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受動的電界電子放出素子による静止軌道衛星帯電防止法の開発
・ELF表面の状態を2μmの空間分解能をもつ電界電子放出顕微鏡で観察し、数100倍の電界増倍係数をもつ電界放出点が金属表面に多数存在することを確認した。
KAKENHI-PROJECT-19206090
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19206090
感性を備えた柔らかい力覚センサの開発
近年,ロボットハンドの力センサの開発が種々行われている。一般に見られる力センサは外壁が金属であり,表面の突起で受けた荷重をセンサ内部のひずみゲージ出力に変換,測定している。人間の指あるいは掌をみた場合全体が柔らかく,センサとともに把持動作にも適した構造を持っている。このことを考えると,ロボットの指につけるセンサは柔らかく,対象物と面接触し,かつセンサの任意点で荷重測定できるほうが,ロボットの人間の指に似た把持動作を行わせる上で好ましい。本研究では柔軟性を考慮しセンサ母材にゴム材を用い,ゴム表面の任意点に荷重が加わると,ゴムのへこみおよびポアソン効果により荷重方向と垂直方向にひずみの生ずること,そのひずみは付加荷重の大きさに比例することに着目し,表面と平行にゴム材に埋め込んだひずみゲージ及びPVDF圧電フィルムを面内変形させ,その任意点に加わる荷重を感知・測定する新しいタイプの柔軟構造触覚センサを開発した。具体的には,始めに二層のゴム材の接着面にひずみゲージあるいはPVDFフィルムを埋め込んだセンサモデルにつきFEM解析を行い、ゴム材の表面に加わる荷重に対し受感部の変形量が最大となるゴム材の最適硬度や厚さ,受感材のひずみゲージ等の最適配置を決定し試作した。試作した種々のセンサに対して実験を行い,その特性を測定した。結果より,小さな荷重を感知できるためには、ベースとなるゴム材は柔らかく厚くする必要がある。また,本研究で試作したセンサは市販されているセンサと実験により比較を行い,かなり満足な結果が得られ,新しい柔軟構造の力覚センサとしてこれからの応用が期待できることが確認された。近年,ロボットハンドの力センサの開発が種々行われている。一般に見られる力センサは外壁が金属であり,表面の突起で受けた荷重をセンサ内部のひずみゲージ出力に変換,測定している。人間の指あるいは掌をみた場合全体が柔らかく,センサとともに把持動作にも適した構造を持っている。このことを考えると,ロボットの指につけるセンサは柔らかく,対象物と面接触し,かつセンサの任意点で荷重測定できるほうが,ロボットの人間の指に似た把持動作を行わせる上で好ましい。本研究では柔軟性を考慮しセンサ母材にゴム材を用い,ゴム表面の任意点に荷重が加わると,ゴムのへこみおよびポアソン効果により荷重方向と垂直方向にひずみの生ずること,そのひずみは付加荷重の大きさに比例することに着目し,表面と平行にゴム材に埋め込んだひずみゲージ及びPVDF圧電フィルムを面内変形させ,その任意点に加わる荷重を感知・測定する新しいタイプの柔軟構造触覚センサを開発した。具体的には,始めに二層のゴム材の接着面にひずみゲージあるいはPVDFフィルムを埋め込んだセンサモデルにつきFEM解析を行い、ゴム材の表面に加わる荷重に対し受感部の変形量が最大となるゴム材の最適硬度や厚さ,受感材のひずみゲージ等の最適配置を決定し試作した。試作した種々のセンサに対して実験を行い,その特性を測定した。結果より,小さな荷重を感知できるためには、ベースとなるゴム材は柔らかく厚くする必要がある。また,本研究で試作したセンサは市販されているセンサと実験により比較を行い,かなり満足な結果が得られ,新しい柔軟構造の力覚センサとしてこれからの応用が期待できることが確認された。
KAKENHI-PROJECT-06650273
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06650273
脳腸ホルモンの特異抗体作製法に関する研究
1)脳腸ホルモンおよびそれらの前駆体について、各種動物由来のホルモンまたは前駆体の提出一次構造に基づき、親水領域および二次構造を解析し、さらに各種動物由来のホルモンにおけるアミノ酸残基の置換領域を考察し、特に置換部位を含む親水領域および共通の配列からなる領域を選び、それに相当する約15-20アミノ酸残基のペプチドを、各種哺乳動物由来のホルモンにつき、それぞれ合成した。合成は自動ペプチド合成機により行い、粗生物は0.01N HC1/CH_3CN系の濃度勾配による逆相HPLCにより精製し、確実に純度を証明した。その結果ガラニン、GLP(グルカゴン様ペプチド)、バロシン、モルモットVIP、NPY、ヘロデルミン、パンクレオスタチン、ヒトオキシントモデュリン、LH-RH前駆体の化学合成を達成した。2)上記合成ペプチドを免疫抗原とし家兎に抗血清を作製するとともに単クロ-ン抗体の作製を行った。その結果ガラニンの単クロ-ン抗体を作製し、P物質、ニュ-ロキニンA、Bなど、構造類似の脳腸ホルモンを明確に免疫組織化学的に区別し、その産生ニュ-ロンを同定した。GLP-1についてはGLP-1(7-22)、GLP-1(1-35)をそれぞれ抗原として用い特異抗体を作製することにより、前駆体のプロセシングが脳と膵で異なることを証明し、本研究で作製した2種のGLP-1特異抗体の有用性を明らかにした。VIPについては、モルモットVIP特異抗体を作製し、実験動物におけるVIPの研究を可能にした。バロシン特異抗体の作製により、バロシンの生体内存在意義を明らかにすることができた。NPY N単フラグメントの抗原として用い、類似ペプチドと交差反応しない特異抗体を初めて作製した。LH-RH前駆体に含まれるGAP特異抗体の作製によりLH-RH前駆体産生ニュ-ロンを確実に証明することに成功し、本法の応用性を明確にした。1)脳腸ホルモンおよびそれらの前駆体について、各種動物由来のホルモンまたは前駆体の提出一次構造に基づき、親水領域および二次構造を解析し、さらに各種動物由来のホルモンにおけるアミノ酸残基の置換領域を考察し、特に置換部位を含む親水領域および共通の配列からなる領域を選び、それに相当する約15-20アミノ酸残基のペプチドを、各種哺乳動物由来のホルモンにつき、それぞれ合成した。合成は自動ペプチド合成機により行い、粗生物は0.01N HC1/CH_3CN系の濃度勾配による逆相HPLCにより精製し、確実に純度を証明した。その結果ガラニン、GLP(グルカゴン様ペプチド)、バロシン、モルモットVIP、NPY、ヘロデルミン、パンクレオスタチン、ヒトオキシントモデュリン、LH-RH前駆体の化学合成を達成した。2)上記合成ペプチドを免疫抗原とし家兎に抗血清を作製するとともに単クロ-ン抗体の作製を行った。その結果ガラニンの単クロ-ン抗体を作製し、P物質、ニュ-ロキニンA、Bなど、構造類似の脳腸ホルモンを明確に免疫組織化学的に区別し、その産生ニュ-ロンを同定した。GLP-1についてはGLP-1(7-22)、GLP-1(1-35)をそれぞれ抗原として用い特異抗体を作製することにより、前駆体のプロセシングが脳と膵で異なることを証明し、本研究で作製した2種のGLP-1特異抗体の有用性を明らかにした。VIPについては、モルモットVIP特異抗体を作製し、実験動物におけるVIPの研究を可能にした。バロシン特異抗体の作製により、バロシンの生体内存在意義を明らかにすることができた。NPY N単フラグメントの抗原として用い、類似ペプチドと交差反応しない特異抗体を初めて作製した。LH-RH前駆体に含まれるGAP特異抗体の作製によりLH-RH前駆体産生ニュ-ロンを確実に証明することに成功し、本法の応用性を明確にした。ブタ・ガラニン特異単クローン抗体を作製し、P物質、ニューロキニンA等、構造類似の脳腸ホルモンを明確に免疫組織化学的に区別し、その産生細胞を同定した。グルカゴン前駆体のプロセシングにより、膵グルカゴンおよび腸管グルカゴンのほかに第3のペプチドとして生成が推定されたグルカゴン様ペプチド(GLP)ーIについて、その化学構造に基づきデザインし合成したGLPー1(7ー22)およびGLPーI(1ー35)をそれぞれ抗原として用い、特異抗原を作製した。特に抗GLPーI(7ー22)抗体はGLPーIに特異的であるのみならず、GLPーI(7ー22)配列を含む大分子型成分を認識し、GLPーI様免疫活性成分の検出にきわめて有用であることがわかった。一方、抗GLPーI(1ー35)抗体はGLPーIの35位をC末端とするペプチドを特異的に認識した。その結果、上記2種類の抗GLPーI抗体を併用することにより、GLPーI様免疫活性成分の存在様式をより正確に解析できることが判明した。VIPの化学構造は、モルモットの場合、他の哺乳動物のそれと異っている。本研究では、モルモットVIPを固相法により合成し、これを抗原として家兎に注射免疫し、モルモットVIP特異抗体を作製し、実験動物として有用なモルモットの組織内VIP濃度の測定を可能にした。ブタ小腸から単離されたペプチド、バロシンについても、合成バロシンを抗原として、家兎に抗体を作製し、バロシン様免疫活性成分の検出を可能にした。
KAKENHI-PROJECT-63870093
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63870093
脳腸ホルモンの特異抗体作製法に関する研究
1)脳腸ホルモンおよびその前駆体関連ペプチドの化学合成:ガラニン、グルカゴン様ペプチド(GLP-I)、バロシン、モルモットVIP,ヘロデルミン、ニュ-ロペプチドY(NPY)の化学合成、ならびに前駆体関連ペプチドとして、LH-RH前駆体に含まれるゴナドトロピン関連ペプチド(GAP)の化学合成をペプチド自動合成機を用い行い、高純度の目的とするペプチドを得た。同時にregion-specific抗体の作製を目ざし、上記ペプチドに関連するペプチド断片をそれぞれ計画的に化学合成したが、その合成も自動ペプチド合成機により行い、粗生成物は逆相HPLCにより精製し、確実に純度を証明したペプチドのみを免疫抗原として用いた。2)特異抗体作製法:脳腸ホルモンおよびそれらの前駆体について、各種動物由来のホルモンまたは前駆体の提出一次構造に基づき、親水性領域および二次構造を解析し、さらに各種動物由来のホルモンにおけるアミノ酸残基の置換領域を考え合せ、特に置換部位を含む親水領域および共通の配列からなる領域に相当する約1520アミノ酸残基の合成ペプチドを抗原とする本研究法は、region-specific抗体の作製法として、きわめて有用かつ有効であることを実証した。すなわち、1)ガラニンN端特異単クロ-ン抗体を作製することに成功し、構造類似のタキキニン類とその産生ニュ-ロンを区別することができた。2)GLP-I(7-22)を抗原とすることにより、GLP-1関連ペプチドのすべてを認識する抗体を作製することができた。3)NPYN端フラグメントを抗原として用い、類似ペプチドと交差反応しない特異抗体を初めて作製した。4)GAP特異抗体の作製によりLHRH前駆体産生ニュ-ロンを確実に証明することに成功した。5)各種動物に特異的なVIP属特異抗体の作製法を確立した。6)EGF特異抗体を作製し、本法の応用性を明確にした。
KAKENHI-PROJECT-63870093
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63870093
ウイルスベクターを利用した霊長類の全脳的遺伝子導入法の開発
本研究では、ヒトに近縁なモデル動物であり、感覚・運動・認知などの様々な脳機能や、それらを支える神経回路に関する知見が集積されているサル類において、新規のウイルスベクターの開発により全脳的なニューロンへの遺伝子導入手法を実現し、それらを実用的なレベルで確立するための、ベクター開発および導入法の検討を行なった。その結果、AAV9ベースのキャプシド改変ベクターをマカクサル新生児へ静脈内導入することにより、従来型を利用した場合と異なり、全脳的なニューロンおよびグリアへの遺伝子導入が実現出来ることを見いだした。また、成体への遺伝子導入法の確立を目指し、幼弱サルを用いて注入法などの検討を行った。本研究では、ヒトに近縁なモデル動物であり、感覚・運動・認知などの様々な脳機能や、それらを支える神経回路に関する知見が集積されているサル類において、新規のウイルスベクターの開発により全脳的なニューロンへの遺伝子導入手法を実現し、それらを実用的なレベルで確立するための、ベクター開発および導入法の検討を行なっている。今年度は、AAV9ベースのキャプシド改変ベクターをマカクサル新生児へ静脈内導入することにより、従来型を利用した場合と異なり、全脳的なニューロンおよびグリアへの遺伝子導入が実現出来ることを見いだした。ベクター導入から約40日後に灌流固定を行い、AAVベクターに挿入したマーカー蛋白質であるGFP陽性細胞の分布、およびNeuN等の細胞腫マーカータンパク質との共染色を行って導入効率を解析した結果、視床や黒質など一部の領域では高いニューロンへの導入効率が確認され、また、大多数の小脳プルキンエ細胞で遺伝子導入が行われていることが確認されたが、皮質ニューロンへの遺伝子導入効率は1割程度と高くなかった。また、成体への遺伝子導入法の確立を目指し、幼弱サルを用いて注入法などの検討を行った結果、幼若・成体個体における導入効率増強を実現する導入法を得つつある。さらに、良好な結果を得たベクターをげっし類にも適用し、げっし類において簡便に全脳的な遺伝子発現を誘導する手法の開発研究も開始した。また、同法を有用なモデル動物作出に繋げる応用研究として、遺伝性運動疾患モデルを作出するためのベクター作成を開始した。交付申請書の研究の目的および実施計画欄に記載した、キャプシド改変AAVベクターの霊長類新生児への血管内投与による全脳的なニューロンへの遺伝子導入の実現、霊長類成体への血管内投与による全脳的なニューロンへの遺伝子導入の実現、の2項目において当初見込んだ通りの成果を得ている。また翌年度に本格的に開始するプロモーター制御による細胞種選択的な全脳的遺伝子導入法の確立、全脳的なニューロンへの遺伝子導入技術を利用した遺伝子改変疾患モデル霊長類の作成に関してもベクター作成など当初予定通り準備が進んでおり、研究が順調に進展していると考えられるため。本研究では、ヒトに近縁なモデル動物であり、感覚・運動・認知などの様々な脳機能や、それらを支える神経回路に関する知見が集積されているサル類において、新規のウイルスベクターの開発により全脳的なニューロンへの遺伝子導入手法を実現し、それらを実用的なレベルで確立するための、ベクター開発および導入法の検討を行なっている。今年度は、昨年度開発した、マカクサル新生児において全脳的なニューロンへの遺伝子導入能を示したAAV9ベースのキャプシド改変ベクターのキャプシドをさらに改変し、幼若マカクサルへ静脈内導入し、導入法を工夫することによって、ニューロンへの導入効率を増強するとともに、多臓器への導入を低減できることを確認した。また、別の改変キャプシドを用いることにより、幼若マカクサルにおいて後根神経節ニューロン選択的に遺伝子を導入するベクターの開発に成功した。さらに、良好な結果を得たベクターをげっし類にも適用し、げっし類成体において簡便に全脳的な遺伝子発現を誘導する手法の開発を進めた。本研究成果は始めてマカクサル新生児および幼若マカクサルへのAAVベクターの静脈内導入により、脳の広範な部位におけるニューロンへの遺伝子導入が可能であることを示したものであり、現在これらのベクターの導入特性を解析しており、一部の結果については論文投稿準備を行っている。今後、作製した遺伝性運動疾患モデルを作出するためのベクター等を用いて、同法を有用なモデル動物作出に繋げる応用研究を進めるとともに、遺伝子治療研究への展開を図りたい。本研究では、ヒトに近縁なモデル動物であり、感覚・運動・認知などの様々な脳機能や、それらを支える神経回路に関する知見が集積されているサル類において、新規のウイルスベクターの開発により全脳的なニューロンへの遺伝子導入手法を実現し、それらを実用的なレベルで確立するための、ベクター開発および導入法の検討を行なった。その結果、AAV9ベースのキャプシド改変ベクターをマカクサル新生児へ静脈内導入することにより、従来型を利用した場合と異なり、全脳的なニューロンおよびグリアへの遺伝子導入が実現出来ることを見いだした。また、成体への遺伝子導入法の確立を目指し、幼弱サルを用いて注入法などの検討を行った。研究は当初の予定通り順調に進展していると考えられるため、今後も当初の予定に従い、前年度確立したマカクサル新生児における全脳的なニューロンへの遺伝子導入に関しては、各領野における導入効率、神経親和性の詳細などの解析を行い論文を投稿する。霊長類成体への血管内投与による全脳的なニューロンへの遺伝子導入の実現に関してもデータを増やし論文投稿の準備を進める。また、導入効率の向上、プロモーターを利用した発現制御などのシステム改良を進め、各発達段階においてより高効率な全脳的遺伝子導入を実現する手法を確立する。
KAKENHI-PROJECT-15K14316
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K14316
ウイルスベクターを利用した霊長類の全脳的遺伝子導入法の開発
また、同法を有用なモデル動物作出に繋げる応用研究として、まず症状を捉えやすい遺伝性運動疾患モデルとして、遺伝性運動疾患であるジストニアモデル作出のためのベクター作成、注入実験を行なうなど、当初計画通り研究を推進する。神経科学、ウイルス学
KAKENHI-PROJECT-15K14316
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K14316
Whole embryo culture(全胚培養法)による覚せい剤の催奇形性
覚せい剤メタンフェタミン(MAMP)を投与した妊娠マウスの飼育条件の相違(単独飼育か集団飼育)による奇形発生率の差は催奇形作用に対する間接作用の複雑な関与を示すものと思われる。全胚培養法(whole embryo culture)は、間接作用を除去して胎仔に対する薬物の直接作用を明らかにすることが出来るので、催奇形性薬物の直接作用の検査には最適と考えられる。そこで、本研究では、MAMPの催奇形性を全胚培養法を用いて検査した。〔方法〕妊娠10.5日のラットの子宮を摘出し、顕微鏡下で胚芽をとり出した。血清とタイロード液及びMAMP溶液の15120μg/mlを入れた滅菌培養瓶に、34個の胚を加え、培養システムを用いて培養した。胚の観察は、K1ugの方法に準じて行った。〔結果と考察〕MAMPの60及び120μg/ml投与群において各1例の死亡胚が認められたのみで生存率は各群90%以上であった。30μg/mlまでの投与量では奇形は認められるなかったが、90μg/Ml以上の量では奇形発生率は激増した。形態異常は脳に多くみられた。又、胚の発育指標であるスコアは投与量とともに徐々に減少し90μg/Ml以上の投与量では有意の減少となった。120μg/mlでは値はさらに低下した。卵黄嚢直径の減少は90μg/ml以上の投与量において、著明となった。頭殿長や体節数は、卵黄嚢直径の場合よりもいずれも低い投与量で影響をうけた。蛋白濃度は60μg/ml以上の投与量で有意に減少した。胚の組織標本にも異常がみられた。以上、全胚培養法により、MAMPの催奇形性が確認された。全胚養法を用いて明らかにしえた部分が直接作用であり、直接作用から推定されたteratogenic dose(90μg/ml)はin vivo実験の場合よりも極めて高い値を示したが、これは胚のMAMPの作用に対する高い抵抗力を示すと同時に母体を介する間接作用も示す。覚せい剤メタンフェタミン(MAMP)を投与した妊娠マウスの飼育条件の相違(単独飼育か集団飼育)による奇形発生率の差は催奇形作用に対する間接作用の複雑な関与を示すものと思われる。全胚培養法(whole embryo culture)は、間接作用を除去して胎仔に対する薬物の直接作用を明らかにすることが出来るので、催奇形性薬物の直接作用の検査には最適と考えられる。そこで、本研究では、MAMPの催奇形性を全胚培養法を用いて検査した。〔方法〕妊娠10.5日のラットの子宮を摘出し、顕微鏡下で胚芽をとり出した。血清とタイロード液及びMAMP溶液の15120μg/mlを入れた滅菌培養瓶に、34個の胚を加え、培養システムを用いて培養した。胚の観察は、K1ugの方法に準じて行った。〔結果と考察〕MAMPの60及び120μg/ml投与群において各1例の死亡胚が認められたのみで生存率は各群90%以上であった。30μg/mlまでの投与量では奇形は認められるなかったが、90μg/Ml以上の量では奇形発生率は激増した。形態異常は脳に多くみられた。又、胚の発育指標であるスコアは投与量とともに徐々に減少し90μg/Ml以上の投与量では有意の減少となった。120μg/mlでは値はさらに低下した。卵黄嚢直径の減少は90μg/ml以上の投与量において、著明となった。頭殿長や体節数は、卵黄嚢直径の場合よりもいずれも低い投与量で影響をうけた。蛋白濃度は60μg/ml以上の投与量で有意に減少した。胚の組織標本にも異常がみられた。以上、全胚培養法により、MAMPの催奇形性が確認された。全胚養法を用いて明らかにしえた部分が直接作用であり、直接作用から推定されたteratogenic dose(90μg/ml)はin vivo実験の場合よりも極めて高い値を示したが、これは胚のMAMPの作用に対する高い抵抗力を示すと同時に母体を介する間接作用も示す。
KAKENHI-PROJECT-04807041
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04807041
適応型ストリーム処理に基づく能動的コンテンツ統合利用に関する研究
Web, XML,ブロードバンド通信などの発展に伴い,ネットワーク上を時系列的なストリームとして動的に送受信される情報の重要性が増加しており,ストリーム形式の情報の処理に対する新たな技術開発や既存技術の体系化が早急に求められている.本研究は,ストリーム形式で配信されるコンテンツと既存情報源に格納されたコンテンツの多様な統合利用技術の構築を目的とするものである.この目的を達成するため,(1)ストリーム統合処理のためのフレームワークと高効率化技術,および(2)ストリームに対するコンテンツ分析技術の2つの視点より研究を推進した.具体的には今年度は下記の研究課題に関する研究を推進した.(1)ストリーム型情報源統合環境の構築と適応型連続的問合せ処理:連続的問合せを用いたストリームデータの能動的な統合環境の構築を目的とする.本年度は,これまでよりさらに性能の高いキャッシュを用いた複数問合せ最適化手法を開発した.また,ストリームを履歴データとして蓄積し,連続的問合せ中で利用可能とするシステムの設計とプロトタイプシステム構築を行い,実データと実環境を用いて実証的な評価実験を行った.(2)ストリームのコンテンツ分析手法:移動ウィンドウ方式に基づくテキストストリーム中のトピック抽出手法について詳細な比較研究を行った.また,テキストストリームのインクリメンタルな解析手法を開発した.さらに,ストリーム間の相関関係を分析するための基盤技術を開発した.(3)移動軌跡ストリームからの移動統計量抽出手法:移動体位置情報がストリームとして配信される場合について,動的な移動ヒストグラムの構築手法を開発した.また,記憶容量のさらなる圧縮を行う方法やビットマップを用いた改良手法も開発し,比較評価を行った.(4)Webアクセスログストリームに基づくWebリンク一貫性維持手法:Webリンクの一貫性を連続的にモニタリングし,リンク一貫性が維持されていないことを発見すると,能動的に一貫性を維持するようリンクを変更するためのシステムを開発し,より本格的な評価実験を行った.Web, XML,ブロードバンド通信などの発展に伴い,ネットワーク上を時系列的なストリームとして動的に送受信される情報が重要となってきている.ストリーム形式の情報の処理は最近になって重要性が広く認識されてきた.本研究は,ストリーム形式で配信されるコンテンツと既存情報源に格納されたコンテンツの多様な統合利用技術の構築を目的とし,(1)ストリームの能動的統合利用方式,(2)ストリーム処理の高効率化技術,(3)ストリームや利用者の特性に対応した適応型処理等にポイントをおき,具体的には下記の研究課題に関する研究を推進した.(1)ストリーム型情報源統合環境の構築と適応型連続的問合せ処理:連続的問合せを用いたストリームデータの能動的な統合環境の構築を目的としており,本システムは,ストリームからの情報の到着や時間の経過に応じて動作するイベント駆動処理の機能と,ストリームデータとRDBのデータを統一的に扱う機能を有する.本年度は,到着パターンの変化に動的に対応可能な適応型の複数問合せ最適化手法を開発した.また,人工データおよび実データを用いたより詳細な評価実験を行った.(2)テキストストリームに対するコンテンツ分析手法:Kleinbergの手法をもとに,時系列テキストストリームに対する連続的トピック分析の手法を開発し,実験によりその有効性を検証した.また,移動ウィンドウ方式に基づくテキストストリーム中のトピックを手法について比較研究を行った.(3)移動軌跡データからの移動統計量抽出手法:移動オブジェクトの移動軌跡データが空間索引R-木に蓄積されている際に,マルコフ連鎖の遷移確率を効率的に求めるための手法を開発した.また,移動体位置情報がストリームとして配信される場合への拡張について,動的な移動ヒストグラムの構築手法の開発を推進した.(4)RDB上のXSLT実体化ビューのインクリメンタルな更新手法:RDBに対するXML実体化ビューがある場合のビュー更新手法を開発した.本方式では,与えられたXSLTによるビュー定義とRDBのスキーマおよび更新パターンの情報を解析し,XML実体化ビューをインクリメンタルに更新するためのスクリプトを生成し,効率的な更新処理を実現する.(5)Webアクセスログストリームに基づくWebリンク一貫性維持手法:Webリンクの一貫性に着目し,Webロボットを用いて収集されたアクセスログストリームからリンクに関する一貫性が維持されていないことを発見すると,能動的に一貫性を維持するようリンクを変更するための手法を開発した.Web, XML,ブロードバンド通信などの発展に伴い,ネットワーク上を時系列的なストリームとして動的に送受信される情報の重要性が増加しており,ストリーム形式の情報の処理に対する新たな技術開発や既存技術の体系化が早急に求められている.本研究は,ストリーム形式で配信されるコンテンツと既存情報源に格納されたコンテンツの多様な統合利用技術の構築を目的とするものである.この目的を達成するため,(1)ストリーム統合処理のためのフレームワークと高効率化技術,および(2)ストリームに対するコンテンツ分析技術の2つの視点より研究を推進した.具体的には今年度は下記の研究課題に関する研究を推進した.(1)ストリーム型情報源統合環境の構築と適応型連続的問合せ処理:連続的問合せを用いたストリームデータの能動的な統合環境の構築を目的とする.本年度は,これまでよりさらに性能の高いキャッシュを用いた複数問合せ最適化手法を開発した.また,ストリームを履歴データとして蓄積し,連続的問合せ中で利用可能とするシステムの設計とプロトタイプシステム構築を行い,実データと実環境を用いて実証的な評価実験を行った.(2)ストリームのコンテンツ分析手法:移動ウィンドウ方式に基づくテキストストリーム中のトピック抽出手法について詳細な比較研究を行った.また,テキストストリームのインクリメンタルな解析手法を開発した.
KAKENHI-PROJECT-16016205
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16016205
適応型ストリーム処理に基づく能動的コンテンツ統合利用に関する研究
さらに,ストリーム間の相関関係を分析するための基盤技術を開発した.(3)移動軌跡ストリームからの移動統計量抽出手法:移動体位置情報がストリームとして配信される場合について,動的な移動ヒストグラムの構築手法を開発した.また,記憶容量のさらなる圧縮を行う方法やビットマップを用いた改良手法も開発し,比較評価を行った.(4)Webアクセスログストリームに基づくWebリンク一貫性維持手法:Webリンクの一貫性を連続的にモニタリングし,リンク一貫性が維持されていないことを発見すると,能動的に一貫性を維持するようリンクを変更するためのシステムを開発し,より本格的な評価実験を行った.
KAKENHI-PROJECT-16016205
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16016205
ナノメーター超微粒子の非等温場での輸送現象の評価
ナノメーターオーダーのクラスターを含む超微粒子の輸送現象は、PVDおよびCVDによる気相中での微粒子製造などと関連して重要である。そこで、本研究では、約1000°Cまで加熱した円管内層流流れを用いて、ナノメーターオーダーの超微粒子の沈着ならびに蒸発による損失を検討し、以下の点を明らかにした。1)非等温のガス流れおよび粒子のブラウン拡散、熱泳動による沈着損失に対する、温度、粒子材質、粒子径、ガス流量などの効果を実験的に求めた。実験結果をガスの流れ、ブラウン拡散および熱泳動を考慮した拡散方程式の数値解析と比較することにより、高温場での粒子の沈着損失の増大を予測することができた。さらに、数値計算によって円管内の速度、温度および濃度分布を求め、管の軸方向位置に対する沈着量の変化を予測した。2)温度に対する粒子径の変化を実験的に求めた結果より、高温中に浮遊する微粒子では、粒子物質のバルクの融点よりもかなり低い温度でサイズの減少が起こった。この蒸発による粒子径の変化は、自由分子領域に対する蒸発理論で説明することができた。以上より、ガスの流れ、ブラウン拡散および熱泳動を考慮した粒子の拡散方程式の数値計算によって、粒子の加熱履歴が正確に評価でき、蒸発や焼結による粒子の形態変化の理論的検討への応用も可能となることがわかった。ナノメーターオーダーのクラスターを含む超微粒子の輸送現象は、PVDおよびCVDによる気相中での微粒子製造などと関連して重要である。そこで、本研究では、約1000°Cまで加熱した円管内層流流れを用いて、ナノメーターオーダーの超微粒子の沈着ならびに蒸発による損失を検討し、以下の点を明らかにした。1)非等温のガス流れおよび粒子のブラウン拡散、熱泳動による沈着損失に対する、温度、粒子材質、粒子径、ガス流量などの効果を実験的に求めた。実験結果をガスの流れ、ブラウン拡散および熱泳動を考慮した拡散方程式の数値解析と比較することにより、高温場での粒子の沈着損失の増大を予測することができた。さらに、数値計算によって円管内の速度、温度および濃度分布を求め、管の軸方向位置に対する沈着量の変化を予測した。2)温度に対する粒子径の変化を実験的に求めた結果より、高温中に浮遊する微粒子では、粒子物質のバルクの融点よりもかなり低い温度でサイズの減少が起こった。この蒸発による粒子径の変化は、自由分子領域に対する蒸発理論で説明することができた。以上より、ガスの流れ、ブラウン拡散および熱泳動を考慮した粒子の拡散方程式の数値計算によって、粒子の加熱履歴が正確に評価でき、蒸発や焼結による粒子の形態変化の理論的検討への応用も可能となることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-05239207
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05239207
インスリン遺伝子発現細胞による糖尿病遺伝子治療-バイオ人工膵B細胞システムの開発
ヒトインスリン遺伝子を導入した発現ベクターをCHO細胞,線維芽細胞腫瘍細胞(3T12-3),下垂体由来細胞(AtT20),マウスインスリノーマ細胞(MIN6細胞)にトランスフェクトし,ヒトインスリン遺伝子発現細胞を分離,株化した。ヒトインスリン遺伝子の発現はノザンブロットにより確認された。ヒトインスリン遺伝子をトランスフェクトしたCHO細胞及び3T12-3細胞はプロインスリンを,ヒトインスリン遺伝子をトランスフェクトしたAtT20細胞及びMIN6細胞ではインスリンを分泌していた。インスリン遺伝子を発現させた各種細胞をヌードマウスに移植したところ,いずれも低血糖を発症し,ヒトインスリン遺伝子発現CHO細胞移植時には移植15日目,ヒトインスリン遺伝子発現MIN6細胞移植時には24時間後に低血糖によりマウスが死亡した。ヒトインスリン遺伝子発現MIN6細胞はブドウ糖濃度依存性にインスリンを培養液中へ分泌したがヒトインスリン遺伝子発現AtT20細胞ではブドウ糖濃度依存性のインスリン分泌を認めなかった。また,ヒトインスリン遺伝子をトランスフェクトした細胞をカラムに充填し,灌流実験を行うと,ヒトインスリン遺伝子発現MIN6細胞はブドウ糖に反応し2相性のインスリン分泌を認めたが,ヒトインスリン遺伝子発現AtT20細胞では2相性のインスリン分泌を認めなかった。一方,ヒトインスリン遺伝子を発現しているAtT20細胞にグルコーストランスポーター2型遺伝子及びグルコキナーゼ遺伝子をトランスフェクトした細胞では培養液中へのブドウ糖濃度依存性のインスリン分泌を認めたが,灌流実験におけるブドウ糖刺激時の2相性インスリン分泌は認められなかった。本研究で構築した細胞は,糖尿病の遺伝子治療の可能性追求のモデルとなるのみならず,現在未解決な膵B細胞ブドウ糖認識機構,細胞内情報伝達機構,インスリン分泌機構の解明に資するものと考える。ヒトインスリン遺伝子を導入した発現ベクターをCHO細胞,線維芽細胞腫瘍細胞(3T12-3),下垂体由来細胞(AtT20),マウスインスリノーマ細胞(MIN6細胞)にトランスフェクトし,ヒトインスリン遺伝子発現細胞を分離,株化した。ヒトインスリン遺伝子の発現はノザンブロットにより確認された。ヒトインスリン遺伝子をトランスフェクトしたCHO細胞及び3T12-3細胞はプロインスリンを,ヒトインスリン遺伝子をトランスフェクトしたAtT20細胞及びMIN6細胞ではインスリンを分泌していた。インスリン遺伝子を発現させた各種細胞をヌードマウスに移植したところ,いずれも低血糖を発症し,ヒトインスリン遺伝子発現CHO細胞移植時には移植15日目,ヒトインスリン遺伝子発現MIN6細胞移植時には24時間後に低血糖によりマウスが死亡した。ヒトインスリン遺伝子発現MIN6細胞はブドウ糖濃度依存性にインスリンを培養液中へ分泌したがヒトインスリン遺伝子発現AtT20細胞ではブドウ糖濃度依存性のインスリン分泌を認めなかった。また,ヒトインスリン遺伝子をトランスフェクトした細胞をカラムに充填し,灌流実験を行うと,ヒトインスリン遺伝子発現MIN6細胞はブドウ糖に反応し2相性のインスリン分泌を認めたが,ヒトインスリン遺伝子発現AtT20細胞では2相性のインスリン分泌を認めなかった。一方,ヒトインスリン遺伝子を発現しているAtT20細胞にグルコーストランスポーター2型遺伝子及びグルコキナーゼ遺伝子をトランスフェクトした細胞では培養液中へのブドウ糖濃度依存性のインスリン分泌を認めたが,灌流実験におけるブドウ糖刺激時の2相性インスリン分泌は認められなかった。本研究で構築した細胞は,糖尿病の遺伝子治療の可能性追求のモデルとなるのみならず,現在未解決な膵B細胞ブドウ糖認識機構,細胞内情報伝達機構,インスリン分泌機構の解明に資するものと考える。正常ヒト白血球genomic DNAよりクローニングしたヒトインスリン遺伝子をpAc3に導入し,全長6.9kbのヒトインスリン遺伝子発現ベクター(pAc3HI)を作製した。pAc3HIを線維芽細胞系腫瘍細胞(CHO細胞,BALB/3T12-3細胞),下垂体由来細胞(AtT-20),インスリノーマ細胞(MIN6細胞)にリポフェクチン法でトランスフェクトし,ヒトインスリン遺伝子発現細胞を選択,株化し,以下の結果を得た。1.ノザンブロット分析:インスリン遺伝子導入前のCHO細胞,3T12-3細胞,AtT-20細胞ではヒトインスリン遺伝子mRNAのバンドを認めなかったが,pAc3HIをトランスフェクトした細胞では明瞭なバンドを認めた。MIN-6細胞ではヒトインスリン遺伝子導入前の細胞でもバンドを認めたが,pAc3HIのトランスフェクトによりバンドがさらに増強した。2.細胞外分泌蛋白の解析:pAc3HIをトランスフェクトしたCHO細胞より培養液中に分泌された蛋白のインスリン活性及びプロインスリン活性(RIA)は0.45nM/L及び3.6nM/Lで,HPLC分析によりプロインスリンと同定された。pAc3HIをトランスフェクトしたAt20細胞より培養液中に分泌された蛋白のインスリン活性及びプロインスリン活性は1.9nM/L及び0.1nM/Lで,HPLC分析により分泌された蛋白の大部分がプロインスリンで一部がインスリンと同定された。pAc3HIをトランスフェクトしたCHO細胞より培養液中に分泌された蛋白のインスリン活性及びプロインスリン活性は1.1μM/L及び5.0nM/Lで,HPLC分析によりマウスインスリン分画以外に大きなヒトインスリン分画が同定された。3.マウス腹腔内細胞導入実験:pAc3HIトランスフェクトCHO細胞(5×10^8個)をヌードマウスに移植すると血糖値は移植後10日目より低下し,15日目には低血糖により死亡した。pAc3HIトランスフェクトMIN6細胞(10^7個)の移植では移植後24時間で死亡した。
KAKENHI-PROJECT-06557061
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06557061
インスリン遺伝子発現細胞による糖尿病遺伝子治療-バイオ人工膵B細胞システムの開発
潅流実験においてブドウ糖濃度を5mMから25mMにステップ状に増加させた時のインスリン分泌は,AtT20HI-GT2細胞,AtT20HI-GK細胞では有意な分泌増加を認めなかったが,AtT20HI-GT2,GK細胞では1012分後にピークを持つ-相性の増加を認めたが,二相性のインスリン分泌は認められなかった。本研究で構築した細胞は,糖尿病の遺伝子治療の可能性追求のモデルとなるのみならず,現在未解決な膵B細胞ブドウ糖認識機構,細胞内情報伝達機構,インスリン分泌機構の解明に資するものと考える。
KAKENHI-PROJECT-06557061
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06557061
がん及び神経変性疾患関連スフィンゴ糖脂質の細胞内輸送システムの独自性と普遍性
スフィンゴ糖脂質(GSL)は、がんや神経変成疾患などの病態に深く関与している。本研究では、メラノーマ抗原GD3と重篤な神経変成疾患であるニーマン・ピック病C型(NPC病)に関連するガングリオシドの細胞内輸送や膜ドメインの維持機構について解析を行った。その結果、GD3が脂質代謝を調節する因子を活性化することで膜ドメインの形成をサポートしていることが明らかになった。また、この脂質代謝調節因子を阻害することでメラノーマ細胞の増殖を抑制することに成功した。一方、NPC病に関与するガングリオシドが蓄積する細胞内小器官を明らかにすると共に、ガングリオシド蓄積を軽減する低分子量化合物を同定した。スフィンゴ糖脂質(GSL)は、がんや神経変成疾患などの病態に深く関与している。本研究では、メラノーマ抗原GD3と重篤な神経変成疾患であるニーマン・ピック病C型(NPC病)に関連するガングリオシドの細胞内輸送や膜ドメインの維持機構について解析を行った。その結果、GD3が脂質代謝を調節する因子を活性化することで膜ドメインの形成をサポートしていることが明らかになった。また、この脂質代謝調節因子を阻害することでメラノーマ細胞の増殖を抑制することに成功した。一方、NPC病に関与するガングリオシドが蓄積する細胞内小器官を明らかにすると共に、ガングリオシド蓄積を軽減する低分子量化合物を同定した。スフィンゴ糖脂質(GSL)は、がん細胞や神経細胞で特に重要な役割を果たしており、がんや神経変性疾患などの病態に深く関与している。GSLは脂質ラフトと呼ばれる細胞膜ドメインに局在し、細胞機能の調節に重要な役割を果たしている。しかしながら、GSLの細胞内輸送メカニズムや脂質ラフトへの集積メカニズムはほとんど理解されていない。本年度は、特に、重篤な神経変性疾患を伴うニーマン・ピックC型(NPC)病に関連するGSLについて研究を行い、以下の成果を得た。これまでのGSL輸送研究では、ほとんどすべての研究においてセラミドの脂肪酸鎖が蛍光標識されたモデルGSL (Bodipy-LacCer)が使用されている。Bodipy-LacCerがスフィンゴリピドーシス関連GSLと同じ糖鎖構造・脂質構造を持つ天然型と同一の細胞内動態を示すかどうかは疑問が残っている。申請者らは、この問題を克服し、疾患関連GSLの細胞内輸送をより詳細に明らかにすることを目的に、NPC1欠損CHO細胞に対して糖鎖リモデリングを行った。CHO細胞の主要なGSLはGM3であるので、NPC1欠損CHO細胞と野生型(WT)CHO細胞にGM2/GD2合成酵素(β1,4-GalNAc転移酵素)を導入した結果、GM2だけでなく脳に発現がみられるGM1やGD1aを発現するCHO細胞を得た。そして、NPC1欠損CHO細胞では、GM2やGM1、GD1aがリソソームに強く蓄積することが明らかになった。また、NPC病患者由来の繊維芽細胞においても、GSL(GM3)の蓄積はリソソームへ限局していた。我々の作製したNPC病関連GSLを蓄積する初めてのモデル細胞であり、NPC病におけるガングリオシド輸送を研究する有用なモデルになると考えられる。スフィンゴ糖脂質(GSL)は、がん細胞や神経細胞で特に重要な役割を果たしており、がんや神経変性疾患などの病態に深く関与している。GSLは脂質ラフトと呼ばれる細胞膜ドメインに局在し、細胞機能の調節に重要な役割を果たしている。しかしながら、GSLの細胞内輸送メカニズムや脂質ラフトへの集積メカニズムはほとんど理解されていない。本年度は、がん関連GSLI及び神経変性疾患関連GSLについて、以下の成果を得た。GD3は、メラノーマに高発現するGSL.でメラノーマ抗原の一つである。GD3は脂質ラフトに集積し、悪性形質に関わるシグナルを増強していることが示されている。申請者らは、GD3が転写因子SREBPを活性化してコレステロール合成を亢進させることで、脂質ラフトの構造や機能の維持させていることを明らかにした。さらに、SREBPを介したコレステロール合成経路がメラノーマ細胞の悪性形質発現に重要な役割を果たしていることを明らかにした。ニーマン-ピックC型(NPC)病は、重篤な遺伝性の神経変性疾患である。患者の脳などではコレステロールとGSLが蓄積する。GSLは、NPC病の病態に重要な役割を果たしており、その蓄積の阻害はNPC病や他のGSL蓄積症の治療方法の開発にとって重要である。申請者らは、昨年度に樹立した疾患関連GSLを蓄積するNPC1欠損細胞を用いて、リソソームから細胞膜へGSLの輸送を促進する低分子量化合物を発見した。スフィンゴ糖脂質(GSL)は、がん細胞や神経細胞で特に重要な役割を果たしており、がんや神経変性疾患などの病態に深く関与している。GSLは脂質ラフトと呼ばれる細胞膜ドメインに局在し、細胞機能の調節に重要な役割を果たしている。しかしながら、GSLの細胞内輸送メカニズムや脂質ラフトへの集積メカニズムはほとんど理解されていない。本年度は、がん関連GSL及び神経変性疾患関連GSLについて、以下の成果を得た。GD3は、メラノーマに高発現するGSLでメラノーマ抗原の一つである。GD3は脂質ラフトにおいて、悪性形質に関わるシグナルを増強していることが示されている。申請者は、昨年度報告したGD3によって誘導される転写因子SREBPの活性化の重要性について、さらに解析を進めた。
KAKENHI-PROJECT-22790280
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22790280
がん及び神経変性疾患関連スフィンゴ糖脂質の細胞内輸送システムの独自性と普遍性
その結果、極めて特異的にSREBPを阻害する低分子量化合物がヒトメラノーマ細胞の増殖を顕著に抑制することが示された。したがって、SREBPを介した脂質ラフトの維持がメラノーマ細胞の悪性形質に重要な役割を果たしていることが明らかになった。ニーマン-ピックC型(NPC)病は、重篤な遺伝性の神経変性疾患である。患者の脳などではコレステロールと特定のGSLが蓄積する。GSLは、NPC病の病態に重要な役割を果たしており、その蓄積を改善することはNPC病や他のGSL蓄積症の治療方法の開発にとって重要である。申請者らは、本研究課題で樹立した疾患関連GSLを蓄積するNPC1欠損細胞を用いて、リソソームから細胞膜へ疾患関連GSLの輸送を促進する低分量化合物を3種類発見し、うち1種類はリソソームの蓄積を軽減することが示された。また、この効果はNPC病患者由来の細胞においても確認された。これらの結果から、疾患関連GSLのリソソームから細胞膜への輸送とリソソームの蓄積を軽減する低分子量化合物は、NPC病の病態を改善することが期待された。がん関連GSLについては、メラノーマ抗原であるGD3がコレステロール生合成経路を活性化することで脂質ラフトの構造や機能の維持に重要な役割を果たしており、これががんの悪性形質の発現に重要な役割を果たしていることを明らかにした。一方、神経変性疾患関連GSLについては、NPC病細胞において疾患関連GSLの輸送を改善する低分量化合物を発見した。24年度が最終年度であるため、記入しない。がん関連GSLについては、申請書に記載したAkt基質として同定されたAS160とがん関連GSL,の輸送について今後研究を進める。野生型及び恒常的活性化型AS160を安定発現したメラノーマ細胞株を樹立したので、それらの細胞を用いて、がん関連GSLの細胞内局在等について解析を行う。神経変性疾患関連GSL、の輸送については、NPC細胞において低分子量化合物が疾患関連GSLの細胞内輸送を改善する分子メカニズムについて研究を進める。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22790280
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名詞句の飽和性と意味機能との相互関係についての理論的・実証的研究
名詞には、それ単独で外延を決定できるタイプの飽和名詞(「作家」「俳優」等)と、意味のうちに「Xの」というパラメータを含み、それが定まらない限り、外延を決定できないタイプの非飽和名詞(「作者」「主役」等)の二つが区別される。名詞句の研究にとっては、この飽和性という観点とは独立に、名詞句の文中での意味機能(対象を指示するか、属性を表すか、命題関数を表すか)という観点が重要である。本研究では、《飽和性》と《文中での意味機能》という二つの観点が文法の深いレベルで相互作用していることに着目し、名詞句を中心とする言語現象を有機的に記述・説明できる一般理論の構築を目指す。平成30年度は、以下の内容を実施した。[1]一般言語理論(生成文法)において、《名詞句の文中での意味機能》が、どの部門でどのように扱われるべきか、その理論的位置づけを考察した。[2]「非飽和名詞」と、先行研究において提案されている類似概念(「中核名詞句」「関数名詞句」)との、概念上の異同を検討した。[3]《飽和性》と《文中での意味機能》との相互作用が見られる構文として、「地図をたよりに人をたずねる」タイプの構文をとりあげ、同構文の特徴・制約を検討した。[4]特定の述語によらない、純粋に《名詞句の文中での意味機能》の違いに起因する曖昧性を持つ文として、いわゆるウナギ文「AはCだ」、および「Aは難しい/簡単だ」タイプの構文を取り上げ、その意味構造を検討した。名詞句の《飽和性》および《文中での意味機能》の考察を通じて、理論的に興味深いデータをいくつか得られた。これらのデータに基づき、現行の理論では説明できないことは何か、理論はどのように改定されるべきかについて考察を深めることができた。また、これらの概念の理論的基盤をより明確にすることができた。平成30年度の課題を継続するとともに、《飽和性》と《文中での意味機能》の相互作用という点から以下の構文を再検討する:「NP1のNP2」・コピュラ文(措定文・指定文)・ウナギ文。さらに、文の意味表示(論理形式)における《意味機能》の位置づけをより明確にする。研究成果を取りまとめ,成果の発表を行う。名詞には、それ単独で外延を決定できるタイプの飽和名詞(「作家」「俳優」等)と、意味のうちに「Xの」というパラメータを含み、それが定まらない限り、外延を決定できないタイプの非飽和名詞(「作者」「主役」等)の二つが区別される。名詞句の研究にとっては、この飽和性という観点とは独立に、名詞句の文中での意味機能(対象を指示するか、属性を表すか、命題関数を表すか)という観点が重要である。本研究では、《飽和性》と《文中での意味機能》という二つの観点が文法の深いレベルで相互作用していることに着目し、名詞句を中心とする言語現象を有機的に記述・説明できる一般理論の構築を目指す。平成30年度は、以下の内容を実施した。[1]一般言語理論(生成文法)において、《名詞句の文中での意味機能》が、どの部門でどのように扱われるべきか、その理論的位置づけを考察した。[2]「非飽和名詞」と、先行研究において提案されている類似概念(「中核名詞句」「関数名詞句」)との、概念上の異同を検討した。[3]《飽和性》と《文中での意味機能》との相互作用が見られる構文として、「地図をたよりに人をたずねる」タイプの構文をとりあげ、同構文の特徴・制約を検討した。[4]特定の述語によらない、純粋に《名詞句の文中での意味機能》の違いに起因する曖昧性を持つ文として、いわゆるウナギ文「AはCだ」、および「Aは難しい/簡単だ」タイプの構文を取り上げ、その意味構造を検討した。名詞句の《飽和性》および《文中での意味機能》の考察を通じて、理論的に興味深いデータをいくつか得られた。これらのデータに基づき、現行の理論では説明できないことは何か、理論はどのように改定されるべきかについて考察を深めることができた。また、これらの概念の理論的基盤をより明確にすることができた。平成30年度の課題を継続するとともに、《飽和性》と《文中での意味機能》の相互作用という点から以下の構文を再検討する:「NP1のNP2」・コピュラ文(措定文・指定文)・ウナギ文。さらに、文の意味表示(論理形式)における《意味機能》の位置づけをより明確にする。研究成果を取りまとめ,成果の発表を行う。平成30年度は、資料収集に重点を置いたため、出張旅費の支出がなかった。来年度は、国内外の学会出張費も支出する予定である。
KAKENHI-PROJECT-18K00558
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K00558
心筋細胞・線維芽細胞のアポトーシス誘導機序及び心筋梗塞後リモデリング治療への応用
我々は心筋細胞培養系において低酸素/再酸素化障害により心筋細胞からキニン産生が増加されることを報告した(Circulation 99:817-822,1999)。平成14年度は、心筋細胞培養および心筋由来線維芽細胞のそれぞれ培養系において低酸素再酸素化障害において、アポトーシスの誘導機序の違いについて検討した。心筋細胞では、5.5時間/1時間の低酸素/再酸素化では、2.5±1.2%のアポトーシスが誘導されたが、7時間/1時間の群では、アポトーシスは、6.5±2.6%のと増加した。ただしこれ以上低酸素時間や再酸素化時間を延長させてもアポトーシスの増加はみられず、ネクローシスによる細胞死が増加した。pH,細胞内カルシウム、細胞内ATP含量の面から原因を検討した結果、再酸素化直前の細胞内ATP含量およびpHがアポトーシスの増減に最も関与していた。心筋細胞をミトコンドリア分画、細胞質分画に分け検討した結果、アポトーシスに先立ち、Baxの細胞質からミトコンドリアへの移動、チトクロームCのミトコンドリアから細胞質への移動を認め、カスパーゼ3の活性化がみられた。ブラジキニンの前投与により心筋細胞のアポトーシスが48±6.6%減少したが、これは、ブラジキニンおよび一酸化窒素によりBaxの細胞質からミトコンドリアへの移動が阻害されることによると考えられた。一方、心筋由来線維芽細胞においては、アポトーシスの時間経過を検討したところ24時間/2時間の低酸素/再酸素化にてアポトーシスの細胞が最も増加し、26.5±5.6%であった。再酸素化直前の細胞内ATP含量およびpHがアポトーシスの増化に最も関与していたが、心筋細胞培養より必要な細胞内ATP含量およびPHは低値であった。ブラジキニンの前投与により心筋由来線維芽細胞においてもアポトーシスは、35±4.6%制御されたが、その機序について現在検討中である。我々は心筋細胞培養系において低酸素/再酸素化障害により心筋細胞からキニン産生が増加されることを報告した(Circulation 99:817-822,1999)。平成14年度は、心筋細胞培養および心筋由来線維芽細胞のそれぞれ培養系において低酸素再酸素化障害において、アポトーシスの誘導機序の違いについて検討した。心筋細胞では、5.5時間/1時間の低酸素/再酸素化では、2.5±1.2%のアポトーシスが誘導されたが、7時間/1時間の群では、アポトーシスは、6.5±2.6%のと増加した。ただしこれ以上低酸素時間や再酸素化時間を延長させてもアポトーシスの増加はみられず、ネクローシスによる細胞死が増加した。pH,細胞内カルシウム、細胞内ATP含量の面から原因を検討した結果、再酸素化直前の細胞内ATP含量およびpHがアポトーシスの増減に最も関与していた。心筋細胞をミトコンドリア分画、細胞質分画に分け検討した結果、アポトーシスに先立ち、Baxの細胞質からミトコンドリアへの移動、チトクロームCのミトコンドリアから細胞質への移動を認め、カスパーゼ3の活性化がみられた。ブラジキニンの前投与により心筋細胞のアポトーシスが48±6.6%減少したが、これは、ブラジキニンおよび一酸化窒素によりBaxの細胞質からミトコンドリアへの移動が阻害されることによると考えられた。一方、心筋由来線維芽細胞においては、アポトーシスの時間経過を検討したところ24時間/2時間の低酸素/再酸素化にてアポトーシスの細胞が最も増加し、26.5±5.6%であった。再酸素化直前の細胞内ATP含量およびpHがアポトーシスの増化に最も関与していたが、心筋細胞培養より必要な細胞内ATP含量およびPHは低値であった。ブラジキニンの前投与により心筋由来線維芽細胞においてもアポトーシスは、35±4.6%制御されたが、その機序について現在検討中である。
KAKENHI-PROJECT-14770323
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14770323
分光プロジェクタを用いた表面反射特性の計測と実物体の見え操作
本研究では,応募者らが先行研究において構築した分光プロジェクタの実応用として,物体表面における光反射特性の新たな計測手法の確立を目的とする.さらに,分光プロジェクタを用いた物体表面への重畳投影(プロジェクションマッピング)により,実物体の見えを操作する新たな技術基盤の構築を実施する.プロジェクションマッピングは,物体表面に塗装や加工を施すことなく見えを操作することができるため,エンターテイメントのみならず,商品開発シミュレーション等の幅広い専門分野で使用されている.近年では,人間の顔にプロジェクションマッピングを行い,表情を操作する方法なども提案されている.しかしながら,従来のプロジェクションマッピングではRGBプロジェクタを用いており,人間の肌の分光的な見え操作を行うことは不可能であり,リアルな再現は困難であった.そこで,申請課題の平成30年度の研究では,著者らが開発した分光プロジェクタを用いて,肌の光学特性を計測するとともに,その計測データをもとに,肌の見かけを分光的に操作するプロジェクションマッピング技術の構築した.提案手法の検証実験において,実際の化粧肌と分光プロジェクションマッピングを行った肌の分光計測を行い,それらの分光分布や色差を比較した.実験結果より,分光プロジェクションマッピングによる肌の見えは化粧肌に数値的に近い結果が得られ,提案手法の有用性が示された.これらの成果は,国内学会や国際学術会議にて発表し,国内学会では発表賞を受賞した.また,現在,この成果をもとに,国際学会誌への論文投稿の準備中である.また,分光プロジェクタを用いた計測手法として,構造色物体を対象とした計測にも着手しはじめ,初期実験データを取得した.本研究では当初計画では,以下の課題解決に取り組む予定となっていた.(1)平成30年度:分光プロジェクタ・カメラシステムの改善,(2)平成30年度31年度:表面反射特性の計測(30年度:蛍光物体,31年度:構造色物体,肌),(3)平成31年度32年度:実物体の見え操作(31年度:蛍光物体,32年度:構造色物体,肌)物体表面の光反射計測や実物体の見え操作には,分光プロジェクタ・カメラシステムが必要となる.応募者の先行研究において,一般物体の分光反射率と3次元形状を計測する分光プロジェクタ・カメラシステムを試作した.計測や見え操作を実現するためには各機器と物体間の位置合わせが必須であるが,平成30年度の研究では,分光プロジェクタの特性を活かした自動位置合わせ手法を開発し,現状の分光プロジェクタ・カメラシステムの改善をはかった.平成30年度は蛍光物体を対象にすることを予定していたが,想定するような計測対象が入手できなかったため,肌の計測と見え操作を行うこととした.その結果,肌の光学特性を計測するとともに,その計測データをもとに,肌の見かけを分光的に操作するプロジェクションマッピング技術の構築した.肌を対象とした研究については,当初予定では平成32年度までに完成予定であったが,既に十分な成果を得ることがおおむねできた.また,構造色物体についても,平成30年度中に計測に関する初期実験を行い,データ取得を既に行っている.以上を踏まえ,研究の進捗状況はおおむね順調であると判断できる.今後の計画は,以下を予定している.(1)令和元年度:構造色物体を対象とした表面反射特性の計測と見え操作,蛍光物体を対象とした表面反射特性の計測,(2)令和2年度:蛍光物体を対象とした表面反射特性の計測と見え操作構造色物体は,白色光の入射に対して,物体表面での干渉・回折・散乱が生じるため,出射光の波長は空間的な位置に依存する.この光特性の計測・再現・見え操作は,現在,コンピュータビジョンやコンピュータグラフィックスの研究分野で十分な成果が挙げられていない状況である.そのため,令和元年度では,構造色物体を対象とした研究に注力する.蛍光物体は表面反射光と蛍光発光の両者を有するが,これらは特定の入射波長に対する出射波長の特性が異なる.さらに,蛍光発光は点拡がり関数のような空間的特性をもつ.蛍光物体は,現在,コンピュータビジョン分野で計測・再現に関する研究が積極的に行われており,これらの技術を利用した発展的研究を実施する予定である.また,研究成果の対外発表については,平成30年度で行った肌の光学特性を計測,および,肌の見かけを分光的に操作するプロジェクションマッピング技術について,令和元年度中に論文投稿する予定である.構造色物体や蛍光物体を対象とした研究についても,研究成果が得られ次第,体外発表する予定である.本研究では,応募者らが先行研究において構築した分光プロジェクタの実応用として,物体表面における光反射特性の新たな計測手法の確立を目的とする.さらに,分光プロジェクタを用いた物体表面への重畳投影(プロジェクションマッピング)により,実物体の見えを操作する新たな技術基盤の構築を実施する.プロジェクションマッピングは,物体表面に塗装や加工を施すことなく見えを操作することができるため,エンターテイメントのみならず,商品開発シミュレーション等の幅広い専門分野で使用されている.近年では,人間の顔にプロジェクションマッピングを行い,表情を操作する方法なども提案されている.
KAKENHI-PROJECT-18K11347
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K11347
分光プロジェクタを用いた表面反射特性の計測と実物体の見え操作
しかしながら,従来のプロジェクションマッピングではRGBプロジェクタを用いており,人間の肌の分光的な見え操作を行うことは不可能であり,リアルな再現は困難であった.そこで,申請課題の平成30年度の研究では,著者らが開発した分光プロジェクタを用いて,肌の光学特性を計測するとともに,その計測データをもとに,肌の見かけを分光的に操作するプロジェクションマッピング技術の構築した.提案手法の検証実験において,実際の化粧肌と分光プロジェクションマッピングを行った肌の分光計測を行い,それらの分光分布や色差を比較した.実験結果より,分光プロジェクションマッピングによる肌の見えは化粧肌に数値的に近い結果が得られ,提案手法の有用性が示された.これらの成果は,国内学会や国際学術会議にて発表し,国内学会では発表賞を受賞した.また,現在,この成果をもとに,国際学会誌への論文投稿の準備中である.また,分光プロジェクタを用いた計測手法として,構造色物体を対象とした計測にも着手しはじめ,初期実験データを取得した.本研究では当初計画では,以下の課題解決に取り組む予定となっていた.(1)平成30年度:分光プロジェクタ・カメラシステムの改善,(2)平成30年度31年度:表面反射特性の計測(30年度:蛍光物体,31年度:構造色物体,肌),(3)平成31年度32年度:実物体の見え操作(31年度:蛍光物体,32年度:構造色物体,肌)物体表面の光反射計測や実物体の見え操作には,分光プロジェクタ・カメラシステムが必要となる.応募者の先行研究において,一般物体の分光反射率と3次元形状を計測する分光プロジェクタ・カメラシステムを試作した.計測や見え操作を実現するためには各機器と物体間の位置合わせが必須であるが,平成30年度の研究では,分光プロジェクタの特性を活かした自動位置合わせ手法を開発し,現状の分光プロジェクタ・カメラシステムの改善をはかった.平成30年度は蛍光物体を対象にすることを予定していたが,想定するような計測対象が入手できなかったため,肌の計測と見え操作を行うこととした.その結果,肌の光学特性を計測するとともに,その計測データをもとに,肌の見かけを分光的に操作するプロジェクションマッピング技術の構築した.肌を対象とした研究については,当初予定では平成32年度までに完成予定であったが,既に十分な成果を得ることがおおむねできた.また,構造色物体についても,平成30年度中に計測に関する初期実験を行い,データ取得を既に行っている.以上を踏まえ,研究の進捗状況はおおむね順調であると判断できる.今後の計画は,以下を予定している.(1)令和元年度:構造色物体を対象とした表面反射特性の計測と見え操作,蛍光物体を対象とした表面反射特性の計測,(2)令和2年度:蛍光物体を対象とした表面反射特性の計測と見え操作構造色物体は,白色光の入射に対して,物体表面での干渉・回折・散乱が生じるため,出射光の波長は空間的な位置に依存する.この光特性の計測・再現・見え操作は,現在,コンピュータビジョンやコンピュータグラフィックスの研究分野で十分な成果が挙げられていない状況である.そのため,令和元年度では,構造色物体を対象とした研究に注力する.蛍光物体は表面反射光と蛍光発光の両者を有するが,これらは特定の入射波長に対する出射波長の特性が異なる.さらに,蛍光発光は点拡がり関数のような空間的特性をもつ.蛍光物体は,現在,コンピュータビジョン分野で計測・再現に関する研究が積極的に行われており,これらの技術を利用した発展的研究を実施する予定である.また,研究成果の対外発表については,平成30年度で行った肌の光学特性を計測,および,肌の見かけを分光的に操作するプロジェクションマッピング技術について,令和元年度中に論文投稿する予定である.
KAKENHI-PROJECT-18K11347
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骨格形成過程における転写因子Osterixの機能的役割と制御機構の解明
転写因子Osterixは骨および軟骨の形成に必須であるとされているが、Osterix遺伝子欠損マウスは胎生18.5日齢以降で膜性骨形成および内軟骨性骨形成を開始する。そこでOsterixの機能を代償する転写因子を探索し、Sp1ファミリー遺伝子が同定した。このSp1ファミリー遺伝子は、BMP2により発現誘導され、in vitroではOsterixと同様の作用を示した。Osterix/ Sp1ファミリー遺伝子ダブルノックアウトマウスを作製し、表現型を解析した結果、胎生18.5日齢で膜性および内軟骨性骨形成を認めた。したがってin vivoではSp1ファミリー遺伝子以外の分子が関与すると示唆された。1.Osterixノックアウトマウスの組織を用いたMicroarray解析結果を検討したところ、Ennp1、Enpp6を始めとする骨あるいは軟骨組織の形成に関与する分子群が、Osterixの標的候補分子であると示唆された。そこでこれらの分子の関与を初代骨芽細胞あるいは軟骨細胞、および株化細胞に過剰発現し、その機能的役割を検討するために、各々のアデノウイルスを作製した。2.Osterixの骨形成機能および軟骨形成機能を代償する分子を同定するために、骨芽細胞ならびに軟骨細胞の前駆細胞に、BMP2を作用させ、そのサンプルをMicroarray解析で検討した。その結果、BMP2依存性に、Sp1ファミリー分子の発現が誘導されることを確認した。この解析結果をさらに検証するために、リアルタイムPCR解析により、Sp1ファミリー分子に対するBMP2の効果を検討したところ、BMP2添加により、骨芽細胞および軟骨細胞においてSp1ファミリー分子の発現が上昇することが確認された。したがって、Sp1ファミリー分子が、Osterixの機能を代償すると考えられた。そこでSp1ファミリー分子のin vivoでの役割を検討するために、Sp1ファミリー分子のfloxマウスを入手し、Sp1ファミリー欠損マウスの作製を開始した。3.上記で同定されたSp1ファミリー分子の機能をin vitroで検索した結果、Sp1ファミリー分子が、Osterixの標的分子の発現を制御している実験結果が得られた。1.Sp1ファミリー分子の機能的役割を分子生物学的に検討した結果、Osterixに比べて活性は弱いものの、骨芽細胞分化および軟骨細胞分化に対して、Osterixと同様な作用を有していることが明らかとなった。さらに、分子機能に関する検討を行ったところ、Osterixの標的遺伝子に対して同様な転写機能を有していることを見出した。したがって、同定されたSp1ファミリー分子は、骨および軟骨形成において、Osterixの機能を代償している可能性が高いと考えられた。2.Sp1ファミリー分子の骨形成および軟骨形成における役割をin vivoにて検証するために、Osterix/Sp1ファミリー遺伝子欠損ダブルノックアウトマウスの作製を進めた。具体的には、Sp1ファミリー分子のfloxマウスとCAG-Creトランスジェニックマウスを交配し、Sp1ファミリー分子の遺伝子欠損ヘテロマウスを作出した。次に、Osterix遺伝子欠損ヘテロマウスと、上記のSp1ファミリー分子遺伝子欠損ヘテロマウスを交配し、Osterix/Sp1ファミリー遺伝子欠損ダブルヘテロマウスを作出した。Osterix/Sp1ファミリー遺伝子欠損ダブルヘテロマウス自体には、大きな異常を認めないので、ダブルヘテロマウス同士の交配により、ダブルノックアウトマウスの作出が可能と判断された。1.OsterixとSp1ファミリーダブルノックアウトマウスの作製:まずOsterix遺伝子ヘテロ欠損マウスとSp1ファミリー遺伝子ヘテロ欠損マウスを交配し、ダブルヘテロマウスを作製した後に、ダブルヘテロマウス同士を交配し、Osterix/Sp1ファミリーダブルノックアウトマウスの作製を行った。Osterix/Sp1ファミリーダブルノックアウトマウスは、生下時頃に死亡し、その産仔の比率は、メンデルの法則より低かった。胎生14.5日齢、胎生18.5日齢でもダブルノックアウトマウスの存在する比率は、1/16より低かったが、その原因は、不明であった。2.OsterixとSp1ファミリーダブルノックアウトマウスの解析:Osterix遺伝子欠損マウスで膜性骨形成および内軟骨性骨形成が、観察される胎生18.5日齢において、Osterix/Sp1ファミリーダブルノックアウトマウスの表現型を解析した。アルシアンブルー/アリザリン二重染色による骨格標本を作製し、Osterix/Sp1ファミリーダブルノックアウトマウスの骨化を検索したところ、コントロールマウスに比べて、アリザリンレッド陽性の骨化部分は、顕著に減少していたが、Osterix遺伝子ノックアウトマウスの骨化と同程度であった。さらに病理組織学的にOsterix/Sp1ファミリーダブルノックアウトマウスを検索したが、Osterix/Sp1ファミリーダブルノックアウトマウスにおいても、Osterix遺伝子欠損マウスと同程度の膜性骨形成および内軟骨性骨形成を認めた。したがって、Osterix遺伝子欠損マウスで観察される、膜性骨形成ならびに内軟骨性骨形成には、同定しているSp1ファミリー以外の分子あるいはメカニズムが関与していると考えられた。転写因子Osterixは骨および軟骨の形成に必須であるとされているが、Osterix遺伝子欠損マウスは胎生18.5日齢以降で膜性骨形成および内軟骨性骨形成を開始する。そこでOsterixの機能を代償する転写因子を探索し、Sp1ファミリー遺伝子が同定した。このSp1ファミリー遺伝子は、BMP2により発現誘導され、in vitroではOsterixと同様の作用を示した。Osterix/ Sp1ファミリー遺伝子ダブルノックアウトマウスを作製し、表現型を解析した結果、胎生18.5日齢で膜性および内軟骨性骨形成を認めた。したがってin vivoではSp1ファミリー遺伝子以外の分子が関与すると示唆された。
KAKENHI-PROJECT-25293378
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骨格形成過程における転写因子Osterixの機能的役割と制御機構の解明
平成26年度に予定していた、同定されたSp1ファミリー分子のin vitroでの機能解析が進展し、Osterix/Sp1ファミリー遺伝子欠損ダブルノックアウトマウスの作製も順調に進んでいるので、本研究計画はおおむね順調に進展していると考えられた。27年度が最終年度であるため、記入しない。分子生物学1.Sp1ファミリー分子欠損マウスとOsterixのダブルノックアウトマウスの作製昨年度までに作製した、Sp1ファミリー分子欠損マウスとOsterix欠損マウスを交配し、ダブルヘテロマウスの交配を継続する。得られたダブルヘテロマウスを交配し、Sp1ファミリー分子およびOsterixのダブルノックアウトマウスを作製する。2. Sp1ファミリー分子/Osterixダブルノックアウトマウスの解析作出されたDKOマウスは、Osterix KOマウスを対照群として、E18.5およびP0日齢にX線撮影、CT撮影、骨格標本、病理組織学的解析にて評価し、膜性骨化ならびに内軟骨性骨化が完全に阻害されるか否かを検討する。3.基質小胞形成に関わるOsterixの分子作用メカニズムの解明Osterix KOマウスおよび軟骨特異的Osterix cKOマウスを解析し、軟骨基質における基質小胞の形成にOsterixが必須であることを明らかにしている。さらに軟骨特異的Osterix cKOマウスの肢芽組織を用いてMicroarray解析したデータを保持している。そこで、この貴重なデータを様々な遺伝子データベース、疾患データベースならびに文献と照らし合わせ、基質小胞形成に関わる候補分子の絞り込みを実施する。申請者らは、石灰化に関連すると示唆されているEnpp1及びEnpp6の発現が軟骨特異的Osterix cKOマウスの肢芽組織で著明に減少していることを明らかにしている。そこでEnpp1ならびにEnpp6を含め、基質小胞形成に関わると考えられる候補遺伝子のアデノウイルスを作製し、Osterix KOマウスの肢芽細胞にそれぞれの遺伝子を導入し、バイオマトリックスを用いた3次元培養を行い、石灰化ならびに基質小胞形成がレスキューできるか否かを検討する。平成25年度に予定していた、1)Osterixの骨芽細胞および軟骨細胞における標的分子の同定、2)骨形成および軟骨形成過程におけるOsterixの機能を代償する分子の同定、3)2の分子のin vitroでの機能解析、に関して、概ね所期の目的に叶う研究結果を得たので、本研究計画はおおむね順調に進展していると思われた。27年度が最終年度であるため、記入しない。平成26年度に予定していた実験が予定より若干、順調に進み、実施予定の実験を予定より効率的行えたため、使用予定の研究費が、予定よりも少なくなった。
KAKENHI-PROJECT-25293378
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多彩な歌唱表現を自動学習する制御性に優れた歌唱音声合成システムの研究
本研究では、これまでに提案してきた隠れマルコフモデル(HMM)に基づいた歌唱合成手法の枠組みを用いて、多様な声質や歌唱表現、多言語歌唱を実現する手法について研究を行った。また、新たに大規模な歌唱データベースを構築し、新たな歌唱モデルを作成する際のガイドラインを検討した本研究では、これまでに提案してきた隠れマルコフモデル(HMM)に基づいた歌唱合成手法の枠組みを用いて、多様な声質や歌唱表現、多言語歌唱を実現する手法について研究を行った。また、新たに大規模な歌唱データベースを構築し、新たな歌唱モデルを作成する際のガイドラインを検討した本研究は表現力豊かな歌唱音声合成手法の探求を目的として、与えられた楽譜から自動的に歌声を合成する用途だけでなく、コンテンツ制作支援という側面においても寄与するものである。これまでに提案した隠れマルコフモデル(Hidden Markov Models, HMM)に基づいた歌唱音声合成システムでは、一般的な素片接続方式の合成方式とは本質的に異なり、歌唱音声における音の高さ、音色・大きさ、時間構造の変化を確率的な枠組みでモデル化したものであり、本研究における研究課題は様々な歌唱表現を実現する歌唱変換手法、加工性に富んだ合成手法の開発と、歌唱音声データの収録と整備である。今年度は、歌唱の多様性に関して主に二つの課題について取り組んだ。1つめの成果としては、歌唱合成において既存の日本語用の音響モデルを用いた英語歌唱合成を試み、多様化における課題の一つである多言語への拡張を検討した。二つ目の成果として、データベースの整備があげられる。これまでに作成した歌唱データベースの仕様を再検討し、音域や音韻バランス、著作権上の問題の回避などを考慮しながら予備的なデータ収集を実施し、統計学習に利用可能なレベルの1時間規模の高品質な女性歌唱者1名からなる歌唱データ収録を実施した。表現力豊かな歌唱音声合成手法の探求を目的として、隠れマルコフモデル(HMM)に基づいた歌唱合成の研究を進めている。この技術は、与えられた任意の歌唱曲の楽譜から自動的に歌声音声を合成する用途だけでなく、コンテンツ制作支援という側面においても寄与するものである。本年度では、前年に収録した女性1名、著作権の失効した楽曲60曲を対象とした歌唱音声データベースの整備を実施した。また、その歌唱データベースに基づいて、新たな女性歌唱者の歌唱合成モデルを構築し歌唱音声の多様化を進めた。なお、当該データベースは、品質や規模としても研究用データとして有用性が高く、研究用途として公開予定である。別の実施項目として、歌唱音声を多様化する観点から、歌唱者の個人性と歌唱モデルの関係について調査した。HMM歌唱合成の枠組みでは、モデルパラメータを柔軟に変更することで歌唱音声を加工することができる利点があるが、モデルを学習した歌唱データ提供者の本来の個人性が、変更後の歌唱音声においてどの程度保持されるかについて検討された事例はこれまでにない。そこで、歌唱合成モデルにおけるスペクトルと基本周波数を制御するパラメータを変更し、それによって歌唱者の本人らしさがどの程度維持されるかを、合成歌唱からの主観評価によって調査した。表現力豊かな歌唱音声合成手法の探求を目的として、隠れマルコフモデル(HMM)に基づいた歌唱合成の研究を進めている。この技術は、与えられた任意の歌唱曲の楽譜から自動的に歌声音声を合成する用途だけでなく、コンテンツ制作支援という側面においても寄与するものである。本年度では、前年までに収録した女性1名、著作権の失効した楽曲60曲を対象とした歌唱音声データベースの整備を継続して実施した。また、その歌唱データベースに基づいて、新たな女性歌唱者の歌唱合成モデルを構築し歌唱音声の多様化を進めた。別の実施項目として、歌唱音声を多様化する観点から、歌唱音声や通常の読み上げ音声における個人性の再現性・知覚について調査を行った。HMM歌唱合成の枠組みでは、モデルパラメータを柔軟に変更することで歌唱音声を加工することができる利点があるが、モデルを学習した歌唱データ提供者の本来の個人性が、変更後の歌唱音声においてどの程度保持されるかについて検討された事例はこれまでにない。そこで、歌唱合成モデルにおけるスペクトルと基本周波数を制御するパラメータを変更し、それによって歌唱者の本人らしさがどの程度維持されるかを、合成歌唱からの主観評価によって調査した。そのほか、歌唱合成の効果的なアプリケーションとして自動歌唱作曲システム「Orpehus」の開発を進めた。これは、任意のテキストやキーワードから生成された詞に沿ってメロディを作成し、それに合った歌唱音声を合成するものであり、この歌声合成エンジンには本研究の成果が利用されている。利用者は自分の要望に合わせて詩やメロディ、歌唱音声を得ることができ、リズムなど作曲スタイルの変更や歌声のカスタマイズなどを楽しむことができ、HMM歌声合成システムが有効に機能するアプリケーションである。
KAKENHI-PROJECT-21700191
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ベッコウタマガイの多環性アルカロイド、ラメラリン類の合成研究
デオキシベンゾイン2とイソキノリン3との縮合を鍵反応とするラメラリンD(1)の全合成を計画した。まずは、この際の重要な中間体であるデオキシベンゾイン2の合成から始めた。イソバニリンを原料とし、ベンジル化、Baeyer-Villiger酸化、加水分解、Duff法によるフォルミル化、及びメトキシメチル化により4-benzyloxy-5-methoxy-2-methoxymethoxybenzaldehydeとした。さらにこのものトリメチルシリルシアノヒドリンをLDA存在下、別途バニリンから3工程で調整した4-benzyloxy-3-methoxybenzylbromideと処理しアルキル化を行った後、脱トリメチルシリルシアノ化を行いデオキシベンゾイン2を合成した。なお、イソバニリンからの通算収率は30%であった。現在、この中間体までしか合成は完結していないが。その後の反応の条件をモデル化合物を用い検討した。まず、2と3の縮合条件をアセトフェノンと無置換イソキノリンを用い検討した。その結果、ケトンをシリルエノールエーテル化し、縮合試薬としてクロロギ酸エチル等の酸クロリドを用いることにより良好な収率で縮合物が得られることを見いだした。この方法を合成したデオキシベンゾイン2とイソキノリン3の縮合に応用することにより4が得られると考えられる。さらに、市販品が入手可能なパバベリンとmethyl2-methoxymethoxybenzoateとの縮合により得られる5を4のアナログとして用い、4からラメラリンDの前駆体6への変換法を検討した。5のプロモ酢酸エチルとの4級アンモニウム塩をクロロフォルム中トリエチルアミンと処理し分子内で脱水縮合を行うことにより、6のアナログである7を得ることが出来た。期間中にラメラリンDを合成することはできなかったが、合成法はほぼ確立できたので、近い将来に全合成が完結するものと思われる。デオキシベンゾイン2とイソキノリン3との縮合を鍵反応とするラメラリンD(1)の全合成を計画した。まずは、この際の重要な中間体であるデオキシベンゾイン2の合成から始めた。イソバニリンを原料とし、ベンジル化、Baeyer-Villiger酸化、加水分解、Duff法によるフォルミル化、及びメトキシメチル化により4-benzyloxy-5-methoxy-2-methoxymethoxybenzaldehydeとした。さらにこのものトリメチルシリルシアノヒドリンをLDA存在下、別途バニリンから3工程で調整した4-benzyloxy-3-methoxybenzylbromideと処理しアルキル化を行った後、脱トリメチルシリルシアノ化を行いデオキシベンゾイン2を合成した。なお、イソバニリンからの通算収率は30%であった。現在、この中間体までしか合成は完結していないが。その後の反応の条件をモデル化合物を用い検討した。まず、2と3の縮合条件をアセトフェノンと無置換イソキノリンを用い検討した。その結果、ケトンをシリルエノールエーテル化し、縮合試薬としてクロロギ酸エチル等の酸クロリドを用いることにより良好な収率で縮合物が得られることを見いだした。この方法を合成したデオキシベンゾイン2とイソキノリン3の縮合に応用することにより4が得られると考えられる。さらに、市販品が入手可能なパバベリンとmethyl2-methoxymethoxybenzoateとの縮合により得られる5を4のアナログとして用い、4からラメラリンDの前駆体6への変換法を検討した。5のプロモ酢酸エチルとの4級アンモニウム塩をクロロフォルム中トリエチルアミンと処理し分子内で脱水縮合を行うことにより、6のアナログである7を得ることが出来た。期間中にラメラリンDを合成することはできなかったが、合成法はほぼ確立できたので、近い将来に全合成が完結するものと思われる。
KAKENHI-PROJECT-06760112
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06760112
ブドウ台木根系の形態的可塑性に対する倍数性および環境条件の影響
(200字)ブドウにおいて栄養成長を抑制する四倍体台木は、土壌(黒ボク土、黄色土)、灌水制限のいずれの条件においても元の二倍体台木に比較して、新根の成長量が小さくなるとともに、新根発生深度が浅くなった。根系の半分を異なる窒素条件においた場合、均等な濃度条件に置くより成長がすぐれる現象が認められた。シェルターによる苗の生育促進は1mmメッシュ素材でも効果が認められ、風の影響を抑制ことも重要な要因と考えられた。(200字)ブドウにおいて栄養成長を抑制する四倍体台木は、土壌(黒ボク土、黄色土)、灌水制限のいずれの条件においても元の二倍体台木に比較して、新根の成長量が小さくなるとともに、新根発生深度が浅くなった。根系の半分を異なる窒素条件においた場合、均等な濃度条件に置くより成長がすぐれる現象が認められた。シェルターによる苗の生育促進は1mmメッシュ素材でも効果が認められ、風の影響を抑制ことも重要な要因と考えられた。ブドウにおける樹勢調節台木として期待される四倍体台木の根系の形態的(新根の発生数量、分岐パターン、細根の組織学的形態など)ならびに成長速度、細根の寿命などにおける土壌水分ならびに硝酸態窒素濃度変化に対する可塑性について、樹勢が強く根系形態が異なる元の二倍体台木と対比して、その特性を解明することを目的とした。また、この四倍体台木の根系の形態的可塑性について異なる気象環境にある栽培地において比較する。先行して苗木を植え付け、結果樹齢となっている京都府精華町および丹波町のブドウ園にミニリゾトロン(内径40mm長さ130cm)を設置し、デジタルファイバーカメラによる地下部の撮影を行った。同時に気象および土壌環境(気温、地温、土壌水分など)についても経時的な観測を行なった。ミニリゾトロン撮影は23年度まで継続し、連続した根量データに変換し、生育地の環境の差異および台木の倍数性による差異を明らかにする。異なる倍数性の台木に接ぎ木した'巨峰'において、宮崎県宮崎市においても京都府精華町の場合と同様、四倍体台木で果実着色を向上させる効果が認められたが、根系の生長量と果実品質の関連については十分に把握できなかったため、研究期間を通した継続的なルートボックス法による根の観察により、その関係を明らかにすることとした。苗保護用プラスチックシェルター試験を行うにあたって、宮崎大学においてまず効率的な挿し木発根処理法について検討を行い、切り口の形状を改良することで発根率を向上できることを明らかにした。ブドウにおける樹勢調節台木として期待される四倍体台木の根系の形態的(新根の発生数量、分岐パターンなど)ならびに成長速度、細根の寿命などにおける土壌水分ならびに硝酸態窒素濃度変化に対する可塑性について、樹勢が強い元の二倍体台木と対比して、その特性を解明することを目的とした。定植3年目の5BBおよびその四倍体台木に接ぎ木したワインブドウ'Pinotnoir'(京都府京丹波町ワイン会社ブドウ園)ではミニリゾトロン(内径40mm長さ100cm)により、京都府精華町の京都府立大学附属農場では鉢育成した同様の台木に接ぎ木した'Pinotnoir'苗を植え付けたルートボックスにより,新根発生を観察した。新根の成長量はルートボックス栽培試験および圃場試験において四倍体で小さく、果実成熟期から収穫期にかけての成長量が大きかった。二倍体は土壌深度が増すにつれ新根の発生量が大きくなったが、四倍体では土壌20cm付近の新根の発生が果実成熟期に多くみられた。また,四倍体台木の'Pinotnoir'は,栄養成長が抑制され,収量も低かったが果実品質が向上した。同様に5BBおよびその四倍体に接ぎ木した'巨峰'において気象条件の異なる宮崎県宮崎市および京都府精華町で栽培したところ、いずれにおいても四倍体台木で果実着色を向上させる効果が認められた。硝酸態窒素濃度による新根発生の可塑性を調査する目的で組織培養により育成した5BBならびにその四倍体の根系を二等分し(スプリットルート法)、双方に与える窒素肥料濃度を変化させた。その結果,四倍体台木は二倍体に比べ新根伸長が顕著に小さかったが,二倍体台木と同様に窒素濃度を低下させた側の根の成長が抑制され,窒素を与えた側では根の生育が旺盛になり,窒素濃度変化に適応的な成長反応が認められた。ブドウにおける樹勢調節台木として期待される四倍体台木の根系の形態ならびに成長速度、細根の寿命などにおける土壌水分ならびに窒素濃度変化に対する反応について、樹勢が強い元の二倍体台木と対比して、その特性を解明することを目的とした。1)根系を二つの根域に分けて栽培するスプリットルート法において、片側根系のみ窒素肥料を与えた場合、いずれの倍数性台木においても両側に均等に与えた場合よりも生育が促進される傾向が認められた。2)'Pinot noir'をルートボックスに植付け,一時的な潅水制限を行ったところ、四倍体台木で二倍体台木より茎の水ポテンシャルがより低く推移し、新根の発達の抑制される傾向が認められた。果実の着色は水分ストレスにより促進され、二倍体台木で四倍体台木より優れていた。宮崎大学における'巨峰'樹において四倍体5BB台木で二倍体5BB台木よりも新根の発生時期が遅く、発生のピークも遅れる傾向が認められた。
KAKENHI-PROJECT-21580040
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ブドウ台木根系の形態的可塑性に対する倍数性および環境条件の影響
3)京都府京丹波町において栽培しているブドウ台木5BBとその四倍体に接ぎ木した'Pinot noir'においてプラスチックマルチによる土壌水分保持処理では、いずれの台木でも対照区(草生)より、蒸散コンダクタンスを高く維持され、栄養成長、葉色、収量等もすぐれたが、果実品質は草生区の方が優れた。この差異は四倍体台木でより顕著であった。4)'巨峰'樹において茎の水ポテンシャル、樹液流速等の日変化は、四倍体台木でより早い時間帯から低下し始める傾向が認められた。5)根および茎の通水性についても四倍体台木で二倍体台木より低くなり、この原因の一つとして茎の肥大に伴う木部比率、総導管断面積の発達が劣ることが観察された。6)プラスチックシェルターのブドウ台木苗に対する初期生育促進効果は、気温の高い夏期には1mmメッシュの網で覆った場合と大差なく、その効果はおもに風による水ストレスを軽減するものと考えられた。
KAKENHI-PROJECT-21580040
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21580040
遷移金属触媒による多重結合のビスメタル化を利用した環状化合物の不斉合成法の開発
金属-金属結合を有するバイメタリックな化合物は遷移金属錯体によって活性化され多重結合へ付加し、新たに炭素-金属結合を含む化合物を与える(ビスメタル化反応)。本研究課題はこのビスメタル化反応を機軸とする環状化合物の効率的な不斉合成反応を新たに開発することを目的とする。平成20年度においては、1,3-ジエン、ケトン及び有機ホウ素化合物または有機ケイ素化合物との立体選択的三成分連結反応の検討を進めた。そこで得られた知見を基に、平成21年度は、典型元素どうしの結合を有するバイメタリックな試薬を用いて新たな多成分カップリングの開発を目指すことにした。まず、ケイ素-スズ結合を有する(trimethylsilyl)tributylystannaneを用いて種々検討を行ったが、目的とする三成分連結体は得られなかった。一方、ホウ素-ケイ素結合を持つdimethylphenylsilyl(pinacolato)boraneをカップリングパートナーとして用いたところ、反応は円滑に進行し、3位にジメチルフェニルシリル基を持つpent-4-en-1-ol誘導体が単一立体異性体として生成した。立体化学を決定したところ、1位の水酸基と3位のシリル基はsynの関係に完全に制御されていることが分かった。本反応は様々な基質を用いても収率良く進行し、脂肪族及び芳香族アルデヒドのいずれを用いた場合でも対応するカップリング体がsyn選択的に生成する。また、内部ジエンを用いた場合、1、2及び3位の連続する不斉中心の立体異性が制御された三成分連結体が収率良く生成することも明らかとなった。また、導入されたシリル基は玉尾-Fleming酸化によって容易に水酸基へと変換できることも分かった。金属-金属結合を有するバイメタリックな化合物は遷移金属錯体によって活性化され多重結合へ付加し、新たに炭素-金属結合を含む化合物を与える(ビスメタル化反応)。本研究課題はこのビスメタル化反応を機軸とする環状化合物の効率的な不斉合成反応を新たに開発することを目的とする。平成19年度において1, 3-ジエン、アルデヒド及び有機金属試薬の三成分連結反応を検討したが、平成20年度はまず本反応にアルデヒドの代わりとしてケトンを用いた場合も同様の立体選択性が得られるかについて検討した。(E)-1-[4-(methoxymethyoxy) methylphenyl]buta-1, 3-diene、アセトフェノンおよびフェニルボロン酸をニッケル-トリフェニルボスフィン錯体存在下、CPME中で反応させたところ、1, 3-位の立体化学がシンに制御された三成分カップリング体が収率良く得られた。またこの際に1位の四置換不斉炭素中心の立体化学も完全に制御されることが明らかとなった。脂肪族ケトンを含む様々なケトンが本反応に適用可能であることが分かった。一方、フェニルボロン酸の代わりに2-(diphenylsilyl)phenylmethanolをトランスメタル化試薬として用い、1, 3-bis(2, 4, 6-trimethylphenyl) imidazolium配位子及び炭酸セシウム存在下で反応を行ったところ、1, 3-アンチの立体化学を有する三成分カップリング体が収率良く得られることが分かった。この場合も不斉四置換炭素の立体化学が完全に制御されることが明らかとなった。また、以上の有機金属化合物の代わりにケイ素-ホウ素結合を有するシリルボランを用い、トリフェニルボスフィン存在下で反応を行ったところ、三成分カップリングが進行しアリルケイ素部位を持つ化合物が立体選択的に生成することを見出した。金属-金属結合を有するバイメタリックな化合物は遷移金属錯体によって活性化され多重結合へ付加し、新たに炭素-金属結合を含む化合物を与える(ビスメタル化反応)。本研究課題はこのビスメタル化反応を機軸とする環状化合物の効率的な不斉合成反応を新たに開発することを目的とする。平成20年度においては、1,3-ジエン、ケトン及び有機ホウ素化合物または有機ケイ素化合物との立体選択的三成分連結反応の検討を進めた。そこで得られた知見を基に、平成21年度は、典型元素どうしの結合を有するバイメタリックな試薬を用いて新たな多成分カップリングの開発を目指すことにした。まず、ケイ素-スズ結合を有する(trimethylsilyl)tributylystannaneを用いて種々検討を行ったが、目的とする三成分連結体は得られなかった。一方、ホウ素-ケイ素結合を持つdimethylphenylsilyl(pinacolato)boraneをカップリングパートナーとして用いたところ、反応は円滑に進行し、3位にジメチルフェニルシリル基を持つpent-4-en-1-ol誘導体が単一立体異性体として生成した。立体化学を決定したところ、1位の水酸基と3位のシリル基はsynの関係に完全に制御されていることが分かった。本反応は様々な基質を用いても収率良く進行し、脂肪族及び芳香族アルデヒドのいずれを用いた場合でも対応するカップリング体がsyn選択的に生成する。また、内部ジエンを用いた場合、1、2及び3位の連続する不斉中心の立体異性が制御された三成分連結体が収率良く生成することも明らかとなった。また、導入されたシリル基は玉尾-Fleming酸化によって容易に水酸基へと変換できることも分かった。
KAKENHI-PROJECT-20036005
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20036005
レトロウイルスによる原癌遺伝子活性化の定量法を新規開発し安全なベクターを開発する
X連鎖重症複合型先天性免疫不全症に対する遺伝子治療が国外で行われているが、治療効果を認めるもののベクターが原癌遺伝子を活性化すること(挿入変異)による白血病を高頻度に発症している。今後、ベクターおよび治療法を改良することが重要である。本研究では細胞の遺伝子に挿入したベクターがその遺伝子をどの程度活性化させているかを包括的に測定する方法としてエキソントラップ法を開発した。オンコレトロウイルスベクター(MSCV)およびHIV1ベクターに人工エキソンを組み込み、この人ロエキソン部立がどれだけ利用したエキソントラップ法を開発し、ベクターの違い(MSCV vs. HIV1)内部プロモーターの違い(レトロウイルスのLTRプロモーターvs.細胞由来EF1αプロモーター)を検討した。この方法ではLTRプロモーターを内部プロモーターとして使用した場合にはMSCVベクターは挿入部位の遺伝子を38倍活性化していたが、HIV1ベクターは1.8倍程度しか活性化していなかった。EF1αプロモーターを内部プロモーターとして使用した場合にはそれぞれ2.4倍と1.5倍と低かった。つぎに、オンコレトロウイルスベクターがHIV1ベクターよりも挿入変異により白血病を起こしやすいかどうかを検証するためにX-SCIDモデマウスをそれぞれのベクターを用いて遺伝子治療を行い白血病の発症を観察した。オンコレトロウイルスベクターを用いて遺伝子治療した場合、15匹中5匹が治療後33週から50週の間にT細胞性白血病・リンパ腫を発症した。その一方、HIV1ベクターで治療した場合には同程度の期間経過を観察したにもかかわらず遺云子治療を行った13匹中白血病を発症したマウスはいなかった。今後、この白血病・リンパ腫の発症機序を明らかにしていく予定である。X連鎖重症複合型先天性免疫不全症に対する遺伝子治療が国外で行われているが、治療効果を認めるもののベクターが原癌遺伝子を活性化すること(挿入変異)による白血病を高頻度に発症している。今後、ベクターおよび治療法を改良することが重要である。本研究では細胞の遺伝子に挿入したベクターがその遺伝子をどの程度活性化させているかを包括的に測定する方法としてエキソントラップ法を開発した。オンコレトロウイルスベクター(MSCV)およびHIV1ベクターに人工エキソンを組み込み、この人ロエキソン部立がどれだけ利用したエキソントラップ法を開発し、ベクターの違い(MSCV vs. HIV1)内部プロモーターの違い(レトロウイルスのLTRプロモーターvs.細胞由来EF1αプロモーター)を検討した。この方法ではLTRプロモーターを内部プロモーターとして使用した場合にはMSCVベクターは挿入部位の遺伝子を38倍活性化していたが、HIV1ベクターは1.8倍程度しか活性化していなかった。EF1αプロモーターを内部プロモーターとして使用した場合にはそれぞれ2.4倍と1.5倍と低かった。つぎに、オンコレトロウイルスベクターがHIV1ベクターよりも挿入変異により白血病を起こしやすいかどうかを検証するためにX-SCIDモデマウスをそれぞれのベクターを用いて遺伝子治療を行い白血病の発症を観察した。オンコレトロウイルスベクターを用いて遺伝子治療した場合、15匹中5匹が治療後33週から50週の間にT細胞性白血病・リンパ腫を発症した。その一方、HIV1ベクターで治療した場合には同程度の期間経過を観察したにもかかわらず遺云子治療を行った13匹中白血病を発症したマウスはいなかった。今後、この白血病・リンパ腫の発症機序を明らかにしていく予定である。ベクター挿入部位近辺のプロモーター活性を検出するエキソントラップベクターの人工スプライスサイトが設計どおりに働いているかどうか確認するために、人工エキソン上のプライマーから5' RACEを行った。RACE産物を解析したところ約半数は細胞のプロモーターから転写されておりスプライスも想定どおりに行われていた。残る半数はベクターの内部プロモーターから逆向きに転写されていた。この非特異的なプロモーター活性がSIN-MSCVベクター内にある場合とSIN-HIVベクター内にある場合で違いがあるかどうかGFPを発現させることにより確認した。プラスミドのトランスフェクションではどちらのベクター内にあってもほぼ同程度の活性を示したが、ベクターを感染させた場合にはSIN-HIVベクターの方がかえって高い活性を示した。これはSIN-MSCVベクターの高いトラップシグナルが、正に挿入変異による細胞の転写活性を反映していることを示している。内部プロモーターをレトロウイルスのLTRプロモーターから人由来のEF1αプロモーターに変更した場合のトラップレベルを検討したところSIN-MSCVベクターではLTRプロモーターが約38倍上昇させていたところを約2.4倍の上昇まで抑えることができた。SIN-HIVベクターで同じく1.8倍の上昇が1.5倍の上昇に抑えることができた。次に、このシステムを用いて、ニワトリβグロビン遺伝子由来のインスレーターにより挿入変異をどの程度抑制できるかどうか検討した。SIN-HIVベクターを用いた場合にはインスレーターの効果を確認することができなかったが、SIN-MSCVベクターに用いた場合にはある程度挿入変異を抑制できることがわかった。(ベクター内部にエンハンサーがない場合はトラップレベルが約3%まで減少するが、インスレーターを使用した場合には14%-72%に減少する。)X連鎖重症複合型先天性免疫不全症に対する遺伝子治療が国外で行われているが、治療効果を認めるもののベクターが原癌遺伝子を活性化すること(挿入変異)による白血病を高頻度に発症している。今後、ベクターおよび治療法を改良することが重要である。本研究では細胞の遺伝子に挿入したベクターがその遺伝子をどの程度活性化させているかを包括的に測定する方法としてエキソントラップ法を開発した。
KAKENHI-PROJECT-18590314
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18590314
レトロウイルスによる原癌遺伝子活性化の定量法を新規開発し安全なベクターを開発する
オンコレトロウイルスベクター(MSCV)およびHIV1ベクターに人工エキソンを組み込み、この人口エキソン部位がどれだけ利用したエキソントラップ法を開発し、ベクターの違い(MSCV vs. HIV1)内部プロモーターの違い(レトロウイルスのLTRプロモーターvs.細胞由来EF1αプロモーター)を検討した。この方法ではLTRプロモーターを内部プロモーターとして使用した場合にはMSCVベクターは挿入部位の遺伝子を38倍活性化していたが、HIV1ベクターは1.8倍程度しか活性化していなかった。EF1αプロモーターを内部プロモーターとして使用した場合にはそれぞれ2.4倍と1.5倍と低かった。つぎに、オンコレトロウイルスベクターがHIV1ベクターよりも挿入変異により白血病を起こしやすいかどうかを検証するためにX-SCIDモデルマウスをそれぞれのベクターを用いて遺伝子治療を行い白血病の発症を観察した。オンコレトロウイルスベクターを用いて遺伝子治療した場合、15匹中5匹が治療後33週から50週の間にT細胞性白血病・リンパ腫を発症した。その一方、HIV1ベクターで治療した場合には同程度の期間経過を観察したにもかかわらず遺伝子治療を行った13匹中白血病を発症したマウスはいなかった。今後、この白血病・リンパ腫の発症機序を明らかにしていく予定である。
KAKENHI-PROJECT-18590314
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若年乳がん生存者の情報ニーズに応じた支援プログラムの開発
若年乳がん患者の情報ニーズをフォーカスグループディスカッションにより調査し、医学的な事柄、心理社会的な事柄を含めた多岐に渡る情報が必要とされていることがわかった。若年乳がん患者の情報ニーズ充足度とQOLを定量的に調査し、医療者とのコミュニケーション全般が最も充足されていないことが示された。若年者特有の問題であり、QOLと関連がみられたホルモン療法の有害事象に関する情報に着目し、ホットフラッシュに関する情報をホームページにより発信した。(1)若年乳がん患者の情報ニーズ調査(2008年度2009年度)45歳以下で乳がんの診断を受けた女性を対象としたフォーカスグループディスカッションを行い、情報ニーズを明らかにする。(2)若年乳がん患者の情報ニーズ充足度に関する調査(2010年度)45歳以下で乳がんの診断を受けた女性を対象とし、情報ニーズがどの程度充足されているか、定量的な調査を実施する。(3)若年乳がん患者の情報ニーズに対応する支援プログラムを開発する。(2011年度)若年乳がん患者の情報ニーズをフォーカスグループディスカッションにより調査し、医学的な事柄、心理社会的な事柄を含めた多岐に渡る情報が必要とされていることがわかった。若年乳がん患者の情報ニーズ充足度とQOLを定量的に調査し、医療者とのコミュニケーション全般が最も充足されていないことが示された。若年者特有の問題であり、QOLと関連がみられたホルモン療法の有害事象に関する情報に着目し、ホットフラッシュに関する情報をホームページにより発信した。若年乳がん生存者が、診断時から調査時点までにどのような困難と情報ニーズを有するかを明らかにすることを目的に、フォーカスグループディスカッションを行った。参加者を乳がん診断時35歳以下群と36歳45歳以下群に分け、それぞれ6名前後のグループを構成し、ディスカッションを行った。なお、FGDへ参加できない人には個別にインタビューを実施した。結果、両群において「予期しないがん罹患」たよる若年患者に特有の問題と、年代を超えて共通する問題が抽出された。若年患者に特有の問題としては、「結婚に関する問題」「妊娠・出産に関する問題」「親への申し訳なさ」「雇用就労問題」「周囲からの同情への不快感」「同年代の仲間がいないこと」などが述べられた。年代を超えて共通する問題としては「経済的問題」「医師とのコミュニケーション」「再発の不安」「情報不足」などが挙げられた。両群の年代の違いによると考えられる事柄として、子どもの年代が違うことによる困難が述べられた。情報ニーズについては、「閉経や妊娠・出産に関連した抗がん剤やホルモン療法に関する情報」「子どもへの説明に対する支援」という若年ゆえのニーズが挙げられた。年代を超えた情報ニーズとして、「診断初期の正確な情報提供」「相談窓口の設置」「体験者の話し」などが挙げられた。具体的な情報の内容としては、「今後起こりうること」「フォローアップについて」「再建術」「補助食品」など様々であった。診断時からフォローアップまでこれらの困難と情報ニーズに応える情報を提供し、同年代の体験者同士の関わりも促進させることの必要性が見出されたことは意義深いと考える。本年度は、昨年度に引き続き、若年乳がん生存者が、診断時から調査時点までにどのような情報ニーズを有するかを明らかにするため、データ収集としてフォーカスグループディスカッションを行った。情報ニーズに関する内容が飽和したことを確認し、データ収集を完了した。結果、参加者は、56人(診断時35歳以下34人、診断時36-45歳22人)となった。情報ニーズとして【医学的な情報】【同病者の経験に基づく情報】【生活面に関する情報】が抽出された。【医学的な情報】には、『乳がんの基礎知識』として「病態」「治療」「フォローアップ」「乳房再建」「遺伝」など、『医師とのコミュニケーション』として「どのように医師と関わるか」、『情報提供の方法』として「情報提供の均てん化」「相談窓口の設置」などが含まれる。【同病者の経験に基づく情報】には、『同病者の体験談』として「治療後の妊娠・出産」「こどもへの説明・接し方」「恋愛・結婚」など、『患者会の情報』が含まれる。【生活面に関する情報】には、『仕事』として「保障(休み、給与)」「人間関係の調整」「雇用面接への対応」「職場での健康診断への対応」、『家庭』として「治療中の患者に対する支援(家事・育児)」「こどもへの説明・接し方」「親への説明・接し方」「夫/パートナーへの説明・接し方」「パートナーの会」が含まれる。本調査により、若年乳がん生存者がどのような情報ニーズを有するかが明らかになった。今後、抽出された若年乳がん生存者の情報ニーズがどれくらい充足されているかを調べ、充足されていない情報ニーズを提供するためのプログラムを開発することが必要である。その基礎資料として、本調査の結果は重要であり、意義深いと考える。本年度は若年乳がん生存者の情報ニーズの充足度を明らかにすることを目的とし、平成20年度、平成21年度に実施した調査結果に基づき以下の通り調査を実施し、結果を得た。1.対象45歳以下で乳がんの診断を受けた女性とし、2つの医療機関で調査を実施した。2.調査項目情報ニーズ充足度(50項目の情報に対する満足度を「とても満足」「まあ満足」「やや不満」「不満」の4段階評定にて尋ねた。)、医学的変数、人口統計学的変数
KAKENHI-PROJECT-20592540
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若年乳がん生存者の情報ニーズに応じた支援プログラムの開発
3.結果と考察307人へ調査票を配布し、230人(74.7%)より回答が得られ、そのうち有効回答が得られた201人(65.5%)を分析対象とした。調査時点の平均年齢は45.2±6.6歳、診断時の平均年齢は40.1±4.3歳であった。医療者からの情報の中で最も充足されていないニーズは「医療者とのコミュニケーション全般」であり、57人(28.4%)が「やや不満」/「不満」と回答した。また、診断直後の病期や治療に関する説明、治療選択のアドバイス、リンパ浮腫の情報、術後の検診の説明、退院後に生じる可能性のある症状、遺伝に関する情報、気軽に相談できる窓口の情報についても「やや不満」/「不満」と回答した人が20%以上を占めていた。乳がん経験者からの情報については、「得ていない」と回答した人が57人(28.4%)154人(76.6%)であり、全体的に医療者と比較すると情報を得ていない人が多く見られたが、「患者会に関する情報」に対し「とても満足」/「まあ満足」と回答した人は78人(37.8%)と比較的少なかった。医療者とコミュニケーションをとる方法の情報を小冊子やインターネットなどを通じ提供すること、気軽に相談できる窓口を設置すること、患者同士の交流を促進することの必要性が示唆された。交付申請時、本研究では若年乳がんサバイバー(45歳以下で乳がんの診断を受けた女性)の情報ニーズを探索し、その結果に基づき情報ニーズに応じた支援プログラムを開発することを目的とした。本年度は、本研究課題の最終年度に当たり、「情報ニーズに基づき構成した支援プログラムの実施と評価」を目指した。平成20年度平成22年度に実施したフォーカスグループディスカッションおよび質問紙調査により、若年特有のニーズであり、かつ充足されていない(当事者が満足していない)ニーズとして、「ホットフラッシュに関する情報」が導き出された。「ホットフラッシュ」は、乳がん治療によりもたらされる有害事象の「更年期障害」の一つであり、身体的、心理社会的に多大な苦痛をもたらし、QOLを低下させる。特に、乳がんのためホルモン療法を受けた女性の方は、乳がんを経験していない女性に比べ、ホットフラッシュの頻度が高く、程度も強いと言われている。従って、若年乳がん経験者のQOLを維持向上させるために、ホットフラッシュを予防、マネジメントすることは重要と言える。そこで、乳がん治療によりもたらされるホットフラッシュに関するエビデンスを文献検討により抽出し、本研究課題において作成したホームページにおいて、ホットフラッシュの概要、出現のメカニズム、有効と考えられる対処について公表した。今後、公表した情報に対する評価を当事者および医療者等より受け、より効果的に、正確な情報を提供するシステムを発展させ、若年乳がんサバイバーのQOLを維持向上させることの必要性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-20592540
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多孔性ブロック共重合体膜の設計とその新規透過濃縮システムへの応用
水中に溶解している糖やタンパク質を濃縮単離する方法として限外濾過が有効であるが,この方法では数気圧程度の加圧を駆動力とする膜透過により,大量の水を系外へ除去する必要がある.本研究では高分子量球状溶質の希薄水溶液から溶質を膜に選択吸着させ,これに圧力をかけてその濃縮液を透過させるという,新しい省エネルギー型の分離濃縮システムを試みた.まず単分離散ポリオキシエチレンとトリレンー2,4-ジイソシアナートとから,両末端にイソシアナート基をもつポリオキシエチレン1__を合成した. 1__を活性加剤に用いて双環オキサラクタム2__のアニオン重合を行い,ポリアミド鎖3__(A)とポリオキシエチレン鎖(B)とから成るABA型ブロック共重合体4__を合成した.ポリオキシエチレングリコールを添加して調製した, 4__の多孔性膜を用いて,ミオグロビンおよびチトクロムC水溶液を加圧下で透過させると,透過液の溶質濃度が仕込液濃度より高くなった. 4とポリオキシエチレングリコールとを重量比10:3で混合して調製した多孔性膜を用いた場合,濃縮率(仕込液の初濃度に対する透過液の濃度比で表す)が最高6.2倍に達した.仕込液中のミオグロビンの初濃度が0.010.03wt%で極大になり,それ以上の濃度では低下した.電解質の添加, pH,撹拌速度,操作圧などにも濃縮現象は強く影響された.この特異な透過濃縮システムは,膜孔の壁面を含む膜表面にタンパク質分子が大量に,しかし適度に弱く吸着することと,生じた高濃度層が加圧により膜中から押し出されることとの組合せからなると思われる.水中に溶解している糖やタンパク質を濃縮単離する方法として限外濾過が有効であるが,この方法では数気圧程度の加圧を駆動力とする膜透過により,大量の水を系外へ除去する必要がある.本研究では高分子量球状溶質の希薄水溶液から溶質を膜に選択吸着させ,これに圧力をかけてその濃縮液を透過させるという,新しい省エネルギー型の分離濃縮システムを試みた.まず単分離散ポリオキシエチレンとトリレンー2,4-ジイソシアナートとから,両末端にイソシアナート基をもつポリオキシエチレン1__を合成した. 1__を活性加剤に用いて双環オキサラクタム2__のアニオン重合を行い,ポリアミド鎖3__(A)とポリオキシエチレン鎖(B)とから成るABA型ブロック共重合体4__を合成した.ポリオキシエチレングリコールを添加して調製した, 4__の多孔性膜を用いて,ミオグロビンおよびチトクロムC水溶液を加圧下で透過させると,透過液の溶質濃度が仕込液濃度より高くなった. 4とポリオキシエチレングリコールとを重量比10:3で混合して調製した多孔性膜を用いた場合,濃縮率(仕込液の初濃度に対する透過液の濃度比で表す)が最高6.2倍に達した.仕込液中のミオグロビンの初濃度が0.010.03wt%で極大になり,それ以上の濃度では低下した.電解質の添加, pH,撹拌速度,操作圧などにも濃縮現象は強く影響された.この特異な透過濃縮システムは,膜孔の壁面を含む膜表面にタンパク質分子が大量に,しかし適度に弱く吸着することと,生じた高濃度層が加圧により膜中から押し出されることとの組合せからなると思われる.水中に溶解している糖やタンパク質を濃縮単離する方法として限外濾過が有効であるが、この方法では数気圧程度の加圧を駆動力とする膜透過により、大量の水を系外へ除去する必要がある。本研究では高分子量球状溶質の希薄水溶液から溶質を膜に選択吸着させ、これに圧力をかけてその濃縮液を透過させるという、新しい省エネルギー型の分離濃縮システムを試みた。まず平均分子量の異なる6種のポリオキシエチレングリコール(Mn,103019000)とトリレン-2,4-ジイソシアナートとから、両末端にイソシアナート基をもつポリオキシエチレン【1!】を合成した。【1!】を活性化剤に用いて双環オキサラクタム【2!】のアニオン重合を行い、ポリアミド鎖【3!】(A)とポリオキシエチレン鎖(B)とから成るABA型ブロック共重合体【4!】を合成した。ブロック共重合体【4!】とポリオキシエチレングリコールとを混合したクロロホルム-メタノール(10:1)溶液から成膜して、ミクロ相分離構造を形成させた。その後膜中のポリオキシエチレングリコールを水中に溶出除去することにより、多孔性のブロック共重合体膜を得た。得られた多孔性ブロック共重合体膜を限外濾過装置に装着し、25°C、13kg/【cm^2】で種々のタンパク質水溶液の透過実験を行ったところ、ミオグロビンおよびチトクロムCの場合に、透過液の濃度が供給液のそれよりはるかに高くなった。今後、この特異な透過濃縮現象に及ぼす、多孔膜の調製条件や透過実験条件の影響を詳しく調べて機能発現の機構を明確にする予定である。
KAKENHI-PROJECT-61550675
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心肺移植および肺移植後における移植肺の成長についての研究
1.研究の目的:肺移植において,移植した肺が成長するかどうか明らかでなく,形態的,機能的な評価は行われていない.そこで,本研究では,移植肺の成長に関して,ラット同系同所性肺移植を行い,遠隔期における移植肺を生化学的にDNA,RNA,collagen,elastinを指標とし,生理学的には肺コンプライアンス,呼吸抵抗を,形態学的には摘出肺標本から,肺胞壁間距離,肺胞表面積を測定し,移植肺の成長に関して総合的に判断することを目的とした.2.研究の結果:本研究では,移植肺の長期生着モデルを作成する必要があり,まずラット同系同所性肺移植を行った.しかし,移植手技の問題もあり,移植直後の出血や移植肺が無気肺に陥ることなどにより,長期生着の移植肺を十分得られなかった.また,生理学的な検査としての肺コンプライアンス,呼吸抵抗を測定する小動物用呼吸流量型および抵抗管の納入が遅れ,その検査は今後行う予定である.形態学的には,摘出肺標本を作成し光学顕微鏡を使用し,計測している.今後,さらに長期生着移植肺に対して,生化学的,生理学的,形態学的に評価を行う予定である.1.研究の目的:肺移植において,移植した肺が成長するかどうか明らかでなく,形態的,機能的な評価は行われていない.そこで,本研究では,移植肺の成長に関して,ラット同系同所性肺移植を行い,遠隔期における移植肺を生化学的にDNA,RNA,collagen,elastinを指標とし,生理学的には肺コンプライアンス,呼吸抵抗を,形態学的には摘出肺標本から,肺胞壁間距離,肺胞表面積を測定し,移植肺の成長に関して総合的に判断することを目的とした.2.研究の結果:本研究では,移植肺の長期生着モデルを作成する必要があり,まずラット同系同所性肺移植を行った.しかし,移植手技の問題もあり,移植直後の出血や移植肺が無気肺に陥ることなどにより,長期生着の移植肺を十分得られなかった.また,生理学的な検査としての肺コンプライアンス,呼吸抵抗を測定する小動物用呼吸流量型および抵抗管の納入が遅れ,その検査は今後行う予定である.形態学的には,摘出肺標本を作成し光学顕微鏡を使用し,計測している.今後,さらに長期生着移植肺に対して,生化学的,生理学的,形態学的に評価を行う予定である.
KAKENHI-PROJECT-05770970
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05770970
量子メトロロジートライアングルにおける差電圧トラッキング
国際単位系(SI)の改定により、電流の単位A (アンペア)が電気素量eを不確かさのない値と定めることによって定義される運びとなった。すでに実現している量子力学的な電圧・抵抗に加え、電流をSIの新しい定義に基づいて実現することによって、量子力学的に、独立に3つの物理量が求まる。これら3つの物理量を用いることで、巨視的な観点では成り立つとみなされている「オームの法則」を量子力学の観点から検証すること(量子メトロロジートライアングル(QMT))が出来るようになる。本研究では、QMT測定における差電圧測定の不確かさ低減を目指す。国際単位系(SI)の改定により、電流の単位A (アンペア)が電気素量eを不確かさのない値と定めることによって定義される運びとなった。すでに実現している量子力学的な電圧・抵抗に加え、電流をSIの新しい定義に基づいて実現することによって、量子力学的に、独立に3つの物理量が求まる。これら3つの物理量を用いることで、巨視的な観点では成り立つとみなされている「オームの法則」を量子力学の観点から検証すること(量子メトロロジートライアングル(QMT))が出来るようになる。本研究では、QMT測定における差電圧測定の不確かさ低減を目指す。
KAKENHI-PROJECT-19K23527
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K23527
暗号化された複雑なWeb通信のPassive計測によるサービスタイプ特定の研究
暗号化された多数のコネクションから構成されたWeb通信の計測データを分析し、ユーザが利用しているサービスタイプを特定する手法を確立する。トランスポートレイヤとネットワークレイヤの計測情報からサービスタイプを示す特徴量を決定し、それらの特徴量からなる特徴ベクトルをもとにサービスタイプを識別するための機械学習アルゴリズムを研究する。機械学習において人手でのラベル付け作業が必要となる教師データの数を抑えるために、半教師あり学習を適用することが本研究の特徴である。膨大のデータが持つ構造をもとにラベルを付与するデータの決定法とサービスタイプの識別するための特徴ベクトルの領域境界の決定法を明らかにする。暗号化された多数のコネクションから構成されたWeb通信の計測データを分析し、ユーザが利用しているサービスタイプを特定する手法を確立する。トランスポートレイヤとネットワークレイヤの計測情報からサービスタイプを示す特徴量を決定し、それらの特徴量からなる特徴ベクトルをもとにサービスタイプを識別するための機械学習アルゴリズムを研究する。機械学習において人手でのラベル付け作業が必要となる教師データの数を抑えるために、半教師あり学習を適用することが本研究の特徴である。膨大のデータが持つ構造をもとにラベルを付与するデータの決定法とサービスタイプの識別するための特徴ベクトルの領域境界の決定法を明らかにする。
KAKENHI-PROJECT-19K11950
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K11950
液晶を駆動源としたモータの開発
液晶を駆動源としたモータの開発を目的として,理論研究および実験研究の両面から電場を印加した場合の液晶流動にアプローチを行った.理論研究にはLeslie-Ericksen連続体理論を用い,平衡平板間の液晶材料に電場を印加した場合に誘起される流動の計算を行い,電圧,平衡平板間隔,壁面チルト角,および壁面ツイスト角の影響を系統的に調べ,液晶による物体駆動を行う際の最適条件の同定を行った.これらの計算は,液晶中に浸された物体を移動させる場合と2平板に相対運動を生じさせる場合の2通りについて行った.一方,実験研究として,まず理論計算結果の確認を行った。2枚の固定された板ガラスの間に液晶材料(5CB)を注入し,電場によって誘起される流動の測定を行った.流れを可視化するために,2.5μmの微小なポリスチレン粒子を液晶中に混入し,粒子の移動を画像解析することによって流速を求めた.その結果,計算結果との十分な一致が見られた.さらに,2枚の板ガラスの内,一方をフリー(自由に移動できる状態)にし,電圧の印加によるガラス板の移動を観測した.その結果,液晶駆動型モータの開発可能性を明らかにした.ネマティック液晶の流動を定量的に記述することが可能であるLeslie-Ericksen理論を用いて,ネマティック液晶に電場を与えた場合に発生する液晶流動についての数値シミュレーションを行った.シミュレーションは全て有次元量を用いて行い,電極膜および配向膜を有する2枚の平行に固定された平板間のネマティック液晶材料(5CB)に5Vおよび10Vの電場を印加した場合について調べた.壁面配向条件(アンカリング条件)として,上下平板面共にチルト角1°,ツイスト角についてはシミュレーションパラメータとした.ツイスト角が0°の場合には,平板間の上部と下部に反対称形の速度分布が生じる.ツイスト角を変化させることにより,平板間に生じる速度分布の対称性が崩れ,ツイスト角が180°ではほぼ一方向の流れが得られることが確認された.5Vの印加電圧に対して発生する液晶流動の最大速度は数十μm/sである.電圧を増加することによって発生する速度も増加する.次に,発生した液晶流動が上部平板に及ぼす力についての解析を行った.液晶流動の発生と共に上部平板面でせん断応力が発生することが確認された.すなわち,上部平板および下部平板に相対運動を引き起こすことが可能であり,液晶モータの開発が可能であるとの知見を得た.液晶を駆動源としたモータの開発を目的として,理論研究および実験研究の両面から電場を印加した場合の液晶流動にアプローチを行った.理論研究にはLeslie-Ericksen連続体理論を用い,平衡平板間の液晶材料に電場を印加した場合に誘起される流動の計算を行い,電圧,平衡平板間隔,壁面チルト角,および壁面ツイスト角の影響を系統的に調べ,液晶による物体駆動を行う際の最適条件の同定を行った.これらの計算は,液晶中に浸された物体を移動させる場合と2平板に相対運動を生じさせる場合の2通りについて行った.一方,実験研究として,まず理論計算結果の確認を行った。2枚の固定された板ガラスの間に液晶材料(5CB)を注入し,電場によって誘起される流動の測定を行った.流れを可視化するために,2.5μmの微小なポリスチレン粒子を液晶中に混入し,粒子の移動を画像解析することによって流速を求めた.その結果,計算結果との十分な一致が見られた.さらに,2枚の板ガラスの内,一方をフリー(自由に移動できる状態)にし,電圧の印加によるガラス板の移動を観測した.その結果,液晶駆動型モータの開発可能性を明らかにした.
KAKENHI-PROJECT-16760140
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原生生物の系統と進化
本年度遺伝子解析の対象とした原生生物種は、ミトコンドリアをもたない寄生虫であるGiardia lamblia(ランブル鞭毛虫)、Entamoeba histolytica(赤痢アメーバ)、Glugea plecoglossi(アユ寄生虫)の3種、ミトコンドリアを有するが解析上その位置づけが重要となるTrypanosoma cruzi、および、チトクロームをもたないミトコンドリアを有するとされる寄生虫Blastocystis hominisの5種である。対象とした保存的蛋白質は、ペプチド鎖伸長因子EF-1αおよびEF-2、イソロイシルtRNA合成酵素(ileRS)などであり、これらについての推定アミノ酸配列データをもとに、アミノ酸置換に関するさまざまな確率モデルに基づいて真核生物内部の系統関係を最尤法により検討した結果、以下のことが明らかとなった。1.アユ寄生虫GlugeaのEF-1αは、明らかに真核生物型の特徴を示しているが通常の真核生物のものに比べると極めて特異的である。EF-1αの解析結果は、Glugeaの分岐がGiardiaよりもさらに早いとの可能性の高いことを示唆している。もしこれが真実であるとすると、Glugeaはミトコンドリアの細胞内共生が起こる以前の真核生物の祖先型により近い生物であるということになる。2.EF-1α、EF-2の解析はともに、Giardiaの分岐のすぐ後にTrypanosomaが分岐したとするSrRNAの一般的な解析結果を支持せず、Trypanosomaの分岐がミトコンドリアをもたないEntamoebaの分岐よりも後であるとの可能性の高いことを示唆している。ileRSや他の保存的蛋白質を含めて総合評価すると、(outgroup,(Giardia,(Entamoeba,(Trypanosoma))))という関係が尤もらしいとの結論が得られる。3.EF-1α、EF-2、ileRSのアミノ酸組成値は生物種間でほとんど偏っていない。このことは、保存的蛋白質に基づく解析がSrRNAに基づく解析に比べ、より頑健な推定を与えるであろうことを示唆している。本年度遺伝子解析の対象とした原生生物種は、ミトコンドリアをもたない寄生虫であるGiardia lamblia(ランブル鞭毛虫)、Entamoeba histolytica(赤痢アメーバ)、Glugea plecoglossi(アユ寄生虫)の3種、ミトコンドリアを有するが解析上その位置づけが重要となるTrypanosoma cruzi、および、チトクロームをもたないミトコンドリアを有するとされる寄生虫Blastocystis hominisの5種である。対象とした保存的蛋白質は、ペプチド鎖伸長因子EF-1αおよびEF-2、イソロイシルtRNA合成酵素(ileRS)などであり、これらについての推定アミノ酸配列データをもとに、アミノ酸置換に関するさまざまな確率モデルに基づいて真核生物内部の系統関係を最尤法により検討した結果、以下のことが明らかとなった。1.アユ寄生虫GlugeaのEF-1αは、明らかに真核生物型の特徴を示しているが通常の真核生物のものに比べると極めて特異的である。EF-1αの解析結果は、Glugeaの分岐がGiardiaよりもさらに早いとの可能性の高いことを示唆している。もしこれが真実であるとすると、Glugeaはミトコンドリアの細胞内共生が起こる以前の真核生物の祖先型により近い生物であるということになる。2.EF-1α、EF-2の解析はともに、Giardiaの分岐のすぐ後にTrypanosomaが分岐したとするSrRNAの一般的な解析結果を支持せず、Trypanosomaの分岐がミトコンドリアをもたないEntamoebaの分岐よりも後であるとの可能性の高いことを示唆している。ileRSや他の保存的蛋白質を含めて総合評価すると、(outgroup,(Giardia,(Entamoeba,(Trypanosoma))))という関係が尤もらしいとの結論が得られる。3.EF-1α、EF-2、ileRSのアミノ酸組成値は生物種間でほとんど偏っていない。このことは、保存的蛋白質に基づく解析がSrRNAに基づく解析に比べ、より頑健な推定を与えるであろうことを示唆している。
KAKENHI-PROJECT-06273102
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遠隔講義におけるプレゼンテーション技術の向上を図る教師訓練プロブラムの開発・評価
本研究では,以下に示す各項目に関する教育実践研究を実施した。1.遠隔講義等メディアを介した授業の教育効果についての実証2.プレゼンテーション技術向上を図るテキスト教材及びマルチメディアCD教材の開発3.関発されたテキスト教材による本教師訓練プログラムの実施・評価4.IT利活用による衛星・電話回線利用による遠隔授業の実証5.異文化間のコミュニケーションの改善を図る日本語学習用マルチメディア教材の開発6.大学院遠隔講義用のビデオ教材の開発対面授業に加えて,SCS利用による遠隔授業での授業者のプレゼンテーション分析等を通して,映像等メディアを介した教授者のプレゼンテーション技術について重要となる要素と改善点を実証した。さらに,情報教育に関する教師訓練プログラムのコンテンツとして,テキスト教材『情報社会を生き抜くプレゼンテーション技術-相互理解のための自己表現-』を出版した。本テキスト教材は,職種を問わずコミュニケーション能力の育成やプレゼンテーション技術訓練用として広く利用された。開発された情報教育の研修内容はCS利用による大学院遠隔教育番組として採用されビデオ教材化された。加えて,本テキスト教材による教師訓練プログラムの実施・評価を通して,情報教育研修内容・方法(主にプレゼンテーション技術),及び現職教員のための授業技術に関する研修内容・方法(主にマイクロティーチング)について実証した。また,テレビ電話会議システム利用の国内小中高等学校間や海外(タイ王国・英国)との遠隔交流学習,SCS利用の大学間での遠隔公開授業・シンポジウムを実施した。さらに,文部科学省メディア教育開発センターでの教員養成課程の学生のためのCD教材の開発に協力した。本研究では,以下に示す各項目に関する教育実践研究を実施した。1.遠隔講義等メディアを介した授業の教育効果についての実証2.プレゼンテーション技術向上を図るテキスト教材及びマルチメディアCD教材の開発3.関発されたテキスト教材による本教師訓練プログラムの実施・評価4.IT利活用による衛星・電話回線利用による遠隔授業の実証5.異文化間のコミュニケーションの改善を図る日本語学習用マルチメディア教材の開発6.大学院遠隔講義用のビデオ教材の開発対面授業に加えて,SCS利用による遠隔授業での授業者のプレゼンテーション分析等を通して,映像等メディアを介した教授者のプレゼンテーション技術について重要となる要素と改善点を実証した。さらに,情報教育に関する教師訓練プログラムのコンテンツとして,テキスト教材『情報社会を生き抜くプレゼンテーション技術-相互理解のための自己表現-』を出版した。本テキスト教材は,職種を問わずコミュニケーション能力の育成やプレゼンテーション技術訓練用として広く利用された。開発された情報教育の研修内容はCS利用による大学院遠隔教育番組として採用されビデオ教材化された。加えて,本テキスト教材による教師訓練プログラムの実施・評価を通して,情報教育研修内容・方法(主にプレゼンテーション技術),及び現職教員のための授業技術に関する研修内容・方法(主にマイクロティーチング)について実証した。また,テレビ電話会議システム利用の国内小中高等学校間や海外(タイ王国・英国)との遠隔交流学習,SCS利用の大学間での遠隔公開授業・シンポジウムを実施した。さらに,文部科学省メディア教育開発センターでの教員養成課程の学生のためのCD教材の開発に協力した。初年度(11年度)は,以下に示す各項目に関する教育実践研究を遂行した。1.マイクロプレゼンテーション(教員,国際協力派遣専門家,地方自治体国際協力担当者)2.現職教員によるマイクロティーチング及び摸擬授業3.SCS及びTV会議システムを利用した遠隔授業及び学校間コミュニケーション4.伝言,描画,非言語による情報伝達の学習5.電子メールおよびHPを利用したコミュニケーション6.教育成果向上をめざした情報発信・受信者双方における評価シートの開発マイクロプレゼンテーションに関する各実践は,JICA国際協力総合研修所における専門家派遣前研修,地方自治体社会教育指導者対象の情報教育研修,地方自治体職員対象の国際協力担当者研修,タイ国教員対象の日本人教員によるプレゼンテーション等,広く実施した。また現職教員による摸擬授業は,インターネットの教育利用と「総合的な学習の時間」の融合を目指し開発した教師訓練プログラムである。これは,マイクロティーチングを応用したものであるが,演劇性を取り入れたことが特徴で,教師の表現・伝達能力(プレゼンテーション能力)の向上により主眼をおいた実践である。本教師訓練プログラムの試行は広く好評を得,京都府教育委員会における2度の実践の後,文部省中央研修(つくば)においても試行的に実施できた。TV会議システム利用の遠隔交流学習に関しては,国内および海外(タイ国)とで実施した。SCSによる遠隔授業に関しては,教授者のプレゼンテーション分析,及びTV放送教育番組の講義分析を通して映像等メディアを介した教授者のプレゼンテーション技術について重要となる要素および改善点についていつかの参考となる知見を得た(日本教育情報学会論文賞受賞,1999)。さらに実践の一貫として,国際理解教育をテーマにしたシンポジウムを山口大学で開催(12月)した。これらをまとめた中間報告書を発刊し,各関係者へ広く配布した。本研究では,以下に示す各項目に関する教育実践研究を実施した。1.遠隔講義等メディアを介した授業の授業効果についての実証2.プレゼンテーション技術向上を図るテキスト教材及びマルチメディアCD教材の開発3.開発されたテキスト教材による本教師訓練プログラムの実施・評価4.IT利活用による衛星・電話回線利用による遠隔授業の実証5.異文化間のコミュニケーションの改善を図る日本語学習用マルチメディア教材の開発6.大学院遠隔講義用のビデオ教材の開発対面授業に加えて,SCS利用による遠隔授業での授業者のプレゼンテーション分析等を通して,映像等メディアを介した教授者のプレゼンテーション技術について重要となる要素と改善点を実証した。
KAKENHI-PROJECT-11680220
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11680220
遠隔講義におけるプレゼンテーション技術の向上を図る教師訓練プロブラムの開発・評価
さらに,情報教育に関する教師訓練プログラムのコンテンツとして,テキスト教材『情報社会を生き抜くプレゼンテーション技術-相互理解のための自己表現-』を出版した。本テキスト教材は,職種を問はずコミュニケーション能力の育成やプレゼンテーション技術訓練用として広く利用された。開発された情報教育の研修内容はCS利用による大学院遠隔教育番組として採用されビデオ教材化された。加えて,本テキスト教材による教師訓練プログラムの実施・評価を通して,情報教育研修内容・方法(主にプレゼンテーション技術),及び現職教員のための授業技術に関する研修内容・方法(主にマイクロティーチング)について実証した。また,テレビ電話会議システム利用の国内小中高等学校間や海外(タイ王国・英国)との遠隔交流学習,SCS利用の大学間での遠隔公開授業・シンポジウムを実施した。さらに,文部科学省メディア教育開発センターでの教員養成課程の学生のためのCD教材の開発に協力した。
KAKENHI-PROJECT-11680220
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へき地小規模学校教員養成の歴史と現状-附属小学校単級教場・複式学級と教員養成カリキュラムの分析を中心に-
附属学校に関する資料は筆者が調べた各大学図書館にはほとんどなく、附属学校任せになっているようであるが、附属学校では資料の系統的保存が不十分で、特に他大学附属校等から寄贈されてきたはずの古い文献が、あまり保存されていないようである。この科学研究費のお陰で、全国各地に散在する附属学校史や師範学校史に関する資料を本学図書館岩見沢分館にまとめて収集することができたが、それらを考察して、戦前における単級複式教育や農村学校等、県内の学校形態の実情に応じた教員養成の努力から学ぶところが多かった。特に、附属小学校単級教場や複式学級、代用附属学校、地方教育実習の制度がそうであった。しかし、教育実習以外の授業科目には単級複式教育や農村教育は特設されておらず、また、教育学分野の教科書の中でも、それほど特筆されていなかった。戦後の教員養成系大学学部におけるへき地教育関係カリキュラムについても調査を行なったが、回答のあった43大学中、へき地複式教育関係授業が現在開設されているのは5大学、現在は開設されていなが以前に開設されていた大学が10大学であった。なお、教育実習にへき地教育を含む大学は8大学、複式学級を含む大学は12大学であった。本研究成果の一部は、平成6年8月の日本教育学会(へき地小規模校教育研究の国際的意義と課題」)と10月の日本教育制度学会(「へき地小規模校教育についての教育制度論的一考察」)での研究発表の際にも取り上げて報告した(それらは当該学会紀要に投稿中)が、本研究成果の体系的報告は、平成7年度科学研究費一般学術図書出版助成を申請中の「へき地小規模校教育研究序説」(多賀出版、平成8年2月予定)の第一部第4章で行なっている。附属学校に関する資料は筆者が調べた各大学図書館にはほとんどなく、附属学校任せになっているようであるが、附属学校では資料の系統的保存が不十分で、特に他大学附属校等から寄贈されてきたはずの古い文献が、あまり保存されていないようである。この科学研究費のお陰で、全国各地に散在する附属学校史や師範学校史に関する資料を本学図書館岩見沢分館にまとめて収集することができたが、それらを考察して、戦前における単級複式教育や農村学校等、県内の学校形態の実情に応じた教員養成の努力から学ぶところが多かった。特に、附属小学校単級教場や複式学級、代用附属学校、地方教育実習の制度がそうであった。しかし、教育実習以外の授業科目には単級複式教育や農村教育は特設されておらず、また、教育学分野の教科書の中でも、それほど特筆されていなかった。戦後の教員養成系大学学部におけるへき地教育関係カリキュラムについても調査を行なったが、回答のあった43大学中、へき地複式教育関係授業が現在開設されているのは5大学、現在は開設されていなが以前に開設されていた大学が10大学であった。なお、教育実習にへき地教育を含む大学は8大学、複式学級を含む大学は12大学であった。本研究成果の一部は、平成6年8月の日本教育学会(へき地小規模校教育研究の国際的意義と課題」)と10月の日本教育制度学会(「へき地小規模校教育についての教育制度論的一考察」)での研究発表の際にも取り上げて報告した(それらは当該学会紀要に投稿中)が、本研究成果の体系的報告は、平成7年度科学研究費一般学術図書出版助成を申請中の「へき地小規模校教育研究序説」(多賀出版、平成8年2月予定)の第一部第4章で行なっている。
KAKENHI-PROJECT-06610213
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06610213
神経性やせ症の治療ステージ進展に伴う脳糖代謝とデフォルトモードネットワークの変化
対象者は浜松医科大学附属病院で入院治療を行う神経性やせ症と診断される1840歳の女性20名および健常対照者20名とする。入院後2週間以内(T0)と、BMI 16を超えた体重回復期(T1)の身体状態の回復前後に安静時fMRI (rs-fMRI)と18F-FDG PETおよび症状評価を受けた患者について、退院1年後(T2)にも追跡調査として同一の評価を行う。健常者については3ヶ月程度の期間をおいて同一の検査を行い、さらに1年後に検査を行う。これにより、神経性やせ症の身体状態と精神病理の回復過程それぞれにおける脳内メカニズムを明らかにする。対象者は浜松医科大学附属病院で入院治療を行う神経性やせ症と診断される1840歳の女性20名および健常対照者20名とする。入院後2週間以内(T0)と、BMI 16を超えた体重回復期(T1)の身体状態の回復前後に安静時fMRI (rs-fMRI)と18F-FDG PETおよび症状評価を受けた患者について、退院1年後(T2)にも追跡調査として同一の評価を行う。健常者については3ヶ月程度の期間をおいて同一の検査を行い、さらに1年後に検査を行う。これにより、神経性やせ症の身体状態と精神病理の回復過程それぞれにおける脳内メカニズムを明らかにする。
KAKENHI-PROJECT-19K08042
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K08042
酸化LDL受容体を介した脈絡膜新生血管形成機構の解明及び治療開発に関する研究
1)黄斑下手術で採取した新生血管膜内には多数のマクロファージを認めたが、その一部に動脈硬化に重要とされる主要なスカベンジャー受容体のクラスA受容体(SR-A)陽性細胞を認めた。加齢黄斑変性症以外の新生血管膜にも同様の所見を認め、新生血管進展に寄与する可能性が示唆された。2)野生型及びLOX-1遺伝子欠損(LOX-1 KO)マウスで、レーザー誘導脈絡膜新生血管誘導モデルを作成した。野生型ではレーザー照射後RNAレベルでのLOX-1の誘導を確認した。またマトリクスメタロプロテアーゼ前駆体の発現上昇と活性化を認めたが、LOX-1 KOマウスでは前駆体発現及び活性化が抑制されていた。さらに照射2週間後には野生型では93%に新生血管を認めたが、LOX-KOでは43%に減少していた。以上よりLOX-1が新生血管の形成過程で主要な役割を果たしている事が示唆された。3)ラットレーザー誘発脈絡膜新生血管(CNV)モデルを作製し、高脂血症、動脈硬化でのプラーク形成に抑制効果のあるHMG-CoA還元酵素阻害薬(ピタバスタチン)のCNVへの効果について検討した。ピタバスタチンの前投与により、レーザー照射部位の蛍光漏出、CNV面積は優位に低下していた。CNV厚も投与群で薄い傾向があり、ピタバスタチンは実験的CNVを抑制する効果があることが示唆された。1)黄斑下手術で採取した新生血管膜内には多数のマクロファージを認めたが、その一部に動脈硬化に重要とされる主要なスカベンジャー受容体のクラスA受容体(SR-A)陽性細胞を認めた。加齢黄斑変性症以外の新生血管膜にも同様の所見を認め、新生血管進展に寄与する可能性が示唆された。2)野生型及びLOX-1遺伝子欠損(LOX-1 KO)マウスで、レーザー誘導脈絡膜新生血管誘導モデルを作成した。野生型ではレーザー照射後RNAレベルでのLOX-1の誘導を確認した。またマトリクスメタロプロテアーゼ前駆体の発現上昇と活性化を認めたが、LOX-1 KOマウスでは前駆体発現及び活性化が抑制されていた。さらに照射2週間後には野生型では93%に新生血管を認めたが、LOX-KOでは43%に減少していた。以上よりLOX-1が新生血管の形成過程で主要な役割を果たしている事が示唆された。3)ラットレーザー誘発脈絡膜新生血管(CNV)モデルを作製し、高脂血症、動脈硬化でのプラーク形成に抑制効果のあるHMG-CoA還元酵素阻害薬(ピタバスタチン)のCNVへの効果について検討した。ピタバスタチンの前投与により、レーザー照射部位の蛍光漏出、CNV面積は優位に低下していた。CNV厚も投与群で薄い傾向があり、ピタバスタチンは実験的CNVを抑制する効果があることが示唆された。1)黄斑下手術により採取をした脈絡膜新生血管膜に対する免疫組織化学的研究既に酸化型LDL受容体(スカベンジャー受容体)の一つであるLOX-1局在を証明した(Arch.Ophthalmol.122;1873,2004)が、動脈硬化に重要とされる主要なスカベンジャー受容体のクラスA受容体(SR-A)の免疫組織学的検討を行った。新生血管膜内には多数のマクロファージ(KP-1陽性細胞)を認めたが、その一部にSR-A陽性細胞を認めた。加齢黄斑変性症以外の新生血管膜にも同様の所見を認め、新生血管進展に寄与する可能性が示唆された。2)レーザー誘導脈絡膜新生血管モデルを用いた、LOX-1の脈絡膜新生血管形成に及ぼす影響の検討野生型(C57BL/6)マウス及びLOX-1遺伝子欠損(LOX-1 KO)マウスの網膜に、一定の条件でレーザー照射し、脈絡膜新生血管誘導モデルを作成した。照射後の後眼部の組織でのLOX-1の発現をreal-time RT-PCRにて検討し、MMP-2及び9の発現をgelatinザイモグラフィーにて検討した。また照射後2週間後の脈絡膜新生血管を形態的に定量化した。野生型ではレーザー照射後24-48時間後にかけてRNAレベルでのLOX-1の誘導を確認した。また照射3-5日後にMMP-2,-9前駆体の発現上昇と活性型MMPを認めるが、LOX-1 KOマウスでは前駆体発現及び活性化が抑制されていた。また照射2週間後の蛍光造影での新生血管検出では、野生型では93%に新生血管を認めたが、LOX-KOでは43%に減少していた。以上よりLOX-1が新生血管の形成過程で主要な役割を果たしている事が示唆されている。3)眼内容液のプロテオミクスを用いた解析平成17年度より脈絡膜新生血管の発症機序、進展にスカベンジャー受容体が関与している可能性が示唆された。新規治療法開発のため本年はこの様な高脂血症、動脈硬化でのプラーク形成に抑制効果のあるHMG-CoA還元酵素阻害薬の脈絡膜新生血管に対する効果に関して本年度は検討を行った。1)実験的脈絡膜新生血管膜モデルに対するHMG-CoAレダクターゼ阻害薬の効果検討レーザー誘発脈絡膜新生血管(CNV)モデルを作製し、HMG-CoA還元酵素阻害薬(ピタバスタチン)のCNVへの効果について検討した。方法はオス6週齢のBrown Norwayラットの両眼底にレーザー照射を行い、CNVモデルを作製した。
KAKENHI-PROJECT-17591842
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酸化LDL受容体を介した脈絡膜新生血管形成機構の解明及び治療開発に関する研究
ラットはピタバスタチン内服(ピタバスタチン1mg/kg/day、n=14)群とコントロール群(n=14)に分け、投与はCNV作製より1日前より行い14日間行った。モデル作製14日後に蛍光眼底造影(FA)を行い、レーザー部位の蛍光漏出の程度をCNVスコア(スコア0-3の4段階)で評価した。FITC-dextrarを灌流して眼球を摘出、フラットマウント標本とし、蛍光顕微鏡で撮影しCNV面積(FITC-dextran size)を比較検討した。一部の摘出眼球はCNV厚を観察するために組織学的検査(H&E染色)を行った。結果はFAのCNVスコアはコントロール群が1.889±0.12だったのに対し、ピタバスタチン群は1.356±0.085で有意に低かった(p<0.05)CNV面積はコントロール群が41.24±2.48、ピタバスタチン群が29.51±2.85(×10^3μm^2)で有意に抑制された(p<0.05)。CNV厚もコントロール群に比ベピタバスタチン群のものは薄い傾向にあった。以上よりピタバスタチンは実験的CNVを抑制する効果があることが示唆された。平成17年度に行った、1)黄斑下手術により採取をした脈絡膜新生血管膜に対する免疫組織化学的研究2)レーザー誘導脈絡膜新生血管モデルを用いた、LOX-1の脈絡膜新生血管形成に及ぼす影響の検討に関しては現在論文投稿準備中である。
KAKENHI-PROJECT-17591842
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バレイショ塊茎形成物質の化学的研究
短日条件下(7月下旬8月上旬)圃場で生育したバレイショ(ダンシャク)葉100kgを収穫し, 70%エタノール液に浸漬後常法によりn-ヘキサン,酢酸エチル,水の各可溶部に振り分けた.活性は酢酸エチル可溶部と水可溶部に認められたので本年度は,まず水可溶部の活性物質の単離を行った.精製を以下の操作で行った.活性炭カラムクロマトグラフィー→Dowexlx4は11g得られ,培地中750ppm濃度で塊茎を形成した.次に高速液体クロマトグラフィーにより精製を進めた. μ+Bondapak C_<18>mgAminexHPX-87H→Resolve C_<18>mgNovapak C_<18>3回.以上の操作で活性物質2.7mgを単離した(27μg/kg,新鮮葉).本物質は,濃度0.1ppmで十分に塊茎を形成し, 0.01ppmでも活性を発現した.濃度を高めると,比例して活性も高くなった.種々のスペクトルデータから,水可溶部の活性物質の化学構造を3-oxo-2-(5′-3-D-glucopyranasyloxy-2′-cis-pentenyl)-cyclo-pentane-1-aletic acidと決定した.本物質は文献未記載の新化合物である.本研究で用いた生物検定法を使用し,塊茎形成作物(キクイモ,チョロギ)と非塊茎形成作物(ビート,トウモロコシ,ナス,ダイズ,サツマイモ,トマト)の検定を行なった.全作物葉の水可溶部と酢酸エチル可溶酸性区は共にバレイショ塊茎を形成した.この事は,本物質あるいは類似物質が植物界に普遍的に存在し,塊茎形成以外の生活環制御にも係っている可能性を示した.短日条件下(7月下旬8月上旬)圃場で生育したバレイショ(ダンシャク)葉100kgを収穫し, 70%エタノール液に浸漬後常法によりn-ヘキサン,酢酸エチル,水の各可溶部に振り分けた.活性は酢酸エチル可溶部と水可溶部に認められたので本年度は,まず水可溶部の活性物質の単離を行った.精製を以下の操作で行った.活性炭カラムクロマトグラフィー→Dowexlx4は11g得られ,培地中750ppm濃度で塊茎を形成した.次に高速液体クロマトグラフィーにより精製を進めた. μ+Bondapak C_<18>mgAminexHPX-87H→Resolve C_<18>mgNovapak C_<18>3回.以上の操作で活性物質2.7mgを単離した(27μg/kg,新鮮葉).本物質は,濃度0.1ppmで十分に塊茎を形成し, 0.01ppmでも活性を発現した.濃度を高めると,比例して活性も高くなった.種々のスペクトルデータから,水可溶部の活性物質の化学構造を3-oxo-2-(5′-3-D-glucopyranasyloxy-2′-cis-pentenyl)-cyclo-pentane-1-aletic acidと決定した.本物質は文献未記載の新化合物である.本研究で用いた生物検定法を使用し,塊茎形成作物(キクイモ,チョロギ)と非塊茎形成作物(ビート,トウモロコシ,ナス,ダイズ,サツマイモ,トマト)の検定を行なった.全作物葉の水可溶部と酢酸エチル可溶酸性区は共にバレイショ塊茎を形成した.この事は,本物質あるいは類似物質が植物界に普遍的に存在し,塊茎形成以外の生活環制御にも係っている可能性を示した.
KAKENHI-PROJECT-62219001
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62219001
アゲハチョウ飼育教材の開発
アゲハチョウは、鱗翅目アゲハチョウ科に分類されるチョウの仲間である。今回は、申請者が開発したアゲハの人工飼料(羽化率80%)を利用してアゲハチョウの教材を作成することにした。チョウの飼育教材は、全国の小学校(3年生の単元、チョウを育てよう)で使われており橿原市昆虫館で開発したモンシロチョウ教材(約300セット)、オオゴマダラ教材(約200セット)がすでに学校現場で使用されている。モンシロチョウ教材は市内をはじめ、大阪府、京都府や東日本大震災で被災した岩手県山田町と宮古市に提供している。オオゴマダラ教材も沖縄県石垣市の全小学校で活用されている。そこで、今回開発したアゲハ教材を小学校の教員30名に対して平成27年から平成28年にかけて実験的に使用してもらいアンケート調査を行った。その結果、4名の教員しか成虫にできなかった。その主な原因は、人工飼料の制作とその飼育方法の不慣れからくるものであった。また、アンケートの中では、モンシロチョウの発生の単元の時間数(10時間前後)に合致しており、アゲハチョウの発生は約20日25日が必要であり教育計画がたてにくい。設計した飼育ケースが紙ベースであるので耐水性に課題がある等の意見を頂いた。アゲハチョウとモンシロチョウを教材として使用した時の指導内容の教育効果は、アゲハチョウのほうが高いことが示されている(授業「アゲハチョウの不思議を探る」をめぐって、村上忠幸、京都教育大学教育実践研究紀要2011, (11)49-58)。教育効果が高くても教育現場へ導入するには今回の教材は、改良が必要である。特に、人工飼料の作り方をさらに簡素化する必要がある(一個体の幼虫を成虫にまで育てるのにミカンの葉であれば3040枚(葉身5cm程度)必要である。)。発生についての期間が指導単元の時間数と異なるのは、現場の教員がアゲハチョウを教材として使用しない要因でもある。比較研究として、外来種であるミカン科植物のヘンルーダ(Ruta graveolens)(別名:アゲハ草)1本(50cm)を食草としてナミアゲハ4個体を飼育したが成虫にすることができなかった。原因は、アリやハチによって狩られてしまった。外来種であるヘンルーダを使用するのも、管理が必要である。学校現場で教材として使用するには、指導者の負担をできるだけ少なくし、子どもたちにより分かりやすい教材が必要である。今後、更に改良を進め、総合的な学習の時間や社会教育での活用を視野に入れた教材として活用できるように取り組んでいく。アゲハチョウは、鱗翅目アゲハチョウ科に分類されるチョウの仲間である。今回は、申請者が開発したアゲハの人工飼料(羽化率80%)を利用してアゲハチョウの教材を作成することにした。チョウの飼育教材は、全国の小学校(3年生の単元、チョウを育てよう)で使われており橿原市昆虫館で開発したモンシロチョウ教材(約300セット)、オオゴマダラ教材(約200セット)がすでに学校現場で使用されている。モンシロチョウ教材は市内をはじめ、大阪府、京都府や東日本大震災で被災した岩手県山田町と宮古市に提供している。オオゴマダラ教材も沖縄県石垣市の全小学校で活用されている。そこで、今回開発したアゲハ教材を小学校の教員30名に対して平成27年から平成28年にかけて実験的に使用してもらいアンケート調査を行った。その結果、4名の教員しか成虫にできなかった。その主な原因は、人工飼料の制作とその飼育方法の不慣れからくるものであった。また、アンケートの中では、モンシロチョウの発生の単元の時間数(10時間前後)に合致しており、アゲハチョウの発生は約20日25日が必要であり教育計画がたてにくい。設計した飼育ケースが紙ベースであるので耐水性に課題がある等の意見を頂いた。アゲハチョウとモンシロチョウを教材として使用した時の指導内容の教育効果は、アゲハチョウのほうが高いことが示されている(授業「アゲハチョウの不思議を探る」をめぐって、村上忠幸、京都教育大学教育実践研究紀要2011, (11)49-58)。教育効果が高くても教育現場へ導入するには今回の教材は、改良が必要である。特に、人工飼料の作り方をさらに簡素化する必要がある(一個体の幼虫を成虫にまで育てるのにミカンの葉であれば3040枚(葉身5cm程度)必要である。)。発生についての期間が指導単元の時間数と異なるのは、現場の教員がアゲハチョウを教材として使用しない要因でもある。比較研究として、外来種であるミカン科植物のヘンルーダ(Ruta graveolens)(別名:アゲハ草)1本(50cm)を食草としてナミアゲハ4個体を飼育したが成虫にすることができなかった。原因は、アリやハチによって狩られてしまった。外来種であるヘンルーダを使用するのも、管理が必要である。学校現場で教材として使用するには、指導者の負担をできるだけ少なくし、子どもたちにより分かりやすい教材が必要である。今後、更に改良を進め、総合的な学習の時間や社会教育での活用を視野に入れた教材として活用できるように取り組んでいく。
KAKENHI-PROJECT-16H00204
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離島における慢性病の家族ケアに及ぼす諸因子の抽出と援助介入のタイプと方法の研究
地域の文化が伝統的にひきつがれている瀬戸内海のB島において、慢性疾患者の家族ケアがどのような文化的因子によって影響されているかをしるために1995-1996年にかけて、当島全世帯、750を対象に、暮らしと健康に関する調査、回収率、70%、およびフィールドワークとして介護経験者を対象にインタービューと家庭訪問をおこなった。インタービューは30名の対象者を調査員が1対1でおこない、当島の診療所、店、個人の家でおこなつた。以上の結果、家族ケアの思考と行動はタテ社会独特な価値観より表現されたものであることがあきらかにされ、家族ケア継続促進因子、妨害因子が抽出され、さらに、年代層による思考と行動の相異が統計的に有意にあらわれた。家族ケアの思考は優位をしめたがその考え方や方法は30代と40代とはことなつた。同年の資料の結果をもとにして、1996-1997年に家族ケアが効果的に継続されていくために看護専門職としての援助方法とそのタイプを提案する調査として、町おこし運動が考えられ、よりよい効果的な家族ケアをするための住民の意識改革に関して、次の世紀を背負っていく若年層の全中学生、165名を対象に2回、7月と11月にわたり町内活動意識調査と暮らしと健康にかんするアンケート及び町ずくりにかんする作文を書かせた。全中学生のうち男子86名、女子79名、12歳-15歳の者、99%の参加をえた。また家庭訪問は再度おこない、フィールドワークとして写真撮影、ビデオ撮影をつずけ、当島たいざい日数は合計50日となった。意識改革についての効果としてはすでに県の2年間にわたって福祉体験学習がおこなわれていたので、そのフォローアップの調査をおこなった。2回にわたるアンケートの回収率は99%であつた。以上の結果、家族が家族の者の世話をするという意識と価値観は多数をしめ施設利用を考えるものは21%であった。町おこしに関して、前年度の成人のアンケートと同様な希望をしめしていたが、当島に一生暮らしたくない者が73.5%であったことは、家族ケアを次の世紀にひきつずいていくことに関しての課題である。福祉体験に関する意識と行動の変化は過半数の者が障害者や老人に対して親切にしようとか役に立ちたいと思うなど意識改革に効果的に影響している。地域の文化が伝統的にひきつがれている瀬戸内海のB島において、慢性疾患者の家族ケアがどのような文化的因子によって影響されているかをしるために1995-1996年にかけて、当島全世帯、750を対象に、暮らしと健康に関する調査、回収率、70%、およびフィールドワークとして介護経験者を対象にインタービューと家庭訪問をおこなった。インタービューは30名の対象者を調査員が1対1でおこない、当島の診療所、店、個人の家でおこなつた。以上の結果、家族ケアの思考と行動はタテ社会独特な価値観より表現されたものであることがあきらかにされ、家族ケア継続促進因子、妨害因子が抽出され、さらに、年代層による思考と行動の相異が統計的に有意にあらわれた。家族ケアの思考は優位をしめたがその考え方や方法は30代と40代とはことなつた。同年の資料の結果をもとにして、1996-1997年に家族ケアが効果的に継続されていくために看護専門職としての援助方法とそのタイプを提案する調査として、町おこし運動が考えられ、よりよい効果的な家族ケアをするための住民の意識改革に関して、次の世紀を背負っていく若年層の全中学生、165名を対象に2回、7月と11月にわたり町内活動意識調査と暮らしと健康にかんするアンケート及び町ずくりにかんする作文を書かせた。全中学生のうち男子86名、女子79名、12歳-15歳の者、99%の参加をえた。また家庭訪問は再度おこない、フィールドワークとして写真撮影、ビデオ撮影をつずけ、当島たいざい日数は合計50日となった。意識改革についての効果としてはすでに県の2年間にわたって福祉体験学習がおこなわれていたので、そのフォローアップの調査をおこなった。2回にわたるアンケートの回収率は99%であつた。以上の結果、家族が家族の者の世話をするという意識と価値観は多数をしめ施設利用を考えるものは21%であった。町おこしに関して、前年度の成人のアンケートと同様な希望をしめしていたが、当島に一生暮らしたくない者が73.5%であったことは、家族ケアを次の世紀にひきつずいていくことに関しての課題である。福祉体験に関する意識と行動の変化は過半数の者が障害者や老人に対して親切にしようとか役に立ちたいと思うなど意識改革に効果的に影響している。1.坊勢島における慢性病の在宅ケアにおよぼす諸因子の抽出をこころみた。研究期間は1995年5月-1996年3月にいたる。研究方法は、インタービュー、観察、写真、及びビデオ撮影により、データーを収集、記録した。又、42項目よりなるアンケート調査を750世帯に配付し、70%を回収し、統計分析、資料作成、印刷をおこなった。2.諸因子として考慮される現象としてカイニ乗検定により年令層間に有意差が認められた項目は次の通りである。1)家族の者が終末期の場合の介護者としての希望(場所・人物・手段)(χ^2(DF16)=23.7,P<.10)40代の介護者は、在宅ケアを行い、医師の往診を希望し、病人のためのショートステイ施設を要望している。
KAKENHI-PROJECT-07457571
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離島における慢性病の家族ケアに及ぼす諸因子の抽出と援助介入のタイプと方法の研究
30代も在宅ケアを行うが、ホームヘルパーや介護機器の貸し出しを希望している。2)自分の終末期に対する介護の要望の場所と人物(χ^2(DF12)=24.7,P<0.5)40代では、子供や身内の者に在宅ケアをしてもらいたい者は皆無で医療施設入院の希望が多い。30代では、在宅ケアを家族のものにしてもらいたいと希望している。3.全体的に自分の終末期に関する在宅ケア希望は、30代を頂点に70代に至るほど減少している。島の現状は、医師一人の診療所が1ケ所あるだけで、在宅ケアは伝統的に、嫁や配偶者によって行われている。家族構成は3世帯が20%、4世帯が18%、2世帯が18%の家族が主であり介護力はある。しかし、援助可能な血縁家族がいないものもある。4.産業は漁業中心で、裕福な地域で、持ち家一軒家は70%以上である。介護のための在宅改善は希望多く、トイレ、風呂場、段差などの改善は解答者524名中220名、42%、病室を別に造りたい者は99名、19%である。インタビューをした介護経験者の20名は介護上の住宅構造の不便さを訴えるものはなく、長期にわたる精神的ストレスの訴えが主であった。5.島の地形は崖状であり、頂上の住宅より診療所に通院することや、医師の往診は非常に不便である。交通手段は徒歩しかないところが多い。6.公的保健医療福祉施設が島外にあり、医療サービス、特に事故の救急医療、重症者の医療、専門医の不在などのため、診療所のプライマリ-・ヘルスケア及び慢性病の在宅ケアの活動に影響を与えている。家族による在宅ケアが地域文化の伝統として,また,地理的及び医療サービス施設分布条件により引き継がれていることが一年目の調査で明確化されたので,当研究は在宅ケアの援助の方法とし町興し運動が効果的な援助計画に結びつくと思われ,そのために住民の意識改革について焦点をあてた。手始めとして,当研究は成人層ではなく若年層である当島中学生,165名を対象に調査を開始した。1995年に当県によって当島中学生を対象に2年間にわたる福祉体験活動推進研究が行われていたので,授業時間を割いて同じような福祉体験活動プログラムをもう一度繰り返すことなくそのフォローアップを試みた。この体験活動は全島住民も参加しており,当研究がAction Researchとして試みようとした活動の多くがすでに実践されていたからである。当該研究期間1996年5月より1997年3月に至った。アンケート調査を7月と11月に,町興しに関する作文,塾での集団インタビュー,診療所及び当町の老人施設のあるI島の施設長のインタビューを行った。対象中学生は165名,1年生61名(男子37名,女子24名),2年生55名(男子31名,女子24名),3年生49名(男子18名,女子31名)であり,13歳,14歳が全体の63%,全男子数86名,全女子数79名であった。一回目の当島の暮らしと健康に関する意識調査の結果は,今の生活に満足している(71%),家族や近隣の人と話し合うのがあまり好きではない(62%),また,誰が病人の世話をするべきかは家族の者であるという答えが最高で,施設利用希望は21&,また,一番関心のあることは勉強と遊びであり,勉強の時間を割いて家事の手伝いをするというのは27%,当島で一生暮らしたいと思わない者は73.5%であった。2回目の調査は県の福祉体験のフォローアップを行い,回収率99%(163)であった。
KAKENHI-PROJECT-07457571
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可観測な環境でのテスト設計と診断容易化手法に関する研究
本研究において得られた主な成果は次の通りである.1)全可観測な環境での論理回路のテスト容易化設計全可観測な環境でのテスト容易な論理回路として,k-UCNAND回路を提案し,更にこの一般化したモデルとしてk-UCP回路を提案した,対象故障は,縮退故障とスタックオープン故障であり,それぞれの場合について必要なテストパターン数はk+1,k(k+1)+1になることが示された.さらに,これを全可観測な順序回路に拡張し,それに対するテスト手法を提案した.2)全可観測な環境でのテストパターン生成全可観測な環境として,回路内部の信号線が観測可能であるという前提のもとでは,故障の影響を外部出力に伝搬させる必要がなく,故障検出に際して信号値が割り当てられる入力端子の数を少なくすることが可能になり,複数個の故障を同時に検出するテスト生成が容易になる.さらに,この手法を順序回路のテスト生成手法にも適用し,従来手法に比べてテストパターン数が十分少なくなることを示した.3)全可観測な環障での故障診断故障位置の指摘をするためには,故障表を実用的な大きさに圧縮する必要があり,本手法ではテストベクトルペアの印加に対する応答による故障候補の絞り込みと,電子ビームテスタにより故障位置の絞り込みを反複利用する.この手法は,観測容易化設計によらない通常の組合せ回路に対する取扱いが可能であり,対象故障として多重故障の存在を許している。また,この手法は直接故障表を用いないので、計算に必要な記憶容量も相対的に少なくてすむことが特長である.電子ビームテスタを用いる診断手法の一般化しとて,ガイデッド・プローブ法による故障診断法を提案し,ベンチマーク回路上での実験を行いその効率を評価した.本研究において得られた主な成果は次の通りである.1)全可観測な環境での論理回路のテスト容易化設計全可観測な環境でのテスト容易な論理回路として,k-UCNAND回路を提案し,更にこの一般化したモデルとしてk-UCP回路を提案した,対象故障は,縮退故障とスタックオープン故障であり,それぞれの場合について必要なテストパターン数はk+1,k(k+1)+1になることが示された.さらに,これを全可観測な順序回路に拡張し,それに対するテスト手法を提案した.2)全可観測な環境でのテストパターン生成全可観測な環境として,回路内部の信号線が観測可能であるという前提のもとでは,故障の影響を外部出力に伝搬させる必要がなく,故障検出に際して信号値が割り当てられる入力端子の数を少なくすることが可能になり,複数個の故障を同時に検出するテスト生成が容易になる.さらに,この手法を順序回路のテスト生成手法にも適用し,従来手法に比べてテストパターン数が十分少なくなることを示した.3)全可観測な環障での故障診断故障位置の指摘をするためには,故障表を実用的な大きさに圧縮する必要があり,本手法ではテストベクトルペアの印加に対する応答による故障候補の絞り込みと,電子ビームテスタにより故障位置の絞り込みを反複利用する.この手法は,観測容易化設計によらない通常の組合せ回路に対する取扱いが可能であり,対象故障として多重故障の存在を許している。また,この手法は直接故障表を用いないので、計算に必要な記憶容量も相対的に少なくてすむことが特長である.電子ビームテスタを用いる診断手法の一般化しとて,ガイデッド・プローブ法による故障診断法を提案し,ベンチマーク回路上での実験を行いその効率を評価した.本年度の研究の主な成果は次の通りである。1)全可観測な環境でのテスト容易な論理回路として,kUCーNAND回路を提案し,その性質を調べた。ここで全可観測な環境とは,すべての論理ゲ-トの出力線が観測可能であることを意味する。この回路の特徴は,全可観測な環境では,固定長のテストパタ-ンで,すべての縮退故障およびスタックオ-プン故障をテストすることが出来ることであり,その長さは,それぞれk+1,k(k+1)+1である。ここで,kは理論ゲ-トのファンイン数であり,通常は2か3であり,非常に短いテストパタ-ンが得られる。この結果は,電子情報通信学会論文誌及び1990年の耐故障計算国際会議(FTCSー21)で報告した。2)種々の論理回路について全可観測な環境でのテスト生成,故障診断表の作成,故障位置指摘を行なうために,ワ-クステ-ションシステムを構築した。3)任意の論理回路をkUCーNAND回路に変換するためには,付加ゲ-トと付加入力が必要となる。しかし,最小付加数を見つけるアルゴリズムは,NP完全であるので,近似解を求る手法を用いてベンチマ-ク用の回路変換を行ない,付加ゲ-ト数の評価を行なった。この結果については,1990年の国際テスト会議(ITC90)で報告した。4)kUCーNAND回路が全可観測であるとして,故障診断を行なうアルゴリズムを開発し,ベンチマ-ク回路を用いて故障診断の模擬実験を行ない,電子ビ-ムテスタ-を用いる場合の実行時間などその効率について評価を行なった。大規模回路の取り扱いを可能にするため,故障診断表の階層化を行ない故障診断アルゴリズムを開発した。この結果は1990年度の「電子ビ-ムテスティングシンポジウム」で発表した。本年度の主な研究成果は次の通りである。
KAKENHI-PROJECT-02452165
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02452165
可観測な環境でのテスト設計と診断容易化手法に関する研究
1.前年度では,可観測な環境でのテスト容易な論理回路として,kーUCNAND回路を提案したが,これを任意の論理素子を含む回路に一般化したモデルとしてkーUCP回路を提案し,テストパタ-ンの種類は2倍になるが従来と同じテストパタ-ン長でテストおよび故障診断が出来ることを示した。kーUCP回路およびそれに対するテスト手法についてはIEEEのトランザクションに投稿し,1992年5月号に掲載の予定である。2.kーUCP回路は組み合せ回路を対象としたものであるが,これを全可観測な順序回路に拡張し,それに対するテスト手法について考察した。順序回路としては,スキャンパスを持つ場合に着目し,スキャンパスの構成とテスト容易化のための付加回路を同時に考慮することにより付加ゲ-ト数を少なくする手法を提案した。順序回路についての議論は電子情報通信学会英文誌に投稿し,論文として採録が決定されている。3.kーUCP回路の場合にはテストは容易であるが,付加回路を要求するという意味では好ましくない。通常の論理回路に対して,全可観測とした場合にどれだけのテストパタ-ンが要求されるかという立場で,テストパタ-ン数を最小にする手法を検討した。ベンチマ-ク回路での実験により,外部出力のみが可観測とするのに比べて大幅にテスト数の減少がはかれる。この結果は,電子情報通信学会FTS研究会で報告した。4.上で述べた手法を大規模回路に対して電子ビ-ムテスタ-を用いるテスト手法に応用するためには,更にテストパタ-ンの圧縮を行う必要があり,動的な圧縮手法を用いたテストパタ-ンの圧縮について考察した。これについては,今年度の電子ビ-ムテスティングシンポジュウムで報告した。この結果を応用して電子ビ-ムテスタ-上で実用的な診断が出来るアルゴリズムを検討中である。本年度は全可観測な環境での故障診断に関する研究を中心に行った。その主な成果は次の通りである。1)故障位置の指摘をするためには,故障表を実用的な大きさに圧縮する必要がある。本手法では,テストベクトルペアの印加に対する応答による故障候補の絞り込みと,電子ビームテスタによる故障位置の絞り込みを反復利用している。この手法は、観測容易化設計によらない通常の組合せ回路に対する取扱いが可能であり,対象故障として多重故障の存在を許している。また,この手法は直接故障表を用いないので,計算に必要な記憶容量も相対的に少なくてすむことになる。この手法を用いた実験結果を,日本学術振興会132委員会第121回研究会(電子ビームテストシンポジュウム)で報告した。2)本研究では全可観測な環境としてすべてのゲート出力が観測可能であるとした。しかし,故障診断という観点からすれば十分条件ではあるが必ずしも必要条件ではない。全可観測という条件を外し,外部出力だけが観測可能とした場合について多重故障を対象にその故障診断について考察した。この成果,電子情報通信学会FTS研究会で報告した。3)電子ビームテスタを用いる診断手法の一般化として,ガイデッド・プローブ法による故障診断について考察した。故障診断を高速化するためには,観測信号線数の削減が必要であり,その解決法として故障診断表をもちいる手法と,回路のネットリストから計算する方法について考察した。これら両手法を実用化するために,故障確率の概念を導入し故障状況を一般化し,ベンチマーク回路に対してこれらの手法を用いた実験を行い,その有効性について考察した。この成果は論文として,電子情報通信学会英文誌に投稿中である。
KAKENHI-PROJECT-02452165
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トランスジェニックフィッシュの手法による、神経活動に変化を加える系の開発
本研究の目的は、ゼブラフィッシュを用いて、特定のクラスの神経細胞を不活化させることにより脊髄神経回路機能を解析することである。研究を進めるにあたり、まず、発現誘導システムを構築した。なぜならば、神経細胞の機能を不活化させる遺伝子、たとえばテタナス毒素遺伝子を、直接、遺伝子(たとえばChx10)の発現制御領域のもとで発現させた場合、その魚は性成熟の前の段階で致死となりラインが確立できないと予想されるからである。この目的のため、昨年度は、Gal4-UASによる発現誘導システムを構築した。今年度は、Gal4-UASに加えて、Cre-loxPによる発現誘導システムの構築に成功した。次に、昨年度に確立されたGal4-UASシステムを用い、テタナス毒素がゼブラフィッシュでうまく働くかどうかを問う研究をまず行った。この目的のため、神経細胞全体で発現を促すHuCプロモーターのもとでGal4を発現するラインと、UASプロモーターのもとでテタナス毒素を発現するラインを作製した。それらを掛け合わせたところ、すべての神経細胞でテタナス毒素が発現し、全く動かない魚を得た。したがって、Gal4-UASシステムとテタナス毒素の双方ともうまく機能していることが示すことができた。現在、Chx10陽性細胞で、テタナス毒素を発現させるコンストラクト(Gal4-UASおよび、Cre-loxPシステム)をもつトランスジェニックフィッシュを作製中である。本研究を進めるにあたり、発現誘導システムが必要である。なぜならば、神経細胞の機能を不活化させる遺伝子、たとえばテタナス毒素遺伝子を、直接、遺伝子(たとえばEn1)の発現制御領域のもとで発現させた場合、その魚は性成熟の前の段階で致死となりラインが確立できないと予想されるからである。このため、本研究ではGal4-UASシステムを取り入れることにした。このシステムでは、2つのストレインの掛け合わせ(たとえば、En1::Gal4とUAS::TeNTとの掛け合わせ)で発現誘導を行う。1つの問題点として、トランスジェニックゼブラフィッシュ作製の際に独立のマーカーシステムが開発されていないため、PCRによるgenotypingを必要とし、ラインの確立がたいへん煩雑になるということが予想された(現在までに作製されているトランスジェニックフィッシュは、申請者自身のものも含め、ほぼすべて蛍光タンパクの発現でスクリーニングがなされている).そこで、蛍光タンパク質を発現する独立のマーカーシステムの確立を目指した。具体的には、rod-opsinのプロモーターに赤色蛍光タンパク質をつないだもの(Rh1::DsRed)が独立マーカーとして機能するか調べた(トランスジェニックフィッシュでは目に赤い蛍光を発する)。モデルケースとしてUAS::GFP、およびHuC(汎神経細胞プロモーター)::Gal4のコンストラクトにこのマーカーをつないでトランスジェニックフィッシュを作製し(目の色でスクリーニング)、お互いのストレインを掛け合わせたところ、神経細胞すべてでGFPの発現が誘導できることが確認された。すなわち、独立マーカーでスクリーニングを行うことが可能な、Gal4-UASシステムがゼブラフィッシュで確立された。ついで、トランスジェニックゼブラフィッシュ作製効率の向上を目指した。DNAコンストラクトにI-SceIのサイトを導入し、I-SceI酵素と共にインジェクションを行うことによって、50%にも達する効率でトランスジェニックフィッシュを作製することに成功した。現在、HuCプロモーターのもとにTeNTを発現させて、その効果を調べている。本研究の目的は、ゼブラフィッシュを用いて、特定のクラスの神経細胞を不活化させることにより脊髄神経回路機能を解析することである。研究を進めるにあたり、まず、発現誘導システムを構築した。なぜならば、神経細胞の機能を不活化させる遺伝子、たとえばテタナス毒素遺伝子を、直接、遺伝子(たとえばChx10)の発現制御領域のもとで発現させた場合、その魚は性成熟の前の段階で致死となりラインが確立できないと予想されるからである。この目的のため、昨年度は、Gal4-UASによる発現誘導システムを構築した。今年度は、Gal4-UASに加えて、Cre-loxPによる発現誘導システムの構築に成功した。次に、昨年度に確立されたGal4-UASシステムを用い、テタナス毒素がゼブラフィッシュでうまく働くかどうかを問う研究をまず行った。この目的のため、神経細胞全体で発現を促すHuCプロモーターのもとでGal4を発現するラインと、UASプロモーターのもとでテタナス毒素を発現するラインを作製した。それらを掛け合わせたところ、すべての神経細胞でテタナス毒素が発現し、全く動かない魚を得た。したがって、Gal4-UASシステムとテタナス毒素の双方ともうまく機能していることが示すことができた。現在、Chx10陽性細胞で、テタナス毒素を発現させるコンストラクト(Gal4-UASおよび、Cre-loxPシステム)をもつトランスジェニックフィッシュを作製中である。
KAKENHI-PROJECT-16700292
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16700292
汎カリブ海地域・大西洋圏における修辞法とその社会効果
本年度は本研究期間最終年度であったので、研究成果の集約・発表を念頭に置いた活動を目的としていたが、予定以上に研究成果発表の場を持てたおかげで充実したものとなった。まず第一に、「黒人研究の会」という学会が創立50周年記念論文集『黒人研究の世界』を出版し、そのなかのカリブセクションに論文発表をすることができた。当論文集は「アメリカ」「アフリカ」「カリブ」という本研究課題と問題系を同じくする三つのセクションから成っているの。そのなかの私の論文「痕跡と再帰性-カリブ海と歴史をめぐって」では、カリブ海の歴史を介して文化的にもたらされた認識(従来のパラダイムと断絶した認識)およびそれを可能にする修辞を中心に考察し、本研究から生まれた結果としてのひとつの見解を提示している。次に、本年度11月3日から5日までUSヴァージン諸島にて開催されたICCL(国際カリブ文学会議)なる国際学会に参加し、発表する機会を得ることができた。当研究発表では、同じポストコロニアル状況下における社会と修辞法との関係をカリブ文学とアイルランド文学とを比較することによって比較検討した。元来アイルランド語という起源を示唆する手段を持つアイルランド文学における民族アイデンティティの一枚岩的措提にたいし、アフリカからの奴隷強制移送の過程で失われた起源を「記憶喪失」として受容するカリブ文化の可能性を提示し、そこで取り交わされる修辞法の相違を発表し、世界各国から集まった研究者たちと有益な議論を交わすことができた。その際、前年度まで日本研究で収集した資料が実証的根拠として利用された。11月の国際学会発表での議論の成果をさらに検討し、12月には国内の「多民族研究学会」にて、カリブ海社会と修辞法との関係を研究発表した。本発表は、11月の国際学会での発表に比べより理論的で、現代思想の知見などをも積極的に参照したものであり、ジル・ドゥルーズによるFigure(形体)/figural(比ゆ的)との相違をカリブ文化において適用し、資料の実証性と理論的可能性との一致を証明した。まず以前より研究対象としてきた批評理論の研究を継続し、言語表象における事実確認的(反映論的)側面と遂行的側面の関係についての考察を深化させた。物や事実を反映するにとどまらず知覚や概念を創出する言語における行為遂行性および対語性を考察することで、表象とその社会効果との関連性がより明確となった。その成果は、別紙に記した論文および第19回IASIL International Conferenceでの"Language/Materiality/Reality"という口頭発表において結実した。一方、私がこれまで研究してきた文化圏と異なり、汎カリブ海地域における言語はそのクレオール性において際立った特長を持つものであるから、クレオール性を考察するのに必要な歴史的・言語的背景を関連図書を通じて研究し、以下のような知見を得た。すなわち、西インド諸島の文化表象においてはクレオール要素の利用についてしばしば対立的に論じられてきたが、それによって言語の反映論的指示対象よりもむしろ言語そのもの、つまり言語の遂行的創出力がおのずと強調されるという歴史的背景があるようである。2003年3月にはジャマイカに赴き、まず西インド大学モナ校図書館にて上述のクレオール性とカリブ海域社会のアイデンティティとの問題に関する過去の論争経過を記録した雑誌やテープといった資料の収集をおこなった。同時に言語的表象と身体的表象の関係を調べるために、ジャマイカ特有の大衆的文化形態である「ダンス」や「サウンドシステム」といった場でのフィールド・ワークをおこなった。これら二点に関しては、まだ資料を収集したばかりで明確な成果は出ていないが、少なくとも西洋文化と異なり詩や小説といった高級文化と音楽やダンスといった大衆文化とが興味深い形で節合されていることが推測されるので、来年度はさらにそうした側面から文化表象とカリブ海域の公共圏との関係について調査・研究を継続する。昨年度収集した資料を検討してゆく過程で、大別して次の2点に関する考察が展開できる見通しが立ってきた。ひとつめは、カリブ海文化における表現の媒体についてである。グローバル情報化社会である点からしても、衛星・ケーブル放送を通じて合衆国文化が普及し影響を与えているのは当然ながら、いっぽうでジャマイカのポピュラー・カルチャーならではの独自性が発信され続けているのは、カリブ海のローカリティに根ざした表現がマス媒体よりもむしろ地域の「サウンドシステム」で育まれ、たとえば音楽ソフトの流通も大手レコード会社を経由することなく無媒介的に国内に普及してゆくことによるところが大きい。これは歴史的に見て、詩(朗読)や演劇という聴衆と無媒介的に向き合い対話する表現媒体がカリブ海地域のローカル文化を支え、小説という印刷(マス)媒体を利用した表現媒体を利用する作家たちがカリブ海外の大都市(ロンドンやニューヨークなど)の移民を支えてきた点と相似的である。ふたつめは、カリブ海文化の身体表現が、宗教的シンクレティズムと類似している点である。しかしこの件に関しては、身体表現を研究において言語化するさいに慎重な方法論が必要とされるため、今後かなりの時間を要することになりそうである。具体的な実績だが、裏面に記した論文は、これまでの理論的考察の一環としてポスト植民地主義社会における時間(歴史)感覚という問題について、本研究課題である大西洋の東端アイルランドの詩人・劇作家の作品をもとに議論を試みた。上記カリブ海文化の表現媒体に関する考察がアイルランドにおいても当てはまる点が興味深いので、今後はその点も考察したい。また、トリニダード・トバゴ共和国でのカーニバルやモナーク、マスを現地取材した。これらカーニバル
KAKENHI-PROJECT-14710389
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14710389
汎カリブ海地域・大西洋圏における修辞法とその社会効果
その他は、カリブ海でも最も人種間軋轢が激しい国における国民統合的意味合いを持って発達してきたものであるだけに、今後の研究に大きく与する資料となりえるはずである。本年度は本研究期間最終年度であったので、研究成果の集約・発表を念頭に置いた活動を目的としていたが、予定以上に研究成果発表の場を持てたおかげで充実したものとなった。まず第一に、「黒人研究の会」という学会が創立50周年記念論文集『黒人研究の世界』を出版し、そのなかのカリブセクションに論文発表をすることができた。当論文集は「アメリカ」「アフリカ」「カリブ」という本研究課題と問題系を同じくする三つのセクションから成っているの。そのなかの私の論文「痕跡と再帰性-カリブ海と歴史をめぐって」では、カリブ海の歴史を介して文化的にもたらされた認識(従来のパラダイムと断絶した認識)およびそれを可能にする修辞を中心に考察し、本研究から生まれた結果としてのひとつの見解を提示している。次に、本年度11月3日から5日までUSヴァージン諸島にて開催されたICCL(国際カリブ文学会議)なる国際学会に参加し、発表する機会を得ることができた。当研究発表では、同じポストコロニアル状況下における社会と修辞法との関係をカリブ文学とアイルランド文学とを比較することによって比較検討した。元来アイルランド語という起源を示唆する手段を持つアイルランド文学における民族アイデンティティの一枚岩的措提にたいし、アフリカからの奴隷強制移送の過程で失われた起源を「記憶喪失」として受容するカリブ文化の可能性を提示し、そこで取り交わされる修辞法の相違を発表し、世界各国から集まった研究者たちと有益な議論を交わすことができた。その際、前年度まで日本研究で収集した資料が実証的根拠として利用された。11月の国際学会発表での議論の成果をさらに検討し、12月には国内の「多民族研究学会」にて、カリブ海社会と修辞法との関係を研究発表した。本発表は、11月の国際学会での発表に比べより理論的で、現代思想の知見などをも積極的に参照したものであり、ジル・ドゥルーズによるFigure(形体)/figural(比ゆ的)との相違をカリブ文化において適用し、資料の実証性と理論的可能性との一致を証明した。
KAKENHI-PROJECT-14710389
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金属内包フラーレン塩の構造と化学的性質の解明
これまでにC_<60>とBEDT-TTF(ET)及びET骨格を2分子有するツインドナーとの電荷移動錯体結晶を得、それらのX線結晶構造解析結果を報告した。C_<60>結晶の三次元的な最密充填構造に対し、これらの錯体は、C_<60>分子が2つのET(またはET部)に取り囲まれつつもC_<60>同士の接触を残し、1次元のカラム構造を有している。C_<60>分子は室温で回転がほぼ止まっており、CT相互作用が分子の回転を抑えている重要な要因と考えられる。本年度においてはフラーレンの形状変化が錯形成に及ぼす効果を検討する目的でET_2C_<60>錯体の錯形成をMO的に解釈するとともに、ET分子とC_<70>との錯形成能を検討した。ET_2C_<60>錯体の分子軌道計算はPM3法により行なった。ETのHOMOはTTF部に大きな係数をもち、NHOMOは分子両端の硫黄原子上に大きな係数をもつことから、両方の軌道がともにC_<60>のLUMOと相互作用していると考えれば、2つのET分子が中性の状態よりもさらに折れ曲がり、C_<60>を包み込むような構造をとっている結晶構造とも良く対応することがわかった。これらのことからET分子の構造的柔軟性が、C_<60>のような球状分子の軌道と効率的な相互作用を生じ易くし、錯形成に有利に働いていることが明らかとなった。またフラーレンの形状変化が錯形成に及ぼす効果を検討する目的でラグビ-ボール型分子であるC_<70>との錯体の調製を行ない、C_<70>とETの比が1:1の時、黒色板状晶の良質結晶を得た。結晶構造は現在解析中である。これまでにC_<60>とBEDT-TTF(ET)及びET骨格を2分子有するツインドナーとの電荷移動錯体結晶を得、それらのX線結晶構造解析結果を報告した。C_<60>結晶の三次元的な最密充填構造に対し、これらの錯体は、C_<60>分子が2つのET(またはET部)に取り囲まれつつもC_<60>同士の接触を残し、1次元のカラム構造を有している。C_<60>分子は室温で回転がほぼ止まっており、CT相互作用が分子の回転を抑えている重要な要因と考えられる。本年度においてはフラーレンの形状変化が錯形成に及ぼす効果を検討する目的でET_2C_<60>錯体の錯形成をMO的に解釈するとともに、ET分子とC_<70>との錯形成能を検討した。ET_2C_<60>錯体の分子軌道計算はPM3法により行なった。ETのHOMOはTTF部に大きな係数をもち、NHOMOは分子両端の硫黄原子上に大きな係数をもつことから、両方の軌道がともにC_<60>のLUMOと相互作用していると考えれば、2つのET分子が中性の状態よりもさらに折れ曲がり、C_<60>を包み込むような構造をとっている結晶構造とも良く対応することがわかった。これらのことからET分子の構造的柔軟性が、C_<60>のような球状分子の軌道と効率的な相互作用を生じ易くし、錯形成に有利に働いていることが明らかとなった。またフラーレンの形状変化が錯形成に及ぼす効果を検討する目的でラグビ-ボール型分子であるC_<70>との錯体の調製を行ない、C_<70>とETの比が1:1の時、黒色板状晶の良質結晶を得た。結晶構造は現在解析中である。
KAKENHI-PROJECT-06224205
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高機能性人工核酸を用いた自在なスプライシング制御技術の開発
高機能性人工核酸を用いたスプライシング制御技術を開発するために、まず、蛍光を利用してスプライシングの違いを簡便・迅速に評価できるスクリーニング系を構築した。次に、多数のBNAアンチセンス分子を設計し、構築したスクリーニング系を用いてスプライシングを制御するか否か評価した。その結果、エクソンスキップを促す分子を多数得ると共に、アンチセンス分子の標的として効果的な領域を同定することに成功した。本研究課題の目的は、高機能性人工核酸BNAアンチセンス分子を用いて、前駆体mRNAのスプライシングを制御する技術を開発することである。まず、筋ジストロフィーの原因遺伝子ジストロフィンに対して、エクソンをスキップするBNAアンチセンス分子の開発を行った。標的とするエクソンの領域を網羅的にカバーするアンチセンス分子を多数設計し、エクソンをスキップさせるか否かをH23年度に作製した評価系を用いて検証した。その結果、効果的にエクソンをスキップさせるアンチセンス分子を複数得ることに成功した。これら効果を持つアンチセンス分子の標的配列を精査した結果、ジストロフィン遺伝子の58番目のエクソンのスキップに寄与する領域を3ヶ所に絞り込むことができた。一方、既に構築していた家族性高コレステロール血症の原因遺伝子LDLレセプターのスプライシングの違いを検出できる評価系を用いて、スキップするエクソンを回復させるBNAアンチセンス分子の開発も行った。LDLレセプター遺伝子の配列を参考にエクソンの含有を促進するESE配列を設計し、BNAアンチセンス分子と繋いだ。このアンチセンス分子の効果を検証した結果、エクソンの回復は認められなかった。一方で、予想に反してエクソンのスキップを亢進するアンチセンス分子が数種得られた。このことは、今回用いたESE配列が機能しないだけでなく、エクソン含有に寄与する因子を阻害した可能性が考えられた。今後、ESE配列を改善することでエクソン回復の実現を目指す。以上本研究は、アンチセンス分子を用いたスプライシング制御技術の開発に大きく貢献するものであり、本研究を発展させることでスプライシング異常に起因する疾患を治療できる新たな核酸医薬の開発に繋がることが期待できる。高機能性人工核酸を用いたスプライシング制御技術を開発するために、まず、蛍光を利用してスプライシングの違いを簡便・迅速に評価できるスクリーニング系を構築した。次に、多数のBNAアンチセンス分子を設計し、構築したスクリーニング系を用いてスプライシングを制御するか否か評価した。その結果、エクソンスキップを促す分子を多数得ると共に、アンチセンス分子の標的として効果的な領域を同定することに成功した。本研究課題では、高機能性人工核酸BNAアンチセンス分子を用いて、前駆体mRNAのスプライシングを制御する技術を開発する。今回は、BNAアンチセンス分子によるスプライシングへの影響を解析するための評価系の改良、および、新たな評価系の構築を行うと共に、その評価系を用いてBNAアンチセンス分子の機能評価を行った。我々は既に、蛍光の変化を指標として家族性高コレステロール血症の原因遺伝子LDLレセプター遺伝子のスプライシングの違いを検出できる評価系を構築している。今回この評価系の感度を上げることで、僅かな量のスプライシング変化を検出できるように改良した。具体的には、エクソン間のイントロンの領域を短くし、転写・翻訳の効率を上げることで、従来法よりも蛍光強度を増強させることに成功した。一方、他のスプライシング異常に起因する疾患への応用を目指し、新たに筋ジストロフィーの原因遺伝子ジストロフィン遺伝子に着目した評価系を構築した。まず、蛍光蛋白質DsRed(赤色)とEGFP(緑色)の遺伝子の5'側に、ジストロフィン遺伝子のエクソンを3個挿入したレポーター遺伝子を構築した。この際、上記得られた知見をもとに、蛍光強度が強くなるような工夫を施した。このレポーター遺伝子は、中央のエクソンのスキップの有無でコドンの読み枠がずれるように設計してあり、スプライシングの違いにより異なる蛍光色(赤色もしくは緑色)を発する。本レポーター遺伝子をFlp-In293細胞に導入することで、スプライシング評価系を構築した。次に、種々BNAアンチセンス分子を設計し、エクソンをスキップさせる機能の効果を検証した。その結果、5種類のBNAアンチセンス分子を混合して添加することにより、エクソンスキップが起こり、蛍光の変化が認められた。今後、これら分子の機能を精査することで、新たなアンチセンス医薬品への応用が期待できる。今回、既に構築していた高コレステロール血症に有効なアンチセンス分子探索のためのスクリーニング系を改良することで、より高感度なスクリーニング系の構築に成功した。これにより、今後様々なBNAアンチセンス分子によるエクソンのスキップや回復の効率を細かく評価することが可能になり、本研究課題の目的を達成する上で大きな進歩である。さらに、別の疾患(筋ジストロフィー)を標的としたスクリーニング系の構築も行った。これら異なる評価系を用いることで、スプライシングを制御するための標的候補配列の決定を一般化することが可能になる。これらスクリーニング系を用いて、種々BNAアンチセンス分子を混合して用いることで、効率よくエクソンをスキップさせることに成功し、目的とするスプライシングの自在な制御の実現に向け前進した。また、これら分子をトランスフェクションするための条件や細胞株の検討を行い、内在性の遺伝子に対するスプライシングへの影響を確認するための準備を行った。現在まで、計画通り順調に研究が進んでおり、今後も研究計画調書にそって研究を進めていく。具体的には以下のとおりである。
KAKENHI-PROJECT-23651236
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23651236
高機能性人工核酸を用いた自在なスプライシング制御技術の開発
1.エクソンをスキップさせるBNAアンチセンス分子について、さらにその配列を精査し、効果的なBNAアンチセンス分子の開発を行う。これらBNAアンチセンス分子を用いて、実際に内在的に発現している遺伝子のスプライシングを制御できるか否かを検証する。2.エクソンがスキップするLDLレセプター遺伝子を標的とした評価系を用いて、スキップするエクソンを回復させるBNAアンチセンス分子を選別し、標的とする配列を同定する。さらに、エクソンの回復を高効率で行うために、スプライシング促進因子の結合配列(ESE)を繋いだBNAアンチセンス分子を開発すると共に、内在的に発現している遺伝子に対する効果も確認する。当初の予定通り、人工核酸BNAおよびオリゴヌクレオチドの合成に必要な原料、試薬の消耗品代として使用する。また、これらオリゴヌクレオチド分子の機能を解析するうえで、細胞生物学的手法、分子生物学的手法、生化学的手法を駆使したアッセイが必要なため、それらに関わる細胞培養用培地、血清やプラスチック器具、酵素、キット類の試薬の消耗品を購入する。さらに、得られた研究成果を学会で発表するための国内旅費、および、論文投稿料も必要とする。
KAKENHI-PROJECT-23651236
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23651236
遺伝子ベクター開発のための細胞内ソーティング素子のスクリーニング系の構築
ヒトゲノムプロジェクトの完成を間近にして,遺伝子治療の可能性に対する期待も益々大きくなることが予想される.しかしながら,これまで多数の遺伝子導入方法の開発が行われてきたにもかかわらず,ほとんど全ての研究は最終的な遺伝子発現を指標として行われ,遺伝子自体の細胞内動態はブラックボックスとなっている.我々は「細胞内動態制御シグナルの分子スクリーニングシステムを確立し,人工遺伝子キャリアーの細胞内動態を最適化する」ことが焦眉の急であると考え,そのために細胞内各オルガネラ中の遺伝子量を定量的に測定し,各素過程を速度定数で定量的に評価できるスクリーニング系を確立することを第一目標とした.申請者は,平成12年度に,本特定領域研究にて,PCR法とサザンブロッティング法を用いて核内遺伝子量を定量する新たな手法の開発に成功した(Tachibana, et al., accepted by Pharm. Res.).平成13年度は,以下のような検討を行った.1)細胞内動態の素過程の分子スクリーニングシステムの構築:細胞内の遺伝子の分布は,細胞膜,細胞質、エンドソーム、ライソゾームそして核が主要な分画である.各分画中の遺伝子量は,我々が確立したPCR法とサザンブロッティング法により定量した.この定量法に基づいて,遺伝子の細胞内動態の各素過程を速度定数として定量的に評価し,分子スクリーニングシステムを構築した.2)非ウイルスベクターの細胞内動態の最適化:細胞内動態のそれぞれの素過程について最適化した.例えば,kescに関しては最大になるように,kdeg, lys(ライソゾームでの分解)に関しては最小になるように分子設計を行った.各ステップの促進あるいは抑制は核局在化シグナルのようなシグナルペプチドや特異的脂質のオルガネラ局在化機構を導入することにより検討した.ヒトゲノムプロジェクトの完成を間近にして,遺伝子治療の可能性に対する期待も益々大きくなることが予想される.しかしながら,これまで多数の遺伝子導入方法の開発が行われてきたにもかかわらず,ほとんど全ての研究は最終的な遺伝子発現を指標として行われ,遺伝子自体の細胞内動態はブラックボックスとなっている.我々は「細胞内動態制御シグナルの分子スクリーニングシステムを確立し,人工遺伝子キャリアーの細胞内動態を最適化する」ことが焦眉の急であると考え,そのために細胞内各オルガネラ中の遺伝子量を定量的に測定し,各素過程を速度定数で定量的に評価できるスクリーニング系を確立することを第一目標とした.申請者は,平成12年度に,本特定領域研究にて,PCR法とサザンブロッティング法を用いて核内遺伝子量を定量する新たな手法の開発に成功した(Tachibana, et al., accepted by Pharm. Res.).平成13年度は,以下のような検討を行った.1)細胞内動態の素過程の分子スクリーニングシステムの構築:細胞内の遺伝子の分布は,細胞膜,細胞質、エンドソーム、ライソゾームそして核が主要な分画である.各分画中の遺伝子量は,我々が確立したPCR法とサザンブロッティング法により定量した.この定量法に基づいて,遺伝子の細胞内動態の各素過程を速度定数として定量的に評価し,分子スクリーニングシステムを構築した.2)非ウイルスベクターの細胞内動態の最適化:細胞内動態のそれぞれの素過程について最適化した.例えば,kescに関しては最大になるように,kdeg, lys(ライソゾームでの分解)に関しては最小になるように分子設計を行った.各ステップの促進あるいは抑制は核局在化シグナルのようなシグナルペプチドや特異的脂質のオルガネラ局在化機構を導入することにより検討した.
KAKENHI-PROJECT-13218001
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13218001
赤外と電波の両面から見た惑星磁気圏の観測的研究
1999年8月、「外惑星の磁気圏に関する研究会」(フランス.パリ大学)を機会に、研究分担者と研究協力者が集まり、赤外・電波で観測される木星磁気圏現象につきディスカッション、蓄積データを検討するとともに、今後の観測計画につき打合わせ。それを受け、佐藤とConnerneyは、1999年に4回、20002001年に5回、IRTF望遠鏡を用い、木星オーロラ現象の赤外線観測を実施。今井とReyes, Carrは、1999年9月11月と2000年8月に、赤外線観測と近接した時期の木星電波観測を実施した(UFRO)。これらのデータから特に北半球オーロラ領域の詳細、IFT輝点の精密な位置を得た(赤外線)。電波データ解析もモジュレーション・レーン・モデルに基づき、イオ関連の電波源の精密位置を得た。非イオ電波源に関してもその発生位置に強い制約を与えることに成功している。これらは木星の北極が地球側に傾く19992000年という時期ならではの、観測・研究成果であると言える。以上のデータに基づく成果を論文にまとめ発表。また、アメリカ地球科学連合年会(佐藤、1999年12月)、イギリス王立協会会議(Connerney,2000年2月)、ヨーロッパ地球科学学会(今井、2000年4月)、アメリカ天文学会惑星科学部門(佐藤・Connerney,2000年10月)、ヨーロッパ惑星電波研究会(今井・Connerney、2001年4月)において、電波・赤外観測に基づく研究成果を発表している。今後の展開として、VIP4木星磁場モデルの改良、オーロラ粒子降下フラックス・モデルの発展、モジュレーション・レーン・モデルのさらなる精密化とより多くのデータへの適用、そして赤外線・紫外線・電波のデータを用いた研究を推進してゆく。1999年8月、「外惑星の磁気圏に関する研究会」(フランス.パリ大学)を機会に、研究分担者と研究協力者が集まり、赤外・電波で観測される木星磁気圏現象につきディスカッション、蓄積データを検討するとともに、今後の観測計画につき打合わせ。それを受け、佐藤とConnerneyは、1999年に4回、20002001年に5回、IRTF望遠鏡を用い、木星オーロラ現象の赤外線観測を実施。今井とReyes, Carrは、1999年9月11月と2000年8月に、赤外線観測と近接した時期の木星電波観測を実施した(UFRO)。これらのデータから特に北半球オーロラ領域の詳細、IFT輝点の精密な位置を得た(赤外線)。電波データ解析もモジュレーション・レーン・モデルに基づき、イオ関連の電波源の精密位置を得た。非イオ電波源に関してもその発生位置に強い制約を与えることに成功している。これらは木星の北極が地球側に傾く19992000年という時期ならではの、観測・研究成果であると言える。以上のデータに基づく成果を論文にまとめ発表。また、アメリカ地球科学連合年会(佐藤、1999年12月)、イギリス王立協会会議(Connerney,2000年2月)、ヨーロッパ地球科学学会(今井、2000年4月)、アメリカ天文学会惑星科学部門(佐藤・Connerney,2000年10月)、ヨーロッパ惑星電波研究会(今井・Connerney、2001年4月)において、電波・赤外観測に基づく研究成果を発表している。今後の展開として、VIP4木星磁場モデルの改良、オーロラ粒子降下フラックス・モデルの発展、モジュレーション・レーン・モデルのさらなる精密化とより多くのデータへの適用、そして赤外線・紫外線・電波のデータを用いた研究を推進してゆく。本年度は以下に示したように、研究計画に沿って研究を進めることができた。●8月には、「外惑星の磁気圏に関する研究会」(フランス、パリ大学)を機会に、Carrを除く共同研究者と研究協カ者が集まり、赤外と電波領域で観測される木星磁気圏現象について、ディスカッションを行うことができた。これまでに蓄積されたデータ中の情報を引き出すとともに、秋以降の観測計画について打ち合わせを行った。●佐藤とConnerneyは、7月末8月初旬、9月下旬、10月中旬、11月初旬にIRTF望遠鏡(米国ハワイ州)を訪れ、木星オーロラ現象の赤外線観測を実施した。9月以降の観測は、パリでの打ち合わせに沿って行われ、情報を最大限活かせるように考慮した。画像データの一次処理を終了した。赤外オーロラの詳細と、衛星イオと木星磁場との相互作用について、新しい知見を得ている。●今井とReyes,Carrは、9月11月の間に、赤外線観測と近接した時期の木星電波観測を実施した。電波データの処理と解析を継続中である。●赤外と電波の双方で、徒来の解析結果を論文にまとめた(論文出版の他、パリでの研究会、アメリカ地球科学連合年会、イギリス王立協会会議などで報告)。双方のデータの突き合せ作業も、開始した。本年度は以下に示したように、研究計画に沿って研究を進めることができた。●今井は4月にヨーロッパ地球科学学会において、電波・赤外観測に基づく研究成果を発表。木星デカメートル波のモジュレーションレーンを精密解析し、Non-Io-A電波源のLシェルを高い精度で推定した。●今井は8月に約一ヶ月間フロリダ大学に滞在し、Reyes,Carrとともに木星電波観測を実施した。また、過去の電波データの処理と解析を完了し、それに基づく新しい論文の執筆作業を行なった。
KAKENHI-PROJECT-11694097
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11694097
赤外と電波の両面から見た惑星磁気圏の観測的研究
●佐藤とConnerneyは、11月中旬、12月中旬、2001年1月初旬、2月初旬と下旬、3月中旬にIRTF望遠鏡(米国ハワイ州)を訪れ、木星オーロラ現象の赤外線観測を実施した。11月12月データの一次処理を完了し、特に好条件に恵まれた12月データから、赤外オーロラの詳細と、衛星イオと木星磁場との相互作用について、新しい知見を得た。●佐藤とConnerneyは10月にアメリカ天文学会惑星科学部門において、赤外オーロラ観測に基づく研究成果を発表。物理モデルに基づく木星極域へのオーロラ粒子降下フラックスと高分解能画像データを比較し、木星磁気圏の活動をモニターしている。●Connerneyは11月に東京理科大学を訪れ、佐藤、今井と赤外・電波データの比較、それに基づく新しい論文の執筆作業を行なった。
KAKENHI-PROJECT-11694097
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11694097
量子ビームを用いた無機・有機コンポジット材料の作製と結合状態評価
放射線や放射光を利用した量子ビーム技術を用いて、新たな無機・有機コンポジット材料の合成手法の開発および、無機-有機結合部分の結合状態の評価を行った。シリカやアルミナ、ジルコニアなどの無機基材に、電子線やガンマ線を照射した際に発生する反応活性種に対するスチレンのグラフト重合反応を検討した結果、無機基材の劈開によってグラフト重合が促進することが明らかになり、XPS測定から無機基材に対するグラフト重合は、主として酸素原子を起点として進行していることがわかった。本研究では、放射線を用いた無機・有機コンポジット材料の合成手法の開発および、量子ビーム技術を用いた無機ー有機結合部分の結合状態の解明を目的としている。前年度は、シリカやアルミナなどの無機セラミックスに、電子線を照射した際に発生する反応活性種に対するビニルモノマーのグラフト重合反応を検討した。今年度は、シリカやアルミナを用いたコンポジット材料の合成手法の確立および、結合状態の分析が行いやすい、ジルコニアをセラミック基材とするコンポジット材料の作製と結合状態評価を行った。電子線に比べ簡便で、照射コストの低いγ線を用いてシリカやアルミナに対するグラフト重合反応を検討した結果、電子線を用いた場合と遜色なくグラフト重合が進行することがわかり、表面に高分子の被覆が形成されることをSEMーEDS分析から確認した。熱重量分析からグラフト率を算出し、反応条件を比較した結果、グラフト重合時に反応溶液を激しく撹拌することでグラフト率が上昇することが明らかになった。これは、撹拌時に起こる無機基材の劈開または剥離によってグラフト重合の起点となる活性表面が露出したためと説明される。ジルコニアについても同様の手法でコンポジット材料が作製でき、得られたサンプルのXPS測定を行ったところ、ZrーOーC結合に帰属されるO1sスペクトルにおいて顕著な変化が観測された。一方で、ZrーC結合に関係するZr3dスペクトルには変化が見られなかったことから、グラフト重合は主として酸素原子を起点として進行しているものと考えられる。現在、各原子における電子状態の情報がより詳細に得られる、放射光を用いたXAFS測定の目途をつけることができたため、ZrーC結合の有無やSiーC、AlーCなどの金属ー炭素結合の選択的形成方法について今後研究を進める予定である。放射線や放射光を利用した量子ビーム技術を用いて、新たな無機・有機コンポジット材料の合成手法の開発および、無機-有機結合部分の結合状態の評価を行った。シリカやアルミナ、ジルコニアなどの無機基材に、電子線やガンマ線を照射した際に発生する反応活性種に対するスチレンのグラフト重合反応を検討した結果、無機基材の劈開によってグラフト重合が促進することが明らかになり、XPS測定から無機基材に対するグラフト重合は、主として酸素原子を起点として進行していることがわかった。本研究では、放射線を用いた無機・有機コンポジット材料の合成手法の開発および、量子ビーム技術を用いた無機ー有機結合部分の結合状態の解明を目的としている。今年度は、シリカやアルミナなどのセラミックスに放射線を照射した際に発生する反応活性種の追跡を行い、ビニルモノマーとのグラフト重合反応を検討した。十分に脱気・脱水したシリカおよびアルミナ粉末に対して、真空下110 MGyの電子線を照射した結果、吸収線量の増加に伴って不対電子の存在を示すESRシグナルの強度が増加し、放射線照射によってセラミックス中に反応活性点を誘発できることが明らかになった。それぞれのESRシグナルの強度は吸収線量約5 MGyで飽和した。照射後の粉末に対してスチレンをビニルモノマーとするグラフト重合反応を行い、光学顕微鏡ならびに電子顕微鏡を用いた構造評価を行ったところ、表面に高分子層が形成されていることが確認され、本プロセスは無機・有機コンポジット材料の新たな合成手法となりうることがわかった。反応後の粉末のESRシグナルの強度は反応前に比べ大きく減少しており、電子線照射によってセラミックス中に誘発された反応活性点は、反応等により大部分が消費されたものと考えられる。無機ー有機結合部分の結合状態の確認においては、シリカやアルミナにおける構成元素のケイ素やアルミニウム等の軽元素よりもジルコニア等におけるジルコニウムのような重元素を含むセラミック材料が分析に適していることがわかり、今後はジルコニア等への本手法の展開を図り結合状態の解明を進める予定である。電子線照射によってシリカやアルミナ等のセラミックス中に反応活性点を誘発できることを明らかにすることができ、また、反応活性点を用いた重合反応が進行することを確認できた。無機ー有機結合部分の結合状態の確認においては進展が見られていないが、ジルコニア等の重元素を含むセラミック材料が分析に適していることがわかっており、今後明らかにできると考えている。前年度は電子線を用いてセラミックス中に反応活性点を誘発させていたが、より簡便で、低コストのγ線を用いて同様の手法が確立できないか検討予定である。放射光を用いた結合状態の確認では、ジルコニアにおけるジルコニウムのような重元素を含むセラミック材料を用いることで明確な差異が確認できることがわかったので、ジルコニアを基材とする無機・有機コンポジット材料の作製と評価を行う。ジルコニアなどのセラミック基材および特殊試薬の購入、ESR管等のガラス器具の購入および不活性ガスの購入に使用する。また、学会参加費並びに成果発表、研究打ち合せ、測定の際の旅費として使用する。
KAKENHI-PROJECT-23656593
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ワークフローシステムを中核とした造船設計システムの実務と教育への展開
知識を内蔵するワークフローシステムを基盤技術として以下を行った。(1)協調設計現場での組織構造に対応する知識の抽出を行い、その運用機能をグループウェアを利用して実装する。(2)造船設計教育の本質である船体形状と配置設計への市販CADを用いた展開を行うことにより、現場での設計知識システムと造船設計教育システムとを完成させる。これにより、設計者の知識の記述や設計情報の効率的な管理が可能として、先端的な協調作業支援機能を実現する。知識を内蔵するワークフローシステムを基盤技術として以下を行った。(1)協調設計現場での組織構造に対応する知識の抽出を行い、その運用機能をグループウェアを利用して実装する。(2)造船設計教育の本質である船体形状と配置設計への市販CADを用いた展開を行うことにより、現場での設計知識システムと造船設計教育システムとを完成させる。これにより、設計者の知識の記述や設計情報の効率的な管理が可能として、先端的な協調作業支援機能を実現する。過去の研究テーマで開発したShareFastシステムは、組織による協調設計現場での知識の抽出とその利用に関する実務システムおよびワークフローをガイダンスとして学生が自分で設計をおこなう造船設計教育システムとして利用できる。本研究は、ShareFastシステムに2つの拡張を行うことを目的とする。(1)ワークフローシステムの中核部分をさらに拡張して、実用上必要になる組織構造に対応する知識の抽出を行い、その運用機能をグループウェアを利用して実装すること。具体的には設計チームの複数の設計者間でのコラボレーション管理機能を開発実装である。(2)造船設計教育システムに、造船設計教育の本質である船体形状と配置設計への市販CADを用いた展開を行うこと。平成20年度は、(1)について現在造船所で行われている組織体系と設計過程での組織ごとの機能とコラボレーションの現状調査を行った。調査結果から、造船所の組織と作業工程のモデリング、作業工程のクリティカルパスを最小化する最適作業計画立案エンジンの開発、作業ワークフローに基づいた組織メンバーへの作業指示システムの開発、を行った。これらの3つの成果から、組織メンバーのスキルレベルにより組織全体のパフォーマンスがどのように変化するかを定量的にシミュレートできることを示し、組織全体のパフォーマンス、すなわちコラボレーション作業のパフォーマンスを評価する仕組みを構築した。次年度以降は、作業指示システムがグループウェアとして組織のメンバーへのユーザインタフェースとなるため、その充実を進めコラボレーション支援プラットフォームを実現する。(2)については(1)と並行して国内の複数の造船所および造船CADの現状調査を行った。従来の研究では基本設計等の上流が設計教育の中心となっていたが、詳細設計から生産設計を含めて調査対象として教育コンテンツの検討を行った。知識を内蔵するワークフローシステムを基盤技術として、(1)協調設計現場での組織構造に対応する知識の抽出を行い、その運用機能をグループウェアを利用して実装する。(2)造船設計教育の本質である船体形状と配置設計への市販CADを用いた展開を行うことにより、現場での設計知識システムと造船設計教育システムとを完成させる。これにより、設計者の知識の記述や設計情報の効率的な管理が可能になり、先端的な協調作業支援機能が実現できる。ナレッジマネジメント、コラボレーション支援という組織内ITシステムを検証するための実験プラットフォームを構築し、産業組織を効率的に運用ができることを検証する。平成21年度は、現状調査による全体システム構想の確定を受けて、実装作業とプロトタイプシステムの開発を行った。組織による協調設計現場での知識の抽出とその利用に関する実務システムについて、LotusNotesとShareFastを統合し、実用に耐えるコラボレーションプラットホームを開発した。また、開発したプラットホーム上で工場の作業をフロー形式で記述し、ルールベースを用いて分析したところ、チームの負荷が高いタイミング等を発見できた。次年度は、以下の項目についてさらに検討を深めて、ソフトウェアの仕様を決定し、実装を進める必要があることがわかった。(1)設計手順の整理(2)設計知識および工場などの現場での知識の収集(3)CADシステムとの連携(1)(2)については、ShareFastシステムを用いることで得られた知識をフロー形式で記述し、また関連するデータも同一システム上に格納する。知識、データを同一の情報システムで表現するため、オントロジー等の標準化された知識記述言語の活用も検討する。また、製造業・造船業の実務での利用を考えた際には、(3)の検討は必須である。知識を内蔵するワークフローシステムを基盤技術として(1)協調設計現場での組織構造に対応する知識の抽出を行い、その運用機能をグループウェアを利用して実装する。(2)造船設計教育の本質である船体形状と配置設計への市販CADを用いた展開を行うことにより、現場での設計知識システムと造船設計教育システムとを完成させる。これにより、設計者の知識の記述や設計情報の効率的な管理が可能になり、先端的な協調作業支援機能が実現できる。ナレッジマネジメント、コラボレーション支援という組織内ITシステムを検証するための実験プラットフォームを構築し、産業組織を効率的に運用ができることを検証する。組織による協調設計現場での知識の抽出とその利用に関する実務システムについて、Lotus NotesとShare Fastを統合して開発したコラボレーションプラットフォームを利用した。開発したプラットフォーム中では、工場での情報収集により記述した標準的な作業手順と各種センサからの時系列センシングデータを多次元行列により表現し、客観的な比較分析が行われ、工場での計測実験の比較分析結果からは工程に関する知見が得られることを実証した。以上から、設計生産の知識をワークフロー形式で記述し、コラボレーションに関するセンシングデータの管理を行い、ワークフローとセンシングデータの比較分析からさらに知識を獲得する手法の構築を行った。
KAKENHI-PROJECT-20246123
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ワークフローシステムを中核とした造船設計システムの実務と教育への展開
また、さらに実用性を向上させるため、プラットフォームに作業プロセスの進捗情報の管理機能も実装し、知識だけではなくワークフローの管理も可能とした。
KAKENHI-PROJECT-20246123
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追波中の船舶復原性の指標に関する調査研究
大きな追波中で船舶が転覆に至る原因の指標とその基準値を分析的に明らかにすることを目的とし、平成4年度から2年間にわたり、1)斜め追波中の船の転覆とその原因の分析2)小型客船の横揺減哀力係数並びに有効波傾斜係数の推定法3)転覆確率を用いた船舶の復原性評価4)転覆シミュレーター5)高速艇の横安定性の改良6)波浪中の操縦運動を記述する新しい座標系とその運動方程式7)インパルス応答関数とストリップ法を用いた運動方程式8)インパルス応答関数を用いた規則波中操縦運動9)孤立的非対称波浪の波形表現と横揺特性,10)低速時における主船体操縦性流体力の数学モデルなどの題目について研究を実施し、その成果を以下のようにとりまとめた。すなわち、1)大波高の追波及び斜め追波状態で航行している船の運動をシミュレーションするための運動方程式とその流体力推定法を理論及び実験の両面からその実用化を検討した。2)種々の船型、海象条件に対する船の追波中挙動を数値シミュレーションにより求め、追波中における実用的指標を提案した。3)コンピュータグラフィックスにより転覆の模様を再現できる転覆シミュレータを作製し、ある提案された転覆危険ゾーンを操船しながら確認できることを示した。4)小型船舶の復原性基準に用いられている、横揺減衰係数並びに有効波傾斜係数の推定法について分析的に検討するとともに、ハードチャイン艇,内航貨物船に対する復原性規則の評価法として転覆確率を用いる方法を提案した。6)高速艇の横不安定現象は船速が大きいほど、またGMが小さいほど起こりやすく、波返し材が横不安定現象の改善に著しい効果のあることを模型試験により確認した。大きな追波中で船舶が転覆に至る原因の指標とその基準値を分析的に明らかにすることを目的とし、平成4年度から2年間にわたり、1)斜め追波中の船の転覆とその原因の分析2)小型客船の横揺減哀力係数並びに有効波傾斜係数の推定法3)転覆確率を用いた船舶の復原性評価4)転覆シミュレーター5)高速艇の横安定性の改良6)波浪中の操縦運動を記述する新しい座標系とその運動方程式7)インパルス応答関数とストリップ法を用いた運動方程式8)インパルス応答関数を用いた規則波中操縦運動9)孤立的非対称波浪の波形表現と横揺特性,10)低速時における主船体操縦性流体力の数学モデルなどの題目について研究を実施し、その成果を以下のようにとりまとめた。すなわち、1)大波高の追波及び斜め追波状態で航行している船の運動をシミュレーションするための運動方程式とその流体力推定法を理論及び実験の両面からその実用化を検討した。2)種々の船型、海象条件に対する船の追波中挙動を数値シミュレーションにより求め、追波中における実用的指標を提案した。3)コンピュータグラフィックスにより転覆の模様を再現できる転覆シミュレータを作製し、ある提案された転覆危険ゾーンを操船しながら確認できることを示した。4)小型船舶の復原性基準に用いられている、横揺減衰係数並びに有効波傾斜係数の推定法について分析的に検討するとともに、ハードチャイン艇,内航貨物船に対する復原性規則の評価法として転覆確率を用いる方法を提案した。6)高速艇の横不安定現象は船速が大きいほど、またGMが小さいほど起こりやすく、波返し材が横不安定現象の改善に著しい効果のあることを模型試験により確認した。追波航行時における船の転覆原因の運動力学的解明と追波中での安全基準の策定を目的として、本研究課題においては、現在までに実用化されている船体運動に関する理論及び実験法を発展的に応用して、大きな追波中で船舶が転覆に至る原因の指標とその基準値を分析的に明らかにすることを目的としている。そのために、本年度は、次の研究を実施した。すなわち、1)大波高の追波及び斜め追波状態で航行している船の運動をシミュレーションするための運動方程式とその流体力推定法を理論及び実験の両面からその利用化を検討した。2)パラメトリック・レゾナンスとサーフライデング及びブローチングを誘発する原因となる船型要素及びその運動力学的関係をシミュレーション計算及びその運動の映像化表示によって分析的検討し、その指標となる項目を抽出しながら検討した。3)種々の船型、海象条件に対する船の追波中挙動を数値シミュレーションにより求め、その結果をとりまとめて、追波中における実用的指標を提案した。また、ドイツ、ポーランドなどで提案されている指標との比較検討を行なった。4)小型船舶の復原性基準に用いられている、横揺減衰係数並びに有効波傾斜係数の推定法について分析的に検討するとともに、小型ハードチャイン艇に対する復原性規則の評価法として転覆確率を用いる方法を提案した。追波航行時における船の転覆原因の運動力学的解明と追波中での安全基準の策定を本研究課題の目的としている。そこで、現在までに実用化されている船体運動に関する理論及び実験法を発展的に応用して、大きな追波中で船舶が転覆に至る原因の指標とその基準値を分析的に明らかにするための研究を実施した。得られた研究実績の概要は以下の通りである。すなわち、1)大波高の追波及び斜め追波状態で航行している船の運動をシミュレーションするための運動方程式とその流体力推定法を理論及び実験の両面からその実用化を検討した。2)種々の船型、海象条件に対する船の追
KAKENHI-PROJECT-04302036
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04302036
追波中の船舶復原性の指標に関する調査研究
波中挙動を数値シミュレーションにより求め、その結果をとりまとめて、追波中における実用的指標を提案した。3)コンピュータグラフィックスにより転覆の模様を再現できる転覆シミュレータを作製した。これを用いることにより、ある提案された転覆危険ゾーンを操船しながら確認できることを示した。4)小型船舶の復原性基準に用いられている、横揺減衰係数並びに有効波傾斜係数の推定法について分析的に検討するとともに、内航貨物船に対する復原性規則の評価法として転覆確率を用いる方法を提案した。6)高速艇の横不安定現象は船速が大きいほど、またGMが小さいほど起こりやすいことを模型試験により確認した。また、波返し材が横不安定現象の改善に著しい効果のあることが分かった。
KAKENHI-PROJECT-04302036
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深層学習を用いたランダム電子系における量子相転移の研究
2018年度は,畳み込みニューラルネットワークを使った深層学習だけでなく,recursive neural networkを用いた量子カオス系のダイナミクスの研究も行った。ここでは量子カオスのモデルとしてkicked rotor(撃力に駆動された回転子)を考えたが,これは撃力項に変調を加えると高次元のアンダーソン転移を記述する有効モデルとなることが知られている。この系の解析により,高次元のアンダーソン金属ー絶縁体を研究し,高次元での量子相転移に対して,ここで開発した手法が有効であることを実証した。またrecursive neural networkも同様に相図を決定できることを示した。以上の研究とともに3次元のトポロジカル絶縁体,ワイル半金属の相図を決定した。この研究の初期の段階では実空間の波動関数を解析していたが,今回はkー空間の波動関数を考察し,より鮮明な相図が描けることを実証した。特に表面状態の有無だけでは区別がつかない強いトポロジカル絶縁体と弱いトポロジカル絶縁体の見分けがkー空間では可能となることを実証した。これに加えてkー空間の解析により,同じワイル半金属でもワイルノードの対の数が異なる相を見分けることに成功した。また,韓国,およびドイツでの国際ワークショップで招待講演を行い,日本物理学会主催の科学セミナーで講演,日本物理学会のシンポジウムで講演,雑誌「固体物理」に解説を発表するなど,本研究の成果公表に努めた。また,人工知能学会で招待講演を行い,この研究が学際的なものになるよう努めた。当初の計画を超えて,4次元のアンダーソン転移,フーリエ空間での波動関数の解析を行い,この科研費で提案した手法の有効性を実証できた。2年にわたってこの研究を推し進めてきたが,成果が十分出ており,本課題に関する招待論文も依頼されている。また,この研究テーマに直接関係している論文が,この3月,日本物理学会論文賞を受賞した。これを機会に何がわかって,今後何をする必要があるかを検討する。科研費交付後は,このアイディアをさらに発展させ,3次元の多層の畳み込みニューラルネットワークを使った画像認識により,3次元のアンダーソン転移を研究し,これにより量子相転移の相図が様々な場合に描けることを実証した。また,アンダーソンモデルで訓練したニューラルネットワークは,ガウス型,コーシー型の確率密度を持つランダムポテンシャルの場合のアンダーソンモデルや,量子パーコレーションにおける相図を描くことができることを実証した。この研究のアイディアを,科研費申請直後に実践し,科研費交付前に2次元の量子相転移,および2次元画像処理の3次元系への応用を完成させた。2018年度は,畳み込みニューラルネットワークを使った深層学習だけでなく,recursive neural networkを用いた量子カオス系のダイナミクスの研究も行った。ここでは量子カオスのモデルとしてkicked rotor(撃力に駆動された回転子)を考えたが,これは撃力項に変調を加えると高次元のアンダーソン転移を記述する有効モデルとなることが知られている。この系の解析により,高次元のアンダーソン金属ー絶縁体を研究し,高次元での量子相転移に対して,ここで開発した手法が有効であることを実証した。またrecursive neural networkも同様に相図を決定できることを示した。以上の研究とともに3次元のトポロジカル絶縁体,ワイル半金属の相図を決定した。この研究の初期の段階では実空間の波動関数を解析していたが,今回はkー空間の波動関数を考察し,より鮮明な相図が描けることを実証した。特に表面状態の有無だけでは区別がつかない強いトポロジカル絶縁体と弱いトポロジカル絶縁体の見分けがkー空間では可能となることを実証した。これに加えてkー空間の解析により,同じワイル半金属でもワイルノードの対の数が異なる相を見分けることに成功した。また,韓国,およびドイツでの国際ワークショップで招待講演を行い,日本物理学会主催の科学セミナーで講演,日本物理学会のシンポジウムで講演,雑誌「固体物理」に解説を発表するなど,本研究の成果公表に努めた。また,人工知能学会で招待講演を行い,この研究が学際的なものになるよう努めた。当初の計画を超えて,4次元のアンダーソン転移,フーリエ空間での波動関数の解析を行い,この科研費で提案した手法の有効性を実証できた。これまでに開発した手法を今後も様々な系に応用していく。また,これまでは固有関数の解析を行ってきたが,今後はダイナミクスの解析もrecurrent neural networkの方法で行いたい。この研究が有効であることは,すでに発表している3つの論文で実証済みである。一方,なぜこの手法がうまくいくのかは明らかでない。これは畳み込みニューラルネットワークを使った研究に共通した悩みで,この手法は結果はもっともらしいが,なぜかうまくいくかはわからないブラックボックスである。今後はこの方法がうまくいく理由を明らかにして行きたい。2年にわたってこの研究を推し進めてきたが,成果が十分出ており,本課題に関する招待論文も依頼されている。また,この研究テーマに直接関係している論文が,この3月,日本物理学会論文賞を受賞した。これを機会に何がわかって,今後何をする必要があるかを検討する。建物の改修のため,研究室を一時的に移転することとなった。その為,電流消費を抑えるため新規に計算機を複数買うのではなく,機械学習用のCPU,メモリ,グラフィックボードの増強に力を入れることにした。研究室の引っ越しがあり,コンピュータをアップグレードすることを控えたとともに,国際会議が招待講演となり費用が抑えられた。この分は本年度にコンピュータをアップグレードするとともに,より広く学会に参加して成果の発表を行う。
KAKENHI-PROJECT-17K18763
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K18763
社会的企業の発展的持続性に資する協働システムの構築モデル
博士論文を執筆し、博士論文構想発表会および公開学術講演会を行い、博士(社会福祉学)を授与された。また研究成果は論文2本、口頭発表2回にて発信した。なお、博士論文タイトルは、「地域福祉推進における生活課題解決に向けた実践方法論研究ー社会的企業実践を手がかりにー」である。研究成果発信の具体的内容は以下のとおりである;1行政と住民との協働方法について、2017年6月12日午前、日本社会事業大学で開催された日本地域福祉学会第30回記念大会において、「地方自治体(職員)と住民との協働のシステム化に向けた促進要因-ブラジル・クリチバ市における現状の分析からー」との題で口頭発表を行った。2社会的企業に関する世界の研究潮流について、2017年9月11日、佛教大学にて開催された日本社会福祉学会第64回秋季大会において、「社会的企業研究の潮流2013年世界会議文献から」と題して口頭発表を行い、文献研究の総まとめを行った。3組織間協働の持続発展に向けたソーシャルワーク機能に関して、『評論・社会科学』誌上で「組織間協働に資するソーシャルワーク機能ー滋賀の縁(えにし)創造実践センターを手がかりにー」と題した論文を発表した。4包括的支援体制構築に資する組織間協働のあり方について、『同志社大学大学院社会福祉学論集』誌上において、「包括的支援体制構築におけるソーシャルワークの展開ー社会福祉法人を中心とした組織間協働のあり方ー」と題した論文を発表した。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。研究課題遂行に向け必要な調査を完了させ、その成果を論文4本(うち査読あり3本)、口頭発表4回(うち英語による発表1回ーポスター発表)にて発信した。結果として、同志社大学大学院博士論文提出要件を満たし、既に博士論文の執筆に入っている。以下、その具体的内容について述べる。(1)社会的企業に関する世界会議(2009年、2011年分)文献レビューの結果を英語論文(『同志社大学大学院社会福祉学専攻院生論集』)として発表した。さらに、2013年分文献レビューも完了した。第5回EMES(ヨーロッパ社会的企業研究ネットワーク)世界会議(2015年6月30日7月3日、フィンランド、ヘルシンキ)にて、英語によるポスター発表を行い、第29回日本地域福祉学会(2015年6月20ー21日、東北福祉大学)にて、口頭発表を行った。(2)2014年度までに蓄積した質的データを、社会的企業と家族との協働という側面から再分析した結果を、口頭発表(日本社会福祉学会第63回秋季大会、2015年9月19ー20日、久留米大学)を行うとともに、論文(『関西社会福祉研究』に採用決定ー査読ありー)として発表した。(3) 1ブラジル調査(2015年2ー3月)で得られたデータを分析し、住民との協働において地方自治体(職員)が持つべき戦略的視点を明らかにし、論文(『日本の地域福祉』に採用決定ー査読ありー)として発表した。また、2滋賀県で展開されている『滋賀の縁創造実践センター(およそ200の社会福祉法人や団体が加盟する組織間連携組織)』にて、民間と民間の協働についての調査を行った。具体的には、4名のセンター正副代表理事へのインタビュー調査を行い、その結果を2015年12月19日開催の近畿地域福祉学会平成27年度大会にて口頭発表するとともに、論文(『地域福祉研究』に採用決定ー査読あり)として発表した。研究課題遂行に向け、1当初の計画より早く必要な調査を完了させ、2その成果を昨年度だけで論文4本(うち査読あり3本)、口頭発表4回(うち英語による発表1回ーポスター発表)にて発信し、3結果として、同志社大学大学院博士論文提出要件を満たし、当初計画より早期に博士論文の執筆に入っていることから、当初の計画以上に進展していると考える。具体的な研究業績(論文)は以下のとおりである。論文i「障害者の自立を支援する事業体と障害者の家族との協働ー社会的企業概念を手がかりにー」『関西社会福祉研究』第2号、pp39-52、2016年(査読あり)、ii「社会福祉法人による「地域における公益的な活動」に向けた協働の成立要因ー滋賀の縁(えにし)創造実践センターへの質的調査からー」『地域福祉研究』第4号、pp19-29、2016年(査読あり)、iii「住民との協働における地方自治体(職員)が持つべき戦略的視点ーブラジル・クリチバ市における開発的実践の分析からー」『日本の地域福祉』第29巻、pp79-92、2016年(竿毒あり)、iv"Trends in the development of Participatory Governance Within Social Enterprise Research in 2009 and 2011; Literature Review"『同志社社会福祉学専攻院生論集』第30号、pp10ー22、2016年(査読無し)博士論文を執筆し、博士論文構想発表会および公開学術講演会を行い、博士(社会福祉学)を授与された。また研究成果は論文2本、口頭発表2回にて発信した。なお、博士論文タイトルは、「地域福祉推進における生活課題解決に向けた実践方法論研究ー社会的企業実践を手がかりにー」である。研究成果発信の具体的内容は以下のとおりである;
KAKENHI-PROJECT-15J02758
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社会的企業の発展的持続性に資する協働システムの構築モデル
1行政と住民との協働方法について、2017年6月12日午前、日本社会事業大学で開催された日本地域福祉学会第30回記念大会において、「地方自治体(職員)と住民との協働のシステム化に向けた促進要因-ブラジル・クリチバ市における現状の分析からー」との題で口頭発表を行った。2社会的企業に関する世界の研究潮流について、2017年9月11日、佛教大学にて開催された日本社会福祉学会第64回秋季大会において、「社会的企業研究の潮流2013年世界会議文献から」と題して口頭発表を行い、文献研究の総まとめを行った。3組織間協働の持続発展に向けたソーシャルワーク機能に関して、『評論・社会科学』誌上で「組織間協働に資するソーシャルワーク機能ー滋賀の縁(えにし)創造実践センターを手がかりにー」と題した論文を発表した。4包括的支援体制構築に資する組織間協働のあり方について、『同志社大学大学院社会福祉学論集』誌上において、「包括的支援体制構築におけるソーシャルワークの展開ー社会福祉法人を中心とした組織間協働のあり方ー」と題した論文を発表した。今後は、以下計画のもとに、研究を推進する。・協働システムの構築モデルの提示昨年度で課題遂行に向けた調査・分析は終了している。既に、7月半ばに予定される博士論文草稿提出に向け、執筆作業に入っている。その中では、これまでの研究成果の分析・統合を行い、社会的企業による、家族、機関、行政との協働システムの構築モデルの提示に向けた作業を行っている。草稿提出後の7月20日には、博士論文予備発表会にて成果発表を行う。その後、専攻内査読を経て、論文の修正を行い、11月末に博士論文の最終稿を提出する予定である。なお、これまでの調査研究成果の一部は、6月12日午前、日本地域福祉学会第30回記念大会(於:東京都、日本社会事業大学)にて、「地方自治体(職員)と住民との協働のシステム化に向けた促進要因-ブラジル・クリチバ市における現状の分析からー」との題で口頭発表を行う。また、調査研究の基盤となる文献研究もほぼ終了している。社会的企業研究を牽引するEMES(ヨーロッパ社会的企業研究ネットワーク)世界会議文献のレビューを完了させた。2013年に開催された第4回世界大会分47本の論文レビューの成果について、9月10ー11日に京都府佛教大学で開催される、日本社会福祉学会第64回秋季大会にて、「社会的企業研究の潮流ー2013年世界会議文献レビューからー」との題で口頭発表を行う。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-15J02758
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15J02758
マッシブな解ける模型と無限次元対称性
「マッシブな解ける模型(場の理論の模型及び格子模型)の保存量や可解性を保証しているのはどういう対称性か?」という問いに答えるべく,無限次元対称性や可解格子模型などについて研究を行ってきた。Yang-Baxter方程式の楕円関数解をBoltzmann重率として持つ面型と頂点型の可解格子模型に対応して,楕円型量子群には面型と頂点型の2種類あるが,エネルギー固有値の数え方が前者はホモジーニアスグレーディング、後者はプリンシパルグレーディングという違いがある。面型の可解格子模型に対しては自由場表示が得られている場合があるが、頂点模型に対しては直接的な自由場表示が得られていなかったので,そのヒントを得るためにプリンシパルグレーデイングの(量子)アファインLie代数を調べた。プリンシパルグレーディングのsl^^^_2の自由場表示を構成し,そのCartan部分を剥がしたLepowsky-WilsonのZ代数が変形Virasoro代数の極限として得られる事を見出した。言い換えると変形Virasoro代数はZ代数のq-変形とみなす事ができるという事であり、これを手掛かりにした発展が期待できる。更にランクが高い場合にも,sl_N版のZ代数と変形W_N代数との関連を、変形W_N代数の定義関係式を具体的に求める事により明らかにする事ができた。Calogero-Moser模型は,超対称Yang-Mills理論のSeiberg-Witten理論との関連,(変形)Virasoro代数・W代数との関連,など古典論・量子論共に興味深い性質を持った可解模型であり,古典論に於いても様々な量が'整数値に量子化'されている事が最近指摘された。そこで全ての有限ルート系に対してこの模型の古典平衡点及びそれから作られるCoxeter(Weyl)群不変な多項式を考察し,多項式の係数の'整数性'を確認した。「マッシブな解ける模型(場の理論の模型及び格子模型)の保存量や可解性を保証しているのはどういう対称性か?」という問いに答えるべく,無限次元対称性や可解格子模型などについて研究を行ってきた。Yang-Baxter方程式の楕円関数解をBoltzmann重率として持つ面型と頂点型の可解格子模型に対応して,楕円型量子群には面型と頂点型の2種類あるが,エネルギー固有値の数え方が前者はホモジーニアスグレーディング、後者はプリンシパルグレーディングという違いがある。面型の可解格子模型に対しては自由場表示が得られている場合があるが、頂点模型に対しては直接的な自由場表示が得られていなかったので,そのヒントを得るためにプリンシパルグレーデイングの(量子)アファインLie代数を調べた。プリンシパルグレーディングのsl^^^_2の自由場表示を構成し,そのCartan部分を剥がしたLepowsky-WilsonのZ代数が変形Virasoro代数の極限として得られる事を見出した。言い換えると変形Virasoro代数はZ代数のq-変形とみなす事ができるという事であり、これを手掛かりにした発展が期待できる。更にランクが高い場合にも,sl_N版のZ代数と変形W_N代数との関連を、変形W_N代数の定義関係式を具体的に求める事により明らかにする事ができた。Calogero-Moser模型は,超対称Yang-Mills理論のSeiberg-Witten理論との関連,(変形)Virasoro代数・W代数との関連,など古典論・量子論共に興味深い性質を持った可解模型であり,古典論に於いても様々な量が'整数値に量子化'されている事が最近指摘された。そこで全ての有限ルート系に対してこの模型の古典平衡点及びそれから作られるCoxeter(Weyl)群不変な多項式を考察し,多項式の係数の'整数性'を確認した。「マッシブな解ける模型(場の理論の模型及び格子模型)の保存量や可解性を保証しているのはどういう対称性か?」という問いに答えるべく、無限次元対称性や可解格子模型などについて研究を行っている。可解格子模型の典型例として、Lie代数sl_2に基づく模型であるABF模型と8頂点模型の二つがあるが、エネルギー固有値の数え方が前者ではホモジーニアスグレーディング、後者ではプリンシパルグレーディングという違いがある。ホモジーニアスグレーディングのsl_2(及びその量子版、楕円版)については自由場表示が知られており、ABF模型の頂点演算子を自由場表示する際に重要な役割を果たしていた。一方、プリンシパルグレーディングについては、q-変形する以前のsl_2についてさえ一般レベルの自由場表示が知られていなかった。今回これを考察し、うまい自由場表示を得る事が出来た。プリンシパルグレーディングのsl_2のCartan部分を剥した代数はLepowsky-WilsonのZ代数と呼ばれているが、興味深い事にZ代数は変形Virasoro代数の極限として得られる事が分かった。これは逆に言うと、Z代数のq-変形が変形Virasoro代数で与えられるという事であり、今後これを手掛かりにして発展が期待される。実際白石潤一氏により変形Z代数と柏原-三輪模型との関係が指摘され、変形Z代数の表現論を調べた所、状態空間の指標が一致している事がほぼ分かった。sl_2に基づくZ代数と変形Virasoro代数が関係しているならば、sl_N版のZ代数と(A_<N-1>型の)変形W代数とが関係していると期待出来るが、実際そうなっているようである。但し、自由場表示した場合には、Fock空間上の演算子として成立しているのではないので(コホモロジーを取った既約表現空間上で成立していると思われる)、sl_2に比べて多少複雑な状況になっている。
KAKENHI-PROJECT-12640261
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12640261
マッシブな解ける模型と無限次元対称性
「マッシブな解ける模型(場の理論の模型及び格子模型)の保存量や可解性を保証しているのはどういう対称性か?」という問いに答えるべく、無限次元対称性や可解格子模型などについて研究を行っている。前年度の研究で、プリンシパルグレーディングの<sl>^^^^_2からCartan部分を剥した代数であるLepowsky-WilsonのZ代数が変形Virasoro代数のある極限として得られる事、つまり、Z代数のq-変形が変形Virasoro代数で与えられるという事が分かったが、今年度はその高ランク版を考察した。プリンシパルグレーディングの<sl>^^^^_NからCartan部分を剥した代数であるsl_N版のZ代数が変形W_N代数のある極限として得られる事を示すために、まず変形W_N代数の定義関係式の具体形を再考察する事から始めた。変形W_N代数の定義関係式の具体形は、(i, j)(1【less thanor equal】i【less thanor equal】j【less than or equal】N)に対してi=1, 2(jは任意)のみが、報告者達による自由場表示を用いた計算により得られていた。しかしながら自由場表示を用いる計算方法はi【greater than or equal】3(jは任意)の場合には絶望的であるため、今回は別の方法を考案した。それはフュージョンを用いる方法で、これにより全ての(i, j)に対して、定義関係式の具体形を得る事ができた。変形W_N代数はqとtという2つのパラメーターを持っているが、t=e^<-2πi/N>q^<k+N/N>と選んでq→1の極限を考えると、この定義関係式の具体形を用いる事により、変形W_N代数がsl_N版のZ代数に帰着する事を示す事ができた。つまり、パラメーター(q, t)(t=e^<-2πi/N>q^<k+N/N>を持つ変形W_N代数はsl_N版のZ代数のq変形と見倣す事ができるという訳である。但し、自由場表示した場合には、Fock空間上の演算子として成立しているのではないので(相関関数のレベル又はコホモロジーを取った既約表現空間上で成立していると思われる)、<sl>^^^^_2に比べて多少複雑な状況になっている。「マッシブな解ける模型(場の理論の模型及び格子模型)の保存量や可解性を保証しているのはどういう対称性か?」という問いに答えるべく,無限次元対称性や可解格子模型などについて研究を行っているが、今年度はこれらに密接に関連した可解模型であるCalogero-Moser模型についての研究を中心に行った。Calogero-Moser模型は古くから研究が行われているが,超対称Yang-Mills理論の厳密解を与えるSeiberg-Witten理論との関連,(変形)Virasoro代数・W代数との関連,など古典論・量子論共に興味深い性質を持った模型である。
KAKENHI-PROJECT-12640261
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12640261
診断マーカー感度向上に向けた高親和性抗体迅速単離法の開発
抗原特異的ウサギモノクローナル抗体(RaMoAbs)は親和性及び特異性が非常に高く特異的抗原の検出に非常に有用であることから、迅速かつ網羅的なRaMoAbsの作製法が望まれている。今回我々は、抗原特異的RaMoAbsの迅速な作製法の開発に取り組んだ。その結果、抗原で免疫したウサギ由来末梢血リンパ球を調整してから7日以内に親和性の高い抗原特異的RaMoAbsを網羅的に得る事に成功した。我々の確立した迅速かつ網羅的なRaMoAbsの新しい作製法は、研究用途のみならず、臨床用途にも寄与することが期待される。抗原特異的ウサギモノクローナル抗体(RaMoAbs)は親和性及び特異性が非常に高く特異的な抗原を検出する上で非常に有用であることから、迅速かつ網羅的なRaMoAbsの作製法が望まれている。我々が以前に開発し報告したISAAC法、マイクロウエルアレイチップを用いてヒト末梢血由来抗原特異的抗体分泌細胞を検出しヒトモノクローナル抗体を迅速かつ網羅的に作製する方法を今回ウサギ由来リンパ球に応用させた。ウサギを抗原で計4回免疫し、その後採血を行いリンパ球を単離した。単離したリンパ球を用いISAAC法により抗原特異的抗体産生細胞の検出を行った。目的の細胞を採取し単一細胞RT-PCRにより抗体遺伝子の可変領域を増幅させ、ウサギ抗体発現プラスミドに組み込み、作製したそのプラスミドをCHO-S細胞に導入することで細胞培養液中にリコンビナント抗体を得た。得られたリコンビナント抗体が抗原と結合するかをELISAにより確認を行ったところ、確かに結合することが示された。これら抗体の親和性を測定した結果、多くは10の-12乗Mという非常に親和性の高い抗体であることが示された。更にISAACによる抗原特異的抗体産生細胞を検出する方法を応用することで、非常に親和性の高い抗体を効率よく選別する事、ならびにリン酸化ペプチド特異的抗体産生細胞を非常に効率よく検出することに成功した。我々の確立した迅速かつ網羅的なウサギモノクローナル抗体の新しい作製法は、研究用途のみならず、臨床用途にも寄与することが期待される。抗原特異的ウサギモノクローナル抗体(RaMoAbs)は親和性及び特異性が非常に高く特異的抗原の検出に非常に有用であることから、迅速かつ網羅的なRaMoAbsの作製法が望まれている。今回我々は、抗原特異的RaMoAbsの迅速な作製法の開発に取り組んだ。その結果、抗原で免疫したウサギ由来末梢血リンパ球を調整してから7日以内に親和性の高い抗原特異的RaMoAbsを網羅的に得る事に成功した。我々の確立した迅速かつ網羅的なRaMoAbsの新しい作製法は、研究用途のみならず、臨床用途にも寄与することが期待される。ウサギモノクローナル抗体(RaMoAbs)は親和性、特異性が極めて高い事から、理想的な検出用抗体である。しかしながらその作製は非常に困難であり、その作製及び使用は極めて限定的である。本研究は、免疫を行ったウサギより1週間程度という非常に短期間で特異的抗体の取得を目指す。さらに得られた抗体の中より、検出感度、親和性及び特異性に優れている抗体が、既存の検出用抗体よりも優れているかの検討を行う。即ち、(1)ウサギ抗体発現ベクターを作製する。(2)ウサギBリンパ球を用いて単一細胞5'-RACE法の条件検討を行う。(3)免疫したウサギより抗原特異的Bリンパ球をISAAC法にて検出し、目的細胞の回収を行う。(4)リコンビナントRaMoAbsを作製し、抗原と結合性を確認する。平成23年度での研究実績は以下の通りである。1、リコンビナントRaMoAbs発現ベクターの構築:リコンビナントRaMoAbsを発現するプラスミドDNAの構築を行うため、定常領域を組み込んだプラスミドDNAを構築した。その後可変領域をインフレームで挿入し、得られたプラスミドDNAをCHO-S細胞へ遺伝子導入を行い、リコンビナントタンパクの発現を確認した。2、ウサギリンパ球由来単一細胞5'-RACEの確立:ウサギ由来単一抗体産生細胞より効率よく抗体遺伝子の増幅をおこなうため、定常領域に設計するオリゴDNAの検討、アニーリング温度などの反応条件検討を行った。その結果、4060%の効率で抗体遺伝子を取得する事が可能となった。3、ウサギリンパ球を用いたISAAC法の確立:ウサギ由来単一抗体産生細胞よりISAAC法による検出を行うため、検出する試薬の検討、反応時間などの条件検討を行った。その結果、抗体産生細胞が検出できることが確認された。平成23年度中に予定していた抗体発現プラスミドの構築、ウサギ抗体遺伝子の増幅、リコンビナント抗体の作製、抗体産生細胞の検出といった基盤技術の確立に至った。平成23年度中に予定していた基盤技術の確立ができたことから、平成24年度は計画通り行う。即ち、免疫を行ったウサギよりリンパ球を回収し、そこからISAAC法により抗原特異的抗体産生細胞の検出ならびに回収を行う。その後リコンビナントRaMoAbsの作製を行い、その機能解析を行う。平成23年度は基盤技術の条件検討が順調に進み、研究費の使用が予定よりも少なく済んだため次年度使用額が生じた。この額を平成24年度におけるウサギ及び酵素などの消耗品費に充て、当初の計画よりも多種類の抗体を得る。
KAKENHI-PROJECT-23790617
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23790617
事態描写における言語表現と認知プロセスの解明:アイトラッキングを用いた実証研究
人がどのように事態を認知し言語表現として表出しているのかを明らかにするため、言語実験を実施し、得られた成果は大きく3つ挙げられる。(1)日本語母語話者と学習者の速読時における視線分析を行い、認知過程での両者の差を明らかにすることによって視線分析の必要性を示した。(2)母語である日本語・英語、学習言語である両言語等を取り上げ、事態描写の言語化傾向を明らかにし、類型的な表現の特徴と言語習得への影響を明らかにした。(3)日本語・英語母語話者の言語産出時における視線の動きと言語表現との関わりを検証した。本研究は、人が事態をどのように認知し言語化しているのかを、従来の言語分析に加え、アイトラッキング装置による視線分析を行なうことにより、認知と言語表現の関連を実証的に検証するものである。話者の視線の動きを計測するアイトラッキング装置を用いて、認知言語学で主張されてきた外界認知のプロセスや認知的際立ちを実証し、言語化への関与を明らかにすることを本研究の目的としている。初年度である平成25年度は実験の準備期間として位置づけられ、1)事態認知と言語表現に関する先行研究のまとめと基礎実験の実施、2)様々な事態の映像作成、3)分析・検証方法の検討を行なった。まず、事態認知と言語表現の関わりやアイトラッキングによる言語分析等の先行研究にあたり資料を収集。認知的際立ちに関わる言語表現として分析が進んでいる「自動詞・他動詞文」「移動表現文」で表される事態の映像を描写する実験やテータ分析を行ない、その成果は学会での研究発表や論文投稿等で公表している。これらの結果も踏まえ、アイトラッキングを用いた視線分析に見合う実験刺激作成を試みた。「能動・受動文」「分詞構文」「授受表現」等で表される事態を提示する映像やイラストを作成・選択し、分析点や分析方法を探る予備調査を行なった。収集されたデータの詳しい分析は次年度へ継続する。また、アイトラッキングを用いた研究手法の習得と対象領域の拡大を兼ね、日本語教育に関わる読解過程解析の実験調査を行ない、日本語教育関連だけでなく工学分野の研究会で成果を発表。今後もアイトラッキングによる言語分析の一環としてこの分野での研究も進めていきたいと考えている。本研究は、人が事態をどのように認知し言語化しているのかを、従来の言語分析に加え、アイトラッキング装置を用いた視線分析を行うことにより、認知と言語表現の関連を実証的に検証するものである。平成26年度は、実験データを収集し分析、さらに実験に改良を加えていく等の本実験の実施が中心となる年度である。前年度に行われたいくつかの予備実験の結果より、対象とする言語表現に関わる事象によって適切な実験刺激の形態(動画、静止画等)が明らかとなり、本実験の映像を選定することができた。ただし、当初の研究計画ではアイトラッキング装置を用いた本実験をすぐに実施する予定であったが、装置利用に関わる諸事情も含め、視線分析の基となる、事態認知時における言語表現の実態をまず明らかにする必要性を感じ、日本語だけでなく多言語との比較を通して、言語表現の個別性・普遍性を検討する基礎的検証を行うことにした。認知と言語表現の関連を検証する事態描写の研究、特に移動事象に関する言語実験を多言語で実施し、先行研究で指摘されてきた論点の検証を行った。さらに対象を第二言語習得にも広げ、研究を進めることができた。様々な学会で口頭発表、そして国内外の学会誌へも投稿し、研究の公表に力を入れた。視線分析の検証まで及ばなかったが、これらの研究結果を基にすることで、より詳細な認知プロセスの解明ができると考えている。昨今、言語学の分野でもアイトラッキング装置を用いた実験研究が行われるようになってきており、国際学会に出席・発表した際には同様の研究を行う研究者との意見交換や、実験協力依頼をすることができた。本研究の目的の一つでもある、多言語での検証を進めていくためにも、今後も協同的な研究体制を整えていきたいと考えている。本研究は、人が事態をどのように認知し言語化しているのかを明らかにするため、事態が描写された言語表現を分析するだけでなく、アイトラッキング装置を用いた視線分析を行うことにより、事態認知と言語表現の関連を実証的に検証するものである。最終年度である平成27年度は成果をまとめる年度となるが、まず昨年度に引き続き、視線分析の基となる従来の言語分析(実験手法を用いて得られた事態描写時の言語表現を分析)を進めた。対象となる言語を広げ、特に移動表現については日本語、英語、イタリア語、ハンガリー語など、多言語の比較検証を行った。また母語だけでなく学習言語にも対象を広げ、各言語の個別性と、第二言語習得における事象の言語化への影響など幅広く分析することができた。その成果は国内外での研究会や学会での口頭発表、論文発表として公表している。今年度はモバイル可能なアイトラッキング装置を確保することができ、昨年度進められなかった実験を実施することができた。装置だけでなく分析ソフトも場所を問わず使用することができ、検証の作業効率をあげることができた。言語は母語話者の日本語・英語、そして学習言語としての日本語と、多言語の実験には及ばなかったが、「移動表現文」「自他動詞文」「能動・受動文」等で表される様々な事象をビデオ映像やイラストを用いた実験素材を使って本実験を行った。
KAKENHI-PROJECT-25580089
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25580089
事態描写における言語表現と認知プロセスの解明:アイトラッキングを用いた実証研究
最終的な研究目標であった事態認知(視線の動き)と言語化の関連を示す認知プロセスモデルの提示にまではまだ至っていないが、データの収集と検証方法の検討は進んでおり、今後の成果発表で示していきたい。人がどのように事態を認知し言語表現として表出しているのかを明らかにするため、言語実験を実施し、得られた成果は大きく3つ挙げられる。(1)日本語母語話者と学習者の速読時における視線分析を行い、認知過程での両者の差を明らかにすることによって視線分析の必要性を示した。(2)母語である日本語・英語、学習言語である両言語等を取り上げ、事態描写の言語化傾向を明らかにし、類型的な表現の特徴と言語習得への影響を明らかにした。(3)日本語・英語母語話者の言語産出時における視線の動きと言語表現との関わりを検証した。現在まで、アイトラッキング装置を用いた予備実験を実施し、本実験に向けての実験映像刺激の精査や、得られたデータを分析し、その結果を言語学関連の学会で発表することにより、視線分析の有用性や新たな研究方法を提示することができた。しかし残念ながら、さらなる研究を進めていこうとする段階で、研究協力者の人事異動に伴いアイトラッキング装置や分析システムの利用が滞る事態となってしまった。そのため、本年度は新たな実験実施はできなかったが、これまでの実験で得られたデータ分析を中心に研究を進めるとともに、研究の方向性を再検討し、視線分析の基となる従来の言語分析を多言語や第二言語習得に広げた研究を進め、成果の公表にもつとめてきた。以上の状況から、当初の研究計画と異なるところもあるが、本研究の目的を遂行するための達成度として大きな遅れが生じたとは考えていない。来年度にはアイトラッキング装置を確保し、本実験を進めていく予定である。言語学今後は視線分析装置を用いた本実験の実施を中心に進めていく。昨今のアイトラッキング装置の軽量化やモバイル化等の改良はめざましく、様々な場所での実験実施が可能になっている。本研究の計画当初ではデスクトップ型の装置が主流で、実験室のような固定された場所での実験実施しか設定できなかった。本研究の初年度に実施した実験状況がまさにそれであり、実験参加者が限られてしまうという状況は否めなかった。それを解消するためにも、今、最新の装置を取り入れるいい機会であると考えている。来年度はモバイル可能な装置を購入し、様々な場所で様々な言語について実験を実施し、分析を進めていきたい。そのため、来年度の物品費の割合を増やし、研究協力者との打ち合わせはインターネットを利用したり、雑誌投稿を中心に成果発表を行うことで、旅費やその他経費の割合を抑えることにしたい。本研究は、人が事態をどのように認知しているのか(認知的際立ちの存在)を明らかにし、視線分析と言語分析を行うことにより、認知的際立ちと事態描写の言語化の関連を実証する。さらに言語間での比較を行うことにより、事態認知プロセスの個別性・普遍性の解明を目指すものである。視線の動きを計測するアイトラッキング装置を用いた実験調査は初めての試みであり、今年度は実験の準備期間として位置づけられている。そのため、1)様々な事態を表す実験刺激の作成、2)分析・検証方法の確立を目指した。1)については、いくつかの構文に関わるビデオ映像実験を実施し、言語化との関わりを検証した。その成果を研究発表や論文投稿などで公表。またこれを基に、本実験に用いる実験刺激作成の参考とすることができた。
KAKENHI-PROJECT-25580089
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25580089
高性能電気二重層キャパシタ用ゲル電解質の開発
本研究の目的は,高性能電気二重層キャパシタ(EDLC)に用いるゲル電解質の開発である。平成10年度は有望なゲル電解質を種々合成し,EDLCに適した基礎物性を持つ系を探索した。この情報に基づき,平成11年度は有望な系をEDLCに適用し,諸特性を幅広く検討した。この際,特に溶液系EDLCに較べ,好特性を発揮する条件を精査した。さらにゲル電解質系が好適な性能を発揮するメカニズムについて解析した。1ゲル電解質の電気二重層キャパシタへの適用前年度の検討で得られた知見に基づき,好適な基礎特性を持つPVdFゲル電解質をEDLCに適用した。このEDLCの充放電試験を実施し放電容量,充放電可逆性を評価した。本年度の検討では具体的に溶液系EDLCとの性能比較を重要視し,有機電解液系EDLCとの特性比較を行った。その結果,溶液系よりも優れた放電容量がこのゲル系EDLCで得られた。さらに開回路での電圧保持特性はゲル電解質の方が大幅に優れていた。これらの場合ゲル電解質は溶液系よりもかなり高濃度の解離イオンを含有できることが判った。2ゲル電解質が関与するメカニズムについての解析ポリマーゲル電解質が関与するEDLCの作動メカニズムを総合的に解析した。特に漏れ電流特性,電圧保持性能などに強く影響を与える電極と電解質との界面の交流インピーダンス特性について,コントローラ(申請における主要設備)で制御した交流電圧発生器を用いて解析した。この結果ゲル電解質バルクのイオン移動が高速になる条件では,界面の電荷移動ならびに物質拡散も高速になることを見出した。このようにゲル電解質特性とは電極界面の特性との相関が明らかとなり,好適界面の設計指針が得られた。1ゲル電解質の基本特性の把握と合成条件の確立ポリマーマトリックス(ポリフッ化カーボン,ポリイミン),有機可塑剤(ブチロラクトン系,カーボネート系),ならびに電解質塩(四級アルキルアンモニウム塩)からなるゲル電解質を合成した。得られたゲル電解質の基礎的な電気化学特性を計測し,電気二重層キャパシタ(EDLC)に好適な系を探索した。すなわち,プログラム精密低温恒温水槽(本研究費補助金による購入設備)による温度制御下,-2080°Cの範囲でイオン伝導特性と安定電位領域を測定した。この結果,マトリックスとしてはポリフッ化カーボン,可塑剤としてはプロピレンカーボネート,電解質塩としてはテトラアルキルアンモニウムテトラフルオロボレートが最適であり,これらを用いた場合,高いイオン伝導度と4V以上の広い安定電位領域が確保できた。すなわち,好特性なゲル電解質の絞り込みが行えた。2ゲル電解質/電極界面の最適化1の検討で選定を行ったゲル電解質をEDLC用電極(活性炭繊維布電極)と接合させ,インピーダンス計測システム(現有設備)を用いて電極界面特性を検討した。すなわち電極界面抵抗,電気二重層容量について解析を行い,EDLC特性を左右するこれら重要因子を把握した。様々な検討の結果,活性炭からなる電極材料の表面処理が界面特性向上のために効果的であることが判明した。そのため,表面処理の基礎条件確立のために,通常の溶液系において処理効果の確認を並行して行った。以上の検討により,界面特性向上のためには,ゲル電解質の最適化,電極表面の改質の両方が極めて重要であることが判った。本研究の目的は,高性能電気二重層キャパシタ(EDLC)に用いるゲル電解質の開発である。平成10年度は有望なゲル電解質を種々合成し,EDLCに適した基礎物性を持つ系を探索した。この情報に基づき,平成11年度は有望な系をEDLCに適用し,諸特性を幅広く検討した。この際,特に溶液系EDLCに較べ,好特性を発揮する条件を精査した。さらにゲル電解質系が好適な性能を発揮するメカニズムについて解析した。1ゲル電解質の電気二重層キャパシタへの適用前年度の検討で得られた知見に基づき,好適な基礎特性を持つPVdFゲル電解質をEDLCに適用した。このEDLCの充放電試験を実施し放電容量,充放電可逆性を評価した。本年度の検討では具体的に溶液系EDLCとの性能比較を重要視し,有機電解液系EDLCとの特性比較を行った。その結果,溶液系よりも優れた放電容量がこのゲル系EDLCで得られた。さらに開回路での電圧保持特性はゲル電解質の方が大幅に優れていた。これらの場合ゲル電解質は溶液系よりもかなり高濃度の解離イオンを含有できることが判った。2ゲル電解質が関与するメカニズムについての解析ポリマーゲル電解質が関与するEDLCの作動メカニズムを総合的に解析した。特に漏れ電流特性,電圧保持性能などに強く影響を与える電極と電解質との界面の交流インピーダンス特性について,コントローラ(申請における主要設備)で制御した交流電圧発生器を用いて解析した。この結果ゲル電解質バルクのイオン移動が高速になる条件では,界面の電荷移動ならびに物質拡散も高速になることを見出した。このようにゲル電解質特性とは電極界面の特性との相関が明らかとなり,好適界面の設計指針が得られた。
KAKENHI-PROJECT-10750597
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10750597
アクシオンによる銀河磁場生成と銀河磁場中でのアクシオン星からの輻射
宇宙ダークマターの正体はいまだなぞである。また、宇宙物理学において、ガンマー線バースト、および、超高エネルギー宇宙線の起源に関しては、未だ解明されてはいない。ここでの理論研究では、その両者を解明するひとつの糸口として、この高エネルギー現象を説明する起源としてあるメカニズムを提唱した。それは、ダークマターであるアクシオンが重力的に集まり星となったアクシオン星と呼ばれるものと、中性子星との衝突である。その衝突で、アクシオン星は中性子星の強磁場の下で電磁波に転化し、それが中性子星の中で吸収され、結局、そこで蒸発してしまう。その結果、急速に開放されたエネルギーで、中性子星の外層(クラフト)が吹き飛ぶ。それが、ガンマー線バーストを発生させるもとになる粒子の風を生み出す。このメカニズムでは、その風の粒子は外層を構成していたもので、その全質量は太陽質量の10万分の一以下である。このことは、観測されるガンマー線バーストから、その起源を考えるとき要求されるものである。他のガンマー線バーストの起源も提唱されているが、この条件を満たすことが困難とされている。その点が、ここのメカニズムの利点である。ガンマー線バーストは以上であるが、そのとき仮定されていることが、中性子星の磁場の強さとして、10の12乗以下であることである。それ以上の磁場に対しては、アクシオン星は衝突前に崩壊してしまう。それはアクシオンが強磁場のもとで発生する強電場が、自発崩壊するためである。この電場で加速される荷電粒子は、超高エネルギー宇宙線として観測される10の20乗電子ボルト以上になるのである。これが、超高エネルギー宇宙線が発生するメカニズムとして私が提案したものである。両現象のエネルギースケールを説明するのに必要なアクシオン星の質量が、ちょうど銀河ハローに発見されたMACHOのそれに等しいことは注目に値する。宇宙ダークマターの正体はいまだなぞである。また、宇宙物理学において、ガンマー線バースト、および、超高エネルギー宇宙線の起源に関しては、未だ解明されてはいない。ここでの理論研究では、その両者を解明するひとつの糸口として、この高エネルギー現象を説明する起源としてあるメカニズムを提唱した。それは、ダークマターであるアクシオンが重力的に集まり星となったアクシオン星と呼ばれるものと、中性子星との衝突である。その衝突で、アクシオン星は中性子星の強磁場の下で電磁波に転化し、それが中性子星の中で吸収され、結局、そこで蒸発してしまう。その結果、急速に開放されたエネルギーで、中性子星の外層(クラフト)が吹き飛ぶ。それが、ガンマー線バーストを発生させるもとになる粒子の風を生み出す。このメカニズムでは、その風の粒子は外層を構成していたもので、その全質量は太陽質量の10万分の一以下である。このことは、観測されるガンマー線バーストから、その起源を考えるとき要求されるものである。他のガンマー線バーストの起源も提唱されているが、この条件を満たすことが困難とされている。その点が、ここのメカニズムの利点である。ガンマー線バーストは以上であるが、そのとき仮定されていることが、中性子星の磁場の強さとして、10の12乗以下であることである。それ以上の磁場に対しては、アクシオン星は衝突前に崩壊してしまう。それはアクシオンが強磁場のもとで発生する強電場が、自発崩壊するためである。この電場で加速される荷電粒子は、超高エネルギー宇宙線として観測される10の20乗電子ボルト以上になるのである。これが、超高エネルギー宇宙線が発生するメカニズムとして私が提案したものである。両現象のエネルギースケールを説明するのに必要なアクシオン星の質量が、ちょうど銀河ハローに発見されたMACHOのそれに等しいことは注目に値する。アクシオン星が、アクシオンである実スカラー場のソリトン解として存在することを示した。特に、宇宙初期におけるその生成で期待される、非常に小さい質量のものが存在しうること、および、そのときの星の半径、質量、アクシオン場の強さ等々について明確な形で求めた。特徴的なことは、その解はアクシオン場が、アクシオンの質量の逆数を振動数として振動している。また、太陽質量の一兆分の1の質量をもつアクシオン星の半径は、ほぼl000kmである。そのアクシオン星が、強い磁場をもつ星、例えば白色矮星や中性子星に衝突すると、その磁場の影響ですぐに溶けてなくなることを示した。すなわち、アクシオン星が磁場に触れると、アクシオンと電磁場との特異な相互作用を通じて、電場を発生する。それが白色矮星や中性子星のもつ高い電気伝導度のために大電流を生み、それゆえ、アクシオン星は、そのエネルギーを散逸してしまう。エネルギー散逸はそれらの星の中では急激で、すぐにアクシオン星そのものが溶けてなくなる。したがって、それらの星はその衝突を通じてエネルギーをもらう。それゆえ、内部エネルギーの上昇でその星の明るさも変化する。MACHOの観測から、銀河ハローの半分は、暗い白色矮星で出来てると言う可能性が指摘されている。私はそれを仮定し、かつ残りの半分をダークマターの有力候補であるアクシオン星であるとして、いくつぐらいの白色矮星が、本来なら冷たく暗いものがそれらの衝突で明るくなっているかを求めた。その結果、30等星ぐらいのものが、太陽から1kpc内に数十存在することがわかった。これらの星は、スバルやケック望遠鏡のような次世代の大型望遠鏡によって、観測されうるのである。
KAKENHI-PROJECT-10640284
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アクシオンによる銀河磁場生成と銀河磁場中でのアクシオン星からの輻射
ガンマー線バーストの起源として、私はアクシオン星と中性子星との衝突を提案した。それによると、中性子星の強い磁場の元でアクシオン星はそのエネルギーを急激に失い、その結果、中性子星の外クラストの一部が吹き飛び、それがガンマー線バーストを生み出すジェットとなる。詳しくはこうである。すなわち、アクシオン星は実スカラー場の解であり、重力で束縛された場である。それが、磁場中では、その強さに比例した電場を誘起される。それゆえ、中性子星の強磁場中では強い電場を持つことになる。それ故、アクシオン星が中性子星と衝突すると、電気伝導度の高い外クラスト中で、電流を誘起してそのエネルギーを失う。その速さが急激で、たとえ光の速さで衝突したとしても、外クラスト中で、アクシオン星のエネルギー全てが散逸する。ただし、それもアクシオン星の半径による。アクシオン星の半径はその質量で決まり、臨界質量では、1kmほどで、その十分の一の質量では、10kmほど、すなわち、中性子星のそれと同じくらいである。それゆえ、臨界質量のアクシオン星では、衝突でそのエネルギーがすべて外クラスト中で失われる。一方、臨界質量の10分の一のアクシオン星では、そのエネルギーは一度の衝突で失われない。何度か衝突を繰り返し失っていくものと思われる。それ故、小さい質量のそれは、ジェットを何度か放出し、それは持続時間の長いガンマー線バーストをもたらすだろう。一方、臨界質量のアクシオン星は持続時間の短いバーストをもたらす。ガンマー線バースト、および、超高エネルギー宇宙線の起源に関しては、未だ解明されてはいない。ここでの理論研究で、その起源としてあるメカニズムを提唱した。それは、アクシオンが重力的に集まり星となったアクシオン星と呼ばれるものと、中性子星との衝突である。その衝突で、アクシオン星は中性子星の強磁場の下で電磁波に転化し、それが中性子星の中で吸収され、結局、そこで蒸発してしまう。その結果、急速に開放されたエネルギーで、中性子星の外層(クラフト)が吹き飛ぶ。それが、ガンマー線バーストを発生させるもとになる粒子の風を生み出す。このメカニズムでは、その風の粒子は外層を構成していたもので、その全質量は太陽質量の10万分の一以下である。このことは、観測されるガンマー線バーストから、その起源を考えるとき要求されるものである。他のガンマー線バーストの起源も提唱されているが、この条件を満たすことが困難とされている。その点が、ここのメカニズムの利点である。ガンマー線バーストは以上であるが、そのとき仮定されていることが、中性子星の磁場の強さとして、10の12乗以下であることである。それ以上の磁場に対しては、アクシオン星は衝突前に崩壊してしまう。それはアクシオン星が強磁場のもとで発生する強電場が、自発崩壊するためである。この電場で加速される荷電粒子は、超高エネルギー宇宙線として観察される10の20乗電子ボルト以上になるのである。これが、超高エネルギー宇宙線が発生するメカニズムとして私が提案したものである。
KAKENHI-PROJECT-10640284
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繰り返し載荷を受ける鋼構造建築骨組の不安定挙動の解明と安全性評価法の開発
設計実務で用いられるせん断型動的挙動解析や一般化塑性ヒンジ解析では捉えられない、繰り返し載荷や動的外乱の作用によって引き起こされる不安定挙動の解明と安全評価法の開発を目的とした一連の研究を行い、次のような成果を得た。1.1層1スパン単位部分骨組の対称限界解析を行い、柱に弓形又はS字形の変形が累積、発散する現象とその発生条件を解明した。2.梁降伏型の多層多スパン平面骨組から1スパンを取り出した部分骨組について、柱軸力がある限界値を超える場合に複数層にまたがる弓形変形が発生するメカニズムと、その変形が載荷サイクル数に対して等比級数的に増大するメカニズムを解明した。3.項目2と同じ部分多層骨組について、周期地動や記録地震波を与えた場合の動的応答解析を行い、下層部分に過度に変形が集中する今までに知られていない新しいタイプの崩壊挙動を見いだした。4.項目3の動的崩壊の発生限界が、対称限界理論によって予測された静的載荷時の限界と明確に対応していることを明らかにした。5.項目4の限界は骨組に固有のものであり、耐震安全性の評価基準として超高層骨組の耐震設計に直接役立つ。設計実務で用いられるせん断型動的挙動解析や一般化塑性ヒンジ解析では捉えられない、繰り返し載荷や動的外乱の作用によって引き起こされる不安定挙動の解明と安全評価法の開発を目的とした一連の研究を行い、次のような成果を得た。1.1層1スパン単位部分骨組の対称限界解析を行い、柱に弓形又はS字形の変形が累積、発散する現象とその発生条件を解明した。2.梁降伏型の多層多スパン平面骨組から1スパンを取り出した部分骨組について、柱軸力がある限界値を超える場合に複数層にまたがる弓形変形が発生するメカニズムと、その変形が載荷サイクル数に対して等比級数的に増大するメカニズムを解明した。3.項目2と同じ部分多層骨組について、周期地動や記録地震波を与えた場合の動的応答解析を行い、下層部分に過度に変形が集中する今までに知られていない新しいタイプの崩壊挙動を見いだした。4.項目3の動的崩壊の発生限界が、対称限界理論によって予測された静的載荷時の限界と明確に対応していることを明らかにした。5.項目4の限界は骨組に固有のものであり、耐震安全性の評価基準として超高層骨組の耐震設計に直接役立つ。地震や風などの変動外乱の下で建築骨組構造物がどのような不安定挙動を呈して崩壊に至るかを明らかにし、設計上想定される外乱に対して構造物が不安定な挙動を起こすことがないかどうかを適切に評価、判定するための方法を提案することをめざして研究を行ない、次のような実績を得た。1.静的繰り返し水平変位を受ける多層多スパン平面骨組の対称限界理論解の導出一定鉛直荷重の下で完全両振り繰り返し頂点水平変位を受ける多層多スパン平面骨組に対称限界理論を適用し、特定の変形モードが発生し一方向に累積していく現象と、その発生条件を予測した。梁降伏型骨組の変形モードは、柱が複数層にわたって弓形にはらみ出す変形モードであり、柱降伏型では、特定の層に塑性変形が集中するモードである。2.静的繰り返し水平変位を受ける多層多スパン平面骨組の塑性崩壊挙動の解明歴挙動解析を行ない、対称限界理論解を実証するとともに、対称限界を超える載荷条件のもとでは理論予測された逆対称変形成分が繰り返しの度に累積されることにより復元力特性が劣化し、終局的に崩壊に至る挙動が生じることを解明した。3.任意形状平面骨組の対称限界及び定常状態限界の解析定常状態経路を追跡することにより任意形状平面骨組の対称限界及び定常状態限界を求めることができる数値解析プログラムを作成した。このプログラムを用いて、柱軸力が変動する多層1スパン骨組の対称限界と定常状態限界を求めた。4.動的周期地動を受ける多層多スパン平面骨組の塑性崩壊の解明一定鉛直荷重の下で動的周期地動を受ける多層多スパン平面骨組の履歴応答解析を行ない、静的繰り返し水平変位の下での対称限界が動的挙動の安定限界と密接な関係があることを明らかにした。設計実務で用いられる剪断型動的挙動解析や一般化塑性ヒンジモデル解析では捉えられない、繰り返し載荷や動的外乱の作用によって引き起こされる不安定挙動の解明と安全性評価法の開発を目的とした一連の研究を行い、次のような新しい知見を得た。1.1層1スパン単位部分骨組の対称限界解析を行い、柱に弓形又はS字型の変形が累積、発散する現象とその発生条件を解明した。2.梁降伏型の多層多スパン平面骨組から1スパンを取り出した部分骨組について、柱軸力がある限界値を超える場合に複数層にまたがる弓形変形が発生するメカニズムと、その変形が載荷サイクル数に対して等比級数的に増大するメカニズムを解明した。3.2.と同じ部分多層骨組について、周期地動や記録地震波を与えた場合の動的応答解積を行い、下層部分に過度に変形が集中する今までに知られていない新しいタイプの崩壊挙動を見いだした。4.3.の動的崩壊挙動の発生限界が、対称限界理論によって予測された静的載荷時の限界と明確に対応していることを明らかにした。5.以上の成果は、超高層骨組の耐震設計に直接役立つ有用な知見である。
KAKENHI-PROJECT-04650518
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肺癌の縦隔リンパ節転移抑制を目指す治療法開発のための基礎的研究
本研究の目的は,肺癌において最も一般的に認められる縦隔リンパ節転移を抑制する治療法はないかを検証することである.癌転移抑制遺伝子導入を試みる遺伝子治療,転移に関係するとされるムチン関連抗原に対する抗体療法,さらに抗腫瘍効果をうたわれるH2受容体拮抗薬(シメチジン)の投与の3つを候補として挙げた.その結果,癌転移抑制遺伝子(MRP-1/CD9, KAI-1/CD82)の遺伝子導入により,縦隔リンパ節への転移が著明に抑制されることが明らかとなった.シメチジンには,その抑制効果がないことも判明した.さらに,ムチン関連抗原に対する抗体療法の試みは,その抗原発現細胞のマウス生体内への移植が困難,肺癌リンパ節転移モデルの作製が困難であることも明らかとなった.本研究の目的は,肺癌において最も一般的に認められる縦隔リンパ節転移を抑制する治療法はないかを検証することである.癌転移抑制遺伝子導入を試みる遺伝子治療,転移に関係するとされるムチン関連抗原に対する抗体療法,さらに抗腫瘍効果をうたわれるH2受容体拮抗薬(シメチジン)の投与の3つを候補として挙げた.その結果,癌転移抑制遺伝子(MRP-1/CD9, KAI-1/CD82)の遺伝子導入により,縦隔リンパ節への転移が著明に抑制されることが明らかとなった.シメチジンには,その抑制効果がないことも判明した.さらに,ムチン関連抗原に対する抗体療法の試みは,その抗原発現細胞のマウス生体内への移植が困難,肺癌リンパ節転移モデルの作製が困難であることも明らかとなった.本研究の目的は,肺癌において最も一般的に認められる縦隔リンパ節転移を抑制する治療法はないかを検証することである.その手段として,癌転移抑制遺伝子として知られるMRP-1/CD9,KAI-1/CD82の遺伝子治療,転移に関係するとされるムチン関連抗原に対する抗体療法,さらに抗腫瘍効果をうたわれるH2受容体拮抗薬(シメチジン)の投与の3つを候補として挙げ,動物モデルにおけるこれらの効果を観察することを予定としていた.本年度はまず,癌転移抑制遺伝子として知られるMRP-1/CD9,KAI-1/CD82のアデノウィルスベクター作製に取り組み,これに成功した.さらに,Lewis lung carcinoma(LLC)細胞を肺へ同所移植したC57BL/6マウスに対して,これらのアデノウィルスベクターを利用した遺伝子治療を行い,縦隔リンパ節転移の程度を検証する実験を実施した.MRP-1/CD9,KAI-1/CD82の遺伝子導入により,原発巣類似の腫瘍組織のサイズには変化を与えないが,縦隔リンパ節への転移が著明に抑制されることが明らかとなった.この実験に加えて,同じLLC細胞を肺へ同所移植したマウスに対して,シメチジンを連日投与することで,縦隔リンパ節への転移の程度がどのように変化するかを検証する実験も行った.シメチジンの連日投与にて,原発巣類似の腫瘍組織のサイズには変化を与えないが,縦隔リンパ節への転移の程度が,シメチジンの用量依存的に軽減できる可能性を示唆する結果が得られた.この結果については,統計学的な有意差を持つものであるかどうかを再検する必要があり,今後再検予定である.本研究の目的は,肺癌において最も一般的に認められる縦隔リンパ節転移を抑制する治療法はないかを検証することである.その手段として,癌転移抑制遺伝子として知られるMRP-1/CD9, KAI-1/CD82の遺伝子治療,転移に関係するとされるムチン関連抗原に対する抗体療法,さらに抗腫瘍効果をうたわれるH2受容体拮抗薬(シメチジン)の投与の3つを候補として挙げ,動物モデルにおけるこれらの効果を観察することを予定としていた.昨年, MRP-1/CD9, KAI-1/CD82の遺伝子導入により,原発巣類似の腫瘍組織のサイズには変化を与えないが,縦隔リンパ節への転移が著明に抑制されることを明らかとした.平成20年度は,シメチジンによる縦隔リンパ節転移抑制作用を中心に検証した.平成19年度の予備実験ではシメチジンの連日投与にて,原発巣類似の腫瘍組織のサイズには変化を与えないが,縦隔リンパ節への転移の程度が,シメチジンの用量依存的に軽減できる可能性を示唆する結果が得られていたのであるが,本年度3回の実験を行った結果は一定の方向性を示すものとはならず,最終的に,シメチジンに縦隔リンパ節転移抑制作用を認めるとは言いがたいと結論づけた.転移に関係するムチン関連抗原としてKL-6を対象とし,KL-6高発現細胞であるヒト肺癌細胞株であるPC3をヌードマウスへ同所移植することを試みたが,残念ながら,生着しないことが判明し,同所移植肺癌モデルの作製自体が困難であることが判明した.
KAKENHI-PROJECT-19590899
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19590899
FAS-FASリガンド実験系を用いたアポトーシスによる癌治療の基礎的研究
アポトーシスはネクローシスと共に重要な細胞死である。しかし、アポトーシスによる細胞死と抗腫瘍効果の関係はまだ明らかにされていない。そこで、FAS抗原-FASリガンド系によるアポトーシスを腫瘍細胞で人工的に起こさせて、in vivoにおける抗腫瘍効果の発現を検討した。1.CBA-lpr^<cg>/lpr^<cg>をC3Hマウスに交配し、F2でリンパ節腫脹をおこした個体を選択し、再度C3Hと交配する。この操作を12回反復して、C3H-lpr^<cg>/lpr^<cg>コンジェニックマウスを作出した。C3H-gld/gldとC3H-lpr/lprの交配で作出したF1をC3H-gld/gldと戻し交配し、その子孫の中からリンパ節腫脹を起こし、かつFAS発現が半分の個体をFACSで選択し、それらの個体同士(gld/gld lr/+)の交配から得られたマウスでFAS発現を欠損する個体を選んでC3H-gld/gld lpr/lprを作出した。2.C3Hマウスに同系腫瘍のマウス肝癌MH134を材料として用いた。MH134は悪液質を誘導し、転移しやすく、悪性度の高い腫瘍である。FAS抗原陰性のMH134培養細胞にマウスFAS抗原とNeo耐性のcDNAを電気穿孔法で導入した後、G418耐性株を選択した。抗マウスFAS抗体Jo2によるフローサイトメトリー法でFAS発現株を選択し、限界希釈法でクローンを得た。FAS抗原発現クローンF6bは抗FAS抗体処理で、細胞死の誘導と核の断片化が認められた。そこで、上述のように作出したFAS抗原とFASリガンドを欠損するC3H-gld/gld lpr/lprマウスにF6b肝癌を移植し、抗FAS抗体の投与による治療実験を行ったところ、核の断片化と著しい抗腫癌効果が認められた。FAS抗原陽性の腫瘍細胞が、二重ミュータント系統gld/gld lpr/lprマウスを宿主として、抗FAS抗体で著しく増殖抑制された。従って、本研究によって、FAS抗原およびFASリガンドによる悪性腫瘍の新しい遺伝子療法の可能性が示唆された。アポトーシスはネクローシスと共に重要な細胞死である。しかし、アポトーシスによる細胞死と抗腫瘍効果の関係はまだ明らかにされていない。そこで、FAS抗原-FASリガンド系によるアポトーシスを腫瘍細胞で人工的に起こさせて、in vivoにおける抗腫瘍効果の発現を検討した。1.CBA-lpr^<cg>/lpr^<cg>をC3Hマウスに交配し、F2でリンパ節腫脹をおこした個体を選択し、再度C3Hと交配する。この操作を12回反復して、C3H-lpr^<cg>/lpr^<cg>コンジェニックマウスを作出した。C3H-gld/gldとC3H-lpr/lprの交配で作出したF1をC3H-gld/gldと戻し交配し、その子孫の中からリンパ節腫脹を起こし、かつFAS発現が半分の個体をFACSで選択し、それらの個体同士(gld/gld lr/+)の交配から得られたマウスでFAS発現を欠損する個体を選んでC3H-gld/gld lpr/lprを作出した。2.C3Hマウスに同系腫瘍のマウス肝癌MH134を材料として用いた。MH134は悪液質を誘導し、転移しやすく、悪性度の高い腫瘍である。FAS抗原陰性のMH134培養細胞にマウスFAS抗原とNeo耐性のcDNAを電気穿孔法で導入した後、G418耐性株を選択した。抗マウスFAS抗体Jo2によるフローサイトメトリー法でFAS発現株を選択し、限界希釈法でクローンを得た。FAS抗原発現クローンF6bは抗FAS抗体処理で、細胞死の誘導と核の断片化が認められた。そこで、上述のように作出したFAS抗原とFASリガンドを欠損するC3H-gld/gld lpr/lprマウスにF6b肝癌を移植し、抗FAS抗体の投与による治療実験を行ったところ、核の断片化と著しい抗腫癌効果が認められた。FAS抗原陽性の腫瘍細胞が、二重ミュータント系統gld/gld lpr/lprマウスを宿主として、抗FAS抗体で著しく増殖抑制された。従って、本研究によって、FAS抗原およびFASリガンドによる悪性腫瘍の新しい遺伝子療法の可能性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-07274219
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07274219
ラオスの国民国家建設と在外ラオス人
本研究は、1975年の社会主義革命後に難民として国外へと脱出した「在外ラオス人」の1反政府活動、2海外送金と投資、3執筆活動、4ラオス政府の対応の4点に焦点をあて、在外ラオス人とラオスの国民国家建設の関係について考察することを目的とするものである。H30年度は当初、米国とラオスでの調査を予定していたが、フランス国立図書館に必要な資料が所蔵されていることが判明したため、予定を変更し、フランスで2度の現地調査を実施した。実施内容は以下の二点に集約される。第一に、フランス、パリの国立図書館において1975年以降、難民としてフランスに移住したラオス人難民によるラオ語の新聞、雑誌などの出版物の収集をおこなった。その結果、1970年代後半1990年代にかけて、パリだけではなく、リヨンやメッスなどフランスの地方都市においてもラオ語による新聞や雑誌が出版されていたこと、それらがフランス国内のみならず、スイス、ドイツ、ベルギー、米国、日本などフランス国外のラオス人難民においても読まれていたことが確認された。現在は収集した新聞・雑誌類の分析をおこなっている。第二に、フランス在住の在外ラオス人に対して、インタビュー調査を実施した。インタビューをおこなったのは、1975年以前に渡仏し、現在までフランスに居住している人物であった。インタビューにより、フランスでのラオス人コミュニティやラオス人組織、ラオ語での出版活動や政治活動についての概要を知ることができた。先行研究が希薄かつ政治的に敏感な内容を含むテーマでもあるため、とくに研究目的の2(在外ラオス人による)海外送金と投資、4ラオス政府の対応についての研究が遅れている。H30年度の成果を踏まえ、次年度はフランスにおいて雑誌や新聞の出版に携わった人物へのインタビュー調査の実施を予定している。そのほか、現在、米国のカリフォルニア州で歴史教育のカリキュラムにラオス人難民の歴史を加えるよう、求める動きが見られていることから、米国での資料収集と関係者へのインタビュー調査を実施したいと考えている。各国での滞在日数を十分に確保するため、次年度使用額は2カ国での現地調査の旅費として使用する予定である。本研究は、1975年の社会主義革命後に難民として国外へと脱出した「在外ラオス人」の1反政府活動、2海外送金と投資、3執筆活動、4ラオス政府の対応の4点に焦点をあて、在外ラオス人とラオスの国民国家建設の関係について考察することを目的とするものである。H28年度は、H29年度以降に本格的に実施予定である各地(ラオス、タイ、米国、フランス)での現地調査のための予備調査を実施した。実施内容は以下の二点に集約される。第一に、関連資料・文献を収集し、先行研究のフォローを行った。ラオスとタイでの現地調査では、体制変換前後のラオス国内、およびタイでの難民キャンプの状況について把握するため、1975年前後の新聞・雑誌などを収集した。さらにタイでは、国立公文書館を訪問し、ラオス関係の資料について調査を実施した。その他、在米ラオス人が発行している雑誌などの出版物を収集した。これらの成果に関しては現在論文を執筆中である。第二に、3月にラオスで現地調査を実施し、来年度以降の調査に向けた予備的研究と協力依頼を実施した。ラオスでは、外務省在外ラオス人関係局にて聞き取り調査を実施し、2007年以降、経済発展のために在外ラオス人を利用する政策へと転じた後のラオス政府の対応、法整備の状況、2015年12月の建国40周年記念式典時に訪問した在外ラオス人団の訪問の経緯などについて、詳細な情報を聞くことができた。また、在外ラオス人政策を担当する大衆組織「ラオス建国戦線」の関係者に聞き取り調査を実施し、海外でのラオス建国戦線の活動状況について情報を得ることができた。さらに、内戦期よりラオス研究に携わっているラオス在住の米国人研究者と面会し、在米ラオス人のコミュニティについての情報収集や、今後の研究協力の依頼を行った。その他、ラオス国立大学、教育科学研究所においても関係者に今後の研究協力を依頼した。関連資料・文献の収集、及びラオス、タイで現地調査を実施し、平成29年度以降に実施予定である各地での現地調査のために必要な予備研究をほぼ予定どおりに行うことができた。H28年度内に研究成果を論文にまとめることはできなかったが、現在執筆中であり、研究は概ね順調に進展しているといえる。本研究は、1975年の社会主義革命後に難民として国外へと脱出した「在外ラオス人」の1反政府活動、2海外送金と投資、3執筆活動、4ラオス政府の対応の4点に焦点をあて、在外ラオス人とラオスの国民国家建設の関係について考察することを目的とするものである。H29年度はタイでの現地調査と次年度以降の現地調査のための予備調査を実施した。実施内容は以下の二点に集約される。第一に、タイ、バンコクの国立公文書館において、1960年代1970年代にかけてのインドシナ難民政策関連文書について本格的な調査を実施した。その結果、外務省、内務省文書を中心に、1975年の社会主義革命前夜の対ラオス人難民政策に関する一連の資料を入手することができた。タイの公文書は原則として、25年で公開されることになっているが、残念ながら1975年以降の関連資料を入手することはできなかった。H30年度中にこれらの資料をもとに論文を執筆するとともに、今後、主な第三国定住先となったフランス、米国での資料調査を実施し、ラオス人難民の脱出の経緯や当時の状況について明らかにしていきたいと考えている。
KAKENHI-PROJECT-16K01996
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K01996
ラオスの国民国家建設と在外ラオス人
第二にラオス語によるインターネットテレビ、ラジオ放送や在外ラオス人によるSNSの内容などをできるかぎり視聴、収集し、ラオス政府の在外ラオス人政策の動向や在外ラオス人の活動についての情報収集に努めた。外務省在外ラオス人関係局の協力により製作されているテレビ番組では頻繁に各国の在外ラオス人訪問団が訪問している様子、観光地での在外ラオス人によるゲストハウス経営、その他、ラオスに帰国した在外ラオス人によるビジネスなどが特集されており、ラオス政府が経済発展のため積極的に在外ラオス人を利用しようとする傾向がいっそう強化されている様子が確認できた。10月以降、体調不良のため、研究計画の大幅な変更を余儀なくされた。当初予定していた、ラオス、米国での現地調査を実施することができなかったほか、H28年度に執筆中であった論文も完成させることができなかった。本研究は、1975年の社会主義革命後に難民として国外へと脱出した「在外ラオス人」の1反政府活動、2海外送金と投資、3執筆活動、4ラオス政府の対応の4点に焦点をあて、在外ラオス人とラオスの国民国家建設の関係について考察することを目的とするものである。H30年度は当初、米国とラオスでの調査を予定していたが、フランス国立図書館に必要な資料が所蔵されていることが判明したため、予定を変更し、フランスで2度の現地調査を実施した。実施内容は以下の二点に集約される。第一に、フランス、パリの国立図書館において1975年以降、難民としてフランスに移住したラオス人難民によるラオ語の新聞、雑誌などの出版物の収集をおこなった。その結果、1970年代後半1990年代にかけて、パリだけではなく、リヨンやメッスなどフランスの地方都市においてもラオ語による新聞や雑誌が出版されていたこと、それらがフランス国内のみならず、スイス、ドイツ、ベルギー、米国、日本などフランス国外のラオス人難民においても読まれていたことが確認された。現在は収集した新聞・雑誌類の分析をおこなっている。第二に、フランス在住の在外ラオス人に対して、インタビュー調査を実施した。インタビューをおこなったのは、1975年以前に渡仏し、現在までフランスに居住している人物であった。インタビューにより、フランスでのラオス人コミュニティやラオス人組織、ラオ語での出版活動や政治活動についての概要を知ることができた。先行研究が希薄かつ政治的に敏感な内容を含むテーマでもあるため、とくに研究目的の2(在外ラオス人による)海外送金と投資、4ラオス政府の対応についての研究が遅れている。H28年度の研究成果を踏まえ、H29年度以降はラオス、タイ、米国、フランスでの現地調査を本格的に実施する。H29年度はラオス、タイ、米国で現地調査を実施予定である。ラオス、タイでは関係省庁、国立図書館、国立公文書館で資料収集を行うほか、ラオスでは関係者への聞き取り調査を実施する。米国では、ワシントンDCにおいて議会図書館、国立公文書記録管理局で資料収集を実施するとともに、自由アジア放送(Radio Free Asia:RFA)、アメリカの声放送(Voice of America:VOA)のラオス語放送担当者への聞き取り調査を行う予定である。今年度は、ラオス、米国の2カ国での現地調査を予定している。
KAKENHI-PROJECT-16K01996
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代数曲線上の線形系の研究と一般型代数多様体への応用
(1)非特異平面曲線の自己同型群の分類を得た.(2)ヒルツェブルフ曲面上の曲線の自己同型群を分類した(大渕朗氏との共同研究).(3)平面4次曲線の二重被覆のワイエルシュトラス半群を調べた(米田二良氏との共同研究).(4)代数曲線の平面モデルの最小次数について研究し,特殊な曲線を分類した(大渕朗氏との共同研究).(5)代数曲面上の線形系の中で,不変量が異なる曲線が共存する場合について調べた(加藤崇雄,大渕朗両氏との共同研究).(6)曲線から射影空間の中への埋め込みの最小次数について研究した.(7)種数の小さな代数曲線について,最小次数のペンシルの個数を決定した(大渕朗氏との共同研究).(1)非特異平面曲線の自己同型群の分類を得た.(2)ヒルツェブルフ曲面上の曲線の自己同型群を分類した(大渕朗氏との共同研究).(3)平面4次曲線の二重被覆のワイエルシュトラス半群を調べた(米田二良氏との共同研究).(4)代数曲線の平面モデルの最小次数について研究し,特殊な曲線を分類した(大渕朗氏との共同研究).(5)代数曲面上の線形系の中で,不変量が異なる曲線が共存する場合について調べた(加藤崇雄,大渕朗両氏との共同研究).(6)曲線から射影空間の中への埋め込みの最小次数について研究した.(7)種数の小さな代数曲線について,最小次数のペンシルの個数を決定した(大渕朗氏との共同研究).1種数の小さな代数曲線について,ゴナリティ(射影直線への被覆の最小次数)を与えるペンシル(あるいは写像)の個数を決定した.主に種数8の曲線が平面7次曲線のモデルをもつ場合を扱い,その特異点の配置とペンシルの個数との関係を明らかにした.この場合平面7次モデルは7つの2重点をもち,この7つが同一の2次曲線上にあるか否かで場合が分かれる.前者の場合には次数5のペンシルは高々7個であり,すべての場合が実際に起こることを示した.後者の場合,次数5のペンシルは高々14個である.このとき個数が2以上の場合はすべて実際に起こり,個数1という場合のみ実際には起こらないこどを明らかにした.このような結果は種数8で初めて現われるものであり,興味深いと思われる.また各々の場合に,曲線の定義方程式を書き下すことにより明瞭な具体例を得た.その他,種数8以外でゴナリティが小さい場合にも,最小次数のペンシルの個数を決定した.2代数曲面上の線形系の中で,不変量が異なる代数曲線が共存する場合について大渕朗,加藤崇雄両氏と共同研究を行った.特にゴナリティについて考察し超楕円曲線と非超楕円曲線をともに含む線形系について詳しく研究した.代数曲面上の代数曲線のゴナリティやクリフォード指数などについては,非特異平面曲線のほか,ヒルツェブルフ曲面(有理線織面),楕円線織面,K3曲面やデルペッゾ曲面などの上の曲線に対して研究がなされており,相異なるゴナリティをもつ曲線を含む線型系もある程度決定されている.今回の研究では,特異点の配置が与えられたとき,その非特異モデルとして超楕円曲線とトリゴナル曲線(ゴナリティ3の曲線)がともに現れる場合について考察した.1前年度に引き続き,代数曲面上の線形系の中で,不変量が異なる代数曲線が共存する場合について大渕朗,加藤崇雄両氏と共同研究を行った.主にゴナリティについて考察し,超楕円曲線と非超楕円曲線をともに含む線形系について詳しく研究した.今回の研究では,与えられた配置の特異点をもつ平面曲線の非特異モデルとして超楕円曲線とトリゴナル曲線(ゴナリティ3の曲線)がともに現れる場合について考察した.よく知られている曲面上の曲線についてはある程度ゴナリティが決定されているが,線形系の中でゴナリティが不変かどうかについてはまだほとんど知られておらず,曲線論やそれを応用した曲面の研究において重要になると思われる.2代数曲線から射影空間の中への双有理写像や埋め込みの最小次数について研究した.これらはゴナリティやクリフォード指数ほど研究が進んでいない不変量である.まず種数の小さい曲線の二重被覆についてこれらの不変量を決定した.また,ほとんどすべての種数について,二つの不変量が一致しない曲線が存在することを示し,具体的な例を構成した.このような曲線はこれまで双楕円曲線(楕円曲線の二重被覆)しか知られていなかったが,今回構成した曲線はまったく異なる性質の曲線である.3平面4次曲線の二重被覆のワイエルシュトラス半群として現れる数値的半群について米田二良氏と共同で研究し,部分的な結果を得た.特に多くの場合について,平面4次曲線の幾何的な性質を利用して具体的な二重被覆の曲線を構成した.1非特異平面曲線の自己同型群について研究した.次数4以上の非特異平面曲線の自己同型群は射影線形群の部分群になるので,2次元射影線形群の有限部分群の分類を利用することができる.その結果,次数4以上の非特異平面曲線の自己同型群は大きく分けて(a)巡回群,(b)1次元射影線形群の有限部分群の巡回拡大,(c)フェルマー型,(d)クライン型,(e)2次元射影線形群の原始的有限部分群,の五種類に分類されることがわかり,群構造を決定することができた.
KAKENHI-PROJECT-22740016
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代数曲線上の線形系の研究と一般型代数多様体への応用
さらに,この分類を用いて自己同型群の位数が大きい場合を詳しく調べ,特殊な曲線の分類を行った.その他,次数を固定したとき,最大位数の自己同型群をもつ曲線が(射影同値を除いて)ただ一つであることの簡単な証明を与えた.今後,正標数の場合や曲線が特異点をもつ場合,射影空間内の非特異超曲面の自己同型群の研究など,様々な一般化を行うことを考えている.2ヒルツェブルフ曲面上の曲線の自己同型群について,大渕朗氏と共同研究を行った.高橋剛氏により,そのような曲線の自己同型群はヒルツェブルフ曲面の自己同型群に延長されることが示されている.それを利用することにより,曲線の自己同型群の構造や位数の上限を決定することができた.3昨年度に引き続き,平面4次曲線の二重被覆のワイエルシュトラス半群として現れる数値的半群について米田二良氏と共同研究を行った.まず可能性のある数値的半群のリストを得た上で,非特異平面4次曲線の幾何学的な性質を利用することにより,ほとんどの半群を実現するような具体的な代数曲線を構成することができた.今後,残っている場合についても曲線の構成を行う予定である.これまで培った多くの技法が効果的に使えたこと.また,国内外の研究者と活発に交流し,有効な議論ができたこと.24年度が最終年度であるため、記入しない。引き続き曲面上の曲線や線形系について深く考察していきたい.また,その結果をもとに曲面や曲線束,高次元の代数多様体を調べることも視野に入れている.24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22740016
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低炭水化物/高蛋白食で誘導される膵α細胞量増加と白色脂肪細胞褐色化の機序の解明
栄養変化に対して、膵内分泌細胞がどのような細胞挙動を示すのかは不明である。低炭水化物/高蛋白食を長期間摂餌させたマウス(C57/BL6j)では、膵α細胞の著明な増加と脂質エネルギー利用が亢進する。そこで、膵α細胞機能制御における低炭水化物/高蛋白食の急性効果を解析した。低炭水化物/高蛋白食開始10日後において、対照群に比し、血糖値には差を認めなかったが、低炭水化物/高蛋白食摂餌マウスでは、肝グリコーゲン含量低下と血中グルカゴン濃度増加を示し、α細胞量が約2倍に増加した。この時、膵島内α細胞の増殖亢進に加え、膵島近傍の膵管周囲に多数のグルカゴン陽性細胞が出現しており、α細胞新生が推測された。このようなα細胞の新生像には局在が見られ、交感神経の分布と一致した。6-ヒドロキシドーパミンによる選択的除交感神経を行ったマウスでは、低炭水化物/高蛋白食負荷によるα細胞新生および増殖亢進が認められず、細胞量増加は抑制された。一方、β細胞に対する系譜解析では、β細胞からα細胞への分化転換は観察されなかった。以上の結果は、低炭水化物/高蛋白食で誘導される神経ネットワークを介した膵α細胞量制御を示唆し、栄養変化に対する急性応答機構の一部と考えられた。一方、低炭水化物/高蛋白食を長期間摂餌させたマウスでは、褐色脂肪組織において脂肪分解およびβ酸化に関連する遺伝子発現が増加し、精巣上脂肪組織において熱産生に関わるUCP1の発現が顕著に増加した。すなわち、脂肪組織における脂質利用亢進と熱産生亢進が示唆された。動物実験を中心に、予定した研究を遂行中である。短期の低炭水化物/高蛋白食負荷で誘導される膵α細胞増加が、神経ネットワークを介して制御される現象である可能性を明らかにし、さらにエネルギー代謝の中枢臓器である脂肪組織の質的変化を解明した。低炭水化物/高蛋白食負荷の急性効果として認められた膵α細胞増殖・新生に関しては、肝臓ー視床下部ー膵島間での臓器連関を想定し、肝臓→視床下部→膵臓、あるいは視床下部→膵臓経路に関わる迷走神経肝臓枝・膵臓枝離断マウスを用いての実験を予定している。低炭水化物/高蛋白食に関連する白色脂肪細胞褐色化については、培養3T3-L1脂肪細胞分化の改善、さらに実験条件を修正して、グルカゴンの直接効果、さらにノルアドレナリンとの相互作用による脂肪細胞UCP1や褐色化関連(C/ebpβ, Pgc-1α等)・代謝機能制御関連遺伝子発現の検討を重ねる予定である。実験に必要な機器および試薬は準備されており、今後研究は進展していくことが推測される。栄養変化に対して、膵内分泌細胞がどのような細胞挙動を示すのかは不明である。低炭水化物/高蛋白食を長期間摂餌させたマウス(C57/BL6j)では、膵α細胞の著明な増加と脂質エネルギー利用が亢進する。そこで、膵α細胞機能制御における低炭水化物/高蛋白食の急性効果を解析した。低炭水化物/高蛋白食開始10日後において、対照群に比し、血糖値には差を認めなかったが、低炭水化物/高蛋白食摂餌マウスでは、肝グリコーゲン含量低下と血中グルカゴン濃度増加を示し、α細胞量が約2倍に増加した。この時、膵島内α細胞の増殖亢進に加え、膵島近傍の膵管周囲に多数のグルカゴン陽性細胞が出現しており、α細胞新生が推測された。このようなα細胞の新生像には局在が見られ、交感神経の分布と一致した。6-ヒドロキシドーパミンによる選択的除交感神経を行ったマウスでは、低炭水化物/高蛋白食負荷によるα細胞新生および増殖亢進が認められず、細胞量増加は抑制された。一方、β細胞に対する系譜解析では、β細胞からα細胞への分化転換は観察されなかった。以上の結果は、低炭水化物/高蛋白食で誘導される神経ネットワークを介した膵α細胞量制御を示唆し、栄養変化に対する急性応答機構の一部と考えられた。一方、低炭水化物/高蛋白食を長期間摂餌させたマウスでは、褐色脂肪組織において脂肪分解およびβ酸化に関連する遺伝子発現が増加し、精巣上脂肪組織において熱産生に関わるUCP1の発現が顕著に増加した。すなわち、脂肪組織における脂質利用亢進と熱産生亢進が示唆された。動物実験を中心に、予定した研究を遂行中である。短期の低炭水化物/高蛋白食負荷で誘導される膵α細胞増加が、神経ネットワークを介して制御される現象である可能性を明らかにし、さらにエネルギー代謝の中枢臓器である脂肪組織の質的変化を解明した。低炭水化物/高蛋白食負荷の急性効果として認められた膵α細胞増殖・新生に関しては、肝臓ー視床下部ー膵島間での臓器連関を想定し、肝臓→視床下部→膵臓、あるいは視床下部→膵臓経路に関わる迷走神経肝臓枝・膵臓枝離断マウスを用いての実験を予定している。低炭水化物/高蛋白食に関連する白色脂肪細胞褐色化については、培養3T3-L1脂肪細胞分化の改善、さらに実験条件を修正して、グルカゴンの直接効果、さらにノルアドレナリンとの相互作用による脂肪細胞UCP1や褐色化関連(C/ebpβ, Pgc-1α等)・代謝機能制御関連遺伝子発現の検討を重ねる予定である。実験に必要な機器および試薬は準備されており、今後研究は進展していくことが推測される。研究を効率よく実施でき、物品・試薬購入費が予定より少額となった。
KAKENHI-PROJECT-18K08516
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低炭水化物/高蛋白食で誘導される膵α細胞量増加と白色脂肪細胞褐色化の機序の解明
翌年度請求額と合わせて、測定キット購入費用・消耗品費としてさらに効率よく使用する予定である。また、成果発表や研究関連情報収集を目的としての学会への参加費を計上する。
KAKENHI-PROJECT-18K08516
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市民と農業をつなぐ『大学農場発「江戸東京野菜」たねとりネットワーク』の形成
この研究は、東京都内で栽培されている伝統野菜「江戸東京野菜」のたねとりネットワークの形成が目的である。研究者の所属する西東京市の東京大学生態調和農学機構を活動場所の核に、農家や市民、教育施設、行政等を結び、「江戸東京野菜」の種子を次世代に継承していくことを目指した。他県の伝統野菜栽培農家の訪問も含め分かったことは、自家採種する農家は、高齢化で技術が失われつつあり、種子も消滅の危機に瀕していた。都内で伝統野菜を栽培する農家(13軒)も、生産の主力はF1交配種に切り替わっており、種採りする際に残す果実や株を選ぶ母本選抜も文献や長老の口述を頼りに手探りで行っていた。また、個人で自家採種していて作柄不良による種子流失や交雑による種子汚染の危険性などの不安を農家は抱えていた。ネットワーク化のニーズは高く、難しいといわれる生産技術や自家採種技術だけでなく、流通や加工まで含めた情報共有の必要性を感じた。その他、大田区の農家で後継者が相続しないため、「馬込半白キュウリ」「馬込大太三寸ニンジン」の種子を東京大学に寄贈するケースもあった。研究機関としての伝統野菜の品種の系統保存およびたねとりネットワークの形成に向けた動きである。今回、市民を巻き込んだ栽培から自家採種までを包括した農作業の展開まで至らなかったが、地元科学館と協働した伝統野菜や在来作物をフィールドや講座で学ぶ企画が立ち上がっており、今後の市民への広報普及につながるものと考えられる。この研究は、東京都内で栽培されている伝統野菜「江戸東京野菜」のたねとりネットワークの形成が目的である。研究者の所属する西東京市の東京大学生態調和農学機構を活動場所の核に、農家や市民、教育施設、行政等を結び、「江戸東京野菜」の種子を次世代に継承していくことを目指した。他県の伝統野菜栽培農家の訪問も含め分かったことは、自家採種する農家は、高齢化で技術が失われつつあり、種子も消滅の危機に瀕していた。都内で伝統野菜を栽培する農家(13軒)も、生産の主力はF1交配種に切り替わっており、種採りする際に残す果実や株を選ぶ母本選抜も文献や長老の口述を頼りに手探りで行っていた。また、個人で自家採種していて作柄不良による種子流失や交雑による種子汚染の危険性などの不安を農家は抱えていた。ネットワーク化のニーズは高く、難しいといわれる生産技術や自家採種技術だけでなく、流通や加工まで含めた情報共有の必要性を感じた。その他、大田区の農家で後継者が相続しないため、「馬込半白キュウリ」「馬込大太三寸ニンジン」の種子を東京大学に寄贈するケースもあった。研究機関としての伝統野菜の品種の系統保存およびたねとりネットワークの形成に向けた動きである。今回、市民を巻き込んだ栽培から自家採種までを包括した農作業の展開まで至らなかったが、地元科学館と協働した伝統野菜や在来作物をフィールドや講座で学ぶ企画が立ち上がっており、今後の市民への広報普及につながるものと考えられる。
KAKENHI-PROJECT-26925011
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イベントスキーマを基盤とした教育的意味タグセットの実証的研究
本研究では、(1)イベントスキーマと文型の典型性、(2)英語教科書を通した典型的な構文の頻度効果、(3)典型的な構文と代表的な動詞、の3つのコーパスを基盤とした英語研究を通して、Radden & Dirven (2007)の11種類の構文の典型性を検証し、典型的な13構文を抽出、代表的な動詞13種類( e.g., States/SVC (be))を特定した。また、中学校の英語教科書の場合(6社3学年計18冊)で実際の構文頻度分布を確認し日本人英語学習者への影響を予測するとともに、13構文が教科書コーパス研究や学習者コーパス研究で教育的意味タグとして利用できる可能性を整理した。2013年度では、イベントスキーマを基盤とした教育的意味タグセットを精選する研究を話し言葉の場合に絞り行った。特に、(1)認知文法論で典型的とされるイベントスキーマと文型の「典型性」を話し言葉コーパスの場合で検証していくこと、(2)教育的に最低限指導すべき典型的な構文を精選し意味タグセットの形にすること、(3) 3年目に教育的意味タグの教育効果を検証するための教科書コーパスを構築すること、の3つの課題に取り組んだ。課題(2)では、上記13構文を教育的意味タグセットとして整理し、最後に、課題(3)では、中学校の英語教科書(2012年度版)を基に構文頻度効果を検証するコーパスの構築および整備を行い3年目の研究の準備とした。また、本研究を基に教育実践例や例文選定法も整理した(赤野・堀・投野2014;馬本2014)。本研究では、(1)イベントスキーマと文型の典型性、(2)英語教科書を通した典型的な構文の頻度効果、(3)典型的な構文と代表的な動詞、の3つのコーパスを基盤とした英語研究を通して、Radden & Dirven (2007)の11種類の構文の典型性を検証し、典型的な13構文を抽出、代表的な動詞13種類( e.g., States/SVC (be))を特定した。また、中学校の英語教科書の場合(6社3学年計18冊)で実際の構文頻度分布を確認し日本人英語学習者への影響を予測するとともに、13構文が教科書コーパス研究や学習者コーパス研究で教育的意味タグとして利用できる可能性を整理した。2012年度は、イベントスキーマを基盤とした教育的意味タグセットを精選する基礎研究の準備を行った。特に、認知文法論で典型的とされるイベントスキーマと文型の「典型性」を改めて検証する研究環境整備を以下のように行った。(1)典型性を検証する上で、頻度が低く使われ方も固定的な中間構文を除き、Radden & Dirven (2007)の11種類のイベントスキーマと文型に研究の視点を戻した。(2)典型性を頻度の観点から検証するため、英語母語話者のスキーマが動的に構築された背景となる話し言葉にまず焦点をあてた。(3)特に話し言葉コーパスでもバランス良く構築されたBritish National CorpusのSpoken Partに注目し先行研究を整理した。(4)典型性をスキーマの拡張性からも検証するためFrameNet Project (International Computer Science Institute, 2000-2012)の最新の研究成果を確認した。(5)典型性を検証する際、同じ動詞で異なるスキーマ、同じスキーマで異なる動詞まで調査範囲を広げるため、その調査方法と統計手法の洗い出しを行った。研究を終えるにあたり、話し言葉における典型的な13構文(最終年度に調整した13動詞を代表とする)を教育的意味タグとして利用できるとした。また、教科書コーパス研究や学習者コーパス研究を通して日本人英語学習者の基本的な構文の習得状況を予測・記述しつつ、教育文法、特に5文型の指導の後に本研究の13構文を基本構文として指導していくことを提案した。英語教育学、コーパス言語学初年度に、文献研究を通して調査方針を微調整したことで無理のない形で調査を進めることができた。ただし、動的用法基盤モデルに基づき話し言葉に焦点を絞ったことで、話し言葉特有の問題が明らかとなった。調査に入る前に、文献研究を行い調査方法を洗い出す中で当初の調査方法を見直す必要が出て来た。それが原因で、予定の調査にとりかかるのがやや遅れている。3年目は、以下2つの課題に取り組むことにしている。(1)中学校の英語教科書(2012年度版)に見られる構文頻度効果を本研究の教育的意味タグを通して検証すること、(2)特に高頻度構文の頻度効果に注目し、学習者の中間言語内に潜む概念融合や概念軋轢を考察すること。上記の応用研究をふまえ、教育的意味タグの教育研究上の意義とその問題点を指摘し、本研究を終えることとする。2年目の2013年度では、以下4つの課題に取り組む予定となっている。(1)頻度情報を軸に認知文法論的に典型的とされたイベントスキーマと文型を話し言葉コーパスの場合で検証していくこと。(2)書き言葉コーパスの場合も同じ調査を行い、レジスターやジャンル別の違いを記述すること。(3)その上で教育的に最低限指導すべきイベントスキーマと文型を精選し意味タグセットの形にすること。(4)同時に3年目に教育的意味タグの教育効果を検証するため、教科書コーパスの構築および整備を行うこと。
KAKENHI-PROJECT-24520682
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イベントスキーマを基盤とした教育的意味タグセットの実証的研究
次年度の研究費は、(1)研究分野の最近の動向を確認する文献購入および学会参加のため、(2)上記4つの研究をそれぞれ進め学会発表や論文投稿を随時進めていくため、に利用する予定となっている。
KAKENHI-PROJECT-24520682
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視覚誘発電位を用いた緑内障眼の青錐体の感度測定
心理物理学的手法を用いて青色感度を測定した報告では、中心窩近傍の青錐体系視感度では潮崎分類で□a期より進行した症例では異常を呈するが、早期では正常範囲であった。また中心視野25°以内で検査を行うと、いわゆる高眼圧症ならびに早期緑内障で青錐体系の障害が認められたと報告している。本研究では緑内障眼および高眼圧症眼に対し、白色背景光と黄色背景光下で460nm(青色),540nm(緑色),640nm(赤色)の3種の刺激光をガンツフェルト刺激にて視覚誘発電位を記録し、他覚的検査法にて検討した。視覚誘発電位の振幅には個人差があるため、短波長領域での変化を調べるために3種の刺激光の刺激強度の相対値を算出し、比較検討を行った。その結果、白色背景光下では緑内障眼および高眼圧症例で記録された視覚誘発電位には、正常と比較して差は認められなかった。一方、黄色背景光下では青(460nm)の刺激に対する反応が、緑(560nm),赤(640nm)の刺激に対する反応に比べて有意に低下していた。すなわち黄色背景光を用いて全視野刺激にて青(460nm)、緑((560nm),赤(640nm)の3種類の刺激光を用いVECPを記録し、刺激強度の相対値を比較することで緑内障および高眼圧症の群で短波長の反応に有意な低下を証明することができた。このことより1)VECPは緑内障初期の変化をとらえるのに有用である2)緑内障の初期では、中・長波長に比較して短波長側に低下が認められることが示唆された。本実験は高眼圧症および緑内障初期の症例のみの検討であるが、より進行した症例では短波長側がさらに低下することが考えられ、今回しめした症例の今後の変化とともに、緑内障の病期による違いについてもさらに検討が必要と考えられた。心理物理学的手法を用いて青色感度を測定した報告では、中心窩近傍の青錐体系視感度では潮崎分類で□a期より進行した症例では異常を呈するが、早期では正常範囲であった。また中心視野25°以内で検査を行うと、いわゆる高眼圧症ならびに早期緑内障で青錐体系の障害が認められたと報告している。本研究では緑内障眼および高眼圧症眼に対し、白色背景光と黄色背景光下で460nm(青色),540nm(緑色),640nm(赤色)の3種の刺激光をガンツフェルト刺激にて視覚誘発電位を記録し、他覚的検査法にて検討した。視覚誘発電位の振幅には個人差があるため、短波長領域での変化を調べるために3種の刺激光の刺激強度の相対値を算出し、比較検討を行った。その結果、白色背景光下では緑内障眼および高眼圧症例で記録された視覚誘発電位には、正常と比較して差は認められなかった。一方、黄色背景光下では青(460nm)の刺激に対する反応が、緑(560nm),赤(640nm)の刺激に対する反応に比べて有意に低下していた。すなわち黄色背景光を用いて全視野刺激にて青(460nm)、緑((560nm),赤(640nm)の3種類の刺激光を用いVECPを記録し、刺激強度の相対値を比較することで緑内障および高眼圧症の群で短波長の反応に有意な低下を証明することができた。このことより1)VECPは緑内障初期の変化をとらえるのに有用である2)緑内障の初期では、中・長波長に比較して短波長側に低下が認められることが示唆された。本実験は高眼圧症および緑内障初期の症例のみの検討であるが、より進行した症例では短波長側がさらに低下することが考えられ、今回しめした症例の今後の変化とともに、緑内障の病期による違いについてもさらに検討が必要と考えられた。
KAKENHI-PROJECT-08672007
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08672007
ヒト上皮性細胞無血清培養を用いる細胞増殖調節因子の検索と解析
ヒトの正常上皮細胞及び上皮性悪性腫瘍細胞を培養初代より血清を含まない培養液を用い,長期培養を行う実験系を確立すること,それを用いて増殖因子,分化誘導因子,増殖阻害因子等の解析を行うことを目的とした.1.ヒト正常表皮細胞の培養については分担者許南浩は23mm^2の微小皮膚片を出発材料として, 23週間表皮細胞の培養が可能である系を開発した.これらを色素性乾皮症患者,乾癬症患者の生検皮膚片に応用して, DNA修復能,ビタミンD感受性の検討に利用することが出来た.培地には現在のところ10%FCSが用いられているが,之はMCDB等を用いた無血清低血清培地に置き換えることを検討中である.ヒト正常気管支上皮については宇多小路は,高アミノ酸培地に微量金属成分を補い,蛋白,ペプチドとしては1%透析FBS,インスリン,トランスフェリン,EGFのみで纎維芽細胞の殆ど混じない上皮細胞シートを約4週間増殖させることが出来た.それ以後には上皮細胞の増殖の低下と纎維芽細胞の増加を認めた.2.ヒト上皮性悪性腫瘍細胞の培養,特に低血清無血清培養は分担者平郡,高橋等と共に許,宇多小路も試みており, 1年目として多くの経験を蓄積しつつある.現在のところ,上皮性腫瘍細胞では1%FCS培地よりは10%FCS培地の方が培養成績が優っており,これに伴う纎維芽細胞の増殖を始何に抑えるかが解決されなければならないと考えられる.無血清培地,化学的に観知の成分のみによるヒト上皮性細胞の長期培養には未だ増殖因子,固相の表層基質,気相の数件等の探究が必要であると考えている.3.これらヒト上皮細胞へのDNAトランスフェクションによる細胞の悪性化は試みられたが,変異株は得られなかった.ヒトの正常上皮細胞及び上皮性悪性腫瘍細胞を培養初代より血清を含まない培養液を用い,長期培養を行う実験系を確立すること,それを用いて増殖因子,分化誘導因子,増殖阻害因子等の解析を行うことを目的とした.1.ヒト正常表皮細胞の培養については分担者許南浩は23mm^2の微小皮膚片を出発材料として, 23週間表皮細胞の培養が可能である系を開発した.これらを色素性乾皮症患者,乾癬症患者の生検皮膚片に応用して, DNA修復能,ビタミンD感受性の検討に利用することが出来た.培地には現在のところ10%FCSが用いられているが,之はMCDB等を用いた無血清低血清培地に置き換えることを検討中である.ヒト正常気管支上皮については宇多小路は,高アミノ酸培地に微量金属成分を補い,蛋白,ペプチドとしては1%透析FBS,インスリン,トランスフェリン,EGFのみで纎維芽細胞の殆ど混じない上皮細胞シートを約4週間増殖させることが出来た.それ以後には上皮細胞の増殖の低下と纎維芽細胞の増加を認めた.2.ヒト上皮性悪性腫瘍細胞の培養,特に低血清無血清培養は分担者平郡,高橋等と共に許,宇多小路も試みており, 1年目として多くの経験を蓄積しつつある.現在のところ,上皮性腫瘍細胞では1%FCS培地よりは10%FCS培地の方が培養成績が優っており,これに伴う纎維芽細胞の増殖を始何に抑えるかが解決されなければならないと考えられる.無血清培地,化学的に観知の成分のみによるヒト上皮性細胞の長期培養には未だ増殖因子,固相の表層基質,気相の数件等の探究が必要であると考えている.3.これらヒト上皮細胞へのDNAトランスフェクションによる細胞の悪性化は試みられたが,変異株は得られなかった.
KAKENHI-PROJECT-62010076
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62010076
ミスフィット層状酸化物材料の探索とテーラリング
本研究では、ミスフィット層状コバルト酸化物を超高圧法・ソフトケミストリーなど様々な合成手法や後熱処理手法によりテーラリングし、その物性の多様性を調べること目的とした。また、新たなミスフィット酸化物を探索・合成し、有用な新規物性、すなわち新機能の開拓をめざした。本年度の主な研究成果を以下に列挙する。・層状コバルト酸化物A_xCoO_2(A=Na,Li;x=0.78,0.47,0.36,0.12[Na],x=1,0.49,0[Li])のCo原子価状態をX線吸収端微細構造(XANES)分光法により調べた。その結果、全ての組成においてCoは低スピン状態を持ち、x=0.4-0.5の閾値以下の組成で酸素欠損が生じることが明らかになった(現在、成果をまとめ学術論文を準備中)。・ミスフィット層状コバルト酸化物の特異な化学結合状態を調べる目的で、ラマン分光法の実験セットアップを進めている。試料は、Mn置換を施した[Ca_2Co_<1-x>Mn_xO_<3-ε>]_<0.62>CoO_2などであり、Mn置換量を系統的に変化させた試料を作製した。・層状コバルト酸化物YBaCo_4O_<7+δ>におけるin situ高温X線回折測定を行った。本物質は200400°Cの温度範囲で特異な酸素吸収・放出特性を示し、その過程に伴う結晶構造の変化に興味が持たれる。実験の結果、酸素吸収・放出に伴う構造の顕著な変化が確認された。現在、構造変化の詳細を調べるため、in situ高温中性子回折測定の実験準備を行っている。優れた熱電変換材料である層状Co酸化物は、最近、超伝導体にもなり得ることが示されたため、最も注目されている物質群である。これら層状Co酸化物はCoO_2層間にアルカリ金属面や様々な岩塩型層を挟み得るが、岩塩型層とCoO_2層は互いに異なる格子周期を持ち、結合が「ミスフィット」している興味深い結晶構造を有する。我々は、ミスフィット層状酸化物に対し酸素不定比性の制御や元素置換を施すことによりミスフィットの度合いや物性とくに輸送特性がテーラリングできることを見出した。本研究では、ミスフィット層状酸化物を超高圧法・ソフトケミストリーなど様々な合成手法や後熱処理手法によりテーラリングし、その物性の多様性を調べること目的とする。また、新たなミスフィット酸化物を探索・合成し、有用な新規物性、すなわち新機能の開拓をめざす。本プロジェクトは平成16年11月24日より開始され、現在は以下に述べる実験準備を行っている最中である。Co原子価状態と物性の相関関係を明らかにすることを目的とし、我々はXANES分光実験を平成17年3月に行う。本プロジェクトでは、実験に用いるミスフィット酸化物試料、具体的には[(Ca,Sr)Co_2O_3]_qCoO_2及びNa_xCoO_2の合成を行っている。またそれと平行し、YBaCo_4O_7,(Sc,Sr)CoO_2,RECoO_3(RE=Y,Sc)など幾つかのコバルト酸化物において、物性に対する酸素不定比性の影響を調べている。本研究では、ミスフィット層状コバルト酸化物を超高圧法・ソフトケミストリーなど様々な合成手法や後熱処理手法によりテーラリングし、その物性の多様性を調べること目的とした。また、新たなミスフィット酸化物を探索・合成し、有用な新規物性、すなわち新機能の開拓をめざした。本年度の主な研究成果を以下に列挙する。・層状コバルト酸化物A_xCoO_2(A=Na,Li;x=0.78,0.47,0.36,0.12[Na],x=1,0.49,0[Li])のCo原子価状態をX線吸収端微細構造(XANES)分光法により調べた。その結果、全ての組成においてCoは低スピン状態を持ち、x=0.4-0.5の閾値以下の組成で酸素欠損が生じることが明らかになった(現在、成果をまとめ学術論文を準備中)。・ミスフィット層状コバルト酸化物の特異な化学結合状態を調べる目的で、ラマン分光法の実験セットアップを進めている。試料は、Mn置換を施した[Ca_2Co_<1-x>Mn_xO_<3-ε>]_<0.62>CoO_2などであり、Mn置換量を系統的に変化させた試料を作製した。・層状コバルト酸化物YBaCo_4O_<7+δ>におけるin situ高温X線回折測定を行った。本物質は200400°Cの温度範囲で特異な酸素吸収・放出特性を示し、その過程に伴う結晶構造の変化に興味が持たれる。実験の結果、酸素吸収・放出に伴う構造の顕著な変化が確認された。現在、構造変化の詳細を調べるため、in situ高温中性子回折測定の実験準備を行っている。
KAKENHI-PROJECT-04F04411
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04F04411
スラヴ語スラヴ文学の比較対照研究
2年間の研究成果の概要は以下のとおりである。1.本研究はスラヴ語学文学の個々の専門分野における研究分担者各人の研究の推進と、国内のこの分野の業績の集約および対外的紹介を目的とするもので、新たに得られた知見は極めて多岐に渉らざるを得ない。3.1988年9月、研究代表者および研究分担者の約半数(計11名)がブルガリアのソフィアで開催された第10回国際スラヴィスト会議に参加し、8名が上記の研究発表を行った。4.最近10年間のこの分野の国内の主要業績約1300点を網羅した文献目録「日本におけるスラヴ語学文学研究1978-1988」(v+53p.索引5p.)を完成し、1989年3月1日付で印刷刊行した(添付資料その2)。この文献目録は日本におけるスラヴ語学文学研究の正確な現状把握と一層の振興のために極めて有効な役割を果たすものと思う。2年間の研究成果の概要は以下のとおりである。1.本研究はスラヴ語学文学の個々の専門分野における研究分担者各人の研究の推進と、国内のこの分野の業績の集約および対外的紹介を目的とするもので、新たに得られた知見は極めて多岐に渉らざるを得ない。3.1988年9月、研究代表者および研究分担者の約半数(計11名)がブルガリアのソフィアで開催された第10回国際スラヴィスト会議に参加し、8名が上記の研究発表を行った。4.最近10年間のこの分野の国内の主要業績約1300点を網羅した文献目録「日本におけるスラヴ語学文学研究1978-1988」(v+53p.索引5p.)を完成し、1989年3月1日付で印刷刊行した(添付資料その2)。この文献目録は日本におけるスラヴ語学文学研究の正確な現状把握と一層の振興のために極めて有効な役割を果たすものと思う。今年度の研究実績の概要は下のとおりである.1本研究はスラヴ語学文学研究の個々の専門分野における研究分担者の研究の推進と,国内の業績の集約および対外的紹介を目的としているので,新たに得られた知見は極めら多岐にわたるが,簡単な要約を許さない性質のものなので,それぞれ専攻論文ないし解説の形でまとめる方針とし,今年度は別掲(11.研究発表の項参照)の8タイトリを含む論文集(欧文)の形で印刷刊行することとした.2昭和62年11月21日東京に於て本科研の研究分担者の全体会議を開催し第10回国際スラヴイスト会議で発表予定の10本の研究について,各担当者による内容の説明ないし資料の提示を受け,内容の改善について共同の討議を行なった.3 1983年以降5年間の国内のスラヴ語学文学研究の業績の整理集約についても各グループの分担と責任者を決定し,その作業を開始したが,その成果は次年度に刊行の予定である.4設備備品費はすべて図書購入費であるが,当初の予定より大幅な増額を見たのは, 5年ごとに開催される国際スラヴイスト会議を今年に控えて,ここ12年各国で関係分野の重要な出版物が急増したためで,旅費と謝金およびその他の支出分野をできるだけ縮少して,図書費の支出をまかなった結果である.5その他の支出項目の金額の大部分は,当初から支出を予定していたとおりの印刷刊行費である.昭和63年度の研究成果の概要は以下のとおりである。1.1988年9月、研究代表者および研究分担者の約半数(計11名)がブルガリアのソフィアで開催された第10回国際スラヴィスト会議に参加し、8名が別指(11研究発表の項参照)の8タイトルの研究発表を行なった。2.最近10年間のスラヴ語学文学の国内の主要業績約1300点を網羅した文献目録「日本におけるスラヴ語学文学研究1978-1988」(V+53P、索引5P.)を完成し、1989年3月1日付で刊行した(添付資料その2)。この文献目録は日本におけるスラヴ語、文学研究の正確な現状把握と一層の振興のために極めて有効な役割を果たすものと思う。
KAKENHI-PROJECT-62301058
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ATF2遺伝子ファミリー欠損による乳癌の発症
1,ATF2遺伝子ヘテロ欠損マウスは雌で生後一年以上経過すると高頻度で(18例/31匹)乳癌の発症が見られた。この乳癌は結合組織が発達しているのでスキルス硬癌と診断され、肺や肝臓への転位を伴うものであった。2、乳癌発症のメカニズムを探るために野生型及びヘテロ、ホモ欠損胎児から初代培養細胞を採取しチップテクノロジー法を用いて発現している遺伝子を比較したところAPCとc-junの発現が変異細胞で低下していた。3、APCの発現が低下すればβ-カテニンの蓄積が予想される。そこで乳癌組織を用いて免疫染色法でβ-カテニン蛋白質の蓄積を解析した結果、複数のサンプルでβ-カテニン蛋白質の蓄積が観察された。4、3T3法で不死化させた細胞株を用いて2と同様に解析したところ、新たにGadd45遺伝子の発現誘導がATF2欠損細胞では正常細胞と比較して著しく低下することが明らかになった。5、免疫染色法とRT-PCR法で乳癌組織と正常乳腺組織においてもGadd45遺伝子の発現量に差の有る事が確認された。6、また野生型及びヘテロ、ホモ欠損胎児から初代培養細胞を採取し活性型RASを発現させた後、ヌードマウスに移植した結果、ヘテロとホモの場合は100%腫瘍を形成したが、野生型では全く形成されなかった。7、以上の事からATF2ヘテロ欠損マウスは腫瘍になるポテンシャルが非常に高く、生後1年程度の間に新たな変異が導入されるとβ-カテニンの蓄積やGadd45の誘導不全等により、腫瘍を発症すると考えられる。1,ATF2遺伝子ヘテロ欠損マウスは雌で生後一年以上経過すると高頻度で(18例/31匹)乳癌の発症が見られた。この乳癌は結合組織が発達しているのでスキルス硬癌と診断され、肺や肝臓への転位を伴うものであった。2、乳癌発症のメカニズムを探るために野生型及びヘテロ、ホモ欠損胎児から初代培養細胞を採取しチップテクノロジー法を用いて発現している遺伝子を比較したところAPCとc-junの発現が変異細胞で低下していた。3、APCの発現が低下すればβ-カテニンの蓄積が予想される。そこで乳癌組織を用いて免疫染色法でβ-カテニン蛋白質の蓄積を解析した結果、複数のサンプルでβ-カテニン蛋白質の蓄積が観察された。4、3T3法で不死化させた細胞株を用いて2と同様に解析したところ、新たにGadd45遺伝子の発現誘導がATF2欠損細胞では正常細胞と比較して著しく低下することが明らかになった。5、免疫染色法とRT-PCR法で乳癌組織と正常乳腺組織においてもGadd45遺伝子の発現量に差の有る事が確認された。6、また野生型及びヘテロ、ホモ欠損胎児から初代培養細胞を採取し活性型RASを発現させた後、ヌードマウスに移植した結果、ヘテロとホモの場合は100%腫瘍を形成したが、野生型では全く形成されなかった。7、以上の事からATF2ヘテロ欠損マウスは腫瘍になるポテンシャルが非常に高く、生後1年程度の間に新たな変異が導入されるとβ-カテニンの蓄積やGadd45の誘導不全等により、腫瘍を発症すると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-12215158
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山地河川における浮遊砂の流出に関する研究
1.山地河川の流れと浮遊砂の流出特性神通川支流の高原川流域で浮遊砂濃度,流量,降雨量などを計測した結果について解析した.その結果,(1)浮遊砂量は降雨強度に支配されるが,場の条件の変化によってそれらの関係は一義的に決定されない,(2)流量と浮遊砂量の関係も(1)と同様の理由で一義的に決定されない,(3)流域面積が大きくなるほど浮遊砂現象を支配する要素が多くなり,その現象の解明は困難となる,(4)現象の解明のためには一つのシステムとして捉えると同時にプロセスとして取り扱うことが必要である,ということなどがわかった.2.浮遊砂量算定のモデル山地河川だけでなく,一搬的な条件で適用できる浮遊砂の拡散モデルを提案した.すなわち,それは浮遊砂の生成を考慮したモデルであり,生成高さの分布によって濃度分布が大きく変化することが示された.また,生成高さは河床砂の上昇流による離脱高さと定義されるが,それには水理条件だけでなく,砂の河床における存在状態に大きく影響されることがわかった.3.浮遊砂の流出システム土砂生産源における浮遊砂量の条件,すなわち,河川システムにおける浮遊砂量の境界条件を明らかにすれば,2.のようなモデルによって浮遊砂の流出過程は計算できる.しかし,1.の研究で明らかにされたように,土砂の生産過程は時間的,場所的な場の変化に左右されるので複雑である.今後,浮遊砂成分の生産過程や河川への流出過程を明らかにし,本研究をさらに発展させたいと計画している.1.山地河川の流れと浮遊砂の流出特性神通川支流の高原川流域で浮遊砂濃度,流量,降雨量などを計測した結果について解析した.その結果,(1)浮遊砂量は降雨強度に支配されるが,場の条件の変化によってそれらの関係は一義的に決定されない,(2)流量と浮遊砂量の関係も(1)と同様の理由で一義的に決定されない,(3)流域面積が大きくなるほど浮遊砂現象を支配する要素が多くなり,その現象の解明は困難となる,(4)現象の解明のためには一つのシステムとして捉えると同時にプロセスとして取り扱うことが必要である,ということなどがわかった.2.浮遊砂量算定のモデル山地河川だけでなく,一搬的な条件で適用できる浮遊砂の拡散モデルを提案した.すなわち,それは浮遊砂の生成を考慮したモデルであり,生成高さの分布によって濃度分布が大きく変化することが示された.また,生成高さは河床砂の上昇流による離脱高さと定義されるが,それには水理条件だけでなく,砂の河床における存在状態に大きく影響されることがわかった.3.浮遊砂の流出システム土砂生産源における浮遊砂量の条件,すなわち,河川システムにおける浮遊砂量の境界条件を明らかにすれば,2.のようなモデルによって浮遊砂の流出過程は計算できる.しかし,1.の研究で明らかにされたように,土砂の生産過程は時間的,場所的な場の変化に左右されるので複雑である.今後,浮遊砂成分の生産過程や河川への流出過程を明らかにし,本研究をさらに発展させたいと計画している.山地河川における浮遊砂の流出のモデル化を目指して,現地観測と理論解析により以下の様な成果を得た.1.山地河川の流れの特性山地河川は,急勾配,小さな相対水深,段階状の河床形態,巨礫の存在などで特徴づけられる.それによって流れの構造も平野部の河川のものと異なる.本年度文献調査や予備実験を行ったが,さらに実験と観測を重ね,浮遊砂の運動に係わる乱流特性について明らかにする.2.急勾配河道における浮遊砂の運動特性山地河川では,勾配が急であるため水深が小さいにもかかわらず掃流力が大きい.このような場合,河床粒子はかなり高い位置まで浮上する.従来の拡散理論ではそのような状況を考慮していないので,河床底面付近に基準点濃度として浮遊砂の生成を与えているが,急勾配河道の場合,水深全体に渡って浮遊砂の生成を与えなければならない.このようなことを粒子のビデオ撮影により確かめるとともに,新たな拡散方程式の構築を行った.3.実山地河川における浮遊砂の流出特性京都大学防災研究所付属穂高砂防観測所のヒル谷流域で,砂防ダムからの排砂に伴う浮遊砂と掃流砂の流下過程について現地観測した.観測点はは排砂地点から150mの区間に3箇所設けられた.浮遊砂濃度は排砂後直ぐに下流に伝播してくるが,その過程で粒径が徐々に細かくなることや河道の空隙や淵を埋めながら伝播してくる掃流砂の移動層が観測地点に近づくと,浮遊砂濃度は急に増加するとともに粒径も大きくなることがわかった.1.山地河川の流れと浮遊砂の流出特性神通川支流の高原川流域で浮遊砂濃度,流量,降雨量などを計測した結果について解析した.その結果,(1)浮遊砂量は降雨強度に支配されるが,場の条件の変化によってそれらの関係は一義的に決定されない,(2)流量と浮遊砂量の関係も(1)と同様の理由で一義的に決定されない,(3)流域面積が大きくなるほど浮遊砂現象を支配する要素が多くなり,その現象の解明は困難となる,(4)現象の解明のためには一つのシステムとして捉えると同時にプロセスとして取り扱うことが必要である,ということなどがわかった.2浮遊砂量算定のモデ
KAKENHI-PROJECT-09460069
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09460069
山地河川における浮遊砂の流出に関する研究
山地河川だけでなく,一搬的な条件で適用できる浮遊砂の拡散モデルを考案した.すなわちそれは浮遊砂の生成を考慮したモデルであり,生成高さの分布によって濃度分布が大きく変化することが示された.また,生成高さは河床砂の上昇流による離脱高さと定義されるが,それには水理条件だけでなく,砂の河床における存在状態に大きく影響されることがわかった.3.浮遊砂の流出システム土砂生産源における浮遊砂量の条件,すなわち,河川システムにおける浮遊砂量の境界条件を明らかにすれば,2.のようなモデルによって浮遊砂の流出過程は計算できる.しかし,1.の研究で明らかにされたように,土砂の生産過程は時間的,場所的な場の変化に左右されるので複雑である.今後,浮遊砂成分の生産過程や河川への流出過程を明らかにし,本研究をさらに発展させたいと計画している.
KAKENHI-PROJECT-09460069
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Rett症候群におけるX染色体不活化を考慮した症状推移曲線の構築
諸般の事情により今年度は所属施設を異動せざるを得なかったため、最終的に研究期間内には、一卵性双生児例1組、姉妹例2組、姉弟例1組、男児例3例(姉弟例の弟を含む)、剖検例1例を含む合計73症例を全国から集積し分析し得た。そのうち、一卵性双生児例1組、姉妹例2組、姉弟例1組、剖検例1例を含む合計48例(約66%)で、点突然変異13種類(一卵性双生児例1組と姉妹例1組及び姉弟例1組を含む36症例)、small deletion 9種類(姉妹例1組と剖検例1例を含む10症例)、smal insertion 1種類(1症例)、splicing mutation 1種類(1症例)の合計24種類のMECP 2 (Metyl CpG-binbing Protein 2)遺伝子の変異を認めた。そのなかでは、T158M (473C→T;7症例)、R133C(397C→T;姉弟例1組を含む5症例)、R255X (763C→T;4症例)、R294X (880C→T;一卵性双生児例1組を含む4症例)、R106Q (317G→A;姉妹例1組を含む3症例)、R168X (502C→T;3症例)、R306C (916C→T;3症例)が比較的頻度の高い変異であったが、残念ながらまだ集積症例数が不足し、MECP 2遺伝子の変異及びX染色体の不活化と症状の間に、一定の傾向を見出すまでには至らなかった。今後とも症例の集積を継続し、当初の目標を達するまで継続する予定である。今後とも当初の研究目的に添って、引き続き症例の集積と前記の解析を進めるとともに、代表的な幾つかの変異に絞って臨床症状とX染色体不活化の偏りの関係に関する検討を加え、重症度を遺伝子変異の強弱とX染色体不活化の影響の両者から導き出される関数として表わす症状推移曲線を構築する。諸般の事情により今年度は所属施設を異動せざるを得なかったため、最終的に研究期間内には、一卵性双生児例1組、姉妹例2組、姉弟例1組、男児例3例(姉弟例の弟を含む)、剖検例1例を含む合計73症例を全国から集積し分析し得た。そのうち、一卵性双生児例1組、姉妹例2組、姉弟例1組、剖検例1例を含む合計48例(約66%)で、点突然変異13種類(一卵性双生児例1組と姉妹例1組及び姉弟例1組を含む36症例)、small deletion 9種類(姉妹例1組と剖検例1例を含む10症例)、smal insertion 1種類(1症例)、splicing mutation 1種類(1症例)の合計24種類のMECP 2 (Metyl CpG-binbing Protein 2)遺伝子の変異を認めた。そのなかでは、T158M (473C→T;7症例)、R133C(397C→T;姉弟例1組を含む5症例)、R255X (763C→T;4症例)、R294X (880C→T;一卵性双生児例1組を含む4症例)、R106Q (317G→A;姉妹例1組を含む3症例)、R168X (502C→T;3症例)、R306C (916C→T;3症例)が比較的頻度の高い変異であったが、残念ながらまだ集積症例数が不足し、MECP 2遺伝子の変異及びX染色体の不活化と症状の間に、一定の傾向を見出すまでには至らなかった。今後とも症例の集積を継続し、当初の目標を達するまで継続する予定である。
KAKENHI-PROJECT-13771433
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13771433
生体-機械融合システムを規範とした適応行動発現アルゴリズムの獲得
生体-機械融合システムの一つの形として,昆虫が移動ロボットを操縦する「昆虫操縦型ロボット」を開発し,操縦者である昆虫の環境適応性を評価した.昆虫操縦型ロボットは二輪式のロボットで,ロボット上の雄カイコガ(Bombyx mori)の歩行運動に基づいた運動を行うが,移動ロボットのモータ回転を操作することで,操縦者の意図と反する運動を引き起こし,それに対する操縦者の反応を見ることができる.実験では雌の性フェロモン源へ定位するというタスクをロボットに与え,モータ回転を人為的に操作しても操縦者(昆虫)の適応性により,ロボットがタスクを達成できるかどうか評価した.左右のモータ回転を非対称に設定し,昆虫が直進しても一方向へ旋回しやすくなるように設定したところ,ロボットはフェロモン源へ定位することができ,その際のロボットの左右の旋回量に有意差は見られなかった。しかし,昆虫の視野を白紙で覆ったところ定位成功率は低下し,左右の旋回量は,人為的に設定した左右の回転の偏りに有意に従う結果を得た.通常雄カイコガは,視覚情報なしでフェロモン源へ到達することが知られているが,昆虫操縦型ロボットを用いた実験結果から,身体性や環境の変化に対しては,視覚情報を統合することで定位能力を維持していることが示された.この人為的な操作に対する昆虫の補償行動の経時的変化を観察したところ,操作後1秒以内で直ちに行動変化が現れ,徐々に変化することはなかった.このことから,補償に必要な視覚情報は,反射のような速い感覚-運動系で行われていることが示唆された.昆虫は様々な環境の中で,最適な行動を発現することで環境に適応している.このような昆虫の優れた環境適応性は,ロボットに必要な重要な要素である.適応行動は,環境との相互作用によって発現するため,感覚フィードバックの存在する閉ループでの実験が必要である.18年度は,1)昆虫操縦型ロボット,2)閉ループ実験系による複数感覚統合モデルの構築を行った.1)昆虫操縦型ロボットは,ロボットに載せた雄カイコガ(Bombyx mori)の運動計測を基に移動ロボットを操作し,昆虫の行動を再現したものである.動作検証の結果,ロボットは,カイコガの本能行動によって,フェロモン源へ定位することができた.この行動を指標として,ロボットのモータゲインを操作することで,昆虫が新たな環境に適応できるか調べた.左右のゲインを均等に操作し,速度を変化させたところ,定位成功率は変化せず,速度はゲインに依存して変化した.このことは,移動速度によらず,カイコガの定位行動プログラムそのものがロバストに機能することを示唆するものである.一方,左右のゲインを非対称に変化させ,一方向へのターンを誘導してもロボットは定位可能であった.このときの左右の旋回パラメータには有意差がなかったことから,視覚や風といった感覚フィードバックによる補正がなされていると考えられる.2)閉ループ実験系による感覚統合モデルでは,フェロモン刺激によって発現するカイコガの歩行運動を計測し,移動に伴って変化する背景の動き(visual flow)を提示することで,視覚情報の定位行動に果たす役割を分析した.行動実験の結果から行動モデルを構築したところ,フェロモン濃度の低い環境では,視覚情報の統合は定位にとって逆効果であるが,高い濃度では定位成功率を高めることが示唆された.このことから複数感覚統合は,環境に応じて調節されることが重要であると考えられる.生体-機械融合システムの一つの形として,昆虫が移動ロボットを操縦する「昆虫操縦型ロボット」を開発し,操縦者である昆虫の環境適応性を評価した.昆虫操縦型ロボットは二輪式のロボットで,ロボット上の雄カイコガ(Bombyx mori)の歩行運動に基づいた運動を行うが,移動ロボットのモータ回転を操作することで,操縦者の意図と反する運動を引き起こし,それに対する操縦者の反応を見ることができる.実験では雌の性フェロモン源へ定位するというタスクをロボットに与え,モータ回転を人為的に操作しても操縦者(昆虫)の適応性により,ロボットがタスクを達成できるかどうか評価した.左右のモータ回転を非対称に設定し,昆虫が直進しても一方向へ旋回しやすくなるように設定したところ,ロボットはフェロモン源へ定位することができ,その際のロボットの左右の旋回量に有意差は見られなかった。しかし,昆虫の視野を白紙で覆ったところ定位成功率は低下し,左右の旋回量は,人為的に設定した左右の回転の偏りに有意に従う結果を得た.通常雄カイコガは,視覚情報なしでフェロモン源へ到達することが知られているが,昆虫操縦型ロボットを用いた実験結果から,身体性や環境の変化に対しては,視覚情報を統合することで定位能力を維持していることが示された.この人為的な操作に対する昆虫の補償行動の経時的変化を観察したところ,操作後1秒以内で直ちに行動変化が現れ,徐々に変化することはなかった.このことから,補償に必要な視覚情報は,反射のような速い感覚-運動系で行われていることが示唆された.
KAKENHI-PROJECT-18656075
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18656075
エンドウ褐紋病菌サプレッサーの第一次作用点の解析
エンドウ褐紋病菌サプレッサーの構造決定を行い、第一次作用点と考えられるエンドウ原形質膜の機能、特に膜情報伝達系と原形質膜ATPaseに対する作用について調べた。1.サプレッサーの構造と原形質膜ATPase阻害機構の解析褐紋病菌の生産する2種のサプレッサーの構造をGalNAc-Ser-Ser-Gly及びGal-GalNAc-Ser-Ser-Gly-Asp-Glu-Thrと決定した。阻害活性に関与する構造を明らかにするために、これら2種のサプレッサーと11種の合成ペプチドを用いてin vitroでの効果を調べた。阻害効果を示した8種のペプチドについて動力学的解析を行った結果、拮抗型(SSGDET,SSG,SSGTED)、非拮抗型(DET,GDE及びSupprescin B)と混合型(TSGDET,SSGD,GDET)に分類できた。さらに、非拮抗型阻害を示した3種が原形質膜酸性ホスファターゼ活性を阻害することが判明した。以上の結果は、サプレッサーがATPaseのATP結合部位並びにホスファターゼ部位に作用していることを強く示唆する。2.病原菌シグナルのエンドウ原形質膜情報伝達機構に対する作用褐紋病菌の生産するエリシターとサプレッサーを用いてエンドウ防御応答に関与する情報伝達系を解析した結果、ポリホスホイノシチド(PI)代謝系の重要性が明らかとなった。水性2層分配法で調製した原形質膜画分において、(1)PtdIns及びPtdInsPキナーゼはエリシターで活性化し、サプレッサーの共存下にはこの活性化は顕著に抑制されること、(2)IP_3生産もエリシターで増高し、サプレッサーで抑制されることからPLC活性もリピッドキナーゼと同調的に菌シグナルで制御されること、また、原形質膜画分では、(3)リゾホスファチヂン酸やリゾ型PtdInsP生産がエリシター処理で増加し、サプレッサーの共存下には抑制されることから、PLA活性についても同調的な制御を受けることが判明した。このエンドウ原形質膜における情報伝達系はATPaseとcross-talkしている可能性が強く示唆された。3.エンドウ健全組織に存在する褐紋病菌サプレッサー様の活性物質を得た。本物質はアスパラギン結合型糖ペプチドであった。基本的な親和性(basic compatibility)に関与する物質であるものと想定した。サプレッサーの第一次作用点の解析を行うにあたり、先ず原形質膜機能に及ぼす影響について解析を試みた結果、サプレッサーは原形質膜ATP-ase活性をin vivo・in vitro共に阻害することが判明した。典型的なP型ATPase阻害剤であるオルソバナジン酸をモデルにエンドウ抵抗性発現とATPaseの関連を調べた結果、本剤はサプレッサーと同様にエンドウの抵抗反応を遺伝子発現レベルから遅延させる効果を示した。次に、エンドウとその病原菌、褐紋病菌の生産するエリシター及びサプレッサーを用いて病害防御機構に関わる初期情報伝達系を検索した結果、原形質膜に存在するポリホスホイノシチド(PI)代謝系の重要性が明らかとなった。上胚軸組織を^<32>P正リン酸でラベルした後、エリシターで処理したところ、処理数秒後には、^<32>P-PIP、また15秒後にはIP_3の一過的上昇が認められたが、サプレッサーの共存下にはこのような変動は認められなかった。さらに、エンドウ原形質膜画分を調製し0°Cでエリシター及びサプレッサーを与えて〔γ-^<32>P〕ATPからPIP及びPIP_2への取込みを調べたところ、エリシター処理5秒以内に両分子への^<32>Pの取込みは増加したが、サプレッサー共存下では顕著に抑制された。また、エンドウファイトアレキシンであるピサチン蓄積を抑制するバナジン酸、K252a、ネオマイシンもPIPのリン酸化を阻害した。そこで、原形質膜ATPaseとPI代謝系の関連について調べた。PI代謝系の一産物であるPIP_2を原形質膜画分に添加するとATPase活性が約2倍に上昇した。一方、ネオマイシンの添加ではATPase活性は阻害された。これらの結果は、原形質膜APTase活性がPI代謝によって制御されることを示している。実際、エリシター処理でATPase活性が上昇する結果が得られている。しかしながら、P型ATPaseの阻害剤であるバナジン酸によって原形質膜PI代謝系が阻害されることから、両酵素はクロストークしているものと推察した。エンドウ褐紋病菌サプレッサーの構造決定を行い、第一次作用点と考えられるエンドウ原形質膜の機能、特に膜情報伝達系と原形質膜ATPaseに対する作用について調べた。1.サプレッサーの構造と原形質膜ATPase阻害機構の解析褐紋病菌の生産する2種のサプレッサーの構造をGalNAc-Ser-Ser-Gly及びGal-GalNAc-Ser-Ser-Gly-Asp-Glu-Thrと決定した。阻害活性に関与する構造を明らかにするために、これら2種のサプレッサーと11種の合成ペプチドを用いてin vitroでの効果を調べた。阻害効果を示した8種のペプチドについて動力学的解析を行った結果、拮抗型(SSGDET,SSG,SSGTED)、非拮抗型(DET,GDE及びSupprescin B)と混合型(TSGDET,SSGD,GDET)に分類できた。
KAKENHI-PROJECT-04660054
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エンドウ褐紋病菌サプレッサーの第一次作用点の解析
さらに、非拮抗型阻害を示した3種が原形質膜酸性ホスファターゼ活性を阻害することが判明した。以上の結果は、サプレッサーがATPaseのATP結合部位並びにホスファターゼ部位に作用していることを強く示唆する。2.病原菌シグナルのエンドウ原形質膜情報伝達機構に対する作用褐紋病菌の生産するエリシターとサプレッサーを用いてエンドウ防御応答に関与する情報伝達系を解析した結果、ポリホスホイノシチド(PI)代謝系の重要性が明らかとなった。水性2層分配法で調製した原形質膜画分において、(1)PtdIns及びPtdInsPキナーゼはエリシターで活性化し、サプレッサーの共存下にはこの活性化は顕著に抑制されること、(2)IP_3生産もエリシターで増高し、サプレッサーで抑制されることからPLC活性もリピッドキナーゼと同調的に菌シグナルで制御されること、また、原形質膜画分では、(3)リゾホスファチヂン酸やリゾ型PtdInsP生産がエリシター処理で増加し、サプレッサーの共存下には抑制されることから、PLA活性についても同調的な制御を受けることが判明した。このエンドウ原形質膜における情報伝達系はATPaseとcross-talkしている可能性が強く示唆された。3.エンドウ健全組織に存在する褐紋病菌サプレッサー様の活性物質を得た。本物質はアスパラギン結合型糖ペプチドであった。基本的な親和性(basic compatibility)に関与する物質であるものと想定した。エンドウ褐紋病菌サプレッサーの第一次作用点と考えられるエンドウ原形質膜の機能、特に膜情報伝達系とATPaseに及ぼす影響について調べた。1.サプレッサーの構造と原形質膜ATPase阻害機構の解析褐紋病菌の生産する2種のサプレッサーの構造をGalNAc-Ser-Ser-Gly及びGal-GalNAc-Ser-Ser-Gly-Asp-Glu-Thrと決定した。阻害活性に関与する構造を明らかにするために、これら2種のサプレッサーと11種の合成ペプチドを用いてin vitroでの効果を調べた。阻害効果を示した8種のペプチドについて動力学的解析を行った結果、拮抗型(SSGDET,SSG,SSGTED)、非拮抗型(DET,GDE及びSupprescin B)と混合型(TSGDET,SSGD,GDET)に分類できた。さらに、非拮抗型阻害を示した3種が原形質膜酸性ホスファターゼ活性を阻害することが判明した。以上の結果は、サプレッサーがATPaseのATP結合部位並びにホスファターゼ部位に作用していることを強く示唆する。2.病原菌シグナルのエンドウ原形質膜情報伝達機構に対する作用褐紋病菌の生産するエリシターとサプレッサーを用いてエンドウ防御応答に関与する情報伝達系を解析した結果、ポリホスホイノシチド(PI)代謝系の重要性が明らかとなった。水性2層分配法で調製した原形質膜画分において、(1)PtdIns及びPtdInsPキナーゼはエリシターで活性化し、サプレッサーの共存下にはこの活性化は顕著に抑制されること、(2)IP_3生産もエリシターで増高し、サプレッサーで抑制されることからPLC活性もリピッドキナーゼと同調的に菌シグナルで制御されること、また、原形質膜画分では、(3)リゾホスファチヂン酸やリゾ型PtdInsP生産がエリシター処理で増加し、サブレッサーの共存下には抑制されることから、PLA活性についても同調的な制御を受けることが判明した。このエンドウ原形質膜における情報伝達系はATPaseとcross-talkしている可能性が強く示唆された。
KAKENHI-PROJECT-04660054
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04660054
クロロフィルcの生化学から顕生代海洋基礎生産の進化を紐解く
まず,Euglena gracilisを用いて,RNAiノックダウン実験系がクロロフィル代謝関連遺伝子を同定する上で強力なアプローチになることを示す結果を得ることが出来た。これを受けて,「クロロフィル生合成研究グループ」のグループミーティングを開催し,クロロフィルc生合成経路に関して,全ゲノム情報が得られており,ノックダウン実験等の遺伝子操作も可能な珪藻Phaeodactylum tricornutumに当面フォーカスをおいて研究を進めることとなった。また,分子データから関連候補遺伝子を選び出し(神川),クロロフィル生合成回路に関する任意の変異株の作出が可能である光合成細菌Rhodobacter spheroidesに遺伝子を組み込んでin vivoで活性を確認する実験(原田),および大腸菌等で発現させたタンパク質について有機合成した中間代謝産物候補を作用させてin vitroで活性を確認する実験(塚谷)を同時並行で信仰させることになった(それぞれ現在実施中)。さらに,「藻類化石記録研究グループ」では,紅藻系二次植物の出現タイミングを推定する分子時計モデルにおいて大きな障害となると考えられる「古すぎる」最古の藻類化石Bangiomorpha pubescensの再検証を行なうため,カナダ・ヌナブト準州のサマセット島での地質調査を行なうため,カナダ人およびアメリカ人研究者と連絡を取って,2019年度に調査を実施するための日程調整を行ない,実施にこぎ着けた。本研究を始めるにあたり,研究分担メンバーを「クロロフィル生合成研究グループ」「クロロフィル分解代謝研究グループ」「クロロフィル中間代謝物有機合成グループ」「藻類化石記録研究グループ」に分け(一部メンバーは複数グループの重複して所属),グループ間のコミュニケーションネットワークを構築した。これにあわせて,5月にメンバー全員と外部のアドバイザーを交えて全体ミーティングを開催し,研究の進め方,目標について話し合った。これによって,研究期間の冒頭からスムーズに複数の研究を並行して走らせることに成功した。これにより,それぞれのグループで既に研究成果が上がってきている。「クロロフィル生合成研究グループ」では,in vivoの実験こそ少し遅れが出ているものの,in vitroの実験ではこれまでに未解明だった酵素の活性を確認することが出来ている。また,「クロロフィル分解代謝研究グループ」では,おそらく世界で初めてとなる二者培養条件での微細藻類捕食性プロティストのトランスクリプトーム解析に成功した。また,「藻類化石記録研究グループ」では,予定より1年早く来年度の北極圏での地質調査の実施にこぎ着けた。「クロロフィル中間代謝物有機合成グループ」では,いくつかの中間代謝産物の合成に既に成功している。「クロロフィル生合成研究グループ」では,光合成細菌Rhodobacter spheroidesを用いたin vivoの実験系の確立に特に注力する。また,in vitroの実験系についても,未着手の候補遺伝子について実験を進める。また,「クロロフィル分解代謝研究グループ」では,トランスクリプトームデータ解析のために谷藤吾朗博士を新たにメンバーに加えて,培養条件を変化させた場合のトランスクリプトーム変化からクロロフィル分解代謝に関連する遺伝子候補を探索する。また,Peranema sp.およびAmastigomonad sp.について,RNA干渉によるノックダウン実験の手法の今年度内の確立を目指す。「藻類化石記録研究グループ」では,カナダ・サスカチュワン大学のSina Adl博士と,アメリカ・ロードアイランド大学のFavid E. Fastovsky博士の協力で,2019年度6月後半の日程でカナダの北極圏の島サマセット島(ヌナブト準州)のアストン湾周辺での地質調査を実施し,地質試料を持ち帰る。これにより,ジルコン同位体年代の決定と,超高解像度多次元スキャンニング手法を用いたBangiomorpha化石の再検証を試みる。「クロロフィル中間代謝物有機合成グループ」では,特に,ジビニル体のクロロフィル生合成中間体の合成に注力する。まず,Euglena gracilisを用いて,RNAiノックダウン実験系がクロロフィル代謝関連遺伝子を同定する上で強力なアプローチになることを示す結果を得ることが出来た。これを受けて,「クロロフィル生合成研究グループ」のグループミーティングを開催し,クロロフィルc生合成経路に関して,全ゲノム情報が得られており,ノックダウン実験等の遺伝子操作も可能な珪藻Phaeodactylum tricornutumに当面フォーカスをおいて研究を進めることとなった。また,分子データから関連候補遺伝子を選び出し(神川),クロロフィル生合成回路に関する任意の変異株の作出が可能である光合成細菌Rhodobacter spheroidesに遺伝子を組み込んでin vivoで活性を確認する実験(原田),および大腸菌等で発現させたタンパク質について有機合成した中間代謝産物候補を作用させてin vitroで活性を確認する実験(塚谷)を同時並行で信仰させることになった(それぞれ現在実施中)。さらに,「藻類化石記録研究グループ」では,紅藻系二次植物の出現タイミングを推定する分子時計モデルにおいて大きな障害となると考えられる「古すぎる」最古の藻類化石Bangiomorpha pubescensの再検証を行なうため,カナダ・ヌナブト準州のサマセット島での地質調査を行なうため,カナダ人およびアメリカ人研究者と連絡を取って,2019年度に調査を実施するための日程調整を行ない,実施にこぎ着けた。本研究を始めるにあたり,研究分担メンバーを「クロロフィル生合成研究グループ」「クロロフィル分解代謝研究グループ」「クロロフィル中間代謝物有機合成グループ」「藻類化石記録研究グループ」に分け(一部メンバーは複数グループの重複して所属),グループ間のコミュニケーションネットワークを構築した。これにあわせて,5月にメンバー全員と外部のアドバイザーを交えて全体ミーティングを開催し,研究の進め方,目標について話し合った。これによって,研究期間の冒頭からスムーズに複数の研究を並行して走らせることに成功した。これにより,それぞれのグループで既に研究成果が上がってきている。
KAKENHI-PROJECT-18H03743
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H03743
クロロフィルcの生化学から顕生代海洋基礎生産の進化を紐解く
「クロロフィル生合成研究グループ」では,in vivoの実験こそ少し遅れが出ているものの,in vitroの実験ではこれまでに未解明だった酵素の活性を確認することが出来ている。また,「クロロフィル分解代謝研究グループ」では,おそらく世界で初めてとなる二者培養条件での微細藻類捕食性プロティストのトランスクリプトーム解析に成功した。また,「藻類化石記録研究グループ」では,予定より1年早く来年度の北極圏での地質調査の実施にこぎ着けた。「クロロフィル中間代謝物有機合成グループ」では,いくつかの中間代謝産物の合成に既に成功している。「クロロフィル生合成研究グループ」では,光合成細菌Rhodobacter spheroidesを用いたin vivoの実験系の確立に特に注力する。また,in vitroの実験系についても,未着手の候補遺伝子について実験を進める。また,「クロロフィル分解代謝研究グループ」では,トランスクリプトームデータ解析のために谷藤吾朗博士を新たにメンバーに加えて,培養条件を変化させた場合のトランスクリプトーム変化からクロロフィル分解代謝に関連する遺伝子候補を探索する。また,Peranema sp.およびAmastigomonad sp.について,RNA干渉によるノックダウン実験の手法の今年度内の確立を目指す。「藻類化石記録研究グループ」では,カナダ・サスカチュワン大学のSina Adl博士と,アメリカ・ロードアイランド大学のFavid E. Fastovsky博士の協力で,2019年度6月後半の日程でカナダの北極圏の島サマセット島(ヌナブト準州)のアストン湾周辺での地質調査を実施し,地質試料を持ち帰る。これにより,ジルコン同位体年代の決定と,超高解像度多次元スキャンニング手法を用いたBangiomorpha化石の再検証を試みる。「クロロフィル中間代謝物有機合成グループ」では,特に,ジビニル体のクロロフィル生合成中間体の合成に注力する。
KAKENHI-PROJECT-18H03743
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H03743
海底堆積物中で展開されるツボカビと有害・有毒渦鞭毛藻の寄生関係
海底堆積物中に存在する渦鞭毛藻のシスト自体あるいは発芽細胞に寄生する微生物の正体を明らかにするため,形態および分子系統学的解析を行った。その結果,外部寄生する菌類は,フタナシツボカビ目およびロブロミケス目のツボカビであることが判明した。大船渡湾からは培養可能なフタナシツボカビ目の分離に成功した。一方,内部寄生者は,広義のツボカビ類に属する新規菌類であると考えられた。この結果は,海産渦鞭毛藻には多様な寄生性ツボカビが存在していること,そして,それらの個体群動態を理解するには,「寄生」を考慮することが不可欠であることを示している。日本沿岸海域におけるツボカビの探索を行うため,宮城県女川湾,気仙沼湾,岩手県大船渡湾,愛知県三河湾より採取した海底堆積物についてマツ花粉釣菌法による探索を行った結果,大船渡湾より新規菌類を分離することに成功した。得られたコロニーについて,PmTG液体培地で限界希釈培養を行い,クローン株を得た。本株について,その形態と発達過程を光学および電子顕微鏡を用いて観察するとともに,rDNAの塩基配列を決定した。本菌はPmTGプレート上で白色のコロニーを形成し,海水ベースのPmTG液体培地中でも良好に増殖した。遊走子から新たな遊走子放出までの期間は約10日間であった。遊走子嚢は直径約190μmの球形で,仮根が良く発達する分実性,単心性であった。放出管は数十個以上と多数あったが,蓋状の構造はみられなかった。遊走子は頭部が約2μmの球形で,後端に長さ約26 μmのムチ型鞭毛1本を有していた。遊走子内にはミクロボディー脂質小球粒複合体(MLC)とリボソームが細胞中央にまとまり,その周囲に核と数個のミトコンドリアが位置した。また,脂質粒子の細胞壁側にはランポソームがみられた。SSU rDNA塩基配列は本菌がRhizophydiumクレード内に位置することを示し,またLSU rDNA塩基配列はAmon(1984)が緑藻ミルから分離したR. littoreumとほぼ一致した。植物プランクトンへの寄生の有無を調べるため,遊走子を珪藻1種,渦鞭毛藻3種と混合培養した結果,Alexandrium tamarenseのみで遊走子嚢の成熟と新たな遊走子の放出がみとめられた。しかし,遊走子嚢はPmTG培養の1/10程度にまでしか成長せず,本菌は必ずしも生きた細胞を必要しない条件的寄生菌と考えられた。海底堆積物中に存在する渦鞭毛藻のシスト自体あるいは発芽細胞に寄生する微生物の正体を明らかにするため,形態および分子系統学的解析を行った。その結果,外部寄生する菌類は,フタナシツボカビ目およびロブロミケス目のツボカビであることが判明した。大船渡湾からは培養可能なフタナシツボカビ目の分離に成功した。一方,内部寄生者は,広義のツボカビ類に属する新規菌類であると考えられた。この結果は,海産渦鞭毛藻には多様な寄生性ツボカビが存在していること,そして,それらの個体群動態を理解するには,「寄生」を考慮することが不可欠であることを示している。本研究では,海域における一次生産者のみならず,有害藻類ブルームの原因生物として極めて重要な渦鞭毛藻を寄主とするツボカビ類について,形態および遺伝情報に基づく分類学的検討および現場でのモニタリング手法の開発を行うことにより,海洋生態系におけるそれらの多様性と機能を明らかにすることを目的とする。海産渦鞭毛藻を寄主とするツボカビの探索を行うため,震災後,有毒プランクトンAlexandriumのシスト密度が急激に増大した仙台湾の海底泥試料を12.5°C,光照射下で培養したが,Alexandriumに寄生する菌は確認できなった。一方,培養開始から2225日後にScrippsiella属と思われるシスト本体に寄生する菌が認められた。光学顕微鏡による形態観察の結果,遊走子嚢は寄主への付着部部分が細く,先端が太い逆洋ナシ型を呈し,遊走子放出管に蓋が無い無弁型であった。遊走子は球形で大きな油球1個と鞭毛を1本有し,その逆方向に遊泳した。鞭毛の全長は遊走子頭部の約5倍程度で,先に発見したAlexandrium寄生菌に比べて短かった。以上の形態的特徴から本菌もツボカビの一種であると考えられた。さらに,本菌のリボゾーム遺伝子の塩基配列を決定したところ,2009年にSimmonsらによりツボカビ門内に認識されたクレードの1つであるロブロミセス目(Lobulomycetales)に近縁である可能性が示された。宿主シストについてもリボゾーム遺伝子塩基配列を決定した結果,これがScrippsiella trochoideaのシストであることも判明した。これらの結果は,海産渦鞭毛藻のシストに直接寄生するツボカビの存在を初めて明らかにするものであるとともに,海産渦鞭毛藻に寄生するツボカビが多様なグループから構成されていることを示すものである。昨年度までの解析により,三河湾および大阪湾から発見された有毒渦鞭毛藻アレキサンドリウムに寄生するツボカビはそれぞれ別のクレードに属することが明らかとなっていた。2014年にフランスで新種記載されたツボカビDinomyces
KAKENHI-PROJECT-24580289
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海底堆積物中で展開されるツボカビと有害・有毒渦鞭毛藻の寄生関係
arenysensisのリボソーム遺伝子配列データを加えて再解析したところ,大阪湾産ツボカビはD. arenysensisと同じクレードに属するが,三河湾産はそれとは別のクレードに位置した。このことから,本邦産のアレキサンドリウムに寄生するツボカビは少なくとも2種存在することが明らかとなった。また,大船渡湾からアレキサンドリウムの休眠シストに内部寄生する菌を発見した。寄生初期にはシスト内部に顆粒状の構造が見られ,時間の経過とともに遊走子が形成された。その後,シスト表面からパピラ様構造が突出し,その先端から遊走子が放出された。遊走子は3μmの球形で大きな脂肪粒を1個有し比較的ゆっくりと遊泳した。遊走子は長さ12 μmの鞭毛1本と数本の糸状仮足様構造を有した。リボソーム遺伝子解析により,本種はコアではないものの,広義のツボカビに属する新奇菌類であると考えられた。この菌は現場および培養シストへに寄生することが確認でき,継代培養が可能であると考えられた。さらに,同海域から2種の寄生性真核微生物も発見された。それらの形態学および遺伝子解析結果から,一つはアルベオラータに属する新種,もう一方はリザリアに属するネコブカビ類の一種であることが判明した。以上のように,アレキサンドリウムには極めて多様な寄生性真核微生物が存在することが明らかになった。以上の結果は,海洋生態系の構造と機能を理解する上で,また,有毒プランクトンの生物学的防除の候補として,これら寄生生物の生理・生態特性の解明が極めて重要な研究テーマとなることを示すものと考えられる。海洋環境微生物学大船渡湾の海底堆積物中から培養可能なツボカビの分離に成功し,その形態学的特徴および遺伝子解析を行い,本菌がRhizophydium littoreumである可能性を示した。さらに,本菌が海産渦鞭毛藻に寄生することも明らかにした。海産の寄生性ツボカビの培養株を確立できたことは,今後の定量PCR法による分子モニタリング技術の開発に極めて重要であり,本課題は順調に進捗していると言える。渦鞭毛藻Scrippsiellaのシスト本体に寄生する新たなツボカビを発見し、その形態学的特徴および遺伝子解析を行って本菌が近年ツボカビ門内に記載されたロブロミセス目(Lobulomycetales)に近縁である可能性を示した。これらの成果は海産渦鞭毛藻のシストに直接寄生するツボカビの存在を初めて明らかにするものであるとともに,海産渦鞭毛藻に寄生するツボカビが多様なグループから構成されていることを示しており,本課題はおおむね順調に進捗している。引き続き,我が国沿岸海域におけるツボカビの探索を行う。試料から泥懸濁液を調製し,これを一定温度,明暗周期のもとで培養後,光学顕微鏡観察により寄生性ツボカビおよびそれらの遊走子が付着した寄主細胞を探索する。探索でみとめられた寄生性ツボカビについて分離・培養を行い,菌体の特徴を把握する。培養過程での菌体の発達過程を経時的に調べるとともに,遊走子嚢および遊走子の形成および形態を明らかにする。ツボカビ門においては,とくに遊走子の構造が形態分類の重要な基準とされていることから,走査電顕および透過電顕を用いてその微細形態を精査する。また,寄生性ツボカビの菌体からDNAを抽出後,リボゾーム遺伝子の塩基配列を決定し,分子系統解析を実施する。得られた形態学的および分子系統学的特徴を基に分類学的検討を行う。さらに,寒天培地などを用いて,ツボカビの継代培養を試み,その生活環の解明を目指す。
KAKENHI-PROJECT-24580289
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イギリス・ルネサンス演劇における人物の登場と退場
イギリス・ルネサンス劇テクストの分析をとおして得た、シェイクスピア時代の登場と退場に関する結論のうち、特に重要なものを挙げると、以下のとおりである。1.シェイクスピアや彼の同僚(book-keeper、俳優など)は、登場と退場をある時間を要する動き、すなわち、開始から完了までしばらく続く動きとして扱っていた。2.楽屋と主たる演技の場である舞台前部との間の歩行には、台詞4行分くらいの時間が与えられていた。3.グローブ座のような大きな舞台では、退場と登場とのオーヴァーラップが、時として極めて効果的に使われた。4.Bernard Beckermanは、楽屋と舞台との間の左右のドアのうち、一方のドアは基本的に登場、他方のドアは退場に使われた、という仮説を提起した。この規則はシェイクスピア時代の俳優たちにとって有効だったかもしれない。5.儀式的な登場や退場など、特殊なものは左右のドアではなく、その中間の開口部から行われたかもしれない。6.シェイクスピア時代、舞台全体が常に一様に「舞台上」だったわけではなく、'Enter'と'Exit'/'Exeunt'というト書きも中心的な演技との相対的関係において成立するところがあった。イギリス・ルネサンス劇テクストの分析をとおして得た、シェイクスピア時代の登場と退場に関する結論のうち、特に重要なものを挙げると、以下のとおりである。1.シェイクスピアや彼の同僚(book-keeper、俳優など)は、登場と退場をある時間を要する動き、すなわち、開始から完了までしばらく続く動きとして扱っていた。2.楽屋と主たる演技の場である舞台前部との間の歩行には、台詞4行分くらいの時間が与えられていた。3.グローブ座のような大きな舞台では、退場と登場とのオーヴァーラップが、時として極めて効果的に使われた。4.Bernard Beckermanは、楽屋と舞台との間の左右のドアのうち、一方のドアは基本的に登場、他方のドアは退場に使われた、という仮説を提起した。この規則はシェイクスピア時代の俳優たちにとって有効だったかもしれない。5.儀式的な登場や退場など、特殊なものは左右のドアではなく、その中間の開口部から行われたかもしれない。6.シェイクスピア時代、舞台全体が常に一様に「舞台上」だったわけではなく、'Enter'と'Exit'/'Exeunt'というト書きも中心的な演技との相対的関係において成立するところがあった。特に重要であるグローブ座、フォーチュン座、ローズ座で上演された劇の登場と退場を重点的に分析しながら、並行して入手可能な劇テクストも随時分析を行った。いずれの劇場で上演された劇テクストにせよ、登場や退場とは、単に舞台背後のドアから出入りするという瞬間的な行為ではなくて、ドアと演戯の場である舞台中央ないしは前部との間の動きであった、ことを示唆する例を含んでいることが確認された。したがって時としては非常に複雑な動きとなることもあり、例えば`Entaraloof/after off'などは、登場後すぐには演戯の場に進まず、しばらくドアの近くに控えていたり、あるいは舞台の屋根を支えて柱の蔭に隠れるという動きを指示するト書きであると考えることができる。(この考察については、日本シェイクスピア協会の大会におけるセミナー「グローブ座再建」で発表した。)また、作者の原稿を印刷所原本とするテクストにせよ、上演用台本から派生するテクストにせよ、演戯の場の中心である舞台中央部や前部からはずれた部分(柱の蔭やドアの近く)を時として`off stage'として見なす例を含んでいることも発見した。「登場」と「退場」は絶対的な概念ではなく、あくまでも主たる演戯の場との相対的関係で成立する意味を有する語でもあったということが確認された。イギリス・ルネサンス劇テクストの分析をとおして得た、シェイクスピア時代の登場と退場に関する結論のうち、特に重要なものを挙げると、以下のとおりである。1.シェイクスピアや彼の同僚(book-keeper、俳優など)は、登場と退場をある時間を要する動き、すなわち、開始から完了までしばらく続く動きとして扱っていた。2.楽屋と主たる演技の場である舞台前部との間の歩行には、台詞4行分くらいの時間が与えられていた。3.グローブ座のような大きな舞台では、退場と登場とのオーヴァーラップが、時として極めて効果的に使われた。4.Bernard Beckermanは、楽屋と舞台との間の左右のドアのうち、一方のドアは基本的に登場、他方のドアは退場に使われた、という仮説を提起した。この規則はシェイクスピア時代の俳優たちにとって有効だったかもしれない。5.儀式的な登場や退場など、特殊なものは左右のドアではなく、その中間の開口部から行われたかもしれない。6.シェイクスピア時代、舞台全体が常に一様に「舞台上」だったわけではなく、'Enter'と'Exit'/'Exeunt'というト書きも中心的な演技との相対的関係において成立するところがあった。
KAKENHI-PROJECT-10610456
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