のそれよりも正電位側にシフトすることを見出し、非対称結晶化によって発現する電子状態変調によって水素発生反応の高活性化が可能であることを明らかにした。また、グラフェンを金単結晶表面に作製する技術を確立、圧縮歪みをもつグラフェンが形成していること、水素発生反応が起きる電位において圧縮歪みが一部、解消されることを明らかにした。このような特徴とグラフェンのもつ選択的プロトン透過能を考慮した結果、水素発生反応下においてグラフェンを透過したプロトンが金表面上で水素に還元、グラフェンの水素分子に対する不透過能によって歪みが緩和したグラフェンとAu界面に水素ガスが貯蔵されることを見出した。 | KAKENHI-PUBLICLY-17H05348 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-17H05348 |
界面を利用したアシンメトリー二次元ナノ結晶の創製と電子移動制御 | 以上、様々な二次元結晶を金属表面上に作製し構造歪みをもつ非対称二次元結晶を作製することで、電子状態変調やエネルギーキャリアの貯蔵が可能であることを明らかにし、二次元結晶を用いた新しいエネルギー変換材料創製の基礎的知見を得た。次年度では、目標の一つである、実際に幾何・電子構造が変調されたTMDCの電気化学的物性評価を集中して行う。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PUBLICLY-17H05348 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-17H05348 |
高周波を用いた日本初の温熱針システムの開発 | 鍼灸とは文字通り「鍼」の機械刺激と「灸」の温熱刺激をツボに与え、全身を調整することにより疾病を治療する医療行為である。中国の電熱鍼は、鍼尖10mm部分が発熱しツボ鍼刺激と調整可能な温熱刺激ができるが、鍼体の直径が太く刺鍼痛を伴いやすく、特殊製造鍼のためコストが高く使い捨てに適さず衛生的でない等の問題点がある。そこでこれらの問題点を見直した「温熱鍼システム」では加温方式を高周波に変えることで使い捨て鍼による刺鍼・鍼尖周囲の加温調節を可能にし、刺鍼痛、衛生面での改良が可能となった。鍼灸とは文字通り「鍼」の機械刺激と「灸」の温熱刺激をツボに与え、全身を調整することにより疾病を治療する医療行為である。中国の電熱鍼は、鍼尖10mm部分が発熱しツボ鍼刺激と調整可能な温熱刺激ができるが、鍼体の直径が太く刺鍼痛を伴いやすく、特殊製造鍼のためコストが高く使い捨てに適さず衛生的でない等の問題点がある。そこでこれらの問題点を見直した「温熱鍼システム」では加温方式を高周波に変えることで使い捨て鍼による刺鍼・鍼尖周囲の加温調節を可能にし、刺鍼痛、衛生面での改良が可能となった。1、中国にある電熱針の現況を調査するために、電熱針専門外来が設置されている北京市、昆明市、広州市の病院を訪問した。電熱針は主に関節痛など整形外科疾患のほか、胃炎、糖尿病といった内科疾患にも応用され、さらに幅広い疾患への応用も可能とのことであった。その効果については実際の臨床や中国国内外に投稿されている学術論文から確認することができた。治療時間は約30分、刺針部位、温度調整は疾患別に使い分けられていた。改善点としては、各病院の担当医師が効果はあるものの針直径が太く刺針の際に痛み易い、特注針であるためコストがかかるなどを指摘しており、この点が温熱針システムの開発においても注目すべきことが明らかになった。2、加温法に関して中国で得られた情報と日本の加温技術に関する学術論文をもとに検討した結果、ハイパーサーミアで応用されている高周波加温技術を用いることに決定した。鍼灸治療で最も使われている刺鍼痛が少なく、コストの安い使い捨てステンレス鍼を加温するには、すでに医療工学技術で確立しているこの方法が最適であると判断した。3、今後の実験では高周波を的確に鍼灸針に照射し、人体に影響のない範囲で高周波を発生させる必要があるため、山本ビニター社と検討を重ね13.56MHzの強度が調整可能な実験用高周波発生装置を共同製作した。4、筋肉等価寒天ファントムを作成すると同時に、実験に必要な備品を調達し予備実験を遂行できる環境を整えた。1、実験に用いる筋肉等価寒天ファントムは熱伝導が均一であることが重要である。そこで寒天末、アジ化ナトリウム、塩化ナトリウム等の各種成分を蒸留水に10分以上加熱攪拌し作成したファントムと3分とのもので温度分布の歪みや熱集中がないかをサーモグラフィを用いて観察した。その結果撹拌分のものでは温度分布の歪みがみられたが10分以上のものは歪みや熱集中は見られなかった。これらのことからファントム作成では十分時間をかけ各種成分を均一に混合させることが重要であることが分かった。2、高周波強度と温度上昇の関係、さらには加温領域を調べるためにディスポーザブルステンレス針(0.18mm×40mm)をファントム(50mm×50mm×50mm)上面中央から20mm刺入し、高周波(13.56MHz)の出力を1W、2W、3Wに設定し15分間針尖に向けて照射し、針尖周囲温度をシース熱電対(0.5mm)、温度分布をサーモグラフィを用いて測定した。その結果1Wでは15分間で6°C上昇し、出力の増加に伴い温度の上昇幅も増大することが分かった。温度分布は針尖周囲が最高温度を示し、そこを中心に蝋燭の炎のような形体で広がりをみせ、出力の増加に伴いその形体も拡大することが分かった。これらのことから出力により温度調整が可能であることが分かった。1.温熱鍼システムの温度調整に関して筋肉等価寒天ファントムに一定の鍼灸鍼を刺鍼した場合、温熱鍼システムはその鍼尖周囲の温度調整を可能とし、(1)高周波出力高める(2)対面電極面積を大きくすることなどで温度を上昇させることが分かった。また、鍼灸鍼と対面電極の位置関係や刺鍼角度によって加温領域に変化をもたらすことが分かった。2.温熱鍼システムの実用化、医療機器申請の検討に関して本システムの商品化を視野に、先端医療振興財団等の医療機器の開発支援機関や伊藤超短波等の医療機器メーカと検討を行った。その結果、本装置は技術的な問題はほぼ解決されてはいるが、大臣承認が必要な医療機器でさらには新規医療機器として審査される可能性があるため、厳格な安全性確認のもと治験が必要となり、多額の費用と時間がかかることが予想された。温熱鍼システムの試作目標は達成したものの、量産の検討で以下の検討課題が判明した。(1)新規医療機器の開発になれている企業と連携し、鍼灸器機よりも癌や腫瘍と言ったさらに幅広い全般医療機器としての応用を視野に入れる。(2)医療機器申請の過程が比較的簡単なクラスIIに分類されるような仕組みに改良する。例:電極を鍼や体表面に装着しない等。 | KAKENHI-PROJECT-19790462 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19790462 |
組合せ構造から得られるシュア環の研究 | 定理Dを部分群H_1,...,H_mに関する群Gのバラメタλの相対差集合とする.つまりこのとき次のいずれかが成り立つ.定理Dを部分群H_1,...,H_mに関する群Gのバラメタλの相対差集合とする.つまりこのとき次のいずれかが成り立つ.シュア環の中でも有限射影平面との結びつきの深い(n,r)型の3次元のシュア環について研究を行った.すなわち位数n^2の群Gの次数rのパ-シャルスプレッドから得られるシュア環については群Gのr個の位数nの部分群達に対応して分割G=S_0∪S_1∪S_2(S_1={1})で|S_1|=r(n-1),|S_2|=(n-r+1)(n-1)となるものが自然に得られてS^^⌒_0,S^^⌒_1,S^^⌒_2はC|G|の3次元の部分環を生成することが知られている.このときのS^^⌒_0,S^^⌒_1,S^^⌒_2間の関係式はS^^⌒_1^2=r(n-1)S^^⌒_0+(n+r^2-3r)S^^⌒_1+r(r-1)S^^⌒_2であることが容易にわかる.本研究では,一般に位数n^2の群Gのこれと同じ濃度の部分集合S_0,S_1,S_2に対してS^^⌒_0,S^^⌒_1,S^^⌒_2がC|G|の3次元の部分環を生成するとき(n,r)型のシュア環と呼んでこれが最初に述べたようなパ-シャルスプレッドから自然に得られる3次元のシュア環に一致するのかどうかについて研究を行った.まず,S^^⌒_0,S^^⌒_1,S^^⌒_2間の関係式がパ-シャルスプレッドの場合と一致するかどうかについては,シュア環の考察を詳細に行って次が分かった.定理1を用いること及びグラフヘの作用を利用して群からその不変部分群として位数nの部分群達を取り出す方法をにより次を得た.定理2n>f(r)ならば(n,r)型のシュア環はパ-シャルスプレッドから自然に得られる3次元のシュア環に一致する.このとき次のいずれかが成り立つ.定理Dを群Gにおける位数nの可換なアフィン差集合でpをn+1の素因数,rをGのp-rankとする.pがπ(ω)⊆π(n)となるある整数ω>1に対してp|ω+1をみたすとしs=(w-1)_<π0>とおく(ただしπ_0=π((ω-1,n^2-1))).このときr≦log_p(|G_S|+2)が成り立つ. | KAKENHI-PROJECT-09640049 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09640049 |
軟質磁性材料の高周波磁気損失に関する研究 | 軟質磁性材料を数MHzまでの周波数帯で高磁束密度に励磁した際の磁気損失を測定し、その起因を検討する一連の実験を行ない、以下の成果を得た。アモルファス磁性薄帯の高周波単板試験器を完成し、200RHzまでの特性評価が可能となった。それ以上の周波数では、単板ではなく他の材料と同様に小形のリングとして測定する必要がある。高周波の磁気損失は磁気ひずみによる形状共鳴を除いては低周波での磁気損失と変った振舞はしないが、ヒステリシス損失が周波数依存性を持つことが確認された。フェライトの超低周波損失は金属系と同様に熱ゆらぎ磁気余効に基づく異常損失が顕著であることが分かった。従って、フェライトにも他の軟質材料と同じ損失機構が働いていると結論でき、軟質磁性材料の磁気損失は一括して論じることができると言える。アモルファス薄帯は熱処理によって当然高周波特性も変化するが、その際透磁率は低下するにもかかわらず低損失化する熱処理過程があることを見出した。低損失化は磁気異方性や結晶化と無関係に起こり、磁壁の動き方のみによって生じると思われる。この点、今後検討を要する問題である。磁化速度を一定にすると、磁気損失は基準である正弦波状の場合より低下する。低下率から損失分離が可能であるが、その分離によると磁化過程は周波数に依存して連続的に変化することが知られる。磁化変化の途上で、一定磁化に止めておく過程を入れると、止めた磁化状態に応じて磁気損失は増す場合と減じる場合とが生じる。この変化過程を解析して、動的磁区構造と静的磁区構造との間に差があり、その変換には時間とエネルギーを要することが分かった。この損失の量的な解析は今後に残された大きな問題である。軟質磁性材料を数MHzまでの周波数帯で高磁束密度に励磁した際の磁気損失を測定し、その起因を検討する一連の実験を行ない、以下の成果を得た。アモルファス磁性薄帯の高周波単板試験器を完成し、200RHzまでの特性評価が可能となった。それ以上の周波数では、単板ではなく他の材料と同様に小形のリングとして測定する必要がある。高周波の磁気損失は磁気ひずみによる形状共鳴を除いては低周波での磁気損失と変った振舞はしないが、ヒステリシス損失が周波数依存性を持つことが確認された。フェライトの超低周波損失は金属系と同様に熱ゆらぎ磁気余効に基づく異常損失が顕著であることが分かった。従って、フェライトにも他の軟質材料と同じ損失機構が働いていると結論でき、軟質磁性材料の磁気損失は一括して論じることができると言える。アモルファス薄帯は熱処理によって当然高周波特性も変化するが、その際透磁率は低下するにもかかわらず低損失化する熱処理過程があることを見出した。低損失化は磁気異方性や結晶化と無関係に起こり、磁壁の動き方のみによって生じると思われる。この点、今後検討を要する問題である。磁化速度を一定にすると、磁気損失は基準である正弦波状の場合より低下する。低下率から損失分離が可能であるが、その分離によると磁化過程は周波数に依存して連続的に変化することが知られる。磁化変化の途上で、一定磁化に止めておく過程を入れると、止めた磁化状態に応じて磁気損失は増す場合と減じる場合とが生じる。この変化過程を解析して、動的磁区構造と静的磁区構造との間に差があり、その変換には時間とエネルギーを要することが分かった。この損失の量的な解析は今後に残された大きな問題である。1.各種軟貭磁性材料の高周波での素材の磁気特性,特に磁気損失の測定法を検討した.アモルファス薄帯のように薄くて広がりのある素材の測定は限界周波数を持つことが分かり,それらの測定法を明確にした.2.從来既知とされていたソフトフェライトの超低周波磁気損失に,金属と同じ異常損失があることを見出し,これを測定して熱ゆらぎ磁気余効に由来することを明らかにした.これは從来の残留損失を明らかにしたことでもあり,高周波損失評価の基礎を固めることができた.この結果は欧州軟貭磁性材料会議で発表した.3.鉄系アモルファス薄帯の熱処理による脆さと磁気特性の変化を検討し,商用品に対して,それぞれの最適熱処理系件を求めた. MetgCas2605Sー2については内部ひずみのみを除去して構造緩和を生起しない状態が良好で,この熱処理時間は大変短かい.又,この系統の材料に応力を印加した場合の磁気損失変化を測定し,磁化方向の張力以外の応力は磁気弾性エネルギー上全て損失増加の方向に働くことを明らかにした.高周波損失も磁壁移動で生じるため,磁区細分化が不可欠であることを示した.これらの結果は国際応用磁気会議と欧州軟貭磁性材料会議に発表した.4.方形波,PWM波による励磁に伴なう電気鉄移の磁気特性を測定した.基本は低周波でも多量の高調波成分が重畳しているため磁化過程は複雑となると考えられているが,実際には磁化速度が一定の励磁となるため,磁化過程はむしろ単純で,磁区構造が明らかになれば損失の計算も可能である.現在,この測定結果をまとめつつある.5.磁気ひずみの測定は光学的方法によって作製中であり,来年度において磁区観察と共に磁気ひずみを測定し,磁気損失の機構に迫る予定である. | KAKENHI-PROJECT-62460119 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62460119 |
軟質磁性材料の高周波磁気損失に関する研究 | 1.表面磁区構造の観察,動磁区観察の試み本課題については磁区の大きい高配向性けい素鋼板を対象に実験を行った。極端な研磨を重ねなくても、磁区の大きなものについてはカー効果での磁区観察は可能であった。しかし、磁区が細かい場合や動的磁区(静的な場合に比して細分化する)については、画素の分離能が不足して観察が成功するには至らなかった。可視化に関する手掛りは得られた。2.高周波磁気ひずみの測定高周波での磁気ひずみはストレーンゲージを用いることによって測定し、形状共鳴が大きな影響を持つことを示した。このほか、光学的に測定することを企画したが、測定装置を構築したに止まり、実際の測定を実施するには至らなかった。3.磁気損失の起因の検討磁化速度を一定に保って磁化する場合、何れの軟質磁性材料にあっても正弦波励磁における場合より磁気損失は少ないことを見出した。計算すると方形波のうず電流損失は正弦波のそれの81%にしかならないため、当然それだけの損失減少が期待される。しかし、実際には、計算のうず電流損失が存在するとすれば、全損失から差引いた残りのヒステリンス損失は周波数によって変化することになる。いずれにしても、磁化過程の周波数による変化に伴ない磁気損失機構も変化する。一定磁化速度で磁化する途上で何度か磁化の進行を止めると、損失は増大したり減少したりする。即ち、磁化を一定値に保っているだけで損失が変化するという不思議な現象が見られる。この損失は磁化進行が停止した瞬間に生じるものと緩和現象を伴なうものとに分かれることが明らかとなった。これらは全く新らしい知見である。このように磁化過程は磁化速度に支配されていて、磁気損失も磁化モードによって変ることが明確になった。 | KAKENHI-PROJECT-62460119 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62460119 |
指向的相互作用による自律的皮質回路形成メカニズムの解析 | 小脳プルキンエ細胞の樹状突起は平行線維に対して直交方向に進展する性質を持つことで平面な突起パターンを構築する。前年度までに、Spectrin beta IIIが樹状突起の直交方向への成長に重要な役割を果たしていることを示していた。またスペクトリンbeta III非存在下では微小管プラス端マーカーのEB3が樹状突起側部に存在するフィロポディア領域に侵入する確率が上昇することを見出した。微小管による重合がフィロポディア膜を押し上げて、突起の進展を促進することが、異方向への進展につながる可能性があることを示していた。本年度ではSpectrin beta IIIがどのようにして微小管の重合を制御しているかについて着目した。これまでに、myosin IIBが直交性制御に関与する可能性を見出していた。さらにMyosin IIBは軸索成長円錐において微小管のダイナミクスを制御することが知られている。Spectrin beta IIIがmyosin IIBと協調して微小管の樹状突起フィロポディアにおける動態を制御することで直交性を制御する可能性を検討した。Myosin IIBノックダウンまたは阻害剤blebbistatinの投与で直交性や平面性が乱れる傾向にあることを見出しており、現在定量化に取り組んでいる。また免疫沈降法を用いてSpectrin beta IIIとmyosin IIB重鎖が共沈殿することを確認した。免疫染色で二つの分子は完全な一致は示さないものの、近傍に存在しうることを確認している。二つの分子が協調して働くことが示唆された。Myosin IIB阻害剤で微小管ダイナミクスが変化するかどうか確認しようとしている。本年度は、人工ナノ繊維培養系を用いて小脳直交回路が形成される過程を解析した。この培養系においては、小脳顆粒細胞軸索は人工ナノ繊維に沿って平行に成長する一方、その軸索と接続するプルキンエ細胞樹状突起は、それらに対して直交方向に形成されることがわかっていた。この直交指向は、樹状突起の成長方向が直交方向に限定される、または直交方向以外の突起が退縮し直交方向に伸びたものが安定化するという2通りの可能性が考えられたが、前者が正しいことが明らかになった。また、直交性関連分子Spectrin beta IIIやmyosin IIBをノックダウンした細胞では、伸長方向が無秩序化し、平行方向にも及ぶことが明らかになった。さらに成長動態を解析するために、樹状突起成長端に存在するフィロポディアのダイナミクス観察したところSpectrin betaIII欠損細胞では樹状突起成長端付近に存在するフィロポディアの運動性が増加していることを見出した。この細胞ではフィロポディア形成異常が方向性のある樹状突起成長を妨げる可能性が考えられた。また、これまでにSpectrinファミリー分子が神経突起内でアクチンと協調して反復構造を形成することが示されていた。スペクトリン-アクチンによる樹状突起の膜を裏打ちする強固な構造が、フィロポディアを安定化することが方向性のある樹状突起形成に必要である可能性が考えられた。実際にSpectrin beta IIIはフィロポディア内においても反復性の構造を示す傾向にあることをSTED顕微鏡で観察した。細胞膜におけるアクチン骨格は一般に微小管の動態を制限することが知られる。Spectrin beta III欠損により微小管動態が活発化し、フィロポディア・樹状突起のダイナミクスが無秩序化している可能性がある。微小管プラス端結合タンパク質であるEB3の観察系を立ち上げつつある。本年度は人工ナノ繊維培養系を用いて小脳直交回路が形成される過程に注目し解析を行った。その過程で直交性は大規模なリモデリングによって形成されるのではなく、プルキンエ細胞の樹状突起が初めから平行線維に対して直交して成長を行うことで形成されることが明らかになった。またこの過程で、当初予見していなかった樹状突起の成長端におけるフィロポディアの動きが無秩序化する傾向を見出した。膜直下に存在するアクチン-スペクトリン複合体が、微小管動態を制御する可能性に思い至り、微小管動態のイメージングを始めている。樹状突起内で微小管プラス端タンパク質EB3の動態の解析をすでに行っており、一定の解析結果を得つつある。このために予定していたアクチン-スペクトリン複合体に組み込まれているadducinやankyrinなどの阻害実験を行うことができなかったが、現在準備を進めている。また、本年度は比較的表現型がわかりやすいスペクトリンに主に注目をして研究を行ってきた。次年度以降myosin IIBに関する解析を進め、Spectrin beta IIIが協調して働くのか、あるいはSpectrin betaIIIとは独立に別の経路で直交性誘導に関わるのかを明らかにしていきたい。本研究は、樹状突起が軸索束に対して直交した方向に進展するメカニズムの解明を目的とする。このような伸長特性は生体内でのプルキンエ細胞樹状突起の平面性獲得に関わる。特に、膜骨格分子であるSpectrin beta IIIに着目する。当該分子の欠損細胞では、樹状突起生育方向に異常が生じ、直交方向への進展が阻害される。進展する樹状突起側部には多くのフィロポディアと呼ばれる微突起が形成される。通常、微突起はおおむね軸索束と同方向に形成される。前年度までにin vitro培養系でshRNAを用いてSpectrin beta IIIを欠失した細胞の樹状突起ではフィロポディアのダイナミクスが亢進していることを見出していた。 | KAKENHI-PROJECT-16KT0171 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16KT0171 |
指向的相互作用による自律的皮質回路形成メカニズムの解析 | フィロポディアが異常に進展することで、方向性の誤った樹状突起が形成される可能性が示唆された。本年度は、以下の二点について研究を進めた。(1)フィロポディアの形成異常が生体内でも行われていることを確認した。In utero electroporationにより、shRNAベクターを小脳プルキンエ細胞に導入し、生後14日齢で固定し、その後コンフォーカル顕微鏡を用いてフィロポディアの形態を観察した。その結果、対照群に比べ、Spectrin beta IIIを欠失した細胞では通常形成される樹状突起の面から突出する方向に、異常に進展したフィロポディア様構造が観察された。(2)前年度までに、フィロポディアの異常進展は微小管がフィロポディアに侵入することに起因する可能性が示唆されていた。本年度も引き続き微小管のプラス端に結合するEB3の樹状突起における動態を観察した。Spectrin beta III欠失細胞で樹状突起フィロポディアに侵入するEB3数が上昇する傾向にあった。本研究では小脳回路形成に着目し、軸索に対して樹状突起が直交方向に形成されるメカニズムの探索を行ってきた。直交性を制御する候補因子としては主にSpectrin beta IIIに注目している。これまでに軸索-樹状突起の直交パターンを再現するナノ繊維培養系を用いて、樹状突起の成長パターンを経時観察していた。この二次元的な再現系を用いて、直交性形成過程における、樹状突起の基本ダイナミクスが明らかになりつつある。当初myosin IIBとSpectrin beta IIIが協調して働いていることを想定していたが、現在のところ明確な相互作用は見られなかったため、まずはSpectrin beta IIIに集中することが得策であると考えている。Spectrin beta III分子の発現阻害を行ったときに観察される、フィロポディアの形成異常に注目している。通常よりフィロポディアの進展が亢進すること、それが異方向への樹状突起伸長をもたらす可能性を追跡している。本年度は、フィロポディアの異常進展が生体内においても観察されることを確認した。異常に進展したフィロポディアが樹状突起に移行する過程は捉えられておらず今後の課題となる。当初予定していたSpectrin関連分子であるadducinやankyrinについては機能阻害を行っても現在のところ直交性への明確な影響を確認することはできなかった。したがって前年度から着目し始めた微小管のダイナミクスの解析に本格的に着手し始めた。微小管の伸長端をラベルするEB3-EGFPを用いてダイナミクスを観察したところ、欠損樹状突起ではEB3のフィロポディアへの侵入が亢進していることを見出している。Spectrin beta IIIが微小管のフィロポディアへの侵入をブロックしている可能性が考えられ、詳細なメカニズムの解析や探索を計画している。小脳プルキンエ細胞の樹状突起は平行線維に対して直交方向に進展する性質を持つことで平面な突起パターンを構築する。前年度までに、Spectrin beta IIIが樹状突起の直交方向への成長に重要な役割を果たしていることを示していた。 | KAKENHI-PROJECT-16KT0171 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16KT0171 |
EBMの手法による医療情報のメディア分析と患者・社会の行動に関する研究 | マスメディアの提供する健康関連記事は一般の人々にとって健康に関する最大の情報源であるが、その情報伝達の在り方が検証されたことはほとんどない。本研究は、まず新聞による健康情報の報道特性を明らかにするため、厚生労働省が発表した「アクリルアミド」の情報を実例として、2002年11月1日の4社(朝日、毎日、読売、日経)2つの地域(東京と京都)の計8つの新聞記事の検討を行った。厚生労働省がホームページで発信した情報と新聞記事の見だしで用いられていた単語から内容分析のカテゴリーを決めた。ホームページと新聞記事見だしの両方でみられた単語(1群)、ホームページのみで使われた単語(2群)、新聞記事見だしのみでみられた単語(3群)に分類し、各群に含まれる単語の8つの新聞記事における出現頻度を測定した。単語の出現頻度では、全ての記事において1群に含まれる単語が多かった。測定対象とした単語の中で、「食品」「等(など)」などはどの記事でも高頻度に使用されていたが、「高温」「ホームページ」などは記事によって使用回数が異なっていた。以上より同一テーマの記事であっても、提供される情報や表現方法は新聞によって違うことが示された。今後、新聞における健康情報の報道特性の解明を進めると共に、研究者によるオリジナル情報の発信、マスメディアによる情報の加工、そして報道による一般の人々への情報提供の過程を検証していく必要がある。今後の研究に供すべく新聞記事の様式・内容を評価するチェックリストを作成した。次にインターネット情報を評価するために、前立腺がんの検診をテーマとして、EBMによるガイドラインとの比較を試みた。各国のガイドラインは前立腺特異抗原(PSA)測定による検診を推奨していないが、国内では自治体や病院が検診項目として採用しているケースが多い。各種検索エンジンで得られたホームページ情報を評価した結果、「ベネフィットとリスクの双方が示されている」のは10%に過ぎず、68%が「ベネフィットに偏っている」と見られた。精密検査(生検による確定診断)に関する情報は、「充分・または少し提供されている」は14%のみであった。確定診断された時の選択すべき治療法等の情報については、「充分提供されている」が6%、「少し提供されている」が12.0%であった。その検診を受けることで疫学的にがん死亡リスクを減らせるかという検診の有効性については、「充分提供されている」6%、「少し提供されている」6%であった。その結果、16%が「検診を強く誘導」し、62%が「検診を誘導」していた。以上から本課題については、EBMによって現時点で得られている知見と乖離する情報がインターネット上に多く存在していることが示された。インターネットの一般の人々の保健・医療行動に与える影響は増大してきており、今後、他の課題についても同様の内容評価の必要性が高まっていくことが予想される。平成14年度は医歯学、薬学、法学、社会学など多様な分野の専門家によるワーキンググループを発足させ、既存文献のレビュー、各自の研究発表.、ブレーンストーミングを行った。本課題では検討対象とするメディアとして、新聞・雑誌などの活字メディア、画像メディア(主としてテレビ)、そしてインタ-ネットを想定し、初年度は活字メディアを対象に基礎的な検討を行った。活字メディアについては利用可能な商用データベース(電通ELデータベース)について、研究目的に供するための基礎的検討を行った。具体的にはがん検診、薬害、インフルエンザなどのいくつかのテーマによるキーワードサーチを行い、データベースの操作性、キーワード付与システムの内容、健康情報を対象とした際の課題などについて、データベース提供側の担当者も交えて検討を行った。また実際に一定期間に複数の新聞を通覧(ハンドサーチ)して、そこで見られる記事内容とデータベースで検索される情報の一致度の確認を行った。その作業をもとに、同じ情報源から発信される情報が、新聞によって強調点の異なる形で発表されていることが確認された(厚生労働省の報道資料として提供されたアクリルアミドの発がん性についての記事)。また先行研究を参考にして、新聞による医療・健康情報の質的評価を行うチェックリストを試作し、それをもとに新聞情報の形式・内容の特徴、問題点について検討を行った。これらの成果を踏まえて、平成15年度は新聞を中心とする活宇情報の質的評価法を提示すると共に、データベースを用いて系統的に検索された情報の内容評価、テレビ、インターネットによる医療・健康情報の検討、そしてメディア情報の受け手(非医療者・医療者)の認識についてインタビュー調査を行う予定である。マスメディアの提供する健康関連記事は一般の人々にとって健康に関する最大の情報源であるが、その情報伝達の在り方が検証されたことはほとんどない。本研究は、まず新聞による健康情報の報道特性を明らかにするため、厚生労働省が発表した「アクリルアミド」の情報を実例として、2002年11月1日の4社(朝日、毎日、読売、日経)2つの地域(東京と京都)の計8つの新聞記事の検討を行った。厚生労働省がホームページで発信した情報と新聞記事の見だしで用いられていた単語から内容分析のカテゴリーを決めた。ホームページと新聞記事見だしの両方でみられた単語(1群)、ホームページのみで使われた単語(2群)、新聞記事見だしのみでみられた単語(3群)に分類し、各群に含まれる単語の8つの新聞記事における出現頻度を測定した。単語の出現頻度では、全ての記事において1群に含まれる単語が多かった。測定対象とした単語の中で、「食品」「等(など)」などはどの記事でも高頻度に使用されていたが、「高温」「ホームページ」などは記事によって使用回数が異なっていた。 | KAKENHI-PROJECT-14657096 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14657096 |
EBMの手法による医療情報のメディア分析と患者・社会の行動に関する研究 | 以上より同一テーマの記事であっても、提供される情報や表現方法は新聞によって違うことが示された。今後、新聞における健康情報の報道特性の解明を進めると共に、研究者によるオリジナル情報の発信、マスメディアによる情報の加工、そして報道による一般の人々への情報提供の過程を検証していく必要がある。今後の研究に供すべく新聞記事の様式・内容を評価するチェックリストを作成した。次にインターネット情報を評価するために、前立腺がんの検診をテーマとして、EBMによるガイドラインとの比較を試みた。各国のガイドラインは前立腺特異抗原(PSA)測定による検診を推奨していないが、国内では自治体や病院が検診項目として採用しているケースが多い。各種検索エンジンで得られたホームページ情報を評価した結果、「ベネフィットとリスクの双方が示されている」のは10%に過ぎず、68%が「ベネフィットに偏っている」と見られた。精密検査(生検による確定診断)に関する情報は、「充分・または少し提供されている」は14%のみであった。確定診断された時の選択すべき治療法等の情報については、「充分提供されている」が6%、「少し提供されている」が12.0%であった。その検診を受けることで疫学的にがん死亡リスクを減らせるかという検診の有効性については、「充分提供されている」6%、「少し提供されている」6%であった。その結果、16%が「検診を強く誘導」し、62%が「検診を誘導」していた。以上から本課題については、EBMによって現時点で得られている知見と乖離する情報がインターネット上に多く存在していることが示された。インターネットの一般の人々の保健・医療行動に与える影響は増大してきており、今後、他の課題についても同様の内容評価の必要性が高まっていくことが予想される。 | KAKENHI-PROJECT-14657096 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14657096 |
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