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リラキシン(LGR7と8)の子宮内発現の解析とその細胞外ドメイン投与の効果
1発現の抑制を介してEVTの脱落膜間質浸潤を促進することが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-16659451
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16659451
不動産会計開示情報の企業不動産マネジメントへの統合的活用方策にかかる基礎的研究
有形固定資産減損処理や投資不動産時価開示等の不動産会計開示情報の作成には、作業過程において不動産時価評価等が要求され、その高い専門性のゆえに莫大な社会的コストを要する。しかし、投資家、債権者、経営者等によって、これらの情報が十分活用されていない。山本は、国内でいち早く減損データ・投資不動産時価開示データを活用した研究に着手し、CRE(Corporate Real Estate:企業不動産マネジメント)の合理的な意思決定に活用できるよう注力してきている。本研究の目的は、これら先駆的な研究業績を基盤として、A.不動産会計開示情報の統合的活用を前提とした合理的・効率的なCREを実現するための具体的方策を確立すると同時に、B.これら情報の信頼性担保のための仕組みを提示することである。上記の研究目的を達成するため、平成30年度については、以下の作業を実施した。・企業不動産の効率的利活用と企業特性等の関係を解明するための研究を行った。投資不動産時価開示データを対象とした分析結果を基盤とし、もう一つの重要な研究対象である有形固定資産減損データをも含めて、財務データ等を広範に活用し、減損発生メカニズムと減損発生の株価への影響にかかる実証分析を実施した。・減損会計適用企業について「鑑定人評価」採用企業と「内部評価」採用企業の財務データを、統計的手法に基づき分析・比較することにより、両者の違いを明らかにした。このことにより、会計情報を開示する企業側のインセンティブや経営行動のメカニズムを明らかにすることができた。当初の計画通り財務データを整備し、それに基づいた予定された実証分析を行うことができた。分析結果も一定水準にあり、仮説を検証できるものであった。その結果を、複数の学会報告、学術論文の公刊に具現化することができた。前年度の研究成果を踏まえ、企業が保有する遊休不動産のあり方に絞り込んだ究明を行う。具体的には、整備された財務データに基づき、遊休不動産の保有状況に着目した分析(ロジット回帰分析等)を行い、遊休不動産を保有する企業の特性を究明する。さらに、遊休不動産の保有状況と企業の時価総額との関係性を分析するものとする。さらに、これら分析を補足する目的で、企業や監査人等を対象としたヒアリング調査を広範に行う予定としている。有形固定資産減損処理や投資不動産時価開示等の不動産会計開示情報の作成には、作業過程において不動産時価評価等が要求され、その高い専門性のゆえに莫大な社会的コストを要する。しかし、投資家、債権者、経営者等によって、これらの情報が十分活用されていない。山本は、国内でいち早く減損データ・投資不動産時価開示データを活用した研究に着手し、CRE(Corporate Real Estate:企業不動産マネジメント)の合理的な意思決定に活用できるよう注力してきている。本研究の目的は、これら先駆的な研究業績を基盤として、A.不動産会計開示情報の統合的活用を前提とした合理的・効率的なCREを実現するための具体的方策を確立すると同時に、B.これら情報の信頼性担保のための仕組みを提示することである。上記の研究目的を達成するため、平成30年度については、以下の作業を実施した。・企業不動産の効率的利活用と企業特性等の関係を解明するための研究を行った。投資不動産時価開示データを対象とした分析結果を基盤とし、もう一つの重要な研究対象である有形固定資産減損データをも含めて、財務データ等を広範に活用し、減損発生メカニズムと減損発生の株価への影響にかかる実証分析を実施した。・減損会計適用企業について「鑑定人評価」採用企業と「内部評価」採用企業の財務データを、統計的手法に基づき分析・比較することにより、両者の違いを明らかにした。このことにより、会計情報を開示する企業側のインセンティブや経営行動のメカニズムを明らかにすることができた。当初の計画通り財務データを整備し、それに基づいた予定された実証分析を行うことができた。分析結果も一定水準にあり、仮説を検証できるものであった。その結果を、複数の学会報告、学術論文の公刊に具現化することができた。前年度の研究成果を踏まえ、企業が保有する遊休不動産のあり方に絞り込んだ究明を行う。具体的には、整備された財務データに基づき、遊休不動産の保有状況に着目した分析(ロジット回帰分析等)を行い、遊休不動産を保有する企業の特性を究明する。さらに、遊休不動産の保有状況と企業の時価総額との関係性を分析するものとする。さらに、これら分析を補足する目的で、企業や監査人等を対象としたヒアリング調査を広範に行う予定としている。実証分析に必要になる財務データ等の整備が予定したよりも低額で行うことができたため。次年度は、更なるデータ整備と企業等に対する関係者ヒアリングに要する経費に充当する計画でいる。
KAKENHI-PROJECT-18K01843
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K01843
景観照明の快適性の定量的評価に関する研究
1.神戸近郊を中心に、近景(建造物など)、中景・遠景(六甲山麓の高台、海岸からの眺望など)、街路ゾーン(市街地、公園、広場、モニュメントなど)の都市景観夜景を約500コマ程度デジタル写真撮リし、調査基礎資料とした。さらに、比較対象として、神戸と類似する横浜市のみなとみらい21地区、港の見える丘地区、東京の有明・台場・池袋・港区東京タワー地区など約300コマ基礎資料を収集した。2.調査基礎資料を中心に以下を実施した。(1).夜景の輝度分布に相当するグレイ(白黒)画像により、2次元空間周減衰係数特性を算出した。(2).景観夜景の輪郭線情報を含む線画を抽出し、フラクタル次元を算出した。(3).色彩色差計により、デジタル写真画像の明るさと輝度の関係を明確にした。(4).2次元画像処理によりR・G・B分布を3次元表現を検討資料とする。(5).[暖かい-冷たい」、「美しい-美しくない」など20項目の感情・快適性要因の相関とともに評価結果をSD法により因子分析により「柔らかさ」、「目立ちやすさ」、「美しさ」等の3つの因子に分類できることを明確にした。(6).簡易型脳波計による生理的特性については、1214Hzのファスト・アルファ波および47Hzのシータ波が心理評価項目と関連している可能性が認められた。3.上記における、定量化要素とを総合的に評価検討を実施した。心理的ある印象評価項目の「現代的な・古典的な」と「はっきりした・ぼんやりした」感覚が色彩分布、フラクタル次元、空間周波数減衰、脳波などとの間に相関があった。さらに、「明るい・暗い」、[派手な・地味な]、「動的な・静的な」、「鮮やかな・くすんだ」、「暖かい・冷たい」、「にぎやかな・さみしい」などの印象評価とも物理的要素が部分的に関連していることが判明し、定量的評価に役立つことが期待できる。1.神戸近郊を中心に、近景(建造物など)、中景・遠景(六甲山麓の高台、海岸からの眺望など)、街路ゾーン(市街地、公園、広場、モニュメントなど)の都市景観夜景を約500コマ程度デジタル写真撮リし、調査基礎資料とした。さらに、比較対象として、神戸と類似する横浜市のみなとみらい21地区、港の見える丘地区、東京の有明・台場・池袋・港区東京タワー地区など約300コマ基礎資料を収集した。2.調査基礎資料を中心に以下を実施した。(1).夜景の輝度分布に相当するグレイ(白黒)画像により、2次元空間周減衰係数特性を算出した。(2).景観夜景の輪郭線情報を含む線画を抽出し、フラクタル次元を算出した。(3).色彩色差計により、デジタル写真画像の明るさと輝度の関係を明確にした。(4).2次元画像処理によりR・G・B分布を3次元表現を検討資料とする。(5).[暖かい-冷たい」、「美しい-美しくない」など20項目の感情・快適性要因の相関とともに評価結果をSD法により因子分析により「柔らかさ」、「目立ちやすさ」、「美しさ」等の3つの因子に分類できることを明確にした。(6).簡易型脳波計による生理的特性については、1214Hzのファスト・アルファ波および47Hzのシータ波が心理評価項目と関連している可能性が認められた。3.上記における、定量化要素とを総合的に評価検討を実施した。心理的ある印象評価項目の「現代的な・古典的な」と「はっきりした・ぼんやりした」感覚が色彩分布、フラクタル次元、空間周波数減衰、脳波などとの間に相関があった。さらに、「明るい・暗い」、[派手な・地味な]、「動的な・静的な」、「鮮やかな・くすんだ」、「暖かい・冷たい」、「にぎやかな・さみしい」などの印象評価とも物理的要素が部分的に関連していることが判明し、定量的評価に役立つことが期待できる。1、中景・近景(建築物など)の40ポイントの景観照明写真(神戸中心に照明普及賞受賞を含む)用い、調査ポイントの選定基礎資料とすべく、験者側から評価項目を選定・提示することなくレパートリー・グリット発展手法により、被験者10名(1923才)により「美しさ」の評価構造を抽出した。その結果、「細かい部分が見えない」-(全体のイメージがつかみやすい)、(輪郭がはっきりしている)、(対象物が際だつ)、「感動す」-(感覚に合う)、(雰囲気がよい)、(落ち着く)、「楽しい」-(いろいろな色が混ざっている)、(にぎやかである)、「建物が魅力的」-(芸術性が高い)、(すっきりしている)、「生活感がない」-(幻想的である)、(演出性が高い)、などであった。以上から景観照明では明確性、魅力性、感動性、芸術性、幻想性などが評価構造と考えられることが明確になった。2、20項目の感情・快適性要因を各7段階評価結果を、SD法(意味微分法)により因子分析を行い、景観照明の特徴づける要素として輪郭をフラクタル次元により定量化し検討した。評価項目「暗い-明るい」、「地味な-派手な」、「寂しい-賑やかな」などの評価得点が、フラクタル次元と相関係数が0.60以上で関連ずけられることが判明した。3、夜間照明対象物のデジタル写真から、(1)注視点の周辺部におけるカラーR・G・Bとモノクロの各2次元空間周波数特性を計算、周波数減衰係数特性、(2)フラクタル次元の計算値、
KAKENHI-PROJECT-10680516
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10680516
景観照明の快適性の定量的評価に関する研究
(3)色彩色差計により、景観照明の特徴部の輝度と色度を計測・記録、(4)Color CubicPalettenによる立方体による三次元表示の色彩分布などにより、物理量の多面的把握のための解析手順を検討中である。4、現有の簡易型脳波計の周波数スペクトル分析により、α波、β波、θ波、筋電図などを瞬時に処理・記録し、特にα波成分など生理特性と景観照明との関連の検討準備中である。5、次年度の実施調査による景観照明の具体的評価を迅速・効率的にするべく、中景(建造物)、近景、道路、街ゾーン(公園・広場・モニュメント)の光源・器具・手法など照明技術データを収集中であり、遠景照明展望場所および調査ポイントを検討中である。1、戸近郊を中心に、近景(構造物など)、中景・遠景(六甲山麓の高台、海岸からの展望など)、街路ゾーン(市街地、公園、広場、モニュメントなど)の都市景観夜景を約500コマ程度デジタル写真撮影し、調査基礎資料とした。さらに、比較対象として、神戸と類似する横浜市のみなとみらい21地区、港の見える丘地区、東京の有明・台場・池袋・港区東京タワー地区など約300コマ基礎資料を収集した。2、調査基礎資料を中心に以下を実施した。(1)景観夜景の輝度分布に相当するグレイ(白黒)画像により、2次元空間周波数の減衰係数特性を算出した。(2)景観夜景の輪郭線情報を含む線画を抽出し、フラクタル次元を算出した。(3)色彩色差計により、デジタル写真画像の明るさと輝度の関係を明確にした。(4)2次元画像処理によりR・G・B分布を3次元的表現を検討資料とする。(5)「暖かい・冷たい」、「美しい・美しくない」など20項目の感情・快適性要因の相関と評価結果をSD法の因子分析により「柔らかさ」、「目立ちやすさ」、「美しさ」等の3つの因子に分類できることを明確にした。(6)簡易型脳波計による生理的特性については、1214Hzのファスト・アルファ波および47Hzのシータ波が心理評価項目と関連している可能性が認められた。3、上記2における、(1)(6)の定量化要素とを総合的に評価検討を実施した。心理的評価項目の「現代的・古典的」と「はっきり・ぼんやり」感覚が色彩分布、フラクタル次元、空間周波数減衰、脳波などとの相関があり、「明・暗」、[派手・地味]、「動的・静的」、「鮮やか・くすんだ」、「暖・冷」、「にぎやか・さむしい」などとも関連していることが明白となった。
KAKENHI-PROJECT-10680516
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10680516
期外収縮後収縮性増強と酸素消費からの興奮収縮連関カルシウム移動量の推定:システムダイナミクス的手法
我々は期外収縮後収縮性増強が収束する際に一過性交互脈の形で収束することを見い出し、拍動する心臓から心筋細胞内Ca動態を推定する方法を考案した。期外収縮後x拍目の収縮性をyとし、期外収縮後6心拍を指数関数のみの項と三角関数と指数関数の積の和の式:にてカーブフィッティングを行った。第一項は心筋細胞内外のCa動態に関係し、第二項は筋小胞体(SR)でのCa動態の特徴を表すと言うモデルを考えた。心筋細胞内を移動するCaのうち、SRに取り込まれる割合を再循環率(RF)と呼び、指数関数項の時定数τ_eを用いてexp(-1/τ_e)として求めた。また、興奮収縮連関に必要な酸素量を求め、細胞質からCaを排出する主な経路であるSR内への取り込みと細胞外への汲み出しのエネルギーコストの違いを組み合わせて心筋細胞内を移動するCa量を求めた。この方法にて同じ収縮性の酸素コストを持つCaとエピネフリン(EP)について検討した結果、CaはRFを増加させEPでは不変であった。一心拍に移動するCa量は対照で40μmol/beat/kg LV、収縮性を増強させた場合には110μmol/beat/kg LVであった。不全心筋についても検討し、SRのCa放出チャネルを半開状態で固定させるためにリアノジンを40nmol/lとなるよう冠動脈内投与した。RFは0.6から0.5に低下し、収縮に関与せず細胞質内を移動する無駄サイクルは収縮に関与するCaの1.4倍存在していた。虚血後のスタニングについても検討し、RFの0.63から0.43への低下と無駄サイクルの1.22への増加、そしてCaに対する収縮性の反応の低下も組み合わせて推定することができた。我々は期外収縮後収縮性増強が収束する際に一過性交互脈の形で収束することを見い出し、拍動する心臓から心筋細胞内Ca動態を推定する方法を考案した。期外収縮後x拍目の収縮性をyとし、期外収縮後6心拍を指数関数のみの項と三角関数と指数関数の積の和の式:にてカーブフィッティングを行った。第一項は心筋細胞内外のCa動態に関係し、第二項は筋小胞体(SR)でのCa動態の特徴を表すと言うモデルを考えた。心筋細胞内を移動するCaのうち、SRに取り込まれる割合を再循環率(RF)と呼び、指数関数項の時定数τ_eを用いてexp(-1/τ_e)として求めた。また、興奮収縮連関に必要な酸素量を求め、細胞質からCaを排出する主な経路であるSR内への取り込みと細胞外への汲み出しのエネルギーコストの違いを組み合わせて心筋細胞内を移動するCa量を求めた。この方法にて同じ収縮性の酸素コストを持つCaとエピネフリン(EP)について検討した結果、CaはRFを増加させEPでは不変であった。一心拍に移動するCa量は対照で40μmol/beat/kg LV、収縮性を増強させた場合には110μmol/beat/kg LVであった。不全心筋についても検討し、SRのCa放出チャネルを半開状態で固定させるためにリアノジンを40nmol/lとなるよう冠動脈内投与した。RFは0.6から0.5に低下し、収縮に関与せず細胞質内を移動する無駄サイクルは収縮に関与するCaの1.4倍存在していた。虚血後のスタニングについても検討し、RFの0.63から0.43への低下と無駄サイクルの1.22への増加、そしてCaに対する収縮性の反応の低下も組み合わせて推定することができた。我々は、期外収縮後収縮性増強と酸素消費から興奮収縮連関カルシウム移動量を推定するためのシステムダイナミクス的手法の開発を進めている。現在、拍動している丸ごと心臓でこのような量を推定する方法は他にない。期外収縮後収縮性増強の一過性交互脈型減衰の経過は、期外収縮後x拍目の収縮性をy、定数項1を定常状態とすると、y=a・exp[-(x-1)/τe]+b・exp[-(x-1)/τs]・cos[π・(x-1)]+1で特徴づけられる。心筋の収縮・弛緩を制御するCa総量のうち、筋小胞体を経由する比率を再循環率(RF=exp(-1/τe))と呼び、形質膜を介する比率は1-RFとなる。筋小胞体ではATP1に対しCaは2、形質膜ではATP1に対しCaは1の比率で汲み上げられる。従って、Caハンドリングに必要なATPは、1/2・Ca・RF+(1-RF)・Caとなる。P:O_2=6:1、O_2 1モルを22400ml、一心拍当たりの興奮収縮連関でのCaハンドリングに用いられる酸素量をCa handling Vo_2とすると、一心拍の総Caハンドリング量は、6・10^7・(Ca hand1ing Vo_2/22400)/(1-RF/2)となる。正常では筋小胞体でハンドリングされるCaは、一心拍の間に一度だけ細胞内に放出され汲み上げられるが、不全心の場呂は、筋小胞体Ca放出チャネルに漏れが生じており一度汲み上げられたCaの一部は漏出し同一心拍中に再度汲み上げられる。これをfutile cycle(無駄サイクル)という。Caハンドリングに費やされるATPは、1/2・Ca・RF+(1-RF)・Ca+N・RF/2Caとして表すことができる。
KAKENHI-PROJECT-10558136
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10558136
期外収縮後収縮性増強と酸素消費からの興奮収縮連関カルシウム移動量の推定:システムダイナミクス的手法
N・RFという項は筋小胞体を介してハンドリングされるCaのうち収縮に関与したCaに対するfutile cycleの割合である。今後さらに研究を進め、我々の提案した方法論の妥当性・有用性を検討・確認してゆく。我々は期外収縮後収縮性増強が収束する際に一過性交互脈の形で収束することを見い出し、拍動する心臓から心筋細胞内Ca動態を推定する方法を考案した。期外収縮後x拍目の収縮性をyとし、期外収縮後6心拍を指数関数のみの項と三角関数と指数関数の積の和の式:にてカーブフィッティングを行った。第一項は心筋細胞内外のCa動態に関係し、第二項は筋小胞体(SR)でのCa動態の特徴を表すと言うモデルを考えた。心筋細胞内を移動するCaのうち、SRに取り込まれる割合を再循環率(RF)と呼び、指数関数項の時定数τ_eを用いてexp(-1/τ_e)として求めた。また、興奮収縮連関に必要な酸素量を求め、細胞質からCaを排出する主な経路であるSR内への取り込みと細胞外への汲み出しのエネルギーコストの違いを組み合わせて心筋細胞内を移動するCa量を求めた。この方法にて同じ収縮性の酸素コストを持つCaとエピネフリン(EP)について検討した結果、CaはRFを増加させEPでは不変であった。一心拍に移動するCa量は対照で40μmol/beat/kg LV、収縮性を増強させた場合には110μmol/beat/kg LVであった。不全心筋についても検討し、SRのCa放出チャネルを半開状態で固定させるためにリアノジンを40nmol/lとなるよう冠動脈内投与した。RFは0.6から0.5に低下し、収縮に関与せず細胞質内を移動する無駄サイクルは収縮に関与するCaの1.4倍存在していた。虚血後のスタニングについても検討し、RFの0.63から0.43への低下と無駄サイクルの1.22への増加、そしてCaに対する収縮性の反応の低下も組み合わせて推定することができた。
KAKENHI-PROJECT-10558136
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10558136
TeX環境による工学系数学のグループワーク型授業に対応した次世代型教材の開発
H30年度は微分積分学(1変数)とH29年度からの継続として微分方程式の科目でグループ型学習のALによる授業を導入した.この2科目の授業を行いながら学習内容毎に,(1)講義内容の劣後順位付けと知識のデリバリ・スキルの留意点の調査,(2)グループ型学習の教員介入に対する留意点の調査,(3)反転授業に伴う事前授業の動画を作成した.H29年度は基礎数学(40人クラス)と微分方程式(80人クラス)の授業で上記の(1)(3)に関して授業実践を行いながら,Tipsの集積を行った.H30年度は通常クラスでは,微分積分学(1変数)の授業において,授業科目に依存しない上記(1)(3)のTipsの検証を行った.また,微分方程式(80人クラス)の授業ではH29年度に引き続き,(1)(3)のTipsの集積に努めた.なお,ALの授業展開に関連して,反転授業で用いた映像の管理はH29年度と同様にYouTubeで行ったのだが,H30年度におけるYouTubeの視聴時間数がH29年度と比較して減少したことから,反転授業の実施方法に改善の必要が確認された.また,グループ学習を種々の形態で実施し,その実践結果を数学教育論文としてまとめることができた.具体的には数学の成績不振者を対象として朝学補習,夏季休業中のTAによる寺子屋補習,自由参加型の補習をアクティブラーニングにより実施し,その教育効果の検証を行った.なお,この研究成果については日本数学教育学会第100回全国算数・数学教育研究(東京)大会の高専・大学部会(2018年8月4日)と数学教育学会2019年度春季例会(2019年3月18日)において口頭発表を行った.まず,H30年度から研究代表者の学内業務として寮務主事(副校長)を拝命した結果,本年度は寮務主事初年度ということもあり,十分な研究時間を確保できなかった.また,H30年度における反転授業は,昨年度に引き続き事前授業動画をYouTubeで管理することにより実施した.しかし,事前授業動画の視聴率が年間を通してよくない状況が確認された.このため,事前授業動画の作成方法,反転授業の実施方法について検証する必要が生じた.この結果,R1年度は反転授業の実施方法及びYouTubeにアップロードする事前授業動画を作成するためのTipsを再度考究しなければならなくなった.さらに,本研究はサイエンス社から出版されている高専数学テキストシリーズ(基礎数学,線形代数,微分積分学,応用数学)の改訂版に最終的には本研究で得られた知見を順次反映することを目標としている.ただ,H30年度に,サイエンス社から高専卒業後に大学の工学部に編入を目指す学生のための自学自習可能な「大学編入試験問題集」の出版の執筆依頼があった.これにより,年度当初に掲げた本研究計画に加えて,この「大学編入試験問題集」の執筆作業が加わり,本研究計画の推進がやや遅れる状況となった.R1年度もH30年度と同様,微分積分学(1変数)と微分方程式の科目で,グループ型学習のALによる授業を実施し,学習内容毎に,(1)講義内容の劣後順位付けと知識のデリバリ・スキルの留意点の調査,(2)グループ型学習の教員介入に対する留意点の調査,(3)反転授業に伴う事前授業の動画の作成について研究を推進していく予定である.なお,R1年度における反転授業は,昨年度に引き続き事前授業動画をYouTubeで管理することにより実施する予定である.ただ,H30年度は事前授業動画の視聴率が年間を通してよくない状況が確認された.このため,今年度は事前授業動画の作成方法,反転授業の実施方法について再度考究しながら,研究を推進する予定である.また,微分方程式の講義において,逆ラプラス変換の計算で部分分数分解をヘビサイド法を用いて計算することをここ十数年来に渡り学生に教えている.このヘビサイド法を学生に教授するデリバリ・スキルに関しては十分固まってきている.このヘビサイド法に関するデリバリ・スキルに関して日本数学教育学会第101回全国算数・数学教育研究(沖縄)大会の高専・大学部会(2019年8月8日)で口頭発表する予定である.H29年度は,基礎数学と微分方程式の科目で,グループ型学習のALによる授業を部分的に導入した.これら2科目の授業を行いながら学習内容毎に,(1)講義内容の劣後順位付けと知識のデリバリ・スキルの留意点の調査,(2)グループ型学習の教員介入に対する留意点の調査,(3)反転授業に伴う事前授業の動画を作製した.特に,基礎数学の授業は1クラス約40人の学生を対象として教室で実施するため,通常クラスでのグループ学習の効果的な実施形態について,授業を実施しながら調査した.また,微分方程式の授業では2クラス合同で約80人の学生対象に大教室で実施するため,大規模クラスでのグループ学習の効果的な実施形態についても調査することができた.また,効果的な授業が実施できているかいるか定期試験毎にアンケートを実施し,授業に関する問題点の有無を一年間を通して調査した.ALの授業展開に関連して,反転授業も基礎数学と微分方程式の授業で実験的に導入することができた.反転授業で用いた映像の管理はYouTubeで行った.基礎数学と微分方程式の授業で部分的に導入した反転授業において作製した事前授業映像の総再生時間は9,802時間,総視聴回数は3,066回であった.YouTubeの映像授業は概ね好評で授業を理解するうえで参考になったという意見がアンケート結果から多数伺えた.
KAKENHI-PROJECT-17K04907
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K04907
TeX環境による工学系数学のグループワーク型授業に対応した次世代型教材の開発
また,グループ型学習を種々の形態で実施し,その問題点と運用方法に関して検証し,数学教育論文としてまとめることができた.具体的には数学の成績不振者を対象とした朝学補習,夏季休業中のTA(TA1人当たり4名程度,補習対象者40名程度)による寺子屋式補習,自由参加型の補習に対して教育効果の検証を行い,第100回全国算数・数学教育研究(東京)大会の高専・大学部会で2018年の8月4日に口頭発表を行う予定である.基礎数学と微分方程式の科目で,グループ型学習のALによる授業を部分的に導入し,学習内容毎に,(1)講義内容の劣後順位付けと知識のデリバリ・スキルの留意点の調査,(2)グループ型学習の教員介入に対する留意点の調査,(3)反転授業に伴う事前授業の動画の作成がH29年度の目標であった.(1)の項目に対しては,授業準備時に劣後順位付けを行い,授業を実施後に劣後順位付けの適切さを検討することができた.(2)に関しては,グループ学習が活発に行われるときとそうでないときの分岐点が授業のトピック毎に何処に準拠しているのかまだ掴めていない状況である.さらに,演習時におけるグループ型学習の活動の活性化の方法も掴めていない状況である.これらの点は,次年度以降に引き続き調査,考究する必要がある.(3)に関しては,基礎数学と微分方程式の授業で実験的に反転授業の導入もすることができた.反転授業で用いた映像の管理はYouTubeで行った.基礎数学と微分方程式の授業で制作した事前授業映像の総再生時間は9,802時間,総視聴回数は3,066回り,YouTubeの事前授業は概ね好評で授業を理解するうえで参考になったという意見がアンケート結果から多数伺えた.ただし,動画の編集作業は特に行っておらず,この点が今後の課題として残っている.また,グループ型学習を種々の形態で実施し,その問題点と運用方法に関して検証し,数学教育論文としてまとめることができた.具体的には数学の成績不振者を対象とした朝学補習,夏季休業中のTAによる寺子屋式補習,自由参加型の補習に対して教育効果の検証を行い,第100回全国算数・数学教育研究(東京)大会の高専・大学部会で2018年の8月4日に口頭発表を行う予定である.以上の結果,当該年度の研究の進捗状況は概ね順調である.H30年度は微分積分学(1変数)とH29年度からの継続として微分方程式の科目でグループ型学習のALによる授業を導入した.この2科目の授業を行いながら学習内容毎に,(1)講義内容の劣後順位付けと知識のデリバリ・スキルの留意点の調査,(2)グループ型学習の教員介入に対する留意点の調査,(3)反転授業に伴う事前授業の動画を作成した.H29年度は基礎数学(40人クラス)と微分方程式(80人クラス)の授業で上記の(1)(3)に関して授業実践を行いながら,Tipsの集積を行った.H30年度は通常クラスでは,微分積分学(1変数)の授業において,授業科目に依存しない上記(1)(3)のTipsの検証を行った.また,微分方程式(80人クラス)の授業ではH29年度に引き続き,(1)(3)のTipsの集積に努めた.
KAKENHI-PROJECT-17K04907
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K04907
医療サービス産業の市場と組織に関する計量分析
本研究では、以下の3つの観点から医療サービス市場を分析した。第1には、診療所・病院がどのような特徴を持つ市場に直面してどのように競争を行っているのかという医療サービス市場の産業組織的分析、第2には、主たるサービス提供者である医師の供給はどのように行われているのかという医師の労働市場の分析、第3には、様々な医療政策が関係者のインセンティブを変えた結果医療サービス需要や供給に及ぼした影響の分析、である。医療サービス市場の競争については、(1)歯科医院の参入・退出分析、(2)大病院と診療所との連携、(3)医療法改正に伴う一般病床、療養病床間の病床選択、などのテーマについて理論的かつ実証的に分析した。医師の労働市場については、医師のキャリアパスと卒業生ネットワークに着目し、(1)女性医師のキャリア選択がどのように行われるのか、(2)卒後研修導入後どのような病院が研修医を多く集めることができたかの要因分析、(3)卒業生の就職ネットワークがどれくらい強固で安定しているのか、について分析した。医療政策については、(1)療養病院においてどのような要因が医療保険適用の療養病床と介護保険適用の療養病床に患者を誘導しているのかを需要サイドと供給サイドからの分析、(2)組合健保に課せられる老人保健制度への拠出金の増加分を雇用主側が負担しているのか従業員側が負担しているのかという保険料決定要因の分析、(3)国や地方自治体からの市町村国民健康保険への補助金が過剰な医療費の増加につながっているという分析、を行った。本研究では、以下の3つの観点から医療サービス市場を分析した。第1には、診療所・病院がどのような特徴を持つ市場に直面してどのように競争を行っているのかという医療サービス市場の産業組織的分析、第2には、主たるサービス提供者である医師の供給はどのように行われているのかという医師の労働市場の分析、第3には、様々な医療政策が関係者のインセンティブを変えた結果医療サービス需要や供給に及ぼした影響の分析、である。医療サービス市場の競争については、(1)歯科医院の参入・退出分析、(2)大病院と診療所との連携、(3)医療法改正に伴う一般病床、療養病床間の病床選択、などのテーマについて理論的かつ実証的に分析した。医師の労働市場については、医師のキャリアパスと卒業生ネットワークに着目し、(1)女性医師のキャリア選択がどのように行われるのか、(2)卒後研修導入後どのような病院が研修医を多く集めることができたかの要因分析、(3)卒業生の就職ネットワークがどれくらい強固で安定しているのか、について分析した。医療政策については、(1)療養病院においてどのような要因が医療保険適用の療養病床と介護保険適用の療養病床に患者を誘導しているのかを需要サイドと供給サイドからの分析、(2)組合健保に課せられる老人保健制度への拠出金の増加分を雇用主側が負担しているのか従業員側が負担しているのかという保険料決定要因の分析、(3)国や地方自治体からの市町村国民健康保険への補助金が過剰な医療費の増加につながっているという分析、を行った。本研究は、医療サービスの供給サイドに着目し、診療所・病院がどのような特徴を持つ市場に直面しているのか、および主たるサービス提供者である医師の供給はどのような組織の下で行われているのかという医療サービス産業の市場と組織の問題を実証的に分析することを目的としている。平成17年度は、産業組織の問題について、二つの研究を行った。第1は、市区ベースの歯科医師の参入退出と歯科医療費のデータを用いて、医師の参入が多い地域ほどより通院1回あたりの診療密度が高くなり、効率的に診療が行われることが明らかになった。第2は、茨城県医師会のデータを用いて、一般診療所の新規参入がどのような要因で行われるかを検証し、大病院の近くに立地することが診療リスクや需要変動リスクの軽減につながり、競争の厳しさを緩和することが明らかになった。その結果、大病院の近くに多くの診療所が立地するという空間的均衡が成立することになった。また、医療サービス産業の組織についてであるが、「関東病院情報」および「茨城県勤務医名簿」を用いて、大学同窓ネットワークと病院との関係を分析した。前者のデータでは関東地区の200床以上の病院の管理職以上がどの大学の出身者であるのか、大学と病院との関係は安定しているのかを分析した結果、比較的安定的であることが確認された。後者のデータでは、ほぼすべての勤務医について出身大学がわかり、病床を拡大している病院についてもわかるので、病院のヒアリングも行い、特定の大学との安定的な関係がある病院が病床を拡大していることがわかった。本研究は、医療サービスの供給サイドに着目し、診療所・病院がどのような特徴を持つ市場に直面しているのか、および主たるサービス提供者である医師の供給はどのような組織の下で行われているのかという医療サービス産業の市場と組織の問題を実証的に分析することを目的としている。平成18年度は、産業組織の問題について、三つの研究を行うと同時に、診療所・病院の市区町村別データおよび大阪府の個票データを整備した。第1に、計量経済学的な研究として、空間的なスピルオーバー効果をモデル化した空間自己相関モデルで、説明変数に内生変数があるときに、パラメータの一致推定量を求める手法を開発すると同時に、適切な操作変数をどう選ぶかについて検討した。学閥による医師の供給が支配的だと考えられる場合には、医科(歯科)大学からの距離が操作変数として適切であること、操作変数を条件とする尤度関数を構成することにより一致推定量が得られることが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-17330045
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17330045
医療サービス産業の市場と組織に関する計量分析
第2に、市区町村で集計されたデータおよび大阪府内の病院の個票データを用いて、競争の程度と療養病床選択の関係を分析した。その結果、一般病床を持つ病院間の競争が厳しいほど、一般病床から療養病床に転換する傾向があること、介護施設を持っている場合にもその傾向があることが示された。第3に、国民健康保険、介護の保険の保険者ごとの医療(介護)サービス需要関数を推定し、保険者のモラルハザードを抑制できるような財務システムを採用している介護保険では、医療保険よりもモラルハザード程度が小さいことが確認された。本年度は、以下の3つの研究を実施した。第1に、昨年度に整備した、「国民健康保険の実態」(1995年度から2004年度)および「介護保険事業状況報告」(2001年度から2004年度)および国勢調査などの人口・世帯・職業構成・平均所得などの情報を連結させたデータベースを用いて、医療サービス・介護サービスへの支出が地域の厚生水準をどのように向上させたかについて検証した。地域ごとの厚生水準の指標としてDisability Adjusted Life Expectancy(DALE)を関東圏の市区町村毎に計算し、介護保険の導入がDALE与えた影響を分析した。その結果、施設サービスの提供が多い地域ほどDALEが高いという結論が得られた。第2に、医師の学閥ネットワークとキャリアパスに関連した研究として、卒後研修制度の導入後の新人医師の研修場所選択について実証的に研究を行なった。筑波大学の卒業生のデータを用いて、どのような個人の特徴がその個人の研修場所選択に影響しているかを検証すると同時に、医療機関ごとの定員充足率のデータを用いて、どのような属性を持つ研修医療機関が選択される傾向にあるかを検証した。特に、筑波大学卒業生については、卒後研修導入前後で研修先がどのように変わったのかを明らかにした。その結果、卒後研修制度導入後、筑波大学の学生は大学病院よりも市中病院を研修先として選択するようになり、また、より大規模で都市部にある病院ほど研修先として選択される傾向にあることが分かった。第3に、研修医療機関が研修生を確保できたかどうかを分析する計量手法として、Dynamicで同時決定の非線形計量モデルの利用可能性や、リサンプリング法によるGMM推定量の分散推定の改善について研究を行った。
KAKENHI-PROJECT-17330045
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17330045
DNAマイクロアレイを用いた直腸癌放射線(化学)療法の個別化治療の確立
DNAマイクロアレイを用いて直腸癌に対する術前放射線療法の効果を照射前に予測できるか検討を行った.術前照射前の癌の生検標本の遺伝子発現解析が可能であった直腸癌52例を対象とした.照射効果は組織学的に評価し,responderとnonresponderに分類し,これらの症例をtraining set(35例)およびtest set(17例)に分け,training setを用いてk-nearest neighbor method(KNN法)によるleave-one-out cross validationを行い術前照射療法の効果予測式を作成した.さらにtest setを用いて予測式の検証を行った.先ずresponder,nonresponder間で発現の異なるアポトーシス関連遺伝子を含む33遺伝子を抽出し,この33遺伝子により効果予測式を作成した結果,training setで88.6%の精度で照射効果の予測が可能であった。さらに,この予測式を用いてtest setで効果判定の検証を行った結果,82.4%の精度で照射効果の予測が可能であった.これまでに,DNAマイクロアレイを用いた直腸癌に対する放射線照射効果予測に関する報告はなかったが,本研究の結果は,Cancer Research誌に2006年に発表され,世界最初の報告となった(Can Res 66(7)).さらに,同様な方法を用いて,本邦で開発された経口抗癌剤(5FU製剤)を用いた化学放射線療法の効果判定を15例を対象として行った結果,全例(100%)の予測を正確に行うことが可能であった.症例数は十分ではないが,この結果から,今後の照射効果予測に基づいた直腸癌に対するテーラーメイド治療の可能が考えられた.DNAマイクロアレイを用いて直腸癌に対する術前放射線療法の効果を照射前に予測できるか検討を行った.術前照射前の癌の生検標本の遺伝子発現解析が可能であった直腸癌52例を対象とした.照射効果は組織学的に評価し,responderとnonresponderに分類し,これらの症例をtraining set(35例)およびtest set(17例)に分け,training setを用いてk-nearest neighbor method(KNN法)によるleave-one-out cross validationを行い術前照射療法の効果予測式を作成した.さらにtest setを用いて予測式の検証を行った.先ずresponder,nonresponder間で発現の異なるアポトーシス関連遺伝子を含む33遺伝子を抽出し,この33遺伝子により効果予測式を作成した結果,training setで88.6%の精度で照射効果の予測が可能であった。さらに,この予測式を用いてtest setで効果判定の検証を行った結果,82.4%の精度で照射効果の予測が可能であった.これまでに,DNAマイクロアレイを用いた直腸癌に対する放射線照射効果予測に関する報告はなかったが,本研究の結果は,Cancer Research誌に2006年に発表され,世界最初の報告となった(Can Res 66(7)).さらに,同様な方法を用いて,本邦で開発された経口抗癌剤(5FU製剤)を用いた化学放射線療法の効果判定を15例を対象として行った結果,全例(100%)の予測を正確に行うことが可能であった.症例数は十分ではないが,この結果から,今後の照射効果予測に基づいた直腸癌に対するテーラーメイド治療の可能が考えられた.DNAマイクロアレイを用いて直腸癌に対する術前放射線療法の効果を照射前に予測できるか検討を行った.術前照射前の癌の生検標本の遺伝子発現解析が可能であった直腸癌52例を対象とした.照射効果は組織学的に評価し,responderとnonresponderに分類し,これらの症例をtraining set(35例)およびtest set(17例)に分け,training setを用いてk-nearest neighbor method(KNN法)によるleave-one-out cross validationを行い術前照射療法の効果予測式を作成した.さらにtestsetを用いて予測式の検証を行った.先ずresponder, nonresponder間で発現の異なるアポトーシス関連遺伝子を含む33遺伝子を抽出し,この33遺伝子により効果予測式を作成した結果,training setで88.6%の精度で照射効果の予測が可能であった.さらに,この予測式を用いてtest setで効果判定の検証を行った結果,82.4%の精度で照射効果の予測が可能であった.これまでに,DNAマイクロアレイを用いた直腸癌に対する放射線照射効果予測に関する報告はなかったが,本研究の結果は,Cancer Research誌に2006年に発表され,世界最初の報告となった(Can Res 66(7)).我々は同様な手法を用いたDNAマイクロアレイ解析の臨床応用を検討しており,解析方法は確立している(Can Res 66(20), Clin Can Res 13(2)).この手法を用いて,さらに現在は,本邦で開発された経口抗癌剤(5FU製剤)を用いた化学放射線療法の効果判定を行うための解析をすすめている段階である.これにより照射効果予測に基づいた直腸癌に対するテーラーメイド治療が可能となるものと考えられる.DNAマイクロアレイを用いて直腸癌に対する術前放射線療法の効果を照射前に予測できるか検討を行った.これまでの検討で,術前照射前の癌の生検標本の遺伝子発現解析が可能であった放射線照射を行った直腸癌52例を対象として,照射効果は組織学的に評価し,responderとnonresponderに分類し,k-nearest neighbor method(KNN法)によるleave-one-out cross validationを行い術前照射療法の効果予測を行った.
KAKENHI-PROJECT-18390361
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18390361
DNAマイクロアレイを用いた直腸癌放射線(化学)療法の個別化治療の確立
この結果,responder,nonresponder間で発現の異なるアポトーシス関連遺伝子を含む33遺伝子を抽出し,この33遺伝子により効果予測式を作成した結果,88.6%の精度で照射効果の予測が可能であった.さらに,この予測式を用いてtest setで効果判定の検証を行った結果,82.4%の精度で照射効果の予測が可能であった,今回は,同様な方法を用いて,本邦で開発された経口抗癌剤(5FU製剤)を用いた化学放射線療法の効果判定を行うための解析を行った.Responder 6例とnonresponder 9例を対象として検討した。
KAKENHI-PROJECT-18390361
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18390361
重力定数と宇宙物理学
重力定数Gは、重力の強さを決める基本的な物理定数である。しかしながら近年、統一理論や重力理論の変更の可能性の観点から、その時間変化の可能性が考えられている。他の3つの相互作用(電磁気力、弱い力、強い力)と比べて、重力は極端に弱く、長距離・大質量の場合に効果が顕著になる力である。星や宇宙の構造・進化においては重力が決定的に重要な役割を果たす。本研究では、プランク衛星による宇宙背景放射の揺らぎの最新の観測データを用いて、重力定数の変化に対して我々が以前WMAP衛星によるデータで与えた制限より一桁強い制限をつけることができた。重力定数$G$は、重力の強さを決める基本的な物理定数である。しかしながら近年、統一理論や重力理論の変更の可能性の観点から、その時間変化の可能性が考えられている。他の3つの相互作用(電磁気力、弱い力、強い力)と比べて、重力は極端に弱く、長距離・大質量の場合に効果が顕著になる力である。星や宇宙の構造・進化においては重力が決定的に重要な役割を果たす。素粒子の統一理論の有力候補である弦理論を含む変更された重力理論では一般的に重力定数が変化しうる。そこで、様々な観測による基本定数の時間変化への制限が理論構築・棄却に大きな役割を果たしうる。本年度は、弦理論を含むより一般的な重力理論であるスカラーテンソル理論における観測量について考察を行った。スカラーテンソル理論においては、作用においてリッチテンソルがスカラー場とnon-minimalに結合するが物質は計量とminimalに結合するJordan frameと、リッチテンソルとスカラー場が分離するが物質と計量はnon-minimalに結合するEinstein frameの2つの顕著な表示があり、両者は共形変換によって関係している。どの表示の観測量が物理的かという議論が古くからあった。しかしながら、研究代表者は両者の違いは単位系の取り方の違いだけであり、観測量には一切変更は生じないということを、宇宙論的な観測量に関して明らかにした。さらに、多成分スカラー場モデルにおけるスケーリング解の存在及びその安定性に関する完全な分類を行った。重力定数Gは、重力の強さを決める基本的な物理定数である。しかしながら近年、統一理論や重力理論の変更の可能性の観点から、その時間変化の可能性が考えられている。他の3つの相互作用(電磁気力、弱い力、強い力)と比べて、重力は極端に弱く、長距離・大質量の場合に効果が顕著になる力である。星や宇宙の構造・進化においては重力が決定的に重要な役割を果たす。素粒子の統一理論の有力候補であるひも理論を含む変更された重力理論では、一般的に重力定数が変化しうる。そこで、様々な観測による基本定数の時間変化への制限が理論構築・棄却に大きな役割を果たしうる。本年度は、重力定数が変化する重力理論(たとえばスカラーテンソル重力理論)と共形変換で関係づけられるアインシュタイン理論での宇宙論における観測量の関係を研究した。一見すると、共形変換で両者の間の観測量は異なるように見られるが、観測量の定義並びに次元量の変換を丁寧に考察することにより、両者の間で観測量は全く変わらないことが明らかになった。また、二体のブラックホールの「影」の構造を解析的および数値的に求め、影の形状は1体の場合の単純な重ね合わせとは異なる複雑な形状を持つことを明らかにし、形状はブラックホールの間隔や質量に依存することが分かった。さらに、宇宙の加速膨張の観測に関連して、スカラー場によるダークエネルギーモデルについて、新しい超新星の最新の観測データやバリオン音響振動の観測データを用いて、幅広いクラスのスカラー場ダークエネルギーモデルに対する観測的制限を与えた。重力定数Gは、重力の強さを決める基本的な物理定数である。しかしながら近年、統一理論や重力理論の変更の可能性の観点から、その時間変化の可能性が考えられている。他の3つの相互作用(電磁気力、弱い力、強い力)と比べて、重力は極端に弱く、長距離・大質量の場合に効果が顕著になる力である。星や宇宙の構造・進化においては重力が決定的に重要な役割を果たす。素粒子の統一理論の有力候補である弦理論を含む変更された重力理論では一般的に重力定数が変化しうる。そこで、様々な観測による基本定数の時間変化への制限が理論構築・棄却に大きな役割を果たしうる。本年度は、重力とnon-minimalに結合したスカラー場によるインフレーションモデルによって生成される重力波や密度揺らぎの性質について、このモデルに特徴的な性質を明らかにした。self-couplingのみを持つインフレーションモデルではnon-minimal couplingによって重力波の生成は抑えられ、観測と整合する傾向になる。将来の重力波観測によりnon-minimal couplingへの制限をつけられる可能性を指摘した。また、chaotic inlfation modelについて、tensor-scalar比と密度揺らぎのスペクトル指数およびスペクトル指数のrunningの間に関係式が成立することを示した。将来の精密な観測によりモデルを検証する可能性を指摘した。重力定数Gは、重力の強さを決める基本的な物理定数である。しかしながら近年、統一理論や重力理論の変更の可能性の観点から、その時間変化の可能性が考えられている。他の3つの相互作用(電磁気力、弱い力、強い力)と比べて、重力は極端に弱く、長距離・大質量の場合に効果が顕著になる力である。星や宇宙の構造・進化においては重力が決定的に重要な役割を果たす。素粒子の統一理論の有力候補である弦理論を含む変更された重力理論では一般的に重力定数が変化しうる。
KAKENHI-PROJECT-24540287
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24540287
重力定数と宇宙物理学
そこで、様々な観測による基本定数の時間変化への制限が理論構築・棄却に大きな役割を果たしうる。本年度は、宇宙背景放射(CMB)による重力定数の変化の制限のテーマに取り組んだ。CMBの温度揺らぎは、バリオンと相互作用している光子中を伝わる音波(疎密波)によるものである。Gが大きくなると宇宙の膨張率が早くなるので、膨張の時間スケール、さらにはその間に光が進む距離も短くなる。したがって、宇宙の中性化が起こる時期が早まり、その間に音波として伝播していたバリオンの進む距離も短くなる。観測される揺らぎの空間的パターン(波長)は小さくなる。我々が以前行ったCMBの揺らぎのデータ(WMAP 1st year)の解析をPlanck衛星による最新のデータを用いて行った。以前の結果よりGの変化に対して一桁強い制限(0.48%以下)が得られた。また、この結果は宇宙の曲率を変えてもほとんど変わらないことが明らかになった。重力定数Gは、重力の強さを決める基本的な物理定数である。しかしながら近年、統一理論や重力理論の変更の可能性の観点から、その時間変化の可能性が考えられている。他の3つの相互作用(電磁気力、弱い力、強い力)と比べて、重力は極端に弱く、長距離・大質量の場合に効果が顕著になる力である。星や宇宙の構造・進化においては重力が決定的に重要な役割を果たす。本研究では、プランク衛星による宇宙背景放射の揺らぎの最新の観測データを用いて、重力定数の変化に対して我々が以前WMAP衛星によるデータで与えた制限より一桁強い制限をつけることができた。宇宙背景放射の揺らぎの計算に進展があったため。また、重力定数のみならず宇宙定数に関する研究にも進展があったため。宇宙物理学予定通り、宇宙物理学的観測量(とくに宇宙背景放射)を用いた物理定数の時間変化への制限をつけることを目指す。重力定数の時間変化のみならず宇宙定数の時間変化の制限についても解析が進んだため。スカラーテンソル理論と共形変換されたアインシュタイン重力理論との間の観測量の関係が明白でなかったため、まずこの点を明確にする必要性が生じたため。今年度は出席を予定していた国際会議がなかったため。予定通り、宇宙物理学的観測量を用いた物理定数の変化への制限を求めていく。予定通り、宇宙物理学的観測を用いた物理定数の変化への制限を求めていく。旅費および物品費等に使用する。前倒し支払い請求を行ったため。旅費および物品費等に使用していく。該当なし。
KAKENHI-PROJECT-24540287
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24540287
ヒトデ卵成熟誘起ホルモン(1-メチルアデニン)の生合成過程とその作用機構
1.1-メチルアデニン前駆体の同定:ヒトデ濾胞細胞内のアデニン関連物質を逆相カラムおよびイオン交換カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析したところGSS処理にともないATPのピークが有意に減少することを見出した。ATPの減少量は1-MAの生産量とほぼ一致していた。このことから、1-MAはATPを基質として生合成される可能性が示唆された。2.1-メチルアデニン生合成系の活性調節:ヒトデ濾胞細胞にサイクリックAMP(cAMP)依存性プロテインキナーゼ(PKA)が存在することが確認された。PKAはcAMP濃度依存的に活性化し、70kDaタンパク質をリン酸化することが示された。今後、70kDaタンパク質のリン酸化と1-MA生合成の関係について検討する予定である。3.1-メチルアデニンの受容体タンパク質に対する相互作用:1-MAのアゴニストおよびアンタゴニストとなるべき15種類の1-置換アデニンを設計、合成したところ1-β-ナフチルメチルアデニンと1-アミノアデニンはアゴニストとして、1-p-ニトロベンジルアデニン、1-α-ナフチルメチルアデニンはアンタゴニストになることを見出した。1-MAに対するアンタゴニストの研究例は少なく、今後、1-MA受容体の標識試薬の開発に有用と思われる。1.1-メチルアデニン前駆体の同定:ヒトデ濾胞細胞内のアデニン関連物質を逆相カラムおよびイオン交換カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析したところGSS処理にともないATPのピークが有意に減少することを見出した。ATPの減少量は1-MAの生産量とほぼ一致していた。このことから、1-MAはATPを基質として生合成される可能性が示唆された。2.1-メチルアデニン生合成系の活性調節:ヒトデ濾胞細胞にサイクリックAMP(cAMP)依存性プロテインキナーゼ(PKA)が存在することが確認された。PKAはcAMP濃度依存的に活性化し、70kDaタンパク質をリン酸化することが示された。今後、70kDaタンパク質のリン酸化と1-MA生合成の関係について検討する予定である。3.1-メチルアデニンの受容体タンパク質に対する相互作用:1-MAのアゴニストおよびアンタゴニストとなるべき15種類の1-置換アデニンを設計、合成したところ1-β-ナフチルメチルアデニンと1-アミノアデニンはアゴニストとして、1-p-ニトロベンジルアデニン、1-α-ナフチルメチルアデニンはアンタゴニストになることを見出した。1-MAに対するアンタゴニストの研究例は少なく、今後、1-MA受容体の標識試薬の開発に有用と思われる。1.1-メチルアデニン前駆体対の同定:ヒトデ濾胞細胞内のアデニン関連物質を逆相カラムおよびイオン交換カラムを用いた高速液体クロマドグラフィー(HPLC)により分析したところGSS処理にともないATPのピークが有意に減少することを見出した。ATPの減少量は1-MAの生産量とほぼ一致していた。このことから、1-MAはATPを基質として生合成される可能性が示唆された。2.1-メチルアデニン生合成系の活性調節:ヒトデ濾胞細胞にサイクリックAMP(cAMP)依存性プロテインキナーゼ(PKA)が存在することが確認された。PKAはcAMP濃度依存的に活性化し、70kDAタンパク質をリン酸化することが示された。今後、70kDAタンパク質のリン酸化と1-MA生合成の関係について検討する予定である。3.1-メチルアデニンの受容体タンパク質に対する相互作用:1-MAのアゴニストおよびアンタゴニストとなるべき15種類の1-置換アデニンを設計、合成したところ1-β-ナフチルメチルアデニンと1-アミノアデニンはアゴニストとして、1-p-ニトロベンジルアデニン、1-α-ナフチルメチルアデニンはアンタゴニストになることを見出した。1-MAに対するアンタゴニストの研究例は少なく、今後、1-MA受容体の標識試薬の開発に有用と思われる。
KAKENHI-PROJECT-07640891
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07640891
15世紀の聖地巡礼記に見る十字軍観・イスラーム観-記憶と経験-
本研究では、後期十字軍を再考する一環として、より具体的には十字軍熱が集合心性としてヨーロッパ世界に定前していたのかを探るべく、15世紀の聖地巡礼記の分析を行った。考察の結果、15世紀になると安全に「麻痺」した巡礼者たちの中にムスリムに対する敵意が表面化したこと、およびオスマン帝国のバルカン・半島進出という状況の中で巡礼者たちが「十宇軍」という用語を用い始めたこと、すなわち15世紀後半における「十宇軍」は聖地回復ではなく対オスマン帝国を意味したことなどが明らかとなった。しかし、ヴェネツイアとオスマン帝国との和平(1479年)により安全な聖地巡礼が確保されると、聖地巡礼者たちの心の中において再び「十字軍」熱が冷却していく傾向が見られることも確認された。本研究では、15世紀に作成された聖地巡礼記を網羅的に分析し、そこから十字軍観・イスラーム観に関する情報を抽出し、その情報を聖地巡礼記全体の文脈で問い直すことによって、ヨーロッパ世界ではいかなる十字軍観・イスラーム観が見られたのか、およびその変遷を見ることを主たる目的としている。この目的を果たすために、約250を数える15世紀の聖地巡礼記を三つの時期で区分し、始めの3年間において順に史料の分析を行い、最終年度においては3年間の分析の結果についての考察を行う。本研究では、後期十字軍を再考する一環として、より具体的には十字軍熱が集合心性としてヨーロッパ世界に定前していたのかを探るべく、15世紀の聖地巡礼記の分析を行った。考察の結果、15世紀になると安全に「麻痺」した巡礼者たちの中にムスリムに対する敵意が表面化したこと、およびオスマン帝国のバルカン・半島進出という状況の中で巡礼者たちが「十宇軍」という用語を用い始めたこと、すなわち15世紀後半における「十宇軍」は聖地回復ではなく対オスマン帝国を意味したことなどが明らかとなった。しかし、ヴェネツイアとオスマン帝国との和平(1479年)により安全な聖地巡礼が確保されると、聖地巡礼者たちの心の中において再び「十字軍」熱が冷却していく傾向が見られることも確認された。かつて研究代表者は、14世紀に時期を限定した上で聖地巡礼記を網羅的に分析し、そこから十字軍観、およびイスラーム・ムスリム観を探ってきたが、本研究は、これまでの行ってきた研究をさらに発展・深化させるために、15世紀に作成された聖地巡礼記を網羅的に分析し、そこから十字軍観・イスラーム観に関する情報を抽出し、その情報を聖地巡礼記全体の文脈で問い直すことを目的とする。この目的を達成するために、旅行記を内容および人称に基づいて網羅的に分析した上で5つの系統((1)メモワール、(2)旅行書、(3)創作、(4)聖地巡礼記、(5)巡礼ガイド)に分類し、聖地巡礼記およびその補助的史料として巡礼ガイドに検討対象を限定する。それぞれの作品について、作者の出身地・出自・旅程などの基本情報を整理した上で、各作品から十字軍観(過去の十字軍に対する記憶・追憶的記述、および経験としての聖地の現状に対する感情)やイスラーム観(クルアーンやムハンマドに関する情報をどのように伝えようとしているのか、および経験を通じてのムスリムに対する感情の変化の有無)に関する情報を抽出する、という研究手法をとる。本年度は、年代的に見て始めの約60作品、具体的にはジルベール・ド・ランノワの作品(1403年作成)からウィリアム・ウェイの作品(1458年作成)までを検討した。分析の結果、14世紀には薄れていた反ムスリム感情が、15世紀より再燃することが確認された。このことは、「安全な聖地巡礼を保証するムスリム」という14世紀の親ムスリム感情を産み出した現状が、当たり前のものとなってしまった、いわば「安全に対する盛覚の麻痺」に起因するものと考えられる。なお、本年度には、比較検討のために併せて413世紀の聖地巡礼記の分析も行い、論文という形でその成果を公にした。かつて研究代表者は、14世紀に時期を限定した上で聖地巡礼記を網羅的に分析し、そこから十字軍観、およびイスラーム・ムスリム観を探ってきたが、本研究は、これまでの行ってきた研究をさらに発展・深化させるために、15世紀に作成された聖地巡礼記を網羅的に分析し、そこから十字軍観・イスラーム観に関する情報を抽出し、その情報を聖地巡礼記全体の文脈で問い直すことを目的とする。この目的を達成するために、旅行記を内容および人称に基づいて網羅的に分析した上で5つの系統((1)メモワール、(2)旅行書、(3)創作、(4)聖地巡礼記、(5)巡礼ガイド)に分類し、聖地巡礼記およびその補助的史料として巡礼ガイドに検討対象を限定する。それぞれの作品について、作者の出身地・出自・旅程などの基本情報を整理した上で、各作品から十字軍観(過去の十字軍に対する記憶・追憶的記述、および経験としての聖地の現状に対する感情)やイスラーム観(クルアーンやムハンマドに関する情報をどのように伝えようとしているのか、および経験を通じてのムスリムに対する感情の変化の有無)に関する情報を抽出する、という研究手法をとる。本年度は、昨年度の研究成果を論文という形で公にするとともに、年代的に見て昨年度に分析対象とした作品に続く約60作品、具体的にはハンス=ルンハルト・フォン・エプティンゲンの作品(1460年作成)からイェハン・ド・トゥルネの作品(1487年作成)までを分析・検討した。とりわけ、この時代に「聖墳墓の騎士」という新たな反ムスリム感情が高揚したことを確認できたことは、大きな成果であった。
KAKENHI-PROJECT-19720196
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19720196
15世紀の聖地巡礼記に見る十字軍観・イスラーム観-記憶と経験-
かつて研究代表者は、14世紀に時期を限定した上で聖地巡礼記を網羅的に分析し、そこから十字軍観、およびイスラーム・ムスリム観を探ってきたが、本研究は、これまでの行ってきた研究をさらに発展・深化させるために、15世紀に作成された聖地巡礼記を網羅的に分析し、そこから十字軍観・イスラーム観に関する情報を抽出し、その情報を聖地巡礼記全体の文脈で問い直すことを目的とする。この目的を達成するために、旅行記を内容および人称に基づいて網羅的に分析した上で5つの系統((1)メモワール、(2)旅行書、(3)創作、(4)聖地巡礼記、(5)巡礼ガイド)に分類し、聖地巡礼記およびその補助的史料として巡礼ガイドに検討対象を限定する。それぞれの作品について、作者の出身地・出自・旅程などの基本情報を整理した上で、各作品から十字軍観(過去の十字軍に対する記憶・追憶的記述、および経験としての聖地の現状に対する感情)やイスラーム観(クルアーンやムハンマドに関する情報をどのように伝えようとしているのか、および経験を通じてのムスリムに対する感情の変化の有無)に関する情報を抽出する、という研究手法をとる。本年度は、昨年度の研究成果を論文という形で公にするとともに、年代的に見て昨年度に分析対象とした作品に続く約60作品までを分析・検討した。とりわけ、この時代に「聖墳墓の騎士」が儀礼化していく過程、それと平行してイスラーム・ムスリムに関する負の感情が減少傾向にあることを確認できたことは大きな成果であった。かつて研究代表者は、14世紀に時期を限定した上で聖地巡礼記を網羅的に分析し、そこから十字軍観、およびイスラーム・ムスリム観を探ってきたが、本研究は、これまでの行ってきた研究をさらに発展・深化させるために、15世紀に作成された聖地巡礼記を網羅的に分析し、そこから十字軍観・イスラーム観に関する情報を抽出し、その情報を聖地巡礼記全体の文脈で問い直すことを目的とする。この目的を達成するために、旅行記を内容および人称に基づいて網羅的に分析した上で5つの系統((1)メモワール、(2)旅行書、(3)創作、(4)聖地巡礼記、(5)巡礼ガイド)に分類し、聖地巡礼記およびその補助的史料として巡礼ガイドに検討対象を限定する。それぞれの作品について、作者の出身地・出自・旅程などの基本情報を整理した上で、各作品から十字軍観(過去の十字軍に対する記憶・追憶的記述、および経験としての聖地の現状に対する感情)やイスラーム観(クルアーンやムハンマドに関する情報をどのように伝えようとしているのか、および経験を通じてのムスリムに対する感情の変化の有無)に関する情報を抽出する、という研究手法をとる。本年度はセバスティアン・ブラントの作品(1490年作成)からイェハン・ド・ジュベク(1499年作成)までの作品を検討対象とした。考察の結果、ヴェネツィアとオスマン=トルコとの戦争の一時終結により、安全な聖地巡礼が確保されると、聖地巡礼者たちの心の中において再び「十字軍熱」が冷却していく傾向が見られることが確認された。
KAKENHI-PROJECT-19720196
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ぶどう膜炎における一酸化窒素の産生と抑制に関する検討
計画1.ぶどう膜炎におけるNO値の検討まず、血清のNO値をぶどう膜炎患者と正常者とで比較した。眼発作の出現時にはぶどう膜炎患者の血清のNO値は正常人よりも高値であった。また、年齢による差や高血圧や糖尿病の既往による差も見られた。患者と正常人の年齢はマッチさせた。現在は、ぶどう膜炎の治療経過とNO値の変動、また、治療方法の違いによるNO値の変動について経過観察中である。また、前房水中のNO値をぶどう膜炎患者と正常者とで比較した。しかし、有意な差はみられなかった。計画2.ぶどう膜炎の原因によるNO値の差次に、ぶどう膜炎の原因はベーチェット病、サルコイドーシス、原田病など様々であることが知られている。また、それぞれの疾患の発症機序も様々であるがその差によるNO値の差は症例数の関係もあるが明らかではなかった。計画1.ぶどう膜炎におけるNO値の検討まず、血清のNO値をぶどう膜炎患者と正常者とで比較した。眼発作の出現時にはぶどう膜炎患者の血清のNO値は正常人よりも高値であった。また、年齢による差や高血圧や糖尿病の既往による差も見られた。患者と正常人の年齢はマッチさせた。現在は、ぶどう膜炎の治療経過とNO値の変動、また、治療方法の違いによるNO値の変動について経過観察中である。また、前房水中のNO値をぶどう膜炎患者と正常者とで比較した。しかし、有意な差はみられなかった。計画2.ぶどう膜炎の原因によるNO値の差次に、ぶどう膜炎の原因はベーチェット病、サルコイドーシス、原田病など様々であることが知られている。また、それぞれの疾患の発症機序も様々であるがその差によるNO値の差は症例数の関係もあるが明らかではなかった。
KAKENHI-PROJECT-08771496
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08771496
聴覚障害における聴覚伝導路の可塑性に関する研究
聴覚伝導路の可塑性を調べるため、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)を用いて臨床および基礎研究を行った。臨床研究では慢性耳鳴患者を対象とし、左大脳聴覚野にrTMS治療を行い、耳鳴が有意に改善する結果が認められた。基礎研究では、動物モデルを用いてrTMS聴覚野刺激を加え、その聴覚伝導路の可塑性をImmediate early genes(IEGs)の変化で組織学的に調べた聴覚伝導路の可塑性を調べるため、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)を用いて臨床および基礎研究を行った。臨床研究では慢性耳鳴患者を対象とし、左大脳聴覚野にrTMS治療を行い、耳鳴が有意に改善する結果が認められた。基礎研究では、動物モデルを用いてrTMS聴覚野刺激を加え、その聴覚伝導路の可塑性をImmediate early genes(IEGs)の変化で組織学的に調べた聴覚伝導路の可塑性を調べるため、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)を用いて臨床および基礎研究を行った。臨床研究では耳鳴患者16人を対象とし、左大脳聴覚野に1kHz、運動閾値の110%強度のrTMS治療を行った。rTMS治療直後より耳鳴が有意に改善する結果が認められ、耳鳴そのものを抑制する画期的な治療として、国内外の学会および論文にて報告した。rTMSによる聴覚伝導路への影響について調べるため、動物モデルを用いてrTMS聴覚野刺激を加え、その聴覚伝導路の可塑性をImmediate early genes(IEGs)の変化で組織学的に調べた。IEGsは様々な細胞刺激により迅速に活性化され、その変化をみることで神経活動を組織学的に調べることが可能である。特にIEGsの一つであるc-fosは活動神経の機能解剖的指標としてもっとも広く使われている。動物はCD-1マウスを用い、磁気刺激にはMagstim Rapid[○!R](Magstim社)と動物用直径50mmの8型刺激コイルを使用した。45%出力強度で左聴覚野を1Hz、420回刺激した。またコントロールとしてシャム刺激ではコイルを90度傾け、刺激が頭蓋内に伝わらないようにした。マウスは刺激1時間後、1日後、1週間後にそれぞれ脳を摘出固定し、そのc-Fos発現の変化を観察した。Sham刺激群に比べ、rTMS刺激群では刺激1時間後でマウス左聴覚野にc-Fosの発現を明らかに認めた。その発現は聴覚野に1日後までみられ、1週間後の標本ではコントロール群の状態に戻っていた。一方rTMS刺激によりc-fosの発現は内側膝状体には認めなかった。IEGsはシナプス可塑性にも関連しており、耳鳴に対するrTMS効果の重要な機序の可能性として考えられる。聴覚伝導路の可塑性を調べるため、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)を用いて臨床および基礎研究を行った。臨床研究では耳鳴患者16人を対象とし、左大脳聴覚野に1kHz、運動閾値の110%強度のrTMS治療を行った。rTMS治療直後より耳鳴が有意に改善する結果が認められ、耳鳴そのものを抑制する画期的な治療として、国内外の学会および論文にて報告した。rTMSによる聴覚伝導路への影響について調べるため、動物モデルを用いてrTMS聴覚野刺激を加え、その聴覚伝導路の可塑性をImmediate early genes(IEGs)の変化で組織学的に調べた。IEGsは様々な細胞刺激により迅速に活性化され、その変化をみることで神経活動を組織学的に調べることが可能である。動物はCD-1マウスを用い、磁気刺激にはMagstim Rapid[○!R](Magstim社)と動物用直径50mmの8型刺激コイルを使用した。45%出力強度で左聴覚野を1Hz、420回刺激した。またコントロールとしてシャム刺激ではコイルを90度傾け、刺激が頭蓋内に伝われないようにした。マウスは刺激1時間後、1日後、1週間後にそれぞれ脳を摘出固定し、そのIEGs(c-Fos,Zif268,Arc)発現の変化を観察した。Sham刺激群に比べ、rTMS刺激群では刺激1時間後でマウス左聴覚野にc-Fos,Arcの発現を明らかに認めた。その発現は聴覚野に1日後までみられ、1週間後の標本ではコントロール群の状態に戻っていた。一方rTMS刺激によりc-fosの発現は内側膝状体には認めなかった。IEGsはシナプス可塑性にも関連しており、耳鳴に対するrTMS効果の重要な機序の可能性として考えられる。
KAKENHI-PROJECT-22791627
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22791627
計測と熱収支モデルの組み合わせによる山岳域における積雪・土壌水分・流出量の評価
研究目的広域陸面の熱収支水収支の実態把握を目的として,陸面過程のパラメータ化とその検証を行なう.まず,日本の東北地方山岳を含む範囲を試験地として選定し,衛星データ,現地調査,気象ルーチンデータ,及び熱収支・新バケツモデルの組み合わせにより,積雪面積,雪線,積雪水当量,土壌水分,流出量,地温の季節変化を評価する.研究成果1.宮城県秋山沢川流域について,「新バケツモデル」を用いて土壌水分,流出量,積雪水当量の季節変化を計算し,さらに河川の熱収支の計算から河川水温を求めた.山地の積雪水当量や雪線標高の季節変化について,熱収支計算と現地調査及び衛星計測による結果はほぼ満足できるものであった.2.中国の積雪域について延べ18年間を解析した結果,熱収支の計算値がルーチン観測とよく対応し,消雪日は±2日の誤差で再現できた.融雪期前後,アルベ-ドの急変により,熱収支状態が大きく変化する.消雪後の表層土壌が乾燥する約20日間では,潜熱輸送量は大きいが顯熱輸送量は小さい.3.植生値では,群落の表面温度は鉛直・水平方向に等温ではなく高度分布をもつ.そのため,植被面温度を放射温度計で測定すると測定角によって大きく異なる場合がある.植生多層モデルによる計算と観測から,イネ群落の顯熱輸送量を代表する放射温度を測定する最適な天底角を求め実例について検証した.研究目的広域陸面の熱収支水収支の実態把握を目的として,陸面過程のパラメータ化とその検証を行なう.まず,日本の東北地方山岳を含む範囲を試験地として選定し,衛星データ,現地調査,気象ルーチンデータ,及び熱収支・新バケツモデルの組み合わせにより,積雪面積,雪線,積雪水当量,土壌水分,流出量,地温の季節変化を評価する.研究成果1.宮城県秋山沢川流域について,「新バケツモデル」を用いて土壌水分,流出量,積雪水当量の季節変化を計算し,さらに河川の熱収支の計算から河川水温を求めた.山地の積雪水当量や雪線標高の季節変化について,熱収支計算と現地調査及び衛星計測による結果はほぼ満足できるものであった.2.中国の積雪域について延べ18年間を解析した結果,熱収支の計算値がルーチン観測とよく対応し,消雪日は±2日の誤差で再現できた.融雪期前後,アルベ-ドの急変により,熱収支状態が大きく変化する.消雪後の表層土壌が乾燥する約20日間では,潜熱輸送量は大きいが顯熱輸送量は小さい.3.植生値では,群落の表面温度は鉛直・水平方向に等温ではなく高度分布をもつ.そのため,植被面温度を放射温度計で測定すると測定角によって大きく異なる場合がある.植生多層モデルによる計算と観測から,イネ群落の顯熱輸送量を代表する放射温度を測定する最適な天底角を求め実例について検証した.
KAKENHI-PROJECT-08241205
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08241205
運動系におけるGABA系、アセチルコリン系及びカテコールアミン系:subpopulationの解析
GABA、アセチルコリン、カテコールアミンは、いわゆる古典的伝達物質であり、中枢神経系全般において、重要な制御系として働いている。これらはそれぞれ相互に関係はあるが独立した系と考えられてきた。しかし、最近、我々は、GABAとカテコールアミンが脳内のいろいろな部位において同一神経細胞内に共存している可能性を免疫細胞化学的手法によって示した。このことは、従来独立していると考えられていたGABA系とカテコールアミン系が一部重複していることを示している。本年度はやはり古典的伝達物質であり、運動系にも重要な意味をもっているアセチルコリンとGABAとの共存の可能性について、免疫細胞化学的手法によって検討した。ウイスター系雄ラットをアルデヒド混液にて潅流固定した後、脳及び脊髄を塙出し、ビブラトームにより50のμmの切片を作製し免疫細胞化学を行なった。一部のラットは固定の一日前に、側脳室内にコルヒチン(10mg/ml;10ml)を投与した。用いた一次抗体はアセチルコリン合成酵素であるコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)に対する抗体及びGABA合成酵素であるグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)に対する抗体及び、GABAそのものに対する抗体である。PAP法及びABC法によって発色させた。共存関係の検討には、連続切片を異なる抗体で免疫反応させ、相対応する面を比較する方法を用いた。その結果、網膜及び、大脳皮質のアセチルコリン性神経細胞の過半数が同時にGABA系であり、中隔部、脊髄でも一部のアセチルコリン性神経細胞においてGABA、あるいはGADの共存が確認できた。従ってラット中枢神経系においては、アセチルコリン系とGABA系も一部重複していると考えられる。GABA、アセチルコリン、カテコールアミンは、いわゆる古典的伝達物質であり、中枢神経系全般において、重要な制御系として働いている。これらはそれぞれ相互に関係はあるが独立した系と考えられてきた。しかし、最近、我々は、GABAとカテコールアミンが脳内のいろいろな部位において同一神経細胞内に共存している可能性を免疫細胞化学的手法によって示した。このことは、従来独立していると考えられていたGABA系とカテコールアミン系が一部重複していることを示している。本年度はやはり古典的伝達物質であり、運動系にも重要な意味をもっているアセチルコリンとGABAとの共存の可能性について、免疫細胞化学的手法によって検討した。ウイスター系雄ラットをアルデヒド混液にて潅流固定した後、脳及び脊髄を塙出し、ビブラトームにより50のμmの切片を作製し免疫細胞化学を行なった。一部のラットは固定の一日前に、側脳室内にコルヒチン(10mg/ml;10ml)を投与した。用いた一次抗体はアセチルコリン合成酵素であるコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)に対する抗体及びGABA合成酵素であるグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)に対する抗体及び、GABAそのものに対する抗体である。PAP法及びABC法によって発色させた。共存関係の検討には、連続切片を異なる抗体で免疫反応させ、相対応する面を比較する方法を用いた。その結果、網膜及び、大脳皮質のアセチルコリン性神経細胞の過半数が同時にGABA系であり、中隔部、脊髄でも一部のアセチルコリン性神経細胞においてGABA、あるいはGADの共存が確認できた。従ってラット中枢神経系においては、アセチルコリン系とGABA系も一部重複していると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-63623512
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63623512
背腰部作業負担の定量的評価方法と筋電モニタ-計の開発
1.昭和63年度に1号機を改造したが試用の結果一部不都合が生じたため次の如く感度ならびにスライスレベル等を再設定した;感度:200μV,500μV,1000μVの3段切換、スライスレベル:10%,20%,30%の3段切換、記憶時間単位:1秒,5秒,10秒,1分,5分,10分の6段切換。2.上記改良機を用いて被検者5名を対象に予め設定したアイソメトリックテストならびに標準模擬動作を行い感度およびスライスレベル別に筋力・筋電図・PEMM出力の関係を解析し次の結果を得た。アイソメトリックテストにおいては、いずれのスライスレベルにおいても同一個人においては、PEMM値と発揮された力ならびに筋電積分値との間に有意な関係が認められ、PEMMを用いて筋出力を評価することが可能であると考えられた。また、スライスレベルを変化させることによってPEMMがカウントを始める負荷の大きさが異なり、測定対象となる作業強度によってスライスレベルを設定できることが認められた。模擬動作においては、スライスレベル50μVでPEMM値と筋電積分値の間に高い相関が得られ、それ以上のスライスレベルでは動的で強い動作の出現を評価することが可能であることが認められた。3.重症心身障害児施設、保育所の保母・指導員・調理員、延べ19名を対象に作業内容・作業姿勢・上肢動作のタイム・スタディならびに全作業時間中の筋電図・心拍・PEMMの測定を行い、これらの関係を解析した。その結果PEMMが背腰部等の長時間の筋活動量あるいは背腰部を使用する職場の労働負担を評価する簡便な測定器として有効であることを確認した。1.ポリグラフ一式の整備(62年度)に加えて多用途テレメーター一式(4チャンネル2台、インターバルカウンター一台)を整備し、インターバルカウンターの記憶容量増強アダプターおよび計算ソフトプログラムを別途作製し分析に用いた。2.前年度に開発製作した筋電モニター計(以下、PEMM)を、健康な成人男子2名、腰痛患者1名の脊柱起立筋を被験筋として装着し、計15種類の模擬動作と伏臥位で背筋に種々の力は発揮させるアイソメトリックテストを行わせて、PEMM出力値、通常筋電図積分値、心拍数、角度と動作およびPEMM感度との関係を検討した。アイソメトリックテストの成績では、100および200μVの感度ではPEMM値と570%最大筋負荷量の間では直線関係がみられたのに対し感度500μVでは30100%最大筋負荷量の間で、また1000μVでは70%最大筋負荷量以上の間においてそれぞれ直線関係がみられた。模擬動作におけるPEMM値と筋電積分値の関係は、感度100μV、200μVのとき、動的ならびに静的な動作に関係なく直線的な対応が認められた。感度500μVのときは、動的な動作においてのみPEMM値が得られた。以上より感度100および200μVにより動的ならびに静的な持続性の筋負担の解析が、500μVにより瞬発的な動的筋負担の評価が可能であることが明らかとなった。3.2の結果をふまえてPEMM1号機を以下の如く改造した。PEMM記憶計の機能として、1)スライスレベルは5、10、20%の3段階可変、2)感度は100、200、500μVの3段階可変、3)外部出力端子付設、4)操作性向上のためのスイッチ等の付設、を追加して2号機を製作した。4.肢体不自由児施設、保育所等の作業現場での実作業者に対する応用は、PEMM改良機の完成の遅れ(平成元年2月末)と性能検定の必要性ならびに被験職場の事情により次年度に実施することになった。1.昭和63年度に1号機を改造したが試用の結果一部不都合が生じたため次の如く感度ならびにスライスレベル等を再設定した;感度:200μV,500μV,1000μVの3段切換、スライスレベル:10%,20%,30%の3段切換、記憶時間単位:1秒,5秒,10秒,1分,5分,10分の6段切換。2.上記改良機を用いて被検者5名を対象に予め設定したアイソメトリックテストならびに標準模擬動作を行い感度およびスライスレベル別に筋力・筋電図・PEMM出力の関係を解析し次の結果を得た。アイソメトリックテストにおいては、いずれのスライスレベルにおいても同一個人においては、PEMM値と発揮された力ならびに筋電積分値との間に有意な関係が認められ、PEMMを用いて筋出力を評価することが可能であると考えられた。また、スライスレベルを変化させることによってPEMMがカウントを始める負荷の大きさが異なり、測定対象となる作業強度によってスライスレベルを設定できることが認められた。模擬動作においては、スライスレベル50μVでPEMM値と筋電積分値の間に高い相関が得られ、それ以上のスライスレベルでは動的で強い動作の出現を評価することが可能であることが認められた。3.重症心身障害児施設、保育所の保母・指導員・調理員、延べ19名を対象に作業内容・作業姿勢・上肢動作のタイム・スタディならびに全作業時間中の筋電図・心拍・PEMMの測定を行い、これらの関係を解析した。その結果PEMMが背腰部等の長時間の筋活動量あるいは背腰部を使用する職場の労働負担を評価する簡便な測定器として有効であることを確認した。
KAKENHI-PROJECT-62870027
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62870027
硝酸性窒素汚染を対象とした微生物機能による分解促進・拡散制御に関する研究開発
農地における過剰な施肥などによる地下水汚染問題を対象とし,微生物機能を活用することで汚染物質の分解および地下での拡散防止を両立させる新しい処理技術について検討を行った.微生物の働きにより発生する二酸化炭素とカルシウムイオンを結合させることで地盤の空隙内にカルシウム系鉱物を析出させ,透水性(水の通りやすさ)を工学的に制御する効果を確認することができた.農地における過剰な施肥などによる地下水汚染問題を対象とし,微生物機能を活用することで汚染物質の分解および地下での拡散防止を両立させる新しい処理技術について検討を行った.微生物の働きにより発生する二酸化炭素とカルシウムイオンを結合させることで地盤の空隙内にカルシウム系鉱物を析出させ,透水性(水の通りやすさ)を工学的に制御する効果を確認することができた.農用地における施肥などを由来とした硝酸・亜硝酸による地下水汚染事例が増加傾向にある.硝酸・亜硝酸に汚染された地下水の飲用による人の健康被害および生態系への悪影響防止を目的とし,微生物機能に着目した原位置透水性制御技術について検討した.本技術では,1)土壌内にカルシウム源及び炭素源を添加し,有機物の代謝に伴って発生するCO_2を利用して炭酸カルシウムを地盤内に生成させる,2)土壌内に硫黄源を添加し,地下水中に含まれる硫黄脱窒細菌および硝酸・亜硝酸を利用して硫酸カルシウムを地盤内に生成させる,ことにより地盤の透水性を低下させるものである.本年度は,炭酸カルシウム析出技術に関して自然界に生息する微生物機能によるカルシウム系鉱物析出促進を目的としてカルシウム源として塩化カルシウム,有機物源としてスクロースを用いた培養試験および連続透水試験を行いその有効性を明らかにした.また,硫酸カルシウム析出技術については県内において複数の農地から採取した土壌を用い,バイアル瓶を用いたバッチ試験により,有機物の添加無しで硫酸カルシウムを得る効果を明らかにした.以上より,新たな微生物源を添加することなく,一般環境中に生息している微生物の活性を高めることでカルシウム系鉱物(炭酸カルシウムおよび硫酸カルシウム)の析出を促進する効果を確認することができた.特に,硫黄源を添加により硫酸カルシウムを得る技術については,短時間で硝酸・亜硝酸の分解と硫酸カルシウムの生成を確認することができ,提案技術の基本的有効性を確認することができた.農用地における施肥等を由来とした硝酸・亜硝酸による地下水汚染を主な対象とし,微生物機能により地盤内にカルシウム系鉱物を析出させることによる拡散防止と,硝酸・亜硝酸の微生物による分解を組み合わせた新たな対策技術について検討した.カルシウム系鉱物の析出に関しては有機物の分解時に発生するCO2とカルシウムイオンを結合させることでカルサイトを得るMicrobial Carbonate Precipitation(MCP)技術に,硝酸・亜硝酸の分解に関しては硫黄脱窒菌の働きに着目した.両者を組み合わせた新たな原位署処理枝術の実用化を最終的な目標とし,平成20年度は主にMCPによる原位置誘水性制御手法について検討を行った.農業廃水が流入するため池から採取した水を微生物源とし,有機物としてスクロース,カルシウム源として塩化カルシウム2水和物を添加した.なお,有機物の分解時に発生する有機酸がため池水のpHを低下させることが懸念されたため, pHバッファーとしてトリスを用いることとした.この溶液を豊浦砂を相対密度50%で締固めた1軸カラムに連続的に通水させて透水係数その他の推移をモニタリングした.試験の結果から,ため池水にカルサイトの結晶化を促す成分を追加した溶液を通水させることで,透水係数の低下効果を得ることが明らかとなった.試験終了後の豊浦砂を対象としたSEM-EDXによる表面観察および元素マッピングの結果がらも,カルシウム系鉱物の析出を裏付けるデータを得ることができた.あわせて,硝酸・亜硝酸を含む地下水に元素硫黄および塩化カルシウム2水和物を添加して培養した予備試験において硫黄脱窒菌の働きによると考えられる石膏の生成を確認することができ,両者を組み合わせることによる新たな処理技術の基本的有効性を明らかにすることができた.
KAKENHI-PROJECT-19710073
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19710073
虚血モデルマウスにおける血管新生や酸化ストレスから見た運動やビタミンC摂取の影響
本研究は右大腿動脈結紮(結紮)により、運動やビタミンC(VC)が血管新生因子などにおよぼす影響を検討した。対象は野生型とVCノックアウトマウスを用い、無作為に区分した(結紮と運動の有無など)。結果、酸化ストレス度は1 week(1W)と3 weeks(3W)で結紮+運動有群がSham群と比較して有意な高値を認めた。PGC-1αとIL-6は結紮+運動有群がSham群と比較して有意な高値、endostatimでは有意な低値を認めた。このことから、酸化ストレス度の変化は1Wより認められ、HIF-1αでは3Wにおいて高値になることが示された。また促進因子と抑制因子とのバランスが明らかになった。【諸言】生体には虚血に応答して血管を新生させる反応が内在し、運動や酸化ストレスなどの関与が考えられる。本研究はこの生理的反応を増強させうる運動について明らかする。【目的】右大腿動脈結紮(結紮)後の運動により血管新生因子などの経時的な変化について検討する。【対象と方法】対象は野生型マウス(C57BL/6NCrSlc)82匹を用い、無作為に9群に区分した(結紮と運動の有無、運動期間の違いにより区分)。全群は12週齢から開始し、と殺を運動期間1week(1W):13週齢、3week(3W):15週齢、6week(6W):18週齢で実施した。運動は外科的処置(処置)2日後より開始した。皮膚温はサーモグラフィーを用い、処置後1週間毎に測定した。血管新生因子はリアルタイムPCR法によりmRNA発現量(VEGF-aやHIF-1αなど)の分析を行った。酸化ストレス度(d-ROMs test)や8-OHdGなどは、フリーラジカル自動分析装置などにより分析を行った。【結果】(1)運動期間の違いによる影響皮膚温は結紮により継時的に有意な低下を認めた。HIF-1αは3Wで結紮+運動有群、結紮+運動無群がSham群と比較して有意な高値を認めたが、VEGF-aなどは有意差を認めなかった。酸化ストレス度は1Wと3Wで結紮+運動有群がSham群と比較して有意な高値を認めたが、8-OHdGでは有意差を認めなかった。(2)6Wにおける血管新生の検討促進因子のPGC-1αとIL-6は、結紮+運動有群がSham群と比較して有意な高値に対して、抑制因子のendostatimでは有意な低値を認めた。【結論】マウス下肢虚血モデルにおいては、酸化ストレス度の変化が1Wより認められ、HIF-1αでは3Wにおいて高値になることが示された。また、6Wの運動により毛細血管の促進因子と抑制因子とのバランスが明らかになった。【諸言】生体には虚血に応答して血管を新生させる反応が内在し、運動や酸化ストレスなどの関与が考えられる。本研究はこの生理的反応を増強させうる運動について明らかする。【目的】虚血下肢モデルマウスを用い、運動やビタミンC(VC)摂取が血管新生におよぼす影響について検討した。【対象と方法】対象は野生型マウス(C57BL6,10週齢)21匹を用い、無作為に運動有無により3群に区分した。またVC合成不全マウス(SMP30/GNL,10週齢)23匹を用い、無作為に運動やVC摂取有無により5群に区分した。全群は12週齢の時点で外科的処置(右大腿動脈2箇所結紮:結紮)または切開のみ(Sham群)を実施した。運動は処置2日後より開始し(期間6週間,5回/週)、と殺は18週齢の時点で行い腓腹筋外側頭内側を採取した。血管新生はリアルタイムPCR法によりmRNA発現量(VEGF,HIF1α,PGC1α,IL6,FGF,kdr,TSP1,endostatin)を分析した。統計に際しては、GAPDH mRNA発現量で除した相対値で、Kruskal Wallis検定と多重比較を用いて検討を行った。研究は所属する動物実験委員会の承認を得て実施した。【結果】(1)野生型結紮+運動有群はSham群と比較してPGC1αとIL6が有意な高値を示した。(2)VC合成不全結紮+運動有+VC摂取有群はSham群と比較してIL6とHIF1αが有意な低値を示した。同様に、結紮+運動無+VC摂取無群と比較してFGFが有意な低値を示した。【結論】今回、野生型は先行研究と同様、PGC1αなどを介した血管新生に関するシグナル伝達の賦活化が示された。またVC合成不全はVC摂取により、PGC1αやFGFなどの促進因子に影響をおよぼした可能性が明らかとなった。血管新生因子の発現を明確にするためには、組織切片を調整し免疫組織化学染色法によって検出する必要がある。また、毛細血管や酸化系酵素、筋線維形態の変化を明確にするためには、AP染色やSDH染色を検討する必要がある。今回、免疫組織化学染色法の分析に時間を要してしまい、当初の計画よりデータの取得が若干遅れている。【諸言】
KAKENHI-PROJECT-26350623
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虚血モデルマウスにおける血管新生や酸化ストレスから見た運動やビタミンC摂取の影響
生体には虚血に応答して血管を新生させる反応が内在し、運動や酸化ストレスなどの関与が考えられる。本研究はこの生理的反応を増強させうる運動について明らかする。【目的】末梢動脈疾患は血管新生などへの影響を引き起こす。本研究は虚血下肢モデルマウスを用い、運動が血管新生やミトコンドリアにおよぼす影響について検討した。【方法】対象は野生型マウス52匹を用い、運動有無と期間の違いにより7群に区分した。全群は12週齢の時点で外科的処置(右大腿動脈結紮)または切開のみ(Sham群)を実施し、と殺を処置後1 week(1W)、3 week(3W)、6week(6W)で行い、腓腹筋と血漿を採取した。運動は処置2日後より開始し、血管新生などはリアルタイムPCR法によりmRNA発現量(PGC1&alphaなど18因子)を分析した。酸化ストレス度や血漿ビタミンC(VC)値などを分析した。【結果】PGCは6W結紮+運動有群がSham群と比較し、IL6では3W結紮+運動有群がSham群と比較して有意な高値を認めた(遺伝子発現は2.6倍、4.3倍)。VC値は3W結紮+運動有群と6W結紮+運動有群がSham群と比較して有意な高値を認めた。Fis1等のミトコンドリアのfusionやfissionなどの因子は有意差を認めなかった。【結論】一般的に運動はPGCやIL6などの血管新生促進に影響することが報告されており、虚血モデルマウスにおいても同様な結果となった。また、運動によりVC値に高値を認めたが、PGCを介したミトコンドリアに関するpathwayなどに影響をおよぼさないことが示された。本研究は右大腿動脈結紮(結紮)により、運動やビタミンC(VC)が血管新生因子などにおよぼす影響を検討した。対象は野生型とVCノックアウトマウスを用い、無作為に区分した(結紮と運動の有無など)。結果、酸化ストレス度は1 week(1W)と3 weeks(3W)で結紮+運動有群がSham群と比較して有意な高値を認めた。PGC-1αとIL-6は結紮+運動有群がSham群と比較して有意な高値、endostatimでは有意な低値を認めた。このことから、酸化ストレス度の変化は1Wより認められ、HIF-1αでは3Wにおいて高値になることが示された。また促進因子と抑制因子とのバランスが明らかになった。血管新生因子の発現を明確にするためには、組織切片を調整し免疫組織化学染色法によって検出する必要がある。今回、免疫組織化学染色法の分析に時間を要してしまい、当初の計画よりデータの取得が若干遅れている。今後の推進方策:組織切片による免疫組織化学染色法などにより、運動により誘導されるanti-VEGFやCD31の検出と分布動態、および酸化系酵素、筋線維形態の変化について検討する予定である。次年度の研究費の使用計画:当該年度は、実験試薬等の購入済みのため、ほぼ残額を生じていない。また、平成28年度は交付申請書の計画に沿った使用を予定している。理学療法学今後の推進方策組織切片による免疫組織化学染色法により、運動により誘導されるanti-VEGFやCD31の検出と分布動態について検討する予定である。次年度の研究費の使用計画当該年度は、備品や実験試薬等の購入済みのため、残額を生じていない。また、平成27年度は交付申請書の計画に沿った使用を予定している。次年度使用額が少額であるため、物品等の購入ができなかった。次年度使用額では、必要な試薬の購入が不可能であったため。
KAKENHI-PROJECT-26350623
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強放射能温泉の泉水の教材化
1.放射能温泉の調査三朝温泉(鳥取県)、池田鉱泉(島根県)、恵那鉱泉(岐阜県)、増富鉱泉(山梨県)で泉水をサンプリングし、半導体式検出器を用いて各泉水の放射能を測定するとともに、既報(化学と教育、42巻4号、p.286(1994))の学生実験に、これらの泉水を実験教材として用いることが可能であるかどうかを検証した。その結果、採取時期や採取方法などによって放射能濃度が変化することが考えられるものの、いずれの泉水も1000Bq/L程度以上のラドン222を含み、トリウム系列に属する核種をほとんど含まないことが分かった。また、既報の実験法の内、鉛214とビスマス214の2つの核種を共沈法によって泉水から分離する実験はいずれの泉水でも良好な結果を得ることができたが、ビスマス214のみを分離する実験は、恵那鉱泉の泉水では不可能であった。その原因は泉水中に共存する何らかのイオンによる影響と考えられるが、その詳細は不明である。2.実験法の立案鉛214のみを泉水から分離することができれば、ビスマス214が鉛214から生まれ、やがて崩壊していく様子を観察することができる。そこで、ビスマスを液相に残したまま鉛214を硫酸鉛の形で泉水から分離する方法を開発した(詳細は化学と教育、45巻1号、p.33(1997)に報告済み)。また、既報の実験法が適用できない恵那鉱泉の泉水にこの方法を用いることで、初めに鉛214のみを泉水から取り除き、その上でビスマス214のみを含む沈殿を作ることができた。3.安価な放射線検出器の開発固体飛跡検出器(CR39)を用いた実験法についても検討中である。1.放射能温泉の調査三朝温泉(鳥取県)、池田鉱泉(島根県)、恵那鉱泉(岐阜県)、増富鉱泉(山梨県)で泉水をサンプリングし、半導体式検出器を用いて各泉水の放射能を測定するとともに、既報(化学と教育、42巻4号、p.286(1994))の学生実験に、これらの泉水を実験教材として用いることが可能であるかどうかを検証した。その結果、採取時期や採取方法などによって放射能濃度が変化することが考えられるものの、いずれの泉水も1000Bq/L程度以上のラドン222を含み、トリウム系列に属する核種をほとんど含まないことが分かった。また、既報の実験法の内、鉛214とビスマス214の2つの核種を共沈法によって泉水から分離する実験はいずれの泉水でも良好な結果を得ることができたが、ビスマス214のみを分離する実験は、恵那鉱泉の泉水では不可能であった。その原因は泉水中に共存する何らかのイオンによる影響と考えられるが、その詳細は不明である。2.実験法の立案鉛214のみを泉水から分離することができれば、ビスマス214が鉛214から生まれ、やがて崩壊していく様子を観察することができる。そこで、ビスマスを液相に残したまま鉛214を硫酸鉛の形で泉水から分離する方法を開発した(詳細は化学と教育、45巻1号、p.33(1997)に報告済み)。また、既報の実験法が適用できない恵那鉱泉の泉水にこの方法を用いることで、初めに鉛214のみを泉水から取り除き、その上でビスマス214のみを含む沈殿を作ることができた。3.安価な放射線検出器の開発固体飛跡検出器(CR39)を用いた実験法についても検討中である。
KAKENHI-PROJECT-08780150
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数理的解析モデルによる乾癬組織構築の定量化の研究
昨年までの研究により、顆粒層マイナス群とプラス群の各々につき、乾癬組織の構築モデルが決定された(Iizuka et al.J Invest Dermatol 109:806-810,1997)。顆粒層のマイナスの乾癬は、成長しつつある乾癬であり、顆粒層プラスの乾癬は、定常状態ないし縮小しつつある乾癬である。この2つの状態が確定したことから両者の相互移行の機構が計算上導き出される。その結果,顆粒層マイナスの乾癬は真皮乳頭高(H)が360ミクロンまでは、Hがより小さい顆粒層プラス乾癬と相互移行すること、一方、Hが360ミクロン以上では、真皮乳頭高Hがより大きい顆粒層プラス乾癬と移行することが示された。後者は乳頭腫構築をもたらすことになるが、現実の乾癬はHが比較的小さく、360ミクロン以上になることは例外的なため、いわゆる乾癬様組織構築が維持されるものと推定される(Iizuka et al.J Dermatol Sci21:105-112,1999)。また顆粒層マイナス乾癬の組織構築の維持においては、表皮細胞の急速な死が関与していること、またそこにはインターフェロンγの関与が想定されることが示された。(Ishida-Yamamoto,Iizuka et al.J Invest Dermatol Symp Proc 4:145-149,1999;Tahakashi,Iizuka et al.Biochem J 344:797-802,1999)1)組織構築パラメーターにもとづく乾癬組織構築モデルの立案乾癬組織の組織構築を各種パラメーターを用いて定量解析し、モデルを決定した。顆粒層マイナス、プラスの各々の乾癬につき決定し、ついで両者の相互移行の機構を調べた。計測は真皮乳頭間距離(D)、真皮乳頭幅(W)、真皮乳頭高(H)、真皮乳頭上方表皮厚(B)等のパラメーターである。これらは2次元垂直切片で類推可能であるが、水平切片のもとで確認された。コンピューター計算はMathematica softversion2.2を用いて行い、モデルが確定した段階で、各種増殖パラメーター(増殖率、ターンオーバー時間)を逆算し、現実のデータと比較検討した。その結果、両者の合致は極めて良好であることが示された。2)モデルに基づく乾癬表皮の角化様式の整合性の検討顆粒層プラス、マイナスを評価する場合、角化様式の定量的評価が決定的な意味を持つため、パラメーターとして増殖率(ならびに細胞死率)と各種角化マーカー(インボルクリン、SPRR、ロリクリン、フィラグリン)を用いた終末角化までの時間を検討した。顆粒層プラスの乾癬では、マイナスの乾癬と比べ1.28倍以上、表皮交代時間が長く、その時間を利用して、顆粒層マーカーが出現することが示された。昨年までの研究により、顆粒層マイナス群とプラス群の各々につき、乾癬組織の構築モデルが決定された(Iizuka et al.J Invest Dermatol 109:806-810,1997)。顆粒層のマイナスの乾癬は、成長しつつある乾癬であり、顆粒層プラスの乾癬は、定常状態ないし縮小しつつある乾癬である。この2つの状態が確定したことから両者の相互移行の機構が計算上導き出される。その結果,顆粒層マイナスの乾癬は真皮乳頭高(H)が360ミクロンまでは、Hがより小さい顆粒層プラス乾癬と相互移行すること、一方、Hが360ミクロン以上では、真皮乳頭高Hがより大きい顆粒層プラス乾癬と移行することが示された。後者は乳頭腫構築をもたらすことになるが、現実の乾癬はHが比較的小さく、360ミクロン以上になることは例外的なため、いわゆる乾癬様組織構築が維持されるものと推定される(Iizuka et al.J Dermatol Sci21:105-112,1999)。また顆粒層マイナス乾癬の組織構築の維持においては、表皮細胞の急速な死が関与していること、またそこにはインターフェロンγの関与が想定されることが示された。(Ishida-Yamamoto,Iizuka et al.J Invest Dermatol Symp Proc 4:145-149,1999;Tahakashi,Iizuka et al.Biochem J 344:797-802,1999)
KAKENHI-PROJECT-10877130
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10877130
自然免疫応答は人工呼吸器関連肺炎の予後を左右するか?
人工呼吸器関連肺炎(ventilator associated pneumonia: VAP)は院内肺炎のうち、とくに死亡率が高く予後不良な疾患である。今回の研究成果から、VAPの予後不良となる因子として、1人工呼吸器装着後5日以上経過した遅発性のVAPであること、2成人呼吸促迫症候群:Adult Respiratory DistressSyndrome(ARDS)の合併があること、3グラム陰性菌による肺炎であること、が抽出された。グラム陰性菌による肺免疫細胞の過剰サイトカイン産生によるARDSが肺傷害の原因となり、それらを保護調節する肺上皮細胞選択的産生物質が必要であることが示唆された。当院のVAP後ろ向き調査:本研究を開始するに先立って、過去3年間に当院にて発生したVAPの後ろ向き調査を行った。2010年12月2013年11月に当院のICUに入院し、48時間以上の人工呼吸器管理を施行された444名の患者のうち、VAPを発生したのは134名(30.1%)であった。当院のVAPの特徴としては、早期VAP(人工呼吸器管理が開始され5日以内に発症)が多く、原因微生物MRSA以外ではグラム陰性菌(S.maltophilia,緑膿菌、クレブシエラ桿菌など)が主であることが挙げられた。多変量解析にて予後因子(28日以内の死亡)として有意であったのはARDSの合併(p=0.0001)のみ抽出され、またARDSは患者背景に慢性肺疾患があり、VAP原因菌としてS.maltophiliaが検出された場合と関連が深いことが明らかになった。この結果より、VAP患者の予後に自然免疫応答が影響するかという我々の仮説の重要性がより強くなった。これら後ろ向き調査については、第88回日本感染症学会総会にて発表し、第68回国立病院総合医学会(横浜)にて最優秀演題賞を受賞した。論文としては、現在Journal of Infection and Chemotherapyに投稿中である。本研究に関するその他の業績:英文原著論文を3報受理された。倫理委員会:平成27年2月2日に当院の倫理審査委員会にて可決された。VAP患者の登録:平成27年3月1日より前向きの登録を開始した。現在VAP疑い例を含めて、19例の検体(BAL液、血液)を集積した段階である。来年度の見通し:目標例が50例であるため、25例の集積に至った段階で、VAP患者の肺胞洗浄液・血清中の肺上皮サイトカイン、マクロファージ由来サイトカインのELISAによる測定を行う予定である。1.当院のVAP後ろ向き調査:過去3年間に当院にて発生したVAPの後ろ向き調査を行った。2010年12月2013年11月当院のICUに入院し、48時間以上の人工呼吸器管理を行った444名の患者のうち、134名(30.1%)がVAPを発生した。当院のVAPの特徴として、早期VAP(5日以内に発症)が多く、MRSA以外の原因微生物としてグラム陰性桿菌が主体であった。多変量解析にて予後因子(28日以内の死亡)としてARDSの合併(p=0.0001)が抽出された。ARDSは背景として慢性肺疾患の存在が有意に多く、また慢性肺疾患患者のVAP原因菌としてS.maltophiliaが有意に検出された(第88回日本感染症学会総会、第68回国立病院総合医学会(最優秀発表賞)、2015年American Thoracic Societyにて発表。現在論文投稿中)。2.VAP患者の前向き登録:平成27年2月に当院の倫理委員会に受理され、3月より登録を開始した。また本研究検体保存専用に研究センターにて-80°C冷凍庫を設置した。現在VAP疑い例を含めて、30検体(BAL液、血液)を集積した。ELISAプレートのコストを考慮し、50例の集積に至った段階で肺上皮サイトカイン、マクロファージ由来サイトカインの測定を行う予定である。3.論文、学会発表、受賞について:本研究に関連して、申請者は平成27年度以降に計4本の原著論文(下記)を受理された。国際学会では5演題、国内学会でのシンポジウム2演題、一般演題12演題を発表した。また、申請者は「肺炎における自然免疫細胞の役割を解明する」という研究総合テーマで、平成27年6月に角尾学術賞を受賞した。申請者の仮説の重要性について、当院のVAP後ろ向き調査で明らかにし、その成果について学会発表および論文作成に至ったこと。平成27年度に本研究の関連分野で複数の英文原著論文発表に至ったことや、国内学会のシンポジウムでその知見を広めることができたこと。本研究の登録目標症例数の5/3に至ったこと。1.VAP患者の肺胞洗浄液検体を用いた肺胞上皮サイトカインの測定:肺胞洗浄液検体で肺胞上皮サイトカインの測定が実際に可能か評価するために、VAP確定例15検体を用いて、サイトカインをELISA法にて測定した。気管支肺胞洗浄液(BALF)中のTNF-α,IL-1β,CCL20,CXCL5はELISA法により測定可能であったが,IL-1α,GM-CSFは14検体が測定限界値以下であった。さらに感度の高い手法が必要と考えられるため、現在immunoPCR法による測定を検討しているため、本研究の延長を申請した。
KAKENHI-PROJECT-26860778
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26860778
自然免疫応答は人工呼吸器関連肺炎の予後を左右するか?
ELISAの結果から、BALFの好中球数とTNF-α,IL-1β,CCL20の相関の可能性が示唆されたものの、微生物類や予後と肺胞上皮サイトカイン値の関連は現時点では明らかではなかった。さらに症例を蓄積し、肺胞上皮サイトカイン値と肺炎の予後に関して検討を行いたい。当初は肺上皮サイトカインがELISAで測定可能と考えていたが、一部より高い感度の必要なサイトカインを認めた。よってELISA法よりも高感度で信頼性の高い測定法として、現在immunoPCR法による測定を検討しているため、本研究の延長を申請している。集積した人工呼吸器関連肺炎の気管支肺胞洗浄液サンプルで、平成28年11月/12月にELISA測定したサイトカインGM-CSFとIL-1αに関して、大部分の検体において測定感度以下であったため、より測定感度の高いimmuno PCRを用いて測定を行った。検体数は当初の目標である50検体に達し、CXCL5, GM-CSF, CCL20, IL-1α, IL-1β, TNF-α, IL-6, IL-8の測定を行った。現在患者背景因子と予後項目(60日以内死亡、ICU入院期間、全入院期間、人工呼吸器装着期間)に対する各種サイトカインの関連性と、サイトカインの組み合わせによる予後項目との関連性について解析中である。2.本研究に関連して、以下の原著論文を報告した。3.本研究に関連して、以下の学会発表を行った。人工呼吸器関連肺炎(ventilator associated pneumonia: VAP)は院内肺炎のうち、とくに死亡率が高く予後不良な疾患である。今回の研究成果から、VAPの予後不良となる因子として、1人工呼吸器装着後5日以上経過した遅発性のVAPであること、2成人呼吸促迫症候群:Adult Respiratory DistressSyndrome(ARDS)の合併があること、3グラム陰性菌による肺炎であること、が抽出された。グラム陰性菌による肺免疫細胞の過剰サイトカイン産生によるARDSが肺傷害の原因となり、それらを保護調節する肺上皮細胞選択的産生物質が必要であることが示唆された。申請者の仮説の重要性を当院のVAP後ろ向き調査にて明らかにし、その成果について学会発表および論文作成に至ったこと。本研究の関連分野にて多数の学会発表および3報の英文原著論文受理に至ったこと。また、本研究について倫理委員会にて承認を得て、前向きに研究を開始し、既に目標症例数の1/3に達成したこと。ELISAプレートが高価であるため、ELISAプレートのコストを考慮し、50例の集積に至った段階で肺上皮サイトカイン、マクロファージ由来サイトカインの測定を行う予定である。本研究の遂行には、当院ICUとの連携が不可欠であり、今後も密に進捗状況を確認していく必要がある。VAP症例の肺胞洗浄液は現在も収集中である。高感度測定法を確立させ、当初の目標を達成したい。呼吸器内科学、感染症学目標例が50例であるため、25例の集積に至った段階で、VAP患者の肺胞洗浄液・血清中の肺上皮サイトカイン、マクロファージ由来サイトカインのELISAによる測定を行う予定である。本研究の遂行には当院ICUとの連携が不可欠であり、今後も密に進歩状況を確認していく必要がある。次年度には検体数が目標検体(50検体)に達し次第、患者肺胞洗浄液および血清サイトカイン測定を行う予定である。、計画に準じてELISAのキットをはじめとした測定用の試薬や、測定結果の解釈について共同研究者であるボストン大学
KAKENHI-PROJECT-26860778
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26860778
組織学習に着目した地域組織活動支援ガイドの作成
本研究は次の3段階で行う。研究1は地域組織を支援する上での課題と組織学習に関連した内容の実践状況について行政保健師に対して質問紙調査を行う。研究2は研究1で得られた結果に基づき,モデルを活用する上で必要なプログラムとガイドブックを作成し,地域組織を支援した経験のある保健師にインタビューを実施し,さらに先行研究等を参考に修正し,内的妥当性を高める。研究3は研究2で得られた結果を基にプログラムを実施し,プログラムとガイドブックの実用可能性についての評価を行う。本研究は次の3段階で行う。研究1は地域組織を支援する上での課題と組織学習に関連した内容の実践状況について行政保健師に対して質問紙調査を行う。研究2は研究1で得られた結果に基づき,モデルを活用する上で必要なプログラムとガイドブックを作成し,地域組織を支援した経験のある保健師にインタビューを実施し,さらに先行研究等を参考に修正し,内的妥当性を高める。研究3は研究2で得られた結果を基にプログラムを実施し,プログラムとガイドブックの実用可能性についての評価を行う。
KAKENHI-PROJECT-19K19700
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K19700
粘弾性積層タイヤの時間変動複雑応力場評価と損失エネルギー低減法の構築
粘弾性体の応力・ひずみ解析手法を構築することが可能になれば,タイヤの走行抵抗低減に資する有用な力学解析手法とタイヤ構造設計への指針を提供できるものと期待される.このような背景から,本研究では,粘弾性体の変形計測手法としてデジタルホログラフィー法とデジタル画像相関法を適用すべく,これら2つの計測手法を粘弾性体の実験変位・ひずみ解析手法として開発してきた.デジタルホログラフィー法による粘弾性材料の変位計測においては,デジタルホログラフィー法を変位計測に適用する際に問題であった視野の拡大を,イメージプレーン光学系を用いることにより解決し,広い視野において3次元変形を測定する手法を構築した.また,測定対象物体の再生においては,フレネル積分を高速・高精度で計算可能なアルゴリズムを構築し,変位計測において標準偏差30nm,ひずみ計測において標準偏差7.5×10^<-6>の精度で計測が可能になった.これにより,粘弾性体の微小変形時において十分な測定精度で変位を計測できる手法を構築した.一方,粘弾性体の応力・ひずみを実験変位計測のみで,精確に求めるのは困難であることから,本研究では,実験計測と数値計算を組み合わせた実験-数値ハイブリッド法を開発し,それを用いて粘弾性応力・ひずみ解析を行った.本研究で開発したハイブリッド法は,解析対象となる粘弾性構造物の有限要素モデルを構築し,その有限要素モデルの外周境界に実験変位計測で得られた変位を境界条件として入力し,有限要素モデル内部の応力・ひずみを求めるものである.この手法を用いることにより,非比例負荷下における粘弾性体の応力・ひずみを定量的に求めることに成功し,粘弾性ゴムタイヤの走行低減に向けた応力・ひずみ解析手法を確立した.粘弾性体の応力・ひずみ解析手法を構築することが可能になれば,タイヤの走行抵抗低減に資する有用な力学解析手法とタイヤ構造設計への指針を提供できるものと期待される.このような背景から,本研究では,粘弾性体の変形計測手法としてデジタルホログラフィー法とデジタル画像相関法を適用すべく,これら2つの計測手法を粘弾性体の実験変位・ひずみ解析手法として開発してきた.デジタルホログラフィー法による粘弾性材料の変位計測においては,デジタルホログラフィー法を変位計測に適用する際に問題であった視野の拡大を,イメージプレーン光学系を用いることにより解決し,広い視野において3次元変形を測定する手法を構築した.また,測定対象物体の再生においては,フレネル積分を高速・高精度で計算可能なアルゴリズムを構築し,変位計測において標準偏差30nm,ひずみ計測において標準偏差7.5×10^<-6>の精度で計測が可能になった.これにより,粘弾性体の微小変形時において十分な測定精度で変位を計測できる手法を構築した.一方,粘弾性体の応力・ひずみを実験変位計測のみで,精確に求めるのは困難であることから,本研究では,実験計測と数値計算を組み合わせた実験-数値ハイブリッド法を開発し,それを用いて粘弾性応力・ひずみ解析を行った.本研究で開発したハイブリッド法は,解析対象となる粘弾性構造物の有限要素モデルを構築し,その有限要素モデルの外周境界に実験変位計測で得られた変位を境界条件として入力し,有限要素モデル内部の応力・ひずみを求めるものである.この手法を用いることにより,非比例負荷下における粘弾性体の応力・ひずみを定量的に求めることに成功し,粘弾性ゴムタイヤの走行低減に向けた応力・ひずみ解析手法を確立した.自動車タイヤは,高加速度,急停車,低温,高温度などの過度な条件で用いられ,さらに近年深刻化する環境問題から,タイヤの転がり抵抗の低減が求められるようになっている.企業では様々なゴム材料(粘弾性材料)により,タイヤを複合構造とすることで,転がり抵抗の低減や乗り心地,ブレーキ性能の向上への取り組みが行なわれている.しかしこうしたタイヤの性能は一方を向上させると他方が悪化するという二律相反の関係がある.現状では求める性能に対し適した構造を決定する際に,多種多様なタイヤモデルをFEM解析を通じて比較することで経験的に行なわれているが,未だ粘弾性特性や異種材料間の境界面および境界付近の残留応力などを考慮した力学的な立証が為されていない.本年度は上述の諸問題を念頭に置きながら,タイヤの転がり抵抗を低減するための第一アプローチとしてタイヤのような複合構造における高分子材料の時間および温度に依存する力学的・熱的挙動の基礎研究を行った.まず,白色楕円偏光を用いた光粘弾性法を積層ソリッドタイヤの回転接触負荷問題に適用するため,青の光を吸収せず,異なる力学的特性で積層構造を形成出来る光粘弾性用の樹脂を選定した.その樹脂により積層ブロックを形成し,垂直荷重下と垂直せん断合成荷重下における主応力差および主応力方向を光弾性実験により決定し定量的に比較した.ソリッドタイヤの回転接触負荷試験では,白色楕円偏光を用いた光粘弾性法の適用を試み,ソリッドタイヤ構造,回転速度,実験温度の相違による光粘弾性実験を行い,しま分布の違いを定性的に、しま次数の時間変動を定量的に評価した.また,ソリッドタイヤの回転を持続させ繰り返し負荷を与え発生する熱分布を構造ごとに比較をした.これらの取り組みは,積層構造各部の時間・温度依存性の力学挙動が,積層構造や構造を形成する材料の種類により異なるということを明確にし,タイヤの転がり抵抗低減の粘弾性力学の観点からの実験的第一アプローチとして,今後の研究の布石を敷いたと言える.時間変動する粘弾性積層タイヤの応力場を評価するためには,粘弾性材料の力学特性関数を高精度に測定すること,測定された特性関数を用いて応力場を正確に評価できる手法を構築することが不可欠である.
KAKENHI-PROJECT-15360060
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15360060
粘弾性積層タイヤの時間変動複雑応力場評価と損失エネルギー低減法の構築
粘弾性材料の力学特性関数の測定においては,マスター曲線の数式化が必要であり,数式化の一つの方法としてプロニー級数近似法が用いられてきた.しかし,この手法は数式化が煩雑なことから,実用上十分な精度で材料の力学特性を表現することが困難であった.そこで,従来手法の欠点を補完し,かつ汎用的な手法としてコロケーション法を基にしたプロニー級数近似法を開発した.この手法を用いることにより,動的粘弾性物性計測試験および定ひずみ速度試験において得られた力学特性関数を正確にプロニー級数近似できることを確認した.粘弾性材料の応力場評価手法の構築においては,変位・ひずみ計測手法の一つであるデジタル画像相関法と有限要素解析法とを組み合わせた実験-数値ハイブリッド解析法を開発した.本手法は,応力場の測定領域全体において,実験誤差を最小化することができ,解析精度を向上させることができる.この手法を用いた応力場解析に際し,前述のプロニー級数近似法を用いて粘弾性材料の円孔周辺における応力場,接触部近傍の応力場を解析し,既存の粘弾性応力解析手法に比べて高い解析精度を有していることを確認した.さらに,解析精度を向上させることを目的として,位相シフトデジタルホログラフィ法による変位計測法を発展させた.これにより,より解析精度の高い実験-数値ハイブリッド解析法が構築できる.一方,損失ひずみエネルギーの低減に関しては,数値解析,実験解析の2つの試みにより研究を行い,一軸加振条件で,損失ひずみエネルギーに起因する温度上昇を示すことができた.これにより,損失ひずみエネルギーが発生メカニズムの把握およびその低減手法の基礎を構築した.時間変動する粘弾性積層タイヤの応力場,損失エネルギーの定量的評価を行うには,粘弾性材料の応力・ひずみ場,温度分布を正確に評価できる手法を構築することが不可欠である.粘弾性材料の応力場評価手法の構築においては,変位・ひずみ計測手法の一つであるデジタル画像相関法と有限要素解析法とを組み合わせた実験-数値ハイブリッド解析法を開発した.本手法は,応力場の測定領域全体において,実験誤差を最小化し,極めて高い精度で応力・ひずみ場を計測することができる.この手法を用いた応力場解析に際し,開発した手法の有効性を弾性体の応力集中部の評価に適用し,測定精度が十分であることを実証している.この手法を,粘弾性体の応力・ひずみ解析に用い,応力・ひずみの時間履歴に関する詳細な解析結果を取得し,損失エネルギー評価のための応力場変動に関する知見を得た.さらに,上記手法を粘弾性物性計測試験に適用し,従来手法では測定が困難であった2つの独立な粘弾性特性係数関数の計測に有効であることを示した.一方,損失ひずみエネルギーの低減に関しては,数値解析,実験解析の2つの試みにより研究を行った.実験解析においては,一軸加振条件で,損失ひずみエネルギーに起因する温度上昇の計測と変位場の同時計測を行い,損失エネルギー消費過程の詳細なデータを取得している.数値解析においては,応力・ひずみ履歴のヒステリシスから得た損失エネルギーを基に,温度上昇を数値計算した結果,定性的な一致を得た.これにより,粘弾性体の損失エネルギーに起因する発熱を考慮した粘弾性解析の基礎を構築した.
KAKENHI-PROJECT-15360060
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15360060
プレターゲティング法による211Atのα線治療への応用
テトラジンとtrans-シクロオクテンによる逆電子要請型Diels-Alder反応を利用したプレターゲティングシステムは近年、様々な検討が実施されており、ある程度確立した手法である。しかし、本プレターゲティングシステムを211Atに展開する場合には、211Atを安定に結合し、かつプレターゲティング用薬剤の動態を損なわない211At標識法がないことが問題となる。前年度までにアミノ酸を母体とする211At標識部位を有する候補薬剤を作製したが、本年度は211Atを安定に結合可能な標識部位として新たにネオペンチル構造の評価を行った。本標識部位を有する低分子モデル化合物として、125I標識体、及び211At標識体をそれぞれ作製し、検討に用いた。本化合物は一般的なアルキルハライド型ハロゲン標識化合物の脱ハロゲンの原因の一つである求核置換反応に対して高い安定性を示した。また分子内に導入したジオール基により、CYPによる脱ハロゲンにも高い安定性を示し、正常マウス投与後、脱ハロゲンの指標となる首(甲状腺)や胃への集積が低かった。125I標識体については、尿中に排泄された放射活性を分析し、ヨウ化物イオンの割合が2%以下であることを認めた。そこで、本標識部位を用いて新たにプレターゲティング用候補薬剤として、テトラジン誘導体を設計、合成し、評価を行った。本薬剤の血液クリアランスは既存のプレターゲティング用薬剤と比較して同程度であり、リンカーを導入せずに薬剤として応用できる可能性を認めた。本研究では211Atを用いるプレターゲティングの問題点を克服し、二つの候補薬剤を導出することに成功した。候補薬剤の導出に時間がかかり、プレターゲティングを実施できていないが、既存の報告に基づくプレターゲティングシステムに応用することで十分に211Atを用いるプレターゲティングが実施可能であると考えられる。本研究の目的は、アスタチン-211(211At)によるα線治療に適したプレターゲティング用薬剤の開発である。プレターゲティング用薬剤は、抗体に導入した標的分子と選択的かつ速やかに結合可能な構造を分子内にもち、正常組織に集積せず、生体内から速やかにクリアランスされる必要がある。そこで本年度は、211At標識プレターゲティング用薬剤開発に向けて、211Atと同族元素であるヨウ素-125(125I)を用いてプレターゲティング用候補薬剤を合成し、その体内動態の基礎的評価を行った。当初の計画では、プレターゲティング用薬剤の母体としてビオチンの利用を計画していたが、免疫原性を低減できる等の理由からテトラジン誘導体を母体構造として合成を行った。125I標識部位のアミノ基からコハク酸リンカーを介してテトラジンを結合させた薬剤をマウスに投与したところ、投与後早期から肝臓、および腸管に高い集積を示した。一方で、水溶性リンカーとしてトリグルタミン酸を導入した薬剤は肝臓や腸管への集積を低減した。非特異的な正常組織への集積を低減できたことから、本薬剤はプレターゲティング用薬剤としての応用が期待できる。水溶性リンカーとしてPEG6を導入した候補薬剤もすでに合成を終えている。今後、その体内動態をトリグルタミン酸リンカーを導入した薬剤と比較検討することで最終的な候補薬剤を決定する予定である。また、コハク酸リンカーを有する薬剤を用いて211At標識を行い、125Iと同様の手法により211At標識が可能であることを確認した。より良い候補薬剤の導出に向けて検討予定の候補薬剤はあるものの、当初の予定通り、プレターゲティング用薬剤として適した体内動態を示す候補薬剤を導出できている。テトラジンとtrans-シクロオクテンによる逆電子要請型Diels-Alder反応を利用したプレターゲティングシステムは近年、様々な検討が実施されており、ある程度確立した手法である。しかし、本プレターゲティングシステムを211Atに展開する場合には、211Atを安定に結合し、かつプレターゲティング用薬剤の動態を損なわない211At標識法がないことが問題となる。前年度までにアミノ酸を母体とする211At標識部位を有する候補薬剤を作製したが、本年度は211Atを安定に結合可能な標識部位として新たにネオペンチル構造の評価を行った。本標識部位を有する低分子モデル化合物として、125I標識体、及び211At標識体をそれぞれ作製し、検討に用いた。本化合物は一般的なアルキルハライド型ハロゲン標識化合物の脱ハロゲンの原因の一つである求核置換反応に対して高い安定性を示した。また分子内に導入したジオール基により、CYPによる脱ハロゲンにも高い安定性を示し、正常マウス投与後、脱ハロゲンの指標となる首(甲状腺)や胃への集積が低かった。125I標識体については、尿中に排泄された放射活性を分析し、ヨウ化物イオンの割合が2%以下であることを認めた。そこで、本標識部位を用いて新たにプレターゲティング用候補薬剤として、テトラジン誘導体を設計、合成し、評価を行った。本薬剤の血液クリアランスは既存のプレターゲティング用薬剤と比較して同程度であり、リンカーを導入せずに薬剤として応用できる可能性を認めた。本研究では211Atを用いるプレターゲティングの問題点を克服し、二つの候補薬剤を導出することに成功した。
KAKENHI-PROJECT-17K16426
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K16426
プレターゲティング法による211Atのα線治療への応用
候補薬剤の導出に時間がかかり、プレターゲティングを実施できていないが、既存の報告に基づくプレターゲティングシステムに応用することで十分に211Atを用いるプレターゲティングが実施可能であると考えられる。候補薬剤を用いて、実際にプレターゲティングを実施する。その際には、125I標識体による事前検討を行った後、211Atへ展開する。
KAKENHI-PROJECT-17K16426
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K16426
収束電子回折法によるナノスケール点欠陥解析法の開発と点欠陥誘起物性への応用
本研究では,収束電子回折法を用いて,点欠陥の原子構造とその分布および周辺の歪みをナノスケールの空間分解能で定量的に解析する方法の開発を目指した.点欠陥を含む試料として不純物ドープSiを用いた.この系では収束電子回折図形の低次反射のロッキングカーブで異常な強度の上昇が見出されている.この異常と点欠陥による歪みとの関係を明らかにするため,エネルギーフィルター透過電子顕微鏡を用いて,ドープ量を変えた試料で精密なロッキングカーブの強度分布を測定した.その際,種々の電子顕微鏡用薄片試料作製法について検討し,ロッキングカーブへの影響のない試料作製法を確立した.またSiイオン打ち込みした不純物のない試料について同様の実験を行い,イオン打ち込みにより誘起される格子間原子や微小Siクラスターなどのロッキングカーブ異常への寄与を見出した.また,統計的動力学回折理論,multislice法,Howie-Whelan法に基づく計算プログラムを開発し,種々の歪み分布モデルを用いて動力学回折理論に基づくロッキングカーブのシミュレーションを行い,実験データと比較を行った.その結果,不純物およびイオン打ち込みで発生する格子間Si原子・微小クラスターなどの点欠陥により生成する歪みに電子顕微鏡用薄膜試料の歪み緩和を入れた歪み分布モデルで,ロッキングカーブの異常な強度上昇を定量的に説明することに成功した.このことは,本方法が,点欠陥による歪み分布をナノスケールの空間分解能で定量解析できる新しい手法であることを示している.本研究で開発した手法は,半導体デバイスの歪み分布解析に有効である.半導体の歪み分布解析には,高次反射に起因する細線からなる図形(HOLZ図形)が従来用いられてきたが,今回の方法により,これまで扱えなかった界面近傍の比較的歪みの大きい領域の解析が可能となった.本研究では,収束電子回折法を用いて,点欠陥の原子構造とその分布および周辺の歪みをナノスケールの空間分解能で定量的に解析する方法の開発を目指した.点欠陥を含む試料として不純物ドープSiを用いた.この系では収束電子回折図形の低次反射のロッキングカーブで異常な強度の上昇が見出されている.この異常と点欠陥による歪みとの関係を明らかにするため,エネルギーフィルター透過電子顕微鏡を用いて,ドープ量を変えた試料で精密なロッキングカーブの強度分布を測定した.その際,種々の電子顕微鏡用薄片試料作製法について検討し,ロッキングカーブへの影響のない試料作製法を確立した.またSiイオン打ち込みした不純物のない試料について同様の実験を行い,イオン打ち込みにより誘起される格子間原子や微小Siクラスターなどのロッキングカーブ異常への寄与を見出した.また,統計的動力学回折理論,multislice法,Howie-Whelan法に基づく計算プログラムを開発し,種々の歪み分布モデルを用いて動力学回折理論に基づくロッキングカーブのシミュレーションを行い,実験データと比較を行った.その結果,不純物およびイオン打ち込みで発生する格子間Si原子・微小クラスターなどの点欠陥により生成する歪みに電子顕微鏡用薄膜試料の歪み緩和を入れた歪み分布モデルで,ロッキングカーブの異常な強度上昇を定量的に説明することに成功した.このことは,本方法が,点欠陥による歪み分布をナノスケールの空間分解能で定量解析できる新しい手法であることを示している.本研究で開発した手法は,半導体デバイスの歪み分布解析に有効である.半導体の歪み分布解析には,高次反射に起因する細線からなる図形(HOLZ図形)が従来用いられてきたが,今回の方法により,これまで扱えなかった界面近傍の比較的歪みの大きい領域の解析が可能となった.本研究では,収束電子回折法を用いて,点欠陥の原子構造とその分布および周辺の歪みをナノスケールの空間分解能で定量的に解析する方法の開発を目指している.本年度は,点欠陥を含む試料として不純物ドープSiを用いた.この系では収束電子回折図形のロッキングカーブで異常な強度が見出されている.このロッキングカーブの異常と不純物ドープとの関係を明らかにするため,以下の実験を行った.・種々の電子顕微鏡用薄片試料作製法について検討し,ロッキングカーブへの影響のない試料作製法を確立した.・イオン打ち込み法により作成したAsおよびB原子ドープSi試料について,不純物原子濃度とロッキングカーブに現れる異常な強度の相関を明らかにした.・Si原子をイオン打ち込みした不純物のない試料について同様の実験を行い,イオン打ち込み時に生じる格子間原子や微小なSiクラスターなどが作る格子乱れのロッキングカーブ異常への寄与を見出した.また,統計的動力学回折理論,multislice法,Howie-Whelan法の3種の計算プログラムを開発し,ロッキングカーブのシミュレーションを行って実験と比較した.その結果,不純物やイオン打ち込みで発生する格子間原子・微小クラスターなどによる局所歪みと,それら欠陥により発生するマクロな歪みの両方が,ロッキングカーブの異常な強度の原因であることを見出した.これらにより,収束電子回折図形のロッキングカーブを定量的に解析することで,点欠陥に起因する微小歪みを検出できることを示した.本研究では,収束電子回折法を用いて,点欠陥の原子構造とその分布および周辺の歪みをナノスケールの空間分解能で定量的に解析する方法の開発を目指した.前年度に,低次反射の収束電子回折図形に現れるロッキングカーブの異常な強度上昇が,点欠陥により生成する歪みにより説明できることを見出し,報告した.本年度は,さらに踏み込んで,低次反射の収束電子回折図形の異常なロッキングカーブを定量的に解析する方法について検討した.種々の歪み分布モデルを用いて動力学回折理論に基づくロッキングカーブのシミュレーションを行い,実験データと比較を行った.
KAKENHI-PROJECT-17510083
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17510083
収束電子回折法によるナノスケール点欠陥解析法の開発と点欠陥誘起物性への応用
その結果,不純物およびイオン打ち込みで発生する格子間Si原子・微小クラスターなどの点欠陥により生成する歪みに,電子顕微鏡用薄膜試料における歪み緩和を取り入れた歪み分布モデルで,ロッキングカーブの異常な強度の上昇を定量的に説明することに成功した.これにより本方法を,点欠陥により生成する歪みをナノスケールの空間分解能で定量的に解析できる手法として確立することができた.また,今回の低次反射のロッキングカーブを用いる手法は,半導体界面近傍の比較的大きな歪みをもつ領域の歪み解析に応用できる新しい手法であることも示した.これまで半導体の歪み解析には,高次反射に起因して現れる細線からなる収束電子回折図形が用いられてきたが,今回の方法を用いると,界面近傍のこれまで取り扱えなかった歪みの大きい領域まで解析可能となる.また低散乱角の低次反射を用いるため散乱に寄与する試料の領域が小さくなり,空間分解能が向上する利点もある.
KAKENHI-PROJECT-17510083
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17510083
分子モデリングによるorphan受容体のリガンドデザインのための基礎的研究
オピオイド受容体における受容体-リガンド認識機構を分子レベルで解析した。オピオイド受容体μタイプに選択的なリガンドであるDAMGOのμ/δ受容体間識別に、第1細胞外ループと第2膜貫通部位の境界領域に存在するμ受容体127番目のアスパラギン残基とδ受容体の対応する位置に存在する108番目のリジン残基の違いが重要であることを明らかにした。また、DAMGOのμ/κ受容体間識別には、第3細胞外ループと第6膜貫通部位の境界領域に存在するμ受容体303番目のリジン残基とκ受容体の対応する位置に存在する297番目のグルタミン酸残基の違い、および、第3細胞外ループと第7膜貫通部位の境界領域に存在するμ受容体316番目のバリン、318番目のトリプトファン、319番目のヒスチジンとκ受容体の対応する位置に存在する310番目のセリン、312番目のチロシン、313番目のチロシンの違いが重要であることを明らかにした。さらに、オピオイド受容体と非常に高い相同性を有するにもかかわらず、オピオイドリガンドが結合しないことが知られているOrphaninFQ受容体の非ペプチド性リガンドを合理的にデザインするための基礎的知見を得ることを目的として、オピオイドリガンドがOrphaninFQ受容体に結合できない原因となっている受容体構造の解明を試みた結果、OrphaninFQ受容体の第2細胞外ループと第5膜貫通部位の境界領域に存在するアラニン残基および第6膜貫通部位に存在するバリン、グルタミン、バリンの3つの残基とオピオイド受容体の対応する位置に存在するリジンおよびイソロイシン、ヒスチジン、イソロイシン残基の違いが重要であることが明らかとなった。以上の実験において、野生型あるいは変異型受容体発現細胞の培養のため本研究費で購入したCO_2インキュベータ-を用いた。オピオイド受容体における受容体-リガンド認識機構を分子レベルで解析した。オピオイド受容体μタイプに選択的なリガンドであるDAMGOのμ/δ受容体間識別に、第1細胞外ループと第2膜貫通部位の境界領域に存在するμ受容体127番目のアスパラギン残基とδ受容体の対応する位置に存在する108番目のリジン残基の違いが重要であることを明らかにした。また、DAMGOのμ/κ受容体間識別には、第3細胞外ループと第6膜貫通部位の境界領域に存在するμ受容体303番目のリジン残基とκ受容体の対応する位置に存在する297番目のグルタミン酸残基の違い、および、第3細胞外ループと第7膜貫通部位の境界領域に存在するμ受容体316番目のバリン、318番目のトリプトファン、319番目のヒスチジンとκ受容体の対応する位置に存在する310番目のセリン、312番目のチロシン、313番目のチロシンの違いが重要であることを明らかにした。さらに、オピオイド受容体と非常に高い相同性を有するにもかかわらず、オピオイドリガンドが結合しないことが知られているOrphaninFQ受容体の非ペプチド性リガンドを合理的にデザインするための基礎的知見を得ることを目的として、オピオイドリガンドがOrphaninFQ受容体に結合できない原因となっている受容体構造の解明を試みた結果、OrphaninFQ受容体の第2細胞外ループと第5膜貫通部位の境界領域に存在するアラニン残基および第6膜貫通部位に存在するバリン、グルタミン、バリンの3つの残基とオピオイド受容体の対応する位置に存在するリジンおよびイソロイシン、ヒスチジン、イソロイシン残基の違いが重要であることが明らかとなった。以上の実験において、野生型あるいは変異型受容体発現細胞の培養のため本研究費で購入したCO_2インキュベータ-を用いた。
KAKENHI-PROJECT-08877327
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08877327
内発的な地域社会の発展と観光開発の関連に関する社会学的研究
この研究では,この国の地方都市や農山村の生きるよすがを探して,観光産業の可能性を考えることになった。農林漁業,伝統的な1.5次産業,時間の経過の中で地域的に形成されてきた諸産業,誘致した企業群による地域経済の循環維持,こういったことに加えて,観光産業が如何なる機能を果たしうるのか,具体的な地域を想定しながら検討した。付加価値を地域に付与する産業である観光は,基礎になる産業の展開無しには発展のよすがを得られない。地域社会の内発的な発展との関連で観光の意味を考えるというのは,地域の基礎産業の発展を観光の視点からも考えることに他ならない。対象地は,歴史的遺構が多く所在し伝統的諸産業あるいは現代的電機産業の発展した米沢市と農林業で生きてきた高畠町が織りなす地域であり,その諸産業のさらなる持続的発展を考慮しつつ,観光への視野を如何に広げられるかが課題となってきた。それは観光への視点こそが,それらの諸産業の高次の発展を支えるという判断の故である。米沢は,歴史的遺構と伝統産業を要素に,まちづくりにそれらを取り込み,複合化されたより厚みのある観光地への展開を計画し,高畠は有機農業とグリーンツーリズムを併せて農村滞在型の観光領域を開発しようとしている。いずれにしても,日常的な時間と空間からの離脱,あるいは時間と空間に関わる異文化体験,別の表現をすれば,都市型生活者たちの自然志向,時間的なゆとり志向を満たそうとする現代的な観光のありかたを示しているが,その観光を支える基礎産業発展の課題がそれぞれに消えたわけではなく,この国の地域構造に規定されたより大きな課題が見えてきているというべきである。この研究では,この国の地方都市や農山村の生きるよすがを探して,観光産業の可能性を考えることになった。農林漁業,伝統的な1.5次産業,時間の経過の中で地域的に形成されてきた諸産業,誘致した企業群による地域経済の循環維持,こういったことに加えて,観光産業が如何なる機能を果たしうるのか,具体的な地域を想定しながら検討した。付加価値を地域に付与する産業である観光は,基礎になる産業の展開無しには発展のよすがを得られない。地域社会の内発的な発展との関連で観光の意味を考えるというのは,地域の基礎産業の発展を観光の視点からも考えることに他ならない。対象地は,歴史的遺構が多く所在し伝統的諸産業あるいは現代的電機産業の発展した米沢市と農林業で生きてきた高畠町が織りなす地域であり,その諸産業のさらなる持続的発展を考慮しつつ,観光への視野を如何に広げられるかが課題となってきた。それは観光への視点こそが,それらの諸産業の高次の発展を支えるという判断の故である。米沢は,歴史的遺構と伝統産業を要素に,まちづくりにそれらを取り込み,複合化されたより厚みのある観光地への展開を計画し,高畠は有機農業とグリーンツーリズムを併せて農村滞在型の観光領域を開発しようとしている。いずれにしても,日常的な時間と空間からの離脱,あるいは時間と空間に関わる異文化体験,別の表現をすれば,都市型生活者たちの自然志向,時間的なゆとり志向を満たそうとする現代的な観光のありかたを示しているが,その観光を支える基礎産業発展の課題がそれぞれに消えたわけではなく,この国の地域構造に規定されたより大きな課題が見えてきているというべきである。近年,農村地域の新たな振興策として「グリーンツーリズム」が注目され,これまでのリゾート地形成への動きに新たな側面を加えつつある。また,わが国観光産業の国際化が課題とされるなかで,観光・リゾート産業の社会形成上の新たな意義,地域産業としての大きな役割が,多くの地域で認識されるようになってきた。研究対象地域の一つである米沢市では,工業化が一定進行し,また新幹線や高速道の整備によって東京ほか他地域との連絡も格段に改善され,都市としての魅力が増している。ただ,旧市街地の空洞化が急速に進んでおり,洗練された観光地としての整備とあわせ,その再編が課題となっている。他方,高畠町は,JR駅名称を高畠駅と改称し,温泉またグリーンツーリズムに対応する滞在施設を付設し,ここを拠点とする町内観光ネットワークを整備した。さらに町内有機農業実践者の活動や豊富な農産加工品の開発は,高畠町の新たな魅力を創り出している。この米沢高畠地域は,繊維,食品加工などの伝統的工業部門の実績を背景に,電子産業など新たな部門の付加・転換に成功し,先端的な工業地域として再編された。一方で、高畠町には農業を土台にした都市農村交流への積極的な取り組みがあり,米沢のもつ伝統的な観光資源とあわせ,工業地域でありながら,観光・リゾート資源をも豊かに有する個性的な地域になっている。この地域では,観光産業を,地域内諸産業を方向づける重要な産業部門と位置づけており,地域社会の内発的な発展を考える上で,今後の観光戦略には関心が高い。今年度の作業をふまえ,来年度以降,この地域の観光産業を構成する各業界の構造・実態を,経営,雇用両面からより具体的に把握するとともに,地域経済や自治体政策の中での位置づけのされかた,その課題を検討し,あわせて,今年は十分に取り組めなかった海外の研究動向の整理と検討をさらに進めたい。本年度は、昨年度に引き続き、山形県米沢市、高畠町を研究対象に、主題に沿って、第一に、主要な関連団体等の代表、担当者と面談し、事実経過を確認し、状況把握、今後の構想などについて、お話を伺い整理した。
KAKENHI-PROJECT-09610169
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09610169
内発的な地域社会の発展と観光開発の関連に関する社会学的研究
また、各地の公的図書館などで関係資料を収集した。地域発展の状況を把握するため、米沢、高畠の各集落の農業生産や就業の状況について、農業センサスを利用して、いくらかの整理検討を行った。観光客等の意識や行動について、現地の状況に合わせて把握する作業を今後ともさらに進めたい。海外文献も含め、地域の内発的な発展、観光産業、地域開発関連の文献をさらに収集し、昨年のものとあわせ、検討を加えている。一定の工業化水準を示す米沢市にあって、伝統的な文化遺産、郊外の保養リゾート地は、都市としての風格や市民の誇りに通ずる地域資源また観光資源であり、今後の都市発展において、その重要な役割が期待される。近年、米沢市においても都市商業機能の一定の衰退がみられるが、これらの存在は都心再生の貴重な素材となりうるものである。市では、都心街区において面的な景観整備を展開し、旧来の印象を一新しつつあるが、一方で郊外化の動きもとまっておらず、都心再生にはさらに工夫が要請される。高畠町は、有機農業の拠点として全国的な認知があり、農業体験、都市農村交流の場としても期待されている。町は、一定の工業化を進めながらも、農業をあらためて全町的な認識のもとに地域の基礎産業として位置づけ、新たな意義を付与し、観光産業との接点を確保し、農産物加工などの地域産業形成に結びつけつつある。豊かな自然環境と農村景観を観光資源として生かし、地域経済の発展につなげていくために、農業生産とその生産環境の維持が有効であることを示している。さらに、置賜地域の広域的な社会再形成をどう構想し連携するかが、両市町の今後を左右する課題である。地域社会の内発的な発展は,受け継がれてきた地域文化の持続と発展を中核とし目標とするものであり,それが可能となる経済的政治的環境を整えることが第一の課題となる。この国の地域政策の展開やその影響を受けつつ形成されてきた地域構造は,国全体の工業化・近代化が優先されてきた経過を示している。内発的な発展の大切な基礎の一つは経済的な発展,豊かさであり,それは,地域の諸産業が如何に編成されるかにかかっている。自給的循環ではなく,一定程度広がる社会分業の中で,各地域が位置づく発展を考えるとすれば,地域産業はその地域の対外的な機能と重みを決める。つまり発展の基礎となる。この国の多くの地域において,ものの生産ととともに,都市型生活者のもつ自然志向性の充足が,今後の重要な機能となるはずであり,それは,広義,観光機能といえる。自然志向性は,私たちの日常生活において重要な行動選択基準になると思われ、多くの地域、農山漁村地域にとって,看過し得ない産業の基礎を提供する。地域産業としての観光産業が基礎づけられる。対象地である米沢と高畠を含む山形県置賜地域は,周辺の大中都市との距離の点からも,上記のような観光産業展開には有望な地域である。高畠における,都市農村交流の持続的拡大,有機農業の地域的展開は,農村滞在型の観光を予想させるものであるし,米沢の伝統的な歴史遺産,産業遺産,伝統産業体験を核とした観光の展開は,保養リゾート地としての温泉もあわせ,置賜全体としての観光資源の潜在的豊かさを示す。近年のそれぞれのまちづくりは観光産業の可能性を前提にしている。観光産業は,農業を含む既存のものづくり産業の発展とその成果を直接の資源にするのであり,その意味では付加価値型の産業である。
KAKENHI-PROJECT-09610169
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炭素・窒素を利用した高強度オーステナイト系ステンレス鋼の水素適合性評価
本課題では、本質的に水素脆化特性が優れているオーステナイト系ステンレス鋼に対して炭素および窒素を添加することで高強度化し、そのときの耐水素脆性に及ぼす炭素および窒素の影響を評価することを目的としている。水素、炭素、窒素はいずれも侵入型元素であり、それらの鋼中の固溶位置、拡散経路も同じである。つまり、炭素、窒素を添加するだけで水素の鋼中への侵入が阻害され、水素脆化が抑制される可能性があると考えた。しかしながら、代表的なオーステナイト系ステンレス鋼であるFe-18%Cr-8%Ni合金に0.2mass%の炭素または窒素を添加した試料に対して、270°C-72時間の高圧水素チャージを行ったところ、飽和水素量に及ぼす炭素、窒素の影響の相違は見られなかった。そこで、固相窒素吸収法により窒素量をさらに高めた0.5mass%N含有オーステナイト系ステンレス鋼に対して同様の実験を行ったところ、窒素を含まない場合には約92wppmの水素が侵入していたのに対し、窒素含有鋼には約89wppmの水素が含有しており、わずかに窒素によって飽和水素量が減少したことが確認できた。また、冷間加工により転位を導入した試料に対して同様の試験を行った。転位は水素のトラップサイトとなるため、転位密度が高いほど飽和水素量が上昇する。しかしながら、窒素含有鋼ではその上昇が抑制される傾向が見られた。これは、転位上に窒素が存在することで、水素のトラップ能を低減させたためであると考えられる。さらに、水素の拡散速度に及ぼす窒素の影響についても検討したが、拡散速度に窒素の影響はほとんど現れなかった。当初、研究対象とした材料としては、オーステナイト系ステンレス鋼に(1)炭素および窒素を0.2mass%添加した試料と(2)固相窒素吸収法により窒素を0.5mass%まで高めた試料を挙げていた。それら試料の準備は完了し、それらに対して高圧水素チャージを行った試料で実験を進めることができている。これら試料に対して、(A)無加工材では八面体空隙に固溶した炭素・窒素が水素の固溶量・拡散速度に及ぼす影響、(B)圧延材では水素のトラップサイトかつ拡散経路である転位や変形双晶と水素の関係に及ぼす炭素・窒素の影響、(C)時効材では水素固溶量、拡散速度に及ぼす炭化物・窒化物の影響を調査し、炭素・窒素が水素脆化を抑制し得る元素であるかどうかを検討する予定としていた。(A)については実験はほぼ完了し、0.2mass%程度の炭素、窒素ではほとんど影響がないこと、0.5mass%まで窒素濃度を高めるとわずかに飽和水素量が減少することを明らかにした。また、拡散速度には窒素の影響はほとんど見られないという知見も得られた。(B)については、窒素を含有してる場合に転位の水素トラップ能が弱まるという新たな知見を得た。一方で、拡散速度は窒素や転位の有無にかかわらず、同一温度では一定値を示した。ここで、従来オーステナイト系ステンレス鋼では評価が難しかった転位密度をmodified Williamson-Hall/Warren-Averbach法というX線ラインプロファイル解析により定量評価することで、転位密度と飽和水素量、拡散速度の関係を定量化できたことが一つの大きな成果である。(C)については未検討であり、次年度に研究を行う予定としている。初年度は、高圧水素チャージを行った場合の飽和水素量および拡散速度に及ぼす炭素および窒素の影響について主に検討した。固溶した炭素および窒素はそれらにあまり影響を与えないことが示唆されたため、今後は析出させた炭化物および窒化物が飽和水素量や拡散速度に及ぼす影響を検討したいと考えている。また、本来の目的である水素適合性を評価するために、水素チャージした試料に対して引張試験を行うことで、水素脆化特性に及ぼす炭素および窒素の影響を明確化する。その際、電子線後方散乱回折(EBSD)法や走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた詳細な加工組織の観察を平行して進め、水素脆化特性の議論を深める予定である。本課題では、本質的に水素脆化特性が優れているオーステナイト系ステンレス鋼に対して炭素および窒素を添加することで高強度化し、そのときの耐水素脆性に及ぼす炭素および窒素の影響を評価することを目的としている。水素、炭素、窒素はいずれも侵入型元素であり、それらの鋼中の固溶位置、拡散経路も同じである。つまり、炭素、窒素を添加するだけで水素の鋼中への侵入が阻害され、水素脆化が抑制される可能性があると考えた。しかしながら、代表的なオーステナイト系ステンレス鋼であるFe-18%Cr-8%Ni合金に0.2mass%の炭素または窒素を添加した試料に対して、270°C-72時間の高圧水素チャージを行ったところ、飽和水素量に及ぼす炭素、窒素の影響の相違は見られなかった。そこで、固相窒素吸収法により窒素量をさらに高めた0.5mass%N含有オーステナイト系ステンレス鋼に対して同様の実験を行ったところ、窒素を含まない場合には約92wppmの水素が侵入していたのに対し、窒素含有鋼には約89wppmの水素が含有しており、わずかに窒素によって飽和水素量が減少したことが確認できた。また、冷間加工により転位を導入した試料に対して同様の試験を行った。転位は水素のトラップサイトとなるため、転位密度が高いほど飽和水素量が上昇する。しかしながら、窒素含有鋼ではその上昇が抑制される傾向が見られた。これは、転位上に窒素が存在することで、水素のトラップ能を低減させたためであると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-18K14016
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K14016
炭素・窒素を利用した高強度オーステナイト系ステンレス鋼の水素適合性評価
さらに、水素の拡散速度に及ぼす窒素の影響についても検討したが、拡散速度に窒素の影響はほとんど現れなかった。当初、研究対象とした材料としては、オーステナイト系ステンレス鋼に(1)炭素および窒素を0.2mass%添加した試料と(2)固相窒素吸収法により窒素を0.5mass%まで高めた試料を挙げていた。それら試料の準備は完了し、それらに対して高圧水素チャージを行った試料で実験を進めることができている。これら試料に対して、(A)無加工材では八面体空隙に固溶した炭素・窒素が水素の固溶量・拡散速度に及ぼす影響、(B)圧延材では水素のトラップサイトかつ拡散経路である転位や変形双晶と水素の関係に及ぼす炭素・窒素の影響、(C)時効材では水素固溶量、拡散速度に及ぼす炭化物・窒化物の影響を調査し、炭素・窒素が水素脆化を抑制し得る元素であるかどうかを検討する予定としていた。(A)については実験はほぼ完了し、0.2mass%程度の炭素、窒素ではほとんど影響がないこと、0.5mass%まで窒素濃度を高めるとわずかに飽和水素量が減少することを明らかにした。また、拡散速度には窒素の影響はほとんど見られないという知見も得られた。(B)については、窒素を含有してる場合に転位の水素トラップ能が弱まるという新たな知見を得た。一方で、拡散速度は窒素や転位の有無にかかわらず、同一温度では一定値を示した。ここで、従来オーステナイト系ステンレス鋼では評価が難しかった転位密度をmodified Williamson-Hall/Warren-Averbach法というX線ラインプロファイル解析により定量評価することで、転位密度と飽和水素量、拡散速度の関係を定量化できたことが一つの大きな成果である。(C)については未検討であり、次年度に研究を行う予定としている。初年度は、高圧水素チャージを行った場合の飽和水素量および拡散速度に及ぼす炭素および窒素の影響について主に検討した。固溶した炭素および窒素はそれらにあまり影響を与えないことが示唆されたため、今後は析出させた炭化物および窒化物が飽和水素量や拡散速度に及ぼす影響を検討したいと考えている。また、本来の目的である水素適合性を評価するために、水素チャージした試料に対して引張試験を行うことで、水素脆化特性に及ぼす炭素および窒素の影響を明確化する。その際、電子線後方散乱回折(EBSD)法や走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた詳細な加工組織の観察を平行して進め、水素脆化特性の議論を深める予定である。予定よりも試料作製が上手くいったため、繰越分が発生した。次年度では学会発表を積極的に行う予定である。
KAKENHI-PROJECT-18K14016
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K14016
独立分散合金ナノ粒子の合成とナノペースト配線技術の基盤形成
金属ナノ粒子は、その表面の活性さから、低温において焼結が可能になり、ナノ粒子を保護膜で覆い安定インク化することで、プリンテッド・エレクトロニクスの基本的な配線材料になると期待されている。本研究では、当初銀ナノ粒子に集中して開発を行い、ナノ粒子の保護膜としてドデシルアミンを用いたインクの塗布特性を評価したところ、塗布後の配線のアルコール洗浄により、劇的に抵抗値が下がることを見いだした。結果として、ナノ粒子インクを用いた常温配線技術を世界初の成果として達成し、そのアルコール洗浄反応のおよそのメカニズムを明らかにした。また、応用技術として、マイクロカプセル製造、常温接合技術の開発や、銀配線特性評価などへ展開を行った。金属ナノ粒子は、その表面の活性さから、低温において焼結が可能になり、ナノ粒子を保護膜で覆い安定インク化することで、プリンテッド・エレクトロニクスの基本的な配線材料になると期待されている。本研究では、当初銀ナノ粒子に集中して開発を行い、ナノ粒子の保護膜としてドデシルアミンを用いたインクの塗布特性を評価したところ、塗布後の配線のアルコール洗浄により、劇的に抵抗値が下がることを見いだした。結果として、ナノ粒子インクを用いた常温配線技術を世界初の成果として達成し、そのアルコール洗浄反応のおよそのメカニズムを明らかにした。また、応用技術として、マイクロカプセル製造、常温接合技術の開発や、銀配線特性評価などへ展開を行った。ナノメーターオーダーからミクロンオーダーの銀系の金属微細粒子を新規に合成、あるいは入手し、エポキシ系樹脂などに分散させた導電性材料を開発し、微細配線形成における諸特性を評価した。酸化物を出発原料とした超音波を用いたナノ粒子合成では、数nmの微細ナノ銀粒子が均質に合成できた。銀-エポキシ系材料の配線形成を行い、高温あるいは高湿環境での信頼性を評価した。その結果、キュアの温度、時間により配線形成直後の電気特性が左右されるばかりでなく、ポストキュアにより大きく特牲が影響されることを明らかにした。これらの特性変化が、マトリックスであるエポキシ樹脂のキュア度と明確な関連を示すことを見いだし、最適材料・キュア条件設計への指針を得た。市販のナノ粒子ペーストを用いて、粘度等の特性を調整しながらインクジェット配線形成とのマッチングを評価した。インクジェット配線では、基板表面状態に大きく影響を受け、例としてセラミックスの場合には著しい粗面ではインクの吸収による滲み広がりが生じ、鏡面ではインクのはじきや乾燥後の密着の弱さが明らかになった。適度な粗面状態がインクジェット配線の正常な形成に必要なことが見いだされた。ナノ粒子配線のキュアにおける過程を熱分析と微細組織評価により進めた。TEMによる微細組織評価から、ナノ粒子ペーストのキュア過程の粒成長、粒子間結合形成が理解され、ミクロンサイズの粒子には見られない得意な粒成長を示すことが分かった。主としてナノメーターオーダーの銀系の金属微細粒子をカルボン酸銀塩および硝酸銀を出発原料として新規に合成し、インクジェット印刷との適合性を評価した。精製した銀ナノ粒子は、ドデシルアミン等の分子膜で保護し、室温で安定にインク化した。この他の多種類の金属ナノ粒子で現象を確認した。銀ナノ粒子ペーストの場合、分散剤としてドデシルアミン、溶剤にはテトラデカンを用いた。分散状態の銀ナノ粒子は5nm前後の粒径になった。合成した銀ナノ粒子ペーストで配線を描画後、エタノールに浸漬すると、室温において30秒から300秒で金属光沢が得られ金属結合が形成されることが分かった。この浸漬方法で得られた金属配線の高分解能電子顕微鏡観察から、数十秒で分子膜が破壊され、短時間で粒径50100nm程度の銀粒子が凝集したものになっており、分子膜が破られナノ粒子が合体成長し、粒子間にしっかりとした結合が形成されることが分かった。実際に、形成した配線の体積抵抗率は10<^-4>10^<-5>Ωcm台の低い値であり、これは同様な銀ナノ粒子ペーストを180°Cで1-2時間加熱処理したものに相当する。アルコールの他の溶液の効果も各種評価を行い、極性溶媒が比較的効果を有することが判明し、これらの結果から、常温キュアプロセスのメカニズムを提案した。この技術は、活気的な常温配線技術として注目されており、今後、その各種配線等への可能性を探索する予定である。この他、ミクロンサイズの銀粒子を用い、エポキシ樹脂やシリコン樹脂と混合、これらの熱的な特性、衝撃など機械的特性を評価し、母体のキュアの条件がこれらの物性へ大きく影響を与えることを明らかにしている。昨年度の成果として、アミン系分子(ドデシルアミン)を分散剤として数nmサイズの銀ナノ粒子を修飾し、これをインクとしてインクジェットなどで配線形成し、アルコール浸漬を施すことにより、分散剤が外れ銀ナノ粒子が常温において自発焼結して常温配線を可能にすることを示した。今年度は、このメカニズムの解明に取り組み、処理溶媒の種類を分子量を変えたアルコール、水と変化させ、低分子アルコールが効果が大きいこと、アミン分子の溶解度が影響することを明らかにした。また、アルコール浸漬において超音波を負荷することで洗浄効果が促進され、常温において5分間で10^<-5>Ωcmの体積抵抗値を達成することに成功した。ちなみに静置した場合は、このレベルの達成に5時間以上かかる。更に本現象の技術展開としてインクジェット塗布直後の液滴を直接アルコール槽へ射出することで、銀ナノシェルを持つマイクロカプセルを形成できることを発見した。その、シェル構造から、アルコール中での常温焼結の進展メカニズムが推測できることを見いだした。
KAKENHI-PROJECT-17206077
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17206077
独立分散合金ナノ粒子の合成とナノペースト配線技術の基盤形成
さらに、応用技術の一環として、銀ナノ粒子インクを銅板上に塗布し、2枚の銅板を貼り合わせることで、銅板の常温接合が出来ることを見いだした。昨年度の成果を受け、銀ナノ粒子インクの常温焼結現象の更なるメカニズム解明と、接合技術への応用を検討した。配線形成した後の浸漬アルコールの温度を室温、40°C、60°Cと振った場合の配線抵抗値の変化を評価したところ、室温と40/60°Cでは初期抵抗変化に大きく差があり、ちょうど分散剤として用いるドデシルアミンのアルコールへの溶解度の変化に対応することから、本現象の大きな駆動力はAgナノ粒子を被覆するアミン分子の洗浄液中の溶解度が大きく影響することが言える。Agナノ粒子の合成において添加するドデシルアミンの添加量を検討したところ、添加量を減じても保存性への影響が少なく、ただし、溶媒とするトルエンの蒸発後は自発焼結が発生ことが分かった。このインクを用いた常温接合の可能性を検討したところ、アルコール洗浄を施さない場合も数分で接合反応が開始することが判明し、常温の配線ばかりでなく常温接合材料としても本技術が大きな可能性を示すことが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-17206077
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17206077
ファンデルワールスエピタキシーを用いたC_<60>の超薄膜化とマイクロトライボロジー
本研究では、C_<60>薄膜の構造とマイクロトライボロジー特性、薄膜/基板界面の構造、C_<60>の成長機構を原子スケールで解析・検討し、マイクロマシンのマイクロトライボロジーをターゲットとした独自のアプローチを試みた。マイクロマシン等を対象としたマイクロトライボロジーでは、シリコン(ポリシリコン及びウェハ)やダイヤモンドライクカーボン(DLC)あるいはLIGA膜上へのファンデルワールスエピタキシーを成功させる必要がある。研究室に現有する装置に改造を加えて、室温から200°Cまでの温度範囲でC_<60>膜の成長を試み、MoS_2基板150°Cにおいて良好なエピタキシャル成長を確認できた。更に水素終端処理を施したSi(111)基板を用いた擬似ファンデルワールスエピタキシーを行ったが、この基板ではC_<60>は層状成長をとらず、柱状Islandが成長する事が確認された。本研究で用いた水素終端処理法では基板表面に3種の化学活性の異なる水素状態が存在するため、層状物質基板の場合のような、平滑で不活性な表面を得る事が出来ない事が示唆された。さらにC_<60>薄膜のモフォロジーは、層状成長、結晶状成長にかかわらず、いずれの場合も基板温度の上昇に伴う、ドメイン、Islandサイズの増大と密度の減少が観察された。さらに成長様式に関わらず蒸着量を増やすと多結晶化することが明らかとなった。一般的な結晶状成長では、微結晶の3次元的な合体による多結晶化が生じるが、本研究で行われたファンデルワールスエピタキシー法を用いた層状成長では、基板との相互作用が小さく異なる結晶方位のドメインが形成され、ドメインの成長に伴う2次元的合体による双晶の発生により多結晶化を生じる。そのため、より結晶性の良好なC_<60>単結晶薄膜を多層かつ広範囲に作成するには、結晶方位が同一方向となるようにドメインを層状成長させることが重要であることを示した。本研究では、C_<60>薄膜の構造とマイクロトライボロジー特性、薄膜/基板界面の構造、C_<60>の成長機構を原子スケールで解析・検討し、マイクロマシンのマイクロトライボロジーをターゲットとした独自のアプローチを試みた。マイクロマシン等を対象としたマイクロトライボロジーでは、シリコン(ポリシリコン及びウェハ)やダイヤモンドライクカーボン(DLC)あるいはLIGA膜上へのファンデルワールスエピタキシーを成功させる必要がある。研究室に現有する装置に改造を加えて、室温から200°Cまでの温度範囲でC_<60>膜の成長を試み、MoS_2基板150°Cにおいて良好なエピタキシャル成長を確認できた。更に水素終端処理を施したSi(111)基板を用いた擬似ファンデルワールスエピタキシーを行ったが、この基板ではC_<60>は層状成長をとらず、柱状Islandが成長する事が確認された。本研究で用いた水素終端処理法では基板表面に3種の化学活性の異なる水素状態が存在するため、層状物質基板の場合のような、平滑で不活性な表面を得る事が出来ない事が示唆された。さらにC_<60>薄膜のモフォロジーは、層状成長、結晶状成長にかかわらず、いずれの場合も基板温度の上昇に伴う、ドメイン、Islandサイズの増大と密度の減少が観察された。さらに成長様式に関わらず蒸着量を増やすと多結晶化することが明らかとなった。一般的な結晶状成長では、微結晶の3次元的な合体による多結晶化が生じるが、本研究で行われたファンデルワールスエピタキシー法を用いた層状成長では、基板との相互作用が小さく異なる結晶方位のドメインが形成され、ドメインの成長に伴う2次元的合体による双晶の発生により多結晶化を生じる。そのため、より結晶性の良好なC_<60>単結晶薄膜を多層かつ広範囲に作成するには、結晶方位が同一方向となるようにドメインを層状成長させることが重要であることを示した。フラーレンC_<60>に期待される物性としてスーパー固体潤滑剤あるいは表面保護膜への応用が考えられている。ダイカルコゲナイドである二硫化モリブデン(MoS_2)基板上ではファンデルワールスエピタキシーと呼ばれる超格子に類似した薄膜の形成が確認されているが、マイクロマシン等を対象としたマイクロトライボロジーでは、シリコン(ポリシリコン及びウェハ)やダイヤモンドライクカーボン(DLC)あるいはLIGA(Lithographie Garvanoformung und Abformung)上へのファンデルワールスエピタキシーを成功させる必要がある。このような見地から本研究では、C_<60>薄膜の構造とマイクロトライボロジー特性、薄膜/基板界面の構造、C_<60>の成長機構を原子スケールで解析・検討し、マイクロマシンのマイクロトライボロジーをターゲットとした独自のアプローチを試みることを目的としている。研究初年度である平成12年度は研究室に現有する装置にクヌーセンセルを取り付けてC_<60>薄膜のファンデルワールスエピタキシーをMoS_2(0001)基板上と水素終端化したSi(001)基板上で試みた。その結果、MoS_2(0001)基板上では基板温度100°C200°Cにおいて良好なファンデルワールスエピタキシーが観察されたが、Si(001)基板上においては十分なファンデルワールスエピタキシーを観察するには至らなかった。これはSi基板表面の水素終端化が不十分であったことが原因であると思われ、Si基板表面の完全な水素終端化が来年以降の課題である。
KAKENHI-PROJECT-12450068
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12450068
ファンデルワールスエピタキシーを用いたC_<60>の超薄膜化とマイクロトライボロジー
フラーレンC_<60>のヘテロエピタキシャル成長のメカニズムを解明し、超薄膜にして優秀な摩擦特性を有する固体潤滑法の開発を目的とした。二硫化モリブデン(MoS_2)や高配向グラファイト(HOPG)ではファンデルワールスエピタキシーによってドメインサイズの大きな単結晶C_<60>薄膜の成長が確認された。アルカリハライドであるNaClやKBrでは三回対称のC_<60>薄膜がサブミクロンサイズで成長するものの、蒸着膜を増やすとともに三次元的に成長することが判った。シリコンの(001)面を水素終端した基板を用いた場合にはハイドライドの存在によって三次元成長がさらに著しくなり、アスペクト比の高いコラム構造となった。バッファ層としてAuを蒸着し、C_<60>のヘテロエピタキシャル成長実験を行った結果、10モノレイヤー程度の蒸着量から三次元成長が著しくなった。今年度の研究成果から、C_<60>のヘテロエピタキシーは、基板の特性に左右され、フランクファンデルメルヴェ型の層状成長(MoS_2,HOPG,マイカ)とヴォルマーウェーバー型の三次元(Si, Au)とに区別できることが判った。Au単結晶上へのエピタキシャル成長もヴォルマーウェーバー型を呈する傾向にあった。原子間力顕微鏡とそのラテラルフォース検出機能を用いてC_<60>薄膜のマイクロトライボロジー特性を考察した。ファンデルワールスエピタキシャル成長を示したMoS_2やHOPG上のC_<60>薄膜の摩擦係数は0.080.14であり、固体潤滑薄膜としての役割をはたすものと考えられる。最も特徴的な結果は、摩擦特性が表面のマイクロジェオメトリに依存しないことであり、極めて安定な摩擦状態を与えることである。したがって、マイクロトライボロジーのオペレーティングシステムへの実用が現実のものとなってきたことを認めた。本研究では、C_<60>薄膜の構造とマイクロトライボロジー特性、薄膜/基板界面の構造、C_<60>の成長機構を原子スケールで解析・検討し、マイクロマシンのマイクロトライボロジーをターゲットとした独自のアプローチを試みた。マイクロマシン等を対象としたマイクロトライボロジーでは、シリコン(ポリシリコン及びウェハ)やダイヤモンドライクカーボン(DLC)あるいはLIGA膜上へのファンデルワールスエピタキシーを成功させる必要がある。前年度までの研究で研究室に現有する装置に改造を加えて、室温から200°Cまでの温度範囲でC_<60>薄膜の成長を試み、MoS_2基板150°Cにおいて良好なエピタキシャル成長を確認できた。本年度は水素終端処理を施したsi(111)基板を用いた擬似ファンデルワールスエピタキシーを行った。その結果この基板ではC_<60>は層状成長をとらず、柱状Islandが成長する事が確認された。本研究で用いた水素終端処理法では基板表面に3種類の水素状態が存在するため、層状物質基板の場合のような、平滑で不活性な表面を得る事が出来ない事が示唆された。さらにC_<60>薄膜のモフォロジーは、層状成長、結晶状成長にかかわらず同様の基板温度依存性を示した。
KAKENHI-PROJECT-12450068
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NIRS研究のための頑健性のあるリサンプリング統計解析法の開発
NIRS(近赤外分光分析法)は脳機能イメージング法として普及が進みつつあるが、統計的なデータ解析法の開発は遅れている。これまで、fMRI(機能的核磁気共鳴撮像法)に用いられていた母数的な統計解析を流用する試みはあったが、比較的均一なばらつきを持つfMRIデータには適するものの、ばらつきの不均一なNIRSデータの解析には、非母数的なリサンプリング法が最適である可能性が高い。そこで、本研究では、NIRSのデータ解析における種々の問題、すなわち、計測部位、被験者間のデータのばらつき、乳幼児計測において頻発する欠損データなどを、リサンプリング法を用いた、頑健な統計手法の適用によって解決することを目的とした。脳機能イメージング研究で通常用いられるリサンプリング法としては、パーミューテーション法が挙げられるが、この方法は母集団の正規性や等分散性は仮定しないものの、交換可能性という前提の下に成立する方法である。NIRSの場合、データの均質性はfMRIよりも低く、交換可能性が保証されるとは限らない。そこで、パーミューテーション法の中でも最も前提条件の緩い非交換ブートストラップ法の適用を試みた。さらに、多チャンネル計測における多重比較問題を解決するため、脳機能イメージング研究としては始めて、ステップダウンMaxT補正の適用を試みた。これらの手法を舌運動課題、言語想起課題遂行時のNIRSデータに適用したところ、非交換ブートストラップ法とステップダウンMaxT補正の組み合わせは母数的方法とボンフェローニ多重比較補正の組み合わせよりも検出力が高いことが判明した。また、パーミューテション法と比較しても、遜色のない検出力を有することを示した。非交換ブートストラップ法は欠損値のあるデータにも有効な方法であり、NIRS計測に極めて有用な手法として今後の適用が期待できるNIRS(近赤外分光分析法)は頭表上に設置したプローブから、近赤外光を用いて、脳の活性状態を血流変化として計測する方法である。拘束性が低く、また小規模な装置しか要さないため、様々な実験課題の遂行が可能であり、幅広い分野への応用が期待されている。しかし、実際の普及に際しては、統計的なデータ解析手法の不備という問題がある。そこで、本研究は、計測部位、被験者間のデータのばらつき、乳幼児計測において頻発する欠損データなどの問題を、リサンプリング法を用いた、頑健な統計手法の適用によって解決することを目的とする。本年度は、欠損データ問題に対するブートストラップ法の妥当性検証を行った。NIRSは乳幼児や障害者など、fMRIでの計測が困難な被験者の計測に威力を発揮するが、元々計測困難な対象を扱うため、欠損データが頻発する。この結果、多チャンネル計測において、チャンネルごとにサンプル数が異なるという問題が生じる。通常のパラメトリック法は母集団からのランダムサンプリング、データの等質性を仮定するため、このような欠損データには適切ではない。一方、ノンパラメトリック法のブートストラップ法は交換可能性という仮定を要しないため、欠損データの多い場合に有効である可能性があった。そこで、NIRSデータにブートストラップ法を適用したところ、実用上、十分な検出力が得られた。さらに、この元データから、ランダムにデータを欠損させて、シミュレーションしたところ、欠損値に対する検出力の低下は実用的には問題ない程度であることが分かった。したがって、NIRSデータへのブートストラップ法の適用は極めて現実的な選択肢であることが明らかとなった。この成果は、NIRSのみならず、ニューロイメージング研究におけるブートストラップ法の実用性を示した最初の適用例として、国際誌に受理された(報告は次年度)。NIRS(近赤外分光分析法)は脳機能イメージング法として普及が進みつつあるが、統計的なデータ解析法の開発は遅れている。これまで、fMRI(機能的核磁気共鳴撮像法)に用いられていた母数的な統計解析を流用する試みはあったが、比較的均一なばらつきを持つfMRIデータには適するものの、ばらつきの不均一なNIRSデータの解析には、非母数的なリサンプリング法が最適である可能性が高い。そこで、本研究では、NIRSのデータ解析における種々の問題、すなわち、計測部位、被験者間のデータのばらつき、乳幼児計測において頻発する欠損データなどを、リサンプリング法を用いた、頑健な統計手法の適用によって解決することを目的とした。脳機能イメージング研究で通常用いられるリサンプリング法としては、パーミューテーション法が挙げられるが、この方法は母集団の正規性や等分散性は仮定しないものの、交換可能性という前提の下に成立する方法である。NIRSの場合、データの均質性はfMRIよりも低く、交換可能性が保証されるとは限らない。そこで、パーミューテーション法の中でも最も前提条件の緩い非交換ブートストラップ法の適用を試みた。さらに、多チャンネル計測における多重比較問題を解決するため、脳機能イメージング研究としては始めて、ステップダウンMaxT補正の適用を試みた。これらの手法を舌運動課題、言語想起課題遂行時のNIRSデータに適用したところ、非交換ブートストラップ法とステップダウンMaxT補正の組み合わせは母数的方法とボンフェローニ多重比較補正の組み合わせよりも検出力が高いことが判明した。また、パーミューテション法と比較しても、遜色のない検出力を有することを示した。非交換ブートストラップ法は欠損値のあるデータにも有効な方法であり、NIRS計測に極めて有用な手法として今後の適用が期待できる
KAKENHI-PROJECT-19650079
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科学を基礎とした食品安全行政/リスクアナリシスと専門職業、職業倫理の確立
食品安全行政の向上のために、リスク管理の数値目標設定の国際討議、動物由来感染症に関する専門家の情報入手調査、ナノテクノロジのリスクガバナンスおよび食品トレーサビリティの国際動向、地方自治体の食品安全条例の比較分析等を行った。また、リスクコミュニケーション改善の基礎研究として、6カ国比較調査による市民のリスク認知構造の解明、心理学実験による情報ソース記憶の解明、消費者の食品理解の解明を行った。さらに、食品行政、公衆衛生の専門職の国内外調査、食品企業の社会的責任の検討枠組みの提示、企業倫理の国際比較研究の動向分析、生産者-消費者の倫理的関係調査を行った。食品安全行政の向上のために、リスク管理の数値目標設定の国際討議、動物由来感染症に関する専門家の情報入手調査、ナノテクノロジのリスクガバナンスおよび食品トレーサビリティの国際動向、地方自治体の食品安全条例の比較分析等を行った。また、リスクコミュニケーション改善の基礎研究として、6カ国比較調査による市民のリスク認知構造の解明、心理学実験による情報ソース記憶の解明、消費者の食品理解の解明を行った。さらに、食品行政、公衆衛生の専門職の国内外調査、食品企業の社会的責任の検討枠組みの提示、企業倫理の国際比較研究の動向分析、生産者-消費者の倫理的関係調査を行った。食品安全行政のために実効性のあるリスクアナリシス手法の開発と専門職業・職業倫理の探求をめざし、以下の研究成果をあげた。(1)リスクアセスメント、リスクマネジメントの連携のとれた実施手法の検討について、諸外国のリスクアセスメント報告書などをサーベイし、考え方や手法の整理を行った(春日、筒井、五十君)。(2)リスクマネジメントにおける政府と地方自治体の連携の検討について、農林水産省、兵庫県、京都府、岡山県、鹿児島県などを対象にヒアリングを実施し、現況をとりまとめた(矢坂、清原、工藤)。(3)リスクコミュニケーションのあり方を検討するための基礎研究Iとして、リスクリテラシー尺度を作成し、リスク情報のサンプルサイズの与える影響を大学生を対象にした模擬データ実験により明らかにした(楠見他)。(4)同基礎研究IIとして、日本、韓国、ベトナム、アメリカにおいて、約50名の被験者に個人面接のラダリング法を用いて、食品ハザードのリスクの知覚度合いとその背景となる要因を把握するための調査を実施した。これまで多様なハザードについて国際的に検証されてきたSlovic(1980)の心理的なリスク特性要因とは異なる要因を検出することができた(リスク研究学会、日本農業経済学会において報告)。この結果をもとに、欧州、アジア、アメリカで大量調査を実施するためのアンケート調査票の質問肢を開発し、日本、フランス、ドイツ、中国、アメリカ向けの調査票を作成した(新山、細野、清原、工藤、河村、田中他)。(5)農業倫理、食品企業倫理、食品技術者倫理の探求のための、文献サーベイ、食品企業へのヒアリングを実施した(新山、細野、工藤、秋津、辻村他)。本年度は、各課題別に以下の研究を実施し、成果を上げた。1.リスクアセスメント、リスクマネジメント食品安全リスク管理措置の導入手法に関する国際学会議論の動向把握(春日)、獣医師の動物由来感染症に対する意識の予備調査実施(筒井、春日、五十君)、食品製造業におけるHACCPの採用と定着に関する研究(清原)、食品ナノテクをめぐるリスク・ガバナンスの国際動向分析(立川)、地方自治体における食品安全行政の動向分析(清原、工藤)、欧州連合、フランス、ドイツにおける食品衛生措置、トレーサビリティ、コントロール体制の整備に関する調査研究(新山、矢坂、細野、工藤)2.食品由来リスク、科学、食品に関するコミュニケーション市民の食品リテラシーの構造分析(楠見、平山)、食品安全における一般市民のリスク概念理解に関するインターネット調査の実施(功刀)、消費者の食品由来リスクの知覚構造に関する国際比較調査の実施および日本の消費者の知覚構造分析(新山、細野、河村、工藤、清原、鬼頭)3.プロフェッションと職業倫理国・地方自治体行政における食品安全衛生管理者の専門職業の確立に関する検討(高鳥毛)、A Japanese Tradition of Studey on Agricultural Ethics(秋津)、食べ物によって結ばれる生産・流通・消費の倫理的関係の検討(辻村)【リスク評価、リスク管理】・国際学会シンポジウムを開催し、リスク管理の数値目標(ALOP,FSO,PO,PCなど)の導入・設定に関する議論を組織し、共同座長を務め、討議内容に関するとりまとめを行った。(春日)・動物由来感染症に関する専門家(獣医師)の情報入手方法に関する調査を行い、家畜衛生、公衆衛生の連携強化の必要性を提示した。(筒井・春日・五十君)・食品に利用されるナノテクノロジに関するリスクガバナンスの国際動向(立川)、食品トレーサビリティの国際動向(矢坂)についてとりまとめた。・食品安全条例の制定の背景と内容、効果について、全国自治体調査を行いとりまとめた。(清原・工藤)・食品製造業のHACCP採用・定着プロセスを「予防的イノベーション」としてモデル化した。(清原)【リスク認知、リスクコミュニケーション】・食品由来リスクの国際比較調査:日韓越仏独米をとりまとめ、日本の消費者の知覚構造、知覚構造の国際比較、ハザード別知覚構造について、国内外の学会で発表した。(新山・細野・亀頭・河村・工藤・清原)・食品安全の情報ソース記憶の心理実験を行い、態度と発信者の影響を明らかにした。(楠見・井関)・消費者の牛肉評価調査を行い、食品理解の脆弱さを明らかにした。(細野・工藤・新山)【専門職業、職業倫理】・食品安全行政に関する専門組織、専門職のあり方について国内外調査をもとにとりまとめた。(高鳥毛)・食品企業の社会的責任の検討枠組みを提示し、フードシステムの持続について論じた。(新山)
KAKENHI-PROJECT-19208021
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科学を基礎とした食品安全行政/リスクアナリシスと専門職業、職業倫理の確立
・倫理的食品調達にみるステークホルダー組織の倫理観の結合と分断を明らかにした。(辻村)・有機農産物に関する生産者-消費者の倫理的関係について、内外調査をもとに分析した。(秋津)・CSR(企業の社会的責任)に関する国際比較研究の動向をとりまとめた。(工藤)
KAKENHI-PROJECT-19208021
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ポストガーネット分解相転移カイネティクスと沈み込む海洋プレートのダイナミクス
放射光施設KEK-PFにおいて,大型焼結ダイアモンドを用いた高温高圧発生に関する開発を行ない,35GPa,2000Kのまでの条件で10-30秒毎のX線回折時分割測定が可能となった。またオーストラリアのRingwood Superabrasives社が提供しているSiCをバインダー材に用いた焼結ダイアモンドアンビルをX線窓材用アンビルとして試用し、超硬アンビルと組み合わせた2段加圧方式により20GPa,2000Kまでの高温高圧発生に成功した。それらの技術を用いて、天然ガーネットのポストガーネット相転移カイネティクス、輝石(エンスタタイト、ダイオプサイド)の高圧相転移カイネティクス、またオリビン-スピネル相転移カイネティクスに対する水の効果を定量的に明らかにした。実験の回収試料について、透過型電子顕微鏡を用いた相転移微細組織観察および顕微FTIRを用いた含水量の測定を行い、相転移のメカニズムを明らかにした。また沈み込む海洋プレート環境下で重要とされる、準安定な立方晶ペロフスカイト相の出現、高圧含水珪酸塩鉱物の脱水分解反応、さらには衝撃を受けた隕石中に存在する相転移微細組織とカイネティクスに関する研究を行った。また、マントル遷移層の主要構成鉱物であるウオズレアイトの陽イオン拡散係数を実験的に明らかにし、沈み込むプレートやマントル遷移層のレオロジー、および地震学的410km不連続面の上下における輸送物性の不連続について考察した。そして、これまでに得られた相転移カイネティクスの定量的な実験データを地球深部に沈み込むプレート内部条件下にスケーリングすることにより、沈み込むプレートのmetastable mineralogyを構築し、上下マントル境界付近においてプレートに働く浮力を計算した。また相転移のメカニズムやカイネティクスを基に非平衡相転移により結晶がどの程度細粒化するかについて推定し、それにともなう沈み込むプレートの強度変化を計算した。それちを基に地球深部に滞留する海洋プレート(スタグナントスラブ)に関する考察を行った。放射光施設KEK-PFにおいて,大型焼結ダイアモンドを用いた高温高圧発生に関する開発を行ない,35GPa,2000Kのまでの条件で10-30秒毎のX線回折時分割測定が可能となった。またオーストラリアのRingwood Superabrasives社が提供しているSiCをバインダー材に用いた焼結ダイアモンドアンビルをX線窓材用アンビルとして試用し、超硬アンビルと組み合わせた2段加圧方式により20GPa,2000Kまでの高温高圧発生に成功した。それらの技術を用いて、天然ガーネットのポストガーネット相転移カイネティクス、輝石(エンスタタイト、ダイオプサイド)の高圧相転移カイネティクス、またオリビン-スピネル相転移カイネティクスに対する水の効果を定量的に明らかにした。実験の回収試料について、透過型電子顕微鏡を用いた相転移微細組織観察および顕微FTIRを用いた含水量の測定を行い、相転移のメカニズムを明らかにした。また沈み込む海洋プレート環境下で重要とされる、準安定な立方晶ペロフスカイト相の出現、高圧含水珪酸塩鉱物の脱水分解反応、さらには衝撃を受けた隕石中に存在する相転移微細組織とカイネティクスに関する研究を行った。また、マントル遷移層の主要構成鉱物であるウオズレアイトの陽イオン拡散係数を実験的に明らかにし、沈み込むプレートやマントル遷移層のレオロジー、および地震学的410km不連続面の上下における輸送物性の不連続について考察した。そして、これまでに得られた相転移カイネティクスの定量的な実験データを地球深部に沈み込むプレート内部条件下にスケーリングすることにより、沈み込むプレートのmetastable mineralogyを構築し、上下マントル境界付近においてプレートに働く浮力を計算した。また相転移のメカニズムやカイネティクスを基に非平衡相転移により結晶がどの程度細粒化するかについて推定し、それにともなう沈み込むプレートの強度変化を計算した。それちを基に地球深部に滞留する海洋プレート(スタグナントスラブ)に関する考察を行った。放射光施設KEK-PFにおいて,一辺10mmまたは14mmの大型焼結ダイアモンドを用いた高温高圧発生に関する開発を行ない,35GPa,2000Kのまでの条件で10-30秒毎のX線回折時分割測定が可能となった。また放射光施設Spring-8に設置された大型マルチアンビルプレスSPEED mk.IIの立ち上げを行い、高圧X線その場観察実験の際に圧力標準物質として用いられるNaClのB1-B2相転移境界を決定した。これらの成果を国際誌に論文として公表した。放射光施設Spring-8およびにおいてKEK-PFにおいて高圧X線その場観察実験を行い,ダイオプサイドの高圧相転移カイネティクス、天然ガーネットのポストガーネット相転移カイネティクス、またオリビン-スピネル相転移カイネティクスに対する水の効果を定量的に明らかにした。またそれらの実験回収試料の相転移微細構造をTEMおよびSEM観察し、相転移メカニズムを明らかにした。さらにこれまでに得られた相転移カイネティクスの定量的な実験データを地球深部に沈み込むプレート内部条件下にスケーリングすることにより、沈み込むプレートのミネラロジーや密度、強度に対する相転移カイネティクスの影響を議論した。これらの成果の一部は国際誌に論文として公表し、他は現在投稿準備中である。またウオズレアイト多結晶体中のMg-Fe相互拡散実験を行い、拡散に対する温度、組成、結晶粒径、および含水量の効果を明らかにした。そして地震学的410km不連続面の上下における輸送物性の不連続について考察した。
KAKENHI-PROJECT-15340181
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15340181
ポストガーネット分解相転移カイネティクスと沈み込む海洋プレートのダイナミクス
またウオズレアイト多結晶体中のSi原子の自己拡散係数を測定し、それをもとにマントル遷移層や沈み込むプレートのレオロジーを議論した。これらの成果は現在国際誌に論文を投稿中である。放射光施設KEK-PFにおいて,一辺14mmの大型焼結ダイアモンドを用いた高温高圧X線回折時分割測定に関する開発を行った。オーストラリアのRingwood Superabrasives社が提供しているSiCをバインダー材に用いた焼結ダイアモンドアンビルを国内では初めて試用し、超硬アンビルと組み合わせた2段加圧方式により20GPa,2000Kまでの高温高圧発生に成功した。X線透過能に優れており、高圧下でのX線回折およびX線ラジオグラフィー用のアンビル材として有用である。それらの技術を用いてX線その場観察によるマントル高圧鉱物の拡散律速反応のカイネティクスを明らかにする実験を行った。これまでに放射光X線を用いて行われたポストガーネット分解相転移カイネティクス実験、輝石(エンスタタイトおよびダイオプサイド)の相転移カイネティクス実験、含水条件下でのオリピン-スピネル相転移カイネティクス実験に関するデータの解析を行った。またそれらのカイネティクス実験の回収試料について、透過型電子顕微鏡を用いた相転移微細組織観察および顕微FTIRを用いた含水量の測定を九州大学において行った。それらの解析や分析をもとに、沈み込む海洋プレートのmetastable mineralogyを構築し、上下マントル境界付近においてプレートに働く浮力を議論した。これらの結果を国際学会にて発表し、現在3本の論文を国際誌に投稿準備中である。前年度までに行われたウオズレアイトの原子拡散実験をまとめマントル遷移層や沈み込む海洋プレートのレオロジーや輸送物性に関する議論を行い、国際誌に2本の論文を公表した。また、沈み込むプレートにおける準安定な立方晶ペロフスカイト相の出現に関する研究、沈み込んだ海洋地殻に存在するとされる高圧含水珪酸塩鉱物の脱水分解反応に関する研究、衝撃を受けた隕石中に存在する相転移微細組織とカイネティクスに関する研究を、国際誌に共著論文として発表した。
KAKENHI-PROJECT-15340181
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15340181
都市開発における環境社会資本の整備状況と課題に関する研究
昨年度収集した都市のエネルギーの面的利用の事例データベースをもとに、我が国のエネルギーの面的利用形態の類型化を行った。現時点では我が国の地域エネルギーシステムは排熱地域活用型自家発電が主要な形態であるが、近年電気事業法の改正により系統への逆潮流・自営線への供給が可能になったことで、スケールメリット・需要地近接に加え、熱需要の集積地を活用して発電を行うという新たなシステムの可能性が生じている。上記の問題意識の元で既存の発電排熱活用型地域エネルギーシステムのうち地域熱供給事業の類型化分析を行った結果、これまでは熱需要が面的エネルギー普及の制約となっていたが近年ではむしろ電力の供給先の確保が制約となっており、発電効率の向上という機器の技術革新の成果をうまく活用できていない可能性があることを明らかにした。また第2に、コージェネレーションを用いた電力/熱を供給する総合的エネルギーシステムに関するモデル分析・ヒアリング調査を行い、都市全体の電力と熱のエネルギーの換算の問題が積み残しになっている現時点では、プラント内部からの視点ではエネルギーシステムの省エネルギー性を適切に評価することが困難となっており、効果が過小評価されていることが普及の妨げとなっている可能性を指定した。これらの研究成果をもとに、次世代の都市エネルギーシステムのあり方を巡って様々な議論が行われている現時点では、可能な限り多様な視点・枠組みから評価を行いながらそれぞれ可能性をもった技術の実績を蓄積することを通じて、将来の好ましい姿を展望することが求められているという仮設を提示した。上記の研究結果の一部は、19年度の日本計画行政学会の全国大会において口頭発表を行ったほか、日本都市計画学会の研究論文に投稿中である。1.分散型エネルギーを用いた環境資本の普及状況について、以下の調査研究を行った。(1)文献調査・学会研究会等を通じて行った情報収集、データの入手可能性等の要素を考慮し、都市開発の環境社会資本の調査対象として、主として分散型電源を用いたエネルギーの面的利用を選定した。(2)分散型電源に関する制度のうち電気事業法に焦点をあて、近年の電力事業自由化に関する制度改正や構造改革特区による特例による分散型エネルギー供給の事例に関する資料収集・ヒアリング調査を行った。これら分散型エネルギー供給事業者が定性的には環境負荷削減効果を実感していることや、多様な電力供給形態を許容し分散型電源の普及に資すると考えられた電力小売自由化が、電力価格の下落を通じて、昨今の原油価格の上昇ともあわせてむしろ普及の阻害要因となっていることを明らかにした。この研究成果は計画行政学会の全国大会で発表した。(3)分散型電源のうち排熱の面的利用に焦点を当てた分析として、全国の普及状況に関するデータが公開されている熱供給事業について情報を収集し、上記の電気事業法に関する事例と合わせて、日本の分散型電源によるエネルギーの面的利用事例のデータベースを構築した。2.分散型電源による環境負荷削減の効果分析に向けて、モデル分析の前提となるエネルギー消費実態に関するデータの収集を行った。分散型電源によりエネルギーの面的利用を行っている事業所を対象に。エネルギー使用状況に関するデータ供与について打診を行い、エネルギー供給事業者と複数の需要家の双方について協力の回答をいただいた事業を調査対象に選定した。その上で、対象とした事業者の日報データはデジタルデータの形で保管されていなかったため、モデル分析を行うにあたり、電力・熱のエネルギー消費実態に関する日報データのデジタル形式のデータ変換を行い、エネルギー消費状況データベースを整備した。昨年度収集した都市のエネルギーの面的利用の事例データベースをもとに、我が国のエネルギーの面的利用形態の類型化を行った。現時点では我が国の地域エネルギーシステムは排熱地域活用型自家発電が主要な形態であるが、近年電気事業法の改正により系統への逆潮流・自営線への供給が可能になったことで、スケールメリット・需要地近接に加え、熱需要の集積地を活用して発電を行うという新たなシステムの可能性が生じている。上記の問題意識の元で既存の発電排熱活用型地域エネルギーシステムのうち地域熱供給事業の類型化分析を行った結果、これまでは熱需要が面的エネルギー普及の制約となっていたが近年ではむしろ電力の供給先の確保が制約となっており、発電効率の向上という機器の技術革新の成果をうまく活用できていない可能性があることを明らかにした。また第2に、コージェネレーションを用いた電力/熱を供給する総合的エネルギーシステムに関するモデル分析・ヒアリング調査を行い、都市全体の電力と熱のエネルギーの換算の問題が積み残しになっている現時点では、プラント内部からの視点ではエネルギーシステムの省エネルギー性を適切に評価することが困難となっており、効果が過小評価されていることが普及の妨げとなっている可能性を指定した。これらの研究成果をもとに、次世代の都市エネルギーシステムのあり方を巡って様々な議論が行われている現時点では、可能な限り多様な視点・枠組みから評価を行いながらそれぞれ可能性をもった技術の実績を蓄積することを通じて、将来の好ましい姿を展望することが求められているという仮設を提示した。上記の研究結果の一部は、19年度の日本計画行政学会の全国大会において口頭発表を行ったほか、日本都市計画学会の研究論文に投稿中である。
KAKENHI-PROJECT-18760452
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18760452
外国語表現選択支援システムの構築
外国語の作文学習の過程において,指導者による「添削」は重要な作業過程のひとつである。添削の際,指導者は「適正な添削」の加減に戸惑うことが多い。学習者もまた「添削の結果」全てに納得することは難しい。本研究では,指導者と学習者の間に生じるこうした「添削の問題」を解消するため,言語データの分析によって,日本人ドイツ語学習者のドイツ語表現の選択傾向を明らかにしていく。分析データを基に,順位付けを行い,複数の表現例を提案できる「表現選択支援システム」を構築する。このシステムを利用して効率的な添削作業または効率的なドイツ語学習をサポートすることを最終的な目標としている。外国語の作文学習の過程において,指導者による「添削」は重要な作業過程のひとつである。添削の際,指導者は「適正な添削」の加減に戸惑うことが多い。学習者もまた「添削の結果」全てに納得することは難しい。本研究では,指導者と学習者の間に生じるこうした「添削の問題」を解消するため,言語データの分析によって,日本人ドイツ語学習者のドイツ語表現の選択傾向を明らかにしていく。分析データを基に,順位付けを行い,複数の表現例を提案できる「表現選択支援システム」を構築する。このシステムを利用して効率的な添削作業または効率的なドイツ語学習をサポートすることを最終的な目標としている。
KAKENHI-PROJECT-19K00817
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K00817
ミャンマー連邦東北地方パラウン語の記述および使用状況の研究
平成18年度は現地での聞き取り調査に必要な備品を購入し、ミャンマー東北部において,パラウン語諸方言の音声・音韻ならびに基礎語彙に関する聞き取り調査を行なった。その過程でヤンゴン,タウンジーおよびカロー,マンダレー周辺の事情について,現地研究者から情報収集を行った。内容は、マンダレーとその近郊において,パラウン寺院,パラウン文芸文化協会における言語および言語使用状況,パラウン語振興運動についての調査およびパラウン語文字現代資料の収集である。これと平行して,現地のパラウン人およびビルマ人を対象に,現地における言語使用について,聞き取り調査を行った。聞き取り場面および内容は,デジタルビデオカメラおよびデジタル録音機を用いて記録した。平成19年度は8月から9月にかけて発生したミャンマー連邦国内の政情不安により、入国を断念し、隣接するタイ王国において、ミャンマー系の少数民族の多言語状況について調査した。パラウン語の音声録音データについては、研究代表者および研究協力者が昨年度に記録したパラウン人へのインタビュー記録と、日本国内に住むパラウン人の協力によって記述・収集したデータ(音声データなし、音声表記のみ)を用いて音韻的な考察を行った。平成18年度は現地での聞き取り調査に必要な備品を購入し、ミャンマー東北部において,パラウン語諸方言の音声・音韻ならびに基礎語彙に関する聞き取り調査を行なった。その過程でヤンゴン,タウンジーおよびカロー,マンダレー周辺の事情について,現地研究者から情報収集を行った。内容は、マンダレーとその近郊において,パラウン寺院,パラウン文芸文化協会における言語および言語使用状況,パラウン語振興運動についての調査およびパラウン語文字現代資料の収集である。これと平行して,現地のパラウン人およびビルマ人を対象に,現地における言語使用について,聞き取り調査を行った。聞き取り場面および内容は,デジタルビデオカメラおよびデジタル録音機を用いて記録した。平成19年度は8月から9月にかけて発生したミャンマー連邦国内の政情不安により、入国を断念し、隣接するタイ王国において、ミャンマー系の少数民族の多言語状況について調査した。パラウン語の音声録音データについては、研究代表者および研究協力者が昨年度に記録したパラウン人へのインタビュー記録と、日本国内に住むパラウン人の協力によって記述・収集したデータ(音声データなし、音声表記のみ)を用いて音韻的な考察を行った。・備品の購入初年度である平成18年度は,デジタル録音機,マイク,ノート型パソコン,ポータブルハードディスクおよびデジタルビデオカメラを購入し,現地での聞き取り調査に携行した。・現地調査ミャンマー東北部において,パラウン語諸方言の音声・音韻ならびに基礎語彙に関する聞き取り調査を行なった。その過程でヤンゴン大学,タウンジー大学,マンダレー大学にて,ヤンゴン,タウンジーおよびカロー,マンダレー周辺の事情について,現地研究者から情報収集を行った。具体的には,・タウンジー近郊のカローにおいて,パラウン語使用状況について調査を行った。・マンダレーとその近郊において,パラウン人の家庭,寺院,パラウン文芸文化協会を訪ね,言語および言語使用状況,パラウン語振興運動についての調査を行った。また,パラウン語文字現代資料を収集した。これと平行して,現地のパラウン人およびビルマ人を対象に,現地における言語使用について,聞き取り調査を行った。聞き取り場面および内容は,デジタルビデオカメラおよびデジタル録音機を用いて記録した。・国内での研究現地で収集した録音資料に基づき、研究分担者がその音韻に関する記述と基本的分析を行った。現地で収集した録音、録画資料をもとに、研究代表者および分担者が協力者とともに談話資料の整理と基本的解析を行なった。本年度(平成19年度)は昨年度の予備的調査をふまえ、ミャンマー連邦東北地方で話されているパラウン語の音声に関して、昨年度は実施できなかったシャン州北部のナムサン地方での本格的な現地調査を実施し、基礎語彙の音声データを録音・収集し、また補助的にスタジオで録音したデータも用いて、基礎的な音声分析とそれに基づく音韻的な分析・考察を行う予定であったが、当該年度中の平成19年8月から9月にかけて発生したミャンマー連邦国内の政情不安によりミャンマー連邦への調査目的の入国は非常に困難な状況であると判断した。そこで9月に計画を変更し、11月に隣接するタイ王国へ出張をし、タイ・ミャンマー国境地域に居住する、あるいは国境を越えてくるミャンマー系の少数民族の多言語状況について調査した。パラウン語の音声録音データは本年度は収集することができなかったため、研究代表者および研究協力者が昨年度に記録したパラウン人へのインタビュー記録と、日本国内に住むパラウン人の協力によって記述・収集したデータ(音声データなし、音声表記のみ)を用いて音韻的な考察を行った。考察の方法は、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所作成の基礎語彙表を用いて記述された約1000語のデータを基礎資料とし、その中から弁別的な言語音を抽出するもので、その考察に基づきパラウン語の音素目録を作成した。また昨年度の記録から、ナムサン地方パヤージー村およびマンダレーにおけるパラウン語の使用状況についての記述を行った。
KAKENHI-PROJECT-18520299
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18520299
インターネットを利用した語学教育
科研費交付の決定を受け、代表者・分担者間の連絡用にメーリングリスト(sogo-b@clc. hyper. chubu. ac. jp)を設定し、インターネットを利用した電子メールによる密接な打ち合わせを開始した。メッセージの交換は、年度末までに695通に達した。5月13日に第1回研究打ち合わせを中部大学で行い、ワークショップの開催を決定した。7月1日、中部大学でワークショップ「インターネットを利用した語学教育」を開催し、約100人の参加者を得た。ワークショップでの議論をより発展させるため、インターネットと語学教育の関わりを考えるメーリングリスト、"net-lang"を開始した。インターネットを経由して国内外の多数の研究者、社会人の参加を得て活発な議論を日常的に展開し、年度末までの8カ月間で1150通あまりのメッセージが流れた。参加者は160人にのぼっている。"net-lang"での日常的な議論をふまえ、10月14日に東海大学湘南キャンパスにおいてシンポジウム「インターネットと語学教育-今何が始まっているのか-」を開催した。100人近い参加者を得て、パネルディスカッションの他に分科会を行った。シンポジウム終了後、本研究の分担者および国内を代表する当該分野の研究者が集まり、将来の共同研究について打ち合わせを行った。この中で研究グループ(19名)を構成し、日常的な情報交換のためのメーリングリスト"sogo-a"を設定した。議論を重ねる中で研究テーマを設定し、平成8年度科学研究費総合研究(A)に応募した。また、年間の研究成果を収録したCD-ROMを作成し、国内外の研究者に配布するとともに、WWW上でも情報提供を続けている。科研費交付の決定を受け、代表者・分担者間の連絡用にメーリングリスト(sogo-b@clc. hyper. chubu. ac. jp)を設定し、インターネットを利用した電子メールによる密接な打ち合わせを開始した。メッセージの交換は、年度末までに695通に達した。5月13日に第1回研究打ち合わせを中部大学で行い、ワークショップの開催を決定した。7月1日、中部大学でワークショップ「インターネットを利用した語学教育」を開催し、約100人の参加者を得た。ワークショップでの議論をより発展させるため、インターネットと語学教育の関わりを考えるメーリングリスト、"net-lang"を開始した。インターネットを経由して国内外の多数の研究者、社会人の参加を得て活発な議論を日常的に展開し、年度末までの8カ月間で1150通あまりのメッセージが流れた。参加者は160人にのぼっている。"net-lang"での日常的な議論をふまえ、10月14日に東海大学湘南キャンパスにおいてシンポジウム「インターネットと語学教育-今何が始まっているのか-」を開催した。100人近い参加者を得て、パネルディスカッションの他に分科会を行った。シンポジウム終了後、本研究の分担者および国内を代表する当該分野の研究者が集まり、将来の共同研究について打ち合わせを行った。この中で研究グループ(19名)を構成し、日常的な情報交換のためのメーリングリスト"sogo-a"を設定した。議論を重ねる中で研究テーマを設定し、平成8年度科学研究費総合研究(A)に応募した。また、年間の研究成果を収録したCD-ROMを作成し、国内外の研究者に配布するとともに、WWW上でも情報提供を続けている。
KAKENHI-PROJECT-07358002
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07358002
次世代DNAシーケンサーを用いた高悪性度乳がんを引き起こす新規体細胞変異の探索
乳がんはエストロゲンレセプター(ER)、プロゲステロンレセプター、HER2の発現解析に基づいて分類される。上記3分子の発現がすべて低いトリプルネガティブと呼ばれる乳がんは全体の15ー20%を占め、予後が悪いため再発、転移する確率が高い。トリプルネガティブ乳がんの特性の理解や特異的な治療法開発のためにも、その分子標的となるがん化に重要な変異の同定が不可欠である。これまでにアナフィラトキシン受容体に着目し、悪性度との関連を解析した。その結果、トリプルネガティブ乳がんにおけるアナフィラトキシン受容体発現量や予後との相関が見いだされた。乳がんはエストロゲンレセプター(ER)、プロゲステロンレセプター、HER2の発現解析に基づいて分類される。上記3分子の発現がすべて低いトリプルネガティブと呼ばれる乳がんは全体の15ー20%を占め、ホルモン療法やターゲット治療法としてのトラスツズマブやラバチニブに感受性が低く、予後が悪いため再発、転移する確率が高い。トリプルネガティブ乳がんの特性の理解や特異的な治療法開発のためにも、その分子標的となるがん化に重要な変異の同定が不可欠である。本研究ではトリプルネガティブ乳がん組織より全ゲノムを調整し、DNA断片化、エキソン領域の調整と高カバレージの解析を行う。そのエキソーム情報とトランスクリプトーム解析やプロテオミクス情報を融合した分子遺伝学的解析を行うことにより、そのがん化に重要な体細胞変異とその下流シグナル経路の同定に取り組む。さらに変異を導入した乳腺上皮培養細胞やトランスジェニックマウスを用いた解析により、その体細胞変異の腫瘍形成能を確認する。本研究課題による新規体細胞変異同定は、悪性度が高いトリプルネガティブ乳がんの診断・予後マーカーや分子標的薬剤開発への重要な知見となる。当該研究では、女性ホルモン応答性がんを中心に、エストロゲンレセプター(ERα、β)、プロゲステロンレセプター、HER2遺伝子発現量を定量し、全ての遺伝子発現が低いトリプルネガティブ群と対照となるホルモンレセプター高発現群を用いて全エキソン配列(エキソーム)解析を行うために、乳がんサンプルの前処理等を行っている。さらに近年乳がんや子宮がん等のホルモン応答性がんでの発現が確認されたアナフィラトキシン受容体に着目し、その細胞内シグナル伝達、関連遺伝子と発現量の情報とともに悪性度との関連を解析するための予備実験を実施している。乳がんは、エストロゲンレセプター、プロゲステロンレセプター、HER2の発現解析に基づいて分類される。これら3分子の発現が全て低いトリプルネガティブと呼ばれる乳がんは、全体の15-20%を占め、ホルモン療法やターゲット治療法としてのトラスツズマブやラバチニブに感受性が低く、予後が悪いため再発、転移する可能性が高い。トリプルネガティブ乳がんの特性を理解し、特異的な治療法開発の為にも、その分子標的となる乳がん抗原や変異の同定が不可欠である。本研究では、トリプルネガティブ乳がんのトランスクリプトーム解析、表面抗原等の解析から、診断、予後マーカー、分子標的薬開発への基礎知見を得ることを目指している。現在のところ乳がんや子宮がん等のホルモン応答性がんでの発現が確認されたアナフィラトキシン受容体に着目し、その下流遺伝子の応答や発現量と悪性度の関連などを解析するための予備実験を実施している。乳がんはエストロゲンレセプター(ER)、プロゲステロンレセプター、HER2の発現解析に基づいて分類される。乳がんの6ー7割がER陽性であり、ホルモン療法(タモキシフェン等)が奏功し、高分化で比較的予後が良いとされる。上記3分子の発現がすべて低いトリプルネガティブと呼ばれる乳がんは全体の15ー20%を占め、ホルモン療法やターゲット治療法としてのトラスツズマブやラバチニブに感受性が低く、予後が悪いため再発、転移する確率が高い。トリプルネガティブ乳がんの特性の理解や特異的な治療法開発のためにも、その分子標的となるがん化に重要な変異の同定が不可欠である。これまでに乳がんや子宮がん等のホルモン応答性がんでの発現が確認されたアナフィラトキシン受容体に着目し、悪性度との関連を解析した。その結果、トリプルネガティブ乳がんにおけるアナフィラトキシン受容体発現量や予後との相関が見いだされ、今後の新規乳がん治療や診断への基礎的知見となった。乳がんはエストロゲンレセプター(ER)、プロゲステロンレセプター、HER2の発現解析に基づいて分類される。上記3分子の発現がすべて低いトリプルネガティブと呼ばれる乳がんは全体の15ー20%を占め、予後が悪いため再発、転移する確率が高い。トリプルネガティブ乳がんの特性の理解や特異的な治療法開発のためにも、その分子標的となるがん化に重要な変異の同定が不可欠である。これまでにアナフィラトキシン受容体に着目し、悪性度との関連を解析した。その結果、トリプルネガティブ乳がんにおけるアナフィラトキシン受容体発現量や予後との相関が見いだされた。昨年度の研究代表者の所属機関移動及び研究分担者の変更が有り、当初の想定よりも研究準備等に時間を取られたため。分子生物学乳がん遺伝子発現解析を進めるとともに、体細胞変異等の検出とデータ解析を進める。またアナフィラトキシン受容体遺伝子の解析を進め、ヒト乳腺上皮細胞や乳がん細胞を用いた解析により、下流遺伝子の変化や相互作用分子の同定を進めていく。今年度は研究代表者の所属機関の移動及び研究分担者の変更が有り、当初の想定よりも研究準備等に時間を取られたため達成度の遅れが生じた。当初の想定よりも研究の進展に遅れが生じたため。
KAKENHI-PROJECT-25461982
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25461982
次世代DNAシーケンサーを用いた高悪性度乳がんを引き起こす新規体細胞変異の探索
乳がんエキソーム一次解析、二次解析をさらに進め、体細胞変異、挿入、重複等の検出と、ヒトゲノム変異データベースとの比較解析を行う。上記解析により絞り込んだ候補遺伝子の、発現量、周辺遺伝子構造等を確認するとともに、ヒト乳腺上皮細胞であるMCF-10Aやヒト乳腺上皮由来テロメアーゼ不死化細胞hTERT-HME1にエレクトロポレーションにより変異遺伝子領域を導入し、その悪性転換能、下流の発現遺伝子の変化等を解析する。コードするタンパク質に応じて、下流シグナル、相互作用分子の解析、タンパク質の細胞内安定性、プロテオーム解析を進める。乳がん遺伝子解析の委託や関連遺伝子解析試薬の購入等に使用する。研究計画達成に遅れが有るため。ホルモン関連がんエキソーム解析及び二次解析、関連遺伝子発現を行う。
KAKENHI-PROJECT-25461982
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25461982
アセトアミノフェンの脊髄後角における鎮痛機序解明と新規投与経路の開発
アセトアミノフェンの作用機序はN-アシルフェノールアミン(AM404)が脳に移行し、TRPV1やCB1受容体を活性化することで鎮痛作用を発揮するとされている。一方、このTRPV1やCB1受容体は脳だけでなく痛覚伝導路である脊髄後角にも多く存在するが、これまでにアセトアミノフェンの脊髄後角における鎮痛作用を検討した報告はない。そこで我々は、行動学実験およびin vivo、in vitroパッチクランプ記録を用いた電気生理学実験を行い、アセトアミノフェンはAM404へ代謝された後、脊髄後角ニューロンのC線維終末のTRPV1受容体に作用し脊髄レベルで鎮痛作用を発揮することを明らかにした。アセトアミノフェンは解熱鎮痛薬として広く使用され、その主な作用機序は代謝物のN-アシルフェノールアミン(AM404)が脳に移行し、TRPV1やCB1受容体を活性化することであるとされている。一方、TRPV1やCB1受容体は、ともに痛みや炎症の治療ターゲット部位であり、脳内に多く存在するばかりでなく脊髄にも存在することが知られている。しかし、痛覚伝導路である脊髄後角へのアセトアミノフェンの作用の可能性、またその機序は明らかではない。そこで我々は、まず行動学実験によりWistar系成熟雄性ラットのくも膜下腔にAM404を投与し、Von Frey testによる痛み閾値や熱刺激に対する逃避行動の潜時を記録し、濃度依存性に鎮痛効果を発揮することを確認した。次に、パッチクランプ記録を行い、脊髄後角ニューロンにおけるアセトアミノフェンの作用を電気生理学的に検討した。その結果、in vivoパッチクランプ法では、アセトアミノフェンの投与により末梢からの痛み刺激に応答する興奮性シナプス後電流(EPSC)の面積を有意に抑制した。さらに脊髄横断スライス標本を用いたin vitroパッチクランプ法では、AM404はAδ線維ではなく、C線維刺激による単シナプス性EPSCを有意に抑制した。また、これらの反応はTRPV1受容体拮抗薬でほぼ完全に拮抗された。よって、アセトアミノフェンはAM404へ代謝された後、脊髄後角ニューロンのC線維終末のTRPV1受容体に作用し鎮痛効果を示すことが明らかになった。以上の研究により、アセトアミノフェンの脊髄後角における鎮痛効果が示されたため、今後、新しい投与経路として直接脊髄や硬膜外投与が考えられ、少ない投与量にて確実な鎮痛効果を得ることができる可能性が示唆された。アセトアミノフェンはAM404へ代謝された後、脊髄後角ニューロンのC線維終末のTRPV1受容体に作用し鎮痛効果を示すことを明らかにすることができた。アセトアミノフェンは解熱鎮痛薬として広く使用され、主な作用機序は代謝物のN-アシルフェノールアミン(AM404)が脳に移行し、TRPV1やCB1受容体を活性化することで鎮痛作用を発揮するとされている。一方、このTRPV1やCB1受容体は脳だけでなく痛覚伝導路である脊髄後角にも多く存在するが、これまでにアセトアミノフェンの脊髄後角における鎮痛作用を検討した報告はない。そこで我々は、ラットを用いた行動学、電気生理学実験により脊髄レベルでのアセトアミノフェンの鎮痛作用を検討した。まず行動学実験ではアセトアミノフェンの腹腔内投与およびAM404のくも膜下投与を行い、熱刺激に対する逃避行動までの潜時を測定したところ、濃度依存性に潜時を延長させることが明らかになった。次に電気生理学実験では、パッチクランプ法により脊髄後角ニューロンから興奮性シナプス後電流(EPSC)を記録した。その結果in vivoではアセトアミノフェンの静脈内投与により、末梢からの痛み刺激によるEPSCの面積を有意に抑制した。一方、in vitroではアセトアミノフェンの脊髄への灌流投与による効果は認めなかったが、AM404の灌流投与によりC線維刺激単シナプス性EPSCを有意に抑制した。さらにこの反応はTRPV1受容体拮抗薬で拮抗されたが、CB1受容体拮抗薬では拮抗されなかった。最後に、炎症性疼痛モデルラットを用いて同様の実験を行ったところ、naiveラットと比較しより強い鎮痛作用を発揮した。以上より、アセトアミノフェンはAM404へ代謝された後、脊髄後角ニューロンのC線維終末のTRPV1受容体に作用し脊髄レベルで鎮痛作用を発揮することが示された。また、これまでアセトアミノフェンの抗炎症作用は非常に弱いと考えられてきたが、今回の実験から炎症性疼痛に対してもより強い鎮痛作用を発揮することが明らかになった。アセトアミノフェンの作用機序はN-アシルフェノールアミン(AM404)が脳に移行し、TRPV1やCB1受容体を活性化することで鎮痛作用を発揮するとされている。一方、このTRPV1やCB1受容体は脳だけでなく痛覚伝導路である脊髄後角にも多く存在するが、これまでにアセトアミノフェンの脊髄後角における鎮痛作用を検討した報告はない。そこで我々は、行動学実験およびin vivo、in vitroパッチクランプ記録を用いた電気生理学実験を行い、アセトアミノフェンはAM404へ代謝された後、脊髄後角ニューロンのC線維終末のTRPV1受容体に作用し脊髄レベルで鎮痛作用を発揮することを明らかにした。これまでの研究によりアセトアミノフェンがAM404へ代謝された後、脊髄後角ニューロンのC線維終末のTRPV1受容体に作用し鎮痛効果を示すことを明らかにすることができた。しかし、通常アセトアミノフェンは痛みの存在下で使用することが多い。そのため、これまではnaiveラットを用いてきたが、今後は疼痛モデルラットである術後痛や炎症性疼痛モデルラットを用いて同様の実験を行い、その反応を検討する必要がある。
KAKENHI-PROJECT-16K20081
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K20081
アセトアミノフェンの脊髄後角における鎮痛機序解明と新規投与経路の開発
よって、今後は術後痛モデルラットおよび炎症性疼痛モデルラットを用いて行動学実験や電気生理学実験を行い、痛みが存在する中でアセトアミノフェンが脊髄後角においてどのような反応を示すか検討していく予定である。また平成29年度では、これまでの研究成果を発表するために、予算を国内外の学会参加や論文投稿の費用に使用していく予定である。麻酔科学分野電気生理学実験を行うにあたり、以前から使用していた機器であり不具合が生じていたため新たな購入を検討していた。しかし、メンテナンスや修理のみで研究を遂行することができた。そのため次年度使用額が生じた。次年度ではこれまでの研究成果を発表するために、国内外の学会参加費や論文投稿料として使用する見込みである。
KAKENHI-PROJECT-16K20081
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K20081
応力聴診器及びピエゾフィルムを用いた危険予測のための欠陥・き裂検出技術の基礎研究
本研究では,応力聴診器及びピエゾフィルムと超高入力インピーダンス接触型表面電位計を用いた欠陥検出の可能性を検討するため,擬似欠陥としての切欠きを有する平滑試験片に一定繰返し荷重を負荷し,切欠き付近のひずみ分布及び電圧分布を測定した。その結果,応力聴診器によるひずみ分布及びピエゾフィルムを用いた電圧分布は,切欠き深さが最大となる位置で最大ひずみ値,最大電圧値を示すとともに,これらの最大値は荷重振幅の増大に対し線形的に変化することがわかった。これらの実験結果より,本研究の提案手法が欠陥検出の可能性を有することが示唆された。特に,応力聴診器を用いた場合はその簡便性,利便性から今後の展開が期待される。今年度は応力聴診器を用いた構造部材表面の欠陥およびき裂検出の可能性を検討した。具体的には切欠き、表面き裂、球面状き裂の三種類の仮想表面欠陥を平板試験片に機械加工により設け、これに一定繰返し荷重を与えながら応力聴診器を仮想表面欠陥の裏面からスキャンするように移動させ、ひずみ分布を測定した。また、従来より使用している応力聴診器は、その受感部の摩擦型ひずみゲージのゲージ長が6mmであるが、本研究から3mmの小型化された応力聴診器を用いた。くわえて、仮想欠陥の半径や厚さなどの幾何条件がひずみ分布に及ぼす影響を調査し、応力聴診器の欠陥・き裂検出センサとしての適用範囲を検討した。その結果、以下の知見が得られた。切欠きの種類に依らず、切欠き深さが最大となる位置で最大ひずみ値を示し、この最大値は振幅荷重の増減に対し線形的に変化することがわかった。表面き裂および球面状き裂に関しては特定の寸法形状におけるひずみ分布測定であるが、振幅荷重とひずみ分布との関係性を見出すことができなかった。今後は様々な寸法条件に対する更なる実験を重ね、応力聴診器の追従性を検討する必要がある。また、本研究で使用したゲージ長3mmの応力聴診器は既存型に比べ、より細かな領域での測定に適しており、測定精度の向上を期待できる。以上より、現在のところ制約はあるものの、応力聴診器によるひずみ分布測定は欠陥検出の可能性を有するものと考えられる。今後は表面き裂、表面球状き裂などの欠陥に対する本手法の適用可否の見極めやこれらの欠陥が構造材内部に存在する場合について取り組む予定である。今年度の研究を通じて、応力聴診器とニューラルネットワークを併用した欠陥検出法が考案された。これは欠陥の有無に限らず、その寸法形状を同定できる可能性があり、発展的な研究課題として位置付けている。今年度も昨年度と同様に,表面欠陥を有する構造部材のひずみ分布を応力聴診器により測定することで,欠陥検出の可能性を検討した。今年度は表面欠陥として切欠き形状に限定し,その幾何形状および試験片厚さがひずみ分布に及ぼす影響を調査した。具体的には,擬似的欠陥として様々な寸法の表面切欠きを施した金属試験片を製作し,これに一定繰返し荷重を負荷した際の欠陥近傍におけるひずみ分布を応力聴診器により測定し,切欠きの寸法形状がひずみ分布に及ぼす影響を調査することで欠陥検出の可能性を模索した。そのために,切欠き幅,切欠き深さおよび試験片厚さを変化させた場合の10種類の試験片に対するひずみ分布測定実験を行った。その結果,切欠き深さおよび切欠き幅が増加すると最大ひずみ値が大きくなることがわかった。また,ひずみ分布の挙動は試験片厚さと切欠き深さとの関係によって変動することが明らかとなった。以上より,応力聴診器を用いたひずみ分布測定より欠陥検出の可能性を示唆することができた。さらに今年度は上述の応力聴診器によるひずみ分布測定にくわえて,ニューラルネットワークおよび有限要素応力解析を駆使して,欠陥検出と欠陥寸法形状の同定を試みた。表面切欠きを有する各種試験片の三次元有限要素応力解析を行い,そこから得られたひずみ分布を教師データとし,同様に疑似欠陥を有する試験片のひずみ分布を,応力聴診器を用いて測定し入力データとした。これらを用いてニューラルネットワークを構築することで,未知欠陥の位置,深さおよび幅の同定が可能か検証を行った。得られた知見として,欠陥深さおよび幅の寸法が大きくなるとそれらの検出誤差は増加することがわかった。また,欠陥の位置検出誤差は数値的には問題ないものの,現状では整合性に難があることが判明した。本手法では,欠陥位置および幾何条件のうち,欠陥深さの検出が最も精度が高いことがわかった。初年度は表面欠陥を伴う構造部材のひずみ分布を応力聴診器により測定することで欠陥検出の可能性を検討した。表面欠陥として切欠き形状に限定し,その幾何形状および試験片厚さがひずみ分布に及ぼす影響を調査するために,切欠き幅,切欠き深さおよび試験片厚さを変化させた10種類の試験片のひずみ分布測定実験を行った。その結果,切欠き深さおよび切欠き幅が増加すると最大ひずみ値が上昇し,ひずみ分布の傾向は試験片厚さと切欠き深さとの関係によって変動することがわかった。これにより,本手法による欠陥検出の可能性が示唆された。次年度はニューラルネットワーク(NNW)および有限要素解析(FEA)を駆使して欠陥検出と欠陥寸法形状の同定を試みた。表面切欠きを伴う各種試験片のFEAによるひずみ分布を教師データ,応力聴診器を用いて測定したひずみ分布を入力
KAKENHI-PROJECT-25871030
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25871030
応力聴診器及びピエゾフィルムを用いた危険予測のための欠陥・き裂検出技術の基礎研究
データとし,これらよりNNWを構築し,未知欠陥の位置,深さおよび幅の同定が可能か検証した。結果として,欠陥深さの検出が最も精度に優れるが,欠陥深さおよび幅が増加するとそれらの検出誤差が増加する傾向が見られた。欠陥の位置検出誤差は数値的には問題ないが,現状では整合性に難がを有する。これまでの研究結果より,試験片厚さと切欠き深さとの比がひずみ分布の様相に影響を及ぼすことが判明したため,それらの関係を詳細に調査し体系化することで切欠き深さの推定可能性を模索した。今年度は試験片厚さと切欠き深さとの比による影響を検討することを目的に,さらに切欠き深さを変化させた試験片6種を製作し実験を重ねた。その結果,試験片厚さが薄くなるほど,すなわち,試験片の剛性が低くなるほど切欠き深さに対する感度が高くなり,ひずみ分布に及ぼす影響が顕著になることがわかった。しかし現段階では,試験片厚さと切欠き深さとの比とひずみ分布との間に相関を見出すことはできず,切欠き深さの推定は達成されていない。本研究では,応力聴診器及びピエゾフィルムと超高入力インピーダンス接触型表面電位計を用いた欠陥検出の可能性を検討するため,擬似欠陥としての切欠きを有する平滑試験片に一定繰返し荷重を負荷し,切欠き付近のひずみ分布及び電圧分布を測定した。その結果,応力聴診器によるひずみ分布及びピエゾフィルムを用いた電圧分布は,切欠き深さが最大となる位置で最大ひずみ値,最大電圧値を示すとともに,これらの最大値は荷重振幅の増大に対し線形的に変化することがわかった。これらの実験結果より,本研究の提案手法が欠陥検出の可能性を有することが示唆された。特に,応力聴診器を用いた場合はその簡便性,利便性から今後の展開が期待される。今年度の研究内容は「応力聴診器による構造部材表面の欠陥検出」の深化を目的とし,試験片厚さおよび切欠き欠陥の寸法形状の変化に対する本手法の追従性を調査することとした。また,応力聴診器によるひずみ分布を活用し,ニューラルネットワークと有限要素応力解析を複合させることで欠陥検出とその寸法形状の同定を試みた。これらの研究成果をもとに3件の学会発表を実施できたことから,本研究の進捗度は概ね順調であると言える。材料力学これまでの各種実験結果より,試験片厚さと切欠き寸法との比がひずみ分布の曲率に影響を及ぼすことが判明した。したがって,それらの関係を詳細に調査しデータベース化することで,試験片厚さとひずみ分布の状態から切欠きの寸法形状の推定が可能であると考えられる。今後は,表面切欠きのひずみ分布測定に特化するとともに,切欠きのパラメータを増やし,より詳細なひずみ分布データの取得を試みる。併せて,実験状態を再現した有限要素解析を行い,考察を深めるための参考資料の蓄積を図る。今年度計画していた研究内容は「応力聴診器による構造部材表面の欠陥およびき裂の検出」である。応力聴診器を用いた各種仮想表面欠陥に対するひずみ分布測定を数多く実施したところ、欠陥検出の可能性を示唆する有意義な成果を得ることができた。この研究成果をもとに学会発表を2件行うことができたことから、本研究の進捗度は概ね順調であると言える。本研究で重要となる測定器具および装置は,応力聴診器と超高入力インピーダンス接触型表面電位計である。後者を用いた測定では実験の性質上,装置の測定子に負荷をかけることになり度々不具合を生じていた。
KAKENHI-PROJECT-25871030
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25871030
アルドステロン作用におけるミネラルコルチコイド受容体のSUMO化修飾の役割
これまで多くの臨床研究や基礎研究によって、生体内でアルドステロンは炎症を惹起し、心臓や腎臓、血管といった臓器に肥大線維化を引き起こすことが知られているが、その詳細なメカニズムについてはまだ不明な点も多い。特に、生体内で血清アルドステロンが必ずしも高値でない場合であっても、MRを介した臓器障害が引き起こされる事実から、アルドステロン非依存性にMRが活性化される未知のメカニズムの存在が示唆されていた。一方で多くの蛋白質はリン酸化やユビキチン化などの多彩な翻訳後修飾を受け、蛋白質の機能が調節されていることが明らかとなってきている。そこで今回我々は蛋白質の翻訳語修飾のひとつであるSUMO化修飾に注目し、MRがSUMO化修飾の基質であるか検討し、その場合に転写調節における役割について解析を行なった。まずsite-directed mutagenesisを用いた変異MRの検討から、MRの中で89番目、399番目、494番目、953番目の計4ケ所のリジン残基がMR修飾を受ける部位であることが明らかとなった。そして、この変異MRを用いたルシフェラーゼアッセイや脱SUMO化酵素SENPlを用いてMRの脱SUMO化を誘導したときの転写活性の検討から、MRに脱SUMO化がおきることで、MR転写が活性化させるというメカニズムを明らかにした。ミネラルコルチコイド受容体(MR)は電解質バランスにかかわるアルドステロン依存性の転写因子であるが、近年、心臓や腎臓といった臓器の肥大線維化にもかかわることが判明し、その転写調節メカニズムの解明が必須となっていた。Ubc9は蛋白のSUMO化修飾に関わるE2酵素であることが知られていたが、今回MRとUbc9の相互作用につき検討をおこなった。Yeasttwo hybrid法、GST pull-down法、哺乳類培養細胞を用いた免疫共沈降法の検討から、Ubc9はMRのN末端に結合することがわかった。そして、3種類のMR応答レポーターを用いてルシフェラーゼアッセイを施行したところ、いずれにおいてもUbc9はMRの転写を増強することがわかった。またsiRNAを用いて内因性のUbc9をノックダウンしたところ、MR転写活性は減少し、MR標的遺伝子のひとつであるsgkのmRNAも減少した。以上から、Ubc9はMRと結合しその転写活性を増強する新規のcoactivatorであることが明らかとなった。さらにそのメカニズムとして、MRのAF2 coactivatorであるSRC1との複合体形成が示唆された。MR標的遺伝子のENaCpromotorを用いたChIP assayで、MR、Ubc9、SRC1はアルドステロン依存性にpromotorに結合することが示され、培養細胞の共焦点レーザー顕微鏡での検討やマウスの腎尿細管細胞での検討から、これらの蛋白は標的細胞の核に共局在することが明らかとなり、生理的に重要な役割を担っていることが示唆された。これまで多くの臨床研究や基礎研究によって、生体内でアルドステロンは炎症を惹起し、心臓や腎臓、血管といった臓器に肥大線維化を引き起こすことが知られているが、その詳細なメカニズムについてはまだ不明な点も多い。特に、生体内で血清アルドステロンが必ずしも高値でない場合であっても、MRを介した臓器障害が引き起こされる事実から、アルドステロン非依存性にMRが活性化される未知のメカニズムの存在が示唆されていた。一方で多くの蛋白質はリン酸化やユビキチン化などの多彩な翻訳後修飾を受け、蛋白質の機能が調節されていることが明らかとなってきている。そこで今回我々は蛋白質の翻訳語修飾のひとつであるSUMO化修飾に注目し、MRがSUMO化修飾の基質であるか検討し、その場合に転写調節における役割について解析を行なった。まずsite-directed mutagenesisを用いた変異MRの検討から、MRの中で89番目、399番目、494番目、953番目の計4ケ所のリジン残基がMR修飾を受ける部位であることが明らかとなった。そして、この変異MRを用いたルシフェラーゼアッセイや脱SUMO化酵素SENPlを用いてMRの脱SUMO化を誘導したときの転写活性の検討から、MRに脱SUMO化がおきることで、MR転写が活性化させるというメカニズムを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-18790640
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18790640
気分障害患者における認知機能障害の生物学的基盤に関する研究
本研究では、双極性障害患者の認知機能を、標準的な認知機能検査法であるMCCB日本語版を用いて測定し、その特徴を明確にするとともに、MCCB日本語版の有用性を明らかとした。また、末梢血単核球由来DNAの全ゲノムにわたるメチル化パターンを解析し、双極性障害の疾患マーカー候補となる50部位を同定するとともに、各認知機能検査結果とメチル化パターンが相関する部位を同定した。本研究は、日本人双極性障害患者の認知機能障害の特徴を初めて標準的な検査法で明らかとしたものであり、今後の研究の基礎となる重要な情報を提供するものである。昨年度に引き続き、症例のリクルートを行い症例数を増やしている。本年度に新たにリクルートした症例は、双極性障害10例、大うつ病性障害7例、健康成人10症例であり、研究全体を通して組み込まれた症例数は、双極性障害14例、大うつ病性障害7例、健康成人42例となった。また、MCCBの下位検査項目に関する予備的な解析の結果、健康成人と比較して双極性障害患者において、TMT, BACS, MSCEIT, CPT-IPにおいてz-scoreで-1以上の低下を認めていた。認知ドメイン別に集計を行ったところ、processing speedおよびattention vigilanceで明らかな低下を認めていた。これらの結果は、すでに外国で報告されているMCCBを用いた双極性障害患者の認知機能障害の特徴とよく合致するものであった。本年度はこれらの結果をまとめ、第16回国際双極性障害学会総会にて発表を行った。また、来年度予定しているDNAメチレーション解析に向けて、末梢血単核球のDNA抽出を行いサンプルを蓄積している。本研究では、双極性障害患者の認知機能を、標準的な認知機能検査法であるMCCB日本語版を用いて測定し、その特徴を明確にするとともに、MCCB日本語版の有用性を明らかとした。また、末梢血単核球由来DNAの全ゲノムにわたるメチル化パターンを解析し、双極性障害の疾患マーカー候補となる50部位を同定するとともに、各認知機能検査結果とメチル化パターンが相関する部位を同定した。本研究は、日本人双極性障害患者の認知機能障害の特徴を初めて標準的な検査法で明らかとしたものであり、今後の研究の基礎となる重要な情報を提供するものである。本年度は、研究初年度にあたるため、まずは九州大学病院倫理委員会に本研究の申請を行い承認を得た。同時に、具体的に実際に行う認知機能バッテリーの確定を行った。トレイルメイキングテストなど、日本語版が複数存在する認知機能検査については、それら内容を吟味して、実際に行う版を決定した。加えて、最終年度に行うことを予定している、末梢血単核球由来のDNAメチレーション解析について、実際に外注を行う業者を選定し、提供する検体の抽出方法および保存方法について打ち合わせを行なった。末梢血単核球の分離には、BDバキュティナCPT採血管を用い、遠心分離した単核球層をQIAGEN DNeasy kitを用い、一部プロトコールを改変してDNA抽出を行うプロトコールを確定した。さらに、これらのプロトコールに沿ってボランティア血液からDNA抽出を行う予備実験を行い、解析に必要とされる充分量のDNA検体を得ることができた。本年度にリクルートできた被験者は、双極性障害4名、大うつ病性障害1名、健常者2名であり、いずれも認知機能検査を終了することができている。3年間の研究期間で、最終的に双極性障害27症例、大うつ病性障害8症例、健康正常人12症例をリクルートすることができた。実際の解析は、双極性障害24症例と健康正常人55症例(過去の研究症例を含む)について、認知機能検査MCCB-Jの結果を比較検討した。背景情報では、年齢において2群間に有意な差が認められた。解析は正準判別分析を行い、p値0.20を基準に変数選択を行った。MCCB-Jの下位検査項目を用いた場合には、2群を判別することが可能であり(p=0.0003)、トレール作成試験パートA(TMT-A)、文字数スパン(LNS)、簡易視空間記憶テスト改訂版(BVMT-R)、マイヤー・サロヴェイ・カルーソー感情知能テスト(MSCEIT)が変数選択された。認知機能ドメインを用いても2群の判別は可能であり(p<0.0001)、処理速度、ワーキングメモリー、視覚学習および社会・感情認知が変数選択された。いずれの結果も、年齢調整後でも変わらなかった。これらの結果は、先行研究と矛盾しないものであり、双極性障害患者における認知機能障害をMCCB-Jを用いて特徴的に検査可能であることを示している。次に、それぞれ12症例ずつの末梢血単核球由来DNAを用いてepigenome-wide association analysisを行ったところ、両群間でメチル化の程度が異なる49のCpG部位を同定し、それらの部位を用いてクラスター解析を行った結果、2群を区別することが可能であった。これらは、双極性障害の末梢血DNAメチレーションマーカーとして有望な候補となりうると考えられた。現在英文にて論文投稿準備中である。精神医学組み込み症例数が目標よりも少ないが、最終年度にむけて生物学的な解析を行うのに必要な症例数は満たしてきており、若干の遅れはあるものの、当初の予定通りに生物学的な解析に進むことができると判断している。九州大学病院倫理委員会では、健康コントロール被験者のリクルート方法に関する議論が出たために、修正が必要であり、最終的な承認を得るまでに時間がかかってしまった。
KAKENHI-PROJECT-24591722
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気分障害患者における認知機能障害の生物学的基盤に関する研究
また、信頼性の高い網羅的なDNAメチレーション解析を委託可能な業者の選定に時間がかかってしまった。以上より、被験者のリクルート開始が当初の予定よりも遅くなってしまったため、本年度リクルートした被験者が合計7名と少数であった。しかし、すでにこれらの技術的な問題は解決しており、現在精力的に被験者のリクルートに勤め、症例数も順調に増えていっているところである。次年度も引き続き被験者のリクルートとデータの蓄積を行う計画であるため、本年度の遅延は十分に回復可能であると考えている。目標症例数には到達していないが、すでに認知機能検査では2群間での差が認められている。今後はさらに症例数を増やし、解析の精度向上につとめる。また、すでに確立したプロトコルに従いDNAサンプルは順調に集まっている。ゲノムワイドDNAメチレーションマイクロアレイを行うには十分な症例数がそろっているので、解析を進めるとともに、認知機能障害との関連について検索を行っていく予定である。次年度は、引き続き精力的に被験者のリクルートを行い、認知機能検査結果および頭部MRI、抹消血液の収集を継続する。最終年度に予定している、ゲノムワイドDNAメチレーションマイクロアレイに向けて、すでにDNA抽出方法は予備実験まで完了しており、順次検体を蓄積していく予定である。最終年度は、認知機能検査結果を、双極性障害、大うつ病性障害、健常群で比較検討し、気分障害における認知機能障害の特徴を明らかにするとともに、ゲノムワイドDNAメチレーションマイクロアレイを行い、それら認知機能および疾患と関連するメチル化パターンの検索を行う予定である。リクルート症例数が目標に達しなかったために、謝金およびDNA抽出にかかる費用が当初の見積もりよりも少なかった。引き続き症例のリクルートを継続するとともに、最終的なDNAメチレーション解析を行う症例数を増やすことが可能であれば、研究の精度を上げることができると考えている。本年度は、研究開始の準備および被験者のリクルートを行う計画であった。研究開始準備に関しては、十分な成果が得られたが、被験者のリクルート開始が遅延したために、本年度に実際に研究に参加した被験者の数が少なかった。次年度は、引き続き精力的に被験者をリクルートし、認知機能検査データ、末梢血単核球由来DNAの抽出、頭部MRI検査を継続して行っていくことを計画している。よって、本年度それらに使用する予定であった費用については、引き続き同目的で、さらなる被験者のリクルートおよびその検体プレパレーションに使用する予定である。また、認知機能検査データについては、ある程度集まった段階で、予備的な解析を行い、学会発表などを行っていく予定である。
KAKENHI-PROJECT-24591722
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生理過程からスケールアップした冷温帯林生態系の撹乱・環境応答:ふたつの大陸東岸の比較解析
本プロジェクトでは,変動環境のもとでの森林生態系の自律的維持と応答のメカニズムを解明するために,北海道中南部の冷温帯性落葉広葉樹林の構成樹種を主対象として,光合成系・通導支持系・栄養獲得系の生理素過程の応答から個体の生長,さらには群集動態にスケールアップしていく理論的・実証的な研究を実施した.二酸化炭素上昇実験区・圃場・野外の森林とさまざまなスケールで,生理諸過程のパラメータ測定と個体への統合過程を解析した.二酸化炭素に対する作物種の個体レベルの応答の種差を解析した.野外森林レベルでの撹乱応答を明らかにするために,施肥と伐採をおこなう操作実験を実施した.撹乱処理による葉の光合成特性の変化や被食率の上昇は,樹種によって異なっており,こうした種差をもたらす生理的な機構を解明した.アーバスキュラー菌根の形成率は,施肥で低く,伐採処理とは独立だった.集団葉群光合成モデルを,光・窒素律速を組み込んで一般化した.シュートベースの3次元樹形形成過程の研究は,モデル植物としてホウノキとモミ属を対象としてすすめた.ホウノキについては,分枝規則の抽出をし,一部の枝が短枝化する現象が,葉の相互被陰を避けるメカニズムとしては機能せず,光合成による同化物生産が十分でないときの節約型の樹形形成機構であることをシミュレーションによりあきらかにした.分枝規則がすでに定量化されているモミ属については,集団状態での発達過程をPipeTreeというシミュレータで記述した.集団の発達にともなって,シュートモジュールの特性が変化することが,観測される現象を再現するのに必要であることが明らかになってきた.本プロジェクトでは,変動環境のもとでの森林生態系の自律的維持と応答のメカニズムを解明するために,北海道中南部の冷温帯性落葉広葉樹林の構成樹種を主対象として,光合成系・通導支持系・栄養獲得系の生理素過程の応答から個体の生長,さらには群集動態にスケールアップしていく理論的・実証的な研究を実施した.二酸化炭素上昇実験区・圃場・野外の森林とさまざまなスケールで,生理諸過程のパラメータ測定と個体への統合過程を解析した.二酸化炭素に対する作物種の個体レベルの応答の種差を解析した.野外森林レベルでの撹乱応答を明らかにするために,施肥と伐採をおこなう操作実験を実施した.撹乱処理による葉の光合成特性の変化や被食率の上昇は,樹種によって異なっており,こうした種差をもたらす生理的な機構を解明した.アーバスキュラー菌根の形成率は,施肥で低く,伐採処理とは独立だった.集団葉群光合成モデルを,光・窒素律速を組み込んで一般化した.シュートベースの3次元樹形形成過程の研究は,モデル植物としてホウノキとモミ属を対象としてすすめた.ホウノキについては,分枝規則の抽出をし,一部の枝が短枝化する現象が,葉の相互被陰を避けるメカニズムとしては機能せず,光合成による同化物生産が十分でないときの節約型の樹形形成機構であることをシミュレーションによりあきらかにした.分枝規則がすでに定量化されているモミ属については,集団状態での発達過程をPipeTreeというシミュレータで記述した.集団の発達にともなって,シュートモジュールの特性が変化することが,観測される現象を再現するのに必要であることが明らかになってきた.苫小牧地方林にて落葉高木ミズナラの林冠葉の光合成特性の測定を3回行った。光合成速度は様々な環境条件下で行い、環境応答をモデル化した。個葉光合成のモデルをさらに葉群光合成モデルに適用し、森林のCO_2吸収速度を推定した。推定値は、渦相関法によって推定された森林のCO_2吸収速度と有意な相関を示した。(彦坂)攪乱処理が林床植物のアーバスキュラー菌根形成に及ぼす影響について調査した。4月に苫小牧研究林に各撹乱処理区を設け、8月末に5種の植物の根部を採取し,4種でアーバスキュラー菌根形成を認めた。マイヅルソウから得た18S rRNA遺伝子配列か識別した10の菌根菌クローンは、1つのAcaulospora属、3つのGlomus属分類群に分類された。(俵谷)多変量解析(DCCA)を適用して、大規模攪乱跡地に成立した二次林の植物種組成を解析した。結果から,高木種の組成が優占林床植物の生活史に影響を与えていること,攪乱が大規模に起こった場合の森林の発達途上では競争と侵入が重要なプロセスであり、景観スケールでの種の組成はローカルな種プールにより維持されていることを推測した.(日浦・小池)温帯、熱帯を含む各地で植物(木本と草本)葉を採取し、養分分析を行なった。さらに世界各地からの養分含有率の報告値の収集をおこない、約5000点の植物葉の養分含有率のデータベースを作成した。系統群制約と生息地の土壌肥沃度から,パターンを解析した.(大崎)シュートベースの樹木・林分生長動態モデルを,Abies属個体群の観測データに対応させてパラメテライズし,個体群動態の定量的過程の再現に成功した.(久保・甲山)苫小牧研究林において,ホオノキの若齢個体のシュートの構造を調べ,以下のパターンを認めた:長枝タイプと短枝タイプの分化の存在,分枝直後の長枝シュートは小さい葉しかつけない;
KAKENHI-PROJECT-13304060
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13304060
生理過程からスケールアップした冷温帯林生態系の撹乱・環境応答:ふたつの大陸東岸の比較解析
長枝の頂芽シュートは年ごとに短くなる.空間獲得努力としての枝の伸長のコストと利得の兼ね合いの視点から長枝,短枝の分化の意味を説明できるものと期待される.(竹中)米国マサチューセッツ州のハーバード大学演習林において,主要カエデ属3種の葉特性,シュート構造,繁殖特性の観測をおこない,苫小牧研究林の結果と比較解析した.高木2種は,苫小牧においてこれら2種と似た生態的地位を占めるイタヤカエデ同様,葉・シュートの高い形態的可塑性を示した.林冠下で繁殖を開始する亜高木は,発育ステージ間で葉・シュート特性が異なり,また成長に伴って樹冠形が縦長に変化していた.(甲山・浦口)1.冷温帯林の樹種ごとの空間分布パターンの解析長命で固着性の生物の共存を可能にするメカニズムのひとつとして、繁殖の時間変動の効果が考えられている。個体の死亡によってできた空き地は、たまたまその時点で多くの繁殖子を散布した種が占めるとすると、希少種の個体数がときおり大きく挽回することが可能になり、共存が促進される。個体ベースモデルを使ったシミュレーション実験の結果、種子が親木の周辺に集中して散布されるような場合でもこのメカニズムが働きうることが示された。北海道大学苫小牧研究林の落葉広葉樹林をフィールドとして、上層木と林床の稚樹との種構成の関係の解析を開始した。調査対象の林分では、20種程度の樹種が高木層を形成している。この程度の種多様性は、多種の共存メカニズムの解析に適したものと考えられる。2.高二酸化炭素条件がカラマツの根圏機能に与える影響いままでの研究より高CO_2によって,根重、根長や根の呼吸量が増加することが報告されており、根圏の機能が高CO_2環境下の植物の生育に関して重要な役割を果たしているのではないかと推測されている。根の養分吸収および養分吸収に様々な影響を与えている土壌微生物の生態に注目して高CO_2環境下における植物の生長、および生理的応答を解析した。また、撹乱処理が林床植物のアーバスキュラー菌根形成に及ぼす影響について調査した。2001年4月に北海道大学苫小牧研究林に伐採、施肥、伐採・施肥および無処理の4処理区を設け、2002年8月末に各処理区の林床から草本植物の根系を採取し、すべての植物種でアーバスキュラー菌根形成が認められた。3.森林の撹乱応答苫小牧研究林の落葉広葉樹二次林に伐採・施肥処理を施し、林床植物の成長と繁殖に及ぼす影響を検証した。その結果、春植物の成長・繁殖は士壌養分が制限要因となっており、夏植物は光資源が制限要因となっていることが明らかとなった。リター混合と撹乱が窒素無機化に及ぼす効果を検証した結果、春植物と樹木の混合には負の効果が見られたが、夏植物との混合には有為な影響はなかった。また、伐採と施肥の効果は検出されなかった。人工ギャップを作り、林床草本・稚樹の葉の形態的・生理的応答を解析した結果、成熟葉の窒素含量、葉の厚さ、光合成速度が可塑的に変化する種とそうでない種があることが明らかとなった。森林生態系の自律的維持機構と環境応答のメカニズムを統合的に理解するために,光合成系,通導支持系,栄養獲得系の生理素過程から個体・群集動態にスケールアップしたアプローチを取った.(TOEF=北海道大学苫小牧研究林)1.栄養獲得系のOTC実験.屋外の二酸化炭素負荷処理実験を長期に亘って実施し,栄養獲得系に及ぼす影響を評価した.高二酸化炭素による現存量増加は,窒素吸収量の増加と対応しており,これは根系現存量の増加だけで説明できた.2.光合成系の光応答実験.TOEFにおいて,光順化を人工ギャップによって調べた.高木種では光合成や窒素含量が増加したが,つる植物は変化しなかった.3.通導支持系の観測とモデル化.TOEFのホウノキを対象に,シュートの動態の追跡観測から,分枝発達のルールを抽出した.
KAKENHI-PROJECT-13304060
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時系列海洋粒子フラックスの長期観測と地球環境動態
本研究の第一年度である平成10年度は、北太平洋高緯度海域およびベーリング海における沈降粒子フラックス試料の継続採集を行った。これは1998年8月の北海道大学大学水産学部練習船おしょろ丸のアラスカ・ダッチハーバー-函館間の航海を利用したフィールドワークである。ベーリング海におけるステーションABと北太平洋中部亜寒帯ステーションSAにおけるセディメント・トラップの回収と再設置は順調に行われ、1997年8月より1998年8月の1年間の試料は2ステーションともに100%成功裡に得られた。今年度の実験室内での時系列沈降粒子フラックス試料解析は、主に珪藻に焦点を絞り詳細のデータを得た。本研究海域におけるプランクトン群集のうち有占群集である珪藻に関しては、1990-1998年の8年間の時系列フラツクスの詳細が明らかになった。ステーションMでは48種、またステーションSAでは40種が出現した。このうち有占種であるNeodecnticula seminaeが全珪藻沈降群集のうち約80%を占めていた。また画像解析システムを駆使したサイズ測定により、以前は全く不明であった珪藻有占種N.seminaeの有性生殖と無性生殖の季節変動の実体が明らかになった。早速この結果は1998年秋季海洋学会(京都)での報告のみならず、AGUアメリカ地球物理学会(サンフランシスコ)にも出席して成果の発表を行うことが出来た。本年度に主要設備備品とし購入した項目は:(1)画像解析システム;および(2)電子天秤の2点であり、早速実験室に設置した。これらは頻繁に使用中であり、毎巨の研究作業に欠かせない備品となっている。本研究第一年度には、ODP国際掘削計画プロボーザル#477の計画達成を目さした予備調査が、1999年8月ベーリング海にて行われた。これは東京大学海洋研究所の白鳳丸を使用した一ヶ月間の航海(Hakuho-Maru KH99-3 Cruise Report,in press)で、現場海域フィールド作業として掘削に向けた音波・マルチャネル地震波探査等のSite Survey調査が行われた。又、数本のピストンコアおよびマルチプルコアがベーリング海および北太平洋亜寒帯にて首尾よく採取された。これらコアの解析は、現在日本国内の研究者で作られたチームの共同研究の形で推進されている。2000年1月11-12日に東京大学海洋研究所にて開催された古海洋学シンポジウムでは、速報が既に紹介され代表的なピストンコア(例えばUMK-3A,BOW-12A,BOW-9A,ES等)の年代や珪藻群集解析に関する発表があった。今後、更にこれらのコアを推進しベーリング海における古環境復元にを行う。また、オホーツク海に関しては、オホーツク海中部海域で得られたPC1(長さ11.1m)の解析に過去一年間の努力が払われた。このコアについては、レディオラリア化石を用いた過去12.5万年間の古環境復元が成されており、他の化石群集とのつきあわせを計画している。今後、これらの手持ちの情報を総括しODP国際掘削計画の2002-2003年のベーリング海およびオホーツク海での掘削を実現するための最大限の努力をする。本研究では、海洋のフィールドから得られた生物源沈降粒子フラックスの化学的主要研究項目(例えば、C,H,.CaCO_3,SiO_2)を長期間連続測定するばかりではなく、プランクトン殻粒子生物群のフラックスをも測定する。このような詳細データが解析され、さらに衛星画像や船舶による広海域での表面水温・クロロフィルデータと付合させることにより、地球規模の理解に必要なこれらの海域における物質循環および気候変動の機構の詳細が把握できることを目的としている。1999年8月にODP国際掘削計画プロポーザル#477の計画達成のため、東京大学海洋研究所の白鳳丸KH99-3航海においてピストンコアが数本得られた。ベーリング海及び北太平洋亜寒帯域で得られたこれらピストンコアは現在日本国内の研究者で構成されたチームの共同研究が推進されている。本研究室では中でも基礎的化学物質(生物源オパール・炭酸カルシウム・有機炭素・窒素)及び、珪藻、レディオラリアを用いたベーリング海における過去20万年間の古環境解析が進んでおり、海洋学会秋季大会及び2001年古海洋学シンポジウム(於東京大学海洋研)にて随時発表された。今後、上記の項目と浮遊性有孔虫を加えたより詳細なベーリング海の古環境復元が行われる予定である。またオホーツク海に関しては、レディオラリによる約12.5万年間の古環境復元についての研究結果を現在Marine micropaleontologyに投稿中である。今後、ベーリング海及びオーツク海における解析結果を総括し、ODP国際掘削計画の2002-2003年の海域での掘削を実現するための最大限の努力をする。
KAKENHI-PROJECT-10480128
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10480128
爆砕処理による木材の構造性炭水化物の飼料価値改善に関する研究
木質系バイオマスは、豊富な有機物資源であり、反すう家畜が利用できる構造性炭水化物を多く含む。しかし木材中の構造性炭水化物はリグニンと固く結びついてるため、その大部分が飼料として直接利用できない。この木材に爆砕処理を施すと、物理的、化学的性状が変化し、その構造性炭水化物の一部が、反すう家畜第一胃内微生物による分解を受け易くなる。しかし爆砕処理によって、木材リグニンが分解されるときに生じる芳香族化合物は通常の飼料中には含まれていない。そこで本研究では爆砕物を家畜に給与して動物の消化率と第一胃内発酵の様相を検討した。まず爆砕シラカバと爆砕ポプラをめん羊に給与したところ、有機物の見かけの消化率はそれぞれ42%と36%であった。爆砕物は粗飼料的性質が弱く、第一胃内での滞留時間が短いため消化率が低下することもあり、飼料として利用するときの形状や組み合わせる飼料に考慮が必要と思われた。爆砕ポプラのメタノール抽出物には、in vitro条件下で、第一胃内の特定の微生物活性を阻害する物質が含まれる可能性が、デンプンとセルロースの分解能を指標とした実験で示唆された。しかし実際に爆砕ポプラをめん羊に給与したとき、第一胃のVFA濃度は対照飼料を給与した場合と変らず、またアンモニア濃度は低いものの、第一胃の微生物の生育を抑制するほど低下しなかったので、爆砕ポプラの給与によって、第一胃発酵はとくに悪影響を受けず、それを飼料として利用してもとくに支障がないことが知られた。結局、爆砕物はそれを給与する形態に考慮すれば、実用上、反すう家畜の飼料の一部として利用しても、ほとんど問題がないことから、粗飼料資源が不足する地域で、これを給与することは好ましいことが明らかとなった。木質系バイオマスは、豊富な有機物資源であり、反すう家畜が利用できる構造性炭水化物を多く含む。しかし木材中の構造性炭水化物はリグニンと固く結びついてるため、その大部分が飼料として直接利用できない。この木材に爆砕処理を施すと、物理的、化学的性状が変化し、その構造性炭水化物の一部が、反すう家畜第一胃内微生物による分解を受け易くなる。しかし爆砕処理によって、木材リグニンが分解されるときに生じる芳香族化合物は通常の飼料中には含まれていない。そこで本研究では爆砕物を家畜に給与して動物の消化率と第一胃内発酵の様相を検討した。まず爆砕シラカバと爆砕ポプラをめん羊に給与したところ、有機物の見かけの消化率はそれぞれ42%と36%であった。爆砕物は粗飼料的性質が弱く、第一胃内での滞留時間が短いため消化率が低下することもあり、飼料として利用するときの形状や組み合わせる飼料に考慮が必要と思われた。爆砕ポプラのメタノール抽出物には、in vitro条件下で、第一胃内の特定の微生物活性を阻害する物質が含まれる可能性が、デンプンとセルロースの分解能を指標とした実験で示唆された。しかし実際に爆砕ポプラをめん羊に給与したとき、第一胃のVFA濃度は対照飼料を給与した場合と変らず、またアンモニア濃度は低いものの、第一胃の微生物の生育を抑制するほど低下しなかったので、爆砕ポプラの給与によって、第一胃発酵はとくに悪影響を受けず、それを飼料として利用してもとくに支障がないことが知られた。結局、爆砕物はそれを給与する形態に考慮すれば、実用上、反すう家畜の飼料の一部として利用しても、ほとんど問題がないことから、粗飼料資源が不足する地域で、これを給与することは好ましいことが明らかとなった。ポプラとシラカバを28kg/【cm^2】の条件下で、4分間処理して爆砕物を作成した。それを用いて、めん羊による消化率を求めるため、体照区ではアルファルファ乾草、試験区ではその30%を爆砕したポプラとシラカバにそれぞれ置きかえて、消化試験を実施した。その結果、爆砕処理によって、これらの木材の消化率は改善されて、乾物1kg当たりの可消化エネルギー含量が爆砕ポプラで1.56Mcal,シラカバで1.79Mcalとなった。しかし爆砕材のめん羊による嗜好性はいくぶん悪く、飼料乾物の40%を給与するという当初の計画は個体によって困難なものもいたため、本試験ではそれを30%に変更した。したがって、爆砕物の飼料的利用に際しては、嗜好性の改善について研究することが実用的に重要と考えられた。つぎに爆砕ポプラの給与によって、第1胃内の微生物の炭水化物,蛋白質分解活性がどのような影響をうけるかを検討した。アルファルファ乾草やふすまを主成分とする基礎飼料で飼育されためん羊と、基礎飼料の40%を爆砕ポプラに置きかえためん羊から第1胃内容液を採取し、in vitro条件下でセルロース活性,デアミナーゼ活性およびプロテェイナーゼ活性を調べた。その結果、爆砕ポプラを給与されためん羊の第1胃内容液のセルロース分解能は個体による程度の違いがあったが、3446%低下した。またデアミナーゼ活性は4860%,プロテェイナーゼ活性は3948%低下した。したがって、木材を爆砕して反すう動物に給与すると、消化率は著しく改善されるものの、その一方では、爆砕物無給与時に比較して、反すう胃内微生物によるセルラーゼ,デアミナーゼ,プロテェイナーゼ活性はいくぶん抑制されることが知られた。したがって今後は、このような微生物に対する負の影響が、爆砕物中のどんな成分によってもたらされるのかについて研究することが重要であるように考えられた。
KAKENHI-PROJECT-61560303
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61560303
爆砕処理による木材の構造性炭水化物の飼料価値改善に関する研究
本年度は爆砕ポプラの水,メタノール抽出物が,第1胃内微生物活性に及ぼす影響をin vitroで調べた.まず爆砕ポプラ(28kg/cm^2, 5分間処理)200g(DM87g)を蒸留水600mlで3回抽出し, G2のガラスフィルターで3液をえ,続けて,水抽出後の残渣をメタノール800mlで3回抽出し,同様に3液をえ,両液とも40°Cでエバポレーターを用い濃縮乾固した後,真空乾燥し,それぞれ水抽出物とメタノール抽出物を作成した.一方,アルファルファ乾草,ばん砕大麦(3:2)を給与しているフィステル装着めん羊より給餌前に第1胃内容物を採取し, in vitroの培養に用いた.第1胃内容物を二重ガーゼでろ過後, 1000rpmで遠沈した上澄で,人工唾液とともにセルロース粉末0.5gを48時間, CO_2通気下で培養し,続けて培養液の残渣をND処理し,第1胃内微生物のセルロース分解能を調べた.また,第1胃内容物を二重ガーゼでろ過した液(RF)25mlと人工唾液25mlで,コーンスターチ0.9g,カゼイン0.1gを4時間培養し,でん粉消失率をでん粉分解能として測定した.さらにRFを用い,カゼインを基質としてERFLEらの方法に従って,デアミナーゼ活性を調べた.抽出物は,デアミナーゼ活性については基質の10%,他の2つについては5.10%添加し,添加の影響を調べた.爆砕ポプラの水およびメタノール抽出物の収量は乾物でそれぞれ14.9%, 16.0%であった.メタノール抽出物を添加すると,第1胃内微生物のセルロース分解能は若干減少したが,水抽出物については影響はなかった.でん粉分解能はメタノール抽出物添加でいくぶん低下した.またカゼイン分解能は水抽出物添加で増加したが,メタノール抽出物添加で変化がなかった.したがって,メタノール抽出物には,特定の微生物の活性を低下させる物質が含まれている可能性が考えられた.爆砕ポプラ中の芳香族化合物の同定については,液体クロマトグラフィを用いて検討中である.本年度は、過去2年間にわたって実施した研究成果を検討し、それをとりまとめて、印刷して公表する時期にあたる。そこで、研究課題名と同じ題名の38頁よりなる印刷物を作成した。以下にその概要を示す。木質系バイオマスは、豊富な有機物資源であり、反すう家蓄が利用できる構造性炭水化物を多く含む。しかし木材中の構造性炭水化物はリグニンと固く結びついているため、その大部分が飼料として直接利用できない。この木材に爆砕処理を施すと、物理的、化学的性状が変化し、その構造性炭水化物の一部が、反すう家蓄第一胃内微生物による分解を受け易くなる。しかし、爆砕処理によって木材リグニンが分解されるときに生じる芳香族化合物は通常の飼料中には含まれていない。そこで、本研究では爆砕物を家蓄に給与して、動物の消化率と第一胃内発酵の様相を検討した。それにあたっては、つぎの4つの実験を行った。
KAKENHI-PROJECT-61560303
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主体的学習における知識の洗練化を支援するワークベンチ・フレームワークの提案と実現
ネットワーク上に点在する学習リソースを収集・整理しながら,自らの知識を再構成していく主体的な学習スタイルは,近年より身近かつ重要なものとなっている。しかし,現状では主体的学習における内省-外化のプロセスに着目した支援環境は少ない。本研究では,特にプレゼンテーションによる知識外化におけるピアレビューを通じた主体的学習の知識洗練化に着目した,知識洗練化モデルの提案,および,それにもとづく支援環境のフレームワークの提案,試作,評価を行った。ネットワーク上に点在する学習リソースを収集・整理しながら,自らの知識を再構成していく主体的な学習スタイルは,近年より身近かつ重要なものとなっている。しかし,現状では主体的学習における内省-外化のプロセスに着目した支援環境は少ない。本研究では,特にプレゼンテーションによる知識外化におけるピアレビューを通じた主体的学習の知識洗練化に着目した,知識洗練化モデルの提案,および,それにもとづく支援環境のフレームワークの提案,試作,評価を行った。本研究は,主体的な学習を効果的に支援するために,学習者の獲得した知識の洗練化プロセスに着目した学習支援方法の提案と,それにもとづく学習支援環境の実装・検証を目的とするものである.平成18年度においては,我々が目的とする知識洗練のためのワークベンチ・フレームワークを構築するための,知識洗練モデルの構築と主体的学習支援環境の全体設計を行い,その主要構成要素となる複数の支援ツールの開発を行った.また,その成果を国際会議,および国内の全国大会と研究会にて報告した.(1)知識洗練モデルの構築:平成18年度には,主体的学習における学習者の知識外化プロセスに着目した知識洗練モデルの考察・検討を行った.学習により獲得された知識の外化には様々な形態が存在するが,今回は特にPowerPointなどのプレゼンテーション・ツールを用いた知識の外化を対象とし,ピアレビューとバックレビューを通じた知識洗練化モデルと,それにもとづく学習支援手法を提案した.(2)学習支援ツールの設計・開発:主に学習者が獲得した知識を内省して外化するための概念構造の表現ツールの設計と開発,さらに,プレゼンテーションリハーサルを対象としたピアレビュー支援環境の設計と試作を行った.前者は,知識を概念グラフとして描画するための支援ツールであり,本フレームワークでの主な知識表現ツールとして利用される.また,後者では,学習者のプレゼンテーションをビデオ撮影しながら,PowerPointファイルを動的に解析して自動的にHyperVideoを作成してレビュー作業を支援する手法を独自に開発・試作することで,新しいプレゼンテーション・レビュー支援方法の提案を行った。本研究は、主体的な学習を効果的に支援するために、学習者の獲得した知識の洗練化プロセスに着目した学習支援方法の提案と、それにもとづく学習支援環境の実装・検証を目的とするものである。平成19年度においては、前年度において行った、知識洗練モデルの構築と主体的学習支援環境の全体設計にもとづき、知識洗練のためのワークベンチ・フレームワークを構築し、特にプレゼンテーションによる知識外化とピアレビューによる洗練化に着目したレビュー支援環境の開発を行った。また、その成果を国際会議、および国内の全国大会と研究会にて報告した。(1)プレゼンテーション・リハーサルを対象としたピアレビュー支援環境の構築:昨年度に引き続き、主に学習者が獲得した知識を内省して外化するための概念構造の表現ツールの設計と開発、さらに、プレゼンテーションリハーサルを対象としたピアレビュー支援環境の設計と試作を行った。前者は、知識を概念グラフとして描画するための支援ツールであり、本フレームワークでの主な知識表現ツールとして利用される。また、後者は、学習者のプレゼンテーションをビデオ撮影しながら、PowerPointファイルを動的に解析して自動的にHyperVideoを作成してレビュー作業を支援する手法を独自に開発・試作することで、新しいプレゼンテーション・レビュー支援方法の提案を行った。(2)開発システムの試験運用とデータ収集:卒業研究発表を対象とした試験運用を行う評価実験を行い、理論の検証に有効なデータを収集・検討することができた。今後はシステムに改良を加え、本格的な評価実験を行う予定である。本研究では,平成19年度までに,主に学習者が獲得した知識を内省し外化するための概念構造の外化ツールの設計と開発,プレゼンテーションを対象とした知識外化における知識洗練プロセスのモデル化とピアレビュー支援環境の設計と試作および予備的な評価実験などを行った.平成20年度は,システムの改良を行いながら,複数のユーザによる本格的な評価実験を進め,本研究が提案する主体的学習のための知識洗練モデルの妥当性の検証を行った.また,これまでの研究成果をまとめ,複数の国内外の研究会や国際会議などにて発表を行った.平成20年度における主要な研究課題は,以下の通りである.(1)プレゼンテーションにおけるピアレビューとバックレビュー方法:本研究では知識の外化として,特にプレゼンテーションにおけるピアレビュープロセスに着目した知識洗練支援の検討を行った.平成20年度には,土台となるレビュー支援環境のプロトタイプシステムを完成し,特に収集された複数のピアレビュー結果をプレゼンテーション改善に役立てるために,整理・分析して学習者にフィードバックするバックレビュー支援方法の検討と実装による評価を行った.(2)ネットワーキングを用いた遠隔非同期によるレビュー環境の実現:現在開発中のレビュー支援環境は,ローカル環境におけるミーティング環境を前提として設計されている.しかし,多くの場合地理的時間的な制約からレビュアーの確保が困難であることが平成19年度までの試験運用の結果わかった.そこで平成20年度は遠隔非同期によるレビューを可能とするサーバ環境を設計開発し,試作・検討を行った.
KAKENHI-PROJECT-18500712
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18500712
褐色脂肪組織の脂肪合成を促進する新しい神経伝達因子のcDNAクローニング
私共は、ウシや、ラットの脳内に褐色脂肪組織での脂肪合成を促進する因子を見出し、この作用因子を脳由来脂肪合成促進因子(Brain-Derived Lipogenic Factor,BDLF)と名付けた。本研究では、BDLFを単離・精製し、アミノ酸配列の決定とcDNAクローニングを試みた。まず、約12kgの牛の全脳を、蛋白分解酵素阻害剤であるPMSFとleupeptinを含む5倍量の水でホモゲナイズし、遠心して上清を採取した。これに乳酸を加えてpHを3.5とした後、もう一度遠心して沈澱物を除いた。更に上清にtriethanolamineを加えてpHを7.0に戻した後、再度遠心し、得られた上清を粗抽出液として使用した。この粗抽出液は脂肪など阻害因子を多く含み、脂肪合成活性を検出することはできなかった。しかし、これをイオン交換樹脂に吸着させ、濃度勾配溶出によってクロマトグラフィーを行なうと、BATの脂肪酸合成を強く促進する活性画分が得られた。更に、この活性因子を疎水性クロマトグラフィーにて分画した後、ゲルろ過によって分離すると、インスリンよりやや大きい分子量約6500の画分に強い脂肪酸合成促進活性が検出された。この活性画分を逆相系HPLCによって分離したところ、BDLFはほぼ単一のピークとなった。脂肪組織に作用して脂肪酸合成を促進する因子としては、これまでインスリン、IGF-I、IGF-IIが知られている。BDLFもまた、トリプシンを作用させるとその脂肪酸合成促進活性が消失することから、ポリペプチドであると考えられる。しかし、逆相系HPLCにおいて、BDLFが溶出される位置は牛インスリンやIGF-I、IGF-IIと異なっており、約31%のacetonitorile濃度にて溶出された。BDLFの最終精製標品は約400ngと微量であるが、今後これを用いてアミノ酸の部分配列を決定し、cDNAクローンから全一次構造を明らかにしたい。私共は、ウシや、ラットの脳内に褐色脂肪組織での脂肪合成を促進する因子を見出し、この作用因子を脳由来脂肪合成促進因子(Brain-Derived Lipogenic Factor,BDLF)と名付けた。本研究では、BDLFを単離・精製し、アミノ酸配列の決定とcDNAクローニングを試みた。まず、約12kgの牛の全脳を、蛋白分解酵素阻害剤であるPMSFとleupeptinを含む5倍量の水でホモゲナイズし、遠心して上清を採取した。これに乳酸を加えてpHを3.5とした後、もう一度遠心して沈澱物を除いた。更に上清にtriethanolamineを加えてpHを7.0に戻した後、再度遠心し、得られた上清を粗抽出液として使用した。この粗抽出液は脂肪など阻害因子を多く含み、脂肪合成活性を検出することはできなかった。しかし、これをイオン交換樹脂に吸着させ、濃度勾配溶出によってクロマトグラフィーを行なうと、BATの脂肪酸合成を強く促進する活性画分が得られた。更に、この活性因子を疎水性クロマトグラフィーにて分画した後、ゲルろ過によって分離すると、インスリンよりやや大きい分子量約6500の画分に強い脂肪酸合成促進活性が検出された。この活性画分を逆相系HPLCによって分離したところ、BDLFはほぼ単一のピークとなった。脂肪組織に作用して脂肪酸合成を促進する因子としては、これまでインスリン、IGF-I、IGF-IIが知られている。BDLFもまた、トリプシンを作用させるとその脂肪酸合成促進活性が消失することから、ポリペプチドであると考えられる。しかし、逆相系HPLCにおいて、BDLFが溶出される位置は牛インスリンやIGF-I、IGF-IIと異なっており、約31%のacetonitorile濃度にて溶出された。BDLFの最終精製標品は約400ngと微量であるが、今後これを用いてアミノ酸の部分配列を決定し、cDNAクローンから全一次構造を明らかにしたい。
KAKENHI-PROJECT-05857007
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05857007
現代日本における公共性の実践
○現代日本における公共性の実践という問題を、social capitalという社会学の新しい概念の中に位置づけ、広義のコミュニティの課題と解決のあり方として明らかにすることを目的として、着実に研究を進めた。2002年度からの東京都世田谷区調査をふまえ、2004年度は東京都江戸川区、練馬区、目黒区、八王子市、調布市の事例を参考として、調査を進めた。○コミュニティ形成の実証研究:2003年度世田谷調査の取りまとめ世田谷区における地域福祉の現状と課題について2003年度に実施した研究成果の取りまとめを行い、『ネットワークと地域福祉』という報告書を刊行した。内容としては、「地域社会」を様々な次元での人々の具体的なネットワークとして読み解きながら、「まちづくり」「プレーパーク」「子育て支援」などの諸課題について、諸団体・行政への聞き取りを精力的に行い、現状と課題を整理し、これからの地域のあり方について提言を行った。○コミュニティ形成の実証研究:2004年度地域調査の実施第一に、地域における施設ケアと在宅ケアとの中間形態として近年注目されている「グループホーム」に焦点をあて、新たな調査を企画し、実施した。内容としては、高齢者・障害者・子どもの領域別に、文献調査とグループホームの実態調査を精力的に行い、グループホームが注目されるようになった社会的背景、現場での課題認識、行政の課題などをインタビュー法によって調査を行い、多様な現場の実態を実証的に調査した。第二に、コミュニティ全体で孤立した母親の子育てをいかに支援するかという課題について、東京都世田谷区の社会福祉協議会が実施している「子育てサロン」を事例に、新たな調査を実施した。内容としては、「子育てサロン」の代表者と参加者に対して質問紙法により、支援する側・される側の認識の共通性・差異や今後の支援策の課題について実証的に調査を行った。○現代日本における公共性の実践という問題を、social capitalという社会学の新しい概念の中に位置づけ、広義のコミュニティの課題と解決のあり方として明らかにすることを目的として、着実に研究を進めた。2002年度からの東京都世田谷区調査をふまえ、2004年度は東京都江戸川区、練馬区、目黒区、八王子市、調布市の事例を参考として、調査を進めた。○コミュニティ形成の実証研究:2003年度世田谷調査の取りまとめ世田谷区における地域福祉の現状と課題について2003年度に実施した研究成果の取りまとめを行い、『ネットワークと地域福祉』という報告書を刊行した。内容としては、「地域社会」を様々な次元での人々の具体的なネットワークとして読み解きながら、「まちづくり」「プレーパーク」「子育て支援」などの諸課題について、諸団体・行政への聞き取りを精力的に行い、現状と課題を整理し、これからの地域のあり方について提言を行った。○コミュニティ形成の実証研究:2004年度地域調査の実施第一に、地域における施設ケアと在宅ケアとの中間形態として近年注目されている「グループホーム」に焦点をあて、新たな調査を企画し、実施した。内容としては、高齢者・障害者・子どもの領域別に、文献調査とグループホームの実態調査を精力的に行い、グループホームが注目されるようになった社会的背景、現場での課題認識、行政の課題などをインタビュー法によって調査を行い、多様な現場の実態を実証的に調査した。第二に、コミュニティ全体で孤立した母親の子育てをいかに支援するかという課題について、東京都世田谷区の社会福祉協議会が実施している「子育てサロン」を事例に、新たな調査を実施した。内容としては、「子育てサロン」の代表者と参加者に対して質問紙法により、支援する側・される側の認識の共通性・差異や今後の支援策の課題について実証的に調査を行った。○現代日本における公共性の実践という問題を、social capitalという社会学の新しい概念の中に位置づけ、広義のコミュニティの課題と解決のあり方として明らかにすることを目的として、着実に研究を進めた。この分野の基本文献と調査事例の双方を検討し、social capitalの具体的なあり方を実証的に研究するための理論的・方法論的な整備をおこなう。特に、ボランティアの実践の深さと広がりを把握する上でどのような指標を用いることが望ましいかを検討した。○コミュニティ形成の実証研究:世田谷調査東京都世田谷区における多様な市民による自発的なコミュニティ形成の活動について実証調査を開始した。分野としては、高齢者、障害者、子どもの<ケア>の社会化に関わる多様な活動を取り上げ、諸団体への聞き取りを精力的に行い、市民と行政、NPOなどがどのように課題を認識し、どのような活動を行っているかの実証研究に入った。○コミュニティ形成の実証研究:新潟県大和町調査これまで相関社会科学研究室で2年をかけて実施してきた、大和町の農村調査の取りまとめを行い、報告書を作成した。「伝統的」な社会結合とボランティアなどの新しい社会参加の形など、有意義な研究成果が得られた。〇現代日本における公共性の実践という問題を、Social capitalという社会学の新しい概念の中に位置づけ、広義のコミュニティの課題と解決のあり方として明らかにすることを目的として、着実に研究を進めた。主として、東京都世田谷区を事例としているが、東京都江戸川区、武蔵野市、兵庫県神戸市の事例などを参考として、調査を進めた。○コミュニテイ形成の実証研究:2002年度世田谷調査の取りまとめ世田谷区における地域福祉の現状と課題について2002年度に実施した実証調査について研究成果の取りまとめを実施し、『ケアの社会化とコミュニティ』という報告書を刊行した。
KAKENHI-PROJECT-14310072
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14310072
現代日本における公共性の実践
内容としては、高齢者、障害者、子どもの<ケア>の社会化に関わる多様な活動を取り上げ、諸団体への聞き取りを精力的に行い、それぞれの分野の地域福祉の現状と課題を整理した上で、市民や行政がどのような活動を行っているかを研究し、これからの地域のあり方について提言を行った。○コミュニテイ形成の実証研究:2003年度世田谷調査の実施世田谷区における多様な市民による自発的なコミュニティ形成の活動について新たな調査を企画し、実施した。内容としては、高齢者、障害者、子どもの<ケア>の社会化に関わる多様なまちづくり活動を個別に取り上げ、諸団体への聞き取りを精力的に行い、市民と行政、社会福祉協議会、NPOなどがどのように課題を認識し、どのような活動を行っているか、質問紙法とインタビュー法を駆使して、それぞれに特色のあるネットワーク形成の動態を実証的に調査した。○現代日本における公共性の実践という問題を、social capitalという社会学の新しい概念の中に位置づけ、広義のコミュニティの課題と解決のあり方として明らかにすることを目的として、着実に研究を進めた。2002年度からの東京都世田谷区調査をふまえ、2004年度は東京都江戸川区、練馬区、目黒区、八王子市、調布市の事例を参考として、調査を進めた。○コミュニティ形成の実証研究:2003年度世田谷調査の取りまとめ世田谷区における地域福祉の現状と課題について2003年度に実施した研究成果の取りまとめを行い、『ネットワークと地域社会』という報告書を刊行した。「地域社会」を様々な次元での人々の具体的なネットワークとして読み解きつつ、「まちづくり」「プレーパーク」「子育て支援」などの諸課題について、諸団体・行政への聞き取りを精力的に行い、現状と課題を整理し、これからの地域のあり方について提言を行った。○コミュニティ形成の実証研究:2004年度地域調査の実施第一に、地域における施設ケアと在宅ケアとの中間形態として近年注目されている「グループホーム」に焦点をあて、新たな調査を企画し、実施した。内容としては、高齢者・障害者・子どもの領域別に、文献調査とグループホームの実態調査を精力的に行い、グループホームが注目されるようになった社会的背景、現場での課題認識、行政の課題などをインタビュー法によって調査を行い、多様な現場の実態を実証的に調査した。第二に、コミュニティ全体で孤立した母親の子育てをいかに支援するかという課題について、東京都世田谷区の社会福祉協議会が実施している「子育てサロン」を事例に、新たな調査を実施した。内容としては、「子育てサロン」の代表者と参加者に対して質問紙法により、支援する側・される側の認識の共通性・差異や今後の支援策の課題について実証的に調査を行った。
KAKENHI-PROJECT-14310072
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14310072
高齢化・産業構造変化のなかでの高齢労働者の退職過程の変容ー国際比較研究
研究成果はまもなく出版される裏面最下欄で示す著書に収められるが,概要はつぎのとおりである。(1)調査対象のどの企業も,1980年以降,国家の政策的誘導と労働組合の要求に応じて定年を60歳に延長した。(2)これとともに中高齢層のますます多くが「出向」により本社から準内部労働市場へと排除される傾向がある。(3)また旧定年年齢以降,年功による処遇が停止される傾向がある。(4)さらに在職年金受給を前提に60歳以後も再雇用制度により雇用を継続するケースもある。(5)以上,日本の大企業における伝統的な終身雇用のあり方がかなり変化しつつあると結論しうる。(6)欧米では,きびしい失業と合理化のなか公的年金早期受給や失業保険,障害年金あるいは企業年金を利用した高齢労働者の早期退職の傾向がこの10年余り進行している。この結果,福祉国家財政危機が進行しているのみならず,厳格な機能分担に立ってきたはずの福祉国家の論理と機能の歪みが生じ,「高齢」概念のあいまい化,個別化,多義化がもたらされている。(7)翻って日本では,旧定年年齢時代は,55歳での定年「退職」,60歳からの年金受給,それの間の「自助」という機能分担であったものが,新定年年齢のもとでは,「高齢」は出向とともに始まり,55年で年功処遇から外され,60歳で雇用保障から放遂される,というものに変容した。さらに再雇用制度を考慮すれば,60歳とは段階的引退の一通過点にすぎなくなる。かく欧米とは逆のベクトルで,日本でも「高齢」あるいは「退職」概念の個別化,多義化のプロセスが進んでいる,といえる。(8)60歳からの減額受給という選択肢を伴なうところの年金支給開始年齢の65歳への引き上げは,このプロセスをさらに推進しよう。研究成果はまもなく出版される裏面最下欄で示す著書に収められるが,概要はつぎのとおりである。(1)調査対象のどの企業も,1980年以降,国家の政策的誘導と労働組合の要求に応じて定年を60歳に延長した。(2)これとともに中高齢層のますます多くが「出向」により本社から準内部労働市場へと排除される傾向がある。(3)また旧定年年齢以降,年功による処遇が停止される傾向がある。(4)さらに在職年金受給を前提に60歳以後も再雇用制度により雇用を継続するケースもある。(5)以上,日本の大企業における伝統的な終身雇用のあり方がかなり変化しつつあると結論しうる。(6)欧米では,きびしい失業と合理化のなか公的年金早期受給や失業保険,障害年金あるいは企業年金を利用した高齢労働者の早期退職の傾向がこの10年余り進行している。この結果,福祉国家財政危機が進行しているのみならず,厳格な機能分担に立ってきたはずの福祉国家の論理と機能の歪みが生じ,「高齢」概念のあいまい化,個別化,多義化がもたらされている。(7)翻って日本では,旧定年年齢時代は,55歳での定年「退職」,60歳からの年金受給,それの間の「自助」という機能分担であったものが,新定年年齢のもとでは,「高齢」は出向とともに始まり,55年で年功処遇から外され,60歳で雇用保障から放遂される,というものに変容した。さらに再雇用制度を考慮すれば,60歳とは段階的引退の一通過点にすぎなくなる。かく欧米とは逆のベクトルで,日本でも「高齢」あるいは「退職」概念の個別化,多義化のプロセスが進んでいる,といえる。(8)60歳からの減額受給という選択肢を伴なうところの年金支給開始年齢の65歳への引き上げは,このプロセスをさらに推進しよう。政府の年金政策・雇用政策との関連での定年延長にかかる企業の人事政策の一般的動向と労働市場における高齢者の位置の変化をマクロ的に概観し理論的に整理した概括レポ-トにもとづいて,三つのケ-ススタディを行ない,企業現場で定年延長のもと高齢労働者の処遇がどのように変化しつつあるか,詳細にデ-タを集め,分析した。他にいくつかの企業でヒアリングも行なった。この結果,明らかになったことは,(1)旧定年年齢時以降の労働者は一般的に旧来からの終身雇用年功制の枠外において処遇されていること,(2)ただ産業ごとに,たとえばブルカラ-を多く抱える製造業と典型的なホワイトカラ-セッタ-の銀行では,ある違いがみられること,(3)さらに同一企業内でもその処遇がさらに労働者個々人により相違があるという意味で個別的であること,である。1990年9月にベルリンで開かれた国際会議では,日本側の三っつのケ-ススタディが発表されて,その詳細な実態分析は参加チ-ムの賞讃するところであった。引き続き,もっとも産業構造変化の激しい波を浴びた鉄鋼メ-カ-,典型的な中小零細部門である港湾荷役業の調査に着手しつつあるところである。また国のさまざまな高齢者雇用促進政策の利用実態と効果についても調査を着手しつつある。最後に,これらの実態調査から得られた発見を,一般化する,という理論的作業も残されている。(1)調査対象企業で実熊調査を行ない,また労働省および『連合』などで聞き取りを行なったほか,Y県職業安定課および商工会連合会でも聞き取りを行なった。(2)これらの調査及び(3)について数回の調査研究打ち合わせを山形及び東京で行なった。
KAKENHI-PROJECT-02301082
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高齢化・産業構造変化のなかでの高齢労働者の退職過程の変容ー国際比較研究
(3)オランダ・ライデン大学で5月に行なわれた国際会議およびドイツ・ベルリン科学センタ-で11月に行なわれた国際会議のためのペ-パ-をそれぞれ執筆した。(4)同上会議に出席した(ライデン大学は木村,ベルリン科学センタ-は木村,岡が出席した)。(6)このpaperは,各国チ-ムのレポ-トと合わせて,"Between VUT and Shukko"というタイトルで,来年末にオランダのWalfer de Gruyterという出版社より出版される予定である。(7)これと並行して日本語での報告書の作成段階にも入りつつある。研究成果はまもなく出版される11欄の著書に収められるが,概要はつぎのとおりである。(1)調査対象のどの企業も,1980年以降,国家の政策的該導と労働組合の要求に応じて定年を60歳に延長した。(2)これとともに中高年層のますます多くの準内部労働市場の利用による出向という形での本社からの排除の傾向がある。(3)また旧定年年数以降,年功による処遇が停止される一般的傾向がある。(4)さらに在職年金受給を前提に60歳以後も再雇用制度により雇用を継続するケースもある。(5)以上,日本の大企業における伝統的な終身雇用のあり方がかなり変容しつつあると結論しうる。(6)欧米では,きびしい失業と合理化のなか,公的年金早期受給や失業保険,障害年金あるいは企業年金の利用による高齢者の早期退職の傾向がこの10年間進行している。この結果,福祉国家財政危機が進行しているだけでなく,厳格な機能分担にたつはずの福祉国家の論理が歪められ,「高齢」概念のあいまい化,多義化がもたらされている。(7)翻って日本では,旧定年時代は55歳での「退職」,60歳からの年金受給,その間の「自助」という機能分担であったものが,新定年のもとでは,「高齢」は出向とともに始まり,55歳で年功処遇から外され,60歳で雇用保障から放逐されるというものに変容した。さらに再雇用制度を考慮すれば,60歳とは段階的引退の一通過失にすぎなくなる。かく欧米とは逆のベクトルで,日本でも「高齢」概念の個別化・多義化のプロセスが進んでいるといえる。(8)年金支給開始年齢の65歳への引き上げ(60歳からの減額受給の選択肢を件なう)は,このプロセスをさらに推進するであろう。
KAKENHI-PROJECT-02301082
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高齢者・老人の人権の憲法学的・実証的研究
平成6年度、引き続き平成7年度において、基本的に、(I)高齢者の人権(自己決定権・生存権など)についての比較憲法的分析作業、(II)日本における要介護高齢者の施設福祉システムの現状についての実態調査作業と理論分析作業、および、(III)本補助金交付を契機として申請者が設立した「家族と憲法・民法研究会」での発表・検討作業を行ってきた。そして、高齢者の人権をめぐる憲法理論の現況と問題点については、論文「高齢者の人権と憲法学」、「年齢による区別の合憲性」として結実させ、人権基礎論、人権の実効的救済方法論という基本問題へと展開させていくための今後の研究の基礎を固めることができた。また、平成7年度半ばにしてとりわけ重要視されるに至った諸課題-成年後見制度、公的介護保険制度に関する基礎理論と具体的提言等-についても取り組んできた。もっとも、「世代間公平の原理」の法律学的分析もアメリカで比較的最近行われ始めたにすぎないこともあって、なお、比較法的検討を継続すべく、平成7年度末の時点ではこれらの諸論点については、未だ個別論文として公刊するに至っていない。今後、スェ-デン・ドイツ・アメリカなどの外国視察調査(本件科研補助金の対象外)の機会を得て、これらの諸点についても個別論文として完成したいと考えている。平成6年度、引き続き平成7年度において、基本的に、(I)高齢者の人権(自己決定権・生存権など)についての比較憲法的分析作業、(II)日本における要介護高齢者の施設福祉システムの現状についての実態調査作業と理論分析作業、および、(III)本補助金交付を契機として申請者が設立した「家族と憲法・民法研究会」での発表・検討作業を行ってきた。そして、高齢者の人権をめぐる憲法理論の現況と問題点については、論文「高齢者の人権と憲法学」、「年齢による区別の合憲性」として結実させ、人権基礎論、人権の実効的救済方法論という基本問題へと展開させていくための今後の研究の基礎を固めることができた。また、平成7年度半ばにしてとりわけ重要視されるに至った諸課題-成年後見制度、公的介護保険制度に関する基礎理論と具体的提言等-についても取り組んできた。もっとも、「世代間公平の原理」の法律学的分析もアメリカで比較的最近行われ始めたにすぎないこともあって、なお、比較法的検討を継続すべく、平成7年度末の時点ではこれらの諸論点については、未だ個別論文として公刊するに至っていない。今後、スェ-デン・ドイツ・アメリカなどの外国視察調査(本件科研補助金の対象外)の機会を得て、これらの諸点についても個別論文として完成したいと考えている。平成6年度は、当初の研究計画に従い、(I)高齢者の人権(自己決定権・生存権など)についての比較憲法的分析作業、および、(II)日本における要介護高齢者の施設福祉システムの現状についての実態調査作業と理解分析作業を行った。日本の問題状況についての憲法学上の問題点とその解決の方向性については、論文「高齢者の人権と憲法学」として公表した。平成7年度では、外国における要介護高齢者の法的処遇をめぐる理論動向の分析作業のまとめを公表すること、実態分析作業のまとめを公表することを予定している。なお、申請者は、平成6年度補助金交付を契機として、勤務先京都産業大学法学部の憲法専攻・民法の専攻の研究者および他大学の憲法専攻等の研究者とで「家族と憲法・民法研究会」を設立し、月1回のペースで合同研究を行ってきている。〈高齢者の人権の憲法学的・実証的研究〉の課題は、「高齢者と家族・日本社会、人と人とのつながりのあり方、高齢世代と若い世代とのとの間の公平・公正の原理」といったよりグローバルなきわめて重要な課題に重大なインプリケーションをもつものである。本件補助金交付を契機として開始されることになった上記研究会の意義は大きく、平成7年度以降において、文部省科学研究・出版助成に値する研究へと結実させていきたいと考えている。平成7年度は、平成6年度に引き続き、(I)高齢者の人権(自己決定権・生存権など)についての比較憲法的分析作業、および、(II)日本における要介護高齢者の施設福祉システムの現状についての実態調査作業と理論分析作業を継続した。高齢者の人権をめぐる憲法理論の現況と問題点については、論文「高齢者の人権と憲法学」、「年齢による区別の合憲性」として結実させ、人権基礎論、人権の実効的救済方法論という基本問題へと展開させていくための今後の研究の基礎を固めることができた。また、平成7年度半ばにしてとりわけ重要視されるに至った諸課題-成年後見制度、公的介護保険制度に関する基礎理論と具体的提言等-についても取り組んできた。もっとも、「世代間公平の原理」の法律学的分析もアメリカで比較的最近行われ始めたにすぎないこともあって、なお、比較法的検討を継続すべく、平成7年度末の時点ではこれらの諸論点については、未だ個別論文として公刊するに至っていない。今後、スェ-デン・ドイツ・アメリカなどの外国視察調査(本件科研補助金の対象外)の機会を得て、これらの諸点についても個別論文として完成したいと考えている。
KAKENHI-PROJECT-06620019
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悪性リンパ腫のイノシトールリン脂質多様性に基づく新規治療戦略の確立を目指した研究
イノシトールリン脂質(PIPs)は主に細胞膜に存在し、細胞内蛋白シグナル伝達に重要な役割を果たし発がんにも重要な関与をしている。悪性リンパ腫においてもPIPs-AKT signalingの活性化が報告されている。PIPsは結合する脂肪酸のパターンなどにより200以上の分子種に分けられるが、分子種の違いがもたらす生理学的意義は不明であった。本研究は悪性リンパ腫におけるPIPs分子種多様性の意義を解明するために行っている。リンパ腫細胞株におけるPIPs質量分析はほぼ終了しており、クラスタリング解析により、細胞増殖能が高く悪性度が高い細胞株は、PIPsに結合する脂肪酸側鎖の炭素数が小さく、悪性度が低い細胞株は脂肪酸側鎖の炭素数が多い分子種が主体であることがわかった。現在臨床検体でも同様の結果が得られるか、リンパ腫患者のリンパ節において解析を続けており、検体数200を目標にしている。昨年度は検体数60程度まで増えており、低悪性度の「濾胞性リンパ腫」では、PIPs脂肪酸側鎖の炭素数が38の分子種が主体であるのに対して、中悪性度の「びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫」では炭素数34、36の短い鎖長の脂肪酸を有する分子種が多いことが見出された。現在FDAではPI3K阻害剤idelalisibが濾胞性リンパ腫に対する適応を取得しており、PIPs分子種の違いがPIPs-AKT signaling関連抗体薬への効果に関連している可能性もある。現在PIPsプロファイルの異なる細胞株に対する、様々な薬剤感受性を比較検討中である。また、PIPsプロファイルの違いがもたらす遺伝学的背景も検索するため、DNA網羅的遺伝子発現解析を実施しており、炭素数38が主体のグループと炭素数34が主体のグループでは細胞周期に関連する遺伝子群の発現に有意な差があることも確認している。細胞株に対する解析は概ね順調に経過しており、PIPs解析やDNA遺伝子発現解析はほぼ終了している。薬剤感受性試験は予定の20薬剤については実施し終えているが、薬剤を追加して検討を続けている。臨床検体のPIPs解析は200検体を目標にしているが、これまで集まっているのは60検体程度であり予定を下回っている。現在関連施設にも協力を仰ぎ、検体収集に努めている。引き続き臨床検体におけるPIPs質量分析を継続する。In Vivoの解析を追加するため、免疫不全マウスにPIPsプロファイルの異なる細胞株を移植を行う予定であり、現在数種類のリンパ腫細胞株を皮下移植し腫瘤形成することを確認している。今後は移植後マウスにPI3K阻害剤をはじめとする抗がん剤を暴露させ、抗腫瘍効果の違いを検討する。イノシトールリン脂質(PIPs)は主に細胞膜に存在し、細胞内蛋白シグナル伝達に重要な役割を果たし発がんにも重要な関与をしている。悪性リンパ腫においてもPIPs-AKT signalingの活性化が報告されている。PIPsは結合する脂肪酸のパターンなどにより200以上の分子種に分けられるが、分子種の違いがもたらす生理学的意義は不明であった。本研究は悪性リンパ腫におけるPIPs分子種多様性の意義を解明するために行っている。リンパ腫細胞株におけるPIPs質量分析はほぼ終了しており、クラスタリング解析により、細胞増殖能が高く悪性度が高い細胞株は、PIPsに結合する脂肪酸側鎖の炭素数が小さく、悪性度が低い細胞株は脂肪酸側鎖の炭素数が多い分子種が主体であることがわかった。現在臨床検体でも同様の結果が得られるか、リンパ腫患者のリンパ節において解析を続けており、検体数200を目標にしている。昨年度は検体数60程度まで増えており、低悪性度の「濾胞性リンパ腫」では、PIPs脂肪酸側鎖の炭素数が38の分子種が主体であるのに対して、中悪性度の「びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫」では炭素数34、36の短い鎖長の脂肪酸を有する分子種が多いことが見出された。現在FDAではPI3K阻害剤idelalisibが濾胞性リンパ腫に対する適応を取得しており、PIPs分子種の違いがPIPs-AKT signaling関連抗体薬への効果に関連している可能性もある。現在PIPsプロファイルの異なる細胞株に対する、様々な薬剤感受性を比較検討中である。また、PIPsプロファイルの違いがもたらす遺伝学的背景も検索するため、DNA網羅的遺伝子発現解析を実施しており、炭素数38が主体のグループと炭素数34が主体のグループでは細胞周期に関連する遺伝子群の発現に有意な差があることも確認している。細胞株に対する解析は概ね順調に経過しており、PIPs解析やDNA遺伝子発現解析はほぼ終了している。薬剤感受性試験は予定の20薬剤については実施し終えているが、薬剤を追加して検討を続けている。臨床検体のPIPs解析は200検体を目標にしているが、これまで集まっているのは60検体程度であり予定を下回っている。現在関連施設にも協力を仰ぎ、検体収集に努めている。引き続き臨床検体におけるPIPs質量分析を継続する。In Vivoの解析を追加するため、免疫不全マウスにPIPsプロファイルの異なる細胞株を移植を行う予定であり、現在数種類のリンパ腫細胞株を皮下移植し腫瘤形成することを確認している。今後は移植後マウスにPI3K阻害剤をはじめとする抗がん剤を暴露させ、抗腫瘍効果の違いを検討する。これまで20種類の抗がん剤を用いて、PIPsプロファイルと薬剤感受性の関連を検討していたが、PI3K-AKT signaling
KAKENHI-PROJECT-18K16075
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K16075
悪性リンパ腫のイノシトールリン脂質多様性に基づく新規治療戦略の確立を目指した研究
関連の薬剤をさらに追加して検討する必要がある。DNA網羅的遺伝子発現解析はこれまで細胞株に実施していたが、リンパ腫臨床検体でも検討するためマイクロアレイ試薬の追加が必要である。
KAKENHI-PROJECT-18K16075
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Candida albicansの粘膜感染に対する生体防御能に関する研究
本研究にて、口腔・咽頭・食道および膣の粘膜カンジダ症マウスモデルモデルをつくることに成功した。これら感染モデルはそれぞれの解剖学的部位にC.albicansを接種した後に、マウスに鎮静剤(クロルプロマジン)を与え、安静状態とし、菌の粘膜進入を促進することによって可能となった。それぞれの粘膜カンジダ症モデルは、C.albicansの増殖が認められるだけでなく、白苔あるいは炎症性分泌物を生じ、症状を示すという点で画期的である。病理組織学的解析では、粘膜上皮にCandidaの菌糸型発育の集落が認められ、炎症細胞を伴う上皮の過形成(hyperplasia)が一部感染動物で見られ、臨床的な粘膜感染症に類似していた。口腔カンジダ症モデルでは、ウシLactoferrin、ヒト唾液および植物テルペノイドが治療効果を示し、組織学的にも患部の粘膜の正常化を早めることを見出した。また、経口投与のLactoferrinの治療効果が、頸部リンパ節細胞の感染に伴う機能回復と関連することを示した。その回復は同リンパ球のCandida抗原刺激IL-2,IFNγ産生能の増加で認められ、Th1型の応答であることが示唆された。またヒト唾液は、Candidaの増殖を阻止しない濃度でCandidaの付着を阻止、解離させるタンパク質の因子を含むこと、その因子の活性は口腔カンジダ症を発症しやすい高齢者の唾液中には、少ないことを明らかにした。これらの研究結果により口腔カンジダ症における生体防御は局所を中心とした免疫学的機序と、抗菌活性よりむしろCandidaの粘膜への付着を阻止し、口腔から流し去り、胃へ送り込み殺菌するという効率的な防御がおこなわれているものと推定している。一方、膣カンジダ症マウスモデルでは、膣粘膜上皮の肥厚が著しく、その表面にC.albicansが付着・増殖するが、分泌液中のデフェンシン、ラクトフェリン等の抗菌因子がその増殖を抑制するものと推定された。本研究にて、口腔・咽頭・食道および膣の粘膜カンジダ症マウスモデルモデルをつくることに成功した。これら感染モデルはそれぞれの解剖学的部位にC.albicansを接種した後に、マウスに鎮静剤(クロルプロマジン)を与え、安静状態とし、菌の粘膜進入を促進することによって可能となった。それぞれの粘膜カンジダ症モデルは、C.albicansの増殖が認められるだけでなく、白苔あるいは炎症性分泌物を生じ、症状を示すという点で画期的である。病理組織学的解析では、粘膜上皮にCandidaの菌糸型発育の集落が認められ、炎症細胞を伴う上皮の過形成(hyperplasia)が一部感染動物で見られ、臨床的な粘膜感染症に類似していた。口腔カンジダ症モデルでは、ウシLactoferrin、ヒト唾液および植物テルペノイドが治療効果を示し、組織学的にも患部の粘膜の正常化を早めることを見出した。また、経口投与のLactoferrinの治療効果が、頸部リンパ節細胞の感染に伴う機能回復と関連することを示した。その回復は同リンパ球のCandida抗原刺激IL-2,IFNγ産生能の増加で認められ、Th1型の応答であることが示唆された。またヒト唾液は、Candidaの増殖を阻止しない濃度でCandidaの付着を阻止、解離させるタンパク質の因子を含むこと、その因子の活性は口腔カンジダ症を発症しやすい高齢者の唾液中には、少ないことを明らかにした。これらの研究結果により口腔カンジダ症における生体防御は局所を中心とした免疫学的機序と、抗菌活性よりむしろCandidaの粘膜への付着を阻止し、口腔から流し去り、胃へ送り込み殺菌するという効率的な防御がおこなわれているものと推定している。一方、膣カンジダ症マウスモデルでは、膣粘膜上皮の肥厚が著しく、その表面にC.albicansが付着・増殖するが、分泌液中のデフェンシン、ラクトフェリン等の抗菌因子がその増殖を抑制するものと推定された。1.マウス口腔カンジダ症に関してマウス口腔カンジダ症モデルがクロルプロマジンを用いると、確実に作製できることを論文として報告した[次ページTakakura et al.]。またこのモデルで、ウシラクトフェリンの経口投与が有効であることを論文として報告した[次ページTakakura et al.]。またウシラクトフェリンを経口投与したマウスでは、頚部リンパ節のリンパ球数の増加、および応答能の回復が認められた。これらの治療効果の一部に生体防御能の増強が関与することが示唆されたといえよう。ウシラクトフェリンを投与した場合には、Candida感染による炎症に伴い舌乳頭の消失がおきるが、治療効果発現とともに舌乳頭が認められるようになることがわかった。さらにこのモデルで、漢方薬、ポリフェノールなどがラクトフェリンと同様に、投与後35日目で治療効果を示しうることを明らかにした。一方、このモデルで抗真菌剤の治療功果を検討した結果、投与後12日という短期間のうちに口腔内の生菌数を低下させ、治療効果を発揮することも認められた。これらは、生体防御能の増強が、Candidaの粘膜感染を阻止する手段となることを示唆するものである。2.マウス膣カンジダ症モデルに関して帯下様の炎症が認められるマウス膣カンジダモデルの作製に成功した。その際マウスが膣部をなめないこと、またマウス系統の選択が重要なことを明らかにした。BALB/Cマウスでは免疫抑制剤を投与しない条件でも、コルセットを腹部に装着させるだけで、膣感染4日目で炎症を伴う帯下が認められた。
KAKENHI-PROJECT-15590401
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Candida albicansの粘膜感染に対する生体防御能に関する研究
病理学的解析から、C.albicansは膣重層上皮の上部にのみ菌糸形発育をしていたが、一部には菌が子宮頚管に達する場合も認められた。これらはさらなる病態解析研究の土台となる。マウスモデルを用い、Candida albicansの粘膜感染では感染部位(口腔粘膜と膣粘膜)の違いにより病態が異なること、また、両者で、生体防御反応のあり方後異なることを見いだしさらに、防御反応を高めることが期待される天然物を利用することにより、これら粘膜カンジダ症の新たな予防・治療法の開発が可能であることを示唆する結果を得た。すでに発表したクロルプロマジンを用いた口腔内へのCandida接種で作製した口腔カンジダ症モデルの他に、抗炎症ステロイド吸入剤(ベコタイド)を用いた口腔・咽頭カンジダ症モデルを作製した。このモデルでは、咽頭部にCandidaを塗布しそこにステロイド吸入剤を噴霧することで、軟口蓋にもCandida性白苔を生じ、しかもその白苔の深部に炎症性細胞の浸潤がおこり、表皮の肥厚が認められた。(論文作成中)これらのモデルを用いて、白血球の動態を形態学的に調べると共に、マーカー酵素のミエロパーオキシダーゼ量の変化を測定し炎症の指標とできることを明らかにした。また、多種の天然物を用いて防御能の増強を試みた結果、ヒト正常唾液および漢方補剤十全大補湯の経口投与が、これらのカンジダ症の治療に有効であることがわかった。唾液の場合には、基質に付着したCandidaを剥離させる活性がこの防御作用に寄与している可能性を明らかにした。一方、膣カンジダモデルでは、好中球の集積を伴う炎症がおき、それが白帯下に代表される炎症症状を、増悪することを、見いだした。(論文作成中)炎症反応に対し一部の植物精油が、抑制的に働くことを見いだし(論文発表済)、それら植物精油が膣カンジダモデルで治療効果を発揮しうる可能性を現在さぐっている。
KAKENHI-PROJECT-15590401
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基本転写因子異常による造血幹細胞腫瘍化の機構の解析
進展期MDS症例に観察されるt(11;19)(q23;p13.1)の分子解析を行うことにより、新規融合遺伝子MLL/MENのクローニングを行った。MLLはAT hooksと2つのzincfinger domainsを有する転写因子であり、MENは基本転写因子RNAポリメラーゼII伸長因子をコードしている。MENに対するポリタロ-ナル抗体を作成し、MENが80kDの蛋白質として核内に発現していることを明らかにした。基本転写因子MENの異常発現が白血病発症に至る機序を明らかにする目的で、MENの造腫瘍活性を以下の実験で証明した。ラットの線維芽細胞Rat1にMENを遺伝子導入すると、形態学的変化は観察されていないものの、コロニー形成能の増強及び血清要求性の低下が観察された。これらの効果はMENのc末領域に存在するlysine-rich domainを失った欠失変異体では観察されなかった。また、MENを発現しているRat1細胞ではmock細胞に比較してFOS蛋白質の発現が亢進していた。さらに、TRE siteをプロモーター領域に有するレポーターを用いたルシフェラーゼ・アッセイの結果、MENを発現しているRat1細胞ではAP-1活性が亢進していることが明らかになった。これらの効果はすべてMENのlysine-rich domainに依存性があった。run-Off assayにより、MENはlysine-rich domain依存性にfos遺伝子に対する転写伸長を活性化することが明らかになり、これがFOS蛋白質発現の亢進の原因であると考えられた。従って、MENの造腫瘍活性はFOSの発現亢進を介するAP-1活性の増強によるものであることが予測された。進展期MDS症例に観察されるt(11;19)(q23;p13.1)の分子解析を行うことにより、新規融合遺伝子MLL/MENのクローニングを行った。MLLはAT hooksと2つのzincfinger domainsを有する転写因子であり、MENは基本転写因子RNAポリメラーゼII伸長因子をコードしている。MENに対するポリタロ-ナル抗体を作成し、MENが80kDの蛋白質として核内に発現していることを明らかにした。基本転写因子MENの異常発現が白血病発症に至る機序を明らかにする目的で、MENの造腫瘍活性を以下の実験で証明した。ラットの線維芽細胞Rat1にMENを遺伝子導入すると、形態学的変化は観察されていないものの、コロニー形成能の増強及び血清要求性の低下が観察された。これらの効果はMENのc末領域に存在するlysine-rich domainを失った欠失変異体では観察されなかった。また、MENを発現しているRat1細胞ではmock細胞に比較してFOS蛋白質の発現が亢進していた。さらに、TRE siteをプロモーター領域に有するレポーターを用いたルシフェラーゼ・アッセイの結果、MENを発現しているRat1細胞ではAP-1活性が亢進していることが明らかになった。これらの効果はすべてMENのlysine-rich domainに依存性があった。run-Off assayにより、MENはlysine-rich domain依存性にfos遺伝子に対する転写伸長を活性化することが明らかになり、これがFOS蛋白質発現の亢進の原因であると考えられた。従って、MENの造腫瘍活性はFOSの発現亢進を介するAP-1活性の増強によるものであることが予測された。
KAKENHI-PROJECT-09250204
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09250204
周期運動のための制御理論の体系化-遅延フィードバックと繰り返し制御
安定化制御器の既約分解表現に基づき,自由パラメータの補間によって特定の極零点構造を制御器に後天的に埋め込む方法を確立し, Lagrange型補間,およびH∞型補間に対応する手法を得た.遅延フィードバックの応用としてネットワーク制御系の機能分散実験,繰り返し制御の応用として電動自転車の高効率パワーアシスト制御実験をおこなった.さらに,周期現象と関連の深いむだ時間系のモデリングと制御,視覚フィードバックへの応用,受動歩行現象の理論解析等に関しても,各種の成果が得られた.安定化制御器の既約分解表現に基づき,自由パラメータの補間によって特定の極零点構造を制御器に後天的に埋め込む方法を確立し, Lagrange型補間,およびH∞型補間に対応する手法を得た.遅延フィードバックの応用としてネットワーク制御系の機能分散実験,繰り返し制御の応用として電動自転車の高効率パワーアシスト制御実験をおこなった.さらに,周期現象と関連の深いむだ時間系のモデリングと制御,視覚フィードバックへの応用,受動歩行現象の理論解析等に関しても,各種の成果が得られた.(1)安定化制御器のLFT構造を用いて,自由パラメータの補間によって遅延フィードバック制御構造を後天的に埋め込む手法を確立し,台車振子系を用いた実験によりその有効性を検証した.同結果を第50回システム制御情報学会研究発表講演会にて発表した.(2)上記の方法をH∞型補間に拡張した方法について,国際会議MTNS2006で発表した.さらにこれを多入出力系へと拡張した方法を確立し,台車振子系を用いた実験によりその有効性を検証した.同結果を国際会議SICE-ICCAS2006で発表した.(3)繰り返し制御の実システム応用として,電動アシスト自転車を用いた実験を開始した.(株)パナソニック・サイクルテックの技術協力を得て,提案手法によるトルク脈動の低減効果に関して検討をおこなった.これらの中間結果について,第7回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会で発表した.(4)遅延フィードバックならびに繰り返し制御において本質的な役割を果たす,むだ時間要素を含む系に対する制御系設計問題にも取り組んだ.具体的には,汎用のWebカメラを用いたビジュアルフィードバック制御系を構築し,比較的速いダイナミクスをもつメカトロ系である台車振子系の安定化を実現した.同結果を第49回自動制御連合講演会で発表,また国際会議1EEECCA2007に投稿して受理された.(5)さらにネットワーク制御におけるむだ時間補償のために切替型オブザーバを用いる方法について検討し,モデルプラントを作成,実機実験をおこなった.同結果を国際会議IEEE CCA2007に投稿して受理された.(6)ネットワークの輻輳制御モデルに現れる状態依存型むだ時間系のモデリングとSOS解析について検討し,同結果を国際会議IFAC TDS2007に投稿中である.(1)微分差分系の安定解析に用いられる積分作用素のスペクトルの数値計算法に関する結果をまとめ,システム制御情報学会に投稿,掲載済.(2)安定化制御器のLFT構造を用いて,自由パラメータ補間によって遅延フィードバック制御構造を埋め込む手法をまとめ,システム制御情報学会に投稿,掲載済.(3)上記手法をH∞型補間および多入出力系へ拡張した方法をまとめ,計測自動制御学会に投稿,掲載済.(4)ネットワークの輻輳制御モデルに現れる状態依存型むだ時間系のモデリングとSOS解析についての結果をシステム制御情報学会に投稿,掲載済.(5)切替型オブザーバによって通信ネットワークの不規則なむだ時間変動を補償する方法に関して,国際会議IEEE CCA2007において発表.また同内容をシステム制御情報学会に投稿,掲載決定.(6)遅延フィードバックと深い関連を持つ受動歩行の安定解析について,円弧脚形状が歩行安定性に与える効果について第8回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会で発表.受動歩行に内在する安定化機構に関する結果を第8回計測自動制御学会制御部門大会で発表.さらに同内容についてPadua大学(イタリア)にて講演.(7)むだ時間要素を含む系の一例である,汎用Webカメラを用いたビジュアルフィードバック系の,カメラ設置誤差に対するロバスト設計について,国際会議IEEE AMC2008において発表.1.修正FSFH法によって,微分差分系の安定解析に用いられる積分作用素のスペクトルの数値計算法を発展させた共同研究内容を国際会議European Control Conference2009に投稿,採択された.2.上記計算法において,非因果的一次ホールドを用いた手法を提案し,計測自動制御学会(SICE)制御部門大会2009等にて発表.国際会議IFAC Workshop on Time-Delay Systems2009に投稿中.4.周期運動の代表例である受動歩行の安定化機構について,SICE SI部門講演会2009等で発表.さらに同内容についてCambridge大学(英国)にて講演.5.むだ時間を含む視覚フィードバック系のカメラ設置誤差に対するロバスト設計について,SICE制御部門大会2009にて発表.学生による関連発表(2回)は,SICE関西支部支部長賞奨励賞,システム制御情報学会奨励賞を受賞.これを発展させて,国際会議IEEE IECON 2009に投稿中.6.上記技術を応用した大道芸ロボットSOMENOSUKEを開発.国内/国際会議および学術雑誌に投稿中.7.周期運動制御である電動パワーアシスト自転車のエネルギー効率改善に関する検討および実験を実施.SICE関西支部若手研究発表会にて学生発表(優秀発表賞受賞)
KAKENHI-PROJECT-18560437
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家族制難聴の遺伝子解析
前庭水管拡大症はPendred症候群の原因遺伝子であるPDS遺伝子異常で生じることが近年報告された。前庭水管拡大症6家系7症例について遺伝子解析を行った。患者血液より抽出したゲノムDNAからPDS遺伝子のエクソン領域に限り全塩基配列を決定し、遺伝子変位箇所を同定した。1家系でエクソン4、1家系2症例でエクソン10、3家系でエクソン19における点変異を同定した。残りの1家系はエクソン領域には変異は同定されず、イントロン領域もしくはプロモーター領域に遺伝子変異が存在する可能性は残ったが、同領域は数万塩基体にものぼり遺伝子解析には不向きと判断された。エクソン4と10はいづれもヘテロ接合による変異であったが、エクソン19はヘテロ接合の家系とホモ接合の家系とに分かれた。エクソン3の点変異は今までに報告のない新しい変異であり、正常者50名には同様の変異は認められず、遺伝子多型ではなく遺伝子変異であることが確かめられた。エクソン10と19とは既報告の変異であった。エクソン19、2168番目の塩基の点変異に血縁関係のない日本人3家系が集中したことにより、同変異は日本人における前庭水管拡大症のホットスポットである可能性が考えられる。現在、更に多くの同症の患者の遺伝子解析を進めている。甲状腺腫やMondiniなどの他の内耳奇形を認めない前庭水管拡大症候群5例のうち4例のDNAからPDS遺伝子変異を認めた。うち1例はエクソン4におけるheterozygousによる点変異であった。残り3例はエクソン19における同一の点変異であったが、2例にhomozygous mutation、1例にheterozygous mutationを認めた。エクソン4の点変異は今までに報告のない新しい変異で、正常者50名のDNAに認められず、pendrinのcoding regionでの変異であることから前庭水管拡大症候群の原因遺伝子と考えられる。エクソン19における点変異は既にPendred症候群例の変異として報告があったものと同一であった。ミトコンドリアDNA1555変異をもつ前庭水管拡大症候群症例のPDS遺伝子の全エクソンの塩基配列を現在解析中であるが、既に解析を終えたエクソンにおいて変異は認めなられなかった。現在、残りのエクソンの塩基配列を解析中である。今後は新しい点変異の多形性を調べるため正常者群の症例を増やす予定である。前庭水管拡大症はPendred症候群の原因遺伝子であるPDS遺伝子異常で生じることが近年報告された。前庭水管拡大症6家系7症例について遺伝子解析を行った。患者血液より抽出したゲノムDNAからPDS遺伝子のエクソン領域に限り全塩基配列を決定し、遺伝子変位箇所を同定した。1家系でエクソン4、1家系2症例でエクソン10、3家系でエクソン19における点変異を同定した。残りの1家系はエクソン領域には変異は同定されず、イントロン領域もしくはプロモーター領域に遺伝子変異が存在する可能性は残ったが、同領域は数万塩基体にものぼり遺伝子解析には不向きと判断された。エクソン4と10はいづれもヘテロ接合による変異であったが、エクソン19はヘテロ接合の家系とホモ接合の家系とに分かれた。エクソン3の点変異は今までに報告のない新しい変異であり、正常者50名には同様の変異は認められず、遺伝子多型ではなく遺伝子変異であることが確かめられた。エクソン10と19とは既報告の変異であった。エクソン19、2168番目の塩基の点変異に血縁関係のない日本人3家系が集中したことにより、同変異は日本人における前庭水管拡大症のホットスポットである可能性が考えられる。現在、更に多くの同症の患者の遺伝子解析を進めている。前庭水管拡大症はPendred症候群の原因遺伝子であるPDS遺伝子異常で生じることが近年報告された。前庭水管拡大症6家系7症例について遺伝子解析を行った。患者血液より抽出したゲノムDNAからPDS遺伝子のエクソン領域に限り全塩基配列を決定し、遺伝子変位箇所を同定した。1家系でエクソン4、1家系2症例でエクソン10、3家系でエクソン19における点変異を同定した。残りの1家系はエクソン領域には変異は同定されず、イントロン領域もしくはプロモーター領域に遺伝子変異が存在する可能性が残ったが、同領域は数万塩基対にものぼり遺伝子解析には不向きと判断された。エクソン4と10はいづれもヘテロ接合による変異であったが、エクソン19はヘテロ接合の家系とホモ接合の家系とに分かれた。エクソン4の点変異は今までに報告のない新しい変異であり、正常者50名には同様の変異は認められず、遺伝子多型ではなく遺伝子変異であることが確かめられた。エクソン10と19とは既報告の変異であった。エクソン19、2168番目の塩基の点変異に血縁関係のない日本人3家系が集中したことにより、同変異は日本人における前庭水管拡大症のホットスポットである可能性が考えられる。現在、更に多くの同症の患者の遺伝子解析を進めている。
KAKENHI-PROJECT-10671610
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CRISPRによるRNA病モデルiPS細胞・動物の構築と病態解明・治療薬創製
本研究は、1スプライシング操作化合物TG003およびRECTASのスプライシング介入ルールの解明、2スプライシング操作により治療可能な遺伝性疾患に適応できる化合物の予測と合成展開、3CRISPR/Cas9法等で作製した疾患モデルiPS細胞やモデル動物による化合物の作用機序解明と有用性の実証を行い、ポストゲノム治療薬を創製する新しいケミカルバイオロジー分野の創出を目指している。本年度は、スプライシング変動によりGFP/RFPの発現が切り替わるdual reporterシステム(SPREADD)を用いた実験から、TG003が深部イントロン変異を有するNEMO異常症患者の偽エクソン発現を抑制する効果を持つことを明らかにし、患者iPS細胞を病態モデルとしたTNFα応答機能障害がTG003処理により改善することを見出し報告した(2019 J Clin Invest.)。また同様に深部イントロン変異により偽エクソンが発現するV型嚢胞性線維症に対してもTG003が偽エクソンの発現を抑制することを見出し、TG003からの化合物展開により、患者iPS細胞で原因遺伝子CFTRの発現回復効果を有する治療薬候補化合物の取得に成功した(投稿準備中)。RECTASについても、家族性自律神経異常症患者の線維芽細胞を用いたmRNA-seq解析と生化学的解析から作用メカニズムを解明し、家族性自律神経異常症モデルマウスと患者iPS細胞でもRECTASがスプライシングを正常化する作用のあることを確認できた(投稿準備中)。RECTASは偽エクソンによる心ファブリー病や、QT延長症候群にも効果があることが見出されたため、標的遺伝子を組み込んだSPREADDにより最適化合物を検索するとともに、CRISPR/Cas9法によりモデル動物・iPS細胞を使った評価系を構築した。1. TG003が治療効果を持ちうる遺伝子疾患として、NEMO異常を見出すなど、スプライシング操作化合物の標的となりうる疾患が複数、見つかってきている。2.スプライシング操作化合物TG003およびその類縁体を用いた偽エクソンのスキッピングについて、化合物が阻害するCLKファミリーメンバーと、関連するSRタンパク質、スプライシング変動が生じるエクソンについて統合的な理解が得られつつある。3.平成31年度末までに到達予定であった、iPS細胞やモデルマウスを用いた解析が進展し、それぞれの系でスプライシング操作化合物の評価結果が得られつつある。また、iPS細胞モデルの解析例としてNEMO異常症におけるTG003の効果を報告した。4.スプライシング操作化合物について、事業参加者らの研究の蓄積により500を超える類縁化合物コレクションを創製保有している。本コレクションとSPREADDの活用により、V型嚢胞性線維症治療薬候補化合物の取得に成功した。本事例、及びNEMO異常症の事例は、FD治療候補薬RECTASと合わせ、今後、化合物によるスプライシング変動ルール解明というケミカルバイオロジー的手法が効率的なスプライシング異常疾患治療薬創製法となることを示している。5か年計画の最終年度となる2019年度は、研究の柱である1スプライシング操作化合物TG003およびRECTASのスプライシング介入ルールの解明、2スプライシング操作により治療可能な遺伝性疾患に適応できる化合物の予測と合成展開、3CRISPR/Cas9法等で作製した疾患モデルiPS細胞やモデル動物をによる化合物の作用機序解明と有用性の実証、のそれぞれについて成果のとりまとめを進め、ポストゲノム治療薬を創製する新しいケミカルバイオロジー分野の確立を目指す。1については2018年度までにTG003およびRECTASについては2018年度までにmRNA-seqデータに基づくスプライシング操作標的エクソンの特徴の記述が終了している。これらの成果を統合し、スプライシング介入ルールの解明および、治療可能な遺伝性疾患に適応できる化合物の予測(2)を完了させる。遺伝性疾患ごとの化合物の合成展開については嚢胞性線維症の原因となる偽エクソンのスキッピングに対して効果があることを見出すことのできたTG003の周辺化合物につて評価を進める。3についてはCRISPR/Cas9法によりモデル動物・iPS細胞を使った評価系の構築が完了した偽エクソンによる心ファブリー病や、QT延長症候群の系について化合物の評価等を進め、モデル動物・iPS細胞を用いてポストゲノム創薬を進めるというコンセプトの確立を目指す。本研究は、リード化合物添加細胞の全トランスクリプトーム解析から導き出されるスプライシング「介入ルール」を解明し、CRISPR-Cas9技術を用いてRNA病患者のゲノム配列を挿入したRNA病モデルiPS細胞やモデルマウスを作成することにより、RNA病等に対するポストゲノム治療薬を創製する新しいケミカルバイオロジー分野の創出を目指している。これまで見出してきた選択的スプライシング介入化合物を用いて、全トランスクリプトームにおける選択的スプライシングに対する影響を解析した。RNA-Seqにより得られた情報を用いて、MISO(Mixture-of Isoforms)により変化するエクソンを同定してきた。平成27年度は、ヒト細胞とマウス細胞の比較、組織特異的比較により化合物のもつスプライスコードに対する「介入ルール」を決定した(Sakuma et al. BMC Mol Biol 2015)。さらに変化するエクソンと前後のイントロン配列をSVM_BPfinder(イントロン,ブランチポイントの配列解析), MaxEntScan (エクソン-イントロン境界の配列解析), SpliceAid (スプライシング因子の解析)によりスコア化した。化合物により変化するエクソンと変化しないエクソンを比較検討することにより化合物の選択的スプライシングに対するルール化を行った。
KAKENHI-PROJECT-15H05721
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CRISPRによるRNA病モデルiPS細胞・動物の構築と病態解明・治療薬創製
実際、最近の我々の解析では、遺伝子配列に基づくTG003による独自のスプライシング介入ルールが存在することが明らかになってきた(Iida et al.論文投稿準備中)。このTG003スプライシング介入ルールを元に、NCBI ClinVarデータベースに登録されている61,410件の遺伝子疾患関連変異を解析した結果、介入ルールに合致しており治療効果が期待できる50個以上の疾患を見いだした。1)同一条件で処理した細胞より高品質のRNAを回収する方法を確立し、RNA-Seqにより得られた情報を用いて、MISO(Mixture-of Isoforms)などによりトランスクリプトームの変化を検討し、スコア化した。これにより、当初想定した化合物の選択的スプライシングに対するルール化を行ったばかりでなく、広範な化合物のトランスクリプトームに対する影響を測定した独自の定量的データベースを構築出来た。この独自データベースを用いて、作用機序が未知だが有用な薬効を有する化合物の作用点を推定出来ることが判明した。3)RNA病の異常スプライシングより得られた「異常スプライスコード」とTG003およびRECTASなどの化合物「介入ルール」のマッチングにより、化合物の効果が予想される標的RNA配列、標的RNA病を選択しリスト化し、大手製薬会社との共同開発契約を締結することが出来た。4)TG003は血中での安定性が悪く経口投与が困難であるとの問題を抱えていた。そこで、TG003と同様のスプライシング是正活性を有するが、血中で安定な化合物のスクリーニングを実施し、新たな候補化合物を見出した。この化合物はマウスに経口投与可能で、マウス筋肉でのSR蛋白リン酸化抑制効果やスプライシング是正効果を確認出来た(Sako et al.論文投稿中)本研究課題ではスプライシング異常に起因する「RNA病」に対して、低分子化合物によるRNAスプライシング制御への介入による治療薬の創製、さらには、CRISPR/Cas9技術等で作製したモデルiPS細胞・モデル動物を使った介入様式の解明や有効性の実証を目指している。我々の研究グループでは疾患原因変異を含むエクソンのスキッピングを誘導することで、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療につながりうる低分子化合物:TG003を開発しているが、研究目標を達成するためには、この化合物の標的エクソンやその作用機序を明らかにすることが必要である。このため、分化させたヒト骨格筋由来細胞を対象として、TG003処理(20μM, 4時間)を行ったmRNA-seqデータを取得・解析したところ253個のエクソンにおいてスキッピングが誘導されていることがわかった。これに対し未分化のヒト骨格筋由来細胞でも同様の解析を行ったところスキッピング誘導が生じたエクソンは148個で、分化ヒト骨格筋細胞での結果との一致はわずか14個であった。スプライシング操作化合物の標的エクソンは組織により大きく変化することがわかった。
KAKENHI-PROJECT-15H05721
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暗号ハードウェアのリアルワールド解析技術に関する研究
平成22年度は,高安全暗号モジュール設計理論について研究を行い,交付申請書の項目に対応して以下の成果を得た。1.安全性評価手法の高度化として,攻撃者が計測波形に対してプリプロセスを行うことを想定した評価法を示した.まず,時間領域での解析法として,重回帰分析に基づき,時間波形の移動平均などによる品質改善の限界を評価する手法を示した.また,周波数領域での解析法として,漏洩情報を含む狭帯域を同定する手法を示し,帯域制限による波形整形の影響の評価に応用できることを示した.2.項目1の手法に基づき,ケーブルからの電磁界放射や,チップ近傍からの磁界計測など,計測手法に応じた攻撃の能力を定量的に評価・分類した.数十マイクロメートルの空間分解能を有する磁界プローブを、開封したチップの100マイクロメートル程度に配置した近傍からの計測では,回路内の信号線の寄与がばらつきを考慮した評価が必要であることを示した.一方,遠隔からの計測波形では,周辺機器から伝導する無相関ノイズは,項目1の信号処理技術による波形整形により,効率的に除去できることを示した.3.脅威を定量的に評価するための手法として,漏洩信号のモデル化と,鍵が既知の条件で行うシミュレーション(既知鍵検査)に基づく安全性評価法を考案した.本手法により,暗号回路の信号線の寄与分の違いを考慮した信号雑音比(SNR)を波形のみを用いて評価できることを示した.また,本シミュレーション手法を応用することで,適合する漏洩モデルの推定が可能であることを示した.平成19年度は,交付申請書の項目に対応して以下の成果を得た2.上述の安全性評価プラットフォームを用いた実験システムを開発した.これにより,暗号処理の実行とサイドチャネル情報の計測,および,計測したサイドチャネル情報の解析が自動化され,評価実験の効率化が可能となった.具体的には,上述の評価基板,PC,計測器から構成する実験システムにおいて,相互に通信を行いながら計測・制御を行うソフトウェアを開発した.また,研究の新たな展開として,上述の実験システムを用いて様々な計測環境における評価実験を行った.これは,本研究テーマの最終的な目標である,回路の物理的なパラメータを考慮した安全性評価理論の確立を視野においたものである.平成21年度は,交付申請書の項目に対応して以下の成果を得た1.先年度に開発したASICを用い、電力解析実験を実施した。これにより、0.13μm CMOSテクノロジで製造されたASICでも攻撃が成功することを示した。また、ASICに搭載された複数の暗号コアに対して網羅的に実験を行うことで、暗号アルゴリズムの主要演算器であるS-boxの実装方法により、解析の難易度が大幅に変化することを指摘した。2.極めて高い計測能力を持つ攻撃者を想定して、物理的な側面から電力解析の検討を行った。実験では、数十マイクロメートルの空間分解能を有する磁界プローブを、開封したチップの100マイクロメートル程度に配置し、近傍磁界を計測した。計測結果を解析した結果、このようなセットアップでは、S/N比の改善と、場所に応じた局所性、および、近傍界の向きに関する情報が得られることから、より効率的な攻撃が可能となることを実証した。また、計測する物理量に応じて攻撃に用いる漏洩モデルに修正が必要なことを指摘し、修正モデルにより結果が改善することを示した。3.機器に接続されたケーブルを介し、より遠くへ漏洩情報が伝播する危険性の指摘・実証を行った。これにより、遠くにいる攻撃者であっても攻撃が可能となる危険性を指摘した。また、環境電磁工学の観点から、グラウンドバウンスに基づく情報漏洩メカニズムの解析とモデル構築、および計算機シミュレーションを通し、設計時での解析手法を検討した。平成22年度は,高安全暗号モジュール設計理論について研究を行い,交付申請書の項目に対応して以下の成果を得た。1.安全性評価手法の高度化として,攻撃者が計測波形に対してプリプロセスを行うことを想定した評価法を示した.まず,時間領域での解析法として,重回帰分析に基づき,時間波形の移動平均などによる品質改善の限界を評価する手法を示した.また,周波数領域での解析法として,漏洩情報を含む狭帯域を同定する手法を示し,帯域制限による波形整形の影響の評価に応用できることを示した.2.項目1の手法に基づき,ケーブルからの電磁界放射や,チップ近傍からの磁界計測など,計測手法に応じた攻撃の能力を定量的に評価・分類した.数十マイクロメートルの空間分解能を有する磁界プローブを、開封したチップの100マイクロメートル程度に配置した近傍からの計測では,回路内の信号線の寄与がばらつきを考慮した評価が必要であることを示した.一方,遠隔からの計測波形では,周辺機器から伝導する無相関ノイズは,項目1の信号処理技術による波形整形により,効率的に除去できることを示した.3.脅威を定量的に評価するための手法として,漏洩信号のモデル化と,鍵が既知の条件で行うシミュレーション(既知鍵検査)に基づく安全性評価法を考案した.本手法により,暗号回路の信号線の寄与分の違いを考慮した信号雑音比(SNR)を波形のみを用いて評価できることを示した.また,本シミュレーション手法を応用することで,適合する漏洩モデルの推定が可能であることを示した.
KAKENHI-PROJECT-08J08039
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妊娠高血圧腎症の治療薬はベバシズマブの薬効を減弱するか?
本研究は、癌治療に用いられているベバシズマブ(血管新生阻害薬)の抗腫瘍効果が、特定の薬(とりわけ妊娠高血圧腎症の治療薬として研究されている既存薬)との併用により減弱する可能性があるという仮説を立て、試験管内で3次元的に培養したヒトミニ腫瘍モデルや、担癌マウスでの解析によって検証する。本研究は、癌治療に用いられているベバシズマブ(血管新生阻害薬)の抗腫瘍効果が、特定の薬(とりわけ妊娠高血圧腎症の治療薬として研究されている既存薬)との併用により減弱する可能性があるという仮説を立て、試験管内で3次元的に培養したヒトミニ腫瘍モデルや、担癌マウスでの解析によって検証する。
KAKENHI-PROJECT-19K07207
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IPM(総合的害虫管理)を視野に入れた水田ユスリカ類の評価
1.水田生息性ユスリカ類のリスト現在までに記録された世界の水田生息性ユスリカ類を探索した結果、3亜科49属158種が判明した。インドから17属53種、日本から20属51種などである。研究進展によりさらに増加することは間違いなく、ユスリカ類は水田における最優占昆虫群であることが判った。2.ユスリカ類の発育オオヤマユスリカとハイイロユスリカの幼虫齢期、幼虫の発育状況、有効積算温度、発育所要日数、成虫の羽化周期性、寿命、蔵卵数、性比のデ-タを得た。また種々の温度、給餌量、水質、土壌、飼育密度下における幼虫の発育デ-タを得た。3.水田における個体群密度水田におけるユスリカ類成虫の発生個体数を、羽化トラップを使用して系統抽出法で調査した結果、691m^2の水田から6月末からの3か月間での推定発生個体数は414万個体で、約6,000/m^2であった。幼虫の生息密度を土壌サンプリングにより調査した結果、同水田で65日間で約413万個体と推定された。成虫と同一日数に換算すると、幼虫の方が約1/2となったが、調査条件から判断してこの数値は実体よりかなり少ないと思われる。4.幼虫の耐乾燥性ハイイロユスリカ幼虫の培地の含水比を変えて調査した結果、含水比30%で3050日間生存することが分った。5.幼虫の捕食性昆虫ユスリカ幼虫の水生捕食性昆虫としてトンボ目6種、半翅目4種、鞘翅目6種の計16種を確認し、うち13種の捕食量を調査した。1.水田生息性ユスリカ類のリスト現在までに記録された世界の水田生息性ユスリカ類を探索した結果、3亜科49属158種が判明した。インドから17属53種、日本から20属51種などである。研究進展によりさらに増加することは間違いなく、ユスリカ類は水田における最優占昆虫群であることが判った。2.ユスリカ類の発育オオヤマユスリカとハイイロユスリカの幼虫齢期、幼虫の発育状況、有効積算温度、発育所要日数、成虫の羽化周期性、寿命、蔵卵数、性比のデ-タを得た。また種々の温度、給餌量、水質、土壌、飼育密度下における幼虫の発育デ-タを得た。3.水田における個体群密度水田におけるユスリカ類成虫の発生個体数を、羽化トラップを使用して系統抽出法で調査した結果、691m^2の水田から6月末からの3か月間での推定発生個体数は414万個体で、約6,000/m^2であった。幼虫の生息密度を土壌サンプリングにより調査した結果、同水田で65日間で約413万個体と推定された。成虫と同一日数に換算すると、幼虫の方が約1/2となったが、調査条件から判断してこの数値は実体よりかなり少ないと思われる。4.幼虫の耐乾燥性ハイイロユスリカ幼虫の培地の含水比を変えて調査した結果、含水比30%で3050日間生存することが分った。5.幼虫の捕食性昆虫ユスリカ幼虫の水生捕食性昆虫としてトンボ目6種、半翅目4種、鞘翅目6種の計16種を確認し、うち13種の捕食量を調査した。1990年度は山口市(野外と室内)を主調査地とし,中国地方(広島県、島根県)と九州(熊本県)でも一部の項目について調査した.得られた結果は下記のとおりである.1.発生ユスリカ類成虫の密度700m^2の水田を6区画にわけた系統抽出法とし,各1個の羽化トラップを2週間毎に区画内を移動させて捕獲ユスリカ個体数を解析した結果,本田初期に全発生量の84.1%が捕獲された.全期間を通した当該水田の推定発生個体数は327万個体で,このうち,ウスイロユスリカが優占種で231万個体と推定された.2.水田内における分布本田初期の高密度時の捕獲は中央部より周辺部で多い傾向がみられたが,以後は差がなかった.6区画のうちの1つは捕獲数が他と比較して少ないが,トラップ面積に対応できるほどユカリカ幼虫の生息はミクロにみて均一ではないと考えられるので,水田全体としてほぼ均一に分布していると推定される.3.オオヤマユスリカとハイイロユスリカの発育幼虫の齢期と発育,成虫の羽化日周性,寿命,蔵卵数,性比,群飛のデ-タを得た.また,種々の温度,給餌量,水質,培地の土壌,密度下における幼虫の発育デ-タを得た.飼育培地の乾燥度(含水比)を変えて幼虫を飼育し,水田の水環境変動に対する適応性を調べた結果,ハイイロユスリカでは含水比30%で30ー50日間生存することが分かった.1991年度に得られた結果は下記のとおりである。1.水田生息性ユスリカ類のリスト現在までに記録された世果の水田生息性ユスリカ類を探索した結果、3亜科49属158種が判明した。インドから17属53種、日本から20属51種などである。研究進展によりさらに増加することは間違いなく、ユスリカ類は水田における最優占昆虫群であることが判った。
KAKENHI-PROJECT-02660049
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02660049
IPM(総合的害虫管理)を視野に入れた水田ユスリカ類の評価
2.水田におけるユスリカ類幼虫の生息密度成虫発生個体数を調査(1990年度)した水田で、幼虫の生息密度を6月9日から8月12日までの期間に5回、3か所から土壌を採取して調査した。7月末以後は乾燥が進み、5回目の採取は、1か所で、多数の幼虫が含まれていた。採集幼虫数から生息密度を推定すると、14回の52日間で約118万個体、15回の65日間では約413万個体となった。先に調査した成虫の推定発生数は94日間で414万個体であったので、5回目を除くと同一日数当りの個体数は幼虫の方が約1/2となり、5回目を入れると幼虫の方が成虫より多い結果となった。調査条件から判断すると,今回の幼虫密度は予想される密度よりも低いと思われる。3.ユスリカ幼虫捕食性昆虫の生態水稲害虫の天敵の寄主ないし代替寄主として重要と考えられるユスリカ類幼虫の水生捕食昆虫のうち、水田の多いトンボ目6種、半翅目4種,鞘翅目6種の計16種について調査した結果、全てユスリカ幼虫を捕食した。うち13種の捕食量を調査したところ、1日当たり平均2479個体を捕食したが,トンボ類の終齢幼虫が捕食量大であった。さらに、ウスバキトンボ幼虫全期間の捕食量推定を行った。4.その他、オオヤマユスリカとハイイロユスリカの各種発育デ-タを得た。
KAKENHI-PROJECT-02660049
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絶縁体界面におけるホットエレクトロンの波動現象とその機能デバイス応用
本研究は、半導体ヘテロ接合では見られない新しい量子サイズ効果を、金属-絶縁体多層ヘテロ接合系の絶縁体界面において発現させ、これを原理とする機能化電子デバイスの実現を目的とし、以下の成果を得た。シリコン基板上に金属/絶縁体(Cosi_2/CaF_2)原子層オーダーの極薄膜多層構造を、絶縁体に対してイオン化ビーム低温結晶成長法、シリサイド金属に対してシリコンとコバルトの二段階成長法を用いて形成した。得られた構造に対して、絶縁体伝導帯に注入したホットエレクトロンの金属/絶縁体界面での干渉現象を観測するため、共鳴トンネルエミッタと金属-絶縁体-金属の垂直入射型電子波干渉計の構造を有するトランジスタを試作し、液体窒素温度においてホットエレクトロンの量子干渉によると考えられる多重微分負性抵抗の観測に成功した。得られた特性は、電圧間隔などが理論予測とよく一致したほか、素子に寄生的に存在するリ-ク電流と抵抗分のために、負性抵抗のピークバレー比が極めて小さくなっていることが等価回路シミュレーションにより明らかとなった。寄生抵抗分の影響を除去して干渉特性を明瞭にするために、素子の平面寸法を電子ビームリソグラフィを用いて微細化することを提案し、その作製プロセスを確立した。このプロセスによって得られた金属/絶縁体量子干渉トランジスタの電流電圧特性を測定し、室温において干渉による多重微分負性抵抗を観測した。この特性から、寄生抵抗分の影響が素子の極微細化によって抑圧されていることが結論された。さらに、素子特性劣化のもう一つの原因であるリ-ク電流について、素子特性の平面寸法依存性から、その原因を列挙し、それらと作製プロセスとの関連を明らかにした。本研究は、半導体ヘテロ接合では見られない新しい量子サイズ効果を、金属-絶縁体多層ヘテロ接合系の絶縁体界面において発現させ、これを原理とする機能化電子デバイスの実現を目的とし、以下の成果を得た。シリコン基板上に金属/絶縁体(Cosi_2/CaF_2)原子層オーダーの極薄膜多層構造を、絶縁体に対してイオン化ビーム低温結晶成長法、シリサイド金属に対してシリコンとコバルトの二段階成長法を用いて形成した。得られた構造に対して、絶縁体伝導帯に注入したホットエレクトロンの金属/絶縁体界面での干渉現象を観測するため、共鳴トンネルエミッタと金属-絶縁体-金属の垂直入射型電子波干渉計の構造を有するトランジスタを試作し、液体窒素温度においてホットエレクトロンの量子干渉によると考えられる多重微分負性抵抗の観測に成功した。得られた特性は、電圧間隔などが理論予測とよく一致したほか、素子に寄生的に存在するリ-ク電流と抵抗分のために、負性抵抗のピークバレー比が極めて小さくなっていることが等価回路シミュレーションにより明らかとなった。寄生抵抗分の影響を除去して干渉特性を明瞭にするために、素子の平面寸法を電子ビームリソグラフィを用いて微細化することを提案し、その作製プロセスを確立した。このプロセスによって得られた金属/絶縁体量子干渉トランジスタの電流電圧特性を測定し、室温において干渉による多重微分負性抵抗を観測した。この特性から、寄生抵抗分の影響が素子の極微細化によって抑圧されていることが結論された。さらに、素子特性劣化のもう一つの原因であるリ-ク電流について、素子特性の平面寸法依存性から、その原因を列挙し、それらと作製プロセスとの関連を明らかにした。本研究は、半導体ヘテロ接合には見られない新しい量子サイズ効果を、金属-絶縁体多層ヘテロ接合系の絶縁体界面において発現させ、これを原理とする機能化電子デバイスの実現を目的として行い、以下に述べる実績と次年度への方針を得た。シリコン基板上に、シリコンに格子定数の非常に近い金属としてCoSi_2、絶縁体としてCaF_2を選択し、それぞれに対して、シリコンとコバルトの2段階成長およびイオン化ビーム結晶成長法を用いて、原子層オーダーの金属-絶縁体極薄膜エピタキシャル多重層を形成した。この構造を用いて、共鳴トンネルによる単一エネルギーのホットエレクトロン放出部と金属/絶縁体/金属の層構造による絶縁体伝導帯での電子干渉部からなるホットエレクトロン量子干渉トランジスタを作製し、絶縁体伝導帯におけるホットエレクトロンの干渉によると考えられる多重微分負性抵抗の観測に成功した。得られた特性は、電圧間隔などが理論的予測とよく一致したほか、トランジスタ本体に寄生する抵抗などの素子の影響で負性抵抗が小さくなっていることが、等価回路シミュレーションにより明らかとなった。さらに、寄生素子を抑圧して明瞭な量子干渉特性を得るためには、デバイスの極微細化が有効であることが明らかとなった。極微細化は、このような量子干渉を顕著に引き出して機能化電子デバイスへの応用の可能性を拓くという点に加えて、金属-絶縁体デバイスの特徴である高キャリア濃度などにより、半導体では制御の難しいと考えられる極微細状況下のデバイス動作の可能性を実際に示すという点においても、重要な方向である。このため、次年度は、電子線リソグラフィおよびデバイス電極形成の各プロセスおよび材料の最適化により、素子の平面構造の微細化を行う計画である。本研究は、半導体ヘテロ接合では見られない新しい量子サイズ効果を、金属一絶縁体多層ヘテロ接合系の絶縁体界面において発現させ、これを原理とする機能化電子デバイスの実現を目的とし、以下の成果を得た。シリコン基板上に金属/絶縁体(CoSi_2/CaF_2)原子層オーダーの極薄膜多層構造を、絶縁体に対してイオン化ビーム低温結晶成長法、シリサイド金属に対してシリコンとコバルトの二段階成長法を用いて形成した。
KAKENHI-PROJECT-07455132
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絶縁体界面におけるホットエレクトロンの波動現象とその機能デバイス応用
得られた構造に対して、絶縁体伝導帯に注入したホットエレクトロンの金属/絶縁体界面での干渉現象を観測するため、共鳴トンネルエミッタと金属-絶縁体-金属の垂直入射型電子波干渉計の構造を有するトランジスタを試作した。昨年度までに、本研究において、このトランジスタ構造によってホットエレクトロンの干渉現象に起因すると見られる電流-電圧特性中の多重微分負性抵抗が微少な量だけ観測されているが、素子に寄生的に存在するリ-ク電流と抵抗分のために、負性抵抗のピークバレー比は極めて小さく、また、観測は液体窒素温度以下のみで、室温では不可能であった。本年度は、寄生抵抗分の影響を除去して干渉特性を明瞭にするために、素子の平面寸法を電子ビームリソグラフィを用いて微細化することを提案し、その作製プロセスを確立した。このプロセスによって得られた金属/絶縁体量子干渉トランジスタの電流電圧特性を測定し、室温において干渉による多重微分負性抵抗を観測した。この特性から、寄生抵抗分の影響が素子の極微細化によって抑圧されていることが結論された。さらに、素子特性劣化のもう一つの原因であるリ-ク電流について、素子特性の平面寸法依存性から、その原因を列挙し、それらと作製プロセスとの関連を明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-07455132
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牛パピローマウイルスの病原性解析
牛属はパピローマ(乳頭腫)が最も多く見られる家畜で、その病原体であるパピローマウイルス(PV)のゲノム型と病態との関係を解析した。本研究により、以下の成果が得られた。[1]牛属のヤクの皮膚乳頭腫から新規のPV型を発見し、ヤクの学名(Bos grunniens)にちなみ、BgPV-1と命名された。[2]これまで皮膚の乳頭腫病変からしか見つからなかったBPV-10を舌病変部から発見し、BPV-10の新たな病態を明らかにした。[3]我々が発見したBPV-12の感染病変部に、全長ゲノムにあわせて欠損ゲノムが存在していることを発見し、BPV病変に見られる欠損ゲノムの初めての報告がなされた。牛の舌に発生した腫瘤よりパピローマウイルス(PV)ゲノムを検出し、解析を行った。シークエンス解析によりPVの型を同定したところ、これまで舌からの病変報告がない牛パピローマウイルス10型(BPV10)であったため、全ゲノムをクローニングし、塩基配列を決定した。その結果、既報のBPV10と比較して、E1蛋白遺伝子領域に129bpの欠失が見つかった。我々は以前に発見したBPV12において、欠損環状PVゲノムが同じ病変部に完全PVゲノムと共存していたことを見出していたため、BPV10についても、完全PVゲノムとの共存や他のPV型との共感染を検討した。特異的プライマーによるゲノムPCR、RT-PCRによるmRAN解析ならびにサザンブロットによる解析を試みた結果、この欠損BPV10のみが検出された。またこのBPV10が検出された病変部は、病理組織的解析により上皮性パピローマと診断され、抗BPV抗体による免疫染色でウイルス蛋白が発現していることが確認された(本年度学会および論文発表)。また我々は昨年、ウシ属のヤクから新規PVを発見し、BgPV-1と命名して論文公表したが、ほぼ同時期にインドのグループより、ヤクからBPV 1とBPV2を検出した内容の論文が発表された。それを受けてインドのヤク由来のBPVをGenBankのデータを元に我々が解析したところ、彼らの示したBPV 1の塩基配列は、BPV 1でもBgPV-1でもない、新たなPVの可能性があることが判明した。彼らはウイルス型特異的プライマーを用いたPCRによりBPVの型を特定しており、今回の事例を参考に、我々は、いまだに未発見の型が多く存在する可能性が高いBPVの型解析においては、より厳密な解析が必要であると主張し、国際ウイルス分類委員会PV研究部会委員長であるBurk博士らと共に、Guest Editorialを執筆して発表した。牛属はパピローマ(乳頭腫)が最も多く見られる家畜で、その病原体であるパピローマウイルス(PV)のゲノム型と病態との関係を解析した。本研究により、以下の成果が得られた。[1]牛属のヤクの皮膚乳頭腫から新規のPV型を発見し、ヤクの学名(Bos grunniens)にちなみ、BgPV-1と命名された。[2]これまで皮膚の乳頭腫病変からしか見つからなかったBPV-10を舌病変部から発見し、BPV-10の新たな病態を明らかにした。[3]我々が発見したBPV-12の感染病変部に、全長ゲノムにあわせて欠損ゲノムが存在していることを発見し、BPV病変に見られる欠損ゲノムの初めての報告がなされた。1)通常の牛(学名:Bos Taraus)と同じ牛属に分類され、中国の高地で家畜化されたヤク(学名:Bos grunniens)のパピローマを解析したところ、新規のパピローマウイルス(PV)候補が確認されたため、解析を進めた。既に我々は新しい型の牛パピローマウイルス(BPV)を宮崎の牛の病変部から検出し、BPV12型(BPV-12)と命名して論文公表し、認められているため、当初、ヤクの新型PVの名称として、BPV-13の提唱を試みた。しかし、ウイルスの分類に関するゴールドスタンダードとなる、国際ウイルス分類委員会PV研究部会委員長との協議で、ヤクは同じ牛属であるが、別の動物種に由来するパピローマであることから、ヤクの学名:Bos grunniensにちなみ、BgPV-1(ヤクパピローマウイルス1型)という名称を提案することになった。BgPV-1が検出された病変部は、病理組織的解析により、繊維性パピローマと診断され、抗BPV抗体による免疫染色も陽性となり、ウイルス蛋白が発現していることが示された。これらの成果は、論文として認められ、公表するに至った。2)2011年に我々が発見した、BPV-12が関与する牛の上皮性パピローマの病変部から、一部遺伝子を欠損した環状ゲノム(BPV-12-del)が存在することを見いだし、解析を行った。シークエンス結果より、BPV-12が約7.2kbであるのに対し、BPV-12-delは約3.4kbで、その結果は、サザンブロットでも確認された。リアルタイムPCRを用いて、病変部に存在するBPV-12ゲノムの内のBPV-12-delの割合を求めたところ、42%がBPV-12-delであることが示された。BPV-12-delの生物学的意義は不明だが、これまでこのような報告はなく、本結果は、初めての欠損環状PVゲノムの報告として、論文公表された。
KAKENHI-PROJECT-24580427
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牛パピローマウイルスの病原性解析
牛に乳頭腫などの腫瘍性疾患を引き起こす牛パピローマウイルス(BPV)の病原性を解明するため、1)新規BPVの検索、2)腫瘍に関与するBPVの性状解析、3)BPV発病に関与する因子の解析、の3項目を行った。本研究により、以下の成果が上がった。1)新しいウイルス型の発見:中国青海省の高地に生息する牛属、ヤクの体表部に見られた繊維性乳頭腫より新しいパピローマウイルス(PV)型を発見した。国際ウイルス分類委員会PV研究部会との協議により、ヤクは家畜種のウシ(Bos taurus)と同じ牛属だが、亜種が違うため、BPVとは独立した新たなPVとして、ヤクの学名(Bos grunience)に因み、BgPV-1と命名することとした。論文発表によりBgPV-1の名称は国際的に認知された。2)舌の腫瘍由来のBPV解析:BPV10型は、これまで体表部での検出報告しかなかったが、本研究の中で、31ヶ月齢の牛の舌で見出された上皮性乳頭腫からBPV10が検出された。この結果は、BPV10による新しい病態として、論文発表された。3)欠損ゲノムの発見:28ヶ月齢の牛の舌で見出された上皮性乳頭腫より、我々は既に新しい型としてBPV12を発見していたが、本研究により、病変部には完全長のウイルスゲノムと共に、ゲノムの47%を欠く欠損ゲノムが、[全長:欠損=58:42]の割合で混在していることを発見した。欠損ゲノムの病原性への関与は不明だが、病変部のBPV12ゲノムの半分近くが欠損ゲノムであったことは興味深い結果であり、またBPVではこれまで欠損ゲノムの存在は知られていなかったことから、欠損BPVゲノムの初めての報告として論文発表された。このほか、BPVとパラポックスウイルスの重感染事例や、BPV感染による牛乳頭腫症の重篤化事例の解析も行い、国際学術雑誌に牛パピローマウイルスの多様性についての論説を掲載するなど、上記の成果とあわせ、BPVの病原性解明に大きく貢献する成果を上げた。基礎獣医学本事業の当初目的に掲げた3項目のいずれについても、すでに成果を上げている。1)新規BPVの検索:事業初年度に、牛属のヤクの乳頭腫から新規のPVとしてBgPV1を発見・命名し、論文発表を行った。2)腫瘍に関与するBPVの性状解析:牛の舌で見つかった乳頭腫から、BPV10を初めて検出し、全ゲノムならびに病理学的解析の結果を論文発表した。3)BPV発病に関与する因子の解析:以前我々が発見したBPV12の由来病変部に、一部遺伝子欠損したBPV12-delが共存していることを発見し、解析結果を論文発表した。また、これまで海外で報告されたBPVの解析法の盲点を見いだし、未知の型が多いBPVの解析には、より厳密な解析法が必要であるという主張をGuest Editorialで発信することもできた。以上のことから、本研究課題である、牛パピローマウイルスの病原性解析に、十分貢献する成果が上がっていると考えられる。新規BPVの検索として、解析中であった新型BPV候補のゲノム解析とクローニングを完了し、国際ウイルス分類委員会とのやり取りをふまえて、牛属のヤクから新たに見いだされたパピローマウイルス(PV)としてBgPV-1を提唱した。病変部の病理組織学的解析とあわせて、BgPV-1の名称が論文として認められたため、当初の第一の目的は達成された。また、BPV発病に関与する因子として、我々が発見した新型BPV12の病変部で見いだされた、遺伝子欠損BPVゲノム(BPV-12-del)が病変部にどの程度存在するか、Realtime PCRにより定量化するとともに、サザンブロットによりBPV-12-delの存在を確認した。
KAKENHI-PROJECT-24580427
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プロセスとして表現される関数微分方程式の分類
B=B((-∞,0];X)上、無限遅れを持つ線形関数微分方程式を考える。ここでAはX上の有界線形作用素のcompact半群のinfinitesimal generatorでμ_1はs∈(-∞.0]に対してμ_t(s)=μ(t+s)によって定義されたBの元である。この相空間Bは扱う微分方程式に対応してその都度選び直す難しさがある。さらに偏微分方程式を一般化した発展方程式にまで対象を広げるとXを無限次元としたときの無限遅れをもつ関数微分方程式として扱う必要がある。本研究の目的はBの選び方に影響されない統一理論の試みであった。そこで本科研費で解明できたのは次の点である。(i)安定理論のプロセスによる特徴ずけ。そのために色々な姿のBに対して統一されたプロセスの構成。(これを準プロセスと名付けた)(ii)非線形振動論のプロセスによる特徴ずけ。特に概周期的プロセスにおける概周期的積分の存在定理を与えた。また、分担者の稲葉は種数無限の開曲面上に極小集合を持たない流れの例を初めて構成した。これは研究目的(ii)を考えるとき、一つの方向性を与えてくれたもので、重要な結果である。分担者の石村・岡田・渚・筒井・久我は多くの具体的モデルの提供によってこの研究が微分方程式の広い分野に応用できることを確信させてくれた。B=B((-∞,0];X)上、無限遅れを持つ線形関数微分方程式を考える。ここでAはX上の有界線形作用素のcompact半群のinfinitesimal generatorでμ_1はs∈(-∞.0]に対してμ_t(s)=μ(t+s)によって定義されたBの元である。この相空間Bは扱う微分方程式に対応してその都度選び直す難しさがある。さらに偏微分方程式を一般化した発展方程式にまで対象を広げるとXを無限次元としたときの無限遅れをもつ関数微分方程式として扱う必要がある。本研究の目的はBの選び方に影響されない統一理論の試みであった。そこで本科研費で解明できたのは次の点である。(i)安定理論のプロセスによる特徴ずけ。そのために色々な姿のBに対して統一されたプロセスの構成。(これを準プロセスと名付けた)(ii)非線形振動論のプロセスによる特徴ずけ。特に概周期的プロセスにおける概周期的積分の存在定理を与えた。また、分担者の稲葉は種数無限の開曲面上に極小集合を持たない流れの例を初めて構成した。これは研究目的(ii)を考えるとき、一つの方向性を与えてくれたもので、重要な結果である。分担者の石村・岡田・渚・筒井・久我は多くの具体的モデルの提供によってこの研究が微分方程式の広い分野に応用できることを確信させてくれた。B=B((-∞,0];X)上、無限遅れを持つ線形関数微分方程式を考える。ここでAはX上の有界線形作用素のcompact半群のinfinitesimal generatorでu_tはs∈(-∞,0]に対してu_t(s)=u(t+s)によって定義されたBの元である。この相空間Bは扱う微分方程式に対応してその都度選び直す難しさがある。さらに偏微分方程式を一般化した発展方程式にまで対象を広げるとXを無限次元としたときの無限遅れをもつ関数微分方程式として扱う必要がある。本研究の目的はBの選び方に影響されない統一理論の試みであった。そこで今年度は次の段階まで解明できた。(i)安定理論のプロセスによる特徴ずけ。そのために色々な姿のBに対して統一されたプロセスの構成。(投稿中)(ii)非線形振動論のプロセスによる特徴ずけ。そのためにもっともふさわしいプロセスの構成。(準備中)また、分担者の稲葉は種数無限の開曲面上に極小集合を持たない流れの例を初めて構成した。これは研究目的(ii)を考えるとき、一つの方向性を与えてくれたもので、重要な結果である。分担者の石村・岡田・筒井・久我は多くの具体的モデルの提供によってこの研究が微分方程式の広い分野に対応できることを確信させてくれた。B=B((-∞,0];X)上、無限遅れを持つ線形関数微分方程式を考える。ここでAはX上の有界線形作用素のcompact半群のinfinitesimal generatorでu_tはS∈(-∞,0]に対してu_t(s)=u(t+s)によって定義されたBの元である。この相空間Bは扱う微分方程式に対応してその都度選び直す難しさがある。さらに偏微分方程式を一般化した発展方程式にまで対象を広げるとXを無限次元としたときの無限遅れをもつ関数微分方程式として扱う必要がある。本研究の目的はBの選び方に影響されない統一理論の試みであった。そこで本科研費で解明できたのは次の点である。(i)安定理論のプロセスによる特徴ずけ。そのために色々な姿のBに対して統一されたプロセスの構成。(これを準プロセスと名付けた)(ii)非線形振動論のプロセスによる特徴ずけ。特に概周期的プロセスにおける概周期的積分の存在定理を与えた。また、分担者の稲葉は種数無限の開曲面上に極小集合を持たない流れの例を初めて構成した。これは研究目的(ii)を考えるとき、一つの方向性を与えてくれたもので、重要な結果である。
KAKENHI-PROJECT-09640156
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プロセスとして表現される関数微分方程式の分類
分担者の石村・岡田・渚・筒井・久我は多くの具体的モデルの提供によってこの研究が微分方程式の広い分野に応用できることを確信させてくれた。
KAKENHI-PROJECT-09640156
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内耳原基の器官培養系を用いた内耳の形態形成機構と内耳奇形発生のメカニズムの解明
1.内耳の原基である耳胞から蝸牛および三半規管が発生する。ICRマウス胎児の耳胞を経時的にとり出し、免疫組織化学的染色を施して、内耳神経節(cochleovestibular ganglion, CVG)の発生を調べた。その結果、胎齢9.511.5日胎児の耳胞で、前腹側の上皮細胞にTGFβ2が発現しており、その分布はニューロン前駆組織のマーカーであるNeuroDの発現部位と一致していた。また、その部位にSmad2も共発現していることが確認された。このことから、内耳神経節の形成にTGFβ2が関与している可能性が示唆された。2.内耳神経節(CVG)の形成におけるTGFβ2の役割を調べるため、昨年度までに我々が開発した耳胞の器官培養法を用い、耳胞上皮からCVGニューロンの前駆細胞がどのように発生し分化するかを観察した。10.5日マウス胎児の耳胞を切り出しコラーゲンコートディッシュで培養したところ、4時間後から細胞が耳胞の外へ遊走し、10時間後までに明瞭な細胞塊を形成した。これらの細胞はTuj1陽性であり、CVGを形成するニューロン前駆細胞と考えられた。次に、培地にTGFβ2(10ng/ml)を添加したところ、耳胞から遊出するTuj1陽性細胞が有意に増加した。この結果から、CVGの形成にTGFβ2が促進的な役割を果たすことが確認された。なお、上皮・間葉転換に関与するSlugの発現をRT-PCRで調べたところ、TGFβ2処理群でその量が低下していた。このことから、耳胞からニューロンが遊出してCVGを形成する現象は、上皮・間葉転換とは異なる機構であると考えられた。1)内耳原基の器官培養法の確立胎生10.5または11.5日のマウス胎児から内耳の原基である耳胞を顕微解剖により摘出し、それを培養して分化させる系を確立した。マウス胎児の頭頚部に顕微解剖と酵素処理を施して耳胞を単離し、それをマトリゲルに埋めて無血清培地で培養することにより、半規管と蝸牛の原基の分化を誘導することに成功した。一方、マウス胎児の頭部をen blocで切り出し、無血清培地で回転培養することにより、頭部組織内で耳胞を発育分化させることに成功した。これらにより、耳胞の単独器官培養系と胎児頭部の培養法を組み合わせることによって、内耳の正常及び異常分化をin vitroで解析し得る実験系を樹立した。この実験系を用い、半規管と蝸牛の発育と分化に関与する因子を同定するための実験を継続中である。2)耳胞から遊走する神経堤細胞の観察と解析耳胞の上皮から神経堤(neural crest)細胞が遊走し、それらが蝸牛前庭神経節を形成すると考えられている。我々はその分子メカニズムを解析するため、胎齢10.5日のマウス胎児の耳胞にエレクトロポレーションによってsnail/slug遺伝子を導入し、上記の培養系で培養を行った後、snail/slug(+)の神経堤細胞の発生とその挙動を追跡できることを確認した。現在この実験系を用いて耳胞由来神経堤細胞の遊走と分化、並びにその過程におけるsnail/slug遺伝子の役割を解析している。1.昨年度までに開発したマウス胎児の耳胞(内耳原基)の器官培養法を改良する目的で、培地など培養条件を変えて耳胞の分化を調べた。胎生10.5日のマウス胎児からコラーゲナーゼ処理によって耳胞を単離した。これをマトリゲル内で培養し、耳胞を発育させることに成功したが、この系は神経堤細胞の遊走と分化を観察するには十分でなかった。そこで、コラーゲンコートディッシュ上で耳胞を培養したところ耳胞が発育して初期形態形成が観察され、更に耳胞から神経堤細胞が分離して遊走することを観察することが可能になった。この系で種々の発生段階のマウス胎児の耳胞の分化を観察したところ、神経堤細胞の遊走と分化を調べるためには10.5日のマウス胎児の耳胞が最適であることが明らかになった。2.耳胞から遊走した神経堤細胞が耳神経節を形成するとされているが、それをin vitroで観察した研究は少ない。上述の培養系で胎生10.5日マウス胎児の耳胞を培養し、培地にTGFβを添加したところ、非添加群に比べて神経堤細胞の遊走が増加し、耳胞の発育も有意に促進された。このことから、耳胞の発育とニューロンの分化にTGFβが関与していることが示唆された。なお、内耳の分化に及ぼすSnail/slugの役割を調べるため、培養開始時にエレクトロポレーション法によってSnail/slug遺伝子を耳胞内へ導入し、耳胞の器官培養を行ったが、処理群の耳胞の発育は非処理対照群と有意の差がなく、Snail/slugの役割は明らかでなかった。1.内耳の原基である耳胞から蝸牛および三半規管が発生する。ICRマウス胎児の耳胞を経時的にとり出し、免疫組織化学的染色を施して、内耳神経節(cochleovestibular ganglion, CVG)の発生を調べた。
KAKENHI-PROJECT-14657005
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14657005
内耳原基の器官培養系を用いた内耳の形態形成機構と内耳奇形発生のメカニズムの解明
その結果、胎齢9.511.5日胎児の耳胞で、前腹側の上皮細胞にTGFβ2が発現しており、その分布はニューロン前駆組織のマーカーであるNeuroDの発現部位と一致していた。また、その部位にSmad2も共発現していることが確認された。このことから、内耳神経節の形成にTGFβ2が関与している可能性が示唆された。2.内耳神経節(CVG)の形成におけるTGFβ2の役割を調べるため、昨年度までに我々が開発した耳胞の器官培養法を用い、耳胞上皮からCVGニューロンの前駆細胞がどのように発生し分化するかを観察した。10.5日マウス胎児の耳胞を切り出しコラーゲンコートディッシュで培養したところ、4時間後から細胞が耳胞の外へ遊走し、10時間後までに明瞭な細胞塊を形成した。これらの細胞はTuj1陽性であり、CVGを形成するニューロン前駆細胞と考えられた。次に、培地にTGFβ2(10ng/ml)を添加したところ、耳胞から遊出するTuj1陽性細胞が有意に増加した。この結果から、CVGの形成にTGFβ2が促進的な役割を果たすことが確認された。なお、上皮・間葉転換に関与するSlugの発現をRT-PCRで調べたところ、TGFβ2処理群でその量が低下していた。このことから、耳胞からニューロンが遊出してCVGを形成する現象は、上皮・間葉転換とは異なる機構であると考えられた。
KAKENHI-PROJECT-14657005
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14657005
新型インフルエンザウイルス出現のメカニズム解析
インフルエンザウイルスの感染は、ヘマグルチニン[HA]がレセプターと結合して始まる。ヒトのウイルスは主にヒト型レセプターを認識し、鳥のウイルスは鳥型レセプターを認識する。このレセプター特異性の違いが宿主域を大きく左右する。1968年のヒト社会での出現以降、ヒトH3N2ウイルスのHA蛋白質表面の正電荷は、年々蓄積しており、レセプター認識が電荷に依存したものに変化していた。更に、ヒト分離H5N1ウイルスも塩基性アミノ酸への置換が多くの株でみられ、塩濃度に依存した結合力でヒト型レセプター結合を行っていた。つまり、H5N1ウイルスも季節性のH3N2ウイルスと似たヒトへの適応をする可能性が示唆された。更に、表面電荷シミュレーションとヒト型レセプター結合とに相関がみられたことからHAの表面電荷の解析もウイルスのヒトへの適応を研究する上で重要なアプローチであることが分かった。さらにヒト型レセプターを認識するH5N1ウイルスのヒトの正常気管支細胞での増殖性を調べたところ、HA蛋白質の182番目のアミノ酸などに変異が起こると顕著にヒトの気管支上皮細胞で増殖性が上がることが明らかになった。しかしながら、どのH5N1ウイルスにおいてもフェレットにおける効率的な伝播は確認されなかった。インフルエンザウイルスの感染は、ヘマグルチニン[HA]がレセプターと結合して始まる。ヒトのウイルスは主にヒト型レセプターを認識し、鳥のウイルスは鳥型レセプターを認識する。このレセプター特異性の違いが宿主域を大きく左右する。1968年のヒト社会での出現以降、ヒトH3N2ウイルスのHA蛋白質表面の正電荷は、年々蓄積しており、レセプター認識が電荷に依存したものに変化していた。更に、ヒト分離H5N1ウイルスも塩基性アミノ酸への置換が多くの株でみられ、塩濃度に依存した結合力でヒト型レセプター結合を行っていた。つまり、H5N1ウイルスも季節性のH3N2ウイルスと似たヒトへの適応をする可能性が示唆された。更に、表面電荷シミュレーションとヒト型レセプター結合とに相関がみられたことからHAの表面電荷の解析もウイルスのヒトへの適応を研究する上で重要なアプローチであることが分かった。さらにヒト型レセプターを認識するH5N1ウイルスのヒトの正常気管支細胞での増殖性を調べたところ、HA蛋白質の182番目のアミノ酸などに変異が起こると顕著にヒトの気管支上皮細胞で増殖性が上がることが明らかになった。しかしながら、どのH5N1ウイルスにおいてもフェレットにおける効率的な伝播は確認されなかった。インフルエンザウイルスの感染は、ヘマグルチニン[HA]がレセプターと結合して始まる。ヒトのウイルスは主にヒト型レセプターを認識し、鳥のウイルスは鳥型レセプターを認織する。このレセプター特異性の違いが宿主域を大きく左右する。ヒトで毎年流行しているH3N2ウイルスのHAタンパク質の変遷を解析したところ、1968年のヒト社会での出現以降、表面電荷が変化していることがわかった。年々、正電荷が蓄積しており、それは鳥のH3N2には見られない特徴であった。そこで、烏のウイルスや1968年当初と、近年のヒト分離株のレセプター結合において質的な違いがあるのか否かを調べた。1968年の株や鳥分離株は塩濃度に依存しない結合力でレセプターと結合していたが、近年のヒト分離株は塩濃度に依存していたことから、レセプター認識が電荷に依存したものに変化したことが示唆された。これはヒトへの適応の一端であると推測された。更に、ヒトから分離され、ヒト型レセプターを認識するH5N1ウイルスのレセプター結合性を調べたところ、正電荷への変異によってヒト型レセプターを認識するようになっていた株は、塩濃度に依存した結合力でレセプター結合を行っていた。これらのことから、ヒトへの適応において、電荷依存的なヒト型レセプター認識を行うように変化しうることが示唆された。今後、更に、ウイルス粒子が正電荷に帯電することが、ヒトからヒトへの伝播にどう影響するかについて、よりマクロな視点で解析を進める予定である。インフルエンザウイルスの感染は、ヘマグルチニン[HA]がレセプターと結合して始まる。ヒトのウイルスは主にヒト型レセプターを認識し、鳥のウイルスは鳥型レセプターを認識する。このレセプター特異性の違いが宿主域を大きく左右する。季節性のヒトH3N2ウイルスのHAタンパク質の変遷を解析したところ、1968年のヒト社会での出現以降、蛋白質表面の正電荷が蓄積しており、それは鳥のH3N2には見られない特徴であった。そこで鳥のウイルスや1968年当初と、近年のヒト分離株のレセプター結合において質的な違いがあるのか否かを調べた。1968年の株や鳥分離株は塩濃度に依存しない結合力でレセプターと結合していたが、近年のヒト分離株は塩濃度に依存していたことから、レセプター認識が電荷に依存したものに変化したことが示唆された。これはヒトへの適応の一端であると推測された。更に、ヒト分離H5N1ウイルスのHAの変異を調べたところ、塩基性アミノ酸への置換が多くの株でみられ、位置的にもヒトH3N2ウイルスで塩基性置換が起きてきた場所と酷似していた。それらの株は、ヒト型レセプターを認識する株が多く、塩濃度に依存した結合力でレセプター結合を行っていた。
KAKENHI-PROJECT-20790352
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20790352
新型インフルエンザウイルス出現のメカニズム解析
つまり、H5N1ウイルスも季節性のH3N2ウイルスと似たヒトへの適応をする可能性が示唆された。更に、表面電荷とレセプター結合との関係の一般化を図るために、ヒト型レセプターを認識しない株のHAの表面電荷パターンを、ヒト型レセプターを認識する株の表面電荷パターンと一致させたところ、ヒト型レセプターを認識するようになった。このことから、ヒトへの適応の際のレセプター認識の変化を考察する上で、HAの表面電荷を解析することも重要なアプローチであることが分かった。
KAKENHI-PROJECT-20790352
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20790352
WWW上で実行可能な科学技術日本語論文の解析と作成支援システムの開発と評価
本研究の研究実績の概要は以下のとおりである。始めに、「科学技術日本語論文構造解析システム」と連携したシステムとして、「科学技術日本語論文作成支援システム」を開発し、その評価実験を行った。本システムの特徴としては、(1)学習者が画面を見ながら論文の章立てを設定していくことができる「章立て構造入力機能」(2)学習者が論文を書くために必要とする「結束表現」のカテゴリー(仮定・条件、定義、比較、原因・理由など)を選択すると該当するカテゴリーの例文を表示する「基本的表現検索機能」が挙げられる。日本語文の結束表現の分類は、「構造解析システム」の開発時に作成したルールベースを用いた。学習者に提示することができる基本的表現は、あらかじめ作成した科学技術日本語論文コーパスに対して「構造解析システム」のルールベースを適用し、その解析結果をもとにして自動的に抽出した。本システムでは、自動的に抽出した表現のうち正しく分類したものを「基本的表現」とし、表現ごとに出現確率を定義して、検索結果を制御している。さらに、日本人学部学生および留学生を対象にした本システムの定性的評価では、科学技術論文作成の場面で、既存のワードプロセッサーがもつ「アウトライン機能」「文章校正・表現ゆれチェック機能」よりも、本システムの方が有効であるとの結果を得た。本研究の研究実績の概要は以下のとおりである。始めに、「科学技術日本語論文構造解析システム」と連携したシステムとして、「科学技術日本語論文作成支援システム」を開発し、その評価実験を行った。本システムの特徴としては、(1)学習者が画面を見ながら論文の章立てを設定していくことができる「章立て構造入力機能」(2)学習者が論文を書くために必要とする「結束表現」のカテゴリー(仮定・条件、定義、比較、原因・理由など)を選択すると該当するカテゴリーの例文を表示する「基本的表現検索機能」が挙げられる。日本語文の結束表現の分類は、「構造解析システム」の開発時に作成したルールベースを用いた。学習者に提示することができる基本的表現は、あらかじめ作成した科学技術日本語論文コーパスに対して「構造解析システム」のルールベースを適用し、その解析結果をもとにして自動的に抽出した。本システムでは、自動的に抽出した表現のうち正しく分類したものを「基本的表現」とし、表現ごとに出現確率を定義して、検索結果を制御している。さらに、日本人学部学生および留学生を対象にした本システムの定性的評価では、科学技術論文作成の場面で、既存のワードプロセッサーがもつ「アウトライン機能」「文章校正・表現ゆれチェック機能」よりも、本システムの方が有効であるとの結果を得た。本年度は以下のように、WWW上で自由に日本語の単文を学習できるシステムを開発し,そのシステムを評価した。(1)日本語学習の誤りの調査とルールベースの同定日本語学習者の作文における誤りのタイプを調べるため,本学の留学生29名を対象に受身の作文テストとアンケート調査を実施した.テストの結果から,誤りを抽出し,受身文に関して誤りの種類を同定した.集めた261文(内120誤り文)のデータから,合計12カテゴリー,65種類,228個の誤りを分類した,この分類に基づいて本システムで扱う誤り処理用のルールを作成した.(2) WWW上で実行できるシステムの開発自然言語処理ツールを用いて,誤り処理とフィードバック処理を加えて,従来のコンピュータ言語学習支援システムの問題点である,自由に入力することができない,誤りを処理することができない,などといった点を解決し,自由に入力でき,誤りの検出と適切なフィードバックを与える機能をもつ日本語作文学習支援システムを開発した.(3)本システムのシステム評価実験の実施留学生22名に実際に使用してもらい,本システム(Tシステム)とMITにおいて開発されたシステム(Mシステム)を比較した.評価の結果,入力方法,フィードバックメッセージ,システム全体において,Tシステム(自由な入力方式,入力に応じた適切なフィードバック)がMシステム(選択式の入力,入力に関係ない正解の表示)より優れている,という1%水準の有意差を見出した.本年度の研究実績の概要は、以下のとおりである。(1)「科学技術日本語論文構造解析システムの開発」文章の結束関係を用いた科学技術日本語論文の構造解析システムの開発を行なった。そのために、結束表現および見出しの情報に着目して、科学技術日本語論文を解析するためのルールを作成した。構造解析システムは、自然言語処理技術を用いて、WWW上で実行可能なシステムであり、科学技術日本語論文の見出し構造と、結束表現を自動的に抽出し、その結果をブラウザ上で表示することが可能である。(2)「科学技術日本語論文構造解析システムの評価」開発した構造解析システムのシステム評価を行なった。具体的には、結束表現と見出し情報の抽出におけるルールセットの解析精度の測定を行ない、その結果からさらにルールを修正し、システムのパフォーマンスを向上させた。(3)「科学技術日本語論文作成支援システムの開発」構造解析システムをもとに、科学技術日本語論文作成における"見出し情報"と、"結束表現"の記述を支援するシステムを開発した。本システムでは、学習者が選択した結束表現に応じて、75編の科学技術日本語論文のテキストコーパスから、論文中に結束表現を含む文を例文として自動的に抽出し、学習者が自由に参照できるような機能を実現した。(4)「科学技術日本語論文作成支援システムの評価」開発した作成支援システムの評価実験を行った。2つの評価実験の結果から、本システムで実現した、"見出し構造の提示"、"結束表現の提示"、及び"コーパスから例文の参照"、といった機能が、科学技術日本語論文の作成に極めて有効であることが分かった。
KAKENHI-PROJECT-10558019
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10558019
WWW上で実行可能な科学技術日本語論文の解析と作成支援システムの開発と評価
また、評価実験のインタビュー結果から、日本語学習者にとって、本システムは、科学技術論文作成に有効なだけではなく、日本語学習にも有用であることが示された。本研究の最終年度である本年度の研究実績の概要は、以下のとおりである。「科学技術日本語論文作成支援システムの開発と評価」昨年度の研究実績である「科学技術日本語論文構造解析システム」と連携したシステムとして、「科学技術日本語論文作成支援システム」を開発し、その評価実験を行なった。本システムの特徴としては、(1)学習者が画面を見ながら論文の章立てを設定してゆくことができる「章立て構造入力機能」、(2)学習者が論文を書くために必要とする「結束表現」のカテゴリー(仮定・条件、定義、比較、原因・理由など)を選択すると該当するカテゴリーの例文を表示する「基本的表現検索機能」、が挙げられる。日本語文の結束表現の分類は、「構造解析システム」の開発時に作成したルールベースを用いた。学習者に提示することができる基本的表現は、あらかじめ作成した科学技術日本語論文コーパスに対して「構造解析システム」のルールベースを適用し、その解析結果をもとにして自動的に抽出した。本システムでは、自動的に抽出した表現のうち正しく分類したものを「基本的表現」とし、表現ごとに出現確率を定義して、検索結果を制御している。さらに、日本人学部学生および留学生を対象にした本システムの定性的評価では、科学技術論文作成の場面で、既存のワードプロセッサがもつ「アウトライン機能」「文章校正・表記ゆれチェック機能」よりも、本システムの方が有効であるとの結果を得た。
KAKENHI-PROJECT-10558019
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10558019