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相対論的場の偏微分方程式の初期値問題の適切性および非相対論的極限 | この仕事は論文「Dirac equation with certain quadratic nonlinearities in one space dimension」として纏められ関連雑誌に掲載が決定している。非斉次輸送方程式の解に対する双線形の評価式を上記二つの論文の二つの双線形評価を元に考察を行った。輸送方程式系の解の一意存在を得た。この仕事は論文「Bilinear estimates for the transport equations」として纏められ関連雑誌に掲載が決定している。 | KAKENHI-PROJECT-15740105 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15740105 |
雌雄交尾器の「錠と鍵」的共進化過程における遺伝的背景の解明 | 性選択によって多様化する交配隔離形質の進化過程を解明することを目的として、種特異的な交尾器形態に雌雄の「錠と鍵」的対応が見られるオオオサムシ亜属を用いて研究を行った。これまでに、2種のオサムシの予備的な種間交配からF1・F2および両方向戻し交配(BC1・BC2)世代を作製し、量的遺伝学的解析により、交尾器形態を支配する遺伝的背景の概要を明らかにした(今年度Heredityに発表済み)。また、F1きょうだい間交配によって得られたF2世代の遺伝子型をAFLP多型解析によって決定し、基盤連鎖地図を作製した。このことにより、野外集団のオサムシを用いた連鎖地図作製およびQTL解析への具体的な道筋が示されたものの、供与個体数が少なかったため、信頼のおける結果とは言い難かった。そこで今年度はさらに信頼性の高いマッピング世代を得るため、平成17年度より交配系を拡張した。本年度は、以前と同様にF1きょうだい同士の交配実験を行い、177個体のF2世代を育成し、表現型データをともなった多数の個体を得ることに成功した。これらについてまずはAFLPで分離世代の遺伝子型を特定した。現在までに66個のマーカーが9個の連鎖群に位置づけられており、今後さらに解析を続ける予定である。また、この連鎖地図および表現型データ(交尾片長・交尾片幅・膣盲嚢長)に基づいて分散分析法を用いた予備的なQTL解析を行ったところ、それぞれについて形質に有意な種間差を与えるマーカーの存在が示唆され、そのうち少なくともひとつは交尾片の長さと幅の両方の形質と連鎖していた。このことは、交尾器形態が量的形質でありながらも比較的少数の遺伝子によって支配されているという予測と合致する。また、交配系の親2種のうち1種を用いて92対のマイクロサテライト用プライマーを作製した。これらのうち、84対のプライマーで多型が認められ、52対では両親を完全に見分けることができることが明らかとなり、マッピングに有効であることが示された。性選択によって多様化する交配隔離形質の進化過程を解明することを目的として、種特異的な交尾器形態に雌雄の「錠と鍵」的対応が見られるオオオサムシ亜属を用いて研究を行っている。これまでに2種のオサムシの種間交配からF1・F2および両方向戻し交配(BC1・BC2)集団を得た。これらの世代について、以下のような研究を展開した。1.オサムシにおける予備的連鎖地図の構築F1のきょうだい交配(full-sib)から得られたF2世代について、AFLPにより遺伝子型を特定し連鎖解析を行うことで、予備的な連鎖地図を作製した。現在までに約50個のAFLPマーカーが、オサムシの染色体数(n=13)と一致する13の連鎖群上に位置づけられている。この結果は、オサムシとAFLPを用いた現在の系において、比較的精度の高いマッピングが実行可能であることを具体的に示すものである。2.交尾器形態の遺伝的背景交尾器形態を支配する遺伝的背景の概要を把握するため、世代平均を用いた解析を行った。F1・BC1・BC2および両親(P1・P2)の5世代について交尾器形質を計測し、世代ごとの平均・分散のデータから、交尾器形態に種間差をもたらす遺伝効果と有効因子数を推定した。遺伝効果についてはjoint-scaling testを行い、有効因子数はCastle-Wrightの推定式を用いた。その結果、(1)関与遺伝子座の効果はほとんどが相加的であること、(2)オス交尾片の長さと幅に関与する遺伝子座の推定数はそれぞれ4.9±1.9、3.9±1.6個、メス膣盲嚢の長さについては1.5±0.6個であること、が明らかになった。以上の結果から、交尾器形態は比較的単純な遺伝効果をもつ少数の遺伝子座によって支配されていることが示唆された。3.マッピング用の世代育成精度の高いQTLマッピングを行うためには、これまでに得られたF2よりも多数の個体が必要であるため、新たに分離世代の育成に着手した。現在までに充分な数のF1が得られており、平成18年度初旬にはF2の育成が完了する。性選択によって多様化する交配隔離形質の進化過程を解明することを目的として、種特異的な交尾器形態に雌雄の「錠と鍵」的対応が見られるオオオサムシ亜属を用いて研究を行った。これまでに、2種のオサムシの予備的な種間交配からF1・F2および両方向戻し交配(BC1・BC2)世代を作製し、量的遺伝学的解析により、交尾器形態を支配する遺伝的背景の概要を明らかにした(今年度Heredityに発表済み)。また、F1きょうだい間交配によって得られたF2世代の遺伝子型をAFLP多型解析によって決定し、基盤連鎖地図を作製した。このことにより、野外集団のオサムシを用いた連鎖地図作製およびQTL解析への具体的な道筋が示されたものの、供与個体数が少なかったため、信頼のおける結果とは言い難かった。そこで今年度はさらに信頼性の高いマッピング世代を得るため、平成17年度より交配系を拡張した。本年度は、以前と同様にF1きょうだい同士の交配実験を行い、177個体のF2世代を育成し、表現型データをともなった多数の個体を得ることに成功した。これらについてまずはAFLPで分離世代の遺伝子型を特定した。 | KAKENHI-PROJECT-05J01879 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05J01879 |
雌雄交尾器の「錠と鍵」的共進化過程における遺伝的背景の解明 | 現在までに66個のマーカーが9個の連鎖群に位置づけられており、今後さらに解析を続ける予定である。また、この連鎖地図および表現型データ(交尾片長・交尾片幅・膣盲嚢長)に基づいて分散分析法を用いた予備的なQTL解析を行ったところ、それぞれについて形質に有意な種間差を与えるマーカーの存在が示唆され、そのうち少なくともひとつは交尾片の長さと幅の両方の形質と連鎖していた。このことは、交尾器形態が量的形質でありながらも比較的少数の遺伝子によって支配されているという予測と合致する。また、交配系の親2種のうち1種を用いて92対のマイクロサテライト用プライマーを作製した。これらのうち、84対のプライマーで多型が認められ、52対では両親を完全に見分けることができることが明らかとなり、マッピングに有効であることが示された。 | KAKENHI-PROJECT-05J01879 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05J01879 |
がん抑制遺伝子RB1CC1のシステム破綻による発がん機構とその制御 | RB1CC1はRBを介した細胞増殖抑制の系とTSC-mTORを介した蛋白合成、細胞成長の制御系をクロストークさせながら、組織、生体の恒常的システム維持に貢献する。本年度は主にRB経路への貢献について、詳細に解析した。RB経路への貢献は、RB1CC1分子が細胞核内でhSNF5,p53両分子と転写因子複合体を形成することによって、p16,p21,RB1すべての発現を亢進させるものであると明らかにできた。一方で、RB1CC1は細胞質においては、TSC-mTOR経路、mTOR活性化因子として働く。両系は、RB1CC1低発現の骨髄では効率的な細胞増殖継続のために、RB1CC1高発現の神経、筋では過剰な細胞増殖を来すことなぐ、細胞、組織を大型に維持するために機能している。更に最近、RB1CC1の発現状態が乳癌症例の生存率に大きく関与していることを明らかにできた。RB1CC1の細胞質での働きと細胞核内での機能を病理標本において簡便に判別することによって、臨床的予後が早期に類推でき、治療選択の一指針にもなり得る事実が明らかになった。新規分子であるRB1CC1の機能を明らかにすることによって、本経路の破綻より生じる発がんの機構を理解することを目的として研究を行っている。これまでにRB1CC1結合分子として、TSC1,GADD34,hSNF5,Smad7等を同定していたが、本年度は特にhSNF5との関わりについて解析した。CAG-loxP-neo-loxP-FlagRB1CC1を導入したマウスの解析においては、全身性のRB1CC1高発現マウスの他、肝特異的、骨、軟骨特異的マウスを得てきているので、これらマウスの解析を進めることによって、RB1CC1の生体内における機能を明らかにしたい。また、RB1CC1 conditional knock-out mouseについては、これを樹立したMichigan大学のグループよりマウスの分与を受け、共同で研究を進めてゆく計画である。RB1CC1はRBを介した細胞増殖抑制の系とTSC-mTORを介した蛋白合成、細胞成長の制御系をクロストークさせながら、組織、生体の恒常的システム維持に貢献する。本年度は主にRB経路への貢献について、詳細に解析した。RB経路への貢献は、RB1CC1分子が細胞核内でhSNF5,p53両分子と転写因子複合体を形成することによって、p16,p21,RB1すべての発現を亢進させるものであると明らかにできた。一方で、RB1CC1は細胞質においては、TSC-mTOR経路、mTOR活性化因子として働く。両系は、RB1CC1低発現の骨髄では効率的な細胞増殖継続のために、RB1CC1高発現の神経、筋では過剰な細胞増殖を来すことなぐ、細胞、組織を大型に維持するために機能している。更に最近、RB1CC1の発現状態が乳癌症例の生存率に大きく関与していることを明らかにできた。RB1CC1の細胞質での働きと細胞核内での機能を病理標本において簡便に判別することによって、臨床的予後が早期に類推でき、治療選択の一指針にもなり得る事実が明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-18012022 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18012022 |
居住環境における行動蓄積のための動作解析手法に関する研究 | 本研究では,人間と機械が密に協調する将来の人間支援システムに不可欠な基礎的技術となる動作認識手法の開発を目指し,その中核となる動作解析・モデル化について「人間の活動の基盤である居住環境における日常行動」を対象に研究を行う.そのために,人の日常行動を解析するための道具立てを開発し,それにより記録・蓄積された行動情報を解析処理するための手法を確立する.これまでに進めてきた視覚センサ群や圧力センサ群に関するセンサ情報処理研究をおしすすめ,それらから得られる情報を統合処理することでシンタクティックレコーディング(統語的記録)するシステムの開発と長時間・長日数にわたって記録された行動情報の解析手法を研究している.本研究では,動作データベースの統計分析に基づく動作解析手法の開発として,人間と機械が密に協調する将来の人間支援システムに不可欠な基礎的技術となる動作認識手法の開発を念頭に,その中核となる動作解析,モデル化を中心課題としている.初年度の今年は,まず,モーションキャプチャスタジオで取得されたデファクトスタンダードのBVH形式で記録された運動情報集であるBIOVISION社のMOTIONCOLLECTIONなどのデータとこれまでの研究で天井カメラは床センサにより長時間・長日数にわたってためてきた日常生活空間における動作情報を比較分析することにより,単なる関節位置・姿勢といった運動情報と「まっすぐ歩いている」「ものを右手で引き寄せた」といった行為・動作情報との対応関係の統計的解析を行なった。視覚センサ群と圧力センサ群の統合による動作理解手法の開発として,人の日常行動を解析するための道具立てとして,過去の研究で開発してきた天井カメラセンサ・床センサから得られる位置・姿勢情報から上で述べたようなレベルの行為・動作情報として認識するための手法の開発を開始した.それにより,記録,蓄積された行動情報を動作として理解する手法確立の可能性が示された。本研究では,人間と機械が密に協調する将来の人間支援システムに不可欠な基礎的技術となる動作認識手法の開発を目指し,その中核となる動作解析・モデル化について「人間の活動の基盤である居住環境における日常行動」を対象に研究を行う.そのために,人の日常行動を解析するための道具立てを開発し,それにより記録・蓄積された行動情報を解析処理するための手法を確立する.これまでに進めてきた視覚センサ群や圧力センサ群に関するセンサ情報処理研究をおしすすめ,それらから得られる情報を統合処理することでシンタクティックレコーディング(統語的記録)するシステムの開発と長時間・長日数にわたって記録された行動情報の解析手法を研究している.本研究では,動作データベースの統計分析に基づく動作解析手法の開発として,人間と機械が密に協調する将来の人間支援システムに不可欠な基礎的技術となる動作認識手法の開発を念頭に,その中核となる動作解析,モデル化を中心課題としている.初年度の今年は,まず,モーションキャプチャスタジオで取得されたデファクトスタンダードのBVH形式で記録された運動情報集であるBIOVISION社のMOTIONCOLLECTIONなどのデータとこれまでの研究で天井カメラは床センサにより長時間・長日数にわたってためてきた日常生活空間における動作情報を比較分析することにより,単なる関節位置・姿勢といった運動情報と「まっすぐ歩いている」「ものを右手で引き寄せた」といった行為・動作情報との対応関係の統計的解析を行なった。視覚センサ群と圧力センサ群の統合による動作理解手法の開発として,人の日常行動を解析するための道具立てとして,過去の研究で開発してきた天井カメラセンサ・床センサから得られる位置・姿勢情報から上で述べたようなレベルの行為・動作情報として認識するための手法の開発を開始した.それにより,記録,蓄積された行動情報を動作として理解する手法確立の可能性が示された。 | KAKENHI-PROJECT-12650244 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12650244 |
作用点が複数ある低用量化学物質の毒性の解析法 | 本年度は,ビスフェノールAを用いて実施した曝露実験で得られた脳試料について,マイクロアレイによる遺伝子発現の定量を行った.すなわち,0.0055.0mg/L曝露群に対照群を加えた5群から,2群を選び対比較する方法によって遺伝子発現への影響を検討した.主要な結果は以下の通り:対照群と比較した場合,最大用量(5mg/L)群で発現に変化(2倍あるいは1/2倍より大きい変化)のあった遺伝子は25の遺伝子に増加が1個で減少が認められた.これに対し低用量群の中の0.05mg/L群では発現の増大した遺伝子が16個,減少した遺伝子が19個認められた.0.005mg/L群においては,増大した遺伝子は5個,発現減少遺伝子が28個となった.0.05mg/Lで反応した遺伝子のうちMus musculus serine incorporator 3を含む2遺伝子は最大用量においても増加していた.したがって,残りの14個が低用量のみで増大していたことになる.一方,発現が抑制された遺伝子は,量によって全く異なっており,共通の遺伝子を見いだせなかった.一方,0.05mg/Lと0.005mg/L群の間には,共通して変化する遺伝子は見いだせなかった.これらの結果より,より低用量においてのみ発現変化する遺伝子候補を複数見いだすことができた.これらの遺伝子変化をrealtime-PCRで確認した後,個々の遺伝子発現と毒性発現との関連を検討することが今後の課題となる.本年度は,当初予定のエストロゲン様作用を有する化学物質としてビスフェノールA(BPA)を用い,In vivoにおける量-反応関係を検討した.C57BL/6Jマウスを妊娠8日で購入,妊娠10日からBPAを飲料水に添加して曝露を開始した.既存文献の中でも比較的低用量の報告を参考に,量は,0.0055.0mg/Lまで(対照群を含めて)5段階を設けた.分娩は通常におこなわせ,特にculminationは行なわず,分娩後も同じ濃度で曝露を継続,新生仔が出生12日(PND12)に達した時点で麻酔下に解剖して,組織のサンプリングを行なった,母体脳(大脳・小脳・その他の部位に3分割).新生仔の雌雄それぞれ2匹ずつを選び,脳を摘出,冷凍保存した.この曝露において,各群n=4としたが,仔を出産しなかった個体が,5,0.5mg/L群の中に,それぞれ1,2個体あった.さらに,5,0.05,0.005の各群それぞれ1母体では,出生時における仔の一部の死亡が観察された.対照群にはこのような事象は観察されなかった.生後12日目(解剖時)まで仔の数はほとんど変化しなかったが,12日の時点での平均litter sizeは,対照群から順に,8.3,7.0,7.5,3.3,5.5であって,高用量2段階が胎仔毒性を有するのは明らかであり,以降の実験は0.05mg/Lの用量で実施すべきことが示唆された.現在,採取組織をDNAマイクロアレイにより,RNAの発現量を探索的(マウス用搭載数5,000のチップを使用)に検討中である.なお,年度当初に分担者2名の異動があったこと,研究代表者の実験室でも大型機器を導入したことなので,実験は当初の予定より遅れることとなったが,次年度(最終年度)は当初予定へのキャッチアップを目指して計画を実施する予定である.本年度は,ビスフェノールAを用いて実施した曝露実験で得られた脳試料について,マイクロアレイによる遺伝子発現の定量を行った.すなわち,0.0055.0mg/L曝露群に対照群を加えた5群から,2群を選び対比較する方法によって遺伝子発現への影響を検討した.主要な結果は以下の通り:対照群と比較した場合,最大用量(5mg/L)群で発現に変化(2倍あるいは1/2倍より大きい変化)のあった遺伝子は25の遺伝子に増加が1個で減少が認められた.これに対し低用量群の中の0.05mg/L群では発現の増大した遺伝子が16個,減少した遺伝子が19個認められた.0.005mg/L群においては,増大した遺伝子は5個,発現減少遺伝子が28個となった.0.05mg/Lで反応した遺伝子のうちMus musculus serine incorporator 3を含む2遺伝子は最大用量においても増加していた.したがって,残りの14個が低用量のみで増大していたことになる.一方,発現が抑制された遺伝子は,量によって全く異なっており,共通の遺伝子を見いだせなかった.一方,0.05mg/Lと0.005mg/L群の間には,共通して変化する遺伝子は見いだせなかった.これらの結果より,より低用量においてのみ発現変化する遺伝子候補を複数見いだすことができた.これらの遺伝子変化をrealtime-PCRで確認した後,個々の遺伝子発現と毒性発現との関連を検討することが今後の課題となる. | KAKENHI-PROJECT-18659168 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18659168 |
新生児低酸素性脳障害における脳エネルギ-代謝と臨床検査との相互関係に関する研究 | 低酸素虚血性脳症は脳性麻痺の主要な原因疾患であり,その病態を解明することは非常に重要である。今回生後24時間以内の新生仔豚を用い,低酸素負荷前後の脳内エネルギ-代謝(CEM)の動態を^<31>PーNMRにより測定すると共に血液生化学的検査成績,脳波等と比較検討した。臍動脈カテ-テルを挿入し血圧・心拍数を測定し,気管内挿管後人工呼吸器にて急激に60分前後で低酸素にした群(A群:7頭)と緩徐に120分前後で低酸素にした群(B群:6頭)に分けて検討した。〔結果〕1.負荷開始後両群共に血圧が上昇する間は,CEMは殆ど変動せず,B群ではその後血圧低下と共に,A群ではやや遅れて急激にPCr・pHi・ATPは低下し,Piは上昇した。PCr/Piは,蘇生後血圧の上昇と共にA群は前値にまで回復したが,B群は70%までしか回復しなかった。負荷中両群共血圧上昇時には,PCr/Piはほぼ一定に保たれていたが,血圧低下時B群は血圧と正の相関をもって低下したが,A群では平均動脈血圧60mmHg前後まではほぼ一定で,それ以下で正の相関をもって低下した。蘇生時のpHiは,A群に比しB群は有意に低値を示したが,蘇生後では逆に有意にアルカロ-シスを示した。又両群共負荷中PCr/Piは,動脈血pH・BEと正の相関を,乳酸・ヒポキサンチンと負の相関を示した。これよりCEM障害の臨界値は,動脈血pH7.25前後,BEー7μmol/1前後,乳酸95mg/dl前後,ヒポキサンチン23μg/ml前後と考えられた。2.負荷中脳波はA群ではCEM低下の時期とほぼ一致して,B群ではCEMの低下に遅れて平坦化した。〔結論〕1.脳内アシド-シスが強度になると,蘇生後脳内はアルカロ-シスになることが証明され,Na^+ーK^+ATPaseの障害による可能性が示唆された。2.動脈血pH・BE・乳酸・ヒポキサンチンの変動の値からCEMを推定することが可能であることが証明された。低酸素虚血性脳症は脳性麻痺の主要な原因疾患であり,その病態を解明することは非常に重要である。今回生後24時間以内の新生仔豚を用い,低酸素負荷前後の脳内エネルギ-代謝(CEM)の動態を^<31>PーNMRにより測定すると共に血液生化学的検査成績,脳波等と比較検討した。臍動脈カテ-テルを挿入し血圧・心拍数を測定し,気管内挿管後人工呼吸器にて急激に60分前後で低酸素にした群(A群:7頭)と緩徐に120分前後で低酸素にした群(B群:6頭)に分けて検討した。〔結果〕1.負荷開始後両群共に血圧が上昇する間は,CEMは殆ど変動せず,B群ではその後血圧低下と共に,A群ではやや遅れて急激にPCr・pHi・ATPは低下し,Piは上昇した。PCr/Piは,蘇生後血圧の上昇と共にA群は前値にまで回復したが,B群は70%までしか回復しなかった。負荷中両群共血圧上昇時には,PCr/Piはほぼ一定に保たれていたが,血圧低下時B群は血圧と正の相関をもって低下したが,A群では平均動脈血圧60mmHg前後まではほぼ一定で,それ以下で正の相関をもって低下した。蘇生時のpHiは,A群に比しB群は有意に低値を示したが,蘇生後では逆に有意にアルカロ-シスを示した。又両群共負荷中PCr/Piは,動脈血pH・BEと正の相関を,乳酸・ヒポキサンチンと負の相関を示した。これよりCEM障害の臨界値は,動脈血pH7.25前後,BEー7μmol/1前後,乳酸95mg/dl前後,ヒポキサンチン23μg/ml前後と考えられた。2.負荷中脳波はA群ではCEM低下の時期とほぼ一致して,B群ではCEMの低下に遅れて平坦化した。〔結論〕1.脳内アシド-シスが強度になると,蘇生後脳内はアルカロ-シスになることが証明され,Na^+ーK^+ATPaseの障害による可能性が示唆された。2.動脈血pH・BE・乳酸・ヒポキサンチンの変動の値からCEMを推定することが可能であることが証明された。 | KAKENHI-PROJECT-02670445 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02670445 |
三次元的に方位制御された短繊維で強化したマイクロ構造物の光造形 | 本研究では,磁界を用いて配向した短繊維で強化したマイクロ部品を光造形法によって製作することを目的としている.その方法を以下に述べる.液体の紫外線硬化樹脂と強磁性体の短繊維を混合する.この混合物に磁界を印加すると,強磁性体の短繊維の両端は分極し,磁力線の方向に短繊維の長手軸方向が配向する.この状態で混合物の表面上を紫外線レーザービームによって照射して所望の形状に樹脂を硬化させる.以上の工程によって,方向を揃えた短繊維で強化したマイクロ部品を製作することができる.最初に,本方法によって配向が可能であることを理論的に検証した後に,造形を行う装置を設計,製作し,配向実験および樹脂硬化実験を行った.強磁性体の短繊維としては,長さ0.32μm,直径0.04μmの磁性酸化鉄を使用した.この磁性酸化鉄を液体の紫外線硬化樹脂に混合すると,短繊維は微小であり,液体樹脂の粘度が高いために,短繊維はほとんど沈降しないことを計算の上で確かめた.次に,短繊維と液体樹脂の混合物に一様磁界が印加されると,短繊維の長手軸が磁界方向に向くようにモーメントが作用することも計算の上で確かめた.以上の検討を行った後,造形装置を製作した.造形部分を囲んで水平面内の周囲4方向と底面に電磁石を設置した.電磁石は自作し,鉄芯には高い透磁率を有するパーマロイを使用した.製作した造形装置によって短繊維を配向できることを確認し,配向時間を短縮するための条件について検討を行なった.これらの結果を利用して,面内で方位制御された短繊維で強化した簡単な構造物の造形を行った.次に,その内部で短繊維を配向した紫外線硬化樹脂を積層する実験を行った.積層した樹脂の厚さは20μm程度である.現状では,積層数は2であるが,顕微鏡観察により,それぞれの層において,設定した方向に配向していることを確認した.本研究では,磁界を用いて配向した短繊維で強化したマイクロ部品を光造形法によって製作することを目的としている.その方法を以下に述べる.液体の紫外線硬化樹脂と強磁性体の短繊維を混合する.この混合物に磁界を印加すると,強磁性体の短繊維の両端は分極し,磁力線の方向に短繊維の長手軸方向が配向する.この状態で混合物の表面上を紫外線レーザービームによって照射して所望の形状に樹脂を硬化させる.以上の工程によって,方向を揃えた短繊維で強化したマイクロ部品を製作することができる.最初に,本方法によって配向が可能であることを理論的に検証した後に,造形を行う装置を設計,製作し,配向実験および樹脂硬化実験を行った.強磁性体の短繊維としては,長さ0.32μm,直径0.04μmの磁性酸化鉄を使用した.この磁性酸化鉄を液体の紫外線硬化樹脂に混合すると,短繊維は微小であり,液体樹脂の粘度が高いために,短繊維はほとんど沈降しないことを計算の上で確かめた.次に,短繊維と液体樹脂の混合物に一様磁界が印加されると,短繊維の長手軸が磁界方向に向くようにモーメントが作用することも計算の上で確かめた.以上の検討を行った後,造形装置を製作した.造形部分を囲んで水平面内の周囲4方向と底面に電磁石を設置した.電磁石は自作し,鉄芯には高い透磁率を有するパーマロイを使用した.製作した造形装置によって短繊維を配向できることを確認し,配向時間を短縮するための条件について検討を行なった.これらの結果を利用して,面内で方位制御された短繊維で強化した簡単な構造物の造形を行った.次に,その内部で短繊維を配向した紫外線硬化樹脂を積層する実験を行った.積層した樹脂の厚さは20μm程度である.現状では,積層数は2であるが,顕微鏡観察により,それぞれの層において,設定した方向に配向していることを確認した.本研究では,磁界を用いて方位制御した短繊維で強化したマイクロ部品を光造形法によって製作することを目的としている.その方法を以下に述べる.液体の紫外線硬化樹脂と強磁性体の短繊維を混合する.この混合物に磁界を印加すると,強磁性体の短繊維の両端は分極し,磁力線の方向に短繊維の長手軸方向が配向する.この状態で混合物の表面上を紫外線レーザービームによって照射して所望の形状に樹脂を硬化させる.以上の工程によって,方向を揃えた短繊維で強化したマイクロ部品を製作することができる,平成17年度は,本方法によって方位制御が可能であることを理論的に検証した後に,造形を行う装置を設計,製作し,配向実験および樹脂硬化実験を行った.強磁性体の短繊維としては,長さ0.32μm,直径0.04μmの磁性酸化鉄を使用した.この磁性酸化鉄を液体の紫外線硬化樹脂に混合すると,短繊維は微小であり,液体樹脂の粘度が高いために,短繊維はほとんど沈降しないことを計算の上で確かめた.次に,短繊維と液体樹脂の混合物に一様磁界が印加されると,短繊維の長手軸が磁界方向に向くようにモーメントが作用することも計算の上で確かめた.以上の検討を行った後,造形装置を製作した,造形部分を囲んで水平面内の周囲4方向と底面に電磁石を設置した.電磁石は自作し,鉄芯には高い透磁率を有するパーマロイを使用した.製作した造形装置によって短繊維を方位制御できることを確認し,方位制御に要する時間や条件などを検討した. | KAKENHI-PROJECT-17560090 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17560090 |
三次元的に方位制御された短繊維で強化したマイクロ構造物の光造形 | さらに,方位制御した状態で樹脂を硬化させた.これらの結果を利用して,面内で方位制御された短繊維で強化した簡単な構造物の造形は行った.本研究では,磁界を用いて方位制御した短繊維で強化したマイクロ部品を光造形法によって製作することを目的としている.その方法を以下に述べる.液体の紫外線硬化樹脂と強磁性体の短繊維を混合する.強磁性体の短繊維としては,長さ0.32μm,直径0.04μmの磁性酸化鉄を使用した.この混合物に磁界を印加すると,強磁性体の短繊維の両端は分極し,磁力線の方向に短繊維の長手軸方向が配向する.この状態で混合物の表面上を紫外線レーザービームによって照射して所望の形状に樹脂を硬化させる.以上の工程によって,方向を揃えた短繊維で強化したマイクロ部品を製作することができる.前年度は主に,造形を行う装置を設計,製作し,基礎的な配向実験を行なった.本年度は,製作した装置を用いて以下のような実験を行なった.本実験装置は三次元的に短繊維を配向することができるように,造形部分を囲むように電磁石が設置されている.電磁石の鉄心には透磁率の高いパーマロイを使用している.磁界を印加すると,磁力線は磁界印加に関与していない電磁石の鉄心を通りやすくなってしまう.このため,造形部分に印加される磁界の値は小さくなり,配向に要する時間が長くなる.一方,実際に造形を行なう場合には,配向時間は短いほうが良い.このため,短繊維として用いた磁性酸化鉄をあらかじめ磁化しておくことによって配向時間を短縮させた.この配向時間を短縮するための条件について検討を行なった.次に,その内部で短繊維を配向した紫外線硬化樹脂を積層する実験を行った.積層した樹脂の厚さは20μm程度である.現状では,積層数は2であるが,顕微鏡観察により,それぞれの層において,設定した方向に配向していることを確認した. | KAKENHI-PROJECT-17560090 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17560090 |
固体粒子による壁面損傷量の計測と流体機械の損傷予測法に関する研究 | 流体機械に混入した固体粒子は、流体との密度差により、流れの流線から離脱し、境界壁面に衝突して、損傷を引き起こす。この際、機械内部の流速は早いので、粒子の慣性力も相当に大きく、流れの乱れや境界層などの影響は軽微であり、ポテンシャル流れの場における固体粒子の運動を解析することにより、粒子の壁面衝突位置や速度を数値的に解析できる。しかし、粒子の壁面衝突速度や衝突角度と壁面磨耗量との関係が未だ充分明らかでないため、磨耗の時間的進行状況を定量的に予測できないのが現状である。本研究では、種々のサイズの固体粒子を遠心力で吹き飛ばし、種々の材質からなる試験片に衝突させて、粒子の壁面での跳ね返り状況と試験片の磨耗量を測定し、粒子の壁面衝突による壁面磨耗量を定量的に明らかにするとともに、サンドポンプなど流体機械の固体粒子による損傷量を定量的に予測できる数値計算法を開発する目的で始められたものである。この研究を通して得られた現段階での成果は以下のように要約される。(1)壁面磨耗量は試験片の材質に著しく影響を受け、衝突角度により値が大きく異なる。(2)ケーシング内の粒子の壁面衝突速度は、粒子間衝突を考慮すると低下するが、さらに粒子自身の回転を考慮すると増加して、粒子間衝突を考慮しない場合とほぼ同じ値になる。粒子衝突による損傷問題は、粒子の種類や形状、被衝突材の性質など多数の要因により影響を受けるが、本研究による損傷量測定実験はようやく軌道に乗り出した段階であり、普遍的な相関関係として未だまとめ終わる段階にまで至っていないが、結果は近いうちに学会にて発表できる予定である。この分野の発展が学術面でも実用面でも要求されている時期にあるので、今後も引き続き多面的および総合的に解明していく予定である。流体機械に混入した固体粒子は、流体との密度差により、流れの流線から離脱し、境界壁面に衝突して、損傷を引き起こす。この際、機械内部の流速は早いので、粒子の慣性力も相当に大きく、流れの乱れや境界層などの影響は軽微であり、ポテンシャル流れの場における固体粒子の運動を解析することにより、粒子の壁面衝突位置や速度を数値的に解析できる。しかし、粒子の壁面衝突速度や衝突角度と壁面磨耗量との関係が未だ充分明らかでないため、磨耗の時間的進行状況を定量的に予測できないのが現状である。本研究では、種々のサイズの固体粒子を遠心力で吹き飛ばし、種々の材質からなる試験片に衝突させて、粒子の壁面での跳ね返り状況と試験片の磨耗量を測定し、粒子の壁面衝突による壁面磨耗量を定量的に明らかにするとともに、サンドポンプなど流体機械の固体粒子による損傷量を定量的に予測できる数値計算法を開発する目的で始められたものである。この研究を通して得られた現段階での成果は以下のように要約される。(1)壁面磨耗量は試験片の材質に著しく影響を受け、衝突角度により値が大きく異なる。(2)ケーシング内の粒子の壁面衝突速度は、粒子間衝突を考慮すると低下するが、さらに粒子自身の回転を考慮すると増加して、粒子間衝突を考慮しない場合とほぼ同じ値になる。粒子衝突による損傷問題は、粒子の種類や形状、被衝突材の性質など多数の要因により影響を受けるが、本研究による損傷量測定実験はようやく軌道に乗り出した段階であり、普遍的な相関関係として未だまとめ終わる段階にまで至っていないが、結果は近いうちに学会にて発表できる予定である。この分野の発展が学術面でも実用面でも要求されている時期にあるので、今後も引き続き多面的および総合的に解明していく予定である。本研究の目的は固体粒子が固体壁面に衝突することによって生ずる壁面摩耗量を正確に測定し、流体機械に混入した固体粒子による壁面損傷量の予測法を確立することである。今年度はまず、粒子サイズが均一な固体粒子をジェット噴流中に混ぜて平板に衝突させ、平板壁面での粒子の挙動を測定するとともに、壁面材料の摩耗量を測定して壁面に対する粒子の衝突と壁面摩耗量の相関関係を定量的に明かにする予定であった。実験装置の製作に当たり種々検討した結果、ジェット噴流を利用する方式では流れの影響により粒子の壁面衝突速度が影響を受け粒子の壁面衝突時の挙動が正確に測定できないことから、実験装置の大幅な変更を余儀なくされた。すなわち、粒子を真空容器中で回転する円盤の中心付近に供給して円周外向きに放出することにより、粒子を遠心力で飛散させて、外周上に設置した各種金属材料からなる試験片(種々の取付角度で設置されている)に衝突させる方式に変えた。これにより、均一で正確な壁面衝突速度が再現性良く得られ、かつ短時間に測定が可能となる。この方式変更により、実験装置の完成が大幅に遅れ、実験結果について成果をまとめるまでには未だ至っていない。数値的予測法については、ポテンシャル流れ場におかれた固体粒子の運動を解析し、衝突速度を求める計算手法に加えて、粒子濃度の影響を加味できる計算プログラム、粒子相互の衝突を考慮に入れた計算プログラムをつくり、完全弾性体モデルで計算を始めており、これら計算に上記実験で得られた関係を用いて比較検討することにより、本研究完結予定の次年度末までには、損傷量予測法を確立できる見込みである。流体機械に混入した固体粒子は、流体との密度差により、流れの流線から離脱し、境界壁面に衝突して、損傷を引き起こす。この際、機械内部の流速は早いので、粒子の慣性力も相当に大きく、流れの乱れや境界層などの影響は軽微であり、ポテンシャル流れの場における固体粒子の運動を解析することにより、粒子の壁面衝突位置や速度を数値的に解析できる。 | KAKENHI-PROJECT-04650148 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04650148 |
固体粒子による壁面損傷量の計測と流体機械の損傷予測法に関する研究 | しかし、粒子の壁面衝突速度や衝突角度と壁面磨耗量との関係が未だ充分明らかでないため、磨耗の時間的進行状況を定量的に予測できていないのが現状である。本研究では、種々のサイズの固体粒子を遠心力で吹き飛ばし、種々の材質からなる試験片に衝突させて、粒子の壁面での跳ね返り状況と試験片の磨耗量を測定し、粒子の壁面衝突による壁面磨耗量を定量的に明らかにするとともに、サンドポンプなど流体機械の固体粒子による損傷量を定量的に予測できる数値計算法を開発する目的で始められたものである。この研究を通して得られた現段階での成果は以下のように要約される。(1)壁面磨耗量は試験片の材質に著しく影響を受け、衝突角度により値が大きく異なる。(2)ケーシング内の粒子の壁面衝突速度は、粒子間衝突を考慮すると低下するが、さらに粒子自身の回転を考慮すると増加して、粒子間衝突を考慮しない場合とほぼ同じ値になる。粒子衝突による損傷問題は、粒子の種類や形状、被衝突材の性質など多数の要因により影響を受けるが、本研究による損傷量測定実験はようやく軌道に乗り出した段階であり、普遍的な相関関係として未だまとめ終わる段階にまで至っていないが、結果は近いうちに学会にて発表できる予定である。この分野の発展が学術面でも実用面でも要求されている時期にあるので、今後も引き続き多面的および総合的に解明していく予定である。 | KAKENHI-PROJECT-04650148 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04650148 |
IV族半導体極微細構造形成プロセスに関する研究 | 本研究では、原子層成長・エッチング法等ラングミュア吸着・反応の制御プロセス技術を駆使して、IV族半導体極微細構造を形成する原子制御プロセス技術を開拓することを目的としている。本年度は、表面吸着・反応制御の研究として原子層成長、表面処理、並びに原子層エッチング、デバイス製作プロセスの研究として低温ヘテロエピタキシャル成長とその極微細デバイスへの応用の研究を中心に行った。原子層成長や表面処理の研究では、反応温度を低温化し反応雰囲気を高清浄化して不要不純物の吸着を抑え、Si及びGe表面の水素終端をpreheat法により制御して、SiH_4、GeH_4等の単分子吸着層の形成を図った。フラッシュ光照射による瞬時加熱を併用し、SiとGeの一原子層ずつの成長を可能にし、SiH_4やGeH_4の吸着量がLangmuir型吸着・脱離平衡で表され表面吸着点密度が表面原子密度に等しい条件があることを明らかにした。また、NH_3による300500°Cでの一原子層熱窒化を実現し、CH_4による600°CでのSi表面一原子層炭化の可能性を示した。原子層エッチングの研究では、塩素の吸着と低エネルギーAr^+イオン照射を交互に行うことにより、SiやGeの自己制限型分数原子層エッチングが可能であり、超微細パターン加工もできることを実証し、飽和エッチ量や塩素の吸着速度のSi基板面方位及び反応性吸着種依存性を明らかにした。極微細デバイス製作プロセスの研究では、不純物ドープSiGe混晶の選択エピタキシャル成長層をソース・ドレイン層とする新しいMOSFET製作プロセスを提案し、ゲート電極寸法と実効チャネル長がほぼ等しい75nmルールのMOSFETを実現した。また、水素終端の制御により100°Cという低温でSi上へのWの選択成長を実現し、電極構成への適用の研究を進めている。本研究では、原子層成長・エッチング法等ラングミュア吸着・反応の制御プロセス技術を駆使して、IV族半導体極微細構造を形成する原子制御プロセス技術を開拓することを目的としている。本年度は、表面吸着・反応制御の研究として原子層成長、表面処理、並びに原子層エッチング、デバイス製作プロセスの研究として低温ヘテロエピタキシャル成長とその極微細デバイスへの応用の研究を中心に行った。原子層成長や表面処理の研究では、反応温度を低温化し反応雰囲気を高清浄化して不要不純物の吸着を抑え、Si及びGe表面の水素終端をpreheat法により制御して、SiH_4、GeH_4等の単分子吸着層の形成を図った。フラッシュ光照射による瞬時加熱を併用し、SiとGeの一原子層ずつの成長を可能にし、SiH_4やGeH_4の吸着量がLangmuir型吸着・脱離平衡で表され表面吸着点密度が表面原子密度に等しい条件があることを明らかにした。また、NH_3による300500°Cでの一原子層熱窒化を実現し、CH_4による600°CでのSi表面一原子層炭化の可能性を示した。原子層エッチングの研究では、塩素の吸着と低エネルギーAr^+イオン照射を交互に行うことにより、SiやGeの自己制限型分数原子層エッチングが可能であり、超微細パターン加工もできることを実証し、飽和エッチ量や塩素の吸着速度のSi基板面方位及び反応性吸着種依存性を明らかにした。極微細デバイス製作プロセスの研究では、不純物ドープSiGe混晶の選択エピタキシャル成長層をソース・ドレイン層とする新しいMOSFET製作プロセスを提案し、ゲート電極寸法と実効チャネル長がほぼ等しい75nmルールのMOSFETを実現した。また、水素終端の制御により100°Cという低温でSi上へのWの選択成長を実現し、電極構成への適用の研究を進めている。 | KAKENHI-PROJECT-08247202 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08247202 |
金属欠損を利用した層状酸化物の新たな高容量発現機構の解明 | 本研究の意義は、新たな理論によって現行のLiイオン電池正極材料よりもエネルギー密度を高めて、かつ安価なMnを利用した新規材料の発見が見込める。その結果、低炭素化社会に向けた次世代Li二次電池の発展に繋がる。そこで本研究の目的は、以下のI.からIII.である。I.層状岩塩型ABX2 (A: Liイオン, B:遷移金属イオンまたはLiイオン, X:酸化物イオン)において、B層の金属欠損濃度とその欠損分布が電池特性に及ぼす影響を解明する。II.欠損濃度とその分布を合成手法によって制御する技術を確立する。III. ABX2型化合物における最も電気化学特性に優れた物質を明らかにする。平成30年度の実施状況は、実施計画に従い実施した。まず、前駆体として、化学式をxNa2Mn3O7ー(1-x)Na2/3MeO2 (Me: Mn, Ni, Ti)で表現される物質においてx = 0.7, 0.8, 0.9の合成を行った。得られた試料をNa/Liイオン交換することによってLiイオン電池正極材料とした。各試料は、金属欠損を含めた化学式の決定に成功した。いずれの試料も放射光X線回折と中性子回折データを用いて結晶構造解析を実施して、構造精密化が行われた。X = 0.7の試料は、放射光X線全散乱データの取得に成功して、PDF解析によって局所構造を解析した。正極特性は、いずれの試料についても実施して、xの値と共に特性が異なることが確かめられた。以上の結果から、xの増加と共に欠損量が増加して本研究課題の仮説を支持しているが、電気化学特性に優れた最適な物質を創成するための情報を得るためには、xの値を今年度の3水準から増やすことで明らかになると考えられる。本研究の実施期間は、3年間であることから、目的とする試料体系の10試料は各年度で3試料を平均して進める予定であった。平成30年度の成果として、3試料を予定した解析の大変を終えることに成功した。不足の実験として、局所構造解析のみがあげられるがSPring-8のマシンタイムに依存するものであり、より長いマシンタイムを今後申請することでこの問題は解決できる。また、解析に要する時間は、基準となる1試料目の解析が最も長く、2試料以降は得られた知見から解析時間の短縮が見込める。つまり、2年目以降では研究の進捗速度が妥当に加速されることが見込めていることから、「おおむね順調に進展している」と判断される。今後の予定は、当初の研究計画通りであり、引き続き最適組成を導出するため、新たな試料合成を推進することと、得られた試料の化学分析、結晶・局所構造解析、電気化学特性の評価を行っていく。試料合成の方針は、初年度は金属欠損を増やすことを目的としたが、徐々に減らす方針で研究を進める。すなわち、x = 0.6, 0.5, 0.4について研究を行う。いずれの試料も新しい化学組成であるため、目的とする物質を合成することができるかが新たな課題となることが想定される。既に、合成条件に関する知見は予備実験によって収集してきたため、新規組成の合成に関する新たな課題は容易に解決されると考えている。電気化学特性の評価により、放電容量だけではなく、二次電池として重要なサイクル特性にも焦点を当てて評価を行う。本研究の意義は、新たな理論によって現行のLiイオン電池正極材料よりもエネルギー密度を高めて、かつ安価なMnを利用した新規材料の発見が見込める。その結果、低炭素化社会に向けた次世代Li二次電池の発展に繋がる。そこで本研究の目的は、以下のI.からIII.である。I.層状岩塩型ABX2 (A: Liイオン, B:遷移金属イオンまたはLiイオン, X:酸化物イオン)において、B層の金属欠損濃度とその欠損分布が電池特性に及ぼす影響を解明する。II.欠損濃度とその分布を合成手法によって制御する技術を確立する。III. ABX2型化合物における最も電気化学特性に優れた物質を明らかにする。平成30年度の実施状況は、実施計画に従い実施した。まず、前駆体として、化学式をxNa2Mn3O7ー(1-x)Na2/3MeO2 (Me: Mn, Ni, Ti)で表現される物質においてx = 0.7, 0.8, 0.9の合成を行った。得られた試料をNa/Liイオン交換することによってLiイオン電池正極材料とした。各試料は、金属欠損を含めた化学式の決定に成功した。いずれの試料も放射光X線回折と中性子回折データを用いて結晶構造解析を実施して、構造精密化が行われた。X = 0.7の試料は、放射光X線全散乱データの取得に成功して、PDF解析によって局所構造を解析した。正極特性は、いずれの試料についても実施して、xの値と共に特性が異なることが確かめられた。以上の結果から、xの増加と共に欠損量が増加して本研究課題の仮説を支持しているが、電気化学特性に優れた最適な物質を創成するための情報を得るためには、xの値を今年度の3水準から増やすことで明らかになると考えられる。本研究の実施期間は、3年間であることから、目的とする試料体系の10試料は各年度で3試料を平均して進める予定であった。平成30年度の成果として、3試料を予定した解析の大変を終えることに成功した。不足の実験として、局所構造解析のみがあげられるがSPring-8のマシンタイムに依存するものであり、より長いマシンタイムを今後申請することでこの問題は解決できる。 | KAKENHI-PROJECT-18K05302 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K05302 |
金属欠損を利用した層状酸化物の新たな高容量発現機構の解明 | また、解析に要する時間は、基準となる1試料目の解析が最も長く、2試料以降は得られた知見から解析時間の短縮が見込める。つまり、2年目以降では研究の進捗速度が妥当に加速されることが見込めていることから、「おおむね順調に進展している」と判断される。今後の予定は、当初の研究計画通りであり、引き続き最適組成を導出するため、新たな試料合成を推進することと、得られた試料の化学分析、結晶・局所構造解析、電気化学特性の評価を行っていく。試料合成の方針は、初年度は金属欠損を増やすことを目的としたが、徐々に減らす方針で研究を進める。すなわち、x = 0.6, 0.5, 0.4について研究を行う。いずれの試料も新しい化学組成であるため、目的とする物質を合成することができるかが新たな課題となることが想定される。既に、合成条件に関する知見は予備実験によって収集してきたため、新規組成の合成に関する新たな課題は容易に解決されると考えている。電気化学特性の評価により、放電容量だけではなく、二次電池として重要なサイクル特性にも焦点を当てて評価を行う。電気化学特性評価に用いる三極式セルが、2019年度に新製品に更新される。それに伴い旧製品と新製品で仕様変更が予測されるため、今後の継続的な研究を考慮すると、新製品に統一して測定を行う必要がある。そのため、2018年度の購入ではなく2019年度の購入が適切であり、それに付随した金額分について次年度使用額が増加した。 | KAKENHI-PROJECT-18K05302 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K05302 |
副甲状腺ホルモン分子のアミノ基末端側における断片化機構の研究 | 副甲状腺ホルモン(PTH)は、細胞外カルシウム濃度により厳密にその分泌が調節されており、血清カルシウム濃度の調節維持に重要な役割を演じている。細胞外カルシウムによるPTHの分泌調節機構は、PTH遺伝子の発現、PTH mRNAの安定性、副甲状腺細胞内でのPTH分子の断片化、副甲状腺細胞増殖といった多くの段階で調節されている。我々は、PTHのアミノ酸配列7番付近におけるN端断片化機構の存在と、その機構が細胞外カルシウム濃度の変化を介していることを示してきた。しかし、この機構が副甲状腺細胞膜上に存在するカルシウム感知受容体(CaR)を介しているかについては、不明であった。今回の研究機関で、副甲状腺からPTHが分泌されるに至る様々な段階で、CaRを刺激することによりPTH分泌を抑制できることを、原発性副甲状腺機能亢進症モデルマウス(PCマウス)や初代培養副甲状腺細胞を用いて、我々は示した。PCマウスを用いた検討、初代培養副甲状腺細胞を用いた検討で、CaRのアゴニストであるシナカルセトを投与することで、PTH分泌が抑制されることを示した。さらに、CaRの刺激により、副甲状腺細胞内でPTH分子のN端断片化が促進されることを、PCマウスを用いた検討、初代培養副甲状腺細胞を用いた検討であきらかにした。以上より、シナカルセトは副甲状腺細胞膜上のCaRをアゴニストとして刺激することにより、PTH分泌抑制作用、副甲状腺細胞内でPTH分子のN端断片化作用を持つことが明らかとなった。副甲状腺ホルモン(PTH)は、細胞外カルシウム濃度により厳密にその分泌が調節されており、血清カルシウム濃度の調節維持に重要な役割を演じている。細胞外カルシウムによるPTHの分泌調節機構は、PTH遺伝子の発現、PTH mRNAの安定性、副甲状腺細胞内でのPTH分子の断片化、副甲状腺細胞増殖といった多くの段階で調節されている。我々は、PTHのアミノ酸配列7番付近におけるN端断片化機構の存在と、その機構が細胞外カルシウム濃度の変化を介していることを示してきた。しかし、この機構が副甲状腺細胞膜上に存在するカルシウム感知受容体(CaR)を介しているかについては、不明であった。今回の研究機関で、副甲状腺からPTHが分泌されるに至る様々な段階で、CaRを刺激することによりPTH分泌を抑制できることを、原発性副甲状腺機能亢進症モデルマウス(PCマウス)や初代培養副甲状腺細胞を用いて、我々は示した。PCマウスを用いた検討、初代培養副甲状腺細胞を用いた検討で、CaRのアゴニストであるシナカルセトを投与することで、PTH分泌が抑制されることを示した。さらに、CaRの刺激により、副甲状腺細胞内でPTH分子のN端断片化が促進されることを、PCマウスを用いた検討、初代培養副甲状腺細胞を用いた検討であきらかにした。以上より、シナカルセトは副甲状腺細胞膜上のCaRをアゴニストとして刺激することにより、PTH分泌抑制作用、副甲状腺細胞内でPTH分子のN端断片化作用を持つことが明らかとなった。本研究は、副甲状腺ホルモン(PTH)のアミノ酸配列のアミノ基末端(N端)断片化機構が、副甲状腺細胞膜上に存在するカルシウム感知受容体(Calcium sensing receptor, CaR)を介して機能するのかを、in vitro, in vivoの系を用いて解明することである。既に我々は、ヒト副甲状腺初代培養細胞系を用いた検討により、細胞外Ca^<2+>依存性PTH分子N端断片化機構を報告している(JCIin Endocrino1 Metab 90:5774-8,2005)。今回我々は、カルシウム感知受容体作働薬のひとつであるシナカルセトがヒト副甲状腺初代培養細胞よりPTH分泌を用量依存的に抑制することを報告した(J. Bone Miner Metah 24:300-6,2006)。さらにシナカルセトがPTH分子N端断片化を促進することを見いだした(投稿準備中)。また、多価イオンとして、Mg^<2+>も同様に本現象を促進することを確認した。以上より、細胞外Ca^<2+>依存性PTH分子N端断片化機構の少なくとも一部は、CaRを介して機能することを示した。今後、CaRの細胞内情報伝達系を刺激・抑制することで、その機能の変化を確認する予定である。原発性副甲状腺機能亢進症モデルマウス(PCマウス)を用いた動物実験において、既に我々はシナカルセトの単回投与により血清Ca, PTH濃度が抑制されることを示している(Eur JEndoerino1153:587-94,2005)。さらに、シナカルセトの混餌投与により副甲状腺増殖能も抑制されることを示した(投稿準備中)。今後本マウスへのシナカルセト投与実験により、CaR依存性PTH分子N端断片化機構を明らかにしていく予定である。副甲状腺ホルモン(PTH)は、細胞外カルシウム濃度により厳密にその分泌が調節されており、血清カルシウム濃度の調節維持に重要な役割を演じている。細胞外カルシウムによるPTHの分泌調節機構は、PTH遺伝子の発現、PTHmRNAの安定性、副甲状腺細胞内でのPTH分子の断片化、副甲状腺細胞増殖といった多くの段階で調節されている。我々は、今回の研究期間中に、PTHのアミノ酸配列7番付近におけるN端断片化機構の存在と、その機構が細胞外カルシウム濃度の変化を介していることを明らかにした。これまで我々は、副甲状腺からPTHが分泌されるに至る様々な段階で、CaRを刺激することによりPTH分泌を抑制できることを、原発性副甲状腺機能亢進 | KAKENHI-PROJECT-18591033 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18591033 |
副甲状腺ホルモン分子のアミノ基末端側における断片化機構の研究 | 症モデルマウス(PCマウス)や初代培養副甲状腺細胞を用いて示してきた。PCマウスを用いた検討、初代培養副甲状腺細胞を用いた検討で、CaRのアゴニストであるシナカルセトを投与することで、PTH分泌が抑制されることを示した。さらに、CaRの刺激により、副甲状腺細胞内でPTH分子のN端断片化が促進されることを、PCマウスを用いた検討、初代培養副甲状腺細胞を用いた検討であきらかにした。さらに、CaRの持続的な刺激により、副甲状腺細胞の増殖が抑制されることを、PCマウスを用いた検討でも確認している。現在,以上の結果について、再実験による確認中である。 | KAKENHI-PROJECT-18591033 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18591033 |
がん研究に要する研究資材開発 | がん研究のためには各種の研究資材が必要である。本研究班はがん研究に必要な資材を調整し,分与し,あるいはそれらの所在情報を,がん研究者に広く供給することを目的としている。具体的には次の8つの事業を行った。1.移植腫瘍,細胞の分与(橘武彦担当)。111株を供給した。うち,50%はヒト培養細胞であった2.化学物質(黒木登志夫)。IQ,MeIQ,NitroIQを各1件分与した3.単クロ-ン抗体(橋本嘉幸,高橋利忠)。本年度は所在情報パンフレットを作らなかった4.遺伝子(豊島久真男,渋谷正史,山本雅)。Cーmyc,cーerbBー1,cーerbBー2を各1件づつ配布した5.染色体マッピング(吉田廸弘,中村祐輔)。マッピング用ハイブハド-マ細胞5件,同DNA4件分与。in situhybridization法によるマッピング10件,およびマッピング用プロ-ブ310件分与した。6.遺伝情報(宮田隆,五條堀孝,伊藤彬)。遺伝子のコンピュ-タ-解析10件,および「タンパク質の機能部位に特異的なアミノ酸配列パタ-ン」の小册子を作成し、がん接,バイオがん班号に配布した7.DNA保存(黒木登志夫,西村暹,青木国雄),秋田大学関係のコホ-ト2000人から未血DNAと100μgづつ分離、保存した。8.ペプチド合成し富田基郎,吉田光昭,黒木登志夫)、班号の要望に応じて18件のペプチドを合成したがん研究のためには各種の研究資材が必要である。本研究班はがん研究に必要な資材を調整し,分与し,あるいはそれらの所在情報を,がん研究者に広く供給することを目的としている。具体的には次の8つの事業を行った。1.移植腫瘍,細胞の分与(橘武彦担当)。111株を供給した。うち,50%はヒト培養細胞であった2.化学物質(黒木登志夫)。IQ,MeIQ,NitroIQを各1件分与した3.単クロ-ン抗体(橋本嘉幸,高橋利忠)。本年度は所在情報パンフレットを作らなかった4.遺伝子(豊島久真男,渋谷正史,山本雅)。Cーmyc,cーerbBー1,cーerbBー2を各1件づつ配布した5.染色体マッピング(吉田廸弘,中村祐輔)。マッピング用ハイブハド-マ細胞5件,同DNA4件分与。in situhybridization法によるマッピング10件,およびマッピング用プロ-ブ310件分与した。6.遺伝情報(宮田隆,五條堀孝,伊藤彬)。遺伝子のコンピュ-タ-解析10件,および「タンパク質の機能部位に特異的なアミノ酸配列パタ-ン」の小册子を作成し、がん接,バイオがん班号に配布した7.DNA保存(黒木登志夫,西村暹,青木国雄),秋田大学関係のコホ-ト2000人から未血DNAと100μgづつ分離、保存した。8.ペプチド合成し富田基郎,吉田光昭,黒木登志夫)、班号の要望に応じて18件のペプチドを合成した | KAKENHI-PROJECT-03151014 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03151014 |
放線菌由来プロリルオリゴペプチダーゼの機能解析と応用 | 放線菌Streptomyces属ゲノム中にコードされる3種のProlyl Oligopeptidase (POP)の酵素学的特徴を明らかにすることを目的とし、3種のPOPのうち、2種についてひとつがエキソ型アミノペプチダーゼ(AP)、もうひとつがエンド型ペプチダーゼであることを明らかにした。エンド型については、トリプシン様の基質特異性を示し、オリゴペプチダーゼBであることも明らかにした。さらに、APの活性中心であるセリンをシステインに置換することにより、野生型よりも著しくアミノリシス活性が上昇することも明らかにした。放線菌Streptomyces属ゲノム中にコードされる3種のProlyl Oligopeptidase (POP)の酵素学的特徴を明らかにすることを目的とし、3種のPOPのうち、2種についてひとつがエキソ型アミノペプチダーゼ(AP)、もうひとつがエンド型ペプチダーゼであることを明らかにした。エンド型については、トリプシン様の基質特異性を示し、オリゴペプチダーゼBであることも明らかにした。さらに、APの活性中心であるセリンをシステインに置換することにより、野生型よりも著しくアミノリシス活性が上昇することも明らかにした。放線菌由来プロリルオリゴペプチダーゼの機能解析と応用」という課題で、放線菌Streptomyces属ゲノム中にコードされる3種のProlyl Oligopeptidase(POP)の酵素学的特徴を明らかにすることを目的とする。さらに、中等度好熱性Streptomyces菌株から、それらの類縁酵素遺伝子を取得し、グルテン、コラーゲン分解への応用と、アミノリシス反応による機能性ペプチドの合成に有用な酵素の創製を最終目標とする。本年度では、3種のPOPのうち、2種についてひとつがエキソ型アミノペプチダーゼ(AP)、もうひとつがエンド型ペプチダーゼであることを明らかにした。エンド型については、トリプシン様の基質特異性を示し、オリゴペプチダーゼB(OPD-B)であることも明らかにした。またこのOPD-Bには、システイン残基が一つしか存在せず、チオール試薬依存性といわれるOPD-Bの研究材料として、適した1次配列であることも解っている。放線菌由来オリゴペプチダーゼの機能解析と応用」という課題で、放線菌Streptomyces属ゲノム中にコードされる3種のProlyl Oligopeptidase(POP)の酵素学的特徴を明らかにすることを目的とする。さらに、中等度好熱性Streptomyces菌株から、それらの類縁酵素遺伝子を取得し、グルテン、コラーゲン分解への応用と、アミノリシス反応による機能性ペプチドの合成に有用な酵素の創製を最終目標とする。本年度は、3種のPOPのうち、2種についてひとつがエキソ型アミノペプチダーゼ(AP)、もうひとつがエンド型ペプチダーゼであることを明らかにした。エンド型については、トリプシン様の基質特異性を示し、オリゴペプチダーゼB(OPD-B)であることも明らかにした。またこのOPD-Bには、システイン残基が一つしか存在せず、チオール試薬依存性といわれるOPD-Bの研究材料として適した1次配列であることも解っている。さらに、APの活性中心であるセリンをシステインに置換することにより、野生型よりも著しくアミノリシス活性が上昇することも明らかにした。放線菌由来オリゴペプチダーゼの機能解析と応用」という課題で、放線菌Streptomyces属ゲノム中にコードされる3種のProlyl Oligopeptidase (POP)の酵素学的特徴を明らかにすることを目的とする。さらに、中等度好熱性Streptomyces菌株から、それらの類縁酵素遺伝子を取得し、グルテン、コラーゲン分解への応用と、アミノリシス反応による機能性ペプチドの合成に有用な酵素の創製を最終目標とする。本年度は、メロップス分類でS9ファミリーに属するエキソ型アミノペプチダーゼが放線菌Streptomyces属のみならず、同じく放線菌Acidothermus属にも存在することを明らかにした。本酵素について、放線菌Streptomyces属由来APと同様に、活性中心であるセリンをシステインに置換することにより、野生型よりも著しくアミノリシス活性が上昇することも明らかにした。さらに、放線菌Streptomyces属ゲノム中にコードされるS9ファミリーに属するとされた酵素が、S9Bファミリーに属するX-prolyl aminopeptodase(X-PDAP)であることも明らかにし、中等度好熱性Streptomyces菌株由来X-PDAPは、分泌シグナルをもたず菌体内酵素であるにもかかわらず放線菌S.lividansを宿主とした系を用いて、菌体外に大量発現に成功した。 | KAKENHI-PROJECT-20550158 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20550158 |
粒子シミュレーションによる小惑星表層の衝突進化過程の解明 | 小惑星ならびに微惑星の表層は微小重力下の高空隙粉体層である.離散要素法等を用いた衝突数値シミュレーションを行うことで,そこで生じる天体衝突過程を明らかにし,小惑星ならびに微惑星進化に及ぼす天体衝突の影響を評価することが本研究の目的である.研究の結果,衝突天体が潜り込む貫入過程における抵抗則が明らかとなり,また衝突によって生じるイジェクタの総量は衝突天体の運動量に概ね比例することが明らかとなった.これらの結果から,天体衝突による成長と削剥のバランスによって決まる小惑星表層進化過程をより定量的に考察することが可能となった.小惑星表層は微小重力下の高空隙粉体層である.そこに刻まれるクレーターなどの天体衝突過程を明らかにし,小惑星進化に及ぼす天体衝突の影響を評価することが本研究の目的である.具体的にはこれまで行ってきた粉体層への衝突シミュレーション手法に粒子間付着力モデルを導入するなど改良・発展させ,微小重力下高空隙粉体層への衝突シミュレーションを行い以下の素過程を明らかにする.今年度は衝突標的である粉体層の形成を中心に展開した.粒子法の一種である離散要素法(DEM)により,低重力のもと多数の粒子をランダムに自由落下させることで衝突標的となる粉体層を形成した.低重力下での自由落下による標的作成は相当な計算時間が必要であった.重力ならびに粒子間相互作用を変化させることで,空隙率の違う標的粉体層を構築することができた.最終年度ではこれら形成された粉体層において衝突の数値シミュレーションを行う予定である.また,小惑星表層を含め高空隙粉体層における衝突において,放出物の量がどれくらいになるか,といった放出過程も惑星形成・小惑星進化過程に重要な素過程である.空隙率85%程度のBPCA構造をもったアグリゲイトの衝突を行った結果,放出物の量は衝突弾丸の運動量に比例することが明らかになりつつあり,小天体の進化過程にインパクトを与えるものと考えられる.さらに,小惑星表層環境におけるダストの振る舞いや付着力に関する理論的推察も行い,小惑星表層進化に関する総合的な知見を得ることができた.小惑星ならびに微惑星の表層は微小重力下の高空隙粉体層である.離散要素法等を用いた衝突数値シミュレーションを行うことで,そこで生じる天体衝突過程を明らかにし,小惑星ならびに微惑星進化に及ぼす天体衝突の影響を評価することが本研究の目的である.研究の結果,衝突天体が潜り込む貫入過程における抵抗則が明らかとなり,また衝突によって生じるイジェクタの総量は衝突天体の運動量に概ね比例することが明らかとなった.これらの結果から,天体衝突による成長と削剥のバランスによって決まる小惑星表層進化過程をより定量的に考察することが可能となった.小惑星表層は微小重力下の高空隙粉体層である.そこに刻まれるクレーターなどの天体衝突過程を明らかにし,小惑星進化に及ぼす天体衝突の影響を評価することが本研究の目的である.具体的にはこれまで行ってきた粉体層への衝突シミュレーション手法に粒子間付着力モデルを導入するなど改良・発展させ,微小重力下高空隙粉体層への衝突シミュレーションを行い以下の素過程を明らかにする.今年度は天体衝突時の粉体層への貫入過程について,室内実験との比較を通して明らかにすることを目的に数値シミュレーションを行った.具体的にはこれまでに準備した粉体層における弾丸貫入・掘削流のシミュレーションを室内実験と同じ条件で行い,結果を比較した.結果的に,弾丸貫入時には衝撃波様の波の伝播や孤立分離波の伝播といった粉体特有の現象が観察された他,弾丸速度の2乗に比例する抵抗ならびに弾丸速度に比例する抵抗が貫入時に生じることが確認され実験とも調和的であることが確かめられた.また,この貫入抵抗は粒子間相互作用をあらわすパラメータによらないことが示され,様々な粉体状況への適用可能性が示された.また,小惑星表層を形成する高空隙粉体層について,その起源となるダストの衝突合体成長過程からの理解についても進んだ.すなわち,もともと空隙率の非常に高いダストがその空隙率を保ちながら微惑星や小天体にまで合体成長することが理論的に可能であることが示された.したがって,本研究で取り組む課題とその結果は,小惑星のみならず,微惑星形成をも含む惑星形成論においても広く応用が可能であると考えられる.小惑星表層は微小重力下の高空隙粉体層である.そこに刻まれるクレーターなどの天体衝突過程を明らかにし,小惑星進化に及ぼす天体衝突の影響を評価することが本研究の目的である.具体的にはこれまで行ってきた粉体層への衝突シミュレーション手法に粒子間付着力モデルを導入するなど改良・発展させ,微小重力下高空隙粉体層への衝突シミュレーションを行い以下の素過程を明らかにする.今年度は低重力のもとで形成されると考えられる高空隙率のアグリゲイト同士の衝突ならびにそのような高空隙率標的へのモノマーの衝突によって生じる放出物破片(イジェクタ)量に注目し,数値シミュレーションを行った.その結果,衝突するものが高空隙率のプロジェクタイルであれば,イジェクタ総量はプロジェクタイルの運動量に比例する一方,プロジェクタイルがモノマーの場合にはその運動エネルギーに比例することが明らかとなった.このことは,十分多数の粒子で構成されたプロジェクタイルであれば,その内部でエネルギーが十分に散逸することになり,結果としてイジェクタの運動はプロジェクタイルの運動量によって支配されるが,モノマーのようにエネルギーが内部で十分に散逸することができなければ,運動エネルギーがイジェクタへ直接的に受け渡されることにより,イジェクタの運動はプロジェクタイルの運動エネルギーで決まる,ということを示唆しているものと考えられる. | KAKENHI-PROJECT-24540459 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24540459 |
粒子シミュレーションによる小惑星表層の衝突進化過程の解明 | 言い換えれば,小惑星の進化過程においてエネルギー散逸がどこで生じるかということが重要であることを意味している.天体衝突現象をはじめとする惑星科学本研究で必要となる小惑星表層を模擬した粉体層の形成を行い,本格的な衝突シミュレーションを行う目途がたったこと,さらにアグリゲイト衝突のシミュレーションから放出物量の衝突条件依存性が明らかになりつつあり,その解析手法とともに次年度に十分な成果が得られることが期待されること,から順調に進展していると考えられる.今年度の当初計画では,重力・粒子間相互作用パラメータを振ってさまざまな空隙率をもつ粉体層を作成すること並びに衝突シミュレーションの予備的計算を行う予定であった.衝突シミュレーションの予備的計算に関しては,室内実験との比較も行うなど数値シミュレーションの妥当性を評価し貫入抵抗過程を明らかにするなど当初予想より大きな収穫が得られた.一方で,さまざまな空隙率をもつ粉体層の作成はようやく着手した段階であり,このことから「やや遅れている」と判断するに至った.しかしながら,粉体層の作成には目途がついており遅れを十分挽回することが可能である.したがって,計画全体の遂行には問題ないと考えられる.25年度に作成した粉体層の性質(音速など)を精査したのち,必要ならばさらに粉体標的層を作成して,それらに対する衝突シミュレーションを行う.衝突クレーター形状やイジェクタ量に関して衝突条件や重力および粒子間相互作用依存性を明らかにしたうえで,小惑星表層における衝突過程モデルを構築する.まずは昨年度末から着手している小惑星表層を想定した高い空隙率を持つ粉体層の作成シミュレーションを行う.具体的には重力下において粒子を上方からランダムに降らせ堆積させることで粉体層を形成する.粉体層の空隙率に関しては,粒子間付着力および転がり抵抗と重力との比が重要であることが知られている.低重力環境(1GマイクロG)下,粒子間付着力および粒子間転がり抵抗を調節することで,様々な空隙率をもつ粉体層の形成が可能である.さらに形成した粉体層への衝突シミュレーションを行う.今年度の成果として得られた粉体層における貫入抵抗則がさまざまな粉体層においても成立するかを確認することを行うとともに,クレーター形状や放出されるイジェクタ量についても,衝突パラメータを振ってその依存性を明らかにする.そのうえで,小惑星表層上における衝突過程に対するスケーリング則の構築をめざす.今年度購入した高速計算機システムを活用して次年度以降数値シミュレーションを行っていくため,次年度以降大きな物品の購入は必要ない.次年度の研究費はもっぱら研究成果の発表や室内実験研究者等との議論を行うための旅費,並びに消耗品購入に充てる予定である. | KAKENHI-PROJECT-24540459 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24540459 |
慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)発症・進展の分子メカニズムの解明 | 研究目的:慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は器質化した血栓より肺動脈が狭窄・閉塞し、肺動脈圧が上昇して心不全を発症する疾患である。血栓部位に存在する細胞群の過剰増殖が病変増悪に関わっていることが明らかとなっているが、これら細胞群の性状や過剰増殖の分子メカニズムは未だ解明されていない。現在、CTEPHにはバルーン肺動脈形成術(BPA)あるいは肺動脈内膜血栓摘除術(PEA)の治療が行われているが、中枢側の狭窄・閉塞病変を解除することで末梢側の狭窄・閉塞も自然経過で軽減・退縮する症例が数多く見られた。このことから、肺動脈にかかる拍動刺激がCTEPHの閉塞・狭窄病変を退縮させるのではないかという点に着目して研究を行った。研究方法: PEAを受けたCTEPH患者の手術検体より細胞を分離・培養し、細胞伸展装置を使用してCTEPH患者から単離・培養された培養に拍動刺激(CCS)を与えて細胞増殖に関わるシグナルの検討を行った。また、CTEPH患者においても肺血管収縮物質であるEndotheli-1(ET-1)が過剰発現していることから、ET-1と拍動刺激の相互作用についての検討も行った。研究成果:細胞の分離培養が成功した患者のサンプルでは平滑筋と同様のマーカーの発現が見られた。また、ET-1,エンドセリン変換酵素(ECE-1)、エンドセリンAレセプター(ETAR)の発現量は患者によって違いがある事から、平滑筋様の細胞ではあるが患者によって性質に違いがある細胞であることが示された。患者細胞に拍動刺激を加えると、過剰刺激である20%では細胞増殖マーカーであるERK1/2の発現が促進されていた。ET-1刺激でもERK1/2の発現は促進するが、CCSとET-1を組み合わせて刺激すると、ERK1/2活性は抑制される傾向を示した。この結果よりはCTEPHの閉塞・狭窄部位より遠位の病変においては、治療により血流および拍動を回復し適切な伸展刺激を与えることでET-1による細胞増殖が抑制される可能性が示唆された。研究目的:慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は器質化した血栓より肺動脈が狭窄・閉塞し、肺動脈圧が上昇して心不全を発症する疾患である。血栓部位に存在する細胞群の過剰増殖が病変増悪に関わっていることが明らかとなっているが、これら細胞群の性状や過剰増殖の分子メカニズムは未だ解明されていない。現在、CTEPHにはバルーン肺動脈形成術(BPA)あるいは肺動脈内膜血栓摘除術(PEA)の治療が行われているが、中枢側の狭窄・閉塞病変を解除することで末梢側の狭窄・閉塞も自然経過で軽減・退縮する症例が数多く見られた。このことから、肺動脈にかかる拍動刺激がCTEPHの閉塞・狭窄病変を退縮させるのではないかという点に着目して研究を行った。研究方法: PEAを受けたCTEPH患者の手術検体より細胞を分離・培養し、細胞伸展装置を使用してCTEPH患者から単離・培養された培養に拍動刺激(CCS)を与えて細胞増殖に関わるシグナルの検討を行った。また、CTEPH患者においても肺血管収縮物質であるEndotheli-1(ET-1)が過剰発現していることから、ET-1と拍動刺激の相互作用についての検討も行った。研究成果:細胞の分離培養が成功した患者のサンプルでは平滑筋と同様のマーカーの発現が見られた。また、ET-1,エンドセリン変換酵素(ECE-1)、エンドセリンAレセプター(ETAR)の発現量は患者によって違いがある事から、平滑筋様の細胞ではあるが患者によって性質に違いがある細胞であることが示された。患者細胞に拍動刺激を加えると、過剰刺激である20%では細胞増殖マーカーであるERK1/2の発現が促進されていた。ET-1刺激でもERK1/2の発現は促進するが、CCSとET-1を組み合わせて刺激すると、ERK1/2活性は抑制される傾向を示した。この結果よりはCTEPHの閉塞・狭窄部位より遠位の病変においては、治療により血流および拍動を回復し適切な伸展刺激を与えることでET-1による細胞増殖が抑制される可能性が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-15H00600 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H00600 |
線虫の温度走性を行動モデルとする記憶・学習の制御機構 | これまでの研究から、線虫温度走性における意思決定を制御するOLA-1およびDCLK-1は多数の神経細胞に発現していた。線虫の温度走性行動は、AFD、AIY、AIZおよびRIAからなるシンプルな神経回路が主体となって駆動される(Mori and Ohshima, Nature 1995)。そこで、OLA-1が機能する神経細胞の特定を試みたところ、OLA-1遺伝子の機能細胞は複数存在し、線虫の過去の経験の違いに応じて、OLA-1は異なる細胞で意思決定を制御していることを見いだした。高温飼育された個体の意思決定の際には、OLA-1はAFD温度受容ニューロンで機能するのに対し、低温飼育された個体においては、AVK, RMG, BAGなどのこれまでに温度走性行動に関与することが知られていなかった神経細胞で働くことが示唆されていた。そこで、本年度においては、OLA-1が高温飼育された個体において、AFD温度受容ニューロンの温度応答性を制御するのかを検証した。AFDニューロンにカルシウムプローブを発現させた野生株、およびola-1変異体を作成し、カルシウムイメージングを行なったところ、ola-1変異体のAFDニューロンは、温度刺激に対して顕著な異常を示さなかった。このことから、OLA-1はAFDニューロンで機能するが、その作用はカルシウム流入よりも下流のプロセスにあることが示唆された。また、OLA-1が、飢餓体験による温度走性行動の意思決定に関与するかを検討した。野生株の線虫は、一定の温度で餌のない条件で飼育されたのちに温度勾配上に置かれると、飢餓を体験した飼育温度には誘引されなくなる。一方で、ola-1変異体は飢餓体験後も飼育温度に誘引されることを見出した。このことから、OLA-1は飢餓体験による意思決定にも重要な役割を果たしていることが明らかとなった。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。これまでの研究から、線虫温度走性における意思決定を制御するOLA-1およびDCLK-1は多数の神経細胞に発現していた。ola-1(lf)変異体に、pan-neuronal promoterであるunc-14プロモーターとola-1cDNAを連結させた融合遺伝子を導入した系統で;は、ola-1(lf)の行動異常が;回復した。この結果より、OLA-1は神経系で機能することで、温度走性における意思決定に関与することが明らかとなった。線虫の温度走性行動は、AFD、AIY、AIZおよびRIAからなるシンプルな神経回路が主体となって駆動される(Mori and Ohshima, Nature 1995)。そこで、OLA-1が機能する神経細胞を特定するために、細胞特異的なOLA-1遺伝子の発現によるレスキュー実験を試みた。AFD、AIY、AIZ、およびRIAなどの細胞に特異的に発現を誘導するプロモーターの下流にOLA-1 cDNAを結合し、ola-1(lf)変異体の表現型を回復するかを検討したところ、OLA-1遺伝子の機能細胞は複数存在し、線虫の過去の経験の違いに応じて、OLA-1は異なる細胞で意思決定を制御していることを見いだした。高温飼育された個体の意思決定の際には、OLA-1はAFD温度受容ニューロンで機能するのに対し、低温飼育された個体においては、AVK, RMG, BAGなどのこれまでに温度走性行動に関与することが知られていなかった神経細胞で働くことが示唆された。また、OLA-1のATP結合に必須なアミノ酸を置換した変異型OLA-1遺伝子では、OLA-1変異体の異常を回復できなかった。このことから、ATP結合、あるいはATP加水分解能がOLA-1の機能に必須な役割を果たしていることが明らかとなった。平成28年度における当初研究計画の主要な項目は、OLA-1が温度走性行動において意思決定を制御する際に機能する細胞を同定することであった。平成28年度において、OLA-1遺伝子の細胞特異的な発現によってola-1(lf)変異体の表現型を回復するかを検討する細胞特異的レスキュー実験を行った。これにより、OLA-1の機能細胞は複数種類あることを明らかにし、それらの異なる機能細胞は線虫個体が過去に経験した環境の違いによって、使い分けられている示唆を得た。さらに、これらの機能細胞のうちの一つを同定することに成功し、高温を経験した個体では、AFD温度受容ニューロンでOLA-1が機能することを明らかにした。また、低温を経験した個体でのOLA-1機能細胞は、温度走性を制御することがこれまでに知られていた神経細胞ではなく、意思決定に関与する新規の神経回路が存在する示唆を得た。さらに、これまでOLA-1ファミリーのタンパク質はin vitroでATPあるいはGTPに結合し、加水分解能を示すことが知られていたが、その生体内での意義は不明なままであった。平成28年度の本研究における解析から、線虫OLA-1のATP結合能は、生体内の機能に必須な役割を果たすことが示された。この結果は、今後のOLA-1の機能解析において、重要な知見となることが予想され、進化的に高度に保存されたOLA-1ファミリータンパク質の意思決定における生体内の役割を解明するための基盤となる。以上のことから、本研究では、平成28年度の当初計画を順調に遂行しており、現在までの研究の進捗は十分に進展していると考える。 | KAKENHI-PUBLICLY-16H01272 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-16H01272 |
線虫の温度走性を行動モデルとする記憶・学習の制御機構 | これまでの研究から、線虫温度走性における意思決定を制御するOLA-1およびDCLK-1は多数の神経細胞に発現していた。線虫の温度走性行動は、AFD、AIY、AIZおよびRIAからなるシンプルな神経回路が主体となって駆動される(Mori and Ohshima, Nature 1995)。そこで、OLA-1が機能する神経細胞の特定を試みたところ、OLA-1遺伝子の機能細胞は複数存在し、線虫の過去の経験の違いに応じて、OLA-1は異なる細胞で意思決定を制御していることを見いだした。高温飼育された個体の意思決定の際には、OLA-1はAFD温度受容ニューロンで機能するのに対し、低温飼育された個体においては、AVK, RMG, BAGなどのこれまでに温度走性行動に関与することが知られていなかった神経細胞で働くことが示唆されていた。そこで、本年度においては、OLA-1が高温飼育された個体において、AFD温度受容ニューロンの温度応答性を制御するのかを検証した。AFDニューロンにカルシウムプローブを発現させた野生株、およびola-1変異体を作成し、カルシウムイメージングを行なったところ、ola-1変異体のAFDニューロンは、温度刺激に対して顕著な異常を示さなかった。このことから、OLA-1はAFDニューロンで機能するが、その作用はカルシウム流入よりも下流のプロセスにあることが示唆された。また、OLA-1が、飢餓体験による温度走性行動の意思決定に関与するかを検討した。野生株の線虫は、一定の温度で餌のない条件で飼育されたのちに温度勾配上に置かれると、飢餓を体験した飼育温度には誘引されなくなる。一方で、ola-1変異体は飢餓体験後も飼育温度に誘引されることを見出した。このことから、OLA-1は飢餓体験による意思決定にも重要な役割を果たしていることが明らかとなった。平成29年度以降の研究の推進方策としては、まず、低温を体験した個体でのOLA-1の機能細胞の同定を試みる。これまでに、低温体験したola-1(lf)変異体の意思決定異常は、ncs-1 promoterに結合したola-1 cDNA融合遺伝子を導入することによって回復することを見いだしている。ncs-1 promoterはAVK、RMG、BAGなどの神経細胞で発現を誘導することが知られている。そこで、これらの神経細胞に特異的に発現を誘導するpromoterをola-1 cDNAに結合し、ncs-1 promoterで発現が誘導される神経細胞のうち、どの細胞でola-1が機能するのかを明らかにする。これにより、線虫温度走性における意思決定を制御する神経回路を明らかにする。さらに、この神経回路の回路動態をカルシウムイメージングによって捉える。特に、AFD、AIY、AIZなどの神経回路上の活動動態が、温度走性の行動モードの遷移とともに、どのように変化するかを計測し、さらにola-1(lf)変異体での活動動態と比較する。このために、これらの神経細胞にGCaMP6fを発現させた線虫株を作成し、温度走性の意思決定の遷移過程にある状態において、温度入力に対する神経活動を計測する。 | KAKENHI-PUBLICLY-16H01272 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-16H01272 |
波動方程式の外部問題における極限振幅の原理の確立 | 時間に関して振動する境界値を持つ波動方程式の外部問題の解の時間無限大での挙動を考察した.それは時間と空間に関して変数分離された形で表現でき,時間については境界値と同じ周波数をもつ周期関数であり,空間については対応するヘルムホルツ方程式のレゾナンスと呼ばれる特殊解となることを明らかにした.また,球対称な場合に実際にレゾナンスを構成した.以上により,波動方程式の外部問題における極限振幅の原理を定式化した.時間に関して振動する境界値を持つ波動方程式の外部問題の解の時間無限大での挙動を考察した.それは時間と空間に関して変数分離された形で表現でき,時間については境界値と同じ周波数をもつ周期関数であり,空間については対応するヘルムホルツ方程式のレゾナンスと呼ばれる特殊解となることを明らかにした.また,球対称な場合に実際にレゾナンスを構成した.以上により,波動方程式の外部問題における極限振幅の原理を定式化した.時間に関して振動する外力項を持つ波動方程式に対する初期値問題の解の挙動は,所謂,極限振幅の原理によって特徴付けられる.すなわち,時間について周期的に振動する力を与え続けると,その振動と共鳴する周波数の波だけが生き残り,極限的には時間と空間に関して変数分離された状態が形成される事を主張するものである.本研究の目的は,斉次波動方程式に対する外部問題において,時間に関して振動する境界値を与えるときの解の挙動を考察し,上述の問題における極限振幅の原理に対応するものを定式化する事である.より具体的には,解の極限を領域の形状(例えば,ガウス曲率など)の言葉で陽的に書き下す事が目標となる.本年度は,その研究目的を達成するために,解の弱極限を具体的に計算することを目指してきた.まず,ラプラス変換を用いて,斉次波動方程式の初期値-境界値問題を定常問題に帰着し,そのレゾルベントを解析した.その解の弱極限を求める際には,Kubota&Shirota(J.Fac.Sci.Hokkaido Univ.1967)におる議論を参考にして進めてきたが,そこで扱われているのはポテンシャル項と時間周期的な外力項のついた波動方程式に対する初期値問題であり,ポテンシャル関数とのベアリングをとる事で弱極限が計算されている.我々の問題では,どの様な関数とベアリングをとるのが有効なのか再検討する必要のあることが明らかになった.その考察を通して,外部問題において境界付近に停留している波の特徴付けを与える事を目指す.時間に関して振動する外力項を持つ波動方程式に対する初期値問題の解の時間無限大における挙動は,所謂,極限振幅の原理によって特徴付けられる.すなわち,時間について周期的に振動する力を与え続けると,その振動と共鳴する周波数の波だけが生き残り,極限的には時間と空間に関して変数分離された状態が形成される事を主張するものである.本研究の目的は,外力項のない波動方程式に対する外部問題において,時間に関して振動する境界値を与えるときの解の漸近挙動を考察し,この問題における極限振幅の原理に対応するものを定式化する事である.より具体的には,解の極限を陽的に書き下す事が目標となる.本年度は,この研究目的を達成するために,解の弱極限を具体的に計算することを目指してきた。ポテンシャル項と時間周期的な外力項のついた波動方程式に対する初期値問題に関する極限振幅の原理はKubota & Shirota (J. Fac. Sci. Hokkaido Univ. 1967)で扱われており,そこでは対応するポワソン方程式のレゾナンスと呼ばれる特殊解を用いて弱極限が計算されている.従って,我々の問題においてもこの論法が有効であると考えられ,ポワソン方程式の代わりに適当な条件を満たすヘルムホルツ方程式を考えれば良いことを明らかにした.更に,この問題がレゾナンスを持つことを仮定すると,解の極限の予想することができ,波動方程式の外部問題における極限振幅の原理の定式化に成功した.加えて,障害物が球であり,波動方程式の解が球対称な場合には,ヘルムホルツ方程式に対する境界値問題が実際に,レゾナンスを持つことを導いている. | KAKENHI-PROJECT-22654017 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22654017 |
極性官能基を冠状配置したフラーレンの高効率合成と機能性ホスト分子としての応用 | 本研究は,高効率,高選択的な両親媒性フラーレン・炭素クラスターの合成法を利用し,効率的にフラーレン・炭素クラスター上に分子認識場を構築,ホスト分子として機能する分子を創出することを目的とするものである.この研究では、独自の反応開発によるホスト分子ライブラリの構築と、それらを利用したゲストのスクリーニング、さらには分子認識の情報増幅による機能化をおこなう.研究最終年度である本年度は高機能化を目指し,5つのオリゴ糖を置換基にもった高度に官能基化されたフラーレン誘導体の合成法を開発した.これによりオリゴ糖の冠状配置を実現し,15個の糖をもつ誘導体の合成を行なった.この誘導体は,予備的検討において,志賀毒素たんぱくに強固に結合することを見いだしており,今後毒素抑制剤等の開発が期待できる.本研究ではさらに,捕捉されるゲスト分子の探索研究を展開し,極性頭部をもつフラーレン誘導体からなる二分子膜集合体が,中性小分子のホストとして特異な性質をもつことを見いだした.すなわち,フラーレン二分子膜は水分子をエントロピー捕捉する特異な膜であり,加熱時により捕捉能が上昇する極めて稀なホスト物質であることを明らかにした.この成果は新しい機能をもつ膜物質として注目され,多くの報道機関や学会会報で報道されている.本研究は,官能基冠状配置法の開発,その巨大炭素クラスターへの展開,高機能性誘導体の開発,さらに異常機能の発見を行ったものであり,当初計画以上の研究成果が得られたものである.本年度は極性官能基を冠状配置したフラーレン誘導体の合成手法の開発を行った.この検討により,穏やかな反応条件下,高効率的,高選択的に極性官能基を4つ冠状配置したアミノフラーレン誘導体の合成手法を確立した.すなわち,これまで光化学反応条件など特殊な活性化が必要であったアミノ化反応を,中性,暗所化で行えることを見いだし,種々の極性官能基をもつ一連のアミノフラーレンを合成した.この反応では極性溶媒を補溶媒とすることで,反応が良好に進むことを見いだし,この知見をもとにリン酸エステル部を極性官能基としたホスホリルフラーレンの合成にも成功している.ホスホリル化反応では,極性官能基の冠状配置は困難であったが,イオン特異性および捕捉能の高いと期待される化合物であることから,これらの化合物についてもイオン,分子捕捉について今後検討を行う予定である.本年度後半では,冠状配置した極性官能基による他の分子・イオンの捕捉について予備的検討を行ったが,その捕捉を分光手段等で確認することはできなかった.この結果を受け,フラーレン類縁体としてさらに大きな共役電子系を有する高次フラーレン,カーボンナノチューブについて予備検討を開始した.また,吸収スペクトルなどの手法に加え,核磁気共鳴による同定を見据え,水素内包フラーレンに極性官能基を導入する検討を行った.この検討により,水素分子を内包フラーレンの化学修飾でに成功し,その核磁気共鳴スペクトルに外部環境が影響することを見いだした.本研究は,高効率,高選択的な両親媒性フラーレン・炭素クラスターの合成法を利用し,効率的にフラーレン・炭素クラスター上に分子認識場を構築,ホスト分子として機能する分子を創出することを目的とするものである.この研究では、独自の反応開発によるホスト分子ライブラリの構築と、それらを利用したゲストのスクリーニング、さらには分子認識の情報増幅による機能化をおこなう.平成18年度中に巨大炭素クラスターのひとつであるカーボンナノチューブの新しい冠状官能基化手法を見いだし,19年度では繰り越し課題として,その合成化学的利用法について検討を進めた.その結果,巨大炭素クラスター上に連結部となる官能基を導入することで,固相合成担体として利用可能であるということを見いだした.この研究遂行においては,前年度合成法を確立した新規物質についての物性データ解析を行なったが,これまでに類似化合物が知られていないものであったために時間がかかった.なお,本研究遂行により,研究目的に記載の多様な官能基を冠状配置した新しい分子のライブラリの構築を行なうことができた.並行して遂行した平成19年度計画においても新しい化合物ライブラリをつくりだし,両研究を併せ多様な化合物群を入手可能とした既に申請済みの特許論文に追記事項として記載し,さらにこの知見を元にした新しい固相担体試剤の可能性が拓けた.予算執行は当初予定通りに進め,主に消耗品費として使用した.本研究は,高効率,高選択的な両親媒性フラーレン・炭素クラスターの合成法を利用し,効率的にフラーレン・炭素クラスター上に分子認識場を構築,ホスト分子として機能する分子を創出することを目的とするものである.この研究では、独自の反応開発によるホスト分子ライブラリの構築と、それらを利用したゲストのスクリーニング、さらには分子認識の情報増幅による機能化をおこなう.研究最終年度である本年度は高機能化を目指し,5つのオリゴ糖を置換基にもった高度に官能基化されたフラーレン誘導体の合成法を開発した.これによりオリゴ糖の冠状配置を実現し,15個の糖をもつ誘導体の合成を行なった.この誘導体は,予備的検討において,志賀毒素たんぱくに強固に結合することを見いだしており,今後毒素抑制剤等の開発が期待できる.本研究ではさらに,捕捉されるゲスト分子の探索研究を展開し,極性頭部をもつフラーレン誘導体からなる二分子膜集合体が,中性小分子のホストとして特異な性質をもつことを見いだした.すなわち,フラーレン二分子膜は水分子をエントロピー捕捉する特異な膜であり,加熱時により捕捉能が上昇する極めて稀なホスト物質であることを明らかにした.この成果は新しい機能をもつ膜物質として注目され,多くの報道機関や学会会報で報道されている. | KAKENHI-PROJECT-17685013 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17685013 |
極性官能基を冠状配置したフラーレンの高効率合成と機能性ホスト分子としての応用 | 本研究は,官能基冠状配置法の開発,その巨大炭素クラスターへの展開,高機能性誘導体の開発,さらに異常機能の発見を行ったものであり,当初計画以上の研究成果が得られたものである. | KAKENHI-PROJECT-17685013 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17685013 |
中高層自然換気建物の換気設計指針の提案と設計段階における自然換気量の簡易予測法 | 本研究の最終目的は高層非住宅建築における自然換気量の簡易予測法と設計指針の提示である。前年度までに風洞実験により汎用データとして整備を行った「市街地における中高層建物の風圧係数データベースの構築」のさらなる拡大を図り、引き続き自然換気量の簡易予測精度の検証を行った。まずデータベースとしてはこれまでに中層、高層、超高層を想定した3種の建物モデルの風圧係数を16風向で整備したが、市街地側の条件として建ぺい率が固定されていたためにこの条件を追加してデータベースを充実させた。これにより、市街地の建物密度と対象建物の高さに応じて適切な風圧係数データベースを選択することを可能とするとともに、風圧係数の鉛直分布の関数化を図り汎用性を高めた。また、建物側の条件は「通風型」、「シャフト型」、「併用型」の3種異なるシステムについて各1種の実建物を想定した換気回路網計算を行ったが、当該年度はこれら3つの実建物において設計条件の変更を想定した計算を行い、中層、高層、超高層で各種自然換気システムを有する建物において前述の風圧係数データベースを用いた場合と、対象建物を再現した風洞実験で風圧係数を取得した場合で自然換気量の算定を行い、簡易算定の精度検証を行うことで当該データベースの有用性を明らかにするとともにシステムに想定される算定値の誤差範囲を明確にした。さらに、屋外ボイドを有する実際の高層自然換気建物を対象とした実測を行い、自然換気時の室内環境検証と居住者評価を行なった上で、ボイド内の鉛直温度分布測定などいまだ不明な点が多い高層自然換気オフィスビルにおける換気性能の知見の蓄積を行なった。当初の目的として掲げていた、整備が容易ではない実建物の風圧係数データベースの充実化を測った上で、前年度までで整備した汎用データベースさらなる整備を測ることができ、この点については予想以上の進捗があったと言える。このために最終的に行う設計指針提案のためのパラメトリックスタディで重要になる自然換気量の簡易算定手法の精度を十分に示すことができた段階であり、概して研究全体に大きな問題はなく進展していると考える。さらには、前年度より実施している自然換気を導入した高層の実建物について、換気量のみならず実際の居住者評価も含めて有益なデータが得られており、加えてボイド内温度分布等これまでに当該分野であまり知見が多く得られていない不明な点についても貴重なデータが得られており、この意味でも順調に進展していると言える。当該年度の研究により超高層オフィスを想定した風洞実験と換気回路網計算による自然換気量算定の検討が行われ、実際にニーズが存在する建物種別をカバーすることのできる基礎検討が行われたと言える。また、風圧係数の汎用データベースの有用性も実際の風洞実験値と比較することで十分な検証が行われた。今後はここまで積み重ねた研究成果を活用し、中高層自然換気建物の自然換気設計指針を提供すべく、既に検証を行なった自然換気量の簡易算定法を用いて自然換気設計で重要な項目となる自然換気口面積、換気パス面積、ボイド面積を対象としたパラメトリックスタディを実施する。当該年度には、自然換気設計を導入した実物件を対象として実際の市街地に立地する建物の縮小模型を再現し、市街地における現実的な建物の風圧係数を取得して整備した。本件は交付申請時の実建物の風圧係数分布の実例を集めたデータベースを整備する研究計画の一環として実施したものであり、予定通り遂行することができた。また、実在する市街地だけでなく、市街地オフィスの汎用的な風圧係数データベース構築を目指して、単純な矩形建物を周辺に設置した状況でペントハウス付きの自然換気建物模型を3つの建物高さ条件で設置してそれぞれ16風向での風圧係数データを整備した。これにより将来的に設計時の換気量簡易予測のための境界条件データを整備したことになるが、建ぺい率条件などは固定の1条件で実施したため今後の研究計画でデータベースを充実させることを目指す。また、当該年度には取得した対象建物の風圧係数を用いて換気回路網計算を行うとともに、前述の汎用風圧係数データベースの値を境界条件に用いた際の換気回路網計算も行い、両者の自然換気量計算結果を比較することで設計段階の換気量簡易予測時に風圧係数がどの程度センシティブに影響を及ぼすかを明らかにした。結果、汎用的なデータベースの風圧係数値を用いたとしても、対象とする中高層オフィスビルの換気システムがシャフト型であれば大きな影響を及ぼさないことが示された。今後の課題としては異なる自然換気システムとして、通風型や通風/シャフト併用型でも同様の感度解析を行うことと、前述の汎用データベースの充実を行うことが求められ、最終的にはこれらに基づいて、換気量の目標値を設定することでシャフト面積や自然換気口面積の指針値を逆算することができる計算法を換気設計指針として提示ことを目指す。当初の目標として掲げていた実在の市街地における実在自然換気建物の風圧係数分布を、実務設計者の協力のもと取得することができ達成できた。可能であれば当該風圧係数取得の対象とする建物は2建物を目指したが、研究の最終目標を考慮した上で実建物は1つとして、他方の代替として汎用的な市街地オフィスの風圧係数データベース構築を整備がより重要との判断でこれを整備することができ、さらに申請時にはH29年度に予定していた換気回路網計算も実建物と汎用データベースの両者の風圧係数を用いて行うことができたため、若干の計画修正はあったが目標としていた進捗状況は十分に達成することができたと考える。 | KAKENHI-PROJECT-16H06110 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H06110 |
中高層自然換気建物の換気設計指針の提案と設計段階における自然換気量の簡易予測法 | 本研究の最終目的は高層非住宅建築における自然換気量の簡易予測法と設計指針の提示であり、そのため当該年度には「市街地における中高層建物の風圧係数データベースの構築」と「自然換気建物分類別の自然換気量の簡易予測精度の検証」を行った。前者の風圧係数データベース作成では申請時の計画通り、前年度に加えて市街地における実際の自然換気建物の縮小模型を新たに作成して風圧係数を取得することでデータベースの充実をはかり、さらには汎用データベースを想定した矩形角柱を周辺建物として配置して矩形の対象建物模型を用いたデータに関しても建ぺい率を変更して風圧の整備を行った。この検討に加え、建物分類別の自然換気量の簡易予測精度の検証については、当該年度には申請時に計画していた通り「通風型」、「シャフト型」、「併用型」の3種異なるシステムについて自然換気回路網計算を実施した。この回路網計算において境界条件となる風圧係数の入力方法についての検討を行った。前述の実建物の模型から得られた風圧係数を与えて得られる換気量に対し、本研究で整備した汎用データベースの値を入力した場合での換気量の予測精度を3種のシステムのそれぞれについて評価しており、自然換気の運用が一般に行われる中間期の平均値の換気量予測については汎用データベースを用いた場合でも精度良く予測されることが示された。これにより、実務を想定して自然換気設計時に実用的な精度で利用可能な技術資料としてのデータベースが充実したと言える。また、次年度以降に計画されている標準的な自然換気建物を対象とした設計指針値の検討においても当該データベースを十分に利用可能なことが示された。前年度と同様に、当初の目的として掲げていた実在する自然換気建物の風圧係数分布を新たな建物対象に取得することができ、整備が容易ではない実建物の風圧係数データベースの充実化を測ることができた点が当初の想定通りの進捗と言え、それに加えて当初は必須としていなかった汎用データベースを作成してその適用範囲を明確に示すことができており、この点については予想以上の進捗があったと言え、概して研究全体に大きな問題はなく進展していると考える。さらには、当該年度には中層ではなく高層の自然換気建物について、トレーサーガス法を用いた実測による換気量評価を行うことができた。研究申請時にはこれを縮小模型を用いた風洞実験で行った上で換気回路網計算による検証を計画したが、実務家の協力によりフルスケールの実建物で信頼性が高くかつ実現象に基づく換気量の実測値が得られた点は申請時の計画以上の成果と言える。本研究の最終目的は高層非住宅建築における自然換気量の簡易予測法と設計指針の提示である。前年度までに風洞実験により汎用データとして整備を行った「市街地における中高層建物の風圧係数データベースの構築」のさらなる拡大を図り、引き続き自然換気量の簡易予測精度の検証を行った。まずデータベースとしてはこれまでに中層、高層、超高層を想定した3種の建物モデルの風圧係数を16風向で整備したが、市街地側の条件として建ぺい率が固定されていたためにこの条件を追加してデータベースを充実させた。これにより、市街地の建物密度と対象建物の高さに応じて適切な風圧係数データベースを選択することを可能とするとともに、風圧係数の鉛直分布の関数化を図り汎用性を高めた。 | KAKENHI-PROJECT-16H06110 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H06110 |
転写調節因子を介する遺伝子発現制御機構の直視下解析 | 1.Ah受容体/Arnt複合体を、XREを含むCYP1A1 DNAの5'flanking領域単鎖とグラファイト基板上で反応させ、原子間力顕微鏡(AFM)で観察した。複合体はDNA(+)鎖標品には結合したが、(-)鎖標品には結合しなかった。複合体の結合した(+)鎖標品では、DNA鎖が複合体結合部より少し離れた部位で屈曲する像がしばしば観察された。しかしながら、複合体をin situと同じ2本鎖DNA標品と反応させても、著明なDNA高次構造の変化は認められなかった。2.培養肝細胞系(H4IIE)にDMSOで可溶化したMCを加え、MC投与後のAhR,ArntおよびHSP90の動態を免疫組織化学法で検出し、AhRからのHSP90の解離部位を高感度蛍光法および高感度化学発光法で調べた。HSP90の大部分は核に移行せず、AhRからのHSP90の解離部位が、核でなく、細胞質であることが明らかとなった。3.蛍光測光および高精度フォトンカウンティングによる定量化のための技術的検討をおこなった。luminol発光法、およびさらに感度の高いECR法について正確な定量化を行える反応条件を確立することができ、CYP分子種発現の抑制系のin situにおける定量的解析がはじめて可能となった。1.Ah受容体/Arnt複合体を、XREを含むCYP1A1 DNAの5'flanking領域単鎖とグラファイト基板上で反応させ、原子間力顕微鏡(AFM)で観察した。複合体はDNA(+)鎖標品には結合したが、(-)鎖標品には結合しなかった。複合体の結合した(+)鎖標品では、DNA鎖が複合体結合部より少し離れた部位で屈曲する像がしばしば観察された。しかしながら、複合体をin situと同じ2本鎖DNA標品と反応させても、著明なDNA高次構造の変化は認められなかった。2.培養肝細胞系(H4IIE)にDMSOで可溶化したMCを加え、MC投与後のAhR,ArntおよびHSP90の動態を免疫組織化学法で検出し、AhRからのHSP90の解離部位を高感度蛍光法および高感度化学発光法で調べた。HSP90の大部分は核に移行せず、AhRからのHSP90の解離部位が、核でなく、細胞質であることが明らかとなった。3.蛍光測光および高精度フォトンカウンティングによる定量化のための技術的検討をおこなった。luminol発光法、およびさらに感度の高いECR法について正確な定量化を行える反応条件を確立することができ、CYP分子種発現の抑制系のin situにおける定量的解析がはじめて可能となった。1.メチルコラントレン(MC)を投与したラット肝から得たアリルハイドロカーボン受容体(AhR)とAhR/Amt複合体および人工合成したXREフラグメントを等方性カーボングラファイト基板に固着させ、原子間力顕微鏡(AFM)で観察して構造を比較した。ArntはAhRのbHLH domalm相当領域に結合し、XREはAmlのend(おそらくN末側)に結合した。また、AhR/Arnt複合体がXREの片方のDNA鎖だけに結合することを示唆する結果が得られた。(交付申請書記載の研究実施計画1および2項に対応)。2. MC投与ラット肝の切片および培養H4-IIE細胞におけるAR/Amt複合体を蛍光標識XREプローブを用いて共焦点レーザー顕微鏡で観察し、AhR/Arnt複合体が細胞質では形成されないことを明らかにした。次に、XREプローブ-高感度ルミノール発光系を導入した生物発光解析システムを用いて高精度フォトンヵウンティングを行なった結果、AhR/Arnt複合体の形成・解離部位が核の辺縁部であることが明らかとなった。現在、HSP90の解離部位について解析中である(交付申請書記載の研究実施計画3項に対応)。3.肝CDNAライブラリからクローニングしPCRで増幅したCYPlAl cDNAの断片をプローブとして肝細胞gcnomicDNAをスクリーニングし、XREを含む5'flanking領域を制限酵素で切り出した。こうして得られたフラグメントとAhRを固着させた基板とを反応させ、Ah受容体のXREへの結合に果たすDNA高次構造の役割の解析を開始した(交付申請書記載の研究実施針画5および6項に対応)。1.3'methylchoranthrene(MC)処理後の肝細胞から単離精製したアリルハイドロカーボン受容体(AhR)標品の構造に一部問題があることがわかった。そこで、単離標品に代えて、大腸菌にAhR cDNAを組み込んだλファージを感染させ、プラークハイブリダイゼーションの後にAhR蛋白を得た。これを、CYP1A1 DNAのXREを含む5'flanking領域and/or Arntとグラファイト基板上で反応させ、原子間力顕微鏡(AFM)で観察した。XREへのAh受容体の結合により、100nmレベルでは、著明なDNA高次構造の変化は認められなかった。現在、1nmレベルの構造を解析中である。(交付申請書記載の研究実施計画1,5および6項に対応)。 | KAKENHI-PROJECT-10670034 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10670034 |
転写調節因子を介する遺伝子発現制御機構の直視下解析 | 2.培養肝細胞系(H4IIE)にDMSOで可溶化したMCを加え、MC投与後のAhR,ArntおよびHSP90の動態を免疫組織化学法で検出し、高感度蛍光法および高感度化学発光法で調べた結果、AhRからのHSP90の解離部位が、核でなく、細胞質であることが明らかとなった。(交付申請書記載の研究実施計画7項に対応)。3.蛍光側光および高精度フォトンカウンティングによる定量化のための技術的検討を行い、luminol発光法については定量法を確立した。より感度の高いECR法については、正確な定量化まであと一歩のところまでこぎつけ、現在、実験を継続中である。(交付申請書記載の研究実施計画7項に対応)Ah受容体/Arnt複合体を、XREを含むCYP1A1 DNAの5'flanking領域単鎖とグラファイト基板上で反応させ、原子間力顕微鏡(AFM)で観察した。複合体はDNA(+)鎖標品には結合したが、(-)鎖標品には結合しなかった。複合体の結合した(+)鎖標品では、DNA鎖が複合体結合部より少し離れた部位で屈曲する像がしばしば観察された。しかしながら、複合体をin situと同じ2本鎖DNA標品と反応させても、著明なDNA高次構造の変化は認められなかった。(交付申請書記載の研究実施計画1,5および6項に対応)。2.培養肝細胞系(H4IIE)にDMSOで可溶化したMCを加え、MC投与後のAhR,ArntおよびHSP90の動態を免疫組織化学法で検出し、AhRからのHSP90の解離部位を高感度蛍光法および高感度化学発光法で調べた。HSP90の大部分は核に移行せず、AhRからのHSP90の解離部位が、核でなく、細胞質であることが明らかとなった。(交付申請書記載の研究実施計画7項に対応)。3.蛍光測光および高精度フォトンカウンティングによる定量化のための技術的検討をおこなった。昨年度のluminol発光法につづき、さらに感度の高いECR法についても、正確な定量化を行える反応条件を確立することができ、CYP分子種発現の抑制系のin situにおける定量的解析がはじめて可能となった。(交付申請書記載の研究実施計画7項に対応) | KAKENHI-PROJECT-10670034 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10670034 |
近代日本における「かわいい」の生成に関する研究-「少女文化」を事例として | 平成30年度は、最終年度にあたり、知見を補強するため資料調査と情報収集を引き続き行い、また分析に際しては、問題を相対化して捉えることにつとめた。主な調査対象は、少女雑誌『少女の友』(實業之日本社)『少女世界』(博文館)である。ただし、隣接領域の状況を認識することが、少女文化の特徴を理解するために必要である。そこで、少年雑誌『日本少年』(實業之日本社)や『少年世界』(博文館)、児童雑誌『赤い鳥』(赤い鳥社)、加えて、文学、美術といった芸術領域、また教育という社会制度の動向の把握につとめた。さらに、本研究の学術的意義を問ううえで、コンテンポラリー文化の動向を捉えることが有益である。そこで、現代社会における「かわいい」や少女文化について、そしてそれらがどのように価値づけられ、語られているのかにも目を配った。解釈にあたっては、「かわいい」がどのように語られているのかを問うのはもちろん、「かわいい」に含まれないとされたのは、どのような事象なのか、またそれがどのように扱われたのかに注目した。「かわいい」に含むことのできない「逸脱」という現象を追うことで、「かわいい」が「規範」として純化していく様相を浮き彫りにした。すなわち、「愛の客体」という「少女」に望まれるジェンダー役割と、「かわいい」は整合性を有するものであった。本研究を進める過程で、新たな問題意識を抱くことになった。「少女」たちは、受動的なジェンダー規範からの越境を、願わなかったのかという疑問である。少女雑誌『少女の友』(實業之日本社)に描かれた、異性装を分析することで、この学術的問いを明らかにすること、これが今後取り組むべき発展的な課題となっている。本研究は、近代日本における「かわいい」の生成を、少女文化を事例として、明らかにしようとするものである。「かわいい」を戦後の文化とする通説的理解を覆し、良妻賢母となる準備教育という視点から、「少女」に与えられたジェンダー規範として、「かわいい」を捉え直すことを目指す。申請者は予備調査によって、戦前の少女文化で「かわいい」はジェンダー規範として機能していたとする知見を得ており(「「かわいい」の生成-1910年代の『少女の友』を事例として」『大阪国際児童文学振興財団研究紀要』28、2015年)、その補強、発展をはかった。初年度である平成27年度は、教育という社会制度と、少女雑誌や児童文学、美術等の文化の領域において、「かわいい」がどのように表現されているのか、資料や情報の調査と収集、ならびにその整理、解釈を進めた。また、「かわいい」の特徴を解明するための基盤として、理想とされる「少女」表象の特徴について捉えることや、現代との比較によって相対化をはかった。平成27年度は、資料や情報の調査、収集、整理、ならびに分析を行い、また、以下の場所で口頭報告し、有識者の所見を得ることで、収集した資料や情報の解釈を進めることができたと考える。(単独)「日本の「かわいい」について考えるー草創期の少女雑誌『少女の友』を中心として」(大正乙女デザイン研究所第48回月例会、2016年3月19日、於中央区立産業会館)本年度は、前年度に引き続き、近代日本の「「かわいい」の生成」について、少女文化を事例として調査研究を進めた。少女雑誌、教育、児童文学、美術等を対象とし、「かわいい」がどのように表現されているのか考察した。文献資料や図像資料の調査や情報収集、整理、解釈という方法によっている。ただし、アクチュアルな意義を問うために、コンテンポラリーの動向との比較、相対化も適宜はかっている。研究実績を以下で説明する。口頭報告「「少女」表象について考えるー傷病、死、弱さ、可愛さ、美しさ」(「大正・乙女デザイン研究所」第51回月例会、2016年8月20日、於中央区立産業会館)で、美術や文学領域の有識者から、専門的な指摘を得ることができ、これにより資料や情報の解釈を進めることができた。さらに、「かわいい」とはなにかを複合的に捉えることにつながることから、論文「黒田清輝の《木かげ》の「少女」ー「農民」表象から見る視覚の近代化」(『島根県立大学短期大学部松江キャンパス研究紀要』55、2016年)で、近代日本の「少女」表象の形成を分析した。また、単著『つくられた「少女」ー「懲罰」としての病と死』(日本評論社、2017年)を出版した。当該著書は、科学研究費若手研究B(23710315)「明治期女子教育の制度化に際する西洋科学思想の影響に関する研究」(2011-2014年)による成果を主にとりまとめたものである。したがって、中心となる考察対象は、女子教育界における医科学の影響となっている。ただし、終章にあたる「おわりにー「少女」について考えるということ」で、「かわいい」ということはどういうことか、「少女」という存在との相関性、類似性から分析している。昨年度、入手した資料を解釈し整理する時間を、当初予定より多く確保するという変更を加えたことにより、本年度の研究計画に影響が及んでいる。この変更が、成果を出す上で、必要だとする判断によっている。しかし、研究全体の進行から見れば、やや遅れがでている。前年度に引き続き、近代日本の「「かわいい」の生成」について、人文社会科学(またこれに影響を与えた自然科学)や芸術の動向と、総合的に捉えることを試みた。文献資料や図像資料の調査や情報収集、整理、解釈という方法に基づく。 | KAKENHI-PROJECT-15K01938 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K01938 |
近代日本における「かわいい」の生成に関する研究-「少女文化」を事例として | 本年度は、「かわいい」ということを明確に把握するために、これと対比される「かわいくない」ことについても分析を進めた。具体的には、少女雑誌での投稿文化の発展、少女雑誌における編集者と読者の関係性、少女雑誌読者の芸術志向(文学志向)、女子教育の動向と少女雑誌に与えた影響、これらの観点から調査を試みた。加えて、アクチュアルな意義を問うために、コンテンポラリー文化の動向についても目を配った。成果発表としては、次の実績を上げることができる。女子学研究会(2017年9月16日、於甲南女子大学)にて、「自著紹介渡部周子『つくられた「少女」ー「懲罰」としての病と死』(日本評論社、2017年)」と題して、口頭報告を行った。この発表は、本研究計画に先立つ、科学研究費による研究課題「明治期女子教育の制度化に際する西洋科学思想の影響に関する研究」の成果としてまとめた、自著の紹介を軸としている。ただし、発表の中で、この研究成果と、進行中の研究課題である「かわいい」の生成が、どのように結びついているのか、現在はどのような問題に取り組んでいるのか、「かわいい」と「少女」との関連から考察することで示してもいる。コンテンポラリー文化の動向(現代日本のアニメが描く「少女」観等)との比較、相対化、またアクチュアルな意義を、この発表で問うこともできた。平成27年28年度に、研究を進める過程で、着実に成果を出すためというポジティブな意図で、収集した資料の整理に、より多くの時間をかけるという、建設的な意味での計画変更が必要だと考えていた。一方、平成29年度に勤務中の事故によって負傷するという、想定外のアクシデントに見舞われ、加療を要する状況に陥った。加えて、所属機関の改組により、研究室の移転、図書館の休館という状況が生じた。以上の状況から、当初の予定とは異なった進捗状況となっている。平成30年度は、最終年度にあたり、知見を補強するため資料調査と情報収集を引き続き行い、また分析に際しては、問題を相対化して捉えることにつとめた。主な調査対象は、少女雑誌『少女の友』(實業之日本社)『少女世界』(博文館)である。ただし、隣接領域の状況を認識することが、少女文化の特徴を理解するために必要である。そこで、少年雑誌『日本少年』(實業之日本社)や『少年世界』(博文館)、児童雑誌『赤い鳥』(赤い鳥社)、加えて、文学、美術といった芸術領域、また教育という社会制度の動向の把握につとめた。さらに、本研究の学術的意義を問ううえで、コンテンポラリー文化の動向を捉えることが有益である。そこで、現代社会における「かわいい」や少女文化について、そしてそれらがどのように価値づけられ、語られているのかにも目を配った。解釈にあたっては、「かわいい」がどのように語られているのかを問うのはもちろん、「かわいい」に含まれないとされたのは、どのような事象なのか、またそれがどのように扱われたのかに注目した。「かわいい」に含むことのできない「逸脱」という現象を追うことで、「かわいい」が「規範」として純化していく様相を浮き彫りにした。すなわち、「愛の客体」という「少女」に望まれるジェンダー役割と、「かわいい」は整合性を有するものであった。本研究を進める過程で、新たな問題意識を抱くことになった。「少女」たちは、受動的なジェンダー規範からの越境を、願わなかったのかという疑問である。 | KAKENHI-PROJECT-15K01938 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K01938 |
高速フォトクロミック分子に基づく新規光エネルギーシステムの構築 | 一般的なT型フォトクロミック分子とは逆の挙動を示す逆フォトクロミック分子では、可視光照射によって有色体から無色体が生成し、熱的にもとの有色体に戻る挙動を示す。一般的なT型フォトクロミック分子とは異なり、無色体は励起光である可視光を吸収しないため、逆フォトクロミック分子では材料の内側においてもフォトクロミック反応を誘起することができる。しかし、これまでに報告された例では無色体から有色体への戻り反応に時間がかかるため、高速な分子構造の制御は実現されていなかった。今回、ビナフチル骨格の1位と1'位にフェノキシルラジカル、イミダゾリルラジカルを導入した、ビナフチル架橋型フェノキシルーイミダゾリルラジカル複合体(BN-PIC)を設計、合成した。BN-PICは熱力学的に安定な発色体、速度論的に安定な消色体、短寿命のビラジカルの3つの異性体を含み、可視光照射によって黄色から無色に退色する逆フォトクロミズムを示す。量子化学計算の結果から、このBN-PICの逆フォトクロミズムは熱力学的支配の反応と速度論的支配の反応を含む、これまでにない機構で進行すると考えている。また、BN-PICにフェナントレン部位を導入することで、消色体の室温における半減期が約2秒とこれまでで最も高速な熱戻り反応を示す高速逆フォトクロミズムを実現した。このような高速逆フォトクロミック分子を用いることで、材料の内部においても高速な分子構造のスイッチングが可能になると考えられる。こういった特性は液晶の光相転移や実時間ホログラフィ材料などの、表面近傍だけではなく、材料の内側における分子構造変化が有利に働き、また高速なスイッチングを必要とする分野において、有用になると期待できる。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。本年度は高速フォトクロミック分子とキラルネマチックネットワークを用いた新規光エネルギーシステムの構築を実現するため、新規高速フォトクロミックキラルドーパントの開発を重点的に行った。ビアリール架橋型イミダゾール二量体はキラリティを有し、ビアリール骨格の二面角が約90°である発色体と3545°になる2,2'-異性体、1,2'-異性体を含む。このため、光照射によりビアリール骨格の二面角の制御が可能である。ビアリール骨格の二面角の制御を行うことで大きならせん誘起力の変化が実現できると期待し、新規フォトクロミックキラルドーパントとしてビアリール架橋型イミダゾール二量体に注目した。しかし、ビアリール架橋型イミダゾール二量体のフォトクロミズムについては未解明な部分が多い、そこで、ビアリール架橋型イミダゾール二量体の架橋基の構造や、イミダゾール環の4位、5位のフェニル基に置換基を導入することで、ビアリール架橋型イミダゾール二量体のフォトクロミック特性の制御を検討した。ビナフチル架橋型イミダゾール二量体は有色から無色への逆フォトクロミズムを示し、発色体の色は発色団であるジアザフルバレン構造に由来する。片方のイミダゾール環の4位、5位のフェニル基にメトキシ基を導入することで、これまでの架橋型イミダゾール二量体と同様に生成する発色体の構造制御が可能であることを示した。このことは適切な置換基を導入することで色調の制御が可能であることを示唆する。次にビフェニル架橋型イミダゾール二量体がナノ秒の時間領域で初期状態に戻る超高速なフォトクロミズムをしめすことをオランダのアムステルダム大学との共同研究で明らかにした。また、架橋基の構造を変化させることで、ビアリール架橋型イミダゾール二量体の2,2'-異性体から発色体への熱異性化反応は、ビアリール骨格の二面角が大きいほど早く、発色体から1,2'-異性体への熱異性化は発色体における共役系の長さが短いほど速いことを示した。本年度も高速フォトクロミック分子とキラルネマチックネットワークを用いた新規光エネルギーシステムの構築を実現するため、新規高速フォトクロミックキラルドーパントの開発を重点的に行った。ビナフチル架橋型イミダゾール二量体はキラリティを有し、ビナフチル骨格の二面角が約90°である発色体と45°になる2,2'-異性体を含む逆フォトクロミズムを示す。このため、光照射によりビアリール骨格の二面角の制御を行うことで大きならせん誘起力の変化が実現できると期待し、ビナフチル架橋型イミダゾール二量体に注目した。これまでに報告されたビナフチル架橋型イミダゾール二量体では無色の2,2'-isomerから、赤色の発色体に完全に戻るまでに約20分を要する。このため、ビナフチル架橋型イミダゾール二量体を新規高速フォトクロミックキラルドーパントとしても用いるためには熱戻り反応を高速化する必要があり、そのために2,2'-isomerを不安定化させるか、発色体を安定化させる必要があると考えた。そこで、電子受容性置換基のニトロ基を導入し、2,2'-isomerの不安定化を試みた。この誘導体の合成反応では、赤色の発色体が得られ、可視光照射を行うことで無色に退色したが、元の赤色に戻ることはなかった。無色体の構造を同定したところ、八員環を有する新規ビスイミダゾール異性体であることが明らかになった。現在のところ、この反応は光誘起シグマトロピー転移により説明できるのではないかと考えている。 | KAKENHI-PROJECT-13J09076 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13J09076 |
高速フォトクロミック分子に基づく新規光エネルギーシステムの構築 | また、昨年度報告した、ビフェニル架橋型イミダゾール二量体のフェムト秒時間分光の結果を詳細に検討した。その結果、2,2'-isomerからビラジカルが生成するまでに最低2種類の過渡種が存在し、それぞれ2.2'-isomerの高励起状態から最低励起状態への緩和過程とビラジカルの振動励起状態から基底状態への緩和過程であると予想している。一般的なT型フォトクロミック分子とは逆の挙動を示す逆フォトクロミック分子では、可視光照射によって有色体から無色体が生成し、熱的にもとの有色体に戻る挙動を示す。一般的なT型フォトクロミック分子とは異なり、無色体は励起光である可視光を吸収しないため、逆フォトクロミック分子では材料の内側においてもフォトクロミック反応を誘起することができる。しかし、これまでに報告された例では無色体から有色体への戻り反応に時間がかかるため、高速な分子構造の制御は実現されていなかった。今回、ビナフチル骨格の1位と1'位にフェノキシルラジカル、イミダゾリルラジカルを導入した、ビナフチル架橋型フェノキシルーイミダゾリルラジカル複合体(BN-PIC)を設計、合成した。BN-PICは熱力学的に安定な発色体、速度論的に安定な消色体、短寿命のビラジカルの3つの異性体を含み、可視光照射によって黄色から無色に退色する逆フォトクロミズムを示す。量子化学計算の結果から、このBN-PICの逆フォトクロミズムは熱力学的支配の反応と速度論的支配の反応を含む、これまでにない機構で進行すると考えている。また、BN-PICにフェナントレン部位を導入することで、消色体の室温における半減期が約2秒とこれまでで最も高速な熱戻り反応を示す高速逆フォトクロミズムを実現した。このような高速逆フォトクロミック分子を用いることで、材料の内部においても高速な分子構造のスイッチングが可能になると考えられる。こういった特性は液晶の光相転移や実時間ホログラフィ材料などの、表面近傍だけではなく、材料の内側における分子構造変化が有利に働き、また高速なスイッチングを必要とする分野において、有用になると期待できる。ここまでの研究で、いまだ、目的とする物性を有する高速フォトクロミックキラルドーパントの開発に成功していないが、本年度までの研究結果から、高速フォトクロミックキラルドーパントの分子設計指針についておおよその検討をつけることに成功した。このことから、おおむね順調に進展していると考えている。27年度が最終年度であるため、記入しない。ビナフチル架橋型イミダゾール二量体の熱戻り反応の高速化を実現するため、2,2'-isomerの不安定化を試みたが、予想に反し、光照射後の生成物は特異な構造を有する新規ビスイミダゾール異性体であることが明らかになった。このことから、熱戻り反応を高速化する指針として、2,2'-isomerの不安定化は適切な方針ではないことが示唆された。そのため、2,2'-isomerを不安定化させるのではなく、発色体を安定化させることで、高速化を促す必要があると考えられる。また、高速フォトクロミックキラルドーパントとして用いることを考えたときに、ビナフチル架橋型イミダゾール二量体にこだわる必要はないため、他の誘導体についても検討していく必要がある。ビナフチル架橋型イミダゾール二量体では、2,2'-isomerと発色体の間のビナフチル骨格の構造変化も大きいが、2,2'-isomerとビラジカルの構造変化も十分に大きいと予想される。そこで、あえて発色体を生成しない誘導体を設計することで大きな構造変化を誘起しつつ、熱戻り反応の高速化を実現できると考えている。 | KAKENHI-PROJECT-13J09076 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13J09076 |
昆虫不妊化剤開発を指向したプロスタグランジン合成酵素の機能解析 | プロスタグランジン(PG)は、必須脂肪酸から生合成される生理活性物質である。昆虫をはじめとする無脊椎動物におけるPGに関する研究は、哺乳類と比較して少ない。本研究では、カイコ由来PG合成酵素(PGES)の構造と機能について調査した。PGES組換え酵素は、グルタチオン存在下にてPGEを合成した。PGESの全体構造を解析したところ、PGESはホモダイマーを形成していた。各モノマーは、9本のアルファヘリックスならびに4本のベータストランドより構成されていた。立体構造解析ならびに部位特異的アミノ酸置換法によりTrp39そしてGln63はPGES活性発現に重要であることが示された。Prostaglandin E synthase (PGES)は,Prostaglandin HからProstaglandin Eを合成する酵素である.平成25度は,カイコ由来PGES組換えタンパク質とグルタチオン類縁体の一種であるglutathione sulfonic acid (GTS)との相互作用について解析した.sitting-drop蒸気拡散法によりPGES-GTS複合体の結晶を作製することに成功した.この複合体結晶を用いてSPring-8においてX線回折実験を行い,分解能1.37Åの回折強度データを得た.分子置換法により位相を決定し,精密化をすすめて全体構造を決定した(Rwork/Rfree=15.6%/18.2%).昨年度得られたPGES-グルタチオン(GSH)複合体同様に,PGESはホモダイマーを形成し,モノマー構造は9本のαヘリックスならびに4本のßストランドより構成されていた.また,mosquito由来のdelta-class glutathione transferase中で観察されたelectron-sharing networkも本酵素中に存在することが明らかとなった.PGES配列中のAsn96,Asp97そしてArg99は,このnetworkを構成しており部位特異的アミノ酸置換法によりこれらのアミノ酸をそれぞれAlaに置換した.これらの変異が活性に与える影響を検討した結果,いずれの変異体も野生型と比較して50%の活性低下が見られた.さらに,ほ乳類由来prostaglandin synthase構造と重ね合わせた結果,Tyr8, Lue14, Tyr107, Lys117, Val155, Met159, Glu203が基質認識に関与していることが予想された.プロスタグランジン(PG)は、必須脂肪酸から生合成される生理活性物質である。昆虫をはじめとする無脊椎動物におけるPGに関する研究は、哺乳類と比較して少ない。本研究では、カイコ由来PG合成酵素(PGES)の構造と機能について調査した。PGES組換え酵素は、グルタチオン存在下にてPGEを合成した。PGESの全体構造を解析したところ、PGESはホモダイマーを形成していた。各モノマーは、9本のアルファヘリックスならびに4本のベータストランドより構成されていた。立体構造解析ならびに部位特異的アミノ酸置換法によりTrp39そしてGln63はPGES活性発現に重要であることが示された。次に,sitting-drop蒸気拡散法によりnative-PGESならびにPGES-GSH複合体の結晶をそれぞれ作製することに成功した.これら結晶を用いてSPring-8においてX線回折実験を行い,回折強度データを得た.分子置換法により位相を決定し,全体構造を解析したところ,PGESはホモダイマーを形成し,モノマー構造は9本のアルファヘリックスならびに4本のベータストランドより構成されていた.また,GSH結合サイトも保存されていた.部位特異的アミノ酸置換法によりこれらのアミノ酸(Tyr8,Leu14, Trp39, Lys43, Gln50, Met51, Gln63, Ser64)をそれぞれAlaに変異し,活性に与える影響を検討した.その結果,PGES活性の減少が観察されたが,Trp39ならびにGln63をAlaに変換した変異体において顕著な活性減少が見られた.以上の構造解析そして部位特異的アミノ酸置換法の結果より,上記のアミノ酸残基はPGES活性発現に重要であることが示唆された.平成25年度は,PGESと各種プロスタグランジン類縁体の複合体結晶を作製し,グルタチオン結合基質結合部位を立体構造学的に解析する予定である.bmPGESはホモダイマーとして存在する.bmPGESダイマーの保持には,Phe48, Phe94, Phe128, Phe129, Lys132そしてLue133より形成されるLock and key motifの関与が明らかとなった.このmotifは他の生物由来GST分子中においても高く保存されていた.平成25年度においては,Asn96,Asp97そしてArg99のelectron-sharing networkへの関与を報告した.これに加えてLue15, Glu63そしてSer64の関与が新たに示された.応用昆虫カイコPGES配列中のAsn96,Asp97そしてArg99がグルタチオンとの相互作用に重要であることが構造解析の結果分かった.部位特異的アミノ酸置換法により,これら3残基は本酵素の活性発現に関与することが認められた.以上の事由により,おおむね順調に進展しているものと判断する.同定したカイコPGES活性の発現に関与するアミノ酸残基を部位特異的アミノ酸置換法により同定した.また,グルタチオンとの複合体結晶を構造解析した結果,当該アミノ酸はグルタチオンと相互作用していることが明らかとなった.以上の事由により,おおむね順調に進展しているものと判断する. | KAKENHI-PROJECT-24580078 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24580078 |
昆虫不妊化剤開発を指向したプロスタグランジン合成酵素の機能解析 | 本研究課題の今後の推進方策は以下の通りである.1.カイコPGESとProstaglandin H類縁体との複合体結晶を作製する.得られた結晶のX線立体構造解析を行うことにより,活性発現に関与するアミノ酸残基を同定する.2.PGESの阻害剤を探索する.3.PGES阻害剤投与によるカイコ卵巣の発育に与える影響を調査する.本研究課題の今後の推進方策は以下の通りである.(1)基質結合部位を明らかにすることを目的とし,PGESとプロスタグランジン類縁体との複合体結晶を作製し,X線立体構造解析を行う予定である.(2)PGESとグルタチオン類縁体との複合体結晶を作製し,X線立体構造解析をすすめる.複合体結晶は,ソーキング法ならびに共結晶法により作製する.(3)PGESの阻害剤探索(スクリーニング)を計画している.平成25年度は,PGESの阻害剤探索を計画している.研究遂行中,消耗品費にて阻害剤を購入する.また,カイコ卵巣中のプロスタグランジン量を質量分析計にて測定する予定である.消耗品費にて必要試薬を購入する.本研究をすすめるうえで必要な印刷費,複写費そしてサンプル運搬費を計上している.研究成果を発表し,情報を交換するための研究成果発表旅費は不可欠である.また,論別刷りそして論文校閲を計上している. | KAKENHI-PROJECT-24580078 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24580078 |
「生活のための制度」を創るスキルの構築-シビル・ロー・エンジニアリングの試み | 本研究は、「シビル・ロー・エンジニアリング」と名づけた、生活基盤整備のための民間主導の制度づくりの基礎理論を提示するとともに、そのいくつかの適用例を、育児・住居・交通・地域の諸領域につき、提示した。具体的には、日本民法学の市民法学的な伝統を発掘するとともに、民法内外の最近の議論状況を踏まえつつ、基礎理論の構成をはかるとともに、課題への対応から一歩進んだ制度作りへという観点から、児童虐待から共同子育てへ、マンション建て替えから新しいハウジングへ、リサイクルから共用自転車、NPOから地域通貨へ、という4つの個別研究を行った。その成果は、著書『生活のための制度を創る-シビル・ロー・エンジニアリングにむけて』にまとめるとともに、その補論として、論文「紛争解決の民法学から制度構想の民法学」をまとめた。後者は、本研究に大きな示唆を与えた平井宜雄教授の『法政策学』の初期形態を再評価することを主張するものである。本研究の結果、今後の課題として次のような作業が必要だとの認識に至った。一方で、非営利団体主導ではなく、営利企業主導の試みをフォローすること、また、外国人や年少者・障害者など社会的に見て不利な地位にある人々の生活支援に着目すること、さらに、制度構築の担い手としての女性、手段としての情報技術に焦点をあてて、外国との比較研究を行うことが興味深いこと、他方、制度構想の民法学のバックボーンとして、20世紀日本の不法行為法学を再検討すること。本研究は、「シビル・ロー・エンジニアリング」と名づけた、生活基盤整備のための民間主導の制度づくりの基礎理論を提示するとともに、そのいくつかの適用例を、育児・住居・交通・地域の諸領域につき、提示した。具体的には、日本民法学の市民法学的な伝統を発掘するとともに、民法内外の最近の議論状況を踏まえつつ、基礎理論の構成をはかるとともに、課題への対応から一歩進んだ制度作りへという観点から、児童虐待から共同子育てへ、マンション建て替えから新しいハウジングへ、リサイクルから共用自転車、NPOから地域通貨へ、という4つの個別研究を行った。その成果は、著書『生活のための制度を創る-シビル・ロー・エンジニアリングにむけて』にまとめるとともに、その補論として、論文「紛争解決の民法学から制度構想の民法学」をまとめた。後者は、本研究に大きな示唆を与えた平井宜雄教授の『法政策学』の初期形態を再評価することを主張するものである。本研究の結果、今後の課題として次のような作業が必要だとの認識に至った。一方で、非営利団体主導ではなく、営利企業主導の試みをフォローすること、また、外国人や年少者・障害者など社会的に見て不利な地位にある人々の生活支援に着目すること、さらに、制度構築の担い手としての女性、手段としての情報技術に焦点をあてて、外国との比較研究を行うことが興味深いこと、他方、制度構想の民法学のバックボーンとして、20世紀日本の不法行為法学を再検討すること。本研究は、市民レベルで行われている「生活のための制度を創る」試みをとりあげて、その実態を明らかにするとともに、その技法・その理念について検討を加えるものである。初年度は関連文献の収集・分析とケーススタディのための現地調査を行った。その際の対象は、(1)育児(共同子育て)・(2)住居(新しいハウジング)・(3)環境(共用自転車)・(4)消費(地域通貨)としたが、それぞれにつき一定の情報を得ることができた。現在、検討結果をまとめたレポートを『生活のための制度を創る--シビル・ロー・エンジニアリングにむけて』という表題で公刊する準備をしているが、研究途中で副産物として産まれた論文が「成年後見と介護契約」であり、(5)介護を対象に共通のアプローチで検討を行った。次年度は、上記レポートを公刊の上、新たに具体的な問題をとりあげて、より立ち入った分析を行う準備をしたい。本研究は、市民レベルで行われている「生活のための制度を創る」試みをとりあげて、その実態を明らかにするとともに、その技法・その理念について検討を加えるものである。初年度は、関連文献の収集・分析とケーススタディのための現地調査を行った。その際の対象は、(1)育児(共同子育て)・(2)住居(新しいハウジング)・(3)環境(共用自転車)・(4)消費(地域通貨)としたが、それぞれにつき一定の情報を得ることができた。集中的な作業によって、予想以上の速度で研究が進展したため、その検討結果をまとめたレポートを『生活のための制度を創る--シビル・ロー・エンジニアリングにむけて』という表題で2005年3月末に公刊することができた(昨年の報告書作成時には未刊だったため、今年度の成果として掲げる)。なお、その後は、フォローアップの研究を続行している。すなわち、第一に、昨年度の「成年後見と介護契約」と対になる論文「高齢者の居住と継続性の尊重」を脱稿したが、刊行には至っていない。第二に、上記著書の結論部分で言及した2点につき、さらなる展開をはかるための準備を行った。具体的には、一方で、「外国人」の生活支援のための制度創りについて検討すべく、法科大学院の演習「外国人のための法律ハンドブックをつくる」を開講し、参加者とともに問題点の析出につとめた(その成果は、参加者によるホームページ「東大ロースクール生による外国人留学生のための法律ハンドブック」となっている)。他方で、「企業」を担い手とする制度創りの実情に関する予備調査に着手した。 | KAKENHI-PROJECT-16530051 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16530051 |
「生活のための制度」を創るスキルの構築-シビル・ロー・エンジニアリングの試み | 本研究は、市民レベルで行われている「生活のための制度を創る」試みをとりあげて、その実態を明らかにするとともに、その技法・その理念について検討を加えるものである。初年度は、関連文献の収集・分析とケーススタディのための現地調査を行った。その際の対象は、(1)育児(共同子育て)・(2)住居(新しいハウジング)・(3)環境(共用自転車)・(4)消費(地域通貨)としたが、それぞれにつき一定の情報を得ることができた。集中的な作業によって、予想以上の速度で研究が進展したため、その検討結果をまとめたレポートを『生活のための制度を創る--シビル・ロー・エンジニアリングにむけて』という表題で2005年3月末に公刊することができた。なお、その後は、フォローアップの研究を続行しており、一昨年度の「成年後見と介護契約」と対になる論文「高齢者の居住と継続性の尊重」を刊行した。さらに、本研究の理論的な補遺となる論文二編「無償行為論の再検討へ」「紛争解決の民法学から制度構想の民法学へ」も刊行した。本研究は、市民レベルで行われている「生活のための制度を創る」試みをとりあげて、その実態を明らかにするとともに、その技法・その理念について検討を加えるものである。初年度は、関連文献の収集・分析とケーススタディのための現地調査を行った。その際の対象は、(1)育児(共同子育て)・(2)住居(新しいハウジング)・(3)環境(共用自転車)・(4)消費(地域通貨)としたが、それぞれにつき一定の情報を得ることができた。集中的な作業によって、予想以上の速度で研究が進展したため、その検討結果をまとめたレポートを『生活のための制度を創る-シビル・ロー・エンジニアリングにむけて』という表題で2005年3月末に公刊することができた。その後は、フォローアップの研究を続行し、計4編の論文を公刊した。昨年度は、次の研究課題(制度構想者としての年少者に焦点をあわせる)への架橋となる2論文(「民法4条をめぐる立法論的覚書」「としょかんライオン考」)を執筆した。 | KAKENHI-PROJECT-16530051 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16530051 |
肝類洞血流を調節する細胞とペプチドの研究 | 硬変肝における肝類洞の微小循環の変化を理解するため、以下の検討を行った。1.ヒト正常肝、硬変肝組織による検討1)通常電顕による肝小葉内神経分布の検討正常肝組織では神経終末が伊東細胞の近傍でしばしば観察されたが、硬変肝組織では伊東細胞近傍の神経終末の局在は乏しかった。2)神経終末内ペプチドの局在に関する免疫電顕的観察抗サブスタンスP、抗VIP、抗S-100蛋白を用いた免疫組織化学による観察から、正常肝ではそれらの抗体の反応産物は伊東細胞近傍の神経に多く存在したが、硬変肝ではそれらの局在が乏しかった。3)α-平滑筋アクチン(α-SMA)、デスミン、エンドセリン-1レセプター(ET-1R)の局在抗α-SMA,抗デスミン、抗ET-1Rを用いた免疫組織化学による検討より、反応産物は硬変肝の類洞壁に局在し、正常肝に比較し著明であった。またそれらの反応産物は主に伊東細胞に局在した。2.肝硬変ラットの肝微小循環に関するin vivoの検討肝硬変ラットの門脈にNO阻害剤であるL-NMMAを注入すると門脈圧の上昇、門脈血流、肝血流の低下がみられた。3.ラット培養伊東細胞を用いたin vitroの検討正常ラット培養伊東細胞にET-1を投与すると伊東細胞は収縮した。IL-1βでは細胞内NOの増加とともに伊東細胞は弛緩した。2)α-SMAとET-1Rの免疫局在正常と肝硬変のラットから得られた培養伊東細胞における抗α-SMA、抗ET-1Rの免疫局在を蛍光レーザー顕微鏡で観察すると肝硬変群の方が正常群より豊富に存在していた。以上の結果より、肝硬変では神経支配の影響より、むしろET-1やNOによる伊東細胞の収縮、弛緩が肝類洞微小循環調節に大きく関与することが示唆された。硬変肝における肝類洞の微小循環の変化を理解するため、以下の検討を行った。1.ヒト正常肝、硬変肝組織による検討1)通常電顕による肝小葉内神経分布の検討正常肝組織では神経終末が伊東細胞の近傍でしばしば観察されたが、硬変肝組織では伊東細胞近傍の神経終末の局在は乏しかった。2)神経終末内ペプチドの局在に関する免疫電顕的観察抗サブスタンスP、抗VIP、抗S-100蛋白を用いた免疫組織化学による観察から、正常肝ではそれらの抗体の反応産物は伊東細胞近傍の神経に多く存在したが、硬変肝ではそれらの局在が乏しかった。3)α-平滑筋アクチン(α-SMA)、デスミン、エンドセリン-1レセプター(ET-1R)の局在抗α-SMA,抗デスミン、抗ET-1Rを用いた免疫組織化学による検討より、反応産物は硬変肝の類洞壁に局在し、正常肝に比較し著明であった。またそれらの反応産物は主に伊東細胞に局在した。2.肝硬変ラットの肝微小循環に関するin vivoの検討肝硬変ラットの門脈にNO阻害剤であるL-NMMAを注入すると門脈圧の上昇、門脈血流、肝血流の低下がみられた。3.ラット培養伊東細胞を用いたin vitroの検討正常ラット培養伊東細胞にET-1を投与すると伊東細胞は収縮した。IL-1βでは細胞内NOの増加とともに伊東細胞は弛緩した。2)α-SMAとET-1Rの免疫局在正常と肝硬変のラットから得られた培養伊東細胞における抗α-SMA、抗ET-1Rの免疫局在を蛍光レーザー顕微鏡で観察すると肝硬変群の方が正常群より豊富に存在していた。以上の結果より、肝硬変では神経支配の影響より、むしろET-1やNOによる伊東細胞の収縮、弛緩が肝類洞微小循環調節に大きく関与することが示唆された。肝硬変における肝類洞内血流の変化を理解するためヒト肝硬変組織を用いて以下の検討を行い、その結果を正常肝と比較し以下の知見を得た。1)肝小葉内神経分布に関する検討-免疫組織化学による観察-一次抗体に抗サブスタンスP抗体、抗VIP抗体、抗エンドセリン-I抗体、抗S-100抗体を用いたABC法による光顕的観察、同様の抗体を用いた酵素抗体間接法による電顕的観察を行った。その結果、光顕的観察にて抗サブスタンスP抗体、抗VIP抗体、抗エンドセリンI抗体、抗S-100抗体との反応産物の局在は肝硬変において正常肝と比べ乏しい傾向にあった。電顕的観察にて正常肝組織では抗サブスタンスP抗体、抗VIP抗体、抗エンドセリン-I抗体陽性の神経終末は伊東細胞近傍に多く存在し、さらに同様の抗体との反応産物が伊東細胞の細胞膜に一致して認められた。一方、肝硬変組織においてはこのような所見は乏しい傾向にあった。2)肝小葉内神経分布に関する検討-通常電顕による観察-通常電顕により肝小歯内を観察した。その結果、正常肝組織では、神経終末が伊東細胞の近傍にてしばしば観察された。一方、肝硬変組織では筋線維芽細胞様伊東細胞を多く認めたが伊東細胞近傍での神経終末の局在は乏しかった。3)伊東細胞におけるアクチン、ミオシンの局在-免疫電顕による観察-一次抗体に抗アクチン抗体、抗ミオシン抗体を用い酵素抗体間接法にて伊東細胞における局在を観察した。 | KAKENHI-PROJECT-06454269 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06454269 |
肝類洞血流を調節する細胞とペプチドの研究 | その結果、抗アクチン抗体、抗ミオシン抗体との反応産物は伊東細胞内に観察されたが肝硬変組織内の伊東細胞の方が正常肝組織内の伊東細胞に比べ、より局在が強い傾向にあった。以上の結果から肝硬変組織では正常肝組織に比べて伊東細胞内のアクチン、ミオシンは豊富であるが、肝小葉内のサブスタンスP、VIP、エンドセリン陽性の神経終末は乏しい傾向にあると思われる。硬変肝における肝類洞の微小循環の変化を理解するため、ラット培養伊東細胞を用いたin vitroの検討、ならびにヒト肝硬変組織を用いて以下の検討を行った。1.エンドセリン-1とインターロイキン1βによるラット培養伊東細胞の収縮効果の検討正常ラットより得られた培養伊東細胞に各種濃度のエンドセリン-1やインターロイキン1βを投与後、面積変化を計測し、収縮・弛緩能を検討した。その結果、ラット培養伊東細胞はエンドセリン-1で収縮し、インターロイキン1βで弛緩した。2.ラット培養伊東細胞におけるα-平滑筋アクチンとエンドセリン-1レセプターの局在-レーザー顕微鏡による観察-正常ラットと肝硬変モデルラットより得られた培養伊東細胞を用い、α-平滑筋アクチンとエンドセリン-1レセプターに対する抗体による蛍光抗体法を施行し、レーザー顕微鏡下で観察を行った。その結果、伊東細胞内におけるこれらの抗体との反応産物の局在は正常ラットに比較して肝硬変ラットの培養伊東細胞に豊富に存在していた。3.ヒトの正常肝と硬変肝におけるα-平滑筋アクチン、デスミン、およびエンドセリン-1レセプターの局在-免疫組織化学による観察-一次抗体にα-平滑筋アクチン、デスミン、ならびにエンドセリン-1レセプターの抗体を用いたABC法による光顕的観察、特に小葉内の局在の変化を検討した。これらの抗体に対する反応産物は硬変肝の偽小葉内の類洞壁に沿って局在し、正常肝の類洞壁に比較してより著明であった。そのほか、結合識内の脈管周囲の細胞内にこれらの抗体との反応産物が、また脈管内腔の細胞に一致して抗エンドセリン-1レセプター抗体との反応産物も認められた。以上の結果から、伊東細胞には収縮・弛緩能があり、その機能は正常より肝硬変において著明であることが推測された。硬変肝における肝類洞の微小循環の変化を理解するため、ラット培養伊東細胞を用いたin vitroの検討、NO阻害剤によるラット肝微小循環の変化ならびにヒト肝硬変組織を用いて以下の検討を行った。すなわち、1.エンドセリン-1(ET-1)とインターロイキン1β(IL-1β)によるラット培養伊東細胞の収縮、拡張効果の検討-正常ラット培養伊東細胞にET-1やIL-1βを投与後、面積変化、アクチン、デスミン、チュブリンなどの細胞骨格の変化および細胞内の一酸化窒素合成酸素(NOS)、cyclic-GMPの変化を検討した。その結果ET-1投与によりNOSやcyclic-GMPの減少、細胞骨格の集簇化ならびに面積の減少を認めた。IL-1β投与では細胞内のNOSやcyclic-GMPが増加し、細胞骨格は細胞質の進展とともに伸長し、面積の増加をみた。以上の結果より、ラット培養伊東細胞はET-1で収縮し、IL-1βで弛緩することが明らかとなった。2.in vivoでのNO阻害剤(L-NMMA)により肝微小循環の変化の検討-肝硬変モデルラットの門脈よりL-NMMAを注入すると、門脈圧の上昇、門脈および肝の血流量の低下を認めた。3.ヒトの正常肝と硬変肝における神経終末の局在、α-平滑筋アクチン(α-SMA)、デスミンおよびET-1レセプター(ET-1R)発現の検討-正常肝に比較し硬変肝では肝小葉内の神経終末が減少する | KAKENHI-PROJECT-06454269 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06454269 |
アルコールの中枢神経系情報伝達機構におよぼす影響 | エタノールの中枢神経作用からの行動異常は精神作動性の受容体であるGABAならびにNMDA受容体が関与している報告は多いが、受容体後の情報伝達系をふくめた神経作用全体での研究は少なく新たな知見が待たれている。また、アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)多型がアルコール摂取量の抑制に寄与しているとされているが、中枢神経作用との関係については明らかでない。そこでこの研究ではエタノールならびにその代謝物の情報伝達系への作用点を検索の前に、ALDH多型の動物モデルの存在の検索と、ALDH多型のエタノール代謝動態に及ぼす影響について検討した。Wistar系雄ラットにおいて肝ALDH型分析を行ったところ、mitochondrial ALDHにおいて2型およびcytosol ALDHにおいて3型の酵素多型が認められた。これらの酵素多型別にエタノール1g/kgを静脈投与し得られた血中エタノール濃度曲線ならびに酢酸濃度曲線を薬物動態学的に解析した結果、エタノール動態解析において有意差は認められないものの、酢酸動態解析についてはmitochondrial ALDH多型間で有意差が認められた。したがって、Wistar系ラットにおいてALDH多型が存在し、その多型が酢酸動態に影響を及ぼすことが判明した。現在、ALDH遺伝子変異部の解析ならびに実験前診断法の確立を行っており、さらに中枢神経作用点の検索を検討している。エタノールの中枢神経作用からの行動異常は精神作動性の受容体であるGABAならびにNMDA受容体が関与している報告は多いが、受容体後の情報伝達系をふくめた神経作用全体での研究は少なく新たな知見が待たれている。また、アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)多型がアルコール摂取量の抑制に寄与しているとされているが、中枢神経作用との関係については明らかでない。そこでこの研究ではエタノールならびにその代謝物の情報伝達系への作用点を検索の前に、ALDH多型の動物モデルの存在の検索と、ALDH多型のエタノール代謝動態に及ぼす影響について検討した。Wistar系雄ラットにおいて肝ALDH型分析を行ったところ、mitochondrial ALDHにおいて2型およびcytosol ALDHにおいて3型の酵素多型が認められた。これらの酵素多型別にエタノール1g/kgを静脈投与し得られた血中エタノール濃度曲線ならびに酢酸濃度曲線を薬物動態学的に解析した結果、エタノール動態解析において有意差は認められないものの、酢酸動態解析についてはmitochondrial ALDH多型間で有意差が認められた。したがって、Wistar系ラットにおいてALDH多型が存在し、その多型が酢酸動態に影響を及ぼすことが判明した。現在、ALDH遺伝子変異部の解析ならびに実験前診断法の確立を行っており、さらに中枢神経作用点の検索を検討している。 | KAKENHI-PROJECT-08670483 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08670483 |
SiO_2二重トンネル障壁をもつ単結晶Si量子井戸の形成および電気的特性の評価 | 本研究では、・ウエハの貼り合わせを用いる独自の手法により、単結晶Si/SiO_2共鳴トンネルダイオードを作製する・電気的特性評価によりSi量子井戸中の電子状態を明らかにすることを目的として研究を行ってきた。前年度までに、従来の結晶成長・堆積技術では実現できないSiO_2/単結晶Si/SiO_2の極薄多層構造の作製が可能となっている。この構造を用いて期待どおりの共鳴トンネル特性を得るには、Si井戸層の膜厚揺らぎの影響を低減することが必要であり、素子の面内寸法の縮小が必須となる。そこで本年度は、(1)素子寸法の縮小化・素子分離プロセスの確立(2)低温における電流-電圧(I-V)測定を行った。その結果、以下のような成果が得られた。(1)素子寸法の縮小化と素子分離プロセスフォトリソグラフィによるパターニングと選択酸化を用いることで、10μm□までダイオード寸法を縮小し、かつ個々の素子を分離することが可能となった(電子線リソグラフィを用いれば、さらに素子寸法を縮小化することも可能である)。Si井戸層の厚さを0-7nmの範囲で変化させた試料(SiO_2障壁厚さは3nmに固定)を多数作製し、低温(主に15K)でのI-V測定を行った。その結果、Si井戸層の厚さが3nm以下の試料について、複数のくびれをもつ特徴的な特性が観測された(印加電圧0-1V)。負性抵抗を示すものも観測されており、Si井戸層を電子が共鳴トンネルしているためと考えられる。ただし、選択酸化プロセス中に量子ドットや量子細線が自然形成されている可能性も否定できない。今後、試料の断面構造を詳細に評価し、得られた特性の解釈やSi量子井戸中の電子状態を明らかにしていく。本年度は、単結晶Si/SiO_2共鳴トンネルダイオード(RTD)構造を、1.市販SOI(Silicon-on-Insulator)ウェハとバルクSiウェハの貼り合わせを用いる独自の手法により作製すること、および2.その電気的特性を評価すること、を目的に研究を行った。その結果、以下のような成果が得られた。1.RTD構造の作製貼り合わせにより自作したトンネル埋め込みSiO_2層(約2nm)をもつSOIウエハの上層Siを、熱酸化およびそれにより形成されたSiO_2をフッ酸溶液で除去することにより薄層化し、厚さ10nm以下(最小値3nm)の極薄Si層を得た。その後、極薄Si層上にトンネルSiO_2(熱酸化膜)を形成し、RTD構造を作製した。エリプソメトリ、原子間力顕微鏡(AFM)、透過電子顕微鏡(TMF)により構造を評価した結果、原子レベルでの膜厚揺らぎは存在するものの、ほぼ予定していたRTD構造を得ることができた。2.電気的特性の評価上側SiO_2障壁を20nm程度(トンネル不可)に厚くした試料に対して、容量-電圧(C-V)測定を行った結果、約2nmの埋め込み酸化膜(下側SiO_2障壁)がトンネル酸化膜としてはたらくことが明らかになった。また、SiO_2およびSi井戸層ともに約2nmのRTD構造に対して、電流-電圧(I-V)測定を開始した。電極(現段階ではマクロなサイズ:約500μmφ)内でのSi井戸層の膜厚揺らぎ(量子準位の揺らぎ)が影響して、負性抵抗特性を得られていないが、電極サイズを縮小するなどにより、負性抵抗特性やSi量子井戸の電子状態に関する知見が得られるものと考えられる。本研究では、・ウエハの貼り合わせを用いる独自の手法により、単結晶Si/SiO_2共鳴トンネルダイオードを作製する・電気的特性評価によりSi量子井戸中の電子状態を明らかにすることを目的として研究を行ってきた。前年度までに、従来の結晶成長・堆積技術では実現できないSiO_2/単結晶Si/SiO_2の極薄多層構造の作製が可能となっている。この構造を用いて期待どおりの共鳴トンネル特性を得るには、Si井戸層の膜厚揺らぎの影響を低減することが必要であり、素子の面内寸法の縮小が必須となる。そこで本年度は、(1)素子寸法の縮小化・素子分離プロセスの確立(2)低温における電流-電圧(I-V)測定を行った。その結果、以下のような成果が得られた。(1)素子寸法の縮小化と素子分離プロセスフォトリソグラフィによるパターニングと選択酸化を用いることで、10μm□までダイオード寸法を縮小し、かつ個々の素子を分離することが可能となった(電子線リソグラフィを用いれば、さらに素子寸法を縮小化することも可能である)。Si井戸層の厚さを0-7nmの範囲で変化させた試料(SiO_2障壁厚さは3nmに固定)を多数作製し、低温(主に15K)でのI-V測定を行った。その結果、Si井戸層の厚さが3nm以下の試料について、複数のくびれをもつ特徴的な特性が観測された(印加電圧0-1V)。負性抵抗を示すものも観測されており、Si井戸層を電子が共鳴トンネルしているためと考えられる。ただし、選択酸化プロセス中に量子ドットや量子細線が自然形成されている可能性も否定できない。今後、試料の断面構造を詳細に評価し、得られた特性の解釈やSi量子井戸中の電子状態を明らかにしていく。 | KAKENHI-PROJECT-11750258 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11750258 |
発育・発達期における低濃度複合水銀曝露による神経行動毒性に対する遺伝的要因の影響 | 発育期に低濃度の0.10 mg/m3水銀蒸気(Hg0)と5ppmメチル水銀(MeHg)の複合曝露後の神経行動機能に及ぼす影響について検討した。動物への曝露は3週齢から7週齢までの4週間行い、10週齢に達したときオープンフィールド試験、受動回避反応試験、放射状迷路試験を実施した。曝露終了後10週齢と加齢による影響を評価するために79週齢で行った行動試験ではHg0曝露群、MeHg曝露群、Hg0+MeHg複合曝露群とも対照群と比較し、統計的な差異はなかった。以上の結果より、発育期において低濃度のHg0やMeHgの複合曝露をうけても神経行動毒性に影響は認められず、また加齢の影響も認められなかった。発育・発達期における低濃度水銀蒸気(Hg0)と低濃度メチル水銀(MeHg)による複合水銀曝露が神経行動機能にとのような影響を与えるかについて雌性マウスを用い、成熟期と加齢期に評価を行った。曝露は授乳終了3週齢から7週齢までの4週間行った。行動試験にはオープンフィールド(OPF)試験、受動回避反応(PA)試験、放射状迷路(RM)試験を用い、神経毒性の評価を行った。10週齢で行った行動試験では、対照群とHg0曝露群、MeHg曝露群、Hg0+MeHg曝露群との間に、OPF試験、PA試験そしてRM試験ともに各群間に統計的な有意差は認められなかった。10週齢で測定した水銀濃度は大脳で対照群に比べ、Hg0+MeHg曝露群が統計的に高値(p<00.1)を示し、小脳でも対照群に比べ、いずれの曝露群も統計的に高値を示した。水銀曝露1年以上経過後(79週齢)に再び行動試験を行い、加齢による影響について評価した。79週齢における対照群と各曝露群のマウスの体重には差異は認められなかった。また行動試験のうちOPF試験では総移動距離は対照群と各曝露群都の間に統計的な有意差は認められなかった。また中心滞在割合は対照群に比べ、Hg0+MeHg曝露群は約2倍高い値を示したが統計的に有意ではなかった。Hg0曝露群とMeHg曝露群は対照群との間に差異はなかった。PAにおいても訓練および保持時間に対照群と各曝露群間の間に有意な差異は認められなかった。RM試験については現在、解析中である。発育期に低濃度の0.10 mg/m3水銀蒸気(Hg0)と5ppmメチル水銀(MeHg)の複合曝露後の神経行動機能に及ぼす影響について検討した。動物への曝露は3週齢から7週齢までの4週間行い、10週齢に達したときオープンフィールド試験、受動回避反応試験、放射状迷路試験を実施した。曝露終了後10週齢と加齢による影響を評価するために79週齢で行った行動試験ではHg0曝露群、MeHg曝露群、Hg0+MeHg複合曝露群とも対照群と比較し、統計的な差異はなかった。以上の結果より、発育期において低濃度のHg0やMeHgの複合曝露をうけても神経行動毒性に影響は認められず、また加齢の影響も認められなかった。発育・発達期における低濃度水銀蒸気(Hg0)と低濃度メチル水銀(MeHg)による複合水銀曝露が神経行動機能へどのような影響を与えるかについてマウスを用いて検討した。水銀曝露は授乳終了3週齢から7週齢まで4週間間行った。Hg0曝露は曝露濃度平均0.096 mg/m3、1日8時間で連日を行った。MeHg曝露は5ppm水溶液に飲水にて曝露を行った。なお動物を対照群、Hg0曝露群、MeHg曝露群、Hg0+MeHg複合曝露群に分け、各群22匹を実験に供した。曝露終了後直ちに4匹を屠殺し、臓器中の水銀濃度を測定した。また10週齢で種々の行動試験(オープンフィールド(OPF)試験、受動回避反応(PA)試験、放射状迷路(RM)試験)を実施した。行動試験には各群7匹動物を使用した。OPF試験では対照群と比較し、Hg0曝露群、MeHg曝露群、Hg0+MeHg複合曝露群との間で総移動距離、中心に滞在する割合(%)にそれぞれ統計的に有意な差は認められなかった。PA試験はOPF試験同様、対照群と各水銀曝露群との間に保持試行の回避反応時間に統計的な差異は認められなかった。RM試験では対照群と比較し、Hg0曝露群、MeHg曝露群、Hg0+MeHg複合曝露群との間に正選択数、誤選択数ともに有意な差異は認められなかった。曝露終了後の臓器中水銀濃度は対照群に比べ、大脳ではHg0曝露群は約15倍、MeHg曝露群は約80倍、Hg0+MeHg複合曝露群は約90倍で高値あった。小脳ではHg0曝露群は約75倍、MeHg曝露群は約140倍、Hg0+MeHg複合曝露群は約200倍、対照群より高値を示した。他の臓器もHg0曝露群、MeHg曝露群、Hg0+MeHg複合曝露群ともに対照群に比べ高値を示した。 | KAKENHI-PROJECT-24590755 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24590755 |
発育・発達期における低濃度複合水銀曝露による神経行動毒性に対する遺伝的要因の影響 | 10週齢ではいずれの曝露群も脳内水銀濃度が対照群に比べ高値にあるにも関わらす行動試験に変化は認められなかった。胎生期メチル水銀曝露を受けた場合、加齢による神経行動異常の発現が報告されていることから、発育期に複合曝露をうけた雌性マウスの1年後(79週齢)の行動試験を行った。体重については、79週齢における対照群と各曝露群の間に差異は認められなかった。行動試験のオープンフィールド(OPF)試験では総移動距離、中心滞在割合ともに対照群と水銀蒸気(Hg0)、メチル水銀(MeHg)、Hg0+MeHg複合曝露群との間に統計的な有意差は認められなかった。受動回避(PA)試験でも訓練および保持時間に対照群と各曝露群間の間に有意な差異は認められなかった。放射状迷路試験では1試行中に「既に獲得したアームを訪れるエラー数」、「試行中に獲得したペレット数」ともに対照群と各曝露群との間に有意差は認められなかった。水銀濃度は大脳で2.6倍、小脳で2.1倍、対照群に比べ高値であり、その差は統計的に有意であった。このことより発育期に低濃度Hg0、MeHgそしてHg0+MeHg複合曝露を受けても加齢による神経行動毒性の発現は認められなかった。次に金属毒性に対し感受性が高いメタロチオネイン-I/II遺伝子欠損雌マウス(以下MT-nullマウス)を用いて、発育期における複合水銀曝露が神経行動機能に及ぼす影響について検討した。OPF試験の総移動距離および中心に滞在する割合、PA試験そして放射状迷路試験の「既に獲得したアームを訪れるエラー数」および「獲得したペレット数」には野生型マウスとMT-nullマウスとの間に統計的有意差に認められなかった。以上の結果より、低濃度複合水銀の曝露による加齢による神経行動毒性に影響は認められなかった。重金属毒性に対し、感受性高いMT-nullマウスを使用して複合水銀曝露を行っても神経行動毒性は認められず、この時期に低濃度複合曝露は胎生期に比べ、水銀に対する感受性は低いことが明らかとなった。環境毒性学平成24年度に行ったHg0曝露群、MeHg曝露群、Hg0+MeHg曝露群の10週齢における神経行動試験と1年後の加齢による各曝露群の神経行動毒性に対する影響を評価することができた。しかし、複合曝露のよる神経行動毒性に対するメタロチオネイン欠損(MT-KO)マウスを用いた遺伝的要因に関する実験が平成24年に行うことができなかった。複合曝露実験を実施するためのMT-KOマウスが動物施設の温度管理機能の故障により、死亡したことにより実験に必要な動物数を確保できなかったためである。我々は胎生期における低濃度MeHg水銀曝露(5ppm給餌)では繁殖適齢期における行動試験ではいずれも異常は認められないが、1年後に行った行動試験においてOPF試験、PA試験、水迷路試験に異常が認められ、加齢による神経行動毒性が発現していた(Yoshida et al 2008)。また授乳期における低濃度Hg0曝露(平均0.057mg/m3)でも繁殖適齢期における行動試験では異常は認められず、1年後の神経行動試験でOPF試験に異常が認められ、遅延性の神経行動毒性が発現することが明らかとなった(Yoshida et al 2013)。今回の授乳後のHg0曝露(平均0.096 mg/m3)、MeHg曝露(5ppm飲料水)、Hg0+MeHg複合曝露実験の曝露条件は過去の結果に基づいて行った。繁殖適齢期に測定した行動試験(OPF試験、PA試験、RM試験)結果は対照群とそれぞれの曝露群の間に統計的な有意差は認められず、Hg0曝露(平均0.096 mg/m3)実験やMeHg曝露(5ppm飲料水)実験結果はこれまでの胎生期におけるMeHg曝露、授乳期におけるHg0曝露実験と同様の結果であった。Hg0+MeHg複合曝露実験ではこの群の水銀濃度は大脳で1.26.6倍、小脳で1.41.9倍、Hg0曝露群やMeHg曝露群に比べ高いにも関わらず神経行動毒性への影響が認められないこと明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-24590755 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24590755 |
単球の高親和性IgEレセプター依存性サイトカインの産性 | 以上の結果より単球のFc εR IおよびIgE依存性のPGE2の遊離が明らかになった。現在までに単球のFc εRI架橋により、Ca influxが上昇することが知られているが我々は、Fc εR I依存性に単球より遊離されるメディエーターを明らかにした。以上の結果より単球のFc εR IおよびIgE依存性のPGE2の遊離が明らかになった。現在までに単球のFc εRI架橋により、Ca influxが上昇することが知られているが我々は、Fc εR I依存性に単球より遊離されるメディエーターを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-07770679 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07770679 |
運動軌道の解析による生体の制御メカニズムの研究 | 生体の運動制御の計算モデルを検証し応用するために、ヒトの手や腕の運動軌道を計測するシステムを構築した。計測した運動軌道のデータを解析することによって制御メカニズムを推測するとともに、運動軌道の知覚に関する心理物理実験も行った。主な実験と研究成果は、以下のとおりである。1.運動軌道の生成における運動規範の検証ヒトの腕による2点間到達運動に関して、作業空間の広い範囲で多数の軌道データを計測し、腕の軌道の曲率、加速度、トルクに関する時空間的特徴を解析した。さまざまな運動規範を比較・検討した結果、計測された人腕の運動軌道は指令トルク変化最小モデルの予測する軌道に最も似ていることが定量的・統計的に示された。また、できるだけ速く手先をターゲットに移動するという行動実験を行い、その運動軌道を解析したところ、要求される運動タスクにかかわらず、ヒトは常に滑らかさの規範に基づいて軌道を計画していることがわかった。3.曲線運動の生成と知覚に関する心理物理実験ヒトが手で楕円を描くような曲線運動を行うとき、手先の接線速度は曲率半径の1/3乗に比例するという1/3乗則が見い出されている。計算機シミュレーションによって、1/3乗則が、指令トルク変化最小モデルなどの滑らかさの運動規範で再現できることを確かめた。また、ヒトが行うさまざまな速度プロファイルの楕円運動をコンピュータグラフィックスで被験者に提示する心理物理実験を行い、滑らかさの運動規範が運動の知覚にも適用されることを示唆する結果が得られた。4.リハビリテーションへの応用本研究の応用として、脊髄損傷による下肢麻痺患者のための歩行再建システムを構築した。本システムは、長下肢装具と機能的電気刺激を組み合わせたハイブリッドシステムである。健常者に対して本歩行再建システムのテストを行い、その下肢関節の動きを解析して実用性が高いことを確認した。生体の運動制御の計算モデルを検証し応用するために、ヒトの手や腕の運動軌道を計測するシステムを構築した。計測した運動軌道のデータを解析することによって制御メカニズムを推測するとともに、運動軌道の知覚に関する心理物理実験も行った。主な実験と研究成果は、以下のとおりである。1.運動軌道の生成における運動規範の検証ヒトの腕による2点間到達運動に関して、作業空間の広い範囲で多数の軌道データを計測し、腕の軌道の曲率、加速度、トルクに関する時空間的特徴を解析した。さまざまな運動規範を比較・検討した結果、計測された人腕の運動軌道は指令トルク変化最小モデルの予測する軌道に最も似ていることが定量的・統計的に示された。また、できるだけ速く手先をターゲットに移動するという行動実験を行い、その運動軌道を解析したところ、要求される運動タスクにかかわらず、ヒトは常に滑らかさの規範に基づいて軌道を計画していることがわかった。3.曲線運動の生成と知覚に関する心理物理実験ヒトが手で楕円を描くような曲線運動を行うとき、手先の接線速度は曲率半径の1/3乗に比例するという1/3乗則が見い出されている。計算機シミュレーションによって、1/3乗則が、指令トルク変化最小モデルなどの滑らかさの運動規範で再現できることを確かめた。また、ヒトが行うさまざまな速度プロファイルの楕円運動をコンピュータグラフィックスで被験者に提示する心理物理実験を行い、滑らかさの運動規範が運動の知覚にも適用されることを示唆する結果が得られた。4.リハビリテーションへの応用本研究の応用として、脊髄損傷による下肢麻痺患者のための歩行再建システムを構築した。本システムは、長下肢装具と機能的電気刺激を組み合わせたハイブリッドシステムである。健常者に対して本歩行再建システムのテストを行い、その下肢関節の動きを解析して実用性が高いことを確認した。生体の運動制御の計算モデルを検証するために、今年度は主として、手と腕の運動計測システムの設計と構築を行い、予備実験とデータの収集を始めた。運動環境を人工的に変更する装置として、マニピュランダムと呼ばれる人腕計測装置を構築した。これは、メガスラストモータによって手先に任意の外力を加えることで、腕のダイナミクスなどを変えることができる装置である。本研究では、ヒトの手や腕の運動軌道を解析することによって制御メカニズムを推測するとともに、運動軌道の知覚に関する心理物理実験も行った。具体的な実験と成果は、以下のとおりである。1.ヒト腕の運動タスクと最適軌道に関する研究:できるだけ速く手先をターゲットに移動するという心理物理実験を行い、その運動軌道を解析したところ、要求される運動タスクに拘わらず、ヒトは常に滑らかさの規範に基づいて軌道を計画していることがわかった。2.ヒトの手先位置の能動的知覚に関する研究:ヒトが自ら手を動かす能動性運動と、マニピュランダムによって他動的に手を動かされる受動性運動とを計測・比較することによって、運動情報が手先位置の知覚に重要であることがわかった。3.ヒトの曲線運動の能動的知覚に関する研究:ヒトが手で曲線を描くような運動を行うとき、手先の接線速度は曲率半径の1/3乗に比例するという1/3乗則が知られている。自分の手先が見えない環境で、1/3乗則からずれた速度プロファイルで、マニピュランダムによって他動的に同一の楕円形状を描かせたとき、楕円形状の知覚に錯覚が生じることを見い出した。生体の運動制御の計算モデルを検証し応用するために、昨年度、設計・構築した運動計測システムを用いて、ヒトの手の運動軌道を計測する実験を行った。具体的な実験と成果は、以下のとおりである。 | KAKENHI-PROJECT-09650467 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09650467 |
運動軌道の解析による生体の制御メカニズムの研究 | 1.キネマティクスが変更された環境下での運動学習の計測プロジェクターを用いて、腕の長さや関節角が仮想的に伸縮された視覚環境を準備し、マニピュランダムを用いて、ヒトの手を他動的に移動できる運動環境を設定した。このように人工的に変更された環境で、被験者に、他動的に動かされた手先の位置を答える課題(順キネマティクス)と目標点に手先を移動する課題(逆キネマティクス)を行わせた。2つの課題における長時間の学習後の回答位置と誤差を解析することによって、ヒトの脳内で、順キネマティクスあるいは逆キネマティクスに応じて、別々のモジュールが獲得される可能性が見い出された。2.運動タスクと最適軌道に関する研究昨年度に続いて、さまざまな運動タスクにおいて滑らかさの運動規範が採用されるか否かを、最適軌道の計算機シミュレーションと、ヒトの到達運動の行動実験を通じて検証した。今年度は特に、実験条件を整備して、系統的かつ長期の心理物理実験を行うことによって、運動時間最小タスクのような課題が指示されてもされても、ヒトは滑らかさの運動規範にしたがって軌道を生成することを確認した。3.運動スキルの獲得メカニズムに関する研究とリハビリテーションへの応用本研究のリハビリテーションへの応用として、脊髄損傷による下肢麻痺患者のための歩行再建システムを構築した。本システムは、長下肢装具と機能的電気刺激を組み合わせて歩行を実現するハイブリッドアシスティブシステムである。健常者に対して、機能的電気刺激を用いた歩行運動と随意的な歩行運動における下肢関節の動きを解析し、本歩行再建システムの実用性が高いことを確認した。生体の運動制御の計算モデルを検証し応用するために、昨年度、設計・構築した運動計測システムを用いて、ヒトの腕の運動軌道を計測する実験を行った。具体的な実験と成果は、以下のとおりである。1.運動パターンの生成における最適化原理の検証ヒトの多関節腕による2点間到達運動に関して、作業空間の広い範囲で多数の軌動データを計測し、腕の軌動の曲率、加速度、トルクに関する時空間的特徴を解析した。手先躍度最小規範、関節角度躍度最小規範、指令トルク変化最小規範などを比較・検討した結果、計測された人腕の運動軌道は指令トルク変化最小の予測する軌動に最も似ていることが定量的・統計的に示された。2.運動タスクと最適軌動の研究昨年度に続いて、運動時間最小タスクにおける人腕の運動軌動を計測し、解析した。今年度は特に、1週間連続して到達運動のトレーニングを行ったときの軌動の変化を調べ、ヒトは、常に滑らかさの運動規範にしたがって軌動を生成することを確認した。3.リハビリテーションへの応用昨年度構築した、下肢麻痺患者のための歩行再建システムの改良を行った。本システムは、長下肢装具と機能的電気刺激を組み合わせたもので、今年度は、特に手指につけたジャイロンセンサから電気刺激へと変換するコントローラの設計・検討を行った。4.曲線運動の生成と知覚における運動規範の検証ヒトが手で楕円を描くような曲線運動を行うとき、手先の接線速度は曲率半径の1/3乗に比例するという1/3乗則が見い出されている。計算機シミュレーションによって、1/3乗則が、指令トルク変化最小モデルなどの滑らかさの運動規範で再現できることを確かめた。 | KAKENHI-PROJECT-09650467 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09650467 |
骨の機械受容におけるインテグリンの生理機能 | 骨芽細胞系列細胞、特に骨細胞は力学負荷受容細胞と考えられている。しかしその受容メカニズムの実態についてはほとんど明らかにされていない。インテグリンαv欠損骨芽細胞にシアストレスを負荷し、αv下流にSrc, p130Cas, JNKのリン酸化と、その結果としてYAP/TAZの核移行が誘導されることを明らかにした。さらに個体においてインテグリンαvのメカニカルストレス応答機能を実証するために骨芽細胞系列特異的インテグリンαv欠損マウスを作製した。その前肢に強制負荷を加えSOST遺伝子をreadoutとして、インテグリンαvがメカニカルストレスの受容に必須の生理機能を果たしていることを明らかにした。骨基質中に埋没して存在する骨細胞は、骨表面の破骨細胞や骨芽細胞の機能を調節することにより骨の恒常性を司っている。骨細胞は、メカニカルストレスを受容することで骨代謝を制御していると想定されているが、骨細胞上に存在するメカノセンサーの実体や受容以降に発動される細胞内シグナル伝達機構については不明な点が多い。細胞接着分子インテグリンalpha-vは骨芽細胞や骨細胞に発現しており、細胞周囲の骨基質にそのリガンドが豊富に存在することから、メカニカルストレス受容センサーの候補と考えられる。インテグリンalpha-vを介するメカニカルストレス受容機構を明らかにするために、インテグリンalpha-v floxマウス頭蓋冠由来の初代培養骨芽細胞にシアストレスを負荷し、インテグリン下流のシグナルについて検討した。その結果、インテグリンalpha-vを介してシアストレス応答にかかわるSrc-p130Cas-JNK-YAP/TAZという新たなシグナル伝達経路の存在を明らかにした。さらに、骨芽細胞系列および骨細胞特異的にインテグリンalpha-v欠損させたマウスを作製したところ、個体レベルでは低骨代謝回転と低骨量傾向を示した。alpha-vがメカニカルストレスを受容することをin vivoで証明するために、骨芽細胞系列でインテグリンalpha-v欠損させたマウスの前肢尺骨に強制負荷を行った。Wntシグナル伝達経路のアンタゴニストとして知られるSOSTは骨細胞で発現し、荷重負荷によりその発現が抑制されることが知られているが、alpha-v欠損マウス尺骨では、対照とした対側に比較して、SOSTの発現抑制が見られないことが判明し、インテグリンalpha-vがメカニカルストレス受容機構の中核であると結論づけた。骨芽細胞系列細胞、特に骨細胞は力学負荷受容細胞と考えられている。しかしその受容メカニズムの実態についてはほとんど明らかにされていない。インテグリンαv欠損骨芽細胞にシアストレスを負荷し、αv下流にSrc, p130Cas, JNKのリン酸化と、その結果としてYAP/TAZの核移行が誘導されることを明らかにした。さらに個体においてインテグリンαvのメカニカルストレス応答機能を実証するために骨芽細胞系列特異的インテグリンαv欠損マウスを作製した。その前肢に強制負荷を加えSOST遺伝子をreadoutとして、インテグリンαvがメカニカルストレスの受容に必須の生理機能を果たしていることを明らかにした。本研究の目的は、細胞接着分子インテグリンalpha-vが骨細胞上でメカニカルストレス受容に関わるとの仮説を立て、個体レベルでメカニカルストレス受容の分子メカニズムを明らかにすることである。骨では、破骨細胞により古い骨が吸収され、骨芽細胞によって新しい骨が形成されることで骨量が維持される。破骨細胞と骨芽細胞の機能は、指令細胞である骨細胞によって制御されると考えられている。骨細胞はメカニカルストレスを受容すると考えられているが、骨細胞上に存在するメカノセンサーの実体や受容後に発動される細胞内シグナル伝達機構については不明な点が多い。近年、古典的Wntシグナル伝達経路のアンタゴニストとして知られるSOSTの発現調節とメカニカルストレス受容機構が関連している可能性が示されているが、骨細胞がどのようにメカニカルストレスを受容し、どのようなシグナル伝達系を経由してSOSTの発現調節をしているかについては未だ十分に明らかではない。接着分子インテグリンalpha-v beta-3は、骨細胞周囲にそのリガンドが豊富に有することから、メカニカルストレス受容センサーの一つと考えられる。骨代謝におけるインテグリンの役割は破骨細胞において盛んに研究されているが、骨芽細胞および骨細胞においては個体レベルでの解析が十分にされていない。その理由は、骨細胞が硬い骨基質に埋没した特殊な環境に存在することにより、これまでその解析が技術的に困難であったためである。昨今、確立された骨細胞特異的に遺伝子発現を調節する系を用いて、骨細胞特異的にインテグリンalpha-vを欠損させるマウスを作製し、個体レベルでメカニカルストレス受容の分子メカニズムを明らかにする。骨細胞上のインテグリンalpha-vがメカニカルストレス受容機構に含まれることを個体レベルで示すために、骨芽細胞系列特異的および骨細胞特異的インテグリンalpha-v欠損マウスを作製した。マイクロCTによって骨の三次元構造を解析すると、両コンディショナルノックアウトマウス(cKO)はコントロールマウスと比較して低骨量傾向であった。骨代謝については、骨形態計測と血清を用いた生化学解析を行い、両cKOにおいて骨代謝回転が低下していることが示された。骨代謝に関わる遺伝子群の発現解析も行ったところ、両cKOにおいて、骨細胞より分泌されるSOSTの発現が高いことが示された。また細胞レベルの解析では、マウス頭蓋冠由来の骨芽細胞を用いてインテグリンalpha-vを介するシグナル解析を行った。 | KAKENHI-PROJECT-24790398 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24790398 |
骨の機械受容におけるインテグリンの生理機能 | 骨細胞に加わるメカニカルストレスとしてずり応力が考えられるので、培養骨芽細胞にずり応力を加えた後にインテグリンalpha-vを経由して活性化するシグナル伝達系に関して検討した。その結果、インテグリンalpha-vを介してずり応力応答にかかわるSrc-p130Cas-JNK-YAP/TAZという新たなメカニカルストレス伝達系の存在を明らかにした。今後は、メカニカルストレス受容機構を個体レベルで明らかにするために、実験モデルを用いた解析をする予定である。また、細胞レベルの解析で明らかにした、Src-p130Cas-JNK-YAP/TAZシグナル伝達系の存在を個体レベルで明らかにしたいと考えている。骨芽細胞系列特異的および骨細胞特異的インテグリンalpha-v欠損マウスを用いて個体レベルでのメカニカルストレス受容機構の分子メカニズムについて解析する。まず、メカニカル刺激を除いた場合、骨芽細胞または骨細胞におけるインテグリンalpha-vの存在の有無が骨代謝に影響を与える可能性について検討する。具体的には、マウスの尾部を持ち上げ(尾部懸垂モデル)、脛骨や大腿骨への荷重を取り除いた状態での骨解析を行う。この尾部懸垂モデルマウスの脛骨や大腿骨を、通常飼育下のマウスの骨をコントロールとして、メカニカル刺激除去時に見られる遺伝子発現変化を比較検討する。特に注目しているのが古典的Wntシグナル伝達経路のアンタゴニストとして知られるSOSTの発現調節である。SOSTは、骨細胞特異的に発現し尾部懸垂によりその発現が上昇することが報告されている。骨芽細胞系列特異的インテグリンalpha-v欠損マウスおよび骨細胞特異的インテグリンalpha-v欠損マウスにおいてSOSTの発現が上昇していることから、骨細胞上のインテグリンalpha-vがSOSTの発現調節に関与しているのではないかと推測している。次に、前肢尺骨に強制負荷を行い、インテグリンalpha-vが骨芽細胞および骨細胞においてメカニカルストレス受容機構に含まれる可能性について検討する。具体的には、マウスの右前肢に負荷を加え、対肢をコントロールとして、メカニカルストレス受容後に活性化されるシグナル伝達経路と発動される遺伝子発現を比較検討する。SOSTは、前肢強制負荷により発現が抑制されることが報告されているので、特に注目して発現比較解析を行う予定である。また、これらの研究結果を国内外の学会で発表し、国内外の研究者と討論することにより、この研究を更に発展させる予定である。骨芽細胞系列特異的インテグリンalpha-v欠損マウスおよび骨細胞特異的インテグリンalpha-v欠損マウスの骨よりmRNAを抽出し、遺伝子解析をするために必要な試薬等を購入する。また、これまでに細胞レベルで明らかにしたインテグリンalpha-vを介してずり応力応答にかかわるSrc-p130Cas | KAKENHI-PROJECT-24790398 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24790398 |
臨床応用を目的にした音声障害の音響的検査装置の開発 | 試作した「音声障害の音響的検査装置(以下検査装置と略称)」のハードウエア構成には、2種類ある。一つは、特別に試作した音声入出力及び音声信号処理を高速・高精度で実行するための音声入出力処理装置とパーソナルコンピュータ(PC)で構成される検査装置で、他の一つは市販のサウンドボードとPCからなる検査装置である。両者は、検査装置としてほぼ同じ機能を実現できるが、ピッチ周波数と音圧を同時に実時間で計測・表示するphonetogram機能は、前者だけで可能である。利用者の操作(対話)は、PCで動作するWindowsを介して行うので、利用者にとって使いやすいだけでなく、Windowsで動作する市販のいろいろな表計算・統計パッケージとデータ交換できる。検査装置の機能は、臨床で定型的な検査業務に利用するモードと、音声障害を研究用に多面的に利用するモードからなる。定型的な検査業務では、患者が持続発声した母音から音声障害を客観的(音響的)に評価するために必要な評価パラメータを自動的に計測し、主な評価用音響パラメータを正常/病的の目安となる閾値と一緒にradar chartとして表示する。そのほかのパラメータも含めて、音響的評価に利用する音響パラメータは、同時にreport fileとして保存され、必要に応じて印字する。これらの評価用音響パラメータには、本研究課題で考案された多くのものが含まれている。研究用のモードでは、持続母音だけでなく連続音性も処理できる。音声分析機能としては、ピッチ、フォルマント、FFT/LPCスペクトル、サウンドスペクトログラム、などを備えているだけでなく、音声合成の手法で音声障害を評価することもできる。これらの検査装置は臨床的に、精度や使い易さを評価し、十分実用に耐えられることが分かっている。試作した「音声障害の音響的検査装置(以下検査装置と略称)」のハードウエア構成には、2種類ある。一つは、特別に試作した音声入出力及び音声信号処理を高速・高精度で実行するための音声入出力処理装置とパーソナルコンピュータ(PC)で構成される検査装置で、他の一つは市販のサウンドボードとPCからなる検査装置である。両者は、検査装置としてほぼ同じ機能を実現できるが、ピッチ周波数と音圧を同時に実時間で計測・表示するphonetogram機能は、前者だけで可能である。利用者の操作(対話)は、PCで動作するWindowsを介して行うので、利用者にとって使いやすいだけでなく、Windowsで動作する市販のいろいろな表計算・統計パッケージとデータ交換できる。検査装置の機能は、臨床で定型的な検査業務に利用するモードと、音声障害を研究用に多面的に利用するモードからなる。定型的な検査業務では、患者が持続発声した母音から音声障害を客観的(音響的)に評価するために必要な評価パラメータを自動的に計測し、主な評価用音響パラメータを正常/病的の目安となる閾値と一緒にradar chartとして表示する。そのほかのパラメータも含めて、音響的評価に利用する音響パラメータは、同時にreport fileとして保存され、必要に応じて印字する。これらの評価用音響パラメータには、本研究課題で考案された多くのものが含まれている。研究用のモードでは、持続母音だけでなく連続音性も処理できる。音声分析機能としては、ピッチ、フォルマント、FFT/LPCスペクトル、サウンドスペクトログラム、などを備えているだけでなく、音声合成の手法で音声障害を評価することもできる。これらの検査装置は臨床的に、精度や使い易さを評価し、十分実用に耐えられることが分かっている。音声障害のゆらぎの計測法について多くの知見を得た。まず,従来提案されているいろいろなゆらぎパラメータの物理的意味を,周波数領域で統一的に解釈することを試みた。その結果それらは,基本周期あるいは振幅系列の高域通過フイルタの出力の大きさあるいはパワーを測定していることを明らかにした。さらにその解釈に基づいて,適当な遮断周波数をもつ高域通過フイルタに基づく新しいゆらぎパラメータを考案した。喉頭癌,声帯ポリープ,反回神経麻痺などの患者の音声データベースを用いて従来のゆらぎパラメータとわれわれの新しいパラメータについて,耳鼻科医の聴覚的な主観評価との相関という観点から比較検討したところ,われわれの方が優れていることを示した。また,音声(持続母音)の非定常性を考慮して,複数の定常区間に区分化してゆらぎパラメータを評価することの有効性を明らかにした。さらに,基本周期・振幅系列の自己回帰・移動平均分析によって得られる自己回帰パラメータを用いると,音声障害の性質を効果的に表現できることを明らかにした。検査装置のパイロットシステムのハードウエアの設計と製作をほぼ完了し,現在テストを行っているが,平成5年4月中には完成する予定である。ハードウエアの制御と音響検査のための信号処理ソフトウエアについては,上述の新しい知見も組み入れながら,現在鋭意製作を急いでいる。これら第1版を,11月米国加州アナハイム市で開催される米国音声・言語・聴覚学会(American Speech-Language and Hearing Association)の年会で発表するとともに,展示も予定している。昨年度終了した音響的検査装置のハードウエア基本設計に基づいて、パイロットシステムを製作した。これまでの基礎的な検討を踏まえて、検査項目の第1次案を以下のように設定し、検査用ソフトウエアを作成した。1周期性の有無の検査:声帯振動に伴う音声の基本周期が音声信号に存在するかどうかの検査。周期性が認められない場合は音声の平均スペクトルを表示し、周期性がある場合は次の検査に移る。 | KAKENHI-PROJECT-04555073 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04555073 |
臨床応用を目的にした音声障害の音響的検査装置の開発 | 2音声の基本周期ゆらぎ(ジッタ)の検査:周期変動指数(PPQ)、ジッタパラメータ(JP)、ジッタファクタ(JF)、周期系列の2次AR分析によるゲインと極周波数及び帯域幅の測定。周期系列の平均値、分散、スキューネス、どの統計量の測定。各測定値と正常値の関係の表示(検査)。3音声の振幅ゆらぎ(シマ)の検査:振幅変動指数(APQ)、シマパラメータ(SP)、シマファクタ(SF)、振幅系列の2次AR分析によるゲインと極周波数の測定。振幅系列の平均値、分散、スキューネスなどの統計量の測定。各測定値と正常値の関係の表示(検査)。4喉頭雑音の測定:2種類の規格化雑音エネルギー(NNEa,NNEb)の測定。その値と正常値の関係の表示。そのほかに、本検査装置の特徴として、音声障害に限らず正常音声についても基本的な特性である、種々のスペクトル表示、ホルマント周波数・帯域幅の測定、サウンドスペクトログラフの表示も可能とした。また、波形のいろいろな編集機能(切り出し、追加、無音化)や音声の録音・再生機能も備えている。現在、第1次案に基づく装置はほぼ完成し、臨床における評価段階に入っている。「音声障害の音響的検査装置(以下検査装置と略称)」を試作し、その使用説明書を作成した。検査装置のハードウエア構成は2種類ある。一つは、特別に試作した音声入出力及び音声信号処理を高速・高精度で実行するための音声入出力処理装置とパーソナルコンピュータ(PC)で構成される検査装置で、他の一つは市販のサウンドボードとパーソナルコンピュータからなる検査装置である。両者はほぼ同じ機能を有するが、ピッチ周波数と音圧を同時に実時間で計測表示するphonetogram機能は、前者だけで可能である。PCで利用者と対話する部分は、Windows上に開発されているので、利用者にとって使いやすいだけでなく、いろいろなPC機種で動作することができるという利点を有する。検査装置の機能は、臨床で定型的な検査業務に利用するモードと、音声障害を研究用に多面的に利用するモードとからなる。定型的な検査業務では、患者が持続発声した母音から音声障害を客観的(音響的)に評価するために必要な評価パラメータを自動的に計測し、主な評価用音響パラメータを正常/病的の目安となる閾値と一緒にradar chartとして表示する。そのほかのパラメータも含めて、音響的評価に利用する音響パラメータは、同時にreport fileとして保存され、必要に応じて印字する。研究用のモードでは、持続母音だけでなく連続音性も処理できる。音声分析機能としては、ピッチ、フォルマント、FFT/LPCスペクトル、サウンドスペクトログラム、などを備えているだけでなく、音声合成の手法で音声障害を評価することもできる。これらの検査装置は臨床的に、精度や使い易さを評価し、十分実用に耐えられることが分かっている。 | KAKENHI-PROJECT-04555073 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04555073 |
APC癌抑制遺伝子産物の中枢神経系における機能 | 1.抗APC抗体を用いた免疫組織化学法によると、APCはマウスの中枢神経系全域に分布しているが、特に嗅球、海馬、小脳皮質での発現が高い。2.免疫電顕法によると、APCはニューロンの細胞体・神経線維・神経終末に広く分布していた。脊髄神経節や脳神経核のニューロンでは、細胞体部分の細胞質に大量のAPCが存在した。嗅球の僧帽細胞ではAPCは核内にも検出された。またAPCは小脳プルキンエ細胞の周囲に濃縮していたが、これはプルキンエ細胞を取り巻く、かご細胞の神経終末叢への局在であることがわかった。3.中枢神経系全域において毛細血管に一致したAPCの局在が示されたが、免疫電顕法によって詳細に調べたところ、APCは毛細血管の周囲に終わるアストロサイトの終足に局在していることが明らかになった。それに加えて、小脳の顆粒層ではアストロサイトの突起にもAPCの局在が見られた。4. APCとβ-カテニン及びhDLGの共存を二重免疫組織化学法で検索したところ、ニューロンではAPCとβ-カテニン・hDLGが共存していたが、アストロサイトでは共存は認められなかった。5. APCとシナプス伝達の関係を知るために、APCとシナプス関連タンパクPSD-95、DAP-1の分布・局在を検索した。PSD-95はマウス小脳皮質分子層全体に分布すると共に、プルキンエ細胞体を取り巻く、かご細胞の終末神経叢に濃縮しており、これはAPCの局在と一致した。二重免疫電子顕微鏡によってAPCとPSD-95及びAPCとDAP-1の共存の有無を検索したところ、分子層のシナプス後部のpostsynapticdensityにおいてAPCとPSD-95及びAPCとDAP-1の共存が認められた。1.抗APC抗体を用いた免疫組織化学法によると、APCはマウスの中枢神経系全域に分布しているが、特に嗅球、海馬、小脳皮質での発現が高い。2.免疫電顕法によると、APCはニューロンの細胞体・神経線維・神経終末に広く分布していた。脊髄神経節や脳神経核のニューロンでは、細胞体部分の細胞質に大量のAPCが存在した。嗅球の僧帽細胞ではAPCは核内にも検出された。またAPCは小脳プルキンエ細胞の周囲に濃縮していたが、これはプルキンエ細胞を取り巻く、かご細胞の神経終末叢への局在であることがわかった。3.中枢神経系全域において毛細血管に一致したAPCの局在が示されたが、免疫電顕法によって詳細に調べたところ、APCは毛細血管の周囲に終わるアストロサイトの終足に局在していることが明らかになった。それに加えて、小脳の顆粒層ではアストロサイトの突起にもAPCの局在が見られた。4. APCとβ-カテニン及びhDLGの共存を二重免疫組織化学法で検索したところ、ニューロンではAPCとβ-カテニン・hDLGが共存していたが、アストロサイトでは共存は認められなかった。5. APCとシナプス伝達の関係を知るために、APCとシナプス関連タンパクPSD-95、DAP-1の分布・局在を検索した。PSD-95はマウス小脳皮質分子層全体に分布すると共に、プルキンエ細胞体を取り巻く、かご細胞の終末神経叢に濃縮しており、これはAPCの局在と一致した。二重免疫電子顕微鏡によってAPCとPSD-95及びAPCとDAP-1の共存の有無を検索したところ、分子層のシナプス後部のpostsynapticdensityにおいてAPCとPSD-95及びAPCとDAP-1の共存が認められた。 | KAKENHI-PROJECT-10152222 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10152222 |
日蓮教学における観心の研究 | 日本仏教の底流にある観心の問題を通して、日蓮の宗教の思想的背景とその特色について明らかにすることが本研究の目的である。本研究を進めるにあたり、次の六項目について検討を試みた。1.天台教学における観心思想、2.日蓮における観心思想の受容、3.観心本尊抄お事具論、4.一念三千の名目出処、5.一念三千と立正安国、6.日蓮教学における観心思想の特色。1では日蓮教学の基盤となっている天台教学の観心思想について検討し、一心三観の観法や法華三昧などの行法が日蓮の観心思想の遠因となっていることを指摘した。2では、天台の観心を一念三千と認識した日蓮の独自な天台教学受容について述べ、これを題目受持お唱題に集約し、教観不二の宗旨を樹立していった日蓮の観心思想について検討した。3では、日蓮が独自な観心法門を論理的に体系づけた『観心本尊抄』の事具論を考察することによって、一念三千法門に立脚した日蓮の独自な観心思想について論述した。4では一念三千の名目出処に関する日蓮の叙述を通して、本門事一念三千に日蓮の観心思想の本質があることを論じた。5では、日蓮の観心思想の本質である一念三千の具現化が立正安国であることを、題目受持の唱題との関連のなかで論じ、日蓮の宗教具体性・現実性について検討した。6では、以上のまとめとして、日蓮教学における観心思想の特色を次の諸点に要約した。(1)時の認識、(2)末法救済のく教法、(3)一念三千の受容、(4)三業円満の唱題、(5)立正安国運動、(6)法華経の実践、(7)地涌の自覚、(8)本時の娑婆世界。これらの点をもって、日蓮の宗教が社会との関わりのなかで極めて具体的・現実的に展開していったことが指摘でき、個人的観念論ではなく、人々の日常生活にそくした日蓮は釈尊の世界をみていたことがわかる。日本仏教の底流にある観心の問題を通して、日蓮の宗教の思想的背景とその特色について明らかにすることが本研究の目的である。本研究を進めるにあたり、次の六項目について検討を試みた。1.天台教学における観心思想、2.日蓮における観心思想の受容、3.観心本尊抄お事具論、4.一念三千の名目出処、5.一念三千と立正安国、6.日蓮教学における観心思想の特色。1では日蓮教学の基盤となっている天台教学の観心思想について検討し、一心三観の観法や法華三昧などの行法が日蓮の観心思想の遠因となっていることを指摘した。2では、天台の観心を一念三千と認識した日蓮の独自な天台教学受容について述べ、これを題目受持お唱題に集約し、教観不二の宗旨を樹立していった日蓮の観心思想について検討した。3では、日蓮が独自な観心法門を論理的に体系づけた『観心本尊抄』の事具論を考察することによって、一念三千法門に立脚した日蓮の独自な観心思想について論述した。4では一念三千の名目出処に関する日蓮の叙述を通して、本門事一念三千に日蓮の観心思想の本質があることを論じた。5では、日蓮の観心思想の本質である一念三千の具現化が立正安国であることを、題目受持の唱題との関連のなかで論じ、日蓮の宗教具体性・現実性について検討した。6では、以上のまとめとして、日蓮教学における観心思想の特色を次の諸点に要約した。(1)時の認識、(2)末法救済のく教法、(3)一念三千の受容、(4)三業円満の唱題、(5)立正安国運動、(6)法華経の実践、(7)地涌の自覚、(8)本時の娑婆世界。これらの点をもって、日蓮の宗教が社会との関わりのなかで極めて具体的・現実的に展開していったことが指摘でき、個人的観念論ではなく、人々の日常生活にそくした日蓮は釈尊の世界をみていたことがわかる。仏教は教相と観心で成り立っている.教相は智慧に立脚して教義を明らかにすること,観心は正しい教義に立脚して仏道を実践することである.この両者が車の両輪のように一つとなって仏教の真髄である涅槃寂静の境地に到達することができるのである.仏教の実践修行である観心は,心の本性を観照して真理を体得することである.中国の天台大師智〓は一念心に空仮中の三諦を観ずる一心三観の観法を説いた.智〓の観心法門を摩訶止観の一念三千に見い出した日蓮は,これを仏教における究極の法門と受けとめ,末法という時代認識の中で,南無妙法蓮華経の題目信仰へと昇華していった. | KAKENHI-PROJECT-62510019 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62510019 |
日蓮教学における観心の研究 | 従来の観心修行が己心を観察する個人的な観念観法であったのに対し,日蓮は法華経を実践し,立正安国を実現するところに一念三千の観心修行があるとし,これを事行の南無妙法蓮華経と称した.日蓮の観心修行は法華経の本門に立脚した事の法門であり,極めて具体性・現実性に富んでいる.題目受持は単に口で南無妙法蓮華経と唱えるものではなく,身をもって法華経を実践し,法華経の世界を現実の歴史社会に実現することである.したがって,南無妙法蓮華経の題目受持は,日蓮にとって,個人的な修行ではなく,社会を仏国化していくための仏行であったのである.本年度は,中国の天台大師智〓から日本の日蓮にいたる,観心思想の流れとその特色について研究を進めた.日蓮の観心思想は、現実的・具体的であることにその特色がある。その要点をあげれば次の通りである。1.時の認識。日蓮は法華経の弘まるべき正しい時を仏滅後末法と受けとめた。それは末法悪世の劣機こそ、釈尊の深い慈悲が寄せられるという法華経が有する歴史的必然であった。2.末法救済の教法。日蓮は、末法の時代を救済しうる教えは法華経の肝心南無妙法蓮華経の五字七字であるとし、これを仏種・大良薬とみなした。末法の人々は仏の教えに違背した謗法の重病者であるため、仏種である妙法五字の大良薬を服し病を治癒するのである。3.一念三千の受容。日蓮は、釈尊の教えの中心は法華経にあり、法華経の肝要は本門寿量品にあり、本門寿量品の真髄は一念三千であるとし、釈尊の極理を一念三千と受けとめた。一念三千は釈尊の真実を証得する行法であると同時に妙法五字の教法、釈尊の久遠因果を結集した仏種でもある。4.三業円満の唱題。個人的な観念観法ではなく、日蓮は身・口・意の三業にわたる題目受持(唱題)に末法の観心をみた。したがって信心に立脚した具体的な法華経の実践を重視したのである。5.立正安国運動。日蓮は現実社会にそくして仏法の真実を見た。したがって現実の社会を仏国土とすることこそ、釈尊の本意であるとして、立正安国の実現を生涯の課題とした。6.法華経の実践。日蓮は釈尊の教えに信順し、経文通りに法華経を実践していった。そのため数々の法難を被ったが、そのことによってよりいっそう日蓮は自覚と使命感を深めた。7.地涌の自覚。法華経に説く仏滅後の弘経者地涌の菩薩を自己の身に主体化することによって、日蓮は法華経を末法の世に弘める師としての自覚を持つにいたった。8.本時の娑婆世界。仏と信仰者が一体となった永遠不滅の浄土を日蓮はこの現実社会(娑婆世界)にみた。以上の通り、本年度は日蓮の観心思想の特色について研究を進めた。 | KAKENHI-PROJECT-62510019 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62510019 |
ミトコンドリア活性増進という観点からの変形性関節症治療と分子的基盤の解明 | 近年、関節軟骨組織における軟骨分化を促進する一方で、骨分化へと繋がる肥大分化を抑制する低分子化合物TD-198946 (TD)が見出されている。我々は磁性ビーズ及びプロテオミクス的手法を用いてTDと直接相互作用するタンパク質の同定を実施し、その結果、TD相互作用タンパク質候補として複数のミトコンドリアタンパク質を同定した。TDによってこれらのミトコンドリアタンパク質間の相互作用が亢進することが軟骨分化に重要であることが示唆されている。また、前年度以前の解析により、これらのミトコンドリアタンパク質のリガンドとして報告されているAという低分子化合物が軟骨分化促進効果及び骨分化促進効果を有することも明らかにしている。今年度においては以下の3件に関して解析結果を得た。1.TDはMAPK (MAPキナーゼ)の活性化を介して、軟骨分化を促進することを見出し、TDによるMAPKの活性化にはTD標的ミトコンドリアタンパク質が関わっていることが分かった。2.TD標的ミトコンドリアタンパク質には、MAPKの活性化・抑制の二重の機能があり、これらのスイッチングが軟骨分化に重要であることが示唆された。3.変形性関節症治療のためにTDを搭載する微小人工骨を開発しており、これらの微小人工骨からの骨軟骨促進因子の適切なリリースの改良に成功した。13に関して、TD及びMAPK、TD標的ミトコンドリアタンパク質の関連を明らかにした。MAPKは骨軟骨分化において、重要な働きをしていることが以前から分かっており、TD標的ミトコンドリアタンパク質の内在的な骨軟骨分化の機能を見出した。3に関して、TDを実用化するために、微小人工骨の改良に取り組んでおり、天然二糖類を用いることによって、微小人工骨の性能を改良することができた。変形性関節症は、関節部に痛みを伴う疾病として代表的なものの一つであり、関節軟骨がすり減ることによって生じる関節部の慢性的な炎症が引き金となって起きる。近年、関節軟骨組織の軟骨分化を促進する一方で、骨分化へと繋がる肥大分化を抑制する低分子化合物TD-198946 (TD)が発見された。しかし、TDの標的因子も含め詳細なメカニズムは未だ不明であった。先行研究において、TDと直接相互作用するタンパク質の同定が磁性ビーズ及びプロテオミクス的手法を用いて実施されたところ、TD相互作用タンパク質候補として、複数のミトコンドリアタンパク質が同定された。その後の解析により、TDによってミトコンドリアタンパク質間の相互作用が亢進することが明らかとなり、この作用がTDの有する軟骨分化促進効果に関与していることが示唆されている。本年度においては、以下の1及び2に関して研究を実施した。1.これまでにこれらのミトコンドリアタンパク質のリガンドとして幾つかの低分子化合物が報告されており、その中の一つであるAFに関して、軟骨分化促進効果を有するかどうかを解析した。2.これらのミトコンドリアタンパク質の軟骨分化への関与を、プラスミドからの過剰発現系によって確認した。1に関して、マウス間葉系幹細胞及びマウス骨芽細胞株をAFで処理し、トルイジンブルー染色法、ALP染色法、RT-PCR法によって解析したところ、軟骨分化マーカー発現や軟骨基質産生の昂進だけでなく、骨分化マーカーの発現昂進が見られることが分かり、TD標的ミトコンドリアタンパク質の結合部位によって、軟骨分化・骨分化の遷移が生じることが示唆された。2においては、マウス間葉系幹細胞株において、ミトコンドリアタンパク質を発現すると、有意に軟骨分化マーカーの発現が上昇することが分かり、これらのミトコンドリアタンパク質が軟骨分化に直接に関与することが示唆された。研究計画においては、新たな軟骨分化促進低分子化合物のスクリーニングを実施することを計画していた。我々は、TD標的ミトコンドリアタンパク質に着目することで、実際に軟骨分化を促進する新たな低分子化合物を同定することに成功した。しかし、新たな軟骨分化促進化合物であるAFは、軟骨分化だけで無く、骨分化促進作用を有することが分かり、我々が注目しているミトコンドリアタンパク質は、軟骨だけでなく骨分化にも関与することが示唆された。TD標的ミトコンドリアタンパク質をマウス間葉系幹細胞株において過剰発現することで、軟骨分化マーカー発現が昂進することが明らかとなり、これらのミトコンドリアタンパク質が直接に軟骨分化に関与することが示唆された。また、これらのミトコンドリアタンパク質をマウス間葉系幹細胞株、ヒト胎児腎由来細胞株などで過剰発現すると、いずれの細胞においても細胞増殖活性が昂進することが分かり、これらのタンパク質の量的な増加によってミトコンドリア活性が大きく変動する可能性が考えられた。近年、関節軟骨組織における軟骨分化を促進する一方で、骨分化へと繋がる肥大分化を抑制する低分子化合物TD-198946 (TD)が見出されている。我々は磁性ビーズ及びプロテオミクス的手法を用いてTDと直接相互作用するタンパク質の同定を実施し、その結果、TD相互作用タンパク質候補として複数のミトコンドリアタンパク質を同定した。TDによってこれらのミトコンドリアタンパク質間の相互作用が亢進することが軟骨分化に重要であることが示唆されている。また、これらのミトコンドリアタンパク質のリガンドとして報告されている幾つかの低分子化合物に関して、軟骨分化促進効果を有するかどうかを解析したところ、その中の一つであるAが軟骨分化促進効果及び骨分化促進効果を有することも明らかにしている。今年度においては以下の3件に関して解析結果を得た。1.ミトコンドリアタンパク質リガンドAの有する骨分化促進作用はBMP経路依存的であることを見出した。 | KAKENHI-PROJECT-16K01924 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K01924 |
ミトコンドリア活性増進という観点からの変形性関節症治療と分子的基盤の解明 | 2.AおよびTDは、軟骨分化に関してお互いに競合的に働き、ミトコンドリアタンパク質の同一部位に結合することが示唆された。3.これらのミトコンドリアタンパク質は軟骨分化に伴い発現が上昇することが分かった。1に関して、Aで処理したマウス骨芽細胞株にBMP阻害剤もしくはBMPを加えることで、骨分化がそれぞれ阻害もしくは促進されることを確認しており、Aによる骨分化がBMP依存的であることが示唆されている。2においては、AおよびTDをマウス間葉系幹細胞株に同時に加えることで、単独で処理したときよりも軟骨分化が抑制されることを確認した。3に関しては、マウス間葉系幹細胞と比して、マウス軟骨前駆細胞においては、これらのミトコンドリアタンパク質の発現が転写レベルで上昇していることが分かり、これらのミトコンドリアタンパク質が内在的に軟骨分化に関与していることが示唆された。本研究においては、軟骨分化促進活性を有する他の低分子化合物のスクリーニングを主要な目的の一つとしているが、TDと結合する他の低分子化合物を解析することで、実際に高確率に軟骨分化誘導性低分子化合物を見つけることが可能であることを示した。しかしながら、今回同定された低分子化合物は軟骨分化だけではなく骨分化も促進することが明らかとなっており、軟骨分化単独の促進効果を有する低分子化合物を引き続きスクリーニングする予定である。既にいくつかの低分子化合物に関して解析を行っており、それらが軟骨分化を促進するという結果を予備的に得ている。また、軟骨分化に伴ってこれらのミトコンドリアタンパク質の発現が上昇することが示唆されており、ミトコンドリアタンパク質の相互作用の安定化と発現上昇がタンパク質レベルでの量的増加に繋がり、これらが軟骨分化を促進するために必要であることが考えられる。近年、関節軟骨組織における軟骨分化を促進する一方で、骨分化へと繋がる肥大分化を抑制する低分子化合物TD-198946 (TD)が見出されている。我々は磁性ビーズ及びプロテオミクス的手法を用いてTDと直接相互作用するタンパク質の同定を実施し、その結果、TD相互作用タンパク質候補として複数のミトコンドリアタンパク質を同定した。TDによってこれらのミトコンドリアタンパク質間の相互作用が亢進することが軟骨分化に重要であることが示唆されている。また、前年度以前の解析により、これらのミトコンドリアタンパク質のリガンドとして報告されているAという低分子化合物が軟骨分化促進効果及び骨分化促進効果を有することも明らかにしている。今年度においては以下の3件に関して解析結果を得た。1.TDはMAPK (MAPキナーゼ)の活性化を介して、軟骨分化を促進することを見出し、TDによるMAPKの活性化にはTD標的ミトコンドリアタンパク質が関わっていることが分かった。2.TD標的ミトコンドリアタンパク質には、MAPKの活性化・抑制の二重の機能があり、これらのスイッチングが軟骨分化に重要であることが示唆された。3.変形性関節症治療のためにTDを搭載する微小人工骨を開発しており、これらの微小人工骨からの骨軟骨促進因子の適切なリリースの改良に成功した。 | KAKENHI-PROJECT-16K01924 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K01924 |
心筋ミオシン分子における頭部・尾部接合部の機能的意義の検討 | 本研究では、ニワトリ平滑筋ミオシンをモデル分子として、ミオシン分子の頭部・尾部接合部(subfragment-2,S-2)の機能的意義を検討した。S-2領域の20および49残基の欠失変異体(Δ20およびΔ49)をバキュロウィルス発現系を用いて培養細胞に発現・精製し、変異型および野生型のミオシン分子のモーター機能を以下の方法で解析した。(1)In vitro motility assay :蛍光アクチンフィラメントが、ATPの存在下でミオシン分子上を滑り運動する速度(V)を計測した。(2)アクチンフィラメントの負荷となるαアクチニンの存在下でVを計測し、フィラメントに作用するミオシン分子の張力が負荷とバランスしてV=0となるαアクチニン濃度(ACT)を求めることにより、ミオシン分子の平均張力を計測した。(3)レーザートラップを用いて、1分子のミオシンとアクチンフィラメントの相互作用で生じる変位(Duni ; unitary displacement)と張力(Funi : unitary force)およびその持続時間(Ton)を計測した。VとACTは変異型(Δ20,Δ49)で野生型に比較して低下しており、特にΔ20ではΔ49に比較して欠失長が短いにもかかわらず、低下が大きかった(V,-38% vs.-23%; ACT,-67%VS.-38%)。然るに、変異型のDuni、Funiは野生型と差がなく、一方、Δ20ではTonが26%延長していた。これらの欠失変異体の速度・張力がともに低下していることから、S-2領域はミオシン分子のモーター機能に重要な役割を果たすが、分子の基本性能であるステップサイズや単一分子の発生張力には影響を及ぼさないことが示された。また、欠失長の短いΔ20の速度・張力がΔ49より低いことから、S-2領域の7個のアミノ酸残基の周期性の重要性が示唆された。本研究では、ニワトリ平滑筋ミオシンをモデル分子として、ミオシン分子の頭部・尾部接合部(subfragment-2,S-2)の機能的意義を検討した。S-2領域の20および49残基の欠失変異体(Δ20およびΔ49)をバキュロウィルス発現系を用いて培養細胞に発現・精製し、変異型および野生型のミオシン分子のモーター機能を以下の方法で解析した。(1)In vitro motility assay :蛍光アクチンフィラメントが、ATPの存在下でミオシン分子上を滑り運動する速度(V)を計測した。(2)アクチンフィラメントの負荷となるαアクチニンの存在下でVを計測し、フィラメントに作用するミオシン分子の張力が負荷とバランスしてV=0となるαアクチニン濃度(ACT)を求めることにより、ミオシン分子の平均張力を計測した。(3)レーザートラップを用いて、1分子のミオシンとアクチンフィラメントの相互作用で生じる変位(Duni ; unitary displacement)と張力(Funi : unitary force)およびその持続時間(Ton)を計測した。VとACTは変異型(Δ20,Δ49)で野生型に比較して低下しており、特にΔ20ではΔ49に比較して欠失長が短いにもかかわらず、低下が大きかった(V,-38% vs.-23%; ACT,-67%VS.-38%)。然るに、変異型のDuni、Funiは野生型と差がなく、一方、Δ20ではTonが26%延長していた。これらの欠失変異体の速度・張力がともに低下していることから、S-2領域はミオシン分子のモーター機能に重要な役割を果たすが、分子の基本性能であるステップサイズや単一分子の発生張力には影響を及ぼさないことが示された。また、欠失長の短いΔ20の速度・張力がΔ49より低いことから、S-2領域の7個のアミノ酸残基の周期性の重要性が示唆された。本研究では、心筋ミオシン分子の頭部・尾部接合部(S-2)領域の機能的意義を検討するものである。初年度では、すでに発現に成功しているニワトリ平滑筋ミオシンを用いてS-2領域の欠失変異体を作製し機能解析した。S-2領域の20および49残基の欠失変異体(S-2Δ20およびS-2Δ49)をバキュロウィルス発現系を用いて発現精製し、変異型および野生型の平滑筋ミオシンの分子機能を以下の方法で解析した。(1)ATP水解活性、(2)In vitro motility assay:蛍光ラベルしたアクチンフィラメントが、ATPの存在下で平滑筋ミオシン分子上を滑り運動する速度(V)を計測した。(3)レーザー・トラップ:1本の蛍光アクチンフィラメントの両端に結合させたポリスチレンビーズを2個のレーザー・トラップで操作し、ATPの存在下で平滑筋ミオシン分子と相互作用させる。1分子のミオシンとアクチンフィラメントの相互作用は、ビーズの微小な変位として高感度4分割光ダイオードで検出される。これより1回の相互作用で生じる変位(Duni ; unitary dispalcement)と張力(Funi : unitary force)およびその持続時間(Ton)を計測した。Vは変異型で野生型に比較して低下しており、特にS-2Δ20ではS-2Δ49に比較して欠失長が短いにもかかわらず、低下が大きかった(38%vs23%)。然るに、変異型のDuni、Funiは野生型と差がなく、S-2Δ20ではTonが26%延長していた。 | KAKENHI-PROJECT-17590710 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17590710 |
心筋ミオシン分子における頭部・尾部接合部の機能的意義の検討 | また、ATP水解活性は変異型と野生型で差がなかった。これらの結果より、S-2領域はミオシン分子のATP水解活性には影響を及ぼさないが、モーター機能には重要な役割を果たすことが示された。また、S-2Δ20の結果より、S-2領域が7個のアミノ酸残基の周期性を有することを考慮すると、この周期性が重要であることも示唆された。本研究では、ニワトリ平滑筋ミオシンをモデル分子とレて、ミオシン分子の頭部・尾部接合部(subfragment-2,S-2)の機能的意義を検討した。S-2領域の20および49残基の欠失変異体(Δ20およびΔ49)をバキュロウィルス発現系を用いて培養細胞に発現・精製し、変異型および野生型のミオシン分子のモーター機能を以下の方法で解析した。(1)in vitromotility assay:蛍光アクチンフィラーメントが、ATPの存在下でミオシン分子上を滑り運動する速度(V)を計測した。(2)アクチンフィラメントの負荷となるαアクチニンの存在下でVを計測し、フィラメントに作用するミオシン分子の張力が負荷とバランスしてV=0となるαアクチニン濃度(ACT)を求めることにより、ミオシン分子の平均張力を計測した。(3)レーザートラップを用いて、1分子のミオシンとアクチンフィラメントの相互作用で生じる変位(Duni ; unitary displacement)と張力(Funi : unitary force)およびその持続時間(Ton)を計測した。VとACTは変異型(Δ20,Δ49)で野生型に比較して低下しており、特にΔ20ではΔ49に比較して欠失長が短いにもかかわらず、低下が大きかった(V,-38% vs,-23% ; ACT,-67% VS,-38%)。然るに、変異型のDuni、Funiは野生型と差がなく、一方、Δ20ではTonが26%延長していた。これらの欠失変異体の速度・張力がともに低下していることから、S-2領域はミオシン分子のモーター機能に重要な役割を果たすが、分子の基本性能であるステップサイズや単二分子の発生張力たは影響を及ぼさないことが示された。また、欠失長の短レΔ20の速度・張力がΔ49より低いことから、S-2領域の7個のアミノ酸残基の周期性の重要性が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-17590710 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17590710 |
TGF-βファミリー分子とその中和分子による網膜内領域特異性決定機構の解明 | これまでの研究から発生後期の網膜においてVentroptinと逆勾配を持って発現する未知のTGF-βファミリー分子が存在し、この分子とventroptinとの相互作用により前後軸方向における網膜視蓋投射が制御されていることが推測された。そこで、まずVentroptinが網膜において二重勾配をなして発現している発生8日目のニワトリ網膜において、TGF-βファミリー分子の同定を試み、BMP-2、BMP-4、BMP-7、GDF-5、GDF-6、GDF-7の6種類が発現していることを明らかにした。次に、これらTGF-βファミリー分子の発生8日目のニワトリ網膜における発現パターンをin situ hybridizationによって解析したところ、BMP-2が背側・後側で高く腹側・前側で低い勾配を持って発現しており、Ventroptinと相補的な発現パターンを示すことが判明した。またBMP-2の発現開始時期はVentroptinが前後軸方向において勾配を持ち出す時期と一致していた。さらにBMP-2を網膜において異所的に発現させると、Ventroptinの場合とは逆に、ephrin-A2の発現が減少した。以上のことは、前後軸方向における網膜視蓋投射を制御する未知のTGF-βファミリー分子の実体がBMP-2であることを示している。また網膜前側領域特異性決定のマスター遺伝子であるCBF-1の作用機構を解析し、DNA結合依存的および非依存的に他の領域特異的遺伝子群の発現を調節することを明らかにした。特にBMP-2については、CBF-1がBMPシグナルを阻害することにより、BMP-2の発現を負に調節することを示した。これまでの研究から発生後期の網膜においてVentroptinと逆勾配を持って発現する未知のTGF-βファミリー分子が存在し、この分子とventroptinとの相互作用により前後軸方向における網膜視蓋投射が制御されていることが推測された。そこで、まずVentroptinが網膜において二重勾配をなして発現している発生8日目のニワトリ網膜において、TGF-βファミリー分子の同定を試み、BMP-2、BMP-4、BMP-7、GDF-5、GDF-6、GDF-7の6種類が発現していることを明らかにした。次に、これらTGF-βファミリー分子の発生8日目のニワトリ網膜における発現パターンをin situ hybridizationによって解析したところ、BMP-2が背側・後側で高く腹側・前側で低い勾配を持って発現しており、Ventroptinと相補的な発現パターンを示すことが判明した。またBMP-2の発現開始時期はVentroptinが前後軸方向において勾配を持ち出す時期と一致していた。さらにBMP-2を網膜において異所的に発現させると、Ventroptinの場合とは逆に、ephrin-A2の発現が減少した。以上のことは、前後軸方向における網膜視蓋投射を制御する未知のTGF-βファミリー分子の実体がBMP-2であることを示している。また網膜前側領域特異性決定のマスター遺伝子であるCBF-1の作用機構を解析し、DNA結合依存的および非依存的に他の領域特異的遺伝子群の発現を調節することを明らかにした。特にBMP-2については、CBF-1がBMPシグナルを阻害することにより、BMP-2の発現を負に調節することを示した。 | KAKENHI-PROJECT-15016111 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15016111 |
マーク・トウェインの文学における言葉遊びと暗号 | 本研究の目的は、19世紀米国人作家マーク・トウェインの文学における言葉遊びを使用したテキストの暗号化という表現手法の解明である。まず、トウェインの言葉遊びと暗号に対する関心の痕跡や実践例を彼の出版物、蔵書、ノート、書簡、原稿等を通して調査した。同時に、彼の言葉遊びに対する関心の土壌である19世紀米国社会における言葉遊び文化を調査した。その後、二つの調査結果を統合し、彼の文学を「言葉遊びの暗号的使用」という観点から理解するための批評的枠組みを構築。その枠組みを通して彼のフィクション作品の読解を行った。本研究の目的は、米国人作家マーク・トウェインの文学における言葉遊びを使用したテキストの暗号化という表現手法の解明である。より具体的には、トウェインが言葉遊びと暗号という緻密な形式上の工夫が求められる表現手法を多用していることを示すことで、彼のフォルマリストとしての新たな側面を提示することが目的ある。この目的のために平成28年度に行った研究とその実績の概要は以下の通りである:2)トウェイン、言葉遊び、暗号に関する一次・二次資料の収集と整理:トウェインのフィクション、ノンフィクション、書簡集、雑誌・新聞記事、ノート、小説The Adventures of Tom Sawyerのファクシミリ等といった一次資料及び本研究に必要なトウェイン研究書の一部を収集し、内容の精査を開始した。また、言葉遊びや暗号に関する研究書や文学作品の一部も収集し、内容の精査を開始した。3)収集した資料に基づくトウェイン文学の読解の開始:収集したトウェイン関連の資料及び言葉遊びと暗号の研究を使ってトウェインのフィクションを解読するための批評的な枠組みの構築を開始した。平成28年度に予定していた研究計画をおおむね順調に遂行できている。計画では、トウェイン50年代後期から70年代初期までの雑誌・新聞記事を集中的に調査する予定であった。この予定については、50年代後期から70年代初期の記事を収集し、読解を開始するという形で遂行できている。予定された研究発表については、平成28年3月24日にNEMLA(MLAの支部)において実施した。また、この研究発表に基づいた論文を現在執筆中である。完成次第、国外あるいは国外の学術誌に投稿する予定である。本研究の目的は、米国人作家マーク・トウェインの文学における言葉遊びを使用したテキストの暗号化という表現手法の解明である。トウェインが言葉遊びと暗号という緻密な形式上の工夫が求められる表現手法を多用していることを示すことで、彼のフォルマリストとしての新たな側面を提示する。上記目的のために2017ー18年度に行った研究内容と実績の概要は以下の通りである。1)資料調査:計画通り米国カルフォルニア大学バークレー校、Mark Twain Project(資料館)にて、2018年2月12日-16日の間に資料調査を実施。Tom Sawyer, Detectiveの原稿とトウェインの使用した辞書・辞典・暗号関連の資料に加え、言葉遊びへの言及や実例を含むノート、手紙、散文作品の原稿を精査し、一部デジタル化。資料はトウェインが様々なジャンルに渡って言葉遊びを頻繁に使用していたことを裏付ける点で重要な意義を持つ。3)批評の枠組み構築と小説読解:計画通り1・2年目の調査結果を整理し、批評的枠組みとして統合。その枠組みを使用したトウェイン作品の読解を開始。読解を進めつつ、研究成果を研究書にまとめる作業を行なっている。2018年度中には研究書の原稿が完成し、出版社選定に入る予定。本研究の目的は、19世紀米国人作家マーク・トウェインの文学における言葉遊びを使用したテキストの暗号化という表現手法の解明である。まず、トウェインの言葉遊びと暗号に対する関心の痕跡や実践例を彼の出版物、蔵書、ノート、書簡、原稿等を通して調査した。同時に、彼の言葉遊びに対する関心の土壌である19世紀米国社会における言葉遊び文化を調査した。その後、二つの調査結果を統合し、彼の文学を「言葉遊びの暗号的使用」という観点から理解するための批評的枠組みを構築。その枠組みを通して彼のフィクション作品の読解を行った。今後の研究の推進方策は下記の通りである:2)Pudd'nhead Wilson執筆時(1892-1893)に使用されていたトウェインのノートを参照するために、テキサス大学オースティン校Harry Ransom Centerを訪問する。また、同センター所蔵の小説A Murder, A Mystery A Marriageの原稿も参照する。4)統合と批評的枠組みの構築:1・2年目の調査結果を整理し、トウェインのフィクション作品における言葉遊びの暗号的使用の理解に有用な部分を批評的枠組みとして統合した上で、フィクション作品の中でも特に彼の小説の読解を集中的に行なう。29年度が最終年度であるため、記入しない。アメリカ文学29年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-16H07128 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H07128 |
細胞内カルシウムを光で操作できるマウスの開発 | 細胞内カルシウムを光で操作するために光感受性機能プローブ、メラノプシンを採用し、細胞種特異的にそれらを発現させるためにテトラサイクリン遺伝子発現誘導システムを採用した。tetO-メラノプシントランスジェニックマウスは、神経細胞tTAマウスとの組み合わせで十分なメラノプシンが誘導され、細胞内カルシウムを光で操作することが出来た。グリア細胞ではメラノプシンの発現誘導が不十分で、機能操作ができなかった。より高い発現を目指してメラノプシン遺伝子座を利用したSTOPtetO-メラノプシンノックインマウスも作成した。予想に反していかなる細胞種においてもメラノプシンの誘導がかからなかった。細胞内カルシウムを光で操作できる遺伝子改変マウスを樹立し、コミュニティーに提供することを目的とした。この目的のため、メラノプシンを細胞種特異的に発現させることができる遺伝子改変システムを構築した。まず最初は、プラスミドを用いた通常のtetOトランスジェニックマウスを作成した。オレキシン神経や海馬CA1錐体細胞にメラノプシンを発現させることに成功し、その神経活動を光で操作することができた。残念ながら、アストロサイトなどの非興奮性細胞に機能変化を引き起こすほどの高い発現量をもってメラノプシンを発現させることはできなかった。より高い遺伝子発現誘導を目指して、メラノプシン遺伝子そのものにSTOP-tetOをノックインする方法を用いた遺伝子改変マウスを作成した。予想に反してこのマウスはいかなるtTAマウスとの交配によってもメラノプシンを誘導させることができなかった。副次的な結果として、ホモ接合体はメラノプシンノックアウトマウスとして樹立できた。tetO-メラノプシントランスジェニックマウス、STOP-tetOメラノプシンノックインマウスともに理研バイオリサーチセンターへ供与し、誰もが使えるように手配した。次にCa透過型チャネルロドプシンを発現する遺伝子改変マウスの作出を試みた。L132C/T159C変異体が現状で最もCa透過性が高いと言われていたので、この変異体を用いてCa上昇記録を試みたが、透過イオンのほとんどがNaイオンで、アストロサイトの機能を操作するレベルのCa濃度上昇が得られなかった。そのためCa透過型チャネルロドプシン発現マウスの作出を断念し、メラノプシン発現マウスの解析実験に労力を費やした。細胞内カルシウムを光で操作するために光感受性機能プローブ、メラノプシンを採用し、細胞種特異的にそれらを発現させるためにテトラサイクリン遺伝子発現誘導システムを採用した。tetO-メラノプシントランスジェニックマウスは、神経細胞tTAマウスとの組み合わせで十分なメラノプシンが誘導され、細胞内カルシウムを光で操作することが出来た。グリア細胞ではメラノプシンの発現誘導が不十分で、機能操作ができなかった。より高い発現を目指してメラノプシン遺伝子座を利用したSTOPtetO-メラノプシンノックインマウスも作成した。予想に反していかなる細胞種においてもメラノプシンの誘導がかからなかった。細胞内カルシウム濃度を細胞種特異的に操作する方法が求められている。細胞種特異的に光感受性蛋白であるメラノプシン、もしくはチャネルロドプシンを発現させ、光で細胞内カルシウム濃度を操作するマウス実験系の構築を目指した。tetO-メラノプシンノックインマウスのキメラマウスと野生型マウスを交配し、生殖系列に子孫が伝搬することが確認できた。次に、tetO-メラノプシンマウスとMlc1-tTAマウス(アストロサイト特異的にtTAを発現するマウス)、PLP-tTAマウス(オリゴデンドロサイト特異的)、Iba1-tTAマウス(ミクログリア特異的)をそれぞれ交配させ、ダブルトランスジェニックマウスを得た。それぞれのダブルトランスジェニックマウスの脳を採取し、メラノプシン遺伝子が発現しているかin situ hybridization法で確認したが、全く誘導が得られなかった。一方で、神経細胞特異的tTAマウスとの交配においては、メラノプシン遺伝子がtTA特異的に発現し、光に応答して細胞が興奮したことから、誘導がかかりさえすれば光操作が可能であることが明らかになった。カルシウム透過型チャネルロドプシンを発現するマウスを得るためのターゲッティングベクターを構築できた。そのターゲッティングベクターを用いて、組換えES細胞を選別する実験を行ったが、200クローン中、1つも組換えES細胞を得ることが出来なかった。tetO-メラノプシンノックインマウスが生殖系列に伝わることまでは達成できた。しかし、実績のあるグリア細胞特異的tTAマウスと交配させたところ、メラノプシン遺伝子の発現誘導が得られなかった。tetOマウスをホモに、tTAマウスをホモにしてメラノプシン遺伝子の発現誘導が得られるか待たなければならない。カルシウム透過型チャネルロドプシンを発現するマウスを得るためにターゲッティングベクターを作成できたが、1回目のES細胞スクリーニングでは1つも組換えES細胞を得ることが出来なかった。ターゲッティングベクターの構築について再考を迫られた。メラノプシン遺伝子の発現量を最も高く誘導できる組み合わせの交配を重ね、グリア細胞にメラノプシン遺伝子を発現させる。ES細胞スクリーニングの失敗は、ターゲッティングベクターのhomology armの選択方法の失敗であった可能性が高いことから、homology armの長腕、短腕を逆転させたターゲッティングベクターを構築し、ES細胞スクリーニングを行う。メラノプシンマウスについては引き続き交配を重ね、ホモ同士のダブルトランスジェニックマウスを得る。 | KAKENHI-PROJECT-24650219 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24650219 |
細胞内カルシウムを光で操作できるマウスの開発 | 遺伝子発現誘導を組織学的に確認する一方で、得られたマウス脳からスライスを調整して光応答実験を行う。カルシウム透過型チャネルロドプシンマウスについては、ターゲッティングベクターを速やかに構築し、ES細胞スクリーニングに移行させる。 | KAKENHI-PROJECT-24650219 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24650219 |
脱窒素を伴うアリール化反応の研究と不斉Lewis塩基触媒を用いた不斉合成への展開 | これまでに得られた知見より、脱窒素によって反応する官能基をカルボニルα位のジアゾに変更し、遷移金属触媒によるアリール化反応の検討を試みた。市販のN-アルキルアニリンから合成したマロン酸アニリドに対してRegitzジアゾ転移反応によりジァゾ化することで、原料であるジァゾアニリドを合成した。これに対して遷移金属触媒によるアリール化反応の検討を種々おこなったところ、トリフルオロ酢酸パラジウムまたはパラジウムビスジベンジリデンアセトン2.5mol%存在下、テトラヒドロフラン中加熱還流することで所望のアリール化が進行した2-アルキリデンオキシインドールを高収率で得ることに成功した。更なる検討の結果、本反応は芳香環上の各種の置換基およびアルキルケトン・アリールケトンに対しても適用でき、いずれも高収率で目的物が得られることを見出した。本反応の反応機構については未だ不明な点が多く、特に2価のトリフルオロ酢酸パラジウムでも0価のパラジウムビスジベンジリデンアセトンでも反応が同様に進行する点は興味深い。2-アルキリデンオキシインドールは、deoxyviolaceinやtrigonostemonFなどいくつかの天然物のみならずtanidapやhesperadinなどの有用な生物活性化合物に見られる骨格であり、これらを既存の方法よりも比較的安価なトリフルオロ酢酸パラジウムを2.5mol%と低触媒量用いることによって高収率で合成できる点は重要な成果であると言える。当初予定していた官能基の安定性に問題があることが明らかとなったものの、脱窒素前駆体を変更することで効率的な遷移金属触媒によるアリール化反応を見出し、新規なオキシインドール骨格の構築法を確立した。脱窒素を伴うアリール化によるアルキリデンオキシインドール合成法をこれまでに確立したことから、今後は反応の中間体として推定されるパラジウムエノラートを起点とした分子内連続反応による全炭素四級炭素の構築が重要な検討課題の一つとして考えられる。本年度は求核試薬としての各種シリルジアゼンを合成してその安定性や物性を評価・確認すると共に、ベンズアルデヒドなどの単純な基質に対する反応性を確認し、反応が進行するものについてはクロスオーバー実験を行って、アリールアニオンが中間体として存在しているかどうかの知見を得ることを目的として基礎的な検討を行った。計画に従ってシリルジアゼンを実際に合成したところ、本化合物は通常の保存条件下若干の不安定性を有しており、また、その高い沸点により高極性官能基化や分子サイズの増大といった誘導体合成が困難であることが明らかとなった。合成された標準的なシリルジアゼンは、申請者の目論見通り、ベンズアルデヒドなど代表的な求電子剤の単純な添加に対してほとんど反応性を示さなかった。また、この化合物は通常のLewis酸触媒下でも求核剤としての作用を示さない一方で、銅やパラジウムといった遷移金属触媒の添加やテトラブチルアンモニウムフルオリドに代表されるLewis塩基によって脱窒素を伴った連鎖的な分解反応を起こすことが明らかとなり、一部の反応における副生成物の分析によりジアゼンへの求核的あるいはラジカル的な付加反応によるヒドラジン誘導体の生成が示唆された。本研究の目的である脱窒素を伴うアリール化反応の開発を目指す上で、これらの知見は試薬の基礎的性質のみならず汎用的な方法論確立の障害となり得る一定の制限を明らかとするものであり、長期的視点から今後の研究にとって意義深いものであると言える。これまでに得られた知見より、脱窒素によって反応する官能基をカルボニルα位のジアゾに変更し、遷移金属触媒によるアリール化反応の検討を試みた。市販のN-アルキルアニリンから合成したマロン酸アニリドに対してRegitzジアゾ転移反応によりジァゾ化することで、原料であるジァゾアニリドを合成した。これに対して遷移金属触媒によるアリール化反応の検討を種々おこなったところ、トリフルオロ酢酸パラジウムまたはパラジウムビスジベンジリデンアセトン2.5mol%存在下、テトラヒドロフラン中加熱還流することで所望のアリール化が進行した2-アルキリデンオキシインドールを高収率で得ることに成功した。更なる検討の結果、本反応は芳香環上の各種の置換基およびアルキルケトン・アリールケトンに対しても適用でき、いずれも高収率で目的物が得られることを見出した。本反応の反応機構については未だ不明な点が多く、特に2価のトリフルオロ酢酸パラジウムでも0価のパラジウムビスジベンジリデンアセトンでも反応が同様に進行する点は興味深い。2-アルキリデンオキシインドールは、deoxyviolaceinやtrigonostemonFなどいくつかの天然物のみならずtanidapやhesperadinなどの有用な生物活性化合物に見られる骨格であり、これらを既存の方法よりも比較的安価なトリフルオロ酢酸パラジウムを2.5mol%と低触媒量用いることによって高収率で合成できる点は重要な成果であると言える。シリルジアゼン自体に想定外の不安定性が観察され、その合成法確立・反応性検討・誘導化検討に時間を要したため。当初予定していた官能基の安定性に問題があることが明らかとなったものの、脱窒素前駆体を変更することで効率的な遷移金属触媒によるアリール化反応を見出し、新規なオキシインドール骨格の構築法を確立した。目標である汎用的な合成法確立に向け、より安定性の高く反応性の低い脱窒素前駆体を用いる必要性が想定されることから、スルホニルヒドラゾンの利用を視野に入れて今後の検討を行う予定である。 | KAKENHI-PROJECT-12J03172 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12J03172 |
脱窒素を伴うアリール化反応の研究と不斉Lewis塩基触媒を用いた不斉合成への展開 | 脱窒素を伴うアリール化によるアルキリデンオキシインドール合成法をこれまでに確立したことから、今後は反応の中間体として推定されるパラジウムエノラートを起点とした分子内連続反応による全炭素四級炭素の構築が重要な検討課題の一つとして考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-12J03172 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12J03172 |
東アジア諸国におけるダーウィン進化論の受容と変容の過程を解明する | おもに韓国を中心として、中国・台湾の事例を参考としつつ、ダーウィン進化論の受容と変容の過程を、研究者への聞き取り調査と文献調査により明らかにした。韓国では動物行動学と社会生物学の両者がほとんど同時に導入されているのが特徴である。1985年が動物行動学の最初の翻訳で、1991年にティンバーゲン、1992年にウィルソン、ドーキンス、1994年にローレンツ、フルディ、ドーキンス、モリス、さらに1995年は進化心理学(バス)も続いている。さらに、反社会生物学も1993年にNot in 0ur Genes、1995年には反社会生物学者を含めたシンポジウムの記録が出されている。もうひとつの特徴は、いくつかのバイパスが存在することである。初期(1990年まで)の文献はおもにフランス語文献からの翻訳で(「フレンチ・コネクション」)、これは、韓国への進化生物学の導入紹介に大きな貢献をしたリー・ビュンフン(全北大学教授・韓国生物多様性研究所長)が、フランスに留学していたことによるのだろう。さらに後期(1990年以降)になっても、英語圏からはクレブス&デイヴィスやメイナード・スミスは翻訳されていない。ウィルソンとドーキンスが中心である。この事情を日本と比較すると、日本では1980年代に正統ダーウィニズム(=進化総合説と、その改良版である社会生物学を導入しなければならなかったという「アクロバット」をしいられたのに対し、韓国では日本からさらに10年遅れて、1980年代後半から90年代前半にかけて、正統進化生物学と動物行動学と社会生物学を、三点セットにして導入した。日本が二重のアクロバットなら、韓国は三重のアクロバットを強いられている。また、韓国ではキリスト教の勢力が強く、その影響も無視できない。創造論はそれなりに盛んで、分子生物学者や生理学者の中には創造論に荷担する学者もいるという。1998年度は、おもに韓国における進化理論の受容と研究の現状について調査をおこなった。進化理論のなかでもとくに注目したのが、社会生物学や人間行動学を中心とする、人間への適用領域である。調査はいまだ予備的な段階をおおきく越えるものとはなりえていないが、韓国を代表する生態学者であるチェ・チェチェイ博士(ソウル国立大学生物学科助教授)や、社会学者のリー・マンガップ博士(ソウル国立大学名誉教授)、生物学者のリー・ビュンフン博士(全北国立大学韓国生物多様性研究所所長、生物学科教授)らへの聞き取り調査を中心に、韓国における社会生物学や進化理論の現状について、かなり正確なアウトラインを描くことができた。現在までに得られている結果は、韓国ではダーウィン進化理論そのものから古典的動物行動学、社会生物学理論、それへの反論、理論的な改訂版である進化心理学などが、すべてほとんど同時期に導入され、渾然一体となって受け入れられてるーといいうものである。その原因として、日本による植民地支配から朝鮮戦争にいたる歴史的・政治的状況が研究や高等教育のインフラ整備を遅らせたことが大きいようである。来年度は今年度の成果をふまえ、韓国において進化理論や人間社会生物学などが実際にどのような反応を受けているのかをさらにくわしく調査するとともに、中国の状況についても調査をおこなう予定である。おもに韓国を中心として、中国・台湾の事例を参考としつつ、ダーウィン進化論の受容と変容の過程を、研究者への聞き取り調査と文献調査により明らかにした。韓国では動物行動学と社会生物学の両者がほとんど同時に導入されているのが特徴である。1985年が動物行動学の最初の翻訳で、1991年にティンバーゲン、1992年にウィルソン、ドーキンス、1994年にローレンツ、フルディ、ドーキンス、モリス、さらに1995年は進化心理学(バス)も続いている。さらに、反社会生物学も1993年にNot in 0ur Genes、1995年には反社会生物学者を含めたシンポジウムの記録が出されている。もうひとつの特徴は、いくつかのバイパスが存在することである。初期(1990年まで)の文献はおもにフランス語文献からの翻訳で(「フレンチ・コネクション」)、これは、韓国への進化生物学の導入紹介に大きな貢献をしたリー・ビュンフン(全北大学教授・韓国生物多様性研究所長)が、フランスに留学していたことによるのだろう。さらに後期(1990年以降)になっても、英語圏からはクレブス&デイヴィスやメイナード・スミスは翻訳されていない。ウィルソンとドーキンスが中心である。この事情を日本と比較すると、日本では1980年代に正統ダーウィニズム(=進化総合説と、その改良版である社会生物学を導入しなければならなかったという「アクロバット」をしいられたのに対し、韓国では日本からさらに10年遅れて、1980年代後半から90年代前半にかけて、正統進化生物学と動物行動学と社会生物学を、三点セットにして導入した。日本が二重のアクロバットなら、韓国は三重のアクロバットを強いられている。また、韓国ではキリスト教の勢力が強く、その影響も無視できない。創造論はそれなりに盛んで、分子生物学者や生理学者の中には創造論に荷担する学者もいるという。 | KAKENHI-PROJECT-10780001 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10780001 |
納豆菌挿入配列の制御機構の解析 | コピー数の大きい納豆菌IS遺伝子群の制御機構を研究する上で、RNA-seq法による網羅的な転写物解析は一度に全ISの転写量を比較できるので非常に有効な手法である。RNA-seq解析はほぼ予定通り進んだ。まず最初に、最少培地で培養した野生株納豆菌から納豆菌全RNAを抽出し受託解析機関で分析した。各ISの発現量(RPMK値)の平均値は、IS4Bsu1が1.2 IS256Bsu1が51.2, IS643-likeが0.5, ISBma2-likeは0(検出されず), ISLmo1-likeは0.2であった。IS4Bsu1とIS256Bsu1が転移能を有する主要なISであることが裏付けられた。しかし、使用した培養条件下ではIS4Bsu1が転移することが推定できる(粘り消失株が現れる)ので、IS643-likeの0.5,およびISLmo1-likeの0.2は無視できるRPMK値ではなく、今後これらが転写されていることをqPCR法などで確認する必要がある。ISBma2-likeの転写産物は検出されなかった。恐らく偽遺伝子であると思われた。一方、転移頻度計測実験系の構築は当初計画よりもやや遅れている。各ISの発現制御の評価系構築のため、2つのプラスミドpQP1およびpQG1を入手した(東農大、吉川教授より分与)。いずれもIS4Bsu1の両末端繰り返し配列の間にレポーター遺伝子(pQP1はLacZ、pQG1はGFP)を連結したもので、転移先でそれらが発現した場合に酵素活性や蛍光を発現する仕組みである(hop-onアッセイ)。納豆菌にpQP1およびpQG1を導入したところ、LacZ活性染色法ではコロニーが部分的に青く染色された。しかし、通常の方法(Miller法)では有意なLacZ活性は測定できなかった。また、フローサイトメーター(Sony CE800)でGFP蛍光を捕らえようとしたが、分析細胞数を100万個まで増やしてもGFPの緑蛍光を有する細胞は検出できなかった。別の方法を検討する必要がある。挿入配列(IS)による細菌ゲノムの多様性獲得メカニズムとその制御機構を解明するためには、IS転移制御の評価系構築が重要である。昨年度に試みたレポーター遺伝子法(IS4Bsu1の両末端繰り返し配列とLacZ遺伝子あるいはGFP遺伝子の融合)の検出感度は低く、IS転移頻度を定量的に評価することができなかった。そこで、今年度はAkashiらによって開発された新しいIS転移検出法(Jumping CAT法、Akashi, Genes and Genetic Systems, 2017)を用いた研究を行った。Jumping CAT法ではレポーター遺伝子としてクロラムフェニコール耐性遺伝子(cat)が使用されているため、検出感度を大幅に向上させることが可能であった。実際、納豆菌ゲノムに組み込んだcat遺伝子が保存的に(コピー&ペースト)転移し、cat遺伝子が多コピー化したことをサザンハイブリダイゼーション法で確認できた。納豆菌ゲノム上で保存的複製を行うISの転移頻度を定量的に測定する評価系(Jumping CAT法)を構築した。Jumping CAT法では、発現調節領域を有しない(プロモーター無)クロラムフェニコール耐性遺伝子(cat)が転移により発現可能となることを利用する。納豆菌Ieeホモログ遺伝子(locus tag, BSNT_10618)の破壊株で観察された転移頻度は約10E-7(クロラムフェニコール耐性細胞数/総細胞数)であった。cat遺伝子が転移先で発現するためには、ゲノム内の構成的に転写される部位に正しい向きで挿入される必要がある。ゆえに、実際の転移頻度はこの値よりも高いと考えられた。加えて、クロラムフェニコール耐性株の中にIS4Bsu1とIS256Bsu1の両方のコピー数が増えていた株が容易に見つかることから、納豆菌BSNT_10618遺伝子は複数種ISの転移制御に関与していることが示唆された。相同性は低いもののBSNT_10618遺伝子はuvrB遺伝子とアミノ酸配列が似ている(ただし、BSNT_10618遺伝子のC末側にはuvrBには存在しないドメインがある)。uvrB遺伝子破壊株はUV感受性が高くなることが報告されている。そこで、BSNT_10618破壊株のUV感受性を調べたところ、野性株と比較してUV感受性に有意な差は認められなかった。大腸菌IeeおよびuvrBはエキソヌクレアーゼ活性を有し、それぞれISのゲノムからの切り出し、UV損傷したDNAの修復を担う。予想に反してBSNT_10618遺伝子破壊株のIS転移頻度が高くなったことは、BSNT_10618がIeeやuvrBと同様に特定のDNA配列に結合する能力を持ちISのゲノムからの切出しを抑制している可能性が示唆し、BSNT_10618遺伝子産物のエキスヌクレアーゼ活性の有無が重要な検討課題として浮上した。本研究では各ISの発現制御の評価系構築が重要である。初年度に試したIS両末端繰り返し配列の間にレポーター遺伝子を組み込んだhop-on実験系(pQP1およびpQG1)は、納豆菌をホスト株として用いた場合には上手く機能しないことが判明した。恐らく、納豆菌細胞内での転移頻度が実験室株より低いことが理由であると考えられた。極最近、新しいIS転移検出法として2017年3月にJumping CAT法が発表された(Akashi, Genes and Genetic Systems, 2017)。 | KAKENHI-PROJECT-16K07683 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K07683 |
納豆菌挿入配列の制御機構の解析 | これは、基本的にはやはりhop-onアッセイなのであるが、レポーター遺伝子にクロラムフェニコール耐性遺伝子が使用されているため検出感度を大幅に向上させることが可能である。今後はJumping CAT法を用いて研究を進める予定である。大腸菌でみつかったIS転移を促すタンパク質因子Iee(insertion sequence excision enhancer)の納豆菌ホモログに関する研究をすすめるため、Jumping CAT法による評価系を速やかに構築し、Ieeホモログ欠損株の作成等も平行して進める予定である。RNA-seq実験にについても分析対象株や培養条件を追加して引き続き継続して遂行する。既に、コンピテンスの向上した変異株NAFM73(degQ::Erm)株やいくつかの未発表変異株等からの全RNA精製を終了した。予算的制約のなかでできるだけ多くの株でRNA-seq解析を行いたいと考えている。初年度に行ったRNA-seq法による5種類の挿入配列(IS4Bsu1, IS256Bsu1, IS643-like, ISBma2-like, ISLmo1-like)の発現量検討について、研究代表者がすでに保有する各種変異株、特にコンピテンス誘導に関わる変異株を用いた解析に引き続き取り組む予定である。Jumping CAT法により検出されたクロラムフェニコール耐性獲得株については、転移したcat遺伝子周辺の塩基配列を解析し、末端繰り返し配列の類似性や転移のホットスポット情報を収集する。得られた結果は、すでに知見が得られている枯草菌実験室株(Bacillus subtilis 168)を用いて得られたデータと比較し、IS転移制御の普遍性検証を行う。ところで、実験室株にはBSNT_10618遺伝子が存在しない。つまり、BSNT_10618の前後のゲノム構造は納豆菌、枯草菌実験室の両者間で保存されているものの、BSNT_10618は納豆菌だけに存在する。納豆菌のBSNT_10618は近隣のuvrB遺伝子を元に遺伝子重複によって獲得された可能性が考えられ、ISの多重コピー化との関連性に興味が持たれるところである。そこで、相同性組換えを利用して枯草菌実験室にBSNT_10618を導入し、Jumping CAT法を用いて転移頻度に与える影響を評価する。この実験によって、BSNT_10618の転移抑制機能が直接証明されるだけでなく、様々な実験系の整った実験室株をホストとすることによって研究が加速されと期待できる。効率的な研究費使用を行ったため、残額が発生した。実験を効率よく進めることができたため。次年度、IS転移解析用試薬、消耗品の購入、賃金などに使用する予定。次年度使用額は主に消耗品試薬に使用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-16K07683 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K07683 |
増殖因子による幹細胞の増殖、生存及び未分化性維持の分子機構の解析 | 我々のこれまでの研究より、増殖因子のひとつFGFが、様々な組織幹細胞の維持増殖に重要な役割を果たしていることが明らかになっている。本年度は、特に以下の成果を得た。1.哺乳動物初期胚内において、転写因子Cdx2は、Bmp4の転写活性化を起こすことによって、幹細胞ニッチを維持している。これまでに、FGFやBmp4などのサイトカインは、in vitroで組織幹細胞を培養する際に必須の因子であることが示されてきた。しかしこれらサイトカインが、実際に個体内でどのような役割を果たしているか不明であった。哺乳動物の初期胚内では、ES細胞を含む内部細胞塊及び胎盤の幹細胞であるTS細胞が同時に維持されている。我々は、FGF4によって未分化性を維持しているTS細胞内で、FGF4の刺激によってCdx2が発現誘増され、Bmp4のプロモーター領域に結合し、Bmp4の発現を活性化することを見いだした。さらに、Bmp4は分泌されると、近接している内部細胞塊の増殖に重要であることを見いだした。すなわち、内部細胞塊とTS細胞が近接しているニツチにおいて、TS細胞内のCdx2がFGF4の刺激に応じてBmp4を産生し、その微妙なバランスによって、二種類の幹細胞がうまく維持されていることがわかった。2.ドッキング分子FRS2alphaは、神経幹細胞の増殖のみならず自己複製能維持にも重要な役割を果たしている。これまで我々は、FRS2alphaの変異マウスの解析より、FRS2alphaが、神経幹細胞の増殖に重要であることを示してきた。今回、レトロウイルスを用いた強発現系及び、siRNAによるノックダウン法を用いて、FRS2alphaが神経幹細胞の自己複製能維持にも必須であることを見いだした。いくつかの多能性幹細胞において、その維持や増殖、あるいは分化の初期段階において、増殖因子のひとつFGFが重要な役割を果たしていることが最近明らかになってきている。私は、新しいアダプター/ドッキング分子FRS2に注目し、解析した結果、これらの分子がFGFのシグナル伝達に深く関わり、幹細胞を制御していることを見い出している。本年度は以下の結果を得た。1.私は、FRS2alphaの機能を一部分失わせたマウスをgene targetingにより作製、解析している。そのひとつShp2結合部位欠失マウスは、大脳皮質の発生が悪い。このマウスを解析した結果、神経幹細胞の異常があることがわかった。神経幹細胞から、intermediate progenitor cellsへの分化がこのマウスではうまくいかないことがわかり、この分化のステップにFRS2alphaのShp2結合部位が必須であることがわかった。また、in vitroでFGF2存在下にneurosphereの形成能を調べると、この変異マウス由来の神経幹細胞は、小さいneurosphereしか形成できないことから、neurosphere細胞の増殖に、FRS2alpha Shp2結合部位は必須であることがわかった。2.FRS2alphaのノックアウトマウスを作製、解析した結果、FRS2alphaは、胎盤の幹細胞trophoblast stem(TS)細胞の維持に必須であることを見い出した。さらに、FRS2alphaは、FGF4の下流で、TS細胞内で転写因子Cdx2の活性化を介し、この分子がBmp4のエンハンサーに結合することにより、Bmp4の産生を誘導していることを見い出した。さらに、Bmp4は、epiblastに働いて、epiblastの成長を促すことも明らかにした。我々のこれまでの研究より、増殖因子のひとつFGFが、様々な組織幹細胞の維持増殖に重要な役割を果たしていることが明らかになっている。本年度は、特に以下の成果を得た。1.哺乳動物初期胚内において、転写因子Cdx2は、Bmp4の転写活性化を起こすことによって、幹細胞ニッチを維持している。これまでに、FGFやBmp4などのサイトカインは、in vitroで組織幹細胞を培養する際に必須の因子であることが示されてきた。しかしこれらサイトカインが、実際に個体内でどのような役割を果たしているか不明であった。哺乳動物の初期胚内では、ES細胞を含む内部細胞塊及び胎盤の幹細胞であるTS細胞が同時に維持されている。我々は、FGF4によって未分化性を維持しているTS細胞内で、FGF4の刺激によってCdx2が発現誘増され、Bmp4のプロモーター領域に結合し、Bmp4の発現を活性化することを見いだした。さらに、Bmp4は分泌されると、近接している内部細胞塊の増殖に重要であることを見いだした。すなわち、内部細胞塊とTS細胞が近接しているニツチにおいて、TS細胞内のCdx2がFGF4の刺激に応じてBmp4を産生し、その微妙なバランスによって、二種類の幹細胞がうまく維持されていることがわかった。2.ドッキング分子FRS2alphaは、神経幹細胞の増殖のみならず自己複製能維持にも重要な役割を果たしている。これまで我々は、FRS2alphaの変異マウスの解析より、FRS2alphaが、神経幹細胞の増殖に重要であることを示してきた。今回、レトロウイルスを用いた強発現系及び、siRNAによるノックダウン法を用いて、FRS2alphaが神経幹細胞の自己複製能維持にも必須であることを見いだした。 | KAKENHI-PROJECT-17045008 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17045008 |
大規模攪乱による生態系インパクトに関するマルチスケールの景観生態学的評価 | 本研究は、高分解能衛星データのGeoEye-1と中空間分解能の衛星データSPOT HRG-2を用いて仙台平野における土地被覆分類図を作成し、異なるスケールの震災前後の景観変化を明らかにした。結果から、海岸沿いにある森林のほとんどが倒壊したことや、広範囲の浸水によってほとんどの水田が耕作不能となっていたと示された。また、景観全体の分断化が拡大し、海岸沿いにより不均質な分布パターンになったことが明らかになった。それらの結果を元に、残存林パッチの分布箇所やパターンなどの現地状況を確認でき、今後それらの場所をホットスポットとして当該地域の自然再生や保全のために重要な基礎情報になると考える。本研究は、高分解能衛星データのGeoEye-1と中空間分解能の衛星データSPOT HRG-2を用いて仙台平野における土地被覆分類図を作成し、異なるスケールの震災前後の景観変化を明らかにした。結果から、海岸沿いにある森林のほとんどが倒壊したことや、広範囲の浸水によってほとんどの水田が耕作不能となっていたと示された。また、景観全体の分断化が拡大し、海岸沿いにより不均質な分布パターンになったことが明らかになった。それらの結果を元に、残存林パッチの分布箇所やパターンなどの現地状況を確認でき、今後それらの場所をホットスポットとして当該地域の自然再生や保全のために重要な基礎情報になると考える。本研究は、2011年3月に起きた東日本大震災で被災した宮城県仙台平野を対象地として、当該地域の再生や新しい都市計画に役立つ土地利用・被覆図などの基礎情報を整備し植生パッチや生息地の動態を景観生態学的観点から評価することを目的とした。平成24年度の研究実績として、中空間分解能の衛星データSPOT/HRG-2(空間分解能:10m)と高分解能衛星データのGeoEye-1(マルチスペクトル:2m、パンシャープン:0.5m)を用いて、広域スケール(約20km×20km)とサイトスケール(約2km×5km)ごとに当該地域の土地被覆分類図を作成し、震災前後の土地被覆変化を明らかにした。その結果、いずれの衛星データも、森林域と農耕地の土地被覆変化が最も大きかった。特に、震災前、海岸沿いに防砂林の森林が確認されるが、震災後は沿岸沿いの森林が壊滅的被害を受けた様子が鮮明に示されている。また、津波の浸水によって高速道路から海岸にわたる範囲にある農耕地は、ほとんど草地になった。各衛星データを用いた震災前後の景観解析の結果から、広域スケールのSPOTとサイトスケールのGeoEyeー1と比べて、GeoEyeを用いたサイトスケールにおける震災による景観構造の変化がより顕著で、森林、草地の孤立化・分断化の影響が大きかった。最後に、昨年度の研究を通じて、解析に必要となる衛星データを入手し、今後の景観構造と津波の関係の定式化と景観変遷のシミュレーションのために重要となる精度の高い土地被覆分類図を作成することができた。本研究は、2011年3月に起きた東日本大震災で被災した宮城県仙台平野を対象地として、当該地域の再生や新しい都市計画に役立つ土地利用・被覆図などの基礎情報を整備し、植生パッチや生息地の動態を景観生態学的観点から評価することを目的とした。平成25年度における主な研究実績については、中空間分解能の衛星データSPOT/HRG-2(空間分解能:10m)と高分解能衛星データのGeoEye-1(空間分解能:0.5m)およびRapidEye(空間分解能:5m)から作成した土地被覆分類図を基に、震災前後の景観変化を計測したうえで、海岸からの距離、標高、津波の浸水高ごとに評価した。解析結果から、海岸沿いにある防潮林(または防災林)の約9割が倒壊したことや、広範囲の浸水によってほとんどの水田が耕作不能となっていたことが明らかになった。また、景観の分断化が拡大し、海岸沿いにより多様な土地被覆タイプが不均質に分布する景観構造になったことが示された。さらに、海岸に近く、標高が低く、浸水が高くなるにつれて津波による土地被覆変化がますます大きくなり、景観も単一の土地被覆タイプがより均一的に分布するパターンとなったことを把握できた。以上から、震災後の景観変化の動態を異なるタイプの衛星データより定量的に解析し、評価することができた。それらの結果を基に、残存林パッチの分布箇所やパターンなどの現地状況を確認でき、今後それらの場所を生物多様性ホットスポットとするなど、当該地域の自然再生や保全のために重要な基礎情報になると考える。当初設定された研究目的に対して、本研究がこれまでおおむね目的に沿って順調に進んでいます。昨年度の研究を通じて、異なる空間スケールの衛星データを入手することができた。それらの衛星データを用いて仙台平野における広域スケールとサイトスケールの土地被覆分類図を作成し、震災前後の土地被覆変化を定量的に把握した。また、空間スケールごとに植生パッチの面積や分断化や孤立化などの景観構造と震災前後の変化も明らかにすることができた。以上の研究成果を、それぞれ国内の景観生態学会や生態学会にて学会発表し、津波によって当該地域にどのような影響をもたらしたか多くの学会参加者や震災の関連者に紹介した。さらに、昨年度の解析により新たな景観解析を行なうための研究手法なども確立でき、今後の研究に重要となる基礎研究を予想どおり進めることができた。25年度が最終年度であるため、記入しない。今後の研究方策については、これまで得られた広域スケールとサイトスケールの土地被覆分類図を基に、津波による大規模な撹乱と景観構造または景観の不均質性との関係を定式化していく予定である。 | KAKENHI-PROJECT-24810024 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24810024 |
大規模攪乱による生態系インパクトに関するマルチスケールの景観生態学的評価 | 本研究の遂行に当たって、当初広域スケールとして丘陵地も含めて地域全体における震災前後の景観構造を調べる予定であったが、これまでの解析結果から被災エリア特に研究対象としての沿岸にある植生域は地域全体に占める割合が少なく、津波の影響が顕著でなかったため、今後主に仙台平野と沿岸域のみを対象に解析を進めていくことにした。具体的には、震災前後の2時期(2010年10月、2011年11月)の衛星データSPOT HRG-2を用いた広域スケール(約9km×21km)と4時期(2010年4月、2011年3月、2012年4月、2013年4月(購入予定))の高分解能衛星データのGeoEyeー1とWorldView-2を用いたサイトスケール(約4km×10km)のような異なる空間スケールの景観構造と津波による大規模な撹乱との関係を明らかにする。また、これらの多時期の衛星データを用いて、当該地域の景観変遷をモニタリングし今後どう変わっていくかを既存モデルを用いて予測する。そのほか、津波による景観構造の変化は海岸からの距離や津波の浸水高や標高などの微地形との関係も提示していく予定である。これらの成果が得られたうえ、順次関連学術論文や学会にて発表し投稿する。現在の所、今年の5月末に開催される日本写真測量学会と6月の日本景観生態学会にて本研究課題の研究成果を発表する予定である。また、今年末までに国際学術誌に論文を投稿する予定である。25年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-24810024 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24810024 |
イオンチャネル型受容体TRPが繋ぐ痒みとアレルギー性炎症のクロストーク | 痛覚や痒覚などの末梢知覚は外部からの障害を認知し危険から逃れるための宿主防御反応であるが、時として過剰あるいは異常な反応が起こることがある。アトピー性皮膚炎などの皮膚アレルギーにおいて痒みは最も不快な臨床症状のひとつであるが、そのメカニズムには不明な点が多い。本研究では、末梢知覚に関与することが示唆されるTRPチャネルに着目し、TRPを欠損するアトピー性皮膚炎マウスモデルを用いることで、解析を試みた。痛覚や痒覚などの末梢知覚は、宿主を障害から回避させる機能である。一方炎症も、病原体による侵略の拡大を防ぎ、外敵を処理する宿主の防御反応である。アトピー性皮膚炎では、痒みや炎症が起こり病勢は悪化するが、痒みと炎症は連動することもしないこともある。しかし、末梢知覚と炎症との分子生物学的相互関係は不明のままである。本研究の目的は、末梢知覚とアレルギー性炎症のクロストークを、特に神経や免疫細胞に発現し、局所の温度やpH、酸素濃度などに反応して開閉し知覚を伝達するTransient receptor potential (TRP)チャネルに着目して細胞から生体レベルで解析し、アトピー性皮膚炎における異常な痒みと炎症が連関する機構を新たな角度から解析することである。そこで平成27年度は、強い痒覚と皮膚のアレルギー性炎症が惹起されるアトピー性皮膚炎モデルNC/Tndマウスを用いて、TRPチャネル欠損NC/Tndマウスの作成を進めている。TRPV欠損及びTRPA欠損C57BL/6マウスを用いたNC/Tndマウスへの戻し交配が6世代まで進み、TRPV欠損及びTRPA欠損NC/Tndマウスが作成されつつある。すでに5、6世代目のNC/Tndマウスを用いた予備試験を開始している。また、マウスの作成を行う間にin vitroの実験を進め、NC/Tndマウスの脳神経組織や免疫担当細胞におけるTRPチャネルの発現や、刺激に対する反応性を調べている。この研究により、肥満細胞やマクロファージにもTRPチャネルが発現しており、酸素濃度やサイトカインなどの外部刺激によって活性化すること、TRPチャネルを欠損するマウスから採取した細胞ではそのような変化が起こらないことを見つけている。特に肥満細胞では、酸素濃度応答性にTRPA1が活性化し、脱顆粒が誘導されることを見出し、現在論文投稿中である。TRPV欠損及びTRPA欠損NC/Tndマウスの戻し交配による作成が順調に進んでおり、また皮膚炎病態の惹起やかゆみや炎症等の評価系も問題なく稼働していることから、最終年度での研究成果が見込まれる。またin vitroの実験系においても、検出や評価などの実験系に苦労することなく、順調に進捗している。痛覚や痒覚などの末梢知覚は外部からの障害を認知し危険から逃れるための宿主防御反応であるが、時として過剰あるいは異常な反応が起こることがある。アトピー性皮膚炎などの皮膚アレルギーにおいて痒みは最も不快な臨床症状のひとつであるが、そのメカニズムには不明な点が多い。本研究では、末梢知覚に関与することが示唆されるTRPチャネルに着目し、TRPを欠損するアトピー性皮膚炎マウスモデルを用いることで、解析を試みた。平成27年度に行ってきたマウスの作成や、in vitro実験をさらに進めるとともに、平成28年度は以下のような計画で実験を遂行する。In vivoの実験では、TRPチャネル遺伝子を改変したコンジェニックNC/Tndマウスを用いて、解析を実施する。解析項目としては、痒覚による引っ掻き行動の画像解析・定量化(SCLABA®-Real解析)、痛覚の画像解析による定量化(SCLABA解析、von Freyテスト、ホットプレートテストなど)と評価を実施し、知覚異常を検出する。また、皮膚炎の人為的誘導あるいは自然発症に伴う皮膚のTRPチャネルの発現や活性化を、免疫組織化学、ウェスタンブロット法、リアルタイムPCR法などで検出する。さらに、TRPチャネルを薬物学的に阻止したり、TRP遺伝子欠損マウスを用い皮膚炎を誘導し、皮膚炎症がどのように修飾されるかを解析する。とくに止痒により、皮膚の慢性炎症に与える影響を解析する。このような計画により、総合的にNC/TndマウスにおけるTRPチャネルの反応性について検証し、痒みなどの知覚とアレルギー性炎症のクロストークに果たすTRPチャネルの役割を明らかにする。臨床獣医学 | KAKENHI-PROJECT-15K14867 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K14867 |
光誘起還元能を用いた有機・無機ハイブリッド環境負荷低減材料の創成 | 本研究は、グリーンテクノロジーに資する光誘起還元触媒に対し、物理化学的な視点(相界面制御と電気化学)から性能向上に取り組んだ。その際、「常温作動の二酸化炭素濃縮領域」を形成させ、実用性に富んだ高効率環境負荷低減材料(二酸化炭素還元)の開発を目指してきた。これは、「二酸化炭素を光触媒近傍に濃密に配し、その還元を促進させる」という材料設計コンセプトを、「常温で作動する“K-Al系複合酸化物"」と「共連続メソポーラス孔を有する“光誘起還元触媒"の多孔質ナノ粒子」を複合化することで実現し、取扱いが容易で高効率な二酸化炭素還元材料を提供することを狙いとした。ウェットプロセスを用いた2つの組成の粒子複合化(二酸化炭素吸着材:K-Al系複合酸化物の粒径数μmの多孔質体と、チタン酸ストロンチウム粒子の複合化)の条件探索を進め、そのノウハウを蓄積した。さらに、ウェットプロセス以外での複合化も探求し、一定の知見を蓄積することができた。一方、バナジウム酸ビスマス等を用いたナノ粒子の光電極化について、作製ノウハウを蓄積させた。また、本研究において、「光触媒還元能」と「キャリア寿命」の間の関係を考察していくことを研究目的の主眼の一つに挙げている。本研究で「キャリア寿命」の計測に用いる「マイクロ波光導電減衰法」は、電極や薄膜の形成を必要としない粉末状態(実際に光触媒がワークさせる状態と同じ環境)でキャリア寿命を計測することが特徴であるが、一つの閾値と予想していた「評価手法と解析方法の探索」は、大よそ達成できた。今後、各種の光触媒のキャリア寿命の測定結果を踏まえつつ、電子寿命と光触媒活性の間の学理の追求を深め、関連する相界面の現象メカニズムの解明を進展させて行きたい。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。本研究は、グリーンテクノロジーに資する光誘起還元触媒に対し、物理化学的な視点(相界面制御と電気化学)から性能向上に取り組んでいる。その際、「常温作動の二酸化炭素濃縮領域」を形成させ、実用性に富んだ高効率環境負荷低減材料(二酸化炭素還元)を開発を目指してきた。これは、「二酸化炭素を光触媒近傍に濃密に配し、その還元を促進させる」という材料設計コンセプトを、「常温で作動する“K-Al系複合酸化物"」と「共連続メソポーラス孔を有する“光誘起還元触媒"の多孔質ナノ粒子」を複合化することで実現し、取扱いが容易で高効率な二酸化炭素還元材料を提供することを狙いとしている。現状、ウェットプロセスを用いた2つの組成の粒子複合化(二酸化炭素吸着材:K-Al系複合酸化物の粒径数μmの多孔質体と、チタン酸ストロンチウム粒子の複合化)の条件探索を進め、そのノウハウを蓄積しつつある。さらに、ウェットプロセス以外での複合化についても、探求を開始した。一方、バナジウム酸ビスマス等を用いたナノ粒子の光電極化についても、作製ノウハウを蓄積させつつある。また、本研究において、光触媒還元能とキャリア寿命の間の関係を考察していくことを研究目的の主眼の一つに挙げている。本研究で「キャリア寿命」の計測に用いる「マイクロ波光導電減衰法」は、電極や薄膜の形成を必要としない粉末状態(実際に光触媒がワークさせる状態と同じ環境)でキャリア寿命を計測することが特徴であるが、一つの閾値と予想していた「評価手法と解析方法の探索」は、ほぼ終了させることができた。今後、各種の光触媒のキャリア寿命の測定を進め、電子寿命と光触媒活性の間の学理の追求を進展させていきたい。ウェットプロセスを用いた粒子複合化(チタン酸ストロンチウムと二酸化炭素吸着材)の条件探索は、一定の進展を得ている。一方、バナジウム酸ビスマスのナノ粒子の光電極化についても、作製ノウハウの蓄積が進んできている。また、本研究において、光触媒還元能とキャリア寿命の間の関係を考察していくことを研究目的の主眼の一つに挙げているが、マイクロ波光導電減衰法を用いた「キャリアライフタイム」の計測において、電極形成を必要としない粉末状態の無機系光触媒の評価が、可能であることを確認している。本研究は、グリーンテクノロジーに資する光誘起還元触媒に対し、物理化学的な視点(相界面制御と電気化学)から性能向上に取り組んでいる。その際、「常温作動の二酸化炭素濃縮領域」を形成させ、実用性に富んだ高効率環境負荷低減材料(二酸化炭素還元)の開発を目指してきた。これは、「二酸化炭素を光触媒近傍に濃密に配し、その還元を促進させる」という材料設計コンセプトを、「常温で作動する“K-Al系複合酸化物"」と「共連続メソポーラス孔を有する“光誘起還元触媒"の多孔質ナノ粒子」を複合化することで実現し、取扱いが容易で高効率な二酸化炭素還元材料を提供することを狙いとしている。現状、ウェットプロセスを用いた2つの組成の粒子複合化(二酸化炭素吸着材:K-Al系複合酸化物の粒径数μmの多孔質体と、チタン酸ストロンチウム粒子の複合化)の条件探索を進め、そのノウハウを蓄積しつつある。さらに、ウェットプロセス以外での複合化についても、探求を開始した。一方、バナジウム酸ビスマス等を用いたナノ粒子の光電極化についても、作製ノウハウを蓄積させつつある。また、本研究において、光触媒還元能とキャリア寿命の間の関係を考察していくことを研究目的の主眼の一つに挙げている。 | KAKENHI-PROJECT-16H02987 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H02987 |
光誘起還元能を用いた有機・無機ハイブリッド環境負荷低減材料の創成 | 本研究で「キャリア寿命」の計測に用いる「マイクロ波光導電減衰法」は、電極や薄膜の形成を必要としない粉末状態(実際に光触媒がワークさせる状態と同じ環境)でキャリア寿命を計測することが特徴であるが、一つの閾値と予想していた「評価手法と解析方法の探索」は、ほぼ達成できた。今後、各種の光触媒のキャリア寿命の測定を進め、電子寿命と光触媒活性の間の学理の追求を深め、関連する相界面の探求も同時に進展させていきたい。ウェットプロセスを用いた粒子複合化(チタン酸ストロンチウムと二酸化炭素吸着材)の条件探索は、一定の進展を得ている。一方、バナジウム酸ビスマスのナノ粒子の光電極化についても、作製ノウハウの蓄積が進んできている。また、本研究において、光触媒還元能とキャリア寿命の間の関係を考察していくことを研究目的の主眼の一つに挙げているが、マイクロ波光導電減衰法を用いた「キャリアライフタイム」の計測において、電極形成を必要としない粉末状態の無機系光触媒の評価が可能であることをすでに確認し、関連する相界面制御についても、新規の基礎的知見が得られている。本研究は、グリーンテクノロジーに資する光誘起還元触媒に対し、物理化学的な視点(相界面制御と電気化学)から性能向上に取り組んだ。その際、「常温作動の二酸化炭素濃縮領域」を形成させ、実用性に富んだ高効率環境負荷低減材料(二酸化炭素還元)の開発を目指してきた。これは、「二酸化炭素を光触媒近傍に濃密に配し、その還元を促進させる」という材料設計コンセプトを、「常温で作動する“K-Al系複合酸化物"」と「共連続メソポーラス孔を有する“光誘起還元触媒"の多孔質ナノ粒子」を複合化することで実現し、取扱いが容易で高効率な二酸化炭素還元材料を提供することを狙いとした。ウェットプロセスを用いた2つの組成の粒子複合化(二酸化炭素吸着材:K-Al系複合酸化物の粒径数μmの多孔質体と、チタン酸ストロンチウム粒子の複合化)の条件探索を進め、そのノウハウを蓄積した。さらに、ウェットプロセス以外での複合化も探求し、一定の知見を蓄積することができた。一方、バナジウム酸ビスマス等を用いたナノ粒子の光電極化について、作製ノウハウを蓄積させた。また、本研究において、「光触媒還元能」と「キャリア寿命」の間の関係を考察していくことを研究目的の主眼の一つに挙げている。本研究で「キャリア寿命」の計測に用いる「マイクロ波光導電減衰法」は、電極や薄膜の形成を必要としない粉末状態(実際に光触媒がワークさせる状態と同じ環境)でキャリア寿命を計測することが特徴であるが、一つの閾値と予想していた「評価手法と解析方法の探索」は、大よそ達成できた。今後、各種の光触媒のキャリア寿命の測定結果を踏まえつつ、電子寿命と光触媒活性の間の学理の追求を深め、関連する相界面の現象メカニズムの解明を進展させて行きたい。現状では、大幅な分担等の役割変更の必要性は、積極的な理由が存在しない。ウェットプロセスを用いた粒子複合化(チタン酸ストロンチウムと二酸化炭素吸着材)の条件探索や、バナジウム酸ビスマスのナノ粒子の光電極化の作製ノウハウの蓄積が進んできているが、昨年度に検討した以外のプロセスも含め更なる最適化を模索し、光触媒能の向上を試みる。 | KAKENHI-PROJECT-16H02987 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H02987 |
トライボ分子膜の分子層間摩擦・減耗修復特性の測定に関する研究 | 前年度の研究において,分子の配列構造に依存した凝着摩擦特性を測定するための課題として,摺動ピンの加重行程の位置決め精度や,繰り返し着脱時の再現性が最重要であることが判明した.これらを確保するために,下記の2点について改良を行った.まず,アームの篏合方法を改造して,アームの着脱に対して摺動子の位置の再現性を向上した.つぎに,アームの上方に静電容量式変位センサを新たに設置して,アームの垂直変位を直接測定することとした.これにより,接触点の同定精度は大幅に向上し,凝着力・摩擦力ともに,5μNの分解能での測定が可能となった.本装置を用いて,分子潤滑膜の配列構造の形成に伴う摩擦特性の変化を解明するために,極性潤滑剤PFPE Zdol2000と無極性潤滑剤PFPE ZO3の2種類を用いて,磁気ディスク表面に厚さ2nmの単分子層潤滑膜を形成し,摩擦特性の経時変化を測定するとともに,摩擦力と配列構造化との相関を明らかにした.得られた結果を要約すると以下のとおりである.(1)ZO3の摩擦力は,時間経過に依存せず,外部荷重の増加とともに線形に増加する.これは,無極性潤滑剤が固定分子を形成できないことに対応しており,流動分子のみから構成された潤滑膜の特徴といえる.(2)Zdol2000の摩擦力は,膜形成直後では,ZO3と同様に荷重に対して線形的に増加するが,時間経過にともない,摩擦力が増加するとともに,荷重の増加に対して飽和するような非線形関係に移行する.(3)Zdo12000の摩擦特性の経時変化は,ボンド膜厚と極性表面エネルギーの経時変化によく対応しているため,時間経過に伴う配列構造化の進展に起因するものと考えられる.固定分子の形成が進展すると,摩擦力が増加するとともに,荷重の変化に対してゴムのような弾性体に類似する摩擦特性を示すようになる.潤滑剤分子の配列構造に基づく分子層間摩擦を測定するためには,分子層の表面に接して摺動させる機構,および超低荷重化にともない顕在化する凝着力(法線力)と微小化する摩擦力(接線力)を測定する2軸の力検出機構が必要である.接触摺動機構としては,pin-on-disk方式を採用することとし,力検出機構の構成を中心にして試作を繰り返しながら,2軸力の検出機構の感度や再現性の向上を進めた.また検出した摩擦力の連続データの採取,load/unload操作の自動化,荷重増加ステップの自動化などの操作プログラムを作成した.1)凝着力検出機構ヘッドディスクインタフェース(HDI)への適用を想定して,設定可能荷重上限10mN,凝着力検出感度0.01mNを確保することとして,検出機構を設計した.変位拡大機構を装備したピエゾアクチュエータの50μmの稼働範囲において,摺動ピンの背面の変位をレーザ変位計で測定する方法により,接触開始点・分離開始点を同定して,再現性の分散0.02mNを実現した.変位拡大機構の蛇行的な送り,これに伴うレーザ反射面の擬似的変位などに問題が残されている.2)摩擦力検出機構摩擦の検出は,接線方向に可撓性を付与した起歪体の変位を高感度の静電容量変化の変位計で測定する方法を採用し,12000point/cycle(約6μm間隔)の分解能で100cycle分の連続データ採取が可能なシステムを構築した.3)凝着力・摩擦力の測定精度PFPE潤滑膜厚さ26nm,荷重範囲sub-mN領域において,試行的な実験を行い,凝着力に関しては,膜厚さや潤滑剤の種類に依存せず,おおむね0.2mN程度であるが,摩擦力に関しては,これらに依存して,大きさが0.020.08mNに及ぶとの結果を得た.しかし試料交換時の再現性に問題が残されており,定量的な比較は今後の課題である.前年度の研究において,分子の配列構造に依存した凝着摩擦特性を測定するための課題として,摺動ピンの加重行程の位置決め精度や,繰り返し着脱時の再現性が最重要であることが判明した.これらを確保するために,下記の2点について改良を行った.まず,アームの篏合方法を改造して,アームの着脱に対して摺動子の位置の再現性を向上した.つぎに,アームの上方に静電容量式変位センサを新たに設置して,アームの垂直変位を直接測定することとした.これにより,接触点の同定精度は大幅に向上し,凝着力・摩擦力ともに,5μNの分解能での測定が可能となった.本装置を用いて,分子潤滑膜の配列構造の形成に伴う摩擦特性の変化を解明するために,極性潤滑剤PFPE Zdol2000と無極性潤滑剤PFPE ZO3の2種類を用いて,磁気ディスク表面に厚さ2nmの単分子層潤滑膜を形成し,摩擦特性の経時変化を測定するとともに,摩擦力と配列構造化との相関を明らかにした.得られた結果を要約すると以下のとおりである.(1)ZO3の摩擦力は,時間経過に依存せず,外部荷重の増加とともに線形に増加する.これは,無極性潤滑剤が固定分子を形成できないことに対応しており,流動分子のみから構成された潤滑膜の特徴といえる.(2)Zdol2000の摩擦力は,膜形成直後では,ZO3と同様に荷重に対して線形的に増加するが,時間経過にともない,摩擦力が増加するとともに,荷重の増加に対して飽和するような非線形関係に移行する. | KAKENHI-PROJECT-17656059 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17656059 |
トライボ分子膜の分子層間摩擦・減耗修復特性の測定に関する研究 | (3)Zdo12000の摩擦特性の経時変化は,ボンド膜厚と極性表面エネルギーの経時変化によく対応しているため,時間経過に伴う配列構造化の進展に起因するものと考えられる.固定分子の形成が進展すると,摩擦力が増加するとともに,荷重の変化に対してゴムのような弾性体に類似する摩擦特性を示すようになる. | KAKENHI-PROJECT-17656059 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17656059 |
非平衡ガラス状態に凍結されたミクロボイドの制御に関する研究 | 本研究ではより効率的なミクロボイド制御の方法論を確立することを目的とする。まず、CO_2を多量に収着させた状態から一気に解放する(CO_2圧処理)ことによりガラス状高分子に本来存在するミクロボイドに加え、CO_2由来のミクロボイドが生成されるために、気体収着量並びに透過性が向上するのを確認した。CO_2圧処理により新たに生成されたミクロボイドのより詳細な知見を得るため、Xeガスを収着させて^<129>Xe NMRスペクトルを観測し、検討を加えた。^<129>Xeはその周りの環境によって化学シフト値が大きく変化するので、ミクロボイドに関する知見を得る上で有効な手段である。CO_2圧処理された膜中の^<129>XeNMRピークは未処理膜(徐冷膜)のものより高磁場側に現れ、その線幅は狭くなった。この原因については今後更なる検討が必要であるが、現段階ではミクロボイドの増大とその分布により理解される。一方、ミクロボイド制御の他の方法として、剛直な主鎖に種々の側鎖を導入することで、分子鎖の凝集形態(パッキング)をより疎なものにする方法を試みた。いくつかのポリイミド膜を合成・調製し、その気体輸送特性を検討した結果、主鎖構造が剛直かつ直線的であるポリイミドに対して、比較的短く剛直な側鎖をランダムに適量導入することが、効率的なミクロボイド制御の重要な指針といえた。さらに2種のポリマーを混合(ポリマーブレンド)することによるミクロボイド制御の可能性も検討した。ブレンドするポリマーの組み合わせによって、ミクロボイドが増減するいくつかの事例を発見した。また、結晶性高分子の中にはその結晶中に気体が溶解できるもののあることを明らかにした。結晶構造が有する形・サイズの規制された空隙は、最も高度に制御されたミクロボイドといえる。なお、この結晶構造は気体のみならず、いくつかの有機分子をも高度に分子認識して分離できる可能性も指摘できた。本研究ではより効率的なミクロボイド制御の方法論を確立することを目的とする。まず、CO_2を多量に収着させた状態から一気に解放する(CO_2圧処理)ことによりガラス状高分子に本来存在するミクロボイドに加え、CO_2由来のミクロボイドが生成されるために、気体収着量並びに透過性が向上するのを確認した。CO_2圧処理により新たに生成されたミクロボイドのより詳細な知見を得るため、Xeガスを収着させて^<129>Xe NMRスペクトルを観測し、検討を加えた。^<129>Xeはその周りの環境によって化学シフト値が大きく変化するので、ミクロボイドに関する知見を得る上で有効な手段である。CO_2圧処理された膜中の^<129>XeNMRピークは未処理膜(徐冷膜)のものより高磁場側に現れ、その線幅は狭くなった。この原因については今後更なる検討が必要であるが、現段階ではミクロボイドの増大とその分布により理解される。一方、ミクロボイド制御の他の方法として、剛直な主鎖に種々の側鎖を導入することで、分子鎖の凝集形態(パッキング)をより疎なものにする方法を試みた。いくつかのポリイミド膜を合成・調製し、その気体輸送特性を検討した結果、主鎖構造が剛直かつ直線的であるポリイミドに対して、比較的短く剛直な側鎖をランダムに適量導入することが、効率的なミクロボイド制御の重要な指針といえた。さらに2種のポリマーを混合(ポリマーブレンド)することによるミクロボイド制御の可能性も検討した。ブレンドするポリマーの組み合わせによって、ミクロボイドが増減するいくつかの事例を発見した。また、結晶性高分子の中にはその結晶中に気体が溶解できるもののあることを明らかにした。結晶構造が有する形・サイズの規制された空隙は、最も高度に制御されたミクロボイドといえる。なお、この結晶構造は気体のみならず、いくつかの有機分子をも高度に分子認識して分離できる可能性も指摘できた。本研究課題ではより効率的なミクロボイド制御の方法論を確立することを目的とする。CO_2ガスを吸着させたまま液体窒素温度まで急冷すると本系は非平衡状態にガラス化し、ミクロボイドを形成する。吸着したCO_2ガスをガラス状態で脱着昇華させるとその跡はさらにガラス状高分子に存在する未来のミクロボイドとなりうる。従って本プロセスはガラス状高分子に存在する本来のミクロボイドとCO_2ガス由来のミクロボイドの相乗的ミクロボイドの制御が可能である。これらのプロセスを複合化させることによりさらに広範囲なミクロボイドの制御を行いミクロボイドの制御の一般則を確立することを最終目的とする。ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド等のガラス状高分子の急冷凍結法による急速なガラス化の際の液体状態の処理温度が高い程、多くのミクロボイドを有するガラス状態の達成が明らかになった。この膜の吸着挙動が2元吸着機構で表され、ミクロボイドの量だけの変化によって説明された。透過挙動は急速なガラス化によるミクロボイドの変化を反映して、透過係数を増加させることができた。その膜の透過機構は部分不動化透過モデルによって表現できた。当初計画したミクロボイドの制御については概略達成できることが判明した。今後より広範囲の制御を目指した技術的な検討をする必要があるだろう。 | KAKENHI-PROJECT-07455381 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07455381 |
非平衡ガラス状態に凍結されたミクロボイドの制御に関する研究 | 学術上の問題点としてはミクムボイドのサイズとその分布の制御とその膜への気体の吸着・拡散・透過機構との関連をより詳細に検討すべきである。本研究ではより効率的なミクロボイド制御の方法論を確立することを目的とする。昨年度までに、炭酸ガスを多量に収着させた状態から一気に解放する(炭酸ガス圧処理と呼ぶ)ことによりガラス状高分子に本来存在するミクロボイドに加え、炭酸ガス由来のミクロボイドが生成されるために、気体収着量並びに透過性が向上するのを確認し、ミクロボイド制御の一方法を示すことができた。本年度は炭酸ガス圧処理により新たに生成されたミクロボイドのより詳細な知見を得るため、Xeガスを収着させて^<129>XeNMRスペクトルを観測し、検討を加えた。^<129>Xeはその周りの環境によって化学シフト値が大きく変化するので、ミクロボイドに関する知見を得る上で有効な手段である。炭酸ガス圧処理された膜中の^<129>XeNMRピークは未処理膜(徐冷膜)のものより高磁場側に現れ、その線幅は狭くなった。この原因については今後更なる検討が必要であるが、現段階ではミクロボイドの増大とその分布により理解される。一方、ミクロボイド制御の他の方法として、分子骨格が剛直であるポリイミドを用いた検討を行った。即ち、剛直な主鎖に種々の側鎖を導入することで、分子鎖の凝集形態(パッキング)をより疎なものにし、結果としてミクロボイドを制御する方法である。いくつかのポリイミド膜を合成・調製し、その気体輸送特性を検討した結果、主鎖構造が剛直かつ直線的であるポリイミドに対して、比較的短く剛直な側鎖をランダムに適量導入することが、効率的なミクロボイド制御を指向する上での重要な指針といえた。本研究ではより効率的なミクロボイド制御の方法論を確立することを目的とする。まず、CO_2を多量に収着させた状態から一気に解放する(CO_2圧処理)ことによりガラス状高分子に本来存在するミクロボイドに加え、CO_2由来のミクロボイドが生成されるために、気体収着量並びに透過性が向上するのを確認した。CO_2圧処理により新たに生成されたミクロボイドのより詳細な知見を得るため、Xeガスを収着させて^<129>XeNMRスペクトルを観測し、検討を加えた。^<129>Xeはその周りの環境によって化学シフト値が大きく変化するので、ミクロボイドに関する知見を得る上で有効な手段である。CO_2圧処理された膜中の^<129>XeNMRピークは未処理膜(徐冷膜)のものより高磁場側に現れ、その線幅は狭くなった。この原因については今後更なる検討が必要であるが、現段階ではミクロボイドの増大とその分布により理解される。一方、ミクロボイド制御の他の方法として、剛直な主鎖に種々の側鎖を導入することで、分子鎖の凝集形態(パッキング)をより疎なものにする方法を試みた。いくつかのポリイミド膜を合成・調製し、その気体輸送特性を検討した結果、主鎖構造が剛直かつ直線的であるポリイミドに対して、比較的短く剛直な側鎖をランダムに適量導入することが、効率的なミクロボイド制御の重要な指針といえた。さらに2種のポリマーを混合(ポリマーブレンド)することによるミクロボイド制御の可能性も検討した。ブレンドするポリマーの組み合わせによって、ミクロボイドが増減するいくつかの事例を発見した。 | KAKENHI-PROJECT-07455381 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07455381 |
レドックス活性高分子を修飾した生体高分子ハイブリッドの合成と電子移動制御 | 本研究は、抗体タンパク質である免疫グロブリンG(IgG)および酸化還元酵素であるグルコースオキシターゼ(GOD)に、片末端にレドックス活性基を有する単分散PEOを位置選択的に修飾し、これら生体高分子機能が保存あるいは改変された新規三次元ナノ組織体である生体高分子ハイブリッドを創製することにある。修飾IgGでは、抗原認識能が保存されたハイブリッド組織体を得、レドックス活性基の電子移動反応の検討を通し、免疫複合体形成を電気化学的に直接検出した。電子メディエーターとなるレドックス活性基を有するGODでは、未修飾GODにはみられない無酸素下での酵素活性発現さらにはレドックス活性基の電子移動反応による酵素機能のon-off制御を検討中である。本年度は、レドックス活性PEOの合成、生体高分子ハイブリッドの合成・精製法の確立および得られたIgGハイブリッドの電子移動反応を明らかにした。(1)レドックス活性PEOの合成:片末端に定量的にレドックス活性基、他の末端に水酸基を有するPEOは、フェロセニルメタノールあるいはフェノチアジンを出発物質、KOH等の塩基を触媒としたエチレンオキシドのアニオン開環重合によって合成した。(2)生体高分子ハイブリッドの合成・精製法の確立:レドックス活性PEOの片末端の末端水酸基をカルボキシル基に変換することによってIgGおよびGOD中の、それぞれのリジン残基への選択的修飾を行うことができた。限外濾過あるいはゲル濾過を行う事により精製法を確立した。(3)IgGハイブリッドの電子移動反応:(2)で得られたIgGハイブリッドの電子移動反応を、エレクトロケミカルワークステーションを用いて検討した結果、抗原-抗体反応を直接、電気化学的に検出することができた。本研究は、抗体タンパク質である免疫グロブリンG(IgG)および酸化還元酵素であるグルコースオキシターゼ(GOD)に、片末端にレドックス活性基を有する単分散PEOを位置選択的に修飾し、これら生体高分子機能が保存あるいは改変された新規三次元ナノ組織体である生体高分子ハイブリッドを創製することにある。修飾IgGでは、抗原認識能が保存されたハイブリッド組織体を得、レドックス活性基の電子移動反応の検討を通し、免疫複合体形成を電気化学的に直接検出した。電子メディエーターとなるレドックス活性基を有するGODでは、未修飾GODにはみられない無酸素下での酵素活性発現さらにはレドックス活性基の電子移動反応による酵素機能のon-off制御を検討中である。本年度は、レドックス活性PEOの合成、生体高分子ハイブリッドの合成・精製法の確立および得られたIgGハイブリッドの電子移動反応を明らかにした。(1)レドックス活性PEOの合成:片末端に定量的にレドックス活性基、他の末端に水酸基を有するPEOは、フェロセニルメタノールあるいはフェノチアジンを出発物質、KOH等の塩基を触媒としたエチレンオキシドのアニオン開環重合によって合成した。(2)生体高分子ハイブリッドの合成・精製法の確立:レドックス活性PEOの片末端の末端水酸基をカルボキシル基に変換することによってIgGおよびGOD中の、それぞれのリジン残基への選択的修飾を行うことができた。限外濾過あるいはゲル濾過を行う事により精製法を確立した。(3)IgGハイブリッドの電子移動反応:(2)で得られたIgGハイブリッドの電子移動反応を、エレクトロケミカルワークステーションを用いて検討した結果、抗原-抗体反応を直接、電気化学的に検出することができた。 | KAKENHI-PROJECT-08246220 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08246220 |
無限次元タイヒミュラー空間上のヴェイユ・ピーターソン計量の研究 | 普遍タイヒミュラー空間を円周上の擬対称写像群の空間とみなせば,その部分群から各種の普遍タイヒミュラー空間の部分空間が定義できる.これらをフックス群の作用に関して不変な空間として定義する場合には,擬対称写像を単位円板の擬等角写像に拡張し,双曲リーマン面上でその歪曲係数(ベルトラミ微分)の特徴付けを考える必要がある.双曲リーマン面上の可積分なベルトラミ微分がつくるタイヒミュラー空間とその上のヴェイユ・ピーターソン計量ついては先行の研究成果がある.今年度の研究では,可積分性に変えて,減衰オーダーを指定したベルトラミ微分からなるタイヒミュラー空間の複素構造とそのタイヒミュラー空間上の基点変換で不変な計量について考察した.この空間は,単位円板の場合には円周上のヘルダー連続な微分をもつ微分同相写像群のタイヒミュラー空間に相当するものである.このような普遍タイヒミュラー空間の部分空間をフックス群の作用と両立する形で構成する各種方法の一般的な比較も行った.円周の擬対称自己同相写像を単位円板の擬等角写像に拡張し,複素解析的に考察する方法とその応用についてを概観する講演を行った.2010年に行われた数理研短期共同研究「複素幾何学の諸問題」では,「無限次元タイヒミュラー空間の問題」と題して,普遍タイヒミュラー空間とその部分空間における群作用の固定点問題と,円周の自己同相写像群の共役に関する剛性の問題を述べた.これらの問題のその後の進展について,本研究課題で得られた研究成果との関係を報告した.平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。普遍タイヒミュラー空間に一般化されたヴェイユ・ピーターソン計量を導入するために,まず基礎となる可積分部分空間による普遍タイヒミュラー空間のアファイン葉層構造について調べた.通常のタイヒミュラー空間は単位円板上のベルトラミ微分の空間を使って表現されるが,p乗可積分タイヒミュラー空間(p>1)は,双曲計量に関してp乗可積分なベルトラミ微分に制限して定義される普遍タイヒミュラー空間の部分空間(正則な埋め込み)である.一方,タイヒミュラー空間はベアス埋め込みという写像により,単位円板上の正則2次微分のなすバナッハ空間の領域と同一視される.p乗可積分タイヒミュラー空間に対しては,単位円板上のp乗可積分(p>1)な正則2次微分形式からなるバナッハ空間を考える.ベルトラミ微分の空間と正則2次微分の空間の分解がベアス埋め込みにより対応することを証明した.2乗可積分な場合にはTakhtajan-Teoによる証明があるが,応用性のある簡略化にも成功している.このアファイン葉層構造を基にして,2乗可積分な場合はCui, Takhtajan-Teoはヴェイユ・ピーターソン計量を導入したが,それを一般化し,p乗ヴェイユ・ピーターソン計量をもつ部分空間による普遍タイヒミュラー空間の葉層構造を与えた.また本来あるタイヒミュラー距離との関係,ベルトラミ微分の可積分ノルムによるヴェイユ・ピーターソン距離の評価などの基本的性質を証明した.ヘルダー連続微分をもつ円周の微分同相写像のタイヒミュラー空間について,ベルトラミ微分のノルムから誘導される位相と微分同相写像のノルムから誘導される位相が同値であることを示した.その結果として,このタイヒミュラー空間は群構造に関して位相群となることが証明できた.ベルトラミ微分のノルムは双曲計量の重みをつけた上限ノルムを与え,そのような歪曲係数をもつ単位円板の擬等角同相写像の境界拡張が円周の微分同相写像となり,その1階微分までのヘルダーノルムが評価できることを証明した.逆向きの評価のためには,このような微分同相写像の等角重心拡張の歪曲係数を評価する方法を開発し,それが実行できた.Earleによる微分同相写像の等角重心拡張に関する論文の方法を改良した.結果としてこのタイヒミュラー空間が可縮であることもわかった.距離空間の凸性の一般化について研究し,等長変換群が有界軌道をもつならば固定点をもつような距離空間の特徴づけを行った.p-一様凸性と正規構造の関連を考察し,一様凸性の拡張概念を得た.研究目標としては,一般化されたWeil-Petersson計量をもつタイヒミュラー空間が,これらの性質をもつことを証明する.普遍タイヒミュラー空間の部分空間である可積分タイヒミュラー空間を,等角重心拡張により単位円板の擬等角自己同相写像として表現する問題については,Cuiによる先駆的な研究があるが,柳下はそれをフックス群作用のある場合に拡張し,リーマン面の可積分タイヒミュラー空間の理論をつくった.一方,ヘルダー連続微分をもつ単位円周の微分同相写像のタイヒミュラー空間の研究においても,等角重心拡張により定義されるタイヒミュラー空間からベルトラミ微分の空間への写像(タイヒミュラー射影の切断)の連続性は重要な性質であり,前年度までの研究で証明を与えている.本年度は柳下と共同で,リーマン面の可積分タイヒミュラー空間の元から等角重心拡張でつくられるリーマン面上の擬等角写像は,漸近的等角であることの直接的な証明を与えた.今後の複雑な計算に対応するため,数式ソフトMathematicaを導入した.演習として,1点穴あきトーラスの単純閉測地線の双曲長さを計算するプログラムをつくり発表した.また,その成果を援用して,正方トーラスのアーベル | KAKENHI-PROJECT-25287021 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25287021 |
無限次元タイヒミュラー空間上のヴェイユ・ピーターソン計量の研究 | 被覆としての整格子点を除く平面上に,双曲計量から誘導される距離を考えたとき,カスプ近傍を除けば,それは平面上のある実ノルムから定まる距離と定数1の擬等距離同値であることを実験的に発見した.その他直接には研究課題と関係しないが,無限次元タイヒミュラー空間につながる問題として,無限型リーマン面のショットキー一意化について研究した.リーマン面が無限生成の古典的ショットキー群で一意化できるための擬等角同値類の必要条件および十分条件をそれぞれ与えた.可積分タイヒミュラー空間の一般化されたヴェイユ・ピーターソン計量について,その幾何学的な性質を調べることが研究課題の中心であるが,タイヒミュラー計量との比較や誘導される距離のベルトラミ微分のノルムでの評価など基本的なことまでができあがった状態である.目標とする距離の凸性に関連する問題は,手がかりがみつからず,本質的な進展はみられていない.普遍タイヒミュラー空間のいくつかの部分空間について,剰余類分解がベアス埋め込みにより,線形部分空間によるアファイン葉層化と完全に対応することを証明した.この結果は,対称写像からなる部分空間については既に知られている重要な結果であり,漸近的タイヒミュラー空間のベアス埋め込みの単射性を保証するものである.2乗可積分タイヒミュラー空間に関して,普遍タイヒミュラー空間の剰余類分解とヴェイユ・ピーターソン計量に関する連結成分への分解との対応についてはTakhtajan-Teoにより示されていたが,今年度の研究では,一般にp乗可積分タイヒミュラー空間に対して,上記のベアス埋め込みでの対応関係を証明した.また,任意の指数のヘルダー連続微分をもつ円周の微分同相写像からなる部分空間に対しても同様の結果を得た.これまでの研究課題では,対称写像による微分同相写像群の共役に関する剛性定理を定式化し,微分同相写像によるメビウス変換群への共役が存在するための必要十分条件について考察していた.剛性定理のもうひとつの応用として,フックス群の微分同相写像群のなかでの変形空間によい構造を与える問題について今年度は取り組んだ.そのためにまず,対称写像のなかでの変形空間に,円周上の群不変対称構造のタイヒミュラー空間としての複素構造を与え,擬等角タイヒミュラー空間論の枠組みでの基礎理論を整備した.微分同相写像群のなかでの変形空間をこのタイヒミュラー空間に埋め込むために,上記のベアス埋め込みが双方の剰余類の構造を保つという結果を応用した.微分同相写像群のクラスとしては,これまでヘルダー連続微分をもつものを扱っていたが,高階の滑らかさをもつ写像に関しても一次元力学系理論を用いて拡張できることを示した.剛性定理における微分可能性度の昇級について,これまでの複素解析的証明はこれで置き換えることが可能になった.本研究課題で残された大きな問題は,p乗可積分タイヒミュラー空間に定義された拡張されたヴェイユ・ピーターソン計量のフィンスラー計量としての幾何学的な性質を考察し,距離関数の凸性,距離空間の正規構造などを証明することである.そののち,この空間の等長変換群の固定点性質を証明し,可積分対称写像によるメビウス変換群への共役の存在を帰結する議論は大筋が完成している.本年度の研究では,この前半部分の課題については少しの進展があったのみであるが,後半部分に付随する議論が別方向に大きく発展した.その意味では,課題全体としては研究が順調に進展していると考えられる.古典的なポアソン積分よる円周の自己同相写像が擬等角写像となるクラスとしてソボレフ空間H(1/2)がある. | KAKENHI-PROJECT-25287021 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25287021 |
公共的利益に資する科学技術分野への貢献を目指した全球数値標高モデルの体系的整備 | 本研究は,写真測量(ステレオ観測),地形図,干渉SAR,航空機レーザー測量といった互いに補完的な性質を有する技術を複合的に利用することにより,数値表面モデル(DSM)と数値地形モデル(DTM)とを厳密に区別し,全球の数値標高モデル(DEM)を体系的に整備することを目的に実施された.3年間という短い実施期間を考慮し,1)補完的な役割を果たす衛星ステレオ観測と干渉合成開口レーダーの長所を最大限に生かしDSMからDTMを作成するアルゴリズムを開発する,2)植生に対して高い貫通力を持つLバンドを搭載する世界で唯一の日本の衛星ALOSPALSARの干渉合成開口レーダーを活用する,3)公共的利益に資する科学技術分野への利用に資するために全球データセットを体系的に整備して国際的な流通を目指す,の3点を目標に研究を行った.その結果,当初予定していた全球でのDTMデータセットの他に,建物の構造分布図,森林や農地のバイオマス分布図などのデータセットが副次的に整い,炭素循環,大気環境,都市防災,など,公共的利益分野における,利用主体型の科学技術研究に資するデータセットの利用体制が整った.本研究は,写真測量(ステレオ観測),地形図,干渉SAR,航空機レーザー測量といった互いに補完的な性質を有する技術を複合的に利用することにより,数値表面モデル(DSM)と数値地形モデル(DTM)とを厳密に区別し,全球の数値標高モデル(DEM)を体系的に整備することを目的に実施された.3年間という短い実施期間を考慮し,1)補完的な役割を果たす衛星ステレオ観測と干渉合成開口レーダーの長所を最大限に生かしDSMからDTMを作成するアルゴリズムを開発する,2)植生に対して高い貫通力を持つLバンドを搭載する世界で唯一の日本の衛星ALOSPALSARの干渉合成開口レーダーを活用する,3)公共的利益に資する科学技術分野への利用に資するために全球データセットを体系的に整備して国際的な流通を目指す,の3点を目標に研究を行った.その結果,当初予定していた全球でのDTMデータセットの他に,建物の構造分布図,森林や農地のバイオマス分布図などのデータセットが副次的に整い,炭素循環,大気環境,都市防災,など,公共的利益分野における,利用主体型の科学技術研究に資するデータセットの利用体制が整った.本研究は,写真測量(ステレオ観測),地形図,干渉SAR,航空機レーザー測量といった互いに補完的な性質を有する技術を複合的に利用することにより,数値表面モデル(DSM)と数値地形モデル(DTM)とを厳密に区別し,全球の数値標高モデル(DEM)を体系的に整備することを目的とする.3年間という短い実施期間を考慮し,次の3点に焦点を絞り技術開発を行う.1)補完的な役割を果たす衛星ステレオ観測と干渉合成開口レーダーの長所を最大限に生かしDSMからDTMを作成するアルゴリズムを開発する,2)植生に対して高い貫通力を持つLバンドを搭載する世界で唯一の日本の衛星ALOS PALSARの干渉合成開口レーダーを活用する,3)公共的利益に資する科学技術分野への利用に資するために全球データセットを体系的に整備して国際的な流通を目指す.本研究は,a)地形図を参考にしたASTER GDEMとSRTM3の空間分特性解析,b)土地被覆分類図と人口分布図を参考にしたDSMからDTM作成アルゴリズムの開発,c)Lバンド干渉合成開口レーダーと衛星・航空機レーザー測量を用いた妥当性の検討の3つに分けられる.次に示すように,およそ半年間を目安に各要素技術の開発を進めた.[平成22年度前半の半年間:空間分布特性解析]日本の国土地理院と米国の地質調査所から得られる地形図を元に,ASTER GDEMとSRTM3からDSMとDTMを区分するための空間分布特性解析を行った.[平成22年度後半の半年間:DTM作成アルゴリズムの開発]全球土地被覆分類図と人口分布図から得られた情報を元に,DEMからDTMを作成するアルゴリズムを開発した.本研究は,写真測量(ステレオ観測),地形図,干渉SAR,航空機レーザー測量といった互いに補完的な性質を有する技術を複合的に利用することにより,数値表面モデル(DSM)と数値地形モデル(DTM)とを厳密に区別し,全球の数値標高モデル(DEM)を体系的に整備することを目的とする.3年間という短い実施期間を考慮し,次の3点に焦点を絞り技術開発を行う.1)補完的な役割を果たす衛星ステレオ観測と干渉合成開口レーダーの長所を最大限に生かしDSMからDTMを作成するアルゴリズムを開発する.2)植生に対して高い貫通力を持つLバンドを搭載する世界で唯一の日本の衛星ALOS PALSARの.干渉合成開口レーダーを活用する,3)公共的利益に資する科学技術分野への利用に資するために全球データセットを体系的に整備して国際的な流通を目指す.本研究は,a)地形図を参考にしたASTERGDEMとSRTM3の空間分特性解析,b)土地被覆分類図と人口分布図を参考にしたDSMからDTM作成アルゴリズムの開発,c)Lバンド干渉合成開口レーダーと衛星・航空機レーザー測量を用いた妥当性の検討の3つに分けられる.次に示すように,およそ半年間を目安に各要素技術の開発を進めた.[平成23年度前半の半年間:DTM作成アルゴリズムの検討と改良]衛星・航空機レーザー測量から得られた情報と比較することにより,特に地形の急峻な地域,森林,都市などでのアルゴリズムの妥当性を検討し改良を加えた.[平成23年度後半の半年間:Lバンド干渉合成開口レーダー処理の検討と改良] | KAKENHI-PROJECT-22760384 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22760384 |
公共的利益に資する科学技術分野への貢献を目指した全球数値標高モデルの体系的整備 | 衛星・航空機レーザー測量から得られた情報と比較することにより,Lバンド干渉合成開口レーダー処理妥当性の検討と改良を行った.本研究は,写真測量(ステレオ観測),地形図,干渉SAR,航空機レーザー測量といった互いに補完的な性質を有する技術を複合的に利用することにより,数値表面モデル(DSM)と数値地形モデル(DTM)とを厳密に区別し,全球の数値標高モデル(DEM)を体系的に整備することを目的とする.3年間という短い実施期間を考慮し,次の3点に焦点を絞り技術開発を行う.1)補完的な役割を果たす衛星ステレオ観測と干渉合成開口レーダーの長所を最大限に生かしDSMからDTMを作成するアルゴリズムを開発する,2)植生に対して高い貫通力を持つLバンドを搭載する世界で唯一の日本の衛星ALOS PALSARの干渉合成開口レーダーを活用する,3)公共的利益に資する科学技術分野への利用に資するために全球データセットを体系的に整備して国際的な流通を目指す.本研究は,a)地形図を参考にしたASTER GDEMとSRTM3の空間分特性解析, b)土地被覆分類図と人口分布図を参考にしたDSMからDTM作成アルゴリズムの開発, c)Lバンド干渉合成開口レーダーと衛星・航空機レーザー測量を用いた妥当性の検討の3つに分けられる.次に示すように,およそ半年間を目安に各要素技術の開発を進めた.3年間の実施機関の2年目が終了したが,当初の予定とおり順調に進展している.24年度が最終年度であるため、記入しない。最終年度は,本研究で開発した手法を用いて作成したデータセットをウェブを通じて公開すべく準備を進めている.24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22760384 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22760384 |
ナノスペースでの分子制御をめざしたミクロ多孔体膜分離システムの開発 | 本研究では、二酸化炭素、メタン、一酸化窒素、酸素、窒素などの重要な気体および蒸留法では分離が困難な共沸或いは近沸点混合物等の分離対象を、固体ナノスペース中で認識し分離することの出来るミクロ多孔体膜を用いた革新的な膜分離システムの実用化を目標とし以下の成果を得た。1)比較的低温で熱分解しやすいスルホン酸基含有フェノール樹脂やポリイミドを前駆体とした炭化膜について、従来の炭化膜の焼成温度以下で高分子骨格の分解に先立ってスルホン基が分解することによりフレキシブルで十分な強度の自立膜が作成でき、膜性能もこれまでの炭化膜に匹敵する性能を有することが分かった。2)3種の芳香族ジアミンからなるポリイミド非対称中空糸膜を前駆体とした炭化膜を作製し、オレフィン/パラフィンガス分離特性を調べた。FE-SEM写真によれば、600°C炭化膜ではノジュールが融着した構造をしておりスキン層は200nm程度で中空糸膜の非対称構造は炭化処理後も保持されていることが分かった。600°C炭化膜におけるプロピレンのパーミアンスR_<C3H6>は50GPUで分離係数α_<C3H6/C3H8>は1315と優れた分離性能を示した。3)シリカライト膜では従来法で合成した膜に比べ大幅に透過流束が改善されエタノール/水(5/95wt%)混合液に対して60°Cで透過流束1kg/m^2h以上、分離係数80以上のゼオライト膜の合成が可能になった。4)T型ゼオライト膜は二酸化炭素/メタン系や二酸化炭素/窒素系でこれまでの高分子膜の性能をしのぐ優れた二酸化炭素選択分離性を示した。あわせてこの膜は化学的にも安定で耐酸性を有し実用化しているA型ゼオライト膜につぐ水選択透過性を有することから浸透気化分離膜としても有望で、ゼオライト膜モジュールの試作が完成し、実用化の目処を得た。本研究では、二酸化炭素、メタン、一酸化窒素、酸素、窒素などの重要な気体および蒸留法では分離が困難な共沸或いは近沸点混合物等の分離対象を、固体ナノスペース中で認識し分離することの出来るミクロ多孔体膜を用いた革新的な膜分離システムの実用化を目標とし以下の成果を得た。1)比較的低温で熱分解しやすいスルホン酸基含有フェノール樹脂やポリイミドを前駆体とした炭化膜について、従来の炭化膜の焼成温度以下で高分子骨格の分解に先立ってスルホン基が分解することによりフレキシブルで十分な強度の自立膜が作成でき、膜性能もこれまでの炭化膜に匹敵する性能を有することが分かった。2)3種の芳香族ジアミンからなるポリイミド非対称中空糸膜を前駆体とした炭化膜を作製し、オレフィン/パラフィンガス分離特性を調べた。FE-SEM写真によれば、600°C炭化膜ではノジュールが融着した構造をしておりスキン層は200nm程度で中空糸膜の非対称構造は炭化処理後も保持されていることが分かった。600°C炭化膜におけるプロピレンのパーミアンスR_<C3H6>は50GPUで分離係数α_<C3H6/C3H8>は1315と優れた分離性能を示した。3)シリカライト膜では従来法で合成した膜に比べ大幅に透過流束が改善されエタノール/水(5/95wt%)混合液に対して60°Cで透過流束1kg/m^2h以上、分離係数80以上のゼオライト膜の合成が可能になった。4)T型ゼオライト膜は二酸化炭素/メタン系や二酸化炭素/窒素系でこれまでの高分子膜の性能をしのぐ優れた二酸化炭素選択分離性を示した。あわせてこの膜は化学的にも安定で耐酸性を有し実用化しているA型ゼオライト膜につぐ水選択透過性を有することから浸透気化分離膜としても有望で、ゼオライト膜モジュールの試作が完成し、実用化の目処を得た。比較的低温で熱分解し離脱し易いスルホン酸基をテンプレートとして分子ふるい細孔径を制御し、ガス分離用の高性能な焼成膜を創製できた。スルホン酸基含有フェノール樹脂を多孔質アルミナ支持体管上にコートした複合膜を窒素気流下500°Cで1.5時間焼成する処理を2回繰り返し、酸素のパーミアンスが30GPU、酸素/窒素分離係数12の高い分離性能を有する複合炭化膜を作製した。また、スルホン酸基含有ポリイミド膜を前駆体とし、ポリイミド骨格の分解温度以下の450°Cで焼成して、フレキシブルで十分な強度の自立性膜を作製出来た。この膜は、プロピレン/プロパン系でプロピレンの透過係数30Barrer、理想分離係数29の高い分離性を示した。耐酸性を有するT型ゼオライト膜の製膜条件を検討し、pH2の有機酸水溶液に対してある程度の耐久性を有するT型ゼオライト膜の合成法を確立した。この膜を用いて、乳酸のエステル化反応に蒸気透過法を適用し、エステル化反応の転化率の向上を達成した。また、蒸気透過法分離を伴うエステ化反応の経時変化をシミュレートし、膜モジュールの分離性能の反応効率化への影響を検討した。シリカライト膜の製膜条件と得られた膜のモルホロジー及び膜透過性能の関係を検討した。 | KAKENHI-PROJECT-13355031 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13355031 |
ナノスペースでの分子制御をめざしたミクロ多孔体膜分離システムの開発 | コロイダルシリカをシリカ源として175°Cで16時間その場水熱合成した膜は、60°Cで5wt%エタノール水溶液の浸透気化分離において、透過流速0、9kg/m2h、分離係数106の高い性能を示し、n-ブタン/iso-ブタン系でもの高い分離性を示し、非ゼオライト孔の少ない高品質な膜が作製できたと考えられる。本研究では分子ふるい炭素やゼオライトのナノ細孔を利用した高性能なミクロ多孔体膜分離プロセスを開発することを目的として、1)比較的低温で熱分解しやすいスルホン酸基含有フェノール樹脂やポリイミドを前駆体とする炭化膜の最適製膜条件の検討、2)オレフィン/パラフィンの高度分離を目的とした非対称中空糸ポリイミドを前駆体とする炭化膜の検討、3)エタノール高選択透過性のシリカライト膜の創製を目的とする多孔質支持体上への水熱合成条件の検討をおこなった結果、以下の成果を得た。1)比較的低温で熱分解しやすいスルホン酸基含有フェノール樹脂やポリイミドを前駆体とした場合には従来の炭化膜の焼成温度以下で高分子骨格の分解に先立ってスルホン基が分解することによりフレキシブルで十分な強度の自立膜が作成でき、膜性能もこれまでの炭化膜に匹敵する性能を有することが分かった。2)BPDAと3種の芳香族ジアミンからなるBPDA系ポリイミド非対称中空糸膜を前駆体とし、400°C30分空気中で処理を行った後、窒素中5°C/分で焼成温度500700°Cまで昇温し炭化膜を作製し、オレフィン/パラフィンガス分離特性を調べた。FE-SEM写真によれば、600°C炭化膜ではノジュールが融着した構造をしておりスキン層は200nm程度であった。この中空糸膜の非対称構造は炭化処理後も保持されていることが分かった。600°C炭化膜におけるプロピレンのパーミアンスR_<C3H6>は50GPUで分離係数α_<C3H6/C3H8>は1315と優れた分離性能を示した。3)シリカライト膜では従来法で合成した膜に比べ大幅に透過流束が改善されエタノール/水(5/95wt%)混合液に対して60°Cで透過流束1kg/m^2h以上、分離係数80以上のゼオライト膜の合成が可能になった。分子ふるい炭素やゼオライト膜等のミクロ多孔体膜は、ナノサイズのチャンネル空間において分子サイズと形状の認識による貯蔵・選択透過・活性化と変換等の機能発現が期待でき21世紀のグリーンケミストリー・サステイナブルプロセスを担う新しい高度分離システムにおける先導的候補として期待されている。本研究では、(i)二酸化炭素、メタン、一酸化窒素、酸素、窒素などの重要な気体および(ii)蒸留法では分離が困難な共沸或いは近沸点混合物等の分離対象を、固体ナノスペース中で認識し分離することの出来るミクロ多孔体膜を用いた革新的な膜分離システムの実用化を目標としている。最終年度は、1)新規な分子ふるい炭素膜としてスルホン化ポリイミドを前駆体とする炭素膜の製膜を行った。TG-MSによる分解ガスの分析にもとずく製膜機構の解析とミクロ孔の選択吸着能・分子ふるい能の詳細な解析を基礎に製膜条件を最適化し、低温で炭化したことにより機械強度の改善された炭素膜を得た。2)二酸化炭素分離用の新規なT型ゼオライト膜を創成した。この膜は二酸化炭素/メタン系や二酸化炭素/窒素系でこれまでの高分子膜の性能をしのぐ優れた二酸化炭素選択分離性を示した。あわせてこの膜は化学的にも安定で耐酸性を有し実用化しているA型ゼオライト膜につぐ水選択透過性を有することから浸透気化分離膜としても有望で、ゼオライト膜モジュールの試作が完成し、実用化の目処を得た。 | KAKENHI-PROJECT-13355031 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13355031 |
Mechanistic link between DNA methylation and H3K9 trimethylation in mammalian cells mediated by two novel SRA proteins- Np95 and Np97 | 本研究は、NP95と呼ばれるタンパク質が、転写を抑制するメチル化DNAと転写を活性化する非メチル化DNAの中間状態である「ヘミメチルDNA」に結合することにより、抑制型のH3K9ヒストン修飾を解除し、内在性レトロウイルス(ERV)配列の転写を誘導することを解明した。へミメチルDNAによる転写制御モデルの発見により、メチル化DNAと非メチル化DNAを中心とした転写制御の従来モデルが大きく見直された。本研究は、NP95と呼ばれるタンパク質が、転写を抑制するメチル化DNAと転写を活性化する非メチル化DNAの中間状態である「ヘミメチルDNA」に結合することにより、抑制型のH3K9ヒストン修飾を解除し、内在性レトロウイルス(ERV)配列の転写を誘導することを解明した。へミメチルDNAによる転写制御モデルの発見により、メチル化DNAと非メチル化DNAを中心とした転写制御の従来モデルが大きく見直された。 | KAKENHI-PROJECT-26870847 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26870847 |
相対論的擬ポテンシャルを用いた第一原理分子動力学法の開発と応用 | スピン軌道相互作用などほとんど全ての相対論効果を含む電子に対する擬ポテンシャルの開発を推進し、これらを既存の第一原理分子動力学法へ組み込む開発研究を行い、さらに開発された計算コードを用いて、スピントロニクス等で重要となる磁気異方性の電界効果や半導体のラシュバ効果といった新しい研究分野において計算科学的理論的研究を推進した。その結果、開発した計算コードがこれらの分野において重要な研究手段を提供することを実証した。スピン軌道相互作用などほとんど全ての相対論効果を含む電子に対する擬ポテンシャルの開発を推進し、これらを既存の第一原理分子動力学法へ組み込む開発研究を行い、さらに開発された計算コードを用いて、スピントロニクス等で重要となる磁気異方性の電界効果や半導体のラシュバ効果といった新しい研究分野において計算科学的理論的研究を推進した。その結果、開発した計算コードがこれらの分野において重要な研究手段を提供することを実証した。本研究では、スピン軌道相互作用などほとんど全ての相対論効果を含む電子に対する擬ポテンシャルの開発および、これらを既存の第一原理分子動力学法へ組み込む開発研究を推進した。この成果として磁気異方性およびスピン軌道相互作用によるスピン分裂(ラシュバ効果)を解析することが可能となった。また外部電場を印加できる計算コードの開発に成功し、単純な系への適用結果を学術論文として出版するに至った。詳細な研究成果について以下に記述する。1.白金等の金属表面にある鉄鎖を想定し、磁気異方性エネルギーの平衡原子間距離依存性を計算することにより、鉄鎖における磁気異方性の原子構造依存性を得た。この依存性を電子状態から理解することに成功した。これにより、磁気異方性をフェルミ準位付近の電子状態から理解する足がかりの一つを得たことになる。また、白金(111)表面に鉄鎖を置くことを想定して、磁気異方性エネルギーの電場依存性を調べた。これにより電場、電子状態、磁気異方性との関係を把握することに成功し、次のステップとして想定している現実系への適用へ向けて、計算の基礎固め行い、計算結果の解析の糸口をつかむことができた。2.白金(001)表面に鉄層を置いた系について、外部電場を印加した系の磁気異方性を計算し、外部電場による磁気異方性制御の可能性を確認した。今後、学術論文への発表等を進める。3.一般化された勾配補正近似(GGA(PW91)やGGA(PBE))についても、相対論的擬ポテンシャルの開発を推進した。この成果を用いて複雑な表面や界面構造をもつ系へ適用が可能となった。4.スピン軌道相互作用によるスピン分裂を解析する計算コードの開発を推進した。本研究では、スピン軌道相互作用などほとんど全ての相対論効果を含む電子に対する擬ポテンシャルの開発を推進し、これらを既存の第一原理分子動力学法へ組み込む開発研究を行った。スピントロニクス等で重要となる磁気異方性の電界効果や半導体のラシュバ効果といったテーマの計算科学的理論的研究を推進した。1.白金の表面にある鉄の磁性原子の系について、原子構造と磁気異方性の関係を調べた。ステップ構造(664)面に鉄鎖を載せた系については、原子構造の最適化を行った上で、磁気異方性の研究を推進し、実験結果を再現する結果を得た。2.鉄白金(001)面系に対して外部電場を印加し、電子構造に現れるスピン軌道相互作用を調べた。大きな電界効果を発現するための条件を検討し、鉄白金系はその条件に合う材料であることが提案された。3.密度汎関数理論に基づく相対論的擬ポテンシャルを構築する一環として局所密度近似(LDA)と一般化された勾配補正近似(GGA(PW91))について計算を行い、その違いを調査した。4.シリコン表面にタリウム、鉛、ビスマスの重い元素で構成される1原子層を積層した系について、スピン軌道相互作用をあらわに取り入れた表面電子構造計算を実施した。角度分解光電子分光法の実験結果と比較し、ラシュバ効果の特徴を検討した。この項目は、坂本一之氏(千葉大学自然科学研究科)を研究協力者とし、実験との比較を促進するための計算コード開発を推進した。本研究では、スピン軌道相互作用などほとんど全ての相対論効果を含む電子に対する擬ポテンシャルの開発を推進し、これらを既存の第一原理分子動力学法へ組み込む開発研究を行った。また開発した計算コードの応用として、スピントロニクス等で重要となる磁気異方性の電界効果や半導体のラシュバ効果といったテーマの計算科学的理論的研究を推進した。1.金(001)表面系に積層した鉄層の薄膜に対して外部電場を印加し、電子構造に現れるスピン軌道相互作用を調べた。昨年度に研究した鉄白金系と比較して、磁気異方性エネルギーにおいて小さな電界効果を発現することが得られることが明らかとなった。大きな磁気異方性電界効果を得るためには、白金を使用することが一つの方法であることを明確に示すことができた。2.密度汎関数理論に基づく相対論的擬ポテンシャルを構築する一環として局所密度近似(LDA)と一般化された勾配補正近似(GGA(PW91))について、磁気異方性エネルギー計算を行い、その違いと起源を調査した。3.シリコン表面にタリウムの1原子層を積層した系について、スピン軌道相互作用をあらわに取り入れた表面電子構造計算を実施した。角度分解光電子分光法の実験結果と比較し、ラシュバ効果の特徴を検討した。この項目は、坂本一之氏(千葉大学自然科学研究科)を研究協力者とし、実験との比較を促進するための計算コード開発を推進した。 | KAKENHI-PROJECT-20510102 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20510102 |
相対論的擬ポテンシャルを用いた第一原理分子動力学法の開発と応用 | 4.新しい超並列計算機に対応した計算コード(MPIとOpenMPとを同時使用)の開発を推進した。 | KAKENHI-PROJECT-20510102 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20510102 |
算数・数学教育における比例的推論の役割について | (1)比例的推論の前提となる「比例関係」についての基礎的考察を行なった。比例的推論を行なう際には,推論を行なう対象となる事象の数量関係に「比例関係」を認めることが必要となる。このとき,「比例関係」が内在する場合と「比例関係」があるものとして仮定する場合とがある。「比例関係」と「比例をなす」との違いとその関連について,同値関係の視点から基礎的な考察が行なわれた。現在,論文として投稿準備中である。(2)中学校,高等学校の数学の教科書分析により比例的推論の役割を分析した。中学校三年分と高等学校一年の数学の教科書分析の結果をまとめ,愛知教育大学数学教育学会誌に発表した。研究の結果,小学校,中学校,高等学校を貫く一貫カリキュラムの視点の1つとして「比例関係」が重要であり,同じ図形を対象していながら「比例関係」を中心に据えることで,その数学的概念の理解の深まりが期待できることが明らかになった。本論文と(1)の理論的考察を踏まえて,高等学校二年の数学の教科書分析の対象を行なった結果,差分に比例関係を見出すことで,例えば変化の割合を受けて平均変化率となり微分の導入段階でもこの関係を見出すことができた。(3)中学校,高等学校の数学以外の教科書分析により比例的推論の役割を分析した。比例関係を暗黙のうちに用いている場面を考察することを目的に,主に技術家庭科と保健体育の教科書分析を行った。これらの成果の一部は,第37回数学教育論文発表会で口頭発表した。この結果,次のことが明らかとなった。小学校算数で比例を顕在化させながら,その後の数学以外での学習では,暗黙のうちに「比例関係」を使っていることが多い。内在する場合ばかりでなく比例関係を仮定している場合も含めて,より意図的に「比例関係」を顕在化させることによって,事象の仕組みがわかりやすい場面が多くあることが確認できた。と同時に,算数・数学学習において統計教材を充実させ,「比例関係」を顕在化させる学習の必要性も明らかとなった。(4)教育実践研究会を開催する。本学附属小学校教諭と附属中学校数学教師と本研究の代表者と研究協力者で比例関係と図形の相似に関する指導について,情報交換会を行なった。1.日本数学教育学会主催の第36回数学教育論文発表会において2つの論文を発表する。口頭発表の部で「二等辺三角形が教えることがら-内在する比例に注目して-」を,課題別部会では,「数直線を活用した欠損値問題の教授学習過程」を,それぞれ発表した。2.授業研究会を実施する。1の課題別部会で発表した構想に基づく授業研究会を,2つの公立小学校第4学年の児童に実践した。この実践の詳細な分析を現在行っており,これをまとめることが次年度の課題の1つである。3.数学教育実践発表会を実施する。清水宏幸(山梨大学附属中学校)氏,新井仁(信州大学附属中学校)氏を囲んで,中学校における比例的推論の実際について研究会を実施した。附属中学校の教員を含め,県内の中学校の教員にも参加して頂き,研究討議した。この記録をまとめることも次年度の課題の1つである。4.比例的推論の教材例を収集分析する。研究分担者のそれぞれの専門領域別に,中学,高等学校段階の比例的推論の例を検討した。主な対象は,それぞれの校種の教科書分析,3の実践発表会での具体例等を参考にした。これらの詳細をまとめ,授業化することも次年度の課題の1つである。(1)比例的推論の前提となる「比例関係」についての基礎的考察を行なった。比例的推論を行なう際には,推論を行なう対象となる事象の数量関係に「比例関係」を認めることが必要となる。このとき,「比例関係」が内在する場合と「比例関係」があるものとして仮定する場合とがある。「比例関係」と「比例をなす」との違いとその関連について,同値関係の視点から基礎的な考察が行なわれた。現在,論文として投稿準備中である。(2)中学校,高等学校の数学の教科書分析により比例的推論の役割を分析した。中学校三年分と高等学校一年の数学の教科書分析の結果をまとめ,愛知教育大学数学教育学会誌に発表した。研究の結果,小学校,中学校,高等学校を貫く一貫カリキュラムの視点の1つとして「比例関係」が重要であり,同じ図形を対象していながら「比例関係」を中心に据えることで,その数学的概念の理解の深まりが期待できることが明らかになった。本論文と(1)の理論的考察を踏まえて,高等学校二年の数学の教科書分析の対象を行なった結果,差分に比例関係を見出すことで,例えば変化の割合を受けて平均変化率となり微分の導入段階でもこの関係を見出すことができた。(3)中学校,高等学校の数学以外の教科書分析により比例的推論の役割を分析した。比例関係を暗黙のうちに用いている場面を考察することを目的に,主に技術家庭科と保健体育の教科書分析を行った。これらの成果の一部は,第37回数学教育論文発表会で口頭発表した。この結果,次のことが明らかとなった。小学校算数で比例を顕在化させながら,その後の数学以外での学習では,暗黙のうちに「比例関係」を使っていることが多い。内在する場合ばかりでなく比例関係を仮定している場合も含めて,より意図的に「比例関係」を顕在化させることによって,事象の仕組みがわかりやすい場面が多くあることが確認できた。と同時に,算数・数学学習において統計教材を充実させ,「比例関係」を顕在化させる学習の必要性も明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-15020209 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15020209 |
算数・数学教育における比例的推論の役割について | (4)教育実践研究会を開催する。本学附属小学校教諭と附属中学校数学教師と本研究の代表者と研究協力者で比例関係と図形の相似に関する指導について,情報交換会を行なった。 | KAKENHI-PROJECT-15020209 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15020209 |
PET膜輸送担体機能定量法に基づいた悪性脳腫瘍のターゲット療法の開発 | 悪性脳腫瘍に対するホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の適切な運用を目指した治療時の腫瘍内ホウ素濃度の健常組織比をPETにより定量するための実用的手法の開発を行った。研究期間内に25名の悪性脳、頭蓋底腫瘍患者に対し^<18>F-BPAによるPETイメージングを行った。悪性神経膠腫患者15名に対しては診断薬静注後の腫瘍および正常脳組織内のトレーサー濃度を1時間の経時計測を行い組織内放射活性曲線(Time activity curve;TAC)を得た。さらに、経時的動脈採血による動脈血のTACを得た上で、モデル解析によりBNCT施行時の中性照射時点における組織ホウ素濃度平均の腫瘍対健常脳比(T/N)を算出した。この比は、動脈採血を行わずとも定常状態において得られるT/Nと有意な相関を示すことが確認できた。次に、全例で11Cメチオニン(MET)によるPET撮影も同日に行うことで、METとBPAのT/Nの比較も行った。両者間にも有意な相関が存在することが確認された。また、FBPAのT/Nは常にMETのT/Nよりも高値であることも明らかになった。この研究により、BNCT施行時のホウ素濃度のT/Nは^<18>F-BPA PETの定常スキャンにより推定できるとともに、MET PETによってもその最低ラインを決定できることが明らかになった。すなわち、アミノ酸輸送体機能を計測できるPETプローブであれば、BNCTにより効果が期待できる悪性腫瘍患者のスクリーニングに用いることが出来、至適治療計画の策定に有効利用が出来ることが明らかになった。悪性脳腫瘍に対するホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の適切な運用を目指した治療時の腫瘍内ホウ素濃度の健常組織比をPETにより定量するための実用的手法の開発を行った。研究期間内に25名の悪性脳、頭蓋底腫瘍患者に対し^<18>F-BPAによるPETイメージングを行った。悪性神経膠腫患者15名に対しては診断薬静注後の腫瘍および正常脳組織内のトレーサー濃度を1時間の経時計測を行い組織内放射活性曲線(Time activity curve;TAC)を得た。さらに、経時的動脈採血による動脈血のTACを得た上で、モデル解析によりBNCT施行時の中性照射時点における組織ホウ素濃度平均の腫瘍対健常脳比(T/N)を算出した。この比は、動脈採血を行わずとも定常状態において得られるT/Nと有意な相関を示すことが確認できた。次に、全例で11Cメチオニン(MET)によるPET撮影も同日に行うことで、METとBPAのT/Nの比較も行った。両者間にも有意な相関が存在することが確認された。また、FBPAのT/Nは常にMETのT/Nよりも高値であることも明らかになった。この研究により、BNCT施行時のホウ素濃度のT/Nは^<18>F-BPA PETの定常スキャンにより推定できるとともに、MET PETによってもその最低ラインを決定できることが明らかになった。すなわち、アミノ酸輸送体機能を計測できるPETプローブであれば、BNCTにより効果が期待できる悪性腫瘍患者のスクリーニングに用いることが出来、至適治療計画の策定に有効利用が出来ることが明らかになった。1)中性子捕捉療法へのFBPA-PETの応用法として、PET画像計測法からの治療時の腫瘍内硼素濃度の推定法に関しての検討を行なった。FBPA静注後一時間のダイナミックスキャンを12名の悪性グリオーマ患者に対し行い、動態解析で得られた薬剤の以降定数からルンゲクッタ法という薬物動態の推定法を用いて、ホウ素中性子捕捉療法時に行われるBPAの一時間ないし2時間持続投与により得られるBPAの腫瘍健常脳比をシミュレートした。この値とFBPA-PETの後期定性画像、および同日に行ったメチオニンPETの定性画像で得られるトレーサーの腫瘍健常脳比を比較検討した。その結果これらはいずれも有意な正の相関を持ち充分信頼できる直線近似ができることが明らかとなった。アミノ酸プローブを用いたPET撮影にてホウ素中性子捕捉療時の腫瘍組織内ホウ素濃度を推定し、適応となる患者のスクリーニングや至適値両計画の策定に用いる事ができると判断した。2)FBPA-PETを、頭蓋底腫瘍、頭蓋骨腫瘍、悪性髄膜腫などへの応用を開始した。FBPAは頭頚部全領域の悪性腫瘍に対する有用なイメージングプローブであることが明らかとなった。これら治療前計測を治療後のPETによる効果と対比しフォローする予定であったが、本年度は原子力研究所医療照射施設の休止が長びき、治療可能となったのが予定症例より少なくなり、効果の判定に関しては次年度の継続研究が必要である。3)脳腫瘍におけるコリン輸送担体機能の画像化とアミノ酸輸送機能との対比検討を行なった。これにより悪性脳腫瘍への応用にはアミノ酸プローブの方がより優れていることが明かとなった。1)中性子捕捉療法へのFBPA-PETの応用を継続し、またこの年度からは術前計測の組織内ホウ素濃度推定と、治療後の腫瘍退縮ないしは放射線障害の発生に関しPETによる追跡調査を計画した。しかし、原子力研究所の治療用原子炉の故障という予想外のアクシデントにより、治療症例蓄積がストップした。そのため、研究期間を延長したが、復旧が年度末となり、治療症例のフォローは行えなかった。 | KAKENHI-PROJECT-19591665 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19591665 |
PET膜輸送担体機能定量法に基づいた悪性脳腫瘍のターゲット療法の開発 | そこで、計測対象をFBPA-PETの計測対象を、中性子捕捉療法とは無関係にボランティアー患者としての計測を行い、FBPAとメチオニンPETとの対比、FBPAの全身分布と全身被ばく線量の計測などのデーター収集を行い完了した。今後の臨床利用のための十分なデーター蓄積が完了した。2)BNCTの停止に伴い、PET画像をターゲットとしての悪性脳腫瘍のガンマナイフ治療法を積極的に行い治療後のデーターを行った。悪性神経膠腫に対するPETガイドのガンマナイフ治療によって生命予後が改善することを示唆するデーターが得られ国際学会で発表した。3)脳腫瘍に対する新しいPET診断薬候補として、DNA合成能計測薬である11Cチオチミジンの臨床利用に向けての開発をスタートし、被験者による臨床計測を開始した。薬剤の腫瘍への到達には血液脳関門の破壊がないと効率が悪いこと、しかし造影を受ける腫瘍部位の中での腫瘍増殖能の局所差の描出には有用性が高いことなどが判明した。 | KAKENHI-PROJECT-19591665 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19591665 |
生物システムの進化と環境変化:ヒトのゲノムに刻まれた環境の変化への適応を読み解く | 生活習慣病や精神障害などのヒトをとりまく環境に起因する疾患に関わる遺伝子では、往々にして祖先型が疾患のリスク型SNPとなっている。この様なリスク多型を示す遺伝子座としてシアル酸転移酵素STXの多型維持機構について詳細に調べた。STXはポリシアル酸を合成する酵素で脳機能において重要な役割を果たしており、統合失調症等の精神障害との関連が指摘されている。STXのプロモーターには3つのSNPsで定義される4タイプが存在するが、プロモーター活性の低いタイプが非リスク型である。このタイプは東アジア集団で限定的に頻度が高いがタイプ内の多様性は極めて低い。これは正の自然選択が働いている可能性が高いことを示す。ヒトのゲノムには、チンパンジーと分岐して以来およそ600万年間のヒト特異的な環境適応のプロセスが刻まれている。近年のゲノム情報の解析からヒトの疾患関連遺伝子には、リスク型と非リスク型の多型があることがわかってきた。生活習慣病や精神障害などのヒトをとりまく環境に起因する疾患に関わる遺伝子を調べてみると、ヒト以外の霊長類ではデフォルトがリスク型であることが多いこともわかってきた。本年度は、1ヒト以外の霊長類におけるヒト疾患関連遺伝子リスク型の固定の検証と2ST8SiaII遺伝子の統合失調症リスク型、非リスク型ハプロタイプの多型解析を行った。1については、マカクとヒトの比較から2種の共通祖先でヒトのリスク型が固定しているとされている93例について、霊長類8種(チンパンジー、ゴリラ、オランウータン、テナガザル、アカゲザル、ニホンザル、マーモセット、キツネザル)でリスク型が固定しているかどうかを検証した。その結果、20例については新世界ザル、あるいは原猿まで含めて、共通祖先でスク型が固定していることが確認された。また11例については非リスク型が固定している種が見つかり8例についてはヒトのリスク型とも非リスク型とも異なるアミノ酸残基に固定していた。2については、ST8SiaII遺伝子について、統合失調症リスクに関わるプロモーター多型の周辺10 kbの領域を、ヒトサンプルを鋳型にPCRにより増幅し、ダイレクトシークエンスによって塩基配列情報を得た。ヒトで知られているリスク型ハプロタイプ3種と非リスク型ハプロタイプ1種の分布をダイレクトシークエンスの結果から予測したところ、アフリカでは4種類全てのハプロタイプが見られ、中でもチンパンジー及びゴリラに固定されているリスク型ハプロタイプの一つの頻度が高いことが明らかとなった。ヒトのゲノムには、チンパンジーと分岐して以来およそ600万年間のヒト特異的な環境応答のプロセスが刻まれている。近年のゲノム配列の解析からヒトの疾患関連遺伝子には、リスク型と非リスク型の多型があることがわかってきた。また、ヒト以外の霊長類のゲノムとの比較から生活習慣病や精神障害などのヒトを取り巻く環境に起因する疾患に関連する遺伝子の多くではリスク型がデフォルトであることも明らかになった。リスク型がデフォルトとなり、非リスク型が新たに生まれた時期とその地域を推定し、これらのイベントとヒト特異的な生息環境への適応との関連を探る。本年度の研究は、統合失調症との関連が指摘されているSTX8遺伝子座の解析を中心に遂行した。ヒト集団ではSTX8遺伝子座の上流配列(プロモーター領域)にあるSNPにリスク型と非リスク型があり、これらの間には、プロモータ活性の違いがある。一方、他の霊長類はリスク型SNPをもち、リスク型が祖先型であることが明らかになった。そこで、現有のヒト集団63個体と1000ゲノムのデータから、リスク型、非リスク型のSNPの各民族集団での頻度分布を調べたところ、非リスク型のSNP頻度は、アジア、特に東アジアの集団で高いことが明らかとなった。さらに、ヒト集団63個体から81染色体でのプロモータ領域を含む10kbの塩基配列を決定した。その結果、96のサイトでSNP多型、一箇所の挿入欠失サイトがあり、単一の染色体でのみ変異のあった39サイトと挿入欠失のサイトを除く54サイト29ハプロタイプで解析を進めた。この領域全体では、特に3'末に組み換えがあり、その領域を除いき、分岐年代の推定を行ったところ、現生人類集団のSTX8遺伝子の共通祖先はおよそ50万年まえに誕生しており、更にリスク型とヒリスク型の共通祖先の誕生は40万年ほど前と推定された。この非リスク型ハプロタイプへの正の自然選択の可能性を示唆する結果も得てている。ヒトのゲノムには、チンパンジーと分岐して以来およそ600万年間のヒト特異的な環境適応のプロセスが刻まれている。近年のゲノム情報の解析から、ヒトの疾患関連遺伝子にリスク型と非リスク型のSNPがあることがわかってきた。興味深いことに、生活習慣病や精神障害などヒトをとりまく環境に起因する疾患に関わる遺伝子では、ヒト以外の霊長類ではデフォルトがリスク型であることが明らかになってきた。このことは、ヒトでのリスク型が他の霊長類では非リスク型であり、ヒトはその進化の過程で環境変化により疾患を獲得したことを意味する。本研究では、そのような疾患を回避するためにヒトで誕生した非リスク型の起源とその拡散の解析を通して、ヒトと環境との関係史を明らかにする。本年度は昨年度からひき続き、統合失調症と関連のある遺伝子STXの多型について自然選択の可能性を中心に解析を進めた。統合失調症との関連が指摘されているのは、プロモータ領域にある3つのSNPである。 | KAKENHI-PROJECT-25291081 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25291081 |
生物システムの進化と環境変化:ヒトのゲノムに刻まれた環境の変化への適応を読み解く | ヒト集団ではこの3SNPの組み合わせでできる主に4種のプロモータタイプがあり、このタイプ間ではプロモータ活性に差がある。これらの4タイプについて、1000人ゲノムのデータをもとに各タイプの頻度を調べてみると、プロモータ活性の低いプロモータタイプを持つ染色体が、他集団と比較して東アジア集団で有意に高い頻度で維持されていることが明らかとなった。このプロモータタイプを持つハプロタイプを調べてみたところ、このプロモータタイプの誕生がおよそ40万年前であるにもかかわらず、ハプロタイプ間の多様性は極めて低く、REHH(relative extendend haplotype heterozygosity)で、STXの位置する15番染色体の他の領域と比較して有意に大きなREHHの値を示した。上記の結果を含めた集団遺伝学的解析からプロモータ活性が低いハプロタイプに正の自然選択が働いている可能性を示した。この結果は現在国際誌に投稿準備中である。生活習慣病や精神障害などのヒトをとりまく環境に起因する疾患に関わる遺伝子では、往々にして祖先型が疾患のリスク型SNPとなっている。この様なリスク多型を示す遺伝子座としてシアル酸転移酵素STXの多型維持機構について詳細に調べた。STXはポリシアル酸を合成する酵素で脳機能において重要な役割を果たしており、統合失調症等の精神障害との関連が指摘されている。STXのプロモーターには3つのSNPsで定義される4タイプが存在するが、プロモーター活性の低いタイプが非リスク型である。このタイプは東アジア集団で限定的に頻度が高いがタイプ内の多様性は極めて低い。これは正の自然選択が働いている可能性が高いことを示す。昨年度から引き続き行ったSTX8遺伝子座の10kbの塩基配列決定実験は順調に進行し、81染色体の塩基配列決定を完了した。これらの配列の集団遺伝学的解析を行い、同時に、1000人ゲノムのデータを用いた解析も進めているところである。27年度が最終年度であるため、記入しない。進化生理学、分子進化学、集団遺伝学STX8を疾病に関する遺伝子解析のモデルケールとして、さらに、糖尿病や高脂血症等の生活習慣病に関係する代謝疾病関連遺伝子についての解析を進める。また精神疾患に関しては、統合失調症やアルコール依存症に関連する遺伝子座での非リスク型の頻度に民族間での偏りが見られるので、これらの遺伝子座についても同様に解析を進める。解析を進めるにあたり、まずSTX8について実際に研究室で塩基配列を決定したサンプルでの各ハプロタイプの頻度や分岐年代推定と1000人ゲノデータを用いて推定されるこれらの値との整合性を調べる。整合性が保たれていることを確認した上で、27年度の解析は1000人ゲノムデータを中心に行い、必要に応じて塩基配列決定を行っていく。また、解析に際して、STX8の解析時と同様にrecombinantの検出を行い、コアハプロタイプの同定をおこなう。この時、大量データを用いてのrecombinationの検出方法、コアハプロタイプの同定方法についても検討する。さらに、リスク型・非リスク型の分岐時間、非リスク型の拡散過程、非リスク型ハプロタイプへの正の自然選択の可能性について精査していく。 | KAKENHI-PROJECT-25291081 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25291081 |
がんリスク・コミュニケーションモデルの医療現場における臨床研究 | 本研究は、がん患者(患者の会及び全国のがん罹患者)を対象とした面接調査、質問紙調査(郵送、Web調査)、及び現役の医師への面接調査、質問紙調査を用いて、がんリスクコミュニケーションを「情動的支援」と「情報的支援」からなるモデルで検討した。その結果、がん患者は情動的支援を医者に先ず求め、その上で情動支援を求めており、両支援に関しては段階的機能モデルが必要であることが示唆された。更に、情報的支援を患者のQOLとの関係でも検討した。その結果、副作用や後遺症によるQOLの低下に直結する情報的支援を患者側は強く求めており、治療中のQOLにより注目したコミュニケーションの必要性が示唆された。本研究の目的は、医療現場のコミュニケーションの問題に関し、医者への依存度が高い従来型のインフォームドコンセントから、チーム医療という臨床現場の現状に即した、がんリスク・コミュニケーションという新たなコミュニケーションモデルを提唱し、1患者が個人の理解力の範囲において、病状と治療に関する理解を最大化し、2医療者との相互作用によって患者の不安や心配を最小化できる、がんリスクコミュニケーションのメカニズムを明らかにすることである。平成26年度の実績:がん患者心理モデルの精緻化の実現平成26年度では、2012年度に実施した予備調査の結果の精査、及び医療関係者からのヒアリングによる、患者の問題のより詳細な探索を実施した。その結果、予備調査時に設計した、がんリスク・コミュニケーションの「事実性・配慮性並列2基準モデル」に新たな視点を導入する必要性が明らかになった。当初は、最終目的関数である、「患者の治療過程満足度」に、1患者の病状・治療理解を最大化させる事実性コミュニケーションと2患者の不安・心配を最小化できる配慮性コミュニケーションが同等の規定力を持つと想定していた(並列モデル)。しかし病状や治療に対する患者の不安や心配は、病状や治療の理解力の阻害要因となること、それ故、話を聞ける状態を提供することが患者に寄り添ったがんリスクコミュニケーションの効果性を高めることになることが上記26年度の研究で明らかになった。この知見に基づき、先ず患者の配慮性欲求が充足されることが基盤で、その上で事実性欲求が充足されることが治療プロセスへの積極参加や満足度を喚起するという、新たなモデル「事実性・配慮性重層化2基モデル」を構築し、その実証に取り組んでいる。本研究の目的は、医療現場のコミュニケーションの問題に関し、医者への依存度が高い従来型のインフォームドコンセントから、チーム医療という臨床現場の現状に即した、がんリスク・コミュニケーションという新たなコミュニケーションモデルを提唱し、1患者が個人の理解力の範囲において、病状と治療に関する理解を最大化し、2医療者との相互作用によって患者の不安や心配を最小化できる、がんリスクコミュニケーションのメカニズムを明らかにすることである。がんリスクコミュニケーションのメカニズムをより明確に捉えるため、平成27年度は「がん治療に伴うQOL低下」という新たな変数を導入した。これまで患者の不安や心配は「がんの告知」等に関連して分析されるてきたが、治療後或いは経過中に伴う様々な副作用によるQOL低下の問題については殆ど看過されていた。平成26年度に実施した患者と病院関係者へのヒアリングにより、この問題の重要性が明確になったため、大規模WEB調査における主要な変数に組み入れた。WEB調査は2040名のモニターが対象者であるが、癌腫、性別、がんの進行度などによる割り付けは標本数から鑑みて困難であるので、このサブグループによるブレイクダウン分析は行わない。結果は現在分析中である。今一つはがん患者会のがん治療中の患者128名に対する調査である。郵送およびWEB調査から成り、調査目的は、がんリスク・コミュニケーションの、医師からの影響についての検討である。2012年度の予備調査では看護師を対象として分析したが、今回はがんリスクコミュニケーションの中心的担い手である医師を対象として患者の認知過程を検討した。その結果、医師からのコミュニケーションの患者による評価は、配慮性、事実性ともにおしなべて高いが、自由記述の回答には医師が信頼を失う契機が示唆されていた。平成27年度に実施した2つの調査では、研究目的の達成において重要であると考えらえる、新たな変数と調査方法の導入を実現できた。一つは研究実績の項で述べた通り、治療後あるいは過程におけるQOLの低下という新しい変数を導入し、研究の深化をなしえたこと、今ひとつは医師のリスクコミュニケーション行動について自由記述も含め患者に仔細に評価を求めえたことである。前者についての分析が現時点で進行中であるという点は予定より若干の研究計画の遅滞を呈しているが、後者についてはその結果を第18回関西がんチーム医療研究会(平成28年2月27日追手門学院大阪城スクエア)にて、がん治療の専門医やコメディカルに対してシンポジウム形式で発表し、今後の継続的テーマとして発表を要請されるなどの好反応を得ている。以上から研究の達成は概ね順調に推移していると考える。本研究は、がん患者を対象としたインタビュー調査、質問紙調査(患者の会対象調査、全国のがん罹患者対象Web調査)、及び現役の医師へのインタビュー調査、質問紙調査を用いて、がんリスクコミュニケーションを「情動的支援」と「情報的支援」からなるモデルで検討した。その結果、多くのがん患者が医師のコミュニケーションにおいて情動的支援を求めているが、現状では求めた支援が十二分に得られていないと感じていることが見出された。更に情報的支援についても新たな知見がえられた。患者にとって情報的支援は重要かつ必要であるが、医学的情報のみのコミュニケーションを欲する程度は低かった。 | KAKENHI-PROJECT-26380860 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26380860 |
がんリスク・コミュニケーションモデルの医療現場における臨床研究 | 情報を共有し自らの命を共に考える「共考相手」として医師を捉えるにしても、その相手には人としての温かみつまり情動的支援を求めるのであろう。治療納得感に、情動的支援と情報的支援のいずれもが関連したことから、リスクコミュニケーションにおける事実性と配慮性の2基準は医療場面でも必要だといえる。しかし、特にがんリスクコミュニケーションにおいては、配慮性が先ず満たされることが、続く情報的支援(事実性)をより有効に機能させると考えられる。従って、がんリスクコミュニケーションには、情動的支援を基盤にした上で、患者の要望に応じて情報的支援を行う段階的モデルが必要であることが示唆された。更に本研究では、情報的支援を患者のQOLとの関係で捉えた。その結果、副作用や後遺症といったQOLの低下に直結する情報的支援を患者側が強く求めている事実が明らかになった。現時点での問題解決を優先するインフォームドコンセントの場では、QOLに関する情報提供が不足気味のようである。しかしがん患者にとって副作用等によるQOLの低下は、治療を決める際のまさしく「リスク」であり、医療場面におけるリスクコミュニケーションにおける、患者のQOLへの注力の重要さが示唆された。本研究は、がん患者(患者の会及び全国のがん罹患者)を対象とした面接調査、質問紙調査(郵送、Web調査)、及び現役の医師への面接調査、質問紙調査を用いて、がんリスクコミュニケーションを「情動的支援」と「情報的支援」からなるモデルで検討した。その結果、がん患者は情動的支援を医者に先ず求め、その上で情動支援を求めており、両支援に関しては段階的機能モデルが必要であることが示唆された。更に、情報的支援を患者のQOLとの関係でも検討した。その結果、副作用や後遺症によるQOLの低下に直結する情報的支援を患者側は強く求めており、治療中のQOLにより注目したコミュニケーションの必要性が示唆された。平成26年度に研究計画の変更を行い、当初27年度に予定していた大規模調査を26年度に実施することとした。その方法は調査会社によるWEB調査である。研究を計画した当初は、調査対象者が、がん患者およびその家族という特殊性から、大規模なサンプリングによるweb調査は難しいと想定し、調査方法として考慮していなかった。しかし研究会を重ねるうちに、この分野に実績のある調査会社との知己を得、大規模調査が可能になった。従ってこの研究計画の変更は、研究のより充実化をもたらすものである。大規模調査のための慎重な調査計画、スクリーニングの難しさにより、調査実施は平成27年度にずれこんだが、Web調査で、患者とその家族のデータを全国規模で大規模にサンプリングできるため、研究成果として得られる知見は拡大することが期待される。従って、本研究の達成はおおむね順調に進展していると考える。最終年度の平成28年度では大規模調査の結果をもとに、医療現場用「がん患者の事実性・配慮性欲求測定尺度」を構築することを主目的とする。 | KAKENHI-PROJECT-26380860 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26380860 |
6d電子に着目したアクチノイド化合物の超伝導とフェルミ面 | 本研究では、6d電子の大きなスピン軌道相互作用の効果を明らかにするということを目的とし、様々なトリウム化合物のフェルミ面および超伝導に対する6d電子の効果を明らかにしていく。具体的には、まず1トリウム金属原料の純良化を行い、2育成方法が確立されている物質や3結晶構造に着目したトリウム化合物の単結晶を育成する。これらの単結晶試料について詳細な物性実験および国内外の研究協力者と議論を行い、得られた成果を国内外で発表する。本研究では、6d電子の大きなスピン軌道相互作用の効果を明らかにするということを目的とし、様々なトリウム化合物のフェルミ面および超伝導に対する6d電子の効果を明らかにしていく。具体的には、まず1トリウム金属原料の純良化を行い、2育成方法が確立されている物質や3結晶構造に着目したトリウム化合物の単結晶を育成する。これらの単結晶試料について詳細な物性実験および国内外の研究協力者と議論を行い、得られた成果を国内外で発表する。 | KAKENHI-PROJECT-19K14643 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K14643 |
高温オゾンガスによる過酸化物合成と過酸化物の熱力学 | オゾン(O_3)を非平衡・高濃度に含むオゾン-酸素混合ガスは、純酸素の1万倍もの高い化学ポテンシャルを有するきわめて化学活性な酸化剤であり、高温状態に未分解のオゾンガスを多量に導入できれば酸素ガス1気圧では到達し得ない酸化性雰囲気を達成しうるとの着想を得、下記のオゾンガスを用いた新しい研究に着手した。はじめに、超高濃度10%O_3の最新鋭オゾン発生器を用い、防毒防爆対策を施した小型炉を試作した。強化テフロン水冷管で高温の物質に直接オゾンを作用させ得ることを、本補助金により新設したオゾン濃度計により確認できた。試行的に270°Cの純銀に9%O_3オゾンを作用させたところ、Ag_2O以外に高酸素圧相AgOを合成できた。過酸化銀合成は、従来は高温超高圧酸素の下、もしくは強アルカリ水溶液中の強い陽極酸化でのみ合成可能であった。次に、報告例のない酸化クロムに対して作用させると、同様に5種類の過酸化クロムの合成に成功した。これらの実験はオゾン-酸素混合ガスの高い化学活性を意味し、熱平衡的には存在し得ない量のオゾンが高温で酸化ガスの化学ポテンシャルを高め得ることを発見したものである。第三に1300°Cの溶融高炭素綱にオゾン-酸素混合ガスを吹き付け、溶鉄中の炭素除去を促進する効果があることを確かめた。オゾン濃度計による計測からオゾンの熱分解による噴流が酸素ガスの溶鋼対流効果を促進したものと認められる。以上、広いダイナミックレンジのオゾン濃度計によって高温における超高濃度オゾンガスの熱安定性を把握することができたので、オゾン吹き付けによって過酸化物が合成できるかどうかを調べると、過酸化物の高温における熱力学データ集積が可能であるとの知見を得た。オゾン(O_3)を非平衡・高濃度に含むオゾン-酸素混合ガスは、純酸素の1万倍もの高い化学ポテンシャルを有するきわめて化学活性な酸化剤であり、高温状態に未分解のオゾンガスを多量に導入できれば酸素ガス1気圧では到達し得ない酸化性雰囲気を達成しうるとの着想を得、下記のオゾンガスを用いた新しい研究に着手した。はじめに、超高濃度10%O_3の最新鋭オゾン発生器を用い、防毒防爆対策を施した小型炉を試作した。強化テフロン水冷管で高温の物質に直接オゾンを作用させ得ることを、本補助金により新設したオゾン濃度計により確認できた。試行的に270°Cの純銀に9%O_3オゾンを作用させたところ、Ag_2O以外に高酸素圧相AgOを合成できた。過酸化銀合成は、従来は高温超高圧酸素の下、もしくは強アルカリ水溶液中の強い陽極酸化でのみ合成可能であった。次に、報告例のない酸化クロムに対して作用させると、同様に5種類の過酸化クロムの合成に成功した。これらの実験はオゾン-酸素混合ガスの高い化学活性を意味し、熱平衡的には存在し得ない量のオゾンが高温で酸化ガスの化学ポテンシャルを高め得ることを発見したものである。第三に1300°Cの溶融高炭素綱にオゾン-酸素混合ガスを吹き付け、溶鉄中の炭素除去を促進する効果があることを確かめた。オゾン濃度計による計測からオゾンの熱分解による噴流が酸素ガスの溶鋼対流効果を促進したものと認められる。以上、広いダイナミックレンジのオゾン濃度計によって高温における超高濃度オゾンガスの熱安定性を把握することができたので、オゾン吹き付けによって過酸化物が合成できるかどうかを調べると、過酸化物の高温における熱力学データ集積が可能であるとの知見を得た。 | KAKENHI-PROJECT-09875182 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09875182 |
高反応性炭素ーヨウ素結合を利用した多環式芳香族化合物の新規変換反応の開発 | 芳香族化合物は、創薬化学や有機材料化学分野において最も重要な構成単位のひとつであるが、多環式芳香族化合物は出発原料として供給されている誘導体の種類が少なく、その官能基導入も単環式の芳香族化合物に比べて十分には確立されていない。多環式芳香族化合物の新たな反応開発が望まれており、本研究では、多環式芳香族化合物の新しい活性化法の開拓を目標とした種々の反応開発の検討を行った。核酸医薬品の開発が注目されている近年、多環式芳香族の一例として核酸塩基誘導体の新規合成法の開発は重要である。このような背景下、本研究では前年度までにプリン塩基誘導体へのメタルフリー求核分子導入反応や、核酸塩基の新規合成素子となるウラシルヨードニウム塩の効率的合成法を見出している。そこで今年度は、さまざまな置換基やカウンターアニオンを有する種々のウラシルヨードニウム塩を合成し、分子設計により安定性を向上させることを検討した。さらに、合成したヨードニウム塩を新規合成素子として活用するウラシルのビシナル官能基化法を検討した。ウラシルヨードニウム塩からの環状歪みアルキンの発生条件について、塩基や溶媒、ヨードニウム塩の配位子の検討を行ったところ、基質は反応性の高い環状ウレア構造を有しているため、脱離反応を選択的に引き起こす塩基の選択が重要となることが明らかとなった。また、ウラシルヨードニウム塩とフランをLiHMDS存在下反応させるとDiels-Alder生成物が得られ、ウラシルのふたつの二重結合炭素を一挙に官能基化することができる新しいビシナル官能基化法を開発した。本法を用いると、合成難易度の高い環構築を高効率に行うことが可能であり、複雑な芳香環化合物の骨格構築に適用することが可能などその応用範囲は広く、合成化学への寄与も大きいと考えられる。芳香族化合物は、創薬科学や有機材料科学分野において最も重要な構成単位のひとつであるが、多環式芳香族化合物は、出発原料として供給されている芳香族化合物の種類が少なく、また芳香環への官能基導入反応も十分に確立されているとは言い難い。したがって、多環式芳香族化合物の新たな反応開発が望まれており、本研究では、多環式芳香化合物の新しい活性化法の開拓を目標とした種々の検討を行った。核酸医薬品の開発が注目されている近年、さまざまな核酸塩基誘導体の合成研究は薬学やバイオケミストリーをはじめとする創薬化学の分野において、重要な位置を占めるといえる。そこで、今年度は主に、プリン塩基誘導体をはじめとした核酸塩基に対し、電子豊富なアリール基やアミノ基などの多様な求核種の導入反応の検討を試みた。その結果、基質が求電子種に活性化され、かつ求核種自身は活性を失わない適度な酸性条件下において、望みの求核種導入反応がハロゲン原子特異的に進行することを新たに見出した。ここで溶媒や添加剤を精査することにより、一般性の高い反応条件を確立することができた。さらに、通常の溶媒とは異なる興味深い反応性を示す有機溶媒としてフルオロアルコールを用いることで、メタルフリーでの効率的求核種導入反応を達成することができた。以上の検討で得られた知見をもとに、生体関連分子等の有用物質の前駆体合成を志向した創薬に役立つ分子シーズ創生研究へとつなげたい。交付申請書に掲げた当初の研究目標について、おおむね問題なく達成できている。研究経費についても有効に活用できており、次年度以降に用いる生体関連分子の購入に充てる経費を十分に残せてある。研究成果の公表に関して、現在論文執筆中であり、近々国際学術誌への投稿と学会発表を行う予定である。芳香族化合物は、創薬化学や有機材料化学分野において最も重要な構成単位のひとつであるが、多環式芳香族化合物は、出発原料として供給されている核酸塩基誘導体の種類が少なく、その官能基導入も芳香族化合物に比べて十分には確立されていない。多環式芳香族化合物の新たな反応開発が望まれており、本研究では、多環式芳香族化合物の新しい活性化法の開拓を目標とした種々の反応開発の検討を行った。次世代医薬の有力候補として核酸医薬が近年注目を集めており、多環式芳香族の一例として核酸塩基誘導体の新規合成法の開発は重要である。このような背景下、本研究では前年度までに、プリン塩基誘導体をはじめとした核酸塩基の新規変換反応として、ハロゲン化体へのメタルフリー求核分子導入反応を見出している。そこで今年度は、核酸塩基の新規合成素子として、高い反応性を有するヨードニウム塩の簡便かつ効率的な合成の検討を試みた。核酸塩基のヨードニウム塩としてウラシルの塩が報告されているが、その反応性はほとんど知られていない。ウラシルからの直接的ヨードニウム塩合成を試みたところ、フルオロアルコールを用いる脱水縮合法が有効であることがわかった。そこでさらに合成素子としての安定性の向上や反応性の制御を目的とし、種々の超原子価ヨウ素化合物を用い、求核剤とのカップリング反応に最適なヨードニウム塩の分子設計を達成することができた。以上の検討で得られた知見をもとに、生体関連分子等の有用物質の前駆体合成を志向した創薬に役立つ研究展開へとつなげたい。交付申請書に掲げた当初の研究目標についておおむね問題なく達成できている。研究経費についても有効に活用できており、次年度に行う生体関連分子の購入に充てる経費を十分に残せてある。 | KAKENHI-PROJECT-16K18854 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K18854 |
高反応性炭素ーヨウ素結合を利用した多環式芳香族化合物の新規変換反応の開発 | 研究成果の公表に関して、既に学会や学術雑誌にいくつか発表しており、引き続き学術誌への投稿や学会での発表を行う予定である。芳香族化合物は、創薬化学や有機材料化学分野において最も重要な構成単位のひとつであるが、多環式芳香族化合物は出発原料として供給されている誘導体の種類が少なく、その官能基導入も単環式の芳香族化合物に比べて十分には確立されていない。多環式芳香族化合物の新たな反応開発が望まれており、本研究では、多環式芳香族化合物の新しい活性化法の開拓を目標とした種々の反応開発の検討を行った。核酸医薬品の開発が注目されている近年、多環式芳香族の一例として核酸塩基誘導体の新規合成法の開発は重要である。このような背景下、本研究では前年度までにプリン塩基誘導体へのメタルフリー求核分子導入反応や、核酸塩基の新規合成素子となるウラシルヨードニウム塩の効率的合成法を見出している。そこで今年度は、さまざまな置換基やカウンターアニオンを有する種々のウラシルヨードニウム塩を合成し、分子設計により安定性を向上させることを検討した。さらに、合成したヨードニウム塩を新規合成素子として活用するウラシルのビシナル官能基化法を検討した。ウラシルヨードニウム塩からの環状歪みアルキンの発生条件について、塩基や溶媒、ヨードニウム塩の配位子の検討を行ったところ、基質は反応性の高い環状ウレア構造を有しているため、脱離反応を選択的に引き起こす塩基の選択が重要となることが明らかとなった。また、ウラシルヨードニウム塩とフランをLiHMDS存在下反応させるとDiels-Alder生成物が得られ、ウラシルのふたつの二重結合炭素を一挙に官能基化することができる新しいビシナル官能基化法を開発した。本法を用いると、合成難易度の高い環構築を高効率に行うことが可能であり、複雑な芳香環化合物の骨格構築に適用することが可能などその応用範囲は広く、合成化学への寄与も大きいと考えられる。前年度の基盤研究を深化させつつ、生体関連分子等の有用な多環式化合物群の前駆体合成を適宜推し進めたい。なかでも、核酸塩基誘導体の環境調和型反応を確立し、近年注目されている核酸医薬分野を意識した研究展開を行いたい。前年度までの基盤研究を発展させ、生体関連分子等の有用な多環式化合物群の前駆体合成を適宜推し進めたい。核酸塩基誘導体の環境調和型反応を実用的な手法として確立し、近年注目されている核酸医薬分野への新規化合物の供給を意識した研究展開を行いたい。初年度であった2016年度は、限られた基質で小スケールでの検討が主となり、また当初の予定よりも順調に研究が進展したこともあり、試薬購入にかかる支出が少なかった。加えて、特許出願等の検討が新たに生じ、研究成果の公表(オープンアクセスを予定)を控えているため、成果発表に関わる経費を抑えたことが、次年度使用額が生じた理由である。今年度は新規反応および合成素子の開発が当初予定よりも進展し、より幅広い化合物を対象とした反応や合成の確認等の研究計画の見直しが生じ、小スケールでの実験検討が主となった。そのため、購入した試薬の量が当初予定よりも少なく、支出が少ない結果となった。最終年度となる2018年度は本研究のまとめとして、実用性の確認の意味も含め、対象とする化合物を絞った大スケールでの実験実施を計画している。そのための多くの試薬や規格の異なるガラス器具の購入が必要となり、未使用額はそのための購入費用に充てるため、研究期間全体を通しての研究費の執行額に大きな変更はない予定である。 | KAKENHI-PROJECT-16K18854 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K18854 |
再プログラム因子導入による間葉上皮移行の誘導と癌浸潤の制御 | 間葉ー上皮移行が人工多能性幹細胞(iPS細胞)誘導過程で起こることが報告されたことを受けて、本研究ではこの現象を利用して再プログラミング因子(RFs)を有棘細胞癌で発現させた際の作用を検討した。RFsが導入された有棘細胞癌細胞(RICs)は、より強い上皮細胞の特性を獲得し、移動能そして浸潤能が著しく低下した。また、免疫不全マウスへの細胞移植実験ではRICsのリンパ節転移が減弱していた。従って、がん細胞においてもRFs導入により間葉ー上皮移行が誘導されて、がん悪性度が低下したと考えた。この様ながん細胞における間葉ー上皮移行を理解することは新たながん治療開発に繋がる可能性がある。ヒト有棘細胞がん由来の細胞株4種類に再ブログラム因子を導入した結果、これらのいずれも親株と比してより強く上皮性性質を獲得していた。それは形態的な変化に加えて分化マーカーの発現変化、細胞運動能の低下、細胞間基質分解能の減少、ヌードマウスXenograft modelでの造腫瘍能の減弱化等が確認された。これら4種類の有棘細胞がんの親株と再ブログラム因子を導入した細胞株を用いて、マイクロアレイによる遺伝子発現のプロファイリングを実施した。再ブログラム因子を導入した細胞で共通して変化した遺伝子を抽出した結果、発現が増加した遺伝子または減少した遺伝子はそれぞれ83と69であった。このうちそれぞれにLincRNAを11と6を含む。この結果には上皮あるいは間葉細胞を特徴付けるマーカー分子があまり含まれなかったことは興味深い。これまで再ブログラム因子として5遺伝子を導入したが、この種類を減らしてMET誘導が可能であるのか検討した。4因子あるいは3因子でもMETを誘導し得たが、5因子より誘導能が低下した。昨年までに研究に用いた有棘細胞癌4株に加えて、新たにヒト有棘細胞癌株OSC-19に再プログラミング因子を導入した。OSC-19細胞はヌードマウスの舌内に移植すると移植部での腫瘍の増大に加えて所属リンパ節へ効率に転移することが知られている。再プログラミング因子を導入したOSC-19は、親株細胞に比べて、上皮系分化マーカーの発現が増加していた。電子顕微鏡による検討では、親細胞では見られなかったデスモソームの形成が確認された。これらより再プログラミング因子によりOSC-19においても間葉上皮移行が誘導されたことが示された。この細胞をヌードマウス舌内に移植したが、移植部での腫瘍増殖能およびリンパ節への転移能が親細胞に比して減じていることが明らかになった。従って、in vitroのみならずin vivoの研究によって、有棘細胞癌は再プログラミング因子の導入により間葉上皮移行が誘導され、その悪性度が減弱することが示された。近年の研究により、microRNA (miRNA)が細胞の機能制御に関わっていることが示されていることから、再プログラミング因子の導入による間葉上皮移行にmicroRNA (miRNA)がどのように関わっているのか検討した。HOC313細胞をこの検討に用いた。再プログラミング因子の導入により5種類のmiR-200 family (miR-200a, -200b, -200c, -141 and -429)とmiR-203およびmiR-205が増加していることが明らかとなった。これらは、ZEB2、SNAI1およびSNAI2を減少させて、CDH1の発現増加に関わっている可能性がある。また、再プログラミング因子の導入によるメチル化の変化が間葉上皮移行に及ぼす影響ついても検討を行った。しかしながら、少なくともCDH1を含む間葉上皮移行に関わる幾つかの遺伝子においては、メチル化の変化を捉えることが出来なかった。OSC-19親細胞あるいはRICsを2×105 cells /mouseとして尾静脈より4匹のヌードマウスに移植した。週3回の体重計測および肉眼的な観察により、腫瘍の増大による全身状態の悪化をモニターした。移植後、47日までに体重の減少の他、肉眼的な異常は確認出来なかった。剖検では胸部および腹部主要臓器に腫瘍の増大は認められなかった。組織学的な検索においても、これら臓器に腫瘍細胞は確認出来なかった。さらに、肺組織中のmicrometastasis確認するために、OSC-19親細胞とRICsで同等に発現することが明らかになっているヒトサイトケラチン18 mRNAを定量的RT-PCR法を用いて検出を試みた。結果として、親細胞を移植したヌードマウス4匹中2匹にヒトサイトケラチン18の発現を認め、一方RICsを移植した全てのマウスでヒトサイトケラチン18の発現は確認出来なかった。昨年までの研究成果である舌内移植による局所リンパ節転移モデルに加えて、遠隔転移モデルにおいても、腫瘍細胞への再プログラミング因子導入によるMET誘導は、腫瘍悪性度を減弱化することが示された。間葉ー上皮移行が人工多能性幹細胞(iPS細胞)誘導過程で起こることが報告されたことを受けて、本研究ではこの現象を利用して再プログラミング因子(RFs)を有棘細胞癌で発現させた際の作用を検討した。RFsが導入された有棘細胞癌細胞(RICs)は、より強い上皮細胞の特性を獲得し、移動能そして浸潤能が著しく低下した。また、免疫不全マウスへの細胞移植実験ではRICsのリンパ節転移が減弱していた。従って、がん細胞においてもRFs導入により間葉ー上皮移行が誘導されて、がん悪性度が低下したと考えた。 | KAKENHI-PROJECT-25461698 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25461698 |
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