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高温衝撃圧縮法による超硬物質粉末の固化成形
本研究では、開発中の高温衝撃圧縮装置に改良を加え、従来より高温かつ高圧力の負荷にも耐えうる新しいシステムを設計・製作した。この装置では、爆発時に高温加熱部の周囲に加熱されていない鋼製の補強部材を遠隔操作で発破直前にセットすることで、粉末容器を破壊することなく850°Cまでの実験が可能になった。従来、このような高温での回収実験は極めて困難であり、おおむね700°Cまでの実験までしか行われていなかったのに対して、本研究では新しいいくつかの実験結果を得ることができた。実験はまず、粒径の異なる高速度鋼粉末を用いて、成形体組織に及ぼす温度の効果を調べた。温度上昇に伴って一般に粒子表面に生じる溶融の割合は増加の傾向を示したが、800°Cの実験でその比率は低下した。この温度での実験では粉末素材に再結晶が生じることが考えられるので、軟化の影響で粉末に加工硬化能が付与され、粒子の変形域が広がり、表面溶融を生じにくくしたと結論づけられた。また粒子径が大きいほど、大きな溶融割合が生じた。この他にも、高温加熱の効果によって、熱残留応力の原因に起因して発生するクラックを減少させることが可能であることなど、実験諸因子の効果が明らかにされた。c-BN、c-BN/TiB_2複合粉末についても高温衝撃成形実験を行い、850°Cまでの回収実験を実施した。これらの粉末の場合、常温では数GPaの硬度値しか得られない材料についても、高温実験によって3040GPa以上の高い硬度値を示す良好な形成体が得られ、高温加熱の効果が明確に示された。本研究では、開発中の高温衝撃圧縮装置に改良を加え、従来より高温かつ高圧力の負荷にも耐えうる新しいシステムを設計・製作した。この装置では、爆発時に高温加熱部の周囲に加熱されていない鋼製の補強部材を遠隔操作で発破直前にセットすることで、粉末容器を破壊することなく850°Cまでの実験が可能になった。従来、このような高温での回収実験は極めて困難であり、おおむね700°Cまでの実験までしか行われていなかったのに対して、本研究では新しいいくつかの実験結果を得ることができた。実験はまず、粒径の異なる高速度鋼粉末を用いて、成形体組織に及ぼす温度の効果を調べた。温度上昇に伴って一般に粒子表面に生じる溶融の割合は増加の傾向を示したが、800°Cの実験でその比率は低下した。この温度での実験では粉末素材に再結晶が生じることが考えられるので、軟化の影響で粉末に加工硬化能が付与され、粒子の変形域が広がり、表面溶融を生じにくくしたと結論づけられた。また粒子径が大きいほど、大きな溶融割合が生じた。この他にも、高温加熱の効果によって、熱残留応力の原因に起因して発生するクラックを減少させることが可能であることなど、実験諸因子の効果が明らかにされた。c-BN、c-BN/TiB_2複合粉末についても高温衝撃成形実験を行い、850°Cまでの回収実験を実施した。これらの粉末の場合、常温では数GPaの硬度値しか得られない材料についても、高温実験によって3040GPa以上の高い硬度値を示す良好な形成体が得られ、高温加熱の効果が明確に示された。
KAKENHI-PROJECT-08750840
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08750840
両生類の形態・構造特異性の決定機構の解明
本研究の最も重要な成果は「皮膚の変換中心」の概念を提出できたことである。変態前期の若いオタマジャクシの体側部に変換中心が点状に出現し、この中心がオタマジャクシの発達とともに体の他の部位に進入していくことを明らかにした。この中心は決して尾の領域に進入しないことで皮膚変態の部域特異性が説明できる。皮膚の変換中心の分子的性質を明らかにするために表皮と皮膚結合組織から次の16種のcDNA・遺伝子をクローニングした。ウシガエルとアフリカツメガエルの7種のケラチン、ウシガエルのガレクチン、機能未知の新規性遺伝子2種、ウシガエルのカテプシンのcDNAおよびその遺伝子の上流域、ウシガエルのオステオネクチン、ウシガエルの1型コラーゲンα1鎖およびα2鎖、イモリ1型コラーゲンα1鎖およびα2鎖、ウシガエルMMP1遺伝子の上流域。また、タンパク質レベルでは5種類のカルシウム結合蛋白質を同定した。以上の結果は吉里と大房が中心となって展開した。菊山は、イモリ、ウシガエル、アフリカツメガエルの脳下垂体ホルモン系の研究を展開した。本研究の初期の目的はカエルとイモリの変態の仕組みを明らかにして、両者の形態特異性獲得の理解に繋げるというものであった。カエルの変態の仕組みについてはかなりの進展をみた。イモリについても初めてコラーゲンの遺伝子をクローニングするなどの成果を上げることができた。しかし、両者を比較して変態の種特異性獲得の仕組みを理解するまでには至らなかった。本研究の成果を踏まえて、今後は、皮膚の変換中心の形成とその移動の仕組みを、特にイモリの皮膚の変態に焦点を当てながら調べたい。これらの分子仕組みを調べるための遺伝子プローブは本研究によってそろえることができた。特に、ケラチンとコラーゲン遺伝子はこの目的の研究に有用である。本年度特に推進した研究はウシガエルのコラゲナーゼとコラーゲン遺伝子の構造解析である。前者についてはcDNA及びゲノム遺伝子の全構造を決定し発表した(Rou′x Arch. Dev. Biol. 1996,205.p.243-251)。校舎については、ウシガエルI型コラーゲンのα1,α2鎖cDNAのほぼ全長をクローン化し、その塩基配列を決定した。ヒトI型コラーゲンa1鎖cDNAを用いたスクリーニングによりcDNAクローンを得た。6A-1は、繊維性コラーゲン遺伝子の3′端側の約3300塩基対をコードしていた。6A-1の5′側の配列を得るために実施したRT-PCRにより得られたY31(約1500塩基対)は、300塩基対以上にわたり6A-1と共通の塩基配列を持っていた。Y31/6A-1は、ウシガエルI型コラーゲンのa2鎖cDNAのほぼ全長をコードしていることが判明した。同時にPCRによって得られたクローンY15は、I型コラーゲンのa1鎖cDNAの翻訳開始点から約1800塩基対の配列を含んでいた。本年度の実績からウシガエルI型コラーゲン遺伝子は、ホ乳動物のそれとほぼ同様の構造を有していることが判明した。さらに、カテプシンDのcDNAをXenopus laevisより全長にわたりクローン化し塩基配列を決定した(Dev.Growth Differ.1995.37.p.463-477)。その他、本年度開始した研究は以下の通りである。(1)変態期に発現しているホメオボックス遺伝子のクローニング、(2)プロテアーゼT1遺伝子のクローニング、(3)カテプシンDゲノム遺伝子のクローニング、(4)DNase遺伝子のクローニング、(5)ウシガエル幼生皮膚におけるカルシウム沈着・蓄積のパターン解析、(6)両生類培養細胞における形質転換、(7)ウシガエルコラゲナーゼ遺伝子上流に見いだされた甲状腺ホルモン応答配列の転写制御活性の定量的解析。本研究の最も重要な成果は「皮膚の変換中心」の概念を提出できたことである。変態前期の若いオタマジャクシの体側部に変換中心が点状に出現し、この中心がオタマジャクシの発達とともに体の他の部位に進入していくことを明らかにした。この中心は決して尾の領域に進入しないことで皮膚変態の部域特異性が説明できる。皮膚の変換中心の分子的性質を明らかにするために表皮と皮膚結合組織から次の16種のcDNA・遺伝子をクローニングした。ウシガエルとアフリカツメガエルの7種のケラチン、ウシガエルのガレクチン、機能未知の新規性遺伝子2種、ウシガエルのカテプシンのcDNAおよびその遺伝子の上流域、ウシガエルのオステオネクチン、ウシガエルの1型コラーゲンα1鎖およびα2鎖、イモリ1型コラーゲンα1鎖およびα2鎖、ウシガエルMMP1遺伝子の上流域。また、タンパク質レベルでは5種類のカルシウム結合蛋白質を同定した。以上の結果は吉里と大房が中心となって展開した。菊山は、イモリ、ウシガエル、アフリカツメガエルの脳下垂体ホルモン系の研究を展開した。本研究の初期の目的はカエルとイモリの変態の仕組みを明らかにして、両者の形態特異性獲得の理解に繋げるというものであった。カエルの変態の仕組みについてはかなりの進展をみた。イモリについても初めてコラーゲンの遺伝子をクローニングするなどの成果を上げることができた。しかし、両者を比較して変態の種特異性獲得の仕組みを理解するまでには至らなかった。本研究の成果を踏まえて、今後は、皮膚の変換中心の形成とその移動の仕組みを、特にイモリの皮膚の変態に焦点を当てながら調べたい。
KAKENHI-PROJECT-07404057
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07404057
両生類の形態・構造特異性の決定機構の解明
これらの分子仕組みを調べるための遺伝子プローブは本研究によってそろえることができた。特に、ケラチンとコラーゲン遺伝子はこの目的の研究に有用である。ウシガエルコラーゲンについては、前年度にクローン化したウシガエルI型コラーゲンのα1,α2鎖cDNAを用いて各組織における発現レベルをノザンブロット法により詳細な解析を実施した。この結果、ウシガエル幼生尾部におけるI型コラーゲンα1,α2鎖遺伝子の発現は、甲状腺ホルモン投与後から3日目にかけて一端発現が抑制され、その後再び発現量が増大することが明らかとなった。この応答の機作は、甲状腺ホルモン投与により、コラーゲン遺伝子の発現が抑制される応答とプロラクチンの分泌量が増大するものと考えられる。この成果をまとめた論文を投稿し、現在査読を受けている。アカハライモリcDNAライブラリよりPCR法によりコラーゲン遺伝子の断片を単離した。得られた断片の1つは1374塩基対の長さを持ち、I型コラーゲンのα1鎖をコードすることが明らかとなった。また、この断片をプローブとして用いたノザン解析の結果から、イモリのI型コラーゲンのα1鎖mRNAは、他の脊椎動物同様に約5500塩基の長さを持つものであることが判明した。さらに、アフリカツメガエルのカテプシンゲノム遺伝子の転写開始点上流域の検索を実施し、そこに甲状腺ホルモン応答配列に類似する配列を見いだした。この配列を含むゲノム断片は、組換え型ツメガエル甲状腺ホルモンリセプターと特異的に反応することを確認した。この配列が甲状腺ホルモンレセプターと直接作用することから、カテプシンD遺伝子が甲状腺ホルモンの直接支配下にある可能性が強く示唆された。この配列とウシガエルコラゲナーゼ遺伝子の類似配列が転写制御活性を有するか否かを明らかにするため、現在レポーター遺伝子と接続し、ツメガエル培養細胞に形質転換を行う準備を整えている。本研究計画の初年度にクローン化したウシガエルI型コラーゲンのα1,α2鎖cDNAを用いて各組織における発現レベルをin situ hydridization法により解析した。この結果、ウシガエル幼生尾部におけるI型コラーゲンのα1,α2鎖遺伝子の発現は、真皮層のみならず表皮層においても、本遺伝子を発現している細胞が局在していることが明らかとなった。これまでは、ウシガエル皮膚において、コラーゲン遺伝子は真皮層の細胞においてのみ発現が見られ、表皮細胞における発現は見られないとされていた。今回我々が得た結果は、ウシガエル要請の表皮細胞においてI型コラーゲン遺伝子が発現していることを示す初めての証拠である。昨年度得られた結果より、アフリカツメガエルのカテプシンゲノム遺伝子の転写開始点上流域存在する甲状腺ホルモン応答配列に類似する配列(TRE-lile sequence)の機能に関する解析を実施した。このTRE-lile sequenceが実際に甲状腺ホルモンレセプター(TR)と結合しうるか否かを明らかにするために、Gel Mobility Shift Assayを実施した。その結果、甲状腺ホルモンレセプターβとレチノイドXレセプターのホモダイマーである複合体分子が、このTRE-lile sequenceに結合することが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-07404057
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07404057
医療用ガンマ線イメージング装置高度化を目指したガンマ線レンズの基礎研究
近年の結晶生成技術の進歩により普及してきたガンマ線用レンズについて、医療用ガンマ線イメージングへの有用性を検証した。ブラッグ回折型のレンズによりサブミリメートルの解像度を持つ装置を作製できる可能性がある事がシミュレーションにより分かった。しかし、この装置ではイメージングに数時間を要する。将来的に開発が見込まれるデリブリュク回折によるレンズを用いると、イメージング時間を大幅に短縮することが期待できる。近年の結晶生成技術の進歩により普及してきたガンマ線用レンズについて、医療用ガンマ線イメージングへの有用性を検証した。ブラッグ回折型のレンズによりサブミリメートルの解像度を持つ装置を作製できる可能性がある事がシミュレーションにより分かった。しかし、この装置ではイメージングに数時間を要する。将来的に開発が見込まれるデリブリュク回折によるレンズを用いると、イメージング時間を大幅に短縮することが期待できる。ガンマ線レンズを用いた医療用イメージング装置高度化のための基礎研究として、平成22年度はガンマ線レンズの基礎性能を評価するための準備を、実験、理論の両面から進めた。実験面では、ガンマ線レンズ用素材としてゲルマニウム単結晶を複数種類準備した。これらのレンズ素材は、結晶方位、厚さ、表面処理等がそれぞれ異なるものである。レンズ性能の評価実験用セットアップとして、これらのレンズ素材を任意の角度に固定配置し、標準線源によるガンマ線を屈折させてガンマ線検出器に到達させる装置を構築した。あわせて、屈折測定用のガンマ線検出器の準備も進めた。ガンマ線検出器としては、エネルギー精度の高いゲルマニウム半導体検出器(既存)を用いるが、ガンマ線レンズの効果を精密測定するためには、数日から数週間の比較的長時間の測定が必要となる。そこで長時間測定の際の温度変化等の影響を受けずに測定を行える、デジタルベースの信号処理系を準備した。この測定系では、信号処理に伴うデッドタイムを長時間にわたり精確に計測できるとともに、測定中の温度変化を随時記録できるようになっている。これらのセットアップを用いて現在、ガンマ線レンズ効果の精密測定の前段階として、測定系の安定性等を確認するための試験測定中である。また、理論面でも、レンズにおけるガンマ線の屈折精度、エネルギー精度における、結晶格子の熱振動による影響の計算を行った。さらに、ガンマ線レンズを、陽電子断層撮像装置(PET)、単一光子放射断層撮影装置(SPECT)、コンプトンカメラに組み込んだ際の効果を検証するための、モンテカルロ法によるシミュレーターの製作を行った。ガンマ線レンズを用いた医療用イメージング装置高度化のための基礎研究として、平成23年度はガンマ線レンズを用いた医療用イメージング装置のデザインとその検証を行った。現在の医療用イメージングにおいて未だ実現していない、望まれるものの一つとして、生体深部でのプローブ分布をミクロなスケールで可視化する装置がある。現在、ミクロなスケールでのプローブ分布を可視化する装置として蛍光イメージングなどがあるが、蛍光の物質透過力が小さいため、深部のイメージングは困難である。深部のイメージングを実現するためには、透過力の高い波長の短い光(X線、ガンマ線等)を使用する必要がある。したがって、本研究で検討するガンマ線レンズの医療用イメージング装置への応用として、ガンマ線プローブによりミクロな分布を可視化する装置の構築がもっとも有益であると考えた。そこで、幾何学的考察およびモンテカルロ・シミュレーションを行い、この様な装置を実現さるためには、宇宙線観測用にデザインされたガンマ線レンズとは異なる構成を必要とすることがわかった。これは、宇宙線観測においては、無限遠方から飛来するガンマ線を観測するため平行ビームとして、これを集光するフォーカス型の配置を必要とするのに対して、前述の目的の医療用イメージング装置では、ガンマ線放出位置の違いを強調する必要があり、これにはデフォーカス型の配置が必要となる。また、シミュレーションにより精度の高い評価を行うためには、ガンマ線構成要素単体のガンマ線反射率を精確に知る必要があるが、そのためには放射光等の強度の高い単色ガンマ線による実験が必要であることがわかった。したがって、このような実験結果をシミュレーションに組み込んだ詳細な装置検討を平成24年度の課題とする。ガンマ線レンズを用いた医療用イメージング装置高度化のための基礎研究として、平成24年度は、医療用イメージング装置へのガンマ線レンズの具体的な応用方法を考案し、シミュレーションにより、その装置の具体的なデザインと性能の検証を行った。現在の医療用イメージングにおいて未だ実現していない、望まれるものの一つとして、生きたままの生体深部のプローブ分布を非侵襲的にミクロなスケールで可視化する装置がある。現在ミクロなスケールでのプローブ分布を可視化する装置として蛍光イメージングなどがあるが、蛍光波長の光の物質透過力が小さいため、生体表面でのイメージングのみが可能であり、非侵襲的には深部のイメージングは困難である。生体深部のイメージングを実現するためには、透過力の高いガンマ線プローブを用いる事が有効であると考えられるが、ガンマ線のエネルギーが高くなるとガンマ線のレンズ素材での屈折率が小さくなるため焦点距離が長くなり、巨大な装置を必要とする。したがって、低エネルギーのガンマ線(数10200 keV程度)を放出するプローブをイメージングの対象とするのが妥当である。そこで、100 keVのガンマ線に対してのシミュレーションを行い、現在一般的に利用されている2 mmの位置分解能を有するガンマ線検出器の前方にガンマ線レンズを配置することにより、イメージング対象の深さ100 mmの場所において、サブミリオーダーのイメージングが実現可能であることを示した。
KAKENHI-PROJECT-22611018
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22611018
医療用ガンマ線イメージング装置高度化を目指したガンマ線レンズの基礎研究
本研究の課題であるガンマ線レンズの医学応用について、詳細な検討は継続中であるものの、その利用形態と装置コンセプトは考案するに至っている。そのため、今後はコンセプトにしたがって、その詳細を検討することのみが課題となったため。24年度が最終年度であるため、記入しない。本研究の課題であるガンマ線レンズの医学応用について、これを応用した装置のコンセプトを考案するに至った。今後は、この装置コンセプトにしたがって、シミュレーションおよび実測により詳細を検討し、性能評価と実際の利用法について検討し、装置構築のための道筋をつくる。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22611018
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22611018
「生命に対する権利」を巡る「市民的価値」と「軍事的価値」との鬩ぎ合い
2003年イギリス軍はイラクを攻撃しそれに続き占領をおこなったが、その間多くの兵士が死傷し、またそれを上回るイラク市民が死傷した。死傷したイギリス兵の遺族は国防省に対し、また死傷したイラク市民の遺族はイギリス政府に対し訴訟をおこした。それらの訴えの法的根拠は、ヨーロッパ人権条約の生命に対する権利および1998年人権法であった。前者の判決が、Smith事件の最高裁判決であり、後者のそれがAl-Skeini事件のヨーロッパ人権裁判所判決であった。後者では遺族が勝訴した。前者では原告が生命に対する権利の侵害を、国防省が戦闘行動免責を主張し、最高裁は事実審査のため高等法院に差戻した。イラク戦争・占領に参加し、現地で死亡あるいは負傷したイギリス兵士の遺族あるいは本人たちが、イギリス国防省を相手におこした損害賠償を求める訴訟の最高裁判決が、2013年6月19日に下された(Smith & Others vs The Ministry of Defence [2013]UKSC 41)。その多数意見の判断は、本案は詳細な事実関係にもとづいて判断される必要があり、高等法院へ差し戻すというものであった。高等法院での審理は現在も継続中である。この間、この最高裁判決をめぐる様々な議論が展開されている。第1は、ヨーロッパ人権条約およびその中の大半の人権保障条項を国内法化した1998年人権法の、特にその「生命に対する権利」の「戦場」での適用の可否に関するもの、第2は、コモンロー上の過失責任およびそれに関連する戦闘行動免責に関するものである。2015年に発表され、注目された論文の1つが、Clearing the Fog of law, by Richard Ekins, Jonathan Morgan, Tom Tugendhat(Policy Exchange)である。この中では、ヨーロッパ人権条約からの免脱および戦闘行動免責の行使が提案されている。そこには、イギリス軍の戦闘行動能力が訴訟を恐れる上官達によって低下してしまうことへの危機感がある。つまり、軍事的価値を市民的価値よりも重視する姿勢である。では、死亡・負傷した兵士立ちはどうなるのか?この著者たちは、潤沢な補償金等での対応を主張する。こうした法的・制度的対応をめぐる主張を収集・整理してきたのが、今年度の研究実績である。イラク戦争・占領に参加し、現地で死亡あるいは負傷したイギリス兵士の遺族あるいは本人たちが、イギリス国防省に損害賠償を求めた訴訟の最高裁判決が、2013年6月19日に下された。(Smith & Others vs The Ministry of Defenece [2013]UKSC 41)その多数意見は、本案は詳細な事実関係にもとづいて判断される必要があり、高等法院に差し戻すというものであった。それから約3年、高等法院の判断はまだ示されていない。その遅れの要因として、イラク戦争・占領全般を調査したthe UK's Iraq Inquiry(Chilcot Inquiry)の調査報告書の公表が遅れていることが関係している可能性もあるが、この報告書は今年の7月に公表されるとされており、高等法院の判決が待たれている。この間、議会・庶民院の国防委員会は、2016年4月に報告書“Beyond endurance?Military exercises and the duty of care "を発刊した。これは、イラク戦争・占領での国防省の兵士に対する安全配慮義務違反が上記の訴訟で問われていることに加え、訓練中の兵士の死亡事故等を問題とし、平時における安全配慮義務を厳しく問うものとなっている。このように、イギリス国防省は、戦時・占領下での安全配慮義務のみならず、平時おけるそれに関しても、従来の法的枠組の検討を求められている。こうした争点をめぐる議論を分析・整理していく中で、「軍事的価値(公共性)」と「市民的価値(公共性)」との鬩ぎ合いの一側面を検討中である。高等法院判決が、予想を超えて遅れている。そこで、議会・庶民院の国防委員会の報告書“Beyond endurance? Military exercises and the duty of care "をめぐる議論を整理していく中で、平時における兵士の「生命に対する権利」、軍隊の兵士に対する「安全配慮義務」を分析している。2016年9月、Warwick大学において、McEldowney教授(憲法学)とイギリス軍兵士に「生命に対する権利」の適用を認めたSmith事件最高裁判決を巡る評価について、意見交換をおこなった。教授とは従来から情報交換をおこなっており、前回の意見交換では、教授は国外のイギリス兵士に1998年人権法の適用を認めることに反対の意見であり、軍事法に服しているイギリス兵には1998年人権法の適用を認めるべきであると考えていた申請者と鋭く対立するという関係にあったが、今回も、この問題に関しては議論は平行のままであった。が、それに加えて、Chilcot Inquiry Reportに関する教授の意見を聞くことができた。帰国後も、この問題に関する情報提供を得ている。2017年3月、再びWarwick大学を訪問し、Andrew Williams教授(人権法)とイギリス軍と人権問題に関する意見交換をおこなった。特に、2016年9月の控訴院判決(Al-Saadoon v. Secretary of State for Defence)に関する情報は、この10年間ほどイギリス国防省・政府が敗訴を強いられてきた状況に変化が生じていることを示すものであり、ほぼ同時期から始まったイギリス議会における、海外で戦闘活動に従事するイギリス軍につきヨーロッパ人権条約から免脱させようとする議論とともに、大いに注目すべき展開であり、こうした情報を早めに入手できたことは研究の方向性を明確にする上で、非常に有益であった。
KAKENHI-PROJECT-26380056
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26380056
「生命に対する権利」を巡る「市民的価値」と「軍事的価値」との鬩ぎ合い
残念ながら、こうした動向を踏まえた研究の成果を2016年度内にまとめることはできなかったが、2017年度にはまとめて公表する作業・準備を進めている。イギリス軍兵士に「生命に対する権利」の適用を認めたSmith事件最高裁判決の後、それが差し戻された高等法院判決がまだ下されないことから、司法の最終判断が示されていない状況が続いている。「生命に対する権利」、戦闘行動免責および安全配慮義務などの1998年人権法、ヨーロッパ人権条約およびコモンロー上の争点が、詳細な事実認定をもとに判断されると期待されているが、もうしばらく待たなければならない。29年度は、今回の2つの研究課題のうち、ヨーロッパ人権条約2条「生命に対する権利」を当該国家の領域外にも適用していくという法解釈がイギリス司法においてどのような展開していくのかを探ることに重点を置くものとなった。この法解釈に関する2013年の最高裁判決(Catherine Smith事件)の差戻審である高等法院での審理に注目していたが、最終的には原告(死亡したイギリス兵士の遺族)に対し国防省が謝罪するという形で決着がついた。また、イギリス軍により虐待されたというイラク人からの訴えを審理した2016年9月の控訴院判決(Al-Saadoon v. Secretary of State for Defence)は原告敗訴となり、その主任弁護士の弁護士資格剥奪の影響もあり、上告されないままとなった。イギリス軍がその戦場・占領地から撤退してから約10年、イラク戦争・アフガン戦争を巡るイギリス国内裁判所での事件は、ほぼなくなった。他方で、この問題は、将来の海外でのイギリス軍の軍事行動に関しヨーロッパ人権条約から免脱(derogation)させようとする政府案を巡り、議会で議論されている。免脱に関しては、拙稿「軍隊の海外での作戦行動に関しヨーロッパ人権条約からの免脱を巡るイギリスにおける議論の検討」(津山工業高等専門学校紀要59号、2017年)においてその賛否の意見を紹介しているが、「生命に対する権利」を当該国家の領域外にも適用していくという法解釈が軍事行動を過度に制約するのではという危険性を認める意見が多い一方で、それを回避するために免脱という手段は必ずしも有効ではない、あるいは免脱そのものができないとする意見が出され、まだ方向性が見えてこない状況である。2003年イギリス軍はイラクを攻撃しそれに続き占領をおこなったが、その間多くの兵士が死傷し、またそれを上回るイラク市民が死傷した。死傷したイギリス兵の遺族は国防省に対し、また死傷したイラク市民の遺族はイギリス政府に対し訴訟をおこした。それらの訴えの法的根拠は、ヨーロッパ人権条約の生命に対する権利および1998年人権法であった。前者の判決が、Smith事件の最高裁判決であり、後者のそれがAl-Skeini事件のヨーロッパ人権裁判所判決であった。後者では遺族が勝訴した。
KAKENHI-PROJECT-26380056
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26380056
腹側内側手綱核の衝動性制御における役割の解明
自閉症スペクトラム症候群と関連があるとされる遺伝子cAMP-GEFII(CG2)の内側手綱核特異的ノックアウトマウスを作成し、その変異マウスの行動実験を行うことによりCG2の衝動性の制御における役割を明らかにする。また行動学的に自閉症スペクトラム症候群との関連の有無を明らかにする。その結果、このノックアウトマウスにおいて新奇環境における行動量の亢進、不安用行動の減少が観察された。しかしながら遅延時間に対する報酬価値の割引に関してはコントロール群と差異は観察されなかった。一方で社会行動では新奇マウスに対する探索行動の減少という自閉症様の表現型が観察された。衝動性制御の異常は多くの精神疾患で共通してみられる中間表現型であり、暴力や問題行動の一因になっている。さらに精神疾患の主な死因は自殺であり、これも衝動性制御の異常がが原因であると考えられる。これらを解決するために衝動性の制御の神経生物学的機構の理解は非常に重要であると考える。申請者らの研究により内側手綱核を遺伝学的に欠失させたマウスは様々な認知機能の異常を示すとも著しい衝動性の制御の異常が観察された。これらのことより申請者らは腹側内側手綱核に着目し、その衝動性制御における役割を解明しようと研究を行っている。腹側内側手綱核にウィルスを注入して化学的遺伝学手法(DREADD)あるいは光遺伝学手法を用いて急性に腹側内側手綱核の神経活動を抑制し、衝動性制御をはじめとする様々な行動にどのような変化があるのかを観察した。今後は内側手綱核にウィルスを注入し、内側手綱核の投射先である、脚間核及び縫線核の神経終末を抑制したとき認知機能あるいは衝動性の制御にどのような影響があるのかを検証する予定である。急性スライスにおけるパッチクランプ法による腹側内側手綱核の電気生理学的解析の確立。これらにより衝動性の高い動物で内側手綱核の電気生理学的特性がどのように変化しているのか調べることができるようになった。慢性的なストレス負荷動物モデルはうつ病様の行動を示すことが知られている。このストレス負荷動物の外側手綱核の神経活動が亢進していることが報告されている。しかしながらストレス負荷動物における内側手綱核の電気生理学的特性の変化などは知られていない。今後は母子分離ストレス負荷マウスにおいての衝動性制御の異常を行動学的に解析を行い、それらのマウスにおいてどのような電気生理学的特性の変化があるのかを検証していく。内側手綱核を急性に操作するためにAAVウィルスを注入する。その注入の条件検討に時間を要したが、最終的に最適な実験条件を得ることができた。現在は化学的遺伝学的手法による内側手綱核の神経活動の抑制したマウスで様々なの行動実験を行っている。今後は光遺伝学的手法を用いて経路選択的な神経回路の抑制を行い、その効果を衝動性制御をはじめとする認知機能に関して行動学的解析を行う。一方で、化学的遺伝学や光遺伝学の効果を検証するために急性スライスによるパッチクランプ法による電気生理学的測定を試みたところ、測定手法を確立することができた。このことにより化学的遺伝学や光遺伝学の効果を検証する。さらにまた遺伝学的(遺伝子ノックアウトマウスなど)、ストレス負荷モデル、薬剤投与モデルによって衝動性制御の異常を示す動物で内側手綱核の電気生理学的特性がどのよう変化するのか検証を行えるようになった。ストレス負荷モデル動物として衝動性制御の異常や情動行動の異常が報告されている母子分離ストレス負荷マウスを作製し、情動行動や活動量にコントロール群との間に有意な差が観察され、ひとつのストレス負荷マウスの作製を確立することができた。衝動性の制御に関する行動解析終了後に急性スライスによる電気生理学的解析の実施を予定している。この実験により内側手綱核の神経活動と衝動性制御の関係が明らかになると考える。衝動性制御の以上は統合失調症、大うつ病、注意欠陥多動性障害、摂食障害などをはじめとする精神疾患で共通してみられる中間表現型であり、暴力や問題行動の一因になっている。さらに精神疾患患者の主な死因は自殺であり、これも衝動性制御の異常が原因の一つであると考えられる。これら問題を解決するために衝動性制御の神経生物学的基盤の理解は非常に重要であると考える。申請者らの研究により内側手綱核を欠失させたマウスは様々な認知機能の異常を示すとともに著しい衝動性制御の異常が観察された。これらのことにより申請者らは腹側内側手綱核及びその主な投射先である脚間核に着目し、その衝動性制御における役割を解明しようと研究を行った。内側手綱核に強く発現しているcAMP-GEFII(CG2)という遺伝子に着目した。cAMP-GEFII(CG2)はPKAとは違ったcAMPの下流標的分子であり、内側手綱核に特に強く発現している。またこの遺伝子のアミノ酸置換を伴う変異が自閉症スペクトラムの患者から発見されたことにより、この遺伝子の機能異常と精神疾患との関連が示唆された。これらの知見をもとにCG2の内側手綱核特異的ノックアウトマウス(Hb-cKO)を作成し、内側手綱核のCG2が衝動性制御に関してどのような役割を果たしているか明らかにするために衝動性を測る行動実験を実施した。このHb-cKOマウスはOpen Fieldで活動量がコントロールに比べ亢進していた。また5選択反応時間試験におけるお手付き反応や遅延時間に対する報酬価値の減少関してはコントロールとの間に有意な差は見いだせなかった。
KAKENHI-PROJECT-15K18356
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腹側内側手綱核の衝動性制御における役割の解明
これらの実験結果より、内側手綱核のCG2は運動衝動性の制御に役割を果たしていることが示唆された。自閉症スペクトラム症候群と関連があるとされる遺伝子cAMP-GEFII(CG2)の内側手綱核特異的ノックアウトマウスを作成し、その変異マウスの行動実験を行うことによりCG2の衝動性の制御における役割を明らかにする。また行動学的に自閉症スペクトラム症候群との関連の有無を明らかにする。その結果、このノックアウトマウスにおいて新奇環境における行動量の亢進、不安用行動の減少が観察された。しかしながら遅延時間に対する報酬価値の割引に関してはコントロール群と差異は観察されなかった。一方で社会行動では新奇マウスに対する探索行動の減少という自閉症様の表現型が観察された。内側手綱核にウィルスを注入し、投射先である脚間核あるいは縫線核の神経終末の活動を光遺伝学的抑制した場合、行動あるいは衝動性制御にどのような影響があるのか、高架式十字迷路、行動量測定、5選択反応時間試験、T字迷路を用いた意思決定課題などを行う。衝動性制御の異常や不安行動の異常が報告されている母子分離ストレスを与えたマウスを作製し、衝動性を測定するために行動量測定、5選択反応時間試験、T字迷路を用いた意思決定課題を行いストレス負荷群にどのような衝動性制御の異常が観察されるかを確認する。さらにこれらのそれぞれのマウスに関して腹側内側手綱核の急性スライスにおける電気生理学的実験を行い、どのような電気生理学特性の差異がコントロール群とストレス負荷群の間にあるか検証を行う。その電気生理学特性と各種の行動の相関も検証する。また内側手綱核は不安などの情動行動の制御も行っていると考えられている。情動行動に関しても内側手綱核の神経活動との相関があるのかを検証を行いたいと考えている。さらに母子分離ストレスには性差があると報告されている。このストレス負荷群において電気生理学特性についても性差があるか検証を行う。ストレス負荷群において例えば神経活動の亢進または減弱が見られて場合、内側手綱核を光遺伝学的手法により神経活動を調整しコントロールレベルに戻してあげることによって衝動性制御の異常が回復するかを回復実験を行う。さらに分子生物学的機構の知見を得るため腹側手綱核特異的にCreの組換えがあるChat-CreマウスとCre依存的にYFPをマウスを掛け合わせ、その仔に母子分離ストレスを与え、そのごフローサイトメトリーで内側手綱核を回収し、ストレス負荷群とコントロール群で網羅的遺伝子発現解析行うことも可能である。神経科学
KAKENHI-PROJECT-15K18356
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肝細胞機能、肝線維化および肝壊死炎症に対する新たな定量的MRI診断法の開発
本年度は、T1ρ計算画像とT2計算画像を用いて、非侵襲的な肝細胞機能、肝線維化、肝炎症壊死の評価に関する有用性を検討した。方法は、肝腫瘍術前にMRIにてT1ρとT2マップを撮影し、術後に組織学的結果が得られた76名(男/女=49/27、平均年齢=74才)を対象とした。T1ρ計算画像はスピンロック時間(0,20,40,60ms)、T2計算画像はエコー時間(0,20,40,60ms)を用いて撮影。肝実質のT1ρ値とT2値は脈管や病変を除いた関心領域を3箇所設定し算出。肝障害度はMRI撮影日近傍の採血結果より評価したChild-Pugh分類(CP)を、壊死炎症(A)と線維化(F)は組織学的結果を使用。T1ρ値やT2値と、CP、AやFの関係をスペアマン順位相関係数にて評価。また、CP(CPACPC)、A(A0A2)、F(F0F4)の各グループ間において平均値をTukey-Kramer HSD testにて対比した。結論として、T1ρ値とT2値を用いて肝障害度、壊死炎症、線維化を評価できる可能性がある。その診断能はT1ρ値がT2値を上回ることが示唆されると考えた。仮説に合う結果が得られている実感はあるが、対象症例を更に増やした上で検討を行いたいとも考えている。しかし、その対象症例を増やすにも時間がかかっている。時間的な限界と対象を増やした上で検討し、得られる結果が変化するのかどうかも今後考慮しながら、計画を進めていく。対象症例を更に増やした上で検討を行いたいのだが、その対象症例を増やすにも時間がかかる。また、研究計画にて設定した期間内に成果を示すことも必要である。対象症例を今後も増やしつつ、結果に大きな変化がないと判断できた時点で、設定した目標を多く達成できるように計画を進める。MRIは、臓器の形態の評価、腫瘍や炎症などの病変検出、細胞レベルの変化など評価に応用可能である。肝臓においては、肝細胞特異性造影剤を用いると、動脈血流量や肝機能の評価も可能である。複数のMRI撮像法を用いることで、形態や構造変化、肝機能を多面的かつ総合的に評価して診断し、正診度の向上や異なる評価者間において再現性の高い診断法が可能となりえる。我々の目的は、肝機能や肝線維化、肝壊死炎症に関して、信頼性の高い診断法を確立することである。仮説に合う結果が得られている実感はあるが、対象症例が少ないために、臨床において利用可能な評価法とは言えない。また、T1ρ強調画像も十分な画質の改善が得られていない。撮像方法に問題があるのか、評価方法に問題があるのかなど、検討する予定である。本年度は、T1ρ計算画像とT2計算画像を用いて、非侵襲的な肝細胞機能、肝線維化、肝炎症壊死の評価に関する有用性を検討した。方法は、肝腫瘍術前にMRIにてT1ρとT2マップを撮影し、術後に組織学的結果が得られた76名(男/女=49/27、平均年齢=74才)を対象とした。T1ρ計算画像はスピンロック時間(0,20,40,60ms)、T2計算画像はエコー時間(0,20,40,60ms)を用いて撮影。肝実質のT1ρ値とT2値は脈管や病変を除いた関心領域を3箇所設定し算出。肝障害度はMRI撮影日近傍の採血結果より評価したChild-Pugh分類(CP)を、壊死炎症(A)と線維化(F)は組織学的結果を使用。T1ρ値やT2値と、CP、AやFの関係をスペアマン順位相関係数にて評価。また、CP(CPACPC)、A(A0A2)、F(F0F4)の各グループ間において平均値をTukey-Kramer HSD testにて対比した。結論として、T1ρ値とT2値を用いて肝障害度、壊死炎症、線維化を評価できる可能性がある。その診断能はT1ρ値がT2値を上回ることが示唆されると考えた。仮説に合う結果が得られている実感はあるが、対象症例を更に増やした上で検討を行いたいとも考えている。しかし、その対象症例を増やすにも時間がかかっている。時間的な限界と対象を増やした上で検討し、得られる結果が変化するのかどうかも今後考慮しながら、計画を進めていく。T1ρ値計算画像を用いた肝機能の検証は今後も継続する。T1ρ値計算画像のアーチファクト軽減、評価方法の確立を行っていきたい。また。Gd-EOB-DTPAを用いた、肝機能や肝線維化、肝壊死炎症に関して、信頼性の高い診断法を模索して行く。対象症例を更に増やした上で検討を行いたいのだが、その対象症例を増やすにも時間がかかる。また、研究計画にて設定した期間内に成果を示すことも必要である。対象症例を今後も増やしつつ、結果に大きな変化がないと判断できた時点で、設定した目標を多く達成できるように計画を進める。経費の節約に努めたため当初の執行予定額より支出額が削減したことや、物品の購入が遅れた為に次年度使用額が生じました。研究の進捗に合わせて、次年度で今年度分も執行致します。今年度は国際学会にて学会発表を行うことが不可能であった。
KAKENHI-PROJECT-17K10407
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肝細胞機能、肝線維化および肝壊死炎症に対する新たな定量的MRI診断法の開発
その為、次年度に再度国際学会へ抄録を投稿しており、学会発表を行う予定である。その為、学会発表の為の英語校正、論文作成、及び旅費が必要となる。
KAKENHI-PROJECT-17K10407
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シリコン・イオン注入した酸化膜を持つMOS構造による可視発光素子の研究
大規模集積回路(VLSI)の基本材料であるシリコン系材料で発光素子が可能になればVLSIと共存可能な表示素子や光デバイスへの幅広い応用が期待できる。本研究では、シリコン・イオン注入したゲート酸化膜を持つMOS構造による可視発光素子(以下、シリコン・イオン注入型MOS発光素子)に関するものである。イオン注入条件が電気的およびエレクトロルミネッセンス(EL)特性に与える影響を調べた。シリコン・イオン注入によって発光強度は50-70倍となり、C-V特性のヒステリシスも大きくなり、シリコン・イオン注入によってトラップ準位が生成されることが推定できる。ポリシリコンをゲート電極とした発光素子について、交流駆動によるEL発光特性を測定した。駆動周波数が大きく(100kHz)なると、発光強度は大きくなり、長波長成分が増加した。短波長領域解析のための透明電極の形成短波長領域でのEL測定のため、Au薄膜透明電極を形成した。イオン・ビーム方式のスパッタリングにより、膜厚が薄くても低抵抗で高透過率の薄膜の形成が可能となり、厚さ15nm Au薄膜において、抵抗率が約3μΩcmで、波長300nm以上の透過率が約40%の電極が得られた。上記の電極を用いて、短波長領域解析のためのシリコン・イオン注入型MOS発光素子をp型シリコン基板を用いて作製した。直流電圧を印加し、EL発光を確認した。Au透明電極を用いたことにより、従来のポリシリコン電極では困難であった、短波長領域の発光特性の観測が可能となり、青色の発光を確認した。いずれの条件でも、発光スペクトルは、ガウス分布を仮定してhν=1.2,1.6,1.9,2.4,2.8eVの5種類の中心波長に分離することができ、酸化膜中の発光中心と相関があると考えられ、発光機構モデルの提案を行った。大規模集積回路(VLSI)の基本材料であるシリコン系材料で発光素子が可能になればVLSIと共存可能な表示素子や光デバイスへの幅広い応用が期待できる。本研究では、シリコン・イオン注入したゲート酸化膜を持つMOS構造による可視発光素子(以下、シリコン・イオン注入型MOS発光素子)に関するものである。イオン注入条件が電気的およびエレクトロルミネッセンス(EL)特性に与える影響を調べた。シリコン・イオン注入によって発光強度は50-70倍となり、C-V特性のヒステリシスも大きくなり、シリコン・イオン注入によってトラップ準位が生成されることが推定できる。ポリシリコンをゲート電極とした発光素子について、交流駆動によるEL発光特性を測定した。駆動周波数が大きく(100kHz)なると、発光強度は大きくなり、長波長成分が増加した。短波長領域解析のための透明電極の形成短波長領域でのEL測定のため、Au薄膜透明電極を形成した。イオン・ビーム方式のスパッタリングにより、膜厚が薄くても低抵抗で高透過率の薄膜の形成が可能となり、厚さ15nm Au薄膜において、抵抗率が約3μΩcmで、波長300nm以上の透過率が約40%の電極が得られた。上記の電極を用いて、短波長領域解析のためのシリコン・イオン注入型MOS発光素子をp型シリコン基板を用いて作製した。直流電圧を印加し、EL発光を確認した。Au透明電極を用いたことにより、従来のポリシリコン電極では困難であった、短波長領域の発光特性の観測が可能となり、青色の発光を確認した。いずれの条件でも、発光スペクトルは、ガウス分布を仮定してhν=1.2,1.6,1.9,2.4,2.8eVの5種類の中心波長に分離することができ、酸化膜中の発光中心と相関があると考えられ、発光機構モデルの提案を行った。シリコン・イオン注入したゲート酸化膜を持つMOS構造による可視発光素子(以下、シリコン・イオン注入型MOS発光素子)に関する以下の研究を行った。1.シリコン・イオン注入型MOS発光素子の電気的特性、EL特性の解析可視光領域エレクトロルミネッセンス(EL)を観測し、イオン注入条件が電気的およびEL特性に与える影響を調べた。イオン注入エネルギー25keV、ドーズ量3x10^<16>cm^<-2>)において、最も大きな発光強度が得られた。ゲート電流はドーズ量とともに増加し、C-V特性のヒステリシスも大きくなり、シリコン・イオン注入によってトラップ準位が生成されることが推定できる。ポリシリコンをゲート電極とした発光素子でについて、交流駆動によるEL発光特性を測定した。駆動周波数が大きく(100kHz)なると、長波長成分が増加し発光色は赤味を帯びた。2.短波長領域解析のための透明電極の形成短波長領域でのEL測定のため、Au薄膜透明電極を形成した。デュアル・イオン・ビーム方式のスパッタリングにより、膜厚が薄くても低抵抗で高透過率の薄膜の形成が可能となり、厚さ15mn Au薄膜において、抵抗率が約3μΩcmで、波長300nm以上の透過率が約40%の電極が得られた。3.上記2.の電極を用いて、短波長領域解析のためのシリコン・イオン注入型MOS発光素子をp型シリコン基板を用いて作製した。直流電圧を印加し、EL発光を確認した。Au透明電極を用いたことにより、従来のポリシリコン電極では困難であった、短波長領域の発光特性の観測が可能となり、青色の発光を確認した。EL発光には、hν=1.25,1.6,1.9,2.4,2.8eVの波長成分が含まれる。
KAKENHI-PROJECT-15560280
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15560280
シリコン・イオン注入した酸化膜を持つMOS構造による可視発光素子の研究
大規模集積回路(VLSI)の基本材料であるシリコンは、間接遷移形半導体でバンドギャップも小さく発光素子には適さないとされてきた。しかし、シリコン系材料で発光素子が可能になればVLSIと共存可能な表示素子や光デバイスへの幅広い応用が期待できる。本研究では、シリコン・イオン注入したゲート酸化膜を持つMOS構造による可視発光素子(以下、シリコン・イオン注入型MOS発光素子)に関するものである。シリコンウエハ上に厚さ50nmの酸化膜を作製し、シリコン・イオン注入によって過剰なシリコンを酸化膜中に導入する。従来の研究成果を基に、3、5、10-10^<16>cm^<-2>とドーズ量を変化させた試料とシリコン・イオン注入していない試料とを作製した。さらに上部電極を形成しMOS構造とする。上部電極には、短波長領域(波長300500nm)解析のためにAu透明電極をイオン・ビーム・スパッタリングによって作製した。シリコン基板の導電形をn形およびp形に変化させた結果、いずれも、しきい値電圧のヒステリシス現象を示す電流-電圧特性となり、透明電極側から電子を注入する方向の電圧印加が発光現象に効果的であることを明らかにした。発光特性解析システムを構築し、EL分光特性を測定した結果、シリコン・イオンのドーズ量が、3×10^<16>cm^<-2>の試料で450nmの波長成分が最も大きくなることが分かった。いずれの条件でも、発光スペクトルは、ガウス分布を仮定して5種類の中心波長に分離することができ、酸化膜中の発光中心と相関があると考えられる。Au以外の透明電極材料に関しては、短波長領域の透過率と導電率を両立させるため、ITOを中心に検討した。
KAKENHI-PROJECT-15560280
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原田病の分子免疫学的検索
原田病患者前房水あるいは脳脊髄液から樹立したT cell clone (TCC)の解析を行った。これまでに10名の原田病患者から採取した前房水あるいは脳脊髄液をHSVc488でtransformし、合計12名からTCCを得ることができた。前房水からは5名、697クローン、脳脊髄液からは12名、1452クローンが樹立された。これらのクローンの内、1名の前房水から樹立した、21クローン、脳脊髄液から樹立した9クローンをランダムに選び出し、解析した。その結果前房水ではT cell clone (TCC)全体で10/21,CD4陽性T細胞に限れば9/16もの多数のクローンがtyrrosinase (TYR)あるいはtyrosinase related protein 1 (TRP1)に反応性を示した。脳脊髄液ではT cell clone全体で2/9,CD4陽性T細胞に限れば2/6がTYRあるいはTRP1に反応性を示した。TCCの細胞表面抗原の解析では全てのクローンがCD3陽性でT細胞であることが確認され、CD4/CD8は16/5であった。これらのTCCのサイトカイン産生能の解析ではTYRあるいはTRP1に反応性を持っているクローンはIL-2とINF-γの産生がみられ、Th1系の細胞が多数を占めると考えられた。このことから原田病の病態形成にはtyrosinase family proteinに反応性を持っているTh1系細胞が深く関与していることが示された。原田病患者前房水あるいは脳脊髄液から樹立したT cell clone (TCC)の解析を行った。これまでに10名の原田病患者から採取した前房水あるいは脳脊髄液をHSVc488でtransformし、合計12名からTCCを得ることができた。前房水からは5名、697クローン、脳脊髄液からは12名、1452クローンが樹立された。これらのクローンの内、1名の前房水から樹立した、21クローン、脳脊髄液から樹立した9クローンをランダムに選び出し、解析した。その結果前房水ではT cell clone (TCC)全体で10/21,CD4陽性T細胞に限れば9/16もの多数のクローンがtyrrosinase (TYR)あるいはtyrosinase related protein 1 (TRP1)に反応性を示した。脳脊髄液ではT cell clone全体で2/9,CD4陽性T細胞に限れば2/6がTYRあるいはTRP1に反応性を示した。TCCの細胞表面抗原の解析では全てのクローンがCD3陽性でT細胞であることが確認され、CD4/CD8は16/5であった。これらのTCCのサイトカイン産生能の解析ではTYRあるいはTRP1に反応性を持っているクローンはIL-2とINF-γの産生がみられ、Th1系の細胞が多数を占めると考えられた。このことから原田病の病態形成にはtyrosinase family proteinに反応性を持っているTh1系細胞が深く関与していることが示された。原田病患者前房水・脳脊髄液からT cell cloneを樹立し、解析することを目的とした。私達はこの1年間で3名の原田病患者から採取した前房水あるいは脳脊髄液をHSVc488でtransformし、合計7名からTCCを得ることができた。しかし目標の10例以上、それぞれ50クローン以上のTCCの樹立にまでは至っていない。現在も原田病新鮮例からの樹立を継続しているが、T cellを採取できる患者さんの数は限られており、今後1年以上は必要と思われる。これまでに樹立したTCCについては特異性等をtyrosinase family proteinを抗原としたlymphocyte proliferation assay等にて検討した。Tyrosinasefamily proteinに特異的なクローンについてはその表面マーカーを同定するとともにサイトカインの産生能についても測定した。上記のtyrosinase family proteinに特異的なクローンの反応する部分を更に詳細に決定するために、現在TCCを増殖させている途中である。方法は上記クローンについてtyrosinaseではTYR1からTYR25までの25の、TRP1ではTRP1-1からTRP1-22までの22のpeptideに対するlymphocyte proliferation assayを行う。陽性反応のみられたpeptideについては11残基のpeptideを合成し、同様に陽性反応のみられるpeptideを同定し、それぞれのTCCに特異的なサイトを決定する。原田病患者前房水あるいは脳脊髄液から樹立したT cell clone(TCC)の解析を行った。これまでに10名の原田病患者から採取した前房水あるいは脳脊髄液をHSVc488でtransformし、合計12名からTCCを得ることができた。前房水からは5名、697クローン、脳脊髄液からは12名、1452クローンが樹立された。これらのクローンの内、1名の前房水から樹立した、21クローン、脳脊髄液から樹立した9クローンをランダムに選び出し、解析した。その結果前房水ではT cell clone(TCC)全体で10/21,CD4陽性T細胞に限れば9/16もの多数のクローンがtyrrosinase(TYR)あるいはtyrosinase related protein 1(TRP1)に反応性を示した。脳脊髄液ではT cell clone全体で2/9,CD4陽性T細胞に限れば2/6がTYRあるいはTRP1に反応性を示した。TCCの細胞表面抗原の解析では全てのクローンがCD3陽性でT細胞であることが確認され、CD4/CD8は16/5であった。
KAKENHI-PROJECT-14571655
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原田病の分子免疫学的検索
これらのTCCのサイトカイン産生能の解析ではTYRあるいはTRP1に反応性を持っているクローンはIL-2とINF-γの産生がみられ、Th1系の細胞が多数をを占めると考えられた。このことから原田病の病態形成にはtyrosinase family proteinに反応性を持っているTh1系細胞が深く関与していることが示された。
KAKENHI-PROJECT-14571655
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微分方程式の幾何学的研究
本年度特に国成果を挙げた研究は「多面体の組み合せ論,有限鏡映群の不変式論と偏微分方程式系」に関するものである。これに関しては、先ず1962年に応用数学者FriedmanとLittmanによって提出された、「多面体に関して平均値の性質を満たす関数(多面体調和関数)全体は有限次元線型空間をなすか?」という未解決問題を解決した。これは従来のFourier解析的手法と全く異なった,多面体の幾何と組み合せ論にホロノミックな偏微分方程式系の理論を組み合せる新しい手法に基づく。この結果は雑誌Geometryに掲載が決まっている。さらに高い対称性を持つ多面体に関する多面体調和関数全体を決定するために,有限鏡映群の不変式と不変偏微分方程式系について考察を進めた。そして一連の新しい不変式環の基底を発見した。この結果を用いて,一般次元での凸正多面体の大部分に対して,対応する多面体調和関数の空間を具体的に決定することができた。他の研究主題に関しては,差分方程式の漸近解析とコホモロジー論,分岐理論の逆問題,多変数超幾何関数に付随する捩れコホモロジー論について研究を行い,成果を論文にまとめた。差分方程式の研究については,Gevreyコホモロジー群という新しい概念を導入し、研究が端緒についたばかりである。合流型超幾何関数への応用を含め,これからの大いなる発展を期していかねばならない。本年度特に国成果を挙げた研究は「多面体の組み合せ論,有限鏡映群の不変式論と偏微分方程式系」に関するものである。これに関しては、先ず1962年に応用数学者FriedmanとLittmanによって提出された、「多面体に関して平均値の性質を満たす関数(多面体調和関数)全体は有限次元線型空間をなすか?」という未解決問題を解決した。これは従来のFourier解析的手法と全く異なった,多面体の幾何と組み合せ論にホロノミックな偏微分方程式系の理論を組み合せる新しい手法に基づく。この結果は雑誌Geometryに掲載が決まっている。さらに高い対称性を持つ多面体に関する多面体調和関数全体を決定するために,有限鏡映群の不変式と不変偏微分方程式系について考察を進めた。そして一連の新しい不変式環の基底を発見した。この結果を用いて,一般次元での凸正多面体の大部分に対して,対応する多面体調和関数の空間を具体的に決定することができた。他の研究主題に関しては,差分方程式の漸近解析とコホモロジー論,分岐理論の逆問題,多変数超幾何関数に付随する捩れコホモロジー論について研究を行い,成果を論文にまとめた。差分方程式の研究については,Gevreyコホモロジー群という新しい概念を導入し、研究が端緒についたばかりである。合流型超幾何関数への応用を含め,これからの大いなる発展を期していかねばならない。
KAKENHI-PROJECT-08640172
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08640172
網羅的遺伝子発現解析を用いたバクテリアの増殖再開メカニズムの解明
バクテリアが増殖停止から増殖再開に至るメカニズムを解明することを目的として、様々な生育状態にある細胞を使ったmicroarray解析を進めた。研究には大腸菌をモデル生物として使用した。本研究の結果、増殖再開の初期に多くの遺伝子が発現していること、栄養環境の違いによって増殖停止期の適応状態が異なり、増殖再開期の遺伝子発現プロファイルも互いに違っていること、などが明らかとなった。バクテリアが増殖停止から増殖再開に至るメカニズムを解明することを目的として、様々な生育状態にある細胞を使ったmicroarray解析を進めた。研究には大腸菌をモデル生物として使用した。本研究の結果、増殖再開の初期に多くの遺伝子が発現していること、栄養環境の違いによって増殖停止期の適応状態が異なり、増殖再開期の遺伝子発現プロファイルも互いに違っていること、などが明らかとなった。本研究は、大腸菌をバクテリアのモデル生物として用い、増殖再開時期の様々な細胞内機能構造の変化を遺伝子発現の観点から追うことで、増殖再開に関わる生命システムの構築原理と動作機構を解明することを主たる目的としている。この達成に向けて、平成20年度前半は、研究実施計画に従い定常期、増殖再開初期、増殖中期、それぞれの細胞からRNAを抽出してmicroarray解析を行い、増殖再開初期に特異的に発現する遺伝子群のスクリーニングをおこなった。その結果、複数の遺伝子が候補として挙げられるデータを得た。しかしこれらの遺伝子が別の時期、すなわち増殖期から定常期までのどこかで発現していた可能性が残された。そこで、平成20年度後半からは研究内容を発展させ、大腸菌の生活環全体を対象としてmicroarray解析を進めた。年度末までに、増殖期、定常期初・中・後期、増殖再開初期、といった生活環の全課程の大腸菌をサンプルとしてRNAを抽出し、microarray解析の結果を得ることに成功している。しかし、対象とする細胞状態が多様になったため、クラスタ解析に適した品質のデータが得られていない。今後はこの問題を解決してクラスタ解析を進めることで、時期特異的に発現する遺伝子群を把握することが課題である。それぞれの機能に関しては、増殖再開初期特異的遺伝子群を抽出した後、各遺伝子破壊株の表現型観察やプロテオーム解析によって解明していく予定である。本研究はバクテリアが増殖停止から増殖再開に至るメカニズムを解明することを目的とし、大腸菌をモデル生物として、主に遺伝子発現の観点から、様々な生育状態にある細胞を使ったmicroarray解析を進めている。平成21年度前半までは、当初の計画通り増殖停止期と増殖再開期時期に注目しつつ、対象とする生育時期を広げ、生活環全体を通して網羅的遺伝子発現解析を進めた。その結果、増殖再開の初期に発現する遺伝子群の存在が明らかとなった。しかし、バクテリアの増殖に必要な栄養素は一つではなく、それぞれによって増殖の停止と再開のメカニズムは異なっていることが予想された。そこで平成21年度後半からは、含まれる栄養素をコントロールできる最少培地を用い、窒素(N)、リン酸(P)、グルコース(C)を欠乏させた場合の増殖停止期と、再供給したときの増殖再開期の細胞について、遺伝子発現のプロファイルを調べ、各栄養素ごとに比較する研究を進めている。これまでに、栄養素の違いによって増殖停止期の細胞の寿命や生理的状態は違っており、飢餓環境への適応がそれぞれ異なっていることが明らかとなった。また栄養供給後の遺伝子発現プロファイルも互いに違っており、増殖再開メカニズムも異なっていることが示唆されている。今後は特徴的な発現パターンを示す遺伝子を探索し、遺伝子破壊株の表現型観察やプロテオーム解析、蛍光融合タンパク質による細胞内局在の観察などから、その機能解析を進めていく予定である。バクテリアの生育は、栄養環境の悪化に伴って、対数増殖期から定常期へと移行する。この間、細胞は生理的、構造的に様々な変化を経て栄養枯渇環境に適応する。一方、定常期のバクテリアは生育環境が改善すると増殖を再開するが、実際の増殖開始までには、lag phaseと呼ばれる増殖準備期を必要とする。我々のこれまでの研究から、ゲノムDNAの複製に必要と考えられる時間を大きく超えて、長時間のlag phaseを要する場合があることが解ってきた。これは増殖停止に至る過程で、増殖に関わる機能構造の一部が失われ、増殖再開の過程でこれらが再構築を必要としていることを示している。では、定常期では何が失われ、lag phaseでは何がどのような順序で発現すると、増殖能が再度獲得されるのだろうか。この解明を目的として、本年度は、多様な栄養条件下における大腸菌の生育とマイクロアレイを用いた網羅的転写産物解析を行った。その結果、枯渇する栄養源が異なると定常期の生存率やlag Phaseの長さに大きな違いが見られること、lag Phaseが長くなる条件ではリボソームの分解が進み、寿命が短くなることを確認した。このことにより、栄養環境の悪化による増殖停止の状態には、リボソームを温存して長寿命化する適応と、リボソームを積極的に分解して短寿命化しながらも生命維持に努める適応があり、増殖再開のメカニズムも多様であることが明らかとなった。このようなリボソームの分解に至るシグナルや、それ以外の細胞内機能構造の変化は、未だ不明である。今後バクテリアの環境応答の解析をさらに進めることで、増殖再開のメカニズムを解明していきたい。
KAKENHI-PROJECT-20570006
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病態時のリンパ管・リンパ組織の可塑性を制御する生理活性脂質の解析と治療への応用
慢性増殖性炎症時の肉芽生成に伴って認められるリンパ管新生は、cyclooxygenase (COX)-2由来のprostaglandin (PG)で増強することが判明した。多くの腫瘍で転移前段階(premetastatic phase)において何らかの分子機構により、特定の器官により転移しやすい傾向があることが知られている。肺がんリンパ節転移モデルにおいて、がんのリンパ節転移に先立ってCOX-2由来のPGがリンパ組織の可塑性を制御し、niche形成に役割を持っていることが判明した。2次性リンパ浮腫をミミックするモデルにおいて、COX-2由来のPGがリンパ管新生を増強していることが判明した。増殖性の炎症をミミックするマトリゲル皮下接種モデルを作成し、増殖性炎症時のリンパ管新生を検討した。マトリゲルをマウスの皮下に接種すると、ゲル周囲では肉芽組織形成が認められ、マトリゲル周囲に集積した細胞は、COX-2やその下流でPGE2を合成する最終段階を担う酵素であるmPGES-1を発現していた。リンパ管内皮マーカーであるVEGFR-3遺伝子発現量をゲルで調べると、FGF-2刺激で発現量が増大し、COX-2阻害薬であるcelecoxibの連日投与により、VEGFR-3発現量は用量依存的に抑制された。免疫染色像でも、celecoxibの効果は確認出来た。このモデルのリンパ管新生はCOX-2、mPGES-1由来のPGE2が重要であることが推定された。4種のEPノックアウトマウスを用い検討し、EP3、EP4がリンパ管新生が増強に重要であることが確認できた。また、LPSを間欠的に腹腔内に投与して腹膜炎を惹起する別のモデルでは、COX-2依存的に横隔膜腹腔側にリンパ管が新生することが明らかに出来た。野生型マウスにおけるLPS誘発腹膜炎に伴うリンパ管新生は、選択的COX-2阻害薬のセレコキシブ連日投与で抑制され、さらにCOX-2の下流でPGE2産生に関与する誘導型PGE合成酵素のmPGES-1ノックアウトマウスでも、リンパ管新生は野生型に比べ有意に抑制された。リンパ管新生部位を詳細に見ると、COX-2及びCD11b陽性細胞、VEGF-C/Dの遺伝子発現の増加も認めた。LPS誘発の腹膜炎時の腹腔からのリンパ流(腹水流出)を腹腔内にFITC-dextran、indian inkを投与して評価すると、COX-2阻害薬投与時には腹腔から排泄される腹水の速度は有意に抑制された。以上より、腹腔からの腹水の排泄に、リンパ管新生が関与し、アラキドン酸代謝物により、制御されていることが明らかになった。がんのリンパ節転移は重要な予後決定因子であり、リンパ管はがんの進展に関わる重要なルートの一つである。リンパ節転移に関してはその分子メカニズムの解明や治療標的の特定が遅れている。多くの腫瘍細胞が転移前段階(premetastatic phase)において何らかの分子機構により、特定の器官により転移しやすい傾向があることが広く知られており、この転移を助長する状況(premetastatic niche)を形成することで転移を促進することが血行性転移の過程で報告されている。しかし、リンパ行性転移でのリンパ節におけるpremetastatic nicheの形成の有無、さらに転移メカニズムについてはまだ明らかにされていない。肺がんの所属リンパ節転移モデルを作成し、肺がんリンパ節転移におけるpremetastatic nicheの形成の有無を検討し、niche形成におけるCOXおよびPGの役割を解明した。原発巣の増殖に伴い、所属リンパ節でごく早期からCOX-2が誘導され、COX-2依存性に産生されたPGE2がEP3刺激することによりケモカインであるstromal cell derived factor (SDF)-1の発現増大がsubcapsular regionで生じSDF-1受容体を高発現する肺がん細胞をトラップすることでpremetastatic nicheを形成すること、さらに、COX-2陽性のSDF-1産生細胞は樹状細胞であり、EP3依存性にTGF-βを産生することでregulatory Tcell (Tregs)を動員することによって腫瘍免疫を抑制して、腫瘍転移を増強させる可能性を示すことが出来た。内因性のPGがpremetastatic niche形成の増強を介して、がんのセンチネルリンパ節転移を増強していることが明らかに出来た。COX-2阻害やEP3シグナルを遮断することが、がんのリンパ節転移を抑制する標的になることが示唆された。所属リンパ節における転移niche形成のデーターが得られ、新規リンパ行性転移を制御する治療標的として極めて興味深い成果と考えられる。マウス横隔膜での炎症誘発性リンパ管新生における生理活性脂質の役割を解析した。マウス腹腔内に大腸菌由来のLPSを間歇的に投与すると、横隔膜ホールマウント標本において、投与後2週間でLyve-1陽性のハシゴ状の新生リンパ管が認められた。COX-2阻害薬のセレコキシブを連日投与(100mg/kg/day)すると、同リンパ管新生が強く抑制された。誘導型PGE合成酵素であるmPGES-1のノックアウトマウスでも有意な横隔膜上のリンパ管新生の抑制が認められ、PGEの関与が明らかにできた。意外なことに, PGE以外にも、thromboxaneの関与が判明した。すなわち、thromboxaneの受容体であるTPをsystemicに消失しているTP受容体ノックアウトマウスでは、野生型に比べ、有意な横隔膜上のLPS誘導リンパ管新生の抑制が認められた。
KAKENHI-PROJECT-26293055
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病態時のリンパ管・リンパ組織の可塑性を制御する生理活性脂質の解析と治療への応用
TPの発現を調べると、LPS投与後1日目頃から横隔膜上で有意な増加が認められ、それはthromboxane合成酵素のTXSの誘導増大を伴っていた。横隔膜上でリンパ管新生誘導因子のVEGFアイソフォームVEGF-CがLPS投与に伴って発現が増加した。その発現は、TP受容体ノックアウトマウスでは、野生型に比べ、有意な抑制が認められた。横隔膜組織でのVEGF-C陽性細胞はCD4陽性のTリンパ球とCD11b陽性のマクロファージであった。野生型のLPS投与マウスの腹腔から採取したTリンパ球とマクロファージをin vitroで安定化thromboxaneアナログで刺激すると、両細胞でVEGF-Cの発現量の増大が認められた。細胞特異的なTP受容体のノックアウトを行うために、TP floxマウスの作成を始め、ほぼ完成に近い状況である。今後、Creマウスとの交配、phenotype解析のために、一部経費を平成29年度まで使うことにした。意外な生理活性脂質の関与を証明でき、同受容体Floxマウスの作成がほぼ完成しており、今後、細胞特異的なノックアウトの作成、phenotype解析を行う予定である。極めてインパクトのある報告になると思われる。腫瘍増殖に伴って形成されるストローマ組織において、PGが形成増強作用を発揮していることを報告している。多くのケモカイン系とその受容体の評価を行ったところ、中でもSDF-1がストローマの主要構成骨髄細胞の動員に役割を持つことが判明した。subcapsular領域におけるケモカイン系の発現を調べると、確かにSDF-1の発現が腫瘍接種に伴って、ごく早期から高まってきていた。COX-2および内因性PGの関与について検討すると、PG receptor内でEP3が最も高発現を呈し、マウスにcelecoxib投与した群においてvehicle群と比較し、リンパ節内subcapsular sinusにおける前転移状態(pre-metastatic phase)でのSDF-1発現の低下が確認できた。vehicle群において、リンパ節転移成立後のリンパ節のsubcapsular sinusにおけるSDF-1陽性部分は腫瘍細胞と一致しており、この部位が転移の温床となることが確認され、celecoxib群では有意に抑制されていることがわかった。DCsマーカーであるCD11c・IDOとCOX-2・SDF-1を用いて免疫染色を用いて解析すると、DCsはCOX-2およびSDF-1陽性であり、vehicle群に比べるとcelecoxib、SDF-1 antagonist(AMD3100)、CXCR4中和抗体処置群のリンパ節内subcapsular sinusでの発現量が有意に低下していた。以上から、腫瘍接種という刺激を受け、premetastatic siteに遊走したDCsがSDF-1を産生し、premetastatic nicheを形成することが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-26293055
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細胞、組織、そして個体におけるプロトン・サーキットの研究
哺乳動物は、多種の高度に分化した細胞により構築されている。これらの細胞は形態・機能がそれぞれ特殊に分化し、その細胞に託された機能を協調して遂行することによって、高等生物が示す高次の個体機能を実現している。エンドソーム・リソソーム系のオルガネラは、これらの分化形質の発現に直接的に関与する。ゴルジ装置,エンドソーム,リソソームあるいは液胞などのエンドソーム・リソソーム系オルガネラは、段階的により低い内腔のpHを形成・維持する。しかしながら、この『酸性オルガネラのpH感知・制御メカニズム』に関しては、未だ不明である。研究代表者がハーバード大学医学部との共同研究で、V-ATPaseのサブユニットが低分子GTPase Arf6のグアニンヌクレオチド交換因子(ARNO)とpH依存的に結合を示すことを見いだした。今年度は、色素細胞や内分泌系組織におけるV-ATPaseの局在と機能を解析し、V-ATPaseが貯留小胞やエンドソームなどを含むオルガネラの内部の酸性pH-senserとして機能することを強く示唆する結果を得た。さらに、V-ATPaseサブユニット・イソフォームa3とpH感受性型緑色蛍光タンパク質(GFP)との融合タンパクのノックイン・マウスを用い、オルガネラ膜輸送および酸性pHをGFPのみならず、個体レベルで酸性コンパートメントを可視化し、プロトンの動態を追跡する系を構築した哺乳動物は、多種の高度に分化した細胞により構築されている。これらの細胞は形態・機能がそれぞれ特殊に分化し、その細胞に託された機能を協調して遂行することによって、高等生物が示す高次の個体機能を実現している。エンドソーム・リソソーム系のオルガネラは、これらの分化形質の発現に直接的に関与する。ゴルジ装置,エンドソーム,リソソームあるいは液胞などのエンドソーム・リソソーム系オルガネラは、段階的により低い内腔のpHを形成・維持する。しかしながら、この『酸性オルガネラのpH感知・制御メカニズム』に関しては、未だ不明である。研究代表者がハーバード大学医学部との共同研究で、V-ATPaseのサブユニットが低分子GTPase Arf6のグアニンヌクレオチド交換因子(ARNO)とpH依存的に結合を示すことを見いだした。今年度は、色素細胞や内分泌系組織におけるV-ATPaseの局在と機能を解析し、V-ATPaseが貯留小胞やエンドソームなどを含むオルガネラの内部の酸性pH-senserとして機能することを強く示唆する結果を得た。さらに、V-ATPaseサブユニット・イソフォームa3とpH感受性型緑色蛍光タンパク質(GFP)との融合タンパクのノックイン・マウスを用い、オルガネラ膜輸送および酸性pHをGFPのみならず、個体レベルで酸性コンパートメントを可視化し、プロトンの動態を追跡する系を構築した哺乳動物は、多種の高度に分化した細胞により構築されている。これらの細胞は形態・機能がそれぞれ特殊に分化し、その細胞に託された機能を協調して遂行することによって、高等生物が示す高次の個体機能を実現している。エンドソーム・リソソーム系のオルガネラは、これらの分化形質の発現に直接的に関与する。ゴルジ装置,エンドソーム,リソソームあるいは液胞などのエンドソーム・リソソーム系オルガネラは、段階的により低い内腔のpHを形成・維持する。しかしながら、この『酸性オルガネラのpH感知・制御メカニズム』に関しては、未だ不明である。研究代表者がハーバード大学医学部との共同研究で、V-ATPaseのサブユニットが低分子GTPase Arf6のグアニンヌクレオチド交換因子(ARNO)とpH依存的に結合を示すことを見いだした。V-ATPaseがタンパク質分解経路に制御的な役割を持つことを明らかにした。さらに、V-ATPase酵素自身が貯留小胞やエンドソームなどを含むオルガネラの内部の酸性pH-senserとして機能することを強く示唆する結果を得た。これは、酸性pHと膜輸送との関連を解明する上できわめて重要な研究結果といえる。さらに、V-ATPaseサブユニット・イソフォームa3とpH感受性型緑色蛍光タンパク質(GFP)との融合タンパクのノックイン・マウスの作出に成功した。オルガネラ膜輸送および酸性pHをGFPのみならず、個体レベルで酸性コンパートメントを可視化し、プロトンの動態を追跡する系を構築した。哺乳動物は、多種の高度に分化した細胞により構築されている。これらの細胞は形態・機能がそれぞれ特殊に分化し、その細胞に託された機能を協調して遂行することによって、高等生物が示す高次の個体機能を実現している。エンドソーム・リソソーム系のオルガネラは、これらの分化形質の発現に直接的に関与する。ゴルジ装置,エンドソーム,リソソームあるいは液胞などのエンドソトム・リソソーム系オルガネラは、段階的により低い内腔のpHを形成・維持する。しかしながら、こゐ『酸性オルガネラのpH感知・制御メカニズム』に関しては、未だ不明である。研究代表者がハーバード大学医学部との共同研究で、V-ATPaseのサブユニットが低分子GTPaseAr6のグアニンヌクレオチド交換因子(ARNO)とpH依存的に結合を示すことを見いだした。今年度は、色素細胞や内分泌系組織におけるV-ATPaseの局在と機能を解析し、V-ATPaseが貯留小胞やエンドソームなどを含むオルガネラの内部の酸性pH-senserとして機能することを強く示唆する結果を得た。さらに、V-ATPaseサブユニット・イソフォームa3とpH
KAKENHI-PROJECT-18570140
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18570140
細胞、組織、そして個体におけるプロトン・サーキットの研究
感受性型緑色蛍光タンパク質(GFP)との融合タンパクのノックイン・マウスを用い、オルガネラ膜輸送および酸性pHをGFPのみならず、個体レベルで酸性コンパートメントを可視化し、プロトンの動態を追跡する系を構築した。
KAKENHI-PROJECT-18570140
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ヒト遺伝子病(ウィルソン病)の多様性モデルの作製と解析
LEC ratはウイルシン病の動物モデルとして知られており、ヒトのATP7B遺伝子に相同なラットAtp7b遺伝子の変異により、銅輸送P-type ATPaseが欠損している。この結果、ヒトウイルソン病の肝型と類似の臨床症状である劇症肝炎、胆管線維症および肝癌を発症する。今回我々は、ヒトのATP7B遺伝子の生体内での機能を確かめ、この遺伝子をLECラットに導入することにより肝臓疾患が救助することができるか否かを調べることを目的とした。導入遺伝子はヒトATP7BcDNAにCXNプロモータを結合させ、LECラット受精卵の前核に注入した。作製されたトランスジェニックラットの導入遺伝子のPR-PCR解析により肝臓及び他の臓器における発現が示された。また、タンパクの発現はノーザンプロット解析により同様に肝臓及び他の臓器に見られた。トランスジェニックラットの血液中にホロセルロプラスミン合成が回復し、胆汁中に分泌される銅含量が増加することにより、肝臓と腎臓の銅含量が減少した。そしてトランスジェニックラットは血液中のGOTおよびGPT活性が大幅に減少し、劇症肝炎および胆管線維症の発現が抑制された。生存率もLECラットの26.3%から97%へと飛躍的に高まった。さらに、興味深いことは肝臓には鉄の蓄積が激減していることである。これらの知見はヒトATP7B遺伝子の産生物がラットの生体内でも銅がセルロナラスミンに結合して細胞間銅輸送を行うことができること、さらに胆汁による銅の排泄経路が機能することを示した。そして、ヒトATP7B遺伝子がLECラットにおいても機能し、ウィルソン病からの回復を示した。加えて、鉄は銅との共同作用でウィルソン病の肝臓疾患に必須の役割を果たしている事が示唆された。この研究におけるラット生体内でのヒトATP7B遺伝子の発現と機能の発現は、ウィルソン病の遺伝子治療の可能性に重要な証拠を与えている。LEC ratはウイルシン病の動物モデルとして知られており、ヒトのATP7B遺伝子に相同なラットAtp7b遺伝子の変異により、銅輸送P-type ATPaseが欠損している。この結果、ヒトウイルソン病の肝型と類似の臨床症状である劇症肝炎、胆管線維症および肝癌を発症する。今回我々は、ヒトのATP7B遺伝子の生体内での機能を確かめ、この遺伝子をLECラットに導入することにより肝臓疾患が救助することができるか否かを調べることを目的とした。導入遺伝子はヒトATP7BcDNAにCXNプロモータを結合させ、LECラット受精卵の前核に注入した。作製されたトランスジェニックラットの導入遺伝子のPR-PCR解析により肝臓及び他の臓器における発現が示された。また、タンパクの発現はノーザンプロット解析により同様に肝臓及び他の臓器に見られた。トランスジェニックラットの血液中にホロセルロプラスミン合成が回復し、胆汁中に分泌される銅含量が増加することにより、肝臓と腎臓の銅含量が減少した。そしてトランスジェニックラットは血液中のGOTおよびGPT活性が大幅に減少し、劇症肝炎および胆管線維症の発現が抑制された。生存率もLECラットの26.3%から97%へと飛躍的に高まった。さらに、興味深いことは肝臓には鉄の蓄積が激減していることである。これらの知見はヒトATP7B遺伝子の産生物がラットの生体内でも銅がセルロナラスミンに結合して細胞間銅輸送を行うことができること、さらに胆汁による銅の排泄経路が機能することを示した。そして、ヒトATP7B遺伝子がLECラットにおいても機能し、ウィルソン病からの回復を示した。加えて、鉄は銅との共同作用でウィルソン病の肝臓疾患に必須の役割を果たしている事が示唆された。この研究におけるラット生体内でのヒトATP7B遺伝子の発現と機能の発現は、ウィルソン病の遺伝子治療の可能性に重要な証拠を与えている。ウイルソン病の遺伝子は酵素蛋白P type-ATPaseをコードしている。この疾患には大きく分けて肝硬変や肝炎を発症する肝型と精神障害を引き起こす神経型および両型のハイブリッド型が知られている。それぞれの病型の相違は、遺伝子欠損部位やその欠損様式による酵素蛋白質の機能の障害の程度に依存している可能性が示唆された。しかし、この仮説が正しいか否かは証明されていない。一方、ウイルソン病モデルであるLECラットの遺伝子異常は、P type-ATPase遺伝子の3'側の数百塩基にわたる大きな欠失であり、その遺伝子は全く発現していない。そしてその病型は、劇症肝炎を起こす肝型である。つまり、ヒトウイルソン病の肝型の患者の性質と一致している。この研究はヒト由来P type-ATPase cDNA遺伝子のLECラット受精卵への導入により、このラットの劇症肝炎の発症が治るか、また、こ遺伝子に各種の変異を挿入し、この遺伝子をLECラット受精卵へ導入することにより、このラットの病型を変えることが出来るかを目的とした。そして今年度はヒト由来の正常P type-ATPase cDNA遺伝子のLECラット受精卵への導入により、このラットの劇症肝炎の発症が治るか否かを目的に、研究を行った。まず、ヒト由来P type-ATPase cDNA遺伝子のコンストラクトを作製し、つぎにLECラットに過剰排卵を誘起し、交配後、受精卵を採取した。遺伝子をマイクロインジェクション法にて受精卵に注入し、偽妊娠ラットに移植しトランスジェニックラットを作製した。現在注入遺伝子が染色体に導入されているか否かを検討中である。
KAKENHI-PROJECT-09480244
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ヒト遺伝子病(ウィルソン病)の多様性モデルの作製と解析
ウイルソン病の遺伝子は酵素蛋白P type-ATPaseをコードしている。この疾患には大きく分けて肝硬変や肝炎を発症する肝型と精神障害を引き起こす神経型および両型のハイブリッド型が知られている。それぞれの病型の相違は、遺伝子欠損部位やその欠損様式による酵素蛋白質の機能の障害の程度に依存している可能性が示唆された。しかし、この仮説が正しいか否かは証明されていない。一方、ウイルソン病モデルであるLECラットの遺伝子異常は、P type-ATPase遺伝子の3'側の数百塩基にわたる大きな欠失であり、その遺伝子は全く発現していない。そしてその病型は、劇症肝炎を起こす肝型である。つまり、ヒトウイルソン病の肝型の患者の性質と一致している。この研究はヒト由来P type-ATPase cDNA遺伝子のLECラット受精卵への導入により、このラットの劇症肝炎の発症を押さえられるか、また、こ遺伝子に各種の変異を挿入し、この遺伝子をLECラット受精卵へ導入することにより、このラットの病型を変えることが出来るかを目的とした。今年度も昨年度に引き続きヒト由来の正常P type-ATPase cDNA遺伝子のLECラット受精卵への導入により、このラットの劇症肝炎の発症を押さえられるか否かを目的に、研究を行った。まず、ヒト由来P type-ATPase cDNA遺伝子のコンストラクトを作製し、つぎにLECラットに過剰排卵を誘起し、交配後、受精卵を採取した。遺伝子をマイクロインジェクション法にて受精卵に注入し、偽妊娠ラットに移植しトランスジェニックラットを作製した。十数匹のファウンダー動物が誕生し、F1の繁殖を行っているが、産子の死亡率が高く、成功していない。引き続きファウンダーの作製とF1の作製を行い、肝炎の発症の有無を観察するつもりである。ウイルソン病は、肝臓や腎臓、脳に銅が蓄積することによる肝疾患と進行性神経疾患を主徴とする遺伝性疾患である。原因遺伝子はATP7B遺伝子であることが明らかにされたが、これは細胞膜に存在する銅輸送性P-type ATPaseをコードしており、この蛋白は6個の銅結合部位を持つ。LECラットはウイルソン病のモデル動物であり、Atp7b遺伝子に大きな欠失変異を起こしている。この結果、銅のセルロプラスミンヘの結合や胆汁への排泄能を欠損しており、肝疾患を引き起こす。この研究では正常のヒトATP7BcDNAをLECラットヘ導入し、肝疾患への効果を調べた。7014bpのヒトATP7BcDNAをトリβ-actinプロモータにつなげ、LECラットおよびSDラット受精卵に注入した。3系統のトランスジェニック(TG)ラットを確立し、RT-PCRによりほとんど全ての臓器に導入遺伝子mRNAが発現していることが確認された。さらにWestern Blottingにより肝臓にヒト型のATP7B蛋白が検出された。このラットは10週齢で、セルロプラスミン活性のわずかな上昇が見られたが、血清銅のレベルの変化は見られなかった。
KAKENHI-PROJECT-09480244
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09480244
高立体規則性ポリスチレン結晶中の積層欠陥の構造解析
新しい立体特異性重合法により合成されたシンジオタクチック・ポリスチレンS-PSは、高立体規則度・超高重合性が得られるだけでなく、高融点(275°C)かつ結晶化速度も大きく、エンジニアリングプラスチックスとしての期待が大きい。分子量(Mw)7万あるいは16万のS-PSを、n-テトラデカンとデカリンの体積比2:1の混合溶媒に溶かし、0.01%程度の稀薄溶液とした。温度範囲160-200°Cでの等温結晶化によって薄板状の単結晶が得られた。溶液中に岩塩を入れ、その(001)面に生長させた単結晶は平面性が良く、かつ単層であった。しかし現在まだ、エピタクシ-生長の特徴は確認できていない。この板状単結晶は、先端の切れたひし形を呈した。S-PSには種々の結晶多形があるが、本研究で得られた単結晶は分子鎖が平面ジグザグ構造をとる斜方晶(P2,2,2:a=2.87nm,b=0.8nm,c=0.51nm)であり、分子鎖軸(C軸)は単結晶板面に垂直である。この単結晶のhko電子回折には次の三つの特徴がある。(1)hOOとOKOは偶数次しか現われずスポット状である。(2)hKOはh+Kの偶数の場合はスポット状、h+Kが奇数の場合はa^*軸方向にストリ-ク状である。(3)散漫散乱は認められない。以上のことを考慮に入れ、若干の試行錯誤の後、次のようなモデルに到達した。規則的結晶のbc面に平行な分子層を2分子層毎に区切ると、2種類のモチ-フの交互的な積層が出来上がる。規則的結晶の構造も充分には解析されていなかったので、エネルギ-計算を行ない、構造を決定した。モチ-フの交互性がくずれた積層欠陥部分についても計算を行ない、2分子層がC軸に平行な2回らせん軸をもつ組合せ(モチ-フ)ならば積層欠陥が生じてもエネルギ-がそれほど大きくならず規則構造に次いで安定であることがわかった。高分解能電子顕微鏡観察によって、提案した規則構造が妥当であることが確認されたが、積層欠陥についてはまだ充分な分解能を有する像は得られていない。新しい立体特異性重合法により合成されたシンジオタクチック・ポリスチレンS-PSは、高立体規則度・超高重合性が得られるだけでなく、高融点(275°C)かつ結晶化速度も大きく、エンジニアリングプラスチックスとしての期待が大きい。分子量(Mw)7万あるいは16万のS-PSを、n-テトラデカンとデカリンの体積比2:1の混合溶媒に溶かし、0.01%程度の稀薄溶液とした。温度範囲160-200°Cでの等温結晶化によって薄板状の単結晶が得られた。溶液中に岩塩を入れ、その(001)面に生長させた単結晶は平面性が良く、かつ単層であった。しかし現在まだ、エピタクシ-生長の特徴は確認できていない。この板状単結晶は、先端の切れたひし形を呈した。S-PSには種々の結晶多形があるが、本研究で得られた単結晶は分子鎖が平面ジグザグ構造をとる斜方晶(P2,2,2:a=2.87nm,b=0.8nm,c=0.51nm)であり、分子鎖軸(C軸)は単結晶板面に垂直である。この単結晶のhko電子回折には次の三つの特徴がある。(1)hOOとOKOは偶数次しか現われずスポット状である。(2)hKOはh+Kの偶数の場合はスポット状、h+Kが奇数の場合はa^*軸方向にストリ-ク状である。(3)散漫散乱は認められない。以上のことを考慮に入れ、若干の試行錯誤の後、次のようなモデルに到達した。規則的結晶のbc面に平行な分子層を2分子層毎に区切ると、2種類のモチ-フの交互的な積層が出来上がる。規則的結晶の構造も充分には解析されていなかったので、エネルギ-計算を行ない、構造を決定した。モチ-フの交互性がくずれた積層欠陥部分についても計算を行ない、2分子層がC軸に平行な2回らせん軸をもつ組合せ(モチ-フ)ならば積層欠陥が生じてもエネルギ-がそれほど大きくならず規則構造に次いで安定であることがわかった。高分解能電子顕微鏡観察によって、提案した規則構造が妥当であることが確認されたが、積層欠陥についてはまだ充分な分解能を有する像は得られていない。
KAKENHI-PROJECT-01550694
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01550694
サブタイプ特異性の高い新規グルタメイトレセプター内在性リガンドの探索研究
本研究遂行の主たる成果として,中枢アミノ酸シグナリング機構について以下の2つの新しい発見があった。「光学異性体を区別するグルタミン酸輸送体(GluTs)の小脳特異的発現」:中枢神経系の重要な興奮性伝達物質であるグルタミン酸の輸送体機能研究には,基質としてD-アスパラギン酸(Asp)が古くから使用されている理由は,D-Aspが代謝的に安定であるとともに,既知のGluTs(GLAST,GLT-1,EAAC1,EAAT4,EAAT5)がL-とD-Aspを区別しないからである。脳内各部位におけるGluTsの多様性を追究する目的で,オートラジオグラフィー法を用いて検討したところ,小脳にはL-AspとD-Aspを識別するという新しい性質を有するGluTが発現していることを強く示唆する結果が得られた。一方,抗GLAST抗体を一次抗体とするWestern blot法では,小脳標品において他の脳内部位標品よりも大きな分子量の位置に抗体陽性蛋白質が検出され,この小脳特異的なGLAST類似の新しいタイプのGluTがL-とD-Aspを識別している可能性ある。「中枢に存在する新しいL-Ser輸送体」:L-Serには抑制性シナプス後電位誘発作用が報告されているが,L-Serの神経活性アミノ酸としての作用出現機構については,ほとんど解明されていない。高親和性取り込み活性について,L-Ser取り込み活性の約半分はNa依存性がないこと,2つ以上の親和力の異なる取り込み系が存在すること,また各種アミノ酸による阻害実験からこれまで知られている各種アミノ酸輸送体とは薬理学的特性が異なっていること等が明らかとなった。これらおよびその他の本研究結果から,従来から知られている神経伝達アミノ酸以外にD-AspおよびL-Serが神経伝達機能を果たしている可能性が高いことが示唆される。本研究遂行の主たる成果として,中枢アミノ酸シグナリング機構について以下の2つの新しい発見があった。「光学異性体を区別するグルタミン酸輸送体(GluTs)の小脳特異的発現」:中枢神経系の重要な興奮性伝達物質であるグルタミン酸の輸送体機能研究には,基質としてD-アスパラギン酸(Asp)が古くから使用されている理由は,D-Aspが代謝的に安定であるとともに,既知のGluTs(GLAST,GLT-1,EAAC1,EAAT4,EAAT5)がL-とD-Aspを区別しないからである。脳内各部位におけるGluTsの多様性を追究する目的で,オートラジオグラフィー法を用いて検討したところ,小脳にはL-AspとD-Aspを識別するという新しい性質を有するGluTが発現していることを強く示唆する結果が得られた。一方,抗GLAST抗体を一次抗体とするWestern blot法では,小脳標品において他の脳内部位標品よりも大きな分子量の位置に抗体陽性蛋白質が検出され,この小脳特異的なGLAST類似の新しいタイプのGluTがL-とD-Aspを識別している可能性ある。「中枢に存在する新しいL-Ser輸送体」:L-Serには抑制性シナプス後電位誘発作用が報告されているが,L-Serの神経活性アミノ酸としての作用出現機構については,ほとんど解明されていない。高親和性取り込み活性について,L-Ser取り込み活性の約半分はNa依存性がないこと,2つ以上の親和力の異なる取り込み系が存在すること,また各種アミノ酸による阻害実験からこれまで知られている各種アミノ酸輸送体とは薬理学的特性が異なっていること等が明らかとなった。これらおよびその他の本研究結果から,従来から知られている神経伝達アミノ酸以外にD-AspおよびL-Serが神経伝達機能を果たしている可能性が高いことが示唆される。グルタメイト(Glu)レセプターには、少なくとも22種類の異なるサブユニットが存在するが、これらサブユニット群の異なる組み合わせから構成されるレセプター蛋白質が、脳内特定部位に無数に分布すると予想される。今年度は、特にシグナル伝達および神経毒性発現に関連の高いGluトランスポーターの脳内多様性について、オートラジオグラフィー法を用いて検討した。ラット脳から凍結水平切片を切り出したのち、4°Cで20nM[^3H]L-aspまたは[^3H]D-aspと反応させた。反応終了後、得られた切片をトリチウム感受性フィルムに、トチリウム標準線源とともに感光させた。両放射性基質を切片と反応させた結果、どちらの場合も脳全体に結合が見られたが、海馬や大脳皮質などの前脳部位に比べ、小脳灰白質で2倍から3倍の強い結合が観察された。さらに、両放射性基質の結合を比較すると、前脳部位では[^3H]L-aspの特異的結合は、[^3H]D-aspよりも1.2倍から2.3倍強力であった。一方、小脳灰白質では、[^3H]L-aspの結合は[^3H]D-aspよりも2.2倍から3.3倍強力であり、より顕著な結合能の違いが観察された。[^3H]L-asp結合に対して、L-aspもD-aspも大脳皮質、海馬、線条体および中核の前脳部位では、ほぼ同等度の阻害活性を示した。これに対して、小脳ではL-aspはIC_<50>値441nMと他の脳内部位と同程度の阻害活性を示したが、D-aspは1386nMとL-aspと比較して3倍以上弱い阻害活性を示すことが判明した。同様に、[^3H]
KAKENHI-PROJECT-13672277
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サブタイプ特異性の高い新規グルタメイトレセプター内在性リガンドの探索研究
D-aspに対しても前脳部位では両異性体はほぼ同程度の阻害活性を示したが、小脳ではD-aspはL-aspよりも3倍以上弱い阻害活性を示した。以上の結果から、小脳に発現するグルタミン酸トランスポーターはL-aspとD-aspを識別する性質を有する可能性が示唆される。本研究遂行の主たる成果として,中枢アミノ酸シグナリング機構について以下の2つの新しい発見があった。「光学異性体を区別するグルタミン酸輸送体(GluTs)の小脳特異的発現」:中枢神経系の重要な興奮性伝達物質であるグルタミン酸の輸送体機能研究には,基質としてD-アスパラギン酸(AsP)が古くから使用されている理由は,D-Aspが代謝的に安定であるとともに,既知のGluTs(GLAST, GLT-1,EAAC1,EAAT4,EAAT5)がL-とD-Aspを区別しないからである。脳内各部位におけるGluTsの多様性を追究する目的で,オートラジオグラフィー法を用いて検討したところ,小脳にはL-AspとD-Aspを識別するという新しい性質を有するGluTが発現していることを強く示唆する結果が得られた。一方,抗GLAST抗体を一次抗体とするWestern blot法では,小脳標品において他の脳内部位標品よりも大きな分子量の位置に抗体陽性蛋白質が検出され,この小脳特異的なGLAST類似の新しいタイプのGluTがL-とD-Aspを識別している可能性がある。「中枢に存在する新しいL-Ser輸送体」:L-Serには抑制性シナプス後電位誘発作用が報告されているが,L-Serの神経活性アミノ酸としての作用出現機構については,ほとんど解明されていない。高親和性取り込み活性について,L-Ser取り込み活性の約半分はNa依存性がないこと,2つ以上の親和力の異なる取り込み系が存在すること,また各種アミノ酸による阻害実験からこれまで知られている各種アミノ酸輸送体とは薬理学的特性が異なっていること等が明らかとなった。これらおよびその他の本研究結果から,従来から知られている神経伝達アミノ酸以外にD-AspおよびL-Serが神経伝達機能を果たしている可能性が高いことが示唆される。
KAKENHI-PROJECT-13672277
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ヒト癌の発生,進展に関与する遺伝子異常の解析
1.膵癌において高頻度欠失の見られる領域のうち3箇所(12q,17p,18q)の染色体欠失が予後不良と相関することを明らかにした。また,膵の発癌過程で初期変化と考えられる18qにおいて,同領域のSMAD4遺伝子がホモ欠失している膵癌株に正常遺伝子を導入しても増殖能は抑制されなかった。一つの遺伝子異常が初期変化であり,かつ予後不良因子である可能性も否定できないが,上記結果を考え合わせると,18qにはSMAD4以外にもがん抑制遺伝子が局在する可能性がある。2.子宮内膜癌では,高頻度に遺伝子異常があるPTEN遺伝子を用いた遺伝子治療を試みた。in vitroでは腫瘍細胞の増殖を抑制できたが,ヌードマウス移植癌では腫瘍縮小効果が見られず,実用化には更なる検討を要するものと考えられた。3.非小細胞肺癌では,10qの高頻度欠失と同領域のDMBT1の異常が癌の発生・進展過程で重要な働きをしている高い可能性を見いだした。4.神経芽細胞腫では14qの高頻度欠失領域の同定,1p32の高頻度欠失と同領域の相互転座点の同定を行った。それぞれ責任遺伝子単離へ向けて更なる解析を進めている。1.膵癌において高頻度欠失の見られる領域のうち3箇所(12q,17p,18q)の染色体欠失が予後不良と相関することを明らかにした。また,膵の発癌過程で初期変化と考えられる18qにおいて,同領域のSMAD4遺伝子がホモ欠失している膵癌株に正常遺伝子を導入しても増殖能は抑制されなかった。一つの遺伝子異常が初期変化であり,かつ予後不良因子である可能性も否定できないが,上記結果を考え合わせると,18qにはSMAD4以外にもがん抑制遺伝子が局在する可能性がある。2.子宮内膜癌では,高頻度に遺伝子異常があるPTEN遺伝子を用いた遺伝子治療を試みた。in vitroでは腫瘍細胞の増殖を抑制できたが,ヌードマウス移植癌では腫瘍縮小効果が見られず,実用化には更なる検討を要するものと考えられた。3.非小細胞肺癌では,10qの高頻度欠失と同領域のDMBT1の異常が癌の発生・進展過程で重要な働きをしている高い可能性を見いだした。4.神経芽細胞腫では14qの高頻度欠失領域の同定,1p32の高頻度欠失と同領域の相互転座点の同定を行った。それぞれ責任遺伝子単離へ向けて更なる解析を進めている。1.胃癌に関しては、その発生、進展に関与する新しい癌抑制遺伝子の局在の候補を2か所解析した。1か所は第1番染色体短腕で約13cM、もう1か所は、第12番染色体長腕で、この領域は1cM以内に限局化させることができた。後者は、膵癌において検出された特異的染色体欠失領域と重なっていた。2.膵癌に関しては染色体欠失を指標に癌抑制遺伝子の局在の候補領域を検索し、合計6か所において高頻度の欠失を検出した。そのうち1か所は、胃癌と共通した1cM以内の領域であり、YACでその領域をカバーすることができた。また、この領域には既にマップされた遺伝子が存在することも明らかとなった。3.子宮体癌については第10番染色体長腕に2か所の高頻度の染色体欠失領域を発見し、そのうち1か所については8cMの領域にせばめることができた。4.神経芽細胞腫に関しては、第14番染色体長腕に高頻度の染色体欠失領域を発見し、約2cMの共通欠失領域を同定した。5.DNAミスマッチ修復異常と発癌に関しては、DNAミスマッチ修復に関与する遺伝子(MMR遺伝子)の単離、解析を進めると共に、各種癌や多重癌患者における異常の関与、ならびにMMR遺伝子の異常を検討した。その結果、一般の多重癌患者においてはRER+の頻度は高かったが、食道癌を含む多重癌患者では、RER+の頻度は低く、今後、どのような癌の組合せで頻度が高いのかなどの検討が必要である。RER+の子宮体癌では、hMSH2遺伝子、hMLH1遺伝子の異常の頻度は低かった。2.子宮体癌についてもCGH法,FISH法,マイクロサテライトマーカーを用いたPCR法により検討を加え,第10番染色体長腕に2か所の高頻度の染色体欠失領域を発見した。さらに,そのうちの1か所について詳細な検討を加え,共通欠失領域を790kb以下にまでせばめることができた。4.hMSH2遺伝子のsplicingのバリエーションが2種類あり,合計3種類のmRNAが正常組織で発現していること,また,バリアントの発現量は低いことを明らかにした。さらに,それらのうち1種類ではsplicingのdonor siteとacceptor siteがそれぞれTAとTTであった。1.膵癌に関しては,前年度CGH法,FISH法,マイクロサテライト法等により検出した染色体増幅・欠失領域のうち,6q,12qにおいて詳細に検討を加えた。その結果,12qでは2か所の,6qでは3か所の共通欠失領域を同定した。これらの領域ではYAC,BAC,PACによるコンティングの作成を行い,12qは1cM以内と650kb以内の共通欠失領域であり,また,6qの1か所では500kb以内であった。2.子宮内膜癌については,CGH法,FISH法,マイクロサテライト法により10q25-q26に2か所の高頻度の染色体欠失領域を同定た。
KAKENHI-PROJECT-07272204
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ヒト癌の発生,進展に関与する遺伝子異常の解析
1997年に報告された10q23のPTEN1遺伝子は,子宮内膜癌において高頻度に異常が見られたが、同定した共通欠失領域はPTEN1遺伝子よりもtelomere側であった。共通欠失領域のうちの1か所についての詳細な検討の結果,その領域を790kb以下にまでせばめることができた。当領域におけるYAC,BAC,PACによるコンティングを作成し,解析を進めている。3.肺癌では16q24において,また,腎癌では3p14-p21において,非常に狭い範囲の共通欠失領域を同定した。4.DNAミスマッチ修復異常の下流に位置するゲートキ-パ-遺伝子の異常として,タンパクコード領域に繰り返し配列を含むIGFIIR遺伝子,BAX遺伝子において異常のスクリーニングを行い,大腸癌,胃癌,子宮内膜癌ではIGFIIR,BAXの異常がみられるが,膵癌では異常はみられないことを明らかにした。膵癌では,発がん過程で大腸癌,胃癌,子宮内膜癌と異なる遺伝子異常が関与しているものと考えられた。5.hMSH2遺伝子,hMSH6遺伝子にはsplicingのバリエーションがあり,これらはいずれも正常組織でみられること,また,バリアントの発現量は低いことを明らかにした。1.膵癌に関しては,6q,12qにおける共通欠失領域を特定し,YAC,BACによるコンティグを成,さらに発現している遺伝子のスクリーニングを行った。12qにおいては2個の候補遺伝子にいて異常の有無を調べたが,構造異常は見られなかった。尚,12q21のDUSP6遺伝子では,多の膵癌細胞株で発現の減弱や消失が観察されたため,現在,発癌との関連についてさらなる検討を加えている。また,膵液中の細胞を用い,膵癌で高頻度に検出されている9p,17p,18qの欠層と8q,20qの増幅を指標にFISHによる診断を試みた結果,FISH法が非常に有効であり,かつ8qの欠失がこれらの領域の中でもっとも初期に生じている異常であることを明らかにした。2.子宮内膜癌については,前年度までに10q25-q26に同定した染色体欠失領域を100-kbに特定した。さらに,この領域の欠失は子宮内膜異型増殖症においても高頻度に見られ,10q25-q26の欠失が子宮内膜の発癌過程における初期変化であり,かつ子宮内膜異型増殖症が前癌病変であることが示唆された。また,子宮内膜異型増殖症においてDNAミスマッチ修復異常の関与も高頻度であり,BAX遺伝子,IGFIIR遺伝子,PTEN遺伝子にも異常が生じていることを明らかにした。3.肺癌において,16q24に狭い範囲の高頻度欠失を検出した。16q24にはH-cadherin遺伝子が存在するので,さらなる検討を加えた結果,高頻度にこの遺伝子の発現が消失しており,また,定現が消失した腫瘍ではプロモーター領域の高頻度のメチル化を明らかにした。尚,胃癌でもこの領域にLOHが検出されたが,H-cadherin遺伝子の異常の関与を示唆する結果は得られなかった。1.膵癌において高頻度欠失の見られる領域のうち3箇所(12q,17q,18q)の染色体欠失が予後不良と相関することを明らかにした。また,膵の発癌過程で初期変化と考えられる18qにおいて,同領域のSMAD4遺伝子がホモ欠失している膵癌株に正常遺伝子を導入しても増殖能は抑制されなかった。一つの遺伝子異常が初期変化にあり,かつ予後不良因子である可能性も否定できないが,上記結果を考え合わせると,18qにはSMAD4以外にもがん抑制遺伝子が局在する可能性がある。
KAKENHI-PROJECT-07272204
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07272204
胎盤形成を制御し、癌抑制機能をもつ新規遺伝子NECC1の解析
正常マウス胎盤におけるNECC1の発現は胎齢8.0-9.5日にかけ海綿状栄養膜細胞層(SPT)と栄養膜巨細胞層(TGC)に限局して発現しており、NECC1欠損変異マウスの解析では胎齢9.5日よりコントロールと比べてTGCの過形成とSPTの低形成を認めた。栄養膜幹細胞をCdx2の発現で検討したところ変異マウスでは発現細胞が著明に減少していた。In-vitroでの機能解析のため分化モデルとしてRcho-1細胞、マウス栄養膜幹細胞株(TS細胞株)を用いた。TSに分化刺激を与えると、巨細胞への分化に伴いNECC1の発現を認めた。NECC1発現アデノウィルスベクターを作製し、Rcho-1細胞、TS細胞株に遺伝子導入し、分化刺激を与えたところ分化に対し抵抗性を示した。この結果は細胞の形態、DNA量の半定量、分化マーカー発現の検討により導かれた。また、NECC1の下流に位置する分子であるSRF(serum response factor)との関連を探るため、SRF結合部位を用いたレポーター活性を測定したところRcho-1細胞の分化に伴い活性が上がり、NECC1や優性ネガティブ型SRF(DN-SRF)の共導入により抑制された。SRFはNECC1と同様、SPTとTGCで発現しており、免疫沈降法により両者の関連性が示唆された。TGCの特異的分泌ホルモンであるPl1の転写制御領域を用いたレポーターアッセイを行ったところ分化刺激に伴い上昇する活性が野生型SRF(wt-SRF)の共導入により促進され、NECC1、DN-SRFの共導入により抑制された。Wt-SRF、DN-SRFをTSに導入し、導入細胞を発現ベクターについたタグにより同定、形態を観察したところ、wt-SRF導入細胞は分化刺激を与えなくても巨細胞への分化を示し、DN-SRF導入細胞は逆に分化を抑制する結果で会った。以上から、NECC1はSRFを介する栄養膜細胞の分化シグナルにネガティブフィードバックを与え、栄養膜細胞の分化を調整する機能を有すると示唆された。1.マウス胎盤形成におけるNECC1の関与:野生型マウスの胎盤におけるNECC1の発現は胎齢8.0日から9.5日にかけ栄養膜巨細胞層、海綿状栄養膜細胞で一過性に発現し胎齢11.5日には発現が消失していた。NECC1欠失変異マウスの胎盤は胎齢9.5日より11.5日にかけ栄養膜巨細胞層の過形成と海綿状栄養膜細胞層、栄養膜迷路層の低形成を認めこの傾向は胎齢が進むにつれて顕著になった。この結果はNECC1が栄養膜細胞の巨細胞への分化を抑制することを示唆している。2.マウス栄養膜細胞におけるNECC1の作用:ラットの絨毛癌細胞株Rcho-1とマウスの栄養膜幹細胞(TS)をin vitroで分化させるモデルを検討したところいずれでも未分化状態ではNECC1を発現しておらず、分化の初期に一過性の高発現を呈し、速やかに発現消失した。Rcho-1とTSにNECC1を遺伝子導入し、分化刺激を与えるといずれも巨細胞への分化において抑制効果を認めた。また未分化維持状態でTSにNECC1を過剰発現するとそれだけで海綿状栄養膜細胞のマーカーを発現するようになった。これらの結果よりNECC1は栄養膜細胞を海綿状栄養膜細胞へ分化促進するとともに巨細胞への分化を抑制することが示唆された。3.NECC1のシグナル:NECC1が相互作用し、抑制する転写因子SRFの標的となる遺伝子プロモーターを有するレポーターを用いてルシフェラーゼ解析を行った。分化刺激によってSRF活性は一過性に急上昇したが、NECC1の発現上昇に同調して低下した。またRcho-1に優性ネガティブSRFを導入し分化刺激を与えるとNECC1導入細胞と同様、分化抵抗性を示した。これらの結果はSRFが栄養膜細胞の巨細胞への分化促進因子で、NECC1はSRFの活性を抑制することで栄養膜細胞の分化を負に調節していることを示唆している。正常マウス胎盤におけるNECC1の発現は胎齢8.0-9.5日にかけ海綿状栄養膜細胞層(SPT)と栄養膜巨細胞層(TGC)に限局して発現しており、NECC1欠損変異マウスの解析では胎齢9.5日よりコントロールと比べてTGCの過形成とSPTの低形成を認めた。栄養膜幹細胞をCdx2の発現で検討したところ変異マウスでは発現細胞が著明に減少していた。In-vitroでの機能解析のため分化モデルとしてRcho-1細胞、マウス栄養膜幹細胞株(TS細胞株)を用いた。TSに分化刺激を与えると、巨細胞への分化に伴いNECC1の発現を認めた。NECC1発現アデノウィルスベクターを作製し、Rcho-1細胞、TS細胞株に遺伝子導入し、分化刺激を与えたところ分化に対し抵抗性を示した。この結果は細胞の形態、DNA量の半定量、分化マーカー発現の検討により導かれた。また、NECC1の下流に位置する分子であるSRF(serum response factor)との関連を探るため、SRF結合部位を用いたレポーター活性を測定したところRcho-1細胞の分化に伴い活性が上がり、NECC1や優性ネガティブ型SRF(DN-SRF)の共導入により抑制された。SRFはNECC
KAKENHI-PROJECT-17791124
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17791124
胎盤形成を制御し、癌抑制機能をもつ新規遺伝子NECC1の解析
1と同様、SPTとTGCで発現しており、免疫沈降法により両者の関連性が示唆された。TGCの特異的分泌ホルモンであるPl1の転写制御領域を用いたレポーターアッセイを行ったところ分化刺激に伴い上昇する活性が野生型SRF(wt-SRF)の共導入により促進され、NECC1、DN-SRFの共導入により抑制された。Wt-SRF、DN-SRFをTSに導入し、導入細胞を発現ベクターについたタグにより同定、形態を観察したところ、wt-SRF導入細胞は分化刺激を与えなくても巨細胞への分化を示し、DN-SRF導入細胞は逆に分化を抑制する結果で会った。以上から、NECC1はSRFを介する栄養膜細胞の分化シグナルにネガティブフィードバックを与え、栄養膜細胞の分化を調整する機能を有すると示唆された。
KAKENHI-PROJECT-17791124
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17791124
「語り」の実践を基軸とする生命倫理の探求
本研究は次のことを明らかにした:生命倫理において重要な役割を果たしてきた普遍主義の倫理は、「同種の事例」と「種類の異なる事例」との区別を必要とするが、そのような区別は広く共有された世間知、人間知の蓄積に依拠している。そのような蓄積は、ある種の快の感情に導かれ、いくつかの偶然的なものを包摂する新たな秩序を生みだす物語や判断力の機能なしには生じない。普遍主義の倫理とこのような営みとは一見異質に思われるが、実際には前者は後者によって支えられている。本研究は次のことを明らかにした:生命倫理において重要な役割を果たしてきた普遍主義の倫理は、「同種の事例」と「種類の異なる事例」との区別を必要とするが、そのような区別は広く共有された世間知、人間知の蓄積に依拠している。そのような蓄積は、ある種の快の感情に導かれ、いくつかの偶然的なものを包摂する新たな秩序を生みだす物語や判断力の機能なしには生じない。普遍主義の倫理とこのような営みとは一見異質に思われるが、実際には前者は後者によって支えられている。研究計画では、【理論面】の課題として、物語倫理の浸透状況とその理論的背景の把握をまず予定していたが、本年度公表するに至った研究成果は、主として「物語倫理はどのような場面・文脈で要請されるのか」という問いに関係するものである。論文「医療・介護/介助のシステムと人間の倫理」(『生命/環境の哲学』所収)と、論文「医学的介入の論理と障害の概念-「何もしないより、何かよいことをしたほうがよい」か」(『医療の本質』所収)では、「人の誕生」に関わる生命倫理問題に関連して普遍主義的-規則定立的な倫理が限界に直面し、物語倫理が要請されるに至る経緯を明らかにした。また、物語倫理との関係が指摘されているカントの判断力論に関する思想史的研究として、論文「判断力の自己自律-1780年代中期のカントに生じた思想的転回-」(『判断力の問題圏』所収)を公表した。メタ倫理学の視点からの考察「生命の価値は実在するか-近代思想のメタ倫理学的回顧」(『生命という価値』所収)もこれに関連する。なお、これらの研究成果はいずれも論文集(共著)の形で公表された(される)ものである。他方、【実践面】の課題として予定していた「語り」の収集については、地域のNPO(自立生活支援センター)の協力の下、出生前診断などの生命倫理問題に関連するライフ・ストーリーを持つ人へのインタビューを実施し、その内容を音声・文書データとして蓄積している段階である。これまでにインタビューの対象としたのは、脳性マヒ、進行性筋ジストロフィー、ウェルニッヒ・ホフマン病、小児麻痺、パーキンソン病などに起因する障害を持つ人々である。今後もこの面での作業を続行し、【理論面】の作業との総合を図りつつ、ライフ・ヒストリーの記述・分析の段階に進む予定である。本年度、【理論面】で主に取り組んだのは、倫理的思考のどのような局面で物語あるいは「語り」への参照が不可欠なものとなるのかという問題である。論文「倫理学における判断力の問題(序説)-普遍化可能性と特殊性-」(『熊本大学教育学部紀要』59巻所収)では、倫理学上の普遍主義が反省的判断力の機能を不可欠なものにすることを解明したが、この論点はさらに物語あるいは「語り」の位置づけにも関係する。また、本年度公刊された論文「医学的介入の論理と障害の概念-「何もしないより、何かよいことをしたほうがよい」か-」(高橋隆雄・北村俊則編『医療の本質と変容』所収)では、障害を持つ人の誕生の問題に関連して、当事者の「語り」の中に生命倫理のあり方の見直しを迫る契機が存在することを明らかにした。さらに、近日公刊される『カントを学ぶ人のために』(世界思想社)所収の論文「人間学-道徳哲学との関係を中心に-」では、現代の倫理学においても課題となっている人間学と倫理学の関係を検討したが、この課題も物語倫理の位置づけに関連する可能性がある。他方、【実践面】の課題である「語り」の収集については、地域のNPO(自立生活支援センター)の協力の下、出生前診断などの生命倫理問題に関連するライフ・ストーリーを持つ人へのインタビューを実施してきたが(対象としたのは、脳性マヒ、進行性筋ジストロフィー、ウェルニッヒ・ホフマン病、小児麻痺、パーキンソン病などに起因する障害を持つ人々)、本年度はこの作業の成果を分析のための暫定的報告書「Narrative Practice 2007-2010:障害も持つ人の誕生をめぐる「語り」」(非公開)にまとめた。今後は【理論面】の作業をふまえつつ、その分析の段階に進む予定である。本年度、【理論面】【思想史面】で主に取り組んだのは、(1)物語の人間にとっての意義及びその成立要件の検討、(2)P.リクール以降、度々指摘されている物語と判断力との関係の明確化、そして、(3)これらが倫理学にとって持つ意義の検討という三つの課題である。このうち(1)と(2)の課題については、論文「倫理学に診ける判断力の問題(続)」で概略以下のような見解を示した。
KAKENHI-PROJECT-21520020
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「語り」の実践を基軸とする生命倫理の探求
すなわち、物語は、(1)二つの異種的秩序(時間的秩序と非時間的秩序)を結合するものであり、(2)何らかの偶然的要素を契機として生成し、(3)人間の自己理解と自己同一性を可能にする。他方、カント的意味での判断力にも、(1)二つの異種的秩序(自然の秩序と自由の秩序)を媒介するものとして、(2)様々な偶然的要素を秩序に包摂する一方、(3)ある種の快の感情によって導かれる、といった性質が認められる。物語と判断力のあいだには、(1)と(2)の点では明白に、(3)の点でも深い関連がある。また、(1)の課題については、いまだ素描的な段階ではあるが、前年度から継続執筆中の論文「倫理学における判断力の問題」や、『カントを学ぶ人のために』所収の論文「人間学-道徳哲学との関係を中心に-」で、倫理的なものと物語的なもの(判断力の領野、人間学)とのあいだにある複雑かつ緊張に満ちた関係を描き出すことに成功しつつある。他方、【実践面】の課題である「語り」の収集・分析については、これまでに行った聞き取りの内容まとめた報告書「障害を持つ人の誕生をめぐる「語り」」(非公開)の分析に進む予定であったが、分析の視点がなかなか定まらなかったことから、この方面ではあまり成果を上げることはできなかった。そのため、今後この分野(障害を持つ人の誕生に関する生命倫理)での「語り」の分析の視点を確立するための手がかりとして、これまでの研究経過の総括として「生命倫理と語りの諸相-研究経過報告」を作成した。
KAKENHI-PROJECT-21520020
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地域医療および院内情報通信用マイクロ波無線と光テレメ-タシステムの開発研究
この研究の目的は、病院内やある地域内で、動画像を含んだ医療情報を双方向に通信するネットワ-クを安価に確実に形成する手法を開発し、そのフィ-ジビリティを検討することにある。このために、カラ-動画像の病院間TV基幹ネットワ-クとして50GHz以上の帯域を使用するマイクロ波通信系を用い、東京大学医学部3号館別棟屋上と東京大学先端科学技術研究センタ-13号館屋上との間を、ア-ク森ビル屋上に設置した中継装置を介して接続し、自営の無線ネットワ-ク系を製作・設置した。サブネットワ-クとして移動体電話とスロ-スキャンTVを利用した公衆電話回線ネットワ-クを併設し、各ノ-ドではこれにコンピュ-タを接続して、デジタル・コンピュ-タ通信網を形成した。このディジタル通信系は、在宅医療機器の遠隔よりの制御をめざして、医用電子研究施設内の医用機器の遠隔制御に用いられた。直視不可能な生体の情報などを採取する目的で光ファイバ-による画像伝送系を作り、さらにレ-ザ-光による光無線通信系を開発し、医用電子研究施設に設置、動物実験の観測に供した。このシステムは、2研究所間での人工心臓動物実験の相互モニタ-に威力を発揮したばかりでなく、中継点のア-クヒル・ビル内で行なわれている教育システムにも先端科学技術の実況中継という形で大きな効果をもたらし、さらに、中継点や両端の2研究所を直視しうる場所への情報ネットワ-ク形成に十分な能力を発揮した。ことに、多くの学会での研究発表にこのメディアの使用が大きなデモンストレ-ション効果を発揮した。基幹ネットワ-クに付随する公衆電話回線を利用したネットワ-クも、移動体通信網との接続で、任意の場所からの画像や直視不可能な身体部位の視認を含めた、多くの生理情報の確保と、遠隔からの医療機器の操作という在宅医療や高度医療に心須の技術のテレオペレ-ションを実現する十分な能力を認めた。この研究の目的は、病院内やある地域内で、動画像を含んだ医療情報を双方向に通信するネットワ-クを安価に確実に形成する手法を開発し、そのフィ-ジビリティを検討することにある。このために、カラ-動画像の病院間TV基幹ネットワ-クとして50GHz以上の帯域を使用するマイクロ波通信系を用い、東京大学医学部3号館別棟屋上と東京大学先端科学技術研究センタ-13号館屋上との間を、ア-ク森ビル屋上に設置した中継装置を介して接続し、自営の無線ネットワ-ク系を製作・設置した。サブネットワ-クとして移動体電話とスロ-スキャンTVを利用した公衆電話回線ネットワ-クを併設し、各ノ-ドではこれにコンピュ-タを接続して、デジタル・コンピュ-タ通信網を形成した。このディジタル通信系は、在宅医療機器の遠隔よりの制御をめざして、医用電子研究施設内の医用機器の遠隔制御に用いられた。直視不可能な生体の情報などを採取する目的で光ファイバ-による画像伝送系を作り、さらにレ-ザ-光による光無線通信系を開発し、医用電子研究施設に設置、動物実験の観測に供した。このシステムは、2研究所間での人工心臓動物実験の相互モニタ-に威力を発揮したばかりでなく、中継点のア-クヒル・ビル内で行なわれている教育システムにも先端科学技術の実況中継という形で大きな効果をもたらし、さらに、中継点や両端の2研究所を直視しうる場所への情報ネットワ-ク形成に十分な能力を発揮した。ことに、多くの学会での研究発表にこのメディアの使用が大きなデモンストレ-ション効果を発揮した。基幹ネットワ-クに付随する公衆電話回線を利用したネットワ-クも、移動体通信網との接続で、任意の場所からの画像や直視不可能な身体部位の視認を含めた、多くの生理情報の確保と、遠隔からの医療機器の操作という在宅医療や高度医療に心須の技術のテレオペレ-ションを実現する十分な能力を認めた。この研究の目的は病院内やある地域の医療システムに、ディジタルやアナログの医用画像や生理機能の情報を簡易に・容易に・安価に双方向通信できるローカルエリア・ネットワークを形成するメディアを与えることにある。このシステム開発の基幹となる通信技術として、自営可能な50GHz以上の帯域を使用するマイクロ波通信系と公衆電話回線網さらに光無線通信系を使用し、これにテレビフレームの画像やコンピュータ処理画像やコンピュータ通信情報を載せる技術の開発を行い、非常に安価で簡便でかつ信頼性の高いLANを完成させるのを研究開発の目標としている。今年度は以下の項目に関し研究が行われた。1.[マイクロ波通信回線網の設置]東大医用電子と東大先端研の間に、中継点を経由して、50GHz通信網を設営中である。現在中継点の工事を残すのみで、本年度末に通信網全体の設置が完了予定である。2.[医用画像通信系]現在小規模のモデル・ネットワークを東大医用電子に設置し、現在運営中の医用電子研究施設LANとCATV網のネットワークを接続し、NTSCベースで医用画像の通信実験を行い、入出力プロトコルの決定などシステムの構築を進めている。3.[ディジタル画像通信系]本研究室で開発されたコンピュータ化サーモグラフィ装置とこのネットワークを接続し、ディジタル画像の入出力通信実験を行った。さらにワークステーションであるApollo DOMAINネットと接続して、ディジタル画像、データの相互通信実験を行っている。4.[光無線通信系]光ファイバー通信系を人工心臓実験動物に接続、生理機能のアナログ情報をディジタル化して送信する系が作成された。
KAKENHI-PROJECT-63870110
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地域医療および院内情報通信用マイクロ波無線と光テレメ-タシステムの開発研究
現在この系の無線化、上記ネットワークへの接続を検討中である。5.[医用画像電話回線通信系]公衆電話回線による静止画通信装置で、東大の自営のDDX回線網を通じて静止画の双方向連続伝送実験を行った。この研究の目的は、病院内やある地域内で、動画像を含んだ医療情報を双方向に通信するネットワ-クを安価に確実に形成する手法を開発し、そのフィ-ジビリティを検討することにある。このために、カラ-動画像の病院間TV基幹ネットワ-クとして50GHz以上の帯域を使用するマイクロ波通信系を用い、東京大学医学部3号館別棟屋上と東京大学先端化学技術研究センタ-13号館屋上との間を、ア-ク森ビル屋上に設置した中継装置を介して接続し、自営の無線ネットワ-ク系を製作・設置した。サブネットワ-クとして移動体電話とスロ-スキャンTVを利用した公衆電話回線ネットワ-クを併設し、各ノ-ドではこれにコンピュ-タを接続して、デジタル・コンピュ-タ通信網を形成した。このディジタル通信系は、在宅医療機器の遠隔よりの制御をめざして、医用電子研究施設内の医用機器の遠隔制御に用いられた。直視不可能な生体の情報などを採取する目的で光ファイバ-による画像電送系をつくり、さらにレ-ザ-光による光無線通信系を開発し、医用電子研究施設に設置、動物実験の観測に供した。このシステムは、2研究期間での人工心臓動物実験の相互モニタ-に威力を発揮したばかりでなく、中継点のア-クヒル・ビル内で行なわれている教育システムにも先端科学技術の実況中継という形で大きな効果をもたらし、さらに、中継点や両端の2研究所を直視しうる場所への情報ネットワ-ク形成に十分な能力を発揮した。ことに、多くの学会での研究発表にこのメディアの使用が大きなデモンストレ-ション効果を発揮した。基幹ネットワ-クに付随する公衆電話回線を利用したネットワ-クも、移動体通信網との接続で、任意の場所からの画像や直視不可能な身体部位の視認を含めた、多くの生理情報の確保と、遠隔からの医療機器の操作という在宅医療や高度医療に必須の技術のテレオペレ-ションを実現する十分な能力を認めた。
KAKENHI-PROJECT-63870110
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アパタイト結晶配向性を指標とした顎骨骨梁のナノメカニクス
顎骨における生体アパタイト結晶の配列は、骨の力学機能と密接に関連性があることが知られている。本研究は、結晶学的アプローチによる顎骨の咬合影響領域特定と荷重支持機能の定量的評価を目的とした。有歯顎、無歯顎およびインプラント周囲顎骨におけるBAp結晶配向性の測定、およびナノインデンテーション法によるヤング率測定を行い、顎骨に対する機能圧の影響を考察した。また、骨強度と骨質の相関について明らかにすることで、BAp結晶配向性から高い精度での力学環境の予測が可能であると考えられた。顎骨は、歯を介して伝達する外部からの荷重が内部骨構造の恒常性維持に重要な役割を果たしており、他の骨にはない特殊な力学的環境を有する骨である。特に顎骨海綿骨梁は歯やインプラントに加わる荷重の伝達・分散に関与するため、生体力学的に果たす役割は大きい。そのため、顎骨内部微細構造の精細な骨質解析と力学機能の評価は、将来のバイオメカニクスに基づく治療計画立案のために一刻も早く完遂されるべき最優先事項である。骨の力学機能は、骨密度よりもアパタイト結晶のc軸配向性によって支配されていることが見出されており、応力信号の伝達が骨組織の配向化を指示していることから、皮質骨のみならず、海綿骨梁における生体アパタイトの異方性を考慮した結晶学的アプローチを進めることで、いまだ未知の領域である顎骨内部の力学的環境にアクセスすることができる。本研究では、有歯顎・無歯顎骨における骨梁の連続的な結晶配向性を算出し、海綿骨領域におけるアパタイト配向性の地図を作製し、力学特性のデータベースとの関係性についての精査を行うことで、ヒト顎骨における荷重支持機能の定量的評価を行うことを目的とした。さらに、実験動物を用いて、負担過重・低荷重モデルの作製および解析と、荷重方向の違いによる局所応力の偏在傾向と結晶配向性について検討を加えることを目的として、異なる荷重条件下における顎骨骨梁のアパタイト配向性と力学機能を精査し、恒常性維持のために必要な力学的環境の一端を解明することとした。本研究はこうした新規発想をベースに、材料工学的手法の最先端から、これからの歯科医師に必須であるバイオメカニクス分野の評価基準を設定し、歯科医師による顎骨のナノレベル制御を可能にするものと期待される。学術的な価値は言うまでもなく、将来の骨質を考慮した顎骨再建や再生医療にも強く貢献できると確信している。歯を介して外部から加わる様々な荷重は、顎骨の構造を維持するために重要な役割を果たしている。特に顎骨の海綿質骨梁は、様々な機能圧の伝達・分散に関与するため、生体力学的に果たす役割は大きい。顎骨内部微細構造における精細な骨質解析と力学機能の評価は、将来のバイオメカニクスに基づく治療計画立案のために一刻も早く完遂されるべき最優先事項である。骨の力学機能は、骨密度のみならずアパタイト結晶のc軸配向性によって支配されることが見いだされている。それ故、皮質骨に加えて海綿骨における生体アパタイトの異方性を考慮した結晶学的アプローチを進めることで、未だ未知の領域である顎骨内部の力学的環境にアクセスすることができる。本研究ではまず、有歯顎・無歯顎における骨梁の連続的な結晶配向性を算出し、海綿骨領域におけるアパタイト配向性の地図を作製する。生体アパタイト結晶の配向性と力学特性のデータベースとの関係性について精査することで、ヒト顎骨における荷重支持機能の定量的評価を行う。さらに実験動物を用いて、負担過重・低荷重モデルの作製及び解析と荷重方向の違いによる局所応力の偏在傾向と結晶配向性について検討を加える。異なる荷重条件下における顎骨骨梁のアパタイト配向性と力学機能の関連について調査することで、恒常性維持のために必要な力学的環境の一端を解明する。本研究はこうした新規発想をベースに、材料工学的手法の最先端から、これからの歯科医師に必須であるバイオメカニクス分野の評価基準を設定し、歯科医師による顎骨のナノレベル制御を可能にするものと期待される。将来の骨質を考慮した顎骨再建や再生医療に大きく貢献できると確信している。歯を介して外部から加わる様々な荷重は、顎骨の構造を維持するために重要な役割を果たしている。特に顎骨の海綿質骨梁は、様々な機能圧の伝達・分散に関与するため、生体力学的に果たす役割は大きい。有歯顎、無歯顎、あるいはインプラント周囲顎骨の内部微細構造における精細な骨質解析と力学機能の評価は、将来のバイオメカニクスに基づく治療計画立案のために一刻も早く完遂されるべき最優先事項である。骨の力学機能は、骨密度のみならずアパタイトの異方性を考慮した結晶学的アプローチを進めることで、未だ未知の領域である顎骨内部の力学的環境にアクセスすることができる。本研究ではまず、有歯顎・無歯顎における骨梁の連続的な結晶配向性を算出し、海綿骨領域におけるアパタイト配向性の地図を作製する。生体アパタイト結晶の配向性と力学特性のデータベースとの関連性について精査することで、ヒト顎骨における荷重支持機能の定量的評価を行う。さらに実験動物を用いて、負担過重・低荷重モデルの作製及び解析と荷重方向の違いによる局所応力の偏在傾向と結晶配向性について検討を加える。異なる荷重条件下における顎骨骨梁のアパタイト配向性と力学機能の関連について調査することで、恒常性維持のために必要な力学的環境の一端を解明する。
KAKENHI-PROJECT-25463055
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アパタイト結晶配向性を指標とした顎骨骨梁のナノメカニクス
本研究はこうした新規発想をベースに、材料工学的手法の最先端から、これからの歯科医師に必須であるバイオメカニクス分野の評価基準を設定し、歯科医師による顎骨のナノレベル制御を可能にするものと期待される。将来の骨質を考慮した新しい顎骨再建手法の確立や骨の再生医療発展に大きく貢献できると確信している。顎骨内部微細構造のメカノバイオロジー解明のためには、(1)咀嚼荷重の負担・緩衝に関与している海綿骨領域のナノレベル特定、およびヒト顎骨における荷重支持機能の定量的評価と、(2)異なる荷重条件下における顎骨骨梁のアパタイト配向性と力学機能の精査による、恒常性維持のために必要な力学的環境の解明が必要である。顎骨内部の応力環境は、アパタイト結晶配向性と力学機能解析によってはじめて可視化と評価が可能となる。本研究は研究計画に基づき、ヒト顎骨における定量的解析と動物実験を用いた介入実験を予定通り終了したが、顎骨内部の応力環境のより精細な予測のためには細胞動態、特にインプラント周囲顎骨におけるオステオンの存在部位とその異方性について検討が不可欠であると考えた。そのため、新たに研究に供された歯科インプラントを含むヒト顎骨を用いた試料作製および解析を研究計画に追加した。平成27年度は前年度に引き続き、日本人成人遺体より採取した無歯顎骨における配向性3Dマッピングによるアパタイト結晶配向性地図を作製するとともに、ビーグル犬を用いた有歯顎モデル、無歯顎モデル、歯科インプラント埋入モデルを作製して骨密度計測、骨形態計測を行った。これに加えて、ヒト上下顎に埋入されたインプラント周囲顎骨におけるミクロ構造特性と応力環境の関連性について検討を行う計画を追加したため、当初の計画よりやや遅れる結果となり、平成28年度に追加実験とさらなる検討を行うこととした。歯を介して外部から加わる様々な荷重は、顎骨の構造を維持するために重要な役割を果たしている。特に顎骨の海綿質骨梁をはじめとする内部構造は様々な機能圧の伝達・分散に関与するため、生体力学的に果たす役割は大きい。有歯顎、無歯顎、あるいはインプラント周囲顎骨の内部微細構造における精細な骨質解析と力学機能の評価は、将来のバイオメカニクスに基づく治療計画立案のために一刻も早く完遂されるべき最優先事項である。骨の力学機能は、骨密度のみならずアパタイトの異方性を考慮した結晶学的アプローチを進めることで、いまだ未知の領域である顎骨内部の力学的環境にアクセスすることができる。本研究では、有歯顎・無歯顎における皮質骨および骨梁の連続的な結晶配向性を算出し、アパタイト配向性地図の作製を行った。生体アパタイト結晶の配向性と力学特性のデータベースとの関連性について精査することで、ヒト顎骨における荷重支持機能の定量的評価を行った結果、歯槽骨の特殊な構造的特徴はナノスケールにまで及ぶことが明らかとなった。さらにビーグル犬の口腔インプラント周囲顎骨の構造解析と荷重方向の違いによる局所応力の偏在傾向と結晶配向性について検討した。インプラント体近傍において、海綿骨領域においても多数のオステオンが確認され、その皮質骨様構造において特殊な荷重環境を見出し、口腔インプラント治療が顎骨の骨質に与える影響についてその一端を解明することができた。本研究は材料工学的手法の最先端から、これからの歯科医師に必須であるバイオメカニクス分野の評価基準を設定し、歯科医師による顎骨のナノレベル制御を可能にするものと期待される。
KAKENHI-PROJECT-25463055
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25463055
手術療法を受けたがん患者のリンパ浮腫に対する支援プログラムの開発と評価
がん手術療法後に生じるリンパ浮腫に対する予防を含めたケアの現状とリンパ浮腫患者の困難と対処の体験を明らかにし、予防介入プログラムを実施・評価した。その結果、予防を含めたケアの実施率はきわめて低いこと、患者はリンパ浮腫発症に戸惑い、試行錯誤しながら専門外来を受診している状況が明らかとなった。術直後から継続した予防介入プログラムの実施にもかかわらず、腋窩リンパ節郭清を行った乳がん術後患者の20%に左右差2cm以上の浮腫がみられたことは、改めて術前からの教育を行い、悪化防止の必要性を示唆するものである。がん手術療法後に生じるリンパ浮腫に対する予防を含めたケアの現状とリンパ浮腫患者の困難と対処の体験を明らかにし、予防介入プログラムを実施・評価した。その結果、予防を含めたケアの実施率はきわめて低いこと、患者はリンパ浮腫発症に戸惑い、試行錯誤しながら専門外来を受診している状況が明らかとなった。術直後から継続した予防介入プログラムの実施にもかかわらず、腋窩リンパ節郭清を行った乳がん術後患者の20%に左右差2cm以上の浮腫がみられたことは、改めて術前からの教育を行い、悪化防止の必要性を示唆するものである。今年度は、2つの研究を実施した。結果の概要を以下に示す。1.がん患者のリンパ浮腫に対する看護ケアの取り組みと患者・家族指導に関する実態調査乳がん、婦人科がん患者に対するリンパ浮腫への取り組みの実態を把握する目的で、看護部長宛に葉書にて調査趣旨を送付し、協力承諾が得られた施設(190)に質問紙を郵送した。回答の得られた135施設について分析した。リンパ浮腫予防のためのケアを全手術患者に実施している施設は31.5%でリスクが高い患者には43.5%が実施していた。浮腫が発生したがん患者へのケア内容は浮腫症状の苦痛の有無と程度、スキンケアの必要性と方法、皮膚損傷予防の必要性と注意点、体に負担をかけない日常生活上の注意点などが上位を占めた。ケア方法は口頭指導、デモンストレーション、既存資料やパンフレットの使用などが多かった。ケア実施上の困難としては専門家の不足、ケア体制の未確立、診療報酬に結びつかないなどが挙げられた。今後必要なケアとしては、保保険適応診療の確立、セルフケア支援の充実、心理・社会的側面のケアの充実などが上位を占めた。2.リンパ浮腫のあるがん患者の日常生活の困難と対処方法に関する質的研究対象者が通院する施設の倫理審査委員会の承認を得て、4060歳代の4名の婦人科系がん愚者に面接を行った。生活上の困難としては、正座や長時間の同一体位などの体位の制限、ヒールの高い靴や左右同一サイズの靴が履けないなどが語られた。また衣生活面ではスカートがはけない、ロングスカートが多くなった、ストレッチ式のズボンが多くなったなどの制約が聞かれた。日常生活の工夫では、疲れたら休む、就寝中の挙上などが挙げられた。リンパ浮腫に対する思いでは、浮腫出現時は「何が起こったかわからない」と認識し、受診時は「浮腫は完治が困難」と告げられショックを受けていた。リンパ外来に通院し、家族や医療者の協力・励ましによって、「浮腫とつきあっていくしかない」と考えるようになっていた。一連の過程を振り返って、術後早期の段階からの情報提供の必要性が示唆された。今年度は以下の2つを実施した。結果の概要を以下に示す。1.婦人科がん術後患者が下肢リンパ浮腫と折り合いを付けた生活を獲得するプロセスに関する質的研究1)対象、方法:A病院のリンパ外来に通院する婦人科がん術後患者13名の面接内容を修正版グランデッド、セオリ、アプローチを用いて分析した。調査は、対象者の通院する施設の倫理委員会の承認を得て面接を行った。2)結果擁要:婦人科がん術後に下肢リンパ浮腫が出現した患者は,【リンパ浮腫の自覚と自己判断での症状改善の模索体験】を経験した後,【リンパ浮腫と折り合いをつける生活の促進体験】と【リンパ浮腫と折り合いをつける生活の阻害体験】を経て,【リンパ浮腫とともに生きる決意】という経過をたどっていた。これらから,看護師は,リンパ浮腫発症の可能性について十分認識できるようにするとともに,予防行動の重要性と具体的な方法を指導することが重要である。また,発症した患者に対しては,セルフケアが継続して実施できるよう,浮腫に対するコントロール感覚を高めるような支援が必要である。このためには,リンパ浮腫患者、家族に対する支援体制を整える必要性が示唆された。2.乳がん患者に対するリンパ浮腫予防介入1)対象:A病院の乳がん手術患者を対象に,術後リンパ浮腫予防のための教育的介入を行い,一部の評価を行った。今後,プログラムの修正を行い,事例を積み重ねる予定である。今年度はこれまでの研究成果をふまえて、作成した心理教育的介入プログラムを実施し評価した。1.対象:研究承諾の得られた初回乳がん手術(腋窩リンパ節郭清施行)患者20名。2.方法:1)介入時期:手術後56日目(退院前)、術後2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月の4時点で縦断的に実施した。2)介入内容:セルフケアの必要性、浮腫発見方法、セルフドレナージ(以後SLD)方法と禁忌、日常生活上の注意事項などを今回の研究で作成した冊子とDVD教材を使用して実施した。さらにSLDの実施状況の確認、生活上の困難点や疑問点の傾聴や支持、不足しているケアの提案など。
KAKENHI-PROJECT-18592342
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18592342
手術療法を受けたがん患者のリンパ浮腫に対する支援プログラムの開発と評価
3)評価方法:退院時の術側上肢周囲径(5点)を基準値として、その増減を対応のあるt検定で分析した。また、質問紙を用いて介入内容を評価した。3.結果の概要1)術側周囲径の増減:術直後を基準値とした術側5点の周囲径と術後2・4・6ヶ月後の周囲径には有意差は認められなかった。しかし、20名中4名(20%)に浮腫が発症しスリーブの処方を行った。2)質問紙による評価:介入プログラム内容や方法は概ね、適切であった。介入によりSLD,日常生活の注意事項は概ね遵守できていたが、SLDが正確に実施できるか不安を持っている者もみられた。また、根気よく続ける必要性は認識しながらも継続することの困難を感じる者もみられた。4.まとめと展望限られた対象で、術直後から介入を継続的行ったにもかかわらず、20%に浮腫発生がみられたことは、あらためて予防介入の重要性が示唆された。今後は、継続データを収集するとともに、教育教材の修正、継続支援のシステム化、さらには、婦人科がん術後患者に対するプログラムの開始について検討する。
KAKENHI-PROJECT-18592342
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18592342
プロテオミクスを用いたMuSK蛋白の機能、構造とその異常による疾患の解析
神経筋シナプス接合部の形成とその機能保持に、リセプター型タイロシンカイネース(RTK)であるmuscle specific kinase(MuSK)は重要な機能を果たしている。我々は、この機能とその異常による疾患について、これまで大きな成果をあげることができた。重症筋無力症(MG)は、シナプス接合部後膜のアセチルコリンリセプター(AChR)、さらにMuSKに対する自己抗体により、シナプスの機能不全を誘発して発症することが知られていた。我々はMuSK自己抗体の鋭敏な測定法を開発することにより、両方の自己抗体を有する患者が存在することを世界に先駆けて発見し報告した(Neurology.2004.in press)。さらに、リコンビナントMuSK細胞外ドメインを作成してウサギに免疫することにより、筋力低下など重症筋無力症様の症状を実験的に誘発することに成功した。したがってこのウサギのMuSKに対する自己抗体を精製して、MuSKの機能および重症筋無力症の分子病態について解析を行うことが可能となった。神経筋シナプス接合部では、運動神経終末から分泌されるヘパリン硫酸プロテオグリカンであるagrinによってMuSKが活性化されAChR凝集が誘導されるが、agrin非依存性の刺激によってもAChR凝集が誘導されることが知られていた。驚くべきことに、我々は上記の抗MuSK自己抗体が、agrin非依存性のAChR凝集も特異的に抑制することを発見した(論文投稿中)。さらにMG患者の抗MuSK抗体も、同様の活性を有することを発見した(論文投稿中)。我々の結果から、自己抗体によるMuSK機能異常によるAChR凝集阻害が,重症筋無力症の分子病態そのものであると考えられる。今後、次のように研究を展開させる。すなわち、MuSKの機能をさらに解析するために、MuSK蛋白高次構造の解明を行っている。我々は、MuSK細胞外ドメイン蛋白の大量精製を確立した。そして、その結晶化のスクリーニングを進めている。またMuSKの機能をinvivoで明らかにすべくMuSK-LacZノックインマウスの作成解析を進めている。質量分析解析で明らかにしたMuSK関連シグナル伝達候補遺伝子の機能解析を行う。神経筋シナプス接合部の形成とその機能保持に、リセプター型タイロシンカイネース(RTK)であるmuscle specific kinase(MuSK)は重要な機能を果たしている。我々は、この機能とその異常による疾患について、これまで大きな成果をあげることができた。重症筋無力症(MG)は、シナプス接合部後膜のアセチルコリンリセプター(AChR)、さらにMuSKに対する自己抗体により、シナプスの機能不全を誘発して発症することが知られていた。我々はMuSK自己抗体の鋭敏な測定法を開発することにより、両方の自己抗体を有する患者が存在することを世界に先駆けて発見し報告した(Neurology.2004.in press)。さらに、リコンビナントMuSK細胞外ドメインを作成してウサギに免疫することにより、筋力低下など重症筋無力症様の症状を実験的に誘発することに成功した。したがってこのウサギのMuSKに対する自己抗体を精製して、MuSKの機能および重症筋無力症の分子病態について解析を行うことが可能となった。神経筋シナプス接合部では、運動神経終末から分泌されるヘパリン硫酸プロテオグリカンであるagrinによってMuSKが活性化されAChR凝集が誘導されるが、agrin非依存性の刺激によってもAChR凝集が誘導されることが知られていた。驚くべきことに、我々は上記の抗MuSK自己抗体が、agrin非依存性のAChR凝集も特異的に抑制することを発見した(論文投稿中)。さらにMG患者の抗MuSK抗体も、同様の活性を有することを発見した(論文投稿中)。我々の結果から、自己抗体によるMuSK機能異常によるAChR凝集阻害が,重症筋無力症の分子病態そのものであると考えられる。今後、次のように研究を展開させる。すなわち、MuSKの機能をさらに解析するために、MuSK蛋白高次構造の解明を行っている。我々は、MuSK細胞外ドメイン蛋白の大量精製を確立した。そして、その結晶化のスクリーニングを進めている。またMuSKの機能をinvivoで明らかにすべくMuSK-LacZノックインマウスの作成解析を進めている。質量分析解析で明らかにしたMuSK関連シグナル伝達候補遺伝子の機能解析を行う。1.Muskリセプター型対ロシンカイネースによるアセチルコリンリセプター(AChR)凝集のシグナル機構解析を行うために,Musk活性化(タイロシンリン酸化)に伴ってリン酸化されるかあるいはリン酸化蛋白に結合する蛋白を二次元電気泳動で解析を行っている。さらに質量分析装置を用いて蛋白の同定を試み、有力な候補遺伝子についてクローニングを行いGFPとのキメラ遺伝子を作成し、AChRの凝集刺激による細胞内局在の変化の解析を行っている。2.Musk蛋白の細胞外ドメインの機能はagrinと未知リガンドとの結合だけでなく、AChR凝集のエフェクター分子として必要であることを示した(論文投稿準備中)。我々の結果からMusK細胞外ドメインの別の機能(3番目)の存在についても示唆され、今後も解析を行う。3.Musk蛋白の高次構造を決定するために、Musk蛋白の大量精製を行っている。酵母(Pichia)と、浮遊細胞として順化されたcos7細胞の両方で発現を行っている。X線結晶解析のためにはさらに蛋白を精製する必要がある。4.重症筋無力症の患者血清に含まれるMusk抗体の検出感度を上げるべくリコンビナントMusk蛋白の改良を行っている。
KAKENHI-PROJECT-14580745
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14580745
プロテオミクスを用いたMuSK蛋白の機能、構造とその異常による疾患の解析
またMuSK抗体による分子病態について新しい重要な知見を得ている。5.Muskノックインマウスを用いてMuskの発現、機能解析を行っている。Muskは他の組織でも重要な機能を果たしていることを示す結果を得ている。ホモマウスの形質解析および関連する別の遺伝子のノックアウトマウスの作成を開始している。神経筋シナプス接合部の形成とその機能保持に、リセプター型タイロシンカイネース(RTK)であるmuscle specific kinase (MuSK)は重要な機能を果たしている。我々は、この機能とその異常による疾患について、これまで大きな成果をあげることができた。重症筋無力症(MG)は、シナプス接合部後膜のアセチルコリンリセプター(AChR)、さらにMuSKに対する自己抗体により、シナプスの機能不全を誘発して発症することが知られていた。我々はMuSK自己抗体の鋭敏な測定法を開発することにより、両方の自己抗体を有する患者が存在することを世界に先駆けて発見し報告した(Neurology. 2004. in press)。さらに、リコンビナントMuSK細胞外ドメインを作成してウサギに免疫することにより、筋力低下など重症筋無力症様の症状を実験的に誘発することに成功した。したがってこのウサギのMuSKに対する自己抗体を精製して、MuSKの機能および重症筋無力症の分子病態について解析を行うことが可能となった。神経筋シナプス接合部では、運動神経終末から分泌されるヘパリン硫酸プロテオグリカンであるagrinによってMuSKが活性化されAChR凝集が誘導されるが、agrin非依存性の刺激によってもAChR凝集が誘導されることが知られていた。驚くべきことに、我々は上記の抗MuSK自己抗体が、agrin非依存性のAChR凝集も特異的に抑制することを発見した(論文投稿中)。さらにMG患者の抗MuSK抗体も、同様の活性を有することを発見した(論文投稿中)。我々の結果から、自己抗体によるMuSK機能異常によるAChR凝集阻害が,重症筋無力症の分子病態そのものであると考えられる。今後、次のように研究を展開させる。すなわち、MuSKの機能をさらに解析するために、MuSK蛋白高次構造の解明を行っている。我々は、MuSK細胞外ドメイン蛋白の大量精製を確立した。そして、その結晶化のスクリーニングを進めている。またMuSKの機能をin vivoで明らかにすべくMuSK-LacZノックインマウスの作成解析を進めている。質量分析解析で明らかにしたMuSK関連シグナル伝達候補遺伝子の機能解析を行う。
KAKENHI-PROJECT-14580745
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イギリス地方分権改革に伴う地方行政法理の変容とその行政法学への影響に関する研究
本研究では、今日の地方行政にかかわる法と仕組みの一端を明らかにすることを目指し、イギリスの自治体外部監査制度に関する歴史的検討を行った。その結果、1イギリスの自治体外部監査は、19世紀以降その基本的仕組みがほとんど変化しない安定した制度であること、2自治体の財務会計行為に関する統制法理としての受託者の義務が果たしてきた歴史的役割は大きいものの、その具体的意義は時代によって異なっていること、3地方分権化の観点からは、能率監査の結果と国から自治体へ配分される補助金の額と連動させることは、自治体の裁量権を統制する結果を招き望ましくないことなどが明らかとなった。本年度も、昨年度に引き続き、早稲田行政法研究会、イギリス行政法研究会、北陸公法判例研究会等での報告を通じ、日本並びにイギリスにおける自治体財政に対する監査制度にかかわる知見を広げることができた。また、イギリスの地方行政全般の現状、及び自治体会計監査制度にかかわる文献収集を行い、主として、イギリスにおける今日の(1970年代以降の)自治体の財務会計行為に対する外部監査制度の仕組み及びその効果についての検討を行った。その結果、第一に、日本における自治体監査制度が、いわば自治体内部での自治監査を原則としており、また、不正または非違の摘発は副次的な目的であるという基本的思考に立脚するものと評価できるのに対し、イギリスにおけるオーディターによる自治体外部監査制度は、自治体外から派遣されるオーディターが、不正の摘発をもその主要な責務として監査を行う点において、効率的かつ適正な自治体運営を担保することに対する寄与度は高いと評価できることが確認できた。また第二に、自治体の財務会計行為の適法性判断基準について、日本、イギリスともに自治体の裁量権の存在を前提として、裁量権の逸脱濫用が認められる場合に、これを違法とする点では共通していること、しかし、裁量権の逸脱濫用の有無の認定について、日本の場合、いわゆる「最小限の審査」が採られる場合が少なくないのに対して、イギリスでは、財務会計に関する裁量統制が比較的厳格に行われていることが確認できた。そして、こうした成果の一部を、長内祐樹「イギリスにおける自治体外部監査の制度的特徴」『「地域主権改革」と地方自治(地方自治叢書24)』(敬文堂、2012年)及び、長内祐樹「住民訴訟の係属中にその市の損害賠償請求権を放棄する市議会の議決を違法とした原審の判断に違法があるとされた事例」早稲田法学88巻1号(2013年)として公表することができた。本年度も、早稲田行政法研究会、イギリス行政法研究会、行政法研究フォーラム等への参加を通じて、日英における自治体財政に対する監査制度にかかわる知見を広げることができた。また、イギリスの地方行政法及び自治体会計監査制度にかかわる文献収集を行い、とりわけイギリスにおける今日の(1970年代以降の)自治体の財務会計行為に対する外部監査制度を通じた裁量統制について、その判例理論の変遷を歴史的観点から検討を行った。また、近時の会計監査委員会廃止に象徴される自治体外部監査制度改革の動向についての分析も行った。その結果、イギリスにおける自治体の財務会計行為は、19世紀においては法人財産に対する受託者の義務の適用という形で統制されていたが、地方団体が国会制定法にその根拠を有する今日的自治体として再定義されるようになる19世紀末以降は、今日に至るまで、いわゆるアルトラヴァイリーズの法理が財務会計行為を含む自治体の諸活動に適用されるようになっていること、但し、自治体の財務会計行為の裁量統制に関して言えば、前者は後者を判断する際の考慮事項として包摂されていることなどが明らかとなった。また、近時の会計監査委員会廃止の議論は、オーディターによる会計監査制度のあり方に問題があるというよりは、むしろ、会計監査委員会がかかわる自治体の活動に関する業績評価(能率監査)制度、とりわけ、その結果が国庫から自治体へ配分される補助金の増減に連動する「包括的地域評価(Comprehensive Area Assessment: CAA)」という仕組みが、自治体の裁量権拡大という近年のイギリス地方分権改革の動向にそぐわないとみなされていることに起因する部分が大きいことなどが明らかとなった。本研究では、今日の地方行政にかかわる法と仕組みの一端を明らかにすることを目指し、イギリスの自治体外部監査制度に関する歴史的検討を行った。その結果、1イギリスの自治体外部監査は、19世紀以降その基本的仕組みがほとんど変化しない安定した制度であること、2自治体の財務会計行為に関する統制法理としての受託者の義務が果たしてきた歴史的役割は大きいものの、その具体的意義は時代によって異なっていること、3地方分権化の観点からは、能率監査の結果と国から自治体へ配分される補助金の額と連動させることは、自治体の裁量権を統制する結果を招き望ましくないことなどが明らかとなった。本年度は、早稲田行政法研究会、あるいは平成24年3月に開催されたイギリス行政法研究会等に参加し、自治体の裁量権に関する日本並びにイギリスにおける立法措置並びに司法統制の仕組みの相違についての知見を広げることができた。また、イギリスの地方行政の沿革並びに現状にかかわる文献収集を行い、1970年代までのイギリスにおける自治体の財務会計行為に対する外部監査制度の沿革及びその特質についての検討を行った。その結果、第一に、イギリスにおける自治体監査制度が優れて外部的なものであり、自治体の財務会計行為に対する統制も、納税者と自治体の公共信託関係に基づいた厳格な統制理論によって運営されてきたものであることを明らかにできた。また第二に、イギリスにおける一般的な裁量統制理論である権限踰越の法理が必ずしも厳格なものとはいえないところ、自治体の財務会計行為の適否については、これが公共信託理論に基づいて判断される結果、少なくとも財務会計行為に関しては、より厳格な裁量統制が行われてきたことを明らかにできた。
KAKENHI-PROJECT-23730018
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イギリス地方分権改革に伴う地方行政法理の変容とその行政法学への影響に関する研究
そしてそれらの成果として、「自治体に対する外部監査制度の法と仕組みー英国におけるオーディターによる自治体外部監査制度その沿革と特質(一)」(金沢法学54巻1号、2011年)を公表することができた。また、1980年代以降のイギリスにおける自治体の裁量権並びにその統制のあり方について考察する前提としての、日本並びにイギリスにおける立法的な裁量権拡大措置やそのための自治体の組織的なあり方についての若干の検討を行うこともでき、その成果の一部を「地方行政における自治体の裁量権と公私協働」(榊原秀訓編著『行政サービスの提供主体の多様化と行政法』(日本評論社、2012年))、「自治体の広域化と地方自治」(法律時報84巻3号、2012年)として公表することができた。本年度は、当初、イギリスにおける海外調査を予定していたものの、私事ではあるが子供の誕生という事情からこれを断念せざるをえなかった。しかし、国内の研究会や学会、あるいは文献等による知識収集を積極的に行った。そしてその結果として、1970年代以降のイギリスにおける自治体財務会計への統制制度について、包括的な理解が得られ、またその成果を大学紀要において公表することができたことから、研究は概ね順調に進展していると考える。本年度は、本科研の主たる研究対象であるイギリスにおける自治体の財務会計行為についての統制のあり方については、その1970年代までの制度的沿革を検討する一方で、80年代以降については検討の途上である。しかし他方で、1970年代までの自治体の財務会計行為についての司法統制の基本的姿勢を明らかにできたこと、また、自治体の裁量権のあり方及びその統制と地方分権改革の関連性について、日英両国の比較法的視点からの傾向分析ができたことから、研究初年度としての進捗状況としては概ね順調に進展していると考える。来年度も、まず学会や研究会への参加や文献収集を通じて、本研究テーマに関連する情報を積極的に得る。そしてイギリスにおける自治体の財務会計行為における裁量権とその統制のあり方について、地方分権改革に伴う立法的措置を踏まえながら検討を進め、その成果を論文としてまとめ2013年度後半ないし2014年度前半までには公表する予定である。また、それと同時に、とりわけ財務会計行為に関する自治体の裁量統制の観点から、イギリスにおける2000年以降の地方分権改革の方向性とその意義についての検討を進める。来年度も、まず学会や研究会への参加や文献収集を通じて、本研究テーマに関連する情報を積極的に得る。そして80年代以降のイギリスにおける自治体の裁量権について、とりわけその統制システムとしての外部監査制度の沿革と特質を明らかにし、その成果を論文としてまとめ2012年度後半ないし2013年度前半までには公表する予定である。また、それと同時に、とりわけ財務会計行為に関する自治体の裁量統制の観点から、イギリスにおける2000年以降の地方分権改革の方向性とその意義についての検討を進める。
KAKENHI-PROJECT-23730018
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ファイバブリルアン光相関領域歪・温度分布測定法の機能高度化とシステム簡素化の両立
光ファイバ中の自然ブリルアン散乱を分布測定して光ファイバに加わる歪分布を得る独自の光ファイバ神経網技術「BOCDR法」に、二つの独自背景光雑音低減手法と二つの独自測定レンジ延伸手法を統合したシステムを稼働させ、5,280m光ファイバ長で3.95cm分解能での分布測定に成功し、性能指数(両者比) 134,000を達成してきた。一方、システム複雑化が信号強度や測定速度を制限していた。本研究では、BOCDR法の構造物健全性診断機能を維持・向上させつつ、システムを簡素化する研究に挑戦している。2018年度の研究では、背景光雑音低減法の「光位相変調法:PM法」を簡素化する技術を進化させた。自然ブリルアン散乱のスペクトラム計測には干渉を活用する。PM法では参照光にPM変調を施して信号成分を減じ、疑似背景光雑音を得る。これをシステム出力から減算して背景光雑音の低減を図る。本グループは、この低減原理を数式表現することに成功し、計算処理だけでPM法の光雑音低減機能を実現する簡素化技術を提案してきた。本年度は、「計算PM法」のシミュレーション法と実験系を構築し、背景光雑音を効果的に低減する計算処理フィルタ形状を合成できた。実験データに本フィルタ計算を施し、優れた雑音低減効果と空間分解能向上効果を実現した。計算PM法の計算式の導出には、誘導ブリルアン散乱を活用したBOCDA法の基本式を使用してきた。本年度の研究にて、両技術の基本式が一致することが証明でき、計算PM法の理論的厳密性も実証できた。「優れたフィルタ形状構築」と「理論厳密化」が2018年度の計画テーマであったが、両者に関し十分な成果を挙げ得た。2年目に研究予定であった背景光雑音低減法「光強度変調法:IM法」についても、BOCDA系での研究にて簡素化技術を提案・実証でき、BOCDR法での活用にも目途がついている。研究計画調書に記載したように、2018年度の具体的な研究テーマは、(1)計算PM法の厳密原理式の導出、ならびに(2)計算PM法で活用するフィルタ形状の最適化、であった。本実績報告書の6項に記載したように、これら二つの具体的テーマに関し、2018年度に十分な成果が得られている。本研究計画全体としては、「光位相変調法:PM法」と「光強度変調法:IM法」という二つの背景光雑音低減法、ならびに「テンポラルゲート法:TG法」と「二重光周波数変調法:DM法」という二つの測定レンジ延伸法を含めた、合計4つの機能向上手法を組み込んだBOCDRシステムにおいて、本研究で開発するシステム簡素化技術をも統合することによって、高い機能とシステムの簡素化を両立させることを目的としている。これら4手法のうちのIM法では、従来、光強度変調器をBOCDRシステム中に加えて光源の時間平均スペクトラム形状を整形することにより、背景光雑音を低減した。一方、本研究の計画調書において、BOCDR法での分布測定原理を発現するための光源光周波数変調を特別に合成した波形で施すだけで、光強度変調器を用いないでもIM法の機能を実現できる手法を提示していた。この手法に関しては、2018年度に、BOCDR法の兄弟技術である誘導ブリルアン散乱を活用するBOCDA法の研究において、その原理の有効性を示すことに成功している。つまり、BOCDRシステムにおけるIM法の簡素化の実現にも目途がたっている。その結果、9項で詳述するように、本研究計画の3年目に設定した研究の一部を2年目に前倒しすることが可能となり、研究の進展を加速できる状況となっている。このように、本研究は、順調に進展していると考える。3年計画である本研究の第2年度(2019年度)の当初計画では、二つ目の背景光雑音低減手法IM法の簡素化技術を研究する計画であった。しかし、8項に記載したように、2018年度に、BOCDR法の兄弟技術であるBOCDA法に関して並進させていた研究において、IM法の簡素化技術のひとつを実証することができた。この成果を基盤として、BOCDR法においても、IM法の簡素化が可能であるとの目途がついた。そこで、4つの要素手法に関する研究の実施順序を入れ替えることで、研究の進展を加速することができると考えた。新たな2019年度の研究計画では、計算PM法により簡素化されたBOCDRシステムに独自測定レンジ延伸手法である「二重光周波数変調法:DM法」を統合し、背景光雑音を低減しつつ測定レンジを延伸した新システム構成に関する研究を展開する。具体的には以下のようである。(1)シミュレーションによる新システム構成の機能確認:まず、構築したシミュレーション法を駆使して、上記計算PM法のフィルタ機能をさらに向上させる。フィルタ計算で得られる歪量の精度評価によって、さらに優れたフィルタ形状を探索する。DM法を含むBOCDRシステムの出力スペクトラムをシミュレーション計算して、本系における計算PM法の背景光雑音低減と空間分解能改善の効果を検証する。(2)基本BOCDRシステムにDM法を実装した実験系の構築: DM法を含むBOCDR実験系を構築し、計算PM法とDM法を併用した際のBOCDR出力を実測する。背景光雑音の低減と測定レンジ・分解能比の向上が実現できることを確認する。
KAKENHI-PROJECT-18H01455
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H01455
ファイバブリルアン光相関領域歪・温度分布測定法の機能高度化とシステム簡素化の両立
最終年度(2020年度)には、第2の測定レンジ延伸法であるTG法もBOCDR系に導入するとともに、BOCDA法に関するIM法の研究成果を活かして、IM法簡素化技術をもBOCDR系に導入して、本研究計画を完成させる計画である。光ファイバ中の自然ブリルアン散乱を分布測定して光ファイバに加わる歪分布を得る独自の光ファイバ神経網技術「BOCDR法」に、二つの独自背景光雑音低減手法と二つの独自測定レンジ延伸手法を統合したシステムを稼働させ、5,280m光ファイバ長で3.95cm分解能での分布測定に成功し、性能指数(両者比) 134,000を達成してきた。一方、システム複雑化が信号強度や測定速度を制限していた。本研究では、BOCDR法の構造物健全性診断機能を維持・向上させつつ、システムを簡素化する研究に挑戦している。2018年度の研究では、背景光雑音低減法の「光位相変調法:PM法」を簡素化する技術を進化させた。自然ブリルアン散乱のスペクトラム計測には干渉を活用する。PM法では参照光にPM変調を施して信号成分を減じ、疑似背景光雑音を得る。これをシステム出力から減算して背景光雑音の低減を図る。本グループは、この低減原理を数式表現することに成功し、計算処理だけでPM法の光雑音低減機能を実現する簡素化技術を提案してきた。本年度は、「計算PM法」のシミュレーション法と実験系を構築し、背景光雑音を効果的に低減する計算処理フィルタ形状を合成できた。実験データに本フィルタ計算を施し、優れた雑音低減効果と空間分解能向上効果を実現した。計算PM法の計算式の導出には、誘導ブリルアン散乱を活用したBOCDA法の基本式を使用してきた。本年度の研究にて、両技術の基本式が一致することが証明でき、計算PM法の理論的厳密性も実証できた。「優れたフィルタ形状構築」と「理論厳密化」が2018年度の計画テーマであったが、両者に関し十分な成果を挙げ得た。2年目に研究予定であった背景光雑音低減法「光強度変調法:IM法」についても、BOCDA系での研究にて簡素化技術を提案・実証でき、BOCDR法での活用にも目途がついている。研究計画調書に記載したように、2018年度の具体的な研究テーマは、(1)計算PM法の厳密原理式の導出、ならびに(2)計算PM法で活用するフィルタ形状の最適化、であった。本実績報告書の6項に記載したように、これら二つの具体的テーマに関し、2018年度に十分な成果が得られている。本研究計画全体としては、「光位相変調法:PM法」と「光強度変調法:IM法」という二つの背景光雑音低減法、ならびに「テンポラルゲート法:TG法」と「二重光周波数変調法:DM法」という二つの測定レンジ延伸法を含めた、合計4つの機能向上手法を組み込んだBOCDRシステムにおいて、本研究で開発するシステム簡素化技術をも統合することによって、高い機能とシステムの簡素化を両立させることを目的としている。これら4手法のうちのIM法では、従来、光強度変調器をBOCDRシステム中に加えて光源の時間平均スペクトラム形状を整形することにより、背景光雑音を低減した。一方、本研究の計画調書において、BOCDR法での分布測定原理を発現するための光源光周波数変調を特別に合成した波形で施すだけで、光強度変調器を用いないでもIM法の機能を実現できる手法を提示していた。
KAKENHI-PROJECT-18H01455
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H01455
自然言語の論理構造--普遍文法の原則とパラメータの理論--
本年度は,自然言語の論理構造が文法構造に最もよく反映されている現象として,いわゆるWH表現を含む構文の問題を取り上げた.特に,表層構造では節の先頭にWH表現が現われる英語のような言語と,文中の項の位置にWH句が自由に現れる日本語のような言語とを対比的に検討し,そのような表層構造の相異がどのような文法上の特性から帰因するのかを議論した.このことは,生成文法理論の枠組では,「移動規則」の有無の問題ということになる.英語などの言語で「移動」が要求されるのは,究極的には,これらの言語では句表現の内部で「指定部」と「主部」の間の,素性に関する一致が要求される,ということが最も重要な要因として挙げられる.一方,日本語などの言語でも「論理形式」のレベルではWH表現が移動を受ける,と考える根拠がある.その根拠の要因となる事項を検討し,最も重要な要因として,「スコープ」と「数量調としての意味」の問題が挙げられた.この研究の基本にあるのは,「パラメータの理論」,即ち自然言語の間に見られる差異は,その差異に直接関っている規則そのものの有無に言及するのではなく,その規則の有無を強制的に帰結させるような独立した根拠を,普遍文法が与える,ある項目に関して,当該言語がどのような選択をするか,によって説明しようとするものである.今後の研究としては,日・英語以外の言語のWH構文, WH構文以外の数量的概念を表す現象について考察して行くつもりである.本年度は,自然言語の論理構造が文法構造に最もよく反映されている現象として,いわゆるWH表現を含む構文の問題を取り上げた.特に,表層構造では節の先頭にWH表現が現われる英語のような言語と,文中の項の位置にWH句が自由に現れる日本語のような言語とを対比的に検討し,そのような表層構造の相異がどのような文法上の特性から帰因するのかを議論した.このことは,生成文法理論の枠組では,「移動規則」の有無の問題ということになる.英語などの言語で「移動」が要求されるのは,究極的には,これらの言語では句表現の内部で「指定部」と「主部」の間の,素性に関する一致が要求される,ということが最も重要な要因として挙げられる.一方,日本語などの言語でも「論理形式」のレベルではWH表現が移動を受ける,と考える根拠がある.その根拠の要因となる事項を検討し,最も重要な要因として,「スコープ」と「数量調としての意味」の問題が挙げられた.この研究の基本にあるのは,「パラメータの理論」,即ち自然言語の間に見られる差異は,その差異に直接関っている規則そのものの有無に言及するのではなく,その規則の有無を強制的に帰結させるような独立した根拠を,普遍文法が与える,ある項目に関して,当該言語がどのような選択をするか,によって説明しようとするものである.今後の研究としては,日・英語以外の言語のWH構文, WH構文以外の数量的概念を表す現象について考察して行くつもりである.
KAKENHI-PROJECT-62210017
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62210017
熱化学的エネルギー変換の工学的研究
本研究は、熱一化学直接エネルギー変換技術の実用化を目ざし、ハロゲン-硫黄素熱化学サイクルを中心とした水の多段熱化学分解法による水素製造プロセスの開発を目的としており、各種熱化学プロセスの基礎研究、ベンチスケールプラントの開発と反応装置材料の開発を行なった。(1)熱化学基本プロセスの研究:KN【O_3】-【I_2】系サイクルにおける熱化学反応の詳細な検討を行なった。金属酸化物の硫酸への溶解反応を調べ、新たな熱化学プロセスの提案を行なった。また、HBr気相電解における電極の最適条件を見出した。(2)熱化学サイクルプラントの開発:UT-3サイクルのCa系、Fe系固体反応物の調製法と臭素化反応への効果を明らかにした。硫酸系ハイブリッドサイクルへの溶融塩電解の適用を試み、その利点と問題点を明らかにした。(3)熱化学反応装置材料の開発:【SO_2】-【O_2】-【SO_3】,囲気における純金属や市販合金の腐食挙動を調べ、生成皮膜の剥離を防止することが最も重要であることを結論した。合金パイプ内壁へのsiおよび【SiO_2】膜のCVDコーティングの手法を確立した。(4)水素貯蔵材料の開発:水素貯蔵用合金微粉体の飛散防止としてシリコン-ゴムによる被覆法が有効かつ実用的であることを示した。(5)ヒドラジン製造法の開発:固体化相間移動触媒を用いたアジン-ヒドラジン変換反応を検討し、連続反応試験により反応装置型式の最適化を行なった。本研究は、熱一化学直接エネルギー変換技術の実用化を目ざし、ハロゲン-硫黄素熱化学サイクルを中心とした水の多段熱化学分解法による水素製造プロセスの開発を目的としており、各種熱化学プロセスの基礎研究、ベンチスケールプラントの開発と反応装置材料の開発を行なった。(1)熱化学基本プロセスの研究:KN【O_3】-【I_2】系サイクルにおける熱化学反応の詳細な検討を行なった。金属酸化物の硫酸への溶解反応を調べ、新たな熱化学プロセスの提案を行なった。また、HBr気相電解における電極の最適条件を見出した。(2)熱化学サイクルプラントの開発:UT-3サイクルのCa系、Fe系固体反応物の調製法と臭素化反応への効果を明らかにした。硫酸系ハイブリッドサイクルへの溶融塩電解の適用を試み、その利点と問題点を明らかにした。(3)熱化学反応装置材料の開発:【SO_2】-【O_2】-【SO_3】,囲気における純金属や市販合金の腐食挙動を調べ、生成皮膜の剥離を防止することが最も重要であることを結論した。合金パイプ内壁へのsiおよび【SiO_2】膜のCVDコーティングの手法を確立した。(4)水素貯蔵材料の開発:水素貯蔵用合金微粉体の飛散防止としてシリコン-ゴムによる被覆法が有効かつ実用的であることを示した。(5)ヒドラジン製造法の開発:固体化相間移動触媒を用いたアジン-ヒドラジン変換反応を検討し、連続反応試験により反応装置型式の最適化を行なった。
KAKENHI-PROJECT-61040009
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フィンランドの児童の思考と信念の特質と環境要因に関する心理学的研究
本研究では,フィンランドの児童の思考の特質や,学習や人間関係を規定する信念,それらに影響する環境要因を,観察,面接,調査などの心理学的方法を用いて検討した。授業場面や学童保育の活動場面の観察や,児童に対する個別面接などの結果,フィンランドの児童の思考には日常生活と関連づけられた多様性がみられ,思考プロセスを友人や教師に表現することが明らかになった。また,他者との協同を重視する学習観や,大人や子どもの各段階に価値を見いだす人間観も示された。さらに教師や学童保育指導員への面接などから,それらの思考や信念が,個人の発達を支援する教育観や教師・指導員・保護者の協同により支えられていることが示唆された。本研究では,フィンランドの児童の思考の特質や,学習や人間関係を規定する信念,それらに影響する環境要因を,観察,面接,調査などの心理学的方法を用いて検討した。授業場面や学童保育の活動場面の観察や,児童に対する個別面接などの結果,フィンランドの児童の思考には日常生活と関連づけられた多様性がみられ,思考プロセスを友人や教師に表現することが明らかになった。また,他者との協同を重視する学習観や,大人や子どもの各段階に価値を見いだす人間観も示された。さらに教師や学童保育指導員への面接などから,それらの思考や信念が,個人の発達を支援する教育観や教師・指導員・保護者の協同により支えられていることが示唆された。本研究では、フィンランドの児童の思考の特質や、学習や人間関係を規定する信念、それらに影響する環境要因を,観察・面接・調査という心理学的方法を用いて明らかにする。1.児童の思考と信念の特質の検討(観察研究):フィンランドの4つの小学校で算数科を中心とした授業場面の観察を行い、1単位時間の授業ごとに教師の発問に対する児童の発言を分析した。全般的傾向として,児童の発言は教科書に沿った定型的発問に対する短答が中心であるが,教師の発問によっては,日常的知識も用いて思考プロセスを説明する構成的説明も観察された。一方で,その説明に必ずしも多様性は求められず,他児による補足説明や質問もあまりみられなかった。児童のノートへの記述に関しては,教科書に沿う授業展開では主に思考の結果のみが記入され教師が評価していたが,一部の授業では思考プロセスも表現されていた。2.児童間及び児童ー教師間の相互作用の検討(観察研究):1で示した小学校の授業場面での児童間の相互作用を検討した結果,算数の推理ゲーム場面では,ペアとなった児童間の発話に知識の関連づけがうかがえた。教師と児童の関わりでは,教師の目標到達を重視した発問と個別支援が特徴的であった。学童保育では,ゲーム等の場面で児童間の発話が観察された。学童保育指導員は児童の活動を見守ることや,少数の児童と製作を行うことがほとんどであったが,問題が生じた際には即時に介入し児童を指導していた。3.学童保育指導員の信念の検討(面接研究):小学校3校の学童保育指導員に面接を行った結果,児童に関する問題が生じたときに,問題を保護者,教師らと即時に共有し,関係者が連携して問題解決にあたっていることが明らかになった。このことは児童の発達を社会全体で支えるという教育観を反映していると同時に,学童保育指導員,保護者,教師の間の信頼関係の形成につながっていると推察される。本研究では、フィンランドの児童の思考の特質や、学習や人間関係を規定する信念、それらに影響する環境要因を,観察・面接・調査という心理学的方法を用いて明らかにする。1.児童の思考と信念の特質の継続的検討(観察研究):前年度に引き続き,フィンランドの3つの小学校で算数科・理科を中心とした授業場面の観察を行い、1単位時間ごとに児童の発話を分析した。日常性・テーマ性の高い発問に対しては,児童の多様な構成的説明(経験に依拠した説明,理由の説明)がみられた。個人のノートへの記述は少ないが,1枚の紙に関連する事項をつなげる記述が理科のグループ学習等で観察された。2.児童間及び児童ー教師間の相互作用の継続的検討(観察研究):前年度に引き続き,授業場面の相互作用を分析した。教師はグループやペアでの活動を適宜,指示し,児童は意見を出し合っていたが,それがクラス全体の取り組みへと発展する機会は少なかった。児童間の発話から相互に影響を及ぼしている可能性は伺えたが,知識を協同で構築するプロセスは少なく,他者は主に聞き手としての役割を果たしていた。3.教師の信念の検討(面接研究):小学校3校の各教師に対して授業終了後に面接を行った。その結果,教師が児童の日常経験と学習内容の関わりを重視していること,20人以下のクラスで個人の特質や状況に応じて(ペアやグループの協同も含む)学習活動を柔軟に組織する一方,それらをクラス全体で集約・整理し,個人に還元する活動はほとんど意図されていないことが示唆された。また,小学校2校の教師に対して,理解と思考を重視した日本の算数授業のDVD視聴後にその授業について話し合わせるグループ面接を実施した。その結果,教師は日常性や解法の多様性のある発問にフィンランドの授業との共通性を見いだす一方,発問の系列や大人数のクラス討論の組織には差異を認識していることが明らかになった。本研究では、フィンランドの児童の思考の特質や、学習や人間関係を規定する信念、それらに影響する環境要因を,観察・面接などの心理学的方法を用いて明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-23402055
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フィンランドの児童の思考と信念の特質と環境要因に関する心理学的研究
1.児童の学習観と数学的思考の検討(面接研究):フィンランドの小学校3,5年生に対して,児童の学習観と数学的思考を明らかにするための個別面接を実施した。発話分析の結果,学習観に関してフィンランドの児童は全般的に協同過程や思考過程を重視しており,協同過程が個人の理解に及ぼす影響についての意識が学年進行とともに高まることが示唆された。また数学的思考に関しては,フィンランドの児童が数学的知識と日常的知識を関連づけて問題解決方略を構成する傾向が示された。2.児童の大人観・友人観の検討(面接研究):フィンランドの2つの小学校の3,4,5年生を対象として,児童の大人観や友人観を尋ねる個別面接を実施した。児童の発話内容を分析した結果,「早く大人になりたいか」という質問に対して「大人に早くなりたい」と答える児童は3年生から4年生にかけて増加すること,それぞれの選択理由から,現在の子どもとしての生活,将来の大人としての生活のいずれも肯定的にとらえることが明らかになった。また,友人観に関しては,学年の進行とともに友人の内面性(信頼,理解,公平など)への言及が増加するが,一方で,社会性を育成する教育の影響も推察される。3.児童間及び児童ー教師間の相互作用の継続的検討(観察研究):前年度に引き続き,授業場面の相互作用を分析した。教師は日常性を重視した発問と対話で児童の考えを引き出す一方で,その問題に対する個別解決の時間は設定せず,臨機応変にグループやペアの活動に移行していた。また,教師によるまとめを行わずに他の問題に移行する特徴もみられた。その背景には,個々の児童の特質に対応して学習活動を組織するという教師の一貫した教育観がうかがえる。26年度が最終年度であるため、記入しない。教育心理学26年度が最終年度であるため、記入しない。フィンランドの児童に対する授業場面と学童保育の活動場面の両者における観察研究,および学童保育指導員に対する面接研究を行い,児童の思考と信念の特質,および環境要因(児童間および大人ー児童間の社会的相互作用,大人のもつ信念)についての知見が得られてきているため。フィンランドの児童に対する授業場面と学童保育の活動場面の両者における継続的な観察研究,および教師と学童保育指導員に対する面接研究を実施することを通じて,児童の思考と信念の特質,および環境要因(児童間および大人ー児童間の社会的相互作用,大人のもつ信念)についての知見が多面的に得られてきているため。フィンランドの児童の思考と信念の特質,およびそれに関連する環境要因について,継続的な観察研究や,教師や児童に対する面接研究と調査研究をさらに実施することを通じて,多面的かつ体系的に明らかにする。フィンランドの児童の思考と信念の特質,およびそれに関連する環境要因について,継続的な観察研究や,教師や学童保育指導員に対する面接研究に加えて,さらに児童に対する調査研究などを実施することを通じて,体系的かつ客観的に明らかにする。
KAKENHI-PROJECT-23402055
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近代日本地方教育行政の再編―教育行政の独立と教育の専門性の関係構造
教育令期における地方教育行政の再編過程について、県会議事録や地域史料の収集と分析に基づいて検証をすすめることができた。検討の結果、第一に、県が独自に創設した地方教育行政機関は教育内容・方法といった教育の内的事項に対する指導監督の必要から設立されたこと、第二に、指導監督機関が機能するだけの高い専門性と身分待遇のあり方が問題となっていたこと、第三に指導監督の強化が求められる一方で地域性や民情に配慮した学事奨励の意義が見出されていたことが明らかとなった。26年度は、資料調査・収集および先行研究の解読、資料整理と論理分析を中心に行った。資料収集については、群馬県と長崎県の調査に着手した。群馬県に関しては、明治12年から明治22年までの県会議事録と明治11年から明治16年までの群馬県布達を収集した。また、小学督業や学事奨励職員に関する区有文書や私家文書を収集することができた。他方、長崎県については、長崎歴史博物館にて明治10年代の長崎県学務課の関連資料を収集することができた。先行研究の解読については、地方教育行政史や教育令成立史、1880年代史研究などの関連論文や書籍を収集して解読を進めた。解読の結果、先行研究では、地方が独自に設置した地方教育行政機関(督業教師・小学督業・学事委員等)に関して地域史料に根ざした分析がほとんどなされていないことが判明した。多くの研究は、府県の布達類の分析にとどまっており、県会議事録まで用いた研究は少ない。府県が独自に地方教育行政機関を設置するに至る施策形成過程までを含んで明らかにするうえで、県会議事録の分析が欠かせないことが明らかとなった。資料の分析から、群馬県では明治12年から独自に督業教師を設置することが県会で提案されていたことが判明した。しかし、明治14年には督業教師を改め督学を設置することを求める建議が提出されたが、この建議が却下されたため、県会では新たに学事奨励職員を設置するよう方向転換したことが明らかとなった。これらの成果をふまえて、27年度に学会報告を行う予定である。27年度は、昨年度から取り組んできた分析成果をふまえて学会発表を行なうとともに、これまでの研究成果を論文にまとめた。昨年度に完了しなかった資料の収集・整理を継続しつつ、群馬県の資料分析を進めた。群馬県に関しては、昨年度収集した県会議事録や群馬県布達のほかに、「上毛新聞」や「上野新報」「群馬日報」といった当時の地域新聞などの周辺資料も新たに収集することができた。研究成果の発表については、明治12年から明治16年までの群馬県議会の分析をもとに、群馬県の地方教育行政の展開をまとめ、中部教育学会第64回大会(於名古屋大学)にて、「教育令期群馬県における地方教育行政の展開ー督業教師と学事奨励職員をめぐってー」と題して報告した。その後、さらに明治18年までの群馬県会議事録と周辺資料の分析を進め、先の学会報告の内容と合わせて「教育令期群馬県における地方教育行政の展開ー督業教師から小学督業に至るまでー」と題する論文をまとめ、発表した。他方、長崎県については、長崎歴史博物館所蔵の学務課関連資料を引き続き収集・整理するとともに分析にも着手し、長崎県における地方教育行政の展開について検討を加えた。また、本研究の分析で明らかになった成果を博士論文に付け加え、これらの研究成果を広く公表するために、出版助成に応募した。今後は、以上の成果をもとに博論刊行に取り組む予定である。教育令期における地方教育行政の再編過程について、県会議事録や地域史料の収集と分析に基づいて検証をすすめることができた。検討の結果、第一に、県が独自に創設した地方教育行政機関は教育内容・方法といった教育の内的事項に対する指導監督の必要から設立されたこと、第二に、指導監督機関が機能するだけの高い専門性と身分待遇のあり方が問題となっていたこと、第三に指導監督の強化が求められる一方で地域性や民情に配慮した学事奨励の意義が見出されていたことが明らかとなった。資料調査については順調に進んでいる。とくに群馬県に関しては主要な関連資料を揃えることができつつある。他方、長崎県については、本研究に関わる重要な史料が長崎歴史博物館に多数保存されていることが判明した。先行研究に関しては、従来の研究における課題を明らかにし、研究の方向性と成果報告をまとめる際の指針として活かすことができている。群馬県の分析と整理に着手し、成果の報告に向けて準備を進めているところである。27年度が最終年度であるため、記入しない。教育学、教育史収集した資料をもとに、群馬県における明治12年から明治18年までの地方教育行政の展開を検討していきたい。県会議事録や群馬県布達等をふまえて、群馬県が独自に設置した地方教育行政機関に関する資料を整理する予定である。とくに、督業教師から学事奨励職員への展開と小学督業の設置をめぐる推移について分析を進めたい。また、これらの成果をまとめて、学会等で報告する予定である。また、長崎県における資料調査と収集に本格的に着手したい。26年度の調査によって長崎歴史博物館に関連資料が保存されていることが明らかになった。これらの資料を収集し整理していきたい。さらに、本研究の成果をふまえて、博論の刊行のための準備に着手したい。27年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-26885064
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同和地区における子育ての現状と課題に関する実証研究
本研究のまとめの年である今年度は、まず、昨年同様に同和地区の保護者を中心にインタビュー調査を行ない、そのテープ起こしと分析を手がけた。しかし、インタビュー調査を中心とする研究は、分析において時間を要するうえに、調査協力者の方々のプライバシー保護に十分に配慮する必要があるため、今後も時間をかけて、さらにインタビュー等の補足調査を重ねたうえでまとめを行いたいと考えている。他方、今年度は、平成8年度に実施したアンケート調査データをもとに、同和地区と一般地区との比較という視点で、地域差・階層差が、子どもたちの定位家族における子育てと親子関係、子どもたちの生活状況、保護者にみられる子育て文化の世代間継承といった諸要因を媒介要因として、子どもたちの学習状況および"生活実現力"に格差を生みだしている諸要因の相互連関を明らかにするとともに、社会的再生産のメカニズムについて考察し、報告書にまとめた。本研究では、同和地区の子どもたちの学力が一般地区よりも相対的に低いことの一因として、学校外での学習時間の短さが関連しているが、学校外での学習時間の短さには、子どもたちの定位家族のなかで形成された進路目標の低さや曖昧さが関連していること、また、同和地区の子どもたちの進路目標の低さには、親の子育てにおける進路期待の低さが関連していること、さらに、親の進路期待の低さと階層の低さが関連するが、同和地区の親の階層の低さに同和地区であるという地域差が関連していることなど、興味深い知見を見いだすことができた。今後さらに、本研究において見いだされた、社会的再生産のメカニズムが同和地区と一般地区とでは異なることや、現代では階層差を越えて子育ての平準化が認められることなどについて、理論的実証的研究を積み重ねながら、社会的再生産論の精緻化を図りたい。本研究のまとめの年である今年度は、まず、昨年同様に同和地区の保護者を中心にインタビュー調査を行ない、そのテープ起こしと分析を手がけた。しかし、インタビュー調査を中心とする研究は、分析において時間を要するうえに、調査協力者の方々のプライバシー保護に十分に配慮する必要があるため、今後も時間をかけて、さらにインタビュー等の補足調査を重ねたうえでまとめを行いたいと考えている。他方、今年度は、平成8年度に実施したアンケート調査データをもとに、同和地区と一般地区との比較という視点で、地域差・階層差が、子どもたちの定位家族における子育てと親子関係、子どもたちの生活状況、保護者にみられる子育て文化の世代間継承といった諸要因を媒介要因として、子どもたちの学習状況および"生活実現力"に格差を生みだしている諸要因の相互連関を明らかにするとともに、社会的再生産のメカニズムについて考察し、報告書にまとめた。本研究では、同和地区の子どもたちの学力が一般地区よりも相対的に低いことの一因として、学校外での学習時間の短さが関連しているが、学校外での学習時間の短さには、子どもたちの定位家族のなかで形成された進路目標の低さや曖昧さが関連していること、また、同和地区の子どもたちの進路目標の低さには、親の子育てにおける進路期待の低さが関連していること、さらに、親の進路期待の低さと階層の低さが関連するが、同和地区の親の階層の低さに同和地区であるという地域差が関連していることなど、興味深い知見を見いだすことができた。今後さらに、本研究において見いだされた、社会的再生産のメカニズムが同和地区と一般地区とでは異なることや、現代では階層差を越えて子育ての平準化が認められることなどについて、理論的実証的研究を積み重ねながら、社会的再生産論の精緻化を図りたい。今日でもなお、同和地区の子どもたちの学力は一般地区の子どもたちの学力よりも相対的に低い傾向を示している。また、高校中退率が高く、大学進学率が低いという現状もある。これらの教育問題の一つの取り組みとして最近では家庭の教育力を高めることが大きな課題として、クローズアップされている。しかし、その具体的な取り組みに必要な基礎的研究やデータはきわめて不十分である。本研究は、個々の家庭での子育ての現状や保護者の子育て観を捉えるとともに、低学力の克服のみならず、豊かな人づくりと部落解放に向けて、子どもたちの「生活自立力」を高めるうえでの子育てや親子関係の課題を明らかにすることを目的とするものである。そこで、本年、大阪市内・府下において、同和地区と一般地区を対象地とし、小学5年生から中学3年生までの子どもとその両親に対して、「親子関係に関するアンケート調査」を実施した。回収数は同和地区768セット、一般地区781セットであった。H9年3月の現時点で、単純集計まで結果を出したが、来年度に向けて、クロス集計を中心とした分析を進める予定である。また、本年度は、インタヴュー調査を十分に行なえなかったが、来年度は、インタヴュー調査に力を注ぎたい。研究課題について、2年目の今年度は、一昨年秋に実施した、同和地区と一般地区との比較による子育てと親子関係に関するアンケート調査の分析を行なった。そのなかで、同和地区における子どもたちの勉学への取り組み方や保護者の子どもへの関わり方などについて興味深い知見が得られた。来年度も引き続きデータ分析を継続する予定である。また、他方、同和地区の保護者の子育て行動や子育て意識について、インテンシブに把握することを目指して、これまで24名の方々にインタヴュー調査を行なった。インタヴューの内容はすべてテープ収録し、現在、アルバイトを頼みながらテープ起こしの作業を行なっている。
KAKENHI-PROJECT-08451041
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08451041
同和地区における子育ての現状と課題に関する実証研究
個々のインタヴュー内容はモノグラフとしても興味深いが、アンケート調査の結果と相互補完的なデータとして活用しながら、同和地区における子育ての実態をまとめていく所存である。本研究のまとめの年である今年度は、まず、昨年同様に同和地区の保護者を中心にインタビュー調査を行ない、そのテープ起こしと分析を手がけた。しかし、インタビュー調査を中心とする研究は、分析において時間を要するうえに、調査協力者の方々のプライバシー保護に十分に配慮する必要があるため、今後も時間をかけて、さらにインタビュー等の補足調査を重ねたうえでまとめを行いたいと考えている。他方、今年度は、平成8年度に実施したアンケート調査データをもとに、同和地区と一般地区との比較という視点で、地域差・階層差が、子どもたちの定位家族における子育てと親子関係、子どもたちの生活状況、保護者にみられる子育て文化の世代間継承といった諸要因を媒介要因として、子どもたちの学習状況および"生活実現力"に格差を生みだしている諸要因の相互連関を明らかにするとともに、社会的再生産のメカニズムについて考察し、報告書にまとめた。本研究では、同和地区の子どもたちの学力が一般地区よりも相対的に低いことの一因として、学校外での学習時間の短さが関連しているが、学校外での学習時間の短さには、子どもたちの定位家族のなかで形成された進路目標の低さや曖昧さが関連していること、また、同和地区の子どもたちの進路目標の低さには、親の子育てにおける進路期待の低さが関連していること、さらに、親の進路期待の低さと階層の低さが関連するが、同和地区の親の階層の低さに同和地区であるという地域差が関連していることなど、興味深い知見を見いだすことができた。今後さらに、本研究において見いだされた、社会的再生産のメカニズムが同和地区と一般地区とでは異なることや、現代では階層差を越えて子育ての平準化が認められることなどについて、理論的実証的研究を積み重ねながら、社会的再生産論の精緻化を図りたい。
KAKENHI-PROJECT-08451041
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08451041
コアコレクションを利用したソルガムのアレロパシー活性に関与する染色体領域の特定
ソルガムの起源地であるアフリカでは、除草剤による雑草防除は現実的でなく、アレロパシー活性(他感作用)を利用した雑草防除は有効な手段となる。そこで、本課題では、ソルガムのアレロパシー活性の品種変異を解析し、関連するQTLの検出をめざす。(1)SSRマーカーによる多型解析SSRマーカーによるコアコレクションの多型解析の結果、10本の染色体で合計98座のSSRマーカー座から連鎖地図を作製した。(2)アソシエーション解析によるQTLの検出107品種のアレロパシー活性値とSSRマーカー98座におけるDNA遺伝子型情報を用いて解析した結果、第2および第5染色体上に高い関連性を示す領域を検出した。レタス根の伸長阻害効果を指標としてアレロパシー活性を評価すると、少なくとも3ケ所の関連領域(QTL)が存在すると考えられる。(3)QTL解析今年度、F_2200個体を圃場で栽培し、個体別に葉サンプルを採取しDNAを抽出した。両親品種で多型を示すSSRマーカーを選定し、連鎖地図を作製した。F2個体別に自殖F3種子を採取した。現在、F3系統を用いてアレロパシー活性を評価中である。評価終了後に、SSRマーカー遺伝子型情報と併せてQTL解析を行って、アレロパシー活性関連QTLを検出する。作物のアレロパシー活性(他感作用)は、雑草に対する唯一の生物的防除対策として期待されている。奥野らは、イネのアレロパシー活性には品種変異が存在し、数個のQTL(量的形質遺伝子座)が関与することを明らかにした。これらの成果は中国で活用され、2008年、雑草耐性イネ品種を開発したと報告されている。本課題では、これまでのイネの成果を踏まえ、アフリカ起源の穀物であるソルガムを用いてアレロパシー活性の品種変異を解析し、関連するQTLの検出を目的とする。(1)アレロパシー活性評価法の確定イネで開発したアレロパシー活性評価法に準じて、ソルガムでの評価条件を検討した。その結果、イネのプロトコールに従ってアレロパシー関連物質を抽出し、ソルガムのアレロパシー活性を評価するための手法を確定した。(2)コアコレクションを用いたアレロパシー活性の品種変異の解析コアコレクションを構成する107のソルガム品種の幼植物からアレロパシー関連物質を抽出した。レタスを検定植物に用いて、レタス根の伸長阻害程度を指標としてアレロパシー活性を評価した。その結果、全般的に強い活性を示した品種が多く、強弱の変異の幅はイネに比べて小さかった。アレロパシー活性の強弱品種間で交配し、F1雑種種子を得た。(3)SSRマーカーによる多型解析アソシエーション解析の精度をあげるため、塩基配列情報に基づいて作成したSSRプライマーによるPCR産物の多型解析を行った。その結果、コアコレクション構成品種間で多型を示すSSRマーカー座を新たに61座検出した。ソルガムの起源地であるアフリカでは、除草剤による雑草防除は現実的でなく、アレロパシー活性(他感作用)を利用した雑草防除は有効な手段となる。そこで、本課題では、ソルガムのアレロパシー活性の品種変異を解析し、関連するQTLの検出をめざす。(1)SSRマーカーによる多型解析SSRマーカーによるコアコレクションの多型解析の結果、10本の染色体で合計98座のSSRマーカー座から連鎖地図を作製した。(2)アソシエーション解析によるQTLの検出107品種のアレロパシー活性値とSSRマーカー98座におけるDNA遺伝子型情報を用いて解析した結果、第2および第5染色体上に高い関連性を示す領域を検出した。レタス根の伸長阻害効果を指標としてアレロパシー活性を評価すると、少なくとも3ケ所の関連領域(QTL)が存在すると考えられる。(3)QTL解析今年度、F_2200個体を圃場で栽培し、個体別に葉サンプルを採取しDNAを抽出した。両親品種で多型を示すSSRマーカーを選定し、連鎖地図を作製した。F2個体別に自殖F3種子を採取した。現在、F3系統を用いてアレロパシー活性を評価中である。評価終了後に、SSRマーカー遺伝子型情報と併せてQTL解析を行って、アレロパシー活性関連QTLを検出する。
KAKENHI-PROJECT-21658002
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21658002
組織・器官分化の分子機構
高等植物の形態形成について以下のような研究成果をあげた。計画班においては、町田は、葉の左右相称的発生に関わっているSYMMETRIC LEAVES1(AS1)とAS2の遺伝子をクローニングし、この二つのタンパク質が互いに結合して機能していることを示した。また、AS1は葉の維管束で、AS2は胚形成過程では葉の表側で発現していることを示した。塚谷は、葉の横幅方向の伸長を制御しているANタンパク質は、CtBPと似ており、細胞壁構造の制御をしているEXGT遺伝子の発現に関わっていること、AN自身がホモポリマーを作っている可能性を示した。中村は、糖シグナル応答の解明のために、糖応答遺伝子SPO::LUCの発現が異常になったシロイヌナズナの変異株を多数分離し、糖応答のみでなくABAに応答するものとしないものがあり、独立した経路の存在が仮定された。また、メリステムが異常に拡大したTONSOKU変異体を単離し、原因遺伝子がLeucine-rich repeatを持つ新奇なタンパク質をコードしていることを示した。島本は、イネの短日性を決定している遺伝子の同定を試みて、長日条件下でCOホモログが、FTホモログの発現を抑制することによってなされることを明らかにした。梅田は、イネCDKB2とサイクリンB2複合体は、細胞周期の進行のみでなく、細胞分化の決定にも関与していることを示した。また、CAKがサイトカイニン作用にも関わっていることを明らかにした。西谷は、EXGT(XTH)ファミリーのメンバー33個の遺伝子の役割解明をめざし、それぞれが組織特異的に発現すること、異なる植物ホルモン応答性を示すこと、特異性の似たものは類似しているプロモーター配列を保持していることなどを示した。また、公募班でも、細胞周期のM期特異的な転写を担うシス配列MSAとそこに結合する転写因子の発見、光シグナルの伝達にオーキシンが関わっていることの発見など、大きな成果をあげた。高等植物の形態形成について以下のような研究成果をあげた。計画班においては、町田は、葉の左右相称的発生に関わっているSYMMETRIC LEAVES1(AS1)とAS2の遺伝子をクローニングし、この二つのタンパク質が互いに結合して機能していることを示した。また、AS1は葉の維管束で、AS2は胚形成過程では葉の表側で発現していることを示した。塚谷は、葉の横幅方向の伸長を制御しているANタンパク質は、CtBPと似ており、細胞壁構造の制御をしているEXGT遺伝子の発現に関わっていること、AN自身がホモポリマーを作っている可能性を示した。中村は、糖シグナル応答の解明のために、糖応答遺伝子SPO::LUCの発現が異常になったシロイヌナズナの変異株を多数分離し、糖応答のみでなくABAに応答するものとしないものがあり、独立した経路の存在が仮定された。また、メリステムが異常に拡大したTONSOKU変異体を単離し、原因遺伝子がLeucine-rich repeatを持つ新奇なタンパク質をコードしていることを示した。島本は、イネの短日性を決定している遺伝子の同定を試みて、長日条件下でCOホモログが、FTホモログの発現を抑制することによってなされることを明らかにした。梅田は、イネCDKB2とサイクリンB2複合体は、細胞周期の進行のみでなく、細胞分化の決定にも関与していることを示した。また、CAKがサイトカイニン作用にも関わっていることを明らかにした。西谷は、EXGT(XTH)ファミリーのメンバー33個の遺伝子の役割解明をめざし、それぞれが組織特異的に発現すること、異なる植物ホルモン応答性を示すこと、特異性の似たものは類似しているプロモーター配列を保持していることなどを示した。また、公募班でも、細胞周期のM期特異的な転写を担うシス配列MSAとそこに結合する転写因子の発見、光シグナルの伝達にオーキシンが関わっていることの発見など、大きな成果をあげた。高等植物の形態形成について以下のような研究成果をあげた。計画班においては、町田は、葉の左右相称的発生に関わっているSYMMETRIC LEAVES1(AS1)とAS2の遺伝子をクローニングし、この二つのタンパク質が互いに結合して機能していることを示した。また、AS1は葉の維管束で、AS2は胚形成過程では葉の表側で発現していることを示した。塚谷は、葉の横幅方向の伸長を制御しているANタンパク質は、CtBPと似ており、細胞壁構造の制御をしているEXGT遺伝子の発現に関わっていること、AN自身がホモポリマーを作っている可能性を示した。中村は、糖シグナル応答の解明のために、糖応答遺伝子SPO::LUCの発現が異常になったシロイヌナズナの変異株を多数分離し、糖応答のみでなくABAに応答するものとしないものがあり、独立した経路の存在が仮定された。また、メリステムが異常に拡大したTONSOKU変異体を単離し、原因遺伝子がLeucine-rich repeatを持つ新奇なタンパク質をコードしていることを示した。島本は、イネの短日性を決定している遺伝子の同定を試みて、長日条件下でCOホモログが、FTホモログの発現を抑制することによってなされることを明らかにした。梅田は、イネCDKB2とサイクリンB2複合体は、細胞周期の進行のみでなく、細胞分化の決定にも関与していることを示した。また、CAKがサイトカイニン作用にも関わっていることを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-10182102
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組織・器官分化の分子機構
西谷は、EXGT(XTH)ファミリーのメンバー33個の遺伝子の役割解明をめざし、それぞれが組織特異的に発現すること、異なる植物ホルモン応答性を示すこと、特異性の似たものは類似しているプロモーター配列を保持していることなどを示した。また、公募班でも、細胞周期のM期特異的な転写を担うシス配列MSAとそこに結合する転写因子の発見、光シグナルの伝達にオーキシンが関わっていることの発見など、大きな成果をあげた。本計画研究班の目的は、メリステムからの植物器官・組織の発生分化の分子的背景を様々な角度から研究することである。町田は、葉の扁平性と左右対称性について、シロイヌナズナの変異体であるale1とas2を用いて研究した。その結果、前者では表皮細胞の分化が、後者では維管束の分化が異常になっていることがわかった。ale1については遺伝子クローニングを行い、その塩基配列からサチライシンファミリー,に属するセリンプロテアーゼをコードしている可能性が示唆された。AS2遺伝子については、独自の方法により染色体歩行を行い、約25kbの中の6つのORFにまで絞り込んだ。河内は、栄養成長から生殖成長への転換の分子機構を知るために、低発現遺伝子のライブラリーから花序分裂組織特異的遺伝子のcDNAを選別した。それらのうちZinc-fingerタンパク質遺伝子のT-DNAによる破壊株などを単離・解析した結果、花の異常を見いだした。島本は、短日植物であるイネの光周性を研究し、光周性を完全になくした変異体se-5の原因遺伝子がHY1である可能性を示した。塚谷は、葉の長軸方向と横軸方向の成長の制御機構を研究してきた。クローニングしたROT遺伝子の発現系を用いて、これが葉の長軸方向への伸長に関わっていることを示した。中村は、しょ糖に対する植物の応答と器官分化の関連を研究するために、7500系統のアクテイベイションタギングライブラリーを作製し、その中に、糖に対する応答が異常になった変異体を見い出した。また、しよ糖誘導性遺伝子の最小プロモーターに存在する配列を調べ、糖に応答する結合タンパク質と複数のシスエレメント(10bp,SP8a,SP8b)を検出した。西谷は、タバコ培養細胞BY-2にEXGT cDNAアンティセンスを導入し、増殖速度の遅延と細胞形態の異常を見つけた。西村は、液胞へのタンパク質輸送系を研究して、これに関与している小胞(PAC)に存在するPV100がプロセシングされ複数の機能分子になることを示した。また、栄養器官型VPEが活性を持った分子として液胞で機能していることがわかった。本計画研究班の目的は、メリステムからの植物器官・組織の発生分化の分子的背景を様々な角度から研究することである。町田は、葉の扁平性と左右対称性について、シロイヌナズナの変異体であるale1とas2を用いて研究した。その結果、前者では表皮細胞の分化が、後者では維管束の分化が異常になっていることがわかった。ale1については遺伝子クローニングを行い、その塩基配列からサチライシンファミリーに属するセリンプロテアーゼをコードしている可能性が示唆された。それに関連してシロイヌナズナからトウモロコシのCRINKLY4(CR4)遺伝子のホモログ(ATCR4)をクローニングし、in situで発現部位を検討した。その結果、ATCR4はALE1遺伝子が発現している細胞の隣の細胞で発現していることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-10182102
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アイヌ文化の住居建築材にみられる古環境利用の動態研究
北海道東部の常呂川河口遺跡で発見されたアイヌ文化の建築材を樹種同定して、北海道東部におけるアイヌ文化の住まいが周辺植生から広葉樹(主にヤナギ属、コナラ節、トネリコ属)を選択し、柱材などに利用した様相を示した。北海道中央部の同時期の資料と比較し、建物(住居、小屋など)の材料に、広葉樹(丸木取りとした)を周辺の古植生から選択し、建物の素材として利用しているアイヌ文化の様相がより明らかとなった。本研究では木材1点がブナ属と樹種同定でき、その利用把握は北海道東部遺跡での初例である。北海道東部の常呂川河口遺跡で発見されたアイヌ文化の建築材を樹種同定して、北海道東部におけるアイヌ文化の住まいが周辺植生から広葉樹(主にヤナギ属、コナラ節、トネリコ属)を選択し、柱材などに利用した様相を示した。北海道中央部の同時期の資料と比較し、建物(住居、小屋など)の材料に、広葉樹(丸木取りとした)を周辺の古植生から選択し、建物の素材として利用しているアイヌ文化の様相がより明らかとなった。本研究では木材1点がブナ属と樹種同定でき、その利用把握は北海道東部遺跡での初例である。平成22年度は、北海道東部の常呂川河口遺跡から出土した木製品(住居建築材含む「の観察・分類や木製品(特に住居建築部材)の一部を試料採取して、樹種同定をおこなうためのプレパラート作成および樹種同定(一部)をおこなった。また、遺跡出土木製品の一部について、年代測定を実施した。1.常呂川河口遺跡から出土した木製品のうち、木材の直径や木取りや先端加工の有無が建築材を区別する上で有効な観察点ととらえられた。遺跡に残されていたものだけからの観察であるが、直径15cmをこえる木材が極端に少ないことがわかった。2.建築材として分類される資料のうち、約140点を抽出して樹種同定のためのプレパラート作成や樹種同定(一部)をおこなった。同定作業は途中であるが、広葉樹や針葉樹が存在していることがわかっている。遺跡周辺の旧地形や花粉分析結果と照らし合わせると、遺跡周辺の植生から木材を得ていたと現段階では考えられる。3.木製品から採取した試料の年代測定実施によって、擦文時代や中世や近世の木製品の存在が常呂川河口遺跡で明らかになった。木製品の出土状況の再検討によって、木製品(18世紀中頃降下の火山灰に覆われて出土した)について時期細別できる可能性がある。平成23年度は、北海道東部の常呂川河口遺跡から出土した木製品(住居建築材含む)の観察・分類や、木製品(特に住居建築材)の一部に対して試料採取・プレパラート作製をして、樹種識別(一部)を実施した。また、その遺跡出土木製品の一部について年代測定をおこない、アイヌ文化の絵画資料(近世)の検討や建築学的観点からの検討をおこなった。1.常呂川河口遺跡から出土した木製品のうち、木材の直径や木取りや先端加工の回数が建築材を区別する上で有効であるととらえられた。遺跡に残されていたものだけからではあるが、直径15cm以内の杭もしくは柱では丸材の先端に2回もしくは3回の切削が鉄器(手斧など)でおこなわれていると明らかになってきた。2.建築材として分類される資料のうち、約200点を抽出して樹種識別のためのプレパラート作製や樹種識別(一部)をおこなった。同定作業は途中であるが、広葉樹(コナラ属など)や針葉樹が存在するとわかった。遺跡周辺の旧地形や花粉分析結果に照らし合わせると、遺跡周辺の植生(針広混交林)から素材を入手していたとよりはっきりした。3.常呂川河口遺跡の木製品から採取した試料の年代測定によって、12世紀16世紀(擦文時代や中世や近世)にあたる木製品の存在がさらに明らかになった。年代測定した木製品の出土層位を確認すると、木製品の埋没時期は2時期(より下位のものは12世紀、より上位のものは13世紀16世紀)にわかれると推測された(前年度とあわせ8個体を年代測定した)。4.北海道大学北方関係資料総合目録を利用して、アイヌ文化(近世)の絵画資料(特に建物が描かれている)を検討途中である。また、杭もしくは柱と考えられる木製品の規模から、建築学的な検討をおこなっている途中である。平成24年度は、北海道東部の常呂川河口遺跡から出土した木製品(住居建築材を含む)の観察・分類や、木製品(特に住居建築材および構築材)の一部に対して、試料採取・プレパラート作製し樹種識別をおこなった。加えて平成23年度に実施したプレパラート作製によって針葉樹・広葉樹に樹種識別した木製品について、属レベルまで樹種識別が可能であるかどうかを再検討した。また、住居建築材の分類をおこなうため、類例検討、発掘調査で確認された建物址の検討(主に柱穴)を実施した。1.建築材、道具類と分類できる資料の内、約100点を抽出し、樹種識別のためのプレパラート作製や樹種識別をおこなった。平成23年度までにおこなった樹種識別の内、再検討の必要性が生じた木製品について属レベルまでの識別をおこなうため、再サンプルを実施した。2.平成22年平成24年度までの樹種識別結果から、資料選別し同定できた範囲内で広葉樹が9割、針葉樹が1割の比率と確認できた。
KAKENHI-PROJECT-22500973
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22500973
アイヌ文化の住居建築材にみられる古環境利用の動態研究
広葉樹材ではヤナギ属、コナラ属コナラ節、トネリコ属が主体とわかり、花粉分析などで明らかとなっている遺跡周辺の古植生(針広混交林)において主に、広葉樹材を入手していたとより明らかになった。その結果の一部については、取りまとめ、学会で発表した。3.近年の発掘調査で確認された、アイヌ文化の平地式住居址を集成し、学際的(考古学、建築学など)な資料検討をおこなった。特に、平地式住居址で確認された柱穴の発見状態や埋没過程の把握が常呂川河口遺跡で発見された建築材を分類する上で重要であると確認した。4.樹種識別を実施する過程で、ブナ属1点を確認した。現在、天然林としてのブナ属分布の北端は北海道寿都郡周辺とされる。道央部の遺跡(千歳市キウス4遺跡)でブナ属が発見されていたが、今回のブナ属の発見は道東部の遺跡における初めての事例で、樹木利用を考える上で貴重な成果となった。常呂川河口遺跡出土の木製品は、生木の状態で2001年と2002年に発見され、発見時から現在までの経年がながく、一般的な木製品よりも脆弱な状態で、切片の採取が難しく、プレパラート作製を丁寧に実施しているため、樹種識別実施のためのプレパラート作製が遅れざるを得ない状況であるから。24年度が最終年度であるため、記入しない。常呂川河口遺跡出土の木製品について、住居建築材に焦点をより絞り、プレパラート作製および樹種識別を実施する。住居建築材については、約7割のプレパラート作製ができていることから、焦点を絞って実施していき、また、樹種識別については研究代表者と連携研究者の双方でおこなう予定である(樹種識別に際して問題となる試料を選別する対策や、一部、業務委託を検討している)。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22500973
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22500973
プログラムの不具合の原因の特定と修正の支援方法に関する研究
本研究の当初の目的は,次の2つであった:[1]マルチスレッドに対応したプログラム実行制御・監視環境を実現する際に起こる問題点について研究を行い,その具体的な解決方法を明らかにする.[2]実際にマルチスレッドに対応したデバッグツールを開発する際に基盤となるプログラム実行制御・監視環境を構築し,広く公開する.[1]に関しては,前年度の間に研究を行い,マルチスレッドに対応したプログラム実行制御・監視環境のプロトタイプを完成させた.そこで本年度では,[2]の目的を達成するために,[1]で開発したプロトタイプを拡張し,提案環境(DbgStar)としての完成度を可能な限り高めていった.また本年度では,実際にDbgStarを利用して,デバッグに有用な様々な機能(特にプログラムスライシングと可逆実行)を統合したデバッガを構築した.そしてこれらの機能を用い,オープンソースプログラム(ProFTPD,GNU Awk,Apache HTTP Server)に含まれていた不具合に対してデバッグを行い,DbgStarの評価・考察を行った.その結果,DbgStarはデバッガの基盤環境に求められるオーバーヘッド,親和性,柔軟性の3つの要件が満たされていることを確認できた.さらに本年度末から,本研究の重要な成果物であるDbgStarを一般に公開するための準備を行っている.そのために,まずDbgStarのドキュメントの作成などを行い,また簡単な利用方法を示すサンプルコードなどを用意した.そしてDbgStarを公開するWebページの立ち上げも行った.これについては,「日本ソフトウェア科学会第10回プログラミングおよびプログラミング言語ワークショップ」(PPL2008)にてポスター発表を行った.本年度では、まず前年度に構築したマルチスレッドに対応したプログラム実行制御・監視環境のプロトタイプシステムが持つ問題点の整理を行い、それぞれの問題点の具体的な解決方法について研究を行っていった。例えばプログラム実行制御・監視環境において、マルチスレッドに対応したdirectorの構築の支援を行うためには、スレッドごとに監視内容を変更できるような、柔軟な監視機構が必要となることが判明した。これは、プロトタイプシステムの拡張を行い、仮想マシンがスレッドごとに異なるdynamic translationを行えるようにすることで解決できた。これらの研究成果に関しては、2006年並列/分散/協調処理に関する『高知』サマー・ワークショップで口頭発表を行い、本環境についての意見なども求めるとともに、情報処理学会論文誌「プログラミング」上でも発表を行った。そして本年度の後半からは、本環境を用いて、デバッギングに利用できる様々な先進的な機能を、「単一のデバッガ」に対して組み込む実験に取り組んでいる。本デバッガに組み込まれている機能としては、動的スライシング、ヒープチェッキング、データレースチェッキング、可逆実行が挙げられる。本環境を用いてこのようなデバッガを構築する利点としては、デバッガのユーザが、これらの機能を柔軟に組み合わせながら利用することが可能となることが挙げられる。実際、実験で構築したデバッガでも、そのような利点を確認することができた。しかし同様に、実験ではいくつかの問題点も露呈した。特に、組み込んだ複数の機能をそれぞれ完全に独立させることが難しく、機能によっては、他の機能と競合が発生する場合もあるという問題点があった。そこで来年度では、可能な限りこれらの問題点に対処するための研究も行いつつ、本研究全体の成果を取りまとめていく予定である。本研究の当初の目的は,次の2つであった:[1]マルチスレッドに対応したプログラム実行制御・監視環境を実現する際に起こる問題点について研究を行い,その具体的な解決方法を明らかにする.[2]実際にマルチスレッドに対応したデバッグツールを開発する際に基盤となるプログラム実行制御・監視環境を構築し,広く公開する.[1]に関しては,前年度の間に研究を行い,マルチスレッドに対応したプログラム実行制御・監視環境のプロトタイプを完成させた.そこで本年度では,[2]の目的を達成するために,[1]で開発したプロトタイプを拡張し,提案環境(DbgStar)としての完成度を可能な限り高めていった.また本年度では,実際にDbgStarを利用して,デバッグに有用な様々な機能(特にプログラムスライシングと可逆実行)を統合したデバッガを構築した.そしてこれらの機能を用い,オープンソースプログラム(ProFTPD,GNU Awk,Apache HTTP Server)に含まれていた不具合に対してデバッグを行い,DbgStarの評価・考察を行った.その結果,DbgStarはデバッガの基盤環境に求められるオーバーヘッド,親和性,柔軟性の3つの要件が満たされていることを確認できた.さらに本年度末から,本研究の重要な成果物であるDbgStarを一般に公開するための準備を行っている.そのために,まずDbgStarのドキュメントの作成などを行い,また簡単な利用方法を示すサンプルコードなどを用意した.そしてDbgStarを公開するWebページの立ち上げも行った.これについては,「日本ソフトウェア科学会第10回プログラミングおよびプログラミング言語ワークショップ」(PPL2008)にてポスター発表を行った.
KAKENHI-PROJECT-06J05972
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06J05972
酸化LDLのスーパーオキサイド産生能及び貧食、細胞からのスーパーオキサイドの産生誘導
現在までに、我々は、SODとの併用による化学発光法及びチトクロームC還元法を用いて、酸化LDLにスーパーオキシド生成能があることを確認した。又、酸化LDLの細胞傷害因子の本体と考えられているHydroperoxideにも、酸化LDLと同様の特徴を有したスーパーオキシド生成能があることや、Hydroperoxideを分解する薬剤(エブセレン)で処理した酸化LDLには、スーパーオキシド生成能が消失することなどを見いだした。各種金属イオン、金属キレート剤、ラジカル・スキャベンジャー、及び抗酸化剤等の酸化LDLのスーパーオキシド生成に及ぼす影響の検討から、酸化LDL中のHydroperoxideのレドックス分解により生ずるラジカルを経由して、スーパーオキシドが生成するものと推測された。酸化LDLのスーパーオキシド生成能とマクロファージに対する細胞傷害活性との間には、極めて強い相関性が認められた。次に、我々は、SODとの併用による化学発光法を用いて、酸化LDLが、好中球からのスーパーオキシド産生を刺激する能力があることを見いだした。好中球から産生されるスーパーオキシド量は、刺激剤となるLDLの酸化の程度に依存して増加すること、及び刺激機構の一部は、好中球の食作用と関連することなどを見いだした。酸化LDLと同様に、マクロファージに取り込まれ泡沫化を引き起こすことが知られているアセチル化LDLや凝集LDLには、好中球からのスーパーオキシド産生の誘導能は認められず、酸化LDLに特異な現象と考えられた。現在までに、我々は、SODとの併用による化学発光法及びチトクロームC還元法を用いて、酸化LDLにスーパーオキシド生成能があることを確認した。又、酸化LDLの細胞傷害因子の本体と考えられているHydroperoxideにも、酸化LDLと同様の特徴を有したスーパーオキシド生成能があることや、Hydroperoxideを分解する薬剤(エブセレン)で処理した酸化LDLには、スーパーオキシド生成能が消失することなどを見いだした。各種金属イオン、金属キレート剤、ラジカル・スキャベンジャー、及び抗酸化剤等の酸化LDLのスーパーオキシド生成に及ぼす影響の検討から、酸化LDL中のHydroperoxideのレドックス分解により生ずるラジカルを経由して、スーパーオキシドが生成するものと推測された。酸化LDLのスーパーオキシド生成能とマクロファージに対する細胞傷害活性との間には、極めて強い相関性が認められた。次に、我々は、SODとの併用による化学発光法を用いて、酸化LDLが、好中球からのスーパーオキシド産生を刺激する能力があることを見いだした。好中球から産生されるスーパーオキシド量は、刺激剤となるLDLの酸化の程度に依存して増加すること、及び刺激機構の一部は、好中球の食作用と関連することなどを見いだした。酸化LDLと同様に、マクロファージに取り込まれ泡沫化を引き起こすことが知られているアセチル化LDLや凝集LDLには、好中球からのスーパーオキシド産生の誘導能は認められず、酸化LDLに特異な現象と考えられた。
KAKENHI-PROJECT-06770818
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06770818
神経細胞ネクローシスをアポトーシスに導く蛋白質の探索と網膜虚血モデルでの応用
ネクローシスモデルとして胎生17日胚ラット大脳皮質細胞を培養開始直後から無血清で低密度培養する「無血清培養モデル」を確立した。細胞密度を高くすると神経細胞死が遅延し、細胞死がアポトーシスにモードスイッチすることを見いだした。この高密度培養で見られる変化は、高密度培養の上清(CM)によっても同様に引き起こされた。薬理学的な解析から、CMはPLCおよびPKCの活性化を引き起こし、グルコースの取り込み及び細胞内ATP量を増加させてネクローシスを抑制し、一方でミトコンドリアからのチトクロームc(cyto c)遊離によりアポトーシスを誘導した。さらにCM中より単離精製した蛋白質NDIに同様の効果があることを見いだした。低密度培養ではグルコース取り込みが急激に減少していたことから、これを補うため培地中のグルコース濃度を増加させたところ細胞死が遅延し、その細胞死はネクローシスからアポトーシスにモードスイッチしていた。この場合も、細胞内ATP増加によりネクローシスが抑制され、一方でBaxの発現増加、cyto c遊離、カスパーゼ活性化を介してアポトーシスが引き起こされた。このように誘導されたアポトーシスは神経栄養因子より有意に抑制された。次にマウス網膜虚血・再灌流モデルで見られる細胞死に対するグルコースの効果を検討したところ、グルコースは虚血の前だけではなく24時間後に処置しても有意に網膜保護効果を示した。さらに今回確立した「無血清培養モデル」を用いて海洋微生物ライブラリーからネクローシスを抑制する物質を産生するクローンを探索した結果、強いネクローシス抑制効果を有する物質を産生するクローンを単離した。そのうち2つのクローンは網膜虚血傷害を抑制することも明らかになった。今回の研究によって、神経細胞死に抑制的に働く細胞死モードスイッチを引き起こすNDI蛋白質を発見し、また海洋微生物ライブラリーよりネクローシス抑制分子を見いだした。ネクローシスモデルとして胎生17日胚ラット大脳皮質細胞を培養開始直後から無血清で低密度培養する「無血清培養モデル」を確立した。細胞密度を高くすると神経細胞死が遅延し、細胞死がアポトーシスにモードスイッチすることを見いだした。この高密度培養で見られる変化は、高密度培養の上清(CM)によっても同様に引き起こされた。薬理学的な解析から、CMはPLCおよびPKCの活性化を引き起こし、グルコースの取り込み及び細胞内ATP量を増加させてネクローシスを抑制し、一方でミトコンドリアからのチトクロームc(cyto c)遊離によりアポトーシスを誘導した。さらにCM中より単離精製した蛋白質NDIに同様の効果があることを見いだした。低密度培養ではグルコース取り込みが急激に減少していたことから、これを補うため培地中のグルコース濃度を増加させたところ細胞死が遅延し、その細胞死はネクローシスからアポトーシスにモードスイッチしていた。この場合も、細胞内ATP増加によりネクローシスが抑制され、一方でBaxの発現増加、cyto c遊離、カスパーゼ活性化を介してアポトーシスが引き起こされた。このように誘導されたアポトーシスは神経栄養因子より有意に抑制された。次にマウス網膜虚血・再灌流モデルで見られる細胞死に対するグルコースの効果を検討したところ、グルコースは虚血の前だけではなく24時間後に処置しても有意に網膜保護効果を示した。さらに今回確立した「無血清培養モデル」を用いて海洋微生物ライブラリーからネクローシスを抑制する物質を産生するクローンを探索した結果、強いネクローシス抑制効果を有する物質を産生するクローンを単離した。そのうち2つのクローンは網膜虚血傷害を抑制することも明らかになった。今回の研究によって、神経細胞死に抑制的に働く細胞死モードスイッチを引き起こすNDI蛋白質を発見し、また海洋微生物ライブラリーよりネクローシス抑制分子を見いだした。これまで、無血清培養による飢餓ストレスが、脳虚血に見られる虚血焦点(コア)とその周辺(ペナンブラ)を模した細胞培養系であることを様々な観点から証拠付けた。さらに生体内では細胞破壊的なネクローシスから細胞死収束的なアポトーシスへの変換が生ずるが、全く同様な現象がこの培養系で観察された。培養上清に見出された細胞死抑制蛋白質NDIはネクローシス細胞から放出され、周りの細胞を細胞死から保護する、もしくはアポトーシスに変換させるというメカニズムを持つことが示唆されている。その一方で高密度培養時は細胞死が遅延するが、そのとき発現が誘導されるHDS遺伝子を見出しているモデル細胞系として培地中にテトラサイクリンを添加することによりHDSの発現が増加もしくは減少するPC12細胞株を樹立した。今後はこれらの細胞に対して各種の細胞死誘導を行い、細胞死抑制能や細胞の形態変化などを検討し、HDSの細胞死抑制メカニズムに迫る。また、マウス個体を用いた神経細胞死評価系として、頸動脈結紮モデルと網膜虚血モデルを検討した。頸動脈結紮モデルでは海馬周辺の神経細胞が脱落するが、細胞死の形態はネクローシスであることを確認した。網膜虚血モデルは眼圧上昇による細胞死であり、ネクローシス像が所々に認められたが、その周辺にはアポトーシス像も観察された。さらにネクローシスによる細胞死がガラス体へのNDI投与により緩和され、NDIアンチセンス投与ではより重篤なネクローシスへ誘導されることが観察された。虚血時などに見られるネクローシスによる破壊的神経細胞死をアポトーシスに変換し、傷害の拡大を阻止する脳保護機構について研究を進めてきた。
KAKENHI-PROJECT-13470490
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13470490
神経細胞ネクローシスをアポトーシスに導く蛋白質の探索と網膜虚血モデルでの応用
無血清高密度大脳皮質細胞培養上清に神経細胞のネクローシスをアポトーシスに変換する蛋白質NDIを見出していたが、部分精製標品中に含まれるSDS-PAGE上NDIと異なる移動度を示す蛋白質バンドを質量分析により解析したところ、NDIが部分的に修飾されたものであることが確認されたが、その活性には差異は見られなかった。このNDIには通常の分泌蛋白質が有する分泌シグナル配列が存在しないが、この分泌は、非古典的蛋白質分泌阻害剤により阻害され、その結果高密度培養条件下での生存効果が抑制されたことから、無血清ストレスに応じて細胞外に放出され機能することが確認された。無血清培養神経細胞でのネクローシスがNDIによりアポトーシスに変換される条件下で、神経栄養因子を併用することにより生存促進効果を確認され、アポトーシス変換後の細胞死を既存のアポトーシス抑制機序により阻止できることが示された。一方、既存の神経保護作用を有する多くの栄養因子は、ネクローシス抑制作用を有さなかったが、インシュリンにはその効果があることを見出した。網膜の虚血実験系において、組換えNDI投与による細胞死保護作用を光学顕微鏡観察、及び、電子顕微鏡観察により確認し、ネクローシスによる細胞死を抑制することを明らかにした。この系においてNDIアンチセンスオリゴヌクレオチド単独処理では網膜に対する傷害は観察されなかったが、虚血処置を併用することにより傷害を悪化させることを見出し、生理的なNDIによる神経保護効果を確認した。NDI関連蛋白質として、NDI結合活性を指標にNDI受容体候補をクローニングし、in vitro実験系により相互作用を確認した。もう一つの関連蛋白質であるNDIの下流で働くHDS1のEGFP融合蛋白質をCHO細胞に発現させ、細胞質及び核にも存在することを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-13470490
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心不全治療計画のコンピュータシミュレーションによる研究
1.本研究の目的循環系の機能は各部の血圧,血流量などの多くの変数が複雑な力学系,神経・体液調節系によって制御されている.従ってモデルに基づいた循環応答のコンピュータシミュレーション技法は病的状態の定量的な診断や最適治療計画作成の為に有用である.本研究の目的は心不全のコンピュータ支援システムに通常統用いられる計学的なデータや経験的ルールに加えて循環力学モデルに基づくシミュレーションを導入することにあった.2.循環力学モデルの実験的並びに理論的検討循環系のモデルにはそれぞれ単一の体・肺脈管回路と左右心室力学モデルを設定した.心臓には多くの既報のモデルの中からEMAXモデルを採用した.このモデルに基づいて従来右心バイパスの実験の解析などに用いられている静脈還流や平均循環充満圧の概念の誤差を推定し,動物実験的に確認した.3.心臓学コンピュータシミュレーション支援システム(Heart)循環系の力学モデルに基づく心不全のコンピュータシミュレーションが心不全の診断治療に対して従来より精密な定量的情報を与える事を臨床データと対比して検討した後,心不全状態のシミュレーションに心不全治療に関する教科書的知識と薬剤情報等のデータベースを付加え,よりトータルなCAI(Heart)の完成した.本CAIシステムはデータファイル言語QRS上に作成されたテキストを中心として図表の表示,プログラムの施行,データベースの呈示などが行なわれる.テキストの内容は基本となる循環生理学,内科学の知識ベースが階層構造を成している.プログラムはTurbo pascalによってねPc9800,またはIBM Pc/AT用に書いた.4.結論本CAIシステムは単なる知識の供給にとどまらず,シミュレーションによる動的応答が可能であり,循環器学に関する医学教育,卒後教育,診療支援システムとして有用である.1.本研究の目的循環系の機能は各部の血圧,血流量などの多くの変数が複雑な力学系,神経・体液調節系によって制御されている.従ってモデルに基づいた循環応答のコンピュータシミュレーション技法は病的状態の定量的な診断や最適治療計画作成の為に有用である.本研究の目的は心不全のコンピュータ支援システムに通常統用いられる計学的なデータや経験的ルールに加えて循環力学モデルに基づくシミュレーションを導入することにあった.2.循環力学モデルの実験的並びに理論的検討循環系のモデルにはそれぞれ単一の体・肺脈管回路と左右心室力学モデルを設定した.心臓には多くの既報のモデルの中からEMAXモデルを採用した.このモデルに基づいて従来右心バイパスの実験の解析などに用いられている静脈還流や平均循環充満圧の概念の誤差を推定し,動物実験的に確認した.3.心臓学コンピュータシミュレーション支援システム(Heart)循環系の力学モデルに基づく心不全のコンピュータシミュレーションが心不全の診断治療に対して従来より精密な定量的情報を与える事を臨床データと対比して検討した後,心不全状態のシミュレーションに心不全治療に関する教科書的知識と薬剤情報等のデータベースを付加え,よりトータルなCAI(Heart)の完成した.本CAIシステムはデータファイル言語QRS上に作成されたテキストを中心として図表の表示,プログラムの施行,データベースの呈示などが行なわれる.テキストの内容は基本となる循環生理学,内科学の知識ベースが階層構造を成している.プログラムはTurbo pascalによってねPc9800,またはIBM Pc/AT用に書いた.4.結論本CAIシステムは単なる知識の供給にとどまらず,シミュレーションによる動的応答が可能であり,循環器学に関する医学教育,卒後教育,診療支援システムとして有用である.1.実験的研究成果:雑犬を麻酔下に開胸し、心拍出量・冠循環血流量測定のための電磁流量計プローブを装着し、またオクルーダにより冠循環血流抵抗を調節した。今年度の実験では下肢筋の電気的刺激による運動のシミュレーション下に、または動静脈シヤント開閉による動静脈圧変下の下に、循環系各部の血圧、換気量の測定、および動静脈血・冠静脈洞流出血のガス分析、心電図記録を行った。これらの結果を我々の心筋虚血指数I=KC・(100CUO+1)/(Pas-Pvs)の確認と係数の推定に用いた。(日本生理学会発表予定)2.心不全治療のコンピュータ指針の作成:循環系力学モデル、心筋虚血指数、および薬力学的モデルを基に心不全のシミュレーションおよび治療計画のコンピュータ支援システムを作成した。今年度はとくに心不全治療に用いられる種々薬剤の薬動力学上の文献的知識を用いてモデルを作成し、最適治療計画の中に組み入れた。その結果、患者個人について具体的な治療計画を呈示することが出来た。コンピュータ支援システムの評価のために、患者資料について、専門医の判断とコンピュータ指針とを比較検討した。疾患の種類は、高血圧性心不全、虚血性心疾患、心筋症に亘っている。このプログラムは、疾患の種類、NYHAの重症度、覗血的データを入力すると心力学上のパラメータを計算しパイグラフで表示する。また最適治療計画の計算は、16ビットパソコンレベルの機器でTurbo Pascalを用いてプログラムすると30秒1分位で完了した。これら計算機outputと専門医の判断とはおおむねよく一致した。疾患の種類を弁膜症や不整脈にまで拡張して本課題の目標を達成すべく、現在研究続行中である。なおこの研究成果の一部は第5回医療情報学会(国際,ワシントン市)MEDINFO'86で金賞論文となった。
KAKENHI-PROJECT-60570406
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核融合炉用液体増殖材と低放射化材料溶接材の共存性
核融合炉液体増殖材と低放射化材料溶接材との共存性を明らかにするにするため、溶接素材における基本的な腐食試験を行うとともに、低放射化材料と316L鋼との異材溶接材の試作と機械特性、照射特性の評価を行った。核融合炉液体増殖材と低放射化材料溶接材との共存性を明らかにするにするため、溶接素材における基本的な腐食試験を行うとともに、低放射化材料と316L鋼との異材溶接材の試作と機械特性、照射特性の評価を行った。低放射化フェライト鋼F82H(Fe-8Cr-2W-0.1C)及び316Lステンレス鋼(Fe-18Cr12Ni-2Mo)の異種溶接材を電子ビーム溶接で作成した。板材の厚さは7mmで電子ビーム入熱は3kW、溶接速度は1m/minである。溶接材から硬さ試験片、組織観察試料、加速器照射試料を切り出した。光学顕微鏡観察、及び走査型電子顕微鏡観察の結果、溶接割れなどの欠陥は観察されなかった。硬さ試験より、溶接金属ではビッカース硬さで400Hv以上の非常に硬い相が生成し、これを溶接後熱処理で母材の硬さ(200Hv)まで軟化させることはできなかった。このような溶接材は脆いことが予想される。この相は現在解析中であるが、マルテンサイト相と推定される。この相の生成を避けるため、20年度は溶接時の照射位置を突き合わせ位置からずらすなどの溶接条件の最適化をする予定である。一方で、溶接部の照射硬化が母材より大きいかどうかを評価するため、加速器でプロトン照射を行った。溶接金属、母材ともに照射硬化は観察されたが、データのばらつきが大きく、定量的には過去のデータと矛盾するものもあるため、現在追試験を準備しているところである。また、溶接材の基本特性となる引張、曲げ、衝撃データをとるため、追加の試料作成準備を行った。以上の成果を日本金属学会2008年度春期講演大会にて発表した。低放射化バナジウム合金の異材溶接材作成においては、溶接条件を求めるために使用する純バナジウムの加工を行って4mm厚の板材を作成した。20年度はこれの熱処理を行い、316ステンレス鋼と突合せ溶接実験をして溶接条件の最適化をする。電子ビーム溶接にて、低放射化フェライト鋼F82H(Fe-8Cr-2W-0.1C)、純バナジウム(V)及び316Lステンレス鋼(Fe-18Cr-12Ni-2Mo)の異種溶接材を作製した。F82H-316L溶接材では、電子ビーム照射位置が突合せ位置の場合、溶接位置が突き合わせ位置の場合には、溶接金属の硬さが400Hvあり脆化していることが示唆された。これを溶接後熱処理しても、元の硬さ200Hvまで回復させることはできなかった。シェフラーの状態図及び溶接金属の電子顕微鏡を用いた蛍光X線分光分析によると、溶接金属ではマルテンサイト相が生成していると考えられる。この相の生成を抑えるために、電子ビーム照射位置のシフトを行った。その結果、照射位置を316L側に0.2mmシフトし、750°C×1hrの溶接後熱処理を施すことで、上記の硬化を回避することができ、溶接条件が明らかとなった。溶接試料について、引張試験、曲げ試験、シャルピー試験を行い、母材並みの良好な機械的特性を確認した。一方で、加速器で0.5dpaまでプロトン照射を行った結果、照射硬化量は57Hvであり、これは316Lの過去のデータ145Hvより小さく、また照射欠陥も特異なものはできないことから、照射後の機械的特性は母材より悪くなることはないと考えられる。以上の成果を日本原子力学会「2008年秋の大会」及び、第18回核融合エネルギー工学トピカル会議にて発表した。一方、純V-316L溶接では溶接金属の硬さが550Hvと想定外に硬化したことから、原因を究明中である。また、液体増殖材溶融塩Flibe中での腐食を模擬するための、HFガス腐食試験装置の準備を行った。電子ビーム溶接にて、低放射化フェライト鋼F82H(Fe-8Cr-2W-0.1C)、純バナジウム(V)、低放射化V合金及び316Lステンレス鋼(Fe-18Cr-12Ni-2Mo)の異種溶接材を作製した。F82H-316L溶接材では、平成20年度に求めた溶接条件で試料を作成し、溶接金属、熱影響部(HAZ)、母材に加速器で0.11.0dpaまでプロトン照射を行った。結果、溶接金属の照射硬化量は1dpaで135Hvで、316L鋼母材と同程度であり、照射硬化の促進は認められなかった。F82H母材及びF82H側HAZの照射硬化量は30Hvであり、316L鋼と比較すると小さいが、HAZの中に50Hv軟化した脱炭層の形成が認められ、これが1dpa照射後も周囲より軟化したままであったため、機械強度への影響がありうることが明らかとなった。純バナジウム-316鋼の溶接材においては、母材が150-200Hvであるのに対し、溶接金属は溶接ままで600Hvと硬く、さらに1273K×1hrの溶接後熱処理によって1000Hv程度の非常に硬い相ができることが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-19760600
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核融合炉用液体増殖材と低放射化材料溶接材の共存性
この硬化相は、電子ビームの照射位置を純V側に0.4mmずらすことで、その体積を小さくすることができた。硬化相は、Fe-Vのシグマ相、あるいはV_3Ni相であると推定された。純V-316L鋼の溶接実験で求めた溶接条件にて低放射化V合金-316L鋼の継手を製作し、溶接部の硬さ分布測定、微細組織観察を行った。以上の成果をまとめ、日本原子力学会にて発表し、また科学雑誌に論文投稿した。
KAKENHI-PROJECT-19760600
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バルト、ブランショ、デリダにおけるエクリチュール概念と発話理論の関係
モーリス・ブランショ、ロラン・バルト、ジャック・デリダは、いずれも20世紀フランスにおいて「エクリチュール」を概念化し、根源的な営みとして捉えた批評家であり思想家である。彼らのエクリチュール概念は、それが主体の理性的な統御を免れるものだという点においては共通している。しかし、構造主義が依拠した発話理論の言語学との関係という観点から見ると、彼らのエクリチュール概念はそれぞれに異なっている。本研究は、関連テクストの精査により、エクリチュール概念と発話理論の関係性という見地から彼らの思想の共通性や差異を明らかにし、それを通して、ブランショやデリダと構造主義との距離をも明らかにする。モーリス・ブランショ、ロラン・バルト、ジャック・デリダは、いずれも20世紀フランスにおいて「エクリチュール」を概念化し、根源的な営みとして捉えた批評家であり思想家である。彼らのエクリチュール概念は、それが主体の理性的な統御を免れるものだという点においては共通している。しかし、構造主義が依拠した発話理論の言語学との関係という観点から見ると、彼らのエクリチュール概念はそれぞれに異なっている。本研究は、関連テクストの精査により、エクリチュール概念と発話理論の関係性という見地から彼らの思想の共通性や差異を明らかにし、それを通して、ブランショやデリダと構造主義との距離をも明らかにする。
KAKENHI-PROJECT-19K00513
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K00513
負の電子親和力状態表面の微視的構造の研究
Cs/Cs2O/半導体方面などで現れるNEA表面では、仕事関数が吸着Csと吸着酸素のまわりで複雑に変化していると考えられる。NEA状態の原子的な構造と動作機構を明らかにするためには、表面の微視的な構造と仕事関数の原子尺度での変動を観察する必要があると考えられる。STMで測定されるトンネルバリアは表面の仕事関数に強く依存している。このトンネルバリアを二次元的に測定すれば、表面の原子尺度の構造と同時に仕事関数の表面での分布を解析することができる。本研究では、STMを用いてトンネルバリアの二次元的な分布を測定する方法を確立し、表面構造とトンネルバリアの二次元的な分布を対応させることに成功した。まず、STMの走査中に、エピゾのz軸印加電圧に、微小な振幅をもち、かつSTMのフィードバックが追従しない十分に短い周期をもつ正弦波電圧を外部から加える。補助金で購入したロックインアンプを用いて、トンネル電流信号のうち外部から加えた正弦波電圧と同じ周波数成分を取り出すことにより、トンネルバリアに比例した信号を取り出す。この信号を二次元像にすることによりトンネルバリアの表面上での分布を分析した。Si (111)表面を観察すると、ロックインアンプを通して検出した信号像においても7×7構造を原子尺度で観察することが出来た。検出信号像を見ると、原子位置でははトンネルバリアが小さく、コーナーホールはトンネルバリアが大きく観察された。また表面に吸着しているコンタミ層は、トンネルバリアが大きく観察された。これらの結果から本研究で用いた方法によりトンネルバリアが正しく観察されていると考えられる。さらにステップを観察してみると、ステップ直上と考えられる位置では、トンネルバリアは大きく観察されたが、二重の線のように観察された。これがダブルステップによるものか、ステップ直上の両側に何らかの構造が出来ているためかはさらに詳細な解析が必要である。また、トンネル電流を表す式を展開した一次項まででは、トンネルバリア像に表面の凹凸の情報は入ってこないが、さらに高次の項や電子状態密度の空間分布などを考慮して解析を行うと表面での波動関数の形などの情報も得られると考えられる。今後、トンネルバリア像のさらに詳細な解析とともに、酸素やアルカリ金属を吸着させ表面の仕事関数を変化させた表面でのトンネルバリア像の観察を行うことにより、NEA状態の機構を解析できると考えられる。Cs/Cs2O/半導体方面などで現れるNEA表面では、仕事関数が吸着Csと吸着酸素のまわりで複雑に変化していると考えられる。NEA状態の原子的な構造と動作機構を明らかにするためには、表面の微視的な構造と仕事関数の原子尺度での変動を観察する必要があると考えられる。STMで測定されるトンネルバリアは表面の仕事関数に強く依存している。このトンネルバリアを二次元的に測定すれば、表面の原子尺度の構造と同時に仕事関数の表面での分布を解析することができる。本研究では、STMを用いてトンネルバリアの二次元的な分布を測定する方法を確立し、表面構造とトンネルバリアの二次元的な分布を対応させることに成功した。まず、STMの走査中に、エピゾのz軸印加電圧に、微小な振幅をもち、かつSTMのフィードバックが追従しない十分に短い周期をもつ正弦波電圧を外部から加える。補助金で購入したロックインアンプを用いて、トンネル電流信号のうち外部から加えた正弦波電圧と同じ周波数成分を取り出すことにより、トンネルバリアに比例した信号を取り出す。この信号を二次元像にすることによりトンネルバリアの表面上での分布を分析した。Si (111)表面を観察すると、ロックインアンプを通して検出した信号像においても7×7構造を原子尺度で観察することが出来た。検出信号像を見ると、原子位置でははトンネルバリアが小さく、コーナーホールはトンネルバリアが大きく観察された。また表面に吸着しているコンタミ層は、トンネルバリアが大きく観察された。これらの結果から本研究で用いた方法によりトンネルバリアが正しく観察されていると考えられる。さらにステップを観察してみると、ステップ直上と考えられる位置では、トンネルバリアは大きく観察されたが、二重の線のように観察された。これがダブルステップによるものか、ステップ直上の両側に何らかの構造が出来ているためかはさらに詳細な解析が必要である。また、トンネル電流を表す式を展開した一次項まででは、トンネルバリア像に表面の凹凸の情報は入ってこないが、さらに高次の項や電子状態密度の空間分布などを考慮して解析を行うと表面での波動関数の形などの情報も得られると考えられる。今後、トンネルバリア像のさらに詳細な解析とともに、酸素やアルカリ金属を吸着させ表面の仕事関数を変化させた表面でのトンネルバリア像の観察を行うことにより、NEA状態の機構を解析できると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-07650028
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07650028
湿度の感性、生理への影響の探索
研究では、行動実験と機能的脳画像法(fMRI)を用いて、1濡れ感に関わる脳部位を同定し、2温冷感と圧覚の2つの異なる感覚から形成されると推察される濡れ感を、脳内情報伝達解析により明らかにする.さらに、3濡れ感により温熱的不快感が生じるメカニズムを明らかにする.4生理学的、電気生理学的手法を用いて、皮膚の濡れによる発汗抑制のメカニズムを明らかにする.湿度や皮膚表面の濡れは、ヒトの体温調節に大きな影響を与える因子であるにもかかわらず、濡れや湿度に関するセンサーの存在は否定され、皮膚表面の濡れの受容を起点とした体温調節反応のメカニズムも明らかになっていない。本研究は、行動実験とfMRIを用いた観測を通して、蒸れ感や濡れ感に対する脳部位の同定や、脳内情報伝達解析を行い、これらの感覚に関する感性要素の形成メカニズムを明らかにしようとするものである。蒸れ感および濡れ感の形成メカニズムを明らかにする試みは、脳・感性情報処理分野における重要な課題であるにもかかわらず、これまで必ずしも十分には行われていない。従って、本研究の学術的意義は高く、かつ期待される成果は、高度な仮想現実感を実現するなどの応用面でも有益と考えられる。研究では、行動実験と機能的脳画像法(fMRI)を用いて、1濡れ感に関わる脳部位を同定し、2温冷感と圧覚の2つの異なる感覚から形成されると推察される濡れ感を、脳内情報伝達解析により明らかにする.さらに、3濡れ感により温熱的不快感が生じるメカニズムを明らかにする.4生理学的、電気生理学的手法を用いて、皮膚の濡れによる発汗抑制のメカニズムを明らかにする.
KAKENHI-PROJECT-19H01128
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H01128
精神疾患特異的iPS細胞における神経発達異常の検証
疾患特異的iPS細胞は、多くが未解明のヒトにおける疾患の成立過程を解析できる画期的実験系である。近年、神経発達や投射経路など発達初期の異常が精神疾患の原因として注目されているが、これら発達の初期過程が実際の患者どのように変化しているのかは不明である。そこで本研究では、精神疾患の疾患特異的iPS細胞の樹立および分化後の神経機能の解析を行った。その結果、患者および健常者からiPS細胞を樹立するとともに、迅速な神経分化誘導法の開発に成功した。さらにこれらの手法とトランスクリプトーム解析を組み合わせることで、治療薬への反応性に関わる可能性のある候補遺伝子の同定に成功した。疾患特異的iPS細胞は、多くが未解明のヒトにおける疾患の成立・発展過程を、遡って解析できる画期的実験系である。近年、神経発達や投射経路など発達初期の異常が精神疾患の原因として注目されているが、これら発達の初期過程が実際の患者でどのように変化しているのかおよびその原因である分子群を解明した研究は存在しない。本研究は、精神疾患の疾患特異的iPS細胞の樹立および分化後の神経機能の解析を行うことで、これら疾患の成立、発展過程に関わる分子ネットワークを解明することを目指すものであり、平成26年度においては、以下の検討を行った。1.エピソーマルベクターを用いた手法により、患者由来iPS細胞および対照群として健常者由来iPS細胞を、それぞれ複数人の患者および健常者から樹立した。2.樹立したiPS細胞における未分化マーカーの発現、増殖速度やコロニーの形態などについて、健常者由来iPS細胞および患者由来iPS細胞の間の差について検討した結果、両群間に顕著な差は見られなかったことから、幹細胞としての性質に著明な差はないと考えられた。3. iPS由来神経細胞の機能解析に必要となる神経分化誘導プロトコルの確立を行った。その結果、neurogenin2発現レンチウイルスベクターを用いた迅速な神経細胞への分化誘導プロトコルおよび低分子を用いた神経幹細胞への分化誘導プロトコルについて確立した。神経幹細胞を神経細胞へと終末分化させる条件については、長期培養時の生存率に問題があるため、次年度以降も継続して検討を行う予定である。4.確立したneurogenin2発現レンチウイルスベクターを用いた分化プロトコルを、樹立した患者由来iPS細胞へと適用し、神経細胞における機能解析を実施した。疾患特異的iPS細胞は、多くが未解明のヒトにおける疾患の成立・発展過程を、遡って解析できる画期的実験系である。近年、神経発達や投射経路など発達初期の異常が精神疾患の原因として注目されているが、これら発達の初期過程が実際の患者でどのように変化しているのかおよびその原因である分子群を解明した研究は存在しない。本研究は、精神疾患の疾患特異的iPS細胞の樹立および分化後の神経機能の解析を行うことで、これら疾患の成立、発展過程に関わる分子ネットワークを解明することを目指すものであり、平成27年度においては、以下の検討を行った。1.前年度に引き続き、エピソーマルベクターを用いた手法により、患者由来iPS細胞および対照群として健常者由来iPS細胞を、それぞれ複数人の患者および健常者から樹立した。2.前年度に引き続き、樹立したiPS細胞における未分化マーカーなどの発現について、健常者由来iPS細胞および患者由来iPS細胞の間の差について検討した結果、両群間に顕著な差は見られなかったことから、幹細胞としての性質に著明な差はないと考えられた。3.前年度に確立したneurogenin2発現レンチウイルスベクターを用いた分化プロトコールを、樹立した患者および健常者由来iPS細胞へと適用し、神経細胞における機能解析を実施した。その結果、治療薬への反応性と相関して、発現変化が見られる遺伝子を複数同定することに成功した。今後この同定した分子が、神経細胞において果たしている役割を詳細に解明していく予定である。疾患特異的iPS細胞は、多くが未解明のヒトにおける疾患の成立過程を解析できる画期的実験系である。近年、神経発達や投射経路など発達初期の異常が精神疾患の原因として注目されているが、これら発達の初期過程が実際の患者どのように変化しているのかは不明である。そこで本研究では、精神疾患の疾患特異的iPS細胞の樹立および分化後の神経機能の解析を行った。その結果、患者および健常者からiPS細胞を樹立するとともに、迅速な神経分化誘導法の開発に成功した。さらにこれらの手法とトランスクリプトーム解析を組み合わせることで、治療薬への反応性に関わる可能性のある候補遺伝子の同定に成功した。当初計画通りに進展していることに加えて、neurogenin2発現による分化系の確立が早期に完了したため、平成27年度に実施予定であった、患者由来iPS細胞を分化させて得られる神経細胞における機能解析を、前倒しで実施できた。従って、当初の計画を上回る進展が得られたと考えられる。神経薬理学当初計画通り、患者由来iPS細胞のさらなる樹立を行うとともに、幹細胞・神経幹細胞・神経細胞の各段階における機能異常の可能性およびその背景にある分子機構について検討を行い、疾患の成立・発展過程に関わる分子ネットワークの同定を目指す。低分子を用いた神経幹細胞への分化誘導と、その後の終末分化により、神経細胞を得ることに成功しているが、シナプス密度などの検討に不可欠である長期培養に耐えうる実験条件の同定には至っていない。多数の成長因子の影響について、長期にわたり細胞を維持培養することで明らかにする必要がある。従って、当初研究目的を達成するためには、本年度使用予定であった金額の一部を次年度使用額として計上する必要があると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-26860055
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26860055
精神疾患特異的iPS細胞における神経発達異常の検証
スパイン密度など、長期培養した後にのみ解析可能かつ神経機能において重要であるパラメーターについて評価するため、神経幹細胞を終末分化させる際の培養条件(成長因子の有無、フィーダー細胞との共培養など)について検討を行い、iPS由来神経細胞の分化・成熟を維持することができる培養条件の確立を図る。
KAKENHI-PROJECT-26860055
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26860055
骨代謝におけるマスト細胞の役割の解明
C57BL/6マウス新生仔の頭頂骨由来骨芽細胞を採取し、ビタミンCとβ-glycerophosphateを含む骨芽細胞分化培地にて培養し分化を誘導した。その際に、GSK3・阻害剤であるSB216763を0、2.5、10・Mの濃度にて添加し、各分化段階におけるオステオカルシンなどの骨芽細胞分化マーカー分子または細胞内シグナル分子の発現量の比較、骨芽細胞による石灰化の検出を主として解析を行った。骨芽細胞の各分化段階において、SB216763処理により細胞内β-cateninが増大した。また、MAPキナーゼの1つであり、骨芽細胞分化の後期段階に関与することを報告した(Matsuguchi T, Chiba N, et.al. JBMR 2009)JNK1/2も増大していた。また、分化マーカーであるが石灰化を抑制するオステオカルシンはSB216763の濃度依存的に減少していたが、これに反して石灰化を促進するオステオポンチンは著明に増大していた。さらにアリザリンレッド染色を用いて石灰化を検出したところ、SB216763により骨芽細胞の分化・成熟にはやや遅れが見られるが、石灰化作用により生じるスポットの大きさは濃度依存的に増大していた。頭頂骨由来骨芽細胞にはある程度分化が進んでいる細胞も含まれていることから、SB216763の処理により未熟な骨芽細胞の分化は遅延するが、一定の分化段階に達している骨芽細胞による石灰化を強力に促進する可能性が考えられる。成熟個体においては、ある程度分化が進んだ骨芽細胞がマウス新生仔の頭頂骨に比較して多く存在すると考えられ、GSK3シグナルの解明が骨破壊による損傷・疾患の治療などに役立つことが期待される。C57BL/6マウス新生仔の頭頂骨由来骨芽細胞を採取し、ビタミンCとβ-glycerophosphateを含む骨芽細胞分化培地にて培養し分化を誘導した。その際に、GSK3・阻害剤であるSB216763を0、2.5、10・Mの濃度にて添加し、各分化段階におけるオステオカルシンなどの骨芽細胞分化マーカー分子または細胞内シグナル分子の発現量の比較、骨芽細胞による石灰化の検出を主として解析を行った。骨芽細胞の各分化段階において、SB216763処理により細胞内β-cateninが増大した。また、MAPキナーゼの1つであり、骨芽細胞分化の後期段階に関与することを報告した(Matsuguchi T, Chiba N, et.al. JBMR 2009)JNK1/2も増大していた。また、分化マーカーであるが石灰化を抑制するオステオカルシンはSB216763の濃度依存的に減少していたが、これに反して石灰化を促進するオステオポンチンは著明に増大していた。さらにアリザリンレッド染色を用いて石灰化を検出したところ、SB216763により骨芽細胞の分化・成熟にはやや遅れが見られるが、石灰化作用により生じるスポットの大きさは濃度依存的に増大していた。頭頂骨由来骨芽細胞にはある程度分化が進んでいる細胞も含まれていることから、SB216763の処理により未熟な骨芽細胞の分化は遅延するが、一定の分化段階に達している骨芽細胞による石灰化を強力に促進する可能性が考えられる。成熟個体においては、ある程度分化が進んだ骨芽細胞がマウス新生仔の頭頂骨に比較して多く存在すると考えられ、GSK3シグナルの解明が骨破壊による損傷・疾患の治療などに役立つことが期待される。
KAKENHI-PROJECT-20791356
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20791356
消化器がん総合的治療戦略確立のためのトランスレーショナルリサーチ
本研究の目的はDNAチップ技術を応用し、従来の病理組織診断ではできなかった消化器癌に対する悪性度・予後予測診断システムを確立し、臨床へ実践的に応用することである。本研究は、臨床フィールドとして、参加施設の協力体制のもと数千例の癌症例のサンプリングと登録を行ない、統一された臨床病理学的データを整理すること、また基礎研究フィールドとして、共同研究契約を締結した実験施設と解析施設において、DNAチップなどを用いた網羅的な分子生物学的解析データの解析を行うことを2本柱とし、2006年4月現在、約4000例の消化器癌症例の登録を完了した。具体的には、1)大阪大学と関連病院で切除された各癌腫の切除標本および臨床病理学的情報を収集し、標本、情報の整理・管理を行なうマルチセンターシステムを構築した。2)収集された各消化器癌切除標本からmRNAを抽出し厳密なquality checkをした後、target DNA(臨床検体)を調整し、ヒト全遺伝子型DNAチップを用いて、各種の消化器癌で数100から1000例のヒト全遺伝子発現データを取得した。3)大腸癌、胃癌、肝細胞癌、食道癌、膵癌など各疾患で癌の発育・進展に関連する遺伝子群の抽出し、新規腫瘍マーカーや治療標的を同定した。4)各疾患で転移・再発・予後や、化学療法、放射線療法などの治療応答性に関する特徴的な遺伝子発現パターンを認識し、遺伝子発現プロファイルの応用による予測診断システムを確立した。本研究の目的はDNAチップ技術を応用し、従来の病理組織診断ではできなかった消化器癌に対する悪性度・予後予測診断システムを確立し、臨床へ実践的に応用することである。本研究は、臨床フィールドとして、参加施設の協力体制のもと数千例の癌症例のサンプリングと登録を行ない、統一された臨床病理学的データを整理すること、また基礎研究フィールドとして、共同研究契約を締結した実験施設と解析施設において、DNAチップなどを用いた網羅的な分子生物学的解析データの解析を行うことを2本柱とし、2006年4月現在、約4000例の消化器癌症例の登録を完了した。具体的には、1)大阪大学と関連病院で切除された各癌腫の切除標本および臨床病理学的情報を収集し、標本、情報の整理・管理を行なうマルチセンターシステムを構築した。2)収集された各消化器癌切除標本からmRNAを抽出し厳密なquality checkをした後、target DNA(臨床検体)を調整し、ヒト全遺伝子型DNAチップを用いて、各種の消化器癌で数100から1000例のヒト全遺伝子発現データを取得した。3)大腸癌、胃癌、肝細胞癌、食道癌、膵癌など各疾患で癌の発育・進展に関連する遺伝子群の抽出し、新規腫瘍マーカーや治療標的を同定した。4)各疾患で転移・再発・予後や、化学療法、放射線療法などの治療応答性に関する特徴的な遺伝子発現パターンを認識し、遺伝子発現プロファイルの応用による予測診断システムを確立した。大阪大学および関連病院の倫理委員会の承認のもと、各施設の全消化器癌の切除標本・臨床病理学的情報の収集システムを構築した。これにより大阪大学を中心とした消化器癌の標本およびデータの整理・管理システムが完成した。DNAチップ研究所と共同研究下に、約30000種類のヒト遺伝子からそれぞれ特異的な60merのオリゴDNA設計し、スライドグラス上に超高密度にスポットしヒト全遺伝子型DNAチップを開発・作製した。ヒト全遺伝子型DNAチップを用いた種々のcell lineを用いた予備検討では、非常に高いデータ再現性と定量性を得ることができ、実験プロトコールの検討を重ね、ヒト癌サンプルでも同様のデータが取得できるようになった。予備検討により決定された一定のプロトコールに従い、control referenceとの競合ハイブリダイゼーションにより、ヒト全遺伝子型DNAチップの遺伝子発現データを取得している。現在、大腸癌を対象とした癌部で発現亢進・減弱する遺伝子の検討では、従来文献報告されている遺伝子が矛盾することなく多数同定された。また肝転移予測能の検討では、preliminaryなデータで約80%と高い値を得ることができている。今後、大腸癌のリンパ節転移、化学療法感受性の検討の他、肝細胞癌、食道癌、胃癌と解析をすすめる予定で、各消化器癌において、関連遺伝子の同定および生物学的特性を反映した悪性度・予後予測診断への応用が期待される。本研究の目的はDNAチップ技術を応用して、これまでの病理組織診断ではできなかった消化器癌に対する悪性度・予後予測診断システムを確立し、実践の臨床へ応用することである。ヒト全遺伝子に対して特異的配列をもったオリゴDNA(30000種類)を搭載したヒト全遺伝子型DNAチップを用い、各消化器で数100から1000例規模を対象として、各種癌における遺伝子発現からみた再発・予後解析に加え、大腸癌での肝転移、胃癌・食道癌でのリンパ節転移並びに腹膜播種、肝細胞癌・膵癌における再発形式予測などの予測診断システムを確立するとともに、それぞれ関連遺伝子群の同定による治療標的の抽出を行っている。具体的には、1)平成16年度より引き続き、大阪大学と関連病院で切除された各癌腫の切除標本および臨床病理学的情報を収集し、マルチセンターシステムとして標本、情報の整理・管理を行ない、2)収集された各消化器癌切除標本からmRNAを抽出し、超微量mRNA分析用マイクロラボチップによるquality checkを行なった上で、Target DNA(臨床検体)の調整を進め、3)予備検討により決定されたプロトコールに従い一定条件下でヒト全遺伝子型オリゴDNAチップによる遺伝子情報を取得した。
KAKENHI-PROJECT-15209040
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15209040
消化器がん総合的治療戦略確立のためのトランスレーショナルリサーチ
解析はa)全ての癌腫において再発・予後解析を行う。b)大腸癌については肝転移、化学療法感受性、リンパ節転移に関連する解析を中心に行う。c)食道癌については、リンパ節転移に関連する解析を中心に行う。d)胃癌については、腹膜播種、リンパ節転移に関する解析を中心に行う。E)肝臓癌については、再発形式、化学療法感受性に関する解析を中心に行っている。本研究の目的はDNAチップ技術を応用し、従来の病理組織診断ではできなかった消化器癌に対する悪性度・予後予測診断システムを確立し、臨床へ実践的に応用することである。本研究は、臨床フィールドとして、参加施設の協力体制のもと数千例の癌症例のサンプリングと登録を行ない、統一された臨床病理学的データを整理すること、また基礎研究フィールドとして、共同研究契約を締結した実験施設と解析施設において、DNAチップなどを用いた網羅的な分子生物学的解析データの解析を行うことを2本柱とし、2005年12月現在、すでに3000例以上の消化器癌症例の登録が終了している。具体的には、1)平成17年度より引き続き、大阪大学と関連病院で切除された各癌腫の切除標本および臨床病理学的情報を収集し、マルチセンターシステムとして標本、情報の整理・管理を行なう、2)収集された各消化器癌切除標本からmRNAを抽出し、超微量mRNA分析用マイクロラボチップによるquality checkを行なった上で、target DNA(臨床検体)の調整を進める、3)ヒト全遺伝子に対して特異的配列をもったオリゴDNA(30000種類)を搭載したヒト全遺伝子型DNAチップを用い、予備検討により決定されたプロトコールに従い一定条件下で大腸癌、胃癌、肝細胞癌、食道癌、膵癌など各種の消化器癌で数100から1000例規模を対象として、遺伝子発現からみた転移・再発・予後・再発形式に加え、治療応答性の解析などの予測診断システムを確立する、4)各疾患それぞれで関連遺伝子群の同定による治療標的の抽出を行うことである。
KAKENHI-PROJECT-15209040
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固体・液体状態の金属及び合金の分光放射率とその推算モデル
本研究は,高温エリプソメータ及びコールドクルーシブル放射率測定装置を用いて,固体・液体状態の金属及び合金の垂直分光放射率の測定を行い,放射機構に基づいて,放射率の推算式を構築することを目的として行った。以下,得られた成果を列記する。(1)Cu,Ag,Au,Fe,Co及びNiの純金属の放射率を各金属の融点で,波長範囲500-2500nmにおいて測定し,放射率が融解にともなって増大することを明らかにするとともに,1000nm以上の波長において,それらの放射率を推算できる推算式を作成した。(2)FZ-Si及び900ppmのSbを含有するポットスクラップSiの放射率をそれぞれの融点で,500-1000nmの波長範囲において測定した。固体Siの放射率は液体Siよりも大きく,前者は正の波長依存性,後者は負の波長依存性を示すこと,900ppm程度の不純物はSiの放射率に有意な影響を与えないことを明らかにした。また,固体Siの放射率は束縛電子モデルで,液体Siの放射率は自由電子モデルで記述できることを示した。(3)固体及び液体Ni-Cu2元系合金の放射率を800-2000Kの温度範囲で測定した。固体,液体に関わらず,放射率の温度係数は正であり,その組成依存性は上に凸の放物線的な関数であること,さらに,液体の放射率は,負の波長依存性を示すことを明らかにした。また,自由電子モデルによる計算値が測定値の温度及び組成依存性を表現すること,これらの値の差がd電子の放射に対応し,その大きさは波長のみに依存することを示し,これらのことから,放射率を温度,組成及び波長の関数として定式化した。(4)Ni-Co2元系固体合金の632.8nm,温度300-1600Kにおける放射率を測定した。組成によらず,放射率の温度係数はキュリー点以下では負,以上では正となることを明らかにした。(5)Ni-Cr2元系液体合金の放射率を1600-2000Kの温度範囲で測定した。放射率の温度係数及び波長依存性は,Ni-Cu系と同様であったが,組成依存性に関しては,特に短波長域において,80at%Ni付近で極小値を取ることを明らかにした。本研究は,高温エリプソメータ及びコールドクルーシブル放射率測定装置を用いて,固体・液体状態の金属及び合金の垂直分光放射率の測定を行い,放射機構に基づいて,放射率の推算式を構築することを目的として行った。以下,得られた成果を列記する。(1)Cu,Ag,Au,Fe,Co及びNiの純金属の放射率を各金属の融点で,波長範囲500-2500nmにおいて測定し,放射率が融解にともなって増大することを明らかにするとともに,1000nm以上の波長において,それらの放射率を推算できる推算式を作成した。(2)FZ-Si及び900ppmのSbを含有するポットスクラップSiの放射率をそれぞれの融点で,500-1000nmの波長範囲において測定した。固体Siの放射率は液体Siよりも大きく,前者は正の波長依存性,後者は負の波長依存性を示すこと,900ppm程度の不純物はSiの放射率に有意な影響を与えないことを明らかにした。また,固体Siの放射率は束縛電子モデルで,液体Siの放射率は自由電子モデルで記述できることを示した。(3)固体及び液体Ni-Cu2元系合金の放射率を800-2000Kの温度範囲で測定した。固体,液体に関わらず,放射率の温度係数は正であり,その組成依存性は上に凸の放物線的な関数であること,さらに,液体の放射率は,負の波長依存性を示すことを明らかにした。また,自由電子モデルによる計算値が測定値の温度及び組成依存性を表現すること,これらの値の差がd電子の放射に対応し,その大きさは波長のみに依存することを示し,これらのことから,放射率を温度,組成及び波長の関数として定式化した。(4)Ni-Co2元系固体合金の632.8nm,温度300-1600Kにおける放射率を測定した。組成によらず,放射率の温度係数はキュリー点以下では負,以上では正となることを明らかにした。(5)Ni-Cr2元系液体合金の放射率を1600-2000Kの温度範囲で測定した。放射率の温度係数及び波長依存性は,Ni-Cu系と同様であったが,組成依存性に関しては,特に短波長域において,80at%Ni付近で極小値を取ることを明らかにした。(1)補助を受けて導入したマルチチャンネル分光器等を用い,コールドクルーシブル放射率測定システムを構成した。本装置により,現在までにCu,Ag,Auの純金属の放射率を測定し,その固液変態に伴う放射率の変化を明らかにした。また,相変態によっても放射率が不変である波長領域があることを明らかにした。(2)Si中に溶解したSbが放射率に及ぼす影響を調べるため,実際の単結晶作製プロセスにおいて生じたSbを含有するポットスクラップシリコンと不純物濃度の極めて低いFZシリコンの放射率を測定・比較し,その間には有意差がないことを確認した。また,Siは固体では半導体的な,液体では金属的な性質を示すことから,固体シリコンには束縛電子モデルを,液体シリコンには自由電子モデルを適用し,Siの放射率を計算によって求めた。
KAKENHI-PROJECT-14350396
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14350396
固体・液体状態の金属及び合金の分光放射率とその推算モデル
さらに,このモデルを用いてSbを900ppm含有したSiの放射率を求めたところ,実験結果と同様,純粋なSiの放射率と有意な差は認められなかった。(3)抵抗炉とエリプソメータを組み合わせた高温用エリプソメータを用い,固体金属表面の複素屈折率を測定し,この値から放射率を求めるという方法を構築した。この方法によりCu-Ni合金の放射率を873Kから各組成の固相線温度までの温度範囲で測定した。長波長域において放射率と電気抵抗率の関係を表すHagen-Rubensの法則により求めた放射率値は,実験値の組成及び温度依存性をよく表したことから,この合金の熱放射は,主に自由電子-フォノン散乱に支配されていることがわかった。しかし,計算により得られた放射率の絶対値は,実験値とわずかに異なった。この差は,その放射にはフェルミ面近傍の自由電子だけでなく,dバンドから励起・緩和する内殻電子も寄与していることを示唆している。(4)購入したマルチチャンネル分光器と二色放射温度計を組み合わせることにより,任意の温度で放射率を測定できるシステムを開発中である。放射温度計の放射率比の校正は物質の相転移点で行う予定である。これにより,合金の放射率の温度依存性と組成依存性以外に,波長依存性をも明らかにすることができる。(1)Si中に溶解したSbがSiの放射率に及ぼす影響を調べるため,コールドクルーシブル放射率測定システムを用いて,実際のSi単結晶製造プロセスにおいて発生したSbを含有するポットスクラップシリコンと,不純物濃度の極めて低いFZシリコンの放射率を測定・比較し,その葦が有意なものでないことを確認した。(2)コールドクルーシブル放射率測定システムを用いて,Cu, Ag, Au, Fe, CoおよびNiの純金属の放射率を各金属の融点で,波長範囲5002500nmにおいて測定し,その融解にともなう放射率の変化を明らかにした。また,1000nm以上の波長において,それらの放射率を推算できる経験式を作成した。(3)昨年度,高温用エリプソメータを用いて,固体金属表面の複素屈折率を測定し,この値から放射率を求めるという方法を考案した。この方法により,Cu-Ni合金の633nmにおける放射率を873Kから各試料組成の固相線までの温度範囲で測定した。各試料の電気抵抗率の値を用いてHagen-Rubensの関係から計算した放射率に対して,本研究による測定値をプロットすると,純Cu以外の測定値は,計算値より約0.038大きくなることがわかった。この差より,高い状態密度を有するdバンドからフェルミレベル以上への遷移(バンド間遷移)が,Niを含有した試料については一定の影響を及ぼしていることを明らかにした。同様の測定を現在,Ni-CrおよびNi-Co合金を用いて行っている。(4)昨年度購入した赤外用マルチチャンネル分光器と二色放射温度計をコールドクルーシブル放射率測定システムにインストールすることにより,より広い波長範囲で,かつ任意の温度において,液体合金の放射率測定を可能とした。この場合,二色放射温度計に入力する放射率比は,各合金の液相線温度において校正することが最適であることを確認した。液相線温度は示差熱分析法により決定した。現在,このシステムを利用し,溶融Cu-Ni合金の5002600nmにおける放射率を,各試料の液相線から約200K以上の温度までの範囲で測定している。純CuおよびNiの放射率測定結果は,過去の報告値と波長依存性・温度依存性ともによい一致を示している。
KAKENHI-PROJECT-14350396
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14350396
微生物起源Mn酸化物による放射性Csの新規固定機構の解明
Mn酸化物への放射性Csの吸着と脱離行為に系統的分析を行った。Mn酸化物の表面に、マルチサイトの吸着を存在しているのを発見した。微生物起源Mn酸化物の表面微量平衡電荷イオンの存在は、低濃度放射セシウムへの吸着には強烈な影響がある。層状Mn酸化物と比較すると、トンネル状Mn酸化物は特異的な吸着挙動を示した。このような吸着挙動の違いは、層状とトンネル状Mn酸化物の構造の違いが影響していると考えられる。Mn酸化物への放射性Csの吸着と脱離行為に系統的分析を行った。Mn酸化物の表面に、マルチサイトの吸着を存在しているのを発見した。微生物起源Mn酸化物の表面微量平衡電荷イオンの存在は、低濃度放射セシウムへの吸着には強烈な影響がある。層状Mn酸化物と比較すると、トンネル状Mn酸化物は特異的な吸着挙動を示した。このような吸着挙動の違いは、層状とトンネル状Mn酸化物の構造の違いが影響していると考えられる。原子力学
KAKENHI-PROJECT-26820410
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26820410
原始クラミジアが共生するアメーバは何故レジオネラの感染から回避できるのか
自然環境に広く生息するアカントアメーバ(以下アメーバ)の約10%程度に難培養性細菌が共生する。私達は、レジオネラ(Legionella)の感染を阻止する難培養性細菌が共生するアメーバを見つけ、その共生基盤を明らかにするために本研究を行った。その結果、この共生細菌は、レジオレラの分泌装置(T4ASS)分子群を感知し、宿主アメーバの貪食機構への修飾作用が、この撃退現象に関与することを発見した。また共生細菌の責任分子候補としてセリンスレオニンキナーゼをコードするキメラ様遺伝子(peg2639)を同定した。自然環境に広く生息するアカントアメーバ(以下アメーバ)の約10%程度に難培養性の偏性細胞内寄生性細菌が存在する。何故一部のアメーバは細菌を共生させなければならないのか。その理由を解き明かすために難培養性細菌ネオクラミジア(Neochlamydia)が共生するアメーバ株を札幌の土壌から樹立した。この共生細菌はアメーバから一度とりだすと二度とアメーバに感染できない。その一方、抗菌剤で除菌したアメーバの発育スピードや運動能は促進され、この細菌を共生させる上でアメーバは大変な"コスト"を支払っていることになる。その代償はなにか。極めて興味深いことに、我々は、このネオクラミジア共生アメーバには、アメーバの天敵ともいえるレジオネラが感染できないことを見つけた。どのようにネオクラミジアの分子基盤を巧みに利用あるいは協調してこのアメーバはレジオネラを排除するのだろうか。そこでこのネオクラミジアのゲノム情報を踏まえ、レジオネラへの対抗手段を細胞・分子レベルにて以下の3つの研究課題を通して検証する。初年度はネオクラミジアのドラフトゲノム情報を踏まえDNAマイクロアレイを用いて行ったトランスクリプトーム解析と2D-DIGEを行った。その結果、レジオネラ感染時に顕著に発現上昇するいくつかの遺伝子を見つけた。その中には真核生物に広く保存されているセリン・スレオニンキナーゼが含まれていた。また2D-DIGEを用いたプロテオーム解析を行った結果、ネオクラミジア除菌アメーバではアクチンのタンパク発現が顕著に低下していることを見つけた。2年目はこれらの知見を踏まえ、キナーゼやアクチンと会合する分子を同定することで、これら分子のレジオネラ感染制御における役割を明らかにしたい。自然環境に広く生息するアカントアメーバ(以下アメーバ)の約10%程度に難培養性細菌が共生する。それに関連して私達は、自然環境に広く分布するアメーバの天敵ともいえるレジオネラ(Legionella)の感染から身を守るために難培養性細菌(Neochlamydia S13)が共生するアメーバを発見した(Ishida et al., PLoS ONE, 2014)。レジオネラは細胞壁から突き出た2種類の分泌装置(T4ASSとT4BSS)から様々なエフェクター分子を宿主アメーバへと打ち込むことでレジオネラの増殖環境の最適化を行っているので、これら分泌装置やそれらエフェクター分子はNeochlamydia S13が、レジオネラ撃退現象を惹起する上で、重要な誘引物質と考えられた。そこで2D-PAGEを用いたプロテオーム解析やNeochlamydiaのドラフトゲノム配列をもとに構築したDNAマイクロアレイによるトランスクリプトーム解析を用いて、共生細菌を介したアメーバのレジオネラの撃退機構に関わる分子基盤を明らかにために本研究を実施した。その結果、Neochlamydia S13が、宿主アメーバのアクチンの再構築を修飾することで、このレジオネラ撃退現象が誘導されていることを見出した。その過程でNeochlamydia S13がレジオネラのT4ASS分子群を感知し、撃退現象が誘導されることも発見した。さらにその菌体側責任分子候補として、セリンスレオニンキナーゼをコードするキメラ様遺伝子(peg2639)が同定された。これらの研究成果は、このアメーバで見られるレジオネラ撃退現象を解明する上で極めて有用な成果であると考えられ、細胞内から病原体を排除する新たな概念を導き出す可能性を秘めている。自然環境に広く生息するアカントアメーバ(以下アメーバ)の約10%程度に難培養性細菌が共生する。私達は、レジオネラ(Legionella)の感染を阻止する難培養性細菌が共生するアメーバを見つけ、その共生基盤を明らかにするために本研究を行った。その結果、この共生細菌は、レジオレラの分泌装置(T4ASS)分子群を感知し、宿主アメーバの貪食機構への修飾作用が、この撃退現象に関与することを発見した。また共生細菌の責任分子候補としてセリンスレオニンキナーゼをコードするキメラ様遺伝子(peg2639)を同定した。レジオネラの撃退現象を安定的に確認できるようになるまで時間を要した。またアメーバ内での安定した遺伝子発現系はこれまで構築することができなかった。その一方、レジオネラ撃退現象の実験系が安定してからは、トランスクリプトーム解析と2D-DIGEを用いたプロテオーム解析を行い、レジオネラ撃退現象に関わると考えられる分子の同定に成功した。この候補分子は今年度の研究の軸となる極めて有用な結果だと考えている。よって評価区分を「おおむね順調に進展している」とした。細菌学トランスクリプトーム解析でレジオネラ発現時に上昇したネオクラミジア遺伝子はレジオネラ撃退現象に深く関わっている可能性がある。そこでまずアメーバ内での安定的な遺伝子発現系の構築を行った上で、トランスクリプトーム解析で同定された候補遺伝子をアメーバ内で発現させ会合分子の同定作業を行いたい。
KAKENHI-PROJECT-26670206
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26670206
原始クラミジアが共生するアメーバは何故レジオネラの感染から回避できるのか
またトランスクリプトーム解析でアクチンがネオクラミジア除菌アメーバで発現の減少が認められたことより、共生細菌が、宿主アメーバのアクチン重合や発現の制御に関与している可能性が考えられた。そこでアクチンをbaitとして会合するであろうネオクラミジア菌体分子の同定作業を進めたい。さらに1,000円未満の端数額。次年度の消耗品購入時に使用する。
KAKENHI-PROJECT-26670206
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26670206
アトピー性皮膚炎における皮膚バリア構成分子フィラグリン発現調節破綻の解析
本研究計画では、アトピー性皮膚炎における皮膚バリア機構の破綻がどのような機序によって制御・誘導されているのかを、自然発症モデルNC/Ngaマウスを用いて、フィラグリンの機能に着目して解析を実施した。・皮膚炎の発症以前から、経時的に皮膚サンプルを採取し、フィラグリンの発現を遺伝子レベルおよびタンパクレベルで検出した。通常マウスでは、出生直後から数週間皮膚フィラグリンの発現が認められるが、その後検出ができなくなる。しかしながら、NC/Ngaマウスの皮膚では、皮膚炎の出現に伴い再び皮膚フィラグリンの発現が認められるようになった。・NC/Ngaマウスから遺伝子を抽出し、Long-range PCR法によってフィラグリン遺伝子を増幅、シークエンス解析を実施して、遺伝子異常の有無を解析する系を整え、現在も解析を進めている。・NC/Ngaマウスから皮膚ケラチノサイトを分離・培養し、分化誘導因子(マトリックスメタロプロテアーゼ)の発現や分化マーカー(ケラチン10およびケラチン14)の発現を正常な対照マウスと比較したところ、NC/Ngaマウスの皮膚ケラチノサイトでは、分化マーカーの発現および分化を促進するMMP-9の産生が低下していることが明らかとなった。また、増殖刺激をかけたとき、NC/Ngaマウスの皮膚ケラチノサイトではプロフィラグリン産生が増加することが明らかとなった。・得られた研究成果は、国際学会や学術集会、および国際的学術論文に広く発表した。本研究計画では、アトピー性皮膚炎における皮膚バリア機構の破綻がどのような機序によって制御・誘導されているのかを、自然発症モデルNC/Ngaマウスを用いて、フィラグリンの機能に着目して解析を実施した。・皮膚炎の発症以前から、経時的に皮膚サンプルを採取し、フィラグリンの発現を遺伝子レベルおよびタンパクレベルで検出した。通常マウスでは、出生直後から数週間皮膚フィラグリンの発現が認められるが、その後検出ができなくなる。しかしながら、NC/Ngaマウスの皮膚では、皮膚炎の出現に伴い再び皮膚フィラグリンの発現が認められるようになった。・NC/Ngaマウスから遺伝子を抽出し、Long-range PCR法によってフィラグリン遺伝子を増幅、シークエンス解析を実施して、遺伝子異常の有無を解析する系を整え、現在も解析を進めている。・NC/Ngaマウスから皮膚ケラチノサイトを分離・培養し、分化誘導因子(マトリックスメタロプロテアーゼ)の発現や分化マーカー(ケラチン10およびケラチン14)の発現を正常な対照マウスと比較したところ、NC/Ngaマウスの皮膚ケラチノサイトでは、分化マーカーの発現および分化を促進するMMP-9の産生が低下していることが明らかとなった。また、増殖刺激をかけたとき、NC/Ngaマウスの皮膚ケラチノサイトではプロフィラグリン産生が増加することが明らかとなった。・得られた研究成果は、国際学会や学術集会、および国際的学術論文に広く発表した。
KAKENHI-PROJECT-19658117
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アデノウイルスベクターを用いたアポトーシス抑制分子発現による移植腎拒絶回避の試み
(1)XIAPのcloning:腎癌細胞株ACHNよりtotal RNAを抽出し、2組のprimerを用いたRT-PCR法にて、XIAPのcloningを行った。それぞれ1601bpと1651bpのproductが得られ、XIAPのsequenceであることが確認された。(2)XIAP発現ベクターの作成:XIAP PCR product (1601bp)のPtargeT mammalian expression vector (Promega社)へのligationを行った。これを、E.coliにtransformし培養後、plasmidを回収した。Sequenceの結果、misincorporationのないXIAP発現ベクターが得られた。(3)XIAPの導入:electroporationにて、XIAP発現ベクターを尿細管由来293細胞株へ導入した。Immunoblottingにて、これらのXIAP transfectantantは、通常の293細胞やPtargeTのみを導入した293細胞に比較し、有意なXIAP蛋白の発現増加を認めた。(4)XIAP導入効果:われわれはXIAPantisense oligonucleotideを用いた膀胱癌細胞株に対するapoptosisの誘導とこの系におけるBcl-2の発現の減弱を報告した。今回XIAP発現ベクターを導入系で種々のapoptosis刺激による関連分子の推移、Feedback-loopの解析をおこない、apoptosis耐性を示唆する知見を得た。このことは移植腎急性拒絶反応における尿細管細胞のapoptosis耐性誘導による移植腎障害回避に本法が臨床応用可能であることを示唆する。XIAPのcloning:腎癌細胞株ACHNよりtotal RNAを抽出し、2組みのprimerを用いたRT-PCR法にて、XIAPのcloningを行った。それぞれ、予想されたsizeである1601bpと1651bpのproductが得られ、XIAPのsequenceであることが確認された。XIAP発現ベクターの作成:XIAP PCR product(1601 bp)のPtageT mammalian expression vector(Prokmega社)へのligationを行った。これを、E.coliにtransformし培養後、plasmidを回収した。Sequenceの結果、misincorporationのないXIAP発現ベクターが得られた。XIAPの導入:electrophorationにて、XIAP発現ベクターを尿細管由来293細胞株へ導入した。Immunoblottingにて、これらのPtargeT-XIAPtransfectantantは、通常の293細胞やPtargeTのみを導入した293細胞に比較し、有意なXIAP蛋白の発現の増加を認めた。今後の計画:現在、XIAP発現ベクターを導入した尿細管由来293細胞株へのapoptosis刺激による関連分子の推移、Feedback-loopを解析中である。このことは移植腎急性拒絶反応における尿細管細胞のapoptosis耐性誘導による移植腎障害回避に向けた治療法の開発につながるものである。(1)XIAPのcloning:腎癌細胞株ACHNよりtotal RNAを抽出し、2組のprimerを用いたRT-PCR法にて、XIAPのcloningを行った。それぞれ1601bpと1651bpのproductが得られ、XIAPのsequenceであることが確認された。(2)XIAP発現ベクターの作成:XIAP PCR product (1601bp)のPtargeT mammalian expression vector (Promega社)へのligationを行った。これを、E.coliにtransformし培養後、plasmidを回収した。Sequenceの結果、misincorporationのないXIAP発現ベクターが得られた。(3)XIAPの導入:electroporationにて、XIAP発現ベクターを尿細管由来293細胞株へ導入した。Immunoblottingにて、これらのXIAP transfectantantは、通常の293細胞やPtargeTのみを導入した293細胞に比較し、有意なXIAP蛋白の発現増加を認めた。(4)XIAP導入効果:われわれはXIAPantisense oligonucleotideを用いた膀胱癌細胞株に対するapoptosisの誘導とこの系におけるBcl-2の発現の減弱を報告した。今回XIAP発現ベクターを導入系で種々のapoptosis刺激による関連分子の推移、Feedback-loopの解析をおこない、apoptosis耐性を示唆する知見を得た。このことは移植腎急性拒絶反応における尿細管細胞のapoptosis耐性誘導による移植腎障害回避に本法が臨床応用可能であることを示唆する。
KAKENHI-PROJECT-14657404
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骨類似機能を発揮するパウダー/ソリッド三次元造形複合体の創製
生体用金属インプラントは、(1)低ヤング率、(2)歩行時・破損時の衝撃吸収性、(3)骨組織に類似の力学的振る舞いと周囲骨への正常な働きかけ、を兼ね備える必要があり、通常の溶融ソリッド部だけからなる造形インプラントでは、その実現が困難である。一方で、造形時に利用する原料粉末は造形後除去する必要があるため、表面から内部までの連結孔をもつ三次元多孔質構造体にしなければならないという強い制約があった。そこで、本研究提案課題では、粉末を除去するという常識・既成概念を払拭し、造形した三次元多孔質構造体の隙間空間に粉末を意図的に充填し、しかも粉末同士がネックを形成した状態である「(ネック形成)パウダー/ソリッド造形複合体」ともいうべき新材料を提案し、開発することにあった。最終的な開発製品としては、あたかも生体骨として振舞うことの出来る「低ヤング率」と「衝撃吸収性」を兼ね備えた、骨類似機能を持つ造形複合体の創製であった。研究課題は2009年4月1日に内定され、通知されたのち研究準備を開始し、パウダー/ソリッド三次元造形複合体の設計図面の作成を行った。しかしながら2009年5月11日付で科学研究費補助金・若手研究(S)の内定があり、重複制限により補助事業を廃止することとなった。その際、研究分担者が研究代表者になることで本研究を継続することは困難であるものと判断した。生体用金属インプラントは、(1)低ヤング率、(2)歩行時・破損時の衝撃吸収性、(3)骨組織に類似の力学的振る舞いと周囲骨への正常な働きかけ、を兼ね備える必要があり、通常の溶融ソリッド部だけからなる造形インプラントでは、その実現が困難である。一方で、造形時に利用する原料粉末は造形後除去する必要があるため、表面から内部までの連結孔をもつ三次元多孔質構造体にしなければならないという強い制約があった。そこで、本研究提案課題では、粉末を除去するという常識・既成概念を払拭し、造形した三次元多孔質構造体の隙間空間に粉末を意図的に充填し、しかも粉末同士がネックを形成した状態である「(ネック形成)パウダー/ソリッド造形複合体」ともいうべき新材料を提案し、開発することにあった。最終的な開発製品としては、あたかも生体骨として振舞うことの出来る「低ヤング率」と「衝撃吸収性」を兼ね備えた、骨類似機能を持つ造形複合体の創製であった。研究課題は2009年4月1日に内定され、通知されたのち研究準備を開始し、パウダー/ソリッド三次元造形複合体の設計図面の作成を行った。しかしながら2009年5月11日付で科学研究費補助金・若手研究(S)の内定があり、重複制限により補助事業を廃止することとなった。その際、研究分担者が研究代表者になることで本研究を継続することは困難であるものと判断した。
KAKENHI-PROJECT-21656175
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酵母染色体複製起点結合タンパク質及び開始複合体についての生化学的研究
出芽酵母の染色体複製起点は11塩基対のコア配列とそれに隣り合うエンハンサー配列からなる。エンハンサー配列内にはコア類似配列が複数個現れる場合が多い。私は大腸菌において、特異的な配列を持つ一本鎖DNA上に複製複合体プライモソームが形成されることを見い出してきたので、酵母においても同様な複製複合体を単離する目的でコア配列を合む一本鎖DNA(T-rich鎖)に結合するタンパク質の単離を試みた。その結果、RNA結合モチーフとして提唱されているRNA recognition motif(RRM)を有するCTBP-1およびCTBP-5(すでに報告されているSSB1と同一であった)を単離した。CTBP-1(これと同じ遺伝子が最近RBP1として報告された)についてはその結合特異性および結合に必要なタンパク質ドメインについて詳細な解析を行った。その結果、CTBP-1はピリミジンを含むpolydeoxyribonucleotideに強く結合すること、結合にはRNP-1とRNP-2を含む1個のRRMのみで十分であること、CTBP-1に含まれる2個のRRMは単独では元のタンパク質の10分の1の親和性をもつにすぎないが、2個存在することにより強い親和性を示すことなどを明らかにした。CTBP-1は酵母の増殖に必須ではないことから染色体複製に必須な役割をはたしている可能性は否定された。染色体上に存在するpolypyrimidineあるいはCTの繰り返し配列はH-DNAあるいはtriple helix構造などの特徴的な高次構造をとることが知られており、CTBP-1はこれらの構造と相互作用する可能性を検討している。出芽酵母の染色体複製起点は11塩基対のコア配列とそれに隣り合うエンハンサー配列からなる。エンハンサー配列内にはコア類似配列が複数個現れる場合が多い。私は大腸菌において、特異的な配列を持つ一本鎖DNA上に複製複合体プライモソームが形成されることを見い出してきたので、酵母においても同様な複製複合体を単離する目的でコア配列を合む一本鎖DNA(T-rich鎖)に結合するタンパク質の単離を試みた。その結果、RNA結合モチーフとして提唱されているRNA recognition motif(RRM)を有するCTBP-1およびCTBP-5(すでに報告されているSSB1と同一であった)を単離した。CTBP-1(これと同じ遺伝子が最近RBP1として報告された)についてはその結合特異性および結合に必要なタンパク質ドメインについて詳細な解析を行った。その結果、CTBP-1はピリミジンを含むpolydeoxyribonucleotideに強く結合すること、結合にはRNP-1とRNP-2を含む1個のRRMのみで十分であること、CTBP-1に含まれる2個のRRMは単独では元のタンパク質の10分の1の親和性をもつにすぎないが、2個存在することにより強い親和性を示すことなどを明らかにした。CTBP-1は酵母の増殖に必須ではないことから染色体複製に必須な役割をはたしている可能性は否定された。染色体上に存在するpolypyrimidineあるいはCTの繰り返し配列はH-DNAあるいはtriple helix構造などの特徴的な高次構造をとることが知られており、CTBP-1はこれらの構造と相互作用する可能性を検討している。酵母の複製起点(ARS)に保存される11塩基対のコア配列に特異的に結合する酵母タンパク質を検索した結果、コア配列T-rich鎖一本鎖DNAに特異的に結合するタンパク質が核抽出液中に存在することを、gel shift assayおよびSouth-western法により確認した。それらをコードする遺伝子をクローニングするために酵母染色体DNAをGST融合ベクター、pGEX-3Xおよびその誘導体にクローニングし、GST融合タンパク質ライブラリーを作製した。このライブラリーをコア配列T-rich鎖を含むオリゴヌクレオチドをプローブとしてスクリーニングした結果、これまでにCBP-1およびCBP-2の2個のクローンを単離した。CBP-1タンパク質はgel shift assayにより野生型コア配列には結合するが、点変異をもつコア配列への結合は減少していることを確認した。酵母核抽出液をATPγSの存在下で、A50mゲル濾過で分画した結果、void volumeに近い高分子量画分に外から添加したARS配列を含む環状DNAを複製する活性と内在性基質タンパク質をリン酸化する能力が共溶出することを見いだした。さらにCDC7タンパク質に対する抗体を用いたimmunoblottingにより同じ高分子量画分にCDC7タンパク質が存在することが明らかとなった。以上の事実は複製能をもつ高分子量タンパク質複合体(複製開始複合体)が核抽出液中に存在し、その中にG1からS期への移行を抑制すると考えられているCDC7キナーゼも含まれていることを示唆し、大変興味深い。(1)S期の細胞を濃縮した酵母細胞から調製した核抽出液を用いてin vitroDNA複製を行った結果、二本鎖、一本鎖DNAいずれを鋳型に用いても複製能が検出された。一本鎖DNAは二本鎖の約10倍の活性を示した。(2)同じ核抽出液をATPγS存在下にゲル濾過で分画した結果、分子量約5000KDaの高分子量複合体にDNA複製能を見出した。さらに、内在性のタンパク質を基質としたリン酸化能とCDC7タンパク質がこの高分子量複合体と共溶出する。2 ARS配列に結合するタンパク質(1)酵母の複製複合体の構成因子を同定する目的で、ARSのT-richコア配列一本鎖DNAに結合するタンパク質のクローン化を試み、RNA結合モチーフとして提唱されているRNP配列を有するCTBP-
KAKENHI-PROJECT-04680182
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04680182
酵母染色体複製起点結合タンパク質及び開始複合体についての生化学的研究
1およびCTBP-5(すでに報告されているSSB1と同一であった)を単離した。CTBP-1はTあるいはTCに富む塩基配列に特異的に結合する。これらの遺伝子産物はいずれも酵母の増殖に必須ではない。(2)CTBP-2に含まれるコード領域はすでに報告されている第三染色体のテロメア近傍の配列と一部同一であったが、Southern解析によりCTBP-2領域を含む配列が第三染色体以外にも存在することが明らかになったので、現在それぞれの構造解析を進めている。CTBP-2のDNA結合は特に顕著な塩基配列特異性を示さない。3出芽酵母の染色体複製の制御因子の探索(1)真核細胞の染色体複製の制御因子を同定するために出芽酵母の複製開始を制御するCDC7タンパク質と相互作用するタンパク質の生化学的同定を試みた。その結果、CDC7結合タンパク質としてDbf4タンパク質を同定した。(2)Two-hybridsystemによりCDC7と相互作用する増殖に必須な新たな遺伝子7KAMを単離した。
KAKENHI-PROJECT-04680182
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パリ郊外の田園都市に関する研究
現地博物館、フランス現代建築資料館、国立公文書館などを活用しつつ、15年度と16年度にシュレンヌ市田園都市の調査と資料収集、18年度にスタン市とプレ=サン=ジェルヴェ市の田園都市の調査と資料収集を行った。その結果、まず、住宅供給の文脈から、国レベルの住宅政策の動向の影響を受けるとともに、逆に、その政策変化を促すものでもあったことが判明した。また建設にあたって、土地獲得の財源は県であり、住棟建設の財源は大部分が国の金融機関からの融資であった。また膨大に所蔵されていた建築図面から、住戸プランのタイポロジーの変化、すなわち19世紀の労働者住宅タイプから次第に20世紀の普遍的なnLDK型に発展したこと、が判明した。とともに、上記3つの田園都市において平行した経過が見られること、衛生設備の普及率なども次第に向上していったことなど、を確認した。さらにセーヌ県低廉住宅公社の理事セリエのもとに、各田園都市に数人の建築家からなる設計者グループが設置されていた。ゆえにシュレンヌでは地方スタイル、プレ=サン=ジェルヴェではオランダ近代スタイルなどと、田園都市ごとに建築スタイルが多様であることの背景を確かめた。さらに社会主義者アンリ・セリエが、県レベルでの市町村ネットワークを確立し、そのなかで福祉政策として公衆衛生、コミュニティ、国民教育、職業教育などを充実させようとしていたこと、そのなかでさまざまな社会階層の住民からなる社会を建設しようとしたことなど、19世紀の理想都市運動とは異なる実際的な面もあったことを確認した。また行政主導であり、民間主導のイギリスや日本とは対照的であった。現地博物館、フランス現代建築資料館、国立公文書館などを活用しつつ、15年度と16年度にシュレンヌ市田園都市の調査と資料収集、18年度にスタン市とプレ=サン=ジェルヴェ市の田園都市の調査と資料収集を行った。その結果、まず、住宅供給の文脈から、国レベルの住宅政策の動向の影響を受けるとともに、逆に、その政策変化を促すものでもあったことが判明した。また建設にあたって、土地獲得の財源は県であり、住棟建設の財源は大部分が国の金融機関からの融資であった。また膨大に所蔵されていた建築図面から、住戸プランのタイポロジーの変化、すなわち19世紀の労働者住宅タイプから次第に20世紀の普遍的なnLDK型に発展したこと、が判明した。とともに、上記3つの田園都市において平行した経過が見られること、衛生設備の普及率なども次第に向上していったことなど、を確認した。さらにセーヌ県低廉住宅公社の理事セリエのもとに、各田園都市に数人の建築家からなる設計者グループが設置されていた。ゆえにシュレンヌでは地方スタイル、プレ=サン=ジェルヴェではオランダ近代スタイルなどと、田園都市ごとに建築スタイルが多様であることの背景を確かめた。さらに社会主義者アンリ・セリエが、県レベルでの市町村ネットワークを確立し、そのなかで福祉政策として公衆衛生、コミュニティ、国民教育、職業教育などを充実させようとしていたこと、そのなかでさまざまな社会階層の住民からなる社会を建設しようとしたことなど、19世紀の理想都市運動とは異なる実際的な面もあったことを確認した。また行政主導であり、民間主導のイギリスや日本とは対照的であった。今年度は、パリ郊外のシュレンヌ市田園都市に対象を絞り、資料収集をおこなった。同市博物館に所蔵されている、セーヌ県低廉住宅公社作成の敷地図面、建築図面を複写した。また国立公文書館に所蔵されている、同公社の議事録などを閲覧した。また関連研究書を収集し、既往研究の検討をほぼ終えた。建築図面等は、カメラで接写し、日本に持ち帰ったのち、CADソフトにより清書しつつ、分析項目を挙げつつデータベース化した。また議事録は、敷地選択理由、建設方針基本、財政状況、建築家の登用、等に注目しつつより閲覧し、とりわけ20世紀初頭において相次いで制定された住宅法の影響を読みとることができた。そこから数回における建設事業ごとに建設された部分が特定できた。また当初はイギリスの田園都市を手本として、運営としては独立採算型、フィジカルには低層独立住宅型の住宅地を建設しようとしたが、国レベルの住宅政策の転換から、経営的には国からの財政補助、フィジカルには中層集合住宅というかたちで実現された。しかしそれでも当初の理念は部分的には実現された、ということを明らかにした。公社において、敷地選定としては、鉄道による都心アクセス、景勝の地であることなどが考慮されたこと、住宅建設においては当初は19世紀的な労働者住宅タイプであったが、1930年代以降はより標準化された、特定の階層に特化していない近代住宅が主流になっていることを確認した。以上の研究成果をまとめ下記「11.研究発表」に挙げた論文を書き、日本建築学会に投稿し、掲載が決定された。またその続編である論文『セーヌ県低廉住宅公社の建築・美装委員会---フランス田園都市誕生の枠組み』は審査中である。パリ郊外シュレンヌ市田園都市について、その住戸タイポロジーを分析するために、まず前年度に現地調査で撮影した住棟、住戸平面図から平面図約600点を清書し、衛生設備、台所と食堂の関係、居間の有無、寝室の独立性などを指標とし、さらに第1期工事(1921)、第2期(1927)、第3期(1930)、第4期(1931)、第5期(193134)、第6期(1933)、第7期(193639)という時系列のなかでどう変化したかを分析した。
KAKENHI-PROJECT-15560559
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パリ郊外の田園都市に関する研究
分析の結果、初期はフロ・シャワーなど生活関連設備を共同化することを目指していたが、第2・第3期以降は設備の戸別化に向かったことが判明した。また初期は台所、食事室、居間を一体化した共同室(salle commune)を含むものが多かったが、これは19世紀の労働者住宅の形成に近い。しかし第3期以降はいわゆるLDK形式に移行したことなどをつきとめた。これらはフランスの田園都市が、初期は労働者ユートピア的なものであったが、次第に機能的な近代住宅に移行したことを示しており、こうした変化がひとつの田園都市のなかにみられるのがシュレンヌ市のきわだった特徴であるといえる。2004年12月から2005年1月にかけて再度シュレンヌ市の現地調査をおこない、シュレンヌ市関係の残りの資料を収集した。また次年度のための予備調査としてスタン市、プレ=サン=ジェルヴェ市の田園都市についても現地調査をし、関係者にヒアリングをし、図面資料の存在をつきとめた。平成15・16年度はパリ郊外シュレンヌ市田園部市について調査分析したが,今年度は比較検討材料とするために、やはりパリ郊外のプレ=サン=ジェルヴェ市とスタン市の田園都市について、現地視察をおこない、さらにセーヌ県住宅供給公社の資料室に保管されている建設当時の施工図や、パリの現代建築資料館に所蔵されているこれら田園都市関係の図面を閲覧し、写真複写などした。さらに田園都市運動推進者であったアンリ=セリエについてのモノグラフや、プレ=サン=ジェルヴェ市史についての2005年度刊行の最新文献を入手し分析した。プレ=サン=ジェルヴェ市については、シュレンヌ市と同様に、なん期かの工期に区分され、初期はイギリス型の低層住宅を中心とするものであったが、後期になると大量供給のために中層集合住宅が大部分を占めるものであったことが確認された。また初期には共同浴場、各戸における共同塞(salle commune)の存在など19世紀の労働者住宅の系譜に繋がるものであったが、次第にミニマムな衛生設備を整えた近代的なものが多くなったことをつきとめた。全体の配置計画も、初期のピクチャレス型から左右対称形式へと移行するなど、建設プロセスの変化が、シュレンヌ市と類似していることを解明した。スタン市はむしろ逆で、初期は中層集合住宅が中心であったが、後期は低層のセミ=デタッチト住宅が多くなったが、これは建設工事全般が他の田園都市よりも早期であったためと判断されることを明らかにした。全体としてはパリ周辺の田園都市は、同じセーヌ県低廉住宅公社が管轄しているのであったが、スタイルなどは多様であるが、統一的なところもあって、衛生設備などについては同じ歩みを示していることを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-15560559
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乱れた系の局在・磁性・超伝導・超流動の微視的理論
固体電子系におけるランダムネスおよび冷却原子気体におけるトラップポテンシャルによって局在したフェルミオンが示す新しい量子凝縮現象を理論的に調べた。なかでも、(1)アンダーソン局在と超伝導の競合による超伝導絶縁体転移のメカニズムを解明したこと、(2)冷却原子気体における新しいFFLO超流動相を発見したこと、(3)ランダムなスピン軌道相互作用があるスピン三重項超伝導体の秩序変数を決定したこと、の3点は特筆すべき成果である。アンダーソン局在の発見以来現在に至るまで、乱れた電子系の量子物性は物性物理学における重要課題となっている。また、電子間相互作用が生み出す磁性・超伝導・金属絶縁体転移などの多彩な現象は物性物理学における中心課題である。現在、アンダーソン局在・強相関電子系の両分野において、電子相関とランダムネスの協奏により生じる興味深い現象が次々と発見され、精力的な研究が続けられている。しかし、理論的に未解明な問題が多いのが現状である。ここには未開拓な分野が広がっており、多くの理論研究者の興味を惹きつけている。しかしながら、具体的な取り組みは少ない。その主な理由は、問題の難しさそのものにあると思われる。しかし、近年の計算機性能の向上と、電子相関を取り扱う理論的手法の発展により、強い乱れを含む系の微視的計算も可能となっている。本研究課題では、そのような理論的研究の発展に取り組んでいる。固体電子系におけるランダムネスおよび冷却原子気体におけるトラップポテンシャルによって局在したフェルミオンが示す新しい量子凝縮現象を理論的に調べた。なかでも、(1)アンダーソン局在と超伝導の競合による超伝導絶縁体転移のメカニズムを解明したこと、(2)冷却原子気体における新しいFFLO超流動相を発見したこと、(3)ランダムなスピン軌道相互作用があるスピン三重項超伝導体の秩序変数を決定したこと、の3点は特筆すべき成果である。乱れた電子系における局在・磁性・超伝導の協奏は歴史的な研究課題である。しかし、相関のあるランダム系の計算は容易でない。また興味ある現象の多くでは、レプリカ対称性を仮定する摂動計算が破綻する。そこで、ランダムネスを厳密に取り扱い、なおかつ臨界揺らぎを取り入れた計算法を開発した。本年度は特に、乱れた電子系の超伝導に関する研究を行い、以下の2つの研究成果を得た。1、アンダーソン局在とS波超伝導の競合による超伝導絶縁体転移超伝導絶縁体転移の新しい典型例としてホウ素ドープダイヤモンドやシリコン等の高濃度半導体における超伝導を考察し、そのグローバルな相図を決定した。特に、超伝導絶縁体転移に関して、超伝導のメゾスコピック揺らぎ・熱揺らぎの影響を調べた。ダイヤモンド、シリコン等の物質の個性を反映した計算を行った。これらの系では、アンダーソン局在に伴うクーパーペアの局在相の存在が超伝導絶縁体転移の起源となりうることを示した。2、磁場中のランダム系におけるFFLO超伝導・超流動の実空間構造FFLO超伝導は並進対称性が自発的に破れた新奇な量子凝縮相として、長く注目を集めて来た。60年代の理論的予言以来、長い間実験的探索が続けられて来たが、その実験的証拠が蓄積されてきたのはごく最近のことである。本研究では、FFLO超伝導における乱れの効果を調べた。特に、点状欠陥の存在下において「FFLOグラス相」が実現される可能性を指摘した。これは本研究で初めて示された新奇なグラス相である。超伝導の標準理論であるBCS理論では、クーパー対が運動量を持たないことが仮定されている。それに対して、有限の運動量を持つクーパー対の量子凝縮による超伝導相がFFLO超伝導である。今年度はランダムネスや空間的不均一性がある系におけるFFLO超伝導・超流動について研究を行った。第一に、重い電子系超伝導体CeCoIn5の低温高磁場領域で実現されていると考えられているFFLO超伝導相におけるランダムネスの効果を調べた。ランダムポテンシャルを含む微視的モデルをボゴリウボフ-ド・ジャン方程式に基づいて解析した結果、新しいタイプのグラス相が現れることを見出し、これをFFLOグラス相と名付けた。その相において期待される磁気的性質を調べ、その空間分布と統計性に現れる特徴を見出した。第2に、インバランスな冷却フェルミ原子気体におけるFFLO超流動相の研究を行った。この系におけるFFLO超流動の可能性が大きな注目を集めているが、現在までに実験的な観測例はない。その理由が、この系に特有のトラップの性質にあることを我々は見出し、FFLO超流動を実現するためには別の種類のトラップを用意すれば良いことを提案した。本研究では、トラップがある系の超流動をボゴリウボフード・ジャン方程式および実空間T行列近似を用いて解析した。その結果から、(1)通常用いられる調和型トラップではFFLO超流動相と相分離状態の区別がつかない、(2)ドーナッツ型トラップを用いれば、回転対称性が破れた超流動相が実現されそれはFFLO超流動であることが実験的に同定可能であること、を示した。ドナッツ型トラップにおける実験はそれほど難しいものではなく、このアイデアに基づいた今後の実験研究により、FFLO超流動の直接的な観測が可能になると期待されている.今年度は、「スピン三重項超伝導におけるランダムスピン軌道相互作用」について研究を行った。スピン三重項超伝導体はベクトル型の秩序変数を持ち、それはdベクトルと呼ばれる。これまでに我々が構築したdベクトルに関する微視的理論の結果から、dベクトルの秩序構造が空間反転対称性の有無によって全く異なることが分かってきた。
KAKENHI-PROJECT-20740187
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20740187
乱れた系の局在・磁性・超伝導・超流動の微視的理論
そのような研究の発展を背景として、本年度は特に層状欠陥を持つスピン三重項超伝導体を解析した。そして、それが空間反転対称性がある系とない系の両方の性質を併せ持ち、新しいタイプのdベクトルの構造を持つことを発見した。具体的な研究対象として、Sr2RuO4-Sr3Ru2O7共晶系とCePt3Siの2つの超伝導体を考察した。これらはスピン三重項超伝導体であると考えられており、層状欠陥の存在が示唆されている。このような系において、2つの興味深い現象を示した。CePt3Siについては、乱れによる超伝導転移温度の増大が実験的に示されている。我々の理論解析により、この異常な振る舞いがランダムネスによるグローバルな空間反転対称性の回復によるものであることが分かった。また、Sr2RuO4-Sr3Ru2O7共晶系において、バルクのSr2RuO4で実現しているカイラル超伝導状態とは異なるヘリカル超伝導状態が安定となることを示した。このことからSr2RuO4-Sr3Ru2O7共晶系では近年話題となっているトポロジカル超伝導が実現していると考えられる。そのことから期待される新しい超伝導現象について議論した。今年度は、以下の2つの研究成果を得た。1.界面近傍に局在した電子状態には反対称スピン軌道相互作用が現れることが知られており、近年スピントロニクスやトポロジカル絶縁体の観点からも大きな注目を集めている。本研究では、まず反対称スピン軌道相互作用のミクロな起源について考察を行った。その結果、反対相スピン軌道相互作用の代表例であるラシュバ型スピン軌道相互作用に関して少なからず誤解があることが分かった。本研究では、多軌道モデルに基づいた正しい導出を行い、パリティの異なる軌道間の混成が主要な役割を果たすことを示した。反対称スピン軌道相互作用を仮定した研究は膨大な規模になっているが、そのミクロな起源についてはあまり知られていなかったため、我々の研究成果は驚きを持って迎えられた。2.冷却原子気体において実現されると期待される新奇FFLO超流動状態を提案した。我々の提案は、リング状のトラップを用いた擬一次元的な原子ガスを考えている。インバランスなフェルミ原子ガスをトロイダルトラップを用いてリング状にトラップすると、Angular-FFLO超流動状態が安定になる。この状態では回転対称性が自発的に破れているので、そこに外的な回転を加えると様々な興味深い量子相が発現する。我々は(1)反整数量子渦状態、(2)巨大量子渦状態、(3)FF+LO中間状態の3つを発見した。
KAKENHI-PROJECT-20740187
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Visual Flowに基づく空間認知の脳内神経機構の研究
(1)広視野運動情報の脳内統合過程の研究MST野D細胞およびMT野細胞に対して、二方向重畳運動刺激およびPlaid運動刺激に対するチューニング特性を解析した。実験結果から、1)Visual Flowの統合がMST野において行われること、2)MST野統合細胞とMST野コンポーネント細胞ともにMT野パターン細胞からのみの入力を受けている可能性が高いこと、等が判明した。また上記の結論に基づき、MT野からMST野への情報統合モデルを提案した。(2)広視野コヒーレント運動認知の順応機構に関する研究Visual Flowの認知特性の順応刺激依存性を心理実験により解析し、広視野運動認知システムにおける順応機構について考察した。順応刺激に依存したテスト刺激に対する運動方向認知の正答率の順位は、順応刺激呈示による運動方向認知特性の変化が、運動方向選択性細胞における順応刺激の強さに依存した感度低下機構のみでは説明できないことを示唆していた。我々は、ボトムアップ的感度低下メカニズムとトップダウン的な選択的感度上昇メカニズムが協同して働くような順応機構モデルを提出した。(3)広視野運動順応に伴う運動残効認知と運動知感度の変化およびその脳内神経機構の研究MST野細胞およびMT野細胞において、順応刺激前後における運動刺激に対する感度ならびに自発放電頻度を調べた。MST野およびMT野細胞における自発放電レベルの回復過程の時間経過は、ヒトにおけるVisual Flow認知感度回復の時間経過および運動残効知覚の持続経過と類似であった。(4)広視野運動情報の脳内情報表現の研究2方向重畳運動刺激およびPlaidパターン刺激を用いた生理実験からMST野にはコンポーネント運動情報表現および統合運動情報表現が、MT野にはコンポーネント運動情報表現およびパターン運動情報表現が存在することが判明した。(1)広視野運動情報の脳内統合過程の研究MST野D細胞およびMT野細胞に対して、二方向重畳運動刺激およびPlaid運動刺激に対するチューニング特性を解析した。実験結果から、1)Visual Flowの統合がMST野において行われること、2)MST野統合細胞とMST野コンポーネント細胞ともにMT野パターン細胞からのみの入力を受けている可能性が高いこと、等が判明した。また上記の結論に基づき、MT野からMST野への情報統合モデルを提案した。(2)広視野コヒーレント運動認知の順応機構に関する研究Visual Flowの認知特性の順応刺激依存性を心理実験により解析し、広視野運動認知システムにおける順応機構について考察した。順応刺激に依存したテスト刺激に対する運動方向認知の正答率の順位は、順応刺激呈示による運動方向認知特性の変化が、運動方向選択性細胞における順応刺激の強さに依存した感度低下機構のみでは説明できないことを示唆していた。我々は、ボトムアップ的感度低下メカニズムとトップダウン的な選択的感度上昇メカニズムが協同して働くような順応機構モデルを提出した。(3)広視野運動順応に伴う運動残効認知と運動知感度の変化およびその脳内神経機構の研究MST野細胞およびMT野細胞において、順応刺激前後における運動刺激に対する感度ならびに自発放電頻度を調べた。MST野およびMT野細胞における自発放電レベルの回復過程の時間経過は、ヒトにおけるVisual Flow認知感度回復の時間経過および運動残効知覚の持続経過と類似であった。(4)広視野運動情報の脳内情報表現の研究2方向重畳運動刺激およびPlaidパターン刺激を用いた生理実験からMST野にはコンポーネント運動情報表現および統合運動情報表現が、MT野にはコンポーネント運動情報表現およびパターン運動情報表現が存在することが判明した。今年度は、Visual Flowに基づく空間認知の神経機構を解明するために、以下の3つの問題について研究を行った。(1)MT野からMST野への視覚運動情報の統合過程に関する研究局所運動の検出を行うMT野細胞および広視野運動の検出を行うMST野細胞の二方向重畳視覚フロー(visual flow)に対する反応特性を比較解析することにより、MT野からMST野への神経情報統合様式を考察した。今回記録したMT野細胞は、すべて、二方向重畳運動を構成する二つのコヒーレントな運動の一方が細胞の最適方向とほぼ一致したとき最大反応を示した。一方、MST野では、MT野で見られたようなチューニング特性を示す細胞(コンポーネント細胞)の他に、重畳運動の統合方向に最大反応を示す細胞(統合細胞)が存在した。以上の結果は、MT野では、視覚フローに関する情報統合は行われておらず、MST野においてはじめて視覚フローの統合がなされる可能性があることを示唆している。(2)MT野およびMST野における順応特性と運動残効知覚の神経機構について順応刺激呈示に伴い、MT野およびMST野細胞の視覚フローに対する反応特性がどのように変化するかを調べた。さらに、順応刺激呈示後の自発放電頻度の変化をMT野細胞とMST野細胞とで比較したところ、MT野、MST野ともに最適方向への順応刺激で減少、逆方向への順応刺激で増加した。また、順応刺激後の自発放電頻度の時間経過と運動残効の持続時間との間には明確な対応関係が見られた。(3)順応刺激による広視野運動知覚の変化とその回復過程に関する心理物理的研究順応刺激呈示後、運動知覚感度および運動残効知覚が順応刺激後に短時間与えるキャンセル刺激の呈示時間および運動方向にどのように依存するかを調べた。その結果に基づき、MST野細胞間の神経連絡について検討した。本年度は、以下のような研究を行った。(1)ニホンザルMT野およびMST野細胞に対して、1)二方向重畳Visual Flow刺激、2)2次元Plaidパターン刺激に対するチューニング特性を調べた。
KAKENHI-PROJECT-16500087
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Visual Flowに基づく空間認知の脳内神経機構の研究
MST野細胞はすべてPlaidパターンのパターン運動に対して最大反応を示したが、MT野細胞ではパターン細胞のみがパターン運動に対して強く反応した。一方、二方向重畳Visual Flowの統合運動に対して最大反応を示したのはMST野統合細胞のみであった。以上の結果より、1)Visual Flowの統合がMT野ではなくMST野において行われること、2)MST野統合細胞とMST野コンポーネント細胞ともにMT野パターン細胞からのみの入力を受けている可能性が高いことが判明した。これらの結論に基づき、MT野からMST野への神経情報統合モデルを提案した。(2)コヒーレントなVisual Flowに対する人の認知特性が、テスト刺激前に呈示される順応刺激にどのように依存するかを調べることにより、広視野運動認知システムにおける順応機構について考察した。順応刺激としてコヒーレントな運動刺激を用いた場合には、順応刺激のコヒーレント値が大きくなるほど運動方向認知の正答率は低下した。また、順応刺激としてダイナミックランダムパターンを用いた場合の方が静止パターンを用いた場合と比較して、運動方向認知率は高くなった。さらに、順応刺激のコヒーレント値が小さいときの運動方向認知率は、ダイナミックランダムパターンを用いたときよりも高くなった。これらの実験結果から、運動刺激の強さに依存して感度を低下させるボトムアップ的な順応メカニズムと、運動刺激の性質に応じて感度を上昇させるトップダウン的な順応メカニズムが協同して働くとする広視野運動順応モデルを提案した。
KAKENHI-PROJECT-16500087
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パフ局在化因子の分子遺伝学的探索を基盤とした活性化クロマチン構造調節機構の解明
真核生物の遺伝子発現においてクロマチン構造変換が重要な過程であることは明白であるが、この過程は多種多様なタンパク質群により制御されており、その分子メカニズムには不明な点が多い。本研究ではショウジョウバエのプロテイントラップ系統ライブラリーを利用した分子遺伝学的スクリーニングにより、エクダイソンパフ領域に局在化する新規因子の探索を試みた。その結果、CG11138(Ringfectと命名)とenolaseが新たなパフ局在化因子として同定され、これらの因子はエクダイソンレセプターに対する新たなコアクチベータとして機能する可能性が示唆された。真核生物の遺伝子発現においてクロマチン構造変換が重要な過程であることは明白であるが、この過程は多種多様なタンパク質群により制御されており、その分子メカニズムには不明な点が多い。本研究ではショウジョウバエのプロテイントラップ系統ライブラリーを利用した分子遺伝学的スクリーニングにより、エクダイソンパフ領域に局在化する新規因子の探索を試みた。その結果、CG11138(Ringfectと命名)とenolaseが新たなパフ局在化因子として同定され、これらの因子はエクダイソンレセプターに対する新たなコアクチベータとして機能する可能性が示唆された。本研究は活性化クロマチン構造の分子制御機構の理解を目的とし、新規因子の探索を基盤とする。構築したショウジョウバエ分子遺伝学的スクリーニングを継続し、クロマチン構造変換因子の候補としてパフに局在化する因子群の探索を実施した。この結果、全1484系統のスクリーニングを完了し、14系統の候補因子系統の取得に成功した。取得された候補因子のなかには、Zinc-fingerモチーフやPHD-fingerモチーフを持つタンパク質グループやRMMといったRNA結合モチーフを有するタンパク質が見出された。続く2次スクリーニングではエクダイソンレセプター(EcR)の転写活性化に寄与する因子の選別を目的とし、候補因子のノックダウン系統とin vivoレポーターショウジョウバエを用いたEcR標的遺伝子の転写活性解析を行った。なかでも、Zinc-fingerモチーフとRing-fingerモチーフを有するCG11138(Ringfectと命名)はその発現量依存的にEcRのリガンド依存的な転写活性を促進した。したがって、Ringfectを中心的に更なる性状解析を行った。まずはRingfectの転写活性化ドメインを検索するためにそれぞれのドメインの欠失変異体と点変異体を作成した。S2細胞においてレポーターアッセイを行った結果、Ring-fingerモチーフ変異体はEcRの転写促進を抑制した。このことから、RingfectのEcR転写活性化能はRING-fingerモチーフを介していることが示唆された。更にRingfectがEcRの標的遺伝子E75Bの発現を促進するかを検討するために、Ringfectをノックダウンし、RT-qPCRを行った。その結果、E75B mRNAの発現量が減少したことから、RingfectはEcRの転写活性化に寄与することが明らかとなった。本研究はクロマチン構造の活性化制御メカニズムの理解を目標とし、分子遺伝学的スクリーニングからの新規因子探索を基盤としている。特に、クロマチン構造のモデル系としてショウジョウバエ三齢幼虫の唾腺多糸染色体を利用した新たなクロマチン構造調節因子の探索を目指している。構築した分子遺伝学的スクリーニングから、クロマチン構造変換候補因子として唾腺多糸染色体エクダイソンパフ領域に局在化する因子として、Zinc-fingerモチーフとRing-fingerモチーフを有するCG11138(Ringfectと命名)を同定した。RingfectはEcRのリガンド依存的な転写活性を、p160ファミリータンパク質Taimanと協調的に促進し、この転写活性化能はRingfectのRING-fingerモチーフを介して発揮されることが明らかとなった。また、ショウジョウバエ培養細胞においてRingfectをノックダウンし、EcR標的遺伝子E75Bの発現誘導をRT-qPCRによって検討を行ったところ、E75B mRNAの発現量が減少したことから、RingfectはEcRの転写活性化因子であることが判明した。更なるスクリーニングの結果、Ringfectに加えて、新たにDrosophila Enolaseがパフに局在化することを見出した。抗Enolase抗体による多糸染色体の免疫染色の結果、解糖系酵素の1種であるEnolaseが核内において転写反応に関与する可能性が認められた。
KAKENHI-PROJECT-22770166
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環境負荷低減型発電用小型水車の開発
本研究では,河川への設置が容易で身近な小規模水力での発電を可能にする環境負荷低減型水車として,サボニウス水車と滝用水車を提案し,各々の特性評価と性能向上を目指した.農業用水路での利用を想定したサボニウス水車については,ランナ設置条件と出力特性との関係解明および,遮へい板と称する一枚の平板で出力特性を改善する方法の検討をおこなった.落差工での使用を想定した滝用水車については,Banki水車をもとに滝用水車専用ロータを設計・製作し,ロータ内部への流れを積極的に利用して出力を得る開放型貫流式ロータを提案し,その出力特性を調べた.また,滝の流量変化によるロータへの流入位置変化による性能低下を防止する方法についても検討した.得られた結果は以下のとおりである.サボニウス水車については,(1)出力特性には流路底面あるいは自由表面とランナとの距離が大きく影響し,付着流による揚力発生,巻込み流による戻りブレード凹面の圧力回復,進みブレード凹面への衝突流が出力特性を支配している.(2)遮へい板の最適設置条件を見出し,出力係数を約1.8倍の47%に増加させることができた.滝用水車については,(3)貫流タイプにしたことで,従来の衝動タイプに生じていた低速回転時のランナ内部での水のよどみが解消され,幅広い回転数領域で安定した出力を得ることができる.(4)衝動タイプと比較して,滝の流量変化に対する出力の変化が抑制される.(5)ランナ単体での出力係数は,衝動タイプの20%増加である74%が得られる.(6)平板による水流制御方法では,衝突時のエネルギー損失および水流の変動が大きく,貫流タイプでも28%の出力係数の低下となる.本研究は,付帯設備を必要とせず,流れに置くだけで発電が可能な環境負荷低減型の超小型水車の開発に関する.農業用水路など水量が豊富で低落差の水力利用を考えたサボニウス水車と,河川の段差等にある滝を利用して発電する滝用水車について検討した.サボニウス形を水車として利用する,ロータ直径が水深の数分の一程度であり,川底や自由表面が出力特性に影響する.回流水槽による基礎実験を実施し,ロータの設置条件と出力特性との関係解明に取組んだ.滝用水車については,室内に設置した人工滝による基礎実験および屋外での実証試験を実施し,最高効率および滝と水車の相対位置の最適値を明らかにした.得られた具体的成果を以下に示す.1.サボニウス水車について,(1)川底からのタービンの設置高さ(Hc)と主流に対するタービンの回転方向で出力特性が変化し,最高効率は26%であった.流れを左から右に見た場合,反時計回り(CCW)時にはHcが小さい場合に,時計回り時(CW)にはHcが大きい場合に効率が高くなった.(2)Hcが小さい場合,流路底面とタービンとの隙間の流れが特性に影響する.CW時には戻りブレード凸面側に生じるよどみが流体抗力の増大を引き起こすとともに,戻りブレード先端付近で発生した渦が戻りブレード凹面側への巻き込み流を妨げるため,圧力回復効果が減少する.(3)Hcが大きい場合,自由表面付近の流れが特性に影響する.CW時には進みブレード凸面側に沿う付着流を強め,揚力が増大する.CCW時には戻りブレードの回転が自由表面流れと逆方向となり流体抗力が増加する.2.滝用水車について,(1)最高効率は68%であった.解析により流量変化に伴う滝のロータへの衝突角度が効率に影響することがわかった.(2)都市河川を利用した屋外実験を実施し,ゴミによるトラブル状況や軸受けや増速機構の性能の評価を行うとともに,発電した電力の利用例として人工宝石の育成を試みた.本研究の目的は,土木工事が不要で水路に置くだけで発電する環境融和型サボニウス水車の性能を向上することである.サボニウスロータは,半円弧状ブレード2枚から成る単純な構造であり,メンテナンス性,経済性,耐久性に優れる一方で,出力係数が低いことが実用化の妨げとなっていた.昨年度までの研究において,ロータ直径が水深の1/3程度の場合,ロータの設置高さと主流に対するロータの回転方向が出力特性に影響することが明らかとなり,最適設置条件において0.26の出力係数を得た.更なる性能向上を達成するために,位相つきロータについて検討した.ロータ中央でブレードに90°の位相差を設けた位相有りロータを設計・製作し,出力特性を評価した.実験は回流水槽にて実施した.位相差の影響を考察するために,ロータ内外部の流れの可視化も実施した.得られた具体的成果を以下に示す.1)位相無しロータと比較して位相有りロータでは,出力係数が高く,最大で14%増加することがわかった.また,ブレードに位相差を設けることで,ロータ姿勢角度による出力変動が大幅に抑制された.2)位相有りロータの中央断面では,ロータの軸方向に回転と同期して揺動する流れがあることが可視化計測から明らかになった.ロータ上流側から進みブレード凹面側へ流れ込む揺動流れはトルクの増大に寄与し,ロータ下流側へ抜ける揺動流れは戻りブレード凹面側の圧力回復に寄与することがわかった.この揺動流れが,位相有りロータで出力係数が増大する主要因である.
KAKENHI-PROJECT-19651033
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19651033
環境負荷低減型発電用小型水車の開発
3)ロータ各段のアスペクト比が減少すると出力の低下を招くが,ブレードに位相差を設けたことによる出力増大効果の方が大きいために,総合的には出力効率が増大したと考えられる.本研究では,河川への設置が容易で身近な小規模水力での発電を可能にする環境負荷低減型水車として,サボニウス水車と滝用水車を提案し,各々の特性評価と性能向上を目指した.農業用水路での利用を想定したサボニウス水車については,ランナ設置条件と出力特性との関係解明および,遮へい板と称する一枚の平板で出力特性を改善する方法の検討をおこなった.落差工での使用を想定した滝用水車については,Banki水車をもとに滝用水車専用ロータを設計・製作し,ロータ内部への流れを積極的に利用して出力を得る開放型貫流式ロータを提案し,その出力特性を調べた.また,滝の流量変化によるロータへの流入位置変化による性能低下を防止する方法についても検討した.得られた結果は以下のとおりである.サボニウス水車については,(1)出力特性には流路底面あるいは自由表面とランナとの距離が大きく影響し,付着流による揚力発生,巻込み流による戻りブレード凹面の圧力回復,進みブレード凹面への衝突流が出力特性を支配している.(2)遮へい板の最適設置条件を見出し,出力係数を約1.8倍の47%に増加させることができた.滝用水車については,(3)貫流タイプにしたことで,従来の衝動タイプに生じていた低速回転時のランナ内部での水のよどみが解消され,幅広い回転数領域で安定した出力を得ることができる.(4)衝動タイプと比較して,滝の流量変化に対する出力の変化が抑制される.(5)ランナ単体での出力係数は,衝動タイプの20%増加である74%が得られる.(6)平板による水流制御方法では,衝突時のエネルギー損失および水流の変動が大きく,貫流タイプでも28%の出力係数の低下となる.
KAKENHI-PROJECT-19651033
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19651033
病態モデル小動物における腎糸球体微小循環可視化法の開発と病態生理学的解析
ペンシルレンズ型のCCD生体顕微鏡(分解能0.86μm、約800X)を用いて病的ラット(虚血・糖尿病・高血圧)の腎糸球体微小循環を可視化し、新たに開発した糸球体内血流速度分布計測のために画像処理ソフトを用いて各病態における微小循環の変化について解明することができた。腎動脈の閉塞・開放による虚血再灌流モデルでは、管周囲および糸球体での微小循環を観察した。(Am J Physiol Renal Physiol.282(6):F1150-5,2002)両部位において閉塞前では血流は順行性であったが、虚血再灌流後では一過性の血流停止と逆行性血流を認めた。その後の経過では管周囲よりも糸球体の微小循環のほうが早く正常状態へ復帰した。これらの結果より腎皮質表面では虚血再灌流の早期から血管障害が生じており、管周囲の微小循環には糸球体周囲と比較し、より大きな影響があることが示された。糖尿病、高血圧モデルの実験では、それぞれstreptoyotocin投与ラット、自然発症高血圧ラットを使用した。(Am J Physiol Renal Physiol.281(3):F571-7,2001)輸入細動脈、輸出細動脈を同時に観察し、対照群に比べて自然発症高血圧ラットでは輸入細動脈径が縮小し、糖尿病では逆に拡大していることがわかった。カルシウム拮抗薬であるBarnidipineの投与では高血圧腎では輸入細動脈の拡張が著明で、糖尿病腎では輸出細動脈の拡張が優位に観察された。血管径比(輸入細動脈径/輸出細動脈径)はそれぞれ有意に増加・減少していた。本研究により、多様な病態における腎微小循環ダイナミクスの変化について評価することが出来た。これら一連の結果は糸球体病態生理の更なる理解に繋がると考える。本研究において、我々は、高速度高分解能撮影用ペンシルレンズCCD生体顕微鏡を開発した。その解像度、分解能を評価するため正常ラット、自然発症高血圧ラット、ストレプトゾトシンによる(STZ)糖尿病ラットにおいて腎糸球体の血流を測定した。正常ラットにおける糸球体輸入細動脈、輸出細動脈の径はそれぞれ11.9±0.7、8.9±0.7μmであった。輸入細動脈、輸出細動脈はそれぞれの糸球体について同時観察が可能であり、また動脈圧、腎動脈流速も測定可能である。自然発症高血圧ラットの輸入細動脈径は正常ラットの60%(6.8±1.1μm)まで低下しており、STZ糖尿病ラットでは逆に輸入細動脈の拡張(14.5±2.1μm)が認められた。さらに、カルシウムチャンネルブロッカー(バルニジピン)の効果を輸入細動脈(Af)と輸出細動脈(Ef)の径の比(Af/Ef)を用いて評価した。すべての群で、輸入細動脈、輸出細動脈の用量依存性の拡張反応が観察されたが、Af/Efには顕著な差異が認められた。正常ラットではバルニジピンを投与してもAf/Efには変化が見られなかった。しかし、自然発症高血圧ラットでは輸入細動脈の顕著な拡張によりAf/Efは用量依存性に増加し、STZ糖尿病ラットでは輸出細動脈を主に拡張するためAf/Efの有意な低下が認められた。これらの所見は高血圧時のこのように我々の開発した高速度高分解能撮影用ペンシルレンズCCD生体顕微鏡は生体での微小循環の観察に十分な性能を有すことが確認でき、高血圧、糖尿病などにおける腎病変の解明に役立つものと考える。ペンシルレンズ型のCCD生体顕微鏡(分解能0.86μm、約800X)を用いて病的ラット(虚血・糖尿病・高血圧)の腎糸球体微小循環を可視化し、新たに開発した糸球体内血流速度分布計測のために画像処理ソフトを用いて各病態における微小循環の変化について解明することができた。腎動脈の閉塞・開放による虚血再灌流モデルでは、管周囲および糸球体での微小循環を観察した。(Am J Physiol Renal Physiol.282(6):F1150-5,2002)両部位において閉塞前では血流は順行性であったが、虚血再灌流後では一過性の血流停止と逆行性血流を認めた。その後の経過では管周囲よりも糸球体の微小循環のほうが早く正常状態へ復帰した。これらの結果より腎皮質表面では虚血再灌流の早期から血管障害が生じており、管周囲の微小循環には糸球体周囲と比較し、より大きな影響があることが示された。糖尿病、高血圧モデルの実験では、それぞれstreptoyotocin投与ラット、自然発症高血圧ラットを使用した。(Am J Physiol Renal Physiol.281(3):F571-7,2001)輸入細動脈、輸出細動脈を同時に観察し、対照群に比べて自然発症高血圧ラットでは輸入細動脈径が縮小し、糖尿病では逆に拡大していることがわかった。カルシウム拮抗薬であるBarnidipineの投与では高血圧腎では輸入細動脈の拡張が著明で、糖尿病腎では輸出細動脈の拡張が優位に観察された。血管径比(輸入細動脈径/輸出細動脈径)はそれぞれ有意に増加・減少していた。本研究により、多様な病態における腎微小循環ダイナミクスの変化について評価することが出来た。これら一連の結果は糸球体病態生理の更なる理解に繋がると考える。
KAKENHI-PROJECT-13878185
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13878185
悪性胸膜中皮腫に対する回転型強度変調放射線治療技術の実用化に向けた研究
悪性胸膜中皮腫に対する強度変調放射線治療(IMRT)は、治療計画および治療に膨大な時間が必要である。本研究では、悪性胸膜中皮腫に対する回転型強度変調放射線治療(VMAT)の臨床実施に関する検討を行った。VMATはIMRTと比較して、肺に対する高線量を低減することができたが、低線量を増加させる傾向にあった。治療時間に関して、IMRTの1/2と減少させることができた。また、3次元検出器の実測値を用いた患者体内線量分布推定法を開発し、前立腺がんおよび膵がんのIMRT症例に関して検証を行い、高精度に治療計画の品質管理を行うことが可能となり、中皮腫に対するVMATの品質保証に有効である可能性を示唆した。5症例に対して、悪性胸膜中皮腫に対する回転型強度変調放射線治療の治療計画シミュレーションを行い、従来の固定型強度変調放射線治療法と比較した。従来法と比較し、腫瘍に対する放射線線量集中性(90%線量領域)は同等となり、1回の治療時間が、約1/5(平均照射Monitor Unitが約2000から400へ低減)ほどに短縮することを明らかにした。しかし、回転照射法を用いることで、肺に対する低線量が増加してしまうという問題があり、肺を避ける照射角度・回転角度および照射野サイズ(ハーフフィールドなど)を選択し、最適化を行う必要があると考えられる。また、前立腺、脳腫瘍、膵がんに対する強度変調放射線治療の治療計画シミュレーションを使用し、回転型強度変調放射線治療のシミュレーションの実証に使用する三次元検出器の精度検証を行った。三次元検出器の半導体検出器による放射線測定結果とフィルムによる測定結果は、ガンマ解析(3 mm/3%)にて、90%以上のパス率を示した。これまで検証に使用していたフィルムと三次元検出器による測定結果が精度良く一致していることから、三次元検出器が検証に使用可能であることを示し、悪性胸膜中皮腫に対する回転型強度変調放射線治療の検証に対しても高精度に検証可能であることが期待される。悪性胸膜中皮腫に対する強度変調放射線治療(IMRT)は、治療計画および治療に膨大な時間が必要である。本研究では、悪性胸膜中皮腫に対する回転型強度変調放射線治療(VMAT)の臨床実施に関する検討を行った。VMATはIMRTと比較して、肺に対する高線量を低減することができたが、低線量を増加させる傾向にあった。治療時間に関して、IMRTの1/2と減少させることができた。また、3次元検出器の実測値を用いた患者体内線量分布推定法を開発し、前立腺がんおよび膵がんのIMRT症例に関して検証を行い、高精度に治療計画の品質管理を行うことが可能となり、中皮腫に対するVMATの品質保証に有効である可能性を示唆した。モンテカルロシミュレーションと同等の精度を要する高精度線量計算アルゴリズムを使用し、IMRTによって実際に患者に投与される放射線量を高精度にシミュレーションすることができ、より詳細にDVH指標を取得することができた。悪性胸膜中皮腫に対するVMAT照射に必要なアーク数は3アークとし、危険臓器(肺)を避けるような照射角度を設定した。更に、ターゲット(腫瘍)に対する線量集中性が低減するような領域では、ハーフフィールドを用いたアーク照射野を使用し、危険臓器への線量を低減しつつ、ターゲットに対する線量を担保するような設定とした。3.悪性胸膜中皮腫に対するIMRTおよびVMATシミュレーションの比較IMRTと比較して、VMATでは、少ないモニタ単位数(MU:Monitor Unit)で治療実施の可能性について示唆した。さらに、ターゲットに対する線量集中性を担保しつつ、危険臓器に対する線量もIMRTと同等に低減可能性について示唆した。このことにより、電子線や固定多門によるIMRTによる治療で、長時間を有した悪性胸膜中皮腫の治療が簡便化かつ短時間で行われる可能性を示唆した。回転型放射線治療の肺に対する低線量増加の問題を解決するため、肺を避けるような照射角度・回転角度および照射野サイズ(ハーフフィールド)を考慮し、悪性胸膜中皮腫に対する回転型強度変調放射線治療の治療計画シミュレーションを行い、従来の固定型強度変調放射線治療と比較を行い、再検討を行った。前回の報告と同様、腫瘍に対する放射線集中性(90%放射線量領域)はほぼ同等となり、1回の治療時間が約1/5に低減されることを再確認した。また、強度変調放射線治療に必要な最適化パラメータを決定することにより、治療計画シミュレーションを立案するため時間を低減することが可能であることも示唆された。しかし、肺に対する低線量が従来の固定型強度変調放射線治療よりも増加する傾向にあった。実際に臨床応用する際には、これらの増加が臨床上問題になるかをしっかり考慮して実施する必要がある。また、回転型強度変調放射線治療シミュレーション実施のために必要な医療用加速器の調整(コミッショニング)を行い、前立腺がんおよび頭頸部がんに対する回転型強度変調放射線治療のEnd to Endテストを行った。前立腺がんおよび頭頸部がんに対して、三次元検出器による測定結果と回転型強度変調放射線治療のシミュレーションの結果を比較し、ガンマ解析(3 mm/3%)にて、90%以上のパス率を示した。医療用加速器の調整が高精度に行われ、悪性胸膜中皮腫に対する回転型強度変調放射線治療に対しても高精度に治療可能であることを示唆した。医学物理学悪性胸膜中皮腫に対する回転型強度変調放射線治療の治療計画のシミュレーションを行い、従来の強度変調放射線治療法と比較して、1回の治療時間が、約1/5ほどに短縮することを明らかにした。しかし、シミュレーションを再現するための医療用加速器の調整を現在行っている最中であり、最後の実証を行えていない。
KAKENHI-PROJECT-24791294
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24791294
悪性胸膜中皮腫に対する回転型強度変調放射線治療技術の実用化に向けた研究
VMATのシミュレーションには、非常に多大な時間を要することから、少数の症例でのみしか行えていないのが現状である。また、異動により、前施設で行えたシミュレーション環境を構築するのに、時間を要したため、VMATシミュレーションに時間を費やすことができなかった。医療用加速器の調整を早急に行い、シミュレーションが実証可能な環境作りを行う。実証可能な状況になれば、シミュレーションによって作成されたDICOM-RTファイルおよび三次元検出器を使用して、検証を行う。VMATのシミュレーション症例を増やしていき、IMRTとの比較をDVH指標やモニタ単位数を用いた統計的解析を行い、VAMTの有用性について検討する。さらに、VMATの検証に使用する3次元検出器の基本特性について解析し、悪性胸膜中皮腫のVMATの品質管理・品質保証に対する使用可能性について検討する。研究はやや進捗が遅れており、実証段階まで到達していないのが現状である。そのため、実証の検証に必要な物品の購入がまだできていない。悪性胸膜中皮腫のシミュレーションを実証するための解析ソフトの開発環境整備に必要な物品費に充てる。具体的には、処理能力高速化用PCおよびソフトウェア開発のためのソフトウェアの購入も検討中である。本年に参加を予定していた米国放射線腫瘍学会に異動のため参加することができなかったことから、旅費、参加費について未使用額が生じた。また、本年度予定していたDVH解析が症例数を増やすことができずに解析を行うことができなった。そのため、解析用ソフトを購入することができなった。平成25年度の学会への旅費、参加費および解析用ソフトの購入と併せて使用する。また、平成25年度は、VMATシミュレーション環境の構築を行うため、PCの増築を行う。また、シミュレーション検証用のデータ解析ソフトを購入し、データ解析環境を構築する。得られた結果を発信するため、新たな情報を収集するための学会参加費用とする。
KAKENHI-PROJECT-24791294
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腫瘍の悪性進展過程における筋特異的カベオラ蛋白質MURCの機能解析
乳癌検体においては、申請者の研究対象とする遺伝子はより難治性なトリプルネガティブ乳癌(以下TNBC)においてより発現が亢進している傾向が確認されている。また、この傾向は、公共データベースであるTCGAおよびGEOに登録されているマイクロアレイやRNA-Seqデータを用いた解析でも確認されたほか、TNBC由来の培養細胞株と非TNBC(ホルモンレセプター陽性)の培養細胞株由来のcDNAを用いたリアルタイムPCR法でも同様の結果が得られている。現在は、乳癌培養細胞株等複数の細胞株を用いてMURC遺伝子のノックダウン時における影響を調べている。研究当初見られなかった現象として、培養細胞株を用いた実験において当該遺伝子のmRNA量と蛋白質量とに乖離が見られる場合が確認されており、転写物の解析の結果、研究開始当初確認されていなかった未知の転写バリアントを発見した。この転写バリアントが長鎖非翻訳RNA(lncRNA)として機能する可能性を検討のため実験計画を変更する必要が生じたため。TCGA等公共データベースに置かれている次世代シークエンサーの発現情報は、50100塩基ほどの短い断片を解読した配列を集積したものとなっており、選択的スプライシングによるバリアントの特定には不向きである。このため、培養細胞株を用いてMURC遺伝子特異的な転写産物を新たに単離し、配列を決定するための実験系を構築し、5'RACE法等を併用して配列の解読を進める。更に、予後不良の腫瘍においてこのようなバリアントが生じる分子機序の解明につなげることを予定する。悪性腫瘍の予後不良因子の候補としては、これまでいくつかの遺伝子の発現や分子機序が発見され、報告されてきている。しかしながら、近年発見された遺伝子や、それを含む経路については研究が進んでおらず、予後予測に適用できるか否かが未だ確定していない場合が存在する。本研究は、腫瘍におけるMURC蛋白質の機能を解析することによる腫瘍の悪性化過程の未知の調節機構の解明を目的とする。申請者らは、米国の癌情報データベースであるTCGAのデータを用いた解析から、乳癌を始めとする複数の癌種において、本来筋組織特異的な発現を示すMURC遺伝子が高発現な患者群は有意に全生存期間が短い(ログランク法によるp値が0.01未満)との結果を得た。この他、KMplotter(http://kmplot.com/)に登録されている乳癌患者群のマイクロアレイデータを用いた解析からも、MURC遺伝子の発現が高い患者群は有意に再発までの期間が短いという結果が得られた。乳癌検体においては、同遺伝子はより難治性なトリプルネガティブ乳癌(以下TNBC)においてより発現が亢進している傾向が確認されている。また、この傾向は、TCGA等の公共データベースを用いた解析で明らかになったほか、TNBC由来の培養細胞株と非TNBC(ホルモンレセプター陽性)の培養細胞株由来のcDNAを用いたリアルタイムPCR法でも同様の結果が得られた。現在は、乳癌培養細胞株を用いたMURC遺伝子の強制発現系・ノックダウン系の構築が完了し細胞ベースでの増殖・浸潤能の検証を始めている。本課題の採択後に研究室移動があり、新たな所属における研究環境の作成と実験系の構築に時間を要した。また、研究当初見られなかった現象として、培養細胞株を用いた実験においては当該遺伝子のmRNA量と蛋白質量とに乖離が見られる場合があり、この現象の解析にも時間を要している。乳癌検体においては、申請者の研究対象とする遺伝子はより難治性なトリプルネガティブ乳癌(以下TNBC)においてより発現が亢進している傾向が確認されている。また、この傾向は、公共データベースであるTCGAおよびGEOに登録されているマイクロアレイやRNA-Seqデータを用いた解析でも確認されたほか、TNBC由来の培養細胞株と非TNBC(ホルモンレセプター陽性)の培養細胞株由来のcDNAを用いたリアルタイムPCR法でも同様の結果が得られている。現在は、乳癌培養細胞株等複数の細胞株を用いてMURC遺伝子のノックダウン時における影響を調べている。研究当初見られなかった現象として、培養細胞株を用いた実験において当該遺伝子のmRNA量と蛋白質量とに乖離が見られる場合が確認されており、転写物の解析の結果、研究開始当初確認されていなかった未知の転写バリアントを発見した。この転写バリアントが長鎖非翻訳RNA(lncRNA)として機能する可能性を検討のため実験計画を変更する必要が生じたため。正常な筋組織および横紋筋肉腫細胞株において、MURC蛋白質は細胞膜上に局在することがすでに報告されている。しかしながら、乳癌をはじめ腫瘍組織においてMURC蛋白質がどのような局在を示すかは不明であり、非細胞膜的な局在を示すことも予測される。MURC蛋白質を標的とした免疫沈降によって、MURCを含む蛋白質複合体を単離し、質量分析法によって結合パートナーを探索する。他方、平成29年度の研究より、悪性度が高く予後の悪い腫瘍において「MURC遺伝子の転写レベルが高い」ということが必ずしも「MURC蛋白質が悪性度に貢献している」という確証を得るに至っていない。このため、「MURC遺伝子の転写が亢進する」という環境が悪性度と相関しており、「MURC転写産物はあくまでも悪性度の指標として有用である」という観点を持つ必要があると考えた。このため、上記の計画に加え、MURC遺伝子が発現上昇するような環境を培養細胞上で探索し、このデータから悪性度の高い腫瘍において共通している分子機序を特定するための研究も並行して行う。TCGA等
KAKENHI-PROJECT-17K15011
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腫瘍の悪性進展過程における筋特異的カベオラ蛋白質MURCの機能解析
公共データベースに置かれている次世代シークエンサーの発現情報は、50100塩基ほどの短い断片を解読した配列を集積したものとなっており、選択的スプライシングによるバリアントの特定には不向きである。このため、培養細胞株を用いてMURC遺伝子特異的な転写産物を新たに単離し、配列を決定するための実験系を構築し、5'RACE法等を併用して配列の解読を進める。更に、予後不良の腫瘍においてこのようなバリアントが生じる分子機序の解明につなげることを予定する。本課題の採択後に申請者の研究室移動があり、新たな所属における購入時期に当初との差異が発生し、一部の消耗品等は次年度の購入とした。このため次年度使用額が発生した。MURC遺伝子由来の転写物の解析の結果、研究開始当初確認されていなかった未知の転写バリアントを発見した。この転写バリアントが長鎖非翻訳RNA(lncRNA)として機能する可能性が考えられるため、実験計画に変更する必要が生じたため。また、当該実験に必要な特異的転写産物の単離・精製用試薬の発売時期の関係により、一部の実験計画が次年度にずれこむことになったため。
KAKENHI-PROJECT-17K15011
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計算科学と観測技術の融合が解き明かす乱泥流の長距離輸送機構に関する統合的理解
本研究では,乱泥流の運動メカニズムを包括的に理解することを目的として,最新の計測技術とシミュレーション技術を総動員し,乱泥流の速度,濃度,粒子径分布等の内部構造や土砂の運搬・堆積作用の詳細を明らかにする.実験・解析事実を蓄積する中で,相互に連携・高度化を図り,最終年度に長期運動性と堆積プロセスの説明付けを行う.本研究では,乱泥流の運動メカニズムを包括的に理解することを目的として,最新の計測技術とシミュレーション技術を総動員し,乱泥流の速度,濃度,粒子径分布等の内部構造や土砂の運搬・堆積作用の詳細を明らかにする.実験・解析事実を蓄積する中で,相互に連携・高度化を図り,最終年度に長期運動性と堆積プロセスの説明付けを行う.
KAKENHI-PROJECT-19KK0110
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19KK0110
近世―近代移行期の地域社会における資金循環構造
本研究は、1地方都市商人の金融機能と在方・大都市との関係、2地域経済・金融構造への領主支配制度の規定性の2点の分析をふまえて、近世ー近代移行期の日本における資金循環構造の変容過程を明らかにすることを目的としている。本研究の2年目の課題は、(1)前年度の分析結果をもとにした学会報告と論文執筆、(2)旗本池田家領、岡山藩領、畿内・近国の幕領における経済・金融関係史料の収集・分析の2点であった。(1)については、日本史についての全国学会である日本史研究会の近世史部会において、2018年5月、7月、9月に3回の大会準備報告を行った。この報告をふまえて、2018年10月に2018年日本史研究会大会近世史部会にて、近世後期の備中国南西部を中心とする地域経済と地方商人の機能、大坂商人との金融・為替関係が地域経済や年貢収納に重要な役割を担っていた点などについての研究報告を行った。この報告内容を原稿化し、2019年3月刊行の『日本史研究』679号(日本史研究会編集)にて、「近世後期の地域経済と商人ー備中国南西部と大坂との関係を中心にー」と題した論文を発表した。(2)については、岡山県立記録資料館(岡山県岡山市)、笠岡市教育委員会(岡山県笠岡市)、大阪大学日本史研究室(大阪府豊中市)、三井文庫本館(東京都中野区)、国立国会図書館(東京都千代田区)、神戸大学文学部古文書室(兵庫県神戸市)などの史料所蔵機関にて史料調査を行い、関連史料を収集した。その中でも、旗本池田家領の掛屋を務めた家や畿内幕領の有力豪農についての史料を収集し、家の経営内容や領主との金融面での関係、領主の財政運営における掛屋の機能などについて分析を行った。なお、本研究は研究期間が2017年度2019年度の3年間の予定であったが、研究代表者が所属機関を変更したため、本年度まででの実施となる。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。本研究は、1地方都市商人の金融機能と在方・大都市との関係、2地域経済・金融構造への領主支配制度の規定性の2点の分析をふまえて、近世ー近代移行期の日本における資金循環構造の変容過程を明らかにすることを目的としている。本研究の1年目の課題は、(1)地方都市商人の文書の収集と基礎データの整理・分析・学会報告、(2)地方都市商人と都市・地域との金融関係についての分析の2点であった。(1)については、岡山県立記録資料館、岡山商科大学附属図書館(以上、岡山県岡山市北区)、井原市文化財センター(岡山県井原市)、笠岡市役所生涯学習課(岡山県笠岡市)、たつの市立龍野歴史文化資料館(兵庫県たつの市)などで史料調査を行い、地方都市商人家の経営帳簿や地域経済にかかわる文書類を収集した。これらの史料をもとに、備中国・播磨国の地方都市商人や有力者の経営分析を行い、近世後期における経営動向や地域において果たした金融機能の一端を明らかにした。この分析成果の一部を大阪歴史学会近世史部会・日本史研究会近世史部会合同報告会で報告した。(2)については、大阪大学大学院経済学研究科経済史・経営史資料室、大阪大学大学院文学研究科日本史研究室(以上、大阪府豊中市)、国立国会図書館(東京都千代田区)などで史料調査を行い、大坂両替商と大坂近郊の有力農民家の経営関係史料、江戸幕府の経済政策関係の史料などを収集し、(1)での分析ともあわせて、都市と地域との経済・金融関係や幕府貸付政策と地域との関係について、一定程度分析を進めた。なお、畿内地域の経済的特質や周辺地域との労働力をめぐる関係、備中国の有力農民家の経営動向・金融機能および領主・大坂蔵元との関係については、『日本歴史』831号、『歴史学研究』966号、共著である『開く日本・閉じる日本ー「人間移動学」事始め』の執筆論文において研究成果の一部を公表した。本研究の1年目の課題のうち、(1)地方都市商人の文書の収集と基礎データの整理・分析・学会報告、(2)地方都市商人と都市・地域との金融関係についての分析の2点については、いずれも計画通り作業を進めることができており、研究成果の一部の公表も行っている。今年度は特に(1)に重点を置き、地方都市商人の経営や地域における機能についての分析を進めることができたため、次年度以降はこの成果をふまえたうえで、(2)についての分析のさらなる深化や(1)、(2)についての論文執筆、地域経済・金融構造への領主支配制度の規定性についての分析を進める予定である。また、岡山藩領や旗本領の有力者家の文書の残存状況の把握や一部の収集も進めることができており、次年度の研究の準備も一定程度行うことができたと考える。本研究は、1地方都市商人の金融機能と在方・大都市との関係、2地域経済・金融構造への領主支配制度の規定性の2点の分析をふまえて、近世ー近代移行期の日本における資金循環構造の変容過程を明らかにすることを目的としている。本研究の2年目の課題は、(1)前年度の分析結果をもとにした学会報告と論文執筆、(2)旗本池田家領、岡山藩領、畿内・近国の幕領における経済・金融関係史料の収集・分析の2点であった。
KAKENHI-PROJECT-17J02841
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J02841
近世―近代移行期の地域社会における資金循環構造
(1)については、日本史についての全国学会である日本史研究会の近世史部会において、2018年5月、7月、9月に3回の大会準備報告を行った。この報告をふまえて、2018年10月に2018年日本史研究会大会近世史部会にて、近世後期の備中国南西部を中心とする地域経済と地方商人の機能、大坂商人との金融・為替関係が地域経済や年貢収納に重要な役割を担っていた点などについての研究報告を行った。この報告内容を原稿化し、2019年3月刊行の『日本史研究』679号(日本史研究会編集)にて、「近世後期の地域経済と商人ー備中国南西部と大坂との関係を中心にー」と題した論文を発表した。(2)については、岡山県立記録資料館(岡山県岡山市)、笠岡市教育委員会(岡山県笠岡市)、大阪大学日本史研究室(大阪府豊中市)、三井文庫本館(東京都中野区)、国立国会図書館(東京都千代田区)、神戸大学文学部古文書室(兵庫県神戸市)などの史料所蔵機関にて史料調査を行い、関連史料を収集した。その中でも、旗本池田家領の掛屋を務めた家や畿内幕領の有力豪農についての史料を収集し、家の経営内容や領主との金融面での関係、領主の財政運営における掛屋の機能などについて分析を行った。なお、本研究は研究期間が2017年度2019年度の3年間の予定であったが、研究代表者が所属機関を変更したため、本年度まででの実施となる。本年度の研究内容から引き続き、地方都市商人の経営帳簿や地方都市商人と都市・地域との金融関係を示す帳簿類、訴訟関係史料類などについての分析を進め、学術論文というかたちでの成果の公表を目指す。さらに、次年度は1旗本領の掛屋文書の収集・分析、2岡山藩領の庄屋文書の収集・分析、3畿内・近国の幕領における豪農・村と領主との金融関係に関する史料収集・分析も課題としている。本年度に把握した史料の所在状況や収集した一部の史料の内容もふまえつつ、岡山県立記録資料館、大阪大学文学部日本史研究室、茨木市立文化財資料館などの史料所在施設において、それぞれの所領における役職就任者・有力者家の経営文書や領主財政との関係を示す帳簿類や書状類などを収集する。それらの史料の分析をもとに、地域の有力者と領主財政との関係、有力者家の近世後期幕末維新期の金融活動や明治期の藩債処分への対応などを明らかにしていく。その際、本年度に収集・分析した史料や分析結果についても参照し、領主ー領民関係や都市ー地域間関係といった広い視野からも各所領における事例の位置づけを試みていく。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-17J02841
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反跳インプランテーションによる化合物合成の機構の研究
核反応反跳インプランテーション法による化合物合成の反応機構について、その反跳エネルギー依存性について検討を行った。原理的には、反跳原子を生じさせる反跳源を0.010.1μmの薄膜状とし、その厚みを種々に変化させることにより、飛び出してくる反跳原子の運動エネルギー分布をコントロールすることによって行われる。非常に薄い膜から放出される反跳原子の運動エネルギーは、その厚みが増加するにつれて、反跳源内での衝突によるエネルギー損失が増すため、低エネルギー側に移動する。すなわち、本薄膜法では、初期核反応反跳エネルギーから、充分厚みの大きくなった時に得られる反跳エネルギー分布までがコントロール可能であるという特色をもっている。これは、反跳原子が反跳源薄膜から飛び出す割合(反跳収率)を実験的に求め、理論的に予想されるそれと比較することにより評価可能である。この実験を、50Cr (n,γ) 51Cr反応、52Cr (γ,n) 51Cr反応、51V (p,n) 51Cr反応に対して行い、数百eVから数百keVまでの広い範囲について反跳原子のエネルギー分布を変化させることが可能であることがわかった。この様子は、種々膜厚における反跳収率の変化や、飛び出す反跳原子の絶対量変化にも系統的に現れ本薄膜法の妥当性が確認された。さらに、本法をトリス(アセチルアセトナト)鉄(III)捕集錯体に適用し、その中心金属を51Cr反跳原子が置換する際の反跳エネルギー依存性を調べた。その結果、数百eVの打ちこみエネルギーでは、中心金属置換収率が89%程度であったのに対し、2030keVの範囲ではその収率は約2倍になり、さらにエネルギー増加に対してゆるやかに収率が増加していくという興味がある結果が得られた。核反応反跳インプランテーション法による化合物合成の反応機構について、その反跳エネルギー依存性について検討を行った。原理的には、反跳原子を生じさせる反跳源を0.010.1μmの薄膜状とし、その厚みを種々に変化させることにより、飛び出してくる反跳原子の運動エネルギー分布をコントロールすることによって行われる。非常に薄い膜から放出される反跳原子の運動エネルギーは、その厚みが増加するにつれて、反跳源内での衝突によるエネルギー損失が増すため、低エネルギー側に移動する。すなわち、本薄膜法では、初期核反応反跳エネルギーから、充分厚みの大きくなった時に得られる反跳エネルギー分布までがコントロール可能であるという特色をもっている。これは、反跳原子が反跳源薄膜から飛び出す割合(反跳収率)を実験的に求め、理論的に予想されるそれと比較することにより評価可能である。この実験を、50Cr (n,γ) 51Cr反応、52Cr (γ,n) 51Cr反応、51V (p,n) 51Cr反応に対して行い、数百eVから数百keVまでの広い範囲について反跳原子のエネルギー分布を変化させることが可能であることがわかった。この様子は、種々膜厚における反跳収率の変化や、飛び出す反跳原子の絶対量変化にも系統的に現れ本薄膜法の妥当性が確認された。さらに、本法をトリス(アセチルアセトナト)鉄(III)捕集錯体に適用し、その中心金属を51Cr反跳原子が置換する際の反跳エネルギー依存性を調べた。その結果、数百eVの打ちこみエネルギーでは、中心金属置換収率が89%程度であったのに対し、2030keVの範囲ではその収率は約2倍になり、さらにエネルギー増加に対してゆるやかに収率が増加していくという興味がある結果が得られた。
KAKENHI-PROJECT-63540471
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63540471
川崎病発症に関与するトールライクレセプターファミリーの解析と治寮への応用
CD14遺伝子プロモーター領域の遺伝子多型(CD14/-159C/T)と川崎病冠動脈病変発症の研究結果をThe Journal of Pediatrics(2003;143:357-62)に報告した。佐賀地区で診断、治療された川崎病患者で、本研究に同意の得られた川崎病67例、対照69例を対象とし研究を行った。この遺伝子多型の頻度はこれまでの報告と有意差はなく、この遺伝子多型は発症には影響してはいなかった。しかし、ロジスティック回帰分析にて、冠動脈病変合併例は、TTのオッズ比は4.05で、さらに冠動脈後遺症例ではTTのオッズ比は6.61とより高値となった。また、ガンマグロブリン未使用例を除く、55例で同様の検討を行い、TTのオッズ比は、冠動脈病変では3.97、後遺症では、7.08と更に高値であった。また、Tアレルを持つことのオッズ比は、冠動脈病変では2.22、後遺症では5.49と同様であった。以上より、川崎病の重症化、冠動脈病変発症、後遺症の残存とCD14プロモーター領域の遺伝子多型との関連性が示された。次に、TLR2遺伝子およびTRL4遺伝子の遺伝子多型の検討においては、既知の報告の領域での遺伝子多型は川崎病群50例においても対照群50例においても認められず、川崎病との関連は指摘できず、本邦における同遺伝子多型は欧米と異なる可能性がある。RP105の研究においては、川崎病急性期のBリンパ球における、RP105の誘導はCRP高値である細菌性感染症とは異なり、RP105の特異的機能が病態に関わっている可能性を示唆させた。CD14遺伝子プロモーター領域の遺伝子多型(CD14/-159C/T)と川崎病冠動脈病変発症の研究結果をThe Journal of Pediatrics(2003;143:357-62)に報告した。佐賀地区で診断、治療された川崎病患者で、本研究に同意の得られた川崎病67例、対照69例を対象とし研究を行った。この遺伝子多型の頻度はこれまでの報告と有意差はなく、この遺伝子多型は発症には影響してはいなかった。しかし、ロジスティック回帰分析にて、冠動脈病変合併例は、TTのオッズ比は4.05で、さらに冠動脈後遺症例ではTTのオッズ比は6.61とより高値となった。また、ガンマグロブリン未使用例を除く、55例で同様の検討を行い、TTのオッズ比は、冠動脈病変では3.97、後遺症では、7.08と更に高値であった。また、Tアレルを持つことのオッズ比は、冠動脈病変では2.22、後遺症では5.49と同様であった。以上より、川崎病の重症化、冠動脈病変発症、後遺症の残存とCD14プロモーター領域の遺伝子多型との関連性が示された。次に、TLR2遺伝子およびTRL4遺伝子の遺伝子多型の検討においては、既知の報告の領域での遺伝子多型は川崎病群50例においても対照群50例においても認められず、川崎病との関連は指摘できず、本邦における同遺伝子多型は欧米と異なる可能性がある。RP105の研究においては、川崎病急性期のBリンパ球における、RP105の誘導はCRP高値である細菌性感染症とは異なり、RP105の特異的機能が病態に関わっている可能性を示唆させた。CD14プロモーター領域の遺伝子多型と川崎病冠動脈病変発症の研究結果をThe Journal of Pediatrics(2003;143:357-62)に報告しました。以下に要点を記載します。対象は、佐賀地区で診断、治療された川崎病患者で、本研究に同意の得られた川崎病67例、対照69例です。川崎病例においては、急性期の検査所見、有熱期間、GG(γグロブリン)の総投与量、冠動脈病変、発症1年後以降の後遺症の有無について検討しました。また、GG投与前の16名の川崎病患児の血清にて、sCD14、TNF-α、VEGF、HGFをELISA法にて測定しました。急性期の検査所見では、有熱期間(CC6.9日、CT6.8日、TT8.2日)はTTにて高い傾向があり、CRP(CC10.8mg/dl、CT11.6mg/dl、TT13.9mg/dl)はCCに対してTTは有意に高値でした。治療については、全例アスピリンは使用しており、GGの総投与量は3群間に差はありませんでした。冠動脈病変、後遺症はTTに多くみられ、GG未使用で冠動脈病変ありの例もTTに多くみられました。以上の結果をロジスティック回帰分析にて検討したところ、冠動脈病変合併例は、CC3名、CT4名、TT10名で、TTのオッズ比は4,05で、後遺症例ではTTのオッズ比は6.61と更に高値となりました。また、Tアレルを持つことも、オッズ比は2.20と高値でした。GG未使用例を除く、55例で同様の検討を行いました。TTのオッズ比は、冠動脈病変では3.97、後遺症では、7.08と高値でした。Tアレルを持つことも、冠動脈病変では2.22、後遺症では5.49と同様の傾向でした。
KAKENHI-PROJECT-15591116
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15591116