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川崎病発症に関与するトールライクレセプターファミリーの解析と治寮への応用 | サイトカインの検討では、sCD14、TNF-α、HGFはいずれもTTが高い傾向にあり、VEGFについては、TTが有意に高値でした。以上より、TTは、川崎病の重症化あるいは、冠動脈病変発症、後遺症の残存との関連性が示唆されました。昨年度に報告したように、CD14遺伝子プロモーターの遺伝子多型が川崎病冠動脈病変の発症に関与しているが、CD14のみではLPSの細胞内へのシグナル伝達は行われず、そのシグナル伝達にはTLRファミリーが関与している。そこで、LPSシグナルのより下流のレセプターであるTLR4とTLR2の遺伝子多型を検討した。川崎病50例、対照50例のそれぞれの既知の部位での遺伝子多型を検討したが、いずれも同部における多型そのものを指摘できず、本邦においては報告されている既知の多型についてはあてはまらない。次に、急性期川崎病血液中の単球におけるTRL4とTRL2の発現量をフローサイトメトリーにて解析した。いずれも単球における発現はみられるが、他の熱性疾患との間に有意差はなかった。更に、川崎病急性期血液中のBリンパ球においてTLRファミリーであるRP105の発現量をフローサイトメトリーにて解析した。急性期においては、RP105の発現は、他のCRP強陽性患者より有意に高値であり、回復期においてはその発現性は低下してくる。このRP105を介するシグナル伝達については、現在のところ詳細な機能は分かっていない。このRP105の実験結果は現在投稿中である。 | KAKENHI-PROJECT-15591116 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15591116 |
神楽による地域人材育成と地域の再生:新しい経営学「地域資源開発経営学」の構築 | 多くの地方では、神楽など伝統的芸能・祭りは衰退傾向にある。しかし、広島では神楽は、大隆盛している。そこで、広島の神楽がなぜ盛んであるか研究調査した。その理由の第一は、広島神楽では、神楽の舞台、演出、衣装、舞、調子(音楽のテンポ)が、旧舞(旧式神楽)と異なり新しくなったことである。これらは、神楽におけるイノベーションである。そして、神楽団間のイノベーションの相互取り入れが促進されたことである。第二に、神楽の公演は都市の劇場でのコンテストとなることが多くなったことである。これにより、神楽団の競争が強まった。平成24年に、日本地域資源開発経営学会を創設し、H25年6月には中部部会を開き、7月広島で第2回全国大会を開催した。本研究は、広島神楽を中心として研究者が能動的に、地域の人々や高校生、地域の諸組織に働きかけ、研究と教育および研究成果を活用し地域の自立的発展をはかる場(地域文化アカデミー)を作り、地域が継承してきた知(地域知)を生かした研究を行い、その活動自体を、地域資源の開発、地域の活性化につなげようとするもので、新しいタイプの能動的アクションリサーチ(AAR)の方法の確立とAARによる研究成果、その実践による地域活性化への貢献を目指したものである。研究成果は、日本地域資源学会の中部部会と第2回全国大会の場で、市民に公開して発表した。広島神楽を中心に、出雲、石見の神楽と関わりあいながら、神楽のイノベーションが地域の特性と関わって、伝統文化軽視から尊重への意識変化の中で行われたことを明らかにし、地域資源開発経営学の基礎理論構築の試みをした(赤岡功)。この時、自動車企業のイノベーション、顧客獲得の戦略論研究から得られた知見(平野)を踏まえた。また、YOSAKOIソーランという新しい祭りが生まれ隆盛した要因に大学と商店街・企業・行政の力の結集のあり方を示す研究(濱田)、中学生・高校生など次世代の伝統芸能を担う者のモチベーション(赤岡美津子)、および研究協力者による韓国を中心とする伝統芸能の影響を考察し(高崎)、東アジアと日本各地の地域伝統芸能の特質の形成と地域の人々の生活の関係を広くとらえる理論枠組みの構築に向けた考察を行った。これらから、伝統的地域芸能および新しい地域芸能や祭りについて、その継承・変容・発展と地域の地誌的条件の関係と、地域の文化特性の形成、それによる地域芸能・祭りの発展について、仮設が得られ,地域資源開発経営学構築の予備的考察が行えた。神楽など祭りによる地域人材育成と地域の再生を調査研究し、それを基礎に新しい経営学「地域資源開発経営学」の構築を目指して、研究を行ってきた。H24年に「日本地域資源開発経営学会」を創設し全国大会を開き、H25年7月広島で第2回全国大会を、H26年7月に愛知県東海市(知多半島)の星城大学で第3回全国大会を開催した。いずれも、市民公開として、神楽(広島)、山車祭り(知多)の現役の活動団体の代表者による講演、研究者による研究報告を行って、日常の学会活動も、全国大会もアクションリサーチの場としてきた。科研費に基づく調査研究であることが、神楽関係者の誇りともなり、その効果もあって、広島では、神楽がさらに活発になり従来と異なり遠く山間部に行かなくても広島市内の中心部で夜神楽が毎週楽しめるまでになり、広島神楽の更なる隆盛と若者を含む神楽の担い手の増加、モチベーション向上になり、本研究の実践的目的は達成されはじめている。こうした成果の一部は、第3回全国大会で発表されている。そして、全国大会および支部研究会において、愛知・知多では近年さらに盛んになってきているからくり山車祭りの担い手の参加によるアクションリサーチを展開している。理論的には、からくりの歴史風土と、自動織機、機械しかけの工夫の関係、そして、現代における自動車産業や機械産業における「からくり改善展」の関係がしだいに明らかになってきており、地域資源開発経営学の構築にむけて着実にすすんでいる。広島での神楽や、愛知・知多で盛んなからくり山車祭りなどを、「地域の資源」ととらえ、そのさらなる発展を期するなかで、地域人材の育成と地域の発展をはかるために、新しい経営学「地域資源開発経営学」の構築を行うことをめざし、研究調査を行ってきた。この目標を効果的に達成するため、全国学会として「地域資源開発経営学会」を組織し、広島市で2回と愛知県東海市で1回、全国大会を開催してきた。そのなかで、広島の神楽は、伝統的神楽から、新しい神楽が生まれ、それが既存伝統神楽の変革を促すなど、神楽団間の相互作用、相互革新のなかで、イノベーションが行われ、広く市民や行政、高校、大学を含めた交流、協力のなかで、地域の「ひとづくり」「まちづくり」に資していることが明らかになった。そして、神楽に加えて愛知・知多のからくり山車祭りの研究が行われて、「からくり」への関心が、産業界の活動と相互作用して、地域全体のイノベーション志向の強さにつながり、産業発展に大きく貢献していることがわかってきた。愛知県の工業出荷額は、47都道府県中で、第2位の神奈川県と3位の大阪府の出荷額の合計よりも大きいという、抜群のものづくり力をもたらしているとみられる。強い革新志向は、工業だけではなく、農業においても、品種開発など新製品だけでなく、新生産方法、新市場開拓等広くみられる。また、革新の担い手に、商業高校等、高校がみられることも注目される。 | KAKENHI-PROJECT-25590080 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25590080 |
神楽による地域人材育成と地域の再生:新しい経営学「地域資源開発経営学」の構築 | こうした成果を踏まえ、アンケートとインタビューを行い、地域資源開発経営学の構築を行うことができるとみられ、広島など、各地の「ひとづくり」、「まちづくり」に生かすことにより、各地の「豊かな社会」実現に接近できる。本年度は、研究代表者の怪我により42日間入院加療の為、研究調査に大きな支障が生じた。広島での神楽や愛知のからくり山車祭り等を、「地域の資源」ととらえ、そのさらなる開発を図るなかで、地域人材の育成と地域の発展をはかるため、新しい経営学「地域資源開発経営学」の構築をめざし、全国学会「地域資源開発経営学会」を組織し、2015年までに広島で2回、愛知県東海市で全国大会を開催してきた。そのなかで、地域資源であるはずの多くの伝統的祭りや伝統芸能が沈滞するなかで、広島の神楽は隆盛してきているが、それは、神楽団間の1競争と2イノベーションによることが明らかになった。さらに、神楽団間の競争を促進する場の設定があり、それにより、神楽の舞台、演出、舞、調子、衣装、化粧、小道具にわたる多くの面で、イノベーションの相互促進が、全体としての広島神楽の隆盛を支えていることが明らかになってきたので、それを、交互的イノベーションと名付けて、交互的イノベーションが行われる要因、阻害要因を考えてきた。他方、愛知の山車祭りが盛んなのは、愛知の「からくり好き」文化が基底にあり、全国47都道府県のなかで、工業出荷額が、第二位の神奈川県、第三位の大阪府の合計よりも9兆円も多いという抜群の工業だけでなく、農業でも、漁業でも、サービス業でもイノベーション志向が強いことによることがわかった。特に、愛知のイノベーションの特徴的なことは、異質とみられるモノ、コト、発想の、大胆な新結合が多いことである。このようなイノベーション志向が強いのは、1経済的利得獲得意欲が旺盛であること、2経済的利得獲得は、運営・行動における通常の合理化、効率化だけでなく、イノベーションが有効であることを、愛知の人々は相当古くから理解する機会に恵まれてきたことによると考えられる。多くの地方では、神楽など伝統的芸能・祭りは衰退傾向にある。しかし、広島では神楽は、大隆盛している。そこで、広島の神楽がなぜ盛んであるか研究調査した。その理由の第一は、広島神楽では、神楽の舞台、演出、衣装、舞、調子(音楽のテンポ)が、旧舞(旧式神楽)と異なり新しくなったことである。これらは、神楽におけるイノベーションである。そして、神楽団間のイノベーションの相互取り入れが促進されたことである。第二に、神楽の公演は都市の劇場でのコンテストとなることが多くなったことである。これにより、神楽団の競争が強まった。地域資源開発経営学の理論的枠組みは明らかになってきており、H26年7月の日本地域資源開発経営学会でその一端は報告した。全国学会はすでに創設して、全国大会を今年3回目を開催するほか、広島支部のほか中部支部も支部研究会を開催しており、その場で、神楽や祭りの担い手と議論するようになっており、これが調査研究の発展を強化している。また、広島神楽の新たな発展にも、本科学研究費研究が一定の役割を果たしている。今後、からくり山車祭りとの関係を大きく発展させるための能動的アクションリサーチを展開しようとしているが、この点ではまだ試行段階である。今後、アンケート調査、インタビューを通じて発展を図る計画である。地域資源開発経営学について、既存の学会で報告し、その構築をすすめる。 | KAKENHI-PROJECT-25590080 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25590080 |
均質化問題と分数冪時間微分を持つ方程式の粘性解理論 | 本年度は主に以下の2つの研究を行い結果を得た。1.カプトーの時間微分項を持つ方程式(ただし空間微分は整数階)を扱った。従来の粘性解のアイデアに従えば自然に一般化解を定義できる。しかし、従来の一意性の証明に抜本的な見直しが必要であるものの昨年度の研究ではこの解決には至らなかったため、この解の概念が適切なものであるかどうかは未解明であった。一方、カプトー微分そのものではなくそれを変形した同値なものを用いても新たに一般化解を定義することができる。これは昨年度導入した適切な粘性解である。本研究では、これら2つの概念が同じであることを証明した。このおかげで前者の解の概念に対する適切性の問題が解消されたことに加え、これまでの存在性の証明も簡易になり理論が随分整理された。2.空間2階微分項が階数1未満のカプトー空間微分の一階微分で置き換えられた1次元熱方程式(非整数階熱方程式と呼ぶ)を初期境界条件の下で考察した。この方程式の固有関数は特殊関数で表されるため、任意に与えられた初期境界条件に対するフーリエの方法による解法は単純でない。同様の理由から通常の熱方程式の熱核に相当するものも特殊関数で表される。そのため、方程式の素朴さに反して通常の熱方程式で考えられるような一般化解を見つけることは容易ではなく、これまで解の存在に関連する研究はなかった。本研究では、粘性解理論に基づく解法を試み時間非整数階の方程式に対して確立した粘性解の理論が非整数解熱方程式にも適用可能であることを発見した。すなわち、粘性解の拡張概念を導入し一意存在性および安定性などの基本的な諸性質を証明した。通常の熱方程式と同様に平滑化作用が期待できることもわかったが、まだ証明の完了には至っていない。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。本年度は,カプトーの意味での非整数階時間微分(以下,カプトーの時間微分)を持つ完全非線形偏微分方程式,特にハミルトン・ヤコビ方程式と退化楕円型作用素を主要部に持つ方程式に対して粘性解の枠組みでの適切性について研究した.空間の非局所性を除けば,同様の方程式に対する(粘性)解はすでに別の研究者によって与えられている.しかし,適切性が議論されていないため,その解の定義の妥当性や適切性は不明瞭のままであった.本年度はそれらを明らかにした.以下はその概要である.粘性解を定義する基本的なアイデアは,未知関数と試験関数の差を考え,最大値原理を介して未知関数の微分を試験関数に担わせることである.すでに知られているカプトーの(時間)微分に対する最大値原理と空間方向への古典的な最大値原理を適用することである一般化された弱解の概念が得られる.しかし,この解の概念に対しては一意性の証明に回避困難な問題が生じる.解の定義を改めるために時間方向には最大値原理の代わりにカプトーの時間微分自身の部分積分を適用する.新たに未知関数の微分に依らない式が導かれ,別の一般化された弱解の概念が得られる.この解の概念はすでに知られている粘性解のものと一致することがすぐにわかるが,新たに適切であることを示した.基本的な証明の流れは整数階の場合と同様である.すなわち,一意性のために比較定理を示し,存在性はペロンの方法に基づいて示す.これにより連続な一意解が得られる.1階の方程式にしか確かめられていないが,この解は時間について"時間微分の階数"次ヘルダー連続,空間についてリプシッツ連続であることも示した.安定性については,古典的なものの類似の他に,時間微分の階数を連続的に変えた時に解は局所一様の位相で連続的に変化するという主張を得た.なお,以上の結果は線形の方程式にも適用可能である.当初の計画では,カプトーの非整数階時間微分をもつハミルトン・ヤコビ方程式に対する粘性解理論構築を目指していた.実際には,ハミルトン・ヤコビ方程式だけでなく退化楕円型作用素を持つ方程式についても同様に解を定義し適切性,すなわち,連続な一意解の存在とある安定性を確立することができた.応用上重要視されているカプトーの時間微分の一般化に,有限個のカプトー微分の線形結合として表される多項カプトー時間微分がある.得られた全ての結果は定数係数の多項カプトー時間微分に置き換えても成立する.以上のことから,研究は当初の計画以上に進展していると判断する.本年度は主に以下の2つの研究を行い結果を得た。1.カプトーの時間微分項を持つ方程式(ただし空間微分は整数階)を扱った。従来の粘性解のアイデアに従えば自然に一般化解を定義できる。しかし、従来の一意性の証明に抜本的な見直しが必要であるものの昨年度の研究ではこの解決には至らなかったため、この解の概念が適切なものであるかどうかは未解明であった。一方、カプトー微分そのものではなくそれを変形した同値なものを用いても新たに一般化解を定義することができる。これは昨年度導入した適切な粘性解である。本研究では、これら2つの概念が同じであることを証明した。このおかげで前者の解の概念に対する適切性の問題が解消されたことに加え、これまでの存在性の証明も簡易になり理論が随分整理された。2.空間2階微分項が階数1未満のカプトー空間微分の一階微分で置き換えられた | KAKENHI-PROJECT-16J03422 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J03422 |
均質化問題と分数冪時間微分を持つ方程式の粘性解理論 | 1次元熱方程式(非整数階熱方程式と呼ぶ)を初期境界条件の下で考察した。この方程式の固有関数は特殊関数で表されるため、任意に与えられた初期境界条件に対するフーリエの方法による解法は単純でない。同様の理由から通常の熱方程式の熱核に相当するものも特殊関数で表される。そのため、方程式の素朴さに反して通常の熱方程式で考えられるような一般化解を見つけることは容易ではなく、これまで解の存在に関連する研究はなかった。本研究では、粘性解理論に基づく解法を試み時間非整数階の方程式に対して確立した粘性解の理論が非整数解熱方程式にも適用可能であることを発見した。すなわち、粘性解の拡張概念を導入し一意存在性および安定性などの基本的な諸性質を証明した。通常の熱方程式と同様に平滑化作用が期待できることもわかったが、まだ証明の完了には至っていない。現状では適切性以外には解の特徴などは何もわかっていない.例えば解の表現公式や長時間挙動,均質化などは整数階の場合には技術が豊かであり結果もよく知られているが,非整数階微分に対する技術がまだ未発達であるために同様の論法が使えない場面が往々にしてあり,いずれも結果は得られていない.解の性質を知ることは今後の大きな課題になってくると思われる.本研究で得られた解と別の意味の弱解との関連性を探ることも考えたい.異常拡散方程式(線形かつ発散型)は非常に広範な分野で注目されており,数学的にも研究が盛んに行われている.これに対してはすでに超関数の意味での弱解が導入されているため,我々の解との関係性を明らかにする.得られた解の概念の適用範囲を広げることも重要である.例えば,整数階の場合にはステファン問題のような自由境界値問題においても粘性解理論が確立されている.カプトーの時間微分をもつステファン問題も現実に考えられるという報告があるため,理論の拡張を行なっていきたい.29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-16J03422 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J03422 |
食餌とホルモンによるタンパク質合成制御の分子機構の解析 | 動物のタンパク質代謝は、主に食餌とホルモンによって巧妙に調節されている。栄養価の高いタンパク質を十分摂取した場合やインスリンが十分作用する場合などは、動物が食餌のタンパク質をよく同化するが、グルココルチコイドの分泌の多い場合などは、タンパク質代謝は異化に傾くことが知られている。これらの条件下で、組織でのタンパク質代謝がどのような影響を受けるかを明らかにしようとしたのが本研究である。筆者らは、すでに動物がタンパク質同化の状態にあるか異化の状態にあるかを、血中のインスリン様成長因子-I(以下IGF-I)の濃度がよく反映すること、また、例外的に反映しない場合でも、インスリン様成長因子結合タンパク質(以下IGFBP)の濃度の変化を考慮すると、動物のタンパク質代謝の状態をよく把握できることを示してきた。特に、IGFBP-1とよばれるタンパク質は、動物のタンパク質代謝が異化に傾いた場合に著しく血中濃度が上昇することを示した。本研究の成果のもつとも重要な点は、タンパク質代謝が異化に傾いた場合の、このIGFBP-1の血中濃度の上昇の分子機構を明らかにしたことにある。この濃度上昇は、主に肝臓におけるIGFBP-1遺伝子の転写の亢進によって説明できるが、本研究で、この転写亢進に関与すると考えられる遺伝子の5'上流領域を特定し、そこへの、HNF-3、USF等の結合が、転写亢進に重要であることを証明した。この結果、および関連した成果により、動物のタンパク質代謝が異化に傾いた場合の動物の内分泌状態の変化を、分子レベルで説明することが可能となった。動物のタンパク質代謝は、主に食餌とホルモンによって巧妙に調節されている。栄養価の高いタンパク質を十分摂取した場合やインスリンが十分作用する場合などは、動物が食餌のタンパク質をよく同化するが、グルココルチコイドの分泌の多い場合などは、タンパク質代謝は異化に傾くことが知られている。これらの条件下で、組織でのタンパク質代謝がどのような影響を受けるかを明らかにしようとしたのが本研究である。筆者らは、すでに動物がタンパク質同化の状態にあるか異化の状態にあるかを、血中のインスリン様成長因子-I(以下IGF-I)の濃度がよく反映すること、また、例外的に反映しない場合でも、インスリン様成長因子結合タンパク質(以下IGFBP)の濃度の変化を考慮すると、動物のタンパク質代謝の状態をよく把握できることを示してきた。特に、IGFBP-1とよばれるタンパク質は、動物のタンパク質代謝が異化に傾いた場合に著しく血中濃度が上昇することを示した。本研究の成果のもつとも重要な点は、タンパク質代謝が異化に傾いた場合の、このIGFBP-1の血中濃度の上昇の分子機構を明らかにしたことにある。この濃度上昇は、主に肝臓におけるIGFBP-1遺伝子の転写の亢進によって説明できるが、本研究で、この転写亢進に関与すると考えられる遺伝子の5'上流領域を特定し、そこへの、HNF-3、USF等の結合が、転写亢進に重要であることを証明した。この結果、および関連した成果により、動物のタンパク質代謝が異化に傾いた場合の動物の内分泌状態の変化を、分子レベルで説明することが可能となった。動物のタンパク質合成の制御は、転写段階と翻訳段階に分けて考えることができる。本研究では、それぞれの段階でどのような制御が行われているかについて、タンパク質合成・分解が大きな影響を受ける条件において解析した。翻訳段階については、翻訳開始因子の活性制御が主たる機構であると考えられている。なかでも、eIF-4Eとよばれる因子は、mRNAと結合し、翻訳開始複合体を形成する上で重要な因子で、この因子には特異的に結合するeIF-4E結合タンパク質(以下4EBPとする)とよばれる因子があり、この4EBPはリン酸化されるとeIF-4Eとの結合活性を失い、翻訳開始が促進されるとされている。本研究でも、組織のタンパク質合成が抑制される条件下、例えば実験的糖尿病、タンパク質欠乏状態、絶食状態などで、4EBPとeIF-4Eとの結合量が増加し、翻訳活性が抑制される可能性が高いことを証明している。さらに、このような条件下ではeIF-4Eや4EBPのmRNA量に変動がないかを、肝臓および骨格筋で解析し、eIF-4Eについては、そのmRNA量は比較的安定しているのに対して、4EBPのmRNA量は実験的糖尿病、タンパク質欠乏状態、絶食状態などで顕著に増加することを証明した。一方、転写段階での調節に関しては、やはり上述のような組織のタンパク質合成活性が抑制される条件下でmRNA量が顕著に増加してくるインスリン様成長因子結合タンパク質-1(以下IGFBP-1)に注目し、このタンパク質のmRNAが、食事のタンパク質欠乏に応答して増加してくる機構を解析した。その結果、IGFBP-1遺伝子の5'上流領域に、食事タンパク質に応答して特別の転写調節因子が結合することを証明する事に成功した。現在、この結果について、論文を作製中で、さらにその因子の同定に精力を注いでいる。昨年度の報告で、動物のタンパク質代謝に重要な役割を果たすホルモンであるインスリン様成長因子-I(以下IGF-I)と、このホルモンの活性を制御する因子の一つであるインスリン様成長因子結合タンパク質-1(以下IGFBP-1)の遺伝子発現を、食餌とホルモンがどのように制御するかについて、その分子機構の解析を進め、IGFBP-1遺伝子の転写開始点の5'-上流領域に、食餌のアミノ酸に応答して遺伝子転写を調節する領域(以下Amino Acid Responsive Element,AAREと略)を同定したことを報告した。 | KAKENHI-PROJECT-10460056 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10460056 |
食餌とホルモンによるタンパク質合成制御の分子機構の解析 | 本年度は、この領域に結合する因子、すなわち転写調節因子と考えられるタンパク質が、この領域にどのように結合するのか、またその因子はどのようなタンパク質であるのか、について解析を行った。AAREの塩基配列をもつプローブ(AAREプローブ)を調製し、標識した。また、タンパク質栄養状態のよいラットとタンパク質欠乏状態のラットの肝臓の核からタンパク質を抽出し、AAREプローブとの結合状態をgel mobility shift assay法により解析した。その結果、タンパク質欠乏ラットから得た核抽出液中には、AAREプローブに特徴的に結合するタンパク質が存在することを発見した。このタンパク質は、結合する塩基配列の特徴および抗体との反応性から判断して、未知のタンパク質であると考えらた。以上の結果は、栄養条件が悪くなると、肝臓の核ではIGFBP-1遺伝子の転写を制御する転写調節因子の合成、もしくは活性化が起こり、その結果IGFBP-1の転写が促進されて、その合成が亢進し、血中のIGFBP-1濃度が上昇して、それがIGF-Iの活性を抑制して体タンパク質の合成が低下する、という一つの機構があることを意味している。昨年度までの報告で、動物のタンパク質代謝におけるインスリン様成長因子-I(IGF-I)の重要性を証明し、またIGFに特異的に結合するIGF結合タンパク質(IGFBPs)の生理的意義を明らかにしてきた。特に、IGFBP-1は、タンパク質栄養状態が悪くなった場合に、血中濃度が著しく上昇し、また肝臓のこのタンパク質のmRNA量が顕著に増加するタンパク質であることを証明してきた。さらに、このmRNA量の増加の分子機構を解析し、このタンパク質の遺伝子の5'上流領域に、いくつかのタンパク質が結合して、遺伝子発現を調節する領域があることを発見した。本年度の研究の成果で、特に重要なものは、まずこの領域に結合するタンパク質の一つがhepatocytenuclear factor-3(HFN-3)であることを証明し、かつこのタンパク質のうち、特にHNF-3γのIGFBP-1遺伝子の5'上流領域の特定部位への結合が、タンパク質栄養状態が悪くなると顕著に増加することを証明することができたことである。そのほか、IGFBP-1の遺伝子発現に及ぼす食餌タンパク質の栄養価の影響を検討した結果、無タンパク質食では、このタンパク質の遺伝子のmRNA量が顕著上昇するのに対して、必須アミノ酸欠乏条件では、著しい上昇が認められないこと、すなわち、IGFBP-1遺伝子の転写の上昇には、複数の必須アミノ酸が欠乏する必要があることが証明された。さらに、ウズラの発達過程での、生殖器官におけるIGF-IのmRNA量の変化を追跡し、発達の過程で特徴的な発現制御が行われていることを証明した。以上のように、本年度の研究によって、動物のタンパク質代謝において、IGF-I、およびIGFBPsは、極めて重要な役割をしていること、栄養条件は、分子のレベルで生体の機能に大きな影響をおよぼすことが、明確に証明されたといえる。 | KAKENHI-PROJECT-10460056 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10460056 |
脳疾患における新しい脳神経機能画像診断法の開発‐脳血管障害・痴呆疾患の早期診断法 | 高齢化社会を迎えるにあたり、脳卒中・痴呆症は本邦において国民病であり、その早急な治療法・予防法の確立が求められている。脳卒中や痴呆性疾患患者において非侵襲的脳血流定量診断法の開発をおこなった。^<99m>Tc製剤が静脈投与後、パルスとして脳組織に流入する特性に着目し、スペクトル解析等の数理的手法を新たに脳血流測定法に導入し、採血を必要としない脳血流定量法を開発した。H_2^<15>O-Positron Emission Tomography (PET)装置での脳血流絶対値と比較検討し、脳血流Single Photon Emission Computed Tomography (SPECT)検査にてPET装置に近い脳血流定量測定がおこなえることを証明した。本研究により高額なPET装置がない一般病院でも、脳血流SPECT検査により脳血流絶対値の測定が安価におこなうことが可能となった。本研究は国内外の関連学会にて発表をおこなった。しかしながら、脳虚血時における神経細胞の障害や、脳組織の代謝応答など生体内分子レベルでの病態解明はいまだ充分になされていない。英国ケンブリッジ大学医学部との共同研究により、ラット脳虚血モデルを用い、非侵襲的生体内分子イメージング法を開発に取り組んだ。低酸素トレーサである^<18>F-fluoromisonidazoleを静脈投与し、小動物専用Micro PETを用いてラット生体での脳内分子画像開発を行った。従来の脳血流トレーサ製剤と比べ、この放射性薬剤を用いた脳機能画像は、より脳内酸素濃度分布に応じて特異的に神経細胞内に取り込まれる。本方法は虚血部位をより感度の高く検出できるイメージング法である可能性が示された。テクネシウム製剤とSPECT検査を用い、脳神経疾患において脳機能画像を作成し、統計学的解析、一般汎用型ソフトウエアの開発をおこなった。多発性脳梗塞による脳血管性痴呆は本邦においてはアルツハイマー病と並んで、痴呆の代表的疾患である。脳血管性痴呆と診断した患者群にTc-99m hexamethyl propyleneamine oximeを投与し、最大放射性カウントに対する閾値を設定し、設定した閾値以上の放射能をもつ画素を計算する。閾値の値を変えて、フラクタル次元として算出した。健常人と比べ、脳血管性痴呆患者では有意差を認めた。このことから、非侵襲的画像検査である本法から脳血管性痴呆が診断可能となった(Journal of Nuclear Medicines誌,Journal of Neurology誌発表)。脳血管性痴呆患者では、特に前頭葉の脳血流不均一性が顕著であることを発見した(American Journal Neuroradiology誌発表)。健常人の指先巧緻運動時の脳血流不均一性についても解析をおこない、新しい知見が得られた(Journal of Cerebral Blood Flow and Metabolism誌発表)。多発性脳梗塞患者の脳血流定量性の方法を開発し、臨床応用した。心臓から総頚動脈を介し、脳組織に流入する血流を、テクネシウム製剤ではその特性からパルス入力であると仮定し、スペクトル解析を導入し、脳血流定量的測定法を開発し、再現性について検討した(Annals of Nuclear Medicine誌発表)。今後、一般病院での非侵襲的簡便脳機能測定法の臨床導入へ向けてソフトウエアの更なる改良を目指している。高齢化社会を迎えるにあたり、脳卒中・痴呆症は本邦において国民病であり、その早急な治療法・予防法の確立が求められている。脳卒中や痴呆性疾患患者において非侵襲的脳血流定量診断法の開発をおこなった。^<99m>Tc製剤が静脈投与後、パルスとして脳組織に流入する特性に着目し、スペクトル解析等の数理的手法を新たに脳血流測定法に導入し、採血を必要としない脳血流定量法を開発した。H_2^<15>O-Positron Emission Tomography (PET)装置での脳血流絶対値と比較検討し、脳血流Single Photon Emission Computed Tomography (SPECT)検査にてPET装置に近い脳血流定量測定がおこなえることを証明した。本研究により高額なPET装置がない一般病院でも、脳血流SPECT検査により脳血流絶対値の測定が安価におこなうことが可能となった。本研究は国内外の関連学会にて発表をおこなった。しかしながら、脳虚血時における神経細胞の障害や、脳組織の代謝応答など生体内分子レベルでの病態解明はいまだ充分になされていない。英国ケンブリッジ大学医学部との共同研究により、ラット脳虚血モデルを用い、非侵襲的生体内分子イメージング法を開発に取り組んだ。低酸素トレーサである^<18>F-fluoromisonidazoleを静脈投与し、小動物専用Micro PETを用いてラット生体での脳内分子画像開発を行った。従来の脳血流トレーサ製剤と比べ、この放射性薬剤を用いた脳機能画像は、より脳内酸素濃度分布に応じて特異的に神経細胞内に取り込まれる。本方法は虚血部位をより感度の高く検出できるイメージング法である可能性が示された。 | KAKENHI-PROJECT-03J04186 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03J04186 |
多環芳香族炭化水素類(PAH)-DNA付加体を指標とするPAH曝露評価法の開発 | 多環芳香族炭化水素(PAH)のなかで特に強い発がん作用を有するBenzo[a]pyrene(BaP)に着目し、BaPが代謝活性化されて生成する発がん作用の本体であるBaP-DNA付加体を生体指標(バイオマーカー)として用いるために、BaP-DNA付加体の高速液体クロマトグラフ-タンデム質量分析計(LC-MS/MS)を用いた新しい高感度分析法の開発を試みた。DNA付加体関連物質としてdG-BPDE、及びdG-BPDEを加水分解して得られるBaP tetrolをBaP-DNA付加体の分析対象化合物としてLC-MS/MSの条件検討を行った。分子量関連イオンをプリカーサーイオンとしてdG-BPDEのMS/MSスペクトルを得たところ、グアニン残基が脱離したイオンが観察され、このイオンを効率よく生成させるように、移動相条件、電圧等を最適化した。これに順じてBaP tetrolのLC-MS/MS条件を最適化するとともに、蛍光検出HPLCによる分析法も確立した。確立した分析法を培養細胞にBaPを暴露して得られたDNAに適用したところ、発がん作用の本体として知られる代謝生成物のanti-BPDEに由来するBaP-DNA付加体をBaP tetrolとして検出することができた。細胞のBaP処理24時間後からBPDE-DNA付加体が観察され、処理時間に依存して付加体量の増加が見られた。続いてDNA付加体を利用したヒトの曝露評価を行うためのバイオマーカーの開発を行った。被験者への負担(侵襲性)の観点から尿中のBaP-DNA付加体関連物質をバイオマーカー候補として、DNA付加体を加水分解して得られる尿中tetrolの検出を試みたが、前処理法の回収率の低さなどの改善の余地が残った。変異原性の比較的高いベンゾ[a]ピレン(BaP)を選択し、血液試料から白血球を分離し、DNAを抽出し酵素分解して3'-モノヌクレオチドを取り出し、さらに濃縮操作を経て得られる10-(deoxyguanosin-N^2-yl)-7,8,9-trihydroxy-7,8,9,10-tetrahydrobenzo[a]pyrene(dG-BPDE)をBaP-DNA付加体の分析対象化合物としてLC-MS/MSの条件検討を行った。分子量関連イオンをプリカーサーイオンとしてMS/MSスペクトルを得たところ、グアニン残基が脱離したイオンが観察され、このイオンを効率よく生成させるように、移動相条件、電圧等を最適化した。次に、試料を得るまでの試料の前処理法を確立するため、培養細胞を用いて条件検討を行った。ディッシュ10枚程度に細胞を播種し、24時間培養後BaPを添加した。培養後細胞を回収し、遠心して得られたペレットに含まれる2×10^7個の細胞を用いて抽出キットを用いたDNA抽出を行ってDNAを得た。DNA中のBaP付加体の測定には、操作が簡便で比較的高濃度試料の定量に適した蛍光検出-HPLC法を用いた。上述のように細胞から抽出したDNAに塩酸濃度が0.1Mとなるように加え、90°Cで4時間加熱して酸加水分解反応を行った。その後1M水酸化ナトリウム溶液で中和してHPLC用サンプルとし、生成したBaP-テトロールを測定した。その結果、発がん作用の本体として知られる代謝生成物のanti-BPDEに由来するテトロールを検出することができた。細胞のBaP処理24時間後からBPDE-DNA付加体が観察され、処理時間に依存して付加体量の増加が見られた。従って、ヒトの血液サンプルに確立した前処理法を適用し、LC-MS/MSを用いて高感度・高選択的にdG-BPDEを検出することが次年度の課題となる。多環芳香族炭化水素(PAH)のなかで特に強い発がん作用を有するBenzo[a]pyrene(BaP)に着目し、BaPが代謝活性化されて生成する発がん作用の本体であるBaP-DNA付加体を生体指標(バイオマーカー)として用いるために、BaP-DNA付加体の高速液体クロマトグラフ-タンデム質量分析計(LC-MS/MS)を用いた新しい高感度分析法の開発を試みた。DNA付加体関連物質としてdG-BPDE、及びdG-BPDEを加水分解して得られるBaP tetrolをBaP-DNA付加体の分析対象化合物としてLC-MS/MSの条件検討を行った。分子量関連イオンをプリカーサーイオンとしてdG-BPDEのMS/MSスペクトルを得たところ、グアニン残基が脱離したイオンが観察され、このイオンを効率よく生成させるように、移動相条件、電圧等を最適化した。これに順じてBaP tetrolのLC-MS/MS条件を最適化するとともに、蛍光検出HPLCによる分析法も確立した。確立した分析法を培養細胞にBaPを暴露して得られたDNAに適用したところ、発がん作用の本体として知られる代謝生成物のanti-BPDEに由来するBaP-DNA付加体をBaP tetrolとして検出することができた。細胞のBaP処理24時間後からBPDE-DNA付加体が観察され、処理時間に依存して付加体量の増加が見られた。続いてDNA付加体を利用したヒトの曝露評価を行うためのバイオマーカーの開発を行った。被験者への負担(侵襲性)の観点から尿中のBaP-DNA付加体関連物質をバイオマーカー候補として、DNA付加体を加水分解して得られる尿中tetrolの検出を試みたが、前処理法の回収率の低さなどの改善の余地が残った。 | KAKENHI-PROJECT-17659036 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17659036 |
酵素反応中に見られる感応性化学種の振動分光法による捕捉と精密構造解析 | インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(以下、IDOと記す)は、ヒトでは肝臓以外に分布するヘムタンパク質であり、トリプトファンに分子状酸素由来の酸素原子2個を添加してN-フォルミルキヌレニンを生成する。この反応はヒトにおけるトリプトファンの主要代謝経路の最初の反応である。Fe-O2型およびFe=O型反応中間体が検出されており、O原子は1個ずつ2回トリプトファンに添加されると考えられているが、反応の詳細は不明である。本研究では、IDOに基質として結合したトリプトファンの電子状態やコンフォマーを詳しく調べることにより、反応メカニズムの理解を深めることが目的である。この目的のため、IDOに深紫外共鳴ラマン分光法を適用した。本法では、ラマン散乱を励起するレーザー光の波長として220250 nmを用いることにより、芳香族アミノ酸であるトリプトファンの振動スペクトルを選択的に検出可能である。基質として結合したトリプトファンと溶液中のトリプトファンおよびIDO中のトリプトファンを区別するため、同位体標識トリプトファンを添加したときのスペクトルも測定し、解析した。その結果、IDOに基質として結合した1個のトリプトファンの振動スペクトルを抽出することに成功した。上述の測定を1.フリーのトリプトファン、2.基質ありIDOおよび3.シアン結合型基質ありIDOの3つの分子種について行った。3はIDOーO2ー基質三者複合体のモデルである。スペクトルの解析結果からトリプトファンのχ2, 1二面角は1、2、3の分子種についてそれぞれ+98°、ー40°、ー34°と見積もられた。三者複合体モデルにおける基質トリプトファンの特異なコンフォマーが酸素添加反応に重要であることが示唆された。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。ヒトインドールアミン2, 3-ジオキシゲナーゼ(IDO)は、分子量約45 kDaのヘムタンパク質で、肝臓以外に存在する。トリプトファン(Trp)に分子状酸素由来の2個の酸素原子を添加してN-フォルミルキヌレニンを生成する反応を触媒するTrp代謝経路の鍵酵素である。Trpの代謝産物と免疫や癌、白内障などとの関係が指摘されており、化学や分光学の研究者のみならず医学や薬理学の研究者からも注目されている。IDOの反応機構を解明するための第一歩は立体構造を決定することであるが、阻害剤である4-フェニルイミダゾール結合型の分解能2.3オングストロームの結晶構造が報告されており、ヘム近傍の立体構造は反応機構の研究に有益な情報を与えた。また、共鳴ラマン分光法により、Fe3+型やFe2+型、Fe2+-CO型等の静的状態に加えてFe3+-O2-型、Trp-Fe3+-O2-型およびFe4+=O2-型反応中間体のヘム配位構造が詳しく調べられた。本研究の目的はヘムの側鎖置換基やν(Fe-His)(鉄-ヒスチジン伸縮振動モード)をいくつかの状態について調べて、それをもとに反応機構について議論を深めることである。本研究では酸化型IDOのヘムにいくつかの配位子を結合させたときの側鎖ビニル基やプロピオン酸基のコンフォメーション変化に由来するラマン線の変化が観測された。さらに、還元型IDOのν(Fe-His)は233 cm-1に観測されたが、このものにTrpが結合すると236 cm-1に3 cm-1だけ高波数シフトを示した。このことはTrpの結合により近位ヒスチジンからFeへの電子供与が増大することを意味する。IDOの反応サイクルにおいてはまずFe3+-O2-型が生成し、次にTrpが結合して三者複合体が生成する。以上のことから反応サイクル中でFe3+-O2-が生成したときに比べて、Trpが結合するとFeへの電子供与が増大してO-Oを切れやすくする、という反応性の微調整機構が存在することがわかった。インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(以下、IDOと記す)は、ヒトでは肝臓以外に分布するヘムタンパク質であり、トリプトファンに分子状酸素由来の酸素原子2個を添加してN-フォルミルキヌレニンを生成する。この反応はヒトにおけるトリプトファンの主要代謝経路の最初の反応である。Fe-O2型およびFe=O型反応中間体が検出されており、O原子は1個ずつ2回トリプトファンに添加されると考えられているが、反応の詳細は不明である。本研究では、IDOに基質として結合したトリプトファンの電子状態やコンフォマーを詳しく調べることにより、反応メカニズムの理解を深めることが目的である。この目的のため、IDOに深紫外共鳴ラマン分光法を適用した。本法では、ラマン散乱を励起するレーザー光の波長として220250 nmを用いることにより、芳香族アミノ酸であるトリプトファンの振動スペクトルを選択的に検出可能である。基質として結合したトリプトファンと溶液中のトリプトファンおよびIDO中のトリプトファンを区別するため、同位体標識トリプトファンを添加したときのスペクトルも測定し、解析した。その結果、IDOに基質として結合した1個のトリプトファンの振動スペクトルを抽出することに成功した。上述の測定を1.フリーのトリプトファン、2.基質ありIDOおよび3.シアン結合型基質ありIDOの3つの分子種について行った。3はIDOーO2ー基質三者複合体のモデルである。スペクトルの解析結果からトリプトファンのχ2, 1二面角は1、2、3の分子種についてそれぞれ+ | KAKENHI-PUBLICLY-25109540 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-25109540 |
酵素反応中に見られる感応性化学種の振動分光法による捕捉と精密構造解析 | 98°、ー40°、ー34°と見積もられた。三者複合体モデルにおける基質トリプトファンの特異なコンフォマーが酸素添加反応に重要であることが示唆された。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。平成25年度の研究計画では、酸化型インドールアミン2, 3-ジオキシゲナーゼ(IDO)の4-フェニルイミダゾール、イミダゾール、CN-等の配位子が結合したヘムの共鳴ラマンスペクトルを測定すること、次に還元型IDOとそのTrp結合型を測定すること、としており計画通り測定した。その結果をもとに、配位子や基質であるTrpの結合に伴うヘム側鎖置換基のコンフォメーションおよびFe-His結合の変化を検出した。特に還元型IDOについてFe-His伸縮振動数を変化からTrp結合に伴いHisからFeへの電子供与が増大することがわかった。このことはTrpの結合によりヘムの反応性が微調整されることを意味する。以上のように新知見を得た。IDOにおいてO2分子に由来する2個の酸素原子が1個ずつ基質に取り込まれる反応のしくみを明らかにするため、反応中間体における基質の構造に注目して研究する。励起波長を200250 nmとして紫外共鳴ラマン分光法によりIDOに結合した基質の反応中間種の構造を選択的に調べる。寿命の短い反応中間種の構造を決定することは振動分光法によってのみ可能である。得られた結果をもとにFe3+-O2-ヘムやFe4+=Oが酸素添加反応を触媒するメカニズムを明らかにする。 | KAKENHI-PUBLICLY-25109540 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-25109540 |
ジルコニア材料の経時的劣化現象と陶材接着力との関係 | ジルコニアは,審美修復治療に用いられる材料の一つとなってきた.この課題の一つとしてジルコニアと陶材の破折があげられる.本研究は,ジルコニア表面が作製されてからの経時的変化により陶材との接着力が変化するかどうかの検証を行った.さらに,ジルコニアに対し紫外線領域の光を照射することで,ジルコニアと陶材の接着力に影響を及ぼすか検討を行った.ジルコニア表面は時間依存的に経過することで炭素量が増加した.紫外線領域の光をジルコニア表面に照射することで,炭素量を減少させ陶材との接着力の増加につながった.ジルコニアは,審美修復治療に用いられる材料の一つとなってきた.この課題の一つとしてジルコニアと陶材の破折があげられる.本研究は,ジルコニア表面が作製されてからの経時的変化により陶材との接着力が変化するかどうかの検証を行った.さらに,ジルコニアに対し紫外線領域の光を照射することで,ジルコニアと陶材の接着力に影響を及ぼすか検討を行った.ジルコニア表面は時間依存的に経過することで炭素量が増加した.紫外線領域の光をジルコニア表面に照射することで,炭素量を減少させ陶材との接着力の増加につながった.審美修復材料としてジルコニアが使用されるようになってきたが,ジルコニア自体の材料特性の理解は十分とは言えない.代表的なものにジルコニアと陶材とは化学的接着力が無い,もしくは少ないと考えられているが,そのメカニズムは不明である.本研究では,ジルコニアの材料的特性を理解する一貫としてジルコニア表面が作製されてからの経時的変化と,この現象により陶材との接着力が変化するかどうかの検証を行うことを目的とし,研究を行っている.ジリルコニア試料を用意し,表面を加工してからの時間経過を管理し,保管を行った.表面加工直後新鮮面から表面加工後4週間経過後までの間,表面形状,表面性状に違いが生ずるか検討を行ったところ,表面粗さは,時間が経過しても有意な変化は認められなかったが.表面の濡れ性および表面元素の構成には変化が認められた.表面の濡れ性は,加工直後の新鮮面では,超親水性を示したのに対し,加工後3日を経過した時点から疎水性傾向となり,時間とともに疎水性へとした.これに伴い,表面の元素分析を行ったところ.炭素の付着増加が観察された.これらの表面に陶材を築盛し,破断試験を行ったところ,表面加工後4週経過した面上での陶材の接着力は,表面加工直後に築盛した接着力と比較し,有意な減少を示すことが確認された.ジルコニアと陶材との接着力は,ジルコニア表面加工後の時間経過と負の相関を持つことが確認された.また,ジルコニアとセメントとの接着力も同様の傾向を示し,表面加工後時間経過とともに接着力は減少することが確認された.ジルコニア材料の使用は,審美修復治療に用いられる材料の一つとなってきた.現在まで,材料の機械的強度や適合性などの検討が行われているが,ジルコニア自体の材料特性の理解は十分とは言えない.代表的なものにジルコニアと陶材とは化学的接着力が無い,もしくは少ないと考えられている.本研究は,ジルコニアの材料的特性を理解する一貫として,ジルコニア表面が作製されてからの経時的変化と,この現象により陶材との接着力が変化するかどうか検証を行うことを目的とした.我々は,ジルコニアの表面が作製直後から時間依存的に疎水性になっていることを確認した.さらに表面の時間依存的な濡れ性の変化に対し,陶材との接着力は減少していることを確認した.ジルコニアを化学周期表から見てみると,同族にはチタンが存在しているため,化学的性質がチタンと似ていると言われている。チタンは,光触媒効果を有する材料と知られているためジルコニアにも同様の効果があると我々は推測している.ジルコニア表面は,通常疎水性傾向を示すが,表面に紫外線を照射した場合、親水性に変化させることが出来,少なからず光触媒様効果が認められるとの報告がなされているこれより,時間依存的に疎水性に変化したジルコニア表面を紫外線領域の光を照射することにより表面の改質を行うことができるかどうか検証を行うことを目的とした.疎水性になったジルコニアに対し紫外線領域の光を照射することで,疎水性表面を超親水性に回復させることができ,さらに陶材との接着力の増加につながった,これよりジルコニアと陶材の接着力増加の手段として紫外線領域の光の照射が有効であることが示唆された. | KAKENHI-PROJECT-22791910 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22791910 |
粒状体の流動性を利用したダンパ振動減衰特性に関する実験的研究 | 本研究では粘性ダンパの一種であるオイルダンパの作動流体の代わり,もしくはヒステリシスダンパの一種である押出型鉛ダンパの鉛の代わりに,粒状体を用いた構造を有するダンパ(以下「粒状体ダンパ」と記す)へ,定常的な正弦状の強制変位を与えた場合に発生する減衰力を実験的に調べた.その結果,粒状体ダンパの減衰力は,変位と共に増大する漸硬型特性を有することがわかった.この特性は一般的に広く使われているオイルダンパや摩擦ダンパの特性と異なることから,本ダンパを振動系に組み込んだ場合の制振特性も独特なものになることが予測できる.また粒状体ダンパに充填する粒状体のサイズや充填率を変えた場合,粒状体ダンパの減衰力発生パターンは,前述した漸硬型特性を維持したままで変化することが確認された.さらに粒状体に磁性材料を用い,外部から磁場を印加することによっても,減衰力発生パターンは変化することが確認された.この場合も同様に,漸硬特性は維持された状態にあった.これらのことは,粒状体ダンパの減衰特性は比較的簡単に調整することが可能であり,さらに充填する粒状体に磁性材料を用い,それに磁場を印加することにより,粒状体ダンパをセミアクティブダンパとして用いることができる可能性を示していると考えられる.粒状体ダンパはその構造から様々な利点が考えられるにもかかわらず,その特性は不明であったが,本研究によりその一部を明らかにすることができた.この結果は粒状体ダンパを制振システムに用いることの有意性を明らかにする上で,意義あるものと考えられる.本研究では粘性ダンパの一種であるオイルダンパの作動流体の代わり,もしくはヒステリシスダンパの一種である押出型鉛ダンパの鉛の代わりに,粒状体を用いた構造を有するダンパ(以下「粒状体ダンパ」と記す)へ,定常的な正弦状の強制変位を与えた場合に発生する減衰力を実験的に調べた.その結果,粒状体ダンパの減衰力は,変位と共に増大する漸硬型特性を有することがわかった.この特性は一般的に広く使われているオイルダンパや摩擦ダンパの特性と異なることから,本ダンパを振動系に組み込んだ場合の制振特性も独特なものになることが予測できる.また粒状体ダンパに充填する粒状体のサイズや充填率を変えた場合,粒状体ダンパの減衰力発生パターンは,前述した漸硬型特性を維持したままで変化することが確認された.さらに粒状体に磁性材料を用い,外部から磁場を印加することによっても,減衰力発生パターンは変化することが確認された.この場合も同様に,漸硬特性は維持された状態にあった.これらのことは,粒状体ダンパの減衰特性は比較的簡単に調整することが可能であり,さらに充填する粒状体に磁性材料を用い,それに磁場を印加することにより,粒状体ダンパをセミアクティブダンパとして用いることができる可能性を示していると考えられる.粒状体ダンパはその構造から様々な利点が考えられるにもかかわらず,その特性は不明であったが,本研究によりその一部を明らかにすることができた.この結果は粒状体ダンパを制振システムに用いることの有意性を明らかにする上で,意義あるものと考えられる. | KAKENHI-PROJECT-21919025 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21919025 |
鰓弓形成を司るシグナル調節因子とエピジェネティック制御機構の解明 | 顎顔面の形態形成においてエンドセリン-1(ET-1)/ETA受容体シグナルは上顎・下顎の領域決定を支配する。鰓弓においてはDlx5/6の発現とDlx5/6遺伝子座に含まれるnon-coding RNAであるEvf2の発現はET-1に依存し、Evf2はさらにDlx5/6遺伝子の発現を負に制御する。一方、Dlx5/6遺伝子間領域のmI56エンハンサー活性は、Dlx5/6自身によって正の制御を受ける。これらの結果から、ET-1/ETARシグナルによるDlx5/6の発現誘導は、一部にはEvf2やmI56エンハンサーを介した正負のフィードバックループを介している可能性が示された。顎顔面の形態形成においてエンドセリン-1(ET-1)/ETA受容体シグナルは上顎・下顎の領域決定を支配する。鰓弓においてはDlx5/6の発現とDlx5/6遺伝子座に含まれるnon-coding RNAであるEvf2の発現はET-1に依存し、Evf2はさらにDlx5/6遺伝子の発現を負に制御する。一方、Dlx5/6遺伝子間領域のmI56エンハンサー活性は、Dlx5/6自身によって正の制御を受ける。これらの結果から、ET-1/ETARシグナルによるDlx5/6の発現誘導は、一部にはEvf2やmI56エンハンサーを介した正負のフィードバックループを介している可能性が示された。我々は今まで、エンドセリン-1(ET-1)/エンドセリンA受容体(ETAR)のシグナルが、形態形成においては神経堤細胞由来組織の形成、特に下顎のアイデンティティーを決定することをノックアウトマウスを用いて証明してきた。また、Cre-変異loxを用いた。Recombinase mediated cassette exchange(RMCE)によるノックインの系を構築し、ETAR遺伝子座にETARcDNAを入れると完全に表現型がrescueされるが、エンドセリンB受容体cDNAでは一部のみしかrescueされず、inVitroでの知見とは違い生体内ではA受容体とB受容体は互換性がなく、下顎ではGq/11を介したシグナルが使われていることを示してきた。(Development135:755-765,2008)さらにET-1の誘導で上顎を下顎に変換させること示した(PNAS105:18806,2008)。下顎において、ET-1シグナルの下流に位置するmI56iエンハンサー領域、evf2遺伝子へのシグナル伝達機序を明らかにするために、この領域における各種核転写因子の作用と認識配列を明らかにした。さらにエピジェネティック修飾の一つとしてDNAメチル化を評価したところ、胎仔肢芽、尾、ES細胞では30%60%メチル化されており、鯉弓では野生型もホモ接合体もほぼ脱メチル化していたことより、胎生10.5日の鯉弓ではこの領域の染色体は転写促進の方向にあることが示唆された。また現在、RMCEによりETARプロモーター下にDlx5,Dlx6,evf2等をノックインしたマウスの作成に成功し、ホモ接合体の解析を始めたところである。我々はエンドセリン-1(ET-1)が下顎領域特性を決定する因子であることを示してきたが、その分子メカニズムの解明は、細胞レベルから形態形成にいたる分子機構のモデルとして位置づけられる。本研究では、最近樹立したETARノックインシステムや初期胚のメチル化維持機構の研究で培ったエピジェネティックスの研究基盤・解析手法を用いて、鰓弓形成を制御するET-1からホメオボックス遺伝子Dlx5/6に至るシグナル伝達機構とニピジェネティック制御機構を解明することを目的とした。Dlx5/Dlx6のエンハンサー領域:mI56iは、Dlx5/6の発現のない尾、ES細胞においてはメチル化されているが、Dlx5/6の発現のある鰓弓では完全に脱メチル化され、発現のある肢芽も不完全ながら脱メチル化されていた。ホモ接合体の鰓弓では肢芽とともに脱メチル化されていた。mI56iのトランスジェニックマウスのmI56iトランスジーンでも正常、ホモで同様の結果が得られた。そこで、いくつかのヒストン修飾を検討したが、正常、ホモで明らかな差は見られなかった。これらより鰓弓においてはDlx5/6の発現のないETARホモ接合体であっても既にクロマチンはオープンの状態であり、転写活性化因子の結合等による違いが大きいと考えられた。次にmI56iに結合する分子を検討したところ、Dlx2の発現は正常とホモで大差なく、Evf2はホモで著減した。in vitroでのEvf2、Dlx6のプロモーター/エンハンサーアッセイの結果と、in vivoでのETARKO、Dlx5/6KO、mI56i-LacZ Tgマウスの各種掛け合わせの結果、さらにETAR遺伝子座へのEvf2またはDlx5,Dlx6ノックインマウスの解析から、ET-1/ETAEシグナルはmI56エンハンサーを介してDlx5/6の発現を促進するのみならず、Evf2、Dlx5/6、mI56iの間ではポジティブ/ネガティブフィードバックループを形成していることが示された。 | KAKENHI-PROJECT-20590275 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20590275 |
HSP72相互作用解析に基づいた新規腫瘍マーカースクリーニング法の開発 | 近年、熱ショックタンパク質72(HSP72)が腫瘍特異抗原と結合したまま、細胞外へと放出されることが報告された。そこで、本研究では血中のHSP72と結合するタンパク質を質量分析計にて同定および比較解析することで、多発性骨髄腫のマーカー探索を試みた。2年目の目標は、1年目に確立した血中のHSP72複合体単離法(NHq法)により同定したマーカー候補分子が、多発性骨髄腫のマーカーとして妥当であるか検証することである。1.マーカー候補タンパク質とHSP72の結合確認1年目に同定された4つの候補分子のうち、2分子についてHSP72との結合を確認したところ、マーカーとなり得る分子が全長タンパク質だけではなく、断片化したフラグメントタンパク質である可能性が示唆された。さらに多発性骨髄腫の培養細胞を用いて解析したところ、全長タンパク質は主に細胞内でHSP72と結合しているが、フラグメントタンパク質は細胞内外でHSP72と結合していた。以上より、HSP72に結合するフラグメントタンパク質は腫瘍細胞から積極的に分泌されている可能性がある。2. ELISAによる定量解析および疾患特異性の評価全長タンパク質として検出されたHistone H4の血中濃度をELISA法にて定量し、健常者22例、多発性骨髄腫患者30例、その他血液疾患患者30例において比較解析した。その結果、3群に有意な差は見られず、Histone H4は多発性骨髄腫特異的なマーカーとしては妥当でないことが明らかとなった。また、すべての群において、血清中のHSP72レベルとHistone H4レベルに相関は見られなかった。3.患者検体数を増やした再スクリーニング質量分析による同定精度を高めるために、患者検体数を10例に増やし、マーカー候補分子の再スクリーニングを行った。その結果、10例すべての患者から同定されたタンパク質が3つであった。その中から最も同定精度の高かったTim13について解析を進めている。血中の微量タンパク質の同定法としてNHq法を確立し特許出願に至った。しかし、本手法により同定した多発性骨髄腫マーカー候補分子4つのうち、全長タンパク質として検出した分子は1つであり、その血中レベルは患者と健常者の群間比較において有意差がなかった。同定した多発性骨髄腫マーカー候補分子のうち3分子は断片化しているため、市販のELISAキットによる定量は困難である。そこで、フラグメントタンパク質の抗体を作製し、NHq法を改良したELISAシステムにより候補分子の血中レベルを定量する。また、患者検体数を増やした再スクリーニングにより新たな候補分子を同定し、HSP72との結合を確認している。新候補分子についても血中レベルを定量し、健常者群、その他血液疾患患者群と比較し、多発性骨髄腫のマーカーとして妥当か検討する。近年、熱ショックタンパク質72(HSP72)が腫瘍特異抗原と結合したまま、細胞外へと放出されることが報告された。そこで、本研究では血中のHSP72と結合する分子の中から、多発性骨髄腫腫瘍マーカーを探索することを目的とした。1年目の計画は、HSP72インタラクトーム法を新しいマーカースクリーニング法として確立させることである。1.血中HSP72複合体の単離アルブミンや免疫グロブリンといった血中の夾雑タンパク質の中からHSP72複合体を単離するため、オリジナルの抗HSP72モノクローナル抗体を9種類作製した。これらの抗体を用いたアフィニティービーズを作製することで、血中のHSP72と結合する微量タンパク質を選択的に濃縮した。また本手法は、多段階に及ぶ前処理を必要とせず、精製時間を大幅に短縮(約1時間)することができた。2.患者血清特異的に検出されるタンパク質の同定腫瘍マーカー候補となるタンパク質を探索するために、患者血清特異的に検出されるHSP72結合タンパク質を同定した。多発性骨髄腫患者4例、および健常者4例の血清からHSP72複合体を単離後、SDS-PAGEにて分離、銀染色した。患者と健常者で大きくバンドパターンが異なる30kDa以下のタンパク質をゲルショットガン法にて質量分析計で測定した。比較解析の結果、患者特異的に検出される44のHSP72結合タンパク質を同定した。3.マーカー候補タンパク質の抽出2で患者特異的に同定されたタンパク質が骨髄腫細胞由来であるかを検討するために、骨髄腫細胞株2種、およびその培養上清のHSP72結合タンパク質のプロファイルと比較解析した。その結果、患者血清中に存在し、かつ骨髄腫細胞株または培養上清に発現が確認できた4つのマーカー候補分子を選抜し、多発性骨髄腫腫瘍マーカーとして特許出願に至った。近年、熱ショックタンパク質72(HSP72)が腫瘍特異抗原と結合したまま、細胞外へと放出されることが報告された。そこで、本研究では血中のHSP72と結合するタンパク質を質量分析計にて同定および比較解析することで、多発性骨髄腫のマーカー探索を試みた。2年目の目標は、1年目に確立した血中のHSP72複合体単離法(NHq法)により同定したマーカー候補分子が、多発性骨髄腫のマーカーとして妥当であるか検証することである。1.マーカー候補タンパク質とHSP72の結合確認 | KAKENHI-PROJECT-12J02543 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12J02543 |
HSP72相互作用解析に基づいた新規腫瘍マーカースクリーニング法の開発 | 1年目に同定された4つの候補分子のうち、2分子についてHSP72との結合を確認したところ、マーカーとなり得る分子が全長タンパク質だけではなく、断片化したフラグメントタンパク質である可能性が示唆された。さらに多発性骨髄腫の培養細胞を用いて解析したところ、全長タンパク質は主に細胞内でHSP72と結合しているが、フラグメントタンパク質は細胞内外でHSP72と結合していた。以上より、HSP72に結合するフラグメントタンパク質は腫瘍細胞から積極的に分泌されている可能性がある。2. ELISAによる定量解析および疾患特異性の評価全長タンパク質として検出されたHistone H4の血中濃度をELISA法にて定量し、健常者22例、多発性骨髄腫患者30例、その他血液疾患患者30例において比較解析した。その結果、3群に有意な差は見られず、Histone H4は多発性骨髄腫特異的なマーカーとしては妥当でないことが明らかとなった。また、すべての群において、血清中のHSP72レベルとHistone H4レベルに相関は見られなかった。3.患者検体数を増やした再スクリーニング質量分析による同定精度を高めるために、患者検体数を10例に増やし、マーカー候補分子の再スクリーニングを行った。その結果、10例すべての患者から同定されたタンパク質が3つであった。その中から最も同定精度の高かったTim13について解析を進めている。多発性骨髄腫腫瘍マーカーの候補分子を4つ同定し、特許出願に至った。血中の微量タンパク質の同定法としてNHq法を確立し特許出願に至った。しかし、本手法により同定した多発性骨髄腫マーカー候補分子4つのうち、全長タンパク質として検出した分子は1つであり、その血中レベルは患者と健常者の群間比較において有意差がなかった。2年目の研究は、同定されたマーカー候補分子の確証実験を中心に行い、腫瘍マーカーとしての妥当性を検討する。1.疾患特異性を評価慢性骨髄性白血病など他の血液疾患患者血清に含まれるHSP72結合分子のプロファイルと比較し、マーカー候補4分子が多発性骨髄腫特異的であるかどうかを検討する。2.MRM解析による比較定量評価する多発性骨髄腫患者血清を30例に増やし、マーカー候補4分子を相対定量することで、マーカーとして臨床応用の可能性が高い分子を選抜する。3.ELISAによる候補分子の血中濃度測定マーカー候補4分子に対し、それぞれEHSAキットを作製し、候補分子の血中濃度を測定する。患者30例および健常者20例について定量することで、マーカ7候補分子の腫瘍マーカーとしての妥当性を検証する。同定した多発性骨髄腫マーカー候補分子のうち3分子は断片化しているため、市販のELISAキットによる定量は困難である。そこで、フラグメントタンパク質の抗体を作製し、NHq法を改良したELISAシステムにより候補分子の血中レベルを定量する。また、患者検体数を増やした再スクリーニングにより新たな候補分子を同定し、HSP72との結合を確認している。新候補分子についても血中レベルを定量し、健常者群、その他血液疾患患者群と比較し、多発性骨髄腫のマーカーとして妥当か検討する。 | KAKENHI-PROJECT-12J02543 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12J02543 |
電子線照射法によるレジン系材料への抗菌成分固定化技術の開発 | 平成29年11月8日より産前産後の休暇および育児休業を取得しており、研究は中断している。そのため平成30年度の研究実績はない。産前産後の休暇および育児休業を習得したため研究は中断していたが、補助事業期間の延長申請時の研究計画に則り、次年度からの2年間で予定していた研究を行う予定である。平成29年度に得られた結果に基づいて、本年度は作製したMDPB固定化レジン試料の抗菌効果を検討する。本年度は、濃度の異なるMDPBコート液を調製し、各コート液をレジン試料に塗布して電子線を照射し、MDPBを固定化したコーティングレジン試料を作製した。また、各コーティングレジン試料表面でのMDPBの結合状態を評価した。30%エタノール溶液にMDPBを0、5、10、20、50、80%の濃度で溶解させたMDPBコート液を調製した後、各コート液を直径10 mm、厚さ2 mmのポリメチルメタクリレート(PMMA)ディスク上面に塗布し、コーティングレジン試料を作製した。原子燃料工業株式会社(大阪府泉南郡)所有の電子加速器を用いて、加速電圧10 MeVの電子線を試料上面に照射した後、エタノール水溶液に浸漬して試料に付着したMDPBモノマー、あるいはそのホモポリマーを除去した。電子線照射後のコーティングレジン試料表面でのMDPBの存在を確認するため、エックス線光電子分光装置(XPS)を用いてMDPB由来のN1s/Br3dの検出を行った。その結果、コート液中のMDPBの濃度が高くなるにしたがって、検出されたN1s値が高くなることが分かった。次に、水中浸漬後のレジン表面でのMDPB結合状態を評価するため、電子線照射後のコーティングレジン試料を蒸留水中に浸漬し、溶液中に溶出した未重合MDPB濃度を高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。水中浸漬後2日間は溶液中に未重合のMDPBモノマーが検出されたものの、3日目以降はその溶出が認められなかったことから、電子線照射後のレジン表面に残存した未重合のMDPBを除去するには、エタノール洗浄後3日間の水洗を行う必要があることが分かった。平成29年度の研究実施計画に則り、MDPB固定化レジン試料を作製し、作製したレジン試料表面でのMDPB結合状態を評価して、前述のような結果を得た。ただし、平成29年11月9日から平成31年3月31日の間、産前産後の休暇および育児休業を取得したため、当初の計画からはやや遅れている。しかし、補助事業期間の延長申請を提出し、すでに承認が得られているため、休業取得前までの本研究の進捗は、おおむね順調に進展していると判断できる。平成29年11月8日より産前産後の休暇および育児休業を取得しており、研究は中断している。そのため平成30年度の研究実績はない。産前産後の休暇および育児休業を習得したため研究は中断していたが、補助事業期間の延長申請時の研究計画に則り、次年度からの2年間で予定していた研究を行う予定である。平成29年度に得られた結果に基づいて、作製したMDPB固定化レジン試料の抗菌効果を検討する。上述のように、産前産後の休暇および育児休業の取得に伴い、補助事業期間を延長し、平成31年4月1日から研究を再開する予定である。平成29年度に得られた結果に基づいて、本年度は作製したMDPB固定化レジン試料の抗菌効果を検討する。上述のように、平成29年11月9日から産前産後の休暇および育児休業を取得したため、当初計画していた抗菌試験は実施していない。したがって、抗菌性評価に係る試薬、消耗品はほとんど購入しておらず、次年度使用額が生じた。研究再開予定である平成31年4月1日以降に、それらの培地や試薬を購入する。また、これらの研究遂行に係る消耗品は、上記の研究計画に則り必要性を吟味し効果的に使用する。上述のように、産前産後の休暇および育児休業を取得したため、当初計画していた抗菌試験は実施していない。したがって、抗菌性評価に係る試薬、消耗品はほとんど購入しておらず、次年度使用額が生じた。本年度は、上記の研究計画に則り必要性を吟味し、抗菌試験に係る培地や試薬等を購入する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-17K17128 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K17128 |
広天域・多帯域観測によるCMB偏光Bモードの探索とインフレーション理論の検証 | 今年度着任した時点では、GroundBIRD(GB)望遠鏡の最終評価試験を行なっている最中であったため、今年度前半は望遠鏡の開発に注力した。検出器の性能評価の解析コードの開発やデータ取得の運転に関わるとともに、以下の2つの性能評価を主に行なった。-望遠鏡に設置する光学フィルターの性能測定:東京大学IPMUに設置される光学測定装置を用いてGBの観測帯域を決定するフィルターの性能を評価した。GBではCMB観測のための145GHz帯域と前景放射評価のための220GHz帯域の2種類を同時観測する。それぞれの帯域では、3つのフィルターを組み合わせることで帯域の選別を実現するが、3フィルター全体の透過率を測定し、期待通りの性能が得られることを確認した。-望遠鏡全体の性能評価:望遠鏡系全体の評価のため、GBが設置されていた建物の水銀灯観測を行なった。水銀灯の形を詳細に捉えるため、望遠鏡の回転速度は2RPMに設定し、望遠鏡の仰角を変化させながら水銀灯を観測した時の検出器応答を測定した。望遠鏡仰角をある角度で固定すると1回転(30秒)に一度だけ望遠鏡の視野が水銀灯を通過し、その検出器応答を確認した。さらに、仰角を変化させながら検出器の信号強度を測定することで、望遠鏡から見える水銀灯の大きさを評価した。測定された水銀灯の大きさはおおよそ予想通りの結果を得ることを確認した。今年度後半では、望遠鏡のスペインテネリフェ島への搬送の準備に携わった。特に現地でのインフラ設備の準備、作業場所の使用許可といった業務を現地の研究員や技師と議論しつつ行なった。今年度末には望遠鏡をはじめとしたほとんどの物品の搬送を終了し、来年度から現地での望遠鏡の構築・現地試験を経て、観測所でのファーストライトを達成する見込みである。本年度はGroundBIRD実験の望遠鏡開発が終了していなかったため、今年度前半部では望遠鏡の最終全体性能評価を行なった。冷凍機の組立作業・冷却運転を始めとして、検出器の読み出し回路の最適化やノイズ測定などの幅広いトピックについて評価を進め、当初の予定以上に望遠鏡系の理解を深めることができた。それらの評価を通じて、最終的な望遠鏡系が期待通りの性能を持つことを確認した。今年度後半部では、望遠鏡の到着に先行して観測地に滞在し、望遠鏡のドームインストールの立会いやインフラの設営を中心に現地の研究員やエンジニアと議論を重ねた。電力やネットワークの設備、現地作業の安全管理など多くの問題が存在したものの、今年度中に全て解決の見通しを立てることに成功した。来年度からはいよいよ望遠鏡で空の観測を行い、研究計画に記述する検出器較正やデータ解析の研究に集中できると言える。また、グループを代表して、これらの成果を日本物理学会で報告した他、GroundBIRD実験の進捗を日本全体のCMBミーティングで報告することで幅広い情報の共有も行なっている。望遠鏡搬入が完了したスペイン現地で望遠鏡の現地統合試験を行ったのち、標高2400mの観測サイトへの輸送を行う。月や偏光源となる星の観測を行い、望遠鏡の動作検証・ファーストライトを達成する。並行して検出器各所の詳細なコミッショニングとキャリブレーションを行い、観測に必要な要求感度を達成できるように評価を進めていく。特に、ワイヤーグリッドを用いたキャリブレーションも本年度中に試験運用を行い、CMB偏光観測と同時に偏光応答の較正が可能であることを実証する。本年度後半では、望遠鏡系に由来する系統誤差の評価を行ない、偏光信号を入れないヌルテスト解析によって偏光信号にバイアスがないかを確認する。初の本格的な解析を始めるため、京都大学で大規模データの計算機の構築・解析を行いつつ、Eモードの偏光スペクトルの評価を中心に進めてCMB偏光観測の解析のフレームワークの構築を行う。今年度着任した時点では、GroundBIRD(GB)望遠鏡の最終評価試験を行なっている最中であったため、今年度前半は望遠鏡の開発に注力した。検出器の性能評価の解析コードの開発やデータ取得の運転に関わるとともに、以下の2つの性能評価を主に行なった。-望遠鏡に設置する光学フィルターの性能測定:東京大学IPMUに設置される光学測定装置を用いてGBの観測帯域を決定するフィルターの性能を評価した。GBではCMB観測のための145GHz帯域と前景放射評価のための220GHz帯域の2種類を同時観測する。それぞれの帯域では、3つのフィルターを組み合わせることで帯域の選別を実現するが、3フィルター全体の透過率を測定し、期待通りの性能が得られることを確認した。-望遠鏡全体の性能評価:望遠鏡系全体の評価のため、GBが設置されていた建物の水銀灯観測を行なった。水銀灯の形を詳細に捉えるため、望遠鏡の回転速度は2RPMに設定し、望遠鏡の仰角を変化させながら水銀灯を観測した時の検出器応答を測定した。望遠鏡仰角をある角度で固定すると1回転(30秒)に一度だけ望遠鏡の視野が水銀灯を通過し、その検出器応答を確認した。さらに、仰角を変化させながら検出器の信号強度を測定することで、望遠鏡から見える水銀灯の大きさを評価した。測定された水銀灯の大きさはおおよそ予想通りの結果を得ることを確認した。今年度後半では、望遠鏡のスペインテネリフェ島への搬送の準備に携わった。特に現地でのインフラ設備の準備、作業場所の使用許可といった業務を現地の研究員や技師と議論しつつ行なった。今年度末には望遠鏡をはじめとしたほとんどの物品の搬送を終了し、来年度から現地での望遠鏡の構築・現地試験を経て、観測所でのファーストライトを達成する見込みである。 | KAKENHI-PROJECT-18J01831 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J01831 |
広天域・多帯域観測によるCMB偏光Bモードの探索とインフレーション理論の検証 | 本年度はGroundBIRD実験の望遠鏡開発が終了していなかったため、今年度前半部では望遠鏡の最終全体性能評価を行なった。冷凍機の組立作業・冷却運転を始めとして、検出器の読み出し回路の最適化やノイズ測定などの幅広いトピックについて評価を進め、当初の予定以上に望遠鏡系の理解を深めることができた。それらの評価を通じて、最終的な望遠鏡系が期待通りの性能を持つことを確認した。今年度後半部では、望遠鏡の到着に先行して観測地に滞在し、望遠鏡のドームインストールの立会いやインフラの設営を中心に現地の研究員やエンジニアと議論を重ねた。電力やネットワークの設備、現地作業の安全管理など多くの問題が存在したものの、今年度中に全て解決の見通しを立てることに成功した。来年度からはいよいよ望遠鏡で空の観測を行い、研究計画に記述する検出器較正やデータ解析の研究に集中できると言える。また、グループを代表して、これらの成果を日本物理学会で報告した他、GroundBIRD実験の進捗を日本全体のCMBミーティングで報告することで幅広い情報の共有も行なっている。望遠鏡搬入が完了したスペイン現地で望遠鏡の現地統合試験を行ったのち、標高2400mの観測サイトへの輸送を行う。月や偏光源となる星の観測を行い、望遠鏡の動作検証・ファーストライトを達成する。並行して検出器各所の詳細なコミッショニングとキャリブレーションを行い、観測に必要な要求感度を達成できるように評価を進めていく。特に、ワイヤーグリッドを用いたキャリブレーションも本年度中に試験運用を行い、CMB偏光観測と同時に偏光応答の較正が可能であることを実証する。本年度後半では、望遠鏡系に由来する系統誤差の評価を行ない、偏光信号を入れないヌルテスト解析によって偏光信号にバイアスがないかを確認する。初の本格的な解析を始めるため、京都大学で大規模データの計算機の構築・解析を行いつつ、Eモードの偏光スペクトルの評価を中心に進めてCMB偏光観測の解析のフレームワークの構築を行う。 | KAKENHI-PROJECT-18J01831 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J01831 |
加齢する障害を持つ人々の権利侵害に関する研究 | 平成1819年度において、加齢する障害を持つ人々の権利侵害の実態把握を行うため、4つの独立した調査研究を行った。まず、平成18年度には、第一に知的障害を持つ人々及びその家族2,000名を対象にアンケート調査を行った。その結果、932名から有効回答が得られた(有効回答率46.6%)。第二に、精神障害を持つ人々及びその家族1,450名に対しアンケート調査を行った。その結果、536名から有効回答が得られた(有効回答率36.9%)。平成19年度には、同様に2つの調査研究を実施した。第三に、脳性麻痺を中心とした肢体不自由障害を持つ人々及びその家族1,000名に対しアンケート調査を実施した。その結果、564名から有効回答が得られた(有効回答率56.4%)。第四に、脊髄損傷障害者及びその家族3,300名に対しアンケート調査を行った。その結果、1,013名から有効回答が得られた(有効回答率30.6%)。これら4つの調査研究より、以下の点が明らかになった。第一に、知的障害を持つ人々や脳性麻痺障害を持つ人々は、「学校」において権利侵害を受けた経験が多い。第二に、精神障害を持つ人々に関しては、「職場」において心理的虐待を受けた経験が多い。第三に、脊髄損傷障害を持つ人々に関しては、他の障害種別と比較すると権利侵害を受けた割合が極めて低いことが確認された。本調査研究の限界性及び問題点としては、知的障害や脳性麻痺障害を持つ人々に関しては、障害の特性より家族等が代理記入せざるを得ないケースが多く、その結果、本人以外の意識が混在している可能性が高い点があげられる。平成1819年度において、加齢する障害を持つ人々の権利侵害の実態把握を行うため、4つの独立した調査研究を行った。まず、平成18年度には、第一に知的障害を持つ人々及びその家族2,000名を対象にアンケート調査を行った。その結果、932名から有効回答が得られた(有効回答率46.6%)。第二に、精神障害を持つ人々及びその家族1,450名に対しアンケート調査を行った。その結果、536名から有効回答が得られた(有効回答率36.9%)。平成19年度には、同様に2つの調査研究を実施した。第三に、脳性麻痺を中心とした肢体不自由障害を持つ人々及びその家族1,000名に対しアンケート調査を実施した。その結果、564名から有効回答が得られた(有効回答率56.4%)。第四に、脊髄損傷障害者及びその家族3,300名に対しアンケート調査を行った。その結果、1,013名から有効回答が得られた(有効回答率30.6%)。これら4つの調査研究より、以下の点が明らかになった。第一に、知的障害を持つ人々や脳性麻痺障害を持つ人々は、「学校」において権利侵害を受けた経験が多い。第二に、精神障害を持つ人々に関しては、「職場」において心理的虐待を受けた経験が多い。第三に、脊髄損傷障害を持つ人々に関しては、他の障害種別と比較すると権利侵害を受けた割合が極めて低いことが確認された。本調査研究の限界性及び問題点としては、知的障害や脳性麻痺障害を持つ人々に関しては、障害の特性より家族等が代理記入せざるを得ないケースが多く、その結果、本人以外の意識が混在している可能性が高い点があげられる。平成18年度の研究実績報告としては、以下の点が挙げられる。障害を持つ人々に対する権利侵害について当事者の視点からその実態を把握するため、日本全国の各障害者団体に依頼し承諾の得られた団体を通して、精神障害を持つ人々1,450名、知的障害を持つ人々2,000名、合計3,450名に対して郵送によるアンケート調査を実施した。実施期間は、2007年2月1日3月10日までとした。精神障害を持つ人々に関しては、535名から有効回等が得られた(有効回収率36.9%)。男性368名・女性162名・無回答5名で、平均年齢は42.6歳だった。「あなたはこれまで利用した機関で怒鳴られたことがありますか」という問に対し、「ある」と回答した場所として職場が19.7%、施設が7.1%、病院が8.5%となっていた。「殴られる」等の身体的虐待に関しては、職場が6.0%、施設が1.5%、病院が3.5%となっていた。その他の場所としては、「家庭」が多くあげられていた。「食事を無理やり食べさせられたりしたことがあるか」という問に対し、職場が0.9%、施設が0.8%、病院が5.1%となっていた。知的障害を持つ人々に関しては、929名から有効回答が得られた(有効回収率46.5%)。男性553名・女性372名・無回答4名、平均年齢41.6歳だった。「怒鳴られたことがある」という問に対しては、職場が24.4%、施設が16.5%、病院が5.5%、学校が29.3%となっていた。また「身体的虐待」については、職場が12.2%、施設が14.0%、病院が0.9%、学校が23.9%となっていた。 | KAKENHI-PROJECT-18530449 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18530449 |
加齢する障害を持つ人々の権利侵害に関する研究 | さらに「食事に関する権利侵害」については、職場が3.8%、施設が5.4%、病院が1.7%、学校が10.4%であった。精神障害を持つ人々の権利侵害が「職場」で多いのに対し、知的障害を持つ人々に関しては「学校」が非常に高い割合を占めていた。平成19年度の研究実績報告としては、以下の点が挙げられる。障害を持つ入々に対する権利侵害について当事者の視点からその実態を把握するため、日本全国の各障害者団体に依頼し承諾の得られた団体を通して、肢体不自由障害を持つ人々1,000名、脊髄損傷障害を持つ人々3,300名、合計4,300名に対して郵送によるアンケート調査を実施した。実施期間は、2008年2月1日3月20日までとした。肢体不自由障害を持つ人々に関しては、564名から有効回等が得られた(有効回収率56.4%)。男性319名・女性237名・無回答8名で、平均年齢は30.7歳だった。「あなたはこれまで利用した機関で怒鳴られたことがありますか」という問に対し、「ある」と回答した場所として職場が9.8%、施設が11.3%、病院が3.7%、学校が16.0%となっていた。「殴られる」等の身体的虐待に関しては、職場が3.2%、施設が8.3%、病院が1.6%、学校が11.3%となっていた。「食事を無理やり食べさせられたりしたことがあるか」という問に対し、施設が6.7%、病院が4.1%、学校が5.7%となっていた。脊髄損傷障害を持つ人々に関しては、1013名から有効回答が得られた(有効回収率30.7%)。男性866名・女性142名・無回答5名、平均年齢59.7歳だった。「怒鳴られたことがある」という問に対しては、職場が6.5%、施設が4.4%、病院が7.2%、となっていた。また「身体的虐待」については、職場が1.1%、施設が1.5%、病院が1.7%、となっていた。さらに「食事に関する権利侵害」については、施設が1.1%、病院が2.7%、であった。肢体不自由障害を持つ人々の権利侵害が「学校」における発生が高いのに対し、脊髄損傷障害を持つ人々に関しては権利侵害の発生比率は極めて低かった。 | KAKENHI-PROJECT-18530449 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18530449 |
アーペルの討議理論における虚構的言説の位置加とその射程 | 本研究は、20世紀ドイツのコミュニケーション論を主導した哲学者の一人、カール-オットー・アーペルの討議理論を再検討するものである。アーペルの理論には、コミュニケーションの中でも特に討議を重視する半面、虚構的な言説を軽視する傾向があった。しかし、現代社会では「フェイク」も含めた広義の虚構的言説の影響力は増す一方であるように思われる。そこで本研究は、哲学だけでなく美学および文学理論の動向にも目を配り、アーペルの討議理論の修正・拡張を通じて、芸術と社会の関係を問い直すことを目指す。3年間の研究期間のうち、特に初年度は美学・文芸学の動向の把握に努め、残りの2年間で考察を深め、その成果を発表する。本研究は、20世紀ドイツのコミュニケーション論を主導した哲学者の一人、カール-オットー・アーペルの討議理論を再検討するものである。アーペルの理論には、コミュニケーションの中でも特に討議を重視する半面、虚構的な言説を軽視する傾向があった。しかし、現代社会では「フェイク」も含めた広義の虚構的言説の影響力は増す一方であるように思われる。そこで本研究は、哲学だけでなく美学および文学理論の動向にも目を配り、アーペルの討議理論の修正・拡張を通じて、芸術と社会の関係を問い直すことを目指す。3年間の研究期間のうち、特に初年度は美学・文芸学の動向の把握に努め、残りの2年間で考察を深め、その成果を発表する。 | KAKENHI-PROJECT-19K12923 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K12923 |
高専におけるティーチング・ポートフォリオの普及とメンタリング技能に関する研究 | 「自らの教育活動について振り返り、その自らの記述をエビデンスによって裏付けた厳選された記録」を「ティーチング・ポートフォリオ」という。本研究は、ティーチング・ポートフォリオを高専に普及させるため、書籍を作成し、ワークショップを開催した。結果、作成者や導入機関を増やすことに成功した。また、メンターに必要なスキルについて明らかにし、さらに、ティーチング・ポートフォリオ作成の効果、およびその継続性について検証を行った。平成24年度は本校を会場としてティーチング・ポートフォリオ(TP)作成ワークショップ(WS)を2回(参加者:学内6名、学外12名)、TP作成長期コースを1回(参加者:学内2名)、TP更新WSを2回(参加者:学内4名)、アカデミック・ポートフォリオ(AP)作成WSを2回(参加者:学内1名、学外5名)、スタッフ・ポートフォリオ(SP)作成WSを1回(参加者:学内1名、学外2名)開催した。これによって、大阪府立大学工業高等専門学校では常勤教員76名中45名がTPを作成し、約6割の教員がTPを執筆した高等教育機関となった。また、本校では学外からも作成者を受け入れており、2013年3月末現在、本校でTPを作成した教員は学内外あわせて86名となっている。日本国内におけるTPの作成者は現在約400名と推測されており、日本国全体におけるTPの作成者のうち、2割以上が本校でTPを作成していることになる。本校は「日本におけるTPのメッカ」としての役割を十分果たしている。全国高専教育フォーラム、日本高専学会、日本工学教育協会工学教育研究講演会等において、TPをはじめとする各種ポートフォリオについての講演を行った。TPを正しく導入するためには構成員の正しい理解が必要である。よって、TPについての正しい情報をFD講演会等の形で周知した。平成24年度は5高専2大学で講演を行い、そのうち1大学でTPの組織的な導入にこぎつけた。TPを組織的に導入している高等教育機関は大学・高専あわせて22である。しかし、高専だけに絞ると、2013年3月末現在、全国57高専のうち、TP作成者が1名以上在籍している高専は18高専(28%)、TPを組織的に導入している高専は10高専(14%)となっている。TP導入大学の割合にくらべれば、かなりの高率といえ、本研究目的の一つである高専へのTP普及は着実に進んでいるといえる。平成25年度はティーチング・ポートフォリオ(TP)作成ワークショップ(WS)を2回(参加者:学内4名、学外15名)、TP作成長期コースを2回(参加者:学内2名)、TP更新WSを1回(参加者:学内2名)、アカデミック・ポートフォリオ(AP)作成WSを2回(参加者:学外12名)、スタッフ・ポートフォリオ(SP)作成WSを2回(参加者:学内1名、学外3名)開催した。これによって、大阪府立大学工業高等専門学校では常勤教員73名中50名がTPを作成し、約7割の教員がTPを執筆した高等教育機関となった。また、本校では学外からも作成者を受け入れており、2014年3月末現在、本校でTPを作成した教員は学内外あわせて107名となっている。日本国内におけるTPの作成者は現在約500名と推測されており、日本国全体におけるTPの作成者のうち、2割以上が本校でTPを作成していることになる。本校は「日本におけるTPのメッカ」としての役割を十分果たしている。全国高専教育フォーラム、日本高専学会、大学教育研究フォーラム等において、TPをはじめとする各種ポートフォリオについての講演を行った。TPを正しく導入するためには構成員の正しい理解が必要である。よって、TPについての正しい情報をFD講演会等の形で周知した。平成25年度は、1高専1大学で講演を行った。TPを組織的に導入している高等教育機関は大学・高専あわせて23である。しかし、高専だけに絞ると、2014年3月末現在、全国57高専のうち、TP作成者が1名以上在籍している高専は20高専(35%)、TPを組織的に導入している高専は11高専(19%)となっている。TP導入大学の割合にくらべれば、かなりの高率であり、本研究目的の一つである高専へのTP普及は着実に進んでいる。「自らの教育活動について振り返り、その自らの記述をエビデンスによって裏付けた厳選された記録」を「ティーチング・ポートフォリオ」という。本研究は、ティーチング・ポートフォリオを高専に普及させるため、書籍を作成し、ワークショップを開催した。結果、作成者や導入機関を増やすことに成功した。また、メンターに必要なスキルについて明らかにし、さらに、ティーチング・ポートフォリオ作成の効果、およびその継続性について検証を行った。平成23年度は本校を会場としてTP作成WSを3回(参加者:学内12名、学外12名)、TP更新WSを1回(参加者:学内4名)、AP作成WSを1回(参加者:学内2名、学外3名)開催した。これによって、大阪府立大学工業高等専門学校では常勤教員78名中42名がTPを作成し、「過半数の教員がTPを執筆した高等教育機関」となった。ただ、特に半数を超えたことによる大きな変化は見られていない(国立阿南高専も平成23年度にTP執筆者が全教員の半数を超えた)。全国高専教育フォーラム、日本高専学会、日本工学教育協会工学教育研究講演会等において、高専におけるTPのあり方について講演を行った。 | KAKENHI-PROJECT-23501044 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23501044 |
高専におけるティーチング・ポートフォリオの普及とメンタリング技能に関する研究 | TPを正しく導入するためには構成員の正しい理解が必要であることがわかってきているため、TPについての正しい情報をFD講演会等の形で周知した。平成23年度は7高専で講演を行い、そのうち2高専でTPの組織的な導入にこぎつけることができた。2012年3月末現在、日本国内におけるTPの作成者は約300名、TPを導入している高等教育機関はわずか19であり、まだ市民権を得ているとは言い難い。しかし、高専だけに絞ると話は変わってくる。2012年3月末現在、全国57高専のうち、TP作成者が1名以上在籍している高専は16高専(28%)、TPを組織的に導入している高専は8高専(14%)となった。全国の大学に占めるTP導入大学の割合にくらべれば、かなりの高率といえる。ワークショップ期間中にメニューとして組み込まれている「よりよいメンターになるために」の結果から、メンターとして必要な資質について抽出し、それが社会人基礎力や教員に求められる資質と共通点が多いことを明らかにした。この成果は所定の査読を経て、日本高専学会誌17巻3号、第6回論文特集号(平成24年7月発行)に論文として掲載される。本校を会場として、ティーチング・ポートフォリオ(TP)作成ワークショップ(WS)を平成23年度2回、平成24年度2回開催することができた。これによって、本校でTPを作成した教員は学内外あわせて86名となっており、全国のTP作成者のうち2割以上が本校で作成していることになる。本校はまさに「日本におけるTPのメッカ」となっている。また、TP作成WS以外に、アカデミック・ポートフォリオ作成WSやスタッフ・ポートフォリオ作成WS、TP更新WS、TP作成長期コースも開催した。WS期間中にメニューとして組み込まれている「よりよいメンターになるために」の結果から、メンターとして必要な資質について抽出し、それが社会人基礎力や教員に求められる資質と共通点が多いことを明らかにした。この成果は所定の査読を経て、日本高専学会誌17巻3号、第6回論文特集号(平成24年7月発行)に論文として掲載された。また、学生に対するキャリア教育の一環として、本校では学生にキャリアデザイン・ポートフォリオを作成させているが、学生がキャリアデザイン・ポートフォリオを書くことによる活動をSECIモデルにあてはめ、キャリアデザイン・ポートフォリオを、担任やクラスメートとのコミュニケーションツールとして用いることによって、学生の人材育成に寄与できる可能性を示した。この成果は「未来材料」誌(平成25年1月発行)に掲載された。また、TPを正しく作成するためには、WSの基準を明確にしておく必要があり、大学評価・学位授与機構プロジェクト研究協力者として、その基準策定にかかわった。基準は、2013年3月17日に「ティーチング・ポートフォリオ・ネット(http://www.teaching-portfolio-net.jp/)」において、ver1.1が公開されている。以上の理由により、「(2)おおむね順調に進展している」とした。研究計画で当初平成23年度に予定していた「個人メンタリング技能向上装置の整備」については、整備が遅れている。しかし平成24年度以降に実施する予定であった「メンターに求められる資質」について、査読付論文として成果をまとめることができたため、「(2)おおむね順調に進展している」とした。 | KAKENHI-PROJECT-23501044 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23501044 |
トルコ絨毯の産地における文化社会的価値と品質の相関ー手工芸の持続的発展に向けて | 本研究期間の2年目(2016年)に、テロやクーデター未遂等、調査対象国の急激な治安不安定化に伴い、途中で調査国および研究内容の変更を迫られたため、研究成果としてはやや拡散した。変更前の主たる成果としては、通称DOBAGと呼ばれる、トルコ絨毯復興プロジェクト実施村の2000年代以降の衰退過程と現況を詳細に把握したことである。また、変更後の主たる成果は、トルコと言語的・民族的共通性が高く、絨毯の伝統を誇る隣国アゼルバイジャンの絨毯生産・流通の現状を多層的に把握したことである。また、国家の絨毯文化・産業への強い関与が、絨毯のアート化・遺産化を主導している過程を明らかにすることができた。初年度である平成27年度は、夏期に従前の調査国であるトルコ共和国内で、40日余りに及ぶ現地調査および資料収集を実施するともに、英語論文の執筆・投稿を行なった。現地調査期間の前半には、新規の調査地で、80年代から伝統天然染色の手織り絨毯復興プロジェクトの拠点となって来たマニサ郡Orselli村に通い、関係者への聞き取り調査および観察を行ない、同プロジェクトの推移やあまり報告されていない2000年代以降の現況を把握することができた。その後は主に報告者の従前の調査地であるミラス地方のミラス市および周辺村落部において、絨毯生産・流通・消費に関わる人類学的調査を行なった。その結果、数年前に比して生産活動をめぐる環境変化が起こりつつあること、ミラス絨毯が地元において徐々に「保護されるべき遺産」になりつつあることとが認められた。さらに加えて、現地の大学教員でミラス絨毯研究者であるベルナ・セヴィンチ氏とミラス絨毯の生産・流通と保護の現況や今後の研究協力・プロジェクト展開の可能性について意見交換も行なうことができた。以上のように、当初調査を二度に分けて行なう予定であったことを、本務の都合により1回に集中させたことを除けば、概ね予定していたとおりに現地調査を遂行し、重要なデータや資料を収集することができた。また、研究成果発信の点では、査読付き英文ジャーナルに、トルコ絨毯の伝統的産地村落部にグローバル経済が及ぼした影響とその「ローカル化」の様相についての論文を執筆・投稿し、受理された。さらに、日本文化人類学会の北陸地区例会等においても積極的に研究発表を行ない人類学者たちと議論を交わした。おおむね当初の予定通りに現地調査によるデータおよび資料収集、分析等の研究活動を進めることができている。2年目となる平成28年度は、1年目に実施した現地調査のデータを整理分析するとともに、後半には二回の現地調査を行なった。後述のとおり、トルコにおける現地調査を見合わせざるを得ない困難な状況があった分、文献精査や前年度のフィールドワークのデータ整理を精力的に進めた。それによって、トルコ国内の手織り絨毯産地の危機的状況がここ数年のうちにさらに進んだことが明らかになった。また、後半に行なった現地調査のひとつは1月の海外調査であり、ドイツ共和国において、手織り絨毯のグローバルな流通において非常に重要な役割を果たしている、国際見本市(ハノーヴァー)と港湾都市絨毯商(ハンブルク)の現地調査を遂行し、手織り絨毯という伝統的手工芸のグローバル流通現場の激しい変化と、マーケティングの最先端の一端を仔細に記録することができた。またもうひとつは、2月の国内調査であり、伝統的手工芸のなかでも絨毯と同じテキスタイルに属する新潟県の小千谷縮および越後上布の生産の現状についての予備的調査を行なった。小千谷縮も越後上布も共に、ユネスコの世界遺産に登録された日本の「伝統工芸品」であり注目度も高いと言えるが、実情としてこのような「遺産化」が生産の現場や産業としての地元地域一帯にどのような影響や変化をもたらしているのかについて、その「品質」と「価値」に留意しながら参与観察と聞き取りを通して明らかにしようとした。この国内調査は、本研究課題の主たる調査対象であるトルコの事例との比較対象として今後比較検討を行なう予定のものである。当初の予定では、夏季にトルコ共和国において長期の現地調査を行ない、秋以降に調査から得られたデータを分析したうえで、成果発表に着手してゆく計画であった。しかし、前年度後半から徐々に情勢が不安定化していたトルコ共和国において、2016年6月にはイスタンブルの国際空港でのテロや7月のクーデター未遂とその後の混乱等、夏前に情勢悪化が進み調査を結局断念せざるを得なくなった。そのため、前年度までの調査では成果発表には不足するデータや資料が多く、なかなか研究を計画通り進めることが困難となってしまった。ただし、その分前年度までに収集した資料やデータの精査は進めることができた。また年度末にかけては、本研究課題に関連して絨毯の大流通消費地での調査を行なったり、このような事態において当初から想定していたテュルク系の絨毯生産国アゼルバイジャンでの予備調査を(別予算により)行なうなど、柔軟な対処を心がけた。結果的に、研究成果発表の面では計画から遅れをとっているが、調査による情報収集と精査においては大いに成果が上げられたと自負している。あとは、翌年度に成果発表に力点を置いた研究活動を行なうことで成果発表の遅れを挽回したい。最終年度である平成29年度は、フィールドであるトルコの政情不安により現地調査計画を大幅に変更せざるを得なかった前年度の遅れを取り戻すべく、データのまとめとフィールドワークを中心とした研究を遂行した。 | KAKENHI-PROJECT-15K16896 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K16896 |
トルコ絨毯の産地における文化社会的価値と品質の相関ー手工芸の持続的発展に向けて | 主たるデータ収集の活動としては、夏季にトルコにおける補足的な現地調査を行ない、また10月にアゼルバイジャンの首都バクーで開催された第5回アゼルバイジャン絨毯国際シンポジウムに参加し、国家と絨毯文化と世界的専門家の関係についての観察を行なうとともに、研究者・専門家たちと議論・交流した。トルコにおけるフィールドワークでは、従前の調査地である絨毯の伝統的産地ムーラ県ミラス地方において、村落部の絨毯生産と流通に関わる補足調査およびミラス市内で流通および展示等の最新状況についての調査を行なった。その結果、村落部の絨毯生産が材料供給面から危機に瀕している新たな状況が明らかになると共に、絨毯のローカルな価値自体の揺らぎを示す興味深い事例も収集するに至った。また、ミラス市内での絨毯博物館の新設予定など、絨毯の「遺産化」を示すその準備過程についてのデータを収集した。国家が積極的に絨毯の「遺産化」に関与するアゼルバイジャン文化庁が主催した国際シンポジウムには、欧米諸国・旧ソ連圏の研究者・専門家を中心に数百名が集いアゼルバイジャン絨毯の歴史・流通・現代アート化の側面などについて、集中的な議論が行なわれた。国の代表者の絨毯表象と国外専門家の認識のズレなどを如実に示す議論が観察され、本研究課題の核心に迫るデータが収集できた。新たなフィールドデータの分析の必要性から前年度の遅れを完全に挽回するには至らなかったが、平成30年度以降、本科研による調査を基にした英語論文の出版や経済人類学の国際シンポジウムでの発表が既に決定しており、本科研の成果を国際的に発信する準備が進んでいる。本研究期間の2年目(2016年)に、テロやクーデター未遂等、調査対象国の急激な治安不安定化に伴い、途中で調査国および研究内容の変更を迫られたため、研究成果としてはやや拡散した。変更前の主たる成果としては、通称DOBAGと呼ばれる、トルコ絨毯復興プロジェクト実施村の2000年代以降の衰退過程と現況を詳細に把握したことである。また、変更後の主たる成果は、トルコと言語的・民族的共通性が高く、絨毯の伝統を誇る隣国アゼルバイジャンの絨毯生産・流通の現状を多層的に把握したことである。また、国家の絨毯文化・産業への強い関与が、絨毯のアート化・遺産化を主導している過程を明らかにすることができた。翌年度以降は、徐々に研究成果の取りまとめに重点をシフトしたい。現地調査もまだ必要であるが、昨今のトルコ国内の治安状況の悪化にやや懸念を抱いている。万が一これ以上悪化することがあり、トルコ国内での対象地域での調査が困難と判断する場合には、同様に絨毯生産の伝統があり類似の言語が話されている隣国アゼルバイジャンなどでの調査で代替することも検討したい。本年度までの現地調査データの整理・分析を進め、学会・研究会報告を行ない、議論を通して研究内容の精緻化を図る。夏季にはトルコ共和国の情勢を注視しつつ、可能であれば28年度に予定していた現地調査を行なったうえで、データをまとめ、本研究課題の総括として学術誌に英語・日本語論文を投稿し出版を目指す。講演等アウトリーチ的な活動も随時行なう。人類学当初2度に分けてトルコ共和国における調査を行う予定であったが、本務の都合で1度にまとめて行なったために、結果的に92,038円の残額が生じた。当初予定していた、トルコ共和国における長期現地調査が、急な情勢悪化により実施を見合わせざるを得ず、当初計画を変更して別の場所で短期調査を行なうこととしたため。 | KAKENHI-PROJECT-15K16896 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K16896 |
空間構造をもつモデル磁性体の量子効果と相転移 | 低次元系おいて顕著に現れる量子スピン効果や相互作用の競合によるフラストレーション効果を実験的に究明するためには、理想に近いモデル物質を創出する必要がある。本研究においては金属錯体分子集合体を用いて理想的な低次元スピン系を実現し、多様な実験手段を駆使して量子効果と相転移に関する理論的予言を検証し、逆に、従来の枠組みでは理解出来ない新規な異常現象を発見して、理論的研究にインパクトを与えることをめざす。本年度補助金によって物質作製が可能になったので、多種多様な量子スピン一次元系のモデル物質を数多く合成した。代表的にはS=1/2 Heisenberg反強磁性鎖、S=l/2交替結合鎖、S=1/2梯子鎖、S=l Heisenberg反強磁性鎖、S=l/2とS=1からなる交互スピン反強磁性鎖等を合成し、強磁場強磁化測定、強磁場磁気共鳴実験を実施した。これらの系において、系を特徴づける特異な磁場中挙動とくに量子スピン効果を反映したスピンギャップの存在と特微的な磁化過程を明らかにした。合わせて特定領域研究斑員を含む合成化学者から試料の提供を受けるなど緊密な連携をとりながら物性測定を開始し、一部予備的な結果を得ている。具体的には、大川(九大)、岩村(九大)、松本(熊大)、山下(名大)、細越(分子研)、向井(愛媛大)等の協力を受けて、集積型金属錯体、遷移金属有機分子複体、有機ラジカル磁性体を対象にして強磁場磁化測定、強磁場磁気共鳴実験を実施した。次年度にはこれらの成果を基にして微視的に量子スピン効果を実験的に究明し、相転移現象の新しい概念を構築することをめざして、磁気共鳴、中性子回折、uSR、強磁場磁化測定等による広範な実験研究を行う。低次元系おいて顕著に現れる量子スピン効果や相互作用の競合によるフラストレーション効果を実験的に究明するためには、理想に近いモデル物質を創出する必要がある。本研究においては金属錯体分子集合体を用いて理想的な低次元スピン系を実現し、多様な実験手段を駆使して量子効果と相転移に関する理論的予言を検証し、逆に、従来の枠組みでは理解出来ない新規な異常現象を発見して、理論的研究にインパクトを与えることをめざす。本年度補助金によって物質作製が可能になったので、多種多様な量子スピン一次元系のモデル物質を数多く合成した。代表的にはS=1/2 Heisenberg反強磁性鎖、S=l/2交替結合鎖、S=1/2梯子鎖、S=l Heisenberg反強磁性鎖、S=l/2とS=1からなる交互スピン反強磁性鎖等を合成し、強磁場強磁化測定、強磁場磁気共鳴実験を実施した。これらの系において、系を特徴づける特異な磁場中挙動とくに量子スピン効果を反映したスピンギャップの存在と特微的な磁化過程を明らかにした。合わせて特定領域研究斑員を含む合成化学者から試料の提供を受けるなど緊密な連携をとりながら物性測定を開始し、一部予備的な結果を得ている。具体的には、大川(九大)、岩村(九大)、松本(熊大)、山下(名大)、細越(分子研)、向井(愛媛大)等の協力を受けて、集積型金属錯体、遷移金属有機分子複体、有機ラジカル磁性体を対象にして強磁場磁化測定、強磁場磁気共鳴実験を実施した。次年度にはこれらの成果を基にして微視的に量子スピン効果を実験的に究明し、相転移現象の新しい概念を構築することをめざして、磁気共鳴、中性子回折、uSR、強磁場磁化測定等による広範な実験研究を行う。 | KAKENHI-PROJECT-10149239 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10149239 |
自閉症児における視覚的注意のアセスメントおよび支援方法の開発 | 昨年度は,細部に注意を向けやすいという自閉症児における視覚的注意の特徴が,刺激サイズの影響を受けないことを明らかにした。本年度は刺激サイズ以外の要因について,以下の2つの課題に基づき検討した。不注意ブラインドネス(inattentional blindness)課題:ある課題の遂行中に視野内に提示された他の視覚刺激に気づく程度を測定した。この課題は典型発達児でも過半数が見落としを起こす課題であるが,自閉症児では全員が見落としを起こすことが明らかになった。ただし,事前に予告すれば見落としは劇的に減少することから,不注意や過集中による見落としの予防策が示唆されたと考えられる。時間評価課題:時間感覚に対する注意の影響を調べるため,時間を数える条件と,課題を遂行して時間から注意をそらす条件とで,時間評価の正確さを比較した。その結果,指定された時間が経過したらボタンを押す時間生成課題において,時間を数える条件では自閉症児は典型発達児よりも時間評価が正確であるが,課題を遂行する条件では時間を短く判断する傾向が見られた。一部の自閉症児に見られるあわてて課題を遂行しようとする傾向の背景には,こうした時間感覚の特徴があると考えられ,認知行動療法などにより感覚の補正を行える可能性が示唆された。上記の他,注意のアセスメントという観点から,本年度は知能検査の歴史的展開について検討した。近年のウェクスラー式知能検査では特に注意・短期記憶といった側面がワーキングメモリという観点から測定されているが,現在目本版を作成中であるWPPSI-IIIではワーキングメモリは測定されておらず,自閉症を初めとする発達障害児の早期発見,早期対応のため,幼児用の注意・短期記憶アセスメントツール開発の必要性を指摘した。本研究では,高機能自閉症児における視覚的注意の特徴の把握や,その特徴を環境や教材の調整によって制御できる可能性について検討した。すなわち,高機能自閉症児および健常成人を対象に,階層的情報処理刺激(例小さなAを多数並べてHの文字を構成する)を用いたストループ課題(部分の文字を答える条件,および,全体の文宇を答える条件がある)によって,視覚的注意の向け方について検討を行った。その際,両群共通サイズの刺激に加え,サイズの小さな刺激であれば自閉症児は全体に注意を向け,部分を無視しやすくなるか,また,極度にサイズの大きな刺激であれば,健常成人は部分に注意を向け,全体を無視しやすくなるかについて検討した。その結果,自閉症児は刺激サイズにかかわらず,全体の文字を答える条件で部分を無視できない傾向を示した。また,健常成人は刺激サイズにかかわらず,部分の文字を答える条件で全体を無視できない傾向を示した。つまり,自閉症児,健常成人ともに,視覚的注意の特徴は刺激サイズに依存しないことが示された。このことは,教材のサイズの調整では,自閉症児における注意の特徴は制御できないことを示しており,他の要因の検討が必要と考えられる。一方,600余名の幼稚園児に対する発達スクリーニングテストの追跡調査において,不注意,多動といった注意の問題がどのように発達的変化を示すかについて検討した。その結果,発達障害が疑われる群では,そうでない群に比べて,介入の有無にかかわらず,年少時に見られた注意の問題が年長まで持続しやすい傾向が見られた。上記の研究と合わせて考えると,自閉症児における視覚的注意の特徴は変化しにくいものと考えられる。昨年度は,細部に注意を向けやすいという自閉症児における視覚的注意の特徴が,刺激サイズの影響を受けないことを明らかにした。本年度は刺激サイズ以外の要因について,以下の2つの課題に基づき検討した。不注意ブラインドネス(inattentional blindness)課題:ある課題の遂行中に視野内に提示された他の視覚刺激に気づく程度を測定した。この課題は典型発達児でも過半数が見落としを起こす課題であるが,自閉症児では全員が見落としを起こすことが明らかになった。ただし,事前に予告すれば見落としは劇的に減少することから,不注意や過集中による見落としの予防策が示唆されたと考えられる。時間評価課題:時間感覚に対する注意の影響を調べるため,時間を数える条件と,課題を遂行して時間から注意をそらす条件とで,時間評価の正確さを比較した。その結果,指定された時間が経過したらボタンを押す時間生成課題において,時間を数える条件では自閉症児は典型発達児よりも時間評価が正確であるが,課題を遂行する条件では時間を短く判断する傾向が見られた。一部の自閉症児に見られるあわてて課題を遂行しようとする傾向の背景には,こうした時間感覚の特徴があると考えられ,認知行動療法などにより感覚の補正を行える可能性が示唆された。上記の他,注意のアセスメントという観点から,本年度は知能検査の歴史的展開について検討した。近年のウェクスラー式知能検査では特に注意・短期記憶といった側面がワーキングメモリという観点から測定されているが,現在目本版を作成中であるWPPSI-IIIではワーキングメモリは測定されておらず,自閉症を初めとする発達障害児の早期発見,早期対応のため,幼児用の注意・短期記憶アセスメントツール開発の必要性を指摘した。 | KAKENHI-PROJECT-19653065 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19653065 |
高分離能大口径液体クロマトグラフィーカラムの開発 | 様々な有用生化学物質を工業規模で高純度に精製するには液体クロマトグラフィーが有用である。しかし、従来実験室規模で用いられていた構造のカラムを単にスケールアップしたのみでは充分な分離能が発揮されない。そこで本研究では大口径カラム中の液体の流動状態と分離度との関係に着目し、液出入口部の構造と圧力損失、充填ゲルの物理的特性、カラムの壁効果などがカラム性能に与える影響を検討し、その結果に基づいて高分離能を有する直径20cmの分取用液体クロマトグラフィーカラムを試作した。本研究で明らかとなった点は、1)充填層上部の滞留液量を最小にし、かつ軸方向の流入液を水平方向に分散させる入口部構造が充填層内の均一な液流分布を得るのに適している。2)1)のカラムに機械的強度の異る平均粒径約100μmのゲルを充填した場合、アガロースやセルロースなどの軟かいゲルは充填層自身の圧力損失が比較的高く、直径20cm程度のカラムでも均一な液流分布が得られやすい。しかし、機械的強度が高く層の圧力損失が低いシリカゲルなどの場合、入口分散板部の圧力損失を高く(液線速度50cm/hで0.05kg/【cm^2】以上)しないと液流分布が悪くなる。3)タンパク質などの高分子の分離の場合は充填ゲル粒子内拡散抵抗が分離能低下の主因で液流分布の不均一性の影響は比較的少ない。4)直径10cm以上のカラムに軟かいゲル粒子を充填した場合細いカラムに比べ圧密が著しくなるが、2.5cm程度の水力相当直径になるよう同心円状邪魔板を挿入すると細いカラムと同等に操作できる。5)既述の結果に基づき直径20cmのカラムを試作し、細いカラムと同等の理論段数と分離能が得られることを確認した。以上、種々の特性を有する充填ゲルに対して大口径液体クロマトグラフィーカラムの設計指針を明らかにした。様々な有用生化学物質を工業規模で高純度に精製するには液体クロマトグラフィーが有用である。しかし、従来実験室規模で用いられていた構造のカラムを単にスケールアップしたのみでは充分な分離能が発揮されない。そこで本研究では大口径カラム中の液体の流動状態と分離度との関係に着目し、液出入口部の構造と圧力損失、充填ゲルの物理的特性、カラムの壁効果などがカラム性能に与える影響を検討し、その結果に基づいて高分離能を有する直径20cmの分取用液体クロマトグラフィーカラムを試作した。本研究で明らかとなった点は、1)充填層上部の滞留液量を最小にし、かつ軸方向の流入液を水平方向に分散させる入口部構造が充填層内の均一な液流分布を得るのに適している。2)1)のカラムに機械的強度の異る平均粒径約100μmのゲルを充填した場合、アガロースやセルロースなどの軟かいゲルは充填層自身の圧力損失が比較的高く、直径20cm程度のカラムでも均一な液流分布が得られやすい。しかし、機械的強度が高く層の圧力損失が低いシリカゲルなどの場合、入口分散板部の圧力損失を高く(液線速度50cm/hで0.05kg/【cm^2】以上)しないと液流分布が悪くなる。3)タンパク質などの高分子の分離の場合は充填ゲル粒子内拡散抵抗が分離能低下の主因で液流分布の不均一性の影響は比較的少ない。4)直径10cm以上のカラムに軟かいゲル粒子を充填した場合細いカラムに比べ圧密が著しくなるが、2.5cm程度の水力相当直径になるよう同心円状邪魔板を挿入すると細いカラムと同等に操作できる。5)既述の結果に基づき直径20cmのカラムを試作し、細いカラムと同等の理論段数と分離能が得られることを確認した。以上、種々の特性を有する充填ゲルに対して大口径液体クロマトグラフィーカラムの設計指針を明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-60850167 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-60850167 |
ジョルダーノ・ブルーノと世界の複数性:メルセンヌとライプニッツからの批判を通して | 本研究では、ジョルダーノ・ブルーノの「世界の複数性」の思想を調和も照応もなき多様性の哲学として読み解き、多様なものの共生という現代的課題に新たな視座を提起することを目的に、(1)ブルーノ『しるしのしるし』(1583)に見られる世界の複数性の存在論的基盤・倫理的含意、(2)世界の複数性の概念史におけるルネサンス・近世の音楽論の重要性、(3)ルネサンス哲学から近世自由思想に継承された自然主義的循環史観の重要性、を解明した。ジョルダーノ・ブルーノの提起した「世界の複数性」の思想をメルセンヌやライプニッツからの批判と対照させながら読み解き、近代以降の人間像と世界像の根幹にある「多様性」概念の再考を試みる本研究は、まず初年度として、当初の研究計画にしたがってブルーノとメルセンヌの関係に取り組んだ。具体的な考察対象としては、ブルーノ『しるし論』(1583)、『原因論』(1584)、『無限論』(1584)、『最小者論』(1591)、およびメルセンヌ『理神論者の不敬虔』(1624)を取りあげたが、なかでも『しるし論』が、ブルーノの「世界の複数性」の思想の倫理的含意を明確化するにあたって重要であるとわかり、後半はとくにその読解に集中した。また、メルセンヌの著作および先行研究の検討から、「世界の複数性」における多様性と調和の問題を考えるにあたって、近世の音楽論の有する重要性も浮かび上がってきた。西洋における宇宙論と音楽論の並行性は古代のピュタゴラス主義以来のものではあるが、天動説から地動説への転換や火星の楕円軌道の発見などが相次いだ近世の宇宙論においても、そのモデルとして音楽論が明に暗に参照されていたのであり、特に世界の多様性と調和の思想に対する音楽論の影響力は看過し得ない。さらに、フランスのパリ、イタリアのヴェネツィアとローマで文献調査収集をおこない、近世思想史研究者のフランチェスコ・カンパニョーラ(ゲント大学)と意見交換した結果、近世におけるイタリア・ルネサンス哲学の受容の広がりを再認識することとなり、少なくともメルセンヌによるブルーノ批判の背景として、ルネサンス期イタリアの自然主義哲学とフランス自由思想との関係を解明する必要性を痛感した。ルネサンス哲学の歴史的影響の解明は、国際的にも研究の立ち遅れているものであり、次年度以降もヨーロッパでの文献調査収集をおこないながら取り組む必要があるだろう。ジョルダーノ・ブルーノによる「世界の複数性」論を、後世のマラン・メルセンヌやライプニッツからの批判と対照しながら読み解き、近代以降の「多様性」概念の再考を目指す本研究は、その二年目として、昨年度の研究実績を踏まえてブルーノとメルセンヌの関係、ルネサンス哲学と近世自由思想の関係をひきつづき調査した。本年度はブルーノ『しるし論』の精読・翻訳・注釈を中心にしつつ、フランス国立図書館にてメルセンヌとガブリエル・ノーデの著作も集中的に調査・検討した結果、自然主義化された循環史観が、ルネサンス期から近世にかけて人間像と世界像の脱キリスト教化・世俗化に大きく関与したとの知見を得た。その一端は、口頭発表「自己のエクリチュールールネサンスから偉大なる世紀へ」で公表した。「調和」概念および「多様性」概念と近代以降の宇宙像との関係については、昨年の研究成果により近世の音楽論の重要性が認識されたが、メルセンヌを中心に検討を継続中である。ジョルダーノ・ブルーノによる「世界の複数性」論を、後世のマラン・メルセンヌやライプニッツからの批判と対照しながら読み解き、近代以降の「多様性」概念の再考を目指す本研究は、その三年目として、昨年度・一昨年度の研究実績を踏まえて、まずはブルーノ『しるしのしるし』の翻訳注釈に集中的に取り組み、そのうち第1部第1節から第23節までを公表した。また、ルネサンス自然主義から近世自由思想への影響作用の内実を解明するために、ひきつづきフランスのパリとイタリアのヴェネツィアで文献資料調査をおこない、とくにガブリエル・ノーデの呪術論・奇跡論に、歴史論と同様、ルネサンス哲学の影響として自然主義化の進行を認められることが分かった。本研究では、ジョルダーノ・ブルーノの「世界の複数性」の思想を調和も照応もなき多様性の哲学として読み解き、多様なものの共生という現代的課題に新たな視座を提起することを目的に、(1)ブルーノ『しるしのしるし』(1583)に見られる世界の複数性の存在論的基盤・倫理的含意、(2)世界の複数性の概念史におけるルネサンス・近世の音楽論の重要性、(3)ルネサンス哲学から近世自由思想に継承された自然主義的循環史観の重要性、を解明した。昨年度の研究によって重要性が認識されたルネサンス自然主義と近世自由思想との関連を順調に解明しつつあり、当初の研究計画であるライプニッツ哲学の検討には踏み込んでいないものの、着実な研究成果を上げつつあると言える。人文学次年度はブルーノ『しるし論』の翻訳・注釈を完成させるとともに、ルネサンスの自然主義的な循環史観がブルーノにおいて「世界の複数性」論と結びついた理路を再構成し、アメリカ大陸植民地化への批判をはじめ多文化主義的な倫理の基盤を解明する。その際、メルセンヌのキリスト教的・機械論的世界像とノーデの自然主義的・循環史観的世界像との対照が重要になると予想される。 | KAKENHI-PROJECT-25770007 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25770007 |
ジョルダーノ・ブルーノと世界の複数性:メルセンヌとライプニッツからの批判を通して | 近世宇宙論における音楽論の重要性やフランス自由思想へのルネサンス哲学の受容など、当初それほど想定していなかった問題の広がりが認識されたことは、本研究にとって重要な成果であり、次年度以降の研究に向けて着実に成果を積み重ねていると言える。次年度もひきつづきヨーロッパの各図書館で近世の自由思想関連文献を調査収集しつつ、ブルーノの「世界の複数性」の思想を検討する。メルセンヌとの関係が当初の想定よりも大きな問題系を構成していたため、ライプニッツとの関係に検討を移すのはもう少し遅らせる予定である。購入予定であったジョルダーノ・ブルーノ著作集の出版延期により、次年度購入用に回した。次年度使用額分はブルーノ著作集が出版され次第、その購入に充てる。それ以外は当初の計画に変更はない。 | KAKENHI-PROJECT-25770007 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25770007 |
持続可能な生物多様性保全の枠組み | 本研究では、生物多様性減少の要因である違法取引と生態系破壊、および人口増大と地球温暖化の側面で、持続可能な生物多様性保全の研究を行った。特に、生物多様性保全を促すインセンティブが内在する枠組を、理論面と実証面での2つの研究を行った。生物多様性の減少は、近年急速に進んでいると言われる。種の絶滅の速度は、自然の状態であれば、年間高々数種程度であるが、現在では、年間1万種から5万種が絶滅していると言われる。主要な理由は、一つは、熱帯雨林や湿地に代表される開発のための生息地の減少であり、もう一つは、個々の種の保全の仕組みである。本研究の目的は、こうした現状を踏まえて、この二つの側面から生物多様性の保全にとって有効な政策的枠組みを考察する。とりわけ、本研究では、生物多様性の保全を促進するような「インセンティブ」に焦点を当て、持続可能な保全政策についての研究を行う。本研究では、生物多様性減少の要因である違法取引と生態系破壊、および人口増大と地球温暖化の側面で、持続可能な生物多様性保全の研究を行った。特に、生物多様性保全を促すインセンティブが内在する枠組を、理論面と実証面での2つの研究を行った。途上国の環境問題を中心に研究を行った。具体的には、(1)カーボンクレジットにおける質の問題、(2)人口問題と環境問題の関係、および(3)バイオプロスペクティングの問題についての研究を行った。(1)では、質の高いクレジットであるWWFのゴールドスタンダード・クレジットが求められる背景を実証及び理論面で明らかにした。この結果、オフセット市場を利用することでの環境保全の方向性を探ることが出来た。(2)では、出生と1人あたりの所得、および環境水準が相互に依存し合うモデルで、人口増大、所得減少、及び環境悪化という、現在発展途上国の一部の陥っている状況が生み出されるケースが実際に存在することを示した。また、外国からの十分大きな援助により、この状況から抜け出すことが出来ることを明らかにした。(3)では、先進国・途上国間でのバイオプロスペクティングをモデル化し、商業化が成功したときの金銭的利益配分が、効率性条件からは、R&Dへの貢献率に等しくなることを示した。これにより、生物多様性条約における金銭的利益配分の衡平性および公正性の意味が明確に出来た。また、地球生態系と持続可能性について、「地球環境と持続可能性-強い持続可能性と弱い持続可能性」で、地球生態系のような本質的な自然資本と人間の福利の向上をめぐる問題について議論を行った。そこでは、強い持続可能性は経済学の議論からは導け出すことは一般には不可能だが、弱い持続可能性を前提しながらも本質的自然資本を減少させることなく将来世代に遺贈するための実際の方策を論じた。平成21年度は、昨年度に引き続き、生物多様性条約における、遺伝資源の利用から発生する利益配分をめぐる問題を、バイオプロスペクティングをもとに分析を行った。今年度は、従来の金銭的利益(収集したサンプルへの支払)に加えて、非金銭的利益(技術移転、雇用、知識の集積)も扱い、これらの利益が(1)途上国のアクターが企業のような利潤行動的をとるか、あるいは研究所・大学のように非営利行動をとるか(2)伝統的知識があるかないか、でどのように変わるのかを分析した。途上国は伝統的知識をもとに非営利的行動をとることが多いが、これが金銭的利益では不利に、また非金銭的利益では雇用を除いてやはり不利に働くことが示された。一方、日本の生物多様性問題として、豊岡市におけるコウノトリ保全の取り組みを、コウノトリ育む農法に着目して農家の農業収益の観点から分析した。無農薬農法、減農薬農法および慣行農法を比較して、減農薬農法が収益の面で優れていることを示した。これは、減農薬農法の採用の伸びを裏付けている。また、コウノトリ保全の経済効果は産業連関分析より少なく見積もって年間約10億円となることを示しか。一方で、熊の胆(ユータン)の取引をもとに、わが国での違法取引の可能性と取引市場の確立による影響を分析した。ユータン取引の現状の調査をもとに理論的モデルを構築し、いくつかの条件の下では、取引市場を確立することは、他国からの密輸を減らす効果かおることを示した。さらに、サンゴ礁修復の手段として注目されている移植について、その問題点を明らかにし、バスケット型供給を提案した。さらに生物多様性オフセットの仕組みと働きについて経済学的に評価した。1.地球温暖化対策としての適応は、生物多様性や農業を大きく変化させる。先進国の適応技術の発展と採用は、その国の緩和行動に影響を与える。その変化は、世界の温室効果ガス排出量への変化を通じて、途上国の緩和行動にも影響を与え、世界の温室効果ガス総排出量と各国の厚生を変化させる。Onuma and Arino (2011)では、こうした変化を厳密に明らかにし、先進国の適応技術向上が、先進国と途上国の厚生に複雑な効果を持つことを示した。あわせて適応が先進国ならびに途上国の状況を改善させるシステムとして国際的な移転制度の役割を示した。2.今日、サンゴ礁修復の手段として注目されている移植について、自然から採取した苗で移植を行っていることや、多様性が低いことなど、その問題点を明らかにし、自然に負荷を与えない種苗と組み合わせたバスケット型供給を提案した(大久保・大沼、2010)。 | KAKENHI-PROJECT-19530215 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19530215 |
持続可能な生物多様性保全の枠組み | また、兵庫県豊岡市のコウノトリ野生復帰では、コウノトリ育む農法が経済的に合理的であること、また、地域経済に与える経済効果が大きいことを合わせて、サンゴ移植と合わせて経済性を評価した(大沼・大久保、2011)。3.ワシントン条約は、記載種の絶滅可能性を低下させる効果を持つものと一般に考えられているが、種によっては逆効果になる。この効果を中心に、ワシントン条約の概説と評価を行った(地球環境学事典、2010)。 | KAKENHI-PROJECT-19530215 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19530215 |
老人における心理的依存性とサクセスフル・エイジングに関する研究 | 本年度は人格のビッグ・ファイブ・モデルに基づくNEO-FFIを用いて,心理的依存性と人格特性との関係について検討するため調査を行った。対象者は板橋区の老人大学「グリーン・カレッジ」の受講者とその友人,合計101名である。心理的依存性JIDIにより測定した。本スケールは情緒的依頼心,社会的自信の欠如,自律の主張の3下位尺度で構成する23項目からなる。NEO-FFIはNEO-PIの短縮版であり,神経症傾向,外向性,開放性,協調性,誠実性の5つの人格次元について測定するように作られた60項目から構成される。神経症傾向は心理的依存性と関係の強い人格特性であることが示され,少なくとも本研究で用いたJIDIから見る限りにおいては,心理的依存性が人格的弱さと関係しているのであろう。また,外向性との負の関係も認められた。そして,古くから研究されてきたこれら2つの人格特性に続く人格の第3の軸として導入された開放性が,情緒的依頼心,社会的自信の欠如という心理的依存性を直接にあらわす指標と負の関係をもつことが注目される。開放性は経験に対してオープンであることを示す。つまり,さまざまなことにとらわれずに,自由に考えたり行動したりする人格特性と定義される。この開放性の定義から考えると,わかりやすい結果のように思われる。自律の主張は低いとはいえ,相関をもつことは,自律の主張が健康な意味での自律心を示すのでなく,防衛としての依存という定義の妥当性を裏づけているのではないだろうか。本年度は人格のビッグ・ファイブ・モデルに基づくNEO-FFIを用いて,心理的依存性と人格特性との関係について検討するため調査を行った。対象者は板橋区の老人大学「グリーン・カレッジ」の受講者とその友人,合計101名である。心理的依存性JIDIにより測定した。本スケールは情緒的依頼心,社会的自信の欠如,自律の主張の3下位尺度で構成する23項目からなる。NEO-FFIはNEO-PIの短縮版であり,神経症傾向,外向性,開放性,協調性,誠実性の5つの人格次元について測定するように作られた60項目から構成される。神経症傾向は心理的依存性と関係の強い人格特性であることが示され,少なくとも本研究で用いたJIDIから見る限りにおいては,心理的依存性が人格的弱さと関係しているのであろう。また,外向性との負の関係も認められた。そして,古くから研究されてきたこれら2つの人格特性に続く人格の第3の軸として導入された開放性が,情緒的依頼心,社会的自信の欠如という心理的依存性を直接にあらわす指標と負の関係をもつことが注目される。開放性は経験に対してオープンであることを示す。つまり,さまざまなことにとらわれずに,自由に考えたり行動したりする人格特性と定義される。この開放性の定義から考えると,わかりやすい結果のように思われる。自律の主張は低いとはいえ,相関をもつことは,自律の主張が健康な意味での自律心を示すのでなく,防衛としての依存という定義の妥当性を裏づけているのではないだろうか。平均寿命の伸長と共に、元気な老人が増えてきている。しかし、老年期本番を迎える80歳以降の後期老年期ともなると、心身両面での衰退が顕著となり、それまでは独立した生活を営んでいた老人でさえも、生活面で家族あるいはホーム・ヘルパー等の公的なスタッフに依存する場面が増加してくる。そこで、心理的依存性の加齢変化および心理的依存性が加齢のプロセスで適応とどのように関係するかを検討することにより、心理的依存性とサクセスフル・エイジングの関係を追求すべく、以下の研究を行った。(1)調査表の作成:心理的依存性に関するスケールに加えて、心理的依存性の特徴を浮き彫りにするための変数、および適応を測定する諸変数をふくむ調査表を作成した。(2)対象者の選定:都内の一定地域に調査フィールドを設定した。65歳以上の老人を男女がほぼ同数となるよう選ぶ。その結果に基づき調査対象者の名簿を作成する。(3)調査の実施:対象者に調査への協力依頼状を発送し、協力の得られた老人について、専門調査員が戸別訪問し、所定の調査表を用いて面接による聞き取り調査を行った。実査に関しては、専門調査機関である新情報センターに委託して行った。調査の終了までが今年度の予定である。分析用のコンピュータ入力の作成および解析は来年度に実施するので、研究目的に沿った結果の検討は、平成8年度に行う予定である。これまで,心理的依存性が加齢とともにどのように変化するか。性差が存在するか。また,実際に受けているサポートとどう関係するかなどを検討してきた。しかし,これまでの調査では,設計上の制約から,パーソナリティをくわしく測定するためのテストを加えることができなかった。そのため,人格の側面から心理的依存性に十分に光をあてることができなかった。そこで,本研究では人格のビッグ・ファイブ・モデルに基づくNEO-FFIを用いて,心理的依存性と人格特性との関係について検討した。対象者は板橋区の老人大学「グリーン・カレッジ」の受講者およびその友人101名である。心理的依存性はJIDIにより測定した。本スケールは情緒的依頼心,社会的自信の欠如,自律の主張の3下位尺度で構成する23項目からなる。 | KAKENHI-PROJECT-07610159 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07610159 |
老人における心理的依存性とサクセスフル・エイジングに関する研究 | NEO-FFIはNEO-PIの短縮版であり,神経症傾向,外向性,開放性,協調性,誠実性の5つの人格次元について測定するように作られた60項目から構成される。神経症傾向は心理的依存性と関係の強い人格特性であり,少なくとも本研究で用いたJIDIから見る限りにおいては,心理的依存性が人格的弱さと関係しているのであろう。また,外向性との負の関係も認められた。そして,古くから研究されてきたこれら2つの人格特性に続く人格の第3の軸として導入された開放性が,情緒的依頼心,社会的自信の欠如という心理的依存性を直接にあらわす指標と負の関係をもつことが注目される。開放性は経験に対してオープンであることを示す。つまり,さまざまなことにとらわれずに,自由に考えたり行動したりする人格特性と定義される。この開放性の定義から考えると,素直な結果のように思われる。自律の主張は低いとはいえ,相関をもつことは,自律の主張が健康な意味での自律心を示すのでなく,防衛としての依存という定義の妥当性を裏づけていよう。 | KAKENHI-PROJECT-07610159 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07610159 |
制御のための大規模複雑系の階層的モデリング | 本研究では,物理モデリングとシステム同定という二つの階層を融合させたモデリング法に関する研究を行った。そのために,まず,音響伝達系,除振マウント支持の半導体露光装置などの具体的な対象について,物理モデリングとシステム同定を融合したモデリング法を提案した。そして,高炉の物理モデル(シミュレータ)を用いた新しいモデリング法を提案した。1.アクティブ騒音制御のための音響伝達系のモデリング自動車車室内の騒音をアクティブ制御するために,車室内の音響伝達系のモデリングを行い,その結果に基づいてフィードバック型のアクティブ騒音制御器を設計した。2.除振マウント支持の半導体露光装置の多変数システム同定半導体露光装置の振動特性を部分空間法によりシステム同定する方法について検討した。部分空間法が多変数システムのモデリングに有効であることを確認した。3.高炉シミュレータの同定に基づく制御系設計計算機上に構築された高炉を模擬するシミュレータに対して,入力信号を印加し,その応答を測定することにより,部分空間法によるシステム同定実験を行い,制御モデルを作成した。本研究では,物理モデリングとシステム同定という二つの階層を融合させたモデリング法に関する研究を行った。そのために,まず,音響伝達系,除振マウント支持の半導体露光装置などの具体的な対象について,物理モデリングとシステム同定を融合したモデリング法を提案した。そして,高炉の物理モデル(シミュレータ)を用いた新しいモデリング法を提案した。1.アクティブ騒音制御のための音響伝達系のモデリング自動車車室内の騒音をアクティブ制御するために,車室内の音響伝達系のモデリングを行い,その結果に基づいてフィードバック型のアクティブ騒音制御器を設計した。2.除振マウント支持の半導体露光装置の多変数システム同定半導体露光装置の振動特性を部分空間法によりシステム同定する方法について検討した。部分空間法が多変数システムのモデリングに有効であることを確認した。3.高炉シミュレータの同定に基づく制御系設計計算機上に構築された高炉を模擬するシミュレータに対して,入力信号を印加し,その応答を測定することにより,部分空間法によるシステム同定実験を行い,制御モデルを作成した。大規模で複雑なシステムの制御系設計のための階層的なモデリング法について,本年度は具体的な二つの対象(半導体露光装置と自動車)を用いて検討を行った。まず,半導体露光装置のアクティブ除振制御系設計のためのモデリング問題では,多自由度(6人出力)システム同定実験を行い,部分空間法を用いて対象のモデリングを行った。その結果,1入出力系のシステム同定を複数回行っていた従来法と比べ,1回のシステム同定実験で6入出力間すべての動特性を高精度に同定する方法を確立することができた。さらに,システム同定結果より物理パラメータを計算する方法についても検討し,その結果を用いて半導体露光装置のシミュレータを作成しているが,これは現在も作業中である。つぎに,自動車車室内の騒音をアクティブ制御するために,車室内の音響伝達系のモデリングを行った。まず,アクチュエータであるスピーカ,センサであるマイクロフォン,そして音が伝搬する音場の各要素を物理モデリングし,音響伝達系の物理モデルを導出した。つぎに,実際に音響伝達系のシステム同定実験を行い,その結果を物理モデルに反映させる,いわゆるグレーボックスモデリングを行った。特に,この結果は,フィードバックアクティブ騒音制御系を設計する際に重要になってくる。今後は,得られた基にして,自動車車室内の音響伝達系のシミュレータを作成していく予定である。以上で説明したように,本年度は大規模複雑系の階層的モデリングについて,二つの実例を用いて,実際に同定実験を行うことにより研究を行った。大規模で複雑なシステムの制御系設計のための階層的なモデリング法について,本年度は以下に示す具体的な対象に対して検討を行った。1.大型無人ヘリコプターの飛行中動特性同定実験総重量約800kgの大型無人ヘリコプターの自立飛行制御系の構成を最終目標として,本年度はまずヘリコプターの飛行中の動特性をモデリングした。飛行中にランダム信号を各軸(ロール軸,ピッチ軸,ヨー軸,ヒーブ軸)に入力し,それに対する変位,速度,加速度応答を測定し,それらの入出力信号からシステム同定の方法によってモデリングを行った。そのとき,高次モデルによって詳細モデルを,低次モデルによって制御系設計のための公称モデルを構築した。2.鉄鋼業の高炉の制御をめざしたシミュレータによる制御モデルの導出とゲインスケジューリングによる制御系設計計算機上に構築された高炉を模擬するシミュレータに対して,入力信号を印加し,その応答を測定することにより,部分空間法によるシステム同定実験を行い,制御モデルを作成した。この同定実験を,さまざまな動作点に対して行うことにより,複数の制御モデルを得ることができ,それらに基づいてゲインスケジューリングによる制御系設計を行った。3.自動車車室内の音響伝達系のモデリングと制御自動車車室内の騒音をアクティブ制御するために,車室内の音響伝達系のモデリングを行い,その結果に基づいてフィードバック型のアクティブ騒音制御器を設計した。本研究では,物理モデリングとシステム同定という二つの階層を融合させたモデリング法に関する研究を行った。具体例として,音響伝達系,除振マウント支持の半導体露光装置などの対象について,物理モデリングとシステム同定を融合したモデリング法を提案した。1.アクティブ騒音制御のための音響伝達系のモデリング自動車車室内の騒音をアクティブ制御するために,車室内の音響伝達系のモデリングを行い,その結果に基づいてフィードバック型のアクティブ騒音制御器を設計した。2.除振マウシト支持の半導体露光装置の多変数システム同定半導体露光装置の振動特性を部分空間法によりシステム同定する方法について検討した。部分空間法が多変数システムのモデリングに有効であることを確認した。最後に,研究の成果をまとめた研究報告書を作成した。 | KAKENHI-PROJECT-10650424 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10650424 |
微構造解析を基礎とする西南日本外帯のテクトンクスの解明 | 西南日本の地体構造論は、近年多様多岐にわたる分野の研究の進展を背景として、急速に新しい展開をみせようとしている。このような展開の中で、鍵的位置をしめる地質体が三波川帯であった。いうまでもなく三波川帯は高圧変成岩であり、外帯の構成地質帯はいずれも付加体であるが、三波川変成岩はそれらよりははるかに沈み込み帯深部で形成されたものである。このため外帯のテクトニクスの研究は、沈み込み帯における高圧変成岩の上昇機構の解明という、今日世界的に注目を集めている課題をてがけることでもある。外帯の構成地質帯についての今日の地質構造論、化石・放射年代測定を基礎とする時代論、沈み込み帯での底づけの位置を決定するための岩石学、温度-圧力径路を推定するための岩石学は、構成地質体間の関係の理解を飛躍的に進展させた。このような進歩の中で、今日の重要な課題のひとつは、今日までかなりの進展をみせているものではあるが、構成地質体の微細構造解析を基礎とする、現在観察される構造関係の形成にいたる運動像を解明することである。三波川帯のナップの運動像、秩父帯とよばれている地質帯、四万十帯最上部の地質帯のナップ群の運動像を解明することである。このような観点からの研究を通して、この研究では、概略以下の諸点が明らかにされてきた。沈む込む地質帯は浅い位置の付加体をテクトニック・エロ-ジョンにより深部まで持ち込むこと(三波川変成岩類の冬ノ瀬ナツプ構成地質体の圧力-温度-時間経路の解析による)。沈み込み帯での底付けの機構・運動像(沢ヶ内ナップの運動像の解析による)。高圧変成岩はプレートの力学境界にそって上昇すること(猿田-冬ノ瀬-沢ヶ内ナップと坂本ナップとの接合の意味の解析による)。高圧変成岩類の上昇する沈み込み帯チャネルの構造(外帯ナップ群の圧力-温度-時間-変形経路の解析による)。西南日本の地体構造論は、近年多様多岐にわたる分野の研究の進展を背景として、急速に新しい展開をみせようとしている。このような展開の中で、鍵的位置をしめる地質体が三波川帯であった。いうまでもなく三波川帯は高圧変成岩であり、外帯の構成地質帯はいずれも付加体であるが、三波川変成岩はそれらよりははるかに沈み込み帯深部で形成されたものである。このため外帯のテクトニクスの研究は、沈み込み帯における高圧変成岩の上昇機構の解明という、今日世界的に注目を集めている課題をてがけることでもある。外帯の構成地質帯についての今日の地質構造論、化石・放射年代測定を基礎とする時代論、沈み込み帯での底づけの位置を決定するための岩石学、温度-圧力径路を推定するための岩石学は、構成地質体間の関係の理解を飛躍的に進展させた。このような進歩の中で、今日の重要な課題のひとつは、今日までかなりの進展をみせているものではあるが、構成地質体の微細構造解析を基礎とする、現在観察される構造関係の形成にいたる運動像を解明することである。三波川帯のナップの運動像、秩父帯とよばれている地質帯、四万十帯最上部の地質帯のナップ群の運動像を解明することである。このような観点からの研究を通して、この研究では、概略以下の諸点が明らかにされてきた。沈む込む地質帯は浅い位置の付加体をテクトニック・エロ-ジョンにより深部まで持ち込むこと(三波川変成岩類の冬ノ瀬ナツプ構成地質体の圧力-温度-時間経路の解析による)。沈み込み帯での底付けの機構・運動像(沢ヶ内ナップの運動像の解析による)。高圧変成岩はプレートの力学境界にそって上昇すること(猿田-冬ノ瀬-沢ヶ内ナップと坂本ナップとの接合の意味の解析による)。高圧変成岩類の上昇する沈み込み帯チャネルの構造(外帯ナップ群の圧力-温度-時間-変形経路の解析による)。西南日本外帯を構成する三波川帯、秩父帯について微構造解析を基礎に、そのテクトニクスの解明を行ってきた。三波川帯沢ケ内ナップの構造解析により、このナップが3つのサブナップから構成されていることを明らかにした。また含へマタイト塩基性片岩のアルカリ角内石の化学組成の解析を行ない、サブナップは圧力差を示し、サブナップの累重関係は圧力に関して不連続であることを明らかにした。石英組織を解析しサブナップの累重に関わる運動像を求めた。その結果、鉱物線構造にそって西むきのセンスで移動し累重したことを明らかにした。これによって三波川変成岩の上昇は、11kbから4kb深度まではtho way strees madelで説明できることが示された。井ノ内・大生院メランジュ、面木山ナップ、佐礼谷-蒲山-出石ナップの構造解析及び含ヘマタイト塩基性片岩の角内石の成長史の解析結果を基礎に、後2者は南へ移動する運動像を示し、前者は北へ移動する運動像を示し、早期の構造集積体を破壊するナップ群として形成されたが、これは付加体上層部におけるhorizontulductiteextesionを反映する現象として説明できることが示された。肱川時相の雁行褶曲群の小構造の解析が行われた。 | KAKENHI-PROJECT-04640705 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04640705 |
微構造解析を基礎とする西南日本外帯のテクトンクスの解明 | 小褶曲群の軸面片理の配列様式の解析から、その運動像とテクトニクスが検討され、左横ずれ剪断応力場で褶曲作用が進行したが、全体として南北圧縮場で行われ、大歩危カルミネーションと中七番カルミネーションは、北方下部から構造的つきあげによって伴われながら褶曲作用が進行したことを反映した現像であることが明らかにされた。肱川褶曲作用の後、三波川帯-秩父帯に雁行状石英脈群の形成を伴う変形作用があったが、この変形作用は、左横ずれ剪断応力場で行われたことが明らかにされた。南にむかって剪断性が低下し、秩父帯では南北圧縮の性格の強い応力場が発達したことが明らかにされた。西南日本外帯のテクトニクスを構成岩石の微細構造解析を基礎に構築しようとするのが本研究の課題である。平成5年度の前半において、この課題で達成した成果は、1)三波川帯において肱川時相の褶曲作用の運動像が、左横ずれ剪断応力場で三波川帯の下部へ北側の古領家-黒瀬川陸塊の構造貫入があったことによるトランスプレッシヴな現象であることを明らかにしたこと(公表論文1)、2)肱川時相の褶曲作用が、早期のフレクシュラル・フロウ型から後期のフレクシュラル・スリップ型へ転換したこと、転換時の物理的条件を流体包有物石英ファブリックから解析し、後者のひずみ像を解析した(公表論文2)、3)大洲時相のナップ群の運動像を、角閃石群の化学組成の分析結果を基礎に、辻時階には、北フェルゲンツであるに対して、大洲時階には、南フェルゲンツであることを明らかにし(公表論文4)、辻時階の褶曲作用の応力像を明らかにしたこと(公表論文3)、4)沢ケ内ナップを構成するサブナップ群の圧力構造を角閃石の化学組成の分析結果を基礎にして明らかにし、石英ファブリックから運動方向を解析して、サブナップ群の運動像を求めた(公表論文3)、5)沢ケ内ナップの底付けの過程に上位の変成岩類のナップ境界の移動があったこと,即ち上昇の過程にナップ境界は固定しないこと(公表論文5)などである。後半の研究成果は、1)シース褶曲の運動像を石英・角閃石ファブリックから解析したこと、2)冬ノ瀬ナップでのざくろ石の成長過程の石英ファブリックを解析したこと(論文印刷中-地質学雑誌)3)大歩危ナップ、坂本ナップ、沢ヶ内ナップの温度構造の炭質物のグラファイト化度による解析(論文印刷中-構造地質)、4)秩父帯南帯から四万十帯にかけての地質体の放射年代測定により、沈み込み開始から上昇にかかるまでの時間の決定などであるが、更に5)外帯付加体群の全体的運動像の解析を石英ファブリックを基礎に進め、論文投稿の準備中である。西南日本の地体構造論は、近年多様多岐にわたる分野の研究の進展を背景として、急速に新しい展開をみせようとしている。このような展開の中で、鍵的位置をしめる地質体が三波川帯であった。いうまでもなく三波川帯は高圧変成岩であり、外帯の構成地質帯はいずれも付加体であるが、三波川変成岩はそれらよりはるかに沈み込み帯深部で形成されたものである。このため外帯のテクトニクスの研究は、沈み込み帯における高圧変成岩の上昇機構の解明という、今日世界的に注目を集めている課題をてがけることでもある。外帯の構成地質帯についての今日の地質構造論、化石・放射年代測定を基礎とする時代論、沈み込み帯での底づけの位置を決定するための岩石学、温度-圧力径路を推定するための岩石学は、構成地質体間の関係の理解を飛躍的に進展させた。このような進歩の中で、今日の重要な課題のひとつは、今日までかなりの進展をみせているものではあるが、構成地質体の微細構造解析を基礎とする、現在観察される構造関係の形成にいたる運動像を解明することである。三波川帯のナップの運動像、秩父帯とよばれている地質帯、四万十帯最上部の地質帯のナップ群の運動像を解明することである。 | KAKENHI-PROJECT-04640705 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04640705 |
不均質核生成の臨界過冷度制御-希土類カルコゲナイト粒子による機能性材料の生産工学- | 本研究では不均質核生成の本質を明らかにするために、触媒(核生成誘因物質)によって誘発的に核生成される初晶の相違(初晶選択)に注意を払いながら、実験を行った。昨年度、Al_2O_3、Ti_2O_3およびTiNをほぼ一定量だけ晶出させた純FeおよびFe-Ni合金(Ni濃度:130mass%)の過冷度を系統的に測定した。この結果を踏まえ、今年度、TiN晶出量を変化させた純Fe, Fe-Ni合金およびFe-Cr-Ni合金(Cr+Ni濃度:130mass%)の過冷度を追加測定した。こうしてAl_2O_3、Ti_2O_3およびTiNを含む純Fe、Fe-Ni合金およびFe-Cr-Ni合金における一連のDSC熱解析から、不均質核生成に関するいくつかの重要な特徴がわかった。1.冷却中に現れる凝固・変態モードは、Fモード(δ相単相凝固)、FAモード(包晶凝固)、Aモード(δ相単相凝固)に分類される。モード変化および臨界過冷度ΔTは化学組成だけでなく、触媒の種類と量に大きく依存する。Cr添加はFモードを優先出現させ、ΔTを下げる。Ni添加はAモードを優先出現させ、ΔTを上げる。、ΔT値は概してTiN、Al_2O_3、Ti_2O_3の順に小さい。最も大きい触媒能を示したTiNに関し、"晶出量を増すと、例えば純FeではΔTは20°Cから4°Cまで低下する"という触媒晶出量の影響を初めて定量的に明らかにした。2.不均質核生成に対する最も重要な因子はcosθ、すなわち界面自由エネルギー比(γ_<CL>-γ_<SC>)/γ_<LS>である。より大きな触媒能はより小さな臨界過冷度、すなわち1に近いcosθに対応する。このときγ_<CL>【approximately equal】γ_<LS>、γ_<SC>【approximately equal】0を満足する。これは触媒(C)と初晶(S)間の構造類似を意味する。実際問題として、δ相初晶において、TiNのみ-特に晶出量が多い場合-が核生成への触媒としての実効を持ち、γ相初晶において、どれも実効を持たなかった。本研究では不均質核生成の本質を明らかにするために、触媒(核生成誘因物質)によって誘発的に核生成される初晶の相違(初晶選択)に注意を払いながら、実験を行った。昨年度、Al_2O_3、Ti_2O_3およびTiNをほぼ一定量だけ晶出させた純FeおよびFe-Ni合金(Ni濃度:130mass%)の過冷度を系統的に測定した。この結果を踏まえ、今年度、TiN晶出量を変化させた純Fe, Fe-Ni合金およびFe-Cr-Ni合金(Cr+Ni濃度:130mass%)の過冷度を追加測定した。こうしてAl_2O_3、Ti_2O_3およびTiNを含む純Fe、Fe-Ni合金およびFe-Cr-Ni合金における一連のDSC熱解析から、不均質核生成に関するいくつかの重要な特徴がわかった。1.冷却中に現れる凝固・変態モードは、Fモード(δ相単相凝固)、FAモード(包晶凝固)、Aモード(δ相単相凝固)に分類される。モード変化および臨界過冷度ΔTは化学組成だけでなく、触媒の種類と量に大きく依存する。Cr添加はFモードを優先出現させ、ΔTを下げる。Ni添加はAモードを優先出現させ、ΔTを上げる。、ΔT値は概してTiN、Al_2O_3、Ti_2O_3の順に小さい。最も大きい触媒能を示したTiNに関し、"晶出量を増すと、例えば純FeではΔTは20°Cから4°Cまで低下する"という触媒晶出量の影響を初めて定量的に明らかにした。2.不均質核生成に対する最も重要な因子はcosθ、すなわち界面自由エネルギー比(γ_<CL>-γ_<SC>)/γ_<LS>である。より大きな触媒能はより小さな臨界過冷度、すなわち1に近いcosθに対応する。このときγ_<CL>【approximately equal】γ_<LS>、γ_<SC>【approximately equal】0を満足する。これは触媒(C)と初晶(S)間の構造類似を意味する。実際問題として、δ相初晶において、TiNのみ-特に晶出量が多い場合-が核生成への触媒としての実効を持ち、γ相初晶において、どれも実効を持たなかった。本研究では不均質核生成の本質を明瞭にするために、触媒(核生成誘因物質/作用剤)によって誘発的に核生成された初晶の相違に注意を払いながら、実験的アプローチがなされた。工業用鋼では、Al_2O_3,Ti_2O_3およびTiNのような酸化物および窒化物が常に懸濁しており、凝固中、触媒として作用するかもしれない。こうして過飽和のためにAl_2O_3,Ti_2O_3およびTiNを含む純FeおよびFe-Ni合金の過冷度が系統的に測定された。Al_2O_3,Ti_2O_3およびTiNを含む純FeおよびFe-Ni合金(Ni濃度:1から29mass%)におけるDSC熱解析において、いくつかの重要な特徴がわかった。まず触媒、化学組成および核生成された初晶の間の関係が明らかにされ、それから臨界過冷度が界面自由エネルギーの観点から議論された。 | KAKENHI-PROJECT-13650797 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13650797 |
不均質核生成の臨界過冷度制御-希土類カルコゲナイト粒子による機能性材料の生産工学- | 1.これらの合金における冷却中の非平衡相の出現は、化学組成(Ni濃度)だけでなく用いた触媒の種類に大きく依存し、3つ場合に分類される。(1)凝固がδ相の単相状態で終了し、それからδ/γ変態を通じてγ相が形成される;(2)δ相の初晶の晶出後、L+δ+γ相の3相共存状態が包晶反応を通じて形成され、凝固が終了した後、それはγ相を形成する;(3)凝固がγ相の単相状態で終了する。2.不均質核生成過冷度に対する重要因子はcoSθ,すなわち界面自由エネルギーγ_<CL>、γ_<SC>およびγ_<LS>であることが明らかになった。特に大きな核生成能はより小さな臨界値の過冷度、すなわち1に近いcosθに対応する。このとき界面自由エネルギーに関し、γ_<CL>【approximately equal】γ_<LS>、γ_<SC>【approximately equal】0を満足する。これは触媒(C)と初晶固体(S)の構造類似を意味する。実際問題として、δ相の初晶において、TiNのみが核生成への触媒としての実効を持ち、そしてγ相の初晶において、それらのどれもを実効を持たなかった。本研究では不均質核生成の本質を明らかにするために、触媒(核生成誘因物質)によって誘発的に核生成される初晶の相違(初晶選択)に注意を払いながら、実験を行った。昨年度、Al_2O_3、Ti_2O_3およびTiNをほぼ一定量だけ晶出させた純FeおよびFe-Ni合金(Ni濃度:130mass%)の過冷度を系統的に測定した。この結果を踏まえ、今年度、TiN晶出量を変化させた純Fe, Fe-Ni合金およびFe-Cr-Ni合金(Cr+Ni濃度:130mass%)の過冷度を追加測定した。こうしてAl_2O_3、Ti_2O_3およびTiNを含む純Fe、Fe-Ni合金およびFe-Cr-Ni合金における一連のDSC熱解析から、不均質核生成に関するいくつかの重要な特徴がわかった。1.冷却中に現れる凝固・変態モードは、Fモード(δ相単相凝固)、FAモード(包晶凝固)、Aモード(γ相単相凝固)に分類される。モード変化および臨界過冷度ΔTは化学組成だけでなく、触媒の種類と量に大きく依存する。Cr添加はFモードを優先出現させ、ΔTを下げる。Ni添加はAモードを優先出現させ、ΔTを上げる。、ΔT値は概してTiN、Al_2O_3、Ti_2O_3の順に小さい。最も大きい触媒能を示したTiNに関し、"晶出量を増すと、例えば純FeではΔTは20°Cから4°Cまで低下する"という触媒晶出量の影響を初めて定量的に明らかにした。2.不均質核生成に対する最も重要な因子はcosθ、すなわち界面自由エネルギー比(γ_<CL>-γ_<SC>)/γ_<LS>である。より大きな触媒能はより小さな臨界過冷度、すなわち1に近いcosθに対応する。このときγ_<CL>【approximately equal】γ_<LS>、γ_<SC>【approximately equal】0を満足する。これは触媒(C)と初晶(S)間の構造類似を意味する。実際問題として、δ相初晶において、TiNのみ-特に晶出量が多い場合-が核生成への触媒としての実効を持ち、γ相初晶において、どれも実効を持たなかった。 | KAKENHI-PROJECT-13650797 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13650797 |
色彩を活用した食環境モデルの構築と有効性の検証 | 療養の場と日常の食環境に用いられる色彩に有意差はなく、色彩と主観評価、および味覚閾値との関連も個人差が大きかった。色彩を食環境に有効に活用するためには、意識的に対象の好む色彩や気分にあった色彩をタイムリーに用いることが重要であり、条件が整えば縦40×横30cm程度の小範囲の刺激でも効果を確認できた。また個々の語り促す情報と色彩を取り入れた絵画は、注視を誘導することによって食前の脳血流や口腔機能の向上につながった。療養の場と日常の食環境に用いられる色彩に有意差はなく、色彩と主観評価、および味覚閾値との関連も個人差が大きかった。色彩を食環境に有効に活用するためには、意識的に対象の好む色彩や気分にあった色彩をタイムリーに用いることが重要であり、条件が整えば縦40×横30cm程度の小範囲の刺激でも効果を確認できた。また個々の語り促す情報と色彩を取り入れた絵画は、注視を誘導することによって食前の脳血流や口腔機能の向上につながった。研究目的を達成するために3つの実施計画を立案し、以下の成果を得た。1.日本における食環境の実態調査と色彩解析Web上に公開された飲食店108のホームページにある食環境を色彩解析ソフトFeelimage Analyzerによって解析した。食材を除く、壁、テーブル、食器、テーブルクロス等の使用頻度の高い基本色を調査し、頻度の高い系統順に白、赤、黄、緑、黒があり、食欲を増進すると言われる暖色系の使用が多かった。色の比率は日本料理、中華料理、イタリアン等料理のジャンル別に差異があり、日本料理には黒、中華料理は赤が特徴であった。特に黒は日本でのみ食器の色として用いられていた。2.食環境の実態調査と色彩解析の国際比較研究協力者が収集した食環境を写したパンフレットや実際の映像等の色彩解析を上記1と同様の方法で行った。中国38、米国89の映像より、中国は赤、黄の比率が有意に高く、米国では白、赤、緑の比率が高かったが有意な特徴はなかった。いずれもテーブルクロスを含む食卓に黒を用いることはなかった。3.療養の場における食環境の実態調査と色彩解析日本の老人保健施設4、病院2のラウンジおよび食堂、ベッド上で食事をする入所者または患者のベッド周りの食環境を写真撮影し、上記1と同様の方法で色彩解析を行った。画像は、食材、食器、食卓、テーブル、その他の背景に区分し、すべての画像の面積比率を同一にして集計し、上記1および2と療養の場の色種類(量)で比較すると、療養の場は日常または飲食店の2040%の種類しか観察されず、統一化された食器や単色の壁、置かれた物品の少なさが影響していた。意図的に色彩を配置して独自に作成した絵画を環境要因として、認知症ケアの効果検証の基礎研究として、絵画による生理的・心理的影響を脳血流量、眼球運動、および主観的評価を行った。健康な成人女性8名を対象に、色やモチーフが多くストーリー性のある小学校校舎の風景を描いたミッケルアート(スプレーアートEXIN製)を見てもらい、脳機能活性の変化を実験的に調査した。実験は温湿度、照度を調整した同一環境で行い、測定は脳血流量(頭部近赤外光計測装置、日立HOT121B)、眼球運動(アイマークレコーダー、NacEMR-9)により行った。主観的評価は絵画への嗜好、見て感じたこと、覚えていることなどの自由記載内容分析により行った。その結果、絵画に対して「リラックスする」「生き生きする」「元気いっぱい」「活気がわく」と感じた快適群4名では、絵画を見たことで左脳血流量は0.22mM-mm、右0.24 mM-mm変化したが、感じなかった非快適群4名では左ー0.1 mM-mm 0、左ー0.09 mM-mmであった。眼球運動は、0.2秒以上の注視の総数、および回数に違いはなかったが見方には違いがあり、非快適群は偏りなく注視するのに対し、快適群は絵画中の特定の場所を有意に長く注視した。また、自由記載の文字数・項目数も快適群に多かった。色彩単独では得られなかった成果が、ストーリー性を持たせた色彩配置によって有意に得られたことは、色彩刺激の方法が無意識ではなく、「快い」「好き」と意識させることでより大きな効果が期待できることを示唆した。すなわち、絵画を快いと感じて注視し、何かを想起・記憶することを通して、脳血流量は増加し、語りの文字数を増加させる効果があることが明らかとなり、意識的に対象の好む情報を取り入れた絵画を提供し、効果的に注視を誘導ことが脳機能活性につながることが示唆された。意図的に色彩を配置して独自に作成した絵画を環境要因として、高齢者を対象とした主観的評価と脳血流データ解析を行った。絵画の色彩データベースは、高齢者の今の気分や気持ちを表現する色彩と気分変化の関係から作成した。対象とした高齢者46名が識別可能な12の色カードと二次元気分尺度(TDMS)の関係では、選ばれた370枚の色カードに性差、年齢差はなく、オレンジ、ピンク、水色、黄色、紫の順に多く、暖色系68.4%、寒色系31.6%であった。TDMSとの関係では、暖色系の活性度、安定度、覚醒度は寒色系より有意に高く、快適度には差はなかった。この成果をもとに会話を促し口腔環境を整えるための昔語りを促す絵画を作成し、その効果を脳血流と会話内容から調査した。 | KAKENHI-PROJECT-23390490 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23390490 |
色彩を活用した食環境モデルの構築と有効性の検証 | 絵画は研究協力者のイグジン橋口氏が作成し、会話データは録音内容から逐語録を作成し、テキストマイニング手法に基づき分析した。総会話文数は対象者2,459文、ファシリテーター2,510文であり、語彙の豊富さを示すタイプトークン比は0.28と0.25で、対象者の方が高かった。対象者は語彙が豊富で、様々な種類の単語を使用して会話をしていた。共起関係にある単語同士の頻度をもとにした係り受け関係分析では絵画にある要素の存在を示す係り受けの頻度が高かった。「釜」-「炊く」、「料理」-「作る」、「ご飯」-「炊く」などの食事に関する係り受けは、絵の中の料理に関する描写をきっかけに、母親の料理に関する話題や、利用者がどのような料理を作るか、ご飯を炊くときの合言葉など、行動に関する話題であった。脳血流の変化とTDMS、および会話解析の間には有意な関係はなかった。高齢者が好み、かつ活性度、安定度、覚醒度を上昇させる暖色系の色彩を用い、食を連想させるようなモチーフを用いた絵画は、自発的な会話を促進し、口腔機能を高める効果が期待できた。昨年度に作成した色彩データベースに基づく絵画を用い、介護老人保健施設の要介護高齢者9名(85.1±7.0歳)を対象に、発話促進援助による介入効果をクロスオーバー試験によって調査した。嚥下機能は、1口腔内湿潤度、2嚥下に要する時間(RSST3回目積算時間)、3口唇機能(口唇閉鎖力)、4呼気筋力、5舌の機能(オーラルディアドコキネシス:OD)で評価した。「発話」は、発声した単音節数で評価した。その結果のべ78回の測定データから『介入日』の嚥下時間は、前18.3・後16.0秒で、有意に短縮し(p<0.05)、口腔粘膜湿潤度の舌粘膜は、前25.3・後24.6%で、有意に減少した(p<0.01)。「発話」数は、『介入日』の序盤2,011個、中盤3,666個、終盤2,090個であり、『通常日』は序盤93個、中盤202個、終盤168個と差があった。10分間に発話による単音節2000個を超えるピークがあり、かつそのピークの位置が発話時間の中盤にあるときに最も効果的であった。さらに「発話」の音声別に出現割合は、歯茎音37.2%、両唇音20.2%、歯音10.3%、声門音9.1%、軟口蓋音3.5%、硬口蓋音3.1%、母音16%、不明瞭0.7%であり、パタカ訓練で使用されている両唇音、歯茎音、軟口蓋音は、「発話」音声全体の60.9%を占めた。この介入が機能回復訓練と同等の効果が得られたことから、発話促進援助を食前に活用することの意義が確認された。機能回復訓練の効果は科学的に検証されており広く臨床で活用されている。しかし、障害がなく機能の維持や嚥下の質向上を目指す高齢者には不向きであり、日常性の高い自然な会話を促進する援助に、色彩と食に関連したモチーフで構成する食環境を提供することの効果が確認できたことは、会話によるQOLの向上も期待できる。26年度が最終年度であるため、記入しない。テキストマイニングによる解析を担当する予定であった研究分担者の出産および育児休業に伴い、解析作業が遅れた。しかし、研究期間の延長により平成26年度予定と並行して、解析を進め、約6ヶ月遅れで平成25年度の目的を達成した。基礎看護学研究期間の延長により平成26年度予定と並行して、遅れていた解析を進め、約6ヶ月遅れで平成25年度の目的を達成した。平成26年度は予定どおり遂行しており、研究計画の変更はない。26年度が最終年度であるため、記入しない。3つの計画のうち2つは当初の計画以上に進展した。 | KAKENHI-PROJECT-23390490 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23390490 |
異波長重畳レーザビームと物質間の量子的・熱的相互作用 | 平成10年度から平成13年度までの研究成果の概要を以下に記す。1)アブレーション加工特性に及ぼすレーザ波長の影響調査各主材料にナノ秒パルスレーザを照射した場合のアブレーション穴あけ加工特性を調べた.照射したレーザ波長はQスイッチYAGレーザの第2高調波(λ=532nm),第3高調波(λ=355nm)及び第4高調波で(λ=266nm)である.アクリル樹脂を用いて穴あけ加工特性を調査した結果,第2高調波及び第3高調波ではナノ秒パルスにも関わらず穴周辺に熱影響部がみとめられること及びレーザの照射回数の増加と共に割れが発生し熱加工特有の現象を示すが,第4高調波では熱影響部は殆ど認められず量子加工的になることが確認された.また,レーザ照射中及び照射後のプラズマ発光強度の変化を調べ,プラズマと入射ビームとの相互作用が加工速度に大きく影響得ることを明らかにした.2)異波長パルスレーザ重畳照射時における各種材料の溶融特性の解明基本波パルスYAGレーザ(波長:1064nm)と第2高調波QスイッチYAGレーザ(波長:532nm)を各種金属表面に照射し,その場合の溶融特性を詳細に解明した.その結果,光の反射率の高い純銅や純アルミニウムではピーク出力5kW級の基本波YAGレーザでは全く溶融しないが,第2高調波を重畳すると基本波YAGレーザビームの吸収が促進され溶融断面積が3割以上拡大することが明かとなった.銅およびアルミニウム以外の材料でも2波長を重畳することにより溶融効率が向上することを確認した.さらに,極薄板(0.1mm以下)の重ね溶接の場合,基本波YAGレーザでは溶接できないのに対し,異波長重畳レーザ照射では高反射率の純銅でも安定に溶接できることが明らかになった.3)レーザ溶接におけるキーホールダイナミックスの直接観察連続およびパルスレーザ溶接におけるキーホール挙動を高速度X線透視装置とプラズマ観察用の高速度ビデオを同期させて高時間分解能観察を行った.その結果,連続レーザ溶接では一定レーザ出力にも関わらずキーホールの深さおよび形状は速い周期で不安定に変動し,これが特有のポロシティ形成を惹起することを明らかにした.またパルスレーザ溶接では,レーザ出力を急激に減衰させるとキーホールが崩壊し,金属蒸気とシールドガスがキーホール底部に閉じこめられ特有のポロシティが形成され,この防止にはパワー減衰時に適切な波形制御が有効であることを示した.平成10年度から平成13年度までの研究成果の概要を以下に記す。1)アブレーション加工特性に及ぼすレーザ波長の影響調査各主材料にナノ秒パルスレーザを照射した場合のアブレーション穴あけ加工特性を調べた.照射したレーザ波長はQスイッチYAGレーザの第2高調波(λ=532nm),第3高調波(λ=355nm)及び第4高調波で(λ=266nm)である.アクリル樹脂を用いて穴あけ加工特性を調査した結果,第2高調波及び第3高調波ではナノ秒パルスにも関わらず穴周辺に熱影響部がみとめられること及びレーザの照射回数の増加と共に割れが発生し熱加工特有の現象を示すが,第4高調波では熱影響部は殆ど認められず量子加工的になることが確認された.また,レーザ照射中及び照射後のプラズマ発光強度の変化を調べ,プラズマと入射ビームとの相互作用が加工速度に大きく影響得ることを明らかにした.2)異波長パルスレーザ重畳照射時における各種材料の溶融特性の解明基本波パルスYAGレーザ(波長:1064nm)と第2高調波QスイッチYAGレーザ(波長:532nm)を各種金属表面に照射し,その場合の溶融特性を詳細に解明した.その結果,光の反射率の高い純銅や純アルミニウムではピーク出力5kW級の基本波YAGレーザでは全く溶融しないが,第2高調波を重畳すると基本波YAGレーザビームの吸収が促進され溶融断面積が3割以上拡大することが明かとなった.銅およびアルミニウム以外の材料でも2波長を重畳することにより溶融効率が向上することを確認した.さらに,極薄板(0.1mm以下)の重ね溶接の場合,基本波YAGレーザでは溶接できないのに対し,異波長重畳レーザ照射では高反射率の純銅でも安定に溶接できることが明らかになった.3)レーザ溶接におけるキーホールダイナミックスの直接観察連続およびパルスレーザ溶接におけるキーホール挙動を高速度X線透視装置とプラズマ観察用の高速度ビデオを同期させて高時間分解能観察を行った.その結果,連続レーザ溶接では一定レーザ出力にも関わらずキーホールの深さおよび形状は速い周期で不安定に変動し,これが特有のポロシティ形成を惹起することを明らかにした.またパルスレーザ溶接では,レーザ出力を急激に減衰させるとキーホールが崩壊し,金属蒸気とシールドガスがキーホール底部に閉じこめられ特有のポロシティが形成され,この防止にはパワー減衰時に適切な波形制御が有効であることを示した.平成10年度は「短パルスレーザ照射時における各種材料のアブレーション各現象の時間的・空間的高分解能計測」を主として行った.その概要を以下に示す.1)アブレーション加工特性に及ぼすレーザ波長の影響調査各主材料(アクリル樹脂,黒鉛,金属シリコン,ガラスエポキシ樹脂,ステンレス)にナノ秒パルスレーザを照射した場合のアブレーション穴あけ加工特性を調べた.照射したレーザ波長はQスイッチ | KAKENHI-PROJECT-10305055 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10305055 |
異波長重畳レーザビームと物質間の量子的・熱的相互作用 | YAGレーザの第2高調波(λ=532nm),第3高調波(λ=355nm)及び第4高調波で(λ=266nm)で照射エネルギーはmJからmJの範囲でパルス時間は2-8nsである.アクリル樹脂を用いて穴あけ加工特性を調査した結果,第2高調波及び第3高調波ではナノ秒パルスにも関わらず穴周辺に熱影響部がみとめられること及びレーザの照射回数の増加と共に割れが発生し熱加工特有の現象を示すが,第4高調波では熱影響部は殆ど認められず量子加工的になることが確認された.2種類の黒鉛,すなわち熱伝導率が等方性を有する黒鉛と異方性を有する黒鉛を用いて除去加工特性を調べた.先ず,除去量と波長の関係では,いずれの材料でも波長が短くなるほど除去量が少なくなる.一般に波長が短い程ビーム吸収率が高くなるため除去量は多くなるはずであるが,実験の結果はこれに反するものである.また,熱伝導率が等方性黒鉛の1/50の異方性黒鉛の除去量は等方性黒鉛よりも少ないことが明らかになり,熱伝導論から類推される結果と正反対の現象が明らかとなった.この原因はレーザ照射中に発生するプラズマと入射ビームとの相互作用に起因するものと考え,次項の実験を遂行した.2)アブレーション加工時のレーザ誘起プラズマの定性的分光計測2種の黒鉛についてレーザ照射中及び照射後のプラズマ発光強度の変化を調べた.この結果,熱伝導率の悪い異方性黒鉛ではプラズマ発光が等方性黒鉛よりも早く始まり,かつ発光強度も遥かに強い.この事実は異方性黒鉛の方がレーザ照射初期に急激に蒸発し高圧プラズマが形成されるため,レーザ照射の後半過程ではプラズマ吸収のため入射ビームが試料表面に届かなくなるため加工が進まなくなることが明らかとなった.また,ステンレスにナノ秒パルスレーザを照射した場合,照射後半過程から強い連続スペクトルが現れ,その後レーザ照射後可成りの時間を経過した後連続スペクトルは次第に輝線スペクトル(鉄の中性線)に変化することが初めて観察された.なお,当初予定していた「アブレーション加工部変質層のミクロ材料科学的解明」についても実験を進めたが,上記1)の実験に大半の時間をとられ結論を出すには至らなかった.平成11年度は「異波長パルスレーザ重畳照射時における各種材料の溶融特性の解明」および「レーザ溶接におけるキーホールダイナミックスの直接観察」を主として行った.その概要を以下に示す.1)異波長パルスレーザ重畳照射時における各種材料の溶融特性の解明基本波パルスYAGレーザ(波長:1064nm)と第2高調波QスイッチYAGレーザ(波長:532nm)を各種金属表面に照射し,その場合の溶融特性を詳細に解明した.その結果,光の反射率の高い純銅や純アルミニウムではピーク出力5kW級の基本波YAGレーザでは全く溶融しないが,第2高調波YAGレーザでは平均出力が40Wと低いにも関わらずアスペクト比の高い溶融部が得られること,および2波長を重畳すると基本波YAGレーザビームの吸収が促進され溶融断面積が3割以上拡大することが明かとなった.銅およびアルミニウム以外の材料でも2波長を重畳することにより溶融効率が向上することを確認した.2)レーザ溶接におけるキーホールダイナミックスの直接観察連続レーザ溶接およびパルスレーザ溶接におけるキーホール挙動とプラズマ挙動との相関性を高速度X線透視装置とプラズマ観察用の高速度ビデオを同期させて高時間分解能観察を行った. | KAKENHI-PROJECT-10305055 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10305055 |
統合化過程のヨーロッパにおけるEUの異文化間教育政策に関する研究 | 本研究は、EUが実施してきた教育計画(事業)を、多文化間・異文化間の共生への試みとして、すなわち異文化間教育(政策)研究という視点によって検討し、その現状と課題を明らかにすること試みてきた。その中で、今日、いよいよ統合が現実の段階に入りつつあるEUでは共通教育政策において「異文化間教育(Intercultural Education)」という考え方が重要な役割を持つつつあるということが明らかになった。具体的には以下のような変化が重要である。すなわち、1.異文化間教育は当初、ヨーロッパ域外からの移民や外国人の子どもを対象とするマイノリティの教育として出発したが、統合の進捗により域内各国の他国に在住する子どもたちへの教育の提供という課題、さらにそうした外部からの移動者とその子どもたちを受け入れる各国「国民」に教育をも課題とするまでに広がりをもつようになってきたこと。2.この過程で、異文化間教育がEUの進める共通教育政策の単なる「一部」をなすものという位置から、EUの教育政策そのものの原理になりつつあるということ。3.今後、共通政策の原理としての異文化間教育という考え方が、各加盟国の個別的な教育政策との間で、どのような調整のもとに実践化されていくのかが現実の問題となりつつあること。4.また、こうした異文化間教育はその課題として、域内の歴史的・言語的・地域的マイノリティであるジプシー/ロマ、職業旅行者、非定住者の教育問題についてもその視野に入れて、共通政策を策定しよとしていること、などである。3年計画の初年度に当たる本年度は、主としてEUの移民教育関係資料及び異文化間教育関係資料・報告書、欧州審議会の異文化間教育関係資料・報告書を収集し、整理を行った。詳しい資料分析は次年度以降に行う予定であるが、当面の資料分析により、概略、次のようなことが明らかになった。1.EU及び欧州審議会における異文化間教育は、当初の1970年代における移民の子どもたちへの教育の一時的な対応から、今日、異文化間教育を追究する方向にあり、このこと自体がヨーロッパにおける政策担当者の共通理解となっていること。2.ヨーロッパの異文化間教育は、多文化社会が現実化する各国にとって不可欠の教育であるということが意識され、各国とも精力的に異文化間教育の実践とその評価を行っていること。3.とくにその場合、青少年期(15歳から25歳)における教育と教師養成及び再教育(継続教育)が重視されつつあること。4.異文化間教育には、一方で、言語的、宗教的、文化的マイノリティへの教育(これには移民に基づくマイノリティと旧来からの地域的マイノリティ、ジプシー、職業旅行者などのいわば歴史的マイノリティ)とマジョリティとしての受入側に対する教育の双方が含まれており、とくに最近は異文化共生の成功のためには後者の教育の正否が大きいことが意識されていること。次年度にはこうした成果をまとめた上で、現地に赴き、関係分野の専門家・研究者によるレビューをうけ、このような知見の深化、発展を期する予定である。3年計画の第2年度度に当たる本年度は、昨年度において収集したEUの移民教育関係資料及び異文化間教育関係資料・報告書、欧州審議会の異文化間教育関係資料・報告書の整理、分析を行った。この分析により、概略、次のようなことが明らかになった。以下に述べることは、EUへの統合が通貨統合をはじめとして一層現実化するヨーロッパにおいて、各国の教育を従来型の個別の国民教育のまま維持するのではなく、何らかの形でEUとしての共通の理解のうえに再構築しなければならないという、参加各国の課題意識に基づいての試みであるといえる。1.異文化間教育(intercultural education)は、ヨーロッパ域外からの移民の子どもたちへの一時的な教育的対応から、各国の国民の移動の自由化に基づく異文化間理解の必要性から導がれるヨーロッパにおける教育政策担当者の共通理解となりつつあること。2.このため、多文化社会が現実化する各国にとって不可欠の教育であるということが意識されることにより、各国とも異文化間教育の実践とその評価を精力的に行っていること。3.異文化間教育には、一方で、言語的、宗教的、文化的マイノリティへの教育(これには移民に基づくマイノリティと旧来からの地域的マイノリティ、ジプシー、職業旅行者などのいわば歴史的マイノリティ)とマジョリティとしての受入側に対する教育の双方が含まれており、とくに最近は異文化共生の成功のためには後者の実現が大きく影響することが意識されていること。次年度にはこうした成果をとりまとめ、報告書を作成する予定である。本研究は、EUが実施してきた教育計画(事業)を、多文化間・異文化間の共生への試みとして、すなわち異文化間教育(政策)研究という視点によって検討し、その現状と課題を明らかにすること試みてきた。その中で、今日、いよいよ統合が現実の段階に入りつつあるEUでは共通教育政策において「異文化間教育(Intercultural Education)」という考え方が重要な役割を持つつつあるということが明らかになった。具体的には以下のような変化が重要である。すなわち、1.異文化間教育は当初、ヨーロッパ域外からの移民や外国人の子どもを対象とするマイノリティの教育として出発したが、統合の進捗により域内各国の他国に在住する子どもたちへの教育の提供という課題、さらにそうした外部からの移動者とその子どもたちを受け入れる各国「国民」に教育をも課題とするまでに広がりをもつようになってきたこと。2.この過程で、異文化間教育がEUの進める共通教育政策の単なる「一部」をなすものという位置から、EUの教育政策そのものの原理になりつつあるということ。 | KAKENHI-PROJECT-09871047 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09871047 |
統合化過程のヨーロッパにおけるEUの異文化間教育政策に関する研究 | 3.今後、共通政策の原理としての異文化間教育という考え方が、各加盟国の個別的な教育政策との間で、どのような調整のもとに実践化されていくのかが現実の問題となりつつあること。4.また、こうした異文化間教育はその課題として、域内の歴史的・言語的・地域的マイノリティであるジプシー/ロマ、職業旅行者、非定住者の教育問題についてもその視野に入れて、共通政策を策定しよとしていること、などである。 | KAKENHI-PROJECT-09871047 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09871047 |
試薬の特性を活用した生理活性天然物の効率的合成法の開発 | 生体機能分子の探索・創製においては、その誘導体合成をも容易にするような簡便かつ効率的な合成法の確立が強く望まれる。古来より、イソキノリン類やインドール類を始めとするアルカロイド、さらには多くのテルペン類には興味ある種々の生理活性を示す化合物が知られている。しかしながら、それらの合成においては多段階を要したり、また複雑な試薬や反応条件等を必要とするものが多い。今年度の研究においては、我々の開発したヨウ化サマリウムによる位置選択的炭素-窒素結合開裂反応を鍵反応として用いることにより、α、α-二置換アミノ酸であるデオキシダイシベタインのキラル合成および強力な鎮痛活性を有するアファノルフィンのキラル合成に成功した。アファノルフィン誘導体の簡易合成法の確立は、今後オピオイド受容体選択的鎮痛薬の探索に有用な手段を提供するものと考えられる。また、コバルトカルボニルを反応剤とするエンイン環化を鍵反応として、潜在的鎮痛薬として期待されるインカルビリンの立体選択的合成も達成することが出来た。本合成はオピオイドとは異なったメカニズムを有する新たな鎮痛薬の開発に繋がる可能性を秘めている。上記合成は用いた試薬の特性を有効に活用したものである。一方、海洋産物の一種として単離されたウピアールはビシクロ[3.3.1]ノナン骨格を有する特異なテルペンである。本化合物の合成においては、アリルシランの分子内カルボニルーエン反応を基盤とすることにより、15工程、総収率10%以上で目的を達成することが出来た。この反応はパラトルエンスルホン酸を用いるという極めて温和かつ効率的なものであり、今後の更なる発展が期待できるものである。生理活性アルカロイドの代表的なものにイソキノリンアルカロイドがある。さらにこのアルカロイド群には、アポルフィンアルカロイドの前駆体であるプロアポルフィンや新規骨格を有するアンノスクワリンさらにはモルフィナンジエノンなど、基本骨格としてシクロヘキサジエノン構造やスピロシクロヘキサジエノン構造を持つものが知られている。これら化合物の合成に関して、従来はファリシアン化カリウムや二酸化マンガンを用いたフェノールオキシデーション或いは光反応などが主に用いられていたが、収率や工程数の面で改善の余地が残されていた。今年度はこれらアルカロイドの短工程かつ一般的合成法の確立を目指し、試薬の特性を活用するということから、超原子価ヨウ素試薬を用いた新規炭素-炭素結合形成反応を基盤とするスピロシクロヘキサジエノン構造の効率的合成法の開発を検討した。すなわち、エナミドとフェノールの酸化反応を鍵反応として超原子価ヨウ素試薬を用いたところ、期待した炭素-炭素結合が効率良く形成されることが判明した。本反応を応用してプロアポルフィンアルカロイドであるステファリンやプロヌシフェリンの合成に成功し、また、特異な構造を有するアンノスクワリンの最初の合成をも達成することが出来た。一方、ルテニウムカルベン錯体の特性を利用した閉環メタセシス反応を鍵反応として、血糖降下作用を有することから民間薬として用いられているピロリチジニル-α,β-不飽和γ-ラクトン構造を有するパンダマリラクトニンの合成をも検討した。本合成においては対応するテトラエン化合物の閉環メタセシス反応により、2つの連続する複素5員環化合物を一工程で構築することが可能になった。生体機能分子の探索・創製においては、その誘導体合成をも容易にするような簡便かつ効率的な合成法の確立が強く望まれる。古来より、イソキノリン類やインドール類を始めとするアルカロイド、さらには多くのテルペン類には興味ある種々の生理活性を示す化合物が知られている。しかしながら、それらの合成においては多段階を要したり、また複雑な試薬や反応条件等を必要とするものが多い。今年度の研究においては、我々の開発したヨウ化サマリウムによる位置選択的炭素-窒素結合開裂反応を鍵反応として用いることにより、α、α-二置換アミノ酸であるデオキシダイシベタインのキラル合成および強力な鎮痛活性を有するアファノルフィンのキラル合成に成功した。アファノルフィン誘導体の簡易合成法の確立は、今後オピオイド受容体選択的鎮痛薬の探索に有用な手段を提供するものと考えられる。また、コバルトカルボニルを反応剤とするエンイン環化を鍵反応として、潜在的鎮痛薬として期待されるインカルビリンの立体選択的合成も達成することが出来た。本合成はオピオイドとは異なったメカニズムを有する新たな鎮痛薬の開発に繋がる可能性を秘めている。上記合成は用いた試薬の特性を有効に活用したものである。一方、海洋産物の一種として単離されたウピアールはビシクロ[3.3.1]ノナン骨格を有する特異なテルペンである。本化合物の合成においては、アリルシランの分子内カルボニルーエン反応を基盤とすることにより、15工程、総収率10%以上で目的を達成することが出来た。この反応はパラトルエンスルホン酸を用いるという極めて温和かつ効率的なものであり、今後の更なる発展が期待できるものである。 | KAKENHI-PROJECT-18032077 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18032077 |
ナットウキナーゼによる血栓溶解作用についての研究 | 日本の伝統食品納豆より分離された新規の線溶酵素ナットウキナーゼは分子量約2万,等電点8.6で,血栓(フィブリン)に対する強力な分解活性の他,プラスミン基質であるH-D-Val-Leu-Lys-pNAへの反応性を示した。しかし,プラスミンのタイトレーターp-nitrophenyl-guanidinobenzoate(NPGB)には働かず,N-trans-cinnamoylimidazoleによるタイトレーションで53.0%activeであった。NKをLys-peptidase処理して得られた9個のペプチドを分析し、NKはN末端にAlaを持ち,S-S結合のない27個のアミノ酸からなるセリン酵素であること,従ってこれまでのいかなる線溶酵素とも異なり,分子内に“kringle"を持たない一本鎖ポリペプチド構造であることを明らかにした。今後さらに例数を増やし検討する必要があるが,以上の結果よりNK(あるいはNK-rich納豆)は血栓症の治療剤として,あるいは予防目的の機能性食品素材としてその応用開発が大いに期待できる。日本の伝統食品納豆より分離された新規の線溶酵素ナットウキナーゼは分子量約2万,等電点8.6で,血栓(フィブリン)に対する強力な分解活性の他,プラスミン基質であるH-D-Val-Leu-Lys-pNAへの反応性を示した。しかし,プラスミンのタイトレーターp-nitrophenyl-guanidinobenzoate(NPGB)には働かず,N-trans-cinnamoylimidazoleによるタイトレーションで53.0%activeであった。NKをLys-peptidase処理して得られた9個のペプチドを分析し、NKはN末端にAlaを持ち,S-S結合のない27個のアミノ酸からなるセリン酵素であること,従ってこれまでのいかなる線溶酵素とも異なり,分子内に“kringle"を持たない一本鎖ポリペプチド構造であることを明らかにした。今後さらに例数を増やし検討する必要があるが,以上の結果よりNK(あるいはNK-rich納豆)は血栓症の治療剤として,あるいは予防目的の機能性食品素材としてその応用開発が大いに期待できる。申請者の須見らは我が国の伝統的発酵食品である納豆より新規の線溶酵素(Nattokinase:NK)を発見し,国際的共同研究でその経口投与によって血中線溶活性の亢進と血管内血栓の溶解を証明してきた。須見,浜田は(株)JCRの協力のもとでNKを完全純化することに成功し,その一次構造決定を完了した。NKは従来のウロキナ-ゼ,組織プラスミノ-ゲンアクチベ-タ-などではみられなかった一本鎖ポリペプチド構造(275個アミノ酸)であった。中島・赤木はNKの持つ性質,特にフィブリンの溶解作用という生理面に焦点をあて検討した結果,NKは極めてフィブリン親和性が高く,また他の線溶酵素ではみられない強い直接の分解活性を持つことを明らかにした。さらに,各種合成アミド基質を用いた比較実験により(HーDーValーLeuーLysーpNAプラスミン基質)に最も高い特異性を示すことを証明した。経口化に,より適したNK産生量が高く,ビタミンK産生量の低い菌株を日本各地のワラより分離し,総数2700株の中からNGー124を分離した。須見らは,これまで一連の線溶酵素を用いた動物への経口投与実験の経験を生かし,粗標品ながらボランティアへのNKの経口投与実験を行い,明らかに長時間引き続く血中線溶亢進効果を各種パラメ-タ-(ELT,EFA,FDP,tーPA)で確認した。須見らは,宮崎医大.生理学教室の協力のもとに血栓モデルの動物を作製しin vivoでのNKの効果を試験し,血管造影でNKのイヌ血栓溶解を確認した。また,ボランティア投与用のNRN調整を終え,カプセル化条件をも決定した。中島,浜田らは純化したNK(134.7U/mg蛋白)のキネティックスを検討した。合成基質H-D-Val-Leu-Lys-pNaに対するKm値(1.7×10^<-2>M)は高かったものの,活性分子(N-trans-cinnamoylimidazooleを用いてtitration可能であった)当りの血栓(フィブリン)溶解能はplasminに近い強い活性を示すこと,また血漿中で分子量約4万の蛋白との新しい活性複合体を形成することを確認した。純化したNKにはGlu-plasminogen活性化能はなかったが,現在第二世代の血栓溶解剤として開発されているpro-urokinase(SCUPA)に対する活性化能のあることがわかった。即ち,NKの線溶発現機序の一つに,これまでKlockingのブタ耳の潅流実験よりNKの血管系への影響(内皮からのplasminogen activator放出)が推測されていたが,それに加えて血中でのSCUPA→μ-PAを介するplasmin形成の重要性が証明された。NKの線溶発現は血栓モデルのイヌを用いたanigiographyの結果からも確認された。その他,須見らは納豆中に分子量1-10万の線溶系への影響物質の存在を認めた。poly-Glu(分子量6,000-90,000)に線溶系賦活,poly-L-Arg,poly-L-Lys及びpoly-(Lys-Ala-Glu-Tyr)に抑制活性が確認された。 | KAKENHI-PROJECT-02558013 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02558013 |
ナットウキナーゼによる血栓溶解作用についての研究 | 須見,KlockingらはNK活性2,100U/gのカプセルを調整し,家兎への長期投与実験を行い,血中TPAと共にMihara法による腎組織tissueplasminogen activator(t-PA)も有意に増加することを確認した。さらに,臨床実験としてNKカプセルの静脈血栓の患者への投与効果を検討し,赤木が血清FDP及びt-PA抗原量を測定し,それらの有意な上昇と,臨床的にも炎症及び疼痛の減少結果を認めた。また,現在NRNをバル-ン療法後の心筋梗塞患者に投与し,再梗塞に対する予防効果があるか否かを検討中である。須見は純化したNKの生体内での作用機序解明のため,静注投与後の分子形態の変化を免疫学的及び酵素学的手法で検討した。その結果,血中で分子量約2.5万のNKが容易に血漿蛋白との複合体を形成し約4.5万の分子に変化すること,それが血中でより安定且つ阻害物質の影響を受けにくく,血中線溶亢進に働き易いことを証明した。浜田,中島らは既に我々によって確立されたClot lysis法による市販納豆中のNK力価検定を高純度NKを標準品として行い,3,000-24,000単位/100gと標品間で大きなバラツキのあることを確認した。また,実験室とパイロットプラントのレベルで,同じ菌株でも活性に大きな差が認められ,発酵条件がNK産生に重要であることを明らかにした。赤木,須見らは等電点電気泳動法を用いて各種納豆中のNKを検定した結果,納豆中にはNKとしてpl8.7以外に少なくとも5種類の異なる分子フォームの存在することを明らかにした。須見,赤木らは納豆中に我々が発見した線溶賦活物質であるpoly-Gluを含むNKカプセルを調製し,ラットに3ケ月という比較的長期間の経口投与実験を行った結果,ELTの短縮及びpyro-Glu-Gly-Arg-pNAアミノダーゼ分解活性の上昇という血中線溶亢進を確認したが,APTT,ReCa^<++>-Tの短縮といった凝固系の変化は認めなかった。須見らは宮崎医大,倫理委員会の許可のもとに19人のvolunteerに純化したNKの腸溶カプセル投与実験を行い,血漿ユーグロビン溶解活性の亢進を確認した。しかし,TPA抗原量あるいはPAI活性等の変化はなく,さらに腸溶カプセル調製の検討が必要であることも判った。Klocking,須見らは川崎医大循環器内科の協力のもとに高齢の心房細動患者でのNK投与実験を開始し,現在その臨床データーを解析中である。 | KAKENHI-PROJECT-02558013 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02558013 |
災害を契機とした保育施設の再配置に関する研究 | 本研究では,災害を契機とした保育施設の再配置(移転,統廃合など)の実態とその有効性を検証することで,災害による地域構成の変化局面における保育施設計画のあり方を示すことを目的とする。被災後,人口構成の変化や復興事業に伴い地域構成が大きく変化する中,保育施設が地域の中でどのように位置づけられ,またどのような事業スキームを活用しながら再配置計画が行われたのか,また再配置にされたことによる地域の中での役割の変化について災害前と比較しながら検証する。本研究では,災害を契機とした保育施設の再配置(移転,統廃合など)の実態とその有効性を検証することで,災害による地域構成の変化局面における保育施設計画のあり方を示すことを目的とする。被災後,人口構成の変化や復興事業に伴い地域構成が大きく変化する中,保育施設が地域の中でどのように位置づけられ,またどのような事業スキームを活用しながら再配置計画が行われたのか,また再配置にされたことによる地域の中での役割の変化について災害前と比較しながら検証する。 | KAKENHI-PROJECT-19K15162 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K15162 |
再燃前立腺がん治療におけるQOL評価と経済評価を統合した意志決定支援ツールの開発 | 【研究目的】わが国においても増加傾向にある前立腺がんは、治療が長期に亘ることが多いため、治療には臨床面、QOL面、経済面に配慮した合理的な意志決定が必要となる。特に、内分泌療法に抵抗性を示す進行前立腺がん(HRPC)は、治療に難渋することが多く、臨床判断には生存期間、奏効率などの指標に加え、QOLと経済面の検討が欠かせない。本研究は、再燃前立腺がんに対する治療法を総合的に評価するためのツールの開発を目的とする。【対象と方法】早期及び進行性前立腺がんの治療についてQOL面と経済面を検討した。前者は大学病院を含む4施設において、前立腺全摘除術を受けた患者を対象に、SF-36、UCLA-PCI、IPSS(尿失禁以外の排尿症状の把握)を用いてQOLを測定した。後者はパクリタキセル(PTX)とリン酸エストラムスチン(EMP)の併用療法(TE療法)を行った患者のQOLをEORTC前立腺がんQOL調査票とEuroQolで把握した。医療費は治療期間中の診療報酬明細書を分析した。【結論】1)限局性前立腺がんにおける手術療法後のQOLは良好に保たれる。術後尿失禁は継続するが、術後6ヶ月以降は軽度であり、患者が受容できる範囲と考えられる。2)手術後はEDを認め、特に若年層においてはその心理的負担感は大きく、今後の課題である。3)前立腺全摘術後の排尿機能の評価では、前立腺による閉塞症状は改善するが、膀胱刺激症状は改善新しない。4)前立腺全摘術の医療費は約150万円であり、進行がんであるほど高額となる。施設間格差も大きい。5)進行性前立腺がん患者のQOLは、治療後も比較的よく保たれるが、再燃前立腺がん患者のQOLは低下する。6)TE療法後のQOLは改善を認め、臨床的治療効果の不良群においてもQOLは比較的保たれる。7)HRPCに対するTE療法は、QOLの面からも有効と考えられる。目的:進行性前立腺がんは内分泌療法が奏効し良好な治療効果が期待できるが、再燃をきたすと治療に難渋する。本研究では再燃前立腺がんに対するエストラムスチンを中心とした治療とシスプラチン(CDDP)少量療法の治療効果についてQOLと経済の両面から検討した。対象と方法:東北大学において1995年1月2002年12月までに進行性前立腺がんと診断し、内分泌療法を施行しその後ホルモン不応性となった症例を対象とし、倫理委員会承認のもと、主治医を介して調査した。再燃後の治療は(1)エストラムスチン治療群、(2)CDDP治療群、(3)他のホルモン療法群に分けた。QOL調査票はEORTC-Prostate CancerQOLとEuroQol (EQ-5D)日本語版を用い、経済面はレセプトから初診時以降の医療費各項目を累積した。結果:回答率85.7%(12/14例)、年齢:71.5歳(中央値)、観察期間:32.5ヶ月(同)、受診時PSA:617.9ng/ml(同)、stage:C 4例、D1 2例、D2 6例、病理:中分化8例、高分化4例、治療期間:エストラムスチン8.5ヶ月、CDDP 22ヶ月、その他14.7ヶ月。性機能を除いたQOL各因子で、その他群はエストラムスチン群とCDDP群に比して良好である。エストラムスチン群とCDDP群は差なし。経済面は、CDDP群は他群に比して高値(特に投薬)である。結論:1)再燃前立腺がん患者のQOLは比較的高く保たれていた。しかし疼痛の有無でQOLに差が見られることからと疼痛対策を含めた治療が必要と考えられる。2)請求点数の約半分を注射が占め、投薬が約1/4。治療期間で区切ると診断時(1年目)に最も多く費用がかかり、その後2年目、3年目と低くなる傾向が見られ、4年目以降は3年目とぼぼ同じ総医療費となる。今後は多施設共同研究により前向き調査を実施の予定である。目的:進行性前立腺癌の治療には内分泌療法が奏効し、良好な治療効果が期待できるが、内分泌療法に抵抗性(HRPC)を示すと治療に難渋することが多く、根治よりもQOLの向上が重要となる。今年度は、近年注目されているタキソイド系抗癌剤(DOC)の効果について、QOL面と経済面から従来の治療法と比較検討する。対象と方法:東北大学泌尿器科において2003年112月までにHRPCとなり、その後ドセタキセル点滴投与及びエストラムスチン内服による治療(DOC+EMP)を施行した9例。倫理委員会承認の下、QOL調査は、主治医から外来受診時に調査票(EORTC日本語版およびEQ-5D日本語版)を渡して郵送により回収する方法、経済評価は、診療報酬明細書により実施した。結果:患者の年齢は71.5歳(中央値)、治療開始時PSAは34.5ng/m(平均)、病理組織は全例adenocarcinoma。DOC+EMP群9例を、EMP単独投与群6例、シスプラチン投与(CDDP群)3例と比較すると、EORTC-QOLは群による差を認めなかった。EQ-5Dの効用値はDOC+EMP群が良好な傾向が見られた。DOC+EMP群は、投与期間によるQOLの低下は認められなかった。 | KAKENHI-PROJECT-14657601 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14657601 |
再燃前立腺がん治療におけるQOL評価と経済評価を統合した意志決定支援ツールの開発 | 経済面では、DOC+EMP群の平均請求額は169886点であり、これをEMP群(87530点)と比較すると高値であった。しかしCDDP群と比較するとほぼ同水準であった。結論:HRPCについてQOL面と経済面から検討したところ、(1)HRPCに対するDOCの投与は比較的副作用が少なく、外来投与可能であった。他の治療法との比較においても、QOLは比較的高く保たれる。(2)DOCは臨床上明らかな治療効果が認められない症例でもQOLは低下せず、HRPCに対する一つの選択肢と考えられる。(3)DOC+EMPは1 QALY向上に必要な医療費が高額であり、今後の検討課題である。【研究目的】わが国においても増加傾向にある前立腺がんは、治療が長期に亘ることが多いため、治療には臨床面、QOL面、経済面に配慮した合理的な意志決定が必要となる。特に、内分泌療法に抵抗性を示す進行前立腺がん(HRPC)は、治療に難渋することが多く、臨床判断には生存期間、奏効率などの指標に加え、QOLと経済面の検討が欠かせない。本研究は、再燃前立腺がんに対する治療法を総合的に評価するためのツールの開発を目的とする。【対象と方法】早期及び進行性前立腺がんの治療についてQOL面と経済面を検討した。前者は大学病院を含む4施設において、前立腺全摘除術を受けた患者を対象に、SF-36、UCLA-PCI、IPSS(尿失禁以外の排尿症状の把握)を用いてQOLを測定した。後者はパクリタキセル(PTX)とリン酸エストラムスチン(EMP)の併用療法(TE療法)を行った患者のQOLをEORTC前立腺がんQOL調査票とEuroQolで把握した。医療費は治療期間中の診療報酬明細書を分析した。【結論】1)限局性前立腺がんにおける手術療法後のQOLは良好に保たれる。術後尿失禁は継続するが、術後6ヶ月以降は軽度であり、患者が受容できる範囲と考えられる。2)手術後はEDを認め、特に若年層においてはその心理的負担感は大きく、今後の課題である。3)前立腺全摘術後の排尿機能の評価では、前立腺による閉塞症状は改善するが、膀胱刺激症状は改善新しない。4)前立腺全摘術の医療費は約150万円であり、進行がんであるほど高額となる。施設間格差も大きい。5)進行性前立腺がん患者のQOLは、治療後も比較的よく保たれるが、再燃前立腺がん患者のQOLは低下する。6)TE療法後のQOLは改善を認め、臨床的治療効果の不良群においてもQOLは比較的保たれる。7)HRPCに対するTE療法は、QOLの面からも有効と考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-14657601 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14657601 |
パルスRF電場励起によるNMRスピンダイナミクス | 本研究の第一の目的は、GaAs単結晶を用いたラジオ波(rf)電場による励起実験であるが、この試料は表面に電極を形成することが非常に困難であったため、試料の加工に予想以上の時間を費やし、実験は大幅に遅れた。実験の結果、2ms程のrf電場で69Ga核スピンの共鳴線の完全な飽和を観測し、一応の成果を得た。しかし、励起効率が文献から予想していた程も高くなかったため、必要な励起効果がみられず、以前の【Al_2】【O_3】についての実験結果を越える成果は得られなかった。音響的な励起の場合、その励起効率は一般に試料中に不純物が存在する方が高く、おそらく文献における試料は純度が低かったのではなかったかと思われる。低純度の試料にすれば励起効率は向上したかもしれないが、逆に電気的な耐圧が下がるため結果は同じことであったであろう。他に高い励起効率が見込まれる試料をみつけたが、この試料で実験をするにはNMRスペクトロメーターを作り直す必要があるためすぐには、実施できなかった。いずれ試みるつもりでいる。第二の目的であるNMR多準位系におけるrf電場励起中の熱混合についての理論的な研究は、上記実験の準備中に進み、論文にまとめ上げる段階に至った。現在作成中である。更に又、その理論的考察の過程で二つの成果が得られた。一つは、磁気双極子相互作用による二量子ロータリーエコーの観測の可能性が判明したことで、すでに実験的にも実証し、その成果を論文に仕上げた。もう一つは、かねてから懸案の三準位系における二量子回転系飽和の問題を深く掘り下げる見通しが立ったことである。これはスピン熱力学的見地に立った非常に興味のある問題で次回の研究課題である。最後の目的のGaAsにおける光ダイナミックポーラリゼーションの実験は、レーザー光を照射した反応としての蛍光は観測できたがそれ以上は時間の都合で進まなかった。本研究の第一の目的は、GaAs単結晶を用いたラジオ波(rf)電場による励起実験であるが、この試料は表面に電極を形成することが非常に困難であったため、試料の加工に予想以上の時間を費やし、実験は大幅に遅れた。実験の結果、2ms程のrf電場で69Ga核スピンの共鳴線の完全な飽和を観測し、一応の成果を得た。しかし、励起効率が文献から予想していた程も高くなかったため、必要な励起効果がみられず、以前の【Al_2】【O_3】についての実験結果を越える成果は得られなかった。音響的な励起の場合、その励起効率は一般に試料中に不純物が存在する方が高く、おそらく文献における試料は純度が低かったのではなかったかと思われる。低純度の試料にすれば励起効率は向上したかもしれないが、逆に電気的な耐圧が下がるため結果は同じことであったであろう。他に高い励起効率が見込まれる試料をみつけたが、この試料で実験をするにはNMRスペクトロメーターを作り直す必要があるためすぐには、実施できなかった。いずれ試みるつもりでいる。第二の目的であるNMR多準位系におけるrf電場励起中の熱混合についての理論的な研究は、上記実験の準備中に進み、論文にまとめ上げる段階に至った。現在作成中である。更に又、その理論的考察の過程で二つの成果が得られた。一つは、磁気双極子相互作用による二量子ロータリーエコーの観測の可能性が判明したことで、すでに実験的にも実証し、その成果を論文に仕上げた。もう一つは、かねてから懸案の三準位系における二量子回転系飽和の問題を深く掘り下げる見通しが立ったことである。これはスピン熱力学的見地に立った非常に興味のある問題で次回の研究課題である。最後の目的のGaAsにおける光ダイナミックポーラリゼーションの実験は、レーザー光を照射した反応としての蛍光は観測できたがそれ以上は時間の都合で進まなかった。 | KAKENHI-PROJECT-61540276 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61540276 |
20世紀アメリカ・ユダヤ思想家からみるシオニズム思想:その批判と受容の変遷史 | 本研究は米国におけるユダヤ教のシオニズム思想に対する批判的精神と親和性について考察するものである。一年目にあたる本年度は以下の2点に絞り研究を進めた。1)アメリカの改革派ユダヤ教のシオニズムに対する批判精神とシオニズムの受容について考察するために、米国におけるユダヤ教改革派の古典的世代の代表者の一人であるカウフマン・コーラーに着目し、彼のシオニズム観の曖昧性について、当時、改革派ユダヤ教内でも見解が分かれていた女性指導者を巡るコーラーの見解を引き合いに出しつつ考察した。2)改革派ユダヤ教内部で親シオニズム的傾向が現れる1920年代について、コーラーの次世代にあたる、スティーブン・S・ワイズの活動を追いながら、1920年代の特殊性について検討した。それらの成果の一部として、今年度は報告書を含む2本の論文と米国で開催されたAssociation for Israel Studies(AIS)、ヘブライ大学と同志社大学の共催により、イスラエルで開催された国際ワークショップを含む、国内外の学会で報告を行った。特にAISの学会では、改革派のラビの一人であり、且つイスラエル建国以前のパレスチナでアラブ人との共生を目指したユダ・L・マグネスの研究者と交流を持つことができた点が、今後の研究において大きな意味をもつに至った。また、2018年はイスラエル国家建国70年を迎えた年であり、AIS学会への参加は、それに纏わるシンポジウムにおいて、現代におけるシオニズムに対する批判と受容を交えた議論を聞くことができた点も意義のあるものとなった。2019年2,3月にAmerican Jewish Archives(シンシナティ)で、コーラーとワイズに関する書簡を中心とした一次資料を調査するとともに、Prof. Gary P. Zola教授に改革派ユダヤ教に関して指導を仰いだ。諸般の事情により止むを得ず、執筆中の論文(1本)を年度内に投稿することを見送ることとなった。しかし、とりわけ以下の3点に関しては当初の計画にはないものであったが、いずれも今後の研究において意義のある機会となった。そのため、「おおむね順調に進展している」と判断した。2)2019年2,3月のAmerican Jewish Archivesでの資料調査に訪れた際、アーカイヴィストらによって、スティーブン・S・ワイズの説教が掘り起し中である機会に恵まれ、その一部を拝聴できたこと。これについては今後も引き続き調査を行うことで、ワイズのシオニズム観の一側面と、彼の説教を聞いていた聴衆の雰囲気が明らかになり、当時、どのようにシオニズムが一部のシナゴーグで語られていたのかを知る手がかりになると思われる。3)外務省の事業である「第2回カケハシ・プロジェクト:ユダヤ若手研究者北米派遣」に参加し、The Association of Reform Zionists of America (ARZA)の会長でもある、Rabbi John L. Rosove氏と面会した。改革派ユダヤ教のごく一部に存在している親シオニズムの流れの今日的な展開に触れることができた。当初の計画にはなかったが、S・S・ワイズのシオニズム観を分析する上でも、引き続き彼の説教に関して調査する必要がある。また、コーラーのシオニズム観に関しては、資料読解を進めるうえで、彼のメシアニズム理解が重要な鍵となることが明らかとなったため、これらのことを精査し、それぞれ論文の完成を目指す。なお、研究遂行の結果生じた多少の方向性の転換に関しては、引き続き国内外の専門家に指導を仰ぎながら適宜調整を図りたい。本研究は米国におけるユダヤ教のシオニズム思想に対する批判的精神と親和性について考察するものである。一年目にあたる本年度は以下の2点に絞り研究を進めた。1)アメリカの改革派ユダヤ教のシオニズムに対する批判精神とシオニズムの受容について考察するために、米国におけるユダヤ教改革派の古典的世代の代表者の一人であるカウフマン・コーラーに着目し、彼のシオニズム観の曖昧性について、当時、改革派ユダヤ教内でも見解が分かれていた女性指導者を巡るコーラーの見解を引き合いに出しつつ考察した。2)改革派ユダヤ教内部で親シオニズム的傾向が現れる1920年代について、コーラーの次世代にあたる、スティーブン・S・ワイズの活動を追いながら、1920年代の特殊性について検討した。それらの成果の一部として、今年度は報告書を含む2本の論文と米国で開催されたAssociation for Israel Studies(AIS)、ヘブライ大学と同志社大学の共催により、イスラエルで開催された国際ワークショップを含む、国内外の学会で報告を行った。特にAISの学会では、改革派のラビの一人であり、且つイスラエル建国以前のパレスチナでアラブ人との共生を目指したユダ・L・マグネスの研究者と交流を持つことができた点が、今後の研究において大きな意味をもつに至った。また、2018年はイスラエル国家建国70年を迎えた年であり、AIS学会への参加は、それに纏わるシンポジウムにおいて、現代におけるシオニズムに対する批判と受容を交えた議論を聞くことができた点も意義のあるものとなった。2019年2,3月にAmerican Jewish Archives(シンシナティ)で、コーラーとワイズに関する書簡を中心とした一次資料を調査するとともに、Prof. Gary P. Zola教授に改革派ユダヤ教に関して指導を仰いだ。諸般の事情により止むを得ず、執筆中の論文(1本)を年度内に投稿することを見送ることとなった。しかし、とりわけ以下の3点に関しては当初の計画にはないものであったが、いずれも今後の研究において意義のある機会となった。そのため、「おおむね順調に進展している」と判断した。 | KAKENHI-PROJECT-18K12210 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K12210 |
20世紀アメリカ・ユダヤ思想家からみるシオニズム思想:その批判と受容の変遷史 | 2)2019年2,3月のAmerican Jewish Archivesでの資料調査に訪れた際、アーカイヴィストらによって、スティーブン・S・ワイズの説教が掘り起し中である機会に恵まれ、その一部を拝聴できたこと。これについては今後も引き続き調査を行うことで、ワイズのシオニズム観の一側面と、彼の説教を聞いていた聴衆の雰囲気が明らかになり、当時、どのようにシオニズムが一部のシナゴーグで語られていたのかを知る手がかりになると思われる。3)外務省の事業である「第2回カケハシ・プロジェクト:ユダヤ若手研究者北米派遣」に参加し、The Association of Reform Zionists of America (ARZA)の会長でもある、Rabbi John L. Rosove氏と面会した。改革派ユダヤ教のごく一部に存在している親シオニズムの流れの今日的な展開に触れることができた。当初の計画にはなかったが、S・S・ワイズのシオニズム観を分析する上でも、引き続き彼の説教に関して調査する必要がある。また、コーラーのシオニズム観に関しては、資料読解を進めるうえで、彼のメシアニズム理解が重要な鍵となることが明らかとなったため、これらのことを精査し、それぞれ論文の完成を目指す。なお、研究遂行の結果生じた多少の方向性の転換に関しては、引き続き国内外の専門家に指導を仰ぎながら適宜調整を図りたい。米国での研究調査(2019年2-3月)の際に、予期せぬ体調不良(二度のインフルエンザ)になり、当初の予定から用務内容の変更が生じたことにより、次年度への繰越金が発生した。繰越金額72,800円は、論文の英文要旨および発表原稿の英文校正費として、次年度の「人件費・謝金」に加えて使用する。残金が発生した場合は、研究調査費に補てんする。 | KAKENHI-PROJECT-18K12210 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K12210 |
炎症性発癌過程におけるmicroRNAの関与と意義―病理組織学的解析 | 肝癌、肺癌、乳癌を対象に、miR-199aとmiR-200cの発現をin situ hybridization(ISH)法で解析した。乳癌ではEpCAMを高発現している腫瘍巣ではmiR-200cの発現が高いことを見出した。両者の発現相関の分子機構を明らかにする予定である。しかし本研究では、多くの症例で染色シグナルが弱かった。その理由はISH法に用いるプローブの劣化が挙げられた。今後、ISHの感度、特異度を改善する必要がある。炎症、発癌、microRNAを病理学的に解析する研究者は非常に少なく、我々の手法はユニークである。様々な癌の解析を視野に入れて、病理学的な関連性を明らかにしていく。【目的と方法】炎症性発癌の代表的な疾患として,肝炎ウイルス(HBV,HCV)により惹起されるヒト肝細胞癌の発癌過程におけるmiR199aの動態を,ヒトB,C型肝炎ウイルス(HBV,HCV)肝炎,同肝硬変,肝癌,および非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)関連肝癌,合計11症例のホルマリン固定パラフィン包埋病理組織切片上で,LNAプローブとタイラマイド増感による高感度in situhybridization (ISH)法により検出を試みた.【結果】1)miR199a-5pの発現は非癌部(肝硬変)においては1例(1/11),癌部においては4例(4/11)が陽性を示した.いずれも上皮細胞の細胞質に発現が確認された.2)非癌部,あるいは癌部の上皮細胞が一様に陽性となるのではなく,症例によって陽性細胞の割合は異なっていた.3)発癌の原因因子(HBV,HCV,NASH)によって明確な差は見出されなかった.4)プローブは1年以上経過すると反応性の著しい低下を来し,陽性,陰性の判定が困難となった.5)形質細胞は特に強い非特異的反応を示し,判定の妨げとなることが多かった.6)miR199a-3pの発現は検討しなかった.【考察ならびに今後の計画】1)ISHプローブの改良の必要があると思われる.具体的な今後の方針としては,1ATの繰り返し配列をtemplateとするISH-AT taling法を試みる,2LNA以外の人工核酸(BNA等)で修飾したプローブを用いる.3)miR199a-5pの発現制御に関わる他の因子(Brm,Caveolin 1等)に関して,免疫組織化学的に検討する.4)以上の結果を総合的に判断し,miR199aをめぐる遺伝子制御ネットワークを考察するとともに,治療あるいは診断に応用可能な新規マーカーの検索の一助とする.【結果】1)2)いずれも改善をみなかった.再度,新規LNAプローブを設計したところ漸く改善した.そこで以下の症例解析に着手した.3)4)1肺原扁平上皮癌(SCC)21例,2子宮頸部SCC16例,3皮膚原発SCC3例である.これらは本研究課題とは異なる症例だが,食道原発SCCを対象とした解析(Sakurai K et al., 2011.)で199aの発現パターンが十分把握されており,まずSCCを重点的に解析した.1199aは癌胞巣周辺部に明瞭に染色された.胞巣中心に向かって角化が進行する箇所では染色性が徐々に低下し,角化部分は陰性であった.これらの部位はCD44,Brmは陽性であった.c-met,caveolin-1もCD44,Brmと概ね類似した発現を示した.cadherinは角化部を除きほぼ腫瘍全体が染色された.EGFRはCD44,Brmよりも限局してより未分化な細胞に染色された.2子宮頸部SCCではCD44とBrm発現は概ね相関していた.199aは規則性を見出せなかった.3皮膚原発SCCではCD44,Brm発現は相関していたが,癌真珠の部分での199a発現は確認されなかった.【考察】新規プローブは有効であった.同じSCCでも発生部位の違いにより199a発現パターンが異なっていた.このことは199aが各臓器の癌発生に関し異なった意義を有する可能性を示唆している.正常扁平上皮では一貫して基底層部を除く部位に発現をみたことから,扁平上皮の分化,成熟過程の制御に関与している可能性があると考えられた.我々は、miR-200cが、NF-κBの制御下にあることや乳癌の進展に関与することを見出しつつある。慢性炎症とmicroRNAの関連が示唆されるため、今年度は、解析対象をmiR-200cとした。さらにEpCAMの発現が高い乳癌細胞では、miR-200cの発現が高いことも明らかにしている(投稿準備中)。そこで藤田保健衛生大学病院にて外科的切除を行った乳癌組織(ホルマリン固定パラフィン包埋標本)を用いて、EpCAMの免疫染色とmiR-200cのISHを行い、両者の発現を比較した。EpCAMの免疫染色は比較的容易ではあったが、同一標本中に染色される癌とされない癌が混在しており、その意義は不明であった。miR-200cの発現は、EpCAMの発現と概ね相関しているといえるが、今後は症例数を増やしてさらに検討する必要がある。 | KAKENHI-PROJECT-25430143 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25430143 |
炎症性発癌過程におけるmicroRNAの関与と意義―病理組織学的解析 | また、miR-199aと比較して、miR-200cの発現シグナルは極めて弱いため、その検出感度を向上させることが必要と考えられる。我々のISHは、生体内におけるmicroRNAの発現様式を解析するのに有用であるといえるが、microRNAの種類、発現量、検体の状態によって染色性が落ちることがあり、そのトラブルシューティングに大きく時間を割いた。解析対象のmicroRNA毎に、プローブのLNA修飾部位やhybridization、washの条件(温度、時間、バッファー組成など)を細かく検討する必要があると思われる。肝癌、肺癌、乳癌を対象に、miR-199aとmiR-200cの発現をin situ hybridization(ISH)法で解析した。乳癌ではEpCAMを高発現している腫瘍巣ではmiR-200cの発現が高いことを見出した。両者の発現相関の分子機構を明らかにする予定である。しかし本研究では、多くの症例で染色シグナルが弱かった。その理由はISH法に用いるプローブの劣化が挙げられた。今後、ISHの感度、特異度を改善する必要がある。炎症、発癌、microRNAを病理学的に解析する研究者は非常に少なく、我々の手法はユニークである。様々な癌の解析を視野に入れて、病理学的な関連性を明らかにしていく。in situ hybridization法のプローブの不具合で解析が全くできない時期が長くあった.正確な原因は不明であったが,具体的には,解析の陽性対象としたレンチウイルスベクター導入によるmiRNA199a強制発現細胞株を用いた解析でも全く良好なシグナルを検出できなかった.その結果,病理切片を用いた症例解析に大幅な遅れが生じた.病理学本研究課題に沿った慢性炎症を背景とする発癌過程でのmiRNA関与の検索のために,Helicobacter pylori (HP)陽性慢性胃炎,HP陰性慢性胃炎,胃癌症例の病理組織学的切片を対象とした解析に着手する.症例はすでに集積済みであり,倫理委員会の審査も終了している.現時点では,従来まで用いてきたISHプローブが良好に機能しにくく,シグナルの検出が困難な状況にある.その理由としては,プローブの劣化(蛍光シグナル強度の低下など)が第一に考えられたが,新たに作製したプローブを用いても研究計画申請時のような良好なシグナルが得られなくなっている.その対策には,抜本的なプローブの改良の必要もあると考えている.症例の病理組織切片は貴重であり,それらを用いた解析を行う以前に十分にプローブの有効性を検討しておく必要がある. | KAKENHI-PROJECT-25430143 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25430143 |
有機導体が示す新奇超伝導相の微視的測定手段による研究 | FFLO超伝導状態が議論されている、非従来型の有機超伝導体λ-(BETS)2GaCl4について研究を行ってきた。これまでに13C置換したBETS分子の合成を行い、1.5K以上の常磁性相における電子状態を13C-NMR測定により明らかにしてきた。60 K以上においては隣接した反強磁性相に由来した磁気ゆらぎ、10 K以下においてはスピン密度波相に由来した磁気ゆらぎの存在を示唆する結果を得た。今年度は超伝導ギャップの対称性を微視的な観点から明らかにするために、Heポンピングで到達可能な1.5 K以上の超伝導相において13C-NMR測定を実施した。その結果ナイトシフトが超伝導転移温度以下で減少し、超伝導のクーパー対がシングレットであることを明らかにした。さらにスピンー格子緩和時間測定からは超伝導ギャップにノードを持つことを明らかにした。これらの結果は超伝導ギャップがd波の対称性を持っていることを示唆している。今後は希釈冷凍機を用いてより低温まで測定していく予定である。低温まで測定することで、低励起のギャップ構造を捉えることができ、超伝導ギャップの対称性に関して明確な情報を得ることができる。さらに当初の実験計画では予定していなかった、アニオンのGaCl4に着目した69Ga-NMR実験も行った。一般的に有機伝導体においては、強い2次元性のためアニオン位置にある核種は緩和時間が非常に長くNMR実験を行うことが困難であり、絶縁層の働きを調べた例はほとんどない。本研究によりGaサイトでNMR実験が可能であることを見出し、詳細な実験を行った。その結果、100K以下において13C-NMR測定で観測されたものと同様の電子状態が観測された。これは絶縁層にあるGa核が伝導層であるBETS分子のπ電子と結合していることを示し、有機伝導体における伝導面間のコヒーレンス性を議論する上で有益な情報である。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。有機超伝導体lambda-(BETS)2GaCl4はFFLO超伝導状態や超伝導ギャップの対称性がd波であることが報告されており注目を集めている物質である。超伝導状態は盛んに研究されているが、超伝導メカニズムを明らかにする上で重要な情報である常伝導状態での物性はまだ未解明な点が多い。微視的な磁性を調べることのできる核磁気共鳴法の観点からは、BETS分子のHサイトとSeサイトで研究が行われているが、電子系との結合の強さや感度などに問題がある。そこで本研究はBETS分子の中心の炭素原子を選択的に13C置換した分子を合成し、核磁気共鳴測定を行う。本年度は13C置換したBETS分子の合成法を確立し、今後の研究に十分な量を作製した。そして核磁気共鳴測定を行うのに十分な大きさのlambda-(BETS)2GaCl4の単結晶を作製することができた。その後実際に核磁気共鳴測定を行い常伝導状態の磁気ゆらぎを調べ、60K以上で反強磁性ゆらぎが存在することを明らかにした。温度を下げると、電子状態が局所的な振る舞いから遍歴的な振る舞いに変化すると同時に反強磁性ゆらぎが抑えられ、フェルミ液体状態が実現していることを明らかにした。さらに温度を下げると7K以下で再び磁気ゆらぎが増大することを観測した。これはネスティングの発達によるものと考えられ、超伝導との関係に興味が持たれる。以上の結果はlambda-(BETS)2GaCl4の超伝導メカニズムを考察する上で重要な情報である。さらに現在は、超伝導ギャップの対称性を核磁気共鳴の観点から明らかにするために低磁場で測定を行っている。本研究では核磁気共鳴測定による物性解明を目的としており、これを達成するには同位体置換した分子および単結晶が出来ることが肝要である。平成28年度の早い段階でこれを達成し、核磁気共鳴測定を実施できたことは順調に研究が進んでいることを示している。この結果は日本物理学会で発表し、現在論文投稿中である。FFLO超伝導状態が議論されている、非従来型の有機超伝導体λ-(BETS)2GaCl4について研究を行ってきた。これまでに13C置換したBETS分子の合成を行い、1.5K以上の常磁性相における電子状態を13C-NMR測定により明らかにしてきた。60 K以上においては隣接した反強磁性相に由来した磁気ゆらぎ、10 K以下においてはスピン密度波相に由来した磁気ゆらぎの存在を示唆する結果を得た。今年度は超伝導ギャップの対称性を微視的な観点から明らかにするために、Heポンピングで到達可能な1.5 K以上の超伝導相において13C-NMR測定を実施した。その結果ナイトシフトが超伝導転移温度以下で減少し、超伝導のクーパー対がシングレットであることを明らかにした。さらにスピンー格子緩和時間測定からは超伝導ギャップにノードを持つことを明らかにした。これらの結果は超伝導ギャップがd波の対称性を持っていることを示唆している。今後は希釈冷凍機を用いてより低温まで測定していく予定である。低温まで測定することで、低励起のギャップ構造を捉えることができ、超伝導ギャップの対称性に関して明確な情報を得ることができる。さらに当初の実験計画では予定していなかった、アニオンのGaCl4に着目した69Ga-NMR実験も行った。 | KAKENHI-PROJECT-16J06398 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J06398 |
有機導体が示す新奇超伝導相の微視的測定手段による研究 | 一般的に有機伝導体においては、強い2次元性のためアニオン位置にある核種は緩和時間が非常に長くNMR実験を行うことが困難であり、絶縁層の働きを調べた例はほとんどない。本研究によりGaサイトでNMR実験が可能であることを見出し、詳細な実験を行った。その結果、100K以下において13C-NMR測定で観測されたものと同様の電子状態が観測された。これは絶縁層にあるGa核が伝導層であるBETS分子のπ電子と結合していることを示し、有機伝導体における伝導面間のコヒーレンス性を議論する上で有益な情報である。現在は超伝導ギャップの対称性を明らかにするために、低磁場での核磁気共鳴測定を行っている。この実験は今後2か月以内に結果が得られる予定である。またアニオンのGaサイトで核磁気共鳴測定が可能であることを見出し、これまでの有機超伝導体では出来なかったアニオンの分子運動と超伝導の関係という新たな観点から研究を進める予定である。さらにlambda-(BETS)2GaCl4において反強磁性ゆらぎの存在が明らかになったことを受け、反強磁性ゆらぎと超伝導メカニズムの関係を明らかにするために、圧力下における核磁気共鳴測定を行っていく予定である。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-16J06398 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J06398 |
関節リウマチでの心臓MRIによる無症候性心病変の検出と意義:生物学的製剤の効果 | 低侵襲的な心臓MRIを用いて、心症状を有さない関節リウマチ(RA)患者における心病変の頻度と程度を明らかにするとともに、さらにMRI所見とRAの活動性の指標や生物学製剤を含む関節リウマチの治療歴に関して多変量解析を用いて検討した。心臓MRIでは、心症状が明らかでないRA患者において、32%に遅延造影、12%に心筋浮腫を認めた。また、局所心機能障害及び心肥大が認められ、その程度はRAの活動性の改善の程度と相関していた。特に、心筋浮腫を示す群において、局所心機能障害及びLVMI増加が有意に高度に認められた。これらの異常所見は、生物学的製剤を使用することにより改善を認めた。本年度は、決定した予算に従って、研究方法、及び、対象症例数を修正した。本研究の適切な実施と評価には、放射線科医と循環器内科医、膠原病内科医間の密な連携が必須である。放射線科医・膠原病科医師により適切なプロトコール、患者選択、データ運用に関して詳細に再検討し、さらに、放射線科医と循環器内科医によりMRI評価法の再検討を行った。対象は、関節リウマチ患者30名とコントロール20名に変更され、関節リウマチ患者においては生物学製剤の治療前後で評価を行うこととした。心臓MRIのシークエンスとして、1シネMRI:左室・右室の心機能評価、2タギングMRI:左室の局所心機能評価、3Phase Contrast法:血流・拡張能評価、4BB T2-WI:浮腫の有無、5遅延造影:心筋炎・線維化・心筋梗塞の有無、6T1/T2マッピング:びまん性線維化や浮腫の定量化、を施行するように修正した。この上で、倫理員会への提出書類を作成した。Johns Hopkins University(JHU)にて開発した心機能解析ソフトウェアの販売元が、ZIOsoft,CA,USAからQiImaging,CA,USAに移行したため、QiImaging社にコンタクトしてソフトウェアの改善を要望し、一部に修正が行われた。最終的には、Ziosoft,Tokyo,Japan経由でソフトウェアを含むWorkstation一式を購入することとなった。また、タギングMRIを解析するためのソフトウェアであるHARPを使用する準備ができた。本年度は、使用する予定の重要な撮像シークエンスであるT1mappingの入手が遅れており研究計画全体の修正を余儀なくされ、循環器内科と膠原病内科医師と相談して倫理委員会への提出準備が終了した。T1mappingのシークエンスに関しては6月ごろより使用可能になる予定であり研究のスタートが予定される。また、予算に応じて関節リウマチ患者30名に修正されている。解析ソフトであるJohns Hopkins Universityと共同研究開発したZIOsoft社(前QiImaging社)製の解析ソフトウェアのvalidationを行い、解析の正確性を確認した。心臓MRIによる心臓病変の評価法として、視覚的評価のみならず定量評価法が確立されつつあり、臨床的に心臓病変を定量的に評価可能となった。我々の検討では、関節リウマチ患者(生物学的製剤非使用群)ではコントロール群と比較して、有意にLV MASSの増加や心機能の低下が認められているが、生物学的製剤使用群では有意さが認められないことが確認されており、さらに詳細な評価が必要である。本研究においては、関節リウマチ患者における心機能や心筋性状を心臓MRIで定量化により正確に評価を行い、さらに治療における改善の有無を評価するために定量化して評価を行うことが非常に重要である。近年、シネMRI・タギングMRIにおける局所心機能の定量評価法であるStrain解析法の進歩、及び、T1マッピング(T1値の定量化)による心筋性状の評価(線維化の定量化や細胞外液量の計測)が可能となった。本研究においても、これらの2つの手法による定量化がきわめて重要となった。局所心機能の解析アプリケーションは、Johns Hopkins Universityで開発が行われたが、同アプリケーションの妥当性を判断するためにパイロットスタディを行いその有用性を検討したが、その有用性が検証されたため同アプリケーションの購入を決定した。また、シークエンスの導入が遅れていたT1マッピングの使用が本年可能となったため、IRBに必要書類を提出し審議中である。局所心機能の解析アプリケーションはJohns Hopkins Universityで開発が行われたが、同アプリケーションの正確性を判断するためにパイロットスタディを行ってその有用性を検証するのに時間を要したことと、定量解析に必要なT1マッピングの導入が遅れたため。本研究の目的は、心臓MRIを用いて心症状を有さない段階のRA患者における心臓病変の頻度と程度を明らかにするとともに、生物学的製剤による心臓病変に対する治療効果を明らかにすることである。心症状のない13名のRA患者においては、生物学的製剤(tocilizumab: TCZ)による治療前ではDAS-28とSDAIが高値を示したが、治療後に有意に改善した。シネMRIによる局所心機能(Mean peak Er)が治療前では低下していたが、治療後には改善傾向にあった(p=0.028)。さらに、LGEを認める群ではLGEを認めない群と比較してQTC intervalが有意に延長していた(p=0.001)が、生物学的製剤による治療により有意に改善した(p = 0.001)。本研究により、心症状を示していない本邦のRA患者における心臓病変の真の頻度が明らかとなり、さらに生物学的製剤により心臓病変が改善する可能性が示された。 | KAKENHI-PROJECT-25461850 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25461850 |
関節リウマチでの心臓MRIによる無症候性心病変の検出と意義:生物学的製剤の効果 | 低侵襲的な心臓MRIを用いて、心症状を有さない関節リウマチ(RA)患者における心病変の頻度と程度を明らかにするとともに、さらにMRI所見とRAの活動性の指標や生物学製剤を含む関節リウマチの治療歴に関して多変量解析を用いて検討した。心臓MRIでは、心症状が明らかでないRA患者において、32%に遅延造影、12%に心筋浮腫を認めた。また、局所心機能障害及び心肥大が認められ、その程度はRAの活動性の改善の程度と相関していた。特に、心筋浮腫を示す群において、局所心機能障害及びLVMI増加が有意に高度に認められた。これらの異常所見は、生物学的製剤を使用することにより改善を認めた。使用する重要な撮像シークエンスであるT1mappingの入手が遅れたため、研究計画全体が遅れてしまったが、6月ごろに入手が予定された。現在、IRBに書類を提出しており許可が得しだい、臨床研究を開始する。現在の本大学における関節リウマチ患者数であれば、次年度の平成28年度で予定患者の検査が終了可能です。放射線医学修正された研究計画書は、5月の倫理委員会で審査を予定している。6月より心臓MRI(シネMRI、Tagging MRI、PC法、BB T2-WI、LGE、T1/T2mapping)を生物学製剤治療前後の関節リウマチ患者に施行して、得られた画像情報に関して開発したソフトウェアにより解析を行い統計学的検討を加える。Journal of Rheumatologyへの投稿を予定している。Johns Hopkins University(JHU)にて開発した心機能ソフトウェアの販売元が、ZIOsoft,CA,USAからQiImaging,CA,USAに移行したため、従来からコンタクトしていた開発元が変更となり事務的な処理等に時間を要したため。最終的には、メンテナンスを含めて、国内のZiosoft,Tokyo,Japan経由で購入することが決定した。定量解析に必要不可欠な解析アプリケーションの検証とT1マッピングシークエンスの導入の遅れのため。使用する予定であったT1mapping、及び、Ziosoft社(前QiImaging)製の解析フトウェアの入手が大幅に遅れたために大幅に研究計画を見直す必要に迫られた。現在の本大学における関節リウマチ患者数であれば、平成28年度で予定患者の検査が終了可能です。直接経費の使用は、上記の局所新機能アプリケーションの購入費用と検査費用(MRI検査、及び、血液検査)、学会発表・論文作成費用として使用いたします。修正された研究計画書は、2014年5月の倫理委員会での審査を予定している。関節リウマチ患者30名とコントロール20名に対して、心臓MRI(1シネMRI、2タギングMRI、3Phase Contrast法、4BB T2-WI、5遅延造影、6T1/T2マッピング)を施行する。生物学的製剤治療後の心臓MRIを適宜試行していく。Johns Hopkins University(JHU)にて開発した心機能解析ソフトウェアをZiosoft,Tokyo,Japanより購入して、得られた画像の解析処理を順次行っていく。 | KAKENHI-PROJECT-25461850 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25461850 |
肝細胞増殖因子の網膜色素上皮に対する保護効果 | 肝細胞増殖因子(HGF)は、視細胞のみならず網膜色素上皮細胞に対しても保護効果を有していることを昨年度報告した。今年度は、HGF投与が網膜色素上皮細胞の機能回復にどのように影響するのかを検討した。A.動物モデル40mg/kgのsodium iodateをSDラットの尾静脈から注入し、視細胞および網膜色素上皮の急性変性を作成した。上記の変性モデルを作成48時間前に、右眼の硝子体内に10μgHGFを注入した。左眼には溶媒を硝子体に注入し、コントロールとした。C.網膜色素上皮の機能評価D.視細胞の機能評価Azide responseの記録と同時に、網膜電図(ERG)を記録し視細胞の機能を評価した。E.結果HGF投与眼ではコントロール眼に比較して、1,2および4週のいずれでもAzide responseおよびERGが良好に保たれていた。また、Azide responseおよびERGの回復は、HGF投与眼では良好であった。従って、HGFは網膜色素上皮および視細胞を障害から保護し、その機能回復を促進すると考えられる。肝細胞増殖因子(hepatocyte growth factor : HGF)の視細胞および網膜色素上皮変性に対する保護効果を検討した。1.動物モデル40mg/kgのsodium iodateをSDラットの尾静脈から注入し、視細胞および網膜色素上皮の急性変性を作成した。2.HGFの投与上記の変性モデルを作成48時間前に、右眼の硝子体内に10μg HGFを注入した。左眼には溶媒を硝子体に注入し、コントロールとした。3.HGFの効果判定sodium iodate投与後1週間で下記の評価を行った。(1)網膜電図(ERG):網膜機能を測定し、視細胞変性に対する保護効果を評価した。(3)網膜組織の評価:視細胞核の配列異常を定量した。また、RPE65抗体を用いて網膜色素上皮を免疫組織染色した。4.結果HGF投与眼では、ERG b波の閾値(10μV criterion voltage)および最大振幅がコントロール眼に比較して有意に良好に保たれていた。HGF投与眼のAzide responseは、コントロール眼のそれに比較し有意に大きかった。網膜外層の配列は、HGF投与眼でコントロール眼に比較して有意に保たれていた。ERGの結果から、HGFの硝子体内投与は視細胞を変性から保護すると考えられた。HGF投与眼ではazide responseが良好に保たれていたことから、HGFは網膜色素上皮の障害を軽減すると考えられた。5.今後の課題HGF投与が視細胞および網膜色素上皮の変性からの回復過程にどのように影響するかを検討する。肝細胞増殖因子(HGF)は、視細胞のみならず網膜色素上皮細胞に対しても保護効果を有していることを昨年度報告した。今年度は、HGF投与が網膜色素上皮細胞の機能回復にどのように影響するのかを検討した。A.動物モデル40mg/kgのsodium iodateをSDラットの尾静脈から注入し、視細胞および網膜色素上皮の急性変性を作成した。上記の変性モデルを作成48時間前に、右眼の硝子体内に10μgHGFを注入した。左眼には溶媒を硝子体に注入し、コントロールとした。C.網膜色素上皮の機能評価D.視細胞の機能評価Azide responseの記録と同時に、網膜電図(ERG)を記録し視細胞の機能を評価した。E.結果HGF投与眼ではコントロール眼に比較して、1,2および4週のいずれでもAzide responseおよびERGが良好に保たれていた。また、Azide responseおよびERGの回復は、HGF投与眼では良好であった。従って、HGFは網膜色素上皮および視細胞を障害から保護し、その機能回復を促進すると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-18791292 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18791292 |
ラット顎下腺再生過程におけるアポトーシスの意義-特に雌性ホルモンの関与について- | 唾液腺は排泄管導管の閉塞により腺房部の著しい荒廃を生じるが、閉塞原因の早期除去により正常構造への回復する。腺組織の再生過程では導管様構造が腺終末部に認められ、再生完了に伴いこの細胞は消退する。本研究はこの導管様構造の出現と消退の意義について検索した。ラットの排泄管導管を結紮すると導管の拡張、腺房部の萎縮・消失を生じアポトーシスによる細胞数の減少が観察された。しかし、介在部細胞では粗面小胞体およびGolgi装置の発達、分泌顆粒の形成がみられ、導管様構造の構築が認められた。解除群では12週で導管末端部に多数の導管様構造の形成が認められ、腺房の回復が観察された。再生過程にみられた導管様構造は、結紮解除後4週で構成細胞に多数の細胞内空胞の形成がみられ、その放出に従い介在部細胞への移行が観察された。また、アポトーシスによる細胞数の減少も観察された。BrdU陽性細胞は、結紮群では導管部に、解除群では導管部と再生腺房細胞に多数見られた。しかし、介在部導管および導管様構造では極めて少なかった。雌性ホルモンであるエストロゲンレセプター陽性細胞は、結紮群では拡張した導管と介在部に、解除群では導管部と導管様構造に多数観察された。以上の結果から、腺房部の再生は残存腺房細胞の増殖により再構築されることが示唆された。この再生過程で特徴的所見を示す導管様構造は、主として介在部細胞が顆粒合成を生じることで構築されるものであり、その形態変化に雌性ホルモンが重要な役割を持つものと考えられる。またその消退は細胞内空胞の形成とその放出、およびアポトーシスによってなされ、その結果、常態時の介在部導管へと変化することが示唆された。唾液腺は排泄管導管の閉塞により腺房部の著しい荒廃を生じるが、閉塞原因の早期除去により正常構造への回復する。腺組織の再生過程では導管様構造が腺終末部に認められ、再生完了に伴いこの細胞は消退する。本研究はこの導管様構造の出現と消退の意義について検索した。ラットの排泄管導管を結紮すると導管の拡張、腺房部の萎縮・消失を生じアポトーシスによる細胞数の減少が観察された。しかし、介在部細胞では粗面小胞体およびGolgi装置の発達、分泌顆粒の形成がみられ、導管様構造の構築が認められた。解除群では12週で導管末端部に多数の導管様構造の形成が認められ、腺房の回復が観察された。再生過程にみられた導管様構造は、結紮解除後4週で構成細胞に多数の細胞内空胞の形成がみられ、その放出に従い介在部細胞への移行が観察された。また、アポトーシスによる細胞数の減少も観察された。BrdU陽性細胞は、結紮群では導管部に、解除群では導管部と再生腺房細胞に多数見られた。しかし、介在部導管および導管様構造では極めて少なかった。雌性ホルモンであるエストロゲンレセプター陽性細胞は、結紮群では拡張した導管と介在部に、解除群では導管部と導管様構造に多数観察された。以上の結果から、腺房部の再生は残存腺房細胞の増殖により再構築されることが示唆された。この再生過程で特徴的所見を示す導管様構造は、主として介在部細胞が顆粒合成を生じることで構築されるものであり、その形態変化に雌性ホルモンが重要な役割を持つものと考えられる。またその消退は細胞内空胞の形成とその放出、およびアポトーシスによってなされ、その結果、常態時の介在部導管へと変化することが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-08771591 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08771591 |
可視化されたエスニシティの比較研究:在日コリアン・コミュニティの過去と現在 | 同地域の同方法による映像記録は、1990年に実施されている。20082010年の間、同方法で経年的に同地域を撮影した映像を90年の映像と比較することによって、地域の表象の変化を明らかにし、それを日本社会における在日コリアン集住地域の歴史的変容の中に位置づけた。今回の撮影では、ハイビジョンビデオカメラを使用し、記録媒体はDVDを使用した。同地域の同方法による映像記録は、1990年に実施されている。20082010年の間、同方法で経年的に同地域を撮影した映像を90年の映像と比較することによって、地域の表象の変化を明らかにし、それを日本社会における在日コリアン集住地域の歴史的変容の中に位置づけた。今回の撮影では、ハイビジョンビデオカメラを使用し、記録媒体はDVDを使用した。大阪生野区にある「コリアタウン」を映像によって記録し、過去の映像と比較し、エスニック・コミュニティの時間的変化を映像という視点から明らかにするのが本研究の目的である。記録の方法は、防振ステディカムに装着したビデオカメラを使って地域社会の街頭景観をシームレスに連続撮影するという特殊な方法である。この方法をもちいた同じ地域の映像記録は、1990年にすでに一度撮影されている。過去(1990年)に撮影されたこの映像対象を、同じ手法で、同じ時期に撮影し、得られた映像データを90年の映像データと比較することによって、地域社会の表象の変化とその方向を明らかにし、その変化を過去17年間の日本社会における在日コリアン社会の歴史的な変容、さらに在日外国人を取り巻く変化の中に位置づけることを試みた。ただし、今回の研究では、撮影にはハイビジョンビデオカメラを使用し、記録媒体はDVDを使用した。撮影は、08年10月、09年1月の2つの時期に行われた。また、撮影された映像と過去の映像を比較するため、地元住民や専門家による映像の読み取り調査を行った。地元商店街の店主1名、地元高等学校韓国語・文化教諭1名、地元出身の韓国籍女性研究者1名、民俗宗教が専門の日本人大学研究者1名による読み取り調査を行った。また韓国に出張し、ソウル大学日本研究所関係者に映像を視聴してもらいコメントを求めると同時に、淑明女子大学で2名の韓国人インフォーマント(文化人類学専攻、都市デザイン専攻)による読み取り調査を実施した。さらに、中間段階の研究成果の公開として、今回採用した映像による調査技法を『映像フィールドワークの発想・ビデオカメラで考えよう』(七つ森書館)として公表した。撮影対象地域である大阪生野コリアタウンで、2009年度の映像収録を行った。2009年度は、従来の方法に加えて、より高性能なスタビライザーを使用して、安定した映像の収録を試みた。つぎに、2008年度、2009年度において現地で収録した映像をターゲットとして、多様な読み手による映像の読み取り作業を実施した。読み取り作業自体が、本研究における重要な課題となっているため、読み手の選定に当たっては、その専門領域の多様性を考慮し、また、当該地域で生活する多様な文化的背景を有する当事者から在日コリアンの1世世代、2世世代を中心に被験者の抽出を行った。同時に、比較対象として、韓国の研究教育機関(ソウル大学校)の協力を得て、ソウル大学校での映像上映を行い、ソウル在住の韓国人日本研究者による読み取りも並行して行った。さらに、研究に協力いただいたソウル大学の文化人類学研究者を招聘し、対象地域での現地フィールドワークを行った。これらの読み取り過程をビデオカメラで収録し、記録映像を対象に文字化する作業を行った。結果として、15サンプルの読み取りにかかるテクストを得ることができた。2010年度は、読み取り作業をさらに広げるとともに、その分析を順次行う予定である。大阪生野区にある「コリアタウン」を映像によって記録した。記録の方法は、防振ステディカム(スタビライザ)をつかって地域社会の街頭景観をシームレスに連続撮影する方法である。同地域の同方法による映像記録は、1990年に実施されている。20082010年の間、同方法で経年的に同地域を撮影した映像を90年の映像と比較することによって、地域の表象の変化を明らかにし、それを日本社会における在日コリアン集住地域の歴史的変容の中に位置づけた。今回の撮影では、ハイビジョンビデオカメラを使用し、記録媒体はDVDを使用した。主な分析結果は、次のとおりである。・90年にくらべて、今回の映像では、コリア文化をしめす指標的な映像記号が全体として増加している。たとえば、商店街の入り口に百済門が設営され、案内板には道祖神などが配置されている。コリアタウンは視覚的なエスニック化の傾向を強めた。・コリア料理の食材などを販売する店の数は増加している。その店頭の商品陳列などを観察すると、90年の映像では、食材に商品名がつけられていない場合が多く、店名も日本式の屋号を持つものが多い。他方、今回の映像では、商品名が明示されている場合が多く、また、商品表示にハングルを使用したものやコリアンの店であることを明示した店舗が増加した。これは、コリアタウンが日本人観光客を顧客とした観光地化の傾向が強めたことを示している。・店舗の中には、韓国から輸入された食材や韓国ドラマに関連するキャラクター商品などを販売する店舗が加わった。他方、地元で製造された食材などを販売する店舗は微減の傾向にあった。 | KAKENHI-PROJECT-20530446 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20530446 |
可視化されたエスニシティの比較研究:在日コリアン・コミュニティの過去と現在 | この事実は、コリアタウンにおけるニューカマーの増加を反映し、現代の韓国文化に即時的に繋がっていることを示している。・非コリアン商店の数に大きな変化はなかった。しかし、コリア文化の視覚化が拡大したため、商店街のモノトーン化の印象が伺える。 | KAKENHI-PROJECT-20530446 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20530446 |
ヒトの気管支におけるガス交換メカニズム | ヒトの肺は,気管から末端の肺胞に至るまで分岐管の集合により構成されている.流路の一方の端(肺胞)は行き止まりであるにもかかわらず,肺は酸素と炭酸ガスの極めて効率良いガス交換を実現している.従来,流路軸方向のガス交換に寄与する因子として,(1)Taylor拡散,(2)streaming,(3)二次流れ,が挙げられているが,本研究代表者らが流れの挙動をより詳細に観察した結果,吸気・呼気いずれの場合にも,各分岐曲がり部での「はく離域の発生・消滅」とそれによる流体の「捕捉・放出」効果が,流路軸方向物質交換の基本機構であることがわかった.上述の物質交換過程は,実際の人肺においても生じていると推測されるが,本研究は,それをより実際に近い条件において定量的な観点から検証かつ解析し,ヒトの肺の気管支内におけるガス交換機構を工学的見地から明らかにすることを目的とする.流れの可視化実験および物理モデルの構築(担当望月)ヒトの肺を模して,3次元的に分岐するガラス製テストセクションを新たに製作し,通常呼吸および人工呼吸法のひとつである高頻度呼吸を再現する脈動周波数範囲での実験を行い,以下のことが明らかになった.(1)3次元流路でも「捕捉・放出」効果が生じている.(2)分岐上流部での流れの非対称性が影響を及ぼし,物質輸送速度が速い経路が存在する.(3)その経路は連続する分岐管軸方向の相対位置関係によって変化する.数値シミュレーション(担当村田)3分岐4世代の分岐管内非定常振動流と物質拡散の有限体積法による数値解析を行った.3通りの分岐角度での計算を行い,剥離泡の大きさと物質移動量の間には相関があり,最適な分岐角度の存在が示唆された.剥離泡の役割としては「捕捉・放出」効果による物質輸送促進と流路面積減少による流体加速の2つの効果が観察された.ヒトの肺は,気管から末端の肺胞に至るまで分岐管の集合により構成されている.流路の一方の端(肺胞)は行き止まりであるにもかかわらず,肺は酸素と炭酸ガスの極めて効率良いガス交換を実現している.従来,流路軸方向のガス交換に寄与する因子として,(1)Taylor拡散,(2)streaming,(3)二次流れ,が挙げられているが,本研究代表者らが流れの挙動をより詳細に観察した結果,吸気・呼気いずれの場合にも,各分岐曲がり部での「はく離域の発生・消滅」とそれによる流体の「捕捉・放出」効果が,流路軸方向物質交換の基本機構であることがわかった.上述の物質交換過程は,実際の人肺においても生じていると推測されるが,本研究は,それをより実際に近い条件において定量的な観点から検証かつ解析し,ヒトの肺の気管支内におけるガス交換機構を工学的見地から明らかにすることを目的とする.流れの可視化実験および物理モデルの構築(担当望月)ヒトの肺を模して,3次元的に分岐するガラス製テストセクションを新たに製作し,通常呼吸および人工呼吸法のひとつである高頻度呼吸を再現する脈動周波数範囲での実験を行い,以下のことが明らかになった.(1)3次元流路でも「捕捉・放出」効果が生じている.(2)分岐上流部での流れの非対称性が影響を及ぼし,物質輸送速度が速い経路が存在する.(3)その経路は連続する分岐管軸方向の相対位置関係によって変化する.数値シミュレーション(担当村田)3分岐4世代の分岐管内非定常振動流と物質拡散の有限体積法による数値解析を行った.3通りの分岐角度での計算を行い,剥離泡の大きさと物質移動量の間には相関があり,最適な分岐角度の存在が示唆された.剥離泡の役割としては「捕捉・放出」効果による物質輸送促進と流路面積減少による流体加速の2つの効果が観察された.ヒトの肺は,気管から末端の肺胞に至るまで分岐管の集合により構成されている.流路の一方の端(気管)は大気に開放されているが,他方(肺胞)は行き止まりであるにもかかわらず,肺は酸素と炭酸ガスの極めて効率良いガス交換を実現している.従来,流路軸方向のガス交換に寄与する因子として,(1)Taylor拡散,(2)streaming,(3)二次流れ,が挙げられているが,本研究代表者らが流れの挙動をより詳細に観察した結果,吸気・呼気いずれの場合にも,各分岐曲がり部での「はく離域の発生・消滅」とそれによる流体の「捕捉・放出」効果が,流路軸方向物質交換の基本機構であることがわかった.この新たに見出された上述の物質交換過程は,実際の人肺においても生じていると推測されるが,本研究は,それをより実際に近い条件において定量的な観点から検証かつ解析し,もってヒトの肺の気管支内におけるガス交換機構を工学的見地から明らかにすることを目的とする.流れの可視化実験および物理モデルの構築(担当望月)ヒトの肺を模して,3次元的に分岐するガラス製テストセクションを新たに製作し,通常呼吸および人工呼吸法のひとつである高頻度呼吸を再現する脈動周波数範囲での実験を一部の条件範囲について行った.可視化結果より,左右対称に分岐する場合でも物質輸送にその上流部での流れの非対称性が影響を及ぼし,物質輸送速度が速い経路が存在することがわかった.数値シミュレーション(担当村田)3次元的に分岐する管内の非定常流れと物質拡散の基礎方程式を用いて,有限体積法による数値解析を行った.3通りの分岐角度での計算を行い,剥離泡の大きさと物質移動量の間に相関があることが明らかとなった. | KAKENHI-PROJECT-13450080 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13450080 |
ヒトの気管支におけるガス交換メカニズム | 但し,その関係は単調なものではなく,最適な分岐角度および剥離泡の役割の詳細な検討は次年度の課題となった.ヒトの肺は,気管から末端の肺胞に至るまで分岐管の集合により構成されている.流路の一方の端(肺胞)は行き止まりであるにもかかわらず,肺は酸素と炭酸ガスの極めて効率良いガス交換を実現している.従来,流路軸方向のガス交換に寄与する因子として、(1)Taylor拡散、(2)streaming,(3)二次流れ,が挙げられているが,本研究代表者らが流れの挙動をより詳細に観察した結果,吸気・呼気いずれの場合にも,各分岐曲がり部での「はく離域の発生・消滅」とそれによる流体の「捕捉・放出」効果が,流路軸方向物質交換の基本機構であることがわかった.上述の物質交換過程は,実際の人肺においても生じていると推測されるが,本研究は,それをより実際に近い条件において定量的な観点から検証かつ解析し,ヒトの肺の気管支内におけるガス交換機構を工学的見地から明らかにすることを目的とする.流れの可視化実験および物理モデルの構築(担当望月)ヒトの肺を模して,3次元的に分岐するガラス製テストセクションを新たに製作し,通常呼吸および人工呼吸法のひとつである高頻度呼吸を再現する脈動周波数範囲での実験を行い,以下のことが明らかになった.(1)3次元流路でも「捕捉・放出」効果が生じている.(2)分岐上流部での流れの非対称性が影響を及ぼし,物質輸送速度が速い経路が存在する.(3)その経路は連続する分岐管軸方向の相対位置関係によって変化する.数値シミュレーション(担当村田)3分岐4世代の分岐管内非定常振動流と物質拡散の有限体積法による数値解析を行った.通りの分岐角度での計算を行い,剥離泡の大きさと物質移動量の間には相関があり,最適な分岐角度の存在が示唆された・剥離泡の役割としては「捕捉・放出」効果による物質輸送促進と流路面積減少による流体加速の2つの効果が観察された. | KAKENHI-PROJECT-13450080 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13450080 |
呼気ガスセンシングによる病状診断と予測アルゴリズム開発 | 本研究課題は、呼気を中心とする非侵襲データに基づき、機械学習法により複数の疾患を診断することを目的とする。これまでの研究から、呼気成分を用いて高精度で疾病診断できることが分かっているが、診断におけるデータの前処理・アルゴリズム、およびガスセンサの小型化・性能向上を行うことで、疾病・健康状態の状態推定の精度向上を目指す。また、呼気に含まれる複数の成分のうち、どの成分が疾病と関連するか、疾病のレベルとの関係性について知見抽出が行えるアルゴリズム開発を行うことを目的とする。さらに、1種のガスセンサで4種の状態(健常および3種の疾病)を特異的に診断できる可能性を調査する。呼気採取グループは採取する疾病の選択および被検者の準備(倫理関係の書面等も含む)行った。センサ開発グループは特定の4成分に対する感度調整を行った。アルゴリズム開発グループは、新規呼気ガスが採取されるまでの準備として、診断に有効な成分選択アルゴリズムの開発を行った。成分選択は機械学習の分野における特徴選択法に相当する。本研究課題に関連した新規の特徴選択法の開発に着手し、ある程度の性能が得られることを確認した。今後、採取された呼気ガスに対して本手法を適用していく予定である。本研究課題の手法が確立されれば、様々な非侵襲データを統合することで、高い精度の健康診断が簡素に行うことが可能となる。その簡便性から医療現場の労力を大幅に削減できるだけでなく、被検者にとっても診断のための経済的・身体的・心的・時間的負担が大幅に軽減される。ヒト由来試料採取を行う研究であるため、採取の手続きおよびデータの扱いについて、規定に従って進めている。採取グループ、センサ開発グループ、アルゴリズム開発グループそれぞれにおいて、具体的な研究事項を順調に進めている。新規に採取した呼気について、センサによる定量化と疾病診断性能の評価を行う。複数の疾病間の呼気成分の違いについて明らかにする。新規の特徴選択法について、他の手法との性能比較を行う。本研究課題は、呼気を中心とする非侵襲データに基づき、機械学習法により複数の疾患を診断することを目的とする。これまでの研究から、呼気成分を用いて高精度で疾病診断できることが分かっているが、診断におけるデータの前処理・アルゴリズム、およびガスセンサの小型化・性能向上を行うことで、疾病・健康状態の状態推定の精度向上を目指す。また、呼気に含まれる複数の成分のうち、どの成分が疾病と関連するか、疾病のレベルとの関係性について知見抽出が行えるアルゴリズム開発を行うことを目的とする。さらに、1種のガスセンサで4種の状態(健常および3種の疾病)を特異的に診断できる可能性を調査する。呼気採取グループは採取する疾病の選択および被検者の準備(倫理関係の書面等も含む)行った。センサ開発グループは特定の4成分に対する感度調整を行った。アルゴリズム開発グループは、新規呼気ガスが採取されるまでの準備として、診断に有効な成分選択アルゴリズムの開発を行った。成分選択は機械学習の分野における特徴選択法に相当する。本研究課題に関連した新規の特徴選択法の開発に着手し、ある程度の性能が得られることを確認した。今後、採取された呼気ガスに対して本手法を適用していく予定である。本研究課題の手法が確立されれば、様々な非侵襲データを統合することで、高い精度の健康診断が簡素に行うことが可能となる。その簡便性から医療現場の労力を大幅に削減できるだけでなく、被検者にとっても診断のための経済的・身体的・心的・時間的負担が大幅に軽減される。ヒト由来試料採取を行う研究であるため、採取の手続きおよびデータの扱いについて、規定に従って進めている。採取グループ、センサ開発グループ、アルゴリズム開発グループそれぞれにおいて、具体的な研究事項を順調に進めている。新規に採取した呼気について、センサによる定量化と疾病診断性能の評価を行う。複数の疾病間の呼気成分の違いについて明らかにする。新規の特徴選択法について、他の手法との性能比較を行う。 | KAKENHI-PROJECT-17H01817 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H01817 |
オートファジーによるオルガネラ品質管理のマウス生体を用いた解析 | Atg5ノックアウトマウスなどのオートファジー不全マウスは生まれて一日以内に致死となるためマウス成体におけるオートファジーの生理学的意義を解析するには制約が大きかった。本研究ではAtg5ノックアウトマウスに神経特異的プロモーター下でAtg5を発現させることにより神経特異的にオートファジーをレスキューしたマウスを作製した。このマウスは神経以外全身でAtg5を欠損する。この神経特異的Atg5レスキューマウスは新生仔致死を乗り越え、成体まで生き延びることができた。本年度はこのマウスの全身の臓器を組織学的及び生化学的に解析することでオートファジー不全により起こる組織学的異常と異常タンパク質の蓄積を全身網羅的に解析、臓器間で比較した。神経特異的Atg5レスキューマウスでは肝脾腫、細胞の腫大・空胞変性、パネート細胞の異常、筋肉・脂肪の萎縮など既報告の異常に加え、小腸絨毛・陰窩の形態変化、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、間質性肺炎、筋肉組織における核の増加、雄雌の生殖器の発達不全・生殖細胞の成熟不全、様々な臓器における炎症性変化が観察された。また心臓・肝臓・筋肉において特にユビキチン化タンパク質とオートファジー特異的基質であるp62の蓄積が顕著であることが観察された。さらに、これらの臓器ではp62の蓄積依存的に活性化される転写因子であるNrf2の増加とそのターゲット因子であるNqo1の増加が観察された。以上の結果より、オートファジー依存的な細胞の品質管理の欠損は臓器によりその影響の強さが違う可能性が示唆された。前年度までの結果から、この神経特異的Atg5レスキューマウスは鉄の吸収不全により鉄欠乏をきたすことが観察されていた。また、その原因として小腸における鉄関連因子の転写制御異常によることが観察されている。これらの結果を前年度までの成果と合わせて論文として投稿した。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。神経以外の全身でオートファジーを欠損した神経特異的オートファジーレスキューマウス(以下ノックアウトマウスとする)を用い、マウス成体の全身におけるオートファジーの生理学的意義を解析した。当初、全身の臓器においてオートファジーの破綻に起因するオルガネラの異常を解析する予定であったが、スクリーニングの途中でノックアウトマウスは貧血及び鉄欠乏を呈することが観察され、その鉄欠乏はノックアウトマウスの貧血の少なくとも一部であることが観察された。このことより、鉄欠乏の原因に重点を置いて解析を進めることとした。鉄欠乏の原因として1、吸収の低下2、分布の異常3、損失の増加の可能性をそれぞれ調べた。全身の臓器で組織鉄を定量したところ、鉄が異常に沈着した臓器は観察されなかった。また、ノックアウトマウスは明らかな外表出血はなく、便潜血も陰性であった。以上のことから、分布の異常と損失の増加は否定的であった。そのため、現在ノックアウトマウスの鉄欠乏は鉄の吸収異常に起因すると考えている。次に鉄吸収の低下の可能性を調べた。鉄吸収の抑制的制御として肝臓ホルモンであるヘプシジンが知られるが、ノックアウトマウスでヘプシジンは低下していた。よって、てつきゅうしゅうがか上に抑制されている可能性は否定的であった。一方、鉄吸収の促進的制御として、鉄不足の時に上部小腸上皮で鉄吸収に関連する因子であるDcytb, DMT1, Fpnの発現が亢進することが知られる。mRNAの発現をqPCR法で調べたところ、ノックアウトマウスは鉄欠乏にもかかわらず、これらの因子の発現がコントロールと比較し、同等か低下傾向にあった。このことから、ノックアウトマウスは鉄関連因子の発現不足により鉄の吸収異常を来していることが示唆された。神経以外で全身でオートファジーを欠損したマウスモデル(以下、ノックアウトマウスとする)を用い、オートファジーの生理的意義を解析している。前年度のスクリーニングの結果からこのノックアウトマウスは鉄欠乏を呈することが観察され、間接的証拠から鉄の吸収異常が疑われていた。今回、コントロールマウスとノックアウトマウスをともに鉄欠乏にして比較するため、両群に鉄欠乏食を与え、鉄吸収関連因子の転写誘導を観察した。コントロールマウスでは鉄含有食を与えた群と比較し、鉄欠乏食を与えた群で非常に劇的に鉄関連因子のmRNAが上昇した。一方、ノックアウトマウスは通常状態で鉄欠乏であるにもかかわらず、これらの因子が上昇しておらず、また、鉄欠乏食を与えたときもコントロールマウスと比較しmRNAの上昇が有意に低いことが観察された。このことから、ノックアウトマウスは鉄欠乏時における鉄吸収関連因子の発現が不十分であることが示された。同様に、生理的に鉄要求性の高い若齢マウスを解析したところ、鉄エクスポーターのmRNA発現が有意に低下していることが観察された。以上のことから、ノックアウトマウスは鉄吸収に必要な因子の発現低下により鉄欠乏を呈することが示唆された。鉄吸収の制御は肝臓からのホルモンによる抑制性の制御と小腸上皮における転写誘導による促進性の制御が知られる。現在、ノックアウトマウスで観察される鉄吸収不全の原因が上記のどちらの原因によるか、小腸上皮特異的オートファジー不全マウスおよび肝臓オートファジー不全マウスを用い解析しているところである。小腸上皮特異的オートファジー不全マウス、肝臓オートファジー不全マウス共に通常状態では鉄欠乏を呈さないことが観察されている。 | KAKENHI-PROJECT-13J07082 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13J07082 |
オートファジーによるオルガネラ品質管理のマウス生体を用いた解析 | 今後、これらのマウスで鉄欠乏食を与えたときに鉄トランスポーター発現誘導不全が観察されるか解析する。Atg5ノックアウトマウスなどのオートファジー不全マウスは生まれて一日以内に致死となるためマウス成体におけるオートファジーの生理学的意義を解析するには制約が大きかった。本研究ではAtg5ノックアウトマウスに神経特異的プロモーター下でAtg5を発現させることにより神経特異的にオートファジーをレスキューしたマウスを作製した。このマウスは神経以外全身でAtg5を欠損する。この神経特異的Atg5レスキューマウスは新生仔致死を乗り越え、成体まで生き延びることができた。本年度はこのマウスの全身の臓器を組織学的及び生化学的に解析することでオートファジー不全により起こる組織学的異常と異常タンパク質の蓄積を全身網羅的に解析、臓器間で比較した。神経特異的Atg5レスキューマウスでは肝脾腫、細胞の腫大・空胞変性、パネート細胞の異常、筋肉・脂肪の萎縮など既報告の異常に加え、小腸絨毛・陰窩の形態変化、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、間質性肺炎、筋肉組織における核の増加、雄雌の生殖器の発達不全・生殖細胞の成熟不全、様々な臓器における炎症性変化が観察された。また心臓・肝臓・筋肉において特にユビキチン化タンパク質とオートファジー特異的基質であるp62の蓄積が顕著であることが観察された。さらに、これらの臓器ではp62の蓄積依存的に活性化される転写因子であるNrf2の増加とそのターゲット因子であるNqo1の増加が観察された。以上の結果より、オートファジー依存的な細胞の品質管理の欠損は臓器によりその影響の強さが違う可能性が示唆された。前年度までの結果から、この神経特異的Atg5レスキューマウスは鉄の吸収不全により鉄欠乏をきたすことが観察されていた。また、その原因として小腸における鉄関連因子の転写制御異常によることが観察されている。これらの結果を前年度までの成果と合わせて論文として投稿した。前年度に行ったスクリーニングより、ノックアウトマウスは鉄欠乏を呈することが明らかになっていた。その原因として鉄の吸収に異常がありそうだということが明らかになった。鉄の吸収異常の原因として、小腸上皮における鉄吸収に必要なトランスポーター等の発現誘導が不十分であることが観察された。現在臓器特異的ノックアウトマウスを作製し、原因となる臓器を特定するための解析を進めている。以上より、おおむね順調に進展していると自己評価した。27年度が最終年度であるため、記入しない。小腸上皮特異的オートファジー不全マウスと肝臓オートファジー不全マウスモデルを解析することで、小腸における鉄吸収不全が小腸内因性の原因であるか、肝臓からのホルモン(特にヘプシジン)制御であるかを調べる。また、神経特異的オートファジーレスキューマウスで観察される鉄関連因子の発現誘導不全がこれらの臓器特異的ノックアウトマウスで観察されるかを解析する。そして、観察される異常の直接的原因を精査していく予定である。また、得られた結果を論文としてまとめ、発表する予定である。ノックアウトマウスの表現型のスクリーニングが終わり、鉄欠乏に注目して解析を進める、という方向性が決まった。 | KAKENHI-PROJECT-13J07082 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13J07082 |
骨髄幹細胞の歯牙構成細胞への分化誘導 | 本研究では骨髄幹細胞を用いた歯牙再生医療の臨床応用を目指す為、骨髄幹細胞の歯牙構成細胞への分化誘導制御に関する基礎的研究を行った。その結果、骨髄幹細胞は歯や歯周組織を構成する様々な細胞への分化能を有していることが証明された。また歯髄中に存在する幹細胞の解析から、骨髄幹細胞の歯牙構成細胞への分化誘導の可能性が示唆された。以上の結果は、将来の歯科再生医療において、骨髄に含まれる細胞から歯を形成できる可能性を示すものである。本研究では骨髄幹細胞を用いた歯牙再生医療の臨床応用を目指す為、骨髄幹細胞の歯牙構成細胞への分化誘導制御に関する基礎的研究を行った。その結果、骨髄幹細胞は歯や歯周組織を構成する様々な細胞への分化能を有していることが証明された。また歯髄中に存在する幹細胞の解析から、骨髄幹細胞の歯牙構成細胞への分化誘導の可能性が示唆された。以上の結果は、将来の歯科再生医療において、骨髄に含まれる細胞から歯を形成できる可能性を示すものである。本年度研究では骨髄幹細胞を用いた歯科再生医療の臨床応用を目指す為、骨髄幹細胞の歯牙構成細胞への分化誘導制御に関する基礎的研究を行った。骨髄幹細胞の歯牙構成細胞への分化能に関する研究では、GFPトランスジェニックマウス・ラット由来の骨髄細胞を用い、1. GFP骨髄細胞移植動物の作成と同動物の組織学的解析、2.歯髄組織中に存在するGFP陽性細胞の樹立を試みた。また骨髄幹細胞の歯牙構成細胞への分化誘導を行う上で、象牙芽細胞の解析を行うことは重要である。そこで歯髄細胞の分化過程の詳細を解析するため3. GFPトランスジェニックラットより歯髄幹細胞の樹立を試みた。1.免疫組織化学的解析では、GFP骨髄細胞移植後1ヶ月で歯髄組織中にGFP陽性細胞が多数認められた。GFP陽性細胞は6ヶ月の観察期間中細胞数の大きな変化は認められなかった。歯髄組織中のGFP陽性細胞は神経、血管等のマーカー陰性であり、また大部分が樹枝状形態を呈していることから免疫機能に関わる樹状細胞である可能性が示唆された。GFP陽性細胞は歯髄組織以外に、歯根膜組織等の歯周組織にも認められ、経時的にGFP陽性細胞数の増加傾向が認められた。以上のことから骨髄幹細胞が歯牙構成組織に深く関わっていると考えられた。2.歯髄組織中のGFP陽性細胞を培養したところ、数代の経代で細胞数は激減した。今後培養条件等の詳細な検討を行う予定である。3.ラット歯髄から樹立した歯髄幹細胞を、硬組織分化培地で培養した結果、高度な石灰化を生じた。また同細胞を免疫不全マウスに移植したところ、象牙質様の硬組織形成を認めた。本研究課題では骨髄および歯髄中に存在する間葉系幹細胞の性状解明をおこない、骨髄幹細胞を歯牙構成細胞に分化誘導し、歯科再生医療へ応用する為の基礎的研究データを得ることを目的としている。本年度研究ではGFP骨髄細胞移植ラットの歯髄組織中に存在するGFP陽性細胞の性状について詳細に解析を行った。また、歯髄組織から樹立した歯髄幹細胞についてその象牙芽細胞への分化能について検討を行った。歯髄中の移植骨髄由来GFP陽性細胞の免疫組織学的検索では、神経系およびマクロファージ系の抗体には反応を示さず、明らかな象牙質形成細胞への分化も認められなかった。また、培養実験では増殖活性に乏しく、ある程度分化段階の進んだ細胞であると考えられた。以上の結果から同細胞は現在までに同定されていない細胞である可能性が示唆された。歯髄組織から樹立した細胞の解析では、歯髄幹細胞は経代60代を経過しても高い増殖能を保持していた。また、同細胞を硬組織分化培地で誘導したところ、細胞外に多量の基質を産生した。電子顕微鏡による観察では産生された基質は線維状を呈しており規則正しい周期構造が認められたことから、基質の主体はコラーゲンであると考えられた。コラーゲン基質には針状結晶状の沈着が認められる箇所も存在しており、アリザリン染色に強陽性を示したところから、高度に石灰化していると考えられた。歯髄幹細胞をオスフェリオン・マトリゲルと共に免疫不全マウスに皮下に移植したところ、象牙質様の硬組織ならびに歯髄様の組織が認められた。免疫組織学的解析では硬組織を形成する細胞はGFP抗体陽性であり、移植した細胞が硬組織を形成したと考えらた。また硬組織および隣接する細胞に抗DSP抗体陽性を認めたことから、樹立した細胞は象牙芽幹細胞の性格を有すると考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-20791515 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20791515 |
プロテインホスファターゼ2Cβ遺伝子の発現制御-精巣特異的発現と多重プロモーター | 我々はこれまでに、PP2Cには6種類のアイソフォーム(α,β-1,β-2,β-3,β-4,およびβ-5)が存在することを明らかにしてきた。これらのうちαとβは異なった遺伝子産物であり、βの5種類のアイソフォームは単一のpre-mRNAからの選択的スプライシングの産物である。また、これまでの研究の結果、マウス精巣の第1減数分裂パテキン期の精母細胞において、PPC2Cβ-3,-4および-5の発現が著しく上昇することが明らかになった。そこで、今回、精母細胞におけるPPC2Cβ遺伝子の発現制御機構の解明を目的に、PPC2CβゲノムDNAのクローニングと解析を行った。PPC2CβゲノムDNAのクローニングにより、これまでに8個のエクソンの存在が明らかになった。エクソンIVからエクソンVIIまでにPPC2Cβの5つのアイソフォーム(β-1β-5)に共通の翻訳領域がコードされていて、エクソンVIIIにPPC2Cβ-1に固有の配列と終止コドンが観察された。PPC2Cβ-2-5のC端末をコードするエクソンはさらに下流に存在するものと考えられる。エクソンIIの上流にはTATAボックスが存在し、性決定に重要な役割を果たす転写因子であるSRYの結合配列、およびNRE(c-mosの精巣以外での転写を阻害する因子)の結合配列が見出された。エクソンIIとその上流より成る7kbpのDNA断片をルシフェレースのレポーター遺伝子の上流に導入し、p19細胞にトランスフェクトしたところ、プロモーター活性が検出された。すでに我々は、PT-PCRによる解析で、エクソンII/III/IVを含む転写産物がマウス成獣の精巣に特異的に発現することを明らかにしている。以上の結果から、今回見出したプロモーター(P2)がPP2Cの精巣における特異的発現を制御するプロモーターであると結論された。我々はこれまでに、PP2Cには6種類のアイソフォーム(α,β-1,β-2,β-3,β-4,およびβ-5)が存在することを明らかにしてきた。これらのうちαとβは異なった遺伝子産物であり、βの5種類のアイソフォームは単一のpre-mRNAからの選択的スプライシングの産物である。また、これまでの研究の結果、マウス精巣の第1減数分裂パテキン期の精母細胞において、PPC2Cβ-3,-4および-5の発現が著しく上昇することが明らかになった。そこで、今回、精母細胞におけるPPC2Cβ遺伝子の発現制御機構の解明を目的に、PPC2CβゲノムDNAのクローニングと解析を行った。PPC2CβゲノムDNAのクローニングにより、これまでに8個のエクソンの存在が明らかになった。エクソンIVからエクソンVIIまでにPPC2Cβの5つのアイソフォーム(β-1β-5)に共通の翻訳領域がコードされていて、エクソンVIIIにPPC2Cβ-1に固有の配列と終止コドンが観察された。PPC2Cβ-2-5のC端末をコードするエクソンはさらに下流に存在するものと考えられる。エクソンIIの上流にはTATAボックスが存在し、性決定に重要な役割を果たす転写因子であるSRYの結合配列、およびNRE(c-mosの精巣以外での転写を阻害する因子)の結合配列が見出された。エクソンIIとその上流より成る7kbpのDNA断片をルシフェレースのレポーター遺伝子の上流に導入し、p19細胞にトランスフェクトしたところ、プロモーター活性が検出された。すでに我々は、PT-PCRによる解析で、エクソンII/III/IVを含む転写産物がマウス成獣の精巣に特異的に発現することを明らかにしている。以上の結果から、今回見出したプロモーター(P2)がPP2Cの精巣における特異的発現を制御するプロモーターであると結論された。我々はこれまでに、PP2Cには6種類のアイソフォーム(α、β-1, β-2, β-3, β-4およびβ-5)が存在することを明らかにしてきた。これらのうちαとβは異なった遺伝子産物であり、βの5種類のアイソフォームは単一のpre-mRNAからの選択的スプライシングの産物である。また、これまでの研究の結果、マウス精巣の第1減衰分裂パテキン期の精母細胞において、PP2Cβ-3, -4および-5の発現が著しく上昇することが明らかとなった。そこで、今回、精母細胞におけるPP2Cβ遺伝子の発現制御機構の解明を目的に、PP2CβゲノムDNAのクローニングと構造解析およびRT-PCRを用いた転写産物の解析を行った。その結果、翻訳開始点を含むエクソン(IV)の上流に3つのエクソン(I, II, III)が存在し、新生児マウス精巣(精祖細胞のみを含む)ではIIVを含む転写産物のみが検出されたのに対し、成獣マウス精巣の転写産物では、II III IVエクソンの読みとりが行われていた。さらに、Iエクソンの上流には構成的発現に関与すると考えられるプロモーター活性が検出された。以上の結果から、IIエクソンの上流に精巣特異的発現に関わるプロモーターが存在することが示唆され、現在その解析を進めている。また、FISH法により、PP2Cβ遺伝子がマウス17番染色体のE領域にマップされることが明らかになった。PP2CβゲノムDNAのクローニングにより、これまでに8個のエクソンの存在が明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-08670133 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08670133 |
プロテインホスファターゼ2Cβ遺伝子の発現制御-精巣特異的発現と多重プロモーター | エクソンIVからエクソンVIIまでにPP2Cβの5つのアイソフォーム(β-1β-5)に共通の翻訳領域がコードされていて、エクソンVIIIにPP2Cβ-1に固有の配列と終止コドンが観察された。PP2Cβ-2-5のC末端をコードするエクソンはさらに下流に存在するものと考えられる。エクソンIIの上流にはTATAボックスが存在し、性決定に重要な役割を果たす転写因子であるSRYの結合配列、およびNRE(c-mosの精巣以外での転写を阻害する因子)の結合配列が見出された。エクソンIIとその上流より成る7kbpのDNA断片をルシフェレースのレポーター遺伝子の上流に導入し、p19細胞にトランスフェクトしたところ、プロモーター活性が検出された。すでに我々は、RT-PCRによる解析で、エクソンII/III/IVを含む転写産物がマウス成獣の精巣に特異的に発現することを明らかにしている。以上の結果から、今回見出したプロモーター(P2)がPP2Cの精巣における特異的発現を制御するプロモーターであると結論された。 | KAKENHI-PROJECT-08670133 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08670133 |
Bordetella壊死毒の細胞膜受容体の同定 | Bordetella壊死毒(DNT)を^<125>I標識して標的細胞との結合様式の解析を試みた。種々の大きさのDNT断片を作製しそれぞれを^<125>I標識して同様に結合実験をおこなったところ、N末端側から54位Gluまでのペプチド断片(B断片)にDNTの結合ドメインが存在することがわかった。MC3T3-E1細胞に対するB断片の結合のKd値は2.5x10^<-6>Mであった。B断片はDNTに感受性のある細胞にはいずれも結合し、非感受性の細胞には結合しなかった。このことから、DNTに対する感受性は細胞膜上の受容体の存在によって主に決定されると考えられた。DNT受容体の一過性発現クローニングの際に利用するアッセイ系を確立することを目的に、DNTの細胞に対する作用をさらに解析した。その結果、DNTは細胞のRhoファミリーGTP結合タンパクのスイッチII領域にあるGlnに特異的にポリアミンを付加することが明らかとなった。ポリアミン化されたRhoはGTP水解活性を失うほか、GTP非依存的に下流のエフェクタータンパクと効果的に相互作用するため、構成的活性型として機能することがわかった。B断片のアミノ酸配列を詳細に調べたところ、B断片のC末端側に動物細胞由来プロテアーゼのfurinの認識モチーフが存在することがわかった。そこでDNTをfurinで処理したところDNTはこのモチーフの位置で切断された。DNTの細胞に対する作用はfurin処理により100倍程度強くなり、逆にfurin認識部位に点変異を導入したDNTは細胞に対する作用が完全に消失した。Furin処理DNTは人工脂質膜であるlipsomeと結合しなかったが、DNTの細胞への結合ドメインを除いたDNTdeltaBはliposomeと結合した。さらに、DNTdeltaBは本来DNTに感受性のないBalb/3T3細胞に作用した。以上の結果から、DNTはN末端側のB断片が細胞膜上のfurinもしくはfurin様プロテアーゼと相互作用した後、酵素活性ドメインを含むC末端領域が直接に細胞膜と相互作用し、最終的に酵素活性領域が細胞内に直接移行すると考えられた。現在はこのfurinもしくはfurin様プロテアーゼがDNTの細胞膜上の受容体として機能しているのかどうか検討している。Bordetella壊死毒(DNT)を^<125>I標識して標的細胞との結合様式の解析を試みた。種々の大きさのDNT断片を作製しそれぞれを^<125>I標識して同様に結合実験をおこなったところ、N末端側から54位Gluまでのペプチド断片(B断片)にDNTの結合ドメインが存在することがわかった。MC3T3-E1細胞に対するB断片の結合のKd値は2.5x10^<-6>Mであった。B断片はDNTに感受性のある細胞にはいずれも結合し、非感受性の細胞には結合しなかった。このことから、DNTに対する感受性は細胞膜上の受容体の存在によって主に決定されると考えられた。DNT受容体の一過性発現クローニングの際に利用するアッセイ系を確立することを目的に、DNTの細胞に対する作用をさらに解析した。その結果、DNTは細胞のRhoファミリーGTP結合タンパクのスイッチII領域にあるGlnに特異的にポリアミンを付加することが明らかとなった。ポリアミン化されたRhoはGTP水解活性を失うほか、GTP非依存的に下流のエフェクタータンパクと効果的に相互作用するため、構成的活性型として機能することがわかった。B断片のアミノ酸配列を詳細に調べたところ、B断片のC末端側に動物細胞由来プロテアーゼのfurinの認識モチーフが存在することがわかった。そこでDNTをfurinで処理したところDNTはこのモチーフの位置で切断された。DNTの細胞に対する作用はfurin処理により100倍程度強くなり、逆にfurin認識部位に点変異を導入したDNTは細胞に対する作用が完全に消失した。Furin処理DNTは人工脂質膜であるlipsomeと結合しなかったが、DNTの細胞への結合ドメインを除いたDNTdeltaBはliposomeと結合した。さらに、DNTdeltaBは本来DNTに感受性のないBalb/3T3細胞に作用した。以上の結果から、DNTはN末端側のB断片が細胞膜上のfurinもしくはfurin様プロテアーゼと相互作用した後、酵素活性ドメインを含むC末端領域が直接に細胞膜と相互作用し、最終的に酵素活性領域が細胞内に直接移行すると考えられた。現在はこのfurinもしくはfurin様プロテアーゼがDNTの細胞膜上の受容体として機能しているのかどうか検討している。Bordetella壊死毒(DNT)を^<125>I標識して標的細胞との結合様式の解析を試みた。^<125>I標識した全長DNTをプローブに用いた場合、非特異結合が高いために特異的結合が検出できなかった。そこで非特異結合を抑えるために、種々の大きさのDNT断片を作製しそれぞれを^<125>I標識して同様に結合実験をおこなったところ、N末端側から54位Gluまでのペプチド断片(B断片)にDNTの結合ドメインが存在することがわかった。骨芽細胞系培養細胞のMC3T3-E1に対するこのB断片の結合のKd値は2.5x10^<-6>Mであった。種々の培養細胞へのB断片の結合を調べたところ、DNTに感受性のある細胞はいずれもB断片が結合し、非感受性の細胞にはいずれも結合しなかった。 | KAKENHI-PROJECT-11670264 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11670264 |
Bordetella壊死毒の細胞膜受容体の同定 | このことから、DNTに対する感受性は細胞膜上の受容体の存在によって主に決定されると考えられた。DNT受容体の一過性発現クローニングの際に利用するアッセイ系を確立することを目的に、DNTの細胞に対する作用をさらに解析した。その結果、DNTは細胞内のRhoファミリーGTP結合タンパクのスイッチII領域にあるGlnに特異的にポリアミンを付加することが明らかとなった。ポリアミン化されたRhoはGTP水解活性を失うほか、GTP非依存的に下流のエフェクタータンパクと効果的に相互作用するため、構成的活性型として機能することがわかった。このことにより、DNTの毒作用が細胞機能の種々の局面で発現することが考えられた。前年度の研究において壊死毒(DNT)のN末端側から54位Gluまでのペプチド断片(B断片)にDNTの結合ドメインが存在することがわかった。B断片のアミノ酸配列を詳細に調べたところ、B断片のC末端側に動物細胞由来プロテアーゼのfurinの認識モチーフが存在することがわかった。そこでDNTをfurinで処理したところDNTはこのモチーフの位置で切断された。DNTの細胞に対する作用はfurin処理により100倍程度強くなり、逆にfurin認識部位に点変異を導入したDNTは細胞に対する作用が完全に消失した。DNTはfurin処理後もDNTのN末端領域とC末端領域は非共有的に結合していた。Furin処理DNTは人工脂質膜であるlipsomeと結合しなかったが、DNTの細胞への結合ドメインを除いたDNTdeltaBはliposomeと結合した。さらに、DNTdeltaBは本来DNTに感受性のないBalb/3T3細胞にも作用した。以上の結果から、DNTはN末端側のB断片が細胞膜上のfurinもしくはfurin様プロテアーゼと相互作用した後、酵素活性ドメインを含むC末端領域が解離して直接に細胞膜と相互作用する。その結果、最終的に酵素活性領域が細胞膜を通じて細胞内に直接移行すると考えられた。現在はこのfurinもしくはfurin様プロテアーゼがDNTの細胞膜上の受容体として機能しているのかどうか検討している。 | KAKENHI-PROJECT-11670264 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11670264 |
難治性根尖性歯周炎の血管内皮細胞を介した炎症の遷延と治癒機構の解明 | midkineの組織治癒機転を検索しiNOSinhibitorの影響を検討するため、歯根肉芽種69例を供した。血管内皮細胞にiNOS、midkineおよびCXCL1のタンパクおよび遺伝子発現が示されたが、健常歯肉では認められなかった。Porphyromonas gingivalisから抽出したLPSで血管内皮細胞を刺激したところ、iNOS、midkineおよびCXCL1の発現を認めたがiNOS inhibitorを添加するとiNOS量の著しい低下が認められた。以上のことから、歯根肉芽種中の血管内皮細胞は歯周病原菌の刺激を受け、iNOSおよびmidkineを発現することが明らかとなった。外科的に摘出した根尖病巣組織50例を試料とし、メスで2分割した。一方を中性緩衝ホルマリンで固定したのち、パラフィン切片を作製し、ヘマトキシリンーエオジン重染色した。試料の84%(42例)は重層扁平上皮とコレステリン結晶を含まず、肉芽組織中には幼弱な血管に富む高度な細胞浸潤を伴うため、歯根肉芽腫と病理診断し、以下の検索に供した。分割した他方を用いてmRNAを抽出し、相補的なDNAを合成した。ヒト誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)、midkineおよびG3PDHに特異的なPCRプライマーを用いて、real-time PCR法による定量的遺伝子検索を行ったところ、全ての試料でiNOSおよびmidkineのmRNA発現を認めた。なお、iNOSとmidkineの遺伝子発現の割合には相関性を認めなかった。なお、陰性コントロールとしてインプラントの二次手術時に摘出した健常歯肉を試料とし、歯根肉芽種と同様に試料の検索を行ったところ、炎症細胞浸潤の程度は低く、また血管内皮細胞の数も少なかった。また、real-time PCR法による分析を行った結果、歯根肉芽種に比較して有意に低いiNOSおよびmidkineのmRNA発現を認めた(Kruskal-Wallis test)。以上のことから、iNOSおよびmidkineは炎症特異的に発現され、血管内皮細胞を介して歯根肉芽種の発症に影響している可能性が示唆された。1.供試試料:外科的に摘出した根尖病巣組織35例をヘマトキシリンーエオジン染色し、歯根肉芽種と診断した27例を供試した。また、埋伏智歯の抜去時に健常歯肉10例を採取し、陰性のコントロールとした。2.免疫組織化学的検索:抗ヒト誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)またはmidkine (MK)モノクローナル抗体で免疫染色を行ったところ、全ての歯根肉芽種でiNOSおよびMKの発現を確認したが、健常歯肉においてはどちらの発現も確認できなかった。iNOSおよびMKは炎症性細胞や血管内皮細胞で強い発現を示し、炎症性細胞は血管内皮細胞周囲に局在していた。3.遺伝子検索:歯根肉芽種および健常歯肉組織のiNOS発現を検索したところ、全ての歯根肉芽種からiNOS遺伝子の発現を認めたが、健常歯肉組織では確認できなかった。同様にMK遺伝子の発現を検索したところ、全ての歯根肉芽種で観察され、健常歯肉でもMK遺伝子の発現を確認したが、発現強度は歯根肉芽種に比較して有意に低かった。4.細胞培養:歯周病原菌の一種であるPorphyromonas gingivalisからLPSを抽出し、ヒト臍帯静脈血由来血管内皮細胞(HUVEC)を刺激したところ、濃度依存的に強いiNOSおよびMK遺伝子の発現を認めた。一方、iNOS inhibitorを添加してからP gingivalisのLPSを添加したところ、iNOS発現が著しく低下した。また、HUVECをガラス板に播種し実体顕微鏡で観察したところ、無刺激では敷石状の形態を示していた。しかし、P gingivalisのLPSで刺激した結果、その形態は紡錘形に変化した。その後iNOS inhibitorを添加したところ、HUVECは元の敷石状の形態に戻った。以上のことから、歯根肉芽種中の炎症性細胞は歯周病原菌の刺激を受け、炎症のメディエーターであるiNOSを発現すると共に創傷治癒に関与するMKを発現することが明らかとなった。midkineの組織治癒機転を検索しiNOSinhibitorの影響を検討するため、歯根肉芽種69例を供した。血管内皮細胞にiNOS、midkineおよびCXCL1のタンパクおよび遺伝子発現が示されたが、健常歯肉では認められなかった。Porphyromonas gingivalisから抽出したLPSで血管内皮細胞を刺激したところ、iNOS、midkineおよびCXCL1の発現を認めたがiNOS inhibitorを添加するとiNOS量の著しい低下が認められた。以上のことから、歯根肉芽種中の血管内皮細胞は歯周病原菌の刺激を受け、iNOSおよびmidkineを発現することが明らかとなった。歯根嚢胞と臨床診断され、外科的に摘出された根尖病巣組織を研究試料とした。得られた組織を二分割し、一方を用いてパラフィン切片を作製したのち、ヘマトキシリン・エオジン重染色を施した。試料の87%は重層扁平上皮とコレステリン結晶を含まず、肉芽組織中には幼弱な血管に富む高度な細胞浸潤を伴うため、歯根肉芽腫と病理診断し、以下の検索に供した。なお、重層扁平上皮を含む組織を歯根嚢胞と病理診断し、本研究から除外した。 | KAKENHI-PROJECT-23592811 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23592811 |
難治性根尖性歯周炎の血管内皮細胞を介した炎症の遷延と治癒機構の解明 | 歯根肉芽種と病理診断した組織の、分割した他方を用いて凍結切片を作製し、抗ヒト誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)、midkine、CD105抗体を用いた免疫染色を行ったところ、肉芽種中のマクロファージやリンパ球などの炎症性細胞や血管内皮細胞にiNOSおよびmidkine抗体による染色性を示したが、特に血管内皮細胞で強陽性を示した。また、陽性細胞数は比較的少ないが、肉芽組織中にCD105陽性細胞の存在を認めた。なお、CD105陽性細胞は血管周囲に局在していた。健常歯肉を用いて同様に免疫染色を行ったところ、全ての試料で陰性所見を示した。これらの抗体を用いて蛍光二重免疫染色を行ったところ、炎症性細胞や血管内皮細胞はiNOSおよびmidkineを共発現していた。歯根肉芽腫の凍結切片からmRNAを抽出し、ヒトiNOSおよびmidkineに特異的なPCRプライマーを用いてreal time PCR法を行ったところ、iNOSおよびmidkine遺伝子の発現を確認した。しかし、健常歯肉から抽出したmRNAを検索した結果、これらの遺伝子発現は認められなかった。以上のことから、iNOSおよびmidkineは炎症特異的に発現され、歯根肉芽種の発症に影響している可能性が示唆された。当初予定していたよりも多くの試料を収集することができ、研究に供試することができたため、多くの研究データを得ることができたことが研究達成に大きく貢献している。研究内容については、病理組織学的、免疫組織学的および分子生物学的手法を用いて検索しているが、それらは申請者が以前から常日頃行っている手法であり、内容を熟知しているため、研究自体は非常に円滑に進行している。当初予定していたよりも多くの試料を収集することができ、研究に供試することができたため、多くの研究データを得ることができたことが研究達成に大きく貢献している。研究内容については、病理組織学的、免疫組織学的および分子生物学的手法を用いて検索しているが、それらは申請者が以前から常日頃行っている手法であり、手技の内容を熟知しているため、研究自体は非常に円滑に進行している。平成23年度の研究結果から、歯根肉芽種中の血管内皮細胞で、midkineおよび誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)の強いタンパク発現が確認された。また、平成24年度の研究結果では、歯根肉芽腫中のmidkineおよびiNOSの遺伝子発現が確認され、健常歯肉に比較して有意に高い発現を示した。根尖性歯周炎の原因菌の一つであるPorphyromonas gingivalisから抽出したLPSを用いて、ヒト臍帯静脈血由来血管内皮細胞(HUVEC)を刺激したところ、midkineおよびiNOSの強い発現を確認したことから、歯根肉芽種中の血管内皮細胞がこれらmidkineおよびiNOSの発現に大きく関与していることが推察された。今後は、歯根肉芽種中で発現しているmidkineの機能を解析することを目的として研究を行う。すなわちchemokineの細胞遊走能に着目し、代表的な細胞遊走因子であるchemokineとmidkineの歯根肉芽種中の発現および細胞遊走能を比較検討していく所存である。23年度の研究結果から、難治性根尖性歯周炎の局所では肉芽組織に浸潤しているリンパ球やマクロファージなどの炎症性細胞よりも血管内皮細胞で、midkineおよび炎症のメディエーターである誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)が強く発現していることが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-23592811 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23592811 |
冬季の海氷厚変動から見た北極海太平洋側海域における夏季の海氷量減少 | 北極海の太平洋側海域では夏季の海氷域の減少が近年になって特に顕著に見られているが、その要因は未だに良く解明されていない。その理由の一つは人工衛星データから正確に把握できる海氷の面積に較べて、その厚さの実態把握が不十分なことである。本研究ではこの海域における10年以上の長期に渡る海氷・海洋の現場観測による海氷厚などのデータと衛星マイクロ波放射計データから見積られる海氷生産量のデータなどを用いて、海氷の力学過程(海氷同士の衝突と重なりによる氷厚の増加)と熱力学過程から決まる冬季の海氷厚分布の実態を明らかにし、それが夏季の海氷分布とどのように関係しているかを調べ、この海氷減少の要因を明らかにする。北極海の太平洋側海域では夏季の海氷域の減少が近年になって特に顕著に見られているが、その要因は未だに良く解明されていない。その理由の一つは人工衛星データから正確に把握できる海氷の面積に較べて、その厚さの実態把握が不十分なことである。本研究ではこの海域における10年以上の長期に渡る海氷・海洋の現場観測による海氷厚などのデータと衛星マイクロ波放射計データから見積られる海氷生産量のデータなどを用いて、海氷の力学過程(海氷同士の衝突と重なりによる氷厚の増加)と熱力学過程から決まる冬季の海氷厚分布の実態を明らかにし、それが夏季の海氷分布とどのように関係しているかを調べ、この海氷減少の要因を明らかにする。 | KAKENHI-PROJECT-19H01961 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H01961 |
EuOにおける電界効果誘起磁気ポーラロンの研究 | 希土類酸化物EuOは強磁性転移と更に絶縁体ー金属転移を起こす稀な物質で、転移メカニズムにはキャリアで誘起される磁気ポーラロンが原因ともされている。固体表面にキャリアを導入できる電界効果、つまり電界効果ドーピングによって磁気ポーラロンやそれによる転移を制御することができれば、スピントロニクスデバイスとして新しい原理を導入できる可能性がある。本研究ではEuOの純良な単結晶育成を行うところから始め、得られた単結晶の劈開面を利用して、電界効果によるキャリア増幅効果に初めて成功した。これまでにEuOの純良な単結晶育成に成功してきている。2年目は、EuOの単結晶育成とサンプルのキャラクタリゼーションとともに、電界効果の実験を行った。電界効果に対しては、電界効果において最も問題となる表面状態と、電極に対して試行錯誤を行った。NaCl構造をとるEuOは(100)面で劈開するが、この劈開面をそのまま利用する方法と、その劈開面を更に研磨する方法を試した。また、電極については、金電極蒸着を行う方法と、直接、針電極をサンプル表面に付ける方法などで実験を行った。結果としては、壁回面を利用し簡易的な針電極を用いたプローブを用いた方法で、電界効果によるp型の増幅効果を観測することに成功した。今の所、イオン液体からの漏電を避けるために、イオン液体の部分とドレイン・ソース電極を十分に引き離した距離をとっているために、印加した電界に対する増幅効果の効率は30%程度である。現在、サンプル面上に電極端子や絶縁層を作成し、イオン液体による電界効果の効率を上げる配置を作成していくことにより増幅効果の改善を図っているところである。また、そのためにはEuO単結晶劈開面の良好な劈開面状態が必要となるが、更なる良質な表面を得るために引き続き単結晶育成を引き続き行っている。これまでにEuOの純良な単結晶育成に成功している。静的物性としては、磁化測定から得られたCurie点は69.5Kで、この温度から低温に向かい絶縁体から金属への転移へ伴う急減な伝導率の上昇(=抵抗の減少)が観測され、比熱にもシャープなピークを観測している。これらはこれまでの報告と一致しているが、熱膨張係数において50K付近に異常が観測されており、その原因については未だ解明できていない。そして作成した単結晶においては、非常に大きな(1cm2)な(100)面の劈開面が得られており、本課題の目的である電界効果のためのFET構造の作成には十分な条件を持っている。その電界効果については、サンプル面としては研磨面と劈開面、電極についても金蒸着や針電極等様々な方法で試行してきたが、現在までのところ劈開面を利用した簡易的な針電極を用いたプローフを用いた方法で、電界効果によるp型の増幅効果を観測することに成功している。但し、イオン液体からの漏電があるために、イオン液体の部分とドレイン・ソース電極を十分に引き離した距離をとっているために、印加した電界に対する増幅効果の効率は30%程度であった。増幅効果の向上のために、劈開時の雰囲気制御等などの劈開方法の様々な試行や、サンプル形状、様々な電極の試行などを行ったが顕著な改善は得られなかった。この試行錯誤にかなりの労力と時間を費やしたこともあり、研究協力者との議論も含めて、最終年度であるが、EuO単結晶劈開面の更に良好な劈開面状態が必要であると結論し、更なる良質な表面を得るための単結晶育成に重点を置いた。そこで、当初は測定系の高度化を予定して微少電流源を購入する予定であったが、単結晶育成のための高周波炉の改良に予算を利用した。現在、この改良によって得られた結晶の評価と電界効果への改善具合の評価を並行して行っており、それまでの結果も含めて学会等で発表する予定である。希土類酸化物EuOは強磁性転移と更に絶縁体ー金属転移を起こす稀な物質で、転移メカニズムにはキャリアで誘起される磁気ポーラロンが原因ともされている。固体表面にキャリアを導入できる電界効果、つまり電界効果ドーピングによって磁気ポーラロンやそれによる転移を制御することができれば、スピントロニクスデバイスとして新しい原理を導入できる可能性がある。本研究ではEuOの純良な単結晶育成を行うところから始め、得られた単結晶の劈開面を利用して、電界効果によるキャリア増幅効果に初めて成功した。初年度は、EuOの単結晶育成とサンプルのキャラクタリゼーション、及びキャラクタリゼーションの効率化のための測定系の開発とFET作製に向けた準備を行った。本研究で目指す電界誘起の絶縁体ー金属転移の本質を見極めるためには、FET加工をする前段階でのEuOのキャラクタリゼーションが欠かせない。そのために、様々な物性測定(=キャラクタリゼーション)が可能なバルクのEuO単結晶を育成から行うことが、本研究の特長でもある。単結晶育成は、EuとEu2O3を出発原料として、タングステン坩堝に高真空中で封入したあと、高周波炉を用いて2000°C近くまで昇温しブリッジマン法により単結晶育成を行った。得られた単結晶は、全体がほぼシングルグレインの約10Φ×1cm程度の大型の単結晶で、NaCl結晶構造の特長的な(100)面の綺麗な劈開面が見られる。 | KAKENHI-PROJECT-23654125 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23654125 |
EuOにおける電界効果誘起磁気ポーラロンの研究 | 得られた単結晶は、比熱、磁化、抵抗等の測定を行った結果を文献値と比較すると、目的とするドナー濃度(酸素欠損濃度)の試料が得られたと考えられる。また本初年度では、サンプル依存性が強いEuOのキャラクタリゼーションの効率化を目的に、Van der Pauw法の測定系の立ち上げを進めた。測定ホルダー等の開発を行うとともに、本年度は微小電流に対応するスイッチ回路を購入し、来年度には微小電流源を購入する予定である。FET構造の作製に関しては、本研究にFET加工を協力して行う同機構の矢ヶ部氏と有効な絶縁層の素材についての議論を進め、今回の単結晶の劈開面をそのまま利用するEuOに対しては、熱的なダメージを極力抑えるために、イオン液体も試すことになった。電界効果による増幅効果が観測されたことは、本課題の最大の難所の一つをクリアしたことになる。本研究では、最初に単結晶育成を行うことが必要となるが、震災による夏の節電のために、電力を必要とする高周波炉を利用する単結晶育成が予定通りに進まず、そのために全体に予定がやや遅れている。電界効果による増幅効果が観測されたものの、未だその効率は低い。この点の改善とともに、電界効果による物性の変化を観測することが今後の最大の課題である。増幅効果改善や物性測定のために、サンプル表面上の電極端子や絶縁層の作成を行っていく。また研磨面より劈開面の方が良好な結果が得られているが、これまでの試行錯誤によって得られた知見を元に、電界効果に適切な良好な劈開面の表面状態を得るような単結晶育成を引き続き行う。単結晶育成時の仕込み濃度を変えることによる、ホール濃度を変化させたサンプル作成も同時に行う。加えて今年度は、更に電界効果による物性変化を測定していくために、電界をかけた状態での物性測定や磁化測定に向けて、カンタムデザイン社のPPMS物性測定装置とMPMS測定装置の、それぞれに対応する測定プローブを開発する予定である。これらの結果については、今年度中の物理学会での発表を目指す予定である。やや遅れ気味の研究状況に対し、単結晶育成とキャラクタリゼーションと同時に、FET加工も2年目前半から進めていく。電場をかけた状態での物性・磁性測定用のプローブ開発や測定機器の購入を行う。測定機器については高額となり、単年度の配分額では不足となるので昨年度から持ち越している。結果の発表としての学会参加の旅費等に使用する。その他に原料購入に使用する予定。試料やFET加工の原料及び、測定に必要な部品等として物品費を使用する。また、本研究の調査及び測定のために旅費を使用する。必要な計測器を次年度予算と合わせて購入するため、本年度分の一部を次年度に持ち越している。 | KAKENHI-PROJECT-23654125 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23654125 |
腸内細菌の質的・量的変化を指標とした食品中化学物質の安全性評価手法の開発 | 当該研究は、腸内細菌の質的・量的変化を指標とした、食品中化学物質の安全性評価手法の開発を目指す。当該研究の遂行において申請者は、食品ナノマテリアル(NM)の代表格である非晶質ナノシリカ(nSP)をモデル化学物質とし、nSPの経口投与における生体影響と腸内細菌の質的・量的変化の因果関係を精査している。具体的には、NMの粒子径・表面修飾の有無の観点から、物性の異なるnSPを経口投与したマウスを用いて、(1)ハザード解析、(2)ハザード発現における腸内細菌叢の寄与、(3)腸内細菌ポピュレーションの変動を解析する。当該年度は、本研究戦略の(1)を中心に実施した。nSPの経口曝露時のハザード同定に向けて、粒子経が30nm、70nm、300nm、1000nmのnSPを28日間マウスに経口投与し、体内動態解析および一般毒性学的観点からハザード解析を実施した。電子顕微鏡による定性的な体内吸収性解析の結果、いずれのnSPも体内吸収され、全身組織に分布することを明らかとした。一方で、血球検査、生化学検査、腸管局所の病理学的解析、体重・臓器重量の測定を実施したところ、いずれのnSPを投与したマウスにおいても、コントロール群と比較して有意な変動は認められなかった。以上の結果から、体内吸収量などを考慮する必要があるものの、nSPは食品NMとして用いるうえでは、極めて安全性が高い素材である可能性が示された。一方で、nSPが腸管局所に存在する腸内細菌に与える影響については世界的にも全く知見はない。従って、nSPは経口投与において一般毒性学的観点からはハザード発現は認められなかったものの、nSPの腸管局所への影響を考慮するうえで、nSPを腸管局所に曝露した際の腸内細菌の役割を評価することは重要である。今後は、腸内細菌除去マウスを用いて、nSP経口投与時の腸管局所の腸内細菌の役割を評価していく。当該研究は、腸内細菌の質的・量的変化を指標とした、食品中化学物質の安全性評価手法の開発を目指す。当該研究の遂行において申請者は、食品ナノマテリアル(NM)の代表格である非晶質ナノシリカ(nSP)をモデル化学物質とし、nSPの経口投与における生体影響と腸内細菌の質的・量的変化の因果関係を精査している。具体的には、NMの粒子径・表面修飾の有無の観点から、物性の異なるnSPを経口投与したマウスを用いて、(1)ハザード解析、(2)ハザード発現における腸内細菌叢の寄与、(3)腸内細菌ポピュレーションの変動を解析する。当該年度は、本研究戦略の(1)を中心に実施した。nSPの経口曝露時のハザード同定に向けて、粒子経が30nm、70nm、300nm、1000nmのnSPを28日間マウスに経口投与し、体内動態解析および一般毒性学的観点からハザード解析を実施した。電子顕微鏡による定性的な体内吸収性解析の結果、いずれのnSPも体内吸収され、全身組織に分布することを明らかとした。一方で、血球検査、生化学検査、腸管局所の病理学的解析、体重・臓器重量の測定を実施したところ、いずれのnSPを投与したマウスにおいても、コントロール群と比較して有意な変動は認められなかった。以上の結果から、体内吸収量などを考慮する必要があるものの、nSPは食品NMとして用いるうえでは、極めて安全性が高い素材である可能性が示された。一方で、nSPが腸管局所に存在する腸内細菌に与える影響については世界的にも全く知見はない。従って、nSPは経口投与において一般毒性学的観点からはハザード発現は認められなかったものの、nSPの腸管局所への影響を考慮するうえで、nSPを腸管局所に曝露した際の腸内細菌の役割を評価することは重要である。今後は、腸内細菌除去マウスを用いて、nSP経口投与時の腸管局所の腸内細菌の役割を評価していく。 | KAKENHI-PROJECT-12J00496 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12J00496 |
衛星観測と計算機実験による地球磁気圏におけるイオン-波動-電子結合系の物理-磁気圏物理学の新展開 | 本研究課題では、宇宙プラズマ中で発生しているイオン-波動-電子の結合系を明らかにするために、衛星観測技術の開発とデータ解析、および、計算機実験による理論計算を行うことを目的とした。具体的な研究実績としては、次の通りである。この結合系を衛星観測で明らかにするためには、複数衛星による観測が重要であるが、そのためには、高機能でしかも軽量化されたプラズマ波動観測器が必須である。そのため新しいデジタル技術、ソフトウェア技術を導入したプラズマ波動観測器を開発し、北極で行われたロケット実験に搭載して成功させた。ここで開発したプラズマ波動観測器は、将来の軽量化されたプラズマ波動観測器の一つのモデルとなるものである。また、衛星機上で直接、波動と粒子の相互作用をとらえることができる波動-粒子相関計(WPC:Wave-Particle Correlator)について基礎検討を行った。これまでのWPCが単純に波動と粒子を足し合わせていくだけであったのに対し、FPGAを使ってワンチップに収め、また、FPGA内におけるリアルタイムFFT処理による周波数バンド幅ごとの相関をとる手法などの検討を行った。また、FPGA評価ボードによる実際の設計も行うことができた。衛星データ解析ではReconnectionにおける電子の効果を示し、それがイオンスケールへと発展していくシナリオ解明に大きな道筋をつけた他、磁気圏境界層でのLower Hybrid Wavesの解析を行った。計算機実験では、大規模なビーム系の計算機実験を行い、電子ビーム、イオンビームから励起される波動が、それぞれ、背景のイオン、電子とカップリングしながらどのような非線形発展をしていくのかを広範囲なパラメータにおいて評価を行い、宇宙プラズマ中で発生しているイオン/電子ビーム不安定性の非線形発展を理解する上で重要なパラメータテーブルを用意することができた。本研究課題では、宇宙プラズマ中で発生しているイオン-波動-電子の結合系を明らかにするために、衛星観測技術の開発とデータ解析、および、計算機実験による理論計算を行うことを目的とした。具体的な研究実績としては、次の通りである。この結合系を衛星観測で明らかにするためには、複数衛星による観測が重要であるが、そのためには、高機能でしかも軽量化されたプラズマ波動観測器が必須である。そのため新しいデジタル技術、ソフトウェア技術を導入したプラズマ波動観測器を開発し、北極で行われたロケット実験に搭載して成功させた。ここで開発したプラズマ波動観測器は、将来の軽量化されたプラズマ波動観測器の一つのモデルとなるものである。また、衛星機上で直接、波動と粒子の相互作用をとらえることができる波動-粒子相関計(WPC:Wave-Particle Correlator)について基礎検討を行った。これまでのWPCが単純に波動と粒子を足し合わせていくだけであったのに対し、FPGAを使ってワンチップに収め、また、FPGA内におけるリアルタイムFFT処理による周波数バンド幅ごとの相関をとる手法などの検討を行った。また、FPGA評価ボードによる実際の設計も行うことができた。衛星データ解析ではReconnectionにおける電子の効果を示し、それがイオンスケールへと発展していくシナリオ解明に大きな道筋をつけた他、磁気圏境界層でのLower Hybrid Wavesの解析を行った。計算機実験では、大規模なビーム系の計算機実験を行い、電子ビーム、イオンビームから励起される波動が、それぞれ、背景のイオン、電子とカップリングしながらどのような非線形発展をしていくのかを広範囲なパラメータにおいて評価を行い、宇宙プラズマ中で発生しているイオン/電子ビーム不安定性の非線形発展を理解する上で重要なパラメータテーブルを用意することができた。平成12年度は、次世代のプラズマ波動受信機のモデルとして、デジタル型のプラズマ波動受信機の製作を行った。このデジタル型のプラズマ波動受信機は、オンボードでデータフローの制御や外部からの割り込み要求に柔軟に対応することのできるメインCPUとFFTやデータ圧縮といったデジタル信号処理を専門に行うDSP、および、ワンチップで周波数をダウンコバートできるデジタルダウンコンバータチップからなっている。これらのデジタル制御部と従来からの低雑音アナログ制御部を融合させ、ひとつの受信機として機能させデータを取得したほか、オンボードソフトによるリアルタイムデータ圧縮、デジタルダウンコンバータチップを用いた高速デジタル型周波数掃引受信機を実際に実現させ、それぞれの性能評価を行うことができた。このような受信機は、将来の磁気圏ミッションにおいて、高度で軽量で自律性の高い受信機へとつながっていくもので、このような受信機を実際に製作して機能させたことは、非常に有意義なことであった。実際に製作した受信機で観測されたデータは、時間分解能、周波数分解能、ノイズレベル、波形の圧縮レベルなど、当初の設計通りの性能となっていることも確認した。特にデジタルダウンコンバータを用いた高速デジタル型周波数掃引受信機では、従来、アナログ回路を用いた大規模な回路構成で行っても、高速で高時間分解能のスペクトルを精度よく得ることのできなかったものが、軽量な小規模な回路構成で実現できることを実証した。平成13年度は、平成12年度に製作したデジタル型のプラズマ波動観測機のデジタル部を、ひとつのFPGAの中に組み込むことができるかどうかを具体的なシミュレータを使いながら、検討に入った。、また、将来の複数衛星観測において、電子-波動-イオン結合系を議論する際に重要な観測手法となる、「波動一粒子相関計」(Wave-Particle Correlator)の設計を行った。この相関計は国外の衛星では用いられることが多いがわが国ではこれまでに使われたことがなく、そのため、まずその特性を明らかにするために、電子ビーム不安定の粒子シミュレーションを行い、そこで発生している粒子と波動のエネルギーのやりとりを、衛星に搭載した相関計でどのように見えるかを確認し、その線形から非線形に至る発展段階で示す相関計の指標の特性を明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-12304026 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12304026 |
衛星観測と計算機実験による地球磁気圏におけるイオン-波動-電子結合系の物理-磁気圏物理学の新展開 | それをふまえて、次期ミッションにそなえ、高性能となった粒子観測機と波動観測機とのデータをどのように取り込んだ相関計を製作すればよいかを考慮し、デジタル技術を新たに取り込んだ相関計の設計を行った。また、一方、これもこれまでわが国では行われていなかった、「波動観測データから周辺プラズマの温度を測定」する手法を用いて、実際のデータから、Hotなプラズマの誘電率テンソルを計算し、そこから求めることのできるアンテナインピーダンスをもちいて、プラズマの温度を測定するプログラムを作成し、実際に衛星データから温度を求めることができることを確認した。さらに、この温度測定の精度を向上させるためには、現在のわれわれがもっているプリアンプ技術からノイズレベルを更に一桁減少させる必要があることも示し、将来の観測機設計に指針を与えた。平成14年度は、次期衛星ミッション用に、13年度に設計を行ったWave-Particle Correlatorを一つのFPGAの中に組み込む作業を行った。Wave-Particle Correlatorは、どうしても時間分解能に限界がある粒子観測機の限界を、波動と粒子の相関をとることにより、直接エネルギー授受を行っている成分をとりだし、打破しようとするものである。具体的には、取り込んだ波形をFFT処理して位相補正を行ったのち、その波形と粒子データとの直接の相関計算をFPGA一つでできるシステムをFPGAの評価ボードを用いて行った。一方、電界測定を精確に行い、波動エネルギーを正しく求めるためのアンテナインピーダンスの評価をホットなプラズマ分散を考慮した理論値と実際の観測値を比較した。そLて、その差異と物理現象との関係の研究を行い、イオンと電子プラズマ周波数範囲では理論と観測が一致、それ以外、特に、電子プラズマ周波数のレゾナンス付近では、大きくずれていくことを示すことに成功した。次に、このアンテナインピーダンスの結果を用いて、電子温度を電界測定値から求めるために必要となる、従来よりも一桁ノイズレベルが低いプリアンプの開発を行い試作した結果、目的の特性が得られことがわかり、その開発に成功した。また、実際の観測データを用いた波動とイオン-電子のエネルギー変換の評価については、GEOTAIL衛星が低緯度境界層で観測する低周波波動が、磁気圏の朝側と夕方側で差があることを示し、それが、プラズマシートの電子・イオンの加熱と相関があることを示すことに成功した。低緯度境界層は、プラズマシートの成因の解明には、重要な領域であり、そこでの波動と粒子の相関を発見したことは、波動-電子-イオンのカップリング現象の解明に大きな手がかりとなる。 | KAKENHI-PROJECT-12304026 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12304026 |
高温超電導体を用いた能動制御形超電導磁気軸受の試作と性能評価 | 本研究の目的は,既に試作済みであるイットリウム系の高温超電導体を用いた完全受動形の超電導磁気軸受の軸受剛性を向上させるため,超電導磁気軸受に能動制御形の磁気軸受を組み入れた併用形超電導磁気軸受を試作し,その評価を行うことであった。1.能動制御形超電導磁気軸受の試作能動制御形の超電導磁気軸受はロータ,超電導体による支持軸受,電磁石による支持軸受の主に3要素から構成した。ロータは超電導磁気軸受と電磁石による磁気軸受の2方式で浮上させることができるようにした。2.制御系の構成ロータの上下左右の変位信号を1カ所に集め,システム全体をモデリングして制御信号を作り出す集中制御方式をとった。制御方式としてはアナログ回路によるPID制御を用いた。システムの開ループ周波数特性を評価し,PIDの各ゲインを決定した。3.能動制御形磁気軸受としての評価先ず,電磁石のみを支持軸受とした磁気軸受を構成した。この制御形の磁気軸受のみで支持したロータの回転特性を評価した。回転特性としては,主に回転数と振幅との関係を評価対象とした。これによって,試作した能動制御形磁気軸受の評価とした。4.超電導磁気軸受としての評価超電導磁気軸受のみで支持したロータの回転特性の評価実績は既にあるので,それに従い今回も評価を行った,昨年同様の結果を得た。5.併用形超電導磁気軸受としての評価制御機構を機能させた併用形超電導磁気軸受によって支持されたロータの回転特性を評価した。評価項目として,コンプライアンス,インパルス応答,エネルギー消費などを考えた。これらの結果,併用形超電導磁気軸受の有用性が確認された。本研究の目的は,既に試作済みであるイットリウム系の高温超電導体を用いた完全受動形の超電導磁気軸受の軸受剛性を向上させるため,超電導磁気軸受に能動制御形の磁気軸受を組み入れた併用形超電導磁気軸受を試作し,その評価を行うことであった。1.能動制御形超電導磁気軸受の試作能動制御形の超電導磁気軸受はロータ,超電導体による支持軸受,電磁石による支持軸受の主に3要素から構成した。ロータは超電導磁気軸受と電磁石による磁気軸受の2方式で浮上させることができるようにした。2.制御系の構成ロータの上下左右の変位信号を1カ所に集め,システム全体をモデリングして制御信号を作り出す集中制御方式をとった。制御方式としてはアナログ回路によるPID制御を用いた。システムの開ループ周波数特性を評価し,PIDの各ゲインを決定した。3.能動制御形磁気軸受としての評価先ず,電磁石のみを支持軸受とした磁気軸受を構成した。この制御形の磁気軸受のみで支持したロータの回転特性を評価した。回転特性としては,主に回転数と振幅との関係を評価対象とした。これによって,試作した能動制御形磁気軸受の評価とした。4.超電導磁気軸受としての評価超電導磁気軸受のみで支持したロータの回転特性の評価実績は既にあるので,それに従い今回も評価を行った,昨年同様の結果を得た。5.併用形超電導磁気軸受としての評価制御機構を機能させた併用形超電導磁気軸受によって支持されたロータの回転特性を評価した。評価項目として,コンプライアンス,インパルス応答,エネルギー消費などを考えた。これらの結果,併用形超電導磁気軸受の有用性が確認された。 | KAKENHI-PROJECT-07750269 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07750269 |
精巣低温環境の与えるストレス抵抗性の機序と臨床的意義に関する研究 | 哺乳類の精巣は通常の体温よりも低い温度環境下におかれ、精子形成細胞は低温環境下でのみ活発に細胞分裂・分化を行うことができる。我々は、32度前後の低温で特異的に発現誘導される遺伝子群が存在する事、さらに軽度低温が37度環境に比べいろいろなストレスに対する細胞の抵抗性を高めることを報告してきた。本研究では、ストレス抵抗性増加の分子機序および低温ショック蛋白質の関与をあきらかにし、男性不妊症及び精巣腫瘍発生との関連を検討することを目的とし、以下の結果を得た。1.転写エンハンサーである軽度低温応答エレメント(MCRE)に結合する転写因子の同定を酵母1ハイブリッド法により試みたが、バックグラウンドが高く不可能であった。そこで、MCRE結合蛋白質を濃縮し、ゲル電気泳動にて分離、マススペクトロメトリーにより複数個同定した。それぞれを過剰発現させると、低温ショック蛋白質CirpおよびMCRE制御下にあるレポーター遺伝子の発現が亢進した。しかし殆どのMCRE結合蛋白質は転写因子ではなく遺伝子発現の修飾因子と考えられた。2.同定したMCRE結合蛋白質の一つをヒト細胞株に過剰発現させ、その制御を受ける遺伝子群をマイクロアレーにより同定した。3.一過性の遺伝子トランスフェクション法により、cirp遺伝子中に同定したMCREは、そのまま単独で染色体に組み込んだのでは、レポーター遺伝子の発現を低温で誘導させる活性が認められなかった。そこでいろいろなMCRE変異体を作製し、良好な誘導が見られるコンストラクトを開発した。これはバイオテクノロジー分野の蛋白質産生に応用できる。4.Cirpノックアウトマウスの解析により、Cirpが創傷治癒に関連することを発見した。5.酵母2ハイブリッド法を利用し、Cirpが結合する蛋白質をキナーゼを含め複数種同定した。ストレス抵抗性増加に関与する分子であることが期待される。哺乳類の精巣は通常の体温よりも低い温度環境下におかれ、精子形成細胞は低温環境下でのみ活発に細胞分裂・分化を行うことができる。我々は、32度前後の低温で特異的に発現誘導される遺伝子群が存在する事、さらに軽度低温が37度環境に比べいろいろなストレスに対する細胞の抵抗性を高めることを報告してきた。本研究では、ストレス抵抗性増加の分子機序および低温ショック蛋白質の関与をあきらかにし、男性不妊症及び精巣腫瘍発生との関連を検討することを目的とし、以下の結果を得た。1.転写エンハンサーである軽度低温応答エレメント(MCRE)に結合する転写因子の同定を酵母1ハイブリッド法により試みたが、バックグラウンドが高く不可能であった。そこで、MCRE結合蛋白質を濃縮し、ゲル電気泳動にて分離、マススペクトロメトリーにより複数個同定した。それぞれを過剰発現させると、低温ショック蛋白質CirpおよびMCRE制御下にあるレポーター遺伝子の発現が亢進した。しかし殆どのMCRE結合蛋白質は転写因子ではなく遺伝子発現の修飾因子と考えられた。2.同定したMCRE結合蛋白質の一つをヒト細胞株に過剰発現させ、その制御を受ける遺伝子群をマイクロアレーにより同定した。3.一過性の遺伝子トランスフェクション法により、cirp遺伝子中に同定したMCREは、そのまま単独で染色体に組み込んだのでは、レポーター遺伝子の発現を低温で誘導させる活性が認められなかった。そこでいろいろなMCRE変異体を作製し、良好な誘導が見られるコンストラクトを開発した。これはバイオテクノロジー分野の蛋白質産生に応用できる。4.Cirpノックアウトマウスの解析により、Cirpが創傷治癒に関連することを発見した。5.酵母2ハイブリッド法を利用し、Cirpが結合する蛋白質をキナーゼを含め複数種同定した。ストレス抵抗性増加に関与する分子であることが期待される。精巣の存在する軽度低温環境では、特異的な遺伝子群の発現誘導がなされ、いろいろなストレスに対する細胞の抵抗性が高まる。本研究では、このストレス抵抗性増加の分子機序、特に低温ショック蛋白質の関与をあきらかにし、男性不妊症及び精巣腫瘍発生との関連を検討する。本年度は以下の結果を得た。1.Cirpゲノム中に同定した低温応答転写促進エレメントに結合する低温応答転写因子の同定を酵母1ハイブリッド法で試みた。しかし、バックグラウンドが高く成功しなかった。そこで、低温応答転写促進エレメントをビーズに固定し、32度で培養した細胞の核蛋白質抽出物と反応させ、結合するものを濃縮し、37度で培養した場合のものに比べて結合が増えているバンドをポリアクリルアミドゲル電気泳動で検索した。見出したバンドを切り出し、マス・スペクトロメトリーにて蛋白質を同定し、低温応答転写因子候補を複数得た。これらそれぞれの細胞中での発現を、亢進させた時、抑制した時のCirp発現変化を解析して、さらに候補蛋白質を絞り込んでいる。2.一過性の遺伝子トランスフェクション法により固定した低温応答転写促進エレメントは、そのまま染色体に組み込んだのでは、レポーター遺伝子発現の低温誘導活性が認められなかった。そこでいろいろな低温応答転写促進エレメント変異体を作製し、良好な誘導が見られるコンストラクトを開発した。3.酵母3ハイブリッド法を利用し、Cirpが結合する遺伝子RNAクローンを複数種得た。センス鎖だけではなくアンチセンス鎖に結合しているもの、UTRに結合しているもの、コード領域に結合しているものといろいろであった。その意義を検討中である。4.酵母2ハイブリッド法を利用し、Cirpが結合する蛋白質を複数種同定した。そのうちのひとつであるキナーゼについてさらに解折中である。 | KAKENHI-PROJECT-18390434 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18390434 |
精巣低温環境の与えるストレス抵抗性の機序と臨床的意義に関する研究 | 哺乳類の精巣は通常の体温よりも低い温度環境下におかれ、精子形成細胞は低温環境下でのみ活発に細胞分裂・分化を行うことができる。我々は、32度前後の低温で特異的に発現誘導される遺伝子群が存在する事、さらに軽度低温が37度環境に比べいろいろなストレスに対する細胞の抵抗性を高めることを報告してきた。本研究は、ストレス抵抗性増加の分子機序および低温ショック蛋白質の関与をあきらかにし、男性不妊症及び精巣腫瘍発生との関連をあきらかにすることを目的とした。その結果、1.転写エンハンサーである軽度低温応答エレメント(MCRE)に結合する蛋白質を複数同定した。それぞれを過剰発現させた時に低温ショック蛋白質CirpおよびMCRE制御下にあるレポーター遺伝子の発現が亢進すること、逆にそれぞれの発現をshRNAにより抑制した時に、Cirpおよびレポーター遺伝子の軽度低温での発現亢進が見られなくなることを確認した。免疫組織化学的には、MCRE結合蛋白質の32度と37度での細胞内局在に違いが認められなかった。MCRE結合遺伝子それぞれを転写因子GAL4のDNA結合ドメインあるいは転写活性化ドメインと融合させ、レポーター遺伝子の発現促進能を解析したが、どの遺伝子にも活性を認めず、転写因子ではなく遺伝子発現の修飾因子である可能性が示唆された。2.同定したMCRE結合蛋白質をヒト細胞株に過剰発現させ、その制御を受ける遺伝子群をマイクロアレーにより解析中である。3.ノックアウトマウスの利用により、Cirpが創傷治癒に関係することが明らかとなった。現在精子形成細胞のストレス抵抗性との関連を解析中である。 | KAKENHI-PROJECT-18390434 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18390434 |
色覚障害者と健常者の視覚系における色度および輝度処理の相互作用に関する研究 | 本研究の目的は、人間の初期視覚系において、色情報を処理するシステムと輝度情報を処理システムという2つのモジュール間で相互作用がおこる過程について、とくに両者の時空間的な特性の違いを考慮しつつ、実証的知見を入手することである。とくに色および輝度順応レベルの変化と空間周波数に対する選択的順応という2つの順応事態におけるいくつかの組み合わせで実験を行う計画であった。前年度はまず平均の飽和度を変化させ、様々な色順応レベルで色度コントラスト感度(CSF)の測定を行った。その結果健常者では、平均の色度レベルが変化するとCSFの形状が変化することが明らかになった。今年度は特定の空間周波数で高いコントラストを持つ等輝度の色格子に対して選択的に順応した後に、色・輝度コントラスト感度(CSF)を測定した。その結果、順応刺激が赤および青の場合,順応刺激と同じ色相(赤および青)のテスト格子を用いた条件でのみ、CSFの感度低下が見られた。順応刺激とテスト刺激の色相が異なる場合には明確な感度の低下は見られなかった。またCSFの感度の低下は、順応刺激の空間周波数に選択的であり、その周波数を中心とした一定の範囲でのみ見られ、その他の周波数帯では感度の低下があまり顕著ではない。今年度はまた色覚機能障害者(2色型第1および第2視覚)も実験に参加した。CSFの形状は健常者とほぼ同じであるが、テスト光の色相が赤の場合,感度レベルは全体としてかなり低い(とくに2色型第1)。青の場合は健常者とほぼ同レベルである。また健常者で見られた選択的順応後の感度低下は、色相が赤の場合,障害者ではあまり明確ではない(とくに2色型第1の被験者ではほとんど低下しない)。色相が青の場合は,健常者とほぼ同じ程度の選択的低下傾向が見られた。本研究の目的は、人間の初期視覚系において、色情報を処理するシステムと輝度情報を処理システムという2つのモジュール間で相互作用がおこる過程について、とくに両者の時空間的な特性の違いを考慮しつつ、実証的知見を入手することである。本研究ではとくに、色および輝度順応レベルの変化と空間周波数に対する選択的順応という2つの順応事態におけるいくつかの組み合わせで実験を行う計画であった。今年度はまず平均の飽和度を変化させ、様々な色順応レベルで色度コントラスト感度(CSF)の測定を行った。その結果健常者では、平均の色度レベルが変化するとCSFの形状が変化することがわかった。結果からは感度の変化だけではなく、ピーク感度のシフトも観察された。平均色度レベルが上昇するにつれ、感度は低下し、ピーク感度はやや高空間周波数側にシフトする。ただし輝度のCSFにおけるピーク感度ほど高い空間周波数ではない。一方色覚機能障害者で2色型第2視覚の被験者では、赤-緑系の平均色度変化に伴うCSFの変化が健常者ほど大きくない。ただし青-黄系については健常者とほぼ同じである。次に特定の空間周波数で高いコントラストを持つ等輝度の色格子に対して選択的に順応した後に、色・コントラスト感度(CSF)の測定を行った。これに関しては実験がまだ途中であり、順応光が赤色格子の条件のみデータを入手している。その結果、順応刺激と同じ色相(赤)のテスト格子を用いた条件でのみ、CSFの感度低下が見られた。また順応刺激の空間周波数に選択的な感度の低下が見られ、他の周波数では感度の低下があまり顕著ではない。今年度はまだ色覚機能障害者のデータを入手していないが、来年度は障害者のデータも入手し、健常者のものと比較検討する予定である。本研究の目的は、人間の初期視覚系において、色情報を処理するシステムと輝度情報を処理システムという2つのモジュール間で相互作用がおこる過程について、とくに両者の時空間的な特性の違いを考慮しつつ、実証的知見を入手することである。とくに色および輝度順応レベルの変化と空間周波数に対する選択的順応という2つの順応事態におけるいくつかの組み合わせで実験を行う計画であった。前年度はまず平均の飽和度を変化させ、様々な色順応レベルで色度コントラスト感度(CSF)の測定を行った。その結果健常者では、平均の色度レベルが変化するとCSFの形状が変化することが明らかになった。今年度は特定の空間周波数で高いコントラストを持つ等輝度の色格子に対して選択的に順応した後に、色・輝度コントラスト感度(CSF)を測定した。その結果、順応刺激が赤および青の場合,順応刺激と同じ色相(赤および青)のテスト格子を用いた条件でのみ、CSFの感度低下が見られた。順応刺激とテスト刺激の色相が異なる場合には明確な感度の低下は見られなかった。またCSFの感度の低下は、順応刺激の空間周波数に選択的であり、その周波数を中心とした一定の範囲でのみ見られ、その他の周波数帯では感度の低下があまり顕著ではない。今年度はまた色覚機能障害者(2色型第1および第2視覚)も実験に参加した。CSFの形状は健常者とほぼ同じであるが、テスト光の色相が赤の場合,感度レベルは全体としてかなり低い(とくに2色型第1)。青の場合は健常者とほぼ同レベルである。また健常者で見られた選択的順応後の感度低下は、色相が赤の場合,障害者ではあまり明確ではない(とくに2色型第1の被験者ではほとんど低下しない)。色相が青の場合は,健常者とほぼ同じ程度の選択的低下傾向が見られた。 | KAKENHI-PROJECT-11710041 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11710041 |
暖房時および冷房時の室温分布の放射温度計による可視化および計測に関する研究 | 1.暖冷房時の室温分布の可視化に関する実験本学室内気候実験室の床置き型ファンコイルユニット(以下FCUと略記)の中心線に沿って、天井から床面まで室断面内に障子紙を吊り下げる。暖房時及び冷房時とも、FCU作動後1時間にわたって障子紙スクリ-ンの温度変化をサ-モカメラにより撮影、ビデオテ-プに収録し、実験後に再生ビデオ画面を写真撮影し室温分布の熱画像を合成した。実験室のFCUの吹出風量をHigh、Middle、Lowの3段階、吹出角度を60°、50°および45°の3通り、全部で9通りの実験を行い、合成サ-モグラムにより各ケ-スの室温分布を比較した。2.暖冷房室内における温熱感覚申告実験同じく室内気候実験室において、College-ageの男性を被験者として、快適感と温冷感のほかに、放射感・気流感・乾湿感の温熱感覚を採取した。暖房時はFCUの吹出角度60°・吹出風量Highと吹出角度45°・吹出風量Lowの2通り、冷房時は吹出角度60°・吹出風量Highと吹出角度60°・吹出風量Lowの2通りについて実験を行い、実験条件及び身体各部位による温熱感覚申告状況の相違について調べた。3.暖房室内温熱環境の数値予測実験数値計算でどの程度分布の性状が把握できるか確認するために、サ-モカメラによる室温分布可視化実験で用いた暖房室内を計算対象室として、k-ε2方程式モデル、MAC法に基づく共役勾配法、k依存型対数則、Gebhartの吸収係数等を用いて、FCU中心断面における気流分布、室温分布を計算した。さらにこれらの計算値から座位の在室者に対するFangerの温冷感申告予測値PMVの平面分布等を求め、暖房時の室内温熱環境を評価するとともに、風速分布や室温垂直分布によってドラフトの危険性についても検討した。1.暖冷房時の室温分布の可視化に関する実験本学室内気候実験室の床置き型ファンコイルユニット(以下FCUと略記)の中心線に沿って、天井から床面まで室断面内に障子紙を吊り下げる。暖房時及び冷房時とも、FCU作動後1時間にわたって障子紙スクリ-ンの温度変化をサ-モカメラにより撮影、ビデオテ-プに収録し、実験後に再生ビデオ画面を写真撮影し室温分布の熱画像を合成した。実験室のFCUの吹出風量をHigh、Middle、Lowの3段階、吹出角度を60°、50°および45°の3通り、全部で9通りの実験を行い、合成サ-モグラムにより各ケ-スの室温分布を比較した。2.暖冷房室内における温熱感覚申告実験同じく室内気候実験室において、College-ageの男性を被験者として、快適感と温冷感のほかに、放射感・気流感・乾湿感の温熱感覚を採取した。暖房時はFCUの吹出角度60°・吹出風量Highと吹出角度45°・吹出風量Lowの2通り、冷房時は吹出角度60°・吹出風量Highと吹出角度60°・吹出風量Lowの2通りについて実験を行い、実験条件及び身体各部位による温熱感覚申告状況の相違について調べた。3.暖房室内温熱環境の数値予測実験数値計算でどの程度分布の性状が把握できるか確認するために、サ-モカメラによる室温分布可視化実験で用いた暖房室内を計算対象室として、k-ε2方程式モデル、MAC法に基づく共役勾配法、k依存型対数則、Gebhartの吸収係数等を用いて、FCU中心断面における気流分布、室温分布を計算した。さらにこれらの計算値から座位の在室者に対するFangerの温冷感申告予測値PMVの平面分布等を求め、暖房時の室内温熱環境を評価するとともに、風速分布や室温垂直分布によってドラフトの危険性についても検討した。I.暖房室内の室温分布の計測(1)実験場所:9.2m×8.4m×3.0mの室(2)暖房方法:床置き型ファンコイルユニット(FCU)1台のみ運転(3)実験方法a.サーモカメラによる撮像:幅90cmの障子紙を天井から床面に吊り下げ、FCUの中心線に沿って室奥まで一面に張る。障子紙から約6.4mの位置にサーモカメラを設置し、障子紙を撮影することにより、暖房開始後の室温分布を計測する。カメラの視野角の制約上、全画面を一度に撮影することは不可能なので、6分割してビデオ収録し、再生画像を写真撮影してつなぎ合わせることにより、1つの画面を合成する。b.熱電対等による測定:サーモカメラによる障子紙の熱画像収録と同時に代表的部位の室温、床面温度、天井面温度、外気温、グローブ温度等を熱電対-データロガーシステムにより連続測定している。風速分布は垂直方向5点にて無指向型風速計を用いて、別途トラバース測定した。c.実験条件(FCUの条件設定):吹出風量はHigh,Middle,Lowの3段階。吹出面での平均風速は概ねH:4m/s,M:3m/s,L:2m/sである。FCUの吹出口には水平面からの角度α=60°の固定ベーンがついているが、これをα=50°及びα=45°にも変更できるようにした。すなわち、吹出風量及び吹出角度の組合せで、合計9ケースについて実験した。(4)実験結果:室温分布は比較的早く形成され、上下分布は吹出角度よりも吹出風量の影響が強い。II.暖房時の温熱感覚申告実験 | KAKENHI-PROJECT-63460179 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63460179 |
暖房時および冷房時の室温分布の放射温度計による可視化および計測に関する研究 | Iと同じ室内で、H-60及びL-45の2ケースに対して延べ24人の被験者を用いて全身及び身体各部位の快適感、温冷感、気流感等の温熱感覚を採取した。1.冷房室内の温度分布の計測(1)実験場所:多次元デザイン実験棟室内気候実験室(9.2m×8.4m×3.0m)(2)冷房方法:床置き型ファンコイルユニット(以下FCUと略記)1台のみ運転(4)実験方法:FCU中心線に沿った室断面にわたって障子紙を天井から床面まで吊り下げて、FCU運転後の1時間の温度変化を、サ-モカメラで撮影し、ビデオテ-プで収録する。ビデオの再生画像を写真撮影により合成し、上記9通りの実験条件に対する室温分布を比較した。2.及び3.冷房/暖房室内における温熱感覚申告実験(1)実験場所及び(2)冷房/暖房方法:同上(3)実験条件:FCUの吹出角度60°及び速度High・Lowの2通り(4)被験者:1実験につき成年男子32名、平常着衣、椅座安静状態(5)環境量測定:気温、グロ-ブ温度、湿度、風速などを測定。(6)温熱感覚:全身及び身体各部位の快適感、温冷感、気流感(ドラフト感)、放射感を一定時間間隔で強制採取した。各温熱感覚相互、全身と身体各部位、温熱感覚と環境量・温熱指標の比較を行った。4.冷房/暖房室内における温熱環境の数値予測(1)数値予測法:MAC法による3次元非等温乱流のk-ε2方程式モデルと壁体間相互放射熱授受を加味した壁面境界条件。(2)計算対象室内及び実験条件:上記1.、2.及び3.と同等。(3)室内空気分布:室内の気温、風速、壁面表面温度、仮想銅板表面温度などを予測し、1.の実験結果と定性的な比較を行った。(4)在室者の温熱感覚:室内の気温、風速、壁表面温度の予測結果と2.の実験条件から在室者の温熱指標としてPMV及びSET^*を算出して申告実験の結果と比較・検討した。 | KAKENHI-PROJECT-63460179 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63460179 |
ステントグラフト後の慢性大動脈解離のリモデリング因子:圧および画像的アプローチ | 大動脈解離に対するステントグラフト治療の有効性は確立されたものとなりつつあるが,偽腔の再縮小(リモデリング)に着目した場合、慢性期症例の場合、リモデリング不良に伴う追加治療が必要となる事が少なくない。腹部を含む全ての内膜亀裂を修復することが理想であるが、臨床上、腹部大動脈に内膜亀裂が残存していても偽腔の増大回避、血栓化を得る症例を経験する。本研究は手術時の偽腔の実測圧とCT上残存する内膜亀裂の画像評価の関連を検討し、リモデリングおよび血栓化に関与する内膜亀裂の画像的因子を明らかにするものである。平成29年度より症例集積を開始し、follow-upのCTデータを蓄積中である。予定より症例収集に難渋しており、A型解離術後症例の経過の追跡などにより症例収集体制を強化している。また関連研究として急性B型解離に対するTEVAR後症例のリモデリングの経過や慢性解離の内膜flapのMRIによる動態評価に関するデータ収集を検討している。症例収集に難渋している。関連施設との連携の強化、A型解離術後症例のCT画像を確認するなど積極的な症例収集に務める。大動脈解離に対するステントグラフト治療の有効性は確立されたものとなりつつあるが,偽腔の再縮小(リモデリング)に着目した場合、慢性期症例の場合、リモデリング不良に伴う追加治療が必要となる事が少なくない。腹部を含む全ての内膜亀裂を修復することが理想であるが、臨床上、腹部大動脈に内膜亀裂が残存していても偽腔の増大回避、血栓化を得る症例を経験する。本研究は手術時の偽腔の実測圧とCT上残存する内膜亀裂の画像評価の関連を検討し、リモデリングおよび血栓化に関与する内膜亀裂の画像的因子を明らかにする。平成29年度より症例集積を開始し、実施済みのものに関してはfollow-upデータを収集している。また関連研究として過去に大動脈解離に対してステントグラフト治療を施行した症例に対しても、画像的アプローチのみではあるがデータ収集を開始している。症例集積を開始しており、安全性にも問題なく施行できている。大動脈解離に対するステントグラフト治療の有効性は確立されたものとなりつつあるが,偽腔の再縮小(リモデリング)に着目した場合、慢性期症例の場合、リモデリング不良に伴う追加治療が必要となる事が少なくない。腹部を含む全ての内膜亀裂を修復することが理想であるが、臨床上、腹部大動脈に内膜亀裂が残存していても偽腔の増大回避、血栓化を得る症例を経験する。本研究は手術時の偽腔の実測圧とCT上残存する内膜亀裂の画像評価の関連を検討し、リモデリングおよび血栓化に関与する内膜亀裂の画像的因子を明らかにするものである。平成29年度より症例集積を開始し、follow-upのCTデータを蓄積中である。予定より症例収集に難渋しており、A型解離術後症例の経過の追跡などにより症例収集体制を強化している。また関連研究として急性B型解離に対するTEVAR後症例のリモデリングの経過や慢性解離の内膜flapのMRIによる動態評価に関するデータ収集を検討している。症例収集に難渋している。関連施設との連携を密にし,症例集積体制を強化する。関連研究としてMRI評価の追加も検討している。関連施設との連携の強化、A型解離術後症例のCT画像を確認するなど積極的な症例収集に務める。研究計画の遅れに伴い学会報告を見送ったため。 | KAKENHI-PROJECT-17K10762 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K10762 |
免疫不全ブタを用いたブタ自然リンパ球の同定と機能解析 | 前年度に引き続き、ブタ自然リンパ球(ILC)の刺激・同定に用いる各種ブタインターロイキン(IL)の合成および精製とその活性の確認を行った。ブレビバチルス菌を用いて作成したIL-18およびIL-25は活性が十分ではなかったため、CHO/K1細胞を用いた哺乳類細胞培養系による合成とFLAGタグによる精製を試み、回収に成功した。さらに、IL-18については、KG1細胞におけるIFNγ発現誘導、IL-25についてはIL-25受容体を導入した293細胞におけるNFκB転写活性の誘導が各々確認され、回収した両ILが活性を持つことが示された。IL-33については、ブレビバチルス菌を用いて合成し、Hisタグに対するアフィニティカラム・イオン交換カラムを用いた精製を行った。さらに、IL-33受容体を発現する293細胞におけるNFκB転写活性の誘導が確認され、回収したIL-33が活性を持つことが示された。前年度、CHO/K1細胞での合成・回収の系を確立したIL-12、IL-23と合わせ、計画した5種類のILを使用した解析を行う準備が整った。一方で、野性型ブタを用いて、ILCに相当する細胞が存在するかどうかを確認するため、FACS解析の条件検討を実施した。他種における知見をもとに、分化細胞マーカー(CD3, CD8, CD14, CD16, CD21)陰性画分(lin-)のうち、T-bet陽性の画分がILC1、GATA3陽性の画分がILC2、RORγt陽性の画分がILC3に相当すると考え、末梢血およびリンパ節・脾臓・肺由来の血球系細胞でその有無を検討した。その結果、末梢血および各組織中において、少数ではあるが、ILC13の存在を確認することができた。各種インターロイキンの合成および精製に計画以上の時間を要したが、今年度までに準備は完了した。ボトルネックが解消したため、今後は研究の進展の加速化が可能と考えている。野性型およびRAG2ノックアウトブタを用いて、末梢血および各組織中における自然リンパ球の存在態様について、詳細なFACS解析を進める。さらに、分化マーカー陰性の細胞を回収し、各インターロイキンでの刺激を行い、応答性・機能性の確認および応答した細胞の単離を実施する。本年度は、ブタ自然リンパ球の刺激・同定に用いる各種ブタインターロイキン(IL)の合成および精製とその活性の確認を行った。ブタ脾臓またはリンパ節由来のcDNAを用いて、各ILの遺伝子をクローニングし、タグ融合タンパク質として発現するベクターを作製した。SS結合を含むIL-12およびIL-23はCHO/K1細胞を用いた哺乳類細胞培養系、SS結合を含まないIL-18、IL-25、IL-33はブレビバチルス菌を用いた分泌発現系と哺乳類細胞培養系の双方でタンパク質の合成とタグによる精製を試みた。IL-12およびIL-23は、遺伝子導入を行ったCHO/K1細胞の培地中への分泌がWestern Blottingによって確認され、ILに付加したStrepタグを用いた精製も可能であった。さらに、IL-12はコンカナバリンAで刺激したウシPBMCに対する増殖誘導、IL-23はブタ脾臓細胞に対するIL-17A発現誘導を確認し、合成されたILが活性を持つことを示すことができた。ブレビバチルス菌による分泌発現系では、培地中への各ILの分泌をWestern Blottingにより確認することができた。各ILに付加したHisタグを用いたカラム精製を行ったところ、夾雑物が多く不十分ではあったが、IL-18(KG1細胞におけるIFNγ発現誘導)とIL-25(ブタPBMCにおけるIL-8発現誘導)の活性を示唆するデータが得られた。IL-33はブレビバチルス菌、CHO/K1細胞ともに合成されていることは示すことはできたが、活性の確認には至っていない。以上のように、一部合成および精製法の再検討が必要な項目は残っているが、目的としている5種類のILの合成および精製が可能となる見通しを立てることができた。各種インターロイキンの合成および精製に計画以上の時間を要しているが、見通しを立てることはできており、今後遅れを取り戻すことは可能である。前年度に引き続き、ブタ自然リンパ球(ILC)の刺激・同定に用いる各種ブタインターロイキン(IL)の合成および精製とその活性の確認を行った。ブレビバチルス菌を用いて作成したIL-18およびIL-25は活性が十分ではなかったため、CHO/K1細胞を用いた哺乳類細胞培養系による合成とFLAGタグによる精製を試み、回収に成功した。さらに、IL-18については、KG1細胞におけるIFNγ発現誘導、IL-25についてはIL-25受容体を導入した293細胞におけるNFκB転写活性の誘導が各々確認され、回収した両ILが活性を持つことが示された。IL-33については、ブレビバチルス菌を用いて合成し、Hisタグに対するアフィニティカラム・イオン交換カラムを用いた精製を行った。さらに、IL-33受容体を発現する293細胞におけるNFκB転写活性の誘導が確認され、回収したIL-33が活性を持つことが示された。前年度、CHO/K1細胞での合成・回収の系を確立したIL-12、IL-23と合わせ、計画した5種類のILを使用した解析を行う準備が整った。一方で、野性型ブタを用いて、ILCに相当する細胞が存在するかどうかを確認するため、FACS解析の条件検討を実施した。 | KAKENHI-PROJECT-17K08143 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K08143 |
免疫不全ブタを用いたブタ自然リンパ球の同定と機能解析 | 他種における知見をもとに、分化細胞マーカー(CD3, CD8, CD14, CD16, CD21)陰性画分(lin-)のうち、T-bet陽性の画分がILC1、GATA3陽性の画分がILC2、RORγt陽性の画分がILC3に相当すると考え、末梢血およびリンパ節・脾臓・肺由来の血球系細胞でその有無を検討した。その結果、末梢血および各組織中において、少数ではあるが、ILC13の存在を確認することができた。各種インターロイキンの合成および精製に計画以上の時間を要したが、今年度までに準備は完了した。ボトルネックが解消したため、今後は研究の進展の加速化が可能と考えている。早急に各インターロイキンの合成および精製とその活性確認を完了させる。活性を持つブタIL-33の合成が困難となる場合を想定し、市販のヒトIL-33等の利用可能性の検討も進める。各インターロイキンの準備が整い次第、当初計画通り、RAG2ノックアウトブタ由来の細胞を用いて、自然リンパ球に相当する細胞の同定や単離を実施する。野性型およびRAG2ノックアウトブタを用いて、末梢血および各組織中における自然リンパ球の存在態様について、詳細なFACS解析を進める。さらに、分化マーカー陰性の細胞を回収し、各インターロイキンでの刺激を行い、応答性・機能性の確認および応答した細胞の単離を実施する。研究計画の進行がやや遅れ、ブタ自然リンパ球の同定に関わる実験への着手が次年度に繰り越しとなった。自然リンパ球の同定に必要な各種ELISAキットおよび増殖細胞をラベルする試薬の購入を予定している。研究計画の進行がやや遅れ、ブタ自然リンパ球の単離や機能解析に関わる実験への着手が次年度に繰り越しとなった。これらの実施に必要な各種ELISAキット、増殖細胞をラベルする試薬および各種抗体の購入を予定している。 | KAKENHI-PROJECT-17K08143 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K08143 |
三叉神経上核のニューロン構成とシナプス解析 | ニッスル染色の光顕像ではネコの三叉神経上核(STN)は三叉神経主感覚核背側亜核の吻背側に接し、かつ結合腕旁核の腹内側に位置して、前頭断面では楕円形状をなす。また、STNは吻尾方向に約0.6mmの広がりを有する核であり、その構成ニューロンは三叉神経主感覚核のものより小型であり、ニューロン密度は低い。咬筋と側頭筋支配の三叉神経中脳路核ニューロンを末梢においてWGA-HRPで標識し、電顕用の標本作製をして、閉口筋支配の三叉神経中脳路核ニューロンの中枢突起がSTN内でどの様な終止様態を示すかをFujii and Kusama(1984)の方法により調べた。その結果、標識された三叉神経中脳路核ニューロンの中枢突起はSTNニューロンに対していずれも軸索ー樹状突起間シナプスを形成しており、その軸索終末には球型シナプス小胞を含むものと多型シナプス小胞を含むものが観察された。三叉神経中脳路核ニューロンの中枢突起は、三叉神経運動核内の咬筋または側頭筋支配の運動ニューロンに対しても多数の軸索ー樹状突起間シナプスを形成しているが、これらの軸索終末はSTN内で観察されたものよりも一般に大きい。次に、既に光顕所見では明らかにされている歯根膜支配の三叉神経中脳路核ニューロンの中枢突起のSTN内終末の観察を電顕で試みたが、未だ一定の所見を得るところまで達していない。末梢からのSTNへの第3の入力系としては鼓索神経由来のものが存在するが、この鼓索神経のSTN内軸索終末は核の腹側部に局在し、大型のものが多く、軸索ー樹状突起間シナプスを形成しており、内部に多型シナプス小胞を含有していることが観察された。今後は同様な方法を用いて、三叉神経上核への扁桃核ニューロンを中心とした中枢性入力のシナプス解析を行う予定である。ニッスル染色の光顕像ではネコの三叉神経上核(STN)は三叉神経主感覚核背側亜核の吻背側に接し、かつ結合腕旁核の腹内側に位置して、前頭断面では楕円形状をなす。また、STNは吻尾方向に約0.6mmの広がりを有する核であり、その構成ニューロンは三叉神経主感覚核のものより小型であり、ニューロン密度は低い。咬筋と側頭筋支配の三叉神経中脳路核ニューロンを末梢においてWGA-HRPで標識し、電顕用の標本作製をして、閉口筋支配の三叉神経中脳路核ニューロンの中枢突起がSTN内でどの様な終止様態を示すかをFujii and Kusama(1984)の方法により調べた。その結果、標識された三叉神経中脳路核ニューロンの中枢突起はSTNニューロンに対していずれも軸索ー樹状突起間シナプスを形成しており、その軸索終末には球型シナプス小胞を含むものと多型シナプス小胞を含むものが観察された。三叉神経中脳路核ニューロンの中枢突起は、三叉神経運動核内の咬筋または側頭筋支配の運動ニューロンに対しても多数の軸索ー樹状突起間シナプスを形成しているが、これらの軸索終末はSTN内で観察されたものよりも一般に大きい。次に、既に光顕所見では明らかにされている歯根膜支配の三叉神経中脳路核ニューロンの中枢突起のSTN内終末の観察を電顕で試みたが、未だ一定の所見を得るところまで達していない。末梢からのSTNへの第3の入力系としては鼓索神経由来のものが存在するが、この鼓索神経のSTN内軸索終末は核の腹側部に局在し、大型のものが多く、軸索ー樹状突起間シナプスを形成しており、内部に多型シナプス小胞を含有していることが観察された。今後は同様な方法を用いて、三叉神経上核への扁桃核ニューロンを中心とした中枢性入力のシナプス解析を行う予定である。 | KAKENHI-PROJECT-63570031 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63570031 |
相転移における自己組織化制御とナノテクノロジーへの応用 | 工学における重要な自己組織化現象の1つに相転移問題がある.本研究では相転移における自己組織化制御とナノテクノロジーへの応用に関して以下の点を明確にした.(1)相転移の定性的解析:相境界の挙動は一般に外部からの影響を受ける.しかし,金属材料の焼き鈍しにおける粒界の挙動のように,その挙動が外部の影響を受けず,相境界の曲率のみに依存する場合がある.そのような場合を考察対象に材料内の不純物や熱雑音等の不規則な外乱の影響を確率過程としてモデル化し,材料内の粒界挙動の確率モデルを構築した.次に,確立した相境界挙動モデルに対して等高面法を用いて定式化した.その際には確率粘性解という弱解の概念を導入した.さらに,相境界挙動が外界の影響を受ける自由境界問題については確率相場モデルを新たに提案し,解析を行った.これにより,モデルに過冷却・過加熱・表面張力といった実際的な現象をモデルに反映することが可能となった.(2)相転移の定量的解析:有限差分法を用いて主要設備のシミュレータにより相境界挙動の定量的解析を行い,外乱が相境界挙動にどのような影響を与えるのかを明確にした.その結果,外乱は相境界が外界の影響を受けない平均曲率流に対しては相境界の移動速度を減少させることや外乱に依存して粒界の分離・融合が生じる場合があることが分かった.このように外乱は相境界挙動に大きな影響を及ぼすことが判明した.また,外界の影響を受ける相境界挙動においては温度に揺らぎが生じるが相境界の運動には大きな影響を及ぼさないことが分かった.(3)自己組織化過程の可視化システム:自己組織化過程を高精度,高速度で可視化するプログラムを開発した.本研究で得られたシミュレーション解析結果は金属材料のナノサイズでの材質制御の基礎研究として有用であると思われる.工学における重要な自己組織化現象の1つに相転移問題がある.本研究では相転移における自己組織化制御とナノテクノロジーへの応用に関して以下の点を明確にした.(1)相転移の定性的解析:相境界の挙動は一般に外部からの影響を受ける.しかし,金属材料の焼き鈍しにおける粒界の挙動のように,その挙動が外部の影響を受けず,相境界の曲率のみに依存する場合がある.そのような場合を考察対象に材料内の不純物や熱雑音等の不規則な外乱の影響を確率過程としてモデル化し,材料内の粒界挙動の確率モデルを構築した.次に,確立した相境界挙動モデルに対して等高面法を用いて定式化した.その際には確率粘性解という弱解の概念を導入した.さらに,相境界挙動が外界の影響を受ける自由境界問題については確率相場モデルを新たに提案し,解析を行った.これにより,モデルに過冷却・過加熱・表面張力といった実際的な現象をモデルに反映することが可能となった.(2)相転移の定量的解析:有限差分法を用いて主要設備のシミュレータにより相境界挙動の定量的解析を行い,外乱が相境界挙動にどのような影響を与えるのかを明確にした.その結果,外乱は相境界が外界の影響を受けない平均曲率流に対しては相境界の移動速度を減少させることや外乱に依存して粒界の分離・融合が生じる場合があることが分かった.このように外乱は相境界挙動に大きな影響を及ぼすことが判明した.また,外界の影響を受ける相境界挙動においては温度に揺らぎが生じるが相境界の運動には大きな影響を及ぼさないことが分かった.(3)自己組織化過程の可視化システム:自己組織化過程を高精度,高速度で可視化するプログラムを開発した.本研究で得られたシミュレーション解析結果は金属材料のナノサイズでの材質制御の基礎研究として有用であると思われる.相転移現象に関するモデリング手法には統計物理学的手法によるミクロ的方法と物質の存在する全領域を対象にした偏微分方程式によるマクロ的方法がある.本研究では偏微分方程式によるマクロ的モデリング法に外乱を考慮した確率マクロ的モデリング法という新しい側面からの相転移現象における自己組織化のモデリング手法を確立し,以下の点を明確にした.(1)自己組織化現象の定性的解析:現象に介在する不純物や熱雑音等の不規則な外乱の影響を確率過程としてモデル化し,2成分合金の自己組織化現象と材料内に現れる相境界挙動の確率モデルの構築を行った.2成分合金の相転移においては相分離と秩序・無秩序転移の2種類の相転移に対して確率Ginzburg-Landau方程式と確率Cahn-Hilliard方程式を数学モデルとし,一意解の存在条件を明らかにした.また,材料内に現れる相境界挙動に関しては粘性解の概念や等高面法を用いての定性的解析を行い,モデル方程式の解の性質(連続性,微分可能性)を明らかにした.(2)自己組織化現象の定量的解析:有限要素法を用いて主要設備のシミュレータにより自己組織化現象の定量的解析を行い,外乱が自己組織化にどのような影響を与えるのかを明確にした.その結果,加法的外乱は自己組織化を促進する働きが秩序・無秩序転移において顕著であることと状態依存性外乱は自己組織化の促進には大きな影響を及ぼさないことが判明した.(3)自己組織化過程の可視化システム:自己組織化過程を高精度,高速度で可視化するプログラムを開発した.工学における重要な自己組織化現象の1つに相転移問題がある. | KAKENHI-PROJECT-14550217 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14550217 |
相転移における自己組織化制御とナノテクノロジーへの応用 | 相転移において物理的状態の異なる相を隔てる境界を相境界という.相境界の挙動は外界の影響を受ける場合と受けない場合に分類できる.本研究では非線形確率偏微分方程式を用いて,この2種類の相境界挙動のモデリング手法を確立し,以下の点を明確にした.(1)相境界の定性的解析:相境界の挙動は一般に外部からの影響を受ける.しかし,金属材料の焼き鈍しにおける粒界の挙動のように,その挙動が外部の影響を受けず,相境界の曲率のみに依存する場合がある.そのような場合を考察対象に材料内の不純物や熱雑音等の不規則な外乱の影響を確率過程としてモデル化し,材料内の粒界挙動の確率モデルを構築した.次に,確立した相境界挙動モデルに対して等高面法を用いて定式化した.その際には確率粘性解という弱解の概念を導入した.さらに,相境界挙動が外界の影響を受ける自由境界問題については確率相場モデルを新たに提案し,解析を行った.これにより,モデルに過冷却・過加熱・表面張力といった実際的な現象をモデルに反映することが可能となった.(2)相境界の定量的解析:有限差分法を用いて主要設備のシミュレータにより相境界挙動の定量的解析を行い,外乱が相境界挙動にどのような影響を与えるのかを明確にした.その結果,外乱は相境界が外界の影響を受けない平均曲率流に対しては相境界の移動速度を減少させることや外乱に依存して粒界の分離・融合が生じる場合があることが分かった.このように外乱は相境界挙動に大きな影響を及ぼすことが判明した.また,外界の影響を受ける相境界挙動においては温度に揺らぎが生じるが相境界の運動には大きな影響を及ぼさないことが分かった.本研究で得られたシミュレーション解析結果は金属材料のナノサイズでの材質制御の基礎研究として有用であると思われる.相転移において物理的状態の異なる相を隔てる境界を相境界という.相境界の挙動の解析は相転移におけるナノサイズでの自己組織化制御に重要である.一般に,相境界の挙動は外界の影響を受ける場合と受けない場合に分類できる.本研究ではこの2種類の相境界挙動について以下の点を明確にした.(1)外界の影響を受けない相境界挙動解析:金属の焼き鈍し時に見られる粒界の運動は相境界の挙動が外部の影響を受けず,その幾何学的形状のみに依存する平均曲率流に従う.そこで,外乱を考慮した相境界の平均曲率流のモデル化を行い,外乱が相境界運動に及ぼす影響を解析した.さらに,運動の一意性がない,いわゆる肥満現象についても提案したモデルを用いて不規則外乱の肥満現象への影響について考察した.その結果,外乱の強度は同じであっても,相境界挙動に大きな影響を及ぼす場合があることが明らかになった.たとえば,円環部の断面直径より中央部の穴の直径の小さなトーラス型相境界の平均曲率流では外乱がなければ中央部が先に消滅し,球状になってから消滅するが,外乱存在下では外乱の影響で中央部が消滅せず,トーラス型を維持したまま消滅することがある.この場合は消滅時刻が他の場合より早くなる.8の字型相境界の平均曲率流のように肥満現象が起き,運動に一意性がなくなる場合がある.そのような場合,外乱は解集合から一意に解を選択する性質をもつことが推測できた.(2)外界の影響を受ける相境界挙動解析:自由境界問題の代表例であるステファン問題における相境界挙動解析を行った.ステファン問題のモデルとして,自由境界の厚みを考慮し,表面張力、過冷却、過加熱などの物理的現象を反映した相場モデルを採用し,解析を行った. | KAKENHI-PROJECT-14550217 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14550217 |
普賢岳火山災害における救護対応の在り方について | 本報告では他の災害事例との比較を通して、住民の優先度が高く、重要と考える復興の在り方を探ろうとしている。そして、普賢岳火山災害をこうむった島原市、深江町、北海道南西沖地震被害をこうむった奥尻町、阪神淡路大震災をこうむった神戸市、北淡町で調査を行っている。また、地方自治体、商工会議所から災害復興計画や関連資料を入手あるいは聞き取りで復興の概要、計画策定の理念や背景を把握する。各種統計資料などから平常時の動向を把握して、地域の長期的計画と緊急時のそれとを分離するようにこころがけつつ、被害の大きさとの関連で住民生活への影響を計量的に評価し、復興事業による環境整備への住民評価を計量的におこなって上記評価式および説明要因の影響度から効果的な対策を考量しようと考えた。これらの結果・考察から得られた新たな知見・成果をまとめれば、次のようなことがいえる。1)避難所生活、仮設住宅あるいは公営住宅の仮入居、住宅の再建の時期を通して、日常生活回復の促進には、被災前からの隣人関係を良好に維持することが重要視されている2)復興の充実期では、商店街の賑わうような地域振興の優先度が高くなっている3)まちづくりでは、都市の安全性が優先され、緑地・公園の配置の適切さが重視されている本報告では他の災害事例との比較を通して、住民の優先度が高く、重要と考える復興の在り方を探ろうとしている。そして、普賢岳火山災害をこうむった島原市、深江町、北海道南西沖地震被害をこうむった奥尻町、阪神淡路大震災をこうむった神戸市、北淡町で調査を行っている。また、地方自治体、商工会議所から災害復興計画や関連資料を入手あるいは聞き取りで復興の概要、計画策定の理念や背景を把握する。各種統計資料などから平常時の動向を把握して、地域の長期的計画と緊急時のそれとを分離するようにこころがけつつ、被害の大きさとの関連で住民生活への影響を計量的に評価し、復興事業による環境整備への住民評価を計量的におこなって上記評価式および説明要因の影響度から効果的な対策を考量しようと考えた。これらの結果・考察から得られた新たな知見・成果をまとめれば、次のようなことがいえる。1)避難所生活、仮設住宅あるいは公営住宅の仮入居、住宅の再建の時期を通して、日常生活回復の促進には、被災前からの隣人関係を良好に維持することが重要視されている2)復興の充実期では、商店街の賑わうような地域振興の優先度が高くなっている3)まちづくりでは、都市の安全性が優先され、緑地・公園の配置の適切さが重視されている | KAKENHI-PROJECT-07650727 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07650727 |
職場のウェルビーイング度の向上に個人特性が与える影響 | 今後、個人の非定型な業務の生産性や、組織としての生産性を高めるために、ウェルビーイングをマネジメントすることが、企業経営において、より注目されると考えられる。そこで、本研究では、ウェルビーイング工学プロジェクトで開発した独自の手法を採用し、個人が「行動調査票」に書き込む「経験抽出法」と「感謝付箋」を用いて、特定の職場を対象にウェルビーイングに関する実験を行なう。その際、心理学分野のビッグファイブ性格特性診断を取り入れ、どのような個人の特性が、職場のコミュニティにおけるウェルビーイング向上に寄与するのかを明らかにする。今後、個人の非定型な業務の生産性や、組織としての生産性を高めるために、ウェルビーイングをマネジメントすることが、企業経営において、より注目されると考えられる。そこで、本研究では、ウェルビーイング工学プロジェクトで開発した独自の手法を採用し、個人が「行動調査票」に書き込む「経験抽出法」と「感謝付箋」を用いて、特定の職場を対象にウェルビーイングに関する実験を行なう。その際、心理学分野のビッグファイブ性格特性診断を取り入れ、どのような個人の特性が、職場のコミュニティにおけるウェルビーイング向上に寄与するのかを明らかにする。 | KAKENHI-PROJECT-19K01831 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K01831 |
アルジネート膜を利用したGBR法への骨伝導性の付与 | GBR法として用いられている即製の細胞遮断膜の欠点である不完全な辺縁封鎖性を改善するために,われわれは直接骨面に膜を作ることが出来るアルジネート膜を考案し,in vivoにおいて細胞遮断膜として機能していることを示した.本研究において,この膜を作製するのに用いるアルギン酸ナトリウムと塩化カルシウムの至適濃度について検討を行なった.細胞遮断膜として結合組織の骨内への侵入を防ぐためにはある程度の膜厚と強度が必要と考え各溶液の濃度を上げて膜を作製したところ膜厚は厚くなったが膜の吸収が遅れその残存膜のために骨の再生も遅延した.このことはこのアルジネート膜の特性である吸収性膜としての機能をしておらず適切な濃度ではなかった.さらに骨欠損部を満たしているアルギン酸ナトリウムが吸収されずに骨再生を遅延させている結果を得たのでこのアルジネート膜を既製膜として,すなわち前もってアルジネート膜を作製して,使用し骨再生の状態を検討した.その結果従来の吸収性膜と同様に強度的に問題があり膜の裏打ちのない部位(皮膚側)では膜が破れ結合組織の侵入が認められた.一方筋により膜の裏打ちのある部位(筋側)では骨の再生が認められたが,骨再生の期間には明らかな短縮は認められなかった.そこで骨再生の期間を短縮させるためにアルジネート膜に骨伝導性を付与した.すなわちアルギン酸ナトリウムにリン酸を含有させアルジネート膜を作製した.しかし動物実験では,対象と比較して有意に骨再生の短縮は得られなかった.逆に術野の感染が多くに起こったことよりリン酸が起炎物質として作用していたと考える.以上の結果より,アルジネート膜が吸収性の細胞遮断膜と作用するためにはアルギン酸ナトリウム1.0%,塩化カルシウム3.0%が至適濃度であった.骨再生の期間を短縮するためアルジネート膜にリン酸を含有させたが効果は得られなかった.GBR法として用いられている即製の細胞遮断膜の欠点である不完全な辺縁封鎖性を改善するために,われわれは直接骨面に膜を作ることが出来るアルジネート膜を考案し,in vivoにおいて細胞遮断膜として機能していることを示した.本研究において,この膜を作製するのに用いるアルギン酸ナトリウムと塩化カルシウムの至適濃度について検討を行なった.細胞遮断膜として結合組織の骨内への侵入を防ぐためにはある程度の膜厚と強度が必要と考え各溶液の濃度を上げて膜を作製したところ膜厚は厚くなったが膜の吸収が遅れその残存膜のために骨の再生も遅延した.このことはこのアルジネート膜の特性である吸収性膜としての機能をしておらず適切な濃度ではなかった.さらに骨欠損部を満たしているアルギン酸ナトリウムが吸収されずに骨再生を遅延させている結果を得たのでこのアルジネート膜を既製膜として,すなわち前もってアルジネート膜を作製して,使用し骨再生の状態を検討した.その結果従来の吸収性膜と同様に強度的に問題があり膜の裏打ちのない部位(皮膚側)では膜が破れ結合組織の侵入が認められた.一方筋により膜の裏打ちのある部位(筋側)では骨の再生が認められたが,骨再生の期間には明らかな短縮は認められなかった.そこで骨再生の期間を短縮させるためにアルジネート膜に骨伝導性を付与した.すなわちアルギン酸ナトリウムにリン酸を含有させアルジネート膜を作製した.しかし動物実験では,対象と比較して有意に骨再生の短縮は得られなかった.逆に術野の感染が多くに起こったことよりリン酸が起炎物質として作用していたと考える.以上の結果より,アルジネート膜が吸収性の細胞遮断膜と作用するためにはアルギン酸ナトリウム1.0%,塩化カルシウム3.0%が至適濃度であった.骨再生の期間を短縮するためアルジネート膜にリン酸を含有させたが効果は得られなかった.我々が考案したアルジネート膜がGBR法における細胞遮断膜として機能することはすでに判明しているが,膜作成に必要な塩化カルシウムやアルキン酸ナトリウムの至適濃度については不明である.そこで本研究の目的は,膜作成に必要な各溶液の至適濃度を細胞遮断膜としての機能や治癒の面から検討することである.まず各溶液の濃度が,形成されるアルギン酸カルシウム膜の厚さに及ぼす影響を検討した.その結果,アルギン酸ナトリウムの濃度が上昇するにつれ膜厚は増した.またアルギン酸ナトリウムの濃度が1%以下では塩化カルシウムの濃度にかかわらずほぼ同じ厚みであり,それ以上の濃度では塩化カルシウム濃度が高くなるにつれ膜は厚くなる傾向を示した.そこで塩酸カルシウム濃度は3%,アルギン酸ナトリウムは0.5%,1.0%,1.5%を用い,厚さの異なる3種類の膜を作成し動物実験に供した.実験動物はラット脛骨に骨欠損を形成し,同骨欠損部に各濃度のアルジネート膜を形成し,1,2,4,8週後の組織標本から骨形成能を検討した.その結果,対照群では骨断端部から早期に新生骨の形成が認められたが,骨欠損部に結合組織が侵入し骨は2つに分かれて治癒した.一方実験群において,1,2週ではアルギン酸ナトリウムの濃度に関わらずアルジネート膜が骨欠損部への結合組織の侵入を防御してしており,8週目では骨欠損部はもとの形態近くまで回復していた.しかし対照に比べ実験群では治癒は遅延していた. | KAKENHI-PROJECT-11470436 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11470436 |
アルジネート膜を利用したGBR法への骨伝導性の付与 | またアルギン酸ナトリウムの濃度により形成されたアルジネート膜の吸収速度に違いが認められ,そのため高濃度では膜の吸収が遅れ残存している膜の下までしか骨の修復は起こっておらずわずかにくびれた形態で回復していた.以上のことより,GBR膜として膜の強度を得るにはアルギン酸ナトリウムの濃度を高くした方がよいが,その場合逆に膜の吸収が遅くなり残存膜部に骨が新生せずに治癒した.前年度の研究結果より,骨欠損部にアルギン酸ナトリウム水溶液(Ag-Na)を充満させた後,塩化カルシウム水溶液(Ca)を滴下して作製した(直接法))アルジネート膜は適切な溶液濃度で生体親和性に優れた吸収性GBR膜として機能することをを証明した.さらにアルジネート膜は自己硬化性があるばかりでなく,柔軟性を有している.そこで現在用いられているGBR膜の欠点である辺縁封鎖性に関して,アルジネート膜を用いれば複雑な表面形態の骨欠損部表面を緊密に封鎖できる可能性があると考え,アルジネート膜をあらかじめ作製し既製のGBR膜として骨欠損部を被覆し(間接法),GBR膜としての有用性について検討を加えた.実験は,Ag-NaにCaを噴霧して作製したアルジネート膜でラット脛骨に形成した骨欠損部を被覆し両端を3-0絹糸で固定した.濃度は前年の直接法と同様にAg-Na:1.0% Ca3.0%(A群),Ag-Na:3.0% Ca:3.0%(B群),Ag-Na:3.0#Ca:10%(C群)とし,経時的に組織学的に検討を行った.その結果,A群では作製したアルジネート膜の強度が弱く操作性が不良であったため実際に骨欠損部への埋入は行なえなかった.(2週目)溶液の濃度にかかわらず周囲組織に接している筋側においては,アルジネート膜が骨欠損部表面に存在していたが,皮膚側ではアルジネート膜が欠損内部に陥没し結合組織の嵌入を認めた.(4週目)溶液の濃度にかかわらず,筋側ではアルジネート膜に沿って新生骨の形成が認められたが,皮膚側では結合性組織が嵌入し骨髄の部分が肉芽様の変性を起こしていた.(8週目)溶液の濃度にかかわらず,筋側では骨のリモデリングにより骨新生が起こっていたが,皮膚側では骨欠損部内に結合性組織が存在しそれにより骨再生は認められなかった.以上の結果より,アルジネート膜を間接法によって使用した場合,即製の吸収性細胞遮断膜と同様に強度的に問題があり,GBR膜として用いることは困難であることが判明した.吸収性細胞遮断膜(GBR膜)として我々が開発したアルジネート膜は,動物験において細胞遮断膜として機能し実際に時間の経緯と伴に吸収していくのが確認されその有用性(2)ついて既に報告した.しかhし,骨再生の速度は即製のGBR膜を用いた場合と同程度であり,骨再生聞かんの短縮は見とめられなかった.そこでこのアルジネート膜がGBR膜としてさらに有用性を高めるために骨伝導性の付与を検討した.1.リン酸含有アルジネート膜の作製1%アルギン酸ナトリウム溶液にリン酸うを各々中性,酸性,塩基性にし含有させ,3%塩化カルシウムを加えて膜を作製したが膜は形成されなかった.そこで3%アルギン酸ナトリウムに中性リン酸を含有させ,10%塩化カルシウムを加えたところアルジネート膜は形成された.2.骨芽細胞を用いたリン酸カルシウム含有アルジネート膜の評価1.で作製したアルジネート膜上に骨芽細胞を播種し培養を行なったが,リン酸の添加で培養液のpHが酸性となり培地上で骨芽細胞が生育しなかった.そのためアルジネート膜に導入されたリン酸が骨芽細胞の活性化に及ぼす影響を検討する実験は成立しなかった.3.リン酸含有アルジネート膜のin vivoにおける骨伝導性への影響ラット脛骨に骨欠損を形成し同骨欠損部を中性リン酸含有アルギン酸ナトリウム水溶液で充満させた. | KAKENHI-PROJECT-11470436 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11470436 |
「都心回帰」時代の大都市都心における地域コミュニティの限界化と再生に関する研究 | 研究機関の3年間(平成25年度平成27年度)に研究代表者を含む研究分担者および研究協力者による学会報告は8回行われ、また学会誌等へ掲載された論文は13本に及んでいる。また、研究メンバーによる情報交換や議論のための研究会を14回開催した。調査研究として東京都、名古屋市、京都市、大阪市の各都心区でのマンション住民や地域住民を対象としたアンケート調査を8回実施した。都心地域においてはマンション住民の増加により、専門職層や富裕層の比率が高まり、地域コミュニティの近隣関係は弱くなっていること、当該都市により、その関係性には差異があることが判明した。平成25年度には、これまでの調査研究を踏まえて、15月には地域社会学会の大会で代表者及び分担者の5人のメンバーが報告を行い、7月には東海社会学会の大会で1人のメンバーが報告を行った。それらの報告では、一定の評価をうけて様々なコメントが寄せられ、今後の調査研究に大きな教唆を得た。これらを踏まえて、2年間5回の「大都市都心研究会」を研究協力者の参加も得て開催し、情報を交換、研究の方向性や方法、調査対象地の選定を行った。具体的な調査研究としては、3東京都中央区および名古屋市中区の区役所へのインタビュー調査および両区のマンション住民約1000名への郵送アンケート調査を行った。それぞれ30%および38%の回答を得た。また、都心区の住民との比較データを得るため、大阪府豊中市の千里ニュータウンと愛知県豊田市の山間部の市支所へのインタビュー及び合計で約1000人の住民への郵送アンケート調査を行い、34%及び48%の回答を得た。これらの4地域へのアンケート調査についてはデータ整理及びデータ入力を完了した。4北海道の中枢都市である札幌市の中央区役所および同区の3つの地域センターと同連合町内会の役員へのインタビューと調査対象のマンションの現地見学を行った。5福岡市中央区および博多区の地域コミュニティにてそれぞれ1箇所ずつ聞き取り調査を行った。6「都心回帰」を見せている大阪市の商店街の状況を知るため、大阪市商店街連合会の協力を得て、同市の約500の商店街の役員に対して郵送調査を行い、約3割の回答を得た。研究成果としては、代表者を含む4名のメンバーによる「『都心回帰』時代の大都市都心地区におけるコミュニティとマンション住民」と題する大部の報告論文が6月と9月に分けて発刊され、多くの関連研究者にお送りし、評価を得た。平成26年度には、これまでの調査研究を踏まえて、15月には地域社会学会の大会で分担者のうち、2人のメンバーが報告を行い、9月には日本都市社会学会の大会で1人のメンバーが報告を行った。また、11月には日本社会学会の大会で1人のメンバーが報告を行った。それらの報告では、一定の評価を受けてさまざまなコメントが寄せられ、議論が深まった。これらのコメントは、今後の調査研究の大きな参考となった。これらを踏まえて、2年間6回の「大都市都心研究会」を研究協力者の参加も得て開催し、情報を交換、研究の方向性や方法、調査対象地の検討を行った。具体的な調査研究としては、3東京都中央区の地域住民へのインタビュー調査(1回)および現地巡見(2回)、名古屋市中区の区役所および研究者(それぞれ2回)、地域住民組織代表者へのインタビュー調査(1回)を行った。4また京都市中京区の地域住民約1000名、マンション住民約1000名への郵送アンケート調査を行った。それぞれ35.9%および39.9%の回答を得た。これらの4地域へのアンケート調査についてはデータ整理、データ入力を完了した。5さらに、大阪市中央区のマンション住民約1000名への郵送アンケート調査を行い32.9%の回答を得た。6加えて、平成25年度末に実施した大阪市の商店街への郵送調査について、データ整理、データ入力を完了した。研究成果としては、代表者を含む6名のメンバーによる「『都心回帰』時代の東京都心部のマンション住民と地域生活ー東京都中央区での調査を通じて」と題する報告論文が発刊され、多くの関連研究者にお送りし、評価を得た。平成27年度にはこれまでの調査研究を踏まえて、15月には研究分担者の一人が人文地理学会政治地理研究部会第14回研究会にて、12月には大阪市立大学大学院創造都市研究科ワークショップにて報告を行った。2また年間3回の「大都市都心研究会」を研究協力者の参加も得て開催し、情報を交換、研究の方向性や方法、調査対象地の検討を行った。3具体的な調査としては大阪市中央区地域住民約1600名、東京都中央区地域住民約1000名へ郵送アンケート調査を行った。それぞれ29.2%および30.5%の回答を得た。これらの調査についてはデータ整理、データ入力を完了した。4研究成果としては代表者を含む5名のメンバーによる「『都心回帰』時代の名古屋市都心部における地域コミュニティの現状ーマンション住民を焦点として」と題する報告論文が発刊され、また、研究代表者による「『都心回帰』による大都市都心部の地域社会構造の変動ー大阪市および東京都のアッパー・ミドル層に注目して」、さらに研究代表者を含む3名のメンバーによる京都市中京区のコミュニティ調査の分析論文「『都心回帰』時代の京都市中京区学区コミュニティー明倫学区と城巽学区の調査より」、「都心住民の近所付き合いと住民自治ー京都コミュニティ調査を事例として」、「都心住民の生活実態と社会意識についての一考察ー京都市中京区明倫学区と城巽学区を事例として」がそれぞれ発刊された。 | KAKENHI-PROJECT-25285160 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25285160 |
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