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再プログラム因子導入による間葉上皮移行の誘導と癌浸潤の制御
この様ながん細胞における間葉ー上皮移行を理解することは新たながん治療開発に繋がる可能性がある。再プログラミング因子の導入による癌悪性度の減弱化をin vivoで示すことが出来たことは大変意義が大きい。miRNAと間葉上皮移行との関与についての検討は、その分子メカニズムの一端を更に詳細に明らかにすることが出来た。年度当初予定していたMET誘導関連遺伝子の探索については十分な検討が行えなかったため、次年度に行うこととする細胞生物学平成27年度はMET誘導関連遺伝子として候補となった2種のnon-coding RNAと6種類の転写因子の機能解析を行う。これらはいずれも再プログラミング因子の導入により発現が上昇したものである。一過性の発現系による検討とともにPiggybac transposon vectorにより安定発現細胞を樹立してMETの誘導能を確認する。25年度の研究結果はほぼ達成できたが、一部で詳細な検討が不十分であった。25年度の結果として新規のMET誘導遺伝子として複数の候補が得られたが、文献検索によりその数を絞り込み、10程度の候補にする。一過性発現系および安定発現系のベクターシステムに候補遺伝子を導入して、あるいは候補遺伝子に対するshRNA発現ベクターシステムを作製してMET誘導可能であるのか形態学的に評価された後に各種の分化マーカー遺伝子の発現や運動能・浸潤能低下等についても検討する。MET誘導は複数分子の相加・相乗作用によることも考えられるので複数遺伝子の制御が必要な可能性がある。この場合、可能な限り単純な遺伝子発現制御に収束することを目指す。当該年度では、マウスの管理、病理組織標本作製やreal-time PCRに用いたプラスチック器具や各種試薬などの物品費が主体となったため、使用経費が抑えられたことが理由として挙げられる。引き続きマウスの管理や測定等における物品費にあてる他、各種の分化マーカー遺伝子の発現や運動能・浸潤能低下等について検討を行うための試薬の購入に多くの経費が必要となる。また、得られた成果の発表や情報収集のため学会に参加する旅費に使用予定である。
KAKENHI-PROJECT-25461698
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25461698
穿刺実験システムを用いた神経ブロック針の超音波視認性の定量的評価の試み
研究目的:本研究は、観察者の主観的評価に頼ることなく、画像解析技術を用いて針の視認性を定量的に測定する方法を考案し、超音波画像下神経ブロックに使用する針の超音波視認性を客観的に評価するための実験システムを開発することを目的とする。研究方法:サイズ・形状の異なるブロック針を、事前に設定した複数の穿刺角度で寒天塊に刺入し、超音波画像を記録した。また、これと独立に人体組織の超音波画像の記録を行い、計算機上に取り込んだ針と生体組織の画像から両者の合成画像を生成した。次に、針の形状に合わせたテンプレートを定義し、これと個々の合成画像との間でマッチング処理を行い、画像上に針の位置を検出した。この結果に基づき、針に該当する領域とそれ以外の領域の画素の平均濃度値を計算し、その差(△Gray)をもって針の視認性の良否を測る指標とした。同時に、個々の合成画像に対して、6名の検者が針の視認性の評価を行い、5段階の視認性スコアを求めた。画像解析から算出した△Grayと検者が評価した視認性スコアの相関を検証した。研究成果:8種類のブロック針を用いて、0度から50度の範囲で5段階の角度の穿刺実験を行い、これらの画像と大腿組織像を重ね合わせた計40枚の合成画像を生成した。個々の画像から、刺入針の位置の自動検出を行い、針とそれ以外の領域の画素の平均濃度値の差を求めるため、C#を用いてWindowsで動作するプログラムを開発した。このプログラムを利用し算出した△Grayと検者の評価から得た視認性スコアの回帰分析を行ったところ、相関係数0.89、決定係数0.79であり、両者に高い相関が存在することが確認された。本研究で提唱する方法は、画像解析技術を応用しブロック針の超音波視認性を定量的に測定することを可能とするものであり、針の超音波視認性を客観的に評価するための有効な方法となり得ると考える。研究目的:本研究は、観察者の主観的評価に頼ることなく、画像解析技術を用いて針の視認性を定量的に測定する方法を考案し、超音波画像下神経ブロックに使用する針の超音波視認性を客観的に評価するための実験システムを開発することを目的とする。研究方法:サイズ・形状の異なるブロック針を、事前に設定した複数の穿刺角度で寒天塊に刺入し、超音波画像を記録した。また、これと独立に人体組織の超音波画像の記録を行い、計算機上に取り込んだ針と生体組織の画像から両者の合成画像を生成した。次に、針の形状に合わせたテンプレートを定義し、これと個々の合成画像との間でマッチング処理を行い、画像上に針の位置を検出した。この結果に基づき、針に該当する領域とそれ以外の領域の画素の平均濃度値を計算し、その差(△Gray)をもって針の視認性の良否を測る指標とした。同時に、個々の合成画像に対して、6名の検者が針の視認性の評価を行い、5段階の視認性スコアを求めた。画像解析から算出した△Grayと検者が評価した視認性スコアの相関を検証した。研究成果:8種類のブロック針を用いて、0度から50度の範囲で5段階の角度の穿刺実験を行い、これらの画像と大腿組織像を重ね合わせた計40枚の合成画像を生成した。個々の画像から、刺入針の位置の自動検出を行い、針とそれ以外の領域の画素の平均濃度値の差を求めるため、C#を用いてWindowsで動作するプログラムを開発した。このプログラムを利用し算出した△Grayと検者の評価から得た視認性スコアの回帰分析を行ったところ、相関係数0.89、決定係数0.79であり、両者に高い相関が存在することが確認された。本研究で提唱する方法は、画像解析技術を応用しブロック針の超音波視認性を定量的に測定することを可能とするものであり、針の超音波視認性を客観的に評価するための有効な方法となり得ると考える。
KAKENHI-PROJECT-24922015
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24922015
選択溶解法による新規分子ふるい材料の創製
カオリン鉱物を1000°C付近で熱処理してその粒子内部に非晶質シリカをマトリックスとし数nmの超微粒子のγアルミナが規則的に分散した微細組織を形成させた後,これをアルカリ水溶液を用いて非晶質シリカを選択溶解して大きさのそろった細孔をその形骸粒子内部に形成させる新規な多孔体合成法,選択溶解法によりγアルミナメソ多孔体を作製し,その多孔体特性,特に細孔径分布について調べた.多孔体の作製条件として,出発試料,加熱処理温度,選択溶解処理の温度,時間,アルカリの種類,濃度などについて検討し,それぞれの調製条件のもとで得られる多孔体の比表面積と細孔径分布を測定し,出発試料に米国ジョージア産のカオリナイト,加熱処理温度を1000°C,選択溶解処理温度を90°C,処理時間を1時間,KOH濃度を4mol/1で処理すると細孔径分布がシャープで数nmの大きさの均一なメソ細孔をもつ多孔体が得られることが分かった.この多孔体はこれまでに知られているγアルミナ多孔体と比較して細孔径がより均一で細孔容積が大きかった.室温における水蒸気の吸着・脱着等温線を調べたところ,吸着側では相対湿度が80%で急峻に吸着量が増大し,最大で約600ml(STP)/gの吸着量を示し,一方,脱着側では70%から急に吸着量が減少する特徴をもっていた.これは細孔径が均一なため,吸着した水蒸気分子の凝縮が狭い相対湿度条件で起きることに起因した結果と解釈でき,狙い通りの分子ふるい作用特性が期待できる多孔体が作製できていると判断された.カオリン鉱物を1000°C付近で熱処理してその粒子内部に非晶質シリカをマトリックスとし数nmの超微粒子のγアルミナが規則的に分散した微細組織を形成させた後,これをアルカリ水溶液を用いて非晶質シリカを選択溶解して大きさのそろった細孔をその形骸粒子内部に形成させる新規な多孔体合成法,選択溶解法によりγアルミナメソ多孔体を作製し,その多孔体特性,特に細孔径分布について調べた.多孔体の作製条件として,出発試料,加熱処理温度,選択溶解処理の温度,時間,アルカリの種類,濃度などについて検討し,それぞれの調製条件のもとで得られる多孔体の比表面積と細孔径分布を測定し,出発試料に米国ジョージア産のカオリナイト,加熱処理温度を1000°C,選択溶解処理温度を90°C,処理時間を1時間,KOH濃度を4mol/1で処理すると細孔径分布がシャープで数nmの大きさの均一なメソ細孔をもつ多孔体が得られることが分かった.この多孔体はこれまでに知られているγアルミナ多孔体と比較して細孔径がより均一で細孔容積が大きかった.室温における水蒸気の吸着・脱着等温線を調べたところ,吸着側では相対湿度が80%で急峻に吸着量が増大し,最大で約600ml(STP)/gの吸着量を示し,一方,脱着側では70%から急に吸着量が減少する特徴をもっていた.これは細孔径が均一なため,吸着した水蒸気分子の凝縮が狭い相対湿度条件で起きることに起因した結果と解釈でき,狙い通りの分子ふるい作用特性が期待できる多孔体が作製できていると判断された.γアルミナ多孔体を従来にない新しい合成法である選択溶解法により作製し,その多孔体特性について調べた.出発試料として天然に多産するカオリン鉱物の内,六角板状のカオリナイトと中空管状のハロイサイトを用いた.これを9001200°Cで熱処理した.この処理により試料中には結晶子の非常に微細なγアルミナと非晶質シリカが生成していることがX線回折法により確認された.この熱処理試料を水酸化カリウム溶液により処理して非晶質シリカを選択溶解した.その処理条件は;処理温度:室温95°C,処理時間:5分3日,KOH濃度:0.54.0mo1/1とした.その結果,ハロイサイトでは75°Cで1時間処理することにより比表面積(BET)が320m^2/gの最高値となった.一方,カオリナイトではシリカの溶出速度はハロイサイトより遅く,90°C2時間の処理で最高比表面積270m^2/gが得られた.得られた多孔体の細孔径分布は,ハロイサイトでは56nmと2040nmの細孔径をもつバイモーダルな分布を示した.一方,カオリナイトでは56nmに非常に均一な大きさの細孔をもつことが分かった.細孔の大きさは熱処理温度により58nm程度の範囲で制御でき,熱処理温度が高くなるほど細孔は小さく均一になった.ただし,1100°C以上の温度では主結晶相がムライトに変化するため細孔径が2050nmと大きくなり,分布も広がることが分かった.結局,カオリナイトを9001050°Cで熱処理し,KOH溶液で非晶質シリカを選択溶解処理することにより均一な細孔を有する多孔体を作製できることが明らかとなった.γアルミナ多孔体を従来にない新しい合成法である選択
KAKENHI-PROJECT-07455263
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07455263
選択溶解法による新規分子ふるい材料の創製
溶解法により作製し,その多孔体特性,特に細孔径分布について調べた.試料の作製方法は,カオリン鉱物を1000°C付近で熱処理してその粒子内部に非晶質シリカをマトリックスとし数nmの超微粒子のγアルミナが規則的に分散した微細組織を形成させ,アルカリやフッ酸などのエッチング液を用いて非晶質シリカを選択溶解して大きさのそろった細孔をその形骸粒子の内部に形成させる方式である.出発試料,加熱処理温度,選択溶解処理の温度,時間,アルカリの種類,濃度などについて検討し,それぞれの調製条件のもとで得られる多孔体の比表面積と細孔径分布を測定した.その結果,出発試料に米国ジョージア産のカオリナイト,加熱処理温度を1000°C,選択溶解処理温度を90°C,処理時間を1時間,KOH濃度を4mol/lで処理すると細孔径分布がシャープで数nmの大きさの均一なメソ細孔をもつ多孔体が得られることが分かった.この多孔体はこれまでに知られているγアルミナ多孔体と比べ細孔径が均一で細孔容積も大きい.そこで,室温における水蒸気の吸着・脱着等温線を調べたところ,吸着側では相対湿度が80%で急峻に吸着量が増大し,最大で約600ml(STP)/gの吸着量を示し,一方,脱着側では70%から急に吸着量が減少する特徴をもっていた.これは細孔径が均一なため,吸着した水蒸気分子の凝縮が狭い相対湿度条件で起きることに起因すると解釈でき,ある程度狙い通りの多孔体特性が作製できていると判断された.また,水蒸気に対する吸着特性からこの多孔体の表面は親水生であることが確かめられたが,非極性分子のシクロヘキサンに対する吸着特性からもその表面性状が親水的であることが明らかにできた.
KAKENHI-PROJECT-07455263
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07455263
超硬質窒化物合成のための高密度ヘリコン波プラズマ励起・超活性化成膜プロセスの開発
ヘリコン波励起プラズマの生成には3巻のヘリカルアンテナ(方位角モードm=0)を使用し、数mTorrのアルゴン・窒素中において1E121E13cm-3の高密度プラズマが生成可能であることを明らかにした。負バイアスを印加したターゲットを配置することにより、金属原子をスパッタリングにより供給することが可能な物理蒸着系を構成し、主として化学量論組成(N/C=4/3)の達成を第一目標において窒化炭素薄膜の合成実験を行った。基板への原子状窒素の供給密度が高い条件で成膜するほど窒素組成比は向上し、最も高い値は目標値に近いN/C=1.3に達することが明らかとなった。フーリエ変換赤外吸収分光の結果から高分子様構造であるCH結合ないしNH結合も形成されており、硬質化を阻害する要因であることが示唆された。この高分子様の構造は、高強度紫外線照射よりも成膜温度の上昇により効果的に減少し、薄膜硬度の向上にも寄与することが明らかとなった。窒化炭素薄膜の機械的特性についてナノインデンテーション法を用いて評価し、基板への負バイアスの印加ないしは基板加熱により薄膜の硬度および弾性率が向上し、最高で20GPa程度の硬度を示すことが明らかとなった。また、高周波電力供給方式の最適化と金属原子供給の問題を調べるため、内部アンテナ方式の誘導結合放電による金属スパッタについて実験を行い、高周波電力給電方式の最適化により静電結合の抑制が可能であることを明らかにした。さらに、超硬質物質の成膜プロセスの開発において極めて重要な応力緩和法を調べるため、イオン衝撃を利用した成膜プロセスによる材料学的検討も併せて行った。膜成長に伴うc-BN:TOモードに対応する赤外吸収ピークは高波数側へシフトし、中間層により応力緩和を施した場合でも、微視的には圧縮応力が蓄積していることが明らかとなった。ヘリコン波励起プラズマの生成には3巻のヘリカルアンテナ(方位角モードm=0)を使用し、数mTorrのアルゴン・窒素中において1E121E13cm-3の高密度プラズマが生成可能であることを明らかにした。負バイアスを印加したターゲットを配置することにより、金属原子をスパッタリングにより供給することが可能な物理蒸着系を構成し、主として化学量論組成(N/C=4/3)の達成を第一目標において窒化炭素薄膜の合成実験を行った。基板への原子状窒素の供給密度が高い条件で成膜するほど窒素組成比は向上し、最も高い値は目標値に近いN/C=1.3に達することが明らかとなった。フーリエ変換赤外吸収分光の結果から高分子様構造であるCH結合ないしNH結合も形成されており、硬質化を阻害する要因であることが示唆された。この高分子様の構造は、高強度紫外線照射よりも成膜温度の上昇により効果的に減少し、薄膜硬度の向上にも寄与することが明らかとなった。窒化炭素薄膜の機械的特性についてナノインデンテーション法を用いて評価し、基板への負バイアスの印加ないしは基板加熱により薄膜の硬度および弾性率が向上し、最高で20GPa程度の硬度を示すことが明らかとなった。また、高周波電力供給方式の最適化と金属原子供給の問題を調べるため、内部アンテナ方式の誘導結合放電による金属スパッタについて実験を行い、高周波電力給電方式の最適化により静電結合の抑制が可能であることを明らかにした。さらに、超硬質物質の成膜プロセスの開発において極めて重要な応力緩和法を調べるため、イオン衝撃を利用した成膜プロセスによる材料学的検討も併せて行った。膜成長に伴うc-BN:TOモードに対応する赤外吸収ピークは高波数側へシフトし、中間層により応力緩和を施した場合でも、微視的には圧縮応力が蓄積していることが明らかとなった。本年度は、ヘリコン波励起による反応性高密度プラズマ源を用いた物理蒸着系を構成して、窒化物系超硬質薄膜の合成実験を行い、合成した薄膜の組成・構造と反応場の活性化状態との相関について検討を行った。まず、ヘリコン波励起プラズマの生成には3ターンの方位角モードm=0アンテナを使用し、負バイアスを印加したターゲットを配置することにより、金属原子をプラズマスパッタリングにより供給することが可能な物理蒸着系を構成した。ヘリコン波が励起されている高密度モードのプラズマ中では、毎分90nm程度の成膜速度で薄膜合成が可能であることか示された。また、本研究でのプラズマ生成においても技術的に重要な課題の一つである内部アンテナを用いた誘導結合放電について、プラズマ生成と金属スパッタリングについても実験を行い、高周波電力給電方式の最適化により静電結合の抑制が可能であることが示された。ついで、上記の物埠蒸着索を用いて窒化炭素薄膜の合成実験をおもに行い、化学量論組成比(N/C=4/3)の達成を第一目標に置いて研究を行った。薄膜の組成分析の結果、原子血窒素の生成密度の高い条件で成膜するほど窒素組成比は向上し、最も高い値は目標値に非常に近いN/C=1.3に達することが明らかとなった。化学結合状態についてX線光電子分光法により調べた結果、窒素組成比の向上とともに膜中のCN結合の割合が増加することが明らかとなった。薄膜の硬度について評価を行ったところ、基板外の負バイアスの印加により20GPa程度の検魔を宗す試料も得られたが、目標値に比べると低い値に止まっていることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-10558065
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10558065
超硬質窒化物合成のための高密度ヘリコン波プラズマ励起・超活性化成膜プロセスの開発
このため、薄膜の結合相ならびに微細構造の制御とともに水素等の不純物の影響について、今後の検討課題としてさらなる研究が必要である。さらに、,cBN薄膜の応力緩和に関して、イオン衝撃を利用した成膜手法を併用した材料学的検討も行った。ヘリコン波励起による反応性高密度窒素プラズマ源を用いた物理蒸着系の構築に主眼をおいて実施した平成10年度の成果をもとにして、平成11年度は薄膜の組成・構築と反応場の活性化状態との相関と共に薄膜の機械的特性についてさらなる検討を行った。窒化炭素薄膜の合成実験では,冷却基板上で成膜した場合、膜中の窒素組成比としては科学量論組成(N/C=1.3)に達する薄膜が得られるものの、フーリエ変換赤外吸収分光(FTIR)の結果から高分子様構造であるCH結合ないしNH結合も形成されており、硬質化を阻害する要因であることが示唆された。この高分子様の構造は高強度紫外線照射よりも成膜温度600度C程度以上とすることにより効果的に減少し、薄膜の硬度の向上にも寄与することが明らかになった。しかし、X線回折的には全て非晶質であった。窒化炭素薄膜の機械的特性についてナノインデンテーション法を用いて評価した結果、基板への負バイアスの印加ないしは基板加熱により薄膜の硬度および弾性率が向上し、硬度では最も高いもので20GPa程度となることが明らかとなった。また、超硬質窒化物薄膜合成プロセスの開発で重要となる薄膜の残留応力について立方晶窒加硼素薄膜の合成実験においてFTIRを用いた実験的検討を行った。その結果、膜成長に伴ってc-BN : TOモードに対応する吸収ピークは高波数側へシフトし、中間層制御により応力緩和を施した場合でも、微視的には圧縮応力が蓄積していることが明らかとなった。さらに、反応性のより一層の向上と成膜プロセスの実用化の観点から、プラズマ生成に関して高周波電力給電法を含む技術的検討を行い、誘導アンテナを真空容器中に内蔵した新しいヘリコン波プラズマ源を構築して、3kW程度の高出力の高周波電力領域においても高密度プラズマ源を安定かつ長時間にわたって動作させることに成功した。
KAKENHI-PROJECT-10558065
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10558065
日露語における「自然な言い回し」について:アスペクト・ヴォイスの認知類型論的研究
本研究では,まず,日露語のパラレルコーパスを作成した。パラレルコーパスとは,複数言語間で意味内容がほぼ等しいと考えられる文について対応関係が付いている対訳コーパスである。日本語からロシア語に翻訳された短編小説7作品,ロシア語から日本語に翻訳された短編小説2作品を電子化した。次に,コーパスを資料として,日本語とロシア語の人為的事態を表す表現について,同一場面での構文の選択という観点から分析した。また,上級日本語学習者に当該表現の使用意識調査を行った。それらの結果をもとに,客観世界に対する事態認識の差異について考察し,日本語はロシア語に比べて事態を主観的に把握する傾向にあることを明らかにした。本研究は,言語の「自然さ」,「語らしさ」ということはどういうことかについて理論化し,説明を試みるものである。すなわち,客観世界に対する事態認識の言語化および構文間の連関と対立の関係に反映される話者の事態認知上のカテゴリー化の動機づけを明らかにする。研究方法は,1)文献資料からの用例収集; 2)パラレルコーパスからの用例収集;3)母語話者への聞き取りによる用例収集;4)収集したデータの分析と意味地図の記述;5)母語話者への使用意識調査;6)認知様式や伝達慣習との関連性の分析・検証,の6段階の手続きによって行う。パラレルコーパス(対訳コーパス)とは,複数言語について,特に,意味内容がほぼ等しいと考えられる文について対応関係が付いているコーパスである。本研究では日本語は主体結果構文(シテイル),受動構文(サレル),客体結果構文(シテアル) ,ロシア語は受動構文(быть+ V-н-/-т-),不定人称構文(主語がなく,動詞は3人称複数形)の構文について調査を展開していく。当該年度に実施した研究成果として,まず,パラレルコーパスの電子化および用例収集を行った。書きことばを中心にロシアや日本の近代から現代にかけての,短編小説を中心にまずは日本語からロシア語へ翻訳されたものを選定して2作品,ロシア語から日本語へ翻訳された短編小説を2作品,DVDを用いてロシア映画のセリフのパラレルコーパスとして1作品を電子化した。次に,電子化したパラレルコーパスを資料として,日本語は主体結果構文(シテイル),受動構文(サレル),客体結果構文(シテアル) ,ロシア語は受動構文(быть+ V-н-/-т-),不定人称構文(主語がなく,動詞は3人称複数形)について,同一場面での構文の選択という観点から分析を行い,日本語とロシア語の客観世界に対する事態認識の言語化の差異,すなわち,日本語はロシア語に比べて事態を主観的に把握する,ということを主張した。本研究では,まず,日露語のパラレルコーパスを作成した。パラレルコーパスとは,複数言語間で意味内容がほぼ等しいと考えられる文について対応関係が付いている対訳コーパスである。日本語からロシア語に翻訳された短編小説7作品,ロシア語から日本語に翻訳された短編小説2作品を電子化した。次に,コーパスを資料として,日本語とロシア語の人為的事態を表す表現について,同一場面での構文の選択という観点から分析した。また,上級日本語学習者に当該表現の使用意識調査を行った。それらの結果をもとに,客観世界に対する事態認識の差異について考察し,日本語はロシア語に比べて事態を主観的に把握する傾向にあることを明らかにした。本研究は,言語の「自然さ」,「語らしさ」ということはどういうことかについて理論化し,説明を試みるものである。すなわち,客観世界に対する事態認識の言語化および構文間の連関と対立の関係に反映される話者の事態認知上のカテゴリー化の動機づけを明らかにする。研究方法は,1)文献資料からの用例収集; 2)パラレルコーパスからの用例収集;3)母語話者への聞き取りによる用例収集;4)収集したデータの分析と意味地図の記述;5)母語話者への使用意識調査;6)認知様式や伝達慣習との関連性の分析・検証,の6段階の手続きによって行う。パラレルコーパス(対訳コーパス)とは,複数言語について,特に,意味内容がほぼ等しいと考えられる文について対応関係が付いているコーパスである。本研究では日本語は主体結果構文(シテイル),受動構文(サレル),客体結果構文(シテアル),ロシア語は受動構文(быть+ V-н-/-т-),不定人称構文(主語がなく,動詞は3人称複数形)の構文について調査を展開することを予定している。当該年度に実施した研究成果1パラレルコーパスの電子化および用例収集:書きことばを中心にロシアや日本の近代から現代にかけての文学作品のうち,短編小説を中心にまずは日本語からロシア語へ翻訳されたものを選定し,6作品についてすでに電子化した。2母語話者への聞きとり:日本在住のロシア語母語話者を対象に聞き取り調査を実施し,関連する構文を収集した。調査は,設定した状況を分かりやすく提示しつつ,母語でどのように表現するか答えてもらう形で行なった。3データベース化:パラレルコーパスなどの収集したデータは,意味内容がほぼ等しいと考えられる文に対応関係を「タグ付け」し,必要に応じて検索・利用できる形でデータベース化することを検討中である。本研究は,言語の「自然さ」,「-語らしさ」ということはどういうことかについて理論化し,説明を試みるものである。すなわち,客観世界に対する事態認識の言語化および構文間の連関と対立の関係に反映される話者の事態認知カテゴリー化の動機づけを明らかにする。
KAKENHI-PROJECT-24520472
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24520472
日露語における「自然な言い回し」について:アスペクト・ヴォイスの認知類型論的研究
研究方法は,1)文献資料からの用例収集; 2)パラレルコーパスからの用例収集;3)母語話者への聞き取りによる用例収集;4)収集したデータの分析と意味地図の記述;5)母語話者への使用意識調査;6)認知様式や伝達慣習との関連性の分析・検証,の6段階の手続きによって行う。パラレルコーパス(対訳コーパス)とは,複数言語について,特に,意味内容がほぼ等しいと考えられる文について対応関係が付いているコーパスである。本研究では人為的事態を表す表現(日本語は主体結果構文(シテイル),受動構文(サレル),客体結果構文(シテアル),ロシア語は受動構文(быть+ V -н-/-т-),不定人称構文(主語がなく,動詞は3人称複数形))の構文について調査を展開していく。最終年度に実施した研究成果として,まず,パラレルコーパスの電子化および用例収集を行った。ロシアや日本の近代から現代にかけての,短編小説を中心に日本語からロシア語に翻訳された短編小説を1作品,ロシア語から日本語に翻訳された短編小説を1作品を電子化した。次に,研究期間全体を通じて電子化したパラレルコーパスを資料として,日本語とロシア語の人為的事態を表す表現について,同一場面での構文の選択という観点から分析を行った。また,日本に留学している上級レベルの日本語学習者にたいし当該表現の使用に関するアンケート調査を行った。それらの結果をもとに,日本語とロシア語の客観世界に対する事態認識の言語化の差異について考察し,日本語はロシア語に比べて事態を主観的に把握する,ということを明らかにした。言語学日本語教育本研究は,アスペクトとヴォイスという2つの範疇を統合的に眺め,機能意味論的な観点からロシア語と日本語を解析し,普遍性と可変性の検証を進めようとするものである。そのため,1ロシア語と日本語のパラレルコーパスの電子化と用例収集(およびデータベース化); 2ロシア語母語話者への聞き取りによる用例収集; 3収集したデータの分析と意味地図の記述; 4各言語の母語話者の使用意識調査,を研究目的の達成のために行う予定である。このうち当該年度では1,3,4の実施を予定していた。パラレルコーパスについては,短編小説のうち原文が日本語のもの2作品,ロシア語のもの2作品,ロシア映画とその日本語訳の1作品の電子化を新たに行った。一方で,ロシア語から日本語へ翻訳された作品や映画やテレビドラマ,アニメなどの話し言葉からの用例収集についてはまだ十分な数がそろったとは言えない。こうしたデータの収集は次年度の計画と同時進行で行っていく。3については,電子化したパラレルコーパスを資料として,日本語は主体結果構文,受動構文,客体結果構文(シテアル),ロシア語は受動構文,不定人称構文について,同一場面での構文の選択という観点から分析を行い,日本語はロシア語に比べて事態を主観的に把握する,ということを明らかにし,その成果を2つの学会で発表した。一方で,意味地図の記述にかんしては正確を期すため,間もなく完成する様々なジャンルからの資料も加味したうえで分析,記述に着手する予定である。
KAKENHI-PROJECT-24520472
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24520472
尿路結石に対する遺伝子治療についての研究
1.平成9年度は、アンチセンスDNA分子の合成および精製を行うとともに、MDCK細胞を用いた実験系でosteopontin(OPN)-mRNAの発現がどの程度抑制されるかについて検討した。(2)塩基配列をもとにmRNA以下の翻訳レベルを抑制させるantisense oligonucleotide、それに対するsense oligonuclcotideをATGを含む66baseから20塩基作製した。(3) 2×10^6cellsのMDCK細胞をconfluentまで培養後、遺伝子導入試薬DOTAPとantisenseoligonucleotide、sense oligonucleotideをそれぞれ加え10時間培養した。(4)その後、OPNの発現抑制を蛍光抗体法で確認した。(5) OPN蛋白発現はantisense oligonucleotide投与にて20μM以上の濃度で抑制された。遺伝子レベルで特異的にOPNのみの発現を抑制することにより結石形成は抑制され、将来的に遺伝子治療へと発展するものと考えられる。2.平成10年度は、アンチセンスDNA分子を結石形成ラットに投与して腎OPN-mRNAの発現に与える影響について検討するとともに、結石形成ラットの腎組織切片標本を作製する予定であった。(1)アンチセンスDNA分子を結石形成ラットに投与する方法が手技的に非常に困難であったため、腎OPN-mRNAの発現に与える影響についてまでは検討できなかった。(2)現在、別の投与方法を検討中であり、今後これが成功すれば結石形成ラットの腎組織切片標本を作製して比較検討する予定である。平成9年度は、アンチセンスDNA分子の合成および精製を行うとともに、MDCK細胞を用いた実験系でosteopontin(OPN)-mRNAの発現がどの程度抑制されるかについて検討した。平成10年度は、アンチセンスDNA分子を結石形成ラットに投与し腎OPN-mRNAの発現に与える影響について検討するとともに、結石形成ラットの腎組織切片標本を作製する準備も始める。1.平成9年度は、アンチセンスDNA分子の合成および精製を行うとともに、MDCK細胞を用いた実験系でosteopontin(OPN)-mRNAの発現がどの程度抑制されるかについて検討した。(2)塩基配列をもとにmRNA以下の翻訳レベルを抑制させるantisense oligonucleotide、それに対するsense oligonuclcotideをATGを含む66baseから20塩基作製した。(3) 2×10^6cellsのMDCK細胞をconfluentまで培養後、遺伝子導入試薬DOTAPとantisenseoligonucleotide、sense oligonucleotideをそれぞれ加え10時間培養した。(4)その後、OPNの発現抑制を蛍光抗体法で確認した。(5) OPN蛋白発現はantisense oligonucleotide投与にて20μM以上の濃度で抑制された。遺伝子レベルで特異的にOPNのみの発現を抑制することにより結石形成は抑制され、将来的に遺伝子治療へと発展するものと考えられる。2.平成10年度は、アンチセンスDNA分子を結石形成ラットに投与して腎OPN-mRNAの発現に与える影響について検討するとともに、結石形成ラットの腎組織切片標本を作製する予定であった。(1)アンチセンスDNA分子を結石形成ラットに投与する方法が手技的に非常に困難であったため、腎OPN-mRNAの発現に与える影響についてまでは検討できなかった。(2)現在、別の投与方法を検討中であり、今後これが成功すれば結石形成ラットの腎組織切片標本を作製して比較検討する予定である。
KAKENHI-PROJECT-09771244
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09771244
計量と両立する接続を持つ多様体の射影共形変形とアフィン幾何学
平成10年度は、計量と両立する接続を持つ多様体の幾何に関連して、主として(i)情報幾何において、確率分布の空間に与えられる幾何構造、(ii)3ないし4次元のアフィン空間における、良い性質をもつ曲面の具体例の構成、の二つの項目についての研究を行い、次のような研究成果を得た。1. (無限次元)バナッハ空間への余次元1の半はめ込み写像のアフィン幾何を構築し、情報幾何において確率分布族に与えられる幾何構造は、いずれもこの一般論を具体例に適用することで得られることを示した。これにより、確率分布の無限次元族に対する情報幾何について確固とした基盤が与えられただけでなく、今後、確率分布族上に導入し得る幾何構造についての一つの指針が与えられたものと考えられる。2. 3次元アフィン空間のアフィンガウス・クロネッカー曲率が一定な曲面について、それが計量的である(その曲面のガウス曲率一定になるような、全空間の内積が存在する)ための簡明な必要十分条件を与え、それらの曲面の間のバックルンド変換をアフィン曲面論の範疇で記述した。また、非計量的な曲面を具体的に構成するための一般的な手順を与え、それを実際に遂行することにより、今まで文献などではあまり知られていなかった具体例を構成した。3. 4次元アフィン空間の自己双対な極小中心アフィン曲面に対する表現公式を与え、そのような曲面が豊富に存在することを示した。さらに、この結果を用いて、クリフォード輪環面や二次曲面などの自己双対極小中心アフィン曲面の典型例を結ぶ変形族を具体的に構成した。射影平坦かつ捩れをもたないアフィン接続∇が与えられた3次元以上の単連結多様体Mの(射影)展開写像について研究し、次の結果を得た:接続∇は対称かつ負定値なリッチ曲率をもち、M上にある点pを始点とする測地線はすべてアフィン径数に関して無限に延ばせる、と仮定する。このとき、(M,∇)の(射影)展開写像は単射であり、像はアフィン空間の有界凸集合となる。この結果の系として、上の仮定を満たす(M,∇)は側地的凸かつ測地的完備であることが示される。また、逆に上の結論を満たす(M,∇)に対して、その展開写像の像の境界がある程度滑らかならば、仮定の条件を満たす接続∇′で∇に射影同値であるものが存在することも示された。これらの結果は、コンパクトな射影平坦多様体の構造の研究を今後進展させていく上で、有益であろうと思われる。その他、上の研究に並行して、共形平坦な多様体の(共形)展開写像についての考察のすすめており、特にミンコフスキー空間の光錐の部分多様体の性質についていくつかの観察をおこなった。その結果、与えられた充分一般的な共形平坦多様体には双対が存在すること、それを用いて共形構造を変形させられることが見つかった。これらのことがらをより詳しく調べることは、これからの研究課題としたい。平成10年度は、計量と両立する接続を持つ多様体の幾何に関連して、主として(i)情報幾何において、確率分布の空間に与えられる幾何構造、(ii)3ないし4次元のアフィン空間における、良い性質をもつ曲面の具体例の構成、の二つの項目についての研究を行い、次のような研究成果を得た。1. (無限次元)バナッハ空間への余次元1の半はめ込み写像のアフィン幾何を構築し、情報幾何において確率分布族に与えられる幾何構造は、いずれもこの一般論を具体例に適用することで得られることを示した。これにより、確率分布の無限次元族に対する情報幾何について確固とした基盤が与えられただけでなく、今後、確率分布族上に導入し得る幾何構造についての一つの指針が与えられたものと考えられる。2. 3次元アフィン空間のアフィンガウス・クロネッカー曲率が一定な曲面について、それが計量的である(その曲面のガウス曲率一定になるような、全空間の内積が存在する)ための簡明な必要十分条件を与え、それらの曲面の間のバックルンド変換をアフィン曲面論の範疇で記述した。また、非計量的な曲面を具体的に構成するための一般的な手順を与え、それを実際に遂行することにより、今まで文献などではあまり知られていなかった具体例を構成した。3. 4次元アフィン空間の自己双対な極小中心アフィン曲面に対する表現公式を与え、そのような曲面が豊富に存在することを示した。さらに、この結果を用いて、クリフォード輪環面や二次曲面などの自己双対極小中心アフィン曲面の典型例を結ぶ変形族を具体的に構成した。
KAKENHI-PROJECT-09740073
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09740073
21世紀型ジェネリック・スキルの形成による「人生設計型学校カリキュラム」の再構築
現在のめまぐるしい産業構造の転換の中で、今日ほど、次代をになう子ども達が「未来を見据えながら希望を持って人生をたくましく歩んでいく力」が強く求められたことはない。ここでは、一般の公私立学校や才教学園小中学校・大阪府教育委員会・宮城県教育委員会・仙台市教育委員会で進められている「志教育・自分づくり教育」の理論と実践を取り上げ、その特色と人間形成的・教育的意義について、筆者がこれまで提唱してきている「人生設計能力を育てるな能力開花型・自己成長型・人生設計型学校カリキュラム」のより一層の充実・発展のあり方という観点から考察する。宮城県教育委員会、仙台市教育委員会、大阪府教育委員会、長野県松本市の才教学園小・中学校等で実施されている「志教育」「自分づくり教育」の理論と実践について帝塚山大学現代生活学部の研究紀要論文にまとめて刊行した。6月7日に、オランダのイエナプラン教育研究家・リヒテルズ直子氏を帝塚山大学に招聘して、「オランダの共生教育ー子どもの幸福度世界一ー」「オランダにおけるシティズンシップ教育の意味と内容」の二つの講演会を、午前と午後に分けて実施した。6月23日に、東北大学大学院教育学研究科で開催された第23回日本公民教育学会において、「防災プロジェクトー地域の一員として自分たちにできることに気づき行動する子どもを育てるー」というテーマで、三山久美子(横浜市立黒須田小学校)三山剛史(帝塚山大学)との共同研究発表を行った。11月29日に、フィンランド・トゥルク大学教育学部のリッタ・コルホーネン博士を帝塚山大学に招聘して、「幼児教育および初等教育におけるシティズンシップ教育ーフィンランドにおける教育カリキュラムと原理と教師の視点ー」というテーマで講演会を実施し、日本グローバル教育学会の学会誌『グローバル教育』第15号に、同名の研究論文を共訳者として発表し刊行した。これまでの研究成果を、今谷順重著『「志教育・づくり教育」で人生設計能力を育てる』ミネルヴァ書房(平成25年度刊行予定)を出版するための原稿執筆に取り組んだ。「21世紀型ジェネリック・スキルの形成による人生設計型学校カリキュラムの再構築」の具体例のひとつとして、才教学園小学校・中学校による「志教育」や仙台市教育委員会における「仙台自分づくり教育」、宮城県教育委員会における「みやぎの志教育」大阪府教育委員会における「夢や志をはぐくむ教育」をとりあげて、そのカリキュラム理論の特色と授業実践理論の特色について、比較的に考察した。またこれらの学校カリキュラム編成や授業実践の背景となるものとして、2006年に改正された教育基本法の改正やそれに基づいた第2期教育振興基本計画の制定、文部科学省が2013年に作成した『小学校・中学校キャリア教育の手引き』、さらにまたアメリカ・マサチューセッツ工科大学のピーター・センゲ教授が提唱して教育実践の実践の現場でも積極的に推進されている「学習する組織(ラーニング・オーゼイション」の理論と実践についても言及した。『志教育』や『自分づくり教育』という言葉からすれば、『志』は自らの進むべき将来の方向性や到達目標を示しており、『自分づくり』とは、今現在の自分を見つめながら自己の能力をよりよいものへと磨き高めていく、現時点での取り組み活動を意味している。これらを積極的に結び付けてとらえた場合、到達目標としての『志』を探し見つけ出しながらその実現に向かって、今現在の『自分づくり』に正面から向き合い、不断に自己を成長・発達・進歩・発展・向上させ続けていく力を形成していく教育こそが、今最も必要とされている21世紀の教育改革の核心部分であるというメッセージを、この始まったばかりの新しい動きからよみとることができるであろう。現在のめまぐるしい産業構造の転換の中で、今日ほど、次代をになう子ども達が「未来を見据えながら希望を持って人生をたくましく歩んでいく力」が強く求められたことはない。ここでは、一般の公私立学校や才教学園小中学校・大阪府教育委員会・宮城県教育委員会・仙台市教育委員会で進められている「志教育・自分づくり教育」の理論と実践を取り上げ、その特色と人間形成的・教育的意義について、筆者がこれまで提唱してきている「人生設計能力を育てるな能力開花型・自己成長型・人生設計型学校カリキュラム」のより一層の充実・発展のあり方という観点から考察する。第22回日本公民教育学会(愛媛大学教育学部)、第19回日本グローバル教育学会(愛知教育大学)、第4回日本個性化教育学会(上智大学)、第60回全国社会科教育学会(広島大学教育学部)、第61回日本社会科教育学会(北海道教育大学)、同志社大学京町屋キャンパスでのアントレプレナーシップ研究会等の学会に参加して、市民性教育とジェネリック・スキルとの関連性について調査した。(1)フィンランドのツルク大学と幼稚園・小・中学校の訪問、(2)ポーランド・ワルシャワでのヨーロッパ市民教育会議への参加、(3)ベルギー・ブリュッセルのEU本部およびEuropean Commisionの訪問及びオランダのイエナプラン教育協会によるイエナプラン教育研修への参加とオランダの幼・小・中・高・教員養成大学の訪問という3回の海外出張を行って、ジェネリック・スキル教育について調査した。オランダ在住の教育研究者・リヒテルズ直子氏、ブリュッセル・EU本部のRichard Deiss氏を招聘して、帝塚山大学と名古屋大学で第1回「国際理解教育セミナー」を開催した。東北大学及び宮城県内で東日本大震災の被害状況について調査し、神奈川県横浜市立黒須田小学校において、ジェネリック・スキルを育成するための防災教育の授業を担当実施するとともに、長野県松本市の才教学園を訪問して、「志教育」とジェネリック・スキルの関連性について調査を行った。
KAKENHI-PROJECT-23531257
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21世紀型ジェネリック・スキルの形成による「人生設計型学校カリキュラム」の再構築
また我が国及びアメリカ・EU諸国の幼・小・中学校で実施されている国際教育・総合的学習のカリキュラムと教材を入手して、その一部を読解・分析した。これらの調査活動は、21世紀型ジェネリックスキルの考え方の導入によって、「人生設計型学校カリキュラム」をより質の高いものに充実・発展させていくうえで不可欠なものであり、有意義な成果を上げることができた。宮城県教育委員会、仙台市教育委員会、大阪府教育委員会、長野県松本市の才教学園小・中学校等で実施されている「志教育」「自分づくり教育」の理論と実践について帝塚山大学現代生活学部の研究紀要論文にまとめて刊行した。6月7日に、オランダのイエナプラン教育研究家・リヒテルズ直子氏を帝塚山大学に招聘して、「オランダの共生教育ー子どもの幸福度世界一ー」「オランダにおけるシティズンシップ教育の意味と内容」の二つの講演会を、午前と午後に分けて実施した。6月23日に、東北大学大学院教育学研究科で開催された第23回日本公民教育学会において、「防災プロジェクトー地域の一員として自分たちにできることに気づき行動する子どもを育てるー」というテーマで、三山久美子(横浜市立黒須田小学校)三山剛史(帝塚山大学)との共同研究発表を行った。11月29日に、フィンランド・トゥルク大学教育学部のリッタ・コルホーネン博士を帝塚山大学に招聘して、「幼児教育および初等教育におけるシティズンシップ教育ーフィンランドにおける教育カリキュラムと原理と教師の視点ー」というテーマで講演会を実施し、日本グローバル教育学会の学会誌『グローバル教育』第15号に、同名の研究論文を共訳者として発表し刊行した。これまでの研究成果を、今谷順重著『「志教育・づくり教育」で人生設計能力を育てる』(ミネルヴァ書房)を出版するための原稿執筆に取り組んだ。その他、日本生活科・総合的学習教育学会(徳島大学6月10日)日本個性化教育学会(宮城教育大学8月18日)日本グローバル教育学会(同志社女子大学9月8日)日本社会科教育学会(東京学芸大学9月29日・30日)全国社会科教育学会(岐阜大学10月20日・21日)等に参加して、シティズンシップ教育や総合的な学習についての意見交換と資料収集を行った。研究はほぼ順調に進んでいる。OECDが提示して世界の教育改革に大きな影響を与えている「キー・コンピテンシー」に続いて、「21世紀・知のヨーロッパ構想」を積極的に推進しているEU(ヨーロッパ連合)では、知識社会化・グローバル化が急速に進展する欧州において、すべての子どもたちや成人・市民が、よりよく学び働き生活していくうえで不可欠な8つの技能としての「生涯学習のキー・コンピテンス」を提示して、加盟27カ国は、このEU共通モデルを、さらに一層オリジナリティーの高いものへと発展させていくことを求めている。本年度は、ベルギー・ブリュッセルのEU本部・European Commissionを訪問して、「生涯学習のキー・コンピテンス」の考え方やEU諸国での具体的展開の実情についての情報・資料収集を行った。
KAKENHI-PROJECT-23531257
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切迫流・早産妊婦の便中の制御性T細胞誘導性クロストリジウム属菌と早産発生との関連
切迫早産の原因は不明である。近年、切迫早産後に早産となった妊婦の腸内細菌叢で、クロストリジウムIV群、XIV群およびXVIII群が減少していると報告された。これらにはCD4+ Foxp3+の制御性T細胞を誘導する働きがあるクロストリジウム種が含まれている。しかし、切迫早産後に早産となった妊婦において、腸内の制御性T細胞誘導性クロストリジウム種が減少しているかどうかはまだ検討されていない。本研究では、妊娠28週未満の切迫早産妊婦および正常妊婦において、便中の制御性T細胞誘導性クロストリジウム種を含む腸内細菌叢を次世代シーケンサーを用いて特定・定量し、腸内の制御性T細胞誘導性クロストリジウム種が早産の発症に関連しているかどうかを検証する。早産の予測、腸内細菌制御による治療・予防法の開発の展望を得る。対象は妊娠28週未満の切迫流・早産妊婦75例、正常妊婦75例。正常妊婦は合併症がなく投薬歴のないものとし、妊娠20週から28週までとする。各時期から糞便、血液を採取する。糞便に関して:正常妊婦では妊娠20週から28週までに1回採取する。切迫流・早産により入院となった患者については、入院中に3回、さらに、分娩後1回採取する。今年度は正常妊婦の検体収集の準備並びに外来診療における検体収集を開始した。検体収集後に腸細菌DNAを抽出する。後日、次世代シークエンサーを用いて16SrRNAおよびクロストリジウム属に特化した腸内細菌叢解析を行う。バイオインフォマテックスを用いた解析を行い、全腸内細菌叢のうちどの菌種が切迫早産妊婦で優勢または劣勢であるかについての評価を行う。妊娠群、切迫早産群において、フローサイトメーターを用いて制御性T細胞比率及びTh17細胞比率の解析を行う。今年度は正常妊婦の末梢血液を採取しそれぞれの細胞比率を解析した。妊娠26週未満の切迫流産早産患者数が少ないため、対象の検体が少ない。正常検体数は目標数に近づいており、今年中に腸内細菌細菌叢解析をおこなう予定。切迫早産の原因は不明である。近年、切迫早産後に早産となった妊婦の腸内細菌叢で、クロストリジウムIV群、XIV群およびXVIII群が減少していると報告された。これらにはCD4+ Foxp3+の制御性T細胞を誘導する働きがあるクロストリジウム種が含まれている。しかし、切迫早産後に早産となった妊婦において、腸内の制御性T細胞誘導性クロストリジウム種が減少しているかどうかはまだ検討されていない。本研究では、妊娠28週未満の切迫早産妊婦および正常妊婦において、便中の制御性T細胞誘導性クロストリジウム種を含む腸内細菌叢を次世代シーケンサーを用いて特定・定量し、腸内の制御性T細胞誘導性クロストリジウム種が早産の発症に関連しているかどうかを検証する。早産の予測、腸内細菌制御による治療・予防法の開発の展望を得る。対象は妊娠28週未満の切迫流・早産妊婦75例、正常妊婦75例。正常妊婦は合併症がなく投薬歴のないものとし、妊娠20週から28週までとする。各時期から糞便、血液を採取する。糞便に関して:正常妊婦では妊娠20週から28週までに1回採取する。切迫流・早産により入院となった患者については、入院中に3回、さらに、分娩後1回採取する。今年度は正常妊婦の検体収集の準備並びに外来診療における検体収集を開始した。検体収集後に腸細菌DNAを抽出する。後日、次世代シークエンサーを用いて16SrRNAおよびクロストリジウム属に特化した腸内細菌叢解析を行う。バイオインフォマテックスを用いた解析を行い、全腸内細菌叢のうちどの菌種が切迫早産妊婦で優勢または劣勢であるかについての評価を行う。妊娠群、切迫早産群において、フローサイトメーターを用いて制御性T細胞比率及びTh17細胞比率の解析を行う。今年度は正常妊婦の末梢血液を採取しそれぞれの細胞比率を解析した。倫理申請許可に時間がかかり検体採取の開始が遅くなったため。切迫早産の原因は不明である。近年、切迫早産後に早産となった妊婦の腸内細菌叢で、クロストリジウムIV群、XIV群およびXVIII群が減少していると報告された。これらにはCD4+ Foxp3+の制御性T細胞を誘導する働きがあるクロストリジウム種が含まれている。しかし、切迫早産後に早産となった妊婦において、腸内の制御性T細胞誘導性クロストリジウム種が減少しているかどうかはまだ検討されていない。本研究では、妊娠28週未満の切迫早産妊婦および正常妊婦において、便中の制御性T細胞誘導性クロストリジウム種を含む腸内細菌叢を次世代シーケンサーを用いて特定・定量し、腸内の制御性T細胞誘導性クロストリジウム種が早産の発症に関連しているかどうかを検証する。早産の予測、腸内細菌制御による治療・予防法の開発の展望を得る。対象は妊娠28週未満の切迫流・早産妊婦75例、正常妊婦75例。正常妊婦は合併症がなく投薬歴のないものとし、妊娠20週から28週までとする。各時期から糞便、血液を採取する。糞便に関して:正常妊婦では妊娠20週から28週までに1回採取する。
KAKENHI-PROJECT-17K16864
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K16864
切迫流・早産妊婦の便中の制御性T細胞誘導性クロストリジウム属菌と早産発生との関連
切迫流・早産により入院となった患者については、入院中に3回、さらに、分娩後1回採取する。今年度は正常妊婦の検体収集の準備並びに外来診療における検体収集を開始した。検体収集後に腸細菌DNAを抽出する。後日、次世代シークエンサーを用いて16SrRNAおよびクロストリジウム属に特化した腸内細菌叢解析を行う。バイオインフォマテックスを用いた解析を行い、全腸内細菌叢のうちどの菌種が切迫早産妊婦で優勢または劣勢であるかについての評価を行う。妊娠群、切迫早産群において、フローサイトメーターを用いて制御性T細胞比率及びTh17細胞比率の解析を行う。今年度は正常妊婦の末梢血液を採取しそれぞれの細胞比率を解析した。妊娠26週未満の切迫流産早産患者数が少ないため、対象の検体が少ない。検体収集を広く行い、検体数を増やす。正常検体数は目標数に近づいており、今年中に腸内細菌細菌叢解析をおこなう予定。検体収集がまだ十分でないため、DNA抽出や次世代シークエンサーで使用する試薬の購入に至らなかったため、次年度使用額が生じた。今年度は検体収集をさらに行い、腸内細菌解析を行う予定である。検体収集がまだ十分でないため、腸内細菌叢解析をまだ行っていないが、今年中に正常検体分は収集が終了し、解析にになる予定である。
KAKENHI-PROJECT-17K16864
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K16864
バングラデシュにおける巨大沖積河川の河道安定化に関する現地適用型対策の調査研究
バングラデシュ国を対象に、低コストでかつ現地で材料を調達でき、設置・修理等も現地の者が実施できるバンダル型水制の水理機能を水理模型実験・数値解析および現地での試験施工で明らかにした。また、当水制の設置により河岸侵食の防止のみならず河岸侵食で失った土地の回復に対して当水制が有効であることを明らかにした。従来、当水制は河川の航路維持のために渇水期に設置されてきたが、洪水期に設置することで河岸浸食が防止され、巨大沖積河川の河道安定化の可能性が示された。沖積河川における河岸浸食機構は、種々の要因が営力となって作用するため極めて複雑である。河道の安定を持続的に維持するには、侵食に対して何らかの対策法を適用する前に河道変動および河岸侵食の将来の変動特性を知っておく必要がある。バングラデシュでは、ガンジス川、ジャムナ川、ブラマプトラ川といった沖積河川の河道安定を図るため、水制や護岸といった河岸侵食防止対策が導入されている。しかしながら、各地でこれらの対策工が破壊されたり危険な状態になったりしているが、このような破壊現象については十分な知見が得られているとは言い難い。そこで,本研究ではこの問題に関してこれまで緊密な連携をとって基礎的な研究を実施してきたメンバ-が一致団結して, 4年間で(1)河道の安定化に関する土砂水理学的調査研究、(2)河道の安定化に関する対策方法とその現地適用性の調査研究、(3)河道の安定化に関する数値シミュレ-ション手法の適用性の研究、(4)低コストで最適な現地適用型河道安定化工法の調査研究、を実施し、巨大沖積河川の河道安定化に関する現地適用型対策法を開発し、現地河川でその効果について調査研究を行うものである。バングラデシュ国を対象に、低コストでかつ現地で材料を調達でき、設置・修理等も現地の者が実施できるバンダル型水制の水理機能を水理模型実験・数値解析および現地での試験施工で明らかにした。また、当水制の設置により河岸侵食の防止のみならず河岸侵食で失った土地の回復に対して当水制が有効であることを明らかにした。従来、当水制は河川の航路維持のために渇水期に設置されてきたが、洪水期に設置することで河岸浸食が防止され、巨大沖積河川の河道安定化の可能性が示された。(1)河道の安定化に関する土砂水理学的調査研究:多数の水制工が配置されているジョムナ川(ボグラ地点)を今回調査した結果、河道幅が平均12kmもあり、流速、水深等の観測に膨大な時間を要することが判明し、適地とはしがたいことが分かった。ただし、多数の水制工が設置されており、局所洗掘等により被災したものや被災しなかったものなどがあり、その原因を土砂水理学的に解明することは重要である。今回の調査から、被災した水制は主として本川の主流部にまで水制が延びている場合が多く、被災しなかった水制は主として主流が水割に直接作用しないような場所に設置されていたことがわかった。このことから、水制の設置場所と耐力は経験によって決定されていて、将来の地形変動予測を適切に行う必要性が認識された。今後、ジョムナ川における地形変動については観測とは別に、別途詳細な解析を実施する必要性が示唆された。定点的な現地観測については、今回の現地調査結果および現地のスタッフの意見をもとに検討した結果、首都ダッカから北西約300kmにあるティスタ川が適当であると判断した。(2)河道の安定化に関する対策方法とその現地適用性の調査研究:当初、竹製のバンダル型水制がコスト的には最適であり現地適用性が高いと考えていたが、ヒアリング調査により、洪水時の使用は耐力的に困難であることが判明した。そこで、現地では石積の水制工(Spur)を対象とした河道の安定化対策について検討し、バンダル型水制は河岸侵食防止と水刎ねの機能を同時に有するため、その機能の定量的評価と実用化に向けた研究を継続することとする。(3)河道の安定化に関する数値シミュレーション手法の適用性の研究:透過型および不透過型水制を配置した模型実験を実施し、実験結果を再現し得る平面2次元および3次元の流れの解析と河床変動計算手法を開発した。平成19年度においては、バングラデシュ国のシラジゴンジ・ハードポイントにおいてADCPを用いてジョムナ川の流況および河床形状を計測するとともに、河床材料を採取し、粒度試験やpf試験を実施した。とくに、数値計算で必要となる境界条件を把握することに努めた。現地計測の結果、ハードポイント周辺の剥離流れによって河床の一部で局所洗掘が生じ、周辺の河床より30m程度も低いような洗堀が生じていた。ハードポイント直前では、回り込む速い流れによって河岸侵食が生じており、河岸の後退が顕著であった。そのための対策として、コンクリートブロックの捨石が施されていたが、洗堀によりこれらの多くが流亡するために繰り返し捨石を施す必要がある。一方、洪水によって河岸や中州が侵食され、土地を失ったために農業から漁業に転職せざるをえない人たちからヒアリングを行った。その結果、ジョムナ橋を架ける際に川を縮幅したために流れが速くなり侵食したが、バンダル型水制を配置することで侵食が抑制され、最近では堆積傾向にあることが分かった。
KAKENHI-PROJECT-18404010
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18404010
バングラデシュにおける巨大沖積河川の河道安定化に関する現地適用型対策の調査研究
そこで、直線水路における水制に関する模型実験を実施し、透過型および不透過型水制の機能を明らかにするとともに、開発した3次元流れの数値シミュレーションを実行し、模型実験の結果をもとにモデルの妥当性を検証した。また、2次元平面流れ及び河床変動計算を木津川における大規模な水制工の模型実験に適用し、モデルの妥当性を検証した。これらの計測、実験および数値計算結果をもとに、透過部と不透過部を有するバンダル型水制の基本的なモデルの構築を行った。本年度も昨年同様、河岸侵食・河道変動に関する現地調査並びに水制周りの局所洗掘の水理模型実験に基づくバンダル型水制の機能評価を中心に研究を行った。観測においては、ジョムナ川のシラジゴンジ・ハードポイントにおいて、昨年と同様にADCPを用いて流況、河床形状、河床材料等の計測、サンプリングを実施した。本年度においては河岸近傍において平面的な砂州の位置に大きな変動があったため、昨年との違いが捉えられるように、かつ、その原因が特定できるように河道・河床変動計測を入念に実施した。なお、原因の特定には衛星写真や計測したデータの分析が必要であり、現在これを実施しているところであるが、砂州の移動による水みちの変化によって主流が河岸にあたる方向に変化したために、洪水時に河岸を大きく侵食するとともに、ハードポイントの護岸の一部を破壊したものと推定された。昨年度計測した地形を初期条件に、昨年度の洪水を外力条件としてこの地形変動について数値シミュレーションを実施して現象の再現を試みているところである。浮遊砂が活発な水理条件下で、水制等の周辺の局所洗掘に関する水理模型実験を行った。越流と非越流の条件で、透過型、不透過型、バンダル型の各水制を用いた場合の水制周りの河床変動と流れの計測を行い、各水制を配置した場合の地形変動と流れを比較検討した。その結果、バンダル型水制が河岸侵食の軽減に対してもっとも有効であることが確認された。また、浮遊砂が卓越する場での3次元の流れの解析と河床変動計算とを実施し、数値解析モデルの妥当性を検討した。再現性にやや難点があり、引き続きモデルの改良を行っている。平成21年度は本課題での研究の最終年度であり、バングラデシュ側のカウンターパートであったバングラデシュ工科大学水・洪水管理研究所において、平成22年1月31日に成果報告会を開催し、共同で実施してきた観測研究および水理模型実験研究および数値解析に基づく実験結果の再現に関する研究成果等を報告しあった。この報告会に先駆け、平成22年1月30日には、懸案であったバンダル型水制の設置個所において現地調査を行った。バンダル型水制の河岸浸食防止効果および水刎効果による主流路の侵食機能については既に本研究の水理模型実験で確認されていたが、浮遊砂の河岸への堆積効果については実験スケールの問題から確認することができなかった。幸いにもカウンターパートの要望が受け入れられ、バングラデシュ水開発局(BWDB)が昨年7月にJamuna川に架かるJamuna橋上流2km左岸辺りに、竹製のパイルとフェンスからなるバンダル型水制を多数試験的に設置した。わずか半年間の設置であったが、その効果は抜群であり、河岸浸食防止効果のみならず、浮遊砂が河岸付近に3m以上もうずたかく堆積し、河岸侵食により流亡したかっての農地が再現されたと、現地のヒアリングで明らかになった。一方、浮遊砂を考慮した数値シミュレーション手法については水制の構造の複雑さから、境界条件等の設定に困難さが残されているが、初歩的なモデルが開発され、浮遊砂がある場合と無い場合とで河床変動にどのような違いがあるかを検討した。
KAKENHI-PROJECT-18404010
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光学活性を有する界面活性剤の生物活性
キラリティを有する両性界面活性剤を研究する目的で以下の一般式で表わされるアミノ酸型(I),アミノスルホン酸型(II),ベタイン型(III)の両性界面活性剤を合成してそのキラリティが表面張力低下能や抗菌性にどの様に影響するか疎水基,親水基の相違とあわせて比較,検討した. (III)については不斉炭素,不斉窒素に基づくジアステレオマーを光学分割し,細菌や真菌に対する抗菌性について検討を試みた.その結果,静的な平衡表面張力低下能やcmcについてはキラリティーの差異が全く影響されず,従来のTraube則に一致する結果が得られた.一方,振動ジェット法により界面活性剤水溶液において溶質の気液界面への吸着速度について検討したが(III)のジアステレオマー間に差異が認められTLC上のRf値の大きいものが小さいものに比べて速やかに気液界面に吸着することがわかった.又両性電解質水溶液の表面張力値のpH依存性についてみるとキラリティには係りなく,酸性側,塩基性側で不安定であり,特に酸性側ではいずれの両性化合物も相分離をおこした.抗菌性についてはそのキラリティに注目すると(I)や(II)の様な不斉源が1ツのものついては光学異性体間の抗菌性の差異に有意差は認められず,以前に著者らが報告した光学活性なカチオニクスの実験結果と一致した. (III)についてはグラム陽性菌,真菌の一部に対してその抗菌性に立体異性の影響が認められた.すなわちエナンチオマー間には差は認められず,ジアステレオマー間についてその試料のTLCにおけるRf値の低いものが高いものに比べて秀れた抗菌性を示した.キラリティを有する両性界面活性剤を研究する目的で以下の一般式で表わされるアミノ酸型(I),アミノスルホン酸型(II),ベタイン型(III)の両性界面活性剤を合成してそのキラリティが表面張力低下能や抗菌性にどの様に影響するか疎水基,親水基の相違とあわせて比較,検討した. (III)については不斉炭素,不斉窒素に基づくジアステレオマーを光学分割し,細菌や真菌に対する抗菌性について検討を試みた.その結果,静的な平衡表面張力低下能やcmcについてはキラリティーの差異が全く影響されず,従来のTraube則に一致する結果が得られた.一方,振動ジェット法により界面活性剤水溶液において溶質の気液界面への吸着速度について検討したが(III)のジアステレオマー間に差異が認められTLC上のRf値の大きいものが小さいものに比べて速やかに気液界面に吸着することがわかった.又両性電解質水溶液の表面張力値のpH依存性についてみるとキラリティには係りなく,酸性側,塩基性側で不安定であり,特に酸性側ではいずれの両性化合物も相分離をおこした.抗菌性についてはそのキラリティに注目すると(I)や(II)の様な不斉源が1ツのものついては光学異性体間の抗菌性の差異に有意差は認められず,以前に著者らが報告した光学活性なカチオニクスの実験結果と一致した. (III)についてはグラム陽性菌,真菌の一部に対してその抗菌性に立体異性の影響が認められた.すなわちエナンチオマー間には差は認められず,ジアステレオマー間についてその試料のTLCにおけるRf値の低いものが高いものに比べて秀れた抗菌性を示した.キラリティを有する新規な界面活性剤を研究する目的で以下の一般式で表わされるアミノ酸型(【I】),アミノスルホン酸型両性界面活性剤(【II】)を合成疎水基や親水基の相違とあわせて比較,検討した。またベタイン型両性界面活性剤(【III】)を合成し、不斉炭素と不斉窒素に基づくジアステレオマーを分割し、細菌真菌に対する抗菌性について検討を試みた。その結果、アミノ酸型(【I】)およびアミノスルホン酸型(【II】)界面活性剤においてその水溶液の表面張力低下能はアルキル鎖長および分子内の2つの親水基間のメチレン数による差は認められ、アルキル鎖が長い程、親水基間のメチレン数が少ない程、臨界ミセル濃度(cmc)は低下した。一方、平衡表面張力値(γcmc)あるいはcmcのキラリティによる明確な差異は認められなかった。抗菌性に注目した場合、本実験における両性界面活性剤は細菌のうちグラム陽性菌、および真菌に対して抗菌性を示し、長鎖アルキル基としてドデシル同族体の方が秀れた抗菌性を示した。また2つの不斉中心を持つベタイン型両性界面活性剤ではその抗菌性においてエナンチオマー間では明確な差は認められなかったがジアステレオマー間ではS.cerevisiae,T.interdigitalの様な真菌に対して差異が認められた。今後の研究の展開として【R_1】【R_2】【R_3】-【N^+】-(【CH_2】)-【N^+】-【R_1】【R2_】【R_3】なる一般式を持つ2つの不斉窒素を持つ活性剤を合成してそのメソ体を考慮した光学活性の影響について検討する予定である。
KAKENHI-PROJECT-61550625
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測定試薬と反応する異常免疫グロブリンの構造解析および反応メカニズムの解明
臨床検査では,血中の異常蛋白質(特に免疫グロブリン)と測定試薬が反応し,病態を反映しない異常値を呈することが少なくない。今回, 2例の異常検体を解析した結果, 1例は免疫グロブリンのIgG分子のγ鎖が寒天成分の硫酸基とイオン結合を起こしたためであることが判明した。もう1例は,免疫グロブリンのIgM分子のμ鎖がビリルビン測定試薬成分の界面活性剤であるSDSと直鎖アルキル基で疎水結合を起こしたためであることが明らかとなった。臨床検査では,血中の異常蛋白質(特に免疫グロブリン)と測定試薬が反応し,病態を反映しない異常値を呈することが少なくない。今回, 2例の異常検体を解析した結果, 1例は免疫グロブリンのIgG分子のγ鎖が寒天成分の硫酸基とイオン結合を起こしたためであることが判明した。もう1例は,免疫グロブリンのIgM分子のμ鎖がビリルビン測定試薬成分の界面活性剤であるSDSと直鎖アルキル基で疎水結合を起こしたためであることが明らかとなった。本研究では,測定試薬との反応に起因する異常反応を示す2例の異常免疫グロブリンについて,どのような反応機序で測定系に影響を及ぼしているのか解明することを目的とする。平成21年度は寒天成分と反応するmonoclonal IgG1について3つの実施計画をたて解析を行った。まず,(1) monoclonal IgG1と寒天成分の硫酸基との反応性が示唆されたことから,患者monoclonal IgG1を精製し,アガロースに硫酸基を持つ多糖類(ヘパリン、コンドロイチン6硫酸)を加えた場合でも,寒天と同様,monoclonal IgG1の移動度に影響を与えるか否か実験を行った。その結果,陽極側に移動度をもつ多糖類の濃度が高くなるほどmonoclonal IgG1のバンドは陽極側に大きく移動することが観察され硫酸基との反応性が確認された。次に,(2) monoclonal IgG1の硫酸基結合部位を確認するため、パパイン処理によりmonoclonal IgGlをγFabとγFcに分解し、どちらに硫酸基との結合性があるのかを確認した。すなわち,コンドロイチン6-硫酸を含有させたアガロース電気泳動によりγFabおよびγFcの移動度の変化を観察した。その結果、γFcバンドの移動度にほとんど変化を認めなかったが,γFabバンドでは,コンドロイチン6硫酸濃度の増加ともに陽極側に大きくシフトし、monoclonal IgG1の硫酸基結合部位はγFab部であることが確認された。さらに、(3)患者monoclonalIgG1を構成するγ鎖とκ鎖のどちらに硫酸基との結合性があるのかを確認するため,還元アルキル化後、γ1鎖とκ鎖に分別し,同様にコンドロイチン6-硫酸含有アガロース電気泳動によりそれぞれのバンドの移動度の変化を観察した。その結果,γ1鎖のみが陽極側にシフトすることが確認され,患者monoclonal IgG1と硫酸基との結合は,γFab部のH鎖のみであることから,抗原抗体反応による結合ではない可能性が強く示唆された。本研究では,測定試薬との反応に起因する異常反応を示す2例の異常免疫グロブリンについて,どのような反応機序で測定系に影響を及ぼしているのか解明することを目的とする。平成22年度は3つの実施計画をたて解析を行った。まず,(1)寒天成分の硫酸基と反応するmonoclonal IgG1の分子性状を明らかにするため二次元電気泳動を行った。その結果,分子を構成するγ1鎖はpI9.4,分子質量54kDa,κ鎖はpI5.3,分子質量26kDaのスポットとして観察され,κ鎖は等電点,分子質量とも正常κ鎖と相違がみられなかった。しかし,γ1鎖は正常γ1鎖とほぼ同じ分子質量であるにも関わらず,等電点はかなり塩基性に傾いていることが確認された。次に,(2)電気泳動で誤判定につながる寒天成分との非特異反応を阻止するため,monoclonal IgG1と硫酸基との結合解離実験を行った。monoclonal IgGlと硫酸基の結合はイオン結合である可能性が考えられることから,緩衝液中のNaCl濃度を段階的に調製し電気泳動により結合解離の有無を確認した。その結果,NaCl濃度5mM/LまではMバンドを観察することができなかったが,8mM/L以上でmonoclonal IgG1は明瞭な単一バンドとして確認されることが判明した。次に,(3)は研究対象のもう1例,酵素法による総ビリルビン値がマイナス(-0.67mg/dl)で直接ビリルビン値(0.13mg/dl)よりも低値を示す原発性マクログロブリン血症例である。測定試薬との反応性を確認したところ,患者血清に第1試薬(0.2%SDS,および0.2%コール酸ナトリウムを含むリン酸緩衝液)を添加した場合にのみ白濁現象を認め,免疫電気泳動によりその異常蛋白質はmonoclonal IgMであることが確認された。そこで,monoclonal IgMを精製し,個々の試薬成分について添加実験を行った。その結果,0.2%SDSのみにて白濁沈殿物の形成を認めたことから,monoclonal IgMと反応する試薬成分はSDSであることが確認された。本研究では,測定試薬との反応に起因する異常反応を示す2例の異常免疫グロブリンについて,どのような反応機序で測定系に影響を及ぼしているのか解明することを目的とする。
KAKENHI-PROJECT-21590620
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21590620
測定試薬と反応する異常免疫グロブリンの構造解析および反応メカニズムの解明
平成23年度は4つの実施計画をたて解析を行った。まず,(1)患者monoclonal IgMと反応するのはビリルビン測定試薬成分のSDSであることが確認されたことから,SDSと化学構造が類似するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム,ベンゼンスルホン酸ナトリウム,およびメタンスルホン酸ナトリウムについてもその反応性実験を行った。その結果,ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムとのみ反応することが確認され,患者monoclonal IgMと反応するのは疎水性を示す直鎖アルキル基であることが示唆された。次に,(2)異常反応回避におけるカオトロープの有用性について検討を行った。過塩素酸イオン(ClO_4^-)およびヨウ化物イオン(I^-)は,カオトロピック効果が強力で,かつ蛋白質への変性作用が比較的小さいことから,この2種類のカオトロープを0.2%SDS溶液に添加し実験を行った。その結果,これまでにみられた白色沈殿物は形成されず異常反応を抑制する作用を有することが確認された。次に,(3)二次元電気泳動法により患者monoclonal IgMの分子性状解析を行った。その結果,L鎖(λ鎖)と考えられるpI8.2、27.9kDaのspotの他に、H鎖(μ鎖)と思われるpI4.55.2の分離ゲル最上端部に泳動されずに残った蛋白質が認められ、SDSとの反応性を有するのは、患者monoclonal IgM分子中のμ鎖である可能性が示唆された。次に,(4)この例では原因不明の溶血性貧血が認められたことから,洗浄した正常ヒト赤血球膜をPVDF膜に電気転写し,膜上で患者monoclonal IgMと反応させ,洗浄後,POD標識抗IgM抗体により赤血球膜蛋白成分との反応性を確認した。しかしながら,いずれの蛋白質バンドとも反応姓を示さなかった。
KAKENHI-PROJECT-21590620
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乳児期の慢性的ストレスにより影響を受けた脳腸相関への迷走神経刺激による効果の解析
心身症は、心理・社会的要因により器質的病変または機能的障害を認める病態であり、自律神経系が大きく関与することが知られている。しかし、心身症に対する治療法としては非薬物療法や薬物療法、心理療法などの治療法が確立されつつあるが、根本的治療法の確立には至っていない。そこで、本研究では乳幼児期に慢性的ストレスを与え心身症様病態モデルを作成し、心身症における中枢神経系及び末梢組織と自律神経系との関係性を明らかにする。さらに、迷走神経刺激法を用いた自律神経系への直接介入による新たな治療法の確立を目指す。心身症は、心理・社会的要因により器質的病変または機能的障害を認める病態であり、自律神経系が大きく関与することが知られている。しかし、心身症に対する治療法としては非薬物療法や薬物療法、心理療法などの治療法が確立されつつあるが、根本的治療法の確立には至っていない。そこで、本研究では乳幼児期に慢性的ストレスを与え心身症様病態モデルを作成し、心身症における中枢神経系及び末梢組織と自律神経系との関係性を明らかにする。さらに、迷走神経刺激法を用いた自律神経系への直接介入による新たな治療法の確立を目指す。
KAKENHI-PROJECT-19K17349
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初等教育段階における「哲学」カリキュラムの開発・実践と思考力育成からみた効果
19年度は,兵庫県加東市の小学校で低学年児童を対象として絵本の「読み聞かせ」活動を取り入れた日本版の「哲学」授業を実践した。これは,これまでIAPCで開発されたテキストを用いてきたが,低学年児童を対象するには討論の題材が身近であること,さらには,低学年児童の読解力の発達を考慮にいれたことによる.また,これまで「総合的な学習の時間」を活用して「哲学」授業をおこなってきたが,今年度は子どもたちにもっと哲学的討論を身近なものとするため,学校のカリキュラムに縛られることのない放課後の学童保育の時間を活用することも考えてみた.これにより教室という物理的,心理的な条件に縛られることなく子どもたちは自由に哲学的討論を楽しむことができた.さらに,兵庫教育大学附属中学校においても選択科目の時間を活用し日本版の「哲学」カリキュラムを開発して授業実践した。これはイギリスのNEWSWISEを手がかりにニュースを教材としたP4Cの手法を参考としつつ,討論テーマを生徒の身のまわりの出来事から取り上げた実践研究である.この実践ではより哲学的な要素を含んで討論が展開されるようにカリキュラムを設定した.また,17年度に収集した韓国の資料をもとに思考力育成を図るための副読本「お母さんとともに創る日記」を完成させた。これらの基礎データによって日本においても「哲学」授業が可能であり,児童・生徒の思考力の育成につながっていくことを明らかにした。子どもたちに「思考」する力を身につけさせるために,特に初等教育段階に適応できる「哲学」カリキュラムの開発をめざし,17年度は以下のような計画で研究を進めてきた。2.さらに、アジアの中でいち早く「子どものための哲学」を導入している韓国の実情を調査し,上記したテキスト,教師マニュアルの韓国版を入手した。これらをアジア型の取り組みの範例とするとともに、現在,日本語化したものと比較検討している。また,韓国独自に開発された教材と実践授業を映像録画した。これについても現在,分析中である。3.加えて台湾,シンガポールとも連絡をとって,情報の交換を行った。18年度はこれらの国とも連携した実践者用のワークショップを計画中である。4.日本語化したテキストのうちHarry,及び独自開発した「哲学」授業を本学の附属中学校2年生を対象に約半年間試行しデータを収集した。また,18年度に実践予定のパイロット校において17年度においても先行的に授業実践を行ってデータを収集した。平成18年度においては以下の計画で研究を進めた.1)18年度は,前年度に開発した「哲学」カリキュラムの中から「Harry Stottlemeier's Discovery:哲学的探究(56年)」を用いて,5年生を対象に「哲学」授業を実践した.授業実践に際して各児童の発話をICレコーダーを持たせ記録した.実践授業の全体像はDVDビデオに保存した.また,低学年児童を対象に「絵本の読み聞かせ」による「子どものための哲学」活動を行い,同様な手法でデータを収集した.現在,これらのデータをもとにプロトコル分析を行い,児童の思考力への効果を分析している.2)また、前年度、入手した韓国版の「子どものための哲学」テキストを分析し、日本版のものと比較検討してアジア型の範例を作成した.加えて、韓国オリジナルのテキストの翻訳を完了した.現在,これを分析するとともに日本版オリジナルを作成している.3)前年度、韓国の研究者と協議する中で提案されたアジア地域の「子どものための哲学」ネットワーク作りをさらに具体化させ進めている.今年度はこの研究者に日本での取り組みを紹介するとともに日本語版「子どものための哲学」活動に対する助言を受けた.また、韓国の「子どものための哲学」授業実践者と今後の活動について協議した.4)本学の附属中学校2年生を対象に独自開発した「哲学」授業については、前年度の実践の分析結果をふまえ、さらに改良を加え、中等教育段階のカリキュラム開発の基礎資料とした.また,韓国の研究者によるモデル授業を行い,現在,この分析を行っている.19年度は,兵庫県加東市の小学校で低学年児童を対象として絵本の「読み聞かせ」活動を取り入れた日本版の「哲学」授業を実践した。これは,これまでIAPCで開発されたテキストを用いてきたが,低学年児童を対象するには討論の題材が身近であること,さらには,低学年児童の読解力の発達を考慮にいれたことによる.また,これまで「総合的な学習の時間」を活用して「哲学」授業をおこなってきたが,今年度は子どもたちにもっと哲学的討論を身近なものとするため,学校のカリキュラムに縛られることのない放課後の学童保育の時間を活用することも考えてみた.これにより教室という物理的,心理的な条件に縛られることなく子どもたちは自由に哲学的討論を楽しむことができた.さらに,兵庫教育大学附属中学校においても選択科目の時間を活用し日本版の「哲学」カリキュラムを開発して授業実践した。これはイギリスのNEWSWISEを手がかりにニュースを教材としたP4Cの手法を参考としつつ,討論テーマを生徒の身のまわりの出来事から取り上げた実践研究である.この実践ではより哲学的な要素を含んで討論が展開されるようにカリキュラムを設定した.また,17年度に収集した韓国の資料をもとに思考力育成を図るための副読本「お母さんとともに創る日記」を完成させた。これらの基礎データによって日本においても「哲学」授業が可能であり,児童・生徒の思考力の育成につながっていくことを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-17653118
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テンサイ細胞質雄性不稔性における翻訳後制御過程の研究
本年度は、テンサイ細胞質雄性不稔性(CMS)の翻訳後制御に関する課題のうち、稔性回復遺伝子Rf1の複対立性を利用した解析と分子進化学的な解析を行った。1多様なRf1対立遺伝子の機能解析分子構造および作用力の異なる優性Rf1を特徴づけたところ、Rf1の作用力は、CMS関連ミトコンドリア遺伝子preSatp6と翻訳後相互作用する遺伝子コピーのmRNAと正に相関した。さらに、CMS株固有に見られるpreSATP6ホモオリゴマーはRf1保持株において減少し、その減少量は相互作用コピーのmRNAと正に相関した。一方で構造の異なる劣性rf1を調査すると、コードされるコピーはpreSatp6と相互作用しなかった。これらの事実に基づき、相互作用コピーの有無により稔性回復アレルを判別するDNAマーカーの開発に成功した。2Rf1の分子進化学的解析系統解析及びシンテニー解析を行ったところ、Rf1は属レベルの系統特異的な重複によって生じたことが示唆された。次に、Oma1オーソログとRf1の機能を比較した。形質転換カルスを用いた調査によれば、テンサイ及びシロイヌナズナOma1オーソログはいずれもpreSATP6とは相互作用しない。発現解析を行うと、Oma1オーソログは全身で発現するが、Rf1は雄性器官特異的に発現していた。未成熟葯におけるmRNAの発現動態を調べたところ、シロイヌナズナOma1の発現パターンに対し、テンサイではOma1オーソログとRf1が相補的に発現していた。これらのことから、Rf1の進化に遺伝子重複と機能分化が関わること、およびパラログであるRf1は花粉形成過程においてオーソログの機能を相補していると考えられた。したがって、Rf1が稔性回復以外の機能を保持する可能性が示唆された。今後、Rf1進化に核ー細胞質の共進化や中立的な側面がどのように関与したか明らかにする必要がある。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。テンサイ細胞質雄性不稔性(CMS)に対する花粉稔性回復遺伝子Rf1は、CMSミトコンドリアに固有なタンパク質preSATP6に対して翻訳後制御を行っている。すなわち、RF1タンパク質はpreSATP6と結合することで複合体構造を変化させ、稔性回復株特異的なRF1-preSATP6複合体を形成する。初年度は、翻訳後制御過程のメカニズムと進化に関する知見を得るべく、以下の実験を行った。1、多様なRf1対立遺伝子を導入した形質転換培養細胞の作製と解析:Rf1対立遺伝子について各々形質転換培養細胞を作製し、タンパク質複合体の解析を行った。rf1グループの対立遺伝子ではpreSATP6との相互作用能が失われていた。また、Rf1グループはpreSATP6と相互作用能が検出され、そのコピーの発現量およびpreSATP6複合体の蓄積量と、花粉稔性との相関が示唆された。2、Rf1高発現培養細胞で現れるタンパク質複合体の単離と分析:CMSミトコンドリアにみられるpreSATP6複合体を二次元電気泳動によって分離したところ、preSATP6以外のタンパク質は検出されなかった。また、Rf1導入細胞からRf1と結合するタンパク質を免疫沈降法によって回収したところ、Rf1およびpreSATP6以外に幾つかのタンパク質が検出された。3、培養細胞におけるミトコンドリア機能調査:正常とCMS培養細胞について、ミトコンドリア内膜の膜電位を指標にすることでミトコンドリア機能を比較したところ、有意な差が検出された。4、Rf1による翻訳後制御の進化:相同性検索や系統解析の結果、Rf1は最近になって祖先遺伝子から重複してできたコピーであることが示唆された。機能解析の結果、祖先遺伝子が重複した後、preSATP6との相互作用能の獲得と発現パターンの変化が起こり、Rf1による翻訳後制御が成立した可能性が示唆された。本年度は、稔性回復遺伝子の翻訳後制御に関する解析を進め、交配材料や培養細胞を用いた実験を行った。研究進捗は順調であり、preSATP6複合体に関する分子生物学的、遺伝学的および生化学的データを得ることができた。これらのデータには研究開始当初に予想していなかったものも含まれる。すなわち、それらはRf1のpreSATP6複合体蓄積量への量的効果や、Rf1とその祖先遺伝子の発現パターンの違いに関するデータであり、興味深い進展があった。したがって、次年度以降の発展が大いに期待できる。細胞質雄性不稔性(CMS)はミトコンドリア変異によって雄性不稔が引き起こされる。その作用は核ゲノムにある稔性回復遺伝子Rfによって抑制されるため、CMSの発現には核ーミトコンドリアの相互作用が関わる。テンサイCMSにおいてこの相互作用に翻訳後制御が関わることが明らかにされた。テンサイRf1はCMS固有タンパク質preSATP6に結合し、preSATP6ホモオリゴマー形成を阻害する。本研究では、この翻訳後制御について以下の3つの課題を設定し、調査を行った。1多様なRf1対立遺伝子の機能解析:テンサイRf1は複雑な複対立遺伝子である。本年度は、異なる作用力をもつ二つの優性Rf1について分子的に特徴づけた。
KAKENHI-PROJECT-16J01146
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テンサイ細胞質雄性不稔性における翻訳後制御過程の研究
形質転換培養細胞および未成熟を用いた解析によって、preSATP6と相互作用するコピーの花粉形成初期における発現量が稔性回復力と正の相関を示すこと、および、preSATP6ホモオリゴマーの蓄積量が稔性回復力と負の相関を示すことが明らかとなった。この成果の一部は学術雑誌に投稿中である。さらに、稔性回復の程度にしたがって、葯形態も異なる可能性が示唆された.2Rf1による翻訳後制御の進化過程: Rf1の進化にはOMA1相同遺伝子の遺伝子重複と機能分化が関わることが分かった。興味深いことに、テンサイ未熟葯においてRf1とOMA1が相補的な発現パターンを示す。したがって、Rf1はOMA1の機能を部分的に代替している可能性が示唆された。3培養細胞におけるミトコンドリア機能調査: CMSミトコンドリアにおいて膜電位が低下することとpreSATP6ホモオリゴマー形成が関わるかどうかRf1導入培養細胞を用いて調査した。Rf1導入細胞はrf1導入細胞と比較して、膜電位は正常に近づく傾向が見られたが、有意な差は検出されなかった。今後はこれについて詳細な検討が必要である。3つの課題を予定通りに進めることができた。特に、Rf1の量的効果の分子機構に葯内部構造の形態が関わることは当初の計画にはない、新たな発見であった。次年度の計画も明確である。本年度は、テンサイ細胞質雄性不稔性(CMS)の翻訳後制御に関する課題のうち、稔性回復遺伝子Rf1の複対立性を利用した解析と分子進化学的な解析を行った。1多様なRf1対立遺伝子の機能解析分子構造および作用力の異なる優性Rf1を特徴づけたところ、Rf1の作用力は、CMS関連ミトコンドリア遺伝子preSatp6と翻訳後相互作用する遺伝子コピーのmRNAと正に相関した。さらに、CMS株固有に見られるpreSATP6ホモオリゴマーはRf1保持株において減少し、その減少量は相互作用コピーのmRNAと正に相関した。一方で構造の異なる劣性rf1を調査すると、コードされるコピーはpreSatp6と相互作用しなかった。これらの事実に基づき、相互作用コピーの有無により稔性回復アレルを判別するDNAマーカーの開発に成功した。2Rf1の分子進化学的解析系統解析及びシンテニー解析を行ったところ、Rf1は属レベルの系統特異的な重複によって生じたことが示唆された。次に、Oma1オーソログとRf1の機能を比較した。形質転換カルスを用いた調査によれば、テンサイ及びシロイヌナズナOma1オーソログはいずれもpreSATP6とは相互作用しない。発現解析を行うと、Oma1オーソログは全身で発現するが、Rf1は雄性器官特異的に発現していた。未成熟葯におけるmRNAの発現動態を調べたところ、シロイヌナズナOma1の発現パターンに対し、テンサイではOma1オーソログとRf1が相補的に発現していた。これらのことから、Rf1の進化に遺伝子重複と機能分化が関わること、およびパラログであるRf1は花粉形成過程においてオーソログの機能を相補していると考えられた。したがって、Rf1が稔性回復以外の機能を保持する可能性が示唆された。今後、Rf1進化に核ー細胞質の共進化や中立的な側面がどのように関与したか明らかにする必要がある。今年度に得られた研究成果を踏まえて、今後の研究方策を課題ごとに示す。
KAKENHI-PROJECT-16J01146
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J01146
視覚的対象認知における形態的処理の効果と意味表象構造の分析
9年度は対象のカテゴリー分類への形態的類似性の促進と妨害の効果を中心に研究を行った。Snodgrassらの画像を用い,後行呈示の絵の形態的特徴の量(完全・不完全)と質(先行呈示項目との形態的特徴の類似性高・低)がカテゴリー分類時間に及ぼす効果を,対応する単語の分類時間と比較した。実験はすべて被験者内要因で行い,被験者は先行呈示の絵に対して後行の絵,先行呈示の単語に対して後行の単語が,同一のカテゴリーに属するかどうかの判断をはい-いいえで行った。その結果,同判断・異判断共に,形態的特徴の量の主効果が認められ,完全な絵が不完全な絵よりも反応が速かった。形態的特徴の類似性の主効果については,同判断では認められず,類似性高・低条件間で差はなかった。しかし,異判断では,類似性の低い絵は類似性の高い絵より反応が速いという結果となった。単語では同・異判断とも条件による差は見られなかった。これらの結果は,形態的特徴の量と類似性(質)がカテゴリー分類という意味処理に影響を及ぼすことを示している。但し,類似性は,異なるカテゴリーであるという判断にのみ手がかりとして用いられていた。カテゴリー判断は,同じカテゴリーであるという判断傾向を持っており,形態が類似していない場合に異判断を行うという処理の流れが示唆される。対象判断を行うためには,同一対象の複数線画を用意する必要がある。9年度では,一つの対象に対して複数の線画の作成まで行うことができた。線画の選択・決定,実験について準備中である。また,線画の意味表象構造についての調査を実施し,眼球運動による形態的特徴の役割を探るため,予備実験を行った。9年度は対象のカテゴリー分類への形態的類似性の促進と妨害の効果を中心に研究を行った。Snodgrassらの画像を用い,後行呈示の絵の形態的特徴の量(完全・不完全)と質(先行呈示項目との形態的特徴の類似性高・低)がカテゴリー分類時間に及ぼす効果を,対応する単語の分類時間と比較した。実験はすべて被験者内要因で行い,被験者は先行呈示の絵に対して後行の絵,先行呈示の単語に対して後行の単語が,同一のカテゴリーに属するかどうかの判断をはい-いいえで行った。その結果,同判断・異判断共に,形態的特徴の量の主効果が認められ,完全な絵が不完全な絵よりも反応が速かった。形態的特徴の類似性の主効果については,同判断では認められず,類似性高・低条件間で差はなかった。しかし,異判断では,類似性の低い絵は類似性の高い絵より反応が速いという結果となった。単語では同・異判断とも条件による差は見られなかった。これらの結果は,形態的特徴の量と類似性(質)がカテゴリー分類という意味処理に影響を及ぼすことを示している。但し,類似性は,異なるカテゴリーであるという判断にのみ手がかりとして用いられていた。カテゴリー判断は,同じカテゴリーであるという判断傾向を持っており,形態が類似していない場合に異判断を行うという処理の流れが示唆される。対象判断を行うためには,同一対象の複数線画を用意する必要がある。9年度では,一つの対象に対して複数の線画の作成まで行うことができた。線画の選択・決定,実験について準備中である。また,線画の意味表象構造についての調査を実施し,眼球運動による形態的特徴の役割を探るため,予備実験を行った。
KAKENHI-PROJECT-09610081
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09610081
シロイヌナズナのユビキノン生合成経路解明とその生合成変異体の解析
1.ユビキノン欠失植物の解析前年度AtPPT1遺伝子欠損株の分離比から、本遺伝子が植物の胚発生に必須であることが示唆された。そこで本年度は、既に単離してあったatppt1変異株の解析を進めた。すなわちこの変異株のヘテロ欠損体にさらにもう1分子AtPPT1遣伝子を導入することで、内在性のAtPPT1遺伝子をホモ欠損している個体が得られるかどうかを検討した。この際、遺伝子導入にはグルココルチコイドの一種であるデキサメタゾン(DEX)により誘導可能なベクターを用いて、DEX存在下での分離比の変化を調べた。その結果、次世代でのこの致死的な表現型が相補された場合の分離比である、薬剤耐性:薬剤感受性=3:1に近い個体を得ることができた。現在これら個々の個体を用いたPCRによる、ホモ個体の確認を進めると共に、DEXを除去した場合に見られると考えられる、成長途中の植物体に対するAtPPT1遺伝子の役割について検討していく。2.AtPPT1遺伝子高発現植物の解析上記1でも利用したAtPPT1遣伝子の高発現用コンストラクトを用いて、野生株ws株を形質転換し、AtPPT1遺伝子高発現植物を作成した。その結果、DEX濃度依存的にAtPPT1遺伝子の転写レベルが増加する高発現体植物を得た。これらの個体はDEX依存的に成長の著しい阻害を示すが、その原因がDEXベクターによるものなのか、AtPPT1遺伝子の高発現によるものなのかについて、現在のところ明らかではない。一方、高発現体において、原核生物同様にユビキノン合成量の増加が見られるかを確かめるために、内生ユビキノン量の定量を行った。その結果、高発現体ではユビキノン含量がむしろ減少する傾向が見られた。このことから、高発現体の成育阻害がユビキノン含量の低下による可能性もでてきた。これらの実験結果をもとに、高等植物においてもユビキノンは発生段階で重要な機能を果たしており、またその生合成は単一酵素の高発現のみでは影響されない制御が存在することを示す論文の作成を現在進めている。1.ユビキノン欠失植物の解析本年度は、既に単離してあったT-DNA挿入破壊株である、Atppt1変異株の解析を進めた。この遺伝子座にはUQ合成において側鎖イソプレノイドをキノン骨格に転移するために必要なCOQ2遺伝子オーソログ(AtPPT1遺伝子)が存在しているが、これまでにそのホモ個体は単離できていない。そこで、ヘテロ個体の鞘の詳細な観察を行った。その結果、鞘中の約25%の種子が未発達であり、AtPPT1遺伝子が授粉後の胚発生に必要であることが示唆された。また、次世代でのカナマイシン耐性:感受性の分離比が約2:1となることからも、ホモ個体は致死となる、すなわちAtPPT1遺伝子が植物の胚発生に必須であることが示唆された。変異株にAtPPT1遺伝子をさらに導入することで、次世代でのこの致死的な表現型が相補されるかどうかを現在検討中である。2.シロイヌナズナからのユビキノン合成に関わる遺伝子群の単離と機能解析本年度は、交付申告書にある未報告の遺伝子単離に先立って、cDNAが既に単離できているAtPPT1遺伝子にコードされるタンパク質の細胞内局在性を観察した。AtPPT1タンパク質のN末端シグナル配列部分をGFPに融合し、CaMV35Sプロモーターにより植物体で発現させた。その結果、AtPPT1タンパク質は観察した全ての組織(根、茎、ロゼット葉、花)においてミトコンドリアに移行していることが明らかとなった。3.AtPPT1遺伝子高発現植物の解析上記1で作成したAtPPT1遺伝子の高発現用コンストラクトを用いて、野生株ws株を形質転換し、AtPPT1遺伝子高発現植物を作成した。現在はホモ個体を単離しているところであり、来年度は形質転換体のUQ含量の測定と、抗酸化ストレスへの影響等、生理学的実験に進む予定である。1.ユビキノン欠失植物の解析前年度AtPPT1遺伝子欠損株の分離比から、本遺伝子が植物の胚発生に必須であることが示唆された。そこで本年度は、既に単離してあったatppt1変異株の解析を進めた。すなわちこの変異株のヘテロ欠損体にさらにもう1分子AtPPT1遣伝子を導入することで、内在性のAtPPT1遺伝子をホモ欠損している個体が得られるかどうかを検討した。この際、遺伝子導入にはグルココルチコイドの一種であるデキサメタゾン(DEX)により誘導可能なベクターを用いて、DEX存在下での分離比の変化を調べた。その結果、次世代でのこの致死的な表現型が相補された場合の分離比である、薬剤耐性:薬剤感受性=3:1に近い個体を得ることができた。現在これら個々の個体を用いたPCRによる、ホモ個体の確認を進めると共に、DEXを除去した場合に見られると考えられる、成長途中の植物体に対するAtPPT1遺伝子の役割について検討していく。2.AtPPT1遺伝子高発現植物の解析上記1でも利用したAtPPT1遣伝子の高発現用コンストラクトを用いて、野生株ws株を形質転換し、AtPPT1遺伝子高発現植物を作成した。その結果、DEX濃度依存的にAtPPT1遺伝子の転写レベルが増加する高発現体植物を得た。
KAKENHI-PROJECT-13760060
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13760060
シロイヌナズナのユビキノン生合成経路解明とその生合成変異体の解析
これらの個体はDEX依存的に成長の著しい阻害を示すが、その原因がDEXベクターによるものなのか、AtPPT1遺伝子の高発現によるものなのかについて、現在のところ明らかではない。一方、高発現体において、原核生物同様にユビキノン合成量の増加が見られるかを確かめるために、内生ユビキノン量の定量を行った。その結果、高発現体ではユビキノン含量がむしろ減少する傾向が見られた。このことから、高発現体の成育阻害がユビキノン含量の低下による可能性もでてきた。これらの実験結果をもとに、高等植物においてもユビキノンは発生段階で重要な機能を果たしており、またその生合成は単一酵素の高発現のみでは影響されない制御が存在することを示す論文の作成を現在進めている。
KAKENHI-PROJECT-13760060
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13760060
生徒間で科学的議論を生み出す新しい理科実験連携授業システムの開発
次世代の科学教育に欠かすことのできない、「科学的な議論や判断を通じて結論にいたる能力」を養うために、データロガーの即時性を活用して生徒間の議論を促す理科実験観察授業システムを開発した。各班の測定画面をVNC画面共有を利用してクラス全体で共有するため、デバイスの更新があってもシステムの基本を変更する必要がなく,将来の機器の更新に柔軟に対応できる.学校教員研修や大学講義での試行では,このシステムを利用することで発言回数が増加し、各班で実験方法を逐次変化させる様子が確認できた。授業への参加意識を高める効果がある。今回開発したシステムを活かす授業展開を確立することがこれからの課題である.システムのプロトタイプを完成。その実施テスト結果について教育工学会で報告。完成させた4班分の連携理科実験観察システムのプロトタイプを使用し、スマートグリッドも意識した電力供給システムの教材を開発した。今年度も小中学校教員研修や免許状更新講習等で教員にこの授業を体験してもらい、高評価を得ている。今年度は、エネルギー変換を学ぶ教材として、ペットボトル容器中の砂を振ることで生じる温度上昇をリアルタイムに測定できるシステムを構築し、小学校教員向け研修会で実践した。リアルタイム共有の効果の高い教材であることが確認された。次世代の科学教育に欠かすことのできない、「科学的な議論や判断を通じて結論にいたる能力」を養うために、データロガーの即時性を活用して生徒間の議論を促す理科実験観察授業システムを開発した。WI-Fi、bluetooth、高輝度プロジェクタ、可搬型PC等を活用して個別の機器を連携させることで実験観察結果のグラフや画像を即時比較し、リアルタイムの生徒間のつながりを活性化し、生徒間の科学的な議論を活性化させることを目指す。本研究では、いくつかの具体的な次世代型理科実験連携授業の実施まで行い、効果を検証する。今年度までに、新OS対応も含め、8班分のシステム構成を完成させ、教員研修や大学生対象の講義で実践を行なった。システムを利用した時の、受講者の発言頻度を変化を測定し、効果を検証した。次世代の科学教育に欠かすことのできない、「科学的な議論や判断を通じて結論にいたる能力」を養うために、データロガーの即時性を活用して生徒間の議論を促す理科実験観察授業システムを開発した。各班の測定画面をVNC画面共有を利用してクラス全体で共有するため、デバイスの更新があってもシステムの基本を変更する必要がなく,将来の機器の更新に柔軟に対応できる.学校教員研修や大学講義での試行では,このシステムを利用することで発言回数が増加し、各班で実験方法を逐次変化させる様子が確認できた。授業への参加意識を高める効果がある。今回開発したシステムを活かす授業展開を確立することがこれからの課題である.次世代の科学教育に欠かすことのできない、「科学的な議論や判断を通じて結論にいたる能力」を養うために、データロガーの即時性を活用して生徒間の議論を促す理科実験観察授業システムを開発した。Wi-Fi、bluetooth、大型高解像度モニタ、可搬型PC等を活用して個別の機器を連携させることで、実験観察結果のグラフや画像を即時比較し、リアルタイムの生徒間のつながりを活性化し、生徒間の科学的な議論を活性化させることを目指す。本研究では、いくつかの具体的な次世代型理科実験連携授業の実施まで行い、効果を検証する。プロトタイプとして、4班分の連携理科実験観察システムの骨格を完成させた。システムの可搬性を考え、高輝度高解像度プロジェクター(EB1925W)を利用した。データロガーは、試験的にSPARK Linkを活用している。ただし、これらは孤立した機器なので、VNC画面共有でセンターPC(教師が操作するPC)とWi-Fi接続し、プロジェクタへ同時投影して、実験データや観察画像やグラフのクラス内での即時同時共有を実現する。教師側から生徒のデバイスを操作できるため、クラス全体のデバイスを迅速にコントロールしやすい。グラフの提示条件等を教師側からも変更できるので、生徒達の議論の内容に合わせて最適な形式でデータを提示しやすい。このシステムを利用した具体的な授業構成として、スマートグリッドも意識した電力供給システムの教材を開発した。発電システムは手回し発電機と光電池、消費システムは豆電球やモーター、蓄電システムは大容量キャパシタを使用し、電力安定度をデータロガーで測定した電圧をリアルタイムのグラフで表示して確認する。小中学校教員研修や免許状更新講習等で教員にこの授業を体験してもらい、高評価を得ている。ICTが苦手な教員でも短時間で簡単にシステムを構成できるように要望もあった。8台の端末で構成する計画のシステムの完成については、ちょうどOSの更新時期と重なったため、導入を遅らせて対応することとした。現在、IOポートとしてUSBを使用できるかどうか、ソフトの対応状況を確認しながら準備を進めている。児童生徒間の相互発言数測定による効果の検証については、8台のシステムが完成した後で実施する。プロトタイプとして、4班分の連携理科実験観察システムの骨格を完成させた。これを利用した授業も効果的で、リアルタイムに変化する各班のグラフを同時共有することで、研修で児童生徒役で使用した教員間の議論が活発になる様子が確認できた。計画通り、24年度にはその効果を定量的に測定する予定である。現在は既存のデータロガーを利用しており、カスタマイズに少し難点がある。安価でカスタマイズしやすい独自のデータロガーシステムやプログラムの開発がまだ途上である。このシステムの使用が適している場面、適していない場面を明確にして、実際の授業での活用方法を確定する。
KAKENHI-PROJECT-23501069
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23501069
生徒間で科学的議論を生み出す新しい理科実験連携授業システムの開発
従来の実験観察授業とは異なるので、実験観察の新しいルールや展開の方法、効果的な機器の活用方法を明確にする必要がある。議論を活性化するために必要な授業展開も含めて、被験者からのフィードバックも利用して確立する。システムを利用したときと利用しないときの児童生徒間の相互発言回数をカウントすることで効果の測定をおこなう。生物単元での観察画像の共有や化学分野でもこのシステムが効果的かどうかも検証する。独自のカスタマイズしやすくかつ安価なデータロガーとプログラムの開発を進める。このシステムの使用が適している場面、適していない場面を明確にして、実際の授業での活用方法を確定する。従来の実験観察授業とは異なるので、実験観察の新しいルールや展開の方法、効果的な機器の活用方法を明確にする必要がある。議論を活性化するために必要な授業展開も含めて、被験者からのフィードバックも利用して確立する。システムを利用したときと利用しないときの児童生徒間の相互発言回数をカウントすることで効果の測定をおこなう。生物単元でのリアルタイムの観察画像の共有にも、このシステムが効果的かどうかも検証する。独自のカスタマイズしやすくかつ安価なデータロガーとプログラムの開発を進める。残りの4班分の構成機器として、新OSおよび機器の中から適したものを選定し、システムを完成させる。具体的な授業例を開発するための費用、成果報告のための旅費などに利用する。現在4班分のプロトタイプを完成させているので、残りの4班分を構成するための機器を購入する。具体的な授業例を開発するための費用、成果報告のための旅費などに利用する。
KAKENHI-PROJECT-23501069
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PFIの会計に関する国際比較研究
EUのPFI会計基準(IFRIC 12)の特徴は「リスク経済価値アプローチ」ではなく「支配アプローチ」を採用している点にある。その結果、民間部門側のPFI関連資産として金融資産と無形資産のいずれが計上されるかで収益認識のあり方は大きく異なる。また官民の適切なリスク分担を反映するという点でも問題が多い。EUではIFRIC 12の承認が難航したが、このことは各国の経済政策遂行におけるPFIの重要性のみならず、その会計処理いかんでPFIに期待される役割が十分に果たされなくなるおそれがあることを示している。EUのPFI会計基準(IFRIC 12)の特徴は「リスク経済価値アプローチ」ではなく「支配アプローチ」を採用している点にある。その結果、民間部門側のPFI関連資産として金融資産と無形資産のいずれが計上されるかで収益認識のあり方は大きく異なる。また官民の適切なリスク分担を反映するという点でも問題が多い。EUではIFRIC 12の承認が難航したが、このことは各国の経済政策遂行におけるPFIの重要性のみならず、その会計処理いかんでPFIに期待される役割が十分に果たされなくなるおそれがあることを示している。本年度は、欧州におけるPFI会計基準を文献研究を通じて検討した。具体的には、Butterworths PFI ManualおよびPPP in EuropeによってEU各国のPFIに関連する制度や法規制などを把握するとともに、国際財務報告基準解釈指針のIFRIC 12を検討し、EUにおけるPFI会計基準の内容とその問題点、および基準設定に関わる諸問題を考察した。なお、今年度はEUにおいてPFI会計基準の設定が重要な進展を見せたため、その検討に注力した結果、当初の実施計画で予定していたオーストラリアにおけるPFI会計基準の研究は行わなかった。研究の結果、以下のことが明らかになった(その研究結果の一部であるIFRIC 12に関する部分を『企業会計』に発表している)。EUの統一基準となることが期待されているIFRIC 12は、PFI取引を会計処理するにあたって、金融資産モデルと無形資産モデルの2つを規定しているが、その最大の特徴は英国基準などとは異なり、「リスク経済価値アプローチ」ではなく「支配アプローチ」を採用している点にある。こうしたアプローチは、既存のIFRSにおける収益認識基準とは整合するものの、官民の適切なリスク分担を反映するという点では問題が多い。また、いずれのモデルを適用するかで期間利益が大きく異なるという問題もある。こうしたことから、EUではIFRIC 12の承認をめぐって加盟国の間で激しい意見対立が生じた。この対立は、各国の経済政策遂行におけるPFIそのものの重要性のみならず、その会計処理の基準いかんでPFIに期待される役割が十分に果たされなくなるおそれがあることを示している。以上のような研究成果は、国内・地域・国際的次元での会計規制の在り方を考える上で重要なインプリケーションを持っている。また、これは国際的な公会計基準の設定とも密接に関連しているため、パブリックセクターのマネジメントの改善とVFMの向上にむけたさらなる研究に貢献できると考えられる。本年度はまず、昨年度に引き続き、欧州におけるPFI会計基準および各国のPFIに関連する制度や法規制について、Public Private Partnership and PFI、Butterworths PFI ManualおよびPPP in Europeなどを用いて研究した。また、国際財務報告基準解釈指針のIFRIC 12のEU域内基準化をめぐる加盟国間の対立をEFRAGおよびARCの議事録をもとに検討し、グローバルな会計規制におけるそのインプリケーションを明らかにした。すなわち、IFRIC 12の承認をめぐるEU内の対立は、「世界政府」なきグローバル社会における規制のあり方の変容、およびグローバル・ガバナンスの-端を担うIASBの役割の増大を示唆しているのである。なお、公的部門側の問題としてはPFI資産・負債のオンバランス問題があるが、2009-10財政年度から英国中央政府機関に適用されるIFRSベースのFReMを題材に、その影響を明らかにした。こうした点に関する研究成果の一部を日本会計研究学会九州部会で報告した。また、IFRIC12における認識・測定に関しては、その特徴として「リスク経済価値アプローチ」ではなく「支配アプローチ」を採用している点が挙げられるが、その結果として民間部門側のPFI関連資産として金融資産が計上されるのか、それとも無形資産が計上されるのかで、収益認識のあり方は大きく異なってくる。この点について、今後予想されるPFI会計基準の改定とも深く関わっていることから、IASBとFASBの共同プロジェクト「収益認識」の進捗状況、特徴と問題点、および両ボードの戦略を検討し、その研究成果の一部を『企業会計』に発表した。以上のような研究成果は、我が国における民間部門のPFI会計基準の設定や、公的部門のマネジメントの改善とVFMの向上にむけたさらなる研究に貢献できると考えられる。また、それだけでなく、近年ますます現実味を帯びてきている国際会計基準のアドプションがもたらす影響を検討する上でも、重要な示唆を与えていると言える。
KAKENHI-PROJECT-19530408
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19530408
単色X線ビームの光電効果を利用する新規制癌法の開発
がん患者は増加の一途を辿っており、がん根絶に向け、精密な診断や治療のための技術基盤を早急に強化する必要がある。そこで本研究では、金ナノ粒子のがん細胞標的化を達成するために、リン脂質被覆金ナノ粒子の作製、並びにPETトレーサー化について検討を行った。以上の結果、金ナノ粒子の表面におけるリン脂質の種類に依存して、金ナノ粒子のがん細胞への取込み量や金ナノ粒子の体内動態が変化することが初めて明らかとなった。これらの知見は、金ナノ粒子を用いた放射線によるがん治療効果を高める上で極めて重要であると考えられる。本年度は、金ナノ粒子の癌細胞標的化を達成するために、リン脂質被覆金ナノ粒子の作製並びにPETトレーサー化について検討を行った。具体的には、4種類(ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸)のリン脂質被覆金ナノ粒子の作製法を確立した。また、放射線同位体(64銅)を用い、これらのリン脂質被覆金ナノ粒子のPETトレーサー化技術を構築した。他方、ラットグリオーマ細胞におけるリン脂質被覆金ナノ粒子の取り込み量を解析した。さらに、リン脂質被覆金ナノ粒子をマウス尾静脈により投与し、PETイメージング装置を用い体内動態を評価した。以上の結果から、リン脂質の種類によって、細胞内への取り込み量や各臓器における集積率が異なることが明らかとなった。今後、グリオーマを皮下に移植したマウスを用いリン脂質被覆金ナノ粒子を腫瘍へ集積させ、金ナノ粒子表面における光電効果から、グリオーマの増殖抑制効果を検討する。本年度は、医薬品として既に販売されている肺人工サーファクタントを用いてナノ粒子を生理食塩水に凝集せずに分散させる技術を開発した。次に、理化学研究所に設置されている自己遮蔽型PET用小型サイクロトロンを用いて、ニッケルから放射線核種である64銅を合成し、脂質被覆ナノ粒子のスポンジ効果を利用して、64銅イオンを脂質被覆ナノ粒子に吸着させ、PETトレーサー化を行なった。標識された脂質被覆ナノ粒子をマウス微静脈から投与し、ガンマカウンターを用いて、24時間後の脂質被覆ナノ粒子の臓器ごとの集積率を解析し体内動態評価を行なった。その結果、脂質被覆ナノ粒子は、肝臓、腎臓、肺、腸等に効率的に集積することが認められた。がん患者は増加の一途を辿っており、がん根絶に向け、精密な診断や治療のための技術基盤を早急に強化する必要がある。そこで本研究では、金ナノ粒子のがん細胞標的化を達成するために、リン脂質被覆金ナノ粒子の作製、並びにPETトレーサー化について検討を行った。以上の結果、金ナノ粒子の表面におけるリン脂質の種類に依存して、金ナノ粒子のがん細胞への取込み量や金ナノ粒子の体内動態が変化することが初めて明らかとなった。これらの知見は、金ナノ粒子を用いた放射線によるがん治療効果を高める上で極めて重要であると考えられる。当初の計画の通り、リン脂質被覆金ナノ粒子を作製し、PETトレーサー化を達成した。さらに、がん細胞に集積させることができている。医学物理学光電効果による癌治療評価では、単色X線ビームの照射システムを構築した上で、単色X線ビームのエネルギー値とドーズ量を変化させ、金ナノ粒子表面における光電効果から癌細胞の増殖抑制効果を検討する。試薬購入にあたり、業者のキャンペーン等により4374円の次年度使用額が生じた。試薬を購入する予定である。
KAKENHI-PROJECT-26860392
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26860392
食道における組織修復機転を利用した異型細胞の制御と制癌効果への応用
癌の水平方向の伸展形式を明らかにするために、4例の表層拡大型食道癌症例において内視鏡下に癌口側端と正常部を含め約2×2cmにわたりArgon Plasma Coagulation (APC)にて60W、2.0L/分、1秒間で焼灼した。1週間後、食道亜全摘術を行いホルマリン固定1日後、臨床病理組織学的検査および増殖活性をKi67、悪性度をp53、Sonic hedgehog (shh)にて免疫染色を行った。症例14の深達度/分化度/pN/ly/v/多発はそれぞれsm2/por/3/1/あり、sm2/por/2/1/なし、sm2/mod/0/1/なし、mp/mod/2/1/あり、sm3/mod/0/0/0/なしで口側は粘膜癌であった。APC焼灼部は粘膜固有層浅層までが脱落または壊死し再生上皮は認められなかった。また粘膜固有層内の癌導管内伸展部は焼け残っていた。ヒト切除標本でAPC焼灼深度を検討した報告はなく、同設定で粘膜固有層まで傷害されるというエビデンスが示された。Ki67、p53、shhの発現は癌部では認められたが、APC焼灼辺縁の癌および正常部では認められなかった。以上より異型上皮およびm1まではAPCで完全焼灼可能だが、粘膜固有層に食道腺の導管が存在すればそこから扁平上皮が再生し得る。p53は異型上皮から癌部まで発現し、まだら不染帯の標本では一見正常と思われる粘膜にもspot状に発現していた。同部はretrospectiveに再検すると軽度異型を認めたことから多中心性の発育をすることが示唆された。増殖活性を示すKi67発現はm1癌に多く、m2以深になるとshhも発現してくるため、m1までの癌を遺残なく焼灼することが治癒の条件と思われた。癌の水平方向の伸展形式を明らかにするために、4例の表層拡大型食道癌症例において内視鏡下に癌口側端と正常部を含め約2×2cmにわたりArgon Plasma Coagulation (APC)にて60W、2.0L/分、1秒間で焼灼した。1週間後、食道亜全摘術を行いホルマリン固定1日後、臨床病理組織学的検査および増殖活性をKi67、悪性度をp53、Sonic hedgehog (shh)にて免疫染色を行った。症例14の深達度/分化度/pN/ly/v/多発はそれぞれsm2/por/3/1/あり、sm2/por/2/1/なし、sm2/mod/0/1/なし、mp/mod/2/1/あり、sm3/mod/0/0/0/なしで口側は粘膜癌であった。APC焼灼部は粘膜固有層浅層までが脱落または壊死し再生上皮は認められなかった。また粘膜固有層内の癌導管内伸展部は焼け残っていた。ヒト切除標本でAPC焼灼深度を検討した報告はなく、同設定で粘膜固有層まで傷害されるというエビデンスが示された。Ki67、p53、shhの発現は癌部では認められたが、APC焼灼辺縁の癌および正常部では認められなかった。以上より異型上皮およびm1まではAPCで完全焼灼可能だが、粘膜固有層に食道腺の導管が存在すればそこから扁平上皮が再生し得る。p53は異型上皮から癌部まで発現し、まだら不染帯の標本では一見正常と思われる粘膜にもspot状に発現していた。同部はretrospectiveに再検すると軽度異型を認めたことから多中心性の発育をすることが示唆された。増殖活性を示すKi67発現はm1癌に多く、m2以深になるとshhも発現してくるため、m1までの癌を遺残なく焼灼することが治癒の条件と思われた。異型上皮からの癌化もしくは正常化にはStem cellの動態と周囲matrixの環境も重要と考えられる。蛋白質分解酵素であるserine proteaseは基底膜を破壊し癌の伸展に関与し、maspinなどのprotease inhibitorはこれらの作用を阻害し乳癌、前立腺癌などでは癌抑制に働く。食道上皮の周囲環境が癌化に有利か否かを知るためにmaspin発現で検討した。【対象および方法】切除食道癌47例(表在癌20例:ep5、m6、sm9、進行癌27例:mp7、Ad20)の全割標本中、最深部を含む切片をHEおよびmaspin免疫染色した。maspin発現程度をnegative、focal、diffuseに3分類し、癌部、異型上皮部、正常部におけるmaspin発現を比較し、臨床病理学的因子として、深達度、リンパ節転移、分化度、脈管侵襲、予後を検討した。【結果】maspinは細胞質において染色され、癌部で94%(44/47)、異型上皮部で88%(22/25)、正常部で93%(38/41)に発現した。またnegative、focal、diffuseの発現頻度は癌部で7、38、55%、異型上皮部で12、56、32%、正常部で7、51、41%であった。異型上皮部では、癌や正常部に比し発現低下傾向にあったが有意差はなかった。maspinの発現と上記臨床病理学的因子間に有意差はなかった。
KAKENHI-PROJECT-17591424
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食道における組織修復機転を利用した異型細胞の制御と制癌効果への応用
しかし進行癌に限るとfocal型(N=11)はdiffuse型(N=15)に比し5生率および無再発生存率は有意(P=0.012およびP=0.0025)に不良であった。【考察】進行食道癌におけるfocal型は有意に予後不良なことからmaspinの発現低下は癌の進展に関与する可能性が示唆された。異型上皮部でのmaspin発現低下は癌の増殖に有利な環境にあると推察された。食道粘膜をArgon Plasma Coagulation (APC)で傷害し組織修復状況から表層拡大型食道癌患の伸展形式を類推し、基底膜に存在するといわれている癌stem cellの動向を組織学的に検討した。インフォームドコンセントが得られた表層拡大型食道癌患者4例に対し、内視鏡下に食道癌口側端のep癌部と正常部を含め約2×2cmにわたりAPC (60W、2.0L/分、1秒間)にて焼灼した。1週間後食道亜全摘術を行い、ホルマリン固定1日後、標本を5mm幅に全割し、病理組織学的検査および増殖活性をKi67、悪性度をp53、Sonic hedgehog (Shh)にて免疫染色を行った。【結果】症例は全例O-IIc+IIa型、表層はm癌であり、症例1、2、3、4の深達度/分化度/pN/ly/v/ieはそれぞれsm2/por/3/1/0、sm2/por/2/1/1、sm2/mod/0/1/0、mp/mod/2/1/1であった。APC焼灼部は粘膜筋板まで組織が脱落または壊死し大部分は再生上皮が認められず、粘膜下層は保たれることが判明した。癌部/APC蒸散部周囲における症例1、2、3、4のKi67染色発現度は-/-、+/-、-/-、-/+であった、同様にp53の発現度は++/-、-/-、-/-、-/-、Shhの発現度は-/-、-/-、+/-、-/-であった。癌部APC焼灼側から連続する異型上皮が壊死組織上を伸展していく像が一部に認められた。また正常部APC焼灼側から壊死組織上を不連続性に上皮が再生した像が一部に認められた。【考察】粘膜焼灼後1週間では組織修復はまだ不十分であるが、一部には水平方向の癌の伸展を認めたことから表層拡大型では水平方向に発育する可能性が示唆された。しかし同部に一致した増殖活性やShh発現は認められず、現段階でのStem cellの関与は焼灼後2週間以降の検討が必要と思われた。
KAKENHI-PROJECT-17591424
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液膜法によるパラジウムの新しい分離精製法に関する基礎的研究
1.ジドデシルモノチオリン酸によるパラジウムの抽出をその抽出をその抽出機構の解明を目的として、分散液滴型攪拌槽および平面接触型攪拌槽を用いて行った。また、この抽出試薬によるパラジウムのロ-ディング実験および抽出剤の界面張力の測定も行ッた。抽出速度に及ぼす各濃度依存性を検討し、これに基づき4種のクロロパラジウム錯体種が関与する界面反応モデルを堤出した。このモデルにより、抽出速度を解析した結果、各クロロパラジウム錯体種と界面吸着した抽出試薬との間の界面反応速度定数を得た。2.上記の系における抽出速度に及ぼすチオシアン酸イオンのトランス効果について検討した。チオシアン酸イオンの添加により約600倍の加速効果がみられた。3種のチオシアン酸クロロパラジウム錯体と抽出試薬との界面反応を考慮して実験結果を解析した。3.アルキル鎖長の影響について検討するためにジオクチルモノチオリン酸によるパラジウムの抽出速度を測定した。その結果はジドデシルモノチオリン酸と同様の抽出機構で説明できたが、速度定数はやや大きくなることがわかった。4.乳化型液膜によるパラジウムの抽出について検討した、まず、逆抽出試薬としてチオ尿素を選び、ジオクチルモノチオリン酸ーパラジウム錯体の逆抽出平衡の測定を行ない、その平衡定数を求めた。次に、チオ尿素の高酸性水溶液を逆抽出液とするパラジウム錯体の逆抽出速度を平面接触型攪拌槽を用いて測定し、各濃度依存性について検討した。これらの結果より、液膜透過機構は非常に復雑なことが推察され今後の検討課題として残された。本研究の目的は希少金属であるパラジウムの従来法に代る新しい分離精製法を実用化するための基礎的知見を得ることであり、本年度の研究成果の概要は次のようである。1.液膜のキャリア-としてイオウを配位原子とする3種類のジアルキルモノチオリン酸を合成した。2.これらのキャリア-とパラジウムとの間で形成される錯体組成についてモル比変化法および抽出平衡実験に基づき検討した結果、パラジウムとキャリア-の比が1:2の組成の錯体が形成されることがわかった。この結果は3種類のジアルキルモノチオリン酸について同様であった。3.各キャリア-を抽出試薬として平面接触型攪拌槽を用いてパラジウムの抽出速度を測定した。抽出速度に及ぼす各化学種濃度の影響を検討した結果、パラジウムの抽出機構を明らかにすることができた。すなわち、パラジウムの抽出は水相中に存在する4種のクロロパラジウム錯体と界面に吸着しているキャリア-との界面反応により1:1錯体が形成される過程が律速であることを明らかにした。しかしながら、アルキル鎖の短かいジブチルモノチオリン酸の場合は水相中における上記反応も無視できないことも明らかとなった。また、チオシアン酸イオンを添加した系では抽出速度が加速され、これはトランス効果により説明された。4.チオ尿素によるパラジウム錯体の逆抽出速度を測定した結果、界面に吸着しているパラジウム錯体とチオ尿素および有機相中でのパラジウム錯体とチオ尿素との両反応が総括の逆抽出速度に影響を与えることを明らかにした。1.ジドデシルモノチオリン酸によるパラジウムの抽出をその抽出をその抽出機構の解明を目的として、分散液滴型攪拌槽および平面接触型攪拌槽を用いて行った。また、この抽出試薬によるパラジウムのロ-ディング実験および抽出剤の界面張力の測定も行ッた。抽出速度に及ぼす各濃度依存性を検討し、これに基づき4種のクロロパラジウム錯体種が関与する界面反応モデルを堤出した。このモデルにより、抽出速度を解析した結果、各クロロパラジウム錯体種と界面吸着した抽出試薬との間の界面反応速度定数を得た。2.上記の系における抽出速度に及ぼすチオシアン酸イオンのトランス効果について検討した。チオシアン酸イオンの添加により約600倍の加速効果がみられた。3種のチオシアン酸クロロパラジウム錯体と抽出試薬との界面反応を考慮して実験結果を解析した。3.アルキル鎖長の影響について検討するためにジオクチルモノチオリン酸によるパラジウムの抽出速度を測定した。その結果はジドデシルモノチオリン酸と同様の抽出機構で説明できたが、速度定数はやや大きくなることがわかった。4.乳化型液膜によるパラジウムの抽出について検討した、まず、逆抽出試薬としてチオ尿素を選び、ジオクチルモノチオリン酸ーパラジウム錯体の逆抽出平衡の測定を行ない、その平衡定数を求めた。次に、チオ尿素の高酸性水溶液を逆抽出液とするパラジウム錯体の逆抽出速度を平面接触型攪拌槽を用いて測定し、各濃度依存性について検討した。これらの結果より、液膜透過機構は非常に復雑なことが推察され今後の検討課題として残された。平成2年度は主として乳化型液膜によるパラジウムの抽出について検討した結果、以下の知見が得られた。1.逆抽出機構前年度に得られた逆抽出速度の測定結果に基づき、逆抽出機構について考察した。まず、逆抽出速度に及ぼす各濃度依存性について検討した結果、逆抽出試薬であるチオ尿素濃度およびパラジウム錯体濃度に比例するが塩化物イオン濃度には依存しないことがわかった。またキャリア-として用いたジオクチルモノチオリン酸濃度と共に逆抽出速度も増加するという結果が得られた。これらのことより、有機相中のパラジウム錯体組成の変化(平衡関係)が逆抽出過程に重要な役割を演じていることが推察された。
KAKENHI-PROJECT-01550760
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液膜法によるパラジウムの新しい分離精製法に関する基礎的研究
2.液膜分離キャリア-としてジオクチルモノチオリン酸、界面活性剤としてグルタミン酸ジオレイルエステルリビト-ル、逆抽出液としてチオ尿素の過塩素酸水溶液を用いて(W/O)エマルションを調製し、これによるパラジウムの抽出を試みた。その結果、ある条件下では10分後に95%のパラジウムが内水相に抽出されることがわかった。抽出はパラジウムに関して擬1次過程で進行することが明らかになったので、このみかけの抽出速度定数を求めた。抽出速度定数に及ぼす各濃度依存性を検討したところ、チオ尿素に1次、水素イオン濃度にー1次、キャリア-濃度に2次に比例することがわかった。これより、逆抽出過程が律速となっている可能性が大きいことが推察されたが、詳細な膜分離機構を解明するには至らず、今後の検討課題として残された。
KAKENHI-PROJECT-01550760
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ドイツ語圏諸国における「学校」近代化傾向の進行過程に関する総合的研究
1.中部ヨーロッパ(オランダからバルト3国まで)に広がったドイツ語文化圏内におけるイエズス会コレギウムの、およそ200年にわたる全体的発展動向が数量的に明らかになった。(18世紀前半に10管区約220校)。2.南(高地)ドイツ管区では、5校(1574年)→10校(1600年)→17校(1642年)→27校(1725年、1742年、1770年)と発展しており、ミュンヘンなど数校の1700年前後の学校外観図が明らかになった。3.史料『1773年版南(高地)ライン管区カタログ』によれば、当時15校を数えたイエズス会コレギウムは、(1)a.人文学過程のみ、b.人文学過程に哲学過程を持つ学院、c.その他の大学の神学部と哲学部をイエズス会が担当するとともに人文学過程を持つ学院の、以上3グループ各5校にきれいに分かれること。(2)そのうちcタイプは、人文学過程が初級・中級・上級の文法、詩学、修辞学の5クラス5教授体制、哲学過程が論理学、自然学、数学、倫理学、形而上学の5教科3教授体制、神学課程がスコラ神学1・2、倫理神学、教会法、聖書、ヘブライ語の6教科54教授体制を基本型にしていること、などが判明した。4.1770年代初頭のオーストラリア管区では、3課程が完備し、生徒数が1,000人を超える「大きな学院」から文法クラスのみの「小さな学校」まで、全体で58校のイエズス会学校を数えたが、その全生徒数は、(1)上級課程(神学と哲学)16校に3,612人、下級課程(人文)に12,303人、合計15,915人を数えた。(2)伝統的教科以外にも、フランス語などの近代語、歴史、力学などの近代的実学を教える学校が12校あった。(3)オーストリア管区の東半部(ハンガリー地域)では、全体で8,105人の生徒数を数え、同地域1317歳の青少年男子人口の約2..5%がイエズス会コレギウムに学んでいた計算になる。1.中部ヨーロッパ(オランダからバルト3国まで)に広がったドイツ語文化圏内におけるイエズス会コレギウムの、およそ200年にわたる全体的発展動向が数量的に明らかになった。(18世紀前半に10管区約220校)。2.南(高地)ドイツ管区では、5校(1574年)→10校(1600年)→17校(1642年)→27校(1725年、1742年、1770年)と発展しており、ミュンヘンなど数校の1700年前後の学校外観図が明らかになった。3.史料『1773年版南(高地)ライン管区カタログ』によれば、当時15校を数えたイエズス会コレギウムは、(1)a.人文学過程のみ、b.人文学過程に哲学過程を持つ学院、c.その他の大学の神学部と哲学部をイエズス会が担当するとともに人文学過程を持つ学院の、以上3グループ各5校にきれいに分かれること。(2)そのうちcタイプは、人文学過程が初級・中級・上級の文法、詩学、修辞学の5クラス5教授体制、哲学過程が論理学、自然学、数学、倫理学、形而上学の5教科3教授体制、神学課程がスコラ神学1・2、倫理神学、教会法、聖書、ヘブライ語の6教科54教授体制を基本型にしていること、などが判明した。4.1770年代初頭のオーストラリア管区では、3課程が完備し、生徒数が1,000人を超える「大きな学院」から文法クラスのみの「小さな学校」まで、全体で58校のイエズス会学校を数えたが、その全生徒数は、(1)上級課程(神学と哲学)16校に3,612人、下級課程(人文)に12,303人、合計15,915人を数えた。(2)伝統的教科以外にも、フランス語などの近代語、歴史、力学などの近代的実学を教える学校が12校あった。(3)オーストリア管区の東半部(ハンガリー地域)では、全体で8,105人の生徒数を数え、同地域1317歳の青少年男子人口の約2..5%がイエズス会コレギウムに学んでいた計算になる。1.かつてのドイツ語文化圏各地の文書館に眠るイエズス会コレギウム関連資史料のうち、オーストリアとハンガリー地域の各コレギウムについては、16世紀半ばから1700年までの同会のカタログ(会員名簿)が入手できた。その結果、この期間の各コレギウム20数校のクラス数や編成状況、担当職員などが判明した。2.日本では入手しがたい、これらコレギウムの個別の学校史誌や記念誌、及び図像資料などの収集についてはドイツやオーストリアの各領邦文部省ないしカトリック大司教区文書館の協力により、10数校分の所在が確認できた。現在、現物ないし複写かマイクロフィルムでの入手を試みている。3.プラハ、ウィーン、フランクフルト、ローマなどで活躍しているイエズス会学校史ないし学校一般史の研究家(A. Fechtnerdve, H. Engelbrecht, H. Nising, L. Szilasら)の最近の著書や論文を見出すことができた。それらを購入すると同時に、研究上の情報交換と交流ができるよう現在準備を進めている。4. 1725年当時のイエズス会コレギウム(10管区220校に及ぶ)の所在地が9割がた判明し、ここには本国での迫害を避け、大陸に逃れていたイギリス管区の12校も含められていることが解った。
KAKENHI-PROJECT-07610276
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ドイツ語圏諸国における「学校」近代化傾向の進行過程に関する総合的研究
5.これまでに収集できた資料をもとに、イエズス会コレギウム各校に関するデータ[所在地、規模、開設年、クラス編成、教員構成等]を各項目ごとに入力し、データベース化に着手している。入手できた文献資料の翻訳作業に取り組んでおり、同時に時代背景の理解や学校近代化の指標の確認作業を進めている。1、ドイツのマインツ市立図書館に、1773年版の「イエズス会ライン上流管区のカタログ」(ラテン語本)が所蔵されていることが判明し、マイクロフィルムの形でこれを入手できた。その読解と分析を進め、若干の内容的考察を加えて、「1773年のドイツ中部におけるイエズス会学校の現況」という論文にまとめた。(次ページ「研究発表(雑誌論文)」の2番目のもの。ただし、現在印刷中)2、個別コレギウムの記念誌・学校史の収集に関しては、トリア-、ハイリゲンシュタット、クロンベルクなどのギムナジウム(その前身はイエズス会コレギウム)のものが手に入った。3、収集資料に基づくイエズス会学校のデータベース化の試みは、これまでに収集できた資料に限りと制約があるため、ドイツ語圏諸国に拡がる約220枚もの学校それぞれの、200年を超える歴史の全貌を捉えきれてはおらず、部分的で断片的なものに止まっているのが実情であるが、とりあえず着手が可能なところから始めている。4、収集できた文献資料の訳出作業は、自分たちで少しずつ試みているほか、本学の大学院生や卒業生の協力を得て、現在のオーストリアとベルギーの地域に開設されていたイエズス会学校の歴史に関する記事の翻訳作業を進めてきた。5、ローマ在住のL.シ-ラス教授のモノグラフ『1773年のオーストリア管区-歴史的・統計的研究』を入手でき、その半分近くを訳出して「1773年におけるイエズス会オーストリア管区の学校と教育」という題目のもとに発表した(次ページ「研究発表(雑誌論文)」の最初のもの)1.1997年8月にドイツのミュンヘン、チェコのプラハ、オーストリアのウィーンを訪問し、その地の国立図書館・文書館、大学図書館を訪れて「イエズス会文書(jusuitica)」を閲覧し、本研究が対象としている期間のイエズス会学校にかかわる第1次史資料を探索した。その結果、(1)イエズス会解散(1773年)直後に移管されたかなりの史資料が各地に所蔵されているものの、必ずしも分類整理が行き届いているわけではないことが改めて判明した。(2)ボヘミア管区とオーストリア管区については、17世紀後半18世紀前半の数年にわたる「イエズス会カタログ」(ラテン語本)をマイクロフィルムの形で入手できた。2.同時に、イエズス会コレギウムの当時の学校図や校舎平面図も探索したが、その結果、(1)ミュンヘンで、1700年前後の高地ドイツ管区のコレギウムの外観図録を閲覧することができた。(2)特にバイエルン州で開かれた最近の展覧会・展示会用のカタログに、数校のイエズス会コレギウムの外観図が収められていることが分かり、その種のカタログを注文、入手した。3.個別コレギウムの記念誌・学校史に関しては、マンハイム(Mannheim)とブルクハウゼン(Burghausen)のギムナジウムの記念誌(ともに1997年刊行)、またプラハのクレメンティヌム(Klementinum)の沿革史が手に入った。4.1997年に公表した拙稿「1773年のドイツ中部におけるイエズス会学校の現況」により、イエズス会学校を研究してその全貌を掴むためには、いわゆるイエズス会コレギウムのみでなく、レジデンティア(residentia)や他の会宅に開かれていた学校についても調べてみる必要のあることが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-07610276
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核磁気共鳴法による常温腸管虚血・再灌流時のエネルギー代謝の検討
(A)31-P MRS法によるエネルギー代謝測定を指標とするSMAO・再灌における小腸組織障害に対する各種薬剤の効果の検討:1:Ca拮抗剤の効果について6週齢Wistar系雄性ラットを用い上腸間膜動脈を30分間閉塞した後,再灌流した。verapamilの効果をA群:対照群(薬剤非投与群)(n=12),B群:verapamil(0.3mg/kg)虚血前投与群(n=12),C群:verapamil(0.3mg/kg)再灌流前10分時投与群(n=12)の3群に分けin vivoにて核磁気共鳴装置(分光器:日本電子製EX-90,超電動磁石:日立製2.1T)を用いエネルギー代謝の変動(beta-ATP,Pi,pH,etc.)を測定した。虚血前値のbeta-ATP値を100%とすると虚血後30分ではA群:32.5±9.2%,B群:46.9±8.2%,C群:32.7±7.6%とB群において有意にbeta-ATPの低下が抑制された。再灌流後150分では、A群:51.4±14.0%,B群:71.3±14.9%,C群:71.1±9.2%とA群に比較しB群,C群で有意にbeta-ATPの回復が認められた。Pi,pHに関しても再灌流後の回復は良好であった。小腸虚血・再灌流障害に対しverapamilは虚血前および再灌流直前投与においても有効であった。その機序として,虚血時の強収縮の抑制,虚血・再灌流時のCa^<2+>の細胞内流入の抑制が示唆された。2.アロプリノール、SODの効果についてMRSの機械自体の調整期間もあり、実験が遅れており統計的集計が可能な例数に達していない。実験方法はCa拮抗剤の効果について検討と同様。2剤とも虚血前,再灌流直前投与の二つの方法をもちいたが虚血前投与において薬剤の有効性を認める傾向にあった。今後、例数の増加と他の薬剤に関してもその有効性の有無を検討し治療の基礎の確立を目指したい。虚血及び再灌流時腸管は強収縮を起こすため組織とpH電極との接触面の変動が大きいためか、測定結果がやや不安定であったが、傾向として各測定法によるpHに正の相関がみられた。(C)ヒトにおける小腸スペクトルの測定による臨床応用の可能性の検討:MRSの機械自体の調整期間もあり、実験が遅れており統計的集計が可能な例数に達していない。本実験に先立ちラットを用い腹壁を除去せずに小腸のスペクトルの検出を試みているが、測定方法の確立には至っていない今後、さらに検討し人体への応用を目指したい。(A)31-P MRS法によるエネルギー代謝測定を指標とするSMAO・再灌における小腸組織障害に対する各種薬剤の効果の検討:1:Ca拮抗剤の効果について6週齢Wistar系雄性ラットを用い上腸間膜動脈を30分間閉塞した後,再灌流した。verapamilの効果をA群:対照群(薬剤非投与群)(n=12),B群:verapamil(0.3mg/kg)虚血前投与群(n=12),C群:verapamil(0.3mg/kg)再灌流前10分時投与群(n=12)の3群に分けin vivoにて核磁気共鳴装置(分光器:日本電子製EX-90,超電動磁石:日立製2.1T)を用いエネルギー代謝の変動(beta-ATP,Pi,pH,etc.)を測定した。虚血前値のbeta-ATP値を100%とすると虚血後30分ではA群:32.5±9.2%,B群:46.9±8.2%,C群:32.7±7.6%とB群において有意にbeta-ATPの低下が抑制された。再灌流後150分では、A群:51.4±14.0%,B群:71.3±14.9%,C群:71.1±9.2%とA群に比較しB群,C群で有意にbeta-ATPの回復が認められた。Pi,pHに関しても再灌流後の回復は良好であった。小腸虚血・再灌流障害に対しverapamilは虚血前および再灌流直前投与においても有効であった。その機序として,虚血時の強収縮の抑制,虚血・再灌流時のCa^<2+>の細胞内流入の抑制が示唆された。2.アロプリノール、SODの効果についてMRSの機械自体の調整期間もあり、実験が遅れており統計的集計が可能な例数に達していない。実験方法はCa拮抗剤の効果について検討と同様。2剤とも虚血前,再灌流直前投与の二つの方法をもちいたが虚血前投与において薬剤の有効性を認める傾向にあった。今後、例数の増加と他の薬剤に関してもその有効性の有無を検討し治療の基礎の確立を目指したい。虚血及び再灌流時腸管は強収縮を起こすため組織とpH電極との接触面の変動が大きいためか、測定結果がやや不安定であったが、傾向として各測定法によるpHに正の相関がみられた。(C)ヒトにおける小腸スペクトルの測定による臨床応用の可能性の検討:MRSの機械自体の調整期間もあり、実験が遅れており統計的集計が可能な例数に達していない。
KAKENHI-PROJECT-05770928
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核磁気共鳴法による常温腸管虚血・再灌流時のエネルギー代謝の検討
本実験に先立ちラットを用い腹壁を除去せずに小腸のスペクトルの検出を試みているが、測定方法の確立には至っていない今後、さらに検討し人体への応用を目指したい。
KAKENHI-PROJECT-05770928
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05770928
超幾何関数の幾何的研究
超幾何関数に関する以下の結果を得た。1)塩山積分に付随する捻表・裏路地群の交叉数を算出し塩山関数に新たな組み合わせ幾何的意味を発見した。またこの結果を共形場理論に応用し、共鳴する場合も調べた;これは単なる定理の改良でなく、応用上の要求に答えるためであった。2)共変関数論を創設した。河童関数を発見;従来保型関数・形式は第一種狐群のみを対象としてきたが、ここに第二種でも面白い物が(身近に)あることを例によって示した。従来の超幾何多項式とは異なる、3つの整数で径数付けられる新しい超幾何多項式系を発見。3)楕円芋蔓関数の乱舞だ関数の新しい無限積表示を発見(手多のそれとは全く異なる)。4)超幾何的黒三角形の内角が一般のときにその形を調べた。被覆面の表示法を工夫した。5)白頭絡補空間に入る又曲構造を又曲空間上の保形関数を構成して具体的表示に成功。6)超幾何的測多価群が一寸来群のとき堆肥村空間と係数空間の関係を調べた。7)超幾何的黒写像研究は百年以上続いてい、前世紀は高次元化がなされたが、ここに新たにより自然な的を持つ又曲黒写像を考案して、(特異点的微分幾何的)研究を始めた。8)3次元李群の働く曲面を調べた;特にSL(2,R)が働く曲面を詳しく調べた。知恵備匠多項式の超幾何的補間から生じる李代数が3次元になる条件を求めた。超幾何関数に関する以下の結果を得た。1)塩山積分に付随する捻表・裏路地群の交叉数を算出し塩山関数に新たな組み合わせ幾何的意味を発見した。またこの結果を共形場理論に応用し、共鳴する場合も調べた;これは単なる定理の改良でなく、応用上の要求に答えるためであった。2)共変関数論を創設した。河童関数を発見;従来保型関数・形式は第一種狐群のみを対象としてきたが、ここに第二種でも面白い物が(身近に)あることを例によって示した。従来の超幾何多項式とは異なる、3つの整数で径数付けられる新しい超幾何多項式系を発見。3)楕円芋蔓関数の乱舞だ関数の新しい無限積表示を発見(手多のそれとは全く異なる)。4)超幾何的黒三角形の内角が一般のときにその形を調べた。被覆面の表示法を工夫した。5)白頭絡補空間に入る又曲構造を又曲空間上の保形関数を構成して具体的表示に成功。6)超幾何的測多価群が一寸来群のとき堆肥村空間と係数空間の関係を調べた。7)超幾何的黒写像研究は百年以上続いてい、前世紀は高次元化がなされたが、ここに新たにより自然な的を持つ又曲黒写像を考案して、(特異点的微分幾何的)研究を始めた。8)3次元李群の働く曲面を調べた;特にSL(2,R)が働く曲面を詳しく調べた。知恵備匠多項式の超幾何的補間から生じる李代数が3次元になる条件を求めた。超幾何関数に関する以下の研究をした。1)実三次曲面の径数空間に又曲構造が入ることを示し、模型又曲空間の商空間から径数空間の射影埋め込みに、保形関数(テタ函数)による同型を構成した。2)純虚指数超幾何微分方程式の黒写像を幾何的に研究した。黒写像の双基本領域を構成した。3)純虚指数超幾何微分方程式の測多価群として現れる一寸来群に関する保形関数を無限積で構成した。4)上記無限積に於いて、三つの指数を全て零に持ってい行く極限をとることが出来、乱舞だ関数の新しい無限積表示(但し、絶対収束はしない)を得た。副産物として調和型積分を発見した。5)十年近く前に代表者が創設した捩れ表裏路地群の交叉理論を、指数が整数に退化するときも取り扱えるように、精密化した。6)ベタ関数の一般化として塩山関数が有名である。ベタ関数の相互法則に対応する塩山関数の相互法則を得た。これを通して、塩山関数が(代表者が数年前に研究した)寺田多面体と深い関係にあることが分った。この結果を共形場理論(物理)の多点関数の解析に応用した。7)共変関数の理論を創設した。特に楕円芋蔓関数のj関数と乱舞だ関数を結ぶ河童関数を初めて定義し、その性質を調べた。また黒写像の隣接関係から共変関数が生じることを発見し、それらを(特別な場合に)調べた。超幾何関数に関する以下の研究をした。刻印3次曲面の変形空間に入る複素又曲構造を多変数超幾何関数を使って記述した。純虚指数超幾何微分方程式の黒写像を幾何的に研究した。種数2の一寸来群が登場する。上記一寸来群不変な関数(一寸来保形関数)を無限積で作った。その極限として楕円乱舞だ関数の新しい無限積表示(絶対収束しない)を得た。捩表裏路地群の交叉理論を応用し塩山積分の相互法則の組み合わせ的構造を明らかにした。捩表裏路地群の交叉理論を共鳴点がある2次元の場合に整備した。共変関数(変数を一次分数変換すると、関数が同じ一次分数変換を受ける様な関数)の理論を創設した。
KAKENHI-PROJECT-14340049
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超幾何関数の幾何的研究
楕円芋蔓関数のj関数と乱舞だ関数を結ぶ河童関数を始めて定義し、その性質を調べた。一般角を内角とする黒三角形の形状を黒写像の隣接関係かち決定した。また測多価群が有限のとき、黒写像の隣接関係から共変(有理)関数が生じることを発見し、それらを調べた。超幾何関数の黒写像と3次元又曲幾何を結ぶ「又曲黒写像」を発見した。3次元又曲空間に働く白頭絡群不変な関数を構成し白頭絡の補空間に入る又曲構造を書き下した。超幾何関数に関する以下の結果を得た。有限測多価群を持つ超幾何関数の指数を整数ずらすことにより、3径数を有する新しい多項式系を得た。塩山積分に付随する表・裏路地群の交叉数を算出し塩山関数に新たな組み合わせ幾何的意味を発見した。またこの結果を共形場理論に応用した。共鳴する場合も研究した。共変関数の理論を創設した。一例として河童関数を発見した。楕円芋蔓関数の乱舞だ関数の新しい無限積表示を発見した。超幾何関数の黒三角形で内角の和が一般のときに黒三角形の組み合わせ位相幾何的性質を明らかにした。白頭絡補空間に入る又曲構造を又曲3-空間上の保形関数を用いて具体的に表示した。超幾何関数に関する以下の結果を得た。1)塩山積分に付随する捻表・裏路地群の交叉数を算出し塩山関数に新たな組み合わせ幾何的意味を発見した。またこの結果を共形場理論に応用し、共鳴する場合も調べた;これは単なる定理の改良でなく、応用上の要求に答えるためであった。2)共変関数論を創設した。河童関数を発見;従来保型関数・形式は第一種狐群のみを対象としてきたが、ここに第二種でも面白い物が(身近に)あることを例によって示した。従来の超幾何多項式とは異なる、3つの整数で径数付けられる新しい超幾何多項式系を発見。3)楕円芋蔓関数の乱舞だ関数の新しい無限積表示を発見(手多のそれとは全く異なる)。4)超幾何的黒三角形の内角が一般のときにその形を調べた。被覆面の表示法を工夫した。5)白頭絡補空間に入る又曲構造を又曲空間上の保形関数を構成して具体的表示に成功。6)超幾何的測多価群が一寸来群のとき堆肥村空間と係数空間の関係を調べた。7)超幾何的黒写像研究は百年以上続いてい、前世紀は高次元化がなされたが、ここに新たにより自然な的を持つ又曲黒写像を考案して、(特異点的微分幾何的)研究を始めた。8)3次元李群の働く曲面を調べた;特にSL(2,R)が働く曲面を詳しく調べた。知恵備匠多項式の超幾何的補間から生じる李代数が3次元になる条件を求めた。
KAKENHI-PROJECT-14340049
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間隔時間知覚の脳神経機構の解明:知覚学習によるアプローチ
本研究では、知覚学習課題を用いて、人間の視覚情報処理の時間特性を検証することを目的とした。具体的には、視覚情報が運動制御に与える効果、運動する視覚刺激の運動軌跡のわずかな差が見えに及ぼす効果、形状知覚と運動知覚の時間的特性の差、時間的変調を持つ視覚刺激や聴覚刺激の間隔時間の知覚、老化が脳の可塑性に及ぼす効果について、行動実験や脳機能計測を用いて明らかにした。本研究では、知覚学習課題を用いて、人間の視覚情報処理の時間特性を検証することを目的とした。具体的には、視覚情報が運動制御に与える効果、運動する視覚刺激の運動軌跡のわずかな差が見えに及ぼす効果、形状知覚と運動知覚の時間的特性の差、時間的変調を持つ視覚刺激や聴覚刺激の間隔時間の知覚、老化が脳の可塑性に及ぼす効果について、行動実験や脳機能計測を用いて明らかにした。時間の知覚には、人間の脳内での情報処理の時間特性が反映される。本研究では、知覚学習課題や脳機能イメージングを用いて、人間の情報処理の時間的特性について検証することを目的とした。まず、fMRIを用い、フラッシュ刺激が短時間に提示された視覚情報処理の特性と、それに関わる脳神経の解剖的特徴を検証した。知覚学習前後で関連部位の活動量が変化するだけでなく、脳神経繊維の密度等の脳の形質も変化することを見いだした。次に、視覚情報処理において、形状知覚と運動知覚の時間的特性の違いや相互作用を、fMRIと経頭蓋磁気刺激を用いた行動実験により検証した。形状知覚と運動知覚に関連する脳の部位をfMRIで特定し、その一部を経頭蓋磁気刺激で様々なタイミングにおいて一時的に抑制させ、形状や運動の知覚が情報入力後のいかなるタイミングでおこなわれ、また両者間にいかなる時間的な相互作用や補完作用があるかを検討した。その過程において、欧米でおこなわれた脳科学研究で報告されている人間の脳の特定部位の位置と、我々の研究で測定した日本人(アジア人)の特定部位の位置に有為な差があることを見いだした。また、視覚情報と聴覚情報の統合における時間的ずれの効果を検証するための実験刺激を作成し、その過程において新しい錯視現象を発見して発表した。情報処理の時間特性に注目しておこなったこれら一連の初年度の研究をもとに、より高次の知覚や認知における処理の時間特性と知覚・認識される時間についてさらなる検証を進めている。本研究では、視覚や聴覚の情報処理の時間的特性をそれらの相互作用に注目し検証した。視知覚における形の情報処理と運動の情報処理の独立性とその相互作用を行動実験で検証した。形が運動で定義される刺激(運動からの形状復元刺激)を用い、同一の刺激dえ形を回答させる条件と運動を回答させる条件の閾値の違いを測定し、両者の処理が単一の機構に基づかないことを示す結果を得た。結果をふまえ、経頭蓋磁気刺激(TMS)を用いて形状知覚と運動知覚の独立性、相互作用、時間特性について検証した。具体的には運動知覚に関わるMT野をTMSによる刺激で運動の知覚を抑制し、運動知覚抑制のタイミングおよび運動知覚が抑制されるタイミングにおける形状知覚の特性を調べた。この研究結果は、現在、国際誌に投稿準備中である。視覚刺激の時間知覚の特性に加え、視覚と聴覚という異なるモダリティー間の処理の時間特性の相互作用を検証した。同一の視覚情報が知覚される時間(タイミング)が、同時に提示される聴覚情報の有無やその特性によっていかに変容するか、脳内の情報処理において聴覚情報処理が負荷となる場合、その負荷が視覚情報処理の時間的特性に何らかの影響を及ぼすのか、また聴覚情報と視覚情報の提示のタイミングが物理的に同一でも両者の知覚にずれが生じる条件があるのかを検討した。研究結果を「フリッカ刺激の時間周波数成分が時間知覚延長に及ぼす効果」のタイトルで日本視覚学会冬季大会にて発表し、ベストプレゼンテーション賞を受賞した。本研究では、知覚学習課題を用いて、視覚情報処理の特性を検証した。短時間呈示される視覚刺激の方位を検出する課題を繰り返し行うことにより、その視覚刺激を知覚する際の人間の脳活動が変化する様子を機能的イメージングを用いて検証した。そして、機能的脳イメージングを用いてヒトの脳機能の可塑性をさぐる方法について、Cortex誌に発表した。さらに、視覚刺激に対応して運動制御を行う課題を用いて、視覚情報と運動制御の方向が一致する場合と一致しない場合で干渉作用が生じることを示し、また、その干渉の効果の非線形性を脳機能イメージングを用いて検証した。その結果をまとめてCerebral Cortex誌に発表した。また、物理的特性が類似していても、その運動軌跡のわずかな違いが知覚に大きく影響することを発見し、その効果をJournal of Vision誌に発表した。初年度は、80セッションのfMRI実験、90セッションの経頭蓋磁気刺激実験、140セッション以上の行動実験を行った。得られたデータを元に複数の学会発表をおこない、研究結果を1報の学術雑誌に投稿中、さらに3報の学術論文を執筆中である。25年度が最終年度であるため、記入しない。研究成果が順調に発表できていると考える。所属元の研究用fMRI機が平成24年度以降使用不可能となったため、今後は脳機能イメージングではなく行動実験、脳波計および経頭蓋磁気刺激を用いて脳内情報処理の時間特性についての研究を進める。特に、初年度の研究成果を応用する形で視覚情報と聴覚情報の統合の時間的特性に関する研究を推進する。25年度が最終年度であるため、記入しない。今後は、視覚情報処理に限らず、運動制御や視聴覚の情報統合に関して同様の手法を用いて研究を進める予定である。
KAKENHI-PROJECT-23680028
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多核金属錯体の電子移動触媒作用
電子供与体から電子受容体への電子移動反応において電子受容体ラジカルアニオンと強い相互作用を有する物質はこの電子移動反応の触媒として機能する。触媒として金属錯体を考える場合、単核に比べ、相互作用のサイトの数の多い多核金属錯体の方が、より高い触媒活性が期待される。本研究では、電子移動反応における金属錯体の触媒作用について検討し、高効率・高選択性を有する電子移動触媒システムを構築することを目的とする。これまでの研究で、Sc(OTf)_3のHMPA錯体はセミキノンラジカルアニオンと二核錯体を形成することにより、対応するキノンの電子移動還元を顕著に加速することを見いだしている。セミキノンラジカルアニオンは各種金属イオンと錯形成し、その配位結合の強さはセミキノンラジカルアニオン金属錯体のESRのg因子の大きさおよび対応するキノンの電子移動還元反応の活性化エネルギーの大きさと強い相関関係があることを見出した。これにより、各種金属イオンのルイス酸性の強さを定量的に評価でき、その結果は、キノンの電子移動還元反応の制御のみならず一般のルイス酸触媒反応の制御にも利用できると考えられる。電子供与体としては、有機金属ポルフィリン[(OETPP)Fe(R)など]を用い、Rの種類を変えることによりその電子供与能を変化させた。電子移動触媒活性は、ラジカルアニオンとの錯形成に起因するので、多核核錯体の酸化還元電位の違いについてサイクリックボルタンメトリーを用いて明らかにした。電子供与体から電子受容体への電子移動反応において電子受容体ラジカルアニオンと強い相互作用を有する物質はこの電子移動反応の触媒として機能する。触媒として金属錯体を考える場合、単核に比べ、相互作用のサイトの数の多い多核金属錯体の方が、より高い触媒活性が期待される。本研究では、電子移動反応における金属錯体の触媒作用について検討し、高効率・高選択性を有する電子移動触媒システムを構築することを目的とする。これまでの研究で、Sc(OTf)_3のHMPA錯体はセミキノンラジカルアニオンと二核錯体を形成することにより、対応するキノンの電子移動還元を顕著に加速することを見いだしている。セミキノンラジカルアニオンは各種金属イオンと錯形成し、その配位結合の強さはセミキノンラジカルアニオン金属錯体のESRのg因子の大きさおよび対応するキノンの電子移動還元反応の活性化エネルギーの大きさと強い相関関係があることを見出した。これにより、各種金属イオンのルイス酸性の強さを定量的に評価でき、その結果は、キノンの電子移動還元反応の制御のみならず一般のルイス酸触媒反応の制御にも利用できると考えられる。電子供与体としては、有機金属ポルフィリン[(OETPP)Fe(R)など]を用い、Rの種類を変えることによりその電子供与能を変化させた。電子移動触媒活性は、ラジカルアニオンとの錯形成に起因するので、多核核錯体の酸化還元電位の違いについてサイクリックボルタンメトリーを用いて明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-11136229
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地上・衛星同時観測データを用いたサブオーロラ帯におけるオーロラ・地磁気脈動の研究
当年は、カナダでTHEMIS-ground同時観測キャンペーンを実施し、全天TVカメラと狭視野カメラを用いオーロラの高速撮像を行った。観測はカナダのFort Smith(北緯60゚,東経248゚)とGillam(北緯56゚,東経265゚)の2ヶ所で行った。このキャンペーン期間中に観測対象であったオーロラサブストームがGillam観測点の上空で発生し、サブストーム開始時のオーロラの光のダイナミクスを撮像する事に成功した。この貴重な観測データを解析した結果、オンセットオーロラには特性波長がありそれが時間変化することが分かった。初期相で見られるオーロラはRayタイプで、時間と共に約40kmから約10kmへのカスケードする。その後、拡大相に移る直前に構造は約100kmに逆カスケードする。初期相の解析結果は、サブストーム開始時にDispersive Alfven wave (DAW)が増光領域に入射してきている事を示唆している。約100kmのスケールのオーロラから拡大相が始まるという解析結果は、磁気圏でのバルーニング不安定がサブストームを引き起こすという理論と一致する。これらの考察をもとに、大振幅のAlfven波動が磁気圏にFeedbackされた結果としてballonning不安定が磁気圏で誘発されサブストームのブレイクアップが発生するという考えを提唱した。[Sakaguchi et al., Angeo, 2009, Sakaguchi et al., GRL, 2009]本研究では主に、カナダのアサバスカ観測点に設置した高感度全天カメラ、掃天分光フォトメータ、誘導磁力計の定常観測データを用いて、サブオーロラ帯の夜空に局所的に現れる「孤立プロトンオーロラ」とPc1地磁気脈動(0.2-5.0Hz)の関連性について統計的に調べた。観測点は磁気緯度62°、L値4.6に位置し、磁力線を介して磁気赤道付近で静穏時のプラズマポーズと交わるサブオーロラ帯に位置する。これまでの研究からこの観測点では、内部磁気圏のプラズマポーズ付近で発生したEMIC(electromagnetic ion cyclotron)波動がリングカレントイオンを共鳴散乱した結果、孤立プロトンオーロラとPc1地磁気脈動が同時に出現するという観測結果が見出されている[Sakaguchi et al.,2007]。今年度は主に孤立プロトンオーロラとPc1地磁気脈動の関連性について統計的解析を行った。1年間の観測データから、孤立プロトンオーロラアークが出現するときは、常にHe^+帯のサイクロトロン周波数のPc1地磁気脈動が同時に発生しているということ、孤立プロトンオーロラの出現する緯度とPc1地磁気脈動の周波数には相関があり、出現緯度が低いほどPc1地磁気脈動の周波数が高くなることが分かった。これはサイクロトロン周波数が地球の固有磁場強度に比例するため、L値の低い場所で発生したEMIC波動ほどその周波数が高くなるためと考えられる。この事実は、EMIC波動の発生領域と孤立プロトンオーロラのダイナミクスが磁気フラックスチューブで密接に連結していること示す。孤立プロトンオーロラの形状が緯度方向に230km、経度方向に250-800kmと狭い範囲に限定されることから、EMIC波動によるプロトンの消失は内部磁気圏で非常に局所的であることを示唆する。本研究は、直接観測の困難な内部磁気圏の波動粒子相互作用が、空間的に局在化しているという描像をオーロラの2次元画像から初めて明らかにした。この結果は、米国地球物理学会師(Jornal of Geophysical Research)から審査論文として出版されている[Sakaguchi et al.,2008]。当年は、カナダでTHEMIS-ground同時観測キャンペーンを実施し、全天TVカメラと狭視野カメラを用いオーロラの高速撮像を行った。観測はカナダのFort Smith(北緯60゚,東経248゚)とGillam(北緯56゚,東経265゚)の2ヶ所で行った。このキャンペーン期間中に観測対象であったオーロラサブストームがGillam観測点の上空で発生し、サブストーム開始時のオーロラの光のダイナミクスを撮像する事に成功した。この貴重な観測データを解析した結果、オンセットオーロラには特性波長がありそれが時間変化することが分かった。初期相で見られるオーロラはRayタイプで、時間と共に約40kmから約10kmへのカスケードする。その後、拡大相に移る直前に構造は約100kmに逆カスケードする。初期相の解析結果は、サブストーム開始時にDispersive Alfven wave (DAW)が増光領域に入射してきている事を示唆している。約100kmのスケールのオーロラから拡大相が始まるという解析結果は、磁気圏でのバルーニング不安定がサブストームを引き起こすという理論と一致する。これらの考察をもとに、大振幅のAlfven波動が磁気圏にFeedbackされた結果としてballonning不安定が磁気圏で誘発されサブストームのブレイクアップが発生するという考えを提唱した。[Sakaguchi et al., Angeo, 2009, Sakaguchi et al., GRL, 2009]
KAKENHI-PROJECT-08J08387
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08J08387
小学校算数と中学校数学の"つなぎ"に関する基礎的研究
中学入学後に急増する「数学嫌い」。この原因は、学習量の増加や学習内容が難しくなったことだけでは説明ができない。本研究では酒井朗等の「学校適応」研究が指摘した「中1から中2にかけて起こる『学校不適応』」に着目し、公立の小中一貫校と附属の小学校・中学校の小中連携研究にコミットし、算数・数学における「中1ギャップ」の表れ方について分析を試みた。数学の授業でも中1から中2にかけて「考えようとしない」「正解が出ればそれでいい」「結果がよければそれでいい」とする生徒が増えることをつきとめた。この背景には中学校の数学の授業があり、中学校の授業改革が求められる。中学入学後に急増する「数学嫌い」。この原因は、学習量の増加や学習内容が難しくなったことだけでは説明ができない。本研究では酒井朗等の「学校適応」研究が指摘した「中1から中2にかけて起こる『学校不適応』」に着目し、公立の小中一貫校と附属の小学校・中学校の小中連携研究にコミットし、算数・数学における「中1ギャップ」の表れ方について分析を試みた。数学の授業でも中1から中2にかけて「考えようとしない」「正解が出ればそれでいい」「結果がよければそれでいい」とする生徒が増えることをつきとめた。この背景には中学校の数学の授業があり、中学校の授業改革が求められる。佐賀市教育委貝会が設立した小中一貫校である芙蓉小学校・中学校をフィールドとして、アクションリサーチという研究手法を使って、小学校算数と中学校数学の接続について研究を進めた。具体的には、ゼミの院2生が非常勤講師として中学校の授業を担当、院1生や学部4年生が小中の教室に教育ボランティアとして学校に入る、研究代表者が小中学校の教員との協議を重ね小6(6月)と中3(9月)生を相手にトピック授業を試みる等、そうした取り組みからさまざまな課題が見えてきた。一番の問題は、教科内容だけでなく授業方法をどうつないでいくかという課題である。例えば、芙蓉小中では、9年間を見通した算数・数学のカリキュラム(指導計画表)がつくられたが、小学校と中学校のどの学年の内容が繋がっているのかは明らかになったが、それぞれがどういうねらいをもって教えられるべきかという検討・協議がされてはいない。小学校の教師には「私は数学を専門に勉強してきたわけではないから、中学校の数学については分からない」という気持ちがあり、中学校の教師には「小学校と違い、教えなければならないたくさんの内容を限られた時間の中で消化するためには、小学校のような『子どもの意見を拾いながら、みんなで練り上げていく』という授業手法は中学校では採用しにくい」といり思いがある。教師の授業観か違うのである。これは、教師の子ども観、小学校と中学校の学校文化の違いに通ずる難題である。広島・呉や東京・品川の先行実践でも同様な指摘がされている。芙蓉小の5-6年生では、小中教員(小の学級担任と中学数学科教員)によるTT授業が行われている。小学校の教員は「自分たちが小学校で教えた内容が、中学校でどう広がり深められるのかの見通しが持てるようになった」と語り、中学校の教員は「小学6年生がこんな風に考えることができるというのが、発見であった」と語る。この意義は大きい。研究当初は、3年間で小中一貫9カ年の算数・数学カリキュフム試案が作れればと考えていたが、「中1ギャップ」をはじめとして、小学校・中学校間に横たわるさまざま問題・乖離について検討を進めながら、教科内容と授業方法の接続を考えていく。20年度は、「中1ギャップ」を中心に研究をすすめた。小中の算数・数学カリキュラムを考えるとき、小学校はともかく中学校の「学校文化」や教員の「授業観」「子ども観」は問題が大きい。「中学生の成長・発達はジグザグ・デコボコの過程である」ことを前提として、中学校の授業や指導は展開されなければならない。研究の成果は、認知科学や教育社会学の研究者による「中1ギャップ」研究から学んだことである。授業構成ひとつとってみても、小学校(構成主義)と中学校(詰め込み中心の中途半端な「教科主義」)は、容易につながらない。佐賀では「4-2-3制」と品川や呉が取り組んだ「4-3-2制」の両方が動いている。小中の連携を模索する各地域の課題や事情は異なる。市町教育行政はここに目が向かず、旧来型の「学力向上」に躍起である。今年度は、科研研究の最終年度である。小中の接続のマスターキーは、「中学校の授業改革」である。「受験と部活動」が顕在である中学校の改革は容易ではない。受験学力=真の学力、部活動=生活指導という信念は揺るぎない。地方行政も校長会も、「中央に追いつけ」「どこの県に学べ」というかけ声ばかりで、地域や学校が抱える事情や課題を見ようとはしない。小学校と中学校の「学校文化」の違いから切り込むことは難題だが、ここに切り込みたい。そもそも、戦後の教育改革の中で「どれだけ、9年間の義務教育」について議論されたのだろうか?「義務教育=市民を育てる教育」という発想がどれだけ地域に根付いているか?算数・数学の世界で言えば、「分数の教育」をどのように考えてきたのか?問題は山積みである。20年度は「中学校で分数を扱うとしたら...」という課題を立て、附属中学校で試行授業を試み、21年度に出版される教育誌に特集を組んでもらった。
KAKENHI-PROJECT-19530829
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小学校算数と中学校数学の"つなぎ"に関する基礎的研究
今年度は,附属小学校・中学校の連携研究、唐津市の第一中学校・長松小学校・天志小学校の小中連携に共同研究者として関わりながら,研究を進めることができた。附属小中の連携研究では、6月に小学校6年生から中学校3年生の4学年で『魔方陣』をテーマとした筆者が自ら授業を実施し、中1から中2にかけての中学生の学びの姿勢やモチベーションの変化について知ることができた。一つ答えが出さえすれば「なぜそうなるのか」その理由を考えようとしない中2生の実態は、酒井等の指摘した「中1ギャップ」「学校不適応」の背景にある課題を浮かび上がらせる結果になった。また、竹内が指摘した「自分くずし・自分つくり」と格闘する中学生の成長課題が見えてきた。同一の課題を教員養成課程に学ぶ大学3年生にもぶつけ、中1から中2にかけての数学の学習の在り方が、その後の彼等の数学観や数学学習観を決定づけるのではないかという仮説を立てることができた。この成果を7月の日本カリキュラム学会で発表した。また、長松小6年生と鹿島西部中1年生で実施した「奇数定理(偶数定理)」の授業からは、小学生の伸びやかで積極的に考えようとする学びの姿勢が,中学生になると受け身的な消極的な学びのスタイルに変化する事をつかんだ。この実践研究は現在投稿中である。ここから、中学校で展開される数学の授業の問題点が見えてくる。一つは、考えることよりも,正解を出す(点数を上げる)事への強いこだわりがあること。こうした姿勢は、中学生の生活、中学校の授業を通して醸成されること。知識・技能の習得型学力から活用・探求型の学力への転換、考えることのたのしさ・手応えを感じさせる授業の創出が求められる。本研究の成果の一部を、算数科教育法のテキストにまとめた。
KAKENHI-PROJECT-19530829
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19530829
子宮頸癌発生におけるホルモンによる癌遺伝子および増殖因子制御に関する研究
頸癌の発生においてHPVの感染が重要な意義を有していることを明らかにした。扁平上皮癌のみでなく、腺癌においてもその感染率は高かった.また,cell lineにおいてHPV陰性のものではp53癌抑制因伝子の異常発現が認められ,両者間に逆の相関がみられた.異形成例においてHPV感染の有無、その型、進展の状況について年令別に検討した。16/18型といった高危険群30-40歳代に多く見られ、その内増悪した例は40歳代に多く認められた。39歳代ではHPV陰性のものも多く、異形成の発症にこの性成熟期においては、HPV以外の種々の原因が関与する可能性が示唆された。また、この群は増悪する傾向が強く、頸癌発生にHPV以外の要因も無視出来ないことを示している。一方、性ホルモンの影響が少なくなった50歳以上の例では進展も軽快もしない存続例が多い。このことは、頸癌の発癌の促進あるいは抑制に性ホルモンが強く関与していることを明瞭に示している。正常子宮頸部よりのsecondly cultureの細胞にHPV18を導入して不死化細胞株を得た。円柱上皮由来のものの方が扁平上皮由来のものより異型度が強く、サイトラチンの発現は、従来の子宮頸部腺癌株HeKaと類似している。本細胞株は頸部腺癌の前癌状態のモデルになりうるものと考えられ、本株に対する各種増殖因子やホルモンの影響に関する研究を今後継続してゆくことによって、本研究の一層の展開が期待される。頸癌の発生においてHPVの感染が重要な意義を有していることを明らかにした。扁平上皮癌のみでなく、腺癌においてもその感染率は高かった.また,cell lineにおいてHPV陰性のものではp53癌抑制因伝子の異常発現が認められ,両者間に逆の相関がみられた.異形成例においてHPV感染の有無、その型、進展の状況について年令別に検討した。16/18型といった高危険群30-40歳代に多く見られ、その内増悪した例は40歳代に多く認められた。39歳代ではHPV陰性のものも多く、異形成の発症にこの性成熟期においては、HPV以外の種々の原因が関与する可能性が示唆された。また、この群は増悪する傾向が強く、頸癌発生にHPV以外の要因も無視出来ないことを示している。一方、性ホルモンの影響が少なくなった50歳以上の例では進展も軽快もしない存続例が多い。このことは、頸癌の発癌の促進あるいは抑制に性ホルモンが強く関与していることを明瞭に示している。正常子宮頸部よりのsecondly cultureの細胞にHPV18を導入して不死化細胞株を得た。円柱上皮由来のものの方が扁平上皮由来のものより異型度が強く、サイトラチンの発現は、従来の子宮頸部腺癌株HeKaと類似している。本細胞株は頸部腺癌の前癌状態のモデルになりうるものと考えられ、本株に対する各種増殖因子やホルモンの影響に関する研究を今後継続してゆくことによって、本研究の一層の展開が期待される。頚癌発生の時期は女性の性成熟期に一致し、その発生・進展に性ホルモンが関与する可能性が古くから推定されており、ホルモンレセプターを介しての細胞増殖への関与のほか、ホルモンの直接の癌遺伝子増幅や癌抑制遺伝子あるいは上皮増殖因子への影響など密接な関係がある。1)異形成上皮の経過観察例のうち、妊娠した症例についてその経過を詳細に観察した。その結果、妊娠期間中は異形成は軽快する傾向にあり、中にはほとんど消失するものもみられた。しかし、分娩後時間をおいて再び現れてくるものも多く、注意深い観察を続けることが肝要であった。このことは妊娠中の大量のエストロゲンまたはプロゲステロン環境は異形成の癌への進展をむしろ阻害するものと考えられた。2)異形成、上皮内癌、浸潤癌例についてEGFR、c-myc,rasの発現状況を免疫組織化学的に検討した。Ha-ras癌遺伝子は進行した癌、とくにリンパ節転移を有するような癌に陽性に出ることが多く、頚癌の発生というよりもむしろ進展に関与していることが示唆された。3)頚癌組織よりDNAを抽出してc-myc,rasなどの癌遺伝子について検討した結果、これら癌遺伝子の過剰発現が証明された。4)ヒト子宮頚部上皮細胞の初代培養法を確立し、これにパピローマウイルスDNAをかけ、異常増殖細胞系をうることが出来た。現在、これにホルモンを投与して増殖に及ぼすホルモンの影響を検討中である。1。数種の頸癌由来継代培養株に各種性ホルモンを投与し、増殖能の変化を検討したが、これのみでは著名な変化は認め得なかった。2。上記の細胞について、癌抑制遺伝子(P53)などの発現状況とその変化を免疫組織学的に検討中である。3。ヒト子宮頸部上皮細胞にHPV-DNAを導入した異常増殖細胞系を用いて、ホルモン投与による細胞増殖状況の変化を検索し、その間における癌遺伝子、癌抑制遺伝子および上皮増殖因子レセプターの変化を追及するのを目的とした。そのため、ヒト子宮頸部上皮細胞の初代培養法を確立し、これにパピローマウイルスDNAをかけ、異常増殖細胞系を得ることができた。現在、この培養細胞の増殖動態を追及するとともに、ホルモンを投与して増殖に及ぼすホルモンの影響を検討している。
KAKENHI-PROJECT-04671010
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04671010
子宮頸癌発生におけるホルモンによる癌遺伝子および増殖因子制御に関する研究
4。異形成例についてEGFR、c-myc,rasの発現状況や病変の変化を性周期、妊娠・分娩、ホルモン量などとの関係において検討した。異形成例においてHPV感染の有無、その型、進展の状況について年令別に検討した。16/18型といった高危険群は30-40歳代に多く見られ、その内増悪した例は40歳代に多く認められた。30歳代ではHPV陰性のものも多く、異形成の発症にこの性成熟期においては、HPV以外の種々の原因が関与する可能性が示唆された。また、この群は増悪する傾向が強く、頸癌発生にHPV以外の要因も無視出来ないことを示している。一方、性ホルモンの影響が少なくなった50歳以上の例では進展も軽快もしない存続例が多い。このことは、頸癌の発癌の促進あるいは抑制に性ホルモンが強く関与していることを明瞭に示している。正常子宮頸部よりのsecondly cultureの細胞にHPV18を導入して不死化細胞株を得た。円柱上皮由来のものの方が扁平上皮由来のものより異型度が強く、サイトケラチンの発現は、従来の子宮頸部腺癌株HeLaと類似している。本細胞株は頸部腺癌の前癌状態のモデルになりうるものと考えられ、本株に対する各種増殖因子やホルモンの影響に関する研究を今後継続してゆくことによって、本研究の一層の展開が期待される。
KAKENHI-PROJECT-04671010
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ヒト多能性幹細胞からのゼノフリー間葉系幹細胞誘導法と維持培養法の開発
本年度に実施した研究成果については下記の通りである。1神経堤細胞研究:昨年に引き続き、(A)誘導過程の分子作用機序の解明を目的とした網羅的遺伝子発現解析と、(B)化合物ライブラリースクリーニングによる維持培養法の開発を行った。(A)では誘導過程の各段階の遺伝子発現をRNAseqにより詳細に調べたところ、維持培養中にSOX10遺伝子が減少することが確認された。しかし本来の目的である誘導過程で重要な役割を担っているシグナル分子の同定を試みたが、解析からは候補分子は得られなかった。また昨年に引き続き行った(B)の化合物スクリーニングでも、維持培養可能な培地条件は同定されなかった。しかし、別研究経費で培養皿表面の気質の固さを調整した際にSOX10遺伝子の減少が一部抑制されるという予備的データを得たため、継続して研究を行う予定である。2神経細胞研究:同定済みの培養条件で継代培養した細胞に、神経への分化能が保持されていることを確認した。現在の培養条件で維持された細胞は神経幹細胞であることが確認された。3中胚葉細胞研究:昨年に引き続き(B)化合物ライブラリースクリーニングによる維持培養法の開発を行ったが、維持培養可能な培地条件を見出だすことはできなかった。中胚葉誘導について海外査読付き論文雑誌に論文として発表した。4間葉系幹細胞研究:神経堤細胞由来間葉系幹細胞と成体由来間葉系幹細胞の遺伝子発現比較を行った。神経堤細胞由来間葉系幹細胞のみで発現している特徴的な遺伝子を幾つか同定することに成功した。現在、それらの遺伝子が神経堤細胞由来間葉系幹細胞の特徴を決定しているのかどうか、機能的に検証中である。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。本年度に実施した研究成果については下記の通りである。1神経堤細胞研究:(A)誘導過程の分子作用機序の解明を目的とした網羅的遺伝子発現解析と、(B)神経堤細胞で特異的に発現するSOX10の遺伝子座にGFP遺伝子をノックインしたiPS細胞の作製を行った。網羅的遺伝子発現解析は、当初の予定では次世代シーケンサーによるRNAseqを予定していたが、専門家との協議の結果、今回はマイクロアレイを実施した。解析の結果、これまでに開発した神経堤細胞誘導法では、まずiPS細胞から神経外胚葉が誘導され、次に神経堤細胞が誘導されるという、実際の発生段階に沿った過程を経て誘導されることを示唆するデータが得られた。現在、さらなる解析を行っている。SOX10ノックインラインについては、作製に成功し、SOX10の発現をモニターする上で極めて有用な細胞として現在使用中である。2神経細胞研究:様々な候補化合物の組み合わせによる培養を行い、新しい誘導方法を探索した。現在はRT-PCRおよび抗体染色により神経系マーカーの発現を確認しているところである。3中胚葉細胞研究:(A)これまでに確立した誘導法の誘導過程を、網羅的遺伝子発現解析により解析した。網羅的遺伝子発現解析は、当初の予定では次世代シーケンサーによるRNAseqを予定していたが、専門家との協議の結果、今回はマイクロアレイを実施した。解析の結果、4日目に未分節体節中胚葉が、7日目に体節中胚葉が優位に誘導されていることが分かった。4間葉系幹細胞研究:安定した実験系の構築、および将来の細胞移植治療への応用を考慮し、誘導培地のゼノフリー化を行った。数種類の市販培地で、神経堤細胞から間葉系幹細胞を誘導することに成功した。網羅的遺伝子発現解析を次世代シーケンサーからマイクロアレイに切り替えた点以外はほぼ計画通りに進んでいる。本年度に実施した研究成果については下記の通りである。1神経堤細胞研究:(A)誘導過程の分子作用機序の解明を目的とした網羅的遺伝子発現解析と、(B)化合物ライブラリースクリーニングによる維持培養法の開発を行った。(A)では誘導過程の各段階のマイクロアレイの結果をパスウェイ解析等により調べ、特に誘導過程で重要な役割を担っているシグナル分子の同定を試みたが、解析からは候補分子は得られなかった。また(B)では小規模のスクリーニングにより維持培養可能な培地条件の同定を試みたが、有効な条件を見出だすことはできなかった。2神経細胞研究:今年度はマーカーノックインiPS細胞の作製を行い、SOX1遺伝子座にGFPをノックインしたSOX1-GFP iPS細胞の作製に成功した。この細胞を、昨年開発した新しい分化誘導方法にて分化誘導したところ、SOX1陽性の神経幹細胞が高効率で誘導されることが判明した。現在はRT-qPCR、網羅的遺伝子発現解析、抗体染色等によりマーカー発現を確認しつつ、分化誘導実験を行って神経幹細胞としての特性解析を行っている。3中胚葉細胞研究:(A)誘導過程の分子作用機序の解明を目的とした網羅的遺伝子発現解析と、(B)化合物ライブラリースクリーニングによる維持培養法の開発を行った。(A)では誘導過程の各段階のマイクロアレイの結果をパスウェイ解析等により調べ、特に誘導過程で重要な役割を担っているシグナル分子の同定を試みたが、解析からは候補分子は得られなかった。また(B)では小規模のスクリーニングにより維持培養可能な培地条件の同定を試みたが、有効な条件を見出だすことはできなかった。4間葉系幹細胞研究:神経堤細胞および中胚葉細胞から間葉系幹細胞への誘導、および分化能の検証を行い、間葉系幹細胞としての証明を行った。
KAKENHI-PROJECT-16H05447
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H05447
ヒト多能性幹細胞からのゼノフリー間葉系幹細胞誘導法と維持培養法の開発
神経堤細胞と中胚葉細胞についての維持培養条件の同定を試みているが、実施した規模の化合物スクリーニングでは候補となるような培養条件は得られなかった。一方、神経細胞については平成30年度実施予定であった新たな維持培養条件を見出すことに成功し、現在特性解析を行っている。よって一部の計画に遅れが生じていることから、やや遅れていると判断した。本年度に実施した研究成果については下記の通りである。1神経堤細胞研究:昨年に引き続き、(A)誘導過程の分子作用機序の解明を目的とした網羅的遺伝子発現解析と、(B)化合物ライブラリースクリーニングによる維持培養法の開発を行った。(A)では誘導過程の各段階の遺伝子発現をRNAseqにより詳細に調べたところ、維持培養中にSOX10遺伝子が減少することが確認された。しかし本来の目的である誘導過程で重要な役割を担っているシグナル分子の同定を試みたが、解析からは候補分子は得られなかった。また昨年に引き続き行った(B)の化合物スクリーニングでも、維持培養可能な培地条件は同定されなかった。しかし、別研究経費で培養皿表面の気質の固さを調整した際にSOX10遺伝子の減少が一部抑制されるという予備的データを得たため、継続して研究を行う予定である。2神経細胞研究:同定済みの培養条件で継代培養した細胞に、神経への分化能が保持されていることを確認した。現在の培養条件で維持された細胞は神経幹細胞であることが確認された。3中胚葉細胞研究:昨年に引き続き(B)化合物ライブラリースクリーニングによる維持培養法の開発を行ったが、維持培養可能な培地条件を見出だすことはできなかった。中胚葉誘導について海外査読付き論文雑誌に論文として発表した。4間葉系幹細胞研究:神経堤細胞由来間葉系幹細胞と成体由来間葉系幹細胞の遺伝子発現比較を行った。神経堤細胞由来間葉系幹細胞のみで発現している特徴的な遺伝子を幾つか同定することに成功した。現在、それらの遺伝子が神経堤細胞由来間葉系幹細胞の特徴を決定しているのかどうか、機能的に検証中である。当初の計画通り進める。神経堤細胞と中胚葉細胞については、当初の計画では平成30年度には同定された条件の機序の解析を実施する予定であったが、計画を変更し、平成30年度も同条件の同定を試みる。神経細胞については予定されていなかったが特性解析へと進む。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-16H05447
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培養歯胚に及ぼす種々の成長因子の影響
本研究では、まずマウス胎生15日目歯胚の器官培養の無血清あるいは血清含有培地にEGFを添加し、その影響を組織学的および免疫組織化学的に検索した。その結果、EGF添加無血清培地では、cervical loopの増殖および咬頭形成の抑制が認められ、EGF添加血清含有培地では、cervical loopの増殖や咬頭形成が一部回復するもののそれらの形態は極めて不規則であった。さらに培養を接続するとEGF添加群ではエナメル器の外側に象牙芽細胞を含む歯乳頭が存在する異常な形態を示す歯胚がみられた。これらの歯胚の細胞増殖活性をBrdUを用いて免疫組織化学的に検索したところ、EGF無添加群では内エナメル上皮の破溝形成部位およびcervical loop部位に増殖活性が限局していたが、EGF添加群では限局性が認められず内エナメル上皮および外エナメル上皮全体に取り込みが認められた。また、細胞外基質成分、細胞接着因子およびEGF受容体について免疫組織化学的に検索したところ、EGF添加無血清培地で培養した歯胚のように咬頭形成が抑制され平坦になっている歯乳頭には幼若な基質成分の存在が示唆された。次に、種々の成長因子(EGF,PDGF-AB,bFGF,aFGF,TGF-β1,HGF)を無血清培地に単独添加あるいは同時添加をしてその影響を検索した。その結果、単独添加においてはEGF添加群にのみ形態形成の抑制が認められ、他の成長因子では変化が認められなかった。同時添加においては、EGFとPDGF-ABあるいはTGF-β1の同時添加群でEGF添加血清含有培地群の歯胚と同様に異常な形態形成が認められたが、その程度は軽度であった。本研究の結果、主としてEGFが歯胚の上皮成分のコントロールされた増殖・停止機構を混乱させ、さらに血清に含まれるPDGF-ABやTGF-β1がそれを修飾して異常な形態形成を惹起することが示唆された。本研究では、まずマウス胎生15日目歯胚の器官培養の無血清あるいは血清含有培地にEGFを添加し、その影響を組織学的および免疫組織化学的に検索した。その結果、EGF添加無血清培地では、cervical loopの増殖および咬頭形成の抑制が認められ、EGF添加血清含有培地では、cervical loopの増殖や咬頭形成が一部回復するもののそれらの形態は極めて不規則であった。さらに培養を接続するとEGF添加群ではエナメル器の外側に象牙芽細胞を含む歯乳頭が存在する異常な形態を示す歯胚がみられた。これらの歯胚の細胞増殖活性をBrdUを用いて免疫組織化学的に検索したところ、EGF無添加群では内エナメル上皮の破溝形成部位およびcervical loop部位に増殖活性が限局していたが、EGF添加群では限局性が認められず内エナメル上皮および外エナメル上皮全体に取り込みが認められた。また、細胞外基質成分、細胞接着因子およびEGF受容体について免疫組織化学的に検索したところ、EGF添加無血清培地で培養した歯胚のように咬頭形成が抑制され平坦になっている歯乳頭には幼若な基質成分の存在が示唆された。次に、種々の成長因子(EGF,PDGF-AB,bFGF,aFGF,TGF-β1,HGF)を無血清培地に単独添加あるいは同時添加をしてその影響を検索した。その結果、単独添加においてはEGF添加群にのみ形態形成の抑制が認められ、他の成長因子では変化が認められなかった。同時添加においては、EGFとPDGF-ABあるいはTGF-β1の同時添加群でEGF添加血清含有培地群の歯胚と同様に異常な形態形成が認められたが、その程度は軽度であった。本研究の結果、主としてEGFが歯胚の上皮成分のコントロールされた増殖・停止機構を混乱させ、さらに血清に含まれるPDGF-ABやTGF-β1がそれを修飾して異常な形態形成を惹起することが示唆された。マウス胎仔15日目の培養歯胚にEGFを添加すると、無血清培地では、咬頭形成が抑制され、無咬頭あるいは極めて浅い咬頭となり、血清含有培地では、歯乳頭の中にエナメル器が不規則に増殖し異常な咬頭形成が惹起されることを報告し、これらの形態形成の抑制および異常がどのような機序で生じるのかを解明するために本研究を行った。まず、培養歯胚にBrdUを取り込ませて増殖活性を検索した。その結果、エナメル器においては、無血清および血清含有培地ともに、EGF無添加の対照群では、裂溝形成部位の内エナメル上皮に増殖活性が限局して認められ、EGF添加群では、限局性は認められず内エナメル上皮全体に活性が認められた。一方、歯乳頭においては、対照群では増殖活性が歯乳頭全体に認められ、EGF添加無血清培地ではエナメル器直下の歯乳頭細胞に対照群と同程度の活性が認められたが、歯乳頭中央部では極端に減少していた。EGF添加血清含有培地では、歯乳頭全体に活性が認められ、対照群よりわずかに上昇していた。次に、各種抗体およびレクチンを使用して細胞表面および細胞外基質分子の発現を免疫組織化学的に検索した。その結果、フィブロネクチン、コラ-ゲI,III型、複合糖質の染色性には差異は認められなかった。しかし、抗プロテオグリカン抗体の一つである2B6抗体の染色において、対照群では歯乳頭に強い陽性反応が認められたが、EGF添加無血清培地では、エナメル器直下の歯乳頭には陽性反応が認められるものの、中央部では著しく減少していた。
KAKENHI-PROJECT-08672108
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08672108
培養歯胚に及ぼす種々の成長因子の影響
EGF添加血清含有培地では、対照群と同様に歯乳頭全体に陽性反応が認められた。以上のことより、EGF添加による形態形成の抑制および異常には、内エナメル上皮の増殖部位の変化と歯乳頭中央部の増殖活性および細胞外基質分子の変化が関与しているように思われた。現在、同様な変化がどのような成長因子の添加の組合せによって起こるのかを解析中である。本研究では、まずマウス胎生15日目歯胚の器官培養の無血清あるいは血清含有培地にEGFを添加し、その影響を組織学的および免疫組織化学的に検索した。その結果、EGF添加無血清培地では、cervical loopの増殖および咬頭形成の抑制が認められ、EGF添加血清含有培地では、cervical loopの増殖や咬頭形成が一部回復するもののそれらの形態は極めて不規則であった。さらに培養を継続するとEGF添加群ではエナメル器の外側に象牙芽細胞を含む歯乳頭が存在する異常な形態を示す歯胚がみられた。これらの歯胚の細胞増殖活性をBrdUを用いて免疫組織化学的に検索したところ、EGF無添加群では内エナメル上皮の裂溝形成部位およびcervical loop部位に増殖活性が限局していたが、EGF添加群では限局性が認められず内エナメル上皮および外エナメル上皮全体に取り込みが認められた。また、細胞外基質成分、細胞接着因子およびEGF受容体について免疫組織化学的に検索したところ、EGF添加無血清培地で培養した歯胚のように咬頭形成が抑制され平坦になっている歯乳頭には幼若な基質成分の存在が示唆された。次に、種々の成長因子(EGF,PDGF-AB,bFGF,aFGF,TGF-β1,HGF)を無血清培地に単独添加あるいは同時添加をしてその影響を検索した。その結果、単独添加においてはEGF添加群にのみ形態形成の抑制が認められ、他の成長因子では変化が認められなかった。同時添加においては、EGFとPDGF-ABあるいはTGF-β1の同時添加群でEGF添加血清含有培地群の歯胚と同様に異常な形態形成が認められが、その程度は軽度であった。本研究の結果、主としてEGFが歯胚の上皮成分のコントロールされた増殖・停止機構を混乱させ、さらに血清に含まれるPDGF-ABやTGF-β1がそれを修飾して異常な形態形成を惹起することが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-08672108
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08672108
高品質・高機能イメージングのための構造的非線形画像分解型の新画像処理と画質制御
ディジタルカメラで撮影された画像データは,ディジタル化に伴う周波数折り返しひずみの影響や,画像の暗い部分に多く生じる信号依存性雑音,ベイヤーモザイク画像からの補間復元する際のひずみ,など種々な劣化を伴っている.雑音を含み,不完全な観測画像データから,観測により失われた高品質なカラー画像データを復元する手法は,ディジタルカラーカメラで不可欠の技術である.本研究では上記の問題点解決のため,新たな画像処理手法を考案し,その有効性を評価した.ディジタルカメラで撮影された画像データは,ディジタル化に伴う周波数折り返しひずみの影響や,画像の暗い部分に多く生じる信号依存性雑音,ベイヤーモザイク画像からの補間復元する際のひずみ,など種々な劣化を伴っている.雑音を含み,不完全な観測画像データから,観測により失われた高品質なカラー画像データを復元する手法は,ディジタルカラーカメラで不可欠の技術である.本研究では上記の問題点解決のため,新たな画像処理手法を考案し,その有効性を評価した.「非線形構造的信号/画像分析法の高度化」研究代表者らは,標準的なカラーイメージングシステムによって観測された信号やその出力画像の構造を分析する数学的手法として,乗算型BV-G-L2構造的非線形画像分解表現やBV-L1-L2構造的非線形画像分解表現を考案し,これによって信号依存性を有したノイズなどの妨害因子を分離可能であることを確認している.本年度は,この手法を,カラーチャンネル間の相互相関を考慮した画像分解表現が可能となるように高度化し,また高速計算アルゴリズムを開発することによって,高機能イメージングの観測劣化信号から画像を復元する処理や出力画像の分析に特化した構造的非線形画像分解表現法を構築した.「歪・ノイズの分離法と信号レベルの評価」高機能イメージングの観測信号に,本年度開発した,構造的非線形画像分解表現法を適用することで,観測劣化信号に含まれる種々の歪・ノイズを分離識別する手法を開発すると共に,イメージングシステムの観測性能を信号レベルで評価する手法を開発した.また,観測劣化信号に含まれる歪・ノイズの性質を分析し,その性質のモデル化を行なった.さらに,観測劣化信号から画像を復元生成するための「画像処理パイプライン」について,構造的非線形画像分解表現のコンセプトに基づき理論解析し,各種の高機能イメージングに適した新たな構成を導出した.1.歪・ノイズのモデルに基づく画像処理パイプラインの最適設計R.H.Chanらにより冗長Haar-Wavelet変換領域で画像復元を行う手法が提案された.この手法はディジタルカラーカメラ内での画像復元に適した手法である.しかしながら,この手法を多くの雑音を含む撮像画像に対して適用すると,雑音由来のアーチファクトが発生する.撮像画像に対する復元手順は3段階に分割できる.カラー補間処理,雑音除去処理,ボケ復元処理の3つである.本研究ではこの処理過程に沿って,高ISO感度撮像された(多くの雑音を含む)画像の復元法を検討した.その結果,カラー補間処理には雑音に対して頑健な線形補間法が適していること.次に,雑音除去法としては冗長Wavelet変換とColor Shrinkageを用いた雑音除去法が有効であること.最後にR.H.Chanらの冗長Haar-Wavelet変換領域で画像復元に改良を加えた画像復元法を適用することが有効であることを示した.2.冗長Wavelet変換とColor Shrinkageを用いた雑音除去法の開発3.JPEG圧縮画像の復元法の開発JPEG圧縮を雑音付加作用素と考え,冗長Cosine変換領域でのShrinkage処理とJPEG圧縮-復元過程を組み入れたBack-projection法とにより構成される反復型画像復元法を開発した.イメージングデバイス技術の進展によって,多画素化・高感度化・広ダイナミックレンジ化・高フレームレート化が実現されてきた.これらの高機能イメージングでは,観測時に重畳する各種の歪やノイズは,信号依存性や空間的パターンなどの複雑な性質を示す.また,イメージングデバイス製造時に種々の欠陥や斑が生じ,これらが最終的な画像品質に大きな影響を及ぼす.本研究課題では,上記のような各種の高機能イメージングを対象とし,研究代表者らが開発中である新しい信号・画像処理パラダイムである「構造的非線形画像分解表現」のコンセプトに基づき,各種の高機能イメージングの観測劣化信号から画像出力を生成する「画像処理パイプライン」を,既存の「画像処理パイプライン」とは異なる新規な構成へと組み替えることで,観測信号に含まれている欠陥・斑・歪・ノイズなどの妨害因子を除去しながら高品質の出力画像を復元する「画像処理パイプライン」を最適化する手法を開発した.具体的には主に以下の2つの検討課題の研究を行った.[冗長DCTとColorShrinkageを用いた画像復元型デモザイキング法の開発]光学ローパスフィルタ(OLPF)を用いたカラー撮像を想定し,OLPFによるぼけの復元機能を具備した超解像デモザイキンヴ法の開発を行った.OLPFの使用を前提としない既存のデモザイキング法と比較し,ひずみが目立たない画像を復元する手法を開発した.[冗長DCTとシフト不変Haarウェーブレット変換を用いたハイブリッド画像雑音除去法の開発]冗長DCTとシフト不変Haarウェーブレット変換を階層的に組み合わせたハイブリッド画像雑音除去法を開発する.また,ディジタルカラーカメラの信号依存性雑音に対しては,提案法が最高水準の雑音除去性能を示すことを実験的に明らかにする.
KAKENHI-PROJECT-21500182
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21500182
好中球由来のMMP9を介した急性大動脈解離の発症機構
大動脈解離(AAD)患者ではMMP9血中濃度が上昇し、患部血管手術標本ではMMP9が好中球と一致して上昇していた。BAPNを前投与したマウスにAngIIを投与してAADを惹起させるマウスモデルの検討から、MMP9阻害剤投与でAAD発症率が低下し、MMP9ノックアウトマウスではAADがほぼ完全に抑制された。好中球除去もAADの発症は減少した。AAD患部血管では酸化ストレスが有意に亢進し、酸化ストレス阻害剤投与でマウスAAD発症率とMMP9産生が減少した。血管平滑筋細胞と好中球の共培養から、血管平滑筋細胞をAngIIで刺激すると好中球のMMP9産生が亢進し、酸化ストレス阻害剤で抑制された。大動脈解離患者からの血液検体を収集しMMP9を測定し未破裂大動脈瘤患者、心筋梗塞患者、健常群と比較したところ、大動脈解離群では有意に血中MMP9が上昇していることが確認され、MMP9が大動脈解離のバイオマーカーとなりうる可能性が示唆された。さらにヒト大動脈解離患部血管においてはヒト未破裂大動脈瘤患部検体にくらべてMMP9が好中球に一致して有意に発現が上昇していることが免疫染色により示された。次に、大動脈解離発症の機序についての検討を動物モデルで行うため、BAPNを幼弱マウスに前投与して大動脈瘤を形成し、そこにアンジオテンシンIIを投与したところ投与後2時間以内には100%の確率で大動脈解離が惹起されるモデルを確立することに成功した。このモデルにMMP9の酵素活性を選択的に阻害するONOー4817を投与したところ有意に大動脈解離の発症が抑制された。またMMP9ノックアウトマウスに同様にBAPNを前投与してAngIIを投与したところ大動脈解離の発症は90%の確立で抑制された。以上より大動脈解離の発症にはMMP9が関与していることが示された。また大動脈解離の発症における好中球の寄与を検討するために上述のマウス大動脈解離モデルにGr1抗体を用いて好中球除去処理を行ったところ有意に大動脈解離の発症が抑制された。したがって、大動脈解離の発症には好中球由来のMMP9が関与していることが示唆された。大動脈解離患者からの血液検体を収集しMMP9を測定し未破裂大動脈瘤患者、心筋梗塞患者、健常群と比較したところ、大動脈解離群では有意に血中MMP9が上昇していることが確認され、MMP9が大動脈解離のバイオマーカーになりうる可能性が示唆された。さらにヒト大動脈解離患部血管においてはヒト未破裂大動脈瘤患部検体にくらべてMMP9が好中球に一致して有意に発現が上昇していることが免疫染色から示された。次に大動脈解離発症の機序についての検討を動物モデルで行うためにBAPNを幼弱マウスに前投与して大動脈瘤を形成し、そこにアンジオテンシンIIを投与して投与後二時間以内には100%の確率で大動脈解離が惹起されるモデルを確立することに成功した。このモデルにMMP9の酵素活性を選択的に阻害するONOー4817を投与したところ有意に大動脈解離の発症が抑制された。以上より大動脈解離の発症にはMMP9が関与している可能性が示された。また大動脈仮の発症における好中球の寄与を検討するために上述のマウス大動脈解離モデルにGr1抗体を用いて好中球除去処理を行ったところ有意に大動脈解離の発症が抑制された。したがって大動脈解離の発症には好中球由来のMMP9が関与することが示された。次にアンジオテンシンII同様の昇圧効果を持つノルエピネフリンをBAPN投与マウスに与えて大動脈解離の発症率を検討したがノルエピネフリンでは大動脈解離の発症は見られず、アンジオテンシンII投与マウスで見られた患部血管での酸化ストレス上昇も見られなかった。アンジオテンシンIIで刺激した血管平滑筋細胞を好中球を共培養すると、好中球由来のMMP9産生が上昇することが示された。MMP9ノックアウトマウスコロニーを拡張してMMP9ノックアウトマウスの幼若マウスにBAPNの前投与を行ったが大動脈瘤の形成には変化は見られなった。しかしながらこのMMP9ノックアウトマウスの大動脈瘤モデルにAngII投与を行うと、大動脈解離の発生は有意に抑制されることを確認した。マウスAADモデルにGr1抗体を投与して好中球除去を行った群でDHE染色を施行したところ酸化ストレスの減少が見られた。さらにヒト大動脈解離手術患部血管標本のDHE染色を行い、患部血管では未破裂大動脈瘤血管にくらべて有意に酸化ストレスが上昇していることを見出した。またマウス大動脈解離モデルに酸化ストレス阻害剤であるapocyninを投与したところAAD発症率の抑制が見られた。apocynin投与群モデルの血管のzymographyおよび組織染色ではMMP9産生がコントロールAAD群より低下していた。血管平滑筋細胞と好中球の共培養系の検討を行い、前年度の予備的検討で見られた血管平滑筋細胞のAngII刺激による好中球のMMP9産生亢進現象をさらに詳しくzymographyなどでも確認した。血管平滑筋細胞のAngII刺激の際に酸化ストレス阻害剤apocyninを加えることで、この共培養した好中球からのMMP9産生亢進
KAKENHI-PROJECT-25870718
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好中球由来のMMP9を介した急性大動脈解離の発症機構
現象は抑制された。大動脈解離(AAD)患者ではMMP9血中濃度が上昇し、患部血管手術標本ではMMP9が好中球と一致して上昇していた。BAPNを前投与したマウスにAngIIを投与してAADを惹起させるマウスモデルの検討から、MMP9阻害剤投与でAAD発症率が低下し、MMP9ノックアウトマウスではAADがほぼ完全に抑制された。好中球除去もAADの発症は減少した。AAD患部血管では酸化ストレスが有意に亢進し、酸化ストレス阻害剤投与でマウスAAD発症率とMMP9産生が減少した。血管平滑筋細胞と好中球の共培養から、血管平滑筋細胞をAngIIで刺激すると好中球のMMP9産生が亢進し、酸化ストレス阻害剤で抑制された。ヒト大動脈解離患者からの検体でMMP9が上昇していることが確認されたことは、当初のMMP9が大動脈解離のバイオマーカーとしての検討という点で実際にMMP9が有用である可能性を示唆する重要な結果である。また大動脈解離発症マウスモデルを用いてMMP9阻害剤により大動脈解離発症の抑制が見られたことはMMP9が大動脈解離発症機序に直接関与することを示唆しており、大動脈解離におけるMMPの関与を検討するという本研究の目的における重要な進展であると評価できる。血管医学今後はMMP9ノックアウトマウスの増産を行い、MMP9ノックアウトマウスでの大動脈解離発症率が抑制されることを確認検討する。さらにヒト大動脈解離検体においても酸化ストレスの測定を行い、マウスモデル同様酸化ストレスが患部検体で増強していることを確認する。マウス大動脈解離モデルに酸化ストレスの阻害剤を投与し、大動脈解離の発症が抑制されることを確認する。またマウス大動脈解離モデルにおいて好中球除去した血管では酸化ストレスが抑制されていることを確認する。MMP9のターゲットとして考えているTGFβが実際に患部血管で発現が上昇しているかどうか、またその下流シグナリングについてウェスタンブロッティングなどで検討する。ヒト大動脈解離患者からの血液検体と患部血管検体でMMP9が上昇していることが確認された。これは当初のMMP9が大動脈解離のバイオマーカーとしての意義の検討という点で、実際にMMP9が有用である可能性を示唆する重要な結果が得られたものである。またマウスにおいて大動脈解離を100%の確立で惹起させることができるモデルを確立できたことは、今後の大動脈解離の病態発症研究を進めるうえで大きな進展であるといえる。さらに、このマウスモデルを使ってノックアウトマウスや阻害剤によりMMP9の除去により大動脈解離の発症が抑制されるというデータが得られた点は、MMP9がバイオマーカーとしてだけでなく、大動脈解離の発症機序に直接関与していることを示唆するものであり、大動脈解離の発症機序におけるMMPの関与を検討するという本研究の目標における重要な進展であると評価できる。今年度使用予定であったマウスの飼育費およびマウス代金、使用薬剤が、マウス飼育室およびMMP9ノックアウトマウスの感染のため繁殖を一時中断せざるをえなかったため、動物実験が一時中断して少なく済んだため次年度使用額が生じた。今後は大動脈解離の発症機序におけるMMP9の作用機序について、今回樹立した動物モデルでの解離惹起因子として重要であることがわかったアンジオテンシンIIとの相互関係を中心に検討していく。具体的には、まず動物モデルを用いてノルエピネフリンでも同様に大動脈解離を惹起させることができるかどうかを検討する。
KAKENHI-PROJECT-25870718
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画一的維持管理ルールに基づくインフラマネジメント手法の開発
画一的な維持管理ルールを用いたインフラアセットマネジメント手法の開発に向け,既往研究の整理,数理的方法論の定式化,画一的維持管理ルールの適用可能なインフラの種類の整理などを平成30年度前半で実施した.その上で,維持管理ルールの最適化問題をヒューリスティックな手法により解くことを予定していたが,まずは,解の最適性が保証されるような小規模な社会基盤ネットワークにおける維持管理問題において問題を考え,最適化問題の特性を把握する必要があるとの問題意識に至った.そのため,従来の研究計画に若干の変更を加え,今年度は,小規模な社会基盤ネットワークにおける最適維持管理施策決定問題において,厳密解を求めるための方法論を開発し,画一的維持管理ルールを採用したときとの比較を行った.その際,単に小規模な社会基盤ネットワークにおける最適維持管理施策決定問題を考えるのではなく,i)維持・補修問題に加えてインフラの廃棄問題を考慮する,ii)交通量制御による劣化過程の制御を考慮する,という2点により,研究としての新規性,有用性を付加した上で研究を実施した.その成果は,複数の国内学会で既に発表しているととともに,査読付きジャーナルへの投稿準備が大詰めを迎えている状況である.また,大規模な社会基盤ネットワークにおける問題に関しても現在検討を進めており既に最適化問題の定式化は完了している.現在は,その問題の解法を検討するとともに,国内外の研究者に対して良い解法が無いかを問い合わせている段階である.当初の計画では,平成30年度に大規模なネットワークでの画一的維持管理ルールを用いた最適化問題の解法についても検討,開発予定であったが,「研究実績の概要」で説明した通り,まず,小規模なネットワークでの問題において問題の特性を把握することが望ましいと判断し,大規模なネットワークでの解法の検討は次年度へと延期した.しかしながら,上記の小規模なネットワークでの問題において,インフラの廃棄問題,交通量制御効果を考慮した方法論を開発でき,当初予定していなかった研究の進捗が見られた.これらのことを総合的に考慮し,「(2)おおむね順調に進展している」と判断する.平成30年度に得られた小規模なネットワークにおける知見を活用し,大規模のインフラ維持管理問題における画一的維持管理ルールの適用可能性を検討する.既に大規模なネットワークにおける画一的維持管理ルールを用いた維持管理最適化問題の定式化は済んでいるが,その解法に関する継続的検討が必要であり,そこに重点を置いて平成31年度の検討を進めてゆき,当初の最終目的であった,ネットワーク特性を考慮しつつも汎用性の高い画一的最適維持修繕ルールの決定を目指す.画一的な維持管理ルールを用いたインフラアセットマネジメント手法の開発に向け,既往研究の整理,数理的方法論の定式化,画一的維持管理ルールの適用可能なインフラの種類の整理などを平成30年度前半で実施した.その上で,維持管理ルールの最適化問題をヒューリスティックな手法により解くことを予定していたが,まずは,解の最適性が保証されるような小規模な社会基盤ネットワークにおける維持管理問題において問題を考え,最適化問題の特性を把握する必要があるとの問題意識に至った.そのため,従来の研究計画に若干の変更を加え,今年度は,小規模な社会基盤ネットワークにおける最適維持管理施策決定問題において,厳密解を求めるための方法論を開発し,画一的維持管理ルールを採用したときとの比較を行った.その際,単に小規模な社会基盤ネットワークにおける最適維持管理施策決定問題を考えるのではなく,i)維持・補修問題に加えてインフラの廃棄問題を考慮する,ii)交通量制御による劣化過程の制御を考慮する,という2点により,研究としての新規性,有用性を付加した上で研究を実施した.その成果は,複数の国内学会で既に発表しているととともに,査読付きジャーナルへの投稿準備が大詰めを迎えている状況である.また,大規模な社会基盤ネットワークにおける問題に関しても現在検討を進めており既に最適化問題の定式化は完了している.現在は,その問題の解法を検討するとともに,国内外の研究者に対して良い解法が無いかを問い合わせている段階である.当初の計画では,平成30年度に大規模なネットワークでの画一的維持管理ルールを用いた最適化問題の解法についても検討,開発予定であったが,「研究実績の概要」で説明した通り,まず,小規模なネットワークでの問題において問題の特性を把握することが望ましいと判断し,大規模なネットワークでの解法の検討は次年度へと延期した.しかしながら,上記の小規模なネットワークでの問題において,インフラの廃棄問題,交通量制御効果を考慮した方法論を開発でき,当初予定していなかった研究の進捗が見られた.これらのことを総合的に考慮し,「(2)おおむね順調に進展している」と判断する.平成30年度に得られた小規模なネットワークにおける知見を活用し,大規模のインフラ維持管理問題における画一的維持管理ルールの適用可能性を検討する.既に大規模なネットワークにおける画一的維持管理ルールを用いた維持管理最適化問題の定式化は済んでいるが,その解法に関する継続的検討が必要であり,そこに重点を置いて平成31年度の検討を進めてゆき,当初の最終目的であった,ネットワーク特性を考慮しつつも汎用性の高い画一的最適維持修繕ルールの決定を目指す.大規模なネットワークに対する計算負荷の大きい最適化問題の解法の開発を平成31年度へ延期し,そのための計算用PCの購入を平成31年度へ延期したため,その分の予算が次年度使用額として生じた.平成31年度に当該計算用PCを購入し当該次年度使用額を使用する予定である.
KAKENHI-PROJECT-18K13844
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K13844
抗体とT細胞が認識する新しい消化器癌抗原の単離と免疫遺伝子治療の解析
近年ヒトメラノーマにおいては、様々な癌抗原が単離され、新しい免疫療法の開発が進められているが、消化器系の癌では、まだ癌抗原は少数しか同定されていない。本研究では癌患者の血清で免疫系の標的となる癌抗原遺伝子を単離するcDNA発現クローニング法(SEREX法)を用いて、消化器癌に発現する癌抗原の単離を試みた。まず、免疫反応が起こりやすいメラノーマ検体を用いて、SEREX法を行ったところ、メラノーマだけでなく、腺癌や扁平上皮癌などの様々な消化器癌に発現し、多くの癌患者に抗体反応をおこす新規癌抗原KU-MELを単離した。次に消化器癌(膵癌と食道癌と大腸癌)患者の検体を用いて、癌抗原の単離を試みた。膵癌では5人の患者血清を用いて、膵癌細胞株と膵癌組織および乳癌・大腸癌細胞株に発現が見られるが、正常組織では精巣などの限局した組織だけにしか発現が認められない新規癌抗原KU-PAN1を単離した。これに対する抗体は膵癌患者血清には認めたが、健常人血清には認めなかった。食道癌では2人の患者血清を用いて検索を進めたが、すでにT細胞の標的抗原になることが判明しているCancer-testis抗原MAGE-4が単離された。大腸癌では1人の患者血清でスクリーニングを行い、大腸癌患者には抗体が検出されるが、健常人血清には認められない分子としてEIF4GとAHNAK nucleoproteinを同定した。食道癌などの多くの消化器癌患者の血清中にIgG抗体が検出されたが、健常人では検出されなかった。したがって、これらの新しく単離した癌抗原は、消化器癌の新しい診断法や治療法の開発に使用できる可能性があり、今後、その臨床応用を検討する予定である。近年ヒトメラノーマにおいては、様々な癌抗原が単離され、新しい免疫療法の開発が進められているが、消化器系の癌では、まだ癌抗原は少数しか同定されていない。本研究では癌患者の血清で免疫系の標的となる癌抗原遺伝子を単離するcDNA発現クローニング法(SEREX法)を用いて、消化器癌に発現する癌抗原の単離を試みた。まず、免疫反応が起こりやすいメラノーマ検体を用いて、SEREX法を行ったところ、メラノーマだけでなく、腺癌や扁平上皮癌などの様々な消化器癌に発現し、多くの癌患者に抗体反応をおこす新規癌抗原KU-MELを単離した。次に消化器癌(膵癌と食道癌と大腸癌)患者の検体を用いて、癌抗原の単離を試みた。膵癌では5人の患者血清を用いて、膵癌細胞株と膵癌組織および乳癌・大腸癌細胞株に発現が見られるが、正常組織では精巣などの限局した組織だけにしか発現が認められない新規癌抗原KU-PAN1を単離した。これに対する抗体は膵癌患者血清には認めたが、健常人血清には認めなかった。食道癌では2人の患者血清を用いて検索を進めたが、すでにT細胞の標的抗原になることが判明しているCancer-testis抗原MAGE-4が単離された。大腸癌では1人の患者血清でスクリーニングを行い、大腸癌患者には抗体が検出されるが、健常人血清には認められない分子としてEIF4GとAHNAK nucleoproteinを同定した。食道癌などの多くの消化器癌患者の血清中にIgG抗体が検出されたが、健常人では検出されなかった。したがって、これらの新しく単離した癌抗原は、消化器癌の新しい診断法や治療法の開発に使用できる可能性があり、今後、その臨床応用を検討する予定である。本年度はSEREX法を用いて癌患者のIgG抗体が認識する固形癌抗原の単離を試みた。膵癌細胞株cDNAライブラリーを3人の患者血清を用いてスクリーニングし、39個の陽性クローンを得た。このうち29個の塩基配列を決定し、既知分子15個と未知分子14個(ESTクローン11個、新規cDNA3個)を同定した。食道癌細胞株cDNAライブラリーを2人の患者血清を用いてスクリーニングし、51個の陽性クローンを単離した。膀胱癌細胞株cDNAライブラリーを同一患者血清でスクリーニングし、88個の陽性クローンを単離し、59個のクローンを同定した。そのうち頻回に検出されたクローンが2種類見つかり、また既知の癌遺伝子が一つ単離された。悪性黒色腫細胞株cDNAライブラリーを患者血清でスクリーニングし、5.1個の陽性クローンを単離し、46個の塩基配列を決定した。26個が既知分子であり20個が未知分子であった。一つのcDNAクローンは頻回に検出され、ESTデータベースにあるメラノサイト由来のcDNAとホモロジーがあった。この遺伝子はRT-PCR法により、悪性黒色腫細胞に強く発現し、腺癌や扁平上皮癌にも発現が認められたが、正常組織や血液系腫瘍には発現が認められなく、免疫療法の標的となる可能性が示唆された。次年度は癌抗原スクリーニングを継続し、個々の単離抗原の同定を行う。その中から免疫療法に使用できる可能性のある抗原に関して2次スクリーニングを行う。すなわち個々のcDNAの正常および各種癌組織での発現をRT-PCR法により検討し、また多数の正常者と各種癌患者血清による認識の有無を検討することにより、癌選択的に発現し、癌患者にだけ免疫応答が起こる癌抗原を選び出す。この基準に合う抗原が同定できた嬶合、in vitroT細胞誘導法を用いて、抗原に対するT細胞が誘導できるかどうかを検討する。
KAKENHI-PROJECT-10470264
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10470264
抗体とT細胞が認識する新しい消化器癌抗原の単離と免疫遺伝子治療の解析
本研究では、癌患者血清を用いて単離するcDNA発現クローニング法(SEREX法)による消化器癌抗原の単離を試みた。平成11年度は、前年度の癌抗原スクリーニングを継続するとともに、個々の単離抗原において、癌の診断・治療への臨床応用の可能性を検討するために、多数の健常者と各種癌患者血清による認識の有無と、正常と各種癌組織での発現をRT-PCR法とノーザン法により調べた。免疫反応が起こりやすいメラノーマ検体を用いてのクローニングにより、メラノーマだけでなく、腺癌や扁平上皮癌など様々な消化器癌に発現し、癌患者に抗体反応をおこす新規癌抗原KU-MEL1を単離した。次に消化器癌(膵癌と食道癌と大腸癌)患者の検体を用いて、癌抗原の単離を試みた。膵癌では5人の患者血清を用いて13個の既知遺伝子と7個の機能不明遺伝子を単離・同定した。そのうち、KU-PAN1は、膵癌患者血清に抗体が認められたが、健常人血清には認められず、RT-PCR法とノーザン法で解析したところ、膵癌細胞株と膵癌組織および乳癌・大腸癌細胞株にも発現がみられたが、正常組織では精巣などの限局した組織だけに発現が認められた。食道癌では2人の患者血清を用いて検索を進めたが、すでにT細胞の標的抗原になることが判明しているCancer-testis抗原MAGE-4が単離された。大腸癌では1人の患者血清でスクリーニングを行い、大腸癌患者には抗体が検出されるが、健常人血清には認められない分子としてEIF4GとAHNAK nucleoproteinを同定した。また、膀胱癌で単離したecalectin相同分子は、膀胱癌だけでなく、食道癌などの多くの消化器癌患者血清中にIgG抗体が検出されたが、健常人では検出されなかった。これらの新規同定癌抗原は消化器癌の診断や治療に応用できる可能性がある。
KAKENHI-PROJECT-10470264
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10470264
嚥下に関与する筋群のエネルギー代謝と筋病理学的研究
嚥下は、多くの筋が巧妙なタイミングで収縮と弛緩を行う事で遂行される。この嚥下機構はきわめて複難で、口腔期の咀嚼運動やその他の運動神経系、咽頭期における知覚神経系、脳幹の嚥下中枢、嚥下関与筋がきわめて協調的に機能することで成り立っている。今回、1)嚥下関与筋の筋線維構成、2)31P MRスペクトロスコピー(MRS)によるエネルギー代謝解析を行い、嚥下機構の解明に迫る一助としたい。1. MRSは、非侵襲的に筋繊維内の高エネルギー酸化合物の代謝を解析できる優れた方法である。MRSのクレアチンリン酸(Pcr)、無機リン酸(Pi)、ATPの吸収域を計算することにより解析可能で、咬筋肥大症や咬筋腱筋膜肥大症筋などの臨床に応用し、病変の評価に有用性が認められた。2.粉末飼料飼育(Soft Diet)実験:生後4週齢(離乳期)から長期間粉末試料で飼育し咀嚼筋に及ぼす影響を調べた。1)Soft Dietにより咬筋や内側翼突筋では、下記のような筋線維タイプの転換が観察された。タイプ2B→2A(強い力を必要としない)3.交感神経切除実験では、壊死、再生線維などヒト顎変形症や筋ジストロフィーと似たような異常所見がみられ、筋線維の分化、エネルギー代謝には交感神経か調節していることが示唆された。嚥下は、多くの筋が巧妙なタイミングで収縮と弛緩を行う事で遂行される。この嚥下機構はきわめて複雑で、口腔期の咀嚼運動やその他の運動神経系、咽頭期における知覚神経系、脳幹の嚥下中枢、嚥下関与筋がきわめて協調的に機能することで成り立っている。今回、1)嚥下関与筋の筋線維構成、dystrophin免疫組織、2)31P MRスペクトロスコピー(MRS)によるエネルギー代謝解析を行い、嚥下機構の解明に迫る一助としたい。【現在までの得られた結果】1. MRSは、非侵襲的に筋線維内の高エネルギーリン酸化合物の代謝を解析できる優れた方法である。MRSのクレアチンリン酸(Pcr)、無機リン酸(Pi)、ATPの吸収域を計算することにより解析可能で、咬筋肥大症や咬筋腱筋膜肥大症筋などの臨床に応用し、病変の評価に有用性が認められている。2.下顎前突症の咬筋生検による筋症理学的検討では、タイプ1優位、タイプ2萎縮の他、Myopathicな所見が得られた。3.顎矯正手術施行し咬合安定後、タイプ2線維は太くなり数も増え正常に近づく所見が観察された。4.家兎交感神経切除実験では、筋線維の分化、エネルギー代謝には交感神経が調節していることが示唆された。動物実駿:成犬を用い正常嚥下関与筋の筋線維構成を調べる。片側迷走神経咽頭枝切除により嚥下障害モデル動物を作成し、筋病理学的検討を行う予定である。嚥下は、多くの筋が巧妙なタイミングで収縮と弛緩を行う事で遂行される。この嚥下機構はきわめて複難で、口腔期の咀嚼運動やその他の運動神経系、咽頭期における知覚神経系、脳幹の嚥下中枢、嚥下関与筋がきわめて協調的に機能することで成り立っている。今回、1)嚥下関与筋の筋線維構成、2)31P MRスペクトロスコピー(MRS)によるエネルギー代謝解析を行い、嚥下機構の解明に迫る一助としたい。1. MRSは、非侵襲的に筋繊維内の高エネルギー酸化合物の代謝を解析できる優れた方法である。MRSのクレアチンリン酸(Pcr)、無機リン酸(Pi)、ATPの吸収域を計算することにより解析可能で、咬筋肥大症や咬筋腱筋膜肥大症筋などの臨床に応用し、病変の評価に有用性が認められた。2.粉末飼料飼育(Soft Diet)実験:生後4週齢(離乳期)から長期間粉末試料で飼育し咀嚼筋に及ぼす影響を調べた。1)Soft Dietにより咬筋や内側翼突筋では、下記のような筋線維タイプの転換が観察された。タイプ2B→2A(強い力を必要としない)3.交感神経切除実験では、壊死、再生線維などヒト顎変形症や筋ジストロフィーと似たような異常所見がみられ、筋線維の分化、エネルギー代謝には交感神経か調節していることが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-19659518
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19659518
iPS細胞技術を駆使したGM1ガングリオシドーシス新規治療薬開発
GM1ガングリオシドーシス患者由来iPS細胞を作成し、神経系細胞へと分化させることによって、in vitroで病態を解析することができる細胞モデル系を確立した。誘導した患者神経系細胞では、健常者に比べてGM1の過剰な蓄積がみられ、また、神経伝達物質の放出能が低下していることを見出した。本疾患の治療薬候補を探索する目的で、患者神経幹細胞とイメージングサイトメトリー法を組み合わせたハイスループット薬剤スクリーニング系を確立し、細胞内のGM1蓄積を抑制する化合物を数個同定した。私たちの構築した疾患モデルは、本疾患の病態解析および治療薬開発に非常に有用である。本研究は、GM1ガングリオシドーシス患者iPS細胞を用いて発見した新規治療薬候補の有効性を、本患者ニューロンを用いたin vitro系、および本疾患モデルマウス(BKOマウス)を用いたin vivo系によって評価するものである。まずin vivo系においては、BKOマウスに新規治療薬候補化合物を7日間腹腔内投与後、脳をサンプリングし、ガングリオシドを抽出、LC-MSを用いて定量した。投与したマウス群は、コントロールのマウス群に比べ、有意なGM1ガングリオシド量の減少がみられた。このことから、我々が発見した候補化合物は、マウスの血液脳関門を通過し、脳内に過剰に蓄積したGM1ガングリオシド量を低下させることが分かった。次に、FM1-43を用いた患者ニューロンのシナプス前終末の機能に候補化合物が影響するかを調べた。患者iPS細胞から神経幹細胞まで分化させ、さらにこれらの細胞をニューロンまで誘導させる。ニューロンまで分化させる際、候補化合物を添加しながら分化誘導させるものと、添加せずに誘導するものと分け、60日間培養した。その後、FM1-43で処理し、シナプス前終末の機能を解析した。その結果、化合物未処理の患者ニューロンは健常者ニューロンに比べ開口放出能が低下しているが、化合物処理を行った者ニューロンは健常者ニューロンと同等までシナプス前終末の機能が回復していた。このことから、我々が発見した候補化合物は、患者ニューロンの機能までも回復させることが分かった。28年度は熊本地震が発生し、研究再開まで時間がかかってしまったが、再開後は順調に計画通りの研究を行うことができた。また、候補化合物が本患者ニューロンを用いたin vitro系、および本疾患モデルマウス(BKOマウス)を用いたin vivo系、いずれの実験系においても有効性を示し、本疾患の新規治療薬開発につながる発見ができた。本研究は、GM1ガングリオシドーシス患者iPS細胞を用いて発見した新規治療薬候補の有効性を、本患者ニューロンを用いたin vitro系、および本疾患モデルマウス(BKOマウス)を用いたin vivo系によって評価するものである。本年度は、前年度に有効性を見出した候補化合物の作用メカニズムについて焦点を当ててて解析した。まず始めに、候補化合物の処理あり・なしでGM1ガングリオシドの生合成・分解にかかわる酵素群を網羅的にmRNAレベルで発現量を調べたところ、NEU1およびβ-GLUとよばれる分解酵素の発現が候補化合物の処理によって増加することが分かった。さらにNEU1およびβ-GLUの酵素活性を測定したところ、候補化合物の処理によって増加することが分かった。このことから、候補化合物の作用メカニズムのひとつとして、ガングリオシド系の分解経路の酵素であるNEU1およびβ-GLUを増加させることによって、GM1ガングリオシドを減少させていることが分かった。さらに、GM1ガングリオシドーシスを含む多くのライソゾーム病で報告のあるオートファジーの異常について、候補化合物の処理あり・なしによって調べたところ、候補化合物の処理によってオートファジーが促進されていることも分かった。これらのことから、有効性を見出した候補化合物は、ガングリオシド系の分解経路の酵素の発現上昇およびオートファジーの促進という2つのメカニズムを介して作用をしているということが示唆された。GM1ガングリオシドーシス患者由来iPS細胞を作成し、神経系細胞へと分化させることによって、in vitroで病態を解析することができる細胞モデル系を確立した。誘導した患者神経系細胞では、健常者に比べてGM1の過剰な蓄積がみられ、また、神経伝達物質の放出能が低下していることを見出した。本疾患の治療薬候補を探索する目的で、患者神経幹細胞とイメージングサイトメトリー法を組み合わせたハイスループット薬剤スクリーニング系を確立し、細胞内のGM1蓄積を抑制する化合物を数個同定した。私たちの構築した疾患モデルは、本疾患の病態解析および治療薬開発に非常に有用である。現時点で、我々が発見した候補化合物の詳しい作用メカニズムは分かっていない。今後は、遺伝子レベルの解析で、化合物の作用点を見つけ出し、化合物の安全性評価や、本疾患の病態解析につなげていく。細胞生物学当初購入を計画していた遠心濃縮装置(Thermo SCIENTIFIC, SPD111V-115、600千円)を代替することができる機器が、申請者が研究を行っている研究所の共通機器として使用可能となったため。次年度の遺伝子の網羅的解析に充てる予定である。
KAKENHI-PROJECT-16K19654
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銀河の撮像観測と分光観測を用いた修正重力理論への包括的な制限
本研究の目的は宇宙論の未解決問題であるダークエネルギーの性質を観測的に制限し、明らかにすることである。この問題を解決する新たな観測として、現在計画されている大型電波干渉計であるSquare Kilometre Array(SKA)による中性水素21cm線の観測が注目されている。SKAでは、宇宙再電離期以前(z>6)の構造形成の情報を得ることが出来ると期待されている。その一方で、観測的にダークエネルギーを制限するためには、高精度な観測量の理論モデルの構築が必要である。私は宇宙の晴れ上がり以前に光子が強く結合していたことに起因する暗黒物質に対するバリオンの超音速相対運動が構造形成に与える影響について研究を行った。この相対運動は小質量のハローの形成時期を遅らせることが知られている。また、宇宙で最初に誕生する星の性質や数に影響を与えるため、その後に続く銀河形成や将来観測で得られる観測量を議論する上で重要である。これまでに孤立系のハロー形成に超音速相対運動を加えたシミュレーションを行い、その結果を基に超音速相対運動の影響のモデル化を行った。本年度は、宇宙論的シミュレーションの結果を解析することでのバリオンと暗黒物質の間の超音速相対運動がより現実的な構造形成の中で与える影響を調べた。その結果、ハローが密集して形成される高密度領域では相対運動の影響が少なく、逆に低密度領域で顕著であることがわかった。さらに、孤立系のハロー形成モデルを拡張することで、超音速相対運動が与える影響の環境依存性を再現することに成功した。その理由として高密度領域ではバリオンが集まりにくくなる効果が弱まるためであることを示した。その他にも、低赤方偏移(z<3)にある大規模構造中の中性水素が発する21cm線に関してSKAによる観測可能性について研究した。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。本研究の目的ある銀河の観測を用いて修正重力理論を制限する上で、観測量に対応する密度揺らぎや速度を理論的に高精度に予測することが重要である。その手法として、宇宙論的N体シミュレーションがある。今年度の前半では、宇宙論的N体シミュレーションについて学び、N体シミュレーションから得られる物理量の一つであるダークマターハローの速度分散の非等方性とハローの形の非等方性について研究を行った。速度分散はハローの質量と重力定数で決まるため修正重力理論の制限に使えると考えられている。そして、大質量のハローでは速度分散が大きい方向とハローの長軸方向が揃っている一方で、小質量のハローでは相関がないことがわかった。本年度の後半は宇宙論的N体シミュレーションを用いて、ダークマターとバリオンの間の超音速相対速度が構造形成に与える影響について研究した。次世代電波干渉計で観測できると期待されている中性水素の空間分布から、現在の観測よりも高赤方偏移の密度揺らぎや速度の情報を得ることができる。高赤方偏移では非線形効果が小さいため、より小スケールの構造を使った修正重力理論の制限について議論することができると期待されている。その一方で高赤方偏移ではバリオンはダークマターに対して超音速の相対速度を持っている。この相対速度は小スケールの構造形成を抑制することが知られている。この抑制を見積もることは小スケールの構造を使った宇宙論の議論において重要である。バリオンが相対速度を持っている場合の球対称崩壊モデルにおけるダークマターの崩壊時刻の変化を定量的に求めた。そして、z=10の小質量のハローの数密度が15%程度減少することがわかった。昨年度から次世代電波干渉計を想定し、宇宙初期の小スケールの構造を使った修正重力理論の制限方法の開発を目的に研究を行っている。修正重力理論を制限するためには観測量である初代星やミニハローの個数を精度良く求める必要がある。近年、バリオンとダークマター間の超音速相対速度が小スケールの構造形成に影響を与えることが指摘された。この効果を見積もることは、加速膨張の起源を解明するためだけではなく、その後に続く銀河形成や宇宙の再電離を理解するうえで重要である。私は球対称崩壊モデルを拡張することで超音速相対速度が構造形成に与える影響について研究を行った。重力多体系シミュレーションを用いてダークマターハローの形成時刻の変化を見積もった。その結果、形成時刻の変化はダークマターハロー内のバリオン質量の時間変化を考慮することで準解析的にシミュレーションの結果を説明できることを示した。さらに、形成時刻の変化のモデルを作り、ハローの数密度を計算するときに組み込むことで宇宙初期における小質量のハローの数が半分以下になることがわかった。これらの結果は論文にまとめ学術誌に投稿した。その一方で、球対称崩壊モデルを拡張して求めたハローの数の変化は、大規模シミュレーションから直接求めたハローの数の変化に比べて過剰に相対速度の影響を見積もり過ぎていることがわかっている。その原因として、球対称崩壊モデルでは孤立系の球の時間発展を考えているため、球の周りを取り巻く環境の影響が含まれていないためだと考えている。実際に大規模シミュレーションの結果から、相対速度の影響が低密度の領域で顕著であることを確かめ、また、球対称崩壊モデルに環境効果を取り入れることに成功した。現在は環境効果を含んだ相対速度によるハローの数の変化を見積もるモデルの開発を行っている。宇宙の加速膨張を説明する理論を解明するために、次世代電波干渉計を用いて重力理論のテストを目的に研究を行っている。
KAKENHI-PROJECT-14J02667
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銀河の撮像観測と分光観測を用いた修正重力理論への包括的な制限
宇宙初期の構造形成で重要であるとダークマターとバリオンの間の超音速相対速度が与える影響をモデル化することができ、学術論文を一本投稿することができた。しかし、シミュレーションの解析に時間がかかり研究がやや遅れている。本研究の目的は宇宙論の未解決問題であるダークエネルギーの性質を観測的に制限し、明らかにすることである。この問題を解決する新たな観測として、現在計画されている大型電波干渉計であるSquare Kilometre Array(SKA)による中性水素21cm線の観測が注目されている。SKAでは、宇宙再電離期以前(z>6)の構造形成の情報を得ることが出来ると期待されている。その一方で、観測的にダークエネルギーを制限するためには、高精度な観測量の理論モデルの構築が必要である。私は宇宙の晴れ上がり以前に光子が強く結合していたことに起因する暗黒物質に対するバリオンの超音速相対運動が構造形成に与える影響について研究を行った。この相対運動は小質量のハローの形成時期を遅らせることが知られている。また、宇宙で最初に誕生する星の性質や数に影響を与えるため、その後に続く銀河形成や将来観測で得られる観測量を議論する上で重要である。これまでに孤立系のハロー形成に超音速相対運動を加えたシミュレーションを行い、その結果を基に超音速相対運動の影響のモデル化を行った。本年度は、宇宙論的シミュレーションの結果を解析することでのバリオンと暗黒物質の間の超音速相対運動がより現実的な構造形成の中で与える影響を調べた。その結果、ハローが密集して形成される高密度領域では相対運動の影響が少なく、逆に低密度領域で顕著であることがわかった。さらに、孤立系のハロー形成モデルを拡張することで、超音速相対運動が与える影響の環境依存性を再現することに成功した。その理由として高密度領域ではバリオンが集まりにくくなる効果が弱まるためであることを示した。その他にも、低赤方偏移(z<3)にある大規模構造中の中性水素が発する21cm線に関してSKAによる観測可能性について研究した。本研究の目的である修正重力理論の制限を議論する行う上で重要な要素である、宇宙論的N体シミュレーションを用いた研究を進めることができた。また、次世代電波干渉計で得られる高赤方偏移中性水素の空間分布を用いた修正重力理論の制限という新しい視点の基礎となる研究を行うことができた。引き続きダークマターとバリオンの間の超音速相対速度が宇宙初期のミニハローの数密度に与える影響に関して研究を行う。また、重力理論理論がハローの数密度に与える影響を見積もることで、次世代観測を用いた修正重力理論の制限の可能性を予想を行う。28年度が最終年度であるため、記入しない。次世代電波干渉計で得られる高赤方偏移中性水素の空間分布を使った場合の修正重力理論の制限を見積もる。また、銀河の撮像観測と分光観測から得られる情報と次世代電波干渉計から得られる情報の関係性について研究を行う。さらに、修正重力理論における非線形領域の観測量を見積もる方法を開発すると共に、実際に得られている観測データを扱い研究を行う。
KAKENHI-PROJECT-14J02667
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2方向地震入力を受ける高強度鉄筋コンクリート造立体接合部の非線形有限要素解析
本研究では、3次元有限要素(FEM)解析プログラムを用いて、高強度鉄筋コンクリート(RC)造内柱・梁接合部2体((1)直交梁なし平面接合部、(2)直交梁付き立体接合部)の非線形解析を行った。2体の解析対象試験体のうち、直行梁付き立体接合部に対しては、1方向地震力だけでなく2方向地震力を模擬した解析も行った。解析には、申請者の研究室で開発されてきた、3次元非線形FEM解析プログラムを使用し、更に高強度鉄筋コンクリート部材を精度良く解析するために、以下の解析モデルを追加、更新した。コンクリートの構成則モデル・圧縮コンクリートの初期剛性→Fafitis-Sharモデル・ひび割れたコンクリートの圧縮強度低減モデル→飯塚、野口モデル以上の解析結果を用いて、立体内柱・梁接合部の破壊状況、履歴特性、鉄筋ひずみについて実験試験体の検証を行った。前述の2本とも、破壊状況、履歴特性、鉄筋ひずみなどは、解析結果が実験と良好な対応を示した。また、接合部に直交梁が付くことにより、接合部コンクリートが拘束され、接合部のせん断強度は増大する傾向がみられた。更に、実験では検討が難しいコンクリート圧縮ストラットの幅や応力状態について、1方向および2方向解析から得られた接合部内コンクリート応力を用いて比較、検討を行った。今後は、コンクリート圧縮ストラット機構を定量的に把握し、直交梁による立体的なせん断抵抗機構について考察を行い、既往のマクロモデルやせん断耐力式の検討を行う予定である。本研究では、3次元有限要素(FEM)解析プログラムを用いて、高強度鉄筋コンクリート(RC)造内柱・梁接合部2体((1)直交梁なし平面接合部、(2)直交梁付き立体接合部)の非線形解析を行った。2体の解析対象試験体のうち、直行梁付き立体接合部に対しては、1方向地震力だけでなく2方向地震力を模擬した解析も行った。解析には、申請者の研究室で開発されてきた、3次元非線形FEM解析プログラムを使用し、更に高強度鉄筋コンクリート部材を精度良く解析するために、以下の解析モデルを追加、更新した。コンクリートの構成則モデル・圧縮コンクリートの初期剛性→Fafitis-Sharモデル・ひび割れたコンクリートの圧縮強度低減モデル→飯塚、野口モデル以上の解析結果を用いて、立体内柱・梁接合部の破壊状況、履歴特性、鉄筋ひずみについて実験試験体の検証を行った。前述の2本とも、破壊状況、履歴特性、鉄筋ひずみなどは、解析結果が実験と良好な対応を示した。また、接合部に直交梁が付くことにより、接合部コンクリートが拘束され、接合部のせん断強度は増大する傾向がみられた。更に、実験では検討が難しいコンクリート圧縮ストラットの幅や応力状態について、1方向および2方向解析から得られた接合部内コンクリート応力を用いて比較、検討を行った。今後は、コンクリート圧縮ストラット機構を定量的に把握し、直交梁による立体的なせん断抵抗機構について考察を行い、既往のマクロモデルやせん断耐力式の検討を行う予定である。
KAKENHI-PROJECT-08750679
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道具組成からみた弥生時代瀬戸内地域における地域性成立と交流・鉄器化進行過程の研究
石器と鉄器の組成,サヌカイト製打製石器,剥片剥離技術,伐採斧,工具石器,特徴的な石質の磨製石器原材について,瀬戸内地域各地で比較した。その結果,東部瀬戸内では,サヌカイトの利用が圧倒的であるために,その流通が地域内での情報伝達の主要ルートを形成し,これに乗る形で大陸系磨製石器,鉄器と鉄器製作技術の移動が起こっていたと考えられた。一方,西部瀬戸内では,サヌカイトの流通量と役割がそこまで大きくなかったため,各種の石斧,特徴的な石質の磨製石器原材,サヌカイト,黒曜石,鉄器とそれらに関する技術が,別個に移動することで,地域内での交流と情報伝達のルートが重層的に形成されていた可能性が明らかとなった。本年度の研究成果は,本年度対象地域である山口・広島・岡山県域についての石器鉄器データベースの作成と,資料の実物観察調査による所見である。石器鉄器データベースについては,山口県域では網羅的に,広島・岡山県域では地域の拠点的な遺跡について作成した。テキスト情報の一覧表ベースでは概ね完成したが,実測図の収録に関しては完了していない。実物観察調査の所見としては,山口県域東部における石器組成,関門地域における特徴的な剥片剥離技術の存在,岡山県岡山市域における特徴的な剥片剥離技術の存在の指摘などが主要な成果である。山口県域東部では,前期から中期初頭にかけて,農具・工具・狩猟具ともに種類も量も豊富な石器組成を示すが,県域東部および広島県域にかけては石器組成の内容は相対的に貧弱である。一方,岡山県域では,石器組成の内容は種類・量ともに充実しており,特にサヌカイト製の打製石器の内容に特徴が見られる。剥片剥離技術に注目すると,珪質岩を石材として,円礫を分割した石核から不定型な剥片を剥ぎ取り,これを素材として小型の石錐を製作する技術工程が,山口県域東部から北九州市域側を含めた関門地域に広がることを確認できた。また,安山岩や硬質頁岩を石材として,礫を分割した石核から不定型な中型の剥片を剥ぎ取り,不定型な剥片石器を製作する技術工程も見られた。このような技術工程は,前期末中期初頭の時期に,さらに関門地域を越えて広がるようであり分布範囲の捕捉が今後の課題である。岡山市域では,サヌカイトの不定型剥片を用いた楔形石器が多数見られ,剥片剥離技術および生業との関わりが注目される。今後さらに検討が必要である。鉄器については,初現期の鋳造鉄器再利用品の量,展開期における器種の内容,発展期における鉄鏃とヤリガンナの型式組成によって地域性を捉えることができるが,従来の所見を追認するに止まっている。遺物データベースについては,昨年度から引き続いての山口県では補足的に,広島県では網羅的に,岡山県では地域の拠点となるような遺跡について重点的に作成した。また,四国地方の愛媛・香川県についても網羅的に作成を開始した。テキスト情報の一覧表ベースでは概ね完成したが,実測図の収録は,継続して来年度も行う。各地域の特色については,関門地域の石斧製作においては,敲打工程に着目することで地域的な特色を抽出できる可能性が見出せた。北九州市域と関門海峡を挟んだ山口県西端部とでは,敲打工程の比重に違いが見られ,使用石材石質の違いに起因すると推測できた。岡山県南方遺跡では,工具として使用された石器のバリエーションの豊富さを指摘できる。敲石・クサビ状石器・楔形石器・磨石などがその代表的な器種である。石器製作や木材加工,さらには動物の骨や角の食用や骨角器への利用など,生業の様々な場面で使用されたことを物語ると推測される。愛媛・香川県域などの瀬戸内海の四国北岸地域では,金山・五色台などのサヌカイト原産地を擁するため,石器組成中のサヌカイト製打製石器の比率や器種構成,さらには剥片剥離および利用技術により地域性を指摘できた。サヌカイト製打製石器とサヌカイト利用の占める位置は,当然ながら原産地からの距離との相関が強く,また愛媛県域では,在地石材とサヌカイトの利用状況の拮抗に着目することで,集落間の関係を抽出することができる可能性を見出した。更に鉄器については,断片的な出土状況ではあるが,剥片石器類の組成の地域的な変移を補完するように存在しているようにも見えるが,資料数が少ない遺跡が多くまだ断言はできない。以上は何れも予察的で,これから更に資料の裏付けを充実することで,確実性を高めて行く必要がある。本年度は,石器鉄器データベース(石器および鉄器のテキスト情報ならびに実測図画像のデータベース)の作成において,研究補助のウェイトを大きくしたため,全体の作業を順調に展開することができた。その結果,中国地方では山口県・広島県・岡山県,四国地方では愛媛・香川県についてデータベースの作成を進め,地域的な特徴を抽出することができた。このようなことから,全体としては「おおむね順調に進展している」と評価した。遺物データベースについては,広島県では網羅的に,岡山県,香川県では地域の拠点となるような遺跡について重点的に作成した。また,島根県,兵庫県では既存の集成資料を参考としながらポイントとなる遺跡について作成した。テキスト情報の一覧表ベースでは概ね完成したが,実測図の収録については不完全な部分を残している。
KAKENHI-PROJECT-26370896
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道具組成からみた弥生時代瀬戸内地域における地域性成立と交流・鉄器化進行過程の研究
各地域の特色については,関門地域の石斧製作においては,昨年着目した敲打工程のみならず第2工程の剥離においても,地域的な特色を抽出できる可能性が見出せた。北九州市域と関門海峡を挟んだ山口県西端部とでは,剥離工程により生じる石器素材の形態に違いが見られ,使用された石材石質の違いによって選択された剥離技術に違いが生じると推測できた。兵庫から大阪にかけての瀬戸内地域の最東端では,サヌカイト石器における器種および石器技術のバリエーションの豊富さを改めて確認した。各種の大きさの素材剥片を自在に獲得していることが分かるが,そのシステムについてまで踏み込むことはできなかった。全体的なこととしては,伐採斧について在地製作と搬入品の組み合わせに注目した。搬入品にも50km程度の中距離の地点から搬入されるものと,50kmを越える遠距離の地点から搬入されるようなものが混在する場合もみられ,その組成が地域的な特徴となる。また,打製石器の原材となる石材について,東部瀬戸内ではサヌカイトが圧倒的で,サヌカイトの流通が情報伝達の主要ルートを形成し,それに乗る形で伐採斧や加工斧の移動や鉄器技術の移動が起こっていたと考えられるのに対して,西部瀬戸内では,サヌカイトの役割がそこまで大きくなかったため,伐採斧,加工斧,鉄器に関する情報や技術が,それぞれ個別に別個の経路を持ちながら重層的な情報伝達のルートが形成されていた可能性が推定できた。石器と鉄器の組成,サヌカイト製打製石器,剥片剥離技術,伐採斧,工具石器,特徴的な石質の磨製石器原材について,瀬戸内地域各地で比較した。その結果,東部瀬戸内では,サヌカイトの利用が圧倒的であるために,その流通が地域内での情報伝達の主要ルートを形成し,これに乗る形で大陸系磨製石器,鉄器と鉄器製作技術の移動が起こっていたと考えられた。一方,西部瀬戸内では,サヌカイトの流通量と役割がそこまで大きくなかったため,各種の石斧,特徴的な石質の磨製石器原材,サヌカイト,黒曜石,鉄器とそれらに関する技術が,別個に移動することで,地域内での交流と情報伝達のルートが重層的に形成されていた可能性が明らかとなった。根本的な原因は,石器鉄器データベース(石器および鉄器のテキスト情報ならびに実測図画像のデータベース)作成の遅れによる。これは,実測図の収録にかかる発掘調査報告書のスキャニング作業に予定外の時間がかかっていることが主な原因である。石器鉄器データベースの作成が本研究の基本となる作業なので,質を落とすことができないため慎重な作業を行っている。当初の予定では,主に年度の前半に行うこととしていたが,年度の後半になっても作業を継続した。この作業の遅れが原因となり,主に年度の後半に予定していた資料の実物調査を広範囲に行うことができなかった。資料の実物調査は,ピンポイント的なものになってしまうとともに,予定していた内容の全てを実施することができなかった。一方で,そのようなピンポイント的な調査の中でも,地域性や時代性を抽出するための特徴的な事例を確認することができたことは一定の成果であると認められる。このようなことから,全体としては「やや遅れている」と評価した。来年度は最終年度となるので,全体の進行に遅れが生じないように実施計画をなるべく先取りして進めるように努力する。また,現時点までで得られている成果はまだまだ断片的なもの,あるいは予察的なものも含まれているので,それらの所見を手がかりとして他地域からの視点や関連資料の充実を計り,総合的に検討して確実な成果に結びつけたい。特に注目されるのは,剥片石器をめぐる石材石質と剥片剥離技術,石材利用の形態であり特に注目して見てゆく。
KAKENHI-PROJECT-26370896
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リンパ球増殖試験を応用した金属アレルギーのin vitro検査法の開発
金属アレルギーのin vitro検査法を開発するため、リンパ球増殖試験、感作マウスの作成および蛋白分画別イオン結合率に関する実験を行い、以下の結果を得た。1.Hg^<2+>培養液へ2-MEを添加した場合のS.I.値は1.5以下で添加Hg^<2+>濃度の影響をほとんど受けないが添加しない場合はHg^<2+>濃度13μMおよび25μMのS.I.値は4.5以上になった。これはHg^<2+>のリンパ球に対するmitogenic作用と2-MEの作用によると考えた。2.ヒト血清を用いた場合、Hg^<2+>では感作の有無による効果は培養時間により異なり、144時間培養までは感作者群のS.I.値が非感作者群の当該値より有意に高かった。3.Co^<2+>の場合、S.I.値は添加濃度が低すぎても高すぎても小さく、至適培養濃度は1.3μ13μMの範囲にあることがうかがえた。4.Co^<2+>に対する感作者群と非感作者群のS.I.値は有意に異なり、至適培養時間は約120時間であった。5.S.I.値の分析結果から、感作の有無がS.I.値の変動に及ぼす効果の大きさ(寄与率)は、Hg^<2+>の場合は全体の0.8%、Co^<2+>の場合は約20%であった。6.水銀塗布24時間後の上皮細胞浮遊液を皮下または腹腔内によりHg^<2+>感作マウスを作成することに成功した。7.Hgcl^2塗布24時間後のマウス上皮細胞の蛋白画分別Hg^<2+>結合率試算値はミクロソーム(40%)、ミトコンドリア(33%)、ライソゾーム(23%)であった。8.以上の結果は、LPTはCo^<2+>に関するin vitro検査として実用的手段であること、Hgなど他の金属イオンに対してはさらに検索を断続する必要があることを示したものである。金属アレルギーのin vitro検査法を開発するため、リンパ球増殖試験、感作マウスの作成および蛋白分画別イオン結合率に関する実験を行い、以下の結果を得た。1.Hg^<2+>培養液へ2-MEを添加した場合のS.I.値は1.5以下で添加Hg^<2+>濃度の影響をほとんど受けないが添加しない場合はHg^<2+>濃度13μMおよび25μMのS.I.値は4.5以上になった。これはHg^<2+>のリンパ球に対するmitogenic作用と2-MEの作用によると考えた。2.ヒト血清を用いた場合、Hg^<2+>では感作の有無による効果は培養時間により異なり、144時間培養までは感作者群のS.I.値が非感作者群の当該値より有意に高かった。3.Co^<2+>の場合、S.I.値は添加濃度が低すぎても高すぎても小さく、至適培養濃度は1.3μ13μMの範囲にあることがうかがえた。4.Co^<2+>に対する感作者群と非感作者群のS.I.値は有意に異なり、至適培養時間は約120時間であった。5.S.I.値の分析結果から、感作の有無がS.I.値の変動に及ぼす効果の大きさ(寄与率)は、Hg^<2+>の場合は全体の0.8%、Co^<2+>の場合は約20%であった。6.水銀塗布24時間後の上皮細胞浮遊液を皮下または腹腔内によりHg^<2+>感作マウスを作成することに成功した。7.Hgcl^2塗布24時間後のマウス上皮細胞の蛋白画分別Hg^<2+>結合率試算値はミクロソーム(40%)、ミトコンドリア(33%)、ライソゾーム(23%)であった。8.以上の結果は、LPTはCo^<2+>に関するin vitro検査として実用的手段であること、Hgなど他の金属イオンに対してはさらに検索を断続する必要があることを示したものである。本邦において感作率が高く、内服試験等による検査が困難な水銀に対するin vitro検査が臨床上極めて有用であると考え、水銀を用いリンパ球増殖試験(LPT)を行った。パッチテストであらかじめ確認しておいたHg^<2+>感作陽性者7名と陰性者5名から末梢血を採取し、LPTの基本術式に従ってリンパ球の培養を行った。ただし、RPMI-1640培養液は2-mercaptoethanol(2-ME)を含むものと含まないものの2種類を準備し、添加した血清はウシ胎児血清とした。また添加するHg^<2+>の濃度は従来の報告を参考に0.025μM、0.13μM、0.25μM、1.3μM、2.5μM、13μM、(最終濃度)の6段階、培養時間は144時間とした。Hg^<2+>モル濃度1.3μM以上では感作の有無にかかわらず2-MEを添加した試料群のS.I.値(抗原添加検体cpm/抗原無添加検体cpm)はこれを含まない試料群の当該値に比べて小さく、2-MEを添加するとリンパ球の増殖にともなって高くなることが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-03557085
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03557085
リンパ球増殖試験を応用した金属アレルギーのin vitro検査法の開発
しかし、S.I.値が目標値より小さく、感作強陽性者群と陰性者群のS.I.値間に明瞭な差を見いだされなかった。一方、Hg^<2+>を添加しなかったコントロ-ル群のcpm値は、先人の報告に基づく予測値(数10数100)よりもはるかに高い値(39004500)であった。このことは、本実験条件下では、リンパ球が水銀以外の因子で刺激されていたことを示し、とくに培養時に用いたウシ胎児血清の作用について検討する必要があることが示唆された。今後、症例を増やし、ヒト血清を用いるなどさらに詳細な検討が必要であると思われた。水銀およびに感作のある被検者各5名と感作のない被検者各5名の末梢リンパ球を当該金属イオンで刺激し、^3H-サイミジンの取り込みを測定、LPTの臨床応用に必要な2-MEの影響、添加金属イオン濃度および培養時間の影響など至適培養条件を検討し、以下の結果を得た。1.Hg^<2+>で培養液へ2-MEを添加した場合のS.I.値は1.5以下で添加Hg^<2+>濃度の影響をほとんど受けないが添加しない場合はHg^<2+>濃度13μMおよび25μMのS.I.値は4.5以上になった。これはHg^<2+>のリンパ球に対するmitogenic作用と2-MEの作用によると考えた。2.ヒト血清を用いた場合、Hg^<2+>では感作の有無による効果は培養時間により異なり、144時間培養までは感作者群のS.I.値が非感作者群の当該値より有意に高かった。しかし、168時間培養では前者のS.I.値は下降、後者のS.I.値は逆に上昇し、両者間に有意な差は認められなかった。3.Co^<2+>の場合、S.I.値は添加濃度が低すぎても高すぎても小さく、至適培養濃度は1.3μ13μMの範囲にあることがうかがえた。4.Co^<2+>に対する感作者群と非感作者群のS.I.値は培養時間の影響を受け、後者は前者より培養時間経過に伴うS.I.値の減少傾向が早く現れた。また各培養時間ともに両者間のS.I.値に有意な差を認めた。5.S.I.値の分析結果から、感作の有無がS.I.値の変動に及ぼす効果の大きさ(寄与率)は、Hg^<2+>の場合は全体の0.8%、Co^<2+>の場合は約20%であった。6.以上の結果は、LPTを応用した金属とくにHg^<2+>およびCo^<2+>アレルギーのin vitro検査に至適検査条件などの新しい知見を加えた。なお、細胞内に取り込まれた金属イオンの蛋白分画に関する解析は現在進行中で、その成果は本年上半期中に報告する予定である。
KAKENHI-PROJECT-03557085
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迅速・精密粉砕試験法の確立と高純度鉱物数十種の粉砕性測定への適用
1.現在、世界的に利用されているF.C.Bondの粉砕仕事指数Wiを測定するには、時間と労力と多量の試料(10kg)を必要とする。しかし、本研究で確立した迅速・精密粉砕試験法に従えば、僅か5gで物質の粉砕性が定量的に把握でき、しかもこの粉砕性指数aからWiを算出できることが明らかとなった。この関係式は次のようである。2.上式を用いて高純度鉱物47種、合成物質3種、計50物質のWi(kWh/t)を算出した。これだけ多種の物質のWiが提示されたのは、世界で初めてである。その1例を示すと、方鉛鉱5.30、石膏6.44、黄銅鉱7.78、閃亜鉛鉱8.84、針鉄鉱9.02、赤鉄鉱10.64、コロンバイト10.89、黄鉄鉱11.43、白鉛鉱12.86、輝銅鉱13.78、輝水鉛鉱14.64、石墨15.96、クロム鉄鉱16.35、尖晶石17.23、磁硫鉄鉱18.87、コランダム19.36、ジルコン23.11、硫ひ鉄鉱24.72等である。Wiの大きい物質ほど砕けにくいこと、つまり粉砕に要するエネルギーが大きいことを意味する。3.硬度は物質の粉砕性にある程度影響を及ぼすが、両者の相関度はそれほど高いとはいえない。物質の粉砕性に影響を及ぼす要因として、そのほか脆性、へき開性等も無視できぬものであることが、本研究により明確にされた。1.現在、世界的に利用されているF.C.Bondの粉砕仕事指数Wiを測定するには、時間と労力と多量の試料(10kg)を必要とする。しかし、本研究で確立した迅速・精密粉砕試験法に従えば、僅か5gで物質の粉砕性が定量的に把握でき、しかもこの粉砕性指数aからWiを算出できることが明らかとなった。この関係式は次のようである。2.上式を用いて高純度鉱物47種、合成物質3種、計50物質のWi(kWh/t)を算出した。これだけ多種の物質のWiが提示されたのは、世界で初めてである。その1例を示すと、方鉛鉱5.30、石膏6.44、黄銅鉱7.78、閃亜鉛鉱8.84、針鉄鉱9.02、赤鉄鉱10.64、コロンバイト10.89、黄鉄鉱11.43、白鉛鉱12.86、輝銅鉱13.78、輝水鉛鉱14.64、石墨15.96、クロム鉄鉱16.35、尖晶石17.23、磁硫鉄鉱18.87、コランダム19.36、ジルコン23.11、硫ひ鉄鉱24.72等である。Wiの大きい物質ほど砕けにくいこと、つまり粉砕に要するエネルギーが大きいことを意味する。3.硬度は物質の粉砕性にある程度影響を及ぼすが、両者の相関度はそれほど高いとはいえない。物質の粉砕性に影響を及ぼす要因として、そのほか脆性、へき開性等も無視できぬものであることが、本研究により明確にされた。各種鉱物のうち,工業的利用の観点から最重要と思われるもの数十種を選び,それぞれを99%以上の純度に試料調製ののち,本迅速・精密試験法により粉砕性の測定を開始した。1.石膏,石灰石,ガラス,黄鉄鉱,炭化珪素の5物質は,高純度のものが大量に得られ,砕けやすさにも開きがあるので,これらを対象にJIS法(試料量10kg)による粉砕仕事指数Wi(kwh/t)と本法(試料量5g)による粉砕性指数aの測定を行った。Wiが小さいほど,またaが大きいほど,その物質は砕けやすいことを示す。各物質のWiは順に8.1,18.9,18.1,8.9,27.8,aは順に5.30,2.15,1.44,1.64,0.31となった。Wiとaの相関係数は-0.79である。両者の相関度がこの程度にとどまるのは,本法の粉砕粒度が45μm以下で,物質の真の粉砕性つまり結晶粒子内のそれが再現できるのに対し,JIS法の粉砕粒度は150μm以下であるため,結晶粒子間の粉砕性の影響を受けることが示唆された。2.セラミック原料鉱物9種のaの測定を実施した。その値は滑石3.36,曹長石1.63,石英1.29,ジルコン0.39,苦土カンラン石0.39,石墨0.83,ドロマイト1.91,ラン晶石0.94,マグネサイト3.07である。3.今後の展開としては,上記1の試料群のJISハ-ドグロ-ブ指数HGI(試料量50g)を測定する。HGIの粉砕粒度は75μm以下であるので,本法で求めたaとの相関係数がWiの場合より高くなることが期待される。HGIからWiを間接的に求める方法は,Bond氏らにより提案されている。従って期待どうりの結果が得られれば,重要鉱物数十種の正確な粉砕性指数を僅か5gで測定できた上,a-HGIおよびHGI-Wiの関係式を用いて,国際的に知られている粉砕性尺度であるWiを,aの値から算出することが可能となるであろう。
KAKENHI-PROJECT-03555138
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迅速・精密粉砕試験法の確立と高純度鉱物数十種の粉砕性測定への適用
1.平成3年度にJIS粉砕仕事指数(Wi)を測定した石膏・ガラス・炭化珪素・石灰石・黄鉄鉱の5試料について、JISハードグローブ指数(HGI)を測定し、両JIS法の測定値と当該迅速・精密試験法で求めた粉砕性指数(a)との相関性を対比・検討した。その結果、Wiとaの相関係数は-0.80、HGIとaの相関係数は0.93となり、後者の相関性が一段と高いことが判明した。そこで本研究の今後の方向を、次のように定めた。なお、それぞれの方法で粉砕性指数測定に必要な粒度調整ずみ試料量は、Wiが約10kg、HGIが50g、aが5gである。(1)高純度鉱物47種にガラス・炭化珪素・フェロシリコンを加えた50種をaの測定対象とする。(2)量的に見てHGIの測定も可能な28試料についてそれを測定し、aとHGIとの関係式を作定する。(3)前記計算式で求まった50試料のHGIから、F.C.Bondが作定した式を用いてWiを算出し、50試料測定値の工業的利用の範囲を広める。(4)鉱物の粉砕性の要因について考察する。2.28試料のHGIの測定結果は次のようである。石膏117、重晶石121、輝安鉱126、鉄閃亜鉛鉱94、自然硫黄143、蛍石88、菱マンガン鉱81、黄銅鉱94、滑石115、菱苦土石68、閃亜鉛鉱88、氷晶石132、石灰石45、方解石92、赤鉄鉱61、あられ石60、黄鉄鉱64、曹長石47、微斜長石56、石英42、輝水鉛鉱44、ビールビンガラス43、藍晶石54、尖晶石32、鋼玉35、炭化珪素28、苦土かんらん石35、フェロシリコン28。これらの試料については、aの測定も完了した。その結果aとHGIの関係式を下記のように作定し、HGI未知の試料でもaを測ることにより、HGIを知ることができるようにした。現在、世界的に利用されているF.C.Bondの粉砕仕事指数Wiを測定するには、時間と労力と多量の試料(10kg)を必要とする。しかし、本研究で確立した迅速・精密粉砕試験法に従えば、僅か5gで物質の粉砕性が定量的に把握でき、しかもこの粉砕性指数aからWiを算出できることが明らかとなった。この関係式は次のようである。上式から求めた50物質のWi(kWh/t)は、方鉛鉱5.30、硫ひ銅鉱5.95、石膏6.44、重晶石6.45、輝安鉱6.56、鉄閃亜鉛鉱6.81、自然硫黄7.06、蛍石7.28、菱マンガン鉱7.34、黄銅鉱7.78、滑石8.05、菱苦土石8.41、鉄マンガン重石8.68、すず石8.72、白鉄鉱8.77、閃亜鉛鉱8.84、針鉄鉱9.02、氷晶石9.95、石灰石10.01、苦灰石10.61、方解石10.64、赤鉄鉱10.64、銅藍10.72、コロンバイト10.89、チタン鉄鉱11.08、あられ石11.17、黄鉄鉱11.43、曹長石11.47、微斜長石11.50、白鉛鉱12.86、金紅石13.22、菱鉄鉱13.61、輝銅鉱13.78、輝水鉛鉱14.64、ゼノタイム14.64、ビールびんガラス14.71、藍晶石15.20、モナザイト15.87、石墨15.96、クロム鉄鉱16.35、黄玉16.67、尖晶石17.23、磁硫鉄鉱18.87、コランダム19.36、炭化珪素20.46、苦土かんらん石23.11、ジルコン23.11、硫ひ鉄鉱24.72、フェロシリコン25.86等である。
KAKENHI-PROJECT-03555138
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心不全の戦略的研究-発生工学を用いた心不全の病態解明と遺伝子・細胞治療
本研究の目標である心不全の病態解明と新たな治療法の確立について多角的に研究を推進できたと考えられる。特にマウスの心機能解析法(心臓カテーテル検査、心臓エコー検査)を確立させたことは、我が国全体における心機能解析技術の飛躍的な向上に寄与できだと思われる。また、本研究代表者や研究分担者らがこれまで世界的にもリードしてきた研究対象であるナトリウム利尿ペプチド、アンジオテンシンII、サイトカイン、三量体G蛋白質、などに着目し、これらの遺伝子改変マウスを作製し実験に用いることができた。心機能に関与する遺伝子をターゲットとした遺伝子改変マウスの解析をおこなうことで心不全の病態を分子レベルで解明した。さらにこれらのマウスに胸部大動脈の縮窄または冠動脈の結紮などの手術を施し、圧負荷心肥大モデル、心筋梗塞モデル、虚血再灌流モデルなどを作製した際の心不全の発症・進展に対する影響も検討した。得られた知見は心不全の発症機序のみならず、心筋細胞が正常機能を維持するための機序についても新しい概念を与えた。心不全発症の分子機序を明らかにすることで心不全の新たな治療基盤を打ち立てることができた。また、心筋細胞の分化・発生の機序に関する研究をおこない、心筋細胞の分化に必須の転写因子や成長因子などを同定した。複数の転写因子を同時に発現させることにより心筋細胞の分化が誘導されることを明らかにした。細胞治療に関する研究では幹細胞生物学と再生医学、心臓病学の領域において先駆的な業績をあげ、国内外における心筋細胞の再生研究に大きな進歩をもたらした。1.心不全の病態解明のために、心臓で重要な役割をはたしていると考えられる遺伝子の改変マウスを作成した。(1)心臓特異的gp130コンディショナルノックアウトマウスでは圧負荷により、心不全を発症して死亡することが報告されている。そこで次にgp130の情報伝達で重要なSTAT3の役割を検討した。Dominanat negative-typeSTAT3を心筋特異的に過剰発現するマウスは心臓の著明な線維化を示し、心不全を呈した。STAT3の標的遺伝子を明らかにする目的でdominant negative STAT3マウスの心臓とconstitutively activatedSTAT3マウスの心臓とでDNA Chip解析を行った。(2)心臓局所のレニン・アンジオテンシン系の長期活性化は心不全の増悪因子の一つであると考えられている。アンジオテンシンII type2受容体(AT2)を心筋特異的に過剰発現するマウスを作成した。このマウスは陰性の変時作用、変力作用を示したことにより、AT2は心機能においてAT1と拮抗して作用することが想定された。(3)ナトリウム利尿ペプチドであるANP、BNPは心臓に圧負荷、容量負荷がかかる様な病態で産生が亢進する。そこでこれらの受容体であるGC-Aのノックアウトマウスを作成し、心臓の虚血再灌流を行った。GC-AノックアウトマウスではP-セレクチンの発現が低下しており、白血球の浸潤も少なく、心筋梗塞巣のサイズは野性型より有意に小さかった。2.今後心不全の新たな治療法として心筋細胞移植をおこなうためには、心筋細胞の選別方法を確立する必要がある。そこで心筋細胞に分化することが確認されている骨髄由来の心筋芽細胞(CMG細胞)に、心筋細胞に特異的に発現するミオシン軽鎖2vのプロモーターにGFPを組み換えた遺伝子を導入して発色細胞をFACSで選別する方法を検討した。本研究の目標である心不全の病態解明と新たな治療法の確立について多角的に研究を推進できたと考えられる。特にマウスの心機能解析法(心臓カテーテル検査、心臓エコー検査)を確立させたことは、我が国全体における心機能解析技術の飛躍的な向上に寄与できだと思われる。また、本研究代表者や研究分担者らがこれまで世界的にもリードしてきた研究対象であるナトリウム利尿ペプチド、アンジオテンシンII、サイトカイン、三量体G蛋白質、などに着目し、これらの遺伝子改変マウスを作製し実験に用いることができた。心機能に関与する遺伝子をターゲットとした遺伝子改変マウスの解析をおこなうことで心不全の病態を分子レベルで解明した。さらにこれらのマウスに胸部大動脈の縮窄または冠動脈の結紮などの手術を施し、圧負荷心肥大モデル、心筋梗塞モデル、虚血再灌流モデルなどを作製した際の心不全の発症・進展に対する影響も検討した。得られた知見は心不全の発症機序のみならず、心筋細胞が正常機能を維持するための機序についても新しい概念を与えた。心不全発症の分子機序を明らかにすることで心不全の新たな治療基盤を打ち立てることができた。また、心筋細胞の分化・発生の機序に関する研究をおこない、心筋細胞の分化に必須の転写因子や成長因子などを同定した。複数の転写因子を同時に発現させることにより心筋細胞の分化が誘導されることを明らかにした。細胞治療に関する研究では幹細胞生物学と再生医学、心臓病学の領域において先駆的な業績をあげ、国内外における心筋細胞の再生研究に大きな進歩をもたらした。(1)心機能に関与すると考えられる遺伝子の改変マウスを作製して、心機能の解析をおこなった。STAT3の優性変異型(dnSTAT3)と持続活性型(caSTAT3)の心筋特異的過剰発現マウスを使って解析をした。LIF投与により野生型マウス(WT)ではVEGFの発現が亢進したが、dnSTAT3では変化はみられなかった。
KAKENHI-PROJECT-12136101
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心不全の戦略的研究-発生工学を用いた心不全の病態解明と遺伝子・細胞治療
一方、caSTAT3では血管密度の増加とVE-cadherinの発現が冗進していたことからSTAT3が心臓における血管新生を促進することが明らかになった。ANP、BNPなどの転写抑制因子であるNRSFの優性変異型の心筋特異的過剰発現マウスでは、圧負荷後のBNP発現亢進は減弱し心機能の低下、心拡大、間質の線維化、突然死などが認められた。アンジオテンシンII受容体の遺伝子欠損マウス(AT1R-KO、AT2R-KO)の下肢を虚血して血管新生に対する役割を解析した結果、血流改善率や毛細血管数はWTマウスに比べAT1R-KOマウスで低下し、AT2R-KOマウスで増加した。このことからAT1Rは血管新生を促進させ、AT2Rは抑制させることが示唆された。(II)血管内皮前駆細胞を含むと考えられる骨髄単核球細胞の移植が虚血部の血管新生を誘導するか否か検討した。ブタの心筋梗塞モデルに、カテーテルを用いて自己骨髄単核球細胞を経皮的に心筋内に移植した結果、毛細血管密度や血流は増加し心機能は改善した。骨髄間葉系幹細胞から分化誘導した心筋細胞(CMG細胞)を用いてイオンチャネルや活動電位を調べた。その結果、in vivoの心筋細胞と同様にこの細胞も経時的にイオンチャネルを発現し、活動電位が変化することが明らかになった。またCMG細胞をマウスの心臓に移植すると、移植された細胞はレシピエントの心筋細胞と平行した走行を示し最低3ヵ月間はレシピエントに生着することが確認された。レニン-アンジオテンシン系は生体における重要な昇圧系として知られており、この系を抑制するアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬は高血圧症だけでなく心不全の治療薬としても使用されている。しかしながらアンジオテンシンIIの受容体であるAT1、AT2の各々の作用については明らかになっていない点が多く残されている。そこでAT1、AT2の遺伝子改変マウスを作製した。AT1、AT2の心筋・血管特異的過剰発現マウスの解析により、AT1が心房では高度房室ブロック、心室では致死性不整脈を誘発し著明な心筋細胞肥大を引き起こすこと、AT2が心筋では陰性変時作用、血管ではブラジキニンやNO/cGMP系を介した降圧作用や冠血管周囲の線維化抑制作用を有することが明らかになった。IL-6ファミリーのサイトカインは細胞の増殖や分化に関与するだけでなくアポトーシスを抑制する作用ももつ。これまでin vitroの研究で培養心筋細胞に対し、IL-6ファミリーサイトカインはgp130を介してJAK/STAT系を活性化することにより心保護作用を示すことが報告されてきたが、実際にin vivoでも同様の作用を有するか否かは不明であった。そこでSTAT3の持続活性型あるいは優性変異型を心筋特異的に過剰発現するマウスを作製し機能を解析した。持続活性型のSTAT3を過剰発現するマウスを解析したところ、心臓でのVEGFの発現は増強しており血管密度も増加していた。逆に優性変異型のSTAT3を過剰発現するマウスではVEGFの発現は減少していた。
KAKENHI-PROJECT-12136101
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ビームの自己収束効果を持つ両側レトロディレクティブシステムの基礎研究
申請者らは、信号の到来方向へ折り返してビームを再放射するレトロディレクティブシステムの原理を送電アレーアンテナと受電アレーアンテナの両方に適用した「両側レトロディレクティブ」を新たに考案した。このシステムは、送電側および受電側でレトロディレクティブを繰り返すことによって外部へのエネルギー漏洩が極小化するというビームの自己収束効果を持つ。この効果は、マイクロ波送電システムの社会実装に向けた中心的課題である電波漏洩の抑制に対して極めて有効であることが期待される。そこで本研究では、ビームの自己収束効果を持つ両側レトロディレクティブシステムの実現に向けた基礎的な研究開発を遂行する。初年度となる平成30年度においては、両側レトロディレクティブシステムの基礎的な解析を実施した。具体的には、自己収束ビームに関するシミュレーション検討、無限アレーアンテナモデルを用いた理論的考察およびフィードバック発振によるシステム動作の基礎的検討である。特に、自己収束ビームに関するシミュレーション検討では、アンテナが軸ずれを起こしている場合に対しても、レトロディレクティブ動作の繰り返しによって低漏洩状態にビームが収束することを明らかにした。このことは、大気揺らぎやアンテナ振動に対しても提案するシステムが有効に動作することを示している。これらの結果について国際会議APMC2018にて発表を行った。また、査読付論文誌への投稿を進めている。当初の研究計画では、平成30年度においては様々な条件下でのビームの自己収束効果に関して検討を実施する予定であった。しかし、本年度ではシステム全体に関する包括的な検討を優先した。学会発表は少なかったものの論文誌への投稿を進めておりおおむね順調に進展していると考えている。次年度以降は当初の計画に従って様々な条件下における自己収束ビームのシミュレーション検討および両側レトロディレクティブシステムの起動プロセスに関する検討を進めるとともに、本年度実施した包括的検討によって明らかとなったシステム実装上の課題についても研究を進めていく予定である。申請者らは、信号の到来方向へ折り返してビームを再放射するレトロディレクティブシステムの原理を送電アレーアンテナと受電アレーアンテナの両方に適用した「両側レトロディレクティブ」を新たに考案した。このシステムは、送電側および受電側でレトロディレクティブを繰り返すことによって外部へのエネルギー漏洩が極小化するというビームの自己収束効果を持つ。この効果は、マイクロ波送電システムの社会実装に向けた中心的課題である電波漏洩の抑制に対して極めて有効であることが期待される。そこで本研究では、ビームの自己収束効果を持つ両側レトロディレクティブシステムの実現に向けた基礎的な研究開発を遂行する。初年度となる平成30年度においては、両側レトロディレクティブシステムの基礎的な解析を実施した。具体的には、自己収束ビームに関するシミュレーション検討、無限アレーアンテナモデルを用いた理論的考察およびフィードバック発振によるシステム動作の基礎的検討である。特に、自己収束ビームに関するシミュレーション検討では、アンテナが軸ずれを起こしている場合に対しても、レトロディレクティブ動作の繰り返しによって低漏洩状態にビームが収束することを明らかにした。このことは、大気揺らぎやアンテナ振動に対しても提案するシステムが有効に動作することを示している。これらの結果について国際会議APMC2018にて発表を行った。また、査読付論文誌への投稿を進めている。当初の研究計画では、平成30年度においては様々な条件下でのビームの自己収束効果に関して検討を実施する予定であった。しかし、本年度ではシステム全体に関する包括的な検討を優先した。学会発表は少なかったものの論文誌への投稿を進めておりおおむね順調に進展していると考えている。次年度以降は当初の計画に従って様々な条件下における自己収束ビームのシミュレーション検討および両側レトロディレクティブシステムの起動プロセスに関する検討を進めるとともに、本年度実施した包括的検討によって明らかとなったシステム実装上の課題についても研究を進めていく予定である。当初の計画ではシミュレーターに使用する計算機を購入する予定であったが、予算内では所望のスペックを持つものを購入することができなかったため、既存のコンピュータで可能な範囲のシミュレーションを実施した。次年度使用予算は、回路モジュール等の試作費用として使用する予定である。
KAKENHI-PROJECT-18K13759
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過疎地域におけるコミュニティ機能の外部的主体による補完・支援・連携関係
(1)過疎・高齢化が進展する集落について、外部的主体の関与について調査・分析を行い、a)クラウド型集落づくりの有効性、b)NPO関与の重要性とそのあり方、c)民間事業者関与の形態による限界について明らかにした。(2)まちづくりとソーシャル・キャピタルの関係について、観光まちづくりの側面から明らかにした。(3)コミュニティを基盤とした高齢者の社会的ケアシステムのアクションリサーチを実施した。結果、コミュニティ内部および外部におけるコンフリクトがむしろ共同関係を強化することが抽出できた。2014年度は、調査研究の基礎段階として、主に以下のような活動を行った。・地方空港の地域経営と利用者誘致に向けた運営指標の開発に関する研究・能登町における住民の地域活動に関する調査効率性の論理からは、過疎地域に人が住みつづけることは非効率であり、個人の選択として非効率な過疎地に住みつづけたいのであればそれにともなって発生する費用はその個人が負担するべきだということになる。具体的には、地方交付税交付金や補助金の縮小、役場の支所や学校などの統廃合といった形となる。こうした論理に対抗し、過疎地域での地域社会維持を支援することの正当性をどのようにしめしていくかが重要な理論的・実践的課題となる。第一は、水源涵養機能、国土保全機能、空気清浄化機能などを挙げて、根拠づける論理である(桒田但馬など)。第二に、藻谷浩介ほか『里山資本主義』のように、新しい経済のあり方をしめすモデルとして過疎地域を把握する見地である。第三は、食料・エネルギー問題、都市と農村の連帯の観点である(小田切徳美)。ここではとくに東日本大震災後の若者の田園回帰が注目される。「都市と農村の共生を機軸とするユニークな国づくりへ向けた理念構築が求められている」ことが強調される。第四に、「農山村の問題が国民全体の課題なのは、都市も農山村も同じく国土の一部であり、都市住民も農山村住民もともに日本国民だからである」とする議論である(青木宗明)。第五に、地域の衰退、過疎化は自然現象でなく歴代政権の政策によってつくり出されてきたものであり、政策によって解決する必要があるとするものである(岡田知弘)。本研究では、第五の見地を基本としつつ、上記すべての見地を援用しながら調査研究に取り組み、あらためて農山漁村、過疎地域を支援する論理を再構築していく。1居住地選択権の保障を、国家がになうべき社会的共同業務のひとつ、国家の正統性の担保ととらえ、過疎化問題の解決の第一義的責任を国家の政策にもとめたうえで、地域の側の主体的な地域活性化策の必要性を強調し、七尾市のなたうち地区の「クラウド型集落づくり」に関する調査を行った。2日本の市町村における商工費・労働費の少なさに対する疑問を起点に、ローカルな産業・雇用振興策の必要性に着目し、ドイツ・ハルツ改革以降の自治体による雇用創出政策に関する研究をすすめた。3コミュニティに関する意識・行動について金沢市民を対象にアンケート調査を行った。地域活性化のための地域コミュニティの単位としては現在の町内会程度とする回答が最も多く、町会長などの役職にもっと女性がつくべきという回答には男女で有意な差があり、女性のほうが否定的な傾向が強いことが分かった。4金沢の高齢化が進む地域で活動するNPO法人「クラブぽっと」のアクションリサーチに取り組んだ。高齢者が気軽に立ち寄れるコミュニティサロンを「コモンズ」=「社会的共通資本」ととらえ、社会的ケアシステムとしての可能性などについて検討し、コミュニティにおけるコンフリクトの意味をしめした。5「ANA沖縄貨物ハブ」の効率性評価と要因分析を行った。包括分析法を用いて輸送の効率性の評価を試みたのち、Malumqist指標による効率性の変化を時系列でしめし、トービットモデルを利用した輸送の効率性に関わる影響因子の導出を行った。今後の効率的運用のためには域内産業循環の活性化などが課題であることがしめされた。これらの調査・研究を通じて、農村部・都市部両方の過疎化・高齢化の実態とその対策、外部的主体の関わり方の基本的方向性が明らかになった。上記「研究実績の概要」に示したように、調査対象を明確にし、アンケート調査など2年度目に実施すべき調査とその分析をおおむね順調に進めている。また、理論・政策を構成するうえで必要となってくる隣接諸領域に関する研究も進んだ。ただし、コミュニティ機能の外部的主体による補完・支援・連携関係のあり方はどうあるべきか、またその構築方策はどのようなものかを探求するという新たな分野への挑戦であり、当初計画以上への進展はできなかった。(1)期間全体の成果の概要1過疎・高齢化が進展する集落について、外部的主体の関与について調査・分析を行い、a)クラウド型集落づくりの有効性、b)NPO関与の重要性とそのあり方、c)民間事業者関与の形態による限界について明らかにした。2まちづくりとソーシャル・キャピタルの関係について、観光まちづくりの側面から明らかにした。3コミュニティを基盤とした高齢者の社会的ケアシステムのアクションリサーチを実施した。(2)最終年度の成果の概要1日本上流文化圏研究所などで移住者確保・定住促進策について追加調査を行った2大規模合併を行った自治体の財政問題について分析し、人口減少地域にふさわしい財政投下が行われることの重要性を明らかにした。3観光まちづくりがa)外部資源の量的獲得、b)外部資源の戦略的活用、c)外部資源の地域内浸透という経過を辿っていることを明らかにした。4都道府県
KAKENHI-PROJECT-26512005
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過疎地域におけるコミュニティ機能の外部的主体による補完・支援・連携関係
ソーシャル・キャピタル指数を用いて変量効果モデルで分析した結果、他者に対する信頼関係・相互扶助の醸成などなどがNPO法人の積極的な取り組みにつながっていることが判明した。5NPOが地域の多様な主体と協働しながら地域住民による高齢者サポートのしくみを構築するアクションリサーチを行った。コミュニティにおけるコンフリクトの発生は,むしろよりよい方向にコミュニティ形成がなされる契機となっていることを示した。(3)意義・重要性1外部的主体が過疎地域に関与する際に生じるコンフリクトの発生を、積極性に転化する可能性と条件が明らかになった。2「限界集落」による迷惑施設誘致・民間事業者の営利主義的関与が地域コミュニティにもたらす分裂と新たな市民的活動の誘発の経路が明らかになった。3過疎地域を含む大規模合併自治体における財政のあり方が明らかになった。、(1)過疎・高齢化が進展する集落について、外部的主体の関与について調査・分析を行い、a)クラウド型集落づくりの有効性、b)NPO関与の重要性とそのあり方、c)民間事業者関与の形態による限界について明らかにした。(2)まちづくりとソーシャル・キャピタルの関係について、観光まちづくりの側面から明らかにした。(3)コミュニティを基盤とした高齢者の社会的ケアシステムのアクションリサーチを実施した。結果、コミュニティ内部および外部におけるコンフリクトがむしろ共同関係を強化することが抽出できた。計画の初年度として相対的に重点を置いた文献研究は、順調に進展した。能登町(石川県)でアンケート調査を成功裏に実施するなど、調査も概ね順調に進んでいる。平成28年度は、研究計画の最終年度となるので、前半はこれまでと同様の調査研究に取り組みつつも、研究のまとめに入っていく。後半は、研究成果をまとめ、シンポジウムの開催などの形で学界・社会へ還元する。財政学当初計画どおり、26年度にまわり切れなかった主体について引き続きインタビュー調査を行うとともに、各種団体へのアンケート調査を実施する。27年度は収集されたデータの分析を進め、必要に応じて重点調査対象地域を決め追加的調査を実施する。調査結果については適時、報告会を開くとともに、論文・学会報告として公表する。なたうち地区で予定していた大規模アンケートとその分析が、研究協力者の事情(配偶者の死去)によって、今年度実施できなくなった。そのため「人件費・謝金」「その他」の支出が0となった。大規模なアンケート調査を予定していたが、協力団体の都合で、26年度は実施を見合わせることにしたため、次年度使用額が生じた。またそれにともなって、最新モデルを選ぶため、PCの購入を見合わせた。研究協力者の状況改善をまって、アンケートを実施する。また、研究成果発表のためのシンポジウムを開催する。協力団体との打ち合わせは継続しており、27年度にはアンケート調査を実施する。
KAKENHI-PROJECT-26512005
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植物間コミュニケーションにおける記憶制御システムの解明
害虫に食害された植物は、害虫の天敵を誘引するために揮発性化合物(匂い・香り)を大気中に放出する。近くの健全な植物はこれらの香りを「立ち聞き」することで、害虫に食害される前に防御能力を高めることができる。さらに、香りを受容した植物では香りは刺激として記憶(プライミング)する能力をもつが、これらの詳細な分子機構については明らかにされていない。本研究では、多岐にわたる生物間相互作用活性をもつミントの香り等をモデルケースとし、植物間コミュニケーションにおける防御応答の記憶制御メカニズムの解明を試みた。さまざまなミント種の近傍で生育したダイズにおける防御遺伝子の発現解析を行ったところ、キャンディーミントの香りには受容植物の防御遺伝子の発現を誘導する能力が備わることが示された。これらの防御活性の誘導はミントの香りに曝してから数日間維持されたが、これらの分子機構には、防御遺伝子のプロモーター領域周辺のクロマチン構造のアセチル化が深く関わることが示された。さらに、野外圃場でキャンディーミントの近傍でダイズを生育した場合および、温室内でミントの香りを受容させたダイズを野外圃場に移した場合に、害虫による被害率は有意に低下した。つまり、ミント香気成分には害虫忌避性に加え、周囲のダイズ植物の潜在的な防御力を向上させるコンパニオン植物として機能することが明示された。これらの成果はコマツナにおいても検証され、当該成果の特許取得と共に本システムを用いた農業システムとしての実用化を目指している。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。害虫に食害された植物は、害虫の天敵を誘引するために揮発性化合物(匂い・香り)を大気中に放出する。近くの健全な植物はこれらの香りを「立ち聞き」することで、害虫に食害される前に防御能力を高めることができる。さらに、香りを受容した植物では香りは刺激として記憶(プライミング)する能力をもつが、これらの詳細な分子機構については明らかにされていない。本研究では、多岐にわたる生物間相互作用活性をもつミントの香り等をモデルケースとし、植物間コミュニケーションにおける防御応答の記憶制御メカニズムの解明を試みた。さまざまなミント種の近傍で生育したダイズにおける防御遺伝子の発現解析を行ったところ、キャンディーミントの香りには受容植物の防御遺伝子の発現を誘導する能力が備わることが示された。これらの防御活性の誘導はミントの香りに曝してから数日間維持されたが、これらの分子機構には、防御遺伝子のプロモーター領域周辺のクロマチン構造のアセチル化が深く関わることが示された。さらに、野外圃場でキャンディーミントの近傍でダイズを生育した場合および、温室内でミントの香りを受容させたダイズを野外圃場に移した場合に、害虫による被害率は有意に低下した。つまり、ミント香気成分には害虫忌避性に加え、周囲のダイズ植物の潜在的な防御力を向上させるコンパニオン植物として機能することが明示された。これらの成果はコマツナにおいても検証され、当該成果の特許取得と共に本システムを用いた農業システムとしての実用化を目指している。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-16H01471
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原子炉モニタ用の水を主成分としたGd入り液体シンチレータの開発
IAEA(国際原子力機関)の保障措置の原子炉ニュートリノモニタとして、不燃および不揮発の水を主成分としたGd入り液体シンチレータの開発を行った。界面活性剤または市販の純石けんを用いて発光剤(PPO)を水に溶かし光量を測定した。70%水+30%界面活性剤(SDS)+30g/L発光剤(PPO)+ 0.2%Gdの液体シンチレータでは、9.55±0.38[pe]の光量が得られた。これは、有機物が主成分の液体シンチレータの約1/30の光量であった。50%水+50%純石けん+30g/L発光剤(PPO)は、6.428±0.074[pe]の光量が得られた。1年間での経年変化(劣化)は認められなかった。液体シンチレータの発光量を測定する装置の設計・製作を行い、水を主成分とした液体シンチレータの開発を進めた。液体シンチレータをバイアル管に封入し、それに密着させた光電子増倍管にて捉えた光量をアナログデジタル変換してパーソナルコンピュータで取り込む装置を製作し、且つ発光量解析プログラムを作成した。発光源として60Co(1.17MeVと1.33MeVのγ線)を用い、γ線が起こしたコンプトン散乱の電子線の発光を測定するのであるが、その発光量(ADC値)の分布を取り、コンプトンエッジの存在を確認し、そのコンプトンエッジ値で発光量を定義する。そして、その発光量(ADC値)を、光電子数に変換して、発光量を評価する。この方法で、発光量が正しく測定できることをシミュレーションにて確認した。よく知られている有機物プソイドクメンを主成分とした試薬での発光量を測定し、316.6±2.5光電子数であったので、この値を基準値として水を主成分とした液体シンチレータの開発を進めた。開発は、1.(ベンゼン環のついた)界面活性剤を用いて発光剤(PPO)を水に溶かす2.親水基を持つ芳香族分子を水に溶かして、それに発光剤(PPO)を溶かす3.水溶性の発光剤を使用するの三種類の方法で進めた。その中で1の方法の、70%水+30%ドデシル硫酸ナトリウム(界面活性剤)+ 30g/L PPO(発光剤)の液体シンチレータの発光量は、30.0光電子数であった。これは、基準値の約1/10であるが、開発を進めていく上で、期待できる値であると考える。これからは、他の界面活性剤も使用し、且つ第二発光剤(波長変換剤)であるBis-MSB等を添加して、開発を進めていく。以上の結果は、日本物理学会年会(平成25年3月26日広島大学)にて発表した。液体シンチレータの発光量を測定する装置の設計・製作を行い、水を主成分とした液体シンチレータの開発を進めた。液体シンチレータをバイアル管に封入し、それに密着させた光電子増倍管にて捉えた光量をアナログデジタル変換してパーソナルコンピュータで取り込む装置を製作し、且つ発光量解析プログラムを作成した。発光源とし60Co(1.17MeVと1.33MeVのγ線)を用い、γ線が起こしたコンプトン散乱の電子線の発光を測定するのであるが、その発光量(ADC値)の分布を取り、コンプトンエッジの存在を確認し、そのコンプトンエッジ値で発光量を定義する。そして、その発光量(ADC値)を、光電子数[pe]に変換して、発光量を評価する。この方法で、発光量が正しく測定できることをシミュレーションにて確認した。よく知られている有機物プソイドクメンを主成分とした試薬での発光量を測定し、316.6±2.5 [pe]であったので、この値を基準値として水を主成分とした液体シンチレータの開発を進めた。開発は、主として"開発1.界面活性剤を用いて発光剤(PPO)を水に溶かす"ことを行い、加えて、"開発2.安全が確認されている市販の純石けんを用いて発光剤(PPO)を水に溶かす"ことを行った。更に、"開発3.開発1の試薬にての経年変化(劣化)"を調べた。開発1では、70%水+30%ドデシル硫酸ナトリウム(界面活性剤)+ 30g/L PPO(発光剤)の液体シンチレータの発光量は、9.99±0.17 [pe]であった。これは、基準値の約1/30であり、更なる光量が必要である。開発2では、50%水+50%洗剤(石けん成分は35%)+30g/L PPO (発光剤)の液体シンチレータの発光量は、6.428±0.074[pe]であった。開発3では、開発1の試薬については、1年間での経年変化(劣化)は認められなかった。IAEA(国際原子力機関)の保障措置の原子炉ニュートリノモニタとして、不燃および不揮発の水を主成分としたGd入り液体シンチレータの開発を行った。界面活性剤または市販の純石けんを用いて発光剤(PPO)を水に溶かし光量を測定した。70%水+30%界面活性剤(SDS)+30g/L発光剤(PPO)+ 0.2%Gdの液体シンチレータでは、9.55±0.38[pe]の光量が得られた。
KAKENHI-PROJECT-23654089
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原子炉モニタ用の水を主成分としたGd入り液体シンチレータの開発
これは、有機物が主成分の液体シンチレータの約1/30の光量であった。50%水+50%純石けん+30g/L発光剤(PPO)は、6.428±0.074[pe]の光量が得られた。1年間での経年変化(劣化)は認められなかった。液体シンチレータの発光量を測定する装置の設計・製作を行った。液体シンチレータをバイアル管に封入し、それに密着させた光電子増倍管(H7195)にて捕らえた光量をアナログデジタル変換(ADC)してパーソナルコンピュータで取り込む装置である。放射線源としてCo60(1.17MeVと1.33MeVのγ線)を用い、γ線が起こしたコンプトン散乱の電子線の発光を測定するのであるが、その発光量(ADC値)の分布を取り、コンプトンエッジの存在を確認し、そのコンプトンエッジ値で発光量を定義する。現在、コンプトンエッジ測定ができ、発光量が既知の市販のバイクロン社の液体シンチレータ(BC521)を主剤とした試薬での値は既存の実験値と同様であり、測定装置が十分稼働することを確認している。液体シンチレータは、放射線のエネルギーを吸収して励起し、発光剤である溶質にエネルギーを伝達する溶媒と、発光剤としての溶質からなる。その溶媒として水を主成分とする液体シンチレータを開発するのが、本研究の目的である。その第一段階として、溶媒構成物質として水溶性と考えられる芳香族分子等の物質を探し、それと水との混合液に溶質としてのPPOが溶解するか否かを調べている。溶媒構成物質としての芳香族分子の2-ピリジンカルバルデテドオキシム、フェニルホスホン酸、ナフチオン酸ナトリウムの水に対する溶解度は、それぞれ水100mlに対して5g、5g、10gである。これらに対してPPOは溶解せず、現時点では有効な溶媒は見つかっていない。本研究は、以上の溶媒、溶質に界面活性剤を加えて、有効な水を主成分とする液体シンチレータを探すのも目的である。界面活性剤としての塩化ベンザルコニウム、ドデシル硫酸ナトリウムの水に対する溶解度は、それぞれ100mlに対して80g、30gである。これらにはPPOは可溶である。液体シンチレータをバイアル管に封入し、それに密着させた光電子増倍管にて捉えた光量をアナログデジタル変換して、それを光電子数に換算して発光量を評価する。具体的には、発光源として60Co(1.17MeVと1.33MeVのγ線)を用い、γ線が起こしたコンプトン散乱の電子線の発光を測定するのであるが、コンプトンエッジを測定するための測定装置の調整と、解析プログラムの確定に時間を要した。水を主成分とした液体シンチレータの開発は、1.(ベンゼン環のついた)界面活性剤を用いて発光剤(PPO)を水に溶かす2.親水基を持つ芳香族分子を水に溶かして、それに発光剤(PPO)を溶かす3.水溶性の発光剤を使用するの三種類の方法で進めた。発光剤(PPO)の溶解度が低く、且つ透明度が悪くなることが多く、コンプトンエッジが測定できる液体シンチレータの探索に時間を要した。現在、70%水+30%ドデシル硫酸ナトリウム(界面活性剤)+ 30g/L PPO(発光剤)の液体シンチレータの発光量は、30.0光電子数であり、これは、基準値の約1/10であるが、開発を進めていく上で、期待できる値であると考える。以上の結果は、日本物理学会年会(平成25年3月26日広島大学)にて発表し、一定の評価は受けたので、やや遅れていると考えている。液体シンチレータの発光量を測定する装置の設計・製作は終了し、十分に光量測定ができる状態にある。この装置製作に時間がかかった。水に溶解する芳香族分子等はいくつか特定できてはいるが、溶質であるPPOが溶解する溶媒は見つかっていない。他の芳香族分子等を探さなくてはならない。水に溶解する界面活性剤は特定できており、それらには溶質であるPPOは溶解することを確認している。
KAKENHI-PROJECT-23654089
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新規モデルマウスを用いたデノボメラノーマの病態解析と治療法の開発
デノボメラノーマモデルマウスと、母斑関連メラノーマモデルマウスを用いて、デノボメラノーマと母斑関連メラノーマを病理学的手法、分子生物学的手法を用いて比較研究を行った。その結果、マウスデノボメラノーマで特徴的に発現量が低下する遺伝子の選択に至った。さらに、ヒトメラノーマ組織を用いた解析から、この遺伝子は、デノボメラノーマの発症に関わるE遺伝子と関連しながらメラノーマ発症に関わる可能性が見出された。デノボメラノーマモデルマウスと、母斑関連メラノーマモデルマウスを用いて、デノボメラノーマと母斑関連メラノーマを病理学的手法、分子生物学的手法を用いて比較研究を行った。その結果、マウスデノボメラノーマで特徴的に発現量が低下する遺伝子の選択に至った。さらに、ヒトメラノーマ組織を用いた解析から、この遺伝子は、デノボメラノーマの発症に関わるE遺伝子と関連しながらメラノーマ発症に関わる可能性が見出された。本研究では、デノボメラノーマと母斑関連メラノーマを組織学的、分子生物学的方法を用いて比較することで、デノボメラノーマの組織学的、分子生物学的特徴付けを行うと共に、その発症の分子メカニズムを解析することを目的としている。1)母斑関連メラノーマモデルマウス、デノボメラノーマモデルマウス由来の腫瘍の病態を、抗Ki67抗体を用いて免疫染色することで、分裂期にある細胞数の比較を行った。この結果、良性腫瘍と比較すると、母斑関連メラノーマもデノボメラノーマもKi67陽性細胞数が有意に増加し、どちらのメラノーマでも分裂速度が上昇していることが分かった。今後は、分裂期の中でもM期にある細胞数のみを検出する抗体で、さらに詳しく調べる予定である。2)母斑関連メラノーマモデルマウス、デノボメラノーマモデル由来の腫瘍から抽出したRNAを用いてマイクロアレイを行った。この結果をクラスター解析し、良性腫瘍と比べて、両メラノーマで発現量が減少あるいは増加する可能性のある遺伝子、デノボメラノーマにおいてのみ発現量が減少あるいは増加する可能性のあるいは遺伝子の選別を行った。これらの遺伝子に関してReal-time PCR法を用いて再現性の確認を行ったところ、再現性の得られた遺伝子とそうでない遺伝子があった。個体差が原因であると考えられるため、さらにサンプル数を増やし、再現性の確認を得ようとしているところである。本研究では、デノボメラノーマと母斑関連メラノーマを組織学的、分子生物学的方法を用いて比較することで、デノボメラノーマの組織学的、分子生物学的特徴付けを行うと共に、その発症の分子メカニズムを解析することを目的としている。1)母斑関連メラノーマモデルマウス、デノボメラノーマモデルマウス由来の腫瘍から抽出したRNAを用いて行ったマイクロアレイの結果から、良性腫瘍と比べて、デノボメラノーマにおいて特異的に発現量が減少あるいは増加する可能性のある遺伝子の選別を行った。これらの遺伝子に関してReal-time PCR法を用いて再現性の確認を行ったところ、個体差が原因と思われるサンプル間でのばらつきが検出されたため、さらにサンプル数を増やし解析を進めた。その結果、デノボメラノーマにおいて発現量が非常に減少するP遺伝子の選別に至った。次に、P遺伝子の発現量をデノボメラボーマ、母斑関連メラノーマと分類されたヒトメラノーマにおいてReal-time PCR法を用いて発現解析を行ったが、デノボメラノーマ特異的に発現量が低下する傾向は見られなかった。原因の1つとして、デノボメラノーマと母斑関連メラノーマを生化学的手法を用いて分類する方法が確立されていないため、病理学的方法からは2種類のメラノーマの混同を避けられないことが挙げられる。そこで、解析方法を変え、デノボメラノーマの発症に関わるE遺伝子との発現量の相関を調べると、非常に強い相関が検出された。このことから、P遺伝子は少なくともE遺伝子と関与することでメラノーマ発症に関わっていることが示唆された。2)母斑関連メラノーマ、デノボメラノーマの両メラノーマの発症に関わる可能性がある遺伝子としてG遺伝子を選別し、論文として報告した。24年度が最終年度であるため、記入しない。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22791092
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多元情報を担う文書画像の理解システムに関する研究
本研究は、多元的表現様相の典型例である文書画像を処理対象とした、高次自動理解システムの開発を目的とするものである。従来は、このような画像と文章が有機的に融合された文書画像を処理対象ごとに分離し、画像解析、文章解析という別個の処理システムによって解析していた。しかしながら、文書画像に含まれる画像と文章は相補的なものであるために、個別的な処理では多くの有用な情報が欠落し、高次自動理解を行うことは困難であった。本研究では、画像解析と言語解析を統一した言語系で処理を行い、大規模な知識ベースシステムによって文書画像を管理しようとするものである。本年度は、昨年の実績を踏まえていくつかの応用システムの開発を行った。第一は、高次理解システムのうち、構文・意味・文脈解析を統一的に実行する自然言語処理システムIPである。IPはLexical Functional Grammarに基づいた構文・意味解析を行い、さらに解析結果として得られる文の意味表現を利用して、文章の連接関係のボトムアップ的抽出、及び常識的知識を用いたトップダウン的な文脈解析を融合し、統一的に文章を理解しようとするものである。第二は、自然言語による仕様からのプログラム合成システムである。本システムは、Prologを目標言語として捉え、日本語文の記述から様々な知識を用いてプログラムを自動合成するものである。本システムの応用事例として、磁気テープ化された市販辞書の構造化処理を取り上げ、その有効性を確認した。第三は、Prologと関係データベースシステムを結合した大規模知識ベース構築用ツールDB-Prologである。DB-Prologは、Prolog側から関係データベースに格納された単位節とユニフィケーションを行う機能、利用者が自由に定義したデータベースの作成、及び検索を行う機能を持つシステムである。DB-Prologの応用事例として、フレーム構造に基づいた知識ベースシステムのプロトタイプを開発した。本研究は、多元的表現様相の典型例である文書画像を処理対象とした、高次自動理解システムの開発を目的とするものである。従来は、このような画像と文章が有機的に融合された文書画像を処理対象ごとに分離し、画像解析、文章解析という別個の処理システムによって解析していた。しかしながら、文書画像に含まれる画像と文章は相補的なものであるために、個別的な処理では多くの有用な情報が欠落し、高次自動理解を行うことは困難であった。本研究では、画像解析と言語解析を統一した言語系で処理を行い、大規模な知識ベースシステムによって文書画像を管理しようとするものである。本年度は、昨年の実績を踏まえていくつかの応用システムの開発を行った。第一は、高次理解システムのうち、構文・意味・文脈解析を統一的に実行する自然言語処理システムIPである。IPはLexical Functional Grammarに基づいた構文・意味解析を行い、さらに解析結果として得られる文の意味表現を利用して、文章の連接関係のボトムアップ的抽出、及び常識的知識を用いたトップダウン的な文脈解析を融合し、統一的に文章を理解しようとするものである。第二は、自然言語による仕様からのプログラム合成システムである。本システムは、Prologを目標言語として捉え、日本語文の記述から様々な知識を用いてプログラムを自動合成するものである。本システムの応用事例として、磁気テープ化された市販辞書の構造化処理を取り上げ、その有効性を確認した。第三は、Prologと関係データベースシステムを結合した大規模知識ベース構築用ツールDB-Prologである。DB-Prologは、Prolog側から関係データベースに格納された単位節とユニフィケーションを行う機能、利用者が自由に定義したデータベースの作成、及び検索を行う機能を持つシステムである。DB-Prologの応用事例として、フレーム構造に基づいた知識ベースシステムのプロトタイプを開発した。
KAKENHI-PROJECT-60210018
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-60210018
ヒト肺胞マクロファージの機能に関する基礎的検討
ヒト肺胞マクロファージ(AM)の貧食、殺菌能、殺菌機序及び組換え型IFN-γの影響を検討した。AMは気管支肺胞洗浄により採取しヒト不活化AB型血清10%を含むMEM培地に浮遊後プレートで培養した。被検微生物はCandida parapsilosis(CP)を用いた。貧食能はday0よりday7まで高く維持され、また軽度ながら有意の殺カンジダ活性を示した。IFN-γと共に培養した場合AMの殺カンジダ活性は増強した。PMA刺激に対する、【O(^-_2)】放出は当初低下しday3よりday5にかけやや増加しその後再び低下した。IFN-γは【O(^-_2)】放出を著明に増加させた。この効果は濃度依存性で、【10^U】/ml以上で効果がみられオートクレイブしたIFN-γは無効であった。IFN-γ添加により【H_2】【O_2】産生も亢進した。AMが血清存在下にIFN-γにより活性化されることを示し、臨床的に難治性感染症や悪性腫瘍に対し有用である可能性が考えられる。また【O_(^-_2)】の除去剤、SODによりヒトAMの殺カンジダ活性は著明に阻害されその殺菌に活性酸素が重要であることが強く示唆された。次に正常及びBCG静注マウスAMに対き活性酸素生成の特性を検討した。チモザンやE(IgG)刺激ではBCG静注後のAMの方が高いがPMA刺激では、両者とも低値で差がない。AMは直接外界と接する環境下で機能しており選択的に反応することは重要である。PMAと同様Protein kinaseCを介して働くDioctanoyl glycerol+A23187による刺激に対しても【O(^-_2)】放出は低値で、細胞膜表面の受容体或は受容体から【O(^-_2)】生成系に至る課程が腹腔マクロファージとは異なっている可能性も考えられ現在検討中である。in vitroで培養すると脾細胞培養上清により活性化され炎症の場でのAMの役割を検討する上で興味深い。さらにヒト末梢血単球由来マクロファージは、in vitroに於ける殺カンジダ活性や活性酸素生成に於てヒトAMとほぼ同様の動態を示し今後末梢血単球を用いた検討も有用と考える。ヒト肺胞マクロファージ(AM)の貧食、殺菌能、殺菌機序及び組換え型IFN-γの影響を検討した。AMは気管支肺胞洗浄により採取しヒト不活化AB型血清10%を含むMEM培地に浮遊後プレートで培養した。被検微生物はCandida parapsilosis(CP)を用いた。貧食能はday0よりday7まで高く維持され、また軽度ながら有意の殺カンジダ活性を示した。IFN-γと共に培養した場合AMの殺カンジダ活性は増強した。PMA刺激に対する、【O(^-_2)】放出は当初低下しday3よりday5にかけやや増加しその後再び低下した。IFN-γは【O(^-_2)】放出を著明に増加させた。この効果は濃度依存性で、【10^U】/ml以上で効果がみられオートクレイブしたIFN-γは無効であった。IFN-γ添加により【H_2】【O_2】産生も亢進した。AMが血清存在下にIFN-γにより活性化されることを示し、臨床的に難治性感染症や悪性腫瘍に対し有用である可能性が考えられる。また【O_(^-_2)】の除去剤、SODによりヒトAMの殺カンジダ活性は著明に阻害されその殺菌に活性酸素が重要であることが強く示唆された。次に正常及びBCG静注マウスAMに対き活性酸素生成の特性を検討した。チモザンやE(IgG)刺激ではBCG静注後のAMの方が高いがPMA刺激では、両者とも低値で差がない。AMは直接外界と接する環境下で機能しており選択的に反応することは重要である。PMAと同様Protein kinaseCを介して働くDioctanoyl glycerol+A23187による刺激に対しても【O(^-_2)】放出は低値で、細胞膜表面の受容体或は受容体から【O(^-_2)】生成系に至る課程が腹腔マクロファージとは異なっている可能性も考えられ現在検討中である。in vitroで培養すると脾細胞培養上清により活性化され炎症の場でのAMの役割を検討する上で興味深い。さらにヒト末梢血単球由来マクロファージは、in vitroに於ける殺カンジダ活性や活性酸素生成に於てヒトAMとほぼ同様の動態を示し今後末梢血単球を用いた検討も有用と考える。
KAKENHI-PROJECT-60570347
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プロテインチロシンホスファターゼによるプロラクチンシグナリングの制御機構の解明
これまでの研究で、細胞質局在型PTPの一つPTP1BがSTAT5aおよびSTAT5bを細胞質内で脱リン酸化することによりプロラクチンシグナリングを負に制御することを示してきた。本年度はPTP1Bと同じサブファミリーに属する核局在型PTPであるTC-PTPに焦点を当てて研究を進めた結果以下のような興味深い知見を得ることが出来た。TC-PTP発現コンストラクトをRT-PCR法により構築し、プロラクチンレセプター、STAT5a/bと共にCOS7細胞に一過性に導入し、プロラクチン刺激に応じたそれぞれのチロシンリン酸化レベルを抗リン酸化チロシン抗体を用いて調べた。その結果、PTP1Bを共発現させた場合よりは遅れるがSTAT5a/bはTC-PTPにより効率よく脱リン酸化されることを見出した。さらに細胞内での局在を丹念に調べた結果、プロラクチン刺激によりリン酸化を受けたSTAT5a/bが核内に移行してからTC-PTPにより脱リン酸化を受けることが明らかとなり、このことが脱リン酸化を受ける時間の遅れの原因となることが示唆された。さらにTC-PTPを恒常的に発現する乳腺上皮細胞株(COMMA-1D)を樹立してプロラクチンのターゲット遺伝子であるβ-caseinの発現を調べた結果、野生型TC-PTPだけでなく活性中心のシステインをセリンに置換した変異体(C/S変異体)を発現させ場合でも顕著に減少することが明らかになった。これらの結果はTC-PTPは乳腺上皮細胞においてもプロラクチンシグナリングの負の制御因子として機能しうることを強く示唆している。またTC-PTPはSTAT3を核内で脱リン酸化することによりインターロイキン-6シグナリングを負に制御しうることも見出した。これらの結果はTC-PTPが広くJAK-STAT経路の負の制御因子として作用することを示す重要な知見である。これまでの研究で、細胞質局在型PTPの一つPTP1BがSTAT5aおよびSTAT5bを細胞質内で脱リン酸化することによりプロラクチンシグナリングを負に制御することを示してきた。本年度はPTP1Bと同じサブファミリーに属する核局在型PTPであるTC-PTPに焦点を当てて研究を進めた結果以下のような興味深い知見を得ることが出来た。TC-PTP発現コンストラクトをRT-PCR法により構築し、プロラクチンレセプター、STAT5a/bと共にCOS7細胞に一過性に導入し、プロラクチン刺激に応じたそれぞれのチロシンリン酸化レベルを抗リン酸化チロシン抗体を用いて調べた。その結果、PTP1Bを共発現させた場合よりは遅れるがSTAT5a/bはTC-PTPにより効率よく脱リン酸化されることを見出した。さらに細胞内での局在を丹念に調べた結果、プロラクチン刺激によりリン酸化を受けたSTAT5a/bが核内に移行してからTC-PTPにより脱リン酸化を受けることが明らかとなり、このことが脱リン酸化を受ける時間の遅れの原因となることが示唆された。さらにTC-PTPを恒常的に発現する乳腺上皮細胞株(COMMA-1D)を樹立してプロラクチンのターゲット遺伝子であるβ-caseinの発現を調べた結果、野生型TC-PTPだけでなく活性中心のシステインをセリンに置換した変異体(C/S変異体)を発現させ場合でも顕著に減少することが明らかになった。これらの結果はTC-PTPは乳腺上皮細胞においてもプロラクチンシグナリングの負の制御因子として機能しうることを強く示唆している。またTC-PTPはSTAT3を核内で脱リン酸化することによりインターロイキン-6シグナリングを負に制御しうることも見出した。これらの結果はTC-PTPが広くJAK-STAT経路の負の制御因子として作用することを示す重要な知見である。これまでの研究により、PTP1BがSTAT5a/bを特異基質としプロラクチン刺激を受けてリン酸化されたSTAT5a/bを細胞質内で効率よく脱リン酸化する事を見いだしている。これとは別にPTP1Bはインスリンレセプターをも脱リン酸化し、活性中心の他にN末端領域が必須であることが他の研究グループにより報告されている。そこで本研究課題において、PTP1BのN末端から30(PTP1BΔN30),155(PTP1BΔN150)アミノ酸残基を欠失したミュータントをPCR法により作成し、そのN末端にHAエピトープタグを付加した。これらコンストラクトをCOS7細胞に導入してその発現をHAに対する抗体を用いたウエスタンブロット法により解析したところ、予想に反して野生型に比して極端に発現量が低くなることが判明し、このN末端領域が何らかの作用によりPTP1Bの細胞内での安定性に深く寄与することが示唆された。現在site-directed mutagenesisによるアミノ酸残基置換型ミュータントの構築を進めている。またPTP1BによるSTAT5a/bの脱リン酸化メカニズムをさらに詳細に調べるために、PTP1Bと同様にSTAT5aのC末端から80アミノ酸残基をPCR法により欠失させたミュータント(STAT5aΔC80)を構築し、プロラクチン刺激後のチロシンリン酸化レベルを調べた。このミュータントは、野生型と同程度の発現レベルを示し、野生型に比べプロラクチン刺激後のチロシンリン酸化が長時間にわたって持続することを見いだしたが、PTP1Bによる脱リン酸化は野生型と同程度受けることが明らかとなった。これまでの研究で、細胞質局在型PTPの一つPTP1BがSTAT5aおよびSTAT5bを細胞質内で脱リン酸化することによりプロラクチンシグナリングを負に制御することを示してきた。
KAKENHI-PROJECT-13660340
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13660340
プロテインチロシンホスファターゼによるプロラクチンシグナリングの制御機構の解明
本年度はPTP1Bと同じサブファミリーに属する核局在型PTPであるTC-PTPに焦点を当てて研究を進めた結果以下のような興味深い知見を得ることが出来た。TC-PTP発現コンストラクトをRT-PCR法により構築し、プロラクチンレセプター、STAT5a/bと共にCOS7細胞に一過性に導入し、プロラクチン刺激に応じたそれぞれのチロシンリン酸化レベルを抗リン酸化チロシン抗体を用いて調べた。その結果、PTP1Bを共発現させた場合よりは遅れるがSTAT5a/bはTC-PTPにより効率よく脱リン酸化されることを見出した。さらに細胞内での局在を丹念に調べた結果、プロラクチン刺激によりリン酸化を受けたSTAT5a/bが核内に移行してからTC-PTPにより脱リン酸化を受けることが明らかとなり、このことが脱リン酸化を受ける時間の遅れの原因となることが示唆された。さらにTC-PTPを恒常的に発現する乳腺上皮細胞株(COMMA-1D)を樹立してプロラクチンのターゲット遺伝子であるβ-caseinの発現を調べた結果、野生型TC-PTPだけでなく活性中心のシステインをセリンに置換した変異体(C/S変異体)を発現させ場合でも顕著に減少することが明らかになった。これらの結果はTC-PTPは乳腺上皮細胞においてもプロラクチンシグナリングの負の制御因子として機能しうることを強く示唆している。またTC-PTPはSTAT3を核内で脱リン酸化することによりインターロイキン-6シグナリングを負に制御しうることも見出した。これらの結果はTC-PTPが広くJAK-STAT経路の負の制御因子として作用することを示す重要な知見である。
KAKENHI-PROJECT-13660340
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児童養護施設における心理職の活用に関する調査研究
児童養護施設(N=568),及び乳児院(N=121)における心理職の活用状況に関する全国調査をおこなった。その結果から,児童養護施設における心理職の活用に関して,(1)小規模施設における心理職導入の困難さ,(2)心理職の育成をめぐる課題,(3)心理職の生活の場への関与の問題,(4)ケアワーカーの人間関係の問題,(5)心理職活用のための有効な取り組み,について言及した。また,乳児院における心理職の活用に関して,(1)心理職導入をめぐる課題,(2)乳児院心理職に求められている役割,(3)生活の場への関与,(4)心理職活用のための有効な取り組みについて言及した。加えて,心理職の活用が進んでいる施設(Expert施設)と活動が評価されている心理職(Master Therapist)に対するインタビュー調査をおこない,その結果から,心理職活用についてのガイドラインを作成した。児童養護施設(N=568),及び乳児院(N=121)における心理職の活用状況に関する全国調査をおこなった。その結果から,児童養護施設における心理職の活用に関して,(1)小規模施設における心理職導入の困難さ,(2)心理職の育成をめぐる課題,(3)心理職の生活の場への関与の問題,(4)ケアワーカーの人間関係の問題,(5)心理職活用のための有効な取り組み,について言及した。また,乳児院における心理職の活用に関して,(1)心理職導入をめぐる課題,(2)乳児院心理職に求められている役割,(3)生活の場への関与,(4)心理職活用のための有効な取り組みについて言及した。加えて,心理職の活用が進んでいる施設(Expert施設)と活動が評価されている心理職(Master Therapist)に対するインタビュー調査をおこない,その結果から,心理職活用についてのガイドラインを作成した。本研究は児童養護施設,及び乳児院における心理職の活用方法や活動内容について検討するものであり,心理職の入所児童に対する有効な支援のあり方やケアワーカーとの有効な連携のあり方などを明示することを目的としている。平成21年度は,児童養護施設や乳児院における心理職の活用状況や活動状況を詳細に分析するために全国の児童養護施設,乳児院を対象としてアンケート調査を実施し,施設形態や規模,心理職の雇用形態などによる活用状況や活動内容の相違を実証的に分析した。その結果,児童養護施設において,施設は心理職の育成や活用システムについて問題点を抱えており,心理職は単に生活場面で心理職として活動するというだけではなく,ケアワーカーと同じように生活支援に従事しながら心理職としての役割を果たさなければならないというダブルロールの問題を抱え,心理職としてのアイデンティティを確立できないでいるという問題が顕著に示された。こうした中で心理職の活用を進めるためには「心理職活用のシステムを構築すること」「施設外部の資源を活用すること」がキーポイントとなることが示唆された。一方,乳児院では心理職には子どもに対する(治療というよりも)発達支援や家族へのアプローチが求められていた。しかし,現状では家族へのアプローチに対する施設からの評価は低く,心理職は家庭支援専門員をはじめとするケアワーカーと連携を深めながら家族へのアプローチを充実させる必要があることが示唆された。児童養護施設,乳児院双方において,心理職の育成や活用,心理職の活動内容に関するシステムやガイドラインを構築することが,入所児童に対するより有効な支援やケアワーカーとの有効な連携を進める上で,1つのポイントとなることが明らかになった。児童養護施設及び乳児院において「施設が心理職を活用するためのガイドライン」及び「心理職が有効な活動を展開するためのガイドライン」(以下,ガイドライン)を作成することを目的とした研究を展開した。子どもたちの生活の場における先駆的な心理臨床実践である臨床心理士による学校臨床心理士事業の展開,特に制度化のプロセスについて学校臨床心理士ワーキンググループの取り組みについてのインタビュー調査等を実施し,新たなコミュニティにおいて心理臨床活動を展開する際のガイドライン作成の方向性についての示唆を得た。さらに,平成21年度の全国調査から得られたデータや周囲の同業専門職への聞き取りによって得られた「有効に機能している」と評価される施設において「どのように心理職が活用されているのか」「心理職がどのような活動を展開しているのか」についてのインタビュー調査をおこなった。こうした調査からは(1)心理職が子どもたちの発達的側面に着目していること,(2)心理職が生活場面で表出する子どもたちの問題行動にアプローチしようとしていること,(3)管理職が心理職の活用に関する方針を持っていること,(4)施設に心理職を受け容れるレディネスがあること,などが重要な要因として存在する可能性が明らかになりつつある(インタビュー調査は平成23年度も継続予定)。加えて,こうした調査から得られたデータをもとに複数の児童養護施設及び乳児院において心理職の活用や心理職の活動をサポートする臨床実践を展開し,より多くの施設において活用することが可能な「ガイドライン」に含まれる項目の選定を進めている。こうしたエビデンスの抽出やガイドラインの作成は,心理職の有効な活用や心理職の効果的な活動内容についての方向性を示すものとなり,児童養護施設及び乳児院において子どもたちに対する有効な心理的ケアを進める一助となると考えられる。本研究の目的は児童養護施設,及び乳児院における心理職の活用を進めるために,心理職の活用に関するガイドラインを策定するものである。施設からの評価や他施設心理職からの評価など,複数の基準によってMaster Therapistと評価された児童養護施設,及び乳児院心理職の活動をGrounded Theory Approachによって分析することによって,彼らの活動内容や活動展開のプロセスを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-21730482
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21730482
児童養護施設における心理職の活用に関する調査研究
また,同様に複数の基準によって心理職の有効活用が進んでいる施設を心理職活用のExpert施設とし,心理職の導入から活用についての特徴について分析した。これらの結果から,児童養護施設及び乳児院における「心理職活用のガイドライン」あるいは「心理職が施設で機能するためのガイドライン」を作成した。例えば,児童養護施設のMaster Therapist(11施設)を対象とした調査では17のカテゴリーと49の概念が得られ,さらにそこからおよそ30項目の児童養護施設Master Therapistの特徴が抽出された。さらに,それらを基にして現職の児童養護施設心理職と共に検討し,心理職が児童養護施設で機能するための「ガイドライン」を作成した。この「ガイドライン」には「児童養護施設心理職としての自分を支える環境を整える」「施設を見立てること,心理職としての自分を見立てること」「児童養護施設心理職としての基本的な姿勢」など6つの領域,22項目が含まれている。同様に児童養護施設のExpert施設(8施設)を対象とした調査では9つのカテゴリーと31の概念が得られ,さらにそこからおよそ15項目の心理職の活用に関するExpert児童養護施設の特徴が抽出され,それらを基に児童養護施設が心理職を活用するための「ガイドライン」を作成した。さらに,乳児院のMaster Therapist(6施設)を対象とした調査では13のカテゴリーと45の概念,乳児院のExpert施設(6施設)を対象とした調査では8つのカテゴリーと24の概念が得られ,同様に現職の乳児院心理職と共に検討し,「ガイドライン」を作成した。
KAKENHI-PROJECT-21730482
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ゴルジ体構造維持タンパク質golginファミリーによる輸送小胞の運命決定機構
繋留タンパク質は輸送小胞が標的膜に融合する前に最初の接着を行う因子と考えられている。ゴルジ体に分布する長いcoiled-coil構造を持つ一群のタンパク質で繋留因子と考えられている。本研究ではgolgin-84とp230の2種類のgolginが微小管関連タンパク質と共役することを明らかにした。golgin-84はKif3Cと,p230はMACF1とそれぞれ共役し、ゴルジ体からの輸送に関係していた。繋留因子と微小管関連タンパク質の相互作用は繋留因子が標的膜と小胞の結合だけでなく、小胞輸送の初期の段階で関わることで小胞を正しい目的地へ運ぶ働きを持つことが示された。1.前年の結果を受けて、以下の解析を行った。(2)KIF3Cノックダウン(KD)とKIF3B KDにおけるライソゾーム糖鎖タンパク質lamp1と形質膜糖タンパク質CD44の挙動。これらの糖鎖タンパク質はゴルジ体で糖鎖の修飾を受けるが、どちらのKIF3のKDでも糖鎖の修飾に変化は見られなかった。このことはKIF3B,Cともにゴルジ体間及びゴルジ体ー小胞体間のretrogradeな輸送には関与しないことを示唆する。(3)両KIF3 KD細胞において、lamp1とCD44の集積がおこることが観察された。このことはKinesin2がpost-Golgiのretrogradeな輸送にかかわっていることを示す。golgin-84は繋留タンパク質COG複合体やCASPと相互作用することで、ゴルジ体の輸送小胞を正確に標的膜に結合させることが報告されている。本研究は繋留タンパク質が輸送小胞を正確に標的膜に運ぶ機構の解明を目的としてゴルジ体局在タンパク質goginと相互作用をするタンパク質の検索をおこなった。この過程でgolgin-84が特異的なモータータンパク質と相互作用することを新しく見いだした。golgin-84はkinesin2のアイソタイプサブユニットKIF3Cと結合し、これは酵母Two-hy,免疫共沈、in-vitro pull-down解析で示された。golgin-84ともう一つのkinesin2のアイソタイプサブユニットKIF3Bとの結合は見いだせなく、KIF3C特異的と考えられる。KIF3Cノックダウン(KD)とKIF3B KD細胞におけるゴルジ体で糖鎖の修飾を受けるライソゾーム糖タンパク質lamp1と形質膜糖タンパク質CD44の挙動を観察したところ。どちらのKIF3のKDでもこれらの糖鎖タンパク質の糖鎖の修飾に変化は見られなかった。このことはKIF3B,Cともにゴルジ体間及びゴルジ体ー小胞体間のretrogradeな輸送には関与しないことを示唆する。さらにKIF3C KD細胞においてlamp1の蓄積がKIF3B KDによってCD44の集積がおこることが観察された。このことはKinesin2アイソタイプがそれぞれ異なったpost-Golgiの輸送にかかわっていることを示している。おそらくKIF3Cがトランスゴルジ体からライソゾームへの、KIF3Bが形質膜からトランスゴルジまたは、トランスゴルジ体からエンドソームの輸送へ関わっていると考えられる。今までkinesin2(kif3A+kif3B)はER-Golgi間retrograde輸送に働くと考えられてきたが、我々の結果はkinesin2のアイソタイプがそれぞれ異なった新しい働きをすることを明らかにした。繋留タンパク質は輸送小胞が標的膜に融合する前に最初の接着を行う因子と考えられている。ゴルジ体に分布する長いcoiled-coil構造を持つ一群のタンパク質で繋留因子と考えられている。本研究ではgolgin-84とp230の2種類のgolginが微小管関連タンパク質と共役することを明らかにした。golgin-84はKif3Cと,p230はMACF1とそれぞれ共役し、ゴルジ体からの輸送に関係していた。繋留因子と微小管関連タンパク質の相互作用は繋留因子が標的膜と小胞の結合だけでなく、小胞輸送の初期の段階で関わることで小胞を正しい目的地へ運ぶ働きを持つことが示された。昨年までの結果から、golgin-84と相互作用を持つkinesin2サブファミリー(kif3A+kif3C)はこれまで主に解析されてきたkinesin2(kif3A+kif3B)と異なりトランスゴルジ体からライソゾームへの輸送に関係していることが明らかになった。この小胞輸送経路にはgolgin-84とkinesin2サブファミリーの相互作用が必須であった。一方、golgin-84と他のgolginの相互作用解析の中で、相互作用タンパク質COG複合体がトランスgolginで有るp230と共局在を示す事を見いだした。COG複合体は酵母細胞においてファゴフォアー形成にかかわることが報告されているが、我々は哺乳動物細胞においてもCOG複合体サブユニットCog3ノックダウン(KD)細胞ではオートファゴソーム形成が阻害されることを確認した。この結果を踏まえて共役因子であるgolgin-84や他のgoginのKD細胞におけるオートファゴソーム形成についての解析を行った。その結果ゴルジ体トランス局在golginであるp230がオートファジイ関連タンパク質Atg9のゴルジ体から形質膜を経由してのファゴフォアーへの輸送に必須であることを発見し、共役タンパク質は微小管結合タンパク質MACF1であることを示した。
KAKENHI-PROJECT-23570149
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ゴルジ体構造維持タンパク質golginファミリーによる輸送小胞の運命決定機構
本研究により明らかにされた、golgin-84とp230の解析結果はゴルジ体トランス領域に於てもgolginタンパク質が小胞やその積み荷の行き先決定に関与していることを強く示している。生化学今までkinesin2(kif3A+kif3B)はER-Golgi間retrograde輸送に働くと考えられてきたが、我々の結果はこのことに疑問をなげかけた。Golgin-84と相が互作用をもつkinesin2(kif3A+kif3C)とkinesin2(kif3A+kif3B)がどのように働きが異なるかを解析することでGolgin-84の機能と小胞輸送の調節機構に新たな局面を追加できる。またkinesin2(kif3A+kif3C)とCASPの相互作用の証明はこれまでのCASPの機能を考えなおす必要をもたらした。概要に述べた繋留タンパク質golgin-84とkinesin2の相互作用がpost-Golgiの小胞輸送に関わっていることをほぼまとめて、論文投稿中である。3種のgolginのうちgiantinを除いては相互作用するSNAREの特定を終えている。これによりそれぞれのgolginが細胞内輸送のどの部分に主に働くかを推測できた。またsiRNA作用条件の確定、抗体の準備等も終えている。小胞の輸送にかかわるモータータンパク質kinesin2とgolgin-84の相互作用ドメインの解析も終わっている。Kinesin2とGolgin-84の相互作用がpost-Golgiである可能性を詳細に検討するために、post-Golgi SNAREとの相互作用を検討する。また正確の異なるライソゾームタンパク質cathepsin Dや形質膜タンパク質TfRなどについても解析を追加する。CASP KDについても、同様の解析をおこなう。我々のgolgin-84と相互作用タンパク質CASPとの関係解析結果やkinesin2(kif3A+kif3C)とCASPの相互作用の証明はこれまでのCASPの機能を考えなおす必要をもたらした。さらにゴルジ体間逆輸送に関係するgolgin-84とCOG複合体の相互作用とpost-Golgi小胞輸送へのgolgin-84の使い分けについてどのような機構により調節されているかの解析が重要である。CASPはGolgin-84との相互作用が報告されているが、我々の解析では今の所そのような直接結合を示す結果が得られていない。一方COPIIコートタンパクのSec23との相互作用が報告されており、今回得られた結果であるER-GolgiのSNAREとの結合と合わせて考えるとGolgin-84との相互作用はゴルジ体側で起こると推測できる。我々はGolgin-84とp115がCOG複合体と相互作用することでCOPI小胞輸送の調節を行っていることを明らかにしてきたが、CASPがこれらの調節機構と関係するかどうかの解析も必要と考える。またGolgin-84と相互作用をもつkinesin2(kif3A+kif3C)のがいままで報告されているER-Golgi間retrograde transport kinesin2(kif3A+kif3B)とどのように働きが異なるかを解析することでGolgin-84の機能と小胞輸送の調節機構を理解する一助となる。
KAKENHI-PROJECT-23570149
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小学校算数科におけるアクティブ・ラーニングの授業設計方法の開発
アクティブ・ラーニング(以下, AL)が展開する授業を分析し,小学校算数教育におけるALが展開する授業設計方法の明示化を目指した。とりわけ,本研究では「問題・課題づくり」の特徴の明示化を目的とした。(1)附属函館小学校算数科(以下,本校)の「問題・課題づくり」の特徴の分析平成27年11月6年「比例と反比例」,平成27年7月6年「速さ」の授業実践を選択。それぞれの授業実践について,教材の目標,内容を研究代表者が分析し記述した。そして,想定される学習活動を「授業過程予想構造図」に表現。2つの「授業過程予想構造図」と授業設計過程についての分析の結果,以下の3点が本校における「問題・課題づくり」の特徴として浮かび上がった。ア子供の解答が複数存在する問題設定。イ授業設計過程において,授業者が子供と同様の活動を行い,何度もシミュレーションを繰り返している。ウ解答の共通点に着目するよう教師が促すことで,中核となる学習内容を共有化している。(2)他校の小学校算数科の「問題・課題」の分析平成28年5年「図形の角」の授業実践の教授・学習行動等のキーフレーズ(キーワード,キーセンテンス)を抽出し,授業過程の構造を「授業過程の構造図」に表現。(3)小学校算数科におけるALの「問題・課題づくり」の特徴本校と他校の「問題・課題づくり」の共通点や傾向を調べたところ,以下の2点が浮かび上がった。ア子供の解答が複数存在する問題設定をしている。イ教師は子供に寄り添う深い教材研究を行い,「問題・課題づくり」を行っている。(4)まとめと今後の展望教師は,子供による主体的な学習の成立を目指して,綿密なシミュレーションを繰り返して「問題・課題づくり」を進めている。教師は子供の理解に寄り添おうと,実践を内省し,授業を子供に合わせて調整・再設計を繰り返していることが分かった。今後は,この授業設計方法の明示化が課題となる。アクティブ・ラーニング(以下, AL)が展開する授業を分析し,小学校算数教育におけるALが展開する授業設計方法の明示化を目指した。とりわけ,本研究では「問題・課題づくり」の特徴の明示化を目的とした。(1)附属函館小学校算数科(以下,本校)の「問題・課題づくり」の特徴の分析平成27年11月6年「比例と反比例」,平成27年7月6年「速さ」の授業実践を選択。それぞれの授業実践について,教材の目標,内容を研究代表者が分析し記述した。そして,想定される学習活動を「授業過程予想構造図」に表現。2つの「授業過程予想構造図」と授業設計過程についての分析の結果,以下の3点が本校における「問題・課題づくり」の特徴として浮かび上がった。ア子供の解答が複数存在する問題設定。イ授業設計過程において,授業者が子供と同様の活動を行い,何度もシミュレーションを繰り返している。ウ解答の共通点に着目するよう教師が促すことで,中核となる学習内容を共有化している。(2)他校の小学校算数科の「問題・課題」の分析平成28年5年「図形の角」の授業実践の教授・学習行動等のキーフレーズ(キーワード,キーセンテンス)を抽出し,授業過程の構造を「授業過程の構造図」に表現。(3)小学校算数科におけるALの「問題・課題づくり」の特徴本校と他校の「問題・課題づくり」の共通点や傾向を調べたところ,以下の2点が浮かび上がった。ア子供の解答が複数存在する問題設定をしている。イ教師は子供に寄り添う深い教材研究を行い,「問題・課題づくり」を行っている。(4)まとめと今後の展望教師は,子供による主体的な学習の成立を目指して,綿密なシミュレーションを繰り返して「問題・課題づくり」を進めている。教師は子供の理解に寄り添おうと,実践を内省し,授業を子供に合わせて調整・再設計を繰り返していることが分かった。今後は,この授業設計方法の明示化が課題となる。
KAKENHI-PROJECT-16H00216
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H00216
子宮内膜症に関連する遺伝子多型の解析
子宮内膜症の病因は未だ明らかではないが、遺伝的因子との関連が指摘されており、近年いくつかの解毒関連酵素遺伝子の遺伝子多型と本症の発生との関連が急速に報告されてきた。本疾患がエストロゲン依存性に発生増殖することから、我々エストロゲン・レセプターα遺伝子のイントロン1上にある1塩基多型が本疾患のリスクに関連することをすでに発表した。今回の研究においても、学内倫理委員会の承認のもと、個人からの同意のもとに採取した末梢血から得たゲノムDNAを検体として、遺伝子多型と子宮内膜症との関連について検討し、下記の結果が得られた。1.インターロイキン10遺伝子のプロモーター領域の1塩基多型:-592*CC遺伝子型および-592*Cアリルは、抗carbonic anhydrase自己抗体を持つ子宮内膜症患者において対照群に対して有意に上昇していた。2.CYP17遺伝子(アンドロゲン生合成酵素チトクロムP450 C17α/C17-20リアーゼをコードする)のプロモーター領域の1塩基多型:子宮内膜症との有意な関連はなかった。3.CYP19遺伝子(エストロゲン生合成酵素アロマターゼ)のイントロン4の3塩基(CTT)挿入/欠失遺伝子多型は、子宮内膜症群において欠失/欠失の遺伝子型が対照群に対して有意に多かった。4.子宮内膜症群ではB7およびCw^*0702の頻度が対照群に比し有意に高頻度であった。このHLAクラスIの増加はNK細胞および細胞障害性T細胞機能と関連し、本疾患の発症進展に関連する。B7はNK活性を抑制することから、HLAクラスIが子宮内膜症の疾患感受性遺伝子の一つである。子宮内膜症の病因は未だ明らかではないが、遺伝的因子との関連が指摘されており、近年いくつかの解毒関連酵素遺伝子の遺伝子多型と本症の発生との関連が急速に報告されてきた。本疾患がエストロゲン依存性に発生増殖することから、我々エストロゲン・レセプターα遺伝子のイントロン1上にある1塩基多型が本疾患のリスクに関連することをすでに発表した。今回の研究においても、学内倫理委員会の承認のもと、個人からの同意のもとに採取した末梢血から得たゲノムDNAを検体として、遺伝子多型と子宮内膜症との関連について検討し、下記の結果が得られた。1.インターロイキン10遺伝子のプロモーター領域の1塩基多型:-592*CC遺伝子型および-592*Cアリルは、抗carbonic anhydrase自己抗体を持つ子宮内膜症患者において対照群に対して有意に上昇していた。2.CYP17遺伝子(アンドロゲン生合成酵素チトクロムP450 C17α/C17-20リアーゼをコードする)のプロモーター領域の1塩基多型:子宮内膜症との有意な関連はなかった。3.CYP19遺伝子(エストロゲン生合成酵素アロマターゼ)のイントロン4の3塩基(CTT)挿入/欠失遺伝子多型は、子宮内膜症群において欠失/欠失の遺伝子型が対照群に対して有意に多かった。4.子宮内膜症群ではB7およびCw^*0702の頻度が対照群に比し有意に高頻度であった。このHLAクラスIの増加はNK細胞および細胞障害性T細胞機能と関連し、本疾患の発症進展に関連する。B7はNK活性を抑制することから、HLAクラスIが子宮内膜症の疾患感受性遺伝子の一つである。子宮内膜症の病因は未だ明らかではないが、遺伝的因子との関連が指摘されており、近年いくつかの解毒関連酵素遺伝子の遺伝子多型と本症の発生との関連が急速に報告されてきた。本症がエストロゲン依存性に発生増殖することから、我々もエストロゲン関連遺伝子を中心に検討してきた。そして、エストロゲン・レセプターα遺伝子のイントロン1上にある1塩基多型が、本症のリスクに関連することをすでに発表した。今回の研究においても、学内倫理委員会の承認のもと、個人からの同意のもとに採取した末梢血から得たゲノムDNAを検体として、遺伝子多型と子宮内膜症との関連について検討してきた。現時点において、明らかになったものは下記のとおりである。1.インターロイキン10遺伝子のプロモーター領域の1塩基多型:-592*CC遺伝子型および-592*Cアリルは、抗carbonic anhydrase自己抗体を持つ子宮内膜症患者において対照群に対して有意に上昇していた。2.CYP17遺伝子(アンドロゲン生合成酵素チトクロムP450 C17α/C17-20リアーゼをコードする)のプロモーター領域の1塩基多型:子宮内膜症との有意な関連はなかった。3.CYP19遺伝子(エストロゲン生合成酵素アロマターゼをコードする)のイントロン4の遺伝子多型:4塩基(TTTA)反復遺伝子多型は、子宮内膜症との有意な関連はなかった。しかし、その80塩基上流にある3塩基(CTT)挿入または欠失遺伝子多型は、子宮内膜症群において欠失/欠失の遺伝子型が対照群に対して有意に多かった。子宮内膜症の病因は未だ明らかではないが、遺伝的因子との関連が指摘されており、近年いくつかの解毒関連酵素遺伝子の遺伝子多型と本症の発生との関連が急速に報告されてきた。本疾患がエストロゲン依存性に発生増殖することから、我々もエストロゲン関連遺伝子を中心に検討してきた。
KAKENHI-PROJECT-13671736
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子宮内膜症に関連する遺伝子多型の解析
そして、本疾患のリスクに関連するものとして、昨年度までにエストロゲン・レセプターα遺伝子のイントロン1上にある1塩基多型、エストロゲン生合成酵素アロマターゼをコードするCYP19遺伝子のイントロン4上にある3塩基(CTT)挿入または欠失遺伝子多型、が見出された。さらに、インターロイキン10遺伝子のプロモーター領域の1塩基多型:-592^*CC遺伝子型および-592^*Cアリルが、抗carbonic anhydrase自己抗体を持つ子宮内膜症患者において対照群に対して有意に上昇していた。今年度の研究においても、学内倫理委員会の承認のもと、個人からの同意のもとに採取した末梢血から得たゲノムDNAを検体として、遺伝子多型と子宮内膜症との関連について検討してきた。その結果、子宮内膜症群ではB7およびCw^*0702の頻度が対照群に比し有意に高頻度であった。このHLAクラスIの増加はNK細胞および細胞障害性T細胞機能と関連し、本疾患の発症進展に関連する。B7はNK活性を抑制することから、HLAクラスIが子宮内膜症の疾患感受性遺伝子の一つであることが強く示唆された。
KAKENHI-PROJECT-13671736
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ジオキセタンを経由する化学発光に於ける励起一重項発光体生成機構の解明
近年、高感度フォトンカウンター、カメラの開発があり、活性酸素と反応することにより化学発光する物質を発光プローブとして生体内活性酸素の検出が可能となってきた。しかしながら、in vivoで使える高性能の化学発光プローブはまだ世になく、本研究では、特に生体内で発生するスーパーオキシドアニオンラジカル検出の化学発光プローブ開発を主眼とした。現在使われている最もこの目的に合致した化合物はイミダゾピラジン骨格を有するウミホタルルシフェリン類縁体(CLA;MCLA)であるが、スーパーオキシドアニオンラジカルに対する特異性が十分でなく、発光量子収率に低い。そこで、目的化合物の分子設計の1つの方向としてMCLAの中に陽電荷を持たせることにより、スーパーオキシドアニオンラジカルに対する反応性を高める一方、ヒドロキシルラジカル等の求核力を持たない活性酸素種に対して反応性を全く有しないようにする事を考えて、1-methyl-2-methyl-6-p-methoxyphenylimidazo[1,2-a]pyrazin(7H)-one hydrochloride(I)を合成した。他方、現在知られている発光の中でホタル生物発光の発光量子収率が最も高いことに注目した。ホタルルシフェリン自体はスーパーオキシドアニオンラジカルと反応して発光しないので、ホタルルシフェリンのフェニルエステル(II)を合成した。化合物IIは、非プロトン性溶媒中で630nmの赤色発光を示す。この波長の光は生体組織を極めて貫通しやすく有望である。これらの化合物を、キサンチン/キサンチンオキシダーゼ酵素系で発生させたスーパーオキシドアニオンラジカルを用いて評価するところである。これらの研究成果は、2篇の論文として公表される。近年、高感度フォトンカウンター、カメラの開発があり、活性酸素と反応することにより化学発光する物質を発光プローブとして生体内活性酸素の検出が可能となってきた。しかしながら、in vivoで使える高性能の化学発光プローブはまだ世になく、本研究では、特に生体内で発生するスーパーオキシドアニオンラジカル検出の化学発光プローブ開発を主眼とした。現在使われている最もこの目的に合致した化合物はイミダゾピラジン骨格を有するウミホタルルシフェリン類縁体(CLA;MCLA)であるが、スーパーオキシドアニオンラジカルに対する特異性が十分でなく、発光量子収率に低い。そこで、目的化合物の分子設計の1つの方向としてMCLAの中に陽電荷を持たせることにより、スーパーオキシドアニオンラジカルに対する反応性を高める一方、ヒドロキシルラジカル等の求核力を持たない活性酸素種に対して反応性を全く有しないようにする事を考えて、1-methyl-2-methyl-6-p-methoxyphenylimidazo[1,2-a]pyrazin(7H)-one hydrochloride(I)を合成した。他方、現在知られている発光の中でホタル生物発光の発光量子収率が最も高いことに注目した。ホタルルシフェリン自体はスーパーオキシドアニオンラジカルと反応して発光しないので、ホタルルシフェリンのフェニルエステル(II)を合成した。化合物IIは、非プロトン性溶媒中で630nmの赤色発光を示す。この波長の光は生体組織を極めて貫通しやすく有望である。これらの化合物を、キサンチン/キサンチンオキシダーゼ酵素系で発生させたスーパーオキシドアニオンラジカルを用いて評価するところである。これらの研究成果は、2篇の論文として公表される。
KAKENHI-PROJECT-07640785
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細菌におけるビフェニル/PCB代謝遺伝子の新規な発現調節機構に関する研究
ビフェニル及びサリチル酸資化菌であるPseudomonas pseudoalcaligenes KF707株のビフェニル代謝(bph)遺伝子群及び、サリチル酸代謝(sal)遺伝子群の転写解析を行った。両遺伝子群の転写はLysR familyに属するBphR2とGntR familyに属するBphR1により制御されていた。Gel shift解析及びDNase I footprinting解析の結果、両転写制御因子は、サリチル酸の中間代謝物である2-hydoroxymuconate semialdehyde(HMSA)をエフェクターとしており、特にBphR2はHMSA非存在下で自身のoperator領域に結合しその転写を抑制していた。一方、HMSA存在下では、その転写抑制が解除され、BphR2はsal遺伝子群のoperator領域に結合しその転写を誘導していることが明らかとなった。この結果から、KF707株のbph-sal遺伝子群の転写モデルを提案した。一方、bph-sal遺伝子群は水平伝播により他菌株へと転移することが知られている。転移した遺伝子群は宿主特異的な転写制御を受けていることが推察されるため、KF707株と極めて相同なbph-sal遺伝子群を有するP.aeruginosa KF702株を用いてbph-sal遺伝子群の転写解析を行った。その結果、KF702株とKF707株のbph-sal遺伝子群の転写制御様式が明らかに異なることが明らかとなった。このことから転移した遺伝子群が、宿主特異的な転写制御メカニズムに依存していることが強く示唆された。なお、本研究の一部についてはフランス・マルセイユ市で行われたPseudomonas 2005シンポジウムで報告済みである。ビフェニル/PCB分解菌Pseudomonas pseudoalcaligenes KF707株のビフェニル代謝(bph)遺伝子群及びサリチル酸代謝(sal)遺伝子群の代謝制御について解析を行なった。両遺伝子群の転写・発現はBphR1及びBphR2によって制御されている。BphR1はGntRファミリーに属しており、bphR1、bphX領域及びbphDの転写を正に制御しており、BphR2はsal遺伝子群の上流に存在しており、LysRファミリーに属し、bphR1、bphABCの転写を正に制御していることが既に明らかとなっている。本研究では両因子によるbph-sal遺伝子群の代謝制御様式について詳細な解析を行なった。定量RT-PCR法を用いてsal遺伝子群の転写量を測定した結果、BphR1はsal遺伝子群を負に、BphR2はsal遺伝子群を正にそれぞれ制御していることが明らかとなった。さらに、ゲルシフト解析により、両因子が制御下にある遺伝子群のオペレーター領域に結合することによることが明らかになった。また、BphR1はサリチル酸の中間代謝物、2-hydroxymuconate semialdehyde(HMSA)存在下ではsal遺伝子群のオペレーター領域に結合できず、sal遺伝子群の負の制御が解除されることが示唆された。また、sal遺伝子群のオペレーター領域にはbphR2のオペレーター領域も存在している。BphR2はHMSA存在下、非存在下においてもsal遺伝子群のオペレーター領域に結合していた。この結果より、HMSA存在下ではBphR2は自身のオペレーター領域に結合しその転写を負に制御しており、HMSA存在下ではsal遺伝子群のオペレーター領域に結合しその転写を制御していることが示唆された。ビフェニル及びサリチル酸資化菌であるPseudomonas pseudoalcaligenes KF707株のビフェニル代謝(bph)遺伝子群及び、サリチル酸代謝(sal)遺伝子群の転写解析を行った。両遺伝子群の転写はLysR familyに属するBphR2とGntR familyに属するBphR1により制御されていた。Gel shift解析及びDNase I footprinting解析の結果、両転写制御因子は、サリチル酸の中間代謝物である2-hydoroxymuconate semialdehyde(HMSA)をエフェクターとしており、特にBphR2はHMSA非存在下で自身のoperator領域に結合しその転写を抑制していた。一方、HMSA存在下では、その転写抑制が解除され、BphR2はsal遺伝子群のoperator領域に結合しその転写を誘導していることが明らかとなった。この結果から、KF707株のbph-sal遺伝子群の転写モデルを提案した。一方、bph-sal遺伝子群は水平伝播により他菌株へと転移することが知られている。転移した遺伝子群は宿主特異的な転写制御を受けていることが推察されるため、KF707株と極めて相同なbph-sal遺伝子群を有するP.aeruginosa KF702株を用いてbph-sal遺伝子群の転写解析を行った。その結果、KF702株とKF707株のbph-sal遺伝子群の転写制御様式が明らかに異なることが明らかとなった。このことから転移した遺伝子群が、宿主特異的な転写制御メカニズムに依存していることが強く示唆された。なお、本研究の一部についてはフランス・マルセイユ市で行われたPseudomonas 2005シンポジウムで報告済みである。
KAKENHI-PROJECT-04J06681
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04J06681
近代オスマン帝国社会にみるエスニシティと地域性
本研究は、近代オスマン帝国において海洋活動にたずさわった人々のエスニシティと地域性を分析することにより、オスマン帝国末期の社会構造を「ヒト」を核としてとらえ直そうとしたものである。具体的には、エスニシティについて、(1)「海運業におけるルーム(ギリシア人)の役割」、地域性について、(2)「黒海沿岸地方から帝都イスタンブルへの人材の供給」というテーマを設定し実証的な研究を行った。(1)に関しては、ギリシアの独立がオスマン帝国海軍にもたらした人材供給面における重大な影響を徴兵制度関係史料にもとづいて明らかにした。(2)に関しては、海軍と官営汽船それぞれの人事記録から海洋活動に従事した人々の出身地のデータを抽出し統計処理を行った。海軍については、イスタンブルの海軍博物館付属歴史文書館所蔵の近代オスマン海軍の人事記録から海軍軍人の出身地に関するデータを収集し分析を行った。官営汽船に関しては、ドルコ海運公社が所蔵する『給与台帳』のうち官営汽船が「特別局」の名の下に運航していた1876年から1910年までの全129冊の台帳の総目録を作成後、29冊を選びデータ・べースを構築して分析を行った。上記研究の結果、黒海沿岸地方が海軍や官営汽船海運に対して人材供給の上できわめて重要な役割を担っていたとの結論を得た。本研究は、近代オスマン帝国において海洋活動にたずさわった人々のエスニシティと地域性を分析することにより、オスマン帝国末期の社会構造を「ヒト」を核としてとらえ直そうとしたものである。具体的には、エスニシティについて、(1)「海運業におけるルーム(ギリシア人)の役割」、地域性について、(2)「黒海沿岸地方から帝都イスタンブルへの人材の供給」というテーマを設定し実証的な研究を行った。(1)に関しては、ギリシアの独立がオスマン帝国海軍にもたらした人材供給面における重大な影響を徴兵制度関係史料にもとづいて明らかにした。(2)に関しては、海軍と官営汽船それぞれの人事記録から海洋活動に従事した人々の出身地のデータを抽出し統計処理を行った。海軍については、イスタンブルの海軍博物館付属歴史文書館所蔵の近代オスマン海軍の人事記録から海軍軍人の出身地に関するデータを収集し分析を行った。官営汽船に関しては、ドルコ海運公社が所蔵する『給与台帳』のうち官営汽船が「特別局」の名の下に運航していた1876年から1910年までの全129冊の台帳の総目録を作成後、29冊を選びデータ・べースを構築して分析を行った。上記研究の結果、黒海沿岸地方が海軍や官営汽船海運に対して人材供給の上できわめて重要な役割を担っていたとの結論を得た。本研究の目的は、近代オスマン帝国において海洋活動にたずさわった人々の「エスニシティと地域性」を分析することにより、オスマン帝国末期の社会構造を「ヒト」を核として捉え直そうとすることである。具体的には、海洋活動を、(1)官営汽船、(2)民間海運、(3)海軍の3つのカテゴリーに分類し、それぞれについて「ヒト」の記録を出来るだけ丁寧に掘り起こすというものである。本年度重点を置いたのは(1)である。現地調査を行い、トルコ海運公社が所蔵する『給与台帳』史料のうち126128巻の3冊を閲覧することにより1911/12年度分のデータをとることができた。また新たに1905年度分に相当するデータが107、108巻に収められていることを確認したため、次回の調査で記録することにした。これらを分類・整理して、海運業にたずさわった人々の地域性を明らかにするためのデータ・ベースを構築する予定である。また、イスタンブルの海軍博物館付属歴史文書館において(3)に関する予備調査を行った。その際近代オスマン海軍の人事記録に関して相当量の史料の存在を確認し、一部データの収集に着手した。これに関しては、平成17年度以降本格的に調査する。本年度の成果は、まだ史料収集の段階にあるため論文とするには至っていないが、(3)のテーマについては、19世紀初頭のバルカンの非ムスリムの徴兵拒否問題に関する史料を検討し、オスマン海軍のエスニシティに関する過去の研究成果を本研究テーマとつなげるかたちで雑誌論文にまとめ、『歴史人類』誌上で発表した。本研究の目的は、近代オスマン帝国において海洋活動にたずさわった人々の「エスニシティと地域性」を分析することにより、オスマン帝国末期の社会構造を「ヒト」を核として捉え直そうとすることである。具体的には、海洋活動を、(1)官営汽船、(2)民間海運、(3)海軍の3つのカテゴリーに分類し、それぞれについて「ヒト」の記録を出来るだけ丁寧に掘り起こすというものである。本年度は昨年度に引き続きトルコでの一次史料の収集を行った。(1)について、トルコ海運公社が所蔵する『給与台帳』史料のうち107、108巻の2冊から1905年のデータを記録した。これでオスマン帝国期に関してはほぼ数年に1度の割合で数値を照合しうるだけの材料がそろった。(2)について、総理府オスマン朝文書館所蔵の『船舶運航許可台帳』から、近世における黒海航路商船の船長の出身地と乗組員のムスリム、非ムスリムの内訳にかんするデータを収集した。(3)については、イスタンブルの海軍博物館付属歴史文書館所蔵の近代オスマン海軍の人事記録の調査を開始した。まず総カタログから海軍軍人の出身地にかんするデータを抽出し数量的概要を把握した後、個別の台帳を閲覧することによりデータの精度を高めていった。この作業は引き続き次年度も行う予定である。
KAKENHI-PROJECT-16520412
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近代オスマン帝国社会にみるエスニシティと地域性
(1)から(3)に共通する地域性の問題について、本研究の焦点となるのは黒海沿岸地方であるため、その中心地トラブゾンで現地調査を実施した。黒海工科大学、市立図書館等でこの地域の歴史、地理、文化等にかんする文献を収集するとともに、実際に市街地や港湾をおとずれ聞き取り調査も行った。以上の結果収集した史料、文献、情報を分類・整理して、オスマン海運・海軍に多数の人材を供給した黒海沿岸地方の地域性を明らかにするためのデータ・ベースを構築する作業をすすめている。本研究の目的は、近代オスマン帝国において海洋活動にたずさわった人々の「エスニシティと地域性」を分析することにより、オスマン帝国末期の社会構造を「ヒト」を核として捉え直そうとすることである。具体的には、海洋活動を、(1)官営汽船、(2)民間海運、(3)海軍の3つのカテゴリーに分類し、それぞれについて「ヒト」の記録を出来るだけ丁寧に掘り起こすというものである。本年度も平成16、17年度に引き続きトルコでの一次史料の収集を行うとともに、データの整理と分析に入った。(1)について、トルコ海運公社が所蔵する『給与台帳』史料のうち第87巻について全データを記録した。この台帳は1901年末から02年初のわずか1ヶ月間の記録であるが他の台帳にない特徴を有しており、データを分析する上できわめて貴重な情報を含むものであることが判明した。その評価については下記の論文にまとめて発表した。また『人事台帳』第14巻から本研究に関連する部分をデジタルカメラで撮影し、その有用性を確認したので次年度に本格的な調査を行う予定である。(2)について、昨年度に続いて総理府オスマン朝文書館所蔵の『船舶運航許可台帳』から、近世における黒海航路商船の船長の出身地と乗組員のムスリム、非ムスリムの内訳にかんするデータを収集した。(3)については、イスタンブルの海軍博物館付属歴史文書館所蔵の近代オスマン海軍の人事記録の調査を継続した。本年度は総カタログから海軍軍人の出身地にかんするデータの抽出作業を完了した。次年度は個別の台帳を閲覧する予定である。以上の結果収集した史料、文献、情報を分類・整理してデータ・ベースを構築する作業をすすめた。また、トルコ海運公社の『給与台帳』87巻の資料的重要性について論文を作成した(研究発表欄参照)。本研究の目的は、近代オスマン帝国において海洋活動にたずさわった人々の「エスニシティと地域性」を分析することにより、オスマン帝国末期の社会構造を「ヒト」を核として捉え直そうとすることである。具体的には、海洋活動を、官営汽船と海軍それぞれについて「ヒト」の記録を出来るだけ丁寧に掘り起こすというものである。本年度は平成16、17、18年度に引き続きトルコでの一次史料の収集を行うとともに、最終年度としてのデータの整理と分析を行った。官営汽船に関しては、トルコ海運公社が所蔵する『給与台帳』史料のうち官営汽船が「特別局」の名の下に運航していた1876年から1910年までのすべての台帳に目を通し、データ・ベースを構築するとともに、総目録を作成した。民間海運との比較を試みるため、昨年度に続いて総理府オスマン朝文書館所蔵の『船舶運航許可台帳』から、近世における黒海航路商船の船長の出身地と乗組員のムスリム、非ムスリムの内訳にかんするデータを収集した。
KAKENHI-PROJECT-16520412
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Src及びCblファミリーによるチロシンリン酸化シグナルの正負の制御と脳高次機能
Src型キナーゼとCblファミリーは広範なチロシンリン酸化シグナルをそれぞれ正及び負に制御する。本研究ではこれらの分子群を起点として、脳高次機能におけるチロシンリン酸化シグナルの役割をより明らかにすることを目指した。(1)脳高次機能発現におけるSrc型キナーゼの基質として、NMDA受容体NR2Aサブユニットに注目し、その最も著明にリン酸化されるチロシン残基をフェニルアラニンに改変したマウスを樹立した。行動解析の結果、この改変マウスでは強制水泳テスト及び尾懸垂テストにおいて、無動時間が短縮していた。従って、Src型キナーゼによるNR2A性のリン酸化は強制ストレスに対する抵抗性を制御すると考えられた。(2)NMDA受容体NR2B結合分子として同定したp250GAPの解析を進めた。私達は、p250GAP及びこれに最も相同性が高いTCGAPがSrc型キナーゼFynと結合すること、TCGAPはFynによりリン酸化されるとそのRhoGAP活性が抑制されることを見いだしており、これらのRhoGAPがSrc型キナーゼを介するシグナル伝達系にも寄与すると考えている。成熟海馬神経細胞に対し、レンチウィルス発現系を用いてp250GAPの発現を抑制した結果、スパインの幅が増大した。更に検討した結果、p250GAPはNMDA受容体近傍におけるRhoAの活性を普段は抑制することにより、スパインのアクチン細胞骨格を制御すると考えられた。(3)cb1-b mRNAは脳では特に海馬歯状回と小脳顆粒細胞層に発現が高かった。Cb1-b欠損マウスの行動解析を進め、Open fieldテスト,Water mazeテスト等を行ったが、用いた実験条件下ではCb1-b欠損マウスに有意な表現型は認められなかった。更に他の行動実験を行い、Cbl-bの脳機能における役割を検討している。Src型キナーゼとCblファミリーは広範なチロシンリン酸化シグナルをそれぞれ正及び負に制御する。本研究ではこれらの分子群を起点として、脳高次機能におけるチロシンリン酸化シグナルの役割をより明らかにすることを目指した。(1)脳高次機能発現におけるSrc型キナーゼの基質として、NMDA受容体NR2Aサブユニットに注目し、その最も著明にリン酸化されるチロシン残基をフェニルアラニンに改変したマウスを樹立した。行動解析の結果、この改変マウスでは強制水泳テスト及び尾懸垂テストにおいて、無動時間が短縮していた。従って、Src型キナーゼによるNR2A性のリン酸化は強制ストレスに対する抵抗性を制御すると考えられた。(2)NMDA受容体NR2B結合分子として同定したp250GAPの解析を進めた。私達は、p250GAP及びこれに最も相同性が高いTCGAPがSrc型キナーゼFynと結合すること、TCGAPはFynによりリン酸化されるとそのRhoGAP活性が抑制されることを見いだしており、これらのRhoGAPがSrc型キナーゼを介するシグナル伝達系にも寄与すると考えている。成熟海馬神経細胞に対し、レンチウィルス発現系を用いてp250GAPの発現を抑制した結果、スパインの幅が増大した。更に検討した結果、p250GAPはNMDA受容体近傍におけるRhoAの活性を普段は抑制することにより、スパインのアクチン細胞骨格を制御すると考えられた。(3)cb1-b mRNAは脳では特に海馬歯状回と小脳顆粒細胞層に発現が高かった。Cb1-b欠損マウスの行動解析を進め、Open fieldテスト,Water mazeテスト等を行ったが、用いた実験条件下ではCb1-b欠損マウスに有意な表現型は認められなかった。更に他の行動実験を行い、Cbl-bの脳機能における役割を検討している。
KAKENHI-PROJECT-18022013
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18022013
高感度・高選択的クロマトグラフィーによる胆汁酸生合成機構の解明
胆汁酸生合成の最終ステップである3α,7α,12α-trihydroxy-5β-cholestanoic acid(THCA)のβ-酸化では、肝ペルオキシソームにおける24、25位脱水素反応が、イブプロフェンに代表される2-アリルプロピオン酸系抗炎症薬の生体内異性化との関連から興味が持たれ、立体化学を含めたその機構解明が望まれている。そこで、負イオン検出ガスクロマトグラフィー(GC)/マススペクトロメトリー(MS)と安定同位元素標識体を用いるトレーサー法とを組み合わせ、Δ^<24>-THCAへの変換における水素脱離の立体化学に検討を加えた。まず、Δ^<24>-THCAを原料として、N_2D_2によるシス付加反応を利用し、(24R,25R)-および(24S,25S)-THCAを製した。一部をペンタフルオロベンジルエステル-ジメチルエチルシリルエーテルに誘導し、負イオン検出GC/MSにて標識純度を測定した結果、2個導入されているものが71%、1個導入されているものが21%、非標識体が8%であった。引き続き、^2H標識体各2nmolをそれぞれ対応する^<18>O標識THCAと1:1に混合後、ラット肝軽ミトコンドリア画分とインキュベートし、生成するΔ^<24>-THCAの^2H保持率をGC/セレクテッドイオンモニタリングにて測定した。その結果、24位の^2Hは25R体で5%、25S体で92%保持されており、いずれもproRの水素が脱離され、(24E)-Δ^<24>-THCAへと変換されることが判明した。このことは、25S体では脂肪酸の場合と同様anti-eliminationで、25S体ではsyn-eliminationで脱水素反応の進行することを示しており、25位立体異性体間で脱水素機構の異なることを示唆しており興味深い。胆汁酸生合成の最終ステップである3α,7α,12α-trihydroxy-5β-cholestanoic acid(THCA)のβ-酸化では、肝ペルオキシソームにおける24、25位脱水素反応が、イブプロフェンに代表される2-アリルプロピオン酸系抗炎症薬の生体内異性化との関連から興味が持たれ、立体化学を含めたその機構解明が望まれている。そこで、負イオン検出ガスクロマトグラフィー(GC)/マススペクトロメトリー(MS)と安定同位元素標識体を用いるトレーサー法とを組み合わせ、Δ^<24>-THCAへの変換における水素脱離の立体化学に検討を加えた。まず、Δ^<24>-THCAを原料として、N_2D_2によるシス付加反応を利用し、(24R,25R)-および(24S,25S)-THCAを製した。一部をペンタフルオロベンジルエステル-ジメチルエチルシリルエーテルに誘導し、負イオン検出GC/MSにて標識純度を測定した結果、2個導入されているものが71%、1個導入されているものが21%、非標識体が8%であった。引き続き、^2H標識体各2nmolをそれぞれ対応する^<18>O標識THCAと1:1に混合後、ラット肝軽ミトコンドリア画分とインキュベートし、生成するΔ^<24>-THCAの^2H保持率をGC/セレクテッドイオンモニタリングにて測定した。その結果、24位の^2Hは25R体で5%、25S体で92%保持されており、いずれもproRの水素が脱離され、(24E)-Δ^<24>-THCAへと変換されることが判明した。このことは、25S体では脂肪酸の場合と同様anti-eliminationで、25S体ではsyn-eliminationで脱水素反応の進行することを示しており、25位立体異性体間で脱水素機構の異なることを示唆しており興味深い。
KAKENHI-PROJECT-05671777
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05671777
現代日本におけるアジアの大衆文化受容についての文化人類学的研究
本年度は前年度に引き続き、大阪、名古屋、東京、福岡においてアジアの大衆文化の普及状況についての実地調査を行い、文化人類学・社会学・カルチュラルスタディーズの分野を中心に文献を調査し研究動向・展望を俯瞰することを行った。またその間、日本においては、5月の日本民族学会第33回研究大会における分科会「文化を売る/売ることの文化:ポピュラーカルチャーの人類学」を組織し、香港においては、12月の香港大学日本研究学科主催・国際交流基金後援のワークショップ「Japan in Hong Kong/Hong Kong in Japan:Systems of production、Circulation、and Consumption of Culture」に参加して、とくに「同人誌」の問題を扱った研究報告を口頭で行った。本年度も香港芸能専門店など、大衆文化の生産・流通・消費の結節点となる場所や商品、集団に注目して調査研究を行ったが、「同人誌」(「ミニコミ誌」ともいう)はそのなかでも興味深い研究対象である。それは、「おたく」や「コミケ」ということばで紹介される1980年代以降の消費社会の成熟と市場の多様化、消費者の生産・流通への積極的な関与にかかわる現代的な事象である。しかしながら、日本の「同人誌」ブームの歴史は1950年代の市民運動に遡ることができ、「アジア」ブームについては「反米帝国主義」としてのベトナム戦争反対など1960年代から70年代にかけての「アジアの民衆」の発見と自由旅行ブームなどとも関係がある。「香港」がいわば歴史的な場所となった今日の状況も踏まえ、「アジア文化」、「中国語圏」、「香港」などが歴史的にどのように日本人に受容されてきたのかということについて実証的なデータを積み重ねることで、今後もこの研究を深めていくことを考えている。本年度は、次の2つのことがらについて研究を行った。1つには、大阪、名古屋、東京の3地区において、アジアの大衆文化の普及にかかわっている人々を訪問し、インタビューを行い、関係する文字資料を収集した。もう1つには、文化人類学・社会学・カルチュラルスタディーズなどの分野の大衆文化研究について、文献を調査し、研究動向・展望を俯瞰した。とくに前者の実地調査の過程においては、本年度以前より継続して行っている日本における香港の大衆文化の受容についての、流通・消費の産業場面での参与観察、関係者へのインタビューを中心に行った。そのなかで明らかとなったこととしては、近年起きているアジアの大衆文化の混交という現象がある。日本においてアジアの大衆文化は、学術的にも日常的にも、「日本文化」対「アジア文化」(あるいは「西洋文化」と対比された「非西洋文化」)という対立として位置づけられる傾向があり、とりわけ香港の大衆文化に関係しては、それが「アジア文化」=「中国語圏の文化」として位置づけられてきた。しかしながら、文化産業の生産面で行われている協同作業は、日本・韓国・台湾・香港などの、日本を含むアジア各地のあいだで盛んに行われており、日本で大衆文化を楽しむ人々自身も、そのアジア内の協同作業から生まれた大衆文化を新たなかたちで消費しつつある。また彼らに商品を提供する日本の専門店においても、顧客の要求という点や流通ルートという点から、この脱地域的な状況を無視することができなくなっている。こうした現状は、理論的には、「アメリカ化」や「日本化」という単線的な受容のモデルを想定する傾向のある、「文化についてのグローバリゼーション論」に対して、新たな批評を加える可能性があるといえる。本年度は前年度に引き続き、大阪、名古屋、東京、福岡においてアジアの大衆文化の普及状況についての実地調査を行い、文化人類学・社会学・カルチュラルスタディーズの分野を中心に文献を調査し研究動向・展望を俯瞰することを行った。またその間、日本においては、5月の日本民族学会第33回研究大会における分科会「文化を売る/売ることの文化:ポピュラーカルチャーの人類学」を組織し、香港においては、12月の香港大学日本研究学科主催・国際交流基金後援のワークショップ「Japan in Hong Kong/Hong Kong in Japan:Systems of production、Circulation、and Consumption of Culture」に参加して、とくに「同人誌」の問題を扱った研究報告を口頭で行った。本年度も香港芸能専門店など、大衆文化の生産・流通・消費の結節点となる場所や商品、集団に注目して調査研究を行ったが、「同人誌」(「ミニコミ誌」ともいう)はそのなかでも興味深い研究対象である。それは、「おたく」や「コミケ」ということばで紹介される1980年代以降の消費社会の成熟と市場の多様化、消費者の生産・流通への積極的な関与にかかわる現代的な事象である。しかしながら、日本の「同人誌」ブームの歴史は1950年代の市民運動に遡ることができ、「アジア」ブームについては「反米帝国主義」としてのベトナム戦争反対など1960年代から70年代にかけての「アジアの民衆」の発見と自由旅行ブームなどとも関係がある。「香港」がいわば歴史的な場所となった今日の状況も踏まえ、「アジア文化」、「中国語圏」、「香港」などが歴史的にどのように日本人に受容されてきたのかということについて実証的なデータを積み重ねることで、今後もこの研究を深めていくことを考えている。
KAKENHI-PROJECT-10710153
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10710153
視覚障害者を考慮したオンライン手書き入力インタフェースによる感覚代行に関する研究
視覚障害者(疾病や事故による中途失明者)が晴眼者の介添えなしでも日本語処理が行えるヒューマンインタフェースの実現のため,読み書きの感覚代行として機能する日本語インタフェースの研究を行った.はじめに,視覚障害者によるオンライン手書き入力時の被験者分析より,視覚障害者が安定して文字入力を行える為の条件として1.文字枠のサイズは710cm程度,2.記入範囲を認識しやすいように文字枠に段差形状を持たせるようにすること等が必要であることが分かった.これらの結果を基に,視覚障害者に有効な手書き入力タブレットの設計および試作を行った.次に,オンライン手書き入力インタフェースをコミュニケーションエイドとして機能させるために必要な基礎データを得ることを目的として,音声合成装置を利用した逐次音声支援による感覚代行技術と,先に開発した視覚障害者の変形手書き文字にも対応可能な認識アルゴリズムを用いて視覚障害者援用インタフェースのプロトタイプを構築した.試作機の評価実験により,画面情報を視覚障害者に音声で伝達するには,各操作の終了段階で逐次音声支援を行う方が良いこと,利用者からのアクション(専用のハンドコントローラ装置によるキ-操作)に応じて必要な情報を優先して得られるようにしておくこと,応答のレスポンスを早くしておくこと(認識に時間が掛かり音声による反応が遅れると不安感を生じやすい)などの条件を満足することが必要であることが分かった.視覚障害者(疾病や事故による中途失明者)が晴眼者の介添えなしでも日本語処理が行えるヒューマンインタフェースの実現のため,読み書きの感覚代行として機能する日本語インタフェースの研究を行った.はじめに,視覚障害者によるオンライン手書き入力時の被験者分析より,視覚障害者が安定して文字入力を行える為の条件として1.文字枠のサイズは710cm程度,2.記入範囲を認識しやすいように文字枠に段差形状を持たせるようにすること等が必要であることが分かった.これらの結果を基に,視覚障害者に有効な手書き入力タブレットの設計および試作を行った.次に,オンライン手書き入力インタフェースをコミュニケーションエイドとして機能させるために必要な基礎データを得ることを目的として,音声合成装置を利用した逐次音声支援による感覚代行技術と,先に開発した視覚障害者の変形手書き文字にも対応可能な認識アルゴリズムを用いて視覚障害者援用インタフェースのプロトタイプを構築した.試作機の評価実験により,画面情報を視覚障害者に音声で伝達するには,各操作の終了段階で逐次音声支援を行う方が良いこと,利用者からのアクション(専用のハンドコントローラ装置によるキ-操作)に応じて必要な情報を優先して得られるようにしておくこと,応答のレスポンスを早くしておくこと(認識に時間が掛かり音声による反応が遅れると不安感を生じやすい)などの条件を満足することが必要であることが分かった.
KAKENHI-PROJECT-06855046
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06855046
高分子規則表面のバイオエッチングとソフトマター分子群集積化への応用
本年度は、簡便な方法を用いて生分解性高分子表面のパターニングを行うバイオエッチング手法の開発を行うため、効率的に生分解性高分子の酵素分解速度を制御する手法を探索した。具体的には、代表的な生分解性高分子であるポリ乳酸のアモルファス薄膜(厚さ約100 nm)を作製し、膜表面をUV-オゾン処理した。そして、プロティナーゼKによる酵素分解試験を行い、分解速度を水晶振動子マイクロバランス(QCM)を用いて測定した。その結果、UV-オゾン処理することで、酵素分解速度が遅くなることがわかった。同様の結果は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いた形状観察によっても確かめた。酵素分解抑制の原因を調べるため、薄膜表面への酵素吸着数をAFMで直接調べたところ、UV-オゾン処理をしていない薄膜と比べて、UV-オゾン処理した薄膜では、酵素吸着数が低下していることがわかった。接触角測定の結果から、UV-オゾン処理により膜表面が親水化していることがわかった。以上の結果から、UV-オゾン処理によりポリ乳酸薄膜表面が親水化されて酵素吸着が抑制され、したがって、酵素分解速度が低下したものと考察した。一方、UVのみでポリ乳酸表面を処理すると、酵素分解が促進されることもわかった。本手法は、ポリヒドロキシアルカン酸やポリカプロラクトンにも適用可能であることをQCMおよびAFM測定によって確認した。そこで、様々な形状のマスクを介してUV-オゾンあるいはUV処理を行い、その後に対応する高分子加水分解酵素による分解を施すことで、生分解性高分子薄膜のパターニング、すなわちバイオエッチングに成功した。24年度が最終年度であるため、記入しない。24年度が最終年度であるため、記入しない。本年度は、効率的なバイオエッチング手法の開発を目指し、生分解性高分子の規則的パターニングに取り組んた。生分解性高分子の一つであるポリ(e-カプロラクトン)(PCL)の高配向グラファイト(HOPG)への設置を試みた。特に、フラーレンやカーボンナノチューブといった炭素材料を添加した際の結晶配列形態について検討した。具体的には、3種類の分子量のPCLクロロホルム溶液を調製し、様々な割合で炭素材料を添加した。そして、HOPG上にスピンキャストして成膜し、キャスト膜および溶融結晶化膜の表面形態を原子間力顕微鏡(AFM)で観察した。キャスト膜に関しては、炭素材料を添加した方がedge-on結晶(基板に対して垂直に配列した結晶)の持続長が長くなる傾向が認められた。一方、溶融結晶化膜では持続長が短くなった。これらの構造変化の要因は不明であるが、炭素材料の添加によりPCLの形態を様々に変化できることがわかった。本研究では、生分解性高分子の規則表面を酵素分解でバイオエッチングした後に形成されるアレイ構造内に、自己組織化で作製した機能性分子群を集積化することを最終目的としている。その際に、酵素の基質特異性を利用することを目指している。そこで、キチナーゼの基質結合部位(ChBD)とキチンあるいはセルロースとの相互作用をAFMのフォースカーブ測定により解析した。その結果、ある特定の負荷速度でフォースカーブ測定した際には、ChBDはキチンあるいはセルロースのいずれに対してもほぼ同一の結合力を有していることがわかった。したがって、両多糖類の側鎖構造はChBDの結合にそれほど影響を与えず、主な相互作用の要因は、ChBDの表面に露出した芳香族アミノ酸とピラノース環との疎水性相互作用であることが示唆された。得られた知見をもとに、ChBDを用いたナノ物質の配置への応用を来年度以降に行っていく予定である。本年度は、簡便な方法を用いて生分解性高分子表面のパターニングを行うバイオエッチング手法の開発を行うため、効率的に生分解性高分子の酵素分解速度を制御する手法を探索した。具体的には、代表的な生分解性高分子であるポリ乳酸のアモルファス薄膜(厚さ約100 nm)を作製し、膜表面をUV-オゾン処理した。そして、プロティナーゼKによる酵素分解試験を行い、分解速度を水晶振動子マイクロバランス(QCM)を用いて測定した。その結果、UV-オゾン処理することで、酵素分解速度が遅くなることがわかった。同様の結果は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いた形状観察によっても確かめた。酵素分解抑制の原因を調べるため、薄膜表面への酵素吸着数をAFMで直接調べたところ、UV-オゾン処理をしていない薄膜と比べて、UV-オゾン処理した薄膜では、酵素吸着数が低下していることがわかった。接触角測定の結果から、UV-オゾン処理により膜表面が親水化していることがわかった。以上の結果から、UV-オゾン処理によりポリ乳酸薄膜表面が親水化されて酵素吸着が抑制され、したがって、酵素分解速度が低下したものと考察した。一方、UVのみでポリ乳酸表面を処理すると、酵素分解が促進されることもわかった。本手法は、ポリヒドロキシアルカン酸やポリカプロラクトンにも適用可能であることをQCMおよびAFM測定によって確認した。そこで、様々な形状のマスクを介してUV-オゾンあるいはUV処理を行い、その後に対応する高分子加水分解酵素による分解を施すことで、生分解性高分子薄膜のパターニング、すなわちバイオエッチングに成功した。24年度が最終年度であるため、記入しない。生分解性高分子ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)の結晶成長を制御して配列形態を変化させる方法を見出した。また、機能性分子群の固定化に必要な酵素-基質間の相互作用力を定量的に原子間力顕微鏡で評価することができるようになった。
KAKENHI-PUBLICLY-23106722
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-23106722
高分子規則表面のバイオエッチングとソフトマター分子群集積化への応用
そのため、来年度以降には酵素分解を利用したバイオエッチング手法で特定領域にアレイ構造を作製し、ナノ物質を配置する最終目標に向けた研究を展開できる足場を築くことができたため。24年度が最終年度であるため、記入しない。大面積でのバイオエッチングをするため、簡便かつ環境低負荷な加工法を更に探索する。また、バイオエッチングで作製したアレイ構造内への機能性分子群の集積化に際し、分子間相互作用を制御することが重要な課題となるため、相互作用の定量的および定性的評価を取り入れた研究も展開する。そして、最終的にはバイオエッチングを用いたソフトマター加工の優位性を示し、新しいソフト界面の創出に貢献できることを目指す。
KAKENHI-PUBLICLY-23106722
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-23106722
口腔扁平上皮癌および口腔粘膜前癌病変におけるS100A7タンパクの発現解析
今回の研究では、主に当科において切除し口腔扁平上皮癌および白板症と診断された組織標本を使用し、S100A7マウスモノクローナル抗体を用いて、免疫組織学的染色を行った。S100A7タンパクの発現は認めるものの、口腔扁平上皮癌および白板症ともに発現にばらつきを多く認めた。当初予測した結果とならず、今後は検体数の追加やその他の口腔前癌病変と併せて検討する必要性が考えられた。今回の研究では、主に当科において切除し口腔扁平上皮癌および白板症と診断された組織標本を使用し、S100A7マウスモノクローナル抗体を用いて、免疫組織学的染色を行った。S100A7タンパクの発現は認めるものの、口腔扁平上皮癌および白板症ともに発現にばらつきを多く認めた。当初予測した結果とならず、今後は検体数の追加やその他の口腔前癌病変と併せて検討する必要性が考えられた。S100A7タンパクの免疫組織学的染色による検討は、癌の初期に高発現するという報告や、浸潤初期に発現する場合には転移しやすいという報告がある。我々は病理組織検査にて口腔扁平上皮癌と診断された、組織標本20例を用いて、S100A7マウスモノクローナル抗体を用いて、免疫組織学的染色を行った。結果としては、口腔扁平上皮癌においては、S100A7タンパク陽性および陰性ともに認めた。高分化型・中分化型・低分化型といった腫瘍細胞の分化度での比較や頚部リンパ節転移の有無症例での比較も行うも、現時点ではS100A7の発現に明らかな差は認めなかった。今後は免疫染色の手技の向上を目指し、口腔扁平上皮癌症例をさらに症例を増やし、また白板症および扁平苔癬といった粘膜病変の生検材料や切除材料での病理組織標本を用いて、免疫染色を行っていきたい。口腔白板症は、自覚症状に乏しく、臨床の場でも比較的病変の範囲が狭いものや、境界が明瞭な場合は、切除せず経過観察を行うことが多い。しかし、白板症での発現解析を行うことでも、癌化傾向にあるかどうかの判定も可能となるかもしれない。S100A7タンパクの免疫組織学的染色による検討は、癌の初期に高発現するという報告や、浸潤初期に発現する場合には転移しやすいという報告がある。今年度では昨年に引き続き、当科にて切除術を施行し病理組織検査にて口腔扁平上皮癌と診断された、パラフィン包埋された組織標本50例を用い、S100A7マウスモノクローナル抗体を用いて、免疫組織学的染色を行った。昨年同様やはりS100A7タンパクの発現にはばらつきがあるが、昨年の20例を合わせると発現が陽性である割合の方が多かった。また、当科にて切除術を施行し病理組織検査にて白板症と診断された組織標本20例を用いて、同様にS100A7タンパクの発現を解析したが、扁平上皮癌同様に発現にばらつきを認めた。癌の進行の度合い別に解析を行うと、切除時の腫瘍の大きさが比較的小さく内部浸潤や外向性に発育していないケースでは、陽性細胞率は高く思えた。腫瘍の大きさど頸部リンパ節転移を認めたケースでの発現解析では差は認められなかった。胃癌で報告があった初期の癌に高発現するという報告は、扁平上皮癌でも同様の結果が得ることができたと思われるが、まだまだ詳細な検討が必要であると思われた。前癌病変である白板症に関しては、ばらつきが多く発現を認めたから癌化し易いかどうがという判定にはまだまだ結び付けがたく、更なる症例の追加やその他の前癌病変と併せて見ていぐ必要性が考えられた。今後も継続して染色を行う検体数を増やし、更なる発現解析を行っていく予定である。
KAKENHI-PROJECT-20791563
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20791563
Developing a fiber optical quantum interface using trapped atoms and nanofiber based photonic crystal cavity
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-15H05462
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H05462