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現代台湾の社会変容下における農村「コミュニティ」関係変化の研究
平成29年度は昨年度の調査成果の整理・公表に重点を置いた。調査成果の整理のため調査対象村(台南市後壁区D村)にて補足的な村落調査を実施した。補足調査では、昨年度の3回の調査で不明確であった屋敷地の相続プロセスについて確認を行うとともに、神明会による祭祀儀礼の参与観察を実施した。補足調査をふまえ過去の調査内容を2篇の論文と2回の口頭発表にとりまとめた。分析テーマ2つめの祭祀(祭祀の村廟化)に関する英文論文1篇を『アジア地域文化研究』(Komaba journal of Asian studies, the University of Tokyo)第14号に投稿し、平成29年12月に掲載が決定した(印刷中)。分析テーマ1つめの家族(屋敷地の相続)に関しては別途の英文論文1篇を平成30年2月に『台湾人類学刊』(Taiwan Journal of Anthropology)に投稿し現在審査中である。また、同内容に関連する口頭報告を日本村落研究学会(平成29年11月、日本語)および台湾・国立台北藝術大学での学術交流会(平成29年12月、中国語)でそれぞれ実施した。昨年度の調査は主にD村内の共時的な集落間比較を中心に実施した。平成29年度についてはフィールド調査の範囲をD村から後壁区全域へ拡大し、D村の地域内におけるサンプルとしての位置づけを歴史的に調査する作業を行いたい。具体的には(1)「無廟」の状態から廟が集落の統合軸へと変化するに至る戦後の過程について、(2)D村では見られない強固な親族集団(宗族)の活動状況について調査を実施する。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-16J06753
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J06753
外国にルーツをもつケアワーカーの職務意識とソーシャルサポートの実態に関する研究
本研究では、入管法や技能実習法改正など、外国人介護労働者の受け入れに大きく舵を切った近年の介護人材確保への動きの中で、「外国にルーツを持つケアワーカーを継続的に就労可能な介護人材として育成することはできるのか」という学術的な問いをたて、受け入れ施設事業の意識や受け入れ施設における支援体制の実態を把握すること、外国人ケアワーカーの職務意識を明らかにし、ソーシャルサポート、就労継続意向の実態の関連性を明らかにすることを目的として、質的調査および量的調査を通して検証する事を計画した。まず、今年度は、1)先行研究の整理の実施、2)外国人支援を行う2カ所のNPO法人と任意団体、国際交流協会の職員への支援状況に関する聞き取り調査、3)EPA介護福祉士候補者の受け入れが進んでいる関西地方と東海地方の2法人の施設管理者に対して受入れ状況と支援体制に関するインタビュー調査を実施し、4)同法人の外国人ケアワーカー(EPA介護福祉士(候補者)、在留資格(介護/留学)、日本人配偶者など)への職務意識に関するインタビュー調査の準備と実施を行った。先行研究には、外国人ケアワーカーの受け入れ施設管理者の意識や評価、同僚の意識や評価、外国人ケアワーカーの来日動機や仕事への意欲・困りごとなどの実態把握を行う調査、あるいは外国人労働者の人権保障の視点や入管法の改正と介護人材の受け入れに関する課題などを政策論の立場から取り上げたものが多い。一方で、外国人ケアワーカー自身を対象とした調査は非常に少なく(廣橋2016)、例えばEPA介護福祉士候補者では、想定外に早い帰国が見られることが課題とされているが、職務意識との関連性に焦点を当てた要因分析を行う研究は見られない。その点で、本研究において、現場で働く外国人ケアワーカーの職務意識を把握し、組織環境や個人状況の関連性を明らかにする研究を行うことの意義は大きい。今年度は、予定していた文献研究に加えて、外国人支援団体のNPO法人、外国人受け入れを行う高齢者福祉施設管理者、外国人ケアワーカーに対してインタビュー調査を実施することができた。外国人受け入れ施設管理者のインタビューの調査では、施設管理者の意識と受け入れ体制を把握するために、EPA介護福祉士候補者の受け入れが進んでいる関西地方と東海地方の2法人の施設管理者に対してインタビュー調査を実施した。同調査では、EPA介護福祉士候補者やその他の外国人ケアワーカーとして受け入れを進めている外国人ケアワーカー(介護の在留資格、留学生、日本人配偶者など)の受け入れ状況と今後の受け入れ予定に加え、雇用条件や処遇状況、仕事内容、現場における同僚や利用者からの評価、チームケアを行う上での課題、資格取得状況、研修指導体制、資格取得や日本語教育の学習支援などについて、インタビュー調査を行った。本調査の結果から全国施設を対象とした質問紙作成を行う予定であり、この点は順調に進めることができている。一方、外国人ケアワーカーへの職務意識に関するインタビュー調査については、東海地方の法人においてキャリアの長いフィリピン人(EPA介護福祉士)を対象に、来日動機や現在の仕事内容とやりがい、自分の立場や同僚からの評価、仕事への意欲や意識、必要とするソーシャルサポート、不安や課題、将来のキャリアについての聞き取りを40分程度行った。この調査をプレ調査として、インタビュー内容のガイドラインを作成し、研究計画に沿って20名程度のインタビュー調査を実施する準備と実施(一部)を行った。現在、3法人5施設に依頼し、多様な在留資格の外国人ケアワーカー(インドネシア、フィリピン、中国人)へのインタビュー調査を継続実施中である。今後の職場組織環境の整備と必要とされるサポート体制づくりを念頭に調査を進めていきたい。本研究では、今後、2つの調査を通して、外国人ケアワーカーの職務意識や必要なサポート、受け入れ施設事業者における現状と今後の課題や方向性を明らかにしていく。進捗状況で述べたように、2018年度に実施終了を予定していた外国人ケアワーカーへのインタビュー調査は双方の時間調整がつきにくく、年度内に全て終了する事ができなかったが、現在も調査は継続しており、2019年8月末を目処に調査を終える予定である。インタビュー調査終了後には、2019年9月11月にアルバイトなどの協力者に依頼し、データのトランスクリプションの作成を進め、2019年12月2020年3月には研究チームにおいて分析結果をまとめていく予定である。また、2019年に実施予定の外国人ケアワーカーの受け入れ施設事業者を対象とした質問紙調査については、2018年度に実施したインタビュー調査をもとに質問紙の素案を作成している段階にあり、2019年9月10月にパイロットスタディを実施後、質問紙を完成させ、2020年1月2月に向けて調査の実施を計画している。質問紙調査は全国の高齢者福祉施設より1000施設を無作為抽出して郵送法により実施する予定である。質問紙の郵送や回収、回収後のデータ入力やデータ整理においてはスムーズな研究の進行のためにアルバイト学生などに協力を要請し、年度内に終了する予定である。データ分析は2020年4月5月頃までに調査結果を整理し、まとめていく。本研究では、インタビュー調査と質問紙調査の実施によるミックス法を用いた調査を行うことで、全国の高齢者福祉施設の外国人ケアワーカーの受け入れ状況と今後の受け入れ課題や方向性を明らかにしていくことが可能になる。また、外国人ケアワーカー自身の就労状況を把握し、今後も長期的に働くことが可能な職場組織環境を目指したサポート体制づくりへの提言へとつなげていきたいと考える。
KAKENHI-PROJECT-18K02182
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K02182
外国にルーツをもつケアワーカーの職務意識とソーシャルサポートの実態に関する研究
本研究では、入管法や技能実習法改正など、外国人介護労働者の受け入れに大きく舵を切った近年の介護人材確保への動きの中で、「外国にルーツを持つケアワーカーを継続的に就労可能な介護人材として育成することはできるのか」という学術的な問いをたて、受け入れ施設事業の意識や受け入れ施設における支援体制の実態を把握すること、外国人ケアワーカーの職務意識を明らかにし、ソーシャルサポート、就労継続意向の実態の関連性を明らかにすることを目的として、質的調査および量的調査を通して検証する事を計画した。まず、今年度は、1)先行研究の整理の実施、2)外国人支援を行う2カ所のNPO法人と任意団体、国際交流協会の職員への支援状況に関する聞き取り調査、3)EPA介護福祉士候補者の受け入れが進んでいる関西地方と東海地方の2法人の施設管理者に対して受入れ状況と支援体制に関するインタビュー調査を実施し、4)同法人の外国人ケアワーカー(EPA介護福祉士(候補者)、在留資格(介護/留学)、日本人配偶者など)への職務意識に関するインタビュー調査の準備と実施を行った。先行研究には、外国人ケアワーカーの受け入れ施設管理者の意識や評価、同僚の意識や評価、外国人ケアワーカーの来日動機や仕事への意欲・困りごとなどの実態把握を行う調査、あるいは外国人労働者の人権保障の視点や入管法の改正と介護人材の受け入れに関する課題などを政策論の立場から取り上げたものが多い。一方で、外国人ケアワーカー自身を対象とした調査は非常に少なく(廣橋2016)、例えばEPA介護福祉士候補者では、想定外に早い帰国が見られることが課題とされているが、職務意識との関連性に焦点を当てた要因分析を行う研究は見られない。その点で、本研究において、現場で働く外国人ケアワーカーの職務意識を把握し、組織環境や個人状況の関連性を明らかにする研究を行うことの意義は大きい。今年度は、予定していた文献研究に加えて、外国人支援団体のNPO法人、外国人受け入れを行う高齢者福祉施設管理者、外国人ケアワーカーに対してインタビュー調査を実施することができた。外国人受け入れ施設管理者のインタビューの調査では、施設管理者の意識と受け入れ体制を把握するために、EPA介護福祉士候補者の受け入れが進んでいる関西地方と東海地方の2法人の施設管理者に対してインタビュー調査を実施した。同調査では、EPA介護福祉士候補者やその他の外国人ケアワーカーとして受け入れを進めている外国人ケアワーカー(介護の在留資格、留学生、日本人配偶者など)の受け入れ状況と今後の受け入れ予定に加え、雇用条件や処遇状況、仕事内容、現場における同僚や利用者からの評価、チームケアを行う上での課題、資格取得状況、研修指導体制、資格取得や日本語教育の学習支援などについて、インタビュー調査を行った。本調査の結果から全国施設を対象とした質問紙作成を行う予定であり、この点は順調に進めることができている。一方、外国人ケアワーカーへの職務意識に関するインタビュー調査については、東海地方の法人においてキャリアの長いフィリピン人(EPA介護福祉士)を対象に、来日動機や現在の仕事内容とやりがい、自分の立場や同僚からの評価、仕事への意欲や意識、必要とするソーシャルサポート、不安や課題、将来のキャリアについての聞き取りを40分程度行った。
KAKENHI-PROJECT-18K02182
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K02182
医療用Er:YAGレーザ対応型高耐力高機能中空ファイバ先端素子
波長が2μm以上の赤外波は有効性が確認されつつも、光源から患部への導光手段として石英光ファイバが使えず、中空ファイバが使用されてきている。中空ファイバを用いた効率良いレーザ治療を行うには、先端素子に対してレーザ光を高効率に導光できる性能が要求されている。本研究では、治療を効果的に行うために、強固でしかも患部にEr:YAGレーザ光を効率的に照射できる種々の機能を有する先端素子の開発を行う。波長が2μm以上の赤外波は有効性が確認されつつも、光源から患部への導光手段として石英光ファイバが使えず、中空ファイバが使用されてきている。中空ファイバを用いた効率良いレーザ治療を行うには、先端素子に対してレーザ光を高効率に導光できる性能が要求されている。本研究では、治療を効果的に行うために、強固でしかも患部にEr:YAGレーザ光を効率的に照射できる種々の機能を有する先端素子の開発を行う。治療用の数多くのレーザの中、波長が2μm以上の赤外波はその有効性が確認されつつも、レーザ発振器から患部へのレーザ光の導光手段は従来の石英光ファイバが使えないため、最近は中空ファイバが多く使用されてきている。また、効率的な治療を行うためには、患部に接触して使用する先端素子は高効率でレーザ光を導光できることと、滅菌工程に耐える性能が要求されている。現時点ではこの要求性能を満たす中空ファイバが無いため、導光効率を犠牲にした短尺のガラスファイバ素子が使用されている。医療現場での感染が、社会問題になっている昨今、滅菌工程に耐える中空ファイバが実現されれば、その導光効率の高さ、経済性のメリットで、治療の可能性を大きくすることが可能である。本研究では、治療を効果的に行うために、強固でしかも患部にEr:YAGレーザ光を効率的に照射できる、種々の機能を有するレーザ先端素子の開発を行う。平成20年度は、以下の研究を行った。1.無機ガラス薄膜内装中空ファイバの製作と評価人体組織に強く吸収され、効率の良い蒸散・切開が可能なEr:YAGレーザ用の伝送路として、細径石英キャピラリーチューブに、銀薄膜と無機ガラス薄膜がコートされた中空ファイバの製作を行った。製作した中空ファイバは、内径100μm、長さ10cmである。光スペクトラムアナライザを用いて、波長損失特性の評価を行った。成膜した無機薄膜は、Er:YAGレーザ光伝送に最適な膜厚であることが分った。2.高耐久性出射マイクロ素子の製作と評価内径100μmの超細径先端素子一体型中空ファイバの製作を図る。素子の封止部として先端封止した内径320μmの石英ガラス管を用いた。先端封止した石英ガラス部分の形状を制御することによって、レーザ光を収束、発散、光軸に対して90°方向に照射する素子の製作を行うことができた。治療用の数多くのレーザの中、波長が2μm以上の赤外波はその有効性が確認されつつも、レーザ発振器から患部へのレーザ光の導光手段は従来の石英光ファイバが使えないため、最近は中空ファイバが多く使用されてきている。また、効率的な治療を行うためには、患部に接触して使用する先端素子は高効率でレーザ光を導光できることと、滅菌工程に耐える性能が要求されている。現時点ではこの要求性能を満たす中空ファイバが無いため、導光効率を犠牲にした短尺のガラスファイバ素子が使用されている。医療現場での感染が、社会問題になっている昨今、滅菌工程に耐える中空ファイバが実現されれば、その導光効率の高さ、経済性のメリットで、治療の可能性を大きくすることが可能である。本研究では、治療を効果的に行うために、強固でしかも患部にEr:YAGレーザ光を効率的に照射できる、種々の機能を有するレーザ先端素子の開発を行う。平成21年度は、以下の研究を行った。1.高耐久性シールド膜付加先端素子の製作歯などの硬組織に先端素子を用いた場合、Er:YAGレーザ光(発振波長2.94μm)により切除された飛散物が先端部につき、磨耗を引き起こす。簡易なディッピング法を用いて、先端素子表面に無機硬化ガラス膜のコーティングを行い、保護膜の形成を行った。製作した保護膜付き先端封止中空ファイバは、内径1mmである。赤外分光計を用いて、波長損失特性の評価を行い、無機膜の厚さ0.3mmで6.5dB程度(波長2.94μm)であった。Er:YAGレーザ先端装置(歯周疾患用、軟組織疾患用装置)に高耐久性高機能先端素子を組み込み、想定されるさまざまな形態に用いた時の伝送特性の評価を行った。内径0.7mmと内径0.32mmの先端素子を使用し、透過率や曲がりの影響などについて評価を行った。治療用の数多くのレーザの中、波長が2μm以上の赤外波はその有効性が確認されつつも、レーザ発振器から患部へのレーザ光の導光手段は従来の石英光ファイバが使えないため、最近は中空ファイバが多く使用されてきている。
KAKENHI-PROJECT-20360164
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20360164
医療用Er:YAGレーザ対応型高耐力高機能中空ファイバ先端素子
また、効率的な治療を行うためには、患部に接触して使用する先端素子は高効率でレーザ光を導光できることと、滅菌工程に耐える性能が要求されている。現時点ではこの要求性能を満たす中空ファイバが無いため、導光効率を犠牲にした短尺のガラスファイバ素子が使用されている。医療現場での感染が、社会問題になっている昨今、滅菌工程に耐える中空ファイバが実現されれば、その導光効率の高さ、経済性のメリットで、治療の可能性を大きくすることが可能である。本研究では、治療を効果的に行うために、強固でしかも患部にEr:YAGレーザ光を効率的に照射できる、種々の機能を有するレーザ先端素子の開発を行う。1.高耐久性シールド膜付加先端素子の製作硬組織に先端素子を用いた場合、切除された飛散物が先端部につき、磨耗を引き起こす。先端部との付着力、耐久性、透過率から最適な保護膜材料の検討を行い、無機溶液のOCクリヤーNo.300(OC300)を選択した。簡易なディッピング法を用いて、先端素子表面にOC300保護膜の形成を図った。Er:YAGレーザ先端装置(歯周疾患用、軟組織疾患用装置)に高耐久性高機能先端素子を組み込み、想定されるさまざまな形態に用いた時の伝送特性の評価を行う。内径0.32mm程度の先端素子を使用する。そこで、従来の充実型先端素子と比較しながら、その透過率や曲がりの影響などについてEr:YAGレーザ光と可視パイロット光を用いて評価を行い、伝送特性を明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-20360164
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20360164
非線形微分方程式の特異解の研究
私は、スロバキアの友人Jaroslav Jaros教授との非線形微分方程式の定性的理論に関する共同研究の過程で、偶然、ある特殊な非線欣青造を持つ2階常微分方程式に、過去の文献に全く現れたことのない新種(珍種)の特異解が2種類存在するという現象を発見し、これらをブラックホール解、ホワイトホール解と命名した。この発見は、非線形微分方程式の解の構造に関する研究が再検討されるべきであることを示唆するもので、私は、これら2種類の新しい特異解の存在と非存在の理論を作り、その他の(通常の)特異解との関連を精密に調べ、最終的に正常解を含む解の全体構造を解明することを目指す研究の必要性を認識した。本研究は、このような考え方に基づいて発案され、研究組織が構成され、申請の採択と同時に(実際にはそれ以前から)開始され、2年間に亘り精力的に実施された。ブラックホール解については、単独の方程式の場合、微分作用素に特異性があるものに限って存在することが示され、その為の必要十分条件が導き出された。ホワイトホール解については、単独の方程式の場合、微分作用素に特異性がないものに限って存在することが示され、そのための必要十分条件が得られた。この結果は、2種類の特異解を有する微分方程式の非線形性の間に顕著な双対性(duality)が存するという事実を明らかにした。これらの新種の特異解が、高階の非線形微分方程式(単独及び連立)に対しても存在するであろうとの予想の下で膨大な計算を行い、先ず2次元の2階非線形微分方程式系に対して肯定的な結果を導くことに成功した。さらなる一般化は今後の課題として残された。また、新種の特異解がその他の特異解と共存し得る非線形微分方程式の具体例が確認された。特異解の統一的理論の構築には未だ時間がかかりそうである。解の全体構造を知るためには、正常解についての考究が不可欠である。本研究においても当然それが実行され、特異解を持ち得ない微分方程式、特異解と正常解が共存する微分方程式が多く取り上げられ、正常解の定性的性質が様々な角度から詳細に吟味され、理論的に価値ある結果が導出された。2年間に亘る本研究に対する助成に衷心より謝意を表して報告を終える。私は、スロバキアの友人Jaroslav Jaros教授との非線形微分方程式の定性的理論に関する共同研究の過程で、偶然、ある特殊な非線欣青造を持つ2階常微分方程式に、過去の文献に全く現れたことのない新種(珍種)の特異解が2種類存在するという現象を発見し、これらをブラックホール解、ホワイトホール解と命名した。この発見は、非線形微分方程式の解の構造に関する研究が再検討されるべきであることを示唆するもので、私は、これら2種類の新しい特異解の存在と非存在の理論を作り、その他の(通常の)特異解との関連を精密に調べ、最終的に正常解を含む解の全体構造を解明することを目指す研究の必要性を認識した。本研究は、このような考え方に基づいて発案され、研究組織が構成され、申請の採択と同時に(実際にはそれ以前から)開始され、2年間に亘り精力的に実施された。ブラックホール解については、単独の方程式の場合、微分作用素に特異性があるものに限って存在することが示され、その為の必要十分条件が導き出された。ホワイトホール解については、単独の方程式の場合、微分作用素に特異性がないものに限って存在することが示され、そのための必要十分条件が得られた。この結果は、2種類の特異解を有する微分方程式の非線形性の間に顕著な双対性(duality)が存するという事実を明らかにした。これらの新種の特異解が、高階の非線形微分方程式(単独及び連立)に対しても存在するであろうとの予想の下で膨大な計算を行い、先ず2次元の2階非線形微分方程式系に対して肯定的な結果を導くことに成功した。さらなる一般化は今後の課題として残された。また、新種の特異解がその他の特異解と共存し得る非線形微分方程式の具体例が確認された。特異解の統一的理論の構築には未だ時間がかかりそうである。解の全体構造を知るためには、正常解についての考究が不可欠である。本研究においても当然それが実行され、特異解を持ち得ない微分方程式、特異解と正常解が共存する微分方程式が多く取り上げられ、正常解の定性的性質が様々な角度から詳細に吟味され、理論的に価値ある結果が導出された。2年間に亘る本研究に対する助成に衷心より謝意を表して報告を終える。非線形微分方程式が様々なタイプの特異解を持つことは周知の事実であるが、著者は最近ある種の特異性を持つ単独の2階非線形常微分方程式にブラックホール型(以下B型と略す)、ホワイトホール型(以下W型と略す)という2種類の新種の特異解が存在し得るという注目すべき現象を発見した。本研究の目的は、これら2種類の特異解を多角的かつ精密に解析するとともに、他種の特異解との関連を分析して、非線形微分方程式の解の構造の解明に貢献することである。筆者は先ず常微分方程式系に対するB型、W型の特異解の存在、非存在の問題の考察から始め、試行錯誤の結果、B型の解を持ち得る弱連結の2次元の2階特異非線形系のクラスが在ることを突き止めることに成功し、論文[1]を著した。
KAKENHI-PROJECT-12640196
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12640196
非線形微分方程式の特異解の研究
W型の解に関する研究も同時並行的に行われたが、進捗はやや遅れ、極く最近になって漸く決着を見た。結論は、B型の場合と同様、W型の解を持つ弱連結の2階2次元系のクラスを明示することが出来るというものである。このテーマの研究論文の執筆が現在進行中で、完成次第専門誌に投稿される。上記の研究の過程で、著者は、一般な1階非線形常微分方程式系の考察が問題の本質への近接に決定的に重要な意味を有するのではないかと思うようになった。当初はB型、W型は異なるタイプの特異解であると理解していたが、何時しか両種の解の統一的取り扱いの可能性を確信するようになり、今年度の後半の殆どをこの方向の研究に費やした。この路線の研究が来年度に継続される本研究の活動の主要な部分を占めることになるが、既に相当な成果が挙がっており、本研究が所期の成果を収めて終了することは確実である。筆者はまた特異解を持たない非線形方程式についての研究も行って得られた結果を研究論文[2、3]に仕上げていることを付言する。今年度の当初の目的は、ホワイトホール解と呼ばれる新種の特異解の厳密な理論付けであった。試行錯誤の結果、ホワイトホール解を持ち得る2階非線形常微分方程式のクラスが存在することを突き止め、この種の特異解が実際に存在する状況を特徴付けることに成功した。得られた結果は、ブラックホール解の存在が、微分作用素に特異性を有する微分方程式に限られるのに反し、ホワイトホール解は、微分作用素に特異性を有しない微分方程式にのみ存在するという、顕著な相対性(duality)の成立を明らかにするものであった。単独の微分方程式に関する研究は更に進展し、ある種の2次元の2階非線形微分方程式系に対してもホワイトホール解が存在することが実証され、存在のための十分条件が導出された。この結果を、前年度に得られた2階非線形微分方程式系に関するブラックホール解の存在の結果と比較すれば、特異型微分方程式系に対しても、2種の特異解について明確な相対性が存することが看取されるであろう。次なる問題は、(1)高階の非線形常微分方程式(単独或いは系)に対するブラックホール解ならびにホワイトホール解の存在・非存在の精密な研究、(2)ブラックホール解とホワイトホール解を統一的に把握する理論の構築の可能性の吟味、であった。問題(1)に関しては、手始めに4階の単独方程式を例に取って、様々な計算を行い、2種の特異解のそれぞれが、特異性を示す解或いは解の導関数の階数に従って、幾つかの部分クラスから構成されるべきであるという青写真を描くことが出来、その後の研究の方向付けについての方針を定めることが出来た。(2)については、前年度の成果報告書に述べた方向に沿って研究を行ったが、実質的な進展を得るまでに至らず、今後の課題として残されることになった。本研究に対する2年間に亘る助成に対し深い感謝の念を表しつつ報告を終える。
KAKENHI-PROJECT-12640196
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12640196
乳癌悪性転化の予防・治療を標的とする革新的核酸医薬の創出
本研究では、ヒトEphA2アンチセンスRNA(AS)に関して次のことを明らかにした。1.ヒトEphA2 ASの同定、発現。2.ヒトEphA2 AS発現を抑制するセンスデオキシヌクレオチド(seODN)の設計と同mRNAに対する作用効果及び作用領域。3.ヒトEphA2 ASの乳癌培養細胞を用いた生理的機能。以上の結果から、ヒトEphA2 ASは限定された領域を介して同mRNAを安定化させ、細胞増殖及び細胞遊走に関与することを示唆した。更に、ヒトEphA2 AS及び同mRNAを標的とするmiRNAを同定し、上記seODNとの併用による相乗効果の可能性を提示した。1.ヒトEphA2アンチセンス(AS)RNAのノーザンブロッティング:EphA2 AS RNAはポリA鎖を有し、全長1.9 kb長及び5 kb長と推定され、前者が大部分であることが示された。2. 5'RACE及び3'RACE:ポリA鎖を除くと、全長990 b長及び1282 b長の3'端が異なる2種類のEphA2 AS RNAが存在することが示唆された。また、1282 b長のEphA2 AS RNAは、同mRNAとは異なるスプライシングを有していた。EphA2 AS RNAの5'端は、同mRNA 3'UTR中の3589番目の塩基に位置した。この結果をRT-PCR法により検証したところ、3881番目の塩基まで増幅可能であったので、この差異は発現頻度が低い5kb長EphA2 AS RNAの5'端に由来すると考えられた。3.細胞遊走アッセイ系におけるヒトEphA2 AS RNA発現抑制:申請時点で確認していたEphA2 AS RNA発現を抑制するオリゴ(seODN)は、その発現を45%まで抑制した。しかしながら、上記EphA2 AS RNAの同定結果から、このseODNは少数(低発現)のEphA2 AS RNAに対するものであると考えられた。そこで、同定した大部分のEphA2 AS RNAに対し、その発現を抑制するseODNを再設計した。その結果、EphA2 AS RNAの発現を20%まで抑制する効率のよいseODNが得られた。現在、この効果の再現性を検討している。4.ヒト乳癌患者由来の癌組織を用いたEphA2 mRNA及び同AS RNA発現解析:臨床検体19症例を解析し、EphA2 AS RNAと同mRNAには正の相関関係が認められた。以上の結果から、臨床検体でEphA2 AS RNAと同mRNA間における正の相関関係を確認し、ヒトEphA2 AS RNAを同定し、その発現を抑制するより効率のよい核酸シーズとなりうるseODNを設計した。ヒトEphA2 AS RNAに関して、臨床検体における発現、培養細胞を用いた同定と機能解析を計画し、「研究実績の概要」に示した4項目を行った。これらの中で追加実験が生じたのは、機能解析に関する1項目となる。これは、ヒトEphA2 AS RNAの同定結果から、申請時点で確認していたヒトEphA2 AS RNAの発現を抑制するseODNより更に効果のよいseODNが予想されたために、seODN再設計及びその効果検討実験を行ったことに起因する。その結果、培養細胞におけるseODNを用いたEphA2 AS RNAの機能解析が遅れた。しかしながら、これは実験をステップバイステップで進め、少しずつ軌道修正をしながら研究を進捗させていく論理的思考の結果である。さらに、今回の軌道修正は、標的の発現を抑制するseODNという核酸医薬シーズの核となるものであり、より効果の高く質の良い創薬シーズになることの期待が高いと考えられる。臨床検体の解析に関しては、当初の予定である設定臨床数20症例にほぼ達することができ、ヒトEphA2 AS RNAと同mRNA間における正の相関関係を確認することができた。しかしながら、乳癌のサブタイプに分類して検討したところ、実験群によっては症例数が統計解析するには不十分であることがわかった。そのため、解析症例数を増やして、臨床研究を継続する予定である。検体の臨床データに関しては、未知の状態、かつ無作為に行っているため、これは不可避の結果である。臨床研究の症例数を増やすことに関しては、軽微な変更であるために、所属機関の倫理委員会において迅速審査で対応可能であるため、速やかに検体の採取、解析と進むことができると考えられる。以上のことから、おおむね順調に研究計画が遂行されていると判断する。1.ヒトEphA2アンチセンス(AS) RNAの同mRNAに対する作用の検討:EphA2 AS RNA及び同mRNAの二次構造上で一本鎖領域を推測し、更にmRNAに関しては種間で保存されている領域をEphA2 AS RNAと同mRNAが相互作用する領域候補とした。この領域配列からなるセンスオリゴデオキシヌクレオチド(seODN)を作製した。seODNはEphA2 AS RNAと二本鎖を形成する結果、RNase Hによる選択的分解の結果、EphA2 AS RNAの同mRNA制御効果の検討が期待できた。また、乳癌培養細胞2種でEphA2 AS RNAを強制発現させた。これら2つの実験において、EphA2 mRNA発現に影響は認められなかった。
KAKENHI-PROJECT-15K06885
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K06885
乳癌悪性転化の予防・治療を標的とする革新的核酸医薬の創出
2.ヒトEphA2 AS RNA及び同mRNAを標的とするmiRNAの探索:EphA2 AS RNA及び同mRNAを標的とするmiRNAをmiRNA標的検索ウェブサイトで検索した。その結果、miR-126, miR-335, miR-4267がEphA2 AS RNA及び同mRNAを標的とすることが推測された。これら3種のmiRNAに関して、EphA2 AS RNA又は/及び同mRNAとの相互作用をルシフェラーゼレポーターアッセイ法によって検証している。更に、これら3種のmiRNAに関してAntimiRによりそれらの機能を抑制すると、EphA2 AS RNA及び同mRNAの発現量が増大した。また、miRNAの機能部位のみを強制発現させると、特にmiR-335に関して、ヒトEphA2 AS RNA及び同mRNAの発現量を減少させた。研究期間1年目に同定したヒトEphA2 AS RNAは、同mRNAの3'UTRに重複して存在していた。5'UTRやプロモーター領域に重複して存在する場合はエピジェネティックな作用を示し、3'UTRと重複する場合は転写後性調節に関与する傾向がある。しかしながら、上記の結果は、3'UTRと重複するにも関わらず、転写後性調節に関与しないことが考えられた。これはネガティブながらも、学術的に一つの知見を提供すると考えられる。一方、核酸医薬シーズとして、ヒトEphA2 AS RNA及び同mRNAを標的とするmiRNAを新規に3種同定し、検証を重ねつつある。その中でも特にmiR-335の機能部位(seed領域)を乳癌培養細胞内に導入させると、ヒトEphA2 AS RNA及び同mRNAの発現を劇的に減少させた。これは、miR-335機能部位が核酸医薬シーズとして有力な候補として考えられることを意味する。EphA2 mRNAのみを標的とすることがこれまでに知られているmiRNAとの比較検証が必要であるが、今後の研究の推進方策において後述する。臨床検体の解析に関しては、当初の予定である設定臨床数20症例を完了した。しかしながら、乳癌のサブタイプに分類して検討したところ、実験群、特に転移が認められる患者由来の症例数が統計解析するには不十分であることがわかった。単純に解析症例数を増やすことでは時間がかかるため、解析母集団を転移が認められる場合とし、臨床研究を新規申請している。また、関連遺伝子発現として前述miRNAについても解析予定としている。関与因子が追加されて計画とは異なっているが、ネットワークという枠で因子間の機能を捉えつつある状況にある。以上のことから、核酸医薬シーズ創出という観点で推進されていると判断する。昨年度報告書では、EphA2アンチセンスRNA(AS)過剰発現及びEphA2 ASと結合してその機能を抑制するセンスデオキシヌクレオチド(seODN)導入は、EphA2 mRNA発現に対して影響がないと報告した。しかしながらその後、核酸細胞内導入試薬を高効率、低毒性のものに変更して改善したところ、EphA2 AS過剰発現によって同mRNAの発現量が増大した。更にLNA化することで安定化させたseODNを用いてEphA2 AS抑制を検証したところ、特定のseODNを用いた時にのみ、EphA2 AS及び同mRNAの発現を減少させた。更に、この特定のseODN領域に関して、変異型EphA2 ASを作製して過剰発現させたところ、同mRNAに対する発現減少は見られなくなった。
KAKENHI-PROJECT-15K06885
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情報キュレーションマップ構築手法の検討と高度情報アクセスタスクへの応用
本課題は、キュレーションマップを構築する手法を考察するとともに、現実的で複雑な質問応答を想定し、世界史論述問題等の高度情報アクセスタスクへの応用を検討する。本年度は、(H30-1)「情報キュレーションマップの精緻化手法の検討(第2期)」、(H30-2)「情報要約への応用(第2期)」を計画どおり検討した。(H30-1)では、平成29年度に導入した、文章の過剰な断片化を抑制する手法について、引き続き検討し、定量評価をするとともに、平成29年度までに基本部分の実装を行っていた情報キュレーションマップ可視化システムに同手法を組み込み、可視化システムを完成させた。同システムでは、利用者の与える検索質問に対し、検索されたWeb文書を、キュレーションマップに基づき、「まとめ回答」を順位付けして示すとともに、まとめ回答に張られたリンクにより「詳細回答」へ至る俯瞰的な可視化が行える。ある「詳細回答」文書を選択すると、それを「まとめ回答」と再解釈して、より詳細な観点に切り分け、再帰的により詳細な文書を得ることもできる。(H30-2)については、情報キュレーションの観点から、異種情報源の混成活用に焦点を置き、次の部分課題を検討した。平成29年度に検討した、世界史用語集の語釈文の活用における、見出し語を語釈文に適切に埋め込み整形する手法について、機械学習に用いる特徴量の精緻化ならびに擬似訓練事例の自動獲得の観点から精度向上を行うことを検討した。さらに論述記述の骨組みを与える情報源として、ある国における重要イベントについて年代を追って記した「各国史」を「まとめ回答」として活用する方法を提案した。具体的には、問題に記された要求に照合する各国史の記述を「まとめ回答」としてイベントオントロジーの整合性の観点から抽出し、それを検索質問として、教科書の記述を検索し論述記述の素材となる文を得る手法を検討した。本課題では、キュレーションマップを構築する手法を考察するとともに、現実的で複雑な質問応答を想定し、世界史の論述問題等の高度情報アクセスタスクへの応用を検討する。本年度は、(H28-1)「ネットワーク構造の縮約手法の検討」, (H28-2)「情報の編纂と俯瞰的可視化への応用(第1期)」が計画されていた。(H28-1)については、ノードとリンクを取捨選択する手法を検討した。具体的には、類似するノード群をまとめ、代表ノードを提示する手法を検討した。ノード間の類似度として、被リンク構造の類似度と内容関連度の両者を考慮する手法を提案した。(H28-2)については、平成29年度実施予定の(H29-2)「情報の編纂と俯瞰的可視化への応用(第2期)」を前倒しで検討しつつ、一般のnon-factoid型質問応答タスクを想定し、キュレーションマップに基づき、「まとめ回答」を順位付けして示すとともに、まとめ回答から始めて、リンクをたどることにより次第に「詳細回答」へ至る俯瞰的な可視化が行えるデモシステムを実装した。さらに、来年度実施予定の(H29-3)「情報要約への応用(第1期)」を前倒しで検討した。同課題で扱う正解情報の整備として、世界史論述問題については、人間作成の模範解答と、教科書等の知識源との間の対応付けを精密に記したコーパスを整備した。多言語情報要約を想定して、複数のトピックにわたって日中英のツィートを収録し、感情分析等の情報を付与したコーパスを整備した。また、知識源から問題に関連する文群を取り出す際の再現率向上をめざし、問題文には明示されていないが、解答するにあたって非常に重要な重要語句を見出す手法について検討を行い、有効性について論じた。さらに論述問題の解答に対する評価に関して、歴史分野で必要となる時間的・空間的な一貫性を考慮した評価法を提案し、有効性について論じた。「研究実績の概要」に記したとおり、交付申請書に記載し、本年度に予定していた部分課題H28-1、ならびに、H28-2について、いずれも検討した。更に、平成29年度実施予定のH29-2、H29-3についても検討した。H28-1については、ほぼ計画通りに研究を遂行し、その内容は研究協力者の修士論文として取りまとめられているところであるが、一部、学会等で発表未定の部分があるので、今後検討したい。H28-2についても、ほぼ計画通りに研究を遂行し、デモシステムの実装を行った。さらに、平成29年度実施予定の(H29-2)「情報の編纂と俯瞰的可視化への応用(第2期)」を、H28-2の検討に合わせて、前倒しで検討した。また、(H29-3)「情報要約への応用(第1期)」についても前倒しで検討し、同課題で扱う世界史の論述問題の自動解答に向けて、基礎的検討を開始した。本課題は、キュレーションマップを構築する手法を考察するとともに、現実的で複雑な質問応答を想定し、世界史論述問題等の高度情報アクセスタスクへの応用を検討する。本年度は、(H29-1)「情報キュレーションマップの精緻化手法の検討(第1期)」、(H29-2)「情報の編纂と俯瞰的可視化への応用(第2期)」、(H29-3)「情報要約への応用(第1期)」を計画どおり検討した。(H29-2)では、平成28年度に前倒しして実施していたデモシステムの実装について、引き続き検討した。
KAKENHI-PROJECT-16K00296
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情報キュレーションマップ構築手法の検討と高度情報アクセスタスクへの応用
これは、一般のWeb検索や質問応答を想定し、キュレーションマップに基づき、「まとめ回答」を順位付けして示すとともに、まとめ回答に張られたリンクにより「詳細回答」へ至る俯瞰的な可視化が行える。まとめ回答を観点毎に動的に切り分け、各観点の文章からその「詳細回答」となる文書へのリンクを自動的に張る。文章の過剰な断片化が観察されたため、(H29-1)ではその抑制手法の検討を行った.最小セグメントから始め、リンク構造が類似するセグメントを漸進的に併合しセグメントを拡張する手法に対し、最小セグメントの再選定、リンク構造の類似判定条件の改善、セグメント併合条件の改善を行うと、適切なセグメントが得られた。(H29-3)については、次の部分課題を検討するとともに、世界史論述問題解答器をオープンソースとして公開をした。知識源から問題に関連する文群を取り出す際の再現率向上をめざし、深層学習を用いた非明示的な関連用語の推定手法を提案し、有効性について論じた。また、解答の際の知識源の一つである世界史用語集の語釈文の活用をめざし、見出し語を語釈文に適切に埋め込み整形する手法について検討した。さらに論述問題の解答に対する自動評価に関して、情報整合性(時間的・地理的整合性)に注目した評価尺度を検討し、有効性について論じた。「研究実績の概要」に記したとおり、交付申請書に記載し、本年度に予定していた部分課題H29-1、H29-2、H29-3について、いずれも検討した。H29-1については、ほぼ計画通りに研究を遂行し、その内容は研究協力者の卒業論文として取りまとめられているところであるが、一部、学会等で発表未定の部分があるので、今後検討したい。H29-2についても、ほぼ計画通りに研究を遂行し、デモシステムの実装・改善を行った。H29-3についても、ほぼ計画通りに研究を遂行し、その成果を査読付き国際会議論文3編、査読なし国際会議論文2編、学会大会論文2編として公表した。本課題は、キュレーションマップを構築する手法を考察するとともに、現実的で複雑な質問応答を想定し、世界史論述問題等の高度情報アクセスタスクへの応用を検討する。本年度は、(H30-1)「情報キュレーションマップの精緻化手法の検討(第2期)」、(H30-2)「情報要約への応用(第2期)」を計画どおり検討した。(H30-1)では、平成29年度に導入した、文章の過剰な断片化を抑制する手法について、引き続き検討し、定量評価をするとともに、平成29年度までに基本部分の実装を行っていた情報キュレーションマップ可視化システムに同手法を組み込み、可視化システムを完成させた。同システムでは、利用者の与える検索質問に対し、検索されたWeb文書を、キュレーションマップに基づき、「まとめ回答」を順位付けして示すとともに、まとめ回答に張られたリンクにより「詳細回答」へ至る俯瞰的な可視化が行える。ある「詳細回答」文書を選択すると、それを「まとめ回答」と再解釈して、より詳細な観点に切り分け、再帰的により詳細な文書を得ることもできる。(H30-2)については、情報キュレーションの観点から、異種情報源の混成活用に焦点を置き、次の部分課題を検討した。平成29年度に検討した、世界史用語集の語釈文の活用における、見出し語を語釈文に適切に埋め込み整形する手法について、機械学習に用いる特徴量の精緻化ならびに擬似訓練事例の自動獲得の観点から精度向上を行うことを検討した。さらに論述記述の骨組みを与える情報源として、ある国における重要イベントについて年代を追って記した「各国史」を「まとめ回答」として活用する方法を提案した。
KAKENHI-PROJECT-16K00296
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多様大規模化する生命科学データのための柔軟な統計解析手法の開発
本研究では、以下の三つを目標に、生体生命情報学や獣医畜産分野における、柔軟で高精度な統計解析手法を提案し、その応用例を示した。目標[1]「多種多様大規模生命科学データのための柔軟な統計解析手法の構築」、[2]「動植物の分子・個体・集団レベルのシステム解明を目指す統計解析手法の構築」、[3]「高速な統計解析手法の提案」。[1]と[3]では、各種オミックスにおける高速な検定や統合解析を提案し、診断マーカー検出への応用研究を行った。[2]では、乳牛を中心として、分子レベル(乳成分や各種オミックス等)、個体レベル(診療記録等)、集団(農場)レベルのデータを基に大規模な統計解析例を提示した。本研究の3つの研究テーマのうち、2つのテーマ、つまり、「多種多様大規模生命科学データのための柔軟な統計解析手法の構築」(特に、オミックスデータの個別の解析手法やオミックスデータを統合解析する手法の提案)と「動植物の分子・個体・集団レベルのシステム解明を目指す統計解析手法の構築」(例えば、農畜産データの統計解析))について、以下の10件の研究を主に行った。[オミックスデータの統計解析]: 1.前年度に引き続き、特徴的な遺伝子発現パターンを高速、かつ、効率的に検出する統計手法の提案を検討中である。関連するレビュー論文が学術雑誌に採択された。2. 1.などに関連した統計手法を提案しアルツハイマー病の超早期診断へ向けて、2編の論文を執筆中。関連する解説論文が出版された。3.前年度に引き続き、時系列で観測された遺伝子発現量に基づき、遺伝子選択を行うための回帰モデルを提案した。今年度は更に、メタボロームの時系列データへの適用を試みた。現在、論文を執筆中である。4.前年度からの継続で、低次偏相関係数とオミックスデータを用いた代謝パスウェイ推定法を提案した。関連する論文が掲載された。[農畜産データの統計解析について]:前年度からの引き続きで、5.乳牛の分娩事故のリスク要因を特定するための回帰モデルの研究、6.乳牛の健康管理のデータに関する研究、7.長イモの種イモ自動(高速)切断機械のためのモデリング研究を行った。これらに関連する論文を執筆中である。今年度新たに、以下の3つの研究を行った。8.乳牛の繁殖成績を評価するための仮説検定を適用し、関連する論文が学術雑誌に掲載された。9.細菌の共通配列の良さを評価するための仮説検定を考えた。論文を投稿中。10.乳牛の受胎率への影響因子を評価するために回帰モデルの適用を考えた。論文を投稿準備中である。本研究の3つの研究テーマのうち、2つのテーマ、つまり、「多種多様大規模生命科学データのための柔軟な統計解析手法の構築」(特に、オミックスデータの個別の解析手法やオミックスデータを統合解析する手法の提案)と「動植物の分子・個体・集団レベルのシステム解明を目指す統計解析手法の構築」(例えば、農畜産データの統計解析))について、以下の7つの研究を主に行った。[オミックスデータの統計解析]:(1)特徴的な遺伝子発現パターンを高速、かつ、効率的に検出する統計手法の提案を検討中である。関連するレビュー論文を学術雑誌に投稿中である。(2)時系列で観測された遺伝子発現量、代謝産物に対する高速なt-検定の提案を検討中である。一部の成果を学会にて発表した。(3)時系列で観測された遺伝子発現量に基づき、遺伝子選択を行うための回帰モデルを提案した。現在、論文を執筆中である。学会にて発表済み。(4)前年度からの継続で、低次偏相関係数とオミックスデータを用いた代謝パスウェイ推定法を提案した。論文を投稿中である。[農畜産データの統計解析について]:(5)乳牛の分娩事故のリスク要因を特定するために、延べ120万頭のデータに回帰モデルを適用した。この結果をまとめた論文を執筆中である。(6)乳牛の健康管理のデータ(18年間の延べ5万頭分)に主成分分析を適用し、経時的な健康変化を調べた。結果を考察し、論文を執筆中である。(7)長イモの種イモ自動(高速)切断機械のためのベイズモデルを構築した。現在、特許出願中である。また、この統計モデルの論文を執筆中である。この統計モデルについて、学会にて発表済みである。平成26年度は、本研究の3つの研究テーマのうち、2つのテーマ、つまり、「多種多様大規模生命科学データのための柔軟な統計解析手法の構築」(特に、オミックスデータの解析手法の提案)と「動植物の分子・個体・集団レベルのシステム解明を目指す統計解析手法の構築」(例えば、農畜産データの統計解析)について、以下の9件の研究を主に行った。[オミックスデータの統計解析]:(1)前年度に引き続き、特徴的な遺伝子発現パターンを高速、かつ、効率的に検出する統計手法を提案し、実データに適用中である。(2)(1)に関連した統計手法を提案し、microRNAやメタボロームデータに基づいた疾患の高精度な診断・診断マーカーの検出を検討中である。(3)前年度に引き続き、時系列で観測された遺伝子発現量に基づき、遺伝子選択を行うための回帰モデルを提案し、生物統計学分野の学術雑誌に投稿中である。[農畜産データの統計解析について]:前年度からの引き続きで、(4)乳牛の分娩事故や(5)健康管理のデータの解析に関する研究、
KAKENHI-PROJECT-24700290
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多様大規模化する生命科学データのための柔軟な統計解析手法の開発
(6)長イモの形状モデリングの研究を継続中である。また、(7)乳牛の受胎率データへの回帰モデルの適用と(8)細菌の参照配列の研究について、関連する論文がそれぞれ学術雑誌に掲載された。今年度新たに、(9)乳成分から乳牛の疾病を判定する回帰モデルの適用を考えた。関連する論文を獣医学分野の学術雑誌に投稿中である。本研究の目標は3つある。[A]「多種多様大規模生命科学データのための柔軟な統計解析手法の構築」(各種オミックスデータの統計解析手法の提案)、[B]「動植物の分子・個体・集団レベルのシステム解明を目指す統計解析手法の構築」(獣医畜産データの統計解析)、[C]「高速な統計解析手法(検定等)の提案」である。今年度は、前年度に引き続き、また、新たに、以下の9件の研究を行った。[A, C]:(1)遺伝子の特徴的な発現パターンを高速・効率的に検出する仮説検定を提案し、実データに適用した(論文投稿準備中)。(2) (1)に関連した統計手法を提案し、遺伝子発現やメタボロームデータに基づいた、疾患(アルツハイマー病等)の高精度な診断マーカー検出法を提案した(論文3編を投稿・執筆中)。(3)時系列遺伝子発現データに基づいて遺伝子選択を行うための回帰モデルを提案した(Kayano et al., Biostatistics 2016)。[B]:(4)乳牛の健康管理や、(5)分娩事故、(6)診療記録と乳成分、(7)受胎率、(8)長芋の形状、(9)その他、乳牛や馬、犬や植物のデータ解析を行い、8編の論文が採択された(Kayano and Kida, Journal of Dairy Science 2015等)。研究期間全体として、[A, C]では、各種オミックスにおける交互作用を捉えるための高速な検定や統合解析、診断マーカー検出への応用を提案した。[B]では、乳牛を中心として、集団(農場等)レベルの情報を考慮した個体レベルのデータ(診療記録や農作物の形状等)と分子レベルのデータ(乳成分や血液成分、各種オミックス等)を用いて、獣医畜産分野における広範囲な研究を行った。本研究により、バイオインフォマティクスや獣医畜産分野における、柔軟で高精度な統計解析手法の例を提示出来たと考えている。本研究では、以下の三つを目標に、生体生命情報学や獣医畜産分野における、柔軟で高精度な統計解析手法を提案し、その応用例を示した。目標[1]「多種多様大規模生命科学データのための柔軟な統計解析手法の構築」、[2]「動植物の分子・個体・集団レベルのシステム解明を目指す統計解析手法の構築」、[3]「高速な統計解析手法の提案」。[1]と[3]では、各種オミックスにおける高速な検定や統合解析を提案し、診断マーカー検出への応用研究を行った。[2]では、乳牛を中心として、分子レベル(乳成分や各種オミックス等)、個体レベル(診療記録等)、集団(農場)レベルのデータを基に大規模な統計解析例を提示した。「研究実績の概要」に挙げたように、本研究の3つのテーマのうち2つについて、9件の研究を行った。それぞれの研究では、手法の提案や実データへの適用がおおむね終了している。
KAKENHI-PROJECT-24700290
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24700290
オンチップ学習回路装備・完全電圧モード動作ニューラルネットワークLSIの試作研究
ニューラルネットワークは、新しいコンピューティングパラダイムの旗手として、そのLSIチップへのハードウェア化が盛んに研究されている。本研究は、単体でニューロンの機能をもつ新しい高機能トランジスタ・ニューロンMOSFETを用いて、独自のアーキテクチャーのアナログニューラルネットワークLSIを開発するものである。特に一切のス-パバイザー・コンピュタ-無しに、すべてオンチップで自己学習できるチップの実現を狙うものである。定常消費電力ゼロで優れた重み更新の線形性をもつ、シナプスとしては理想的な特性をもつセルを新しく開発、これを用いて自己学習機能内蔵のニューラルネットワークLSIを設計・試作し、その基本動作を確認した。上記シナプス回路をマトリクス状に配置し、その直行する2辺の上に、ニューロンセルを配置。各ニューロンセルの出力には、教師信号とニューロンの出力を比較し、学習規則に応じて高電圧パルスを発生する学習制御回路を設けた。パルスの加えられた信号線の直行する位置にあるシナプスに於いてのみ、加重値の更新が行われ、Hebb則の学習が実行される。特に工夫をこらしたのは、誤差の逆伝播である。隠れ層ニューロンの応答誤差を3値の変数でデジタル化し、ニューロンMOSのフローティングゲート技術を用いて誤差逆伝播学習則のオンチップ化に成功した。ニューロン出力の2値化、微分関数の窓関数近似等、ハードウェア化のために学習アルゴリズムの思い切った簡略化を行い「ハードウェアバックプロパゲーション」と呼ぶ新しい学習アルゴリズムも開発した。簡略化にもかかわらず、オリジナルバックプロパゲーションと同等の学習性能をもつことを実証したばかりか、ある種の問題に対しては、オリジナル学習則よりも汎化能力において優れていることを見いだした。これらの研究により、ニューロンMOSを用いた自己学習機能搭載のニューラルネットワークチップの基礎技術を確立することができた。ニューラルネットワークは、新しいコンピューティングパラダイムの旗手として、そのLSIチップへのハードウェア化が盛んに研究されている。本研究は、単体でニューロンの機能をもつ新しい高機能トランジスタ・ニューロンMOSFETを用いて、独自のアーキテクチャーのアナログニューラルネットワークLSIを開発するものである。特に一切のス-パバイザー・コンピュタ-無しに、すべてオンチップで自己学習できるチップの実現を狙うものである。定常消費電力ゼロで優れた重み更新の線形性をもつ、シナプスとしては理想的な特性をもつセルを新しく開発、これを用いて自己学習機能内蔵のニューラルネットワークLSIを設計・試作し、その基本動作を確認した。上記シナプス回路をマトリクス状に配置し、その直行する2辺の上に、ニューロンセルを配置。各ニューロンセルの出力には、教師信号とニューロンの出力を比較し、学習規則に応じて高電圧パルスを発生する学習制御回路を設けた。パルスの加えられた信号線の直行する位置にあるシナプスに於いてのみ、加重値の更新が行われ、Hebb則の学習が実行される。特に工夫をこらしたのは、誤差の逆伝播である。隠れ層ニューロンの応答誤差を3値の変数でデジタル化し、ニューロンMOSのフローティングゲート技術を用いて誤差逆伝播学習則のオンチップ化に成功した。ニューロン出力の2値化、微分関数の窓関数近似等、ハードウェア化のために学習アルゴリズムの思い切った簡略化を行い「ハードウェアバックプロパゲーション」と呼ぶ新しい学習アルゴリズムも開発した。簡略化にもかかわらず、オリジナルバックプロパゲーションと同等の学習性能をもつことを実証したばかりか、ある種の問題に対しては、オリジナル学習則よりも汎化能力において優れていることを見いだした。これらの研究により、ニューロンMOSを用いた自己学習機能搭載のニューラルネットワークチップの基礎技術を確立することができた。ニューラルネットワークのハードウェアに、自己学習機能を付与する際に鍵となる、最も重要なのがシナプス回路である。本年度の研究における最大の成果は、理想的な特性を持つ新しいシナプス回路を考案し、実際の試作によりその特性を確かめたこと、さらに、このシナプス回路を組み込んだ自己学習回路の動作に関し、テスト回路の試作並びにシミュレーションにより最適化を行い、これにより、次年度に試作する自己学習ニューラルネットワークLSI設計に関する基本的な方針を確立したことにある。シナプスとは、ニューロン間の結合の強度(加重値)を決める素子で、ネットワークが望ましい応答をするように、加重値を適宜変更・修正する過程が学習であるといわれる。これまで我々は、2個のνMOSと4個の通常のMOSを用いた6トランジスタのシナプスセルを提案し、「定常消費電力ゼロ」、「5V単一電源で正と負の両極性加重値の表現可」、「ハードウェア自己学習対応」という優れた特性が得られることを示してきた。しかしながら、加重値の更新に関し、重大な問題があった。これは、フローティングゲートメモリを応用するシナプスの基本的な問題で、その解決には、世界で多くの研究者がとりくんでいるが、いずれも本質的な解決には至っていない。本研究では、従来の6トランジスタセルにたった1つのMOSトランジスタをつけ加えることで、これを見事に解決した。つまり、フローティングにすでに蓄積されている電荷を回路のソースフォロワ動作で読み出し、その値をトンネルゲート部にフィードバックすることにより、フローティングゲート中の電荷量と無関係に、加重値を常に一定量だけ更新できるようにできたのである。これにより、学習に際してのネットワークの収束性が飛躍的に改善された。さらに新しく開発したハードウェア自己学習に特化した学習アルゴリズムも、様々な問題に対し、従来のバックプロパゲーションアルゴリズムよりも優れていることが分かり、自己学習ニューラルネットワーク実現の基礎が確立された。
KAKENHI-PROJECT-05505003
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05505003
オンチップ学習回路装備・完全電圧モード動作ニューラルネットワークLSIの試作研究
ニューラルネットワークは、新しいコンピューティングパラダイムの旗手として、そのLSIチップへのハードウェア化が盛んに研究されている。本研究は、単体でニューロンの機能をもつ新しい高機能トランジスタ・ニューロンMOSFETを用いて、独自のアーキテクチャーのアナログニューラルネットワークLSIを開発するものである。特に一切のス-パバイザー・コンピュータ無しに、すべてオンチップで自己学習できるチップの実現を狙うものである。本年度は、昨年度開発した定常消費電力ゼロで優れた重み更新の線形性をもつ、シナプスとしては理想的な特性を持つセルを用いて、自己学習機能内蔵のニューラルネットワークLSIを設計・試作し、その基本動作を確認した。上記シナプス回路をマトリクス状に配置し、その直交する2辺の上に、ニューロセルを置いた。各ニューロンセルの出力には、教師信号とニューロンの出力を比較し、学習規則に応じて高電圧パルスを発生する学習制御回路を設置。パルスの加えられた信号線の直交する位置にあるシナプスに於いてのみ、加重値の更新が行われ、Hebb則の学習が実行される。特に工夫をこらしたのは、誤差の逆伝播である。隠れ層ニューロンの応答誤差を3値の変数でデジタル化し、ニューロンMOSのフローティングゲート技術を用いて誤差逆伝播学習則のオンチップ化に成功した。ニューロン出力の2値化、微分関数の窓関数近似等、ハードウェア化のために学習アルゴリズムの思い切った簡略化を行い「ハードウェアバックプロパゲーション」と呼ぶ新しい学習アルゴリズムを開発した。簡略化にもかかわらず、オリジナルバックプロパゲーションと同等の学習性能をもつことを実証した。また、ある種の問題に対しては、オリジナル学習則よりも凡化能力において優れていることを見い出した。これらの研究により、ニューロンMOSを用いた自己学習機能搭載のニューラルネットワークチップの基礎技術を確立することができた。
KAKENHI-PROJECT-05505003
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05505003
極限高速吸収分光を用いた分子内プロトン移動におけるコヒーレント核運動の観測
10-ヒドロキシベンゾキノリン(10-HBQ)の分子内プロトン移動についての実験を進めた。10フェムト秒パルスを用いた二色ポンプ・プローブ分光の結果、反応に関与する励起状態の吸収および誘導放出信号には振動コヒーレンスに由来するビートが観測された。このビート信号には4つの低波数成分が含まれているが、これらが分子のコヒーレント振動に直接対応するものであるかどうかは自明ではない。この点を明らかにするために、まずビート信号の励起波長依存性の実験を行った。吸収スペクトルの短波長側(360nm)と長波長側(385nm)を光励起した場合のビート信号を高い時間分解能(27fs)で観測し比較した。フーリエ解析の結果、励起波長の違いに依らず低波数成分は4つであり、それらの周波数は一致していた。この結果は各低波数振動の倍音系列がコヒーレントに光励起された場合に相当し、ビート信号として観測される低波数成分は10-HBQ分子のコヒーレント分子振動に直接対応しているといえる。特に最も低波数のモード(242cm^<-1>)は他の3モードに比べ位相緩和が速いことから反応による分子構造変化(反応座標)との関係が興味深い。そこで電子基底状態分子のラマンデータおよび密度汎関数法による計算との比較をもとに帰属を試み、242cm^<-1>モードは基底状態において243cm^<-1>に観測される全対称振動に対応するモードであると一意に帰属することができた。この242cm^<-1>モードの振動形(核の動き)はOH基全体がN原子側に大きく変位するとともに、分子全体が反応サイト(-OH N-部分)に向けて面内で変形している。この核の動きは酸素・窒素原子間の距離を近づけるもので、プロトン移動をより容易にする動きといえる。この意味で、10-HBQのプロトン移動反応で観測されたコヒーレント核運動は反応座標との相関の強い振動モードと考えられる。化学反応におけるコヒーレント核運動の研究には反応性が高く、かつ系にコヒーレンスが残っているサブピコ秒時間スケールで反応が進む系が適している。このため、代表的な超高速反応として知られるプロトン移動に着目し、まずヒドロキシ置換フラボン、ベンゾキノリン、アントラキノン類について定常吸収および蛍光スペクトルを測定し、これらの分子の反応性を検討した。この結果、なかでも10-ヒドロキシベンゾキノリン(10-HBQ)が10000cm^<-1>にも達する大きなストークスシフトを示し高い反応性をもつことを確認した。この10-HBQの反応ダイナミクスを調べるためにサブピコ秒の時間分解能で過渡吸収スペクトルを測定し、この分子が光励起後100フェムト秒以下で励起状態プロトン移動を起こしてエノール体からケト体へと変化することがわかった。また、反応に関与する励起状態の吸収が400600nm、基底状態への誘導放出が600800nmの波長領域に観測されることもわかった。これらの基礎的データをふまえ、反応におけるコヒーレンスを明らかにするために極短パルスを用いた紫外励起二色ポンプ・プローブ吸収分光を行った。2530フェムト秒という極限的に高い時間分解能で10-HBQの反応ダイナミクスを測定した結果、励起状態吸収、誘導放出の双方で、反応する励起状態での振動コヒーレンスを反映したビート信号が明瞭に観測された。このビート信号のフーリエ解析の結果、ビート信号には約240、390、550、690cm^<-1>の振動数の成分が含まれていることがわかった。したがって、プロトン移動反応においてこれら複数の低波数振動がコヒーレントに誘起されていると考えられる。今後、ラマン散乱測定や量子化学計算による研究も組み合わせて、観測された低波数振動と反応座標との関係についての詳細を調べる予定である。10-ヒドロキシベンゾキノリン(10-HBQ)の分子内プロトン移動についての実験を進めた。10フェムト秒パルスを用いた二色ポンプ・プローブ分光の結果、反応に関与する励起状態の吸収および誘導放出信号には振動コヒーレンスに由来するビートが観測された。このビート信号には4つの低波数成分が含まれているが、これらが分子のコヒーレント振動に直接対応するものであるかどうかは自明ではない。この点を明らかにするために、まずビート信号の励起波長依存性の実験を行った。吸収スペクトルの短波長側(360nm)と長波長側(385nm)を光励起した場合のビート信号を高い時間分解能(27fs)で観測し比較した。フーリエ解析の結果、励起波長の違いに依らず低波数成分は4つであり、それらの周波数は一致していた。この結果は各低波数振動の倍音系列がコヒーレントに光励起された場合に相当し、ビート信号として観測される低波数成分は10-HBQ分子のコヒーレント分子振動に直接対応しているといえる。特に最も低波数のモード(242cm^<-1>)は他の3モードに比べ位相緩和が速いことから反応による分子構造変化(反応座標)との関係が興味深い。そこで電子基底状態分子のラマンデータおよび密度汎関数法による計算との比較をもとに帰属を試み、242cm^<-1>モードは基底状態において243cm^<-1>に観測される全対称振動に対応するモードであると一意に帰属することができた。
KAKENHI-PROJECT-15750019
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15750019
極限高速吸収分光を用いた分子内プロトン移動におけるコヒーレント核運動の観測
この242cm^<-1>モードの振動形(核の動き)はOH基全体がN原子側に大きく変位するとともに、分子全体が反応サイト(-OH N-部分)に向けて面内で変形している。この核の動きは酸素・窒素原子間の距離を近づけるもので、プロトン移動をより容易にする動きといえる。この意味で、10-HBQのプロトン移動反応で観測されたコヒーレント核運動は反応座標との相関の強い振動モードと考えられる。
KAKENHI-PROJECT-15750019
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プライマリ-ケアにおける専門科への「振分け」システムの開発
今回患者の訴えや徴候をもとに、専門科への患者振り分け論理を作成し、コンピュ-タ上で稼働できるようにすることを試みた。実際の、受診科案内、診療所での本システムの使用を通じて評価を行い以下の結果を求めた。1)患者のセルフケアとしての評価は、診療所の患者を対象としたアンケ-ト調査で行った。その結果、患者全員が本システムの出力結果を受診の有無の参考にするとしたため、本システムは患者セルフケアシステムとして使えると考えた。また、そのためにはシステムの使用方法を簡便にする必要があることを指摘した。2)専門科への振り分け機能の評価は、東海大学医学部付属病院の受診科案内の窓口でおこなった。その結果、現時点で調査対象とした患者の70%を妥当な診療科へ振り分ける事が可能な事を求めた。3)病診連携の支援としての検討は一診療所では紹介患者数が少ない事より行わなかった。しかし、診療所の医師より自分の専門外の疾患を見る場合の支援、病院の外来医師、診療科等の情報入手に本システムを使用したいとの意見を得た。本システムはデ-タベ-スシステムであるので、これらの要望に対応する事は可能である事を示した。4)本システムの応用として在宅医療、保健婦活動の支援などを提案した。その場合、音声合成ボ-ドを使用してプッシュホンによる音声応答システムを構築すると有効である事を提案した。今回患者の訴えや徴候をもとに、専門科への患者振り分け論理を作成し、コンピュ-タ上で稼働できるようにすることを試みた。実際の、受診科案内、診療所での本システムの使用を通じて評価を行い以下の結果を求めた。1)患者のセルフケアとしての評価は、診療所の患者を対象としたアンケ-ト調査で行った。その結果、患者全員が本システムの出力結果を受診の有無の参考にするとしたため、本システムは患者セルフケアシステムとして使えると考えた。また、そのためにはシステムの使用方法を簡便にする必要があることを指摘した。2)専門科への振り分け機能の評価は、東海大学医学部付属病院の受診科案内の窓口でおこなった。その結果、現時点で調査対象とした患者の70%を妥当な診療科へ振り分ける事が可能な事を求めた。3)病診連携の支援としての検討は一診療所では紹介患者数が少ない事より行わなかった。しかし、診療所の医師より自分の専門外の疾患を見る場合の支援、病院の外来医師、診療科等の情報入手に本システムを使用したいとの意見を得た。本システムはデ-タベ-スシステムであるので、これらの要望に対応する事は可能である事を示した。4)本システムの応用として在宅医療、保健婦活動の支援などを提案した。その場合、音声合成ボ-ドを使用してプッシュホンによる音声応答システムを構築すると有効である事を提案した。患者を専門家へ振り分ける基準として、米国医師会(AMA)の発行の“Family Medical Guide"に記載されているdiagnostic symptom chartを参考にした。チャ-トの英文での入力作業は完成した。ファイル容量として200MBとなった。このデ-タを使い、NECーPC98RL上にMUMPS言語を用いて振り分け外来支援システムを構築した。各診断論理は、MUMPSのグロ-バル変数として一連の番号をつけ、質問内容、答が“YES"または“NO"の時のそれぞれの次の質問番号を記録している。使用者は試作システムが画面に表示する質問に答えていく。この過程は問診結果として記録される。最後に最適と思われる診療料が表示される。診療科名は、東海病院固有のものと、一般的なものの2種類を表示するようにし、将来的に本システムを診療所から病院へ患者を紹介する場合の支援システムにもなるように配慮した。現在、日本語化を進めつつある。検討会を実施したところ、今後の課題として、(1)診断ロジックの検証のため、推定病名に至るすべてのル-トをコンピュ-タによりリストしチェックすること、(2)質問の入り口が99と多いため、この分類を行う、キ-ワ-ドにより該当する質問へ行けるようにする、の2点が上げられた。本年度の研究は、おおむね順調に進行できた、本年度は診断論理のフロ-を実際の診療現場での使用に耐えるように、その質問の表現形式に修正を加えた。その詳細を以下に示す。1)平成元年度作成した英文の設問の日本語化を行った。2)デ-タベ-ス上の最終振り分けを診療科をすべて決定し、大学病院以外の医院等で標榜科目との対応付けを行った。3)マン・マシンインタ-フェ-スを改良し、カ-ソルとリタ-ンキ-のみでシステムの操作ができるように設定した。4)デ-タベ-ス上の振り分け過程を検討し、論理的な矛盾の有無を検討した。5)実際の設問を選択するために、99の質問を年齢、性別、身体部位で分類し設問を選択す論理を検討した。以上の設定をおえて、3年2月18日より5日間、東海大学医学部附属病院の受診科案内において、本システムのテストを行った。現在、その結果を解析中であるが、今までに以下のことが判明したので報告する。1)実際の運用では、99の質的を選択する部分が難しく、ここをあやまったため不適切な質問が選択されてしまう場合があった。2)診療科の医師よりは、設問の選択が不適切な場合があることが指摘され、実際の振り分け外来に本システムを使用するためにはまだまだ改良が必要であることのコメントを受けた。
KAKENHI-PROJECT-01480504
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プライマリ-ケアにおける専門科への「振分け」システムの開発
一方、患者自身のセルフメディケアシステムとして本システムを使用することについては、肯定的な意見を多く受けた。平成3年度は、これらの点を考慮してシステムの改良を行いたい。本年度の研究は、おおむね順調に進行できた。本年度は本システムの評価を行う事を重点に研究を遂行した。その内容を以下に示す。1)本システムの、患者のセルフケアとしての評価は、伊勢原市の一診療所の待合い室をお借りして、そこの患者を対象としたアンケ-ト調査で行った。その結果、調査対象とした患者全員が本システムの出力結果を受診の有無の参考にするとした。このことより、本システムは患者セルフケアシステムとして使えることが可能であると考えた。また、そのためには、システムの使用方法を簡便にする必要があることを指摘した。2)病診連携の支援としての検討は一診療所では紹介患者数が少ない事より行わなかった。しかし、診療所の医師より要望として、自分の専門外の疾患を見る場合の支援、病院の専門科医師の診療日、診療科等の情報入手に本システムを使用したいとの意見を得た。本システムはデ-タベ-スシステムであるので、これらの要望に対応する事は充分可能であると考えた。3)本システムの評価を通じ、本システムの今後の応用分野として在宅医療の支援、保健婦活動の支援などが有効である事を堤案した。それらのシステムを構築する場合、本システムと音声合成ボ-ドを使用してプッシュホンによる音声応答システムを構築すると有用と考えられる事を示した。
KAKENHI-PROJECT-01480504
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日本古辞書の翻刻階層モデルの構築に関する人文情報学的研究
本研究は、日本古辞書の多様性・複雑性に対応できる翻刻階層モデルの構築によって、奈良時代から伝存する良質な日本の古写本古辞書文献資料を電子化し、さらにそのオープンアクセスを実現するための基礎研究である。特にこれまでの古写本翻刻の先行研究における漠然とした文字同定の包摂問題や、異なる古辞書の連携などの課題を解決することを研究目的とする。高山寺本『篆隷万象名義』を中心資料として、天治本『新撰字鏡』、図書寮本・観智院本『類聚名義抄』を同時に視野に入れ、『篆隷万象名義』の掲出字と対応する部分も研究対象とする。上記の目的を達成するために、[(1)古辞書電子テキストの校勘作業][(2)字書の項目構造化による本文記述]を基に、[(3)古辞書翻刻階層モデルの構築]へ至るまで三つの作業を段階的に進める。当年度は[(2)字書の項目構造化による本文記述]を中心に、本文構造化記述をおこなった。構造化記述は、基本的にはTEI (Text Encoding Initiative) P5を用いて、『篆隷万象名義』の原本画像と、掲出字全体を解読した先行研究を照合した上で、翻刻揺れのある掲出字に古写本古辞書翻刻階層モデルを適応させ、階層翻刻作業をおこなった。この際に、UCS (Universal Coded Character SetいわゆるUnicode)にすら含まれていない掲出字が1145字も出現したことから、UCS提案をおこなうための基礎資料を作成した。研究進捗に応じ、研究分担者(李媛)が1年間で10件もの発表をおこなっており、順調に進展しているといえる。先行研究における漠然な文字同定の事実上の包摂範囲を明示し、古辞書翻刻階層モデルを精練させる。古辞書翻刻階層モデルによる電子テキスト記述に関するガイドラインの作成とデータの公開をおこなう。本研究は、日本古辞書の多様性・複雑性に対応できる翻刻階層モデルの構築によって、奈良時代から伝存する良質な日本の古写本古辞書文献資料を電子化し、さらにそのオープンアクセスを実現するための基礎研究である。特にこれまでの古写本翻刻の先行研究における漠然とした文字同定の包摂問題や、異なる古辞書の連携などの課題を解決することを研究目的とする。高山寺本『篆隷万象名義』を中心資料として、天治本『新撰字鏡』、図書寮本・観智院本『類聚名義抄』を同時に視野に入れ、『篆隷万象名義』の掲出字と対応する部分も研究対象とする。上記の目的を達成するために、[(1)古辞書電子テキストの校勘作業][(2)字書の項目構造化による本文記述]を基に、[(3)古辞書翻刻階層モデルの構築]へ至るまで三つの作業を段階的に進める。当年度は、(1)古辞書電子テキストの校勘作業を主たるテーマとした。『篆隷万象名義』の原本と近世写本、各種の覆製本・諸家の翻刻を参照して校訂本文の精度を高めた。その成果を2017年10月の第117回訓点語学会研究にて発表した。また、『篆隷万象名義』の本文研究に関する論考二本が「Journal of the Graduate School of Letters」Volume 13と「東亞文獻研究」第20輯に掲載された。そして、電子テキスト化による『新撰字鏡』・『類聚名義抄』に関する内容研究や辞書項目構造記述についての考察の成果を2017年12月の人文科学とコンピュータシンポジウム2017にて発表した。(2)字書の項目構造化による本文記述につき、2018年3月の東洋学へのコンピュータ利用第29回研究セミナーで、公開済みの高山寺本篆隷万象名義全文テキストに基づき、掲出字を対象に、古辞書翻刻階層モデルを適応し、原本玉篇の対応部分を記述し、一部の字例のデータセットを提示した。研究進捗に応じ、研究分担者(李媛)が半年間で5本の論文を発表しており、順調に進展しているといえる。本研究は、日本古辞書の多様性・複雑性に対応できる翻刻階層モデルの構築によって、奈良時代から伝存する良質な日本の古写本古辞書文献資料を電子化し、さらにそのオープンアクセスを実現するための基礎研究である。特にこれまでの古写本翻刻の先行研究における漠然とした文字同定の包摂問題や、異なる古辞書の連携などの課題を解決することを研究目的とする。高山寺本『篆隷万象名義』を中心資料として、天治本『新撰字鏡』、図書寮本・観智院本『類聚名義抄』を同時に視野に入れ、『篆隷万象名義』の掲出字と対応する部分も研究対象とする。上記の目的を達成するために、[(1)古辞書電子テキストの校勘作業][(2)字書の項目構造化による本文記述]を基に、[(3)古辞書翻刻階層モデルの構築]へ至るまで三つの作業を段階的に進める。当年度は[(2)字書の項目構造化による本文記述]を中心に、本文構造化記述をおこなった。構造化記述は、基本的にはTEI (Text Encoding Initiative) P5を用いて、『篆隷万象名義』の原本画像と、掲出字全体を解読した先行研究を照合した上で、翻刻揺れのある掲出字に古写本古辞書翻刻階層モデルを適応させ、階層翻刻作業をおこなった。この際に、UCS (Universal Coded Character Set
KAKENHI-PROJECT-17F17301
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17F17301
日本古辞書の翻刻階層モデルの構築に関する人文情報学的研究
いわゆるUnicode)にすら含まれていない掲出字が1145字も出現したことから、UCS提案をおこなうための基礎資料を作成した。研究進捗に応じ、研究分担者(李媛)が1年間で10件もの発表をおこなっており、順調に進展しているといえる。本文構造化記述を行い、反切中心となる部分を抽出し、玉篇系字書音韻データを整備する。モデル構築の第一段階、『万象名義』の翻刻に揺れのある掲出字の階層翻刻作業を行う。すなわち、原本『玉篇』残巻と対応しない部分の『万象名義』の原本画像と、掲出字全体を解読した先行研究を照合した上で、その照合した結果に基づき、約2,000字の翻刻揺れのある掲出字に古写本古辞書翻刻階層モデルを適応させ、階層翻刻作業を行う。次に、モデル構築の第二段階、『新撰字鏡』・『類聚名義抄』まで範囲を広げ、階層翻刻作業を行い、問題点を洗い出す。具体的には、拡大した調査範囲に対し、それぞれ階層翻刻作業を行い、これらの古辞書間の異体項目の連携を実現するために、必要となるオプション(補助的階層)を追加して、古写本古辞書の多様性に適応する理論を検討し、汎用性の高い翻刻階層モデルにするために修正を加える。さらに、先行研究における漠然な文字同定の事実上の包摂範囲を明示し、古辞書翻刻階層モデルを精練させる。古辞書翻刻階層モデルによる電子テキスト記述に関するガイドラインの作成とデータの公開をおこなう。先行研究における漠然な文字同定の事実上の包摂範囲を明示し、古辞書翻刻階層モデルを精練させる。古辞書翻刻階層モデルによる電子テキスト記述に関するガイドラインの作成とデータの公開をおこなう。
KAKENHI-PROJECT-17F17301
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17F17301
20種類のアミノ酸は生命進化の必然の帰結か? : 単純化遺伝暗号表を用いた実験的検証
私の研究の目標はトリプトファンを含まないバクテリオファージMS2の作成である。実験の手順は1.MS2を構成するタンパク質の遺伝子全体にランダムな変異を導入して変異遺伝子ライブラリを作成、2.どのような遺伝子配列に対してもトリプトファンを導入しないような翻訳系である「単純化遺伝暗号表」を用いて、ライブラリの遺伝子と産物のタンパク質が対応づいた形で翻訳、3.産物のタンパク質の活性を指標にして、活性を持つ変異体タンパク質および遺伝子を特定、4.トリプトファンを含まないMS2ファージを再構築、のステップからなる。今回は、3.の達成のために必要な課題の1つを達成した。セレクションに用いる成熟タンパク質、コートタンパク質、複製タンパク質の遺伝子を大腸菌用のベクターに導入し、発現を確認した。今回の大腸菌での発現は、それぞれのタンパク質のセレクションの系を構築する予備実験のために、大量のタンパク質を生産する目的で必要不可欠のステップである。また、2.に関して、単純化遺伝暗号表を記述した論文を投稿中である。本研究に用いるトリプトファンを含まない系を中心に、あるアミノ酸が別のアミノ酸に置き換わる現象を、アミノ酸組成分析、立体構造解析などの手法を用いて様々な側面から示している。また、単純化遺伝暗号表は、普遍遺伝暗号表と同等の翻訳効率と正確性を有していることも明らかになった。当初はMS2ファージの進化実験の成果をとりまとめる予定であったが、研究機関の時間的な制約を考慮して遺伝暗号表に限った話題で執筆・投稿を行っている。21年度の実績として、タンパク質翻訳系の活性タンパク質合成能の確認、およびタンパク質翻訳系のスケールアップ、およびマルチウェルプレートの1wellあたり1分子の変異体遺伝子が含まれるように希釈・増幅する系の確立、の3点を実現したことがあげられる。私の研究の目標はトリプトファンを含まないバクテリオファージMS2の作成である。MS2を構成するタンパク質にランダムな変異を加えて膨大なパターンの変異体ライブラリを作成し、トリプトファンをタンパク質中に導入しない翻訳系「単純化遺伝暗号表」によって翻訳・選択する。申請書提出時にはこの「単純化遺伝暗号表」が、活性を持つタンパク質を合成することができるかどうかが明らかではなかった。MS2タンパク質の選択には活性を指標に実験を行う必要があるため、私は活性の確認を最優先した。その結果、単純化遺伝暗号表と普遍遺伝暗号表では、作成されるタンパク質の活性の間には差がないことを確認した。次に、「単純化遺伝暗号表」のスケールアップを行った。当初「単純化遺伝暗号表」は30μlの反応系でしか実現されておらず、数少ない活性タンパク質の検出のためにはスケールアップが求められた。私はこれまでの100倍のスケールである3mlの「単純化遺伝暗号表」の系を実現した。最後に、マルチウェルプレートの1wellあたり1分子の変異体遺伝子が含まれるように希釈・増幅する系の確立を行った。条件検討の結果、試験管当たり平均3.2分子の鋳型DNAを特異的に増幅する条件に到達した。私の研究の目標はトリプトファンを含まないファージMS2の作成である。実験の手順は1.MS2を構成するタンパク質の遺伝子全体にランダムな変異を導入して変異遺伝子ライブラリを作成、2.どのような遺伝子配列に対してもトリプトファンを導入しないような翻訳系である「単純化遺伝暗号表」を用いて、ライブラリの遺伝子と産物のタンパク質が対応ついた形で翻訳、3.産物のタンパク質の活性を指標にして、活性を持つ変異体タンパク質および遺伝子を特定、4.トリプトファンを含まないMS2ファージを再構築、のステップからなる。本研究の特色かつ、実験結果を大きく左右するのは、2.に用いる単純化遺伝暗号表であるが、この単純化遺伝暗号表がトリプトファンをアラニンに変えて翻訳することは、今回の報告まで定量的に示されていなかった。今回私は、単純化遺伝暗号表中でタンパク質のトリプトファンがアラニンに置き換わることを定量的に示すことを目的として、アミノ酸組成分析を行った。実験には、トリプトファンの含有量が多く、組成の挙動の観察に適しているモデルタンパク質を用いて行った。その結果、タンパク質に8個含まれるトリプトファンの定量値は普遍遺伝暗号表を用いて翻訳したタンパク質で7.2個、単純化遺伝暗号表を用いて翻訳したタンパク質で0個となり、翻訳されたタンパク質にトリプトファンがまったく含まれないことが示された。さらに、異なる系のアミノ酸組成分析を用いて普遍遺伝暗号表を用いて翻訳したタンパク質の組成と単純化遺伝暗号表を用いて翻訳したタンパク質の組成を比較したところ、前者から後者にかけてアラニンのみが顕著に変化しており、その変化は8.1個の増加であった。したがって、この単純化遺伝暗号表はトリプトファンをアラニンに変換することが示されたといえる。今回の研究で、MS2ファージを作成するための系の性質の確からしさが確認され、研究目標を実現するための基盤が整った。私の研究の目標はトリプトファンを含まないバクテリオファージMS2の作成である。実験の手順は1.MS2を構成するタンパク質の遺伝子全体にランダムな変異を導入して変異遺伝子ライブラリを作成、2.どのような遺伝子配列に対してもトリプトファンを導入しないような翻訳系である「単純化遺伝暗号表」を用いて、ライブラリの遺伝子と産物のタンパク質が対応づいた形で翻訳、3.産物のタンパク質の活性を指標にして、活性を持つ変異体タンパク質および遺伝子を特定、4.トリプトファンを含まないMS2ファージを再構築、のステップからなる。今回は、3.の達成のために必要な課題の1つを達成した。
KAKENHI-PROJECT-09J09606
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09J09606
20種類のアミノ酸は生命進化の必然の帰結か? : 単純化遺伝暗号表を用いた実験的検証
セレクションに用いる成熟タンパク質、コートタンパク質、複製タンパク質の遺伝子を大腸菌用のベクターに導入し、発現を確認した。今回の大腸菌での発現は、それぞれのタンパク質のセレクションの系を構築する予備実験のために、大量のタンパク質を生産する目的で必要不可欠のステップである。また、2.に関して、単純化遺伝暗号表を記述した論文を投稿中である。本研究に用いるトリプトファンを含まない系を中心に、あるアミノ酸が別のアミノ酸に置き換わる現象を、アミノ酸組成分析、立体構造解析などの手法を用いて様々な側面から示している。また、単純化遺伝暗号表は、普遍遺伝暗号表と同等の翻訳効率と正確性を有していることも明らかになった。当初はMS2ファージの進化実験の成果をとりまとめる予定であったが、研究機関の時間的な制約を考慮して遺伝暗号表に限った話題で執筆・投稿を行っている。
KAKENHI-PROJECT-09J09606
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09J09606
鋼コンクリート複合構造の力学特性解析法確立に関する研究
(1)鋼桁を鉄筋コンクリート橋脚に剛結する形式の複合構造の力学挙動を解析する有限要素プログラムを開発した。このプログラムは、コンクリートの構成則として、ひずみ軟化を考慮し、等方性材料として破壊基準をモールクーロン則、混合硬化としてもので、コンクリートと鉄筋の付着およびコンクリートと鋼板の付着をより厳密に取り扱うために、既往のモデルをもとに開発した、付着特性をバネで表現する付着要素を組み込んだものである。特に、コンクリートと鋼板の付着要素は、すべりおよび剥離を考慮できるようにした。このプログラムは、対象とした複合構造以外にも用いることができる。(2)開発した有限要素プログラムによる解析結果と載荷実験の結果と対比した結果、このプログラムによれば、大変形領域まで精度よく力学挙動を追跡できることが示された。(3)開発した有限要素プログラムを用い、実橋の挙動解析を重ねた結果、接合に特別の工夫をしない限り、上部構造からの荷重の大部分は接合部近傍に伝達され、横方向には分散しないことが明らかとなった。また、横桁にダイヤフラムを設け、そのダイヤフラムにフランジを付ければ、荷重は横方向へ効果的に分散伝達されることも明らかとなった。(4)解析結果を基に、より簡便に接合部の力学挙動を解明し、設計に結びつけることができるストラット・タイモデルを開発した。(1)鋼桁を鉄筋コンクリート橋脚に剛結する形式の複合構造の力学挙動を解析する有限要素プログラムを開発した。このプログラムは、コンクリートの構成則として、ひずみ軟化を考慮し、等方性材料として破壊基準をモールクーロン則、混合硬化としてもので、コンクリートと鉄筋の付着およびコンクリートと鋼板の付着をより厳密に取り扱うために、既往のモデルをもとに開発した、付着特性をバネで表現する付着要素を組み込んだものである。特に、コンクリートと鋼板の付着要素は、すべりおよび剥離を考慮できるようにした。このプログラムは、対象とした複合構造以外にも用いることができる。(2)開発した有限要素プログラムによる解析結果と載荷実験の結果と対比した結果、このプログラムによれば、大変形領域まで精度よく力学挙動を追跡できることが示された。(3)開発した有限要素プログラムを用い、実橋の挙動解析を重ねた結果、接合に特別の工夫をしない限り、上部構造からの荷重の大部分は接合部近傍に伝達され、横方向には分散しないことが明らかとなった。また、横桁にダイヤフラムを設け、そのダイヤフラムにフランジを付ければ、荷重は横方向へ効果的に分散伝達されることも明らかとなった。(4)解析結果を基に、より簡便に接合部の力学挙動を解明し、設計に結びつけることができるストラット・タイモデルを開発した。(1)一般鋼材とコンクリートとの付着特性に関する既往の文献を調査した結果、付着強度は摩擦係数によって整理するのが便利であり、かぶりの影響は側圧に換算して、これを表すことが可能であって、その力学特性は鋼板とコンクリートの接触問題として定式化できることが判明した。(2)スタッドジベルに関し、これを溶植した鋼材をコンクリートに埋め込んだ供試体につき載荷実験を行った結果、本研究の準備となる研究で得たスタッドジベルの解析プログラムは十分な精度でその挙動を予測できるが、これを全体構造の解析に用いるには、単純化する必要が認められた。単純化の一つの方法として、一端を鋼板に他端をコンクリートに固定した梁要素とし、その曲げ剛性を前述の解析プログラムであらかじめ求めておく方法が有望であるが、なお検討が必要である。(3)鋼コンクリート接合部において、コンクリートの挙動を的確に表現し得る構成則について検討を重ねた結果、鋼板とコンクリートを完全付着とし、相互の剥離を考慮しない場合、分散ひび割れモデルを用いてひずみ軟化を考慮し、等方性材料として破壊基準をモールクーロン則、混合硬化とすれば、満足できる程度に接合部の挙動を推定できることが明らかとなった。しかし、この定式化では、鋼板とコンクリートのすべりならびに剥離を考慮できず、大変形領域では精度が劣るので、より厳密な定式化の検討が必要である。(1)穴あき鋼板が伝達し得るせん断力について既往の文献を調査した結果、終局せん断力は、穴の面積およびコンクリート強度に概ね比例すること、このことを仮定した場合、実験値は穴径が小さい場合やや大きく、大きい場合やや小さい傾向があること、実験値の回帰曲線を0.7倍すれば、終局せん断力を安全側に評価できることが明らかになった。(2)鋼桁を鉄筋コンクリート橋脚に剛結する形式の複合構造について、小型供試体を用いた載荷実験の結果と有限要素解析を対比した結果、鋼板とコンクリートを完全付着とし、相互の剥離を考慮しない場合、コンクリートの構成則として、分散ひび割れモデルを用いてひずみ軟化を考慮し、等方性材料として破壊基準をモールクーロン則、混合硬化とすれば、満足できる程度に接合部の挙動を推定できるが、大変形領域での精度を向上させるには、鋼板とコンクリートのすべりならびに剥離を考慮する必要があることが明らかとなった。(3)コンクリートと鉄筋の付着およびコンクリートと鋼板の付着をより厳密に取り扱うため、既往のモデルをもとに、付着特性をバネで表現する付着要素の開発を行った。特に、コンクリートと鋼板の付着要素は、すべりおよび剥離を考慮できるようにした。(4)これらのモデルを組み込んで解析を行った結果、大変形領域の解析精度が向上することが示された。しかし、繰り返し荷重の影響を考慮するには、若干の修正が必要であることも示された。(1)鋼桁を鉄筋コンクリート橋脚に剛結する形式の複合構造の力学挙動を解析する有限要素プログラムを開発した。
KAKENHI-PROJECT-11450169
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11450169
鋼コンクリート複合構造の力学特性解析法確立に関する研究
このプログラムは、コンクリートの構成則として、ひずみ軟化を考慮し、等方性材料として破壊基準をモールクーロン則、混合硬化としてもので、コンクリートと鉄筋の付着およびコンクリートと鋼板の付着をより厳密に取り扱うために、既往のモデルをもとに開発した、付着特性をバネで表現する付着要素を組み込んだものである。特に、コンクリートと鋼板の付着要素は、すべりおよび剥離を考慮できるようにした。このプログラムは、対象とした複合構造以外にも用いることができる。(2)開発した有限要素プログラムによる解析結果と載荷実験の結果と対比した結果、このプログラムによれば、大変形領域まで精度よく力学挙動を追跡できることが示された。(3)開発した有限要素プログラムを用い、実橋の挙動解析を重ねた結果、接合に特別の工夫をしない限り、上部構造からの荷重の大部分は接合部近傍に伝達され、横方向には分散しないことが明らかとなった。また、横桁にダイヤフラムを設け、そのダイヤフラムにフランジを付ければ、荷重は横方向へ効果的に分散伝達されることも明らかとなった。(4)解析結果を基に、より簡便に接合部の力学挙動を解明し、設計に結びつけることができるストラット・タイモデルを開発した。
KAKENHI-PROJECT-11450169
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11450169
共通の上界・下界構造を持つ半順序集合の族と、それを表現するグラフの特徴について
upper bound graphの特徴付けには、McMorrisとZaslavskyによるclique coverを用いたものが良く知られている。これは、グラフのグローバルな構造的特徴付けであり、アルゴリズム的あるいは構成的な観点等、別の特徴付けの余地があると考えられる。今回の研究では、第一に、1988年、D.J.BergstrandとK.F.Jonesによって示された、graphに特定の操作を施して得られる構造によってupper bound graphの特徴を調べる手法をヒントに、upper bound graphの操作的特徴付けを試み、一定の結果を得た。第二に、グラフの族を限定することによって、与えられたupper bound graphに対応するcanonical posetのforbidden subposetsの族を決定することができた。以下がそれらの概要である。Gをupper bound graphとするとき、Gの隣接するnon-simplicialなすべての2点を縮約する操作によって、novaと呼ばれる特定のグラフの族が得られる。また、縮約の逆操作であるsplitによって、upper bound graphであることが保存される。さらに、これらといくつかの補題により、特定の条件を満たす2点の縮約の列によって得られるグラフがnovaであることがupper bound graphの特徴であることが示された。Gがsplit upper bound graphであることと、Gのcanonical posetがP_<2K2>をm-subposetとして含まないことは同値である。(ここに、QがPのm-subposetとは、任意のP(かつQ)の2元x, yがPにおいて上界m_1を持てば、Qの中においても上界m_2を持つことが満たされるときを言う)さらに、Gがthreshold upper bound graphであることと、Gのcanonical posetがP_<2k2>とP_wをm-subposetとして含まないことは同値である。Gがdifference upper bound graphであることと、Gのcanonical posetがP_<2K2>とPをm-subposetとして含まないことは同値である。upper bound graphの特徴付けには、McMorrisとZaslavskyによるclique coverを用いたものが良く知られている。これは、グラフのグローバルな構造的特徴付けであり、アルゴリズム的あるいは構成的な観点等、別の特徴付けの余地があると考えられる。今回の研究では、第一に、1988年、D.J.BergstrandとK.F.Jonesによって示された、graphに特定の操作を施して得られる構造によってupper bound graphの特徴を調べる手法をヒントに、upper bound graphの操作的特徴付けを試み、一定の結果を得た。第二に、グラフの族を限定することによって、与えられたupper bound graphに対応するcanonical posetのforbidden subposetsの族を決定することができた。以下がそれらの概要である。Gをupper bound graphとするとき、Gの隣接するnon-simplicialなすべての2点を縮約する操作によって、novaと呼ばれる特定のグラフの族が得られる。また、縮約の逆操作であるsplitによって、upper bound graphであることが保存される。さらに、これらといくつかの補題により、特定の条件を満たす2点の縮約の列によって得られるグラフがnovaであることがupper bound graphの特徴であることが示された。Gがsplit upper bound graphであることと、Gのcanonical posetがP_<2K2>をm-subposetとして含まないことは同値である。(ここに、QがPのm-subposetとは、任意のP(かつQ)の2元x, yがPにおいて上界m_1を持てば、Qの中においても上界m_2を持つことが満たされるときを言う)さらに、Gがthreshold upper bound graphであることと、Gのcanonical posetがP_<2k2>とP_wをm-subposetとして含まないことは同値である。Gがdifference upper bound graphであることと、Gのcanonical posetがP_<2K2>とPをm-subposetとして含まないことは同値である。半順序集合P=(X,>)の2要素a, bが上界(下界)を持つとき、a, bを辺で結ぶことによって得られるX上のグラフをPの上界(下界)グラフと呼ぶ。上界グラフとなる条件はいくつか知られているが、本研究では、グラフの辺の縮約と点の分割の操作の結果生ずるグラフの構造的な特徴によって、その条件付けを試みた。ここで言うグラフの辺の縮約とは、非単体的2点a, bを端点に持つグラフの一辺e=(a, b)をそのグラフから除去し、その端点aとbを重ねあわせて同一化させる操作であり、ここで言う点の分割とは、非単体的一点aに対して、aを除去したうえで新たに2点c, dを追加し、aを含むクリークのすべての点とc, dを辺で結ぶ操作である。元のグラフが上界グラフであるとき、これらの操作の結果も上界グラフであることを証明した。対応する半順序集合においては、一方が、要素と関係の除去による部分半順序集合の構成にあたり、他方が、要素と関係の追加による半順序集合の拡大にあたる。これらの操作は互いに可逆な操作であることも示された。さらに、上界グラフに縮約の操作を繰り返し行った結果得られるグラフの特徴を示すことによって、上界グラフの構成的な特徴づけができることを示した。
KAKENHI-PROJECT-16540115
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16540115
共通の上界・下界構造を持つ半順序集合の族と、それを表現するグラフの特徴について
すなわち、非単体的2点を端点に持つ辺のうち、一定の局所的条件を満たすものを選び、縮約を繰り返した結果がNOVAと呼ばれる特殊なグラフの族に帰着するとき、かつそのときに限り、そのグラフは上界グラフであることが証明された。ここで、NOVAとは、星グラフK(1,n)の各辺を位数2以上の完全グラフに置き換えて得られるグラフの族である。upper bound graphの特徴付けには、McMorrisとZaslavskyによるclique coverを用いたものが良く知られている。これは、グラフのグローバルな構造的特徴付けであり、アルゴリズム的あるいは構成的な観点等、別の特徴付けの余地があると考えられる。今回の研究では、グラフの族を限定することによって、与えられたupper bound graphに対応するcanonical posetのforbidden subposetsの族を決定することができた。以下がそれらの概要である。与えられたupper bound graphに対応するposetの中で、posetを関係の集合とみなしたときの極小のものをGのcanonical posetと呼ぶ。canonical posetは与えられたG毎に一意に決まる。今回の考察は、Gの固有の性質によってそれらのcanonical posetが持ち得ない構造が生じることを、そのcanonical posetのforbidden subposetの概念で示そうと試みたものである。ただし、ここで着目しているのはposetの上界構造であるから、一般のsubposetの概念を用いることには無理があり、D.D.Scott(1986)によるm-subposetの概念を用いることが自然なことと思われた。QがPのm-subposetであるとは、任意のP(かつQ)の2元x,yがPにおいて上界m_1を持てば、Qの中においても上界m_2を持つことが満たされるときを言う。その結果、次の3とおりのグラフのクラスについて、forbidden m-subpostの概念による特徴づけが得られた。Gがsplit upper bound graphであることと、Gのcanonical posetがP_<2K2>をm-subposetとして含まないことは同値である。ここに、さらに、Gがthreshold upper bound graphであることと、Gのcanonical posetがP_<2k2>とP_Wをm-subposetとして含まないことは同値である。Gがdifference upper bound graphであることと、Gのcanonical posetがP_<2K2>とPをm-subposetとして含まないことは同値である。
KAKENHI-PROJECT-16540115
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16540115
協調作業による生涯学習を支援するネットワークメディアシステムに関する研究
本研究は、生涯教育において、広域ネットワーク上で、目標を共有する学習者が、協調学習を行うのを支援するシステムを目指して、4つの目標を立てた。得られた成果は、(1)教材の、類比的あるいは対立的な知識や事例比較参照をおこなわせるために、教師が、例題レパートリと、それらを解くために利用される知識およびそれらの根拠となる知識の集合を指定して、それらについて例示したり解説している情報リソースや例題解答リソースに対して、教師あるいは学習者によるノート付けを支援し、一方で、ノートに現れる知識のつながりに基づいて、知識をつないだマップをつくり、学習者が、ノート経由で、類比や対立の関係にある知識や解法を比較参照をするのを支援する仕組みを提案した。具体的には、第二言語としての日本語の学習支援におけるテキストへの表現ノート付けを支援するシステム、また、ShareMediaについては、地理の分野での手がかり表現のマップをつくって検索を支援し、ともに有効性を確認した。(2)加齢も考慮したメディア表現教材とのインタラクションの一貫として、ポインティングカーソルをアイコンまで持って行く操作を容易にし、かつ、時間を短縮するような支援ソフトウエアを開発した。入力表示一体型ペンコンピュータを利用して手書き入力からオブジェクトを認識表示するとともに、表示されたオブジェクトを動的に操作する仕組みについては、さらに開発を進める。(3)問題解決作業の緩やかな支援の仕組みについては、問題解決学習支援システムCAFEKSの問題型と知識との関連を明らかにし、問題解決のプランの中での問題型の利用の記述としては、個別の問題について、簡略にオーサが書き込めるようシステムが支援することによって取り扱い分野のスケーラビリティを確保し、一方、問題解決のプランニングをやり直しも含めて支援する仕組みを開発した。(4)これらの作業を、議論を交えて共同で行なうことができる電子的な作業場としては、文字列ストリームによって、リモートにメソッドを起動する仕組みをつくり、協調学習サーバによって競合解消を受けて許可されたクライアントからのアクションを、全クライアントに配信して実行反映させる仕組みを完成させた。チャットと、作業におけるオブジェクトの操作を連絡する方法についても試作を行った。本研究は、生涯教育において、広域ネットワーク上で、目標を共有する学習者が、協調学習を行うのを支援するシステムを目指して、4つの目標を立てた。得られた成果は、(1)教材の、類比的あるいは対立的な知識や事例比較参照をおこなわせるために、教師が、例題レパートリと、それらを解くために利用される知識およびそれらの根拠となる知識の集合を指定して、それらについて例示したり解説している情報リソースや例題解答リソースに対して、教師あるいは学習者によるノート付けを支援し、一方で、ノートに現れる知識のつながりに基づいて、知識をつないだマップをつくり、学習者が、ノート経由で、類比や対立の関係にある知識や解法を比較参照をするのを支援する仕組みを提案した。具体的には、第二言語としての日本語の学習支援におけるテキストへの表現ノート付けを支援するシステム、また、ShareMediaについては、地理の分野での手がかり表現のマップをつくって検索を支援し、ともに有効性を確認した。(2)加齢も考慮したメディア表現教材とのインタラクションの一貫として、ポインティングカーソルをアイコンまで持って行く操作を容易にし、かつ、時間を短縮するような支援ソフトウエアを開発した。入力表示一体型ペンコンピュータを利用して手書き入力からオブジェクトを認識表示するとともに、表示されたオブジェクトを動的に操作する仕組みについては、さらに開発を進める。(3)問題解決作業の緩やかな支援の仕組みについては、問題解決学習支援システムCAFEKSの問題型と知識との関連を明らかにし、問題解決のプランの中での問題型の利用の記述としては、個別の問題について、簡略にオーサが書き込めるようシステムが支援することによって取り扱い分野のスケーラビリティを確保し、一方、問題解決のプランニングをやり直しも含めて支援する仕組みを開発した。(4)これらの作業を、議論を交えて共同で行なうことができる電子的な作業場としては、文字列ストリームによって、リモートにメソッドを起動する仕組みをつくり、協調学習サーバによって競合解消を受けて許可されたクライアントからのアクションを、全クライアントに配信して実行反映させる仕組みを完成させた。チャットと、作業におけるオブジェクトの操作を連絡する方法についても試作を行った。今年度は、システムの主要な要素であるShareMediaとCAFEKSをそれぞれで、ネットワーク上での協調作業ができるものにすることができた。ともにメンバのクライアントにおけるHCIをJAVAで、また、ShareMediaの手がかり検索とCAFEKSの知識ベースは、サーバにおいてPrologで実装した。サーバクライアント間のやり取りは、JAVA-RMI(遠隔オブジェクトメソッドの直接起動)を用い、各クライアントとサーバにトランスレータを置く形で実装し、協調作業場で、任意のクライアントでの作業が他のクライアントの表示に直ちに反映される仕組みを実現した。一方、分野独立な分散協調作業支援プラットフォームとして、議論支援の部分をタグのつけられるチャットと掲示板の両方で試み、さらに、共同作業場の任意の領域に囲みを描いたとき、それとチャットの中の該当位置にユニークな記号がつく仕組みを作って、図を指し示しながら議論して、同期的な記録がとれるようにした。タグとこうした記録を合わせて、協調グループがリフレクションを行うことを可能にしている。また、このプラットフォームは、やはりJAVA-RMIを用い、クライアントサーバ間のやり取りをトランスレータを置いて実装したので、上述したShareMediaとCAFEKSを、容易に、この議論支援の場と統合することができる。HCIについては、このほか、オブジェクト部品の組み合わせとして学習者に作らせた図表現に、直接、記号や数値を入力させたものが、どのオブジェクトのどの属性に対するものかをシステムが認識できる仕組みを実装し、また、式の入力について、入力し易くその結果が適切に表示されるような機構に関する研究を行った。
KAKENHI-PROJECT-12558014
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12558014
協調作業による生涯学習を支援するネットワークメディアシステムに関する研究
バリヤフリーHCIについては文献調査を行った。2001年度は,生涯教育の議論支援と協調作業場をブラウザベースで構築する方法を検討し,ブラウザクライアントからのコマンドに対し,Webサーバ側が,レスポンスを保留しておき,サーバ側からクライアント側への通信は,この保留を解くことによって行うというプロトコルを開発した.この仕組みの上でクライアント側でアプレット,サーバ側でJAVAサーブレットを使うことにより,fire wallに妨げられることなく,かつポータブルな仕組みが作られる見込みが立った.また,プランニングをさせながら問題解決の支援を担当するCAFEKSについては,ポータビリティを考慮して,問題型に至るまで,全てをJAVAでプログラムすることを試みた.また,問題解決プランの形式を,例えば,電気回路の閉路が複数与えられたとき,それらに関する方程式を作るのに,どの閉路からでも,また,複数並行してでも実行でき,また,戻って追加も自由にできるように自由度を増やした.また,数式入力の整合性を単位をつかってチェックし,同類項簡約を用いて,正解と照合し,また,連立させた方程式を解いて,学習者の結果の入力とつきあわせることもできるようになった.さらに,セマンティックなアノテーションを手がかりにメディア表現された事例を検索し,関連を辿るのを支援するShareMediaについては,今回,手がかりに使われた意味フレームの接続情報を集めたフレームマップを自動作成して表示し,フレームマップを辿りながら,メディア表現の関連検索を行うことができるようにした.評価実験の結果,この方法は,検索を動機付けるのに大いに役立つことが分かった.今後,例題解法のメディア表現ベースに対するプランの手がかりについても,同様の試みをして行き,この場合,学習者をループにいれた例題解法のシミュレーションを行うといったactive annotationを開発して行く.今年度は,また,加齢や肢体不自由で,マウス操作に困難がある学習者に対処するために,マウス操作に対するポインタの動きを,Fuzzy logicを組み込んだソフトウエアにより,個人に合わせた制御を行うシステムを試作し,研究をスタートさせた.
KAKENHI-PROJECT-12558014
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12558014
新卒看護師の看護実践プロセスにおける思考様式に関する研究
本研究は、看護基礎教育終了後、社会人経験等なく、はじめて看護師として病院施設に勤務した新卒看護師の協力を得て実施した。本年度は、平成18年度5月10月までの約6ヶ月間、およそ2日/月の割合で新卒看護師2名の看護実践場面の参与観察と、その場面に関連した非構成的インタビューをおこない、新卒看護師の看護実践プロセスにおける思考様式を質的記述的に分析した。その結果、新卒看護師は患者の問題状況に気づくと、<過去の患者の反応を想起する><現在の反応と照らし合わせる>ことにより、直面している状況との対話を行なっていた。初めて経験する予想外の出来事に対しては、過去に見たことのある先輩看護師の実践状況と自分の今の状況とを重ね合わせて、先輩看護師の対処を参照し、対応する方略、<他者の実践状況と重ね合わせて対処を参照する>ことで解決を試みていた。また看護実践の中でのリフレクションには、<時間のマネジメント>が影響していた。こうした新卒看護師がおこなう、「看護実践の中でのリフレクション」に関わる根拠は、患者が今「希望していること」「気になっていること」に即した援助を重視する<患者の文脈に寄り添うことを心がける>という、【応答性】に基づく援助の志向であった。また、<納得できない実践についてのリフレクション><失敗した実践についてのリフレクション>からの学びは深く意味づけられ、患者のわずかなサインや反応からく状況を予測する>能力の形成につながっていた。また、問題状況との対話において<経験からの学びの意識的活用>をおこない、<時間のマネジメント>ができるようになると<立ち止まって考える><状況を吟味する>ことも可能になり、より深い状況の理解につながっていた。さらに、患者にこうなってほしいという<展望性>、介入的アプローチの機会を逃さず、柔軟に対応する<即興性><柔軟性>をもった実践を展開できるようになっていた。そうした実践の変化は、新卒看護師自身に<自己の看護レパートリーが拡がっている実感>をもたらし、積極的に自己の看護実践についてリフレクションすることを促進させていた。以上から、新卒看護師の実践能力向上において、先輩看護師が患者に看護を行っている場面を見る機会の保証、先輩看護師の看護ケア経験の語りを聞く機会の保証、自己の看護実践についてのリフレクションが重要であることが示唆された。本研究は、看護基礎教育終了後、社会人経験等なく、はじめて看護師として病院施設に勤務した新卒看護師2名の協力を得て実施した。本年度は、平成17年度11月平成18年度3月末日までの5ヶ月間、およそ4日/月の割合で新卒看護師の看護実践場面の参与観察と、その場面に関連した非構成的インタビューをおこない、新卒看護師の看護実践プロセスにおける思考様式と、それがどのように変容していくのかを質的記述的に分析した。その結果、新卒看護師は、臨床において直面する問題状況の中で、看護学生だった頃の臨床看護実習での経験「自己の看護実習経験の物語」と先輩看護師の日々の臨床での経験の語り「古参者の看護ケア経験の物語」を、自らの看護実践の文脈の中で主体能動的に活用しつつ実践していた。さらに、新卒看護師自らが日々の臨床における看護実践を通して経験する出来事「自己の看護ケア経験の物語」が加わっていくことによって、思考の深まりや多義的な看護実践の展開がみられていた。また、その場その場の患者の状況に対して、ひたむきに向き合おうとする、新卒看護師の「応答性」を中心とした関わりは、新卒看護師自身が一人の看護師として患者から信頼される経験につながっていた。さらに、そのような患者への看護援助や関わりについての「自己の看護ケア経験の物語」が、参加している共同体(所属する病棟)の看護メンバーから「良き実践」として承認され、看護実践に活用される「良き実践として他者の看護実践に借用される経験」は、自己の看護に対する自信や、共同体の看護メンバーに対する信頼感につながり、新卒看護師がさまざまな問題状況に対して、行動しつつ考えることを促進させていた。次年度も研究継続させて、就職直後半年間の新卒看護師の看護実践プロセスにおける思考様式を理解するとともに、その形成過程における看護実践能力の変化を明らかしていくことを予定している。本研究は、看護基礎教育終了後、社会人経験等なく、はじめて看護師として病院施設に勤務した新卒看護師の協力を得て実施した。本年度は、平成18年度5月10月までの約6ヶ月間、およそ2日/月の割合で新卒看護師2名の看護実践場面の参与観察と、その場面に関連した非構成的インタビューをおこない、新卒看護師の看護実践プロセスにおける思考様式を質的記述的に分析した。その結果、新卒看護師は患者の問題状況に気づくと、<過去の患者の反応を想起する><現在の反応と照らし合わせる>ことにより、直面している状況との対話を行なっていた。初めて経験する予想外の出来事に対しては、過去に見たことのある先輩看護師の実践状況と自分の今の状況とを重ね合わせて、先輩看護師の対処を参照し、対応する方略、<他者の実践状況と重ね合わせて対処を参照する>ことで解決を試みていた。また看護実践の中でのリフレクションには、<時間のマネジメント>が影響していた。こうした新卒看護師がおこなう、「看護実践の中でのリフレクション」に関わる根拠は、患者が今「希望していること」「気になっていること」に即した援助を重視する<患者の文脈に寄り添うことを心がける>という、【応答性】に基づく援助の志向であった。また、<納得できない実践についてのリフレクション><
KAKENHI-PROJECT-17791600
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17791600
新卒看護師の看護実践プロセスにおける思考様式に関する研究
失敗した実践についてのリフレクション>からの学びは深く意味づけられ、患者のわずかなサインや反応からく状況を予測する>能力の形成につながっていた。また、問題状況との対話において<経験からの学びの意識的活用>をおこない、<時間のマネジメント>ができるようになると<立ち止まって考える><状況を吟味する>ことも可能になり、より深い状況の理解につながっていた。さらに、患者にこうなってほしいという<展望性>、介入的アプローチの機会を逃さず、柔軟に対応する<即興性><柔軟性>をもった実践を展開できるようになっていた。そうした実践の変化は、新卒看護師自身に<自己の看護レパートリーが拡がっている実感>をもたらし、積極的に自己の看護実践についてリフレクションすることを促進させていた。以上から、新卒看護師の実践能力向上において、先輩看護師が患者に看護を行っている場面を見る機会の保証、先輩看護師の看護ケア経験の語りを聞く機会の保証、自己の看護実践についてのリフレクションが重要であることが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-17791600
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17791600
土石の広域流動を伴う山体崩壊に関する防災科学的研究
本研究では昭和59年9月の、いわゆる波岳くずれの解明にかなりのエネルギーを注いだ。御岳くずれによる被害はその物理的規模の割には少なかったが、それは多分に偶然性によるものであり、同種の自然現象による災害を防止するために、御岳くずれの実態を解明することはきわめて重要と考えられる。このような観点から、御岳くずれに関して、できるだけ多様な研究成果を持寄って現地討論会を実施した。御岳くずれのメカニズムに関しての最大の問題点は、土石の広域流動を可能にしたのは水か空気かということである。この論争を通じて、毎年我国のどこかで起るような規模の土石流に関する研究にもとづく理論と、【10^8】【m^3】程度以上の規模の山体崩壊による岩屑なだれに関する、主として堆積物の調査にもとづく理論の間には、大きなギャップがあることがわかった。しかし、御岳くずれについては、長い距離にわたる土石の流動には水の存在が不可欠であり、水が存在しない場合には、エアクッション効果が起っても、このような規模で0.13程度の低い等価摩擦係数は実現しないであろうことが確認された。しかし、流動土石のかなりの部分が乾いた状態のものであったことも確認された。水で飽和した土石流状の部分と乾いた流れ山状の部分の間の相互関係については、堆積物の詳細な調査にもとづくいくつかの提案がなされたが、未解明、あるいは十分な検証ができない点が残った。土石の広域流動を伴う山体崩壊の地質・地形条件に関して、外帯の起伏量の大きい山地では流れ盤斜面で発生しやすいことが報告された。この知見を直ちに一般化することは困難であるが、風化および他の削剥過程との関係を解明して行くことが重要であると考えられる。本研究で得られた知見を実際の防災に生かす方策についての討議もおこなったが、その結果は王滝村から発行される災害誌の一部として執筆した。本研究では昭和59年9月の、いわゆる波岳くずれの解明にかなりのエネルギーを注いだ。御岳くずれによる被害はその物理的規模の割には少なかったが、それは多分に偶然性によるものであり、同種の自然現象による災害を防止するために、御岳くずれの実態を解明することはきわめて重要と考えられる。このような観点から、御岳くずれに関して、できるだけ多様な研究成果を持寄って現地討論会を実施した。御岳くずれのメカニズムに関しての最大の問題点は、土石の広域流動を可能にしたのは水か空気かということである。この論争を通じて、毎年我国のどこかで起るような規模の土石流に関する研究にもとづく理論と、【10^8】【m^3】程度以上の規模の山体崩壊による岩屑なだれに関する、主として堆積物の調査にもとづく理論の間には、大きなギャップがあることがわかった。しかし、御岳くずれについては、長い距離にわたる土石の流動には水の存在が不可欠であり、水が存在しない場合には、エアクッション効果が起っても、このような規模で0.13程度の低い等価摩擦係数は実現しないであろうことが確認された。しかし、流動土石のかなりの部分が乾いた状態のものであったことも確認された。水で飽和した土石流状の部分と乾いた流れ山状の部分の間の相互関係については、堆積物の詳細な調査にもとづくいくつかの提案がなされたが、未解明、あるいは十分な検証ができない点が残った。土石の広域流動を伴う山体崩壊の地質・地形条件に関して、外帯の起伏量の大きい山地では流れ盤斜面で発生しやすいことが報告された。この知見を直ちに一般化することは困難であるが、風化および他の削剥過程との関係を解明して行くことが重要であると考えられる。本研究で得られた知見を実際の防災に生かす方策についての討議もおこなったが、その結果は王滝村から発行される災害誌の一部として執筆した。
KAKENHI-PROJECT-60020032
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-60020032
役割演技の発達と他者の視座獲得との関連性について
自己の行為の再現は、他者の行為の再現と比し、より低年齢で可能となる、との報告に基づき、役割演技行為には、(a)自己の行為の再現(自己の行為の再現のみ行う)、(b)他者の行為の再現(他者の行為の再現を行うが、自己と他者の関係を再現しない)、(c)他者と自己、及び他者同士の関係の再現、という3つの発達水準が観察されると予測し、3歳から6歳までの幼児(女児)を二人一組とし、役割演技行為の観察を行った。その結果、(c)他者と自己、及び他者同士の関係の再現は、6歳のペア-が他の年齢群と比べ、より多く観察される傾向が見られたが、(a)自己の行為の再現、及び、(b)他者の行為の再現は、年齢による特定の傾向は観察されなかった。当初予測していた発達水準が観察されなかったため、役割演技行為と、他者の視座獲得との関連性については、検討ができなかった。また、5、6歳児のデータから、(c)の水準をさらに、他者と自己の関係の再現、及び他者同士の関係の再現、の2水準に分けるかどうかの検討が必要であることが明らかになった。発達水準が観察されなかった理由として、有効データ数が少なかったために3才以下の被観察児のデータを分析から除外したこと、プレールームという被観察児にとり新規な場所での遊びであったため対人的な遊びより対物的な遊びが多く観察されたこと、等が考えられる。各年齢、特に、3歳以下のデータ数を増やすこと、自由場面での観察データとの比較を行うことを今後の課題としたい。自己の行為の再現は、他者の行為の再現と比し、より低年齢で可能となる、との報告に基づき、役割演技行為には、(a)自己の行為の再現(自己の行為の再現のみ行う)、(b)他者の行為の再現(他者の行為の再現を行うが、自己と他者の関係を再現しない)、(c)他者と自己、及び他者同士の関係の再現、という3つの発達水準が観察されると予測し、3歳から6歳までの幼児(女児)を二人一組とし、役割演技行為の観察を行った。その結果、(c)他者と自己、及び他者同士の関係の再現は、6歳のペア-が他の年齢群と比べ、より多く観察される傾向が見られたが、(a)自己の行為の再現、及び、(b)他者の行為の再現は、年齢による特定の傾向は観察されなかった。当初予測していた発達水準が観察されなかったため、役割演技行為と、他者の視座獲得との関連性については、検討ができなかった。また、5、6歳児のデータから、(c)の水準をさらに、他者と自己の関係の再現、及び他者同士の関係の再現、の2水準に分けるかどうかの検討が必要であることが明らかになった。発達水準が観察されなかった理由として、有効データ数が少なかったために3才以下の被観察児のデータを分析から除外したこと、プレールームという被観察児にとり新規な場所での遊びであったため対人的な遊びより対物的な遊びが多く観察されたこと、等が考えられる。各年齢、特に、3歳以下のデータ数を増やすこと、自由場面での観察データとの比較を行うことを今後の課題としたい。
KAKENHI-PROJECT-07780018
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対馬暖流ベルト地帯周辺における縄文農耕の実証化に向けた関連石器類の広域基盤研究
近年の土器圧痕レプリカ法等の開発と普及により、縄文時代における栽培種植物の存在と多様性が次第に確実視されるようになってきた。けれども、それらを考古学的に証明する遺構はもとより、関連する石製農具類の実態についても依然、不明瞭な点が多い。本研究では、初期縄文農耕に関与すると推察される縄文石器類の広域的な再検証を実施する。大陸由来の農耕文化をいち早く受容した可能性が高い、日本海西部沿岸地域(仮称、対馬暖流ベルト地帯)を対象に、関連石器類に関する形態、使用痕等に関する広範囲の比較調査を実施する。本研究課題の遂行により、西日本における縄文農耕に関与する石器類の実態解明が期待できる。近年の土器圧痕レプリカ法等の開発と普及により、縄文時代における栽培種植物の存在と多様性が次第に確実視されるようになってきた。けれども、それらを考古学的に証明する遺構はもとより、関連する石製農具類の実態についても依然、不明瞭な点が多い。本研究では、初期縄文農耕に関与すると推察される縄文石器類の広域的な再検証を実施する。大陸由来の農耕文化をいち早く受容した可能性が高い、日本海西部沿岸地域(仮称、対馬暖流ベルト地帯)を対象に、関連石器類に関する形態、使用痕等に関する広範囲の比較調査を実施する。本研究課題の遂行により、西日本における縄文農耕に関与する石器類の実態解明が期待できる。
KAKENHI-PROJECT-19K01097
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腎芽腫におけるβ-カテニン分解β系遺伝子異常の解析
腎芽腫の半数以上は既知原因遺伝子異常が認められないことより、未知原因遺伝子の存在が考えられている。腎芽腫114検体を用いた既知原因遺伝子異常の解析を行い、Wnt/βカテニン分解系に関わる遺伝子異常の頻度(CTNNB1 : 26.3%、WTX : 22.8%)を明らかにした。SNP array解析は少ないながらもAPC、AXIN1およびAXIN2コード領域の染色体構造異常を示し、Wnt/βカテニン分解系に異常を有さなかった59検体のうち1検体でダイレクトシークエンス法にてAPC遺伝子変異を同定した。WTX遺伝子異常を呈する腎芽腫の予後はそうでない腫瘍と比べ有意に不良であった(p=0.0402)腎芽腫の半数以上は既知原因遺伝子異常が認められないことより、未知原因遺伝子の存在が考えられている。腎芽腫114検体を用いた既知原因遺伝子異常の解析を行い、Wnt/βカテニン分解系に関わる遺伝子異常の頻度(CTNNB1 : 26.3%、WTX : 22.8%)を明らかにした。SNP array解析は少ないながらもAPC、AXIN1およびAXIN2コード領域の染色体構造異常を示し、Wnt/βカテニン分解系に異常を有さなかった59検体のうち1検体でダイレクトシークエンス法にてAPC遺伝子変異を同定した。WTX遺伝子異常を呈する腎芽腫の予後はそうでない腫瘍と比べ有意に不良であった(p=0.0402)腎芽腫の半数近くは既知原因遺伝子に異常が認められていない。腎芽腫の発生機序には未知の原因遺伝子が関与していると予想され、未だその分子生物学的特徴は未明な部分が多く残っている。腎芽腫の半数近くにβカテニンの核蓄積を認めることから、Wnt/βカテニン分解系の異常が腎芽腫の発症に関与することが示唆されている。しかし、βカテニンの核蓄積をWnt/βカテニン分解系に関与する既知原因遺伝子(CTNNB1(βカテニン)と剛遺伝子)異常だけでは説明できず、腎芽種においてβカテニンの核蓄積とWnt/βカテニン分解系に関わる他の遺伝子異常との関与については不明である。そこで腎芽腫の分子生物学的特徴の解析の一環として、本研究において腎芽腫発症におけるWnt/βカテニン分解系に関わる遺伝子群(AXIN1、AXIN2、GSK3β、APC、WTXそしてβカテニン)異常の関与とその意義を明らかにする。本年度はWTXタンパク質コード領域、CTNNB1、AXIN2およびAPC遺伝子の変異高頻度領域の変異解析を行った。腎芽種114症例の解析においてCTNNB1遺伝子変異20症例、WTX遺伝子変異23症例、APC遺伝子変異1症例を認めたがSXIN2変異高頻度領域に変異は認めなかった。CTNNB1、APCとWTXの異常は同一腫瘍で重複しなかった。また、見いだしたAPC遺伝子変異は大腸癌で既に報告されていた。これらのことはWnt/βカテニン分解系異常が腎芽腫発症において重要であることを裏付けた。腎芽腫の半数近くは既知原因遺伝子に異常が認められていない.腎芽腫の発生機序には未知の原因遺伝子が関与していると予想され,未だその分子生物学的特徴は未明な部分が多く残っている.腎芽腫の半数近くにβカテニンの蓄積を認めることから,Wnt/βカテニン分解系の異常が腎芽腫の発症に関与することが示唆されているが,βカテニンとWTXの異常が報告されているのみでWnt/βカテニン分解系に関わる他の遺伝子については解析されていない.そこで腎芽腫の分子生物学的特徴の解析の一環として,本年度は腎芽腫発症におけるWnt/βカテニン分解系に関わる遺伝子群異常の関与とその意義を明らかにするため、RNAの抽出可能だった44検体に関してWnt/βカテニン分解系遺伝子(AXIN1,AXIN2,APC,WTX)のmRNA発現をリアルタイムPCRにて解析した。AXIN1は全症例で正常人と同等かそれ以上に発現しており、AXIN2、APCは2および3症例でのみ発現消失を認めた。変異解析はAPCの変異を1症例で認めた。WTXおよびβカテニンの異常はそれぞれ腎芽腫の20%に認められるが、WTXおよびβカテニン以外のAPC複合体遺伝子異常は非常にまれであった。今後はβカテニンの下流遺伝子の発現を解析しWnt/βカテニン分解系の異常がAPC複合体以外で生じている可能性を検討するとともに、LPR5、6といった受容体に関して解析を進めていく予定である。腎芽腫の半数以上にβカテニンの蓄積を認めることから、Wnt/βカテニン分解系の異常が腎芽腫の発症に関与することが示唆されているが、βカテニンとWTXの異常が報告されているのみでWnt/βカテニン分解系に関わる他の遺伝子については解析されていない。本研究は腎芽腫発症におけるWnt/βカテニン分解系に関わる遺伝子群(AXIN1、AXIN2、GSK3β、APCそしてWTX)異常の関与とその意義を明らかにすることである。β-カテニンの核蓄積は下流遺伝子群(c-MycやCyclin D1等)の過剰発現をもたらすことが知られている。本年度は腎芽腫においてWnt/βカテニン分解系の異常をスクリーニングするため、腎芽腫49症例にて下流遺伝子であるc-Myc、CCND1、WIF1とAXIN2のmRNA発現解析をreal time PCRを用いて行った。c-Myc、CCND
KAKENHI-PROJECT-21791021
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腎芽腫におけるβ-カテニン分解β系遺伝子異常の解析
1、WIF1とAXIN2遺伝子はWTXまたはCTNNB1遺伝子に変異を認めた24症例中6症例、1症例、2症例そして10症例で正常腎および胎児腎より高発現していた。一方、WTXまたはCTNNB1遺伝子に変異を認めない25症例中7症例、9症例、2症例そして4症例でc-Myc、CCND1、WIF1とAXIN2遺伝子の高発現を認めた。これらはWTXまたはCTNNB1遺伝子に変異を認めない一部症例においてWnt/βカテニン分解系の異常が生じている可能性を示唆する。また、腎芽腫腫瘍死10症例の遺伝子変異解析にて、7症例でWTX遺伝子変異を2症例でWT1とCTNNB1遺伝子変異を認め、WT1とβ-カテニン両シグナル経路の異常が腎芽腫の予後因子となることを示唆する結果を得た。
KAKENHI-PROJECT-21791021
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瀕死患者の治療存続決定過程の施設差に関する研究
(1)瀕死患者の治療存続過程データベースに必要なスコア算出プログラムを作成した。発症、および集中治療室入室段階における急性期の評価としてAPACHE-IIを利用し、患者のバイタルサイン、生化学検査結果を直接入力することにより、自動的なスコア算出が可能とした。また、各患者において、APACHE-IIスコアの継時的な変化(トレンド解析)が検討できるように、ソフトウエアに修正を加えた。施設間の検討は、参加6施設の集中治療室を、集中治療専従医が常駐している施設(ICU)、救命救急センターの附属施設(ER-ICU)、専従医が常駐はしていない施設(Open-ICU)に分けて行った。(2)参加施設のうち、山口大学医学部附属病院集中治療室は、病床数14床、専従医5名、上記のICUに分類される。年間入室患者数1007名、平均入室期間は5.2日であり、ICU死亡症例は39例で、その内訳は、呼吸不全5例、心不全12例、多臓器不全13例、中枢神経障害3例、その他6例であった。APACHEスコアのトレンド解析では、うち29例に死亡予測が成立した。積極的治療の差し控え・中止が発生したのは18症例であった。生存退院した1例を除いて、積極治療の差し控えが決定されてから平均3.2日で死亡した。(3)参加施設間での検討では、ICUとの比較において、ER-ICUでは比較的早期に積極治療の差し控えが発生した症例の割合が多くなり、Open-ICUでは積極的治療の差し控えの時点が明確な症例と不明確な症例との混在を認めた。中枢神経障害の有無を含んだ対象疾患群の違いと専従医師の常駐が、施設間の差異に影響を与えていることが考察された。(1)瀕死患者の治療存続過程データベースに必要なスコア算出プログラムを作成した。発症、および集中治療室入室段階における急性期の評価としてAPACHE-IIを利用し、患者のバイタルサイン、生化学検査結果を直接入力することにより、自動的なスコア算出が可能とした。また、各患者において、APACHE-IIスコアの継時的な変化(トレンド解析)が検討できるように、ソフトウエアに修正を加えた。施設間の検討は、参加6施設の集中治療室を、集中治療専従医が常駐している施設(ICU)、救命救急センターの附属施設(ER-ICU)、専従医が常駐はしていない施設(Open-ICU)に分けて行った。(2)参加施設のうち、山口大学医学部附属病院集中治療室は、病床数14床、専従医5名、上記のICUに分類される。年間入室患者数1007名、平均入室期間は5.2日であり、ICU死亡症例は39例で、その内訳は、呼吸不全5例、心不全12例、多臓器不全13例、中枢神経障害3例、その他6例であった。APACHEスコアのトレンド解析では、うち29例に死亡予測が成立した。積極的治療の差し控え・中止が発生したのは18症例であった。生存退院した1例を除いて、積極治療の差し控えが決定されてから平均3.2日で死亡した。(3)参加施設間での検討では、ICUとの比較において、ER-ICUでは比較的早期に積極治療の差し控えが発生した症例の割合が多くなり、Open-ICUでは積極的治療の差し控えの時点が明確な症例と不明確な症例との混在を認めた。中枢神経障害の有無を含んだ対象疾患群の違いと専従医師の常駐が、施設間の差異に影響を与えていることが考察された。(1)山口大学医学部附属病院総合治療センター、および麻酔科蘇生科関連病院のうち、集中治療病床を有する総合病院(山口県内を中心に6施設)に対して、本研究の目的、個人情報、施設情報保護に関する対策を説明し、参加の同意を得た。その上で、下記の(2)の内容である各スコア算出のために必要な患者情報がそれぞれの施設でどのような形式で、記録されているかを確認するために、各施設での一般的な患者のバイタルサイン記録様式血液生化学検査項目一式、集中治療室患者チャート機械的補助および看護記録などの拠出協力の要請を行った。(2)次に、瀕死患者の治療存続過程データベースに必要なスコア算出のためのプログラムを作成した。発症、および集中治療室入室段階における急性期の評価には、急性疾患の身体的重症度を測定するAPACHE-IIおよびIIIスコアを利用した。患者のバイタルサイン、生化学検査結果を直接入力することにより、自動的にスコア算出が可能なソフトウェアを作成した。また、各患者において、APACHE-IIおよびIIIスコアの継時的な変化(トレンド解析)が検討できるように、ソフトウエアに修正を加えた。治療開始後、ある一定期間の治療経過を追った評価には、医療資源投入量を測定する包括的医療介入度を利用した。APACHE-IIおよびIIIスコア算定ソフトウエアとの統一性を考慮して、入力作業の簡便さをはかった。また、各施設の記録様式から、各スコアが同様に算出可能であることを確認した。(3)参加施設でのデータベース収集に先立って、まず(2)で作成したソフトウエアをパーソナルコンピューターに搭載し、総合治療センターにおいて、患者情報の入力を行って運用した。本研究の対象は瀕死患者であるが、ソフトウェアの安定性を確認するために、平成14年12月から平成15年1月にかけて、センター入室患者すべてにおいて、患者情報の入力、スコア算出を試行し、他施設でのデータ収集に支障が無いことを確認した。
KAKENHI-PROJECT-14572130
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14572130
瀕死患者の治療存続決定過程の施設差に関する研究
(1)昨年度、作成した瀕死患者の治療存続過程データベースに必要なスコア算出プログラムを利用して、発症、および集中治療室入室段階における急性期の評価としてAPACHE-IIを算出し、そのスコアの継時的な変化をトレンド解析として利用した。施設間の検討は、参加6施設の集中治療室を、集中治療専従医が常駐している施設(ICU)、救命救急センターの附属施設(ER-ICU)、専従医が常駐はしていない施設(Open-ICU)に分けて行った。(2)参加施設のうち、山口大学医学部附属病院集中治療室は、病床数14床、専従医5名、上記のICUに分類される。年間入室患者数1007名、平均入室期間は5.2日であり、ICU死亡症例は39例で、その内訳は、呼吸不全5例、心不全12例、多臓器不全13例、中枢神経障害3例、その他6例であった。APACHEスコアのトレンド解析では、うち29例に死亡予測が成立した。積極的治療の差し控え・中止が発生したのは18症例であった。生存退院した1例を除いて、積極治療の差し控えが決定されてから平均3.2日で死亡した。(3)参加施設間での検討では、ICUとの比較において、ER-ICUでは比較的早期に積極治療の差し控えが発生した症例の割合が多くなり、Open-ICUでは積極的治療の差し控えの時点が明確な症例と不明確な症例との混在を認めた。中枢神経障害の有無を含んだ対象疾患群の違いと専従医師の常駐が、施設間の差異に影響を与えていることが考察された。
KAKENHI-PROJECT-14572130
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脳内レドックス状態のイメージングを目的とするPETプローブの開発
脳内のレドックス状態を非侵襲的に評価することが可能となれば、脳疾患の病態解明や早期診断に貢献すると期待される。本研究では11C標識ジヒドロキノリン誘導体([11C]DHQ1)について、脳内のレドックスイメージングの可能性を検討した。[11C]DHQ1は投与後、脳内に入り水溶性代謝物に酸化され、その代謝物は[11C]DHQ1よりも緩やかに脳から排出された。また、レドックスモジュレータのアポシニンを投与したマウスの脳では水溶性代謝物への酸化が阻害され、さらに[11C]DHQ1の動態にも変化が認められた。以上、[11C]DHQ1による脳内レドックス状態のイメージングの可能性が示された。生体内のレドックス状態の恒常性は様々なシステムにより維持されているが、この恒常性が破綻すると病気の発症や進行に深く関与している酸化ストレスを引き起こす。従って、生きたままのレドックス状態を評価することができれば、脳疾患の病態解明や早期診断に貢献すると期待される。そこで、本研究では脳内のレドックス状態を非侵襲的に評価するためのPETプローブの開発を行った。今年度は、候補化合物として血液脳関門を通過し、脳内で酸化され、集積することが期待される二種のジヒドロピリジン系化合物と三種のジヒドロキノリン系化合物を設計し、これらの標識前駆体と標品の合成、および11C標識合成を行った。ジヒドロピリジン系の1化合物は、ヨウ化メチルやメチルトリフレートでは短時間で標識することができなかったが、残りの4化合物については通常の11C標識法のヨウ化メチルを用いたメチル化により酸化体を得ることができた。その後、アルカリ性水溶液中、亜ジチオン酸ナトリウムあるいはアセトニトリル中、1-ベンジル-1,4-ジヒドロニコチンアミドを用いて還元することにより目的とする11C標識体を得ることができた。次に、マウス脳ホモジネート中における11C標識化合物の安定性を調べたところ、リン酸生理食塩水中では安定であったのに対して、脳ホモジネート中では時間の経過と共に水溶性の酸化体が増加した。また、化合物間で酸化速度に著しい差が認められ、酸化に対して安定性の異なる複数の11C標識候補化合物を得ることに成功した。生体内のレドックス状態の恒常性は様々なシステムにより維持されているが、この恒常性の破綻は病気の発症や進行に深く関与していることが報告されている。従って、生きたままのレドックス状態を評価することができれば、脳疾患の病態解明や早期診断に貢献すると期待される。前年度、代謝変換捕捉原理に基づきレドックスイメージングのための候補化合物を設計し、11Cによる標識合成に成功した。今年度は、まず、ジヒドロピリジン系化合物([11C]DHP1)およびジヒドロキノリン系化合物([11C]DHQ1)の脳移行性を検討した。その結果、静脈内投与後の[11C]DHP1の脳内放射能は低値を示したためPETプローブとしては不適当であったものの、脂溶性のより高い[11C]DHQ1については十分な脳移行性が認められた。また、脳内放射能は最大値に達した後、緩やかに減少した。次に、[11C]DHQ1投与後の脳内化学形を分析したところ、親化合物の[11C]DHQ1は消失し、脳内放射能の大分部が水溶性の酸化体となっていることが確認された。さらに、その酸化体投与後の脳取り込みを調べた結果、親化合物の[11C]DHQ1に比べ、低値を示したことから、末梢組織で生じた酸化体の脳移行性は低いことが考えられ、酸化体についても本測定原理上望ましい性質を示した。以上、今年度の研究により、[11C]DHQ1は脳への高い取り込みおよび酸化体への変換という条件を満たし、[11C]DHQ1のレドックスプローブとしての可能性が示唆された。本研究の目的は脳内のレドックス状態を非侵襲的に評価するためのポジトロン断層撮像法(PET)用プローブを開発することである。この目的のため、血液脳関門を通過し、脳内で酸化され水溶性代謝物に変換される候補化合物を設計・合成し、インビボにおいて望ましい性質を有するジヒドロキノリン系化合物([11C]DHQ1)を前年度に見出した。今年度は、レドックスモジュレータのジフェニレンヨードニウムおよびアポシニンを用いて、[11C]DHQ1の応答性を評価した。マウス脳ホモジネート中の[11C]DHQ1の酸化速度はジフェニレンヨードニウムおよびアポシニンにより低下し、さらにアポシニンについては濃度依存的な酸化速度の減少が認められた。また、インビボにおいてもアポシニンによる[11C]DHQ1の脳内動態の変化が認められた。即ち、アポシニンを投与したマウスでは、[11C]DHQ1投与後の脳内放射能はピークに達した後、急速に減少したのに対して、対照群のマウスでは緩やかに減少した。また、[11C]DHQ1投与後の脳内化学形を分析したところ、対照群のマウスでは、投与後1分および15分で脳内放射能の大分部が水溶性の酸化体であった。一方、アポシニン投与マウスでは、[11C]
KAKENHI-PROJECT-25461895
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25461895
脳内レドックス状態のイメージングを目的とするPETプローブの開発
DHQ1の酸化が阻害され、投与後1分および15分でそれぞれ脳内放射能の65%および36%が脂溶性の還元体(未変化体)であった。以上、[11C]DHQ1の動態はアポシニンによるレドックスの変化を反映し、[11C]DHQ1の脳内レドックス状態イメージングプローブとしての可能性が示された。脳内のレドックス状態を非侵襲的に評価することが可能となれば、脳疾患の病態解明や早期診断に貢献すると期待される。本研究では11C標識ジヒドロキノリン誘導体([11C]DHQ1)について、脳内のレドックスイメージングの可能性を検討した。[11C]DHQ1は投与後、脳内に入り水溶性代謝物に酸化され、その代謝物は[11C]DHQ1よりも緩やかに脳から排出された。また、レドックスモジュレータのアポシニンを投与したマウスの脳では水溶性代謝物への酸化が阻害され、さらに[11C]DHQ1の動態にも変化が認められた。以上、[11C]DHQ1による脳内レドックス状態のイメージングの可能性が示された。本年度の研究では、前年度11Cにより標識した候補化合物がインビボにおいて望ましい挙動を示すかどうかを検証した。ジヒドロピリジン系化合物([11C]DHP1)はPETプローブとしては不適当であったが、ジヒドロキノリン系化合物([11C]DHQ1)は高い脳移行性と水溶性酸化体への変換を示し、生じた[11C]DHQ1の酸化体は完全には脳組織内に捕捉されなかったものの、その放射能の減少速度は比較的緩やかであった。このように、当初の計画通り、インビボにおいて望ましい性質を有する11C標識化合物を見出すことができたので、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。放射性医薬品平成26年度は、本研究はおおむね計画通りに進み、インビボにおいて望ましい性質を有する11C標識化合物([11C]DHQ1)を見出すことができた。今後は、薬物による酸化酵素活性の阻害、あるいは活性酸素の過剰生成により脳内のレドックス状態を変化させたモデル動物を用いて、[11C]DHQ1の応答性を調べることを予定している。これらの結果が良好な場合は、さらに、酸化ストレスが関与する虚血ー再灌流モデル、アルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患モデル動物を用いて、[11C]DHQ1の応答性を調べる。本年度の研究では、候補化合物として血液脳関門を通過し、脳内で酸化され、集積することが期待されるジヒドロピリジン骨格あるいはジヒドロキノリン骨格を有する化合物を五種設計し、11C標識合成を行った。設計した五種の候補化合物のうち、ジヒドロピリジン系の一化合物を除く、四種の化合物について11C標識体を得ることに成功した。また、これら候補化合物はマウス脳ホモジネート中で酸化に対して異なる安定性を示した。このように、当初計画したとおり異なる酸化速度を有する11C標識候補化合物を得ることができたので、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。今年度は、比較的スムーズに研究が進んだので、少額の余剰金が出た。平成25年度は、本研究はおおむね計画通りに進み、異なる酸化速度を有する11C標識候補化合物を得ることができた。よって、今後は、それぞれの候補化合物について、脳内レドックス状態をイメージングするために必要なプローブの条件、血液脳関門を通過することおよび酸化体が脳内に滞留することを満たすかどうかをインビボにおいて詳細に検討する。
KAKENHI-PROJECT-25461895
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25461895
統語構造の階層性および非均一的な言語現象に関する包括的研究
本研究課題「統語構造の階層性および非均一的な言語現象に関する包括的研究」は本年度が3年目にあたる。研究の目標は,いわゆる節の周辺部の階層構造に加え,複雑述語の階層構造など,命題の決定に関わる階層構造をその考察の対象にし,原理的な説明を加えることである。本年度も,非均一的な言語現象をいくつか体系的にとりあげ,説明理論の構築を目指して研究を進めた。本年度は,特に,経験的な事実の発掘を中心に据えて,理論的考察をさらに進めていった。具体的には以下のように研究を進行させた。言語現象を的確に記述できる理論開発のための文献の調査をおこない,最終的な研究成果を出すための方向性に関する検討をおこなった。本年度も,日本語・英語・シンハラ語について理論的に重要になるいくつかの構文の比較対照をおこなった。本年度の海外の研究発表としては,南アフリカケープタウンにおいて開催された第20回国際言語学者会議およびエストニアのタリンで開催された第51回ヨーロッパ言語学会において日本語の例外的格標示構文についての発表をおこなった。さらに,イギリスのエジンバラ大学,ロンドン大学において,例外的格標示構文についてコロキアムでの発表を行い,現地の研究者と意見交換を行うことができた。また,本研究に関する資料収集をおこなうことができた。フランスのパリの日本語研究会においては,日本語のN-スル構文の研究発表をおこなった。この成果は『レキシコン研究の新たなアプローチ』に掲載された。その他,日本言語学会第157回大会,ワークショップにおいては,シンハラ語の名詞補文節についての発表を行い,日本英語学会第36回大会ワークショップにおいては,VN-スル構文の研究発表を行った。本年度は,海外の学会においていくつか研究発表をおこなうことができたこと(第20回国際言語学者会議,第51回ヨーロッパ言語学会における研究発表),および,ここ数年取り組んでいた研究の成果がいくつかの論文が学術雑誌に掲載された(Journal of Japanese Linguisticsなど)。本年度は,おおむね着実な研究の進展と成果が得られたと考えている。最終年度に入るため,総括を行う。研究成果の研究発表,論文執筆などを積極的に行う。本研究課題の「統語構造の階層性および非均一的な言語現象に関する包括的研究」は本年度が初年度にあたる。研究の目標は、いわゆる節の周辺部の階層構造に加え,複雑述語の階層構造など,命題の決定に関わる階層構造をその考察の対象にし,原理的な説明を加えることである。さらに、複雑な要因の絡む非均一的な言語現象をいくつか体系的にとりあげ,説明理論の構築を目指すことが本課題の研究の大きな柱となる。本年度は、特に、研究基盤を整えることに力点を置き、理論的考察のための基盤づくりや、研究目標達成のために必要となる基礎的な研究を進めた。具体的には以下のように研究を進行させた。まず、基本的な研究として、言語現象を的確に記述できる理論開発のための文献の調査をおこない問題点を整理した上で、研究の方向性に関する検討をおこなった。本年度は、特に、日本語および英語を中心に基本データの収集と整理をおこない、いくつかの構文の比較対照をおこなった。フランス、香港に出張し、当地の大学主催のワークショップ等で研究発表をおこない、また、資料集および意見交換のためにイタリアで行われた言語学の学会にも参加した。国内においては、日本英語学会のシンポジウムの発表、福岡言語学会で研究発表をおこなった。北海道大学で行われた言語学ワークショップにおいても、研究発表をおこない、さらに他の発表のコメンテーターの役割を担った。以上のように、初年度は、資料収集および意見交換が中心の活動が多かったが、途中経過を報告する研究発表もおこなうことができ、おおむね着実な研究の進展と成果が得られたと考えている。研究テーマに関する意見交換を何人かの研究者と行うことができた。また,進行中の研究成果の一部を発表することができたため。本研究課題の「統語構造の階層性および非均一的な言語現象に関する包括的研究」は本年度が2年目にあたる。本年度は、複雑な要因の絡む非均一的な言語現象をいくつか体系的にとりあげ,説明理論の構築を目指して研究を進めた。本年度は、特に、経験的な事実の発掘を中心にして、理論的考察を進め、研究目標達成のために必要となる研究の基盤を確立することに努めた。具体的には以下のように研究を進行させた。まず、基本的な研究として、言語現象を的確に記述できる理論開発のための文献の調査をおこない問題点を整理した上で、研究の方向性に関する検討をおこなった。本年度は、特に、日本語および英語に加えて、シンハラ語を加えて、研究の対象となる言語をひろげ、理論的に重要になるいくつかの構文の比較対照をおこなった。本年度の海外の研究発表としては、ニュージーランド言語学会におけるシンハラ語の非項依存関係についての発表、そして中国北京で開催されたカートグラフィーの国際言語学会におけるシンハラ語の節の上部構造についての研究発表がある。この成果は学術雑誌Glossaに掲載された。また、資料収集および意見交換のためにアメリカで行われたJapanese/Korean Linguisticsにも参加した。さらに、シンガポール国立大学のコロキアムでの発表および意見交換・資料収集をおこなった。国内においては、慶應大学の慶應言語学コロキアムにおいての格と統語構造に関する研究発表、国立国語研究所でシンハラ語のとりたて表現の研究発表をおこなった。研究テーマに関する意見交換を何人かの研究者と行うことができた。また,進行中の研究成果の一部を発表することができた。
KAKENHI-PROJECT-16K02628
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統語構造の階層性および非均一的な言語現象に関する包括的研究
さらに、研究成果の一部が学術雑誌に掲載された。本研究課題「統語構造の階層性および非均一的な言語現象に関する包括的研究」は本年度が3年目にあたる。研究の目標は,いわゆる節の周辺部の階層構造に加え,複雑述語の階層構造など,命題の決定に関わる階層構造をその考察の対象にし,原理的な説明を加えることである。本年度も,非均一的な言語現象をいくつか体系的にとりあげ,説明理論の構築を目指して研究を進めた。本年度は,特に,経験的な事実の発掘を中心に据えて,理論的考察をさらに進めていった。具体的には以下のように研究を進行させた。言語現象を的確に記述できる理論開発のための文献の調査をおこない,最終的な研究成果を出すための方向性に関する検討をおこなった。本年度も,日本語・英語・シンハラ語について理論的に重要になるいくつかの構文の比較対照をおこなった。本年度の海外の研究発表としては,南アフリカケープタウンにおいて開催された第20回国際言語学者会議およびエストニアのタリンで開催された第51回ヨーロッパ言語学会において日本語の例外的格標示構文についての発表をおこなった。さらに,イギリスのエジンバラ大学,ロンドン大学において,例外的格標示構文についてコロキアムでの発表を行い,現地の研究者と意見交換を行うことができた。また,本研究に関する資料収集をおこなうことができた。フランスのパリの日本語研究会においては,日本語のN-スル構文の研究発表をおこなった。この成果は『レキシコン研究の新たなアプローチ』に掲載された。その他,日本言語学会第157回大会,ワークショップにおいては,シンハラ語の名詞補文節についての発表を行い,日本英語学会第36回大会ワークショップにおいては,VN-スル構文の研究発表を行った。本年度は,海外の学会においていくつか研究発表をおこなうことができたこと(第20回国際言語学者会議,第51回ヨーロッパ言語学会における研究発表),および,ここ数年取り組んでいた研究の成果がいくつかの論文が学術雑誌に掲載された(Journal of Japanese Linguisticsなど)。本年度は,おおむね着実な研究の進展と成果が得られたと考えている。本年度のの達成度をふまえた上で,次年度以降の研究計画を進行させる。次年度は、基本的な課題の検討およびその解決にむけ研究をすすめる予定で有る。本年度の達成度をふまえた上で,次年度以降の研究計画を進行させる。次年度も、途中経過の研究報告・研究発表を積極的におこなっていきたい。最終年度に入るため,総括を行う。研究成果の研究発表,論文執筆などを積極的に行う。
KAKENHI-PROJECT-16K02628
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不規則性を考慮した第一原理電子状態計算によるマルテンサイト変態に関する研究
マルテンサイト変態の背後にある機構、特に系の不均一性や非化学量論組成の与える影響および構造安定性と磁性との関係の解明に向けて、不規則性を考慮した高精度第一原理電子状態計算を行った。本年度は前年度に引き続き、ホイスラー合金系(Ni2MnSn、Ni2MnGaなど)の磁性の評価とスピントロニクス/スピンカロリトロニクスへの応用に関する研究を行った。ホイスラー合金の磁性は歪みや不純物濃度、不純物のサイトによって大きく変化する。まずホイスラー合金の電子状態を第一原理から計算し、得られるグリーン関数から、ハイゼンベルグモデルにおける有効交換相互作用定数を求める。これで問題がハイゼンベルグモデルにマップされるので、モンテカルロシミュレーション等を用いて有限温度における磁性状態を調べる事ができる。本研究では、歪みや不純物の導入によって有効交換相互作用定数がどのように変化するかに着目した。その起源を探るために交換相互作用定数を角運動量および磁気量子数について分解し、ふるまいを議論した。Fe系合金の構造安定性については、前年度に引き続きFe-Pt系について体積とc/a比に対するbinding energy surfaceの計算を規則合金・不規則合金・部分不規則合金について行った。プロジェクト中断のためあまり進められなかったが、今後、格子緩和の効果を取り入れた計算との比較、議論に発展させる足がかりを作ることができた。マルテンサイト変態の背後にある機構、特に系の不均一性や非化学量論組成の与える影響および構造安定性と磁性との関係の解明に向けて、不規則性を考慮した高精度第一原理電子状態計算を行った。本年度は前年度に引き続き、これまで詳細な実験が行われており、第一原理計算による議論も試みられている系について全エネルギーを計算し、構造の安定性を評価した。前年度はFe-Pd完全不規則合金の体積、c/a比に対するbinding energy surfaceを計算したので、今年度は部分不規則合金の計算を行ってbinding energy surfaceの規則度依存性を調べた。その結果、完全不規則合金の計算では得られなかった面心正方晶相が部分不規則合金では得られることが明らかになった。不純物濃度と規則度に対する相図を作成し、安定性を議論した。同様の計算を他のFe-Pt合金についても行った。今後は更に他のFe系合金の系統的な計算と格子緩和の効果を取り入れた計算との比較、議論が必要である。また、ホイスラー合金系の磁性の評価に関する研究も行った。特に、Ni2MnSnおよびNi2MnGaにPtを添加した系に着目して、歪みによる有効交換相互作用定数の変化を調べた。交換相互作用定数の変化の起源を探るために定数を電子状態で分解する手法を開発し、そのように分解された交換相互作用のふるまいを議論した。マルテンサイト変態の背後にある機構、特に系の不均一性や非化学量論組成の与える影響および構造安定性と磁性との関係の解明に向けて、不規則性を考慮した高精度第一原理電子状態計算を行った。本年度は前年度に引き続き、ホイスラー合金系(Ni2MnSn、Ni2MnGaなど)の磁性の評価とスピントロニクス/スピンカロリトロニクスへの応用に関する研究を行った。ホイスラー合金の磁性は歪みや不純物濃度、不純物のサイトによって大きく変化する。まずホイスラー合金の電子状態を第一原理から計算し、得られるグリーン関数から、ハイゼンベルグモデルにおける有効交換相互作用定数を求める。これで問題がハイゼンベルグモデルにマップされるので、モンテカルロシミュレーション等を用いて有限温度における磁性状態を調べる事ができる。本研究では、歪みや不純物の導入によって有効交換相互作用定数がどのように変化するかに着目した。その起源を探るために交換相互作用定数を角運動量および磁気量子数について分解し、ふるまいを議論した。Fe系合金の構造安定性については、前年度に引き続きFe-Pt系について体積とc/a比に対するbinding energy surfaceの計算を規則合金・不規則合金・部分不規則合金について行った。プロジェクト中断のためあまり進められなかったが、今後、格子緩和の効果を取り入れた計算との比較、議論に発展させる足がかりを作ることができた。マルテンサイト変態の背後にある機構、特に系の不均一性や非化学量論組成の与える影響および構造安定性と磁性との関係の解明に向けて、不規則性を考慮した高精度第一原理電子状態計算を行った。本年度は、Fe-Pd合金、Fe3Ptといったこれまで詳細な実験が行われており、第一原理計算による議論も試みられている系について、全エネルギーを計算し、構造の安定性を評価した。本研究ではフルポテンシャルKorringa-Kohn-Rostoker法にコヒーレントポテンシャル近似を組み合わせることによって不規則合金の電子状態を取り扱う。まず、計算で用いるパラメータの評価を行ったところ、本研究のような歪みを取り扱う場合にはかなり大きな角運動まで考慮しなければいけないことがわかった。次に規則合金であるFe3Pdのc/a比に対する全エネルギー計算の結果を他の第一原理計算手法によるものと比較して、本研究の計算手法が、比較的信頼性が高いと言われるFLAPW法と矛盾しない結果が得られることを確認した。その後、Fe-Pd不規則合金の体積、c/a比に対するbinding energy surfaceを計算したところ、fccからbccへの構造相転移は確認できたものの、実験で観測されているfct相は得られなかった。この点については今後さらなる議論が必要である。また、今年度はホイスラー合金系の磁性の評価に関する研究も行った。Ni2MnInに歪みや欠陥を導入した際の有効交換相互作用定数の変化を調べた。
KAKENHI-PROJECT-23760624
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不規則性を考慮した第一原理電子状態計算によるマルテンサイト変態に関する研究
また、NiやMnの一部を他の遷移金属不純物で置き換えることによる磁性のコントロールを試みた。おおむね当初の予定通り進んだが、格子緩和の議論までいけなかった。当初想定していたよりも多くの計算量を必要とすることが明らかになったが、おおむね当初の予定通り進んだ。平成24年度計画で達成できなかったものから引き続き計画を推進する。今後は、格子緩和の効果に重点を絞って研究を進める。平成23年度計画で達成できなかったものから引き続き計画を推進する。今後は、不規則性・格子欠陥に重点を絞って研究を進める。主に旅費に使用する。研究費の使用についても計画通りなので、このまま当初の計画に沿って進める。主にクラスターノードの購入と旅費に使用する。研究費の使用についても計画通りなので、このまま当初の計画に沿って進める。
KAKENHI-PROJECT-23760624
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破壊と創造ー歴史的破壊の経験が19世紀フランス文学にもたらした影響の考察
本研究は、フランスにおける、ロマン主義時代の作家たちの歴史思想の形成に作用した時代的な要因を考察した。また、作家による破壊をめぐる思索が、文学的創造に対して与えた影響を検証し、19世紀フランス文学における破壊のテーマの重要性を明らかにした。ヴィクトル・ユゴーの作品の読解と分析を通じて、この作家に特有の「創造」と「破壊」の観念を明らかにした。本研究は、フランスにおける、ロマン主義時代の作家たちの歴史思想の形成に作用した時代的な要因を考察した。また、作家による破壊をめぐる思索が、文学的創造に対して与えた影響を検証し、19世紀フランス文学における破壊のテーマの重要性を明らかにした。ヴィクトル・ユゴーの作品の読解と分析を通じて、この作家に特有の「創造」と「破壊」の観念を明らかにした。本研究は、19世紀フランス文学のあらゆる位相に存在する「破壊」と「創造」という主題を精緻に分析し、この時代の文学における「破壊」というテーマの重要性を明らかにすることを目的として行われた。本年度の研究は大きく3つの方向性から進められた。第一に、破壊をめぐる思索が個々の作家の歴史思想の形成過程にどのように関与しているかを考察するために、ヴィクトル・ユゴーの作品の分析を行い、その成果を口頭発表・論文"Ruine etla question du tempsdans 1" ceuvre de Victor Hugo(ヴィクトル・ユゴーの作品における破壊と時間の問題)"として発表した(以下、それぞれめ論文の掲載先については下記の研究成果を参照)。これにより作家ヴィクトル・ユゴーに特有の破壊と時間の観念を明らかにした。第二に、19世紀前半のフランス文学における終末論の流行の状況と、その後半世紀における文学的創造への影響を分析し、口頭発表・論文"Visionary Catastrophe(幻想のカタストロフィ)"として発表した.本論文では終末論の流行か、革命といり歴史的破壊の経験と密接に結びついていることを確認したうえで、破壊をめぐる思索が、19世紀後半における文学手法としてのパロデイの流行を引き起こすにいたるという文学史的な流れを明らかにした。第三に、歴史的破壊の経験としての革命と暴動がどのように表象されているのかを考察し、それらが作家による「音識」と「無章識」の領域に対する思索へと接続されていることを明らかにした。その成果は、口頭発表・論文「ヴィクトル・ユゴーの作品における意識と無意識」として発表された。本論文では、この作家において、現実と夢想、「意識」と「無意識」の境界が、突如起こる暴力的な破壊により常に侵犯されるものとして思索されていることを明らかにした。本年度の研究は、19世紀フランスの作家における歴史思想と芸術的創造との関係を明らかにすることを目的として行われた。とりわけ、ロマン主義時代の作家たちの歴史観の形成に、フランス革命とナポレオン帝国の崩壊という二つの異なるカタストロフィの経験が、いかなる影響を及ぼしたのかを明らかにすることを目論んだ。研究にあたっては、フランス革命とナポレオン帝国の崩壊という二つの異なる歴史的破壊の経験に焦点を当てた。(1)19世紀前半の時代の文学における終末論的主題の流行には、歴史的断絶としてのフランス革命の経験が密接に関連していることに加え、ナポレオン帝国の崩壊による英仏の文化交流の再開が、フランスに大洪水や最後の審判を題材とした作品群がもたらされる重要な契機となっていたことを考察した。(2)作家たちは、歴史的破壊の経験としてのフランス革命をいかに表象したのか。彼らにとって、革命を描くことにはいかなる意味があったのか。カタストロフィを表象するという試みは、果たして成功したといえるのか。これらの問いから出発し、ヴィクトル・ユゴーの小説および詩作品の中で、フランス革命に直接的、間接的に関連する作品を取り上げ、それらを創作過程および出版形態とあわせて精査した。これにより、ユゴーがフランス革命を主要な主題として設定した詩作品群の大半が、当初においては詩集の根幹として構想されているにも関わらず、未完のまま死後出版されるか、作者本人によって分割され、原型を残さない形で別の作品の中に組み込まれていることが明らかになった。この事実は、19世紀文学におけるカタストロフィの表象可能性をめぐる問題を考察する上での、重要な糸口となるはずである。本年度の研究の成果の一部は「文学はカタストロフィを描きうるか-ヴィクトル・ユゴーの場合」東京大学教養学部講義「平和構築論」(2012年12月2日東京大学駒場キャンパス)にて公表した。
KAKENHI-PROJECT-22820013
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セルロースヒドロゲルを基材とした三次元足場材料の調製
本研究の目的は、大孔径化したセルロースゲルの細胞培養足場材料としての利用の可否を検討することである。前年度までの検討で、アルカリ・尿素系セルロース溶剤は、調製されるゲルにおいて厚み方向の異方性を与えることがわかった。そこで、新規セルロース溶剤である飽和臭化リチウム水溶液を使用し、同様の検討を行った。1)セルロースゲルの大孔径化飽和量の食塩を添加し、ゲル化、水洗し食塩を溶出させることで、ゲルの大孔径化(100300μm)に成功した。また、光学顕微鏡や電子顕微鏡を使用して、この孔が互いに繋がり合った連通孔であることを確認した。さらに、添加する食塩を予め分級しておくことで、調製されるゲルの孔径を段階的に制御できることがわかった。2)セルロースゲルの内部表面修飾細胞培養足場材料に求められる性質の一つに、細胞接着性がある。セルロースのみでは細胞接着性に欠けるため、ゲルの内部表面を細胞接着性の高い物質で被覆する必要がある。本研究では、細胞接着性の高いキトサンによりセルロースゲルの内部表面を被覆することを目指した。セルロースゲルに過ヨウ素酸酸化を施すことでアルデヒド基を導入し、そのアルデヒド基をターゲットとしたシッフ塩基反応によりキトサンの導入を行った。元素分析の結果、この反応経路によってキトサンはセルロース表面に導入されていることがわかった。さらに、反応時間を制御することで、キトサンの導入量を制御できることがわかった。(抄録なし)1)セルロース溶解機構における尿素の役割セルロースゲルの前段階材料であるセルロース溶液調製に必要な、セルロースの溶解条件の最適化を、溶解度、溶液熱安定性、溶解過程のX線回折測定を組み合わせることで検討した。尿素はセルロースに直接的な相互作用を持たないが、アルカリに溶媒和したセルロースの安定性を高めることで、セルロース溶解能を向上させていることがわかった。2)セルロースゲルの尿素過剰添加による大孔径化尿素の過剰添加によってセルロースゲルが大孔径化し、添加する尿素の量によってその多孔構造は制御できるということがわかった。3)アルカリ・尿素溶剤由来のセルロースゲルの構造異方性アルカリ・尿素溶剤由来のセルロースゲルは、凝固浴に浸漬することでゲル化を行う。そのため、厚み方向での異方性の存在が示唆されていたが、偏光、走査型電子顕微鏡による測定により、その存在を実際に確認した。この異方性はゲルの固形分濃度のゆらぎに起因するものと考えられる。4)新規セルロース溶剤の本課題への適用3)で明らかになったように、アルカリ・尿素溶剤からのセルロースゲルは厚み方向に構造的な異方性を有する。そのため、均一で厚みのあるゲルの調製が困難であり、これは本課題達成の大きな障壁となることが予想された。近年発見された臭化リチウム濃厚水溶液はセルロースを高温(120°C)で溶解し、室温で溶液はゲル化する。このゲル化は、冷却により均一に進行するため、構造的に均一な厚みのあるゲルを調製することが容易である。よって、このセルロース溶剤の本課題への適用を検討した。その結果、2)に見られたようなゲルの大孔径化がなされ、さらに過剰に添加する食塩に分級処理を施すことで、ゲルの孔径は均一となり、力学的強度も2)に比べ向上した。また、孔同士がつながった(連通孔)構造が確認された。こういった構造は細胞培養に非常に有効である。本研究の目的は、大孔径化したセルロースゲルの細胞培養足場材料としての利用の可否を検討することである。前年度までの検討で、アルカリ・尿素系セルロース溶剤は、調製されるゲルにおいて厚み方向の異方性を与えることがわかった。そこで、新規セルロース溶剤である飽和臭化リチウム水溶液を使用し、同様の検討を行った。1)セルロースゲルの大孔径化飽和量の食塩を添加し、ゲル化、水洗し食塩を溶出させることで、ゲルの大孔径化(100300μm)に成功した。また、光学顕微鏡や電子顕微鏡を使用して、この孔が互いに繋がり合った連通孔であることを確認した。さらに、添加する食塩を予め分級しておくことで、調製されるゲルの孔径を段階的に制御できることがわかった。2)セルロースゲルの内部表面修飾細胞培養足場材料に求められる性質の一つに、細胞接着性がある。セルロースのみでは細胞接着性に欠けるため、ゲルの内部表面を細胞接着性の高い物質で被覆する必要がある。本研究では、細胞接着性の高いキトサンによりセルロースゲルの内部表面を被覆することを目指した。セルロースゲルに過ヨウ素酸酸化を施すことでアルデヒド基を導入し、そのアルデヒド基をターゲットとしたシッフ塩基反応によりキトサンの導入を行った。元素分析の結果、この反応経路によってキトサンはセルロース表面に導入されていることがわかった。さらに、反応時間を制御することで、キトサンの導入量を制御できることがわかった。従来使用する予定であったアルカリ・尿素溶剤の欠点が明らかになり、本研究遂行の大きな障壁となると予想されたが、新規セルロース溶剤を使用することでこの問題を解決した。新規溶剤を使用してのセルロースゲルの大孔径化に関する検討はほぼ終了し、2年目から細胞培養の実験を開始する予定である。これより、本研究は当初の計画通り、順調に進展しているといえる。新規溶剤から得られた大孔径セルロースを使用し、動物の軟骨細胞を使用した細胞培養実験を開始する。
KAKENHI-PROJECT-12J07759
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セルロースヒドロゲルを基材とした三次元足場材料の調製
細胞の接着性、成長、分化を検討する。細胞の接着性が低い場合は、完全水系の化学反応によりゲル表面にコラーゲンを導入し、細胞接着性の向上を図る。(抄録なし)
KAKENHI-PROJECT-12J07759
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12J07759
HisRSスプライスバリアントの抗Jo-1抗体に対する抗原性の検討
[目的]多発性筋炎/皮膚筋炎で認められる抗Jo-1抗体の抗原はヒスチジルtRNA合成酵素(HisRS)であり、近年HisRSは、一部のドメインが欠損するスプライスバリアント(HisRS-SV)の存在が報告されている。現在、臨床で用いられる抗Jo-1抗体の検査には抗原として主にリコンビナント蛋白が用いられているが、完全長のHisRS(FL)のみが用いられており、このSVは含まれていない。よって本研究ではHisRS-SVに対する抗Jo-1抗体の反応性を検討した。[方法]THP-1細胞よりクローニングしたHisRS-FLおよびSVを大腸菌ヒスチジンタグ発現ベクターに組み込みコンストラクトを作製し、リコンビナント蛋白を得た。Niセファロースカラムにて精製した蛋白を固相抗原とし血清中の抗体を検出するELISAを確立した。対象として抗Jo-1抗体陽性患者血清13例(Jo-1+)、および健常者血清10例(NC)を用いた。[結果]ELISAで測定された吸光度の平均値はそれぞれ、FLがJo-1+ : 1.14(最大値2.43、最小値0.27)、NC : 0.10(最大値0.19、最小値0.04)、SVがJo-1+ : 0.75(最大値1.87、最小値0.13)、NC : 0.07(最大値0.12、最小値0.04)であった。HisRS-FL, SVどちらにおいてもJo-1+の吸光度の最小値はNCの最大値を上回った。SV/FL比は平均値0.68(最大値1.40、最小値0.48)だった。[考察]抗Jo-1陽性患者血清においては、すべての症例でHisRS-SVに対して反応性を示した。これは抗Jo-1抗体の認識エピトープがFLとSVに共通のドメインであるとする報告と一致する。しかしSV/FL比を見ると平均値0.68に対し最大値が1.40となり、症例によってSVに対する反応性は一様ではないことが明らかになった。[目的]多発性筋炎/皮膚筋炎で認められる抗Jo-1抗体の抗原はヒスチジルtRNA合成酵素(HisRS)であり、近年HisRSは、一部のドメインが欠損するスプライスバリアント(HisRS-SV)の存在が報告されている。現在、臨床で用いられる抗Jo-1抗体の検査には抗原として主にリコンビナント蛋白が用いられているが、完全長のHisRS(FL)のみが用いられており、このSVは含まれていない。よって本研究ではHisRS-SVに対する抗Jo-1抗体の反応性を検討した。[方法]THP-1細胞よりクローニングしたHisRS-FLおよびSVを大腸菌ヒスチジンタグ発現ベクターに組み込みコンストラクトを作製し、リコンビナント蛋白を得た。Niセファロースカラムにて精製した蛋白を固相抗原とし血清中の抗体を検出するELISAを確立した。対象として抗Jo-1抗体陽性患者血清13例(Jo-1+)、および健常者血清10例(NC)を用いた。[結果]ELISAで測定された吸光度の平均値はそれぞれ、FLがJo-1+ : 1.14(最大値2.43、最小値0.27)、NC : 0.10(最大値0.19、最小値0.04)、SVがJo-1+ : 0.75(最大値1.87、最小値0.13)、NC : 0.07(最大値0.12、最小値0.04)であった。HisRS-FL, SVどちらにおいてもJo-1+の吸光度の最小値はNCの最大値を上回った。SV/FL比は平均値0.68(最大値1.40、最小値0.48)だった。[考察]抗Jo-1陽性患者血清においては、すべての症例でHisRS-SVに対して反応性を示した。これは抗Jo-1抗体の認識エピトープがFLとSVに共通のドメインであるとする報告と一致する。しかしSV/FL比を見ると平均値0.68に対し最大値が1.40となり、症例によってSVに対する反応性は一様ではないことが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-15H00621
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H00621
ミスト冷却熱伝達の促進を目的としたスプレーフラッシュ液体微粒化法の追究
ミスト冷却の高効率化を目的とした噴霧液滴群の最適形成・供給法の追究として,スプレーフラッシュ蒸発による過熱水の微粒化について,液体過熱度(ノズル入口液温と1atmでの液体の飽和温度との差),噴出圧力差(ノズル入口圧力と1atmとの差)を操作条件に,耐熱ガラス円管ノズルの流路寸法の影響を含めて実験した結果,以下の成果を得た.・噴霧流の形成は,圧力差一定のもと過熱度の増加とともに不完全噴霧から完全噴霧に変化する.この完全噴霧は,ノズル流路寸法に対してある一定以上の圧力差を要し,さらに,同じ寸法のノズルの場合,圧力差がより高いほどノズル内流れの乱れの増大によって,より低過熱度で形成する.・形成した噴霧流の温度分布はその中心から半径方向に減少する.この分布は流れとともにわずかに平坦になる.この分布の一様性について以下に要約する.噴出液柱は,フラッシングによってノズル出口で多数の液滴に分裂する.この液滴により,噴霧流中心では気流蒸気濃度が高まり滴温低下を抑制する.したがって,一様性は,噴霧流の中心とその外縁との液滴温度差が増す高過熱度条件ほど低下する.・形成した噴霧流の噴霧量分布はその中心から半径方向に減少する.この分布は流れとともにその噴霧域が広がり平坦になる.また,噴霧量は全体的に低下する.この分布の一様性について以下に要約する.噴出液柱は,ノズル出口で大径の液滴に分裂し,飛行中の分裂を経て下流へ飛散する.したがって,一様性は,力学的に安定な小径液滴にノズル出口で分裂し,噴霧域内での質量差が小さくなる高過熱度条件ほど増す.ただし,過熱度が高すぎると逆に一様性を低下させるため,最適値がある.・形成した噴霧流の液滴粒径分布は,噴霧流の流れとともに,噴霧域内では外縁ほど,さらに,圧力差一定のもと過熱度の増大によって,飛行中の分裂,小径液滴の飛散,微粒化促進で,それぞれ,より均一になる.(800字)ミスト冷却の高効率化を目的とした噴霧液滴群の最適形成・供給法の追究として,スプレーフラッシュによる過熱水噴流の微粒化特性について,液体の過熱度(ノズル入口温度と1atmでの液体の飽和温度との差),噴出圧力差(ノズル入口圧力と大気圧との差)を操作条件に,耐熱ガラス製円筒ノズルの寸法をパラメーターとして実験した結果,以下の成果を得た.1.噴霧条件としてノズル出口下流における液滴分散流のマイクロフラッシュ撮影から,微粒化の様相は圧力差一定のもと過熱度の増加とともに部分微粒化から完全微粒化へと変化し,過熱度一定では圧力差のより小さい場合が完全微粒化することが明らかにされた.しかし,微粒化の様相は操作条件が液体の熱力学的飽和状態に近づくとともに蒸気流となり,つまり,液滴分散流となる最適条件の存在が明らかにされた.ノズル寸法の影響として内径の効果は,より大径のほうがノズル内での気泡核生成(不均一)確率が増すため微粒化し易く,長さについては,同じ内径の場合,より短いノズルが微粒化開始過熱度が似下する,すなわち微粒化し易いことが明らかにされた.2.微粒化特性としてノズル出口下流における液滴分散流の流量密度分布は,過熱度あるいは出口からの距離の増加とともに噴出液がより微粒化するため平坦化した.但し,飛行過程での分裂挙動はある距離以上(ある滴径以下)に達するとほぼ収束することが明らかにされた.他方,データ収集システムによって得た液滴温度分布は,微粒化開始過熱度がより低温であるほど高温で,より高温であるほど低温で平衡し,さらに,噴霧角については過熱度の増加とともに,また,ノズル内径が同じ場合,微粒化開始過熱度がより高温となる長いノズルにおいて,それぞれ広角(微粒化の促進)になることが明らかにされた.以上より,より高過熱度の液体においてより小径の液滴群に微粒化することが示唆された.ミスト冷却の高効率化を目的とした噴霧液滴群の最適形成・供給法の追究として,スプレーフラッシュ蒸発による過熱水の微粒化について,液体過熱度(ノズル入口液温と1atmでの液体の飽和温度との差),噴出圧力差(ノズル入口圧力と1atmとの差)を操作条件に,耐熱ガラス円管ノズルの流路寸法の影響を含めて実験した結果,以下の成果を得た.・噴霧流の形成は,圧力差一定のもと過熱度の増加とともに不完全噴霧から完全噴霧に変化する.この完全噴霧は,ノズル流路寸法に対してある一定以上の圧力差を要し,さらに,同じ寸法のノズルの場合,圧力差がより高いほどノズル内流れの乱れの増大によって,より低過熱度で形成する.・形成した噴霧流の温度分布はその中心から半径方向に減少する.この分布は流れとともにわずかに平坦になる.この分布の一様性について以下に要約する.噴出液柱は,フラッシングによってノズル出口で多数の液滴に分裂する.この液滴により,噴霧流中心では気流蒸気濃度が高まり滴温低下を抑制する.したがって,一様性は,噴霧流の中心とその外縁との液滴温度差が増す高過熱度条件ほど低下する.・形成した噴霧流の噴霧量分布はその中心から半径方向に減少する.この分布は流れとともにその噴霧域が広がり平坦になる.また,噴霧量は全体的に低下する.この分布の一様性について以下に要約する.噴出液柱は,ノズル出口で大径の液滴に分裂し,飛行中の分裂を経て下流へ飛散する.
KAKENHI-PROJECT-13750169
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13750169
ミスト冷却熱伝達の促進を目的としたスプレーフラッシュ液体微粒化法の追究
したがって,一様性は,力学的に安定な小径液滴にノズル出口で分裂し,噴霧域内での質量差が小さくなる高過熱度条件ほど増す.ただし,過熱度が高すぎると逆に一様性を低下させるため,最適値がある.・形成した噴霧流の液滴粒径分布は,噴霧流の流れとともに,噴霧域内では外縁ほど,さらに,圧力差一定のもと過熱度の増大によって,飛行中の分裂,小径液滴の飛散,微粒化促進で,それぞれ,より均一になる.(800字)
KAKENHI-PROJECT-13750169
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前浜砂層内の浸透流・滲出流を考慮した波打ち帯の漂砂機構に関する研究
砂浜地盤内の水位は、降雨や潮位変動の履歴効果によって砂浜斜面上の水位と不連続を生じ、砂層地盤内への浸透流や地盤からの滲出流を生じさせて、波打ち帯の漂砂に大きな影響を与えると考えられる。本研究は、前浜砂層内への浸透流を含めた斜面上の波動場を解析し、漂砂や地形変化に与える浸透流の効果を考察したものである。初年度は非線形長波方程式を基礎方程式とし、遡上端を移動境界とした数値モデルによる解析を行った。波打ち帯では砂地盤内への浸透流は地盤上端面でtransientな水位変動が載荷されるが、この非定常浸透流をDickerの理論に基づいて解析した。解析の結果、斜面上の水粒子速度に与える浸透流・滲出流の影響は小さく、また地盤内浸透流に対する非定常性も顕著でなく、砂粒径で決定される定常流速で近似できることが明らかになった。次に、得られた水粒子速度場を外力とした時の、斜面上に置かれた単一砂粒子の運動を作用流体力と移動抵抗力に関する力学モデルに基づき解析した。その結果から、砂粒子の移動限界掃流力および岸沖漂砂量についての解析的表示式を導出した。これらは粒径のみをパラメターとした定量的表示式で与えられており、実用に供する形で提案することができた。第2年度は、斜面上の有限振幅重複波の解析解を用い、前年度の数値解による解析をさらに精密化することを目指した。この理論から得られる水粒子運動を外力として斜面上の単一砂粒子の運動をラグランジェ的に追跡し、波打ち帯の漂砂運動の特性を考察した。砂粒子は遡上波先端の到達とともに大きな慣性力を受けるとともに、部分的に水中浮力の影響を受け、砂粒子は特異な運動を行うことが明らかになった。さらにこの結果を用いて前年度と同様に、一様勾配斜面上の局所掃流漂砂量を考察し、波打ち帯の海岸地形変化に関する検討の精密化を行った。砂浜地盤内の水位は、降雨や潮位変動の履歴効果によって砂浜斜面上の水位と不連続を生じ、砂層地盤内への浸透流や地盤からの滲出流を生じさせて、波打ち帯の漂砂に大きな影響を与えると考えられる。本研究は、前浜砂層内への浸透流を含めた斜面上の波動場を解析し、漂砂や地形変化に与える浸透流の効果を考察したものである。初年度は非線形長波方程式を基礎方程式とし、遡上端を移動境界とした数値モデルによる解析を行った。波打ち帯では砂地盤内への浸透流は地盤上端面でtransientな水位変動が載荷されるが、この非定常浸透流をDickerの理論に基づいて解析した。解析の結果、斜面上の水粒子速度に与える浸透流・滲出流の影響は小さく、また地盤内浸透流に対する非定常性も顕著でなく、砂粒径で決定される定常流速で近似できることが明らかになった。次に、得られた水粒子速度場を外力とした時の、斜面上に置かれた単一砂粒子の運動を作用流体力と移動抵抗力に関する力学モデルに基づき解析した。その結果から、砂粒子の移動限界掃流力および岸沖漂砂量についての解析的表示式を導出した。これらは粒径のみをパラメターとした定量的表示式で与えられており、実用に供する形で提案することができた。第2年度は、斜面上の有限振幅重複波の解析解を用い、前年度の数値解による解析をさらに精密化することを目指した。この理論から得られる水粒子運動を外力として斜面上の単一砂粒子の運動をラグランジェ的に追跡し、波打ち帯の漂砂運動の特性を考察した。砂粒子は遡上波先端の到達とともに大きな慣性力を受けるとともに、部分的に水中浮力の影響を受け、砂粒子は特異な運動を行うことが明らかになった。さらにこの結果を用いて前年度と同様に、一様勾配斜面上の局所掃流漂砂量を考察し、波打ち帯の海岸地形変化に関する検討の精密化を行った。降雨や潮位変化などによる砂浜背後の地盤内水位と海水面水位の不連続は、波打ち帯の漂砂に対して大きな影響を与えると考えられる。前浜砂層内への浸透流を含めた斜面上の波動場を、非線形長波方程式を基礎方程式とし、遡上端を移動境界とした数値モデルによって解析した。波打ち帯では砂地盤内への浸透流は地盤上端面でtransientな水位変動が載荷されることになるが、この非定常浸透流をDickerの理論に基づいて解析した。計算は、わが国の砂浜海岸の現実的な地形形状・底質形状の下で行った。すなわち、細砂・粗砂・小砂利を代表する3種類の粒径を設定し、それに対応する透水係数を与えた。解析の結果、斜面上の水粒子速度に与える浸透流・滲出流の影響はきわめて小さいが、干出と没水を繰り返す波打ち帯においてはその影響は必ずしも無視できないことがわかった。次に、得られた水粒子速度場を外力とした時の、斜面上に置かれた単一砂粒子に対する移動限界掃流力、および岸沖漂砂量に関して、砂粒子に作用する流体力と移動抵抗力の力学モデルに基づき解析的表示式を導出した。それらの諸量に及ぼす砂地盤内への浸透流ならびに砂地盤内からの滲出流の影響を定量的に検出した。
KAKENHI-PROJECT-11650533
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11650533
前浜砂層内の浸透流・滲出流を考慮した波打ち帯の漂砂機構に関する研究
その結果、局所的岸沖漂砂量の及ぼす浸透・滲出の影響は、波動による水粒子速度に対する浸透・滲出流の比が20%と大きな場合でも、たかだか5%に過ぎないが、1日あたりの漂砂量に換算すると遡上端付近では、現実に生起する条件下での試算で、20m^3/dayの差異が浸透流によって生じ、海浜変形を議論するにあたって大きな影響があることが明らかになった。昨年度は、前浜砂層内への浸透流を含めた斜面上の波動場を、非線形長波方程式を基礎方程式とした数値モデルによって解析したが、遡上波先端では数値解析特有の擾乱を完全に除去することができなかった。そこで、本年度はCarrier-Greenspanによる斜面上の有限振幅重複波の解析解を用い、さらなる考察の精密化を行った。この理論から得られる水粒子運動を外力としたときの斜面上の単一砂粒子の運動を、運動方程式に基づきラグランジェ的に追跡し、波打ち帯の漂砂運動の特性を考察した。特に、波打ち帯では干出と没水を繰り返すため、砂粒子は遡上波先端の到達とともに大きな慣性力を受けるとともに、部分的に水中浮力の影響を受け、砂粒子は特異な運動を行うことが明らかになった。さらに、遡上した水塊の砂層地盤内への浸透や、引き波時の砂層地盤からの滲出流によって、砂粒子の運動が大きく影響を受けることも明確となった。前浜の地形変化を定量的に記述するには、前述のラグランジェ的な表現より固定空間座標上のオイラー的な漂砂量を求める必要がある。そこで、前述の理論解に基づく水粒子運動を外力としたときの一様勾配斜面上の局所掃流漂砂量をKobayashiの理論で計算し、波打ち帯の海岸地形変化を考察した。砂粒子の粒径や斜面の勾配・波の諸元を系統的に変化させた計算を行い、漂砂量の変化特性を検討した。砂層地盤内への浸透を考慮しない場合には、漂砂はすべての条件下で沖向きとなり、一部の条件では現実的では無いことが判明した。浸透流を考慮した場合の漂砂量の結果は、昨年度すでに数値計算によって考察し妥当な結果を得ているが、理論解を用いた場合には浸透流をこの理論と整合的に組み込むには現時点では至っておらず、今後の課題としたい。
KAKENHI-PROJECT-11650533
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11650533
自社株式取得の理論的・実証的・制度的研究
本研究は,「自社株式取得」問題の,単なる抽象的研究だけでなく,経営理論的・実証的・制度的研究を意図するものである。そのような問題意識のもとで展開された研究成果の概要を「自社株式取得と企業財務戦略」として纏めたものを以下に示す。第1章序論-「アメリカ企業財務の最近の動向-自社株式取得の増大化傾向」本章は,既発表のものであるが,本研究の出発点となったものなので,あえて転職した。第2章,「ダッチ・オ-クションによる自社株式取得」ダッチ・オ-クション方式の実証研究によって、明らかになった株主の応募入札価格の差異は、MM理論の圧倒的影響下にある、現代企業財務論研究のなかで、より現実的な企業財務の実践理論ないし現実理論構築の重要なてががりとなった。とくに,ダッチ・オ-クションによる自社株式取得においてみられる右上がりの供給曲線の特色とその解釈における株主の異質性の明確化は重要である。第3章「自社株式取得方法の三形態のシグナリング効果の比較研究」第4章アメリカ大規模企業における従業員持株制度の普及と自社株式取得従業員持株制度の普及の著しさとその意義の検討。それは,給付建制度から掛金建制度への移行に伴う,固定的給与所得者からリスク負担者への従業員の変容を意味する第5章アメリカ上場企業の従業員持株制度の展開とその企業財務論的意義従業員持株制度の自社株式の取得に伴う株主の富や権利の希薄化とその形態の検討および,その希薄化を相殺する諸制度の活用状況の考察と,総合的財務戦略手段としての従業員持株制度利用の自社株式取得政策を解明した。第6章モデル分析による自社株式取得の本質とわが国における自社株式取得の実情自己株取得の本質をモデル分析によって検討,さらに,わが国における自己株式取得の現状を考察した。わが国での利益消却のための自己株取得が主である。本研究は,「自社株式取得」問題の,単なる抽象的研究だけでなく,経営理論的・実証的・制度的研究を意図するものである。そのような問題意識のもとで展開された研究成果の概要を「自社株式取得と企業財務戦略」として纏めたものを以下に示す。第1章序論-「アメリカ企業財務の最近の動向-自社株式取得の増大化傾向」本章は,既発表のものであるが,本研究の出発点となったものなので,あえて転職した。第2章,「ダッチ・オ-クションによる自社株式取得」ダッチ・オ-クション方式の実証研究によって、明らかになった株主の応募入札価格の差異は、MM理論の圧倒的影響下にある、現代企業財務論研究のなかで、より現実的な企業財務の実践理論ないし現実理論構築の重要なてががりとなった。とくに,ダッチ・オ-クションによる自社株式取得においてみられる右上がりの供給曲線の特色とその解釈における株主の異質性の明確化は重要である。第3章「自社株式取得方法の三形態のシグナリング効果の比較研究」第4章アメリカ大規模企業における従業員持株制度の普及と自社株式取得従業員持株制度の普及の著しさとその意義の検討。それは,給付建制度から掛金建制度への移行に伴う,固定的給与所得者からリスク負担者への従業員の変容を意味する第5章アメリカ上場企業の従業員持株制度の展開とその企業財務論的意義従業員持株制度の自社株式の取得に伴う株主の富や権利の希薄化とその形態の検討および,その希薄化を相殺する諸制度の活用状況の考察と,総合的財務戦略手段としての従業員持株制度利用の自社株式取得政策を解明した。第6章モデル分析による自社株式取得の本質とわが国における自社株式取得の実情自己株取得の本質をモデル分析によって検討,さらに,わが国における自己株式取得の現状を考察した。わが国での利益消却のための自己株取得が主である。平成5年度・一般研究Cの研究成果報告書平成5年度においては、まず、アメリカ企業にみられる自社株式取得の実態資料の収集と、それに基づく実態調査研究に取り組んだ。最近のアメリカ企業行動で注意をひく点は、ダッチ・オークションによる自社株式取得である。この問題に関するわれわれの実証的研究は、「アメリカおけるダッチ・オークション(Dutch Auction)の展開とその意義」(「企業会計」Vo1.46,【double half arrows】)でまとめている。この方向での実証研究は、さらに、平成6年度において、いくつかのバリェーションをもって展開される予実証研究によって、明らかになった株主の応募入札価格の差異は、MM理論の圧倒的影響下にある、現代企業財務論研究のなかで、より現実的な企業財務の実践理論ないし現実論理を構築しようとする、われわれにとって、理論展開の重要なてががりとなろう。それは、前述の実証研究論文においても、暗示的に提示しておいた。この論理的方面に関する研究は、平成6年度の主要な研究課題となろう。わが国における自社株式取得の法的規制緩和に関しては、法務省民事局が中心になって、「各界意見の聴取」がなされた。各界の意見は公表されたが、その様な見解が纏められるに至った経緯について、数回にわたりそれぞれの団体関係者から直接に意見をきく努力をした。近く法制化される、わが国の自社株式取得制度は、各界の意見を集約して、基本的には原則禁止を貫き、規制緩和は極めて限定的である。また、税制その他の制度的条件も整っていない。これらをどのように評価するかは、研究の総括段階の課題としたい。平成6年度・一般研究Cの研究成果報告書
KAKENHI-PROJECT-05630080
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05630080
自社株式取得の理論的・実証的・制度的研究
1.平成6年度の研究は,まず,最近のアメリカで注意をひくダッチ・オ-クションによる自社株式取得の取得の普及の実態と,その実戦的・理論的意義を明らかにした。2.自社株式取得の三つの主要形態-(1)伝統的な固定価格による公募方式(fixed pricetender offer)(2)ダッチ・オ-クションによる公募方式(dutch auction tender offer)(2)流通市場での自社株式取得方式-の特色とプレミアム格差を実証分析によって明らかにした。このプレミアム格差を説明する理論としては,シグナリング理論は非常に強力である。とくに,このシグナリング・アプローチによる,インサイダーとしての経営者の自社株式取得関連リスクとプレミアムの大きさとの相関の解明が非常にすぐれている。今年度の大きな成果の一つである。3.しかし,シグナリング理論は,市場の自社株式に対する過小評価のシグナルとして自社株式取得を説明するが,それならば,相対的に株価引上げ効果の低いダッチ・オ-クション方式や流通市場での自社株式取得が,最近になって普及しつつある事実をどのように説明するのか。そこにシグナリング・アプローチの限界がある。このことが明らかになったことが,今年度の第二の成果である。4.次年度は,これらの成果をふまえて,シグナリング理論を補強する諸理論の検討を試みたい。たとえば,フリー・キャシュ・フローの株主への還元手段として自社株式取得をとらえるエージェンシー理論や株主の異質性を強調する理論は,M&Aや会社乗っ取り防止効果との関連で興味深い。これらの理論的諸問題の掘り下げと,それらの整理と総合化は次年度の課題である。本年度の研究目標は,(1)自社株式取得の方法の違いによるプレミアムの格差,実施前後の株価の動きから推察される自社株式取得の目的の多様性の研究,(2)EU諸国での実施状況と,その特質の研究。(3)わが国においても容認されるようになった,「従業員持株制度のための自社株式取得」を,アメリカ企業の実態についての実証的検討。(4)今までの研究成果の公刊のための整理と総括。研究実績の概要第一の目標に関しては,「自社株式取得の三形態のシグナリング効果の比較研究」(福岡大学商学論叢,第40巻第1号,平成7年6月)において,その主要な目的を達成することができた。また,第三の目標に対しては,予想以上の成果を達成し,新たな展望を切り開くことができた。その研究成果は,(1)「アメリカ大規模企業における従業員持株制度の普及とその意義」(福岡大学商学論叢,第40巻第3号,平成8年3月),および「アメリカ上場企業の従業員持株制度の展開とその企業財務論的意義」(福岡大学商学論叢,第40巻第3号,平成8年5月)において展開されている。アメリカにおける自社株式取得による従業員持株制度の予想以上の展開は,アメリカ経済ないし経営制度そのものの重要な変貌(従業員福祉制度の再構築と企業の財務構造の再構,企業成果に対する従業員の新しい参加システムの確立)を孕んでいる。しかし,その全貌を解明するには,更なる研究努力が必要であることを痛感した。第二のEU諸国での自社株式取得に関する実態については,必ずしも十分な資料を入手することができず,所期の目的を達成するにいたらなかった。
KAKENHI-PROJECT-05630080
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05630080
現代的課題群の解決に資する「越境する教師」支援モデルの開発に関する研究
本研究は,現代的諸課題に対応するための,教師の専門性発達に資する教師の越境に関して研究することが目的である。これまで教師の学習機会は,学校の内部と外部に区別されて議論されてきたが,近年の学術的知見の要請だけでなく,学校現場でのニーズから,外部アクターとの関わりを視野に収めた取り組みが独自にあり,教師の越境には,特定の生成過程や指向性が存在することが明らかになった。越境する教師の学習と,同僚性に基づく学校組織での学習とを接続した上で,教師像と循環型教師支援モデルの開発の必要性が確認された。本研究は,現代的諸課題に対応するための,教師の専門性発達に資する教師の越境に関して研究することが目的である。これまで教師の学習機会は,学校の内部と外部に区別されて議論されてきたが,近年の学術的知見の要請だけでなく,学校現場でのニーズから,外部アクターとの関わりを視野に収めた取り組みが独自にあり,教師の越境には,特定の生成過程や指向性が存在することが明らかになった。越境する教師の学習と,同僚性に基づく学校組織での学習とを接続した上で,教師像と循環型教師支援モデルの開発の必要性が確認された。本研究では、現代的諸課題に対応するため教師の専門性発達に資する教師の越境性に関して研究することを目指している。学校の文脈を越境することを志向し、学校外の異分野のアクターとのインタラクションを試みる教師が集う研究会や場について調査し、そこに理論的検討を加える。それらを筆者の行ってきた現代的諸課題の一つと目されるメディア・リテラシーにおける教師支援の実践研究の知見と再検討することで、既に教師が直面する、現代的課題群に対応可能な教師の育成が可能な教師支援のモデルの開発を試みる。平成21年度では、研究計画のうち、異分野の人々とコミュニケートし、越境を試みる教師に関わる研究会に関して、インタビュー調査を行うとともに、同時並行で、理論的検討を進めた。教師をめぐる研究会やコミュニケーションの場も時代の状況やメディア状況に合わせ、有り様を変えており、様々なアクターが主催する様々なコミュニケーションの場が発生している。これらの点に配慮した結果調査フィールドの検討・選定と、調査対象者の確定に時間を要したため、次年度も継続して調査を行う。平成22年度では、幅広く現代的諸課題に対応するためにコミュニケーションのあり方をリ・デザインするハイブリッドな場の実践を調査し、それを支える理論を整理検討、参照することになるが、昨年度に引き続き、教師が参加している研究会やコミュニケーションの場に対して主催者・参加者に承諾を得た上で、インタビュー等による調査を行い、データを詳細に分析する。調査データから得られた知見から教師像とその支援のあり方についての理論的検討を行う。申請者は、教師が異なる分野の専門家と相互作用し、メディア・リテラシーについて専門性発達を支援するオンライン学習環境を開発・実施・評価してきた。その結果、既存の教師像とは異なる、「越境する教師」像とその支援モデルの開発の必要性についての示唆を得た。グローバル化や社会の変動状況に応じた高度な専門的知識と技量を備えた教師への要請は、近年検討されてきている。そこでは、強力な教師の専門家団体を目指すだけではない、より広範はステークホルダーとの開かれた関係構築が可能な専門家集団としての教師像が議論されている。しかし、これらの議論は、まだ、理論的なレベルでの議論と、実践レベルでの議論が錯綜している状況であり、これらをどのように実現していくかという具体的な議論や提案は始まったばかりである。本研究では、「越境する教師」という新たな教師の専門性像とその教師支援モデルの開発を試みるための調査と理論的検討を行った。学校を越えて教師の参加する研究会の主催者や参加者に対して、インタビュー調査を行った。その結果では、教師自身が、個人的にテーマを持って参加しているケースや高等教育機関やNPO等が仲介に入り、場を提供するケースだけでなく、学校が積極的に地域の人々や異なる専門分野の人々を巻き込んでいく仕組みについての幾つかの形態と生成過程がみられた。これまで、学校の外部と内部の教師の学習機会は、区別されて議論されがちであり、学校外との関わりを持つ教師はある種、特別な存在としてみなされ個人的特性に資するものと説明されがちであったが、学校現場でも、外部アクターとの関わりを視野に納める目的や手段、その傾向の多様性が明らかになった。現代的課題に対応可能な「越境する教師」の専門性発達の支援モデルの開発の為、申請者が行ってきた実践研究の知見との再検討と理論的検討を行った。
KAKENHI-PROJECT-21700799
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21700799
看護実践能力の評価指標を基盤とした看護学実習カリキュラムの開発
看護学実習で獲得する能力の要素を明確にし、看護学実習の内容と実習で獲得する看護実践能力との関係を明らかにし、看護学実習のカリキュラムの開発をはかることである。そのために、課題1として、看護学実習前後で実施するPROGのスコアの変化に着目し、看護学実習で獲得する看護実践能力の要素を明確にする。課題2として、複数大学でのPROGスコアに基づき、実習内容の違いと実習で獲得する看護実践能力の差異・関係を明確化する。課題3として、課題1と2をもとに看護学実習の教育要素の抽出をはかり、看護学実習カリキュラムの開発(抜本的な見直しと改善)をする。看護学実習で獲得する能力の要素を明確にし、看護学実習の内容と実習で獲得する看護実践能力との関係を明らかにし、看護学実習のカリキュラムの開発をはかることである。そのために、課題1として、看護学実習前後で実施するPROGのスコアの変化に着目し、看護学実習で獲得する看護実践能力の要素を明確にする。課題2として、複数大学でのPROGスコアに基づき、実習内容の違いと実習で獲得する看護実践能力の差異・関係を明確化する。課題3として、課題1と2をもとに看護学実習の教育要素の抽出をはかり、看護学実習カリキュラムの開発(抜本的な見直しと改善)をする。
KAKENHI-PROJECT-19K10843
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K10843
質量分析を用いたncRNA結合タンパク質同定技術の高度化とその利用
多くのRNAは、タンパク質と複合体を形成して機能を果たすと考えられていることから、RNAの機能を分子的に理解するためにはRNAに結合するタンパク質を明らかにすることが重要である。我々は質量分析を用い、RNAに結合するタンパク質を同定する技術の確立を目指している。今年度は、去年度開発したReporter-ChIRP-MS法を用い、10種類のmRNAの3'UTRについてそれぞれに結合するタンパク質の同定実験および結合タンパク質の機能解析を行なった。その結果、それぞれのmRNAに結合するタンパク質として1000種類以上のタンパク質を同定可能である事、その中から各mRNA特異的な結合タンパク質を選び出し機能解析を行うことにより、結合したmRNAの翻訳量や分解量を制御する働きを持つタンパク質を同定できることも明らかとした。また、同一のmRNAについても、細胞の培養条件の違いにより結合するタンパク質に大きな変化が現れることも明らかとした。さらに、mRNAに結合するタンパク質として同定されたタンパク質の中には、翻訳開始タンパク質群やポリA末端に結合するタンパク質群、mRNAの翻訳を行なっていると考えられるリボソーム、それぞれのmRNAから作られている合成中の新生タンパク質鎖が含まれており、それぞれに定量比較が可能であることも明らかとした。これらの結果は、Reporter-ChIRP-MS法を用いることにより、mRNAの3'UTRに結合する重要な制御タンパク質が同定できるだけでなく、mRNA上の翻訳の状態をモニターできることを示しており、mRNAの制御を解析する上で非常に重要なツールとなりうると考えられる。我々はまた、新学術領域内においてiSRIM法及びChIRP-MS法を用いたRNA結合タンパク質同定に関わる複数の共同研究を行い、それぞれにおいて重要な結合タンパク質の同定に成功している。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。多くのRNAは、タンパク質と複合体を形成して機能を果たすと考えられていることから、RNAの機能を分子的に理解するためにはRNAに結合するタンパク質を明らかにすることが重要である。本研究計画では、iSRIM法(in vitroにおいて特定のRNAに結合するタンパク質を同定する手法)及びChIRP-MS法(in vivoにおいて特定のRNAに結合するタンパク質を同定する手法)の両手法を比較しながら用い、特定のRNAに結合するタンパク質同定基盤技術の確立を目指すとともに、確立した技術を用いRNAの成熟過程、機能、制御機構の解明を目指す。平成29年度は、それぞれの技術の確立のために、特異的な結合タンパク質が知られている7SK-ncRNA、TNF-αmRNA、TFRC mRNAの3'UTR領域を用い、RNA及びその結合タンパク質の精製、質量分析による結合タンパク質の同定実験について、細胞の量、固定方法、細胞溶解液の組成、細胞の破砕方法、アンチセンスオリゴの種類等の条件検討を行い、プロトコルの確立を目指した。その結果、ベイトRNA特異的に既知の結合タンパク質(7SK RNAについてCDK9, CyclinT, Hexim, LARP7, MEPCE、TNF-αmRNAについてRC3H1/2やZFP36L1/2、TFRC mRNAについてIRP1/2等)が効率よくかつ特異的に同定される実験条件を見いだすことに成功し、実験プロトコルを確立した。さらに、レポーターRNAを用いたChIRP-MS法の開発を行い成功、レポーターRNAの下流に様々な目的RNA配列をつないだコンストラクトを用いることで、全く同じ実験条件のもと様々なRNAに結合するタンパク質を同定、ベイトRNA間で結合タンパク質の比較が可能となった。本研究課題において平成29年度は、以下を達成することを目標としており(1CHIRP-MS法の洗練、2CHIRP-MS法の高度化(レポーターRNAを用いたCHIRP-MS法の開発)、3iSRIM法の高度化(酵素反応とのカップリングによる適用拡大)、4領域内共同研究を通した開発技術の有用性実証)、全てを達成することに成功、研究は順調に進捗している。具体的には、1ChIRP-MS法の洗練については、ChIRP-MS法についての実験条件の検討を行い複数のRNAについてその既知結合タンパク質同定を可能とする実験条件を確定することに成功した。2ChIRP-MS法の高度化(レポーターRNAを用いたChIRP-MS法の開発)については、Red fluorescentやNanoLuc配列の下流に目的のRNA配列をつないだレポーターコンストラクトを作成、Red fluorescentやNanoLucのRNA配列を標的としたアンチセンスオリゴを用いてそれぞれのRNAと共にその結合タンパク質を精製、質量分析を用いて結合タンパク質を同定する実験系を確立に成功し、また、この手法については、mRNA上にある合成中のレポータータンパク質(Red fluorescentタンパク質やnanoLucタンパク質)の定量が可能であり、レポーターmRNAの翻訳効率の定量化を行うことができることを明らかとしている。3iSRIM法の高度化(酵素反応とのカップリングによる適用拡大)、については酵素反応を組み合わせることでRNAと結合タンパク質に変化が起こりうることを確認することに成功している。4領域内共同研究を通した開発技術の有用性実証については、nRNAタクソノミ領域内の複数の研究者との共同研究を行い、複数のRNAについてその結合タンパク質の同定に成功している。多くのRNAは、タンパク質と複合体を形成して機能を果たすと考えられていることから、RNAの機能を分子的に理解するためにはRNAに結合するタンパク質を明らかにすることが重要である。我々は質量分析を用い、RNAに結合するタンパク質を同定する技術の確立を目指している。今年度は、去年度開発したReporter-ChIRP-MS法を用い、10種類のmRNAの3'UTRについてそれぞれに結合するタンパク質の同定実験および結合タンパク質の機能解析を行なった。
KAKENHI-PUBLICLY-17H05610
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-17H05610
質量分析を用いたncRNA結合タンパク質同定技術の高度化とその利用
その結果、それぞれのmRNAに結合するタンパク質として1000種類以上のタンパク質を同定可能である事、その中から各mRNA特異的な結合タンパク質を選び出し機能解析を行うことにより、結合したmRNAの翻訳量や分解量を制御する働きを持つタンパク質を同定できることも明らかとした。また、同一のmRNAについても、細胞の培養条件の違いにより結合するタンパク質に大きな変化が現れることも明らかとした。さらに、mRNAに結合するタンパク質として同定されたタンパク質の中には、翻訳開始タンパク質群やポリA末端に結合するタンパク質群、mRNAの翻訳を行なっていると考えられるリボソーム、それぞれのmRNAから作られている合成中の新生タンパク質鎖が含まれており、それぞれに定量比較が可能であることも明らかとした。これらの結果は、Reporter-ChIRP-MS法を用いることにより、mRNAの3'UTRに結合する重要な制御タンパク質が同定できるだけでなく、mRNA上の翻訳の状態をモニターできることを示しており、mRNAの制御を解析する上で非常に重要なツールとなりうると考えられる。我々はまた、新学術領域内においてiSRIM法及びChIRP-MS法を用いたRNA結合タンパク質同定に関わる複数の共同研究を行い、それぞれにおいて重要な結合タンパク質の同定に成功している。これまでの研究は順調に進捗しており、当初の予定通り以下について(1同定されたRNA結合タンパク質についての結合意義解析、2領域内共同研究を通した開発技術の有用性実証)研究を進める。具体的には、1同定されたRNA結合タンパク質についての結合意義解析においては、1年目に行った、7SK-ncRNA、TNF-αmRNA、TFRC mRNAの3'UTRに加え、2年目はその他の複数のRNAについてChIRP-MS法および、iSRIM法を用いた解析を行う。具体的には、ChIRP-MS法および、iSRIM法で同定されたタンパク質について、RNAの種類別、RNA精製の手法別に分類し、特定のRNAでのみ同定された結合タンパク質や特定の手法でのみ同定された結合タンパク質等、特徴的な結合タンパク質についてその後の結合意義の解析を行う。結合意義の解析手順としては、機能が明確でないncRNAについては、まずncRNAの機能を明らかとするためにncRNAのノックアウトやノックダウン細胞を作成、トランスクリプトーム解析や、我々の新生タンパク質定量解析を行い、ncRNAの下流で発現量が変化する分子群の同定を行う。次にncRNA結合タンパク質として同定されたタンパク質のノックダウンやノックアウトを行い、ncRNAの下流で発現量が変化する分子群についての定量を行い、その相関性を調べることにより、同定したncRNA結合タンパク質の結合意義の検証を行う。
KAKENHI-PUBLICLY-17H05610
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-17H05610
ヘム型ペルオキシダーゼに着目したインフルエンザ重症肺炎の治療戦略
ヒポチオシアン酸はラクトペルオキシダーゼやミエロペルオキシダーゼのようなヘム型ペルオキシダーゼによって産生されるオキシダントである。昨年度の研究により、インフルエンザウイルス感染時に生じる抗ウイルス応答をヒポチオシアン酸が抑制することが示唆されていた。今年度はこの可能性のさらに調べ、分子メカニズムを解明することを目的として研究を行った。RNAウイルスの疑似RNAであるpoly I:Cで細胞を刺激すると、抗ウイルス応答であるアポトーシス誘導やインターフェロンβの発現誘導が観察された。これらの現象は、poly I:Cで細胞を刺激した後、ヒポチオシアン酸処理を2時間行うと顕著に抑制された。ヒポチオシアン酸は、インターフェロンβのみならず、インターフェロンλやRANTES、IP-10等、他の抗ウイルス応答遺伝子も顕著に抑制した。これらの結果からヒポチオシアン酸は抗ウイルス応答を抑制する作用があることが明らかとなった。この分子機構を明らかにするために、抗ウイルス応答のマスター制御因子であるIRF3の活性化に対するヒポチオシアン酸の作用を解析した。IRF3のダイマー形成とダイマー形成に必須な386と396番目のアミノ酸のリン酸化をIRF3の活性化の指標として調べたところ、ヒポチオシアン酸はpoly I:Cによるダイマー形成およびIRF3のリン酸化を抑制することが明らかとなった。次に、IRF3のリン酸化酵素であるTBK1に対するヒポチオシアン酸の作用を調べた。TBK1はpoly I:C刺激でリン酸化されたが、これはヒポチオシアン酸処理により抑制された。この結果より、ヒポチオシアン酸はTBK1を介して、IRF3の活性化を抑制し、抗ウイルス応答を負に調節するオキシダントであることが明らかとなり、ヒポチオシアン酸がウイルス感染による肺炎の病態を増悪する可能性が強く示された。当初の研究計画には、インフルエンザウイルスによる肺炎マウスを用いたペルオキシダーゼ阻害剤の効果について調べる実験内容(in vivo実験)が記載されているが、in vitroの実験結果が計画より順調に進んでいるため、in vitroの実験を中心にヒポチオシアン酸の作用解析を進めている。このためにin vivoの実験が遅れているので、全体としてややおくれているとした。今後は、ウイルス感染に伴い引き起こされる宿主細胞のアポトーシスをヒポチオシアン酸がどのように抑制するのか、この分子機構を解明する実験を中心的に行う。ウイルス感染細胞のアポトーシス誘導の機構にはIRF3非依存的機構も十分考えられるので、先ずは、本実験で誘導されたアポトーシスがIRF3依存的か非依存的かをsiRNAなどを用いて明らかにする。IRF3依存的である場合、IRF3と相互作用する細胞質因子を探しだし、ヒポチオシアン酸が、この相互作用に影響を及ぼすか否かを調べる。IRF3非依存的である場合、先ずはヒポチオシアン酸のセンサーとなり得る因子に着目し、アポトーシス誘導のキーとなる因子を探し出す。このようにしてウイルス感染に伴い引き起こされる宿主細胞のアポトーシスをヒポチオシアン酸が抑制する機構を明らかにする予定である。ヒポチオシアン酸はラクトペルオキシダーゼやミエロペルオキシダーゼのようなヘム型ペルオキシダーゼによって産生されるオキシダントである。私共はヒポチオシアン酸で気道上皮細胞(H292細胞)を曝露すると、炎症性サイトカインであるIL-6やIL-8が誘導されることを見いだし、インフルエンザウイルス感染によって引き起こされる様々なサイトカイン遺伝子の発現にヒポチオシアン酸が影響するのではないかと考えていた。そこで、今年度は本研究計画に基づき、ヒポチオシアン酸で発現が影響される遺伝子をさらに探索した。単なる気道上皮細胞へヒポチオシアン酸処理する実験と同時に、インフルエンザウイルス(PR-8)に感染した気道上皮細胞もヒポチオシアン酸で処理し、ウイルス感染によって誘導される遺伝子の発現に対するヒポチオシアン酸の作用も解析した。インフルエンザウイルスを気道上皮細胞(H292)に感染させると、既に報告されているようにインターフェロンβ1遺伝子の発現が誘導された。この遺伝子の発現誘導はヒポチオシアン酸で暴露した細胞では著しく抑制されることがわかった。さらなる解析により、インターフェロンβ1遺伝子と同様にヒポチオシアン酸の曝露で誘導が抑制される遺伝子としてRANTES遺伝子を同定した。ウイルス感染後に誘導されるIL-6、IL-8、TNF-αといった炎症性サイトカインの遺伝子発現に対しては、ヒポチオシアン酸は影響を及ぼさなかった。インターフェロンβ1やRANTESは宿主細胞の抗ウイルス応答に重要であることが知られているので、私共の結果から、ヒポチオシアン酸は宿主細胞の抗ウイルス応答を抑制し、肺炎の病態を増悪する可能性が示された。当初の研究計画には、ヒポチオシアン酸曝露により影響をうける遺伝子の網羅的解析(マイクロアレイ)が含まれていたが、この実験よりも「インフルエンザウイルス感染細胞に対するヒポチオシアン酸の作用解析」を優先的に進めている。この実験は当初の計画には含まれていなかったが、インフルエンザウイルスによる重篤肺炎の病態から考えると、実際にウイルスを用いたこの実験の方がより重要であり、かつ、この実験から興味深い結果が既に得られているので、さらに解析を進めている。インフルエンザウイルスによる肺炎マウスを用いたペルオキシダーゼ阻害剤の効果に関してはインフルエンザウイルスによる肺炎モデルマウスの作成は既に成功しているため、in vitroの実験とともに今後進めて行きたいと考えている。ヒポチオシアン酸はラクトペルオキシダーゼやミエロペルオキシダーゼのようなヘム型ペルオキシダーゼによって産生されるオキシダントである。
KAKENHI-PROJECT-17K08792
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K08792
ヘム型ペルオキシダーゼに着目したインフルエンザ重症肺炎の治療戦略
昨年度の研究により、インフルエンザウイルス感染時に生じる抗ウイルス応答をヒポチオシアン酸が抑制することが示唆されていた。今年度はこの可能性のさらに調べ、分子メカニズムを解明することを目的として研究を行った。RNAウイルスの疑似RNAであるpoly I:Cで細胞を刺激すると、抗ウイルス応答であるアポトーシス誘導やインターフェロンβの発現誘導が観察された。これらの現象は、poly I:Cで細胞を刺激した後、ヒポチオシアン酸処理を2時間行うと顕著に抑制された。ヒポチオシアン酸は、インターフェロンβのみならず、インターフェロンλやRANTES、IP-10等、他の抗ウイルス応答遺伝子も顕著に抑制した。これらの結果からヒポチオシアン酸は抗ウイルス応答を抑制する作用があることが明らかとなった。この分子機構を明らかにするために、抗ウイルス応答のマスター制御因子であるIRF3の活性化に対するヒポチオシアン酸の作用を解析した。IRF3のダイマー形成とダイマー形成に必須な386と396番目のアミノ酸のリン酸化をIRF3の活性化の指標として調べたところ、ヒポチオシアン酸はpoly I:Cによるダイマー形成およびIRF3のリン酸化を抑制することが明らかとなった。次に、IRF3のリン酸化酵素であるTBK1に対するヒポチオシアン酸の作用を調べた。TBK1はpoly I:C刺激でリン酸化されたが、これはヒポチオシアン酸処理により抑制された。この結果より、ヒポチオシアン酸はTBK1を介して、IRF3の活性化を抑制し、抗ウイルス応答を負に調節するオキシダントであることが明らかとなり、ヒポチオシアン酸がウイルス感染による肺炎の病態を増悪する可能性が強く示された。当初の研究計画には、インフルエンザウイルスによる肺炎マウスを用いたペルオキシダーゼ阻害剤の効果について調べる実験内容(in vivo実験)が記載されているが、in vitroの実験結果が計画より順調に進んでいるため、in vitroの実験を中心にヒポチオシアン酸の作用解析を進めている。このためにin vivoの実験が遅れているので、全体としてややおくれているとした。今後は、インフルエンザウイルスによるインターフェロンβ遺伝子の発現誘導をヒポチオシアン酸が抑制するメカニズムを優先的に解析する予定である。具体的にはインターフェロンβ1やRNATESといった抗ウイルス系サイトカイン遺伝子の転写調節にはIRF3という転写因子が必須であるので、この転写因子の活性化に対するヒポチオシアン酸の作用を解析する。さらにヒポチオシアン酸産生酵素であるペルオキシダーゼの活性をメチマゾールで阻害するとインフルエンザウイルスによる肺炎の病態が軽減されるか否かをインフルエンザウイルス肺炎マウスを用いて解析する。今後は、ウイルス感染に伴い引き起こされる宿主細胞のアポトーシスをヒポチオシアン酸がどのように抑制するのか、この分子機構を解明する実験を中心的に行う。
KAKENHI-PROJECT-17K08792
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K08792
金属を含む液晶性高分子の液晶相転移による機能制御
高分子骨格、液晶形成の原動力となるメソ-ゲン基および金属錯体の各セグメントよりなる金属を含む液晶性高分子を合成した。高分子化にはあらかじめメソ-ゲン基と金属錯体部を導入したモノマ-を合成し重合する方法(側鎖型液晶性高分子)とメソ-ゲン基と金属錯体部よりなる官能団を高分子反応で高分子主鎖へ導入する方法(主鎖型液晶性高分子)の二方法で行った。メソ-ゲン基としてはフェニルベンゾエ-ト基とし、金属錯体部には銅、ニッケル、コバルトなどの4配位のビス(βージケトナト)金属錯体を導入した。合成した高分子金属錯体の液晶挙動をDSC測定、X線回折、偏光顕微鏡観察により調べた。ニッケル錯体やコバルト錯体を導入すると液晶性を示さないが、平面4配位錯体の銅錯体を導入すると相転移にともない液晶性を示し液晶相としてネマチック相やスメクチック相が発現した。主鎖型液晶性高分子は液晶温度に保って室温へ急冷延伸(液晶紡糸)することによりネマチック相やスメクチック相が凍結された異方性の繊維を作成することができた。これらの異方性繊維では繊維軸(延伸方向)に平行に銅錯体平面が完全配向していることがESRスペクトルにより明かとなった。平面性の高い金属錯体を含む液晶性高分子の液晶紡糸は錯体平面を繊維軸に平行に配列させる有用な手段であることを初めて明かにした。完全配向した金属錯体は導電性や強磁性材料として有望であることがわかった。高分子骨格、液晶形成の原動力となるメソ-ゲン基および金属錯体の各セグメントよりなる金属を含む液晶性高分子を合成した。高分子化にはあらかじめメソ-ゲン基と金属錯体部を導入したモノマ-を合成し重合する方法(側鎖型液晶性高分子)とメソ-ゲン基と金属錯体部よりなる官能団を高分子反応で高分子主鎖へ導入する方法(主鎖型液晶性高分子)の二方法で行った。メソ-ゲン基としてはフェニルベンゾエ-ト基とし、金属錯体部には銅、ニッケル、コバルトなどの4配位のビス(βージケトナト)金属錯体を導入した。合成した高分子金属錯体の液晶挙動をDSC測定、X線回折、偏光顕微鏡観察により調べた。ニッケル錯体やコバルト錯体を導入すると液晶性を示さないが、平面4配位錯体の銅錯体を導入すると相転移にともない液晶性を示し液晶相としてネマチック相やスメクチック相が発現した。主鎖型液晶性高分子は液晶温度に保って室温へ急冷延伸(液晶紡糸)することによりネマチック相やスメクチック相が凍結された異方性の繊維を作成することができた。これらの異方性繊維では繊維軸(延伸方向)に平行に銅錯体平面が完全配向していることがESRスペクトルにより明かとなった。平面性の高い金属錯体を含む液晶性高分子の液晶紡糸は錯体平面を繊維軸に平行に配列させる有用な手段であることを初めて明かにした。完全配向した金属錯体は導電性や強磁性材料として有望であることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-03650745
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03650745
籾殻による食用キノコ迅速栽培法の確立と菌糸生育促進物質の単離
1.菌糸生育促進物質の精製・単離昨年度に引き続き,ウシグソヒトヨタケの菌糸生育を指標に,籾殻に存在する菌糸生育促進物質の単離を目指して精製を進めた。20kgの籾殻より水抽出物を得,これを各種カラムクロマトグラフィー及び分取HPLCにより順次分離し活性物質を精製した。現在までに,1-5μg/m1で菌糸生育促進活性を示す画分を2画分(各0.5mg以下)得た。^1H-NMRスペクトルを測定したところ,アミノ基及び水酸基の存在を示唆するシグナルを観測したが,構造決定には至らなかった。今後更に精製スケールを増やして構造解析に供する試料を得る予定である。2.キノコ栽培における実証試験今年度は,ガラスビーズ及びオガコ培地に籾殻を添加することで,収穫量(キノコ個数,重量)が向上するかを検討した。ヒラタケについて検討したところ,オガコ培地に80-160mg/mlで籾殻を添加すると,キノコ個数,一個あたり重量とも増加することが明らかとなった。今後は菌種ごとに添加量を検討することにより,最適な栽培条件を明らかにする予定である。3.ソバ殻に含まれる生物活性物質申請者は,籾殻だけでなく,ソバ殻にも様々な生物活性物質が存在することを見出し,植物の初期生育促進物質の一つとしてオレアノール酸を単離・同定した(学会発表)。今後はソバ殻についてもキノコ栽培における効果を検証し,その有効利用の可能性を追究する予定である。1.食用キノコにおける菌糸生育促進効果の検討これまでの研究により、申請者は数種の食用キノコの菌糸生育に対して籾殻添加が促進効果を示すことを明らかにした。本年度は新たにタモギタケ、エノキタケについて籾殻添加による菌糸生育への効果を検証した。その結果、タモギタケについては10-80mg/mlの範囲で濃度依存的な菌糸生育促進効果が確認された。一方エノキタケについては5-40mg/mlの範囲でやや低い菌糸生育促進効果が確認された。以上の結果から、タモギタケ、エノキタケについても籾殻を培地に添加することで栽培期間を短縮できる可能性が示唆された。2.菌糸生育促進物質の精製・単離ウシグソヒトヨタケの菌糸生育を指標に、籾殻に存在する菌糸生育促進物質の単離を目指して精製を進めた。20kgの籾殻より水抽出物を得、これを各種カラムクロマトグラフィー及び分取HPLCにより順次分離し活性物質を精製した。現在までに、1-5μg/mlで菌糸生育促進活性を示す画分を2画分得た。しかしながらそれぞれ0.5mg以下の微量であり、構造決定には至らなかった。今後更に精製スケールを増やして構造解析に供する試料を得る予定である。3.キノコ栽培における実証試験申請者はこれまでにマイタケ栽培工場において籾殻添加による栽培期間短縮効果の試験を行い、1サイクルについて約6%栽培日数を短縮できることを示した。そこでエリンギ栽培農家に協力を仰ぎ、栽培培地に籾殻を添加して栽培日数を計測する試験を試みた。その結果、マイタケの場合と異なり有意な効果を確認することは出来なかった。今後は実験室規模で栽培試験を行い、実験条件の最適化を図る予定である。1.菌糸生育促進物質の精製・単離昨年度に引き続き,ウシグソヒトヨタケの菌糸生育を指標に,籾殻に存在する菌糸生育促進物質の単離を目指して精製を進めた。20kgの籾殻より水抽出物を得,これを各種カラムクロマトグラフィー及び分取HPLCにより順次分離し活性物質を精製した。現在までに,1-5μg/m1で菌糸生育促進活性を示す画分を2画分(各0.5mg以下)得た。^1H-NMRスペクトルを測定したところ,アミノ基及び水酸基の存在を示唆するシグナルを観測したが,構造決定には至らなかった。今後更に精製スケールを増やして構造解析に供する試料を得る予定である。2.キノコ栽培における実証試験今年度は,ガラスビーズ及びオガコ培地に籾殻を添加することで,収穫量(キノコ個数,重量)が向上するかを検討した。ヒラタケについて検討したところ,オガコ培地に80-160mg/mlで籾殻を添加すると,キノコ個数,一個あたり重量とも増加することが明らかとなった。今後は菌種ごとに添加量を検討することにより,最適な栽培条件を明らかにする予定である。3.ソバ殻に含まれる生物活性物質申請者は,籾殻だけでなく,ソバ殻にも様々な生物活性物質が存在することを見出し,植物の初期生育促進物質の一つとしてオレアノール酸を単離・同定した(学会発表)。今後はソバ殻についてもキノコ栽培における効果を検証し,その有効利用の可能性を追究する予定である。
KAKENHI-PROJECT-18780090
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18780090
冠循環異常による心筋障害の発生機序とその防止に関する実験的研究
1)冠動脈攣縮の実験的誘発とその機序について【◯!1】ミニ豚冠動脈の内膜剥離3ヵ月後、ヒスタミンによって再現性良く冠攣縮を生じることを確認し得た動物において、thiothromboxane-【A_2】(ST【A_2】)の攣縮誘発作用、PG【I_2】の防止効果を検討した。何れも有意の影響を与えなかった。ロイコトルエン(LT)【D_4】、【E_4】は夫々1.10μgの冠動脈内注入により、心筋虚血を誘発し造影剤の冠動脈内充満遅延を起こしたが、限局性の攣縮を起こさなかった。LTの拮抗剤であるFPL-55712を前投与するとLTの作用は抑制し得たがヒスタミンによる冠攣縮は抑制しなかった。従って、LTはわれわれが開発した実験的冠攣縮には直接関与していないと思われた。しかし、細動脈の過剰収縮による心筋虚血誘発作用はあると考えた。【◯!2】冠攣縮をin vitroの環境で再現しうる条件をin vivoで冠攣縮を起こした12例について検討した。即ち心臓を摘出後電解質液(Krebs-Henseleit液)で潅流し乍ら潅流液中にヒスタミンを添加すると容量依存性にin vivoの場合と同一の冠動脈攣縮部に同程度の冠攣縮を認め得た。異常収縮の原因としてヒスタミン受容器依存性の【Ca^(++)】の過剰流入が示唆された。2)血管平滑筋の細胞生物学的検討【◯!1】遠心分離、蔗糖密度勾配遠心分離法により細胞膜成分に富む分画を得る方法を確立した。豚大動脈と冠動脈から細胞膜分画を抽出し、受容体の数や性質を放射性標識リカンドを用いて検討した。冠動脈には大動脈に比較して、α受容体が少なく【β_1】優位であり、又【H_1】も多い事が明らかになった。【◯!2】培養平滑筋細胞にQuin【II】を生理的にとりこませることに成功し、細胞内自由【Ca^(++)】の動態を1μ【M^2】の微小領域について連続的に測定する方法を開発した。現在、冠攣縮部細胞についてこの方法を応用する条件について検討している。1)冠動脈攣縮の実験的誘発とその機序について【◯!1】ミニ豚冠動脈の内膜剥離3ヵ月後、ヒスタミンによって再現性良く冠攣縮を生じることを確認し得た動物において、thiothromboxane-【A_2】(ST【A_2】)の攣縮誘発作用、PG【I_2】の防止効果を検討した。何れも有意の影響を与えなかった。ロイコトルエン(LT)【D_4】、【E_4】は夫々1.10μgの冠動脈内注入により、心筋虚血を誘発し造影剤の冠動脈内充満遅延を起こしたが、限局性の攣縮を起こさなかった。LTの拮抗剤であるFPL-55712を前投与するとLTの作用は抑制し得たがヒスタミンによる冠攣縮は抑制しなかった。従って、LTはわれわれが開発した実験的冠攣縮には直接関与していないと思われた。しかし、細動脈の過剰収縮による心筋虚血誘発作用はあると考えた。【◯!2】冠攣縮をin vitroの環境で再現しうる条件をin vivoで冠攣縮を起こした12例について検討した。即ち心臓を摘出後電解質液(Krebs-Henseleit液)で潅流し乍ら潅流液中にヒスタミンを添加すると容量依存性にin vivoの場合と同一の冠動脈攣縮部に同程度の冠攣縮を認め得た。異常収縮の原因としてヒスタミン受容器依存性の【Ca^(++)】の過剰流入が示唆された。2)血管平滑筋の細胞生物学的検討【◯!1】遠心分離、蔗糖密度勾配遠心分離法により細胞膜成分に富む分画を得る方法を確立した。豚大動脈と冠動脈から細胞膜分画を抽出し、受容体の数や性質を放射性標識リカンドを用いて検討した。冠動脈には大動脈に比較して、α受容体が少なく【β_1】優位であり、又【H_1】も多い事が明らかになった。【◯!2】培養平滑筋細胞にQuin【II】を生理的にとりこませることに成功し、細胞内自由【Ca^(++)】の動態を1μ【M^2】の微小領域について連続的に測定する方法を開発した。現在、冠攣縮部細胞についてこの方法を応用する条件について検討している。
KAKENHI-PROJECT-59440044
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骨梁形成における細胞極性の関与について
骨芽細胞株Saos2にsiRNAを用いたNesprin-1のノックダウン実験を行った。Si-Nesprin1を導入することで、Nesprinの核局在が減少していることを確認した。さらにsi-Nesprin1が蛋白レベルでの発現を抑制していることが確認された。次に、凹凸表面構造を用いたノックダウン細胞の極性変化を観察した。しかし、細胞の配列において有意な差は認められなかった。メカニカルストレスにおけるSaos2の極性に与える変化をみるため細胞の伸展実験を行った。しかしながら、Saos2ではメカニカルストレスに対する極性の変化はみられなかったためにNesprinの関与を検討するに至らなかった。1siRNAを用いたNeprin-1ノックダウン実験骨芽細胞様細胞株Saos2細胞に対して、Nesprin-1遺伝子のsiRNAを遺伝子導入することで、細胞骨格アクチンと細胞核との結合を切断し、細胞極性を失わせる。遺伝子導入後、3日経過した時点で細胞固定およびタンパク回収を行い、Nesprin-1に対する蛍光免疫染色およびウエスタンブロッティング法によりノックダウンの効果を確認した。その結果、タンパクレベルでの抑制は確認できた。また、同時におこなったアクチン線維の蛍光染色により、Si-Nesprin群においては、線維の形成が弱いことが確認された。しかしながら、細胞の輪郭においては変化がみられなかった。2細胞伸展装置を用いたノックダウン細胞の培養実験骨芽細胞の細胞極性が、凹凸表面構造の認識に重要であることを検討するため、上記実験で作製したノックダウン細胞を、坂元先生の研究室にて、ストレッチ(伸展力)を掛けて、細胞の配行性を確認した。しかしながら、従来坂元教室で、上皮細胞では確認されている伸展方向と直交方向に配列を示すはずの、コントロール細胞では、従来予想されていた細胞の配行性の変化が観察されないことがわかった。よって、ノックダウン細胞との配行性の違いを検討する予定であったが、取りかかりの研究においては、細胞の選択といった最初のステージからの見直しが必要となった。株化の影響も考えられるので、市販されているヒト正常骨細胞を用いた実験を組み立てる予定である。研究実績に述べているように、従来細胞伸展力に対して、直交して再配列を示すと予想されていた株化骨芽細胞に予想された形態変化がみられないことが確認されたために、si-Nesprinの抑制効果を検討することが困難であった。用意しているSi-Nesprinは、ヒトのものであるために、ヒト由来骨芽細胞をあらたに対象とした実験を組み立てなければならなくなったために、従来の予定よりやや遅れている。最終年度である本年度は、si RNAを用いたNesprin-1のノックダウン実験を行った。準備できるsi RNAはヒト用であることから、対象細胞はヒトの骨芽細胞様細胞株Saos2細胞とした。DharmaFECTおよびLipofectamineを用いたトランスフェクション法の両方によって、si-Nesprin1を導入し、Nesprinの核の局在が減少されることを免疫蛍光法にて観察した。その結果、両法ともコントロールsiRNAを用いた群に比べてNesprin1の核局在を著しく減少させていた。さらにWestern blotting法により蛋白レベルでの発現を抑制していることが確認された。次に、凹凸表面構造を用いたノックダウン細胞の培養実験を行った。上記実験で作製したノックダウンSaos2細胞を、立体構造を持つ三次元細胞培養用プレート上で培養し、細胞増殖の方向性や形態に及ぼす影響を顕微鏡にて確認した。Nesprin1のノックダウンに伴う細胞極性の消失が細胞のマイクロウェル内での細胞の配列になんからの影響を与えるかを検討した。結果として、Nesprin1の発現の抑制は確認されたものの細胞の配列において両者に有意な差は認められなかった。同時にメカニカルストレスにおけるSaos2の細胞極性に与える変化を観察するために共同研究者である首都大学東京システムデザイン学部の坂元尚哉先生に依頼してSaos2に対してflexer cell unitによる細胞の伸展実験を行った。しかしながら、コントロールとして用いたマウス骨芽細胞様細胞MC3T3-E1細胞では細胞が進展された方向に対して、直角に配列することが確認されたが、Saos2ではそのようなメカニカルストレスに対する配列の変化は生じることがなかった。骨芽細胞株Saos2にsiRNAを用いたNesprin-1のノックダウン実験を行った。Si-Nesprin1を導入することで、Nesprinの核局在が減少していることを確認した。さらにsi-Nesprin1が蛋白レベルでの発現を抑制していることが確認された。次に、凹凸表面構造を用いたノックダウン細胞の極性変化を観察した。しかし、細胞の配列において有意な差は認められなかった。メカニカルストレスにおけるSaos2の極性に与える変化をみるため細胞の伸展実験を行った。しかしながら、Saos2ではメカニカルストレスに対する極性の変化はみられなかったためにNesprinの関与を検討するに至らなかった。今回の機械的刺激に対する応答の少なさは株化細胞の問題であることが予想されたので、ヒト骨芽細胞をTakaraより購入して、先のSaos-2細胞で行った同様の実験を行う。すなわち、伸展力の負荷、Si-Nesprinの導入、ウエスタンブロッティングによるタンパク抑制の確認を行う。歯科矯正学予定としていた抗体の仕入れが安価ですんだため。来年度の消耗品の購入で調整できるために特別な計画は必要ない。
KAKENHI-PROJECT-16K15837
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次世代亜鉛合金系表面処理鋼板の開発
次世代防錆鋼板表面処理法として注目を浴びているZn-Cr合金の電析挙動および電解機構を明らかにすることを主眼にし,以下に示すような研究成果を得た。(1)添加剤としてのPEGの有無にもかかわらず,高電流密度域ではZn中にCrの共析が認められたが,PEG含有浴からの電析物の場合のみ金属Crとして存在し,PEGを含有しない浴からの電析物では,Crは水酸化物の状態で存在していることがわかった。さらに,ZnとCrの共析に先立つ水素発生により陰極近傍において水素イオンが枯渇した結果、陰極界面pHが溶液本体に比べ上昇していることが確認できた。また,ZnおよびCrの部分分極曲線を測定した結果、PEG含有浴においてはZnの部分分極曲線が大きく卑な領域に移行していることが確認でき,PEGの役割はCr^<3+>が放電できるような陰極電位を達成させる分極剤として作用しているものと推定された。(2)PEG濃度および平均分子量の増加につれ,電析物中のCr含有量は増加し,このときZnの析出電位も大きく卑に移行し,Cr^<3+>の放電が可能な陰極電位が達成されていることが確認できた。また,電析物の表面外観もダークグレーの無光沢から金属Crの共析に起因した金属光沢のある電析皮膜へと変化することがわかった。そして,このようなPEGの分極作用を,高分子の陰極表面への吸着現象との関連において考察した。(3)電解時には,副反応として同時に水素発生が進行しており,陰極近傍で水素イオンの枯渇によりpHが上昇し,pH4付近で陰極表面にZnとCrがモル比2:1の割合で構成される複合水酸化物を生成することがわかった。したがって,Zn-Cr合金の電析は,この複合水酸化物を中間生成物として進行することを示し,PEGを含有する硫酸酸性浴からのZn-Cr合金電析過程の全貌を明らかにした。次世代防錆鋼板表面処理法として注目を浴びているZn-Cr合金の電析挙動および電解機構を明らかにすることを主眼にし,以下に示すような研究成果を得た。(1)添加剤としてのPEGの有無にもかかわらず,高電流密度域ではZn中にCrの共析が認められたが,PEG含有浴からの電析物の場合のみ金属Crとして存在し,PEGを含有しない浴からの電析物では,Crは水酸化物の状態で存在していることがわかった。さらに,ZnとCrの共析に先立つ水素発生により陰極近傍において水素イオンが枯渇した結果、陰極界面pHが溶液本体に比べ上昇していることが確認できた。また,ZnおよびCrの部分分極曲線を測定した結果、PEG含有浴においてはZnの部分分極曲線が大きく卑な領域に移行していることが確認でき,PEGの役割はCr^<3+>が放電できるような陰極電位を達成させる分極剤として作用しているものと推定された。(2)PEG濃度および平均分子量の増加につれ,電析物中のCr含有量は増加し,このときZnの析出電位も大きく卑に移行し,Cr^<3+>の放電が可能な陰極電位が達成されていることが確認できた。また,電析物の表面外観もダークグレーの無光沢から金属Crの共析に起因した金属光沢のある電析皮膜へと変化することがわかった。そして,このようなPEGの分極作用を,高分子の陰極表面への吸着現象との関連において考察した。(3)電解時には,副反応として同時に水素発生が進行しており,陰極近傍で水素イオンの枯渇によりpHが上昇し,pH4付近で陰極表面にZnとCrがモル比2:1の割合で構成される複合水酸化物を生成することがわかった。したがって,Zn-Cr合金の電析は,この複合水酸化物を中間生成物として進行することを示し,PEGを含有する硫酸酸性浴からのZn-Cr合金電析過程の全貌を明らかにした。次世代の鋼板の表面処理法として期待されている硫酸塩浴からのZn-Cr合金電析挙動を検討し,以下に示すような研究成果を得た。(1)添加剤としてのPEGの有無にもかかわらず,高電流密度域では電析Zn中にCrの共析が認められるが,PEG含有浴からの電析物の場合のみ金属Crとして存在し、PEGを含有しない浴からの電析物中では、Crは水酸化物の状態で存在していることがわかった。(2)分極曲線に及ぼすPEGの影響を検討した結果,PEGは陰極電位を大きく卑に移行させた。(3)電解時の陰極からの距離に対するpHプロファイルを測定した結果,陰極近傍においてはpH4付近までの上昇が認められた。さらに,加水分解生成物の同定からこのpH域においてCrとZnの水酸化物が同時に生成しているものと思われた。(4)PEG添加浴においては,Cr単独電析の場合と異なり,Zn-Cr合金浴においては,界面pH上昇の結果生成したZnとCrの複合酸化物(速度論的に容易に還元可能な化合物であると推定される)からの放電の結果合金が生成し,PEGはCrが十分放電できるような陰極電位を達成させる分極剤として作用しているものと推定された。したがって,PEGを含有しない浴においては,複合酸化物からのZnの還元のみが起こり,Crは電析Zn中に水和酸化物として混在する結果となった。また,PEGの分極効果に関する詳細なメカニズム,および合金浴においてCrとZnが同時に水酸化物を生成する原因に関しては不明であり,次年度の検討課題である。
KAKENHI-PROJECT-09555217
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次世代亜鉛合金系表面処理鋼板の開発
次世代の鋼板の表面処理法として期待されている硫酸塩浴からのZn-Cr合金電析挙動を検討し,以下に示すような研究成果を得た。(1)添加剤としてのポリエチレングリコール(PEG)の濃度および分子量の効果を調べた結果,PEG濃度0.1g/L以上で分子量1540以上の場合,電析Zn中にCrが金属状態で存在することが分かった。また,PEGが低濃度で低分子量の場合,電析物中では、Crは水酸化物の状態で存在していることがわかった。(2)分極曲線に及ぼすPEGの影響を検討した結果,PEG濃度0.1g/L以上で分子量1540以上の場合,陰極電位が約0.2V卑に移行した。(3)電解時の陰極近傍において生成しているZnCr複合水酸化物の生成挙動を調べた結果,PEGの有無にかかわらず,ZnとCrは2:1の比率で複合水酸化物を生成し,その構造は熱的に安定な非晶質状態であることが判明した。また,Cr単独水酸化物に比べZnCr複合水酸化物のCrはアルゴンスパッタリングにより還元されやすいことが判明した。(4)高濃度・高分子量PEG添加浴においては,Cr単独電析の場合と異なり,Zn-Cr合金浴においては,界面pH上昇の結果生成したZnとCrの複合酸化物(速度論的に容易に還元可能な化合物であると推定される)からの放電の結果合金が生成し,PEGはCrが十分放電できるような陰極電位を達成させる分極剤として作用しているものと推定された。したがって,PEGを含有しない浴においては,複合酸化物からのZnの還元のみが起こり,Crは電析Zn中に水和酸化物として混在する結果となった。次世代の防錆鋼板の表面処理法として期待されているZn-Cr合金電析挙動を水溶液(硫酸塩浴)および非水溶媒(メタノール浴)を用いて検討し,以下に示すような研究成果を得た.(1)高濃度・高分子量PEGを添加した水溶液においては,Cr単独電析の場合と異なり,Zn-Cr合金浴においては,界面pH上昇の結果生成したZnとCrの複合酸化物(速度論的に容易に還元可能な化合物であると推定される)からの放電の結果合金が生成し,PEGはCrが十分放電できるような陰極電位を達成させる分極剤として作用してるものと推定された.したがって,PEGを含有しない浴においては,複合酸化物からのZnの還元のみが起こり,Crは電析Zn中に水和酸化物として混在する結果となった.(2)メタノール浴においては,浴中のCr^<3+>イオン濃度比が低い場合にはCrは金属まで還元されず3価の化合物として電析物中に取り込まれるが,Cr^<3+>イオン濃度比が高くなると高Cr含有率のZn-Cr合金が電析した.また,合金電析の際のZnおよびCrの部分分極曲線を単独析出のそれらと比較したところ,Crの場合ほとんど変化は認められないものの,Znは合金として共析することにより大きく分極することがわかった.(3)Crの還元挙動に及ぼす合金浴への水添加の影響を調べた結果,溶媒中の水含有率が高くなると,Crは金属まで還元されず,3価の状態で電析物中に存在するものと思われた.さらに,金属状態でCrが析出する条件下ではZnの析出は大きく分極した.また,合金浴中におけるCr^<3+>錯体の構造を調べた結果,Zn-Cr合金が電析可能な浴組成では,Cr^<3+>はジクロロテトラアコクロム(III)イオンとして存在するものと思われた.上述のように,水溶液およびメタノール浴からのZn-Cr合金電析挙動には大きな相違が認められ,水溶液を用いタ場合のZn-Cr合金電析過程には水としての溶媒の特性が大きく関与していることがわかった.
KAKENHI-PROJECT-09555217
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実測困難な原子炉安全パラメータの不確かさ評価-分散共分散行列を用いた新概念
本研究では、実測が困難な原子炉の核的安全性パラメータの予測誤差を評価する理論を新たに確立し、その適用性を確認した。また、ランダムサンプリング法を用いて、原子炉の核特性予測計算に伴う不確かさ低減のための断面積調整法およびバイアス因子法を実機軽水炉体系に適用可能とした。以上のことから、研究の目的を全て達成するとともに、その波及効果として、当初の計画以上の成果をあげた。本研究の目的は、実測が困難な原子炉の核的安全性パラメータの予測誤差を評価する理論を新たに確立し、その適用性を確認する。本研究では、1これまで着目されてこなかった安全パラメータ間の誤差の相関(共分散)を評価する理論を確立し、2これを活用することで実測が困難な安全パラメータの予測誤差を推定することを可能とする。H24年度までの研究成果により、感度係数を用いて断面積の共分散を伝播させる方式は、(1)軽水炉の実機に対して適用を考えると、感度係数マトリックスが非常に大きなサイズとなり、現実的な計算時間での評価が困難であること、(2)軽水炉の核特性は燃焼及び熱水力フィードバック効果が大きな影響を及ぼすが、特に熱水力フィードバックを含む現象に対して一般化随伴計算を適用することが困難であること、等が明らかになってきた。そこで、H25年度は、ランダムサンプリング法をベースにして炉心特性誤差の相関を評価する研究を推進した。ランダムサンプリング法を用いる場合、推定した炉心特性誤差の相関に統計的な不確かさが含まれることとなる。従って、少ないサンプル数で精度良く炉心特性誤差の相関を見積もる必要がある。そのため、統計安全解析手法などで用いられているラテン超方格法を新たにランダムサンプリング法に用いる検討を行い、本手法の優位性を確認した。また、LHS法を用いて、加圧水型軽水炉および沸騰水型軽水炉の炉心特性誤差の相関の試算を試みた。また、本研究の波及的成果として、ランダムサンプリング法を用いた断面積調整法についてもその理論的枠組みと妥当性について確認を行った。なお、炉心特性誤差の相関の試算結果を用いて、実測が困難な安全パラメータの不確かさの予測を行った。本研究では、実測が困難な原子炉の核的安全性パラメータの予測誤差を評価する理論を新たに確立し、その適用性を確認した。また、ランダムサンプリング法を用いて、原子炉の核特性予測計算に伴う不確かさ低減のための断面積調整法およびバイアス因子法を実機軽水炉体系に適用可能とした。以上のことから、研究の目的を全て達成するとともに、その波及効果として、当初の計画以上の成果をあげた。本研究の目的は、実測が困難な原子炉の核的安全パラメータの予測誤差を評価する理論を新たに確立し、その適用性を確認する。本研究では、1これまで着目されてこなかった安全パラメータ間の誤差の相関(共分散)を評価する理論を確立し、2これを活用することで実測が困難な安全パラメータの予測誤差を推定することを可能とする。平成24年度は、炉心の安全パラメータ間の共分散を評価するための理論的枠組みの構築を実施した。炉心解析では、多群微視的断面積を出発点として、集合体計算、炉心計算を行って炉心特性を算出する。この流れに従い、微視的断面積の共分散データを入力値とし、感度係数行列を用いることで、これを非均質多群巨視的断面積、均質少数群巨視的断面積、炉心特性に伝播させる理論的な枠組みを構築した。また、この理論的に枠組みに基づいて単純化したPWR体系などで解析を実施し、妥当性を確認した。一方、感度係数行列を用いる手法は、感度係数行列を求めるための手法が複雑になる可能性があり、特に、入力パラメータと出力パラメータの双方の数がいずれも多い場合、計算量が現実的なものにならなくなる可能性あることも明らかになった。そこで、共分散を伝播させる方法として、感度係数行列を用いる方法に加えて、別途ランダムサンプリングを用いる方法についても検討を実施した。ランダムサンプリングでは、多変量正規分布に基づき相関のある複数のデータをサンプリングし、それを用いた多数回の解析により、共分散の伝播を計算する。感度係数を用いる手法が線形モデルを仮定しているのに比べ、より複雑かつ非線形性の高いシステムの不確かさ評価に有効であるとの知見を得た。本研究の目的は、実測が困難な原子炉の核的安全性パラメータの予測誤差を評価する理論を新たに確立し、その適用性を確認することである。本研究では、1これまで着目されてこなかった安全パラメータ間の誤差の相関(共分散)を評価する理論を確立し、2これを活用することで実測が困難な安全パラメータの予測誤差を推定することを可能とする。H24年度までの研究成果により、感度係数を用いて断面積の共分散を伝播させる方式は、(1)軽水炉の実機に対して適用を考えると、感度係数マトリックスが非常に大きなサイズとなり、現実的な計算時間での評価が困難であること、(2)軽水炉の核特性は燃焼及び熱水力フィードバック効果が大きな影響を及ぼすが、特に熱水力フィードバックを含む現象に対して一般化随伴計算を適用することが困難であること、等が明らかになってきた。そこで、H25年度は、ランダムサンプリング法をベースにして炉心特性誤差の相関を評価する研究を推進した。また、本研究の波及的成果として、ランダムサンプリング法を用いた断面積調整法についてもその理論的枠組みと妥当性について確認を行った。なお、炉心特性誤差の相関の試算結果を用いて、実測が困難な安全パラメータの不確かさの予測を行った。
KAKENHI-PROJECT-24561040
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実測困難な原子炉安全パラメータの不確かさ評価-分散共分散行列を用いた新概念
H26年度は、H25年度までの研究成果を元にして、ランダムサンプリング法によるPWRおよびBWR実機炉心特性誤差の相関を評価した。また、応用技術として、ランダムサンプリング法を用いた断面積感度係数評価法、断面積調整法、バイアス因子法について検討を行い、いずれについても実用化の見通しを得た。さらに、ランダムサンプリング法は統計的手法であり、解析結果に統計誤差を含むことから、ブートストラップ法を用いたランダムサンプリング手法の統計誤差推定法を開発した。以上のことから、研究の目的を全て達成するとともに、その波及効果として、当初の計画以上の成果をあげた。原子力工学平成25年度の計画では、動力炉の集合体核定数に対する共分散行列の評価を実施する予定であったが、ラテン超方格サンプリング法を用いることにより、炉心特性誤差の共分散行列を試算することに成功した。従って、当初の計画以上に研究が進捗していると判断している。平成24年度の計画は、感度係数行列を用いた分散共分散行列の伝播に関する理論的枠組みの構築であったが、これに加えて、ランダムサンプリング法による共分散行列の伝播に関する検討を実施した。従って、当初の計画以上に進展していると判断している。平成26年度は、本研究の最終年度であり、これまでに開発したランダムサンプリング法に基づく手法により、軽水炉および革新炉に対する炉心特性誤差の相関を評価する。この相関を用いた実測困難なパラメータの不確かさ予測については、H25年度の成果にて、その妥当性が確認されている。当初の計画では、炉心体系における一般化随伴計算手法を検討予定であったが、これはランダムサンプリング法によって代替する予定である。なお、実測が困難な安全パラメータの不確かさを低減する手法として、断面積調整法に新たに着目し、ランダムサンプリング法を用いた断面積調整法の検討を推進し、実機動力炉に対する適用性を確認する。平成25年度は、安全パラメータの誤差の相関(共分散)を評価するための解析システムに関する研究に取り組む予定である。具体的には、MOCを用いた一般化中性子束および一般化随伴中性子束の解析手法を新たに開発する。また、軽水炉および高速炉に対して、燃料集合体核定数の共分散行列の評価を行う。なお、解析にあたっては、解析手法の汎用性と実用性を考慮して、平成24年度に開発したランダムサンプリング法を主体とした解析方法を採用し、集合体核定数の共分散行列の評価を試みる。人件費・謝金の所要額が少なかったことによる。論文投稿料および学会参加費として使用する予定である。研究経費は、当初の計画通り、成果発表および打ち合わせのための国内旅費および海外旅費、研究補助のための謝金、成果発表のための論文投稿料などに使用する予定である。
KAKENHI-PROJECT-24561040
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24561040
高品質n型ダイヤモンドの高速合成
本課題研究では、ダイヤモンド電子デバイス実現において最も重要な課題である、(i)高品質ダイヤモンドの高速合成、及び(ii)n型ダイヤモンド薄膜合成に焦点を合わせて研究を進めた。その結果、前者の研究においては、高温・高密度プラズマを適用することが非常に有効であることを見いだした[研究業績1,3]。続いて、この高速合成された薄膜に対して電子線やレーザ光を照射し、励起されたキャリヤの拡散長等を評価したところ、得られた薄膜中でのキャリヤの拡散長が10μm以上と従来ダイヤモンド薄膜と比べて非常に長いことが分かった[研究業績1,3,4]。また後者においては、非特殊高圧ガスを用いて作製したタイヤモンド(111)薄膜のHall測定において、世界で始めて明確なn型特性を観測し、また幾つかの新たな重要な知見を得た[論文投稿中]。石英製反応容器を持つCVD装置を用いた場合、水素プラズマに対する石英の耐性が低いため、Siの膜中への混入だけでなく、プラズマエッチングに伴って発生した酸素が成長機構に大きな影響を与え、薄膜の品質を大きく左右することが明らかになった。合成時においては、プラズマが石英製の反応容器及びホルダーに接している。特に高温・高密度プラズマを用いたときはこれが顕著となるため、高温・高密度プラズマを適用するためには、反応容器やホルダー部を金属製に変更することが不可欠であろう。一方、ドーピングガスについては、非特殊高圧ガスであるトリメチルフォスフィンP(CH_3)_3を用いると、リンの取り込み率が約2桁も改善することを発見した。この特徴を生かすことにより、取り込み率が非常に小さい(100)薄膜にもリンを効果的にドープできると予想される。残念ながら、本研究期間中に、比較的平坦はリンドープ(100)薄膜を作製することはできたが、これらから明確なn型を観測することができなかった。他の半導体デバイスを圧倒する高性能ダイヤモンド電子デバイスの実現には高品質n型(100)薄膜の作製が急務である。本研究では更に、この手法により得た高濃度n型ダイヤモンド層を、申請者らが独自に開発した選択成長技術と組み合わせることにより、n型ダイヤモンドへのオーミック電極の形成に成功した[研究業績2]。今後のn型ダイヤモンド研究に不可欠な技術となろう。高品質n型ダイヤモンド薄膜作製に不可欠な合成技術を確立するために、今年度は(i)高品質ノンドープダイヤモンド薄膜の高速合成、及び(ii)リンドープn型ダイヤモンド(111)薄膜合成に焦点をおいて研究を進めた。前者については、高出力マイクロ波プラズマCVD装置を用いて進めた。ダイヤモンドの伝導帯最下端は真空準位に近いため、励起された電子は結晶欠陥に大きく影響されることが予想される。従って、n型伝導を得るためには、結晶欠陥の少ない高品質ダイヤモンドである必要がある。そこで高速合成された薄膜に対して電子線やレーザ光を照射し、励起されたキャリヤの拡散長等を評価することにより、薄膜の結晶性を調べた。その結果、得られた薄膜中でのキャリヤの拡散長が10μm以上と非常に長いことが分かった。これは、高速合成されたダイヤモンド薄膜の欠陥密度が十分小さい事を示唆している。一方、後者については、今年度の実施計画に述べたように、現有設備を用い、また下地として既にn型ダイヤモンドの作製が可能である(111)基板上での作製を試みた。リンドープガスには、特殊高圧ガスに指定されていないトリメチルリンを用いた。これは、利用に際して特殊な設備が必要でない事、また危険性もいくらか少ない事等、実験室系で用いる上では利点が多いためである。フォスフィンでの作製条件に準じて合成を行うと、フォスフィンによるリンドープダイヤモンド薄膜に比べて結晶品質は同程度に高品質であるが、抵抗は3桁程度高くなった。トリメチルリンの解離度がフォスフィンのそれに比べてかなり小さいことを示唆している。合成圧力を上げプラズマを高密度化し、合成温度も上げたところ、抵抗値もフォスフィンのそれと同じ程度になった。しかしながら、結晶品質は低下したため、n型判定ができなかった。トリメチルリンを用いてn型ダイヤモンドを得るためには、薄膜の高品質化とトリメチルリンの解離を進める必要があろう。本課題研究では、ダイヤモンド電子デバイス実現において最も重要な課題である、(i)高品質ダイヤモンドの高速合成、及び(ii)n型ダイヤモンド薄膜合成に焦点を合わせて研究を進めた。その結果、前者の研究においては、高温・高密度プラズマを適用することが非常に有効であることを見いだした[研究業績1,3]。続いて、この高速合成された薄膜に対して電子線やレーザ光を照射し、励起されたキャリヤの拡散長等を評価したところ、得られた薄膜中でのキャリヤの拡散長が10μm以上と従来ダイヤモンド薄膜と比べて非常に長いことが分かった[研究業績1,3,4]。また後者においては、非特殊高圧ガスを用いて作製したタイヤモンド(111)薄膜のHall測定において、世界で始めて明確なn型特性を観測し、また幾つかの新たな重要な知見を得た[論文投稿中]。石英製反応容器を持つCVD装置を用いた場合、水素プラズマに対する石英の耐性が低いため、Siの膜中への混入だけでなく、プラズマエッチングに伴って発生した酸素が成長機構に大きな影響を与え、薄膜の品質を大きく左右することが明らかになった。合成時においては、プラズマが石英製の反応容器及びホルダーに接している。
KAKENHI-PROJECT-14750237
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高品質n型ダイヤモンドの高速合成
特に高温・高密度プラズマを用いたときはこれが顕著となるため、高温・高密度プラズマを適用するためには、反応容器やホルダー部を金属製に変更することが不可欠であろう。一方、ドーピングガスについては、非特殊高圧ガスであるトリメチルフォスフィンP(CH_3)_3を用いると、リンの取り込み率が約2桁も改善することを発見した。この特徴を生かすことにより、取り込み率が非常に小さい(100)薄膜にもリンを効果的にドープできると予想される。残念ながら、本研究期間中に、比較的平坦はリンドープ(100)薄膜を作製することはできたが、これらから明確なn型を観測することができなかった。他の半導体デバイスを圧倒する高性能ダイヤモンド電子デバイスの実現には高品質n型(100)薄膜の作製が急務である。本研究では更に、この手法により得た高濃度n型ダイヤモンド層を、申請者らが独自に開発した選択成長技術と組み合わせることにより、n型ダイヤモンドへのオーミック電極の形成に成功した[研究業績2]。今後のn型ダイヤモンド研究に不可欠な技術となろう。
KAKENHI-PROJECT-14750237
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増殖因子と超音波療法を用いた象牙質再生への展開
本研究は、増殖因子(BMP;Bone Morphogenetic Protein)および低出力パルス超音波(超音波療法)を、直接覆髄法に応用した場合の象牙質再生(形成)の効果を検討した。直接覆髄材として増殖因子(BMP)配合覆髄材を用いた場合、非BMP配合覆髄材の場合と比べて修復象牙質形成の促進が認められた。さらに低出力パルス超音波(超音波療法)を用いることで象牙質形成が亢進していた。以上より、直接覆髄法に増殖因子(BMP)と低出力パルス超音波(超音波療法)の両者を用いることにより、象牙質形成が促進されることが示唆された。本研究は硬組織形成を促進し治癒を促す効果のある低出力パルス超音波(超音波療法)と、硬組織誘導脳を有する増殖因子(BMP)に着目し、両者を象牙質再生に用いた場合の効果を検討することを目的として実施している。昨年度の研究から、BMP配合覆髄材を用いて直接覆髄したところ、BMP無配合の場合と比べて窩洞内部(歯冠側)に新しく象牙質様の硬組織形成が認められたことが示唆された。そこで24年度は、BMPによる硬組織形成に対する低出力パルス超音波の効果を検討する目的で、BMP配合吸収性材料を硬組織(骨)に移植し超音波療法を施した。その結果、超音波療法を併用した場合、硬組織の緻密度が亢進される可能性が示唆された。本研究は、硬組織誘導能を有する増殖因子(BMP)と骨形成を促進し治癒を促すことが知られている低出力超音波パルス(LIPUS)に着目し、両者を象牙質再生に用いた場合の効果を検討することを目的として実施した。全身麻酔下にて実験動物の健全永久歯に窩洞形成を行いラウンドバーにて実験的露髄部を作成し、ネオクリーナー・オキシドール交互洗浄、止血を行った。これにより歯髄腔と交通した歯冠側空隙が形成される。その後増殖因子(BMP)配合覆髄材を用いて直接覆髄を施し、コンポジットレジン充填を行った。移植後の観察期間中はLIPUSを用いて照射した群(BMP+LIPUS群)と照射しない群(BMP群)に分けて評価した。また覆髄材としてスキャホールドを用い直接覆髄を施した群(コントロール群)とした。その結果、BMP群、BMP+LIPUS群はいずれもコントロール群と比べて有意に修復象牙質が多く形成されていた。さらに、BMP+LIPUS群は他の2群と比べて修復象牙質形成が亢進していた。以上より、増殖因子(BMP)と低出力超音波パルス(LIPUS)の両者を用いることにより、象牙質形成が促進されることが示唆された。本研究は、増殖因子(BMP;Bone Morphogenetic Protein)および低出力パルス超音波(超音波療法)を、直接覆髄法に応用した場合の象牙質再生(形成)の効果を検討した。直接覆髄材として増殖因子(BMP)配合覆髄材を用いた場合、非BMP配合覆髄材の場合と比べて修復象牙質形成の促進が認められた。さらに低出力パルス超音波(超音波療法)を用いることで象牙質形成が亢進していた。以上より、直接覆髄法に増殖因子(BMP)と低出力パルス超音波(超音波療法)の両者を用いることにより、象牙質形成が促進されることが示唆された。本研究は硬組織形成を促進し治癒を促す効果のある低出力パルス超音波(超音波療法)と、象牙質誘導能を有する増殖因子(BMP)に着目し、両者を象牙質再生に用いた場合の効果を検討することを目的として実施している。23年度ではまず、実験動物を用いて増殖因子(BMP)と覆髄材(スキャホールド)の有効性について検討した。臼歯に実験的露髄形成後、BMP配合覆髄材およびBMP無配合覆髄材を露髄面に被覆した。その結果、窩洞内部(歯冠側)に新しく象牙質形成が認められ、BMP配合した場合はBMP無配合より有意に多く形成された。これは歯髄細胞にBMPを作用させると、歯髄細胞から象牙芽細胞へ分化が促進され、歯冠側に象牙質形成が促進されたためではないかと考えられる。今後、低出力パルス超音波を用いた場合の効果について研究を進める予定である。これまでの研究結果より、BMP配合覆髄材を用いて直接覆髄したところ、新しく象牙質様の硬組織形成が認められたことが示唆された。またBMPによる硬組織形成に対する低出力パルス超音波の効果を検討する目的で、BMP配合成体吸収性材料を硬組織(骨)に移植し、超音波療法を施したところ、硬組織の緻密度が亢進される可能性が示唆されている。25年度は、増殖因子移植と超音波療法を組み合わせた研究の追加実験を行うとともに、これまでの研究成果を取りまとめる予定であり、おおむね順調に進展している。本研究は硬組織形成を促進し治癒を促す効果のある低出力パルス超音波(超音波療法)と、象牙質誘導能を有する増殖因子(BMP)に着目し、両者を象牙質再生に用いた場合の効果を検討することを目的としている。現時点(23年度)では、実験動物を用いて増殖因子(BMP)と直接覆髄材(スキャホールド)を直接覆髄に応用した結果、象牙質再生への有用性が認められている。24年度より低出力パルス超音波を用いた場合の効果を検討する予定としており、おおむね順調に進展している。
KAKENHI-PROJECT-23592797
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増殖因子と超音波療法を用いた象牙質再生への展開
これまで、BMP配合覆髄材を用いることで、新しく象牙質様の硬組織形成が認められたことと、BMP配合成体吸収性材料を硬組織(骨)に移植し、超音波療法を施したところ、硬組織の緻密度が亢進される可能性が示唆されている。今後は増殖因子移植と超音波療法を組み合わせた研究の追加実験を行うとともに、これまでの研究成果を取りまとめ成果発表を行う予定である。今後は低出力パルス超音波を用いた場合の効果について評価する。増殖因子(BMP)をスキャホールドに配合した覆髄材を用いて直接覆髄を施し、コンポジットレジン充填を行う。覆髄後の観察期間中に低出力パルス超音波を用いて照射する。観察期間終了後、象牙質再生について増殖因子と低出力パルス超音波の効果について評価する。これまでの研究結果を合わせて、増殖因子と低出力パルス超音波(超音波療法)の効果について総合的に評価を行う。該当なし。次年度は研究遂行のための経費が引続き必要となる。実験動物購入費用、増殖因子(BMP)、試薬、手術用器具、評価等に必要な器具購入費用が見込まれる。また、研究成果発表のための費用として学会発表や論文投稿等に必要な経費が見込まれる。
KAKENHI-PROJECT-23592797
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偏波・フェーズドアレイレーダー統合システムを利用した積乱雲電荷構造の超高速解析
平成30年度は、当該課題の最終年度として研究成果の総括を行った。前年度までの研究により明らかになった、積乱雲内の降水粒子・気流場・電荷分布の間にある密な関係性に関する知見に基づいて、とりわけフェーズドアレイレーダーによる高速スキャン観測データを用いて、積乱雲内の電荷構造に関する時間発展の理解深化に取り組んだ。複数サイトの同時観測の結果として導出される気流ベクトルのほか、単一サイトの観測で得られるドップラー速度場から推定される気流場について、先行研究で開発された技術を応用して時間発展の解析を行い、得られた知見を取りまとめた。特に2014年9月10日に大阪府周辺で発生したダウンバーストを伴う雷雲事例については、積乱雲内で生じる強い下降気流によって電荷の存在する高度が短時間に下降する様子が明らかになった。先行研究によって、当該事例では僅か20分ほどの間に降水コアの落下と中層の水平風収束に伴う強い下降気流が発生する様子が確認されていたが、本研究では新たに、それらに伴って雷放電の開始高度が明瞭に下降する様子が明らかになった。積乱雲最上部の正電荷領域およびその下部の負電荷領域の間で生じる放電の開始高度が、当初は約8km付近に位置していたものの、下降流の発生によって約6kmにまで下がり、極めて敏感な時間応答を有することが確認された。本研究課題では積乱雲の盛衰に伴う電荷構造の変化について、雷放電3次元観測や、二重偏波レーダーおよびフェーズドアレイレーダーを用いた観測と、事例解析や統計解析、および夏季・冬季の比較解析の手法を用いて、多角的な理解に取り組んだ。得られた成果は1分未満の極めて高い時間分解能で、積乱雲の電荷構造の時間発展を明らかにするものであり、当該課題の当初目標の達成に至った。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。積乱雲内の電荷構造は発雷過程、雷放電の進展過程と強く結びつく、積乱雲の最も基本的な性質の一つである。電荷構造は現在、三重極分布と考えられているものの、統一的見解はない。積乱雲の盛衰に伴い、大きく変化する電荷構造を理解するためには、雷放電3次元可視化だけでなく、偏波レーダー観測が不可欠である。しかしながら、積乱雲内部構造は数分という非常に短い時間で変化するのに対し、偏波レーダー観測は1ボリュームスキャンに数分程度必要なため、内部構造の速い変化を捉えることができない。本研究ではC帯偏波レーダーとX帯フェーズドアレイレーダーを組み合わせた「偏波・フェーズドアレイレーダー統合システム(偏波PAR)」を構築し、北関東平野を中心に雷放電3次元観測を合わせて積乱雲の観測を行う。偏波PAR・雷放電3次元観測から積乱雲内の降水粒子分布・電荷構造を高時空間分解能で推定し、積乱雲の電荷構造の時間発展の標準モデルを構築する。研究初年度の平成27年度では平成28年度から開始する本観測に向けてその準備を行った。即ち、気象研究所で運用しているC帯二重偏波レーダーとフェーズドアレイレーダーを組み合わせて偏波PARを実現するための必要な解析技術の開発を行った。また雷放電観測装置BOLTの試験観測を実施し、雷放電標定アルゴリズムの整備等を行った。研究初年度内に研究2年目以降の本観測の準備を完了した。さらにフィージビリティスタディとして大阪平野の雷観測結果の事例解析を行った。この事例解析で上昇気流発生に伴い、短時間で電荷構造が大きく変化することを観測から示した。この解析結果は積乱雲内部の鉛直流と電荷構造の因果関係を強く示す結果であり、ここで得た知見を平成28年度以降の本観測の解析に活かしていきたい。研究初年度である平成27年度は予定通り、偏波PARを実現するための解析技術の開発、雷放電三次元標定装置(BOLT)の導入・試験観測・標定アルゴリズムの整備等を行った。具体的には偏波PARのデータ収集・管理システムの整備、解析アルゴリズム開発、品質管理手法の高度化などを行い、平成28年度の偏波PAR本観測に向けた準備を進めた。一方、雷観測機BOLTの準備も進めた。夏季に試験観測を実施し、気象庁が運用している二次元雷放電標定装置の標定結果に対しBOLTの標定点がその誤差範囲内であることを確かめた。平成28年度に実施する観測の事前準備が予定通り完了した。積乱雲内の電荷構造は発雷過程、雷放電の進展過程と強く結びつく、積乱雲の最も基本的な性質の一つである。電荷構造は、古典的には正、負、正の三重極分布と考えられているものの、統一的見解はない。積乱雲の盛衰に伴い、大きく変化する電荷構造を理解するためには、雷放電3次元可視化だけでなく、偏波レーダー観測が不可欠である。しかしながら、積乱雲内部構造は数分という非常に短い時間で変化するのに対し、偏波レーダー観測は1ボリュームスキャンに数分程度必要なため、内部構造の速い変化を捉えることができない。本研究ではC帯偏波レーダーとX帯フェーズドアレイレーダーを組み合わせた「偏波・フェーズドアレイレーダー統合システム(偏波PAR)」を構築し、雷放電3次元観測を合わせて、積乱雲の観測を行う。偏波PAR・雷放電3次元(BOLT)観測から積乱雲内の降水粒子分布および電荷構造を高時空間分解能で推定し、積乱雲の電荷構造の時間発展の標準モデルを構築する。
KAKENHI-PROJECT-15H03728
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偏波・フェーズドアレイレーダー統合システムを利用した積乱雲電荷構造の超高速解析
平成28年度では、研究初年度に整備した偏波PARによる観測とBOLTを用いた雷観測を本格的に実施し、雷放電に伴う電荷構造の観測に成功した。このうち顕著な事例として、2016年7月14日に埼玉県東部で発生した対流セルの事例が挙げられる。同時例では1分あたりの雷放電数が40を超える、非常に激しい雷活動を伴った。偏波PARの解析により、この対流セル内には少なくとも4つの降水コアが存在しており、それぞれ10分程度で発達・衰退を繰り返していることが分かっている。偏波パラメータの解析により、雷活動が活発だった成長期から成熟期の対流セルでは過冷却水や霰が多く存在する一方で、雷活動が弱まり始める衰退期の対流セルでは過冷却水が減少し、霰を多く含む層が卓越していることが分かった。電荷構造のモデル化を行う上で重要な観測に成功した。来年度以降、解析事例を増やし、モデル構築を進める。平成27年度までに構築した観測システムを用いて、実観測を実施した。観測期間中、測器が問題なく動作し、観測データを無事取得できた。また初期解析結果では降水種別判定にも成功しており、今後の解析結果に期待が持てる。平成29年度は、これまでの観測で取得された北関東周辺(夏季)および庄内周辺(冬季)の雷放電3次元データの解析を行い、積乱雲の構造と雷放電活動の関係性に関する調査を実施した。雷放電点の高度とともに、気温の鉛直プロファイルを用いて放電点の温度を算出し、冬季と夏季に分けて統計を取った。その結果、夏季雷と冬季雷では電荷分離が活発になる高度は大きく異なるものの、温度で見れば、-10°C付近で最も活発化することが明らかになった。この成果は、-10°C付近で電荷分離が活発になる着氷電荷分離機構が、夏季雷だけでなく冬季雷でも同様に働くことを示唆する。さらに、放電点の水平方向の広がりを表す指標として放電長を定義し、その統計的な性質を調査したところ、夏季雷に比べて冬季雷は2倍を超える値を有することが明らかになった。冬季には、比較的に弱い上昇流を持つ複数の積乱雲がバンド状に連なる構造を有し、その結果として電荷分布が水平に広がることを示唆する。さらにこのことは、冬季雷における移動電荷量が夏季に比べて大きいという、よく知られた観測的事実と整合的な結果と考えられる。これらの成果は、積乱雲の降水構造と電荷分布が密接な関わりを有することを示す。そこでその時間変化を捉えるため、フェーズドアレイレーダーを用いた積乱雲構造の高速立体解析に取り組んだ。平成29年夏季に得られた観測データを用いて、積乱雲内の降水領域の振る舞いを30秒毎の高頻度で立体的に導出したところ、その盛衰が極めて細やかに捉えられることが明らかになった。さらにこの過程で、積乱雲の動的理解のためには気流構造を精度よく導出することの必要性が示された。最終年度にあたる次年度は、この観点から解析研究に取り組み、当該課題全体の達成を目指す。平成29年度に得られた成果は、年度当初の実施計画にある積乱雲内電荷構造とその時間変化に関する要素目標を満たすものである。さらに、現象の本質的理解のためには気流構造の精密解析の必要性が新たに明らかになり、次年度につながる成果が得られた。最終年度である平成30年度は、この観点から解析を進めて積乱雲の気流構造の時間変化を明らかにするとともに、平成29年度までの知見を組み合わせることにより、当該課題全体の達成が見込まれる。
KAKENHI-PROJECT-15H03728
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H03728
経皮ワクチンの最適化を目指したアジュバントの探索
我々は、経皮ワクチンデバイスとして皮膚内溶解型マイクロニードルを開発し、ニードル内に封入した抗原に対して注射による投与と同等の免疫応答を誘導出来る事を報告した。この研究においては、皮膚内溶解型マイクロニードルを用いた経皮ワクチンの最適化を図る為にアジュバントの探索を行った。その結果、Monophosphoryl Lipid A Lipid A (MPLA)とODN1826が経皮ワクチンにおいてモデル抗原の鶏卵白アルブミンに対する抗体産生を増強することを明らかにした。以上の結果からODN1826とMPLAは、経皮ワクチンアジュバントとして有用であろうと思われる。我々は、経皮ワクチンデバイスとして皮膚内溶解型マイクロニードルを開発し、ニードル内に封入した抗原に対して注射による投与と同等の免疫応答を誘導出来る事を報告した。この研究においては、皮膚内溶解型マイクロニードルを用いた経皮ワクチンの最適化を図る為にアジュバントの探索を行った。その結果、Monophosphoryl Lipid A Lipid A (MPLA)とODN1826が経皮ワクチンにおいてモデル抗原の鶏卵白アルブミンに対する抗体産生を増強することを明らかにした。以上の結果からODN1826とMPLAは、経皮ワクチンアジュバントとして有用であろうと思われる。マウスの表皮細胞におけるToll様受容体(TLR)の発現プロファイルを解析した結果、ランゲルハンス細胞、ケラチノサイト及び真皮樹状細胞においてTLR4とTLR9の高発現が認められた。そこで次に各種TLRリガンド(TLR-L)とニワトリ卵白アルブミン(OVA)を混合して含有させたマイクロニードルをマウスに貼付しアジュバント活性を評価したところ、MPLAあるいはODN1826を併用した群で、OVA単独免疫群と比較して、顕著な抗体価の上昇が認められた。IgG抗体のサブクラスを解析では、Th2型抗体であるIgG1の抗体価は各群とも高値を示しており顕著な差は認められなかった一方、Th1型抗体であるIgG2b抗体に関しては、MPLA(TLR4のリガンド)あるいはODN1826(TLR9のリガンド)を併用した群で著しい抗体産生の増強が認められた。また粘膜面におけるIgA抗体の誘導について検討した結果、TLR-Lを併用した場合でも経皮免疫ではIgA抗体の産生は認められなかった。さらに最終免疫から2週間後のリンパ組織におけるIFN-γならびにIL-4産生細胞数を解析したところ、MPLAあるいはODN1826を併用した群では、所属リンパ節、脾臓のどちらにおいても、OVA単独免疫群と比較してIFN-γ産生細胞数は2倍以上増加していたのに対し、IL-4産生細胞数は減少していた。またTLR-Lの安全性評価については、TLR-Lを併用した群における紅班はOVA単独群と同様に消失しており、TLR-Lの皮膚刺激性は極めて低いと考えられた。またMPLAおよびODN1826併用群ともに未処理群と同様の体重増加曲線を描くとともに、主要臓器の重量についても顕著な差は認められなかった。さらに、血中の肝臓および腎臓の組織障害マーカーについても異常は認められなかった。昨年度に経皮免疫においてアジュバント候補物質であるMPLAとODN1826に高い抗体産生増強効果を認めた。そこで今年度は、両者の経皮アジュバント活性に寄与する細胞および分子の同定、並びにそれらの作用機序の解明に取り組んだ。C57BL/6マウス由来のランゲルハンス細胞(LC)、真皮樹状細胞(dDC)にMPLA並びにODN1826を細胞傷害性を示さない濃度範囲内で作用させた時、MHC class I分子の発現が僅かに上昇した。それに対してCD40、CD80、CD86、CCR7、MHC class II分子の発現は大きく増加した。またTNF-α、IL-1β、IL-6、IL-12のサイトカインの産生増強も認められ、TNF-α、IL-1βに関してはMPLAを作用させた場合の方が産生量は多く、IL-12はODN1826を作用させた場合の方が産生量は多かった。一方、TLR4低応答性のC3Hマウス由来のLCやdDCを用いて同様の検討を行った結果、ODN1826を作用させた場合はCD40、CD80、CD86、CCR7、MHC class II分子の発現は大きく増加したが、MPLAを作用させた場合は、それらの発現に変化は認められなかった。さらにC57BL/6マウスとC3Hマウス由来のケラチノサイト(KC)では、ODN1826を作用させることにより、TNF-α、IL-1βならびにIL-6の産生増強が見られた一方で、MPLAを作用させた場合、C57BL/6マウス由来KCにおいてはTNF-α、IL-1βおよびIL-6の産生増加が見られたのに対して、C3Hマウス由来KCにおいては、どのサイトカインについても有意な増強は認められなかった。現在、MPLA並びにODN1826の経皮アジュバント効果についてさらに詳細に検討中である。生物薬剤学今年度検討予定であった項目については、全て完了しており、研究は順調に進展している。今年度にマイクロニードルを用いて各種TLR-L(TLR-L1TLR-L9)の中から絞り込んだ経皮ワクチン用のアジュバント候補物質(MPLAとODN1826)を用い、LC、KCおよびdDCにおけるMHC分子や共刺激分子の発現誘導をフローサイトメトリーにより解析する。さらにMPLAとODN1826で刺激した細胞の培養上清を回収し、各種サイトカイン濃度をELISA法により測定する。
KAKENHI-PROJECT-25670076
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25670076
経皮ワクチンの最適化を目指したアジュバントの探索
さらにLCやdDCを欠損させたマウス並びにTLR4或いはTLR9を欠損したマウスを用い、in vivoにてアジュバント候補物質の免疫誘導・免疫増強特性を解析する。これらの結果から、申請者が絞り込んだ経皮ワクチン用アジュバント候補物質による免疫誘導並びに免疫増強の機序を探り、経皮ワクチン用アジュバントとしての可能性を評価する。本研究では、経皮ワクチンにおけるアジュバント候補物質を探索するのが目的である為、使用する抗原(OVA)は、アジュバント様物質(特にエンドトキシン)が全く含まれていない抗原を使用しなければならない。このエンドトキシンが含まれていないOVAは、非常に高価であり、これまでは一社からしか販売されていなかった。しかし別の試薬会社が我々の要望により、新たにエンドトキシンを含まないOVAを開発することになり、その試薬会社が新たに開発した試薬をサンプルとして提供して頂いた為、購入する費用を削減することが出来た。さらに購入予定だったTLR-Lの一部を共同研究者から提供して頂いた為、その費用を削減することが出来た。また、昨年度第45回日本小児感染症学会で発表するにあたり、出張費を支出する予定であったが、学会から一部支給されたため、出張費の削減につながった。今年度の実験計画として、当初予定していた研究計画に加えて今年度新たにTLR4及びTLR9を欠損したマウスでもアジュバント効果を検討することとした。昨年度に使用予定だった約72万円については、この検討を行うための費用として予定している。
KAKENHI-PROJECT-25670076
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25670076
ヒト口腔扁平上皮癌におけるヒトパピローマウイルスの関与に関する研究
1.頭頸部扁平上皮癌組織におけるヒトパピローマウイルスDNAの検索結果頭頸部扁平上皮癌56例について,PCR法でHPV6型および11型DNAを検索した結果,HPV6型は検出されなかったが,HPV11型は舌癌の1例に検出された。対照として,検索した正常歯肉10例では,HPV6型と11型のいずれも検出されなかった。HPV16型DNAは,頭頸部扁平上皮癌の77例中26例(33.8%)に検出された。特に,喉頭癌では77.8%と高い検出率を示し,口腔癌では頬粘膜癌で57.1%と検出率が高かった。HPV18型は,77例中3例(3.9%)に検出されたが,その3例はすべて頬粘膜癌であり,頬粘膜癌に限定して考えると,42.9%と高率に検出されたことになる。対照として検索した正常歯肉10例ではいずれも検出されなかった。HPV16型と18型の両者が検出されたのは頬粘膜癌の2例で18型単独で検出されたのも頬粘膜癌の1例で認められた。頭頸部に発生する扁平上皮癌症例にも,HPVDNAの認められる例があり,特にHPV16型の検出率が高いことが明らかとなった。2.口腔扁平上皮癌における染色体欠失についての検索結果HF12-32をプローブとして,口腔扁平上皮癌における3番染色体短腕の欠失を検索した結果,11例中6例がinformative caseで,いずれの腫瘍組織にも,ヘテロ接合性の消失は認められなかった。また,YNZ22をプローブとして17番染色体短腕の欠失を検討した結果,8例がinformative caseであり,このうち6例に染色体欠失が認められた。以上の結果より,口腔扁平上皮癌における染色体欠失は,子宮頸癌とは異なり,3番染色体短腕の欠失頻度は低く,17番染色体短腕の欠失頻度の高いことが判明した。1.頭頸部扁平上皮癌組織におけるヒトパピローマウイルスDNAの検索結果頭頸部扁平上皮癌56例について,PCR法でHPV6型および11型DNAを検索した結果,HPV6型は検出されなかったが,HPV11型は舌癌の1例に検出された。対照として,検索した正常歯肉10例では,HPV6型と11型のいずれも検出されなかった。HPV16型DNAは,頭頸部扁平上皮癌の77例中26例(33.8%)に検出された。特に,喉頭癌では77.8%と高い検出率を示し,口腔癌では頬粘膜癌で57.1%と検出率が高かった。HPV18型は,77例中3例(3.9%)に検出されたが,その3例はすべて頬粘膜癌であり,頬粘膜癌に限定して考えると,42.9%と高率に検出されたことになる。対照として検索した正常歯肉10例ではいずれも検出されなかった。HPV16型と18型の両者が検出されたのは頬粘膜癌の2例で18型単独で検出されたのも頬粘膜癌の1例で認められた。頭頸部に発生する扁平上皮癌症例にも,HPVDNAの認められる例があり,特にHPV16型の検出率が高いことが明らかとなった。2.口腔扁平上皮癌における染色体欠失についての検索結果HF12-32をプローブとして,口腔扁平上皮癌における3番染色体短腕の欠失を検索した結果,11例中6例がinformative caseで,いずれの腫瘍組織にも,ヘテロ接合性の消失は認められなかった。また,YNZ22をプローブとして17番染色体短腕の欠失を検討した結果,8例がinformative caseであり,このうち6例に染色体欠失が認められた。以上の結果より,口腔扁平上皮癌における染色体欠失は,子宮頸癌とは異なり,3番染色体短腕の欠失頻度は低く,17番染色体短腕の欠失頻度の高いことが判明した。
KAKENHI-PROJECT-06771916
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06771916
林業における死傷事故を予防低減する高機能性蛍光色彩デザイン
我が国は国土の約70%を森林が占める森林国だが、森林の維持管理事業を担う「林業」は極めて死傷事故が多く、その改善が渇望されている。本研究では、林業の安全性を高めるための改善方策として、蛍光色彩による注意喚起効果・意思伝達機能に注目した。森林環境を構成する色彩を数値化し、比較する形で安全性能の高い蛍光色彩の用法を求め、作業服や装備などに反映する高機能性蛍光色彩デザインシステムの構築を目指している。平成30年度は、測定実施に先立って、蛍光色彩の利用を規定した各種工業規格の確認と、改訂動向の把握を行った。JIS Z9103の改訂やEN1150のJIS化の遅れなど流動的な状況に注意を要する。また、使用する計測器類の性能について事前評価を行い、測定手順の構築を進めた。(1-1)森林環境の色彩測定について、青森県・秋田県・福島県・栃木県・群馬県・長野県・東京都・静岡県・鹿児島県島嶼部(奄美大島・加計呂麻島)を訪問し、気候・立地条件・樹種・利用状況などに特徴的な森林にて色彩情報の測定を実施した。(1-2)測定は、森林環境を構成する要素の写真撮影を基本に、東西南北4方向の視野ならびに可能な場合には360度パノラマと全天球の撮影を実施した。さらに林内の可視光照度およびUV強度の測定を行った。(1-3)既存の被服・装備品の色彩情報の測定については、5月に国際学会ECPC(ポルトガル)、日本伐木チャンピオンシップ(青森市)、6・10月にハスク社技術指導会(木曽郡)、7・1月にアウトドア企業合同展示会(台東区)、8月に上高地横尾地区(松本市)、11月に「2018森林・林業・環境機械展示実演会」(秋川市)、1月にウェアラブルEXPO(江東区)、2月にスポーツビジネス産業展(千葉市)、バイオマス展(江東区)にて情報の収集と各社の製品等から色彩測定資料の収集を行った。森林環境色彩の測定ならびに林内可視光照度およびUV強度の測定によるプロファイルの充当について、7月豪雨の被害で中国・四国地方の測定を延期するなど、スケジュールの遅れが発生している。調査地の変更など対処をしており、次年度で吸収する予定である。なお中・四国以外の地域での測定は順調に進展した。青森県・秋田県・福島県・栃木県・群馬県・長野県・東京都・静岡県・鹿児島県島嶼部(奄美大島・加計呂麻島)を訪問し、気候・立地条件・樹種・利用状況などに特徴的な森林にて色彩情報の測定を実施した。蛍光色彩の数値化に関して、測定試行の結果、照明光照度値の幅が広く、当初導入予定の輝度計の性能では実用的に不適当であることが判明し、測定スケジュールに遅れが生じている。代替機の選定を進めており、現在候補を2機種に絞り精度の検討を進めている。関連する工業規格の動向では、蛍光色彩の比較対象基準として設定した欧州規格EN1150のJIS化が既定路線となりながら、実際の作業は停滞しており、時期が不確定ながら基準色彩値の変更が想定される。また、JIS Z9103の改訂に際してユニバーサル・デザイン志向の導入は、本研究においても重要な観点であることから、今後の運用事例を追跡したい。東京大学森林利用学研究室の協力により、同研究室を会場として、繊維系素材業者・アパレル系製造販売業者・林業事業体・商社などを集めた情報交流の場としての研究会を開設した。現在月一回のペースで会議の運営を行っている。平成31年度(令和元年度:2年次)は、初年次に発生した中国・四国地方での測定の遅れの回復に向けて、測定ペースの加速を行う。測定地域については気象の影響を最小に抑えるべく、西部日本(中部・関西・中国・四国・九州・沖縄地方)と東部日本(関東・甲信越・東北・北海道地方)に分割し、気象変化に対応してスケジュールの差し替えができるよう調査計画の多重化を検討する。また、蛍光色彩の数値化の分野についても代替機を用いた測定を迅速に進める。輝度計の機種変更により調達価格が下がることから、導入台数の増加が可能となるため、2人作業による効率化を予定している。さらに試行の経験を受け、測定資料の形状変更など当初の測定手順を見直し、測定にかかる時間の短縮を図る。10月にはオーストリア・ハンガリーにて開催される欧州最大の林業機械展示会Austrofomaと林業機械化シンポジウムFormecへの参加を予定している。研究情報の交換とともに最新の林業機械・防護服・装備品の色彩情報取得と、現地林業現場の環境色彩情報の取得を行う。我が国は国土の約70%を森林が占める森林国だが、森林の維持管理事業を担う「林業」は極めて死傷事故が多く、その改善が渇望されている。本研究では、林業の安全性を高めるための改善方策として、蛍光色彩による注意喚起効果・意思伝達機能に注目した。森林環境を構成する色彩を数値化し、比較する形で安全性能の高い蛍光色彩の用法を求め、作業服や装備などに反映する高機能性蛍光色彩デザインシステムの構築を目指している。平成30年度は、測定実施に先立って、蛍光色彩の利用を規定した各種工業規格の確認と、改訂動向の把握を行った。JIS Z9103の改訂やEN1150のJIS化の遅れなど流動的な状況に注意を要する。また、使用する計測器類の性能について事前評価を行い、測定手順の構築を進めた。
KAKENHI-PROJECT-18K11951
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K11951
林業における死傷事故を予防低減する高機能性蛍光色彩デザイン
(1-1)森林環境の色彩測定について、青森県・秋田県・福島県・栃木県・群馬県・長野県・東京都・静岡県・鹿児島県島嶼部(奄美大島・加計呂麻島)を訪問し、気候・立地条件・樹種・利用状況などに特徴的な森林にて色彩情報の測定を実施した。(1-2)測定は、森林環境を構成する要素の写真撮影を基本に、東西南北4方向の視野ならびに可能な場合には360度パノラマと全天球の撮影を実施した。さらに林内の可視光照度およびUV強度の測定を行った。(1-3)既存の被服・装備品の色彩情報の測定については、5月に国際学会ECPC(ポルトガル)、日本伐木チャンピオンシップ(青森市)、6・10月にハスク社技術指導会(木曽郡)、7・1月にアウトドア企業合同展示会(台東区)、8月に上高地横尾地区(松本市)、11月に「2018森林・林業・環境機械展示実演会」(秋川市)、1月にウェアラブルEXPO(江東区)、2月にスポーツビジネス産業展(千葉市)、バイオマス展(江東区)にて情報の収集と各社の製品等から色彩測定資料の収集を行った。森林環境色彩の測定ならびに林内可視光照度およびUV強度の測定によるプロファイルの充当について、7月豪雨の被害で中国・四国地方の測定を延期するなど、スケジュールの遅れが発生している。調査地の変更など対処をしており、次年度で吸収する予定である。なお中・四国以外の地域での測定は順調に進展した。青森県・秋田県・福島県・栃木県・群馬県・長野県・東京都・静岡県・鹿児島県島嶼部(奄美大島・加計呂麻島)を訪問し、気候・立地条件・樹種・利用状況などに特徴的な森林にて色彩情報の測定を実施した。蛍光色彩の数値化に関して、測定試行の結果、照明光照度値の幅が広く、当初導入予定の輝度計の性能では実用的に不適当であることが判明し、測定スケジュールに遅れが生じている。代替機の選定を進めており、現在候補を2機種に絞り精度の検討を進めている。関連する工業規格の動向では、蛍光色彩の比較対象基準として設定した欧州規格EN1150のJIS化が既定路線となりながら、実際の作業は停滞しており、時期が不確定ながら基準色彩値の変更が想定される。また、JIS Z9103の改訂に際してユニバーサル・デザイン志向の導入は、本研究においても重要な観点であることから、今後の運用事例を追跡したい。東京大学森林利用学研究室の協力により、同研究室を会場として、繊維系素材業者・アパレル系製造販売業者・林業事業体・商社などを集めた情報交流の場としての研究会を開設した。現在月一回のペースで会議の運営を行っている。平成31年度(令和元年度:2年次)は、初年次に発生した中国・四国地方での測定の遅れの回復に向けて、測定ペースの加速を行う。測定地域については気象の影響を最小に抑えるべく、西部日本(中部・関西・中国・四国・九州・沖縄地方)と東部日本(関東・甲信越・東北・北海道地方)に分割し、気象変化に対応してスケジュールの差し替えができるよう調査計画の多重化を検討する。また、蛍光色彩の数値化の分野についても代替機を用いた測定を迅速に進める。輝度計の機種変更により調達価格が下がることから、導入台数の増加が可能となるため、2人作業による効率化を予定している。さらに試行の経験を受け、測定資料の形状変更など当初の測定手順を見直し、測定にかかる時間の短縮を図る。10月にはオーストリア・ハンガリーにて開催される欧州最大の林業機械展示会Austrofomaと林業機械化シンポジウムFormecへの参加を予定している。
KAKENHI-PROJECT-18K11951
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K11951
鉄基形状記憶合金の変態/変形挙動に関する統一理論の確立
εマルテンサイト変態およびその逆変態の開始と進行を規定する条件として,変態条件をその適合条件を導入した.変態条件は,熱力学的一般化力と内部変数に依存する.変態条件を熱・力学的拘束条件と考えて,消散不等式の条件付き極値問題を解くことによって,内部変数に関する発展式を導いた.熱力学第二法則より求まる可逆過程に関する速度型構成式とこの発展式が求める構成式系である.導入した変態条件は,金属学で議論される変態駆動力と等価であることが証明された.また,変態条件に対応して,"移動硬化"と"等方硬化"の概念が存在することを理論的に説明できた.鉄基形状記憶合金の円管試験片を用いて引張/圧縮-ねじり試験を実行し,マルテンサイト変態開始条件(曲面)と逆変態開始/終了条件を,応力-温度空間における曲面として決定した.マルテンサイト変態局面は,せん断応力軸に対して非対称であり,塑性論におけるvon Mises理論では記述できなことがわかった.応力負荷方向の効果を導入するためには,応力の第3不変量を考慮しなければならない.マルテンサイト変態開始条件は,応力-温度空間における卵形錐面として表現できることがわかった.逆変態面は,応力-温度空間における平面として表されることがわかった.逆変態平面の方向は発生するマルテンサイトバリアントの種類に依存し,その位置は発生するマルテンサイト相の量によって決まる.マルテンサイト相の量が変化すると,逆変態平面が温度軸方向に平行移動することと確認した.予負荷中に複数のバリアントが発生する場合には,逆変態面は多角形錐面となることが明らかになった.εマルテンサイト変態およびその逆変態の開始と進行を規定する条件として,変態条件をその適合条件を導入した.変態条件は,熱力学的一般化力と内部変数に依存する.変態条件を熱・力学的拘束条件と考えて,消散不等式の条件付き極値問題を解くことによって,内部変数に関する発展式を導いた.熱力学第二法則より求まる可逆過程に関する速度型構成式とこの発展式が求める構成式系である.導入した変態条件は,金属学で議論される変態駆動力と等価であることが証明された.また,変態条件に対応して,"移動硬化"と"等方硬化"の概念が存在することを理論的に説明できた.鉄基形状記憶合金の円管試験片を用いて引張/圧縮-ねじり試験を実行し,マルテンサイト変態開始条件(曲面)と逆変態開始/終了条件を,応力-温度空間における曲面として決定した.マルテンサイト変態局面は,せん断応力軸に対して非対称であり,塑性論におけるvon Mises理論では記述できなことがわかった.応力負荷方向の効果を導入するためには,応力の第3不変量を考慮しなければならない.マルテンサイト変態開始条件は,応力-温度空間における卵形錐面として表現できることがわかった.逆変態面は,応力-温度空間における平面として表されることがわかった.逆変態平面の方向は発生するマルテンサイトバリアントの種類に依存し,その位置は発生するマルテンサイト相の量によって決まる.マルテンサイト相の量が変化すると,逆変態平面が温度軸方向に平行移動することと確認した.予負荷中に複数のバリアントが発生する場合には,逆変態面は多角形錐面となることが明らかになった.電気/油圧サーボ式多軸試験システムを完成した.当実験システムは,薄肉円管試験片に引張/圧縮応力,せん断応力と温度の3個の任意荷重波形を独立に制御して負荷することができるものである.鉄基形状記憶合金の変態条件を実験的に決定した.すなわち,比例負荷のもとでの応力誘起マルテンサイト変態開始条件は,引張/圧縮応力-せん断応力-温度空間で卵形錐面として表すことができる.応力平面での変態開始条件の強い非対称性を確認した.逆変態条件は,同じ応力-温度空間の平面として表される.平面の位置と方向は,マルテンサイト変態の進行程度とその時に発生するバリアントに依存する.従って,非比例負荷を行った場合には複数の逆変態平面が現れる.マルテンサイト変態の進行度によっては,これらの逆変態面が交わることもある.加熱過程での,ひずみ回復と逆変態の進行について考察した.逆変態が完了してもひずみは完全に回復しない場合があることを実験的に明らかにした.さらに,保持応力のもとでの逆変態の進行を調べることによって,マルテンサイトバリアントに加わる背応力が,この現象の重要な影響因子であることを確認した.微視的内部応力を導入した理論体系を構築し,逆変態中のひずみ回復と背応力に関する数値シミュレーションを行い,実験結果を説明した.εマルテンサイト変態およびその逆変態の開始と進行を規定する条件として,変態条件をその適合条件を導入した.変態条件は,熱力学的一般化力と内部変数に依存する.変態条件を熱・力学的拘束条件と考えて,消散不等式の条件付き極値問題を解くことによって,内部変数に関する発展式を導いた.熱力学第二法則より求まる可逆過程に関する速度型構成式とこの発展式が求める構成式系である.導入した変態条件は,金属学で議論される変態駆動力と等価であることが証明された.また,変態条件に対応して,“移動硬化"と“等方硬化"の概念が存在することを理論的に説明できた.鉄基形状記憶合金の円管試験片を用いて引張/圧縮ーねじり試験を実行し,マルテンサイト変態開始探件(曲面)と逆変態開始/終了条件を,応力ー温度空間における曲面として決定した.マルテンサイト変態局面は,せん断応力軸に対して非対称であり,塑性論におけるvon Mises理論では記述できなことがわかった.応力負荷方向の効果を導入するためには,応力の第3不変量を考慮しなければならない.
KAKENHI-PROJECT-09650112
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09650112
鉄基形状記憶合金の変態/変形挙動に関する統一理論の確立
マルテンサイト変態開始条件は,応カー温度空間における卵形錐面として表現できることがわかった.逆変態面は,応カー温度空間における平面として表されることがわかった.逆変態平面の方向は発生するマルテンサイトバリアントの種類に依存し,その位置は発生するマルテンサイト相の量によって決まる.マルテンサイト相の量が変化すると,逆変態平面が温度軸方向に平行移動することと確認した.予負荷中に複数のバリアントが発生する場合には,逆変態面は多角形錐面となることが明らかになった.
KAKENHI-PROJECT-09650112
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09650112
音響的生態を基礎とした音の知覚属性の実験的再検討
人問の耳に到来する音響信号は音源の性質,伝播過程の影響などから様々な変化を被る。こうような変化は通常音響パワースペクトル上の相違として表現される。本研究では,音源における性質の変化が音響スペクトル上に頑健に現れる特徴の一つとして,音源の寸法という変数に着目して研究を進めた。音源の寸法を聴覚を通して知ることにより,我々は対象が自らよりも大きい存在か小さい存在かを知ることができる。他の感覚器官の助けを得ることなく,この情報を知ることは我々の遠い祖先が環境に適応して生存競争を勝ち残ってきた上でも重要な役割を果たしていたと考えられる。本研究のテーマとして音響的生態というキーワードを付した主旨はそのような観点からである。さらに,このような音響情報を通じた寸法の適切な把握は,得られた寸法情報を有効活用して,寸法要因によらない音響上の変化を推定することへもつながる。例えば,音声信号は声道が作る形状と声道自体の寸法の両者がかけ合わさった形で耳に到来する。その結果として,大人と子供,男性と女性の間に共通の形状で音声を発したとしても,寸法の違いから実際の音声信号は異なったものとなる。子供に成人男性と同じような音声信号を発生させることは身体構造上無理なわけであり,音声信号から寸法の違いに起因する側面を正規化して受聴する能力は音声コミュニケーションを実現する上でも重要な役割を担っている。この音響的寸法情報の抽出過程に迫るべく,本研究では寸法が時間的に変化を続けるという自然な状況では生じない合成音刺激を用いて,寸法抽出過程の時間追随性について調査した。その結果として,およそ4Hzを境として寸法の追随性が困難になってくることを見出した。しかし,それよりも高い周波数における寸法変調に対しては寸法に基づいて,本来はひとつの音を2つの音の流れとして知覚的に仕分ける能力が備わっていることも見出した。人問の耳に到来する音響信号は音源の性質,伝播過程の影響などから様々な変化を被る。こうような変化は通常音響パワースペクトル上の相違として表現される。本研究では,音源における性質の変化が音響スペクトル上に頑健に現れる特徴の一つとして,音源の寸法という変数に着目して研究を進めた。音源の寸法を聴覚を通して知ることにより,我々は対象が自らよりも大きい存在か小さい存在かを知ることができる。他の感覚器官の助けを得ることなく,この情報を知ることは我々の遠い祖先が環境に適応して生存競争を勝ち残ってきた上でも重要な役割を果たしていたと考えられる。本研究のテーマとして音響的生態というキーワードを付した主旨はそのような観点からである。さらに,このような音響情報を通じた寸法の適切な把握は,得られた寸法情報を有効活用して,寸法要因によらない音響上の変化を推定することへもつながる。例えば,音声信号は声道が作る形状と声道自体の寸法の両者がかけ合わさった形で耳に到来する。その結果として,大人と子供,男性と女性の間に共通の形状で音声を発したとしても,寸法の違いから実際の音声信号は異なったものとなる。子供に成人男性と同じような音声信号を発生させることは身体構造上無理なわけであり,音声信号から寸法の違いに起因する側面を正規化して受聴する能力は音声コミュニケーションを実現する上でも重要な役割を担っている。この音響的寸法情報の抽出過程に迫るべく,本研究では寸法が時間的に変化を続けるという自然な状況では生じない合成音刺激を用いて,寸法抽出過程の時間追随性について調査した。その結果として,およそ4Hzを境として寸法の追随性が困難になってくることを見出した。しかし,それよりも高い周波数における寸法変調に対しては寸法に基づいて,本来はひとつの音を2つの音の流れとして知覚的に仕分ける能力が備わっていることも見出した。本研究の総合的目標は,音のスペクトルに対する変化のうち音源の寸法の変化に起因する成分の知覚的分離過程の解明を目指すことにある.そのための鍵となる実験刺激として,寸法変調音声を合成し,これに対する知覚像の推定を知覚実験と計算機シミュレーションを両輪として実施するというのが研究の大きな枠組となる.寸法変調音声とは,身体の大きさが発話の最中に時々刻々と変化するという,自然界では存在しない刺激信号である.今年度の第一の成果は,この不自然な刺激に対する知覚的追随性を測定する目的で,音声の発話速度とは独立な正弦波的寸法変調を加えた刺激に対する母音同定成績を知覚実験によって調べた結果として,変調周期が250ms付近に成績が最も悪くなる点が存在することを確認した.また,ウェーブレット・メリン変換に基づく聴覚計算モデルを使用し,これらの刺激を入力としたシミュレーションを実施した結果にも,変調周期に応じた変曲点の存在が予想された.但し,計算機シミュレーション上は250ms以下の成績の向上は説明できなかった.第二の成果として,以上の点についての検討するため,発話速度と独立の変調ではなく,母音の区間毎に変調を切り替える形式の新たな寸法変調母音系列を用いた聴取実験を実施した.これは当初次年度以降に実施する予定を早めたものである.この結果,寸法変調を高速でかけることにより寸法に応じた音脈分凝が生じ,これが見かけ上の聴取成績に影響を与えることが分かってきた.この結果については,平成18年8月に実施予定の国際聴覚シンポジウム(ISH2006)での発表が許可されている.ISH2006は発表件数も限定された中身の濃いシンポジウムで研究の初年度としては順調な滑り出しを見せている.本研究の総合的目標は,音のスペクトルに対する変化のうち音源の寸法の変化に起因する成分の知覚的分離過程の解明を目指すことにある.
KAKENHI-PROJECT-17530529
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17530529
音響的生態を基礎とした音の知覚属性の実験的再検討
その解明の焦点は寸法情報の分離・抽出過程の時間追随性の限界を測ることであった。しかしながら,前年度に実施した母音の区間毎に変調を切り替える形式の寸法変調母音系列を用いた聴取実験の結果では,変調の切り替え速度が速くなることによって寸法の異なる二話者が同時に話しているような印象をもたらすことが分かった。このような寸法の急速な変調に伴う音脈分凝の発生は、初年度に行ったような母音区間とは独立な変調の場合には母音の聴取に取って有利に働いていると考えられる。それに対して,母音ごとに寸法が切り替わるような実験では、各母音の系列内の順番を正しく認識できなくなるという音脈分凝にとって共通の特性により、見かけ上の同定成績の劣化に繋がっていることが分かった。さらに、それがあくまでも見かけ上の劣化であることを示すために系列内の単独の母音に対する同定能力を問う実験を実施した結果、単独の母音についての同定は問題なくできていることを示す実験結果が得られ,これについて8月に開催された国際聴覚シンポジウムでの発表を行った。また、9月に開催されたケンブリッジ大学における寸法知覚と聴覚イメージに関するシンポジウムにおいても研究成果を報告した。以上のような知見からは、寸法変調母音同定課題自体は興味深い現象である反面,本研究課題が本来の目的とした寸法抽出過程の時間追随性を測定するにあたっては関わる要因が多すぎるとの判断に至った。そこで、寸法変調の存在の検出だけをする実験課題を実施した。結果は予想に反してむしろ早い変調の方が検出しやすいという逆説的なものとなった。その原因としては高速の変調によって駆動パルスごとインパルス応答波形に存在する尾西構造の時間的な揺らぎが効率的な検出手掛かりとなることを発見した。本研究の総合的目標は,音のスペクトルに対する変化のうち音源の寸法の変化に起因する成分の知覚的分離過程の解明を目指すことにある.その解明の焦点は寸法情報の分離・抽出過程の時間追随性の限界を測ることであった。この研究目的のためにー連の音声信号に対して,その音声の発話速度とは独立の正弦関数に従った寸法変調を施し,その変調の知覚的な検出閾を変調周波数を独立変数として測定した。その結果,閾値は変調周波数が高くなるほど下降するというハイ・パス・フィルタ的な特性を示した。目的とした時間追随性の限界を推定する場合,この特性は基本的にロー・パス・フィルタ的なものとなるべきである。このような逆説的な結果を得た原因として,寸法変調によって刺激のスペクトル上に変調がない場合には存在しないサイド・バンドへのパワー分布が生じ,これが変調の有無の検出をする上で効率の良い手掛かりとして機能していることが推察された。但し,この場合加えられた変調が聴取者にとって寸法の変化として知覚されている可能性はむしろ低く,無変調の場合との区別ができるという域を出ないことが内観報告から推察された。これらの結果については音響学会英文誌の速報として出版されると同時に,ケンブリッジ大学で開催された寸法知覚に関するワークショップにて発表した。
KAKENHI-PROJECT-17530529
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17530529
きょうだい関係の持続・変容プロセスと高齢者の主観的幸福感に関する実証研究
本研究は「高齢期に至るまでにきょうだいとどのような関係を持ってきたのか」に注目し、きょうだい関係の持続・変容プロセス、ならびにそれと高齢者の主観的幸福感、夫婦、親子関係、地域活動等とのかかわりを追究するものである。本年度は、1.質問紙調査に先立ち、作成した質問紙調査票をもとに調査予定地域・対象者年齢層を同じくする岡山県で(60歳代1名、70歳代2名、80歳代2名、計5名を対象)予備調査を実施し、その結果をふまえて質問紙調査票を修正・完成させるとともに、調査実施依頼を行ううえで必要となる基本的情報を得た。2.9月12月にかけて岡山県高梁市老人クラブ連合会会員を対象に質問紙調査を実施した。5つの地域を層化基準にした層化抽出法により511サンプルを無作為抽出し、各地域局の老人クラブ事務局より該当する老人クラブ会員に調査票の配布を行い、回収は郵送で行った(返送確認依頼1回)。3.質問紙調査の内容についてより詳細な情報を得るため、1月に質問紙調査への協力者のうちの4名(男性3名、女性1名)に半構造化面接を行った(実施時間は一人当たり約1時間1時間半)。4.質問紙調査のデータ入力・クリーニング、インタビュー調査のテープおこしを行い、調査協力者への研究成果還元のため、その結果を「研究成果報告書」にまとめた。5.3月に平成17年度奈良女子大学プロジェクト「修了生・退学者・在学生情報ネットワーク事業とネットワーク効果の研究」(研究代表者:人間文化研究科教授中道實)情報交流ネットワーク研究会第一回大会にて、「高齢者の主観的幸福感と家族関係-自分のきょうだいと配偶者・子どもとの関係-」をタイトルとし、本研究での成果の一部について報告を行った。本研究は「高齢期に至るまでにきょうだいとどのような関係を持ってきたのか」に注目し、きょうだい関係の持続・変容プロセスのパターンを追究するものである。その上でそのパターンと主観的幸福感との関連を究明することを目的とする。本年度は1.先行研究が多く蓄積されている高齢者の「主観的幸福感」にかんする実証的な研究の検討により、これまで用いられてきた研究方法、依拠している理論、調査方法や内容、得られた知見を検討、整理した。2.日本では殆ど研究蓄積のない「高齢者のきょうだい関係」にかんする欧米を中心とした諸外国の文献・論文、ならびに例えば中年期といった高齢期に至るまでのきょうだい関係についての文献・論文も幅広く収集し、検討を加えた。同時に、1.2.において収集した文献・論文をデータベース化し、研究を効率的に進められるよう研究環境整備を行った。3.本研究におけるもう一つのキー概念である「きょうだい関係の維持・変容」概念を明確化するため、生涯発達にかかわる文献等も参考にしつつ、そのプロセスのパターン分けを行うとともに、それを実証的に測定・解明できるよう質問項目化した。4.調査対象予定地域である岡山県において、岡山市、倉敷市を中心にこれまで実施された高齢者にかんする研究成果報告書を入手し、高齢者を取り巻く地域環境や家族・親族関係状況、地域政策の現状等の把握に努めた。5.以上をもとに、調査票を作成し、当該調査対象予定地域内外で長年にわたり実証研究を蓄積されてこられた先生や関係者の方々からご教示をいただきながら、調査票の修正を行うとともに、実証研究の具体的実施時期・方法等についても準備を進めている。本研究は「高齢期に至るまでにきょうだいとどのような関係を持ってきたのか」に注目し、きょうだい関係の持続・変容プロセス、ならびにそれと高齢者の主観的幸福感、夫婦、親子関係、地域活動等とのかかわりを追究するものである。本年度は、1.質問紙調査に先立ち、作成した質問紙調査票をもとに調査予定地域・対象者年齢層を同じくする岡山県で(60歳代1名、70歳代2名、80歳代2名、計5名を対象)予備調査を実施し、その結果をふまえて質問紙調査票を修正・完成させるとともに、調査実施依頼を行ううえで必要となる基本的情報を得た。2.9月12月にかけて岡山県高梁市老人クラブ連合会会員を対象に質問紙調査を実施した。5つの地域を層化基準にした層化抽出法により511サンプルを無作為抽出し、各地域局の老人クラブ事務局より該当する老人クラブ会員に調査票の配布を行い、回収は郵送で行った(返送確認依頼1回)。3.質問紙調査の内容についてより詳細な情報を得るため、1月に質問紙調査への協力者のうちの4名(男性3名、女性1名)に半構造化面接を行った(実施時間は一人当たり約1時間1時間半)。4.質問紙調査のデータ入力・クリーニング、インタビュー調査のテープおこしを行い、調査協力者への研究成果還元のため、その結果を「研究成果報告書」にまとめた。5.3月に平成17年度奈良女子大学プロジェクト「修了生・退学者・在学生情報ネットワーク事業とネットワーク効果の研究」(研究代表者:人間文化研究科教授中道實)情報交流ネットワーク研究会第一回大会にて、「高齢者の主観的幸福感と家族関係-自分のきょうだいと配偶者・子どもとの関係-」をタイトルとし、本研究での成果の一部について報告を行った。
KAKENHI-PROJECT-16730257
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16730257
Resistance to diffusion of innovation
技術の普及の成功、成功を導く要因に関わる科学的な研究はこれまで比較的よく行われ、その大部分では分野内に意見の違いがみられない。反対に、技術が普及しないことを検討した研究は少ない。さらに、技術の受容ではなく阻害の立ち位置から始めることは、G8経済のような技術で飽和した経済を理解する際に、価値ある視点をもたらす。同様に本研究は革新的な新製晶開発の際に直面しうる障害を分析する、一般的なツールの発展にも寄与するものと考えられる。平成23度に行った一連のサーベイやインタビュー、事例研究から得られた結果:質問用紙(http://questionpro.co./t/AHABcZMWn3)では.パイロットスタディとして各経済領域の約50-100名の対象者(日本、イギリス、イタリア、ベトナム、中国チュニジア)をサンプルにとり、言語以外の条件は一定にして調査を行った。この結果、次のことが判明した。・技術的、社会的、学習的状況は、マーケディング行動やこの種の組織の競争戦略に明確に影響を与える。・ある企業が新技術の導入に対するユーザーの切り替えコストが高すぎると判断した場合、その企業はイノベーションのパイオニアと直接的な競争をするリスクを負う必要はなくなる。・逆に、このような状況を有効に使い、成熟した技術を活性化する製品を販売するといった、新たな機会を探ることが可能となる。平成24年7-8月。調査代表者は英話圏の国でサーベイを行い、他の調査協力者から提出された資料をまとめる役割を担った。共同研究者はサンプルの対象とする集団と、5つある技術それぞれに対する実践のコミュニティを特定した。9-10月結果を照合し、分析を行った。調査代表者はパイロットスタディのデータを分析し、続いてサーベイ調査用紙の改良を行った。このサーベイ調査用紙の改良に関する議論には、共同研究者も参加した。11-12月サーベイを改良し、対象とする集団を拡大した。代表研究者、共同研究者ともに個人のユーザー、社会ネットワーク、ユーザー集団を含めたより多数のサンプルを収集した。技術の普及の成功、成功を導く要因に関わる科学的な研究はこれまで比較的よく行われ、その大部分では分野内に意見の違いがみられない。反対に、技術が普及しないことを検討した研究は少ない。さらに、技術の受容ではなく阻害の立ち位置から始めることは、G8経済のような技術で飽和した経済を理解する際に、価値ある視点をもたらす。同様に本研究は革新的な新製品開発の際に直面しうる障害を分析する、一般的なツールの発展にも寄与するものと考えられる。平成23年度に行った一連のサーベイやインタビュー、事例研究から得られた結果:質問用紙(http://questionpro.com/t/AHABcZMWn3)では、パイロットスタディとして各経済領域の約50ー100名の対象者(日本、イギリス、イタリア、ベトナム、中国、チュニジア)をサンプルにとり、言語以外の条件は一定にして調査を行った。この結果、次のことが判明した。・技術的、社会的、学習的状況は、マーケディング行動やこの種の組織の競争戦略に明確に影響を与える。・ある企業が新技術の導入に対するユーザーの切り替えコストが高すぎると判断した場合、その企業はイノベーションのパイオニアと直接的な競争をするリスクを負う必要はなくなる。・逆に、このような状況を有効に使い、成熟した技術を活性化する製品を販売するといった、新たな機会を探ることが可能となる。技術の普及の成功、成功を導く要因に関わる科学的な研究はこれまで比較的よく行われ、その大部分では分野内に意見の違いがみられない。反対に、技術が普及しないことを検討した研究は少ない。さらに、技術の受容ではなく阻害の立ち位置から始めることは、G8経済のような技術で飽和した経済を理解する際に、価値ある視点をもたらす。同様に本研究は革新的な新製晶開発の際に直面しうる障害を分析する、一般的なツールの発展にも寄与するものと考えられる。平成23度に行った一連のサーベイやインタビュー、事例研究から得られた結果:質問用紙(http://questionpro.co./t/AHABcZMWn3)では.パイロットスタディとして各経済領域の約50-100名の対象者(日本、イギリス、イタリア、ベトナム、中国チュニジア)をサンプルにとり、言語以外の条件は一定にして調査を行った。この結果、次のことが判明した。・技術的、社会的、学習的状況は、マーケディング行動やこの種の組織の競争戦略に明確に影響を与える。・ある企業が新技術の導入に対するユーザーの切り替えコストが高すぎると判断した場合、その企業はイノベーションのパイオニアと直接的な競争をするリスクを負う必要はなくなる。・逆に、このような状況を有効に使い、成熟した技術を活性化する製品を販売するといった、新たな機会を探ることが可能となる。平成24年7-8月。調査代表者は英話圏の国でサーベイを行い、他の調査協力者から提出された資料をまとめる役割を担った。共同研究者はサンプルの対象とする集団と、5つある技術それぞれに対する実践のコミュニティを特定した。9-10月結果を照合し、分析を行った。調査代表者はパイロットスタディのデータを分析し、続いてサーベイ調査用紙の改良を行った。このサーベイ調査用紙の改良に関する議論には、共同研究者も参加した。11-12月サーベイを改良し、対象とする集団を拡大した。代表研究者、共同研究者ともに個人のユーザー、社会ネットワーク、ユーザー集団を含めたより多数のサンプルを収集した。
KAKENHI-PROJECT-23730346
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Resistance to diffusion of innovation
平成23 7ー8月サーベイの実行を行う。調査代表者は英語圏の国でサーベイを行い、他の調査協力者から提出された資料をまとめる役割を担う。共同研究者はサンプルの対象とする集団と、5つある技術それぞれに対する実践のコミュニティを特定する。9ー10月結果を照合し、分析を行う。調査代表者はパイロットスタディの平成23年7ー8月:サーベイを行った。研究代表者は英語圏の国でサーベイを行い、他の研究協力者から提出された資料をまとめた。共同研究者はサンプルの対象とする集団と、5つある技術それぞれに対する実践のコミュニティを特定した。平成23年9ー10月:結果を照合し、分析を行った。研究代表者はパイロットスタディのデータを分析し、続いてサーベイ調査用紙の改良を行った。このサーベイ調査用紙の改良に関する議論には、共同研究者も参加した。平成23年11ー12月:サーベイを改良し、対象とする集団を拡大した。研究代表者は共同研究者とともに個人のユーザー、社会ネットワーク、ユーザー集団を含めたより多数のサンプルを収集した。平成24年1ー3月:サーベイを実施した(日本、イギリス、イタリア、ベトナム、中国、チュニジア)。研究代表者は拡張された対象集団への配布を担当した。共同研究者はそれぞれの母国語でサーベイを実施し、技術採用に関する選択の背後にある理由の詳細な実態を明らかにするため、ユーザー集団に関与した。結果の分析と発表を行う。独立に調査結果を分析してもらうために、SPSSのスペシャリストの協力を得る。この時点で調査グループは結果について議論し、長期的な研究プロジェクト全体の中の第二段階目の方策を決める。データは公表し、発見事項は国際学会において他の科学者や企業関係者により議論されるだろう。その時点で、平成24年度に行う予定である、主要な組織とともに我々のモデルを検証する作業の準備を行うヨーロッパ、北アメリカ、日本にある共同研究者のネットワークによって、プロジェクトの2年度の計画は理論モデルに述べた9条件に限ってイノベーションの拡大の程度をさらに検討する。今年度野の焦点は消費者とユーザーグループからイノベーティブと産業グループまでシフトするとことである。平成24年は、23年度に収集したサーベイデータを活用し、イノベーティブ企業と産業グループを探しコンタクトをとる。平成24年度の研究はほとんどデスクワークのため、平成23年度ほど交通費は生じない。平成24年度の経費は日本国内旅費と市場研究ウエブサイトの保守に使用する
KAKENHI-PROJECT-23730346
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サル内膜症モデルの免疫抑制細胞除去カラムによる治療研究
子宮内膜症のサルにおいてはNK細胞の活性低下が見られ、腹腔内に逆流した子宮内膜組織を排除できないと考えられた。病変部では、有意ではなかったがTregの増加傾向が見られた。病変部にはM2マクロファージの有意な増加も認められ。2頭のカニクイザルで免疫抑制細胞除去カラムによる体外循環を行い、病変の明確な縮小が腹腔鏡で確認できた。免疫抑制細胞除去カラムにより抹消血ではLAP(latency associated protein)陽性の単球の明確な減少が見られた。以上の結果から、内膜症ではTreg、M2マクロファージに分化するLAP陽性単球の両者が重要な役割を果たすことが推測された。霊長類のみが卵管の腹腔端開存のため子宮内膜症を自然発症する。当初、我々は4頭の内膜症を自然発症したカニクイザルを同定していたが、現在はさらに8頭の内膜症の初期病変を有するカニクイザルを腹腔鏡にて同定している。また、Foxp3陽性調節性T細胞(Treg)に注目して解析していたが、末梢血の解析結果からLAP陽性単球の増減が内膜症に相関することが明らかとなった。末梢血の解析からは、Tregと内膜症との相関は明らかにならなかった。LAPは抑制性の液性因子であるTGF-betaを包み、細胞膜表面でTGF-betaを保持する分子である。LAPを有する細胞は抑制的に作用すると推測される。初期内膜症のカニクイザルはLAP陽性単球の比率が高く、NK細胞の比率が低かった。逆に、進行した内膜症のカニクイザルではLAP陽性単球の比率が低く、NK細胞の比率高かった。この結果から、内膜症の成立にはLAP陽性単球が深く関与すると考えられた。また、内膜症組織においては、CD163陽性のM2マクロファージが増加していることを確認している。現在、LAP陽性単球が刺激により抑制性のマクロファージに変化するかどうかを検討している。我々の開発したTreg除去カラムはLAP陽性単球も除去できることが判明しているので、初期内膜症カニクイザルで体外循環を行い、腹腔鏡で異所性内膜組織の変化を検討した。我々の作成したカラムで3回体外循環を行った結果、明らかな異所性内膜組織の縮小が認められた。また、末梢血の解析ではLAP陽性単球のみが明らかな減少を示していた。以上は1頭の初期内膜症カニクイザルでの結果であり、27年度は頭数を増やしてカラムによる治療実験を行う予定である。霊長類のみが卵管の腹腔端開存のため子宮内膜症を自然発症する。我々や他の研究者により内膜症患者や内膜症サルでFoxp3陽性調節性T細胞(Treg)が組織内に増加していることが判明している。そこで、この免疫抑制性のFoxp3陽性調節性T細胞(Treg)を除去して、異所性内膜を免疫細胞により排除することを目的に、我々の作成したTreg除去カラムによる体外循環を行った。子宮内膜症のサルにおいては、抹消血のNK細胞は増加していたが、逆に活性は低下していた。NK細胞の活性低下により腹腔内に逆流した子宮内膜組織を排除できないと考えられた。病変部では、有意ではなかったがTregの増加傾向が見られた。病変部にはM2マクロファージの有意な増加が認められ、異所性内膜組織の維持の一端を担っていると考えられた。2頭のカニクイザルでTreg除去カラムによる体外循環を行った。いずれのサルにおいても病変の明確な縮小が腹腔鏡で確認できた。Treg除去カラムによる体外循環後の抹消血ではTregの有意な減少は見られなかったが、LAP(latency associated protein)陽性の単球の明確な減少が見られた。Treg除去カラムはLAPに親和性があり、LAPを有する活性化Treg以外にもLAP陽性単球を除去できることが判明している。以上の結果から、内膜症ではTreg、M2マクロファージに分化するLAP陽性単球の両者が重要な役割を果たすことが推測された。子宮内膜症のサルにおいてはNK細胞の活性低下が見られ、腹腔内に逆流した子宮内膜組織を排除できないと考えられた。病変部では、有意ではなかったがTregの増加傾向が見られた。病変部にはM2マクロファージの有意な増加も認められ。2頭のカニクイザルで免疫抑制細胞除去カラムによる体外循環を行い、病変の明確な縮小が腹腔鏡で確認できた。免疫抑制細胞除去カラムにより抹消血ではLAP(latency associated protein)陽性の単球の明確な減少が見られた。以上の結果から、内膜症ではTreg、M2マクロファージに分化するLAP陽性単球の両者が重要な役割を果たすことが推測された。内膜症カニクイザルを8頭新たに同定でき、貴重な実験材料を予想外に確保できた。また、体外循環用のカラムを使用した治療実験は27年度を予定していたが、26年度に1頭の内膜症カニクイザルで治療実験を行うことがでた。その結果、ほぼ異所性内膜組織を除去できることが明らかになった。これまで内膜症に有効な治療方法は外科的切除以外になかったことから、新たな治療法の開発につながると期待される。以上の可能性を1年目から得られたことは、当初の計画をはるかに超えた進展と考えられる。実験病理学カラムで体外循環治療する内膜症サルの頭数を増やすし、カラムの効果を確認する。
KAKENHI-PROJECT-26640054
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26640054
サル内膜症モデルの免疫抑制細胞除去カラムによる治療研究
また、LAP陽性単球細胞の内膜症における明確な役割を解析する。免疫組織学的な検索およびカラム治療前後の組織のDNAアレイを行い、異所性内膜組織の除去に関与する因子の解析も行う。さらに、当初計画には入っていないが、内膜症患者の末梢血でのLAP陽性単球の比率も検討する。
KAKENHI-PROJECT-26640054
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解析多様体の研究
本年度に行った研究の概要は次の通りである。1.多様体においても用いられる極値的長さについて種々調べた。次数p【greater than or equal】1の場合を考える。p<1の時には成り立つがp=1の場合には成り立たない結果がある。これについて若又湧き口のないベクトル場における流線の作る管の極値的長さを一般の場合に計算した。p=1の場合はp<1の場合と異っている。2.1984年に発行された関数論の未解決問題集の中に、極値的距離に関する問題が2つ提出されている。そのうち1つはDubininが自分の結果の1つを用いて解いている。代表者は極値的長さと一般の等角容量の間の関係を用い、より拡張された形で解答を与えた。もう1つは、平面のy軸に集合Eが与えられたとき、Eとy軸に関する余集合との間の極値的距離が∝かという問で、代表者はp【greater than or equal】2の場合に肯定的な解答を与え、応用として、ディリクレ有界な調和測度が定数のことを示した。1<P<2の場3.関連する研究としては、シュレ-ディンガ-作業素の固有関数と固有値の数値計算法とデデキント和に関する研究、逆シュトルム-リュ-ヴィユ問題や対称形式とその応用の問題の研究が活発に行われた。本年度に行った研究の概要は次の通りである。1.多様体においても用いられる極値的長さについて種々調べた。次数p【greater than or equal】1の場合を考える。p<1の時には成り立つがp=1の場合には成り立たない結果がある。これについて若又湧き口のないベクトル場における流線の作る管の極値的長さを一般の場合に計算した。p=1の場合はp<1の場合と異っている。2.1984年に発行された関数論の未解決問題集の中に、極値的距離に関する問題が2つ提出されている。そのうち1つはDubininが自分の結果の1つを用いて解いている。代表者は極値的長さと一般の等角容量の間の関係を用い、より拡張された形で解答を与えた。もう1つは、平面のy軸に集合Eが与えられたとき、Eとy軸に関する余集合との間の極値的距離が∝かという問で、代表者はp【greater than or equal】2の場合に肯定的な解答を与え、応用として、ディリクレ有界な調和測度が定数のことを示した。1<P<2の場3.関連する研究としては、シュレ-ディンガ-作業素の固有関数と固有値の数値計算法とデデキント和に関する研究、逆シュトルム-リュ-ヴィユ問題や対称形式とその応用の問題の研究が活発に行われた。
KAKENHI-PROJECT-03640180
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03640180
非平衡合金を前駆体とする表面制御機能材料の創製と評価
1.非晶質Ni-Zr基二元合金を前駆体として、二酸化炭素と水素を反応させてメタンを生成するためのNi担持ジルコニア触媒を作製し、メタン化触媒としての活性の程度と合金組成、反応温度などとの関係を調べ、Zrを40-50原子%含む場合にメタン化速度が最大であることを確認した。この結果はNi原子の表面分散度、反応のターンオーバー数および正方晶ジルコニア含有量の合金組成依存性により説明できた。これらの結果をもとに、Sm添加により正方晶ジルコニアの安定化とNi原子の表面分散度を高めることにより触媒活性を高めることに成功した。2.スパッタ法で作製したNb-WおよびNb-Mn系二元合金は、それぞれ2050原子%Wおよび2675原子%Mnの範囲で非晶質合金が得られた。Nb-Mn合金は0.1モルの中性食塩水中ではMn含有量が60原子%以下であれば純Nb程度の高耐食性を示し、Nb-W合金ではWを多量に含む合金は12モルの塩酸中より6モルの塩酸中で腐食がより早く進行した。3.スパッター法で作製したCo-20原子%Al合金薄膜は非平衡状態のCsCl型CoAl金属間化合物となるが、窒素中および酸素中での反応性スパッター法で作製すると、それぞれ高周波特性に優れたCo-Al-NおよびCo-Al-O薄膜が生じ、前者はnmサイズのNを固溶したCoの微粒子を絶縁性のAlN化合物が取り囲む構造、後者はnmサイズのCo微粒子を絶縁性Al_2O_3化合物が取り囲む構造となることを明らかにした。4.ゾルゲル法で作製したSr-Bi-Ta酸化物は低温で作製した場合は強誘電体特性を示さないが、ある程度の高温での熱処理により強誘電体特性を示すようになるが、その特性は熱処理の雰囲気および温度に大きく依存し、強誘電体特性劣化は表面における化学量論組成からのずれおよび金属状Biの偏析により支配されることを明らかにした。1.非晶質Ni-Zr基二元合金を前駆体として、二酸化炭素と水素を反応させてメタンを生成するためのNi担持ジルコニア触媒を作製し、メタン化触媒としての活性の程度と合金組成、反応温度などとの関係を調べ、Zrを40-50原子%含む場合にメタン化速度が最大であることを確認した。この結果はNi原子の表面分散度、反応のターンオーバー数および正方晶ジルコニア含有量の合金組成依存性により説明できた。これらの結果をもとに、Sm添加により正方晶ジルコニアの安定化とNi原子の表面分散度を高めることにより触媒活性を高めることに成功した。2.スパッタ法で作製したNb-WおよびNb-Mn系二元合金は、それぞれ2050原子%Wおよび2675原子%Mnの範囲で非晶質合金が得られた。Nb-Mn合金は0.1モルの中性食塩水中ではMn含有量が60原子%以下であれば純Nb程度の高耐食性を示し、Nb-W合金ではWを多量に含む合金は12モルの塩酸中より6モルの塩酸中で腐食がより早く進行した。3.スパッター法で作製したCo-20原子%Al合金薄膜は非平衡状態のCsCl型CoAl金属間化合物となるが、窒素中および酸素中での反応性スパッター法で作製すると、それぞれ高周波特性に優れたCo-Al-NおよびCo-Al-O薄膜が生じ、前者はnmサイズのNを固溶したCoの微粒子を絶縁性のAlN化合物が取り囲む構造、後者はnmサイズのCo微粒子を絶縁性Al_2O_3化合物が取り囲む構造となることを明らかにした。4.ゾルゲル法で作製したSr-Bi-Ta酸化物は低温で作製した場合は強誘電体特性を示さないが、ある程度の高温での熱処理により強誘電体特性を示すようになるが、その特性は熱処理の雰囲気および温度に大きく依存し、強誘電体特性劣化は表面における化学量論組成からのずれおよび金属状Biの偏析により支配されることを明らかにした。(1)いくつかの非晶質Zr基二元合金系の300°Cの大気中における酸化挙動を調べた。非晶質Zr基二元合金は作製時における酸化を避けるため、不活性ガス雰囲気中での溶融急冷法で作製した。組成はZr組成を一定値に固定し、合金元素の相違による効果を調べた。合金元素がAuの場合に異常に早い酸化速度を示し、Pdの場合にもかなり急速な酸化速度を示したが、Ni、RhおよびCuでは酸化速度はこの温度および雰囲気では非常に小さかった。以前に行ったZr-Cu系合金の室温大気中における酸化では、室温という低い温度にも拘わらず、Zr-Cu合金は大気と容易に反応したが、これは大気中における相対湿度が高いことが特に大きな影響を与えていたものと思われる。Zr-Au合金は酸化によりZrO_2を生じるとともに、Auが単体で析出した。また酸化に伴う重量変化は合金中のZrが完全に酸化され、Auは全く酸化されないと考えて行った計算とよく一致するが、Zr-Pd系ではPdもいくぶん酸化されていることを示す結果であった。(2)Nb-WおよびNb-Mn系二元合金をスパッタ法で作製し、その組成と構造の関係を決定した。また、それらの電気化学的挙動の検討と表面キャラクタリゼーションを行った。Nb-W合金では2050原子%Wの範囲、Nb-Mn合金では2675原子%Mnの範囲で非晶質合金が得られた。
KAKENHI-PROJECT-09650776
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09650776
非平衡合金を前駆体とする表面制御機能材料の創製と評価
Nb-Mn合金は0.1モルの中性食塩水中ではMn含有量が60原子%以下であれば純Nbに匹敵する高い耐食性を示し、表面にはカチオンとしてはNb^<5+>を主成分としMn^<2+>を含むオキシ水酸化物が生じていた。また、Nb-W合金ではWを多量に含む合金は12モルの塩酸中より6モルの塩酸中で腐食がより早く進行する現象を見いだした。非晶質Ni-Zr基二元合金を酸化と還元を繰り返し施すことにより、ジルコニアに微細な金属状のニッケルが担持された物質が生成したが、この物質は二酸化炭素と水素を反応させてメタンを生じさせるための触媒としての活性を持つことがわかった。そこで、メタン化触媒としての活性の程度と合金組成、反応温度などとの関係を調べた。この触媒を用いると、二酸化炭素と水素との反応により二酸化炭素はほとんどメタンと水に変わった。反応温度100-300°Cの範囲においては、反応は温度上昇とともに増大した。調べた合金の組成範囲では、Zrを40-50原子%含む場合にメタン化速度が最大であった。また、含浸法で作製した3原子%の金属Niをジルコニアに担持した触媒と比較したが、メタン化速度は非晶質Ni-Zr基合金から作製した触媒の方が大きかった。水素の化学吸着法により表面に存在するニッケル原子の数を決定したが、これは触媒中のZr含有量とともに増大した。一方、ターンオーバー数は逆にZr含有量の増加に従って減少した。この非晶質Ni-Zr基合金から作製した触媒には結晶型の異なる二種類のジルコニアが含まれていた。一つは安定な単斜晶型で、もう一つは準安定な正方晶型であった。Niを70原子%含む合金からは作製した場合には準安定な正方晶型が主であったが、Zr含有量の増大とともに、準安定正方晶型ジルコニアの割合は減少した。これらの結果から、Ni含有量の大きい場合の大きなターンオーバー数は準安定正方晶型ジルコニアに担持された金属状Niによるものと推察され、担体のジルコニアの結晶構造の触媒活性に及ぼす効果の重要性を明らかにした。1.昨年度に引き続き、非晶質Ni-Zr基二元合金を前駆体として、二酸化炭素と水素を反応させてメタンを生成するためのニッケル担持ジルコニア触媒を作製し、メタン化触媒としての活性の程度と合金組成、反応温度などとの関係を調べ、Zrを40-50原子%含む場合にメタン化速度が最大である事を確認した。またその原因を水素の化学吸着法により表面に存在するニッケル原子の数、反応のターンオーバー数、準安定正方晶ジルコニア含有量の合金組成依存性により説明できることを明らかにした。これらの結果をふまえて、Smを添加することで、正方晶ジルコニアを安定化し、Ni原子の表面分散度を高める事により触媒活性を高めることに成功した。2.スパッター法によりCo-20原子%Al合金薄膜を作製した場合、非平衡状態のCsC1型CoAl金属間化合物となるが、窒素中および酸素中で反応性スパッター法により作製することにより、それぞれ高周波特性に優れたCo-Al-N薄膜およびCo-Al-O薄膜が生じ、前者はナノメータサイズのNを固溶したCoの微粒子を絶縁性のAIN化合物が取り囲む構造となり、後者はナノメータサイズのCo微粒子を絶縁性のAl203化合物が取り囲む構造となる事に起因していることを明らかにした。3.ゾルゲル法で作製したSr-Bi-Ta酸化物は低温で作製した場合は強誘電体特性を示さないが、ある程度の高温での熱処理により強誘電体特性を示すようになるが、その特性は熱処理の雰囲気および温度に大きく依存し、強誘電体特性劣化は表面における化学量論組成からのずれおよび金属状Biの偏析により支配されることを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-09650776
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09650776
HTLV-1感染ヒト化マウスを用いたATLおよびHAM発症機序の解明
ヒト造血幹細胞のNOG-SCIDマウスへの骨髄内移植により作製したヒト化マウスにHTLV-1を感染させることで感染T細胞の異常増殖、肝脾腫および花弁様分様核を持ったリンパ球の出現等、ATL様病態が再現された。感染マウスでは抗HTLV-1宿主免疫の誘導と特定の感染クローンの選択的増殖が観察され、その過程におけるHTLV-1 Tax遺伝子の発現抑制とCD25陰性から陽性への転換が示された。ヒト造血幹細胞のNOG-SCIDマウスへの骨髄内移植により作製したヒト化マウスにHTLV-1を感染させることで感染T細胞の異常増殖、肝脾腫および花弁様分様核を持ったリンパ球の出現等、ATL様病態が再現された。感染マウスでは抗HTLV-1宿主免疫の誘導と特定の感染クローンの選択的増殖が観察され、その過程におけるHTLV-1 Tax遺伝子の発現抑制とCD25陰性から陽性への転換が示された。ヒト臍帯血由来造血幹細胞を免疫不全NOG-SCIDマウス骨髄内に移植することでヒト造血・免疫系を個体内に再構築したヒト化マウス腹腔内にHTLV-1感染ヒトT細胞株MT2を移入し感染を成立させたところ、感染ヒトTリンパ球の脊髄浸潤によるHTLV-1関連脊髄症様症状あるいは肝脾腫を伴う感染ヒトTリンパ球の白血病様増殖が観察された。1.感染細胞ゲノムに組み込まれたHTLV-1プロウイルスを解析したところ、白血病様増殖を示したリンパ球ではgag領域とpX領域がほぼ同量検出されたのに対して、脊髄浸潤Tリンパ球においてはpX領域が約2倍量観察され、gag領域を欠損した欠損ウイルスの重感染の可能性が示唆された。2.HTLV-1感染後、感染細胞数の増加に比例してCD25陽性CD4 Tリンパ球の割合が増大し、最終的に白血病様症状を示した個体では、末梢血の90%以上が感染CD25陽性CD 4Tリンパ球で占められ、かつATLに特徴的な花弁様分葉核をもつ感染細胞が観察された。また、LM-PCR法を用いたプロウイルス組み込み部位の解析から、感染細胞の増加に伴い感染細胞のクローナリティが減少する傾向が観察された。3.感染ヒト化マウスにおけるCD25陽性CD4 Tリンパ球は、感染ヒト個体の場合と同様にCCR4を発現していたが、制御性T細胞の指標となるFoxP3の発現は観察されなかった。4.Taxテトラマーを用いて、感染ヒト化マウス脾臓中のCD8陽性Tリンパ球の0.1%2%にHLA拘束性抗TaxCTLの存在が確認され、さらに、白血病様症状を示した個体では感染初期のマウスよりもその存在率が低い傾向が観察され、感染ヒト個体との類似性が示唆された。以上の結果より、細胞レベルでのTax発現量の相違が脊髄浸潤性に影響を与えている可能性が示唆されたと共に、HTLV-1感染ヒト化マウスにおいて、宿主抗HTLV-1細胞性免疫下での感染CD25陽性CD4 Tリンパ球のクローナル増殖と選択という、感染ヒト個体で想定されるATL発症過程が再現された。NOG-SCIDマウスにヒト臍帯血由来造血幹細胞を移植することで作製したヒト化マウスにHTLV-1感染ヒトT細胞株MT2を移入し感染を成立させたところ、感染34ヶ月で、ATLに特徴的な花弁様分葉核をもつ感染ヒトTリンパ球の出現を伴うCD25陽性CD4 Tリンパ球の白血病様増殖を観察した。1.感染細胞におけるプロウイルスの構造を定量的PCRで経時的に解析したところ、感染24週では、1020%のCD4+ヒトT細胞がHTLV-1に感染したが、その90%以上がpol領域を欠失する欠損ウイルスであった。しかしながら、感染1ヶ月以降から、完全長HTLV-1を持つ感染細胞の数が増加し、最終的にはほぼ全細胞が完全長HTLV-1に感染していた。2.欠損プロウイルスの構造を解析したところ、MT-2細胞が持つgag-pX型の欠損ウイルスの形状を示したが、組み込み部位がMT-2細胞のものと異なることから、ウイルス粒子を介した感染の結果であることが明らかとなった。3. CD4+Tリンパ球におけるCD25の発現率は、完全長ウイルスの感染率とは相関しなかったものの、欠損ウイルスの感染率と相関したことから、欠損ウイルスの感染がCD25+T細胞の増殖に影響を及ぼしている可能性が示唆された。4.感染1ヶ月以内に感染CD4+T細胞の選択的な増殖が観察されたが、初期においてはその大部分がCD25陰性であり、感染2ヶ月以降になってCD25陽性細胞が優勢となった。それぞれの細胞でのtax mRNAの発現を解析したところ、CD25陰性細胞において有意な発現が観察されたものの、CD25陽性細胞では抑制されていた。以上の結果より、HTLV-1感染CD25陽性T細胞の異常増殖において、tax遺伝子だけではなく、その他のウイルス遺伝子が関与している可能性が示唆された。NOG-SCIDマウス骨髄内へのヒト造血幹細胞の移植で作製したヒト化マウスの腹腔内にHTLV-1感染ヒトT細胞株MT2を移入することで、感染数ヶ月でATL様の病態を再現することに成功した。
KAKENHI-PROJECT-21590515
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HTLV-1感染ヒト化マウスを用いたATLおよびHAM発症機序の解明
1.感染後期では、ほぼすべての感染細胞は完全長プロウイルスを保持していたが、感染初期には90%以上にMT-2細胞由来gag-pX型欠損ウイルスの組み込みが見られため、同欠損ウイルスにおける遺伝子発現を解析したところ、HBZ mRNAは観察されたがTaxの発現は検出されなかった。したがって、HBZの発現のみでは最終的なATL様増殖には至らない可能性が示唆された。2.感染初期のヒト化マウスリンパ球を解析したところ、感染細胞と同等数の反応性非感染T細胞の増殖が観察された。同感染マウスにAZTを投与したところ、感染T細胞と同時に非感染T細胞数の増加も抑制され、さらに投与中止後、増加が再開した。このことから、AZTの効果はHTLV-1感染の有無に依らず増殖T細胞一般に及ぶことが明らかとなった。3.感染後期におけるプロウイルス組み込みの塩基配列をもとに同一感染個体における感染クローンの動態を解析したところ、最大感染クローンは末梢血、リンパ節、肝臓転移部、脾臓すべてに検出され、脾臓内CD25陽性CD4 T細胞の最も多く(約60%)を占めていた。感染初期においてはほとんどの感染細胞がCD25陰性であり、感染後期では同一脾臓内CD25陰性CD4 T細胞にも同一感染クローンの存在が観察された(約35%)ことから、感染CD25陽性細胞はCD25陰性細胞由来であると結論された。4.同一感染個体のCD25陰性および陽性のCD4 T細胞における細胞遺伝子の発現をcDNA microarrayにて解析・比較したところ、チロシンキナーゼSykの発現において20倍近い上昇が見いだされ、今後、治療標的の候補として注目される。
KAKENHI-PROJECT-21590515
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高精度電磁場解析統合システムによるミリ波伝送機器損失評価と最適化
前年度行っていたタングステンファズ構造を模した凸凹構造・バブル構造をターゲットとし、平面波を照射するFDTDシミュレーションでは、タングステン中でのジュール加熱を求めるアルゴリズムが不完全であった。FDTDする際に必要なYee格子では、計算に用いる電場磁場はxyz成分ごとに違う場所に位置するが、その場所でのジュール熱を求めるという素朴な手法を用いることで精度がよくなった。この改良手法を用いて、凸凹の場合、さらには、実際のタングステンファズ構造での電磁波応答シミュレーションをすることができた。結果として、タングステンの表面の凸凹度合いが強くなればなるほど、電磁波の吸収が進むことが分かった。さらに、凹の構造より、凸の構造の方が電磁波の吸収が強くなることが分かった。これは、ナノ構造の柱に囲まれた領域に電磁波が閉じ込められそこで電磁波の強度が増強されるためである。ゆえに、同じ表面積でも、構造によっては、吸収率が変わることも見出すことができた。さらに、導波管中の電磁波伝搬については、これまではTEモードもしくはTMモードの電磁波入射を行ってきた。今年度新たな試みとして、電磁波の持つ角運動量について着目した。結果として、まずは矩形導波管中での各電磁波伝搬モードのある断面での総角運動量を求めゼロになることを解析的に示すことができた。一方、円筒導波管では、総角運動量が有限になることを、系の対称性から議論できた。導波管中の電磁波伝搬について、壁材料の適切なモデルの導入から、ファズ構造の光学応答への拡張することができた。さらには、導波管中の伝搬モードの角運動量についての検討を始めることまでできた。これらの進展を見て、おおむね順調に進展したと考える。コルゲート導波管に電磁波応答を、複素誘電率を組み込んだドルーデ=ローレンツモデルによるシミュレーションコードで計算できるようになった。この計算の検証として、コルゲート導波管の伝送効率実験との比較で妥当性が定性的に確認できるようになった。さらに、導波管以外のナノ構造金属表面の実験との比較も進め妥当性が定量的に確認できた。この成果を学会論文発表し本コードの信頼性を確固とするため延長を希望し認められた。今後は、得られた結果を積極的に学術発表を行い。得られた結果・計算技法の周知に努める。プラズマの電子加熱では、サイクロトロン周波数(50200GHz)のミリ波領域帯での高出力の電磁波の供給が必要となる。(例えば、現在建設中のITERでは170GHzのミリ波で一経路あたり約1MW(全体で20MW)をプラズマに供給する設計となっている。)この加熱装置システムは、ミリ波発生源のジャイロトロンから、ミリ波伝送系を経由して、プラズマ装置中のアンテナから照射する構成になっている。さらに、ミリ波伝送系は、以下のミリ波伝送素子で構成される。1)コルゲート導波管:直線経路の構成素子、2)マイターベンド:90度伝送経路を曲げる素子、3)偏波器:ミリ波の偏波方向を制御するための素子。この伝送系では、ジャイロトロンで発生する電磁波を「エネルギー損失を少なく伝送する(高効率化)」、かつ、「伝送されるミリ波の位相・偏波面やエネルギープロファイルが、プラズマ加熱に適した状態を維持(高品質化)する」ことが要求される。初年度は、「モード変換損失の評価」に取り組んだ。ミリ波伝送素子の伝送損失として、素子の金属面での散乱にともなう入力波のモード変換損失と、その金属面で発生する渦電流によるオーミック損失の二つが考えられる。当初のFDTDコードでは、これらの評価が不十分であった。そこで、本年度は、モード変換損失の評価を行えるようにデータ解析部分の開発を行った。その結果、入力モードであるHE11モードが、高次のモードに変換される割合を定量的に得ることができるようになった。目標であったFDTD計算によって得られた電磁波の時空間分布のデータを使ってモード展開を行えるようになった。これにより、実験測定では計測困難である出力波に含まれる高次モードの割合を定量的に評価できるようになった。昨年まで開発を行ってきたECHシステムのミリ波伝送系の電磁波伝搬シミュレーションを引き続き行い、マイターベンド及びマイターベンド偏波器に入射された波(HE11)が、伝送される差に発生する高次モードの割合の計算の精度を上げることにより、これまでの求めていた値よりより詳細なモード分布を定量的に求めることができた。さらに、本研究からの副産物として、タングステンナノ構造物の電磁波応答についての計算のエンジン部を提供することができた。さらに、複雑な形状を三次元(3D)差分格子に離散化しコードに入力する作業に莫大な時間がかかる。この作業の効率化のため、導波管加工に用いられる3D CADデータを直接シミュレーションの入力コードに変換するツールのプロトタイプを開発することができた。また、本FDTDコードの妥当性を検証するために、コルゲート導波管以外の系(ナノ構造体)に電磁波を照射する課題に取り組み始めた。この応用系では、実験と直接比較できるため、ひいては本課題で開発したコードの妥当性の検証を行うという目的がある。そのための準備を本年度進めることができた。昨年度計算したモード解析を、改良することができた。具体的には、モード解析を行うための基底関数で展開する際に"内積"を求める必要がある。昨年度までの内積計算の精度をあげるため、ある導波管断面における積分をさらに改良した。
KAKENHI-PROJECT-15K06650
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高精度電磁場解析統合システムによるミリ波伝送機器損失評価と最適化
これによって精度の良い内積の値を求められるようになり、その結果各モードの割合を精度良く求められるようになった。これまで電磁波伝播シミュレーションコードの開発を通して、伝送路に用いられているコルゲート導波管やマイターベンドの伝送効率を調査してきた。その際、入力面と出力面でのエネルギー(ポインティングベクトルの面積分の時間平均)比を見るとコルゲート導波管、マイターベンドともに先行研究である実験と同様の結果が得られた。しかしながら、マイターベンド中の電磁場分布が想定される基本モードとは異なり、歪んでいることを確認した。これは、回折により発生した高次モードを再現しているためであり、出力面でのエネルギー計算には様々なモードが重ね合わされた電磁場分布が使用されていることを示している。これため、厳密に伝送効率を評価するためには基本モードのみを抽出する必要がある。我々が進めてきたFDTD法では、任意の電磁場分布を取得することができるため、モード展開の技術を容易にすることができる。伝送電力比のみによる伝送効率の評価ではなく、導波管表面での熱損失や高次モードへ変換される割合などを踏まえた伝送効率の評価を行うための手法を開発した。さらに、本シミュレーションでは大規模化が必須である。そこで、FDTDのエンジンの部分の並列化を行い、高速化することができた。さらに本シミュレーションの心臓部ともいえる場と物質の相互作用の取り扱い手法の有効性を確かめるべく、タングステンファズ構造を模した凸凹構造・バブル構造をターゲットとし、平面波を照射するFDTDシミュレーションを行った。その結果、凸の場合は山の高さ(凹の場合は谷の深さ)が大きくなればなるほど、反射率が減少することが示せた。これは、二体衝突近似法で計算したスパッタリング収量についての依存性と訂正的には似たふるまいをすることを突き止めた。本手法により、炉材料の様々な電磁場応答をシミュレーションで調べられる基盤を作り上げた。FDTDの並列化を行うことができた。さらに、場と物質の相互作用のシミュレーション技法の妥当性が検証できたため、ほぼ順調に進めることができた。前年度行っていたタングステンファズ構造を模した凸凹構造・バブル構造をターゲットとし、平面波を照射するFDTDシミュレーションでは、タングステン中でのジュール加熱を求めるアルゴリズムが不完全であった。FDTDする際に必要なYee格子では、計算に用いる電場磁場はxyz成分ごとに違う場所に位置するが、その場所でのジュール熱を求めるという素朴な手法を用いることで精度がよくなった。この改良手法を用いて、凸凹の場合、さらには、実際のタングステンファズ構造での電磁波応答シミュレーションをすることができた。結果として、タングステンの表面の凸凹度合いが強くなればなるほど、電磁波の吸収が進むことが分かった。さらに、凹の構造より、凸の構造の方が電磁波の吸収が強くなることが分かった。これは、ナノ構造の柱に囲まれた領域に電磁波が閉じ込められそこで電磁波の強度が増強されるためである。ゆえに、同じ表面積でも、構造によっては、吸収率が変わることも見出すことができた。
KAKENHI-PROJECT-15K06650
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消化器癌幹細胞標的治療の開発を目的としたABC/SLCトランスポーターの発現解析
1.消化器癌における癌幹細胞の存在を調べる。研究室が保有する大腸癌細胞株を用いて、それらにSP細胞が含まれるかどうかの解析を進めてきた。その中で、大腸癌細胞株の解析において、DLD-1, HCT-8, SW948などでSP細胞が同定できることを確認してきた。2.癌幹細胞及び分化した癌細胞におけるABCトランスポーター遺伝子の発現パターンを解析する。SP細胞群に癌幹細胞が多く含まれる可能性が示され、SP細胞群とnon-SP細胞群における全ABCトランスポーター遺伝子の発現を、TaqManリアルタイム定量RT-PCR法にて調べ、ATP-bindingcassette transporter(ABCトランスポーター)ファミリーの中の数種類、特にABCG2が高発現していた。3. Solute Carrier(SLC)の発現についても解析を行った。4.トランスポーターが癌幹細胞の薬剤耐性の要因となっているかを検討する。SP細胞群とnon-SP細胞群での発現に差が認められるトランスポーターをピックアップし、そのトランスポーターによって輸送される抗癌剤を用いて細胞増殖抑制試験を行った。5. SP分画形成に関与するABCトランスポーターを明らかにする。ABCG2が、Hochst33342を輸送するトランスポーターである可能性が示され、SP細胞群とnon-SP細胞群で発現に差が認められるトランスポーターの可能性が示された。完全長cDNAを発現ベクターに組み込み、トランスフェクタントを作製、それを用いて、Hochst33342の輸送実験へと進めた。(1)消化器癌における癌幹細胞の存在を調べる。研究室が保有する大腸癌細胞株を用いて、それらにSP細胞が含まれるかどうかの解析を進めてきた。その中で、大腸癌細胞株の解析において、DLD-1,HCT-8,SW948などでSP細胞が同定できることを確認してきた。(2)癌幹細胞及び分化した癌細胞におけるABCトランスポーター遺伝子の発現パターンを解析する。SP細胞群に癌幹細胞が多く含まれる可能性が示され、SP細胞群とnon-SP細胞群における全ABCトランスポーター遺伝子の発現を、TaqManリアルタイム定量RT-PCR法にて調べ、ATP-bindingcassette transporter(ABCトランスポーター)ファミリーの中の数種類、特にABCG2が高発現していた。(3)Solute Carrier(SLC)の発現についても解析を行う。抗癌剤の取り込みを担う事が報告されているSLCについて、発現を調べた。(4)トランスポーターが癌幹細胞の薬剤耐性の要因となっているかを検討する。SP細胞群とnon-SP細胞群での発現に差が認められるトランスポーターをピックアップし、そのトランスポーターによって輸送される抗癌剤を用いて細胞増殖抑制試験を行った。1.消化器癌における癌幹細胞の存在を調べる。研究室が保有する大腸癌細胞株を用いて、それらにSP細胞が含まれるかどうかの解析を進めてきた。その中で、大腸癌細胞株の解析において、DLD-1, HCT-8, SW948などでSP細胞が同定できることを確認してきた。2.癌幹細胞及び分化した癌細胞におけるABCトランスポーター遺伝子の発現パターンを解析する。SP細胞群に癌幹細胞が多く含まれる可能性が示され、SP細胞群とnon-SP細胞群における全ABCトランスポーター遺伝子の発現を、TaqManリアルタイム定量RT-PCR法にて調べ、ATP-bindingcassette transporter(ABCトランスポーター)ファミリーの中の数種類、特にABCG2が高発現していた。3. Solute Carrier(SLC)の発現についても解析を行った。4.トランスポーターが癌幹細胞の薬剤耐性の要因となっているかを検討する。SP細胞群とnon-SP細胞群での発現に差が認められるトランスポーターをピックアップし、そのトランスポーターによって輸送される抗癌剤を用いて細胞増殖抑制試験を行った。5. SP分画形成に関与するABCトランスポーターを明らかにする。ABCG2が、Hochst33342を輸送するトランスポーターである可能性が示され、SP細胞群とnon-SP細胞群で発現に差が認められるトランスポーターの可能性が示された。完全長cDNAを発現ベクターに組み込み、トランスフェクタントを作製、それを用いて、Hochst33342の輸送実験へと進めた。
KAKENHI-PROJECT-19659318
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19659318
走行環境リスクポテンシャル予測に基づく知能化自動車の衝突自動回避制御系の基盤構築
本研究では,道路環境リスクポテンシャル予測モデルを内蔵した高度運転支援システムの構築を目的とし,障害物回避時における運動計画部と運動制御系を設計した.横方向運動制御では障害物への衝突と道路逸脱の危険度,前後運動制御では障害物の死角からの歩行者の飛び出しをリスクポテンシャルとして定量的に記述している.横運動と前後運動各々のリスクポテンシャルを中間変数として扱い,最適化問題に帰着することで運動計画アルゴリズムを提案した.実際の熟練ドライバの走行データと比較し,構築した運動計画手法は熟練ドライバの運転行動を模擬可能であることが確認できた.本研究では、走行環境のリスク予測およびドライバの常時運転状態監視に基づき、熟練運転者のように高い確率で事故を自律的に回避するためのモビリティ知的運動制御システムを開発することを目的とする。平成25年度の実績は、以下である。まず、前年度に引き続き、危険個所を含む市街地内の実路を一定期間走行することにより、取得した熟練運転者の走行データを用いて規範運転行動モデルを構築した。次に、車載カメラおよびレーザレーダからのセンサフュージョンにより、歩行者の運動を予測し、数秒先の自車との相対位置を推定し、走行空間上の衝突リスクポテンシャルを演算するポテンシャルフィールドアルゴリズムを開発した。具体的には、最適制御とポテンシャルフィールドを組み合わせて、演算されたリスクポテンシャルに応じて目標減速度および目標経路を決定することができた。最適制御のロジックでは、自車の数秒先の運動を予測し、リスクが最小となる経路を決定するように設定した。ドライビングシミュレータを用いて市街地走行で得られた危険場面シナリオを作成し、一般運転者に走行してもらい、環境ハザード・危険状況に対する速度制御モデルと経路計画の妥当性を検討した。本研究では,道路環境リスクポテンシャル予測モデルを内蔵した高度運転支援システムの構築を目的とし,障害物回避時における運動計画部と運動制御系を設計した.横方向運動制御では障害物への衝突と道路逸脱の危険度,前後運動制御では障害物の死角からの歩行者の飛び出しをリスクポテンシャルとして定量的に記述している.横運動と前後運動各々のリスクポテンシャルを中間変数として扱い,最適化問題に帰着することで運動計画アルゴリズムを提案した.実際の熟練ドライバの走行データと比較し,構築した運動計画手法は熟練ドライバの運転行動を模擬可能であることが確認できた.本研究では、走行環境のリスク予測およびドライバの常時運転状態監視に基づき、熟練運転者のように高い確率で事故を自律的に回避するためのモビリティ知的運動制御システムを開発することを目的とする。平成24年度の実績は、以下である。まず、危険個所を含む市街地内の実路を一定期間走行することにより、GPSによるデジタルマップ上での行動パターン、およびハンドル・ペダル操作の個人の運転行動パターンを計測するシステムを作成し、熟練運転者の走行データを収集した。本学付近の市街地内の公道を走行するための実験車を作成し、上記の地図情報と運転者情報に加えて、周辺交通状況、視覚動作と運転操作行動との関係をリアルタイムで記録可能とするデータ収集装置を製作した。この実験車により1日1時間程度の実験走行により、運転行動のデータ収集を行った。次に、車載カメラ、レーザレーダからのセンサフュージョンにより、対向車、自転車、歩行者の運動を予測し、数秒先の自車との相対位置を推定し、走行空間上の衝突リスクポテンシャルを演算するポテンシャルフィールドアルゴリズムを開発した。演算されたリスクポテンシャルに応じて目標減速度を決定し,その目標減速度に追従するように自動ブレーキ制御を行う.また、運転者の運転支援に対する受容性を検討するため、ドライビングシミュレータを用いて市街地走行で得られた危険場面シナリオを作成した。本研究では、走行環境のリスク予測およびドライバの常時運転状態監視に基づき、熟練運転者のように高い確率で事故を自律的に回避するためのモビリティ知的運動制御システムを開発することを目的とする。平成26年度の実績は、以下である。前年度に引き続き、熟練ドライバの行動から走行リスクポテンシャルのパラメータ同定を行った。車両周辺の移動物体に対する衝突リスクが存在する場合、衝突リスクポテンシャルを時々刻々演算し、最適化アルゴリズムを用い規範モデルに基づきリスクに対する規範車両応答を決定する計算手法を提案し、その有効性を確認した。また、規範値と現在の行動との差を最小化する衝突自動回避システムを設計し、シミュレーションおよび実車実験によりその有効性を検証する。実験車両の加減速制御と操舵制御システムを用い、環境リスクポテンシャル予測モデルを内蔵し、時々刻々の周辺環境の動的変化に対応可能な危険自動回避システムを設計し、実車実験によってその有効性・実用性を確認した。また、今年度は主に研究計画の通り研究を実施でき、各方面で研究成果発表および雑誌論文への投稿を行うことができた。機械力学・制御工学今年度は主に研究計画の通り研究を実施でき、各訪問で成果発表を行うことができた。今年度はシミュレーションおよび走行実験を実施し、主に研究計画の通り研究を実施でき、学会等で成果発表を行うことができた。最終年度では、車両周辺の移動物体に対する衝突リスクが存在する場合、衝突リスクポテンシャルを時々刻々演算し、規範モデルに基づきリスクに対する規範車両応答を決定し、規範値と現在の行動とのギャップを最小化する衝突自動回避システムを設計し、シミュレーションおよび実車実験によりその有効性を検証する。超小型電気自動車の左右独立駆動インホイールモータ制御と操舵制御システムを用い、環境リスク予測モデルを内蔵し、時々刻々の周辺環境の動的変化に対応可能な危険自動回避システムを設計し、実車実験によってその有効性・実用性を確認し、開発した衝突回避手法を体系的にまとめる。
KAKENHI-PROJECT-24560251
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24560251
走行環境リスクポテンシャル予測に基づく知能化自動車の衝突自動回避制御系の基盤構築
ドライビングシミュレータを用いて市街地走行で得られた危険場面シナリオを作成し、高齢運転者に走行してもらい、環境ハザード・危険状況に対するブレーキ反応時間および危険回避操作を計測し、その特性を把握する。また、車両周辺の移動物体に対する衝突リスクが存在する場合、衝突リスクポテンシャルを時々刻々演算し、規範モデルに基づきリスクに対する規範車両応答を決定し、規範値と現在の行動とのギャップを最小化する衝突自動回避システムを設計し、シミュレーションおよび実車実験によりその有効性を検証する。提案者は、これまで超小型電気自動車の左右独立駆動インホイールモータ制御により、先行車追従、車線維持の車両制御システムを開発する。その車両制御システムをさらに拡張し、環境リスク予測モデルを内蔵し、時々刻々の周辺環境の動的変化に対応可能な危険自動回避システムを設計する。該当なし
KAKENHI-PROJECT-24560251
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コミュニケーション場面における非言語・パラ言語・コードスイッチングの機能分析
本研究では、コミュニケーション場面において繰り返し使用される身振り手振りなどの非言語的手段や、声の大小、あいづちの打ち方、間(ま)の取り方などのパラ言語的手段等の機能を具体的に分析するとともに、表現意図を相手に正しく伝達したり、目的を遂行するためのコードスイッチングの有効性や働きかけの方策についても分析・検討した。具体的に取り上げた場面は(1)言葉によるコミュニケーションが成立しにくい場面として、・特別養護老人ホームにおける高齢者とケースワーカーとのコミュニケーション。(2)目的達成の働きかけ方の差違を捉える場面として、(ア)急病人の発生に伴い往診を依頼する場面(イ)商店に置いて買い物という本来の目的外の荷物を預かってもらう場面(ウ)スーパーで受け取った釣り銭の間違いを指摘し、確認してもらう場面で、以上の分析から、言語以外の要素がコミュニケーションの成立に大きく関わっている実態を捉えることができた。本研究では、コミュニケーション場面において繰り返し使用される身振り手振りなどの非言語的手段や、声の大小、あいづちの打ち方、間(ま)の取り方などのパラ言語的手段等の機能を具体的に分析するとともに、表現意図を相手に正しく伝達したり、目的を遂行するためのコードスイッチングの有効性や働きかけの方策についても分析・検討した。具体的に取り上げた場面は(1)言葉によるコミュニケーションが成立しにくい場面として、・特別養護老人ホームにおける高齢者とケースワーカーとのコミュニケーション。(2)目的達成の働きかけ方の差違を捉える場面として、(ア)急病人の発生に伴い往診を依頼する場面(イ)商店に置いて買い物という本来の目的外の荷物を預かってもらう場面(ウ)スーパーで受け取った釣り銭の間違いを指摘し、確認してもらう場面で、以上の分析から、言語以外の要素がコミュニケーションの成立に大きく関わっている実態を捉えることができた。コミュニケーションが成立しにくい場面として、具体的に(1)特別養護老人ホームにおける高齢者とケースワーカーとのコミュニケーション(調査地点:山形県三川町「なのはな荘」)(2)海外都市における日本人と外国人とのコミュニケーション(調査地点:オーストラリアシドニー)の二地点で臨地調査を実施し、ビデオカメラ、録音機等で場面を記録・観察した。収集データのデータベース化を行うと同時に以下の観点について分析を行った。・声の大小、あいづちの打ち方、間(ま)の取り方などのパラ言語的手段が情報伝達にどのように機能しているか。・身振り手振りなどの非言語的手段がコミュニケーションの成立をどうサポートしているか。・特に、話しことばに障害がある高齢者や、母語しか使用できない日本人や外国人の場合、言語の代替手段としての非言語手段を用いて話し手の表現意図をどのようにして的確に伝えようとしているか。・地域社会で生活する高齢者とのコミュニケーションを成立させる上で、方言と共通語との切り替えをどのように行っているか。本研究では、コミュニケーション場面において繰り返し使用される身振り手振りなどの非言語的手段や、声の大小、あいづちの打ち方、間(ま)の取り方などのパラ言語的手段等の機能を具体的に分析するとともに、表現意図を相手に正しく伝達したり、目的を遂行するためのコードスイッチングの有効性や働きかけの方策についても分析・検討した。具体的に取り上げた揚面は(1)言葉によるコミュニケーションが成立しにくい場面として、・特別養護老人ホームにおける高齢者とケースワーカーとのコミュニケーション。(2)目的達成の働きかけ方の差違を捉える場面として、(ア)急病人の発生に伴い往診を依頼する場面(イ)商店に置いて買い物という本来の目的外の荷物を預かってもらう場面(ウ)スーパーで受け取った釣り銭の間違いを指摘し、確認してもらう場面で、以上の分析から、言語以外の要素がコミュニケーションの成立に大きく関わっている実態を捉えることができた。
KAKENHI-PROJECT-16520248
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16520248
IL-12とIL-18産生によって引き起こされる移植拒絶反応及びGVHDについて
白血病をはじめとする血液細胞・免疫担当細胞の悪性腫瘍に対しては徹底した化学療法と骨髄移植が、また、一部の免疫不全に対しても骨髄移植は有効な治療方法である。しかし、通常の骨髄移植にはドナー・レシピエント間の多少の組織適合抗原の不適合が黙認されている。その結果、基礎疾患は完治しても多様な臓器病変を伴う移植片対宿主病(GVHD)をおうおうにして随伴する。当該研究において、急性GVHDの重症度と患者血中IL-18値が正に相関することが明らかになった。また、マウスモデルにおいても同様の結果が得られた。ところで、IL-18は生理活性を欠く前駆体として貯蔵され、適正な刺激により活性化された切断酵素が前駆体を切断して活性型IL-18が分泌される。急性GVHDにおけるIL-18分泌機構を検討したところ、Fas/Fasリガンドにより活性化されるcaspase-1が必須であることが判明した。さらに、caspase-1欠損マウスでは、急性GVHDを誘導しても血清IL-18上昇が認められないばかりでなく、種々の臓器病変も著しく軽減することから、caspase-1阻害を標的にした新たな臨床治療応用の可能性が示唆された。IL-18は生理活性の無い前駆体としてマクロファージ系をはじめ多様な細胞に恒常的に産生・貯蔵され、適正な刺激下に特定の細胞内酵素により切断されたのちに生理活性型IL-18として分泌される。IL-18は炎症性サイトカインであることに着目して、皮膚移植におけるIL-18の役割を検討した。C57BL/6バックグラウンドのIL-18欠損マウス並びに対照群として野生型C57BL/6マウスに、MHC class Iの異なる野生型BALB/cマウスの皮膚片を移植した。現在経過観察中ではあるが、野生型に比べてIL-18欠損マウスヘの移植片の生着率はより良好であった。逆に、野生型BALB/cマウスにIL-18欠損或いは野生型C57BL/6マウス皮膚片を移植しても、両者の移植片生着率に差は認められなかった。これらの結果から、移植片に対する細胞障害にはIL-18が重要な役割を果たしていることが示唆された。現在、その機序を解析中である。さらに、C57BL/6バックグラウンドのIL-12/IL-18のダブルノックアウトマウス並びにIL-12単独ノックアウトマウスを用いて同様の検討を計画している。ところで、血清IL-18は急性GVHD反応でも上昇し、その量は臨床症状と相関性が高い。そこで、急性GVHDにおけるIL-18の分泌機構を検討した。最近の研究から、LPS刺激によるIL-18の分泌にはcaspase-1が必須であるが、Fasリガンド(L)刺激によるIL-18分泌には必ずしもcaspase-1を必要としないことが明らかになった。ところで、急性GVHDではFas或いはFasLが強く発現誘導されることから、Fas/FasLを介したIL-18分泌の可能性を検討した。予想通り、FasLに機能欠損のあるgld/gldマウス由来の脾細胞をドナーとすると野生型脾細胞をドナーとした場合に比べて、血清IL-18値の上昇はほとんど無かった。このことから、急性GVHDにおけるIL-18の分泌にはFas/FasL系が重要な働きを果たしていると考えられた。このように、移植拒絶反応とその裏の反応であるGVHDの何れにおいても、IL-18が重要な働きをしていることが判明した。白血病をはじめとする血液細胞・免疫担当細胞の悪性腫瘍に対しては徹底した化学療法と骨髄移植が、また、一部の免疫不全に対しても骨髄移植は有効な治療方法である。しかし、通常の骨髄移植にはドナー・レシピエント間の多少の組織適合抗原の不適合が黙認されている。その結果、基礎疾患は完治しても多様な臓器病変を伴う移植片対宿主病(GVHD)をおうおうにして随伴する。当該研究において、急性GVHDの重症度と患者血中IL-18値が正に相関することが明らかになった。また、マウスモデルにおいても同様の結果が得られた。ところで、IL-18は生理活性を欠く前駆体として貯蔵され、適正な刺激により活性化された切断酵素が前駆体を切断して活性型IL-18が分泌される。急性GVHDにおけるIL-18分泌機構を検討したところ、Fas/Fasリガンドにより活性化されるcaspase-1が必須であることが判明した。さらに、caspase-1欠損マウスでは、急性GVHDを誘導しても血清IL-18上昇が認められないばかりでなく、種々の臓器病変も著しく軽減することから、caspase-1阻害を標的にした新たな臨床治療応用の可能性が示唆された。白血病をはじめとする血液細胞・免疫担当細胞の悪性腫瘍に対しては徹底した化学療法と骨髄移植が、また、一部の免疫不全に対しても骨髄移植は有効な治療方法である。しかし、通常の骨髄移植にはドナー・レシピエント間の多少の組織適合抗原の不適合が黙認されている。その結果、基礎疾患は完治しても多様な臓器病変を伴う移植片対宿主病(GVHD)をおうおうにして随伴する。当該研究において、急性GVHDの重症度と患者血中IL-18値が正に相関することが明らかになった。また、マウスモデルにおいても同様結果が得られた。
KAKENHI-PROJECT-11670331
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11670331