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Osborne-Mendelラットの糸球体足細胞障害に関わる新規RAS分子の同定 | その結果、OMラットの培養足細胞では足細胞関連分子の発現と局在、mRNA発現量に異常はみられなかったが、Ang IIの受容体であるAng II type1受容体(AT1R)のmRNA発現量が高く、OMラットの足細胞はRASの活性化に対する感受性が高いことが示唆された。2-B)アンジオテンシンII添加による培養足細胞のアクチン細胞骨格への影響2-A)の結果よりAng IIによる足細胞への作用に着目し、培養足細胞の培養液中にAng IIを添加し、足細胞の細胞骨格への影響を評価した。その結果、Ang II刺激により培養足細胞のアクチン細胞骨格の再編が観察された。<まとめ>OMラットの足細胞はAng IIに対する受容体の発現量が高く、糸球体局所におけるRASの活性化により足細胞の細胞骨格の再編が生じ、足細胞障害と糸球体傷害が誘導されている可能性が示唆された。今後はAng II刺激の下流に存在する細胞骨格の制御機構に関わるタンパク質を解析をしていく方針である。【緒言】慢性腎不全の起点ともいえる足細胞障害の機序については不明な点が多く、その病理発生の解明が待たれている。Osborne-Mendel(OM)ラットは比較的早期に糸球体傷害を発症する系統で、病変形成の引き金として糸球体足細胞の障害が重要であると考えられるが、詳細な研究は行われていない。本研究ではこのOMラットの足細胞障害に関連する新規レニン・アンジオテンシン系(RAS)分子を同定し、足細胞障害と糸球体傷害の進行機序の解明に資することを目的として研究を行った。(1)降圧剤の投与によるOMラットの足細胞障害の修飾:OMラットにRAS阻害薬であるRAS阻害薬とRASに作用しない血管拡張薬Hydralazine(HYD)を投与した。その結果、いずれの投与群においても同程度の降圧作用が確認されたのにもかかわらず、HYD投与群ではRAS阻害群と比較して十分な足細胞障害抑制効果が認められなかったことから、OMラットの糸球体傷害は血圧非依存性であり、足細胞障害にRAS、特にアンジオテンシンII(Ang II)とその受容体(Ang IItype1受容体;ATIR)が足細胞障害の病理発生に関与していることが示唆された。(2)In vitroにおけるOMラットの足細胞の性状の検索:次にin vitroの系を用いて足細胞の組織RASに焦点を絞り、OMラットとF344ラットの足細胞を単離・培養し、その性状を比較した。その結果、OMラットの培養足細胞は他系統のそれと比べATIRの発言量が高く、Ang IIに対する感受性が高い可能性が示された。さらに、両系統の培養足細胞の培養液中にAng IIを添加し、nephrin mRNA発現量と足細胞のアクチン細胞骨格への影響を評価した。その結果、Ang II刺激によるnephrinmRNA量の発現低下は両系統の培養足細胞で誘導されたが、OMラットでより有意な低下がみられた。また、OMラットではアクチン細胞骨格に再編がみられた。なお、これらのAng II誘導性の作用はAng IIアンタゴニストを同時に添加することにより抑制された。(3)in vivoにおけるATIRの発現量の比較:OMラットの足細胞におけるATIRの発現量を免疫電顕を用いて他系統のそれと比較したところ、OMラットではATIRの発現量が高いことが示された。 | KAKENHI-PROJECT-11J09653 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J09653 |
延性破壊を考慮した土木鋼構造物の耐震照査法の開発に関する研究 | 本研究では脆性破壊の第一段階に相当する延性き裂の発生に着目し,まず,延性亀裂の発生状況を把握するため,解析モデルとして切欠きを有する円筒形棒部材を用い延性き裂の発生をシミュレーションした.その際,大ひずみ領域における断面欠損を表す手法としてボイドを導入した.ボイド成長の考慮により,延性き裂発生過程を追うことができた.また,ボイドの体積分率から延性き裂発生の破壊基準を決定し,延性き裂発生条件式を提案した.さらに,局所ひずみと全体ひずみの相関を示し,延性き裂発生限界ひずみ(延性破壊ひずみ)を求めた.次に,鋼製橋脚の破壊実験を行い,次の現象を明らかにした.(1)全ての供試体について,鋼製橋脚基部に発生する脆性破壊現象を実験的に再現できた.(2)延性き裂は繰り返しひずみ硬化の影響による強度増加の段階で発生する.(3)延性き裂の発生後,ただちに供試体が強度低下を生じることはない.(4)延性き裂は供試体基部の溶接止端部から発生し,初期の段階は板厚方向に進展し,その後溶接線に沿って進展し,やがて母材へ進展する.(5)き裂が母材へ進展すると,供試体の強度が急激に低下する.さらに,既往の研究で提案されている延性き裂発生条件式の精度を検証し,解析的にき裂発生点近傍のひずみ挙動を追究した.さらに,ファイバーモデルによる解析では模擬できないひずみ集中現象をShell要素を用いた解析によりとらえ,構造ディテール係数を提案し,新しい照査法の枠組みを示した.構造ディテール係数を考慮した照査法により算定した終局変位は本実験結果とほぼ一致した.本研究では脆性破壊の第一段階に相当する延性き裂の発生に着目し,まず,延性亀裂の発生状況を把握するため,解析モデルとして切欠きを有する円筒形棒部材を用い延性き裂の発生をシミュレーションした.その際,大ひずみ領域における断面欠損を表す手法としてボイドを導入した.ボイド成長の考慮により,延性き裂発生過程を追うことができた.また,ボイドの体積分率から延性き裂発生の破壊基準を決定し,延性き裂発生条件式を提案した.さらに,局所ひずみと全体ひずみの相関を示し,延性き裂発生限界ひずみ(延性破壊ひずみ)を求めた.次に,鋼製橋脚の破壊実験を行い,次の現象を明らかにした.(1)全ての供試体について,鋼製橋脚基部に発生する脆性破壊現象を実験的に再現できた.(2)延性き裂は繰り返しひずみ硬化の影響による強度増加の段階で発生する.(3)延性き裂の発生後,ただちに供試体が強度低下を生じることはない.(4)延性き裂は供試体基部の溶接止端部から発生し,初期の段階は板厚方向に進展し,その後溶接線に沿って進展し,やがて母材へ進展する.(5)き裂が母材へ進展すると,供試体の強度が急激に低下する.さらに,既往の研究で提案されている延性き裂発生条件式の精度を検証し,解析的にき裂発生点近傍のひずみ挙動を追究した.さらに,ファイバーモデルによる解析では模擬できないひずみ集中現象をShell要素を用いた解析によりとらえ,構造ディテール係数を提案し,新しい照査法の枠組みを示した.構造ディテール係数を考慮した照査法により算定した終局変位は本実験結果とほぼ一致した.本研究は脆性破壊の第一段階に相当する延性き裂の発生に着目し,延性亀裂の発生状況を把握するために,解析モデルとして切欠きを有する円筒形棒部材を用い延性き裂の発生をシミュレーションした.その際,大ひずみ領域における断面欠損を表す手法としてVoidを導入した.Voidの考慮により,延性き裂発生過程を追うことができた.また,Voidの体積分率から延性き裂発生の破壊基準を決定し,延性き裂発生条件式を提案した.さらに,局所ひずみと全体ひずみの相関を示し,延性き裂発生限界ひずみ(延性破壊ひずみ)を求めた.本研究で得られた主な結論をまとめると以下のようである.(1)大ひずみ領域で生じる部材の断面欠損による荷重の低下を本解析モデルによって表現することができた.(2)Voidは,き裂底表面型の延性き裂とき裂内部型の延性き裂を捉えることにも有効な手段と言える.(3)既往の実験結果と比較することで,延性き裂発生の破壊点をVoidの体積分率と定めた.(4)切欠き底表面型において,切欠きが鋭いと切欠き底表面でVoidが最も大きく成長した.切欠きが鈍いと切欠き底表面から若干内部でVoidが最も成長した.(5)素材特性が相当塑性ひずみ-応力三軸度関係に及ぼす影響は小さい.(6)切欠き深さが相当塑性ひずみに及ぼす影響は,切欠きが深くなると相当塑性ひずみが小さくなる.また,同じ切欠き半径でも,切欠き深さによってき裂底表面型と亀裂内部型に分かれる.さらに,切欠き深さが大きいほど,また切欠き半径が小さいほど三軸応力拘束が強くなることがわかった.(7)切欠き形状が応力三軸度に及ぼす影響は,切欠き半径が大きくなると応力三軸度が小さくなる.(8)き裂底表面型とき裂内部型の境界は,切欠き形状と切欠き深さの両方によって変わってくる. | KAKENHI-PROJECT-16560410 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16560410 |
延性破壊を考慮した土木鋼構造物の耐震照査法の開発に関する研究 | (9)延性き裂発生の破壊点から延性き裂発生条件式を提案した.(10)グローバルひずみ-相当塑性ひずみの相関を得た.(11)構造ディテールの3次元解析を実施する場合の延性き裂発生限界ひずみの算出法を示した.(12)はり要素を用いる解析を実施する場合の延性き裂発生限界ひずみを求めた.本研究では脆性破壊の第一段階に相当する延性き裂の発生に着目し,鋼製橋脚の破壊実験を行った.既往の研究で提案されている延性き裂発生条件式の精度を検証し,解析的にき裂発生点近傍のひずみ挙動を追究した.さらに,ファイバーモデルによる解析では模擬できないひずみ集中現象をShell要素を用いた解析によりとらえ,構造ディテール係数を提案し,新しい照査法の枠組みを示した.本研究で得られた主な知見を以下にまとめる.1)実験的検討(1)全ての供試体について,鋼製橋脚基部に発生する脆性破壊現象を実験的に再現できた.(2)延性き裂は繰り返しひずみ硬化の影響による強度増加の段階で発生する.(3)延性き裂の発生後,ただちに供試体が強度低下を生じることはない.(4)延性き裂は供試体基部の溶接止端部から発生し,初期の段階は板厚方向に進展し,その後溶接線に沿って進展し,やがて母材へ進展する.(5)き裂が母材へ進展すると,供試体の強度が急激に低下する.2)解析的検討(1)荷重-変位曲線は,き裂が発生するまでは精度良く一致している.(2)エネルギー吸収量について,実験値と解析値は非常に精度良く一致しているが,若干実験値の方が解析値を下回る傾向がある.(3)延性破壊点における累積エネルギー吸収量は厚肉構造であるほど大きくなる.(4)延性破壊点に至るまでの繰り返し数は3サイクルの方が小さい値となっているが,エネルギー吸収量に及ぼす載荷履歴による影響は少なく定量的な評価は困難である.(5)延性破壊点における有効ひずみ量は厚肉断面であるほど,大きくなるが,その値は7.511%程度であった.3)延性き裂照査法の提案(1)材料レベルにおける延性き裂発生の限界ひずみをそのまま適用すると,危険側の評価となる.(2)角部に集中するひずみとBeam要素の軸ひずみの比から,構造ディテール係数を提案した.(3)構造ディテール係数を考慮した照査法を提案し,それにより算定した終局変位は本実験結果とほぼ一致した. | KAKENHI-PROJECT-16560410 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16560410 |
有機膜直接蒸着法を用いた液体機能デバイスの研究 | 本研究では、液体上に有機膜を直接蒸着し封止する手法を用いて、液体を機能要素として持つマイクロデバイスの研究開発を行った。封止技術の確立に関して、有機膜の厚さにより物質の透過性を制御する手法、また振動場を用いて液体含浸ビーズ上に有機膜を蒸着する手法を開発した。また機能性デバイスとして、微小環境計測用機能性マイクロビーズ、イオン液体ゲートトランジスタガスセンサ、熱音響水中超音波発信デバイスの研究開発を行った。本研究では、液体上に有機膜を直接蒸着し封止する手法を用いて、液体を機能要素として持つマイクロデバイスの研究開発を行った。封止技術の確立に関して、有機膜の厚さにより物質の透過性を制御する手法、また振動場を用いて液体含浸ビーズ上に有機膜を蒸着する手法を開発した。また機能性デバイスとして、微小環境計測用機能性マイクロビーズ、イオン液体ゲートトランジスタガスセンサ、熱音響水中超音波発信デバイスの研究開発を行った。微小液体への有機膜蒸着による封止技術の確立に関して、液体としてシリコンオイルを用い、パリレン膜を蒸着する程における液滴形状の変化を観察した。重力により平坦だったシリコンオイルは、蒸着開始後12分付近で急に液滴中央部が盛り上がり、14分でほぼ球面状となった。12分の時点で、パリレン膜の生成が急速に進んだことを示している。終了時の液滴形状から計算されたパリレン膜の応力は700uN/mmとなり、これはシリコンオイルの表面張力34uN/mmの20倍以上であった。液体が周囲の界面を介して行なう力の伝達や発光・光伝搬の解析、機能性液体の探索およびデバイス適用に関し、液体をパリレンでカプセル化した機能性マイクロビーズを検討した。これはマイクロ化学や生化学分野において微小空間で計測を行うための機能性液体を、カプセル化するものである。微小液体を保持するために、多孔質シリカビーズを用いた。機能性液体は毛細管現象によって多孔質ビーズ内に吸着される。シリカとパリレンの密着性を向上させるため、ヘキサメチルジシラザンによる表面処理を行った。ビーズの全面にパリレン膜を蒸着し、かつ蒸着中にビーズがほかのビーズや壁と固着することを防ぐために、真空チャンバー内でビーズを500Hz程度で振動させながらCVDプロセスを行う手法を開発した。デバイス適用として、温度センサとpHセンサの実験を行った。温度センサは、機能液体としてイオン液体に蛍光物質(Rhodamine B)を溶かしたものを用いた。Rhodamine Bの蛍光強度が温度に依存するため、温度センサとして機能することを確認した。pHセンサは、機能液体としてイオン液体にプロモチモルブルー(BTB)粉末を溶解させたものを用いた。ビーズに蒸着するパリレンの厚さを0.2umと薄くすることでOH-イオンがパリレン膜を通過し、アルカリ溶液中では内部のBTB分子と反応して色が変化して、pHセンサとして機能することを確認した。微小液体への有機膜蒸着による封止技術の確立に関して、機能性液体を含浸したシリカビーズを用いて、パリレンの防御膜としての機能を評価した。機能性液体として、イオン液体に蛍光物質を溶解させたものを用いた。異なる厚さのパリレン膜を蒸着し、水及びエタノール溶媒中に入れ、40分間の蛍光強度観測を行った。蛍光強度の減少は、パリレンを蒸着していないビーズでは水18%、エタノール88%、パリレン膜圧0.3umでは水7%、エタノール11%、パリレン膜圧0.7umでは水、エタノールとも0%であった。以上から、膜厚を制御することで、物質透過量を制御できることがわかった。液体が周囲の界面を介して行なう力の伝達や発光・光伝搬の解析に関連し、液中の振動場の伝達を用い、液中用の超音波受信デバイスと超音波発信デバイスの研究開発を行った。超音波受信デバイスは、気液界面に長さ100um、幅70um、厚さ0.3umのピエゾ検出部付きカンチレバーを配置し、液体をパリレンで封止した構造である。機械的共振の影響を受けず、界面の振動を計測することができる。実験の結果、10 kHz1.2 MHz以上の帯域で、液中の超音波を受信できることがわかった。超音波発信デバイスは、薄膜ヒータ上にシリコンオイルの液滴を配し、パリレンで封止した構造である。熱によるシリコンオイルの膨張で振動を発生させる、熱誘起型の超音波発信デバイスである。50 kHz150 kHzの帯域で、液中に超音波を発信できることを確認した。機能性液体の探索およびデバイス適用に関し、前年度に引き続き、イオン液体をパリレンで封止したガスセンサを目指して、イオン液体によるガスの検出実験を行った。昨年のアンモニア、二酸化炭素に加え、本年度は過酸化水素、ヨウ素も用いて検出実験を行った。その結果、ガス間での選択性の違いが再現でき、ガスの識別が可能であることを確認した。微小液体への有機膜蒸着による封止技術の確立に関して、液滴上に蒸着されたパリレン膜のミクロ構造の評価を行い、生成プロセスを明らかにした。平面状に塗布した液体(シリコンオイル)の上に蒸着したパリレン膜を引き剥がし、SEM観察を行った。蒸着源側(液体と反対側)の表面はスムースで稠密であるが、液体側(液体と接触側)の表面はあれていて、ポーラス状になっていることが観察された。 | KAKENHI-PROJECT-23310089 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23310089 |
有機膜直接蒸着法を用いた液体機能デバイスの研究 | さらに引き剥がしたパリレン膜を切断し、切断面のSEM観察を行った結果、液体側から厚さ1.2μm程度厚さのポーラス状のパリレンが生成し、その上に平坦で稠密な通常のパリレンが生成していることがわかった。液体が周囲の界面を介して行なう力の伝達や発光・光伝搬の解析に関連し、気体や液体の透過性の指針とするため、パリレンポーラス膜の粒度を評価した。液体として分子量の異なる3つのシリコンオイルやグリセリンを用いて、膜の生成の違いを調べた結果、分子量とポーラス面の粗さには、正の相関がみられ、ポーラス膜の粒度を制御できることがわかった。機能性液体の探索およびデバイス適用に関し、イオン液体をパリレンで封止したガスセンサを目指して、イオン液体によるガスの検出実験を行った。デバイスは、イオン液体とグラフェンチャネルによりFET(電界効果トランジスタ)を構成するものである。イオン液体はガスの種類による選択性をもつ。またグラフェンチャネルは周囲1nm程度の電気2重層に敏感に反応する。これらにより、低電圧で駆動が可能で、ガスの種類、濃度に反応して異なった特性を示す電界効果トランジスタを形成できる。実験により、1V以下のゲート電圧で、30ppmのNH2と4000ppmのCO2を検出できることが確認できた。またNH3とCO2では異なったI-V特性を示すため、選択的なガスの検出も可能であると思われる。特に微小液体への有機膜蒸着による封止技術の確立に関して、上記成膜過程の解析の他に、膜の液体との界面のミクロ構造の評価などを行い、順調に進んでいる。25年度が最終年度であるため、記入しない。特に微小液体への有機膜蒸着による封止技術の確立に関して、上記膜の液体との界面のミクロ構造の評価の他に、パリレン膜ミクロ構造の生成過程の評価も進めいている。また、実際にガスを用いた透過特性の評価も開始している。シリコンオイルやイオン液体に対するパリレン膜による封止技術は、ほぼ確立したものと考えている。液体が周囲の界面を介して行なう力や光の伝搬解析は、本年度の成果にあるような温度、イオンなども含め広い範囲での物質あるいは物理量の授受、伝搬について検討を行い、さらに機能性液体の探索やデバイス適用までをふまえて、広い範囲で応用まで見据えて探索していきたいと考えている。25年度が最終年度であるため、記入しない。シリコンオイルやイオン液体に対するパリレン膜による封止技術は、確立したものと考えている。液体が周囲の界面を介して行なう力や光の伝搬解析は、本年度の成果にあるようなガスの他にイオンなども含め広い範囲での物質あるいは物理量の授受、伝搬について検討を行う。さらに機能性液体の探索やデバイス適用までをふまえて、広い範囲で応用まで見据えて探索してゆく。次年度が最終年度であるため、研究の総括も行う。 | KAKENHI-PROJECT-23310089 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23310089 |
有史以新の堆積物の続成過程に於ける堆積環境記録保存性の忠実度と分解能 | 堆積物コア試料には,堆積した当時の堆積環境の記録が年代を追って保存されているはずである.所が有機物,無機物を問わず,湖底表面近傍での微生物活動,酸化還元環境の変化による堆積初期での速度の大きい続王作用や堆積層深部での脱水過程や鉱物化過程での速度の遅い続王作用の結果,化学組成あるいは化学物貭という形態での堆積環境の記録の忠実度と時間分解能を失うことになる.この問題は我々が堆積物コアーを分析し堆積環境を再構築する上で考慮しなければいけない重要な問題である.そこで,琵琶湖を中心として木崎湖,池田湖等を含めた日本の貧栄養湖,中栄養湖の既採取のコアサンプルにつき上記目的に適したものを選んで分析した.また比較のために,南半球において日本と気候,地貭条件が類似しているニュージーランドの代表的な湖であるタウポ湖とワイカレモアナ湖の既採取のコアについても分析した.無機イオンについては,湖底表面の酸化還元電位の急激な変化とともに濃度の大きな変化が生じるものはMnとAsである. Fe,C_0,Zn,Sb等についてもこの傾向が見られる.生体由来のステロール類も堆積後の比較的初期の段階で分解,特異吸着が起こる.堆積後脱水過程が進行するコア深部では,Asは特異的な凝集は起らないため偏析しないが,Mnは偏析する傾向があり堆積初期の忠実度と分解能を低下させる.しかし琵琶湖では千年程度の時間スケール内での平均値をとれば,Mn濃度は堆積環境の指標として用いられる.この例でも明らかな様に,化学物貭の濃度組成等から古環境を復元する場合には,現代の堆積環境において生じた現生の堆積物の研究がきわめて要重であることがあらためて確認された.同位体の研究等は残されたが,63年度以後もこの種の研究は可能なかぎり継続して行くつもりである.堆積物コア試料には,堆積した当時の堆積環境の記録が年代を追って保存されているはずである.所が有機物,無機物を問わず,湖底表面近傍での微生物活動,酸化還元環境の変化による堆積初期での速度の大きい続王作用や堆積層深部での脱水過程や鉱物化過程での速度の遅い続王作用の結果,化学組成あるいは化学物貭という形態での堆積環境の記録の忠実度と時間分解能を失うことになる.この問題は我々が堆積物コアーを分析し堆積環境を再構築する上で考慮しなければいけない重要な問題である.そこで,琵琶湖を中心として木崎湖,池田湖等を含めた日本の貧栄養湖,中栄養湖の既採取のコアサンプルにつき上記目的に適したものを選んで分析した.また比較のために,南半球において日本と気候,地貭条件が類似しているニュージーランドの代表的な湖であるタウポ湖とワイカレモアナ湖の既採取のコアについても分析した.無機イオンについては,湖底表面の酸化還元電位の急激な変化とともに濃度の大きな変化が生じるものはMnとAsである. Fe,C_0,Zn,Sb等についてもこの傾向が見られる.生体由来のステロール類も堆積後の比較的初期の段階で分解,特異吸着が起こる.堆積後脱水過程が進行するコア深部では,Asは特異的な凝集は起らないため偏析しないが,Mnは偏析する傾向があり堆積初期の忠実度と分解能を低下させる.しかし琵琶湖では千年程度の時間スケール内での平均値をとれば,Mn濃度は堆積環境の指標として用いられる.この例でも明らかな様に,化学物貭の濃度組成等から古環境を復元する場合には,現代の堆積環境において生じた現生の堆積物の研究がきわめて要重であることがあらためて確認された.同位体の研究等は残されたが,63年度以後もこの種の研究は可能なかぎり継続して行くつもりである. | KAKENHI-PROJECT-62303021 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62303021 |
胎盤特異的PFK-2/F2,6Paseのクローニングと発現 | PFK-2/F2,6Pase(6-Phosphofructo-2-kinase/Fructose-2,6-bisphosphatase)は,解糖系の律速酵素の一つであるPhosphofructokinaseの最も強力な活性化因子であるFructose-2,6-bisphosphateの合成(PFK-2)および分解(F2,6Pase)を触媒する二機能性酵素である.哺乳動物の本二機能性酵素は各臓器で構造が異なり,肝・骨格筋型,心筋型,精巣型アイソザイムなどが報告されており,臓器特異的な遺伝子発現機構と連関した本酵素の糖代謝調節における役割の解明が期待されている.本研究では,極めて特異な臓器である胎盤の二機能性酵素はどのような構造と特性を有しているかを明らかにするため,ヒト胎盤から本酵素のクローニング,その発現ベクターの構築,発現酵素の精製および諸性質の解明を行った.ヒト胎盤cDNAライブラリーのスクリーニングおよび5'-RACE法により本酵素アイソザイムの全構造をコードするcDNAの塩基配列を決定した.推定アミノ酸配列から,このアイソザイムはこれまで報告のなかった新規アイソザイム(胎盤型アイソザイム:HP2Kと命名)であることが分かった.HP2K-cDNAを組み込んだ発現ベクター(pBSSK(^+)/HP2K)を構築し大腸菌BL21(DE3)にトランスフォームし過剰発現させる条件を確立し,発現タンパク質をSDS-PAGEで単一バンドに精製した.精製酵素は,分子量58000のサブユニットからなるホモダイマー構造を有し,他のアイソザイムと同様キナーゼ及びホスファターゼ活性を合わせ持つ二機能性酵素であったが,ホスファターゼ活性は,他のアイソザイムと比較すると極めて低いことが特徴的であった.発現酵素は,プロテインキナーゼAおよびCにリン酸化され,またFructose-2,6-bisphosphateにもリン酸化されることなども明らかとなった.これらの胎盤型アイソザイムの特性から,本酵素の胎盤における役割について考察した.PFK-2/F2,6Pase(6-Phosphofructo-2-kinase/Fructose-2,6-bisphosphatase)は,解糖系の律速酵素の一つであるPhosphofructokinaseの最も強力な活性化因子であるFructose-2,6-bisphosphateの合成(PFK-2)および分解(F2,6Pase)を触媒する二機能性酵素である.哺乳動物の本二機能性酵素は各臓器で構造が異なり,肝・骨格筋型,心筋型,精巣型アイソザイムなどが報告されており,臓器特異的な遺伝子発現機構と連関した本酵素の糖代謝調節における役割の解明が期待されている.本研究では,極めて特異な臓器である胎盤の二機能性酵素はどのような構造と特性を有しているかを明らかにするため,ヒト胎盤から本酵素のクローニング,その発現ベクターの構築,発現酵素の精製および諸性質の解明を行った.ヒト胎盤cDNAライブラリーのスクリーニングおよび5'-RACE法により本酵素アイソザイムの全構造をコードするcDNAの塩基配列を決定した.推定アミノ酸配列から,このアイソザイムはこれまで報告のなかった新規アイソザイム(胎盤型アイソザイム:HP2Kと命名)であることが分かった.HP2K-cDNAを組み込んだ発現ベクター(pBSSK(^+)/HP2K)を構築し大腸菌BL21(DE3)にトランスフォームし過剰発現させる条件を確立し,発現タンパク質をSDS-PAGEで単一バンドに精製した.精製酵素は,分子量58000のサブユニットからなるホモダイマー構造を有し,他のアイソザイムと同様キナーゼ及びホスファターゼ活性を合わせ持つ二機能性酵素であったが,ホスファターゼ活性は,他のアイソザイムと比較すると極めて低いことが特徴的であった.発現酵素は,プロテインキナーゼAおよびCにリン酸化され,またFructose-2,6-bisphosphateにもリン酸化されることなども明らかとなった.これらの胎盤型アイソザイムの特性から,本酵素の胎盤における役割について考察した.PFK-2/F2,6Pase(6-Phosphofructo-2-kinase/Fructose-2,6-bisphosphatase)は,解糖の律速酵素であるPhosphofructokinaseの最も強力な活性化因子であるFructose-2,6-bisphosphateの合成(PFK-2)および分解(F2,6Pase)を触媒する二機能性酵素である.哺乳動物の本二機能性酵素は各臓器で構造が異なり,肝・骨格筋型,心筋型,精巣型アイソザイムなどが報告されており,臓器特異的な遺伝子発現機構と連関した本酵素の糖代謝調節における役割の解明が期待されている.本研究では,極めて特異な臓器である胎盤の二機能性酵素はどのような構造と特性を有しているかを明らかにするため,ヒト胎盤から本酵素をクローニングすることを目的として行った.ヒト中絶胎盤よりポリ(A)-RNAを精製し作製したcDNAライブラリーをラット精巣及びカエル骨格筋のアイソザイムcDNA断片をプローブとしてスクリーニングした結果,2種のcDNAクローンを得ることができた. | KAKENHI-PROJECT-07680654 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07680654 |
胎盤特異的PFK-2/F2,6Paseのクローニングと発現 | これらのクローンの完全塩基配列を5'-RACE法を用いて決定し,一つのクローンは他アイソザイムとはホモロジーは高いが明らかに異なり,胎盤特異的なもの(胎盤型アイソザイム)であることを明らかとした.推定アミノ酸配列から,胎盤型アイソザイムは,肝型アイソザイムのようにN-末端部位にはPKAのリン酸化サイトを持たず,むしろ心筋型アイソザイムがそうであるようなC-末端部位にPKCのリン酸化サイトが推定された.現在,この胎盤型アイソザイムを大腸菌で発現し酵素化学的諸性質を明らかにすべく研究を進めている.PFK-2/F2,6Pase(6-Phosphofructo-2-kinase/Fructose-2,6-bisphosphatase)は,解糖系の律速酵素の一つであるPhosphofructokinaseの最も強力な活性化因子であるFructose-2,6-bisphosphateの合成(PFK-2)および分解(F2,6Pase)を触媒する二機能性酵素である.哺乳動物の本二機能性酵素は各臓器で構造が異なり,肝,骨格筋型,心筋型,精巣型アイソザイムなどが報告されており,臓器特異的な遺伝子発現機構と連関した本酵素の糖代謝調節における役割の解明が期待されている.本研究では,極めて特異な臓器である胎盤の二機能性酵素はどのような構造と特性を有しているかを明らかにするため,平成7年度にはヒト胎盤から本酵素のクローニングを行った.平成8年度は発現ベクターを構築し,本酵素の発現と精製法の確立し,さらに精製酵素の諸性質を明らかにした.胎盤型アイソザイムの全構造をコードするcDNAを組み込んだ発現ベクター(pBSSK(+)/HP2K)を大腸菌BL21(DE3)にトランスフォームし過剰発現させる条件を確立し,発現タンパク質の精製を行った.大腸菌中抽出液から,DE52及びSephadex G-100クロマトグラフィーによりSDS-PAGEで単一バンドに精製した.精製酵素は,分子量58000のサブユニットからなるホモダイマー構造を有し,他のアイソザイムと同様キナーゼ及びホスファターゼ活性を合わせ持つ二機能性酵素であったが,ホスファターゼ活性は,他のアイソザイムと比較すると極めて低いことが特徴的であった.発現酵素は,プロテイインキナーゼAおよびCにリン酸化され,またFructose-2,6-bisphosphateにもリン酸化されることなども明らかとなった.これらの胎盤型アイソザイムの特性から,本酵素の胎盤における役割を考察することができた. | KAKENHI-PROJECT-07680654 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07680654 |
地方公共団体の財源配分と固定資産税改革 | 1.固定資産税および都市計画税の実態分析バブル経済時に高騰した地価により固定資産税がどの地域で、どの程度増加したかの実態分析を行った。この結果バブルの当初では東京における地価上昇が著しかったのが、徐々に京都・大阪等の東京圏以外の都市圏に波及したプロセスが確認された。2.固定資産税制度変更のシミュレーション固定資産税を現状に固定したままではかなりの増税になるため、自治省が既に公表している各種の軽減措置の効果を都道府県別に計測した。これらの措置のうち、固定資産税評価額の引き上げはどちらかといえばこれまで評価の低かった都市圏の税収を相対的に増加させ、一方地価急騰時の軽減措置やいわゆる四分の一特例の拡充などは都市圏の税収を減少させるが、これらの効果を総合するとやはり都市圏の固定資産税収の伸びの方が地方圏のそれよりも大きいことが分かった。また、これまでに公表されている措置のみではかなりの増税になることが分かった。3.固定資産税増税と住民税減税のシミュレーションそこで、これらの増税分を地方住民税減税の財源に当てるシミュレーションを行ったが、それでも現状以上の税収格差が生じることが明らかにされた。1.固定資産税および都市計画税の実態分析バブル経済時に高騰した地価により固定資産税がどの地域で、どの程度増加したかの実態分析を行った。この結果バブルの当初では東京における地価上昇が著しかったのが、徐々に京都・大阪等の東京圏以外の都市圏に波及したプロセスが確認された。2.固定資産税制度変更のシミュレーション固定資産税を現状に固定したままではかなりの増税になるため、自治省が既に公表している各種の軽減措置の効果を都道府県別に計測した。これらの措置のうち、固定資産税評価額の引き上げはどちらかといえばこれまで評価の低かった都市圏の税収を相対的に増加させ、一方地価急騰時の軽減措置やいわゆる四分の一特例の拡充などは都市圏の税収を減少させるが、これらの効果を総合するとやはり都市圏の固定資産税収の伸びの方が地方圏のそれよりも大きいことが分かった。また、これまでに公表されている措置のみではかなりの増税になることが分かった。3.固定資産税増税と住民税減税のシミュレーションそこで、これらの増税分を地方住民税減税の財源に当てるシミュレーションを行ったが、それでも現状以上の税収格差が生じることが明らかにされた。 | KAKENHI-PROJECT-04630055 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04630055 |
高分子系の緩和のシミュレーションによる解析 | 1.斥力的壁でスリット内に閉じ込められた高分子鎖の緩和率、緩和モードを調べた。壁に平行な方向に関しては、スリットの間隔程度の大きさのブロッブの連なった2次元排除体積鎖の挙動として理解できた。壁に垂直な方向に関しては、隣り合うブロッブの垂直方向の変位の間に斥力的相互作用があるとして理解できた。2.複数の高分子鎖の一端が共通の中心で結合された星型高分子の緩和率、緩和モードを調べた。枝の数と1本の枝あたりのセグメント数を変えたときの変化を調べ、全体の形の変化に対応した緩和モードと2本の枝の交換に対応する緩和モードを見い出した。前者は理論的に予想されていたが、後者はされていなかった。3.斥力的壁で作られた管の2、3次元のネットワーク内に閉じ込められた高分子鎖の緩和率、緩和モードを調べた。2次元の場合、排除体積相互作用の影響で、緩和率分布のセグメント数依存性の翼が変化していた。また最小緩和率が他の緩和率と異なる挙動を示していた。3次元では排除体積相互作用の影響は小さかった。4.濃厚高分子系中の1本の高分子鎖の緩和率、緩和モードを調べた。最小緩和率がセグメント数Nの何乗に反比例するかの見かけの指数がNとともに大きくなり、理論の予想値3を超えることを見い出した。扱った最大のNに対して見かけの指数は実験値に近い3.5となった。p番目に小さい緩和率のp依存性の冪は理論値2よりわずかに小さかった。緩和モードの挙動はp=1、2に対しては理論の予想にほぼ合っていた。5.排除体積相互作用と流体力学的相互作用を取り入れて、希薄溶液中の孤立高分子鎖の緩和率、緩和モードを調べた。流体力学的相互作用の強さを変化させたときに緩和率分布がどのように変化するかを記述する理論式を提案し、それが成立していることを確認した。1.斥力的壁でスリット内に閉じ込められた高分子鎖の緩和率、緩和モードを調べた。壁に平行な方向に関しては、スリットの間隔程度の大きさのブロッブの連なった2次元排除体積鎖の挙動として理解できた。壁に垂直な方向に関しては、隣り合うブロッブの垂直方向の変位の間に斥力的相互作用があるとして理解できた。2.複数の高分子鎖の一端が共通の中心で結合された星型高分子の緩和率、緩和モードを調べた。枝の数と1本の枝あたりのセグメント数を変えたときの変化を調べ、全体の形の変化に対応した緩和モードと2本の枝の交換に対応する緩和モードを見い出した。前者は理論的に予想されていたが、後者はされていなかった。3.斥力的壁で作られた管の2、3次元のネットワーク内に閉じ込められた高分子鎖の緩和率、緩和モードを調べた。2次元の場合、排除体積相互作用の影響で、緩和率分布のセグメント数依存性の翼が変化していた。また最小緩和率が他の緩和率と異なる挙動を示していた。3次元では排除体積相互作用の影響は小さかった。4.濃厚高分子系中の1本の高分子鎖の緩和率、緩和モードを調べた。最小緩和率がセグメント数Nの何乗に反比例するかの見かけの指数がNとともに大きくなり、理論の予想値3を超えることを見い出した。扱った最大のNに対して見かけの指数は実験値に近い3.5となった。p番目に小さい緩和率のp依存性の冪は理論値2よりわずかに小さかった。緩和モードの挙動はp=1、2に対しては理論の予想にほぼ合っていた。5.排除体積相互作用と流体力学的相互作用を取り入れて、希薄溶液中の孤立高分子鎖の緩和率、緩和モードを調べた。流体力学的相互作用の強さを変化させたときに緩和率分布がどのように変化するかを記述する理論式を提案し、それが成立していることを確認した。いくつかの高分子系に対してシミュレーションを行い、その緩和について次のような結果を得た。1.排除体積相互作用と流体力学的相互作用を取り入れて、溶液中の孤立高分子鎖のブラウン運動のシミュレーションを行い、その緩和率、緩和モードを調べた。流体力学的相互作用が強い場合の緩和率の挙動が、理論的な予想と合致することを示した。さらに、流体力学的相互作用の強さを変化させることにより、流体力学的相互作用がない場合の緩和率の挙動から、ある場合の挙動への移り変わりの様子を明らかにした。2.斥力的壁でスリット内に閉じ込められた高分子鎖のモンテカルロ・シミュレーションを行い、その緩和率、緩和モードを調べた。壁に平行な方向に関する緩和率、緩和モードの挙動は、スリットの間隔程度の大きさのブロッブの連なった2次元の排除体積鎖の挙動として理解できることを示した。壁に垂直な方向に関する挙動は、隣り合うブロッブの垂直方向の変位の間に斥力的な相互作用があるとして理解できることを明らかにした。3.斥力的壁で作られた管の2次元ネットワーク内に閉じ込められた高分子鎖のモンテカルロ・シミュレーションを行い、その緩和率、緩和モードを調べた。緩和率、緩和モードの挙動が、レプテーション理論の予想とほぼ一致することを明らかにした。緩和率のセグメント数依存性の指数が排除体積効果のために変化している可能性について、検討を続けている。4.斥力的壁で作られた管の3次元ネットワーク内に閉じ込められた高分子鎖のモンテカルロ・シミュレーションを行い、その緩和率、緩和モードを調べた。緩和率、緩和モードの挙動が、レプテーション理論の予想とほぼ一致することを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-11640380 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11640380 |
高分子系の緩和のシミュレーションによる解析 | 以下の高分子系に対して計算機シミュレーションを行い、高分子の緩和モードと緩和率分布を調べ、以下のような結果を得た。いずれの場合も、排除体積相互作用を取り入れ、流体力学的相互作用は無視して扱った。1.複数の高分子鎖の一端が共通の中心で結合された星型高分子の緩和を調べた。星型高分子の枝の数と1本の枝あたりのセグメント数を変化させて緩和率と緩和モードの変化を調べ、2種類の緩和モードがあることを明らかにした。一つは星型高分子全体の形の変化に対応し、もう一つは2本の枝の位置の交換に対応すると考えられる。前者は理論で予想されていたが、後者は予想されていない。また、緩和モードの振幅が、排除体積相互作用のない場合に比べ、中心部分で小さくなっていることを見い出した。2.斥力的壁で作られた管の2、3次元のネットワーク内に閉じ込められた高分子鎖の緩和を調べた。2次元の場合、排除体積相互作用の影響で、緩和率分布のセグメント数依存性の冪が変化していること、最小緩和率が他の緩和率と異なる挙動を示すことを見い出した。3次元の場合、排除体積相互作用の影響は小さく、緩和率分布の振る舞いに関して、排除体積相互作用のない場合の理論の予想からのずれは見い出せなかった。3.濃厚高分子系中の1本の高分子鎖の緩和を調べた。セグメント数Nの高分子鎖のp番目に小さい緩和率の振る舞いが、Nのpに対する比がある値より大きい場合に、緩和率がNの3乗に反比例しpの2乗に比例するという、レプテーション理論の予想に合っていることを見い出した。また、緩和モードの振る舞いがレプテーション理論の予想に合っていることを見い出した。現在、この結果の確認のために、さらに大きなセグメント数の高分子鎖の系に対して計算機シミュレーションを行っている。以下の高分子系に対して計算機シミュレーションを行い、高分子鎖の緩和モードと緩和率分布を調べ、以下のような結果を得た。1.複数の高分子鎖の一端が共通の中心で結合された星型高分子の緩和を調べた。排除体積相互作用のみ取り入れ、流体力学的相互作用は無視した。星型高分子の枝の数を従来より多くして、緩和率と緩和モードの枝の数依存性を調べた。少ない枝の数で見い出された2種類の緩和モード(全体の形の変化と2本の枝の位置の交換に対応)が、枝の数が多い場合にも確認された。緩和率の枝の数依存性の指数をより正確に評価することができた。枝の数が多いほど中心部分の緩和モードの振幅が小さくなっていることを見い出した。2.排除体積相互作用と流体力学的相互作用を取り入れて、溶液中の孤立高分子鎖の緩和を調べた。流体力学的相互作用の強さを変化させたときに緩和率分布がどのように変化するかを記述する理論式を提案し、それが成立していることを確認した。3.濃厚高分子系中の1本の高分子鎖の緩和を調べた。高分子鎖のセグメント数、本数、シミュレーションの長さに関し世界最大規模のシミュレーションを行った。セグメント数Nの高分子鎖の最も小さい緩和率がNの何乗に反比例するかを記述する見かけの指数が、Nを大きくしていくと大きくなっていき、レプテーション理論の予想値3を超えることを見い出した。扱った最大のNに対しては見かけの指数は3.5になり、実験で見い出されている値に近かった。 | KAKENHI-PROJECT-11640380 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11640380 |
ゴム中ナノ粒子のネットワーク構造の離散幾何解析と構造機能相関解明 | ナノ粒子が充填されたゴム材料で、バウンドラバーやナノ粒子凝集構造の特徴や機能との相関を分子シミュレーションで明らかにするために、粗視化MD解析法の検討を確立させた。これは本研究で用いる教師データの質を高めることに対応する。延伸下のゴム中ナノ粒子の構造に関する2次元散乱パターンの挙動と、分子レベルでの挙動を結びつける検討を行い、7本の論文を出版した。ゴム材料中の充填剤のシリカナノ粒子の体積分率を系統的に変えたサンプル(4%, 8%, 12%, 16%, 20%, 24%)を作成し、NIMS微細構造プラットフォームのFIB-SEMを用いた3次元ナノ構造の計測や、SPring-8のBL19B2, BL08B2, BL24XUを用いた小角散乱データの観察を行った。開始当初に、ゴム中ナノ粒子の3次元構造を2nmの高解像度でFIB-SEM計測する手法を確立させるとともに、切削方向のディープラーニング超解像化の可能性を検討し論文出版した。また、3次元構造をVR観察する技術の検討を行い、論文出版した。粗視化MDをさらに簡素化したFN-toyモデルにおいて、ボンド切断を考慮した模型の検討を行った。粗視化MDを教師データとして、FN-toyモデルへの学習・フィッティングを改良し、構造の数学的特徴と物性値の相関をAI(機械学習・ディープラーニング)で見いだす作業を進めている。新たに取得した散乱スペクトルに対する逆モンテカルロ(RMC)解析で「京」コンピュータの有償利用し、約3千万粒子の大規模系の途中結果を迅速に得た。現在、RMC解析の継続と詳細な解析を進めている。延伸中の異方的な2次元散乱パターンからナノ粒子配置を逆問題推定する2次元散乱パターンRMC法について、3D-FFTを用いて散乱を計算する新しい計算法のコードを開発し、ゲル中のナノ粒子で実証検証を実施した。この成果は、論文投稿中である。ナノ粒子が充填されたゴム材料に関して、バウンドラバー/ナノ粒子のネットワーク構造の数学的特徴付けと機能との相関解明を検討するためのシミュレーション研究を順調に進めた。特に、数学的特徴と物性推定値との広範な相関を、構造と応力のデータから、AI(機械学習・ディープラーニング)的判別の可能性検討のために、シミュレーションデータを取得した。簡易粗視化模型のFN-toyモデルは、延伸過程の2次元散乱パターンを再現するようにパラメータを設定するため、教師データとなる粗視化MD法による研究を進めた。また、高分子ネットワークの特徴が2次元散乱パターンの挙動に大きく影響を与えることを新たに明らかにした。高分子ネットワークが、グラフとしてはパーコレーションしていないが、entanglementにより力を伝える状態では、パターンの変化が顕著になった。高分子ネットワークの特徴付けについて、領域内の研究者と議論を行い、関連する研究の発展を検討した。ゴム材料中の充填剤のシリカナノ粒子の体積分率を系統的に変えたサンプル(4%, 8%, 12%, 16%, 20%, 24%)を作成し、NIMS微細構造プラットフォームのFIB-SEMを用いた3次元ナノ構造の計測や、SPring-8のBL19B2, BL08B2, BL24XUを用いた小角散乱データの取得を概ね順調(一部が未実施)に進めた。BL19B2の小角データに対する52万粒子系のRMC解析は実施した。BL24XUの極小角データに対する400万粒子系の解析を順調に進めた。並行して、比較確認のために、すでに出版した論文と同じ3000万粒子の大規模系の解析を京コンピュータを実施し、迅速に途中経過を得た。ゴム中ナノ粒子の3次元凝集構造を直感的に把握するため、没入型VR観察の環境を整備し、研究協力者や領域内研究者および講演を通じての一般への理解周知を行った。フィラー充填ゴム材料系の粗視化MDシミュレーションで得た2次元散乱パターンに対するAI的解析や、FN-toyモデルによる大量データでの解析について、引き続き検討を進める。また、ABAブロックコポリマーの粗視化MDによる相分離構造の形成や変形に対する2次元散乱パターン挙動に関する研究も、フィラーが作る相対的に硬い構造体の挙動解析と関係することから、並行して進める。さらに、ボイド形成などの破壊挙動については、2次元散乱パターン挙動が実験とシミュレーションの対応関係を明らかにできたことから、高分子とナノ粒子の間の相互作用の影響を詳細に検討するため、物性値の再現精度が高いユナイテッドアトム模型TraPPE-UAや反応力場ReaxFFを用いた高分子材料系のシミュレーション研究も進める予定である。これらのデータの特徴について、機械学習やディープラーニングなどのAI的解析での分析を進め、構造の数学的特徴と物性の相関を解明し、材料物性の予測などを実現させる。本研究課題で作成したゴム材料のナノ構造観察については、一部未実施であったFIB-SEM観察やSPring-8 BL24XUの極小角散乱データの取得を引き続き進める。FIB-SEMで取得したナノ粒子の凝集構造についての数学的特徴付けについての分析を引き続き進める。極小角散乱データのRMC解析については、解析対象とする系の規模の見極めを行い、解析を完了させる。FIB-SEMの3次元構造に対する解析の知見を基にして、RMC解析で得た単分散ナノ粒子の3次元凝集構造の特徴分析を行う。延伸させたゴム中のナノ粒子の2次元散乱パターン挙動に対するRMC解析を、論文投稿中のPM-2DpRMCコードで実施し、特徴的な挙動を明らかにする。 | KAKENHI-PUBLICLY-18H04494 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-18H04494 |
ゴム中ナノ粒子のネットワーク構造の離散幾何解析と構造機能相関解明 | 加えて、PM-2DpRMCコードについて、研究協力者等も利用できるようにしてコード公開の準備を進める。ナノ粒子が充填されたゴム材料で、バウンドラバーやナノ粒子凝集構造の特徴や機能との相関を分子シミュレーションで明らかにするために、粗視化MD解析法の検討を確立させた。これは本研究で用いる教師データの質を高めることに対応する。延伸下のゴム中ナノ粒子の構造に関する2次元散乱パターンの挙動と、分子レベルでの挙動を結びつける検討を行い、7本の論文を出版した。ゴム材料中の充填剤のシリカナノ粒子の体積分率を系統的に変えたサンプル(4%, 8%, 12%, 16%, 20%, 24%)を作成し、NIMS微細構造プラットフォームのFIB-SEMを用いた3次元ナノ構造の計測や、SPring-8のBL19B2, BL08B2, BL24XUを用いた小角散乱データの観察を行った。開始当初に、ゴム中ナノ粒子の3次元構造を2nmの高解像度でFIB-SEM計測する手法を確立させるとともに、切削方向のディープラーニング超解像化の可能性を検討し論文出版した。また、3次元構造をVR観察する技術の検討を行い、論文出版した。粗視化MDをさらに簡素化したFN-toyモデルにおいて、ボンド切断を考慮した模型の検討を行った。粗視化MDを教師データとして、FN-toyモデルへの学習・フィッティングを改良し、構造の数学的特徴と物性値の相関をAI(機械学習・ディープラーニング)で見いだす作業を進めている。新たに取得した散乱スペクトルに対する逆モンテカルロ(RMC)解析で「京」コンピュータの有償利用し、約3千万粒子の大規模系の途中結果を迅速に得た。現在、RMC解析の継続と詳細な解析を進めている。延伸中の異方的な2次元散乱パターンからナノ粒子配置を逆問題推定する2次元散乱パターンRMC法について、3D-FFTを用いて散乱を計算する新しい計算法のコードを開発し、ゲル中のナノ粒子で実証検証を実施した。この成果は、論文投稿中である。ナノ粒子が充填されたゴム材料に関して、バウンドラバー/ナノ粒子のネットワーク構造の数学的特徴付けと機能との相関解明を検討するためのシミュレーション研究を順調に進めた。特に、数学的特徴と物性推定値との広範な相関を、構造と応力のデータから、AI(機械学習・ディープラーニング)的判別の可能性検討のために、シミュレーションデータを取得した。簡易粗視化模型のFN-toyモデルは、延伸過程の2次元散乱パターンを再現するようにパラメータを設定するため、教師データとなる粗視化MD法による研究を進めた。また、高分子ネットワークの特徴が2次元散乱パターンの挙動に大きく影響を与えることを新たに明らかにした。高分子ネットワークが、グラフとしてはパーコレーションしていないが、entanglementにより力を伝える状態では、パターンの変化が顕著になった。高分子ネットワークの特徴付けについて、領域内の研究者と議論を行い、関連する研究の発展を検討した。ゴム材料中の充填剤のシリカナノ粒子の体積分率を系統的に変えたサンプル(4%, 8%, 12%, 16%, 20%, 24%)を作成し、NIMS | KAKENHI-PUBLICLY-18H04494 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-18H04494 |
水田農業再編主体としての農業再生協議会の農地観・農業観に関する実証的比較研究 | 水田農業再編を進める上で各地域が主体的に果たす役割が重みを増している中、地域ではJA等が構成する農業再生協議会が主体となり、農地・農業の実情の認識を踏まえて計画性ある水田農業のビジョンを策定し、詳細な補助金を決定する。そこで、各地域の水田農業のビジョンを全国規模で収集・分析し、農業再生協議会が農地・農業にいかに認識し、どのようなビジョン(農地観・農業観)をもつか、また、そのビジョンが補助金決定に与える影響等を分析し、現行政策の意義と限界を解明する。とくに、補助金に強く依存し、より人為的・計画的な取り組みが反映されやすい、飼料用水稲の位置付けに着目して統計データ・実態から地域間比較分析を行う。水田農業再編を進める上で各地域が主体的に果たす役割が重みを増している中、地域ではJA等が構成する農業再生協議会が主体となり、農地・農業の実情の認識を踏まえて計画性ある水田農業のビジョンを策定し、詳細な補助金を決定する。そこで、各地域の水田農業のビジョンを全国規模で収集・分析し、農業再生協議会が農地・農業にいかに認識し、どのようなビジョン(農地観・農業観)をもつか、また、そのビジョンが補助金決定に与える影響等を分析し、現行政策の意義と限界を解明する。とくに、補助金に強く依存し、より人為的・計画的な取り組みが反映されやすい、飼料用水稲の位置付けに着目して統計データ・実態から地域間比較分析を行う。 | KAKENHI-PROJECT-19K15933 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K15933 |
5-HTと5-HT受容体を介する尿細管間質線維化の機序の解明と新規治療標的の同定 | 腎線維化マウスにsarpogrelate hydrochrolide(SG)を投与すると、腎機能や尿細管間質線維化が改善した。SGの腎保護メカニズムとして、腎線維化を促進するPAI-1の抑制、抗血栓や血流改善、抗炎症効果があることが示唆された。遺伝子改変マウスの検討ではSGにより尿細管障害マーカーである尿中L-FABPが低減し、腎尿細管保護作用が示唆された。培養細胞(mProx細胞)での検討では、腎線維化促進刺激を細胞に与えるとPAI-1が増加したがSG投与で改善した。SGの受容体が培養細胞や腎で発現していることを確認し、SGが尿細管上皮細胞に直接作用して腎保護効果をもたらすと考えられた。腎線維化マウスにsarpogrelate hydrochrolide(SG)を投与すると、腎機能や尿細管間質線維化が改善した。SGの腎保護メカニズムとして、腎線維化を促進するPAI-1の抑制、抗血栓や血流改善、抗炎症効果があることが示唆された。遺伝子改変マウスの検討ではSGにより尿細管障害マーカーである尿中L-FABPが低減し、腎尿細管保護作用が示唆された。培養細胞(mProx細胞)での検討では、腎線維化促進刺激を細胞に与えるとPAI-1が増加したがSG投与で改善した。SGの受容体が培養細胞や腎で発現していることを確認し、SGが尿細管上皮細胞に直接作用して腎保護効果をもたらすと考えられた。野生型マウス(C57BL/6)をアデニン含有飼料で6週間飼育し、尿細管間質線維化モデルマウスを作製した。この尿細管間質線維化モデルマウスに対して、アデニン含有飼料開始2週間後より5-HT受容体拮抗薬であるsarpogrelate hydrochrolide(以下SG)を投与することで、血中BUNやクレアチニンの低下や尿細管間質線維化の改善を認め、また、αSMAやCollagen type IVの発現が抑制された。また、SGの投与量によって、尿細管間質線維化抑制効果に違いがあることを見出した。SGの投与で腎組織中のPAI-1発現量の低下を認めた。SGによる腎線維化改善メカニズムの1つとして、TGF-βの効果を増量するPAI-1をSGが抑制することがあると考えられた。また、Fibrin/Fibrinogen陽性血栓の減少や腎尿細管周囲の血流改善も認め、SGの腎保護効果のメカニズムにSGの抗血栓性や腎内の微小循環血流改善もあると考えられた。また、腎内へのF4/80陽性マクロファージ浸潤の減少を認め、SGによる抗炎症効果の可能性が示唆された。SGによるTGF-βやMCP-1の低減効果は有意ではなかった。ヒトL-FABPトランスジェニックマウスを用いて同様の実験を行い、尿細管障害のバイオマーカーである尿中L-FABPを定量したところ、SGにより尿L-FABPの低減が認められ、SGによる腎尿細管保護作用が示された。野生型マウス(C57BL/6)をアデニン含有飼料で6週間飼育し尿細管間質線維化モデルマウスを作製した。この尿細管間質線維化モデルマウスに5-HT受容体拮抗薬であるsarpogrelate hydrochrolide(以下SG)を4週間投与したところ、血中BUNやクレアチニンの低下や尿細管間質線維化の改善、αSMAやCollagen type IVの発現抑制を認めた。これらの効果にはSGの至適用量があることを見出した。また、SG投与で腎組織中のPAI-1発現の低下を認め、SGによる腎線維化改善メカニズムの1つとして、TGF-β作用増強をもたらすPAI-1の抑制があると考えられた。また、SG投与で腎組織中のFibrin/Fibrinogen陽性血栓の減少や、腎尿細管周囲の血流改善(CCDカメラを用いたシステムで評価した)を認め、SGの腎保護効果のメカニズムとして抗血栓や血流改善効果もあると考えられた。さらに、腎組織中へのF4/80陽性マクロファージ浸潤の軽減を認め、SGによる抗炎症効果の可能性が示唆された。SG投与によるTGF-βやMCP-1の低下効果は有意ではなかった。ヒトL-FABPトランスジェニックマウスを用いて上記と同様の実験を行い、尿細管障害のバイオマーカーである尿中L-FABPを定量したところ、SGにより尿L-FABPの低減が認められ、SGによる腎尿細管保護作用が示唆された。続いて、マウス由来近位尿細管上皮細胞であるmProx細胞を用いた検討を行った。mProx細胞をTGF-β単独またはTGF-βと5-HTで刺激するとPAI-1の発現増加を認め、このPAI-1上昇はSG投与で改善した。mProx細胞やマウス腎臓ではSGの主要な受容体である5-HT 2A受容体が発現していることを確認した。SGが尿細管上皮細胞に直接作用して腎保護効果をもたらす可能性が考えられた。腎臓病学動物を用いた実験で、当初計画していた評価項目の評価を行い、一定の結果(薬剤による有意な作用を示唆する結果)を得ている。また、培養細胞を用いた実験をすでに初年度までには行っている。培養細胞である尿細管上皮細胞を用いた実験を行い、5-HT受容体拮抗薬による尿細管上皮細胞に対する作用を検討する。 | KAKENHI-PROJECT-25860288 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25860288 |
5-HTと5-HT受容体を介する尿細管間質線維化の機序の解明と新規治療標的の同定 | 研究が当初の予定よりも順調に経過したため、次年度使用額が生じた。次年度で、次年度使用顎および翌年分請求額を合わせた助成金を使用する予定である。in vitroの実験で使用する試薬などの購入を予定している。また、追加で必要になると思われるin vivo実験で使用するための動物、抗体などの試薬などの購入も予定している。データ解析用のPCを購入する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-25860288 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25860288 |
ペルー伝承民間薬「猫のつめ」(アカネ科ウンカリア・トメントーサ)の化学的研究 | ペルー伝承民間薬「Una de gato(ウーニャ・デ・ガト)」(猫のつめ)は、古くから関節炎・胃炎、がん、ある種の伝染病の治療に用いられており、その基源植物はアカネ科uncaria tomentosaまたはU.guianensisであることが知られている。最近になって、抗炎症・抗HIV・抗がん・抗酸化活性が報告され、また、この2種の植物の含有成分に関しては1952年以来多くの研究が行なわれているが、その有効成分の解明には至っていない。輸入業者を通じて入手したペルー市場品Una de gato 385gをメタノールにて熱抽出し、メタノールエキス約100gを得た。これを各種クロマトにより精製を行い、新規化合物6種を含むアルカロイド類、トリテルベン類など23種を得た。アルカロイドとして3種のへテロヨヒンビン型オキシインドールとともにUna de gatoからインドールアルカロイド配糖体(5S-5-Carboxystrictosidinic acid,Lyaloside)が見出されたのはこれが最初である。さらに新規アルカロイド配糖体3,4-Dehydro-5S-5-carboxystrictosidinic acidの単離に成功した。既知トリテルペンとしては、ウルサン型トリテルペン2種、ウルサン型トリテルペン配糖体4種ならびにオレアナン型トリテルペン配糖体3種を得た。さらに新規トリテルペンとして、ウルサン型トリテルペンの6位がケトンとなった化合物2種と、13-14位に二重結合を有する27-ノルウルサン型並びに27-ノルオレアナン型トリテルペン配糖体を単離した。また、エピカテキンとC6-C3ユニットが結合した新規化合物、3種の既知クマリン類を得た。新規化合物に関しては、既知化合物の化学変換による構造証明を含めた構造の検討を行っている。数種の単離化合物については現在、学習機能に関する行動薬理学的研究のための薬理試験に供している。ペル-伝承民間薬「Una de gato(ウ-ニャ・デ・ガト)」(猫のつめ)の基源植物はアカネ科Uncaria tomentosaであることが明らかにされている。この生薬についてはすでにドイツ、イタリアなど多くの研究者によって含有成分の研究が行なわれているが、その有効成分の解明には至っていない。当研究室には各種Uncaria属植物についての研究ノウハウの蓄積があり、また含有成分のライブラリーが整っているのでこれを利用してこの注目すべき南米民間薬成分の研究を行うこととした。輸入業者を通じて入手したUna de gato385gをメタノールにて熱抽出し、メタノールエキス約100gを得た。これを各種クロマトにより精製を行い、現在までにアルカロイド類、トリテルペン類など既知化合物9種とともに新規化合物3種を得た。アルカロイドとしてはヘテロヨヒンビン型オキシインドールのUncarine F,Isopteropodine,Pteropodineなどを単離した。またβ-carboline骨格を持つLyalosideを本植物からははじめて単離した。既知のトリテルペンとしては、ウルサン型トリテルペン2種、ウルサン型配糖体トリテルペン2種ならびにオレアナン単離配糖体トリテルペン1種を得た。さらに新規化合物として、ウルサン型トリテルペンの6位がケトンとなった化合物2種と、13-14位に二重結合を有するオレアナン型トリテルペンの3位水酸基に糖がエーテル結合し、17位のカルボン酸に糖がエステル結合した化合物を単離し、各種スペクトルによりその構造を検討中である。単離した化合物については今後薬理試験に供する予定である。ペルー伝承民間薬「Una de gato(ウーニャ・デ・ガト)」(猫のつめ)は、古くから関節炎・胃炎、がん、ある種の伝染病の治療に用いられており、その基源植物はアカネ科uncaria tomentosaまたはU.guianensisであることが知られている。最近になって、抗炎症・抗HIV・抗がん・抗酸化活性が報告され、また、この2種の植物の含有成分に関しては1952年以来多くの研究が行なわれているが、その有効成分の解明には至っていない。輸入業者を通じて入手したペルー市場品Una de gato 385gをメタノールにて熱抽出し、メタノールエキス約100gを得た。これを各種クロマトにより精製を行い、新規化合物6種を含むアルカロイド類、トリテルベン類など23種を得た。アルカロイドとして3種のへテロヨヒンビン型オキシインドールとともにUna de gatoからインドールアルカロイド配糖体(5S-5-Carboxystrictosidinic acid,Lyaloside)が見出されたのはこれが最初である。さらに新規アルカロイド配糖体3,4-Dehydro-5S-5-carboxystrictosidinic acidの単離に成功した。既知トリテルペンとしては、ウルサン型トリテルペン2種、ウルサン型トリテルペン配糖体4種ならびにオレアナン型トリテルペン配糖体3種を得た。さらに新規トリテルペンとして、ウルサン型トリテルペンの6位がケトンとなった化合物2種と、13-14位に二重結合を有する27-ノルウルサン型並びに27-ノルオレアナン型トリテルペン配糖体を単離した。また、エピカテキンとC6-C3ユニットが結合した新規化合物、3種の既知クマリン類を得た。新規化合物に関しては、既知化合物の化学変換による構造証明を含めた構造の検討を行っている。 | KAKENHI-PROJECT-09771895 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09771895 |
ペルー伝承民間薬「猫のつめ」(アカネ科ウンカリア・トメントーサ)の化学的研究 | 数種の単離化合物については現在、学習機能に関する行動薬理学的研究のための薬理試験に供している。 | KAKENHI-PROJECT-09771895 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09771895 |
富栄養化とP栄養塩:そのサステイナブル管理のための生態学的戦略 | リンは土壌中に蓄積されており、植物の根によって吸収され取り込まれるが、土壌中で吸着されたリン酸イオンは、植物による利用率が低い。しかし、植物根は有機酸を分泌し、リン酸を吸収する能力を持つ。この現象と仕組みを、少ないリン酸イオンを的確に植物体内で有効化する作物品種を用いて明らかにし、その特性を持続的な作物生産の維持管理に活用することが本研究の目的である。その目的を達成するために下記の研究を実施した。A.水域のリン過剰条件下:河川並びに富栄養湖のヘドロを24地点から採集し、ヘドロの土性によりPの収着/非収着の動態が異なることを明らかにした。B.陸域のリン過剰・欠乏条件下:選抜した特徴的な4品種を供試して、遅効性の可溶性PのP可溶化やP獲得を含めた根部介在メカニズムを誘引するPストレスを証明した。さらに、生きた小麦個体の根を供試して、根圏の酸性化を誘引するPストレスを感知すると共に遅効性の可溶性Pを供試して、根部分泌物の役割を解明した。すなわち、リン酸カルシウム塩を寒天に混入し、根端付近の根圏酸性化と比較することにより、遅効性の可溶性Ca-Pの不可溶性に関するH+イオン流出の関与を確認し、H+ポンプやプラズマ膜のH+ATPase活性の適応を相対評価した。また、PストレスにおけるP再流動及びPi吸収に関するパラメータを推定して植物体内のP再流動や再移行を誘引するP欠乏状況や栄養塩類枯渇状況を把握した。一方、リン過剰条件下においては、P隔離に関する相対能力を評価するモデルに、既往の実験で得られた結果をシミュレートすることにより、Pの収着/非収着の動態を解明した。以上のP獲得とP利用効率の実験から、欠乏する溶解性P資源に応じた低濃度に対するP耐性/P利用効率の高い小麦品種が持続可能な作物生産を維持し、P過剰の富栄養化のリスクを解消することを提言した。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。リンは生体必須元素の一つで、生体の重要な機能に深く関与する。一方、生物圏におけるリンの循環は閉鎖性のより強い生物学的循環を行っている。陸域生態系において、リンは土壌中に蓄積されており、植物の根によって吸収され、生物体に取り込まれる。この土壌と植物との連繋体でリンの挙動を概観した場合、土壌中で吸着されたリン酸イオンは、植物による利用率が低い。しかし、植物根は有機酸を分泌し、それらと交換して土壌溶液に出てきたリン酸を吸収する能力を持つ。この現象と仕組みを土壌中のリン欠乏に耐性を持ち、少ないリン酸イオンを的確に植物体内で有効化する作物品種を用いて明らかにし、その特性を将来生じるリン欠乏時代に備えて、持続的な作物生産や土壌中の有機態リンの存在の維持管理に活用することが本研究の目的である。その目的を達成するために下記の研究を実施した。1.水域のリン過剰条件下:水生植物によるファイトレメディエーション能力の評価:水生植物Azolla3種を供試して、バイオマス生産量、P蓄積量、及びP除去速度よりP除去能を評価した。その結果、3種共に短期間で高濃度のリンを吸収することが把握され、P除去能の向上に及ぼす微環境を確認した。2.陸域のリン過剰・欠乏条件下:P低濃度に対する耐性小麦品種及びP高感受性小麦品種の選抜:溶解性P源を使用し、P低濃度・高濃度条件下で生育反応並びにP利用効率が様々な小麦14品種を供試して相対評価を行い、低濃度Pに対して、P利用効率の高い反応集団、利用効率の低い反応集団、非効率性が明確な集団、非効率性の反応が低い集団に類別化した。各グループの中から、今後追跡可能な特徴的な4品種を選抜した。得られた結果を、米国ハワイで開催された「14th International Symposium forSoil and Plant Analysis」にて発表した。リンは土壌中に蓄積されており、植物の根によって吸収され取り込まれるが、土壌中で吸着されたリン酸イオンは、植物による利用率が低い。しかし、植物根は有機酸を分泌し、リン酸を吸収する能力を持つ。この現象と仕組みを、少ないリン酸イオンを的確に植物体内で有効化する作物品種を用いて明らかにし、その特性を持続的な作物生産の維持管理に活用することが本研究の目的である。その目的を達成するために下記の研究を実施した。A.水域のリン過剰条件下:河川並びに富栄養湖のヘドロを24地点から採集し、ヘドロの土性によりPの収着/非収着の動態が異なることを明らかにした。B.陸域のリン過剰・欠乏条件下:選抜した特徴的な4品種を供試して、遅効性の可溶性PのP可溶化やP獲得を含めた根部介在メカニズムを誘引するPストレスを証明した。さらに、生きた小麦個体の根を供試して、根圏の酸性化を誘引するPストレスを感知すると共に遅効性の可溶性Pを供試して、根部分泌物の役割を解明した。すなわち、リン酸カルシウム塩を寒天に混入し、根端付近の根圏酸性化と比較することにより、遅効性の可溶性Ca-Pの不可溶性に関するH+イオン流出の関与を確認し、H+ポンプやプラズマ膜のH+ATPase活性の適応を相対評価した。 | KAKENHI-PROJECT-14F03908 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14F03908 |
富栄養化とP栄養塩:そのサステイナブル管理のための生態学的戦略 | また、PストレスにおけるP再流動及びPi吸収に関するパラメータを推定して植物体内のP再流動や再移行を誘引するP欠乏状況や栄養塩類枯渇状況を把握した。一方、リン過剰条件下においては、P隔離に関する相対能力を評価するモデルに、既往の実験で得られた結果をシミュレートすることにより、Pの収着/非収着の動態を解明した。以上のP獲得とP利用効率の実験から、欠乏する溶解性P資源に応じた低濃度に対するP耐性/P利用効率の高い小麦品種が持続可能な作物生産を維持し、P過剰の富栄養化のリスクを解消することを提言した。本研究は、リン過剰とリン欠乏の両極端の環境条件下で、環境生態学と植物生物学の観点から水域と陸域の両面において、植物と土壌や水界との連携体を単位にリンの動態を明らかにして、将来のリン欠乏時期に備えることを目的としている。本年度の計画は、基礎的な事項を把握することにあった。その意味では、水生植物のリン固定能力の把握、リンに対する反応の異なる4グループに小麦14品種を類別し、各グループより特徴のある品種を選抜し、今後の研究の方向性を堅固にしたことは評価できる。得られた結果は国際シンポジウムで発表し討議する機会を得た。現在、発表論文数は少ないが、3編は投稿中で、5編は論文作成中である。27年度が最終年度であるため、記入しない。本年度の研究結果を基に下記の項目を解明し、研究成果をまとめる。まず、各特性から類別化された小麦品種の自然環境下における砂耕及び土耕栽培における再現性の評価する。次に、遅効性の可溶性PにおけるP可溶化やP獲得を含めた根部介在メカニズムを誘引するPストレスを証明する。さらに、遅効性の可溶性Ca-Pの不可溶性に関するH+イオン流出の関与とH+ポンプやプラズマ膜のH+ATPase活性の適応を相対評価する。一方、PストレスにおけるP再流動及びPi吸収に関するパラメータの推定も必要となる。最後に、水域及び陸域における植物のP収着/非収着の動態及び一連のP細分化/隔離の工程を解明し、リン回収戦略を検討する。なお、特徴ある品種のDNA解析を他の研究室と共同で実施することも検討している。27年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-14F03908 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14F03908 |
熱力学的非平衡状態を用いたナノ構造強磁性体の作製とスピン相関デバイスへの応用 | ナノ構造を有する強磁性多層膜ピラーの磁化反転特性を独自に開発した2段階ミリング法によるクロスコンタクト測定法を用いて詳しく調べた。また、磁性層間の静磁気的結合が多層膜ピラーの磁化過程に及ぼす影響を定量的に解析するため、マイクロマグネティクス計算結果からのエネルギー再構成を導入した新しい単磁区モデル計算を行った。さらに、強磁性層としてハーフメタル材料であるFe_3O_4を用いた多層膜ピラーを作成し、電界によるスピン輸送特性制御についても調べた。1)サブミクロンスケールに微細加工したNiFe/Cu多層膜パターンのCPP-GMR特性を調べた。その結果、フリンジ磁界に起因する磁性層間の静磁気相互作用により、隣接磁性層の磁化が互いに反対方向に回転する可逆磁化過程が実現することを磁気抵抗測定より確かめた。磁界掃引に対して磁気抵抗の大きさが履歴なしにかつ線形変化するこのような特性は、極微磁界センサへの応用上重要な成果である。また、多層膜の磁化過程を効率的かつ高精度に導出可能な新しい計算モデルを確立し、多層膜パターンの飽和磁界の膜厚依存性について明らかにした。2)Fe_3O_4を用いた多層膜ピラーの膜面垂直(CPP)電気伝導特性において、バイアス電圧によりCPP伝導度が3桁程度変化するスイッチング現象を発見した。さらに、高抵抗状態から低抵抗状態へのスイッチング電圧は、温度上昇に伴い単調な減少を示し、熱的励起と電気的励起の相乗効果として伝導度スイッチングが起こることがわかった。さらに、スイッチング電圧がFe_3O_4層の膜厚にほぼ比例しており、膜厚方向の電界強度がスイッチング現象を支配していると考えられる。なお、スイッチング電圧の温度依存性および膜厚依存性の結果より、電気的励起のみによるスイッチングの閾値電界が2×10^7V/mであることがわかった。ナノ構造強磁性体の磁化反転特性を調べるため、精密三軸ピエゾプローブシステムを用いた微小磁界測定の手法を確立するとともに、極微磁性体配列群の磁化反転特性が静磁気相互作用をどのように反映するかを計算機シミュレーションにより調べた。1)10μm×10μm×100nmのCo矩形微粒子を20μm周期で正方格子配列させた試料を作製し、GMR磁界センサー素子と精密三軸ピエゾプローブシステムを組み合わせた装置により、その浮遊磁界分布を測定した。GMRセンサを測定試料にsub-μm以下にまで近接させることにより、0.1Oeの測定感度で漏洩磁界分布を測定することに成功した。また、測定した磁界分布をもとに任意のCo矩形微粒子がGMRセンサの感磁部直上にくるように相対位置を制御し、外部磁界を掃引しながら磁気抵抗変化を測定することにより、Co矩形微粒子1個の磁化反転過程を検出することができた。2)静磁気結合した磁気微粒子配列群における任意微粒子の磁化反転特性を計算機シミュレーションにより調べた。本研究では、磁性ランダムアクセスメモリ(MRAM)で用いられる電流一致選択方式による任意微粒子の磁化反転制御を想定している。そこで、任意微粒子を選択磁化反転できる動作電流余裕度、および磁化の熱安定性の微粒子間距離依存性をを詳しく調べた。その結果、F×F×t磁気微粒子を2F周期で9×9個配列させた場合、F【greater than or equal】80nmでは選択的磁化反転が可能な動作電流余裕度が20%を超えるのに対し、F=60nmでは導体電流磁界分布の局在性劣化を反映して電流一致選択動作が不可能になることがわかった。ただし、隣接導体に逆向きの電流を印加するFlow back方式を用いて磁界分布の局在性を改善することにより、F=60nmでも20%程度の動作余裕度を確保できることがわかった。ナノ構造を有する強磁性多層膜ピラーの磁化反転特性を独自に開発した2段階ミリング法によるクロスコンタクト測定法を用いて詳しく調べた。また、磁性層間の静磁気的結合が多層膜ピラーの磁化過程に及ぼす影響を定量的に解析するため、マイクロマグネティクス計算結果からのエネルギー再構成を導入した新しい単磁区モデル計算を行った。さらに、強磁性層としてハーフメタル材料であるFe_3O_4を用いた多層膜ピラーを作成し、電界によるスピン輸送特性制御についても調べた。1)サブミクロンスケールに微細加工したNiFe/Cu多層膜パターンのCPP-GMR特性を調べた。その結果、フリンジ磁界に起因する磁性層間の静磁気相互作用により、隣接磁性層の磁化が互いに反対方向に回転する可逆磁化過程が実現することを磁気抵抗測定より確かめた。磁界掃引に対して磁気抵抗の大きさが履歴なしにかつ線形変化するこのような特性は、極微磁界センサへの応用上重要な成果である。また、多層膜の磁化過程を効率的かつ高精度に導出可能な新しい計算モデルを確立し、多層膜パターンの飽和磁界の膜厚依存性について明らかにした。2)Fe_3O_4を用いた多層膜ピラーの膜面垂直(CPP)電気伝導特性において、バイアス電圧によりCPP伝導度が3桁程度変化するスイッチング現象を発見した。さらに、高抵抗状態から低抵抗状態へのスイッチング電圧は、温度上昇に伴い単調な減少を示し、熱的励起と電気的励起の相乗効果として伝導度スイッチングが起こることがわかった。さらに、スイッチング電圧がFe_3O_4層の膜厚にほぼ比例しており、膜厚方向の電界強度がスイッチング現象を支配していると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-15710091 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15710091 |
熱力学的非平衡状態を用いたナノ構造強磁性体の作製とスピン相関デバイスへの応用 | なお、スイッチング電圧の温度依存性および膜厚依存性の結果より、電気的励起のみによるスイッチングの閾値電界が2×10^7V/mであることがわかった。 | KAKENHI-PROJECT-15710091 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15710091 |
ラット肝化学発癌過程におけるGST-P遺伝子の特異的発現機構の研究:トランスジェニックラットによる解析 | グルタチオントランスフェラーゼP(GST-P)はラットの肝化学発癌過程においてほぼ必ず誘導される腫瘍マーカーである。肝細胞の癌化とともにGST-P遺伝子が活性化されるメカニズムには二つのカテゴリーが考えられる。その一つはGST-P遺伝子が肝癌発生に決定的役割を果たす遺伝子(未同定)の極めて近傍にあり発癌剤投与の際の染色体上の変化に伴うシス効果によって両遺伝子が同時に活性化するというものであり,他の一つは両遺伝子が位置的には無関係であるにもかかわらず強力なトランスアクチベータ-を共有しているために活性化されるというものである。どちらの仮説が正しいかを検証する目的でGST-P遺伝子の上流領域の種々の欠失変異体をCAT構造遺伝子に繋いでラットの受精卵に導入しトランスジェニック(Tg)ラットを作成した。TgラットにSolt-Farber法によって肝癌病変を作ると3つの独立の系全てにおいて肝癌病変部においてCAT活性が証明されたが正常肝組織においては全く陰性であった。GST-P遺伝子の上流にはAP-1結合配列に似たシーケンスが回文状に対合するというユニークな構造をもつ強力なエンハンサーGPEIが存在する。先に使用した上流領域からGPEIを除いたTgラットに肝癌をつくったところ肝癌病変部にもCAT活性は現れなかった。さらにGST-P遺伝子のミニマムプロモーターとCAT構造遺伝子だけをもつTgラットの肝癌病変部にはCAT活性は認められなかったが,そこへGPEIを導入したところ肝癌病変部においてCAT活性の上昇を認めた。以上の結果からGST-Pの発現は肝癌発生に決定的な役割を果たす遺伝子と共通のトランスアクチベータ-によって支配されていることと及その作用がGPEIを介して行われることが明らかになった。グルタチオントランスフェラーゼP(GST-P)はラットの肝化学発癌過程においてほぼ必ず誘導される腫瘍マーカーである。肝細胞の癌化とともにGST-P遺伝子が活性化されるメカニズムには二つのカテゴリーが考えられる。その一つはGST-P遺伝子が肝癌発生に決定的役割を果たす遺伝子(未同定)の極めて近傍にあり発癌剤投与の際の染色体上の変化に伴うシス効果によって両遺伝子が同時に活性化するというものであり,他の一つは両遺伝子が位置的には無関係であるにもかかわらず強力なトランスアクチベータ-を共有しているために活性化されるというものである。どちらの仮説が正しいかを検証する目的でGST-P遺伝子の上流領域の種々の欠失変異体をCAT構造遺伝子に繋いでラットの受精卵に導入しトランスジェニック(Tg)ラットを作成した。TgラットにSolt-Farber法によって肝癌病変を作ると3つの独立の系全てにおいて肝癌病変部においてCAT活性が証明されたが正常肝組織においては全く陰性であった。GST-P遺伝子の上流にはAP-1結合配列に似たシーケンスが回文状に対合するというユニークな構造をもつ強力なエンハンサーGPEIが存在する。先に使用した上流領域からGPEIを除いたTgラットに肝癌をつくったところ肝癌病変部にもCAT活性は現れなかった。さらにGST-P遺伝子のミニマムプロモーターとCAT構造遺伝子だけをもつTgラットの肝癌病変部にはCAT活性は認められなかったが,そこへGPEIを導入したところ肝癌病変部においてCAT活性の上昇を認めた。以上の結果からGST-Pの発現は肝癌発生に決定的な役割を果たす遺伝子と共通のトランスアクチベータ-によって支配されていることと及その作用がGPEIを介して行われることが明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-05770104 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05770104 |
学校における発達障害児の感覚・運動アセスメントツールの開発に関する研究 | 本研究の目的は、発達障害児の感覚面や運動面の問題を小学校教師が把握するための質問紙を作成することであった。学校版感覚運動質問紙試案を作成し、教師の回答を分析したところ次のことが明らかになった。1感覚面の質問紙において年齢によるスコアの差は認められなかったが、運動面の質問紙では年齢による差が認められた。2質問紙試案の下位尺度の多くで一般児童と発達障害児のスコアの差が認められた。3感覚面の質問紙の試案の因子分析で5因子が明らかになった。4運動面の質問紙の試案の因子分析で6因子が明らかになった。本研究で考案された質問項目と因子に基づくスコアリングは児童の感覚処理や協調運動の評価に有用と考えられる。本研究の目的は学校で教師が使うことができる感覚運動質問紙を作成することである。平成25年度は前年度に作成し、予備的データによって妥当性を確認した学校版感覚運動質問紙試案を用いて、九州以外の地域のデータを収集した。データ収集においては、研究代表者から各研究分担者に依頼し、各地域で学校に調査依頼をしてもらう形で行った。研究分担者から各地域の学校に調査を依頼したところ、北海道、関東、関西地域の学校からのデータを収集できた。これらのデータについて年齢群間で有意差が見られるかどうか分散分析を用いて検討した。その結果、感覚面の質問紙の回答では年齢間のスコアの差には有意差が見られなかった。一方、運動面の質問紙のスコアでは6-7歳、8-9歳、10-12歳の年齢群間で有意差が認められた。これは九州地区のデータと類似した回答結果であった。データの内訳を見ると学校間で、問題ありとする回答にばらつきがあることがわかった。また、項目においては未回答の比率が高いものがあり、教師が回答しづらい、または授業の中で観察しづらい項目があると考えられた。今後、未回答者が多い項目を削除するなどの対応が必要と考えられた。平成25年度は、各地域からデータが収集できたが、いずれの地域の回答も目標のデータ数まで至っていない。そのため、平成26年度中に依頼地域や学校を増やすなどして、データ数の増加をはかり、標準データを確立すると共に、データの因子分析を行う予定である。なお、検査者間の信頼性、検査・再検査の信頼性などについても検証する必要がある。本研究の目的は、発達障害児の感覚面や運動面の問題を小学校教師が把握するための質問紙を作成することであった。学校版感覚運動質問紙試案を作成し、教師の回答を分析したところ次のことが明らかになった。1感覚面の質問紙において年齢によるスコアの差は認められなかったが、運動面の質問紙では年齢による差が認められた。2質問紙試案の下位尺度の多くで一般児童と発達障害児のスコアの差が認められた。3感覚面の質問紙の試案の因子分析で5因子が明らかになった。4運動面の質問紙の試案の因子分析で6因子が明らかになった。本研究で考案された質問項目と因子に基づくスコアリングは児童の感覚処理や協調運動の評価に有用と考えられる。本研究の目的は、学校で教師が使うことができる感覚運動質問紙を作成することである。平成24年度は、研究代表者が先行研究や海外で使用されているSensory Profile SchoolCompanion (Dunn, 2006)やSensory ProcessingMeasure (Kuhaneck et al., 2009)などを参考にして学校で教師が使用できる感覚運動質問紙の試案(学校版感覚・運動質問紙試案)を作成した。次に作成した検査の項目の有用性、内容の妥当性について、小学校の教師20名、感覚統合学会の認定セラピストの資格を有する作業療法士10名に諮った。そして、そこで得られた意見を元に学校版感覚運動質問紙試案の項目や質問内容に修正を加えた。次に小学校の通常学級の担任教師40名に学校版感覚運動質問紙試案に回答してもらった。その結果、7歳から12歳の児童341名のデータが得られた。その結果、運動面の質問に対する回答は年齢ごとにスコアが異なることが分かり、年齢毎の標準値が必要であることがわかった。感覚面に関してはスコアの年齢による違いはなく全年齢同一の基準で良いことがわかった。また、発達障害児データにつていも収集し、学校版感覚運動質問紙試案の有用性についても検証した。その結果、発達障害児のスコアは一般児童の平均値、標準偏差の範囲から逸脱しているものが多かった。これらの結果について論文にまとめた。本研究の目的は、協調運動や感覚処理の問題を教師がアセスメントできる質問紙を作成することである。本研究では、学校版感覚・運動発達アセスメントシート試案を作成し、北海道、関東、関西、九州地区の学校の教師からのデータを収集し、教師がアセスメントする際に有用な項目を抽出した後に標準値を算出した。更に因子分析を行い、スコアリングのためのカテゴリーとなる因子を明らかにした。運動面のアセスメントシート試案を用いて、712歳の児童646名のデータを収集した。そのデータを集計したところ、試案に含まれていた60項目の中の20項目は回答率が90%以下であったため、これらをアセスメントシートから除外することとした。残り40項目について因子分析を行った結果、6因子が抽出された。 | KAKENHI-PROJECT-24500593 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24500593 |
学校における発達障害児の感覚・運動アセスメントツールの開発に関する研究 | それらはそれぞれの因子に因子負荷量が大きい項目の内容から「両側の協調」、「書字スキル」、「スポーツスキル」、「眼球運動・口腔運動」、「姿勢調整」、「描画スキル」と命名した。一方、感覚面のアセスメントの試案では、712歳の児童692名のデータを収集した。その結果、試案に含まれていた77項目の中の17項目は回答率が90%以下であり、14項目は直接感覚処理の問題について問う項目ではなかったため、これら31項目をアセスメントシートから除外した。そこで除外項目を除いた46項目を用いて因子分析を行い、5因子を主要因子とした。それらを「感覚探求」、「聴覚・味覚・嗅覚の感覚過敏・回避」、「低登録」、「触覚・前庭覚の感覚過敏」、「接触による易怒」と命名した。本研究で選出した運動面に関する40項目と感覚面に関する46項目と本研究で明らかになった因子に基づくスコアリング方法は、学校で教師が子どもの運動面や感覚面の問題を評価することに役立つと考えられる。これらの研究成果を論文として報告し、著書でも紹介した。作業療法学平成25年度は学校版感覚運動質問紙試案の全国データを収集する予定であった。北海道、関東地区はおおむね予定通りにデータ収集が進んでいるが、まだ十分なデータ数とは言えない。また関西地区は学校からの回答待ちの状態である。そのため、データが当初の予定まで集まっていない。いずれの地域も研究分担者を通してデータ収集をしているところであるが、データ回収に時間がかかっている。平成24年度の研究計画は次の2点であった。・学校で教師が使用できる感覚運動質問紙の試案(学校版感覚運動質問紙試案)を作成する。・研究責任者及び研究分担者が関わりのある一部の地域で試行的に学校版感覚運動質問紙試案のデータを収集し、その結果を元に検討を重ね有用性を高める。これら2点については概ね、計画通り実施できた。平成26年度は、全国のデータを収集し、学校版感覚運動質問紙の標準値を算出し、本質問紙の標準化を進める。全国のデータ収集が完了していないために研究代表者・分担者で各地域の学校に働きかけを行い、データ数の確保に努める。また、新たにデータ収集地域を増やす予定である。平成25年度は、作成した学校版感覚・運動質問紙試案の全国での標準データを収集し、その信頼性、妥当性について検証する。そして、因子分析を行い、この質問紙に見られる一般児の因子についても検証する。研究対象は全国の小学校の通常学級の教師300名とする。教師が評価する生徒は、調査研究に同意が得られた通常学級に在籍する一般児童1000名とする。基準関連妥当性の検証のために上記対象児童の中の100名の児童の保護者も対象とする。調査方法:全国各地域の学校の校長、担任教師に電話及び郵送で研究協力依頼を行う(岩永:九州、加藤:近畿、伊藤:関東、仙石:北海道)。調査対象となる児童の担任に学校版感覚運動質問紙試案を郵送し、それに回答後返送してもらう。一部の教師には再テスト信頼性の分析のために1ヶ月後再度同じ子ども(50名の児童)について質問紙に回答してもらう。また評価者間信頼性の分析のために同じ学校に勤務する教師2名が1名の児童について別々に質問紙に回答してもらう(50組)。基準関連妥当性の検証においては、保護者が回答する感覚 | KAKENHI-PROJECT-24500593 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24500593 |
In vivo electroporation法を用いた骨性癒着歯歯根膜の再生 | 骨性癒着歯歯根膜の病態を分子細胞レベルで把握するために、歯根膜の治癒を促進するといわれている細胞増殖因子IGF-1、創傷治癒を促進し骨形成を制御する線維芽細胞増殖因子bFGF、血管新生を誘導する血管内皮細胞増殖因子VEGFの発現様相を、咬合刺激低下歯モデルを用いて明らかにした。また、骨性癒着歯の発現機序に深く関与する歯槽骨代謝についても、エストロゲン欠乏や交感神経系が及ぼす影響を検討した。骨性癒着歯歯根膜の病態を分子細胞レベルで把握するために、歯根膜の治癒を促進するといわれている細胞増殖因子IGF-1、創傷治癒を促進し骨形成を制御する線維芽細胞増殖因子bFGF、血管新生を誘導する血管内皮細胞増殖因子VEGFの発現様相を、咬合刺激低下歯モデルを用いて明らかにした。また、骨性癒着歯の発現機序に深く関与する歯槽骨代謝についても、エストロゲン欠乏や交感神経系が及ぼす影響を検討した。矯正歯科臨床において、骨性癒着歯の存在は術者を悩ませるものである。骨性癒着歯の原因には、外傷、機能低下歯、歯科疾患、骨代謝異常、遺伝的要因などが挙げられるが、その分子細胞レベルでのメカニズムはいまだ不明である。我々はこれまで、機能低下歯モデルを用いて、歯根膜組織における線維の機能的排列の喪失、線維間基質の減少、血管数・血管径の減少、機械受容器の形態・応答特性の変化などの廃用性萎縮を明らかにしてきた。骨性癒着歯においてもその歯周組織は廃用性萎縮を起こしていると考えられ、それを再賦活化することが可能となれば矯正臨床において大変有意義である。そのために、まず骨性癒着歯歯根膜の病態を分子細胞レベルで把握しておく必要がある。機能低下歯モデルを用いて、歯根膜細胞の増殖因子の一つであり歯根膜の治癒を促進するといわれているインスリン様成長因子(IGF-1)の発現変化を検討した。機能低下歯歯根膜においてIGF-1およびIGF-1受容体の発現量は減少した。再植歯モデルを用いて、創傷治癒の過程において重要な因子である線維芽細胞成長因子(bFGF)の発現変化を検討した。再植後非咬合群では骨性癒着が観察され、bFGF陽性細胞は咬合群に比べ減少していた。再植後咬合群と再植後咬合回復群では骨性癒着は観察されず、bFGF陽性細胞数は未処置群に近い値を示したことから、咬合刺激が再植歯の骨性癒着を抑制し、その機序の一つにbFGFが関与することが示唆された。矯正歯科臨床において、骨性癒着歯の存在は術者を悩ませるものである。骨性癒着歯の原因には、外傷、機能低下歯、歯科疾患、骨代謝異常、遺伝的要因などが挙げられるが、その分子細胞レベルでのメカニズムはいまだ不明である。我々はこれまで、機能低下歯モデルを用いて、歯根膜組織における線維の機能的排列の喪失、線維間基質の減少、血管数・血管径の減少、機械受容器の形態・応答特性の変化などの廃用性萎縮を明らかにしてきた。骨性癒着歯においてもその歯周組織は廃用性萎縮を起こしていると考えられ、それを再賦活化することが可能となれば矯正臨床において大変有意義である。そのために、まず骨性癒着歯歯根膜の病態を分子細胞レベルで把握し、歯根膜における石灰化抑制分子の同定、それが関与するシグナル伝達機構を解明する必要がある。創傷治癒、血管新生を促進し、骨量や骨形成を制御している線維芽細胞成長因子(bFGF)は、歯根膜において、破骨細胞の活動を増強しアルカリフォスファターゼ活性を抑制し、歯根膜細胞が石灰化物形成細胞へ分裂するのを防ぐといわれている。昨年度は再植歯モデルを用いて人為的に骨性癒着を起こし、bFGFの関与を検討したが、今年度は成長・加齢モデルにおいて、歯根膜におけるbFGFの発現変化を検討したところ、加齢に伴い発現低下が見られたが、咬合力の影響を大きく受けていると考えられる根分岐部においては発現が多く見られた。また、血管新生を活発に誘導するといわれている血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は、メカニカルストレスを受けることでその産生量が増加することがわかっており、VEGF受容体は骨芽細胞・破骨細胞にも発現するため、歯根膜の恒常性維持や骨リモデリングの一端を担う重要な因子と考えられる。機能低下歯モデルにおいて、歯根膜におけるVEGF受容体の一つであるVEGFR-2の発現を蛍光抗体法により検出できる手法を開発した。矯正歯科臨床において、骨性癒着歯の存在は術者を悩ませるものである。骨性癒着歯の原因には、外傷、咬合刺激低下歯、歯科疾患、骨代謝異常、遺伝的要因などが挙げられるが、その分子細胞レベルでのメカニズムはいまだ不明である。我々はこれまで、咬合刺激低下歯モデルを用いて、歯根膜線維の機能的排列の喪失、線維間基質の減少、血管数・血管径の減少、機械受容器の形態・応答特性の変化などの廃用性萎縮を明らかにしてきた。骨性癒着歯においてもその歯周組織は廃用性萎縮を起こしていると考えられ、それを再賦活化することが可能となれば矯正臨床において大変有意義である。そのために、骨性癒着歯歯根膜の病態を分子細胞レベルで把握し、歯根膜における石灰化抑制分子の同定、それが関与するシグナル伝達機構を解明する必要がある。 | KAKENHI-PROJECT-20592390 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20592390 |
In vivo electroporation法を用いた骨性癒着歯歯根膜の再生 | 血管新生を活発に誘導するといわれている血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は、メカニカルストレスを受けることでその産生量が増加することがわかっており、VEGF受容体は骨芽細胞・破骨細胞にも発現するため、歯根膜の恒常性維持や骨リモデリングの一端を担う重要な因子と考えられる。刺激低下歯に矯正力を与えたモデルにおいて、昨年度開発した蛍光抗体法を用いて、VEGF受容体の一つであるVEGFR-2およびCD31の歯根膜における発現様相を明らかにした。また、骨性癒着歯発現の機序には歯槽骨代謝のバランスも深く関与していると思われる。刺激低下歯モデルにエストロゲン欠乏が及ぼす影響を検討したところ、歯槽骨微細構造や骨吸収に変化が認められた。刺激低下歯モデルに交感神経系が及ぼす影響を検討したところ、刺激低下に伴う歯槽骨吸収はβアドレナリンレセプター遮断薬により抑制され、メカニカルストレスに対する歯槽骨代謝に交感神経系が関与していることが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-20592390 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20592390 |
新脱ガス法(真空吸引脱ガス法)による融体の高純度化に関する研究 | 真空吸引脱ガス法(VSD法)を提案し、溶融金属中のガスを生成する不純物の除去に適用した。本法においては、融体と外界をガス透過性、融体不透過性の多孔質材料により仕切り、外界を減圧下におく。この場合、ガスを生成する不純物は融体-多孔質材料の界面でガス化し、多孔質材料を通して外界に速やかに除去されるため、不純物除去が促進される。極低濃度域における溶鉄の脱炭、脱窒実験を、溶鉄中に内部を減圧にした耐火物製の多孔質管を浸漬することにより行った。脱炭反応は溶鉄の炭素と多孔質管の酸化物(Al_2O_3、SiO_2など)の間の反応で進行した。溶鉄中の炭素濃度は数ppmの極低濃度まで低下する一方、酸素濃度は50ppm以下に保たれた。Al_2O_3-SiO_2管を用いた脱炭速度はAl_2O_3管を用いたそれより非常に大きかった。多孔質管のガス透過性の増加により脱炭速度は大きくなった。以上により、VSD法は溶鉄の脱炭速度を著しく増加させることを明らかにした。さらに、本法を用いて溶鉄の脱窒実験を行った。同時脱炭脱窒の場合、脱窒速度は非常に増加した。多孔質管表面における脱窒の化学反応速度定数は、従来得られている溶鉄表面におけるそれにほぼ一致した。グラファイトによる溶銅の脱酸実験をVSD法を適用して行った。脱酸速度は、生成したCOガスの吸引除去、したがってCO気泡による攪拌力の低下のため、減少した。しかし、到達酸素濃度はVSD法を適用しない場合と比較してより低くなった。VSD法が溶鉄、溶融アルミニウムの脱水素にも有効であることを示した。溶鉄の脱水素速度は液側とガス側の物質移動の混合律速であり、溶融アルミニウムの脱水素速度は液側物質移動律速であることを明らかにした。なお、実用化規模の実施試験については今後の課題として残った。真空吸引脱ガス法(VSD法)を提案し、溶融金属中のガスを生成する不純物の除去に適用した。本法においては、融体と外界をガス透過性、融体不透過性の多孔質材料により仕切り、外界を減圧下におく。この場合、ガスを生成する不純物は融体-多孔質材料の界面でガス化し、多孔質材料を通して外界に速やかに除去されるため、不純物除去が促進される。極低濃度域における溶鉄の脱炭、脱窒実験を、溶鉄中に内部を減圧にした耐火物製の多孔質管を浸漬することにより行った。脱炭反応は溶鉄の炭素と多孔質管の酸化物(Al_2O_3、SiO_2など)の間の反応で進行した。溶鉄中の炭素濃度は数ppmの極低濃度まで低下する一方、酸素濃度は50ppm以下に保たれた。Al_2O_3-SiO_2管を用いた脱炭速度はAl_2O_3管を用いたそれより非常に大きかった。多孔質管のガス透過性の増加により脱炭速度は大きくなった。以上により、VSD法は溶鉄の脱炭速度を著しく増加させることを明らかにした。さらに、本法を用いて溶鉄の脱窒実験を行った。同時脱炭脱窒の場合、脱窒速度は非常に増加した。多孔質管表面における脱窒の化学反応速度定数は、従来得られている溶鉄表面におけるそれにほぼ一致した。グラファイトによる溶銅の脱酸実験をVSD法を適用して行った。脱酸速度は、生成したCOガスの吸引除去、したがってCO気泡による攪拌力の低下のため、減少した。しかし、到達酸素濃度はVSD法を適用しない場合と比較してより低くなった。VSD法が溶鉄、溶融アルミニウムの脱水素にも有効であることを示した。溶鉄の脱水素速度は液側とガス側の物質移動の混合律速であり、溶融アルミニウムの脱水素速度は液側物質移動律速であることを明らかにした。なお、実用化規模の実施試験については今後の課題として残った。本研究では、融体の高純度化を目的として、新しい脱ガス法(真空吸引脱ガス法)により、溶鉄の脱炭、脱水素、溶銅の脱酸に関する実験を行った。本脱ガス法は、ガス透過性、融体不透過性の多孔質材料により融体と外界を仕切り、外界を真空(減圧)にすることにより、融体と多孔質材料の界面で生成したガスを迅速に吸引、除去するため、反応界面積を大幅に増加し、脱ガスを大幅に促進することができる。溶鉄の脱炭に関しては、溶鉄中の酸素濃度を50ppm以下と非常に低く保った状態で、固体酸化物との反応により炭素濃度を最低3ppmの極低濃度まで低下させることができた。なお、鉄中の炭素濃度は炭素・硫黄分析装置により測定した。溶鉄の脱炭速度は、SiO_2などのように比較的解離しやすい酸化物を含有させ、さらにガス透過性を良好にした多孔質材料を使用することにより、大幅に増加した。なお、溶鉄の脱炭速度は酸化物の解離により律速されると推定された。溶鉄の脱水素に関しても、本脱ガス法は有効であり、脱水素速度を増加させることができた。この場合にも、ガス透過性が脱水素速度に大きな影響を及ぼすことがわかった。 | KAKENHI-PROJECT-04555158 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04555158 |
新脱ガス法(真空吸引脱ガス法)による融体の高純度化に関する研究 | 溶鉄の脱水素速度は、水素濃度について2次の速度式にしたがい、多孔質材料中のガスの透過により律速されていると考えられる。溶銅の脱酸は、多孔質グラファイトを介して行い、酸素濃度を0.5ppm程度まで低下させることができた。溶銅の脱酸速度はメタル側の酸素の物質移動により律速されることを明らかにした。山本(TYK)は、各種組成、気孔率の多孔質管を試作し、気孔の均質性を確保することが重要であることを示した。水上、工藤(新日鉄)は、溶鉄の脱炭、脱水素実験を比較的大きな規模で行っているが、使用する多孔質管のガス透過性をさらに向上させることが必要であるという結果を得ている。真空吸引脱ガス法(VSD法)を提案し、溶融金属中のガスを生成する不純物の除去に適用した。本法においては、融体と外界をガス透過性、融体不透過性の多孔質材料により仕切り、外界を減圧下におく。この場合、ガスを生成する不純物は融体-多孔質材料の界面でガス化し、多孔質材料を通して外界に速やかに除去されるため、不純物除去が促進される。極低濃度域における溶鉄の脱炭、脱窒実験を、溶鉄中に内部を減圧にした耐火物製の多孔質管を浸漬することにより行った。脱炭反応は溶鉄中の炭素と多孔質管の酸化物(Al_2O_3、SiO_2など)の間の反応で進行した。溶鉄中の炭素濃度は数ppmの極低濃度まで低下する一方、酸素濃度は50ppm以下に保たれた。Al_2O_3-SiO_2管を用いた脱炭速度はAl_2O_3管を用いたそれより非常に大きかった。多孔質管のガス透過性の増加により脱炭速度は大きくなった。以上より、VSD法は溶鉄の脱炭速度を著しく増加させることを明らかにした。さらに、本法を用いて溶鉄の脱窒実験を行った。同時脱炭脱窒の場合、脱窒速度は非常に増加した。多孔質管表面における脱窒の化学反応速度定数は、従来得られている溶鉄表面におけるそれにほぼ一致した。グラファイトによる溶銅の脱酸実験をVSD法を適用して行った。脱酸速度は、生成したCOガスの吸引除去、したがってCO気泡による攪拌力の低下のため、減少した。しかし、到達酸素濃度はVSD法を適用しない場合と比較してより低くなった。VSD法が溶鉄、溶融アルミニウムの脱水素にも有効であることを示した。溶鉄の脱水素速度は液側とガス側の物質移動の混合律速であり、溶融アルミニウムの脱水素速度は液側物質移動律速であることを明らかにした。なお、実用化規模の実施試験については今後の課題として残った。 | KAKENHI-PROJECT-04555158 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04555158 |
水晶振動子センサの連成振動高感度検出による静電気力・磁気力顕微鏡の高速化 | 高速原子間力顕微鏡(HS-AFM)は動的現象をナノスケールにて解明可能な顕微鏡である。本研究では、HS-AFMに水晶振動子センサを適用することで、高速なナノ物性測定に挑戦した。探針取り付け時にはセンサの両梁でカウンターバランスをとり、取り付け後でも高Q値を確保した。このセンサで表面形状を高速撮像できる顕微鏡システムを構築し、1 μ角のエリアで数秒/枚の撮像を確認した。静電気・磁気的相互作用を変調して正弦波状の力を加えるとセンサは連成振動によって応答すると考え、解析や測定を試みた。ナノ表面物性の高速計測に向け、バイモードルモードの組み込み等、HS-AFMの機能拡張という点で進展したと考える。本研究では、高速AFM (HS-AFM)のシステムにおいて、一般的に用いられる高共振周波数のカンチレバーの代わりに水晶振動子センサの圧電応答を用いて画像取得を行うことを特徴としており、その水晶振動子センサの連成振動を高速な静電気力・磁気力の検出に利用する。そのため、水晶振動子センサにより、安定した撮像を行うことも重要となる。水晶振動子センサを励振するために、別のアクチュエータにより振動させる機械的励振方式と、水晶振動子センサに励振信号を加えて逆圧電効果により振動させる電気的励振方式の2つが可能なようにシステムを構築し、両者を比較した。Q値は圧倒的に電気的励振方式の方が優れており、HS-AFMのシステムにおいてFM-AFMにより表面形状像を問題なく撮像できることを確認した。本研究では、基本的にFM方式による制御を用いることになるので、位相の安定性が重要である。機械的励振方式では固定の問題由来と考えられるが、共振周波数に対応する位相が時間変動していたので、本研究目的を達成する上では電気的励振方式が良いと考えらえる。一方、静電気力や磁気力を模擬して振動状態がどのように変化するかをシミュレーションで検討したが、あくまで近似モデルであるため、実際に実験的に機械的な振動を調べることが重要となった。そこで、2本のプロングの振動を同時測定するために、ケージシステムで光てこ変位検出用の光学系を2系統構築することとし、まず片方での検出を目指した。その際、10 MHzの帯域幅は確保できるように、フォトダイオードをバイアスを印加して低容量化するとともに、高速オペアンプを採用したプリアンプを設計した。また、光学系も試行錯誤しながら設計することで、最終的に2本同時に振動計測できる見込みが得られた。本研究は、高速原子間力顕微鏡(HS-AFM)のシステムに、力検出センサとして水晶振動子センサを組み入れ、その水晶振動子センサの連成振動を検出することで高速な静電気力・磁気力の検出を実現しようとするものである。水晶振動子センサの振動解析のため、センサに含まれる2本のプロングの振動を独立に測定することで観測される機械的振動信号と、センサの圧電効果によって電気的に検出される振動信号とを比較することが重要となる。両プロングの変位検出を行うには、光てこ変位検出用の光学系を2系統構築する必要がある。昨年度はケージシステムにより片側だけ構築するところまで進めており、本年度はそれを両側に拡張した。また、昨年度に設計まで進めていたプリアンプを実際に回路基板で組み立て、差動アンプ回路やレーザ駆動用の周辺回路も充実させた。フォトダイオードをバイアスして容量を低減し、検出帯域を10 MHzほど確保する設計であったが、まずはバイアスせずに回路の基本性能を確認した。帯域は5 MHz程度で低くなったものの、検出上はバイアスなしでも問題ないと判断した。次に、全体として所望の動作ができるか確認してみた。プロング幅は狭いため、光てこ系において十分にレーザ光を絞る必要がある。しかし、実際に絞って照射してみると、反射光としてフォトダイオード上に映し出されるレーザビーム形状はいびつであった。これが原因と思われるが、十分な感度がでておらず、目下、改良を進めている。改良が済みしだい、効率的に連成振動を検出できるようパラメータ等を確立する予定である。一方、本研究においては静電気力・磁気力の検出とは別に高速AFMとして表面形状も測定できなくてはならない。そこで、所有しているデジタルロックインアンプHF2LIにHF2LI-MFマルチ周波数オプションを追加し、バイモーダル検出が可能なように準備を進めた。本年度で、水晶振動子の連成振動を実験的に検証するために必要となる2系統の光てこ系および回路系に関しては、一応の完成までこぎつけた。ただし、感度よく検出できるように注意して設計していたものの、現状では十分な性能が出ておらず、問題点・原因を検討して、改良を進めているところである。電気的に振動を検出するところはできているので、光てこ系による振動検出ができるようになれば、検証実験は順調に進んでいくものと思われる。静電気力の高速検出ができれば、磁気力もほぼ同じ手法で検出可能であることから、静電気力検出に注力することにした。静電気力検出のため金属コートカンチレバーを水晶振動子にとりつけることにしたが、研究目的の振動モードを検出するためには、水晶振動子の二つの振動子両方にバランスよくカンチレバーを接着する必要があった。導電性のエポキシ樹脂によって接着するには加熱も必要なため、掴んでいるカンチレバーを加熱できるようにした独自のマニピュレータを構築した。その結果、二つの振動子に接着できるようになり、理想とする状況よりもQ値が不足している点ではまだ課題が残ってはいるものの、カンチレバーを片方にしかつけなかった場合と比べるとQ値が改善できた。 | KAKENHI-PROJECT-26630185 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26630185 |
水晶振動子センサの連成振動高感度検出による静電気力・磁気力顕微鏡の高速化 | 一方、研究開始当初は、倒立したピエゾスキャナに試料を搭載し、その直下に配置した水晶振動子で観察する、つまり試料が下方向に向いた顕微鏡システムであったが、多様な試料を測定するため、試料を上向きに置くことが望ましい。また、従来スキャナでは表面の凹凸が大きい試料でダイナミックレンジが不足することも経験していた。これらの解決のため、昨年度までの原理検証実験の結果を反映しつつ、高速スキャナを上下両方に配置し、上のスキャナを水晶振動子用に、下のスキャナを試料用にして、どちらでも走査・距離制御ができるようにした顕微鏡ヘッドを開発した。また、高速の静電気力検出を実現するには、試料に対しては変調用バイアス信号を印加し、水晶振動子に対しては信号検出することが必要で、搭載物は軽量にしなければならない。固定法を工夫し、極細アルミ線による配線によってスキャナ性能を最大限引き出せるようにした。また、振動子の高次モードを利用することで表面形状と静電気力の同時検出の可能性を見出した。こうした試行錯誤の結果、表面形状だけでなく表面物性の高速計測に向け、高速原子間力顕微鏡の機能拡張に成功した。高速原子間力顕微鏡(HS-AFM)は動的現象をナノスケールにて解明可能な顕微鏡である。本研究では、HS-AFMに水晶振動子センサを適用することで、高速なナノ物性測定に挑戦した。探針取り付け時にはセンサの両梁でカウンターバランスをとり、取り付け後でも高Q値を確保した。このセンサで表面形状を高速撮像できる顕微鏡システムを構築し、1 μ角のエリアで数秒/枚の撮像を確認した。静電気・磁気的相互作用を変調して正弦波状の力を加えるとセンサは連成振動によって応答すると考え、解析や測定を試みた。ナノ表面物性の高速計測に向け、バイモードルモードの組み込み等、HS-AFMの機能拡張という点で進展したと考える。本研究の振動計測にあたって、水晶振動子センサのプロング2本を同時計測することが重要である。光てこ系を2系統組み込むにあたって、効果的に予算執行をおこなうために、光学系のフレームワークを基本設計した上で、まず片方だけで計測できるようにすることで、問題点を調べることにした。その際、一般的な光てこのような配置は難しいことが予想され、λ/4位相板と偏光ビームスプリッタを利用して、同一軸上にレーザを照射できるようにするなど試行錯誤を加えた。思っていたよりも設計に時間がかかったために、2本同時の振動計測は達成できていないが、ある程度計測できる見込みがついた。連成振動を検証する第一段階が達せられたと思われる。このことから、概ね当初計画通りに進捗していると自己評価している。本研究のポイントは水晶振動子の機械的な共振振動に対し、静電気力や磁気力を変調させて生じると考えている連成振動を実証することにあり、これを測定できるように開発したシステムを改良していくことが喫緊の課題になっている。現在、これを集中して進めているが、測定さえできるようになれば、これまでにシミュレーションで調べたパラメータを手掛かりに、効果的に検出できる条件を見出し、申請の段階での仮説を実証するところまで進める。 | KAKENHI-PROJECT-26630185 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26630185 |
昭和戦前期における右翼雑誌のメディア学的研究 | 平成16度は『原理日本』を中心とする日本主義右翼団体の機関紙に関する調査を中心に行った。『原理日本』を編集した蓑田胸喜の全集を竹内洋教授(京都大学大学院教育学研究科)と共同編集し、平成16年10月に柏書房より『蓑田胸喜全集』全7巻を刊行した。小職が担当した第7巻では、機関紙『原理日本』の全目次と蓑田執筆の編集後記を復刻し、解説を加えた。『原理日本』は、1925年11月7日に創刊された月刊雑誌で廃刊の第185号(1944年1月号)まで(未刊行の第63号1931年9月号をのぞき)184冊が現存している。離合集散が繰り返された右翼結社とその機関紙の中で、長期的に継続刊行された雑誌であり、その編集後記は他の右翼結社や機関紙との関係について豊かな情報を提供している。なお、『原理日本』をメディア論から分析した論文「歌学的ナショナリズムのメディア論-『原理日本』再考」を、国際日本文化研究センターの出版物(井波律子・井上章一編)に寄稿した。平成17年度は戦前期の右翼メディア全体に展望を与える『新聞と社会』(新聞と社会社)全10巻を柏書房より復刻した。『新聞と社会』1930年(昭和5年)12月に創刊された右翼新聞内報(月刊誌)であり、主筆の高杉京演は日本主義を掲げて各新聞社・通信社の内情や誤報・報道被害の糾弾、新聞業界の噂など、数多くの内部情報を掲載している。その内容の過激さゆえ当局からも睨まれ、『新聞と社会』は1940年9月号で廃刊に追い込まれている。この編集作業を通じて得られた知見は、竹内洋・佐藤卓己編『日本主義的教養の時代-大学批判の古層』(柏書房・平成18年2月)所収の「日本主義ジャーナリズムの曳光弾-『新聞と社会』の軌跡」にまとめた。平成16度は『原理日本』を中心とする日本主義右翼団体の機関紙に関する調査を中心に行った。『原理日本』を編集した蓑田胸喜の全集を竹内洋教授(京都大学大学院教育学研究科)と共同編集し、平成16年10月に柏書房より『蓑田胸喜全集』全7巻を刊行した。小職が担当した第7巻では、機関紙『原理日本』の全目次と蓑田執筆の編集後記を復刻し、解説を加えた。『原理日本』は、1925年11月7日に創刊された月刊雑誌で廃刊の第185号(1944年1月号)まで(未刊行の第63号1931年9月号をのぞき)184冊が現存している。離合集散が繰り返された右翼結社とその機関紙の中で、長期的に継続刊行された雑誌であり、その編集後記は他の右翼結社や機関紙との関係について豊かな情報を提供している。なお、『原理日本』をメディア論から分析した論文「歌学的ナショナリズムのメディア論-『原理日本』再考」を、国際日本文化研究センターの出版物(井波律子・井上章一編)に寄稿した。平成17年度は戦前期の右翼メディア全体に展望を与える『新聞と社会』(新聞と社会社)全10巻を柏書房より復刻した。『新聞と社会』1930年(昭和5年)12月に創刊された右翼新聞内報(月刊誌)であり、主筆の高杉京演は日本主義を掲げて各新聞社・通信社の内情や誤報・報道被害の糾弾、新聞業界の噂など、数多くの内部情報を掲載している。その内容の過激さゆえ当局からも睨まれ、『新聞と社会』は1940年9月号で廃刊に追い込まれている。この編集作業を通じて得られた知見は、竹内洋・佐藤卓己編『日本主義的教養の時代-大学批判の古層』(柏書房・平成18年2月)所収の「日本主義ジャーナリズムの曳光弾-『新聞と社会』の軌跡」にまとめた。戦後のジャーナリズム史研究においては、「なぜ軍国主義を阻止できなかったか」という問題意識から、左翼ジャーナリズムの活動とそれに対する当局の弾圧が中心的な研究対象となってきた。その結果、左翼メディアの復刻や研究は蓄積されたが、もうひとつの「反体制」メディアである右翼ジヤーナリズムの研究はほとんど行われず、資料の保存状況も秋からではなかった。本研究は、現代日本におけるバランスの取れた言論空間の発展の向けて、右翼ジャーナリズムの構造と機能に関する反省的・批判的な検討を行うために開始された。初年度は、右翼の新聞雑誌の所蔵状況を確認し、右翼ジャーナリズム全体の見取り図を書くことに力を注いだ。一方で、蓑田胸期主宰の『原理日本』をメディアとして考察する個別研究を行い、その成果は竹内洋・佐藤卓己共編『蓑田胸喜著作集』第七巻の改題としてまとめ、2004年10月に柏書房より刊行する予定である。また、右翼ジャーナリズムに影響力をもった陸軍新聞班一陸軍情報部やその周辺組織について研究を行ったが、その成果は『教育の国防国家-情報官・鈴木庫三伝』(中公新書)として2004年秋に刊行する予定である。平成16年度は、『原理日本』を中心とする日本主義右翼団体の機関紙に関する調査を中心に行った。また、そうした右翼雑誌を含む言論統制の枠組みについて、情報局情報官・鈴木庫三の日記や手帳など一次資料を利用した研究を行った。 | KAKENHI-PROJECT-15530098 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15530098 |
昭和戦前期における右翼雑誌のメディア学的研究 | 前者については、『原理日本』を編集した蓑田胸喜の全集を竹内洋教授(京都大学大学院教育学研究科)と共同編集し、平成16年10月に柏書房より『蓑田胸喜全集』全7巻を刊行した。第7巻では、機関紙『原理日本』の全目次と蓑田執筆の編集後記を復刻し、解説を加えた。『原理日本』は、一九二五年一一月七日に創刊された月刊雑誌で廃刊の第一八五号(一九四四年一月号)まで(未刊行の第六三号一九三一年九月号をのぞき)一八四冊が現存している。離合集散が繰り返された右翼結社とその機関紙の中で、長期的に継続刊行された雑誌であり、その編集後記は他の右翼結社や機関紙との関係について豊かな情報を提供している。なお、『原理日本』をメディア論から分析した論文「歌学的ナショナリズムのメディア論-『原理日本』再考」を、国際日本文化研究センターの出版物(編者・井波律子教授)に提出している。後者については、平成16年9月に中央公論新社より『言論統制-情報官・鈴木庫三と教育の国防国家』(中公新書)として公刊した。陸軍情報部で雑誌検閲を担当した鈴木少佐の思想と背景を追いながら、戦時期の言論統制に「統制側」から光を当てた著作である。平成16度は『原理日本』を中心とする日本主義右翼団体の機関紙に関する調査を中心に行った。『原理日本』を編集した蓑田胸喜の全集を竹内洋教授(京都大学大学院教育学研究科)と共同編集し、平成16年10月に柏書房より『蓑田胸喜全集』全7巻を刊行した。小職が担当した第7巻では、機関紙『原理日本』の全目次と蓑田執筆の編集後記を復刻し、解説を加えた。『原理日本』は、1925年11月7日に創刊された月刊雑誌で廃刊の第185号(1944年1月号)まで(未刊行の第63号1931年9月号をのぞき)184冊が現存している。離合集散が繰り返された右翼結社とその機関紙の中で、長期的に継続刊行された雑誌であり、その編集後記は他の右翼結社や機関紙との関係について豊かな情報を提供している。なお、『原理日本』をメディア論から分析した論文「歌学的ナショナリズムのメディア論-『原理日本』再考」を、国際日本文化研究センターの出版物(井波律子・井上章一編)に寄稿した。平成17年度は戦前期の右翼メディア全体に展望を与える『新聞と社会』(新聞と社会社)全10巻を柏書房より復刻した。『新聞と社会』1930年(昭和5年)12月に創刊された右翼新聞内報(月刊誌)であり、主筆の高杉京演は日本主義を掲げて各新聞社・通信社の内情や誤報・報道被害の糾弾、新聞業界の噂など、数多くの内部情報を掲載している。その内容の過激さゆえ当局からも睨まれ、『新聞と社会』は1940年9月号で廃刊に追い込まれている。この復刻作業を通じて得られた知見は、竹内洋・佐藤卓己編『日本主義的教養の時代-大学批判の古層』(柏書房・平成18年2月)所収の「日本主義ジャーナリズムの曳光弾-『新聞と社会』の軌跡にまとめた。 | KAKENHI-PROJECT-15530098 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15530098 |
樹木リョウブの重金属集積メカニズムの解明-内生菌に着目して- | 本年度はリョウブ葉内、根内内生菌叢の季節変化と元素濃度について調べ、他樹種としてタカノツメとの比較を行った。結果として、リョウブ葉内では5月に優占した種が7月以降は消え、他の種が優占した。落葉前の11月は夏期に優占した種以外の種も多く出現していた。夏期に優占した種は重金属耐性が確認された種だった。一方で、タカノツメ葉内内生菌は季節ごとの明確な優占パターンは確認できなかった。根の内生菌叢については、リョウブで5-7月は共通する4種が優占する傾向があった。11月には5-7月と共通する1種の他、異なる2種が出現し、3種が優占する傾向があった。タカノツメ根では特定の1種が1年優占する傾向があり、リョウブ根11月の優占種と共通していた。重金属濃度についてはリョウブ葉内でタカノツメに比べCo濃度が20倍、Mn濃度が3倍高かった。また、リョウブのCo、Mn濃度は秋にかけて高濃度になる傾向が確認された。重金属耐性種が優占したのは、葉内のCo、Mn濃度が影響した可能性がある。また、接種試験として2種類の実験を行った。葉内内生菌の接種試験では、重金属耐性が確認された内生菌を無菌幼植物体に接種し、Co処理を行った場合に重金属集積に影響するかを調べた。結果としては、非接種区と接種区で成長や各器官重金属濃度に明確な影響は確認されなかった。根内内生菌の接種試験では、Co、Niを集積させた幼植物体に蛇紋岩土壌区、名大土壌区の土壌抽出物を接種し、非接種区との比較により重金属集積の違いが内生菌に与える影響を調べた。結果として、Ni処理名大区のリョウブでのみ他条件よりも成長増加が確認された。また、重金属濃度に他区との違いは確認できなかったが、K、P濃度が低かった。これらから内生菌の養分吸収によらない補助成長促進効作用が確認され、集積した重金属によって内生菌叢を調整し、成長を補助している可能性が示唆された。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。重金属汚染地の緑化や浄化を目指した植物の重金属集積機構解明の上で、微生物は重金属集積と密接な関係が示唆されている。本申請課題では、リョウブ樹体内に生息する内生微生物の内、特に内生糸状菌が重金属集積に関与するという仮説をたて、内生糸状菌が関わるリョウブのニッケル(Ni)、コバルト(Co)集積機構を明らかにすることを目的とした。本年度はリョウブ葉内重金属に関わる実験として、Co、Ni溶液処理を行い生育させたリョウブに対して、シンクロトロン光を用いたX線分析を行った。リョウブ葉中においてCoは先端に集積し、Niは葉縁に局在しており、各部位での隔離がリョウブの重金属耐性メカニズムであることが考えられた。また、局在部位におけるXANES測定からCoは硫酸、Niは有機酸との結合が示唆された。合わせて葉中の硫酸、有機酸をイオンクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーにより定量分析を行ったところ、Co蓄積したリョウブ葉中で硫酸濃度の増加が確認され、Ni蓄積した葉中では有機酸の内、コハク酸、シュウ酸濃度の増加が確認された。それぞれの物質はリョウブ葉中の液胞内においてCoまたはNiと結合していることが予想された。内生菌に関わる実験として、リョウブ葉内内生菌において、リョウブの重金属集積性が異なる2サイトでの種組成、重金属への耐性の比較を行った。結果として、2サイト間で5種は共通していたが、異なる種が3種分離され、葉内に集積された重金属の種類が影響していることが考えられた。耐性試験において分離された内生菌のいくつかの種はNiとCoの内、分離されたサイトのリョウブ葉内で高濃度だった重金属によって成長が抑制された。また、分離サイトが異なる場合、同種であってもNiとCoに異なる応答を示したため、分離株間で重金属に関わる特性が変化していることが示された。本年度における特筆すべき研究成果としては、CoとNiのリョウブ葉における局在を、愛知シンクロトロンセンターにおいてX線分析により明らかにしたことである。Coは葉の先端に、Niは葉縁や主脈に局在することが明らかになった。また、CoやNiの局在する部位における有機酸やイオウについても分析をおこなっており、これら重金属の化学形態についても、興味深い知見を得ている。このような元素の局在は、並行して実施している内生菌に関する研究ともリンクしていくものと期待できる。研究課題となっている内生菌については、リョウブ葉に内生する種を同定し、それらの菌における重金属耐性を明らかにしている。このような知見の蓄積により、次年度には、リョウブにおける重金属集積メカニズムにおける内生菌の役割が解明できると期待している。本年度はリョウブ葉内、根内内生菌叢の季節変化と元素濃度について調べ、他樹種としてタカノツメとの比較を行った。結果として、リョウブ葉内では5月に優占した種が7月以降は消え、他の種が優占した。落葉前の11月は夏期に優占した種以外の種も多く出現していた。夏期に優占した種は重金属耐性が確認された種だった。 | KAKENHI-PROJECT-17J04296 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J04296 |
樹木リョウブの重金属集積メカニズムの解明-内生菌に着目して- | 一方で、タカノツメ葉内内生菌は季節ごとの明確な優占パターンは確認できなかった。根の内生菌叢については、リョウブで5-7月は共通する4種が優占する傾向があった。11月には5-7月と共通する1種の他、異なる2種が出現し、3種が優占する傾向があった。タカノツメ根では特定の1種が1年優占する傾向があり、リョウブ根11月の優占種と共通していた。重金属濃度についてはリョウブ葉内でタカノツメに比べCo濃度が20倍、Mn濃度が3倍高かった。また、リョウブのCo、Mn濃度は秋にかけて高濃度になる傾向が確認された。重金属耐性種が優占したのは、葉内のCo、Mn濃度が影響した可能性がある。また、接種試験として2種類の実験を行った。葉内内生菌の接種試験では、重金属耐性が確認された内生菌を無菌幼植物体に接種し、Co処理を行った場合に重金属集積に影響するかを調べた。結果としては、非接種区と接種区で成長や各器官重金属濃度に明確な影響は確認されなかった。根内内生菌の接種試験では、Co、Niを集積させた幼植物体に蛇紋岩土壌区、名大土壌区の土壌抽出物を接種し、非接種区との比較により重金属集積の違いが内生菌に与える影響を調べた。結果として、Ni処理名大区のリョウブでのみ他条件よりも成長増加が確認された。また、重金属濃度に他区との違いは確認できなかったが、K、P濃度が低かった。これらから内生菌の養分吸収によらない補助成長促進効作用が確認され、集積した重金属によって内生菌叢を調整し、成長を補助している可能性が示唆された。地下部の内生菌についても本年度と同様に調べて、重金属との関係性を明らかにする。根や葉において重金属の関係性が深い菌株を決定でき次第、葉、根の内生菌それぞれについてリョウブへの接種試験を行い、重金属集積性の変化を調べるこのことにより、リョウブの重金属集積への内生菌の関与を明らかにすることができ、応用可能性を検討できる。また、これと合わせて、内生菌を接種したリョウブ各器官中の成分や重金属の化学状態の変化を調べることで、リョウブ樹体内における内生菌と重金属の相互作用に関係する詳細なメカニズムを明らかにする。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-17J04296 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J04296 |
高機能活性タ脱離基を有するアルキル化剤の開発 | エノラートアニオン等のカルバニオンのアルキル化剤への求核置換反応による炭素炭素結合形成反応に於けるアルキル化剤の脱離基の機能強化を当初の目的として、研究に着手した。1.機能性脱離基を有するアルキル化剤の設計、合成昨年度に引き続き金属カチオンにキレート能力を有するアルキル化剤を各種設計、合成した。今年度はアリファティックスルフォン酸エステルを合成した。2.それらを用いてケトンのアルファー位メチル化反応を試みたところ、THF中では全く反応が進行しなかったが、トルエン中で行うと21%の収率で所望のモノメチル化生成物が得られた。収率は低いものの、この溶媒効果は脱離基のキレート能が効力を発揮したと考えられることから今後のアルキル化剤の設計に指針を与えるものと期待される。3.エノラートの反応性の向上も図るため種々のジアニオンを検討中に興味深い反応を見出した。エステルエノラートのジアニオンをα-ブロモエステルから生成し、次いで0度まで反応温度を昇温したところ3重結合を有するイノラートアニオンが生成した。このカルバニオンは文献上いくつかの合成法が知られているものの、実用に耐えうる汎用性のある合成法は見出されていなかった。そこで条件検討を行ったところ90%以上の生成効率でイノラートアニオンを合成する新規方法論を確立することができた。次にこのイノラートアニオンの反応について、いくつかの検討を行った。その結果、イノラートアニオンとアルデヒド及びケトンとの反応において求核活性の高いβラクトンエノラートが効率よく生成することを見出した。更にこのエノラートを熱分解すると高いE選択性で多置換オレフィンが生成することを見出した。この反応は従来のオレフィン化反応を良がする選択性を示す系も見出されており有機合成上有用なものと考えられる。エノラートなどのカルバニオンのアルキル化剤(求電子剤)ヘの求核置換反応による炭素炭素結合形成反応におけるアルキル化剤の脱離基の機能強化という観点からの研究を行った。1)機能性脱離基を有するアルキル化剤の設計・合成カルバニオンの対カチオン(リチウムカチオン)と強く相互作用する事が期待されるメトキシエトキシ、もしくはメトキシエトキシメチルユニットをオルト位に組み込んだ各種ベンゼンスルフォニル基を機能性脱離基として設計しそのブチルエステルを合成した。合成法は、3-メトキシエトキシベンゼン誘導体をオルトリチオ化した後亜硫酸、SO_2Cl_2で順次処理してスルフォニルクロリドに導き、引き続きエステルとする方法、もしくはベンゼンスルフォニルエステルをオルトリチオ化しついでメトキシエトキシメチルクロリドと反応させる方法である。2)リチウムエノラートのブチル化反応一般にケトエノラートは反応性が低く、そのアルキル化は容易でない。本研究ではまずテトラロンのリチウムエノラートのブチル化について検討した。この反応系は、現在最強のアニオン活性化剤であるHMPA(強い発ガン性を有する)を添加してヨウ化ブチルを用いてもわずか10数%しか所望のαブチルテトラロンを得ることができない。しかし今回合成した新アルキル化剤をトルエン中で用いたところ4%の収率で所望の生成物を得た。HMPAや他の金属を用いずにブチル化反応が(わずかでも)進行したことは大いなる前進である。興味深いことにTHF、DME中では0%であった。以上の結果は脱離基に導入したメトキシエトキシユニットがリチウムエノラートのリチウムと相互作用し反応活性化に貢献したことを示唆する。即ち、本コンセプトの妥当性が示されたのである。以上のように本年度の研究によって高機能脱離基開発の端緒を掴んだ。エノラートアニオン等のカルバニオンのアルキル化剤への求核置換反応による炭素炭素結合形成反応に於けるアルキル化剤の脱離基の機能強化を当初の目的として、研究に着手した。1.機能性脱離基を有するアルキル化剤の設計、合成昨年度に引き続き金属カチオンにキレート能力を有するアルキル化剤を各種設計、合成した。今年度はアリファティックスルフォン酸エステルを合成した。2.それらを用いてケトンのアルファー位メチル化反応を試みたところ、THF中では全く反応が進行しなかったが、トルエン中で行うと21%の収率で所望のモノメチル化生成物が得られた。収率は低いものの、この溶媒効果は脱離基のキレート能が効力を発揮したと考えられることから今後のアルキル化剤の設計に指針を与えるものと期待される。3.エノラートの反応性の向上も図るため種々のジアニオンを検討中に興味深い反応を見出した。エステルエノラートのジアニオンをα-ブロモエステルから生成し、次いで0度まで反応温度を昇温したところ3重結合を有するイノラートアニオンが生成した。このカルバニオンは文献上いくつかの合成法が知られているものの、実用に耐えうる汎用性のある合成法は見出されていなかった。そこで条件検討を行ったところ90%以上の生成効率でイノラートアニオンを合成する新規方法論を確立することができた。次にこのイノラートアニオンの反応について、いくつかの検討を行った。その結果、イノラートアニオンとアルデヒド及びケトンとの反応において求核活性の高いβラクトンエノラートが効率よく生成することを見出した。更にこのエノラートを熱分解すると高いE選択性で多置換オレフィンが生成することを見出した。この反応は従来のオレフィン化反応を良がする選択性を示す系も見出されており有機合成上有用なものと考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-09771910 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09771910 |
エクソソームの組織指向性に依存したがん転移機構の解明 | エキソソームは、様々な細胞から分泌される脂質二重膜の小胞体で、タンパク質および核酸を含む。エキソソームは、ドナー細胞由来の細胞情報を伝達し、臓器特異的転移などの様々な生理学的および病理学的事象に関与する。しかしながら、ドナー細胞によって分泌されたエキソソームがレシピエント細胞に選択的または非選択的に組み込まれているかどうかは不明である。我々の結果は、ドナー細胞によって分泌されたエキソソームはレシピエント細胞に非選択的に取り込まれ、エキソソームの取り込みのメカニズムはレシピエント細胞によって異なることを明らかにした。エクソソームは、さまざまな種類の細胞から分泌され、生体内の体液中に存在する直径30100 nmの膜小胞である。エクソソームは、分泌する細胞(ドナー細胞)由来のmiRNA、mRNA、タンパク質等の細胞機能を制御する分子を内包して、エクソソームを受容する細胞(レシピエント細胞)にその情報を伝達する。エクソソームは、がんや神経変性疾患の進行に関与し、エクソソームの取り込み阻害は、がんや神経変性疾患の進行の抑制につながる可能性がある。しかし、エクソソームがどのようなメカニズムで細胞内に移行し、ドナー細胞の情報を伝達するかは不明である。本研究では、エクソソームの細胞内移行メカニズムを明らかにするために、レシピエント細胞に依存したエクソソームの取り込み能と取り込みに関与する分子の発現について検討した。ドナー細胞とレシピエント細胞が同じ細胞の時には、DiO標識したエクソソームは、細胞内に取り込まれた。ドナー細胞とレシピエント細胞が異なる細胞の時には、DiO標識した各細胞由来のエクソソームの取り込みは、HCT116、A549、COLO205細胞の順に減少した。さらに、クラスリンの発現は、COLO205細胞と比較してA549およびHCT116細胞では減少した。一方、カベオリン-1の発現は、COLO205細胞ではほとんど認められず、A549細胞と比較してHCT116細胞でより多く発現していた。エクソソームの細胞内取り込み能は、ドナー細胞によって規定されるのではなく、レシピエント細胞によって規定されており、さらにレシピエント細胞におけるカベオリン-1の発現と相関していることが示唆された。カベオリンを介したエクソソームの細胞内取り込み機能を評価するために、カベオリンのsiRNAを用いてカベオリンをノックダウンした細胞を構築した。しかし、この細胞を用いてカベオリンの基質を細胞内に取り込ませたところ、取り込み量に差がなく、カベオリンを介した細胞内取り込み能を評価する実験系の構築ができなかった。また、研究協力者が研究半ばで退職されたため、次世代シークエンスで解析する実験が途中で頓挫した。体液中を循環するエクソソームには、マイクロRNAやタンパク質が含まれ、がんの悪性化、とくに転移への関与が示唆される。転移を介してがん疾患が増悪化するには、体液中のがん細胞由来エクソソームが、その特異的な転移組織に選択的に取り込まれ、異常な細胞機能を伝達する可能性がある。しかし、エクソソームの組織指向性については、解析が不十分である。そこで、エクソソームの細胞内取り込み機構の解明するためにヒト肺がん由来A549細胞、ヒト大腸がん由来HCT116細胞およびCOLO205細胞を用いてエクソソームの細胞内取り込み様式について検討した。昨年度、エクソソームの精製方法を確立し、細胞間でエクソソームの膜たんぱく質の発現が異なることおよびエクソソームの細胞内への取り込みには、レシピエント細胞に依存することを明らかにした。本年度は、エンドサイトーシスを介したエクソソームの取り込み機構を明らかにするために、クラスリンエンドサイトーシス阻害剤であるpitstop2およびカベオリンエンドサイトーシス阻害剤であるゲニステインを用いて、エクソソームの取り込み様式について検討した。その結果、HCT116細胞におけるA549細胞由来エクソソームおよびCOLO205細胞由来エクソソームの細胞内取り込みは、Pitostop2で有意に阻害されたが、ゲニステインでは顕著な差は認められなかった。A549細胞におけるA549細胞由来エクソソームの細胞内取り込みは、Pitostop2で阻害されず、ゲニステインで有意に阻害された。COLO205細胞におけるA549細胞由来エクソソームの細胞内取り込みは、HCT細胞同様Pitstop2で阻害された。この結果より、レシピエント細胞に依存してエクソソームの取り込み様式が異なり、この違いがエクソソームを介した組織指向性に関与する可能性が示唆された。エキソソームは、様々な細胞から分泌される脂質二重膜の小胞体で、タンパク質および核酸を含む。エキソソームは、ドナー細胞由来の細胞情報を伝達し、臓器特異的転移などの様々な生理学的および病理学的事象に関与する。しかしながら、ドナー細胞によって分泌されたエキソソームがレシピエント細胞に選択的または非選択的に組み込まれているかどうかは不明である。我々の結果は、ドナー細胞によって分泌されたエキソソームはレシピエント細胞に非選択的に取り込まれ、エキソソームの取り込みのメカニズムはレシピエント細胞によって異なることを明らかにした。カベオリンを介したエクソソームの細胞内取り込みを評価するために、カベオリンを介した細胞内取り込みを阻害する物質を用いて、カベオリンを介したエクソソームの細胞内取り込みについて検討する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-15K18943 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K18943 |
エクソソームの組織指向性に依存したがん転移機構の解明 | さらに、カベオリン依存性のエンドサイトーシス以外の機構も関与している可能性があるので、その他のエンドサイトーシスの機構についても、阻害剤を用いて検討する予定である。医療薬学カベオリンを介したエクソソームの取り込みを証明するための評価系が構築できなかった。そのため、動物実験を用いてエクソソームの体内動態を検討する実験まで、手を回すことが出来なかった。また、次世代シークエンス用の試薬代として予算を残していたが、研究協力者が退職したため次世代シークエンスを行うことができず、次年度に使用する額が増えた。カベオリンを介したエクソソームの取り込みを証明する評価系を構築する。いままで用いたしsiRNAの配列やメーカーを変えたり、トランスフェクション試薬の種類を変えたり、試行錯誤する。しかし、これら条件を検討しても評価系を構築することができなければ、特異性が弱いが、カベオリンの阻害剤を用いて、カベオリン介在性の取り込みを評価する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-15K18943 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K18943 |
都市新中間層の共同性形成と社会教育に関する歴史研究:高度成長期の団地を事例として | 本研究で検討する事象はいずれも、高度成長期(1950年代後半1970年代前半)の範囲に基本的に限定する。まず、団地住民と社会教育をめぐる当時の関係者の認識枠組みを把握するとともに(1)、団地住民に対する当時の社会教育行政の対応を把握し(2)、当時の全体的状況を概観する。その上で、団地における社会教育実践の具体的な展開とその団地住民への影響について、事例調査によって検討する(3)。以上を踏まえて、高度成長期における団地の社会教育実践が住民たちにもたらした成果とその限界、またそれらを規定していた社会的要因について考察する(4)。本研究で検討する事象はいずれも、高度成長期(1950年代後半1970年代前半)の範囲に基本的に限定する。まず、団地住民と社会教育をめぐる当時の関係者の認識枠組みを把握するとともに(1)、団地住民に対する当時の社会教育行政の対応を把握し(2)、当時の全体的状況を概観する。その上で、団地における社会教育実践の具体的な展開とその団地住民への影響について、事例調査によって検討する(3)。以上を踏まえて、高度成長期における団地の社会教育実践が住民たちにもたらした成果とその限界、またそれらを規定していた社会的要因について考察する(4)。 | KAKENHI-PROJECT-19K02429 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K02429 |
若年性骨髄単球性白血病と小児骨髄異形成症候群の網羅的ゲノム・エピゲノム解析 | 近年、成人のAMLとMDSでCBL遺伝子変異が高頻度にみられることが報告された。Juvenile myelomonocyticleukemia (JMML)と小児myelodysplastic syndrome (MDS)に対して、AffymetrixとAgilentのゲノムとエピゲノムのアレイを用いた網羅的解析を行い、発症、進展の分子機構を解明する。今年度は、SNPアレイ解析で抽出したCBL遺伝子の解析を行った。これまで変異の報告のあるCBL遺伝子のexon7-9(linker/RING finger domain)について、PCR法と直接塩基決定法にて変異の有無を検討し、小児白血病149例とMDS65例におけるCBL遺伝子と臨床像の関係を検討した。MDSのうち、JMML40例の検討では、CBL遺伝子変異は3例(7.5%)にみられ、いずれも11番長腕-acquired uniparental disomy (11q-aUPD)がみられ、PTPN11やRAS遺伝子の変異はみられず、CBL遺伝子はJMMLの原因遺伝子の1つであると思われた。これらの3例の年齢は2例が2ヵ月、1例が3ヵ月で、1例が移植の副作用で32ヵ月で死亡したが残り2例は12ヵ月と68ヵ月無病生存中であり、CBL変異例は予後良好であることが示唆され、欧米の報告と一致した。欧米ではCBL遺伝子の胚細胞変異が報告されているが、正常細胞が入取できなかったので、今回は検討できなかった。AML81例の検討では、急性巨核芽球性白血病(AMKL)1例(1.2%)にのみ変異がみられた。また検索したCMML1例で変異がみられたが、小児ALL28例では変異はみられなかった。CBL遺伝子変異はJMMLに頻度が高く、AMKLでもみられるが、他のAML、MDSやALLではまれであることが示唆された。SNPアレイでスクリーニングした候補遺伝子を次々とSanger sequenceにより検証しており、特にDNAメチル化に関与する遺伝子の関係が明らかになりJMMLの病態解明に貢献している。24年度が最終年度であるため、記入しない。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22591171 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22591171 |
中等理科教員養成における科学技術リテラシーの指導についての教授理論と方法 | 欧米の科学教育研究ではSSI(socio-scientific issues)の研究が近年盛んになりつつある反面日本ではあまり進展していない。中学校理科には「科学技術と人間」というSSIの要素を含む単元があるが、高校入試の時期に重なるなどで積極的な指導が行われていないと推察されるが、そもそもその実態はほとんど明らかにされていない。そこで、国内の中学校理科教諭に質問紙調査をおこない(回答者725名、回答率19.6%)、当該単元「科学技術と人間」の指導の実態を明らかにするとともに、単元「科学技術と人間」の指導の枠組み、科学的根拠に基づく意思決定の目標やルーブリック評価などを提示した。中学校理科における内容「科学技術と人間」の実践や指導方法についての先行研究を収集、分析をおこない、おもな特徴について考察をおこなった。そこから明らかになったことは、「科学技術と人間」についての先行研究自体が少なく、また学習指導要領が求めている科学的な根拠に基づいた意思決定をおこなわせることについての研究が必ずしも十分ではないということである。「科学的な根拠」とはどのようなものかという理解や、科学的な根拠に基づいて「意思決定」をおこなう科学的思考を生徒にどのように指導するかの具体やその評価方法についての知見や議論が十分蓄積されているとは言い難い状態であった。学習指導要領において「科学的な根拠」やそれに基づいた「意思決定」についての解説が不十分であり、指導にあたる教師がこれらについての理解が十分でないことが想像されるが、その状況を改善するための支援方法が必要であることが改めて浮き彫りになった。その一方で、意思決定の方法や生徒の意思決定の内容を分析した研究も散見され、それらを分析することで、「科学技術と人間」の指導の実態を見通すことができた。また、ヨーロッパの科学教育研究を中心にして、内容「科学技術と人間」に関連の深いSSI(socio-scientific issues)の指導や評価方法に関する先行研究の調査をおこなった。いわゆる物化生地といった伝統的でオーソドックスな理科の内容の指導方法についての先行研究のボリュームと比較すると必ずしも多くはないものの一定の研究の蓄積がなされており、アメリカ合衆国を中心としてフランス、カナダ、イギリス、スウェーデン、ドイツ、台湾、チュニジア、イスラエル、ポルトガルなどの諸国における研究論文を収集した。日本の中学校理科における単元「科学技術と人間」に関連する欧米における科学教育のトピックSSI(Socio-scientific Issues)研究の動向について、アメリカにおける当該研究を牽引している南フロリダ大学の研究者を訪問した。フロリダ州タンパ近隣の中・高校理科教員の教員研修に参加するとともに、SSIの高等学校での実践内容について調査をおこない、開発された教材について情報収集をおこなった。科学的な意思決定やargumentationなどのアクティブラーニングを取り入れたモジュールは日本の次期学習指導要領改訂がめざしている能動的な学習の具現化に向けて参考になることがわかった。また、SSIは次世代科学スタンダード:NGSSやSTEM Educationといった科学教育のトレンドとも深く関わりがあることも明らかとなり、日本の中学校理科の単元「科学技術と人間」の展望についての示唆を得ることができた。また、単元「科学技術と人間」の指導の実態を明らかにする目的で、2014年11月12月にかけて国内政令都市13市の中学校理科教員725名に質問紙調査を実施した。主な調査結果として、1)同単元にかける指導時間は約半数の教員が05時間であること、2)回答者の約8割が同単元の指導において学習指導案の作成経験がほとんどないかまったくないこと、3)しかしながら2)に関連して、その経験は市によって傾向のちがいがあること、4)同単元の指導について大学や大学院の講義や教職に就いた後の研修などにおいて、約7割の教員が学んだことがないこと、などの実態が明らかになった。同単元の指導時期が中学校3学年の高校入試と重なることから、教員の指導だけでなく中学生の学習への意欲が低いことや評価の難しさなどの課題が抽出された。2015年3月に調査結果の概要を各市教委に報告するとともに、現在詳細な分析を継続中である。1.単元「科学技術と人間」の指導の現状分析中学校理科の単元「科学技術と人間」の指導の実態について、2014年11月から12月に全国政令指定都市13市の市立全中学校に勤務する理科教諭を対象に調査票をおこなった(回収725部、回収率19.6%)。その結果、指導や学習指導案の作成経験の不十分さが見られ、多くの教員が当該単元内容の難しさ、とくに科学技術の社会的経済的倫理的側面の扱い、科学技術の進歩についての情報更新の難しさなどを指摘した。当該単元の特徴である「科学的な根拠に基づいた意思決定」についての指導や評価がほとんどなされていないことが明らかになった。かつて欧米やアジア諸国で取り組まれたSTS教育を新たにしたSSIは科学技術の社会的側面などについての議論や判断などを指導する科学教育の実践と研究である。アメリカ合衆国ではSSIの指導と評価についてのガイドブックや教員研修がおこなわれており、その研修に参加し、生徒のポートフォリオの作成およびルーブリックによる評価基準の作成について情報収集をおこなった。また、ヨーロッパ科学教育学会でもSSIの研究動向を情報収集し、それらを取り入れて「科学技術と人間」の指導方法の改善に資するために、図書に執筆をおこなっており近日中に印刷予定である。また、生徒に身近な科学技術の例としてリサイクルなどを取り上げ、科学技術の経済性について科学的な根拠に基づいた意思決定を指導し、それを評価する事例など指導方法について提示する。 | KAKENHI-PROJECT-25350249 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25350249 |
中等理科教員養成における科学技術リテラシーの指導についての教授理論と方法 | 欧米の科学教育研究ではSSI(socio-scientific issues)の研究が近年盛んになりつつある反面日本ではあまり進展していない。中学校理科には「科学技術と人間」というSSIの要素を含む単元があるが、高校入試の時期に重なるなどで積極的な指導が行われていないと推察されるが、そもそもその実態はほとんど明らかにされていない。そこで、国内の中学校理科教諭に質問紙調査をおこない(回答者725名、回答率19.6%)、当該単元「科学技術と人間」の指導の実態を明らかにするとともに、単元「科学技術と人間」の指導の枠組み、科学的根拠に基づく意思決定の目標やルーブリック評価などを提示した。中学校における単元「科学技術と人間」の指導の実態の概要を質問紙調査によって明らかにすることができ、また同単元に関連するSSIの研究と研究の動向の調査をおこなうことができた。これらのことから、本研究がめざしている科学技術の意思決定などの指導法についての教授理論を構成する主要な内容を得ることができたため。科学教育今年度明らかに出来た研究成果をもとにし、さらにアクティブラーニングの実践的な手法を取り入れることによって、単元「科学技術と人間」の指導法の理論を構築するとともに、その公表方法を検討、決定し、研究成果を中学校理科指導に資するものにする。いわゆる教科専門の位置づけとして科学技術社会論などをベースにして、科学的な根拠あるいはそれに基づいた意思決定がどのように論じられているか先行研究を収集し分析をおこなっている。「科学技術と人間」における意思決定の指導方法について先行研究を収集し分析をおこなっている。SSIにおける意思決定についての先行研究を収集し分析をおこなっている。また、ドイツの理科教育における科学技術と生活および社会との関連についての指導の実践事例や指導方法について聞き取り調査をおこなうとともに、ドイツの教科書や指導書を入手した。欧米の大学の教員養成課程における科学技術リテラシーの指導方法を調査するとともに、日本の教員養成のシラバスから科学技術リテラシーの指導方法と比較する。引き続きSSIについての先行研究から、科学的な根拠に基づいた意思決定の指導方法の分析をおこなう。また、博物館などの学校外の教育資源を活用した学習プログラムや指導方法についても調べを進める。 | KAKENHI-PROJECT-25350249 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25350249 |
行列式による虚アーベル体の相対類数公式の研究 | 1.最近、円藤によって奇数導手の円分体Kの2次拡大の相対類数とKのそれとの商が1つの行列式で与えられた。(この結果は今だ未発表のようである。)本研究代表者はこの結果を円分体から一般の虚アーベル体に、パラメータを含んだ形で拡張した。特に、Kをp分体(pは奇素数)とし、Kの2次拡大として、Kと4分体の合併体を取り、パラメータを4p+1とすると、金光一葛巻が条件付きで与えていた相対類数の商の公式が符号をこめて最終的な形で得られる。また、Kを導手mの円分体とし、Kの2次拡大としてKに4分体、8分体の2次部分体を添加した体とし、パラメータを4m+1、あるいは8m+1とすると、円藤の公式が符号をこめた形で得られる。また、パラメータを2とすると、円藤の1996年の公式ができる。これらの結果とこれまでのいろいろな公式の相関関係を明治学院大学の数論セミナー、京都大学の数理解析研究所の研究集、会「代数的整数論とその周辺」で発表した。2.1970年Newmannは奇素数分体の相対類数を計算するために、相対類数を行列式で表した。また、Skulaはこの公式を奇素数べき分体に拡張した。本研究代表者はこれらの結果を一般の虚アーベル体まで、パラメータbを持った形で拡張した。この公式において、体をpべき分体(pは奇素数)、bをp+1とすると、Newmann、Skulaの公式が得られ、彼らが決めていなかった行列式の符号を決めることができる。この結果を上記の数理研の研究集会で簡単に紹介し、本年度5月に金沢の研究集会で詳しく紹介した。1.最近、円藤によって奇数導手の円分体Kの2次拡大の相対類数とKのそれとの商が1つの行列式で与えられた。(この結果は今だ未発表のようである。)本研究代表者はこの結果を円分体から一般の虚アーベル体に、パラメータを含んだ形で拡張した。特に、Kをp分体(pは奇素数)とし、Kの2次拡大として、Kと4分体の合併体を取り、パラメータを4p+1とすると、金光一葛巻が条件付きで与えていた相対類数の商の公式が符号をこめて最終的な形で得られる。また、Kを導手mの円分体とし、Kの2次拡大としてKに4分体、8分体の2次部分体を添加した体とし、パラメータを4m+1、あるいは8m+1とすると、円藤の公式が符号をこめた形で得られる。また、パラメータを2とすると、円藤の1996年の公式ができる。これらの結果とこれまでのいろいろな公式の相関関係を明治学院大学の数論セミナー、京都大学の数理解析研究所の研究集、会「代数的整数論とその周辺」で発表した。2.1970年Newmannは奇素数分体の相対類数を計算するために、相対類数を行列式で表した。また、Skulaはこの公式を奇素数べき分体に拡張した。本研究代表者はこれらの結果を一般の虚アーベル体まで、パラメータbを持った形で拡張した。この公式において、体をpべき分体(pは奇素数)、bをp+1とすると、Newmann、Skulaの公式が得られ、彼らが決めていなかった行列式の符号を決めることができる。この結果を上記の数理研の研究集会で簡単に紹介し、本年度5月に金沢の研究集会で詳しく紹介した。1.pを奇素数、gを法pの原始根として、1/pを1/gのべき級数で展開したときの係数でできる行列式でp分体の相対類数が表せる。p分体の相対類数は他の形の行列式、Maillet行列式、Demjanenko行列式でも表せる。これら3つの行列式は、津村、研究代表者、Kuceraによって、パラメータを持った形で統一化、一般化された。これらの行列式の成分は、導手を法として最小正剰余から作られる。また、絶対最小剰余からも同様にして、相対類数公式ができる。2003年、円藤がこれらのp分体の公式それぞれ一般化した。本研究で円藤の公式がKuceraの公式から導かれることを示した。この結果を平成18年1月に首都大学の数論セミナーで発表した。2.津村によって、虚アーベル体Kの相対類数は、その導手mを法とする最小正剰余を-1のべきにとったもののいくつかの和を成分とする行列式で表せている。他方、p分体について、円藤は、絶対最小剰余を成分とする行列と-1の絶対最小剰余のべきを成分とする行列の積の行列式でp分体の相対類数を表した。また、金光-葛巻は、絶対最小剰余を成分とする行列式でp分体の相対類数公式を求めた。これらの商で-1の絶対最小剰余のべきを成分とする行列式が、ある条件の下でp分体の相対類数を表すことになる。本研究では、この商でできた公式を虚アーベル体まで拡張し、その系として、円藤、金光-葛巻のp分体の公式を条件なしで表した。この結果を平成18年3月の日本数学会で発表した。1.最近、円藤によって奇数導手の円分体Kの2次拡大の相対類数とKのそれとの商が1つの行列式で与えられた。 | KAKENHI-PROJECT-17540047 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17540047 |
行列式による虚アーベル体の相対類数公式の研究 | (この結果は今だ未発表のようである。)本研究代表者はこの結果を円分体から一般の虚アーベル体に、パラメータを含んだ形で拡張した。特に、Kをp分体(pは奇素数)とし、Kの2次拡大として、Kと4分体の合併体を取り、パラメータを4p+1とすると、金光-葛巻が条件付きで与えていた相対類数の商の公式が符号をこめて最終的な形で得られる。また、Kを導手mの円分体とし、Kに4分体、8分体の2次部分体を添加した体とし、パラメータを4m+1、あるいは8m+1とすると、円藤の公式が符号をこめた形で得られる。また、パラメータを2とすると、円藤の1990年の公式ができる。これらの結果とこれまでのいろいろな公式の相関関係を明治学院大学の数論セミナー、京都大学の数理解析研究所の研究集会「代数的整数論とその周辺」で発表した。2.1970年Newmannは奇素数分体の相対類数を計算するために、相対類数を行列式で表した。また、Skulaはこの公式を奇素数べき分体に拡張した。本研究代表者はこれらの結果を一般の虚アーベル体まで、パラメータbを持った形で拡張した。この公式において、体をp分体(pは奇素数)、bをp+1とすると、Newmann、Skulaの公式が得られ、彼らが決めていなかった行列式の符号を決めることができる。この結果を上記の数理研の研究集会で簡単に紹介し、本年度5月に金沢の研究集会で詳しく紹介した。 | KAKENHI-PROJECT-17540047 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17540047 |
薬物動態・薬理遺伝学に基づいたテーラーメイド抗がん剤治療の標準治療化に関する研究 | 肝代謝型抗がん薬は治療域が狭いだけでなく薬物動態の個人間差異が大きい。遺伝子多型や併用薬および薬物動態などの情報を基に投与量を個別に調整する方法は、理論的に最も単純でかつ確実な方法である。京都大学大学院医学研究科・医の倫理委員会にて承認を得て、複数の臨床楽理学関連の医師主導臨床試験を行い、薬物動態の個人間差異を出来るだけ小さくするための手法の可能性を検討した。抗がん剤の多くは、肝臓や腎臓で代謝・排泄されるが、体表面積(BSA)がこれらの臓器機能と相関するというはっきりとした根拠は存在しない。肝臓の代謝酵素(CYPやUGT1A1など)の遺伝子多型や併用薬が薬物動態に影響を及ぼし、その結果として副作用や有効性にも影響することがある。テーラーメード医療として、個々の患者における遺伝子多型や薬物動態を基に個々の患者における効果や副作用の確率を予想して投与量を調整する方法は、理論的に最も単純でかつ確実な方法である。京都大学大学院医学研究科・医の倫理委員会にて承認された医師主導臨床試験において臨床研究実施計画書(プロトコール)に従って肝代謝の抗がん剤投与がなされた患者の中で、副作用や最大耐量(MTD)との関連が示唆されるAUC(Area Under the Blood Concentration-time Curve)やクリアランス(CL)などの薬物動態因子や薬物代謝酵素の遺伝子多型などの中から、重篤な副作用や最大耐量(MTD)と良く相関するだけでなく、臨床の現場において広く普及が可能な検査法の組み合わせを同定する。肝代謝型抗がん薬は治療域が狭いだけでなく薬物動態の個人間差異が大きい。遺伝子多型や併用薬および薬物動態などの情報を基に投与量を個別に調整する方法は、理論的に最も単純でかつ確実な方法である。京都大学大学院医学研究科・医の倫理委員会にて承認を得て、複数の臨床楽理学関連の医師主導臨床試験を行い、薬物動態の個人間差異を出来るだけ小さくするための手法の可能性を検討した。計画に含まれていた臨床試験(1)乳癌症例を対象とした術後補助化学療法としての個人内用量漸増を伴う経口CEF療法-第I・II相試験(薬物動態解析を含む)当施設の標準治療が変更になり十分な症例を集積できず試験を中止せざるを得なかったが、試験選択基準を満たさずも他の治療選択肢がないため当臨床試験に準じて治療を行った症例を含めて解析を行うと、エピルビシンにおいては体表面積で投与量の補正を行わなくとも、個々の症例における推奨投与量は一定の用量にたることが示唆された。(2)進行乳癌症例を対象としたドセタキセル化学療法に伴う爪の変化と冷却グローブによる予防効果の検討(薬物動態解析を含む)登録が順調に進み予定期間内に終了となる見込み。試験途中であり詳細な解析は行っていないが、個々の症例におけるAUCおよびクリアランスは、効果や有害事象の予測因子になり得ることが示唆された。これらのデーターを基にドセタキセルの投与間隔を調整できる可能性も示唆されている。計画に含まれていなかった臨床試験(3)アンスラサイクリン系薬剤かつ、タキサン系薬剤の治療歴を有する再発・転移性乳癌に対するCPT-11/S-1併用療法の第I・II相臨床試験(付随研究:UGT1A1遺伝子多型と塩酸イリノテカンの臨床効果との関連に関する臨床研究)臨床研究実施計画書の倫理委員会承認を得た。(4)乳癌患者における循環血液中腫瘍細胞数および血管内皮細胞数測定の精度に関する探索的研究臨床研究実施計画書の倫理委員会承認を得た。臨床試験実施計画書(薬物動態解析)を作成した。計画に含まれていた臨床試験(1)進行乳癌症例を対象としたドセタキセル化学療法に伴う爪の変化と冷却グローブによる予防効果の検討(ドセタキセル薬物動態測定・解析含む)予定登録症例の6割の症例が登録され薬物濃度測定が施行されたが、残りの4割の症例登録のために、登録期間1年間延長の変更を医の倫理委員会に申請し承認された。(2)アンスラサイクリン系薬剤かつ、タキサン系薬剤の治療歴を有する再発・転移乳癌に対するCPT-11/S-1併用療法の第I/II相臨床試験(CPT薬物動態・代謝酵素遺伝子多型測定・解析含む)第I相試験を終了し、そのデータをまとめて今年の日本乳癌学会で共同演者として報告予定である。第II相試験においては、CPTの添付文書改訂に伴う計画書・説明文書・症例報告書改訂を行い、医の倫理委員会の変更承認を得た。引き続き症例登録を開始し、平成21年3月までに3例の症例を登録した。計画に含まれていなかった臨床試験これまでの、薬物動態に基づいた投与量の設定に加えて、薬理遺伝学的手法を加えて、より精度の高い治療効果または副作用予測を行うべく、以下のヒト遺伝子解析研究を開始した。(1)乳癌内分泌療法において薬物代謝酵素遺伝子多型が薬物血中濃度に及ぼす影響の検討ヒト遺伝子解析研究計画書の倫理委員会承認を得て、症例登録を開始した。平成21年3月末までに6例が登録された。(2)抗がん剤による重篤な有害事象発現患者における抗がん剤代謝酵素の遺伝子多型および薬物動態に関する研究ヒト遺伝子解析研究計画書を作成し倫理委員会に提出した。以下の研究(臨床試験)を主任研究者として施行している。 | KAKENHI-PROJECT-19590533 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19590533 |
薬物動態・薬理遺伝学に基づいたテーラーメイド抗がん剤治療の標準治療化に関する研究 | (1)進行乳癌症例を対象としたドセタキセル化学療法に伴う爪の変化と冷却グローブによる予防効果の検討(ドセタキセル薬物動態測定・解析含む)平成22年3月末の時点で予定登録症例(25例)の9割(22例)の症例が登録され薬物濃度測定が施行された。平成22年6月で登録期間終了予定である。(2)アンスラサイクリン系薬剤かつ、タキサン系薬剤の治療歴を有する再発・転移乳癌に対するCPT-11/S-1併用療法の第I/II相臨床試験(CPT薬物動態・代謝酵素遺伝子多型測定・解析含む)第I相試験を終了し平成21年の日本乳癌学会にて共同演者として報告した。平成22年2月末までに当院にて10例、全体で26例の症例が登録された。当院で登録した患者においてはイリノテカンの薬物動態測定も施行された。平成22年7月で登録期間終了(予定登録数50例)予定である。(3)乳癌内分泌療法において薬物代謝酵素遺伝子多型が薬物血中濃度に及ぼす影響の検討(CYP2D6遺伝子多型・抗エストロゲン剤薬物動態測定・解析含む)平成22年3月末で当院予定登録症例(40例)の8割(35例)が登録され、60例に症例追加する予定である。多施設共同研究(200症例)として行うために計画書を変更し倫理委員会の承認を得た。平成22年3月末で4施設(全12施設予定)で倫理委員会の承認を得ている。(4)抗がん剤による重篤な有害事象発現患者における抗がん剤代謝酵素の遺伝子多型および薬物動態に関する研究平成22年3月末の時点で1例登録した。(5)ホルモン感受性乳癌症例を対象とした遺伝薬理学および薬物動態学に基づいた抗エストロゲン療法の臨床薬理学試験実施計画書を作成し倫理委員会に提出し承認を得た。多施設共同研究として施行する準備中である。以下の臨床試験を主任研究者として施行した。(1)進行乳癌症例を対象としたドセタキセル化学療法に伴う爪の変化と冷却グローブによる予防効果の検討(ドセタキセル薬物動態解析含、登録期間平成22年6月)(2)アンスラサイクリン系薬剤かつ、タキサン系薬剤の治療歴を有する再発・転移乳癌に対するCPT-11/S-1併用療法の第I/II相臨床試験(CPT薬物動態・代謝酵素遺伝子多型解析含、登録期間平成23年7月)(3)乳癌内分泌療法において薬物代謝酵素遺伝子多型が薬物血中濃度に及ぼす影響の検討(CYP2D6遺伝子多型・抗エストロゲン剤薬物動態解析含、登録期間平成24年7月)当院予定登録症例(40例)は終了した。多施設共同研究は、平成24年2月末現在で300症例中276例が既に登録されている。(4)ホルモン感受性乳癌症例を対象とした遺伝薬理学および薬物動態学に基づいた抗エストロゲン療法の臨床薬理学試験(トレミフェン薬物動態解析含む)予定症例30例中、当院からは5例登録された。全体での登録症例数は13例である。(5)「エストロゲン受容体陽性HER2陰性乳癌に対するS-1術後補助療法ランダム化比較第III相試験」におけるバイオマーカー探索研究-薬理ゲノム・薬物動態/薬力学研究-(S-1薬物動態解析含む)倫理委員会の承認を得て試験を開始した。平成23年3月末時点で、1例登録された。 | KAKENHI-PROJECT-19590533 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19590533 |
神経細胞におけるカルシウム応答遺伝子群の検索とその発現制御機構の解析 | 本年度は、主にマウス小脳顆粒細胞ニューロンの初代培養系において、細胞質膜の脱分極で惹起されるカルシウムシグナルで発現変化を受ける一連の遺伝子群(カルシウム応答遺伝子群)の検索と、その発現制御系の解明を目指した。1.カルシウム応答遺伝子群の検索:脱分極によって電位依存性カルシウムチャネルからCa2+流入が誘起され、細胞内にカルシウムシグナルが惹起される。このシグナルで発現変化を示す遺伝子をDifferential display法によって検索した所、セクレトグラニン-II(Sg-II)遺伝子が同定された。現在、そのプロセッシング産物であるセクレトニューリンを合成しており、今後、その細胞生存や可塑性に与える影響等を検討する。2.カルシウム応答遺伝子群の発現制御系の解析: VDCCからのCa^<2+>流入でBDNF,Sg-II遺伝子はup-regulationを、NT-3遺伝子はdown-regulationを受ける。この発現制御には、最適な細胞内Ca^<2+>濃度が必要とされる。また、BDNF,Sg-II遺伝子の活性化にはVDCCからのCa^<2+>流入が影響を与えるが、c-fos誘導にはNMDAレセプターからのCa^<2+>流入も効果的であった。このカルシウムシグナリングにはMAPキナーゼの活性化は関与していないことが明らかとなった。今後、これらカルシウムシグナル伝達系の解析を行う。また、BDNF遺伝子のプロモーター解析によって、一200bpより下流にカルシウム応答エレメントのあることが明らかとなった。本年度は、主にマウス小脳顆粒細胞ニューロンの初代培養系において、細胞質膜の脱分極で惹起されるカルシウムシグナルで発現変化を受ける一連の遺伝子群(カルシウム応答遺伝子群)の検索と、その発現制御系の解明を目指した。1.カルシウム応答遺伝子群の検索:脱分極によって電位依存性カルシウムチャネルからCa2+流入が誘起され、細胞内にカルシウムシグナルが惹起される。このシグナルで発現変化を示す遺伝子をDifferential display法によって検索した所、セクレトグラニン-II(Sg-II)遺伝子が同定された。現在、そのプロセッシング産物であるセクレトニューリンを合成しており、今後、その細胞生存や可塑性に与える影響等を検討する。2.カルシウム応答遺伝子群の発現制御系の解析: VDCCからのCa^<2+>流入でBDNF,Sg-II遺伝子はup-regulationを、NT-3遺伝子はdown-regulationを受ける。この発現制御には、最適な細胞内Ca^<2+>濃度が必要とされる。また、BDNF,Sg-II遺伝子の活性化にはVDCCからのCa^<2+>流入が影響を与えるが、c-fos誘導にはNMDAレセプターからのCa^<2+>流入も効果的であった。このカルシウムシグナリングにはMAPキナーゼの活性化は関与していないことが明らかとなった。今後、これらカルシウムシグナル伝達系の解析を行う。また、BDNF遺伝子のプロモーター解析によって、一200bpより下流にカルシウム応答エレメントのあることが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-09259226 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09259226 |
心身障害者の歯科治療時における全身管理 | 前年度はパルスオキシメーターのコンピューター処理とVTRの同時記録を可能にした。さらに重症心身障害児154名の歯科治療時のSpQ_2値を測定した。これらの最重度の心身障害児であっても、約9割は健常者と同様のSpsQ_2値を示すことを明らかにし、残り1割もSpQ_2値は90以上を示す事を明らかにした。本年度は153名の心身障害者について、種々の治療方法による歯科治療時の全身管理のモニタリングとしてパルスオキシメーター測定のVTRの同時記録を行った。心身障害者の全身麻酔を用いた集中歯科治療時の全身管理で、SpQ_2値の測定を61症例に行い、その結果、重度の脳性麻痺患者では覚醒時の自発呼吸が再開するまでに著しい遅延が見られることが明らかとなり、適切な抜管時期を知る上で、また病棟帰室後の呼吸管理にきわめて有用であることが明らかとなった。静脈内鎮静法を用いた場合の全身管理では42症例についてSpQ_2測定を行った。その結果、静脈内鎮静法の導入時および術中、術後に鎮静が深くなった場合の呼吸抑制を他のモニターより早期に知ることができ、より安全な鎮静法を行うことが可能となった。特に脳性麻痺患者の舌根沈下などを早期に知ることができ呼吸管理上きわめて有用であった。さらに通常の歯科治療時においても脳性麻痺患者36症例の測定を行い、頻回にSpQ_2値の著しい低下が認められ、呼吸管理上きわめて危険な状況にあることが明らかとなった。これらを回避するためにSpQ_2値を常時監視することが重要であることが明らかとなった。しかし不随意運動が著しい場合には測定不能となる場合も多く今後改善する必要があることが明らかとなった。コウシタ症例では笑気吸入鎮静法が不随意運動を抑制し、SpQ_2値を高い値に保つことができ、きわめて有用であった。また通常の歯科治療時にてんかん発作を起こした症例では呼吸状態を正確に把握でき適切な対処が可能となった。最重度の心身障害者の歯科治療時にパルスオキシメーターは,最も重要なモニターとなりうることが明かとなった.本年度は,パルスオキシメーター(CSI502)と記録用のコンピュータ(NEC98LT)間のデータ受信のコンピュータープログラムおよびデータ処理用コンピューター(NEC9801)を用いた同時解析プログラムを9月末までに自主開発した.これにより,歯科治療時の膨大なPaO_2をリアルタイムで連続的に測定し,診療内容とともに記録することが可能となった.同時にビデオカメラで診療時の患者の状態が記録できこれを分析することによって脳性麻痺患者にとって最も安全かつ楽な歯科治療姿勢を検索することが可能となった.これらを用いて,最重度の重症心身障害児154名の歯科検診時のPaO_2(動脈血酸素飽和度)を測定した.1)約9割の者がSpO_2値(パルスオキシメータ測定動脈血酸素飽和度)9499%を示した.残りの約1割の者はSpO_2は90%以上が,ほとんどである事が明かとなった.2)心疾患(ファロー四微)を合併した重症脳性麻痺児でSpO_2が70%以下を示した者が一名いた.3)重症脳性麻痺患者では通常の歯科治療でも姿勢によってはSpO_2が85%以下になる事があった.パルスオキシメータ監視時には,こうした低値となった場合直ちに警報により知ることができるため,気道の確保,分泌物吸引など直ちに対処できる利点があることが明かとなった.4)パルスオキシメータは重症脳性麻痺患者の通常の歯科治療時はもちろん,各種の〓静法や全身麻酔時の術中術後管理に有用であった.特に術後長時間にわたって呼吸の監視が必要な症例では,きわめて有用であった.前年度はパルスオキシメーターのコンピューター処理とVTRの同時記録を可能にした。さらに重症心身障害児154名の歯科治療時のSpQ_2値を測定した。これらの最重度の心身障害児であっても、約9割は健常者と同様のSpsQ_2値を示すことを明らかにし、残り1割もSpQ_2値は90以上を示す事を明らかにした。本年度は153名の心身障害者について、種々の治療方法による歯科治療時の全身管理のモニタリングとしてパルスオキシメーター測定のVTRの同時記録を行った。心身障害者の全身麻酔を用いた集中歯科治療時の全身管理で、SpQ_2値の測定を61症例に行い、その結果、重度の脳性麻痺患者では覚醒時の自発呼吸が再開するまでに著しい遅延が見られることが明らかとなり、適切な抜管時期を知る上で、また病棟帰室後の呼吸管理にきわめて有用であることが明らかとなった。静脈内鎮静法を用いた場合の全身管理では42症例についてSpQ_2測定を行った。その結果、静脈内鎮静法の導入時および術中、術後に鎮静が深くなった場合の呼吸抑制を他のモニターより早期に知ることができ、より安全な鎮静法を行うことが可能となった。特に脳性麻痺患者の舌根沈下などを早期に知ることができ呼吸管理上きわめて有用であった。さらに通常の歯科治療時においても脳性麻痺患者36症例の測定を行い、頻回にSpQ_2値の著しい低下が認められ、呼吸管理上きわめて危険な状況にあることが明らかとなった。これらを回避するためにSpQ_2値を常時監視することが重要であることが明らかとなった。しかし不随意運動が著しい場合には測定不能となる場合も多く今後改善する必要があることが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-62480417 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62480417 |
心身障害者の歯科治療時における全身管理 | コウシタ症例では笑気吸入鎮静法が不随意運動を抑制し、SpQ_2値を高い値に保つことができ、きわめて有用であった。また通常の歯科治療時にてんかん発作を起こした症例では呼吸状態を正確に把握でき適切な対処が可能となった。 | KAKENHI-PROJECT-62480417 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62480417 |
多言語性の否定と肯定―ルーマニア・ドイツ語文学に見る言語アイデンティティの諸相― | 本研究では、第一次世界大戦後にルーマニアのマイノリティとなったユダヤ系およびドイツ系ドイツ語詩人や作家が自らの背負った多言語性に対して示した一見相反する姿勢に着目し、多言語性が彼らの文学の形成に果たした役割を考察するものである。ルーマニア・ドイツ語文学は、近年のドイツ文学研究で次第に注目を集めているが、国民文学観を踏まえた文学史観の桎梏から解放されることは現在もなお難しい。マイノリティの視座から従来の文学評価に新たな照射をも行うことで、文学研究およびマイノリティ研究双方に寄与可能な学際研究である。書籍化やデジタル化されていない重要な資料の発掘と部分的公刊も可能となる本研究では、第一次世界大戦後にルーマニアのマイノリティとなったユダヤ系およびドイツ系ドイツ語詩人や作家が自らの背負った多言語性に対して示した一見相反する姿勢に着目し、多言語性が彼らの文学の形成に果たした役割を考察するものである。ルーマニア・ドイツ語文学は、近年のドイツ文学研究で次第に注目を集めているが、国民文学観を踏まえた文学史観の桎梏から解放されることは現在もなお難しい。マイノリティの視座から従来の文学評価に新たな照射をも行うことで、文学研究およびマイノリティ研究双方に寄与可能な学際研究である。書籍化やデジタル化されていない重要な資料の発掘と部分的公刊も可能となる | KAKENHI-PROJECT-19K00490 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K00490 |
ナノシートを用いたメタマテリアル構造の構築によるTHz波強度変調デバイス | 4種類の導電性ナノシート(K-RuO2,Na-RuO2,K-IrO2,還元型酸化グラフェン)のTHz領域における電磁応答特性を調べ,新規THz光学デバイスへの応用性を検討した。THz領域における透過率を測定し,シートインピーダンスを算出した結果,K-RuO2はTHz領域において比較的高い導電性を示すことが示された。K-RuO2ナノシート膜は波長に対して非常に薄い領域にTHz波を吸収させることができるため,THz領域の薄膜吸収体として応用が期待できる。一方,メタマテリアルへの応用について検討した結果,導電率が最も高いK-RuO2ナノシートでもメタマテリアル構造には適していないことが示唆された。本研究は,テラヘルツ領域におけるナノシートの応答特性を調べ,その特性を新規のテラヘルツ光学デバイスに応用することを目的としている。本年度において,層状K0.2RuO2.0・nH2Oから誘導した酸化ルテニウム(RuO2)ナノシートの原子平滑薄膜を作製し,テラヘルツ領域における重要な光学定数であるシートインピーダンスを評価した。RuO2ナノシートは厚みが1 nm以下,面方向が数100 nmの板状単結晶であり,高い電子伝導性を有することが従前の研究でわかっている。RuO2ナノシートコロイドを用いて交互積層法により石英およびシリコン基板上にRuO2ナノシートを1層から3層重ねた1,2,3ML-RuO2ns/quartz,1,2,3ML-RuO2ns/Siを成膜した。3層積層した膜で解析可能なS/N比が得られた。テラヘルツ領域における振幅の透過率は石英,Si基板のいずれにおいても0.32.5THzで約90%であった。測定に用いたテラヘルツ時間領域測定法では,複素透過係数を測定することが可能であるので,測定した値からシートインピーダンスを算出することができる。テラヘルツ波の波長(100μm1mm)に対し,ナノシートの厚み(1nm程度)は0.000010.000001程度であり,ナノシートの厚みを無限小としてシートインピーダンスを算出した。その結果,石英基板及びSi基板を用いた3ML-RuO2nsの両方において,0.32.5THzでおおよそ5001500Ω/squareの値であった。これらの分光学的に求めたテラヘルツ領域での抵抗値は,直流に対する抵抗値(2300Ω/square)のオーダーと一致している。これは,RuO2ナノシートが,テラヘルツ波の高周波領域まで,ある程度の導電性を持っていることを示しており,今後のデバイス研究において重要な情報である。本研究は,THz領域におけるナノシートの応答特性を調べ,その特性を新規のTHz光学デバイスに応用することを目的としている。前年までに,層状K0.2RuO2.1・nH2Oから誘導した酸化ルテニウム(K-RuO2)ナノシートを13層積層させた薄膜のテラヘルツ(THz)領域におけるシートインピーダンスを評価し,THz時間領域分光法にて,非破壊・非接触でナノシートのシートインピーダンスを測定できることを確認した。本年度は,積層数を10層まで増加させた薄膜のシートインピーダンスを調べた。それらの値は,直流におけるシート抵抗の値とオーダーが一致しており,THz領域においても比較的高い電子伝導性を示す材料であることがわかった。さらに層状NaRuO2.0・nH2Oから誘導した酸化ルテニウム(Na-RuO2)ナノシート,IrO2ナノシート,還元型酸化グラフェンの薄膜を作製し評価したところ,測定精度を超える高いシートインピーダンスを有しており,THz領域における電子伝導率が低いことがわかった。さらに,比較的伝導率が高いK-RuO2においてTHz領域のメタマテリアル応用の可能性を検討した。計算機シミュレーションによって,K-RuO2(10層)を材料とした分割リング共振器と呼ばれるメタマテリアル構造を形成し,そのTHz応答特性を調べたところ,完全導体を仮定した場合には現れる共鳴スペクトルが,K-RuO2(10層)では観測されなかった。実際にレーザー加工によりK-RuO2をメタマテリアル構造に加工,特性を評価した結果,シミュレーションとよく一致した。シミュレーションでは,K-RuO2の導電率を10倍程度高めると共鳴スペクトルが観測される結果が得られているため,K-RuO2単体でのメタマテリアル応用としては導電率が不足することがわかった。本研究は,ナノシートを用いてTHz領域における変調デバイスを作製することを目的としている。その実現のためには,各ナノシートのTHz領域における光学特性を詳細に把握しておくことが重要である。本年度は,K-RuO2において110層までの試料のシートインピーダンスを詳細に調べ,かつ直流のシート抵抗と比較することによって,THz領域において比較的高い電子伝導率を有することが確認できた。さらに他のナノシート(Na-RuO2,IrO2,グラフェン)のシートインピーダンスも測定し,K-RuO2とは異なり電子伝導率が低いことが明らかになった。特に,同じRuO2であるK-RuO2とNa-RuO2の伝導率が大きく異なることは興味深い知見である。またナノシートのメタマテリアル応用のために,K-RuO2でメタマテリアル構造を作製した際のTHz応答を測定した。 | KAKENHI-PROJECT-26610084 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26610084 |
ナノシートを用いたメタマテリアル構造の構築によるTHz波強度変調デバイス | 明確な共鳴スペクトルは観測されなかったが,ナノシートをレーザーによって微細加工することが可能であることと,10nmという,THz波の波長と比較して4桁も薄いナノシートで形成したメタマテリアル構造のシミュレーションと実験結果とが良い精度で一致することを確認することが出来た。これらは今後のメタマテリアル開発において重要な技術である。本研究は,テラヘルツ領域においてナノシートの電磁応答特性を調べ,その応答特性を新規のテラヘルツ光学デバイスに応用することを目的としている。昨年度までに層状K0.2RuO2.1*nH2Oから誘導した酸化ルテニウム(K-RuO2)ナノシートを110層積層させた薄膜のテラヘルツ領域におけるインピーダンスを測定し,テラヘルツ領域において比較的高い導電率を示すことを見出した。本年度は,比較的導電率が高いK-RuO2ナノシートに注目し,その電気伝導特性を詳細に調べるため,温度依存性の測定を行った。そのために,試料の温度を変化させることができる装置を構築し,それをテラヘルツ時間領域分光装置に導入することによりナノシートの温度変化によるインピーダンスの変化を測定した。その結果,温度変化に対してK-RuO2ナノシートのインピーダンスはあまり変化しない様子が観測された。通常の金属では低温になるに従ってフォノン散乱が減少し,電気抵抗が下がるのが一般的であるが,今回の結果はその傾向と異なる。そのような温度特性を示す原因は,今後解明する必要がある。さらに本年度は,K-RuO2の吸収率の評価を行った。K-RuO2ナノシートの透過及び反射特性を測定し,それらの結果から吸収率を見積もった結果,基板の両面にK-RuO2(10層)ナノシートを成膜した試料において,入射テラヘルツ波に対して30%程度のパワーが吸収されていることがわかった。テラヘルツ波の波長は300ミクロン(1THzにおいて)であるのに対して,両面のK-RuO2ナノシートをあわせた厚みは20nm程度である。このように波長に対して非常に薄い領域にテラヘルツ波を吸収させることができる特性は,テラヘルツ領域の薄膜吸収体として応用することができると考えられる。4種類の導電性ナノシート(K-RuO2,Na-RuO2,K-IrO2,還元型酸化グラフェン)のTHz領域における電磁応答特性を調べ,新規THz光学デバイスへの応用性を検討した。THz領域における透過率を測定し,シートインピーダンスを算出した結果,K-RuO2はTHz領域において比較的高い導電性を示すことが示された。K-RuO2ナノシート膜は波長に対して非常に薄い領域にTHz波を吸収させることができるため,THz領域の薄膜吸収体として応用が期待できる。一方,メタマテリアルへの応用について検討した結果,導電率が最も高いK-RuO2ナノシートでもメタマテリアル構造には適していないことが示唆された。本研究は,ナノシートを用いてテラヘルツ領域における変調デバイスを作製することを目的としている。その実現のためには,外場(電場や光)によるナノシートのテラヘルツ応答の変化が必要である。そこで,本年度の研究において,3ML-RuO2ns/quartzに800nm及び400nmの可視光を照射し,ポンプープローブ法によってテラヘルツの応答特性の変化を調べた。しかしながら,測定精度範囲内でテラヘルツの応答特性の変化は見られなかった。そのため,メタマテリアル光学素子の具体的な設計検討及び作製には至っていない。 | KAKENHI-PROJECT-26610084 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26610084 |
Porphyromonas gingivalisにおけるへミン結合性外膜蛋白の役割及びその輸送機構の解明 | Porphyromonas gingivalisにおけるHBP35蛋白の性状解析:局在化、チオレドキシン活性、ヘム利用の役割Porphyromonas gingivalisにおけるHBP35蛋白の性状解析:局在化、チオレドキシン活性、ヘム利用の役割成人性歯周炎の主要病原細菌として、Porphyromonas gingivalisが知られている。我々は本菌の主たる病原因子として、強力な蛋白分解酵素であるジンジパインの解析を行ってきた。またジンジパインが外膜表面で局在化する分子機構についても解析中であり、ジンジパインが外膜に輸送される為には、PorT蛋白が必須であること、また外膜上で適切にアンカーされるためにはPorR蛋白が必須であることを報告してきた。近年、ジンジパインのC-terminaldomain(80アミノ酸)は高度に保存されており、輸送と局在化の両方に寄与していると報告されている。その報告はジンジパインに含まれるRgpB分子の解析から明らかにされている。しかしながら、RgpB分子以外のC-terminal domainを有する分子についての解析は未だない。また、本菌は発育素としてヘムを要求する。我々は本菌のヘムの取込み機構についても解析を進めており、C-terminal domainを有しておりまた組換え蛋白がヘミン結合性を有するHBP35蛋白について解析を行い以下の知見を得た。2. hbp35転写産物より、40-, 29-, 27-kDaの翻訳産物を産生する。3. 29-, 27-kDa分子は主に細胞質内に局在する。一方、40-kDa分子はPorT依存性に外膜に輸送され、PorR依存性のシステムで外膜に局在化される。上記の知見より、RgpB分子以外のC-terminal domainも同様な輸送・局在化機構を有することが予想される。C-terminal domainを有する分子は病原因子と関連する事から、PorTなどの輸送分子は本菌の制圧を目標とした場合の標的として、よい候補となると期待される。前年度、抗HBP35抗体はDiffuse 50-90 kDa, 40-kDa, 27-kDa蛋白を検出し、そのうち、27-kDa蛋白は135番目のメチオニンから開始されること、また、hbp35遺伝子はmonocistronicに1.1kbの転写産物を産生すること、さらに菌体分画解析より、27-kDa蛋白は細胞質内にDiffuse 50-90 kDaは外膜に40-kDaは全ての画分に局在し、Diffuse 50-90 kDaはPorT依存性の輸送機構で外膜に輸送され、PorR依存性に糖鎖の修飾が起きることを明らかにしていた。本年度、組換え蛋白を調製し、40-kDa、27-kDa蛋白は共にヘミン結合性があること、組換え40-kDa蛋白はチオレドキシン活性を有し、活性部位の48番目と51番目のシステイン依存性であることを確認した。また、野生株、変異株および相補株を作製し、ヘミン制限液体培地による増殖抑制が相補株で部分的に相補されたことから、HBP35蛋白はヘムの利用、獲得に関与していると示唆された。一方、HBP35蛋白が抗酸化ストレス因子としての機能を担っているという直接的な結果は得られなかった。次に、CTDの最後の5個のアミノ酸領域を欠失する蛋白を発現する変異株を作製し、その株では、Diffuse bandsは検出されず、輸送の途中で蛋白分解が起こり、およそ30-kDaの分子が検出された。このことは、CTDは輸送シグナルであると示唆された。今後、CTDを直接認識する分子を同定することで病原性を減弱化させるような開発が期待される。 | KAKENHI-PROJECT-20791341 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20791341 |
金属ガラスの電子線イメージング | 本研究では金属ガラスの構造ゆらぎに関連した中距離秩序構造を明らかにするため、透過電子顕微鏡を用いたイメージング技術の検討を行った。具体的には、極小の集束絞りを使って電子線を0.4nm以下に絞り、その電子線を走査することにより金属ガラスの各局所領域からの電子回折パターンを取得した。得られたデータを解析することによって中範囲秩序領域の広がり、形状、構造の特徴などが明らかとなった。本研究では金属ガラスの構造ゆらぎに関連した中距離秩序構造を明らかにするため、透過電子顕微鏡を用いたイメージング技術の検討を行った。具体的には、極小の集束絞りを使って電子線を0.4nm以下に絞り、その電子線を走査することにより金属ガラスの各局所領域からの電子回折パターンを取得した。得られたデータを解析することによって中範囲秩序領域の広がり、形状、構造の特徴などが明らかとなった。本研究の目的は、金属ガラスの原子構造マッピング法を開発することであり、今年度は特にオングストロームサイズの電子線を用いたディフラクションマッピングに焦点を置き、研究を行った。従来、ガラス構造の解析にはX線・中性子線回折法などの平均構造解析の手法が用いられてきたが、実際のガラス構造を明らかにするには局所構造の情報も必要であると考えられる。本研究では、オングストロームスケールの局所回折をマッピングすることにより、局所構造の空間分布を検討し、局所情報とマクロ情報を繋ぐことを試みている。具体的には、Zr基金属ガラス試料の電子顕微鏡用薄片を用意し、球面収差補正器と極小集束絞りを備えた走査型透過電子顕微鏡により、連続するオングストロームスケール領域(34Å)からの電子回折の撮影を試みた。本年度は主に撮影条件の最適化に焦点を絞り研究を行い、最終的には2Åステップの2次元電子回折マップを得ることができた。しかし試料ドリフトの問題が十分に解決できていないため、現段階では比較的狭い領域でのマッピングのみ可能である。得られたマップから、観察した金属ガラス中にはサイズ1nm以下の規則領域が多く存在することが明らかとなった。このような情報は平均構造情報から得ることは難しく、ガラス構造を包括的に理解するために有益なものであると考えられる。今後はより精度の高いマップの取得や、他の合金系への適用を検討していく予定である。本研究の目的は、金属ガラスの原子構造マッピング法を開発することであり、今年度も昨年度に引き続き、オングストロームサイズの電子線を用いたディフラクションマッピングに焦点を置いた研究を行った。従来、ガラス構造の解析にはX線・中性子線回折法などの平均構造解析の手法が用いられてきたが、実際のガラス構造を明らかにするには局所構造の情報も必要であると考えられる。本研究では、オングストロームスケールの局所回折をマッピングすることにより、局所構造の空間分布を検討し、局所情報とマクロ情報を繋ぐことを試みている。昨年度の課題であったデータ取得時のドリフトの問題など、概ね解決できたため、今年度は比較的広い領域から良好な電子回折マッピングを取得できるようになった。具体的なサイズはおおよそ10nm×10nmである。この手法をバルク金属ガラス試料に応用するため、現時点で最高のガラス形成能を示すPd-Cu-Ni-P金属ガラス試料を入手し、電子回折マッピングの取得を試みた。マップ中には同方向の回折波を生じさせる1nm程度の領域が多く観察された。このような領域の構造を理解するため、第一原理分子動力学法を用いて作製した構造モデルとの比較検討を行った。分子動力学モデルから抜き出した原子数およそ50個の配列から得られた一連の電子回折パターンは、実験により得られたものと良い一致を示した。本手法によって、これまでより長範囲の局所構造について議論することが可能となってきた。金属ガラスのような非晶質物質の構造解析は、これまで試料全体からの回折曲線等を測定して得られる平均的な構造情報を使って行われてきた。しかし、平均情報だけでは非晶質構造を理解するには十分でなく、局所的な構造データを相補的に組み合わせることが必要である。本研究の目的は、金属ガラス試料に対してオングストロームサイズの電子線を用いた電子回折マップの撮影を行い、1nm以上に広がる中範囲秩序構造の特徴を明らかにすることである。これまでに金属ガラスの10nm四方程度の領域から0.2nmのステップで局所電子回折を1000-2000枚程度撮影することに成功しており、26年度はこれまでに得られた実験データを再現する中範囲秩序構造のモデル構築を試みた。しかし、大量に撮影された電子回折パターンのほとんどは方位のずれのため、対称的なパターンになっておらず、ある一部分からしかモデル構築に適したデータが得られないこともわかった。また、この電子回折の方法では元素種の区別がつかないため、短範囲の局所構造は第一原理分子動力学法で得られたものを使用する必要があった。このような困難さはあるものの、各領域から得られる電子回折パターンを再現する局所構造を見出し、それらを組み合わせることで全体のデータと矛盾のない中範囲秩序構造を構築することができた。今回行ったモデリングは実空間での位置情報を含んでいるため、局所構造の空間的な広がりが正確に反映されており、より詳細な金属ガラスの構造的特徴を捉えられる手法であると思われる。26年度が最終年度であるため、記入しない。材料科学26年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-24360260 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24360260 |
金属ガラスの電子線イメージング | 本年度は、ほぼ当初の計画通り、ディフラクションマッピングの適切な実験条件の探索を行い、実際にある程度信頼できるマッピングを得ることができたため。昨年度の課題であった技術的な問題がクリアでき、良好な電子回折マップを広範囲から得られるようになったため。26年度が最終年度であるため、記入しない。当初の予定通り、次年度は深さ分解STEMマッピング法の開発へ移行する。これと並行して、本年度取り組んだディフラクションマッピングの精度の向上にも注力する予定である。次年度は、電子回折マッピングをもとにした構造モデリングを引き続き行う。それと並行して深さ分解STEMマッピング法の開発も進める予定である。26年度が最終年度であるため、記入しない。本年度の使用額が予定をわずかに下回ったため、翌年度に充当することとなった。大幅な予定の変更はないが、翌年度の研究費と合わせて、小額物品費、消耗品費、および旅費に充てる予定である。端数の106円の用途がなく使いきれなかったため。次年度予算と合わせて購入希望物品に使用する。 | KAKENHI-PROJECT-24360260 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24360260 |
水中ランニングの運動処方に関する学際的研究 | 本研究では、種々の歩数条件下および最大運動条件下での、水中および陸上ランニング時の生理学的応答、生体力学的応答および主観的運動強度に関する研究を実施した。その結果、水中ランニング時の歩数の変化は、下肢筋活動動態(大腿直筋、大腿二頭筋、前脛骨筋および腓腹筋)に影響を及ぼす可能性が示唆された。さらに、運動負荷試験を実施する環境(水中および陸上)の変化は、最大運動時の生理学的応答(酸素摂取量や心拍応答)および生体力学的応答(下肢筋活動および歩数)に影響を及ぼす可能性が示唆された。平成25年度には、水中および陸上ランニング時の生体応答に関する以下の研究を行った。本研究の目的は、最大運動条件下での、水中ランニング時のバイオメカニクス的応答、生理学的応答および主観的運動強度(Rating of Perceived Exertion (RPE))を、陸上ランニング時のそれらと比較検討することであった。健常成人11名に対して、プールおよび陸上トレッドミルにおいて、運動負荷試験を実施した。各被験者における最大運動条件下での水中および陸上ランニング時の生理学的応答(酸素摂取量および心拍数)、RPE、バイオメカニクス的応答(筋活動および関節角度)、速度および歩数を測定した。筋活動測定での被験筋は、右側の大腿直筋、大腿二頭筋、前脛骨筋および腓腹筋の4筋であった。また、運動試験実施前に、各筋の最大随意収縮の測定を実施した。その結果、最大運動条件下での、水中ランニング時の酸素摂取量、心拍数、下肢筋活動量および歩数は、陸上ランニング時と比較して、有意に低かった。しかしながら、最大運動時でのRPEには、水中および陸上ランニング間で、有意差はみられなかった。これらのことから、運動負荷試験を実施する環境(水中や陸上)は、最大運動時の生理学的応答およびバイオメカニクス的応答に影響を及ぼす可能性が示唆された。本研究結果は、現在、詳細な解析を進めており、学術論文として国際誌に投稿準備中である。また、平成25年度には、平成24年度に実施した、種々の歩数条件下での、水中および陸上ランニング時のバイオメカニクス的応答およびRPEに関する研究論文の執筆も行った。本研究成果は、既に国際誌に投稿中である。本研究では、種々の歩数条件下および最大運動条件下での、水中および陸上ランニング時の生理学的応答、生体力学的応答および主観的運動強度に関する研究を実施した。その結果、水中ランニング時の歩数の変化は、下肢筋活動動態(大腿直筋、大腿二頭筋、前脛骨筋および腓腹筋)に影響を及ぼす可能性が示唆された。さらに、運動負荷試験を実施する環境(水中および陸上)の変化は、最大運動時の生理学的応答(酸素摂取量や心拍応答)および生体力学的応答(下肢筋活動および歩数)に影響を及ぼす可能性が示唆された。平成24年度には、水中ランニングの運動処方に関する以下の研究を行った。本研究の目的は、種々の歩数条件下での、水中ランニング時の筋活動を、陸上ランニング時のそれと比較検討することであった。健常成人11名に対して、プールおよび陸上トレッドミルにおいて運動試験(ランニング)を実施した。はじめに、被験者の自己選択速度・ペースでの水中および陸上ランニング時の歩数(PSF)を測定した。得られたPSF値に基づいて、種々の歩数条件下(PSF、PSF ±5%、10%および15%)での各運動中の筋活動を測定した。被験筋は、右側の大腿直筋、大腿二頭筋、前脛骨筋および腓腹筋の4筋であり、運動試験実施前に各筋の最大随意収縮の測定を実施した。その結果、水中ランニング時のPSFは、陸上ランニング時よりも低かった。また、水中におけるPSFでのランニング時の下肢筋活動量は、陸上におけるPSFでのランニング時と比較して、低い傾向がみられた。さらに、水中および陸上ランニング時の歩数の変化は、下肢筋活動量に影響を及ぼす可能性が示唆された。本研究結果は、現在、詳細な解析を進めており、学術論文として国際誌に投稿準備中である。また、平成24年度には、同一の歩数条件下での、水中ランニングおよび陸上ランニング時の筋活動に関する研究論文の執筆も行った。本研究成果は、Gait and Posture誌に掲載された。さらに、平成24年度には、平成23年度に実施した同一の生理学的条件下(同一の心拍数)での、水中ランニングおよび陸上ランニング時の筋活動動態に着目した研究のデータ解析および論文の執筆も行った。本研究成果は、既に、International Journal of Sports Medicine誌に掲載が受理されている。本年度に実施した研究結果に関しては、データ解析が完了しつつあり、既に、学術論文として国際誌への投稿準備を進めているため。今後も、継続して、水中ランニングの運動処方の開発に寄与するための学術的研究を実施する。該当なし | KAKENHI-PROJECT-24700758 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24700758 |
卵膜ライシンの作用機構およびその種特異性について | バテイラの卵膜ライシンについては,全アミノ酸配列およびそれより推定された二次構造,さらに化学修飾法によって決められた活性部位が明らかにされている.これに加えて,この卵膜ライシンの卵膜における結合部位の構造の決定を行なうために次のような実験を試みた.アルカリ分解によって可溶化された卵膜はライシンの卵膜に対する溶解反応を完全に阻害する.この阻害活性を指標にして,この可溶化した卵膜をStaphylococcus aureus V8プロテアーゼ・キモトリプシン消化とトリフロロメタンスルホン酸での脱糖処理によって細分画した結果, N-アセチルグルコサミンと比較的に疎水性のアミノ酸を多く含む分子量90,000の糖蛋白分画が得られた.プロナーゼ消化とグリコペプチダーゼA消化によって,この分画の阻害活性が失われるので,この結合部位にはN-グリコシド結合によるN-アセチルグルコサミンとアスパラギンを含む特異的なアミノ酸配列が必須と思われる.更に細分画したのち,溶解阻害活性をもつ最小の分画を決めてこの一次構造を明らかにする予定である.又,ライシンの抗体を用いて,プロティンA-ゴールド法により免疫細胞組織化学的に卵膜上のライシンの結合部位を決める.これらのデータを総合して,バテイラのライシンの作用機構が分子レベルでどのように考えられるかを検討する予定である.軟体動物の卵膜ライシンは、受精の際に精子の先体反応に伴って溶出されて卵膜を非酵素的に溶解する。最もよく研究の進んでいるバティラの卵膜ライシンは、我々の手で全アミノ酸配列を決定され、活性部位も含めた立体的配置も明らかにされている。卵膜上のライシンの結合部位を明らかにする事でライシンの卵膜溶解機構を分子レベルで明らかにしようとして、次のような実験を行なった。バテイラライシンは、卵膜と化学量論的に反応し、不可逆的に結合する事が知られているので、この性質を利用して卵膜のライシン結合活性とした。バテイラ卵膜は、アルカリ分解する事によって可溶化される。この可溶化された卵膜は元の卵膜と同様にライシンと不可逆的に結合する能力をもつ。この可溶化された卵膜をプロナーゼ消化するとこの結合活性は消失し、Staphylococcus aureus V8プロテアーゼ消化、過沃素酸々化及びアーモンドのGlycopeptidase消化ではこの活性は保持された事から、卵膜のタンパク部分がライシン結合部位である可能性が高い。V8プロテアーゼ処理した卵膜を細分画し、それぞれの分画が結合活性を持つか否かを検べ、このうちの活性を持つ分画をプロナーゼ処理する事でそのペプチド部分のちがいを明らかにしたいと思っている。卵膜中の糖部分も何らかの働きをしているように思われるので、これについても詳しくデータを検討中である。バテイラの卵膜ライシンについては,全アミノ酸配列およびそれより推定された二次構造,さらに化学修飾法によって決められた活性部位が明らかにされている.これに加えて,この卵膜ライシンの卵膜における結合部位の構造の決定を行なうために次のような実験を試みた.アルカリ分解によって可溶化された卵膜はライシンの卵膜に対する溶解反応を完全に阻害する.この阻害活性を指標にして,この可溶化した卵膜をStaphylococcus aureus V8プロテアーゼ・キモトリプシン消化とトリフロロメタンスルホン酸での脱糖処理によって細分画した結果, N-アセチルグルコサミンと比較的に疎水性のアミノ酸を多く含む分子量90,000の糖蛋白分画が得られた.プロナーゼ消化とグリコペプチダーゼA消化によって,この分画の阻害活性が失われるので,この結合部位にはN-グリコシド結合によるN-アセチルグルコサミンとアスパラギンを含む特異的なアミノ酸配列が必須と思われる.更に細分画したのち,溶解阻害活性をもつ最小の分画を決めてこの一次構造を明らかにする予定である.又,ライシンの抗体を用いて,プロティンA-ゴールド法により免疫細胞組織化学的に卵膜上のライシンの結合部位を決める.これらのデータを総合して,バテイラのライシンの作用機構が分子レベルでどのように考えられるかを検討する予定である. | KAKENHI-PROJECT-61540527 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61540527 |
メタゲノム解析を応用したインプラント周囲炎の病態解明 | 細菌叢(細菌の多種多様な集合)の解析はすべての細菌、特に培養することが出来ない細菌の検出および遺伝子情報を入手することが可能であり、その菌種組成および細菌叢機能解析を行うことが出来る非常に有効な方法である。したがって、細菌が原因である感染症の一つであるインプラント周囲炎の病態を明らかにするため、インプラント周囲の細菌叢の解析を行った。しかし、本研究においてインプラント周囲炎に特徴的な細菌の組成及び機能を発見するには至らなかった。口腔内細菌叢(マイクロバイオーム)のシークエンス解析はすべての細菌、特に培養することが出来ない細菌の検出およびゲノム情報を入手することが可能であり、その菌種組成および細菌叢機能解析を行うことが出来る非常に有効な方法である。インプラント周囲炎は細菌が原因である感染症の一つであり、その病態や治療法は明らかとなっていない。したがって、本研究の目的は健常成人におけるマイクロバイオームのシークエンス解析を行い、その菌種組成および細菌叢機能を明らかにすることである。さらに、それらをインプラント周囲炎の罹患者におけるマイクロバイオームの解析結果と比較して特徴を明らかにし、その病態を解明することである。H26年度は正常歯周組織および正常インプラント周囲組織のマイクロバイオーム解析を行うことを目的として研究を行った。被験者として健常成人10名をそれぞれ選択し、歯周組織もしくはインプラント周囲組織からプラークを回収し、核酸の抽出を行った。その後のマイクロバイオームの解析は未だ途中であり、結果は出ていない。口腔内細菌叢(マイクロバイオーム)のシークエンス解析は全ての細菌、特に培養することの出来ない細菌の検出及びゲノム情報を入手することが可能であり、その菌種組成及び細菌叢機能解析を行うことが出来る非常に有効な方法である。インプラント周囲炎は細菌が原因である感染症の一つであり、その病態や治療法は未だ不明な点が多く存在する。したがって、本研究の目的は健常成人におけるマイクロバイオームのシークエンス解析を行い、その菌種組成及び細菌叢機能を明らかにすることである。さらに、それらをインプラント周囲炎の罹患者におけるマイクロバイオームの解析結果と比較して特徴を明らかにし、その病態を解明することである。H27年度はH26年度に引き続き、正常歯周組織及び正常インプラント周囲組織のマイクロバイオーム解析及びインプラント周囲炎組織のマイクロバイオーム解析を行うことを目的として研究を行った。被験者としてインプラント周囲炎患者8名を選択し、インプラント周囲組織からプラークを回収し、核酸の抽出を行った。その後のマイクロバイオームの解析は未だ出来ておらず、結果は出ていない。H26年度に予定していたサンプルの回収は概ね終了したが、次世代シークエンサーの使用が困難であり、マイクロバイオームの解析結果がうまく得られていないため。申請者は口腔内細菌叢(マイクロバイオーム)に関連したインプラント周囲炎の病態解明を目指している。マイクロバイオームのシークエンス解析はすべての細菌、特に培養することが出来ない細菌の検出およびゲノム情報を入手することが可能であり、その菌種組成および細菌叢機能解析を行うことが出来る非常に有効な方法である。インプラント周囲炎は細菌が原因である感染症の一つであり、その病態や治療法は明らかとなっていない。したがって、本研究の目的は健常成人におけるマイクロバイオームのシークエンス解析を行い、その菌種組成および細菌叢機能を明らかにすることである。さらに、それらをインプラント周囲炎の罹患者におけるマイクロバイオームの解析結果と比較して特徴を明らかにし、その病態を解明することである。米国国立衛生研究所が設立した研究者らからなるコンソーシアムにより、健常者の正常微生物群の構成が初めて明らかにされ、ほぼ全てのヒトは、病原性をもつ微生物を保持しているが、健常者において病原微生物は疾患を引き起こすことはなく、単に宿主に生存するマイクロバイオームと共存するだけであることが明らかになった。本研究では、患者のプラークを採取して核酸を採取し,菌種組成解析と細菌叢機能解析から、下記のことを明らかにできた。1健常な歯周組織およびインプラント周囲組織のマイクロバイオームの分析を行って、菌種組成および細菌叢機能の検索を行った。2炎症のあるインプラント周囲組織のマイクロバイオームの分析を行い、菌種組成および細菌叢機能を検索した。細菌叢(細菌の多種多様な集合)の解析はすべての細菌、特に培養することが出来ない細菌の検出および遺伝子情報を入手することが可能であり、その菌種組成および細菌叢機能解析を行うことが出来る非常に有効な方法である。したがって、細菌が原因である感染症の一つであるインプラント周囲炎の病態を明らかにするため、インプラント周囲の細菌叢の解析を行った。しかし、本研究においてインプラント周囲炎に特徴的な細菌の組成及び機能を発見するには至らなかった。H26年度に予定していたサンプルの回収は概ね終了したが、次世代シークエンサーの使用が難しく、未だマイクロバイオームの解析がうまくできていないため。当初の計画通りサンプルの回収を行うと同時に、次世代シークエンサーの使用方法の習熟に努める。インプラント周囲の侵出液中に含まれるタンパク質についても分析を行う。補綴・理工系歯学当初の計画通りサンプルの回収を行うと同時に、次世代シークエンサーの使用方法の習熟に努め、研究を進めていく。計画通り、使用したが少額の残金が発生したため次世代シークエンサーに関わる経費をあまり使用しなかったため。従来の計画通り使用するH26年度に使用できなかった経費はH27年度における次世代シークエンサーの使用に関わる経費に使用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-26462929 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26462929 |
敗血症性脳症の非侵襲計測と分子病態の統合解析による積極的治療介入の再考察 | 本研究の目的は救急医療の現場において重症敗血症の生存者におこる敗血症性脳症に焦点を当てる。有効な生体指標を見出し、敗血症性脳症の積極的治療介入方法を探索することにより、従来の対症療法を主とした治療法を再考察する。本年度は、当初の研究計画に基づき、敗血症性脳症の網羅的統合解析から敗血症性脳症の分子病態解明に役立つ新たな生体指標を見出した。具体的には下記の実験を行った。マウスを正常群、病態群、治療介入群にわけ、脳の海馬を摘出した。脳の海馬は敗血症患者がしばしば呈するせん妄症状において変化が顕著という先行研究がある。本研究では病態誘導、治療介入は炎症誘発物質を腹腔内投与し24時間後に治療介入を加えた。各々の標本群からタンパク質を抽出し、溶解液に懸濁させる。各標本の基準タンパク質量をそろえたのち、脱塩処理、フィルター処理等を経て質量分析計(LC-MS;サーモサイエンティフィック社製、QExclusive)を用いて病態および治療介入により顕著にタンパク質量が変動する分子群を測定した。その結果、2014種類の変動するタンパク質を見出した。標準タンパク質によりデータをノーマライズした結果、98種類のタンパク質群が病態誘導によりその発現量を顕著に変化させることがわかった。またそれらのタンパク質群は治療介入により正常群と同じレベルに回復することも分かった。98種類のタンパク質群は、それぞれ脳のイオンチャネル制御、可塑性の制御、オートファジー制御などの分子群を含んでいた。さらに、これらのタンパク質群の中にはこれまでの研究で着目されなかった多くのタンパク質群を含み、新しい生体指標が見出されることが期待される。以上の測定および解析は理化学研究所脳神経科学センター(CBS)のRRDユニットの支援を受けて行った。最後に本年度の研究に関わる報告は原著論文3報、総説1報、学会発表2報を国際誌等に報告した。本年度は研究課題2年目である。当初の研究計画では敗血症性モデルマウスを用い、超音波などによる迷走神経刺激により脳症の治療介入効果を検討し、さらにmRNAあるいはタンパク質等の網羅的分子機能解析から新しい治療介入に関わる生体機能分子を探索するというものであった。本年度は、まず治療介入効果を炎症時に体内で上昇する炎症性サイトカイン(インターロイキン1,インターロイキン6など)の数値変化から確認した。次に、生体機能分子は最終的にタンパク質の異常という形で脳機能障害を引き起こすと仮説を立て、その仮説を検証するため、タンパク質分子の網羅的機能解析を行った。研究実績の概要の欄でも述べたが、最終的に98種類の新しい機能候補分子が見出され、現在、共同研究者とともに議論を重ねつつ、最も有効な機能分子群を選定する段階まで来ている。以上の状況を鑑みるに現在までの進捗状況は極めて順調であるといえる。これまでの研究により、非侵襲による生体の観察手段、治療介入の有用性、また治療加入による生体機能分子群がわかりつつある。今後はこれらの研究成果に基づき、3つの研究構想を考えている。一つ目は非侵襲計測の適用可能性である。しかし、これについては現段階ではこれ以上の進展は難しいと言わざるをえない。その理由は、現時点では空間解像度やシグナルノイズ比の問題からこれ以上の計測精度を上げることが難しいからである。二つ目は、治療介入の有用性である。本治療介入方法は、迷走神経を非侵襲で刺激し、過剰な炎症反応を抑えつつ、機能回復を測る手段を重層化していくというものである。すでに抗炎症効果は見出されているが、最終的にヒトの患者さんに応用することを想定することを鑑みるに、様々な角度から安全性を検討する必要があると考える。例えば、迷走神経反射による徐脈がおこらないかどうかなどを心電図などで慎重に検討する必要があると考えており、本年度はそれらを含めて検討を重ねていく予定である。最後に、3つ目であるが、敗血症性脳症に関わる新しい機能分子を(もし可能であれば)、活性制御し、実際に治療介入効果が同等にあるのかどうかを検討していく。仮にもし現時点で(最適な薬剤がないなどの理由により)難しいのであれば、既知の炎症性分子を可視化し、脳または腹腔内の免疫細胞において治療介入前後で炎症マーカーが実際に変化しているかどうかの検討を重ねていく。腹腔内を想定したのは、敗血症モデルマウスの原発巣は腹腔内にあることが多く、そこからの多種多様な免疫細胞群の動態が病態を引き起こしていると考えられているためである。このように、今後の推進方策としては当初の研究計画書で示した通り、「転んでもただではおきない」を念頭に置き、多種多様な研究手法を組み合わせて相乗的な研究成果を実現していくつもりである。H29年度は、研究計画の最初の事業年度である。そのため、前年度の研究準備状況に基づき、まず第一に敗血症性脳症の病態をマウスで再現し、実験系において再現できるかどうかを検証し、その後の研究の進展が可能かどうかを検討した。一つ目としては、研究計画書にも記載された通り、敗血症性脳症に関わる病態の可視化をin vivoで可能かどうか調べた。その結果、敗血症を誘導し、20hrを経過したマウスにおいて、ELISA法にて測定したところ、炎症のマーカとなるインターロイキン1、またインターロイキン6が増加し、敗血症が起きており、その経時的変化から敗血症性脳症が起きていることが考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-17H04364 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H04364 |
敗血症性脳症の非侵襲計測と分子病態の統合解析による積極的治療介入の再考察 | 次に、当初の研究計画書に基づき、近赤外領域の蛍光発光を示す量子ドットを病態マウス尻尾の静脈より注入し、脳血管の状態を可視化した。その結果、敗血症脳症時に起こると考えられる播種性血管内凝固症候群(DIC)が観測され、血栓様の構造に関して、顕著な増加が見出された。以上のことから、本実験系は過去の結果を十分に再現しており、この後の研究計画の進捗に有意な結果であることが示唆された。そこで二つ目の実験を行った。分子病態の網羅的な解析からヒトの病態を反映した敗血症性脳症の新しいバイオマーカーの探索を行うべく、ヒト人工性多能性幹細胞(human ips cell)を用い、リポポリサッカライド(LPS)を投与群と非投与群を対象にmRNAの網羅的解析を行った。しかし、得られた結果は当初の予想に反し、炎症以外の未知のマーカーが顕著に変化し、解釈が難しい状態である。本結果については、次年度以降、別の系を導入し、検討を加える予定である。当初の研究計画書に書かれた通り、本年度においては当初の研究計画が有効かどうかを検証し、さらに分子病態の可視化につながる検討を行う予定であった。しかし、本年度は予想外のことが多く重なり、研究代表者が所属先を理研から大阪大学に変更すること、また、研究分担者の大幅変更を余儀なくされたため、一時的に研究の進展が見込めないと予想された。しかし、結果としては、二つの大きな実験系の検討を行うことができた。そのため、自己点検としてはおおむね順調に進展していると判断した。本研究の目的は救急医療の現場において重症敗血症の生存者におこる敗血症性脳症に焦点を当てる。有効な生体指標を見出し、敗血症性脳症の積極的治療介入方法を探索することにより、従来の対症療法を主とした治療法を再考察する。本年度は、当初の研究計画に基づき、敗血症性脳症の網羅的統合解析から敗血症性脳症の分子病態解明に役立つ新たな生体指標を見出した。具体的には下記の実験を行った。マウスを正常群、病態群、治療介入群にわけ、脳の海馬を摘出した。脳の海馬は敗血症患者がしばしば呈するせん妄症状において変化が顕著という先行研究がある。本研究では病態誘導、治療介入は炎症誘発物質を腹腔内投与し24時間後に治療介入を加えた。各々の標本群からタンパク質を抽出し、溶解液に懸濁させる。各標本の基準タンパク質量をそろえたのち、脱塩処理、フィルター処理等を経て質量分析計(LC-MS;サーモサイエンティフィック社製、QExclusive)を用いて病態および治療介入により顕著にタンパク質量が変動する分子群を測定した。その結果、2014種類の変動するタンパク質を見出した。標準タンパク質によりデータをノーマライズした結果、98種類のタンパク質群が病態誘導によりその発現量を顕著に変化させることがわかった。またそれらのタンパク質群は治療介入により正常群と同じレベルに回復することも分かった。98種類のタンパク質群は、それぞれ脳のイオンチャネル制御、可塑性の制御、オートファジー制御などの分子群を含んでいた。さらに、これらのタンパク質群の中にはこれまでの研究で着目されなかった多くのタンパク質群を含み、新しい生体指標が見出されることが期待される。 | KAKENHI-PROJECT-17H04364 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H04364 |
線虫C.elegansの嗅覚学習をモデルとした忘却の制御メカニズム | 動物の神経系では、入手した情報の重要性に応じて記憶の形成・保持・忘却が適切に制御されている。必要な記憶を保持する一方で、不必要な記憶を忘れることは、常に変化する環境に適応するためのみならず、不必要な記憶の蓄積により必要な記憶の想起が阻害されることを防ぐためにも重要である。本研究では線虫C.elegansの嗅覚学習を用いて、忘却の制御メカニズムの解析を行った。カルシウムイメージングや行動解析により、シナプス放出に関わる分子が神経回路上で嗅覚学習の忘却を制御していることが明らかになった。線虫C.elegansを用い「記憶の忘却」のメカニズム解明に向けて、SNT-3が神経回路上で忘却を制御する仕組み、特に感覚神経と介在神経の間でやりとりされる神経伝達に注目し、SNT-3による忘却制御に関わる神経回路を明らかにすることを目的としている。野生型個体を用いたカルシウムイメージングでは、ブタノンエンハンスメントにより誘起されたAWC感覚神経の強い感覚応答が記憶を忘れさせた後も維持されていたことから、ブタノンを感知するAWC感覚神経より下流の神経で可塑的な変化があると予想された。また、snt-3変異体ではブタノンエンハンスメントの記憶が野生型に比べ長く続くが、これが感覚応答の変化によるものかをカルシウムイメージングにより解析した。その結果、snt-3変異体でもAWC感覚神経の感覚応答は野生型と同様の傾向を示すことが分かった。さらに、ブタノンエンハンスメントの記憶が消去されない条件下で飼育した線虫の感覚応答を解析したところ、記憶の有無に関わらずAWC感覚神経の感覚応答に違いは認められなかった。このように、行動レベルと感覚応答レベルで異なる結果が得られており、ブタノンを感知するAWC感覚神経より下流の神経で可塑的な変化があることが強く示唆された。現在、ブタノンエンハンスメントの記憶を制御する神経回路を明らかにするため、AWC感覚神経の下流にある介在神経についてカルシウムイメージングを行っている。カルシウムプローブの種類、匂い物質の濃度や刺激時間等を変化させ最適なイメージングの条件設定を行い、忘却が起きた際に可塑的な変化を示す神経細胞の同定を試みている。また、人為的に介在神経の神経活動を操作した遺伝子導入個体を作成し、その行動測定を行った。神経活動の操作が記憶の忘却に与える影響を解析し、ブタノンエンハンスメントの忘却に関わる介在神経の候補を推測している。線虫C.elegansを用い「記憶の忘却」のメカニズム解明に向けて、SNT-3が神経回路上で忘却を制御する仕組み、特に感覚神経と介在神経の間でやりとりされる神経伝達に注目し、SNT-3による忘却制御に関わる神経回路を明らかにすることを目的としている。カルシウムイメージングでは、ブタノンエンハンスメントにより誘起されたAWC感覚神経の強い感覚応答が記憶を忘れさせた後も維持されていたことから、ブタノンを感知するAWC感覚神経より下流の神経で可塑的な変化があると予想された。また、snt-3変異体ではブタノンエンハンスメントの記憶が野生型に比べ長く続くが、これが感覚応答の変化によるものかをカルシウムイメージングにより解析した。その結果、snt-3変異体でもAWC感覚神経の感覚応答は野生型と同様の傾向を示すことが分かった。さらに、ブタノンエンハンスメントの記憶が消去されない条件下で飼育した線虫の感覚応答を解析したところ、記憶の有無に関わらずAWC感覚神経の感覚応答に違いは認められなかった。このように、行動レベルと感覚応答レベルで異なる結果が得られており、ブタノンを感知するAWC感覚神経より下流の神経で可塑的な変化があることが強く示唆された。本年度は、SNT-3変異体の別アリル株を用いてカルシウムイメージングを行った。その結果、これまでの結果と同様の傾向が得られ、SNT-3の忘却に対する働きが神経回路の中にあることを確かめることができた。また、細胞特異的レスキュー実験により、SNT-3が頭部神経細胞で機能することも明らかとなった。線虫C.elegansを用い「記憶の忘却」のメカニズム解明に向けて、SNT-3が神経回路上で忘却を制御する仕組み、特に感覚神経と介在神経の間でやりとりされる神経伝達に注目し、SNT-3による忘却制御に関わる神経回路を明らかにすることを目指した。カルシウムイメージングにより、AWC感覚神経下流のいくつかの介在神経で野生型とsnt-3変異体で神経応答に差が見られる場所の探索を行った。このうち、AIB介在神経においては、野生型もsnt-3変異体も同様の応答が観察された。さらに、AIB介在神経の神経活動を人為的に抑制した線虫では、snt-3変異体のように記憶が長続きする傾向があることが明らかとなった。以上より、AIB介在神経が忘却において重要な働きをすることが示唆され、より下流の神経細胞で可塑的な変化があることが予想された。ブタノンエンハンスメントの忘却には「餌シグナル」の関与が重要であることが示唆されていたため、餌の有無による感覚応答の変化をカルシウムイメージングにより解析した。その結果、snt-3変異体では餌の感知が異常になっている可能性があると考えられたが、pumping回数を指標に餌の感知の有無を解析したところ、snt-3変異体でも正常に餌を感知していることが明らかとなった。続いて、snt-3変異体が、他の行動においてもブタノンエンハンスメント記憶のように記憶が長く続くか否かを解析した。 | KAKENHI-PROJECT-25840125 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25840125 |
線虫C.elegansの嗅覚学習をモデルとした忘却の制御メカニズム | 匂い物質イソアミルアルコール、ジアセチルに対する嗅覚順応および、塩走性学習の記憶の保持時間は野生型と同様で、snt-3変異体で忘却異常は観察されなかった。これまでのところsnt-3変異体においてブタノンエンハンスメントの記憶の保持時間以外の異常は見つかっておらず、SNT-3がブタノンエンハンスメントの忘却に関わる情報処理においてユニークなシナプス放出制御を行っていることが予想された。動物の神経系では、入手した情報の重要性に応じて記憶の形成・保持・忘却が適切に制御されている。必要な記憶を保持する一方で、不必要な記憶を忘れることは、常に変化する環境に適応するためのみならず、不必要な記憶の蓄積により必要な記憶の想起が阻害されることを防ぐためにも重要である。本研究では線虫C.elegansの嗅覚学習を用いて、忘却の制御メカニズムの解析を行った。カルシウムイメージングや行動解析により、シナプス放出に関わる分子が神経回路上で嗅覚学習の忘却を制御していることが明らかになった。カルシウムイメージングと遺伝学的解析により、忘却を制御する神経回路の解析を進めている。生物学カルシウムイメージングと分子遺伝学的解析を用いて、SNT3によるブタノンエンハンスメントの忘却の制御機構を明らかにしていく。また、餌と忘却の関係性について解析を行う予定である。計画通りカルシウムイメージングと遺伝学的解析により、忘却を制御する神経細胞の同定を進めている。おおむね順調に進展していると考えている。当該年度は所属研究室にある設備を利用できたため、差額が生じた。また、育児により出張が制限されたため、旅費を使用できなかった。引き続きブタノンエンハンスメントの忘却を制御する神経回路の同定を行う。また、SNT-3が忘却過程で制御する標的分子をサプレッサースクリーニングにより探索する。新しく実験室を整備するため、顕微鏡等の設備購入を考えている。消耗品として実験動物の飼育道具や分子生物学用試薬の購入を予定している。当該年度は既に所属研究室にある装置を使用でき、消耗品のストックが十分にあったため、新たに購入する必要がなかった。また、出産育児のために実験を中断した期間があり、旅費を使用できなかった。実験サンプル数が増えるため、低温インキュベーターを購入予定である。また、消耗品として実験動物の飼育道具や分子生物用試薬の購入を予定している。 | KAKENHI-PROJECT-25840125 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25840125 |
ホルモン依存性プログラム細胞死の開発と応用 | 1研究目的本研究は、プログラム細胞死を脂溶性ホルモンにより自由にコントロールしうるシステムを作り出すこと、更にこのシステムを応用発展させることにより、全く新しい癌の遺伝子療法を確立することを目的としている。2研究成果fas抗原受容体のプログラム細胞死に必須な蛋白領域とエストロジェンホルモン受容体もしくはレチノイン酸受容体のリガンド結合領域を結合した融合蛋白質をコードする融合遺伝子を作出し、fas抗原に感受性があることが知られているL929細胞及びHeLa細胞に恒常的に発現するように導入した。得られた細胞株に、導入した融合遺伝子の受容体部分に対応するリガンド(エストラヂオール、レチノイン酸)を加えたところ、どちらの細胞においても0.1nMのエストラヂオール、10nMのレチノイン酸で処理後3時間ですべての細胞が死滅することが観察された。つまり、現時点で少なくとも培養細胞レベルにおいて脂溶性ホルモンによりプログラム細胞死を自由にコントロールしうるシステムの確立に成功した。現在、遺伝子導入したL929細胞及びHeLa細胞をヌードマウスに移植しin vivoにおいても細胞死が脂溶性ホルモンにより誘導されることを確認する実験を行っている。また、このシステムに感受性のあるヒト癌細胞株を系統的にスクリーニングしているところであり、これにより将来的に治療の標的となりうる癌の種類が特定できると考えている。さらに、in vivoの癌細胞に効率よく融合遺伝子を導入するために、レトロウイルスおよびリポゾームを用いる方法を検討している。1研究目的本研究は、プログラム細胞死を脂溶性ホルモンにより自由にコントロールしうるシステムを作り出すこと、更にこのシステムを応用発展させることにより、全く新しい癌の遺伝子療法を確立することを目的としている。2研究成果fas抗原受容体のプログラム細胞死に必須な蛋白領域とエストロジェンホルモン受容体もしくはレチノイン酸受容体のリガンド結合領域を結合した融合蛋白質をコードする融合遺伝子を作出し、fas抗原に感受性があることが知られているL929細胞及びHeLa細胞に恒常的に発現するように導入した。得られた細胞株に、導入した融合遺伝子の受容体部分に対応するリガンド(エストラヂオール、レチノイン酸)を加えたところ、どちらの細胞においても0.1nMのエストラヂオール、10nMのレチノイン酸で処理後3時間ですべての細胞が死滅することが観察された。つまり、現時点で少なくとも培養細胞レベルにおいて脂溶性ホルモンによりプログラム細胞死を自由にコントロールしうるシステムの確立に成功した。現在、遺伝子導入したL929細胞及びHeLa細胞をヌードマウスに移植しin vivoにおいても細胞死が脂溶性ホルモンにより誘導されることを確認する実験を行っている。また、このシステムに感受性のあるヒト癌細胞株を系統的にスクリーニングしているところであり、これにより将来的に治療の標的となりうる癌の種類が特定できると考えている。さらに、in vivoの癌細胞に効率よく融合遺伝子を導入するために、レトロウイルスおよびリポゾームを用いる方法を検討している。 | KAKENHI-PROJECT-05670138 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05670138 |
脂肪由来細胞を用いた腎疾患治療の開発-再生促進作用と免疫抑制作用の融合- | 我々の研究の最終ゴールは脂肪由来間葉系幹細胞(ASC=adiposetissue-derived stem/stromal cell)の再生促進作用と免疫抑制作用を融合し腎疾患に対する新たな細胞治療を開発することである。本研究はそのための基盤研究と位置づけられる。In vitroでのT細胞抑制およびin vivoでの異種抗原に対する抗体産生といったモデル、つまりLASCの免疫抑制作用を定量する系が確立された。このことは、今後LASCの免疫抑制作用に関する分子機序を解析を加速するものと期待される。我々の研究の最終ゴールは脂肪由来間葉系幹細胞(ASC=adiposetissue-derived stem/stromal cell)の再生促進作用と免疫抑制作用を融合し腎疾患に対する新たな細胞治療を開発することである。本研究はそのための基盤研究と位置づけられる。In vitroでのT細胞抑制およびin vivoでの異種抗原に対する抗体産生といったモデル、つまりLASCの免疫抑制作用を定量する系が確立された。このことは、今後LASCの免疫抑制作用に関する分子機序を解析を加速するものと期待される。脂肪には多くの幹細胞が存在することが明らかとなり、再生医療における細胞ソースとして脂肪組織が注目されている。我々は脂肪由来幹細胞を含む細胞集団(SVF=stroma vascular fraction)を培養せずに腎局所に投与することで腎再生が促進されることを見出した。また我々は、低血清培養法を用いることで、脂肪から高い増殖能を有する間葉系幹細胞(MSC=mesenchymal stem cell)を選択的に培養することに成功した。この細胞は動物実験において良好な腎再生促進効果を示す。さらに我々は脂肪由来MSCが強い免疫抑制作用を有することを見出した。本研究の最終的なゴールは脂肪由来幹細胞の再生促進作用と免疫抑制作用を利用し、腎臓病に対する新たな細胞治療を開発することである。今年度は以下のような研究成果を得た。(1)SVF細胞の治療効果の解析:シスプラチン腎症においてSVFが腎機能を改善させるが、その際の再生促進分子を検討したところ、VEGFやHGFが同定された。特に脂肪由来細胞はHGF分泌を介して、尿細管細胞に対する増殖促進作用、抗アポトーシス作用を呈することが明らかとなった。(2)AKIモデルでの培養脂肪由来MSCの治療効果:AKIモデル(葉酸腎症)での治療的効果につき、腎臓再生促進因子に関して解析した。低血清MSCは高血清MSCと比較して、有意に腎機能を改善させた。この腎保護作用にはVEGFとHGFが有効に作用していることが明らかとなった。(3)糸球体腎炎モデルでの培養脂肪由来MSCの治療効果:抗糸球体腎炎モデルに低血清MSCを投与したところ、腎機能が有意に改善した。この作用には、免疫調整作用が関与していることが明らかとなった。(4)免疫抑制に関するin vivo解析:異種抗原に対する免疫反応を検討したところ、低血清MSCは異種抗体産生を強力に抑制することが明らかとなった。この作用には、T細胞抑制を介したB細胞機能抑制が関与していることがわかった。我々は、低血清培養法を用いることで、脂肪から高い増殖能を有する間葉系幹細胞(MSC : mesenchymal stem cell)を選択的に培養することに成功した。この細胞は各種のモデル動物において良好な臓器再生促進効果を示すとともに、強力な免疫抑制作用を有する。我々の研究の最終的なゴールは脂肪由来幹細胞の再生促進作用と免疫抑制作用を利用し、腎臓病に対する新たな細胞治療を開発することである。本研究はそのための基礎的検討を行うことを目的としている。まず、ラットの葉酸腎症(急性腎障害モデル)を用いて治療実験を行った。その結果、低血清培養脂肪由来MSC(LASC)は高血清培養脂肪由来MSC(HASC)や骨髄由来MSC(BMSC)よりも強力に腎機能障害を抑制した。腎病理の検討でも、尿細管障害の抑制およびマクロファージ浸潤の軽減効果が観察された。さらに2週間後の腎線維化をLASCはHASCよりも強力に抑制した。投与ルートに関しても検討したところ、静脈内では有意な効果が得られず、腎被膜下投与でのみ有効であった。続いて、腎保護効果の分子機序を明らかにするための実験を行った。我々はこれまでにin vitroの系でLASCではHASCと比較してHGFとVEGFの分泌量が格段に高いことを見出している。今回は治療実験の腎組織を用いてHGFとVEGFの発現量をEUSAで検討した。LASC投与群ではHASC投与群と比較してHGFとVEGFが有意に高い値を示した。次に、VEGFとHGFに対するsiRNAを用いてノックダウン実験を行った。HGFをノックダウンしたLAscを投与すると治療効果が有意に抑制された。一方、VEGFをノックダウンしたLASCでは抑制は軽度であった。このことから、このモデルではLASCの腎保護作用の少なくとも一部はHGFを介していることが明らかとなった。免疫抑制能に関しては、LASCがHASCと比較してより強力にT細胞増殖を抑制するという結果を得ている。今後、LASCの再生促進作用と免疫抑制作用を有効に利用し、各種腎炎モデルでの検討を進めていく予定である。近年、骨髄由来間葉系幹細胞(MSC=mesenchymal stem. cell)が組織再生促進作用および免疫抑制作用を有することが明らかとなり臨床応用が進んでいる。我々は、骨髄よりも採取が容易で増殖力も強い脂肪由来間葉系幹細胞(ASC=adipose tissue-derived stem/stlomal cell)に着目して検討を進めてきた。 | KAKENHI-PROJECT-21591026 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21591026 |
脂肪由来細胞を用いた腎疾患治療の開発-再生促進作用と免疫抑制作用の融合- | 我々の研究の最終ゴールはASCの再生促進作用と免疫抑制作用を融合し、腎疾患に対する新たな細胞治療を開発することである。本研究はそのための基盤研究と位置づけられる。今回は特にAscの免疫抑制能に関して検討した。In vitroの系では、Ascを高血清(20%)および低血清(2%)条件で培養してリンパ球抑制能につき検討した。末梢血単核球分画をPHAで刺激し、低血清培養ASC(LASC)および高血清培養ASC(HASC)を投与したところ、LASC群ではT細胞増殖抑制作用が観察されたが、HASC共群ではこうした効果は認められなかった。Transwellを用いた検討では、T細胞抑制作用が液性因子に起因することが明らかとなった。一方、B細胞増殖に対する抑制効果はLASC、肌SCともに認められなかった。In vivoの系は、ラットにブタ赤血球を投与する異種移植モデルを用いた。このモデルに対し、骨髄由来MSC、HASC、LASCを経静脈的あるいは腹腔内に投与した。静脈内に投与したLASCのみが有意な異種抗体産生抑制効果を呈した。本研究では、in vitroでのT細胞抑制およびin vivoでの異種抗原に対する抗体産生といったモデル、つまりLASCの免疫抑制作用を定量する系が確立された。このことは、今後LASCの免疫抑制作用に関する分子機序を解析する上で大きな意義を持つ。今後網羅的な解析により得られた候補分子は、今回の研究で確立した系で評価することが可能となる。このことは今後の研究を加速するものと期待される。 | KAKENHI-PROJECT-21591026 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21591026 |
高エネルギーエレクトロンとラジカルによる水中環境汚染物質の分解除去 | 平成1113年度の研究によって次のような成果が得られた。(1)低導電率水溶液中で二段階放電破壊現象が生ずることを発見した。コンデンサに蓄積された電荷が放電する際に、いったん生じたストリーマ放電が休止し、ある時間をおいて次の放電が再び生ずる現象である。この現象は水の導電率に大きく影響し、導電率が15μScm^<-1>以下でコンデンサ容量が4nF以上の時に観察された。また、ある範囲内の印加電圧の場合でのみ発生した。一回の放電で二段階のラジカル生成が期待でき、有機物質の分解に有効に作用するものと思われる。(2)水中パルス放電は電極間距離と水の導電率によってモードが異なることを発見した。電極間距離を変化することによって、ストリーマ、スパーク、スパークとストリーマ混合放電の三つのモードが観察され、それぞれのモードでのメカニズムの違いから、結果として活性種と紫外線の生成量が大きく異なることを、発光分光分析とフェノール分解の結果から明らかにした。(3)三つの水中パルス放電モードを用いて、有機物質としてのフェノールの分解と染料の脱色を試みた。フェノールの分解では放電モード、印加電圧、ガスバブリング及び過酸化水素の添加効果について検討した。さらに、染料の脱色では放電モード、染料の濃度、水溶液のpH、及び過酸化水素添加の脱色率への影響について検討し、それぞれに最適値があることを明らかにした。(4)反応有効容積を広くするために、リングと円筒電極を使用した新しい放電反応器を開発し、反応器の特性と有機物質分解への応用について検討した。有機物質の反応特性については、電極構成、印加電圧極性と水溶液の導電率に大きく影響された。本電極形状を用いることにより、広域にストリーマ放電を生成することができ、リングの本数と円筒の長さを増加することにより、今後の実用的プラズマ反応器としてのスケールアップが期待できる。平成1113年度の研究によって次のような成果が得られた。(1)低導電率水溶液中で二段階放電破壊現象が生ずることを発見した。コンデンサに蓄積された電荷が放電する際に、いったん生じたストリーマ放電が休止し、ある時間をおいて次の放電が再び生ずる現象である。この現象は水の導電率に大きく影響し、導電率が15μScm^<-1>以下でコンデンサ容量が4nF以上の時に観察された。また、ある範囲内の印加電圧の場合でのみ発生した。一回の放電で二段階のラジカル生成が期待でき、有機物質の分解に有効に作用するものと思われる。(2)水中パルス放電は電極間距離と水の導電率によってモードが異なることを発見した。電極間距離を変化することによって、ストリーマ、スパーク、スパークとストリーマ混合放電の三つのモードが観察され、それぞれのモードでのメカニズムの違いから、結果として活性種と紫外線の生成量が大きく異なることを、発光分光分析とフェノール分解の結果から明らかにした。(3)三つの水中パルス放電モードを用いて、有機物質としてのフェノールの分解と染料の脱色を試みた。フェノールの分解では放電モード、印加電圧、ガスバブリング及び過酸化水素の添加効果について検討した。さらに、染料の脱色では放電モード、染料の濃度、水溶液のpH、及び過酸化水素添加の脱色率への影響について検討し、それぞれに最適値があることを明らかにした。(4)反応有効容積を広くするために、リングと円筒電極を使用した新しい放電反応器を開発し、反応器の特性と有機物質分解への応用について検討した。有機物質の反応特性については、電極構成、印加電圧極性と水溶液の導電率に大きく影響された。本電極形状を用いることにより、広域にストリーマ放電を生成することができ、リングの本数と円筒の長さを増加することにより、今後の実用的プラズマ反応器としてのスケールアップが期待できる。水中プラズマによって生成する高エネルギーエレクトロンと各種ラジカルによる、水中微量環境汚染物質の分解除去に関する実験的研究を行った。水中プラズマは、高電圧パルスを水中におかれた針対平板、ならびにその発展した形状として強度な不均一電界を形成する形状の電極に印加し、ストリーマコロナ放電およびスパーク放電を生じさせる。本研究においては、それら活性種を高いエネルギー効率で発生させるための放電形式と、有機物質の分解除去を目的としている。本年度においては、水中パルス放電形式として、スロリーマコロナ、スパーク、ならびにスパーク・ストリーマ放電の水中微量フェノールの分解に関する比較検討を行い、三者のそれぞれの特徴を明らかにした。ストリーマ放電においては、放電炉が長く延び、処理体積が大きいという特徴があるが、電子エネルギーが小さく、フェノールノ分解効果が他に比較して低い。一方、スパーク放電では発生する紫外線の効果の割合が大きくなり、紫外線は大きなエネルギーを有するため、分解効果は高いが放電炉が短く処理範囲が狭い。スパーク・ストリーマ放電は、両者の組合わせであり、放電炉を長くとれるとともに、発生する高エネルギーの電子と紫外線を効果的に有機分解に利用することができることがわかった。以上の実験効果を基に、今後は、さらに電界集中の可能な、放電領域を広く取れる形状の電極システムを試作し、さらなる容積効果ならびにエネルギー効率の向上を図り、水環境浄化の先端的な方法のひとつとすることを目指しさらなる開発を進める。水中パルス放電による微量有機物質の分解に関する実験的研究を行った。前年度から引き続き行っている、放電形態による分解速度の変化をさらに詳細にわたって追及した。 | KAKENHI-PROJECT-11555205 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11555205 |
高エネルギーエレクトロンとラジカルによる水中環境汚染物質の分解除去 | すなわち、3つの放電形態、ストリーマ、スパーク、スパーク・ストリーマ放電のうちで、スパーク・ストリーマ放電が水中のフェノールに対して最も大きな分解効果をもつことがわかった。また、現在環境問題としての重要なもののひとつ、染料廃水を模擬した溶液に対しても検討を行った。その結果、染料の種類により分解速度は異なるが、用いた染料5種類すべてについて脱色効果があることがわかった。脱色速度の更なる向上を目指して、過酸化水素を少量添加した。過酸化水は紫外線によって分解され、多量のOHラジカルを発生するためと考えられるが、脱色効果に格段の向上が見られた。フェノール分解の場合には、上記スパーク・ストリーマ放電の形態が最も効果的であったのに対し、染料の場合には、特に格段の効果が見られた過酸化水素添加の場合に、スパーク放電形態が最も脱色が速かったことから、染料の脱色機構はフェノールの場合と異なっているものと考えられ、来年度に向けてのテーマとして進行中である。さらに、物理的現象としてのスパーク・ストリーマ放電の観察により、一回の放電中にストリーマが二段階に進展することを見出した。これは新現象であり、液体の物性や、電源の電気的特性によって変化するが、発光分光を用いた観察により、一回目の放電はストリーマ放電であること、二回目はスパークにいたっていることなどを突き止めた。この現象を利用すれば、有機物の分解効果を向上させることにもつながるため、さらに追求する予定である。本年度においては、水中パルス放電による微量有機物質の分解に関する実験的研究を、実用化の見地から行った。前年度から引き続き行っている、3つの放電形態による分解速度の変化、ならびに物理的現象としての二段階放電に関して、結果の整理を行い、国際学会および国内学会での発表と、論文の投稿を行った。本年度は、実用化に向けての装置条件と操作条件の検討を主として行い、以下に示すような結果を得た。すなわち、従来の針対平板形状電極に替わる新しい形状として、リング対円筒電極を開発した。これは、放電路が一カ所に集中してしまう針対平板型に比較して、リング周辺にわたってより広範囲のプラズマ領域を得ようとするものであり、その効果は十分にあることがわかった。リング対円筒形状電極を用いて、従来法との比較のためにフェノールの分解と染料の脱色を試みた。この電極形状においてもスパーク・ストリーマ放電形態が有機物質の分解に最もエネルギー効率がよいことがわかった。さらに工夫して、円形リングの形状をいくつか変化させた実験的検討を行った。リング周辺形状を円形から星形、すなわち周辺を削り取って210個の突起を持たせた。この突起はプラズマ生成のきっかけを与えるものであり、突起先端の電界強度が増すために放電開始電圧を低下させ、プラズマ領域を広げる効果があった。直接撮影による写真と、有機物質の分解実験結果より、リング対円筒形状電極よりもさらに大幅なエネルギー効率の向上が図れた。3年間にわたる本課題研究によって、水中パルス放電の基礎としてのメカニズムと作用が明らかにされ、環境改善への応用の可能性を示唆した。 | KAKENHI-PROJECT-11555205 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11555205 |
「証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度」と証拠法 | 平成30年度も、前年度に引き続き、イタリアにおける司法取引的手法を代表する「司法協力者」制度を利用して得られた情報や供述の証拠法上の扱いに関する調査を進めた。また、日本の制度に関しては、協議・合意制度によって得られた供述を裁判所の事実認定に供する際に問題となりうる証拠諸法則の関係を検討する前提として、捜査手続および科刑手続に妥当する「適正手続」概念の関係について、主として、近時有力に主張されている「熟議による適正手続」論を批判的に検証しつつ検討した。より具体的には、まず、イタリアにおいて、司法協力者に科刑上・行刑上の恩典を付与する制度や保護・援助措置の制度が利用された場合に同人からその見返りに採取された情報・供述等について、証拠法上、どのような取り扱いがなされているかを、この点に関連するイタリア刑事訴訟法500条以下の一連の諸規定について、改正や議論の歴史的経緯をたどりながら検討した。他方、日本の状況に関しては、協議・合意制度によって得られた供述を裁判所の事実認定に供する際の諸証拠法則の適用可能性を検討するには、その前提として、証拠収集手続の違法と科刑手続の「適正」との間にどのような関係があるかを確認しておく必要があるものと考えられる。そこで、この点について、近時提示された「熟議による適正手続」論が説くところを批判的に検証しながら、憲法31条の「適正手続」概念内容を再検討し、さらに、とりわけ自白排除法則および違法収集証拠排除法則の内容・趣旨について、従来の議論や判例の見直しを進めた。平成30年度においては、1協議・合意制度の内容と、同制度によって得られた供述を裁判所の事実認定に供する際に問題となりうる点を洗い出し、その問題点とわが国において従来展開されてきた証拠法に関する個別の議論との関連性を検討すること、そして、2イタリアにおける「司法協力者」制度の内容と、同制度導入後の証拠法の沿革およびそれをめぐる議論の内容を検討することにくわえ、3個別(冤罪)事例から抽出した「司法協力者」の自白ないし供述の危険性・問題点の具体的内容を、制度の差異を考慮に入れつつ慎重に比較対照することにより、両国の「司法協力者」の自白ないし供述に共通する危険性・問題点が存在するか否か、あるいは、わが国固有の問題が存在するか否かを検討することを予定していた。1については、合意制度によって得られた供述を裁判所の事実認定に供する際に問題となりうる点を特定し、自白排除法則や違法収集証拠排除法則をはじめとする証拠法則の内容・趣旨の再検討を行うと同時に、憲法31条が要求する「適正手続」の意義を再検討した。また、2については、イタリアにおける「司法協力者」制度導入後の証拠法の沿革およびそれをめぐる議論の内容の検討を行った。しかし、とくに1の過程で、近時有力に主張されている「熟議による適正手続」論の検討に予想以上に時間を要したことから、3についてはまだ手が付けられていない。研究最終年度においても、わが国およびイタリアにおける「司法協力者」制度によって得られた情報・証拠の刑事手続上の取扱およびこれに関する議論状況を把握するための調査・研究を行う。その際には、自白法則に関する論文の完成を手始めに、とくに、わが国において従来展開されてきた証拠法に関する議論を、捜査法と証拠法の関係という観点から再検討する。さらに、イタリアにおいて「司法協力者」を利用して得られた自白ないし供述について指摘されている危険性・問題点を洗い出す。その上で、制度の差異を考慮に入れながら、日本の協議・合意制度により得られた情報・供述にはいかなる危険性・問題点が指摘されうるか、そこには、わが国固有の問題が存在しないかについて検討する。さらに、この問題に対応するためにイタリアにおいて形作られてきた証拠法の内容・運用およびこれをめぐる議論を参考にしながら、わが国の証拠法の体系を見直す作業を継続して行う。その際には、前年度は適正手続手が回らなかった、「取引」的手法が用いられたおそれのある過去の具体的事件の内容の検討も可能な限り進めることにしたい。平成28年度は、主として、イタリアにおける司法取引的手法を代表する「司法協力者」制度を利用して得られた情報や供述の証拠法上の扱いに関する調査を進めた。その前提として、「司法協力者」制度の内容および運用に関する資料を収集し、その解読・分析を行い、その成果を2つの論文にまとめて公表した。また、日本の郵便不正事件を例に、合意制度によって得られた供述を裁判所の事実認定に供する際に問題となりうる点を洗い出す作業を行った。より具体的には、まず、イタリアにおいて、国内テロリズム対策の一環として司法協力者に科刑上の恩典を付与する制度が導入され、その後、その適用対象がマフィア型組織犯罪に拡大され、さらには、司法協力者に付与される恩典にも、行刑上の恩典や、保護・援助措置が加わることになった経緯を調査した。その結果、これらの諸制度は、それぞれの時代における大きな社会問題に対する緊急ないし応急措置的な形で導入され、その運用上の具体的問題を解決する形で改正を重ね、現在に至っていることを確認した。なかでも、とりわけ、マフィア型犯罪組織との関係では、供述の信用性確保という観点から、様々な恩典付与の要件・手続が整備され、これとあわせて、司法協力者から得られた供述の扱いに関する証拠法が形成されていく過程を調査した。また、このような制度改正の過程に影響を与えたいくつかの個別事件を確認し、その概要を調査した。 | KAKENHI-PROJECT-16K03366 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K03366 |
「証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度」と証拠法 | 他方、日本の状況に関しては、協議・合意制度導入のきっかけともなったいわゆる郵便不正事件について、とりわけ、検察官による「共犯者」からの供述採取の過程において、身体拘束等の不利益と捜査への協力の「取引」が行われていたか否か、行われていたとして、そこにはどのような法的問題を見出すことができるかという観点から、関係資料を検討した。研究計画においては、平成28年度においては、1合意制度によって得られた供述を裁判所の事実認定に供する際に問題となりうる点を洗い出し、その問題点とわが国において従来展開されてきた証拠法に関する個別の議論との関連性を検討すること、そして、2イタリアにおける「司法協力者」の供述に起因する冤罪事件の内容を確認するとともに、同国における「司法協力者」制度導入後の証拠法の沿革およびそれをめぐる議論の内容を検討することを予定していた。このうち、1については、合意制度によって得られた供述を裁判所の事実認定に供する際に問題となりうる点の洗い出し、2については、イタリアにおける「司法協力者」制度導入後の証拠法の沿革およびそれをめぐる議論の内容の検討を、予定通り完了することができた。1および2ともに、その他の課題(具体的には、わが国において従来展開されてきた証拠法に関する議論の再検討、そして、イタリアにおける司法取引に起因する冤罪事件の検討)が残されてはいるが、これらは、いずれにしても、平成29年度以降にも継続して研究対象とすることが予定されていた点である。平成29年度も、前年度に引き続き、イタリアにおける司法取引的手法を代表する「司法協力者」制度を利用して得られた情報や供述の証拠法上の扱いに関する調査を進め、これに関連して、「司法協力者」制度に関係する主要法令を翻訳し、公表した。また、日本の制度に関しては、協議・合意制度によって得られた供述を裁判所の事実認定に供する際に問題となりうる証拠諸法則の関係を検討する前提として、憲法31条の「適正手続」概念についての再検討を開始した。より具体的には、まず、イタリアにおいて、司法協力者に科刑上・行刑上の恩典を付与する制度や保護・援助措置の制度について、関連主要法令の翻訳作業を完成させるとともに、同制度が利用された場合に同人からその見返りに採取された情報・供述等について、捜査法あるいは証拠法上、どのような取り扱いがなされているかを関連諸文献により検討した。この点に関連するのは、とりわけイタリア刑事訴訟法500条以下の一連の諸規定であるが、これらの諸規定は、同法施行後も数次の改正を経ており、また、各規定に関する解釈・改正に関する議論も相当程度蓄積していることから、歴史的経緯をたどりながら慎重に内容を検討している。他方、日本の状況に関しては、協議・合意制度によって得られた供述を裁判所の事実認定に供する際に問題となりうる証拠諸法則の関係を検討するために、憲法31条の「適正手続」概念内容を再検討し、さらに、とりわけ自白排除法則および違法収集証拠排除法則の内容・趣旨について、従来の議論や判例の見直しを進めた。平成29年度においても、前年度に引き続き、1協議・合意制度の内容と、同制度によって得られた供述を裁判所の事実認定に供する際に問題となりうる点を洗い出し、その問題点とわが国において従来展開されてきた証拠法に関する個別の議論との関連性を検討すること、そして、2イタリアにおける「司法協力者」制度の内容と、同制度導入後の証拠法の沿革およびそれをめぐる議論の内容を検討することを予定していた。 | KAKENHI-PROJECT-16K03366 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K03366 |
サイトメガロウイルスの細胞指向性、個体での病態、防御抗体誘導に関する研究 | モルモットサイトメガロウイルス(GPCMV)は、先天性CMV感染を小動物で唯一起こす。我々は、線維芽細胞での増殖に不要だが個体での増殖に必須な1.6kbのゲノム領域を同定し、この領域が細胞指向性に関与するヒトCMV UL128及びUL130蛋白に相同性を有するGP129及びGP131をコードすることを明らかにしてきた。本研究では、線維芽細胞で正常に増殖できるGPCMVゲノムがクローニングされたBACの構築に成功し、BAC改変系を用いて、GP129、GP131及びGP133に変異を導入したGPCMVをそれぞれ作製し、これらの糖蛋白がGPLや上皮細胞株GPC16での増殖には不要であるが、単球・マクロファージへの感染に必須であることを明らかにした。線維芽細胞と感染マクロファージを共培養すると線維芽細胞でウイルスが増殖した。マクロファージは、個体内での感染伝播に重要な役割をもつことから、その細胞指向性は個体での効率的な感染成立に密接に関連していると考えられた。モルモットサイトメガロウイルス(GPCMV)は、先天性CMV感染を小動物で唯一起こす。我々は、線維芽細胞での増殖に不要だが個体での増殖に必須な1.6kbのゲノム領域を同定し、この領域が細胞指向性に関与するヒトCMV UL128及びUL130蛋白に相同性を有するGP129及びGP131をコードすることを明らかにしてきた。本研究では、線維芽細胞で正常に増殖できるGPCMVゲノムがクローニングされたBACの構築に成功し、BAC改変系を用いて、GP129、GP131及びGP133に変異を導入したGPCMVをそれぞれ作製し、これらの糖蛋白がGPLや上皮細胞株GPC16での増殖には不要であるが、単球・マクロファージへの感染に必須であることを明らかにした。線維芽細胞と感染マクロファージを共培養すると線維芽細胞でウイルスが増殖した。マクロファージは、個体内での感染伝播に重要な役割をもつことから、その細胞指向性は個体での効率的な感染成立に密接に関連していると考えられた。我々は、唯一の先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染の小動物モデルであるモルモットCMV(GPCMV)について、線維芽細胞での増殖に不要だが個体での増殖には必須な1.6kb遺伝子領域を同定し、この領域がウイルス粒子構成糖蛋白として細胞指向性に関与するとともに中和の主要な標的となると報告されたヒトCMV UL128及びUL130蛋白に相同性を有する蛋白をコードすることを、これまでに明らかにしてきた。本研究では、これらのGPCMVホモローグの解析を通して、UL128及びUL130について、1)その細胞指向性決定の詳細な分子機序、2)個体での感染及び病態における役割、及び3)サブユニットワクチン候補としての可能性を明らかにする。本年度の研究成果としては、1)個体で増殖可能なGPCMVの全ゲノム配列を決定した。2)UL128,UL130,gH,gL,gO,gBなどのGPCMVホモローグを発現する組換えアデノウイルス(rAd)を構築した。3)蛍光蛋白発現組換えGPCMVを作製し、簡便に中和抗体を測定する方法を確立した。4)モルモットをgB発現rAdで免疫することにより、自然感染と同レベルの中和抗体が誘導され、GPCMV感染に伴う体重減少や感染の最終臓器である唾液腺でのウイルス検出が抑制されることを明らかにした。5)UL130ホモローグ発現rAd単独の免疫では、中和抗体の誘導は見られなかったため、分泌型での発現や他の蛋白との共発現を検討する必要が示された。一方、計画通りに運んでいない内容としては、1)モルモット内皮及び上皮細胞株の樹立を試みたが、長期培養に耐える株を得られていないこと、2)完全長の野生型GPCMV BACの構築を行っているが完了していないことがあり、現在、アプローチを変えてさらに検討している。モルモットサイトメガロウイルス(GPCMV)は、先天性CMV感染を小動物で唯一起こす。我々は、線維芽細胞での増殖に不要だが個体での増殖には必須な1.6kbのGPCMVゲノム領域を同定し、この領域が、細胞指向性に関与するヒトCMV UL128及びUL130蛋白に相同性を有する蛋白をコードすることを明らかにしてきた。本研究では、これらのGPCMVホモローグの解析を通して、UL128及びUL130について(1)細胞指向性決定の詳細な分子機序(2)個体での感染及び病態における役割(3)サブユニットワクチンの抗原候補としての可能性、を明らかにする。本年度の研究成果としては、妊娠モルモットにgBホモローグ発現組換えアデノウイルスを免疫することにより、85%程度の先天性感染の防御が確認された。しかし、一旦胎仔に感染が成立すると、gB抗体が胎仔に存在しているにも関わらず防御効果が無いことから、gB以外の蛋白に対する抗体が先天性感染の防御に重要であることが示唆された。同様の方法で、UL130ホモローグを発現する組換えアデノウイルスもしくはその感染細胞を用いて免疫した場合、中和抗体の上昇は見られなかった。このことより、gH,gLなどUL130と複合体を形成する他の蛋白がUL130の中和抗体誘導に必要な可能性があることがわかった。UL130ホモローグの全長をカバーする20残基のペプチドを用いて、抗原性の高いエピトープを同定した。 | KAKENHI-PROJECT-22590426 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22590426 |
サイトメガロウイルスの細胞指向性、個体での病態、防御抗体誘導に関する研究 | また、モルモット内皮及び上皮細胞株の樹立を試みたが、長期培養に耐える株を得られていない、UL128-130ホモローグ領域に欠損がない蛍光蛋白発現組換えGPCMVを得たが、個体での増殖性が見られない、など想定外の問題が発生したため、現在、完全長の野生型GPCMVBACの構築を行っている。モルモットサイトメガロウイルス(GPCMV)は、先天性CMV感染を小動物で唯一起こす。我々は、線維芽細胞での増殖に不要だが個体での増殖に必須な1.6kbのGPCMVゲノム領域を同定し、この領域が、細胞指向性に関与するヒトCMV UL128及びUL130蛋白に相同性を有する蛋白をコードすることを明らかにしてきた。本研究では、これらのGPCMVホモローグの解析を通して、1)細胞指向性決定の詳細な分子機序2)個体での感染及び病態における役割3)サブユニットワクチンの抗原候補としての可能性、を明らかにする。本年度の主な研究成果は以下の通りである。1)約9kbの欠失を有するが、線維芽細胞で正常に増殖するGPCMVのゲノムを有し、GFPを発現可能なBACの構築に成功した。2)このBACを用いて、UL128, UL130及びIL131Aホモローグに変異を導入したGPCMVをそれぞれ作製し、これらのGPCMVホモローグがマクロファージへの感染に必須である一方、ヒトCMVと異なり、上皮細胞指向性には重要でないことを明らかにした。3)マクロファージにおけるGPCMVの増殖は限定的であるが、線維芽細胞と感染マクロファージを共培養すると線維芽細胞でウイルス増殖が起ることを明らかにした。また、4)塩化アンモニウム処理などエンドサイトシス後の細胞内での酸性化に対して阻害処理を行っても、感染の阻害は生じなかった。マクロファージは、個体内での感染伝播に重要な役割を担っていることから、その細胞指向性は個体での効率的な感染の成立に密接に関連していると考えられる。なお、マウスCMVでは、UL128, UL130に相当する遺伝子は、サイトカインをコードしマクロファージの分化・遊走に関与する形で個体での感染効率に寄与しており、モルモットCMVは、マウスCMVからヒトCMVへの進化過程の中間段階とも考えられた。全体としては順調であるが、長期培養に耐えるモルモット内皮及び上皮細胞株が樹立できていないため、細胞指向性に関する検討が出来ていない。24年度が最終年度であるため、記入しない。細胞指向性を検討する新たなアプローチとして、個体から得られた胎盤や脳などのスライスにGPCMVを感染させ、現在作製中のモルモット内皮を認識する抗体と抗GPCMV抗体を用いた組織染色を行う。また、BACの作製を行う。さらに、BACを早急に作製し、UL130など特定遺伝子をノックアウトした時の効果を明らかにする。その他の計画に変更はなし。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22590426 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22590426 |
遺伝子導入動物による発癌の研究 | 癌遺伝子及び癌関連遺伝子に関する研究において、ヒトプロト型ras遺伝子をマウスに導入すると、体細胞突然変異がおこり腫瘍が発生することが分かった。また活性型myc遺伝子によるリンパ腫の発生において、第2の遺伝的変化として第4番染色体の欠失が指摘された。TL抗原遺伝子導入マウスにおいては、CD4ーCD8のT細胞集団が増加し、この中からγδのT細胞リセプターを持つものが腫瘍化した。ウイルスによる発癌機構の研究において、B型肝炎ウイルス産生マウスが樹立された。また、ヒトT細胞白血病ウイルスのpX遺伝子導入により胸腺萎縮にもとずく免疫不全と、その結果と考えられる種々の腫瘍が観察された。また、免疫グロブリン産生細胞において2種類のRNAが産生された時2つのRNA間でトランススプライシングがおこり新しい免疫グロブリンのクラスが産生されうることが示された。癌化に及ぼす遺伝子背景に関する研究において、C3Hの背景では活性化myc遺伝子によりT細胞腫が好発することが明らかとなった。種々の腫瘍発生への影響を見るため、ヒト主要組織適合抗原クラスII遺伝子を導入したマウスが作出された。発癌物質に対する処理能力がどの程度発癌を抑制しうるかを検討するためメチル基転移酵素を多量に産生するマウスが作製された。相同遺伝子組み換え技術を開発するための実験が開始された。過去に実績のある胚幹細胞が入手され、またその分化を抑え増殖させるのに有効と考えられるLIFの遺伝子も入手され、その多量産生も可能となった。組み換え頻度を上昇させる試みも必要であるが、この点に関しマウス第17番染色体上の染色体組み換えのホットスポットの存在が明らかになり今後の進展が期待された。癌遺伝子及び癌関連遺伝子に関する研究において、ヒトプロト型ras遺伝子をマウスに導入すると、体細胞突然変異がおこり腫瘍が発生することが分かった。また活性型myc遺伝子によるリンパ腫の発生において、第2の遺伝的変化として第4番染色体の欠失が指摘された。TL抗原遺伝子導入マウスにおいては、CD4ーCD8のT細胞集団が増加し、この中からγδのT細胞リセプターを持つものが腫瘍化した。ウイルスによる発癌機構の研究において、B型肝炎ウイルス産生マウスが樹立された。また、ヒトT細胞白血病ウイルスのpX遺伝子導入により胸腺萎縮にもとずく免疫不全と、その結果と考えられる種々の腫瘍が観察された。また、免疫グロブリン産生細胞において2種類のRNAが産生された時2つのRNA間でトランススプライシングがおこり新しい免疫グロブリンのクラスが産生されうることが示された。癌化に及ぼす遺伝子背景に関する研究において、C3Hの背景では活性化myc遺伝子によりT細胞腫が好発することが明らかとなった。種々の腫瘍発生への影響を見るため、ヒト主要組織適合抗原クラスII遺伝子を導入したマウスが作出された。発癌物質に対する処理能力がどの程度発癌を抑制しうるかを検討するためメチル基転移酵素を多量に産生するマウスが作製された。相同遺伝子組み換え技術を開発するための実験が開始された。過去に実績のある胚幹細胞が入手され、またその分化を抑え増殖させるのに有効と考えられるLIFの遺伝子も入手され、その多量産生も可能となった。組み換え頻度を上昇させる試みも必要であるが、この点に関しマウス第17番染色体上の染色体組み換えのホットスポットの存在が明らかになり今後の進展が期待された。 | KAKENHI-PROJECT-01010050 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01010050 |
法運動と社会変動-産廃処理施設反対運動をめぐって- | 1990年代から2000年代にかけて、産業廃棄物問題は、きわめて多くの反対運動が生じるという内政上の大問題であると同時に、法的にも大きな問題であり、社会的注目度も高い問題であった。その紛争のパターンは、住民が県を訴えるもの・産廃業者が県を訴えるもの・住民が産廃業者を訴えるもの、また産廃業者が市町村を訴えるものがあり、紛争としては多様で、環境法における法学的検討の素材を豊富にもたらした。他方、産業廃棄物に関して、最終処分よりリサイクルへ誘導する政策が整備されると、紛争は減少し、社会的関心も漸減した。しかし、依然として廃棄物の量自体は高止まりしており、排出抑制には成功していない。1990年代から2000年代にかけて、産業廃棄物問題は、きわめて多くの反対運動が生じるという内政上の大問題であると同時に、法的にも大きな問題であり、社会的注目度も高い問題であった。その紛争のパターンは、住民が県を訴えるもの・産廃業者が県を訴えるもの・住民が産廃業者を訴えるもの、また産廃業者が市町村を訴えるものがあり、紛争としては多様で、環境法における法学的検討の素材を豊富にもたらした。他方、産業廃棄物に関して、最終処分よりリサイクルへ誘導する政策が整備されると、紛争は減少し、社会的関心も漸減した。しかし、依然として廃棄物の量自体は高止まりしており、排出抑制には成功していない。本年度は、研究の初年度にあたるため、(1)基本的な文献の検索・収集・読解、(2)一部の新聞記事の収集、(3)重要な判例の収集に費やした。文献としては、社会学関係の社会運動に関する諸文献と、法律学関係の環境法に関する諸文献を中心に収集した。新聞記事については、まだ十分な精査をしていないので確定的なことは言えないが、産廃紛争に関する記事は、1990年代後半を中心に山なりに増減しており、当初の予想を裏付けるものとなっている。ただし、新聞記事の有料データベースについては、予想より費用がかさみ、一部の新聞社の記事しか検索できていない。それらの新聞記事および諸文献によれば、産廃処理施設反対運動は、90年代にかなりの数に上るが、1997年および2001年の廃棄物処理法改正により、徐々にその数を減じていることが分かる。今後は、これらの法改正を促した要因とその影響を調査する必要がある。(1)予算の関係上、網羅的な新聞記事の検索は、朝日新聞と日経新聞に限定して行った。その結果、朝日新聞の記事数は1985年には34件にとどまっていたのに対し、年ごとに漸増し、1996年897件、1997年1750件と飛躍的に増え、2001年に2115件とピークを迎え、その後、漸減し、2010年には698件となっている。(2)また、単なる新聞記事だけでなぐ、新聞各社の社説に産廃に関する社説の数も社会的関心の高まりを示す指標と考えることができるため、全国ほぼ全ての新聞社の産廃に関する社説を網羅的に調べた。その結果、上記(1)と同じ年度で調べると、新聞各社の社説の回数は、1985年には1件であったのに対し、96年は65件、97年は162件、01年は87件、10年は8件となっている。(3)以上、(1)(2)の結果から、新聞記事数や新聞社の社説数の増減は、廃棄物処理法の大改正が1997年と2001年に行われたことと一致する結果となっており、社会的関心の高まりが、法改正を促したことがうかがえる。(4)次に、量的な探索だけでなく、質的な探索として、上記社説の中から、特徴的と思われる社説を一部分収集した。これについての詳しい分析は、今後の課題であるが、暫定的な結論としては、産廃処理施設の近隣住民の以降を全く無視して設置計画を進めうる法制度の仕組みに強い反発が示されている。したがって、産廃処理施設設置に関する住民投票についても、好意的な社説が多い。(5)産業廃棄物に関する裁判例については、2007年ごろまでの裁判例はほぼ収集し、検討を加えた。2008年以降の裁判例の収集・分析については、今後の課題である。さらには、裁判例が住民の意向に沿ったものとなる以前の、すなわち、1990年代前半の裁判例を集める,とも必要である(1)1990年代から2000年代にかけての、産業廃棄物処理施設反対運動や産廃処理政策に関する朝日新聞と日経新聞の新聞記事は、ほぼ収集できた。その結果から、新聞記事数々新聞社の社説数の増減は、廃棄物処理法の大改正が1997年と2001年に行われたことと一致する結果となっており、社会的関心の高まりが、法改正を促したことがうかがえる。(2)産廃処理施設に関する諸判例の収集は、まだ一部にとどまっているが、上記(1)に示した新聞記事の増大に伴って、すなわち産業廃棄物処理施設の問題が大きな社会問題として認識されるよ引こなるにつれて、裁判例が住民よりになる傾向がうかがえる。(3)特徴的な産廃処理施設設置反対運動が生じた県に調査に赴くことはできていない。(4)研究を進める上で、2002年に環境省が主催した「廃棄物問題懇話会」の調査を見いだした。ここで各県の産業廃棄物設置に関する行政指導要綱の中の「住民同意]条項が問題とされており、「住民同意」を「住民理解」に変更することが指導されていた。 | KAKENHI-PROJECT-21510046 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21510046 |
法運動と社会変動-産廃処理施設反対運動をめぐって- | この「住民理解」のための交渉は、いわゆるリスク・コミュニケーションの一種であり、リスク・コミュニケーションの研究も必要であることに気づかされた。(5)こうして、本研究のテーマである「法運動と社会変動」について、「リスク・コミュニケーションの社会的構築」というサブテーマを設定し、それに沿って研究を組み立てられるのではないかという見通しがついた。平成25年度には、環境白書などの産業廃棄物処理に関する政府文書や廃棄物処理法などの関連法令を整理し、年表を作成した。また、紛争地の一つであった宮城県に出張し、関連する資料を収集した。その結果、以下のことが分かった。1.環境白書における廃棄物関連の記載量は90年代に増大し、環境大臣による「前書き」で産業廃棄物問題への言及が増える。2.90年代は、廃棄物の量が増大する時期であるとともに、ダイオキシンに対する社会的関心が高まり、産業廃棄物について、社会的関心が高まる時期でもある。例えば、1985年における産廃排出量は約31,200(万トン)であったが、1990年には約39,500(万トン)へとおよそ5年間に8,000万トンも増大し、その後、40,000(万トン)前後に落ち着く。この産廃量の増大の背景には、いわゆるバブル景気が考えられる。ダイオキシンについての社会的関心については、今回、調査していないが、『奪われし未来』の日本における初版本刊行が1997年であることからすれば、90年代後半に、環境ホルモンに関する社会的関心が高まったと言えよう。3.朝日新聞のデータベースで、「産廃」もしくは「産業廃棄物」で記事数を検索すると、95年までは年間約500件であった記事数が、96年から急上昇し、97年に1750件、2001年に2115件を数えるまでになる。その後、記事数は漸減し、2013年には502件に落ち着く。4.裁判例を見てみると、その総数はまだ未調査であるが、環境法分野での重要性を表していると見なしうる『環境法判例百選』(その前身は『公害・環境判例百選』である。)で、産廃事案が取り上げられている割合は、80年代までは全判例の0%であったのに対し、90年代に2%、2000年代には10%を超えるまでになっている。産業廃棄物紛争が環境法理論にも大きな影響を与えていることが分かる。今年度は、産業廃棄物処理施設紛争全般ではなく、特に争点となった「地元合意」の問題に絞って分析を進めた。これは、産業廃棄物処理施設の設置に当たって、多くの道府県が、産廃業者に地元との合意を取得するよう行政指導していたが、政府はこの指導は法的に問題があるとして、その廃止を求めていた。しかし、各道府県議会や住民、マスコミは、この「地元合意」の行政指導が必要であるとして、政府に反発していた、という構図の問題である。ところで、この「地元合意」の行政指導を要綱に盛り込んでいる自治体は、今日では皆無である。今年度は、全国紙・地方紙を含めて、この問題に関する記事を網羅的に集め、問題の背景を探った。また、幾つかの自治体にヒアリングを行った。以上の成果の一部を、学会で発表し、学会誌に掲載した。学会発表:日本法社会学会(京都女子大学、2012年5月13日)「紛争処理とリスク・コミュニケーションー合意から理解へー」学会誌:「法社会学」78号「紛争処理とリスク・コミュニケーションー「合意」から「意味ある応答」そして「理解」へー」p.195-214実証的なデータの収集と同時に、理論的な整理の方向も探ってきたため、データの収集が遅れている。25年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-21510046 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21510046 |
高等植物における2つの異なるチラコイド膜糖脂質合成経路の分子細胞生物学的再検討 | 高等植物やラン藻など光合成生物の光合成の場となるチラコイド膜の主要糖脂質であるmonogalactosyldiacylglycerol(MGDG)の生合成については、古典的な代謝レベルでの実験から、シロイヌナズナやホウレンソウなどの植物では葉緑体の内側と外側で行われる2つのMGDG合成経路が存在すること、またキュウリなどの植物では葉緑体外の経路しか持たないことがわかっている。葉緑体内での経路は原核型経路、葉緑体外での経路は真核型経路と名付けられ、植物脂質代謝を特徴づける最も重要な経路として広く知られている。しかしなぜこのように植物によって異なる経路が存在するのか、さらにそれらの経路がどのように制御されているかなどの点は全く分かっていなかった。本研究では、これら2つの葉緑体主要脂質合成経路に関する古典的知見を申請者らの得たMGDG合成酵素遺伝子ファミリーを鍵として再検討し、これら2つの合成経路の違いやその生物学的意義、その制御機構を明らかにすることを目的として研究を行った。申請者らはシロイヌナズナに3種の異なるMGDG合成酵素遺伝子MGD1,MGD2,MGD3が存在することを見出した。MGD1mRNAは全ての組織で高い発現を示したのに対して、MGD2については花芽で、MGD3については子葉および根でそれぞれ最も高い発現を示すことが分かった。細胞内局在性に関して詳しく調べたところ、3種のMGDG合成酵素は全てプラスチドに局在することが明らかになった。また、特にMGD1については細胞分画法により葉緑体包膜に局在することが抗MGD1抗体を用いた解析により明らかになった。3つの酵素の基質特異性を調べたところ、MGD1がdiacylglycerol(DG)に対する基質特異性が低いのに対してMGD2やMGD3では真核型経路で合成される真核型DGに特異性が高いことがわかった。また、MGD3がシロイヌナズナの発芽初期に高い発現を示し、生育日数に応じて発現が減少することがわかった。これと平行した脂質組成分析の結果、発芽初期には真核型脂質の割合が高く、生育に伴い真核型の割合が減少し、原核型脂質の割合が増加する傾向を示した。このことはMGD3が主に真核型脂質の合成に関わっていることを示唆している。これらの結果を統合して考えると、葉緑体形成時の糖脂質合成については主にMGD1が機能しており、MGD1は原核型経路と真核型経路の両方を担っていると考えられる。また、MGD2,MGD3については、発芽初期や花、根などの限定的な条件下で主に真核型脂質合成経路に関与していると考えられる。さらに、これらの結果とは別にリン酸欠乏条件などのストレス時においてはMGD2や、特にMGD3が糖脂質生合成に大きな寄与をしていることも示唆された。高等植物やラン藻など光合成生物の光合成の場となるチラコイド膜の主要糖脂質であるmonogalactosyldiacylglycerol(MGDG)の生合成については、古典的な代謝レベルでの実験から、シロイヌナズナやホウレンソウなどの植物では葉緑体の内側と外側で行われる2つのMGDG合成経路が存在すること、またキュウリなどの植物では葉緑体外の経路しか持たないことがわかっている。葉緑体内での経路は原核型経路、葉緑体外での経路は真核型経路と名付けられ、植物脂質代謝を特徴づける最も重要な経路として広く知られている。しかしなぜこのように植物によって異なる経路が存在するのか、さらにそれらの経路がどのように制御されているかなどの点は全く分かっていなかった。本研究では、これら2つの葉緑体主要脂質合成経路に関する古典的知見を申請者らの得たMGDG合成酵素遺伝子ファミリーを鍵として再検討し、これら2つの合成経路の違いやその生物学的意義、その制御機構を明らかにすることを目的として研究を行った。申請者らはシロイヌナズナに3種の異なるMGDG合成酵素遺伝子MGD1,MGD2,MGD3が存在することを見出した。MGD1mRNAは全ての組織で高い発現を示したのに対して、MGD2については花芽で、MGD3については子葉および根でそれぞれ最も高い発現を示すことが分かった。細胞内局在性に関して詳しく調べたところ、3種のMGDG合成酵素は全てプラスチドに局在することが明らかになった。また、特にMGD1については細胞分画法により葉緑体包膜に局在することが抗MGD1抗体を用いた解析により明らかになった。3つの酵素の基質特異性を調べたところ、MGD1がdiacylglycerol(DG)に対する基質特異性が低いのに対してMGD2やMGD3では真核型経路で合成される真核型DGに特異性が高いことがわかった。また、MGD3がシロイヌナズナの発芽初期に高い発現を示し、生育日数に応じて発現が減少することがわかった。これと平行した脂質組成分析の結果、発芽初期には真核型脂質の割合が高く、生育に伴い真核型の割合が減少し、原核型脂質の割合が増加する傾向を示した。このことはMGD3が主に真核型脂質の合成に関わっていることを示唆している。これらの結果を統合して考えると、葉緑体形成時の糖脂質合成については主にMGD1が機能しており、MGD1は原核型経路と真核型経路の両方を担っていると考えられる。また、MGD2,MGD3については、発芽初期や花、根などの限定的な条件下で主に真核型脂質合成経路に関与していると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-11640644 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11640644 |
高等植物における2つの異なるチラコイド膜糖脂質合成経路の分子細胞生物学的再検討 | さらに、これらの結果とは別にリン酸欠乏条件などのストレス時においてはMGD2や、特にMGD3が糖脂質生合成に大きな寄与をしていることも示唆された。[目的]高等植物やラン藻など光合成生物の光合成の場となるチラコイド膜の主要糖脂質であるmonogalactosyldiacylglycerol(MGDG)の生合成については、その存在量の多さ(葉緑体脂質の50%)や光合成機能との関係から、多くの研究がなされている。古典的な代謝レベルでの案験から、シロイヌナズナやホウレンソウなどの植物では葉緑体の内側と外側で行われる2つのMGDG合成経路が存在すること、またキュウリなどの植物では葉緑体外の経路しか持たないことがわかっている。葉緑体内での経路は原核型経路、葉緑体外での経路は真核型経路と名付けられ、植物脂質代謝を特徴づける最も重要な経路として周知の事実となっている。このように、2つの異なるMGDGの合成経路の存在が広く知られながらも、この2つの経路がどのような違いに基づいているのか、あるいはなぜこのように植物によって異なる経路が存在するのか、さらにそれらの経路がどのように制御されているかなどの点は全く分かっていなかった。本研究では、これら2つの葉緑体主要脂質合成経路に関する古典的知見を申請者らの得たMGDG合成酵素遺伝子ファミリーを鍵として、生化学的、分子生物学的、細胞生物学的な手法から再検討し、植物脂質代謝を特徴づけるこれら2つのMGDG合成経路の違いやその生物学的意義、その制御機構を明らかにすることを目的として研究を行った。[結果]これまでシロイヌナズナからMGDA,MGDBの2種のMGDG合成酵素遺伝子を単離していたが、今回新たに3つ目の遺伝子MGDCを単離した。これら3種の遺伝子産物について、細胞内局在性等について調べたところ、これら全ては葉緑体包膜に局在していることが分かった。また、それぞれの組織特異的発現についても調べた。その結果、MGDAは全ての組織で高い発現を示したのに対して、MGDBについては花芽で、MGDCについては子葉および根でそれぞれ最も高い発現を示した。これらのことから、主に葉緑体形成時の糖脂質合成についてはMGDAが機能しており、MGDB,MGDCについては、異なる組織でそれぞれ特異的な役割を担っていると考えられる。[目的]高度植物やラン藻など光合成生物の光合成の場となるチラコイド膜の主要糖脂質であるmonogalactosyldiacylglycerol(MGDG)の生合成については、その存在量の多さ(葉緑体脂質の50%)や光合成機能との関係から、多くの研究がなされている。古典的な代謝レベルでの実験から、シロイヌナズナやホウレンソウなどの植物では葉緑体の内側と外側で行われる2つのMGDG合成経路が存在すること、またキュウリなどの植物では葉緑体外の経路しか持たないことがわかっている。葉緑体内での経路は原核型経路、葉緑体外での経路は真核型経路と名付けられ、植物脂質代謝を特徴づける最も重要な経路として周知の事実となっている。このように、2つの異なるMGDGの合成経路の存在が広く知られながらも、この2つの経路がどのような違いに基づいているのか、あるいはなぜこのように植物によって異なる経路が存在するのか、さらにそれらの経路がどのように制御されているかなどの点は全く分かっていなかった。 | KAKENHI-PROJECT-11640644 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11640644 |
ステップ・オン・インタフェースの高機能化とさまざまな形態での実現 | ロボット・メカトロニクス機器を操作するためのステップ・オン・インタフェース(SOI)の高機能化(高信頼性と高精度化)と多様化(さまざまな形態での実現)を図った.高機能化では,カメラ画像処理(OpenCVによる投影画面やスポット光点の認識)と深度データ処理(三次元深度センサの利用)によるSOIを可能にした.多様化では,レーザー・ポインタのon/offジェスチャによる画面操作(クリック/ドラッグ動作),ズーム付き雲台カメラの制御による投影画面へのリアルタイム追従,深度データに基づく指先の背景への接触/非接触動作の認識,バーチャル・キーボードとバーチャル・シロフォンへの応用を実現した.[目的]課題である「ステップ・オン・インタフェース(SOI,プロジェクタで投影した操作画面上の任意の位置を操作者が特定することで機器とインタラクションする機能)の高機能化とさまざまな形態での実現」を具現化してゆくこと.[方法]ふたつのアプローチで研究を進めた:(1)レンジ・スキャナ(二次元距離センサ,)の代わりにRGB-Dセンサ(カラー+深度センサ,Microsoft Kinect or ASUS Xtion Pro)を使ったSOIの実現.(2)壁に投影した操作画面をレーザー・ポインタ(LP)で操作する方法の実現.[成果](1)指先タッチ動作:赤外線カメラによる深度情報に基づいて,操作者の手先から指先を特定し,その指先の背景へのタッチ動作を認識する機能を実現した.1本から5本の指先の認識率は平均80%程度で,タッチ動作の認識も同程度である.(2)LPインタフェース:投影画面上に照射したLPの光点の認識をWebカメラからの画像をOpenCVで処理することで実現した.On/Offでマウス・クリックを代替し,ドラッグ動作もできることを確認した.<最終年度:平成25年度>[方法]引き続き,ふたつの側面から並行して研究を進めた:(1)三次元深度センサを使ったSOIの実現.(2)操作画面を壁面に投影するSOIの実現.[成果](1)三次元深度センサによるSOI:昨年度の指先タッチ動作の認識技術を元にして,バーチャル・キーボード(鍵盤)およびバーチャル・シロフォン(木琴)を実現した.前者では,複数の指先の接触/非接触の認識により,和音も弾くことができる.後者では,マレット(撥)と人の指とを形状・サイズから識別する機能(マレットのみに反応する)や,音板(投影された背景)を叩く速度により反応が異なる機能(音量が変化する)を実現した.(2)壁面投影するSOI:ズーム付き雲台(パン・チルト)カメラの制御による投影画面へのリアルタイム追従を実現した.<研究期間全体>[成果]画像投影式インタフェースの高機能化および多様化をねらいとして,壁面投影と机上投影のふたつの形式を対象として,新しい知見・知識を獲得した.(1)レーザー・ポインタ・インタフェース(壁面):プロジェクタから壁面に投影した画面の位置と大きさをWebカメラで認識し,また投影画面上にレーザー・ポインタより照射されたスポット光点の位置計測からon/offジェスチャによる画面操作(クリック/ドラッグ動作)を実現した.今後は,従来の操作インタフェースとの比較・評価実験が必要である.(2)タッチ・インタラクション(机上):3次元深度センサを用いて指先タッチ動作を認識できるようにして,バーチャル・キーボード(鍵盤:複数の指先タッチの認識により和音を弾ける)およびバーチャル・シロフォン(木琴:撥と人の指の識別,叩く速さにより異なる反応)を実現した.今後は,実用化のための認識精度の向上が必要である.ロボット・メカトロニクス機器を操作するためのステップ・オン・インタフェース(SOI)の高機能化(高信頼性と高精度化)と多様化(さまざまな形態での実現)を図った.高機能化では,カメラ画像処理(OpenCVによる投影画面やスポット光点の認識)と深度データ処理(三次元深度センサの利用)によるSOIを可能にした.多様化では,レーザー・ポインタのon/offジェスチャによる画面操作(クリック/ドラッグ動作),ズーム付き雲台カメラの制御による投影画面へのリアルタイム追従,深度データに基づく指先の背景への接触/非接触動作の認識,バーチャル・キーボードとバーチャル・シロフォンへの応用を実現した.H23年度は,投影画面上のユーザ指示位置の検知をカメラ画像処理により実現するための基礎的な検討を主に実施した.これには,PCにプロジェクタとWebカメラが接続されるだけの単純なシステムを用いた.当初は,セキュリティ・システムや車載センサ・システムのために製品化されているCCDカメラや画像処理ボードを用いることを計画していたが,最近のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の普及にともない,高性能で安価なUSB接続のWebカメラが容易に入手できるようになったためである.Windows上のソフトウェア統合開発環境であるMicrosoft Visual Studioを用いてプログラミングを行なう.コンピュータ・ビジョン向けライブラリとして,当初はDirectShowを利用していたが,途中からOpenCVを用いることに方針を転換した.DirectShowの利用では,ある条件下で,壁に投影した操作画面の位置と大きさをカメラで認識し,操作画面上にレーザー・ポインタより照射されたスポット光点の位置もカメラで計測できるプログラムを作成した.現在は,OpenCVの利用でも同様な機能を実現できるように再プログラミングをしている.さらに,床面に投影した操作画面上に置かれたユーザの足などの位置を,従来のレンジ・スキャナ(2D距離センサ)ではなく,ゲームデバイスであるXbox 360 Kinectセンサで認識する方法を検討するサブテーマも開始した. | KAKENHI-PROJECT-23560300 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23560300 |
ステップ・オン・インタフェースの高機能化とさまざまな形態での実現 | Kinectに内蔵されたRGBカメラと深度センサからのデータを処理することになるが,現在利用できるSDKは「Kinect for Windows SDK」と「OpenNI」であり,まずはそれらを使いこなそうとしている.(1)指先タッチ動作:指先の認識やタッチ動作の認識をある程度実現できたことは,大きな進展である.しかし実用上には不十分であり,それらの認識率の向上が今後の課題である.(2)LPインタフェース:カメラ座標系とスクリーン座標系の自動キャリブレーションの機能も実現しているが,周囲照度,画面歪み,相対位置などの条件がある程度整っている必要がある.それらの条件を緩めるような頑健性の向上が今後の課題である.「研究実績の概要」で記述したように,コンピュータ・ビジョン用のライブラリとして,当初はDirectShowを利用していたが,途中からOpenCVを用いることに実施方針を転換したことが大きな理由の一つである(研究内容の変更ではない).DirectShowは,Microsoft社がWindowsシリーズのマルチメディア機能を強化するために提供している拡張API(application program interface)群であるDirectXの一部であるため,汎用性や拡張性が限定される.それに対してOpenCVは,C言語やC++により記述することが可能であり,WindowsやLinuxなどの複数のプラットフォームに対応するとともに,オープンソースソフトウェア(OSS)として提供されているため,誰でも無償で利用できると利点があるので,今後の機能拡充や他のプラットフォームへの移植性などを考慮して,途中で方針を転換した.(1)指先タッチ動作:指先の認識率やタッチ動作の認識率の向上に取り組む計画である.具体的には,現行のアルゴリズムの見直し・修正や新しいアルゴリズムの導入により,認識精度の向上を図る.また計算機の演算機能の高性能化により,計測処理時間(サイクル・タイム)の短縮を図る.さらに,Webカメラでマーカの3次元位置を計測する手法を導入し,安価に実現する方法も試みる計画である.(2)LPインタフェース:投影されたコンピュータ画面に対する操作インタフェースの比較実験を計画している.具体的には,ワイヤレス・マウス,リング・マウス(指に装着し指先で操作できるマウス),Wiiリモコンと比較することで,LPインタフェースの特徴を明らかにする.またWebカメラを雲台付きカメラに置き換え,移動する投影画面に対する自動追尾機能の追加(まずはズーム機能の追加)を試みる計画である.「研究実績の概要」で示したように,DirectShowからOpenCVへのビジョン・ライブラリの変更を主因として,プログラム開発が当初の計画よりも遅れがちである. | KAKENHI-PROJECT-23560300 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23560300 |
マスト細胞サブセットの分化を規定する因子の同定 | 本研究においては、独自に樹立した細胞外ATP受容体の一つであるP2X7に特異的な抗体を用いマスト細胞サブセットの解析を行った。その結果、腸管のマスト細胞上にP2X7が高レベルで発現し、炎症性腸疾患の発症経路の一つになっていることを見いだした。さらに腸管以外の組織との比較を行った研究から、P2X7の発現制御因子の一つであるレチノイン酸を繊維芽細胞が分解することにより皮膚のマスト細胞はP2X7の発現が低いこと、本経路が破綻することによりマスト細胞のP2X7を介した皮膚炎の発症につながることが明らかとなった。本研究においては、これまでに研究代表者が独自に樹立したマスト細胞特異的抗体ライブラリを駆使したマスト細胞サブセットの解析を進めている。本事業の2年目であるH25年度の研究においては、初年度に得られた1細胞外ATP受容体の一つであるP2X7が腸管のマスト細胞に高レベルで発現し、ATP依存的に活性化されること、2ATP-P2X7-マスト細胞の相互作用は炎症性腸疾患の発症因子となっていること、3皮膚のマスト細胞においてはP2X7の発現が低いこと、といった知見をもとに、皮膚マスト細胞のP2X7発現制御メカニズムの解明を進めた。その結果、皮膚マスト細胞上のP2X7は、細胞が本来内在的に有しているメカニズムにより発現低下しているのではなく、皮膚環境の関与により変化していることが判明した。さらにその機能は皮膚の繊維芽細胞により担われていること、またその制御を行う上で重要な因子としてレチノイン酸分解酵素であるCyb26b1を同定した。これらの知見を発展させた研究から、レチノイン酸はマスト細胞上のP2X7を誘導する因子であり、皮膚においては繊維芽細胞がその分解を担うことで、P2X7の発現が抑制されることが判明した。今後は、皮膚疾患との関連も含め基礎と臨床の両観点からレチノイン酸、ATP、P2X7、マスト細胞のそれぞれの相互相関を明らかにすることが重要であると考える。本研究においては、独自に樹立した細胞外ATP受容体の一つであるP2X7に特異的な抗体を用いマスト細胞サブセットの解析を行った。その結果、腸管のマスト細胞上にP2X7が高レベルで発現し、炎症性腸疾患の発症経路の一つになっていることを見いだした。さらに腸管以外の組織との比較を行った研究から、P2X7の発現制御因子の一つであるレチノイン酸を繊維芽細胞が分解することにより皮膚のマスト細胞はP2X7の発現が低いこと、本経路が破綻することによりマスト細胞のP2X7を介した皮膚炎の発症につながることが明らかとなった。本研究においては、これまでに研究代表者が独自に樹立したマスト細胞特異的抗体ライブラリを駆使したマスト細胞サブセットの解析を進めている。本事業の初年度に当たるH24年度の研究から、腸管のマスト細胞上に細胞外ATP受容体の一つであるP2X7が高レベルで発現していることが判明した。またP2X7を阻害する1F11抗体で処理することでマスト細胞のATP依存的な活性化が抑制出来ること、また炎症性腸疾患モデルにおいて治療効果が得られることが明らかとなった。そこで各組織に存在するマスト細胞上のP2X7の発現を比較したところ、腸管のマスト細胞や骨髄由来マスト細胞が高レベルでP2X7を発現しているのに対し、皮膚のマスト細胞はP2X7の発現が低いことが判明した。またこの細胞表面でのP2X7の発現レベルは遺伝子レベルでの発現量と相関していたことから、転写レベルで発現制御が行われていることが示された。さらに細胞外ATPに対する反応もP2X7の発現レベルに相関し、皮膚マスト細胞は細胞外ATPへの反応性がほとんど認められなかった。一方、ヒト組織サンプルを用いた解析から、健常人の腸管に存在するマスト細胞はP2X7を発現していないのに対し、炎症性腸疾患の一つであるクローン病の患者の大腸組織においてはマスト細胞上のP2X7の発現が誘導されていることが判明した。これらの結果は、ヒト、ならびにマウスにおいてP2X7の発現を指標にマスト細胞の分類が可能であり、その発現が炎症性疾患の病態形成と関連していることを示唆するものであり、今後P2X7の発現制御メカニズムという観点からのマスト細胞サブセットの分類と機能制御に関する研究が重要であると考える。マスト細胞は活性化や脱顆粒に伴いアレルギー炎症性物質を産生することで即時型アレルギーや炎症を引き起こす悪玉細胞である。これまでの研究からマスト細胞は皮膚などの結合組織と肺や腸管などの粘膜面とで性質が異なっていることが知られていた。本研究では我々が独自に樹立したマスト細胞特異的抗体ライブラリの一つである1F11抗体を用いた検討を発展させ、マスト細胞の機能制御における組織環境の重要性を明らかにするための研究を遂行している。1F11抗体は細胞外ATPの受容体の一つであるP2X7を認識するが、1F11抗体を用いたこれまでの検討から、腸管のマスト細胞においてP2X7が強く発現しており、細胞外ATPを介した活性化が炎症性腸疾患の発症と増悪化に関与していることが判明していた。本事業における今年度の検討から、マスト細胞上のP2X7の発現は組織によって異なることが判明した。腸管、皮膚、腹腔といった組織からマスト細胞を単離し、P2X7遺伝子の発現比較を行ったところ、皮膚のマスト細胞で発現が低いことが判明した。分子、細胞レベルにおけるメカニズムを検討したところ、皮膚の線維芽細胞がP2X7 | KAKENHI-PROJECT-24659217 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24659217 |
マスト細胞サブセットの分化を規定する因子の同定 | 発現誘導因子の一つであるレチノイン酸を分解していることが一因であることが判明した。さらに皮膚線維芽細胞を介したレチノイン酸恒常性機構が破綻することにより、マスト細胞のP2X7を介した皮膚炎の発症につながることが明らかとなった。免疫学本研究においては、研究代表者が独自に樹立したマスト細胞特異的抗体ライブラリを駆使することで得られた知見を発展させ、皮膚と腸管のマスト細胞の機能的差異を明らかにする研究を進めている。これまでの検討から、同じマスト細胞であっても生体環境により機能が変化すること、特に炎症性疾患の発症因子の一つであるP2X7の発現が非免疫系細胞である繊維芽細胞によって制御されており、その介在分子がレチノイン酸であることを見いだした。これらの知見は、皮膚環境におけるマスト細胞の活性化制御機能を世界で初めて明らかにしたものであり、本事業の目的にあった優れた結果が得られつつあることを示している。初年度の研究においては、研究代表者が樹立したマスト細胞特異的抗体ライブラリを駆使し、そのうちの一つであるP2X7を認識する1F11抗体を用い、各組織におけるマスト細胞上のP2X7分子の発現レベルが異なることを示すことに成功した。さらに同じ腸管組織のマスト細胞であっても、ヒトの腸管ではP2X7が発現していないのがデフォルトとなっており、炎症性疾患の一つであるクローン病の患者においては発現が誘導されることが示された。これらの結果は、同じマスト細胞であっても環境や組織の免疫状態により機能が変化すること、その一つがP2X7分子であることを示す結果であり、本事業の目的にあった結果が得られつつあることを示している。現在の研究は当初の予定通りに進んでいることから、引き続き計画に従い推進する。レチノイン酸による皮膚マスト細胞上のP2X7の発現制御と免疫疾患との関連について解明を進める。現在の研究は当初の予定通りに進んでいることから、引き続き計画に従い推進する。特に皮膚と腸管組織においてマスト細胞上のP2X7の発現が異なるという知見を発展させ、その制御メカニズムの解明を進める。当初の予定に従い研究を進めた結果、標的分子候補を同定することが出来たが、病態形成との関連を明らかにするための関連遺伝子欠損マウスの導入と繁殖を進めていたが、予想していたよりも産仔数が少なく、必要数のマウスが確保できなかったため。当初の予定通り研究費の全ては消耗品として使用する。当初の予定通り研究費の多くは消耗品として使用するが、それ以外に国内での研究打ち合わせのための旅費や英文校正などの謝金に使用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-24659217 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24659217 |
正電荷コレステロールを素材とした正電荷リポソームの遺伝子治療への展開 | 正電荷コレステロールを素材とした非ウイルスベクター(正電荷リポソーム)の開発を行い、遺伝子治療における基盤技術の確立と展開を行った。同時に、外来遺伝子の細胞内動態を解析する顕微光学技術を開発し、遺伝子治療研究への展開を行った。特に、水酸基を末端に持った正電荷コレステロール誘導体の有効性を明らかにするとともに、非ウイルスベクターによる外来遺伝子の導入機構(エンドサイトーシス、膜融合、核シグナルの寄与)を解明した。具体的な研究成果は次の8項目に大別できる。(1)高効率の非ウイルスベクターを遺伝子導入に利用する技術の確立。(2)顕微工学法による外来遺伝子の細胞内動態の解明。(3)バイオサーファクタントを用いた高効率の非ウイルスベクターの開発。(4)バイオサーファクタントによる遺伝子導入機構の解明。(5)プロタミンによる遺伝子導入効率の増進と、そのメカニズムの解明。(6)プロタミンによるDNA・正電荷リポソーム複合体のコンパクト化とそれによる核膜孔通過促進の可能性の提示。(7)核移行シグナルによる外来遺伝子の核移行の促進。(8)NGF、EGF等の受容体(レセプターチロシンキナーゼ)の活性化による遺伝子導入効率の増強。これら多くの多様な研究成果は細胞機能解明の基礎研究に大きく寄与するだけでなく、遺伝子導入の基礎技術と臨床応用(遺伝子治療)への展開に大きく寄与すると判断された。また、外来遺伝子(DNA)の核移行には細胞骨格蛋白質の動態が密接に関与している事も明確にした。これらの一連の研究成果は正電荷コレステロール誘導体を素材とした正電荷リポソームの遺伝子治療の研究に画期的な寄与をすると判断された。正電荷コレステロールを素材とした非ウイルスベクター(正電荷リポソーム)の開発を行い、遺伝子治療における基盤技術の確立と展開を行った。同時に、外来遺伝子の細胞内動態を解析する顕微光学技術を開発し、遺伝子治療研究への展開を行った。特に、水酸基を末端に持った正電荷コレステロール誘導体の有効性を明らかにするとともに、非ウイルスベクターによる外来遺伝子の導入機構(エンドサイトーシス、膜融合、核シグナルの寄与)を解明した。具体的な研究成果は次の8項目に大別できる。(1)高効率の非ウイルスベクターを遺伝子導入に利用する技術の確立。(2)顕微工学法による外来遺伝子の細胞内動態の解明。(3)バイオサーファクタントを用いた高効率の非ウイルスベクターの開発。(4)バイオサーファクタントによる遺伝子導入機構の解明。(5)プロタミンによる遺伝子導入効率の増進と、そのメカニズムの解明。(6)プロタミンによるDNA・正電荷リポソーム複合体のコンパクト化とそれによる核膜孔通過促進の可能性の提示。(7)核移行シグナルによる外来遺伝子の核移行の促進。(8)NGF、EGF等の受容体(レセプターチロシンキナーゼ)の活性化による遺伝子導入効率の増強。これら多くの多様な研究成果は細胞機能解明の基礎研究に大きく寄与するだけでなく、遺伝子導入の基礎技術と臨床応用(遺伝子治療)への展開に大きく寄与すると判断された。また、外来遺伝子(DNA)の核移行には細胞骨格蛋白質の動態が密接に関与している事も明確にした。これらの一連の研究成果は正電荷コレステロール誘導体を素材とした正電荷リポソームの遺伝子治療の研究に画期的な寄与をすると判断された。正電荷コレステロール誘導体を素材とした画期的な非ウイルスベクターを開発し、遺伝子治療への応用を可能にすることを企てた。同時に、導入遺伝子の細胞内動態を解析する顕微光学技術を確立し、遺伝子治療の基盤技術とした。特に、環状両親媒性(ステロール)分子の開発とリポソームベクターの構築原理を追究した。また、顕微光学法をベクターの評価と探索に利用した。具体的研究は次の4項目を中心にして推進した。(1)正電荷コレステロール誘導体による外来遺伝子の細胞内導入の研究。(2)環状両親媒性ステロール分子を用いた新規ベクターの開発。(3)顕微光学法による導入遺伝子の細胞内動態の解析。(4)新規ベクターのデザインと構築原理の確立とそれを基盤とした遺伝子治療への展開。特に初年度である平成12年度は(1)から(3)の研究項目に焦点を当てて研究を推進した。その結果、項目(1)と(2)では新規正電荷コレステロール誘導体の発見や、環状両親媒性(ステロール)分子を素材とした新規の非ウイルスベクターの開発に成功した。これらの新規非ウイルスベクターは安全性が高いだけでなく、既存の非ウイルスベクターと比較しても、遺伝子導入の効率が非常に高いことも明らかに出来た。また、血清存在下でも遺伝子導入の効率がそれほど減少せず、in vivoへの応用性も非常に高いことが示された。それと同時に、項目(3)の顕微光学法を遺伝子導入の基盤技術として高度に応用する各種の新規技術を開発し、導入遺伝子の細胞内動態と遺伝子導入機構の追究を行った。その結果、正電荷リポソームによる外来遺伝子の細胞内導入は、正電荷リポソーム・DNA複合体がエンドサイトーシスで細胞内に導入された後に、エンドソーム内での膜融合の際にDNAが選択的に核内に移行することを明らかにした。また、DNAの核移行には細胞骨格蛋白質も働きも密接に関与していることを顕微光学法により初めて明らかにした。正電荷コレステロールを素材とした非ウイルスベクター(正電荷リポソーム)の開発を行い、遺伝子治療への展開を行なった。また同時に、導入遺伝子の細胞内動態を解析する顕微光学技術を確立し、遺伝子治療研究の基盤技術とした。 | KAKENHI-PROJECT-12557207 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12557207 |
正電荷コレステロールを素材とした正電荷リポソームの遺伝子治療への展開 | 特に、水酸基を末端持った正電荷コレステロール誘導体の有効性を明らかにするとともに、非ウイルスベクターによる外来遺伝子の導入機構(エンドサイトーシス、膜融合、核シグナルの寄与)を明らかにした。具体的な研究成果は次の7項目に大別できる。(1)高効率の非ウイルスベクターを遺伝子導入に利用する手法の確立。(2)顕微光学法による導入遺伝子の細胞内動態の解明。(3)バイーサーファクタントを用いた非ウイルスベクターの開発。(4)プロタミンによる遺伝子導入効率の増進と、そのメカニズムの解明。(5)プロタミンによるDNA・正電荷リポソーム複合体のコンパクト化とそれによる核膜孔通過促進の可能性の提示。(6)核移行シグナルによる外来遺伝子の核移行促進の可能性についての示唆。(7)NGF, EGF等の受容体(レセプターチロシンキナーゼ)の活性化による遺伝子導入効率の増強。これらの多角的な成果は細胞機能の解明に大きく寄与するだけでなく、遺伝子導入の基礎技術と臨床応用(遺伝子治療)を強く結びつける際に大いに役立つものと判断された。また、外来遺伝子(DNA)の核移行には細胞骨格蛋白質の動態が密接に関与していることを顕微光学法により明確に示した。これらの一連の研究成果は正電荷コレステロール誘導体を素材とした正電荷リポソームの遺伝子治療への展開に画期的な寄与するものと判断された。正電荷コレステロールを素材とした非ウイルスベクター(正電荷リポソーム)の開発を行い、遺伝子治療における基盤技術の確立と展開を行った。同時に、外来遺伝子の細胞内動態を解析する顕微光学技術を開発し、遺伝子治療研究への展開を行った。特に、水酸基を末端に持った正電荷コレステロール誘導体の有効性を明らかにするとともに、非ウイルスベクターによる外来遺伝子の導入機構(エンドサイトーシス、膜融合、核シグナルの寄与)を解明した。具体的な研究成果は次の8項目に大別できる。(1)高効率の非ウイルスベクターを遺伝子導入に利用する技術の確立。(2)顕微光学法による外来遺伝子の細胞内動態の解明。(3)バイーサーファクタントを用いた高効率の非ウイルスベクターの開発。(4)バイオサーファクタントによる遺伝子導入機構の解明。(5)プロタミンによる遺伝子導入効率の増進と、そのメカニズムの解明。(6)プロタミンによるDNA・正電荷リポソーム複合体のコンパクト化とそれによる核膜孔通過促進の可能性の提示。(7)核移行シグナルによる外来遺伝子の核移行の促進。(8)NGF, EGF等の受容体(レセプターチロシンキナーゼ)の活性化による遺伝子導入効率の増強。これら多くの多様な研究成果は細胞機能解明の基礎研究に大きく寄与するだけでなく、遺伝子導入の基礎技術と臨床応用(遺伝子治療)への展開に大きく寄与すると判断された。また、外来遺伝子(DNA)の核移行には細胞骨格蛋白質の動態が密接に関与していることも明確にした。 | KAKENHI-PROJECT-12557207 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12557207 |
上皮基底膜のlamina lucida中のHSPG-特に上皮脱落と上皮再生時における解析 | 皮膚に凍結・融解処理を施して3日後、表皮は基底膜を真皮上に残して浮き上がり、水泡状を呈した。透過型電子顕微鏡的に基底膜には肥厚部が観察され、半接着斑部のIamina densaと考えられた。再生表皮細胞は基底膜上を移動し、露出した基底膜の細胞側を覆うようになるが、再生細胞は単層で移動するのではなく、数層が互いにデスモゾーム結合をしたまま移動していた。再生表皮細胞の起源は凍結・融解処理部周囲の健丈部、および毛根である。透過型電子顕微鏡用の切片上で抗ヘパランサルフェイト・プロテオグリカン(HSPG)抗体と、コロイダル・ゴールドで標識した二次抗体で反応させると、露出した基底膜の肥厚部、すなわち半接着斑部のlamina densaに強い反応を示した。再生表皮細胞は露出した基底膜と再結合し、半接着斑を形成した。HSPGの免疫反応は再結合後の基底膜の肥厚部においても明らかであり、凍結・融解処理を施す前の半接着斑部を再利用して再び再生細胞が半接着斑を形成している可能性を強く示唆した。再生表皮細胞は、移動中lamina densaに密着することなく、ある程度の距離を保つが、lamina lucidaに電子密度が低い物質が密に存在していることを予想させる。凍結超薄切片法およびネガティブ・ステイニングで表皮基底膜を観察すると、lamina densaは厚く、lamina lucidaは薄く観察された。この事実はlamina lucidaにおける物質の存在を示唆している。皮膚に凍結・融解処理を施して3日後、表皮は基底膜を真皮上に残して浮き上がり、水泡状を呈した。透過型電子顕微鏡的に基底膜には肥厚部が観察され、半接着斑部のIamina densaと考えられた。再生表皮細胞は基底膜上を移動し、露出した基底膜の細胞側を覆うようになるが、再生細胞は単層で移動するのではなく、数層が互いにデスモゾーム結合をしたまま移動していた。再生表皮細胞の起源は凍結・融解処理部周囲の健丈部、および毛根である。透過型電子顕微鏡用の切片上で抗ヘパランサルフェイト・プロテオグリカン(HSPG)抗体と、コロイダル・ゴールドで標識した二次抗体で反応させると、露出した基底膜の肥厚部、すなわち半接着斑部のlamina densaに強い反応を示した。再生表皮細胞は露出した基底膜と再結合し、半接着斑を形成した。HSPGの免疫反応は再結合後の基底膜の肥厚部においても明らかであり、凍結・融解処理を施す前の半接着斑部を再利用して再び再生細胞が半接着斑を形成している可能性を強く示唆した。皮膚に凍結・融解処理を施して3日後、表皮は基底膜を真皮の上に残して浮き上がり、水泡状を呈した。透過電顕的には,lamina lucida中の物質と構造は、表皮細胞から離れ,lamina densaの上に残っていることが観察された。lamina lucida中の物質は、特に半接着斑直下の部分において多く、電子密度が高く観察された。透過型電子顕微鏡用の切片上で抗HSPG抗体と、コロイダル・ゴールドで標識した二次抗体で反応させると、半接着斑直下のlamina lucidaに特に強い反応を観察した。同時にHSPGは基底膜の真皮側のanchoring fibrilの基部、および、anchoring fibril上にもコロイダル・ゴールドが乗っているのが観察された。半接着斑部以外のlamina lucidaにおいても、網状構造は表皮脱落後も保存されていると思われ、コロイダル・ゴールドが観察できた。lamina lucidaの網状構造の構成にHSPGが関与していることが考えられる。再生表皮細胞は、古いlamina densaに密着することなく、ある程度の距離を保っていた。この事は表皮脱落後に残ったlaminalucidaの網状構造の上を再生表皮細胞が移動していたことを示している。再生表皮細胞は古い基底膜と再び半接着斑を形成するが、その位置がかつて半接着斑が存在していた位置なのか、全く新しい場所なのかについては今後、免疫組織化学的に検索を続けて行くつもりである。皮膚に凍結・融解処理を施して3日後、表皮は基底膜を真皮上に残して浮き上がり、水泡状を呈した。透過型電子顕微鏡的に基底膜には肥厚部が観察され、半接着斑部のlamina densaと考えられた。再生表皮細胞は基底膜上を移動し、露出した基底膜の細胞側を覆うようになるが、再生細胞は単層で移動するのではなく、数層が互いにデスモゾーム結合をしたまま移動していた。再生表皮細胞の起源は凍結・融解処理部周囲の健丈部、および毛根である。透過型電子顕微鏡用の切片上で抗ヘパランサルフェイト・プロテオグリカン(HSPG)抗体と、コロイダル・ゴールドで標識した二次抗体で反応させると、露出した基底膜の肥厚部、すなわち半接着斑部のlamina densaに強い反応を示した。再生表皮細胞は露出した基底膜と再結合し、半接着斑を形成した。HSPGの免疫反応は再結合後の基底膜の肥厚部においても明らかであり、凍結・融解処理を施す前の半接着斑を再利用して再び再生細胞が半接着斑を形成している可能性を強く示唆した。再生表皮細胞は、移動中lamina densaに密着することなく、ある程度の距離を保つが、lamina lucidaに電子密度が低い物質が密に存在していることを予想させる。 | KAKENHI-PROJECT-06671822 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06671822 |
上皮基底膜のlamina lucida中のHSPG-特に上皮脱落と上皮再生時における解析 | 凍結超薄切片法およびネガティブ・スカイニングで表皮基底膜を観察すると、lamina densaは厚く、lamina lucidaは薄く観察された。この事実はlamina lucidaにおける物質の存在を示唆している。 | KAKENHI-PROJECT-06671822 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06671822 |
日本列島の森林のなりたちにおける隠岐諸島の位置づけ | 隠岐諸島は島根半島の北方約50 kmに位置するが、約2万年前の最終氷期には島根半島と陸続きとなっていた。その後、後氷期になると再び切り離され、現在のような島嶼環境になった。日本列島の森林の成立・維持の過程において隠岐諸島が果たしてきた役割を明らかにすることを目的として、カツラ、ミズナラ、クロベ、モミ等の木本植物のDNA解析を行った。もし、隠岐諸島の集団が過去にレフュジアとして機能していた場合には、他地域の集団と比較して遺伝的多様性が高いことが予想される。マイクロサテライトマーカーの遺伝子型と葉緑体DNAの非コード領域の塩基配列を決定し、遺伝的多様性と遺伝構造を調べた。その結果、隠岐諸島の集団は日本の他地域と同程度の遺伝的多様性を有していることが分かった。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。隠岐諸島は島根半島の北方約50 kmに位置するが、約2万年前の最終氷期には島根半島と陸続きとなっていた。その後、後氷期になると再び切り離され、現在のような島嶼環境になった。日本列島の森林の成立・維持の過程において隠岐諸島が果たしてきた役割を明らかにすることを目的として、起源の古い被子植物であるカツラを用いて分子系統地理学的な調査を行った。カツラは渓畔林に代表的な樹種であり、隠岐諸島では島後(隠岐の島町)を中心に生育している。島後の林道沿いを中心に、カツラの集団サンプリングを行った。5遺伝子座のマイクロサテライトマーカーの遺伝子型と葉緑体DNAの4つの非コード領域の塩基配列を決定し、遺伝的多様性と遺伝構造を調べた。その結果、隠岐諸島の集団は日本の他地域と同程度の遺伝的多様性を有し、葉緑体DNAの塩基配列は西日本の他の集団と共通していた。ただし、西日本の他の集団とは塩基置換は見られなかったものの1領域で1塩基反復の繰り返し数の違いが2ヶ所で見つかった。もし、隠岐諸島が過去にレフュジアとして機能していた場合には、他地域の集団と比較して遺伝的多様性が高いことが予想された。今年度の調査では、遺伝的多様性が高いなど隠岐諸島が氷期にレフュジアとなっていた痕跡は、カツラにおいて認められなかった。しかし、隠岐諸島と西日本の他の集団で1塩基反復の繰り返し数の違いが見つかり、現在島嶼域で隔離されていることにより固有性が形成された可能性が考えられた。隠岐諸島での調査を開始し、カツラではDNAサンプルの採集を完了した。また別の樹種についても順調に採集を進められ、現在個体数が不足している樹種については、2018年度に追加の調査を行い、採集できる見込みである。採取サンプルについては、順次DNA解析を開始している。また、2018年度に遺伝子流動を明らかにするため、その調査区の選定も行うことができた。したがって、本研究はおおむね順調に進展している。隠岐諸島は島根半島の北方約50 kmに位置するが、約2万年前の最終氷期には島根半島と陸続きとなっていた。その後、後氷期になると再び切り離され、現在のような島嶼環境になった。日本列島の森林の成立・維持の過程において隠岐諸島が果たしてきた役割を明らかにすることを目的として、カツラ、ミズナラ、クロベ、モミ等の木本植物のDNA解析を行った。もし、隠岐諸島の集団が過去にレフュジアとして機能していた場合には、他地域の集団と比較して遺伝的多様性が高いことが予想される。マイクロサテライトマーカーの遺伝子型と葉緑体DNAの非コード領域の塩基配列を決定し、遺伝的多様性と遺伝構造を調べた。その結果、隠岐諸島の集団は日本の他地域と同程度の遺伝的多様性を有していることが分かった。カツラ以外の樹種について、サンプル採取・DNA解析を行い、隠岐諸島の集団の遺伝学的背景について、先行研究の他集団との比較により明らかにする予定である。また、遺伝子流動については、島後に設定した調査区内で成木からのDNAサンプルの採取と、シードトラップを設置し、親子解析用の種子を回収する予定である。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-17H06877 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H06877 |
慢性感染ウイルスとヒト免疫のバイオインフォマティクス解析 | ヒト感染免疫学では、感染個体で見られた現象が、ウイルスに起因するか、ヒトに起因するか明確にすることが困難なケースが多い。本研究では、HIV -1 Nefの遺伝子多型性、機能的多型性と、感染者の病態について、北米のコホートを用いた包括的な解析を試みた。慢性感染者(46検体)の血漿からnef遺伝子を増幅し、プロウイルスベクターに組み込み、感染性ウイルスを調製した。Nef依存的なウイルス感染性やウイルス複製能の昂進、CD4やMHCクラスIの発現低下、CD74分子の発現昂進などの機能を測定した。同時に、感染者のウイルス量、CD4カウント、HLAクラスIアリルとの相関について解析を行った。その結果、慢性感染者のNefは、遺伝的に変異性が著しく、機能変化が大きかった。中でも、ウイルス感染性、複製能、CD74発現昂進は特に変化が大きく、ウイルス感染性は感染者の病態マーカーと相関していたヒト感染免疫学では、感染個体で見られた現象が、ウイルスに起因するか、免疫系に起因するか、ウイルスやヒトの多様性の問題か、明確にすることが困難なケースが多い。本研究では、HIV-1 Nefの機能と、感染者の病態について、さまざまな観点から解析を行った。まず、アメリカおよびカナダのグループとの共同研究で、慢性感染者のうち抗レトロウイルス療法を受けていない人を約200名リクルートした。血漿からウイルスRNAを抽出して、ウイルス遺伝子の解析を行った。ウイルスがサブタイプBであった検体について、さらにNef遺伝子をPCRで増幅してクローニングした。このうち、ランダムに選んだ約50名の検体について、Nef遺伝子をプロウイルスベクターに組み込み、感染性ウイルスを調製した。これらを用いて、ウイルス感染性、ウイルス複製能、CD4発現抑制、MHCクラスI発現抑制、CD74発現昂進の機能を測定した。同時に、感染者のウイルス量、CD4カウント、HLAクラスIアリルとの相関について解析を行った。その結果、Nef機能には、クローンによって(あるいは感染者によって)大きな開きがあることが分かった。ウイルス感染性、複製能、CD74発現昂進は特にその範囲が広かった。それに対して、CD4発現抑制、HLA-I発現抑制機能は、クローン間で非常に狭い範囲のばらつきしか認めなかった。また、感染者の臨床マーカーとの多変数解析を行ったところ、ウイルス感染性とCD4カウントに相関が認められた。感染者のHLA-Iアリルとの関連性を解析したが、統計学的に有意な関連性は認められなかった。おそらく、HLA-Iアリルの多型性が大きいため、この程度の検体数では、十分に精度の高い結果が得られないためと考えられた。ヒト感染免疫学では、感染個体で見られた現象が、ウイルスに起因するか、ヒトに起因するか明確にすることが困難なケースが多い。本研究では、HIV -1 Nefの遺伝子多型性、機能的多型性と、感染者の病態について、北米のコホートを用いた包括的な解析を試みた。慢性感染者(46検体)の血漿からnef遺伝子を増幅し、プロウイルスベクターに組み込み、感染性ウイルスを調製した。Nef依存的なウイルス感染性やウイルス複製能の昂進、CD4やMHCクラスIの発現低下、CD74分子の発現昂進などの機能を測定した。同時に、感染者のウイルス量、CD4カウント、HLAクラスIアリルとの相関について解析を行った。その結果、慢性感染者のNefは、遺伝的に変異性が著しく、機能変化が大きかった。中でも、ウイルス感染性、複製能、CD74発現昂進は特に変化が大きく、ウイルス感染性は感染者の病態マーカーと相関していた本研究では、これまでに構築した多国間の共同研究ネットワークを通じて、さまざまな病態の多数の検体入手することにより、HIV-1の免疫回避機能と宿主のHIV特異的免疫応答をex vivoで解析する。そして、ウイルスとヒト双方のゲノム情報を含めた多変量バイオインフォマティクスを進めることにより、ウイルスによるヒト免疫回避システムと、ヒトの遺伝的・免疫学的背景が、慢性感染の成立や病態発症にもたらす影響を定量的・包括的に明らかにすることを目的としている。研究費の採択通知を受けたのち、速やかに海外の研究機関に連絡を取り、前もって打ち合わせておいた本研究の計画にしたがって、研究計画書の作成(倫理委員会等への申請を含め)と検体収集の準備に取り掛かった。しかしながら、計画書の作成過程で、当初予期していなかったさまざまな修正が必要となったこと、各研究機関の倫理委員会の承認に時間がかかったこともあり、研究の開始(臨床検体の収集を含む)が想定外に遅れた。その後は、海外での検体収集、ウイルスRNAやDNAの調製は順調に進んだ。H24年2月と3月に、こうした検体をすべて受け取った。検体のID、付帯する臨床データおよびサンプルについて、すべて確認を行なった。一部の検体について、試験的に、ウイルス遺伝子の増幅とシークエンスの確認を試みて、相応の結果を得た。今後は速やかに、受け取ったすべての検体の解析を進めていく予定である。研究実績に記載した通り、臨床検体の収集に至るまでの過程で、大きな遅れを生じた。前もってある程度の準備はしていたが、研究費採択後に具体的に動き出したら、想定外の多くの問題が生じた。解析を予定している検体がすべて手元にそろったため、当初の実験計画にしたがって、速やかに実験と解析を進めていく予定である。 | KAKENHI-PROJECT-23659232 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23659232 |
慢性感染ウイルスとヒト免疫のバイオインフォマティクス解析 | 研究をきわめて速やかに進めるため、当初の6か月から8か月の間に集中して研究費を投入したいと考えている。このために、実験を補佐する技術補佐員の雇用人して、1,500,000円(250,000円/月として6カ月)を計上する。その他、実験に用いる試薬代、材料費などとともに、研究成果の投稿料を計画したい。また、アメリカ、カナダに出向いて、共同研究者と実験データの最終的な解析方法について打ち合わせを行いたい。 | KAKENHI-PROJECT-23659232 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23659232 |
細胞内 DNA センサーの探索とその機能解析 | 自己の不要となったDNAが分解されずに細胞内に蓄積すると、慢性的な炎症により関節リウマチが発症する。本研究は自己のDNAによる炎症誘導機構の解明を目的とした。未知の細胞内DNAセンサーを同定するためDNAの刺激に強く応答する細胞の選別を行ったところ、DNAに対する応答性が非常に高い細胞を単離することに成功した。また、STINGという分子が自己のDNAによる炎症応答に関与しており、DNAの刺激に応じて二量体化し活性化されることを見出した。自己の不要となったDNAが分解されずに細胞内に蓄積すると、慢性的な炎症により関節リウマチが発症する。本研究は自己のDNAによる炎症誘導機構の解明を目的とした。未知の細胞内DNAセンサーを同定するためDNAの刺激に強く応答する細胞の選別を行ったところ、DNAに対する応答性が非常に高い細胞を単離することに成功した。また、STINGという分子が自己のDNAによる炎症応答に関与しており、DNAの刺激に応じて二量体化し活性化されることを見出した。DNA分解酵素であるDNase IIの欠損マウスでは、マクロファージ内でのDNAの蓄積により、TNF-αやIFN-β、CXCL10などのサイトカインが過剰に産生され、関節リウマチが引き起こされる。本研究は、DNAを認識する未知のセンサーを同定し、その機能解析を行い、関節リウマチの病態への関与を調べることを目的としている。昨年度はDNAを認識するセンサーを同定するため、発現クローニング法によるスクリーニングを行った。まずスクリーニングの系を構築するため、株化したDNase II欠損mousee embryonic fibroblastにCXCL10のプロモーターの下流でGFPが発現するレポータープラスミドを導入した。しかしながら、この細胞にDNAの刺激を与えてもGFPの発現は全く認められなかった。そこで、系の感度を上げるため、CXCL10の転写因子として知られているIRF3を細胞に強制発現させたところ、DNAに応答してGFPを弱く発現する細胞が認められた。この細胞に元々DNAの応答性が強いfetal liver macrophageより調製したcDNAライブラリー(レトロウイルスベクターに組み込んだもの)を導入し、DNA刺激後にGFPを強く発現する数パーセントの細胞集団をFACSにより分取した。分取後の細胞を増やし、DNAによる刺激、GFP強発現細胞の分取といった工程を数回繰り返すとDNAへの応答性が強い細胞集団がある程度濃縮された。その細胞集団を最終的にシングルセルに分けて調べてみると、DNAの刺激後にCXCL10やIFN-βの遺伝子発現が内在性レベルで顕著に上昇する細胞が見つかった。現在これらの細胞に挿入されたcDNAの同定を試みている。DNAセンサーを同定し、DNAの認識機構を明らかにすることで、関節リウマチの病態解明につながることが期待される。本研究では発現クローニング法を用いて、細胞内のDNAを感知しIFN-βやCXCL10などのサイトカイン産生を誘導する未知の細胞内DNAセンサーの探索を行った。レトロウイルスベクターに組み込んだcDNAのライブラリーを作製しCXCL10遺伝子のプロモーターの下流でGFPが発現するレポーターが入っているMEF細胞に導入後、DNA刺激によってGFPを強く発現する細胞をFACSにより分取したところ、DNAに対する応答性が非常に高い細胞クローンをいくつか単離することに成功した。しかしながら、これらの細胞にDNAセンサーと思われる遺伝子のcDNAは挿入されていなかった。この結果はcDNAライブラリー非依存的に単離された細胞クローンになんらかの遺伝子変化が起きたと考えられた。そこで、これらの応答性の高い細胞からcDNAライブラリーを作製し直して再度発現クローニングを試みたが上手くいかなかった。一方、発現クローニングを行う過程でSTINGという分子がDNAに対する応答に必要であり、DNAの刺激に応じて二量体化し活性化されることを見出した。STINGはDNAセンサーの下流で働く重要な分子であることが既に報告されているが、STINGの活性化因子や活性化機構は不明である。我々はSTINGの二量体化を引き起こす分子がDNAセンサーではないかとの予想のもと、現在生化学的アプローチによりSTING活性化因子の同定を試みている。昨年度の研究計画は発現クローニングによるスクリーニングによってDNAセンサーを同定するところまでを予定していた。現在はスクリーニングによって見つかった細胞からcDNAを回収し遺伝子配列を決定する段階まで進んでいる。従って、おおむね順調に進展していると思われる。24年度が最終年度であるため、記入しない。DNAセンサーの同定に成功した場合、以下の実験を行う。1、DNAセンサーによるDNA認識機構および下流へのシグナル伝達機構の解析2、DNAセンサーの病理的および生理的役割の解明もし、DNAセンサーを同定できなかった場合は、スクリーニングの過程でDNAに対する応答が非常に強い細胞の選別に成功しているので、そこから再度ライブラリーを作り直し、発現クローニングを行うことを予定している。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-23890088 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23890088 |
フォトニックネットワークに向けた超高機能モノリシック光集積回路の開発 | 1.能動/受動集積に向けた有機金属気相エピタキシャル(MOVPE)選択成長のメカニズム解明:モノリシック光集積回路作製の基本となるMOVPE選択成長につき,InPおよびGaAsの選択成長膜厚プロファイルを実験から求め,これと2次元シミュレーションを比較することにより,付着確率や拡散係数など重要なパラメータを抽出・決定した.これらを用いれば,選択成長のシミュレーションが行えるので,光集積回路マスクの計算機支援設計が可能となる.2.バルクInGaAsP/InPハイメサ導波路構造を用いたマッハツェンダー型光スイッチ回路:InP基板上バルクInGaAsP中のフランツケルディッシュ効果に基づくハイメサ導波路構造のマッハツェンダー干渉計型光スイッチ回路を研究した.メタン・水素サイクリック反応性イオンビームエッチング技術を確立し,ハイメサ導波路の形成を可能にした.次に実際の素子を前記エッチング技術と電子線露光によって試作した.その結果,3Vという低いスイッチング電圧が,波長1.53μm1.56μmにおいて偏光無依存に得られた.位相変調領域長とスイッチング電圧の積は1.5V・mmであり,従来に比べ4倍改善された.3.選択成長と多モード干渉デバイスに基づく集積型全光スイッチ回路の設計と作製:前項のMOVPE選択成長を利用して,InP基板上に半導体光アンプと多モード干渉(MMI)カプラ,入出力導波路を集積化し,全光スイッチ回路を試作した.光・光スイッチング実験において消光比改善を達成した.4.電界吸収型(EA)光変調器における光誘起屈折率変化を利用した波長変換光回路:EA光変調器に生じる光誘起屈折率変化が偏光依存性を有することを利用して,EA変調器と偏光子からなる極めて簡単な構成で全光波長変換が行えることを実験的に示した.5.波長割り当て光交換方式の研究:光集積回路を応用したフォトニックネットワークにおける光スイッチング方式として,「波長割り当て光交換方式」を提案し,その伝送特性解析とIP網への適用性の検討を行った.1.能動/受動集積に向けた有機金属気相エピタキシャル(MOVPE)選択成長のメカニズム解明:モノリシック光集積回路作製の基本となるMOVPE選択成長につき,InPおよびGaAsの選択成長膜厚プロファイルを実験から求め,これと2次元シミュレーションを比較することにより,付着確率や拡散係数など重要なパラメータを抽出・決定した.これらを用いれば,選択成長のシミュレーションが行えるので,光集積回路マスクの計算機支援設計が可能となる.2.バルクInGaAsP/InPハイメサ導波路構造を用いたマッハツェンダー型光スイッチ回路:InP基板上バルクInGaAsP中のフランツケルディッシュ効果に基づくハイメサ導波路構造のマッハツェンダー干渉計型光スイッチ回路を研究した.メタン・水素サイクリック反応性イオンビームエッチング技術を確立し,ハイメサ導波路の形成を可能にした.次に実際の素子を前記エッチング技術と電子線露光によって試作した.その結果,3Vという低いスイッチング電圧が,波長1.53μm1.56μmにおいて偏光無依存に得られた.位相変調領域長とスイッチング電圧の積は1.5V・mmであり,従来に比べ4倍改善された.3.選択成長と多モード干渉デバイスに基づく集積型全光スイッチ回路の設計と作製:前項のMOVPE選択成長を利用して,InP基板上に半導体光アンプと多モード干渉(MMI)カプラ,入出力導波路を集積化し,全光スイッチ回路を試作した.光・光スイッチング実験において消光比改善を達成した.4.電界吸収型(EA)光変調器における光誘起屈折率変化を利用した波長変換光回路:EA光変調器に生じる光誘起屈折率変化が偏光依存性を有することを利用して,EA変調器と偏光子からなる極めて簡単な構成で全光波長変換が行えることを実験的に示した.5.波長割り当て光交換方式の研究:光集積回路を応用したフォトニックネットワークにおける光スイッチング方式として,「波長割り当て光交換方式」を提案し,その伝送特性解析とIP網への適用性の検討を行った.1.有機金属気相拡散選択エピタキシ(MOVE)の成長メカニズムの解明:MOVEによる選択成長を系統的に理解しマスク設計を可能とすることを目的として,横方向気相拡散効果と表面マイグレーション効果の両方を考慮した2次元シミュレーションを行った。この過程を通じてMOVEの成長メカニズムを明らかにした。2.MOVPE選択成長層の組成/膜厚推定法の確立とマスク設計への適用:通常の有機金属気相エピタキシ(MOVPE)による選択成長において,マスク幅から成長層の組成・膜厚の推定を可能にする新たな技術を確立した。これに基づいて,逆に所望のバンドギャップを得るのに必要なマスク幅を自動設計することが可能となった。3.ハイメサ導波路形成のためのメタン・水素/酸素サイクリック反応性イオンビームエッチング法(RIBE)の開発:光集積回路用のハイメサ導波路の形成を行うために,メタン・水素/酸素サイクリックRIBE法を研究した。金属チタンをマスクとすることで,エッチング深さと表面の平滑性を両立させることができ,ハイメサ導波路の形成が可能となった。現在その導波損失を評価中である。4.リッジ導波路と多モード干渉(MMI)カプラの試作:電子線描画により導波路およびMMIカプラパターンをエピタキシャル基板上に作製し,リッジ導波路型の素子に加工した。その導波損失をファブリーペロー干渉法により測定し,光集積回路に適用するに十分な低損失性を確認した。 | KAKENHI-PROJECT-11355016 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11355016 |
フォトニックネットワークに向けた超高機能モノリシック光集積回路の開発 | さらにMMIカプラの分岐特性についても評価を行った。5.波長割り当て光交換方式の研究:光集積回路を応用したフォトニックネットワークにおける光スイッチング方式として,「波長割り当て光交換方式」を提案し,その伝送特性解析とIP網への適用性の検討を行った。1.バルクInGaAsP/InPハイメサ導波路構造を用いたマッハツェンダー型光スイッチ回路:フォトニックネットワーク構築に向けて,InP基板上バルクInGaAsP中のフランツケルディッシュ効果に基づくハイメサ導波路構造のマッハツェンダー干渉計型光スイッチ回路を研究した.まず,InGaAsP系材料のメタン・水素サイクリック反応性イオンビームエッチング技術を確立し,リフトオフTiマスクを用いてハイメサ導波路の形成を可能にした.次に実際の素子の設計を行い,前記エッチング技術と電子線露光によって試作した.その結果,3Vという低いスイッチング電圧が,波長1.53μm-1.56μmにおいて偏光無依存に得られた.位相変調領域長とスイッチング電圧の積は1.5V・mmであり,従来に比べ4倍改善された.2.選択成長と多モード干渉デバイスに基づく集積型全光スイッチ回路の設計と作製:電子回路の速度限界を超えるために,光による制御が可能な「全光スイッチ」が求められている.ここでは,半導体光アンプとマッハツェンダー干渉計を集積化した光スイッチ回路を研究した.まず,能動干渉計の光量のアンバランスを補償する非対称分岐/合流比の多モード干渉(MMI)カプラ,ならびに制御光・被制御光のミキシングと分離を行う特殊なMMIカプラの設計と数値解析を行い,実際に試作して動作確認を行った.次に有機金属気相エビタキシーにおける選択成長を利用して,InP基板上に半導体光アンプとMMIカプラ,入出力導波路を集積化し,光スイッチ回路を試作した.その結果,電気・光スイッチング実験において約1mAという低いスイッチング電流を,また光・光スイッチング実験において約10倍の消光比改善を,それぞれ達成した.3.能動/受動集積化に向けたInP系アレイ導波路格子合分波器の設計と試作:アレイ導波路格子(AWG)は波長多重(WDM)光通信のキーコンポーネントであるが,半導体光アンプなどの能動素子と組み合わせるとさらに多彩な機能を発揮できる.ここではAWG集積化の基礎を確立するために,InP基板上のAWGの設計法と試作技術を研究した.まずビーム伝搬法によるAWG単体の特性解析・設計を行った後.より複雑な回路に対処するため散乱行列ベースのマイクロ波設計・解析ツールによる光集積回路設計を試みた.一例として複数のAWGからなる光クロスコネクトの特性解析を行い,所期の結果を得た.次に,ドライエッチングと電子線露光を駆使してInP基板上に200GHz間隔8チャンネルのAWGを試作し,比較的小さい導波損失(7.1dB/cm)とWDMデマルチプレクサとしての動作を実証した.1.能動/受動集積に向けた有機金属気相エピタキシャル(MOVPE)選択成長のメカニズム解明:モノリシック光集積回路作製の基本となるMOVPE選択成長につき,InPおよびGaAsの選択成長 | KAKENHI-PROJECT-11355016 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11355016 |
遺伝性角膜ジストロフィの分子生物学的研究 | 角膜ジストロフィの原因となる候補遺伝子を探る目的で、岡山大学分子医科学教室から供与を受けた家兎角膜内皮細胞cDNAライブラリーよりプラスマイナススクリーニングを行い、角膜を多く発現している13個のクローンを得た。解析の結果、NADHユビキノン酸化還元酵素B22サブユニット、25KDa FK-506結合蛋白(FKBP25)、トロンボスポンジン2、α1タイプVIIIコラーゲン、フェリチン重鎖を確認した。また、RT-PCRにより、FKBP12と25のmRNAが家兎角膜、網膜、大脳、小脳で多く発現していること、さらに培養角膜細胞ではむしろ上皮細胞に多く発現していることが分かった。角膜特異的なクローンは認められなかったが、これらは角膜内皮で重要な働きをしていると考えられる。クローニングした既知のクローンの中には既に分かっている角膜ジストロフィのヒト染色体(5、16、20番染色体)と一致するものはなかった。未知の6クローンについてはヒトBACクローンをスクリーニングし、FISH法によってヒト染色体上の座位を検討している。また、同ライブラリーから1000個のクローンをランダムに抽出し、各塩基配列の解析を開始し、随時インターネットを通じて検索を行っている。一方、候補遺伝子と疾患との関連を調べる上で、角膜ジズトロフィの診断を確認しておく必要が生じ、角膜移植時に得られた角膜159検体について検討し、わが国に報告のなかったAvellinoタイプの角膜ジストロフィを診断した。これらの結果をもとに各検体からDNAを抽出し、解析を行えるよう備えた。角膜への遺伝子導入の基礎的研究として、アデノウイルスベクターと実験設備を整えることをおおむね完了した。1.角膜ジストロフィの候補遺伝子アプローチ岡山大学分子医科学教室から供与を受けた家兎角膜内皮のcDNAライブラリーよりプラスマイナススクリーニングを行ない、角膜に多く発現している18個のクローンを得た。それらの部分塩基配列を決めてホモロジー検索を行なった。今のところNADH-ユビキノン酸化還元素B22サブユニット、25KDaFK-506結合蛋白質(FKBP25)、トロンボスポンジン2、フェリチンなど既知のcDNAの他に機能のはっきりしない未知のcDNAが8種類とれている。家兎のFKBP25は、cDNAは塩基配列が決まっていなかったので、塩基配列を決めた。またRT-PCR法を用いて、FKBP12と25のmRNAが角膜、結膜、大脳、小脳に多く発現していることを確認した。また培養角膜細胞においても検討し、角膜上皮に多く発現していることがわかった。他のクローン、特に未知のクローンについては、塩基配列の決定、組織における発現、またヒト染色体上の場所についても検討し、角膜ジストロフィの候補遺伝子となり得るかどうかを検討している。2.膠様滴状角膜ジストロフィの連鎖解析膠様滴状角膜ジストロフィなど角膜ジストロフィの診断を確認し、同意の得られた患者とその家族から採血し、DNAを抽出し、解析に備えている。設備備品としてこれらの検体を保存するための超低温槽を購入し、眼科研究室にて検索ができるようにした。3.角膜への遺伝子導入の基礎研究ウイルスベクターを用いた遺伝子の移入実験については、当初予定していたウイルスベクターの入手が困難であるため、現在別のベクターを用いることを検討している。角膜ジストロフィの原因となる候補遺伝子を探る目的で、岡山大学分子医科学教室から供与を受けた家兎角膜内皮細胞cDNAライブラリーよりプラスマイナススクリーニングを行い、角膜を多く発現している13個のクローンを得た。解析の結果、NADHユビキノン酸化還元酵素B22サブユニット、25KDa FK-506結合蛋白(FKBP25)、トロンボスポンジン2、α1タイプVIIIコラーゲン、フェリチン重鎖を確認した。また、RT-PCRにより、FKBP12と25のmRNAが家兎角膜、網膜、大脳、小脳で多く発現していること、さらに培養角膜細胞ではむしろ上皮細胞に多く発現していることが分かった。角膜特異的なクローンは認められなかったが、これらは角膜内皮で重要な働きをしていると考えられる。クローニングした既知のクローンの中には既に分かっている角膜ジストロフィのヒト染色体(5、16、20番染色体)と一致するものはなかった。未知の6クローンについてはヒトBACクローンをスクリーニングし、FISH法によってヒト染色体上の座位を検討している。また、同ライブラリーから1000個のクローンをランダムに抽出し、各塩基配列の解析を開始し、随時インターネットを通じて検索を行っている。一方、候補遺伝子と疾患との関連を調べる上で、角膜ジズトロフィの診断を確認しておく必要が生じ、角膜移植時に得られた角膜159検体について検討し、わが国に報告のなかったAvellinoタイプの角膜ジストロフィを診断した。これらの結果をもとに各検体からDNAを抽出し、解析を行えるよう備えた。角膜への遺伝子導入の基礎的研究として、アデノウイルスベクターと実験設備を整えることをおおむね完了した。家兎角膜内皮細胞cDNAライブラリーから、虹彩とのプラスマイナススクリーニングによって得た13個のクローンのうち、7クローンについては既に解析が済み、NADHユビキノン酸化還元酵素B22サブユニット、25KDa FK-506結合蛋白(FKBP25)、トロンボスポンジン2、α1タイプVIIIコラーゲン、フェリチン重鎖を確認した。 | KAKENHI-PROJECT-07457417 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07457417 |
遺伝性角膜ジストロフィの分子生物学的研究 | また、RT-PCRにより、FKBP12と25のmRNAが家兎角膜、網膜、大脳、小脳で多く発現していること、さらに培養角膜細胞ではむしろ上皮細胞に多く発現していることが分かった。角膜特異的なクローンは認められなかったが、これらは角膜内皮で重要な働きをしていると考えられる。クローニングした既知のクローンの中には既に分かっている角膜ジストロフィのヒト染色体(5、16、20番染色体)と一致するものはなかった。未知の6クローンについての検索の結果はまだ得られていないが、ヒトBACクローンをスクリーニングし、FISH法によってヒト染色体上の座位を検討している。さらに、同ライブラリーから1000個以上のクローンをランダムに抽出し、各クローンの塩基配列の解析を行うことを目標に、現在、約700個の各塩基配列の解析を行い、ミトコンドリア酵素のサブユニット、トロンボスポンジン、VIII型コラーゲン、K-グリピカン、SPARCなどの出現率が高いことが分かった。一方、候補遺伝子と疾患との関連を調べる上で、角膜ジストロフィの診断を確認しておく必要が生じ、角膜移植時に得られた角膜159検体について検討し、わが国に報告のなかったAvellinoタイプの角膜ジストロフィを診断した。これらの結果をもとに各検体からDNAを抽出し、解析を行えるよう備えた。角膜への遺伝子導入の基礎的研究がまだ残されているが、アデノウイルスベクターと実験設備を整えることをおおむね完了した。 | KAKENHI-PROJECT-07457417 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07457417 |
児童虐待対応における多職種間コミュニケーションの円滑化に関する研究 | 本研究では、児童虐待への対応においてスムーズな多職種間連携を妨げる要因の一つは、各職種同士の間に生じる「認識のズレ」にあると仮定し、調査を行った。児童福祉司、児童福祉施設職員、その他の3群について比較検討したところ、各職種の持つ背景によりリスク認知にある一定の傾向の存在が示唆された。これらの特徴を互いが理解することにより、職種内、職種間のコミュニケーションの円滑化の手掛かりとなることが望まれる。本研究では、児童虐待への対応においてスムーズな多職種間連携を妨げる要因の一つは、各職種同士の間に生じる「認識のズレ」にあると仮定し、調査を行った。児童福祉司、児童福祉施設職員、その他の3群について比較検討したところ、各職種の持つ背景によりリスク認知にある一定の傾向の存在が示唆された。これらの特徴を互いが理解することにより、職種内、職種間のコミュニケーションの円滑化の手掛かりとなることが望まれる。児童虐待への対応において適切で迅速な解決を得るためには、関連する様々な職種間の連携が必須である。しかし現実には、組織間の壁や職種間での認識の差異などにより、必ずしも十分な連携がとれていないのが現状である。また、職種間連携の視点からの研究もほとんどなされていない。本研究では、スムーズな多職種間連携を妨げる一つの要因は、各職種同士の間に生じる「認識のズレ」にあると仮定し、この様相を明らかにすることを目的としている。具体的には、(1)児童虐待に関係する各職種の情報収集・処理(リスク認知)の特性を知る、(2)各職種のリスク認知に影響する要因を知る、といった2点の目的のもと、児童虐待に関わる様々な職種の被験者に対して「児童虐待事例のリスク認知評価調査」と「フェースシート」から成るアンケート調査表を作成した。そして全国の児童虐待に関わる多職種に対する研修を行う施設である『子どもの虹情報研修センター(日本虐待・思春期問題情報研修センター)』において、ここに集まる各種専門職員に調査を実施した。現在までに、児童相談所の児童福祉司、児童心理司、児童養護施設・乳児院の児童指導員、保育士、家庭支援専門相談員、地方自治体の福祉担当事務職員、情緒障害児短期治療施設の専門職員、といった職種の250名から回答が得られた。21年度は、これまで実施した調査で回収数が低かった職種について追加調査を行った。対象は、神奈川県内の保育園・幼稚園、学校、警察関係の各種専門職で各種50名を目標とし、前述のアンケート調査表を配布し現在回収、データ入力中である。児童虐待への対応において適切で迅速な解決を得るためには、関連する様々な職種間の連携が必須である。しかし現実には、組織間の壁や職種間での認識の差異などにより、必ずしも十分な連携がとれていない。本研究では、スムーズな多職種間連携を妨げる一つの要因は、各職種同士の間に生じる「認識のズレ」にあると仮定し、この様相を明らかにすることを目的としている。具体的には、(1)児童虐待に関係する各職種の情報収集・処理(リスク認知)の特性を知る、(2)各職種のリスク認知に影響する要因を知る、といった2点の目的のもと、児童虐待に関わる様々な職種の被験者に対してアンケート調査を実施した。このうちある程度まとまった回答数が得られ、かつ業務内容が同種の職種をグループ化し、児童福祉司100名、児童福祉施設職員(児童養護施設・乳児院)75名、その他74名、の3群を分析した。その結果、(1)「要保護事例の発見・判断」というリスク事象に対し、児童福祉施設職員は他の職種よりも、注目する情報量が少ない、(2)児童福祉司では、虐待関係への従事年数が短いほど提示された情報に広く注意を向け、またその中でも保護者に関する情報(特に「親の内面描写」)への注目度が高い、(3)いずれの職種においても「直近で扱ったケース」の内容(時期、子どもの年齢)は、現在扱っているケースのリスク情報処理に影響を与える、(4)いずれの職種においても「性別」により虐待のリスク情報認知・処理に差があり、女性の方が、比較的幅広い情報に注目しながら状況把握を行い、かつリスク判断がシビアになる傾向がある、といったことが示された。児童虐待に関わる様々な職種の中の一部ではあるが、その職種に属する各自の持つ背景によりリスク認知にある一定の傾向の存在が示唆された。これらの特徴を互いが理解することにより、職種内、職種間のコミュニケーションの円滑化の手掛かりとなることが望まれる。 | KAKENHI-PROJECT-21730445 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21730445 |
β-バレル構造を有する10種のブルー銅蛋白質のX線精密構造と電子移動挙動との相関 | 系統だった一群の蛋白質やその変異体のX線構造解析を集中的かつ高精度で行うことは、分子動力学計算やモジュール解析に応用でき、構造機能相関の解明や分子進化について明らかにすることが可能となる。本研究の目的は、8本鎖β-バレル構造を共通に持つアズリン、シュウドアズリン、プラストシアニンというブルー銅蛋白質を10種類以上にわたって系統的に結晶学的研究を行い、構造機能相関および分子進化について検討を加えることである。本年度の成果としては、脱窒菌Achromobacter xylosoxidans GIFUの産出する2種のアズリン(2.45Åと1.7Å分解能)、大腸菌で発現させた高等植物Silene pratensisおよびオシダDryopteris crassirhizoma由来の2種のプラストシアニン(それぞれ2.0Å分解能)の4種類のブルー銅蛋白質のX線構造精密化を行った。アズリンに関しては未だアミノ酸シークエンスの解析が間に合わず精密化途中ではあるが、それ以外はいずれも順調に精密化が収劔した。中でも特にシダ植物由来のプラストシアニンがプラストシアニンにとって新しいモチーフと言える3巻きα-ヘリックスを有することが分かった。通常そこは半巻きのヘリックスを取る場所であるが、異なっており、シダ植物の進化について興味深い知見が得られた。またブルー銅蛋白質では初めての例であるが、銅の配位子に直接π-πスタッキング相互作用が見られ、耐酸性との相関が得られた。系統だった一群の蛋白質やその変異体のX線構造解析を集中的かつ高精度で行うことは、分子動力学計算やモジュール解析に応用でき、構造機能相関の解明や分子進化について明らかにすることが可能となる。本研究の目的は、8本鎖β-バレル構造を共通に持つアズリン、シュウドアズリン、プラストシアニンというブルー銅蛋白質を10種類以上にわたって系統的に結晶学的研究を行い、構造機能相関および分子進化について検討を加えることである。本年度の成果としては、脱窒菌Achromobacter xylosoxidans GIFUの産出する2種のアズリン(2.45Åと1.7Å分解能)、大腸菌で発現させた高等植物Silene pratensisおよびオシダDryopteris crassirhizoma由来の2種のプラストシアニン(それぞれ2.0Å分解能)の4種類のブルー銅蛋白質のX線構造精密化を行った。アズリンに関しては未だアミノ酸シークエンスの解析が間に合わず精密化途中ではあるが、それ以外はいずれも順調に精密化が収劔した。中でも特にシダ植物由来のプラストシアニンがプラストシアニンにとって新しいモチーフと言える3巻きα-ヘリックスを有することが分かった。通常そこは半巻きのヘリックスを取る場所であるが、異なっており、シダ植物の進化について興味深い知見が得られた。またブルー銅蛋白質では初めての例であるが、銅の配位子に直接π-πスタッキング相互作用が見られ、耐酸性との相関が得られた。 | KAKENHI-PROJECT-09261223 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09261223 |
ブレオマイシンの酸素活性化機構に基づく高効率的酸化触媒の設計 | 制癌性抗生物質ブレオマイシンはそのピリミジン部位で鉄錯体を形成し分子状酸素を活性化することにより、DNA中のデオキシリボ-ス部分を酸化的に開裂することが知られている。本研究ではブレオマイシンの錯体化学を解明し、すぐれた酸化触媒を設計するため、種々の人工ペプチドによる酸素活性化を検討した。我々はすでにモデル化合物PYMLー6でブレオマイシンと同等の酸素活性化を達成している。今年度はモデル化合物の軸配位子部分の構造と機能の関係について検討した。ブレオマイシンは生体内に存在する加水分解酵素により不活化されるが、これは軸配位子部位のカルバモイル基が加水分解されるためと考えられている。そこで不活化ブレオマイシンに対応するdeamidoーPYMLー6を合成し、PYMLー6と比較した。その結果、カルボキシル基が軸配位すると酸素を活性化しなくなることが分かった。さらにPYMLー6をマウス肝臓抽出物で処理したところdeamidoーPYMLー6を与えた。これによりブレオマイシンの酵素による不活化の機構が証明された。酵素によるカルバモイル基の加水分解をうけないよう、軸配位子をイミダゾ-ルで置き換えたPYMLー13を合成した。PYMLー13は鉄錯体としての挙動はブレオマイシンとは異なるものの、かなりの効率で酸素を活性化した。さらに実用的見地から構造を大胆に改変し、ヒスチジンを2分子含むモデルPYMLー14を合成した。制癌性抗生物質ブレオマイシンはそのピリミジン部位で鉄錯体を形成し分子状酸素を活性化することにより、DNA中のデオキシリボ-ス部分を酸化的に開裂することが知られている。本研究ではブレオマイシンの錯体化学を解明し、すぐれた酸化触媒を設計するため、種々の人工ペプチドによる酸素活性化を検討した。我々はすでにモデル化合物PYMLー6でブレオマイシンと同等の酸素活性化を達成している。今年度はモデル化合物の軸配位子部分の構造と機能の関係について検討した。ブレオマイシンは生体内に存在する加水分解酵素により不活化されるが、これは軸配位子部位のカルバモイル基が加水分解されるためと考えられている。そこで不活化ブレオマイシンに対応するdeamidoーPYMLー6を合成し、PYMLー6と比較した。その結果、カルボキシル基が軸配位すると酸素を活性化しなくなることが分かった。さらにPYMLー6をマウス肝臓抽出物で処理したところdeamidoーPYMLー6を与えた。これによりブレオマイシンの酵素による不活化の機構が証明された。酵素によるカルバモイル基の加水分解をうけないよう、軸配位子をイミダゾ-ルで置き換えたPYMLー13を合成した。PYMLー13は鉄錯体としての挙動はブレオマイシンとは異なるものの、かなりの効率で酸素を活性化した。さらに実用的見地から構造を大胆に改変し、ヒスチジンを2分子含むモデルPYMLー14を合成した。 | KAKENHI-PROJECT-03670993 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03670993 |
森戸辰男資料の教育政策史的調査研究 | 1.本研究は,戦後日本の文教政策立案においてオピニオンリーダー的役割を果した森戸辰男が遺した資料の、保存・整理と其の資料による戦後文教政策分析を目的としたものである。その膨大な資料は、広島大学付属図書館書庫に納められていたものであるが、同図書館の移転に伴う散逸を防止するため、取り敢えず未整理の状態のまゝで、写真撮影しマイクロフィルムに収めた。その分量は、教育関係だけで、ロールフィルム71本、4万コマ強に及んだ。2年目の平成7年度は、フィルムに撮影した「資料」の整理を行なった。経費の関係で各「資料」を引き伸し・焼付けすることが出来ず、ロールフィルムを一本ずつマイクロリーダーで判読しながらの手工業的な整理作業にならざるを得なかった。その結果は、『森戸辰男資料目録稿』として作成・印刷した。しかし、本格的な資料分析による文教政策史的研究は、今後の課題として残されてしまった。「資料」整理を通して、森戸辰男の活動においてその国際的側面が非常に大きいことが判った。ユネスコ活動を契機にした各種国際会議(アジア地域ユネスコ加盟国文相会議、同教育行政代表者会議)や国際大学協会総会、日米文化教育会議等々の第一次資料は特に貴重なものであった。「森戸辰男資料」の内容は、国内関係でも重要なものが多く見られた。教育刷新委員会関係、文相時代の閣議資料、中央教育審議会(「46答申」まで)、国立大学協会関係、社会教育審議会、国語審議会、憲法調査会等の関係資料である。要するに、森戸辰男の戦後ほゞ30年間に関係した要職に関わる膨大な資料群である。1.本研究は,戦後日本の文教政策立案においてオピニオンリーダー的役割を果した森戸辰男が遺した資料の、保存・整理と其の資料による戦後文教政策分析を目的としたものである。その膨大な資料は、広島大学付属図書館書庫に納められていたものであるが、同図書館の移転に伴う散逸を防止するため、取り敢えず未整理の状態のまゝで、写真撮影しマイクロフィルムに収めた。その分量は、教育関係だけで、ロールフィルム71本、4万コマ強に及んだ。2年目の平成7年度は、フィルムに撮影した「資料」の整理を行なった。経費の関係で各「資料」を引き伸し・焼付けすることが出来ず、ロールフィルムを一本ずつマイクロリーダーで判読しながらの手工業的な整理作業にならざるを得なかった。その結果は、『森戸辰男資料目録稿』として作成・印刷した。しかし、本格的な資料分析による文教政策史的研究は、今後の課題として残されてしまった。「資料」整理を通して、森戸辰男の活動においてその国際的側面が非常に大きいことが判った。ユネスコ活動を契機にした各種国際会議(アジア地域ユネスコ加盟国文相会議、同教育行政代表者会議)や国際大学協会総会、日米文化教育会議等々の第一次資料は特に貴重なものであった。「森戸辰男資料」の内容は、国内関係でも重要なものが多く見られた。教育刷新委員会関係、文相時代の閣議資料、中央教育審議会(「46答申」まで)、国立大学協会関係、社会教育審議会、国語審議会、憲法調査会等の関係資料である。要するに、森戸辰男の戦後ほゞ30年間に関係した要職に関わる膨大な資料群である。1.本研究は、広島大学付属図書館所蔵の「森戸辰男(元文部大臣)資料」の保存・整理とその研究を目的としたものである。この「資料」は、ダンボール53箱に封印されたまま死蔵の状態に置かれていたもので、本年度は当図書館の協力を得てその内容を精査・点検し、その内特に重要且つ損壊の恐れのある「文書資料」を撮影してマイクロフィルムに収録した。その数量は、ロールフィルム71本・39133コマに及んだ。2.マイクロ撮影は民間の専門業者に委託したが、資料の性格上出張撮影となった。また広島大学付属図書館の移転・引っ越しと重なり、当初の予定より撮影に手間取り、撮影完了・フィルムの納品が年度末近くになったため、「資料研究」自体は次年度に回さざるを得かった。3.この「森戸辰男資料」の概要は予備調査において凡そ把握していたが、今年度の調査で、同図書館内に別置されたダンボール13箱の「資料」が見つかった。それらも「森戸辰男資料」であることが鑑定できたが、今年度は時間的にも、予算的にもマイクロ撮影はできなかった。それを含めてこの「森戸資料」には、文部大臣時代の閣議関係資料、教育刷新委員会関係資料、「四六答申」を含む中央教育審議会関係資料、日米文化教育会議関係資料などの貴重なものが多く、教育政策史研究にとって欠かせないものであることが明らかとなった。1.本研究は、戦後日本の文教政策立案においてオピニオンリーダー的役割を果たした「森戸辰男資料」の保存・整理と其の資料による戦後文教政策分析を目的としたものである。その膨大な資料は、広島大学付属図書館書庫に納められていたものであるが、同図書館の移転に伴う散逸を防止するため、取りあえず未整理の状態のままで撮影して、マイクロ・フィルムに収めた。その分量は、ロールフィルム71本、約4万コマに及んだ。2.2年目の今年は、フィルムに撮影した「資料」の整理を行った。経費の関係で各「資料」を焼き付け・拡大することができず、一本ずつマイクロリーダーで判読しながらの手工業的な整理作業にならざるを得なかった。 | KAKENHI-PROJECT-06451055 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06451055 |
森戸辰男資料の教育政策史的調査研究 | その結果は、『森戸辰男資料仮目録』として結実したが、本格的な資料研究と文教政策分析は今後の課題として残されてしまった。同時にそれは、マイクロ撮影後のフィルムからの資料整理の難しさを示すものでもあった。3.この「森戸辰男資料」の内容は概要次のようなものである。(1)教育刷新委員会関係、(2)文相時代の閣議関係、(3)中央教育審議会関係(「46答申」まで)、(4)ユネスコ関係(総会、国内委員会、アジア地域加盟国文相会議)、(5)日米分化教育会議(CULCON)関係、(6)国際大学協会(IAU)総会関係、(7)国立大学協会関係、(8)社会教育審議会関係、(9)国語審議会関係、(10)憲法調査会関係等々。要するに、森戸辰男が戦後ほぼ30年間に関わった要職を網羅する広範な資料群である。 | KAKENHI-PROJECT-06451055 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06451055 |
単分散糖鎖ブロック共重合体によるシングルナノ相分離構造の戦略的構築 | 本課題では、5 nm以下の周期間隔でミクロ相分離構造を形成・制御可能なブロック共重合体の創出を目標としている。これを実現するために、分子量分散の無い糖鎖含有ブロック共重合体に着目し、その合成とミクロ相分離挙動の評価を行った。本年度は、疎水性セグメントとして天然由来の長鎖炭化水素であるソラネソール(9ユニットのイソプレンから構成される)、糖鎖としてマルトオリゴ糖(グルコース、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース)を用い、直鎖状ジブロック共重合体を合成した。還元末端にプロパルギル基を導入したオリゴ糖をアジド化したソラネソールに対してクリック反応させることで目的とするジブロック共重合体を合成した。ソラネソールとオリゴ糖は何れも分子量分散のない化合物であり、必然的に生成するブロック共重合体は単分散である。続いて、糖鎖重合度を15に変化させた一連の直鎖状ブロック共重合体について小角X線散乱測定を行うことでミクロ相分離構造を評価した。その結果、わずか分子量10002000ほどであるにもかかわらず、いずれのサンプルにおいてもミクロ相分離(大部分はラメラ構造)することを見出した。さらに、ミクロ相分離構造の周期間隔は5.57.5 nmであり、シングルナノスケールのナノ構造を得ることに成功した。ラメラ構造の周期間隔は糖鎖重合度が1増えるごとに約0.4 nm増加することがわかり、糖鎖重合度の調節による相分離サイズの制御に成功したと言える。直鎖状ジブロック共重合体に加え、分岐構造を導入したブロック共重合体の合成も行った。小角X線散乱測定の結果、直鎖状ジブロック共重合体では見られなかったスフィア、シリンダーおよびジャイロイド構造の形成が示唆された。以上より、糖鎖含有単分散ブロック共重合体はシングルナノスケールのミクロ相分離構築に成功した。単分散糖鎖ブロック共重合体の系統的な合成とナノ構造解析に成功し、望みのサイズとモルフォロジーを有するミクロ相分離構造を得るための分子設計指針を確立した。すでに最終目標とする5 nmに迫る周期間隔でミクロ相分離する材料をいくつか見出している。さらに、一般的なブロック共重合体ではほとんど見られないジャイロイド構造の発現に成功するなど予想を超える結果が得られている。これらのことから、当初の計画以上に研究が進展していると判断できる。ソラネソール以外の疎水性セグメントを有する単分散糖鎖ブロック共重合体についても検討を進め、最終目標とする5 nm以下の周期でのミクロ相分離構造発現を目指す。平成30年度の検討では、バルク中におけるミクロ相分離観察がメインであったが、今後は、リソグラフィー用レジストとしての応用を志向し、薄膜中でのミクロ相分離挙動を重点的に検討する。また、ミクロ相分離構造を薄膜中で垂直配向させるアニーリング条件を検討し、実際に次世代リソグラフィー用のレジストとしての応用を目指す。本課題では、5 nm以下の周期間隔でミクロ相分離構造を形成・制御可能なブロック共重合体の創出を目標としている。これを実現するために、分子量分散の無い糖鎖含有ブロック共重合体に着目し、その合成とミクロ相分離挙動の評価を行った。本年度は、疎水性セグメントとして天然由来の長鎖炭化水素であるソラネソール(9ユニットのイソプレンから構成される)、糖鎖としてマルトオリゴ糖(グルコース、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース)を用い、直鎖状ジブロック共重合体を合成した。還元末端にプロパルギル基を導入したオリゴ糖をアジド化したソラネソールに対してクリック反応させることで目的とするジブロック共重合体を合成した。ソラネソールとオリゴ糖は何れも分子量分散のない化合物であり、必然的に生成するブロック共重合体は単分散である。続いて、糖鎖重合度を15に変化させた一連の直鎖状ブロック共重合体について小角X線散乱測定を行うことでミクロ相分離構造を評価した。その結果、わずか分子量10002000ほどであるにもかかわらず、いずれのサンプルにおいてもミクロ相分離(大部分はラメラ構造)することを見出した。さらに、ミクロ相分離構造の周期間隔は5.57.5 nmであり、シングルナノスケールのナノ構造を得ることに成功した。ラメラ構造の周期間隔は糖鎖重合度が1増えるごとに約0.4 nm増加することがわかり、糖鎖重合度の調節による相分離サイズの制御に成功したと言える。直鎖状ジブロック共重合体に加え、分岐構造を導入したブロック共重合体の合成も行った。小角X線散乱測定の結果、直鎖状ジブロック共重合体では見られなかったスフィア、シリンダーおよびジャイロイド構造の形成が示唆された。以上より、糖鎖含有単分散ブロック共重合体はシングルナノスケールのミクロ相分離構築に成功した。単分散糖鎖ブロック共重合体の系統的な合成とナノ構造解析に成功し、望みのサイズとモルフォロジーを有するミクロ相分離構造を得るための分子設計指針を確立した。すでに最終目標とする5 nmに迫る周期間隔でミクロ相分離する材料をいくつか見出している。さらに、一般的なブロック共重合体ではほとんど見られないジャイロイド構造の発現に成功するなど予想を超える結果が得られている。これらのことから、当初の計画以上に研究が進展していると判断できる。ソラネソール以外の疎水性セグメントを有する単分散糖鎖ブロック共重合体についても検討を進め、最終目標とする5 nm以下の周期でのミクロ相分離構造発現を目指す。 | KAKENHI-PROJECT-18K14268 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K14268 |
単分散糖鎖ブロック共重合体によるシングルナノ相分離構造の戦略的構築 | 平成30年度の検討では、バルク中におけるミクロ相分離観察がメインであったが、今後は、リソグラフィー用レジストとしての応用を志向し、薄膜中でのミクロ相分離挙動を重点的に検討する。また、ミクロ相分離構造を薄膜中で垂直配向させるアニーリング条件を検討し、実際に次世代リソグラフィー用のレジストとしての応用を目指す。 | KAKENHI-PROJECT-18K14268 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K14268 |
リラキシン(LGR7と8)の子宮内発現の解析とその細胞外ドメイン投与の効果 | リラキシンは妊娠子宮頸管熟化作用や子宮収縮抑制作用を有することがマウス等で解明されてきた。ヒトでは、リラキシン血中濃度は妊娠初期にピークを示すが、その生理作用は明らかでない。2002年にリラキシン受容体(LGR7・LGR8)が発見され、LGR7とLGR8のヒト胎盤での発現が確認された。そこで本研究では、リラキシンの妊娠初期絨毛外トロホブラスト(extravillous trophoblast:EVT)の浸潤能に及ぼす影響をMMPとTIMPの発現動態から検討した。まず、インフォームドコンセントを得て採取した妊娠初期絨毛組織から、当研究室で確立された酵素処理と遠沈濾過法(JCEM 2004)にてEVTを分離し、培養した。EVTにおけるリラキシン受容体の発現はRT-PCR法とimmunoblot法で検討した。培養48時間後EVTの無血清培養系にrecombinant H2リラキシン(rH2)を0.033ng/ml添加し、rH2添加24時間後のMMP-2,-3,-9mRNAとTIMP-1 mRNA発現に及ぼす影響をrealtime RT-PCRで検討した。その結果、妊娠初期絨毛EVTにおけるリラキシン受容体の発現がRT-PCR法とimmunoblot法で確認された。rH2添加によって濃度依存性に培養EVTでのMMP-2,-3,-9mRNA発現が増加し、TIMP-1mRNA発現は逆に低下することを認めた。これらの知見より、リラキシンは妊娠初期EVTにおいてMMP-2,-3,-9発現の促進とTIMP-1発現の抑制を介してEVTの脱落膜間質浸潤を促進することが示唆された。2002年1月、申請者らが米国スタンフォード大学との共同研究で、LGR7とLGR8がリラキシン受容体であることを発見した。リラキシンは1930年代に発見されたホルモンであり、子宮頚管熟化作用、恥骨結合弛緩作用、乳腺結合組織の弛緩による乳管伸長作用を持つことより妊娠分娩に密接に関与することが推察されてきた。しかし、最近までその受容体が同定されず、妊娠維持・分娩発来におけるリラキシンの役割は不明な点が多かった。本研究では、LGR7とLGR8の子宮内・胎盤内発現態度を解明し、リラキシン結合に伴うLGR7とLGR8のシグナル伝達系を分析することにより、子宮頚管熟化機序及び妊娠成立・維持におけるリラキシンとリラキシン受容体(LGR7,LGR8)の役割を明らかにしようとするものである。まず、リラキシン受容体(LGR7と8)の子宮内発現の解析において、子宮筋腫・子宮頚管・子宮体部筋層に存在することをmRNAレベルで確認した。次に妊娠初期絨毛細胞の絨毛外トロホブラストにおけるLGR7の発現をmRNA及び蛋白レベルで確認し、一方LGR8の発現は認めなかった。LGR7発現を確認した細胞における、エストロゲン・プロゲステロンなどのLGR7発現への影響を確認するため、real time RT-PCRを施行するプライマーを作成した。現在、子宮筋腫・子宮頚管・子宮体部筋層・妊娠初期絨毛細胞にエストロゲン・プロゲステロンを投与し、cDNAライブラリーを作成した。また、子宮頚管熟化機序を解明するための妊娠子宮頚管組織のサンプルについては、神戸大学病院周産母子センターにて切迫早産の管理を行った単胎妊娠症例50例及び正常単胎妊娠症例50例を対象としている。現在までのところ、分娩方法が帝王切開であった症例中informed consentが得られた切迫早産の管理を行った単胎妊娠7症例及び正常単胎妊娠10症例より血液検体・頚管組織検体を収集した。リラキシンは妊娠子宮頸管熟化作用や子宮収縮抑制作用を有することがマウス等で解明されてきた。ヒトでは、リラキシン血中濃度は妊娠初期にピークを示すが、その生理作用は明らかでない。2002年にリラキシン受容体(LGR7・LGR8)が発見され、LGR7とLGR8のヒト胎盤での発現が確認された。そこで本研究では、リラキシンの妊娠初期絨毛外トロホブラスト(extravillous trophoblast:EVT)の浸潤能に及ぼす影響をMMPとTIMPの発現動態から検討した。まず、インフォームドコンセントを得て採取した妊娠初期絨毛組織から、当研究室で確立された酵素処理と遠沈濾過法(JCEM 2004)にてEVTを分離し、培養した。EVTにおけるリラキシン受容体の発現はRT-PCR法とimmunoblot法で検討した。培養48時間後EVTの無血清培養系にrecombinant H2リラキシン(rH2)を0.033ng/ml添加し、rH2添加24時間後のMMP-2,-3,-9mRNAとTIMP-1 mRNA発現に及ぼす影響をrealtime RT-PCRで検討した。その結果、妊娠初期絨毛EVTにおけるリラキシン受容体の発現がRT-PCR法とimmunoblot法で確認された。rH2添加によって濃度依存性に培養EVTでのMMP-2,-3,-9mRNA発現が増加し、TIMP-1mRNA発現は逆に低下することを認めた。これらの知見より、リラキシンは妊娠初期EVTにおいてMMP-2,-3,-9発現の促進とTIMP- | KAKENHI-PROJECT-16659451 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16659451 |
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