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マルチキナ-ゼ阻害薬の緑内障手術モデル眼における効果 | 【目的】レゴラフェニブはチロシンキナーゼやVEGF (vascular endothelial growth factor )受容体13などの受容体に阻害作用をもつとされるマルチキナーゼ阻害薬で強力な線維芽細胞増殖抑制作用が期待できる。そこで前年度にイヌ緑内障濾過手術モデル眼における眼圧、濾過胞形成に対する効果を調べた。その結果、濾過手術モデル眼作成後のレゴラフェニブ一日2回点眼により少なくとも4週後まで細胞増殖が抑制され、濾過胞形成および眼圧下降が維持された。これらの結果からレゴラフェニブ点眼は緑内障濾過手術に有効であることが示唆され、短期的なレゴラフェニブの効果が確認された。現在は、同様にイヌ緑内障濾過手術眼を作成し、レゴラフェニブ点眼による濾過胞や眼圧に及ぼす効果をより長期(3ヶ月間)にわたって検討している途中である。比較対照として、臨床上使用されているマイトマイシンC術中結膜下3分曝露を用いて安全性も検討している。これらのことから臨床応用への可能性をさらに探ることとなった。より長期の点眼実験は組織学的検討を含め時間がかかるが、ほぼ予定通り進行していると考えている。前回の実験でレゴラフェニブの4週間点眼にて眼圧下降及び濾過胞形成がより維持されることが分かった。現在マイトマイシンC術中結膜下曝露と比較してその効果と安全性を比較し、レゴラフェニブの緑内障濾過手術への臨床応用が可能かどうかを検討している。【目的】レゴラフェニブはチロシンキナーゼやVEGF (vascular endothelial growth factor )受容体13などの受容体に阻害作用をもつとされるマルチキナーゼ阻害薬で強力な線維芽細胞増殖抑制作用が期待できる。そこで今回イヌ緑内障濾過手術モデル眼における眼圧、濾過胞形成に対する効果を調べた。【対象と方法】対象はビーグル犬12匹12眼。全身麻酔下にて濾過手術モデル作製後, 2%レゴラフェニブ50μlを処置眼に、基剤を対照眼に1日2回4週間点眼し、眼圧と濾過胞形成を4週後まで測定、4週後に眼球を摘出し免疫組織学的検討を行った。【結論】濾過手術モデル眼作成後のレゴラフェニブ一日2回点眼により少なくとも4週後まで細胞増殖が抑制され、濾過胞形成および眼圧下降が維持された。これらの結果からレゴラフェニブ点眼は緑内障濾過手術に有効であることが示唆された。短期的なレゴラフェニブの効果が確認されたことから、今後1)より長期の効果を確認2)ハイドロゲルなどに包含させて徐放しより長期間作用させる3)術中に結膜下注射を行って一回の投与を行う4)現在臨床使用されているマイトマイシンCとの効果および副作用の比較を行い、臨床応用への可能性を探ることとなった。点眼実験は組織学的検討を含め時間がかかるが、ほぼ予定通り進行していると考えている。【目的】レゴラフェニブはチロシンキナーゼやVEGF (vascular endothelial growth factor )受容体13などの受容体に阻害作用をもつとされるマルチキナーゼ阻害薬で強力な線維芽細胞増殖抑制作用が期待できる。そこで前年度にイヌ緑内障濾過手術モデル眼における眼圧、濾過胞形成に対する効果を調べた。その結果、濾過手術モデル眼作成後のレゴラフェニブ一日2回点眼により少なくとも4週後まで細胞増殖が抑制され、濾過胞形成および眼圧下降が維持された。これらの結果からレゴラフェニブ点眼は緑内障濾過手術に有効であることが示唆され、短期的なレゴラフェニブの効果が確認された。現在は、同様にイヌ緑内障濾過手術眼を作成し、レゴラフェニブ点眼による濾過胞や眼圧に及ぼす効果をより長期(3ヶ月間)にわたって検討している途中である。比較対照として、臨床上使用されているマイトマイシンC術中結膜下3分曝露を用いて安全性も検討している。これらのことから臨床応用への可能性をさらに探ることとなった。より長期の点眼実験は組織学的検討を含め時間がかかるが、ほぼ予定通り進行していると考えている。今回レゴラフェニブの4週間点眼にて眼圧下降及び濾過胞形成がより維持されることが分かった。今後はレゴラフェニブを濾過手術時に結膜下に一環注射を行って同様の実験を行いその一回投与での効果を確認し、その結果をみてから、ハイドロゲルなどに包含させて結膜下に挿入し徐放させることにより、より効果的で持続的な効果を得られるかを確認する。さらに、現材種リュとなっているマイトマイシンC術中結膜下曝露と比較してその効果と安全性を比較し、レゴラフェニブの緑内障濾過手術への臨床応用が可能かどうかを検討する。前回の実験でレゴラフェニブの4週間点眼にて眼圧下降及び濾過胞形成がより維持されることが分かった。現在マイトマイシンC術中結膜下曝露と比較してその効果と安全性を比較し、レゴラフェニブの緑内障濾過手術への臨床応用が可能かどうかを検討している。平成29年度において、濾過手術モデル眼作成後のレゴラフェニブ点眼により少なくとも4週後まで細胞増殖が抑制され、濾過胞形成および眼圧下降が維持されることが示された。これらの結果をふまえて、平成30年度は、1)より長期の点眼による効果を確認。 | KAKENHI-PROJECT-17K11496 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K11496 |
マルチキナ-ゼ阻害薬の緑内障手術モデル眼における効果 | 2)ハイドロゲルなどに包含させて徐放しより長期間作用させたときの作用を確認。3)術中に結膜下注射を行った一回投与での確認を行う。4)現在臨床使用されているマイトマイシンCとの効果および副作用の比較を行い、臨床応用への可能性を探る。という目的のために、実験動物であるイヌの追加購入や、ハイドロゲル、マイトマイシンCの購入、その他、さまざまな器材の購入のために次年度使用額が必要となっている。現在、イヌ緑内賞濾過手術モデル眼を用いてレゴラフェニブを点眼してより長期の眼圧および濾過胞に及ぼす効果をマイトマイシンC術中曝露との比較検討を行っており、この研究続行にさらに薬剤、麻酔薬、手術のための縫合糸その他の消耗品、イヌの購入費が必要となっているため次年度に使用することとした。 | KAKENHI-PROJECT-17K11496 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K11496 |
スケッチに基づく濃淡画像からの知識獲得と概念形成 | 本研究においては、機械による情報処理においても、スケッチを活用して濃淡画像の認識・理解と知識獲得、概念形成にいたる手順の実現を試みようとして計画された。まず、スケッチの意義・形態に関しては、スケッチの意義、スケッチの表現形態、スケッチの利用形態、スケッチと知識獲得、などの現状を整理し、本研究の基礎資料とした。次に、スケッチを利用した知識獲得と概念形成に関連して、画像からの知識獲得の一例として、我々が開発した画像処理エキスパートシステムIMPRESSをとりあげた。IMPRESSは、濃淡画像(=処理対象)とそこから抽出すべき図形(=サンプル図形=ゴール)から、このサンプル図形を抽出する処理手順を自動的に生成する。しかし、その中における知識の扱いについてはこれまでほとんど検討されていなかった。そこで、このシステムの機能を知識獲得の観点からとらえなおし、スケッチからのアルゴリズムの学習という形での知識獲得機能の一例を検討した。まず、ツールとしてのIMPRESSを使い易くし、また、その中で最適な解を求めるために行われる解空間の探索をより省力化するような知識の構成法についても検討し、実際に効率のよいシステムを実現した。3番目に、やはりIMPRESSの学習において従来は正サンプルのみを与えていたのに対して、負サンプルを与えて画像処理手順を自動生成するシステムを初めて開発し、実際に実現した。これによって、画像サンプルのセットとそれに対応するスケッチのサンプルを与えることによって、「ある種の画像から***のような手順によって抽出されるもの」という形での一種の概念形成機能を実現できることが実験的に確かめられた。本研究においては、機械による情報処理においても、スケッチを活用して濃淡画像の認識・理解と知識獲得、概念形成にいたる手順の実現を試みようとして計画された。まず、スケッチの意義・形態に関しては、スケッチの意義、スケッチの表現形態、スケッチの利用形態、スケッチと知識獲得、などの現状を整理し、本研究の基礎資料とした。次に、スケッチを利用した知識獲得と概念形成に関連して、画像からの知識獲得の一例として、我々が開発した画像処理エキスパートシステムIMPRESSをとりあげた。IMPRESSは、濃淡画像(=処理対象)とそこから抽出すべき図形(=サンプル図形=ゴール)から、このサンプル図形を抽出する処理手順を自動的に生成する。しかし、その中における知識の扱いについてはこれまでほとんど検討されていなかった。そこで、このシステムの機能を知識獲得の観点からとらえなおし、スケッチからのアルゴリズムの学習という形での知識獲得機能の一例を検討した。まず、ツールとしてのIMPRESSを使い易くし、また、その中で最適な解を求めるために行われる解空間の探索をより省力化するような知識の構成法についても検討し、実際に効率のよいシステムを実現した。3番目に、やはりIMPRESSの学習において従来は正サンプルのみを与えていたのに対して、負サンプルを与えて画像処理手順を自動生成するシステムを初めて開発し、実際に実現した。これによって、画像サンプルのセットとそれに対応するスケッチのサンプルを与えることによって、「ある種の画像から***のような手順によって抽出されるもの」という形での一種の概念形成機能を実現できることが実験的に確かめられた。 | KAKENHI-PROJECT-05213207 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05213207 |
光線情報の計算的変換による3次元視覚処理技術体系の構築 | 本研究の目的は、空間を飛び交う光線を3次元視覚情報の単位と考え、光線データの計算的変換処理を基盤として、多様なデータ形式間での相互変換を可能とし、3次元視覚情報の取得、処理、表示を統一的に包含する技術体系を構築することである。本研究は、(a)3次元撮影方式、(b)3次元表示方式、(c)統一的体系化、の3つの部分から構成される。(a)については,符号化開口カメラを用いた光線空間の圧縮撮影において,最適な開口パターンを主成分分析や非負値行列因子分解に基づいて導出する方式をまとめて論文誌上で報告した.また,これらに加えて,ニューラルネットワークを用いたアプローチにも取り組み,有効性を明らかにした.(b)については,積層レイヤ型3次元ディスプレイの高画質化や大画面化を検討した.高画質化において,高解像度パネルを用いることの効果を詳細に検討し,その結果を論文誌上で報告した.また,大画面化においては,テーブルトップ型のレイアウトに取り組んだ.また,ディスプレイに関する国際会議(International Display Workshop)において,開発したディスプレイを実機展示し,来場者から様々なフィードバックを得た.(c)については,様々な入力デバイスから,光線情報の計算的変換を経て,3次元ディスプレイに実写コンテンツを表示する実験を行い,計算的変換の有効性を確かめた.入力としては,通常のカメラで撮影したフォーカルスタック画像,ライトフィールドカメラの一つであるRaytrixによる撮影画像,および,単一のカメラで撮影された画像とデプスマップ(デプスの取得にはプロジェクタを併用したアクティブ照明法を用いた)を用い,いずれも有効であることを確認した.平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。本研究の目的は、空間を飛び交う光線を3次元視覚情報の単位と考え、光線データの計算的変換処理を基盤として、多様なデータ形式間での相互変換を可能とし、3次元視覚情報の取得、処理、表示を統一的に包含する技術体系を構築することである。本研究は、(a)3次元撮影方式、(b)3次元表示方式、(c)統一的体系化、の3つの部分から構成される。(a)に関しては、商用のLytro Illumカメラおよび符号化開口カメラを用いて検討を行った。Lytro Illumに関しては、解像度の限界に着目し、撮影された多視点画像の解像度を数倍に向上させる超解像手法を開発した。符号化開口カメラに関しては、限られた撮影データから多視点画像を得る圧縮センシングにおいて、重み付きDCT基底を用いた信号復元技術を開発した。さらに、九州大学の所有する符号化開口カメラを用いて撮影実験を行い、明るさのムラなど、実機に固有の問題を明らかにした。(b)に関しては、バックライトの前方に液晶を積層するレイヤ型の表示方式を検討した。この方式では、表示したい多視点画像を入力として与え、これらの入力データから最適なレイヤのパターンを求める逆問題を解く。本研究では、ディスプレイで再現される空間周波数に関する理論的解析に基づき、高品質な映像表示を実現するための入力多視点画像の条件を明らかにした。また、この条件の妥当性を、実写映像を用いて実験的に検証した。(c)に関しては、多視点カメラで撮影されたデータをレイヤ型ディスプレイに表示する課題に取り組んだ。撮影された多視点画像をそのまま扱う代わりに、自由視点映像生成技術を用いて条件を適切に満たす多視点画像に変換する技術を開発した。また、多視点画像の信号的性質を分析し、圧縮センシングにおける画質劣化の分析や、高速・高精度な奥行き推定技術に向けた検討を行った。実施計画に記述した内容に加え、幾つかの面で予定以上の進捗がある。符号化開口カメラに関しては、既にカメラの実機を試作している九州大学のグループの協力を得ることができた。結果として、プロジェクトの早期に実際のカメラを用いた実験に取りかかることができ、実機に固有の問題を明らかにすることができた。レイヤ型のディスプレイにおいては、計算機シミュレーションだけではなく、OHPシートや液晶パネルを用いたプロトタイプの製作にも着手し、当初の予定よりも早く研究を進められている。また、ディスプレイへの実写映像の表示においては、多視点カメラに加えて、レンズアレイ方式のカメラによる映像を試みるなど、当初の予定よりも広範囲に取り組むことができている。光線情報の信号的性質についても、新たな理解が得られている。まず、圧縮センシングにおいて、被写体の奥行きに応じて復元品質に違いが出る現象を明らかにし、この違いが多視点画像における視差に起因することを示した。また、光線情報の信号的構造から奥行き推定を行う課題に取り組み、エピポーラ平面画像に対して事前にせん断変形をほどこすことで、従来よりも広範囲な奥行きに対応した奥行き推定が可能になることを明らかにした。本研究の目的は、空間を飛び交う光線を3次元視覚情報の単位と考え、光線データの計算的変換を基盤として、多様なデータ形式の相互変換を可能とし、3次元視覚情報の取得、処理、表示を統一的に包含する技術体系を構築することである。本研究は、(a)3次元撮影方式、(b)3次元表示方式、(c)統一的体系化、の3つの部分から構成される。(a)に関しては、符号化開口カメラ、およびレンズアレイ方式のライトフィールドカメラを用いて以下を検討した。符号化開口カメラでは、九州大学との共同研究により、実際のカメラハードウェアを用いて、開口を実現する機構(LCOS)と撮像系との時間同期、開口部分の明るさのムラなどを適切に扱う方式を構築した。 | KAKENHI-PROJECT-15H05314 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H05314 |
光線情報の計算的変換による3次元視覚処理技術体系の構築 | 同時に、効率的な撮影および多視点画像の復元のために適切な開口パターンについて、光線情報の主成分分析に基づいて理論的に検討した。レンズアレイ方式においては、異なる機構を持つ2種のカメラ(Lytro、Raytrix)から適切な多視点画像を得るための方式を構築した。(b)に関しては、3層の液晶をバックライト上に積層する方式のレイヤ型3次元ディスプレイのプロトタイプを構築した。また、与えられた多視点映像を適切な液晶の透過パターンへと高速に変換する演算手法を確立した。これらを用いて、様々な多視点映像を3次元表示してその有効性を確認した。(c)に関しては、光線データの信号的構造の解析に基づき高精度に奥行き情報を推定するために、せん断変形を活用した手法を確立した。また、多様な撮影方式(多眼カメラ、ライトフィールドカメラ、フォーカルスタック)によって得られる光線情報を、レイヤ型3次元ディスプレイに表示する実験を行い、撮影から表示までの体系化に見通しをつけた。以下に記すように、申請時の計画に記載した内容以上に進展が見られる。撮影方式に関しては、平成29年度に予定していた、コンピュテーショナルカメラの一種である符号化開口カメラを用いた撮影に既に取り組むことができている。また、当初予定していなかったフォーカルスタック撮影についても有効性を確認しつつある。表示方式においては、平成28年度に予定していたレイヤ型3次元ディスプレイのプロトタイプ開発が順調に進み、既に二つの学会でデモ展示をし、参加者から好評を得た。統一的体系化に関しては、撮影から表示までを行う複数の処理フローを考案・実装して有効性を確認しつつある段階である。平成29ー30年度に予定していた内容を前倒しして進められている状況である。本研究の目的は、空間を飛び交う光線を3次元視覚情報の単位と考え、光線データの計算的変換処理を基盤として、多様なデータ形式間での相互変換を可能とし、3次元視覚情報の取得、処理、表示を統一的に包含する技術体系を構築することである。本研究は、(a)3次元撮影方式、(b)3次元表示方式、(c)統一的体系化、の3つの部分から構成される。(a)に関しては、符号化開口カメラによる撮影方式を中心に、多眼カメラ、レンズアレイ型カメラによる撮影手法についても並行して検討した。符号化開口カメラにおいては、主成分分析や非負値行列因子分解を用いて光線情報の基底を導き、それらの基底に基づいて開口パターンや復元アルゴリズムを設計する手法を開発した。この手法は計算コストが低いため標準的な計算機で高速に実行でき、またカメラ実機を用いた実験を通して有効性も確認できている。(b)に関しては、レイヤ型ディスプレイおよびレンズアレイ型ディスプレイにおける実写映像の表示に取り組んだ。レイヤ型ディスプレイにおいては、表示映像よりも高精細なディスプレイデバイスを用いることで、飛び出し量の大きな表示物体の空間周波数の上限を向上させ、映像の鮮明度を改善できることを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-15H05314 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H05314 |
解軌道のコンパクト性が得られない力学系に対してのアトラクター構成方法に関する研究 | 昨年度の研究結果を受けて、本年度はPenrose-Fifeタイプの相分離モデルに対する時間大域解の一意存在性とその定常解の安定性について議論するとともに大域的アトラクターの構成方法に関する1つの手法として定常解を利用することができるのではないだろうかという結論に至った。何故ならば、我々が取り扱っている相分離モデルの時間無限大での挙動の解析の困難さは、熱方程式の拡散項が強非線形であるという事実から生じている。にもかかわらず、鈴木貴教授(大阪大学基礎工学部)の研究グループによって我々が考察している相分離モデルの定常解の個数が有限個であるという事実が今年度明確に証明されたからである。また、新しい課題として、秩序変数に浸透圧(Signorini)境界条件を課した相分離モデルに対する時間大域解の一意存在性を示すことに成功した。次に、昨年度から我々は地域経済動向を記述するための数理モデルを非線形微分方程式系で提唱し、その解析を関数解析学及び凸解析学の理論を用いて進めている。今年度は、非線形拡散を含む偏微分方程式系に対する時間局所解の一意存在性を証明することができた。また、オリジナルの常微分方程式系モデルに対しては定常解の一意存在性を示すとともに、その定常解の安定性について議論することができた。実際、唯一の定常解は漸近安定であり、結果として大域的アトラクターはその定常解1点で構成される。吸収集合の存在を示すのではなく、定常解の個数とその構造を精査することによって間接的に大域的アトラクターの存在を示すことに成功した。本モデルの理論的な解析が難しい1つの理由として熱方程式の拡散項がΔ(1/θ)であることが挙げられる。更に、熱流∇・(1/θ)に斉次ノイマン境界条件を課したシステムは全熱量を保存する(時間に関して不変な量という意味)系となり、秩序変数の値を強制的に制限したモデル以外では特殊な場合を除いて解の一意存在性すら未解決であった。そのような未解決なモデル(空間次元は1次元から3次元に制限)に対して、時間大域解の一意存在性を示すだけでなく、時間無限大での挙動と定常解の安定性を証明することに成功した。実際には、Sobolevの埋め込み定理・楕円形方程式に対する解の正則性・放物形方程式に対する解の正則性などの現在に至るまでの結果を適切に利用することによって解の一意存在性を証明することができた。また、定常問題は全熱量を保存する時間発展の方程式系における時間微分に関する項を削除した問題と一致することを示すとともに、鈴木貴教授(大阪大学基礎工学部)が提唱した双対変分原理を適用することによって、その定常問題に対する解の力学的安定性は保存される全熱量を1つのパラメータとして持つ非局所項を含んだ秩序変数に対する楕円形方程式の解の漸近安定性によって議論されることを証明した。Phase Field Modelの定常解の力学的安定性が秩序変数を支配する変分構造のみで議論することができることを示した結果は過去には存在しない。また、本研究の成果は非局所項を含む楕円形方程式の漸近安定性を議論することがしばしばPhase Field Modelなどの非線形放物形方程式系の力学的安定性の議論を可能にする場合があることを示している。昨年度の研究結果を受けて、本年度はPenrose-Fifeタイプの相分離モデルに対する時間大域解の一意存在性とその定常解の安定性について議論するとともに大域的アトラクターの構成方法に関する1つの手法として定常解を利用することができるのではないだろうかという結論に至った。何故ならば、我々が取り扱っている相分離モデルの時間無限大での挙動の解析の困難さは、熱方程式の拡散項が強非線形であるという事実から生じている。にもかかわらず、鈴木貴教授(大阪大学基礎工学部)の研究グループによって我々が考察している相分離モデルの定常解の個数が有限個であるという事実が今年度明確に証明されたからである。また、新しい課題として、秩序変数に浸透圧(Signorini)境界条件を課した相分離モデルに対する時間大域解の一意存在性を示すことに成功した。次に、昨年度から我々は地域経済動向を記述するための数理モデルを非線形微分方程式系で提唱し、その解析を関数解析学及び凸解析学の理論を用いて進めている。今年度は、非線形拡散を含む偏微分方程式系に対する時間局所解の一意存在性を証明することができた。また、オリジナルの常微分方程式系モデルに対しては定常解の一意存在性を示すとともに、その定常解の安定性について議論することができた。実際、唯一の定常解は漸近安定であり、結果として大域的アトラクターはその定常解1点で構成される。吸収集合の存在を示すのではなく、定常解の個数とその構造を精査することによって間接的に大域的アトラクターの存在を示すことに成功した。 | KAKENHI-PROJECT-16740102 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16740102 |
胃癌リンパ節微小転移の蛍光即時PCR法による検出と臨床的意義の研究 | 本研究では、real-time RT-PCR法による胃癌リンパ節微小転移の検出能を検討し、その検出能をH-E、免疫組織染色法と比較した。方法:対象は21例の胃癌患者のリンパ節392個と非癌リンパ節1個。全393個のリンパ節を3群に分類:病理陽性群71個、病理陰性群304個、対照群18個(非癌リンパ節1個とm癌の遠隔リンパ節17個)。全てのリンパ節は、半分をH-Eと免疫組織染色に用い、残る半分をreal-time RT-PCRに用いた。AGPC変法にてRNAを抽出し、続いてcDNAを作成。LyghtCyclerを用い、CEA・CK20を標的としたreal-time RT-PCRを行った。蛍光プローブはハイブリダイゼーションプローブを用いた。GAPDHのreal-time RT-PCRも行った。AE1/AE3、CEA、CK20の免疫染色を行い、染色強度を評価した。平均16ヶ月追跡。結果:CEA mRNAの平均値は病理陽性群、病理陰性群、対照群の各々で16,000、21、0.6。非補正CEA値を使用。カットオフ5.0で、1個を除く病理陽性群全てと、病理陰性群中26個が陽性。CK20 mRNAでは、病理陰性群中16個が陽性で、病理陽性群中13個が陰性。CEA、CK20の一方が陽性のリンパ節を陽性と判定する解析法で、病理陽性群全ては陽性、病理陰性群中30個が陽性。病理陽性群全てはAE1/AE3免疫組織染色陽性で、病理陰性群中の11個が陽性。陽性率はH-E、免疫組織染色、複合real-time RT-PCRで各々18.0%、20.9%、25.8%。病理陰性・複合real-time RT-PCR陽性の30個中9個で免疫組織染色で微小転移が確認された。AE1/AE3陽性の11人中、CEAとCK20では各々3人と5人が染色されなかった。mRNA測定値と染色強度はCEAでもCK20でも有意に相関した。早期癌9症例では病理陰性の2個がreal-time RT-PCR陽性、si患者の1例では病理学的に1群転移のみ認めたがreal-time RT-PCRで2群転移を認めた。この3例は現在まで無再発。1例は肝転移再発死亡し、他に4例の腹膜播種再発・肝転移再発を認めた。討論:本研究は胃癌リンパ節微小転移の検出にreal-time RT-PCR法を用いた最初のものである。本法は定量的で迅速であるため臨床応用性が広い。カットオフを定めることにより偽陽性を排除し、複合real-time RT-PCR法にて偽陰性を排除しうる。微小転移が通常のリンパ流領域に存在したこと、少数個の集塊から成る転移巣であったことが、今回予後がよかった理由と考えた。Real-time RT-PCR法は胃癌リンパ節微小転移の検出において鋭敏な検出法である。研究(1)進行胃癌症例5例(深達度別にss:1例;se:3例;si:1例)、リンパ節18個を対象とした。うちH-E染色にて転移陽性と診断されたものは11個であった。LiglhtCyclerTMを用いて、CEAをプローブとしたreal-time RT-PCR法を行った結果は15個(検出率83%)に転移を検出した。偽陰性を認めなかった。本法はCEAの単一マーカーであっても高感度な方法であると考えられた。研究(2)進行胃癌症例7例(深達度別にmp:2例;ss:2例;se:2例;si:1例)、リンパ節203個を対象とした。うちH-E染色にて転移陽性と診断されたものは59個であった。real-time RT-PCR法の結果は75個(37%)に転移を検出した。1例の低分化型腺癌症例、2個のリンパ節で偽陰性の結果を認めた。研究(3)上記の221個のすべてのリンパ節を対象として追加実験を行った。1)CK20をプローブとしてreal-time RT-PCR法を行った。結果は64個(29%)に転移を検出し、CK20単独では検出能は低いと考えられた。ただしCEAで偽陰性を示した2個のリンパ節のうち1個はCK20にて陽性であり、両マーカーの併用により感度を高めることが可能と考えられた。2)CEA、CK20、AE1/AE3を用いた免疫染色を行った。染色性はAE1/AE3が優れており、81個(37%)に転移を検出し、偽陰性を認めなかった。H-E染色で陰性、real-time RT-PCR法で陽性のリンパ節22個中9個が免疫染色にて転移を検出された。:CEA、CK20の染色性を層別化し、real-time RT-PCR法の測定値との相関を調べると、高い正の相関を認めた。低い定量値の得られるリンパ節ではCEA、CK20の発現が沙ないことが確認された。本研究では、real-time RT-PCR法による胃癌リンパ節微小転移の検出能を検討し、その検出能をH-E、免疫組織染色法と比較した。 | KAKENHI-PROJECT-13770689 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13770689 |
胃癌リンパ節微小転移の蛍光即時PCR法による検出と臨床的意義の研究 | 方法:対象は21例の胃癌患者のリンパ節392個と非癌リンパ節1個。全393個のリンパ節を3群に分類:病理陽性群71個、病理陰性群304個、対照群18個(非癌リンパ節1個とm癌の遠隔リンパ節17個)。全てのリンパ節は、半分をH-Eと免疫組織染色に用い、残る半分をreal-time RT-PCRに用いた。AGPC変法にてRNAを抽出し、続いてcDNAを作成。LyghtCyclerを用い、CEA・CK20を標的としたreal-time RT-PCRを行った。蛍光プローブはハイブリダイゼーションプローブを用いた。GAPDHのreal-time RT-PCRも行った。AE1/AE3、CEA、CK20の免疫染色を行い、染色強度を評価した。平均16ヶ月追跡。結果:CEA mRNAの平均値は病理陽性群、病理陰性群、対照群の各々で16,000、21、0.6。非補正CEA値を使用。カットオフ5.0で、1個を除く病理陽性群全てと、病理陰性群中26個が陽性。CK20 mRNAでは、病理陰性群中16個が陽性で、病理陽性群中13個が陰性。CEA、CK20の一方が陽性のリンパ節を陽性と判定する解析法で、病理陽性群全ては陽性、病理陰性群中30個が陽性。病理陽性群全てはAE1/AE3免疫組織染色陽性で、病理陰性群中の11個が陽性。陽性率はH-E、免疫組織染色、複合real-time RT-PCRで各々18.0%、20.9%、25.8%。病理陰性・複合real-time RT-PCR陽性の30個中9個で免疫組織染色で微小転移が確認された。AE1/AE3陽性の11人中、CEAとCK20では各々3人と5人が染色されなかった。mRNA測定値と染色強度はCEAでもCK20でも有意に相関した。早期癌9症例では病理陰性の2個がreal-time RT-PCR陽性、si患者の1例では病理学的に1群転移のみ認めたがreal-time RT-PCRで2群転移を認めた。この3例は現在まで無再発。1例は肝転移再発死亡し、他に4例の腹膜播種再発・肝転移再発を認めた。討論:本研究は胃癌リンパ節微小転移の検出にreal-time RT-PCR法を用いた最初のものである。本法は定量的で迅速であるため臨床応用性が広い。カットオフを定めることにより偽陽性を排除し、複合real-time RT-PCR法にて偽陰性を排除しうる。微小転移が通常のリンパ流領域に存在したこと、少数個の集塊から成る転移巣であったことが、今回予後がよかった理由と考えた。Real-time RT-PCR法は胃癌リンパ節微小転移の検出において鋭敏な検出法である。 | KAKENHI-PROJECT-13770689 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13770689 |
身体性に基づく仮想空間協調設計支援システムの研究・開発 | 現在,インターネットの普及や,市場のグローバル化により,製品設計も複数の国や地域にまたがって行われることが多くなってきた.設計時間の短縮やコストの削減を目的として,遠隔地にいる複数の作業者が同一画面を共有しながら協調作業を行えるコラボレーション支援システムを導入している企業もある.しかし,製品化されているコラボレーション支援ツールの多くはコミュニケーション手段が文字,もしくは音声がほとんどで,身振り,手振りといったノンバーバルな情報を伝えることができない.相手に細かな説明を行うときや相手の反応を見るときには身振り,手振りやうなずきや表情などのノンバーバル情報はコミュニケーションにおいて重要な役割を果たすと考えられ,遠隔地の複数の作業者が円滑に協調作業を行うためには,身体的な動作を含めたコミュニケーションを支援することが重要であることは明らかである.最近では,ノンバーバル情報がコミュニケーションに及ぼす影響の重要性が広く認識され,身体性に着目した遠隔コミュニケーション支援そのものに対する研究が数多くなされている.しかし,これらの研究の多くはあくまでコミュニケーション支援が目的であり,直接コラボレーション支援に利用するのは困難である.したがって本研究では遠隔地の複数の設計者が仮想空間を共有し,ユーザの身体動作を反映する相手と自己のアバタを介して製品設計を協調的に行えるシステムを研究開発している.具体的には,仮想空間を利用した3次元形状評価のためのコラボレーション支援システムの研究開発を行っている.本システムは2人のユーザが仮想空間で相手と自己のアバタを介してコミュニケーションしながら,協調的に形状評価を行うものであり,このシステムを利用して,身体的なコミュニケーションが遠隔コラボレーションにおよぼす影響について検討し、良好な結果を得ている.現在,インターネットの普及や,市場のグローバル化により,製品設計も複数の国や地域にまたがって行われることが多くなってきた.設計時間の短縮やコストの削減を目的として,遠隔地にいる複数の作業者が同一画面を共有しながら協調作業を行えるコラボレーション支援システムを導入している企業もある.しかし,製品化されているコラボレーション支援ツールの多くはコミュニケーション手段が文字,もしくは音声がほとんどで,身振り,手振りといったノンバーバルな情報を伝えることができない.相手に細かな説明を行うときや相手の反応を見るときには身振り,手振りやうなずきや表情などのノンバーバル情報はコミュニケーションにおいて重要な役割を果たすと考えられ,遠隔地の複数の作業者が円滑に協調作業を行うためには,身体的な動作を含めたコミュニケーションを支援することが重要であることは明らかである.最近では,ノンバーバル情報がコミュニケーションに及ぼす影響の重要性が広く認識され,身体性に着目した遠隔コミュニケーション支援そのものに対する研究が数多くなされている.しかし,これらの研究の多くはあくまでコミュニケーション支援が目的であり,直接コラボレーション支援に利用するのは困難である.したがって本研究では遠隔地の複数の設計者が仮想空間を共有し,ユーザの身体動作を反映する相手と自己のアバタを介して製品設計を協調的に行えるシステムを研究開発している.具体的には,仮想空間を利用した3次元形状評価のためのコラボレーション支援システムの研究開発を行っている.本システムは2人のユーザが仮想空間で相手と自己のアバタを介してコミュニケーションしながら,協調的に形状評価を行うものであり,このシステムを利用して,身体的なコミュニケーションが遠隔コラボレーションにおよぼす影響について検討し、良好な結果を得ている.遠隔地に居る複数の設計者が一つの仮想空間を共有し,円滑にコミュニケーションをしながら製品形状の評価・決定ができるシステムの開発が切望されている.そこで本研究では,我々がこれまでに行ってきた仮想空間における3次元形状評価の合成的解析や仮想空間を用いた遠隔コミュニケーションシステムの開発,および本システムを用いたバーチャルコミュニケーションの解析・評価の研究成果を基にして,空間的に離れた複数の設計者が製品の形状評価を協調的に行うための支援システムを開発することを目的とする.本年度は、協調作業システムがコミュニケーションと形状評価の作業を両立させる必要性から,2つの作業視点を設定し,コミュニケーションと形状評価の作業の切り替えを,作業者の視点変更により実現するため,複数の視点変更手法について検討を行った.実験では相手のアバタと自己のアバタの上半身が見えるコミュニケーションモードの視点と,相手のアバタと自己のアバタの前腕部が見える形状評価モードの視点をそれぞれ設定し,これらの視点を切り替えるための複数の視点変更手法について検討を行っている.その結果,ズーム機能を付加したボタンを押す手法が好まれた.さらに,仮想空間での3次元形状評価の協調作業における視点変更手法の有効性を検討した結果,被験者は、相手のアバタと自己のアバタの前腕部が見える視点で形状評価を行いながら,相手のアバタと自己のアバタの上半身が見える視点も利用して,自己の動きや相手の動き,さらに両者の関係の確認を行っている傾向が認められた.遠隔地に居る複数の設計者が一つの仮想空間を共有し,円滑にコミュニケーションをしながら製品形状の評価・決定ができるシステムの開発が切望されている.そこで本研究では,我々がこれまでに行ってきた仮想空間における3次元形状評価の合成的解析や仮想空間を用いた遠隔コミュニケーションシステムの開発,および本システムを用いたバーチャルコミュニケーションの解析・評価の研究成果を基にして,空間的に離れた複数の設計者が製品の形状評価を協調的に行うための支援システムを開発することを目的とする.これまでに本研究では、ユーザの身体動作をそのまま仮想空間上のアバタに反映させる3次元形状評価のための協調作業支援システムを開発し、高い評価を得ている。しかし、本システムではヘッドマウンティッドディスプレイ(HMD)やヘッドセット、磁気センサを使用するため、ユーザのコミュニケーション動作を拘束している可能性が高い。 | KAKENHI-PROJECT-14550241 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14550241 |
身体性に基づく仮想空間協調設計支援システムの研究・開発 | そこで本年度は、3次元形状評価のための協調作業支援システムにおいて、ユーザの身体動作をアバタにそのまま反映すると同時に、話しかけによって仮想空間上の相手アバタをうなずかせることにより、システムを使用する際に損なわれてしまうノンバーバル情報を補うことで、より円滑に協調作業を支援するシステムを開発した。また、官能評価とアンケートによる統計的解析により仮想空間3次元評価のための協調作業支援システムにおけるうなずき反応の影響について検討した。その結果、提案するシステムを用いた仮想空間で、話しかけに対するうなずき反応が形状の協調的形状評価に悪影響を及ばさないことが示された。また、本システムおよび協調作業等に関するアンケートを行った結果、検定による有意な差は見られなかったが、全ての項目において概ね良好な回答が得られ、システムの有効性が確認された。現在,インターネットの普及や,市場のグローバル化により,製品設計も複数の国や地域にまたがって行われることが多くなってきた.設計時間の短縮やコストの削減を目的として,遠隔地にいる複数の作業者が同一画面を共有しながら協調作業を行えるコラボレーション支援システムを導入している企業もある.しかし,製品化されているコラボレーション支援ツールの多くはコミュニケーション手段が文字,もしくは音声がほとんどで,身振り,手振りといったノンバーバルな情報を伝えることができない.相手に細かな説明を行うときや相手の反応を見るときには身振り,手振りやうなずきや表情などのノンバーバル情報はコミュニケーションにおいて重要な役割を果たすと考えられ,遠隔地の複数の作業者が円滑に協調作業を行うためには,身体的な動作を含めたコミュニケーションを支援することが重要であることは明らかである.最近では,ノンバーバル情報がコミュニケーションに及ぼす影響の重要性が広く認識され,身体性に着目した遠隔コミュニケーション支援そのものに対する研究が数多くなされている.しかし,これらの研究の多くはあくまでコミュニケーション支援が目的であり,直接コラボレーション支援に利用するのは困難である.したがって本研究では遠隔地の複数の設計者が仮想空間を共有し,ユーザの身体動作を反映する相手と自己のアバタを介して製品設計を協調的に行えるシステムを研究開発している.具体的には,仮想空間を利用した3次元形状評価のためのコラボレーション支援システムの研究開発を行っている.本システムは2人のユーザが仮想空間で相手と自己のアバタを介してコミュニケーションしながら,協調的に形状評価を行うものであり,このシステムを利用して,身体的なコミュニケーションが遠隔コラボレーションにおよぼす影響について検討し、良好な結果を得ている. | KAKENHI-PROJECT-14550241 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14550241 |
セメント質含有蛋白の歯周組織再生治療への応用 | セメント質成分が歯周組織創傷治癒,再生に重要な役割を演じることが確認されている。すなわち、これらセメント質含有物質は、未分化間葉細胞をセメント芽細胞、骨芽細胞、歯根膜細胞に分化させ、新生セメント質、新生歯根膜、新生歯槽骨を同時に形成させる。本研究は、セメント含有蛋白のリコンビナント化を成就させるため、局所再生活性を高めるセメント含有蛋白分離、精製が行われた。その結果、我々は数種の新規のセメント質由来蛋白を発見した。(1)牛プレセメンタムPBS(-)抽出物をDEAE-HPLCで精製を行い、66kDaのセメント質由来走化物質を見い出した。(2)牛プレセメンタムPBS(-)抽出物を逆相カラムで精製し、他のケモカインと異なる8kDaの新規の蛋白を見い出した。(3)牛プレセメンタムPBS(-)抽出物をDEAE-HPLCで精製。走化活性の高い非吸着成分をCM-HPLC、ゲル濾過し、そのN末端アミノ酸配列解析により、39.7kDaの新規の蛋白を見い出した。加えて、γ線照射セメント質と歯肉繊維芽細胞との共培養液をRT-PCRを用いてOPG/OCIFmRNA発現を調べた。その結果、0PG/OCIFmRNAの発現は,γ線未照射セメント質よりγ線照射セメント質の方が低かった。このことは、健全セメント質に含まれるある物質が根面上への骨芽細胞の接着、分化を抑止している可能性を示唆している。セメント質成分が歯周組織創傷治癒,再生に重要な役割を演じることが確認されている。すなわち、これらセメント質含有物質は、未分化間葉細胞をセメント芽細胞、骨芽細胞、歯根膜細胞に分化させ、新生セメント質、新生歯根膜、新生歯槽骨を同時に形成させる。本研究は、セメント含有蛋白のリコンビナント化を成就させるため、局所再生活性を高めるセメント含有蛋白分離、精製が行われた。その結果、我々は数種の新規のセメント質由来蛋白を発見した。(1)牛プレセメンタムPBS(-)抽出物をDEAE-HPLCで精製を行い、66kDaのセメント質由来走化物質を見い出した。(2)牛プレセメンタムPBS(-)抽出物を逆相カラムで精製し、他のケモカインと異なる8kDaの新規の蛋白を見い出した。(3)牛プレセメンタムPBS(-)抽出物をDEAE-HPLCで精製。走化活性の高い非吸着成分をCM-HPLC、ゲル濾過し、そのN末端アミノ酸配列解析により、39.7kDaの新規の蛋白を見い出した。加えて、γ線照射セメント質と歯肉繊維芽細胞との共培養液をRT-PCRを用いてOPG/OCIFmRNA発現を調べた。その結果、0PG/OCIFmRNAの発現は,γ線未照射セメント質よりγ線照射セメント質の方が低かった。このことは、健全セメント質に含まれるある物質が根面上への骨芽細胞の接着、分化を抑止している可能性を示唆している。精製試料としてヒトならびに牛プレセメンタムを用いた.プレセメント質含有走化物質の抽出にはPBS(pH7リン酸緩衝化生理食塩水)を使用した.ゲル濾過クロマトグラフィーで6つの分画(分子量230万,57万,27万,16万,4.4万,3.4万)に活性が認められ,細胞走化活性以外にもTGF-β(潜在型含む),BSP(bone sialoprotein)活性を検出した.ゲル濾過で他の活性と重複しない27万の分画をさらに陰イオン交換クロマトグラフィー,ヒドロオキシアパタイトクロマトグラフィーなどで精製したところ,SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で66kDaのシングルバンドCDCF(cementum derivedchemotactic factor)を得た.In vitroでCDCFは未分化間葉系細胞に対しhPDGF-BBより約10倍高い走化活性を示したが,増殖活性は1/10低かった.マイルドな抽出では57万分画からも単離され,セメント質中ではコラーゲンマトリックスに保持された状態での存在が推定された.この研究で,従来かなり過激な抽出条件でないと抽出されないと報告されていたBSPやTGF-β(潜在型含む)が生理食塩水で抽出されること,さらに種々の高分子の状態で存在することがわかった.セメント質は,コラーゲンマトリックス中に,これら細胞増殖因子,分化因子を保持していることが裏付けられた.試料として牛歯プレセメンタムを用いた。イオン交換クロマトグラフィーによる一次精製、ゲル濾過カラムによるDEAE1.0M溶出フラクションの二次精製後、逆用クロマトグラフィーを行った。即ち、DEAE-HPLC1.0M画分を濃縮しTSKG2000SWxLカラムを用いた。ゲル濾過HPLCを行った。各フラクションの細胞走化試験を行い、走化活性極大ピークが確認されたフラクションを濃縮緩衝液buffer置換しC8逆用カラムを用いて、歯肉繊維芽細胞走化性因子を更に精製し、そのN末端アミノ酸配列解析を行い、目的蛋白質のN末端アミノ酸配列を決定した。逆用クロマトより得た8kDaのバンドを切り出し、シークエンス分析の結果から、純度が高く単一のタンパクであることが推測された。 | KAKENHI-PROJECT-10470410 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10470410 |
セメント質含有蛋白の歯周組織再生治療への応用 | この配列(8kDa)を全既存タンパクのアミノ酸配列を記録したデータベース(SWISS PLOTT)から、アミノ酸配列相同性検索エンジン(FASTA amino acid sequence comparison)によって検索した。、その結果、本研究のおける歯肉由来未分化間葉系繊維芽細胞走化因子は、その相同性、分子量から、牛歯プレセメンタムであり、既知のタンパクでない新規のものであると考えられた。セメント質成分が組織再生に重要な役割を担うことが確認されている。セメント質が関与する歯周組織再生は、幹細胞の走化活性がまず起こり、歯表面に移動し、そして細胞が増殖、セメント芽細胞へ分化し、セメント質形成を引き起こすと考えられている。この一連のカスケード反応は様々な因子によって制御されていると推定され、それら因子がセメント質より単離精製されている。我々は近年、ウシ歯プレセメント質より66kDa、8kDaの新規の蛋白を見出した。他方、我々は一次精製後の非吸着成分にも走化活性があることを見出したため、この非吸着成分にも組織再生に関与する因子が含まれていると考え、本年度はその解析を行った。ウシ歯プレセメンタムのTris-HCL buffer抽出液をDEAE-HPLC精製。歯肉繊維芽細胞に対し高い走化活性の認められた非吸着成分をCM-HPLC,gelfiltrationにより精製し、そのN末端アミノ酸配列解析を行い、目的蛋白質のN末端アミノ酸配列を決定した。Gelfiltrationより得た39.7kDa(抗コラーゲン抗体と交叉反応しない)バンドを切り出し、シークエンス分析の結果から、この物質は純度が高く単一の蛋白であることが推定された。この39.7kDaの配列をFASTAプログラムによって検索した。その結果、本研究における細胞走化因子は、その相同性、分子量から、既知の蛋白でない新規のものであると考えられた。歯周組織再生には、創傷部に集積する未分化間葉細胞が、歯槽骨細胞,歯根膜細胞、セメント質細胞に分化する必要がある。これには、多くの蛋白、特にセメント質由来の蛋白が、適切な時期に、適切な量、これら未分化細胞を刺激しなければならない。現在、骨細胞がセメント質関連蛋白の修飾を受けることによって、セメント芽細胞化するという考えがある。本研究の目的は骨細胞とセメント質粒子を共培養することによって得られる培養液を分離精製し、その性状を検索することである。サル歯槽骨由来細胞だけあるいはサル歯槽骨由来細胞とセメント質粒子とを共培養後、(1)培養液中の分泌蛋白に対するサル歯肉由来繊維芽細胞、サル歯根膜由来細胞、サル歯槽骨由来細胞の増殖試験、(2)各培養液をの蛋白精製を行った。細胞増殖試験では骨細胞とセメント質粒子共培養液は、サル歯肉由来繊維芽細胞、サル歯根膜由来細胞の増殖を促進したが、サル歯槽骨由来細胞の増殖を抑制した。蛋白分析は、陰イオン交換クロマトグラフィーを行ない、吸着部分に対しゲルろ過を施すと、各培養液(骨細胞培養液、骨細胞とセメント質粒子共培養液)の蛋白分布に差異がみられた。更に、非吸着部分を陽イオン交換したところ、各培養液間には蛋白の分布に大きな差異が認められた。本結果はセメント質成分が骨細胞のセメント芽細胞化に何らかの影響を与えることを示唆した。 | KAKENHI-PROJECT-10470410 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10470410 |
金属/絶縁体界面の電子構造の第一原理計算 | 金属/絶縁体界面の電子物性を、量子力学的な数値計算により調べた。この際、電子間の強いクーロン反発力によって生じるMott絶縁体を扱うため、2、3次元結晶に対して発展してきた動的平均場理論を、半無限界面など不均一な多原子層系に適用するための方法を考案した。この手法を適用することにより、金属/Mott絶縁体界面において、金属状態が絶縁体内部にどのように侵入するかを、隣接原子間の電子相関の効果も取り入れて調べた。金属/絶縁体界面の電子物性を、量子力学的な数値計算により調べた。この際、電子間の強いクーロン反発力によって生じるMott絶縁体を扱うため、2、3次元結晶に対して発展してきた動的平均場理論を、半無限界面など不均一な多原子層系に適用するための方法を考案した。この手法を適用することにより、金属/Mott絶縁体界面において、金属状態が絶縁体内部にどのように侵入するかを、隣接原子間の電子相関の効果も取り入れて調べた。研究経過:平成20年8月にユーリッヒ研究センターに出張し、エムベディッドGreen関数法に関する共同研究を行った。同年10月に6-CPUの並列型パーソナルコンピュータを購入し、計算プログラムの開発と興味ある系の計算を行った。今年度予算は上記の旅費及びコンピュータ購入に使用した。研究成果1:InglesfieldのエムベッディッドGreen関数法では、半無限結晶下地の効果を、界面領域との境界面上で作用するエムベッディングポテンシャル(以下Σと表記)で表現する。この境界面は、原子のマフィンティン球を避けるため複雑な曲面になる。曲面上のΣを扱うのは困難なので、従来の計算では、バッファー領域を導入することにより、曲面と等価な平面上のΣを用いていた。最近、ユーリッヒのグループにより、曲面上のΣを直接計算する方法が提案された。ユーリッヒへの出張中に、同グループと議論を行い、研究代表者の計算プログラムにこの新手法を取り入れた。これによりΣの精度が上がると同時に、Green関数の基底関数を減らすことができた。研究成果2:半無限系の電子構造計算のためのもう一つの手法は、強結合ハミルトニアンに基づくエムベッディッドGreen関数法である。ユーリッヒでの共同研究中に、半無限結晶の一体効果及び多体効果を強結合エムベッディングポテンシャルで表現することにより、半無限界面の電子構造を、動的平均場近似の範囲で電子相関の効果も含めて計算する新手法を考案した。この方法はワニエ関数を用いれば、第一原理計算に応用可能である。今年度はハバード模型を用いて、金属/Mott絶縁体界面、金属間にMott絶縁体を挟んだサンドイッチ構造の電子構造を計算して、金属状態が絶縁体に侵入する振舞いを調べた。研究経過:6月にユーリッヒ研究センターのD.Wortmann博士を招へいし、エムベッディッドGreen関数法を用いた界面の電子構造計算法について議論した。8月にユーリッヒ研究センターに滞在し、クラスター動的平均場理論を用いた金属/絶縁体界面の電子構造計算に関して、A.Liebsch博士と共同研究打合せを行った。今年度予算は、出張旅費及び計算環境の整備に使用した。研究成果:金属電極/モット絶縁体薄膜/金属電極から成るサンドイッチ型ヘテロ界面を考え、その電子構造をクラスター動的平均場理論によって調べた。従来の強相関ヘテロ構造の計算では、クーロン相互作用による電子自己エネルギーのオンサイト成分のみを考慮するシングルサイト近似が用いられてきたが、本研究では、原子層間の自己エネルギー非対角成分を取り入れた計算を初めて行った。シングルサイト近似では、孤立薄膜の金属絶縁体転移は、オンサイト自己エネルギーの虚部の発散により生じるが、本計算により、自己エネルギー非対角成分の実部の不連続変化により生じる新しいタイプの金属絶縁体転移を見出した。絶縁体薄膜が金属電極に挟まれた場合、前者の相転移は金属との近接効果により消失して、温度がフェルミ温度以下であれば,フェルミエネルギー付近の状態密度には金属的な擬粒子ピークが出現する。一方、後者の相転移はサンドイッチ系でも存在するため、薄膜内部でのフェルミエネルギー付近の状態密度は非常に小さくなる。その結果、ヘテロ接合の界面垂直方向の電気伝導度が、シングルサイト近似で予測される値に較べて、大幅に減少することが分った。この計算結果をまとめた論文の投稿準備をしている。最終年度の平成23年度は、金属/Mott絶縁体界面の電子構造の計算を中心に研究を行った。ここで応用上重要な問題は、デバイスの絶縁体層をMott絶縁体で作成したとき、通常のバンド絶縁体と同様にデバイスが動作するかということである。密度汎関数法など一体近似の計算では、Mott絶縁体を記述できない。本研究では、動的平均場理論(DMFT)の範囲で強電子相関効果を扱い、金属表面に吸着したMott絶縁体単原子層の電子構造を調べた。これまで同様な計算は単一サイトDMFTを用いて行われ、金属に隣接した絶縁体層に近接(近藤)効果により低温で準粒子ピークが誘起され、絶縁体層がフェルミ液体になることが示された。本研究ではクラスターDMFTを用いることにより、絶縁体層内の隣接原子問の短距離電子相関の効果を取り入れた計算を行った。この際、絶縁体吸着層は正方格子の2次元ハバード模型を用い、下地金属には相互作用のない半無限強結合ハミルトニアンを用いた。我々の計算でもMott絶縁体層は下地金属との軌道混成により金属状態になる。しかし単一サイト近似とは異なり、クラスターDMFTでは絶縁体層のフェルミ準位付近にフェルミ液体を特徴づける準粒子ピークが生じなかった。 | KAKENHI-PROJECT-20540320 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20540320 |
金属/絶縁体界面の電子構造の第一原理計算 | 面内原子間の強い相関効果により、吸着層は非フェルミ液体状態になる。つまりフェルミ準位付近の電子は有限の寿命を持ちその平均自由行程も短い。これはMott絶縁体をトンネル接合素子に用いると、バンド絶縁体の場合より大きなエネルギー損失が生じる可能性を示唆する。現在、この研究結果を論文にまとめている。本研究はドイツ・ユーリッヒ研究センターのLiebsch博士との共同研究により実施された。研究費は共同研究およびドレスデンでの国際会議での研究発表のため出張旅費及びPCクラスター設置用棚など物品費に用いた。 | KAKENHI-PROJECT-20540320 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20540320 |
シュレディンガー作用素とハミルトン流の関係の研究 | 今年度は0次斉次なポテンシャルを持つポテンシャルを持つシュレディンガー作用素の解析に半古典測度(semiclassical defect measure)の手法を導入するという方針の下で以下のような成果を得た。1.新たな表象の族を適切に定義することで新しい半古典測度の定義を与えた。そのうえで適切な仮定の下ではこの新しい半古典測度が方向について局所化することを示した。0次斉次なポテンシャルを持つポテンシャルを持つシュレディンガー作用素が方向について局所化することはすでに知られていたが、この結果は半古典測度、つまり超局所解析を用いているという点でこれまでの結果よりも精緻な結果であるということができる。また、半古典測度はこれまでは有界な空間上のシュレディンガー作用素に対してしか取り扱えなかった対象であったが、この結果は非有界な空間上のシュレディンガー作用素に対する結果である。そのため今後の非有界な空間上のシュレディンガー作用素の解析において重要な役割を果たすことが期待できる。2.この半古典測度の方向局所化に関する具体例を用いて観測性不等式の成り立つための必要条件を得ることに成功した。これまでのシュレディンガー作用素の観測性不等式に関する研究はコンパクト空間に関するものが中心であった。この結果は非有界な空間での結果であるため観測性不等式の研究に新しい流れを起こすことが期待できる。特に得られた条件は十分条件になることも期待できると考えている。今年度は研究実績で述べた0次斉次なポテンシャルを持つシュレディンガー作用素の半古典解析並びに制御性不等式に関する研究とこれまでに知られていた方向局所化をポテンシャルがモースボット関数である場合に拡張する研究を行う計画であった。この二つの研究テーマのうち0次斉次なポテンシャルを持つシュレディンガー作用素の半古典解析並びに制御性不等式に関する研究については当初の想定を超えて制御性不等式に関する研究成果を得るという素晴らしい成果を得ることができた。この研究テーマは想定を超えた進展を見せていると考えている。方向局所化をポテンシャルがモースボット関数である場合に拡張する研究については残念ながら当初の計画通りに研究を遂行することはできなかった。今後も引き続き0次斉次なポテンシャルを持つシュレディンガー作用素の半古典解析並びに制御性不等式に関する研究とこれまでに知られていた方向局所化をポテンシャルがモースボット関数である場合に拡張する研究の二つに取り組んでいく。0次斉次なポテンシャルを持つシュレディンガー作用素の半古典解析並びに制御性不等式に関する研究については研究を完成し、さらなる発展を目指す。方向局所化をポテンシャルがモースボット関数である場合に拡張する研究に関しては当初のアプローチがうまくいかず今年度は目標を達成できなかったが、すでに代替アプローチは得られておりそれに従って取り組むことでこれまでの遅れを取り戻すことができると考えている。今年度は0次斉次なポテンシャルを持つポテンシャルを持つシュレディンガー作用素の解析に半古典測度(semiclassical defect measure)の手法を導入するという方針の下で以下のような成果を得た。1.新たな表象の族を適切に定義することで新しい半古典測度の定義を与えた。そのうえで適切な仮定の下ではこの新しい半古典測度が方向について局所化することを示した。0次斉次なポテンシャルを持つポテンシャルを持つシュレディンガー作用素が方向について局所化することはすでに知られていたが、この結果は半古典測度、つまり超局所解析を用いているという点でこれまでの結果よりも精緻な結果であるということができる。また、半古典測度はこれまでは有界な空間上のシュレディンガー作用素に対してしか取り扱えなかった対象であったが、この結果は非有界な空間上のシュレディンガー作用素に対する結果である。そのため今後の非有界な空間上のシュレディンガー作用素の解析において重要な役割を果たすことが期待できる。2.この半古典測度の方向局所化に関する具体例を用いて観測性不等式の成り立つための必要条件を得ることに成功した。これまでのシュレディンガー作用素の観測性不等式に関する研究はコンパクト空間に関するものが中心であった。この結果は非有界な空間での結果であるため観測性不等式の研究に新しい流れを起こすことが期待できる。特に得られた条件は十分条件になることも期待できると考えている。今年度は研究実績で述べた0次斉次なポテンシャルを持つシュレディンガー作用素の半古典解析並びに制御性不等式に関する研究とこれまでに知られていた方向局所化をポテンシャルがモースボット関数である場合に拡張する研究を行う計画であった。この二つの研究テーマのうち0次斉次なポテンシャルを持つシュレディンガー作用素の半古典解析並びに制御性不等式に関する研究については当初の想定を超えて制御性不等式に関する研究成果を得るという素晴らしい成果を得ることができた。この研究テーマは想定を超えた進展を見せていると考えている。方向局所化をポテンシャルがモースボット関数である場合に拡張する研究については残念ながら当初の計画通りに研究を遂行することはできなかった。今後も引き続き0次斉次なポテンシャルを持つシュレディンガー作用素の半古典解析並びに制御性不等式に関する研究とこれまでに知られていた方向局所化をポテンシャルがモースボット関数である場合に拡張する研究の二つに取り組んでいく。0次斉次なポテンシャルを持つシュレディンガー作用素の半古典解析並びに制御性不等式に関する研究については研究を完成し、さらなる発展を目指す。方向局所化をポテンシャルがモースボット関数である場合に拡張する研究に関しては当初のアプローチがうまくいかず今年度は目標を達成できなかったが、すでに代替アプローチは得られておりそれに従って取り組むことでこれまでの遅れを取り戻すことができると考えている。 | KAKENHI-PROJECT-18J12370 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J12370 |
感染に必須因子である黄色色素の生成阻害剤に関する研究 | 最近、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の名前の由来でもある黄色色素(staphyloxanthin)が、菌の感染過程において必須成分であることが報告された。そこで申請者は簡易的な黄色色素生成阻害活性を評価する方法を構築し、天然物ライブラリーならびに微生物培養液を中心に評価した。その結果、ライブラリーからはcitridoneAが色素生成阻害活性を有する事を初めて見いだした。本研究ではcitridoneAの黄色色素生成阻害メカニズムの完全な解明および誘導体合成による化合物の最適化を行い、新しい作用を有したMRSA感染予防治療薬への展開を目的としている。昨年度は誘導体の活性評価および化合物の最適化に力を注いだ結果、目的の活性を維持するには構造中のphenilpiridone環に4,5,6a-trimethyl-3,3a,4,6a-tetrahydro-2H-cyclopentafuranが結合した3環性部分が必須であり、かつベンゼン環部分はmono置換である事が活性には重要である事が判明した。また目的の活性とは異なるが、これらcitridone類がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対し、抗菌薬であるイミペネムの活性を増強する活性を同時に有している事も判明した。これら結果については昨年度論文発表を行っている。またcitridone Aの活性メカニズム研究では、黄色色素生成阻害によって蓄積した生合成中間体と考えてた化合物がマススペクトル解析により全く異なる分子であるという興味深い知見を得る事ができた。これについては今年度精査を予定している。最近、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の名前の由来でもある黄色色素(staphyloxanthin)が、菌の感染過程において必須成分であることが報告された。そこで申請者は簡易的な黄色色素生成阻害活性を評価する方法を構築し、citridone Aが色素生成阻害活性を有する事を初めて見いだした。本研究ではcitridoneAを中心に研究を行い、新しい作用を有したMRSA感染予防治療薬への展開を目的としている。加えて新しい活性化合物の発見も目的としている。昨年度中にcitridone Aの誘導体合成(11種)を終了し、構造活性相関の知見を得た。結果的に天然物のcitridone Aが最も強い活性を示すことが判明した。しかしメカニズム研究に用いる予定であった誘導体の合成、すなわち活性を維持した誘導体が得られなかった事からメカニズム研究は途中で断念した。本年度は全合成により準備したcitridone Aを用いて、マウスをつかったin vivo試験を開始した。予備的にHR-1マウス(n=3)を入手し黄色ブドウ球菌の感染実験を行った。具体的にはcitridone Aを用いて白色にした菌液および通常の黄色の菌液各25 μlをそれぞれマウス皮下に注射し(1匹につき2カ所)8日目までその感染の有無を評価した。その結果、通常の黄色の菌液では100% (6/6)感染が成立したのに対し、白色の菌液では50% (3/6)にその感染率が低下していた。また病変部位の大きさも通常のものと比べ小さくなっていた。プレリミナルなデータではあるが本結果は、in vivoレベルもでcitridone Aが有効である可能性を示唆したものと考えている。今後はマウスの数を増やしデータの信憑性を確認する予定である。また新しい活性物質の探索では新規化合物graphiumin類を海洋由来放線菌より単離し、その構造決定、論文報告ならびに学会発表を行った。天然物化学昨年度計画していたcitridone Aのメカニズム研究は黄色ブドウ球菌を使用する理由からスピードアップができず、まだ大きな成果は得られていない。そのかわり今年度予定していた研究計画を前倒しにする事で、citoridone Aおよびその誘導体に関する一定の成果を得られたと考えている。これらの知見は昨年度に論文投稿ならびに受理を終了し、オンラインで公開されている。また新しい化合物の発見を目指したスクリーニングを行うことにより、新規活性物質(Graphiumins AFと命名)を見いだした。それらの構造決定は各種機器分析にて行い、いずれもthiodiketopiperazines骨格を有した化合物群であると決定した。現在はその有用性を確かめる為に、様々な活性評価を行っている。また本化合物群に関する論文の作製にも取りかかっている。黄色ブドウ球菌を使用する理由から大量培養が難しい等問題もあるが、現在はLC-MS等を駆使して少ない量でも化合物を見いだす努力を続けている。昨年度に効率の良い培養方法ならびに抽出方法をほぼ確立したので、本年度は化合物の同定まで行う予定である。またcitoridoneに関しては誘導体合成の結果より、天然物が最も強い活性を示す事が判明した事から化合物の最適化研究を終了し、in vivo感染実験へと移行する予定である。この結果をもとに薬剤開発の可能性を判断する予定である。またスクリーニングの継続を行い新たな活性化合物の発見を目指す。その為に今までスクリーニングに使用していた様なありふれた微生物培養液ではなく、特殊な環境より分離された微生物(温泉環境下や海底土壌など)の培養液を用いて行う。ちなみに昨年度見いだしたgraphiuminsは沖縄県石垣島の海底土壌より分離された真菌培養液中より見いだされた活性物質である。申請時に予定していた機器の購入を見送った。本来なら本機器を導入し大量の化合物の精製を自動化する予定であったが、本年度は人力で行った。それでも新規活性化合物を見いだすことに成功する事ができた。化合物の精製を行うにあたり最も大事な事はピュアな化合物を得る事である。 | KAKENHI-PROJECT-25870704 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25870704 |
感染に必須因子である黄色色素の生成阻害剤に関する研究 | そこで現在はHPLCのポンプを入手している。しかし本機器を動かす為のコントローラーやUV検出器が不足しているため稼働不可能となっている。そこで本年度はこれら精製に使用する機器を稼働させる為に必要不可欠な機器を購入予定である。具体的な機器をすでに選定しており5月中に納入予定である。 | KAKENHI-PROJECT-25870704 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25870704 |
リビングラジカル重合による金属含有特殊構造ポリマーの開発 | 本研究では、特殊構造ポリマーのセグメント中、周期的に安定な金属錯体や金属イオンなどを導入した融合マテリアルを創出すること目的として、リビングラジカル重合や配列制御重合などの精密重合を用いて、高分子鎖中に配列周期的に金属の導入された高分子の合成やこれまでにない周期配列構造を有する高分子の合成を検討した。1.金属触媒リビングラジカル重合による金属含有特殊構造ポリマーの開発配位子を設計することで、前周期金属であるチタン原子を用いても、Titanatraneと呼ばれる対称性の高いチタン錯体がポリマー中に定量的に導入でき、水や大気中でも安定性の高い新規金属錯体含有ポリマーが得られることを明らかにした。リビングラジカル重合によるブロック共重合体などの構造が明確に制御された特殊構造ポリマーの合成と有機配位子への高効率変換反応を組み合わせることで、高分子鎖中のセグメント特異的、もしくは末端など位置特異的に金属原子が導入された材料設計が可能となった。その他、以下の点を明らかとした。2.連鎖/逐次ラジカル同時重合による周期配列特殊構造ポリマーの開発3.逐次ラジカル重合によるモノマー配列特殊構造ポリマーの開発4.融合マテリアル創成に向けた配列特殊構造ポリマー合成法の開発(共同研究)24年度が最終年度であるため、記入しない。24年度が最終年度であるため、記入しない。本研究では、特殊構造ポリマーのセグメント中、周期的に安定な金属錯体などを導入した融合マテリアルを創出すること目的として、リビングラジカル重合や配列制御重合などの精密重合を用いて、高分子鎖中に配列周期的に金属の導入された高分子の合成やこれまでにない周期配列構造を有する高分子の合成などの検討を行っている。1.リビングラジカル重合による金属含有特殊構造ポリマーの開発本研究では、まず、容易に化学変換が可能なエポキシ基を有するメタクリル酸グリシジル(GMA)に着目し、GMAをモノマーとしたリビングラジカル重合や配列制御ラジカル重合後に金属の有機多座配位子に変換することで、新規な金属錯体含有特殊構造ポリマーの合成を検討した。リビングラジカル重合によるブロック共重合体などの構造が明確に制御された特殊構造ポリマーの合成と有機配位子への高効率変換反応を組み合わせることで、高分子鎖中のセグメント特異的、もしくは末端など位置特異的に金属原子が導入された材料設計が可能となった。2.融合マテリアル創成に向けた配列特殊構造ポリマー合成法の開発融合マテリアルの設計に向けた高分子鎖への配位子導入反応と最近我々が開発した配列制御ラジカル重合と組み合わせることで、高分子のモノマー配列中や周期配列中の任意のユニットへの金属原子の導入も可能となると考えられた。今年度は、より高次の周期配列高分子を与えるAA-BB型モノマーのラジカル逐次重合を開発し、さらに連鎖/逐次同時ラジカル重合へと展開することで、周期的官能基を導入したポリマーの合成を検討した。とくに、温度応答性ポリマーを与えるN-イソプロピルアクリルアミドのリビングラジカル重合を行い、ポリマー鎖間で逐次重合させることで、周期的官能化に成功した。本研究では、特殊構造ポリマーのセグメント中、周期的に安定な金属錯体や金属イオンなどを導入した融合マテリアルを創出すること目的として、リビングラジカル重合や配列制御重合などの精密重合を用いて、高分子鎖中に配列周期的に金属の導入された高分子の合成やこれまでにない周期配列構造を有する高分子の合成を検討した。1.金属触媒リビングラジカル重合による金属含有特殊構造ポリマーの開発配位子を設計することで、前周期金属であるチタン原子を用いても、Titanatraneと呼ばれる対称性の高いチタン錯体がポリマー中に定量的に導入でき、水や大気中でも安定性の高い新規金属錯体含有ポリマーが得られることを明らかにした。リビングラジカル重合によるブロック共重合体などの構造が明確に制御された特殊構造ポリマーの合成と有機配位子への高効率変換反応を組み合わせることで、高分子鎖中のセグメント特異的、もしくは末端など位置特異的に金属原子が導入された材料設計が可能となった。その他、以下の点を明らかとした。2.連鎖/逐次ラジカル同時重合による周期配列特殊構造ポリマーの開発3.逐次ラジカル重合によるモノマー配列特殊構造ポリマーの開発4.融合マテリアル創成に向けた配列特殊構造ポリマー合成法の開発(共同研究)24年度が最終年度であるため、記入しない。当初の目的であったリビングラジカル重合によるブロック共重合体などの構造が明確に制御された特殊構造ポリマーの合成と有機配位子への高効率変換反応を組み合わせることで、高分子鎖中のセグメント特異的、もしくは末端など位置特異的に金属原子が導入された材料設計が可能となった。また、エポキシ基を含有するAA型二官能性化合物をリビングラジカル重合の開始剤として用い、温度応答性ポリマーを与えるN-イソプロピルアクリルアミドのリビングラジカル重合を行い、ポリマー鎖間で逐次重合させることで、周期的官能化に成功した。24年度が最終年度であるため、記入しない。引き続き、以下の点について検討を行う。1.リビングラジカル重合による金属含有特殊構造ポリマーの開発Titanatraneと呼ばれる対称性の高いチタン錯体へと変換することで、水や大気中でも安定性の高い新規金属錯体含有ポリマーの合成を検討する。また、逐次ラジカル重合とリビングラジカル重合を組み合わせることで、周期的に官能基が導入されたポリマーを設計しする。とくに、エポキシ基などを含有するAA型二官能性化合物をリビングラジカル重合の開始剤として用い、温度応答性ポリマーを与えるN-イソプロピルアクリルアミドのリビングラジカル重合を行い、ポリマー鎖間で逐次重合させることで、周期的官能化を行う。 | KAKENHI-PUBLICLY-23107515 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-23107515 |
リビングラジカル重合による金属含有特殊構造ポリマーの開発 | 生成するポリマーについて、金属だけではなく導入した種々の周期的機能性基が物性に与える影響についても考察する。さらに、これらのポリマーの応用展開について、共同研究により推進する。2.融合マテリアル創成に向けた配列特殊構造ポリマー合成法の開発高分子鎖への配位子導入反応と配列制御ラジカル重合と組み合わせることで、高分子のモノマー配列中や周期配列中の任意のユニットへの金属原子の導入についても検討する。とくに、配列構造が組み込まれたオリゴマーの設計を行い、遷移金属錯体を用いたラジカル重付加により、目的の配列構造をもつポリマーへとビルドアップすることより、付加重合では得られない定序配列型の金属原子含有高分子の合成も検討する。 | KAKENHI-PUBLICLY-23107515 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-23107515 |
末梢動脈疾患(PAD)への包括的リハビリテーションの有効性の確立 | 中等症以上のPAD症例に対して、12週間の運動療法を含む包括的リハビリテーションを実施し、各種パラメータへの効果を検討した。運動療法は歩行能力と健康関連QOL質問紙であるSF-36およびWIQのスコアを改善させた。しかし、疾患特異的QOL尺度であるWIQのスコアにおいても、歩行能力の間に介入前でのみ正の相関が認められ、運動療法の介入後の客観的な歩行能力と患者自身の主観的評価は一致しないことが示唆される。中等症以上のPAD症例に対して、12週間の運動療法を含む包括的リハビリテーションを実施し、各種パラメータへの効果を検討した。運動療法は歩行能力と健康関連QOL質問紙であるSF-36およびWIQのスコアを改善させた。しかし、疾患特異的QOL尺度であるWIQのスコアにおいても、歩行能力の間に介入前でのみ正の相関が認められ、運動療法の介入後の客観的な歩行能力と患者自身の主観的評価は一致しないことが示唆される。間歇性跛行症状を有する中等症のPAD症例に対して、運動療法・薬物療法・食事療法・日常生活指導による包括的リハビリテーションを実施し、各種パラメータへの効果を検討した。介入前から行われている薬物療法は継続し、さらに栄養指導、生活習慣指導も運動療法に併せて東北大学病院で3ヶ月間実施した。トレッドミルによる監視下運動療法は、初めは傾斜12%、速度2.4km/時で行い、ややきつい程度の下肢疼痛が生じるまで歩かせた。この強度で10分以上歩けるようなら、次いで速度を3.2km/時とするか、傾斜を強くした。1回に行う歩行時間は合計30分以上で、頻度は日に12回行い、週3回以上実施した。治療開始時と終了時に、1)歩行能力、2)質問紙による障害・活動の評価、3)運動耐容能を検討した。3ヶ月後、最大歩行距離は有意に延長し、Peripheral Arterial Disease Walking Impairment Questionnaire(WIQ)の歩行距離と歩行速度、36-item Short-Form(SF-36)のphysical function(PF)は有意に改善した。最大歩行距離とSF-36間の関連を検討したところ、最大歩行距離の変化とrole physical(RP)、bodily pain(BP)、vitality(VT)、social functioning(SF)の変化が正の相関を示した。以上の結果から、PADへの包括的リハビリテーションは歩行能力の向上に伴い、QOLの改善をもたらす可能性が示唆された。間歇性跛行症状を有する血行再建術の適応でない中等症以上のPAD症例に対して、運動療法・薬物療法・食事療法・日常生活指導による包括的リハビリテーションを実施し、各種パラメータへの効果を検討した。10名の中等症以上のPAD患者(血行再建術後血管再狭窄した患者5名と合併症などのリスクで血行再建術の適応外になった患者5名)を対象に12週間の監視下トレッドミル運動を実施した。運動療法介入前後で歩行能力として無痛歩行距離と最大歩行距離を、健康関連QOL(Health-related Quality of Life;HRQOL)としてMedical Outcomes Study36-item Short-Form(SF-36)とWalking Impairment Questionnaire(WIQ)を評価・比較した。運動療法は、無痛歩行距離と最大歩行距離を有意に延長し、SF-36「身体機能」「活力」とWIQ「歩行距離」「歩行スピード」を有意に延長した。無痛歩行距離とSF-36「日常役割機能(身体)」「活力」にのみ介入後で正の相関があり、最大歩行距離とSF-36下位尺度のスコアには介入前・後で相関が見られなかった。無痛歩行距離と最大歩行距離はWIQ4項目のスコアと介入前に相関があり、特に最大歩行距離はWIQ「階段」のスコアと介入後でも相関が見られた。血行再建術の適応外と判断された中等症以上のPAD患者において、運動療法は歩行能力とSF-36およびWIQのスコアを改善させる。しかし、疾患特異的QOL尺度であるWIQのスコアにおいても、歩行能力の間に運動療法の介入前でのみ正の相関が認められ、運動療法の介入後の客観的な歩行能力と患者自身の主観的評価は一致しないことが示唆される。 | KAKENHI-PROJECT-22650121 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22650121 |
ドイツにおける環境教育学の視座に関する研究 | 2022年、「環境教育」はその誕生から50年という歴史的な節目を迎える。本研究はこの歴史的立ち位置に鑑み、この半世紀における「環境×教育学」問題に関するドイツの環境教育学の成果と到達点を明らかにすることを研究の目的とするものである。この目的を達成するために、本研究では、ドイツにおける環境教育学の代表的な視座を分析するとともに、環境教育の史的展開とその質的転換に関わる時代特徴的な議論を解明する。2022年、「環境教育」はその誕生から50年という歴史的な節目を迎える。本研究はこの歴史的立ち位置に鑑み、この半世紀における「環境×教育学」問題に関するドイツの環境教育学の成果と到達点を明らかにすることを研究の目的とするものである。この目的を達成するために、本研究では、ドイツにおける環境教育学の代表的な視座を分析するとともに、環境教育の史的展開とその質的転換に関わる時代特徴的な議論を解明する。 | KAKENHI-PROJECT-19K02455 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K02455 |
遷移金属錯体触媒による含窒素ポリアリール類の新合成法の確立と有機EL素子への応用 | 1. 2-フェニルピリジンとハロゲン化アリールとをルテニウム錯体触媒と塩基の存在下に反応させると,2-フェニルピリジンのベンゼン環オルト位が直接アリール化されることを見出した、各種反応条件に関して検討を行い,最適条件を確立した.触媒に関しては,ホスフィンが配位したルテニウム系錯体が高い活性を示し,中でも[η^6-C_6H_6RuCl_2]_2-4PPh_3系が最も高い活性を示した.さらに,塩基は炭酸カリウム,溶媒はN-メチルピロリジノン,反応温度は120°C,反応時間は20-40時間という最適条件を得た.この条件下で転化率は90%程度となる.2.ピリジル基はルテニウムに配位してオルト位への反応を促進するディレクティンググループとして重要である.しかし,ピリジル基は他の官能基への変換が容易ではないため,官能基変換が容易な置換基をディレクティンググループとした反応の開発が望まれた.そこで,イミノ基,オキサゾリル基をディレクティンググループとして有する芳香環のハロゲン化アリールによる直接アリール化反応を開発した.イミノ基はケトン,アルデヒド,アルコール,アミンに容易に変換可能であり,また,オキサゾリル基はカルボン酸,エステル,アミドに容易に変換可能である.すなわち,本反応はこれらの官能基を有する芳香環の直接アリール化を可能とした.3.上記の反応を用いて各種含窒素ポリアリール化合物を合成し,それらの有機EL材料としての有用性を検討したところ,熱的に安定な電子輸送材料として優れた性能を有することが分かった.また,イリジウムや白金錯体の配位子としてこれらの含窒素ポリアリール化合物を用い,発光効率の高い燐光性遷移金属錯体の合成に成功した.1. 2-フェニルピリジンとハロゲン化アリールとをルテニウム錯体触媒と塩基の存在下に反応させると,2-フェニルピリジンのベンゼン環オルト位が直接アリール化されることを見出した、各種反応条件に関して検討を行い,最適条件を確立した.触媒に関しては,ホスフィンが配位したルテニウム系錯体が高い活性を示し,中でも[η^6-C_6H_6RuCl_2]_2-4PPh_3系が最も高い活性を示した.さらに,塩基は炭酸カリウム,溶媒はN-メチルピロリジノン,反応温度は120°C,反応時間は20-40時間という最適条件を得た.この条件下で転化率は90%程度となる.2.ピリジル基はルテニウムに配位してオルト位への反応を促進するディレクティンググループとして重要である.しかし,ピリジル基は他の官能基への変換が容易ではないため,官能基変換が容易な置換基をディレクティンググループとした反応の開発が望まれた.そこで,イミノ基,オキサゾリル基をディレクティンググループとして有する芳香環のハロゲン化アリールによる直接アリール化反応を開発した.イミノ基はケトン,アルデヒド,アルコール,アミンに容易に変換可能であり,また,オキサゾリル基はカルボン酸,エステル,アミドに容易に変換可能である.すなわち,本反応はこれらの官能基を有する芳香環の直接アリール化を可能とした.3.上記の反応を用いて各種含窒素ポリアリール化合物を合成し,それらの有機EL材料としての有用性を検討したところ,熱的に安定な電子輸送材料として優れた性能を有することが分かった.また,イリジウムや白金錯体の配位子としてこれらの含窒素ポリアリール化合物を用い,発光効率の高い燐光性遷移金属錯体の合成に成功した.2-フェニルピリジンのベンゼン環オルト位アリール化反応に関して、ブロモベンゼンをアリール化剤として用い、各種反応条件に関して検討を行い、最適条件を確立した触媒に関しては、ホスフィンが配位したルテニウム系錯体が高い活性を示し、中でも[η^6-C_6H_6RuCl_2]_2-4PPh_3系が最も高い活性を示した.さらに、塩基は炭酸カリウム、溶媒はN-メチルピロリジノン、反応温度は120°C、反応時間は20-40時間という最適条件を得た.この条件下で転化率は90%程度となる.引き続き、上記の反応に関して、様々な基質を用いて反応を実施し、適用範囲の検討を行った.様々な2-アリールピリジン類とブロモベンゼンの反応では、アリール基として電子吸引性、供与性に関わらず様々な置換基を有するフェニル基が適用できることが分かった.アリール基の置換位置に関しては、オルト位、メタ位の場合は選択的にモノフェニル化体が生成し、パラ位の場合はジフェニル化体も少量生成した.さらに、アリール基としてフェニル基以外にもα-およびβ-ナフチル基等の縮環系芳香族、チエニル基等の復素環系芳香族が適用可能であることも明らかにした.次に、2-フェニルピリジンと様々なハロゲン化アリール類との反応を検討した.ハロゲンの種類に関して、反応性はI > Br > TfO > Clの順となった. | KAKENHI-PROJECT-13555250 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13555250 |
遷移金属錯体触媒による含窒素ポリアリール類の新合成法の確立と有機EL素子への応用 | 但し、臭化物を用いた場合でも反応性は充分高く、実用上問題はない.様々な置換基を有するブロモベンゼンを用いても反応は良好に進行し、置換基による反応の阻害が起こりにくいことを確認した.アリール基としては、ベンゼン環以外にもα-およびβ-ナフチル基、ピリジル基等の複素環系芳香族が適用可能であることを明らかにした.またハロゲン化アリール以外にもβ-ブロモスチレン等のハロゲン化アルケニル類を用いた場合でも反応が進行することを明らかにした.昨年度は,ルテニウム錯体触媒を用いた2-フェニルピリジンのハロゲン化アリールによるベンゼン環オルト位アリール化反応に関して検討を行い,効率良く反応が進行する条件を見出した.この反応において,ピリジル基はルテニウムに配位してオルト位への反応を促進するディレクティンググループとして重要である.しかし,ピリジル基は他の官能基への変換が容易ではないため,官能基変換が容易な置換基をディレクティンググループとした反応の開発が望まれた.本年度は,イミノ基,オキサゾリル基をディレクティンググループとして有する芳香環の,ハロゲン化アリールによる直接アリール化反応を開発した.イミノ基はケトン,アルデヒド,アルコール,アミンに容易に変換可能であり,また,オキサゾリル基はカルボン酸,エステル,アミドに容易に変換可能である.すなわち,本反応はこれらの官能基を有する芳香環の直接アリール化を可能とした.触媒に関しては,ホスフィンが配位したルテニウム系錯体が高い活性を示し,中でも[η^6-C_6H_6RuCl1_2]_2-4PPh_3系が最も高い活性を示した.さらに,塩基は炭酸カリウム,N-メチルピロリジノン,反応温度は120°C,反応時間は20-40時間という最適条件を得た.この条件下で転化率は90%程度となる.上記の反応に関して,様々な基質を用いて反応を実施し,適用範囲の検討を行った.様々な芳香族イミン類,オキサゾリン類とブロモベンゼンの反応では,アリール基として電子吸引性,供与性に関わらず様々な置換基を有するフェニル基が適用できることが分かった.アリール基の置換位置に関しては,オルト位,メタ位の場合は選択的にモノフェニル化体が生成し,パラ位の場合はジフェニル化体も生成した.さらに,アリール基としてフェニル基以外にもα-およびβ-ナフチル基等の縮環系芳香族が適用可能であることも明らかにした.昨年度は,イミノ基,オキサゾリル基をディレクティンググループとして有する芳香環の,ハロゲン化アリールによる直接アリール化反応を開発したが,本年度はディレクティンググループとして機能する含窒素ヘテロ環の適用範囲拡大を目的とし,イミダゾリニル基を有する芳香環のオルト位アリール化反応を見出した.触媒に関しては,ホスフィンが配位したルテニウム系錯体が高い活性を示し,中でも[η^6-C_6H_6RuCl_2]_2-4PPh_3系が最も高い活性を示した.さらに,塩基は炭酸カリウム,溶媒はN-メチルピロリジノン,反応温度は120°C,反応時間は20-40時間という最適条件を得た.イミダゾリニル基の3位の窒素上の置換基が水素の場合にはジアリール化生成物の生成が優先したが,N-アシル体の場合にはモノアリール化生成物が優先することが分かった.また,芳香環の直接アリール化反応をフェノール類に対しても適用したところ,ロジウム錯体と亜りん酸アミド系の配位子を組み合わせることによって反応が進行することを新たに見い出した.触媒に関しては,シクロオクタジエンを配位子とする塩化ロジウム錯体とヘキサメチル亜りん酸トリアミドの組み合わせがもっとも活性が高く,塩基としては炭酸カリウム及び炭酸セシウム,溶媒はキシレン,反応温度は120°C,反応時間は20-40時間という最適条件を得た.この反応により,フェノールの二つのオルト位にアリール基を同時に導入することが可能となり,有機EL素子のホール輸送材料等への応用が期待される. | KAKENHI-PROJECT-13555250 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13555250 |
Vaccination法を用いたナラ枯れ防除法の開発 | "ナラ枯れ"はカシノナガキクイムシの大量穿入(マスアタック)と,この昆虫が樹体内に持ち込む病原菌"なら菌"の樹木内蔓延により起こる伝染病である.これまで多くの研究が積み重ねられて来たが,未だその発病機構は明らかになったとはいえず,適切な防除方法も確立されていない。本研究では植物が傷害に応答して生産することが知られている植物ホルモンであるジャスモン酸メチル(以下MJ)と、エチレン(Et)を外部から寄主樹体に接種し、寄主の抵抗性反応を誘起し、カシノナガキクイムシに対する獲得抵抗性の誘導を試みた。その結果、本来寄主への飛来に見られるマスアタックに変化が起こり、飛来ピ.クが不明瞭になり、かつ飛来総数が減少した。しかし、このように植物ホルモンで処理した個体の中には、本来の飛来ピーク時から遅れて大量飛来が生じるものがあり、このような処理の効果が一時的なものであることを伺わせた。この実験で観察された植物ホルモンの効果はカシノナガキクイムシが生産する集合フェロモンに影響を与えている事が示唆されたが、そのことを確かめるためには更なる研究が必要である。"ナラ枯れ"はカシノナガキクイムシの大量穿入(マスアタック)と,この昆虫が樹体内に持ち込む病原菌"なら菌"の樹木内蔓延により起こる伝染病である.これまで多くの研究が積み重ねられて来たが,未だその発病機構は明らかになったとはいえず,適切な防除方法も確立されていない。本研究では植物が傷害に応答して生産することが知られている植物ホルモンであるジャスモン酸メチル(以下MJ)と、エチレン(Et)を外部から寄主樹体に接種し、寄主の抵抗性反応を誘起し、カシノナガキクイムシに対する獲得抵抗性の誘導を試みた。その結果、本来寄主への飛来に見られるマスアタックに変化が起こり、飛来ピ.クが不明瞭になり、かつ飛来総数が減少した。しかし、このように植物ホルモンで処理した個体の中には、本来の飛来ピーク時から遅れて大量飛来が生じるものがあり、このような処理の効果が一時的なものであることを伺わせた。この実験で観察された植物ホルモンの効果はカシノナガキクイムシが生産する集合フェロモンに影響を与えている事が示唆されたが、そのことを確かめるためには更なる研究が必要である。ブナ科樹木萎凋病(以下、ナラ枯れ)はカシノナガキクイムシPlatypus quercivorusの大量穿入(マスアタック)と,この昆虫が樹体内に持ち込む病原菌Raffaelea quercivoraの樹木内蔓延により起こる伝染病である.1980年代以降,コナラ(Quercus serrata)やミズナラ(Q.crispula)といった樹種を中心に本病の被害は全国各地へと拡大しているが,未だその発病機構は明らかになったとはいえず,適切な防除方法も確立されていない。本研究では植物が傷害に応答して生産することが知られている植物ホルモン、ジャスモン酸メチル(以下MJ)と、エチレン(Et)を外部から寄主樹体に接種し、寄主の抵抗性反応を誘起し、カシノナガキクイムシに対する獲得抵抗性の誘導を試みた。その結果、本来寄主への飛来に見られるマスアタックに変化が起こり、飛来ピークが不明瞭になり、かつ飛来総数が減少した。しかし、このように植物ホルモンで処理した個体の中には、本来の飛来ピーク時から遅れて大量飛来が生じるものがあり、このような処理の効果が一時的なものであることを伺わせた。この実験で観察された植物ホルモンの効果はカシノナガキクイムシが生産する集合フェロモンに影響を与えている事が示唆されたが、そのことを確かめるためには更なる研究が必要である。また、本研究結果は植物と他生物の相互作用を研究する上で、宿主樹木の植物ホルモン処理が新しい研究方法となることを示唆している。 | KAKENHI-PROJECT-23658125 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23658125 |
生体関連物質によるoff/on型蛍光プローブの開発とそのガン細胞ターゲティング | 葉酸受容体は多くの上皮がん細胞表面で過剰に発現し、新たな化学療法剤の標的となっている。本研究課題において、この受容体に認識される簡単な蛍光分子であるジアミノプテリジンを基にして、がん細胞中でのみ蛍光がon状態になる機能性分子の開発を目指した。そして本研究により、葉酸受容体の認識部位であるプテリジンを蛍光色素部位として有し、がん細胞中で特異的に発現しているグルタチオン-S-トランスフェラーゼなどの酵素活性によって蛍光がoff/on制御でき、蛍光on状態で紫外線照射することでGリッチなDNA配列に対して酸化的ダメージを与えることのできる多機能性分子の開発に成功した。本研究では、がん細胞で特異的に発現している酵素によってのみ発光する新たなプテリン誘導体の蛍光プローブを幾つか開発し、それらの細胞での機能評価を行うことを目的としている。平成27年度は、酵素反応によって蛍光がoff/on制御できるプローブを、がん細胞中で特異的に発現している多くの酵素に対して設計し、それらを実際に合成した。ターゲットとなる酵素としては、多くのがん細胞中で特異的に発現しているγーグルタミルトランスペプチダーゼ、ロイシンアミノペプチダーゼ、γーグルタミン合成酵素、カテプシンなどを検討した。量子化学計算により、それぞれの化合物の最適化構造に関する分子軌道及び励起エネルギーを計算し、基質型と生成物型で蛍光のoff/on状態が変化する組み合わせを見出し、酵素反応に対応できる蛍光プローブとして分子設計した後に実際に合成した。基本骨格としては蛍光色素部位(プテリン環)と電子移動部位(ベンゼン環)を連結させた化合物である。ベンゼン環部位の置換基(酵素反応部位)として、各種アミノ酸やペプチドなどを導入する事で、酵素基質としての反応部位を導入する事ができる。合成した化合物は全て吸収スペクトル及び蛍光スペクトルを測定し、蛍光量子収率を算出し、ほとんどの化合物において酵素反応によりoff/on型蛍光プローブとして利用できることを確認した。これにより特定の酵素活性によって蛍光のoff/onがスイッチングできる新規な蛍光プローブの開発に成功した。密度汎関数法を用いた量子化学計算を駆使する事で、それぞれの化合物の最適化構造に関する分子軌道及び励起エネルギーを計算し、酵素反応における基質型と生成物型の構造で蛍光のoff/on状態が変化する組み合わせを数多く見出した。この理論化学による分子設計を経て、そこで見出された候補化合物の中から実際に多くの化合物を合成する事にも成功し、さらに蛍光スペクトルを含む各種スペクトルの測定により、合成された化合物群がoff/on型蛍光プローブとして利用できることを確認した。以上の事から、概ね当該年度の目標は達成できていると言える。プテリンを蛍光部位に導入した新規蛍光プローブを設計し、がん細胞で特異的に発現している酵素によってのみ発光するプローブを開発し、それらの細胞内での機能評価を行うことを目的としている。平成28年度はすでに設計・合成した、酵素活性を蛍光のoff/onで検出できる種々のプローブを用いて、多くのがん細胞中で特異的に発現している酵素に適応可能かどうかを評価した。蛍光による酵素活性の検出は、本研究経費により平成28年度に設備備品として導入した蛍光プレートリーダーを用いて測定した。合成した数十種類の蛍光プローブに関して、種々の酵素を用いて検討したところ、グルタチオンSトランスフェラーゼ、カテプシン、カスパーゼおよびロイシンアミノペプチダーゼに関して、蛍光のoff/onによる酵素活性の検出が可能であることを確認した。特にグルタチオンSトランスフェラーゼ検出プローブに関しては20種類以上の化合物を合成し検討し、何れも酵素活性の検出が可能であることを確認した。また、蛍光のoff/onによる酵素活性の検出に関する評価と並行して、光照射によるDNAへの酸化的ダメージの評価もin vitroで行った。DNAのモデル化合物としては、GGGGおよびAAAAテトラオリゴマーを用いて、蛍光がoffとon状態のそれぞれのプローブの存在下で360 nmの紫外線を照射して検討した。DNAの酸化的ダメージの有無はHPLCを用いて分析した結果、蛍光がon状態のプローブ存在下で、配列がGGGGのDNAオリゴマーの時のみ紫外線照射によるDNAの損傷が確認された。密度汎関数を用いた量子化学計算により、酵素活性が蛍光のoff/onで検出できるように論理的に設計された新規蛍光プローブを数十種類合成した。これらのプローブの蛍光測定を行い、計画通り合成された化合物群がoff/on型蛍光プローブとして利用できることを確認した。さらにこれらのプローブを用いてin vitroでの酵素による実験を行い、がん細胞で特異的に発現している酵素の活性が検出可能であることを確認した。これらのことより特定の酵素活性によって蛍光のoff/onがスイッチングできる新規な蛍光プローブの開発に成功した。また、これと同時に数種のDNAのオリゴマーに対してin vitroで蛍光プローブの存在下で360 nmの紫外線を照射し、DNAの酸化的損傷を評価した。その結果、蛍光がon状態のプローブの時にだけ、グアニンが連続する配列のDNAに対してのみDNAが損傷を受けていることを確認した。これによりプローブの蛍光がon状態の時のみ紫外線照射によって配列特異的にDNAに酸化的ダメージを与えられることが示された。以上の事から、概ね当該年度の目標は達成できていると言える。本研究計画ではプテリンを蛍光部位に導入した新規蛍光プローブを設計・合成し、がん細胞で特異的に発現している酵素によってのみ発光するプローブを開発し、それらの細胞内でのDNA損傷機能評価を行うことを目的としている。 | KAKENHI-PROJECT-15K01827 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K01827 |
生体関連物質によるoff/on型蛍光プローブの開発とそのガン細胞ターゲティング | 平成29年度は、酵素活性によるoffからonへの蛍光スイッチングと紫外線照射による配列特異的DNAオリゴマーの損傷評価を行った。多くのがん細胞中で特異的に発現している酵素の中で、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)をターゲットにした新規蛍光プローブを各種合成し、その効果を検証した。ジアミノプテリジンを蛍光部位とし、複数の電子吸引基を様々な置換パターンで導入したフェニルスルホンアミド誘導体を各種合成し、蛍光のoff/onによってGSTの活性検出が可能かどうかを検討したところ、電子吸引基の置換パターンによってGSTの活性が大きく異なることが明らかになった。また、蛍光プローブの疎水性の違いにより、細胞への導入効率が大きく左右されることも明らかになった。紫外線照射によるDNAオリゴマーの損傷評価では、塩基配列の異なる10オリゴマーを設計し、蛍光がon状態のプローブ存在下で360 nmの紫外線を照射してその損傷をHPLCとLC-MSによって評価した。グアニン(G)が連続した配列のDNAオリゴマーの時のみに紫外線照射によるDNAの損傷が確認され、その生成物はLC-MSの解析により酸化体DNAオリゴマーであることが分かった。これにより、on型蛍光プローブへの紫外線照射による励起状態への電子移動か、発生した活性酸素による酸化反応によって連続G配列を有するDNAオリゴマーが酸化的ダメージを受けていることが明らかになった。葉酸受容体は多くの上皮がん細胞表面で過剰に発現し、新たな化学療法剤の標的となっている。本研究課題において、この受容体に認識される簡単な蛍光分子であるジアミノプテリジンを基にして、がん細胞中でのみ蛍光がon状態になる機能性分子の開発を目指した。そして本研究により、葉酸受容体の認識部位であるプテリジンを蛍光色素部位として有し、がん細胞中で特異的に発現しているグルタチオン-S-トランスフェラーゼなどの酵素活性によって蛍光がoff/on制御でき、蛍光on状態で紫外線照射することでGリッチなDNA配列に対して酸化的ダメージを与えることのできる多機能性分子の開発に成功した。平成28年度も当初の計画通りに進める。まず、前年度に合成したプローブに、がん細胞で特異的に発現している酵素を用いて、それぞれの酵素の基質に該当するプローブで酵素反応を行い、蛍光のoff/onによる酵素活性の検出が可能かどうかを評価する。さらに、目的通りの機能を有するoff/on型蛍光プローブが、蛍光on状態でのみDNAに酸化的ダメージを与えられるかどうかも評価する。様々な塩基配列の一重鎖や二重鎖のDNAオリゴマーを設計・購入し、各種蛍光プローブの存在下in vitroで光照射する。DNAへの酸化的ダメージの有無は、HPLCを用いて分析する。その配列特異性や酸化効率などを評価する。平成29年度は、蛍光プローブのがん細胞選択的な取り込み、酵素活性によるoffからonへの蛍光スイッチング、及び光照射によるDNA損傷の三つの機能を最終的に細胞系で評価する。 | KAKENHI-PROJECT-15K01827 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K01827 |
アジア地域における産後の伝統慣習についての比較研究 | 東南アジアに位置するラオスの農柳地域では出産後「Yu-kham」と呼ばれる、看護ケアに関わる慣習が現在でも広く一般に行われている。この習俗は、産後に母体を保温する、食物の種類を制限する、伝統的な薬を飲むなどであることが申請者の先行研究により、確認されている。また、申請者自身によるタイ山岳民族リスの産育慣習にも、産後のケアにおいて身体を温めるため目的で薬湯を使うサウナがあることがわかっている。本年度は、その他のアジア諸地域の出産・育児に関する伝統慣習、特に産後の慣習について文献収集を行い、先行研究について知見の整理を行った。その結果、カンボジア・インドなど、かなりの地域において同様な慣習が存在し、また産後に身体を温める習慣があることも理解された。さらにわが国においては、沖縄において「ジール」というかなり似通った慣習があることがわかった。その上で、本年はタイでの申請者自身の先行研究をもとに、山岳民族リスの村における産後の伝統的慣習の存在(ナツフェと呼ばれる)とその変容の把握を目的として調査を行なった。対象は、タイ北部の山岳民族リスの村であるナムリン村に済んでいる、出産した経験のある女性10名に産後の伝統的慣習について聞き取りを行った。また、沖縄において、「ジール」を経験したことのある女性およびそれについて知見のある女性、8名に聞き取り調査を行った。その結果、タイの山岳民族の村では、出産場所は病院へと変化したものの、産後の産育慣習「ナツフェ」についてはほとんどの人が伝統的な方法で行っていることがわかった。沖縄においては、地域によって異なるが、昭和20年代まで「ジール」という産後に身体をあたためる習慣が残っており、その方法は、ラオスの産後の慣習とほぼ似ていることがわかった。東南アジアに位置するラオスの農村地域では出産後「Yu-kham」と呼ばれる、看護ケアに関わる慣習が現在でも広く一般に行われている。この習俗は、産後に母体を保温する、食物の種類を制限する、伝統的な薬を飲むなどであることが申請者の先行研究により、確認されている。本年度は、その他のアジア諸地域の出産・育児に関する伝統慣習、特に産後の慣習について文献収集を行い、先行研究について知見の整理を行った。その結果、カンボジア・インドなど、かなりの地域において同様な慣習が存在し、また産後に身体を温める習慣があることも理解された。さらに、ラオスでの申請者自身の先行研究をもとに、現地において都市部での伝統的慣習の存在(特に「Yu-kham」焦点を当てて)とその変容の把握を目的として調査を行なった。対象は、ラオスの首都ビィエンチャンにある国立マホソット病院で働いている看護婦16名であり、産後の慣習についての聞き取り調査を行った。その結果、都市部においては、病院での出産がほとんどであったが、「Yu-kham」を行なう事例が多かった。しかし、その方法などは、農村部において伝統的行われている方法よりも簡素がされており、この変容について考察を加えた。また、この調査については、国際看護科学学会にて演題登録の申請中である。東南アジアに位置するラオスの農柳地域では出産後「Yu-kham」と呼ばれる、看護ケアに関わる慣習が現在でも広く一般に行われている。この習俗は、産後に母体を保温する、食物の種類を制限する、伝統的な薬を飲むなどであることが申請者の先行研究により、確認されている。また、申請者自身によるタイ山岳民族リスの産育慣習にも、産後のケアにおいて身体を温めるため目的で薬湯を使うサウナがあることがわかっている。本年度は、その他のアジア諸地域の出産・育児に関する伝統慣習、特に産後の慣習について文献収集を行い、先行研究について知見の整理を行った。その結果、カンボジア・インドなど、かなりの地域において同様な慣習が存在し、また産後に身体を温める習慣があることも理解された。さらにわが国においては、沖縄において「ジール」というかなり似通った慣習があることがわかった。その上で、本年はタイでの申請者自身の先行研究をもとに、山岳民族リスの村における産後の伝統的慣習の存在(ナツフェと呼ばれる)とその変容の把握を目的として調査を行なった。対象は、タイ北部の山岳民族リスの村であるナムリン村に済んでいる、出産した経験のある女性10名に産後の伝統的慣習について聞き取りを行った。また、沖縄において、「ジール」を経験したことのある女性およびそれについて知見のある女性、8名に聞き取り調査を行った。その結果、タイの山岳民族の村では、出産場所は病院へと変化したものの、産後の産育慣習「ナツフェ」についてはほとんどの人が伝統的な方法で行っていることがわかった。沖縄においては、地域によって異なるが、昭和20年代まで「ジール」という産後に身体をあたためる習慣が残っており、その方法は、ラオスの産後の慣習とほぼ似ていることがわかった。 | KAKENHI-PROJECT-12771512 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12771512 |
Ofut1によるNotch受容体の構造・機能の調節機構 | Notch受容体のEGFリピートは、特徴的なO-結合型糖鎖修飾を受け、その修飾にはO-フコース転移酵素1(OFUT1)など特異的な糖転移酵素が関与する。これまでの研究で、OFUT1には、糖転移活性の他にシャペロン活性があり、この活性がOFUT1の機能に中心的な役割を果たすこと、さらにOFUT1の作用の分子機序として、多数の連続したEGFリピートのフォルディングにOFUT1が必須な役割をすることを明らかにした。また、Notch受容体の細胞外領域における新たな翻訳後修飾として、O-HexNAc修飾の存在を明らかにした。Notch受容体のEGFリピートは、特徴的なO-結合型糖鎖修飾を受け、その修飾にはO-フコース転移酵素1(OFUT1)など特異的な糖転移酵素が関与する。これまでの研究で、OFUT1には、糖転移活性の他にシャペロン活性があり、この活性がOFUT1の機能に中心的な役割を果たすこと、さらにOFUT1の作用の分子機序として、多数の連続したEGFリピートのフォルディングにOFUT1が必須な役割をすることを明らかにした。また、Notch受容体の細胞外領域における新たな翻訳後修飾として、O-HexNAc修飾の存在を明らかにした。発生段階の多くの細胞運命決定のステップに関与するNotch受容体は、約36個のEGFドメインからなるEGFリピートを細胞外領域にもち、その多くがO-フコースやO-グルコースを含むドメイン特異的な糖鎖修飾を受ける。本研究では、Notch受容体の糖鎖修飾に関わる糖転移酵素O-フコース転移酵素1(OFUT1)のNotch受容体の構造と機能に対する役割を理解することを主要な目的とした。これまでの研究より、OFUT1は、酵素活性以外にシャペロン活性を有しており、酵素活性非依存的にNotch受容体のEGFリピートのフォルディングを促進することを示した。本年度は、OFUT1の酵素活性もしくは、シャペロン活性いずれが、Notch受容体の機能に必須な役割をするかの検討を行った。OFUT1の非活性化型変異体とGMD変異体(GDP-フコースの生合成に異常)を用いて、OFUT1の変異体にOFUT1のシャペロン活性だけ回復させたところ、Fringeと似た表現型が観察された。このことより、OFUT1のシャペロン活性がNotch受容体の機能に必須であり、酵素潜性はNotch受容体には必要でないことが示唆された。また、OFUT1以外のNotch受容体の糖鎖修飾に関わる新たな因子をスクリーニングする過程で、新規の遺伝子を同定することに成功した。現在、酵素活性や細胞内局在などの生化学的解析、細胞生物学的な解析や、生物学的役割の解析を行っている。OFUT1のNotch受容体に対する役割を明らかにするため、ショウジョウバエwing discのOfut1変異クローンにおけるNotch受容体の局在を調べた。界面活性剤を用いて、膜透過処理をした場合、Ofut1変異クローンにおいて著明なNotch受容体の蛋白質発現の増加が認められた。また、その局在も異常を示し、野生型細胞に見られるadherens junctionへの局在が失われ、垂直断面において、apical側から、basal側に渡り、強い染色像が認められた。これらの、染色パターンは、部分的にERマーカーと一致したことから、Ofut1変異細胞では、細胞膜上への輸送に異常があることが示唆された。次に、細胞膜上へのNotch受容体の発現の有無を確かめるため、膜透過処理をしない場合のNotch受容体の局在を調べた。Apical側の水平断面において、Ofut1変異クローンにおけるNotch受容体の染色像が失われた。また、垂直断面においても、その染色像は認められなかった。以上の結果より、Ofut1は、Notch受容体の細胞表面上への発現に必要であることが明らかになった。一方、Notch受容体のリガンドも細胞外ドメインにEGFリピートを含んでおり、O-結合型糖鎖修飾を受けることが知られている。それらの糖鎖機能を検討するために、O-結合型糖鎖付加部位の複数のSer/Thr残基をアラニンに置換した変異体を作製した。野生型と変異型をHEK293細胞に過剰発現させたところ、変異型では野生型を発現させた際に認められた形態の変化が検出できなかった。現在、詳しい分子機構を解析している。前年度までの研究結果より、0-フコース転移酵素1が連続した多数のEGFドメインの分泌に必須な役割を果たすことが明らかになった。そこで、本年度は、0-フコース転移酵素1が、EGFリピートのフォールディングにおける役割を分子レベルで検討するためのモデル分子として、FLAGタグを付加したEGFリピートのコンストラクト(EGF : FLAG、並びにEGF : FLAG-TM)を作製した。今後、これらのコンストラクトを用いて、0-フコース転移酵素1の発現抑制をした際の構造の変化を、ネイティブPAGEの手法などを用いて、解析する必要があると考えられた。また、実際に、生体内でも同様な構造異常が生じるかどうかを検討するために、0-フコース転移酵素1の変異体を利用して、内在性のNotch受容体の構造の変化の有無を調べる実験についても今後取り組む必要があると考えられた。一方、EGFドメインを修飾する0-結合型糖鎖修飾として、0-フコースや0-グルコースが知られていたが、本研究課題を遂行する中で、これら既存の糖鎖修飾とは異なる、新規の0-結合型糖鎖修飾が存在することを示唆するデータが得られた。 | KAKENHI-PROJECT-18689011 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18689011 |
Ofut1によるNotch受容体の構造・機能の調節機構 | この新規の翻訳後修飾は分子量203であることから、0-GlcNAcもしくは0-GalNAc修飾であることが明らかになった。今後、この新規翻訳後修飾の同定に向けた生化学的な解析や、生物学的役割の解明に向けた取り組みが重要となると考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-18689011 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18689011 |
近接連星系における伴星表面の熱輸送過程の3次元数値シミュレーション | 2つの星(主星と伴星)が非常に接近して、その共通重心を回転している天体を近接連星系と呼ぶ。この近接連星系は、宇宙においては非常にありふれた存在でもあり、従って今日に至るまで理論的及び観測的興味の的であった。しかし、それにも係わらず近接連星系は未だに多くの謎に包まれている。本研究では数ある謎のうち、「銀河系内超軟X線源RX JOO19.8+2156における謎」に取り組んだ。これは以下のよう問題である。この天体からHe II λ4686輝線が観測されているが、この放射位置は未だに同定されていない。従来、この輝線は主星周辺から放射されると想定し、輝線から測定されるドップラー速度を手段に伴星の質量が求められてきた。その結果、伴星の質量は主星の質量よりも小さいという結果を得ている。しかし、この結果は「超軟X線源においてそのX線強度を説明するためには伴星の方が主星よりも重くなければならない」という理論的予測と矛盾している。さらに、観測による輝線分布は、これらの輝線の集中領域が主星および降着円盤の内縁の高温部分と一致していないことを示した。従って、輝線が主星及びその周辺から放射されるという考えは疑問視される。そこで本研究では、輝線が主星から放射されるのではなく、伴星表面の主星および降着円盤に照らされた部分が熱せられ、その結果熱せられた部分が輝線を放射すると想定した。この想定のもとに、現在までの理論及び観測結果を我々の伴星表面流モデルを用いて矛盾なく説明できるかを調べた。その結果、我々は伴星の方が主星よりもおおよそ3倍程度重い場合に観測された輝線分布を説明できることを発見した。さらに、伴星の方が主星よりも重いという結果は理論的予測にも矛盾しない。従って、輝線のドップラー速度による伴星質量の推定は、誤った結果を導くことになることを示した。2つの星(主星と伴星)が非常に接近して、その共通重心を回転している天体を近接連星系と呼ぶ。この近接連星系は、宇宙においては非常にありふれた存在でもあり、従って今日に至るまで理論的及び観測的興味の的であった。しかし、それにも係わらず近接連星系は未だに多くの謎に包まれている。本研究では数ある謎のうち、「銀河系内超軟X線源RX JOO19.8+2156における謎」に取り組んだ。これは以下のよう問題である。この天体からHe II λ4686輝線が観測されているが、この放射位置は未だに同定されていない。従来、この輝線は主星周辺から放射されると想定し、輝線から測定されるドップラー速度を手段に伴星の質量が求められてきた。その結果、伴星の質量は主星の質量よりも小さいという結果を得ている。しかし、この結果は「超軟X線源においてそのX線強度を説明するためには伴星の方が主星よりも重くなければならない」という理論的予測と矛盾している。さらに、観測による輝線分布は、これらの輝線の集中領域が主星および降着円盤の内縁の高温部分と一致していないことを示した。従って、輝線が主星及びその周辺から放射されるという考えは疑問視される。そこで本研究では、輝線が主星から放射されるのではなく、伴星表面の主星および降着円盤に照らされた部分が熱せられ、その結果熱せられた部分が輝線を放射すると想定した。この想定のもとに、現在までの理論及び観測結果を我々の伴星表面流モデルを用いて矛盾なく説明できるかを調べた。その結果、我々は伴星の方が主星よりもおおよそ3倍程度重い場合に観測された輝線分布を説明できることを発見した。さらに、伴星の方が主星よりも重いという結果は理論的予測にも矛盾しない。従って、輝線のドップラー速度による伴星質量の推定は、誤った結果を導くことになることを示した。 | KAKENHI-PROJECT-03J03074 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03J03074 |
距離空間上のMusielak-Orlicz空間における楕円型偏微分方程式の研究 | 本研究では,距離空間上のMusielak-Orlicz-Newtonian空間におけるDirichlet integralの最小値問題の解の存在について研究を行った.具体的には,Musielak-Orlicz-Newtonian空間(MON空間)を新たに定義し,MON空間上の容量の性質,下限に達する弱上微分の存在,MON空間と曲線上絶対連続な関数族との関係や境界上0の値をもつMON空間の性質などについて研究を行った.さらにそれをもとにPoincareの不等式,Obstacle problemの解の存在,そして最終年度には,Dirichlet integralの最小値問題の解の存在を示した.本研究対象であるMusielak-Orlicz空間は,Lebesgue空間やOrlicz空間,変動指数をもつ関数空間などを包括した関数空間であるため,本研究で得られた関数空間の性質やDirichlet integralの最小値問題の解の存在は,様々なタイプの楕円型偏微分方程式の解の存在に応用されることが期待される.加えてユークリッド空間だけでなく距離空間上での解析を行うため,実解析学だけでなく,多様体上の微分幾何学やグラフ上の解析学などでの幅広い応用が期待される.さらに,距離空間上でのMusielak-Orlicz-Sobolev空間における楕円型偏微分方程式の解の存在が示されれば,次には解の正則性の研究が可能となるため,本研究は関連研究分野の進展,新しい学問分野の開拓等に大きな学術的波及効果が期待される.また,正確なER効果と流れの形態のモデル化,その解の性質の研究が進み,宇宙開発だけではなく,ブレーキ,クラッチなどの応用デバイス開発,または,次世代フルードパワーシステムとして多くの分野で実用化・製品化されることが期待でき,社会貢献に大きなるものが期待される.近年,変動指数をもつ関数空間,Orlicz空間や変動指数をもOrlicz空間の研究が,宇宙開発の分野への応用が非常に期待されている電気粘性流体(ER流体)の研究の更なる発展に必要であることがわかってきた.よって本研究では,この領域における研究の更なる発展のため,上記3つの関数空間を含む関数空間(Musielak-Orlicz-Newtonian空間)を定義し,n次元ユークリッド空間では楕円型偏微分方程式の解に相当する,距離空間上のDirichlet integralの最小値問題の解の存在を示すことを目的とする.本年度は,上記の目的のために,主にMusielak-Orlicz-Newtonian空間の諸性質について研究を行った.具体的には,除外集合を測るツールとして有用なMusielak-Orlicz-Newtonian空間上の容量の性質やモジュラスとの関係を研究し,今後の研究を進めていく上で有用な成果を得ることができた.また,Dirichlet integralの最小値問題の解を定義する上でMusielak-Orlicz-Newtonian空間における弱上微分の存在が必要となるが,その弱上微分の存在を証明することができた.さらにMusielak-Orlicz-Newtonian空間と曲線上絶対連続な関数族との関係や境界上0の値をもつMusielak-Orlicz-Newtonian空間の性質など,今後の研究を進めていく上で必要な成果を得た.また,境界上0の値をもつMusielak-Orlicz-Newtonian空間の性質について研究を進める上で,類似の関数空間であるMusielak-Orlicz-Hajlasz空間について,境界上0の値をもつMusielak-Orlicz-Hajlasz空間の特徴づけまで研究を行うことができた.尚,本年度の研究成果は,本研究対象であるMusielak-Orlicz空間が,Lebesgue空間やOrlicz空間,変動指数をもつ関数空間などを包括した関数空間であるため,本研究で得られた関数空間の性質は他の特殊な関数空間で応用可能であることより,本研究のみならず他の研究分野にも意義があると思われる.近年,変動指数をもつ関数空間,Orlicz空間や変動指数をもOrlicz空間の研究が,宇宙開発の分野への応用が非常に期待されている電気粘性流体(ER流体)の研究の更なる発展に必要であることがわかってきた.よって本研究では,この領域における研究の更なる発展のため,上記3つの関数空間を含む関数空間(Musielak-Orlicz-Newtonian空間)を定義し,n次元ユークリッド空間では楕円型偏微分方程式の解に相当する,距離空間上のDirichlet integralの最小値問題の解の存在を示すことを目的とする.本年度は,上記の目的のために,Musielak-Orlicz-Newtonian空間上のMazya型の不等式について研究を行い,予想されていた結果を得ることができた.Mazya型の不等式はPoincareの不等式を得る上で重要な不等式であることは,古典的結果からよく知られている.次にMazya型の不等式を用いて,Musielak-Orlicz-Newtonian空間上のPoincareの不等式について研究を行った.後に示すようにPoincareの不等式はObstacle problemの解の存在を証明する上で重要なツールである. | KAKENHI-PROJECT-16K17618 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K17618 |
距離空間上のMusielak-Orlicz空間における楕円型偏微分方程式の研究 | そして,得られたPoincareの不等式を用いることで,Musielak-Orlicz-Newtonian空間上のObstacle problemの解の競争関数の列として,Musielak-Orlicz-Newtonian空間上で有界な関数列を選び,Mazurの補題を用いることで,Obstacle problemの解の存在を示すことができた.尚,本年度の研究成果は,本研究対象であるMusielak-Orlicz空間が,Lebesgue空間やOrlicz空間,変動指数をもつ関数空間などを包括した関数空間であるため,本研究で得られた関数空間の性質は他の特殊な関数空間で応用可能であることより,本研究のみならず他の研究分野にも意義があると思われる.当初の計画通り,Musielak-Orlicz-Newtonian空間上のMazya型の不等式について研究を行い,予想されていた形で結果を得ることができ,次に得られたMazya型の不等式を用いて,Musielak-Orlicz-Newtonian空間上のPoincareの不等式についても予想されていた形で結果を得ることができことは,当初の計画通り研究が進んでいると思われる.また,得られたPoincareの不等式を用いることで,Musielak-Orlicz-Newtonian空間上のObstacle problemの解の存在を示すまで研究が進んだことは,当初の計画以上に研究が進展していると思われる.本研究では,距離空間上のMusielak-Orlicz-Newtonian空間におけるDirichlet integralの最小値問題の解の存在について研究を行った.具体的には,Musielak-Orlicz-Newtonian空間(MON空間)を新たに定義し,MON空間上の容量の性質,下限に達する弱上微分の存在,MON空間と曲線上絶対連続な関数族との関係や境界上0の値をもつMON空間の性質などについて研究を行った.さらにそれをもとにPoincareの不等式,Obstacle problemの解の存在,そして最終年度には,Dirichlet integralの最小値問題の解の存在を示した.本研究対象であるMusielak-Orlicz空間は,Lebesgue空間やOrlicz空間,変動指数をもつ関数空間などを包括した関数空間であるため,本研究で得られた関数空間の性質やDirichlet integralの最小値問題の解の存在は,様々なタイプの楕円型偏微分方程式の解の存在に応用されることが期待される.加えてユークリッド空間だけでなく距離空間上での解析を行うため,実解析学だけでなく,多様体上の微分幾何学やグラフ上の解析学などでの幅広い応用が期待される.さらに,距離空間上でのMusielak-Orlicz-Sobolev空間における楕円型偏微分方程式の解の存在が示されれば,次には解の正則性の研究が可能となるため,本研究は関連研究分野の進展,新しい学問分野の開拓等に大きな学術的波及効果が期待される.また,正確なER効果と流れの形態のモデル化,その解の性質の研究が進み,宇宙開発だけではなく,ブレーキ,クラッチなどの応用デバイス開発,または,次世代フルードパワーシステムとして多くの分野で実用化・製品化されることが期待でき,社会貢献に大きなるものが期待される.次年度使用額が生じた理由として,「研究業績の概要」,「現在までの達成度」でも触れたように,研究対象の空間を増やし新たな空間も研究対象としたため,購入予定の研究書が変更になったためである. | KAKENHI-PROJECT-16K17618 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K17618 |
生体適合性ポリマーゲルを用いた腱癒着防止に関する基礎的検討 | 生体細胞膜類似構造を有し、優れた生体適合性と潤滑特性を発揮する高分子材料・2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine (MPC)ポリマーを用いた癒着防止材を創案した。これは、MPCポリマーにカルボキシル基あるいは三級アミノ基をブロック的に配列させたもので、これらを混合すると直ちにゲル化して粘性が高まり、腱表面に接着させられる。本研究の目的は、MPCポリマーゲルによる腱縫合部の被覆を、腱癒着の防止技術として臨床応用するために必要な基礎的検討を完了させることであり、下記の検討を行った。1.高い固相化を達成するMPCポリマーゲル合成の至適条件の決定手術部位という湿潤環境下で高い固相化を達成するMPCポリマーゲルの構造を確立するため、分子組成、分子量とその分布、疎水性ユニットの構造などをパラメーターとして様々なゲルを作製し、疑似体液、ラットのモデルを用いて検討した。この検討で確立したMPCポリマーゲルを2.3.4.の検討に用いた。2.MPCポリマーゲル被覆による腱縫合部の癒合に対する効果の検討In vivo腱損傷モデルを確立し検討を行った。趾屈筋腱を横切後顕微鏡視下に腱を縫合しMPCポリマーゲルで被覆後3週間の外固定を行った。手術後3・6週で腱を摘出し、ゲルを使用しないコントロール群と治癒(癒合)の程度を比較検討した。肉眼、組織および力学的所見にてMPCポリマーゲルが腱の治癒(癒合)を妨げないことを確認した。3.MPCポリマーゲル被覆による腱縫合部の癒着防止に対する効果の検討In vivo腱癒着モデルを確立し検討を行った。趾屈筋腱をバイポーラー電気凝固器で損傷した後MPCポリマーゲルで損傷部を被覆した。手術後3・6週で腱を摘出し、ゲルを使用しないコントロール群と癒着の程度を比較検討した。肉眼、組織および力学的所見にてMPCポリマーゲルが腱の癒着を防止することを確認した。4.腱縫合部を被覆したMPCポリマーゲル表面の潤滑特性の評価上記3.の腱癒着モデルを利用し、手術3週後に趾屈曲運動を反復後の腱滑走抵抗を測定して力学的に評価し、MPCポリマーゲルが腱滑走抵抗を低下させ、潤滑特性に優れることを確認した。生体細胞膜類似構造を有し、優れた生体適合性と潤滑特性を発揮する高分子材料・2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine (MPC)ポリマーを用いた癒着防止材を創案した。これは、MPCポリマーにカルボキシル基あるいは三級アミノ基をブロック的に配列させたもので、これらを混合すると直ちにゲル化して粘性が高まり、腱表面に接着させられる。本研究の目的は、MPCポリマーゲルによる腱縫合部の被覆を、腱癒着の防止技術として臨床応用するために必要な基礎的検討を完了させることであり、下記の検討を行った。1.高い固相化を達成するMPCポリマーゲル合成の至適条件の決定手術部位という湿潤環境下で高い固相化を達成するMPCポリマーゲルの構造を確立するため、分子組成、分子量とその分布、疎水性ユニットの構造などをパラメーターとして様々なゲルを作製し、疑似体液、ラットのモデルを用いて検討した。この検討で確立したMPCポリマーゲルを2.3.4.の検討に用いた。2.MPCポリマーゲル被覆による腱縫合部の癒合に対する効果の検討In vivo腱損傷モデルを確立し検討を行った。趾屈筋腱を横切後顕微鏡視下に腱を縫合しMPCポリマーゲルで被覆後3週間の外固定を行った。手術後3・6週で腱を摘出し、ゲルを使用しないコントロール群と治癒(癒合)の程度を比較検討した。肉眼、組織および力学的所見にてMPCポリマーゲルが腱の治癒(癒合)を妨げないことを確認した。3.MPCポリマーゲル被覆による腱縫合部の癒着防止に対する効果の検討In vivo腱癒着モデルを確立し検討を行った。趾屈筋腱をバイポーラー電気凝固器で損傷した後MPCポリマーゲルで損傷部を被覆した。手術後3・6週で腱を摘出し、ゲルを使用しないコントロール群と癒着の程度を比較検討した。肉眼、組織および力学的所見にてMPCポリマーゲルが腱の癒着を防止することを確認した。4.腱縫合部を被覆したMPCポリマーゲル表面の潤滑特性の評価上記3.の腱癒着モデルを利用し、手術3週後に趾屈曲運動を反復後の腱滑走抵抗を測定して力学的に評価し、MPCポリマーゲルが腱滑走抵抗を低下させ、潤滑特性に優れることを確認した。外傷や手術後に発生する腱の癒着は関節の運動障害をきたす原因となり、社会復帰や日常生活の大きな妨げとなる。特に手指の腱損傷の場合、腱癒着のため手術後3週間の固定が必要となり、腱の癒着は必発である。手指は関節の微細な運動を必要とするため、癒着は深刻な合併症であり、関節機能の回復に多大な労力と時間を要することになる。我々は、周囲組織からの液性因子の供給による修復を妨げずに縫合部を被覆できれば癒着を防止できると考えた。この目的で、生体細胞膜類似構造を有し、優れた生体適合性と潤滑特性を発揮する高分子材料・2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine(MPC)を用いた癒着防止材を創案した。これは、MPCポリマーにカルボキシル基あるいは三級アミノ基をブロック的に配列させたもので、これらを混合すると直ちにゲル化して粘性が高まり、腱表面に接着させることができる。 | KAKENHI-PROJECT-17591548 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17591548 |
生体適合性ポリマーゲルを用いた腱癒着防止に関する基礎的検討 | したがって術野に応じて瞬時に成型でき、かつ持続して効果を発揮できる。また、MPCポリマーは、液性因子の透過を妨げないこと、表面にタンパク質の吸着が起きないため癒着する可能性が少ないこと、異物としての認識を受けず生体の異物反応を惹起しないこと、潤滑性に優れること、が判明している。本研究の目的は、MPCポリマーゲルによる腱縫合部の被覆を、腱癒着の防止技術として臨床応用するために必要な基礎的検討を完了させることであり、本年度は下記の検討を行った。1)高い固相化を達成するMPCポリマーゲル合成の至適条件の決定手術部位という湿潤環境下で高い固相化を達成するMPCポリマーゲルの構造を確立するため、分子組成、分子量とその分布、疎水性ユニットの構造などをパラメーターとして様々なゲルを作製し、疑似体液、ラットのモデルを用いて検討した。この検討で確立したMPCポリマーゲルを以下に用いた。2)MPCポリマーゲル被覆による腱縫合部の癒合に対する効果の検討家兎の腱損傷モデルを用いた。顕微鏡視下に縫合しMPCポリマーゲルで被覆した腱を3・6週後に摘出し、肉眼所見、組織所見、力学的所見にてMPCポリマーゲルが腱の癒合を妨げないことを確認した。3)MPCポリマーゲル被覆による腱縫合部の癒着防止に対する効果の検討平成18年度の検討に用いるため、家兎の腱癒着モデルを確立した。腱の癒着は関節の運動障害をきたし、社会復帰や日常生活の大きな妨げとなる。そこで、生体細胞膜類似構造を有し、優れた生体適合性と潤滑特性を発揮する高分子材料・2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine(MPC)ポリマーを用いた癒着防止材を創案した。これは、MPCポリマーにカルボキシル基あるいは三級アミノ基をブロック的に配列させたもので、これらを混合すると直ちにゲル化して粘性が高まり、腱表面に接着させることができる。また、MPCポリマーは、液性因子の透過を妨げないこと、表面にタンパク質の吸着が起きないため癒着する可能性が少ないこと、異物としての認識を受けず生体の異物反応を惹起しないこと、潤滑性に優れること、が判明している。本研究の目的は、MPCポリマーゲルによる腱縫合部の被覆を、腱癒着の防止技術として臨床応用するために必要な基礎的検討を完了させることであり、本年度は下記の検討を行った。1. MPCポリマーゲル被覆による腱縫合部の癒合に対する効果の検討前年度に引き続き、MPCポリマーの合成条件をかえ、腱損傷モデルに用いてMPCポリマーゲルが腱縫合部の治癒(癒合)に与える影響を検討した。経時的に肉眼所見、組織所見、力学所見を検討し、MPCポリマーゲルが腱の治癒(癒合)を妨げないことを確認した。2. MPCポリマーゲル被覆による腱縫合部の癒着防止に対する効果の検討上記1.で使用したMPCポリマーゲルを腱癒着モデルに用い、MPCポリマーゲルの癒着防止効果を検討した。マイクロ顕微鏡視下に腱を損傷した後MPCポリマーゲルで被覆し3週間の外固定を行った。経時的に肉眼所見、組織所見、力学的所見を検討し、MPCポリマーゲルが腱の癒着を防止することを確認した。3.腱縫合部を被覆したMPCポリマーゲル表面の潤滑特性の評価 | KAKENHI-PROJECT-17591548 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17591548 |
レーザービームによる微小モータ駆動に関する研究 | 本研究の目的は,レーザー光の放射圧と用いて,可動子が数μm程度のマイクロモータ(回転モータ,リニアモータ,浮上モータ等)を,非接触・非電力・非媒質で駆動させるための理論を構築し,実際の装置化のための機械機構,光学系,材料などを検討、試作することにある。本年度は,顕微鏡を利用した実験システムを用いて可動子の駆動実験およびレーザーマイクロモータの実現に必要となる条件について調べる理論計算を行なった。可動子の駆動実験では,照射光の状能・可動子の形状等を操作して,レーザーモータ駆動に最適な照射レーザーパワー,可動子の光学的材質,形成,サイズ,重さ等の条件について調べ、また,ユバネッセント波を用いた駆動法についても可動子の条件,エバネッセント波の条件について調べた。実現の可能性について考察した。理論計算では,レーザービームによって発生する可動子の駆動力を理論的に予想するための物理モデルを構築し,可動子の形状・材質の入射光の状態等を考慮した数値計算を行なった。さらに,基礎実験および可動子の駆動実験で得られた結果と比較し,構築した物理モデルに考慮されるべき条件について考察した。また,光導波路からのエバネッセント波による可動子の駆動について理論的解析および数値計算を行ない,レーザーマイクロモータを駆動するのに最適な光導波路の設計・理論的評価を行なった。また,レーザーマイクロモータをアッセンブルするための手法としてレーザートラッピング技術を利用した方法について検討し,可能性を調べるための実験を行なった。本研究の目的は,レーザー光の放射圧と用いて,可動子が数μm程度のマイクロモータ(回転モータ,リニアモータ,浮上モータ等)を,非接触・非電力・非媒質で駆動させるための理論を構築し,実際の装置化のための機械機構,光学系,材料などを検討、試作することにある。本年度は,顕微鏡を利用した実験システムを用いて可動子の駆動実験およびレーザーマイクロモータの実現に必要となる条件について調べる理論計算を行なった。可動子の駆動実験では,照射光の状能・可動子の形状等を操作して,レーザーモータ駆動に最適な照射レーザーパワー,可動子の光学的材質,形成,サイズ,重さ等の条件について調べ、また,ユバネッセント波を用いた駆動法についても可動子の条件,エバネッセント波の条件について調べた。実現の可能性について考察した。理論計算では,レーザービームによって発生する可動子の駆動力を理論的に予想するための物理モデルを構築し,可動子の形状・材質の入射光の状態等を考慮した数値計算を行なった。さらに,基礎実験および可動子の駆動実験で得られた結果と比較し,構築した物理モデルに考慮されるべき条件について考察した。また,光導波路からのエバネッセント波による可動子の駆動について理論的解析および数値計算を行ない,レーザーマイクロモータを駆動するのに最適な光導波路の設計・理論的評価を行なった。また,レーザーマイクロモータをアッセンブルするための手法としてレーザートラッピング技術を利用した方法について検討し,可能性を調べるための実験を行なった。本研究の目的は,レ-ザ-光の放射圧を用いて、可動子力数Mm程度のマイクロモ-タ(回転モ-タ、リニアモ-タ、浮上モ-タ等)を、非接触・非電力・非媒質で駆動させるための理論を構築し,実際の装置化のための機械機構、光学系、材料などを検討、試作することにある。光の放射圧でマイクロモ-タを駆動させるためには、レ-ザ-光を非常に効率よく回転力、浮上力などに変換しなければならない。そのために、光の放射圧が発生する機構についての理論的解析及び数値計算を行ない、集光ビ-ムによるトラッピングの効果、ビ-ムの偏光性による回転の効果、ユバネッセント波によるトラッピングとスライディングの効果等について調べる必要がある。理論的解析及び数値計算によって、集光ビ-ムによるトラッピングの効果についてその理論的限界を示し,リング状の集光ビ-ムを用いることによりその限界を越え得ることを示す結果を得た。また、ユバネッセント波による放射圧発生の原理を明らかにし,可動子のスライディング効果・浮上効果があることをも見いだした。そして,光導波路上部に生じるエバネッセント波によっても可動子を駆動可能であることを見いだした。また,落射型光学顕微鏡をベ-スとした、レ-ザ-モ-タ駆動確認のための基礎的システムを試作した。このシステムにおいてはレ-ザ-ビ-ムはガルバノミラ-によって顕微鏡視野内に異なる方向から焦点の位置を走査することができるようにし,また可動子の位置情報や散乱光パタ-ンを検出するための位置センサやビデオカメラシステムを設置した。本試作システムを用いて,エバネッセント波による球状可動子の浮上・移動,円偏光ビ-ムによる円柱モ-タの回転・制止などの基礎的実験を行なえることを確認した。本研究の目的は、レーザー光の放射圧を用いて、可動子が数μm程度のマイクロモータ(回転モータ、リニアモータ、浮上モータ等)を、非接触・非電力・非媒質で駆動させるための理論を構築し、実際の装置化のための機械機構、光学系、材料などを検討、試作することにある。本年度は、顕微鏡を利用した実験システムを用いて可動子の駆動実験およびレーザーマイクロモータの実現に必要となる条件について調べる理論計算を行なった。可動子の駆動実験では、照射光の状態・可動子の形状等を操作して,レーザーモータ駆動に最適な照射レーザーパワー,可動子の光学的材質,形状,サイズ,重さ等の条件について調べた。また,ユバネッセント波を用いた駆動法についても可動子の条件,エバネッセント波の条件について調べ,実現の可能性について考察した。 | KAKENHI-PROJECT-03650351 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03650351 |
レーザービームによる微小モータ駆動に関する研究 | 理論計算では,レーザービームによって発生する可動子の駆動力を理論的に予想するための物理モデルを構築し,可動子の形状・材質,入射光の状態等を考慮した数値計算を行なった。さらに、基礎実験および可動子の駆動実験で得られた結果と比較し,構築した物理モデルに考慮されるべき条件について考察した。また、光導波路からのエバネッセント波による可動子の駆動について理論的解析および数値計算を行ない,レーザーマイクロモータを駆動するのに最適な光導波路の設計・理論的評価を行なった。また、レーザーマイクロモータをアッセンブルするための手法としてレーザートラッピング技術を利用した方法について検討し,可能性を調べるための実験を行なった。 | KAKENHI-PROJECT-03650351 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03650351 |
呼吸器領域における凍結療法の安全性の確立 周囲組織と隣接臓器への影響の実験的検討 | 肺の腫瘍が冠動脈に接している場合、凍結療法中、冠動脈周囲の組織温度も低下することが危惧された。冠動脈自体は十分な血流があるため一般にその壁が凍結されることはないものと考えられるが、周囲組織の温度の低下が血管の攣縮を引き起こすことがないか、今のところ実験データは何一つないのが実情である。そこで本実験では全身麻酔下の仔豚を用いて冠動脈血流量をドップラー装置で測定しながら冠動脈周囲の組織温度を段階的に下げていき、その変化を観察した。心膜に接する肺を凍結すると心膜も凍結するが、心臓は心嚢液を介して心膜と直接接することなく激しく運動しているため心筋が凍結することはなかった。したがって冠動脈周囲の温度は0°C以下にはならないことが示され、またその条件下では電磁流量計を用いて測定したところ冠動脈血流量は変化しなかった。しかし心膜炎の既往のある患者も凍結治療を受ける可能性があるので、更に心筋に直接凍結端子を当てて冠動脈あるいは冠動脈周囲を凍らせる実験も行った。電磁流量型を冠動脈に当てて、冠動脈の滅流量をモニターしながら冠動脈の近傍に凍結用端子を当てて冠動脈周囲を冷やしていくと、冠動脈自体が凍らない限りは、冠動脈流量に変化は無かつた。さらに冠動脈自体に直接凍結用端子を当ると)、冠動脈自体を凍らせることができる。その後融解させると血流は再開し元通り拍動が再開する。このときの血流量も凍結前と比べ減少していなかった。心筋は全体の層の外側1/2が壊死していたが、拍動(壁の運動性)、血圧、脈には影響が見られなかった。肺の腫瘍が冠動脈に接している場合、凍結療法中、冠動脈周囲の組織温度も低下することが危惧された。冠動脈自体は十分な血流があるため一般にその壁が凍結されることはないものと考えられるが、周囲組織の温度の低下が血管の攣縮を引き起こすことがないか、今のところ実験データは何一つないのが実情である。そこで本実験では全身麻酔下の仔豚を用いて冠動脈血流量をドップラー装置で測定しながら冠動脈周囲の組織温度を段階的に下げていき、その変化を観察した。心膜に接する肺を凍結すると心膜も凍結するが、心臓は心嚢液を介して心膜と直接接することなく激しく運動しているため心筋が凍結することはなかった。したがって冠動脈周囲の温度は0°C以下にはならないことが示され、またその条件下では電磁流量計を用いて測定したところ冠動脈血流量は変化しなかった。しかし心膜炎の既往のある患者も凍結治療を受ける可能性があるので、更に心筋に直接凍結端子を当てて冠動脈あるいは冠動脈周囲を凍らせる実験も行った。電磁流量型を冠動脈に当てて、冠動脈の滅流量をモニターしながら冠動脈の近傍に凍結用端子を当てて冠動脈周囲を冷やしていくと、冠動脈自体が凍らない限りは、冠動脈流量に変化は無かつた。さらに冠動脈自体に直接凍結用端子を当ると)、冠動脈自体を凍らせることができる。その後融解させると血流は再開し元通り拍動が再開する。このときの血流量も凍結前と比べ減少していなかった。心筋は全体の層の外側1/2が壊死していたが、拍動(壁の運動性)、血圧、脈には影響が見られなかった。【背景】超高圧アルゴンガスを用いた凍結装置が開発され短時間に端子を中心とした一定範囲を-135°Cまで冷却できるようになった。また3断面表示CTが開発されたことから肺内の小型腫瘍に対し正確に誘導針を刺入し、さらにreal timeに凍結範囲を観察することが可能になった。しかし肺悪性腫瘍に対する局所麻酔下CT透視下cryoablationという極めて低侵襲な局所治療法において隣接する重要臓器への低温の影響などに関する基礎実験はまだほとんど行われていない。食道は内腔側から壁全層が凍結されると穿孔を起こすことが知られている。癒着が無ければ人工気胸を作ることでこの問題は回避できるが、結核等で癒着している場合肺の凍結は連続して食道壁の凍結を引き起こしうる。【目的】食道壁が肺組織を介して冷却を受ける際に、食道壁全層の凍結を回避する方法を確立すること。【方法】体重30kgの仔豚を全身麻酔下に右開胸した。最も影響が強い状況を考え、肺を介さず直接的に食道壁を凍結させた。このとき凍結部の食道内腔温度を測定した。16Frセイラムサンプ胃管を挿入し管内に45°Cの温水を30秒で約50ml注入し循環させた。注入中と注入停止後の測定温度、病理組織を比較し食道壁の凍結の程度を検討した。【結果】凍結開始前、食道内腔温平均35°C。温水注入開始とともに凍結を開始。凍結開始後凍結端子先端温度平均-126°C。食道内腔温1分後平均29.6°C。2分後平均24.8°C。3分後平均22.4°C。ここで注入を停止した。注入停止後、1分後平均15°C。2分後平均13.7°C。病理組織では食道筋層に高度なうっ血が見られたが、粘膜層には明らかな変化は見られなかった。【結語】胃管より45°Cの温水を注入することで20°C以下に下がることは防げた。 | KAKENHI-PROJECT-16591409 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16591409 |
呼吸器領域における凍結療法の安全性の確立 周囲組織と隣接臓器への影響の実験的検討 | また、粘膜層には明らかな変化は見られなかった。胃管の太さや温水還流方法などを今後検討する必要がある。肺腫瘍に対して実臨床に於いてこれまで120例以上の症例に凍結療法を行ってきた。その臨床成績はJ Thorac Cardiovasc Surgにacceptされ2006年掲載予定である。本治療は局所制御力が80%と肺部分切除と遜色ないにもかかわらず、局所麻酔下に施行可能であるため術後在院日数が2.6日と低侵襲であることが特徴である。しかし肺実質を凍結するため近接臓器の冷却を避けることができない。本治療を希望しながら腫瘍の占拠部位が食道や心臓に近接するために適応とならなかった症例は少なくない。そこで本研究では特に低温環境により重篤な合併症を危惧される食道と冠動脈について豚を用いて基礎的実験を行った。全身麻酔下に豚を開胸し、臨床に用いているものと同じ凍結端子を直接食道に当てて食道壁を冷却した。食堂壁は薄いため容易に全層が凍結し壊死に陥った。生存実験を行えば数日後に食道穿孔が発生する状態である。そこで胃管を挿入し胃内に向けて45°Cの温生食を300mlゆっくり注入し、胃が張った状態でこれを吸引する操作(この間ほぼ1分)を食道を冷やしている間中繰り返した。食道内壁の温度は無処置では-130°Cであったものが、この操作により9°Cに保たれた。次に冠動脈の低温による血流の変化を電磁流量計を用いて測定した。現時点では冠動脈の直接凍結のみを実験的に行っているため、凍結により冠動脈は血流が途絶する。しかし凍結を終了すると血流は再開し電磁流量計で計測する限り凍結前の血流量と同じ血流量が得られている。冠動脈の凍結による長期的変化は今後検討する。肺腫瘍に対して実臨床に於いてこれまで150例以上の症例に凍結療法を行ってきた。その臨床成績の一部はJ Thorac Cardiovasc Surg2006;131:1007-13に報告した。本治療は局所制御力が80%と肺部分切除と遜色ないにもかかわらず、局所麻酔下に施行可能であるため術後在院日数が2.6日と低侵襲であることが特徴である。しかし肺実質を凍結するため近接臓器の冷却を避けることができない。本治療を希望しながら腫瘍の占拠部位が食道や心臓に近接するために適応とならなかった症例は少なくない。そこで本研究では特に低温環境により、重篤な合併症を危惧される食道と冠動脈について豚を用いて基礎的実験を行った。全身麻酔下に豚を開胸し、臨床に用いているものと同じ凍結端子を直接食道に当てて食道壁を冷却した。食道壁は薄いため容易に全局が凍結し壊死に陥った。生存実験を行えば数日後に食道穿孔が発生する状態である。そこで胃管をいため容易に全層が凍結し壊死に陥った。生存実験を行えば数日後に食堂穿孔が発生する状態である。そこで胃管を挿入し胃内に向けて45度の温生食を300mlゆっくり注入し、胃が張った状態でこれを吸引する操作(この間ほぼ1分)を食道を冷やしている間中繰り返した。食道内壁の温度は無処置では-130°Cであったものが、この操作により9°Cに保たれ、組織学的な変化は生じなかった。この方法を用いれば臨床的にも食道近傍の肺転移巣に対し凍結療法が可能であることが示唆された。次に冠動脈の低温による影響を豚を用いて観察した。心膜こ接する肺を凍結すると心膜も凍結するが、心臓は心蓑液を介して心膜と直接接することなく激しく運動しているため心筋が凍結することはなかった。 | KAKENHI-PROJECT-16591409 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16591409 |
哺乳類胎仔の in vivo ライブ観察系の確立 | 本研究「哺乳類胎仔のin vivoライブ観察系の確立」は,従来の「培養を介した器官観察法」が抱えていた「1循環系,結合組織の欠如など,三次元性・細胞組成についての問題」,「2観察対象が胎仔全身および母体から隔絶される問題」を克服すべく,二光子顕微鏡を用いて母体と胎盤でつながったままの胎仔に対するライブ観察系を立ち上げることをめざした.胎生14日目マウスの大脳皮質原基のなかのミクログリアが脳膜に向けて移動する様子を世界で初めてとらえた(論文投稿準備中).また,子宮内観察に供した胎仔の出産も達成できた.胎生期の母体炎症が脳発生に及ぼす影響をミクログリア動態に注目して研究する基盤が構築された.発生・器官形成の原理を研究するには,三次元組織における細胞動態をリアルタイム観察できる手法が有用である.脊椎動物のなかでは,従来,ゼブラフィッシュを用いた研究が真の「in vivo」イメージングを行なってきたが,哺乳類では.組織・器官の培養(explant cultureやslice cultureなど)と蛍光標識とを組み合わせることで,「in vivoに準じた立体的・三次元的な環境下」での細胞の生育・挙動の解析が果たされてきた.申請者も,脳の形成の原理を知るための研究に「スライス培養」を役立て,細胞の本来の形態,立体環境中での挙動を明らかにしてきた.しかし「組織・器官の培養」には,循環系,局所的三次元構造,母胎関係など,いくつかの欠落物がある.こうした種々の「欠落」を回避し,母胎連関を含めた環境因子全般の発生・形態形成への関与を研究する上では,「培養」ではない「完全に生理的」と言えるような次世代型イメージング法が求められる.それが「母体とつながったままの胎仔を羊膜越し・子宮壁越しにライブ観察する手法」である.本研究は,二光子顕微鏡を用いて母体と胎盤でつながったままの胎仔に対するライブ観察系を立ち上げる.「1」胎生期での単数回観察,「2」胎生期の経時的複数回観察,「3」胎生期から生後にかけての追跡観察の手法を,順に構築する.初年度は,「1」について,子宮内エレクトロポレーションを介しての細胞標識によって,一定の進捗を得ることができた.また,「2」「3」に関しての問題点あぶり出しが進行中である.研究の成果を次の学会で発表した。第39回日本神経科学大会(横浜市)、第39回日本分子生物学会年会(横浜市)胎生期単回観察については,予備的取り組みでE14-E15大脳原基に対する観察条件の検討してきたが,それをさらに進め,観察深度を増すように改善・至適化した.母体の麻酔後,子宮に対して筋弛緩,卵巣動脈結紮と間膜切断を施したのち,金属性の台座から伸ばしたネジ式の支持板2枚で観察対象の胎仔を含む子宮部位をはさみ付け,粘土で囲ったスペースに寒天を充満・固化させ,さらに上方からカバーガラスで軽く圧迫するという形式で「胎仔支持」を達成した.さらなる観察深度確保のための改善として,羊水の部分除去やカバーガラスによる上方からの押さえの度合い調整を行った.新型の装置(手製)を複数パターン作成し,胎齢や,子宮内ポジションに応じて胎仔保持の仕方を柔軟に変えられるよう,工夫した.また,E12-E13など若い胎齢での観察のためには保持装置を小型化した.子宮内エレクトロポレーション法で標識した脳原基部位を実体顕微鏡で見いだし,それを二光子顕微鏡での観察に供するための諸手続きの流れを確立することができた.このように一定の成果を上げることができた一方で,母体の呼吸や血流など視野揺動の原因の解明と対策に相当な時間を要したことなどの影響で,胎生期複数回観察と,生後にかけての追跡的観察については,遅れ気味であるので,次年度に重点的に取り組む予定である.発生・器官形成の原理を研究するには,三次元組織における細胞動態をリアルタイム観察できる手法が有用である.脊椎動物のなかでは,従来,ゼブラフィッシュを用いた研究が真の「in vivo」イメージングを行なってきたが,哺乳類では.組織・器官の培養(explant cultureやslice cultureなど)と蛍光標識とを組み合わせることで,「in vivoに準じた立体的・三次元的な環境下」での細胞の生育・挙動の解析が果たされてきた.申請者も,脳の形成の原理を知るための研究に「スライス培養」を役立て,細胞の本来の形態,立体環境中での挙動を明らかにしてきた.しかし「組織・器官の培養」には,いくつかの欠落物がある.循環系や脳膜・頭蓋など,脳以外の構造・システムの欠如に加えて,「切断」による本来のタテ成分・ヨコ成分のからみ合いや,越境的な細胞移動などへの影響が避けられない.そこで,こうした種々の「欠落」を回避し,母胎連関を含めた環境因子全般の発生・形態形成への関与を研究する上では,「培養」ではない,「完全に生理的」と言えるような次世代型イメージング法が求められる.それが,「母体とつながったままの胎仔を羊膜越し・子宮壁越しにライブ観察する手法」である.さまざまな試行錯誤を通じて,これまでに,胎生E14日目のトランスジェニックマウスノ大脳原基内ミクログリアの動態(脳原基実質から脳膜への移行など)をとらえることに成功している(複数回の学会発表済み.論文投稿準備中). | KAKENHI-PROJECT-16K15169 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K15169 |
哺乳類胎仔の in vivo ライブ観察系の確立 | また,子宮内電気穿孔法で特定の蛍光蛋白質を発現させた胎生12-13日目の胎仔の脳原基を観察する系の確立にも取り組んできており,さまざまな留意点をあぶり出すことに成功して来ている.本研究の始まる前にはゼロであった技術的な情報を多く得ることができた.また,生体内とスライスで細胞挙動が異なることを関連論文として報告した.本研究「哺乳類胎仔のin vivoライブ観察系の確立」は,従来の「培養を介した器官観察法」が抱えていた「1循環系,結合組織の欠如など,三次元性・細胞組成についての問題」,「2観察対象が胎仔全身および母体から隔絶される問題」を克服すべく,二光子顕微鏡を用いて母体と胎盤でつながったままの胎仔に対するライブ観察系を立ち上げることをめざした.胎生14日目マウスの大脳皮質原基のなかのミクログリアが脳膜に向けて移動する様子を世界で初めてとらえた(論文投稿準備中).また,子宮内観察に供した胎仔の出産も達成できた.胎生期の母体炎症が脳発生に及ぼす影響をミクログリア動態に注目して研究する基盤が構築された.初年度には,「単回」観察を念頭に,まず最大の観察深度・分解能を得ることを念頭に,子宮筋層を切開し,羊膜越しに胎仔観察を行なう方針をとった.今後,複数回観察,生後に向けた追跡をめざす上で,できるだけ子宮筋層を維持したままで胎仔組織内のイメージングが果たせるよう,胎齢ごとに諸条件の検討を行う.具体的には,出産のために原則「子宮壁」は維持する予定であるが,子宮壁の厚い胎生早期中期の観察後に出産をめざす場合など,開窓・再縫合が必要なケースでは「帝王切開→里親による保育」とする.胎生期観察が胎生後期に行なわれる場合には,深部観察のために,胎仔の表皮・皮下組織・頭蓋骨原基(膜状構造)をいったん「flap」として開いてからまた戻す(表皮部を生体ボンドで接着)という方法をとる.また,胎生後期には,表皮・皮下結合組織の肥厚,頭蓋の軟骨細胞分化から骨化という「脳原基に対する深部観察にとって妨げとなり得る要因」が増す(予備実験結果).そこで「胎生後期2回目観察」時には子宮の開窓と羊膜除去でのライブ観察とし,それで不十分な場合は,胎仔の表皮・皮下組織・頭蓋骨原基(膜状構造)の除去を検討する.脳発生研究実施によって浮き彫りになった胎齢に応じた胎仔の脆弱性,母体の呼吸,循環・拍動などによる視野揺動の困難さなどへの対処のために,初年度は,当初の計画よりもやや基本的な諸条件の検討に時間を要した.このため,比較的高価な試薬類を用いて長時間にわたって行なう事が想定されていた複合的な実験群を次年度で実施する事となった.そこで,そうした解析群に関しての予算使用が初年度から次年度へと持ち越しとなった.初年度に行なった胎生期単回観察実績に立脚し,初年度はほぼ実施できなかった複数回観察,生後への追跡的観察をめざす.それにあたり,子宮筋層や胎仔の結合組織に対するさまざまな微小外科的模索の実施機会を多く確保する.このために初年度ある程度控え気味となったマウス購入を多めにし,諸条件の検討が充分にできるようにする.加えて,追跡的な長時間観察を充分に行なう予定である.こうした長時間観察の増加により,共同利用施設の使用料が,初年以上に多く必要となる事が見込まれる.また,技術補佐員による観察および画像情報の処理・とりまとめ等の補助を見込んでいる. | KAKENHI-PROJECT-16K15169 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K15169 |
長距離走者の赤血球膜脂質について | 毛細血管内を非常に速い速度で通過する赤血球(RBC)には変形能がある。その形と赤血球膜脂質との間にはphosphatidylcholine (PC)を中心とした脂質組成の違いがある。運動ではこれらの現象がさらに要求される。持久性トレーニングではその頻度,持続時間,血液中の代謝的変化などが赤血球膜脂質の量的・質的変化を起し,末梢血管抵抗,血液粘性,さらには最大酸素摂取量へ関係が考えられる。本研究では対照者群(n=10,男性,18.5±3.5才)と長距離走者群(n=11,男性,18.8±0.8才)のRBC膜脂質を比較し,その違いを検討した。それぞれのRBCをghoast cellsとし蛋白をBradford法で定量し,Folchたちの方法で得た脂質を薄層クロマトグラフィーで分離後,それぞれの脂肪酸をガスクロマトグラフィーで分析・定量した。総脂肪量並びにcholesterol量には全く差異はなかった。phosphatidylethanolamine (PE)は有意に低下し(p<0.05),パルチミン酸(C16),ステアリン酸(C18),リノール酸(C18: 2),メバロン酸(C24: 1)に有意な上昇がおき(それぞれp<0.05),アラキドン酸(C20: 4)には有意な低下が認められた(p<0.05)。ラットの遊泳トレーニングで得たmethyltransferase IとIIの亢進によるPEの低下とPCの増加が期待されたが,長距離走者群のRBC膜PCには量的にも質的にも変化はなかった。しかしsphyngomyeline (SM)に有意な増加が生じ(p<0.05),脂肪酸組成でもC16, C24: 1の増加,C18, C20: 4の減少がそれぞれ有意に認められた(p<0.05)。SMの量的・質的変化はセラミドとPCを介したsphyngomyelinase活性の亢進を意味し,長距離走者のRBCではmethyltransferase I, IIと-sphyngomyelinase活性の亢進が考えられた。そしてこれらの活性亢進の背景には,持久性トレーニング初期にはmethyltransferase I, IIを介したPE-PC関係,後期にはsphyngomyelinaseを介したPC-SM関係が区分されると考えられる。毛細血管内を非常に速い速度で通過する赤血球(RBC)には変形能がある。その形と赤血球膜脂質との間にはphosphatidylcholine (PC)を中心とした脂質組成の違いがある。運動ではこれらの現象がさらに要求される。持久性トレーニングではその頻度,持続時間,血液中の代謝的変化などが赤血球膜脂質の量的・質的変化を起し,末梢血管抵抗,血液粘性,さらには最大酸素摂取量へ関係が考えられる。本研究では対照者群(n=10,男性,18.5±3.5才)と長距離走者群(n=11,男性,18.8±0.8才)のRBC膜脂質を比較し,その違いを検討した。それぞれのRBCをghoast cellsとし蛋白をBradford法で定量し,Folchたちの方法で得た脂質を薄層クロマトグラフィーで分離後,それぞれの脂肪酸をガスクロマトグラフィーで分析・定量した。総脂肪量並びにcholesterol量には全く差異はなかった。phosphatidylethanolamine (PE)は有意に低下し(p<0.05),パルチミン酸(C16),ステアリン酸(C18),リノール酸(C18: 2),メバロン酸(C24: 1)に有意な上昇がおき(それぞれp<0.05),アラキドン酸(C20: 4)には有意な低下が認められた(p<0.05)。ラットの遊泳トレーニングで得たmethyltransferase IとIIの亢進によるPEの低下とPCの増加が期待されたが,長距離走者群のRBC膜PCには量的にも質的にも変化はなかった。しかしsphyngomyeline (SM)に有意な増加が生じ(p<0.05),脂肪酸組成でもC16, C24: 1の増加,C18, C20: 4の減少がそれぞれ有意に認められた(p<0.05)。SMの量的・質的変化はセラミドとPCを介したsphyngomyelinase活性の亢進を意味し,長距離走者のRBCではmethyltransferase I, IIと-sphyngomyelinase活性の亢進が考えられた。そしてこれらの活性亢進の背景には,持久性トレーニング初期にはmethyltransferase I, IIを介したPE-PC関係,後期にはsphyngomyelinaseを介したPC-SM関係が区分されると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-07680141 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07680141 |
両次大戦間期におけるカール・クラウスの文芸批評と時代批判 | カール・クラウスは「文芸劇場」で独特の演劇的パフォーマンスを展開した。彼はまた腐敗したマスメディアを批判し、特にその代表はウィーンの「新自由新聞」である。彼は「時代の精神」に対し断固として反対しており、これは好戦的なファシズム(ムソリーニの場合)に、あるいはナチズム(ヒトラーの場合)に向かっていく傾向を見せる時代への批判であった。この抵抗の精神こそ、クラウスが何故に批判的知識人たちの中で、ある種の国際的名声を勝ち得たかの証左である。カール・クラウスは「文芸劇場」で独特の演劇的パフォーマンスを展開した。彼はまた腐敗したマスメディアを批判し、特にその代表はウィーンの「新自由新聞」である。彼は「時代の精神」に対し断固として反対しており、これは好戦的なファシズム(ムソリーニの場合)に、あるいはナチズム(ヒトラーの場合)に向かっていく傾向を見せる時代への批判であった。この抵抗の精神こそ、クラウスが何故に批判的知識人たちの中で、ある種の国際的名声を勝ち得たかの証左である。今年度のカール・クラウス研究では、クラウスが自らさまざまな論考や演劇作品、詩を寄稿し、さらに編集、発刊した「FACKEL」を集中して読み、彼の時代批判と文芸批評の全体をよく理解することができた。特にクラウスの時代批判に注目して、彼が第一次世界大戦を批判することで書き上げた「人類最後の日々」に注目し、当時のマスメディア(大新聞)と戦争賛美者・戦争加担者の癒着関係を詳細に分析できたことは、今年度の研究成果である。クラウスが最も批判したのはウィーンの大新聞である「Neue Freie Presse(新自由新報)」であり、その戦争賛美に満ちているさまざまな記事を載せることでセンセーションを巻き起こし、販売部数を驚異的に増やしていったビジネス路線がクラウスの批評精神によってどのように表現されているかを、丹念に彼の作品と政治的エッセーを読み、その内容を分析することで理解することができた。この成果は23年度執筆予定の論文で発表する。クラウスを対象とする23年度の研究では、今年得られた知見を基軸に、その細部につき理解を深める予定である。さらに今年度は、クラウスの生きた両次大戦間期が当時の文学者にどのように受容され、その作品にどのように表現されているかに注目して、後期の「ロスト・ジェネレーション」ともいうべきハイナー・ミュラーやミロ・ドールの批判精神を考察した。引き続き、彼らの戦争批判が文学作品で、どのように表現されているかを、23年度には精力的に研究する。今年度のカール・クラウスの研究では、前年度に集中して研究したクラウスの時代批判を踏まえ、彼の戦争批判とマスメディアへの批判を特に掘り下げて研究した。その成果として、日本独文学会の機関誌「ドイツ文学」(国際版第10巻)に寄稿した論文で、クラウスはその初期・中期の作品の中で、すでに「戦争」を取り上げ、戦争を緻密に分析し、大作『人類最後の日々』及び『第3のワルプルギスの夜』に至るまで、首尾一貫してあらゆる形態の戦争を批判していることを跡づけ、彼の「平和主義者」の面目を論証した。彼の戦争批判にあっては、当時の大新聞に代表されるマスメディアが扇情的に戦争を賛美する論調に陥っていることをクラウスは鋭く指摘し、この意味でも彼の戦争批判は現代に通じる価値を持っていることも論証づけた。このテーマに関しては、今年度はオーストリア・ウィーンに出張し、従来孤立した猜介固随の評論家と思われていたクラウスは文学論争にとどまらず、戦争批判に関しても、アルフレート・ケルなどの敵対者だけでなく、ベルトルト・ブレヒトなど盟友を見出し、プラハ、パリ、ベルリンへの「講演・朗読」の旅行で国外にまで広く影響を及ぼしたことを調査できたが、これも今年度の研究の成果であった。さらに今年度はクラウスの批判精神の淵源の一部をなす「オーストリアの啓蒙主義」にも着目し、ドイツとオーストリアで18世紀に隆盛をみた「啓蒙文化運動」に着目して、その肯定的側面と否定的側面を「ドイツ・オーストリア精神史」の観点で考察し、その現代にまで通じる批判精神の発祥をさまざまな観点から考察できたことは当該研究の重要な成果である。この研究はさらに継続して行われる予定で、平成24年度の研究では「批判的啓蒙の精神」が21世紀の今日まで持続している、その文化の流れを跡づける予定である。カール・クラウスの政治および文化に対する批判は多岐にわたっているが、特に当時の最大のウィーンの新聞『新自由新聞』に代表される文化の腐敗をクラウスは個々の記事に即して剔抉しており、私の研究ではその批判内容を具体的な批判の対象を詳しく調べ、成果としてクラウスの批判精神を精緻に検証し解明することができた。さらに、当時のマスメディアが煽り立て、批判的知識人たちが同様の傾向を見せて助長した、戦争へと向かう「時代の傾向」をクラウスが的確に把握していたことも当該研究は論証し、クラウスの政治批判を詳細に論証できた。当該研究では特にクラウスの有する文筆の力による批判精神と演劇的パフォーマンスの実践に着目し、彼が独自の「文芸劇場」という芸術表出形態を創造したことに着目し、彼の批判力の内実と、広くヨーロッパ演劇復興(特にオッフェンバッハ、シェークスピア、ネストロイ三名の劇作家の新解釈)の試みとを跡付けることができた。 | KAKENHI-PROJECT-22520339 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22520339 |
両次大戦間期におけるカール・クラウスの文芸批評と時代批判 | 従来の研究では偏狭固陋の「論争人間」としてクラウスはむしろ否定的に扱われてきたが、当研究ではクラウスの持つ「土着性」と「国際性」を見出し(ヨーロッパ演劇の再発見)、彼がヨーロッパの政治と文化の領域で、各地域、各文化圏を互いに交流させる「文化的架橋」の役割を果たそうとした試みも詳細に論じることができた。たとえば『二都市について』など一連の評論活動で、クラウスはベルリンとウィーンを対比し、オーストリアとドイツという国家の特質と国民性を「比較文化論」の形で論じており、彼の考察の射程は往々にしてヨーロッパ全域にわたっていることも確認し、そこから当論考は、クラウスの自らへの批判的内省をも含め、その客観的複眼思考を理解し、彼の分析力の鋭さも詳しく論じることができた。カール・クラウスの戦争批判とマスメディア批判は今年度までの研究で詳細に論証でき、当初目的とした研究は達成できた。しかし「研究の目的」の一つに挙げた総体的研究、つまりクラウスの言語観から出発して、彼の「政治・社会」と「文芸・文化」に対する批判については、この二項を有機的な相互関連の形でまとめるところまで研究は進渉していないので、当該研究は「やや遅れている」段階にある。24年度が最終年度であるため、記入しない。特に当時の「政治・社会」に対するクラウスの批判についてはこれまでの二年間の研究では不十分なところがあったので、この側面でのクラウスの批判精神を最終研究年度では集中して考察する予定である。この研究のため、クラウスがウィーンを中心とする祖国オーストリアを、客観的に冷静に批判できる端緒となった外国への講演旅行に注目し、彼がどのように外側から見たオーストリアの「政治・社会」を検証しているかを、今年度の考察の重要課題とする。具体的には、ベルリンとウィーンを比較する形でクラウスはドイツとオーストリアを比較検証しており、研究方法として今年度はクラウスのベルリンでの「講演・朗読活動」及び同地でのドイツの知識人との連帯を調査するため、ベルリンへの研究のための出張も考慮している。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22520339 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22520339 |
植物の時計細胞ネットワークに生じたスパイラルパターンのマルチスケール解析 | 独自の研究成果である「植物にスパイラルパターンを発生させる技術」を応用して、複雑な植物細胞ネットワーク上にスパイラルパターンを発生させ、そのスパイラルパターンを器官、組織、細胞レベルのマルチスケールで解析し、スパイラルの中心にある位相特異点で細胞機能が自己崩壊するメカニズムを解明することを試みる。そして、そのメカニズムを利用した新たな細胞機能制御技術についての考察を行う。本年度の研究結果は以下のとおりである。1.前年度に引き続き、実験サンプル・実験条件の最適化、実験装置の調整を行った。特に、スパイラルパターンを発生させるための細胞リズムの光制御システムの改良を行い、より高精度でスパイラルを発生させる実験システムの開発を行った。2.実験と同時並行で、葉におけるスパイラルパターンのコンピュータ・シミュレーションを行った。特に、サーカディアンリズムの振幅に着目した解析を行い、葉脈による細胞ネットワークの複雑性、不均一性、非局所結合性について調べた。また、スパイラル対消滅のダイナミクスの解析を行った。その他、葉脈ネットワークに関連する研究項目としては、実際の葉脈の写真画像から葉脈パターンを抽出し、それをシミュレーションに利用するためのプログラム開発を行い、実際の実験データとの比較検討を可能とするシミュレーション環境を整えた。さらに、細胞レベルのダイナミクスを解析するために、分子モデルを用いたシミュレーショシに関する考察も行った。世界でも例を見ない独自の研究成果である「植物にスパイラルパターンを発生させる技術」を応用して、複雑な植物細胞ネットワーク上にスパイラルパターンを発生させ、そのスパイラルパターンを器官、組織、細胞レベルのマルチスケールで解析し、スパイラルの中心にある位相特異点で細胞機能が自己崩壊するメカニズムを解明することを試みる。そして、そのメカニズムを利用した新たな細胞機能制御技術についての考察を行う。本年度の研究結果は以下のとおりである。1.実験サンプル・実験条件の最適化、実験装置の調整を行った。実験サンプルが長期間に渡って安定な活性を保つように、サンプル調整方法の改良を行った。また、スパイラルパターンを発生させるための実験システムの改良を行った。これらの改良により、スパイラルパターンの実験精度が向上した。2.実験と同時並行で、葉におけるスパイラルパターンのコンピュータ・シミュレーションを行った。特に、サーカディアンリズムの振幅に着目した解析を行い、スパイラルパターンのコア近傍で極度にリズムの振幅が減衰している様子や、葉脈上の細胞で振幅が減衰している様子を明らかにした。cmスケールにおけるパターン解析(器官レベルの同期現象、位相波の伝播、ならびに葉脈による位相遅れ効果)を解析するための準備ができた。また、mmスケールにおけるスパイラル・コアの構造およびμmスケールにおける細胞リズムの解析に必要な予備データを得ることができた。独自の研究成果である「植物にスパイラルパターンを発生させる技術」を応用して、複雑な植物細胞ネットワーク上にスパイラルパターンを発生させ、そのスパイラルパターンを器官、組織、細胞レベルのマルチスケールで解析し、スパイラルの中心にある位相特異点で細胞機能が自己崩壊するメカニズムを解明することを試みる。そして、そのメカニズムを利用した新たな細胞機能制御技術についての考察を行う。本年度の研究結果は以下のとおりである。1.前年度に引き続き、実験サンプル・実験条件の最適化、実験装置の調整を行った。特に、スパイラルパターンを発生させるための細胞リズムの光制御システムの改良を行い、より高精度でスパイラルを発生させる実験システムの開発を行った。2.実験と同時並行で、葉におけるスパイラルパターンのコンピュータ・シミュレーションを行った。特に、サーカディアンリズムの振幅に着目した解析を行い、葉脈による細胞ネットワークの複雑性、不均一性、非局所結合性について調べた。また、スパイラル対消滅のダイナミクスの解析を行った。その他、葉脈ネットワークに関連する研究項目としては、実際の葉脈の写真画像から葉脈パターンを抽出し、それをシミュレーションに利用するためのプログラム開発を行い、実際の実験データとの比較検討を可能とするシミュレーション環境を整えた。さらに、細胞レベルのダイナミクスを解析するために、分子モデルを用いたシミュレーショシに関する考察も行った。 | KAKENHI-PROJECT-20034049 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20034049 |
次世代ネットワークにおける光バースト交換とCACに関する研究 | インターネットサービスの多様化に伴い,基幹ネットワークのトラピックが爆発的に増大しており,高速・大容量な伝送技術および,サービス対応の品質制御技術が必要となっている.高速・大容量な伝送技術として,光バースト交換が注目されている.しかし光バースト交換は,バースト信号生成のための待機遅延と,経路資源予約のための待機遅延が発生する.これら2つの待機遅延がIPパケットの転送遅延を増大させる.この問題に対して,「バースト信号生成待機期間」と「経路資源の予約待機期間」を重畳させる方式が提案されているが,経路資源予約パケットの必須情報であるバースト信号長情報を推定する必要が生じる.そこで,バースト信号長推定方式として,BEJ(Burst length Estimation using Jacobson/Karels)を新たに提案し,評価実験により提案方式の有効性を示した.また,光バースト交換における品質制御技術として,FDL(Fiber Delay Line)を用いた棄却品質制御技術が研究されている.しかし,FDLを用いると遅延の増大を招く問題が発生する.そこで,新たにFDLスケジューリングアルゴリズムを提案し,評価実験により提案方式の有効性を示した.さらに,サービス対応の品質制御技術では,ネットワーク内部での輻較を回避しつつ,収容トラピックを最大化するために,入口ノードでの入力トラピックの制限率を最適化するCAC_ITL(Call Admission Control by Input Traffic Limitation)方式の提案を行った.CAC_ITL方式では,任意の交流トラピックを対象としており,交流トラピックが既知の場合と比較し,収容トラピック量の最大化に限界があった.このため,一部の交流トラピックが既知とする定式化を行い,その有効性を明らかにするとともに,観測するトラピックの選択法を明らかにした.今後の研究課題としては,光バースト交換方式においてBEJ方式とFDLスケジューリングアルコリズムの両万を適応した場合での有効性の評価がある.評価結果に応じて,提案手法を改良する必要がある.また,光バースト交換方式とCAC_ITL方式を統合し,品質制御技術を確立する必要がる.インターネットサービスの多様化に伴い,基幹ネットワークのトラピックが爆発的に増大しており,高速・大容量な伝送技術および,サービス対応の品質制御技術が必要となっている.高速・大容量な伝送技術として,光バースト交換が注目されている.しかし光バースト交換は,バースト信号生成のための待機遅延と,経路資源予約のための待機遅延が発生する.これら2つの待機遅延がIPパケットの転送遅延を増大させる.この問題に対して,「バースト信号生成待機期間」と「経路資源の予約待機期間」を重畳させる方式が提案されているが,経路資源予約パケットの必須情報であるバースト信号長情報を推定する必要が生じる.そこで,バースト信号長推定方式として,BEJ(Burst length Estimation using Jacobson/Karels)を新たに提案し,評価実験により提案方式の有効性を示した.また,光バースト交換における品質制御技術として,FDL(Fiber Delay Line)を用いた棄却品質制御技術が研究されている.しかし,FDLを用いると遅延の増大を招く問題が発生する.そこで,新たにFDLスケジューリングアルゴリズムを提案し,評価実験により提案方式の有効性を示した.さらに,サービス対応の品質制御技術では,ネットワーク内部での輻較を回避しつつ,収容トラピックを最大化するために,入口ノードでの入力トラピックの制限率を最適化するCAC_ITL(Call Admission Control by Input Traffic Limitation)方式の提案を行った.CAC_ITL方式では,任意の交流トラピックを対象としており,交流トラピックが既知の場合と比較し,収容トラピック量の最大化に限界があった.このため,一部の交流トラピックが既知とする定式化を行い,その有効性を明らかにするとともに,観測するトラピックの選択法を明らかにした.今後の研究課題としては,光バースト交換方式においてBEJ方式とFDLスケジューリングアルコリズムの両万を適応した場合での有効性の評価がある.評価結果に応じて,提案手法を改良する必要がある.また,光バースト交換方式とCAC_ITL方式を統合し,品質制御技術を確立する必要がる. | KAKENHI-PROJECT-11J06602 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J06602 |
新領域強結合プラズマの物性 | 粒子間のクーロン相互作用エネルギーの熱運動エネルギーに対する比(=Γ)が大きいプラズマは強結合プラズマと呼ばれ、自然界では木星や白色矮星の内部、中性子星の外郭に存在するとされているが、実験室での強結合プラズマの実現は極端な高密度や低温のプラズマが必要とされるため困難とされていた。この研究の目的は荷電量の非常に大きな金属粒子を生成し閉じ込めることによって、これまで得られなかったような高いΓの強結合プラズマを実現し、この強結合プラズマを利用して、プラズマが気体、液体、固体と相転移していく過程でのプラズマの集団効果を研究しプラズマ物理の新しい分野を開拓することにある。研究の成果は次のような項目に要約される。(1)金属粒子に大きな荷電を帯電させ、これを閉じ込める方式および、金属粒子の熱運動を外部制御する方法の確立。(Γ値の外部制御)(2)Γ値の大きな金属粒子(一成分プラズマ)の基本的な物性が調べられた。(1)については、高電圧が印加されたシリコン単結晶板に粒径のそろった金属粒子(直径1mm前後)を乗せ、電子の10^8倍程度の電荷量をもつ一成分プラズマを模擬した系を作った。これらは重力と静電場によって2次元的に安定に閉じ込められている。さらにこのシリコン板下部より音波によって粒子に振動を与えた。画像として撮った粒子の軌跡の解析より振動は熱運動と等価的であり、Γ値は約2000まで制御できることが分かった。(2)この方法によってΓを変化させた時、Γが数百の時に2次元状の三角格子状の結晶化が起こることが観測された。この相転移のΓ値は理論的に予測されている値に近く、プラズマの結晶転移が実現された。またΓ値の高い液体領域で金属粒子密度の時間および空間的な揺らぎが観測され、波数、周波数スペクトルの解析を行い、これらと理論的に予想されている2次元強結合プラズマの静電プラズマ波の分散との比較を進めている。これによって強結合プラズマの波動の実験的検証が可能になりつつあり、これらの成果は現在論文にまとめられつつある。粒子間のクーロン相互作用エネルギーの熱運動エネルギーに対する比(=Γ)が大きいプラズマは強結合プラズマと呼ばれ、自然界では木星や白色矮星の内部、中性子星の外郭に存在するとされているが、実験室での強結合プラズマの実現は極端な高密度や低温のプラズマが必要とされるため困難とされていた。この研究の目的は荷電量の非常に大きな金属粒子を生成し閉じ込めることによって、これまで得られなかったような高いΓの強結合プラズマを実現し、この強結合プラズマを利用して、プラズマが気体、液体、固体と相転移していく過程でのプラズマの集団効果を研究しプラズマ物理の新しい分野を開拓することにある。研究の成果は次のような項目に要約される。(1)金属粒子に大きな荷電を帯電させ、これを閉じ込める方式および、金属粒子の熱運動を外部制御する方法の確立。(Γ値の外部制御)(2)Γ値の大きな金属粒子(一成分プラズマ)の基本的な物性が調べられた。(1)については、高電圧が印加されたシリコン単結晶板に粒径のそろった金属粒子(直径1mm前後)を乗せ、電子の10^8倍程度の電荷量をもつ一成分プラズマを模擬した系を作った。これらは重力と静電場によって2次元的に安定に閉じ込められている。さらにこのシリコン板下部より音波によって粒子に振動を与えた。画像として撮った粒子の軌跡の解析より振動は熱運動と等価的であり、Γ値は約2000まで制御できることが分かった。(2)この方法によってΓを変化させた時、Γが数百の時に2次元状の三角格子状の結晶化が起こることが観測された。この相転移のΓ値は理論的に予測されている値に近く、プラズマの結晶転移が実現された。またΓ値の高い液体領域で金属粒子密度の時間および空間的な揺らぎが観測され、波数、周波数スペクトルの解析を行い、これらと理論的に予想されている2次元強結合プラズマの静電プラズマ波の分散との比較を進めている。これによって強結合プラズマの波動の実験的検証が可能になりつつあり、これらの成果は現在論文にまとめられつつある。粒子間のクーロン相互作用エネルギーの熱運動エネルギーに対する比(=Γ)が大きいプラズマは強結合プラズマと呼ばれ、自然界では木星や白色矮星の内部、中性子星の外郭に存在するとされているが、実験室での強結合プラズマの実現は極端な高密度や低温のプラズマが必要とされるため困難とされていた。この研究の目的は荷電量の非常に大きな微粒子を生成し閉じ込めることによって、これまで得られなかったような高いΓの強結合プラズマを実現し、この強結合プラズマを利用して、プラズマが気体、液体、固体と相転移していく過程でのプラズマの集団効果を研究しプラズマ物理の新しい分野を開拓することにある。平成5年度の研究では(1)微粒子に大きな荷電を帯電させ、これを閉じ込め、(2)微粒子の熱運動を外部制御することによってΓを変化させる方法を確立し、(3)大きなΓ値で微粒子(プラズマ)の結晶化がおこる可能性を確かめることに重点がおかれた。(1)については粒径のそろった金属粒子(この実験では比較的大きな直径1mm前後の粒子が予備実験として用いられた。)などを用い、変形された高電圧電極上で帯電し、電荷量の計測によって電子の10^8倍の電荷量をもつ粒子が重力と静電場によって安定に閉じ込められていることが確かめられた。 | KAKENHI-PROJECT-05680390 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05680390 |
新領域強結合プラズマの物性 | (2)次にこの粒子に、音波によってランダムな振動エネルギーを与えることによって粒子の等価的な熱運動を制御し、粒子間のクーロン相互作用のエネルギーの熱運動エネルギーに対する比が広範囲に変えられ、1000を越える大きなΓが得られるが分かった。(3)この方法によってΓを変化させた時、Γが数百の時に2次元状の三角格子状の結晶化が起こることが観測された。この相転移のΓ値は理論的に予測されている値に近く、巨視的なプラズマイオンの結晶転移が実現された。(これらの詳細な結果は平成6年度にまとめられ論文化される予定である。)平成6年度の研究では、帯電金属粒子を使った2次元-成分強結合プラズマのΓ値、密度揺動の計測と解析法の開発が行われた。シリコン単結晶板に高電圧を印加し、粒径のそろった金属粒子(直径1mm前後)をこの上に乗せ、大電荷量をもつ-成分プラズマを模擬した系を作った。粒子の電荷量は、重力と静電場の釣り合いを利用して正確に計測された。また粒子の運動をビデオを使って画像として撮り、これを計算機に取り込み粒子の位置を1/30秒ごとに計算する方式を開発した。これによる粒子軌跡の解析より粒子の速度分布関数が求められ、粒子の振動運動ははマックスエル分布を持った熱運動と等価的であり、Γ値が計算された。この系ではΓ値は約2000まで制御できることが分かった。金属粒子密度を変化させ、温度を計測し、Γ値を変えていった実験により、Γ値が300(粒子の回転運動も熱運動として考慮するとこのΓ値は214となる)で6方晶形の結晶化が起こることが観測され、このような系で2次元-成分強結合プラズマの相転移が模擬出来ることが始めて示された。また粒子の存在する領域をメッシュに切り、各セルの中の粒子を計算することによって密度の空間分布が求められ、密度の空間的、及び時間的な揺動の計測が行われた。強結合プラズマの物性はその集団現象の観測によって明らかにされることが理論で予想されており、密度揺動のスペクトルは重要な物理課程を含んでいるとされている。実験ではΓ値の高い液体領域で金属粒子密度の時間および空間的な揺らぎが観測され、波数、周波数スペクトルの解析を行い、これらと理論的に予想されている2次元強結合プラズマの静電プラズマ波の分散との比較が行われた。 | KAKENHI-PROJECT-05680390 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05680390 |
行政裁量論の憲法的考察-電気通信法をめぐるドイツの最近の議論動向を中心に- | 〈研究の目的〉本研究の課題は、従来はもっぱら行政法において議論されてきた行政裁量を、憲法的観点から捉え直すことにある。前年度は、行政法が憲法との関係で常に論じられてきたドイツ法を参照しつつ、行政裁量の理論的な再構成を試みた。今年度は、ドイツにおいて近時盛んに論じられている「規制裁量(Regulierungsermessen)」の問題を取り上げて、電気通信法という具体的法領域において行政裁量がどのように扱われているかを明らかにするとともに、そこで提示されている新理論が憲法との関係でどのように評価されているかを調査し、日本法への示唆を得ることとした。〈研究の実施〉関連する文献・判例を収集し読み進める傍ら、環境訴訟に関する学会「グリーンアクセスの実効的保障をめざして」に参加し、ドイツの裁判官の行政裁量に関する講演を聞き、実務の実態について質問する機会を得た。また8月末より渡独し、新たに出版された電気通信法のコンメンタール等の文献を収集した。その後、行政法の研究者に積極的にコンタクトをとり、日本国内における電気通信に関する文献についての情報を得るとともに、これまでの研究を論文にまとめる作業を行った。〈研究の意義〉以上の研究により、ドイツ電気通信法において「規制裁量」と呼ばれる行政裁量が比較的容易に認められている背景には、連邦ネットワーク庁というネットワーク産業の規制を行う特別の機関の形成、およびEUの立法(EU指令)やEU諸国の国内規制機関から成る組織(GEREK)の形成がある、ということが明らかになった。また「規制裁量」をめぐっては、それに賛同する意見に劣らず多くの懸念が表明されており、少なくとも「規制裁量」の射程は、電気通信法等の一部の法律に限られ、従来の理論に取って代わるものではないということも判明した。当初の計画に従って順調に文献等を収集することができ、この点については予想以上に研究が進展した。しかし、その分研究内容をまとめるのに苦労し、雑誌に論文を掲載するという目標を達成するには至らなかった。(抄録なし)1.行政裁量の憲法的考察平成24年度は主に行政裁量の理論的側面について、特に憲法との関係を中心に研究を行った。その成果として、まず平成24年7月25年3月にかけて阪大法学誌上に「ドイツ行政裁量論における憲法の構造理解とその変遷一行政に対する司法の地位に関する一考察一」と題する論文を発表した。ここでは、行政法を憲法との関係において自覚的に発展させてきた戦後のドイツ法を手掛かりに、行政裁量は憲法的観点からどのように位置づけられるか、特に行政に対する司法の地位という点から行政裁量論はどのように構成されるべきかを論じた。その後、同論文の内容をこれまでの研究成果と併せて要約し、平成25年3月に京都大学で開催された第15回ドイツ法フォーラムにおいて「行政裁量論の日独比較一法理論的・憲法学的考察の意義と可能性一」と題する報告を行った。ここでは、法理論と憲法学という行政裁量論を考察するための2つの視点を設定し、それらを巡るドイツの学説の流れを整理して、日本法への示唆を検討した。2.ドイツ電気通信法における規制裁量論の展開さらに、平成25年度に実施予定である特定法分野における行政裁量論の具体的展開についても、研究の足がかりを得ることができた。まず、平成24年8月9月に渡独した際、電気通信法分野において展開されている新たな行政裁量論の動向、すなわち規制裁量を巡る議論について、研究者から聞き取り調査を行うとともに、関連する文献の収集を行った。その後、調査の内容を1.で行った戦後の行政裁量論の発展と関連付けながらまとめて、平成25年3月に提出した博士論文の一部として執筆した。この部分は、平成25年7月に阪大法学誌上にて公表される予定である。〈研究の目的〉本研究の課題は、従来はもっぱら行政法において議論されてきた行政裁量を、憲法的観点から捉え直すことにある。前年度は、行政法が憲法との関係で常に論じられてきたドイツ法を参照しつつ、行政裁量の理論的な再構成を試みた。今年度は、ドイツにおいて近時盛んに論じられている「規制裁量(Regulierungsermessen)」の問題を取り上げて、電気通信法という具体的法領域において行政裁量がどのように扱われているかを明らかにするとともに、そこで提示されている新理論が憲法との関係でどのように評価されているかを調査し、日本法への示唆を得ることとした。〈研究の実施〉関連する文献・判例を収集し読み進める傍ら、環境訴訟に関する学会「グリーンアクセスの実効的保障をめざして」に参加し、ドイツの裁判官の行政裁量に関する講演を聞き、実務の実態について質問する機会を得た。また8月末より渡独し、新たに出版された電気通信法のコンメンタール等の文献を収集した。その後、行政法の研究者に積極的にコンタクトをとり、日本国内における電気通信に関する文献についての情報を得るとともに、これまでの研究を論文にまとめる作業を行った。〈研究の意義〉以上の研究により、ドイツ電気通信法において「規制裁量」と呼ばれる行政裁量が比較的容易に認められている背景には、連邦ネットワーク庁というネットワーク産業の規制を行う特別の機関の形成、およびEUの立法(EU指令)やEU諸国の国内規制機関から成る組織(GEREK)の形成がある、ということが明らかになった。また「規制裁量」をめぐっては、それに賛同する意見に劣らず多くの懸念が表明されており、少なくとも「規制裁量」の射程は、電気通信法等の一部の法律に限られ、従来の理論に取って代わるものではないということも判明した。 | KAKENHI-PROJECT-12J02050 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12J02050 |
行政裁量論の憲法的考察-電気通信法をめぐるドイツの最近の議論動向を中心に- | 平成24年度の主たる研究課題であった行政裁量と憲法との関係については、ドイツ法を参照にその構造を明らかにすることができ、一定の成果が得られたといえよう。また、平成25年度の研究課題であるドイツ電気通信法における行政裁量論の具体的展開についても、概観を得ることができた。しかし、当初予定していたドイツの比較憲法雑誌への論文の公表は、阪大法学への論文連載中に改善点を見つけたため、平成25年度の課題としてこれを見送ることとした。当初の計画に従って順調に文献等を収集することができ、この点については予想以上に研究が進展した。しかし、その分研究内容をまとめるのに苦労し、雑誌に論文を掲載するという目標を達成するには至らなかった。1.阪大法学への論文の公表ドイツの規制裁量をめぐる論争を整理し、7月の公表に向けて論文を修正する。2.ドイツの雑誌(VRU)への論文の公表平成24年度の成果を踏まえつつ、行政裁量の日独比較に関する論文をドイツの比較憲法雑誌に公表する。9月に渡独し、修正・編集作業を行う。3.判例評釈の公表これまでの理論的成果に基づいて、行政裁量に関する判例の具体的分析を行い、阪大法学誌上に公表する。(抄録なし) | KAKENHI-PROJECT-12J02050 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12J02050 |
セラミックス水系サスペンションの電気泳動堆積における無気泡固化成形技術の確立 | セラミックス水系サスペンションの電気泳動堆積プロセスにおいて問題となる電極基板表面でのガス発生を、(1)直流電場制御、(2)基板材料の選択、(3)溶媒への添加剤の3つの視点から効果的に抑止するプロセス条件を検討し、DCパルス電場(矩形波)の利用、パラジウム基板の利用から効果的に防止できることを実証した。セラミックス水系サスペンションの電気泳動堆積プロセスにおいて問題となる電極基板表面でのガス発生を、(1)直流電場制御、(2)基板材料の選択、(3)溶媒への添加剤の3つの視点から効果的に抑止するプロセス条件を検討し、DCパルス電場(矩形波)の利用、パラジウム基板の利用から効果的に防止できることを実証した。本研究は、セラミックス水系サスペンションの電気泳動堆積プロセスにおいて問題となる電極基板表面でのガス発生を防止し、高密度な粒子堆積膜や成形体を作製するための基礎研究であり、(1)電場のパルス印加による気泡の防止、(2)基板材料の選択による気泡の防止、(3)溶媒の調製による気泡の防止、の3つの視点から、気泡を含有せず高密度な粒子固化膜や固化成形体が得られる条件を探索し、セラミックスの電気泳動成形プロセスにおける水系サスペンションへの転化の普及に資することを目的としている。本年度は、DCパルスEPDによる気泡発生/抑止に及ぼす因子の調査を行い、DCパルスの印加で気泡抑制の可能な理由およびDCパルスEPDによる粒子固化のメカニズムを考察した。特にDC印加時におけるカソードおよびアノード近傍における溶媒pHの変化、および堆積体のpHを実測したところ、通電時に電極近傍でpHが大きく変化する現象を観察した。また、電極基板上に堆積した固化成形層のpHが、等電点付近のpHに一致していることが確認された。このことから、電極基板に到達した帯電粒子は、等電点付近までpHの上昇した電極近傍のpHローカリゼーション領域に達すると急速に静電反発力を失って、ファンデルワールスカにより凝集・堆積することが示唆された。水系サスペンションにDCパルス電場(矩形波)を印加すると、気泡発生のない良好な膜質の堆積層が形成できることを見出し、パルス電圧・電流やON/OFF時間などが気泡生成・抑止に及ぼす条件を系統的に検討している。通常のコロイドプロセスでは、安定したサスペンションの調製しやすさにより粒子を正、負どちらに帯電させるかが選択される。その場合、EPDプロセスでは、粒子表面の帯電極性の正負に依存して負または正極側に粒子が堆積する。しかし、ゼータ電位の絶対値が同じサスペンションでも、正極側と負極側で堆積量が異なったり、膜質に差があったりするケースが認められた。そこで、中性付近に等電点を持つアルミナを用い、通電時の基板近傍におけるサスペンションpHの変化を比較したところ、カソード側では、アノード側に比べpH変化が大きく、より強い凝集効果が作用することが示唆された。また、アノードデポジションで堆積量や膜質が劣る場合において、アニオン性分散剤で粒子を修飾し等電点を酸性側に少しずらすと、堆積量や膜質が著しく改善されることがわかった。また、カソードデポジションを対象に、陰極で発生する水素量に及ぼすDCパルス周波数の影響を調べるため、水素吸収能に特に優れたパラジウムを陰極とし、パラジウム陰極板を精密天秤に吊るした状態で通電時の重量増加を連続的に調べた。その結果、パルス幅を短くするほど重量増加は少なくなり、水素発生量が減少することが判明した。このことから、DCパルスによる気泡抑制の理由が、水の電気分解反応自体を抑制することに起因することがわかった。セラミックス水系サスペンションの電気泳動堆積プロセスにおいて問題となる電極基板表面でのガス発生を防止し、高密度な粒子堆積膜や成形体を作製するため、(1)電場のパルス印加による気泡の防止、(2)基板材料の選択による気泡の防止、(3)溶媒の調製による気泡の防止、の3つの視点から、気泡を含有せず高密度な粒子固化膜や固化成形体が得られる条件を探索した。これまでに、DC印加時におけるカソードおよびアノード近傍における溶媒pHの実測から、通電による基板近傍のpHローカリゼーデョンシフトを確認しており、このpHが粒子の等電点に近いと粒子堆積が起こりやすいことが経験的に示されている。そこで、粒子表面を高分子電解質で修飾し等電点を意図的に制御したサスペンションを作製して、粒子が堆積しやすいサスペンションの調製条件を検討した。その結果、DC印加時におけるカソードおよびアノード近傍における溶媒pHが粒子の等電点に近い状態に粒子表面のチャージを制御することで、粒子堆積が起こりやすくなることが実証できた。また、EPD法による粒子堆積メカニズムが、粒子間の静電反発ポテンシャルが失われることによりファンデルワールス力で凝集するという古典的なDLVO理論で説明できることが実証できた。カソードデポジション時における水素気泡発生を電極基板で吸収し抑止することを目的とし、優れた水素吸蔵金属として知られるV、V-15%Ni、Pdで水素気泡を比較したところ、VおよびV-15%Niでは気泡の発生は抑制できず、唯一Pd基板の使用時で気泡生成の抑制された緻密な固化成形体が作製可能であった。さらにアノードデポジション時における電極基板での酸素防止を、還元剤として知られるアスコルビン酸のサスペンションへの添加により試みたが、長時間にわたる酸素気泡発生の抑止はできなかった。 | KAKENHI-PROJECT-20560687 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20560687 |
膵B細胞のブドウ糖認識機構-ATP感受性K^+チャネル非依存性経路の解明- | (1)ATP感受性K^+チャネル非依存性のブドウ糖作用のメデイーターこの経路においてブドウ糖作用はCキナーゼの活性化、フォスフォリパーゼCの活性化、甘味レセプター類似の構造を介した未知のシグナル、等を介してインスリン分泌を刺激することを明らかにした。(2)ATP感受性K^+チャネル非依存性のブドウ糖作用の生理的意義この経路を介したブドウ糖によるインスリン分泌刺激は生理的濃度のブドウ糖によって充分起こること、主として第2相のインスリン分泌を起こすこと、いわゆるブドウ糖によるB細胞のprimingを起こすこと、さらに驚くべきことには細胞内遊離カルシウム濃度の上昇が全くない状態でも認められること、等を明らかにした。(3)ATP感受性K^+チャネル非依存性のブドウ糖作用と糖尿病発症との関連この経路を介したブドウ糖作用は糖尿病発症過程で膵B細胞が疲弊していくことを防ぐ方向に作用しており、その意味である種の防御機構をなしていることを明らかにした。(4)今後の発展本研究ではブドウ糖のインスリン分泌刺激機構が極めて多岐に渡ること、特に生理的な条件下ではATP感受性K^+チャネル非依存性のブドウ糖作用も重要な位置を占めることを明らかにした。さらにこのブドウ糖作用が糖尿病発症予防のキ-となる可能性も見いだされた。また、ホルモンの開口放出過程で細胞内遊離カルシウムが全く上昇しない場合にも、生理的な刺激物質(ブドウ糖)が生理的な濃度で生理的なパターンのホルモン分泌を正常な細胞(膵ラ氏島のB細胞)から惹起しうることを確立し、これまでの細胞生物学の常識に強い疑義を呈した。これらの発見は今後のこの領域の発展に多大な貢献をすることが予想される。(1)ATP感受性K^+チャネル非依存性のブドウ糖作用のメデイーターこの経路においてブドウ糖作用はCキナーゼの活性化、フォスフォリパーゼCの活性化、甘味レセプター類似の構造を介した未知のシグナル、等を介してインスリン分泌を刺激することを明らかにした。(2)ATP感受性K^+チャネル非依存性のブドウ糖作用の生理的意義この経路を介したブドウ糖によるインスリン分泌刺激は生理的濃度のブドウ糖によって充分起こること、主として第2相のインスリン分泌を起こすこと、いわゆるブドウ糖によるB細胞のprimingを起こすこと、さらに驚くべきことには細胞内遊離カルシウム濃度の上昇が全くない状態でも認められること、等を明らかにした。(3)ATP感受性K^+チャネル非依存性のブドウ糖作用と糖尿病発症との関連この経路を介したブドウ糖作用は糖尿病発症過程で膵B細胞が疲弊していくことを防ぐ方向に作用しており、その意味である種の防御機構をなしていることを明らかにした。(4)今後の発展本研究ではブドウ糖のインスリン分泌刺激機構が極めて多岐に渡ること、特に生理的な条件下ではATP感受性K^+チャネル非依存性のブドウ糖作用も重要な位置を占めることを明らかにした。さらにこのブドウ糖作用が糖尿病発症予防のキ-となる可能性も見いだされた。また、ホルモンの開口放出過程で細胞内遊離カルシウムが全く上昇しない場合にも、生理的な刺激物質(ブドウ糖)が生理的な濃度で生理的なパターンのホルモン分泌を正常な細胞(膵ラ氏島のB細胞)から惹起しうることを確立し、これまでの細胞生物学の常識に強い疑義を呈した。これらの発見は今後のこの領域の発展に多大な貢献をすることが予想される。ATP感受性K^+チャネル非依存性のブドウ糖によるインスリン分泌がCキナーゼの活性化とフォスフォリパーゼCによるPIの加水分解を介して起こる事を明らかにした。即ちATP感受性K^+チャネル非依存性のブドウ糖によるインスリン分泌は、Cキナーゼ阻害剤であるスタウロスポリンおよびPI加水分解の阻害剤であるネオマイシンによりいずれも強力に阻害された。又、グルコレセプターを阻害する可能性の強いPNPグルコピラノシドによってもATP感受性K^+チャネル非依存性のブドウ糖によるインスリン分泌が抑制された事から、この経路に代謝されないブドウ糖そのものを認識するメカニズムが関与している事が強く示唆された。一方、膵B細胞でのブドウ糖代謝を抑制する事により通常のブドウ糖によるインスリン分泌が消失するような条件下でもATP感受性K^+チャネル非依存性のブドウ糖によるインスリン分泌は、ある程度起こる事も明かとなった。つまり、B細胞におけるブドウ糖代謝がこの経路ではそれほど重要でない可能性が示された。このようにATP感受性K^+チャネル非依存性のブドウ糖によるインスリン分泌は従来考えられていたいわゆるブドウ糖によるB細胞の“Time-Dependent Potentiation(TDP)"によく似た性質を有している事が明らかになりつつある。このことから、我々が提唱した仮説、即ち「ブドウ糖による2相性のインスリン分泌の第一相が主にATP感受性K^+チャネル閉鎖を介した脱分極やCa^<2+>流入によるものであり、第二相が主にATP感受性K^+チャネルに依存しないブドウ糖によるB細胞のPotentiationによるものである」という考えの正当性が証明されつつある。ATP感受性K^+(K^+ATP)チャネル非依存性のブドウ糖作用について平成6年度は以下の3点について新しい知見を得た。1)K^+ATPチャネル非依存性のブドウ糖によるインスリン分泌刺激はCキナーゼ及びフォスフォリパーゼCの活性化を介しており、いわゆる「グルコレセプター」を介したシグナルもこの経路に関与している可能性を見いだした。またブドウ糖代謝はこの経路においては、従来から知られているK^+ATPチャネル依存性のブドウ糖作用に比べて重要でない事も明らかにした。これらについては文献1に報告した。 | KAKENHI-PROJECT-05670852 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05670852 |
膵B細胞のブドウ糖認識機構-ATP感受性K^+チャネル非依存性経路の解明- | 2)糖尿病における膵B細胞の異常を自然発症糖尿病モデルラットで検討し、糖尿病状態のラットではK^+ATPチャネル依存性のブドウ糖作用に選択的な異常(過剰反応)があることを見いだした。この結果から糖尿病の発症過程でも膵B細胞のブドウ糖に対する過剰反応がある可能性を考え、この異常が糖尿病発症の原因として関与していないか否かを詳細に検討中である。これらについては文献2、3に報告した。3)上記の研究の過程でブドウ糖によるB細胞刺激の生理的メカニズムとして“Augmentation"という概念を提唱しその生理的意義についても検討を加えた。これらについては文献4-7に発表した。今年度は主としてATP感受性K^+チャネル非依存性のブドウ糖によるインスリン分泌刺激機構と糖尿病の関係を解明した。1.肥満型糖尿病を発症するOLETFラットでは糖尿病発症前(3週令)から膵B細胞のブドウ糖に対する過剰反応が存在し、ATP感受性K^+チャネル非依存性の経路を介したブドウ糖によるインスリン分泌刺激のみを測定すると、こうした過剰反応がなかった。従って、主としてATP感受性K^+チャネルに依存した経路に異常があり、インスリンの過剰分泌がおこり、肥満、インスリン抵抗性をきたし、糖尿病発症に至ると考えられた。この仮説を実証すべくATP感受性K^+チャネルの閉鎖阻害剤であるジアゾキシドを糖尿病発症前からOLETFラットに投与し続けたところ、糖尿病、肥満、インスリン抵抗性の発症を予防することができた。遺伝的に規定された糖尿病発症を薬剤で予防できた最初の例である。2.非肥満型糖尿病を発症するGKラットでは3週令で既に高血糖が存在した。従ってここでみられた膵B細胞の異常が糖尿病の原因なのか、あるいは過血糖の結果生じた二次的な変化かは厳密には不明である。いづれにせよ、この週令のGKラット膵B細胞ではATP感受性K^+チャネルに依存したブドウ糖作用が障害されており、ブドウ糖に対するB細胞の感受性が低下していた。一方ATP感受性K^+チャネル非依存性のブドウ糖作用は障害されていなかった。これらの結果からATP感受性K^+チャネル非依存性のブドウ糖作用は従来から知られていたATP感受性K^+チャネルに依存したブドウ糖作用に異常が生じた場合、そうした異常を打ち消す方向に作働しているある種の防御機構をなしている可能性が示された。今後の糖尿病の治療、予防を考える上で極めて示唆に富む結果である。 | KAKENHI-PROJECT-05670852 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05670852 |
超音波診断装置を用いた咀嚼筋の組織特性評価に関する研究 | 近年、歯科領域においても活発に応用が試みられている超音波診断装置は、人体の任意断面を非侵襲的に形態、動態分析が行うことが可能である。また電子工学技術の発達にともない、生体の組織性状、物理特性を定量的に評価するためのultrasonic tissuecharacterization(組織特性評価)に関する研究もおこなわれている。そこで本研究では、超音波エコーレベルの変化および組織音響特性の解析から、顎顔面領域における咀嚼筋の断面積、収縮活性ならび物理特性などの定量的評価をおこなうことを目的としている。本年度は以下の研究を行った。1)超音波診断装置の食用肉を用いた正確なエコーレベルの算出法の確立市販の食用肉を測定の対象として、数種類の超音波診断装置にてAモード、Bモードの撮影を行い、得られた超音波画像上に関心領域(ROI)を設定、エコーレベルとそれぞれのヒストグラムを解析し、それぞれの病理組織像と比較検討することで組織性状の定量評価に最も適した撮影条件を検討した。2)咀嚼筋超音波画像の三次元化プローブの方向特性と接面形状を改良したうえで、一定方向からの撮影を可能とし、得られた画像を三次元化する試みをおこなった。現在作業中であり、顔面上での咀嚼筋形態を三次元的に把握し、その断面積、体積収縮率を算出する予定である。3)物理実験結果と超音波診断装置から得られた測定値との比較BモードエコーレベルおよびAモードより測定された組織弾性率と対象とした食用肉の物性状を比較・検討した。以下の研究の結果、咀嚼筋の弾性、組織性状の評価に超音波が有用であることが明かとなった。近年、歯科領域においても活発に応用が試みられている超音波診断装置は、人体の任意断面を非侵襲的に形態、動態分析が行うことが可能である。また電子工学技術の発達にともない、生体の組織性状、物理特性を定量的に評価するためのultrasonic tissuecharacterization(組織特性評価)に関する研究もおこなわれている。そこで本研究では、超音波エコーレベルの変化および組織音響特性の解析から、顎顔面領域における咀嚼筋の断面積、収縮活性ならび物理特性などの定量的評価をおこなうことを目的としている。本年度は以下の研究を行った。1)超音波診断装置の食用肉を用いた正確なエコーレベルの算出法の確立市販の食用肉を測定の対象として、数種類の超音波診断装置にてAモード、Bモードの撮影を行い、得られた超音波画像上に関心領域(ROI)を設定、エコーレベルとそれぞれのヒストグラムを解析し、それぞれの病理組織像と比較検討することで組織性状の定量評価に最も適した撮影条件を検討した。2)咀嚼筋超音波画像の三次元化プローブの方向特性と接面形状を改良したうえで、一定方向からの撮影を可能とし、得られた画像を三次元化する試みをおこなった。現在作業中であり、顔面上での咀嚼筋形態を三次元的に把握し、その断面積、体積収縮率を算出する予定である。3)物理実験結果と超音波診断装置から得られた測定値との比較BモードエコーレベルおよびAモードより測定された組織弾性率と対象とした食用肉の物性状を比較・検討した。以下の研究の結果、咀嚼筋の弾性、組織性状の評価に超音波が有用であることが明かとなった。近年、歯科領域においても活発に応用が試みられている超音波診断装置は,人体の任意断面を非侵襲的に形態,動態分析が行なうことが可能である。また電子工学技術の発達にともない,生体の組織性状,物理特性を定量的に評価するためのultrasonic tissuecharacterization(組織特性評価)に関する研究もおこなわれている。そこで本研究では、超音波エコーレベルの変化および組織音響特性の解析から、顎顔面領域における咀嚼筋の断面積,収縮活性ならび物理特性などの定量的評価をおこなうことを目的としている。本年度は以下の研究をおこなった。1)超音波診断装置の食用肉を用いた正確なエコーレベルの算出法の確立市販の食用肉を測定の対象として、数種類の超音波診断装置にてAモード,Bモードの撮影を行い、得られた超音波画像上に関心領域(ROl)を設定、エコーレベルとそれぞれのヒストグラムを解析し,それぞれの病理組織像と比較検討することで組織性状の定量評価に最も適した撮影条件を検討した。2)咀嚼筋超音波画像の三次元化プローブの方向特性と接面形状を改良したうえで、一定方向からの撮影を可能とし、得られた画像を三次元化する試みをおこなった。現在作業中であり、顔面上での咀嚼筋形態を三次元的に把握し、その断面積,体積収縮率等を算出する予定である。3)物理実験結果と超音波診断装置から得られた測定値との比較BモードエコーレベルおよびAモードより測定された組織弾性率と対象とした食用肉の物性状を比較・検討した。以上の研究の結果、咀嚼筋の弾性,組織性状の評価に超音波が有用であることが明らかとなった。近年,歯科領域においても活発に応用が試みられている超音波診断装置は,人体の任意断面を非浸襲的に形態,動態分析が行うことが可能である。また電子工学技術の発達にともない,生体の組織性状,物理特性を定量的に評価するためのultrasonic tissuecharacterization(組織特性評価)に関する研究も行われている。 | KAKENHI-PROJECT-09672119 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09672119 |
超音波診断装置を用いた咀嚼筋の組織特性評価に関する研究 | そこで本研究では,超音波エコーレベルの変化および組織音響特性の解析から,顎顔面領域における咀嚼筋の断面積,収縮活性ならび物理特性などの定量的評価をおこなうことを目的としている。本年度は以下の研究を行った。1)超音波診断装置の食用肉を用いた正確なエコーレベルの算出法の確立市販の食用肉を測定の対象として,数種類の超音波診断装置にてAモード,Bモードの撮影を行い,得られた超音波画像上に関心領域(ROI)を設定,エコーレベルとそれぞれのヒストグラムを解析し,それぞれの病理組織像と比較検討することで組織性状の定量評価に最も適した撮影条件を検討した。2)咀嚼筋超音波画像の三次元化プローブの方向性と接面形状を改良したうえで,一定方向からの撮影を可能とし,得られた画像を三次元化する試みを行った。その結果,顔面上での咀嚼筋形態を三次元的に把握することが可能となり,その筋断面積から体積収縮率等を算定した。そして咀嚼筋牽引力の推定と,さらに筋力と筋束長から筋トルク値の推定も可能とした。3)物理実験結果と超音波診断装置から得られた測定値との比較BモードエコーレベルおよびAモードより測定された組織弾性率と対象とした食用肉の物性状を比較・検討した。4) CT画像との比較検討超音波画像とCT画像から得られた咀嚼筋筋幅の測定値を比較検討した結果,強い正の相関が得られた。以上の研究の結果,咀嚼筋の弾性,組織性状の評価に超音波が有用であることが明らかとなった。1)超音波診断装置を用いた正確なエコーレベルの算出法の確立;市販の食用肉を測定の対象として、数種類の超音波診断装置のAモード,Bモードにて撮影をおこなった。得られた超音波画像上に関心領域(ROI)を設定、エコーレベルとそれぞれのヒストグラムを解析し、それぞれの病理組織像と比較検討することで組織性状の定量評価に最も適した設定条件を確立した。さらに、Aモードによって得られた音響減衰、速度から組織内の弾性の傾向を検討した。2)物理実験結果と超音波診断装置から得られた測定値との比較;エコーレベルおよびAモードより測定された組織弾性率と対象とした食用肉の物性状を検討した。さらに、咀嚼筋における体積収縮率、弾性率、組織密度と咬合力など実際の筋の収縮力との関係を考察した。3)超音波診断装置の顎変形症患者への臨床応用;顎変形症患者の初診時における左右咀嚼筋の超音波診断装置によるエコーレベルの解析をおこない、さらに顎顔面形態を比較検討し、顎変形と咀嚼筋の関連性を求めた。また、治療途中および治療後の検査も同様に行い、術前との比較から骨改造と筋機能の関連性について検討を加えた。その結果、顎の変形は、左右咬筋の収縮率と関係しており、骨成長に対する筋牽引力の差がその発症に大きく影響していることが判明した。 | KAKENHI-PROJECT-09672119 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09672119 |
知識処理の新らしい方式とそれに基づく知的情報システムの研究 | 情報技術が大きく変化しつつあり、本研究は将来の新しい情報技術のコンセプトを確立することを目指し、従来とは異なる情報システムの研究を行ってきた。この研究では新システムを構成する2つの新技術の概念を確立し、基本技術を開発した。第1は汎用の知能情報処理方式を可能にする技術、第2は問題に応じてこの汎用システムから問題向きシステムを生成する技術である。このうち第一については主として第1年度(平成7年度)で研究を行い、第2について基本方式を第2年度(平成8年度)に求めてきた。この研究は順調に進み、新情報技術と呼べる新しい情報処理方式の提案がほぼ出来るまでに至っている。こそシステムはモデル方式の自律的問題解決システムであり、異なる知的機能を表す多種の知識群が相互の関係によって知識構造として蓄えられる。この知識構造は問題の表現に基づいて必要な知識の部分構造が取り出せるような検索システムを構成している。一方、広範囲の問題とその解決プロセスの中間状態、そして最後の解を表現するために、モデル従来の単純な表現では不十分であり、人間を含むシステムをモデル化出来る多階層異種機能モデル(Multi-Strata Model)を定義する。これらすべてを統一言語で表すための知識表現言語としてはメタ表現が出来る知識表現言語としては既に多層論理(Multi-Layer Logic,MLL)が開発されており、これを用いた。このシステムでは問題が与えられるとそれはモデルの形で受け取られ、この問題表現を手掛かりに知識構造から必要な関連知識を取り出す。これはいわば汎用の問題解決システムから、問題に特化した専用問題解決システムを生成することに相当する。専用問題解決システムはこの問題の処理プログラムの原形でもあり、これからプログラムが生成される。この方式で自動プログラミングの開発に進むことを予定している。情報技術が大きく変化しつつあり、本研究は将来の新しい情報技術のコンセプトを確立することを目指し、従来とは異なる情報システムの研究を行ってきた。この研究では新システムを構成する2つの新技術の概念を確立し、基本技術を開発した。第1は汎用の知能情報処理方式を可能にする技術、第2は問題に応じてこの汎用システムから問題向きシステムを生成する技術である。このうち第一については主として第1年度(平成7年度)で研究を行い、第2について基本方式を第2年度(平成8年度)に求めてきた。この研究は順調に進み、新情報技術と呼べる新しい情報処理方式の提案がほぼ出来るまでに至っている。こそシステムはモデル方式の自律的問題解決システムであり、異なる知的機能を表す多種の知識群が相互の関係によって知識構造として蓄えられる。この知識構造は問題の表現に基づいて必要な知識の部分構造が取り出せるような検索システムを構成している。一方、広範囲の問題とその解決プロセスの中間状態、そして最後の解を表現するために、モデル従来の単純な表現では不十分であり、人間を含むシステムをモデル化出来る多階層異種機能モデル(Multi-Strata Model)を定義する。これらすべてを統一言語で表すための知識表現言語としてはメタ表現が出来る知識表現言語としては既に多層論理(Multi-Layer Logic,MLL)が開発されており、これを用いた。このシステムでは問題が与えられるとそれはモデルの形で受け取られ、この問題表現を手掛かりに知識構造から必要な関連知識を取り出す。これはいわば汎用の問題解決システムから、問題に特化した専用問題解決システムを生成することに相当する。専用問題解決システムはこの問題の処理プログラムの原形でもあり、これからプログラムが生成される。この方式で自動プログラミングの開発に進むことを予定している。本研究は此れ迄と異なる新しい汎用情報処理技術として知能的コンピュータの実現方法の開発を目的とした。これには2段階のアプローチを用いる。第1は汎用知的処理機構を実現すること、第2は目的に応じてこの汎用システムから目的指向システムを生成すること、である。本研究は主として第1段階を実現することに目的としてきたが、全体の枠組みを考慮しつつ行うことが必要であり、第2段階の具体的な方式を考察範囲に含めながら検討を行ってきた。これは各種知的行為を表わす為に必要な知的機能を整理し、依存関連を明かにした上でそれに応じて機能の階層構造を作ること、問題の型(設計、診断、自動プログラミングなど)に固有の知的機能の構造を作ること、によって可能になる。この知的機能構造は言語層、システム機能層、モデル操作層、理論手法層、基本問題解決機能層、問題型識別層、ヒューマンインターフェース層と名付けられた異種機能層からなり、各層はさらに具体的な知的機能を表わす層に細分される。これら知的機能は、それが置かれた層より下の各機能を用いて定義されており、最下位は手続き型言語になっている。すなわちこの知的機能構造内に置かれた機能は下位の機能に順次展開され、最後は手続き型言語で表わされ、コンピュータ上で処理が可能になる。この全体構造を実際に完成するには今後膨大な知識の収集が必要であるが、本研究はその枠組みを作ることが目的であり、その目的はほぼ達成された。枠組みが与えられれば今後逐次的な知識を蓄えてゆくことができる。従ってこの研究は将来の大規模知識ベース構築の手掛かりを与える。設計等の問題への適用を通してこの基本の枠組みが予想した通り複合的な知的活動に役立つことは実証されている。今後、さらにこの延長として、上記第2段階の完成を目指す。情報技術が大きく変化しつつあり、本研究は将来の新しい情報技術のコンセプトを確立することを目指し、従来とは異なる情報システムの研究を行ってきた。この研究では新システムを構成する2つの新技術の概念を確立し、基本技術を開発した。 | KAKENHI-PROJECT-07458068 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07458068 |
知識処理の新らしい方式とそれに基づく知的情報システムの研究 | 第1は汎用の知能情報処理方式を可能にする技術、第2は問題に応じてこの汎用システムから問題向きシステムを生成する技術である。このうち第一については主として第1年度(平成7年度)で研究を行い、第2について基本方式を第2年度(平成8年度)に求めてきた。この研究は順調に進み、新情報技術と呼べる新しい情報処理方式の提案がほぼ出来るまでに至っている。こそシステムはモデル方式の自律的問題解決システムであり、異なる知的機能を表わす多種の知識群が相互の関係によって知識構造として蓄えられる。この知識構造は問題の表現に基づいて必要な知識の部分構造が取り出せるような検索システムを構成している。一方、広範囲の問題とその解決プロセスの中間状態、そして最後の解を表現するために、モデル従来の単純な表現では不十分であり、人間を含むシステムをモデル化出来る多階層異種機能モデル(Multi-Strata Model)を定義する。これらすべてを統一言語で表すための知識表現言語としてはメタ表現が出来る知識表現言語としては既に多層論理(Multi-Layer Logic,MLL)が開発されており、これを用いた。このシステムでは問題が与えられるとそれはモデルの形で受け取られ、この問題表現を手掛かりに知識構造から必要な関連知識を取り出す。これはいわば汎用の問題解決システムから、問題に特化した専用問題解決システムを生成することに相当する。専用問題解決システムはこの問題の処理プログラムの原形でもあり、これからプログラムが生成される。この方式で自動プログラミングの開発に進むことを予定している。 | KAKENHI-PROJECT-07458068 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07458068 |
中世ローマ教皇庁のユダヤ人認識に関する研究 | 第一回十字軍の際に生じたキリスト教徒によるユダヤ人虐殺についての教皇側の態度は史料上明白ではないのに対して、中世においてしばしば繰り返された儀式殺人の告発については、教皇はおおむねそれを非難する立場に立ったとみられる。しかし、ローマのユダヤ人コミュニティと教皇の関係の検討から明らかとなるように、教皇はユダヤ人に対して一貫した態度を取ったわけではなく、社会的文脈において両者の関係性は変化し、それに伴って対ユダヤ人の態度も変化したというべきである。基盤C第一回十字軍の際に生じたキリスト教徒によるユダヤ人虐殺についての教皇側の態度は史料上明白ではないのに対して、中世においてしばしば繰り返された儀式殺人の告発については、教皇はおおむねそれを非難する立場に立ったとみられる。しかし、ローマのユダヤ人コミュニティと教皇の関係の検討から明らかとなるように、教皇はユダヤ人に対して一貫した態度を取ったわけではなく、社会的文脈において両者の関係性は変化し、それに伴って対ユダヤ人の態度も変化したというべきである。研究の初年度である本年度は、まず必要な資料の収集と並行して全般的な研究動向の把握に努めた。そのうえで、研究計画にもとついて中世におけるユダヤ人迫害のいくつかの事例の検討に取り組んだ。具体的には、第一回十字軍に際する1096年のユダヤ人虐殺と12世紀以降散発した「儀式殺人の告発」を考察の対象に設定した。1096年の事例においては教皇庁の反応は史料上確認できないのに対して、儀式殺人の告発に関しては抑制的な態度を示す傾向がみられたことが明らかとなった。この点については、9月に開催された東京大学グローバルCOEプログラム主催のワークショップ「死者の記憶と表象のポリティクス」において発表した。フランスの人類学者も多く参加したこのワークショップにおいては、迫害を記した年代記史料に表れるレトリックや神話的要素について人類学の立場からの指摘を得、議論を深めることができた。また、冬には、イタリア・ローマのローマ大学やドイツ歴史学研究所において関連資料の調査を実施するとともに、現地研究者と議論を交わした。本年度を通じて、教皇庁の主な所在地であったローマのユダヤ人コミュニティの存在及び教皇庁との関係が本研究にとって重要性を有することが明らかとなった。この点については、次年度の主要な研究課題として取り組む予定である。第二年目の平成21年度は、まず儀式殺人の告発と1096年の虐殺について前年度に国際研究集会で行った口頭発表の原稿を論文としてまとめた。これは同研究集会の報告書『非業の死の記憶』によって公表された。論文とするにあたっては、発表時に欠けていた年代記史料に用いられるレトリックについての考察なども取り入れた。次にこの論文でも言及した、儀式殺人の告発からユダヤ人を保護することを旨とする教皇の一連の勅書「シークット・ユダエイース」のテクスト及び時代的背景の検討に着手した。この勅書は中世において少なからぬ教皇たちが就任直後に繰り返し発してきたことから、教皇庁のユダヤ人認識を理解するのに欠くことができない。この史料はさらに、教皇とローマのユダヤ人コミュニティの関係についても示唆を与えるものである。そのため、教皇勅書と関連して、前年に引き続きローマのユダヤ人コミュニティについての調査を進めた。関連する史料と先行研究を収集し吟味した結果、教皇がローマで執り行う儀礼に関する史料でユダヤ人集団がしばしば言及されていることが明確となった。この儀礼をめぐる問題は最終年度の課題として継続される。9月から10月にかけてはエジプトで開かれた国際シンポジウムに参加し、口頭発表を行った。1月にはイタリアのローマのいくつかの研究機関で調査を行うとともに、現在のユダヤ聖堂もあるローマのユダヤ人地区で宗教施設や関連地点を実際に訪問した。さらにヴァティカン機密文書館ではオリジナル手稿史料の調査も進めた。第三年目はまず、前年度に発表した儀式殺人の告発及び1096年の虐殺についての論文を海外の研究者向けにフランス語で改稿した。これは、東京大学人文社会系研究科発行の国際会議報告論集において公表された。そこでは、キリスト教側とユダヤ教側のいずれの史料も検討することによって、一方的な史料への依拠にもとづく歴史像の歪みを補正することを図った。また、記憶構築の問題にも踏み込むとともに、歴史叙述における書き手の立ち位置が有する歴史研究上の重要性についても論じた。次に、前年度からの課題として、中世ローマのユダヤ人に関する調査を継続した。12世紀以降、諸教皇がたびたび発した教勅「Sicut Judaeis」の史料分析を行うとともに、教皇が行う儀礼においてユダヤ人が果たした役割を検討することにより、ローマのユダヤ人と教皇が相互にその存在を承認しあう契機を確認することができた。以上の取り組みにあたっては、ヴァティカン文書館や在ローマの諸研究機関を訪ねて史料調査を実施し、わが国では得られにくい史料を本研究に反映することができた。さらに、十三世紀を中心とする中世教皇庁の組織と制度に関する研究を博士論文として完成させ、本研究の基礎の一部とすることができた。教皇庁がユダヤ人をどのように認識していたかというときに、認識の主体である中世教皇庁の組織や制度の歴史的な展開が及ぼした影響を見過ごすことはできないが、これを当該論文によって補った。教皇庁のユダヤ人に対する認識や態度については、受容か排除かといった単純な色分けをすることも、両義的であったとして曖昧に片づけることも、おそらく適切ではない。古代ユダヤ教に対する態度と中世における同時代のユダヤ人・ユダヤ教に対する態度が異なるなど、一定のコードに従って教皇庁の態度は使い分けられていたとみるべきである。基盤C | KAKENHI-PROJECT-20529003 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20529003 |
言語の普遍性と個別性に関する記述的・理論的総合研究 | 多数の専門家を擁する研究組織であり,対象言語も多様であるため,当然ながら研究成果も多岐に亘る.代表者の成果を中心にいくつかを列挙するなら,まず代表者は,原因と結果に関する言語形式を,日本語,朝鮮語,フランス語,英語に基づいて考察し,新しい言語の類型を提案した(Journal of East Asian Linguistics6,1-49(米国)およびOhak Yongu 33(韓国).この提案については,研究分担者の一人が批判的な考察を加え,ドイツ語・オランダ語等の事実を考慮に入れた優れた代案を提示している(報告書63-80)・代表者はまた,上記諸言語の考察に基づき,受動表現・使役表現の成立條件および両者の関係について具体的な仮説を提案したが(『ヴォイスに関する比較言語学的研究』1-66,『ヴォイスとアスペクト』),中国語における類似の現象を追及した分担者の研究により,中国語は,他の言語と多くの類似点を共有する反面,細部になお研究すべき興味深い相違点のあることが明らかになった(『ヴォイスに関する...』133-160).これら以外では,英語の非対格表現に対応するドイツ語の再帰動詞と自動詞を考察した分担者の研究により,ドイツ語におけるこれらの使い分けが意味論的に動機づけらえていることが明らかになった(Sprachtheorie und gemanistische Linguistik3,7-16).諸ゲルマン語の「完了形」構文について研究を行った別の分担者は,ドイツ語あるいはスウェーデン語の「完了形」構文が一般的な完了分詩を伴う構文の体系に属するものでありうることを明らかにした(報告書111-140,Sprachwissenschaft22,287-307).言語理論に貢献する成果も見逃せない.ロマンス諸語における動詞や代名詞の位置に関する研究などがその例である(報告書165-184).多数の専門家を擁する研究組織であり,対象言語も多様であるため,当然ながら研究成果も多岐に亘る.代表者の成果を中心にいくつかを列挙するなら,まず代表者は,原因と結果に関する言語形式を,日本語,朝鮮語,フランス語,英語に基づいて考察し,新しい言語の類型を提案した(Journal of East Asian Linguistics6,1-49(米国)およびOhak Yongu 33(韓国).この提案については,研究分担者の一人が批判的な考察を加え,ドイツ語・オランダ語等の事実を考慮に入れた優れた代案を提示している(報告書63-80)・代表者はまた,上記諸言語の考察に基づき,受動表現・使役表現の成立條件および両者の関係について具体的な仮説を提案したが(『ヴォイスに関する比較言語学的研究』1-66,『ヴォイスとアスペクト』),中国語における類似の現象を追及した分担者の研究により,中国語は,他の言語と多くの類似点を共有する反面,細部になお研究すべき興味深い相違点のあることが明らかになった(『ヴォイスに関する...』133-160).これら以外では,英語の非対格表現に対応するドイツ語の再帰動詞と自動詞を考察した分担者の研究により,ドイツ語におけるこれらの使い分けが意味論的に動機づけらえていることが明らかになった(Sprachtheorie und gemanistische Linguistik3,7-16).諸ゲルマン語の「完了形」構文について研究を行った別の分担者は,ドイツ語あるいはスウェーデン語の「完了形」構文が一般的な完了分詩を伴う構文の体系に属するものでありうることを明らかにした(報告書111-140,Sprachwissenschaft22,287-307).言語理論に貢献する成果も見逃せない.ロマンス諸語における動詞や代名詞の位置に関する研究などがその例である(報告書165-184).印欧語・東洋語の専門家が結集し,諸言語の比較・分析を徹底した深さ・精密さで行うことにより、言語の普遍性・個別性という概念に,明確な理論的意義を与える,という本研究プロジェクトの基本的立場を踏まえ,本年度は,「研究実施計画」に示した線に添って,月一回のペースで研究会を開き,会合の席上あるいはネットワーク上で活発な討論が繰り広げられた。研究会では,例えば次のようなトピックに関して発表が行なわれた。鷲尾龍一「投射されない意味構造に関する若干の考察」(第13回例会1995年4月26日)山田博志「他動詞構文に現われる場所の状況補語の曖昧さについて」(第14回例会1995年6月7日)岡本順治「方向性の認知に関するメモ」(第16回例会1995年7月11日)佐々木勲人「方向性と影響性-中国語受身文の成立条件について」(第17回例会1995年9月13日)伊藤眞「日独慣用句対照研究」(第18回例会1995年10月5日)こうした研究会を通じ,日本語,中国語,フランス語,ドイツ語,英語,韓国,朝鮮語などの言語が、どの程度まで共通点を有し,どの点において異なっているのかが、かなり具体的な形で明らかにされてきた。印欧語・東洋語の専門家が集結し,諸言語の比較・分析を徹底した深さ・精密さで行うことにより,言語の普遍性・個別性という概念に明確な理論的意義を与える,という本研究の基本的な踏まえ,本年度も昨年度に続き,月1回のペースで研究会を開き,活発な討論を行った.研究会のトッピクは以下の通りである. | KAKENHI-PROJECT-07451105 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07451105 |
言語の普遍性と個別性に関する記述的・理論的総合研究 | 岡本順治「ドイツ語における移動様態動詞の特性」(第22回例会1996年4月11日)山田博志「フランス語の中間構文」(第24回例会1996年6月13日)佐々木勲人「中国語の使役文と受身文」(第25回例会1996年7月18日)伊藤眞「日独慣用句にみられる表現上の差異」(第26回例会1996年9月19日)印欧語・東洋語の専門家が結集し,諸言語の比較・分析を徹底した深さ・精密さで行うことにより,言語の普遍性・個別性という概念に明確な理論的意義を与える,という本研究の目標を踏まえ,本年度も昨年度に引き続き,月1回の研究会を開催し,活発な討論を行った.研究会の主なトピックは以下の通りである.黒田享「日本語とドイツ語の主語」(第34回例会1997年6月26日)佐々木勲人「間接受動文の成立条件」(第35回例会1997年9月25日)岡本順治「Eventの定義をめぐって」(第39回例会1998年1月29日)大矢俊明「行為動詞から移動表現へ」(第40回例会1998年3月18日)た,本年度は最終年度に当たるため,研究成果のとりまとめの作業を行い,報告書を作成した.そこには次のような論文が含まれる(抜粋).伊藤眞「慣用句の構成要素の分析」黒田享「ドイツ語の迂言的テンス形式について」大矢俊明「ドイツ語の移動表現における再帰代名詞の出没について」 | KAKENHI-PROJECT-07451105 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07451105 |
環境や利用者に適応して多様なスポーツのコンテンツを提示する次世代可視化技術の構築 | スポーツの中でも,特に,複数人が1つのフィールド上で連携して試合を進めるサッカーやラグビー,野球等の競技では,フォーメーションが戦術の重要な要素であり,その分析は,試合内容を理解するために重要である.このため,提案者はこれまでにサッカーや野球の分析データを生成する理論の構築を進めており,本研究課題では,このさらなる高度化と多様化を進めるとともに,利用者のレベルや興味に応じて選手やチームの情報,戦況,さらには戦術の高度な情報までを動的に提示する次世代の可視化技術を構築する.すなわち,本研究では,利用者の「知識レベル」や「観戦・練習の環境」等の多様なデータから,「所望する分析データ」と「利用環境に適応した提示方式」を定める理論を導出し,スポーツの効率的な観戦や教育等を助ける情報提示の基盤技術を構築する.具体的に応募者は,本研究を4年間で計画しており,期間内に次の【フェーズ1】【フェーズ4】を明らかにする.【フェーズ1】スポーツの分析データを生成する理論の高度化【フェーズ2】利用者の環境および操作履歴に基づく分析データ提示の基盤技術構築【フェーズ3】様々なスポーツ環境・デバイスでの分析データ提示システムの実装【フェーズ4】競技の枠を超えて適応的に分析データを提示する可視化技術への拡張平成30年度には,【フェーズ2】を特に進め,「操作履歴や観戦・練習等の利用環境のデータ」と「スポーツの分析データ」との相関を分析する理論を新たに導出し,適応的な分析データの可視化の基礎技術を構築した.具体的には,種々提案されている相関分析の手法や距離計量学習[8]を拡張する新たな手法を導出し,利用者の視線データや検索システムの操作と「分析データ」との関係を分析することで,利用者に適応した提示を可能とした.平成29年度から平成30年度までは,非常に順調に研究が実施でき,平成30年度には,【フェーズ2】に計画した,「操作履歴や観戦・練習等の利用環境のデータ」と「スポーツの分析データ」との相関を分析する理論を新たに導出し,適応的な分析データの可視化の基礎技術を構築した.具体的には,種々提案されている相関分析の手法や距離計量学習[8]を拡張する新たな手法を導出し,利用者の視線データや検索システムの操作と「分析データ」との関係を分析することで,利用者に適応した提示を可能とした.また,本研究では,【フェーズ4】として計画している複数競技を横断して利用者に応じた分析データの提示を可能とする手法構築の一部を平成29年度に先行実施している.具体的には,サッカー競技のパス可能な領域を映像上に可視化する理論をラグビー競技に応用可能とし,ラグビー競技で行われるパスを提示可能とした.今後は,平成31年度以降に計画している下の【フェーズ3】と【フェーズ4】を計画の通りに進める.【フェーズ3】様々なスポーツ環境・デバイスでの分析データ提示システムの実装【フェーズ4】競技の枠を超えて適応的に分析データを提示する可視化技術への拡張なお,【フェーズ4】については,既に一部を先行着手しており,研究期間終了までに計画の通りに進めることができる見込みである.本研究では,利用者の「知識レベル」や「観戦・練習の環境」等の多様なデータから,「所望する分析データ」と「利用環境に適応した提示方式」を定める理論を導出し,スポーツの効率的な観戦や教育等を助ける情報提示の基盤技術を構築する.具体的に応募者は,本研究を4年間で計画しており,期間内に下の【フェーズ1】【フェーズ4】を明らかにする.【フェーズ1】スポーツの分析データを生成する理論の高度化【フェーズ2】利用者の環境および操作履歴に基づく分析データ提示の基盤技術構築【フェーズ3】様々なスポーツ環境・デバイスでの分析データ提示システムの実装【フェーズ4】競技の枠を超えて適応的に分析データを提示する可視化技術への拡張平成29年度に実施した【フェーズ1】によって,戦術の重要な要素であるフォーメーションを分析可能とし,試合内容の理解を補助する分析データの生成が可能となる理論の構築が進んだ.具体的には,「基本的なフォーメーション情報」,および「関連の話題」を映像中の選手位置等を分析することで提示可能とした.また,この理論は,「有効なパスコース」や「新しい攻め方」,「過去の類似シーン」に関するデータを提示可能とするものであり,新しい戦術への気づきや監督等の他者との円滑な意思疎通に繋がる.また,平成29年度には,サッカー競技で構築した理論をラグビー競技に応用する実験を進め,【フェーズ4】で検討する「競技の枠を超えて適応的に分析データを提示する可視化技術」の構築に先行着手した.また,得られた成果について学会での発表を行った.平成29年度に計画した【フェーズ1】が順調に実施でき,戦術の重要な要素であるフォーメーションを分析可能としたことで,試合内容の理解を補助する分析データの生成が可能となる理論の構築が進んだ.さらに,平成29年度には,サッカー競技で構築した理論をラグビー競技に応用する実験を進める環境の整備が進み,【フェーズ4】で検討する「競技の枠を超えて適応的に分析データを提示する可視化技術」の構築に先行着手することができた.スポーツの中でも,特に,複数人が1つのフィールド上で連携して試合を進めるサッカーやラグビー,野球等の競技では,フォーメーションが戦術の重要な要素であり,その分析は,試合内容を理解するために重要である. | KAKENHI-PROJECT-17K00148 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K00148 |
環境や利用者に適応して多様なスポーツのコンテンツを提示する次世代可視化技術の構築 | このため,提案者はこれまでにサッカーや野球の分析データを生成する理論の構築を進めており,本研究課題では,このさらなる高度化と多様化を進めるとともに,利用者のレベルや興味に応じて選手やチームの情報,戦況,さらには戦術の高度な情報までを動的に提示する次世代の可視化技術を構築する.すなわち,本研究では,利用者の「知識レベル」や「観戦・練習の環境」等の多様なデータから,「所望する分析データ」と「利用環境に適応した提示方式」を定める理論を導出し,スポーツの効率的な観戦や教育等を助ける情報提示の基盤技術を構築する.具体的に応募者は,本研究を4年間で計画しており,期間内に次の【フェーズ1】【フェーズ4】を明らかにする.【フェーズ1】スポーツの分析データを生成する理論の高度化【フェーズ2】利用者の環境および操作履歴に基づく分析データ提示の基盤技術構築【フェーズ3】様々なスポーツ環境・デバイスでの分析データ提示システムの実装【フェーズ4】競技の枠を超えて適応的に分析データを提示する可視化技術への拡張平成30年度には,【フェーズ2】を特に進め,「操作履歴や観戦・練習等の利用環境のデータ」と「スポーツの分析データ」との相関を分析する理論を新たに導出し,適応的な分析データの可視化の基礎技術を構築した.具体的には,種々提案されている相関分析の手法や距離計量学習[8]を拡張する新たな手法を導出し,利用者の視線データや検索システムの操作と「分析データ」との関係を分析することで,利用者に適応した提示を可能とした.平成29年度から平成30年度までは,非常に順調に研究が実施でき,平成30年度には,【フェーズ2】に計画した,「操作履歴や観戦・練習等の利用環境のデータ」と「スポーツの分析データ」との相関を分析する理論を新たに導出し,適応的な分析データの可視化の基礎技術を構築した.具体的には,種々提案されている相関分析の手法や距離計量学習[8]を拡張する新たな手法を導出し,利用者の視線データや検索システムの操作と「分析データ」との関係を分析することで,利用者に適応した提示を可能とした.また,本研究では,【フェーズ4】として計画している複数競技を横断して利用者に応じた分析データの提示を可能とする手法構築の一部を平成29年度に先行実施している.具体的には,サッカー競技のパス可能な領域を映像上に可視化する理論をラグビー競技に応用可能とし,ラグビー競技で行われるパスを提示可能とした.今後は,平成30年度以降に計画している下の【フェーズ2】から【フェーズ4】を計画の通りに進める.【フェーズ2】利用者の環境および操作履歴に基づく分析データ提示の基盤技術構築【フェーズ3】様々なスポーツ環境・デバイスでの分析データ提示システムの実装【フェーズ4】競技の枠を超えて適応的に分析データを提示する可視化技術への拡張なお,【フェーズ4】については,既に一部を先行着手しており,研究期間終了までに計画の通りに進めることができる見込みである. | KAKENHI-PROJECT-17K00148 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K00148 |
小児・母性看護学領域で活用する感性教材モデルの開発と有用性の検討 | 小児・母性看護学領域で使用者に「温かさ」をもたらすことが可能な新生児型感性教材モデルの開発と有用性の検討を行なった。看護師と産科の助産師を対象とした被験者実験の結果、感性教材モデルの平均表面温は概ね3235°Cを保つ熱性能が要求されることがわかった。産科・小児科に検診に訪れる母子、看護師を対象にした「温かさ」評価実験の結果、皮膚表面温の低い被験者のモデルの「温かさ」評価は高くなることがわかった。感性教材モデルの表面と被験者の手腕の皮膚表面の伝熱が.ないことに拠るものと考えられた。小児・母性看護学領域で使用者に「温かさ」をもたらすことが可能な新生児型感性教材モデルの開発と有用性の検討を行なった。看護師と産科の助産師を対象とした被験者実験の結果、感性教材モデルの平均表面温は概ね3235°Cを保つ熱性能が要求されることがわかった。産科・小児科に検診に訪れる母子、看護師を対象にした「温かさ」評価実験の結果、皮膚表面温の低い被験者のモデルの「温かさ」評価は高くなることがわかった。感性教材モデルの表面と被験者の手腕の皮膚表面の伝熱が.ないことに拠るものと考えられた。初年度は、新生児型感性教材モデルの開発に関する基礎的検討として、主として試作モデルの熱性能に関する被験者実験を、北海道札幌市にある総合病院の産科外来にて産後1ヶ月以内の母親を対象に実施した。方法は、被験者が新生児と試作モデルのそれぞれを「抱く直前」・「抱いている途中」・「抱き終えた3分経過後」にて、被験者胸部から腹部までの着衣の表面温度分布を赤外線放射カメラにて記録した。研究の倫理的配慮については所属施設倫理委員会の承認を得た。また、被験者に対しては、研究概要、研究参加の自由意志の尊重、拒否や中途辞退の権利と不利益からの保護、デジタルカメラ・赤外線放射カメラによる撮影に伴う安全性、個人情報の保護および公開方法などに関する説明を行い、同意書に署名を得た。実験の結果、以下の1)から3)が確認できた。1)試作モデルの「やわらかさ」の評価は、新生児に近い評価を得た。2)「重たさ」の評価は、試作モデル頭部の重量感が新生児より軽いことがわかった。3)「温かさ」の評価は、試作モデルを抱き終えた被験者の着衣表面温は平均30°Cで、新生児より若干低く、「温かさ」の持続性について課題を得た。実用化に向けた今後の課題としては、モデル体内の熱源ポイント数を増やす、もしくは、熱伝導性能・熱容量の高い材料を選択するなどの検討が必要だと考えられる。実験後に、改良版試作モデルの制作を行ない、伝熱試験を実施した結果、モデル外部から電力を15分供給した後に、電源を外してから1時間程度は、モデルの体表面温を30°C以上に保つことが確認できた。以上は、日本看護科学学会学術集会にて成果を公表した。平成22年度は、新生児型感性教材モデルの熱源に関する見直しとその検証を行なった。本教材は、医療・看護の現場でさまざまなユーザーを想定しているが、簡便な取り扱いで「温かさ」を提示する教材としての条件を十分に満す仕様ではなかった。そこで、頭部・腕部に熱源を増設した試作モデルの被験者実験を行ない、教材の原材料となっているシリコーンゴムの内部に電熱ヒータを内蔵させ、これらの電源制御を管理することで教材運用中の体表温度を維持する方法に改めた。今年度は、本試作モデルの「温かさ」評価に加え、試作モデルの体表温度と被験者の手の表面温の関係を明らかにした。被験者実験は、倫理申請によって承認された内容について、北海道札幌市の総合病院の小児科病棟の看護師と産科病棟の助産師を対象とした。方法は、体表温度が新生児に近くなるよう予め温めた試作モデルを、被験者に1分間抱いた直後に被験者の温冷感申告と、試作モデルの「温かさ」、「やわらかさ」など7項目の5段階で評価した。被験者の着衣の表面温を赤外線放射カメラにて撮影した。手の皮膚表面温度の低い被験者は、試作モデルの「あたたかさ」評価が高くなり、試作モデルの表面温度を室温より10°C以上高くすると、モデルの「温かさ」評価は低くなることがわかった。したがって、感性教材モデルの平均表面温は概ね3235°Cを保つ熱性能が要求され、感性教材モデルを使用する室温は2426°C程度が「温かさ」を感じやすい室内環境と考えられる。最終年度の平成23年度は、上記の熱性能を満足するモデルの制作と、いくつかの室内環境条件における被験者実験を重ねて試作モデルの精度と有効性を検証し、実モデルの制作を行なう予定である。最終年度は、開発した第3次感性教材モデルを用いて、実際の産科・小児科に検診に訪れる母子、および当該看護師を対象にした「温かさ」評価実験を行なった(札幌市立大学倫理委員会の承認を得た)。実験では、被験者の感性教材モデルに対する「温かさ」の5段階の評価(とても似ている・似ている・どちらともいえない・似ていない・まったく似ていない)と、被験者の温冷感、被験者の皮膚表面温(手腕)、感性教材モデルの表面温(頭・肩・腰・腹)の相関をみた。 | KAKENHI-PROJECT-21500203 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21500203 |
小児・母性看護学領域で活用する感性教材モデルの開発と有用性の検討 | その結果、被験者の手腕の皮膚表面温と温冷感に強い相関はなく、感性教材モデルの表面温が極端に高いとき、モデルの「温かさ」評価は低いことがわかった(特に、肩部と腰部)。また、皮膚表面温の低い被験者は、感性教材モデルの「温かさ」評価は高く、感性教材モデル表面温が室温より10°C以上高いと、モデルの「温かさ」評価は低くなることがわかった。さらに、感性教材モデルの表面と被験者の手腕の皮膚表面の温度差がほとんどなければ、モデル表面と被験者の間の伝熱が少ないので、「温かさ」の評価は高くなることがわかった。 | KAKENHI-PROJECT-21500203 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21500203 |
光学的マルチスケールひずみ分布計測法の開発と損傷メカニズムの実験的解明 | 本研究は,撮影された規則格子模様の画像を用いて画像処理より生成されるモアレ縞画像の位相解析技術を利用したマルチスケール変位・ひずみ計測手法を開発した.開発したモアレ計測手法を異なるスケールの構造材料の損傷評価に適用し,以下の研究成果が得られた.今年度は4件の英文学術論文,1件の和文解説記事,6件の国際会議と11件の国内学会でそれぞれ成果を外部発信した.1.CFRP複合材の積層断面に3ミクロンピッチの微細格子を付与し,レーザ顕微鏡下での3点曲げ試験を行った.異なる荷重負荷に対して,取得されたCFRP積層材の垂直ひずみとせん断ひずみ分布から,損傷破壊におけるマトリックスクラックと層間剥離の起因となる引張ひずみの集中部からマイクロクラックの発生場所の特定と,異なる繊維方向の層間で発生したせん断ひずみの増加がマイクロクラックの発生を誘発することを明らかにした.2.顕微鏡下での試験片観察の際に,試料表面に意図しない埃や傷が付着することがある.それが原因で従来の空間的な位相接続方法によるひずみ算出では広い範囲にわたって正しいひずみ分布が得られないという問題点があった.この問題点を解決するために,新たに局部位相接続方法によるひずみ算出方法を開発した.3.大きい構造物である橋梁の変位・振動測定を行った.ビデオカメラによる動画記録から時系列での変位を得られるようになった.また動画記録で用いる画像圧縮に対して,画像の圧縮率とサンプリングモアレ法の変位測定の関係を調査した.その結果,低い空間周波数の情報(モアレ縞)を用いるサンプリングモアレ法は画像の圧縮に強いことを確認できた.このことから,今後顕微鏡またはシネマカメラの動画記録を利用するだけで,簡便に動的な変位・ひずみ分布が得られるようになり,小さい材料から大きいインフラ構造物まで幅広いスケールでの光学的変位・ひずみ計測が可能になった.本研究では、モアレ現象及び縞画像の位相解析技術を利用した光学的マルチスケール変位・ひずみ計測手法を開発し、CFRP複合材料および異種構造材料での損傷を実験的アプローチによりそのメカニズムを解明しようとするものである。初年度では専用のマルチスケール格子の設計と特注作製および高精度な全視野変位・ひずみ分布を測定できる新しい計測手法の原理を確立した。以下の研究成果が得られ、特許出願・論文発表・学会発表を行った。1.異なる空間周波数を有するマルチスケール格子を新たに設計した。大視野と小視野両方を最適なモアレ観察できるように、750nmピッチの小格子と15ミクロンピッチの大格子を混在したマルチスケール格子のモールドを作製した。作製したモールドを試料表面にマルチスケール格子を付与し、同一レーザー顕微鏡で異なる倍率観察を行った。その結果、それぞれの観察倍率で2方向のモアレ縞画像をサンプリングモアレ法より生成できることを確認できた。特に小視野での微細格子からきれいなモアレ縞画像を生成するために、フーリエ格子変換法を導入した。これにより、材料全体のひずみ集中部と界面での高分解能のひずみ分布を同時に評価する見込みができた。2.2次元格子の2方向同時解析によるせん断ひずみ測定法を開発した。材料表面の損傷評価を行ううえで重要とされている最大・最小主ひずみ分布をより高精度で測定できる光学的方法を新たに考案した。本開発手法は、従来評価困難だった複雑な変形挙動を示すCFRP複合材及び半導体チップ等の異種材料間での損傷メカニズムを実験的アプローチにより明らかにするうえで極めて重要と考える。3.時系列で撮影された連続した実験画像を用いて、新たに時空位相平均法を考案し、その有効性をシミュレーションより確認した。本手法はひずみ算出の際に誤差の原因となる外来ノイズの影響を低減できる可能性が高い。本研究の目的は、構造材料を対象に広視野で試料全体のひずみ集中部を特定し、その後ひずみ集中部に着目し、高倍率での観察から高精度なひずみ評価ができる光学的マルチスケール計測手法を開発するものである。初年度では、レーザー顕微鏡の下で異なる観察倍率でマルチスケール評価できるように、新たにマルチスケール格子の設計と作製を行った。実際に顕微鏡で観察を行い、大視野および小視野での格子を観察し、それぞれの倍率で縞格子画像の位相解析ができることを確認できた。またより高精度なせん断ひずみ分布計測ができるように、新たな2次元格子を用いた2方向変位同時解析手法により、高精度なせん断ひずみ計測法を開発した。加えて、実験最中に連続的に撮影した格子画像を活用した時空位相平均法の計測原理を新たに考案し、シミュレーションよりその有効性を確認した。これらの達成は当初の計測通りである。本研究は,規則的正しい格子模様の撮影画像から生成できるモアレ縞画像の位相解析技術を利用した光学的マルチスケール変位・ひずみ計測手法を開発し,CFRP複合材料および異種構造材料の損傷を実験的アプローチにより,その破壊メカニズムを解明しようとするものである.今年度はCFRP複合材を対象に機械的試験を行い,以下の研究成果が得られ,2件の特許出願,3件の英文学術論文,3件の和文解説記事,5件の国際会議と9件の国内学会でそれぞれ成果を外部発信した.1.CFRP複合材の3点曲げ試験を行い,CFRPの損傷破壊の際にマトリックスクラック・層間剥離・繊維破断の3つに着目し,荷重の違いに伴う異なる撮像倍率での格子画像を取得し,異なるスケールでのひずみ分布をサンプリングモアレ法より測定することができた.曲げ応力による引張ひずみ分布と層間におけるせん断ひずみ分布の傾向を得ることができた. | KAKENHI-PROJECT-16K05996 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K05996 |
光学的マルチスケールひずみ分布計測法の開発と損傷メカニズムの実験的解明 | 2.2次元直交格子を用いて,顕微鏡と試験片表面に貼り付けた格子の角度に依存しない高精度なひずみ分布算出法を提案した.サンプリングモアレ法により得られる水平方向と垂直方向の変位分布を1セットの変位データとして扱い,同時に垂直ひずみとせん断ひずみ分布を高精度で測定できるアルゴリズムを開発した.これをCFRP複合材などの機械的試験へ応用した.3.モアレ法を用いて大きい構造物の変位を測定する場合,格子ピッチの半分以上を超えると正しく変位量を測定できない問題点に対して,異なる2種類の格子ピッチを有するカラー格子による広レンジの変位測定方法を考案した.加えて,細長いような試験片や構造物の変位を測定できるように,新たに斜め格子を用いた変形計測方法を考案した.これらの2つの新しい画像変位計測方法は当初の研究計画にはなかったもので,本研究での実験実施の最中に新しく開発できた方法である.本研究の目的は,光学的手法を用いて構造材料の破壊挙動をマルチスケールで材料表面のひずみ分布を測定できる方法を開発するものである.今年度は2次元直交格子を用いた高精度なひずみ分布測定方法を開発したことに加えて,カラー格子を利用して大きい構造物の変位挙動を広レンジで測定できる方法を考案した.また,斜め格子による長細い構造物の変形分布を測定できる方法も開発した.これらの方法をCFRP複合材料の変形計測へ応用し,有益な実験結果が得られた.これらの成果は当初の予定通りである.本研究は,撮影された規則格子模様の画像を用いて画像処理より生成されるモアレ縞画像の位相解析技術を利用したマルチスケール変位・ひずみ計測手法を開発した.開発したモアレ計測手法を異なるスケールの構造材料の損傷評価に適用し,以下の研究成果が得られた.今年度は4件の英文学術論文,1件の和文解説記事,6件の国際会議と11件の国内学会でそれぞれ成果を外部発信した.1.CFRP複合材の積層断面に3ミクロンピッチの微細格子を付与し,レーザ顕微鏡下での3点曲げ試験を行った.異なる荷重負荷に対して,取得されたCFRP積層材の垂直ひずみとせん断ひずみ分布から,損傷破壊におけるマトリックスクラックと層間剥離の起因となる引張ひずみの集中部からマイクロクラックの発生場所の特定と,異なる繊維方向の層間で発生したせん断ひずみの増加がマイクロクラックの発生を誘発することを明らかにした.2.顕微鏡下での試験片観察の際に,試料表面に意図しない埃や傷が付着することがある.それが原因で従来の空間的な位相接続方法によるひずみ算出では広い範囲にわたって正しいひずみ分布が得られないという問題点があった.この問題点を解決するために,新たに局部位相接続方法によるひずみ算出方法を開発した.3.大きい構造物である橋梁の変位・振動測定を行った.ビデオカメラによる動画記録から時系列での変位を得られるようになった.また動画記録で用いる画像圧縮に対して,画像の圧縮率とサンプリングモアレ法の変位測定の関係を調査した.その結果,低い空間周波数の情報(モアレ縞)を用いるサンプリングモアレ法は画像の圧縮に強いことを確認できた. | KAKENHI-PROJECT-16K05996 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K05996 |
悪性脳腫瘍におけるサバイビンmRNA発現量の定量的解析と遺伝子治療への応用 | 脳腫瘍、膵臓癌、結腸癌切除標本より、サバイビンとそのsplice variants mRNAを抽出し、LightCyclerを用いて定量的発現解析を行うことにより、悪性度判定、予後判定の有用性を検討した。またその結果いずれの腫瘍においてもサバイビンおよびそのsplice variantのうちのsurvivin Δ3の発現がその組織学的悪性度と相関していたがsplice variantのうちsurvivin 2Bとは相関しなかった。またこれらのサバイビンの発現はその患者の予後とも相関していた。一方で、サバイビンプロモーターを利用し、ICP4遺伝子を欠損した単純ヘルペスウイルス株d120にサバイビンプロモーターによりICP4を発現するユニットを相同組み換えを利用して挿入した組み換えウイルスを作成した。このウイルスはサバイビン高発現株では効率に複製を繰り返し、ヌードマウスを用いた皮下腫瘍モデルにおいてその細胞を破壊したが、一方で、その低発現株では抗腫瘍効果を認めなかった。どちらの細胞株も組織非特異的な単純ヘルペスウイルスhrR3ではよく破壊された。またこのサバイビン特異的複製可能型ウイルスの発現ユニットにIgGの4F2 enhancer unitを挿入したところ、この組織特異的細胞破壊の効率は倍加することが判明した。一方膵癌細胞株でSiRNAの技法でサバイビンの発現を抑制することにより、その細胞の放射線感受性が増強した。(1)脳腫瘍切除標本より、サバイビンとそのsplice variants mRNAを抽出し、LightCyclerを用いて定量的発現解析を行うことにより、悪性度判定、予後判定を検討している。脳腫瘍患者において、survivin、survivin-2Bよりsurvivin-ΔEx3のmRNAの発現を定量し、その患者の予後をアンケート調査により追跡している。現在アンケートを発送中であり、その発現パターンと予後を検討する予定である。(2)サバイビンプロモーターを利用したサバイビン特異的複製可能型単純ヘルペスウイルスを作成し、遺伝子治療の研究行っている。すなわち、単純ヘルペスウイルスの複製に必須なICP4遺伝子を欠失したウイルスd120にサバイビンプロモーター制御下にICP4遺伝子を発現するtransgeneを挿入することにより、サバイビンを発現する腫瘍を選択的に破壊するウイルスを作成した。また、このtransgeneの下流に4F2 enhancerを挿入した組み換えウイルスも作成した。現在これらのウイルスを用いて、in vitroにおける腫瘍細胞破壊の治療実験を行っている。脳腫瘍、膵臓癌、結腸癌切除標本より、サバイビンとそのsplice variants mRNAを抽出し、LightCyclerを用いて定量的発現解析を行うことにより、悪性度判定、予後判定の有用性を検討した。またその結果いずれの腫瘍においてもサバイビンおよびそのsplice variantのうちのsurvivin Δ3の発現がその組織学的悪性度と相関していたがsplice variantのうちsurvivin 2Bとは相関しなかった。またこれらのサバイビンの発現はその患者の予後とも相関していた。一方で、サバイビンプロモーターを利用し、ICP4遺伝子を欠損した単純ヘルペスウイルス株d120にサバイビンプロモーターによりICP4を発現するユニットを相同組み換えを利用して挿入した組み換えウイルスを作成した。このウイルスはサバイビン高発現株では効率に複製を繰り返し、ヌードマウスを用いた皮下腫瘍モデルにおいてその細胞を破壊したが、一方で、その低発現株では抗腫瘍効果を認めなかった。どちらの細胞株も組織非特異的な単純ヘルペスウイルスhrR3ではよく破壊された。またこのサバイビン特異的複製可能型ウイルスの発現ユニットにIgGの4F2 enhancer unitを挿入したところ、この組織特異的細胞破壊の効率は倍加することが判明した。一方膵癌細胞株でSiRNAの技法でサバイビンの発現を抑制することにより、その細胞の放射線感受性が増強した。 | KAKENHI-PROJECT-16659397 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16659397 |
脳梗塞を有する症例に対する脳保護法の確立 | 【材料ならびに方法】交雑犬(雌)の左内頚動脈からシリコン円柱を注入し、左中大脳動脈領域を選択的に塞栓し脳梗塞を作製。12時間後、神経症状をSmith ALらの報告に準じ5段階評価し、score 2もしくは3でかつ4週以上生存したものを慢性脳梗塞モデルとして採用。正常交雑犬および脳梗塞モデルそれぞれ12頭に対して、人工心肺を用いたASCP(直腸温20°C、灌流量10ml/kg/min)を120分間施行した後に36°Cまで復温する実験を行い、以下の4群に分類した:A群(正常犬、非Edaravone投与)、B群(正常犬、Edaravone投与)、C群(慢性脳梗塞犬、非Edaravone投与)、D群(慢性脳梗塞犬、Edaravone投与)(各群ともn=6)。Edaravone投与群には冷却直前と冷却開始30分後にそれぞれEdaravone 1.5mg/kgを投与した。生化学的評価として血液中のmalondialdehyde (MDA)、hexanoyl-lysine(HEL)、Glutamate濃度を経時的に定量し、中枢神経系の機能的評価として体性感覚誘発電位(SEP : somatosensory evoked potential)を計測・解析した。【結果】各群において術前因子および術中因子に有意差を認めなかった。C群において、ASCPI20分後より血液中MDA及びHEL濃度の有意な上昇を認め、復温に伴いその差は拡大した。またC群において、復温中直腸温28°C以降の血液中glutamate濃度の有意な上昇と、復温中直腸温28°Cでの動静脈乳酸較差の有意な拡大を認めた。またSEP解析では、C群において復温後の有意な中枢伝導時間の延長と振幅の低下を認めた。C群で認められた上記全ての有意所見は、D群においては正常犬群と有意差がないまでに改善された。【結論】犬慢性脳梗塞モデル対する順行性選択的脳灌流において、Edaravoneの予防的投与による脳保護効果が認められた。これは脳梗塞既往症例に対する弓部大動脈手術への臨床応用が期待され、今後の手術成績の向上に寄与するものと考えられた。【材料ならびに方法】交雑犬(雌)の左内頚動脈からシリコン円柱を注入し、左中大脳動脈領域を選択的に塞栓し脳梗塞を作製。12時間後、神経症状をSmith ALらの報告に準じ5段階評価し、score 2もしくは3でかつ4週以上生存したものを慢性脳梗塞モデルとして採用。正常交雑犬および脳梗塞モデルそれぞれ12頭に対して、人工心肺を用いたASCP(直腸温20°C、灌流量10ml/kg/min)を120分間施行した後に36°Cまで復温する実験を行い、以下の4群に分類した:A群(正常犬、非Edaravone投与)、B群(正常犬、Edaravone投与)、C群(慢性脳梗塞犬、非Edaravone投与)、D群(慢性脳梗塞犬、Edaravone投与)(各群ともn=6)。Edaravone投与群には冷却直前と冷却開始30分後にそれぞれEdaravone 1.5mg/kgを投与した。生化学的評価として血液中のmalondialdehyde (MDA)、hexanoyl-lysine(HEL)、Glutamate濃度を経時的に定量し、中枢神経系の機能的評価として体性感覚誘発電位(SEP : somatosensory evoked potential)を計測・解析した。【結果】各群において術前因子および術中因子に有意差を認めなかった。C群において、ASCPI20分後より血液中MDA及びHEL濃度の有意な上昇を認め、復温に伴いその差は拡大した。またC群において、復温中直腸温28°C以降の血液中glutamate濃度の有意な上昇と、復温中直腸温28°Cでの動静脈乳酸較差の有意な拡大を認めた。またSEP解析では、C群において復温後の有意な中枢伝導時間の延長と振幅の低下を認めた。C群で認められた上記全ての有意所見は、D群においては正常犬群と有意差がないまでに改善された。【結論】犬慢性脳梗塞モデル対する順行性選択的脳灌流において、Edaravoneの予防的投与による脳保護効果が認められた。これは脳梗塞既往症例に対する弓部大動脈手術への臨床応用が期待され、今後の手術成績の向上に寄与するものと考えられた。【方法】交雑犬(雌)を用いて頸動脈アプローチで脳梗塞モデルを作製。全身麻酔下で人工心肺を用いた超低体温下(直腸温20°C)で順行性選択的脳灌流を120分間施行した後に36°Cまで復温した。正常犬、脳梗塞犬それぞれラジカット投与群/非投与群で4群(各群のn=3)に分け比較検討した。edaravone投与群には冷却直前と冷却開始60分後にそれぞれedaravone 3mg/kgを投与した。評価は中枢神経系機能的評価として体性感覚誘発電位(SEP : somatosensory evoked potential)を測定し、また生化学的評価としてfree radicalによって障害された核酸の代謝産物である8-OhdGと脂質過酸化産物であるMDAを頸静脈から採取した血清で定量することで行った。【結果】脳梗塞犬モデルにおいて復温後のSEPにおけるcentral conduction timeの延長とamplitudeの低下を認め、edaravone投与によるこれらの改善傾向を認めた。 | KAKENHI-PROJECT-16591391 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16591391 |
脳梗塞を有する症例に対する脳保護法の確立 | また脳梗塞犬モデルにおいて、復温開始後の血漿8OHdGと血漿MDAの有意な増加を認め、同モデルにおけるedaravone投与によるこれらの抑制傾向を認めた。【まとめ】脳梗塞を有する脳に対する順行性選択的脳灌流法において、予防的なedaravone投与による脳保護効果が推測された。これは弓部大動脈手術における術後脳機能障害の予防、軽減につながることが推測され、さらなる弓部大動脈手術成績の向上に寄与する可能性があると考えられた。【方法】交雑犬(雌)を用いて頸動脈アプローチで脳梗塞モデルを作製。全身麻酔下で人工心肺を用いた超低体温下(直腸温20°C)で順行性選択的脳灌流を120分間施行した後に36°Cまで復温した。正常犬、脳梗塞犬それぞれラジカット投与群/非投与群で4群(各群のn=5)に分け比較検討した。edaravone投与群には冷却直前と冷却開始60分後にそれぞれedaravone 1.5mg/kgを投与した。評価は中枢神経系機能的評価として体性感覚誘発電位(SEP:somatosensory evoked potential)を測定し、また生化学的評価としてfree radicalによって障害された脂質の過酸化産物であるHEL:Hexanoyl-lysineとMDA:Malondialdehideを血漿で経時的に定量することで行った。【結果】脳梗塞犬モデルにおいて復温後のSEPにおけるcentral couduction timeの延長とamplitudeの低下を認め、edaravone投与によるこれらの改善傾向を認めた。また脳梗塞犬モデルにおいて、復温開始後の血漿HELと血漿MDAの有意な増加を認め、同モデルにおけるedaravone投与によるこれらの抑制傾向を認めた。【まとめ】脳梗塞を有する脳に対する順行性選択的脳灌流法において、予防的なedaravone投与による脳保護効果が推測された。これは弓部大動脈手術における術後脳機能障害の予防、軽減につながることが推測され、さらなる弓部大動脈手術成績の向上に寄与する可能性があると考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-16591391 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16591391 |
長時間勤務者における睡眠パターンが循環器危険因子に及ぼす影響に関しての研究 | 今回の研究の目的は、慢性疲労を訴える長時間勤務従事者に多く見られる睡眠関連自覚症状と睡眠パターンの循環器危険因子に対する影響を検討し、その関係を明らかにすることである。特に長時間勤務者における慢性疲労の初期症状と考えられる睡眠の質、量及びパターンを数量化することにより、長時間勤務者における睡眠症状の得点化とスクリーニングテストへの活用を目的とする。平成17年度は研究計画書を策定し、協力事業場と契約を締結して、健診時を利用した調査及び健康診断成績からなるデータベースを作成した。また、朝型夜型パターン調査用紙(Morning Evening Scale)の簡易版を作成した。平成18年度は引き続きデータベースの修正と追加とを行い、得られたデータベースの解析を行い、睡眠と慢性疲労、メンタルヘルス及び循環器危険因子との関連について検討した。調査においては既知の他の労働要因について考慮し、勤務環境(職種、交代勤務の有無とその種類)、勤務状況(平日の始業時間、就業時間、休日勤務日数、休日勤務時間、通勤時間等)等の調査を行い、実態を反映した労働時間を把握する質問票を開発した。慢性疲労の評価にはCFSIを用い、精神健康度の評価には抑うつ度調査を用いた。解析においては睡眠の質、量及び生活の朝型夜型パターンによる群分けを行い、共分散分析及び共分散構造分析を行い、睡眠と疲労及び抑うつとの関連を検討した。同時に長時間勤務と精神健康度への影響についても検討を行った。結果として、調査対象においては夜型パターンがほとんど在籍せず、軽度夜型パターンと朝型および軽度朝型パターンに区分された。軽度夜型パターンでは朝型パターンに比べて長時間労働による疲労は初期には小さいが、労働時間が延長することにより慢性疲労度、ストレスは強くなる傾向が認められた。一方の朝型パターンでは、月労働時間260時間に閥値を持つ影響が認められた。今回の研究の目的は、慢性疲労を訴える長時間勤務従事者に多く見られる睡眠関連自覚症状と睡眠パターンの循環器危険因子に対する影響を検討し、その関係を明らかにすることである。特に長時間勤務者における慢性疲労の初期症状と考えられる睡眠の質、量及びパターンを数量化することにより、長時間勤務者における睡眠症状の得点化とスクリーニングテストへの活用を目的とする。平成17年度は研究計画書を策定し、協力事業場と契約を締結して、健診時を利用した調査及び健康診断成績からなるデータベースを作成した。また、朝型夜型パターン調査用紙(Morning Evening Scale)の簡易版を作成した。平成18年度は引き続きデータベースの修正と追加とを行い、得られたデータベースの解析を行い、睡眠と慢性疲労、メンタルヘルス及び循環器危険因子との関連について検討した。調査においては既知の他の労働要因について考慮し、勤務環境(職種、交代勤務の有無とその種類)、勤務状況(平日の始業時間、就業時間、休日勤務日数、休日勤務時間、通勤時間等)等の調査を行い、実態を反映した労働時間を把握する質問票を開発した。慢性疲労の評価にはCFSIを用い、精神健康度の評価には抑うつ度調査を用いた。解析においては睡眠の質、量及び生活の朝型夜型パターンによる群分けを行い、共分散分析及び共分散構造分析を行い、睡眠と疲労及び抑うつとの関連を検討した。同時に長時間勤務と精神健康度への影響についても検討を行った。結果として、調査対象においては夜型パターンがほとんど在籍せず、軽度夜型パターンと朝型および軽度朝型パターンに区分された。軽度夜型パターンでは朝型パターンに比べて長時間労働による疲労は初期には小さいが、労働時間が延長することにより慢性疲労度、ストレスは強くなる傾向が認められた。一方の朝型パターンでは、月労働時間260時間に閥値を持つ影響が認められた。本年度は、長時間勤務者に対する面接指導を行っている企業2社と契約を結び、それぞれの企業において面接指導前の問診及び面接時に勤務環境(職種、交代勤務の有無とその種類、役職等)、勤務状況(平日の始業時間、就業時間、休日勤務日数、休日勤務時間、通勤時間等)及びパソコン起動時間の記録による勤務時間を調査した。また、睡眠に関しては、睡眠時間調査(平日及び休日)、睡眠に関する自覚症状、Morning Evening Scaleを調査した。これらの結果より、睡眠タイプ及び生活リズムタイプで対象を区分した。さらに抑うつ調査を行いメンタルヘルスの状況についても調査を加えた。調査を行った対象者数は、データの整理前ではあるが、対象者及び対照者の合計で約4000名であり、これを基礎調査とした。さらに、調査対象の健康診断成績を過去3年さかのぼり、問診情報及び健康診断成績を各人についてデータの連結を行った。現在は、Morning Evening Scaleの簡易版を作成するための解析及び長時間勤務者の睡眠障害発生状況を解析中である。平成18年度は、健診結果より得られた循環器リスクの推移と長時間勤務及び睡眠状況との関連を労働要因、身体的要因および生活習慣を考慮したモデルで解析する予定である。今回の研究の目的は、慢性疲労を訴える長時間勤務従事者に多く見られる睡眠関連自覚症状と睡眠パターンの循環器危険因子に対する影響を検討し、その関係を明らかにすることである。特に長時間勤務者における慢性疲労の初期症状と考えられる睡眠の質、量及びパターンを数量化することにより、長時間勤務者における睡眠症状の得点化とスクリーニングテストヘの活用を目的とする。平成17年度は研究計画書を策定し、協力事業場と契約を締結して、健診時を利用した調査及び健康診断成績からなるデータベースを作成した。また、朝型夜型パターン調査用紙(Morning Evening Scale)の簡易版を作成した。 | KAKENHI-PROJECT-17590510 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17590510 |
長時間勤務者における睡眠パターンが循環器危険因子に及ぼす影響に関しての研究 | 平成18年度は引き続きデータベースの修正と追加とを行い、得られたデータベースの解析を行い、睡眠と慢性疲労、メンタルヘルス及び循環器危険因子との関連について検討した。調査においては既知の他の労働要因について考慮し、勤務環境(職種、交代勤務の有無とその種類)、勤務状況(平日の始業時間、就業時間、休日勤務日数、休日勤務時間、通勤時問等)等の調査を行い、実態を反映した労働時間を把握する質問票を開発した。慢性疲労の評価にはCFSIを用い、精神健康度の評価には抑うつ度調査を用いた。解析においては睡眠の質、量及び生活の朝型夜型パターンによる群分けを行い、共分散分析及び共分散構造分析を行い、睡眠と疲労及び抑うつとの関連を検討した。同時に長時間勤務と精神健康度への影響についても検討を行った。結果として、調査対象においては夜型パターンがほとんど在籍せず、軽度夜型パターンと朝型および怪度朝型パターンに区分された。怪度夜型パターンでは朝型パターンに比べて長時間労働による疲労は初期には小さいが、労働時間が延長することにより慢性疲労度、ストレスは強くなる傾向が認められた。一方の朝型パターンでは、月労働時間260時間に閾値を持つ影響が認められた。 | KAKENHI-PROJECT-17590510 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17590510 |
病態モデルマウスに対する多因子連鎖解析を用いる糖尿病の病因遺伝子の解析 | 2型糖尿病モデルマウスのdbマウス、およびNODマウスの遺伝的背景で作成されたTg(NOD-RGP-IL-10)を対象として、変異ob受容体あるいはIL-10遺伝子発現下で糖尿病発症を修飾する複数の疾患感受性遺伝子の染色体座位を多因子連鎖解析法で解析し、新たな糖尿病発症の候補遺伝子を同定する目的で検討を行い、以下の知見を得た。マウス種の遺伝的背景の違いで抽出される遺伝子が異なるため、先ず、dbマウスとの交配で固体間で遺伝形式の多型を示すC3Hマウスを選択した。さらに、dbマウスとの交配で誕生したF2インタークロスマウス約300匹の内、dbホモ(8週齢時)、ヘテロ、野生型(10週齢時)の各群マウスについて、糖尿病に関する定量的遺伝形式として、体重、随時および空腹時血糖値、糖負荷後の血糖値およびインスリン値、膵組織の評価を収録した。同時に、マウスのマイクロサテライトマーカーを用いて、各群マウスの遺伝子型をスクリーニングし、MapMaker/QTLソフトを用いて、定量的遺伝子形式と連鎖する座位を検討した結果、有意に連鎖する座位を見い出した。糖尿病を発症するNOD-RGP-IL-10とC57BL/6マウスとの交配によるN2バッククロスマウス約150匹を作成し、IL-10を発現するN2マウスでは15%の糖尿病の発症率を示すことを確認した。1)と同様に、糖尿病の発症と連鎖する座位の検討を進行中である。2型糖尿病モデルマウスのdbマウス、およびNODマウスの遺伝的背景で作成されたTg(NOD-RGP-IL-10)を対象として、変異ob受容体あるいはIL-10遺伝子発現下で糖尿病発症を修飾する複数の疾患感受性遺伝子の染色体座位を多因子連鎖解析法で解析し、新たな糖尿病発症の候補遺伝子を同定する目的で検討を行い、以下の知見を得た。マウス種の遺伝的背景の違いで抽出される遺伝子が異なるため、先ず、dbマウスとの交配で固体間で遺伝形式の多型を示すC3Hマウスを選択した。さらに、dbマウスとの交配で誕生したF2インタークロスマウス約300匹の内、dbホモ(8週齢時)、ヘテロ、野生型(10週齢時)の各群マウスについて、糖尿病に関する定量的遺伝形式として、体重、随時および空腹時血糖値、糖負荷後の血糖値およびインスリン値、膵組織の評価を収録した。同時に、マウスのマイクロサテライトマーカーを用いて、各群マウスの遺伝子型をスクリーニングし、MapMaker/QTLソフトを用いて、定量的遺伝子形式と連鎖する座位を検討した結果、有意に連鎖する座位を見い出した。糖尿病を発症するNOD-RGP-IL-10とC57BL/6マウスとの交配によるN2バッククロスマウス約150匹を作成し、IL-10を発現するN2マウスでは15%の糖尿病の発症率を示すことを確認した。1)と同様に、糖尿病の発症と連鎖する座位の検討を進行中である。NODマウスの遺伝的背景で作成されたTg(NOD-IL-10-Tg)、およびII型糖尿病モデルマウスのdb/dbマウスを対象として、IL-10あるいは変異OB-Rの遺伝子発現下で糖尿病発病を修飾する、複数の糖尿病病因遺伝子の座位を、多因子連鎖解析の方法で解析し、新たな糖尿病発症の候補遺伝子を探索する目的で検討を行い、現在までに以下の知見を得た。1)F2バッククロスおよびインタークロスマウスの作成糖尿病を発症するNOD-IL-10-TgをMHC Class IIのIEα^dを発現するNOD-IE-Tgの遺伝的背景で維持し、NOD-IE-Tg(hemi-Tg)とC57BL/6マウスと交配させたF1の内、IEα^dを有さないF1をNODマウスに戻し交配させたF2バッククロスマウスを121匹(58匹;IL-10+,63匹;IL-10-)作成した。IL-10を発現するF2マウスは14%の糖尿病発症率を示すことが確認された。マウス種の遺伝的背景により抽出される遺伝子が異なるため、db/dbマウスとの交配で、遺伝形質の多型を示す系統をC3H、DBA2マウスで検討した。2種の交配系統について、25匹のdb/+のヘテロF1マウス、PCR-PIRA法を用いて区別したdb/db(ホモ)、db/+(ヘテロ)および野生型マウス、計35匹のF2インタークロスマウスの糖尿病の発症頻度、体重、糖負荷後の血糖値について検定した結果、マウス個体間で遺伝形質の多型を示すC3Hマウス交配系を選択した。現在までに、ホモ(15匹)、ヘテロ(33匹)、野生型(12匹)が得られ、さらにn数を増加中である。2)糖尿病に関する指標とマウスゲノム全体の連鎖スクリーニングdb/db、db/+および野生型を区別したF2マウスについて、糖尿病に関する定量的遺伝形質として、週齢ごとに血糖値、体重、膵島炎のグレーディング、糖負荷後の血糖値、血清インスリン値を収録した。同時に、インターネットで公開されているマウスの連鎖地図を基に、PCRで増幅可能で20cM以下の連鎖距離で全ゲノムをカバーする遺伝子マーカーを、合計200種類選択し、スクリーニングを実施中である。現在までに、各群マウスについてChr.1,2の35種の遺伝子マーカーを用いてスクリーニングを終了した。 | KAKENHI-PROJECT-09470224 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09470224 |
病態モデルマウスに対する多因子連鎖解析を用いる糖尿病の病因遺伝子の解析 | 3)結果のデータベースの作成数種の解析ソフトについて検討した結果、MapMakerを用いてLOD scoreを解析すると同時に、血糖値、体重、膵島炎のグレーディング、糖負荷後の血糖値、血清インスリン値を、正規分布する変数に転換後、MapMaker/QTLを用いて定量的遺伝形質と遺伝子座位との連鎖を解析する方法で現在検定中である。NODマウスの遺伝的背景で作成されたTg(NOD-IL-10-Tg)、およびII型糖尿病モデルマウスのdb/dbマウスを対象として、IL-10あるいは変異OB-Rの遺伝子発現下で糖尿病発病を修飾する、複数の糖尿病病因遺伝子の座位を、多因子連鎖解析の方法で解析し、新たな糖尿病発症の候補遺伝子を探索する目的で検討を行い、現在までに以下の知見を得た。1) F2バッククロスおよびインタークロスマウスの作成糖尿病を発症するNOD-IL-10-TgをMHC Class IIのIEα^dを発現するNOD-IE-Tgの遺伝的背景で維持し、NOD-IE-Tg(hemi-Tg)とC57BL/6マウスと交配させたF1の内、IEα^dを有さないF1をNODマウスに戻し交配させたF2バッククロスマウスを131匹(68匹;IL-10+,63匹:IL-10-)作成した。IL-10を発現するF2マウスは16%の糖尿病発症率を示すことが確認された。マウス種の遺伝的背景により抽出される遺伝子が異なるため、db/dbマウスとの交配で、遺伝形質の多型を示す系統をC3H、DBA2マウスで検討した。2種の交配系統について、25匹のdb/+のヘテロF1マウス、PCR-PIRA法を用いて区別したdb/db(ホモ)、db/+(ヘテロ)および野性型マウス、計35匹のF2インタークロスマウスの糖尿病の発症頻度、体重、糖負荷後の血糖値について検定した結果、マウス個体間で遺伝形質の多型を示すC3Hマウス交配系を選択した。現在までに、ホモ(37匹)、ヘテロ(82匹)、野性型(31匹)が得られ、さらにn数を増加中である。2)糖尿病に関する指標とマウスゲノム全体の連鎖スクリーニングdb/db、db/+および野性型を区別したF2マウスについて、糖尿病に関する定量的遺伝形質として、ホモマウスは8週齢時で、ヘテロマウスは10週齢時で血糖値、体重、膵島炎のグレーディング、糖負荷後の血糖値、血清インスリン値を収録した。同時に、インターネットで公開されているマウスの連鎖地図を基に、PCRで増幅可能で20cM以下の連鎖距離で全ゲノムをカバーする遺伝子マーカーを、合計200種類選択し、スクリーニングを実施中である。現在までに、各群マウスについてChr.1,2,3の44種の遺伝子マーカーを用いてスクリーニングを終了した。3)結果のデータベースの作成血糖値、体重、膵島炎のグレーディング、糖負荷後の血糖値、血清インスリン値を、正規分布する変数に転換後、MapMaker/QTLを用いて定量的遺伝形質と遺伝子座位との連鎖を解析する方法で、現在解析中である。種々の検討の結果、MapMaker/QTLの使用は、ほぼ完全に実施可能となった。2型糖尿病モデルマウスのdbマウス、およびNODマウスの遺伝的背景で作成されたTg(NOD-RGP-IL-10)を対象として、変異ob受容体あるいはIL-10遺伝子発現下で糖尿病発症を修飾する複数の疾患感受性遺伝子の染色体座位を多因子連鎖解析法で解析し、新たな糖尿病発症の候補遺伝子を同定する目的で検討を行った。 | KAKENHI-PROJECT-09470224 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09470224 |
コンピュータを用いた自動陶材築盛における形状制御 | 切削加工では工具の送りに対応して被削材が削られるが,陶材築盛による造形では材料の供給量が必ずしも仕上がり形状に対応しない.そのためコンピュータを用いて築盛の自動化を図る場合も人間が行っているように築盛の途中で形状を測定し,最終目標とする形状と比較しながら築盛を進めていく必要があると考えられる.そこで本研究では自動築盛における築盛体の形状測定と築盛部位の自動決定アルゴリズム,すなわち自動築盛における形状のフィードバック制御方法について検討した.試作した自動築盛プログラムは形状測定,築盛部位決定,築盛実行の一連の工程を陶材が不足している部位が無くなるまで繰り返すものとした.築盛体の形状測定にはレーザスリット光源による光切断法を用いた.CCDカメラで取り込んだ画像をそのまま計算に用いると形状データに大きな欠損やノイズが生じるので,ノイズ除去のための各種画像処理を行い,さらにデータ補間を施すことにより安定した形状データが得られるようにした.築盛部位の決定は築盛体の現在の形状をメタルフレームや最終形状と比較することにより行った.また陶材泥の流動を考慮して,一回の築盛は高さの低いところから一定の体積率で行うものとした.前歯メタルフレームへの築盛実験から,現在の築盛体の形状を次の築盛に反映させることにより,歯牙形状に近い立体的な築盛体が得られることが分かった.また試作装置ではフレームの位置決めの自由度に制約があるため形状測定や築盛ができない部位が生じたが,これは装置に自動ステージを追加することにより解消することが可能であると思われた.切削加工では工具の送りに対応して被削材が削られるが,陶材築盛による造形では材料の供給量が必ずしも仕上がり形状に対応しない.そのためコンピュータを用いて築盛の自動化を図る場合も人間が行っているように築盛の途中で形状を測定し,最終目標とする形状と比較しながら築盛を進めていく必要があると考えられる.そこで本研究では自動築盛における築盛体の形状測定と築盛部位の自動決定アルゴリズム,すなわち自動築盛における形状のフィードバック制御方法について検討した.試作した自動築盛プログラムは形状測定,築盛部位決定,築盛実行の一連の工程を陶材が不足している部位が無くなるまで繰り返すものとした.築盛体の形状測定にはレーザスリット光源による光切断法を用いた.CCDカメラで取り込んだ画像をそのまま計算に用いると形状データに大きな欠損やノイズが生じるので,ノイズ除去のための各種画像処理を行い,さらにデータ補間を施すことにより安定した形状データが得られるようにした.築盛部位の決定は築盛体の現在の形状をメタルフレームや最終形状と比較することにより行った.また陶材泥の流動を考慮して,一回の築盛は高さの低いところから一定の体積率で行うものとした.前歯メタルフレームへの築盛実験から,現在の築盛体の形状を次の築盛に反映させることにより,歯牙形状に近い立体的な築盛体が得られることが分かった.また試作装置ではフレームの位置決めの自由度に制約があるため形状測定や築盛ができない部位が生じたが,これは装置に自動ステージを追加することにより解消することが可能であると思われた. | KAKENHI-PROJECT-08771762 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08771762 |
ゾーンコントロール誘導加熱システムの発熱分布解析と電流制御特性の研究 | 従来の高周波誘導加熱は,高速かつ高温加熱の特長を有するが,従来の単一の渦巻きコイルでは,磁束密度分布により発熱分布が決定されるため,均一な温度制御は困難であった。この問題に対して,ゾーンコントロール誘導加熱が提案されている。これは,加熱コイルを複数に分割してそれぞれのコイル電流を独立に制御することにより,被加熱物の部位(ゾーン)ごと発熱を制御する。ゾーンコントロール誘導加熱システムでは,複数コイルの電流の位相を等しくした上,電流振幅を調整することによって被加熱物の複数個所(ゾーン)の温度・発熱分布を制御することができる。これまでは,制御可能なゾーンの最大数がコイルの数に等しく,制御制約になっていた。また,コイルの数は使用デバイスの数に比例する。したがって,温度制御精度がいいシステムでは,デバイス数が多くなり,コストが高くなってしまうデメリットがある。本研究では,コイル電流の振幅だけではなく,発熱分布に対しての電流位相影響も考慮した上,コイル電流の振幅と位相を同時に制御することによって制御可能なゾーンの数を増やすことを提案する。したがって,より少ないデバイス数で同じ性能のシステムが作れ,コスト低下に繋がる。まず,複数コイル電流の振幅・振幅と被加熱物の発熱分布との関係を理論的に導出し,提案方法の実用可能性を証明する。その結果,二週類の三次元抵抗行列を求めた上,被加熱物の発熱分布が各コイル電流の振幅と位相から早く算出することが可能になる。また,温度制御に要求される発熱分布から,各コイルの電流振幅と電流位相の指令値を簡単に設定できるようになる。従来の高周波誘導加熱は,高速かつ高温加熱の特長を有するが,従来の単一の渦巻きコイルでは,磁束密度分布により発熱分布が決定されるため,均一な温度制御は困難であった。この問題に対して,ゾーンコントロール誘導加熱が提案されている。これは,加熱コイルを複数に分割してそれぞれのコイル電流を独立に制御することにより,被加熱物の部位(ゾーン)ごと発熱を制御する。本研究の目的は,高速かつ安定なコイル電流制御器の開発と一様な発熱分布を達成するコイル電流の設定法を明らかにすることにある。これにより、さらに高温度・高精度・高速度の熱処理を実現し,高効率・生産性向上・低コストなどに繋がる。まず,6ゾーンのゾーンコントロール誘導加熱システムをシミュレーションで設計し,実験モデルを作成した。次に,シミュレーションでシステムの三次元抵抗を求めた上,被加熱物の発熱分布が一様になるように各ゾーンの電流指令値を設定した。さらに,実験モデルに設定した電流を流して,被加熱物の温度変化から発熱分布を測定した。その結果,理論と実験結果がよく合うことが明らかになった。得られた結果はECCEの国際学会で発表し,IEEE Transaction on Power Electronicsに投稿した。また,相互誘導起電力の大きいシステムを作成し,デジタル制御器を作成した。次に,新しい制御法を制御器に記述し,実験モデルを動かした。その結果,6個のコイル電流を同時に独立制御できるようになり,高速度電流制御実現できた。これは,従来の電流制御法と比べ,より広い制御範囲より安定な制御方法であることを証明することである。優れた新制御法はこれからゾーンコントロール誘導加熱システムの基本制御方法になる。得られた結果をECCEの国際学会で発表した。これから,IEEE Transaction on Power Electronicsに投稿する予定である。従来の高周波誘導加熱は,高速かつ高温加熱の特長を有するが,従来の単一の渦巻きコイルでは,磁束密度分布により発熱分布が決定されるため,均一な温度制御は困難であった。この問題に対して,ゾーンコントロール誘導加熱が提案されている。これは,加熱コイルを複数に分割してそれぞれのコイル電流を独立に制御することにより,被加熱物の部位(ゾーン)ごと発熱を制御する。ゾーンコントロール誘導加熱システムでは,複数コイルの電流の位相を等しくした上,電流振幅を調整することによって被加熱物の複数個所(ゾーン)の温度・発熱分布を制御することができる。これまでは,制御可能なゾーンの最大数がコイルの数に等しく,制御制約になっていた。また,コイルの数は使用デバイスの数に比例する。したがって,温度制御精度がいいシステムでは,デバイス数が多くなり,コストが高くなってしまうデメリットがある。本研究では,コイル電流の振幅だけではなく,発熱分布に対しての電流位相影響も考慮した上,コイル電流の振幅と位相を同時に制御することによって制御可能なゾーンの数を増やすことを提案する。したがって,より少ないデバイス数で同じ性能のシステムが作れ,コスト低下に繋がる。まず,複数コイル電流の振幅・振幅と被加熱物の発熱分布との関係を理論的に導出し,提案方法の実用可能性を証明する。その結果,二週類の三次元抵抗行列を求めた上,被加熱物の発熱分布が各コイル電流の振幅と位相から早く算出することが可能になる。また,温度制御に要求される発熱分布から,各コイルの電流振幅と電流位相の指令値を簡単に設定できるようになる。研究目的とした熱分布の解析や大きい相互誘導あるシステムの電流制御が理論解析と検証実験により明らかにした。また,得られた結果を国際論文誌IEEE Transaction on Power Electronicsに投稿した。これまで,n個のコイルでn箇所のゾーンを制御するゾーンコントロール誘導加熱システムが明らかにされている。これから,電流振幅と電流位相を同時に制御することによって,コイルの数を半分にする可能性を検討する。これは,システムのコスト低下へ繋がる。 | KAKENHI-PROJECT-11J09441 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J09441 |
ゾーンコントロール誘導加熱システムの発熱分布解析と電流制御特性の研究 | 今後,証明された結果を積極的に利用し,広く応用できるように新しい誘導過熱システムを提案する。最終的には電力使用効率を高める予定である。 | KAKENHI-PROJECT-11J09441 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J09441 |
スギ切株の年輪解析による大気汚染の影響評価 | 富山県内の2市3町でスギの切株から採取した約20本のコアサンプルを研磨後,年輪幅測定・解析システム(LINTAB-TSAP)を用いて測定および解析を実施した.昨年度中に採取したコアサンプルのほか,即存の試料とあわせて取りまとめを行った.得られた結果は,以下のようなものであった。1.樹齢や気象条件を補正した後に,大気汚染がスギの肥大成長におよぼす影響について検討した.その結果,1960年代後半1970年代前半の大気汚染レベルが高かった時期に生長が悪く,汚染レベルの低下とともに肥大成長がある程度回復していることが明らかになった.2.重回帰分析の結果,硫黄酸化物,窒素酸化物,オキシダントの中でスギの肥大成長に最も影響をおよぼしていたのは硫黄酸化物と考えられた。3.富山県内の平野部に生育するスギと標高約1000メートルの山間部に生育するスギは基本的に同様な年輪幅の変動パターンを示している.しかしながら,例外的に両者の位相が逆点する年があった.この点について検討したところ,冬期間の降雪タイプの相違(山雪型と里雪型)が原因となっていると考えられた.これは,積雪地帯で年輪年代学的な研究を実施する場合に局地的なバイアスを避けるためにも重要な知見であるとともに,年輪古気象学的にも興味深い事実である.富山県内の2市3町でスギの切株から採取した約20本のコアサンプルを研磨後,年輪幅測定・解析システム(LINTAB-TSAP)を用いて測定および解析を実施した.昨年度中に採取したコアサンプルのほか,即存の試料とあわせて取りまとめを行った.得られた結果は,以下のようなものであった。1.樹齢や気象条件を補正した後に,大気汚染がスギの肥大成長におよぼす影響について検討した.その結果,1960年代後半1970年代前半の大気汚染レベルが高かった時期に生長が悪く,汚染レベルの低下とともに肥大成長がある程度回復していることが明らかになった.2.重回帰分析の結果,硫黄酸化物,窒素酸化物,オキシダントの中でスギの肥大成長に最も影響をおよぼしていたのは硫黄酸化物と考えられた。3.富山県内の平野部に生育するスギと標高約1000メートルの山間部に生育するスギは基本的に同様な年輪幅の変動パターンを示している.しかしながら,例外的に両者の位相が逆点する年があった.この点について検討したところ,冬期間の降雪タイプの相違(山雪型と里雪型)が原因となっていると考えられた.これは,積雪地帯で年輪年代学的な研究を実施する場合に局地的なバイアスを避けるためにも重要な知見であるとともに,年輪古気象学的にも興味深い事実である.富山県内の7地点(81本)と福井県敦賀市内の6地点(13本)のスギ切株から採取した円盤状の試料を,十分に研磨した後に実体顕微鏡下で年輪幅を測定した。年輪幅の推移をグラフ化した後に,年輪幅の標準曲線(福井県下のデータもとに作成したもの)を用いて,伐採年を確定し,偽年輪や年輪欠損の可能性について検討した。年輪幅の推移を指数曲線で近似することにより樹齢の影響を補正した後に,重回帰分析によって気象要因を除外したものを標準化年輪指数と定義し,この値と大気汚染との関連を二つの地域で検討し,以下の知見を得た。1.富山県内のスギ年輪幅(標準化年輪指数)は1960年代の末から1970年代の前半にかけて低値を示しており,その推移と大気中の硫黄酸化物濃度や硫黄酸化物排出量との間には,有意な負の相関が認められた。2.敦賀市内で採取されたスギも,1960年代末1970年代前半に標準化年輪指数が低い値を示している。1960年代の後半には汚染レベルのモニタリングが行われていないため,大気汚染と年輪幅との関連を直接的に検討することはできなかった。しかしながら,敦賀市では工業出荷額の対全国比が,この時期に急増しており,大気汚染が最も深刻化していたと考えられ,標準化年輪指数の推移と大気汚染との関連性が示唆された。3.スギの年輪幅におよぼす気象条件の影響を検討する中で,富山県の平野部と福井県の嶺北地方および嶺南地方のスギ年輪幅の推移は基本的に同一のパターンを示すことが証明された(p<0.001)。一方,互いに数十kmしか離れていない富山県内の平野部と山間部では,年輪幅のピークにしばしば逆転が見られた。この原因として,平野部における大雪の寄与が推察された。この事実は,日本で年輪年代学的な手法を厳密に適用する上で注意すべき点を示すとともに,古気象の解析のための新たな手段を提供するものと考えられる。富山県内の2市3町でスギの切株から採取した約20本のコアサンプルを研磨後,年輪幅測定・解析システム(LINTAB-TSAP)を用いて測定および解析を実施した.昨年度中に採取したコアサンプルのほか,既存の試料とあわせて取りまとめを行った.得られた結果は,以下のようなものであった。1.樹齢や気象条件を補正した後に,大気汚染がスギの肥大成長におよぼす影響について検討した.その結果,1960年代後半1970年代前半の大気汚染レベルが高かった時期に成長が悪く,汚染レベルの低下とともに肥大成長がある程度回復していることが明らかになった. | KAKENHI-PROJECT-06680500 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06680500 |
スギ切株の年輪解析による大気汚染の影響評価 | 2.重回帰分析の結果,硫黄酸化物,窒素酸化物,オキシダントの中でスギの肥大成長に最も影響をおよぼしていたのは硫黄酸化物と考えられた。3.富山県内の平野部に生育するスギと標高約1000メートルの山間部に生育するスギは基本的に同様な年輪幅の変動パターンを示している.しかしながら,例外的に両者の位相が逆転する年があった.この点について検討したところ,冬期間の降雪タイプの相違(山雪型と里雪型)が原因となっていると考えられた.これは,積雪地帯で年輪年代学的な研究を実施する場合に局地的なバイアスを避けるためにも重要な知見であるとともに,年輪古気象学的にも興味深い事実である. | KAKENHI-PROJECT-06680500 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06680500 |
神経炎症の制御を標的とした筋萎縮性側索硬化症の治療法の開発 | 研究代表者は,これまでに遺伝性筋萎縮性側索硬化症(ALS)のモデルである変異SOD1マウスを用いた研究で,ALSにおける運動ニューロン死は,グリア細胞との細胞間ネットワークの異常により非細胞自律性に起こることを示してきた.また,変異SOD1マウスでは,疾患進行期にグリア細胞の活性化やそれに伴う炎症性サイトカインの放出,リンパ球の浸潤などがみられ,神経炎症というべき病態を呈している.まずALSの疾患進行期の脊髄病巣におけるグリア細胞の分子病態を解明するため,遺伝子発現の網羅的解析によってグリア細胞に異常発現する遺伝子群を同定した.そのうち,大半はミクログリアに主に発現するものであり,後述する自然免疫経路と関連する遺伝子群が含まれていた.次に候補遺伝子アプローチとして,ミクログリア特異的に発現し,その病巣への浸潤や炎症性サイトカイン発現に寄与しているマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)のALSモデルマウスの病態への関与を交配実験により検討した.このMMPを欠失した変異SOD1マウスでは,生存期間の短縮傾向がみられたが統計学的に有意ではなかった.さらに,自然免疫経路のシグナル伝達に重要な遺伝子であるMyD88, Trifのノックアウトマウスと変異SOD1マウスの交配実験を行ったところ,自然免疫系のシグナル伝達を抑制することにより疾患進行が著しく加速し,生存期間の著明な短縮がみられた.本研究から,神経炎症に関与する自然免疫経路の適度な賦活化はALSモデルにおいて神経保護的な役割をしていることが示唆された.われわれは,これまでに遺伝性筋萎縮性側索硬化症(ALs)のモデルである変異SOD1マウスを用いた研究で,ALS疾患の進行はグリア細胞であるミクログリアとアストロサイトに由来する変異SOD1毒性により加速されることを見いだしてきた.また,変異SOD1モデルでは,疾患進行期にクリア細胞の活性化やそれに伴う炎症性サイトカインの放出,リンパ球の浸潤などがみられ,神経炎症というべき病態を呈している.本研究計画では,これまでの研究成果に立脚して変異SOD1マウスの炎症制御により,疾患の進行速度を制御できるかを動物交配実験により検討する.アルツハイマー病モデルマウスにおいて,自然免疫経路の関与を示唆する報告がみられ,ALSにおいてもその関与が想定される,本年度は,自然免疫経路のシグナル伝達に重要な遺伝子群のノックアウトマウスと変異SOD1マウスの交配実験を開始した.実験途上であるが,自然免疫系のシグナル伝達を抑制することにより疾患進行が加速している傾向がみられており,来年度はその検証と分子メカ二ズムの検討を行う.さらに,運動ニューロンとoligodendrocyteに変異SODlを発現し,他の細胞群は野生型とのキメラとなる新規キメラマウスを作成し,運動神経変性の発症および進行が著しく遅延することを証明し,ALSマウスモデルにおける運動神経変性は非細胞自律性に起こることを証明し,論文発表を行った.非神経細胞である,クリア細胞が非細胞自律性の運動神経変性に貢献していることを解明した研究成果は,現在進行中の本研究の重要性を支持するものである研究代表者は,これまでに遺伝性筋萎縮性側索硬化症(ALS)のモデルである変異SOD1マウスを用いた研究で,ALSにおける運動ニューロン死は,グリア細胞との細胞間ネットワークの異常により非細胞自律性に起こることを示してきた.また,変異SOD1マウスでは,疾患進行期にグリア細胞の活性化やそれに伴う炎症性サイトカインの放出,リンパ球の浸潤などがみられ,神経炎症というべき病態を呈している.まずALSの疾患進行期の脊髄病巣におけるグリア細胞の分子病態を解明するため,遺伝子発現の網羅的解析によってグリア細胞に異常発現する遺伝子群を同定した.そのうち,大半はミクログリアに主に発現するものであり,後述する自然免疫経路と関連する遺伝子群が含まれていた.次に候補遺伝子アプローチとして,ミクログリア特異的に発現し,その病巣への浸潤や炎症性サイトカイン発現に寄与しているマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)のALSモデルマウスの病態への関与を交配実験により検討した.このMMPを欠失した変異SOD1マウスでは,生存期間の短縮傾向がみられたが統計学的に有意ではなかった.さらに,自然免疫経路のシグナル伝達に重要な遺伝子であるMyD88, Trifのノックアウトマウスと変異SOD1マウスの交配実験を行ったところ,自然免疫系のシグナル伝達を抑制することにより疾患進行が著しく加速し,生存期間の著明な短縮がみられた.本研究から,神経炎症に関与する自然免疫経路の適度な賦活化はALSモデルにおいて神経保護的な役割をしていることが示唆された. | KAKENHI-PROJECT-20023034 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20023034 |
肺移植後の神経再生:移植肺内神経構築変化の定量形態学的解析 | カルボシアニン蛍光色素Dilをエチルアルコールに溶解して、左右の頚部迷走神経へ取り込ませる事による、脳内への逆行性の神経細胞の標識について、従前の逆行性色素に加えて、有用な点について、現在論文投稿中。さらに、胃、肺などの臓器に同様にして、色素の投与を行ったところ、その支配領域の脳内の神経細胞の標識に成功した。この点についても、論文作成中。肺移植モデル、除神経モデルについての検討は、平成7年の6月より開始。平成6年度後半より、臓器の神経再生にかかわる因子として塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)に注目し、除神経臓器の内部で起こるbFGFのmRNA発現の変化をcompetitive PCR法をもちいて経時的に、定量的に把握する方法の確立を目指してきた。ラットbFGF mRNAの定量系の確立のために、A)PCRプライマーの合成;B)competitorテンプレートの作成(1)上記pTB784 plasmid DNAを制限酵素EagIとKpnIで切断の後にligation。355bpのPCRproductをうむ、組み替えテンプレートDNAを作成。C)competitive PCR:組織から精製したmRNAを逆転写した後に、(3)で作成したcompetitor DNAテンプレートを適量用いて、^<32>P-CTPsとともにPCRを行う。このあとは、ゲルをエチジウムブロマイドで染色する事で、視認でおおよその濃度を検討する。bFGFの発現時期に合成bFGF;TGP-580(CS23)(武田薬品中央研究所より供与済み)を大量投与し、神経再生への影響を検討する。カルボシアニン蛍光色素DiIをエチルアルコールに溶解し、臓器局所に注入すれば、2週間後には蛍光色素は、器に対応した脳幹の神経細胞核内にまで軸策内を逆行性に上昇し、蛍光顕微鏡下で蛍光を発生する。これにより、器の脳幹内での空間分布を明らかにできる。また、蛍光の確認にはG1Aの励起フィルター、580nmの吸収フィルターを2枚重ねて使用することが、明確な画像を得るのに必要である。1)ICRマウスで予備実験:左肺に色素を注入した。脳幹では左右の迷走神経背側核、疑核に蛍光色素の存在を認めたが、同側に蛍光色素を含む細胞数が多い傾向が見られた。また、肺内に注入する際に、色素が血管内に入り、脳内血管内に蛍光色素の沈着を来す。2)ラットでの本実験;マウスでは脳内の神経細胞核の分布についての一定した知見が乏しく、本実験はラットで行うことにした。まず、麻酔下に左右の頚部の迷走神経幹を剖出し、DiIを小さなカプセルに注入した後、直接、神経と接触させる。左右の迷走神経の脳内での空間分布を定量的に地図作りを行っている。現在、調べ終えた右の迷走神経の脳内の分布は、右迷走神経背側核は小脳下縁-300nmから1800nmまでに分布し、右の疑核は小脳下縁頭側100nmから1800nmにかけて分布している。右迷走神経核への投射細胞数は、右疑核に対するものの約4倍である。今後、左の迷走神経や、胃・十二指腸に色素を注入し、その逆行した蛍光色素を含む細胞についても、脳内での空間分布を検討予定である。今後の研究方針;Lewisラットを用いた同種肺移植手術の試み。さらに長期生存(最低3カ月)後に、蛍光色素の脳幹への逆行試験を行い、蛍光色素に染まる神経細胞核をカウントし、分布を定量化する事により、神経再生の程度を脳幹において定量化する。ラットの肺移植に際しては、NGFを吻合肺門部に大量投与した群や免疫抑制剤を投与しつづけた群についてのコントロールを取り、影響を比較検討する。カルボシアニン蛍光色素Dilをエチルアルコールに溶解して、左右の頚部迷走神経へ取り込ませる事による、脳内への逆行性の神経細胞の標識について、従前の逆行性色素に加えて、有用な点について、現在論文投稿中。さらに、胃、肺などの臓器に同様にして、色素の投与を行ったところ、その支配領域の脳内の神経細胞の標識に成功した。この点についても、論文作成中。肺移植モデル、除神経モデルについての検討は、平成7年の6月より開始。平成6年度後半より、臓器の神経再生にかかわる因子として塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)に注目し、除神経臓器の内部で起こるbFGFのmRNA発現の変化をcompetitive PCR法をもちいて経時的に、定量的に把握する方法の確立を目指してきた。ラットbFGF mRNAの定量系の確立のために、A)PCRプライマーの合成;B)competitorテンプレートの作成(1)上記pTB784 plasmid DNAを制限酵素EagIとKpnIで切断の後にligation。355bpのPCRproductをうむ、組み替えテンプレートDNAを作成。C)competitive PCR:組織から精製したmRNAを逆転写した後に、(3)で作成したcompetitor DNAテンプレートを適量用いて、^<32>P-CTPsとともにPCRを行う。このあとは、ゲルをエチジウムブロマイドで染色する事で、視認でおおよその濃度を検討する。bFGFの発現時期に合成bFGF;TGP-580(CS23)(武田薬品中央研究所より供与済み)を大量投与し、神経再生への影響を検討する。 | KAKENHI-PROJECT-05807122 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05807122 |
次世代中国ビジネスの経営規範に関する研究 | 本研究課題は、次世代中国企業のビジネスモデルに着目し、技術・管理面のみならず、経営規範面に留意しながら、両者の関係を体系的に描写し、新たな理論的地平を開拓することを目的とするものである。分析を通じて、これまで「経済性」を中心に構築されてきたビジネスモデルの中に、企業の社会的責任など「社会性」の側面を組み込む発想が問われつつあることが一つの示唆として導出された。本研究課題の目的は、次世代中国企業のビジネスモデルに着目し、その革新に並行して提起される経営規範に関する問題を整理することにある。とりわけ、平成24年度においては、研究実施計画として、中国ビジネスの新たな模範とされる企業群が新しい経営文化を前面に打ち出し、労働者・消費者への視点や環境への配慮をCSRの一環として明確化する可能性があることに留意しながら本研究を進めるものとし、活動を遂行した。以上の目的ならびに実施計画を受け、日本経営学会第86回大会(2012年9月7日)において「次世代中国ビジネスと経営規範:その理論的萌芽をいかにとらえるか」と題する研究報告を行った。本報告の具体的内容は、従来型の「利益創出を目指した中国ビジネスモデル」に対する評価と従来モデルからの方向転換の萌芽を、実践ならびに理論の流れのなかで見出すとともに、CSRに関する中国での議論をサーベイすることにある。本報告の意義として、利益創出モデルの検討に加えて、ステイクホルダーへの視点を踏まえたトータルな「経営規範」を検討する必要があることを提起したことが挙げられるであろう。そのほか、中国・北京で行われたシンポジウム「亜洲的未来与中日関係:紀念中日邦交正常化40周年国際学術研討会」(2012年9月15日)では、「従管理理論在亜洲的創新展望中日関係」と題して、本研究課題の重要性を現地の研究者等に紹介するとともに、かかる視点からの研究活動の進展が日中関係を考えるうえで意義深いものとなる点を強調した。本研究課題の目的は、次世代中国企業のビジネスモデルに着目し、その革新に並行して提起される経営規範に関する問題を整理することにある。平成25年度は最終年度であることに鑑み、研究課題にかかる抽象化レベルの整理を進め、「中国企業の経営規範とビジネスモデルの転換:『経済性』と『社会性』の統合をめぐって」(アジア経営学会編『アジア経営研究』第19号、唯学書房、2013年)を執筆した。この論文では、中国ビジネスにおけるドラスティックな価値観の転換の様相をめぐり、ビジネスモデルに「社会性」への視点を取り込むべき時代の入り口に差し掛かっているものとして分析枠組みを構築することとし、ビジネスモデルのなかに「経済性」と「社会性」の2要素をトータルに取り込むことに焦点を当てて叙述を試みた。具体的には、1中国の従来型ビジネスモデルの特徴、2中国における企業の社会的責任(CSR)をめぐる議論、3中国経営研究と「中国問題」との結合をめぐる議論の3点をとりあげた。とりわけ、上記2では、市場・社会・環境への責任とそれらを統括する管理の「四位一体CSRモデル」を提唱する『中国CSR研究報告』を基にその2009年版と2011年版を比較し、2年の経過を経て中国トップ100企業のCSR意識の向上を初歩的に確認した。また、『中国CSR報告白書』からは国有企業のCSR報告書に対する評価の高さを確認し、『中国CSR建設青書』からは中国企業の持続可能な発展と「調和のとれた社会」構想との符合性ならびにそのグローバル展開における重要性を確認した。本研究課題は、次世代中国企業のビジネスモデルに着目し、技術・管理面のみならず、経営規範面に留意しながら、両者の関係を体系的に描写し、新たな理論的地平を開拓することを目的とするものである。分析を通じて、これまで「経済性」を中心に構築されてきたビジネスモデルの中に、企業の社会的責任など「社会性」の側面を組み込む発想が問われつつあることが一つの示唆として導出された。本年度は「次世代中国ビジネスの経営規範をめぐる一考察:その背景に関する整理を中心に」(アジア経営学会第18回全国大会)において、3か年の研究課題の土台にかかる事柄の整理を行った。その概要は、以下の通りである。従来型の中国のビジネスモデルは、改革・開放政策以降の「郷鎮ビッグビジネスの成功モデル」、その後の「グローバル戦略による成功モデル」から近年の「超ビジネス連鎖による利益創出モデル」に至るまで、「低コストの労働集約型産業による発展」を前提に、社内で厳しいルールを決め、従業員個人への報酬を成果と連動させ、やる気を引き出す管理手法を採用することにより、グループ内ネットワークの規模を急拡大させるようなスピード感あふれるイメージを有するものであった。ところが、2010年代初頭から増加しつつある議論は、広くステイクホルダーとの関係性を踏まえ、永続的に事業を発展させるビジネスの在り方である。とりわけ、企業倫理、CSR、環境保護への視点、従業員への配慮など、ビジネスの在り方をトータルに設計する基盤となる価値観への言及が特徴的である。本研究課題における「経営規範」という用語について、かかる価値観との関連で問題を整理する重要性が抽出された。こうした現象は、中国経済の存在感の拡大とさらなるグローバル化、国内における「国学ブーム」の勃興などにみられる中国古典思想の再評価、中国企業における出稼ぎ労働者に対する最低賃金の値上げと「ルイスの転換点」の議論、環境保護に対する国際的な関心などと連動する動きであると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-23530502 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23530502 |
次世代中国ビジネスの経営規範に関する研究 | これらより、次世代中国ビジネスの研究においては、経済効率一辺倒の視点でなく、「経営規範」との関連で企業の在り方を問うアプローチが不可欠であることを提起した。本研究課題の特徴は、中国における企業経営の実態の変化を整理し、中国におけるビジネスモデル論の展開プロセスを追っていくところにある。この点においては、改革開放政策以降の大きな流れを実践・理論の両面から捉えるとともに、ごく最近の動向をおおむね押さえることができたものと考えている。とりわけ、社会変化に伴うビジネスモデルの力点の変化に言及している点は、理論的な問題提起として意義のあるところであろう。経営規範との関連でいえば、近年中国でのCSRの捉え方の変化が注目され、文献を用いてその初歩的な検証ができたことはさらなる研究への一歩を進める基礎となりえたのではないかと考えられる。ただし、国内学会での報告を通じて得られたのは、ビジネスモデル論とCSR等をめぐる規範論との間の理論的整合性の有無については議論が分かれる、という点であった。今後はこの点で実証などを通じた一層の精緻化が求められるものと思量される。3か年を通じた研究計画は、2つの個別領域と1つの統合、すなわち、(1)実践領域(=技術・管理面と経営規範面)、(2)理論領域(=道徳に関する諸学説と政策の検討)、(3)統合理解(=概念装置の構築)という枠組みに関心を払い、研究を進めていくこととした。とりわけ、平成23年度においては、(1)実践領域における基本データを収集する準備を行うことに重点を置く予定であった。ただし、現実の進行状況としては、研究者との情報交換の過程において、企業訪問等につきさらなる検討が必要であることが判明したため、(1)実践領域における活動を進めつつ、(2)理論領域における検討に同等以上の重きを置くこととした。とくに、新しい価値観をめぐるインタビューの際に支障をきたさない平易な表現の可否を検討することに留意した。総体としてみれば、おおむね順調な進展といえるだろう。平成25年度は最終年度であることに鑑み、研究課題にかかる抽象化レベルの整理をいっそう進めることが必要となる。ただし、「現在までの達成度」で記したように、具体的な現象に関するスケッチも同時並行して行う必要があろうと考えられる。とりわけ、ビジネスモデル論の進展と経営規範にかかる取り組みの進行はともにスピードが速く、そのうえこれらを関連して論じる必要性を主張する声が、中国国内でも静かに増加しつつある点に留意しなければならない。そこで、国内学会と国際学会における研究報告を今年度も引き続き行うことを通じ、広く各方面からの意見を得るよう心掛け、議論の精度を上げることに努めたい。今後もおおむね、当初の研究計画をそのまま実施することとする。上記「現在までの達成度」の「理由」欄に示したように、引き続き、(1)実践領域、(2)理論領域、(3)統合理解という枠組みに関心を払いながら、研究活動を継続していくことが不可欠である。とりわけ、理論領域と実践領域を統合するさい、本研究の狙いを平易な言葉で表現することが不可欠になる。この作業には、研究活動の全体像の提示が必要であるだけでなく、中国古典思想を含む難解な事柄を平易な形で構造化したり、日本語・中国語・英語の3言語表記を試みたりする活動も含まれている。 | KAKENHI-PROJECT-23530502 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23530502 |
認知症診断のための手指運動巧緻性のパラメータの判別とその実証 | 認知症では、早期症状である記憶障害の発症に先立ち、運動障害を呈することが報告されてきており、初期の運動障害から認知症を検出できる可能性が示唆されてきている。本研究では、認知症患者の手指機能を指タップ運動を用いて計測し、認知症患者の手指運動巧緻性の低下を捉える検出度の高いパラメータを抽出する。また、手指の運動を地域高齢者の認知症のスクリーニング評価に使用することを想定し、より妥当性の高い最適なカットオフ値を設定する。認知症患者の特徴的な手指機能について発症早期から検出することができれば、従来の診断法より早期に、認知症の兆候をつかまえられる可能性がある。認知症では、早期症状である記憶障害の発症に先立ち、運動障害を呈することが報告されてきており、初期の運動障害から認知症を検出できる可能性が示唆されてきている。本研究では、認知症患者の手指機能を指タップ運動を用いて計測し、認知症患者の手指運動巧緻性の低下を捉える検出度の高いパラメータを抽出する。また、手指の運動を地域高齢者の認知症のスクリーニング評価に使用することを想定し、より妥当性の高い最適なカットオフ値を設定する。認知症患者の特徴的な手指機能について発症早期から検出することができれば、従来の診断法より早期に、認知症の兆候をつかまえられる可能性がある。 | KAKENHI-PROJECT-19K11339 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K11339 |
ロシアにおける宗教復興:公共機能、ライフヒストリー、空間動態 | ロシアの諸宗教を網羅的・多面的に研究した結果、宗教というプリズムを通じてロシア社会を観察することが可能であることが明らかになった。宗教の視点からは、ロシアはより広い地理的なまとまりの一部であり、キリスト教の「教会法上の領域」の観念、巡礼やディアスポラを含めて広域的な観点から分析する必要性が明らかになった。「脱世俗化」の傾向はロシアにも共通するが、その特殊な形態を明らかにする作業が行われた。ロシアの諸宗教を網羅的・多面的に研究した結果、宗教というプリズムを通じてロシア社会を観察することが可能であることが明らかになった。宗教の視点からは、ロシアはより広い地理的なまとまりの一部であり、キリスト教の「教会法上の領域」の観念、巡礼やディアスポラを含めて広域的な観点から分析する必要性が明らかになった。「脱世俗化」の傾向はロシアにも共通するが、その特殊な形態を明らかにする作業が行われた。7月に最初の打ち合わせ会議を行って、最初の課題であるロシアの宗教概説書の執筆に着手した。同時にここでは研究会も行った。8月は、ドイツのミュンスター大学のトマス・ブレマー教授を招いて、ロシア正教につき東京で研究会・書評会を行った。比較を目的として、8月には松里が甘粛省・北京でイスラームの、10月に荒井がブリヤートとモンゴルで仏教の調査を行った。松里の現地調査の成果は、12月に法政大学で行われた新学術領域「ユーラシア地域大国比較」において、東北大学澤江史子准教授と共同報告され、すでにReligion, State & Society誌に掲載が決まっている。そのほかにも、藤原、井上が3月にソウルで開催されたスラブ研究東アジア学会で宗教関係のパネルを組織するなど、初年度から国際的な成果発表を行った。公刊業績面では、赤尾が論文集『ディアスポラから世界を読む』(明石書店)を出版した。藤原は博士論文を素地にした単著『呪われたナターシャ』(人文書院)の出版にこぎつけた(6月刊)。松里はReligion, State & Societyにアブハジア、トランスニストリアをめぐる正教外交に関する論文を発表した。長縄は、『イスラム世界』に帝政ロシア末期のワクフに関する論文を発表した。<研究会活動>「ロシアの諸宗教」邦文論文集に向けて、7月10日に第2回目の研究会を行った。松里がロシア正教会について自分の原稿に基づいて報告し、そのほか研究分担者・連携研究者が執筆の進行状況について報告した。<現地調査>12-1月、ロシア正教会と南オセチア教会との関係を調査するため、松里が南オセチアに出張した。2月、ロシアのイスラーム宗務行政を調査するため、松里がダゲスタンに出張した。3月、ロシアとインドの宗務行政の比較のため、松里がインドに出張した。<海外での研究発表>松里が4月20-21日にブラゴヴェシチェンスク(ロシア極東)で開催された国際コンフェレンス「良心の自由:国際的標準と各国の実例」において、「非アラブ辺境におけるムスリム行政の類型論:トルコ、ロシア、インド、中国」という題で報告した。7月26-31日にストックホルムで開催された中欧東欧研究国際協議会(ICCEES)において、英・米・ポーランドの第一線の研究者を招いて、「21世紀における宗教と人文地政学」という題でパネルを組織した。長縄が、上記ICCEESのほか、ASEEES(北米のスラブ学会)、ニジニ・ノヴゴロド、ヘルシンキ、京都などにおいてイスラームについて活発に報告した。井上が8月にトロントで開催された国際宗教史学会で、「共産主義後のシベリアにおけるシャマニズムについての言説」という題で報告した。<出版><現地調査・委託調査>松里がアブハジアでの現地・ロシア正教会の活動を現地調査した(9月)。その成果は、論文集Eastern Christianityにおいて近刊される。タタルスタンにおけるイスラームの状況について委託調査が行われた(2月回収)。<論文集準備>7月、論文集(ロシアの宗教についての概説書)の準備を主な課題として、研究会を行った。並行して、分担者が講師となり、論文集に向けた原稿を利用しつつ北大大学院・全学授業「ロシアにおける諸宗教」を行った。原稿は現在までに3章が提出されており、出版社との交渉が開始された。<海外での研究成果発表>4月のASN年次大会(松里)、スタンフォード大学での国際学会(長縄)、8月北京で開催されたスラブ・ユーラシア研究東アジア学会(松里)などで研究発表が行われた。このうちASN年次大会で発表されたアルメニア使徒教会に関するペーパーは、Religion, State & Society誌に近刊される。<業績の公刊>長縄によるメッカ巡礼についての論文がSlavic Reviewに、松里によるアブハジアのムスリム・マイノリティに関する論文がNationalities Papersに掲載された。赤尾が中心となって、論文集『シオニズムの解剖』(人文書院)を、井上、藤原が中心となって論文集『ロシア文化の方舟』(東洋書店)を刊行した。事業最終年度であったため、以上のように調査結果のまとめと発表に力を大きな割いたが、その中でも実証研究を蓄積した。7月の研究会では、他者の認識によって宗教意識が形成されることなど、興味深い方法論的な提起が行われた。 | KAKENHI-PROJECT-21310154 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21310154 |
神経活動によるシナプス結合強化の分子機構 | 我々は神経活動によって誘導される神経接着分子Arcadlinを見い出している。Arcadlinは、神経活動によってニューロンで誘導される。合成されたArcadlinはシナプスへ運ばれた後、シナプス前・後膜で同種結合することによって、シナプス結合の形態学的変化に関わると予想される。本年度は、Arcadlinの細胞内領域と結合するタンパク質TAO2の機能解析を行った。TAO2はMKK3をリン酸化し、リン酸化されたMKK3が今度はp38 MAP kinaseをリン酸化することが知られている。そこで、HEK293T細胞にarcadlin、TAO2、MKK3、p38 MAPKを強制発現させ、Arcadlinの細胞外領域蛋白質を培地に添加したところ、MKK3・p38MAPKのリン酸化とArcadlin蛋白質の内在化が生じた。Arcadlinの内在化は、dominant-negative dynaminによって止まることから、clathrin-mediated endocytosisによると考えられた。また、TAO2やMKK2、p38 MAP kinaseを共発現させないとArcadlinのエンドサイトーシスが起こらないことから、細胞内のこれらのリン酸化酵素がArcadlinのエンドサイトーシスを制御していると考えられる。さらに、リン酸化p38 MAPKの阻害剤であるSB203980を加えることによってもArcadlinのエンドサイトーシスが抑制されることから、p38 MAPKが何らかの基質蛋白質をリン酸化することによってArcadlinのエンドサイトーシスが調節されると考えられた。以上の結果から、Arcadlinの細胞外部分の同種結合によってTAO2が機能的に活性化され、その情報をp38 MAPKへ伝達することによって、Arcadlinエンドサイトーシスが制御されることが明らかになった。これは、遺伝子発現だけでなく、「シナプス膜上の接着分子の数を調節することによってシナプス結合の強さを制御する」という、神経活動によるシナプス修飾の新しいメカニズムを示唆する。我々は神経活動によって誘導される神経接着分子Arcadlinを見い出している。Arcadlinは、神経活動によってニューロンで誘導される。合成されたArcadlinはシナプスへ運ばれた後、シナプス前・後膜で同種結合することによって、シナプス結合の形態学的変化に関わると予想される。本年度は、Arcadlinの細胞内領域と結合するタンパク質TAO2の機能解析を行った。TAO2はMKK3をリン酸化し、リン酸化されたMKK3が今度はp38 MAP kinaseをリン酸化することが知られている。そこで、HEK293T細胞にarcadlin、TAO2、MKK3、p38 MAPKを強制発現させ、Arcadlinの細胞外領域蛋白質を培地に添加したところ、MKK3・p38MAPKのリン酸化とArcadlin蛋白質の内在化が生じた。Arcadlinの内在化は、dominant-negative dynaminによって止まることから、clathrin-mediated endocytosisによると考えられた。また、TAO2やMKK2、p38 MAP kinaseを共発現させないとArcadlinのエンドサイトーシスが起こらないことから、細胞内のこれらのリン酸化酵素がArcadlinのエンドサイトーシスを制御していると考えられる。さらに、リン酸化p38 MAPKの阻害剤であるSB203980を加えることによってもArcadlinのエンドサイトーシスが抑制されることから、p38 MAPKが何らかの基質蛋白質をリン酸化することによってArcadlinのエンドサイトーシスが調節されると考えられた。以上の結果から、Arcadlinの細胞外部分の同種結合によってTAO2が機能的に活性化され、その情報をp38 MAPKへ伝達することによって、Arcadlinエンドサイトーシスが制御されることが明らかになった。これは、遺伝子発現だけでなく、「シナプス膜上の接着分子の数を調節することによってシナプス結合の強さを制御する」という、神経活動によるシナプス修飾の新しいメカニズムを示唆する。我々は、神経活動によって誘導ざれる神経接着分子arcadlinを見い出した。Arcadlinは、神経活動によってニューロンで誘導される。合成されたarcadlinはシナプスへ運ばれ、シナプス前・後膜で同種結合することによって、神経活動によるシナプス結合の形態学的変化に関わっていると予想される。本年度は、arcadlinの細胞内領域と結合するタンパク質を探索し、その機能解析を行った。2)次に、HEK293T細胞にarcadlin、単離されたcDNAとGFPの融合遺伝子を共発現させ、arcadlinの細胞外領域に対する抗体で免疫沈降を行ない、抗GFP抗体でウエスタン解析を行った。さらに、共焦点レーザー顕微鏡でarcadlinの染色とGFP蛍光の局在が同じ遺伝子産物を探索したところ、セリンースレオニンキナーゼのTAO2がarcadlinの細胞内領域に結合していることが予想された。3)TAO2はMKK3をリン酸化し、リン酸化されたMKK3がp38MAPkinaseをリン酸化することが知られている。そこで、HEK293T細胞にarcadlin、TAO2、MKK3、p38を強制発現させ、arcadlinの細胞外領域を細胞外から添加したところ、MKK3、p38のリン酸化が一過性に生じることがわかった。以上の結果から、TAO2は物理的にarcadlin細胞内領域に結合しているだけでなく、arcadlin細胞外領域の同種結合によって機能的に活性化され、その信号をp38MAPKへ伝達していることが明らかになった。我々は神経活動によって誘導される神経接着分子、Arcadlinを見い出している。 | KAKENHI-PROJECT-13480261 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13480261 |
神経活動によるシナプス結合強化の分子機構 | Arcadlinは、神経活動によってニューロンで誘導される。合成された、Arcadlinはシナプスへ運ばれた後、シナプス前・後膜で同種結合することによって、シナプス結合の形態学的変化に関わると予想される。本年度は、Arcadlinの細胞内領域と結合するタンパク質TAO2の機能解析を行った。TAO2はMKK3をリン酸化し、リン酸化されたMKK3が今度はp38 MAP kinaseをリン酸化することが知られている。そこで、HEK293T細胞にarcadlin、TAO2、MKK3、p38 MAPKを強制発現させ、Arcadlinの細胞外領域蛋白質を培地に添加したところ、MKK3・p38 MAPKのリン酸化とArcadlin蛋白質の内在化が生じた。Arcadlinの内在化は、dominant-negative dynaminによって止まることから、clathrin-mediated endocytosisによると考えられた。また、TAO2やMKK2、p38 MAP kinaseを共発現させないとArcadlinのエンドサイトーシスが起こらないことから、細胞内のこれらのリン酸化酵素がArcadlinのエンドサイトーシスを制御していると考えられる。さらに、リン酸化p38 MAPKの阻害剤であるSB203980を加えることによってもArcadlinのエンドサイトーシスが抑制されることから、p38 MAPKが何らかの基質蛋白質をリン酸化することによって、Arcadlinのエンドサイトーシスが調節されると考えられた。以上の結果から、Arcadlinの細胞外部分の同種結合によってTAO2が機能的に活性化され、その情報をp38 MAPKへ伝達することによって、Arcadlinのエンドサイトーシスが制御されることが明らかになった。これは、遺伝子発現だけでなく、「シナプス膜上の接着分子の数を調節することによってシナプス結合の強さを制御する」という、神経活動によるシナプス修飾の新しいメカニズムを示唆する。 | KAKENHI-PROJECT-13480261 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13480261 |
サブユニット特異的部分同位体ラベル化による巨大膜蛋白質の構造解析 | 細胞内のエネルギー生産器官であるミトコンドリアにおける電子伝達機構を解明するため,その電子伝達系の中枢を担うシトクロム酸化酵素について,NMRによる解析を可能なように安定同位体ラベルし,さらにこの酵素をナノディスク化することにより,生体内に近い膜結合状態での詳細な構造解析を実現することを試みた。バクテリア由来のシトクロム酸化酵素のナノディスク化再構成の結果から,巨大分子量膜結合蛋白質であっても安定同位体ラベルとナノディスク化で詳細な構造解析が可能であることを示した。細胞内のエネルギー生産器官であるミトコンドリアにおける電子伝達機構を解明するため,その電子伝達系の中枢を担うシトクロム酸化酵素について,NMRによる解析を可能なように安定同位体ラベルし,さらにこの酵素をナノディスク化することにより,生体内に近い膜結合状態での詳細な構造解析を実現することを試みた。バクテリア由来のシトクロム酸化酵素のナノディスク化再構成の結果から,巨大分子量膜結合蛋白質であっても安定同位体ラベルとナノディスク化で詳細な構造解析が可能であることを示した。平成25年度の研究実績の概要は以下のとおりである.バクテリア由来シトクロム酸化酵素(CcO)の発現精製系の構築これまで本研究者らはウシのCcOを用いて,その電子供与体であるシトクロムcとの相互作用を分光学的手法で検討し,その電子伝達反応の制御機構を検討してきたが,ウシのCcOはサブユニット数13,分子量42万の二量体構造を有するため,CcO側の相互作用部位についての知見は極めて限られていた.特に,アミノ酸置換体が作成できないことは,相互作用を検討する上でCcO側から直接検討できないことを意味している.そこで本年度では,アミノ酸置換が可能で,サブユニット数が3個からなる分子量の小さな紅色細菌(Rhodobacter sphaeroides)のCcOの単離,精製を試みた.このCcOの発現系はイリノイ大学のGennis教授の研究室で作成された発現ベクターを利用した系で,現状では発現効率が低く,十分な収量のccOを得るまでには至っていないが,系統的な条件検討により,実験に支障のない量の試料が得られる発現精製系の目途を立てることができた.CcO-Cytc電子伝達複合体における相互作用の同定これまでの本申請者らの結果を元に,CcO-Cytc電子伝達複合体における相互作用について,特に,電子伝達複合体の形成においてその安定化に寄与すると想定されるヘム近傍の相互作用に絞って研究を進めた.その結果,ヘム近傍のLys13の変異により,その相互作用部位が大きく変化することが確認され,このことはCcO側においては負電荷のアミノ酸が,電子伝達複合体の形成に大きな寄与をしていると想定された.以上の結果は,来年度に本格的に検討を開始するCcO側の変異体作成の上で,重要な知見となり,部位特異的アミノ酸置換を施す部位の絞り込みが可能となった.バクテリア由来のシトクロム酸化酵素およびその電子伝達系タンパク質の単離精製昨年度まで,光合成バクテリア由来のシトクロム酸化酵素についてその発現,単離,精製を行ってきたが,菌体の成長が遅い上に目的タンパク質発現効率が悪く,安定同位体ラベルに耐えうる十分量の試料を得ることは容易ではなかった。今年度は,さらに条件検討を進め,一定量の試料を得られる目処はついたものの,安定同位体でのナノディスク再構成化まで視野に入れたときには有利ではないと判断した。そこで,菌体の成長が早く,既に大量培養の報告のあるコレラ菌のシトクロム酸化酵素に注目し,その大量精製系を確立した。さらに,このコレラ菌由来のシトクロム酸化酵素には,これまで我々が用いてきた哺乳類のCyt cでは十分な電子伝達反応が行えないため,コレラ菌のシトクロム酸化酵素への生理的な電子供与体であるシトクロムc4についても大量精製系を確立した。シトクロムcーシトクロム酸化酵素間電子伝達複合体形成における構造変化標記のような構造変化を追跡するため,その基礎的な構造情報を与える酸化型,還元型シトクロムcの詳細な立体構造をNMRにより決定した。その結果,電子伝達前の状態に相当する還元型に比べ,電子伝達後の状態に相当する酸化型では,シトクロムcの酸化還元中心であるヘム近傍の疎水性残基による溶媒露出疎水面の拡張が観測され,電子伝達複合体形成においては酸化還元中心付近で,疎水性相互作用が強く作用することが示唆された。シトクロムc酸化酵素におけるシトクロムc相互作用部位の同定と検討実験的に決定することが困難なウシシトクロムc酸化酵素におけるシトクロムcへの相互作用部位をシミュレーションによって検討した。その結果,これまでの予想通り,サブユニットIIの領域に重要な相互作用部位が位置していることが明らかになった。生物無機化学平成25年度の研究計画項目に対する達成度は以下のとおりである.バクテリア由来シトクロム酸化酵素(CcO)の発現精製系の構築R. sphaeroidesのCcOの単離,精製系の確立については,十分量の試料が供給できる状態ではないが,その改良の目途を立てることができ,来年度の本格的なアミノ酸置換による変異体CcOの作成は十分可能であることから,当初の目的はほぼ達成できたと考えられる.一方,サブユニット特異的安定同位体ラベルについては,さらに予備実験が必要である.CcO-Cytc電子伝達 | KAKENHI-PROJECT-25650016 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25650016 |
サブユニット特異的部分同位体ラベル化による巨大膜蛋白質の構造解析 | 複合体における相互作用の同定本年度の結果から,CcO側で電子伝達反応に重要な機能を果たしているアミノ酸残基の絞り込みが可能になったことから,当初の目的はほぼ達成できたと考えられる.平成25年度の実験を通して,バクテリア由来シトクロム酸化酵素(CcO)の発現精製系の構築についてはある程度の目途が立ったことから,平成26年度の実験計画において最も重点を置くべき点はサブユニット特異的安定同位体ラベル化であると考えられる.平成25年度の予備実験からは,平成26年度の本格的な実験開始に対して,まだ十分目途が立っているとは言い難い状況である.平成25年度に得られた実験結果を再検討し,新たな安定同位体導入法を検討することなどが必要と考えられる.平成25年度では紅色細菌由来のCcOを大量培養する予定であったが,より高い発現効率と精製度を目指して,当初予定したよりは条件検討に時間を十分かけて実験を遂行したため,培地が大量に必要な大量培養の実験が当初予定した回数よりも大幅に少なくなり,培地の購入量が当初見込みを大きく下回った.また,サブユニットラベル化の予備実験についても,安定同位体を使用しない「コールド」実験でその検討を行ったため,高価な安定同位体の購入が当初予定よりも少なかった.そのため,次年度使用額が生じた.平成26年度は平成25年度で予定していた紅色細菌由来CcOの大量培養実験と,安定同位体を用いたサブユニットラベルの実験を本格的に開始するため,当初予定していたより大量の培地用試薬と安定同位体導入試薬が必要となる.これらの試薬の購入に充てる予定である. | KAKENHI-PROJECT-25650016 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25650016 |
スギ林木の成長特性と木材材質との関係 | より効率的なスギ材利用のためには,立木の力学的性能を予測する必要がある。風や台風によって樹幹が受ける曲げモーメントは樹形によって異なることに着目し,樹形によって木部の力学的性質が異なると考えた。この研究ではスギ林木の形状比(樹高/胸高直径)から力学的性能を予測できるか否かについて検討した。オビスギ品種展示林(38年生),若齡の林分(24年生,品種不明),成長の異なる3林分(4750年生,品種不明)および植栽密度試験林分(32年生,トサアカ)を対象に形状比(樹高/胸高直径)と樹幹曲げヤング率との関係を調べたところ,以下の結果を得た。(1)品種によって3つのタイプ,すなわち,(1)林分内の生育環境によって形状比が異なり,形状比が大きくなると力学的性質が増大するタイプ,(2)林分内の生育環境によって形状比が異なるものの,力学的性質への形状比の影響が小さいタイプ,(3)生育環境の影響が小さく形状比の変動が小さく,力学的性質の変動も小さいタイプに分類され,(1)のタイプが多かった。(2)展示林全体を品種が混在する1つの林分とした場合,形状比と樹幹曲げヤング率との間には密接な関係がみられ,形状比が大きくなるほど樹幹曲げヤング率は増大し,形状比100付近で増加割合が低下した。(3)形状比によって展示林のスギ林木を区分すると,樹幹曲げヤング率が大きくバラツキの小さいグループを選別することが可能であった。(4)2450年生までの林分では,林齢に関係なく,形状比と樹幹曲げヤング率との間に密接な関係がみられた。(5)成長の異なる林分間でも,形状比と樹幹曲げヤング率との間には密接な関係がみられ,形状比の小さな林分に比べて,大きい林分では樹幹曲げヤング率が大きかった。(6)植栽密度を制御した林分では,植栽密度が大きくなるほど形状比が増大し,樹幹曲げヤング率も増大した。これらの結果から,スギ林木の品質管理や育林施業において,形状比が有効な指標となることがわかった。この研究の目的は、形状比(樹高/胸高直径)を成長特性の指標、立木の樹幹曲げヤング率を力学的性質の指標として、さまざまなスギ林分でこれらの指標値を測定し、スギ林木の成長特性と木材材質との関係について基礎資料を得ることである。さらに、得られた結果をもとに、形状比によって立木の樹幹曲げヤング率を予測することが可能であるか否かについて検討を加える。今年度は、オビスギ品種展示林と大学演習林のスギ林分を研究対象として、以下の研究成果を得た。1.オビスギ品種展示林では、林分内の局所的な生育環境の違いによって、胸高直径、樹高および形状比が大きく変動する品種と、生育環境の影響を受けずに、ほとんど同じような成長を示す品種があった。2.オビスギ品種展示林では、形状比が大きくなるにつれて、立木樹幹曲げヤング率が増大する品種が多かったものの、両者の間に密接な関係が認められない品種もあった。3.オビスギ品種展示林を17品種(オビスギ15品種、対照2品種)が混在する1つの林分と見なした場合、形状比が大きくなるにつれて立木樹幹曲げヤング率が増大し、形状比90100付近でその増加傾向が小さくなった。4.オビスギ品種展示林の林木を形状比が大、中、小の3グループに区分したところ、各グループの立木樹幹曲げヤング率の平均値は102×10^3kg/cm^2、92×10^3kg/cm^2、79×10^3kg/cm^2となり、形状比による力学的性質の区分が可能であった。5.品種不明で、同一林齢である3つのスギ林分においても、形状比が大きくなるにつれて、立木樹幹曲げヤング率が増大することが認められた。より効率的なスギ材利用のためには,立木の力学的性能を予測する必要がある。風や台風によって樹幹が受ける曲げモーメントは樹形によって異なることに着目し,樹形によって木部の力学的性質が異なると考えた。この研究ではスギ林木の形状比(樹高/胸高直径)から力学的性能を予測できるか否かについて検討した。オビスギ品種展示林(38年生),若齡の林分(24年生,品種不明),成長の異なる3林分(4750年生,品種不明)および植栽密度試験林分(32年生,トサアカ)を対象に形状比(樹高/胸高直径)と樹幹曲げヤング率との関係を調べたところ,以下の結果を得た。(1)品種によって3つのタイプ,すなわち,(1)林分内の生育環境によって形状比が異なり,形状比が大きくなると力学的性質が増大するタイプ,(2)林分内の生育環境によって形状比が異なるものの,力学的性質への形状比の影響が小さいタイプ,(3)生育環境の影響が小さく形状比の変動が小さく,力学的性質の変動も小さいタイプに分類され,(1)のタイプが多かった。(2)展示林全体を品種が混在する1つの林分とした場合,形状比と樹幹曲げヤング率との間には密接な関係がみられ,形状比が大きくなるほど樹幹曲げヤング率は増大し,形状比100付近で増加割合が低下した。(3)形状比によって展示林のスギ林木を区分すると,樹幹曲げヤング率が大きくバラツキの小さいグループを選別することが可能であった。 | KAKENHI-PROJECT-16780128 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16780128 |
スギ林木の成長特性と木材材質との関係 | (4)2450年生までの林分では,林齢に関係なく,形状比と樹幹曲げヤング率との間に密接な関係がみられた。(5)成長の異なる林分間でも,形状比と樹幹曲げヤング率との間には密接な関係がみられ,形状比の小さな林分に比べて,大きい林分では樹幹曲げヤング率が大きかった。(6)植栽密度を制御した林分では,植栽密度が大きくなるほど形状比が増大し,樹幹曲げヤング率も増大した。これらの結果から,スギ林木の品質管理や育林施業において,形状比が有効な指標となることがわかった。 | KAKENHI-PROJECT-16780128 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16780128 |
中小企業の情報基盤を強化するクラウドシステムの研究開発 | 激化する競争環境下における中小企業の情報基盤を構築・強化するための情報システム・モデルとして、中小企業に適合的なクラウドシステムについて研究し、プロトタイプシステムの開発をおこなった。具体的には、オープンソースのクラウド基盤であるEucalyptusおよびOpenStackを用いて、構築が容易で運用管理の負担が少ないモデルを提案し、実験運用から評価までを実施した。また、代表的な有償のサービスであるAmazon EC2との比較もおこなった。前年度の研究調査およびその分析と考察にもとづいて、クラウドシステムの企画・設計の作業に入る。このフェーズでは、全研究者でシステムの仕様について、分析・検討を重ねることにより、仕様を確定していく。システムの骨格やユーザ・インタフェースなど、本システムの基本構想は研究代表者が中心となって立案し、研究分担者は経営情報システム的な側面およびネットワーク技術・情報技術をフォローする。また、研究分担者は、本システムが幅広い分野の業務に適用できるように経営情報論および情報工学等の立場から検討を加える。そして、システムの設計・開発に取り組む。ここでは、中小企業に適合的なシステムのモデルを考案し、プロタイプとして実装する。まずはじめに、Google AppsやAmazon ECのような既存の代表的なクラウドシステムについて優劣を比較・検討した。また、システムの基盤となる仮想化技術について比較・検討した。実際のハードウェアを完全にエミュレートするのではなく、仮想マシン環境のための仮想的なハードウェアを提供することによって実現する「準仮想化」と仮想化支援機能を有するCPUを用いて、実際のハードウェアを完全にエミュレートする「完全仮想化」との優劣について検討した。続いて、クラウドシステムサービスの形態に対応させて、SaaS(Software as a Service:機能がネットワークを介して提供される)、PaaS(Platform as a Service:アプリケーションの開発環境、カスタマイゼーション機能がネットワークを介して提供される)、IaaS(Infrastructure as a Service:仮想マシンやOSもネットワークを介して提供される)という観点から3つのサブシステムとしての構成を設計した。激化する競争環境下における中小企業の情報基盤を構築・強化するための情報システム・モデルとして、中小企業に適合的なクラウドシステムについて研究し、プロトタイプシステムの開発をおこなった。具体的には、オープンソースのクラウド基盤であるEucalyptusおよびOpenStackを用いて、構築が容易で運用管理の負担が少ないモデルを提案し、実験運用から評価までを実施した。また、代表的な有償のサービスであるAmazon EC2との比較もおこなった。まず、クラウドシステムの企業への適用および中小企業における情報基盤に関するこれまでの研究蓄積、および最新の動向を体系的に整理した。この作業は、1文献研究をおこなう、2先進的な取り組みをおこなっている中小企業の事例を調査する、という方法により進めた。1については、クラウドシステムおよび中小企業における情報戦基盤に関する主要な文献のサーベイとレビューをおこなった。とくにクラウドシステムの利用を強力に推進している欧米の文献のサーベイに注力した。そして、欧米での先進的な事例が日本に応用可能かどうかについても検討した。具体的には、たとえば米国ReliableAdaptive Distributed Systems Laboratory(RAD Lab)がまとめた「クラウドコンピューティングに関する研究」などを中心として、サービスの可用性、データの囲い込み、データの機密性と監査性など10項目のクラウドコンピューティングの課題について調査・検討をおこなった。また2については、クラウドシステムの導入を積極的に推進している中小企業あるいは中小企業の情報化を支援している公共機関などについて事例研究をおこなった。そこでは、さまざまなクラウドシステム構築の事例から、その効果や問題点を考察した。その際には、独立行政法人情報処理推進機構による「クラウド・コンピューティング社会の基盤に関する研究会」報告書あるいは「中小企業等におけるクラウドの利用に関する実態調査」などを参考にして分析を進めた。これらの調査研究は研究代表者を中心としておこない、研究分担者もその一翼を担い、情報蒐集やデータ分析作業などを分担した。最終年度となる平成26年度では、開発したシステムの実証実験をおこない、さらに評価もおこなう研究実施計画に沿って、最終フェーズとして、実証システムによる運用と評価をおこない、知見としてまとめた。まず、システムの基盤となるOSの選定と設定、データベースの選定と導入、ネットワークの構築を実施した。OSは、CentOS 6.4(x86_64)を採用した。また、データベースは、MySQLなどを選択した。次いで、IaaS型クラウドサービスを提供するための代表的なオープンソースであるEucalyptusなどを導入し、プロトタイプシステムを試作した。Amazon EC2と同様のサービスを他の技術で提供する形態がEC2クローンである。Eucalyptusは、IaaS型クラウドサービスを提供するための代表的なオープンソースである。Eucalyptusは、EC2クローンの一つである。Eucalyptus3.2.2 FastStartを導入し、クラウド環境の構築をおこなった。もう一つは、OpenStackによるクラウド環境の構築である。OpenStackは、IaaS型クラウドサービスを提供するための代表的なオープンソースである。OpenStackについても、Eucalyptusとほぼ同様の手順でクラウド環境を構築することができた。続いて、中小企業の協力を得てシステムの実証実験をおこない、RASISつまり「信頼性」「可用性」「保守性」「保全性」「安全性」の観点から主観的ではあるが評価を実施した。これにより、中小企業に適合的なクラウドシステムのフレームワークのモデルとして実装するとともに運用・管理時の問題点についても調査・検討することができた。情報システム前年度の研究調査およびその分析と考察にもとづいて、クラウドシステムの企画・設計の作業に入ることができた。このフェーズでは、全研究者でシステムの仕様について、分析・検討を重ねることにより、仕様を確定した。 | KAKENHI-PROJECT-24530444 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24530444 |
中小企業の情報基盤を強化するクラウドシステムの研究開発 | システムの骨格やユーザ・インタフェースなど、本システムの基本構想は研究代表者が中心となって立案し、研究分担者は経営情報システム的な側面およびネットワーク技術・情報技術をフォローした。また、研究分担者は、本システムが幅広い分野の業務に適用できるように経営情報論および情報工学等の立場から検討を加えた。そして、システムの設計・開発に取り組むことができた。ここでは、中小企業に適合的なシステムのモデルを考案し、プロタイプとして実装した。まずはじめに、Google AppsやAmazon ECのような既存の代表的なクラウドシステムについて優劣を比較・検討した。また、システムの基盤となる仮想化技術について比較・検討した。実際のハードウェアを完全にエミュレートするのではなく、仮想マシン環境のための仮想的なハードウェアを提供することによって実現する「準仮想化」と仮想化支援機能を有するCPUを用いて、実際のハードウェアを完全にエミュレートする「完全仮想化」との優劣について検討した。続いて、クラウドシステムサービスの形態に対応させて、SaaS(Software as a Service:機能がネットワークを介して提供される)、PaaS(Platform as a Service:アプリケーションの開発環境、カスタマイゼーション機能がネットワークを介して提供される)、IaaS(Infrastructure as a Service:仮想マシンやOSもネットワークを介して提供される)という観点から3つのサブシステムとしての構成を設計しプロトタイプを稼動することができた。クラウドシステムの企業への適用および中小企業における情報基盤に関するこれまでの研究蓄積、および最新の動向の整理はほぼ完了した。中小企業における情報戦基盤に関する主要な文献のサーベイとレビューについてもおおむね完了した。「クラウドコンピューティングに関する研究」などを中心として、サービスの可用性、データの囲い込み、データの機密性と監査性など10項目のクラウドコンピューティングの課題についても検討をおこなうことができた。クラウドシステムの導入を積極的に推進している中小企業あるいは中小企業の情報化を支援している公共機関などについての事例研究もおおむね完了した。 | KAKENHI-PROJECT-24530444 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24530444 |
枯草菌を用いた環境調和型多機能微生物農薬の創製 | 1.殺菌剤(ネビジン)耐性菌を収得することに成功した。この菌のiturin生産性は安定していたが、surfactin生産性は低下した。2.この耐性菌を農地に用いて植物病抑制試験を行ったところ、育苗の段階で使用することが有効であることが判明した。3.農業モンカット耐性は元株RB14Cが保持していることが明らかになった。4.RB14Cとモンカットの併用試験をポットにより実施し、使用するモンカットの量を1/5に減らすことができることを証明した。5.トマトの苗立枯病に対する効果をテストした結果、菌体かん注あるいは発芽種子処理と農薬フルトラニルのかん注を組み合わせると高い効果がみられた。6.キュウリホモプシス根腐病の抑制テストを実施した。キュウリの菌を移植する時、RB14Cの菌体懸濁液を根に浸す処理によって顕著な病害抑制がみられた。7.キチナーゼ遺伝子をRB14Cおよび枯草菌M1113に導入し、キチナーゼを生産することを確認した。各種の病原菌とキチナーゼ遺伝子保育菌を混合すると病原菌の菌糸の成長が抑制されることが実証された。8.iturin生合成遺伝子のクローニングに成功した。iturin合成遺伝子は約30kbpからなる巨大分子であり、上流部分に側鎖である脂肪酸合成に関与すると考えられる遺伝子が思い出された。9.surfactin耐性遺伝子をクローニングし、その特性を明らかにした。今まで知られている多剤耐性遺伝子と相関性を示した。この遺伝子の増幅はsurfactinの生産性の向上にはつながらなかった。10.iturinおよびsurfactinの高生産条件元株によるiturinおよびsurfactinuの生産量は数100ppmであったが培地組成を検討した結果、surfactinでは20g/l、iturinは38/lまで生産量を向上させることに成功した。こうして生産性が向上した培養液による植物病抑制効果を検討し、その有効性が証明された。1.殺菌剤(ネビジン)耐性菌を収得することに成功した。この菌のiturin生産性は安定していたが、surfactin生産性は低下した。2.この耐性菌を農地に用いて植物病抑制試験を行ったところ、育苗の段階で使用することが有効であることが判明した。3.農業モンカット耐性は元株RB14Cが保持していることが明らかになった。4.RB14Cとモンカットの併用試験をポットにより実施し、使用するモンカットの量を1/5に減らすことができることを証明した。5.トマトの苗立枯病に対する効果をテストした結果、菌体かん注あるいは発芽種子処理と農薬フルトラニルのかん注を組み合わせると高い効果がみられた。6.キュウリホモプシス根腐病の抑制テストを実施した。キュウリの菌を移植する時、RB14Cの菌体懸濁液を根に浸す処理によって顕著な病害抑制がみられた。7.キチナーゼ遺伝子をRB14Cおよび枯草菌M1113に導入し、キチナーゼを生産することを確認した。各種の病原菌とキチナーゼ遺伝子保育菌を混合すると病原菌の菌糸の成長が抑制されることが実証された。8.iturin生合成遺伝子のクローニングに成功した。iturin合成遺伝子は約30kbpからなる巨大分子であり、上流部分に側鎖である脂肪酸合成に関与すると考えられる遺伝子が思い出された。9.surfactin耐性遺伝子をクローニングし、その特性を明らかにした。今まで知られている多剤耐性遺伝子と相関性を示した。この遺伝子の増幅はsurfactinの生産性の向上にはつながらなかった。10.iturinおよびsurfactinの高生産条件元株によるiturinおよびsurfactinuの生産量は数100ppmであったが培地組成を検討した結果、surfactinでは20g/l、iturinは38/lまで生産量を向上させることに成功した。こうして生産性が向上した培養液による植物病抑制効果を検討し、その有効性が証明された。(1)本枯草菌が生産する各物質をコードする遺伝子のクローニング抗菌物質プリパスタチンをコードする遺伝子をクローニングすることに成功した。従来からフェンギシンを呼ばれていた遺伝子はPli遺伝子として命名し直した。iturinAをコードする遺伝子のクローニングにも成功し、塩基配列を解読中である。(2)抗菌物質の生産性の向上に貢献する遺伝子の決定今まで、酵素などの生産性に関与する遺伝子としてdegQ遺伝子が知られていたが、この遺伝子が枯草菌において正常に作用しない場合があることを見いだした。そこでdegQ(H)遺伝子を枯草菌に導入したところ、プリパスタチンの生産性が数倍向上した。degQ(H)が抗菌物質の生産性にも関与することを初めて明らかにした。(3)化学農薬耐性菌の創製枯草菌を化学農薬と併用して使用する場合、化学農薬に耐性を示す必要がある。その為に、2種類の化学農薬耐性菌を突然変異により創製した。野菜の根こぶ病に有効なネビジン0.01%に耐性な菌を獲得し、大量培養して、次年度以降の実験資材を得た。苗立ち枯病に有効なフルトラニル100ppmに耐性な菌を得た。(4)培養の最適化枯草菌のプロモータを改変した遺伝子組換え体を、用いイチュリンとサーファクチンの生産性を検討した結果、イチュリンの生産性は1.5倍向上したが、サーファクチンは80%に減少した。 | KAKENHI-PROJECT-11450312 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11450312 |
枯草菌を用いた環境調和型多機能微生物農薬の創製 | (5)植物試験上記で得られた各種の枯草菌を実験室において、トマトの苗立枯れ病(病原菌は糸状菌、Rhizoctonia solani)を用い、植物病の抑制試験を実施した。(1)本枯草菌が生産する抗菌物質iturinAをコードする遺伝子のクローニングiturin Aをコードする遺伝子のクローニングにも成功し、塩基配列の解読を完了した。iturin合成遺伝子は約30kbpからなる巨大分子であり、前頭部分に側鎖である脂肪酸合成に関与すると考えられる遺伝子が見い出された。(2)バイオサーファクタント、surfactinの自己耐性遺伝子のクローニングと特性解析surfactinを生産する枯草菌から自己耐性遺伝子としてyerpをクローニングすることに成功し、この遺伝子の諸特性を解析した。(3)バイオサーファクタント、surfactinの生産性の向上バイオサーファクタント、surfactinの生産性は数g/l程度が限界であった。枯草菌MI113C(pC115)はサーファクチンのみを生産するが、この菌に変異を加えsoy bean powder培地で培養するサーファクチン生産性は15g/lまで向上する。さらにこの変異株NA2054にyerp遺伝子を導入し、同じ培地で培養すると20g/lまで増加した。この溶液は今まで報告された値の中で最大の値である。(4)化学農薬耐性菌の創製と植物試験枯草菌を化学農薬と併用して使用する場合、化学農薬に耐性を示す必要がある。枯草菌を苗立ち枯病に有効な化学農薬フルトラニル100ppmで培養したところ、増殖に差はみられなかった。従って枯草菌はフルトラニルに対して耐性を本来有していることがわかった。フルトラニル存在下でiturin Aの生産量は変化しないがsurfactin生産量は1/6に低下した。Rhizoctonia solaniの菌立枯病に対するフルトラニルと枯草菌の併用試験をポットにより行ったところ、化学農薬め量を1/4に減少させることができること、土壌中から枯草菌が検出されたことから十分化学農薬の代替が可能であることが判明した。1.殺菌剤(ネビジン)耐性菌を収得することに成功した。この菌のiturin生産性は安定していたが、surfactin生産性は低下した。2.この耐性菌を農地に用いて植物病抑制試験を行ったところ、育苗の段階で使用することが有効であることが判明した。3.農業モンカット耐性は元株RB14Cが保持していることが明らかになった。4.RB14Cとモンカットの併用試験をポットにより実施し、使用するモンカットの量を1/5に減らすことができることを証明した。5.トマトの苗立枯病に対する効果をテストした結果、菌体かん注あるいは発芽種子処理と農薬フルトラニルのかん注を組み合わせると高い効果がみられた。6.キュウリホモプシス根腐病の抑制テストを実施した。キュウリの菌を移植する時RB14Cの菌体懸濁液を根に浸す処理によって顕著な病害抑制がみられた。7.キチナーゼ遺伝子をRB14Cおよび枯草菌MI113に導入し、キチナーゼを生産することを確認した。各種の病原菌とキチナーゼ遺伝子保育菌を混合すると病原菌の菌糸の成長が抑制されることが実証された。8.iturin生合成遺伝子のクローニングに成功した。 | KAKENHI-PROJECT-11450312 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11450312 |
歯根膜の組織特異性に関する基礎的研究 | 歯根膜の組織特異性の有無を、外骨膜との比較により検索した。外骨膜、歯根膜、骨組織それぞれから得た細胞間でALPase活性やPTHによるcAMP産生などに違いは認められなかった。歯根膜を除去し、外骨膜をラッピングした歯根の顎骨肉への移植では、移植歯根表面への新生セメント質の形成は認められなかったものの、移舶歯根の骨性癒着もあまり観察されなかった。また外骨膜から得た細胞を培養した象牙質片の顎骨内への移植でも、同様の結果が認められた。また外骨膜および歯根膜それぞれを培養した象牙質片の移植後に発現する蛋白の検索においても、両者間に違いは認められなかった。今回の結果では、外骨膜には多数の骨芽細胞様細胞が含まれるものの、いずれの外骨膜応用群でも新生セメント貿は観察されなかった。一方、そのような多数の骨芽細胞様細胞が含まれるにもかかわらず、骨性癒着はほとんど観察されなかった。以上のことから、歯根膜という非石灰化組織の維持は歯根膜以外の組織でも可能であるのに対し、セメント質形成は歯根膜にのみ存在する特異的能力である可能性が高い事が示唆された。今後例数を増やし、さらに検索していく予定である。歯周組織を再生させるためには、歯根膜が他の組織との共通性をもたない全く特異的な組織であるのかどうかを明確にする必要がある。そのためには歯根膜組織と他の組織との比較検討を行なわなければならない。そこで我々は、比較する組織として外骨膜に着目した。外骨膜は骨表層に存在する線維性結合組織であり、骨に近接し、その組織内に骨芽細胞が認められるものの通常骨化しない組織であり、歯根膜と近似している。さらに歯周組織において、歯槽骨の外骨膜と歯根膜は連続性を有している。そこで、本研究では、外骨膜がいわゆる場の違いにより歯根膜様の構造をとり得るのか?なぜ外骨膜や歯根膜に骨化が見られないのか?を目的に実験を行った。成犬の抜去歯からOut growthさせた歯根膜細胞と、生後3か月の犬の頭蓋の外骨膜からOut growthさせた外骨膜細胞それぞれのALPase活性、PTH応答性、Type Iコラーゲン産生量および1,25(OH)_2D_3依存的BGP産生量を検索した。しかし両細胞とも骨芽細胞様細胞の特徴を示し、両細胞間で違いは認められなかった。生後3か月の犬の頭蓋の外骨膜を、歯根膜とセメント質を除去した抜去歯根にラッピングして、成犬の下顎骨に形成した骨窩洞に埋入した。外骨膜をラッピングせずにそのまま抜去歯根を骨窩洞に埋入したものを対照群とした。埋入6週後、対照群では抜去歯根表層の大部分に著名なアンキロ-シスが生じ、歯根膜腔は認められなかった。一方外骨膜をラッピングした群では、歯根表層にアンキロ-シスは認められず、歯根膜腔が存在していた。しかし歯根表層にセメント質は認められず、歯根膜腔の線維も歯根表面に平行に配列していた。現在実験期間を延長した同様の実験系を行っている。また外骨膜から獲得した外骨膜細胞および抜去歯から獲得した歯根膜細胞それぞれを象牙片上で培養し、それぞれの象牙質片を成犬の下顎骨に形成した骨窩洞に埋入した。6週後、歯根膜細胞群の一部の象牙質片表層にセメント質の形成が認められているものの、外骨膜群では認められなかった。しかし未だ数例が少なく、現在例数を増やしてさらなる検索を行っている。歯根膜の組織特異性の有無を、外骨膜との比較により検索した。外骨膜、歯根膜、骨組織それぞれから得た細胞間でALPase活性やPTHによるcAMP産生などに違いは認められなかった。歯根膜を除去し、外骨膜をラッピングした歯根の顎骨肉への移植では、移植歯根表面への新生セメント質の形成は認められなかったものの、移舶歯根の骨性癒着もあまり観察されなかった。また外骨膜から得た細胞を培養した象牙質片の顎骨内への移植でも、同様の結果が認められた。また外骨膜および歯根膜それぞれを培養した象牙質片の移植後に発現する蛋白の検索においても、両者間に違いは認められなかった。今回の結果では、外骨膜には多数の骨芽細胞様細胞が含まれるものの、いずれの外骨膜応用群でも新生セメント貿は観察されなかった。一方、そのような多数の骨芽細胞様細胞が含まれるにもかかわらず、骨性癒着はほとんど観察されなかった。以上のことから、歯根膜という非石灰化組織の維持は歯根膜以外の組織でも可能であるのに対し、セメント質形成は歯根膜にのみ存在する特異的能力である可能性が高い事が示唆された。今後例数を増やし、さらに検索していく予定である。 | KAKENHI-PROJECT-09771646 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09771646 |
近世興福寺・春日社の組織と祭礼構造に関する研究-日本宗教の世俗化過程に関する比較宗教史的試みのために | 本年度は、引き続き奈良国立文化財研究所の協力を得て興福寺の史料調査を行った。おもに、『興福寺典籍文書目録』第2巻に掲載されている記録を中心に調査し、主要な文献に付いては、複写した。集会記録・近世中期の僧侶の日記・春日神鹿関連の史料である。前年度収集した史料とあわせて解読した。祭礼あるいは法会のうち、春日若宮祭礼に付いて中心的に分析した。奈良奉行所与力の記録である「庁中漫録」の中に、戦国期から織豊政権期に作成された送状があり、これを中心に、他の記録を突き合わせると、送状の内容と実際にそなえられる物とが一部乖離していること、国人の地位によって供物量に違いが大きいこと、あるいは天正期になると減少が目立つこと、惣奉行とよばれる事務担当者の地位が大きくなること、かれらは、在地の小領主とよばれる階層に属することなどが明らかになった。これらの変動は、かって柳田国男が『日本の祭』で論じた大きな宗教変動、すなわち「宗教の世俗化」にも比される問題である。また、実務的な部分が小領主によって支えられているという点は、日常的な寺院経営にも反映しており、『多聞院日記』をそうした観点で分析すると、端的な事例として備前村衛門太郎の例が挙げられる。彼を通してみると、天正末年から慶長期にかけて、小領主の位置づけが大きくなっていることがわかり、宗教教団のみならず近世初期の地域社会の主要な担い手が彼らであったことも明らかになってきた。本年度は春日社・興福寺その他の文書所蔵機関等の調査を行い、具体的な作業として、得られた史料の中から、春日若宮祭礼の行事次第を翻刻中である。これは奈良奉行所役人によって記された長文のもので、従来知られていた内容よりはるかに詳細な祭礼運営が明らかになることは間違いない。さらに収集した資料を用い、流鏑馬を奉仕していた人々の動向を整理中である。流鏑馬の記録上の記述には大きな変化はないが、天正期には流鏑馬を直接奉仕している者だけでなく、それを差配する総奉行の社会的な位置が高くなり、かれらの中から江戸時代の流鏑馬奉仕者が出て、家として固定していることがわかってきた。この理解には祭礼の歴史だけでなく、中近世移行期における村落社会の動向把握が不可欠であるということにもなる。また祭礼の構造は社会変動期にあっても温存されているが、一方で実態は構造と分離し、祭礼は儀礼としてのみ残存していること。豊臣秀吉が若宮祭礼を自らの祭礼化したことは、定説となっているが、さらにそれを伝統の継承と変更の観点から、分節化して検討することができることがわかった。今後は、これらを具体的に分析論述する作業を行う。その他に「唐院日記」という近世興福寺の運営史料の存在が確認できた。これは、従来別の史料で存在が示されていたもので、教団内部で起こった諸事件の分析だけではなく、近世社会における「聖俗の分化」(宗教の世俗化secularization of religionの定義の一つ)も、より細部まで検討することが可能になると思われる。この史料の複写と分析は来年度に作業する予定である。本年度は、引き続き奈良国立文化財研究所の協力を得て興福寺の史料調査を行った。おもに、『興福寺典籍文書目録』第2巻に掲載されている記録を中心に調査し、主要な文献に付いては、複写した。集会記録・近世中期の僧侶の日記・春日神鹿関連の史料である。前年度収集した史料とあわせて解読した。祭礼あるいは法会のうち、春日若宮祭礼に付いて中心的に分析した。奈良奉行所与力の記録である「庁中漫録」の中に、戦国期から織豊政権期に作成された送状があり、これを中心に、他の記録を突き合わせると、送状の内容と実際にそなえられる物とが一部乖離していること、国人の地位によって供物量に違いが大きいこと、あるいは天正期になると減少が目立つこと、惣奉行とよばれる事務担当者の地位が大きくなること、かれらは、在地の小領主とよばれる階層に属することなどが明らかになった。これらの変動は、かって柳田国男が『日本の祭』で論じた大きな宗教変動、すなわち「宗教の世俗化」にも比される問題である。また、実務的な部分が小領主によって支えられているという点は、日常的な寺院経営にも反映しており、『多聞院日記』をそうした観点で分析すると、端的な事例として備前村衛門太郎の例が挙げられる。彼を通してみると、天正末年から慶長期にかけて、小領主の位置づけが大きくなっていることがわかり、宗教教団のみならず近世初期の地域社会の主要な担い手が彼らであったことも明らかになってきた。 | KAKENHI-PROJECT-09710247 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09710247 |
ダイオキシンの胎児毒性に関する研究:大脳皮質発生モデルを用いた解析 | 近年、環境汚染物質が生体に与える影響が懸念されており、特に胎児発生への影響については社会的関心が高い。環境汚染物質であるダイオキシン(2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin, TCDD)は、培養細胞において細胞分裂動態に影響を与えることが知られている。さらに、胎内曝露したラットで出生後の空間記憶能力が障害されるなど、高次脳機能発達障害の原因となる可能性が報告されている。そこで、TCDD胎内曝露が大脳皮質発生に与える影響を解明することを目的として、TCDD胎内曝露脳の大脳皮質発生過程を、大脳皮質発生の数学モデルを応用し定量解析した。【方法】妊娠7日のマウスにTCDD(20μg/kg体重)を1回経口投与、胎生12日目のマウス胎児前脳を用いて、神経前駆細(NPC)の(1)細胞周期調節遺伝子発現・局在の変化、(2)細胞周期長、(3)分化誘導の確率(Q値)、について解析した。さらに生後21日のマウス終脳を用いて、(1)終脳の全長・全幅、(2)大脳皮質の厚さ、(3)抗GABA免疫組織化学染色切片を用いた皮質各層のGABA陽性・陰性細胞、グリア細胞数・密度について解析した。【成績】平成15年度平成16年度の研究期間に、TCDD胎内曝露は(1)神経前駆細胞(NPC)内のp27Kiplの核内存在量を増加、(2)大脳皮質発生早期にNPCのG1期を延長、(3)大脳皮質発生早期にNPCの化誘導の確率(Q値)を増加、(4)最終的に形成される大脳皮質深層の投射ニューロン数を減少させ非薄化させること、を明らかにした。【考察】TCDD胎内曝露が大脳皮質発生異常(薄い大脳皮質)の原因となること示した。TCDD胎内曝露により、胎生12日目でのp27Kipl核内局在量が増加、NPCの早期の異常な分化誘導亢進が、最終的に大脳皮質の菲薄化につながることを示した。皮質深層のGABA陰性細胞のみがTCDD曝露群で減少していた理由として、TCDD曝露が皮質発生早期にNPCの分化誘導を異常に亢進させた結果、皮質浅層のGABA陰性細胞に異常に分化した可能性が示唆された。近年、環境汚染物質が生体に与える影響が懸念されており、特に胎児発生への影響については社会的関心が高い。環境汚染物質であるダイオキシン(2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin, TCDD)は、培養細胞において細胞分裂動態に影響を与えることが知られている。さらに、胎内曝露したラットで出生後の空間記憶能力が障害されるなど、高次脳機能発達障害の原因となる可能性が報告されている。そこで、TCDD胎内曝露が大脳皮質発生に与える影響を解明することを目的として、TCDD胎内曝露脳の大脳皮質発生過程を、大脳皮質発生の数学モデルを応用し定量解析した。【方法】妊娠7日のマウスにTCDD(20μg/kg体重)を1回経口投与、胎生12日目のマウス胎児前脳を用いて、神経前駆細(NPC)の(1)細胞周期調節遺伝子発現・局在の変化、(2)細胞周期長、(3)分化誘導の確率(Q値)、について解析した。さらに生後21日のマウス終脳を用いて、(1)終脳の全長・全幅、(2)大脳皮質の厚さ、(3)抗GABA免疫組織化学染色切片を用いた皮質各層のGABA陽性・陰性細胞、グリア細胞数・密度について解析した。【成績】平成15年度平成16年度の研究期間に、TCDD胎内曝露は(1)神経前駆細胞(NPC)内のp27Kiplの核内存在量を増加、(2)大脳皮質発生早期にNPCのG1期を延長、(3)大脳皮質発生早期にNPCの化誘導の確率(Q値)を増加、(4)最終的に形成される大脳皮質深層の投射ニューロン数を減少させ非薄化させること、を明らかにした。【考察】TCDD胎内曝露が大脳皮質発生異常(薄い大脳皮質)の原因となること示した。TCDD胎内曝露により、胎生12日目でのp27Kipl核内局在量が増加、NPCの早期の異常な分化誘導亢進が、最終的に大脳皮質の菲薄化につながることを示した。皮質深層のGABA陰性細胞のみがTCDD曝露群で減少していた理由として、TCDD曝露が皮質発生早期にNPCの分化誘導を異常に亢進させた結果、皮質浅層のGABA陰性細胞に異常に分化した可能性が示唆された。環境汚染物質であるダイオキシン(2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin, TCDD)は、胎内曝露したラットで出生後の空間記憶能力が障害されるなど、高次脳機能発達障害の原因となる可能性が報告されている。昨年我々は、胎内でTCDDに単回曝露したマウス胎仔においては、大脳皮質の発生過程が遅滞すること、そのメカニズムは神経前駆細胞においてp27Kip1の核内移行が促進するためである可能性を報告した。TCDD胎内曝露による大脳皮質発生異常のメカニズムを更に解明するために、胎生12日において、細胞分裂、分化誘導、アポトーシスに関する定量解析を行った。【方法】 | KAKENHI-PROJECT-15390327 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15390327 |
ダイオキシンの胎児毒性に関する研究:大脳皮質発生モデルを用いた解析 | 妊娠7日のマウスにTCDD(20μg/kg体重)を1回経口投与、胎生12日の胎仔前脳を用いて以下の実験を行った。1.BrdUを用いたCumulative Labeling法による細胞周期各相の測定、2.IrdUおよびBrdUの時間差投与法による分化誘導の確率(Q値)の測定、3.TUNEL染色によるアポトーシスの解析。【成績】TCDD投与群では、神経前駆細胞のG1期が延長、Q値が増加、アポトーシスは不変であった。【考察】妊娠7日におけるTCDD胎内曝露により、核内p27Kip1蛋白量が増加、その結果、胎生12日において、神経前駆細胞のG1期が延長、分化誘導の確率が増加することを示した。胎生14日で観察された大脳壁、特に皮質板の菲薄化は、TCDDが神経前駆細胞の分裂速度を減じ、また、早期に分化誘導が行われた結果、神経前駆細胞の総数が減少したためであると推測された。神経前駆細胞の減少にアポトーシスは関与していないことも示された。TCDD胎内曝露は神経初期発生において、神経前駆細胞の細胞周期制御機構を変化させ、大脳皮質発生異常(薄い大脳皮質)の原因となる可能性がある。環境汚染物質であるダイオキシン(2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin, TCDD)は、胎内曝露したラットで出生後の空間記憶能力が障害されるなど、高次脳機能発達障害の原因となる可能性が報告されている。これまでに我々は、胎内でTCDDに単回曝露したマウス胎仔の大脳皮質の発生過程が遅滞すること、そのメカニズムは胎生12日(E12)神経前駆細胞において核内p27Kip1蛋白量が増加、その結果神経前駆細胞のG1期が延長し、分化誘導の確率が増加する可能性を報告した。TCDD胎内曝露による大脳皮質発生異常のメカニズムを更に解明するために、生後21日目の大脳皮質構築異常を検討した。【方法】妊娠7日のマウスにTCDD(20μg/kg体重)を1回経口投与、生後21日のマウス終脳を用いて以下の計測を行った。1.終脳の全長・全幅、2.大脳皮質の厚さ、3.抗GABA免疫組織化学染色切片を用いた皮質各層のGABA陽性・陰性細胞、グリア細胞数・密度。【成績】TCDD曝露群ではコントロール群と比較し、終脳の全長・全幅が有意に減少していた。さらにTCDD曝露群では、大脳皮質層構造の異常が認められた。大脳皮質第V-VI層におけるGABA陰性細胞の減少による第V-VI層の菲薄化を認め、その結果、大脳皮質の厚さが有意に減少していた。皮質各層の細胞密度については、GABA陽性・陰性細胞、グリア細胞いずれにおいても、有意な変化を認めなかった。【考察】TCDD胎内曝露が大脳皮質発生異常(大脳皮質の菲薄化)の原因となり得ること示した。昨年度までの研究成果とあわせて、神経前駆細胞の異常な分化誘導亢進が大脳皮質菲薄化の原因と考えられえること、細胞周期制御蛋白のひとつであり分化誘導作用を有するp27が関与していること、の2点が強く示唆された。皮質深層のGABA陰性細胞のみがTCDD曝露群で減少していたことから、TCDD曝露による分化誘導障害が投射ニューロンの前駆細胞に特異的に起こる可能性も示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-15390327 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15390327 |
超高圧変成作用を受けた衝突帯における物質循環-中国山東半島(蘇魯地域)の例 | 世界で数少ない超高圧変成帯として知られている中国山東半島地域で共同研究者とともに地質調査を行ってきた。その主たる目的は、広域的な構造を究明することと、比重の高い岩石(エクロジャイト)と取り囲んでいる岩石との関係を明らかにすることの二通りであった。青島市近郊の露出状況が優れた地域では、特に精密なマッピングや標本採取を行った。その結果の一部は論文にまとめ国際誌に投稿したが、その最も重要な結論は次の通りである。i)エクロジャイトが露出する地域を中心として広域的に岩石の構造を調べ、面構造はばらつきがあるものの平均的には北東-南西走向を示し、鉱物線構造は北西-南東であり、しかもそれに伴う剪断は概ね北西ずれであることが判った。ii)コース石を含むエクロジャイトや局所的に花崗岩組織を残す変麻岩とで構成されている100m^2規模の複合岩体を見つけ、野外で観察した初生関係や全岩組成の結果によって、この複合岩体は一つのマグマからできた一連の火成岩類であることが判った。さらに、変成鉱物やそれらの微細組織を観察し、複合岩体として超高圧(25kbar以上)変成作用を受け、その後再び地表に上昇したと推定される。また、本研究では、ヨーロッパのアルプス山脈以外では、初めて超高圧花崗岩類を報告した。このような岩類の存在は、花崗岩は密度が低いにも関わらずマントル上部に当たる深さまで潜り込むことが可能であることを証明できるといった点で意義がある。この現象の力学を説明する試みについては、月刊地球に発表した。こうした花崗岩類はコース石を含むエクロジャイトと一緒に潜り込み、その複合体の総合密度は排除されるマントルに比べて小さいので、浮力は正となり上昇の最初の段階で重要な力であった可能性がある。世界で数少ない超高圧変成帯として知られている中国山東半島地域で共同研究者とともに地質調査を行ってきた。その主たる目的は、広域的な構造を究明することと、比重の高い岩石(エクロジャイト)と取り囲んでいる岩石との関係を明らかにすることの二通りであった。青島市近郊の露出状況が優れた地域では、特に精密なマッピングや標本採取を行った。その結果の一部は論文にまとめ国際誌に投稿したが、その最も重要な結論は次の通りである。i)エクロジャイトが露出する地域を中心として広域的に岩石の構造を調べ、面構造はばらつきがあるものの平均的には北東-南西走向を示し、鉱物線構造は北西-南東であり、しかもそれに伴う剪断は概ね北西ずれであることが判った。ii)コース石を含むエクロジャイトや局所的に花崗岩組織を残す変麻岩とで構成されている100m^2規模の複合岩体を見つけ、野外で観察した初生関係や全岩組成の結果によって、この複合岩体は一つのマグマからできた一連の火成岩類であることが判った。さらに、変成鉱物やそれらの微細組織を観察し、複合岩体として超高圧(25kbar以上)変成作用を受け、その後再び地表に上昇したと推定される。また、本研究では、ヨーロッパのアルプス山脈以外では、初めて超高圧花崗岩類を報告した。このような岩類の存在は、花崗岩は密度が低いにも関わらずマントル上部に当たる深さまで潜り込むことが可能であることを証明できるといった点で意義がある。この現象の力学を説明する試みについては、月刊地球に発表した。こうした花崗岩類はコース石を含むエクロジャイトと一緒に潜り込み、その複合体の総合密度は排除されるマントルに比べて小さいので、浮力は正となり上昇の最初の段階で重要な力であった可能性がある。 | KAKENHI-PROJECT-07740424 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07740424 |
Vav遺伝子欠損マウスを用いた抗酸化機能食品の緑内障予防効果の検討 | われわれはVav遺伝子欠損マウスの研究から、緑内障の発症要因として、これまで言われてきた日中眼圧の高さ以外に、眼圧の日内変動とRGCを取り巻く環境の酸化ストレスに注目するに至った。本研究ではVavマウスのの眼圧日内変動とRGC数の関係と食物として抗酸化作用の強い食品を投与することによるRGCの細胞死との関係を調べている。しかし、昨年に発生したマウスの肝炎ウイルス感染事故のため対象実験マウス群の再構築を余儀なくされた。実施計画5:15週マウスの網膜のRGCをけCFP蛍光発色させる実験で、CFP遺伝子が各固体マウスに導入されているか、を検証する方法を確定した。最も確実な方法として、生後4週のマウスのテールカットを行い、PCR法でCFP遺伝子をげgenotypingを行う方法を採用することにした。これにより10週齢マウスの眼圧を9:00と21:00に計測し、Vavマウスに対する眼圧変動の影響と抗酸化作用食品の緑内障予防効果の定量的な検討を行える状況を構築した。実験計画6:本研究では本来使用するマウスをVav2単一遺伝子を欠損させたマウスと、Vav2/Vav3二重遺伝子欠損マウスで緑内障予防効果を検証する計画であったが、2017年度に発生したマウスの感染事故のためVav2とVav3の2重マウス遺伝子欠損マウスを再生して研究に用いる事が研究期限内に行う事が不可能となることが判明し、Vav2単独欠損マウスのみを用いて研究成果を得る事となった。感染事故のため緑内障疾患モデルマウス(Vavマウス)の準備が十分にできなかった感染事故から回復できたマウスを用いて、計画II沿った実験を継続している。最終的には緑内障モデルマウスを用いて眼圧変動のRGCへの影響と抗酸化食品投与のRGCへの影響を検討する実験を期間内実施する予定である。近年フラボノイドを含む食品が健康に良いという意識は広く知られており、視覚の維持にも効果があるといわれている。しかし、その科学的根拠は未だ乏しいといえる。その原因の一つとして考えられるのは、食品の効果を検証する評価系が不十分だということである。これまでは食品の成分分析をして効果が期待される成分を取りだし、細胞レベルで成分の効果を検証することが行われてきた。しかし、経口摂取から関係する器官にどのように達して、どのように働くかを統一的に評価することは困難である。この問題を解決するにはin vivoでの食品の機能を評価できる動物モデルの構築が最も有効な手段と思われる。日本人の失明原因の第1位は緑内障であり、40歳以上の20人に1人の割合で発症する。眼圧の影響を受けて網膜上の網膜神経節細胞(RGC)が損傷を受け細胞死にいたる。それにより視野欠損が起こり、病態は不可逆的に進行し最終的には失明に至る。そのため緑内障の治療には早期発見と疾病予防対策が求められている。我々は自ら開発したVav2遺伝子の欠損マウス(Vavマウス)の表現型に高眼圧が有ることを発見した。生後6週から眼圧が上昇し、10週で正常マウスに比較して20%程度の上昇に達し、以降漸次減少する。これと平行して視神経乳頭の陥凹と網膜神経節細胞の脱落を認めた。これはヒト緑内障の病態に近似している。次にRGCが蛍光発色するCFPマウスとVavマウスを交配し、CFP/Vavマウスを作成した。これによりマウス個体毎に眼圧とRGC数を定量的に計測することが可能なマウスが作成された。本研究の目的はフラボノイドを含む食品を緑内障モデルマウスであるCFP/Vavマウスに給餌し、眼圧下降効果とRGC数減少抑制効果を調査して、対象食品が緑内障の進行を抑制する効果があるか検証することである。緑内障の進行を抑制する食品の候補として抗酸化機能を持つ適切な食品を検討した。アスパラガス擬葉および各種ベリー類(ブルーベリー、ハスカップ、アロニア、ラズベリー、シーベリー、カランツなど)果実に含まれる抗酸化成分のプロファイリングを行った。抗酸化能評価には、ESRスピントラップ法を用いた。これにより、生体内で発生する各種ラジカルについて、ラジカル種ごとの補足活性測定を行った。各種フリーラジカル発生試薬、材料抽出液及びススピントラップ剤(CYPMPO)を混合後、紫外線照射した。この場合、生成し試料中に残留するラジカルは、CYPMPOにトラップされてアダクトを形成し、ESR特有の波形を示す。抽出液によるラジカル消去能の高・低は、振幅の小・大に反映される。この原理に基づき、Troloxを外部標準として材料の抗酸化能を評価した。結果としてルチンを多く含むアスパラガス擬葉が抗酸化作用が高く、食品として加工が可能であること、食品中でのルチンの安定性が高いことを考え合わせるとアスパラガス擬葉は緑内障予防食品の検査対象として適切と考えられた。評価系として用いるマウスは、我々が所持するVav遺伝子欠損マウスとジャクソンLABから購入したCFPマウスを交配して必要量のCFP/Vav2マウスを準備した。われわれはVav遺伝子欠損マウスの研究から、緑内障の発症要因として、これまで言われてきた日中眼圧の高さ以外に、眼圧の日内変動とRGCを取り巻く環境の酸化ストレスに注目するに至った。 | KAKENHI-PROJECT-17K19876 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K19876 |
Vav遺伝子欠損マウスを用いた抗酸化機能食品の緑内障予防効果の検討 | 本研究ではVavマウスのの眼圧日内変動とRGC数の関係と食物として抗酸化作用の強い食品を投与することによるRGCの細胞死との関係を調べている。しかし、昨年に発生したマウスの肝炎ウイルス感染事故のため対象実験マウス群の再構築を余儀なくされた。実施計画5:15週マウスの網膜のRGCをけCFP蛍光発色させる実験で、CFP遺伝子が各固体マウスに導入されているか、を検証する方法を確定した。最も確実な方法として、生後4週のマウスのテールカットを行い、PCR法でCFP遺伝子をげgenotypingを行う方法を採用することにした。これにより10週齢マウスの眼圧を9:00と21:00に計測し、Vavマウスに対する眼圧変動の影響と抗酸化作用食品の緑内障予防効果の定量的な検討を行える状況を構築した。実験計画6:本研究では本来使用するマウスをVav2単一遺伝子を欠損させたマウスと、Vav2/Vav3二重遺伝子欠損マウスで緑内障予防効果を検証する計画であったが、2017年度に発生したマウスの感染事故のためVav2とVav3の2重マウス遺伝子欠損マウスを再生して研究に用いる事が研究期限内に行う事が不可能となることが判明し、Vav2単独欠損マウスのみを用いて研究成果を得る事となった。感染事故のため緑内障疾患モデルマウス(Vavマウス)の準備が十分にできなかった食品の緑内障予防効果を検証するために、アスパラ擬葉粉末を購入しマウス一般飼料にルチンが0.2%になるように言入させた粉末飼料を作成する。CFP/Vavマウスとコントロールマウスをそれぞれ食品投与群(グループA)とプラセーボ投与群(グループB)にそれぞれ10匹分ける.グループAに緑内障予防効果が期待される食品を給餌する。CFP/Vav2マウスとCFP/WTマウスに関して生後8週齡、10週齢、12週齢、14週齡マウスに対して3日間、昼間と夜間に計測する。眼圧はトノラボ手持眼圧計(ICARE)を用いて非侵襲的に測定する。計測値の信頼性を得るためにマウスと測定装置の両者を固定装置で固定し、3回の測定を行い、その平均値を眼圧とする。食品投与が終わったに眼球を摘出し4%PFAで固定後、網膜フラットマウント標本を作製する。蛍光顕微鏡下で視野内に200×200μmの矩形を表示し、その範囲内の蛍光発色するRGCの数を目視により計測。3回計測し平均値をRGC数とする。計測部位は視神経乳頭を中心に耳側、鼻側、上方、下方の四方向合にそれぞれ600μm間隔で遠位、中間部、近位の3部位を設定し、網膜全体で合計12部位の計測を行う。感染事故から回復できたマウスを用いて、計画II沿った実験を継続している。最終的には緑内障モデルマウスを用いて眼圧変動のRGCへの影響と抗酸化食品投与のRGCへの影響を検討する実験を期間内実施する予定である。分担研究者の相原一が100,000円物品使用予定であったが、使用が0円となった。この100,000円は次年度の物品使用費とする。外部の分担研究者(相原一)への配分額が2年分200,000円のうち未使用分78,133円となった。これは東京大学で物品費として使用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-17K19876 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K19876 |
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