title
stringlengths
0
199
text
stringlengths
3
3.18k
id
stringlengths
23
32
url
stringlengths
56
65
「都心回帰」時代の大都市都心における地域コミュニティの限界化と再生に関する研究
これらの論文は関連研究者にお送りし、評価を得た。研究機関の3年間(平成25年度平成27年度)に研究代表者を含む研究分担者および研究協力者による学会報告は8回行われ、また学会誌等へ掲載された論文は13本に及んでいる。また、研究メンバーによる情報交換や議論のための研究会を14回開催した。調査研究として東京都、名古屋市、京都市、大阪市の各都心区でのマンション住民や地域住民を対象としたアンケート調査を8回実施した。都心地域においてはマンション住民の増加により、専門職層や富裕層の比率が高まり、地域コミュニティの近隣関係は弱くなっていること、当該都市により、その関係性には差異があることが判明した。まず、1これまでの調査研究の成果を関連学会で報告し、一定の評価を得ることができた。2東京都中央区と名古屋市中区および研究者へのインタビュー調査を中心としたフィールドワークを計画通り実施できた。3京都市中京区における地域住民およびマンション住民、大阪市中央区における地域住民への郵送アンケート調査も行い、それぞれ35.9%、39.9%、32.9%の回答を得た。これらの、都市間の比較対象データを得たことも大きな成果である。27年度が最終年度であるため、記入しない。地域社会学平成27年度は以下のことを目途にして研究を進める。(1)大阪市中央区の地域住民へのインタビュー。(2)ワークショップの開催(3)報告書の作成まず、1これまでの調査研究の成果を関連学会で報告し、一定の評価を得ることができた。2従前から計画していた東京都中央区と名古屋市中区の量的調査を行政側の協力を得て無事に終了できた。とくに東京都中央区に関しては、そもそも近年、選挙人名簿を使っての学術的なサンプリング調査自体が行われておらず、また回答率も何とか30%を達成し、この種の調査においては評価できるデータを得たと思われる。また、研究協力者の助力を得て、大阪府豊中市の千里ニュータウンと愛知県豊田市の山間部の住民への郵送アンケート調査も行い、34%及び48%の回答があり、比較対象のデータを得たことも大きな成果である。これらの4地域へのアンケート調査については、調査票のデータ整理及びデータ・クリーニングも終了し、平成26年度にはその分析が可能な状態となっている。3大阪市の商店街調査については、突然に大阪市長の出直し選挙があったために、調査の日程を大幅に繰り下げざるを得なくなり、実施が遅れていたが、何とか年度内に実態調査が実現できた。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。平成26年度は以下のことを目途にして研究を進める。(1)都心部の地域住民へのインタビュー:対象都市の都心部のコミュニティを担ってきた地域住民組織の役員にインタビューを行い、その地域の変容を把握する。この際、既存地域住民とマンション住民や外国人居住者との関係、既存企業(大企業から自営業まで)や新たに進出してきた企業の経営者との交流や関係について注意を払う。これにより、1新旧住民間、2旧住民と日系外国人、3日本人と外国人(オールドタイマーとニューカマー)、4NPOや地域住民組織のコミュニティの再生の取り組みについて探る。
KAKENHI-PROJECT-25285160
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25285160
直腸肛門奇形マウスを用いた器官培養による分子生物学的解析及び胎仔治療への応用
ビタミンAの誘導体であるエトレチナートを妊娠マウスに経口投与することにより,ほぼ100%の再現性をもって直腸肛門奇形マウスを作成することに成功した.この直腸肛門奇形マウスを用いて胎仔期の発生段階における直腸壁内神経伝達の異常を分子生物学的手法を用いて証明した.直腸肛門奇形マウスは生まれながらに直腸の神経伝達が正常でないことが示唆された.また,直腸肛門奇形マウスを用いた直腸肛門部の器官培養は困難であったが,成功する可能性もでてきたため,今後も継続して研究が必要と思われる.ビタミンAの誘導体であるエトレチナートを妊娠マウスに経口投与することにより,ほぼ100%の再現性をもって直腸肛門奇形マウスを作成することに成功した.この直腸肛門奇形マウスを用いて胎仔期の発生段階における直腸壁内神経伝達の異常を分子生物学的手法を用いて証明した.直腸肛門奇形マウスは生まれながらに直腸の神経伝達が正常でないことが示唆された.また,直腸肛門奇形マウスを用いた直腸肛門部の器官培養は困難であったが,成功する可能性もでてきたため,今後も継続して研究が必要と思われる.直腸肛門奇形は新生児外科疾患の中で最も多い疾患の一つであるが、その病態の解明には至っていない。今年度我々は、妊娠9日目のマウスにビタミンAの誘導体であるエトレチナートを過剰投与することにより直腸肛門奇形マウス胎仔を作製した。それらを用いて、発生の4大要因の一つである細胞移動に関わる因子のWnt-5a、Rhoキナーゼ、c-jun N-terminalkinaseに注目し、それらに対する抗体を用いて、免疫組織化学的染色を行った。直腸肛門奇形マウスでは、コントロール群と比較していずれの因子も特に総排泄腔周囲においてその発現が抑制されており、それらの因子の低下が原因の可能性が示唆された。また、直腸肛門奇形患児は術後も便秘に悩まされることが多く、その原因の究明も必要である。この直腸肛門奇形マウス胎仔を用いて、神経伝達分子であるSubstance P、Vasoactive intestinal peptideおよびc-kitに注目し、それらに対する抗体を用いて免疫組織化学的染色を行った。いずれの因子も直腸肛門奇形マウス群の直腸筋層でその発現がコントロール群と比較すると低下しており、先天的に腸管の運動能が低下している可能性が示唆された。これらの結果から、胎仔治療が直腸肛門奇形においても重要であると考えられる。直腸肛門奇形は新生児外科疾患の中で最も多い疾患の一つであるが、その病態の解明には至っていない。昨年度、我々は妊娠9日目のマウスにビタミンAの誘導体であるエトレチナートを過剰投与することにより直腸肛門奇形マウス胎仔を作製し、そのモデルを用いて、神経伝達分子であるSubstance PやVasoactive intestinal peptideおよびc-kitに注目し、その抗体を用いて免疫組織化学的染色を行った。その発生過程,とりわけ妊娠後期において、直腸肛門奇形マウスではコントロール群と比較して明らかにそれらの活性が低下していることがわかり、胎仔治療の重要性が示唆された。今年度はこれらの成果を、小児外科の国際学会の一つであるPacific Association of Pediatric Surgeonsにおいて発表し、現在論文を投稿中である。また、昨年度併せて実施した細胞移動に関わるWnt-5a、Rhoキナーゼおよびc-jun N-terminalkinaseに関しても、エトレチナート投与早期において、総排泄腔膜におけるそれらに対する抗体の発現を免疫組織化学的染色を用いて検索したが、正常群と比較して直腸肛門奇形群ではそれらの発現の低下が認められた。この結果から、直腸肛門奇形群では特に中胚葉系の細胞移動が抑制されていることが示唆された。この成果に関して、現在、論文作成中である。さらに、今年度は培養技術を用いて、正常マウス胎仔の直腸肛門部の培養を試みたが、細胞死が多く認められ、培養液の組成のさらなる工夫が必要であり今後の課題である。
KAKENHI-PROJECT-21592276
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21592276
長期詳細土地利用動態モデルの開発
大都市圏内の都市地域を対象とした街区単位(100m四方の土地区画単位)の土地利用動態モデルの開発研究と、都市内の住宅地区、商業地区、幹線道路沿道地区を対象とした10m四方(あるいは50m四方)の宅地区画単位の土地利用動態モデルの開発研究を進展させた。具体的には、都市域対象の研究では、千葉県柏市、我孫子市を中心とした、10km四方の地域を事例地域とし、都市の中の地区を対象とした研究では、木更津市と国道16号線ぬ道を事例地域とし、さらに木更津市の比較対照地域として、佐倉市と我孫子市を採用した。首都圏の細密土地利用データ(10mメッシュ単位、5年間隔5時点分)を利用した統計解析により、街区単位レベルと宅地区画単位レベルにおける、土地利用用途間の遷移ポテンシャル関数の推定を行なった。遷移ポテンシャルの説明要因には、対象街区(区画)自体の現況用途、対象街区の近傍の街区(区画)の現況用途、対象街区の交通利便性(鉄道駅への近接性、幹線道路への近接性)、都市書画による規制条件の有無、自然条件(傾斜など)が含まれるが、特に、近傍街区の用途および交通利便性と遷移ポテンシャルの関係に重点を置いた分析を進めた。その結果、遷移ポテンシャルと近傍内のある土地利用の街区の個数の間の非線形な関係、あるいは、遷移ポテンシャルに与える近傍内の各用途の影響の相対的な強度についての知見が得られた。また、3都市市の比較研究からは、住宅用途への遷移ポテンシャルについて、近隣の土地利用状態を説明要因とした関数の形状が、地域の違いによらないことが確認された。街区単位の研究では、遷移ポテンシャルの要因に従来考慮していた、利用による効用・収益に関する要因の他に、費用要因である「地価」を含めた新モデルを提案した。新モデルは、従来のモデルによる、過去の土地利用変化に対する説明精度に比較して、かなり高い精度を実現できた。大都市圏内の都市地域を対象とした街区単位(100m四方の土地区画単位)の土地利用動態モデルの開発研究と、都市内の住宅地区、商業地区、幹線道路沿道地区を対象とした10m四方(あるいは50m四方)の宅地区画単位の土地利用動態モデルの開発研究を進展させた。具体的には、都市域対象の研究では、千葉県柏市、我孫子市を中心とした、10km四方の地域を事例地域とし、都市の中の地区を対象とした研究では、木更津市と国道16号線ぬ道を事例地域とし、さらに木更津市の比較対照地域として、佐倉市と我孫子市を採用した。首都圏の細密土地利用データ(10mメッシュ単位、5年間隔5時点分)を利用した統計解析により、街区単位レベルと宅地区画単位レベルにおける、土地利用用途間の遷移ポテンシャル関数の推定を行なった。遷移ポテンシャルの説明要因には、対象街区(区画)自体の現況用途、対象街区の近傍の街区(区画)の現況用途、対象街区の交通利便性(鉄道駅への近接性、幹線道路への近接性)、都市書画による規制条件の有無、自然条件(傾斜など)が含まれるが、特に、近傍街区の用途および交通利便性と遷移ポテンシャルの関係に重点を置いた分析を進めた。その結果、遷移ポテンシャルと近傍内のある土地利用の街区の個数の間の非線形な関係、あるいは、遷移ポテンシャルに与える近傍内の各用途の影響の相対的な強度についての知見が得られた。また、3都市市の比較研究からは、住宅用途への遷移ポテンシャルについて、近隣の土地利用状態を説明要因とした関数の形状が、地域の違いによらないことが確認された。街区単位の研究では、遷移ポテンシャルの要因に従来考慮していた、利用による効用・収益に関する要因の他に、費用要因である「地価」を含めた新モデルを提案した。新モデルは、従来のモデルによる、過去の土地利用変化に対する説明精度に比較して、かなり高い精度を実現できた。大都市圏内の都市域を対象とした街区単位(100m四方の土地区画単位)の土地利用動態モデルの開発研究と、都市内の商業地区、幹線道路沿道地区を対象とした10m四方の宅地区画単位の土地利用動態モデルの開発研究を進展させた。具体的には、都市域対象の研究では、千葉県柏市、我孫子市を中心とした、10km四方の地域を事例地域とし、都市の中の地区を対象とした研究では、千葉県木更津駅周辺地区と国道16号線沿道(野田・柏市内)を事例地域とした。首都圏の細密土地利用データ(10mメッシュ単位、5年間隔5時点分)を利用した統計解析により、街区単位レベルと宅地区画単位レベルにおける、土地利用用途間の遷移ポテンシャル関数の推定を行なった。遷移ポテンシャル関数に含まれる説明要因は、遷移ポテンシャルを求める街区(または区画)自体の現況用途、その街区の近傍の街区(または区画)の現況用途、その街区の交通利便性(鉄道駅への近接性、幹線道路への近接性)、都市計画による規制等条件の有無、自然条件(傾斜など)が含まれるが、特に、近傍街区(または区画)の用途、交通利便性と遷移ポテンシャルの関係に重点を置いた分析を進めた。その結果、遷移ポテンシャルと近傍内のある土地利用の街区(区画)の個数の間の非線形な関係、あるいは、遷移ポテンシャルに与える近傍内の各用途の影響の相対的な強度について、多くの知見が得られた。しかし、まだ、遷移ポテンシャル関数の第1次的な推定段階にあり、長期的な経済変動の影響の考慮、広域的な土地需要の想定、大規模開発事業の考慮、などの課題を残しており、都市域レベルの研究と地区レベルの研究を統合して、長期的な詳細土地利用動態モデルを精緻化する方向にさらに研究を進めて行く計画である。
KAKENHI-PROJECT-14580487
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14580487
長期詳細土地利用動態モデルの開発
本研究では、CA(セル・オートマトン)を適用しミクロな視点から構築した、都市の土地利用動態モデルの基本部分を構成する、各セルの用途別土地利用遷移ポテンシャルの算定ルールを、長期間にわたる土地利用変化の詳細メッシュ統計資料を統計手法を適用して解析し、実証的に同定することを目的とする。具体的な研究対象地域には、首都圏内の近郊地域(千葉県柏・松戸広域圏、我孫子市地域、木更津市地域、佐倉市地域、東京都多摩地域、横浜市地域)を選び、1974年から1994年にわたる期間、5年間隔の10mメッシュ単位の土地利用データと関連統計メッシュデータを利用して、実証的に算定ルールの構成とそれらに含まれるパラメータ値を地域間比較分析結果も踏まえて推定する研究を進め、大都市圏内の近郊地域(都心から20kmから50km程度の範囲の地域)における、農林系利用から都市的利用への用途転換、および都市的用途間の利用競合の現象を記述できるモデルの精緻化の研究を進展させた。千葉県柏・松戸広域圏を対象とした、100mメッシュ単位の研究では、用途別土地利用遷移ポテンシャルの要因に従来考慮していた、利用による効用・収益に関連する要因の他に、費用に関連した要因である「地価」を含めた新モデルを提案した。新モデルは、従来のモデルによる、過去の土地利用変化に対する説明精度に比較して、かなり高い精度を実現できた。我孫子市地域、木更津市地域、佐倉市地域、を対象とした50mメッシュ単位の研究からは、住宅用途への遷移ポテンシャルについて、近隣の土地利用状態を説明要因とした関数の形状が、地域の違いによらずほぼ同様であることも、確認された。東京都多摩地域、横浜市地域を対象とした50mメッシュ単位の研究からは、地域の特殊性を考慮して、標高あるいは交通利便性を遷移ポテンシャルの説明要因に含めることにより、説明力を向上できることが確認された。
KAKENHI-PROJECT-14580487
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14580487
修飾ヌクレオチドによる生体環境場における情報伝達系の光制御
本研究は細胞という生体環境場で、変異遺伝子あるいは外来遺伝子の発現による病気の発症を、光化学反応によって阻止する手法の開発を目指している。光応答型オリゴヌクレオチドとして、核酸への結合機能を有する蛍光色素フルオレセインを5'末端に修飾した11merオリゴヌクレオチド(5'-TTTCCTCCTCT-3'、以下F-DNA)を合成し、リポソームに内包させて細胞に取り込ませ、細胞内親和部位およびその動態を蛍光の検出によって調べた。このF′-DNAをさらにDNA分解酵素(DNase)が、F-DNAの核への到達を妨害しないことを明らかにするため、DNA分解酵素に耐性を持つホスホロチオエ-ト型F-DNA(F-S-DNA)を用いてF-DNAの挙動と比較検討した。F-S-DNAリポソームは、細胞内取り込み後F-DNAリポソームと同様にリソソームを経由して細胞核に集積すると考察された。DNaseに耐性を持つF-S-DNAリポソームでも同様の細胞核への集積がみられたことから、F-DNAがDNaseに分解されずに細胞核に到達できる経路の存在が確認できた。細胞核内のF-DNA(またはF-S-DNA)の蛍光は、励起光照射により減衰したが、生理食塩水中で光照射してもほとんど減衰しなかった。この結果はF-DNA(またはF-S-DNA)が細胞核内の物質と何らかの光化学反応を起こしていることを示している。F-DNA(またはF-S-DNA)がインキュベート中に細胞核内DNAあるいはrRNAと二重らせんを形成し、光照射によってF-DNA(またはF-S-DNA)とその相補鎖が共有結合を起こした結果と考察した。以上より、F-DNAおよびF-S-DNAは多層膜の中性リポソームとして細胞核内に到達できること、これらDNAオリゴマーの細胞内移行過程にリソソームを経由するエンドサイトーシス過程が存在することが明らかとなった。本研究は細胞という生体環境場で、変異遺伝子あるいは外来遺伝子の発現による病気の発症を、光化学反応によって阻止する手法の開発を目指している。光応答型オリゴヌクレオチドとして、核酸への結合機能を有する蛍光色素フルオレセインを5'末端に修飾した11merオリゴヌクレオチド(5'-TTTCCTCCTCT-3'、以下F-DNA)を合成し、リポソームに内包させて細胞に取り込ませ、細胞内親和部位およびその動態を蛍光の検出によって調べた。このF′-DNAをさらにDNA分解酵素(DNase)が、F-DNAの核への到達を妨害しないことを明らかにするため、DNA分解酵素に耐性を持つホスホロチオエ-ト型F-DNA(F-S-DNA)を用いてF-DNAの挙動と比較検討した。F-S-DNAリポソームは、細胞内取り込み後F-DNAリポソームと同様にリソソームを経由して細胞核に集積すると考察された。DNaseに耐性を持つF-S-DNAリポソームでも同様の細胞核への集積がみられたことから、F-DNAがDNaseに分解されずに細胞核に到達できる経路の存在が確認できた。細胞核内のF-DNA(またはF-S-DNA)の蛍光は、励起光照射により減衰したが、生理食塩水中で光照射してもほとんど減衰しなかった。この結果はF-DNA(またはF-S-DNA)が細胞核内の物質と何らかの光化学反応を起こしていることを示している。F-DNA(またはF-S-DNA)がインキュベート中に細胞核内DNAあるいはrRNAと二重らせんを形成し、光照射によってF-DNA(またはF-S-DNA)とその相補鎖が共有結合を起こした結果と考察した。以上より、F-DNAおよびF-S-DNAは多層膜の中性リポソームとして細胞核内に到達できること、これらDNAオリゴマーの細胞内移行過程にリソソームを経由するエンドサイトーシス過程が存在することが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-08218104
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08218104
ジオメディア情報資源の発見および検索に関するプロジェクト
本研究は、インターネット経由で様々なジオメディア(地理画像)コンテンツにアクセスするための効果的で有効な技術の研究を目標に研究を行ってきた。ジオメディアコンテンツとは、地理分野に関する幅広いマルチメディアコンテンツ(テキスト、写真、画像、ビデオ及び音声)に関するものである。分散された環境内のジオメディアベースのコンテンツ内を有効に検索するために、我々は、ジオメディアから抽出したメタデータをまとめたメタレベルシステムを構築した。これらのメタデータは、階層的に蓄積される。本研究の目的は、エンドユーザの興味に応じて容易にジオメディアデータをアクセスすることを可能とするシステムを開発することにあった。本研究は、ジオメディアデータ・ベース上にメタレベルシステムを開発した。主な成果としては下記の通りである。(1)地理的なイメージ用の多規模表現(多次元)方法の生成(2)多次元イメージ・データの任意の形でのクラスタを検知することができる斬新なクラスタ・アプローチの開(3)関連するGEOMEDIAデータ・ベースへの視覚的クエリを指図する統合システムのために必要なタデータの公式化を可能にするメタデータ・モデルの構築(4)メタデータに基づくデータ・ベース選択アプローチの理論的な基礎の生成(5)視覚的データの内容から抽出された異種混合の特徴を統合する視覚的なクエリ処理コンポーネントの生成その成果として完成したプラットフォームは、階層的メタデータ・ベース、メタ検索エージェントおよびクエリ・マネージャーを含むメタサーバーコンポーネントを含むものである。システムのパフォーマンスはユーザのフィードバックに応じて精製される。更に、クエリ・マネージャーは、メタデータのマッチングに一致するためにクエリ中のテキスト、テキスチャーおよび色のような異種混合の特徴を抽出することが出来る。サブクエリは個々の特徴に基づいて公式化された。クエリ・マネージャーは、最終的なデータ・ベース選択決定へサブクエリからの結果を統合するものである。本研究は、インターネット経由で様々なジオメディア(地理画像)コンテンツにアクセスするための効果的で有効な技術の研究を目標に研究を行ってきた。ジオメディアコンテンツとは、地理分野に関する幅広いマルチメディアコンテンツ(テキスト、写真、画像、ビデオ及び音声)に関するものである。分散された環境内のジオメディアベースのコンテンツ内を有効に検索するために、我々は、ジオメディアから抽出したメタデータをまとめたメタレベルシステムを構築した。これらのメタデータは、階層的に蓄積される。本研究の目的は、エンドユーザの興味に応じて容易にジオメディアデータをアクセスすることを可能とするシステムを開発することにあった。本研究は、ジオメディアデータ・ベース上にメタレベルシステムを開発した。主な成果としては下記の通りである。(1)地理的なイメージ用の多規模表現(多次元)方法の生成(2)多次元イメージ・データの任意の形でのクラスタを検知することができる斬新なクラスタ・アプローチの開(3)関連するGEOMEDIAデータ・ベースへの視覚的クエリを指図する統合システムのために必要なタデータの公式化を可能にするメタデータ・モデルの構築(4)メタデータに基づくデータ・ベース選択アプローチの理論的な基礎の生成(5)視覚的データの内容から抽出された異種混合の特徴を統合する視覚的なクエリ処理コンポーネントの生成その成果として完成したプラットフォームは、階層的メタデータ・ベース、メタ検索エージェントおよびクエリ・マネージャーを含むメタサーバーコンポーネントを含むものである。システムのパフォーマンスはユーザのフィードバックに応じて精製される。更に、クエリ・マネージャーは、メタデータのマッチングに一致するためにクエリ中のテキスト、テキスチャーおよび色のような異種混合の特徴を抽出することが出来る。サブクエリは個々の特徴に基づいて公式化された。クエリ・マネージャーは、最終的なデータ・ベース選択決定へサブクエリからの結果を統合するものである。ジオメディア・テストベッドを立ち上げた。このテストベッドはメタデータ抽出の研究のための資源を提供するものであり具体的な研究活動は以下の3項目を計画し実行した。(1)大規模地理的エルチメディアコンテンツ(10億枚の地理画像や、300巻のビデオ、数テラバイトの地理データなどから構成される)を蓄積した包括的なジオメディアデータベースへのアクセスを確保した。これらのデータは日本(岐阜大学)、米国(ウェスト・バージニア大学)、ヨーロッパ(フランス:ラバル・マイエンヌ・テクノポール、ノルウェー:オスロ・サイエンス・パーク)、タイ(カセサート大学)において収集しているものである。(2)地理画像に適した多重スケールのデータ表現手法を研究した。この手法によって、大規模ジオメディアデータセットに対する新しい索引付けアルゴリズムを設計した。ジオメディアからの特徴抽出および特徴空間のクラスタリングに関する研究を行った。本研究では、ジオメディアという文脈に基づくWaveCluster法を提案した。これは、多次元空間情報であるジオメディアを多次元信号として処理することにより、格子に基づく多次元ジオメディアコンテンツのクラスタリングを実現する手法である。信号処理要素というアイデアを空間データベースに適用するのは、多次元空間オブジェクトは多次元特徴空間で表現できるという観察が動機となっている。またこの特徴空間に対して適切な核関数を選択しウェーブレット変換を畳み込むことで、変換後の空間においては自然なクラスタがより明瞭に出現することになった。メタサーバの最初のバージョンを立ち上げた。このメタサーバは情報資源選択のためのプラットフォームを提供するものである。具体的な研究活動には以下の3項目を計画し実施した。(1)多次元ジオメディアに基づくメタデータベースにおける「テンプレート」の管理と設定を研究した。ここでテンプレートとは、キーワード、注釈、テクスチャパターン、色パターン、形状パターンなどを指すものである。
KAKENHI-PROJECT-13480108
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13480108
ジオメディア情報資源の発見および検索に関するプロジェクト
このようなテンプレートに基づくアプローチを適用することにより、ジオメディアデータベースの特徴ベクトルはテンプレートの集合に対する類似度に基づいてクラスタに分割され、またメタサーバはテンプレートと統計的情報の両方に基づいて群化した。(2)メタサーチエージェントのための資源選択手法を設計するとともに、ジオメディアデータベースのクラスタを表現する際の、テンプレートやメタデータの有効性の評価を行った。このタスクでは、ジオメディアデータベースとテンプレートとの間の視覚的な関係を表現する統計的情報を収集することが鍵であった。ある特定の問い合わせに関して重要なジオメディアデータベースは「2レベルプロセス」で決定した。すなわち、まずテンプレートと問い合わせとの類似度を決定し、次にこれらの視覚的な関係に基づいてジオメディアデータベースサイトを順番づけ、同時に、ジオメディアデータベースの索引づけアルゴリズムも、各データベースに実装した。(3)ジオメディア情報資源の選択という文脈に基づくWaveCluster法の拡張について研究を進めた。また多重解像度クラスタリングコンポーネントの第1バージョンを配布した。本研究は、インターネット経由で様々なジオメディア(地理画像)コンテンツにアクヤスするための効果的で有効な技術の研究を目標に研究を行ってきた。ジオメディアコンテンツとは、地理分野に関する幅広いマルチメディアコンテンツ(テキスト、写真、画像、ビデオ及び音声)に関するものである。分散された環境内のジオメディアベースのコンテンツ内を有効に検索するために、我々は、ジオメディアから抽出したメタデータをまとめたメタレベルシステムを構築した。これらのメタデータは、階層的に蓄積される。本研究の目的は、エンドユーザの興味に応じて容易にジオメディアデータをアクセスすることを可能とするシステムを開発することにあった。本研究は、ジオメディアデータ・ベース上にメタレベルシステムを開発した。主な成果としては下記の通りである。(1)地理的なイメージ用の多規模表現(多次元)方法の生成(2)多次元イメージ・データの任意の形でのクラスタを検知することができる斬新なクラスタ・アプローチの開(3)関連するGEOMEDIAデータ・ベースへの視覚的クエリを指図する統合システムのために必要なタデータの公式化を可能にするメタデータ・モデルの構築(4)メタデータに基づくデータ・ベース選択アプローチの理論的な基礎の生成
KAKENHI-PROJECT-13480108
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13480108
鴎外の演劇翻訳・改作・創作に関する日独比較文体論及び文献学的詩学に基づく国際研究
演劇の近代化をめぐる鴎外の活動(翻訳・改作・創作)を総合的に研究するには、ドイツ留学時における演劇研究や観劇体験ばかりでなく、世紀転換期ヨーロッパにおいて展開した上演芸術としての演劇の総合性回復の運動、心理描写を重視する一幕物の流行、詩学と文献学を融合化する動向、さらに日本における新劇運動の台頭、標準語制定の動きなど、それらが複合的に鴎外の演劇活動に作用している局面を再構成しなければならない。演劇の分野における鴎外の活動はもともと国際的な広がりを持つものであり、本研究は鴎外研究をそのような本来の場面へともたらし、成果をドイツ語等で発信、海外の関心を呼び起こすことを目指す。演劇の近代化をめぐる鴎外の活動(翻訳・改作・創作)を総合的に研究するには、ドイツ留学時における演劇研究や観劇体験ばかりでなく、世紀転換期ヨーロッパにおいて展開した上演芸術としての演劇の総合性回復の運動、心理描写を重視する一幕物の流行、詩学と文献学を融合化する動向、さらに日本における新劇運動の台頭、標準語制定の動きなど、それらが複合的に鴎外の演劇活動に作用している局面を再構成しなければならない。演劇の分野における鴎外の活動はもともと国際的な広がりを持つものであり、本研究は鴎外研究をそのような本来の場面へともたらし、成果をドイツ語等で発信、海外の関心を呼び起こすことを目指す。
KAKENHI-PROJECT-19K00481
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K00481
イギリス社会保障の政策論理についての歴史学的研究
1.イギリス社会保障に関する諸立法について、社会保障の諸制度に内在する理念ないし哲学を解明しようとする問題関心から歴史学的研究を行っている。2.その一環として、先に1834年救貧法改正法についての歴史学的考察を行ったのに引き続き、今年度は19世紀から20世紀はじめまでの社会保障立法についての考察を通してこの時期のイギリス社会保障の政策論理の解明につとめ、その結果以下の諸点を明らかにすることができた。(1)19世紀イギリスにおける救貧法に基づく救貧行政は、1834年救貧法改正法(新救貧法)の前後を通して、民衆の伝統的な権利の擁護と、効率的な農業経営という大土地所有者および借地農業家の利害の維持との均衡を図りながら行われていた。(2)新救貧法はその理論的な構成から貧民の側に一種の被救済権を確立しており、また救貧行政の運営において充分な救済を保障しようと意図したと考えられる一方で、当時の人々の観念では新救貧法は貧民救済への伝統的な権利を侵害していると考えられ、実際の救貧行政の運営においても伝統的な貧民救済方法を踏襲する形で行われる場合が少なくなかった。(3)19世紀の公的扶助にみられる貧困観は、私的な相互扶助組織および慈善組織たる友愛組合および慈善組織協会の貧困観と同様に、なお貧困を罪悪とみる観念が強く、人々が道徳的に貧民救済に値するか否かの判断が明示的ないし黙示的に、公的扶助および私的扶助の諸制度のなかで行われていた。(4)世紀転換期の児童保護立法や老齢年金制度、国民保険制度の確立は、児童や老齢者、さらには一般の労働者の困難、困窮に対して一定の国家的責任を認めるものとしてイギリス社会保障法の歴史における一大画期をなすが、その立法経過および法制度そのものに一種の道徳的価値判断ないしはよき人間像と言うべきものを内包している。これは現代イギリスの社会保障制度にも相当に共通する観念ではないかと推測できる。1.イギリス社会保障に関する諸立法について、社会保障の諸制度に内在する理念ないし哲学を解明しようとする問題関心から歴史学的研究を行っている。2.その一環として、先に1834年救貧法改正法についての歴史学的考察を行ったのに引き続き、今年度は19世紀から20世紀はじめまでの社会保障立法についての考察を通してこの時期のイギリス社会保障の政策論理の解明につとめ、その結果以下の諸点を明らかにすることができた。(1)19世紀イギリスにおける救貧法に基づく救貧行政は、1834年救貧法改正法(新救貧法)の前後を通して、民衆の伝統的な権利の擁護と、効率的な農業経営という大土地所有者および借地農業家の利害の維持との均衡を図りながら行われていた。(2)新救貧法はその理論的な構成から貧民の側に一種の被救済権を確立しており、また救貧行政の運営において充分な救済を保障しようと意図したと考えられる一方で、当時の人々の観念では新救貧法は貧民救済への伝統的な権利を侵害していると考えられ、実際の救貧行政の運営においても伝統的な貧民救済方法を踏襲する形で行われる場合が少なくなかった。(3)19世紀の公的扶助にみられる貧困観は、私的な相互扶助組織および慈善組織たる友愛組合および慈善組織協会の貧困観と同様に、なお貧困を罪悪とみる観念が強く、人々が道徳的に貧民救済に値するか否かの判断が明示的ないし黙示的に、公的扶助および私的扶助の諸制度のなかで行われていた。(4)世紀転換期の児童保護立法や老齢年金制度、国民保険制度の確立は、児童や老齢者、さらには一般の労働者の困難、困窮に対して一定の国家的責任を認めるものとしてイギリス社会保障法の歴史における一大画期をなすが、その立法経過および法制度そのものに一種の道徳的価値判断ないしはよき人間像と言うべきものを内包している。これは現代イギリスの社会保障制度にも相当に共通する観念ではないかと推測できる。
KAKENHI-PROJECT-08720002
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08720002
定量的コンピュータ断層血流評価とオミックス情報による肺癌の標準治療効果予測
Perfusion ADCTによる定量的肺癌血流評価法開発における臨床検討として,前年に開発した再構成を用いた低線量Perfusion ADCTを神戸大学医学部附属病院放射線部にて非小細胞肺癌患者(n=30)に対して治療前後に施行するとともに,改良された定量的肺血流解析ソフトにて解析を行い,標準治療に対する早期治療効果予測能に関して検討し,Radiological Society of NorthAmericaの主催するRSNA2014に投稿した。あわせて,更なる低線量化を図るために,低線量CTに適した新たな再構成法による低線量Perfusion ADCTの血流測定に関する検討を行い,RSNA2013,日本医学放射線学会の主催するJRC 2014,European Society of Radiologyの主催するECR 2014にて発表した。また,肺動脈・気管支動脈二重支配対応定量的血流解析ソフトに関する初期臨床検証に関して,海外一流誌にて発表を行うとともに,以前に開発した手法などとの比較を行った。また,肺動脈・気管支動脈二重支配対応定量的血流解析ソフトに関して,肺実質,肺結節および腫瘤及びリンパ節転移などのさまざまなResponse Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST)評価における標的病変に対応するための改良を行う必要があることが明らかになった。神戸大学医学部附属病院放射線部の320列面検出器型CT(Area-Detector CT: ADCT)にて標準治療が施行される臨床病期Stage IIIA, IIIB及びIVの非小細胞肺癌患者(n=32)の治療前Perfusion ADCTを既発表のプロトコールにて施行し,得られたデータに画像ノイズを付加し,擬似的低線量CTを新たに開発した画像再構成法を用いて作製した。あわせて,現在開発中の定量的肺結節血流解析ソフトを肺動脈・気管支動脈二重支配対応に改良を行い,患者より実際に得たPerfusion ADCTと擬似低線量Perfusion ADCTデータを既開発及び改良された解析ソフトにて解析を行い,どの程度の低線量CTにてPerfusiion ADCTが可能であるかを統計学的に検討した。(2)非小細胞肺癌患者の標準治療前Omics情報に関する検討(1)にてPerfusion ADCTが施行された非小細胞肺癌患者(n=32)に対して治療前に生検などにて種々の検体を得た。あわせて,非小細胞肺癌患者にたいして呼吸器内科及び放射線腫瘍科にて化学療法,放射線治療や化学放射線治療などの標準治療を行い,早期治療効果の評価をResponse Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST)評価と定期検査としてのPerfusion ADCTによる治療効果判定を行い,データ集積を行った。(1)Perfusion ADCTによる定量的肺癌血流評価法開発における臨床検討に関しては前年に開発した再構成を用いた低線量Perfusion ADCTを神戸大学医学部附属病院放射線部にて臨床病期Stage IIIA, IIIB及びIVの非小細胞肺癌患者(n=40)に対して治療前に施行するとともに,改良された定量的肺血流解析ソフトにて解析を行い,治療効果予測能に関してPET/CTと対比し,PET/CTよりも正確な汚予測能を有していることを明らかにした。また,北米放射線学会,欧州放射線学会及びISCT 2014にて研究成果を発表した。(2)非小細胞肺癌患者の標準治療前Omics情報に関する検討に関しては(1)にて低線量Perfusion ADCTが施行された非小細胞肺癌患者に対して各Omics情報を得ることを試みたが集積は計画通り進まなかった。(3)画像バイオマーカー及びOmics情報の融合に向けた臨床的検討に関しては(1)および(2)において評価されたPerfusion ADCTによる画像バイオマーカーとOmics情報および標準治療の早期治療効果より,1画像バイオマーカー単独, 2Omics情報単独及び3それらの融合による定量的標準治療効果予測能を今後も継続的に研究を期間終了後も行っていく予定である。放射線医学1)本研究における基礎的検討である肺癌患者のPerfusion ADCTデータ取得及びソフト開発及び改良がおこなわれていること。2)本研究におけるPerfusion ADCTの臨床応用に向けた低線量化下に対するシュミレーション実験を行い,ソフトの低線量Perfusion CTへの対応などのさまざまな改良を行い,症例集積を開始したこと。3)肺癌患者の組織及び病理診断を行うための検体の収集は行われていること。4)保存的治療の効果判定を行うための必要な画像検査を他診療科と共同して行っており,脱落症例が現時点ではいないので,順調に症例登録が進んでいること。1)本研究における基礎的検討である肺癌患者のPerfusion ADCTデータ取得及びソフト開発及び改良がおこなわれていること。2)本研究におけるPerfusion ADCTの臨床応用に向けた低占領下に対するシュミレーション実験が終了し,その結果を撮像法,造影剤投与法及びソフトの低線量Perfusion CTへの対応などのさまざまな改良のためにデータを有効活用し,次年度からのさらなる臨床患者集積を安全かつ効率的に行うことを可能にしていること。3)肺癌患者の組織及び病理診断を行うための検体の収集は行われていること。4)保存的治療の効果判定を行うための必要な画像検査を他診療科と共同して行っており,脱落症例が現時点ではいないので,順調に奨励登録が進んでいること。1)Perfusion ADCTによる定量的肺癌血流評価法開発における臨床検討:前年に開発した再構成を用いた低線量Perfusion ADCTを神戸大学医学部附属病院放射線部にて臨床病期非小細胞肺癌患者に対して引き続き治療前に施行するとともに,改良された定量的肺血流解析ソフトにて解析を行う。2)低線量Perfusion ADCT用画像再構成法および肺動脈・気管支動脈二重支配対応定量的
KAKENHI-PROJECT-24591762
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24591762
定量的コンピュータ断層血流評価とオミックス情報による肺癌の標準治療効果予測
血流解析ソフトの改良を引き続き行う。3)前年度の検討により,RECIST評価に対応するために複数の部位で同時にPerfusion CTを行うための撮像法及び解析法を開発する必要性が生じたため,その開発に着手する。4)非小細胞肺癌患者の標準治療前におけるOmics情報に関する検討に関して開始し,画像バイオマーカーとの融合を目指すための準備を行う。これらの研究成果は国内学会や国際学会にて研究成果を積極的に発表する予定である。1)Perfusion ADCTによる定量的肺癌血流評価法開発における臨床検討:前年に開発した再構成を用いた低線量Perfusion ADCTを神戸大学医学部附属病院放射線部にて臨床病期Stage IIIA, IIIB及びIVの非小細胞肺癌患者(n=80)に対して治療前に施行するとともに,改良された定量的肺血流解析ソフトにて解析を行う。なお,低線量Perfusion ADCT用画像再構成法および肺動脈・気管支動脈二重支配対応定量的血流解析ソフトの改良は前年の解析結果などをもとに必要に応じて行う。2)非小細胞肺癌患者の標準治療前Omics情報に関する検討:1)にて低線量Perfusion ADCTが施行された非小細胞肺癌患者(n=80)に対して治療前に得た種々の検体を引き続き本学質量分析総合センターにおける各種組織分析装置にて網羅的探索を行い,プロテオミックス解析やメタボロミックス解析を行い,Omics情報を得る。あわせて,1)および2)にて評価された非小細胞肺癌患者に呼吸器内科及び放射線腫瘍科にて標準治療と経過観察を行い,早期および1ないし2年後の治療効果をRECIST評価にて行う。3)画像バイオマーカー及びOmics情報の融合に向けた臨床的検討:1)および2)において評価されたPerfusion ADCTによる画像バイオマーカーとOmics情報および標準治療の早期治療効果より,1画像バイオマーカー単独, 2Omics情報単独及び3それらの融合による定量的標準治療効果予測能を統計学的比較検討するとともに,オーダーメイド治療を行うための重要な画像バイオマーカーやOmics情報を同定する。これらの研究成果は国内学会や国際学会にて研究成果を積極的に発表する予定である。1)引き続きソフト開発及び高速化や改良を加えるために,DELL社製並列演算機能搭載画像解析用コンピューターを作成し,開発を進める。あわせて,画像解析の効率化を図り,症例数増加に対応する。
KAKENHI-PROJECT-24591762
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24591762
新しいモノクロナール抗体を用いた実験的移植心冠状動脈硬化の予防の試み
我々は移植心の冠状動脈硬化の実験に先立ち,先ずanti-rat抗CD80抗体および抗CD86抗体の移植心生着延長効果の検討を行うため,主要組織適合抗原がminor mismatchの系であるF-344ラット(RT1^<1V-1>)をDonor,Lewisラット(RT1^1)をRecipientとしてOno-Lindsey法に従い腹腔内異所性心移植を行なった.移植直後より抗CD80抗体および抗CD86抗体1mg/kg/dayを5日間浸透圧ポンプにて投与した結果、抗体無投与群に比し生着延長効果が認められたが、免疫学的寛容状態を得ることはできなかった。現在,我々はanti-rat抗CD80抗体、および抗CD86抗体を移植前に投与することによって生着延長効果があるかどうかを検討中であると同時に、suboptimal doseの既存の免疫抑制剤を投与し相乗効果についての検討を進めている.我々は移植心の冠状動脈硬化の実験に先立ち,先ずanti-rat抗CD80抗体の移植心生着延長効果の検討を行うため,主要組織適合抗原がminor mismatchの系であるF-344ラット(RT1^<1v-1>)をDonor,Lewisラット(RT1^1)をRecipientとしてOno-Lindsey法に従い腹腔内異所性心移植を行なった.移植直後より抗CD80抗体0.25mg/kg/dayを5日間浸透圧ポンプにて投与したが、control群に比し、有意な移植心生着延長効果は得られなかった.その後抗体量を0.5mg/kg/day、1.0mg/kg/dayと増量しても生着延長効果を得ることはできなかった.我々の作成したanti-rat抗CD80抗体はIg-M typeであったため期待された効果が得られなかったと推察された.現在,我々はIgG typeのanti-rat抗CD80抗体、および抗CD86抗体を投与し生着延長効果について検討を進めている.我々は移植心の冠状動脈硬化の実験に先立ち,先ずanti-rat抗CD80抗体および抗CD86抗体の移植心生着延長効果の検討を行うため,主要組織適合抗原がminor mismatchの系であるF-344ラット(RT1^<1V-1>)をDonor,Lewisラット(RT1^1)をRecipientとしてOno-Lindsey法に従い腹腔内異所性心移植を行なった.移植直後より抗CD80抗体および抗CD86抗体1mg/kg/dayを5日間浸透圧ポンプにて投与した結果、抗体無投与群に比し生着延長効果が認められたが、免疫学的寛容状態を得ることはできなかった。現在,我々はanti-rat抗CD80抗体、および抗CD86抗体を移植前に投与することによって生着延長効果があるかどうかを検討中であると同時に、suboptimal doseの既存の免疫抑制剤を投与し相乗効果についての検討を進めている.
KAKENHI-PROJECT-09771007
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09771007
細菌ゲノム生存戦略のレジストーム研究
多剤耐性菌の出現が医療現場において大きな問題となっており、今日もなお感染症の克服は医学的重要課題である。一方で、ゲノム配列が次々と解読され、細菌染色体上には、多数の多剤耐性遺伝子が潜在していることが明らかになってきた。これからは細菌が保持する薬剤耐性因子および、これらの制御ネットワークをゲノムワイドに包括的に解析する必要性がある。本研究では細菌ゲノムが保持する薬剤耐性因子を網羅的に解析し、薬剤耐性克服のための情報基盤を構築することを目的とする。本年度得られた成果は以下の通りである。1)細菌はゲノム上に多くの耐性因子を保持している。中でも異物排出トランスポーターは細菌の多剤耐性因子として注目されている。これまでに、大腸菌やサルモネラのゲノムに数多くの異物排出トランスポーターが潜在していることを明らかにしてきたが、それらトランスポーターの制御ネットワークについては不明であった。本年度、マイクロアレイ等を用いて解析を行った結果、大腸菌の酸耐性を制御しているYdeOやsmall RNAが異物排出トランスポーターをコントロールしているという新たな薬剤耐性制御機構を発見した。2)近年、薬剤耐性のサルモネラが出現し、問題となっている。異物排出トランスポーターは、薬剤耐性化因子であることから、その阻害剤は薬剤耐性を軽減させる効果があると考えられる。臨床分離株とトランスポーター阻害剤であるPhe-Arg β-naphthylamideを用いた実験の結果、阻害剤はサルモネラの多剤耐性化を軽減させる効果があることが明らかとなった。研究成果は、薬剤耐性菌感染症を克服する上でも重要なものであると評価され、文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞した。多剤耐性菌の出現が医療現場において大きな問題となっており、今日もなお感染症の克服は医学的重要課題の一つである。一方で、ゲノム配列が次々と解読され、細菌染色体上には、多数の多剤耐性遺伝子が潜在していることが明らかになってきた。私はこれまでに、ゲノム博報をもとに、推定異物排出蛋自質遺伝子とその制御遺伝子を網羅的に解析することで、数多くの耐性因子を同定してきた。これからは細菌が保持する薬剤耐性因子および、これらの制御ネットワークをゲノムワイドに包括的に解析する必要性がある。本研究では細菌ゲノムが保持する薬剤耐性因子を網羅的に解析し、薬剤耐性克服のための情報基盤を構築することを目的とする。本年度得られた成果は以下の通りである。1)細菌はゲノム上に多くの環境適応・耐性因子を保持している。異物排出蛋白質遺伝子はゲノムに存在する基本的な生存戦略因子である。近年、薬剤耐性サルモネラの出現が問題となっている。サルモネラ薬剤耐性化機構を明らかにするために、サルモネラ異物排出蛋白質遺伝子全てを欠損させた株を作成し、フェノタイプマイクロアレイを用いて、フェノーム解析を行った。その結果、排出蛋白質は臨床現場で用いられる薬剤に対しての耐性に関与していることを見出した。また、金属耐性にも排出蛋白質が関与しているという新たな生理機能を発見した。2)サルモネラ異物排出蛋白質は薬剤耐性のみならず病原性発現にも関与していることが分かっているが、病原性に関わる機構はこれまで不明であった。フェノーム解析とトランスクリプトーム解析の結果、異物排出蛋白質AcrDとMdtABCは鉄代謝制御因子Fur依存的に鉄欠乏条件下で誘導され、これら排出蛋白は外環境から鉄を獲得するために鉄キレーターを排出していることを明らかにした。鉄は細菌病原性発現に必要な因子であることから、排出蛋白質による鉄キレーター排出が細菌病原性発現に関与していることが強く示唆される。本研究成果は、耐性菌感染症を克服するのに重要なものであると評価され、日本抗生物質学術協議会および日本化学療法学会より表彰を受けた。多剤耐性菌の出現が医療現場において大きな問題となっており、今日もなお感染症の克服は医学的重要課題である。一方で、ゲノム配列が次々と解読され、細菌染色体上には、多数の多剤耐性遺伝子が潜在していることが明らかになってきた。これからは細菌が保持する薬剤耐性因子および、これらの制御ネットワークをゲノムワイドに包括的に解析する必要性がある。本研究では細菌ゲノムが保持する薬剤耐性因子を網羅的に解析し、薬剤耐性克服のための情報基盤を構築することを目的とする。本年度得られた成果は以下の通りである。1)細菌はゲノム上に多くの耐性因子を保持している。中でも異物排出トランスポーターは細菌の多剤耐性因子として注目されている。これまでに、大腸菌やサルモネラのゲノムに数多くの異物排出トランスポーターが潜在していることを明らかにしてきたが、それらトランスポーターの制御ネットワークについては不明であった。本年度、マイクロアレイ等を用いて解析を行った結果、大腸菌の酸耐性を制御しているYdeOやsmall RNAが異物排出トランスポーターをコントロールしているという新たな薬剤耐性制御機構を発見した。2)近年、薬剤耐性のサルモネラが出現し、問題となっている。異物排出トランスポーターは、薬剤耐性化因子であることから、その阻害剤は薬剤耐性を軽減させる効果があると考えられる。臨床分離株とトランスポーター阻害剤であるPhe-Arg β-naphthylamideを用いた実験の結果、阻害剤はサルモネラの多剤耐性化を軽減させる効果があることが明らかとなった。研究成果は、薬剤耐性菌感染症を克服する上でも重要なものであると評価され、文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞した。
KAKENHI-PROJECT-19041041
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19041041
動的環境における環境変化の予測と行動を一体化した視覚サーボ系の研究
画像は膨大な情報量を持つが,きわめて冗長性が高い.そこで,十分な精度を確保したままで冗長性の少ない情報の抽出法を検討した.その結果,画像の解像度を4段階にわけ,各々の特徴点に関して4枚のテンプレートを用いて対象物の移動速度に応じて使い分ける方法が追従速度および位置決め精度を確保するのに適していることがわかった.また,冗長な特徴量を用いることは位置決め精度の向上に効果があることを理論的に証明し,PUMA560ロボットを用いた実時間実験により確認した.このことから,画像処理的に安定な特徴量を冗長にとることの有効性が検証できた.次に,視覚情報に基づいて3次元情報を精度良く求めるためのカメラ位置およびロボット姿勢について検討した.再構成される3次元情報の精度は,画像ヤコビ行列の条件数に依存し,この条件数が作業対象物の特徴量の選択に依存することがわかった.したがって,この条件数を最小にするように特徴量を選択することが精度と応答速度の両方の面から重要であることが示された.一方,視覚サーボ系のモデルは,ロボットのダイナミクスを考慮しない場合には拘束条件つきの線形微分方程式で記述される.本研究では,ロボットのダイナミクスを考慮する場合,きわめて複雑な非線形微分方程式になることを示し,微分方程式の幾何学的構造の解析が合理的な制御系設計において重要であることを明らかにした.また,この非線形性のために,環境モデルの推定法は,従来の線形推定法では不十分であることがわかった.そこで,ロボットのダイナミクスと環境変動のダイナミクスを統一的に取り扱うために,作業の実施を環境の変動とロボットの運動からなる非線形関数として定義し,この関数の幾何学的構造の解明を試みた.大域的に拘束条件を記述する関数は求められていないが,局所的な性質は明らかになり,それを用いた制御系の構成法も求まった.本研究の当初の目的は完全には達成されてはいないが,局所的な性質がわかればそれを解析的に接続することにより大域的な性質に拡張できるので,本研究において視覚サーボ問題の本質を解明できたといえる.画像は膨大な情報量を持つが,きわめて冗長性が高い.そこで,十分な精度を確保したままで冗長性の少ない情報の抽出法を検討した.その結果,画像の解像度を4段階にわけ,各々の特徴点に関して4枚のテンプレートを用いて対象物の移動速度に応じて使い分ける方法が追従速度および位置決め精度を確保するのに適していることがわかった.また,冗長な特徴量を用いることは位置決め精度の向上に効果があることを理論的に証明し,PUMA560ロボットを用いた実時間実験により確認した.このことから,画像処理的に安定な特徴量を冗長にとることの有効性が検証できた.次に,視覚情報に基づいて3次元情報を精度良く求めるためのカメラ位置およびロボット姿勢について検討した.再構成される3次元情報の精度は,画像ヤコビ行列の条件数に依存し,この条件数が作業対象物の特徴量の選択に依存することがわかった.したがって,この条件数を最小にするように特徴量を選択することが精度と応答速度の両方の面から重要であることが示された.一方,視覚サーボ系のモデルは,ロボットのダイナミクスを考慮しない場合には拘束条件つきの線形微分方程式で記述される.本研究では,ロボットのダイナミクスを考慮する場合,きわめて複雑な非線形微分方程式になることを示し,微分方程式の幾何学的構造の解析が合理的な制御系設計において重要であることを明らかにした.また,この非線形性のために,環境モデルの推定法は,従来の線形推定法では不十分であることがわかった.そこで,ロボットのダイナミクスと環境変動のダイナミクスを統一的に取り扱うために,作業の実施を環境の変動とロボットの運動からなる非線形関数として定義し,この関数の幾何学的構造の解明を試みた.大域的に拘束条件を記述する関数は求められていないが,局所的な性質は明らかになり,それを用いた制御系の構成法も求まった.本研究の当初の目的は完全には達成されてはいないが,局所的な性質がわかればそれを解析的に接続することにより大域的な性質に拡張できるので,本研究において視覚サーボ問題の本質を解明できたといえる.
KAKENHI-PROJECT-09221101
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09221101
パーソナリティの健康影響に関する大規模コホート研究
本研究の目的は、宮城県民47,605名を対象に1990年より実施している大規模コホート研究の長期追跡調査にもとづき、英国の心理学者アイゼンクが開発した性格尺度(外向性/内向性、神経症的傾向、逸脱傾向、律儀さ)と、がんを始めとする疾病との関連を明らかにすることである。コホート集団の死亡、転出、およびがん罹患に関する追跡調査を行った。死亡と転出に関する追跡調査は、2001年3月まで行った。ベースラインから11年間での死亡者は2,536名(対象者の5.3%)、転出者は2,166名(4.5%)であった。死因の内訳は、がんが1,132名(死因の44,6%)、心疾患が368名(14.5%)、脳血管疾患が302名(11.9%)、その他が734名(28.9%)であった。がん罹患に関する追跡調査は、宮城県地域がん登録との記録照合により、1997年12月31日まで行った。7年間での総罹患数は1,633例(対象者の3.4%)であった。その結果、がん罹患・虚血性心疾患死亡・脳血管疾患死亡のいずれについても、4つの性格尺度のいずれとも、有意の関連を認めなかった。例えば、全がん罹患についての解析では、性格尺度得点の最小4分位群に対する最大4分位群の多変量補正相対危険度(95%信頼区間)は、外向性が0.9(0.7-1.1)、神経症的傾向が1.2(1.0-1.4)、逸脱傾向が1.1(0.9-1.3)、律儀さが0.9(0.7-1.0)であった。結論として、日本人のがん・虚血性心疾患・脳血管疾患に対する性格の関連は明確ではないことが示唆された。本研究の目的は、宮城県民47,605名を対象に1990年より実施している大規模コホート研究の長期追跡調査にもとづき、英国の心理学者アイゼンクが開発した性格尺度(外向性/内向性、神経症的傾向、逸脱傾向、律儀さ)と、がんを始めとする疾病との関連を明らかにすることである。コホート集団の死亡、転出、およびがん罹患に関する追跡調査を行った。死亡と転出に関する追跡調査は、2001年3月まで行った。ベースラインから11年間での死亡者は2,536名(対象者の5.3%)、転出者は2,166名(4.5%)であった。死因の内訳は、がんが1,132名(死因の44,6%)、心疾患が368名(14.5%)、脳血管疾患が302名(11.9%)、その他が734名(28.9%)であった。がん罹患に関する追跡調査は、宮城県地域がん登録との記録照合により、1997年12月31日まで行った。7年間での総罹患数は1,633例(対象者の3.4%)であった。その結果、がん罹患・虚血性心疾患死亡・脳血管疾患死亡のいずれについても、4つの性格尺度のいずれとも、有意の関連を認めなかった。例えば、全がん罹患についての解析では、性格尺度得点の最小4分位群に対する最大4分位群の多変量補正相対危険度(95%信頼区間)は、外向性が0.9(0.7-1.1)、神経症的傾向が1.2(1.0-1.4)、逸脱傾向が1.1(0.9-1.3)、律儀さが0.9(0.7-1.0)であった。結論として、日本人のがん・虚血性心疾患・脳血管疾患に対する性格の関連は明確ではないことが示唆された。本研究の目的は、宮城県民47,605名を対象に1990年より実施している大規模コホート研究の長期追跡調査にもとづき、英国の心理学者アイゼンクが開発した性格尺度(外向性/内向性、神経症的傾向、逸脱傾向、律儀さ)と、がんを始めとする疾病との関連を明らかにすることである。2年間の研究の初年度にあたる今年度は、コホート集団の死亡、転出、およびがん罹患に関する追跡調査を行った。死亡と転出に関する追跡調査は、すでに1999年3月まで実施していたものを、さらに2001年3月まで2年間延長した。ベースラインから11年間での死亡者は2,536名(対象者の5.3%)、転出者は2,166名(4.5%)であった。死因の内訳は、がんが1,132名(死因の44.6%)、心疾患が368名(14.5%)、脳血管疾患が302名(11.9%)、その他が734名(28.9%)であった。がん罹患に関する追跡調査は、宮城県地域がん登録との記録照合により、1997年12月31日まで行った。7年間での総罹患数は1,633例(対象者の3.4%)であった。部位別の内訳は、胃がん392例(がん罹患の24.0%)、大腸がん292例(17.9%)、肺がん178例(10.9%)、乳がん141例(8.6%)などであった。以上の追跡調査により、性格尺度と各種疾患との関連を検討するためのデータセットが構築された。
KAKENHI-PROJECT-13470086
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13470086
パーソナリティの健康影響に関する大規模コホート研究
次年度は、このデータを用いて、がん罹患・脳卒中死亡・心疾患死亡・全死因死亡等におよぼす性格の影響について解析を行う予定である。本研究の目的は、宮城県民47,605名を対象に1990年より実施している大規模コホート研究の長期追跡調査にもとづき、英国の心理学者アイゼンクが開発した性格尺度(外向性/内向性、神経症的傾向、逸脱傾向、律儀さ)と、がんを始めとする疾病との関連を明らかにすることである。コホート集団の死亡、転出、およびがん罹患に関する追跡調査を行った。死亡と転出に関する追跡調査は、2001年3月まで行った。ベースラインから11年間での死亡者は2,536名(対象者の5.3%)、転出者は2,166名(4.5%)であった。死因の内訳は、がんが1,132名(死因の44.6%)、心疾患が368名(14.5%)、脳血管疾患が302名(11.9%)、その他が734名(28.9%)であった。がん罹患に関する追跡調査は、宮城県地域がん登録との記録照合により、1997年12月31日まで行った。7年間での総罹患数は1,633例(対象者の3.4%)であった。その結果、がん罹患・虚血性心疾患死亡・脳血管疾患死亡のいずれについても、4つの性格尺度のいずれとも、有意の関連を認めなかった。例えば、全がん罹患についての解析では、性格尺度得点の最小4分位群に対する最大4分位群の多変量補正相対危険度(95%信頼区間)は、外向性が0.9(0.7-1.1)、神経症的傾向が1.2(1.0-1.4)、逸脱傾向が1.1(0.9-1.3)、律儀さが0.9(0.7-1.0)であった。結論として、日本人のがん・虚血性心疾患・脳血管疾患に対する性格の関連は明確ではないことが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-13470086
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13470086
医療関係者・医療系大学生に必要なリーディング・リテラシー伸長に関する調査・研究
コミュニケーション教育、日本語教育の専門知識をベースに、インストラクショナル・デザイン、医療人文学、医学教育準備教育、ピア・レスポンスの知見を踏まえた調査・研究がなされた。そして、その成果を反映し、医療系大学(医学部、看護学部)初年次生を対象としたカリキュラムおよびシラバスが作成され、学会においてその成果・今後の課題が公開された。コミュニケーション教育、日本語教育の専門知識をベースに、インストラクショナル・デザイン、医療人文学、医学教育準備教育、ピア・レスポンスの知見を踏まえた調査・研究がなされた。そして、その成果を反映し、医療系大学(医学部、看護学部)初年次生を対象としたカリキュラムおよびシラバスが作成され、学会においてその成果・今後の課題が公開された。本年度は、以下の(1)から(6)の調査・研究を行った。(1)リーディング・リテラシーに関連する国内外の論文、文献、教科書、HP等の情報検索・収集、(2)(1)の情報の整理・分析・入力、(3)専門家(インストラクショナル・デザイナー)との共同作業による、ある医療系単科大学(医学部および看護学部)の初年次教育における表現技術系科目(必修科目、選択科目)のシラバスおよびカリキュラムの分析、設計、(4)(3)の結果のリーディング・リテラシーに注目した分析、(5)上記大学初年次教育における人間性の涵養を目指した読書課題の、コールバーグの道徳段階説に依拠した構造的枠組みを導入しての再デザイン、(6)教育内容分析のための、教員が学生のリーディング・リテラシーに対して抱いているイメージをあぶりだすためのアンケートおよびインタビューのデザイン(1)および(2)の情報収集は、大学入学以前の教育内容も視野に入れてはいるが、大学教育以降のもので成人を対象としたものを中心に行った。(3)から(6)の調査・研究は、分析、設計、開発、実施、評価技法の確立しているインストラクショナル・デザインを導入した。このことにより、より効果的・効率的な教育デザインとなった。上級学年も考慮しているが、本年度は初年次学生を中心に行った。(3)および(4)の調査・研究は、医療関係者および医療系大学生のニーズおよび対象となった医療系大学のカリキュラムの流れを考慮し行われたものである。成果の一部は、2007年6月の大学教育学会第29回大会自由研究で口頭発表することが既に決まっている。本年度は、平成18年度の成果を踏まえたうえで、以下の(1)から(5)の調査・研究を行った。(1)リーディング・リテラシーに関連する国内外の論文、文献、教科書、HP等の更なる情報検索・収集、(2)(1)の情報の整理・分析・入力、(3)専門家(コミュニケーション教育研究者)との共同作業による、医療系単科大学(医学部)の初年次教育における表現技術系科目(必修科目)のシラバスおよびカリキュラムの再デザイン、(4)(3)の結果のリーディング・リテラシーに注目した分析、(5)専門家(図書館司書、リーディング・リテラシーを駆使している患者会の会員)との共同作業による医療系大学生を対象とした読書課題のデザイン(1)および(2)の情報収集は、主対象は成人だが、読書体験およびリーディング・リテラシーのレベルが異なる学生に対応できるよう、初中等教育におけるリーディング・リテラシー関連科目・活動に関する文献・情報の収集も行った。本年度は「図書館の活用力の向上」および「人間性の涵養」につながる本および情報の収集にも力を注いだ。その際に、公共図書館、医学図書館、病院図書館、患者図書館の現状に精通している専門家および医療者に期待するコミュニケーションカ・リテラシーについて実体験をもって深く理解している患者会会員による情報提供が非常に役立った。(3)から(5)の調査・研究は、医療系大学生の置かれている状況、医療系大学生への社会の期待などを考慮したカリキュラム・デザインを目標に行われた。成果の一部を学会で口頭発表し、認知心理学の観点からの有益なフィードバックを得ることができた。本研究の目的は、医療系大学生のリーディング・リテラシーの涵養をコミュニケーション教育の立場から目指すことを通し、社会的に要請されている、医療機関利用者-医療関係者のより良い関係の構築、医療関係者の生涯学習力の向上に寄与することである。平成20年度は、平成19年度の研究成果の実施、評価、再デザイン、および成果の発表を中心に行った。これまで教育・研究上交流のあった専門家(コミュニケーション教育研究者、医療系大学準備教育担当者、教育方略の専門家、インストラクショナル・デザイナー等)に加え、医療系大学生という対象の特性に鑑みた内容面の充実を図り、いのちの教育、医療人文学の専門家の協力を得、調査研究内容をさらに充実させた。具体的な内容は、以下の通りである。(1)平成19年度までに収集したリーディング・リテラシーに関連する国内外の論文、文献、教科書、HP等の情報の分析結果のさらなる充実、(2)平成18年度の成果を踏まえ、平成19年度に専門家(コミュニケーション教育研究者)との共同作業によりデザインした医療系単科大学(医学部)の初年次教育における表現技術系科言(必修科目)のシラバスおよびカリキュラムの実施、評価、成果の発表、(3)インストラクショナル・デザイナーと協働し、平成18年度に再デザインし平成19年度に実施した上記大学初年次教育における人間性の涵養を目指した読書課題の再デザイン、実施、評価、そして評価を踏まえた再デザイン、(4)医療系大学準備教育担当者との協働研究、成果の発表、(5)いのちの教育、医療人文学の研究・教育者との協働による、医療系学部初年次生の特性に鑑みたシラバスのデザイン
KAKENHI-PROJECT-18720142
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18720142
半導体の結晶特性と非線形光学効果による遠赤外光発生機構
これまで半導体GaP結晶を用いて光-フォノン相互作用に基づく遠赤外光発生の研究を行い、結晶性および結晶サイズが発生機構に影響を及ぼすことを確認している。本研究では、結晶性・非線形光学効果・導波路構造の観点に基づきフォノンの挙動を理解し、半導体結晶特性と非線形光学効果による遠赤外光発生機構の解明を目的としている。今年度は、遠赤外光閉じ込めが可能な導波路構造の作製および差周波混合における高効率遠赤外光発生について検討した。遠赤外光の2次元方向閉じ込めが可能な導波路構造としてリブ型およびフォトニック結晶導波路構造に着目した。半絶縁性GaP結晶を用いてフォトジングラフィーおよび誘導結合プラズマ反応性イオンエッチング(ICP-RIE)により各種導波路構造を形成する。リブ型導波路については、厚さ350μmのGaP基板に対して、リブ高さ200μmおよびリブ幅1mm200μmの構造を作製した。フォトニック結晶導波路として、直径160μmの空気円柱が格子定数200μmの三角格子配列した構造に対し、1列のみ格子配列を除いた線欠陥を導入することにより遠赤外光に対する導波路構造とした。作製した導波路構造を用いて、波長1μm帯の近赤外光を用いた差周波混合による遠赤外光発生特性の検討を行った。リブ導波路から発生した周波数位置は、導波路断面積が減少するに従い高周波数側ヘシフトした。これは導波路断面積に依存して実効屈折率が変化し、それにより位相整合条件が変化するためである。遠赤外光の発生効率は、リブ型断面積の縮小に伴って増加し、リブ幅200μmの構造においてバルクGaP結晶と比較しておよそ9倍に向上した。次に、線欠陥を導入したフォトニック結晶導波路対して遠赤外光発生を検討したところ線欠陥導波路特有の伝搬モードに基づく発生を確認した。これはリブ型導波路ではみられないフォトニック結晶導波路特有の現象である。これまで半導体GaP結晶を用いて光-フォノン相互作用に基づく遠赤外光発生の研究を行い、結晶性および結晶サイズが発生機構に影響を及ぼすことを確認している。本研究では、結晶性・非線形光学効果・導波路構造の観点に基づきフォノンの挙動を理解し、半導体結晶特性と非線形光学効果による遠赤外光発生機構の解明を目的としている。今年度はまず、不純物添加特性が異なるGaP結晶における遠赤外光反射スペクトル測定を行い、不純物の存在がこの領域の光物性に及ぼす影響について検討した。半絶縁性GaP結晶(キャリア濃度,1×10^<12>cm^<-3>以下)における反射スペクトルではTOフォノンによる寄与を、ドナー不純物であるSをドープしたGaP結晶(キャリア濃度,5×10^<17>cm^<-3>)ではTOフォノンに加えて自由電子による寄与を確認した。それらの結果はDrude-lorentzモデルによる計算結果とほぼ対応している。不純物添加によって生じる自由キャリアの存在が遠赤外光領域におけるフォノンの分散関係に影響を与えるという知見を得た。さらに、導波路構造がフォノンの分散関係に及ぼす効果について検討した。GaP結晶に対して遠赤外光波長と同程度のサイズを有する導波路構造(数100μm程度)を作製した。断面形状としては、厚さ方向に対して遠赤外光を閉じ込めるスラブ型構造と厚さおよび幅方向に閉じ込める矩形構造を作製した。各種導波路結晶における遠赤外光発生を行いバルク結晶とは異なるコリニア位相整合による発生機構を確認した。これは導波路中のフォノンの分散関係がバルク結晶とは異なることを意味しており、これは導波路分散を考慮したフォノン分散曲線から説明できる。さらに矩形導波路構造では遠赤外光の発生効率がバルク結晶の値を1桁上回る結果を得た。これは遠赤外光の2次元方向閉じ込めによる光-フォノン相互作用の増強効果を示していると考えられる。これまで半導体GaP結晶を用いて光-フォノン相互作用に基づく遠赤外光発生の研究を行い、結晶性および結晶サイズが発生機構に影響を及ぼすことを確認している。本研究では、結晶性・非線形光学効果・導波路構造の観点に基づきフォノンの挙動を理解し、半導体結晶特性と非線形光学効果による遠赤外光発生機構の解明を目的としている。今年度は導波路構造における遠赤外光閉じ込めによる遠赤外光特性制御を検討した。まず、GaPスラブ型導波路(厚さ290μm)から発生する遠赤外光の偏光特性について検討した。発生する遠赤外光の偏光状態は2つの入射光電場ベクトルと結晶の誘電テンソルにより決定される。入射光の偏光状態を制御することによりTEおよびTMモードに基づく遠赤外光の発生を確認した。発生周波数位置はTEおよびTMモードに対してそれぞれ0.80および0.95 THzであった。これは2つのモード間に位相差が存在することを示唆している。次に、導波路中でTEおよびTMモードを同時に励起した場合の偏光状態を測定したところ、楕円偏光という結果を得た。ここで、バルク結晶を用いた場合については、水平方向に対しておよそ30度傾いた直線偏光であった。以上、導波路中の2つの伝播モード間の位相差を利用した遠赤外光の偏光制御が可能であるという知見を得た。偏光制御された光源を用いることにより遠赤外光分光スペクトルへの応用が期待できる。
KAKENHI-PROJECT-06J05304
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06J05304
半導体の結晶特性と非線形光学効果による遠赤外光発生機構
さらに、2次元方向(厚さおよび幅方向)に閉じ込め可能な導波路構造としてリブ型およびフォトニック結晶導波路を作製し、遠赤外光発生特性の検討を行った。リブ導波路から発生した周波数位置は、導波路断面積が減少するに従い高周波数側ヘシフトした。これは導波路断面積に依存して実効屈折率が変化するためであると考えられる。フォトニック結晶に対して線欠陥構造を導入した導波路における遠赤外光発生を行ったところ、フォトニック結晶の透過特性を反映した出力特性を確認した。これまで半導体GaP結晶を用いて光-フォノン相互作用に基づく遠赤外光発生の研究を行い、結晶性および結晶サイズが発生機構に影響を及ぼすことを確認している。本研究では、結晶性・非線形光学効果・導波路構造の観点に基づきフォノンの挙動を理解し、半導体結晶特性と非線形光学効果による遠赤外光発生機構の解明を目的としている。今年度は、遠赤外光閉じ込めが可能な導波路構造の作製および差周波混合における高効率遠赤外光発生について検討した。遠赤外光の2次元方向閉じ込めが可能な導波路構造としてリブ型およびフォトニック結晶導波路構造に着目した。半絶縁性GaP結晶を用いてフォトジングラフィーおよび誘導結合プラズマ反応性イオンエッチング(ICP-RIE)により各種導波路構造を形成する。リブ型導波路については、厚さ350μmのGaP基板に対して、リブ高さ200μmおよびリブ幅1mm200μmの構造を作製した。フォトニック結晶導波路として、直径160μmの空気円柱が格子定数200μmの三角格子配列した構造に対し、1列のみ格子配列を除いた線欠陥を導入することにより遠赤外光に対する導波路構造とした。作製した導波路構造を用いて、波長1μm帯の近赤外光を用いた差周波混合による遠赤外光発生特性の検討を行った。リブ導波路から発生した周波数位置は、導波路断面積が減少するに従い高周波数側ヘシフトした。これは導波路断面積に依存して実効屈折率が変化し、それにより位相整合条件が変化するためである。遠赤外光の発生効率は、リブ型断面積の縮小に伴って増加し、リブ幅200μmの構造においてバルクGaP結晶と比較しておよそ9倍に向上した。次に、線欠陥を導入したフォトニック結晶導波路対して遠赤外光発生を検討したところ線欠陥導波路特有の伝搬モードに基づく発生を確認した。これはリブ型導波路ではみられないフォトニック結晶導波路特有の現象である。
KAKENHI-PROJECT-06J05304
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06J05304
マグマオーシャンからの脱ガスと初期海洋の形成
本研究は、重点領域研究(1)「原始太陽系と惑星の起源」の公募研究として、最終年度に参加した。筆者は、大気ー海洋系の起源と進化に関心を持ち、その一環としてマグマオーシャンからの脱ガスをモデル化することを通じて上記主題に寄与することを意図した。脱ガスのモデル化が可能と判断した根拠は、1)現在におけるH_2O、CO_2、SO_2、およびClなどの脱ガス速度がみつもられている。2)地球がマグマオーシャンに覆われていた時期は最初の5億年とみなせる。3)その後の40億年は、固化した表面を通してマグマからの脱ガスが起ったと考えられる。4)最古の海洋は少なくとも38億年前には、存在していた。5)脱ガス速度は還流速度をも含めて一次反応の形式で表現できる理論的根拠がある。以上の前提にもとづいて、本年度はCO_2とClの脱ガスについて検討を行なった結果、地球の歴史を通じてCO_2はClにくらべてはるかに脱ガス速度が速いだけでなく、還流速度も速いことが分った。すなわち、マグマを通じての揮発性物質の循環速度は、1)マグマという共通の運搬媒質があってもガス種によって著しい差があること。2)その差異はガス種のマグマ内拡散速度よりも、溶解度と相関が高いことがうかがわれる。以上の結果は、H_2OおよびSO_2なども加えて総合的に追及をひろげ、理論的にも手直しをして、海洋の形成が何時頃可能になったかという点に焦点を絞って、来年度以降も継続する予定である。なお発表報文としては、昨年度に発表した高温の海洋の存在の可能性を論じたもののみを挙げてある。本研究は、重点領域研究(1)「原始太陽系と惑星の起源」の公募研究として、最終年度に参加した。筆者は、大気ー海洋系の起源と進化に関心を持ち、その一環としてマグマオーシャンからの脱ガスをモデル化することを通じて上記主題に寄与することを意図した。脱ガスのモデル化が可能と判断した根拠は、1)現在におけるH_2O、CO_2、SO_2、およびClなどの脱ガス速度がみつもられている。2)地球がマグマオーシャンに覆われていた時期は最初の5億年とみなせる。3)その後の40億年は、固化した表面を通してマグマからの脱ガスが起ったと考えられる。4)最古の海洋は少なくとも38億年前には、存在していた。5)脱ガス速度は還流速度をも含めて一次反応の形式で表現できる理論的根拠がある。以上の前提にもとづいて、本年度はCO_2とClの脱ガスについて検討を行なった結果、地球の歴史を通じてCO_2はClにくらべてはるかに脱ガス速度が速いだけでなく、還流速度も速いことが分った。すなわち、マグマを通じての揮発性物質の循環速度は、1)マグマという共通の運搬媒質があってもガス種によって著しい差があること。2)その差異はガス種のマグマ内拡散速度よりも、溶解度と相関が高いことがうかがわれる。以上の結果は、H_2OおよびSO_2なども加えて総合的に追及をひろげ、理論的にも手直しをして、海洋の形成が何時頃可能になったかという点に焦点を絞って、来年度以降も継続する予定である。なお発表報文としては、昨年度に発表した高温の海洋の存在の可能性を論じたもののみを挙げてある。
KAKENHI-PROJECT-01611005
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01611005
消化管微小環境による炎症応答抑制機構の分子生物学的解析
グラム陰性菌由来物質であるリポ多糖(LPS)が体循環に入ると重篤な症状が引き起こされるが、消化管、特に大腸は管腔内常在菌由来の多量のLPSに暴露されているにもかかわらず、通常状態では炎症応答はみられない。本研究の目的は、大腸に存在するマクロファージ様細胞が、末梢血中に存在するマクロファージ系細胞とは異なる性質、すなわち「常在菌由来成分LPSに対する低免疫応答性」をどの様にして獲得していくのかを理解することである。平成17年度において、定常状態の大腸粘膜層に分泌されているIL-6、MIF、リンホタクチン、アクチビン、フラクタルカイン等の、一般的には向炎症性と考えられているサイトカイン・ケモカインを、骨髄より誘導したマクロファージ様細胞に作用させると、その後のLPS刺激に対するTNFα産生が低下することを既に見出した。本年度は、マクロファージのLPS応答抑制作用が最も強かった低濃度フラクタルカインに着目し、その作用機序について詳細な検討を行った。LPSを介したシグナル伝達経路に及ぼす低濃度フラクタルカインの影響について調べた結果、低濃度フラクタルカイン処理により、核内受容体であるPPARγの発現が亢進すること、LPS刺激により核移行したNF-κBがPPARγと結合することにより速やかに核外へ排出されていることを見出した。また、低濃度フラクタルカイン処理により、PPARγの生理的リガンドである15dPGJ_2の発現が亢進すること、15dPGJ_2処理によりマクロファージにPPARγの発現を誘導すると、低濃度フラクタルカイン処理時と同じくLPS応答性が低下した。以上の結果から、大腸に恒常的に発現する低濃度フラクタルカインが、マクロファージに対して常在菌由来成分LPSに対する低応答性をもたらすメカニズムの一つとして、15dPGJ_2の誘導を介したPPARγの発現増強による、LPSに対する反応の収束の促進が示された。グラム陰性菌由来物質であるリポ多糖(LPS)が体循環に入ると重篤な症状が引き起こされるが、消化管、特に大腸は管腔内常在菌由来の多量のLPSに暴露されているにもかかわらず、通常状態では炎症応答はみられない。本研究の目的は、大腸に存在するマクロファージ様細胞が、末梢血中に存在するマクロファージ系細胞とは異なる性質、すなわち「常在菌由来成分LPSに対する低免疫応答性」をどの様にして獲得していくのかを理解することである。予備実験において、一般的には向炎症性と考えられているサイトカイン・ケモカインが、定常状態の大腸粘膜層に分泌されていることを既に見出していたため、本年度は、IL-6、MIF、リンホタクチン、アクチビン、フラクタルカイン等の大腸に恒常的に発現しているサイトカイン・ケモカインを、骨髄より誘導したマクロファージ様細胞に作用させ、その後のLPS刺激に対する応答性を調べた。その結果、IL-6、MIF、リンホタクチン、アクチビン、ないしフラクタルカインで前処理した骨髄由来マクロファージ様細胞で、LPS刺激に対するTNFα産生の低下が認められた。マクロファージのLPS応答抑制作用が最も強かった低濃度フラクタルカインに着目し、その作用機序について詳細な検討を行った結果、フラクタルカイン処理により、LPS受容体であるToll様受容体(TLR)-4とその構成分子MD-2の発現が低下することが明らかとなった。LPS以外のTLRリガンド(CpG、ペプチドグリカン等)に対する応答には、低濃度フラクタルカイン処理は影響を及ぼさなかった。LPSを介したシグナル伝達経路に及ぼす低濃度フラクタルカインの影響についても調べた結果、ERK-1/2のリン酸化の低下とNF-κBサブユニットの変化が認められた。以上の結果により、大腸に恒常的に発現する低濃度フラクタルカインが、マクロファージに作用して常在菌由来成分LPSに対する低応答性をもたらし、「大腸型」へと誘導する微小環境因子の一つである可能性が示唆された。グラム陰性菌由来物質であるリポ多糖(LPS)が体循環に入ると重篤な症状が引き起こされるが、消化管、特に大腸は管腔内常在菌由来の多量のLPSに暴露されているにもかかわらず、通常状態では炎症応答はみられない。本研究の目的は、大腸に存在するマクロファージ様細胞が、末梢血中に存在するマクロファージ系細胞とは異なる性質、すなわち「常在菌由来成分LPSに対する低免疫応答性」をどの様にして獲得していくのかを理解することである。平成17年度において、定常状態の大腸粘膜層に分泌されているIL-6、MIF、リンホタクチン、アクチビン、フラクタルカイン等の、一般的には向炎症性と考えられているサイトカイン・ケモカインを、骨髄より誘導したマクロファージ様細胞に作用させると、その後のLPS刺激に対するTNFα産生が低下することを既に見出した。本年度は、マクロファージのLPS応答抑制作用が最も強かった低濃度フラクタルカインに着目し、その作用機序について詳細な検討を行った。LPSを介したシグナル伝達経路に及ぼす低濃度フラクタルカインの影響について調べた結果、低濃度フラクタルカイン処理により、核内受容体であるPPARγの発現が亢進すること、LPS刺激により核移行したNF-κBがPPARγと結合することにより速やかに核外へ排出されていることを見出した。
KAKENHI-PROJECT-17790474
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17790474
消化管微小環境による炎症応答抑制機構の分子生物学的解析
また、低濃度フラクタルカイン処理により、PPARγの生理的リガンドである15dPGJ_2の発現が亢進すること、15dPGJ_2処理によりマクロファージにPPARγの発現を誘導すると、低濃度フラクタルカイン処理時と同じくLPS応答性が低下した。以上の結果から、大腸に恒常的に発現する低濃度フラクタルカインが、マクロファージに対して常在菌由来成分LPSに対する低応答性をもたらすメカニズムの一つとして、15dPGJ_2の誘導を介したPPARγの発現増強による、LPSに対する反応の収束の促進が示された。
KAKENHI-PROJECT-17790474
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17790474
大気化学輸送モデルを用いたトップダウン手法による一酸化二窒素の全球収支の解析
大気中一酸化二窒素(N2O)の計算を行うために、大気大循環モデルに成層圏でのN2Oとオゾンの光化学反応を組み込んだ大気化学輸送モデルを開発した。本モデルは大気N2Oモデル相互比較実験(TransCom-N2O)において他のモデルと比べて優れた性能を示し、逆計算においても高い信頼性が有することが予想された。逆計算による地域毎のN2O放出量変動の推定の結果、陸域では概ね先験値と異なる変動傾向を示し、春の農業における施肥や融雪が原因となっている可能性や、更なる観測データの拡充による逆計算精度向上の必要性が示唆された。また観測データの整備を行い、モデル計算以外でのN2O逆計算研究への貢献も行った。大気中一酸化二窒素(N2O)は地球環境にとって非常に重要であるため、N2Oの全球循環の理解および収支解析を目的とした研究がここ数年非常に活発になってきた。昨年、大気化学輸送モデルによるN2O計算の相互比較を行う国際プロジェクトTransCom-N2Oが立ち上げられ、N2Oモデリングにおける様々な要素に対する共通理解が得られつつある。その中で、既存の生態系モデル等による陸域や海洋のN2O放出量変動の推定値が大気中のN2O変動をよく再現しないという問題がある。特に自然・人為放出源を含めた土壌からのN2O放出量の季節変動の位相が合わないというケースがある。そのようなN2O放出メカニズムに対する不理解を修正するためにインバースモデリング(逆解析)が行われる。逆解析ではフラックス先験値(prior-flux)を大気中濃度観測値を用いて修正するが、その結果はprior-fluxに影響されるという性質がある。そのため、prior-fluxができる限り現実的であり、その残りの僅かな真値との差を逆解析により修正するというのが理想である。しかしその逆解析において、N2Oのprior-fluxの真値からずれは、例えばCO2等のそれと比べて、上述したように、かなり大きいことが予想される。これは逆解析によるフラックス推定結果に含まれる人為的バイアスの大きな原因と成り得る。そのような問題を多少なりとも改善するために、本研究では複数のインベントリデータを用いたモデル計算を行い(マルチエミッション計算)、それら計算結果を用いて逆解析を行うことにより最適なprior-fluxの推定および実際のフラックス緯度分布の推定を行った。推定されたフラックス緯度分布は昨年度行った逆解析推定値と非常によく一致し、本手法の妥当性が証明された。大気中の一酸化二窒素(N2O)は温室効果気体であるとともに、今世紀最大のオゾン層破壊物質であると考えられており、地球環境にとって極めて重要であるため、N2Oの全球収支をできる限り正確に把握することは今後の削減施策にとって欠かせない取り組みである。TransCom-N2OなるN2O全球モデル国際相互比較プロジェクトが立ち上げられ、我々のモデルについてもN2Oの前進計算および逆解析結果を提供し、その結果、現段階において最も優れたN2O再現能を持つモデルであることが明らかとなった。これらについてはH25年度に2本の論文として出版された。一方で、逆解析により地域・月毎のN2O放出量を推定するわけであるが、その際に最も重要な要素はやはり用いる観測データである。基本的には観測データが全球的にまたは時空間的にどれくらい密にカバーしているかという点が重要である。代表者はこれまで東北大学の観測データの管理を担ってきていたが、このN2O逆解析による放出量推定精度を向上させるために、それらの観測データの精緻化にも取り組んだ。中でも太平洋における船舶による大気中N2O観測データセットは海外の研究者へも積極的に提供しており、それらの成果は2本の論文として出版された。その中で今後自分が行う逆解析において、スピンアップ計算の重要性や、日内変動の考慮など様々な問題点が見出されたため、今後の自分の計算においてはそれらを反映させより高精度化することが可能であると期待される。大気中一酸化二窒素(N2O)の計算を行うために、大気大循環モデルに成層圏でのN2Oとオゾンの光化学反応を組み込んだ大気化学輸送モデルを開発した。本モデルは大気N2Oモデル相互比較実験(TransCom-N2O)において他のモデルと比べて優れた性能を示し、逆計算においても高い信頼性が有することが予想された。逆計算による地域毎のN2O放出量変動の推定の結果、陸域では概ね先験値と異なる変動傾向を示し、春の農業における施肥や融雪が原因となっている可能性や、更なる観測データの拡充による逆計算精度向上の必要性が示唆された。また観測データの整備を行い、モデル計算以外でのN2O逆計算研究への貢献も行った。本年度はまず昨年立ち上げられたTransCom-N2O(国際大気輸送モデル計算相互比較プロジェクト)の枠組みに従ってN2O逆解析を行った。使用モデルはCCSR/NIES/FRCGC AGCMであり、気象庁JRA-25再解析気象データによりナッヂングされている。成層圏におけるオゾン濃度はECMFW-INTERIMの再解析値を使用し、その光分解、およびN2Oの光分解とO(1D)との酸化反応がモデル中で考慮されている。逆解析に用いる観測データは、TransCom-N2OのProtocolに従い、NOAA/ESRL/GMDによる全球フラスコサンプリングネットワークのデータを中心に、環境研やAGAGE等のin-situ観測値も含めた約60ステーションの2005-2009年のデータを用いた。
KAKENHI-PROJECT-23710034
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23710034
大気化学輸送モデルを用いたトップダウン手法による一酸化二窒素の全球収支の解析
初期推定値(priorフラックス)は、EDGARv4.1の人為起源放出量推定値と、フランスの研究グループによるORCHIDEE O-CN陸上生態系モデル及びPISCES海洋モデルの推定値、そしてGFED2のbiomass burningによる放出量推定を組み合わせたものであり、全球年間放出量は17 TgN程度である。推定領域はTransCom3(CO2)で用いられた22領域(陸・海11領域)に準拠している。逆解析は、濃度測定誤差、測定値の時間代表性やモデル輸送等の誤差を考慮し、Rayner et al. (1999)に準拠した逆解法アルゴリズムを用いて行った。東南アジア、ヨーロッパ、北太平洋で逆解析推定値(posterior)がpriorよりも増加し、南緯45度以南の海洋で減少したが、他の地域には大きな変化はなかった。しかし地域毎のフラックスの季節変動は逆解析によって振幅や位相が特に陸上において大きく変化しており、プロセスモデルあるいは統計手法による推定は未だ容易ではないことが伺えた。大気化学気候モデル(ACTM)をベースに大気中一酸化二窒素(N2O)同位体モデルを開発した。また、モデル最適化手法を開発し、N2O同位体モデルを大気観測データを用いて最適化を行うことにより、地表放出源のN2O同位体比を見積もった。観測データとしては、地上観測ステーション、フィルン空気測定、成層圏気球観測により得られたそれぞれのデータを用い、大気中N2O濃度及び同位体比の長期トレンド、南北勾配および光分解による同位体分別についてモデルの最適化を行った。この最適化により地表から中部成層圏に至るまで大気中N2O同位体の時空間変動を現実的に再現できるようになり、対流圏中における微小なN2O同位体の子午面分布までもよく再現された。全球N2O放出源平均同位体比の推定は過去の1-boxモデル研究と近い結果を示し、地表付近の大気中長期トレンド観測によりほぼ決まる傾向が示唆された。しかし、半球スケールの見積もりは過去の2-boxモデルと異なり、半球間大気交換時間等のboxモデルに用いられる各種パラメータや、3次元モデル内で再現される対流圏内のN2O同位体の空間分布が大きく影響していることが示唆された。これまでの各機関による大気中N2O同位体の観測とモデル計算の結果を比較した結果、長期トレンドのような時間変動はほぼ一致した傾向を示すものの、空間分布に関しては、機関間の同位体測定用標準ガスのスケールの違いが、現実以上の大きな差を生じさせている状況が見てとれた。したがって、この同位体測定スケールの統一により、より高度なモデル解析、すなわち、同位体情報を含めた逆解法による地域毎のN2O放出量推定および放出源の特定が実現可能となることが期待される。大気化学最初のN2O逆解析により既に全球N2O放出量変動の推定を行うことができた。加えて新たにマルチエミッション計算法を開発し、おおまかなフラックス推定とより現実的なフラックス先験値の導出方法を考案した。次年度は高解像度の全球N2O逆解析を行う予定である。第一次の前進計算・逆解析を行い、それらを海外の他のモデル計算結果と比較することで、我々のモデルの性能が非常に高いこと、またその観点からみた世界的位置付けがよく把握できた。観測データの整備をほぼ終え、より高精度の逆解析の準備が整った。
KAKENHI-PROJECT-23710034
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23710034
小学算数を中学数学に接続する分数による除法に関する学習指導の開発研究
本研究の課題意職は,算数を数学に接続するという「教育内容と学習の適時性」について,一般化の視座から理論的に明確にすると同時に,実践的にも当該教材の意義を明らかにする点にある。いくつかある接続教材の中から,特に問題を含む「分数による除法」(以下「÷分数」)をとりあげ,上記課題に対する解答を試みた。実際,平成6年2月に文部省によって実施された「教育課程実施状況調査」によれば,6学年児を対象とする「分数÷分数」を立式させる問題の通過率は27.2%であり,一方5学年児を対象とする「小数÷小数」(以下「÷小数」)を立式させる問題の通過率は65.9%であった。両問題の数理構造は類似しているにもかかわらず,通過率に40%近くの差が生じるところに,接続を考察する上で,基本的な問題が内包されていると考えた。本年度の研究実績の概要をまとめれば,次の3点に集約される。第1点は,上で述べたような「÷分数」に関する低い通過率の要因を一般化の視座から理論的に明らかにした点である。本研究では,「÷分数」と「÷小数」の通過率の差が立式に不可分なアルゴリズムの理解によるものであり,両者のアルゴリズムの理解が「外延的一般化」あるいは「内包的一般化」として質的に異なることを指摘した。第2点は「÷分数」指導の新たな目的を提起した点である。つまり,小学算数を中学数学に接続する教材という視座から,算数を統合し代数へと発展させる出発点として「÷分数」の教材を位置づけるべきことを指摘した。第3点としては,現行の比例的推論に基づく「÷分数」指導に代わって,新たな指導の対案を提案した点である。その対案とは,立式のためには「比較」のスキーマを前提とし,「×逆数」の説明には,既有の数学的知職を仮定する教授学的介入である。本研究では,この対案に基づく教授実験を設計,実施し,その妥当性,有効性を示すことができた。本研究の課題意職は,算数を数学に接続するという「教育内容と学習の適時性」について,一般化の視座から理論的に明確にすると同時に,実践的にも当該教材の意義を明らかにする点にある。いくつかある接続教材の中から,特に問題を含む「分数による除法」(以下「÷分数」)をとりあげ,上記課題に対する解答を試みた。実際,平成6年2月に文部省によって実施された「教育課程実施状況調査」によれば,6学年児を対象とする「分数÷分数」を立式させる問題の通過率は27.2%であり,一方5学年児を対象とする「小数÷小数」(以下「÷小数」)を立式させる問題の通過率は65.9%であった。両問題の数理構造は類似しているにもかかわらず,通過率に40%近くの差が生じるところに,接続を考察する上で,基本的な問題が内包されていると考えた。本年度の研究実績の概要をまとめれば,次の3点に集約される。第1点は,上で述べたような「÷分数」に関する低い通過率の要因を一般化の視座から理論的に明らかにした点である。本研究では,「÷分数」と「÷小数」の通過率の差が立式に不可分なアルゴリズムの理解によるものであり,両者のアルゴリズムの理解が「外延的一般化」あるいは「内包的一般化」として質的に異なることを指摘した。第2点は「÷分数」指導の新たな目的を提起した点である。つまり,小学算数を中学数学に接続する教材という視座から,算数を統合し代数へと発展させる出発点として「÷分数」の教材を位置づけるべきことを指摘した。第3点としては,現行の比例的推論に基づく「÷分数」指導に代わって,新たな指導の対案を提案した点である。その対案とは,立式のためには「比較」のスキーマを前提とし,「×逆数」の説明には,既有の数学的知職を仮定する教授学的介入である。本研究では,この対案に基づく教授実験を設計,実施し,その妥当性,有効性を示すことができた。
KAKENHI-PROJECT-14022233
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14022233
動的共有結合架橋の導入による新規多機能型モノドメイン液晶エラストマーの創製
最終年度においては、ポリエステルを基盤として結合交換型動的共有結合架橋を導入した機能性エラストマーの調製法の確立を目指した。具体的には、側鎖に多点カルボン酸基を含む非晶・線状ポリエステル(PE-COOHと呼称)を構成ポリマーとした。なお、本ポリマーは、我々が新規に合成法を確立した有用架橋性ポリエステルである。架橋剤としてジエポキシ分子を用い、エポキシ-カルボン酸の開環反応を介して架橋を施すことで、結合交換の担い手をなる「エステル結合」と「フリーOH基」を多点で含む網目構造を形成させた。得られた架橋試料は、室温付近では結合交換が凍結されているため高強度エラストマーとして振る舞うが、加熱することで結合交換が活性化することがわかった。この結合交換能により、再成型性・再利用性・表面傷の修復・自己接着性など、従来の共有結合架橋材料では発現し得ない機能を付与することに成功した。また、構成ポリマーPE-COOHのカルボン酸基導入割合を調節することで、架橋密度の異なる試料を調製し、結合交換温度などの諸物性に与える影響を詳細に調査した。上記知見は、国内・国際学会での成果発表はもちろんのこと、査読付き国際雑誌、国内特許出願、工業雑誌への寄稿など、様々な形で公表した。本研究課題には「液晶エラストマー」というタイトルを付したが、我々が助成期間内に達成した「結合交換型共有結合架橋の網目構造への導入」は「液晶・非晶」問わずエラストマー材料を機能化する上で有用であった。架橋後の再利用や再成型・傷の修復などの機能を有する本材料は、環境に配慮した新規・エコマテリアルとしての価値を見出すことができ、且つ資源やエネルギーの乏しい極限環境(宇宙や深海)での活躍も期待される。本年度は、目的の主鎖型液晶エラストマー調製法の確立と物性評価を主に行った。dimethyl p,p'-bibenzoateと1,2,6-hexanetriol、1,5-pentandiolを溶融重縮合し、フリーOH基を含む主鎖型液晶ポリエステルを得たのち、エステル交換触媒(1,5,7-Triaza bicyclo[4.4.0]dec- 5-ene(TBU))を混合して鎖間を熱架橋した(フリーOH基とエステル結合間で架橋が起こり、その際新たにフリーOH基が生成するため、系中のフリーOH基の数は一定である)。DSC測定と広角X線散乱より、架橋後の試料も液晶性を保っており、液晶ー液体相転移温度(Ti)は約109°Cに有することを確認した。力学特性評価として、熱機械測定と応力緩和測定を行った。エステル交換触媒を含む架橋試料では、高温での軟化(軟化温度は約166°C)およびほぼ100%の応力緩和が観測された。一方で、エステル交換触媒を含まない試料では、軟化や応力緩和が見られなかった。これらの比較から、エステル交換触媒含有試料の高温での軟化や応力緩和は、高温で触媒が活性化され、フリーOH基とエステル結合間で結合交換が起こるためといえる。実際に、200°Cのヒーター上に一定時間試料を置くと、徐々に軟化し、再成型が可能であった。モノドメイン化した試料に関しては、結合交換が凍結している軟化温度以下では、Ti付近(109°C)で可逆な伸縮を示し(伸縮率約40%)、従来のLCEと同様の伸縮特性を有することが確認できた。その他、最近では、架橋度と液晶エラストマー試料の力学特性との相関についても判ってきた。本研究課題では、結合交換型動的共有結合架橋を組み込み、高温での良成型加工性を付与した新規主鎖型液晶エラストマーの創製を主な目的としている。課題申請時の研究計画では、平成29年度は<分子合成・架橋反応法の確立>と<物性評価・解析>としてあり、上記で示したとおり、今年度は結合交換型動的架橋液晶エラストマーの調製法の確立および物性評価まで行うことができた。また、架橋度と物性の相関など、液晶エラストマーの研究分野における興味深いテーマについても追究することができてきている。これらの理由から、現在までの進歩状況としては「おおむね順調に進展している」とする。また、学会発表は、国内学会での口頭発表が2件、国内国際学会が1件を行った。新規材料として同分野の研究者からの興味も得ることができ、本研究課題の新規性・意義を感じることができた。最終年度においては、ポリエステルを基盤として結合交換型動的共有結合架橋を導入した機能性エラストマーの調製法の確立を目指した。具体的には、側鎖に多点カルボン酸基を含む非晶・線状ポリエステル(PE-COOHと呼称)を構成ポリマーとした。なお、本ポリマーは、我々が新規に合成法を確立した有用架橋性ポリエステルである。架橋剤としてジエポキシ分子を用い、エポキシ-カルボン酸の開環反応を介して架橋を施すことで、結合交換の担い手をなる「エステル結合」と「フリーOH基」を多点で含む網目構造を形成させた。得られた架橋試料は、室温付近では結合交換が凍結されているため高強度エラストマーとして振る舞うが、加熱することで結合交換が活性化することがわかった。この結合交換能により、再成型性・再利用性・表面傷の修復・自己接着性など、従来の共有結合架橋材料では発現し得ない機能を付与することに成功した。また、構成ポリマーPE-COOHのカルボン酸基導入割合を調節することで、架橋密度の異なる試料を調製し、結合交換温度などの諸物性に与える影響を詳細に調査した。
KAKENHI-PROJECT-17K17708
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K17708
動的共有結合架橋の導入による新規多機能型モノドメイン液晶エラストマーの創製
上記知見は、国内・国際学会での成果発表はもちろんのこと、査読付き国際雑誌、国内特許出願、工業雑誌への寄稿など、様々な形で公表した。本研究課題には「液晶エラストマー」というタイトルを付したが、我々が助成期間内に達成した「結合交換型共有結合架橋の網目構造への導入」は「液晶・非晶」問わずエラストマー材料を機能化する上で有用であった。架橋後の再利用や再成型・傷の修復などの機能を有する本材料は、環境に配慮した新規・エコマテリアルとしての価値を見出すことができ、且つ資源やエネルギーの乏しい極限環境(宇宙や深海)での活躍も期待される。優先事項としては、上記成果をまず論文としてまとめ、発表することである。また、課題申請時の研究計画では、平成30年度の計画として<4.物性制御への挑戦>と記載した。本分子設計での物性制御は、用いる構成モノマーや割合を調整することで行うことができると考えている。実際に、液晶ポリエステルのジオールスペーサーとして用いている1,2,6-hexanetriolと1,5-pentandiolの割合を変化させることで、液晶ー液体相転移温度(Ti)が変化することがすでに確認できている。今後は、液晶エラストマーとしての力学特性について評価していく予定である。さらに、平成29年度に研究を遂行する中で、結合交換型架橋を利用して調製する架橋材料の「特異的なゲル化機構」を解明するという研究テーマにも着手した。これまで、結合交換型架橋を伴う材料(vitrimerと総称される)の、架橋後の試料の物性評価は盛んに行われてきた。しかしながら、架橋材料が得られるまでの分岐生成・架橋進行・巨大分子化に関しては十分に知見がない。本研究課題での分子設計に用いている結合交換型架橋は、架橋生成の際、分子鎖の切断を伴う。このような特異的な架橋の進行に基づくゲル化機構はこれまで十分に解明されていないため、本研究課題執行中にこのゲル化について詳細を明らかにできれば、学術的に意義があると言える。現在は、特に、結合交換に関与する官能基(本分子設計の場合は、フリーOH基とエステル結合)の比率が、ゲル化の進行に与える影響について、主に動的光散乱測定を用いて詳細に調査している。ゲル化機構の解明を行ったのちに、架橋試料における官能基の比率と力学物性との相関について明らかにしていく予定である。平成29年度は、ほぼ使用計画と同額を使用して研究を遂行した。差額については、16000円程度であり、ほぼ差がないといえる。差額分16000円は、平成30年度の物品費として使用する予定である。
KAKENHI-PROJECT-17K17708
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K17708
非対称マッピング狭帯域符号化変調方式および非対称通信路におけるViterbi復号法
本研究では、非対称マッピング狭帯域符号化変調方式、及び、非対称通信路におけるViterbi復号法について研究を行なった。以下、本研究で得られた研究成果の要約を述べる1.狭帯域かつ高い誤り訂正能力を有するMulti-h畳み込み符号化連続位相変調方式(CPM)に、非対称なマッピングを組み合わせることにより、ユ-クリッド距離を拡大できることが示された。また、誤りパスの個数と平均出現確率も減少させることができることが示され、誤り率特性を一層改善できることが明らかになった。2.Multiple Trellis符号化連続位相変調方式に、非対称マッピングを用いることにより、従来、誤り訂正できなかった平行パス誤りが訂正できるようになり、ユ-クリッド距離を大きくすることが可能となり、誤り率特性が一層改善できることが明らかになった。3.光通信チャンネルにおけるViterbi復号において、光通信チャンネルの非対称性を利用した高速復号方式RPVD(Reduced Path Viterbi Decoder)を提案した。この方式は、正しいパスである可能性のきわめて小さいパスを除去することにより、Viterbi復号の復号時間の大部分をしめるAdd-Compare-Select(ACS)の回数の大幅な削減を可能としている。理論解析、及び、計算機シミュレ-ションの結果、誤り率特性を劣化させることなく、ACSの回数の大幅な低減ができることが示され、光通信チャンネルにおける高速化復号としてきわめて適した方式であることが明らかになった。本研究では、非対称マッピング狭帯域符号化変調方式、及び、非対称通信路におけるViterbi復号法について研究を行なった。以下、本研究で得られた研究成果の要約を述べる1.狭帯域かつ高い誤り訂正能力を有するMulti-h畳み込み符号化連続位相変調方式(CPM)に、非対称なマッピングを組み合わせることにより、ユ-クリッド距離を拡大できることが示された。また、誤りパスの個数と平均出現確率も減少させることができることが示され、誤り率特性を一層改善できることが明らかになった。2.Multiple Trellis符号化連続位相変調方式に、非対称マッピングを用いることにより、従来、誤り訂正できなかった平行パス誤りが訂正できるようになり、ユ-クリッド距離を大きくすることが可能となり、誤り率特性が一層改善できることが明らかになった。3.光通信チャンネルにおけるViterbi復号において、光通信チャンネルの非対称性を利用した高速復号方式RPVD(Reduced Path Viterbi Decoder)を提案した。この方式は、正しいパスである可能性のきわめて小さいパスを除去することにより、Viterbi復号の復号時間の大部分をしめるAdd-Compare-Select(ACS)の回数の大幅な削減を可能としている。理論解析、及び、計算機シミュレ-ションの結果、誤り率特性を劣化させることなく、ACSの回数の大幅な低減ができることが示され、光通信チャンネルにおける高速化復号としてきわめて適した方式であることが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-01550271
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01550271
希土類原子加熱法によるパノスコピック形態制御光学機能ガラスの創製と光波制御
本研究は、光非線形性を示す単結晶ラインをガラス表面にレーザー誘起原子加熱法(希土類/遷移金属原子加熱法)で書き込み、形態や光機能を明らかにすると共に次世代光波制御デバイスへと展開することを目的とするものである。今年度の研究で得られた成果を以下に示す。○レーザー誘起原子加熱法の適用によって、Li_2O-Nb_2O_3-SiO_2系ガラスにおいて強誘電性LiNbO_3結晶ラインのパターニング(Yb:YVO_4ファイバーレーザー:波長1080nm、パワー:1.3W、走査速度:7μm/s)を行い、偏光マイクロラマン散乱スペクトルおよび第二高調波強度の方位依存性(Azimuthal法)から、LiNbO_3結晶は単結晶に近い高配向(レーザー走査方向に沿ってc-軸配向)で成長していることを明らかにした。光導波(波長:632.8nm)実験の結果、LiNbO_3結晶ラインに有効に光が閉じ込められることを実証した。また、前駆体ガラスにEr_2O_3を添加することにより、結晶ラインから、Er^<3+>イオンに起因する蛍光が観測されたことから、LiNbO_3結晶にEr^<3+>が固溶することを明らかにした。光制御デバイス創製に大きく前進した。○レーザー誘起原子加熱法によって、Gd_2O_3-MoO_3-B_2O_3系ガラスにおいて強弾性/強誘電性を示すβ'-Gd_2(MoO_4)_3結晶ラインは、屈折率の周期的構造およびそれに伴う第二高調波強度の周期的変化を示し、レーザー誘起結晶化において極めて特異な結晶成長をすることを発見した。また、前駆体ガラスを通常の電気炉で熱処理を行うと、結晶化に伴って、電気炉内(結晶化後の冷却過程ではなく)で自ら微粉化する現象を発見した。この現象を、我々は自己微粉化現象と命名した。自己微粉化したβ'-Gd_2(MoO_4)_3結晶片においても、屈折率の周期的構造およびそれに伴う第二高調波強度の周期的変化が観測された。これらの現象はいずれも、β'-Gd_2(MoO_4)_3結晶の強弾性に基づくものと結論した。新規光制御デバイスとしての可能性が高い。本研究は、光非線形性を示す結晶ドット及び単結晶ラインをガラス表面に希土類原子加熱法で書き込み、形態や光機能(伝搬特性等)を明らかにすると共に次世代光波制御デバイスへと展開することを目的とするものである。今年度の研究で得られた成果を以下に示す。1.Sm_2(MoO_4)_3系強誘電体結晶ラインの書き込み○強誘電性β'-Sm_2(MoO_4)_3結晶が熱処理によって生成するSm_2O_3-MoO_3-B_2O_3系ガラスを新規に開発した。Sm_2O_3-MoO_3系ではα-Sm_2(MoO_4)_3とβ'-Sm_2(MoO_4)_3結晶が存在し、α-型は常誘電体であり、β'-型は強誘電体であることから、開発したガラス系は極めて重要である。また、Sm_2O_3をGd_2O_3など他の希土類REに変えてもβ'-RE_2(MoO_4)_3結晶がガラス中から生成することを明らかにした。○21.25Sm_2O_3.63.75MoO_3.15B_2O_3ガラスにcw Nd:YAGレーザー(波長:1064nm)を照射し、レーザー走査速度を変えることによって屈折率変化ラインおよび光非線形性を示すβ'-Sm_2(MoO_4)_3結晶ラインの書き込みに成功した。特に、レーザーパワー一定下(0.4W)では、書き込んだ結晶ラインの形態(形や均質性)がレーザー走査速度によって大きく変化し、走査速度が1μm/sのときに比較的良質な結晶ラインが書けることが明らかになった。○YAGレーザー照射によって書き込んだ結晶ラインから明瞭な第二高調波発生を確認し、生成したSm_2(MoO_4)_3結晶が光非線形性を示すことを明らかにした。2.曲線状の結晶ラインの書き込み非常に均質な直線状の結晶ラインの書き込みに成功しているSm_2O_3-Bi_2O_3-B_2O_3系ガラスについて、レーザー照射方向のみを変化させることで曲線状の結晶ラインの書き込みを行った結果、非線形性を示すSm_xBi_<1-x>BO_3結晶から成る曲線状(曲がり角度:0-90°、サイン曲線型)結晶ラインの書き込みに成功した。また、レーザー照射方向を変えても結晶成長方向は同じであることを偏光マイクロラマン散乱スペクトルの結果から見出した。ただし、方向変化点近傍では結晶成長方位は徐々に変化しているというモデルを提案した。本研究は、光非線形性を示す結晶ドット及び単結晶ラインをガラス表面に希土類原子加熱法で書き込み、形態や光機能(伝搬特性等)を明らかにすると共に次世代光波制御デバイスへと展開することを目的とするものである。今年度の研究で得られた成果を以下に示す。○ガラスの熱処理によって生成する強誘電性β'-RE_2(MoO_4)_3結晶(RE:Sm,Gd,Dy)の結晶化挙動、構造、光学的、誘電的性質を明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-16080207
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16080207
希土類原子加熱法によるパノスコピック形態制御光学機能ガラスの創製と光波制御
特に、希土類の種類に関わらず目的結晶が容易に生成することを示した。○8Sm_2O_3. 37Bi_2O_3. 55B_2O_3ガラスに光非線形性を示すSm_xBi_<1-x>BO_3結晶ラインを曲線状および分岐状の形態で書き込むことに成功した。○曲線状および分岐状のSm_xBi_<1-x>BO_3結晶ラインの光透過性に関しては、屈曲点あるいは分岐点で顕著な光の散乱は観察されず、いずれも光導波路として機能することを明らかにした。特に、40度のY字分岐構造を有する結晶ラインでもガラスと結晶との屈折率差(5%)が大きく、屈曲点で全反射条件を満たしているものと結論した。○共焦点レーザー顕微鏡によりSm_xBi_<1-x>BO_3結晶ラインの表面形態を観察した結果、結晶ラインの表面は非常にスムースであり、屈曲点あるいは分岐点においても顕著な構造の乱れがないことを明らかにした。○希土類原子加熱法に代わる新規な手法として遷移金属イオンを利用したレーザー誘起結晶化法を開発した。希土類原子法と比較して、遷移金属イオンの含有量が1mol%程度でもレーザー照射によって十分発熱し、結晶化が起こる。例として、非常に大きな二次光非線形性を示すBa_2TiGe_2O_8結晶をNi^<2+>やFe^<2+>イオンを含んだガラスにYAGレーザーを照射することにより均一かつ配向性のある結晶ラインの書き込みに成功した。本研究は、光非線形性を示す結晶ドット及び単結晶ラインをガラス表面に希土類/遷移金属原子加熱法で書き込み、形態や光機能(伝搬特性等)を明らかにすると共に次世代光波制御デバイスへと展開することを目的とするものである。今年度の研究で得られた成果を以下に示す。○レーザー照射の結晶成長速度を求め、希土類原子加熱法において品質の良い結晶ラインの形成には、レーザー照射による結晶成長速度とステージ走査速度をマッチングさせることが重要であることを見出した。また、屈曲を持つ結晶ラインにおいて、結晶方位は屈曲点直上で急激に変化するのではなく、屈曲後徐々に元の方位に対応していくことを明らかにした。○希土類原子加熱法をSm_2O_3-Gd_2O_3-MoO_4-B_2O_3系ガラスに適用し、強誘電性を示すβ'-Gd_xSm_<2-x>(MoO_4)_3結晶ラインの書込みに成功した。共焦点レーザー顕微鏡によるラインの形態観察から、レーザー照射条件とライン形態との関係を明らかにした。検討したガラス組成では、しかしながら、結晶の配向は確認されなかった。○Gd_2O_3-MoO_4-B_2O_3系ガラスに遷移金属原子加熱法を適用してβ'-Gd_2(MoO_4)_3結晶ラインの形成を試みた結果、希土類原子加熱法と比較して、容易に結晶ラインを書き込むことができ、しかも偏光ラマン散乱スペクトル測定から結晶ライン中の結晶は配向していることを明らかにした。○レーザー誘起原子加熱法を酸フッ化物ガラス系に適用し、SiO_2-Al_2O_3-Na_2O-LaF_3-NiOガラスにおいて、LaF_3から成る結晶ラインの形成に成功した。形成したラインのマイクロラマン散乱スペクトル測定から、しかしながら、ラインは酸化物ガラス中にLaF3のナノ結晶が分散した形態をとっているものと提案した。分岐ラインの形成やEr^<3+>,Tm^<3+>などの希土類イオンの添加によるフッ化物ナノ結晶から成る新規な光導波路や短波長レーザーなどへの展開に道を拓いた。○レーザー照射と化学エッチングの組合せによる新規な形態制御加工法を提案し、実際にBaO-TiO2-GeO2系ガラスにおいて数μm-
KAKENHI-PROJECT-16080207
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16080207
革新的エネルギー転換に資する固体酸化物触媒の開発
炭素のCO2ガス化を触媒する複合酸化物を検討し、アルカリ土類含有ペロブスカイト酸化物が優れた活性を有することを見出した。組成を系統的に変化させて、その活性を評価したところ、BaSnO3やBaCeO3がBaTiO3やBaZrO3と比べて著しく高いガス化促進効果を示した。Sn系およびCe系のアルカリ土類含有ペロブスカイト酸化物触媒では、CO2-炭素-触媒の三相界面の“近傍"のミクロ領域において、触媒表面のBaが炭素とコンプレックスを形成するとともに、Ba上に吸着したCO2を活性化し、これによって、炭素のCO2ガス化を促進するものと考えられる。炭素のCO2ガス化において、Sn系ならびにCe系複合酸化物がTi系ならびにZr系複合酸化物と比較して優れた触媒活性を有することを見出した。そこで、優れた活性を有する触媒の設計指針を得るべく、これら複合酸化物触媒におけるCO2ガス化促進機構を明らかにすることを目的に、触媒と炭素との相互作用について評価を行った。ここでは、複合酸化物触媒と炭素を機械的に混合し、不活性雰囲気ならびにCO2雰囲気において、加熱時の重量変化を熱天秤で評価した。その結果、CO2ガス化活性の低いTi系ならびにZr系複合酸化物触媒では、不活性雰囲気において加熱に伴う重量変化がほとんど認められなかったのに対し、高いCO2ガス化活性を示したCe系ならびにSn系複合酸化物触媒においては、700750°C程度以上で著しい重量減少を生じ、反応後の試料の粉末X線回折より、前者は複合酸化物の状態を保っているのに対し、後者では、相分離が生じていた。また、CO2雰囲気においては、さらに重量減少が促進されたが、その開始温度は不活性雰囲気におけるそれと概ね一致した。なお、CO2雰囲気においては、反応前後で触媒の結晶構造は普遍であった。これらのことから、優れたCO2ガス化活性を示す複合酸化物触媒においては、炭素との固-固接触界面において部分的に炭素と直接的に反応し、それによって、ガス化を促進していることが強く示唆された。平成28年度は、これらの触媒におけるガス化促進機構の詳細を、構造解析だけでなく化学状態分析を駆使して明らかにする。本年度は、開発触媒におけるCO2ガス化促進機構を明らかにするとともに、より高性能な触媒の設計指針を得ることを目的に検討を行った。ガス化反応速度を大幅に促進する触媒においては、CO2供給雰囲気においてはその結晶構造が維持されるが、不活性雰囲気中では固体炭素と相互作用することを見出した。これは、さらに高性能な触媒を設計する上で重要な知見であり、今年度の目的を達成できた。今年度は、Baを含むSn、Ce、TiおよびZr系において、これらの複合酸化物触媒を固体炭素と接触させ、不活性雰囲気およびCO2ガス化雰囲気下で加熱した際の状態変化を評価し、触媒活性との関係を調査した。不活性雰囲気下での加熱における重量減少率はSn系>Ce系>Zr系Ti系となった。加熱後試料の粉末X線回折より、Sn系における結晶質相はほぼ金属Snのみであり、また、Ce系ではCeO2のみであった。一方、Ti系およびZr系において、結晶構造は不変であった。これらの試料のSEM-EDS観察より、Sn系およびCe系においては、Ba成分が炭素中に均一に分布し、一方、Zr系およびTi系では、Ba成分の遊離と炭素中への分布は認められなかった。このことから、触媒活性の高いSn系およびCe系においては、上記の状態変化に伴い炭素中へ拡散したBaが活性点となり、炭素のガス化を促進していることが強く示唆された。なお、CO2雰囲気においては、いずれの触媒においても上記のような変化は認められないことから、酸化性ガスが共存する雰囲気においては、バルク構造はほとんど変化せず、CO2-炭素-触媒の三相界面の“近傍"のミクロ領域でのみ上記の状態変化に伴うガス化促進が生じることが強く示唆された。Ba-L3吸収端近傍のX線吸収分光測定により、炭素中に拡散したBaの化学状態を評価したところ、Ba-L3吸収端は複合酸化物触媒のそれと同じであった。このことから、Baは2価の状態を保っていることが明らかとなった。これらの結果より、Sn系およびCe系複合酸化物触媒においては、触媒表面のBaが炭素とコンプレックスを形成するとともに、吸着したCO2を活性化し、これによって、炭素のガス化を促進するものと考えられる。本年度は、開発触媒におけるCO2ガス化促進機構を明らかにするとともに、より高性能な触媒の設計指針を得ることを目的に、Baを含む複合酸化物触媒における、不活性雰囲気ならびにガス化雰囲気における状態および微構造変化を詳細に評価し、これによりガス化反応促進機構を予測した。高い活性を有する触媒では、表面のBaが活性点となり、固体炭素との接触点においてコンプレックスを形成するとともに、吸着したCO2を活性化して炭素のガス化を促進することが強く示唆され、高活性触媒の設計に資する重要な知見が得られた。炭素のCO2ガス化を触媒する複合酸化物を検討し、アルカリ土類含有ペロブスカイト酸化物が優れた活性を有することを見出した。Aサイト元素(Mg, Ca, Sr, Ba)とBサイト元素(Mg, Ca, Sr, Ba)を系統的に変化させて実験を行ったところ、触媒活性はAサイト元素がBa>Sr≧Ca>Mg、BサイトがSn>Ce>Zr>Tiの順で高くなった。特にBサイト元素の依存性が高く、BaSnO3やBaCeO3がBaTiO3やBaZrO3と比べて著しく高いガス化促進効果を示した。
KAKENHI-PROJECT-15K18210
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K18210
革新的エネルギー転換に資する固体酸化物触媒の開発
触媒と炭素を不活性ガス雰囲気下で加熱したところ、BaTiO3やBaZrO3では重量変化がほとんど認められなかった。これに対し、BaSnO3やBaCeO3では、700750度程度以上で著しい重量減少が生じ、処理後の試料では、SnあるいはCeO2に関するXRDピークが認められたことから、還元分解が生じたものと考えられる。一方、Baを含む結晶性物質は認められなかったことから、Ba種の所在を明らかにするため、SEM-EDS観察を行った。その結果、Baは炭素マトリックス中に拡散し、一様に分布していることが明らかとなった。Ba-L3吸収端のXANESスペクトルより、炭素中に拡散したBaは+2価の状態を保っており、Ba-O-C等のコンプレックスを形成していることが示唆された。CO2雰囲気においては、重量減少開始温度は不活性雰囲気におけるそれと概ね一致したものの、反応前後で触媒の結晶構造は普遍であった。これらのことから、Sn系およびCe系のアルカリ土類含有ペロブスカイト酸化物触媒では、CO2-炭素-触媒の三相界面の“近傍"のミクロ領域において、触媒表面のBaが炭素とコンプレックスを形成するとともに、Ba上に吸着したCO2を活性化し、これによって、炭素のCO2ガス化を促進するものと考えられる。炭素のCO2ガス化を触媒する複合酸化物を検討し、アルカリ土類含有ペロブスカイト酸化物が優れた活性を有することを見出した。組成を系統的に変化させて、その活性を評価したところ、BaSnO3やBaCeO3がBaTiO3やBaZrO3と比べて著しく高いガス化促進効果を示した。Sn系およびCe系のアルカリ土類含有ペロブスカイト酸化物触媒では、CO2-炭素-触媒の三相界面の“近傍"のミクロ領域において、触媒表面のBaが炭素とコンプレックスを形成するとともに、Ba上に吸着したCO2を活性化し、これによって、炭素のCO2ガス化を促進するものと考えられる。今年度は、同位体C18O2を用いたガス化反応促進機構の解明に関する予備検討を行ったが、各触媒間で明確な差異が認められなかったため、本検討を保留し、触媒と炭素との相互作用の観点から反応促進機構の解明を検討した。平成28年度も引き続き、ガス化反応促進機構の解明を進めるとともに、得られた知見を基に、より高機能の触媒構造を提案する。Baを含む複合酸化物においては、4価カチオンとの相互作用によってBaの触媒活性が変化することを見出した。次年度は、他のアルカリ土類金属を用いた場合にも同様の触媒活性が発現するか否かについて検証するとともに、これらアルカリ土類金属の特性、例えば塩基性と触媒活性との関係を調査することにより、さらなる触媒活性の向上に資する知見を得る。無機材料本年度の予算の大半を占める消耗品のほとんどは、他の予算で購入した物を使用した。また、調査旅費については、本年度予算より支出予定であった海外調査旅費を他の予算より支出したため、残金が生じた。今年度は物品費(消耗品)および調査研究旅費を、ほぼ、当初の計画どおりに執行したため、平成26年度からの繰越金が残った。また、当初の予想とは異なる結果が得られており、さらに詳細な検討を次年度に行う必要が生じた。そのため、残金は平成29年度に繰越す。
KAKENHI-PROJECT-15K18210
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K18210
サリチル酸、キニンによる耳鳴りとネコ皮質聴覚野との関係
耳鳴りは日常診療における難治症状の一つである。その主たる理由としては、耳鳴りの原因が不明な場合がほとんどであることがあげられる。サルチル酸、キニンは難聴、耳鳴りを発生させる事で知られているが、これら薬剤についても聴覚経路上どこで、どのようなメカニズムで耳鳴りが発現するかについては明らかでない。今までの実験動物を用いた報告によると、蝸牛からの電気生理学的検討により複合活動電位の変化、形態学的検討による外有毛細胞の障害がみられた。また、蝸牛核、下丘における自発放電発火率の上昇、聴皮質における第二次皮質聴覚野からの自発放電発火率上昇した結果から、耳鳴りの神経伝導路は通常の聴覚経路classical pathwayとは違うextra-lemuniscal pathwayが強く関与していると推察された。今回の研究では、サリチル酸、キニンを実験動物に投与して耳鳴り発現について電気生理学的に検討した。複合活動電位は2,4,8,16kHzの短音によって記録され、クリックトレインは8,16,32,64msの間隔で与えられた.その結果、サチリル酸、キニン投与動物の複合活動電位の閾値は薬剤投与後の全ての動物において5-30dB上昇し、順応現象の変化が認められた。これらの複合活動電位の変化はカルシウムイオンチャンネルが強く関係しており、順応現象を抑制した。この事がextra-lemuniscal pathwayへの影響したと考えられ、耳鳴りが発生する原因の一つと推察した。また、複合活動電位の波形について検討したところ、キニン投与群のみ異常が見られた。このことから、これら薬剤が全て同様なメカニズムではないと考えられた。今回の研究において我々はネコを用いて耳鳴の中枢神経への影響について行った。我々はネコの脳溝がはっきりしているため脳側頭葉表面に存在する皮質聰覚野から容易に神経発火が記録出来ることを経験していた。今までの報告では第一次皮質聴覚野からの神経発火について検討されていたが、我々は聴覚連合野である第二次皮質聴覚野、前部皮質聴覚野も同時に記録することで、これら聴覚連合野についても耳鳴に関連しているか検討した。ダンクステン電極を第一次皮質聴覚野、前部皮質聴覚野そして第二次皮質聴覚野に刺入した。自発放電発火は、電極からの信号をコンピューターで分析し複合ユニットで記録された。音刺激に反応する誘発神経発火は、電極からの信号をフィルター(10-100 Hz)を通して記録されたlocal field potentials(LFPs)として得られた。各皮質聴覚野における特徴周波数はLFPsから測定された。全ての特徴周波数は2kHzから21kHz(平均7.136±4.072kHz)であり、第一次皮質聴覚野では5kHzから15kHz(平均6.797±2.758kHz)、前部皮質聴覚野では3.6kHzから21kHz(平均6.629±5.612kHz)そして第二次皮質聴覚野では2kHzから13kHz(平均8.176±2.964kHz)であった。複合ユニットからの平均自発放電発火率は、第一次皮質聴覚野、前部皮質聴覚野そして第二次皮質聴覚野でそれぞれ3.3sp/s,3.9sp/s,3.1sp/sであった。サリチル酸投与により自発放電発火数の変化は認められたが、特に第二次皮質聴覚野において有意に神経発火の上昇した。耳鳴りは日常診療における難治症状の一つである。その主たる理由としては、耳鳴りの原因が不明な場合がほとんどであることがあげられる。サルチル酸、キニンは難聴、耳鳴りを発生させる事で知られているが、これら薬剤についても聴覚経路上どこで、どのようなメカニズムで耳鳴りが発現するかについては明らかでない。今までの実験動物を用いた報告によると、蝸牛からの電気生理学的検討により複合活動電位の変化、形態学的検討による外有毛細胞の障害がみられた。また、蝸牛核、下丘における自発放電発火率の上昇、聴皮質における第二次皮質聴覚野からの自発放電発火率上昇した結果から、耳鳴りの神経伝導路は通常の聴覚経路classical pathwayとは違うextra-lemuniscal pathwayが強く関与していると推察された。今回の研究では、サリチル酸、キニンを実験動物に投与して耳鳴り発現について電気生理学的に検討した。複合活動電位は2,4,8,16kHzの短音によって記録され、クリックトレインは8,16,32,64msの間隔で与えられた.その結果、サチリル酸、キニン投与動物の複合活動電位の閾値は薬剤投与後の全ての動物において5-30dB上昇し、順応現象の変化が認められた。これらの複合活動電位の変化はカルシウムイオンチャンネルが強く関係しており、順応現象を抑制した。この事がextra-lemuniscal pathwayへの影響したと考えられ、耳鳴りが発生する原因の一つと推察した。また、複合活動電位の波形について検討したところ、キニン投与群のみ異常が見られた。このことから、これら薬剤が全て同様なメカニズムではないと考えられた。
KAKENHI-PROJECT-10770914
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10770914
シェ-グレン症候群の多臓器炎成立におけるアポトーシスの病態生理学的機序
FasリガンドをもつCD4陽性細胞が、Fas抗原陽性細胞と結合し、その細胞を破壊するキラーT細胞活性を示すことが知られている。シェ-グレン症候群に出現する臓器炎、すなわち小唾液腺炎、尿細管間質性腎炎において、アポトーシスの有無、Fas抗原、そのリガンドの発現の有無程度を明らかにし、本症候群の臓器炎の成立機序におけるFas抗原、Fasリガンド系の関与を解明することを目的として検討した。さらに、最近本症候群のモデルとして注目されるalyマウスの顎下腺炎組織においてfas、fasリガンドの発現と、アポトーシスの有無を検討した。1.本症候群患者の小唾液腺生検や尿細管間質性腎炎生検組織におけるFas抗原、Fasリガンドの発現を、組織病変の程度と比較検討した。小唾液腺導管、間質性腎炎尿細管の細胞浸潤部分に於いて、導管上皮、尿細管上皮に強いFas抗原の発現を認めた。浸潤細胞の一部にFasリガンドが陽性にみとめられた。細胞浸潤の多部分に於いて、電子顕微鏡、DNA nick end labeling法にて、唾液腺導管上皮、尿細管上皮細胞にアポトーシスに陥った像が見られた。2.本症候群の唾液腺炎組織におけるFas抗原、Fasリガンド発現のRT-PCR法により検討したところ、Fas抗原、FasリガンドのmRNAの発現が認められた。3.本症候群モデル動物alyの顎下腺におけるfas抗原、Fasリガンドの発現を検討した。細胞浸潤部分に於いて、導管上皮にFas抗原の発現を認めた。浸潤細胞の一部にFasリガンドが陽性にみとめられた。細胞浸潤の多い部分に於いて、DNA nick end labeling法にて、唾液腺導管上皮にアポトーシスに陥った像が見られた。以上により、シェ-グレン症候群の臓器炎に於いて、細胞浸潤の程度に相関して、導管上皮、尿細管上皮にFas抗原の発現が認められ、周囲の浸潤細胞のFasリガンドからのシグナルを受けて、導管上皮、尿細管上皮にアポトーシスが生じ、組織破壊が生じていることが示唆された。FasリガンドをもつCD4陽性細胞が、Fas抗原陽性細胞と結合し、その細胞を破壊するキラーT細胞活性を示すことが知られている。シェ-グレン症候群に出現する臓器炎、すなわち小唾液腺炎、尿細管間質性腎炎において、アポトーシスの有無、Fas抗原、そのリガンドの発現の有無程度を明らかにし、本症候群の臓器炎の成立機序におけるFas抗原、Fasリガンド系の関与を解明することを目的として検討した。さらに、最近本症候群のモデルとして注目されるalyマウスの顎下腺炎組織においてfas、fasリガンドの発現と、アポトーシスの有無を検討した。1.本症候群患者の小唾液腺生検や尿細管間質性腎炎生検組織におけるFas抗原、Fasリガンドの発現を、組織病変の程度と比較検討した。小唾液腺導管、間質性腎炎尿細管の細胞浸潤部分に於いて、導管上皮、尿細管上皮に強いFas抗原の発現を認めた。浸潤細胞の一部にFasリガンドが陽性にみとめられた。細胞浸潤の多部分に於いて、電子顕微鏡、DNA nick end labeling法にて、唾液腺導管上皮、尿細管上皮細胞にアポトーシスに陥った像が見られた。2.本症候群の唾液腺炎組織におけるFas抗原、Fasリガンド発現のRT-PCR法により検討したところ、Fas抗原、FasリガンドのmRNAの発現が認められた。3.本症候群モデル動物alyの顎下腺におけるfas抗原、Fasリガンドの発現を検討した。細胞浸潤部分に於いて、導管上皮にFas抗原の発現を認めた。浸潤細胞の一部にFasリガンドが陽性にみとめられた。細胞浸潤の多い部分に於いて、DNA nick end labeling法にて、唾液腺導管上皮にアポトーシスに陥った像が見られた。以上により、シェ-グレン症候群の臓器炎に於いて、細胞浸潤の程度に相関して、導管上皮、尿細管上皮にFas抗原の発現が認められ、周囲の浸潤細胞のFasリガンドからのシグナルを受けて、導管上皮、尿細管上皮にアポトーシスが生じ、組織破壊が生じていることが示唆された。FasリガンドをもつCD4陽性細胞が、Fas抗原の発現している細胞と結合し、その細胞を破壊するCD4陽性キラーT細胞活性を示すことが知られている。シェ-グレン症候群に出現する臓器炎、すなわち小唾液腺炎、ならびに腺外症状として特にその中でも頻度が高い尿細管間質性腎炎において、アポトーシス有無、Fas抗原、そのリガンドの発現の有無程度を明らかにし、シェ-グレン症候群の臓器炎の成立機序におけるFas抗原、Fasリガンド系の関与を解明することを目的として検討した。1.シェ-グレン症候群患者の小唾液腺生検や尿細管間質性腎炎生検の凍結切片に対して抗Fas抗体、抗Fasリガンド抗体を用いて免疫ペルオキシダーゼ法にて染色し、組織病変の程度のFas抗原、リガンドの表現との関係を検討した。小唾液腺導管、間質性腎炎尿細管の細胞浸潤の多い部分に於いて、導管上皮、尿細管上皮に強いFas抗原の発現を認めた。細胞浸潤の少ない部分に於いては、導管、尿細管にはFas抗原に発現は見られなかった。
KAKENHI-PROJECT-08670536
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08670536
シェ-グレン症候群の多臓器炎成立におけるアポトーシスの病態生理学的機序
周辺に見られる浸潤細胞の一部にFasリガンドが陽性にみとめられた。細胞浸潤の多い部分に於いて、電子顕微鏡、DNA nick end labeling法にて、唾液腺導管上皮、尿細管上皮細胞にアポトーシスに陥った像が見られた。2.シェ-グレン症候群の唾液腺炎組織におけるFas抗原、Fasリガンド発現のRT-PCR法により検討したところ、Fas抗原、FasリガンドのmRNAの発現が認められた。以上より、シェ-グレン症候群の臓器炎に於いて、細胞浸潤の程度に相関して、導管上皮、尿細管上皮にFas抗原の発現が認められ、周囲の浸潤細胞のFasリガンドからのシグナルを受けて、導管上皮、尿細管上皮にアポトーシスが生じ、組織破壊が生じていることが示唆された。FasリガンドをもつCD4陽性細胞が、Fas抗原陽性細胞と結合し、その細胞を破壊しキラーT細胞活性を示すことが知られている。シェ-グレン症候群の臓器炎、小唾液腺炎、尿細管間質性腎炎において、アポトーシス、Fas抗原、そのリガンドの発現の有無を明らかにし、シェ-グレン症候群の臓器炎の成立におけるFas、Fasリガンド系の関与を解明することを目的として検討した。平成8年度に、本症候群患者の小唾液腺生検や尿細管間質性腎炎生検組織において、小唾液腺道管、間質性腎炎尿細管に新たなFas抗原の発現を認め、浸潤細胞の一部にFasリガンドが陽性にみとめられることを明らかにした。そこで平成9年度は、同組織のFas抗原、FasリガンドのmRNAの発現を検討した。さらに、最近本症候群のモデルとして注目されるalyマウスの顎下腺炎組織においてFas、Fasリガンドの発現と、アポトーシスの有無を検討した。1.本症候群の唾液腺炎組織におけるFas抗原、Fasリガンド発現のRT-PCR法により検討したところ、Fas抗原、FasリガンドのmRNAの発現が認められた。2.本症候群モデル動物alyの顎下腺におけるFas抗原、Fasリガンドの発現を免疫ペルオキシダーゼ法にて検討した。細胞浸潤部分に於いて、導管上皮にFas抗原の発現を認めた。細胞浸潤の少ない部分では導管にFas抗原に発現は見られなかった。浸潤細胞の一部にFasリガンドが陽性にみとめられた。細胞浸潤の多い部分に於いて、DNA nick end labeling法にて、唾液腺導管上皮にアポトーシスに陥った像が見られた。以上より、シェ-グレン症候群の臓器炎に於いて、細胞浸潤の程度に相関して、導管上皮、尿細管上皮にFas抗原の発現が認められ、周囲の浸潤細胞のFasリガンドからのシグナルを受けて、導管上皮、尿細管上皮にアポトーシスが生じ、組織破壊が生じていることが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-08670536
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08670536
植物運動制御を担うLOVタンパク質の分子構造とシグナル伝達初期過程
フォトトロピン(phot)は、植物の光屈性、葉緑体光定位運動、光気孔開口などの光合成活性の最適化に関わる光調節反応をひきおこす青色光シグナルの光受容体として知られている。phot分子は、LOV1とLOV2と呼ばれる二つの青色光受容部位をもち、光で活性制御されるタンパク質リン酸化酵素であると考えられる。本研究ではそのLOV1やLOV2、酵素活性部位の分子構造を明らかにして、光シグナルにより酵素活性が調節される分子メカニズムの解明を目指して研究を行い、多くの重要な知見を得た。フォトトロピン(phot)は、植物の光屈性、葉緑体光定位運動、光気孔開口などの光合成活性の最適化に関わる光調節反応をひきおこす青色光シグナルの光受容体として知られている。phot分子は、LOV1とLOV2と呼ばれる二つの青色光受容部位をもち、光で活性制御されるタンパク質リン酸化酵素であると考えられる。本研究ではそのLOV1やLOV2、酵素活性部位の分子構造を明らかにして、光シグナルにより酵素活性が調節される分子メカニズムの解明を目指して研究を行い、多くの重要な知見を得た。植物青色光受容体の一つフォトトロピンは、光屈性、葉緑体光定位運動、気孔開口、葉の伸展運動など、光合成効率を、個体、器官、細胞レベルで最適化反応光制御の受容体として重要な役割を果たしている。フォトトロピンはN-末端側にLOVと呼ばれる光受容ドメインを二つ(LOV1、LOV2)もちC-末端側はセリン/スレオニンキナーゼとなっていて、光制御キナーゼとして働くと考えられている。同キナーゼに関して、これまで、自己リン酸化しか知られていなかったが、自身以外にも同キナーゼの一般的基質であるカゼインをリン酸化する能力を有することを初めて証明し、この系を用い、LOV2が光活性制御のメインスイッチとしてとして働き、LOV1はその光感度鈍化を行っていることを見つけ両者の役割分担を明らかにした。各LOVドメインは発色団としてFMNを1分子非共有結合で保持している。青色光照射にともないLOVドメインのFMNは、暗状態(D450)から励起1重項状態を経て系間交叉により励起三重項中間体(L660)を形成し、さらにLOVドメイン内に保存されたシステインと付加物を形成する。(S390)は緩和過程を経てD450に戻る。名工大・工グループと共同で、低温振動分光によりD450でシステインのS-Hがプロトン化してチオール状態にあることを報告していたが、さらにL660でもプロトン化していることを見つけ付加物形成反応機構解明に関する情報を得た。さらにアミドI伸縮振動の光照射による変化から、2次構造変化においてLOV2とLOV1に大きな違いがあることを見つけ、両者間の機能の違いの分子的基盤解明に有用な情報を与えた。さらに京大・理グループと共同で、過渡回折法によりLOV2とキナーゼドメインとの間の部分で、大きな構造変化が起きていることを見つけ、キナーゼ活性制御との関連を議論した。植物青色光受容体の一つフォトトロピンは、光屈性、葉緑体光定位運動、気孔開口、葉の伸展運動など、光合成効率を、個体、器官、細胞レベルで最適化反応光制御の受容体として重要な役割を果たしている。フォトトロピンはN-末端側にLOVと呼ばれる光受容ドメインを二つ(LOV1、LOV2)もちC-末端側はセリン/スレオニンキナーゼとなっていて、光制御キナーゼとして働くと考えられている。同キナーゼに関して、これまで、自己リン酸化しか知られていなかったが、自身以外にも同キナーゼの一般的基質であるカゼインをリン酸化する能力を有することを初めて証明し、この系を用い、LOV2が光活性制御のメインスイッチとしてとして働き、LOV1はその光感度鈍化を行っていることを見つけ両者の役割分担を明らかにした。各LOVドメインは発色団としてFMNを1分子非共有結合で保持している。青色光照射にともないLOVドメインのFMNは、暗状態(D450)から励起1重項状態を経て系間交叉により励起三重項中間体(L660)を形成し、さらにLOVドメイン内に保存されたシステインと付加物を形成する。(S390)は緩和過程を経てD450に戻る。名工大・工グループと共同で、低温振動分光によりD450でシステインのS-Hがプロトン化してチオール状態にあることを報告していたが、さらにL660でもプロトン化していることを見つけ付加物形成反応機構解明に関する情報を得た。さらにアミドI伸縮振動の光照射による変化から、2次構造変化においてLOV2とLOV1に大きな違いがあることを見つけ、両者間の機能の違いの分子的基盤解明に有用な情報を与えた。さらに京大・理グループと共同で、過渡回折法によりLOV2とキナーゼドメインとの間の部分で、大きな構造変化が起きていることを見つけ、キナーゼ活性制御との関連を議論した。phot分子は,光屈性,葉緑体光定位運動,気孔開口光制御などを担う青色光受容体で,N-末端側LOVと呼ばれる発色団ドメインを二つ,C-末端側にセリン/スレオニンキナーゼドメインを持ち,光より制御されるタンパク質キナーゼとして機能すると考えられる。これまでにphotのLOV2ドメイン光反応機構を解明する一方,二つLOVドメインが,キナーゼの光制御おいて異なる役割を果たすこと示唆する結果を得ている。
KAKENHI-PROJECT-17084008
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17084008
植物運動制御を担うLOVタンパク質の分子構造とシグナル伝達初期過程
昨年度の研究によりシロイヌナズナphotでは,LOV2がキナーゼ活性部位光可逆的に結合して,活性制御の光分子スイッチとして機能すること,photlとphot2ではキナーゼ性制御のモードが異なっていることを示唆する結果を得た。さらにdocking simulationおよびアミ酸変異導入によりにより,phot2のキナーゼドメインとLOV2との結合サイトの詳細な解析を行った。方LOV1の機能として,キナーゼ活性の光制御の光感受性の低下作用,およびphot分子の二量体化サトの機能を持つのではないかという結果を得ていたが,昨年度,世界で始めてLOV1の二量体結晶構を明らかにし,LOV1がタイマーサイトとして働く事を証明した。この結果を得て,二量体構造のアステリックな効果による光感受性の制御の可能性を考察した。phot分子は、光屈性、葉緑体光定位運動、気孔開口光制御などを担う青色光受容体で、N-末端側にLOVと呼ばれる発色団ドメインを二つ、C-末端側にセリン/スレオニンキナーゼドメインを持ち、光により制御されるタンパク質キナーゼとして機能すると考えられる。これまでの研究によりLOV2がキナーゼ活性部位に光可逆的に結合して、活性制御の光分子スイッチとして機能すること、その際の結合部位がLOVドメインのヘリカルコネクター部分の可能性が高いこと、LOV1は光感度調節に関与していることなどを明らかにしていた。今年度は、シロイヌナズナの2種類のフォトトロピンホモログ、phot1とphot2の4種類のLOVドメインのオリゴマー構造を決め、LOV1に関しては世界初のダイマー結晶構造を論文発表しこれはJ. Mol. Biol.の表紙を飾り幾つかの新聞にニュースとして取り上げられた。LOV1のダイマー構造はphot1とphot2でその結合様式が異なっており、これがphot1とphot2の機能分担、低光強度から中強光域の光センサー、高強度光センサー、に関与する可能性を指摘した。さらにphot2-LOVドメイン分子内のシグナル伝達に関わるアミノ酸置換変異シロイヌナズナを作成し、アミノ酸変異のLOVドメインの光反応、変異固体の光屈性、葉緑体光定位運動に対する効果を調べ、発色団の光反応により引き起こされるLOV分子内ジグナル伝達経路に関する重要な知見を得た。フォトトロピン(phot)は、光屈性、葉緑体光定位運動、気孔開口光制御など光合成活性の効率化を担う青色光受容体で、phot1とphot2という二つのホモログが存在して光強度に依存して機能分担している。phot分子はN-末端側にLOVと呼ばれる光受容ドメインを二つ、C-末端側にセリン/スレオニンキナーゼドメインを持ち、光により制御されるタンパク質キナーゼとして機能すると考えられる。これまでの研究によりLOV2がキナーゼ活性部位に光可逆的に結合して活性制御の光分子スイッチとして機能すること、その際の結合部位がLOV2ドメインのヘリカルコネクター部分の可能性が高いこと、LOV1は光感度調節に関与することなどを明らかにし、昨年度は、シロイヌナズナのphot1とphot2の4種類のLOVドメインのオリゴマー構造を決め、LOV1に関しては世界初のダイマー結晶構造を発表した。本年度はLOV2によるキナーゼ活性光制御機構をさらに詳細に解明するために、光活性制御機能を持つ最小単位であるLOV2-リンカー-キナーゼよりなるポリペプチドの純品調製系、および同ポリペプチドプチの基質としてphot分子自身の自己リン酸化サイトを含むN-末端ポリペプチドを用いたキナーゼ活性アッセイ系を確立した。
KAKENHI-PROJECT-17084008
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17084008
ヒト網膜細胞腫の形態と分化ー神経伝達物質代謝酵素、細胞外マトリックス
今年度は、昨年度に継続して細胞外マトリックス(fibronection Type IV collagen)の定量的検索を行なった。誘導物質添加後の腫瘍細胞(Y79及び初代培養株)及び培養dish内の培地は凍結保存とし、細胞凍結保存器に保存した。凍結保存した培地は濃縮し、90%エタノ-ルと混合して、-20°Cで分離、電気泳動緩衝液(20%sodium dedecyl sulfate[SDS]、10%glycerol、65mM TrisHClpH6.8、4M urea、bromphenol blue)に融解して、SDS-polyacrylamide gelelectrophoresis(SDS-PAGE)で分子量による抽出を試みた。また、Labtek chamber(Miles Co.MN)に培養した細胞系は、分化誘導後、風乾、冷アセトン固定として蛍光抗体法間接法による細胞外マトリックス(フィブロネクチン、4型コラ-ゲン)の局在を検討した。特異血清はいずれも希釈は500:1である。SDS-PAGEによる泳動パタ-ンからは、培地中の分子量480kdのフィブロネクチンが同定され、4型コラ-ゲンに関しては検出は不成功であった。これら細胞外マトリックスの局在のパタ-ンは、フィブロネクチンで繊維状或いは瀰慢性に、4型コラ-ゲン顆粒状に、形質膜に分布していた。本研究をとおして、形態学的に分化の誘導された腫瘍細胞には神経伝達物質代謝酵素(glutamati decarboxylase)の活性増加が確認され、機能的分化の誘導も示唆される。超微形態像で、神経分泌顆粒やシナプス様構造もみられ、神経性腫瘍としての性格が明かとなった。また、培養細胞からの細胞外マトリックス、特にフィブロネクチンの増加は、接着性の増加など細胞骨格の再構成を示唆している。[結論]1.ヒト網膜芽細胞腫において、cyclic AMPの添加により、形態的、生化学的分化が誘導された。2.形態分化した腫瘍細胞には、細胞内小器官特に、視細胞を模倣した繊毛形成や再構築された細胞骨格が認められ、後者は接着性の増加と関連している。3.神経伝達物質代謝酵素の活性増加も観察され、機能的分化の誘導も示唆される。網膜芽細胞腫における分化誘導療法の導入のためには、今後さらに検索を継続する予定である。今年度は、昨年度に継続して細胞外マトリックス(fibronection Type IV collagen)の定量的検索を行なった。誘導物質添加後の腫瘍細胞(Y79及び初代培養株)及び培養dish内の培地は凍結保存とし、細胞凍結保存器に保存した。凍結保存した培地は濃縮し、90%エタノ-ルと混合して、-20°Cで分離、電気泳動緩衝液(20%sodium dedecyl sulfate[SDS]、10%glycerol、65mM TrisHClpH6.8、4M urea、bromphenol blue)に融解して、SDS-polyacrylamide gelelectrophoresis(SDS-PAGE)で分子量による抽出を試みた。また、Labtek chamber(Miles Co.MN)に培養した細胞系は、分化誘導後、風乾、冷アセトン固定として蛍光抗体法間接法による細胞外マトリックス(フィブロネクチン、4型コラ-ゲン)の局在を検討した。特異血清はいずれも希釈は500:1である。SDS-PAGEによる泳動パタ-ンからは、培地中の分子量480kdのフィブロネクチンが同定され、4型コラ-ゲンに関しては検出は不成功であった。これら細胞外マトリックスの局在のパタ-ンは、フィブロネクチンで繊維状或いは瀰慢性に、4型コラ-ゲン顆粒状に、形質膜に分布していた。本研究をとおして、形態学的に分化の誘導された腫瘍細胞には神経伝達物質代謝酵素(glutamati decarboxylase)の活性増加が確認され、機能的分化の誘導も示唆される。超微形態像で、神経分泌顆粒やシナプス様構造もみられ、神経性腫瘍としての性格が明かとなった。また、培養細胞からの細胞外マトリックス、特にフィブロネクチンの増加は、接着性の増加など細胞骨格の再構成を示唆している。[結論]1.ヒト網膜芽細胞腫において、cyclic AMPの添加により、形態的、生化学的分化が誘導された。2.形態分化した腫瘍細胞には、細胞内小器官特に、視細胞を模倣した繊毛形成や再構築された細胞骨格が認められ、後者は接着性の増加と関連している。3.神経伝達物質代謝酵素の活性増加も観察され、機能的分化の誘導も示唆される。網膜芽細胞腫における分化誘導療法の導入のためには、今後さらに検索を継続する予定である。二系統のヒト細胞芽細胞腫培養細胞(V79、WERI-1)及び非遺伝性網膜芽細胞腫(1歳、男児)初代細胞の継代維持を行なった。各細胞は、RPM11640培地(20%FBSグルタミン添加、阪大微研)に単層培養とし、37°C、5%CO_2の培養条件下に継代が可能であった。初代培養に用いた腫瘍の組織型は分化型で、Honer Wright型ロゼットの形成が顕著であった。分化誘導には、2×10^<-4>MN^6、O^<12>dibutyryl cyclic AMP、2.5×10^<-7>Mretionoic acid(Sigma,St.Louis,Mo)を、60mm径のtissue culture
KAKENHI-PROJECT-63570157
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63570157
ヒト網膜細胞腫の形態と分化ー神経伝達物質代謝酵素、細胞外マトリックス
dish(Falcon)に添加して行なった。各細胞間に若干差異はあるが、添加後8時間で形態的に軸策突起を有し、神経特異蛋白陽性細胞群を確認できた。協同研究者(沢田)の電顕的検討では、分化した腫瘍細胞には細胞内小器官、特に接着装置の増加や軸策突起内の微少管の増加以外には、アデノウィルス12型誘発網膜腫瘍細胞を用いた実験系で観察されたフラスコとの接着面の細胞膜に著変は認められなかった。蛍光抗体法による免疫組織化学的検討(小林、田坂)では、フィブロネクチン、ラミニン、4型コラーゲンは前二者の培養細胞細胞膜に陽性、後者で陰性であった。これら細胞外マトリックスの局在のパターンは、フィブロネクチンで繊維状或いは瀰慢性に、ラミニン、4型コラーゲンは顆粒状に、細胞膜に分布していた。誘導物質添加後の腫瘍細胞及び培養dish内の培地は凍結保存とし、細胞凍結保存器に保存、次年度のSDS-PAGESystemによる生化学的定量に用いる。次に網膜芽細胞腫瘍培養細胞の細胞膜のレクチン結合パターンをHRP標識ConA、PNA、WGA抗体を用いて比較検討した。Con A、WGAは細胞膜と細胞内に陽性で、ロゼット様に配列する細胞群に瀰慢性に強陽性であった。WGAを網膜外節に一致して分布することから腫瘍の起源を考える上で興味深い。今年度の研究では、細胞膜の糖鎖構造と細胞外マトリックスの局在に関して新知見が得られた。今年度は、昨年度に継続して細胞外マトリックス(fibronectin,Type IV collagen)の定量的検索を行なった。誘導物質添加後の腫瘍細胞(Y79および初代培養株)及び培養dish内の培地は凍結保存とし、細胞凍結保存器に保存した。凍結保存した培地は濃縮し、90%エタノ-ルと混合して、-20°Cで分離、電気泳動緩衝液(20%sodium dedecyl sulfate[SDS],10%glycerol,65mM Tris HClpH6.8,4M urea,Bromphenol blue)に融解して、SDS-polyacrylamide gelelectrophoresis(SDS-PAGE)で分子量による抽出を試みた。また、La btek chamber(Miles Co.MN)に培養した細胞系は、分化誘導後、風乾、冷アセトン固定として蛍光抗体方間接方による細胞外マトリックス(フィブロネクチン、4型コラ-ゲン)の局在を検討した。特異血清はいずれも希釈は500:1である。SDS-PAGEによる泳動パタ-ンからは、培地中の分子量480kdのフィブロネクチンが同定され、4型コラ-ゲンに関しては検出は不成功であった。これら細胞外マトリックスの局在のパタ-ンは、フィブロネクチンで線維状或いは瀰慢性に、4型コラ-ゲンは顆粒状に、形質膜に分布していた。本研究をとおして、形態学的に分化の誘導された腫瘍細胞には神経伝達物質代謝酵素(glufamate decarboxylase)の活性増加が確認され、機能的分化の誘導も示唆される。超微形態像で、神経分泌顆粒やシナプス様構造もみられ、神経性腫瘍としての性格が明かとなった。また、培養細胞からの細胞外マトリックス、特にフィブロネクチンの増加は、軸索突起の形成、接着性の増加など細胞骨格の再構成を示唆している。
KAKENHI-PROJECT-63570157
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63570157
作用素環の境界と融合積の研究
本研究では、抽象的なC*環を離散群の抽象化とみることで、離散群の境界理論の抽象化を考えた。具体的な目標としては,完全C*環の自然な核型C*環への埋め込みの存在について問う小澤の予想に対して,離散群の種々の境界の理論の類似を用いたアプローチを考えた.具体的には,完全C*環の典型例の一つである核型C*環の自由積に対して,Furstenberg境界と密接に関係する単射的包絡と,群上のランダムウォークから定まるPoisson境界の抽象化である非可換Poisson境界の関係を明らかにすることで,上記予想の解決を目指した。これまでの研究でC*環の自由積については境界の候補が得られているため、その上の適切な状態を固定してPossion境界の理論の類似を考察した。Cuntz環の自由積のような扱いやすい設定で非可換Markov作用素と非可換Poisson境界の研究を行なったが、求める結果には到達できなかった。問題の難しさは群上のランダムウォークにおける調和測度の一意性が接合積の上の"調和状態"に対して容易に拡張できないことにあった。他方で、名古屋大学の植田好道教授との共同研究で、Arvesonによる境界定理に対する泉の非可換Possion境界を用いた簡単な別証明が得られた。Arvesonの境界定理はArvesonによって導入されたもう一つの作用素環論における境界の概念であり、ある種の剛性と関係がある。本研究で非可換Possion境界との関係性が少し明らかになったため、今後の作用素環論における境界の研究の取っ掛かりになることが期待できる。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。本研究では、抽象的なC*環を離散群の抽象化とみることで、離散群の境界理論の抽象化を考えた。具体的な目標としては,完全C*環の自然な核型C*環への埋め込みの存在について問う小澤の予想に対して,離散群の種々の境界の理論の類似を用いたアプローチを考えた.具体的には,完全C*環の典型例の一つである核型C*環の自由積に対して,Furstenberg境界と密接に関係する単射的包絡と,群上のランダムウォークから定まるPoisson境界の抽象化である非可換Poisson境界の関係を明らかにすることで,上記予想の解決を目指した。これまでの研究でC*環の自由積については境界の候補が得られているため、その上の適切な状態を固定してPossion境界の理論の類似を考察した。Cuntz環の自由積のような扱いやすい設定で非可換Markov作用素と非可換Poisson境界の研究を行なったが、求める結果には到達できなかった。問題の難しさは群上のランダムウォークにおける調和測度の一意性が接合積の上の"調和状態"に対して容易に拡張できないことにあった。他方で、名古屋大学の植田好道教授との共同研究で、Arvesonによる境界定理に対する泉の非可換Possion境界を用いた簡単な別証明が得られた。Arvesonの境界定理はArvesonによって導入されたもう一つの作用素環論における境界の概念であり、ある種の剛性と関係がある。本研究で非可換Possion境界との関係性が少し明らかになったため、今後の作用素環論における境界の研究の取っ掛かりになることが期待できる。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-18J00453
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J00453
自己修復作用を有した次世代型高耐食性ナノ微粒子複合電析
クロメート化成処理膜に代わる高耐食性の亜鉛めっきを開発すべく,耐食性を期待される元素を,電解中の陰極近傍において「その場生成」させる手法により,複合電析物を得た。クロメート化成処理膜に代わる高耐食性の亜鉛めっきを開発すべく,耐食性を期待される元素を,電解中の陰極近傍において「その場生成」させる手法により,複合電析物を得た。自動車用鋼板は,高温・高湿度から極低温・高塩濃度まで幅広い環境で耐食性を発揮しなくてはならない。一般的な自動車用鋼板の防食処理は多層であり,外から,複数の塗膜層・化成処理膜・Zn合金めっきからなる。化成処理膜として従来は6価クロメート処理が行われていたが,EUによるRoHS指令により,ヨーロッパ圏での使用が禁止され,世界でもその流れが起きている。6価クロメート処理に特有の「自己修復性」はCrイオンが3価と6価という多価酸化状態を持ち皮膜に損傷が発生した場合,残存するCr6+が損傷部に流動,下地のZnと酸化還元反応を起こし, Cr酸化皮膜を形成することに起因する。Cr以外にも多価酸化状態を有する元素は多数有り,研究者はVに注目した。研究者は化成処理ではなくZnめっき皮膜中にV化合物を分散共析することによる新しい防食処理法の開発を目的とした。本年度はZnめっき膜中にV化合物を混在させる方法として, Zn電析の際に陰極近傍が高pH状態になることを利用した「微小V水酸化物その場生成」を試みた。バルクのpHが1未溝の時は, Znの電流効率は低く,Zn皮膜中にV元素は混入しなかった。しかしながらバルクのpHを大きくしていくと, V元素が混入され始め,最大20wt%程度までの混入が確認された。各種電析条件で作製した電析物を分析機器で測定した結果を以下にまとめる。色合い...V元素が多量に混入している試料は一般的な亜鉛合金のモノトーンとは異なり,青黒い色をしていたESCA(XPS)・・上記試料において, Znは金属状態, Vは酸化物状態であったが, Sのピークも観測されたXRD・...全ての試料において,金属Znに相当するピークしか観測できなかった。またZnの格子定数の変化も見られない。SEM/EPMA・・通常のZn電析において見られる「六角板状結晶」が観察されたが,その大きさは小さく,エッジ部分に何かが付着しているのが確認できた。EPMAによる元素マッピングにより,その付着物がVとSに起因するものであることがわかった。元素分布状態からVは硫酸塩と酸化物の少なくとも2種類が混在している可能性がある。Znめっき鋼板の化成処理膜として従来は6価クロメート処理が行われていたが, EUによるRoHS指令により,ヨーロッパ圏での使用が禁止され,世界でもその流れが起きている。Cr以外にも多価酸化状態を有する元素は多数有り,研究者はVに注目した。研究者は化成処理ではなくZnめっき皮膜中にV化合物を分散共析することによる新しい防食処理法の開発を目的とした。本年度は実際に電気亜鉛鋼板を作製する際に使用される高速撹拌状態を再現し,その時の電析挙動を調査した。今回は陰極を円筒の側面とし,この円筒を溶液に対して回転させることにより,高速撹拌状態を実現した。陽極はTiの網に白金をめっきしたものを陰極表面と等間隔になるように設置し,陽・陰極間に不織紙をおいた。これは陽極で酸化されたVイオン並びに陰極で還元されたVイオンの移動を阻害するためである。円筒の直径を40mmφ,長さを20mmとし,円筒の回転数を500, 1000, 2000, 3000rpmとした。浴中のVOSO4濃度を5g/l, 50g/lとし,定電気量定電流電解を行い,電析物の定量を行った。Znの電流効率は回転数が低い場合は低電流密度(100A/m2)から徐々に大きくなっており,最大80%程度であった。また浴中のVOSO4濃度が50g/lのものは5g/lに比べて電流効率は低下した。陰極の回転数が大きくなっていくと, 50g/lの電流効率は低下していき, 3000rpmのときには5%程度となった。Zn電析物中のV含有率は5g/lの浴では0.1mass%程度でどの回転数でもほぼ同じであった。V濃度の高い電解浴では電流効率は低いのは通電した電流がVイオンの還元に使用されルためだと思われる。高速撹拌状態になると陰極付近で還元したVイオンがすぐに陰極から離され,未還元のVイオンが陰極にやってくるため,通電した電流のほとんどがVの還元に費やされるため,回転数の上昇が電流効率の低下につながると思われる。Znめっさ鋼板の化成処理膜として従来は6価クロメート処理が行われていたが,EUにするRoHS指令により,ヨーロッパ圏での使用が禁止され,世界でもその流れが起きている。Cr以外にも多価酸化状態を脊する元素は多数有り,研究者はVに注目した。研究者は化成処理ではなくZnめっき皮膜中にV化合物を分散共析することによる新しい防食処理法の開発を目的とした。
KAKENHI-PROJECT-19760510
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19760510
自己修復作用を有した次世代型高耐食性ナノ微粒子複合電析
本年度は,V元素の析出メカニズムを解明するため,pH滴定を行った。Znのみ.VのみZn+V混合浴においてそれぞれNaOHを滴定した。Znのみの場合,滴定曲線図でpH6.3のところで上昇が一時停止し,その後急上昇した。pH上昇時のNaOHの添加量の関係は理論と一致した。同様にVのみについても,滴定を行ったところ,電位-pH図で計算したpHで一時停止した。Zn-V混合浴についてpH滴定を行ったところ,ZnのみとVのみを重ねたものとなった。念のため,代表的なpHとなった時に懸濁した溶液を一定量分取し,遠心分離器で水酸化物を分離した上澄みをICPで定量分析した結果,ZnとVの水酸化物は独立して沈殿していることがわかった。得られた電析物も耐食性を評価するため,走査電位法による分極曲線の測定を行った。得られた分極曲線から腐食電位と腐食電流を評価したところ,電析物中のV含有率が5%程度のときに,腐食電流の極小値があった。
KAKENHI-PROJECT-19760510
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19760510
中国の教育バウチャーに関する実証的研究
本研究は、中国の教育バウチャーを対象として、その政策動向、実態さらにその効果について、現地調査を主として実証的分析を行った。その結果、中国大陸における教育バウチャーはその数も多く種類において多様であるが、教育バウチャーを「個人を基準とする公教育費の配分方式」ととらえたとき、低所得者の児童・生徒への補助効果、私立学校の活性化などに有効であったと分析できる。しかし、一方、台湾における保育バウチャーに関しては、その目的にある学校選択の自由化など社会効果に関しては、成果を検証されず、一定の制度もしくは政策の見直しが課題であることが分析できた。以上のことは、今後の日本の教育バウチャー導入における先行的な知見を与えるといえる。中国における教育バウチャーの政策と実態を分析することを目的として、現地訪問調査を主な方法として検証を行った。研究計画の概要は以下のようであった。(1)中国の教育バウチャーに関する中国国内の先行研究及び関係資料の採集と分析。(2)大陸の教育バウチャーの事例訪問調査(3)台湾の教育バウチャーの事例訪問調査本研究は、中国の教育バウチャーを対象として、その政策動向、実態さらにその効果について、現地調査を主として実証的分析を行った。その結果、中国大陸における教育バウチャーはその数も多く種類において多様であるが、教育バウチャーを「個人を基準とする公教育費の配分方式」ととらえたとき、低所得者の児童・生徒への補助効果、私立学校の活性化などに有効であったと分析できる。しかし、一方、台湾における保育バウチャーに関しては、その目的にある学校選択の自由化など社会効果に関しては、成果を検証されず、一定の制度もしくは政策の見直しが課題であることが分析できた。以上のことは、今後の日本の教育バウチャー導入における先行的な知見を与えるといえる。本研究は、中国の教育バウチャー制度を研究することを目的としている。現状では、教育バウチャーに関する外国研究は、主にその導入の実態が知られているアメリカやイギリスさらにチリ・ニュージーランド・スウエーデンを中心に行われている。しかし、一方、中国の教育バウチャーに関しては、その実態がほとんど知られず、本格的な研究は皆無に等しい。本研究は、こうした中国における教育バウチャー制度の本格的な実施の実態を前提及び対象として、さまざまな中国国内の地方の多様な教育バウチャー制度の事例調査等を中心とする実証的調査を行うことを内容としている。本年度は、主に研究対象となる「教育バウチャー」制度に関する先行研究のレビューを中心として、「教育バウチャー」制度研究の現時点の到達点を確認するととともに、その課題を把握することを行った。こうした作業は、次年度以降の「中国」を対象とした調査研究の前提となる基礎研究としての価値をもった。本年度は、広く中国の教育バウチャーの理論研究と部分的な事例調査を行った。この間、中国国内では教育券制度の研究者と評価される北京師範大学教育管理学院の牛志奎副教授を訪問し、事例調査のための指導を得た。また、青海省等の中国北西部さらに台湾の教育バウチャーの事例調査を行った。理論研究では、北京師範大学教育管理学院の牛志奎と中国教育学会教育政策・法律専門委員会論文集中国教育学会おいて、「中日における学校の民営化」に関して共同発表をした。同発表では、中国の教育バウチャー制度導入の前提となる中国の学校の民営化の政策と実態を報告するとともに、教育バウチャーの課題について検討結果を報告した。事例調査では、教育券制度導入の経緯及び目的さらに制度運営の実態を聴取した。また、新たに台湾省の幼稚園の教育バウチャーの実態調査(2009.1.2527)を行った。台湾の調査に関しては、台北師範大学の周志宏教授に指導を受けるとともにいくつかの幼稚園を訪問調査した。なお、以上の成果に関しては、特に本年度は単著として刊行した『中国における教育の市場化』(ミネルヴァ書房)の中の「第5章教育バウチャー制度の導入」にまとめた。同章では、特に前年度に調査した浙江省長興県の調査の成果を反映させた。本年度は主に台湾の教育バウチャーに関して文献研究及び実地調査を行った。特に実地調査として5月と10月に関係機関の訪問調査と現地研究者へのインタビューを行った。具体的には、台湾で2000年から実施されている保育バウチャーに関して、その政策化の背景と内容さらに実態に関して資料採集、インタビュー等を行い、その分析を行った。今回の調査では、特に現地研究者(台北教育大学周教授など)へのインタビューや当事者(台北県私立佳美幼稚園保護者)へのインタビューが効果的であったと考える。また、台北教育大学での招待講演会や学会(台湾別類教育学会国際シンポジユム)の招待講演など、研究交流もできた。今回の意義は、大陸(中国本土)とは異なる台湾の教育バウチャーの特質を明らかにすることにあった。その成果としては、1.台湾の教育バウチャーが教育の市場化ではなく民主化の政策意図により導入されたこと。2.しかし、その効果は必ずしも十分なものではなかったこと。3.特に教育の民主化・自由化への社会的効果は機能しなかったことなどが明らかとされた。その意味では、教育の民主化に機能する教育バウチャーの課題が明らかとされたといえる。中国の教育バウチャーは、以上のことから大陸と台湾でその政策意図や社会効果に関して相当に異り.現在世界で進行する教育バウチャーとの大きな比較で言えば、固有な特質と課題をもつことが明らかとなった。次年度、引き続き分析を継続する予定である。
KAKENHI-PROJECT-20530726
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20530726
中国の教育バウチャーに関する実証的研究
本年度は、主に台湾の教育バウチャーと学校の民営化の実証的な研究を行った。詳細には、実際に台湾で導入・実施された保育バウチャーとしての「幼児教育券」を対象として、第一にその導入の過程を教育政策の動向を中心に分析した。この際、その導入を推進した運動サイドのリーダー(元台湾大学教授黄武雄、同張清渓)へのインタビューにより、その政策化の要因を検討した。第二に実際にその幼児教育券の受益者である保護者へのインタビューを当該の幼稚園(台北県私立佳美幼稚園)で行うとともに、台湾内の研究者の先行調査研究を分析し、幼児教育券導入の評価意識等を検討した。以上のことから、つぎのことがらが明らかとされた。1。幼児教育券の導入は財政効果においては微妙であり、例えば保護者の負担軽減の面では消極性がみられた。その理由は主に実際の幼児教育券の額の少なさにあった。2.幼児教育券の導入は教育効果においても微妙であった。実際、台湾国内の研究者の間でもその効果への評価は分かれ、また当事者のアンケート評価も確定的ではなかった。その原因は、「教育効果」の指標があいまいであることと、その成果指標が数量的な基準になじまないことにあった。例えば、保護者の満足度を指標としたとしても、その「満足」の指標は多様であり、その「質」は確定できなかった。3.幼児教育券の導入は、社会効果においては低かった。このとき、その社会効果を「選択の自由化」「公私の良性的な競争による質の向上」さらに「無認可園(所)の解消」とした場合、実際に幼児教育券はいずれの要因にも効果を及ぼさなかった。以上のことから、台湾の教育バウチャーは制度構想と制度実現の間に例葛藤があり、制度構想の次元で主目的とされた学校選択の自由化に効果を示さなかったことが問題とされる。
KAKENHI-PROJECT-20530726
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20530726
無反射膜への希土類イオン注入による太陽電池の高効率化
この研究では、太陽電池の表面に付着されている無反射膜に、希土類イオンをドープする事によって、太陽電池では利用されない短波長の光を希土類イオンに吸収させたあと長波長で発光させ、太陽光を太陽電池の分光感度の高い波長領域に変換させることで高効率化を試みている。平成10年度と11年度では、本学SVBL施設クリーンルーム内に設置してあるイオン注入装置(日新電機NHV-1014A、200KV max)を用いてa-Si太陽電池(サンヨー、AM-5205)の無反射膜(SiO_2)、そして機構解明の補助として熔融石英板(99.9%SiO_2),シリコン熱酸化膜への希土類Euイオン(4f^7)の注入を行ない、注入後レーザーアニール(YAG,1.064m,0.5J)を試み、Eu^<3+>(4f^6)、Tb^<3+>(4f^8)イオンの蛍光とESRによる欠陥の信号を得た。両イオンとも、900°C程度のアニールによって蛍光強度を強め、欠陥分減らすことができた。PLのアニール温度特性からイオン注入後の熱処理の温度で蛍光強度をある程度制御できることが分かった。半導体デバイス製造過程で用いられるイオン注入法による蛍光体の作成は、光集積回路などへの応用の可能性も広い。平成12年度では、a-Si(アモルファスシリコン)薄膜太陽電池の上に希土類イオンを、付着拡散もしくはイオン注入によって蛍光薄膜(厚さ;0.1-100μmオーダー)を形成させてその高効率化を目指した。研究は、大きく分けて(1)布織布浸透膜(2)ITO膜と窒化ケイ素膜の2項目の蛍光薄膜形成の課題からなる。(1)では、Euイオンの発光はみられるが、透過度の低下を補うだけの蛍光を得るためには、蛍光強度をさらに強める溶媒を選定する必要がある。(2)では、ESR測定で注入前、注入後、アニール後の各段階の試料すべてから、欠陥による信号が検出された。この研究では、太陽電池の表面に付着されている無反射膜に、希土類イオンをドープする事によって、太陽電池では利用されない短波長の光を希土類イオンに吸収させたあと長波長で発光させ、太陽光を太陽電池の分光感度の高い波長領域に変換させることで高効率化を試みている。平成10年度と11年度では、本学SVBL施設クリーンルーム内に設置してあるイオン注入装置(日新電機NHV-1014A、200KV max)を用いてa-Si太陽電池(サンヨー、AM-5205)の無反射膜(SiO_2)、そして機構解明の補助として熔融石英板(99.9%SiO_2),シリコン熱酸化膜への希土類Euイオン(4f^7)の注入を行ない、注入後レーザーアニール(YAG,1.064m,0.5J)を試み、Eu^<3+>(4f^6)、Tb^<3+>(4f^8)イオンの蛍光とESRによる欠陥の信号を得た。両イオンとも、900°C程度のアニールによって蛍光強度を強め、欠陥分減らすことができた。PLのアニール温度特性からイオン注入後の熱処理の温度で蛍光強度をある程度制御できることが分かった。半導体デバイス製造過程で用いられるイオン注入法による蛍光体の作成は、光集積回路などへの応用の可能性も広い。平成12年度では、a-Si(アモルファスシリコン)薄膜太陽電池の上に希土類イオンを、付着拡散もしくはイオン注入によって蛍光薄膜(厚さ;0.1-100μmオーダー)を形成させてその高効率化を目指した。研究は、大きく分けて(1)布織布浸透膜(2)ITO膜と窒化ケイ素膜の2項目の蛍光薄膜形成の課題からなる。(1)では、Euイオンの発光はみられるが、透過度の低下を補うだけの蛍光を得るためには、蛍光強度をさらに強める溶媒を選定する必要がある。(2)では、ESR測定で注入前、注入後、アニール後の各段階の試料すべてから、欠陥による信号が検出された。この研究は、光起電力材料の前駆体として希土類イオンを位置ずけ、その特徴的な光活性を生かして太陽電池に、より有効な太陽光エネルギーの移動を行わせることによって、高効率の太陽電池を開発する事を目的としている。本研究では、太陽電池そのものに付着されている無反応膜に直接希土類イオンをイオンインプランテーション装置を用いて注入する実験を行う。イオンインプランテーション装置の利用は、産業界での半導体太陽電池の製造行程の一段階として組み込めることが可能であり、これを利用すれば提案された希土類利用の太陽電池の実用化に大きく一歩近づく。本学SVBL施設クリーンルーム内に設置してあるイオン注入装置(日新電機NHV-1014A、200KV max)を用いてa-Si太陽電池(サンヨー、AM-5205)の無反射膜(SiO_2)、そして機構解明の補助として熔融石英板(99.9%SiO_2),シリコン熱酸化膜への希土類Euイオン(4f^7)の注入を行ない、注入後レーザーアニール(YAG,1.064M,0.5J)を試みた。発光スペクトルの測定では、ドーズ量の不足からかEuの明確な発光は得られなかった。注入前後での変換効率の変化は、、-3.3%であった。結果として、希土類イオン注入の効果は大きく発揮されてない。
KAKENHI-PROJECT-10555089
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10555089
無反射膜への希土類イオン注入による太陽電池の高効率化
この原因として、イオン注入の加速電圧、ドーズ量ともに不足していることが考えられ、これについては、地理的に近い都立産技研の高エネルギー(2MeV)イオン注入装置、及びRBS装置の利用を申請し、より充分な注入とその確認を行なうよう、現在実験中である。更に、強い発光を得るために無機物質中の希土類イオンの発光メカニズムをしらべ、電子状態を探るための、高感度光磁気共鳴装置を製作中であるが、不足している電磁石制御及び検出系のシステムを新たに購入した。この研究では、太陽電池の効率改善の一つのアプローチとして、希土類錯体を使って太陽電池では利用されない短波長の光を希土類イオンに吸収させた後、長波長で発光させ、電池への入射光をその高い分光感度に変換させることで高効率化を試みている。これまで太陽電池の前面に希土類を含む無機単結晶を置いて、太陽光の波長移動を試みるテスト実験を行ない、十分に希土類の効果を確かめている。本研究では、太陽電池そのものに付着されている無反射膜(無機材巡りに直接、希土類イオン注入する実験を行う。イオン注入装置の利用は、産業界での半導体太陽電池の製造行程の一段階として組み込めることを可能とし、提案された希土類利用の太陽電池の実用化に大きく一歩近づく。しかし、昨年試みたa-Si太陽電池の無反射膜(Si0_2)、そして機構解明の補助として熔融石英板(99.9%Si0_2),シリコン熱酸化膜への希土類Euイオンの注入後レーザーアニールの実験では,希土類イオン注入の効果は大きく発揮されてなかった。今年度は、本学SVBLの注入装置及び地理的に近い都立産技研の高エネルギー(2 MeV)イオン注入装置、及び蛍光評価装置を用いて、Si熱酸化膜Si0_2/Siにイオン注入されたEu^<3+>(4f^6)、Tb^<3+>(4f^8)イオンの蛍光とESRによる欠陥の信号を得た。両イオンとも、900°C程度のアニールによって蛍光強度を強め、欠陥を減らすことができた。更に、強い発光を得るために無機物質中の希土類イオンの発光メカニズムをしらべ、電子状態を探るための、高感度24GHz帯ESR及び光磁気共鳴装置を製作中であるが、不足しているカウンター、ディテクター、位相器を新たに購入した。この研究では、太陽電池の効率改善の一つのアプローチとして、希土類錯体を使って太陽電池では利用されない短波長の光を希土類イオンに吸収させた後、長波長で発光させ、電池への入射光をその高い分光感度に変換させることで高効率化を試みている。この場合、通常、太陽電池の表面に付着されている無反射膜の代りに、無反射膜の役割を持たせると同時に希土類蛍光体による波長変換の作用もさせることになる。今年度は、a-Si(アモルファスシリコン)薄膜太陽電池の上に希土類イオンを、付着拡散もしくはイオン注入によって蛍光薄膜(厚さ;0.1-100μmオーダー)を形成させてその高効率化を目指した。研究は、大きく分けて(1)布織布浸透膜(2)ITO膜と窒化ケイ素膜の2項目の蛍光薄膜形成の課題からなる。(1)では、希土類Euの水溶液をa-Si薄膜太陽電池上の布織布(光ファイバー繊維を均一に引き伸ばした薄いシート)に染み込ませ、その上から接着剤と保護膜で覆って真空加熱圧着させ、Euイオンを電池表面に閉じ込める。圧縮処理後の太陽電池は、表面層でのEuイオンが、もとのEu塩化物として析出してしまったため、逆に透過度が低下してしまい出力は大幅に低下した。水溶液中でのEuイオンの発光はみられるが透過度の低下を補うだけの蛍光を得るためには、蛍光強度をさらに強める溶媒を選定する必要がある。(2)では、Euをそれぞれの膜にイオン注入法で混入させ、その光学的特性を調べ波長変換利用の太陽電池の可能性を探ることを目的とした。
KAKENHI-PROJECT-10555089
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10555089
心理実験における刺激音声試料作成を目的とした高品質音声分析合成システムの開発
本研究は,心理実験で使用される音声刺激の作成を支援すべく音声韻律変換システムの構築を主たる目的として行なわれた。心理実験での使用に耐えうる品質の合成音声を生成する必要があるため,ここでは分析合成に基付く手法を導入・改良した。開発したシステムの特徴としては,・声道特性フィルタとしてLMAフィルタを使用(残差における白色性向上を目的としたもの)。・残差波形に対する時間領域PSOLA法に基付くピッチ変換(音声波形そのものにPSOLA法を適用した場合に生じるスペクトル歪みを回避するため)。・藤崎モデル(基本周波数パターン生成モデル)に基付くパラメータベースのピッチパターン編集。・波形伸長時における有声子音部の自動推定(有声子音部を伸長対象から除き,有声母音部のみを伸長対象とすることで合成音の自然性が向上)。これらの中でその性能/特性が韻律変換後の合成音声の品質に最も影響を与える,有声部残差波形中のピッチパルス検出,及び指定されたピッチに基付く残差波形編集において,各々,・局所的自己相関値を参照した初期ピッチパルス位置の決定,2段階閾値を利用した有声部の細分化,局所的及び大局的自己相関値を利用した最終的なピッチパルス位置の選択。・部分的零位相化による,品質劣化を抑えた残差波形編集,及び合成。を提案し,種々の高さにピッチ変換した合成音声(男声/女声)の聴取実験により,その有効性を実証することができた。なお本システムは現在,国内外の関係研究者(音声学/言語学/心理学だけでなく,工学の分野を含む)に配布され,実際の研究の場で利用されている。現在更なる品質向上を実現すべく,ピッチ変換時のスペクトル変動に対するケプストラムレベルでのモデル化を検討している。本研究は,心理実験で使用される音声刺激の作成を支援すべく音声韻律変換システムの構築を主たる目的として行なわれた。心理実験での使用に耐えうる品質の合成音声を生成する必要があるため,ここでは分析合成に基付く手法を導入・改良した。開発したシステムの特徴としては,・声道特性フィルタとしてLMAフィルタを使用(残差における白色性向上を目的としたもの)。・残差波形に対する時間領域PSOLA法に基付くピッチ変換(音声波形そのものにPSOLA法を適用した場合に生じるスペクトル歪みを回避するため)。・藤崎モデル(基本周波数パターン生成モデル)に基付くパラメータベースのピッチパターン編集。・波形伸長時における有声子音部の自動推定(有声子音部を伸長対象から除き,有声母音部のみを伸長対象とすることで合成音の自然性が向上)。これらの中でその性能/特性が韻律変換後の合成音声の品質に最も影響を与える,有声部残差波形中のピッチパルス検出,及び指定されたピッチに基付く残差波形編集において,各々,・局所的自己相関値を参照した初期ピッチパルス位置の決定,2段階閾値を利用した有声部の細分化,局所的及び大局的自己相関値を利用した最終的なピッチパルス位置の選択。・部分的零位相化による,品質劣化を抑えた残差波形編集,及び合成。を提案し,種々の高さにピッチ変換した合成音声(男声/女声)の聴取実験により,その有効性を実証することができた。なお本システムは現在,国内外の関係研究者(音声学/言語学/心理学だけでなく,工学の分野を含む)に配布され,実際の研究の場で利用されている。現在更なる品質向上を実現すべく,ピッチ変換時のスペクトル変動に対するケプストラムレベルでのモデル化を検討している。
KAKENHI-PROJECT-08750430
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08750430
人工キメラ植物の作出法の開発と新たな園芸品種の育成
人工キメラ植物の作出は、接ぎ木処理後の組織癒合部より不定芽を誘導することによりおこなわれてきた。しかし、現行の方法で作出可能なキメラ植物は、接ぎ木ができる組み合わせであること、不定芽が誘導できる植物種であることなど種々の制約を受ける。我々は、植物の茎頂分裂組織(生長点)を微細手術し、異種植物の組織や器官を移植することでキメラ植物を作出する方法の開発を目指し研究をおこなった。未分化組織への微細手術を目的として、茎頂分裂組織のみを培養する方法を開発した。茎頂分裂組織は非常に微小な組織であり、単独での培養が困難である。本実験ではキクを用いたが、茎頂分裂組織のみを単独培養した際の生存率は著しく低かった。そこで、茎頂分裂組織を根端を含む根の切り口に移植し培養したところ、高い確率で生存し植物体となることを見いだした。また、茎頂分裂組織を摘出する機器を堂阪イーエムと共同開発し、熟練を要する茎頂分裂組織の摘出操作を確実に行えるようにした。さらに茎頂分裂組織を移植する組織として、他種植物を利用することも可能であることがわかった。例えば、ニンニクの茎頂分裂組織の移植先としてニンニクの根のみならずネギの実生由来の根を使うことができた。次に茎頂分裂組織に葉原基などの組織を移植して組織接着が可能かどうかを確かめた。キャベツの茎頂分裂組織に、他品種の葉原基を移植する方法で実験をおこなった。手術は全て根の上に移植した茎頂分裂組織に対しておこなった。キャベツでは、一部葉原基が接着した個体が見られた。これに関しては組織学的に細胞接着を確認する必要があるが、移植した葉原基が茎頂分裂組織の上で生長しているのが観察された。現在まで、茎頂分裂組織への組織移植は非常に困難であった。今回実験に進展が見られた理由の一要因として、茎頂から分化した組織(葉原基)を全て除去し、未分化な組織のみを取り扱ったことが考えられた。人工的に任意のキメラ植物を作出することは、多くの研究者の夢であるが、現在までに人工キメラの作出法は開発されていない。本実験では、人工キメラを作出する方法として生長点の微細手術を検討している。これまでの実験から以下のことが生長点手術を困難にしている原因として考えられた。(1)肉眼で観察できるような手術は、生長点に大きなダメージを与える。(2)大きな傷を与えた生長点は傷を修復させることなく、無傷部より新たな生長点を形成する。(3)異種細胞間の接着が難しい(微細手術では隙間なく細胞を接着させることが難しい)。(4)生長点に移植する異種細胞は大きさの点から、生長点由来のものが望ましい。以上の点を解決する方法として、二種の生長点をセルラーゼやペクチナーゼで処理し、生長点の細胞間接着をゆるめた状態で手術ができれば良いのではないかと考えられた。そこでユリの生長点を用い酵素処理を行ったところ、生長点が軟化し生長点からの細胞の掻き取りおよび異種細胞の埋め込みが容易にできるようになった。特に異種細胞の埋め込みに関してはペ一スト状の細胞塊で破壊部を隙間なく埋めることができた。さらに本法で軟化させた生長点はTTC還元活性が見られ、培養しても正常に葉原基を分化するなど、特に問題は見られていない。現在この方法でユリの生長点を処理、培養を行っている。経時的な切片の観察を行い細胞の接着と手術経過を観察していく予定である。また、花弁にキメラ斑を有するセントポーリアを培養し、培養植物体の変異を調査したところ、多くの変異体が出現した。キメラ斑を有する植物体を大量増殖する系を確立することは、作出した人エキメラを大量増殖することにもつながるものである。人工キメラ植物の作出は、接ぎ木処理後の組織癒合部より不定芽を誘導することによりおこなわれてきた。しかし、現行の方法で作出可能なキメラ植物は、接ぎ木ができる組み合わせであること、不定芽が誘導できる植物種であることなど種々の制約を受ける。我々は、植物の茎頂分裂組織(生長点)を微細手術し、異種植物の組織や器官を移植することでキメラ植物を作出する方法の開発を目指し研究をおこなった。未分化組織への微細手術を目的として、茎頂分裂組織のみを培養する方法を開発した。茎頂分裂組織は非常に微小な組織であり、単独での培養が困難である。本実験ではキクを用いたが、茎頂分裂組織のみを単独培養した際の生存率は著しく低かった。そこで、茎頂分裂組織を根端を含む根の切り口に移植し培養したところ、高い確率で生存し植物体となることを見いだした。また、茎頂分裂組織を摘出する機器を堂阪イーエムと共同開発し、熟練を要する茎頂分裂組織の摘出操作を確実に行えるようにした。さらに茎頂分裂組織を移植する組織として、他種植物を利用することも可能であることがわかった。例えば、ニンニクの茎頂分裂組織の移植先としてニンニクの根のみならずネギの実生由来の根を使うことができた。次に茎頂分裂組織に葉原基などの組織を移植して組織接着が可能かどうかを確かめた。キャベツの茎頂分裂組織に、他品種の葉原基を移植する方法で実験をおこなった。
KAKENHI-PROJECT-11876008
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11876008
人工キメラ植物の作出法の開発と新たな園芸品種の育成
手術は全て根の上に移植した茎頂分裂組織に対しておこなった。キャベツでは、一部葉原基が接着した個体が見られた。これに関しては組織学的に細胞接着を確認する必要があるが、移植した葉原基が茎頂分裂組織の上で生長しているのが観察された。現在まで、茎頂分裂組織への組織移植は非常に困難であった。今回実験に進展が見られた理由の一要因として、茎頂から分化した組織(葉原基)を全て除去し、未分化な組織のみを取り扱ったことが考えられた。
KAKENHI-PROJECT-11876008
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11876008
神経回路形成期におけるアストロサイト-神経細胞間相互作用の生理的意義の解明
ほ乳類の中枢神経回路形成期には、神経突起の伸長・退縮・分解といった大規模な組織構築・改変に伴い、脳内環境に劇的な物理的・生理的変化が生じていることが考えられる。脳内環境の恒常性維持を担うアストロサイトはこの変化を敏感に感知して、何らかの応答を示していると推測される。そこで本研究は、この応答の生理学的意義を以下のような方法で明らかにすることを目指す。本年度は、前年度に構築した脳内でプログラム細胞死の一つであるアポトーシスを抑制するタンパク質を発現させたトランスジェニックマウスで見られた大規模な脳発生不全の原因を探った。結果、このマウスは全身性の発生遅延と、重篤な脳の発生異常を示すことが明らかになった。そこで、この原因を探るため、脳全体を用いてDNAマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析を行ったところ、カスパーゼ活性が抑制されている脳では、アストロサイトや脳室上衣細胞(エペンダイマル細胞)特異的な遺伝子であるS100bの発現量が低下していることが判明した。これは、発生時のカスパーゼ活性がアストロサイトの発生あるいは機能に重要な役割を果たしている可能性を示唆している。私は修士課程においてトランスジェニックマウスを作成する必要なくアストロサイトで任意の遺伝子を発現させる技術を確立しており、今後、この手法を用いれば、カスパーゼ活性抑制がアストロサイトに与える影響を明らかにし。脳発生異常の原因を探ることが出来る。従って、カスパーゼ活性とアストロサイト、脳の正常発生の関わりを明らかにすることができると考えている。複数のトランスジェニックマウスを戦略的かつ計画的に同時並行で解析することで、用いたトランスジェニックマウスの異常の原因解明が進展した。構築したトランスジェニックマウスが示した表現型の原因として、アストロサイトや特定の部位での発生期のアポトーシスが原因であることが示唆された。今後は、どの部位および時期のアポトーシス不全が脳全体の構造に異常を来す原因となっているかを明らかにし、更にその時アストロサイトが自律的/非自律的にどう応答しているかを解明する。神経回路においてアストロサイトはシナプスへの参加や脳内恒常性維持などの重要な役割を果たしている。しかし、神経回路形成期におけるアストロサイトの機能に関しては明らかでない。本研究において、子宮内電気穿孔法とTol2トランスポゾンシステムを用いて、外来遺伝子を簡便克つ効率的にアストロサイトへ導入するシステムを構築した。この研究成果は、本年度Genes to Cells誌で報告した(Yoshida,A,el.al.,Genes Cells,2010;15(5):501-12.)。本研究では、この技術を用いて、神経回路形成期における神経細胞-アストロサイト相互作用の生理機能を解明することを目的とする。本年度は神経回路形成が起きないことが期待されるトランスジェニックマウスの構築を行った。ハエにおいては変態期の神経突起の刈り込みに局所的なカスパーゼの活性が重要であることが報告されている。そこで、ほ乳類でも神経回路形成期の神経細胞の除去・神経突起の刈り込みにはカスパーゼの活性が関与するという仮説を立てた。これに基づき、広範なカスパーゼファミリーの活性を抑制するp35というウイルス由来のタンパク質をCreによる組み替え依存的に発現するトランスジェニックマウスを作成した。神経回路においてアストロサイトはシナプスへの参加や脳内恒常性維持などの重要な役割を果たしている。しかし、神経回路形成期におけるアストロサイトの機能に関しては明らかでない。本研究において、子宮内電気穿孔法とTol2トランスポゾンシステムを用いて、外来遺伝子を簡便克つ効率的にアストロサイトへ導入するシステムを構築した。この研究成果は、本年度Genes to Cells誌で報告した(Yoshida, A,et. al.,Genes Cells,2010 ; 15(5) : 501-12.)。本研究では、この技術を用いて、神経回路形成期における神経細胞-アストロサイト相互作用の生理機能を解明することを目的とする。作年度、神経回路形成が起きないことが期待されるトランスジェニックマウスの構築を行った。ハエにおいては変態期の神経突起の刈り込みに局所的なカスパーゼの活性が重要であることが報告されている。そこで、ほ乳類でも神経回路形成期の神経細胞の除去・神経突起の刈り込みにはカスパーゼの活性が関与するという仮説を立てた。これに基づき、広範なカスパーゼファミリーの活性を抑制するp35というウイルス由来のタンパク質をCreによる組み替え依存的に発現するトランスジェニックマウスを作成した。本年度は、このトランスジェニックマウスで起きている異常を探索し、医学的に非常に興味深い知見を得た。そこで、このマウスにおいて起きている異常を、神経-グリア細胞の相互作用を中心に広範に解析中である。ほ乳類の中枢神経回路形成期には、神経突起の伸長・退縮・分解といった大規模な組織構築・改変に伴い、脳内環境に劇的な物理的・生理的変化が生じていることが考えられる。脳内環境の恒常性維持を担うアストロサイトはこの変化を敏感に感知して、何らかの応答を示していると推測される。そこで本研究は、この応答の生理学的意義を以下のような方法で明らかにすることを目指す。本年度は、前年度に構築した脳内でプログラム細胞死の一つであるアポトーシスを抑制するタンパク質を発現させたトランスジェニックマウスで見られた大規模な脳発生不全の原因を探った。結果、このマウスは全身性の発生遅延と、重篤な脳の発生異常を示すことが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-10J10600
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J10600
神経回路形成期におけるアストロサイト-神経細胞間相互作用の生理的意義の解明
そこで、この原因を探るため、脳全体を用いてDNAマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析を行ったところ、カスパーゼ活性が抑制されている脳では、アストロサイトや脳室上衣細胞(エペンダイマル細胞)特異的な遺伝子であるS100bの発現量が低下していることが判明した。これは、発生時のカスパーゼ活性がアストロサイトの発生あるいは機能に重要な役割を果たしている可能性を示唆している。私は修士課程においてトランスジェニックマウスを作成する必要なくアストロサイトで任意の遺伝子を発現させる技術を確立しており、今後、この手法を用いれば、カスパーゼ活性抑制がアストロサイトに与える影響を明らかにし。脳発生異常の原因を探ることが出来る。従って、カスパーゼ活性とアストロサイト、脳の正常発生の関わりを明らかにすることができると考えている。構築したトランスジェニックマウスが示した表現型が予想外であったため、解析に時間を要して入るが、非常に興味深くまた、学術的にも意義の大きい表現型であるので、研究の質が高めることが出来そうである。複数のトランスジェニックマウスを戦略的かつ計画的に同時並行で解析することで、用いたトランスジェニックマウスの異常の原因解明が進展した。トランスジェニックマウスで生じる異常を特定し、これにカスパーゼの活性がどのように影響しているかを解明する。このため、組織学的解析と同時に、複数系統のトランスジェニックマウスを用いた遺伝学的解析も平行して行う予定である。その上で、カスパーゼ阻害により生じる脳発生の異常に、異常にアストロサイトー神経細胞間相互作用がもたらす役割を示す。構築したトランスジェニックマウスが示した表現型の原因として、アストロサイトや特定の部位での発生期のアポトーシスが原因であることが示唆された。今後は、どの部位および時期のアポトーシス不全が脳全体の構造に異常を来す原因となっているかを明らかにし、更にその時アストロサイトが自律的/非自律的にどう応答しているかを解明する。
KAKENHI-PROJECT-10J10600
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J10600
動的修飾型カラムによる高濃度塩溶液中の微量陰イオンのイオンクロマトグラフィ-
1.通常用いる陰イオンクロマトグラフ装置は低交換容量の陰イオン分離カラムと導電率検出器で構成されており、簡便な測定法として大変有効であるが、高濃度塩溶液中の微量成分の測定は共存イオンの分離カラムへの過負荷、検出器のそのイオンへの応答により難しい。そこで、最初の点についてはイオン交換容量を上げるために有機物の分離に有効な逆相型カラムの表面に陽イオン界面活性剤(セチルトリメチルアンモニウム、CTA^+)を吸着させ高交換容量の陰イオン交換カラムとして使用する方法を検討した。また低交換容量の分離カラムとして使用する方法もあわせて検討した。2.1mMCTA^+の種々な水-メタノ-ル混合溶液中で、カラム修飾を検討したところCTA^+の吸着量を任意に変えることができた。そのカラムの正確な陰イオン交換容量をサリチル酸イオン、硝酸イオンを用いて決定した。それらの値は、吸着量から算出した値とほぼ一致しており、吸着したCTA^+はほとんど陰イオン交換となっていた。この修飾カラムは、測定対象試料に適合するように交換容量を変化させることが可能である。しかも吸着したCTA^+は安定に保持される。3.このカラムをUV吸収検出器、電気化学検出器、蛍光検出器の選択的検出器と組み合わせたイオンクロマトグラフシステムにより、共存イオンの妨害なしに微量陰イオン(亜硝酸イオン、硝酸イオンなど)の直接検出、さらにサリチル酸溶離液の使用により上記検出器に不活性な塩化物イオン、硫酸イオンの間接定量ができることを明らかにし環境水に適用した。1.通常用いる陰イオンクロマトグラフ装置は低交換容量の陰イオン分離カラムと導電率検出器で構成されており、簡便な測定法として大変有効であるが、高濃度塩溶液中の微量成分の測定は共存イオンの分離カラムへの過負荷、検出器のそのイオンへの応答により難しい。そこで、最初の点についてはイオン交換容量を上げるために有機物の分離に有効な逆相型カラムの表面に陽イオン界面活性剤(セチルトリメチルアンモニウム、CTA^+)を吸着させ高交換容量の陰イオン交換カラムとして使用する方法を検討した。また低交換容量の分離カラムとして使用する方法もあわせて検討した。2.1mMCTA^+の種々な水-メタノ-ル混合溶液中で、カラム修飾を検討したところCTA^+の吸着量を任意に変えることができた。そのカラムの正確な陰イオン交換容量をサリチル酸イオン、硝酸イオンを用いて決定した。それらの値は、吸着量から算出した値とほぼ一致しており、吸着したCTA^+はほとんど陰イオン交換となっていた。この修飾カラムは、測定対象試料に適合するように交換容量を変化させることが可能である。しかも吸着したCTA^+は安定に保持される。3.このカラムをUV吸収検出器、電気化学検出器、蛍光検出器の選択的検出器と組み合わせたイオンクロマトグラフシステムにより、共存イオンの妨害なしに微量陰イオン(亜硝酸イオン、硝酸イオンなど)の直接検出、さらにサリチル酸溶離液の使用により上記検出器に不活性な塩化物イオン、硫酸イオンの間接定量ができることを明らかにし環境水に適用した。
KAKENHI-PROJECT-01540483
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01540483
電離を伴う非定常密度場計測のための単一結像2波長マッハツェンダー干渉計の開発
2つの波長の光に対するマッハツェンダー干渉計画像を同一のカラーCCD面上に結像し、非定常2次元(あるいは軸対称)の電離気体流れ場における重粒子密度、電子密度分布を同時計測できるシステムを開発した。これは、屈折率変化に対する密度・波長依存性が電子と重粒子で異なることを利用するもので、光源にはデバイス感度が高い波長473nm(B成分)と593nm(R成分)の2台のCW半導体レーザーを、ビームスプリッターを介して用いた。撮影は、カラーCCD高速度カメラ(画素数;360×410pixel、撮影条件;200,000コマ/秒、露光時間;3μs)を用いた。電離気体からの自発光を除去するために、当該2波長帯域のみを透過するデュアルバンドパスフィルター(半値幅10nm)を用いることによって、S/N比の飛躍的向上が実現した。得られた干渉計画像に対して波長感度補正を行った後、それぞれ2次元フーリエ変換し、2次元周波数空間にてノイズ除去を行ったのち、逆フーリエ変換、再構成を施すことによって位相変化の2次元分布が得られる。このようにして得られた2つの2次元分布から適切な演算を施すことによって、重粒子、電子の密度分布が得られる。このシステムを、直径350mm、長さ400mmのテストチャンバー内で、TEA炭酸ガスパルスレーザーを用いて生成したアルゴンプラズマの計測に適用し、重粒子密度5×1025m-3、電離度約10%のプラズマの軸対称密度場測定に成功した。2つの波長の光に対するマッハツェンダー干渉計画像を同一のカラーCCD面上に結像し、非定常2次元(あるいは軸対称)の電離気体流れ場における重粒子密度、電子密度分布を同時計測できるシステムを開発した。これは、屈折率変化に対する密度・波長依存性が電子と重粒子で異なることを利用するもので、光源にはデバイス感度が高い波長473nm(B成分)と593nm(R成分)の2台のCW半導体レーザーを、ビームスプリッターを介して用いた。撮影は、カラーCCD高速度カメラ(画素数;360×410pixel、撮影条件;200,000コマ/秒、露光時間;3μs)を用いた。電離気体からの自発光を除去するために、当該2波長帯域のみを透過するデュアルバンドパスフィルター(半値幅10nm)を用いることによって、S/N比の飛躍的向上が実現した。得られた干渉計画像に対して波長感度補正を行った後、それぞれ2次元フーリエ変換し、2次元周波数空間にてノイズ除去を行ったのち、逆フーリエ変換、再構成を施すことによって位相変化の2次元分布が得られる。このようにして得られた2つの2次元分布から適切な演算を施すことによって、重粒子、電子の密度分布が得られる。このシステムを、直径350mm、長さ400mmのテストチャンバー内で、TEA炭酸ガスパルスレーザーを用いて生成したアルゴンプラズマの計測に適用し、重粒子密度5×1025m-3、電離度約10%のプラズマの軸対称密度場測定に成功した。2つの波長の光に対するマッハツェンダー干渉計画像を同一のカラーCCD面上に結像し、非定常2次元(あるいは軸対称)の電離気体流れ場における重粒子密度、電子密度分布を同時計測できるシステムを開発した。これは、屈折率変化に対する密度・波長依存性が電子と重粒子で異なることを利用するもので、光源にはデバイス感度が高い波長473nm(B成分)と593nm(R成分)の2台のCW半導体レーザーを、ビームスプリッターを介して用いた。撮影は、カラーCCD高速度カメラ(画素数;360×410pixel、撮影条件;200,000コマ/秒、露光時間;3μs)を用いた。電離気体からの自発光を除去するために、当該2波長帯域のみを透過するデュアルバンドパスフィルター(半値幅10nm)を用いることによって、S/N比の飛躍的向上が実現した。得られた干渉計画像に対して波長感度補正を行った後、それぞれ2次元フーリエ変換し、2次元周波数空間にてノイズ除去を行ったのち、逆フーリエ変換、再構成を施すことによって位相変化の2次元分布が得られる。このようにして得られた2つの2次元分布から適切な演算を施すことによって、重粒子、電子の密度分布が得られる。このシステムを、直径350mm、長さ400mmのテストチャンバー内で、TEA炭酸ガスパルスレーザーを用いて生成したアルゴンプラズマの計測に適用し、重粒子密度5×10^24m^-3、電離度約10%のプラズマの軸対称密度場測定に成功した。
KAKENHI-PROJECT-24656519
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24656519
SCNにおける時間発振機構の解明
ショウジョウバエの時計遺伝子の転写翻訳フィードバックループの解明は、2017年ノーベル医学生理学賞に輝いた。我々は、1997年に哺乳類時計遺伝子Perのクローニングに成功し、さらに、哺乳類では時計遺伝子だけではリズム形成は不十分で、時計中枢SCNの時計細胞同士の神経伝達が必須である事を明らかにした。今回、SCNのGPR176ーcAMP系がリズム発現の鍵物質であること、時差の数理モデル、PERの活性を制御するCk1dの選択的スプライシングによって生成するCK1D2が概日周期を司る事、哺乳類カルシトニン受容体が昼寝時の体温調節に関与する事、Per遺伝子が細胞の多倍体化に関与することを明らかにした。本研究においては、物質・分子・細胞・回路という現代の新しい考え方で生体リズム中枢視交叉上核(suprachiasmatic nucleus: SCN)を再定義し直し、分子から行動までのリズム発振の分子メカニズムを解明する。SCNは生体リズムの発現には必須の神経核であり、この部位の破壊で、生体リズムは消失する。哺乳類のリズム発振に関しては、全身の細胞中での時計遺伝子の転写翻訳フィードバックループによるロバストなリズムが確認されているが、未だに、なぜSCNのみが全身の細胞リズムを駆動する力を持っているのかは、解明されていない。最近、代謝サイクルのリズムが時計発振に関与するという新しい考えが出てきて、時計の概念が根本的に変ろうとしている。これまで、我々はSCNの遺伝子を網羅的にノックアウトするプロジェクト(SCN-Gene Project)にて、SCN特有の神経回路がリズム産生や時差に必須であることを解明してきた。今回我々は、無麻酔・無拘束下の動物のSCNからPer1とPer2の転写発現をluciferase発光としてモニターできる遺伝子改変ラットを用いて、脳内に直接光ファーバーを挿入しリズム発振の様子を検出した。その結果、Per1転写がPer2転写に先行してリズムを描くことを生体で初めて解明した。さらに、SCNの神経伝達で重要な役割を担う、G蛋白質共役受容体(GPCR)にも詳細な検討を行なった。その結果、GPCRファミリーに属する新規オーファン受容体分子Gpr176を同定した。さらにこのGpr176は、これまで過去によく解析されてきた他のGPCRとは異なり、Gzという特殊なG蛋白質を介して下流にシグナルを伝えることがわかった。GPCRは創薬ターゲットとして優れた性質を持っているので、Gpr176を標的とした今後、睡眠障害に対する新しい治療法や予防法の開発が期待される。行動レリズムはSCNの形成する概日リズムにより形成されている。このリズムは、時計遺伝子Per1、Per2の転写・翻訳フィードバックループにより形成される。今回、我々は、無麻酔・無拘束下の動物のSCNからPer1とPer2の転写発現をリアルタイムでモニターし、そのリズム発振の様子を検索した。プロモーター制御でルシフェラーゼ(luc)を発現する2種類のトランスジェニックラット(Per1-lucラットおよびPer2-lucラット)を用いた。自由行動下のこれらのラットSCNに光ファイバーを挿入し、ルシフェラーゼの基質であるルシフェリンを浸透圧ポンプによりSCNに持続投与し生体発光の変動を経時的に検索した。その結果、Per1-lucラットおよびPer2-lucラットのどちらも、明瞭な生体発光の概日リズムを示したが、振動のピーク時刻は異なっており、Per1-lucの発光ピークは主観的明期の中頃に、Per2-lucの発光ピークはそれより3時間程度遅れていた。続いて、SCNの神経伝達で重要な受容体に関しても研究した。今回、我々は、体内時計中枢SCNに発現するG蛋白質共役受容体(GPCR)ファミリーに属する新規オーファン受容体分子Gpr176を同定した。Gpr176は、生体リズムの中枢に作用して時刻調整を行うという優れた性質をもつ。さらにこのGpr176は、これまで過去によく解析されてきた他のGPCRとは異なり、Gzという特殊なG蛋白質を介して下流にシグナルを伝えることがわかった。GPCRは創薬ターゲットとして優れた性質を持っているので、Gpr176を標的とした今後、睡眠障害に対する新たな生体リズム調整薬の開発が期待される。覚醒・活動・睡眠という生活リズムは、社会生活や個人の健康の基盤であり、食事、労働、個人生活も全てこのリズムの上に乗っている。ところが、現代の24時間社会では、我々をとりまく環境が急速に変化してきた。シフトワーク(交代性勤務や時差勤務)が常態となり、現代人は夜遅くまで強い照明を浴び、また、夜に活動して昼間に眠るなど自然の昼夜とは異なった明暗サイクルで生活する機会も増えている。このような生活環境が生物時計不調の引き金となる。不眠や概日リズム障害は、加齢性の脳の変性疾患でも増え、重大な問題となっている。では、このようなリズム異常はどのような機構で起こるのであろうか。周知のように、睡眠覚醒を司るのは概日リズムセンターである視交叉上核(Suprachiasmatic nucleus: SCN)であり、この神経核の破壊で生体リズムは消失する。哺乳類のリズム発振に関しては、時計遺伝子が単離され、全身の細胞中での転写翻訳フィードバックループの発振が確認されているが、未だに、なぜSCNのみが全身の細胞リズムを駆動する力を持っているのかは、解明されていない。今回、中枢時計SCNを中心とする、哺乳類生体リズムシステムの、リズム駆動・リズム調節のメカニズムを解明し、現代人のリズム不全の原因を探る。そこで、鍵となるのは、最近の代謝サイクルのリズムが時計発振に関与するという新しい考え方である。
KAKENHI-PROJECT-15H01843
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H01843
SCNにおける時間発振機構の解明
具体的には、これまで、我々が主導してきたSCNの遺伝子を網羅的にノックアウトするプロジェクト(SCN-Gene Project)を基に、物質・分子・細胞・回路という現代の新しい考え方でリズム発振を再定義し直し、リズム発振の分子・神経機構を解明し、概日リズム睡眠障害の動物モデルを作成し、リズムから見た疾病の新しい治療法や予防法の開発を目指す。脳の視交叉上核(SCN)における時計遺伝子の形成するリズムにより、約24時間周期の概日リズムは形成されている。しかし、最近は、代謝サイクルのリズムが時計発振に関与するという新しい考えが出てきおり、時計遺伝子の、転写、翻訳、またそれ以上のレベルの制御かどうかを決定することは、重要である。今回、我々は、哺乳類の生物時計の原型と考えられる、MEF細胞系を用いて、時計タンパク質PER2の挙動を検索した。その結果、PER2のリン酸化・非リン酸化状態がリズミックに発現することが分かった。このリズムは、タンパク合成阻害下では、直ちに減衰し、翻訳過程の存在がPER2リズム発現に必須であることが初めて明らかとなった。サーカディアンリズムの環境周期への同調機能は、哺乳類では、一義的にSCNが担っている。一般に、リズム同期に最も強いのは光刺激である。今回、光以外の因子として神経伝達物質であるアセチルコリンを検討した。今回、時計遺伝子レポーター発現マウスから採取したPer1-lucレポーターSCNスライスカルチャー系の各位相に、アセチルコリン受容体作動薬Carbacholを培養液中に投与したところ,位相依存的に時計遺伝子のリズムが変動した。このことは、アセチルコリンがリズム位相の決定に重要な働きをしていることを示し、アセチルコリン作動薬が概日リズム障害の治療に有効である可能性を示唆する。我々はさらに、概日リズムの新たな数理モデルを提唱し、薬を使わずに時差ボケを軽減する方法を提案した。実際、この数理をマウスに適応し、その有用性を確認した。この方法は、起床時間を変える方法で、時差ボケの症状の軽減だけでなく、シフト労働者の体のに優しいスケジュールづくりにも応用することが期待される。以上は今年度発表したデータであるが、RNAメチル化を始めとする分子機構の研究も公表あと一歩のところまで来ている。2017年のノーベル賞の対象となった時計遺伝子の発見により、細胞レベルでは時計遺伝子の転写翻訳フィードバックループがサーカディアンリズム(概日リズム、生体リズムともいう)を引き起こすことが解明された。我々は時計遺伝子が哺乳類でも存在することを明らかにした。しかるに、哺乳類では時計遺伝子による時間発振だけでは生体リズム発現には不十分で、時計中枢SCNの時計細胞相互の神経伝達が必須であることを明らかにした。今回、SCNの神経回路形成に必要な物質を、SCNに特異的に発現する遺伝子の網羅的解析(SCN Gene Project)にて同定した。
KAKENHI-PROJECT-15H01843
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H01843
フィトクロムの構造と機能解明を目指したフィコビリン誘導体の高効率・高選択的合成
植物の主要な光レセプターであるフィトクロムが環境の光情報を認知し,その情報に応じて生育のプロセスを巧みに制御する機構を分子レベルで解明することを目指して,発色団部分(テトラピロール化合物の一種であるフィトクロモビリン)の高効率・高選択的一般合成法の開発について検討した。その結果,以下のような成果を得ることができた。1.まず,発色団であるフィトクロモビリン(PΦB)及びその代替物として用いられる集光性色素蛋白質フィコシアニンの発色団であるフィコシアノビリン(PCB)のAD環に相当するピロール誘導体の簡便合成法並びにそれらのカップリング反応を開発した。2.上で開発した反応を駆使して,アポ蛋白質と再構成可能な側鎖カルボン酸が遊離の形の天然型PΦB, PCB及び20種以上のPCB誘導体を世界に先駆けて合成した。また,18位に光活性基を導入したPΦB誘導体(構造・機能探索分子)の合成にも成功した。3.合成発色団とアポ蛋白質との再構成実験を行い,アポ蛋白質に対する結合効率や再構成フィトクロムの光可逆性に関するスペクトル的研究から,発色団の構成要素であるAD環上の各側鎖の特異的役割並びに発色団結合サイトの環境に関する重要な知見を得た。更にフィトクロムA, Bの機能とPΦBとPCBの構造上の相違との関係に関する新規で重要な知見を得た。4.引き続き,アポ蛋白質と発色団との相対的配置や相互作用などを解明するために,PΦB並びにPCB誘導体の更に簡便な合成法の開発を試み,入手容易なビリルビンを出発物質とする新規で簡便な一般合成法を確立することができた。5.P_<fr>型に対応すると考えられるCD環部分の立体化学がE-syn型で固定されたPCB誘導体の合成にも成功した。植物の主要な光レセプターであるフィトクロムが環境の光情報を認知し,その情報に応じて生育のプロセスを巧みに制御する機構を分子レベルで解明することを目指して,発色団部分(テトラピロール化合物の一種であるフィトクロモビリン)の高効率・高選択的一般合成法の開発について検討した。その結果,以下のような成果を得ることができた。1.まず,発色団であるフィトクロモビリン(PΦB)及びその代替物として用いられる集光性色素蛋白質フィコシアニンの発色団であるフィコシアノビリン(PCB)のAD環に相当するピロール誘導体の簡便合成法並びにそれらのカップリング反応を開発した。2.上で開発した反応を駆使して,アポ蛋白質と再構成可能な側鎖カルボン酸が遊離の形の天然型PΦB, PCB及び20種以上のPCB誘導体を世界に先駆けて合成した。また,18位に光活性基を導入したPΦB誘導体(構造・機能探索分子)の合成にも成功した。3.合成発色団とアポ蛋白質との再構成実験を行い,アポ蛋白質に対する結合効率や再構成フィトクロムの光可逆性に関するスペクトル的研究から,発色団の構成要素であるAD環上の各側鎖の特異的役割並びに発色団結合サイトの環境に関する重要な知見を得た。更にフィトクロムA, Bの機能とPΦBとPCBの構造上の相違との関係に関する新規で重要な知見を得た。4.引き続き,アポ蛋白質と発色団との相対的配置や相互作用などを解明するために,PΦB並びにPCB誘導体の更に簡便な合成法の開発を試み,入手容易なビリルビンを出発物質とする新規で簡便な一般合成法を確立することができた。5.P_<fr>型に対応すると考えられるCD環部分の立体化学がE-syn型で固定されたPCB誘導体の合成にも成功した。植物の発生や生長,分化などの様々な過程に広く関係して,環境の光情報を植物に伝える重要な役割を果たしている光受容色素蛋白質フィトクロムは,開環状テトラピロール化合物の一種であるフィトクロモビリン(PΦB)を発色団として有する。このPΦB及び類似の構造を有するフィコシアノビリン(PCB)のジメチルエステルは,1980年以前に合成されていたが,アポタンパク質と結合可能な遊離のカルボン酸側鎖を有するPΦB及びPCBの合成は,目的化合物が不安定なこともあり,これまで達成されていなかった。そこで,我々は,発色団とアポタンパク質との相対的配置や相互作用,並びに発色団の構造と機能の相関関係,更に光合成系遺伝子発現・調節機構の解明を目指して,遊離のPΦB及びPCBとそれらの誘導体の高効率・高選択的合成法を確立することを目的として研究した。その結果,以下のような成果が得られた。(2)極めて効率的なB,C環に共通のピロール誘導体の一般合成法を確立した。(3)A環及びD環の新規簡便一般合成法を確立し,D環への光活性基の導入にも成功した。(4)上で得られたA,D環とB,C環との新しいカップリング反応を開発することができた。(5)上記の成果を活用して,効率的なAB環及びCD環の新構築法を開発し,世界ではじめて遊離のPΦB及びPCBの合成に成功した。(6)化学合成したPΦB及びPCBはアポ蛋白質と容易に結合し,天然型のフィトクロムと同様の機能を有するホロ蛋白質を与えることを見い出した。
KAKENHI-PROJECT-11440187
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11440187
フィトクロムの構造と機能解明を目指したフィコビリン誘導体の高効率・高選択的合成
植物の発生や生長,分化などの様々な過程に広く関係し,環境の光情報を植物に伝える重要な役割を果たしている光受容色素蛋白質フィトクロムの発色団は,フィトクロモビリン(PΦB)と呼ばれ,開環状テトラピロール骨格を有する。本研究では,このPΦB及びその誘導体の高効率・高選択的合成法を確立することにより,発色団の構造と機能の相関関係並びに,アポタンパク質と発色団との相対的配置および相互作用を探究し,最終的には,植物中における光合成系遺伝子の発現・調節機構を解明することを目的とする。この研究を通じて得られる新しい知見は,次世代型の高効率的光分子スイッチの創製をも可能性にするものと期待される。平成12年度に実施した研究の成果は,以下の通りである。1.PΦB及びその代替発色団として多用されるフィコシアノビリン(PCB)のAB環部分の新規簡便合成法を開発し,D環に光活性基を有するPCB誘導体をはじめ,種々のPCB誘導体の合成に成功した。2.これまでB,C環の合成は多くのステップを要し,収率も満足のできるものではなかった。本研究では,ラクトンを出発物質として用いる高効率的な合成法を確立し,PCBの8位及び12位のカルボン酸側鎖の長さを変えたPCB誘導体の合成に成功した。3.アポ蛋白質中の発色団ポケットのA環近傍のアミノ酸環境を探るために,3,3′-ジヒドロPCB誘導体をはじめ,A環の置換基を修飾した種々のPCB誘導体の合成に成功した。4.上記で化学合成した20種類以上のPCB誘導体を,遺伝子工学の手法を用いて大量発現したアポ蛋白質とin vitroで再構成し,スペクトル手法により,アポ蛋白質中の発色団ポケットに関する興味深い新知見を得た。植物の主要な光レセプターであるフィトクロムが環境の光情報を認知し,その情報に応じて生育のプロセスを巧みに制御する機構を分子レベルで解明することを目指して,発色団部分(テトラピロール化合物の一種であるフィトクロモビリン)の高効率・高選択的一般合成法の開発について検討した。その結果,以下のような成果を得ることができた。1.まず,発色団であるフィトクロモビリン(PΦB)及びその代替物として用いられるフイコシアノビリン(PCB)の構成要素としてのD環ピロリノンの新たな簡便合成法を開発した。また,この反応を応用し、18位に光ラベル化部位を導入したPΦB誘導体(構造・機能探索分子)の合成にも成功した。2.これまでに開発した反応を駆使して,アポ蛋白質と再構成可能な側鎖カルボン酸が遊離の形の天然型PΦB及びPCBの全合成を世界に先駆けて達成した。3.更に20種以上のPCB誘導体の合成にも成功し,アポ蛋白質との再構成実験を行った。その結果,アポ蛋白質に対する結合効率や,再構成フィトクロムの光可逆性に関するスペクトル的研究から,PCBのA(8160)16D環上の各側鎖の特異的役割並びに発色団結合サイトの環境に関する重要な知見を得た。4.引き続き、アポ蛋白質と発色団との相対的配置や相互作用などを解明するために,PΦB並びにPCB誘導体の更に簡便な合成法の開発を試み,入手容易なビリルビンを出発物質とする新規で簡便な一般合成法を確立することができた。5.P_<fr>型に対応すると考えられるCD環部分の立体化学を固定したPCB誘導体の合成にも成功した。
KAKENHI-PROJECT-11440187
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11440187
原発性肺がんの発生・進展に関連する新規責任遺伝子の検索
本研究は、肺がんの発生と関連する責任遺伝子の局在を突き止める目的で肺腺がん、扁平上皮がんおよび神経内分泌性腫瘍合計306例を対象とし、8pにある19のDNAマーカーを用いPCR法によりマイクロサテライト不安定性MSI解析を行った。その結果、8p23.2、8p23.1、8p22および8p21におけるMSI頻度は、それぞれ20%、51%、24%と15%であり、8p23.1におけるMSI頻度は他の領域より有意に高いことが判明した。特にD8S1819においてのMSIは何れの組織型においても高頻度であったことから、肺がんの発生と関連する責任遺伝子が8p23.1に存在している可能性が示唆された。本研究は、原発性肺がんを対象とし染色体領域にあるマーカーを用い、マイクロサテライト解析を行うことで、肺がんの発生・進展に関連する染色体領域から責任遺伝子を探し出すことを、最終目的とする。外科手術例から遠隔転移を伴わない肺がん220症例および病理解剖例から遠隔転移を伴う進行型肺がん40症例(180病変)を対象とし、各組織型の肺がん組織標本からがん部・非がん部組織を選び核酸抽出を行い遺伝子解析を行った。平成25年度はサンプルを収集しつつ遺伝子解析を行った。既にDatabaseに登録されている情報を参照し、肺がん患者においてinformative markerを選出し、肺がんの発生と関連する染色体領域が8番短腕であることを見出した。そして、当該候補染色体領域8pに存在するMTUS1を含む幾つかの候補遺伝子を選出し遺伝子解析まで行った。一部の肺がん症例において、シークエンス解析を行った結果、何れの遺伝子においても有意な突然変異がないことが判明した。現在はMTUS1の機能に関連するmRNAの発現およびタンパク質の発現を検討している。一方、肺がんの発生においては多種類の遺伝子が関わる多段階発がん説が想定され、また病理学的には多彩な組織像を呈することから、中枢気道、末梢気道および肺胞のそれぞれを構築する上皮を母細胞として肺がんが発生し得ると考えられている。我々は4番染色体に存在する遺伝子PROM1に着目し、様々な人体材料を用いて研究を進めている。外科手術により得られた原発性肺がん113症例を対象とし、PROM1タンパク質の発現変化を検討した。その結果、肺がん細胞においてPROM1タンパク質の発現が認められたのは113症例中29例の26%であった。一方、進行型肺がんにおいてもほぼ同程度の割合であった。一部の結果を第102回日本病理学会総会で発表した。原発性肺がんは、先進国においてはがん死亡原因の一位である。肺がんは、組織学的には腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんおよび小細胞がんに大きく分けられる。組織型の違いにより、発生頻度だけでなく治療方針や臨床経過も異なってくる。最近になって、各組織型の間に遺伝学的にも明らかな相違点があることが確認されている。本研究は、原発性肺がんの各組織型を対象とし、染色体領域にあるマーカーを用いマイクロサテライト解析を行い、肺がんの発生・進展に関連する染色体領域を選出し、最終的に真の責任遺伝子を探し出すことを目的とする。そのため、今年度はサンプルの収集から研究を開始した。具体的には、外科手術により得られた肺がん組織標本のホルマリン固定・パラフィン包埋ブロックからがん部、非がん部および正常組織をマイクロダイセクション法により切除した。その症例の内訳は、細気管支肺胞上皮がんを含む腺房型、乳頭型腺がん138症例、扁平上皮がん55症例、大細胞がん21症例、小細胞がん21症例およびその他特殊型など合計220症例であり、これらから500以上のがん病変組織を採取した。同様に病理解剖により得られた遠隔転移を伴う進行型肺がん40症例の組織標本から原発巣と転移巣の合計180がん病変組織を採取した。更に一部の標本を用いて染色体領域にある既知のマーカーから、日本人肺がん患者においてinformative markerを選出した。現在は、採取された組織から核酸抽出を行い、サンプルとしてマイクロサテライト解析および遺伝子解析を行っている。一方、4番染色体短腕に存在するPROM1についての研究を進めており、肺がんの発生・転移過程におけるPROM1の生物学的機能を解明するため、ヒト胎児を含む正常組織および様々な非腫瘍性組織におけるPROM1タンパク質の発現様式を明らかにした。一部の結果を第9回日米合同癌学会で発表した。本年度は主に2つの候補遺伝子に焦点を絞って発癌過程における機能解析を行った.まずPROM1についてであるが,2009年から2012年まで本学附属病院にて外科手術より切除された肺腺癌134症例と扁平上皮癌71症例のFFPE組織標本を用いPROM1タンパク質の発現を明らかにし,その発現の意義を検討した.肺腺癌134例中PROM1の発現が認められたのは64例の48%であった.この結果から,肺腺癌の発生過程におけるPROM1は機能タンパクとしての関連性が低いと推測された.一方,扁平上皮癌についてであるが,癌細胞においてPROM1タンパクの発現が認められたのは71症例中僅か9例の13%であった.裏を返せば87%の扁平上皮癌においてPROM1タンパク質が発現していなかったという結果であった.このことから,PROM1は肺扁平上皮癌の発生過程において,がん幹細胞の機能タンパクではないことが明らかとなった.
KAKENHI-PROJECT-24590454
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24590454
原発性肺がんの発生・進展に関連する新規責任遺伝子の検索
また,非癌部気管支粘膜上皮細胞においてPROM1タンパク質が恒常的に発現していることも判明した.これはPROM1タンパクが正常気管支粘膜上皮細胞の構造または機能を維持するのに重要であることを示唆していた.これまでの解析結果を基にして,8番染色体短腕領域に存在する候補遺伝子MTUS1は新規のがん抑制遺伝子である可能性を示唆してきた.今年度は外科手術より切除された早期段階の肝細胞癌34症例および病理解剖より得られた遠隔転移を伴う進行型肝細胞癌22症例64病変を対象とし,自ら作製した抗MTUS1タンパクの特異抗体を用い,肝細胞のがん化過程におけるMTUS1タンパク質の発現変動を検討した.75%の肝癌症例において,がん化と共にMTUS1タンパクの消失が確認された.また,2015年3月に新WHO肺癌分類が提唱されたのを受けて,これまでに蓄積した250症例の組織標本を新組織分類基準に基づき再評価した.2015年3月にWHO Classification of Tumors of The Lung, Pleura, Thymus and Heart 4th Editionが刊行されたことを受け、これまでに蓄積していたすべての症例について、新WHO分類に準拠した肺癌組織型・亜型再分類を行った。最終的には、新組織型・亜型分類に基づいて、肺癌発生に関連する染色体変化の解析および候補遺伝子の解析を研究期間内に終了することを目標としている。そのため、外科手術より得られた肺腺癌183症例(257病変)および病理解剖より得られた遠隔転移を伴う進行型肺腺癌40症例(180病変)の組織標本に対して、EVG染色およびTTF-1免疫染色を施行し、新組織亜型分類を行った。そして、置換性・乳頭状・腺房型・充実性の浸潤性肺腺癌の各組織亜型においてTTF-1の発現率にバラつきがみられ、特に充実性浸潤癌においては有意に低いことが判明した。一方、肺扁平上皮癌に関して、外科手術より得られた遠隔転移を伴わない81症例(157病変)の組織標本に対して、CK5/6、p40(Δp63)およびTTF-1の免疫染色を施行し、組織亜型分類を行った。引き続き、肺腺癌と扁平上皮癌を対象とし、8番染色体短腕領域の変化を網羅的に解析したところ、充実性肺腺癌は、他の組織亜型の肺腺癌と異なる染色体変化を示す一方、非角化型扁平上皮癌と共通する変化を示すことを見出した。また、今回の改訂では、それらの組織学的特徴から、従来の神経内分泌大細胞癌と小細胞癌はカルチノイド腫瘍と併せて神経内分泌腫瘍に統合された。我々は、21例の神経内分泌大細胞癌と21例の小細胞癌を対象とし、幾つかの染色体領域の変化を解析したところ、二者の間に類似する傾向が示された。この結果を第105回日本病理学会および第75回日本癌学会総会にて発表することを予定している。本研究は、肺がんの発生と関連する責任遺伝子の局在を突き止める目的で肺腺がん、扁平上皮がんおよび神経内分泌性腫瘍合計306例を対象とし、8pにある19のDNAマーカーを用いPCR法によりマイクロサテライト不安定性MSI解析を行った。その結果、8p23.2、8p23.1、8p22および8p21におけるMSI頻度は、それぞれ20%、51%、24%と15%であり、8p23.1におけるMSI頻度は他の領域より有意に高いことが判明した。
KAKENHI-PROJECT-24590454
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24590454
放射線発がんにおける遺伝的不安定性の役割とその分子機構
放射線発がんに重要な役割を果たす遺伝的不安定性誘導の分子機構を解析するため、照射したマウス精子が持ち込んだDNA損傷が1細胞期杯で誘発するp53依存性シグナル伝達経路について解析した。これらの研究から以下の結果を得た。1.父親精子の照射により生まれたF1マウスでは、母親ハエ由来のミニサテライト配列の突然変異頻度が上昇していた。さらに眼色遺伝子pinkeyedunstableの体細胞突然変異も上昇した。これらは、照射精子が持ち込んだDNA損傷による間接的突然変異の誘発と、それが遅延事象として体細胞において生じることを示している。2.p53応答配列をもつ核移行型lacZ遺伝子を受精卵の雌性前核に微小注入したところ、精子が照射されている場合にのみ発現した。また照射精子での受精卵では、雌性核のDNA合成も抑制された。この抑制はp53欠失精子および卵子においては見られなかったが、これに大腸菌でつくらせたp53-GSTを微小注入したところ、抑制が現れた。3.照射精子受精において、少なくとも8細胞期まではG1 block、G2 block、apoptosisはみられず、着床数も減少しなかった。胎児数は6Gy照射で約半数に減少したことから、胚のアポトーシスは、着床後に起こる現象であることが明らかになった。4.照射精子受精初期胚においてみられた上記のdamage checkpointとcytokinesisのuncouplingは、この発生の時期では、損傷存在下での細胞の増殖という遺伝的不安定性誘導を最も誘導しやすい環境をとなっていることを示している。放射線発がんに重要な役割を果たす遺伝的不安定性誘導の分子機構を解析するため、ショウジョウバエの眼色遺伝子の突然変異について解析した。培養細胞で遺伝的不安定性を解析しうる系の開発を行った。さらに照射したマウス精子が持ち込んだDNA損傷が1細胞期杯で誘発するp53依存性シグナル伝達経路について解析した。これらの研究から以下の結果を得た。1.父親精子の照射により生まれたF1ショウジョウバエでは、母親ハエ由来のwhite-ivory株の復帰突然変異が上昇することを明らかにした。これは、照射精子が持ち込んだDNA損傷が、体細胞において母親由来遺伝子に遅延突然変異を起こしたためと結論できる。2. p53応答配列をもつ核移行型lacZ遺伝子を受精卵の雌性前核に微小注入した。この遺伝子は、精子が照射されている場合にのみ発現した。これは、精子の持ち込んだDNA損傷がp53依存性シグナル伝達系を立ち上げ、これが雌性核の遺伝子の転写を活性化したことを意味する。3.精子に対する照射線量に依存して、受精卵における雄性前核と雌性前核のDNA合成が抑制された。4.培養細胞におけるミニサテライト配列を指標にした遺伝的不安定性の解析系の開発をおこなった。ニワトリDT40細胞に超可変ミニサテライト配列CEB1をもつヒト染色体2番を導入した株を作成したが、クローニング効率が悪く、実験系としては問題があることが判明した。以上、ショウジョウバエの系においても雄精子照射による雌親由来遺伝子の突然変異が誘発された。この分子機構の一端として、雄精子のDNA損傷は受精卵においてシグナル伝達系を活性化し、これが雌性核に伝えられることが明らかにされた。放射線発がんに重要な役割を果たす遺伝的不安定性誘導の分子機構を解析するため、照射したマウス精子が持ち込んだDNA損傷が1細胞期杯で誘発するp53依存性シグナル伝達経路について解析した。これらの研究から以下の結果を得た。1.父親精子の照射により生まれたF1マウスでは、母親ハエ由来のミニサテライト配列の突然変異頻度が上昇していた。さらに眼色遺伝子pinkeyedunstableの体細胞突然変異も上昇した。これらは、照射精子が持ち込んだDNA損傷による間接的突然変異の誘発と、それが遅延事象として体細胞において生じることを示している。2.p53応答配列をもつ核移行型lacZ遺伝子を受精卵の雌性前核に微小注入したところ、精子が照射されている場合にのみ発現した。また照射精子での受精卵では、雌性核のDNA合成も抑制された。この抑制はp53欠失精子および卵子においては見られなかったが、これに大腸菌でつくらせたp53-GSTを微小注入したところ、抑制が現れた。3.照射精子受精において、少なくとも8細胞期まではG1 block、G2 block、apoptosisはみられず、着床数も減少しなかった。胎児数は6Gy照射で約半数に減少したことから、胚のアポトーシスは、着床後に起こる現象であることが明らかになった。4.照射精子受精初期胚においてみられた上記のdamage checkpointとcytokinesisのuncouplingは、この発生の時期では、損傷存在下での細胞の増殖という遺伝的不安定性誘導を最も誘導しやすい環境をとなっていることを示している。
KAKENHI-PROJECT-10151217
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10151217
フェニルプロパノイド系ポリフェノールが腸管を介して脳機能を改善する効果の解明
ポリフェノールにはアルツハイマー病(AD)を予防する疫学的知見が報告されているが生体内でのメカニズムは不明なことが多い。ADモデルマウスに、ロスマリン酸(RA)を摂食させると、脳内アミロイドβ(Aβ)の凝集が抑制された。本マウス脳のトランスクリプトミクスによりRA群において、脳内でAβ凝集抑制活性を有する化合物濃度が上昇する可能性が示唆された。野生型マウスを用いた試験では、RA摂食によりこの化合物の濃度が上昇し、さらにその分解酵素の抑制が示唆された。以上の結果からRA摂食により脳内においてAβ凝集抑制活性を有する化合物の濃度が上昇することにより、ADを予防している可能性が考えられた。ロスマリン酸(RA)を摂食させ、脳内Aβ凝集が抑制されたTg2576マウス脳のトランスクリプトミクス結果と比較するために、Tg2576マウスの背景系統であるC57BL/6Jマウスを用いて、RA摂食による脳の遺伝子発現変化を検討した。短期間として7週間、長期間として12ヵ月間RAを摂食させ、脳を採取した。同時にTg2576マウスも12ヶ月間の飼育を開始した。それぞれの12か月間摂食群については現在も飼育継続中であり、飼育の終了は次年度を予定している。脳の解析部位は、記憶および認知に関与しAD患者において特異的な異常が報告されている大脳皮質とした。大脳皮質からtotalRNAを抽出し、DNAマイクロアレイに供した。DAVIDによるGO解析では、神経系の発達および神経伝達調節などの機能のまとまりがみられた。7週間RAを摂食させたマウスの血液、脳および消化管を採取し、RA濃度を測定した。RA食を摂食させた野生型マウスのDNAマイクロアレイ解析を実施し、Tg2576マウスとの比較を行った。またRA摂食マウスの血液、脳、および消化管のRA濃度を測定した。消化管のトランスクリプトミクスは次年度を予定している。27年度に引き続き、Tg2576マウスに1年間ロスマリン酸(RA)混合餌を摂食させ、AD予防効果を検討した。比較のために野生型マウスも同様にして飼育した。行動試験において、野生型マウスでは、コントロール群(C群)およびRA群共に認知機能低下は認められなかったが、ADモデルマウスではC群において認知機能が低下し、RA群では認知機能低下が抑制されることが明らかとなった。抗体免疫染色およびELISAにより脳内アミロイドβ(Aβ)の沈着を測定した。また、このマウスの脳(海馬)を摘出し、DNAマイクロアレイ解析を実施した。現在、認知機能低下に繋がる因子を解析している。金沢大学において実施された動物実験での脳サンプルを用いてDNAマイクロアレイを実施した。得られたデータをDFWで正規化後、FDR<0.1を満たすプローブセットをWeb解析ツールIngenuity Pathways Analysis(IPA)に供した。遺伝子を機能カテゴリーごとに分類すると、機能低下と判定されたカテゴリーとして、apoptosis、cell death、necrosisなどが上位に位置していたため、Tgマウスの脳内ではRA摂食により細胞死が抑制される可能性が示唆された。それ以外にも、我々はAβ沈着抑制に繋がる、RA摂食によって生じる脳内物質の変化に着目した。その物質について、HPLCを用いた部位別の脳内濃度測定やイメージングMSを実施し、局在性を検討した。7週間RAを摂食した野生型マウスの脳および血漿を採取し、RA濃度をクーロメトリック式HPLC-ECDで測定した。当初の目標通り、マイクロアレイの解析を進め、AD予防ターゲットと成り得る因子を数種同定し、野生型マウスを用いてその表現型を確認した。ポリフェノールにはアルツハイマー病(AD)を予防する疫学的知見が報告されているが生体内でのメカニズムは不明なことが多い。ADモデルマウスに、ロスマリン酸(RA)を摂食させると、脳内アミロイドβ(Aβ)の凝集が抑制された。本マウス脳のトランスクリプトミクスによりRA群において、脳内でAβ凝集抑制活性を有する化合物濃度が上昇する可能性が示唆された。野生型マウスを用いた試験では、RA摂食によりこの化合物の濃度が上昇し、さらにその分解酵素の抑制が示唆された。以上の結果からRA摂食により脳内においてAβ凝集抑制活性を有する化合物の濃度が上昇することにより、ADを予防している可能性が考えられた。ポリフェノールにはアルツハイマー病(AD)を予防する疫学的知見が報告されているが生体内でのメカニズムは不明なことが多い。ADモデルマウスに、ロスマリン酸(RA)を摂食させると、脳内アミロイドβ(Aβ)の凝集が抑制された。本マウス脳のトランスクリプトミクスによりRA群において、脳内でAβ凝集抑制活性を有する化合物濃度が上昇する可能性が示唆された。野生型マウスを用いた試験では、RA摂食によりこの化合物の濃度が上昇し、さらにその分解酵素の抑制が示唆された。以上の結果からRA摂食により脳内においてAβ凝集抑制活性を有する化合物の濃度が上昇することにより、ADを予防している可能性が考えられた。野生型およびTg2576マウスのトランスクリプトミクス解析により見出されたRA摂食による脳機能改善に繋がる変化について、野生型マウスを用いてその表現型を確認する。消化管のDNAマイクロアレイ解析を実施し、標的因子を探索する。
KAKENHI-PROJECT-15H02894
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H02894
フェニルプロパノイド系ポリフェノールが腸管を介して脳機能を改善する効果の解明
28年度までにADモデルマウスを用いてRAの認知機能低下抑制を検討した。また野生型マウスを用いてRAの体内動態を明らかにした。脳内における遺伝子発現変化からRAの新たな機能性およびターゲット因子の候補を見出し、その因子の脳内局在性および脳内濃度を明らかにした。29年度は、RA摂食により生じる脳内変化についてさらに解析を進めると共に、RAを摂食したマウスの消化管上皮のオミックス解析によりRA摂食により活性化される可能性のある候補分子を選抜する予定である。29年度が最終年度であるため、記入しない。食品機能学29年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-15H02894
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H02894
スポーツ選手の視線制御機能(眼と頭の協調)とその学習による向上の可能性
視野の中に現れた対象物に対して視線方向を急速に切り替える視線制御運動(眼と頭の協調)によるゲイズサッケードの精度,速度を調べ、その機能がスポーツ選手において特異的に高いか、トレーニングによって向上が可能かを実験的に検討することが目的である。実験として、(1)頭を能動的に回転させたときのゲイズサッケードの速度を計測し、頭の速度、VORゲインとの関係を検討、(2)暗闇で身体を受動回転させたときの視覚目標に対するゲイズサッケードの位置精度を計測し、頭の回転角知覚を視線制御に活用する能力の検討を行った。(1)については、被験者9名について計測を行い、(1)ゲイズ角速度は頭角速度の増加関数である。(2ゲイズ実行中、VORゲインは0.40.7に低下し、そのため頭角速度を高めるとゲイズ角速度が増加する。(3)ゲイズ角速度はスポーツ選手が一般人より高いとは言えないが、VORゲインの低下はスポーツ選手の方が大きい可能性がある。(2)については、1)暗闇で知覚した頭の回転角は実際の回転角と高い相関がある(相関係数0.99以上)。(2)頭の受動回転後、視覚目標を暗闇で注視する精度はVORゲインに依存する。(3)VORゲインはトレーニングによって増大又は減少が可能で、注視の位置精度もその影響を受ける。ことを明らかにした。視野の中に現れた対象物に対して視線方向を急速に切り替える視線制御運動(眼と頭の協調)によるゲイズサッケードの精度,速度を調べ、その機能がスポーツ選手において特異的に高いか、トレーニングによって向上が可能かを実験的に検討することが目的である。実験として、(1)頭を能動的に回転させたときのゲイズサッケードの速度を計測し、頭の速度、VORゲインとの関係を検討、(2)暗闇で身体を受動回転させたときの視覚目標に対するゲイズサッケードの位置精度を計測し、頭の回転角知覚を視線制御に活用する能力の検討を行った。(1)については、被験者9名について計測を行い、(1)ゲイズ角速度は頭角速度の増加関数である。(2ゲイズ実行中、VORゲインは0.40.7に低下し、そのため頭角速度を高めるとゲイズ角速度が増加する。(3)ゲイズ角速度はスポーツ選手が一般人より高いとは言えないが、VORゲインの低下はスポーツ選手の方が大きい可能性がある。(2)については、1)暗闇で知覚した頭の回転角は実際の回転角と高い相関がある(相関係数0.99以上)。(2)頭の受動回転後、視覚目標を暗闇で注視する精度はVORゲインに依存する。(3)VORゲインはトレーニングによって増大又は減少が可能で、注視の位置精度もその影響を受ける。ことを明らかにした。眼と頭を使って視線の方向を切り換えるいわゆる視線サッケードの角速度を計測し、(1)角速度が頭の回転角速度に依存するか、(2)角速度の個人差はどの程度あるかについて調べた。眼球運動はEOG法により、頭の回転は被験者が装着したヘルメットを、板ばねとユニバーサル・ジョイントを介して天井に固定されたポテンショメータの回転軸に接続して計測を行った。視線方向は頭の回転角と眼の頭に対する回転角の和として求めた。頭静止時の視線サッケードの角速度は個人差があり平均246deg/secから360deg/secの範囲(L30°→0°の場合)にあった。これに対し頭も同時に回転させた場合頭の角速度が250deg/sec以下のとき視線の角速度はほぼ頭静止時と同じであったが、頭の角速度が250deg/sec以上では20deg/secの増加が認められた。また左60°と右60°の間のサッケードの場合には頭の角速度が200deg/secから700deg/secの範囲でほぼ直線的に視線サッケードの角速度の増加がみられ、350deg/secから800deg/secまで増加することが確かめられた。視線サッケードの平均角速度だけでなくピーク角速度についても同様に頭の角速度とともに増加することが確かめられた。また視線サッケードの所要時間は頭の角速度の増加にしたがって減少することがみとめられた。これらのことから視線サッケードの時間中には頭の回転速度を補償するVOR(前庭性動眼反射)のゲインが低下することが明らかとなった。ゲインは3名の被験者について頭速度250deg/secのとき0.70.4であった。また視線サッケードの速度を高めるには頭の回転と急速性眼球運動のタイミングをうまく調整することが必要であることも明らかとなった。次年度はこの点に関して個人差、スポーツ選手と一般被験者との差異、学習の可能性等について研究を行う。平成6年度の研究成果としてゲイズサッケードの角速度は頭の角速度の増加関数であることを見いだした。本年度はゲイズサッケード実行中の時刻における頭の角速度を大きくすることによってゲイズサッケードの角速度の増大をはかる方法、およびゲイズサッケード実行中のVORゲインの低下の程度に個人差があるか否かについて検討した。頭の角速度を大きくするにはゲイズサッケードより頭の回転開始時刻を早くすることが必要で、視覚目標の出現を予測できる状況では、頭の回転の開始時刻を早めることができることを見いだした。予測不可能な場合(ゲイズ角速度の最大値400deg/sec)に対して予測可能な場合には700deg/secにまで増大可能であった。
KAKENHI-PROJECT-06454630
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06454630
スポーツ選手の視線制御機能(眼と頭の協調)とその学習による向上の可能性
またVORゲインは頭の角速度がある閾値(約100deg/sec)を越えると低下すること、しかし低下の程度には大きな個人差(0.30.7)があることを見いだした。VORゲインの低下の程度は日常すばやいゲイズサッケードを要求されるスポーツ選手(卓球)とそうでないグループの間で有為な差は見られなかった。またゲイズサッケードの実行に必要な中枢の神経積分器の構成について検討し自己組織型の神経積分器の形成をモデル化することができた。
KAKENHI-PROJECT-06454630
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06454630
歯周炎罹患歯歯髄の病理組織学的研究
歯周疾患に罹患した生活歯の歯髄について病理組織学的検索を行った。標本にした歯の臨床病態は、歯根露出があり、知覚過敏、冷・温水痛、咬合痛あるいは自発痛などのいずれかの症状を呈し、動揺はM2以上、ポケットの最深部は6mm以上、歯肉の炎症は中等度以上であった。歯周治療のため根面のルートプレーニングを行った既往はあるが、その頻度およびセメント質除去の程度は不明であった。抜去歯牙所見としては、歯石の沈着が認められ、根面カリエスが存在することもあった。脱灰標本のHE染色による歯髄の病理組織学的所見としては、萎縮、変性、充血、炎症性変化が認められた。炎症性細胞の浸潤は、多くが冠部歯髄および歯冠側よりの根部歯髄においてであり、リンパ球と形質細胞からなる巣を形成している場合と広範囲にリンパ球が散在している場合とがあった。根尖付近まで歯石沈着が認められた症例では、根尖付近の歯髄にも炎症性細胞の浸潤が認められた。根部歯髄においては、特にポケットの深い症例で、石灰変性や不規則な象牙粒の形成が頻繁に認められ、象牙芽細胞の消失も見られた。抗PCNA抗体による免疫組織化学的染色では、炎症性細胞の浸潤叢内に陽性細胞が認められたが、象牙芽細胞や歯髄細胞には認められないようであった。以上のことより、冠部歯髄と根部歯髄で動態が異なる可能性が示されたが、摘出歯髄では象牙芽細胞層を損傷しやすく、かつ根部歯髄の状態が検討するには不適切であった。今後は、脱灰標本において硬組織と歯髄組織を同一切片状で免疫組織染色できる方法を検討する予定である。歯周疾患に罹患した生活歯の歯髄について病理組織学的検索を行った。標本にした歯の臨床病態は、歯根露出があり、知覚過敏、冷・温水痛、咬合痛あるいは自発痛などのいずれかの症状を呈し、動揺はM2以上、ポケットの最深部は6mm以上、歯肉の炎症は中等度以上であった。歯周治療のため根面のルートプレーニングを行った既往はあるが、その頻度およびセメント質除去の程度は不明であった。抜去歯牙所見としては、歯石の沈着が認められ、根面カリエスが存在することもあった。脱灰標本のHE染色による歯髄の病理組織学的所見としては、萎縮、変性、充血、炎症性変化が認められた。炎症性細胞の浸潤は、多くが冠部歯髄および歯冠側よりの根部歯髄においてであり、リンパ球と形質細胞からなる巣を形成している場合と広範囲にリンパ球が散在している場合とがあった。根尖付近まで歯石沈着が認められた症例では、根尖付近の歯髄にも炎症性細胞の浸潤が認められた。根部歯髄においては、特にポケットの深い症例で、石灰変性や不規則な象牙粒の形成が頻繁に認められ、象牙芽細胞の消失も見られた。抗PCNA抗体による免疫組織化学的染色では、炎症性細胞の浸潤叢内に陽性細胞が認められたが、象牙芽細胞や歯髄細胞には認められないようであった。以上のことより、冠部歯髄と根部歯髄で動態が異なる可能性が示されたが、摘出歯髄では象牙芽細胞層を損傷しやすく、かつ根部歯髄の状態が検討するには不適切であった。今後は、脱灰標本において硬組織と歯髄組織を同一切片状で免疫組織染色できる方法を検討する予定である。
KAKENHI-PROJECT-07771767
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07771767
Kir6.2チャネル阻害作用を標的としたアルツハイマー病創薬研究
申請者らは既存の認知症治療薬であるメマンチンの新しい作用機序として、KATPチャネル抑制作用を発見した。そこで申請者らはKATPチャネル発現細胞を用いて、メマンチンとは異なる構造を持つシーズ化合物(アダマンタン誘導体)をスクリーニングして、メマンチンに比べて強力にKir6.2チャネルを抑制する化合物(本剤)を含む化合物群を創製した。本剤は、マウスによる実験で強力なKir6.2チャネル抑制作用による認知機能改善効果(AD中核症状)に加えてKir6.1チャネル抑制作用によるうつ症状・不安症状・攻撃症状などのAD周辺症状(BPSD)を改善することが確認された。本研究の目的として、申請者はmemantineのマウスへの急性適応(10-30 microM)ではNMDA受容体阻害作用を強く発現するが、逆に、慢性適応(1mg/kg p.o.)ではKir6.2チャネル阻害作用による神経細胞膜の閾値上昇を介して細胞内カルシウム流入を促進し、CaM kinase IIの活性上昇により認知機能を改善することをAPP23マウス(ADモデルマウス)を用いて明らかにした(Moriguchi et al., Mol. Psychiatry under revision)。本研究課題では、岩渕好治教授ら(東北大学)により作製したmemantineの構造異性体(47種類)の新規アダマンタン誘導体の中から1カルシウムイメージング法による細胞内カルシウム濃度の上昇効果、および2whole-cell patch-clamp法によるKir6.2チャネルを介する細胞内カリウム電流の阻害効果を指標としてmemantineより強力なKir6.2選択的シード化合物の同定を目指すことを目的とした。さらに、APP23マウスの認知機能障害に対する本化合物の改善効果について行動薬理学、電気生理学、生化学的手法により解析し、有益な結果を確認した。平成27年度は、新規アダマンタン誘導体(47種類)の中からKir6.2チャネルの過剰発現Neuro2A細胞を用いて、カルシウムイメージング法による細胞内カルシウム濃度の上昇効果およびwhole-cell patch-clamp法によるKir6.2チャネルを介する細胞内カリウム電流の阻害効果を有するmemantineより優れた薬効を持つシード化合物の同定行った。本研究の目的であるmemantineより優れた新規アダマンタン誘導体(シード化合物)について同定し、特許の出願を行ったため、当初の計画以上に進展している。MemantineはNMDA受容体を阻害し、AD患者脳における細胞内への過剰なカルシウム流入を抑制することによる神経細胞保護効果が有効であることが報告されてきたが、memantineによるNMDA受容体阻害作用は少なくとも10μMの脳内濃度が必須であり、AD患者へ投与されている薬剤濃度5mg/kgではNMDA受容体を阻害する有効域には到達できない。申請者は、memantineの新しい作用機序としてKATPチャネル阻害作用を見出し、KATPチャネルのアイソフォーム(Kir6.1およびKir6.2チャネル)の中で、Kir6.2チャネルの阻害作用が認知機能の改善に重要であることを見出した(Moriguchi et al., Mol. Psychiatry 2016)。申請者が見出したKATPチャネル阻害作用では、KATPチャネル阻害作用により神経細胞膜の閾値上昇を惹起し、L型Ca2+チャネルを介して細胞内のCa2+濃度を上昇させ、記憶学習に必須の分子であるCaMキナーゼIIを賦活化することにより記憶学習を改善する。MemantineによるKATPチャネル阻害作用は脳内において100pMより惹起され、AD患者へ投与されている薬剤濃度5mg/kgでも十分な有効域を持つ。一方、memantineはKir6.2チャネル阻害作用と同時に、Kir6.1チャネル阻害作用を介してうつ症状を改善することも見出した(Moriguchi et al., Mol. Psychiatry 2016)。このように、KATPチャネル阻害作用は、AD治療の中核症状(記憶障害)および周辺症状(うつ症状)を改善する。また、申請者は、KATPチャネル欠損マウスを用いた解析により興味深い研究結果を見出した。Kir6.2欠損マウスではADの中核症状である認知機能障害を見出し、一方、Kir6.1欠損マウスではADの周辺症状であるうつ症状を確認した。さらに、MemantineはKATPチャネル欠損マウスの中核・周辺症状において治療効果を示さず、KATPチャネル欠損マウスにおいてもmemantineの作用部位を同定している。申請者は、memantineの有するアダマンタン骨格に注目し、東北大学大学院薬学研究科の岩渕好治教授との共同研究により約80種類のアダマンタン誘導体を合成し、memantineのKATPチャネル阻害作用より強力な薬効を有する数種類の新規アダマンタン誘導体を見出し、既に2つのPCT出願を完了している。KATPチャネル阻害作用は、アルツハイマー病の中核症状(認知機能障害)だけでなく、周辺症状(うつ症状)を改善する画期的な治療薬の創成が期待される。申請者らは既存の認知症治療薬であるメマンチンの新しい作用機序として、KATPチャネル(Kir6.1/Kir6.2チャネル)抑制作用を発見した(Moriguchi et al., Mol. Psychiatry 2018; IF:13.314)。メマンチンがKir6.2チャネル抑制作用により脳インスリンシグナルを賦活化するというこの発見は、アルツハイマー病(AD)の脳糖尿病仮説を実証する最初の報告である。そこで申請者らはKir6.2チャネル発現細胞を用いて、メマンチンとは異なる構造を持つシーズ化合物(アダマンタン誘導体)をスクリーニングして、メマンチンに比べて強力にKir6.2チャネルを抑制する化合物(本剤)を含む化合物群を創製した。本剤は、マウスによる実験で強力なKir6.2
KAKENHI-PROJECT-15K08583
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K08583
Kir6.2チャネル阻害作用を標的としたアルツハイマー病創薬研究
チャネル抑制作用による認知機能改善効果(AD中核症状)に加えてKir6.1チャネル抑制作用によるうつ症状・不安症状・攻撃症状などのAD周辺症状(BPSD)を改善することが確認された。さらに本剤は、神経伝達作用もしくはAβを標的とした薬剤ではないにも関わらず、Aβ蓄積を抑制することが確認された。特に、メマンチンでは10μM以上において培養神経細胞における神経細胞死が観察されるが、本剤では100μMの濃度において神経細胞死は確認されず、非常に安全な化合物である。また、本剤にはメマンチンと異なり、NMDA受容体阻害作用は認められない。ADに代表される認知症の認知機能改善効果に加えて、うつ症状、不安症状・攻撃症状、徘徊などのAD周辺症状を改善する治療薬が期待できる。申請者らは既存の認知症治療薬であるメマンチンの新しい作用機序として、KATPチャネル抑制作用を発見した。そこで申請者らはKATPチャネル発現細胞を用いて、メマンチンとは異なる構造を持つシーズ化合物(アダマンタン誘導体)をスクリーニングして、メマンチンに比べて強力にKir6.2チャネルを抑制する化合物(本剤)を含む化合物群を創製した。本剤は、マウスによる実験で強力なKir6.2チャネル抑制作用による認知機能改善効果(AD中核症状)に加えてKir6.1チャネル抑制作用によるうつ症状・不安症状・攻撃症状などのAD周辺症状(BPSD)を改善することが確認された。新規アダマンタン誘導体によるアルツハイマー病創薬は、Kir6.2チャネル阻害作用による認知機能改善効果(アルツハイマー病中核症状)だけでなく、Kir6.1チャネル阻害作用によるうつ病改善効果(アルツハイマー病周辺症状)の両方の改善効果が考えられる。今後、認知機能改善効果に加え、うつ病改善効果についても検討を行う予定である。上述の通り、申請者は東北大学大学院薬学研究科の岩渕好治教授との共同研究により約80種類のアダマンタン誘導体を合成し、memantineのKATPチャネル阻害作用より強力な薬効を有する数種類の新規アダマンタン誘導体を見出し、既に2つのPCT出願を完了している。今後、これらの知財を用いた有益なKATPチャネル阻害作用を有するアルツハイマー病治療薬の創成に尽力する。また、申請者はKATPチャネル(kir6.1およびKir6.2)の遺伝子欠損マウスにおいて、アルツハイマー病の中核症状(認知機能障害)をKir6.2欠損マウスにおいて見出し、周辺症状(うつ症状)をKir6.1欠損マウスにおいて見出している。今後、KATP欠損マウスの表現型解析により、KATPチャネルの病態生理学的役割について解析する。神経薬理学
KAKENHI-PROJECT-15K08583
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K08583
出芽酵母におけるオートファジー膜動態の分子機構
オートファジーは真核生物が備えるタンパク質分解機構の1つであり、オートファゴソームの新生を伴う動的な膜動態から成り立っている。本研究では、オートファゴソーム膜およびオートファジー関連膜構造体Atg9ベシクルの単離・精製を行い、それぞれの膜に含まれるタンパク質群のプロテオーム解析を行った。その結果、Atg9ベシクル・オートファゴソーム膜の両者にゴルジ体由来の膜繋留装置であるTRAPPIII複合体および下流因子Ypt1が含まれることを見出した。また、オートファゴソーム膜特異的因子として小胞体・ゴルジ体由来の因子が複数同定され、これらのオルガネラのオートファゴソーム形成への寄与が示唆された。オートファジーは真核生物が普遍的に備えるタンパク質分解機構の1つであり、二重膜構造体「オートファゴソーム」の新生を伴う非常にダイナミックな膜動態から成り立っている。本研究では、オートファジー必須因子の中で唯一の膜タンパク質であるAtg9を指標とし、オートファゴソーム膜の単離精製を行った。また、オートファゴソーム膜とAtg9ベシクルの組成比較を行うため、Atg9ベシクルの単離精製も同時に行った。前年度までに、プロテオーム解析に必要な量の精製標品を得ることに成功していた。最終年度では、得られた精製標品についてプロテオーム解析およびリピドーム解析を行い、複数のオートファゴソーム膜因子の候補を得ることに成功した。その多くは、小胞体やゴルジ体の構成タンパク質、あるいは膜輸送に関わる因子であったため、これらの候補について蛍光顕微鏡観察や生化学的解析での検証を行い、実際にオートファゴソーム形成過程に関与する因子を数因子同定した。これらの因子について、オートファゴソーム形成のどのステップに関与しているかについてさらに詳細な機能解析を行い、その成果について現在論文準備中である。また、Atg9のリン酸化解析も合わせて行い、既知のリン酸化部位以外に新規のリン酸化部位を複数同定することに成功し、これらのリン酸化がオートファジー必須キナーゼであるAtg1依存的にリン酸化されることを見出した。また、これらのリン酸化がオートファゴソーム形成の初期過程に関与することも同時に見出している。これらの成果についても、上記のオートファゴソーム膜因子の機能解析と合わせて論文準備中である。オートファジーは真核生物が備えるタンパク質分解機構の1つであり、オートファゴソームの新生を伴う動的な膜動態から成り立っている。本研究では、オートファゴソーム膜およびオートファジー関連膜構造体Atg9ベシクルの単離・精製を行い、それぞれの膜に含まれるタンパク質群のプロテオーム解析を行った。その結果、Atg9ベシクル・オートファゴソーム膜の両者にゴルジ体由来の膜繋留装置であるTRAPPIII複合体および下流因子Ypt1が含まれることを見出した。また、オートファゴソーム膜特異的因子として小胞体・ゴルジ体由来の因子が複数同定され、これらのオルガネラのオートファゴソーム形成への寄与が示唆された。オートファジーは真核生物が普遍的に備えるタンパク質分解機構の1つであり、二重膜構造体・オートファゴソームの新生を伴う非常にダイナミックな膜動態から成り立っている。本研究では、オートファジー必須因子の中で唯一の膜タンパク質であるAtg9に焦点を当て、Atg9構造体(Atg9ベシクル)の動態および組成について解析を行った。本研究の解析により、Atg9ベシクルは直径50 nm程度の単膜ベシクルであること、オートファジーの誘導(栄養飢餓)に伴って液胞近傍のPASに集積し、最終的にオートファゴソーム膜の一部になっていくことなどが明らかとなり、これらの成果については、J. Cell Biol.誌に掲載された(J. Cell Biol., 198, 219-233, 2012)。次に、Atg9ベシクルのタンパク質組成を明らかにするため、FLAGタグおよびBiotinタグを用いた2段階精製によりAtg9ベシクルを単離・精製し、プロテオーム解析を行った。その結果、Atg9ベシクルの主要構成因子がAtg9およびAtg27であることが明らかとなり、このことはAtg9ベシクルが他の分泌ベシクルとは異なり、オートファゴソーム形成に特化した機能を持つベシクルであることを示唆している。さらに我々は、Atg9ベシクルの構成因子としてYpt1およびTrs85を同定しており、こららの因子がオートファゴソーム形成の後期ステップに関与することを明らかにした。これらの成果については、J. Biol. Chem.誌に掲載された(J. Biol. Chem., 287, 44261-44269, 2012)。Atg9ベシクルとオートファゴソーム膜の組成比較を行うため、オートファゴソーム膜の単離・精製を行った。すでに、プロテオーム解析に必要な量の精製標品が得られており、質量解析によるタンパク質同定を行っている。Atg9ベシクルの動態および組成についてそれぞれ学術雑誌に報告しており、これらの点については交付申請書に記載した研究計画が十分以上に達成されている。また、オートファゴソーム膜のプロテオーム解析についても、すでに精製標品が得られており、研究計画に合わせて順調に進んでいる。また、質量解析装置の都合により、次年度の予定であったAtg9のリン酸化解析についてもすでに進めており、複数のリン酸化部位が同定されている。
KAKENHI-PROJECT-24770182
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24770182
出芽酵母におけるオートファジー膜動態の分子機構
これらを総合的に考えると、研究計画の達成度については「おおむね順調に進展している」と言える。オートファゴソーム膜のプロテオーム解析の結果をもとに、Atg9ベシクルとの組成比較や、変異体解析などを行う。また、次年度予定であったAtg9のリン酸化解析については、すでに計画を前倒しして進めているので、申請書に記載した内容についても前倒しで早めに進めていく予定である。計画の内容としては、Atg9リン酸化部位の変異体解析が中心となり、in vitro融合反応などの生化学的手法や、蛍光顕微鏡・電子顕微鏡解析が中心となる。該当なし
KAKENHI-PROJECT-24770182
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24770182
アポトーシス検出PETイメージング技術の開発・研究
アポトーシスは細胞レベルの現象であり、これを画像化し臨床応用する技術開発は、多くの疾患の病態解明、診断、治療方針の決定に役立つ。放射性同位元素を用いる核医学イメージング技術は、このような分子生物学的事象を画像化する最も感度の高い技術である。なかでも、陽電子放出核種を用いるPETは定量性も高く優れた画像診断技術として注目されている。群馬大学のPET検査施設を利用し、今回の研究は(1)既に群馬大学で開発したアミノ酸トランスポータ活性のイメージング製剤であるF-18アルファメチルタイロシンおよびC-11コリンとアポトーシスの関連を基礎的・臨床的に検討すること。(2)リン脂質結合タンパクファミリのF-18、C-11標識の可能性を検討し新たなアポトーシス検出製剤を開発することを目的に行った。検討結果として(1)F-18アルファメチルタイロシンおよびC-11コリンに関しては、これらのトレーサ集積とアポトーシスの発現との因果関係は明らかではなかった。(2)アポトーシスの検出にフローサイトメトリで使われているアネキシンVの標識体としてC-11標識アネキシンの合成に成功した。(3)合成したC-11アネキシンはアポトーシス発現率の高い繊維肉腫細胞と低い繊維肉腫細胞の結合率に有意差を示した。以上の結果から、アポトーシス検出PET製剤としてC-11アネキシンが有用である可能性が示され、臨床応用に向けさらにインビボ動物実験の必要性が示された。アポトーシスは細胞レベルの現象であり、これを画像化し臨床応用する技術開発は、多くの疾患の病態解明、診断、治療方針の決定に役立つ。放射性同位元素を用いる核医学イメージング技術は、このような分子生物学的事象を画像化する最も感度の高い技術である。なかでも、陽電子放出核種を用いるPETは定量性も高く優れた画像診断技術として注目されている。群馬大学のPET検査施設を利用し、今回の研究は(1)既に群馬大学で開発したアミノ酸トランスポータ活性のイメージング製剤であるF-18アルファメチルタイロシンおよびC-11コリンとアポトーシスの関連を基礎的・臨床的に検討すること。(2)リン脂質結合タンパクファミリのF-18、C-11標識の可能性を検討し新たなアポトーシス検出製剤を開発することを目的に行った。検討結果として(1)F-18アルファメチルタイロシンおよびC-11コリンに関しては、これらのトレーサ集積とアポトーシスの発現との因果関係は明らかではなかった。(2)アポトーシスの検出にフローサイトメトリで使われているアネキシンVの標識体としてC-11標識アネキシンの合成に成功した。(3)合成したC-11アネキシンはアポトーシス発現率の高い繊維肉腫細胞と低い繊維肉腫細胞の結合率に有意差を示した。以上の結果から、アポトーシス検出PET製剤としてC-11アネキシンが有用である可能性が示され、臨床応用に向けさらにインビボ動物実験の必要性が示された。アポトーシスは細胞レベルの現象であり、これを画像化して臨床応用する技術を開発することは、多くの疾患の病態解明、診断、治療方針の決定に役立つ。核医学イメージングは、分子生物学的事象を画像化する上で最も感度の高い技術である。なかでもPETイメージングは定量性も高く極めて優れた画像化技術であり、臨床応用が急速に進められつつある分野である。本研究では(1)既に当大学で開発したアミノ酸トランスポータ活性のイメージング製剤である^<18>F-アルファメチルタイロシン、及び臨床研究で使用している細胞膜リン脂質代謝製剤^<11>C-コリン集積とアポトーシスとの関連を基礎的・臨床的研究により明らかにする。(2)アネキシンVなどのリン脂質結合タンパクファミリーの^<18>Fないし^<11>C標識を検討し、新しいアポトーシス検出PET製剤の開発を行う。本年度は2年計画の初年度として、アポトーシスのPET製剤の開発に重点をおいた。その結果、^<11>C標識アネキシンVの合成に成功した。1回の合成で40mCiの収量が得られ、臨床応用が十分に可能であることを確認した。さらに34%のアポトーシスの発現率を有する線維肉腫細胞(Gc-4SD)を用いたインビトロアッセイにより^<11>C標識アネキシンVの特異的結合を確認した。現在、^<11>C標識アネキシンの結合量とアポトーシス発現量の定量的な相関性の精度について検討中である。アポトーシスは細胞レベルの現象であり、これを画像化し臨床応用する技術開発は、多くの疾患の病態解明、診断、治療方針の決定に役立つ。放射性同位元素を用いる核医学イメージング技術は、このような分子生物学的事象を画像化する最も感度の高い技術である。なかでも、陽電子放出核種を用いるPETは定量性も高く優れた画像診断技術として注目されている。群馬大学のPET検査施設を利用し、今回の研究は(1)既に群馬大学で開発したアミノ酸トランスポータ活性のイメージング製剤であるF-18アルファメチルタイロシンおよびC-11コリンとアポトーシスの関連を基礎的・臨床的に検討すること。(2)リン脂質結合タンパクファミリのF-18、C-11標識の可能性を検討し新たなアポトーシス検出製剤を開発することを目的に行った。
KAKENHI-PROJECT-12670853
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12670853
アポトーシス検出PETイメージング技術の開発・研究
検討結果として(1)F-18アルファメチルタイロシンおよびC-11コリンに関しては、これらのトレーサ集積とアポトーシスの発現との因果関係は明らかではなかった。(2)アポトーシスの検出にフローサイトメトリで使われているアネキシンVの標識体としてC-11標識アネキシンの合成に成功した。(3)合成したC-11アネキシンはアポトーシス発現率の高い繊維肉腫細胞と低い繊維肉腫細胞の結合率に有意差を示した。以上の結果から、アポトーシス検出PET製剤としてC-11アネキシンが有用である可能性が示され、臨床応用に向けさらにインビボ動物実験の必要性が示された。
KAKENHI-PROJECT-12670853
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12670853
ユビキタス社会の実現を目的としたバイオメトリクスを鍵として利用する暗号化の研究
1.計算機実験による暗号化手法の評価(1)暗号化手法の安全性評価本研究で提案した指紋を鍵とする暗号化手法の強度測定として、暗号文と平文及び暗号文と暗号鍵との相関性の調査、また平文と暗号文のペアから擬似鍵を推定し、擬似鍵での攻撃による耐性調査を行った。その結果、これらの点においては十分な安全性を有することが確認できた。2.光学的な実装の検討(1)位相変調素子の特性評価暗号化実験に用いる位相変調型の空間光変調器の特性を評価し、光学的な暗号化を行うために十分な性能を有することを確認した。(2)光学系による暗号化実験実際に暗号化を行う光学系を構築し、暗号化実験を行った。しかし位置あわせ等の問題が多く、ほとんどの場合で正しく復号化できなかった。この結果より、提案手法を光学的に実装するためには、光演算技術の向上が必須であり、現時点では電子的な実装が現実的であると言える。3.具体的なサービスの検討(1)暗号化ソフトウェアの改良昨年度開発したファイル暗号化ソフトを改良し、処理速度の高速化や照合精度の改善を図った。またファイルの関連付けやテェックテスト機能など、操作性を向上させるための機能を追加した。(2)PKIとの連携方法の検討PKIの秘密鍵を暗号化してPC等へ保存しておくことで、ICカードのような耐タンパ性を有するメディアがなくても安全な認証が可能なシステムを提案した。またシステム設計を行い、実際にデモシステムの構築を行った。本研究では、暗号の鍵の所持や記憶の必要なしにいつでもどこでも暗号化・復号化できる暗号インフラの構築を目指し、身体的特徴(バイオメトリクス)を暗号鍵として利用可能な暗号アルゴリズムの開発を行う。今年度の研究成果を以下に示す。1.指紋を鍵として利用可能な暗号化アルゴリズムの開発(1)光暗号化に用いる鍵生成手法の開発(2)回転やシフトなどに対応する手法の開発指紋の回転や大きな位置ずれに対処する手法として、指紋を回転させながら正解の復号化画像を決定する手法、大きな位置ずれのある指紋画像を照合対象から除去する手法を考案した。(3)暗合化されるデータを画像へコーディングする方法の開発光暗号化手法は本来画像を暗号化する手法であるため、任意のデータを暗号化するためにはバイナリデータを画像へエンコードする必要がある。そこで、安全性や復元精度を考慮し、2つの矩形で1ビットを表現するエンコード手法を考案した。(4)計算機シミュレーションによる評価指紋センサーによって取得した8名分の指紋画像を用いて、提案手法の有効性を確認するための計算機シミュレーションを行った。その結果、本人の指紋では約90%の確率で正しく復号化でき、他人の指紋では100%の確率で復号化に失敗した。2.電子的及び光学的な実装のための基礎実験(1)電子的な実装提案した手法を利用して、Windows上のファイルを指紋で暗号化・復号化するソフトウェアを構築した。(2)光学実験の準備提案手法を効率的に光演算によって実装するための光学系の設計を行った。1.計算機実験による暗号化手法の評価(1)暗号化手法の安全性評価本研究で提案した指紋を鍵とする暗号化手法の強度測定として、暗号文と平文及び暗号文と暗号鍵との相関性の調査、また平文と暗号文のペアから擬似鍵を推定し、擬似鍵での攻撃による耐性調査を行った。その結果、これらの点においては十分な安全性を有することが確認できた。2.光学的な実装の検討(1)位相変調素子の特性評価暗号化実験に用いる位相変調型の空間光変調器の特性を評価し、光学的な暗号化を行うために十分な性能を有することを確認した。(2)光学系による暗号化実験実際に暗号化を行う光学系を構築し、暗号化実験を行った。しかし位置あわせ等の問題が多く、ほとんどの場合で正しく復号化できなかった。この結果より、提案手法を光学的に実装するためには、光演算技術の向上が必須であり、現時点では電子的な実装が現実的であると言える。3.具体的なサービスの検討(1)暗号化ソフトウェアの改良昨年度開発したファイル暗号化ソフトを改良し、処理速度の高速化や照合精度の改善を図った。またファイルの関連付けやテェックテスト機能など、操作性を向上させるための機能を追加した。(2)PKIとの連携方法の検討PKIの秘密鍵を暗号化してPC等へ保存しておくことで、ICカードのような耐タンパ性を有するメディアがなくても安全な認証が可能なシステムを提案した。またシステム設計を行い、実際にデモシステムの構築を行った。
KAKENHI-PROJECT-16656115
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16656115
SIRT1による神経細胞保護の分子機構の解明
カロリー制限を行うと、生物の寿命が延長し、アルツハイマー病・パーキンソン病・脳梗塞を含む多岐にわたる疾患の発症・進行が抑制される。カロリー制限による酵母・線虫の寿命延長にはNAD依存性ヒストン脱アセチル化酵素Sir2の活性化が関与しており、その過剰発現により寿命が延長する。一方、哺乳動物のSir2ホモログであるSIRT1は、カロリー制限により脳で発現レベルが増加すること、ポリグルタミン病の線虫モデルでSir2の過剰発現により神経細胞死が抑制されること等が報告されたことから、SIRT1の活性化・過剰発現による神経細胞保護の可能性が示唆されている。本研究では、ラットNeuron Specific Enolase遺伝子のプロモーターにより、ヒトSIRT1遺伝子を神経細胞特異的に過剰発現するトランスジェニックマウスを樹立し、そのマウスを用いてSIRT1の発現増加による神経細胞保護の可能性を検証した。その結果、中大脳動脈閉塞による脳梗塞、1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine(MPTP)投与によるパーキンソン病、胸髄切断による脊椎損傷のいずれにおいても、SIRT1過剰発現による神経細胞保護効果は認められなかった。予想に反して、トランスジェニックマウスでは、記憶・学習能が障害されており、それは高齢マウスで著明に認められた。この結果は、SIRT1の活性化・過剰発現が認知機能を障害する可能性を示しており、アルツハイマー病の動物モデルでSIRT1阻害剤nicotinamideの投与により認知機能が改善したという最近の報告とも矛盾しない。SIRT1の活性・発現の調節による神経細胞保護の可能性、その高次脳機能に及ぼす影響については、さらに詳細かつ慎重な検討が望まれる。カロリー制限は、生物の寿命を延長するとともに、脳梗塞、アルツハイマー病・パーキンソン病等の神経変性疾患の発症、進行を抑制する。最近になり、カロリー制限による寿命延長にNAD依存性ヒストン脱アセチル化酵素Sir2が関与しており、その過剰発現により酵母・線虫の寿命が延長することが示された。一方、哺乳物動のSir2ホモログであるSIRT1を過剰発現させると、ポリグルタミン凝集による神経細胞が抑制されることが報告され、SIRT1による神経細胞保護の可能性が示唆されている。さらに、カロリー制限により脳でSIRT1の発現レベルが増加することが示れている。本研究では、ラットNSE(Neuron Specific Enolase)遺伝子のプロモーターにより、ヒトSIRT1遺伝子を神経細胞特異的に過剰発現するトランスジェニック(TG)マウスを用いて、脳脊髄疾患モデルでSIRT1の神経細胞保護作用を検証するとともに、SIRT1が脳で発現を誘導する遺伝子を同定し、SIRT1による神経細胞保護の分子機構を解用することを目的とする。19年度は、中大脳動脈閉塞(MCAO)による脳梗塞モデルで検討を行ったが、TGマウスでは、正常(WT)マウスと比較して梗塞面積・梗塞体積・脳浮腫に明らかな減少は認められなかった。20年度は、1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine(MPTP)投与によるパーキソン病モデル、および胸髄切断による脊椎損傷モデルにおいて、SIRT1による神経細胞保護作用を検討する。一方、TGおよびWTマウスの海馬を用いた網羅的遺伝子発現解析も実施した。20年度は、この解析結果に基づき、定量RT-PCR・パスウェイ解析等によりSIRT1遺伝子下流の標的遺伝子を同定する。カロリー制限を行うと、生物の寿命が延長し、アルツハイマー病・パーキンソン病・脳梗塞を含む多岐にわたる疾患の発症・進行が抑制される。カロリー制限による酵母・線虫の寿命延長にはNAD依存性ヒストン脱アセチル化酵素Sir2の活性化が関与しており、その過剰発現により寿命が延長する。一方、哺乳動物のSir2ホモログであるSIRT1は、カロリー制限により脳で発現レベルが増加すること、ポリグルタミン病の線虫モデルでSir2の過剰発現により神経細胞死が抑制されること等が報告されたことから、SIRT1の活性化・過剰発現による神経細胞保護の可能性が示唆されている。本研究では、ラットNeuron Specific Enolase遺伝子のプロモーターにより、ヒトSIRT1遺伝子を神経細胞特異的に過剰発現するトランスジェニックマウスを樹立し、そのマウスを用いてSIRT1の発現増加による神経細胞保護の可能性を検証した。その結果、中大脳動脈閉塞による脳梗塞、1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine(MPTP)投与によるパーキンソン病、胸髄切断による脊椎損傷のいずれにおいても、SIRT1過剰発現による神経細胞保護効果は認められなかった。予想に反して、トランスジェニックマウスでは、記憶・学習能が障害されており、それは高齢マウスで著明に認められた。この結果は、SIRT1の活性化・過剰発現が認知機能を障害する可能性を示しており、アルツハイマー病の動物モデルでSIRT1阻害剤nicotinamideの投与により認知機能が改善したという最近の報告とも矛盾しない。SIRT1の活性・発現の調節による神経細胞保護の可能性、その高次脳機能に及ぼす影響については、さらに詳細かつ慎重な検討が望まれる。
KAKENHI-PROJECT-19650090
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19650090
顔知覚における空間情報の処理について:発達研究の視点から
本研究では、顔知覚における空間情報の処理の発達について、乳児を対象とした行動実験により検討した。まず、「両眼と口という、要素の配置が顔と同じ図」と「図の上部分に要素が多いが顔には見えない図」の選好を比較した結果、生後2-3ヶ月の乳児は、静止画では選好を示さなかったが、動きを加えると、眼や口が開閉するような「顔」らしい動きでも、その動きを90度回転させた「顔」らしくない動きでも顔選好を示した。この結果から、乳児による顔の知覚および学習を運動情報が促進することが示唆された。この研究成果は英語での口頭発表をはじめとした学会発表を行ない、「包括脳」夏のワークショップでは2010年度若手優秀発表賞を受賞した。さらに、別の研究として、お面を裏側から見たような、鼻部分がへこんだ顔でも「顔」に見えれば、鼻が出っ張った通常の「顔」らしい三次元形状が知覚されるというHollow Face錯視図形を用いた実験を実施し、生後8ヶ月の乳児でさえも成人と同様には錯視を知覚せず、へこんだ顔はへこんで見えることを示唆する結果が得られた。この研究成果は英語論文として投稿中である。また、生後4-8ヶ月の乳児における垂直な刺激と傾いた刺激との選好を比較し、縞刺激という幾何学図形では垂直な刺激を選好するのに対し、頭が上にありその下に手足がある人体のシルエットという刺激図形においては、逆に傾いた刺激を選好することを示した。この結果は、生後4ヶ月の乳児が、傾きを知覚する際に、人体を幾何学図形とは異なる特徴をもつものとして知覚していることを示唆している。これらの研究には、米Minnesota大学のYonas教授・独Bonn大学のKavsek私講師・豪Wollongong大学Hill講師に、学会での打ち合わせや研究室訪問などにより助言を仰いだ。本研究では、顔知覚における空間情報の処理の発達について、乳児を対象とした行動実験により検討する。顔知覚は、空間情報の処理とは異なる、脳内の特定部位で処理される(Kanwisher et al.,1997;McCarthyetal.,1997)。だが一方、眼・鼻・口などの要素の位置関係が重要とも示されており(Leder & Bruce,2000)、空間情報の処理も重要と言える。乳児の顔知覚においては、静止画よりも動画で処理が促進されることをふまえ(Otsuka et al.,2005)、静止画と動画を比較する。本年度は,生後2-3ヶ月の乳児を対象に「両眼と口という,要素の配置が顔と同じ図」と「図の上部分に要素が多いが顔には見えない図」との選好を調べた.乳児は、生後まもない新生児でも強い顔選好を示す。これは図の上部分に要素が多い(top-heavy)図を選好するためとされている(Simion et al.,2002)。実験の結果,静止画では選好は示されなかったが,両眼と口が開閉するような動きを加えると,「顔」を「top-heavyであるだけの図」よりも選好注視され,生後2-3ヶ月の乳児は顔らしい要素の配置への選好を有することが示唆された.この実験結果は学会で口頭発表を行なった。また,顔認知の領域会議と心理班第1回研究会(世話役:立命館大学北岡明佳教授)に出席し,多くの顔研究者と交流し,助言を受けた.さらに,世話役として心理班第2回研究会を開催し,琉球大学の遠藤光男教授・岩手県立大学の桐田隆博教授を招聘し,顔認知に関する研究についてご講演いただいた.その翌日には研究室をご見学いただき,助言をうけた.さらに、顔知覚をはじめ,乳児の知覚に関する多くの研究実績を持つミネソタ大学のヨナス教授の研究室に滞在し、データ解析・今後の実験計画に関する助言を仰いだ。本研究では、顔知覚における空間情報の処理の発達について、乳児を対象とした行動実験により検討した。まず、「両眼と口という、要素の配置が顔と同じ図」と「図の上部分に要素が多いが顔には見えない図」の選好を比較した結果、生後2-3ヶ月の乳児は、静止画では選好を示さなかったが、動きを加えると、眼や口が開閉するような「顔」らしい動きでも、その動きを90度回転させた「顔」らしくない動きでも顔選好を示した。この結果から、乳児による顔の知覚および学習を運動情報が促進することが示唆された。この研究成果は英語での口頭発表をはじめとした学会発表を行ない、「包括脳」夏のワークショップでは2010年度若手優秀発表賞を受賞した。さらに、別の研究として、お面を裏側から見たような、鼻部分がへこんだ顔でも「顔」に見えれば、鼻が出っ張った通常の「顔」らしい三次元形状が知覚されるというHollow Face錯視図形を用いた実験を実施し、生後8ヶ月の乳児でさえも成人と同様には錯視を知覚せず、へこんだ顔はへこんで見えることを示唆する結果が得られた。この研究成果は英語論文として投稿中である。また、生後4-8ヶ月の乳児における垂直な刺激と傾いた刺激との選好を比較し、縞刺激という幾何学図形では垂直な刺激を選好するのに対し、頭が上にありその下に手足がある人体のシルエットという刺激図形においては、逆に傾いた刺激を選好することを示した。
KAKENHI-PUBLICLY-21119519
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-21119519
顔知覚における空間情報の処理について:発達研究の視点から
この結果は、生後4ヶ月の乳児が、傾きを知覚する際に、人体を幾何学図形とは異なる特徴をもつものとして知覚していることを示唆している。これらの研究には、米Minnesota大学のYonas教授・独Bonn大学のKavsek私講師・豪Wollongong大学Hill講師に、学会での打ち合わせや研究室訪問などにより助言を仰いだ。
KAKENHI-PUBLICLY-21119519
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-21119519
製品再生ライフサイクル志向の循環型生産・物流システムのモデル化と評価
本研究は、リユース・リサイクルによる製品の資源循環におけるモノの流れに着目し、組立・分解作業に伴う製品/素材の価値・利益の創出とともに、物流のエネルギー消費で排出してしまう配送・回収のCO2排出量の削減を同時に目指して、資源循環による生産・物流の経済性と環境負荷についての見える化と評価を行った。具体的には、循環型と低炭素型のサプライチェーン設計課題の整理、環境に調和しかつ、経済的な生産・物流システム構成のモデル化および評価と、リサイクル率、CO2排出量および経済性の分解システム設計を行った。本研究では、リユース・リサイクルによる製品の資源循環すなわちモノの流れに着目し、組立・分解による製品/素材の価値・利益の創出と、物流のエネルギー消費で排出してしまう配送・回収のCO2量の削減を同時に目指して、生産・物流の経済性および環境負荷の見える化と評価を行う。本年度の主な研究成果は以下である。1.回収される使用済み製品について、リサイクル率を維持しながら利益を最大化するように、部品ごとに分解あるいは廃棄を決める最適な部品選択法を提案した。さらに、選択される部品の分解作業が分解ラインの作業編成に影響することに着目し、その部品選択のもとで最適な作業編成を行う分解システム設計法を手順化した。この成果の一部は、国際会議APIEMS2012における研究協力者の発表論文で、Best Student Paper Awardを受賞した。2.使用済み製品のリサイクルを行う素材仕分け分解システムについて、素材の流れを待ち行列のシミュレーションや数値解析によってモデル化した。また、具体的な製品CADモデルの例を適用したシミュレーション実験を行って、製品の部品・素材構成がシステムの直行率や素材回収率に与える影響を分析した。3.これまでに整理してきた環境に調和しかつ経済的なサプライチェーン設計の課題解決へ向けて、製品の環境負荷測定法、生産・物流システムの経済性評価・最適設計を組み合わせて体系化する設計アプローチを提案した。また、循環型と低炭素型の統合的なサプライチェーン設計の必要性と課題について議論した。研究成果の一部は、国際会議・国内学会での研究発表のほか、国際セミナーや企業向け研究会での招待講演・論文や、洋書と和書の執筆を行って普及に努めた。また、新興国や先進国の研究拠点を訪問し、講演や研究者らと意見交換を行い、サプライチェーンや環境対応の現地最新事情を調査した。本研究では、リユース・リサイクルによる製品の資源循環すなわちモノの流れに着目し、組立・分解による製品/素材の価値・利益の創出と、物流のエネルギー消費で排出してしまう配送・回収のCO2量の削減を同時に目指して、生産・物流の経済性および環境負荷の見える化と評価を行う。本年度の主な研究成果は以下である。1.使用済み製品のリサイクル分解システムのために、分解部品の選択によるリサイクル率および利益の両立と、そのもとで分解ライン・ステーション数の最小化を行う2段階設計を提案した。さらに、本設計法を携帯電話、パソコンと掃除機の3次元CADモデルに適用し、製品タイプごとの特性を定量的に示した。2.素材仕分け分解システムについて、溢れのある待ち行列としてのモデル構築や、製品構成や作業先行関係を考慮したシミュレーション分析により、システムの性能評価を行った。その結果、各ステーションに適切なバッファ配分を行うことで、スループットや素材回収率を向上させるケースのあることを示した。3.2国間のグローバル・サプライチェーンについて待ち行列としてモデル化し、リードタイムやその時間のバラつきを考慮したシミュレーション分析を行った。研究成果の一部は、国際会議・米国国内会議での研究発表のほか、査読付きジャーナルに論文が3件掲載された。また、会議参加に合わせて、新興国や先進国を訪問して研究者らと意見交換を行い、現地の最新事情の情報収集を行った。本研究は、リユース・リサイクルによる製品の資源循環におけるモノの流れに着目し、組立・分解作業に伴う製品/素材の価値・利益の創出とともに、物流のエネルギー消費で排出してしまう配送・回収のCO2排出量の削減を同時に目指して、資源循環による生産・物流の経済性と環境負荷についての見える化と評価を行った。具体的には、循環型と低炭素型のサプライチェーン設計課題の整理、環境に調和しかつ、経済的な生産・物流システム構成のモデル化および評価と、リサイクル率、CO2排出量および経済性の分解システム設計を行った。本研究では、リユース・リサイクルによる製品の資源循環におけるモノの流れに着目し、組立・分解作業に伴う製品/素材の価値・利益の創出とともに、物流のエネルギー消費で排出してしまう配送・回収のCO2排出量の削減を同時に目指して、資源循環による生産・物流の経済性と環境負荷についての見える化と評価を行う。本年度の主な研究成果は以下である。1.再生される素材価値を考慮したリサイクル生産システムについてモデル化を行い、シミュレーション実験を行って再生素材価値の変化がもたらす経済的な影響を検討した。2.使用済み製品を再生する分解生産のシステム構成について、製品仕分け型と素材仕分け型に分類して整理した。また、素材仕分け型の分解システムをモデル化してシミュレーション実験を行い、製品の部品構成や各ステーションで分解される仕分け素材数がシステムの生産性や経済性に与える影響を分析した。3.循環型と低炭素型のサプライチェーンに関して、環境に調和しかつ経済的な設計のための課題を整理した。また、地球環境問題における資源循環とCO2量削減は相互に関係しており、統合的に議論される可能性について言及した。研究成果の一部は、国際セミナーやシンポジウムでの招待講演や、国際会議・国内学会で研究発表を行った。また、国際会議に合わせて渡航した環境先進国ドイツにおいては、生産・物流システムの研究・実践拠点を複数訪問した。先端研究の実験室や工場の見学を行うとともに、研究者や実務家らと最新の研究や欧州事情について意見交換を行った。
KAKENHI-PROJECT-23710182
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23710182
製品再生ライフサイクル志向の循環型生産・物流システムのモデル化と評価
経営情報、サプライチェーン、経営工学本年度までの主な成果によって、循環型サプライチェーンで使用済み製品を再生する分解生産システムの設計に関し、分解部品選択、分解作業編成と仕分けシステムの3段階を対象にし、環境に調和しかつ経済的な設計法をそれぞれで確立したと考えられるためである。また、サプライチェーンと環境対応のグローバルな実地調査によって、先進国(ドイツ、イギリス、米国)のみならず、新興国(インドネシア、ベトナム、タイ)でも講演や工場見学、研究者・企業家との意見交換を行って、海外研究拠点とのネットワーキングを形成できたためである。こうして得られる、あるいは今後も引き続き得られる現地事情は、すでにグローバル化しているサプライチェーンをモデルに反映させるためには不可欠であり、現地事情の入手見通しが立ったと考えられる。以上より、当初の計画以上に進展していると考えられる。本年度の主な成果として、循環型生産・物流システムにおける分解システムを対象に、リサイクル分解システムや素材仕分け型分解システムのモデル化ならびにシミュレーション実験を行ったことが挙げられる。この結果、再生されたリサイクル素材価格の変化や、分解・仕分けのシステム構成の違いがもたらす生産性ならびに経済性の影響について、基礎的な知見を得ることができたと考える。さらに、環境に調和しかつ経済的な循環型と低炭素型のサプライチェーンに関する設計課題の整理や、環境先進国ドイツにおける生産・物流システムの研究・実践拠点の見学とそこでの意見交換の実施が挙げられる。こうした整理や調査で得られた情報は、今後開発する生産・物流システムのモデルに反映することができるため、より実用的な設計基準づくりに貢献したと考える。以上より、本研究の現在までの達成度は、おおむね順調に推移していると考える。今後の推進方策として、物流システム(配送・回収)のモデル化、循環型のリサイクル率と低炭素型のCO2排出量の同時評価と、これまで開発してきた分解システム設計法間の統合が挙げられる。物流システムのモデル化については、新興国では陸上輸送におけるリードタイムの不確実性、先進国では災害やテロなど有事の際のリスク考慮なども考えられる。循環型のリサイクル率と低炭素型のCO2排出量の同時評価では、使用済み製品の分解部品選択において、環境負荷をリサイクル率のみならずCO2排出量でも評価し、利益向上と両立する点がないか検討する。分解システム設計法間の統合では、分解部品選択、分解作業編成と仕分けシステムの3段階について、1つの設計手順として統合する方法について検討する。
KAKENHI-PROJECT-23710182
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23710182
魚類の浸透圧調節を担う塩類細胞のライフサイクル
環境水の浸透圧変化に伴う塩類細胞の入替りについて明らかにするため、本研究ではティラピアを淡水から70%海水へ直接移行し、サンプリングを行った。まず環境水の浸透圧変化による鰓での細胞死を検証するため、TUNEL法を用いてアポトーシスを検出した。その結果、移行1日後にアポトーシスを起こす細胞が有意に増加した。更に、移行1日後の鰓上皮細胞を透過型電子顕微鏡で観察したところ、アポトーシスが塩類細胞で起きていることが確認された。以上から、淡水型塩類細胞がアポトーシスを起こすことで鰓でのイオン吸収が抑えられ、70%海水移行に伴い高くなった体液浸透圧の正常化に寄与していると考えられた。次に、BrdU法を用いて塩類細胞の加入を検討するため、淡水馴致ティラピアをBrdUで処理した後、淡水または70%海水へ移行し1,3,7日後に鰓をサンプリングした。この鰓をBrdUとNa+/K+-ATPaseに対する抗体を用いて二重免疫染色を行い、新しく分化した塩類細胞を検出した。その結果、BrdU陽性の核を有する塩類細胞は「単体の塩類細胞」と「塩類細胞の複合体」の2種類に分類できた。BrdUで標識された単体の塩類細胞は、70%海水移行群でも淡水群と同様に出現するのに対し、塩類細胞の複合体の分化は移行群で有意に増加した。ここから70%海水移行群では、単体の塩類細胞に加え塩類細胞複合体を新たに分化させることで海水適応能を高めていると考えられた。成熟した塩類細胞のイオン輸送機能については今まで多くの知見が得られてきた。しかし、塩類細胞が幹細胞や未熟細胞からどのように分化し機能を得るか、また機能を喪失した塩類細胞はどのように死を迎えるかについては研究がほとんど進んでいないのが現状である。そこで本研究では、鰓において塩類細胞の加入、細胞死が起きていることを示すと共に、そのメカニズムを明らかにすることを目的とした。実験魚には多様な浸透圧環境に対して高い適応能力を持ち、イオン調節に関する基礎的な知見が豊富なティラピアOreochromis mossambicusを用いる。淡水中で飼育していたティラピアを塩類細胞のターンオーバーが起きやすいと考えられる海水へ移行し、移行後の鰓を淡水群と比較することで、塩類細胞の加入と細胞死を検証した。塩類細胞での細胞死を検証するため、アポトーシスのマーカーとして知られているTUNEL法を用いて鰓を染色した。その結果、海水移行24時間後にアポトーシスを起こしている細胞が最も増加することが分かった。次に、塩類細胞の加入を検証するため、細胞増殖のマーカーであるPCNA抗体、BrdU抗体を用いて鰓を免疫染色した。その結果、海水移行群と淡水群で塩類細胞の増殖率に大きな変化は見られなかったが、淡水と海水では異なる経路を経て、塩類細胞が分化することが示唆された。以上、本年度の研究では、環境水変化に伴った塩類細胞の加入、細胞死の様子を明らかにすることができた。環境水の浸透圧変化に伴う塩類細胞の入替りについて明らかにするため、本研究ではティラピアを淡水から70%海水へ直接移行し、サンプリングを行った。まず環境水の浸透圧変化による鰓での細胞死を検証するため、TUNEL法を用いてアポトーシスを検出した。その結果、移行1日後にアポトーシスを起こす細胞が有意に増加した。更に、移行1日後の鰓上皮細胞を透過型電子顕微鏡で観察したところ、アポトーシスが塩類細胞で起きていることが確認された。以上から、淡水型塩類細胞がアポトーシスを起こすことで鰓でのイオン吸収が抑えられ、70%海水移行に伴い高くなった体液浸透圧の正常化に寄与していると考えられた。次に、BrdU法を用いて塩類細胞の加入を検討するため、淡水馴致ティラピアをBrdUで処理した後、淡水または70%海水へ移行し1,3,7日後に鰓をサンプリングした。この鰓をBrdUとNa+/K+-ATPaseに対する抗体を用いて二重免疫染色を行い、新しく分化した塩類細胞を検出した。その結果、BrdU陽性の核を有する塩類細胞は「単体の塩類細胞」と「塩類細胞の複合体」の2種類に分類できた。BrdUで標識された単体の塩類細胞は、70%海水移行群でも淡水群と同様に出現するのに対し、塩類細胞の複合体の分化は移行群で有意に増加した。ここから70%海水移行群では、単体の塩類細胞に加え塩類細胞複合体を新たに分化させることで海水適応能を高めていると考えられた。
KAKENHI-PROJECT-10J04313
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J04313
光渦を利用した極限精度の波面センシングに関する研究
本研究の目的は、光渦(らせん状の等位相面をもつ光)を利用することにより、これまでにない高い精度の光波面揺らぎセンサーを実現することである。この目的のため、最先端の天文観測技術である光渦コロナグラフ(太陽系外惑星を観測するため、すぐそばの明るい恒星光を除去する技術)を応用した新たな計測原理を提案し、室内実証試験および計算機シミュレーションなどを通じた研究開発を推進する。提案する技術は、光学計測や天文学、医学、生物学など幅広い分野にわたる応用が期待される。本研究の目的は、光渦(らせん状の等位相面をもつ光)を利用することにより、これまでにない高い精度の光波面揺らぎセンサーを実現することである。この目的のため、最先端の天文観測技術である光渦コロナグラフ(太陽系外惑星を観測するため、すぐそばの明るい恒星光を除去する技術)を応用した新たな計測原理を提案し、室内実証試験および計算機シミュレーションなどを通じた研究開発を推進する。提案する技術は、光学計測や天文学、医学、生物学など幅広い分野にわたる応用が期待される。
KAKENHI-PROJECT-19K22137
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K22137
かに星雲の新しい描像の確立
かに星雲はその中心に強磁場・高速自転の中性子星(パルサー)を持っている。パルサーは回転のエネルギーを磁化した相対論的なプラズマとして放出し(これをパルサー風と呼ぶ)、そのエネルギーによりかに星雲は輝いている。従来のかに星雲の描像ではパルサー風のエネルギーは殆どプラズマの運動エネルギーとして放出されていると見ていた(ローレンツ因子が百万以上のプラズマの流れ)。本研究は、この描像が誤りである可能性があることを提案し、それを検証しようとする。本研究で以下の結果を得た。(1)X線観測とモデルの比較から星雲磁場が乱流になっていることを示した、(2)この結果を偏光から確立した、(3)かに星雲の詳細な観測からトーラス磁場が劇的に変動することや低エネルギー粒子が同時に加速されていることを示した、(4)磁気中性面と衝撃波の相互作用を初めて数値計算により解いた。以上から、従来のかに星雲の描像を塗り替えて、磁気散逸を含む星雲の姿がかなり有望なモデルとして浮上したといえる。しかし、今後、さらに精密な観測と理論の比較が必要である。本研究のサイド効果として電子陽電子対生成とパルサー風の形成過程の研究が多いに進歩したことを付け加えたい。かに星雲はその中心に強磁場・高速自転の中性子星(パルサー)を持っている。パルサーは回転のエネルギーを磁化した相対論的なプラズマとして放出し(これをパルサー風と呼ぶ)、そのエネルギーによりかに星雲は輝いている。従来のかに星雲の描像ではパルサー風のエネルギーは殆どプラズマの運動エネルギーとして放出されていると見ていた(ローレンツ因子が百万以上のプラズマの流れ)。本研究は、この描像が誤りである可能性があることを提案し、それを検証しようとする。本研究で以下の結果を得た。(1)X線観測とモデルの比較から星雲磁場が乱流になっていることを示した、(2)この結果を偏光から確立した、(3)かに星雲の詳細な観測からトーラス磁場が劇的に変動することや低エネルギー粒子が同時に加速されていることを示した、(4)磁気中性面と衝撃波の相互作用を初めて数値計算により解いた。以上から、従来のかに星雲の描像を塗り替えて、磁気散逸を含む星雲の姿がかなり有望なモデルとして浮上したといえる。しかし、今後、さらに精密な観測と理論の比較が必要である。本研究のサイド効果として電子陽電子対生成とパルサー風の形成過程の研究が多いに進歩したことを付け加えたい。かに星雲は1054年に起こった超新星爆発の残骸であり、現在も秒速2000kmの速さで膨張を続けている。爆発の際、中心部に1兆ガウスにも強く磁化した中性子星が形成され、その中性子星は回転のエネルギーを磁化したプラズマとして放出し、そのエネルギーによりかに星雲は輝いている。従来のかに星雲の描像では中心の中性子星(パルサー)からトロイダルな磁場を伴った超相対論的なプラズマ(ローレンツ因子は百万以上)が吹き出ていて、その終端衝撃波で加熱しシンクロトロン放射によって星雲が輝くと考えている。熱化はパルサー風の運動エネルギーによるものであると考えられてきた。しかし、本研究では始めてこの描像に疑いがあることを提示した。これまでに、最近得られたX線望遠鏡チャンドラのイメージと我々のモデル計算を比較し、乱れた磁場の存在を指摘した(研究発表リストShibata et al.2003参照)。これはシンクロトロン放射するプラズマのエネルギー源がパルサー風によって運ばれてきた磁場である可能性を示唆するものである。今年度後半にはこれを更に進め、柴田を中心に、かに星雲の偏光観測から乱流磁場の存在を検討し、やはり、偏光観測も乱流磁場を指示することを示した。また、星野を中心に、パルサー内の逆転する磁場を伴った衝撃波の構造の研究を開始した。逆転磁場のある衝撃波の構造についてはこれまでに研究が無く、今後の発展が期待される。かに星雲はその中心に強磁場・高速自転の中性子星(パルサー)を持っている。パルサーは回転のエネルギーを磁化した相対論的なプラズマとして放出し(これをパルサー風と呼ぶ)、そのエネルギーによりかに星雲は輝いている。従来のかに星雲の描像ではパルサー風のエネルギーは殆どプラズマの運動エネルギーとして放出されていると見ていた(ローレンツ因子は百万以上のプラズマの流れ)。本研究は、この描像が誤りである可能性があることを提案し、それを検証しようとする。2003年にはパルサー風の直後のプラズマは乱流的になることを観測的に指摘した。2004年(本年)は、パルサー風の作る衝撃波の下流が乱流的になることを、星雲の偏光を理論的に計算し観測と比較することで確実にした。従来の運動エネルギーが卓越したパルサー風はなく、磁気エネルギーが衝撃波とその下流でプラズマ加速と加熱を起こしている可能性が高まった。乱流磁場の原因としては、パルサー風にたくさんふくまれる磁気中性面の崩壊(磁気リコネクションを含む)がもっとも可能性が高い。この点に注目し多数の磁気中性面が衝撃波にとびこんでくるときの衝撃波の研究を推進した。これは、まだ未開拓の分野であり、従来、衝撃波粒子加速と磁気リコネクションによる粒子加速は独立に研究されて来たが、あたらしく、複合した現象を扱っていることに本研究のオリジナルの成果がある。
KAKENHI-PROJECT-15540227
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15540227
かに星雲の新しい描像の確立
今後、X線によるかに星雲の連続観測、磁気中性面を含む衝撃波に於ける粒子加速、乱流加速をふくむかに星雲の流れの研究を推進し、新しい描像を明確にしてゆく。かに星雲はその中心に強磁場・高速自転の中性子星(パルサー)を持っている。パルサーは回転のエネルギーを磁化した相対論的なプラズマとして放出し(これをパルサー風と呼ぶ)、そのエネルギーによりかに星雲は輝いている。従来のかに星雲の描像ではパルサー風のエネルギーは殆どプラズマの運動エネルギーとして放出されていると見ていた(ローレンツ因子は百万以上のプラズマの流れ)。本研究は、この描像が誤りである可能性があることを提案し、それを検証しようとする。2003年にはパルサー風の直後のプラズマは乱流的になることを観側的に指摘した。2004年は、パルサー風の作る衝撃波の下流が乱流的になることを、星雲の偏光を理論的に計算し観測と比較することで確実にした。2005年(本年)は、(1)新しい描像の核心部分である衝撃波およびその下流での磁気エネルギーの散逸課程の研究、および、(2)その過程の直接検証を目指した観測を実施した。(1)については、パルサー風中の磁気中性面が衝撃波において散逸する場合の一般化したジャンプコンディションを定式化し、衝撃波後方の流れを導いた。また、粒子シミュレーションによって磁気中性面を起源に磁気音波が作られ、粒子加速の効率が増加することを示した。(2)については、X線と可視光、赤外線での同時観測を実施し、X線を放射する粒子と赤外線を放射する粒子が同時に加速される様子やそれが波として伝わる現象を見つけた。これらのことから本研究で目指した、磁気散逸効果がキーであることがより明確になった。しかし、新しい描像の完全な姿を導くには至らなかった。
KAKENHI-PROJECT-15540227
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15540227
抗糖尿病活性およびDNA修復増強活性を併せもつ機能性食品の開発
PI3-K阻害剤であるWortmanninを用いて3T3-L1脂肪細胞におけるグルコース取り込み測定を行った。その結果Wortmannin処理によりケフランケフィアの効果は完全には抑制されなかったことから、ケフランケフィア水溶性画分の作用点は、PI3-K感受性及び非感受性作用部に複数存在する可能性が示唆された。PI3-K感受性作用部位に関してはインスリン受容体の活性化が確認された。MAPキナーゼ阻害剤を用いた検討により、p38MAPキナーゼが3T3-L1脂肪細胞においてケフランケフィア水溶性画分のグルコース取り込み増強効果に関与することが確認され、Western blottingによって、ケフランケフィア水溶性画分処理によりp38MAPキナーゼのリン酸化の促進が確認された。ケフランケフィア中の抗酸化活性を有する成分を分子量1,000以下に見出し単離・精製を行い、この抗酸化物質が実際に培養動物細胞内で抗酸化活性を示すことを確認した。また培養動物細胞のDNA修復関連遺伝子発現に及ぼす効果をRT-PCRにより検討したところ、p53、PCNA、MLH1、PMS1、PMS2のmRNA発現上昇が確認された。先天的にレプチン受容体欠損により肥満を通して2型糖尿病を発症するC57BL/KsJ-db/dbマウスを用いて抗糖尿病機能性食品の予防・治療効果に関して評価を行った結果、ケフランケフィアを自由摂取させたマウスでは血中インスリン量に関して差は見られなかったが、空腹時血糖値の低下と耐糖能の改善が観察された。糖尿病において、高血糖状態を生じる原因の一つとしてインスリン標的臓器におけるグルコース取り込み能の低下が考えられることから、脂肪細胞へのグルコース取り込みに及ぼす発酵乳ケフランケフィアの効果に関して検討を行った。その結果、ケフランケフィア水溶性画分は、インスリン刺激存在/非存在下において脂肪細胞へのグルコース取り込みを未処理の場合と比較し2倍以上に増強した。またこの効果はインスリン抵抗性状態の脂肪細胞においても確認された。ケフランケフィア水溶性画分を分子量分画したサンプルを用いてグルコース取り込み検定を行った結果、ケフランケフィア中のグルコース取り込み増強活性成分は分子量30,000以上の画分に含まれることが確認された。本活性成分はpH4.010.0の範囲において安定な糖含有物質であることが確認された。細胞がDNA修復を行う際に観察される不定期DNA合成(UDS)活性を指標として、培養動物細胞への紫外線照射により生じるDNA障害修復能を測定する実験系を確立した。紫外線照射後の培養動物細胞のUDS活性を検討した結果、ケフランケフィアのUDS活性増強効果を示唆する結果が得られた。また、ケフランケフィアのDNA修復関連遺伝子発現に及ぼす効果をRT-PCRにより検討したところ、紫外線照射により生ずるDNA障害の修復酵素遺伝子の発現増強が確認された。また、in vitroにおける直接的な抗酸化活性測定に基づくオンラインHPLC-DPPH法を用い、ケフランケフィア中の抗酸化活性を有する成分を分子量1,000以下に見出し単離・精製を行った。この抗酸化物質が実際に培養動物細胞内で抗酸化活性を示すことが確認された。PI3-K阻害剤であるWortmanninを用いて3T3-L1脂肪細胞におけるグルコース取り込み測定を行った。その結果Wortmannin処理によりケフランケフィアの効果は完全には抑制されなかったことから、ケフランケフィア水溶性画分の作用点は、PI3-K感受性及び非感受性作用部に複数存在する可能性が示唆された。PI3-K感受性作用部位に関してはインスリン受容体の活性化が確認された。MAPキナーゼ阻害剤を用いた検討により、p38MAPキナーゼが3T3-L1脂肪細胞においてケフランケフィア水溶性画分のグルコース取り込み増強効果に関与することが確認され、Western blottingによって、ケフランケフィア水溶性画分処理によりp38MAPキナーゼのリン酸化の促進が確認された。ケフランケフィア中の抗酸化活性を有する成分を分子量1,000以下に見出し単離・精製を行い、この抗酸化物質が実際に培養動物細胞内で抗酸化活性を示すことを確認した。また培養動物細胞のDNA修復関連遺伝子発現に及ぼす効果をRT-PCRにより検討したところ、p53、PCNA、MLH1、PMS1、PMS2のmRNA発現上昇が確認された。先天的にレプチン受容体欠損により肥満を通して2型糖尿病を発症するC57BL/KsJ-db/dbマウスを用いて抗糖尿病機能性食品の予防・治療効果に関して評価を行った結果、ケフランケフィアを自由摂取させたマウスでは血中インスリン量に関して差は見られなかったが、空腹時血糖値の低下と耐糖能の改善が観察された。
KAKENHI-PROJECT-16780094
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16780094
過冷却凝固における潜在核の緩和過程
ビールやコーラなどから生成される二酸化炭素の泡はどのようにして生成されるのであろうか。本研究では,缶から吹いた噴出量を測定することにより均質核がどれほど生成しているのか,または振動直後からどれほど緩和しているのかを調査した。まず初めに,気泡を発生させるために手による振動を与えることによって核成長を促し噴出させた。手による振動では噴出量が小さく,明らかに小さな振動エネルギーしか与えることができないことが分かった。そのために,より大きな振動エネルギーを与えることができる超音波洗浄機を用いて実験を行った。ここで,一度振動を与えたものの缶内部の状態変化を調べるために,振動を与えなかったものと比較したところ,振動後約1時間放置のものが振動を与えなかったものと比べて著しく噴出量が少なくなった。そこで,液体中からの気泡生成について述べられたPshenichnikov等の説を導入し臨界核よりも小さな核である潜在核というべきものの挙動を考えることによってその理由を解明した。ビールやコーラなどから生成される二酸化炭素の泡はどのようにして生成されるのであろうか。本研究では,缶から吹いた噴出量を測定することにより均質核がどれほど生成しているのか,または振動直後からどれほど緩和しているのかを調査した。まず初めに,気泡を発生させるために手による振動を与えることによって核成長を促し噴出させた。手による振動では噴出量が小さく,明らかに小さな振動エネルギーしか与えることができないことが分かった。そのために,より大きな振動エネルギーを与えることができる超音波洗浄機を用いて実験を行った。ここで,一度振動を与えたものの缶内部の状態変化を調べるために,振動を与えなかったものと比較したところ,振動後約1時間放置のものが振動を与えなかったものと比べて著しく噴出量が少なくなった。そこで,液体中からの気泡生成について述べられたPshenichnikov等の説を導入し臨界核よりも小さな核である潜在核というべきものの挙動を考えることによってその理由を解明した。1今年度における研究目的相変態時の核生成に関しては、未だに不明な点が多い。今年度においては、潜在核の存在とその緩和過程について気液系について実験を行なった。潜在核については、缶ビ-ルを振った後、吹くという日常に見られる現象からその存在が示唆された。そこで実験試料には缶ビ-ルを用いた。2研究方法超音波振動機を用いて缶ビ-ルに振動エネルギ-を加えて振動時間と振動終了時から開缶間での時間の二つのパラメ-タについて実験を行なった。3結果以下のことが判明した。但し、ここでいう緩和は元の状態(すなわち開缶時に吹かない)に戻ることを意味している。1.振動時間が長いほど緩和が速い。2.温度が低いほど緩和が速い。以上の結果より潜在核が存在することが確認された。また、その大きさや分布は振動エネルギ-を加えることにより変化し、定常的には得られないこと、温度異存生は小さいことが判明した。これらの結果は、1985年Yu.G.Chirkovらの提唱している亜臨界核の存在と関係しているように思われる。しかし、彼らの緩和過程と我々の実測した緩和過程では速度が大きく違い今後さらなる検討が必要である。ビールやコーラなどから生成される二酸化炭素の泡について、缶から吹き出る噴出量を測定することにより潜在核の発生量を推測した。振動は超音波法浄器を用いて実験を行なった。その結果、つぎの事柄があきらかになった。1.一度振動を与えたものは不均質核生成が減少するため、長時間放置しておいても元の状態には戻らない。2.振動後約1時間放置したものは著しく噴出量が減ることが分った。以上の結果は、Pshenichikovらが報告している臨界核の径より小さい径を有する潜在核が非常に安定であり、時間を経るにしたがい、このサイズの核に一度遷移した後、核が消減すると考えるとうまく説明されることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-03650552
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03650552
視覚系の細胞分化と形態形成の再生系における解析
プラナリアの眼は視細胞と色素細胞の2種類の細胞で構成され、視細胞は光を受容する感桿と脳への突起(視神経)を備えている。プラナリアの眼を摘出すると、2日目には、眼の再生が観察される。視細胞の分化はVC-1抗原の発現によって、色素細胞の分化はその色素によって特徴づけられる。再生過程における2種類の細胞の分化過程、眼の再生の場の性質、視神経と脳の親和性について調べた。視細胞分化が色素細胞に依存して分化する可能性を調べるために、視細胞の除去、視細胞と色素細胞の間での感桿の切断、視神経の切断の3種類の手術を行った。前2種の手術によって、視細胞は退化するが、色素細胞は残存する。しかし、残存した色素細胞によって視細胞の再生が促進されることはない、つまり、眼全体を除去した場合の再生と変わるところはなかった。視細胞と色素細胞が共通の幹細胞から分化する仮説が有力であると考えられる。また、視神経の切断によっては、視細胞は退化することはなかった。プラナリアの眼の周辺には眼を再生する場が想定される。再生過程の誤りで生じた過剰眼の周辺に再生の場が存在するか否かを調べた。三眼プラナリアを多数集め、正常眼および過剰眼を考えられる7通りのパターンで摘出し、再生の様式を調べた。結果は正常眼の位置では再生が起こるが、過剰眼の位置では再生が起こらなかった。過剰眼は再生過程で生じたhomeoticな異常であり、再生終了後の過剰眼の周辺には、眼を再生する場はないと考えられる。眼の形成はPax6遺伝子に依存して、決定されることがショウジョウバエで示されている。プラナリアのPax6遺伝子をクローニングし、プラナリアにparticle gunで導入し、異所的に眼を形成させることを計画している。プラナリアの正常眼と過剰眼からは2本の視神経束が独立に向かって走行する。プラナリアにおいては、視神経の経路に特別な標識はなく、脳からのchemotactic substanceに反応していると考えられる。プラナリアの眼は視細胞と色素細胞の2種類の細胞で構成され、視細胞は光を受容する感桿と脳への突起(視神経)を備えている。プラナリアの眼を摘出すると、2日目には、眼の再生が観察される。視細胞の分化はVC-1抗原の発現によって、色素細胞の分化はその色素によって特徴づけられる。再生過程における2種類の細胞の分化過程、眼の再生の場の性質、視神経と脳の親和性について調べた。視細胞分化が色素細胞に依存して分化する可能性を調べるために、視細胞の除去、視細胞と色素細胞の間での感桿の切断、視神経の切断の3種類の手術を行った。前2種の手術によって、視細胞は退化するが、色素細胞は残存する。しかし、残存した色素細胞によって視細胞の再生が促進されることはない、つまり、眼全体を除去した場合の再生と変わるところはなかった。視細胞と色素細胞が共通の幹細胞から分化する仮説が有力であると考えられる。また、視神経の切断によっては、視細胞は退化することはなかった。プラナリアの眼の周辺には眼を再生する場が想定される。再生過程の誤りで生じた過剰眼の周辺に再生の場が存在するか否かを調べた。三眼プラナリアを多数集め、正常眼および過剰眼を考えられる7通りのパターンで摘出し、再生の様式を調べた。結果は正常眼の位置では再生が起こるが、過剰眼の位置では再生が起こらなかった。過剰眼は再生過程で生じたhomeoticな異常であり、再生終了後の過剰眼の周辺には、眼を再生する場はないと考えられる。眼の形成はPax6遺伝子に依存して、決定されることがショウジョウバエで示されている。プラナリアのPax6遺伝子をクローニングし、プラナリアにparticle gunで導入し、異所的に眼を形成させることを計画している。プラナリアの正常眼と過剰眼からは2本の視神経束が独立に向かって走行する。プラナリアにおいては、視神経の経路に特別な標識はなく、脳からのchemotactic substanceに反応していると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-06680722
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06680722
EMCウイルス感染症に関する基礎的研究
脳心筋炎(EMC)ウイルスは豚の急性致死性心筋炎の病因で、そのキャリアとして小型げっし類が疑われている。また、本ウイルスは特定の系統のマウスに糖尿病を起こすことが知られている。本年度は4種類の小型げっし類を用いて脳心筋炎ウイルス感染症に関する基礎的検討を行ない、以下の成績を得た。(1)EMCウイルスに体する感受性:4種類の小型げっし類のEMCウイルスに対する感受性を比較したところ、スナネズミが最も感受性が高く、ラットは全く感受性を示さなかった。また、マウス、ハムスター、スナネズミでは、ウイルスの増殖部位や病変形成部位に差が見られた。(2)EMCウイルス感染スナネズミの急性期病態:(1)でEMCウイルスに最も感受性の高かったスナネズミを用いて、感染初期の膵臓における本ウイルスの増殖様式と病変形成の関係を明かにした。(3)EMCウイルスは感染BALB/cマウスの全身性病態:BALB/cマウスは元来EMCウイルス性糖尿病に抵抗性であるとされているが、若齢動物(4週齢)に10^5PFU/headのEMCウイルスD株(EMC-D)を接種することによって持続性の糖尿病を惹起しえた。また、この系で、EMCウイルスによる脳病変の分布様式(海馬に主坐)と病理組織学的性状(神経細胞の壊死・脱落)が初めて明らかにされ、同時に亜急性期における膵島病変と心筋病変の特徴が示された。(4)EMC-BによるEMC-D誘発心筋炎の防御効果:マウス膵島非障害性のB株をマウス膵島障害のD株と同時投与もしくは前投与することによって、D株誘発心筋炎の発現頻度を低下させ、かつ病変の強変を減弱させることができた。現在、その機序について検討中である。脳心筋炎(EMC)ウイルスは豚の急性致死性心筋炎の病因で、そのキャリアとして小型げっし類が疑われている。また、本ウイルスは特定の系統のマウスに糖尿病を起こすことが知られている。本年度は4種類の小型げっし類を用いて脳心筋炎ウイルス感染症に関する基礎的検討を行ない、以下の成績を得た。(1)EMCウイルスに体する感受性:4種類の小型げっし類のEMCウイルスに対する感受性を比較したところ、スナネズミが最も感受性が高く、ラットは全く感受性を示さなかった。また、マウス、ハムスター、スナネズミでは、ウイルスの増殖部位や病変形成部位に差が見られた。(2)EMCウイルス感染スナネズミの急性期病態:(1)でEMCウイルスに最も感受性の高かったスナネズミを用いて、感染初期の膵臓における本ウイルスの増殖様式と病変形成の関係を明かにした。(3)EMCウイルスは感染BALB/cマウスの全身性病態:BALB/cマウスは元来EMCウイルス性糖尿病に抵抗性であるとされているが、若齢動物(4週齢)に10^5PFU/headのEMCウイルスD株(EMC-D)を接種することによって持続性の糖尿病を惹起しえた。また、この系で、EMCウイルスによる脳病変の分布様式(海馬に主坐)と病理組織学的性状(神経細胞の壊死・脱落)が初めて明らかにされ、同時に亜急性期における膵島病変と心筋病変の特徴が示された。(4)EMC-BによるEMC-D誘発心筋炎の防御効果:マウス膵島非障害性のB株をマウス膵島障害のD株と同時投与もしくは前投与することによって、D株誘発心筋炎の発現頻度を低下させ、かつ病変の強変を減弱させることができた。現在、その機序について検討中である。
KAKENHI-PROJECT-63560286
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63560286
IgG4関連硬化性胆管炎の網羅的組織プロテオーム・リン酸化修飾解析
IgG4関連硬化性胆管炎の組織からタンパクを抽出し,網羅的なプロテオーム解析ならびにリン酸化修飾解析を行った.対照として用いた原発性硬化性胆管炎と比較すると,IgG4関連硬化性胆管炎は特徴的なリン酸化修飾パターンを示した.パスウェイ解析では,B細胞や免疫グロブリンに関連したシグナルが有意に活性化していた.個別のタンパクでは,FYN-binding proteinやallograft inflammatory factor-1が有意に発現亢進し,主としてM2型マクロファージに発現していた.これらの分子の発現は他臓器のIgG4関連疾患でも見られ,臓器を問わずIgG4関連疾患に特徴的と考えられた.初年度は、IgG4関連硬化性胆管炎(IgG4-SC)と原発性硬化性胆管炎(PSC)の凍結組織から採取したタンパクを用いて、網羅的なプロテオーム解析ならびにリン酸化修飾解析を行った。まず、phosphopeptide enrichment methodを併用したプロテオーム解析で、タンパクのリン酸化修飾が十分検討できることを確認したのち、実際の症例の検討を開始した。最終的に、胆管組織からペプチド23,357個とリン酸化ペプチド4,794個を同定しえた。発現ペプチドに基づいてクラスター解析を行うと、総ペプチドや非リン酸化ペプチドの発現プロファイルはIgG4-SCとPSCで明確な違いはなかったが、リン酸化ペプチド発現プロファイルは両疾患を明確に区別することができ、リン酸化ペプチドが病態の違いをより反映していると考えられた。各疾患で高発現しているタンパクや優位にリン酸化しているタンパクに着目して発現亢進タンパクのネットワーク解析をすると、3つの免疫関連シグナル伝達がPSCに比してIgG4-SCで有意に亢進しており、興味深いことにすべてB細胞や免疫グロブリン関連であった。一方、PSCでは細胞外マトリックスのリモデリングに関連した2つのシグナル伝達が有意に活性化していた。各疾患で過剰発現しているタンパクも同定され、来年度からは個別のタンパクに対して、validation studyを行う予定である。研究計画に記載した予定どおりに、研究が進んでいる。本年度は、プロテオーム解析で得られた昨年度のデータから、IgG4関連硬化性胆管炎や原発性硬化性胆管炎で発現が亢進しているタンパクに対して、局所での発現をより詳細に検討した。予備実験として発現量に有意な差があったタンパクに対して免疫染色を行うことで、各疾患で強発現し、免疫や細胞外マトリックスのリモデリングに関与していると推定される分子を選択した。具体的には、IgG4関連硬化性胆管炎で発現が亢進しているタンパク群から、FYN-binding proteinとallograft inflammatory factor-1が選択された。これらの分子は病変局所で多数の細胞に発現していることが明らかとなり、2重染色ではこれらの分子は主としてマクロファージに発現しており、特にM2型マクロファージが活性化していると考えられた。原発性硬化性胆管炎ではFYN-binding proteinやallograft inflammatory factor-1の発現は部分的であり、プロテオーム解析の結果に合致していた。一方、原発性硬化性胆管炎に対しては、filamin-Aとfilamin-Cに着目して解析したところ、これらの分子はマクロファージと線維芽細胞に過剰発現した。一方、IgG4関連硬化性胆管炎を含めた他の胆道疾患での発現はほとんどなく、原発性硬化性胆管炎の細胞外マトリックスの変化に重要な分子であると考えられた。興味深いことに、filamin-Aは原発性硬化性胆管炎に合併した胆管癌でも発現が亢進しており、発癌プロセスにも関連している可能性がある。さらに、これらの分子は肝生検でもその過剰発現が確認でき、硬化性胆管炎の臨床的な鑑別にも有用である可能性が示唆された。研究計画に記載したとおりに進んでいる。本年度は本研究の最終年度にあたる.昨年度までにIgG4関連硬化性胆管炎の組織片をプロテオーム解析し,原発性硬化性胆管炎に比して優位に発現が亢進,もしくは低下しているタンパクを同定した.本年度は胆管炎で得られた知見を他臓器に応用し,他臓器のIgG4関連疾患でも同様の変化が生じているのか,また同定したタンパクの発現が診断マーカーとなるのかを検証した.解析した臓器は,唾液腺,肺,後腹膜である.唾液腺ではIgG4関連唾液唾液腺炎とシェーグレン症候群を,肺ではIgG4関連肺病変と特発性間質性肺炎を,後腹膜ではIgG4関連後腹膜線維症とIgG4非関連の特発性後腹膜線維症を対象とした.IgG4関連硬化性胆管炎で過剰発現していることが明らかとなったFYN-binding proteinとallograft inflammatory factor-1の発現をこれらの臓器病変で解析したところ,予想していたとおり,これらの分子は他臓器のIgG4関連疾患でも強発現していた.2重免疫染色を行うと,硬化性胆管炎と同様にM2型マクロファージが主な発現細胞であることが明らかとなった.また,対照として用いた他疾患ではIgG4関連疾患に比してこれらのタンパクの発現は弱く,FYN-binding proteinやallograft inflammatory factor-1の過剰発現はIgG4関連疾患に特徴的であることが明らかとなった.さらに,これらのタンパクを発現する細胞は病変内にびまん性に認められ,生検検体でも陽性細胞は容易に検出でき,診断マーカーとして臨床的にも使用できる可能性が示唆された.IgG4関連硬化性胆管炎の組織からタンパクを抽出し,網羅的なプロテオーム解析ならびにリン酸化修飾解析を行った.
KAKENHI-PROJECT-15K08345
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K08345
IgG4関連硬化性胆管炎の網羅的組織プロテオーム・リン酸化修飾解析
対照として用いた原発性硬化性胆管炎と比較すると,IgG4関連硬化性胆管炎は特徴的なリン酸化修飾パターンを示した.パスウェイ解析では,B細胞や免疫グロブリンに関連したシグナルが有意に活性化していた.個別のタンパクでは,FYN-binding proteinやallograft inflammatory factor-1が有意に発現亢進し,主としてM2型マクロファージに発現していた.これらの分子の発現は他臓器のIgG4関連疾患でも見られ,臓器を問わずIgG4関連疾患に特徴的と考えられた.当初の研究計画に沿って研究を進める。具体的には本年度同定した各疾患で過剰発現しているタンパクに対して、免疫染色などの別の方法を用いたvalidation studyを行う。また、胆道系だけでなく、他臓器のIgG4関連疾患にも応用できるかも含めて検討する。次年度は本研究の最終年度に相当する。IgG4関連硬化性胆管炎で発現が亢進していた分子に関して、他臓器のIgG4関連疾患でも同様に発現が亢進しているか検討する。硬化性胆管炎で得られた知見が、全身疾患であるIgG4関連疾患の他臓器病変にも応用できるか明らかにする。人体病理学冷却遠心機を購入予定であったが、消耗品の費用が多くかかった関係で、遠心機を購入しなかったことが差額が生じた主な原因である。初年度に消耗品費がかかった関係で、購入予定だった遠心機を購入しなかった。その残額を昨年度から持ち越し、ほぼ同額が本年度も持ち越しとなった。本年度自体の支出額は、予定支出額とほぼ同額である。来年度は、免疫染色を含めた解析で消耗品費がかかると予想され、そちらに使用する。
KAKENHI-PROJECT-15K08345
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K08345
児童生徒の攻撃行動の変容を目指したストレスマネジメント実施に関する研究
本研究においては,関東甲信越地区の公立小中学校および公立私立高等学校を対象として,心理的ストレス,学校不適応,および攻撃行動に関する実態調査を実施した.この調査結果と,平成13年度までに行った攻撃行動の変容を目指したストレスマネジメントプログラムの持続性効果の検討結果を踏まえて,ストレスマネジメントプログラムの修正を行った.その後,社会的スキル訓練(児童生徒個人の行動的変容)を中心とした介入を実施する小中学校,セルフ・エフィカシーの向上(児童生徒個人の認知的変容)を中心とした介入を実施する小中学校,および,ソーシャルサポートの充実(児童生徒を取り巻く環境の調整)を中心とした介入を実施する小中学校をそれぞれ選定し,児童生徒の攻撃行動の変容に及ぼすストレスマネジメント実施の効果を検討した.なお,効果測定においては,攻撃性尺度やストレス反応尺度を中心とする質問紙調査(自己評定),教師による他者評定,友人による他者評定,第3者による行動評定などを多角的に用いた.その結果,ソーシャルサポートの充実による介入は小学生を除き,ほとんど効果がないことが示された.一方,社会的スキル訓練,およびセルフ・エフィカシーの向上による介入は,全般的に児童生徒の攻撃行動を変容する可能性があることが明らかにされた.さらに,児童生徒個人を対象とした介入(ケース研究)においては,小中学生ともに社会的スキル訓練の顕著な介入効果が得られた.しかしながら,セルフ・エフィカシーの向上やソーシャルサポートの充実には介入効果はほとんど得られなかった.以上のことから,児童生徒の攻撃行動の変容には社会的スキルの獲得が大きな効果があること,集団介入と個別介入では,介入を行う要因によってプログラムの効果が異なる可能性があることが示唆された.本研究においては,公立小中学生を対象として,攻撃行動,心理的ストレス,および学校不適応に関する実態調査を実施した.そして,調査の結果を踏まえ,攻撃性の変容を目指したストレスマネジメントを実施した.その際,社会的スキル訓練(児童生徒個人の行動的変容)を中心とした介入を実施する小中学校,敵意性の変容(児童生徒個人の認知的変容)を中心とした介入を実施する小中学校,および,ソーシャルサポートの充実(児童生徒を取り巻く環境の調整)を中心とした介入を実施する小中学校をそれぞれ選定し,ストレスマネジメント実施の効果を比較した.効果測定においては,攻撃性尺度やストレス反応尺度を中心とする質問紙調査(自己評定),教師による他者評定,第3者による行動評定などを多角的に用いた.攻撃性の変容を目指したストレスマネジメントをクラス集団に実施した結果,小学生を対象とした場合,社会的スキル訓練の攻撃行動低減効果,ストレス反応軽減効果が示された.一方,中学生を対象とした場合には,社会的スキル訓練,敵意性の変容,ソーシャルサポートの充実のいずれにおいても攻撃行動低減効果,ストレス反応軽減効果が示された.特に認知的変容は,学年が上がるにつれてその介入効果が大きくなることが明らかにされた.さらに,児童生徒個人を対象とした介入(ケース研究)においては,小学生においては社会的スキル訓練,中学生においては敵意性の変容を中心として,ストレスマネジメントの介入効果が得られた.今後は,小中学生におけるストレスマネジメント技法の円滑な実施を考える上での問題点,および,本研究において効果が得られなかった技法に関する問題点などを具体的に解決しながら,ストレスマネジメントプログラムの修正を考えていく必要がある.本研究においては,関東甲信越地区の公立小中学校および公立私立高等学校を対象として,心理的ストレス,学校不適応,および攻撃行動に関する実態調査を実施した.この調査結果と,平成13年度までに行った攻撃行動の変容を目指したストレスマネジメントプログラムの持続性効果の検討結果を踏まえて,ストレスマネジメントプログラムの修正を行った.その後,社会的スキル訓練(児童生徒個人の行動的変容)を中心とした介入を実施する小中学校,セルフ・エフィカシーの向上(児童生徒個人の認知的変容)を中心とした介入を実施する小中学校,および,ソーシャルサポートの充実(児童生徒を取り巻く環境の調整)を中心とした介入を実施する小中学校をそれぞれ選定し,児童生徒の攻撃行動の変容に及ぼすストレスマネジメント実施の効果を検討した.なお,効果測定においては,攻撃性尺度やストレス反応尺度を中心とする質問紙調査(自己評定),教師による他者評定,友人による他者評定,第3者による行動評定などを多角的に用いた.その結果,ソーシャルサポートの充実による介入は小学生を除き,ほとんど効果がないことが示された.一方,社会的スキル訓練,およびセルフ・エフィカシーの向上による介入は,全般的に児童生徒の攻撃行動を変容する可能性があることが明らかにされた.さらに,児童生徒個人を対象とした介入(ケース研究)においては,小中学生ともに社会的スキル訓練の顕著な介入効果が得られた.しかしながら,セルフ・エフィカシーの向上やソーシャルサポートの充実には介入効果はほとんど得られなかった.以上のことから,児童生徒の攻撃行動の変容には社会的スキルの獲得が大きな効果があること,集団介入と個別介入では,介入を行う要因によってプログラムの効果が異なる可能性があることが示唆された.
KAKENHI-PROJECT-13710062
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13710062
パルスYAGレーザーを用いたアルミニウムの表面パターニング
本研究は、アルミニウム基板上におけるパターニング技術の新しい方法の開発と確立と目的としており、平成8年度平成10年度にわたって行われたものである。すなわち、アノード酸化皮膜化成試料を金属イオンを含む溶液中に浸漬し、これにパルスYAGレーザーを照射することにより、皮膜を局部的に破壊・除去する。その後、電気メッキあるいは無電解めっきにより、皮膜除去部のみに金属を析出させ、アルミニウム上にパターンを描くとともに、有機絶縁板の接着、素地金属の溶解除去により模擬プリント配線基板を作製しようとするものである。得られた結果の主なものは次の通りである。1)レーザー照射のさい、皮膜は素地金属のレーザーアプレーションにより生じる高圧力により破壊・除去される。そのため、レーザー照射部の周囲の皮膜にはクラックが発生するが、レーザー照射前に皮膜を赤く着色しておくことにより、クラックの発生は防止できる。最大100μmの厚さの皮膜を15500μmの幅で連続的に皮膜を除去できる。2)レーザー照射のさい、皮膜除去部の表面に金属微粒子が析出し、これらが、次の電気メッキおよび無電解めっきのさい、核として作用し、とくに無電解めっきの初期の析出速度に大きな影響をおよぼす。析出Pd金属粒子がもっともその効力が大きい。電気メッキによりNlおよびCuの、無電解めっきによりNI-Pの緻密電析層を得ることができた。3) 15μmのNl電析線で描いたアルミニウム試料板に有機絶縁板を接着し、素地金属を溶解除去により生成した模擬プリント配線基板を形成し、電気伝導性を調べた結果、きわめてよい電気電導性を示した。本研究は、アルミニウム基板上におけるパターニング技術の新しい方法の開発と確立と目的としており、平成8年度平成10年度にわたって行われたものである。すなわち、アノード酸化皮膜化成試料を金属イオンを含む溶液中に浸漬し、これにパルスYAGレーザーを照射することにより、皮膜を局部的に破壊・除去する。その後、電気メッキあるいは無電解めっきにより、皮膜除去部のみに金属を析出させ、アルミニウム上にパターンを描くとともに、有機絶縁板の接着、素地金属の溶解除去により模擬プリント配線基板を作製しようとするものである。得られた結果の主なものは次の通りである。1)レーザー照射のさい、皮膜は素地金属のレーザーアプレーションにより生じる高圧力により破壊・除去される。そのため、レーザー照射部の周囲の皮膜にはクラックが発生するが、レーザー照射前に皮膜を赤く着色しておくことにより、クラックの発生は防止できる。最大100μmの厚さの皮膜を15500μmの幅で連続的に皮膜を除去できる。2)レーザー照射のさい、皮膜除去部の表面に金属微粒子が析出し、これらが、次の電気メッキおよび無電解めっきのさい、核として作用し、とくに無電解めっきの初期の析出速度に大きな影響をおよぼす。析出Pd金属粒子がもっともその効力が大きい。電気メッキによりNlおよびCuの、無電解めっきによりNI-Pの緻密電析層を得ることができた。3) 15μmのNl電析線で描いたアルミニウム試料板に有機絶縁板を接着し、素地金属を溶解除去により生成した模擬プリント配線基板を形成し、電気伝導性を調べた結果、きわめてよい電気電導性を示した。アルミニウム基板上における新しいパタ-ニング技術の開発・発展を目指し、本年度は、レーザー照射条件(パワー、ビーム系、焦点はずし距離、照射環境)を種々変化し、レーザー照射による皮膜破壊挙動をSEMにより追跡するとともに、金属の電析に及ぼす影響について調べた。パワーの影響:あるしきい値を越えたパワーのレーザーを試料に照射することにより、レーザーアブレ-ジョンによりアノード酸化皮膜を皮膜/素地界面からほぼ完全に除去することができた。除去部はほぼ円形でありその面積はパワーの増大とともに大きくなる。焦点はずし距離とビーム径の影響:照射条件によらず、除去面積は、焦点の位置に試料をおいて照射すると最少になり、焦点はずし距離が長くなると大きくなる。集光前にレーザー光を絞りビーム径を小さくして照射することにより、焦点はずし距離による剥離面積の変化を小さくできる。また,絞ることにより,より小さな面積を剥離可能であった。照射環境の影響:各パワー、位置において水溶液中より空気中で照射すると剥離面積は小さくなった。しかし、空気中で照射したさい、大気酸化皮膜の影響により、めっき層の形成速度が一定になるまでの時間が長くなる。初期から速い速度で皮膜を形成するにはめっき溶液中で照射する必要がある。金属の電析に及ぼす影響:銅およびニッケルめっき溶液中で照射することで、高い電流効率で緻密なめっき相を形成することができた。本研究は、アルミニウム基板上におけるパタ-ニング技術の新しい方法の開発と確立を目的としており、本年度は、厚いメッキ層を局部的に形成する方法について検討した。また、有機絶縁板との接合および素地金属の溶解除去にり、模擬プリント配線基板の作製を試みた。1.レーザー照射によるアノード酸化皮膜の除去機構の解明1)皮膜が薄い(<15μm)場合には、レーザー照射により皮膜は完全に除去できる。2)皮膜が厚い(>20μm)場合には、レーザー照射により皮膜に多数のクラックが発生し、局部的な皮膜の除去は、困難である。
KAKENHI-PROJECT-08455326
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08455326
パルスYAGレーザーを用いたアルミニウムの表面パターニング
3)アノード酸化ののち、アリザリンレッド溶液中に浸漬して皮膜を染色すると、レーザー照射により、クラックの発生が見られず、皮膜の局部的除去が極めて容易となる。2.局部ニッケルめっきと模擬プリント配線基板の作製1)レーザービームを走査させて500μm幅のパターンを形成後、連続的なニッケルめっきパターンを得ることができる。2)電気絶縁樹脂との接合の後、50.1M-NaOH溶液中に浸漬すると、素樹脂および接着面を損なうことなく素地金属の溶解除去をうまくできる。本研究は、アルミニウム基板上におけるパターニング技術の新しい方法の開発と確立を目的としており、本年度は、1)レーザー照射・無電解めっきによるパターニングの開発および2)光学系の工夫による極微細パターニングの形成について研究を行った。1)レーザー照射・無電解めっきによるパターニングの開発:レーザー照射をPd^<2+>,Ni^<2+>,Cu^<2+>イオンを含む溶液中で行うと、いずれの場合にも、試料のレーザー照射部に金属微粒子が析出することをXPSおよび浸漬電位の測定により明らかにした。また、レーザー照射のさい析出したPd金属は、その後のNi-P無電解めっきの初期過程においてその析出速度を促進するが、Cu粒子は促進効果を有しないことがわかった。2)極微細パターニングの形成:レーザー照射を、レーザーパワー、絞り径および凸レンズ焦点距離の関数としてレーザー照射を行い、皮膜の破壊に伴う皮膜除去部のスポットサイズ(D)および走査線幅(W)を測定したところ、DおよびWの値を」15500μmまで調節することができることがわかった。また、有機絶縁基板との接着および素地金属の溶解除去などにより、微細回路をもつ模擬プリント配線基板を形成できた。
KAKENHI-PROJECT-08455326
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08455326
中枢神経悪性リンパ腫の予後規定マーカーの解明
中枢神経悪性リンパ腫(PCNSL)は難治性の脳腫瘍である。PCNSLに対する標準治療は大量Methotrexate(MTX)を中心とする化学療法とそれに引き続き行なう全脳照射であるが、30%の症例は治療抵抗性であり、60%が再発する。再発や治療抵抗性のPCNSLに対してテモゾロミド(TMZ)が有効な症例が存在する。本研究ではPCNSL治療に重要な役割を占める化学療法剤であるTMZ及びMTXの薬剤感受性に関わるマーカー候補であるMGMT遺伝子プロモーターのメチル化、reduced folate carrier (RFC)遺伝子の発現について検討し、化学療法剤の効果、治療成績との関係について検討した。中枢神経悪性リンパ腫(PCNSL)は難治性の脳腫瘍である。PCNSLに対する標準治療は大量Methotrexate(MTX)を中心とする化学療法とそれに引き続き行なう全脳照射であるが、30%の症例は治療抵抗性であり、60%が再発する。再発や治療抵抗性のPCNSLに対してテモゾロミド(TMZ)が有効な症例が存在する。本研究ではPCNSL治療に重要な役割を占める化学療法剤であるTMZ及びMTXの薬剤感受性に関わるマーカー候補であるMGMT遺伝子プロモーターのメチル化、reduced folate carrier (RFC)遺伝子の発現について検討し、化学療法剤の効果、治療成績との関係について検討した。中枢神経悪性リンパ腫(PCNSL)治療に重要な役割を占める化学療法剤である、テモゾロミド(TMZ)及びMetotrexate (MTX)の薬剤感受性に関わるマーカー候補であるMGMT遺伝子プロモーターのメチル化、mRNA発現、蛋白発現、reduced folatecarrier (RFC)遺伝子のプロモーターのメチル化、mRNA発現について検計し、さらにPCNSLを遺伝子学的サブタイピングした上で、化学療法剤の効果、治療成績、予後との関係について検討し、新たな治療法の開発に向けての基盤的研究を行うことを本研究の目的としている。本年度は、PCNSL症例34例の腫瘍組織よりDNAを抽出し、MGMT遺伝子に対するメチル化感受性高解像能融解曲線分析法にて、MGMT遺伝子のプロモーターのメチル化の有無を解析した。Bisulfite処理した各DNAサンプル0.2μgを最終容量20μlに溶解した。メチル化スタンダードは、100%メチル化コントロールDNAを100%非メチル化コントロールで希釈して100%から0%まで10%毎に段階希釈したサンプルを準備した。PCR primerはWojdaczらの論文に従ってデザインした。DNAインターカレート色素を含むLightCvcler480 High Resolution Meltingマスターミックスを使用し、PCRの条件はSYBR GreehI検出フォーマットにて、95°C10分X1サイクル、95°C10秒-60°C20秒-72°C20秒X45サイクル、高解像能融解曲線分析法のステップとして、95°C1分、50°C1分、72°C5秒反応させた後、95°Cへ向かって1°Cにつき30回連続して蛍光を取得した。34例中MGMTのメチル化が確認できたのは17例であった。メチル化の程度は5%から100%まで存在した。再発時にTMZを導入した5例中4例はMGMTのメチル化がみられ、これらの症例では治療に奏功した。一方MGMTのメチル化がみられない1例ではTMZの効果を認めなかった。MGMTのメチル化はTMZの効果を予測する因子となりうる可能性が示唆された。RFC遣伝子に対するメチル化感受性高解像能融解曲線分析法を前述同様に確立した。現在RFC遺伝子のプロモーターのメチル化の有無を解析中である。中枢神経悪性リンパ腫(PCNSL)治療に重要な役割を占める化学療法剤である、テモゾロミド(TMA)及びMetotrexate(MTX)の薬剤感受性に関わるマーカー候補であるMGMr遺伝子プロモーターのメチル化、mRNA発現、蛋白発現、reduced folatecarrier(RFC)遺伝子のプロモーターのメチル化、mRNA発現について検討し、さらにPCNSLを遺伝子学的サブタイピングした上で、化学療法剤の効果、治療成績、予後との関係について検討し、新たな治療法の開発に向けての基盤的研究を行うことを本研究の目的としている。本年度も昨年度に引き続き、PCNSL症例3の腫瘍組織よりDNAを抽出し、MGMr遺伝子に対するメチル化感受性高解像能融解曲線分析法にて、MG辨遺伝子のプロモーターのメチル化の有無を解析した。Bisulfite処理した各DNAサンプル0.2μgを最終容量20μlに溶解した。メチル化スタンダードは、100%メチル化コントロールDNAを100%非メチル化コントロールで希釈して100%から0%まで10%毎に段階希釈したサンプルを準備した。PCR primerはWojdaczらの論文に従ってデザインした。DNAインターカレート色素を含むLightCycler480High Resolution Meltingマスターミックスを使用し、PCRの条件はSYBRGreenI検出フォーマットにて、95°C10分X1サイクル、95°C10秒-60°C20秒-72°C20秒X45サイクル、高解像能融解曲線分析法のステップとして、95°C1分、50°C1分、72°C5秒反応させた後、95°Cへ向かって1°Cにつき30回連続して蛍光を取得した。昨年より症例が増え、45例中MGMrのメチル化が確認できたのは23例であった。メチル化の程度は5%から100%まで存在した。
KAKENHI-PROJECT-21591878
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21591878
中枢神経悪性リンパ腫の予後規定マーカーの解明
再発時にTMZを導入した5例中4例はMGMrのメチル化がみられ、これらの症例では治療に奏功した。一方MGMTのメチル化がみられない1例ではTMZの効果を認めなかった。MGMTのメチル化はTMZの効果を予測する因子となりうる可能性が示唆された。MTX療法の感受性に関与する可能性があるRFC遺伝子のタンパク発現を免疫組織化学染色にて検討した。発現を検討できた26例中、RFCの発現を認めたのは9例で、このうち初期MTX療法に効果を示した(CR,CRu)のは7例(78%)であり、RFCの発現を認めない17例中、初期MTX療法中治療抵抗性を示したもの(SD,PD)は12例(71%)であった。以上よりRFCのタンパク発現は初期MTX療法の感受性に関係する可能性が示唆された。現在、Fas,Bc12の発現を免疫組織染色を行っており、今後、治療効果や予後との関わりを検討する予定である。中枢神経悪性リンパ腫(PCNSL)治療に重要な役割を占める化学療法剤である、テモゾロミド(TMZ)及びMetotrexate(MTX)の薬剤感受性に関わるマーカー候補であるMGMT遺伝子プロモーターのメチル化、reduced folatecarrier(RFC)遺伝子のプロモーターのメチル化、遺伝子発現を調べ、これらの化学療法剤の効果との関係を検討する。さらにPCNSLを遺伝子学的サブタイピングした上で、治療成績との関係について検討し、新たな治療法の開発に向けての基盤的研究を行うことを本研究の目的としている。昨年度に引き続き、PCNSL症例の腫瘍組織よりDNAを抽出し、MGMT遺伝子に対するメチル化感受性高解像能融解曲線分析法にて、MGMT遺伝子のプロモーターのメチル化の有無を解析した。Bisulfite処理した各DNAサンプル0.2μgを最終容量20μlに溶解した。メチル化スタンダードは、100%メチル化コントロールDNAを100%非メチル化コントロールで希釈して100%から0%まで10%毎に段階希釈したサンプルを準備した。PCR prierはWojdaczらの論文に従ってデザインした。DNAインターカレート色素を含むLight Cycler480 High Resolution Meltingマスターミックスを使用し、PCRの条件はSYBR GreenI検出フォーマットにて、95°C10分X 1サイクル、95°C10秒-60°C20秒-72°C20秒X45サイクル、高解像能融解曲線分析法のステップとして、95°C1分、50°C1分、72°C5秒反応させた後、95°Cへ向かって1°Cにつき30回連続して蛍光を取得した。PCNSL45例中MGMTのメチル化が確認できたのは23例であった。メチル化の程度は5%から100%まで存在した。再発時にTMZを導入した5例中4例はMGMTのメチル化がみられ、これらの症例では治療に奏効した。一方MGMTのメチル化がみられない1例ではTMZ抵抗性であった。
KAKENHI-PROJECT-21591878
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21591878
ABC 輸送体活性・発現制御機構の解明と創薬基盤の構築
P-糖タンパク質(P-gp)はABC輸送体に属する抗がん剤排出ポンプである。がん細胞におけるP-gpの発現増加は抗がん剤耐性の一因とされる。本研究では、P-gpの活性や発現の制御方法を調べ、P-gp阻害薬の開発基盤を構築することを目的として遂行した。本研究では、(1) P-gpはSCFFBX15で認識され、Ube2r1/Cdc34/Ubc3によるユビキチン化を受けてプロテアソームで分解されること、(2)タンパク質脱リン酸化酵素複合体PP5/PPP2R3CはP-gp発現を低下させることを見出した。FBXO15はユビキチンE3リガーゼ複合体(SCF[Fbx15])の構成因子であることから、FBXO15を介したP-gpの分解について検討した。FBXO15はP-gpと結合すること、FBXO15をノックダウンするとP-gpのユビキチン化が抑制され、発現が増大すること、さらにビンクリスチンに対する感受性が低下することを平成23年度に報告した。平成24年度はSCF[Fbx15]が介在するP-gpのユビキチン化タンパク質を探索し、Ube2r1を同定した。Ube2r1のノックダウンはP-gpのユビキチン化を抑制し、P-gpの発現を増大させた。以上よりP-gpのユビキチン化の構図を完成し、論文報告するに至った。PPP2R3Cはprotein phosphatase (PP) 2AやPP5の活性制御サブユニットである。平成23年度までにPPP2R3CとPP5はP-gpのC-末端と共沈すること、それらのノックダウンによりP-gp発現が増加することを報告した。PP2AはP-gpと共沈しなかった。平成24年度はPP5/PPP2R3CをノックダウンするとP-gpの基質であるrhodamine 123の排出が亢進すること、ビンクリスチンやドキソルビシンに対する感受性が低下することを突き止めた。よって、PP5/PPP2R3C複合体はP-gpの負の制御因子であることを明らかした。以上のように、当該研究ではP-gpの分解機構と発現制御機構の解明において成果を挙げることができた。P-糖タンパク質(P-gp)はABC輸送体に属する抗がん剤排出ポンプである。がん細胞におけるP-gpの発現増加は抗がん剤耐性の一因とされる。本研究では、P-gpの活性や発現の制御方法を調べ、P-gp阻害薬の開発基盤を構築することを目的として遂行した。本研究では、(1) P-gpはSCFFBX15で認識され、Ube2r1/Cdc34/Ubc3によるユビキチン化を受けてプロテアソームで分解されること、(2)タンパク質脱リン酸化酵素複合体PP5/PPP2R3CはP-gp発現を低下させることを見出した。【(1)PP5、PP2AによるP-糖タンパク質/BCRPの発現・機能制御】PP5、PP2A、およびその制御サブユニットPPP2R3CによるP-糖タンパク質の発現制御について検討した。内因性P-糖タンパク質を発現するHCT-15、SW620-14、OVCAR-8、HEK293のいずれの細胞株でも、PP5およびPPP2R3CをsiRNAでノックダウンすると細胞膜上のP-糖タンパク質の発現が増加した。PP2Aのノックダウンは、P-糖タンパク質の発現に影響を与えなかった。これらの結果から、PP5はP-糖タンパク質の安定性を低下させるものと考えられる。抗がん剤耐性の一つとしてP-糖タンパク質の発現が鍵になっているので、PP5がP-糖タンパク質の発現を低下させることは、抗がん剤耐性の克服に向けて重要な証拠になる。【(2)新規P-糖タンパク質C末端領域結合タンパク質の機能解析】F-boxタンパク質として機能分類されているFBXO15に注目して研究を遂行し、以下の結果を得た。(1)FBXO15はP-糖タンパク質と結合した、(2)FBXO15はP-糖タンパク質と共局在した、(3)FBXO15はP-糖タンパク質をユビキチン化した、(4)FBXO15のノックダウンにより細胞膜上のP-糖タンパク質の発現が増加した、(5)FBXO15のノックダウンによりビンクリスチンに対する耐性が増大した。FBXO15はSCF複合体において基質認識を担っており、P-糖タンパク質のユビキチン化、プロテアソームによる分解を制御することが明らかになった。P-糖タンパク質の発現制御に関する報告は乏しく、分解機構については全く明らかになっていないことから、本研究は細胞生物学の面で非常に価値がある。また、FBXO15はドメイン解析からF-boxタンパク質に分類されていたが、その基質は見つかっておらず、P-糖タンパク質はFBXO15の最初の基質である。PP5、PPP2R3CによるP-糖タンパク質の制御では、P-糖タンパク質の脱リン酸化検討の系を現在構築中である。平成23年度中にこの脱リン酸化検討の系を構築することを目指していたが、今のところ完成していない。しかし、他のデータが得られていることから、総合的には比較的順調に進捗しているものと考えられる。FBXO15によるP-糖タンパク質の分解制御は、当初の予定を上回る進捗状況である。論文作成に必要なデータはほぼ揃っている状況である。
KAKENHI-PROJECT-23790196
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23790196
ABC 輸送体活性・発現制御機構の解明と創薬基盤の構築
新規P-糖タンパク質中間領域結合タンパク質の同定は、上記2つの研究を優先したことから、平成23年度中に開始することはできなかった。PP5、PPP2R3CによるP-糖タンパク質の制御では、P-糖タンパク質のリン酸化状態の変化を確認し、またそのリン酸化部位を同定していく。さらに、そのリン酸化がP-糖タンパク質の発現や活性に与える影響について、抗がん剤に対する耐性度などを指標として調べ、研究成果をまとめていく。また、学会等で研究成果報告をしていく。FBXO15によるP-糖タンパク質の分解制御は、現在、論文投稿の準備をしている。本研究成果は、平成24年度中に掲載されることを目指す。また、国内外の学会で成果報告をしていく。新規P-糖タンパク質中間領域結合タンパク質の同定は、上記2研究の進捗を見ながら開始時期を見極めるが、可能なかぎり早い時期に開始できるように目指す。試薬や消耗品の購入など、研究に関する消耗に主に研究費を使用する。また、学会での成果報告およびその旅費、論文投稿などの諸経費としても使用する。
KAKENHI-PROJECT-23790196
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23790196
中性脂肪蓄積心筋血管症に対する特異的栄養療法の動脈硬化抑制効果に関する検討
心筋エネルギー源の代謝異常により心筋エネルギー不全や中性脂肪蓄積型の冠動脈硬化を呈する中性脂肪蓄積心筋血管症に対する研究である。心筋の代替エネルギーである中鎖脂肪酸を含む栄養療法が、心筋のエネルギー不全を改善し得ることは確認されているが、中性脂肪蓄積型の冠動脈硬化に与える影響は分かっていない。本研究では、中鎖脂肪酸を含有する栄養療法が、難治性の中性脂肪蓄積型の冠動脈硬化の進展に対して抑制効果を有するのかどうかを、冠動脈内イメージングを用いて明らかにすることを目的とする。これにより、中性脂肪蓄積型の冠動脈硬化の治療に難渋する患者に対しても、本栄養療法の意義が示せるかもしれない。心筋エネルギー源の代謝異常により心筋エネルギー不全や中性脂肪蓄積型の冠動脈硬化を呈する中性脂肪蓄積心筋血管症に対する研究である。心筋の代替エネルギーである中鎖脂肪酸を含む栄養療法が、心筋のエネルギー不全を改善し得ることは確認されているが、中性脂肪蓄積型の冠動脈硬化に与える影響は分かっていない。本研究では、中鎖脂肪酸を含有する栄養療法が、難治性の中性脂肪蓄積型の冠動脈硬化の進展に対して抑制効果を有するのかどうかを、冠動脈内イメージングを用いて明らかにすることを目的とする。これにより、中性脂肪蓄積型の冠動脈硬化の治療に難渋する患者に対しても、本栄養療法の意義が示せるかもしれない。
KAKENHI-PROJECT-19K11705
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K11705
高温酸化物超伝導線材の温度磁場可変環境下ひずみ効果測定システムの構築
Y系超伝導線材の臨界電流のひずみ依存性を測定する新規システムを設計し、導入した。駆動部分はステッピングモーターを用い、リニアガイドで上下方向の運動に変換した。荷重は駆動部に取り付けられたロードセルで計測した。プルロッドの上下運動を水平方向変換する機構は以下のようにした。プルロッドの下端にカム1を接続し、さらにもう一つのカム2をカム1を介して回転させ、カム2の下端で水平に配置された超伝導線材の一旦を引張ることによって、一軸の引張ひずみを発生させた。ひずみ測定用の伸び計はT-6A1-4Vフレームにひずみゲージを取り付けて自作した。伸び計のゲージ長は15mmであり、マイクロメーターを備えたキャリブレーターでの校正により03%の範囲で線形性が成り立つことを確認した。これらの装置を用いて、まず室温で引張試験を行い、別途引張試験機により測定した応力-ひずみ曲線と比較した。その結果、両データはほぼ一致することが確認された。次に、液体窒素中、自己磁場の条件で線材の臨界電流のひずみ依存性を測定した。通電は、線材の両端がハンダ付けされているCuブロックを介して行い、発生電圧は20mmの間隔で試料に取り付けられた電圧端子間でモニターした。これも別途引張試験機を用いて測定した結果との比較を行ったところ、両データはほぼ一致した。これらの結果から、今回構築した測定しシステムの荷重、ひずみ、臨界電流の測定精度は問題ないことが確認された。Y系超伝導線材の臨界電流のひずみ依存性を測定する新規システムを設計し、導入した。駆動部分はステッピングモーターを用い、リニアガイドで上下方向の運動に変換した。荷重は駆動部に取り付けられたロードセルで計測した。プルロッドの上下運動を水平方向変換する機構は以下のようにした。プルロッドの下端にカム1を接続し、さらにもう一つのカム2をカム1を介して回転させ、カム2の下端で水平に配置された超伝導線材の一旦を引張ることによって、一軸の引張ひずみを発生させた。ひずみ測定用の伸び計はT-6A1-4Vフレームにひずみゲージを取り付けて自作した。伸び計のゲージ長は15mmであり、マイクロメーターを備えたキャリブレーターでの校正により03%の範囲で線形性が成り立つことを確認した。これらの装置を用いて、まず室温で引張試験を行い、別途引張試験機により測定した応力-ひずみ曲線と比較した。その結果、両データはほぼ一致することが確認された。次に、液体窒素中、自己磁場の条件で線材の臨界電流のひずみ依存性を測定した。通電は、線材の両端がハンダ付けされているCuブロックを介して行い、発生電圧は20mmの間隔で試料に取り付けられた電圧端子間でモニターした。これも別途引張試験機を用いて測定した結果との比較を行ったところ、両データはほぼ一致した。これらの結果から、今回構築した測定しシステムの荷重、ひずみ、臨界電流の測定精度は問題ないことが確認された。
KAKENHI-PROJECT-18860039
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18860039
遷移金属錯体およびその集合体の電子状態転移に関する理論的研究
近年,さまざまな摂動(光照射,ゲスト分子吸着など)が異なる電子状態間の遷移を誘起する現象に注目が集まっており,単分子メモリー等への応用面のみならず,その機構と支配因子の解明に力が注がれている.本年度は,動力学と熱力学の観点から二件の理論的研究をおこない,その成果について論文を執筆中である,以下に,それぞれの成果について詳しく述べる.Jubanらは最近,Cr^<III>(acac)_3錯体が光照射後の緩和過程において,^4T_<2g>状態から^2E_g状態への超高速項間交差(100fs以内)をおこしていることを報告した.この項間交差は^4T_<2g>状態内での振動緩和と競合するとされ,旧来のKasha則等の知見と矛盾する.本研究では,量子化学計算と電子状態遷移をふくめた量子動力学シミュレーションにより,この原因を検討した.その結果,Franck-Condon領域とポテンシャルエネルギー面の交差点がきわめて近いことが,速い項間交差をおこした原因と分かった.くわえて,Franck-Condon領域における励起状態の擬縮退が超高速項間交差に重要であることも明らかにした.この結果は,金属錯体に特有の擬縮退性の考慮が,緩和機構の解明に不可欠であることを示唆している.以上の成果を国際学会で発表し,ポスター賞を受賞した.CS_2吸着による高スピン状態から低スピン状態へのスピン転移の機構について,エントロピーの観点から検討をおこなった.強いCS_2吸着にともなう配位子回転の抑制が,高スピン状態と低スピン状態の間のエントロピー差を小さくし,その結果,低スピン状態を安定化させている可能性があることを明らかにした.スピン転移の機構をエントロピー差との関連で理論的に研究した,数少ない研究である.分子が二つのスピン状態(低スピン,高スピン)間を互いに遷移するスピン転移は,分子メモリーや分子センサー等への応用が期待され,古くから研究されてきた.しかし,この現象は,多岐にわたる過程をへて,きわめて短い時間で起こるために,今日でも理解が十分でない点が多い.本研究では,この複雑な現象の機構解明を目的に,分子の電子状態がスピン転移の過程にどのような影響をあたえるかを理論的に調べた.1.多孔性Fe(II)Pt(II)錯体のゲスト誘起スピン転移大場らは,分子を吸着するとスピン転移がおこり,磁性や色が変化する多孔性錯体(多くの空孔をもつ化合物)を,近年,見いだした.この現象は,光や熱,圧力などが引き起こす従来のスピン転移とまったく違うタイプの現象として注目をあつめている.この化合物では,ほとんどの分子の吸着が低スピン状態から高スピン状態への転移を一方的にひきおこすなかで,二硫化炭素が逆方向の転移を特異的にひきおこすことが分かっている.本研究では,この特異な転移の機構を,錯体と吸着分子の相互作用エネルギーから検討した.二硫化炭素は分子サイズが小さいにも関わらず,吸着エネルギーが大きいことが明らかになった.このことは,二硫化炭素が強く錯体に吸着されると同時に,錯体骨格のゆらぎを止め,特異的な転移をおこしたことを示唆している.2.鉄ピコリルアミン錯体の光誘起スピン転移光誘起スピン転移は,光照射によって低スピン,高スピン状態間で転移する現象であり,その機構は中間スピン状態とよばれる,ほかの状態を経由しておこることが知られている.本研究では,機構の理解に重要とされてきたが,詳細な研究がなされてこなかったこの中間スピン状態に注目し,エネルギー面の相対的関係から,その機構を理解する指針を示した.遷移金属錯体が複数のスピン状態間を遷移するスピン転移は,分子メモリー等への応用が期待され,古くから研究されてきた.しかし,この現象は,競合する多数の過程をへて,きわめて短い時間でおこるため,今日でも理解の不十分な点が多い.本研究課題の目的は,遷移金属錯体のスピン転移(あるいは電子状態遷移)のメカニズムを理論的に明らかにすることである.本年度は,光吸収によりスピン転移をおこす錯体として有名な[Fe^<II>(pic)_3]^<2+>錯体をとりあげ,電子状態,ポテンシャルエネルギー面の相対関係,光吸収エネルギーの観点から,スピン転移の要因を明らかにした.さらに,スピン転移をおこさないとされる類似の鉄(III)錯体についても同様の検討をおこない,[Fe^<II>(pic)_3]^<2+>錯体の結果と比較することで,スピン転移を示さない理由を明らかにした.上述の研究では,有機化合物で一般に成立するKasha則とよばれるモデルに基づいて,議論をすすめてきた.しかし,複数の電子状態のポテンシャルエネルギー面が近接した遷移金属錯体のような系では,このモデルが破綻しえると指摘されている.そこで,現在,このモデルの破綻が実験的に示唆されているCr^<III>(acac)_3錯体をとりあげ,動力学的観点から電子状態遷移の機構を解明する研究にとりくんでいる.目下,スピン転移をふくめた核波動関数の時間発展をとり扱うプログラムを開発中である.次年度においては,動力学的観点からの研究を推し進めてゆく予定である.
KAKENHI-PROJECT-08J08230
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08J08230
遷移金属錯体およびその集合体の電子状態転移に関する理論的研究
これにより,ポテンシャルエネルギー面などの静的な物理量のみからは明らかにできない,詳細なメカニズム解明をおこなう.近年,さまざまな摂動(光照射,ゲスト分子吸着など)が異なる電子状態間の遷移を誘起する現象に注目が集まっており,単分子メモリー等への応用面のみならず,その機構と支配因子の解明に力が注がれている.本年度は,動力学と熱力学の観点から二件の理論的研究をおこない,その成果について論文を執筆中である,以下に,それぞれの成果について詳しく述べる.Jubanらは最近,Cr^<III>(acac)_3錯体が光照射後の緩和過程において,^4T_<2g>状態から^2E_g状態への超高速項間交差(100fs以内)をおこしていることを報告した.この項間交差は^4T_<2g>状態内での振動緩和と競合するとされ,旧来のKasha則等の知見と矛盾する.本研究では,量子化学計算と電子状態遷移をふくめた量子動力学シミュレーションにより,この原因を検討した.その結果,Franck-Condon領域とポテンシャルエネルギー面の交差点がきわめて近いことが,速い項間交差をおこした原因と分かった.くわえて,Franck-Condon領域における励起状態の擬縮退が超高速項間交差に重要であることも明らかにした.この結果は,金属錯体に特有の擬縮退性の考慮が,緩和機構の解明に不可欠であることを示唆している.以上の成果を国際学会で発表し,ポスター賞を受賞した.CS_2吸着による高スピン状態から低スピン状態へのスピン転移の機構について,エントロピーの観点から検討をおこなった.強いCS_2吸着にともなう配位子回転の抑制が,高スピン状態と低スピン状態の間のエントロピー差を小さくし,その結果,低スピン状態を安定化させている可能性があることを明らかにした.スピン転移の機構をエントロピー差との関連で理論的に研究した,数少ない研究である.
KAKENHI-PROJECT-08J08230
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08J08230
聴覚障害者のテレコミュニケーションに関する調査研究
聴覚障害者のテレ・コミュニケーション(遠隔通信)は、聴覚が障害されていることから、通常の電話によるものは困難である。そこで、聴覚障害者のテレ・コミュニケーション用の機器が開発され、その種類は数多くある。本研究では、聴覚障害者のテレ・コミュニケーションの現状を調べ、その活用のためのプログラムの構築を目的とした。その結果、以下のようなことが結論として出された。〇テレ・コミュニケーション機器の選択及び活用は、各個人の聴覚の障害の程度によるものではなく、コミュニケーション手段(手話、補聴器、読話)によって決定される。〇多くの聴覚障害者は、聴覚が障害されていることから、音声を増幅する聴覚障害者用電話を活用するだけでなく、FAX等の視覚的表示によるものを併用するもしくは使い分ける傾向がみられた。〇さらに、FAX等の視覚的表示のものについては、通常の電話機のように、同時にお互いの通信が困難なことから、視覚的表示を用いたものについても同時に通信できる機器の開発を希望する傾向がみられた。〇多種多様なテレ・コミュニケーション機器における聴覚障害者のための活用方法が明確でなく、これらの機器に関する情報が聴覚障害者に伝わってないことがみられ、テレ・コミュニケーション機器の活用方法について整理し、明確にすることが課題として出された。これらのことに留意し、各個人のテレ・コミュニケーションの評価、機器の適用、機器活用の指導を中心に機器活用プログラムの構築を行った。聴覚障害者のテレ・コミュニケーション(遠隔通信)は、聴覚が障害されていることから、通常の電話によるものは困難である。そこで、聴覚障害者のテレ・コミュニケーション用の機器が開発され、その種類は数多くある。本研究では、聴覚障害者のテレ・コミュニケーションの現状を調べ、その活用のためのプログラムの構築を目的とした。その結果、以下のようなことが結論として出された。〇テレ・コミュニケーション機器の選択及び活用は、各個人の聴覚の障害の程度によるものではなく、コミュニケーション手段(手話、補聴器、読話)によって決定される。〇多くの聴覚障害者は、聴覚が障害されていることから、音声を増幅する聴覚障害者用電話を活用するだけでなく、FAX等の視覚的表示によるものを併用するもしくは使い分ける傾向がみられた。〇さらに、FAX等の視覚的表示のものについては、通常の電話機のように、同時にお互いの通信が困難なことから、視覚的表示を用いたものについても同時に通信できる機器の開発を希望する傾向がみられた。〇多種多様なテレ・コミュニケーション機器における聴覚障害者のための活用方法が明確でなく、これらの機器に関する情報が聴覚障害者に伝わってないことがみられ、テレ・コミュニケーション機器の活用方法について整理し、明確にすることが課題として出された。これらのことに留意し、各個人のテレ・コミュニケーションの評価、機器の適用、機器活用の指導を中心に機器活用プログラムの構築を行った。
KAKENHI-PROJECT-07710206
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07710206
中空型生物酸化接蝕担体の浄化機能評価に関する研究
この研究の目的は、汚水の生物処理における処理機能を格段に向上させる可能性がある接触担体のあるべき姿や設計要因を明確にするため、第1に接触酸化生物処理用に市販されている担体の材料・形状による微生物の付着性・増殖性の差異を評価し、第2に接触微生物膜の増殖特性並びに低減特性を、生物膜厚さと基質低減速度から解析し、第3に増殖微生物群の低減化機構の明確化(原生動物の役割・嫌気性分解作用など)を視覚的に捉えて定量化し、必要担体量や形状に関する合理的な設計基準の作成に寄与することを目指した。第1点については、基礎実験を実施し、別添報告書のごとく、7種類の担体について流動性、単位表面積あたりの付着微生物量を定量評価し、成果を論文にまとめ、審査中である。第2点については、実験装置による人工下水を用いた実験で、汚泥の増殖速度、担体からの剥離速度、自己分解速度並びに浮遊性汚泥の増減の挙動などについて、これら因子の相互関連を解析するため、微生物量を蛋白質量で定量把握し、摂取速度をCOD変化量として把握した。それぞれの機能を具体的な数値で表示し、シミュレーションで相互因子間の関連を明確とした。これら成果を論文としてまとめ、審査中である。第3点については、最終報告書に記載のごとく、付着生物が増殖する担体の顕微鏡写真を撮り、接触担体上に生育し、活性のある汚泥の脱水素酵素活性を計測するための染色法を活用した。活性のある汚泥の存在場所の特定かつ存在量を定量化する努力を試み、ランダムに付着する汚泥量の定量化手法の開発を進めた。これらにより、生物接触担体のあるべき姿や付着微生物量を定量化するための基礎技術を開発出来たものと思う。この研究の目的は、汚水の生物処理における処理機能を格段に向上させる可能性がある接触担体のあるべき姿や設計要因を明確にするため、第1に接触酸化生物処理用に市販されている担体の材料・形状による微生物の付着性・増殖性の差異を評価し、第2に接触微生物膜の増殖特性並びに低減特性を、生物膜厚さと基質低減速度から解析し、第3に増殖微生物群の低減化機構の明確化(原生動物の役割・嫌気性分解作用など)を視覚的に捉えて定量化し、必要担体量や形状に関する合理的な設計基準の作成に寄与することを目指した。第1点については、基礎実験を実施し、別添報告書のごとく、7種類の担体について流動性、単位表面積あたりの付着微生物量を定量評価し、成果を論文にまとめ、審査中である。第2点については、実験装置による人工下水を用いた実験で、汚泥の増殖速度、担体からの剥離速度、自己分解速度並びに浮遊性汚泥の増減の挙動などについて、これら因子の相互関連を解析するため、微生物量を蛋白質量で定量把握し、摂取速度をCOD変化量として把握した。それぞれの機能を具体的な数値で表示し、シミュレーションで相互因子間の関連を明確とした。これら成果を論文としてまとめ、審査中である。第3点については、最終報告書に記載のごとく、付着生物が増殖する担体の顕微鏡写真を撮り、接触担体上に生育し、活性のある汚泥の脱水素酵素活性を計測するための染色法を活用した。活性のある汚泥の存在場所の特定かつ存在量を定量化する努力を試み、ランダムに付着する汚泥量の定量化手法の開発を進めた。これらにより、生物接触担体のあるべき姿や付着微生物量を定量化するための基礎技術を開発出来たものと思う。生物接触酸化処理法で利用される接触担体の設計指針ならびに利用方法の規格についてはまとまった指針が示されていない。経験的に水体積の何%投入といった値が用いられている。本年は担体機能を微生物の増殖特性と担体の流動特性とから把握するための解析・定量手法の開発に主眼を置いた。そこで、実施設の処理過程で利用されている中空型担体を施設設計業者から譲り受け、さらに流動特性向上を目的とした新アイディアを加味した新型担体の製造を依頼し、作成した。これらを用いて担体表面への微生物生育特性並びに剥離特性を把握する基礎実験を実施した。基礎実験では、人工下水を用い、回転攪拌フラン器を用いたビーカーテストを繰り返し実施し、生物の繁茂状況や繁茂した微生物群による基質分解特性、並びに酸素消費特性を把握し、経時的な付着微生物量の変化を定量化する手法の開発を試みた。さらに、担体からの付着微生物群の剥離速度乗数を定義してその値を求め、微生物の増殖と剥離の関係を具体的な数値として定量化することを試みた。他方では、旋回流動する流体中で、微生物担体としてもっとも生物活動が効果的に発露する形状や担体表面積などを求めるため、20リットルの旋回流動槽2基を作成し、上記2種類と他に市販浮遊担体4種類を入手して、その中で旋回流動させ、個々の流動特性(特に回転頻度や角度分布)を計測し、担体形状による流動特性を評価した。一方で、購入した高精度クイックマイクロスコープを用いて、人工下水による生物培養実験での担体表面での生物増殖状況を確認し、別途購入したソフトエアーを活用して顕微鏡映像をコンピュータに取り込み、経日的に繁茂する状況をデータとして残すことを試みた。次年度は、担体上の微生物膜厚と担体の適正形状とについて実験的検討を試みる。この研究の目的は、汚水の生物処理における機能を格段に向上させるために利用される接触担体のあるべき姿、あるいは設計要因を明確にするため、第1に接触酸化生物処理用
KAKENHI-PROJECT-16560486
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16560486