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細胞の増殖・分化を共役するRB癌制遺伝子ファミリーの二元的役割
骨髄系前駆細胞株32Dは、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)添加により細胞周期停止ならびにそれに引き続く成熟顆粒球への分化が誘導される。このG-CSF依存的な顆粒球分化は、pRBファミリー(pRB,p107,p130)の機能を不活化するアデノウイルスE1A癌タンパクを発現することにより完全に阻止され、骨髄系細胞分化におけるpRBファミリーの機能的重要性が示唆された。そこで、テトラサイクリンならびにIPTGの二重制御を受ける発現プロモーター用い、32D細胞にpRBファミリー分子を誘導発現する系を樹立した。この系を用いpRBファミリーの一つp130を異所性発現させたところ、細胞増殖が抑制されるとともに核の分葉化で特徴付けられる成熟顆粒球への分化が誘導された。一方、異所性のpRB発現では分化誘導は認められない。次に人工改変分子を用い分化にかかわるp130責任領域を検討した結果、サイクリンーCDK結合領域として知られるスペーサー領域ならびにE2F結合に関与するポケット領域が分化誘導活性に必要不可欠であることが明らかとなった。さらに、細胞分化におけるE2Fの関与を明らかにするため、優性陰性型DP-1を32D細胞内に異所性発現させたところ、細胞増殖は強く抑制される一方、形態学的な細胞分化は誘導されなかった。以上の結果から、細胞分化プログラムの起動にはE2F活性抑制による細胞増殖停止に加え、p130により機能抑制される骨髄系細胞分化制御因子の関与が示唆された。本研究を通して、pRBファミリー癌抑制蛋白が細胞の増殖と分化を協調的に制御するコーディネーターとして機能することが示された。pRBファミリー分子が細胞周期進行の抑制ならびに分化プログラムの促進という二面的機能を担うことにより、増殖と分化の二律排他性が保証されるものと推察される。骨髄系前駆細胞株32Dは、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)添加により細胞周期停止ならびにそれに引き続く成熟顆粒球への分化が誘導される。このG-CSF依存的な顆粒球分化は、pRBファミリー(pRB,p107,p130)の機能を不活化するアデノウイルスE1A癌タンパクを発現することにより完全に阻止され、骨髄系細胞分化におけるpRBファミリーの機能的重要性が示唆された。そこで、テトラサイクリンならびにIPTGの二重制御を受ける発現プロモーター用い、32D細胞にpRBファミリー分子を誘導発現する系を樹立した。この系を用いpRBファミリーの一つp130を異所性発現させたところ、細胞増殖が抑制されるとともに核の分葉化で特徴付けられる成熟顆粒球への分化が誘導された。一方、異所性のpRB発現では分化誘導は認められない。次に人工改変分子を用い分化にかかわるp130責任領域を検討した結果、サイクリンーCDK結合領域として知られるスペーサー領域ならびにE2F結合に関与するポケット領域が分化誘導活性に必要不可欠であることが明らかとなった。さらに、細胞分化におけるE2Fの関与を明らかにするため、優性陰性型DP-1を32D細胞内に異所性発現させたところ、細胞増殖は強く抑制される一方、形態学的な細胞分化は誘導されなかった。以上の結果から、細胞分化プログラムの起動にはE2F活性抑制による細胞増殖停止に加え、p130により機能抑制される骨髄系細胞分化制御因子の関与が示唆された。本研究を通して、pRBファミリー癌抑制蛋白が細胞の増殖と分化を協調的に制御するコーディネーターとして機能することが示された。pRBファミリー分子が細胞周期進行の抑制ならびに分化プログラムの促進という二面的機能を担うことにより、増殖と分化の二律排他性が保証されるものと推察される。
KAKENHI-PROJECT-11139270
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11139270
構造不変の定理に基づく音声アフォーダンスの提案とそれに立脚した音声認識系の構築
音声から言語情報・パラ言語情報を抽出する場合,年齢/性別/収録聞きの違いによって付与される音響歪みは純粋なノイズとなる。従来これらのノイズに対処するために,多量の音声でイータを収集し,それらから統計的な音響モデルを構築していた。本研究では,集めることで解決を図るのではなく,これらのノイズを表現する次元を消失した音声モデリング(音声アフォーダンスを数学的に定式化することで解決を図った。音声ストリームを分布系列に変換し,時間的に離れた分布対を含め、全ての二分布距離をバタチャリヤ距離と呼ばれる距離尺度を用いて計算する。全ての2事象間距離を求める(即ち距離行列を算出する)ことは,幾何学的な構造を規定することに等しいが,距離尺度としてバタチャリヤ距離を用いることで,空間を歪ませて構造不変性を保証している。先行研究では,孤立母音の系列を対象として上記音声表象の妥当性を検討したが,本年度はこれを連続音声へと拡張して検討を行なった。この場合,状態数の増加に伴う問題が発生するが,構造不変性を部分空間においても仮定することで認識率の大幅な向上を実現した。具体的には,日本語5母音を並び替えて構成される120単語認識をタスクとして実験を行ったところ,単語単位では93%,母音単位では97%という率が得られた。これは,音声の絶対的な物理量を一切用いずに,単語が認識でき,かつ,母音を同定することが可能であることを示す。従来,音の同定には音の絶対的な特徴量を用いて来たが(故に,音響歪みが混入する),これとは全く異なる枠組みにおいて,音声の認識が可能であることを示している。この場合,モデル学習に必要な話者数は極めて少数でよい。なお,本手法は孤立音の同定は原理上できなくなる。つまり,音の同定を行なうことなく,単語の同定を行なうアルゴリズムとなる訳だが,似た症状を呈する障害として発達性dyslexiaがある文字の読み書きにのみ困難を示す症状である。本研究は,この症状を物理的に説明するモデルを提供する可能性があり,言語障害関係の学会において様々な議論を重ねることができた。音声から言語情報・パラ言語情報を抽出する場合,年齢/性別/収録聞きの違いによって付与される音響歪みは純粋なノイズとなる。従来これらのノイズに対処するために,多量の音声でイータを収集し,それらから統計的な音響モデルを構築していた。本研究では,集めることで解決を図るのではなく,これらのノイズを表現する次元を消失した音声モデリング(音声アフォーダンスを数学的に定式化することで解決を図った。音声ストリームを分布系列に変換し,時間的に離れた分布対を含め、全ての二分布距離をバタチャリヤ距離と呼ばれる距離尺度を用いて計算する。全ての2事象間距離を求める(即ち距離行列を算出する)ことは,幾何学的な構造を規定することに等しいが,距離尺度としてバタチャリヤ距離を用いることで,空間を歪ませて構造不変性を保証している。先行研究では,孤立母音の系列を対象として上記音声表象の妥当性を検討したが,本年度はこれを連続音声へと拡張して検討を行なった。この場合,状態数の増加に伴う問題が発生するが,構造不変性を部分空間においても仮定することで認識率の大幅な向上を実現した。具体的には,日本語5母音を並び替えて構成される120単語認識をタスクとして実験を行ったところ,単語単位では93%,母音単位では97%という率が得られた。これは,音声の絶対的な物理量を一切用いずに,単語が認識でき,かつ,母音を同定することが可能であることを示す。従来,音の同定には音の絶対的な特徴量を用いて来たが(故に,音響歪みが混入する),これとは全く異なる枠組みにおいて,音声の認識が可能であることを示している。この場合,モデル学習に必要な話者数は極めて少数でよい。なお,本手法は孤立音の同定は原理上できなくなる。つまり,音の同定を行なうことなく,単語の同定を行なうアルゴリズムとなる訳だが,似た症状を呈する障害として発達性dyslexiaがある文字の読み書きにのみ困難を示す症状である。本研究は,この症状を物理的に説明するモデルを提供する可能性があり,言語障害関係の学会において様々な議論を重ねることができた。
KAKENHI-PROJECT-18049018
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18049018
多重極限化におけるCuT_2X_2の金属・絶縁体転移と超伝導特性の研究
スピネル型結晶構造をもつCuT_2X_4化合物(T=遷移金属、X=カルコゲン)は、T、Xを変化させることにより、金属、絶縁体、また、超伝導体になるなど、多彩なふるまいをすることが最近発見された。本研究では、CuT_2X_4の電気抵抗や、熱膨張を多重極限(低温・高圧・強磁場)下で測定し、金属・絶縁体転移や超伝導特性の圧力依存を明らかにすることを目的とした。まず、構造相転移をともなう金属・絶縁体転移を示すCuIr_2S_4を取り上げ、2GPaまでの高圧(静水圧)下において電気抵抗と熱膨張を測定した。電気抵抗は、室温付近(スピネル型立方晶)では金属的、220K(=T_<M-I>)での不連続な(約3桁)とびを経て低温(正方晶)では半導体的ふるまいをする。T_<M-I>は圧力とともに約30K/GPaの割合で上昇し、転移点における電気抵抗のとびは次第に小さくなる傾向を示した。熱膨張の測定からは、この転移が体積の不連続な変化として検出され、T_<M-I>の圧力による上昇は電気抵抗の測定結果とよく一致した。2GPaまでのこれらの結果から室温では3GPa程度の圧力によって低温相(正方晶、絶縁体相)が誘起されると予想される。室温において高圧下のX線回折実験をおこなったところ、低圧で安定であったスピネル型立方晶構造が3GPa付近で混晶相を経て正方晶に移り変わる様子が観測された。また、この物質は合成が難しく、現段階で得られている試料は密度の低い焼結体である。そこで、より詳細な物性測定をおこなうために現在衝撃圧縮法を用いた合成実験が進行中である。スピネル型結晶構造をもつCuT_2X_4化合物(T=遷移金属、X=カルコゲン)は、T、Xを変化させることにより、金属、絶縁体、また、超伝導体になるなど、多彩なふるまいをすることが最近発見された。本研究では、CuT_2X_4の電気抵抗や、熱膨張を多重極限(低温・高圧・強磁場)下で測定し、金属・絶縁体転移や超伝導特性の圧力依存を明らかにすることを目的とした。まず、構造相転移をともなう金属・絶縁体転移を示すCuIr_2S_4を取り上げ、2GPaまでの高圧(静水圧)下において電気抵抗と熱膨張を測定した。電気抵抗は、室温付近(スピネル型立方晶)では金属的、220K(=T_<M-I>)での不連続な(約3桁)とびを経て低温(正方晶)では半導体的ふるまいをする。T_<M-I>は圧力とともに約30K/GPaの割合で上昇し、転移点における電気抵抗のとびは次第に小さくなる傾向を示した。熱膨張の測定からは、この転移が体積の不連続な変化として検出され、T_<M-I>の圧力による上昇は電気抵抗の測定結果とよく一致した。2GPaまでのこれらの結果から室温では3GPa程度の圧力によって低温相(正方晶、絶縁体相)が誘起されると予想される。室温において高圧下のX線回折実験をおこなったところ、低圧で安定であったスピネル型立方晶構造が3GPa付近で混晶相を経て正方晶に移り変わる様子が観測された。また、この物質は合成が難しく、現段階で得られている試料は密度の低い焼結体である。そこで、より詳細な物性測定をおこなうために現在衝撃圧縮法を用いた合成実験が進行中である。
KAKENHI-PROJECT-08740290
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08740290
高・中エントロピー合金の系統的比較による高濃度固溶体合金の本質的特徴の解明
本年度研究員は,主に高・中エントロピー合金の強化機構に関する研究を行った.高エントロピー合金(HEA)と中エントロピー合金(MEA)は,それぞれ5種類以上,4種類以下の合金元素を等モル分率で含有する高濃度合金である.特に単相固溶体HEAは従来の希薄合金と比較して高い強度を示すことが知られており、近年注目を集めている.しかし,HEA,MEAの強度に関しては、希薄系の固溶強化理論などでは十分に説明がつかず、HEA,MEAを含む高濃度系の強化機構は未だ明らかになっていない.本研究では,CoCrFeMnNi HEAとそのSubsystemのFCC単相MEA (CoCrFeNi, CoCrNiなど)の格子摩擦応力(転位の移動に対する基礎抵抗)を比較することで,各合金の強度に与える合金元素の効果を明らかにし,高濃度合金における強化機構について考察を行った.アーク溶解により作製した様々なMEAに対して巨大ひずみ加工を施し,焼鈍を行うことで,様々な平均粒径の完全再結晶組織を有する試料を作製した.微小引張試験片を用いて,室温で引張試験を行い力学特性を評価した.得られた降伏強度のHall-Petch関係の切片より,合金の格子摩擦応力を決定した.合金の平均原子サイズミスフィットはToda-Caraballoモデルを用いて評価した.平均原子サイズミスフィットが増加するに従い,合金の格子摩擦応力も増加することが分かった.本研究で求めた合金の強度の実験値は,平均場Labuschモデルとよく一致していた.また,HEA,MEAの平均原子サイズミスフィットは希薄合金と同等なのに対し,HEA,MEAの方が希薄合金よりも格子摩擦応力が高いことが分かった.本研究では,転位が移動する際のPeierlsポテンシャルの変化から,高濃度合金ではたらく特異な強化機構として元素間相互作用による強化機構を提唱した.平成30年度は当初の計画に沿って研究を遂行し,特に、HEA、MEAの基本的強度とも言える格子摩擦応力が従来の合金に比べて大変高く、それがHEA、MEAの高強度に寄与していることを精緻な実験により示した.またその理由の一つとして、転位のすべり運動に伴い生じる元素の配置換え、すなわち元素間の相互作用による強化メカニズムを提唱した.研究代表者を筆頭著者として,これらの内容を詳しく示した論文を国際学術誌Acta Materialia誌に投稿し、同論文が平成31年4月に掲載された.これらに加えて,本研究課題に関連した共同研究を嶺南大学(韓国),インド工科大学ハイデラバード校(インド)の研究グループと行い,平成30年度中に、研究代表者を著者とする国際学術雑誌論文3編が出版された.また,研究代表者は平成30年11月から平成31年3月までの約3.5ヶ月間、デンマーク工科大学,スイス連邦工科大学ローザンヌ校における研究留学を行ない,本研究課題に関連した複数の共同研究を開始している.以上から,本研究課題では,積極的に国際共同研究を行うことにより,当初の研究計画以上の大きな進展を見せている.本研究課題では1年目に高・中エントロピー合金(HEA, MEA)中の格子摩擦応力が従来の希薄合金に比べて非常に大きいことを実験的に明らかにした.そのような転位の大きな移動抵抗が存在する場合,HEA,MEAの結晶格子中の格子欠陥は,純金属とは異なる挙動を示す可能性がある.その場合,HEA,MEAの変形挙動および変形組織に何らかの特徴が現れる可能性がある.そこで2年目は主にHEA,MEAの変形メカニズムの解明に取り組む.また,研究を行うために必要な合金試料を素材メーカーより購入するほか,必要に応じて真空アーク溶解により合金試料を作製する.その後,1年目と同様に加工熱処理により完全再結晶組織を有するHEA,MEA試料を作成し,種々のひずみ量まで試料を変形させる.変形した試料について,所属機関保有の高分解能電子顕微鏡を用いて変形組織の観察を行う.同時に,大型放射光施設にて,変形中のその場回折実験を行うことで,HEA,MEA試料の変形に伴う内部の変形組織発達を定量的に評価する.なお,これらの研究はデンマーク工科大学の研究グループとの共同研究として行うものであり,今年度は議論のために彼らのもとを訪れる予定である.そのための出張費を研究経費に計上した.さらに,実験結果からHEA,MEAの変形メカニズムおよび,大きな移動抵抗が存在する環境下での格子欠陥の振る舞い方について考察する.また,得られた成果を世界に発信し,他の研究者と多くの議論を行うために国内外の複数の会議で発表するほか,最後に成果をまとめ,国際論文誌に発表するための費用を研究経費に計上した.本年度研究員は,主に高・中エントロピー合金の強化機構に関する研究を行った.高エントロピー合金(HEA)と中エントロピー合金(MEA)は,それぞれ5種類以上,4種類以下の合金元素を等モル分率で含有する高濃度合金である.特に単相固溶体HEAは従来の希薄合金と比較して高い強度を示すことが知られており、近年注目を集めている.しかし,HEA,MEAの強度に関しては、希薄系の固溶強化理論などでは十分に説明がつかず、HEA,MEAを含む高濃度系の強化機構は未だ明らかになっていない.本研究では,CoCrFeMnNi HEAとそのSubsystemのFCC単相MEA (CoCrFeNi, CoCrNiなど)の格子摩擦応力(転位の移動に対する基礎抵抗)を比較することで,各合金の強度に与える合金元素の効果を明らかにし,高濃度合金における強化機構について考察を行った.
KAKENHI-PROJECT-18J20766
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J20766
高・中エントロピー合金の系統的比較による高濃度固溶体合金の本質的特徴の解明
アーク溶解により作製した様々なMEAに対して巨大ひずみ加工を施し,焼鈍を行うことで,様々な平均粒径の完全再結晶組織を有する試料を作製した.微小引張試験片を用いて,室温で引張試験を行い力学特性を評価した.得られた降伏強度のHall-Petch関係の切片より,合金の格子摩擦応力を決定した.合金の平均原子サイズミスフィットはToda-Caraballoモデルを用いて評価した.平均原子サイズミスフィットが増加するに従い,合金の格子摩擦応力も増加することが分かった.本研究で求めた合金の強度の実験値は,平均場Labuschモデルとよく一致していた.また,HEA,MEAの平均原子サイズミスフィットは希薄合金と同等なのに対し,HEA,MEAの方が希薄合金よりも格子摩擦応力が高いことが分かった.本研究では,転位が移動する際のPeierlsポテンシャルの変化から,高濃度合金ではたらく特異な強化機構として元素間相互作用による強化機構を提唱した.平成30年度は当初の計画に沿って研究を遂行し,特に、HEA、MEAの基本的強度とも言える格子摩擦応力が従来の合金に比べて大変高く、それがHEA、MEAの高強度に寄与していることを精緻な実験により示した.またその理由の一つとして、転位のすべり運動に伴い生じる元素の配置換え、すなわち元素間の相互作用による強化メカニズムを提唱した.研究代表者を筆頭著者として,これらの内容を詳しく示した論文を国際学術誌Acta Materialia誌に投稿し、同論文が平成31年4月に掲載された.これらに加えて,本研究課題に関連した共同研究を嶺南大学(韓国),インド工科大学ハイデラバード校(インド)の研究グループと行い,平成30年度中に、研究代表者を著者とする国際学術雑誌論文3編が出版された.また,研究代表者は平成30年11月から平成31年3月までの約3.5ヶ月間、デンマーク工科大学,スイス連邦工科大学ローザンヌ校における研究留学を行ない,本研究課題に関連した複数の共同研究を開始している.以上から,本研究課題では,積極的に国際共同研究を行うことにより,当初の研究計画以上の大きな進展を見せている.本研究課題では1年目に高・中エントロピー合金(HEA, MEA)中の格子摩擦応力が従来の希薄合金に比べて非常に大きいことを実験的に明らかにした.そのような転位の大きな移動抵抗が存在する場合,HEA,MEAの結晶格子中の格子欠陥は,純金属とは異なる挙動を示す可能性がある.その場合,HEA,MEAの変形挙動および変形組織に何らかの特徴が現れる可能性がある.そこで2年目は主にHEA,MEAの変形メカニズムの解明に取り組む.また,研究を行うために必要な合金試料を素材メーカーより購入するほか,必要に応じて真空アーク溶解により合金試料を作製する.その後,1年目と同様に加工熱処理により完全再結晶組織を有するHEA,MEA試料を作成し,種々のひずみ量まで試料を変形させる.変形した試料について,所属機関保有の高分解能電子顕微鏡を用いて変形組織の観察を行う.同時に,大型放射光施設にて,変形中のその場回折実験を行うことで,HEA,MEA試料の変形に伴う内部の変形組織発達を定量的に評価する.なお,これらの研究はデンマーク工科大学の研究グループとの共同研究として行うものであり,今年度は議論のために彼らのもとを訪れる予定である.そのための出張費を研究経費に計上した.
KAKENHI-PROJECT-18J20766
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J20766
高いスピン多重度の励起状態を前駆体とする反応中間体のスピンダイナミクスの研究
1.分子内光電子移動反応により生成する電荷分離状態の減衰挙動に対するスピン多重度の効果を検討するために、電子供与体-架橋-受容体(D-B-A)および受容体にTEMPOラジカルを結合したD-B-A-Rを合成し、種々の溶媒中で光反応挙動を比較検討した。いずれの場合も蛍光消光、過渡吸収スペクトルの測定によりDとして用いた亜鉛ポルフィリンの励起1重項状態からAとして用いたナフタレンジイミドへ電子移動が0.7-0.9の量子収率で起こり、Rは光電子移動過程にはほとんど影響しないことが確認された。2.生成した電荷分離状態の減衰速度は磁場効果を示し、架橋部分が短いD^+-Bs-A^-ではD^+とA^-の間の交換相互作用が大きい(|2J|=0.9T)ことがわかった。D^+-Bs-A^--Rではスピン状態間のエネルギー分裂が、D^+-Bs-A^-の場合とは異なり項間交差が効率よく起こるため、減衰速度及び磁場依存性に差が見られた。また、低極性溶媒ほど逆電子移動速度は小さく、Marcus理論の逆転領域に位置することが明かになった。3.交換相互作用および電子移動反応速度に及ぼす反応中心間の距離の効果を調べるため、長い架橋を持つD-B_L-A, D-B_L-A-Rについても光電子移動反応を行った。ab initio(HF/3-21Gレベル)計算によりD^+とA^-の距離はD^+-B_L-A^-では18A、D^+-Bs-A^-では14Aと見積もられた。D-B_L-Aでは光電子移動速度はD-Bs-Aとほぼ同じであったが、過渡吸収の減衰や磁場効果を比較すると逆電子移動速度およびD^+-A^-交換相互作用の大きさはD^+-Bs-A^-(-R)よりずっと小さいという結果が得られ、これは主としてD^+-A^-距離の増加による電子的相互作用の減少によるものと考えられる。光誘起電子移動反応により生成する3つの不対電子を有する中間体のスピンダイナミクスを検討するために、電子供与体として亜鉛ポルフィリン(ZnP),受容体としてナフタレンイミド(NIm),安定ラジカルとしてTEMPO(R・)を連結した1R・,2R・と対照化合物1,2を合成した。これらの化合物のZnPをC_6H_6,dioxane,THF等の溶媒中で光励起すると蛍光の分子内消光が起こり、ZnP^<・+>とNIm^<・->に帰属される過渡吸収スペクトルが観測されたことから、^1ZnP^*からNImへの電子移動により電荷分離状態(CS)が生成していることが示された。1由来のCSについては減衰速度の磁場依存性からznP^<・+>とNIm^<・->の間の交換相互作用が大きく(|2J|/gβ=0.9T)、ゼロ磁場で1重項-3重項変換が抑制されていることがわかった。一方、1R・由来のCSではゼロ磁場で2重項-4重項変換が効率よく起こっており、磁場強度を0Tから1.7Tまで増加するに連れてスピン緩和速度が減少した。2由来のCSでは|2J|が小さくその減衰挙動は1重項と3重項が縮重したビラジカルに特有の磁場効果を示し、2R・由来のCSの減衰は2由来のものより速く、スピン変換がより速いことが示された。以上より3スピン系は2スピン系と比較して(i)ゼロ磁場でのエネルギー準位が異なる、(ii)スピン変換がより速いことが明らかになった。1.分子内光電子移動反応により生成する電荷分離状態の減衰挙動に対するスピン多重度の効果を検討するために、電子供与体-架橋-受容体(D-B-A)および受容体にTEMPOラジカルを結合したD-B-A-Rを合成し、種々の溶媒中で光反応挙動を比較検討した。いずれの場合も蛍光消光、過渡吸収スペクトルの測定によりDとして用いた亜鉛ポルフィリンの励起1重項状態からAとして用いたナフタレンジイミドへ電子移動が0.7-0.9の量子収率で起こり、Rは光電子移動過程にはほとんど影響しないことが確認された。2.生成した電荷分離状態の減衰速度は磁場効果を示し、架橋部分が短いD^+-Bs-A^-ではD^+とA^-の間の交換相互作用が大きい(|2J|=0.9T)ことがわかった。D^+-Bs-A^--Rではスピン状態間のエネルギー分裂が、D^+-Bs-A^-の場合とは異なり項間交差が効率よく起こるため、減衰速度及び磁場依存性に差が見られた。また、低極性溶媒ほど逆電子移動速度は小さく、Marcus理論の逆転領域に位置することが明かになった。3.交換相互作用および電子移動反応速度に及ぼす反応中心間の距離の効果を調べるため、長い架橋を持つD-B_L-A, D-B_L-A-Rについても光電子移動反応を行った。ab initio(HF/3-21Gレベル)計算によりD^+とA^-の距離はD^+-B_L-A^-では18A、D^+-Bs-A^-では14Aと見積もられた。
KAKENHI-PROJECT-12740332
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12740332
高いスピン多重度の励起状態を前駆体とする反応中間体のスピンダイナミクスの研究
D-B_L-Aでは光電子移動速度はD-Bs-Aとほぼ同じであったが、過渡吸収の減衰や磁場効果を比較すると逆電子移動速度およびD^+-A^-交換相互作用の大きさはD^+-Bs-A^-(-R)よりずっと小さいという結果が得られ、これは主としてD^+-A^-距離の増加による電子的相互作用の減少によるものと考えられる。
KAKENHI-PROJECT-12740332
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12740332
マイクロ流体デバイスのための機能性表面の最適設計
近年,マイクロ流体デバイスにおいて電気的制御による液滴操作技術に対する関心が高まっている.本研究では, MEMSピラー構造を用いた超撥液表面での濡れ性・電気的安定性の現象解明とその最適設計に基づいた液滴デバイスの開発に取り組んでいる.現在までに, MEMS技術を用いて製作される周期的ナノピラー構造を用いた超撥液性表面を用いた液滴輸送において,液滴とピラー表面間に空気層を形成するCassie-Baxter状態を保持する観点から,液滴の静的・動的接触角ヒステリシス特性および電圧印可に対する液滴速度をモデル予測し,抵抗力の評価を行った.特に,固体面積割合を一定とした周期的ナノピラー構造を形成し,静的・動的接触角特性に及ぼすピッチの影響を実験的に調査した.平成25年度には, MEMSピラー構造の静的/動的接触角特性を種々の液体に対して系統的に評価するとともに,従来知見の極めて少ない電場の重畳する場におけるCassie-Baxter状態の静電気的安定特性に対する実用モデルを開発し,電気的制御による高速液滴輸送を実現するための検討を実験および理論解析の両面から推進した.今後,現在までに開発したMEMSピラー構造を超撥水/超撥液性表面に応用し,電気的制御による高速液滴操作技術の開発に取り組むことを予定している. MEMSピラー構造の超撥液特性に対する系統的評価を継続し,デバイス応用への基礎データを整備するとともに機能性表面を実現するためのMEMSプロセスに対する検討を進め,低電圧での高速液滴操作が可能なマイクロ流体デバイス応用に向けた最適設計指針を獲得することを目指す.平成25年度にはMEMSピラー面における濡れ性・電気的安定性を系統的に評価し,電気的安定性に対する理論モデルを開発している.研究目的の達成に向け,おおむね順調に研究が進展していると考えられる.今後, MEMS技術により製作された実デバイスを用いた評価実験,および理論的・解析的なアプローチによる検討を進めることで,本研究課題をさらに推進する.近年,マイクロ流体デバイスにおいて電気的制御による液滴操作技術に対する関心が高まっている.本研究では,MEMSピラー構造を用いた超撥液表面での濡れ性・電気的安定性の現象解明とその最適設計に基づいた液滴デバイスの開発に取り組んでいる.平成24年度には,MEMS技術を用いて製作される周期的ナノピラー構造を用いた超撥水性表面を用いた液滴輸送において,液滴とピラー表面間に空気層を形成するCassie-Baxter状態を保持する観点から,液滴の静的・動的接触角ヒステリシス特性および電圧印可に対する液滴速度をモデル予測し,抵抗力の評価を行った.特に,固体面積割合を一定とした周期的ナノピラー構造を形成し,静的・動的接触角特性に及ぼすピッチの影響を実験的に調査した.本研究では,電子線描画を用いてデバイスを試作し,その加工精度を向上する観点からプロセス条件の最適化を行った.また,電気的制御による液滴輸送デバイスにおける液滴速度と抵抗力成分の関係を解析モデルにより明らかにした.本実験およびモデル評価を通じて,動的接触角ヒステリシスがピッチの減少とともに低下すること,および液滴の高速移動時には接触線抵抗が支配的となることが示唆された.今後,現在までに開発した周期的ピラー構造を用いた超撥水/超撥液性表面に応用し,電気的制御による濡れ性の可逆的変化(可逆的スイッチング機構)を用いた高速液滴輸送を実現するための理論的検討を進めるとともに,濡れ性の可逆的変化機構を付加したMEMSデバイスの製作に取り組むことを予定している.近年,マイクロ流体デバイスにおいて電気的制御による液滴操作技術に対する関心が高まっている.本研究では, MEMSピラー構造を用いた超撥液表面での濡れ性・電気的安定性の現象解明とその最適設計に基づいた液滴デバイスの開発に取り組んでいる.現在までに, MEMS技術を用いて製作される周期的ナノピラー構造を用いた超撥液性表面を用いた液滴輸送において,液滴とピラー表面間に空気層を形成するCassie-Baxter状態を保持する観点から,液滴の静的・動的接触角ヒステリシス特性および電圧印可に対する液滴速度をモデル予測し,抵抗力の評価を行った.特に,固体面積割合を一定とした周期的ナノピラー構造を形成し,静的・動的接触角特性に及ぼすピッチの影響を実験的に調査した.平成25年度には, MEMSピラー構造の静的/動的接触角特性を種々の液体に対して系統的に評価するとともに,従来知見の極めて少ない電場の重畳する場におけるCassie-Baxter状態の静電気的安定特性に対する実用モデルを開発し,電気的制御による高速液滴輸送を実現するための検討を実験および理論解析の両面から推進した.今後,現在までに開発したMEMSピラー構造を超撥水/超撥液性表面に応用し,電気的制御による高速液滴操作技術の開発に取り組むことを予定している. MEMSピラー構造の超撥液特性に対する系統的評価を継続し,デバイス応用への基礎データを整備するとともに機能性表面を実現するためのMEMSプロセスに対する検討を進め,低電圧での高速液滴操作が可能なマイクロ流体デバイス応用に向けた最適設計指針を獲得することを目指す.平成24年度にMEMSピラー構造を用いた超撥水表面での濡れ性・電気的安定性を系統的に評価し,研究目的を達成するための基礎的知見が蓄積されており,おおむね順調に研究が進展していると考えられる.
KAKENHI-PROJECT-12F02732
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12F02732
マイクロ流体デバイスのための機能性表面の最適設計
平成25年度にはMEMSピラー面における濡れ性・電気的安定性を系統的に評価し,電気的安定性に対する理論モデルを開発している.研究目的の達成に向け,おおむね順調に研究が進展していると考えられる.今後,MEMS技術により製作された実デバイスを用いた評価実験,および理論的・解析的なアプローチによる検討を進めることで,本研究課題をさらに推進する.今後, MEMS技術により製作された実デバイスを用いた評価実験,および理論的・解析的なアプローチによる検討を進めることで,本研究課題をさらに推進する.
KAKENHI-PROJECT-12F02732
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タンパク質モーターの分子エナジェティックス
研究代表者は,ミオシンのモータードメインS1によるATP分解反応を誘電分散測定法によって解析した.その結果,S1に拘束されている約2,100個の水分子のうち6%にあたる約120分子がATP加水分解にともなって遊離され,Pi遊離とともに再び拘束されることが明らかになった.すなわち,S1-ATP分解サイクルは分子表面に存在する疎水性残基の溶媒露出度の変化と共役していることが明らかになった.若林(健)は冷電界放出型電子銃を備えた電子顕微鏡を用いたホログラフィック像再構成法を開発し,生きたミオシン単一分子について,ヌクレオチドを結合していないミオシン頭部及びADPやADP・Piを結合した頭部をそれぞれ可視化するに成功した.須藤は,細胞性粘菌Dictyostelium discoideumのミオシンIIの遺伝子操作によりモーター活性を保持している最小ドメインを作成し,X線結晶解析を行い,結合しているヌクレオチドによる構造の相違点を3Dレベルで明らかにした.安藤はHMMのS2部先端にビオチンを導入し,ウルトラアビジンをコートした蛍光性アクリルアミドビーズに結合させて1分子を可視化した.また,原子間力顕微鏡をもちいてHMMとアクチンとの間に働く力を計測することに成功した.片山は高い空間および時間分解能を有するマイカ細片/急速凍結フリーズレプリカ電子顕微鏡法によって滑り運動しているミオシン頭部の構造がアクチン,ATPとの結合によって微妙に変化していることを明らかにした.柳田は,各種モーター一分子系の張力,変位ゆらぎの解析,一分子ATP分解反応の解析,一分子内エネルギー転移反応の解析を行い,タンパク質モーターによる化学-力学エネルギー変換に関する新しい考えを提唱した.研究代表者は,ミオシンのモータードメインS1によるATP分解反応を誘電分散測定法によって解析した.その結果,S1に拘束されている約2,100個の水分子のうち6%にあたる約120分子がATP加水分解にともなって遊離され,Pi遊離とともに再び拘束されることが明らかになった.すなわち,S1-ATP分解サイクルは分子表面に存在する疎水性残基の溶媒露出度の変化と共役していることが明らかになった.若林(健)は冷電界放出型電子銃を備えた電子顕微鏡を用いたホログラフィック像再構成法を開発し,生きたミオシン単一分子について,ヌクレオチドを結合していないミオシン頭部及びADPやADP・Piを結合した頭部をそれぞれ可視化するに成功した.須藤は,細胞性粘菌Dictyostelium discoideumのミオシンIIの遺伝子操作によりモーター活性を保持している最小ドメインを作成し,X線結晶解析を行い,結合しているヌクレオチドによる構造の相違点を3Dレベルで明らかにした.安藤はHMMのS2部先端にビオチンを導入し,ウルトラアビジンをコートした蛍光性アクリルアミドビーズに結合させて1分子を可視化した.また,原子間力顕微鏡をもちいてHMMとアクチンとの間に働く力を計測することに成功した.片山は高い空間および時間分解能を有するマイカ細片/急速凍結フリーズレプリカ電子顕微鏡法によって滑り運動しているミオシン頭部の構造がアクチン,ATPとの結合によって微妙に変化していることを明らかにした.柳田は,各種モーター一分子系の張力,変位ゆらぎの解析,一分子ATP分解反応の解析,一分子内エネルギー転移反応の解析を行い,タンパク質モーターによる化学-力学エネルギー変換に関する新しい考えを提唱した.研究代表者ならびに分担者による主な成果について述べる.研究代表者は,筋収縮の可逆的阻害剤である2,3-butanedione monoximeがATPとミオシンモーターの相互作用のキネティックスには質的な変化は与えないが,アクチンとの相互作用を弱めるとともにエネルギー論的な特徴を大幅に変調することを見いだした.また,誘電分散測定によって,ATP結合,加水分解にともなう水分子の解離結合があることを明確に示した.若林克三は,ミオシンモーターとATPの相互作用にともなう分子構造変化をX線小角散乱法で解析し,ADPと無機りん酸複合体での分子ベンディングが最も大きくなることを示した.柳田はミオシン/アクチンフィラメントのin vitro運動系の張力ゆらぎの解析から1分子ミオシンの発生する変位と張力を測定し,負荷の減少とともにスパイク張力が減少する一方,変位が大きくなることを示した.片山は,マイカフレークを用いた急速凍結法を改良して,滑り運動を行っているミオシン分子の形状を観察し,結合しているヌクレオチドの種類によってミオシンモーターの構造が変化することを見いだした.安藤は,タンパク質分子と化学架橋が可能なポリアクリルアミド超微粒子を調製し,モータータンパク質1分子の可視化を試みた.須藤は,ミオシンモーターの遺伝子工学的改変を行い,化学一力学共役に必須な最小限の分子構造を推定に成功した.佐野は,カルジュリン(CD)/メリチン(M)の相互作用に対するCaイオンの効果を迅速反応法で解析し,CDとCaの結合解離とCDとMの結合解離のキネティックスとが一致しないことを示した.他の分担者も各自の研究テーマを発展させ,学会発表,論文投稿によって成果を発表している.研究代表者ならびに分担者による主な成果について述べる.研究代表者は,アルキル鎖長がC4以上のアルコールがミオシンモータードメイン(S1)の50Kドメインに特異的かつ可逆的に作用して,1)分子表面の疎水性を微小ではあるが増大させる;2)しかし,トリプシン消化に対する感受性は変化しない程度の構造変化を引き起こし,3)Mg-ATPaseを活性化する;4)アクトS1ATPase活性化におけるアクチンに対するKmを減少させることを見い出した.
KAKENHI-PROJECT-06304052
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タンパク質モーターの分子エナジェティックス
また,誘電分散測定によって,ATP結合,加水分解にともないS1分子表面の疎水性水和が約10%変化することを見い出し,ATPaseサイクルとS1表面の局所的な疎水・親水転移サイクルが共役していることを明らかにした.これらの結果と,従前から知られているミオシン中間体のエネルギー論/速度論的特性をあわせて,タンパク質モーターによる化学-力学エネルギー変換における方向性の出現に関する仮説を形成した.柳田は,キネシンモーター一分子系の張力,変位ゆらぎの解析からモーターのステップサイズは8nmの倍数になっていることを明らかにした.すなわち,1ATPサイクルの間にモーター分子は負荷に応じて,8xn nmの滑りを行うことが示された.また,ミオシンモーターについてエバネッセント光を用いた分子動態観測によって,ミオシン1分子が1分子の蛍光性ATPを結合し,分解し,生成物を解離する様子を明らかにすることにも成功した.須藤は,遺伝子工学的手法により構築した,粘菌ミオシン頭部の結晶解析を,アメリカのRaymentらと協力して行い,結合しているヌクレオチドの違いによって,S1の大きな構造変化はないが,内部の水素結合の数に変化のあることを明らかにした.他の分担者も各自の研究テーマを発展させ,学会講演,論文投稿によって成果を公表している.研究代表者は,ミオシンのモータードメインS1によるATP分解反応を誘電分散測定法によって解析した.その結果,S1に拘束されている約2,100個の水分子のうち6%にあたる約120分子がATP加水分解にともなって遊離され、Pi遊離とともに再び拘束されることが明らかになった.すなわち,S1-ATP分解サイクルは分子表面に存在する疎水性残基の溶媒露出度の変化と共役していることが明らかになった.若林(健)は冷電界放出型電子銃を備えた電子顕微鏡を用いたホログラフィック像再構成法を開発し,生きたミオシン単一分子について,ヌクレオチドを結合していないミオシン頭部及びADPやADP・Piを結合した頭部をそれぞれ可視化するに成功した.須藤は,細胞性粘菌Dictyostlium discoideumのミオシンIIの遺伝子操作によりモーター活性を保持している最小ドメインを作成し,X線結晶解析を行い,結合しているヌクレオチドによる構造の相違点を3Dレベルで明らかにした.安藤はHMMのS2部先端にビオチンを導入し,ウルトラアビジンをコートした蛍光性アクリルアミドビーズに結合させて1分子を可視化した.また,原子間力顕微鏡をもちいてHMMとアクチンとの間に働く力を計測することに成功した.片山は高い空間および時間分解能を有するマイカ細片/急速凍結フリーズレプリカ電子顕微鏡法によって滑り運動しているミオシン頭部の構造がアクチン,ATPとの結合によって微妙に変化していることを明らかにした.柳田は,各種モーター一分子系の張力,変位ゆらぎの解析,一分子ATP分解反応の解析,一分子内エネルギー転移反応の解析を行い,タンパク質モーターによる化学-力学エネルギー変換に関する新しい考えを提唱した.
KAKENHI-PROJECT-06304052
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B群レンサ球菌による周産期感染症発症予防法確立に向けての試み
日本人女性の腟分泌物から分離されるB群溶血性レンサ球菌(GBS)は、妊婦49例では分離頻度の高い順に、III型12株(24.5%)、V型7株(24.3%)、Ia型6株(12.2%)、VI型5株(10.2%)など、非妊婦49例ではIa型8株(16.3%)、Ib型7株(14.3%)、III型6株(12.2%)、V型6株(12.2%)などと血清型V型が増加していた。また、日本人女性でも腟内から初めてペニシリンG低感受性のGBSが検出された。さらに、日本人で分離頻度が高いGBS血清型VI型の細胞付着性および細胞侵入性は高く、GBS血清型III型とは異なる免疫応答が存在することが明らかになった。平成23年度から平成24年度にかけて実施してきた疫学的研究により、周産期領域では、B群溶血性連鎖球菌(GBS)の血清型Ia, Ib, III、V型が侵襲性感染症を引き起こす可能性が高いこと、周産期GBS感染症発症予防のガイドラインにゴールドスタンダード薬として記載されているペニシリン系抗菌薬に低感受性を示す株も存在することなどが明らかになってきた。疫学研究データによると日本人女性腟内には、GBS血清型VI型、VIII型の常在頻度が高いにもかかわらず、これらの血清型が侵襲性感染症を引き起こす頻度が低い原因を検討することは、将来のGBSワクチン開発にも有用と判断されることから、培養細胞A549を用いてGBSの細胞付着性および侵入性に関して基礎的検討を実施した。実験方法としては羊膜細胞を用いる予定であったが、予備実験において羊膜細胞を用いてGBSの付着試験を行うと羊膜細胞が死滅し、ダメージが大きいため使用する細胞を羊膜細胞からA549に変更して検討した。その結果、GBS血清型VI型やVIII型は、GBS血清型III型と比較して、細胞付着性は有意に高いものの、細胞侵入性は有意に低いことが明らかになった。この事実は、GBS血清型VI型やVIII型は、標的細胞に容易に付着して抗体産生を促す能力が高いが、病原性は低い可能性を示している。ペニシリン低感受性GBSは、日本では女性性器感染症からは分離されていなかったが、我々の検討により日本でもはじめてペニシリン低感受性GBSが分離されたことは特筆すべきことであり今後の経過を観察する必要があると同時に、ペニシリン低感受性GBSの早期検出法を開発する必要性が示唆され、今年度の重要な研究課題の一つとして進める予定である。日本人女性の腟分泌物から分離されるB群溶血性連鎖球菌group B Streptococcus:GBSは、妊婦では、分離頻度の高い順に、III型12株(24.5%)、V型7株(24.3%)、Ia型6株(12.2%)、VI型5株(10.2%)など、非妊婦では、Ia型8株(16.3%)、Ib型7株(14.3%)、III型6株(12.2%)、V型6株(12.2%)などとこれまでの疫学とは大きく変化している。日本人女性から分離されるGBSの血清型は、従来よりVI型、VIII型が中心であったが、今回の研究結果から、近年は欧米と同様にIII型、Ia型、Ib型、V型が急増していることが明らかになり、今後の継続的な監視が必要である。GBSの血清型Ia, Ib, III型は侵襲型であるとされているが、V型も侵襲性感染症を引き起こすことが明らかにされており、その意味でも継続的な疫学研究が望まれる。また、周産期GBS感染症発症予防のガイドラインではゴールドスタンダード薬としてペニシリン系抗菌薬が記載されているが、今回の我々の研究から日本人女性でも初めて腟内からペニシリン低感受性のGBSが検出されたことは特筆すべき事実である。ペニシリン低感受性GBSが増加すれば、周産期GBS感染症発症予防のガイドラインを改訂する必要性も出てくると考えられるため、GBSの薬剤耐性に関するサーベイランスも必須であることが明らかになった。なお、今回検出されたペニシリン耐性GBSの耐性機構は点変異であることが明らかになったことから、臨床現場では抗菌薬の適正使用の啓発がきわめて重要であることも示唆された。日本人女性の腟分泌物から分離されるB群溶血性レンサ球菌(GBS)は、妊婦49例では分離頻度の高い順に、III型12株(24.5%)、V型7株(24.3%)、Ia型6株(12.2%)、VI型5株(10.2%)など、非妊婦49例ではIa型8株(16.3%)、Ib型7株(14.3%)、III型6株(12.2%)、V型6株(12.2%)などと血清型V型が増加していた。また、日本人女性でも腟内から初めてペニシリンG低感受性のGBSが検出された。さらに、日本人で分離頻度が高いGBS血清型VI型の細胞付着性および細胞侵入性は高く、GBS血清型III型とは異なる免疫応答が存在することが明らかになった。B群溶血性連鎖球菌(GBS)は、絨毛膜羊膜炎、早産、産褥子宮内膜炎・筋層炎、新生児肺炎・髄膜炎などの原因となる。
KAKENHI-PROJECT-23591485
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23591485
B群レンサ球菌による周産期感染症発症予防法確立に向けての試み
2009年8月から2010年12月に愛知医科大学病院でGBSと同定された臨床分離株173株を対象として血清型および薬剤感受性について検討した。GBSの血清型はB群溶血連鎖球菌型別用免疫血清「生検」(デンカ生検)を用いて分類した。また、薬剤感受性試験はCLSI法に従った微量液体希釈法により測定した。GBSの血清型はIa型18株(10.4%),Ib型47株(27.2%),II型7株(4.0%),III型18株(10.4%),IV型5株(2.9%),V型26株(15.0%),VI型19株(11.0%),VII型1株(0.6%),VIII型3株(1.7%),型別不能29株(16.8%)であった。従来日本で主要な血清型であるとされてきたVI型、VIII型の比率が減少傾向にある一方で、V型が増加傾向になり、V型GBSが日本ではemergent pathogenである可能性が示唆された。薬剤感受性試験ではABPC、IPM、CTRX、CTX、CFPM、CVA/AMPC、STではすべての株が感性と判定された。EMは、感性86.7%、MINOは感性67.6%であった。LVFXは、耐性率39.9%と耐性化傾向が認められた。LVFX耐性GBS血清型は、Ib42株(61.0%)、型別不能14株(20.3%)、Ia7株(10.1%)などであった。GBS感染症の周産期予防に使用されている抗菌薬であるペニシリン系薬の耐性は認めなかったが、キノロン薬耐性化傾向を認め、今後の動向に注意を払う必要があると考えられた。また、LVFX耐性株では血清型Ib型が6割を占めており、薬剤耐性と血清型の関連性について今後も検討する必要があると考えられた。GBSの細胞接着性および細胞侵入性が、血清型により異なることが明らかになり、そのメカニズムについて解明が進んでいる。ペニシリン低感受性GBSに関して、分子生物学的解析も順調に進んでいる。GBSの疫学解析が順調に進展しており、全妊婦のGBS保菌検査の必要性、保菌検査の至適時期・採取部位・培養手技、血清型別抗体価スクリーニングの有用性、GBS保菌妊婦に対する抗菌薬投与の必要性について明らかになりつつある。GBSの細胞接着性および侵入性のメカニズムの解明は、GBSワクチンの開発に繋がる可能性が高いため、各血清型によるサイトカイン産生能の違いについて検討を進めていく予定である。ペニシリン低感受性GBSの迅速診断方法について、質量分析法による解析の可能性を検討する予定である。これまでのGBSに関する疫学解析により、日本において血清型V型がemerging pathogenであることが明らかにされつつあり、今後血清型V型に関する研究を進める必要性が出てきている。また、これまでに検討対象としたGBS173株以外の臨床分離GBSの中に、一次判定でペニシリン低感受性株と判定される株があり、これらの株について、慎重に検討していく必要性がある。各血清型によるサイトカイン産生能の違いについて検討を進める。ペニシリン低感受性GBSの迅速診断方法について、質量分析法による解析の可能性を検討する。血清型V型と判定された株について詳細な検討を実施するとともに、検討するGBSの菌株数を増加させて、本当に血清型V型がemerging pathogenにあたるのかどうかの検討を進める予定である。さらに、追加検討対象とする予定のGBSに関して、一次判定でペニシリン低感受性と判定された株については、分子疫学的な解析も進める予定である。
KAKENHI-PROJECT-23591485
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新しい作用機序をもつ天然由来の免疫抑制物質の探索
現在開発・上市されている免疫抑制剤は、作用点の類似性、副作用などの問題を抱えており、より安全性が高く作用点の異なる新規物質の開発が強く望まれている。そこで本研究では、新しい作用機序に基づく免疫抑制活性をもつ新規物質を天然物から探索することを目的とする。天然物の探索素材としては、植物のみならず、海洋生物(海綿、ホヤ等の無脊椎動物)、および細菌・真菌類などの陸棲および海洋性微生物をとりあげ、マウスリンパ球混合培養反応(MLR)を指標として、活性物質の探索を行った。以下に本年度の研究成果の概要を報告する。沖縄等において採取した海綿動物、ホヤ類などの種々の海洋無脊椎動物、微細藻類、細菌、真菌等の海洋微生物、陸棲の微生物、およびブラジル産薬用植物を材料として、これらの抽出物について、マウスリンパ球混合培養反応を指標としてスクリーニングを行った結果、いくつかの抽出物に活性が認められた。これらの抽出物について各種クロマトグラフィーを用いて分離、精製することにより新規化合物を単離した。分離した新規化合物に対して、各種NMRおよびMSスペクトルならびに誘導反応等を用いて化学構造を明らかにした。ブラジル産薬用植物からは新規ラブダン型ジテルペンおよび新規含窒素クレロダン型ジテルペンを、海洋性真菌からは新規1,3-ジオキソラン化合物を見い出した。現在開発・上市されている免疫抑制剤は、作用点の類似性、副作用などの問題を抱えており、より安全性が高く作用点の異なる新規物質の開発が強く望まれている。そこで本研究では、新しい作用機序に基づく免疫抑制活性をもつ新規物質を天然物から探索することを目的とする。天然物の探索素材としては、植物のみならず、海洋生物(海綿、ホヤ等の無脊椎動物)、および細菌・真菌類などの陸棲および海洋性微生物をとりあげ、マウスリンパ球混合培養反応(MLR)を指標として、活性物質の探索を行った。以下に本年度の研究成果の概要を報告する。マウスリンパ球混合培養反応を指標としてスクリーニングを行った結果、病原性の放線菌Nocardiabrasiliensisより、新規テルペノイド化合物ブラシリカルジンAを単離し、二次元NMRデータ、分解反応、改良Mosher法ならびにp-ブロモベンゾイル体のX-線結晶解析により、絶対立体配置を含めてブラシリカルジンAの構造を決定した。ブラシリカルジンAにはマウスリンパ球混合培養反応において強い阻害活性(IC_<50>,0.11μg/mL)が認められた。ブラシリカルジンAは天然には稀な3環性ジテルペンであるイソコパラン骨格に二糖とアミノ酸が結合したユニークな化合物である。一方、D-[1-^<13>C]グルコースを添加して培養を行い、得られたブラシリカルジンAの^<13>C NMRデータより、イソコパラン骨格のC-2,C-6,C-11,C-15,C-19,C-21,C-22およびC-23が選択的に^<13>C標識されていることがわかった。このことからブラシリカルジンAのイソコパラン骨格部分は非メバロン酸経路で生合成されていることが示された。現在開発・上市されている免疫抑制剤は、作用点の類似性、副作用などの問題を抱えており、より安全性が高く作用点の異なる新規物質の開発が強く望まれている。そこで本研究では、新しい作用機序に基づく免疫抑制活性をもつ新規物質を天然物から探索することを目的とする。天然物の探索素材としては、植物のみならず、海洋生物(海綿、ホヤ等の無脊椎動物)、および細菌・真菌類などの陸棲および海洋性微生物をとりあげ、マウスリンパ球混合培養反応(MLR)を指標として、活性物質の探索を行った。以下に本年度の研究成果の概要を報告する。沖縄等において採取した海綿動物、ホヤ類などの種々の海洋無脊椎動物、微細藻類、細菌、真菌等の海洋微生物、陸棲の微生物、およびブラジル産薬用植物を材料として、これらの抽出物について、マウスリンパ球混合培養反応を指標としてスクリーニングを行った結果、いくつかの抽出物に活性が認められた。これらの抽出物について各種クロマトグラフィーを用いて分離、精製することにより新規化合物を単離した。分離した新規化合物に対して、各種NMRおよびMSスペクトルならびに誘導反応等を用いて化学構造を明らかにした。ブラジル産薬用植物からは新規ラブダン型ジテルペンおよび新規含窒素クレロダン型ジテルペンを、海洋性真菌からは新規1,3-ジオキソラン化合物を見い出した。
KAKENHI-PROJECT-11771373
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11771373
特異的ヒトプロレニン変換酵素遺伝子の単離・同定
近年、心臓血管系組織においては組織レニン-アンジオテンシン系が循環系とは独立したものとして、主要な役割を担っていることが明らかとなりつつある。しかし組織局所のアンジオテンシンI産生のメカニズムは明らかでない。特に腎外組織から産生されるプロレニンが腎におけるのと同様、レニンに活性化されるか否かは不明である。これまでプロレニン活性化酵素としては、マウス顎下腺の顎下腺型レニン(REN-2)対してglandular kallikrein(PRECE)が同定されている。またヒトではCathepsin B,PC1/3,PC5/6などが候補として挙げられているが、プロレニンに対する活性が十分強くないことや、発現部位の問題などの点からヒト腎臓の真正プロレニン活性化酵素であるとは考えにくい。本研究は、近年新たに形成されたプロホルモン活性化酵素遺伝子ファミリーに的を絞り、subtractive cloning法にdegenerate primerを用いたPCR法を併用することにより、腎臓に特異的な酵素を新たに単離しようという試みであった。Subtractionにより得られたcloneはいずれも既知のものであった。現時点での結論としては、この方法で得られると想定した酵素は存在しない可能性が高いと考えられる。本計画は終了するが、いずれ大幅に条件をゆるめたESTクローニングなどを計画している。近年、心臓血管系組織においては組織レニン-アンジオテンシン系が循環系とは独立したものとして、主要な役割を担っていることが明らかとなりつつある。しかし組織局所のアンジオテンシンI産生のメカニズムは明らかでない。特に腎外組織から産生されるプロレニンが腎におけるのと同様、レニンに活性化されるか否かは不明である。これまでプロレニン活性化酵素としては、マウス顎下腺の顎下腺型レニン(REN-2)対してglandular kallikrein(PRECE)が同定されている。またヒトではCathepsin B,PC1/3,PC5/6などが候補として挙げられているが、プロレニンに対する活性が十分強くないことや、発現部位の問題などの点からヒト腎臓の真正プロレニン活性化酵素であるとは考えにくい。本研究は、近年新たに形成されたプロホルモン活性化酵素遺伝子ファミリーに的を絞り、subtractive cloning法にdegenerate primerを用いたPCR法を併用することにより、腎臓に特異的な酵素を新たに単離しようという試みであった。Subtractionにより得られたcloneはいずれも既知のものであった。現時点での結論としては、この方法で得られると想定した酵素は存在しない可能性が高いと考えられる。本計画は終了するが、いずれ大幅に条件をゆるめたESTクローニングなどを計画している。近年、心臓血管系組織においては組織レニン-アンジオテンシン系が循環系とは独立したものとして、主要な役割を担っていることが明らかとなりつつある。しかし組織局所のアンジオテンシンI産生のメカニズムは明らかでない。特に腎外組織から産生されるプロレニンが腎におけるのと同様、レニンに活性化されるか否かは不明である。これまでプロレニン活性化酸素としては、マウス顎下腺の顎下腺型レニン(REN-2)対してglandularkallikrein (PRECE)が同定されている。またヒトではCathepsin B, PC1/3,PC5/6などが候補として挙げられているが、プロレニンに対する活性が十分強くないことや、発現部位の問題などの点からヒト腎臓の真正プロレニン活性化酵素であるとは考えにくい。本研究は、近年新たに形成されたプロホルモン活性化酵素遺伝子ファミリーに的を絞り、subtractive cloning法にdegenerate primerを用いたPCR法を併用することにより、腎臓に特異的な酵素を新たに単離しようという試みである。現在、腎臓組織として、培養メサンジウム細胞、腎癌のため摘出された腎臓の正常部位のRNAを調整中である。プロホルモン活性化酵素遺伝子ファミリーにおいて、セリンプロテアーゼとしての活性の保持に重要であると考えられているアミノ酸配列に対応するdegenerateしたオリゴヌクレオチドをプライマーとして作製しており、subtractionすべきRNAとしてPC1/3およびPC2は大量に発現するがレニンはあまり発現していないと考えられる組織としてインスリノーマの入手手続き中である。近年、心臓皿管系組織においては組織レニン-アンジオテンシン系が循環系とは独立したものとして、主要な役割を担っていることが明らかとなりつつある。しかし組織局所のアンジオテンシンI産生のメカニズムは明らかでない。特に腎外組織から産生されるプロレニンが腎におけるのと同様、レニンに活性化されるか否かは不明である。これまでプロレニン活性化酵素としては、マウス顎下腺の顎下腺型レニン(REN-2)対してglandular kallikrein(PRECE)が同定されている。またヒトではCathepsin B, PC1/3,PC5/6などが候補として挙げられているが、プロレニンに対する活性が十分強くないことや、発現部位の問題などの点からヒト腎臓の真正プロレニン活性化酵素であるとは考えにくい。本研究は、近年新たに形成されたプロホルモン活性化酵素遺伝子ファミリーに的を絞り、subtractive cloning法にdegenerate primerを用いたPCR法を併用することにより、腎臓に特異的な酵素を新たに単離しようという試みであった。Subtractionにより得られたcloneはいずれも既知のものであった。現時点での結論としては、この方法で得られると想定した酵素は存在しない可能性が高いと考えられる。本計画は終了するが、いずれ大幅に条件をゆるめたESTクローニングなどを計画している。
KAKENHI-PROJECT-14571020
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14571020
統合失調症発症前後の脳画像機械学習と計測最適セットの提案:アジア多施設共同研究
本研究は、応募者らが設立・運営するアジア精神病MRI研究コンソーシアム(ACMP)により、ECSを中心とした大規模マルチモダリティ脳画像データを集積する。疾患共通性・特異性に着目した生物学的要因を検討しつつ、大規模データを生かした機械学習により、臨床応用可能なバイオマーカー開発を目指す。10,000計測を超えるMRIデータ量を取り扱う解析・機械学習パイプラインを備え、効率的な前処理・解析分担の仕組みを作る。病態解明、バイオマーカー開発だけでなく、臨床現場で実施可能な必要計測手法の提案を行う。一連の研究成果により、アジアの精神疾患脳画像研究拠点を構築することを目指す。本研究は、応募者らが設立・運営するアジア精神病MRI研究コンソーシアム(ACMP)により、ECSを中心とした大規模マルチモダリティ脳画像データを集積する。疾患共通性・特異性に着目した生物学的要因を検討しつつ、大規模データを生かした機械学習により、臨床応用可能なバイオマーカー開発を目指す。10,000計測を超えるMRIデータ量を取り扱う解析・機械学習パイプラインを備え、効率的な前処理・解析分担の仕組みを作る。病態解明、バイオマーカー開発だけでなく、臨床現場で実施可能な必要計測手法の提案を行う。一連の研究成果により、アジアの精神疾患脳画像研究拠点を構築することを目指す。
KAKENHI-PROJECT-19H03579
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H03579
覚醒剤及び有機溶剤中毒における脳組織の免疫組織化学的研究
覚醒剤中毒例の脳において、ヘマトキシリン-エオジン(HE)染色及びルクソ-ルファーストブルー(LFB)染色では神経細胞に虚血性変化等の明らかな形態学的変化を認めなかった。しかし、免疫組織化学的染色において、微小管関連蛋白2(MAP-2)に対する抗体を用いたところ、神経細胞の細胞質内に断片化して存在し、神経細胞外にも断片化したMAP-2陽性像が認められた。さらにアストロサイトの変化についてグリア線維性酸性蛋白(GFAP)に対する抗体を用いて観察したところ、細胞質及び突起が肥大したアストロサイトが増生しているのが認められた。しかし、これらのアストロサイトについてビメンチン、さらに酸性及び塩基性線維芽細胞成長因子(a-FGF、b-FGF)に対する抗体を用いて観察したところ明らかな陽性像は認められなかった。有機溶剤中毒例の脳については、HE染色及びLFB染色では神経細胞に虚血性変化等の明らかな形態学的変化を認めなかった。MAP-2に局在ついて観察したところ、神経細胞には殆んど陽性像は認められなかった。GFAPに対する抗体を用いたところ、海馬のCA3-4領域において、少数ながら反応性アストロサイトが観察され、これらはビメンチン、a-FGF及びb-FGF陽性像は認められなかった。以上のことから、覚醒剤中毒及び有機溶剤中毒の脳組織のおいて、神経細胞の細胞骨格蛋白、アストロサイトの形態及び増生について特徴的な神経病理学的変化を認めた。従って、免疫組織化学的手法を用いて覚醒剤中毒及び有機溶剤中毒の法医病理学的診断は有用であると考える。今後は、神経細胞の障害及びグリア細胞の反応のメカニズムを検討するために、熱ショック蛋白質、癌遺伝子酸性蛋白についても検討を行いたいと考える。覚醒剤中毒例の脳において、ヘマトキシリン-エオジン(HE)染色及びルクソ-ルファーストブルー(LFB)染色では神経細胞に虚血性変化等の明らかな形態学的変化を認めなかった。しかし、免疫組織化学的染色において、微小管関連蛋白2(MAP-2)に対する抗体を用いたところ、神経細胞の細胞質内に断片化して存在し、神経細胞外にも断片化したMAP-2陽性像が認められた。さらにアストロサイトの変化についてグリア線維性酸性蛋白(GFAP)に対する抗体を用いて観察したところ、細胞質及び突起が肥大したアストロサイトが増生しているのが認められた。しかし、これらのアストロサイトについてビメンチン、さらに酸性及び塩基性線維芽細胞成長因子(a-FGF、b-FGF)に対する抗体を用いて観察したところ明らかな陽性像は認められなかった。有機溶剤中毒例の脳については、HE染色及びLFB染色では神経細胞に虚血性変化等の明らかな形態学的変化を認めなかった。MAP-2に局在ついて観察したところ、神経細胞には殆んど陽性像は認められなかった。GFAPに対する抗体を用いたところ、海馬のCA3-4領域において、少数ながら反応性アストロサイトが観察され、これらはビメンチン、a-FGF及びb-FGF陽性像は認められなかった。以上のことから、覚醒剤中毒及び有機溶剤中毒の脳組織のおいて、神経細胞の細胞骨格蛋白、アストロサイトの形態及び増生について特徴的な神経病理学的変化を認めた。従って、免疫組織化学的手法を用いて覚醒剤中毒及び有機溶剤中毒の法医病理学的診断は有用であると考える。今後は、神経細胞の障害及びグリア細胞の反応のメカニズムを検討するために、熱ショック蛋白質、癌遺伝子酸性蛋白についても検討を行いたいと考える。
KAKENHI-PROJECT-07770327
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消化管癌の新規治療について
本研究の概要は、不可逆電気穿孔法(Irreversible Electroporation:IRE)を用いた,癌に対する新たなアプローチの治療法の開発である。このIREの特徴は,既存の構築を破壊せずに,細胞破壊を得ることができる。実質臓器における新規治療の位置づけにある。本研究は消化管IREの基礎的研究を完成し,さらにIREを基軸とした,消化管の新規治療法を開発し,臨床応用へと展開するための基盤となる研究を行うことを目的としている。平成29年度、IREによる消化管壁の組織構造(粘膜内の腺管構造及び細胞,粘膜筋板,血管,リンパ管,固有筋層,神経線維)への影響を検証した結果、通電範囲内に明瞭な変化を認め、病理学的に細胞の形態学的な変化を認めたものの,層構造の粗大な変化はなく、固有筋層は保たれており、粘膜筋板の構造が残存していた状態であった。この結果を元に、平成30年度は、IREの影響を及ぶ範囲、治療後の実験ブタをsurviveさせ、回復過程についての実験を行なった。その結果、通常の胃潰瘍が修復まで2ヶ月を要するとされているものの、IRE後は、2週間程度で瘢痕治癒を認めた。このことから、早期組織再生の可能性が示唆された。しかしながらジェネレーターの設定値による治療効果領域の想定などの実験は現時点で行えていない。今後、再現性の確認、データ整理、組織学的評価、問題点についての解析し、今後の継続的な実験および解析を行う予定である。2018年度前半は異動に伴い、計画や進行の再調整、書類や機器準備の問題に対する対応に時間を要した。効果的な実験の追加に向けて他の動物実験研究と並行して実施し、費用の抑制と時間的効率の向上を図り、実験を遂行していく予定である。本研究の概要は、不可逆電気穿孔法(Irreversible Electroporation:IRE)を用いた,癌に対する新たなアプローチの治療法の開発である。このIREの特徴は,既存の構築を破壊せずに,細胞破壊を得ることができる。実質臓器における新規治療の位置づけにある。本研究は消化管IREの基礎的研究を完成し,さらにIREを基軸とした,消化管の新規治療法を開発し,臨床応用へと展開するための基盤となる研究を行うことを目的としている。平成29年度、IREによる消化管壁の組織構造(粘膜内の腺管構造及び細胞,粘膜筋板,血管,リンパ管,固有筋層,神経線維)への影響を検証した報告を、2017年5月にシカゴで開催された消化器疾患の学会で最も大きな米国消化器病週間(DDW2017)にて、発表を行った。この報告は、全身麻酔下のブタに経皮的に胃内へ電極を穿刺し,胃粘膜へ押しあてIREを実施している。実験の結果は、通電範囲内に明瞭な変化を認め、病理学的に細胞の形態学的な変化を認めたものの,層構造の粗大な変化はなく、固有筋層は保たれており、粘膜筋板の構造が残存していた状態であり、我々が当初想定していた通りの結果が得られている。発表には海外の方からの多くの質問を受け、本新規治療に対する関心が高いことが考えられた。本年度の結果を引継ぎ、次年度も引き続きIREの基礎的研究を遂行していく予定である。当初の計画よりも遅れているものの、経済的、時間的に効率的な機器・器具使用のため短期間での実験計画に変更したため、概ね問題はない。本研究の概要は、不可逆電気穿孔法(Irreversible Electroporation:IRE)を用いた,癌に対する新たなアプローチの治療法の開発である。このIREの特徴は,既存の構築を破壊せずに,細胞破壊を得ることができる。実質臓器における新規治療の位置づけにある。本研究は消化管IREの基礎的研究を完成し,さらにIREを基軸とした,消化管の新規治療法を開発し,臨床応用へと展開するための基盤となる研究を行うことを目的としている。平成29年度、IREによる消化管壁の組織構造(粘膜内の腺管構造及び細胞,粘膜筋板,血管,リンパ管,固有筋層,神経線維)への影響を検証した結果、通電範囲内に明瞭な変化を認め、病理学的に細胞の形態学的な変化を認めたものの,層構造の粗大な変化はなく、固有筋層は保たれており、粘膜筋板の構造が残存していた状態であった。この結果を元に、平成30年度は、IREの影響を及ぶ範囲、治療後の実験ブタをsurviveさせ、回復過程についての実験を行なった。その結果、通常の胃潰瘍が修復まで2ヶ月を要するとされているものの、IRE後は、2週間程度で瘢痕治癒を認めた。このことから、早期組織再生の可能性が示唆された。しかしながらジェネレーターの設定値による治療効果領域の想定などの実験は現時点で行えていない。今後、再現性の確認、データ整理、組織学的評価、問題点についての解析し、今後の継続的な実験および解析を行う予定である。2018年度前半は異動に伴い、計画や進行の再調整、書類や機器準備の問題に対する対応に時間を要した。29年度を見直し、無駄のない計画に修正後、引き続き研究を遂行する。効果的な実験の追加に向けて他の動物実験研究と並行して実施し、費用の抑制と時間的効率の向上を図り、実験を遂行していく予定である。海外学会における研究発表に、研究費を使用しなかったため。平成30年度は、効率的な実験実施のため、実験豚の購入や、器具購入を予定している。実験計画の変更
KAKENHI-PROJECT-17K16582
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消化管癌の新規治療について
および、他の実験と同時に実施した実験費用があり、次年度使用が生じた。次年度は、専用ニードルを含めた実験器具および、データ解析に使用する計画である。
KAKENHI-PROJECT-17K16582
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免疫抑制剤FK506による歯肉肥大誘発実験とメカニズムの解明
免疫抑制剤FK506(タクロリムス)ならびにラパマイシンを用いてラットにおける薬物誘発性歯肉肥大発現の実験を行った.1.供試標品FK506(プログラフ)は,賦形剤のみのプラセボとともに,藤沢薬品工業開発本部(大阪)より提供された.生後15日齢の雌雄フィッシャーラットに,FK506を8,15,30μg/gの濃度で粉末飼料に混和して40日間摂取させた後,歯肉肥大の程度と血中薬剤濃度を測定した.その結果,(1)ラットの体重増加(成長)に関しては,雌雄ともにこの量の範囲ではFK506の有無および量による影響はなかった.(2)雄ラットで8μg/gのFK506投与群は,下顎第一白歯および第二白歯の頬側(p<0.001),舌側(p<0.01)ともに歯肉溝は深くなっており,歯肉肥大の発現している可能性が示唆された.(3)雌ラットの歯肉については,第一白歯の頬側ではFK506の15μg/g群:575±28.1(平均±S.E.,μm),30μg/g群:605±21.7,対照群:540±37.1,舌側では15μg/g群:425±13.4,30μg/g群:455±22.9と対照群:390±23.3であり,FK506投与群の方が大きい傾向を示したが統計学的には有意の差を認めなかった.2.供試のラパマイシンはWyeth-Ayerst Research(New Jersey,USA)に依頼して提供を受けた.生後15日齢の雌Fischerラットに,ラパマイシンが50μg/gになるように調整した飼料を与えて40日間飼育し,生後55日目に歯肉肥大の程度を測定した.ラパマイシン投与群では,第一白歯の頬側は410±28.7(平均±S.E.,μm)であり,対照群は325±22.7,舌側では投与群の280±20.0に対して,対照群は200±22.4といずれも(p<0.05)有意に歯肉溝は深くなっていた.このことより,ラパアマイシンはラットの体重増加には影響を与えず,シクロスポリンに比べると程度は軽いが,歯肉肥大を誘発させる可能性が示された.免疫抑制剤FK506(タクロリムス)ならびにラパマイシンを用いてラットにおける薬物誘発性歯肉肥大発現の実験を行った.1.供試標品FK506(プログラフ)は,賦形剤のみのプラセボとともに,藤沢薬品工業開発本部(大阪)より提供された.生後15日齢の雌雄フィッシャーラットに,FK506を8,15,30μg/gの濃度で粉末飼料に混和して40日間摂取させた後,歯肉肥大の程度と血中薬剤濃度を測定した.その結果,(1)ラットの体重増加(成長)に関しては,雌雄ともにこの量の範囲ではFK506の有無および量による影響はなかった.(2)雄ラットで8μg/gのFK506投与群は,下顎第一白歯および第二白歯の頬側(p<0.001),舌側(p<0.01)ともに歯肉溝は深くなっており,歯肉肥大の発現している可能性が示唆された.(3)雌ラットの歯肉については,第一白歯の頬側ではFK506の15μg/g群:575±28.1(平均±S.E.,μm),30μg/g群:605±21.7,対照群:540±37.1,舌側では15μg/g群:425±13.4,30μg/g群:455±22.9と対照群:390±23.3であり,FK506投与群の方が大きい傾向を示したが統計学的には有意の差を認めなかった.2.供試のラパマイシンはWyeth-Ayerst Research(New Jersey,USA)に依頼して提供を受けた.生後15日齢の雌Fischerラットに,ラパマイシンが50μg/gになるように調整した飼料を与えて40日間飼育し,生後55日目に歯肉肥大の程度を測定した.ラパマイシン投与群では,第一白歯の頬側は410±28.7(平均±S.E.,μm)であり,対照群は325±22.7,舌側では投与群の280±20.0に対して,対照群は200±22.4といずれも(p<0.05)有意に歯肉溝は深くなっていた.このことより,ラパアマイシンはラットの体重増加には影響を与えず,シクロスポリンに比べると程度は軽いが,歯肉肥大を誘発させる可能性が示された.
KAKENHI-PROJECT-06672049
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06672049
農外労働供給が食料供給と栄養摂取に及ぼす効果:ベトナム農村世帯に関する実証分析
本研究は,1990年代から最新年までのベトナム農家のミクロ(パネル)データに基づき,農外労働供給(賃金労働・非農業自営業・出稼ぎ),食料供給,栄養摂取に関する理論・実証分析の方法を改善しながら,農家の農外労働供給行動,それが食料供給と栄養摂取に与える効果,食料供給と栄養摂取の相互依存関係を考察する。また,市場の発展が進むベトナムにおいて,貧しい農家が所得と栄養状態を十分改善できない原因をさぐり,その改善に必要な政策を見出すことを目的とする。本年度は,農家行動に関する幅広い情報を長い期間にわたって整理するため, 19922014年のベトナム家計生活水準調査から農家の世帯員属性と就業,農業における投入・産出量,食料消費,所得などに関するデータの整理を行った。この作業と並行して,2010年と2014年のベトナム家計生活水準調査に基づいて海外研究者との共同研究を進め,短期的な出稼ぎが,農家の一人当たり食料支出(総支出と9費目への支出),一人当たりカロリー摂取量,食料支出とカロリー摂取に関する多様化指数に与える影響を分析した。分析結果によれば,出稼ぎ者のいる農家は,主に外食への支出のために一人当たり食料総支出が少なく,主に穀物消費のために一人当たりカロリー摂取量が多く,カロリー摂取に関する多様化指数が低い。また,食料支出とカロリー摂取量を自給・購入別にみると,出稼ぎ者のいる世帯は,自給による消費が多く,購入による消費が少ない。したがって,近年のベトナムでは,短期的な出稼ぎは必ずしも農家の食生活を改善しているわけではない。データ整理においては,比較的長い期間にわたり共通の変数を定義する作業が難航した。また,理論分析と実証法の提案では,非農業自営業を農家モデルに組み込んだ上で,自営業への就業が農業産出に与える影響の分析について,理論的帰結がやや曖昧な結果となっている。一方で,海外研究者との共同研究により,非農業部門への就業(出稼ぎ)が食料支出や栄養摂取に及ぼす効果に関する実証結果が得られ,論文化できた。分析用データセットを整えながら,計画を達成するため,農外労働供給,食料生産,栄養摂取の相互関係について,できるかぎりの理論分析,実証分析を行う。具体的には,非農業自営業の生産活動を含む農家モデルの理論分析,二種類の農外就業(賃金雇用と非農業自営業への就業)の実証分析,これらの農外就業が生産物供給と栄養摂取に与える効果の推定などを行い,その政策的意義を見出す。本研究は,1990年代から最新年までのベトナム農家のミクロ(パネル)データに基づき,農外労働供給(賃金労働・非農業自営業・出稼ぎ),食料供給,栄養摂取に関する理論・実証分析の方法を改善しながら,農家の農外労働供給行動,それが食料供給と栄養摂取に与える効果,食料供給と栄養摂取の相互依存関係を考察する。また,市場の発展が進むベトナムにおいて,貧しい農家が所得と栄養状態を十分改善できない原因をさぐり,その改善に必要な政策を見出すことを目的とする。これらの目的を達成するため,本年度は,ベトナム家計生活水準調査の2012年と2014年の調査データを入手し,ベトナム語の質問票における必要部分の翻訳と基本統計量の観察を行い,次年度以降の実証分析に備えた。また,非農業自営業の生産活動を含むミクロ経済モデル(農家モデル)において,農外就業が農業生産活動に与える効果を分析する方法について検討した。その結果,農業,賃金雇用,非農業自営業での労働時間を同時決定する図に基づき,異なる種類の農外就業(賃金雇用,非農業自営業への就業)は農業生産活動(農業での労働需要と生産物供給)に異なる影響を与えうることを確かめた。この結果は,単一の農外就業と農業生産活動の関係を分析してきた従来の結果を拡張しており,異なる種類の農外就業が農業生産活動に及ぼす異質な効果を実証する根拠を与える。さらに,海外の研究者との議論を通じて,ベトナムにおける出稼ぎ,農業生産活動,栄養摂取の関係について,従来検証されてきた仮説(New Economics of Labor Migrationなど)とは異なる意義を含むモデルの実証化を検討した。本年度は,ベトナム家計生活水準調査の2012年と2014年の調査データを入手し,ベトナム語の質問票における必要部分の翻訳と基本統計量の観察を行い,次年度以降の実証分析に備えることができた。また,農外労働供給関数の推定は行わなかったが,その代わりに,非農業自営業の生産活動を含む農家モデルにおいて,農外就業が農業生産活動に与える効果の分析を行い,一定の成果をあげることができた。さらに,海外の研究者との議論を通じて,ベトナムにおける出稼ぎ,農業生産活動,栄養摂取の関係の実証モデル化についても検討を始めた。これらの状況を勘案すれば,本研究課題の進捗状況は総じて順調に進展しているといえる。本研究は,1990年代から最新年までのベトナム農家のミクロ(パネル)データに基づき,農外労働供給(賃金労働・非農業自営業・出稼ぎ),食料供給,栄養摂取に関する理論・実証分析の方法を改善しながら,農家の農外労働供給行動,それが食料供給と栄養摂取に与える効果,食料供給と栄養摂取の相互依存関係を考察する。また,市場の発展が進むベトナムにおいて,貧しい農家が所得と栄養状態を十分改善できない原因をさぐり,その改善に必要な政策を見出すことを目的とする。本年度は,農家行動に関する幅広い情報を長い期間にわたって整理するため, 19922014年のベトナム家計生活水準調査から農家の世帯員属性と就業,農業における投入・産出量,食料消費,所得などに関するデータの整理を行った。
KAKENHI-PROJECT-17K07964
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農外労働供給が食料供給と栄養摂取に及ぼす効果:ベトナム農村世帯に関する実証分析
この作業と並行して,2010年と2014年のベトナム家計生活水準調査に基づいて海外研究者との共同研究を進め,短期的な出稼ぎが,農家の一人当たり食料支出(総支出と9費目への支出),一人当たりカロリー摂取量,食料支出とカロリー摂取に関する多様化指数に与える影響を分析した。分析結果によれば,出稼ぎ者のいる農家は,主に外食への支出のために一人当たり食料総支出が少なく,主に穀物消費のために一人当たりカロリー摂取量が多く,カロリー摂取に関する多様化指数が低い。また,食料支出とカロリー摂取量を自給・購入別にみると,出稼ぎ者のいる世帯は,自給による消費が多く,購入による消費が少ない。したがって,近年のベトナムでは,短期的な出稼ぎは必ずしも農家の食生活を改善しているわけではない。データ整理においては,比較的長い期間にわたり共通の変数を定義する作業が難航した。また,理論分析と実証法の提案では,非農業自営業を農家モデルに組み込んだ上で,自営業への就業が農業産出に与える影響の分析について,理論的帰結がやや曖昧な結果となっている。一方で,海外研究者との共同研究により,非農業部門への就業(出稼ぎ)が食料支出や栄養摂取に及ぼす効果に関する実証結果が得られ,論文化できた。基本的には,今後の研究は計画通りに進めていく。具体的には,1)最新年だけでなく,過去のベトナム家計生活水準調査についても,農業生産活動,農外就業,栄養摂取の関係に関する実証分析ができるよう,引き続きデータ整備を行う。2)昨年度行わなかった農外労働供給モデルの実証分析を行う。3)非農業自営業の生産活動を含む農家モデルの理論分析において,図に基づく分析にとどまらず,数式展開による結果の導出を試みる。4)二種類の農外就業(賃金雇用と非農業自営業への就業)が農業生産活動(労働需要と生産物供給)に与える効果を推定する方法を検討し,実践する。なお,前年度に繰り越した予算は,当初の予定どおりパソコンの購入にあて,今後の計算に利用していく。分析用データセットを整えながら,計画を達成するため,農外労働供給,食料生産,栄養摂取の相互関係について,できるかぎりの理論分析,実証分析を行う。具体的には,非農業自営業の生産活動を含む農家モデルの理論分析,二種類の農外就業(賃金雇用と非農業自営業への就業)の実証分析,これらの農外就業が生産物供給と栄養摂取に与える効果の推定などを行い,その政策的意義を見出す。年度末にパソコンの購入を予定したが,3月末での納入が困難であったため,次年度の早期に購入することにした。研究計画にやや遅れが生じ,米国での研究報告・打合せが延期となったため。
KAKENHI-PROJECT-17K07964
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K07964
教師教育における、“体験"をキーワードとするカリキュラム開発の総合的研究
今回の研究は、教員養成における「教育学」教育のカリキュラム構成とその実践を、教師教育(教員養成)の過程そのものに着目し、学習者自らの“学び"の体験を対象化することによって、「教育学」研究の新たな様相を探ることが目的であった。その具体的な内容は大きく次の三点にまとめられる。1.教育をめぐる課題の把握(北星余市高校の実践ビデオに基づくレポートと討議)2.学校教育等訪問(附属小学校、僻地小規模小学校校、児童館等訪問)3.体験に学ぶ(食べ物づくり、民舞、羊飼育及び羊毛加工、川下り等)一連の体験的学習の構成は教育学及び心理学的視点に基づきながら、教授及び学習活動の諸相を明らかにするように努めたが、学習者の“体験"を基調とする今回の試みは教師教育において重要な内容と方法論であることを示す結果と知見を得ることができた。今回の研究は、教員養成における「教育学」教育のカリキュラム構成とその実践を、教師教育(教員養成)の過程そのものに着目し、学習者自らの“学び"の体験を対象化することによって、「教育学」研究の新たな様相を探ることが目的であった。その具体的な内容は大きく次の三点にまとめられる。1.教育をめぐる課題の把握(北星余市高校の実践ビデオに基づくレポートと討議)2.学校教育等訪問(附属小学校、僻地小規模小学校校、児童館等訪問)3.体験に学ぶ(食べ物づくり、民舞、羊飼育及び羊毛加工、川下り等)一連の体験的学習の構成は教育学及び心理学的視点に基づきながら、教授及び学習活動の諸相を明らかにするように努めたが、学習者の“体験"を基調とする今回の試みは教師教育において重要な内容と方法論であることを示す結果と知見を得ることができた。
KAKENHI-PROJECT-06610212
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06610212
消滅の危機に瀕した八丈語の音声資料作成とその分析に関する研究
消滅危機言語である八丈語の記録・保存・継承のため、収集した音声にテキストと標準語訳(逐語訳と意訳)のほかアノテーションを加え、音声談話資料として整備することで、八丈語研究のインフラ整備を行なった。併せて先行研究の記述を確認し、現在の八丈語の状況について個人差や地域差を含めバリエーション実態を把握する調査を行なった。その成果を基に、文法記述の精緻化を行ない、用言の活用体系の記述や代名詞の体系記述を見直し、新たに記述を加えた。また、言語継承の観点から、音声談話資料を教材として活用するため一般島民や学習者向けに紙芝居や会話集・資料の作成を行ない、ドキュメンテーションとして記録し映像化した。本年度は坂下の三根・大賀郷地区を中心に自然談話音声を収集した。収集した音声は文字起こしし、テキストとアノテーション情報とを付与することで音声談話資料として整備している。本年度終了時点では公開には至っていないが、Web上での公開を目指し、引き続き整備作業を進めている。こうしたデータ収集を下支えするために、本年度は活動領域を広げるための活動を行なった。2016年2月には、普段の調査では気づきにくい事象を記録することを目的とし、各分野のエキスパートとともに合同調査を行なった。坂下の三根・大賀郷と、坂上の末吉で調査を行ない、特に音声・音韻の分野で、新しい知見を得ることができた。無声化が多く聞かれ、それが音韻変化へ影響を与えている可能性があること、母音の融合などに関して有益な知見を得られた。また、言語地理学的な研究への発展の可能性を示唆する知見も得られた。3月には金田章宏氏(千葉大学)にご協力をお願いし、青ヶ島調査を行なった。八丈語の方言の一つである青ヶ島方言は緊急に調査が必要であるが、フィールドを開拓するのが難しかった。おそらく、今ここで記述しておかなければ、この島の方言は記述されることがないままに消滅してしまうだろう。金田氏から話者をご紹介いただき、今後の足掛かりを作ることができたことは非常に意義深いことだった。また、アウトリーチ活動として、八丈町教育委員会の依頼で一般島民向けに八丈語に関する講演を行なった。こうした活動は危機言語の調査・記述・保存活動を地元に周知するとともに、理解を深めてもらうことで、調査への協力を仰ぐことに大いに役立つ。また、こうした会を通じて、八丈語に関心のある島民のコミュニティ形成にも寄与するものである。研究成果の地元還元は方法が難しいが、こういう形で少しでも還元できるよう、今後も積極的に活動していく予定である。三根地区の音声収集は概ね順調であり、収集したデータをもとに音声談話資料の作成を進めている。また、三根にとどまらず、大賀郷や、2016年度調査予定の末吉の調査にも手をつけ、さらに青ヶ島へもフィールドを広げることができ、充実した活動を行なうことができた。一方で、膨大なデータの文字起こしや整備作業に多くの時間を費やさざるをえないジレンマは避けて通れず、今後は文字化する作業の見直しや、文字化するデータを厳選して量よりも質を高めることに傾注するなどして、対応していく予定である。また、音声談話資料作成の一環として、話者による紙芝居の語りをドキュメンテーションとして記録する活動を始めた。現在は八丈語による紙芝居を作成中であり、整備したテキストをもとに、絵を準備している。このような資料は言語継承活動に役立ち、特に教育の場での応用に寄与するものである。八丈語には八丈町教育委員会による方言カルタがあるが、5集落すべての方言で読み札が書かれている。これと同様、紙芝居も1組の絵に対し、5集落のテキストをつけ、地点ごとの比較ができるように整備している。方言カルタよりも長い単位の八丈語音声を聞き、学習することができる点で優れている。紙芝居は話者とも協議して修正を加え、夏ごろの完成を目指している。成果の公開は、2016年秋を目指して目下作業中である。本年度は坂下の三根・大賀郷、及び、坂上の末吉地区を中心に調査を行ない、自然談話音声を収集した。調査では先行研究の記述を再確認し、同一地区内での個人差や世代差、用法のゆれへ変化に着目した。自然談話を収集し、音声を文字起こししてテキストとアノテーション情報を付与することで音声談話資料として整備している。Web上で広く一般に公開することを目指し、引き続き整備作業を行なっている。本年度は八丈語の継承活動に音声談話資料を役立てるため、八丈語による紙芝居作成を行なった。話者の協力を得て、先行研究を参照しつつ八丈島の代表的な民話「欠け皿(カケジャラ)」を題材として採録し、テキストをより伝統的な八丈語の体系に沿ったものに修正して作成したものである。紙芝居は紙媒体のもののほか、デジタル媒体によるものを作成し、持ち運びや配布が容易となるよう工夫した。また、話者の実演を映像に収め、八丈語と日本語訳の字幕を付した映像ファイルを作成した。この紙芝居についても、上記の音声談話資料と合わせてWeb上で公開予定である。本研究にかかわる研究成果として、2本の論文を発表したほか、国内での口頭発表2件と、国際学会での口頭発表2件を行なった。現地調査のデータに基づき、先行研究で指摘されていた八丈語の特徴を再分析し、現在起こっている用法の変化や、音声談話資料を用いた言語継承活動への取り組みについて報告した。
KAKENHI-PROJECT-15K16766
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K16766
消滅の危機に瀕した八丈語の音声資料作成とその分析に関する研究
アウトリーチ活動として、東京都八丈支庁において東京都教職員向けに八丈語に関する講演を行なった。こうした活動は、危機言語の調査・記述・保存活動を教育の現場に携わる教職員に知っていただき、理解を深めてもらうことで、新たな連携・協力関係を築くことにもつながり、その意義は大と考える。本年度は、三根・末吉でのデータ収集を中心にフィールドで充実した活動を行なうことができた。特に末吉での調査は前年度に調査の下準備を行なっていたことが功を奏した。収集したデータによる研究成果として2本の論文を発表したほか、国内での口頭発表2件と、国際学会での口頭発表2件を行なった。調査データに基づき、先行研究で指摘されていた八丈語の特徴を再分析し、現在起こっている用法の変化や、音声談話資料を用いた言語継承活動への取り組みについて報告した。昨年度に引き続き音声談話資料を作成しており、三根と末吉のデータベースの整備を行なっている。関連して、音声談話資料を言語継承活動に応用するために八丈語による紙芝居を作成した。話者が実演して活用するほか、その映像を記録し、八丈語と日本語訳の字幕をつけ、映像化した。また、持ち運びや配布の便が良いように紙芝居をデジタルファイル化したものを作成し、映像とともにWeb公開してい句予定であり、本年度はその目途がついた。今後、量を増やしていくほか、実際の活用を進め、その成果をフィードバックすることで質を高めていくことを考えている。このほか、アウトリーチ活動として、教職員を対象とした八丈語に関する講演を行なった。また、こうした活動を通じて、八丈語に関心のある島民を増やし、八丈語を媒体としたコミュニティ形成・拡大に寄与することを目指している。研究成果の地元還元には様々な方法があるが、直接的な効果を求めるのは難しく、微力ではあるが、こうした形で少しでも還元できるよう、今後も積極的に活動していく予定である。本年度は坂下の三根・大賀郷と坂上の末吉を中心に調査を行なった。また、中之郷・樫立地域での話者開拓に努め、活動地域を広げデータ収集に努めた。収集した自然談話音声を基に、文字に起こしてテキストとアノテーション情報を付与することで音声談話資料として整備する作業を行なった。これらは今後Webサイトを設け、下記のデータと併せて公開する予定である。また、音声談話資料を活用するために必要な記述文法書の作成も進めている。本年度は動詞の活用体系の調査や例文収集を行なったほか、名詞の格体系の確認や、人称・指示代名詞の詳細なデータ収集を行なった。その際、先行研究の記述を再確認し、同一地点での個人差や世代差、用法のゆれや変化に着目した。その結果、これまで記述されていない複数接辞を発見し、現在の八丈語に新たに正常複数と近似複数の対立が生まれていることを確認した。このほか、これまで報告のなかったいくつかの事象についての記述を加えた。さらに、八丈語の継承活動に音声談話資料を役立てるため、八丈語による紙芝居の作成を行なった。先行研究を参照しつつ、八丈島の民話「タコのムコ殿」を題材として採話し、話者の協力を得て、テキストをより伝統的な八丈語の体系に沿ったものに検討・修正して作成したものである。上記の音声談話資料と合わせてWeb上で公開予定である。
KAKENHI-PROJECT-15K16766
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色素体分化を調節するブラシノステロイドの作用に関する細胞形態学的研究
プラシノステロイド欠損植物は、暗所で発芽・生育させると、もやしにならずに光形態形成をおこなう。一方、サイトカイニンを与えて暗所で生育させた場合も同様の変化がおこることが知られていた。このように、プラシノステロイドとサイトカイニンは、暗所での光形態形成に関して逆の効果を示すようにみえる。しかしこれまで微細構造レベルで両者の作用を比較した例はない。そこで、当該年度の研究では、色素体分化という側面からプラシノステロイド欠損とサイトカイニン過剰の作用を比較することを目的とした。特異的プラシノステロイド生合成阻害剤であるBrzを4μM添加した培地、またはサイトカイニンの一種ベンジルアデニン(BA)を250μM添加した培地で育てたものは、暗所から明所に移した時の緑化がcontrolに比べ早かった。BrzとBA両方を添加した培地で育てたものは、Brz単独、BA単独で育てたものと緑化の早さは同じ程度であった。BA培地にブラシノライド(BL) (1μM)を一緒に添加した場合でも、BA単独の時と緑化の早さは同じ程度であった。Brz処理及びdet2の暗所芽生えの子葉の色素体は、プロラメラボディの結晶構造を含む典型的なエチオプラストであったが、プロラメラボディの占める面積が無処理に比べ大きかった。一方、BA処理の色素体は、プロラメラボディの面積が小さく、むしろチラコイド膜が発達していた。以上のように、暗所での色素体の発達という点において、プラシノステロイド欠損とサイトカイニン過剰は独立の異なる作用を持っていた。さらに、暗所のBrz処理植物を光存在下に移して2時間後に電子顕微鏡観察したところ、渦巻き上に激しく発達したチラコイド膜が観察された。ブラシノステロイド欠損時には、これまでに知られていない、特殊なチラコイド膜発達様式をとる可能性がある。ブラシノステロイド生合成阻害剤ブラシナゾール(以下Brz)を与えた植物は、暗所で発芽・生育させるともやしにならずに光形態形成を示すという特徴を持つ。一方、サイトカイニンを植物に過剰に与えた場合も同様の効果を示すと言われていた。本研究においては、暗所におけるブラシノステロイドとサイトカイニンの作用を比較することで、ブラシノステロイド欠損とサイトカイニン過剰の作用の違いを調べた。サイトカイニンの一種のベンジルアデニン(BA)処理を行うと多くの本葉が伸びてくるが、その形は細長くいびつであった。一方Brz処理を行うと、分裂も若干促進するが、むしろ本葉の形を横に平たく展開させる効果が強く働いていた。また、クロロフィルの前駆体であるプロトクロロフィライド(Pchlide)とプロトクロロフィル(Pchl)量の測定したところ、Brz処理では薬剤無処理の野生株に対してPchlideの量は変わらなかったが、Pchl含量が上がっていた。一方BA処理では、Pchlの量は変わらなかったが、Pchlide含量が上昇していた。さらにBrz処理の暗所子葉の色素体を電子顕微鏡により観察したところ、プロラメラボディの占める面積が無処理に比べ大きかった。一方、BA処理の色素体は、プロラメラボディの面積が小さく、むしろチラコイド膜が発達していた。このように、ブラシノステロイド欠損とサイトカイニン過剰はともに暗所での光形態形成をもたらすが、その効東は全く異なっていることが示された。プラシノステロイド欠損植物は、暗所で発芽・生育させると、もやしにならずに光形態形成をおこなう。一方、サイトカイニンを与えて暗所で生育させた場合も同様の変化がおこることが知られていた。このように、プラシノステロイドとサイトカイニンは、暗所での光形態形成に関して逆の効果を示すようにみえる。しかしこれまで微細構造レベルで両者の作用を比較した例はない。そこで、当該年度の研究では、色素体分化という側面からプラシノステロイド欠損とサイトカイニン過剰の作用を比較することを目的とした。特異的プラシノステロイド生合成阻害剤であるBrzを4μM添加した培地、またはサイトカイニンの一種ベンジルアデニン(BA)を250μM添加した培地で育てたものは、暗所から明所に移した時の緑化がcontrolに比べ早かった。BrzとBA両方を添加した培地で育てたものは、Brz単独、BA単独で育てたものと緑化の早さは同じ程度であった。BA培地にブラシノライド(BL) (1μM)を一緒に添加した場合でも、BA単独の時と緑化の早さは同じ程度であった。Brz処理及びdet2の暗所芽生えの子葉の色素体は、プロラメラボディの結晶構造を含む典型的なエチオプラストであったが、プロラメラボディの占める面積が無処理に比べ大きかった。一方、BA処理の色素体は、プロラメラボディの面積が小さく、むしろチラコイド膜が発達していた。以上のように、暗所での色素体の発達という点において、プラシノステロイド欠損とサイトカイニン過剰は独立の異なる作用を持っていた。さらに、暗所のBrz処理植物を光存在下に移して2時間後に電子顕微鏡観察したところ、渦巻き上に激しく発達したチラコイド膜が観察された。ブラシノステロイド欠損時には、これまでに知られていない、特殊なチラコイド膜発達様式をとる可能性がある。
KAKENHI-PROJECT-13740475
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13740475
抗炎症タンパク質の新機能の解析
ステロイドの抗炎症作用の本体として抗炎症タンパク質ある好中球の細胞質中で刺激物に依存してCa++依存性に酸性リン脂質に可逆的に会合するAnnexin1の生理機能を解析した。その結果、NF-kBのサブユニットであるp65と結合することが判明した。さらに、新しい好中球の機能である細胞外トラップにおけるAnnexin1の機能を解析し、細胞外へDNAと結合して放出されることがあきらかとなった。ステロイドの抗炎症作用の本体として抗炎症タンパク質ある好中球の細胞質中で刺激物に依存してCa++依存性に酸性リン脂質に可逆的に会合するAnnexin1の生理機能を解析した。その結果、NF-kBのサブユニットであるp65と結合することが判明した。さらに、新しい好中球の機能である細胞外トラップにおけるAnnexin1の機能を解析し、細胞外へDNAと結合して放出されることがあきらかとなった。「目的」ステロイドの抗炎症作用の本体として抗炎症タンパク質が注目されているが、その機構は明らかにされていない。好中球の細胞質中で刺激物に依存してCa++依存性に酸性リン脂質に可逆的に会合するAnnexin 1もステロイドにより発現誘導される抗炎症蛋白であるが、その生理機能は明らかでない。Annexin 1の生理機能を解析するため、本研究では、その細胞内結合タンパク質を同定し、その機能を解析した。「方法」Annexin 1結合タンパク質は抗Annexin1特異抗体を用いた免疫沈降法により検出した。特に、Annexin 1 Tgマウスにエンドトキシンショックを誘導して、炎症時に特異的に結合するタンパク質の同定を試みた。「結果」エンドトキシンショックによりAnnexin 1の発現が上昇するが、これまで同定してきたタンパク質と違う新たな結合蛋白質を検出した。免疫沈降法により、NF-kBのサブユニットであるp65と結合することが判明した。p65は、Annexin 1と結合し、その核移行が阻害される傾向がみられた。したがって、アネキシン1Tgマウスがエンドトキシンショックでの生存性が高いことやサイトカインの放出が低いのは、これらの結合が背景にあるものと考えられた。今後、結合性のメカニズムを詳細に検討することでアネキシン1の抗炎症機構の解明につながると考えられる。「目的」ステロイドの抗炎症作用の本体として抗炎症タンパク質が注目されているが、その機構は明らかにされていない。好中球の細胞質中で刺激物に依存してCa++依存性に酸性リン脂質に可逆的に会合するアネキシン1もステロイドにより発現誘導される抗炎症蛋白であるが、その生理機能は明らかでない。炎症局所に遊走する好中球は、アネキシン1を多く含み、炎症細胞として自然免疫系に果たす役割は大きい。好中球は活性酸素を産生するだけでなく、近年、新しい生理機能として、extracellular trapをおこして生体防御機能をはたすことも知られている。本年度は、好中球でのアネキシン1の発現が、麻酔薬により増強することおよび好中球の新しい生理機構であるektracellular trapにおけるアネキシン1の機能を解析した。「方法」麻酔薬として、プロポファールを用いた。培養細胞であるHL-60細胞に添加し、その発現の海を解析した。さらに、好中球は、末梢血好中球および口腔内好中球を健常人から採取し使用し、刺激あるいは無刺激下でのアネキシン1の発現およびextracellular trapにおけるアネキシン1の分布を解析した。「結果」エンドトキシンによりアネキシン1の培養細胞内での発現が上昇するが、麻酔薬であるプロポフォールを前処理するおアネキシン1の発現が増強され、炎症性サイトカインの発現は低下した。従って、プロポフォールは、抗炎症タンパク質を誘導し、炎症ストレスを軽減させる可能性が示唆された、また、extracellular trapにおけるアネキシン1の分布を解析した結果、extracellular trapの進行にともないアネキシン1の分布は、一度核に移行し、その後、細胞外へと放出されることが判明した。以上の結果から、アネキシン1の抗炎症機構の解明につながると考えられる。ステロイドの抗炎症作用の本体として抗炎症タンパク質が注目されているが、その機構は明らかにされていない。好中球の細胞質中で刺激物に依存してカルシウム依存性に酸性リン脂質に可逆的に会合するアネキシン1もステロイドにより発現誘導される抗炎症蛋白であるが、その生理機能は明らかでない。炎症局所に遊走する好中球は、アネキシン1を多く含み、炎症細胞として自然免疫系に果たす役割は大きい。好中球は活性酸素を産生するだけでなく、近年、新しい生理機能として、細胞外トラップをおこして生体防御機能をはたすことも知られている。本年度は、好中球の新しい生理機構である細胞外トラップにおけるアネキシン1の機能をより詳細に解析した。「方法」好中球は、末梢血好中球および口腔内好中球を健常人から採取し使用し、刺激あるいは無刺激下でのアネキシン1の発現および細胞外トラップにおけるアネキシン1の分布を解析した。さらに、アネキシン1の過剰発現およびsiRNAによるアネキシン1の発現を抑制することにより、細胞外トラップへの影響を解析した。「結果」細胞外トラップにおけるアネキシン1の分布を解析した結果、細胞外トラップの進行にともないアネキシン1の分布は、一度核に移行し、その後、細胞外へと放出されることが判明した。
KAKENHI-PROJECT-22590288
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22590288
抗炎症タンパク質の新機能の解析
共焦点顕微鏡による解析では、アネキシン1は細胞外DNAに結合して分布されることが判明した。さらに、アネキシン1を過剰発現させると細胞外トラップが抑制されつ傾向が認められた。また、siRNAによるアネキシン1の発現抑制では細胞外トラップに影響しなかった。以上の結果から、細胞外トラップには抗炎症タンパク質であるアネキシン1も部分的に関与しており、抗炎症機構の解明につながると考えられる。4月に大阪市立大学から鈴鹿医療科学大学に移動し、実験室の立ちあげからおこなったため。また、遺伝子改変マウスなどを移設する手続きなどに時間と労力をようしたため、やや計画と遅れることとなった。24年度が最終年度であるため、記入しない。ほぼ、実験室の立ち上げは終了しており、今後の研究遂行は可能である。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22590288
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22590288
表在性膀胱癌の再発(侵潤)に関する研究
膀胱腫瘍の再発浸潤に関して、以下の研究結果を得た。1)、膀胱腫瘍患者尿および組識(腫瘍と膀胱粘膜)のアリルスルファターゼA(ASA)活性の測定をおこない、膀胱癌患者の尿中ASA活性はクレアチニン単位当りでは、正常人の尿中ASAに比較して有意に高く、膀胱癌組識のASA値も正常膀胱組識に比較して有意に高かったが、Gradeの間では両者とも有意差を認めず、再発の予知、浸潤に関してはやや不満な結果であった。2)、尿中の剥離細胞を用いる染色体分析では、Grade、Stageの高いものほど染色体は2倍体以上の異数性のものが多く、分裂中期細胞も多いことが分かり、loro grade,loro stageの症例で、染色体分析では悪性度が高いものが、数例あり、今後の経過観察に於ける再発および浸潤に興味が持たれる。3)、膀胱腫瘍の組識標本を使用しての特異的赤血球付着法(SRCA法)では、その陽性率とGrade,再発率,浸潤度との間での相関を認めなかったが、ABC法(Avidin Biotin Peroxidase Complex)ではloro gradeの膀胱癌における再発との関連を検討して、陽性例では33%、陰性例では62%の再発を認め、一応の相関々係を得たが、未だfalse positire negativeが多く、試切標本など更に多くの検討が必要と思われた。T抗原(Thomsen Fsiedemeich antigen)とABC法とを組み合わせた検討では、少数例ではあるが、予後や悪性化に対して、何らかの指標になる可能性が示唆された。4)再発例における病理組識標本の検討では、Co in situ例を除き知見を得ていないが、今後random bopsyとの比較など、更に検討することによって、再発、浸潤例の傾向を見出す可能性があると思われる。膀胱腫瘍の再発浸潤に関して、以下の研究結果を得た。1)、膀胱腫瘍患者尿および組識(腫瘍と膀胱粘膜)のアリルスルファターゼA(ASA)活性の測定をおこない、膀胱癌患者の尿中ASA活性はクレアチニン単位当りでは、正常人の尿中ASAに比較して有意に高く、膀胱癌組識のASA値も正常膀胱組識に比較して有意に高かったが、Gradeの間では両者とも有意差を認めず、再発の予知、浸潤に関してはやや不満な結果であった。2)、尿中の剥離細胞を用いる染色体分析では、Grade、Stageの高いものほど染色体は2倍体以上の異数性のものが多く、分裂中期細胞も多いことが分かり、loro grade,loro stageの症例で、染色体分析では悪性度が高いものが、数例あり、今後の経過観察に於ける再発および浸潤に興味が持たれる。3)、膀胱腫瘍の組識標本を使用しての特異的赤血球付着法(SRCA法)では、その陽性率とGrade,再発率,浸潤度との間での相関を認めなかったが、ABC法(Avidin Biotin Peroxidase Complex)ではloro gradeの膀胱癌における再発との関連を検討して、陽性例では33%、陰性例では62%の再発を認め、一応の相関々係を得たが、未だfalse positire negativeが多く、試切標本など更に多くの検討が必要と思われた。T抗原(Thomsen Fsiedemeich antigen)とABC法とを組み合わせた検討では、少数例ではあるが、予後や悪性化に対して、何らかの指標になる可能性が示唆された。4)再発例における病理組識標本の検討では、Co in situ例を除き知見を得ていないが、今後random bopsyとの比較など、更に検討することによって、再発、浸潤例の傾向を見出す可能性があると思われる。
KAKENHI-PROJECT-61570750
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61570750
超臨界流体担持プロセスの戦略的設計へ向けた金属錯体吸着挙動の定量的把握
本研究課題では,まず初めに固定層吸着法に基づく超臨界二酸化炭素中における金属錯体の吸着挙動測定装置の開発を行った.本装置は,研究代表者らが既に開発している超臨界CO2中における揮発性有機化合物(VOC)の吸着速度,吸着平衡測定装置の改造により開発したものである.測定においては,金属錯体を溶解させたメタノールと,二酸化炭素をそれぞれ高圧ポンプにより流通,混合後,多孔質担体を封入した吸着カラムに導入し,UV-Vis(紫外可視分光法)検出器で錯体濃度をin-situでモニタリングすることにより,その破過曲線の面積から吸着平衡(吸着量)が定量可能となった.続いて開発した装置により,モデル担体を代表的な多孔質担体であるメソポーラスシリカ(MCM-41),モデル金属錯体をコバルトアセチルアセトナートCo(acac)3として,温度313 353 K,圧力12.520.0 MPaの条件範囲で測定を行った.その結果,超臨界二酸化炭素中における金属錯体吸着量は温度,圧力条件に強く依存することが明らかになり,これは各温度,圧力条件における二酸化炭素密度の観点から説明可能であった.以上をまとめると,本申請課題で開発した装置によって.幅広い温度,圧力条件におけるメソポーラスシリカに対する金属錯体吸着平衡の測定に成功した.この結果,本申請課題で目的とする超臨界流体中における金属錯体吸着挙動の定量的データ獲得へ向けた基礎的な方法論を確立することが出来た.翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。本研究課題では,まず初めに固定層吸着法に基づく超臨界二酸化炭素中における金属錯体の吸着挙動測定装置の開発を行った.本装置は,研究代表者らが既に開発している超臨界CO2中における揮発性有機化合物(VOC)の吸着速度,吸着平衡測定装置の改造により開発したものである.測定においては,金属錯体を溶解させたメタノールと,二酸化炭素をそれぞれ高圧ポンプにより流通,混合後,多孔質担体を封入した吸着カラムに導入し,UV-Vis(紫外可視分光法)検出器で錯体濃度をin-situでモニタリングすることにより,その破過曲線の面積から吸着平衡(吸着量)が定量可能となった.続いて開発した装置により,モデル担体を代表的な多孔質担体であるメソポーラスシリカ(MCM-41),モデル金属錯体をコバルトアセチルアセトナートCo(acac)3として,温度313 353 K,圧力12.520.0 MPaの条件範囲で測定を行った.その結果,超臨界二酸化炭素中における金属錯体吸着量は温度,圧力条件に強く依存することが明らかになり,これは各温度,圧力条件における二酸化炭素密度の観点から説明可能であった.以上をまとめると,本申請課題で開発した装置によって.幅広い温度,圧力条件におけるメソポーラスシリカに対する金属錯体吸着平衡の測定に成功した.この結果,本申請課題で目的とする超臨界流体中における金属錯体吸着挙動の定量的データ獲得へ向けた基礎的な方法論を確立することが出来た.翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-26889011
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26889011
固体中のフェムト・アト秒電子ダイナミクスに対する第一原理計算
パルス光と物質の相互作用を実時間で記述する、時間依存密度汎関数理論に基づく第一原理計算法を発展させた。光電磁場と電子のダイナミクスをマルチスケール手法で結合する新奇なシミュレーション法を開発し、摂動的な非線形光学応答からフェムト秒レーザによる非熱加工の初期過程に至る、物質へのパルス光照射で起こる広範な現象を記述し理論的に探求する基盤を築いた。極限的なパルス光と固体の相互作用であるコヒーレントフォノン生成や誘電率の超高速変化、透明物質に現れる超高速電流、半導体バンドギャップの超高速時間変化、フェムト秒レーザによるアブレーション閾値や深度など、多様な過程に対する計算と解析を行った。パルス光と物質の相互作用を実時間で記述する、時間依存密度汎関数理論に基づく第一原理計算法を発展させた。光電磁場と電子のダイナミクスをマルチスケール手法で結合する新奇なシミュレーション法を開発し、摂動的な非線形光学応答からフェムト秒レーザによる非熱加工の初期過程に至る、物質へのパルス光照射で起こる広範な現象を記述し理論的に探求する基盤を築いた。極限的なパルス光と固体の相互作用であるコヒーレントフォノン生成や誘電率の超高速変化、透明物質に現れる超高速電流、半導体バンドギャップの超高速時間変化、フェムト秒レーザによるアブレーション閾値や深度など、多様な過程に対する計算と解析を行った。レーザー科学の最前線で用いられている高強度パルス光は、物質の高精度測定のみならず光の能動的な作用による通信・制御・加工への応用が急速に進展している。一方、高強度光電場のもとでは電子の非線形ダイナミクスのため、通常の電磁気学による光伝播の記述が不可能になる。本研究では、高強度・超短パルスレーザーと物質の相互作用を記述する、電磁気学(マクスウェル方程式)と量子力学(時間依存密度汎関数理論)を統合したマルチスケール第一原理シミュレーション法を開発する。これによりパルス光により誘起される固体中の非線形電子ダイナミクスの特徴を明らかにし、フェムト秒・アト秒スケールで起こる諸現象に関するミクロな理解を得ることを目的としている。本年度は、時間依存密度汎関数理論に基づきパルス光の伝播を記述するマルチスケール理論の構築に成功し、この理論の枠組みに基づくマルチスケール計算コードの開発を行った。そして、半導体結晶(Si)に対して直線偏光パルスが垂直入射するもっとも簡単な設定において高強度パルス光と物質の相互作用に対する第一原理計算に始めて成功し、弱い光パルスに対しては通常の誘電応答が再現され、強いパルスの場合には摂動展開が許されない領域での光伝播を記述できることを確認し、論文にまとめた。また、近年アト秒パルスを用いた実験研究の進展が著しいが、我々の計算コードにおいて内殻電子のダイナミクスを記述できるよう射影法に基づく理論(PAW法)を実装し、フェムト秒パルスとアト秒パルスが同時に照射する場合の電子ダイナミクスが記述可能となるよう拡張した。本研究は、高強度パルス光と固体の相互作用を記述する計算科学的手法を発展させ、フェムト秒以下の時間スケールで起こる光と電子の相互作用を、時間に依存する密度汎関数理論に基づく第一原理計算により明らかにし、そこで起こる新奇な現象を理解し予言することを目的としている。本年度、以下に述べる2つの方向に関し進展があった。最近、物質が不可逆的に壊変される限界に近い強度での光と物質の著しい非線形相互作用が興味を集めている。実験的には、極限的なパルス光を透明な誘電体に照射したときに瞬間的な電流が発生することが報告されており、その生成メカニズムに興味が持たれている。通常の非線形光学では、分極が電場のべきで展開できることを仮定するが、このような極限的強度での光と物質の相互作用では、電子の運動を時間依存シュレディンガー方程式を用いて解くことが必須になる。我々は、パルス光が照射されたSiO_2の単位セル中の電子ダイナミクスを計算し、実験で見出されているものと極めて類似した電流が得られることを示し、原子スケールで電流が生成される様子を明らかにすることに成功した。高強度パルス光と物質の相互作用が、物質の電子構造によりどのように異なるのかは、基本的な問題である。この問いに答えるため、いくつかの異なるバンドギャップを持つ物質群に対して、パルス光が誘起する電子ダイナミクスを調べた。SiO_2、MgO、Siを比較すると、ギャップが減少するにつれて電子励起が容易になることは見出されるが、破壊強度にそれほど大きな変化はないことが見出された。また半金属であるグラファイトでは、予想されていたことではあるが、偏光面と結晶軸のなす角により、電子励起の様相が大きく異なることが見出された。本研究は、パルス光を固体に照射した際に生じる電子ダイナミクスを時間依存密度汎関数理論に基づき第一原理から計算する方法を発展させ、超短パルス光により生じるフェムト秒からアト秒時間スケールの現象や、高強度の光により生じる非線形電子ダイナミクスを微視的に記述し、光と物質の相互作用に関する基本的理解を深化させるとともに、新奇な光応答現象を探求することを目的としている。本年度は次の2課題に関して進展があった。一つはパルス光を固体に照射して観測される現象の一つであるコヒーレントフォノンの生成機構に関する研究である。これまで我々はSiを例に計算を行い、光の振動数がバンドギャップエネルギーより低い場合にはラマン型のメカニズムが、高い場合には実励起型のメカニズムが主要となることを理論的に確認してきた。
KAKENHI-PROJECT-23340113
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固体中のフェムト・アト秒電子ダイナミクスに対する第一原理計算
本年は、多くの実験研究がなされてきた半金属物質であるSbを対象に計算を行い、コヒーレントフォノンの生成機構に関する考察を進めた。その結果、エネルギーギャップが無いSbではすべての振動数領域で実励起型が主要となることを確認した。また、しばしば実験の解析に用いられる現象論的な模型である2テンソル模型の妥当性を第一原理計算から吟味し、その適用限界を調べた。もう一つは、パルス光で励起された物質がフェムト秒以下の時間スケールで示す誘電的性質の超高速変化に関する研究である。我々の発展させた計算法で、外場として与える光電場にポンプ光とプローブ光を含めることにより、数値的にポンプ・プローブ実験を行うことができる。我々はこのような数値シミュレーションにより、極めて短いパルス光により励起した物質の誘電的性質の超高速変化を、Siを例にとり第一原理計算により調べた。その結果、誘電関数の実部は自由電荷を加えたドルーデ模型でよく記述されるが、虚部は複雑な振る舞いをすることを示した。時間依存密度汎関数理論に基づくパルス光と物質の相互作用に関する計算科学的研究を進展させた。光電磁場と電子ダイナミクスを同時に記述するマルチスケールシミュレーションの方法を用い、以下の進展が得られた。京コンピュータを用いた大規模シミュレーションを遂行し、フェムト秒レーザーによる透明物質の表面加工の初期過程に相当する第一原理計算をクォーツを例にとり行った。レーザーによるアブレーションが起こる閾値強度を、計算から得られる光から電子へのエネルギー移行と、結晶の凝集エネルギーを比較することにより推測した。その結果、従来実験的に測定されてきたアブレーション閾値強度やその深度が、計算で得られる結果と良く一致することを確認した。これにより、本研究で開発したシミュレーション法が、フェムト秒レーザーによる非熱加工の記述と理解に有効であることが実証されたと考えている。また、同じく京コンピュータを用い、パルス光による不可逆な変化が起こる直前の光強度で起こる、極めて非線形性の強いレーザーと物質の相互作用の例として、数サイクルのパルス光がクォーツ薄膜を透過するときに起こる波形変化を実験グループと共同で調べた。計算と測定の比較から、主要な非線形効果は3次の非線形光学効果である光カー効果であることが特定され、光強度が増すにつれ物質中に生じる電子励起による誘電率変化も重要となることが見出された。また、異なる強度のパルス光伝播を比較することにより、非線形分極を時間領域で分析することが可能となることを示し、応答時間の遅れに関する分析を行った。26年度が最終年度であるため、記入しない。計算物質科学26年度が最終年度であるため、記入しない。本年度計画していた、理論的枠組みの整備と基本的な計算コードの作成については、まとめた論文を作成し出版することができたため。本年度の重要な進展として、高強度パルス光が透明な物質中に極めて短い時間だけ生成する電流について、実験で得られた様相を精度よく再現できたことが挙げられる。他の方向に向けた研究も、順調に進展している。当初の研究計画を、おおむね順調に進めることができている。
KAKENHI-PROJECT-23340113
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パーキンソン病の多中心性病巣形成と伝播:剖検組織の透明化と三次元観察による検証
パーキンソン病(PD)の病変進展仮説として、初期病巣は全身の様々な部位で多中心性に形成され、順次周囲へ伝播する仮説を立て、これを剖検組織を用いて検証する。ヒトPD剖検例、特に早期例・偶発例を対象とし、黒質-線条体系、自律神経系などの複数の系統について免疫染色を施行し、AS凝集の多中心性を検討する。伝播の検討では、組織透明化を基盤とする3Dイメージング技術CUBICを剖検組織に適応し、薄切切片では把握できないASの三次元的な伝播を可視化することを試みる。本研究によりAS凝集と伝搬の様式が明らかにされれば、ヒトPDの病態理解・治療法の開発に貢献しうる。パーキンソン病(PD)の病変進展仮説として、初期病巣は全身の様々な部位で多中心性に形成され、順次周囲へ伝播する仮説を立て、これを剖検組織を用いて検証する。ヒトPD剖検例、特に早期例・偶発例を対象とし、黒質-線条体系、自律神経系などの複数の系統について免疫染色を施行し、AS凝集の多中心性を検討する。伝播の検討では、組織透明化を基盤とする3Dイメージング技術CUBICを剖検組織に適応し、薄切切片では把握できないASの三次元的な伝播を可視化することを試みる。本研究によりAS凝集と伝搬の様式が明らかにされれば、ヒトPDの病態理解・治療法の開発に貢献しうる。
KAKENHI-PROJECT-19K07841
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小児癌由来遺伝子材料を基盤とした疾病関連遺伝子の探索と病態解明への応用
神経・肝の発生分化における遺伝子発現ネットワークの解明と、神経芽腫・肝芽腫の発生および疾患メカニズムの解明を目指し、本年度は以下を進めた。1)小児癌遺伝子ソースの独自データベースの整備と遺伝子機能情報の付加これまでに同定してきた700個の遺伝子について、各種ヒト組織やマウス胎仔における発現、レチノイン酸等による分化誘導・細胞死誘導時の発現、神経芽腫細胞への導入時の発現パターン等の情報を整理するとともに機能アノテーション情報を付加しデータベースの情報の蓄積を進めた。2)腫瘍サブセット間における発現量の異なる遺伝子の解析神経芽腫で高頻度に欠失・増加するゲノム領域にある遺伝子群に注目し、新たに神経の細胞増殖調節に関与すると予想される2つの遺伝子について解析を進めた。そのうちの一つ、肺癌のがん抑制遺伝子として報告があるイムノグロブリンスーパーファミリーのメンバーについて、増殖能の強い神経芽腫で有意に低い発現を示し予後と強く相関すること、過剰発現下において神経芽腫細胞のコロニー形成能を抑制し、ノックダウン時に細胞増殖能を亢進することを確認した。今後はその転写制御についての解析や遺伝子変異の検索を行い、病態との関連について解析を進める。3)神経発生分化関連転写因子群の神経芽腫細胞における遺伝子発現解析神経芽腫においてがん遺伝子として働くLMO3に転写制御される下流遺伝子の探索を目的に、神経芽腫細胞株にLMO3遺伝子を導入し、小児癌由来11000遺伝子のチップを用いて遺伝子発現プロファイル比較を行った。LMO3過剰発現により発現が上昇する遺伝子群には神経の交感神経系への分化に関わる遺伝子群がみられ、LMO3が初期神経発生において重要な役割を担っていることが強く示唆された。4)診断用チップの臨床応用神経芽腫の診断ミニチップの臨床における評価を進めた。新しい試みとしてゲノムコピー数異常データを組み合わせた予後分類のシミュレーションにも着手した。神経・肝の発生分化における遺伝子発現ネットワークの解明と、神経芽腫・肝芽腫の発生および疾患メカニズムの解明を目指し、本年度は以下を進めた。(1)小児癌チップに対する独自データベースの構築これまでに同定してきた神経芽腫の予後の異なるサブセット間で発現量に差のある700個の遺伝子から、さらに重要なものを絞り込むため、小児癌チップを用いて、神経分化・細胞死の誘導時の発現プロファイルや、発現の組織特異性を検討し、データベース化した。本年度は、「神経分化型」、「シュワン型」、および幹細胞様といわれる「中間型」の3種類の神経芽腫細胞株の発現プロファイルを行い、データベースに追加した。(2)遺伝子の絞り込みと機能解析上記の3種の神経芽腫細胞株の間で特徴的な発現プロファイルを示した神経分泌タンパク質ファミリーを新たに同定し機能解析を行った。多検体の神経芽腫組織を用いた解析から、この遺伝子発現は、従来予後予測の困難であった中間予後群に対する新たな予後因子として、腫瘍組織由来RNAおよび血中タンパク質レベルの両方で応用可能であることが示された。(3)臨床検体を用いた発現解析とチップの臨床応用全国の臨床施設の協力のもと、当研究室にて開発した神経芽腫の予後診断チップの臨床における評価を進め、本年度はあらたに50症例について解析を行った。最終的な評価には数年のフォローアップが必要であるが、再発症例や死亡症例が、診断直後の腫瘍組織においても悪性の発現プロファイルを持っていたことから、本チップ解析の診断後早期の施行が、迅速な腫瘍層別化に有効であると期待された。(4)遺伝子発現プロファイルの特徴抽出神経芽腫症例の発現プロファイルデータにっいて、統計的手法を用いて神経発生・分化に関わるMASH1やMYCN等の転写因子群を中心とする発現クラスターを抽出し、Mash1の新たな転写制御機構を見いだした。本成果は神経芽腫細胞の増殖維持のメカニズム解明への一助となると期待される。神経・肝の発生分化における遺伝子発現ネットワークの解明と、神経芽腫・肝芽腫の発生および疾患メカニズムの解明を目指し、本年度は以下を進めた。1)小児癌遺伝子ソースの独自データベースの整備と遺伝子機能情報の付加これまでに同定してきた700個の遺伝子について、各種ヒト組織やマウス胎仔における発現、レチノイン酸等による分化誘導・細胞死誘導時の発現、神経芽腫細胞への導入時の発現パターン等の情報を整理するとともに機能アノテーション情報を付加しデータベースの情報の蓄積を進めた。2)腫瘍サブセット間における発現量の異なる遺伝子の解析神経芽腫で高頻度に欠失・増加するゲノム領域にある遺伝子群に注目し、新たに神経の細胞増殖調節に関与すると予想される2つの遺伝子について解析を進めた。そのうちの一つ、肺癌のがん抑制遺伝子として報告があるイムノグロブリンスーパーファミリーのメンバーについて、増殖能の強い神経芽腫で有意に低い発現を示し予後と強く相関すること、過剰発現下において神経芽腫細胞のコロニー形成能を抑制し、ノックダウン時に細胞増殖能を亢進することを確認した。今後はその転写制御についての解析や遺伝子変異の検索を行い、病態との関連について解析を進める。3)神経発生分化関連転写因子群の神経芽腫細胞における遺伝子発現解析神経芽腫においてがん遺伝子として働くLMO3に転写制御される下流遺伝子の探索を目的に、神経芽腫細胞株にLMO3遺伝子を導入し、小児癌由来11000遺伝子のチップを用いて遺伝子発現プロファイル比較を行った。LMO3過剰発現により発現が上昇する遺伝子群には神経の交感神経系への分化に関わる遺伝子群がみられ、LMO3が初期神経発生において重要な役割を担っていることが強く示唆された。4)診断用チップの臨床応用神経芽腫の診断ミニチップの臨床における評価を進めた。
KAKENHI-PROJECT-18018042
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18018042
小児癌由来遺伝子材料を基盤とした疾病関連遺伝子の探索と病態解明への応用
新しい試みとしてゲノムコピー数異常データを組み合わせた予後分類のシミュレーションにも着手した。
KAKENHI-PROJECT-18018042
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薬剤感受性を考慮した抗MRSA薬血中濃度モニタリングとその臨床的意義に関する研究
【目的】本邦でMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)に対して使用されている3種類の抗菌薬(バンコマイシン(VCM)、テイコプラニン(TEIC)、アルベカシン(ABK))は、安全かつ有効な治療を行うために薬物血中濃度モニタリング(TDM)を行うことが推奨されており、投与設計の際には、トラフ値およびピーク値を指標とした一般的な目標値が用いられている。しかしながら、その目標値の多くは一般的な有効性や安全性をもとに設定されたものであり、添付文書通りの用量を投与しても、各種細菌の最小発育阻止濃度(MIC)を上回る有効域に達しないケースもあるなど、多くの問題を抱えている。そこで、当施設における個々の薬物に対するMRSAのMICを測定するとともに、薬剤感受性や薬物動態学的一薬力学的(PK-PD)パラメーターを考慮したTDMについて検討した。【方法】抗MRSA薬を投与された患者を対象とし、血中濃度測定やMICの調査、およびPK-PDパラメーターの算出を行った。【成果】過去5年間のMICを調査した結果、VCMでは2μg/mLを超える菌は無く、1-2μg/mLの範囲は約20%であった。ABKでは98%が4μg/mL内であった。TEICでは95%が2μg/mL内であったが、若干耐性度が増した菌がみられた。一方、過去1年間のTDM結果を解析した結果、VCMは60%の症例、ABKは32%の症例、TEICは77%の症例で、一般的な目標値に達していたが、PK-PDパラメーターを算出した結果、VCMではほとんどの症例が有効域であった一方で、多くのABKや若干のTEICにおいて、有効域に到達していない症例がみられた。したがって、PK-PDパラメーターを考慮した抗MRSA薬のTDMにより、より有効な投与設計が可能となり、耐性菌出現の回避といった抗MRSA薬の適正使用に有益であることが考えられた。【目的】本邦でMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)に対して使用されている3種類の抗菌薬(バンコマイシン(VCM)、テイコプラニン(TEIC)、アルベカシン(ABK))は、安全かつ有効な治療を行うために薬物血中濃度モニタリング(TDM)を行うことが推奨されており、投与設計の際には、トラフ値およびピーク値を指標とした一般的な目標値が用いられている。しかしながら、その目標値の多くは一般的な有効性や安全性をもとに設定されたものであり、添付文書通りの用量を投与しても、各種細菌の最小発育阻止濃度(MIC)を上回る有効域に達しないケースもあるなど、多くの問題を抱えている。そこで、当施設における個々の薬物に対するMRSAのMICを測定するとともに、薬剤感受性や薬物動態学的一薬力学的(PK-PD)パラメーターを考慮したTDMについて検討した。【方法】抗MRSA薬を投与された患者を対象とし、血中濃度測定やMICの調査、およびPK-PDパラメーターの算出を行った。【成果】過去5年間のMICを調査した結果、VCMでは2μg/mLを超える菌は無く、1-2μg/mLの範囲は約20%であった。ABKでは98%が4μg/mL内であった。TEICでは95%が2μg/mL内であったが、若干耐性度が増した菌がみられた。一方、過去1年間のTDM結果を解析した結果、VCMは60%の症例、ABKは32%の症例、TEICは77%の症例で、一般的な目標値に達していたが、PK-PDパラメーターを算出した結果、VCMではほとんどの症例が有効域であった一方で、多くのABKや若干のTEICにおいて、有効域に到達していない症例がみられた。したがって、PK-PDパラメーターを考慮した抗MRSA薬のTDMにより、より有効な投与設計が可能となり、耐性菌出現の回避といった抗MRSA薬の適正使用に有益であることが考えられた。
KAKENHI-PROJECT-19923035
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19923035
非イオン界面活性剤ミセルを媒体とするイオン会合抽出と分離分析
本研究では,溶媒抽出法に基づく分離分析法からの脱却と擬均一系水系溶媒での二相間分配反応を伴う分離分析を指向し,疎水性イオンのミセル抽出現象に関する研究を進めた.対象とする疎水性物質として,一連の物質が揃った陰イオンであることから8種類のダンシルアミノ酸類を,また,陽イオン性物質として一連のアルキルピリジニウム,アルキルイミダゾリウムを用いた.ポリエーテル系の非イオン界面活性剤ミセルに対して,陽イオンよりも陰イオンを強く結合する結果が得られた.本研究では,溶媒抽出法に基づく分離分析法からの脱却と擬均一系水系溶媒での二相間分配反応を伴う分離分析を指向し,疎水性イオンのミセル抽出現象に関する研究を進めた.対象とする疎水性物質として,一連の物質が揃った陰イオンであることから8種類のダンシルアミノ酸類を,また,陽イオン性物質として一連のアルキルピリジニウム,アルキルイミダゾリウムを用いた.ポリエーテル系の非イオン界面活性剤ミセルに対して,陽イオンよりも陰イオンを強く結合する結果が得られた.本研究では,溶媒抽出法に基づく分離分析法からの脱却と擬均一系水系溶媒でのミセル抽出への移行を指向し,疎水性イオン及びイオン会合体のミセル抽出現象に関する物理化学の確立を目的として研究を進めている.非イオン界面活性剤からなるミセルは,ミセル自身に電荷を有さない点で有機溶媒と等価であるが,無電荷物質に加えて電荷を有する物質も結合する特徴を有する.本年度は特に,疎水性イオンの非イオン界面活性剤ミセルへの結合反応について検討を進めた.結合反応解析には,反応に基づいてプローブイオンの電気泳動移動度が変化するキャピラリー電気泳動法を用いた.対象とする疎水性物質として,一連の物質が揃った陰イオンであることから8種類のダンシルアミノ酸類を選択して用い,各種非イオン界面活性剤ミセルへの結合反応平衡を調査した.ダンシルアミノ酸類の結合反応は,水-オクタノールのアミノ酸の分配平衡からみられる疎水性を反映する結果が得られた.界面活性剤はその種類により疎水性媒体としての特性,疎水的環塊が異なることを結合定数から知ることができた.(学会発表済,論文投稿中)また,ミセルへ結合する物質として6種類の陽イオン性アルキルピリジニウムを用いた場合,得られた結合定数は分子体積に基づく疎水性から予想される値よりも小さい結果が得られた.疎水性陽イオンと疎水性陰イオンに対して,ポリオキシエチレン部位を有する非イオン界面活性剤ミセルが異なる選択律を示す結果が得られた.(学会発表済,論文執筆中)本研究では,環境負荷の高い各種有機溶媒を極力使用せず,分離分析における水系溶媒の積極的な活用を目指している,二相間分配反応を伴う分離分析を実現するための一つの方法として,水中の非イオン界面活性剤ミセルを擬似有機相,疎水性抽出媒体として用いる研究を進めている.この研究を通して,疎水性イオン及びイオン会合体のミセル抽出現象に関する物理化学の確立を目指している.これまでの研究で,疎水性物質の分配反応場としての,有機溶媒と非イオン界面活性剤ミセルとの類似性,相違性に関する情報を蓄積してきた.すなわち,ポリオキシエチレン系の非イオン界面活性剤からなるミセルは,ミセル自身に電荷を有さない点で有機溶媒と等価であるが,無電荷物質に加えて電荷を有するイオンも結合する特徴を有する.イオン種に対するミセルの選択性もあり,非イオン界面活性剤では陽イオンよりも陰イオンを強く結合する知見を得ている.なお,結合反応の平衡解析には,反応に基づいてプローブイオンの電気泳動移動度が変化するキャピラリー電気泳動法を用いた.本年度の研究では特に,陽イオン種としてアルキルイミダゾリウムのミセルへの結合反応を通して,非イオン界面活性剤の結合特性に関する検討を進めた.各種アルキルイミダゾリウムはイオン液体として注目されており,今後その用途が拡がると考えられる.四種類のアルキルイミダゾリウムの結合反応は,昨年度に検討したアルキルピリジニウムと同様に比較的弱い結合特性が得られた(学会発表済,論文執筆中).また,陽イオンとしてアルキルアニリニウムイオン,芳香族アンモニウムイオンについて検討を進め,陽イオン種の非イオン界面活性剤ミセルへの弱い結合特性に関するデータを蓄積している(学会発表予定).
KAKENHI-PROJECT-19550090
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東日本大震災時の知的障害者避難行動分析に基づく災害時コミュニティ支援モデルの開発
・本研究は、知的障害児・者(障害者手帳所有者)の1)被災時の避難行動、2)避難時に受けた支援内容、3)宮城県沖地震を想定して準備していたこと等を検証し、今後想定されている大規模災害時の避難行動に対する避難介助と支援方法等についてのコミュニティ支援モデルを作成することを目的としている。・平成30年度は、知的障害者の通所施設の職員と知的障害者をもつ家族に対して、インタビューガイドを用いてインタビューをした結果を突き合わせ相違点を比較した。・対象は東日本大震災において津波被害を受けた、A県B市内にある知的障害者通所施設職員と通所施設に通所する知的障害者をもつ家族である。聞き取った内容は、1)被災時の避難行動、2)避難時に困ったこと、3)地域の人から受けた支援、受けたい支援についてインタビューを実施した。インタビュー内容は逐語録を作成し記述データとした。分析はデータを精読し、対象者から発災時の避難行動とその時困ったこと、避難時に地域の人から受けたい支援内容などについて抽出・整理した。・避難するうえで困ったことについて家族は、【避難所に行くための手助けがなくて困った】という内容であった。一方、施設職員は、【テレビ以外から情報を得る手段がなくて困った】【上司や同僚と相談することができなかった】という内容であった。地域から受けた支援・受けたかった支援については、家族は、【避難所では普段から知っているので手を貸してくれた】【近所づきあいが密なので状況が分かる】【避難所に行く時は手を貸してほしい】という内容であった。一方施設職員は、【普段の障害児の顔や特徴を理解してほしい】【障害を理解し手助けしてもらいたい】と感じていた。家族も施設職員も同様の内容であった。本研究は、災害時要援護者の中でも知的障害児・者(障害者手帳所有者)の1避難時の避難行動、2避難時に受けた支援内容、3宮城県沖地震を想定して準備していたこと等を検証し、今後想定されている大規模災害時の避難介助と支援方法についてコミュニティ支援モデルを開発することを目的としている。平成26年度は、文献検索、家族会代表等から避難時の行動要因の抽出と要因に関連する環境の類型化を図ることを計画していた。文献を抽出する為、CiNii Web版(1995年2014年)において公表された文献(2014年12月17日時点)の内、「災害」「障害者」「避難」をキーワードに論文に絞り込み、さらに、「避難行動」「方法」「支援」について記載されている文献に絞りこんだ。その結果、28件の文献が抽出されその文献を分析対象とした。対象となった文献を精読し、研究目的、方法、結果の観点から文献リストを作成した。そのうえで、災害別、障害別に、1震災時の避難行動、2避難時に困ったこと、3避難所での生活等で困難をきたしたこと等について抽出した。また、障害者の災害時の避難行動、避難時の支援を行うにあたり、その対象者を取り巻く環境により避難行動やその支援に影響することが予測される。そこで、障害者を取り巻く環境について類型化を図り分析するために、被災した自治体のホームページから地域の概要を理解するために基本となるデータおよび防災計画等既存の資料収集を行った。・本研究では、被災自治体在住の知的障害者(障害者手帳所有者)を持つ家族を対象に、1震災時の避難行動、2避難時に受けた支援内容、3宮城県沖地震を想定して準備していたこと等について検証し、今後の大規模地震に想定し、自助・互助・共助・公助に分類し、コミュニティ防災システムを開発することを目的としている。・平成26年度は先行研究から災害時要援護者の「避難行動」「避難時に受けた支援」「災害が起きた時のために準備していたこと」等について、災害の種類別、障害別に分けて抽出した。しかし、これらに関する文献が少なく、また、知的障害者についてはもっと少なく、要因を抽出するのに困難をきたし施設の職員に聞き取りを行うに至らなかった。・平成27年度は、文献数が少ないながらも平成26年度に文献から明らかにした避難時の行動要因を基に、家族や支援者に対する半構成的面接による調査を行うことを計画していた。しかし、知的障害者の特性等を考慮した内容なのか疑問に思い、再度文献検索を行った。また、知的障害者が生活している自治体の類型化を図るため、ホームページの情報以外の情報収集については、一部の自治体のみ入手するにとどまった。・数少ない文献をもとに倫理委員会資料の作成を試みたが、知的障害者とその家族の震災時の避難行動等に関する先行研究の内容は、震災当初支援活動を行っていた時に関係者から聞いていたこととずれていたため、再度先行研究の検索を行い、分析した。しかし、文献数は一昨年よりは増えているものの、必要とする「知的障害者」についての「避難行動」に関する文献に変わりがなかった。・平成26年度に文献検索をした結果をもとに調査を行うことも可能であったが、現状にそぐわないことを調査しても対象者に負担をかけるだけであり、少しでも調査内容が次の災害時に活かせるものにしたいと考え再度文献検索を行った。・自治体の類型化については、自治体から入手したい情報を入手するには自治体職員の手を煩わせることになるため、時期を見計らっていたため遅れてしまったが、これについては研究をまとめるまでに入手することで対応可能である。
KAKENHI-PROJECT-26463279
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26463279
東日本大震災時の知的障害者避難行動分析に基づく災害時コミュニティ支援モデルの開発
・本研究は、被災自治体在住の知的障害者(障害者手帳B所有者)を持つ家族を対象に、1被災時の避難行動、2避難時に困ったこと、3避難時に受けた支援内容、4宮城県沖地震を想定して準備していたこと、5地域住民による支援の必要性等について明らかにし、避難時の行動要因の分析を行い、大震災による津波災害時の避難行動支援のあり方を検討することを目的としている。また、そのうえで、支援内容を自助・互助・共助・公助に分類し、コミュニティ防災システムの開発を行うことである。・災害時要援護者の中でも知的障害者・児の災害時における「避難行動」「避難時に受けた支援」「地域住民による支援の必要性」「避難時に困ったこと」「災害時のために準備していたこと」等に関する先行研究が少なく研究を進める上で、研究開始当初から苦慮した。・平成26年度に予定していた先行研究からの要因抽出は先行研究が少なすぎて困難であった。そこで、平成27年度は当該家族の聞き取りをする前に、再度の文献検索と施設職員への聞き取りを行うこととし、その準備を進めた。・平成28年度は、被災自治体の知的障害者福祉施設の職員から聞き取り調査を行うため、所属する大学の研究倫理委員会の承認を得た。3か所の自治体に研究の概要を説明し、対象となる福祉施設の紹介を依頼したものの、5年が過ぎた現在においても施設長はじめ施設職員が面接に対応できるか不安があるという申し出があり、研究を進めることができないでいた。・年度末になり、1か所の自治体から3か所の福祉施設を紹介され調査可能となり、調査日程の調整の関係で、平成29年4月の調査となった。・先行研究の少ない研究課題であり、対象が知的障害児・者とその家族であることに加え、東日本大震災により被災した方々でもあるため倫理的にも十分配慮を行う必要がある。また、先行研究から聞き取る内容の要因を抽出するのが難しく、知的障害児・者が通所している福祉施設の代表、および職員を対象に聞き取り調査を行うこととした。しかし、福祉施設の代表者自身が既に5年が経過していても不安定な状態であり対象施設の選定に苦慮した。・平成29年度は施設職員に聞き取りを行い、分析し、聞き取り可能な当事者を紹介していただき調査を行う予定である。・本研究の目的は、被災自治体に在住する知的障害者(障害者手帳B所有者)を持つ家族を対象に、被災時の1避難行動、2困難な点、3支援内容、4準備内容、5地域住民による支援のあり方を検討し、支援内容の分類とコミュニティ防災システムの開発を行うことである。・被災自治体から研究対象として希望する福祉施設の紹介をうけ、施設職員や知的障害者を持つ家族の協力を得て研究を進める計画であったが、利用者の家族状況などから家族対象の調査は困難となり、職員からの聞き取り調査を実施した。その結果、施設職員は、施設の立地場所が沿岸部から距離があり津波が来ることは想定外であった。また、通所者の特徴と通所施設という施設の特徴から施設外に避難しないという認識であり、むしろ施設自体が一時避難所として対応していた。施設職員が、避難するうえで困ったことは、情報不足、通信困難な状況の中にあり、的確な判断をしなければならないことであった。判断を誤らないためにも確実な情報収集が必要であり、今後、情報収集の手段の検討を行う必要性を訴えていた。必要な支援としては、避難する時の地域の人達の支援である。
KAKENHI-PROJECT-26463279
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新規遺伝性腎がんラットのTransgenic rescueと遺伝子機能の解明
新規遺伝性腎がんラットであるNihonラットの腎がん発生の原因が、ヒトのBirt-Hogg-Dube症候群の原因遺伝子であるBHD遺伝子のラットホモログに生じたgerm line mutationであることが明らかになった。本年度は、まず昨年度樹立した野生型Bhd遺伝子導入トランスジェニックNihonラットの表現型の解析を中心に行い、腎発癌の抑制と胎生致死の回避を複数の独立したラインで確認することができた。これらの結果からBhd遺伝子がNihonラットの腎発癌ならびに胎生致死の原因遺伝子であることを最終的に証明できたものと考える。またBhd産物の機能を明らかにする手がかりとして、以下の結果を得た。細胞内でのBhdの局在を、タグを付加した強制発現系を用いて検討した結果、核および細胞質の両方にびまん性に存在することが確認された。臓器における発現など内在性の発現様式に関しては、現在Bhdに対する特異抗体を用いて検討中である。またBhd結合タンパクに関して、Bhdに対する抗体を用いた免疫共沈降法とSDS-PAGEによる検討を行った結果、150kD付近の特異的なバンドを候補として認めた。現在このバンドを切り出し、アミノ酸配列のシークエンスを試みている。Bhdのリン酸化部位に関しては、ウェスタンブロットにより検出されるBhd産物の複数のバンドが、ホスファターゼ処理により、より移動度の速いバンドに収束することを確認した。次に、BhdをN末とC末に二分して発現させたところ、N末にリン酸化部位が存在することが予想された。現在リン酸化部位の候補となるセリン/スレオニンをアラニンに換えたアミノ酸置換Bhd変異体発現プラスミドを作製しており、それらを利用して最終的にリン酸化部位を同定する予定である。また、本研究においてはNihonラット腎癌由来の培養細胞に、Bhd遺伝子発現系を再導入した細胞株の樹立も進めた。現在樹立の最終段階であり、今後これらの細胞株をBhd産物の機能解析のツールとして利用する予定である。新規遺伝性腎がんラットであるNihonラットの腎がん発生の原因が、ヒトのBirt-Hogg-Dube症候群の原因遺伝子であるBHD遺伝子のラットホモログに生じたgerm line mutationであることが明らかとなった。ラットBhd遺伝子の全長cDNA構造の解析をRT-PCRおよび5'-、3'-RACEにより行った。ラットBhd産物(folliculin)は579アミノ酸残基からなり、ヒトとマウスにそれぞれ93%、97%の相同性を有していることがわかった。ラットBhd遺伝子の5'領域には、ヒトでは3つであった非翻訳エクソンを2つ認めた。さらにNihonラット由来の腎がん培養細胞を樹立し、この培養細胞株ならびに4匹のNihonラットから採取した腎がん11例に関してBhd遺伝子における遺伝子変異の解析を行った。その結果、腎がん11例中10例と上記培養細胞株全例においてBhd遺伝子領域のLOHを認め、さらにLOHを認めなかった腎がん1例においても、Bhd遺伝子の野生型アリルのエクソン6内にナンセンス変異を生じるG→Tへの塩基置換を認めた。以上からNihonラットの腎発がんの原因がBhd遺伝子におけるKnudsonの2nd hitにより生じることが確認された。現在、野生型Bhd遺伝子を導入遺伝子に持つトランスジェニックNihonラットを樹立し、表現型の観察を行っている。また原因遺伝子産物であるfolliculinのN末ならびにC末に対する抗体作製を行った。特にC末に対する抗体はウェスタンブロットで良好な結果を得ており、約66kDaのfolliculinの特異的なバンドが検出されている。今後、この抗体を利用し、folliculinの機能解析を進める予定である。新規遺伝性腎がんラットであるNihonラットの腎がん発生の原因が、ヒトのBirt-Hogg-Dube症候群の原因遺伝子であるBHD遺伝子のラットホモログに生じたgerm line mutationであることが明らかになった。本年度は、まず昨年度樹立した野生型Bhd遺伝子導入トランスジェニックNihonラットの表現型の解析を中心に行い、腎発癌の抑制と胎生致死の回避を複数の独立したラインで確認することができた。これらの結果からBhd遺伝子がNihonラットの腎発癌ならびに胎生致死の原因遺伝子であることを最終的に証明できたものと考える。またBhd産物の機能を明らかにする手がかりとして、以下の結果を得た。細胞内でのBhdの局在を、タグを付加した強制発現系を用いて検討した結果、核および細胞質の両方にびまん性に存在することが確認された。臓器における発現など内在性の発現様式に関しては、現在Bhdに対する特異抗体を用いて検討中である。またBhd結合タンパクに関して、Bhdに対する抗体を用いた免疫共沈降法とSDS-PAGEによる検討を行った結果、150kD付近の特異的なバンドを候補として認めた。現在このバンドを切り出し、アミノ酸配列のシークエンスを試みている。Bhdのリン酸化部位に関しては、ウェスタンブロットにより検出されるBhd産物の複数のバンドが、ホスファターゼ処理により、より移動度の速いバンドに収束することを確認した。次に、BhdをN末とC末に二分して発現させたところ、N末にリン酸化部位が存在することが予想された。現在リン酸化部位の候補となるセリン/スレオニンをアラニンに換えたアミノ酸置換Bhd変異体発現プラスミドを作製しており、それらを利用して最終的にリン酸化部位を同定する予定である。また、本研究においてはNihonラット腎癌由来の培養細胞に、Bhd遺伝子発現系を再導入した細胞株の樹立も進めた。
KAKENHI-PROJECT-15700315
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新規遺伝性腎がんラットのTransgenic rescueと遺伝子機能の解明
現在樹立の最終段階であり、今後これらの細胞株をBhd産物の機能解析のツールとして利用する予定である。
KAKENHI-PROJECT-15700315
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コミュニティ再生に向けた地域福祉実践理論の構築とその研究方法論の確立に関する研究
地域福祉の実践と理論を結ぶことを目的に、地域福祉政策において先駆的な取り組みを展開している「東京都三鷹市」「長野県茅野市」「宮崎県都城市」という3つのフィールドの比較研究をもとに、それぞれの地域で地域福祉が形成されていく過程を明らかにし、その裏付けになった理論的背景を踏まえつつ、地域福祉の発展型モデルを提示した。さらに、その結果を踏まえ、包括的支援体制の構築の必要性を検討し、2017年9月に厚生労働省がまとめた「最終とりまとめ」における「地域における住民主体の課題解決力強化・相談支援体制のあり方に関する検討会」での検討内容と改正された社会福祉法を検証し、包括的支援体制をについて検証した。本研究では、コミュニティ再生に向けた地域福祉実践理論の構築をめざし、「地域間比較研究」「地域福祉理論研究」「国際比較研究」の3本立てで実施している。2015年度は、このうち「地域間比較研究」を中心に研究事業を展開した。具体的には、地域福祉政策において先駆的な取り組みを展開している「東京都三鷹市」「長野県茅野市」「宮崎県都城市」の3市において、関係者へのインタビュー調査を実施した。事前に、インタビュー項目を検討するため、3市の地域福祉政策に関わる文献を収集し、その分析から、各市において特徴的な取り組みと考えられる、1地域福祉推進組織の設立経緯・推進体制・実践内容等、2地域福祉計画・地域福祉活動計画の策定手法・推進体制・課題等の、2点を中心にインタビューを実施することとした。研究代表者、分担研究者、連携研究者、研究協力者が分担して3市を訪問し、各市の市長、市長経験者、行政担当者、社会福祉協議会職員、福祉関係機関職員、民生委員・ボランティア等に対し、インタビューを行った。インタビュー内容の分析から、「地域コミュニティの福祉化」「ガバナンスと協働の仕組みづくり」「地域ケアシステムの展開」の3つの視点を抽出し、地域福祉研究による理論と実践と政策がどのように関与してきたかという相関について、3市のインタビュー内容から比較研究を行った。その結果は、2016年6月に開催される「日本地域福祉学会第30回記念大会」においてシンポジウムとして報告する。その他、「地域福祉理論研究」では、地域福祉や近接領域に関わる文献の収集および研究者に対するインタビューを一部実施し、「国際比較研究」では、2016年度に行う現地調査に向け調査先候補の検討を行った。これらの研究を進めるため、研究会を4回開催した。「地域間比較研究」においては、当初計画通り、調査対象として選定した「東京都三鷹市」「長野県茅野市」「宮崎県都城市」の3市の地域福祉に関わる文献を収集し、インタビュー項目を検討した。さらに、現地へ赴き、各市の市長、市長経験者、行政担当者、社会福祉協議会職員、福祉関係機関職員、民生委員・ボランティア等へのインタビューを実施し、その分析を行った。また、「国際比較研究」においても、当初計画通り、2016年度に行う現地調査に向けた準備を行った。「地域福祉理論研究」においては、当初計画通り、地域福祉や近接領域に関わる文献の収集・分析をすすめ、各領域の識者へのヒアリングは一部実施した。よって、おおむね順調に進展していると言える。【研究実績の概要】本研究では、コミュニティ再生に向けた地域福祉実践理論の構築をめざし、「地域間比較研究」「地域福祉理論研究」「国際比較研究」の3本立てで実施している。2015年度は「地域間比較研究」を中心に実施したが、2016年度は「地域福祉理論研究」と「国際比較研究」に主軸を置いて、以下の2点に焦点を絞って研究を行った。1つ目は、「地域福祉計画の策定を通して介入された、地域・住民の視点から、その有効性・妥当性を検証する」。この目的を果たすために、文献研究を行うとともに、2015年度にインタビュー調査を行った、東京都三鷹市・長野県茅野市・宮崎県都城市の3市を対象に、量的(アンケート)調査を実施した。行った調査は、1民生委員を対象とした意識調査(全数調査)、2市民を対象とした意識調査(1000人無作為抽出調査)、33市がある都県内の自治体を対象とした計画の策定状況に係る調査(全数調査)、の3種類の調査である。2つ目は「『市民度』を高めることに寄与するような『参加』及び『自治』、『協働』の推進、『権力構造』の把握とそれへの介入があれば、地域福祉の良好なパフォーマンスが展開されているといえるのではないか」という仮説の検証である。この目的を果たすため、文献研究を行い、そこで導き出された『市民度』を図る指標をふまえ、3市の民生委員やボランティア・市民活動者、行政・社協職員等に対するインタビュー調査を再度行うこととし、2016年度は都城市で実施した。2017年度は三鷹市・茅野市で行う予定にしている。さらに、海外における動向を把握するため、「国際比較研究」の一環としてアメリカでコミュニティを基盤とした活動をしている研究者に対しインタビュー調査をするとともに、ロサンゼルスに赴き、コミュニティを基盤に活動しているNPOへのインタビュー調査を実施した。2015年度のインタビュー調査および文献研究から導き出された論点をふまえ、量的(アンケート)調査を3市を対象に実施することができた。また、3市においてインタビュー調査を再度行うこととし、3市のうち1市ですでに実施し、残り2市も2017年度に実施することとしている。さらに、国際比較研究として、国内でアメリカの研究者に対するインタビュー調査を行うとともに、現地へ赴き、NPOの視察とインタビュー調査も実施した。
KAKENHI-PROJECT-15H03434
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コミュニティ再生に向けた地域福祉実践理論の構築とその研究方法論の確立に関する研究
以上から、本研究は、概ね順調に進展しているといえる。地域福祉の実践と理論を結ぶことを目的に、地域福祉政策において先駆的な取り組みを展開している「東京都三鷹市」「長野県茅野市」「宮崎県都城市」という3つのフィールドの比較研究をもとに、各地域で地域福祉が形成されていく過程を調査し、その裏付けになった理論的背景を考察した。<『地域福祉に関する包括的支援体制と住民福祉活動支援に関する調査結果報告』2017年10月)、『地域福祉に関する住民活動調査調査結果報告書』(2017年8月)、『地域の相談・支援体制に関するアンケート(民生委員・児童委員対象)調査結果報告書』(2017年5月)>。本研究の今日における意義を検証すべく、「地域における住民主体の課題解決力強化・相談支援体制のあり方に関する検討会:最終報告」(2017年9月厚生労働省)と改正社会福祉法における包括的支援体制について検証し、成果を2018年1月21日「日本地域福祉学会平成29年度公開研究フォーラム」で報告し日本地域福祉学会のホームページに「地域共生社会の実現にむけた地域福祉の実践・理論課題」(ディスカッションペーパー)を掲載した。1地域福祉実践の多角的な評価と推進課題I研究の全体概要、II包括的相談支援体制の整備および住民福祉活動の現状と課題3都県での地域福祉計画に関するアンケート調査を通して、III地域福祉活動における圏域設定と地域福祉課題への態度都城市・茅野市・三鷹市住民対象調査結果の比較から、IV総合相談・支援システムの検証民生委員・児童委員対象アンケート調査結果の比較から、Vソーシャル・キャピタルの醸成と市民度、2地域共生社会の実現に向けた地域福祉のありかた地域福祉計画のあり方を中心にI包括的支援体制の構築に向けて、II地域福祉計画と住民参加の蓄積、III地縁型組織の関わり、社協の役割、IV包括的支援体制と地域福祉計画地域福祉行政への転換である。地域福祉の実践と理論を結ぶことを目的に、地域福祉政策において先駆的な取り組みを展開している「東京都三鷹市」「長野県茅野市」「宮崎県都城市」という3つのフィールドの比較研究をもとに、それぞれの地域で地域福祉が形成されていく過程を明らかにし、その裏付けになった理論的背景を踏まえつつ、地域福祉の発展型モデルを提示した。さらに、その結果を踏まえ、包括的支援体制の構築の必要性を検討し、2017年9月に厚生労働省がまとめた「最終とりまとめ」における「地域における住民主体の課題解決力強化・相談支援体制のあり方に関する検討会」での検討内容と改正された社会福祉法を検証し、包括的支援体制をについて検証した。「地域間比較研究」については、2015年度の研究の成果を2016年6月に行われる日本地域福祉学会大会において研究会シンポジウムとして報告する。「国際比較研究」については、アメリカおよびイギリスに焦点をあてて現地調査を行い、2015年度に行った国内の地域間比較研究の分析結果との比較を行う。「地域福祉理論研究」においては、引き続き文献の収集・分析および識者へのヒアリングを実施する。
KAKENHI-PROJECT-15H03434
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超音波破砕と薬物学的CEA抗原遊出法を併用した播種性転移診断増強法
【目的】申請者は先に、phosphatidyl inositol phospholipase C(PLC)の性質を応用した腹膜転移(P)早期診断法(PLC法)を開発したが、今回、超音波細胞破砕を併用した場合(USP法)の感度増強効果と臨床応用の可能性を検討した。【対象】CEA産生胃癌細胞株(KATO-III、LoVo、MKN-45)および1993年1月から1998年5月までに当科で開腹した胃癌症例のうち、洗浄細胞診を施行した196例。【方法】開腹時にダグラス窩と左横隔膜下に生食水50mlを注入、撹拌後回収し、PLCを添加した。USP法ではPLC添加時に超音波細胞破砕を併用した。それぞれ上清中CEA濃度を測定し、添加前の1.6倍以上の上昇を陽性とした。【臨床的検討】(1)P(+)例におけるUSP法の陽性率は94.1%と高く、T1症例での陽性率は0%であり、偽陽性、偽陰性が最も少なかった。P(-)例におけるUSP法、PLC法、CY法の陽性率はそれぞれ15.3%、9.5%、5.4%であり、USP法の感度が最も高かった。(2)全例でのCY法、PLC法、USP法による検討で、いずれの陽性群も陰性群に比べ有意に予後不良であった。(3)stageIII、IV且つCY(-)症例においてPLC(+)群とPLC(-)群の予後を比較すると、両群間に有意差がみられなかったが、USP施行例における比較では、USP(+)群がUSP(-)群に比べ有意に予後不良であった。以上の結果、USP法の腹膜転移早期診断法としての有用性が示唆された。【目的】申請者は先に、phosphatidyl inositol phospholipase C(PLC)の性質を応用した腹膜転移(P)早期診断法(PLC法)を開発したが、今回、超音波細胞破砕を併用した場合(USP法)の感度増強効果と臨床応用の可能性を検討した。【対象】CEA産生胃癌細胞株(KATO-III、LoVo、MKN-45)および1993年1月から1998年5月までに当科で開腹した胃癌症例のうち、洗浄細胞診を施行した196例。【方法】開腹時にダグラス窩と左横隔膜下に生食水50mlを注入、撹拌後回収し、PLCを添加した。USP法ではPLC添加時に超音波細胞破砕を併用した。それぞれ上清中CEA濃度を測定し、添加前の1.6倍以上の上昇を陽性とした。【臨床的検討】(1)P(+)例におけるUSP法の陽性率は94.1%と高く、T1症例での陽性率は0%であり、偽陽性、偽陰性が最も少なかった。P(-)例におけるUSP法、PLC法、CY法の陽性率はそれぞれ15.3%、9.5%、5.4%であり、USP法の感度が最も高かった。(2)全例でのCY法、PLC法、USP法による検討で、いずれの陽性群も陰性群に比べ有意に予後不良であった。(3)stageIII、IV且つCY(-)症例においてPLC(+)群とPLC(-)群の予後を比較すると、両群間に有意差がみられなかったが、USP施行例における比較では、USP(+)群がUSP(-)群に比べ有意に予後不良であった。以上の結果、USP法の腹膜転移早期診断法としての有用性が示唆された。目的:癌細胞膜に疎水結合しているCEA抗原がPhosphatidyl inositol phospholipase C(以下PIPLC)により選択的に切断・可溶化される可能性を種々検討してきた。申請者らは細胞質内CEA抗原を超音波により破砕・遊出(USPLC法)した場合の感度増強程度と併用による診断能向上の可能性を検討した。対象:胃癌手術症例48例方法:開腹直後にダグラス窩及び左横隔膜下腔内に50mlの生食水を注入・洗浄し可及的洗浄液を採取後、得られた沈渣を0.1Mリン酸緩衝液(PB)にて洗浄し1mlPB中に再浮遊させ、0.5単位のPIPLCを添加後超音波細胞破砕を併用(USPLC法)し、37°C120分間反応させた。判定は上清中のCEA濃度が非処置群に比べ1.6倍以上の感度増強を認めた場合を陽性と判定し、パパニコロ-染色による洗浄細胞診(CY)の結果と比較検討した。基礎的検討:USPLC法は胃癌培養細胞株KATO-3 1.0×10^3個、MKN-45 1.0×10^2個が検出可能であった。これは、以前のPIPLC法に比べ510倍以上の感度である。臨床的検討:肉眼的腹膜播種性転移別に陽性率を検討するとP(+)10例の全てでUSPLC法でも陽性で、同時にCYで癌細胞の存在が確認された。P(-)38例の内、8例でUSPLC法が陽性で、内3例でCYが陽性であった。P(-)でCY陰性例中USPLC法陽性例が5例存在したが、何れも広汎T3症例で、腹膜播種性転移高度危険群と推察された。
KAKENHI-PROJECT-09671219
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超音波破砕と薬物学的CEA抗原遊出法を併用した播種性転移診断増強法
結語:US法とPIPLC法を併用したUSPLC法は、腹膜播種性転移の客観的かつ鋭敏な早期診断法として有用である可能性が示唆された。【目的】申請者らは癌細胞膜に疎水結合しているCEA抗原がPhosphatidyl inosi-tol phospholipase C(以下PIPLC)により選択的に切断、可溶化される性質を利用した腹膜播種性転移(P)早期診断法(PIPLC法)を開発した。今回、さらに癌細胞の超音波破砕により細胞質内CEA抗原を遊出させる方法(USP法)と併用した場合の感度増強効果と臨床応用の可能性を検討した。【対象】1993年1月から1998年5月までに当科で開腹した胃癌手術症例187例【方法】開腹直後にダグラス窩、左横隔膜下腔に生食水50mlを注入、撹拌洗浄後回収し、PIPLCを添加した。また、同様にPIPLC添加後、超音波細胞破砕を併用し上滑中CEA濃度を測定し、非添加群に比べ1.6倍以上の濃度増強を認めた症例を陽性と判定し、洗浄細胞診(CY)の結果と比較した。【基礎的検討】USP法は胃癌培養細胞株KATO-3 1×10^3個、MKN-45 1.0×10^2個が検出可能であった。これはPIPLC法に比べ510倍以上の感度である。【臨床的検討】(1)PIPLC法を施行した腹膜播種陰性87例中、7例(8.0%)がPIPLC陽性、そのうち2例はCYも陽性であった。また、USP法を施行した腹膜播種陰性74例中、11例(14.9%)がUSP陽性であり、USP,CYともに陽性が6例みられた。USP陽性,CY陰性例が5例存在したが、いずれも広範なT3,N4症例で腹膜播種高危険群と推察された。(2)PIPLC法、USP法と予後との関連をstageIII、IV症例で検討すると、PIPLC陽性・陰性例、USP陽性・陰性例の術後平均生存期間はそれぞれ457.3日、757.8日、246.4日、617.3日であり、陽性例の予後は不良であった。以上の結果より両検査法の腹膜播種性転移早期診断法としての有用性が示唆された。【目的】申請者は先に、phosphatidyl inositol phospholipase C(PIPLC)の性質を応用した腹膜転移(P)早期診断法(PIPLC法)を開発したが、今回、癌細胞の超音波破砕を併用した場合(USP法)の感度増強効果と臨床応用の可能性を検討した。【対象】1993年1月から1998年5月までに当科で開腹した胃癌199例。【方法】開腹時にダグラス窩と左横隔膜下に生食水50mlを注入、撹拌後回収し、PIPLCを添加した。USP法ではPIPLC添加後に超音波細胞破砕を併用した。それぞれ上清中CEA濃度を測定し、添加前の1.6倍以上の上昇を陽性と判定した。【臨床的検討】(1)P(+)例におけるUSP法の陽性率は94.1%と高く、T1症例での陽性率は0%であり、偽陽性、偽陰性が最も少なかった。P(-)例におけるUSP法、PIPLC法、CY法の陽性率はそれぞれ15.3%、9.5%、5.4%であり、USP法の感度が最も高かった。(2)全例でのCY法、PIPLC法、USP法による検討で、いずれの陽性群も陰性群に比べ有意に予後不良であった。(3)stageIII、IV且つCY(-)症例においてPIPLC(+)群とPIPLC(-)群の予後を比較すると、両群間に有意差がみられなかったが、USP施行例における比較では、USP(+)群がUSP(-)群に比べ有意に予後不良であった。以上の結果、USP法の腹膜播種性転移早期診断法としての有用性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-09671219
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パラグループ理論と量子群,位相的場の理論,共形場理論等との関わりの研究
私は,昨年度までに,上述のOcneanuによるDynkin図形上のconnectionの完全分類の応用として,(A型から他のA-D-E型への埋め込みによって得られる)subfactor理論では古くから知られているGoodman-de la Harpe-Jones subfactorという一連のsubfactorすべての(dual)principal graphやfusion ruleの計算,およびその一般化として,D型やE型から他のA-D-E型への埋め込みのから生じるsubfactorのfusion ruleの計算を行っていたが,本年度はこれらの結果を吟味することにより,すべてのA-D-E型subractor(index<4のsubfactor)のgeneralized intermediate subfactor(またはsub-equivalent paragroup)の分類を行った.paragroupの(sub-)equivalenceの概念はsubfactorから生じる位相的場の理論との関係から,非常に自然に定義されるものである(実際equivalentなparagroupからは同じTuraev-Viro型の位相的場の理論が生じることが知られている).今回のsub-equivalentなparagroupの分類結果と位相的場の理論の分類との関係を調べることは,今後の重要課題の1つとなるだろう.私は,このOcneanuによるDynkin図形上のconnectionの完全分類の応用として,subfactor理論では古くから知られているGoodman-de laHarpe-Jones subfactorという一連のsubfactorすべての(dual)principal graphやfusion ruleの計算を行っていたが,本年度は,この計算をさらに一般の場合に行った.具体的には,A型から他のA-D-E型への埋め込みによって得られるのがGoodman-de laHarpe-Jones subfactorだが,これをさらにD型やE型から他のA-D-E型への埋め込みの場合にも計算した.これらの結果を総合すると,A-D-E型Dynkin図形上のすべてのconnectionが得られるため,これをさらに詳しく吟味すれば、すべてのA-D-E型subfactor(index<4のsubfactor)のgeneralized intermediate subfactor(あるいはsub-equivalent paragroup)を完全分類することができる.私は,昨年度までに,上述のOcneanuによるDynkin図形上のconnectionの完全分類の応用として,(A型から他のA-D-E型への埋め込みによって得られる)subfactor理論では古くから知られているGoodman-de laHarpe-Jones subfactorという一連のsubfactorすべての(dual)principal graphやfusion ruleの計算,およびその一般化として,D型やE型から他のA-D-E型への埋め込みのから生じるsubfactorのfusion ruleの計算を行っていたが,本年度はこれらの結果を吟味することにより,すべてのA-D-E型subractor(index<4のsubfactor)のgeneralized intermediate subfactor(またはsub-equivalent paragroup)の分類を行った.paragroupの(sub-)equivalenceの概念はsubfactorから生じる位相的場の理論との関係から,非常に自然に定義されるものである(実際equivalentなparagroupからは同じTuraev-Viro型の位相的場の理論が生じることが知られている).今回のsub-equivalentなparagroupの分類結果と位相的場の理論の分類との関係を調べることは,今後の重要課題の1つとなるだろう.
KAKENHI-PROJECT-11740098
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11740098
パルス位相による非線形ダイナミクスを用いた脳型集積システムの研究
1.パルスタイミングによる非線形ダイナミクスを利用した画像処理LSIの開発振動子の位相同期により画像領域分割・抽出を行う振動子ネットワークLSIをアナログ・デジタル融合/混載アーキテクチャを用いて開発した。このLSIでは,非線形ダイナミクス回路をパルス変調回路で,荷重記憶・制御部をデジタル方式で実現している。2.パルスタイミングを用いる脳型情報処理回路のためのアルゴリズムの開発スパイキングニューロンモデル(積分・発火型)を,フィードバック型ネットワークに適用し,パルスタイミング処理による高速化を実現した。この処理の基本思想は「重要な信号が時間的に早く到着することを利用して,重要な結果を早く得る」ことにある。この場合,先に発火した信号がフィードバックしてきたものと,遅く発火した信号の区別がつかないという問題がある。そこでこれを,ランプ型抑制を行うグローバルニューロンと,発火によりその影響をリセットする機構を導入することで解決した。このモデルに基づく集積回路を設計し,回路シミュレータ(HSPICE)により,モデルの検証を行った。ホップフィールド型ネットワーク(20ニューロン)での連想記憶において,同期型のパルス幅変調方式と比較したところ,パルスタイミング方式が約20倍高速であることを確認した。3.多重ナノドットMOSFETを用いたスパイキングニューロン回路の設計ポストCMOS世代での回路設計技術として,ナノテクノロジーによる自己組織化技術によりナノドットを形成する手法を利用して,効率的かつ超低消費電力でPSP発生を行えるスパイキングニューロン回路を考案し,単電子回路シミュレータにより,設計・検証した。1.パルスタイミングによる非線形ダイナミクスを利用した画像処理LSIの開発振動子の位相同期により画像領域分割・抽出を行う振動子ネットワークLSIをアナログ・デジタル融合/混載アーキテクチャを用いて開発した。このLSIでは,非線形ダイナミクス回路をパルス変調回路で,荷重記憶・制御部をデジタル方式で実現している。2.パルスタイミングを用いる脳型情報処理回路のためのアルゴリズムの開発スパイキングニューロンモデル(積分・発火型)を,フィードバック型ネットワークに適用し,パルスタイミング処理による高速化を実現した。この処理の基本思想は「重要な信号が時間的に早く到着することを利用して,重要な結果を早く得る」ことにある。この場合,先に発火した信号がフィードバックしてきたものと,遅く発火した信号の区別がつかないという問題がある。そこでこれを,ランプ型抑制を行うグローバルニューロンと,発火によりその影響をリセットする機構を導入することで解決した。このモデルに基づく集積回路を設計し,回路シミュレータ(HSPICE)により,モデルの検証を行った。ホップフィールド型ネットワーク(20ニューロン)での連想記憶において,同期型のパルス幅変調方式と比較したところ,パルスタイミング方式が約20倍高速であることを確認した。3.多重ナノドットMOSFETを用いたスパイキングニューロン回路の設計ポストCMOS世代での回路設計技術として,ナノテクノロジーによる自己組織化技術によりナノドットを形成する手法を利用して,効率的かつ超低消費電力でPSP発生を行えるスパイキングニューロン回路を考案し,単電子回路シミュレータにより,設計・検証した。1.パルスタイミングを用いる脳型情報処理回路のためのアルゴリズムの開発スパイキングニューロンモデル(積分・発火型)を,フィードバック型ネットワークに適用し,パルスタイミング処理による高速化を実現した。この処理の基本思想は「重要な信号が時間的に早く到着することを利用して,重要な結果を早く得る」ことにある。この場合の最大の問題は,先に発火した信号がフィードバックしてきたものと,遅く発火した信号の区別がつかないという点である。そこでこれを,ランプ型抑制を行うグローバルニューロンと,発火によりその影響をリセットする機構を導入することで解決した。まず,最初にニューロンが発火するとグローバル抑制ニューロンが一定時間発火し,すべてのニューロンに時間的に増加するランプ型抑制を加える。この結果,早い時期に入力パルスを受け取ったニューロンほど抑制が小さいので発火しやすくなる。すなわち,早い信号ほど発火への寄与度を高くできる。さらに,発火によりそのニューロンに及ぼしている抑制効果をリセットすることにより,フォードバック信号によって発火し続けることができるようにした。2.パルス変調方式脳型情報処理回路の設計・試作・評価パルス幅変調方式のニューラルネットワーク回路を設計・試作し,キャパシタ型のシナプス荷重回路などの正常動作を確認した。また,パルスタイミングモデルに基づく集積回路を設計し,回路シミュレータ(HSPICE)により,モデルの検証を行った。ホップフィールド型ネットワーク(20ニューロン)での連想記憶において,同期型のパルス幅変調方式と比較したところ,パルスタイミング方式が約20倍高速であることを確認した。また,積分発火型ニューロンを構成する単電子回路を考案した。1.パルス変調方式脳型情報処理回路の設計昨年度開発したスパイキングニューロンモデルによる脳型情報処理アルゴリズムをCMOSLSIで実現するために,CMOS要素回路を設計した。ニューロン発火部分は,スパイキングニューロンモデルの特徴である後シナプス電位(PSP)発生を制御性良く実現するために,インバータチェーンによる時間遅延回路を組み合わせ,PSPの立ち上がりおよび立ち下がりの各時間を個別に設定できる回路を考案・設計し,回路シミュレーションにより動作を検証し,回路レイアウトを行った。シナプス部については,荷重をキャパシタに蓄積した電荷により表現するために,高精度に電荷蓄積・更新ができるチャージポンプ回路を考案・設計し,実回路で動作検証を行った。2.パルスタイミングによる非線形ダイナミクスを利用した画像処理LSIの開発パルスタイミングによる非線形ダイナミクスを利用した画像処理の例として,画像領域分割・抽出を行う非線形振動子ネットワークLSIを設計・試作し,動作を確認した。本項目は,19992000年度に実施した科研費・基盤研究Bの発展研究の一部である。
KAKENHI-PROJECT-13835005
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13835005
パルス位相による非線形ダイナミクスを用いた脳型集積システムの研究
この研究により,非線形ダイナミクス回路をパルス変調回路で,荷重記憶・制御部をデジタル方式で実現するアナログ・デジタル融合/混載アーキテクチャを開発した。3.多重ナノドットによるスパイキングニューロン回路の設計ポストCMOS世代での回路設計技術として,ナノテクノロジーによる自己組織化技術によりナノドットを形成する手法を利用して,効率的かつ超低消費電力でPSP発生を行えるスパイキングニューロン回路を考案し,単電子回路シミュレータにより,設計・検証した。
KAKENHI-PROJECT-13835005
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多文化間ディスカッション授業におけるファシリテーション要素の研究
本研究は、国内学生、留学生を問わず、将来のグローバル社会の担い手となる若者の、「多文化間ディスカッション」を円滑且つ効果的に行うための条件を抽出し、彼らの到達目標の一つを提案するものである。本研究最終年度の平成30年度には、研究の総括を目標としながら、その過程において、以下二点の作業を行った。一つには、前年度の研究結果のブラッシュアップである。ここでは、(1)グループのメンバーとしての個人の役割の認識、(2)発話の「量」(時間)、(3)ソーシャル・サポートの使用、特に「笑い」「量」(時間)の観点から、研究代表者、研究分担者両者の勤務校である金沢大学の、「TOBITATE!留学JAPAN日本代表プログラム」第6期奨学生選考で第一次審査(書類審査)に合格した学生の、第二次審査(面接、プレゼンテーション、グループ・ディスカッション審査)に向けて指導を行った際のデータを再分析した。もう一つには、研究分担者が名城大学で開催されたセミナー(OJAEセミナー2019「OJAEで測る日本語コミュニケーション能力」2019年3月3日、OJAE=Oral Japanese Assessment Europe)に参加し、本研究成果をもとに研究会出席者と意見を交わした。この研究会は、ヨーロッパにおける日本語教育の充実および発展のために、評価法を検討するために開催されたものであるが、コミュニケーション能力の展開という点において、本研究と方向性を共にしている。そのセミナーにおいては、本研究で実践した国内学生同士のコミュニケーション能力の評価と日本語学習のためのコミュニケーション能力の共通性についても確認できた。本研究では、「多文化間ディスカッション」をファシリテートするための条件を、ディスカッション参加者としての大学生(国内学生、留学生)及び高校生(国内学生)の言語使用の「量」と「質」、「心理的条件」の二つの側面から明らかにする。そのため本研究では、多文化間ディスカッションの実践データを録画・録音することにより収集し分析する。またそれに基づき、グローバル人材予備軍としての大学生、高校生の到達目標を開発する。平成27年度には、文献、その他の資料を収集し、授業現場における多文化間ディスカッション活動に関する先行研究を調査した。その結果、多文化間ディスカッションを円滑化し、最大限の効果を引き出すための条件として、1ディスカッションを行うグループ内で、各メンバーに与えられた役割(「舵取り役」「書記」「発言者」等)の自己及び相互認識、2与えられた役割に応じた適切な発話、態度、ソーシャル・サポートとしての表情やジェスチャーが、ディスカッションに相乗効果を生み出すための重要な要素だということがわかった。しかしこのことは、多文化間ディスカッションの場のみならず、文化背景や言語を同じくするメンバー同士のディスカッションの場にも当てはまる。よって、次年度以降、本研究では、特にディスカッション参加者としての非母語話者の言語使用に着目しながら研究を進める。この年度にはさらに、次年度集中的に行う多文化間ディスカッションの実践データ収集のための準備を整えた。平成27年度後半には、金沢大学の国内学生と留学生間の「英語のみを使用するケース」及び金沢市内の高校生と金沢大学留学生間の「英語のみを使用するケース」の多文化間ディスカッションの実践データを収集し分析する計画であったが、実施することができなかった。本研究は、「多文化間ディスカッション」を円滑化するための普遍的条件を、ディスカッション参加者の「言語使用」と「心理」の両側面より探り、大学生(国内学生、留学生の両者)、高校生が、将来グローバル人材として活躍するための到達目標の一つを提案することを目的とする。そのため本研究では、彼ら/彼女らの相互ディスカッションの場を録画・録音することにより、研究データを収集し、分析を行っている。平成28年度の研究は、文献調査、データ収集を行うとともに、年度計画に沿い、非母語話者としてのディスカッション参加者の言語使用を調査することから開始した。その過程においては、数々の興味深い観察が得られたが、中でも、発話の「量」(時間)と参加者間の「パワーバランス」及び、ディスカッションの際に見受けられる、主に国内学生(特に日本人学生/生徒)による、「笑い」(表情のみによる「笑み」ではなく、声を出した笑いであり、時に大きなジェスチャーを伴うもの)の「量」(時間)の2点に着目するに至った。前者については、オランダの社会心理学者であるGeert Hofstede他が提唱する6種類の文化指標(Cultural Dimensions)に基づく分析作業、後者については、「笑い」を認識する際の文化間の普遍性並びに特異性を求める作業を行った。さらに同年度には、母語を異にする者同士のディスカッションをより円滑にするための、非言語媒体によるサポートについて、インフォグラフィックスの観点から検討を行った。英語のみを使用するケースの多文化間ディスカッションのデータ収集がなされていない。本研究では、大学生(国内学生と留学生)と高校生という、将来グローバル社会で大きな役割を担うことになる若者の間の多文化間ディスカッション」を円滑化、活性化するための条件を、「言語使用」と「心理」の両側面から探っていくものである。また、最終的には、ディスカッション参加者である若者のためにグローバル人材としての将来に向けての到達目標の一つを提案する。平成29年度には、文献調査を継続しながら、前年度までに収集したデータの精査を行った。この過程では、4名の国内学生による15分間のグループ・ディスカッション(平成28年1月収集)のデータも扱うことにした。
KAKENHI-PROJECT-15K12906
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多文化間ディスカッション授業におけるファシリテーション要素の研究
このデータは、研究者の勤務校である金沢大学において、「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」第6期奨学生選考で第一次審査(書類審査)に合格した学生を対象とし、第二次審査(面接、プレゼンテーション、グループ・ディスカッション審査)に向けての指導を行った際のものであるが、データ内のディスカッション参加学生4名全員が、後に第二次審査に合格し当該奨学金を授与されている。よって、このデータを分析することにより「グローバル人材の卵」の資質を抽出することができ、本研究の最終目標であるグローバル人材予備軍のための到達目標の提案に近づくことができるのである。このデータの分析には、前年度までに着目するに至った、1グループ内での役割の認識、2発話の「量」(時間)、3ソーシャル・サポート、特に「笑い」の発現「量」(時間)(ここでの「笑い」とは、表情のみのものではなく、声によるリアクションやジェスチャーを伴う笑いである)を観点として使用した。研究代表者、研究分担者双方の学内業務の多忙化により、研究に費やす時間が不足し、当初計画どおりの研究実施に遅延が生じている。具体的には、英語のみを使用する多文化間ディスカッションのデータ収集と分析、研究のとりまとめと十分な公開作業に至っていない。本研究は、国内学生、留学生を問わず、将来のグローバル社会の担い手となる若者の、「多文化間ディスカッション」を円滑且つ効果的に行うための条件を抽出し、彼らの到達目標の一つを提案するものである。本研究最終年度の平成30年度には、研究の総括を目標としながら、その過程において、以下二点の作業を行った。一つには、前年度の研究結果のブラッシュアップである。ここでは、(1)グループのメンバーとしての個人の役割の認識、(2)発話の「量」(時間)、(3)ソーシャル・サポートの使用、特に「笑い」「量」(時間)の観点から、研究代表者、研究分担者両者の勤務校である金沢大学の、「TOBITATE!留学JAPAN日本代表プログラム」第6期奨学生選考で第一次審査(書類審査)に合格した学生の、第二次審査(面接、プレゼンテーション、グループ・ディスカッション審査)に向けて指導を行った際のデータを再分析した。もう一つには、研究分担者が名城大学で開催されたセミナー(OJAEセミナー2019「OJAEで測る日本語コミュニケーション能力」2019年3月3日、OJAE=Oral Japanese Assessment Europe)に参加し、本研究成果をもとに研究会出席者と意見を交わした。この研究会は、ヨーロッパにおける日本語教育の充実および発展のために、評価法を検討するために開催されたものであるが、コミュニケーション能力の展開という点において、本研究と方向性を共にしている。そのセミナーにおいては、本研究で実践した国内学生同士のコミュニケーション能力の評価と日本語学習のためのコミュニケーション能力の共通性についても確認できた。平成28年度には、次の作業を行う。1多文化間ディスカッション関係のさらなる文献資料を収集し精査する。
KAKENHI-PROJECT-15K12906
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高劣駆動度系の新しい制御理論の構築と応用
本研究では、高劣駆動度系(いわゆる、一般化座標数と制御入力数の差が2以上の系)を対象とし、その物理的構造と固有の非線形特性を活かして、その可制御性・可観測性、大域的な安定化制御、目標軌道への追従制御のような中核的な問題を解決し、高劣駆動度系の新しい制御理論を構築することを目的とする。本年度では、以下の主な研究成果を挙げた。得られた研究成果は権威ある国際学術雑誌と国際学術会議に掲載されているまたは掲載される予定である。1.関節1と2が非駆動、関節3が駆動である3リンクロボット(以下PPAロボット)を対象とし、そのPPAロボットのすべてのリンクが共に鉛直真上姿勢で静止した真上平衡点を安定化する問題に対して、PPAロボットの角運動量とその一次と二次の時間微分以外のフィードバックする変数の選定法を提案して、それを用いた安定化制御則の設計法を与えて、その制御則でのPPAロボットの動きを解析した。また、シミュレーションより、その提案則の有効性を示している。2.高劣駆動度系の可制御性に対して、鉛直平面における台車に設置されるnリンクの振子系を対象とし、そのすべてのリンクが共に鉛直真上姿勢で静止した真上平衡点の近傍において、その系が機械パラメータによらず可制御であることを明らかにしている。3.劣駆動ロボットのすべてのリンクが共に鉛直真下姿勢で静止した真下平衡点への振り下げ制御は、クレーン系の振れ止め制御や体操競技の吊り輪運動における姿勢制御などに求められるものである。その振り下げ制御の設計・解析法を確立するための第一歩として、2リンク劣駆動ロボットであるPendubotとAcrobotを対象にし、その非線形動特性を活かした振り下げ制御則を提案するとともに、その制御則下でのロボットの動きを大域的に解明し、シミュレーションより、その提案則の有効性を示している。いつかの研究成果は国際学術雑誌、国際会議等で発表されている。計画のとおりに研究を進める予定である。制御入力の数が一般化座標数より少ない劣駆動系では、アクチュエータの数が全駆動系に比べて少ないため、コスト、重量などの点で優れている。しかし、そのような劣駆動系には強い非線形性があるため、劣駆動系の制御に関する研究は挑戦的な課題である。本研究では、劣駆動度(一般化座標数と制御入力数の差)1の系に関する代表者のいままでの研究成果をもとに、高劣駆動度系(いわゆる、劣駆動度2以上の系)を対象とし、その物理的構造と固有の非線形特性を活かして、その可制御性・可観測性、大域的な安定化制御、目標軌道への追従制御のような中核的な問題を解決し、高劣駆動度系の新しい制御理論を構築することを目的とする。本年度では、高劣駆動度系の可制御性と可観測性に対して、劣駆動系の代表例としての鉛直平面におけるnリンク劣駆動ロボットを対象とし、根元関節あるいは末端関節でない中間関節が駆動の場合について、以下の主な研究成果を挙げた。今年度得られた研究成果は権威ある国際学術雑誌と国際学術会議に掲載されているまたは掲載される予定である。1. 1つの中間関節のみが駆動であるnリンク劣駆動ロボットの可制御性と可観測性:そのロボットが可制御と可観測であるための必要十分条件を示すとともに、そのロボットの物理的構造、機械パラメータの性質を用いて、不可制御あるいは不可観測であるロボットが存在することを解析的に明らかにした。2. 2つ以上の中間関節が駆動であるnリンク劣駆動ロボットの可制御性と可観測性:そのロボットの可制御性と可観測性について、その駆動関節の配置、機械パラメータとの関係を解析した結果、2つの駆動中間関節が隣接しない場合に対して、不可制御あるいは不可観測のロボットが存在することを解析的に明らかにした。また、そのロボットが可制御と可観測であるための必要十分条件は隣接する2つの駆動中間関節が存在することをはじめて示した。今年度得られた研究成果は3つの権威ある国際学術雑誌と5つの国際学術会議に掲載されているまたは掲載される予定である。本研究では、高劣駆動度系(いわゆる、一般化座標数と制御入力数の差が2以上の系)を対象とし、その物理的構造と固有の非線形特性を活かして、その可制御性・可観測性、大域的な安定化制御、目標軌道への追従制御のような中核的な問題を解決し、高劣駆動度系の新しい制御理論を構築することを目的とする。本年度では、以下の主な研究成果を挙げた。得られた研究成果は権威ある国際学術雑誌と国際学術会議に掲載されているまたは掲載される予定である。1.関節1と2が非駆動、関節3が駆動である3リンクロボット(以下PPAロボット)を対象とし、そのPPAロボットのすべてのリンクが共に鉛直真上姿勢で静止した真上平衡点を安定化する問題に対して、PPAロボットの角運動量とその一次と二次の時間微分以外のフィードバックする変数の選定法を提案して、それを用いた安定化制御則の設計法を与えて、その制御則でのPPAロボットの動きを解析した。また、シミュレーションより、その提案則の有効性を示している。2.高劣駆動度系の可制御性に対して、鉛直平面における台車に設置されるnリンクの振子系を対象とし、そのすべてのリンクが共に鉛直真上姿勢で静止した真上平衡点の近傍において、その系が機械パラメータによらず可制御であることを明らかにしている。
KAKENHI-PROJECT-17K06504
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K06504
高劣駆動度系の新しい制御理論の構築と応用
3.劣駆動ロボットのすべてのリンクが共に鉛直真下姿勢で静止した真下平衡点への振り下げ制御は、クレーン系の振れ止め制御や体操競技の吊り輪運動における姿勢制御などに求められるものである。その振り下げ制御の設計・解析法を確立するための第一歩として、2リンク劣駆動ロボットであるPendubotとAcrobotを対象にし、その非線形動特性を活かした振り下げ制御則を提案するとともに、その制御則下でのロボットの動きを大域的に解明し、シミュレーションより、その提案則の有効性を示している。いつかの研究成果は国際学術雑誌、国際会議等で発表されている。研究計画に従って、研究を推進する。計画のとおりに研究を進める予定である。(理由)研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更なく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。(使用計画)米国で開催される2018American Control Conferenceに参加し、本研究の成果である論文を発表する予定である。研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更なく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
KAKENHI-PROJECT-17K06504
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K06504
腰部コンパートメント症候群に関する実験的研究
腰痛性間欠跛行の病態解明のため、慢性脊柱後弯モデルを作成し、腰椎部背筋群の筋内圧と筋血流の関係について検討した。【対象と方法】雑種成犬12頭(8-12kg、平均9.6kg)を用いた。全身麻酔下に側方アプローチにより第3から第5腰椎の椎体をAOプレートで固定し、後弯モデルを作成した。固定後の腰椎後弯角は、15.8±5.9°であった。術前(n=12)、術直後(n=12)、1週間後(n=4)、および1カ月後(n=5)に第4腰椎高位で腰背筋(軸上筋)の筋内圧と筋血流を測定した。筋内圧の測定にはMiller microtipcatheterを用いた。筋血流の測定は水素クラアランス法で行った。測定結果は分散分析法とポスト・ホックテストを用いて、統計学的に検討した。【結果】1.筋内圧:腰背筋の筋内圧(mmHg)は、術前8.6±7.6、術直後18.6±8.2、1週間後12.5±8.6、1カ月後12.0±5.3であった。術前の筋内圧と比較して、術直後の筋内圧は有意(p<0.005)に大きかったが、1週間後では有意差は認められなかった。2.筋血流:腰背筋の筋血流量(ml/min/100g)は、術前99.9±24.9、術直後74.8±13.1、1週間後83.0±29.0、1カ月後93.6±13.0であった。術前の筋血流と比較して、術直後の筋血流は有意(p=0.005)に低下していたが、1週間後では有意差は認められなかった。【考察】今回の研究から、腰背筋に対して後彎変形という静的な変化を与えた場合の筋内圧と筋血流量の変化は、一時的には筋内圧が上昇し筋血流量が現象するものの、その後は順応し回復してしまうことが判明した。腰椎後弯変形という静的異常状態のみでは持続的な腰背筋の筋内圧上昇や筋血流量低下はきたさない。臨床的研究で、腰椎後弯変形に伴う腰痛性間欠跛行の症例では、立位や歩行の負荷による腰椎部背筋群の持続性筋放電や易疲労性が認められている。したがって、腰痛性間欠跛行の病態には、脊柱の後弯化という静的因子に、さらに動的因子が深く関与していることが示唆された。腰痛性間欠跛行の病態解明のため、慢性脊柱後弯モデルを作成し、腰椎部背筋群の筋内圧と筋血流の関係について検討した。【対象と方法】雑種成犬12頭(8-12kg、平均9.6kg)を用いた。全身麻酔下に側方アプローチにより第3から第5腰椎の椎体をAOプレートで固定し、後弯モデルを作成した。固定後の腰椎後弯角は、15.8±5.9°であった。術前(n=12)、術直後(n=12)、1週間後(n=4)、および1カ月後(n=5)に第4腰椎高位で腰背筋(軸上筋)の筋内圧と筋血流を測定した。筋内圧の測定にはMiller microtipcatheterを用いた。筋血流の測定は水素クラアランス法で行った。測定結果は分散分析法とポスト・ホックテストを用いて、統計学的に検討した。【結果】1.筋内圧:腰背筋の筋内圧(mmHg)は、術前8.6±7.6、術直後18.6±8.2、1週間後12.5±8.6、1カ月後12.0±5.3であった。術前の筋内圧と比較して、術直後の筋内圧は有意(p<0.005)に大きかったが、1週間後では有意差は認められなかった。2.筋血流:腰背筋の筋血流量(ml/min/100g)は、術前99.9±24.9、術直後74.8±13.1、1週間後83.0±29.0、1カ月後93.6±13.0であった。術前の筋血流と比較して、術直後の筋血流は有意(p=0.005)に低下していたが、1週間後では有意差は認められなかった。【考察】今回の研究から、腰背筋に対して後彎変形という静的な変化を与えた場合の筋内圧と筋血流量の変化は、一時的には筋内圧が上昇し筋血流量が現象するものの、その後は順応し回復してしまうことが判明した。腰椎後弯変形という静的異常状態のみでは持続的な腰背筋の筋内圧上昇や筋血流量低下はきたさない。臨床的研究で、腰椎後弯変形に伴う腰痛性間欠跛行の症例では、立位や歩行の負荷による腰椎部背筋群の持続性筋放電や易疲労性が認められている。したがって、腰痛性間欠跛行の病態には、脊柱の後弯化という静的因子に、さらに動的因子が深く関与していることが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-08671672
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08671672
物質の自己組織化を用いたナノレベル無機/有機新しい複合材料の合成と光物性
本研究(=物質の自己組織化を用いたナノレベル複合材料の合成と光物性)では、ナノサイズ無機酸化物のメソポーラスクリスタル(MCM)のナノポアの中に有機系機能材料(即ち、高分子、色素など)の分子やクラスターをドープして、新しい複合光機能材料の作成法の確立と光物性の評価を中心とした基礎研究である。マトリックスとして、TEOS(TetraethylOrthosilicate)を、表面活性剤として、CnTMA(Tetramethyl Ammonium)とFeTMA(Ferrocenyltrimethylundecylammonium)などを用いて、ゾル-ゲル法で試薬の種類、濃度、溶液のpH、温度などを変化させることによりサイズの異なるナノポアを持つ自己組織化をしたSiO_2,V_2O_5,WO_3などのMCMを作製し、有機機能分子として、ポリジアセチレン(PDA)、フタロシアニンなどをSiO_2,V_22O_5,WO_3などのMCMのナノポアの中に入れ、物質の自己組織化を用いたナノサイズ複合材料の合成を試みた。透過電子顕微鏡(TEM)とX線回折などでサイズと構造を評価した。光吸収スペクトルでポリジアセチレン(PDA)、フタロシアニンなど機能分子の光物性を評価した。また、フタロシアニン機能分子をドープしたV_2O_5-MCM系において、ドープ量が増えると、アモルファス構造から結晶構造に相転移が起こることを観測した。本研究(=物質の自己組織化を用いたナノレベル複合材料の合成と光物性)では、ナノサイズ無機酸化物のメソポーラスクリスタル(MCM)のナノポアの中に有機系機能材料(即ち、高分子、色素など)の分子やクラスターをドープして、新しい複合光機能材料の作成法の確立と光物性の評価を中心とした基礎研究である。マトリックスとして、TEOS(TetraethylOrthosilicate)を、表面活性剤として、CnTMA(Tetramethyl Ammonium)とFeTMA(Ferrocenyltrimethylundecylammonium)などを用いて、ゾル-ゲル法で試薬の種類、濃度、溶液のpH、温度などを変化させることによりサイズの異なるナノポアを持つ自己組織化をしたSiO_2,V_2O_5,WO_3などのMCMを作製し、有機機能分子として、ポリジアセチレン(PDA)、フタロシアニンなどをSiO_2,V_22O_5,WO_3などのMCMのナノポアの中に入れ、物質の自己組織化を用いたナノサイズ複合材料の合成を試みた。透過電子顕微鏡(TEM)とX線回折などでサイズと構造を評価した。光吸収スペクトルでポリジアセチレン(PDA)、フタロシアニンなど機能分子の光物性を評価した。また、フタロシアニン機能分子をドープしたV_2O_5-MCM系において、ドープ量が増えると、アモルファス構造から結晶構造に相転移が起こることを観測した。
KAKENHI-PROJECT-08750876
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08750876
新たなゲノム機能調節機構の解明につながる好熱バチルスの制御因子Crhの解析
GK親株にhprK G268R変異のみを導入しiol遺伝子群が発現しなくなる原因がこの変異に他ならないことを確証するために、まず元来存在するhprK遺伝子を削除する必要がある。昨年度はこの遺伝子削除を進めたが、hprKの欠失により生育が低下するために、この変異株の作成に予定を上回る時間と労力を要した。また、hprK削除株においては、驚いたことに誘導物質の有無にかかわらずiol遺伝子群が完全に構成的に発現していることが判明した。この結果は、Crhのリン酸化がiol遺伝子群の抑制において必須であることを示唆する新たな発見でもある。さらに、このhprK削除株に野生型のhprKあるいはhprK G268R変異を導入し、機能の相補を観察しようと試みたが、プロモーターの選定が不適切であったためかこれを確認することはできなかった。そこで、来年度はまずこの相補実験の完成を第1目標とし、この達成によってもたらされる人工的なHPrKG268R変異株においてはiol遺伝子群が発現しなくなると予想されるので、この株においてCrhを破壊してiol遺伝子群の発現の回復を確認する。これによって、従来のカタボライト抑制ならびにCrhと相互作用する因子とCrhの第3機能との関連を理解できると予想している。一方、上記HPrK G268R変異+Crh破壊株においてCrh-Hisを発現させると、再びiol遺伝子群が抑制されるはずである。細胞内のCrh-Hisを精製して、リン酸化されP-Ser-Crh-Hisとなっていることを確認するとともに、細胞内クロスリンクによりP-Ser-Crh-Hisと相互作用する他のタンパク質因子を質量分析計によって同定して、Crhの第3制御機能に関わる「未知のパートナー」の特定に着手する。GKにおいてはhprKの欠失により生育が低下するために、この変異株の作成に予定を上回る時間と労力を要した。しかし、結果的に得られたhprK削除株においては、驚いたことに誘導物質の有無にかかわらずiol遺伝子群が完全に構成的に発現していることが判明した。この結果は、Crhのリン酸化がiol遺伝子群の抑制において必須であることを示唆する新たな発見でもある。さらに、このhprK削除株に野生型のhprKあるいはhprK G268R変異を導入し、機能の相補を観察しようと試みたが、プロモーターの選定が不適切であったためかこれを確認することはできなかった。そこで、来年度はまずこの相補実験の完成を第1目標とし、この達成によってもたらされる人工的なHPrKG268R変異株においてはiol遺伝子群が発現しなくなると予想されるので、この株においてCrhを破壊してiol遺伝子群の発現の回復を確認する。これによって、従来のカタボライト抑制ならびにCrhと相互作用する因子とCrhの第3機能との関連を理解できると予想している。hprK削除株においては、驚いたことに誘導物質の有無にかかわらずiol遺伝子群が完全に構成的に発現していることが判明した。この結果は、Crhのリン酸化がiol遺伝子群の抑制において必須であることを示唆する新たな発見でもある。さらに、このhp rK削除株に野生型のhprKあるいはhprK G268R変異を導入し、機能の相補を観察しようと試みたが、プロモーターの選定が不適切であったためかこれを確認することはできなかった。そこで、まずこの相補実験の完成を第1目標とする。次いで、この第1目標の達成によってもたらされる人工的なHPrK G268R変異株においてはiol遺伝子群が発現しなくなると予想されるので、この株においてCrhを破壊してiol遺伝子群の発現の回復を確認する。加えて、HPr、CcpAならびにMgsAについても同様に破壊し、影響を検討する。これによって、従来のカタボライト抑制ならびにCrhと相互作用する因子とCrhの第3機能との関連を理解できると予想している。一方、上記HPrK G268R変異+Crh破壊株においてCrh-Hisを発現させると、再びiol遺伝子群が抑制されるはずである。細胞内のCrh-Hisを精製して、リン酸化されP-Ser-Crh-Hisとなっていることを確認するとともに、細胞内クロスリンクによりP-Ser-Crh-Hisと相互作用する他のタンパク質因子を質量分析計によって同定する。これによって、Crhの第3制御機能に関わる「未知のパートナー」の特定に着手する。別の研究テーマの進展により、IolQと名付けた制御因子がパートナー候補として浮上しているので、これを仮想パートナーと見なした実験も並行して進める。GK親株にhprK G268R変異のみを導入しiol遺伝子群が発現しなくなる原因がこの変異に他ならないことを確証するために、まず元来存在するhprK遺伝子を削除する必要がある。昨年度はこの遺伝子削除を進めたが、hprKの欠失により生育が低下するために、この変異株の作成に予定を上回る時間と労力を要した。また、hprK削除株においては、驚いたことに誘導物質の有無にかかわらずiol遺伝子群が完全に構成的に発現していることが判明した。この結果は、Crhのリン酸化がiol遺伝子群の抑制において必須であることを示唆する新たな発見でもある。さらに、このhprK削除株に野生型のhprKあるいはhprK G268R変異を導入し、機能の相補を観察しようと試みたが、プロモーターの選定が不適切であったためかこれを確認することはできなかった。
KAKENHI-PROJECT-18H02128
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H02128
新たなゲノム機能調節機構の解明につながる好熱バチルスの制御因子Crhの解析
そこで、来年度はまずこの相補実験の完成を第1目標とし、この達成によってもたらされる人工的なHPrKG268R変異株においてはiol遺伝子群が発現しなくなると予想されるので、この株においてCrhを破壊してiol遺伝子群の発現の回復を確認する。これによって、従来のカタボライト抑制ならびにCrhと相互作用する因子とCrhの第3機能との関連を理解できると予想している。一方、上記HPrK G268R変異+Crh破壊株においてCrh-Hisを発現させると、再びiol遺伝子群が抑制されるはずである。細胞内のCrh-Hisを精製して、リン酸化されP-Ser-Crh-Hisとなっていることを確認するとともに、細胞内クロスリンクによりP-Ser-Crh-Hisと相互作用する他のタンパク質因子を質量分析計によって同定して、Crhの第3制御機能に関わる「未知のパートナー」の特定に着手する。GKにおいてはhprKの欠失により生育が低下するために、この変異株の作成に予定を上回る時間と労力を要した。しかし、結果的に得られたhprK削除株においては、驚いたことに誘導物質の有無にかかわらずiol遺伝子群が完全に構成的に発現していることが判明した。この結果は、Crhのリン酸化がiol遺伝子群の抑制において必須であることを示唆する新たな発見でもある。さらに、このhprK削除株に野生型のhprKあるいはhprK G268R変異を導入し、機能の相補を観察しようと試みたが、プロモーターの選定が不適切であったためかこれを確認することはできなかった。そこで、来年度はまずこの相補実験の完成を第1目標とし、この達成によってもたらされる人工的なHPrKG268R変異株においてはiol遺伝子群が発現しなくなると予想されるので、この株においてCrhを破壊してiol遺伝子群の発現の回復を確認する。これによって、従来のカタボライト抑制ならびにCrhと相互作用する因子とCrhの第3機能との関連を理解できると予想している。hprK削除株においては、驚いたことに誘導物質の有無にかかわらずiol遺伝子群が完全に構成的に発現していることが判明した。この結果は、Crhのリン酸化がiol遺伝子群の抑制において必須であることを示唆する新たな発見でもある。さらに、このhp rK削除株に野生型のhprKあるいはhprK G268R変異を導入し、機能の相補を観察しようと試みたが、プロモーターの選定が不適切であったためかこれを確認することはできなかった。そこで、まずこの相補実験の完成を第1目標とする。次いで、この第1目標の達成によってもたらされる人工的なHPrK G268R変異株においてはiol遺伝子群が発現しなくなると予想されるので、この株においてCrhを破壊してiol遺伝子群の発現の回復を確認する。加えて、HPr、CcpAならびにMgsAについても同様に破壊し、影響を検討する。これによって、従来のカタボライト抑制ならびにCrhと相互作用する因子とCrhの第3機能との関連を理解できると予想している。一方、上記HPrK G268R変異+Crh破壊株においてCrh-Hisを発現させると、再びiol遺伝子群が抑制されるはずである。
KAKENHI-PROJECT-18H02128
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H02128
37ローカスを用いた高精度DNA鑑定法の構築とその実務への応用
常染色体上37ローカスの日本人におけるアレル頻度を明らかにした。D5S818、D19S433、F13B、FGAの4ローカスにおいて、新規なアレルを観察し、その塩基配列を決定した。また、染色体15番上に位置するPenta EとFESFPSが連鎖不平衡にあることが示唆された。そこで、FESFPSを除く36ローカスについて、シミュレーションにより二者間での血縁鑑定における尤度比の分布を評価し、血縁鑑定における対象ローカスの増加の有用性を検討した。このアレル頻度データをもとに、劣化試料のDNAタイピングを効率良く行えるよう7ローカスのマルチプレックスPCRをデザインした。昨年度までに終えた246人分の血液試料からのDNA調製およびそのタイピングに加え、本年度は110人分を行い、計356人の血液試料を本研究において使用した。しかしながら、本年度で追加したロットについては、ほぼ全ての試料について保存状態が不良であったとことが原因と考えられるDNAの劣化が著しかったことから、本研究において後の解析に用いるには不適当であると判断した。結果として、昨年度までに得られた結果を用いてアレル頻度表を作成するとともに、各種法医学的パラメーターを計算し、論文として発表した。計37の対象ローカスのうち、染色体15番上に位置するPenta EとFESFPSが連鎖不平衡にあることが示唆された。このため、2つのローカスのうちPD(Power of Discrimination,識別能)が低いFESFPSを除く計36ローカスにを用いたDNA鑑定が、従来法に比して優位なものとなるか否かについて検討するために、シミュレーションを用いた評価を行うこととした。1万組の親子および血縁の無い個人の36ローカスについてDNA型をアレル頻度に基づいて作成し、個人同定における存在確率分布、二者および三者間での親子鑑定における尤度比の分布、さらに二者間での同胞・半同胞鑑定における尤度比の分布を調べる事とし、現在シミュレーションのためのプログラミングを進めている。昨年度、本研究が計画以上に進展している事から、新たにABI社Minifilerを補完する高識別のローカスセットの有用性について提案したが、今年度においてローカスの選定とマルチプレックスPCRのデザインを行った。現在、PCR条件の検討を進めている。常染色体上37ローカスの日本人におけるアレル頻度を明らかにした。D5S818、D19S433、F13B、FGAの4ローカスにおいて、新規なアレルを観察し、その塩基配列を決定した。また、染色体15番上に位置するPenta EとFESFPSが連鎖不平衡にあることが示唆された。そこで、FESFPSを除く36ローカスについて、シミュレーションにより二者間での血縁鑑定における尤度比の分布を評価し、血縁鑑定における対象ローカスの増加の有用性を検討した。このアレル頻度データをもとに、劣化試料のDNAタイピングを効率良く行えるよう7ローカスのマルチプレックスPCRをデザインした。平成24年度においては、計175人分の血液サンプルについて、DNA抽出および市販の4つのDNAタイピングキット(Lifetechnologies社Identifiler、Promega社PowerPlex ESX17、PowerPlex CS7 custom、QIAGEN社HDplex)を用いて37ローカスのDNAタイピングを完了した。タイピングを行う中で、D5S818、D18S51、D19S433、F13B、FGA、Penta Eの6ローカスにおいて、これまでに報告の無かったアレルや報告例の少なかったアレルが認められた。そこで、これらのDNA断片をPCRにて増幅後クローニングし、塩基配列の確認を行った。その結果、D18S51・アレル29、D19S433・アレル9.2、Penta E・アレル19.4は既報のものと一致した。このうち、D18S51・アレル29、D19S433・アレル9.2は、日本人においての報告は無く、本研究が始めてである。また、D5S818・アレル6、F13B・アレル9c、FGA・アレル21.1は新規なDNA配列をもつアレルであることを明らかにした。現在までに得られた計175サンプルからのデータについて、PowerSTAT ver 2.1ソフトウェアを用いて法医学的パラメータの計算を行った。対象とした37ローカスのなかでSE33は最も高い識別力を示し、F13Bは最も低かった。さらに、GENEPOPソフトウェアにより同一染色体上に位置しているローカスが遺伝的に独立であるか否かについて検討したところ、第15染色体上のFESFPSとPenta Eとの間で連鎖不平衡にあることが推察された。京都大学大学院医学研究科法医学講座にて保管されていた法医解剖由来血液試料を用いて、常染色体上計37ローカスの日本人におけるアレル頻度を調べた。タイピングを行う中で、D5S818、D18S51、D19S433、F13B、FGA、Penta Eの6ローカスにおいて、これまでに報告の無かったアレルや報告例の少なかったアレルが認められ、その塩基配列を明らかにした。また、染色体15番上に位置するPenta EとFESFPSが連鎖不平衡にあることが示唆された。そこで、FESFPSを除く36ローカスについて、シミュレーションを用いた二者間での血縁鑑定における尤度比の分布を評価を行い、血縁鑑定における対象ローカスの増加の有用性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-24590854
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24590854
37ローカスを用いた高精度DNA鑑定法の構築とその実務への応用
このアレル頻度データをもとに、市販タイピングキットMinifilerのローカスを補完しつつ、日本人の個人鑑定に有用な7ローカスを選定し、劣化試料のDNAタイピングを効率良く行えるようデザインした。ヒト肝癌細胞株HepG2由来のDNAを本キットに供すると、すべてのローカスで良好な結果が得られたのに対し、アフリカミドリザル腎細胞株COS7由来のDNAでは、有意なシグナルは観察されなかったことから、ヒト由来DNAを選択的に検出可能であることが示唆された。法医解剖にて採取された劣化試料を本キットに供すると、幾つかのローカスで有意なシグナルが得られたことから、今後の劣化DNA試料の解析において新たな一手段となり得ることが示された。医歯薬学/社会科学・法医学2年次における研究達成目標は、全ての血液試料(当初予定300人)からのDNA調製を終え、全ての試料について3つのDNAタイピングキットによるタイピングの完了することであった。現在までに、試料の劣化により本研究に不適当と判断したサンプルも含め、計356人からの血液試料について、DNA調製および全てのローカスについてタイピングに供した。劣化試料を除く175人分の試料からのタイピング結果をもとにアレル頻度分布を作成し、さらに法医学的パラメーターを算出して論文として発表した。現在は、本データをもとにした、多ローカスを用いたDNA鑑定の評価のためのシミュレーションプログラムの作成に着手した段階である。従って、本研究は既に3年次の行程に進んでおり、当初の計画以上に進展していると考える。研究計画においては健常人より血液試料の提供を受ける予定であったが、京都大学大学院医学研究科・医の倫理委員会より承認を得られたことから、京都大学大学院法医学講座にて保管されていた法医解剖由来血液試料を用いることとした。これにより計画予定の300人分の血液試料をほぼ確保することができた。しかしながら、いくつかの試料については採取時に既に腐敗していたと思われるものや、保存期間中の劣化等に起因すると思われる不完全なDNAタイピング結果が得られた。すなわち、対象ローカスの一部もしくは全体について、PCRによるDNA断片の増幅が不十分であったり全く行われないケースが認められた。本研究においては、部分的に得られたDNAタイピング結果は使用せず、全37ローカスでタイピングが完了した試料のみを以降の解析に供することとした。研究計画における平成24年度の目標は、200人分の血液試料からのDNA抽出と、Identifiler、PowerPlex ESX17、PowerPlex CS7 customの3キットを用いたDNAタイピングの完了であった。一方、これまでに246人分の血液試料からのDNA調製を行い、HDplexを含めた4キットによるDNAタイピングを終えることができた。その結果、前述の理由から246人分の結果のうち175人分の試料について目的とするデータの採取を完了した。さらに現在までに得られた175人分のデータについて、種々のパラメーターの計算や連鎖不平衡の有無について検討した。低頻度もしくは新規と思われるアレルの塩基配列を調べたところ、日本人において始めて認められたアレルや全く新規な配列をもつアレルを確認することができた。以上のことより、全体として当初の計画以上に進展していると判断した。
KAKENHI-PROJECT-24590854
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24590854
Ballistic contractionによる筋出力の準備と調整に関する研究
本研究ではballistic contractionによる筋出力量の準備と調整について,反応時間(筋放電開始時間)を利用して時間的側面から検討するとともに,効果器からの求心性情報が筋出力の準備や調整に影響を与えるかどうかを以下の2つの主な実験によって検討した.【実験I】各被験者の最大等尺性肘屈曲筋力を基に発揮筋力の目標値(20,40,60,80%MVC)を設定し,被験者の発揮する張力と共にオシロスコープの両面上にライン表示した.被験者は,warning signalの呈示後与えられるLEDの点灯を合図にできるだけ早く(ballisticに)目標値に筋出力を合わせる課題を行った.Foreperiodは,25秒の間を0.5秒刻みでランダム順に与えた.同じ条件下で,foreperiodの間のバイブレーターによって主働筋に振動刺激を与える実験併せて行った.【実験II】実験Iと同様の方法で行ったが,実験IIでは80%MVCを発揮している状態から各目標値(0,20,40,60%MVC)に発揮筋力を合わせる課題を行った.【結果及び考察】Premotor time(筋放電開始時間,PMT)と筋出力量(20,40,60,80%MVC)との関係は既に筆者らが報告しているとおり,ballisticな筋力発揮時には発揮筋力が大きくなるほどPMTが増大することが確認された.また,foreperiodとの関係については2秒ではPMTが大きく,foreperiodが長くなるにつれてPMTは短縮したが,4秒をこえると逆にわずかに増大する傾向に示した.また,筋出力量が大きくてもforeperiodが長ければ比較的短い潜時で筋放電が出現し,十分な準備時間があれば大きな筋出力でも素早く発揮できることを示唆している.さらに,foreperiod中に振動刺激を主働筋に与えて,筋出力のpreparationに求心性情報がどれほど影響力を持っているのかを検討したが,本研究のような課題動作の場合にはほとんどその影響が見られず,脳内プログラムによって準備・制御されていることが窺えた。実験IIについては現在分析を進めているところである.本研究ではballistic contractionによる筋出力量の準備と調整について,反応時間(筋放電開始時間)を利用して時間的側面から検討するとともに,効果器からの求心性情報が筋出力の準備や調整に影響を与えるかどうかを以下の2つの主な実験によって検討した.【実験I】各被験者の最大等尺性肘屈曲筋力を基に発揮筋力の目標値(20,40,60,80%MVC)を設定し,被験者の発揮する張力と共にオシロスコープの両面上にライン表示した.被験者は,warning signalの呈示後与えられるLEDの点灯を合図にできるだけ早く(ballisticに)目標値に筋出力を合わせる課題を行った.Foreperiodは,25秒の間を0.5秒刻みでランダム順に与えた.同じ条件下で,foreperiodの間のバイブレーターによって主働筋に振動刺激を与える実験併せて行った.【実験II】実験Iと同様の方法で行ったが,実験IIでは80%MVCを発揮している状態から各目標値(0,20,40,60%MVC)に発揮筋力を合わせる課題を行った.【結果及び考察】Premotor time(筋放電開始時間,PMT)と筋出力量(20,40,60,80%MVC)との関係は既に筆者らが報告しているとおり,ballisticな筋力発揮時には発揮筋力が大きくなるほどPMTが増大することが確認された.また,foreperiodとの関係については2秒ではPMTが大きく,foreperiodが長くなるにつれてPMTは短縮したが,4秒をこえると逆にわずかに増大する傾向に示した.また,筋出力量が大きくてもforeperiodが長ければ比較的短い潜時で筋放電が出現し,十分な準備時間があれば大きな筋出力でも素早く発揮できることを示唆している.さらに,foreperiod中に振動刺激を主働筋に与えて,筋出力のpreparationに求心性情報がどれほど影響力を持っているのかを検討したが,本研究のような課題動作の場合にはほとんどその影響が見られず,脳内プログラムによって準備・制御されていることが窺えた。実験IIについては現在分析を進めているところである.
KAKENHI-PROJECT-07680117
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07680117
傾斜機能層を利用したハイブリッド表面改質による高強度バイオマテリアルの創製
ハイドロキシアパタイト(HAp)粒子を用いたショットピーニング,HApプラズマ溶射,HAp粒子を用いたショットピーニング後にHAp溶射を施した生体適合チタン合金(Ti-6Al-4V ELI)に対して軸荷重疲労試験を実施した.その結果,各処理材とも未処理材と疲労強度と比較すると大きな差異は認められなかった.従来,溶射を施すことで疲労強度が低下することが報告されてきたが,本研究では疲労強度が低下することがほとんどなかった.破面を観察すると,応力振幅500 MPa以下にて疲労試験を実施した試験片全ての破面上に内部き裂の発生を示すFish-eyeが確認されため表面処理の疲労強度に及ぼす影響は少ないと考えられる.また,内部き裂の起点となる欠陥の大きさが試験片により様々であり,定性的にみると疲労寿命が短かった試験片,すなわち疲労試験開始後すぐに破断した試験片の内部き裂が大きい傾向があった.そこで,内部き裂発生起点の大きさが疲労寿命に影響を及ぼしていると考え,内部き裂の大きさと疲労寿命の関係を明らかにするため内部き裂起点部の大きさおよび試験応力から応力拡大係数範囲を計算した.その結果,応力拡大係数範囲の値が小さくなると疲労寿命が増加する傾向が得られた.したがって,本研究で使用したチタン合金(Ti-6Al-4V ELI)の軸荷重疲労特性は材料表面の状態より材料内部に存在する欠陥に大きく影響されることが分かった.アコースティックエミッション(AE)法を用いて溶射皮膜のはく離挙動と疲労寿命の関係を明らかにすることも当初の計画に含んでいたが,今後の検討課題とし,溶射材の疲労特性の更なる解明に繋げていく予定である.本研究では,ハイドロキシアパタイト(HAp)溶射皮膜を有する高疲労強度複合バイオマテリアルの創製を目的として,チタン合金に対してHAp溶射を施す前にHAp粒子を用いたショットピーニングを施してチタンとHApの中間の性質を有する傾斜機能層の形成を試みた.その結果,チタン合金にHApが拡散したと考えられる,チタンとHApが混在する層が確認された.また,界面の基材(チタン合金)表面には著しい硬さの上昇が確認され,従来の溶射法よりも高い圧縮残留応力が生起していた.実験室・大気中において超高サイクル域におよぶ回転曲げ疲労試験を実施した結果,従来の溶射法に比べてやや疲労強度が低下する結果となった.従来の溶射法では,基材を粗面化させることで皮膜と基材の剥離を抑制するために溶射の前処理としてブラスト処理を施しているが,本研究ではブラスト処理後にHAp粒子を用いたショットピーニングを施している.これにより従来の溶射法よりも基材の表面粗さが改善されたため溶射皮膜と基材の界面強度が低下し,皮膜が疲労過程中において容易に剥離することで界面からき裂が発生して疲労強度の低下に繋がったと考えられる.溶射を施す前にHAp粒子を用いたショットピーニングを施した試験片の疲労試験後の破面を走査型電子顕微鏡(SEM: Scanning electron microscope)を用いて観察した結果,疲労き裂は溶射皮膜と基材の界面より発生していた.したがって,溶射を施した材料の界面強度は,その疲労強度に大きな影響を及ぼすことが確認された.チタンおよびHApが混在する層は確認できたが,溶射の前にHAp粒子を用いたショットピーニングを施すことで疲労強度は改善されていない.したがって,疲労強度を改善させる適切な処理条件を模索中であることからやや遅れていると判断する.平成28年度より引き続き,ハイドロキシアパタイト(HAp)粒子を用いたショットピーニング材,HAp溶射材,HAp粒子を用いたショットピーニング後にHAp溶射を施した材料について応力繰返し数10^9におよぶ回転曲げ疲労試験を実施し,超高サイクル域の疲労試験データの取得を行った.その結果,各種試験片ともS-N曲線に明瞭な折れ点が現れる疲労限度型のS-N特性を示した.各試験片の疲労限度を比較すると,HAp粒子を用いたショットピーニング材の疲労限度が最も改善した.これは,ショットピーニングにより被処理面に高い圧縮残留応力が生起し,さらには加工硬化も生じたためと考えられる.一方,HAp溶射材およびHApピーニング後にHAp溶射を施した材料については,疲労限度は未処理材と比較してほぼ同程度の値を示し,大きな改善効果は認められなかった.HAp溶射材については前処理としてブラスト処理を施しており,これにより基材表面近傍に圧縮残留応力の生起および加工硬化は生じるが同時に基材表面が粗面化する.この粗面化した凹部よりき裂が容易に発生することで疲労強度の改善効果が得られなかったものと考えられる.HApピーニング後にHAp溶射を施した材料については,予めブラスト処理により粗面化した基材表面粗さがHApピーニングを施して改善されてしまったことでHAp溶射皮膜と基材の密着強度が低下したため疲労強度の改善効果が得られなかったと考えられる.また,アコースティックエミッション(AE)法より各種試験片の回転曲げ疲労破壊挙動の解明を試みたが,回転曲げ疲労試験では試験片が回転するためAEセンサの取り付けが困難であった.そこで,試験片の軸方向に引張圧縮の負荷を与える軸荷重試験においてAE信号の取得を試みた結果,チタン合金の疲労き裂の発生をAE法を用いて捉えることが出来た.AE法により基材であるチタン合金のき裂発生の信号を取得することに成功したが,溶射皮膜のはく離を表すAE信号については未だ検出できていない.
KAKENHI-PROJECT-16K17986
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K17986
傾斜機能層を利用したハイブリッド表面改質による高強度バイオマテリアルの創製
したがって,HAp溶射材およびHApショットピーニング後にHAp溶射を施した材料の疲労破壊挙動をAE法により解明できていないことからやや遅れていると判断する.ハイドロキシアパタイト(HAp)粒子を用いたショットピーニング,HApプラズマ溶射,HAp粒子を用いたショットピーニング後にHAp溶射を施した生体適合チタン合金(Ti-6Al-4V ELI)に対して軸荷重疲労試験を実施した.その結果,各処理材とも未処理材と疲労強度と比較すると大きな差異は認められなかった.従来,溶射を施すことで疲労強度が低下することが報告されてきたが,本研究では疲労強度が低下することがほとんどなかった.破面を観察すると,応力振幅500 MPa以下にて疲労試験を実施した試験片全ての破面上に内部き裂の発生を示すFish-eyeが確認されため表面処理の疲労強度に及ぼす影響は少ないと考えられる.また,内部き裂の起点となる欠陥の大きさが試験片により様々であり,定性的にみると疲労寿命が短かった試験片,すなわち疲労試験開始後すぐに破断した試験片の内部き裂が大きい傾向があった.そこで,内部き裂発生起点の大きさが疲労寿命に影響を及ぼしていると考え,内部き裂の大きさと疲労寿命の関係を明らかにするため内部き裂起点部の大きさおよび試験応力から応力拡大係数範囲を計算した.その結果,応力拡大係数範囲の値が小さくなると疲労寿命が増加する傾向が得られた.したがって,本研究で使用したチタン合金(Ti-6Al-4V ELI)の軸荷重疲労特性は材料表面の状態より材料内部に存在する欠陥に大きく影響されることが分かった.アコースティックエミッション(AE)法を用いて溶射皮膜のはく離挙動と疲労寿命の関係を明らかにすることも当初の計画に含んでいたが,今後の検討課題とし,溶射材の疲労特性の更なる解明に繋げていく予定である.2017年度は,まず疲労強度を改善する適切な処理条件を見つける.回転曲げ疲労試験および軸荷重疲労試験を実施し,荷重負荷様式による疲労特性の違いを調べる.また,疲労試験中におけるHAp溶射皮膜と基材の剥離をアコースティックエミッション法を用いて検出し,破断に至るまでのき裂の進展挙動を調査する.軸荷重疲労試験により,試験片軸方向に引張圧縮の繰返し荷重を与えて各種試験片について疲労試験データを取得し,これまでに取得した回転曲げ疲労試験の結果と比較して荷重様式による疲労強度改善率の変化を調べる.また,疲労試験中におけるHAp溶射皮膜と基材のはくり離をAE法により検出し,破断に至るまでのき裂の進展挙動を調査する.さらには擬似体液中などの体内環境を模擬した状況下で疲労試験を実施する.アコースティックエミッション用の装置やセンサが特注で製造に時間がかかり,2016年度に納品が間に合わなかったことが理由である.今年度はハイドロキシアパタイトの溶射を外注することがなかったため次年度使用額が生じてしまった.次年度は試験荷重方式を変えた疲労試験を行うために新たに試験片を作製し,これにハイドロキシアパタイトの溶射するための外注費として使用することを考えている.アコースティックエミッション用の装置やセンサを購入するために使用することが既に決定している.
KAKENHI-PROJECT-16K17986
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K17986
意思決定の基準をセット・利用する脳内機構
意思決定とは、複数の選択肢から、ベストを選択する高次脳機能である。我々は、意思決定の際に、最適な選択をすべく、文脈や状況に応じて、基準を調節している。しかし脳の中で、どのようなメカニズムで、その基準が設定され、利用されているかは、よくわかっていなかった。そこで、本研究では、申請者がとりくんできた、意思決定の迷いを検出するための行動課題を改良し、迷い(確信度)の上流・下流に位置する基準を、別個に操作する実験パラダイムを開発した。その結果、意思決定の内部変数のゆらぎから、各試行間の確信度のばらつきを、さらに、確信度の時系列構造から、各試行間の意思決定の基準の変化を予測することができた。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。意思決定とは、複数の選択肢から、ベストを選択する高次脳機能の結果である。我々は、最適な選択をすべく、状況やコンテクストに応じて、意思決定の基準を調節している。しかし、その基準が、どのように設定され、利用されているかは、良くわかっていない。本年度は、霊長類が、意思決定において、迷いを、どのように検知して、どんな適応行動に結びつけているかを明らかにするために、サルとヒトの実験を並行して、精査した。まず、申請者自身が確立した、サルの実験系において、視覚刺激を提示して、二者択一の判断をさせるか、その判断を逃避してもよいというオプトアウトの選択肢を与えると、視覚刺激が曖昧になればなるほど、サルはオプトアウトすることが明らかになっている。さらに、オプトアウト課題を改良して、サルに二者択一の知覚判断課題をさせた後、その確信度を問うwagering課題を採用した結果、視床枕のニューロン活動は、知覚の確信度(迷いの逆)を反映していることが分かり、それは、知覚判断の基準からの距離によって、説明できることが分かった。次に、ヒトの心理実験において、主観的な自信の程度を、レーティングさせると、正解時とエラー時において、異なる心理物理関数が得られることが分かった。この性質も、知覚判断の基準からの距離によって、説明できることが分かった。意思決定には、迷いがつきものだが、その程度によって、基準が更新されうるエビデンスも得た。当初の計画どおり、サルとヒトの実験を並行してできた。意思決定とは、複数の選択肢から、ベストを選択する高次脳機能である。我々は、意思決定の際に、最適な選択をすべく、文脈や状況に応じて、基準を調節している。しかし脳の中で、どのようなメカニズムで、その基準が設定され、利用されているかは、よくわかっていなかった。そこで、本研究では、申請者がとりくんできた、意思決定の迷いを検出するための行動課題を改良し、迷い(確信度)の上流・下流に位置する基準を、別個に操作する実験パラダイムを開発した。その結果、意思決定の内部変数のゆらぎから、各試行間の確信度のばらつきを、さらに、確信度の時系列構造から、各試行間の意思決定の基準の変化を予測することができた。これまでの知見を踏まえて、神経生理実験を進める。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-26120735
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-26120735
減数分裂特異的に相同染色体間の接着を媒介するメカニズムとその制御
シナプトネマ複合体は減数第一分裂前期特異的に染色体上に形成される高次構造で、その際凝縮した相同染色体同士がその全長に渡って密着し相同染色体間で遺伝情報の交換を促進する。シナプトネマ複合体は細胞周期が第一分裂中期に移行するに従い速やかに解離するがその制御機構の多くは不明であった。本研究ではその制御において、主要な細胞周期調節キナーゼであるDDK(Dbf4依存性Cdc7キナーゼ)、ポロキナーゼ、CDK1キナーゼが協調的に機能することを示した。また、シナプトネマ複合体の解離に伴い体細胞分裂期型相同組換え機構が再活性化することを明らかにした。減数分裂を通じて染色体数は半減し、遺伝的多様性が増幅され配偶子(精子、卵)が形成される。特に第一分裂の前期において、父方由来と母方由来の染色体(相同染色体)が全長にわたって密着し遺伝情報を交換することは、減数分裂に必須の過程である。この相同染色体対合を支える複雑な染色体構造をシナプトネマ複合体と呼ぶ。シナプトネマ複合体形成と解離の制御機構はよく分かっていない。本研究において、私はシナプトネマ複合体が減数第一分裂期における染色体分配に先立ち迅速に分解される機構についての解析を行っている。これまでの結果により、シナプトネマ複合体の分解反応が細胞周期依存的キナーゼのネットワークにより制御されていることが示唆された。とりわけDDK (Dbf4-dependent Cdc7 kinase)とPoloキナーゼの相互作用がその制御の鍵を握ることを示唆する遺伝的データを得た。具体的には、DDKとPoloの相互作用に影響を与える種々のdbf4変異を作成し、DDKとPoloの相互作用の強度がシナプトネマ複合体の分解に与える影響を体系的に調べた。その結果、DDKとPoloの物理的相互作用がシナプトネマ複合体の分解制御の鍵を握ること、その相互作用強度がDDKのリン酸化レベルの重要なモジュレーターであることが明らかとなった。以上の結果により、シナプトネマ複合体の分解がPoloによるDbf4のリン酸化により制御されている可能性が強く示唆された。DDKがシナプトネマ複合体の分解制御に関与していることを明確に示すことができた。また、DDKの制御をつかさどるリン酸化反応を分子的に理解しつつある。PoloとDbf4の直接的相互作用がDbf4のリン酸化反応及びシナプトネマ複合体の分解に重要であることを示した。さらにDbf4の効率的なリン酸化に必須な部位を同定した。シナプトネマ複合体は減数第一分裂前期特異的に染色体上に形成される高次構造で、その際凝縮した相同染色体同士がその全長に渡って密着し相同染色体間での遺伝情報の交換を促進する。シナプトネマ複合体は細胞周期が第一分裂中期に移行するに従い速やかに解離するがその制御機構の多くは不明であった。本研究ではその制御において、主要な細胞周期調節キナーゼであるDDK(Dbf4依存性Cdc7キナーゼ)、ポロキナーゼ、CDK1キナーゼが協調的に機能することを示した。その中で中核的役割を果たすのがDbf4のリン酸化である。まずDbf4のリン酸化ははポロキナーゼとの直接的相互作用を通じて誘導される。さらにDbf4はCDK1によってもポロキナーゼと重複的にリン酸化を受ける。減数分裂で第一分裂前期から中期に移行する過程でポロキナーゼ、およびCDK1の活性調節を担うサイクリンの発現誘導が起こることから、これらのキナーゼの活性上昇がシナプトネマ複合体の解離を細胞周期の進行と結びつける分子的基盤と考えられる。また、減数第一分裂前期の終了から中期にかけて起こるシナプトネマ複合体の解離に伴い、体細胞分裂期型相同組換え機構が素早く再活性化することを見出した。減数分裂期の前期を通じて、相同組換えの開始を促すDNAの二重鎖切断が継続的に起こっていること、DNAの二重鎖切断が完全に修復されないと染色体分配に伴いゲノムの恒常性が著しく損なわれることから、減数第一分裂中期直前に起こる体細胞分裂期型組換え機構の活性化は染色体分配前にDNA傷害を完全に修復し切るためのメカニズムかも知れない。シナプトネマ複合体は減数第一分裂前期特異的に染色体上に形成される高次構造で、その際凝縮した相同染色体同士がその全長に渡って密着し相同染色体間で遺伝情報の交換を促進する。シナプトネマ複合体は細胞周期が第一分裂中期に移行するに従い速やかに解離するがその制御機構の多くは不明であった。本研究ではその制御において、主要な細胞周期調節キナーゼであるDDK(Dbf4依存性Cdc7キナーゼ)、ポロキナーゼ、CDK1キナーゼが協調的に機能することを示した。また、シナプトネマ複合体の解離に伴い体細胞分裂期型相同組換え機構が再活性化することを明らかにした。DDKの制御とDbf4のリン酸化について、そのリン酸化部位の正確な特定と、そのリン酸化がDDKの活性に及ぼす影響を明らかにするとともに、DDKとPoloがどのような機構を通じてシナプトネマ複合体の分解を促進するのか、その実態の解明に取り組んで行く予定である。29年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-16H07422
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H07422
減数分裂特異的に相同染色体間の接着を媒介するメカニズムとその制御
分子遺伝学細胞生物学29年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-16H07422
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タンパク質膜挿入・膜透過に関与する糖脂質MPIaseと標的タンパク質との相互作用
膜タンパク質の膜挿入は根本的な部分ではすべての生物において保存されている。大腸菌においては、シグナル認識粒子SRPやタンパク質膜透過チャンネルSecYEGに依存して膜挿入が進行する経路と、これらに依存しないで進行する経路が存在する。YidCは、ミトコンドリアや葉緑体にもホモログが存在し、タンパク質膜挿入に重要な役割を果たす。YidCの結晶構造が報告され、その構造に基づきYidCの作用機構が提唱されているが、その機能については今なお不明な点が多い。申請者はタンパク質膜挿入の再構成系を確立し、膜挿入に必須の糖脂質MPIase(Membrane Protein Integrase)を発見した。さらに、この再構成系を用いてYidC機能を解析したところ、基質膜タンパク質の量が少ないときはMPIaseのみに依存して膜挿入するが、基質膜タンパク質量がMPIaseやYidCよりも多いときはYidCにより膜挿入効率が数倍上昇することを示した。この結果は、MPIaseとYidCが直接相互作用することを示している。YidCに強く依存する膜タンパク質とあまり依存しない膜タンパク質が報告されている。これらの膜タンパク質の膜挿入に関して再構成系で調べたところ、いずれの場合も膜挿入にはMPIaseが必須でありことが判明した。これらの結果は、まず膜タンパク質はMPIaseと相互作用して膜挿入反応が進行し、その後YidCに基質が受け渡されて膜挿入が完了することを強く示唆している。YidCの依存性が弱い膜タンパク質に関しては、MPIaseだけで膜挿入が十分に進行し、YidC機能が必要ないことが明らかとなった。YidCによる膜挿入促進は、SRP/SecYEGに依存する場合もしない場合も同様に観察された。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。膜タンパク質の膜挿入や分泌タンパク質の膜透過は、根本的な部分ではすべての生物において保存されている。タンパク質膜透過チャンネルSecYEGはタンパク質膜挿入、膜透過のどちらにおいても中心的役割を果たす。YidCは、ミトコンドリアや葉緑体にもホモログが存在し、タンパク質膜挿入に重要な役割を果たすが、その機能については今なお議論が分かれている。タンパク質膜挿入、膜透過の分子機構を明らかにするため、申請者はそれらの再構成系を確立し、膜挿入に必須の糖脂質MPIase(Membrane Protein Integrase)を発見した、MPIaseはSecYEGと相互作用しSecYEGの二量体構造に影響を与えることを明らかにした。本年度はYidCとMPIaseの相互作用に着目して研究を進めた。その結果、基質膜タンパク質の量が少ないときはMPIaseのみに依存して膜挿入するが、基質膜タンパク質量がMPIaseやYidCよりも多いときはYidCにより膜挿入効率が数倍上昇した。これらの結果は、まず膜タンパク質はMPIaseと相互作用して膜挿入反応が進行し、その後YidCに基質が受け渡されて膜挿入が完了することを強く示唆している。この現象は、枯草菌由来のYidCでも大腸菌由来のYidCでも観察された。さらに、YidCの膜内部に存在する比較的親水的な空洞内に変異が生じたとき、YidCによる促進効果が無効となることも判明した。YidCによる膜挿入促進は、SecYEGに依存する反応でも観察された。このことは、MPIaseーYidC複合体はSecYEG複合体とも直接相互作用して膜挿入反応を触媒している可能性がある。膜タンパク質の膜挿入は根本的な部分ではすべての生物において保存されている。大腸菌においては、シグナル認識粒子SRPやタンパク質膜透過チャンネルSecYEGに依存して膜挿入が進行する経路と、これらに依存しないで進行する経路が存在する。YidCは、ミトコンドリアや葉緑体にもホモログが存在し、タンパク質膜挿入に重要な役割を果たす。YidCの結晶構造が報告され、その構造に基づきYidCの作用機構が提唱されているが、その機能については今なお不明な点が多い。申請者はタンパク質膜挿入の再構成系を確立し、膜挿入に必須の糖脂質MPIase(Membrane Protein Integrase)を発見した。さらに、この再構成系を用いてYidC機能を解析したところ、基質膜タンパク質の量が少ないときはMPIaseのみに依存して膜挿入するが、基質膜タンパク質量がMPIaseやYidCよりも多いときはYidCにより膜挿入効率が数倍上昇することを示した。この結果は、MPIaseとYidCが直接相互作用することを示している。YidCに強く依存する膜タンパク質とあまり依存しない膜タンパク質が報告されている。これらの膜タンパク質の膜挿入に関して再構成系で調べたところ、いずれの場合も膜挿入にはMPIaseが必須でありことが判明した。これらの結果は、まず膜タンパク質はMPIaseと相互作用して膜挿入反応が進行し、その後YidCに基質が受け渡されて膜挿入が完了することを強く示唆している。YidCの依存性が弱い膜タンパク質に関しては、MPIaseだけで膜挿入が十分に進行し、YidC機能が必要ないことが明らかとなった。YidCによる膜挿入促進は、SRP/SecYEGに依存する場合もしない場合も同様に観察された。MPIaseからYidCへと流れる膜挿入機構を提唱することができ、これまで議論の分かれていたYidCの役割に決着をつける結果が得られたため「おおむね順調に進展している」とした。27年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-26102703
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-26102703
タンパク質膜挿入・膜透過に関与する糖脂質MPIaseと標的タンパク質との相互作用
MPIaseとYidC、MPIaseとSecYEGという、タンパク質膜挿入・膜透過に重要な相互作用の詳細は、現在のところ大部分が不明なままである。これら相互作用の詳細について解析を進める。27年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-26102703
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柏原代数に付随するq-頂点作用素のN点関数について
1990年頃京都大学数理解析研究所の柏原氏により発見された結晶基底の理論と、1991年にロシアの数理物理学者フレンケルとレシェティヒンにより発見されたq-頂点作用素の理論は量子群、格子模型、共形場理論などに特に大きな影響を及ぼした。申請者は、結晶基底を記述するために柏原氏により導入された柏原代数に対しq-頂点作用素の類似物を定義しその2点関数が、いわゆる量子R行列と一致することを示した。申請者の目的としては、2点関数のみならず、Nが2より大きい場合にN点関数の具体的な記述を与えるということがあった。申請者は、まず、柏原代数に対するq-頂点作用素の双対的な描写として現れる、変形された量子群の結晶基底の構造をリー環sl_2の場合に明らかにした。そこでは、変形された量子群の結晶基底が、道空間表示としうものを用いて、最も単純な2次元アファイン結晶のテンソル積のアファイン化の無限直和の形で表されることを示した。これは、フレンケルとレシェティヒンのq-頂点作用素の理論を用いて、京都大学の神保氏らによって解析されたXXZ模型の場合の結晶基底による描写のある種の極限に相当することが分かった。これらをもとにして、N点関数の具体的な記述に対しては、R行列の積に関係したものであるという予想が立つが、これは今後の大きな課題である。R行列の解析は、現在なお世界中の多くの研究者達が追求する大きなテーマであり、量子R行列が柏原代数に付随したq-頂点作用素と深い関係をもつということは、量子R行列に新しい解釈を与えたと言え、他のR行列の解析に役立つものと期待できる。1990年頃京都大学数理解析研究所の柏原氏により発見された結晶基底の理論と、1991年にロシアの数理物理学者フレンケルとレシェティヒンにより発見されたq-頂点作用素の理論は量子群、格子模型、共形場理論などに特に大きな影響を及ぼした。申請者は、結晶基底を記述するために柏原氏により導入された柏原代数に対しq-頂点作用素の類似物を定義しその2点関数が、いわゆる量子R行列と一致することを示した。申請者の目的としては、2点関数のみならず、Nが2より大きい場合にN点関数の具体的な記述を与えるということがあった。申請者は、まず、柏原代数に対するq-頂点作用素の双対的な描写として現れる、変形された量子群の結晶基底の構造をリー環sl_2の場合に明らかにした。そこでは、変形された量子群の結晶基底が、道空間表示としうものを用いて、最も単純な2次元アファイン結晶のテンソル積のアファイン化の無限直和の形で表されることを示した。これは、フレンケルとレシェティヒンのq-頂点作用素の理論を用いて、京都大学の神保氏らによって解析されたXXZ模型の場合の結晶基底による描写のある種の極限に相当することが分かった。これらをもとにして、N点関数の具体的な記述に対しては、R行列の積に関係したものであるという予想が立つが、これは今後の大きな課題である。R行列の解析は、現在なお世界中の多くの研究者達が追求する大きなテーマであり、量子R行列が柏原代数に付随したq-頂点作用素と深い関係をもつということは、量子R行列に新しい解釈を与えたと言え、他のR行列の解析に役立つものと期待できる。
KAKENHI-PROJECT-06740025
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06740025
強相関チアジルラジカルの光・電流応答
環状チアジルラジカルの磁気特性や光物性、電気物性を研究した。BDTDAと呼ばれるラジカル分子の光物性を調べたところ、ITO|BDTDA(300nm)|Alなる光学セルが、バイアス電圧なしで巨大な過渡光電流を見せることを見出した。この起源であるが、「BDTDAはラジカルであるという電子構造の特殊性と自分自身の分極に助けられながら、電極界面で効率よく光電荷分離を起こす。BDTDAのLUMOはAlのフェルミ準位よりも高いため、電荷分離によって生じた電子はAl電極に即座に吸収され、ITOとAlの仕事関数の差によってITO側まで移動する。」を結論した。このメカニズムの面白さは、過渡電流は外部回路を通る界面から界面への電流であるため、有機半導体の最大の弱点である移動度の低さや化学的安定性は問題にならない点である。またこの機構を見れば明らかなように、過渡光電流発現に有機層内部の導電性は必要ない。つまり電極界面で電荷分離さえ生じれば、有機層内部を絶縁体に置き換えても同様の過渡光電流を観測できる。このモデルに従って過渡電流生成に特化した、電荷分離層と絶縁分極層からなる二層膜セルを作製した。電荷分離層=ZnPcとC60の共蒸着膜、絶縁分極層=有機ポリマーPVDFとすることにより、予想通りBDTDAのものに匹敵する大きな過渡電流や交流電流が生じ、また絶縁分極層の物質を取りかえて誘電率を制御することによって、過渡光電流の大きさを2ケタ以上変化させることに成功した。NT_3(GaCl_4)は、チアジルラジカルらしい3次元的な分子ネットワークをもつ結晶構造中に電荷が異なる4分子が存在し、室温でも電荷秩序状態にある。この系は顕著な非線形伝導を室温でも示すが、高電場によってこの電荷秩序が部分的に融解して高伝導になったためと推察している。最近、岸田(名大)らは、負性抵抗現象から電流発振を引き出すための電気回路を提案したが、NT_3(GaCl_4)もこれによって安定な発振を見せることが分かった。さらに試料に振動電流を印加しながらEPRを計測したところ、この影響を直接EPRシグナル上に観測することができた。このような計測は我々が知る限り初めての例で、本研究では有機伝導体中を電流がどのように流れるかといった極めて基本的な問題に対して、分子論的な知見を得られる。さらに本研究では、非磁性のGaCl_4をEPRアクティブなFeCl_4イオンに部分置換したNT_3(GaCl_4)_<1-x>(FeCL_4)_xを合成した。xの値は10%程度であった。この結晶に電流を印加したところ、EPRのレスポンスはNT_3(GaCl_4)のものとまったく異なり、電流による熱発生で単純に説明できることが分かった。これは対イオン上が電流パスとなっていないためであると解釈している。環状チアジルラジカルの磁気特性や光物性、電気物性を研究した。BDTDAと呼ばれるラジカル分子の光物性を調べたところ、ITO|BDTDA(300nm)|Alなる光学セルが、バイアス電圧なしで巨大な過渡光電流を見せることを見出した。この起源であるが、「BDTDAはラジカルであるという電子構造の特殊性と自分自身の分極に助けられながら、電極界面で効率よく光電荷分離を起こす。BDTDAのLUMOはAlのフェルミ準位よりも高いため、電荷分離によって生じた電子はAl電極に即座に吸収され、ITOとAlの仕事関数の差によってITO側まで移動する。」を結論した。このメカニズムの面白さは、過渡電流は外部回路を通る界面から界面への電流であるため、有機半導体の最大の弱点である移動度の低さや化学的安定性は問題にならない点である。またこの機構を見れば明らかなように、過渡光電流発現に有機層内部の導電性は必要ない。つまり電極界面で電荷分離さえ生じれば、有機層内部を絶縁体に置き換えても同様の過渡光電流を観測できる。このモデルに従って過渡電流生成に特化した、電荷分離層と絶縁分極層からなる二層膜セルを作製した。電荷分離層=ZnPcとC60の共蒸着膜、絶縁分極層=有機ポリマーPVDFとすることにより、予想通りBDTDAのものに匹敵する大きな過渡電流や交流電流が生じ、また絶縁分極層の物質を取りかえて誘電率を制御することによって、過渡光電流の大きさを2ケタ以上変化させることに成功した。
KAKENHI-PUBLICLY-21110515
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ヒト胆癌肝および肝癌細胞における上皮成長因子リセプターと組織学的分化度の研究
ヒト肝細胞癌について, 1.ヒト肝の再生,増殖,腫瘍形成と密接な関与が考えられているEGF受容体の面からと, 2.DNAplcidyの面から検討を加えた.1.EGF受容体検索;対象は肝細胞癌12例で,良性胆のう疾患6例を正常対照とした.精製細胞膜分画と^<127>I-EGFを用いた解析により,肝癌組織12例中10例,非癌及び正常肝組織の全てにEGF受容体が検出され解離定数(×10^<-10>M)は肝癌,非癌,正常肝でそれぞれ90±40(Mean±SD), 8.5±5.7,9.9±4.5であり,総結合能(Fu/mg蛋白)はそれぞれ20.8±17.5,51.4±50.9,116.2±38.9であった.従来,肝癌組織においては,非癌部に比して, EGF受容体の発現が低下していると報告されているが,非癌部に比して癌部で増加している症例がみられ,興味がもたれた.2.フローサイトメトリーによるDNAploidy検索:対象はヒト肝癌14例で癌部と非癌部をそれぞれコラゲナーゼにより単離細胞とし, No〓idetP-40シリンジングにより裸核とし,エタノールで固定し, propidion codineにて染色を行いフローサイトメトリー(EAcS40)にてDNAヒストグラムを作製し, DNAploidyを検索した.未分化なものにPolyploidyを多く認めた.Euploidyを呈した6例全例単結節型であったが, Aneuploidy群とPolyploidy群では一定の傾向を認めなかった.Stage分類では, Fuploidyを呈した大半は進行度の低いもので, Aneuploidy又はPolyploidyを呈したものは進展したstageのものが多かった.今後データーを整現し, EGF受容体と組織型や病期との関係を明らかにしたい.ヒト肝細胞癌について, 1.ヒト肝の再生,増殖,腫瘍形成と密接な関与が考えられているEGF受容体の面からと, 2.DNAplcidyの面から検討を加えた.1.EGF受容体検索;対象は肝細胞癌12例で,良性胆のう疾患6例を正常対照とした.精製細胞膜分画と^<127>I-EGFを用いた解析により,肝癌組織12例中10例,非癌及び正常肝組織の全てにEGF受容体が検出され解離定数(×10^<-10>M)は肝癌,非癌,正常肝でそれぞれ90±40(Mean±SD), 8.5±5.7,9.9±4.5であり,総結合能(Fu/mg蛋白)はそれぞれ20.8±17.5,51.4±50.9,116.2±38.9であった.従来,肝癌組織においては,非癌部に比して, EGF受容体の発現が低下していると報告されているが,非癌部に比して癌部で増加している症例がみられ,興味がもたれた.2.フローサイトメトリーによるDNAploidy検索:対象はヒト肝癌14例で癌部と非癌部をそれぞれコラゲナーゼにより単離細胞とし, No〓idetP-40シリンジングにより裸核とし,エタノールで固定し, propidion codineにて染色を行いフローサイトメトリー(EAcS40)にてDNAヒストグラムを作製し, DNAploidyを検索した.未分化なものにPolyploidyを多く認めた.Euploidyを呈した6例全例単結節型であったが, Aneuploidy群とPolyploidy群では一定の傾向を認めなかった.Stage分類では, Fuploidyを呈した大半は進行度の低いもので, Aneuploidy又はPolyploidyを呈したものは進展したstageのものが多かった.今後データーを整現し, EGF受容体と組織型や病期との関係を明らかにしたい.
KAKENHI-PROJECT-62570321
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62570321
量子サイバネティクスにおける量子推定理論の新たな展開
量子推定理論とは,測定を介して観測者が物理系から取り出せる情報の限界を非可換統計学の観点から厳密に研究する分野である.本研究の目的は,量子推定理論におけるこれまでの理論的研究成果を,主として研究計画DO1「光子量子回路による量子サイバネティクスの実現」の研究代表者である竹内繁樹氏の研究グループとの共同研究を通じて実験的に検証すると同時に,その過程で得られる様々なノウハウ・研究成果を量子情報操作/制御の基盤技術として量子情報システムに組み込むことで,測定を介した量子系のフィードバック制御方法を確立し,量子情報科学の発展に寄与することにある.本年度は,光子の偏光方向の適応的推定実験を系統的に行い,研究代表者の先行研究である適応的最尤推定法の強一致性および漸近有効性(J. Phys. A: Math, Gen., 39(2006)12489)を世界で初めて実験的に検証することに成功した.まず,光子の偏光方向を定める半波長板の設定値θを推定する適応的推定実験において,光子数n=300の段階で,推定値の分布が理論的に予測される正規分布に,設定値θ=0,30,60,78.3(deg)のいずれにおいても十分収束していることがカイ2乗検定で確認できた.引き続き,推定値の期待値と分散の区間推定を行ったところ,分散についてはいずれの設定値においても,信頼水準90%という厳しい水準の信頼区間に理論値(量子Fisher情報量の逆数)が入っていることが確認できた.一方,期待値については,真値が信頼水準90%の信頼区間に入っているか,もしくは最大でも0.04(deg)以内のずれに収まっていた.実験系の設定精度が±0.2(deg)であることを考慮すると,以上の結果は,働て高い精度で理論予想を実験的に検証できたことを意味する.量子推定理論とは,測定を介して観測者が物理系から取り出せる情報の限界を非可換統計学の観点から厳密に研究する分野である.本研究の目的は,量子推定理論におけるこれまでの理論的研究成果を,主として研究計画DO1「光子量子回路による量子サイバネティクスの実現」の研究代表者である竹内繁樹氏の研究グループとの共同研究を通じて実験的に検証すると同時に,その過程で得られる様々なノウハウ・研究成果を量子情報操作/制御の基盤技術として量子情報システムに組み込むことで,測定を介した量子系のフィードバック制御方法を確立し,量子情報科学の発展に寄与することにある.本年度は,研究代表者が先行研究で明らかにしたCramer-Rao型下限の操作的意味づけの実験的検証に向けて,適応的推定方式の数値実験的検討を行った.まず,光子の偏向方向の推定問題に対して適応的推定法を用いた場合,最尤推定量が一致性および漸近有効性を示すという理論結果を数値的に確認した.引き続き,観測データから偏向角およびその分散を推定した場合の挙動を区間推定法を用いて解析し,サンプル数と繰り返し数の積が一定(15万回)という条件の下で最適なサンプル数を見積もった.この結果,実験的に実現可能な条件下で,量子推定理論が導出する推定方式の最適性が検証できそうであることが明らかとなった.現在,竹内グループの量子光学実験も着々と準備が進んでおり,近い将来,検証実験が軌道に乗るものと期待される.量子推定理論とは,測定を介して観測者が物理系から取り出せる情報の限界を非可換統計学の観点から厳密に研究する分野である.本研究の目的は,量子推定理論におけるこれまでの理論的研究成果を,主として研究計画DO1「光子量子回路による量子サイバネティクスの実現」の研究代表者である竹内繁樹氏の研究グループとの共同研究を通じて実験的に検証すると同時に,その過程で得られる様々なノウハウ・研究成果を量子情報操作/制御の基盤技術として量子情報システムに組み込むことで,測定を介した量子系のフィードバック制御方法を確立し,量子情報科学の発展に寄与することにある.本年度は,光子の偏光方向の適応的推定実験を系統的に行い,研究代表者の先行研究である適応的最尤推定法の強一致性および漸近有効性(J. Phys. A: Math, Gen., 39(2006)12489)を世界で初めて実験的に検証することに成功した.まず,光子の偏光方向を定める半波長板の設定値θを推定する適応的推定実験において,光子数n=300の段階で,推定値の分布が理論的に予測される正規分布に,設定値θ=0,30,60,78.3(deg)のいずれにおいても十分収束していることがカイ2乗検定で確認できた.引き続き,推定値の期待値と分散の区間推定を行ったところ,分散についてはいずれの設定値においても,信頼水準90%という厳しい水準の信頼区間に理論値(量子Fisher情報量の逆数)が入っていることが確認できた.一方,期待値については,真値が信頼水準90%の信頼区間に入っているか,もしくは最大でも0.04(deg)以内のずれに収まっていた.実験系の設定精度が±0.2(deg)であることを考慮すると,以上の結果は,働て高い精度で理論予想を実験的に検証できたことを意味する.
KAKENHI-PUBLICLY-22102504
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-22102504
腸内細菌叢由来代謝物測定系の確立と臨床応用
腸内細菌由来のコリン代謝産物は、心血管疾患を含む多くの病態と関連していることが明らかになりつつあるが、多くの代謝物の中で日本人で重要な物質は何か、それが疾患予知因子となりえるかについては明らかでない。本研究では、(1)複数分子の同時測定系の確立、(2)地域住民を対象にしたコホート検体の測定、(3)測定値と心血管疾患ならびに動脈硬化指標との関連について解析を行い、複数の分子を選択し重みづけによる疾患尺度を創出する。日本人によるエビデンスを構築することにより、わが国における個人の疾患リスクや予後予測、ハイリスク者の特定などが可能になると期待される。腸内細菌由来のコリン代謝産物は、心血管疾患を含む多くの病態と関連していることが明らかになりつつあるが、多くの代謝物の中で日本人で重要な物質は何か、それが疾患予知因子となりえるかについては明らかでない。本研究では、(1)複数分子の同時測定系の確立、(2)地域住民を対象にしたコホート検体の測定、(3)測定値と心血管疾患ならびに動脈硬化指標との関連について解析を行い、複数の分子を選択し重みづけによる疾患尺度を創出する。日本人によるエビデンスを構築することにより、わが国における個人の疾患リスクや予後予測、ハイリスク者の特定などが可能になると期待される。
KAKENHI-PROJECT-19K11741
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生体イメージングによる活性化造血幹細胞ニッチの同定
造血幹細胞の細胞周期は、生理学的状況に応じて変動することが知られているが、その正確なメカニズムはわかっていない。本研究では、多光子励起顕微鏡法を用いて、定常状態及び活性化造血幹細胞の生体イメージングを行った。抗腫瘍薬5-FUによる前処置を行ったマウスに移植された造血幹細胞の運動性は、対照マウスに移植されたものと比較して有意に低下しており、その大部分は血管内皮細胞に近接していた。遺伝子発現解析の結果からは、骨髄抑制後の微小環境が造血幹細胞に増殖シグナルを供給し、その細胞周期に影響を及ぼすことが示唆された。造血幹細胞の特徴は自己複製能と多分化能を有することであるが、その維持・調節のためには造血幹細胞を取り巻く造血微小環境が重要な働きをすることが示されている。その中で、造血幹細胞は“造血幹細胞ニッチ"と呼ばれる特有の環境に存在すると考えられている。造血幹細胞の多くは静止状態にあるが、化学療法や放射線照射などによる骨髄抑制を受けた後には、減少した血球を補うべく細胞周期が活性化し、盛んに分裂するようになる。静止状態と自己複製的な増殖および成熟血球への分化のバランスを保つために、造血幹細胞は必要に応じたシグナルを享受する必要がある。そのため、造血幹細胞は状況に応じて、相互作用するニッチの場を移動すると考えられているが、詳細は明らかになっていない。我々は、二光子励起顕微鏡を用いて骨髄内の造血幹細胞の可視化を行った。生きたマウスを麻酔下に頭部の剃毛と皮膚切開をした上で固定台上に固定し、二光子励起顕微鏡を用いて骨髄内を長時間撮影することに成功した。この技術により、造血幹細胞の骨髄内における三次元的な位置や、その動きを捉えることができた。得られた画像を解析ソフトを用いて詳細に解析することにより、環境側の変化によって造血幹細胞自体の動きや局在に変化が生じることが明らかとなった。造血幹細胞は、骨髄環境側からのシグナルにより細胞周期を変化させていると考えられたため、造血幹細胞近傍の環境側の細胞を解析することにより、造血幹細胞を活性化させる候補シグナルを明らかにする。造血幹細胞の生体イメージングに成功し、環境側の変化によって造血幹細胞自体の動きや局在に変化が生じることを明らかにできたため。造血幹細胞はニッチと呼ばれる骨髄微小環境で維持されており、自己複製や分化を精緻に制御しているものと考えられている。一方、抗腫瘍薬投与などによる骨髄抑制後には、造血幹細胞の細胞周期が回転し、活性化することが知られているが、その詳細なメカニズムは明らかになっていない。そこで本研究の目的は、生理的状態と骨髄抑制後の造血幹細胞を解析することにより、造血幹細胞活性化の分子機構を明らかにすることである。そのために、まず二光子励起顕微鏡を用いてマウス骨髄内の造血幹細胞の可視化を行った。生きたマウスを麻酔下に頭部の剃毛と皮膚切開をした上で固定台上に固定し、正立型二光子励起顕微鏡を用いて骨髄内を長時間撮影することに成功した。抗腫瘍薬による前処置を施したレシピエントマウスに移植された造血幹細胞と、前処置を施さないレシピエントマウスに移植された造血幹細胞について、骨髄内における細胞運動や微小環境(ニッチ)との位置関係を継時的に解析した。結果として、前処置施行マウスに移植された造血幹細胞の多くが、骨髄内の血管性ニッチに存在することが示された。更にホーミングした造血幹細胞の遺伝子発現をRNA-Seq法を用いて網羅的に解析したところ、細胞周期関連の遺伝子発現が環境変化に応じて活性化することが明らかとなった。以上の結果より、骨髄抑制後に生じる微小環境変化が、移植造血幹細胞の挙動や細胞周期に影響を与えうることが示された。造血幹細胞の細胞周期は、生理学的状況に応じて変動することが知られているが、その正確なメカニズムはわかっていない。本研究では、多光子励起顕微鏡法を用いて、定常状態及び活性化造血幹細胞の生体イメージングを行った。抗腫瘍薬5-FUによる前処置を行ったマウスに移植された造血幹細胞の運動性は、対照マウスに移植されたものと比較して有意に低下しており、その大部分は血管内皮細胞に近接していた。遺伝子発現解析の結果からは、骨髄抑制後の微小環境が造血幹細胞に増殖シグナルを供給し、その細胞周期に影響を及ぼすことが示唆された。造血幹細胞は、骨髄環境側からのシグナルにより細胞周期を変化させていると考えられたため、造血幹細胞近傍の環境側の細胞を解析することにより、造血幹細胞を活性化させる候補シグナルを明らかにする。28年度が最終年度であるため、記入しない。血液内科学28年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-15H06373
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H06373
アルコールとの「微弱な相互作用」を利用したポリヒドリドクラスターの反応性の制御
三核ポリヒドリド錯体とフルオロアルコールとの相互作用について定量的に評価した。三核錯体の場合には溶液中では5分子のアルコールとのアダクトが形成され、金属の種類によって平衡定数には大きな差が表れることを明らかにした。アダクトの形成によってクラスター上からの脱水素反応が促進されるなどアルコールアダクトはプロトン化によって生じるカチオン性錯体と類似の性質を示すが、その他にもアルコールの配位によって不安定な中間体が安定化されうることも明らかにした。ポリヒドリドクラスターとアルコールとの"微弱な相互作用"について各種分光装置を用いて定量的に解析し、プロトン性分子の配位による金属中心の電子状態の変化およびヒドリド配位子の性質の変化について明らかにしていく。さらに、このような相互作用を用いることでポリヒドリドクラスターの反応性を連続的に変化させ、水和あるいはアルコールの付加といった形で炭化水素分子への極性分子の付加、すなわち官能基導入反応の開発につなげることを目的とする。三核ルテニウムペンタヒドリド錯体を中心に様々な核数ならびに様々な種類の金属を用いた異種金属クラスターについても同様に調査し、プロトン性分子との相互作用の強弱からクラスターを構成する元素の数・種類が及ぼす反応性への影響についても明らかにしていく。三核ポリヒドリド錯体とフルオロアルコールとの相互作用について定量的に評価した。三核錯体の場合には溶液中では5分子のアルコールとのアダクトが形成され、金属の種類によって平衡定数には大きな差が表れることを明らかにした。アダクトの形成によってクラスター上からの脱水素反応が促進されるなどアルコールアダクトはプロトン化によって生じるカチオン性錯体と類似の性質を示すが、その他にもアルコールの配位によって不安定な中間体が安定化されうることも明らかにした。三核ルテニウムペンタヒドリド錯体へのアルコール分子の配位について検討し、アルコールの酸強度が平衡定数に大きく影響を及ぼすことを明らかにした。三核ルテニウムペンタヒドリドクラスターは5分子のアルコールとアダクトを形成するが、pKaが12.4のトリフルオロエタノールを用いた場合には平衡定数Kは110M^<-1>であったが、pKaが9.95のフェノールを用いた場合にはKの値は2100M^<-1>と、酸性度が高まることでアダクトが形成されやすくなることが明らかになった。一方で二核ルテニウムテトラヒドリド錯体とアルコール分子との相互作用は弱く、相互作用に関する情報を得ることは出来なかったが、二核錯体上に塩基部位としてp-ベンゾキノンを導入することで二核錯体への水素結合の影響を影響を定量的に評価することに成功した。二核ルテニウムテトラヒドリド錯体はベンゾキノンと定量的に反応し、ベンゾキノンが2つのルテニウム間でsyn-η^2:η^2-配位した架橋ベンゾキノン錯体を生成する。このキノン配位子へのアルコールの水素結合の強度ならびに金属中心へ及ぼす電子的な影響についてUV-visスペクトル、IR、NMR、サイクリックボルタモグラムによって定量的に評価した。アルコールとしてフェノールを用いた場合にはアダクトの単結晶を得ることができ、単結晶X線構造解析から水素結合の存在を確認することができた。さらに、水素結合によって錯体の反応性が大きく向上することも明らかにした。二核の架橋ベンゾキノン錯体とアセチレンとの反応では、アセチレンが金属-ヒドリド結合に挿入し架橋ビニル錯体を形成するが、ベンゼン中での反応に比べメタノール中では反応速度が3倍になることが明らかになった。これまでに三核ルテニウムペンタヒドリド錯体とアルコールとの相互作用について検討し、過剰のアルコール存在下では5分子のアルコールがヒドリド錯体と弱く結合したアダクトを形成することを明らかにしてきた。本年度は異種金属ヒドリドクラスターについて検討し、アルコールの配位の平衡定数を調べることで、クラスター骨格に導入した異種遷移金属の効果について明らかにすることとした。ヒドリドクラスターとしてイリジウムを含む等電子構造のテトラヒドリド錯体(Cp^*Ru)_2(Cp^*lr)(H)_4(1)を用いたところ、三核ルテニウム錯体と同様にアルコールアダクトの形成が確認された。NMRを用いた滴定実験から三核ルテニウムの系と同様に5分子のアルコールが平衡に関与しているが、平衡定数は3桁程度小さな値を示すことを明らかにした。この結果は、Ru_2Irのクラスターの塩基性度がRu_3クラスターに比べて低いことを示すものであり、またアルコールの配位数は反応場の立体的な大きさによって支配されることを示唆する、ものであった。また、アルコール存在下におけるヒドリドクラスターの反応と非プロトン性の溶媒中での反応とを比較したところ、末端アルキン類との反応について顕著な差が観察された。非プロトン性溶媒中ではビニリデン錯体などを含む様々な中間体の生成に留まるが、トリフルオロエタノール存在下では垂直配位型アルキン錯体の生成が確認された。これはアルコール分子の配位によって中間体からの脱水素反応が速やかに進行したことを示すものであり、アルコールとの相互作用によってヒドリドクラスターの反応性を大きく変えることができることを強く示唆するものであった。これまでに三核ポリヒドリド錯体とアルコールとの相互作用について検討し、過剰のアルコール存在下では5分子のアルコールがヒドリド錯体と弱く結合したアダクトを形成することを明らかにしてきた。ヒドリドクラスターとして骨格内にイリジウムを含む
KAKENHI-PROJECT-19550058
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19550058
アルコールとの「微弱な相互作用」を利用したポリヒドリドクラスターの反応性の制御
テトラヒドリド錯体(Cp*Ru)_2(Cp*Ir)(H)_4についても同様なアルコールアダクトの生成を確認したが、イリジウムを含む異種金属錯体のアルコールアダクトはルテニウム錯体の場合とは異なり、高い反応性を示すことをアルキン類との反応を通じて明らかにしてきた。本年度は酸素との反応について検討し、アルコール存在下での酸素錯体の生成を確認することができた。アルコールアダクトが生成した溶液中に酸素を導入したところ新たなヒドリド配位子の生成が^1HNMRスペクトルから確認することができた。まだ酸素が配位した錯体の単離には至っていないが、この錯体はトリフェニルホスフィンを酸化する能力を有することを明らかにした。ホスフィンの酸化反応は触媒的に進行し、アルコール存在下、空気雰囲気下で50倍モルのホスフィンを酸化する。アルコールが存在しない場合には瞬時にビス三重架橋オキソ錯体が生成し、失活することから、配位した酸素に対してプロトンが付加することで中間体を安定化し、ビスオキソ錯体の生成が阻止されたのではないかと考えている。この結果はアルコールとの相互作用を用いることで、熱力学的に安定な生成物を与える反応経路を変化させたことに相当するものであり、アルコールとの相互作用を利用することでポリヒドリドクラスターの反応性が制御できたことを示す結果である。同様な化学種の生成はカチオン性錯体[(Cp*Ru)_2(Cp*Ir)(H)_5]^+と酸素との反応からも得られることを明らかにした。これまでに三核ポリヒドリド錯体とアルコールとの相互作用について検討し、過剰のアルコール存在下では5分子のアルコールがヒドリド錯体と弱く結合したアダクトを形成することを明らかにしてきた。ヒドリドクラスターとして骨格内にイリジウムを含むテトラヒドリド錯体(Cp^*Ru)_2(Cp^*Ir)(H)_4(1)についても同様なアルコールアダクトの生成を確認したが、イリジウムを含む異種金属錯体のアルコールアダクトはルテニウム錯体の場合とは異なり、高い反応性を示すことをフェニルアセチレン、酸素との反応を通じて明らかにしてきた。これまでにアルコールアダクトの反応は中間体としてカチオン性ペンタヒドリド錯体[(Cp^*Ru)_2(Cp^*Ir)(H)_5]^+(2)の生成を経て進行することを明らかにしてきたが、本年度はカチオン性のペンタヒドリド錯体2を合成し、2と不飽和炭化水素類との反応について検討することでクラスター上のプロトンの影響について調べることとした。3-ヘキシンとの反応では垂直配位型アルキン錯体が得られたが、クラスター上で不飽和結合部分の転移が起こり、3-ヘキシン錯体と2-ヘキシン錯体の混合物が得られることを明らかにした。ここで得られた混合物を45°Cに加熱することで全て2-ヘキシン錯体へと異性化することも明らかにした。このような転移反応は中性のアルキン錯体では見られないものである。また、シクロペンタジエンとの反応では、ほぼ定量的に垂直配位型シクロペンチン錯体が生成した。等電子構造の三核ルテニウムペンタヒドリド錯体とシクロペンタジエンとの反応ではC-C結合の切断によってnido型のルテナシクロペンタジエン錯体が得られている。
KAKENHI-PROJECT-19550058
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19550058
Fc受容体のシグナル伝達機構の解析
1. EBウイルス感染により膜表面のCD23 (FcεRII)の発現が増強し、膜貫通部欠損型CD23mRNAの発現が減少すること、膜貫通部欠損型CD23が細胞内に分布していることが観察された。既に膜型CD23と結合する蛋白として膜貫通部欠損型CD23をクローニングしており、膜型CD23が膜貫通部欠損型CD23と細胞内で結合し、膜表面への発現を抑制されている可能性を示唆する。(淀井)2. IL-10はCD23 type b mRNAの抑制により単球表面CD23発現とsCD23産生を抑制することが明らかとなった。また、SLEやRA患者においてリンパ球や単球のD23発現異常が認められ、SLE患者のそれはB細胞異常活性化の指標となり、RA患者では炎症の指標となることが示唆された。(熊谷)3.通年性鼻アレルギー患者の鼻粘膜マスト細胞と偏桃のB細胞とを共培養し、ダニ抗原を加えるとIgE産生が誘導されるが、感染性鼻炎患者の鼻粘膜マスト細胞にはこれを支持する活性がないことが明らかとなった。一方、FcεRIβ鎖遺伝子欠失マウスを作成、現在解析中。(羅)4.マウス発現型γ2b鎖遺伝子導入マウス(C line)の脾臓細胞ではLPSとIL-4依存的にγ1鎖及びε鎖trans-mRNA特異的RT-PCR産物が検出された。C lineマウス脾臓細胞で産生されたtrans-mRNAの量は、Sμ領域を持つμ鎖遺伝子導入マウス脾臓細胞が産生するそれと違いがなかった。(清水)5. FcレセプターをT細胞以外の細胞系に導入したところ、FcγIIAはp34cdc2とサイクリンA遺伝子のプロモーターに影響を与えないことが明らかになった。(二階堂)6.培養ヒト単球より調整したRNAを鋳型として、cDNAライブラリーを作成、現在スクリーニング中。一方、γ鎖がFcεRIやFcαRの他に、組織因子とも会合していること見出した。(桝田)1. EBウイルス感染により膜表面のCD23 (FcεRII)の発現が増強し、膜貫通部欠損型CD23mRNAの発現が減少すること、膜貫通部欠損型CD23が細胞内に分布していることが観察された。既に膜型CD23と結合する蛋白として膜貫通部欠損型CD23をクローニングしており、膜型CD23が膜貫通部欠損型CD23と細胞内で結合し、膜表面への発現を抑制されている可能性を示唆する。(淀井)2. IL-10はCD23 type b mRNAの抑制により単球表面CD23発現とsCD23産生を抑制することが明らかとなった。また、SLEやRA患者においてリンパ球や単球のD23発現異常が認められ、SLE患者のそれはB細胞異常活性化の指標となり、RA患者では炎症の指標となることが示唆された。(熊谷)3.通年性鼻アレルギー患者の鼻粘膜マスト細胞と偏桃のB細胞とを共培養し、ダニ抗原を加えるとIgE産生が誘導されるが、感染性鼻炎患者の鼻粘膜マスト細胞にはこれを支持する活性がないことが明らかとなった。一方、FcεRIβ鎖遺伝子欠失マウスを作成、現在解析中。(羅)4.マウス発現型γ2b鎖遺伝子導入マウス(C line)の脾臓細胞ではLPSとIL-4依存的にγ1鎖及びε鎖trans-mRNA特異的RT-PCR産物が検出された。C lineマウス脾臓細胞で産生されたtrans-mRNAの量は、Sμ領域を持つμ鎖遺伝子導入マウス脾臓細胞が産生するそれと違いがなかった。(清水)5. FcレセプターをT細胞以外の細胞系に導入したところ、FcγIIAはp34cdc2とサイクリンA遺伝子のプロモーターに影響を与えないことが明らかになった。(二階堂)6.培養ヒト単球より調整したRNAを鋳型として、cDNAライブラリーを作成、現在スクリーニング中。一方、γ鎖がFcεRIやFcαRの他に、組織因子とも会合していること見出した。(桝田)1.膜貫通部を欠失する低親和性IgE受容体(FcεRII/CD23)を、COS細胞に発現させ共焦点レーザー顕微鏡でその局在を検討した。その結果核周囲に斑紋状に集積していることが判明した。また、正常人末梢血中での局在を検討するため、膜貫通部欠失型CD23に特異的なポリクローナル抗体を作成することに成功した。(淀井)2.低親和性IgE受容体(FcεRII/CD23)に対するRT-PCR法を用いた半定量法を確立した。サイトカインによる発現調節を検討し、IL-4によるB細胞でのmRNA誘導が、type aでは約10倍、type bでは数100倍に達することを示した。また、IL-10による単球FcεRII発現調節を検討し、膜型および可溶型ともに抑制されることを発見した。(熊谷)3.ヒト好塩基球性白血病細胞株(KU812)より、SykキナーゼcDNAを単離し、alternative splicingによる二つの型の存在を明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-06304027
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06304027
Fc受容体のシグナル伝達機構の解析
69bpを欠失する短いタイプはZAP70と相同であることから、FcεRIを介したシグナル伝達においての役割が注目され、レセプターの再構築の系に導入してその機能を解析中である。また、ヒトFcαRも、シグナル伝達分子としてFcεRIγ鎖を会合していることを明らかにした。(羅)4.trans-mRNAの産生がその産物への結合刺激により抑制されることを示した。trans-mRNAの産生過程は、クラススイッチの可逆的中間過程である可能性が高く、この段階での調節はアレルギー制御に新たな可能性を開くものである。さらに、可溶化FceRIα鎖が肥満細胞へのIgEの結合の阻害のみならず、IgE産生の抑制を通じてアレルギーの制御に効果をあげる可能性を示唆するものとして興味深い。(清水)5.p34cdc2及びサイクリンAのmutation及びdeletionの入ったプロモーターを作り、双方のプロモーターを解析し、正及び負の制御配列の存在を明らかにした。(二階堂)6.培養単球におけるFc γRIIとγ鎖および35-25PDとの会合は、FcγRIIIαとγ鎖との会合と同様に、NP-40によって解離された。細胞種による違いでは血小板、リンパ球、単球系細胞株(U937、THP-1)では検出できなかった。(桝田)1.Two-Hybrid Systemを用いてCD23を解析した。検出された未知のcDNAをプローブとして、ヒトの各臓器に対し解析した。その結果、すべての臓器において発現が検出され、ubiquitousな蛋白であると予想された。ヒト胎盤のライブラリーをスクリーニングしてその全塩基配列を決定した。その結果、127アミノ酸よりなる蛋白で、この配列中には膜貫通部、シグナル配列に相当する疎水性部分はみられず、既知の蛋白との相合性も見出されなかった。(淀井)2.様々な免疫疾患でCD23の異常発現やsCD23の上昇がみられるが、単球でのCD23発現に及ぼすIL-10の影響を検討した。単球上のCD23 type b mRNAはIL-4により誘導されたが、IL-10はこの誘導を抑制した。CD23 type aについては著名な抑制は認められなかった。(熊谷)3.培養ヒト単球から分離したFcγRII複合体には、23kDa(α)と17kDa(β)のhrterodimerが含まれていた。N末端アミノ酸配列分析を行ったところ、それぞれのN末端アミノ酸配列はWIVLTQSPA(α),EVQLYAPGGM(β)であった。FcγRI及びIIIaは、膜貫通部位でγ鎖と会合しているのに対し、FcγRIIの同部位の相同性が低いことから、35-25PDを介してγ鎖と会合している可能性が示唆された。(桝田)4.ヒトFcγIIIBやマウスIIBlがp34cdc2とサイクリンA遺伝子産物や細胞周期調節因子を解析したところ、FcγIIIB陽性T細胞でもp34cdc2とサイクリンA遺伝子のプロモーター活性がFcγIIIA陽性T細胞と同様に抑制された。またサイクリンA遺伝子産物がFcレセプター陽性T細胞では減少していた。Fcレセプターは種類によって違った細胞増殖制御を行うことが明らかにされた。(二階堂)5.ヒト膜型μ鎖遺伝子導入マウスの脾細胞をリコンビナント可溶化CD40 ligandとIL-4で刺激すると、細胞のblast化並びに増殖が観察されたが、その程度はLPSとIL-4の刺激に比べ低かった。
KAKENHI-PROJECT-06304027
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06304027
HIV感染者の産生するJCウイルスの遺伝子構造とPML異常発生との相関
AIDS患者には神経系の疾患が多発し深刻な問題となっている。PML(進行性多巣性白質脳症)は、潜伏していたJCウイルス(JCV)が神経系細胞内で増殖することによっておこる脱随疾患である。HIV感染者におけるPMLの発生頻度は極めて高く、またその病像も激しいものとなっている。この原因を明らかにする目的で、PMLで死亡した日本人および米国人AIDS患者脳組織からJCVのDNAを分子クロ-ニングし、その制御領域遺伝子を解析した。その結果、1,PMLから分離されたJCVの制御領域のnt.90(Mad1)より上流の領域が、JCVの神経細胞でのエンハンサ-活性の誘導に重要な働きをしていることがわかった。またnt.60からnt.90(Mad1)の領域にもエンハンサ-エレメントが存在することがわかった。2,末梢血単核細胞、CSF細胞に、JCVDNAが存在していることが明らかになり、血液リンパ系細胞においてJCVが持続または潜伏感染している可能性が示唆された。3,PMLからクロ-ニングされたJCV制御領域は、健康人尿からクロ-ニングされたJCVと比較してDNAの欠失と挿入が起こっており、特にnt.90(Mad1)より上流部域に大きな変異が見られた。AIDSーPML患者脳からは、この領域に異なる変異を持つた複数のクロ-ンがいずれの患者からも得られ、HIV感染にともなって、JCVの制御領域に高率に変異が起こっていることが明らかになった。以上の結果から、HIVの感染増殖によってJCVの制御領域に変異が起こり、神経病原性が変化したウイルスが生じて、PMLが多発するようになる可能性を示したものと考えられ、JCV感染モデル動物を開発して確かめる必要がある。AIDS患者には神経系の疾患が多発し深刻な問題となっている。PML(進行性多巣性白質脳症)は、潜伏していたJCウイルス(JCV)が神経系細胞内で増殖することによっておこる脱随疾患である。HIV感染者におけるPMLの発生頻度は極めて高く、またその病像も激しいものとなっている。この原因を明らかにする目的で、PMLで死亡した日本人および米国人AIDS患者脳組織からJCVのDNAを分子クロ-ニングし、その制御領域遺伝子を解析した。その結果、1,PMLから分離されたJCVの制御領域のnt.90(Mad1)より上流の領域が、JCVの神経細胞でのエンハンサ-活性の誘導に重要な働きをしていることがわかった。またnt.60からnt.90(Mad1)の領域にもエンハンサ-エレメントが存在することがわかった。2,末梢血単核細胞、CSF細胞に、JCVDNAが存在していることが明らかになり、血液リンパ系細胞においてJCVが持続または潜伏感染している可能性が示唆された。3,PMLからクロ-ニングされたJCV制御領域は、健康人尿からクロ-ニングされたJCVと比較してDNAの欠失と挿入が起こっており、特にnt.90(Mad1)より上流部域に大きな変異が見られた。AIDSーPML患者脳からは、この領域に異なる変異を持つた複数のクロ-ンがいずれの患者からも得られ、HIV感染にともなって、JCVの制御領域に高率に変異が起こっていることが明らかになった。以上の結果から、HIVの感染増殖によってJCVの制御領域に変異が起こり、神経病原性が変化したウイルスが生じて、PMLが多発するようになる可能性を示したものと考えられ、JCV感染モデル動物を開発して確かめる必要がある。AIDS患者には、脱髄疾患である進行性多巣性白質脳症(PML)が高率に発生してきている。PMLは、JCウィルスが脳内のオリゴデンドログリア細胞で増殖することによって起ることが、明らかになっている。JCウィルスは、成人の70%以上に感染しているにもかかわらず、きわめて限られた宿主域と増殖の特異性を持っている。JCウィルスの遺伝子の転写を調節する遺伝子領域は、JCウィルスが感染増殖できる宿主細胞の種類と増殖の強さに関わっていることを明らかにした。AIDS患者に高率にPMLが発生する要因を明らかにするために、PMLを発症し死亡したAIDS患者脳などから、JCウィルスを分子クロ-ニングして調節領域遺伝子の構造を調査した。日本人およびアメリカ人AIDS患者脳などからクロ-ニングしたJCウィルス調節領域遺伝子には、いずれも変異がおこっており、その変異は、遺伝子の転写を促進するエンハンサ-配列を新たにもたらすものであった。JCウィルスは、成人の70%以上に感染しており、持続または潜伏感染状態にある。体内にひそんでいるウィルスの再活性化と尿中へのウィルスの放出が多くの人で起っており、加令とともにその頻度がこることが明らかとなってきている。尿中に放出されたウィルスとPML患者脳からクロ-ニングしたウィルスの調節領域を比較したところ、PML患者脳からクロ-ニングしたJCウィルスの調節領域は、いずれも特定領域の欠失と挿入が起っており、新たなエンハンサ-配列を生じる変異が起こっていることが明らかとなった。また白血球中にJCウィルス遺伝子を検出できた。これらの結果から、HIV感染によって、JCウィルス調節領域遺伝子に、高頻度に変異が起こり、その結果病原性の変化したJCウィルスが出現してくることが予想された。
KAKENHI-PROJECT-02235215
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02235215
重原子結晶の電子分布と静電ポテンシャル
X線回折法で電子密度分布の精密測定・多極子解析法により、物性を電子密度分布から説明することを目的とした。そのため、KMnF_3結晶の186Kでの立方晶から正方晶への相転移に伴う電子密度の温度変化を実測するため、298K、240K、および相転移点直上の190Kで、精密回折強度測定を行った。電子密度の温度変化を測定し相転移機構を研究する試みは、研究代表者の知る限り、本研究が世界で最初である。測定された電子密度を多極子解析法で解析するとともに、電子密度のトポロジー解析を行ったところ、結合の詳細とともに、相転移機構までも明らかになった。KmnF_3結晶はペロブスカイト型構造を持つが、電子密度のトポロジーから、結晶内にはMn-FとK-F間に、結合の形成を示す(3,-1)bond critical pointが存在することが明らかになった。これはKNiF_3等の他のペロブスカイト結晶と同じである。KMnF_3結晶の弱い一次相転移は、MnF_6正八面体の結晶内での協同的回転によって起こることは知られているが、本研究により、298Kでは、(3,+3)cage critical pointであったK-Mn間の中点が、少なくとも相転移前の240K以下では、結合形成を示す(3,-1)型の点に変化することが明らかになった。これに伴うMn-F、K-F結合の変化から、以下の相転移に伴う事実および相転移機構が明らかになった。1.K-F結合の電子密度の傾きのひとつがほとんど0なり、電子密度分布のトポロジーは結合を示す(3,-1)から(3,+1)ring critical pointに変化しかけている。これはMnF_6の回転を阻害していたK-F結合が190Kで非常に弱くなり切れることを示す。2.温度低下とともに非調和熱振動が増加し、Fイオンは4個のポテンシャルの低い点に、統計的に分布する。3.同時にMn-K結合が形成され結晶の崩壊を防ぐ。相転移点よりも50-60°も上から前駆現象が始まっている。一方、Mn-F結合には目立った変化は見られない。これらを総合すると。温度低下に伴い、Fイオンの非調和熱振動が大きくなるが、Mn-K結合の形成により結晶の崩壊を防ぎつつ、相転移点でK-F結合が切れてMnF_6が回転し、F原子はかねてから形成されていた4個のポテンシャルのひとつに共同的に移動する。これらの成果は国際的にも注目され、15年度5月、8月にロシアおよびオーストラリアで開催された、ロシア全国結晶化学会、サガモア会議等で発表された。また、今夏のゴードン会議(米国)にも招待されている。現在、この研究を発展させるものとして、六方晶BaTiO_3のトポロジカル解析を、ロシアに帰国後も継続して行っている。Ivanov博士は、ペルブスカイト構造を持つ、遷移金属化合物結晶KMnF_3の電子密度を、298K,240Kおよび相転移温度直上の180Kで、X線回折法を使用して精密測定し、その回折強度データを多極子解析法で解析する研究を行った。本研究の具体的な目的は相転移に伴う電子密度のトポロジーの変化を、Bader教授の理論に基づき解析し(電子密度のラプラシアンの解析)、相転移機構を明確にすることであるが、本研究は電子密度の多温度精密測定と相転移を結びつけた、私の知る限りでは世界でも初めての試みであり、相転移の研究に新知見をもたらした。Ivanov博士は1昨年10月に来日以来上記の研究に従事した結果、(1)F-K間にも、Mn-F間と同様に、結合の存在を示す(3,-1)結合特異点(Bond critical point)が存在する。一方、(2)F-F間には結合は存在しない。しかし、(3)相転移温度に近づくに従いK-M結合が形成され、(3,-1)結合特異点が現れるとともに、F-K結合特異点は(3,+1)に変化しF-K結合は事実上消滅し、MnF_6八面体の回転が可能になることを明らかにした。(1)(2)の結果はすでに行ったKNiF_3結晶でも発見されているが、(3)の結果は、相転移に伴いKとMn陽イオン間に結合が形成され結晶構造を保つ一方、FとKの陰陽イオン間の結合が切れて、F_6八面体が回転の自由度を得るという、これまで想像もされなかった相転移の機構を示すものである。電子密度分布の微妙な変化から相転移機構を明示した、世界で初めての研究で高く評価される(Acta Cryst.に投稿中)。この成果を確実にするため、非調和熱振動との関係をさらに詳しく調べると同時に、六方晶BaTiO_3のX線解析を行っている。また、トポロジカル解析法のうち、運動エネルギー分布・ポテンシャルエネルギー分布の計算法はわれわれの推進するX線分子軌道解析法でも、将来必要になると判断されるので、その導入に向けた共同研究も行っております。同博士は上記の結果を昨年12月には日本結晶学会で報告した。また、本年5月のロシアでの国際学会でも発表する予定である。本年8月オーストラリアで開催される電子密度解析の専門化のみによる国際会議であるサガモア会議でも発表を許可されております。
KAKENHI-PROJECT-01F00243
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重原子結晶の電子分布と静電ポテンシャル
X線回折法で電子密度分布の精密測定・多極子解析法により、物性を電子密度分布から説明することを目的とした。そのため、KMnF_3結晶の186Kでの立方晶から正方晶への相転移に伴う電子密度の温度変化を実測するため、298K、240K、および相転移点直上の190Kで、精密回折強度測定を行った。電子密度の温度変化を測定し相転移機構を研究する試みは、研究代表者の知る限り、本研究が世界で最初である。測定された電子密度を多極子解析法で解析するとともに、電子密度のトポロジー解析を行ったところ、結合の詳細とともに、相転移機構までも明らかになった。KmnF_3結晶はペロブスカイト型構造を持つが、電子密度のトポロジーから、結晶内にはMn-FとK-F間に、結合の形成を示す(3,-1)bond critical pointが存在することが明らかになった。これはKNiF_3等の他のペロブスカイト結晶と同じである。KMnF_3結晶の弱い一次相転移は、MnF_6正八面体の結晶内での協同的回転によって起こることは知られているが、本研究により、298Kでは、(3,+3)cage critical pointであったK-Mn間の中点が、少なくとも相転移前の240K以下では、結合形成を示す(3,-1)型の点に変化することが明らかになった。これに伴うMn-F、K-F結合の変化から、以下の相転移に伴う事実および相転移機構が明らかになった。1.K-F結合の電子密度の傾きのひとつがほとんど0なり、電子密度分布のトポロジーは結合を示す(3,-1)から(3,+1)ring critical pointに変化しかけている。これはMnF_6の回転を阻害していたK-F結合が190Kで非常に弱くなり切れることを示す。2.温度低下とともに非調和熱振動が増加し、Fイオンは4個のポテンシャルの低い点に、統計的に分布する。3.同時にMn-K結合が形成され結晶の崩壊を防ぐ。相転移点よりも50-60°も上から前駆現象が始まっている。一方、Mn-F結合には目立った変化は見られない。これらを総合すると。温度低下に伴い、Fイオンの非調和熱振動が大きくなるが、Mn-K結合の形成により結晶の崩壊を防ぎつつ、相転移点でK-F結合が切れてMnF_6が回転し、F原子はかねてから形成されていた4個のポテンシャルのひとつに共同的に移動する。これらの成果は国際的にも注目され、15年度5月、8月にロシアおよびオーストラリアで開催された、ロシア全国結晶化学会、サガモア会議等で発表された。また、今夏のゴードン会議(米国)にも招待されている。現在、この研究を発展させるものとして、六方晶BaTiO_3のトポロジカル解析を、ロシアに帰国後も継続して行っている。
KAKENHI-PROJECT-01F00243
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熱ショック蛋白質HSP60の胃MALTリンパ腫発生への関与
1.HSP60に対するヒト免疫系の反応性、とくにMALTリンパ腫患者リンパ球の反応性MALTリンパ腫患者では、HSP60に対する自己抗体ができることを報告しているが,この機序を解明するために、MALTリンパ腫患者リンパ球をGM-CSFとIL-4存在下にHSP60で刺激し,リンパ球の反応性を調べた。抗原刺激により,MALTリンパ腫患者のリンパ球はIL-4を産生するが、健常者や胃炎患者のリンパ球はIFN-γを多く産生した。またB細胞の抗原刺激に際してco-stimulatory signalとして働くCD4T細胞のCD40リガンド(CD40L)の発現が、MALTリンパ腫患者では増強した。H.pylori菌全体を使った抗原刺激では,胃炎患者とMALTリンパ腫患者でCD40Lの発現に差は認められなかった。これらの結果より、MALTリンパ腫患者ではHSP60に対するTh-2の液性免疫反応が強く誘導され、B細胞の増殖が起こることが判明した。2.HSP-60の末梢血並びにリンパ組織単核細胞における発現HSP60は末梢血中ではTリンパ球の一部と単球の大部分に発現し、マイトゲンで刺激すると,T.B.NK細胞における発現率と発現量が著しく増強した。反応性リンパ組織では、芽中心及び濾胞間のマクロファージとリンパ芽球の胞体内に発現していた。3.感染動物実験による宿主因子の解析マウスの系統によって、H.pylori感染後に発症する胃炎の程度が異なることが知られている。あらかじめ感染させたマウスに大腸菌のリコンビナント易熱性毒素をアジュバントとして、rHSP60を鼻腔より免疫した。Th-1優位なC57BL/6でもTh-2優位なBALB/Cマウスでも、HSP60を用いた局所免疫により、感染早期から胃炎が高率に発症することを認めた。またT細胞を活性化しやすいアミノ酸配列を含んだ領域を部分発現させたHSP60を免疫すると,胃炎の発症が強く誘導された。1.胃MALTリンパ腫および胃炎と健常者の末梢血より単核球を分離し、IL-4とGM-CSFを加えた培養液中に各種抗原を加え一週間培養した。抗原にはrHSP60とH.pylori抗原を用い、培養後、FACScanによりCD40陽性細胞におけるCD40Lの発現を比較した。またELISAにより培養上清中のIFN-γとIL-4の濃度を測定した。その結果、rHSP60の抗原刺激で、CD40Lの発現とIL-4の産生はMALTリンパ腫患者のみ、IFN-γの産生は胃炎患者の4/4と健常者の2/4で認められた。このことから、H.pyloriのHSP60抗原刺激下のCD40L発現及びサイトカインに対する反応性の差が、胃MALTリンパ腫発生に関与していることが示唆された。2.H.pylori HSP60に対する単クローン抗体を作製し、その特異性を明らかにした。現在免疫組織学的検索に使用可能かどうか検定中である。3.HSP60は末梢血中ではTリンパ球の一部と単球の大部分に発現し、マイトゲンで刺激すると、T, B, NK細胞における発現率と発現量が著しく増強することを明らかにした。反応性リンパ組織では芽中心及び濾胞間のマクロファージとリンパ芽球の胞体内に発現していた。4.H.pyloriを感染させたマウスにHSP60を粘膜免疫すると、1ヶ月で胃炎が発症し、免疫をしないコントロールマウス群より、明らかに炎症が強く出現した。血中の抗体価を調べると、炎症の強いマウスでは、HSP60や菌体に対するIgG抗体価が上昇していた。また脾臓リンパ球をHSP60で刺激するとIFN-γのmRNA発現が認められた。1.HSP60に対するヒト免疫系の反応性、とくにMALTリンパ腫患者リンパ球の反応性MALTリンパ腫患者では、HSP60に対する自己抗体ができることを報告しているが,この機序を解明するために、MALTリンパ腫患者リンパ球をGM-CSFとIL-4存在下にHSP60で刺激し,リンパ球の反応性を調べた。抗原刺激により,MALTリンパ腫患者のリンパ球はIL-4を産生するが、健常者や胃炎患者のリンパ球はIFN-γを多く産生した。またB細胞の抗原刺激に際してco-stimulatory signalとして働くCD4T細胞のCD40リガンド(CD40L)の発現が、MALTリンパ腫患者では増強した。H.pylori菌全体を使った抗原刺激では,胃炎患者とMALTリンパ腫患者でCD40Lの発現に差は認められなかった。これらの結果より、MALTリンパ腫患者ではHSP60に対するTh-2の液性免疫反応が強く誘導され、B細胞の増殖が起こることが判明した。2.HSP-60の末梢血並びにリンパ組織単核細胞における発現HSP60は末梢血中ではTリンパ球の一部と単球の大部分に発現し、マイトゲンで刺激すると,T.B.NK細胞における発現率と発現量が著しく増強した。反応性リンパ組織では、芽中心及び濾胞間のマクロファージとリンパ芽球の胞体内に発現していた。3.感染動物実験による宿主因子の解析マウスの系統によって、H.pylori感染後に発症する胃炎の程度が異なることが知られている。あらかじめ感染させたマウスに大腸菌のリコンビナント易熱性毒素をアジュバントとして、rHSP60を鼻腔より免疫した。
KAKENHI-PROJECT-13877026
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13877026
熱ショック蛋白質HSP60の胃MALTリンパ腫発生への関与
Th-1優位なC57BL/6でもTh-2優位なBALB/Cマウスでも、HSP60を用いた局所免疫により、感染早期から胃炎が高率に発症することを認めた。またT細胞を活性化しやすいアミノ酸配列を含んだ領域を部分発現させたHSP60を免疫すると,胃炎の発症が強く誘導された。
KAKENHI-PROJECT-13877026
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非平衡第一原理計算を基盤とした電流密度計算による燃料電池メゾスケールモデリング
固体酸化物形燃料電池の酸化物/燃料/電極の三相界面設計を理論的に行うべく、三相界面を含むメソスケール動的モンテカルロプログラムを開発し、電流密度計算を大規模長時間スケールで実行可能となるシミュレーション体制の基盤を構築した。合わせて、第一原理計算による反応解析を同モデル界面で実行し、メソスケール動的モンテカルロプログラムの実行に必要な速度論的データの取得に成功した。固体酸化物形燃料電池の酸化物/燃料/電極の三相界面設計を理論的に行うべく、三相界面を含むメソスケール動的モンテカルロプログラムを開発し、電流密度計算を大規模長時間スケールで実行可能となるシミュレーション体制の基盤を構築した。合わせて、第一原理計算による反応解析を同モデル界面で実行し、メソスケール動的モンテカルロプログラムの実行に必要な速度論的データの取得に成功した。本研究課題の目的は、固体酸化物形燃料電池の代表的燃料極であるNi/YSZを計算対象とし、その電極での燃料酸化反応経路解析を電極の存在をあらわに取り込んだ第一原理非平衡グリーン関数計算で実行し、そこから得られる電気化学反応素過程の速度論的情報を動的モンテカルロ計算に取り込むことで、3次元電極構造を反映した形で、交換電流密度のメソスケールシミュレーションを達成することである。研究実施計画にもとづき、H22年度はNi/YSZ燃料極での燃料酸化反応の素過程解析を行い、Ni表面上での酸素空孔移動障壁とNi/YSZ界面近傍での酸素空孔移動障壁との違いを検討した。なお、第一原理非平衡グリーン関数計算による反応・イオン移動解析の実行は多大な計算コストを要するため、通常の第一原理計算による経路探索を行っておくことが効率のよい研究の進め方であり、H22度はこの"通常の第一原理計算"による反応経路探索を行った。一方、H22年度の計画には含めていなかった動的モンテカルロ計算プログラムの整備も同年度に開始し、三相界面近傍でのイオン移動(拡散)シミュレーションを実行できるように整備した(これにより、空気極の反応探索を次年度以降の開始へと変更した)。本研究で得られた反応過程解析における知見はもとより、構築しつつあるメソスケール動的モンテカルロシミュレーションプログラムの有効性は、燃料電池研究はもちろん、さらに多方面における適用が想定でき、ここでの成果は大変大きいものと言える。本研究課題の目的は、固体酸化物形燃料電池の燃料極であるNi/Yszを研究対象とし、その電極での燃料酸化反応の反応経路解析を電極の存在をあらわに取り込んだ第一原理非平衡グリーン関数計算で実行し、そこから得られる電気化学反応素過程の速度論的情報を動的モンテカルロ計算に取り込むことで、3次元電極実構造を反映した形で、交換電流密度のメソスケールシミュレーションを達成することである。研究実施計画にもとづき、昨年度はNi/YSZ燃料極での燃料酸化反応の素過程解析を行い、水素スピルオーバーメカニズムによる燃料酸化過程の全体像がまぼ見通せる段階にまで到達した。ただし、第一原理非平衡グリーン関数計算による反応解析の実行は多大な計算コストを要するため、通常の第一原理計算による経路探索を行っておくことが効率のよい研究の進め方であり、昨年度はこの"通常の第一原理計算"による反応経路探索を行った(ここで得られた反応経路をもとに第一原理非平衡グリーン関数計算による解析は本年度にて行う)。一方、動的モンテカルロ計算をメソスケールで実行するためのプログラム整備にも着手し、任意のユニット構造データ(複数可)を三次元的に積み上げ、その構造体に対して発生可能な反応・イオン移動イベントをリストアップし、動的モンテカルロ計算が実行できる体制をほぼ構築した。その動的モンテカルロプログラムを用いて三相界面近傍でのイオン移動(拡散)シミュレーションを実行し、界面近傍でイオンの特徴的な動きが発生することを見出した。本研究で得られた反応過程解析における知見はもとより、構築しつつあるメソスケール動的モンテカルロシミュレーションプログラムの有効性は、燃料電池研究はもちろん、さらに多方面における適用が想定でき、ここでの成果は大変大きいものと言える。本研究課題の目的は、固体酸化物形燃料電池のNi/YSZを研究対象とし、燃料酸化反応の反応経路解析を電極の存在を取り込んだ第一原理計算で実行し、そこから得られる電気化学反応素過程の速度論的情報を動的モンテカルロ計算に取り込むことで、3次元電極実構造を反映した形で、交換電流密度のメソスケールシミュレーションを達成することである。研究実施計画にもとづき最終年度である昨年度は動的モンテカルロ計算をメソスケールで実行するための並列化動的モンテカルロプログラム作成に注力し、主にそのコード開発を行ってきた。その成果として、任意のユニット構造体を三次元的に積み上げ、その巨大構造体に対して発生可能な反応・イオン移動イベントをリストアップし動的モンテカルロ計算が実行できるものとして開発することに成功し、さらにはこの計算プログラムが並列化されて実行されるため、通常の動的モンテカルロ計算では到達しえない時間・空間スケールのダイナミクスを行えるという特徴を有するものとなった。ただし、この並列化への取り組みは当初想定していたものより大変困難を極め、特に動的モンテカルロアルゴリズムと並列化アルゴリズムに内在する相反するコンセプトが存在することから、並列化を導入する上でアルゴリズムの変更を検討する必要性が生じた。このため、プログラム開発に今年度の時間のほとんどを割いてしまったため電流密度算出に関してはテストプログラム程度の結果のみが得られたという状況であるが、当初の目的である並列化大規模動的モンテカルロ計算プログラムの開発と実行にまで到達したという点において十分な成果が得られたと言える。このメソスケール動的モンテカルロシミュレーションプログラムの有効性は、燃料電池研究はもちろんさらに多方面における適用が想定できここでの成果は大変大きいものと言える。研究計画書に記載の昨年度予定である反応経路解析、メソスケール動的モンテカルロプログラム整備、ともにほぼ計画通りに進行している。
KAKENHI-PROJECT-22760534
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22760534
非平衡第一原理計算を基盤とした電流密度計算による燃料電池メゾスケールモデリング
ただ、空気極解析は、燃料極解析に時間を費やした分多少遅れてはいるが、本年度にて十分対応可能は状態である。24年度が最終年度であるため、記入しない。反応経路解析に関しては、経路の全体像がほぼ得られたので、それらを非平衡グリーン関数法でより現実的状況設定で計算できる段階にある。メソスケール動的モンテカルロプログラム整備に関しては、並列化の整備を残すのみである。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22760534
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22760534
インド版マイクロファイナンスSHGの発展における信用組合の役割に関する研究
経済成長に沸くインドにおいて、農村における貧困問題は依然として深刻である。そこで、農村の貧困問題を解く1つの手がかりとして、近年注目を集めているインド型マイクロファイナンス「SHG(Self Help Groups)」の働きに着目する。ただし、このSHGは農村における普及度が地域により大きな偏りをみせていることから、普及のための方策を考える必要がある。そこで注目したのが、インド農村で大きな普及度をもつ信用組合で、この信用組合に設置されているWomen's Development CellがSHGの普及において重要な役割をになっていることが明らかになった。本研究の中間年度にあたる今年度の課題は、SHG(Self Help Groups)の結成・育成におけるWDC(Women Development Cell)の効果を検討することであった。そのために、平成25年8月に現地調査を行い、関係者への聞き取りや資料の収集を行った。また、先行研究の整理も行った。その結果、NGOによって結成・育成された場合のSHGと、WDCが中心になって信用組合が結成・育成したSHGには、様々な違いがあることが分かった。最終年度には、初年度(昨年度)と本年度の成果を併せ、本研究の最終的な取りまとめを行う予定である。経済成長に沸くインドにおいて、農村における貧困問題は依然として深刻である。このような状況下、インド農村の貧困問題を解く1つの手がかりとして、近年注目を集めているインド型マイクロファイナンスSHG(Self Help Groups)の働きに着目する。ただし、このSHGは農村における普及度が地域により大きな偏りをみせていることから、普及のための方策を考える必要がある。そこで注目するのが、インド農村で大きな普及度をもつ信用組合で、この信用組合を利用したSHG普及のための新たな方策を明らかにすることが、本研究の課題である。より具体的に言えば、SHGの結成・育成に大きな成果を収めてきたマハラシュトラ州の信用組合を事例とし、その信用組合が設置して効果的であったと考えられるSHG専門の部署であるWDC(Women Development Cell)の効果を明らかにすることが課題となる。この課題に取り組むに当たり、今年度の目標は、事例信用組合内部におけるWDCの効果を明らかにすることで、そのために現地調査を行った。この調査は、WDCのスタッフ及び事例信用組合の関係者、全国農業農村開発銀行関係者、SHGのメンバー等を対象とし、聞き取り調査によって進められた。その結果、WDCの組織構造、信用組合内での位置づけや役割などの実態を捉えることができた。また、WDCが設置されることによって、SHGプログラムへの取組に大きな差が生じていることも明らかになった。経済成長に沸くインドにおいて、農村における貧困問題は依然として深刻である。そこで、農村の貧困問題を解く1つの手がかりとして、近年注目を集めているインド型マイクロファイナンス「SHG(Self Help Groups)」の働きに着目する。ただし、このSHGは農村における普及度が地域により大きな偏りをみせていることから、普及のための方策を考える必要がある。そこで注目するのが、インド農村で大きな普及度をもつ信用組合で、この信用組合を利用したSHG普及のための新たな方策を提示していくことが、本研究の課題である。この課題に取り組むため、平成24年度には、現地調査の結果を中心に、信用組合内部におけるWomen Development Cellのインパクトに関する分析を行った。平成25年度にも現地調査を行うことで、Women Development CellがSelf Help Groupsに与えるインパクトに関する分析を行った。そして、平成26年度の目的は、以上の2ヵ年における現地調査や文献調査等の結果を踏まえ、成果を総合的に整理することであった。そのために、これまで行った現地調査や文献調査等のデータを整理した上で、データ不足を補うため、平成26年910月に現地での補足調査を実施した。その結果、信用組合独自でSHGを結成・育成する際、Women Development Cellがいくつかの重要な役割を果たしていることが分かった。経済成長に沸くインドであるが、農村における貧困問題は依然として深刻である。そこで、農村の貧困問題を解く1つの手がかりとして、近年注目を集めているインド型マイクロファイナンス「SHG(Self Help Groups」の働きに着目する。ただし、このSHGは農村における普及度が地域による大きな偏りをみせていることから、普及のための方策を考える必要がある。そこで注目するのが、インド農村で大きな普及度をもつ信用組合で、この信用組合を利用したSHG普及のための新たな方策を提示していくことが、本研究の課題である。この課題に取り組むため、平成24年度には、現地調査の結果を中心に、信用組合内部におけるWomen Development Cellのインパクトに関する分析を行った。平成25年度にも現地調査を行うことで、Women Development CellがSHGに与えるインパクトに関する分析を行った。そして、平成26年度も現地調査を行い、これまでの現地調査や文献調査等の結果もあわせ、成果を総合的に整理した。その結果、信用組合独自でSHGを結成する際、Women Development Cellがいくつかの重要な役割を果たしていることが分かった。最終年度となる平成27年度には、以上の成果を研究会等で報告し、最終的な成果発表のアウトラインを固めた。経済成長に沸くインドにおいて、農村における貧困問題は依然として深刻である。そこで、農村の貧困問題を解く1つの手がかりとして、近年注目を集めているインド型マイクロファイナンス「SHG(Self Help Groups)」の働きに着目する。ただし、このSHGは農村における普及度が地域により大きな偏りをみせていることから、普及のための方策を考える必要がある。
KAKENHI-PROJECT-24780223
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24780223
インド版マイクロファイナンスSHGの発展における信用組合の役割に関する研究
そこで注目したのが、インド農村で大きな普及度をもつ信用組合で、この信用組合に設置されているWomen's Development CellがSHGの普及において重要な役割をになっていることが明らかになった。平成26年度は、本研究の取りまとめを行った上で、学会や研究会で成果を報告し、その結果を踏まえて修正し、最終的な論文・レポートを作成する予定であった。しかし、当初予定していた学会・研究会での報告が若干不足しているため、本研究の達成度はやや遅れていると判断した。農業経済学次年度は、学会・研究会での報告を積極的に行い、そこで受けたコメントを参考にして、最終的に論文・レポートとして完成させる予定である。本研究は、インドでの現地調査を重視して行うものであり、特に調査対象とする信用組合やSHGメンバー等に対して、徹底した聞き取り調査を行うことに重点を置いている。これまでに、調査対象者からの聞き取り調査が進んでおり、そこで収集したデータを分析する段階に進んでいるものの、若干のデータ不足から補足調査が必要な段階にあるため、本研究の達成度はやや遅れていると判断した。本研究は、インドでの現地調査をより重視して行うものである。特に、事例対象とする信用組合やSHGのメンバー、比較対象とする信用組合やSHGのメンバーなどに対して、徹底的に聞き取り調査を行うことが最も重要だと考えている。そこで、初年度の目標として掲げていたのは、事例信用組合内部におけるWDCの効果を把握するためのデータを現地調査により収集することであった。それを行うため、インド西部マハラシュトラ州での現地調査を行い、当初予定していたすべての調査対象に対しての聞き取り調査を完了させ、十分なデータを収集することができた。したがって、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。当初は、国内外での学会や研究会で数回の報告を行う予定であったが、取りまとめが遅れたことにより、それができなかった。そのため、旅費等の支出額が予定額を下回っている。本研究では、SHG普及のために事例信用組合に設置されたWDC(Women Development Cell)の効果を明らかにするため、1事例信用組合内部でのWDCの効果を把握するための現地調査、2SHGの結成・育成におけるWDCの効果を把握するための現地調査、以上を行うことを当初から予定していた。1と2はおおむね順調に進んでいるが、ややデータが不足している部分もあるので、それについては最終年度である次年度に補足調査を行い、補いたい。そして、1と2の結果を取りまとめ、DCCB(県協同組合銀行)による直接連結モデルを機能させるためのWDCの役割等について考察を行いたい。
KAKENHI-PROJECT-24780223
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ヒト食道癌に高発現する新たなチロシンキナーゼの検索
【目的】癌細胞の増殖・分化にチロシンキナーゼ(PTK)を介したシグナル伝達機構が重要とされる。食道癌ではどのような種類のPTKが発現しているのか、その全体像を把握する報告はない。今年度、我々は食道癌に発現するPTKをスクリーニングし、その意義を検討した。【方法】食道癌培養細胞に発現するPTKを変性プライマーを用いたRT-PCR法によりクローニングした。さらに、同定された各種PTKのmRNA発現を食道癌手術及び正常食道粘膜においてノザン法により検索した。【結果と考察】食道培養細胞から10種類の受容体型PTK:EGFR、FGFR4、Cak、HEK2、HEK8、Eck、Erk、IGF1R、Axl、Skyと1種類の非受容体型PTK:Tyk2が同定された。これらのPTKは全て、ノザン解析にて培養細胞、正常食道粘膜及び食道癌手術材料での発現が確認された。同一症例の癌部と非癌部を比較すると、ほとんどの例で同等が癌部での発現が増加していた(1.11.75倍)。これらの結果より、同定されたPTKは扁平上皮の増殖に関与すると考えられた。また高発現するPTKの種類や発現量は症例により差があり、それぞれの腫瘍の生物学的態度との関連を検討中である。【目的】癌細胞の増殖・分化にチロシンキナーゼ(PTK)を介したシグナル伝達機構が重要とされる。食道癌ではどのような種類のPTKが発現しているのか、その全体像を把握する報告はない。今年度、我々は食道癌に発現するPTKをスクリーニングし、その意義を検討した。【方法】食道癌培養細胞に発現するPTKを変性プライマーを用いたRT-PCR法によりクローニングした。さらに、同定された各種PTKのmRNA発現を食道癌手術及び正常食道粘膜においてノザン法により検索した。【結果と考察】食道培養細胞から10種類の受容体型PTK:EGFR、FGFR4、Cak、HEK2、HEK8、Eck、Erk、IGF1R、Axl、Skyと1種類の非受容体型PTK:Tyk2が同定された。これらのPTKは全て、ノザン解析にて培養細胞、正常食道粘膜及び食道癌手術材料での発現が確認された。同一症例の癌部と非癌部を比較すると、ほとんどの例で同等が癌部での発現が増加していた(1.11.75倍)。これらの結果より、同定されたPTKは扁平上皮の増殖に関与すると考えられた。また高発現するPTKの種類や発現量は症例により差があり、それぞれの腫瘍の生物学的態度との関連を検討中である。
KAKENHI-PROJECT-07770123
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07770123
密度汎関数法による表面反応の制御と新機能物質の設計に関する研究
水の可視光による分解を達成する上で、バンドギャップが(H+の還元準位とOH-の酸化準位をまたいていることは当然として)、より狭いギャップの無機材料(半導体)を開発することが最も重要であり、ペロブスカイトは、この目的において有望な物質群である。多くの酸化物半導体の電子構造は、その構成元素の多様性にもかかわらず、原子価帯は、酸素の2p軌道、伝導帯は、金属のd軌道と、比較的単純な電子構造をもっている。一方、今までに、実験サイドからの経験的蓄積として、ある種の重元素を骨格に含む物質では、バンドギャップが、狭くなるということが知られている。本研究では、このような興味ある電子構造をもつ化合物群を中心に、系統的にバンド構造を計算することにより、バンドギャップを狭くする元素として、Bi、Pb、Agなどが有効であり、これらの元素の軌道が酸素の2p軌道と混成し、原子価帯のトップ位置に、現れるためであることを示した。これらの知見は、今後の材料開発をする上での指針となりうる。今年度の課題研究では、水素酸素型燃料電池の反応機構と金属イオン置換ゼオライトへのCO分子の吸着構造について調べた。燃料電池は、クリーンなエネルギー源として注目されており、その内部で進行する反応機構については、以下のような素反応に分けて考えることができる。(1)水素は白金電極表面で解離し、(2)原子状で白金層を通過する。(3)酸素分子は他方の白金電極表面で解離する。(4)酸素原子と水素原子とからOHラジカルが生成する。(5)OHラジカルはさらに水素原子と反応して水を生成する。これらの反応へのアプローチとしては、固体触媒表面での反応解析の方法が用いられるが、水素原子の白金層通過や、系の電荷の効果などが、新しい因子として加わる。計算の結果、水素原子がPt層を通過する過程が最も活性化エネルギーが高いことがわかった。2番目は水の生成過程であるが、実際には多数の水分子が存在するので、このエネルギーは低下すると思われる。金属イオン置換ゼオライトは、一時期、環境触媒として盛んに研究され、現在は一段落した感があるが、反応サイトなどの反応機構上、重要な問題は未決着のまま残されている。COをプローブ分子として種々の金属イオン置換ZSM-5に吸着させ、吸着熱と振動スペクトルを測定することにより、金属イオンの吸着サイトとして、2配位と3配位サイトが存在することを報告されている。また、アルカリ金属(Li、Na、K)置換ゼオライトはCuとは違った性質がある事がわかっている。本研究では吸着安定構造を求め、吸着エネルギー、赤外振動数、吸着分子上の電荷などから、金属による相互作用の違いを系統的に調べた。水の可視光による分解を達成する上で、バンドギャップが(H+の還元準位とOH-の酸化準位をまたいていることは当然として)、より狭いギャップの無機材料(半導体)を開発することが最も重要であり、ペロブスカイトは、この目的において有望な物質群である。多くの酸化物半導体の電子構造は、その構成元素の多様性にもかかわらず、原子価帯は、酸素の2p軌道、伝導帯は、金属のd軌道と、比較的単純な電子構造をもっている。一方、今までに、実験サイドからの経験的蓄積として、ある種の重元素を骨格に含む物質では、バンドギャップが、狭くなるということが知られている。本研究では、このような興味ある電子構造をもつ化合物群を中心に、系統的にバンド構造を計算することにより、バンドギャップを狭くする元素として、Bi、Pb、Agなどが有効であり、これらの元素の軌道が酸素の2p軌道と混成し、原子価帯のトップ位置に、現れるためであることを示した。これらの知見は、今後の材料開発をする上での指針となりうる。
KAKENHI-PROJECT-12042280
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ドナー骨髄細胞の増殖能と軟骨分化能および関連non-coding RNAの同定
検体数30個体のドナーから分離した骨髄細胞を用い実験を行った。増殖期のbFGF添加の反応性については従来の報告と同様の定性的な結果が得られ、各ドナーにおける定量指標も独自に得られた。実験の妥当性とその後の解析に十分なサンプルサイズが得られた。各ドナーのRNAプロファイリングをmicroarrayシステム(EXIQON社miRCURY LNA miRNA array)で網羅的に解析し、軟骨分化度のマーカー候補となりうるmicroRNAを検証した結果、miR708-5pが軟骨分化に抑制的に関与することが示唆された。しかしサンプル間でのバラつきも大きく、他の因子の関与も示唆された。検体数30個体のドナーから分離した骨髄細胞を用い実験を行った。増殖期のbFGF添加の反応性については従来の報告と同様の定性的な結果が得られ、各ドナーにおける定量指標も独自に得られた。実験の妥当性とその後の解析に十分なサンプルサイズが得られた。各ドナーのRNAプロファイリングをmicroarrayシステム(EXIQON社miRCURY LNA miRNA array)で網羅的に解析し、軟骨分化度のマーカー候補となりうるmicroRNAを検証した結果、miR708-5pが軟骨分化に抑制的に関与することが示唆された。しかしサンプル間でのバラつきも大きく、他の因子の関与も示唆された。本研究では、ドナー間で差があると考えられる骨髄細胞の増殖能と軟骨分化能について、その軟骨分化過程でのnon-coding RNAによる様々な遺伝子発現調節の関与を検討し、さらにそれら細胞の性質の指標となるマーカーの探索を目的としている。昨年度の研究実施によって、臨床試験に先立つ前臨床試験から分与された骨髄(一部購入骨髄を含む)が、既に目標とするN=20のサンプルサイズとなった。得られた細胞の増殖能と軟骨分化能についての実験は継続中であるが、目的とする検体もほぼ9割がた得られ、それらの生化学試験・免疫染色についても順次解析中である。増殖期のbFGF添加による効果、および継代を重ねることによる骨髄細胞の変化については、ほぼ従来の報告通りの結果であることを確認したが、ドナー間のばらつきの程度について本研究で十分なサンプルサイズが得られたことにより確認できた。また増殖期のbFGFに対する反応性を含めた軟骨分化能との相関についてドナー数例を抽出し、軟骨分化誘導前の骨髄細胞のRNAプロファイリングをncRNAを中心に最先端microarrayシステムで網羅的に解析した。それらから軟骨分化過程における遺伝子発現調節に関与する可能性が考えられる既知のncRNAを抽出した。更に関連する研究として、本実験で得られた基礎データを素に、scaffold free軟骨様細胞シートを作製し平成25年度日本軟骨代謝学会(Itokazu M, Mera H et al.日本軟骨代謝学会発表;京都2014年,3月)などで報告した。「臨床試験」および購入骨髄からの検体を合わせN=30(目標N=20以上)のドナー骨髄が得られた。計画ではP1、P4、P7の検討を行う予定だったが、現行の培養方法で必要な日数や費用など臨床利用の観点から、P1の解析のみに修正した。我々が今回骨髄細胞用に選定したロットのウシ血清(FBS)を用い、110%FBS, 25%FBS, 35%FBS+10ng/ml bFGFの条件で培養させた場合、P1における倍加指数はそれぞれ10.22±0.08(PD/d), 20.16±0.08(PD/d), 30.35±0.14(PD/d)で、さらに軟骨分化誘導後のペレットの湿重量は10.82±0.67(mg), 20.82±0.72(mg), 33.42±1.06(mg)であった。生化学試験や免疫染色を含めbFGFの反応性については従来の報告と同様の定性的な結果が得られ、各ドナーにおける定量指標も独自に得られた。実験の妥当性とその後の解析に十分なサンプルサイズが得られたと判断した。これを踏まえ、軟骨分化誘導前のRNAプロファイリングをmicroarrayシステム(EXIQON社miRCURY LNA miRNA array)で網羅的に解析し、増殖期のbFGFの反応性を含めた各ドナーの軟骨分化度のマーカー候補となりうるmicroRNAをいくつか抽出した。定量PCRによる検証の結果、条件1の軟骨分化後の湿重量1mgを境にした群間比較でmiR708-5pの発現が1mg以上群で有意に低く、本遺伝子が軟骨分化誘導に抑制的に関与することが示唆された。しかし1mg以下群内でのバラつきは大きく、これらは他遺伝子の関与を示唆した。今後、bFGF処置細胞のmiR708-5pの発現量とともに他遺伝子についても更なる検討を要する。次世代シーケンサーを用いたRNA-Seqによる解析および臨床成績との比較は現在進行中である。26年度が最終年度であるため、記入しない。整形外科26年度が最終年度であるため、記入しない。骨髄ドナーに関して、目標としていたサンプルサイズを満たした。増殖および軟骨分化誘導実験は一部継続中であるが、目的としていた検体もほぼ9割がた得られており、それらの生化学試験・免疫染色についても順次解析中である。また軟骨分化誘導前の細胞のRNAプロファイリングをncRNAを中心に最先端microarrayシステムを用いて網羅的に解析し、増殖期のbFGFの反応性を含めた軟骨分化能との相関について、遺伝子発現調節に関与する可能性が考えられる既知のncRNAを抽出し、ほぼ予定通りの進捗と考えられる。
KAKENHI-PROJECT-25893277
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25893277
ドナー骨髄細胞の増殖能と軟骨分化能および関連non-coding RNAの同定
抽出したncRNAについて定量PCRによる検証を行う。また継続して細胞増殖・軟骨分化誘導実験をおこない、得られた検体の生化学試験・免疫染色を行う。さらに、RNAプロファイリングに用いなかった検体に関してもRNA抽出から続くRTおよび定量PCRによる検証を行い、ドナー数を重ねることでより信頼性の高いncRNAの絞り込みが可能になると考えている。
KAKENHI-PROJECT-25893277
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自衛権の起源
本年度は、これまでの研究に引き続いて、戦間期における集団的自衛権の萌芽とその位置づけを明らかにした。具体的には、集団的自衛権(の萌芽)と集団安全保障体制との関係を論じる上で何が問題となったのか、そしてそれはどのように克服されてきたのか、に着目しながら、戦間期から国連憲章第51条の起草過程における「集団的自衛権」の形成過程を明らかにした。本研究は国際法学会2002年秋期大会において報告された。第一に、戦間期における「集団的自衛権の先駆」には、国際連盟の集団安全保障体制の枠内で、いわば保全的措置としてそれを補完するものと、その枠外で、戦争に訴える自由の回復と位置づけられるものとがあった。さらに、国連憲章起草過程においても、この2つの位置づけの間での対立が見られたのであり、この対立は、集団的自衛権が国連の集団安全保障体制内の保全的措置と位置づけられることによって解決された。第二に、集団的自衛権が、上記の意味で集団安全保障体制を補完するものでありながら、同時に、戦争を誘発しかつ拡大させる危険性、延いては集団安全保障体制を瓦解させる危険性を有するという点で、それと矛盾・対立する契機を内在するものであることも、明確に意識されていた。これは侵略の定義およびその認定の困難さを背景とするものであった。こうした正反対のモメントに関して、集団的自衛権の発動要件を個別的自衛権に比して厳格にし、また行動開始後においても連盟理事会あるいは安保理の判断に服するとすることによって止揚される、という枠組が一貫して見出される。ロカルノ条約において「違反」ではなく「明白な違反」を、国連憲章起草過程において「侵略」ではなく「武力攻撃」を発動要件としたのは、そうした、侵略等の発生に関する個別国家の認定を可能な限り客観化しようとする試みに他ならない。本年度は、これまでの研究に引き続いて、戦間期における集団的自衛権の萌芽とその位置づけを明らかにした。具体的には、集団的自衛権(の萌芽)と集団安全保障体制との関係を論じる上で何が問題となったのか、そしてそれはどのように克服されてきたのか、に着目しながら、戦間期から国連憲章第51条の起草過程における「集団的自衛権」の形成過程を明らかにした。本研究は国際法学会2002年秋期大会において報告された。第一に、戦間期における「集団的自衛権の先駆」には、国際連盟の集団安全保障体制の枠内で、いわば保全的措置としてそれを補完するものと、その枠外で、戦争に訴える自由の回復と位置づけられるものとがあった。さらに、国連憲章起草過程においても、この2つの位置づけの間での対立が見られたのであり、この対立は、集団的自衛権が国連の集団安全保障体制内の保全的措置と位置づけられることによって解決された。第二に、集団的自衛権が、上記の意味で集団安全保障体制を補完するものでありながら、同時に、戦争を誘発しかつ拡大させる危険性、延いては集団安全保障体制を瓦解させる危険性を有するという点で、それと矛盾・対立する契機を内在するものであることも、明確に意識されていた。これは侵略の定義およびその認定の困難さを背景とするものであった。こうした正反対のモメントに関して、集団的自衛権の発動要件を個別的自衛権に比して厳格にし、また行動開始後においても連盟理事会あるいは安保理の判断に服するとすることによって止揚される、という枠組が一貫して見出される。ロカルノ条約において「違反」ではなく「明白な違反」を、国連憲章起草過程において「侵略」ではなく「武力攻撃」を発動要件としたのは、そうした、侵略等の発生に関する個別国家の認定を可能な限り客観化しようとする試みに他ならない。
KAKENHI-PROJECT-14720022
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14720022
大気圧プラズマを利用したラジカル反応加工に関する研究-反応素過程の理論的解明-
本研究の目的は、我々の提唱する大気圧プラズマを用いたプラズマCVMをあらゆる材料に適用するために、量子力学的計算手法を用いて加工の反応素過程の解明を行い、最適な反応系を設計するところにある。これまでに、ラジカル照射型のプラズマCVM加工装置により、反応生成物の蒸気圧から見ればどちらでも加工可能と考えられるFラジカル及びC1ラジカルを用いてシリコンの加工実験を行ったところ、Fラジカルでは加工が進行するがC1ラジカルでは加工現象が見られないことが分かっている。この事を説明するため、昨年度は第一原理分子動力学シミュレーションによりSi(100)2×1面にF及びC1原子を被覆率0.25で吸着させた時の結合次数の計算を行った結果、実験結果と定性的に一致する計算結果が得られている。本年度は、ハロゲンの被覆率を1.0として再度同様の計算を行った。その結果、やはり実験結果に一致する計算結果を得ることができたが、昨年度同様、シリコンの結合が切れるには至らなかった。そこで、被覆率1.0の状態から更にハロゲン原子を表面に近づける計算を行ったところ、表面再構成結合が切れるという新しい計算結果を得ることができた。今後は更に計算を進め、シリコン原子が表面から除去される反応素過程をシミュレーションで明らかにしていくと同時に、現在プラズマCVMにより加工が困難な材料に対する解を得るため、実験及び計算の両面からアプローチしていく予定である。本研究の目的は、我々の提唱する大気圧プラズマを用いたプラズマCVMをあらゆる材料に適用するために、量子力学的計算手法を用いて加工の反応素過程の解明を行い、最適な反応系を設計するところにある。これまでに、ラジカル照射型のプラズマCVM加工装置により、反応生成物の蒸気圧から見ればどちらでも加工可能と考えられるFラジカル及びC1ラジカルを用いてシリコンの加工実験を行ったところ、Fラジカルでは加工が進行するがC1ラジカルでは加工現象が見られないことが分かっている。この事を説明するため、昨年度は第一原理分子動力学シミュレーションによりSi(100)2×1面にF及びC1原子を被覆率0.25で吸着させた時の結合次数の計算を行った結果、実験結果と定性的に一致する計算結果が得られている。本年度は、ハロゲンの被覆率を1.0として再度同様の計算を行った。その結果、やはり実験結果に一致する計算結果を得ることができたが、昨年度同様、シリコンの結合が切れるには至らなかった。そこで、被覆率1.0の状態から更にハロゲン原子を表面に近づける計算を行ったところ、表面再構成結合が切れるという新しい計算結果を得ることができた。今後は更に計算を進め、シリコン原子が表面から除去される反応素過程をシミュレーションで明らかにしていくと同時に、現在プラズマCVMにより加工が困難な材料に対する解を得るため、実験及び計算の両面からアプローチしていく予定である。
KAKENHI-PROJECT-07750145
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07750145
やわらかなタンパク質Bachのリガンド分子による制御機構の解明
Bach2は大部分が天然変性領域からなるタンパク質である。我々は331-520という領域で比較的良好に精製サンプルを調製することに成功した。この領域でのヘムの結合は、331-839という長い領域での結合実験の結果と非常によく似た結合パターンを示した。動的光散乱ではBach2(331-520)はヘムが結合することにより不安定化が予想され、またX線小角散乱実験を行い、ヘムの結合が構造のコンパクト化に寄与していることが明らかとなった。このことは質量分析を用いた解析からも支持されており、Bach2がヘムにより構造変化を起こす一端を明らかにした。Bach2タンパク質は従来より精製タンパク質として調製することが著しく困難であった。本研究課題においてはこれまでに、安定して調製可能なコンストラクトを検討し、331ー520という領域で比較的良好に精製サンプルが調製できることを見出し、実験に用いている。この領域はプロテアーゼ限定分解の実験では何らかのドメイン様構造を有する部分ではないかと予想された。また、ヘム結合に重要であると考えられるCPモチーフを3か所含んでおり、実際、333ー839という長い領域での結合実験の結果と非常によく似た結合パターンを示した。これはこの領域がヘムの結合において非常に重要であることを示していると考えられ、Bach2タンパク質の解析を進めるうえで有意義な領域であると思われる。この領域に注目して物理化学的解析を進める一方、配列のバイオインフォマティクス的解析を進めた。その結果、Bach2が通常の2次構造の組み合わせからなる立体構造を保持しないことが予想される一方、完全なランダムコイルから予想される性質にも合致しないことが理解された。SAXS測定によるヘムの有無でのクラツキープロットの相違は興味深いものであり、このタンパク質がわずかではあるが、ヘムの有無によって2次構造の誘起などとは異なる構造変化を示すことがわかった。特にヘムのある場合にややコンパクトな構造をとる可能性を示した。現在のコンストラクトは広い意味で「天然変性タンパク質」と考えられるが、これまでの結果を考えると、ヘムによる変化は天然変性タンパク質の間での状態変化だと考えることができる。このような変化は構造変化の連続性と多数のヘム結合を考える場合、タンパク機能のコントロールにおいて非常に興味深い。Bach2は大部分が天然変性領域からなるタンパク質である。我々は331-520という領域で比較的良好に精製サンプルを調製することに成功した。この領域でのヘムの結合は、331-839という長い領域での結合実験の結果と非常によく似た結合パターンを示した。動的光散乱ではBach2(331-520)はヘムが結合することにより不安定化が予想され、またX線小角散乱実験を行い、ヘムの結合が構造のコンパクト化に寄与していることが明らかとなった。このことは質量分析を用いた解析からも支持されており、Bach2がヘムにより構造変化を起こす一端を明らかにした。本研究課題においてはまず、高純度の精製サンプルを調製することが重要である。Bach2全長タンパク質は大腸菌による発現系でのサンプル調製が困難であったため、安定して調製可能なコンストラクトを検討したところ、331ー520という領域で比較的良好に精製サンプルが調製できることがわかった。この領域はプロテアーゼ限定分解解析でバンドとして検出された部分とほぼ一致する部分であり、かつヘム結合に重要であると考えられるCPモチーフを3か所含む領域である。実際、ヘムの結合を調べたところ、331-839という長い領域での結合実験の結果と非常によく似た結合パターンを示した。これはこの領域がヘムの結合において非常に重要であることを示していると考えられ、Bach2タンパク質の解析を進めるうえで有意義な領域であると思われる。この領域に注目して物理化学的解析を進めた。分析超遠心を用いた解析では、Bach2(331-520)は溶液中でヘムの有無にかかわらず単量体で存在することが示された。システインをターゲットとした化学修飾解析では、化学修飾後のタンパク質について質量分析計を用いて修飾の有無を解析したが、いずれのシステインにも修飾が確認できることからジスルフィド結合の形成は否定的である。動的光散乱ではヘムの有無の比較において粒子径に大きな変化は見られないものの、温度プロファイルの解析から、Bach2(331-520)はヘムが結合することにより変性温度の低下が観測された。この結果よりヘムの結合による不安定化が予想され、Bach2の機能を考えるうえで非常に興味深い知見が得られた。またSAXS(X線小角散乱)実験を行い、ヘムの結合と構造の変化について検討を進めている。Bach2タンパク質は従来より精製タンパク質として調製することが著しく困難であった。本研究課題においてはこれまでに安定して調製可能なコンストラクトを検討し、331ー520という領域で比較的良好に精製サンプルが調製できることを見出し、実験に用いている。この領域はプロテアーゼ限定分解の実験では何らかのドメイン様構造を有する部分ではないかと予想された。また、ヘム結合に重要であると考えられるCPモチーフを3か所含んでおり、実際、331-839という長い領域での結合実験の結果と非常によく似た結合パターンを示した。これはこの領域がヘムの結合において非常に重要であることを示していると考えられ、Bach2タンパク質の解析を進めるうえで有意義な領域であると思われる。この領域に注目して物理化学的解析を進める一方配列のインフォマティクス的解析を進めた。
KAKENHI-PROJECT-24570175
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24570175
やわらかなタンパク質Bachのリガンド分子による制御機構の解明
その結果、Bach2が通常の2次構造の組み合わせからなる立体構造を保持しないことが予想される一方、完全なランダムコイルから予想される性質にも合致しないことが理解された。SAXS測定によるヘムの有無でのクラツキープロットの相違は興味深いものであり、このタンパク質がわずかではあるが、ヘムの有無によって2次構造の誘起などとは異なる構造変化を示すことがわかった。現在のコンストラクトは広い意味で「天然変性タンパク質」と考えられるが、ヘムによる変化は天然変性タンパク質の間での状態変化だと考えることができる。このような変化は構造変化の連続性と多数のヘム結合を考える場合、タンパク機能のコントロールにおいて非常に興味深いと考えられる。生物物理化学本タンパク質は、330-520の発現領域で、大腸菌発現系を用いた試料の調製が進められることがわかっている。これまでの実験ではこの領域に注目して進めている。前年度までにおいてタンパク質の調製に成功し基礎的な物理化学的解析(分析超遠心、動的光散乱、CDスペクトル、ヘム結合解析、SAXS解析など)について進めることができたが、これらの結果について現在とりまとめを行いつつある。特にCDスペクトルによる結果ではヘムの有無で変化が見られないものの、SAXS測定では構造変化が確認されており、これらの結果の解釈について検討し、論文として取りまとめを進めた。一部の結果は現在論文として投稿できる段階まで進んでいる。これまでのところ、タンパク質の発現領域を330-520とすることで、大腸菌発現系を用いて安定して試料の調製が進められることがわかった。精製プロセスをさまざまに検討し現在では高純度のサンプルが得られる精製条件を決めている。タンパク質の収量がやや低くこの点ではもう少し改善の余地があるものの、通常の物理化学的分析が可能な量のタンパク質の調製は可能としている。当該年度においてタンパク質の調製に成功し基礎的な物理化学的解析(分析超遠心、動的光散乱、CDスペクトル、ヘム結合解析、SAXS解析など)について進めることができた。これまでの研究でBach2タンパク質の性質について多くのことが理解されてきた。その結果、このタンパク質は天然変性タンパク質としての性質を示しており、溶液状態での分析が有効であることがわかった。よって分光解析、質量分析ならびにX線小角散乱などを中心に、溶液状態での測定で構造情報の取得ならびにBach2の本質的性質の解明を進め、論文等などを通した結果の取りまとめと公表を行う。Bach2タンパク質は非常に不安定であり、現在用いている試料(331-520)であっても長期間の保存や測定は難しい。よって調製後すぐに測定可能である溶液状態での分光解析をメインに解析を進める予定である。また構造解析手段として結晶化を進める一方、X線小角散乱などもさらに推し進め、溶液状態での測定で構造情報の取得ならびにBach2の本質的性質の解明を目指す。年度内における研究の使用としては、研究を推進するにあたっての実験室の整備はほぼ整っているので主に消耗品を予定している。その他、成果を公にするための学会発表(旅費)や論文としての成果報告の際の費用
KAKENHI-PROJECT-24570175
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24570175
ケロイド発生病態にHDAC阻害剤が及ぼす影響の検討
HDAC阻害剤がケロイド細胞において細胞外マトリックスや転写因子の遺伝子発現にどのような影響を及ぼすか検討を行った。以前の検討でケロイド組織中のHDAC2が高発現していることを見出したため、HDAC阻害剤として、SAHAに加えMocetinostat、Apicidinを選択した。その結果、いずれのHDAC阻害剤もCOL1A2抑制し得たが、Apicidinが抑制効果に優れていた。また、ApicidinはHIF-1αを抑制することを見出した。以上よりApicidinは局所の低酸素を改善し、線維化を抑制する可能性が示唆された。今後検討数を増やし、さらなるメカニズムの解明が望まれる。肥厚性瘢痕・ケロイドでは病変部に細胞外マトリックスの過剰沈着が認められる。本研究ではエピジェネティクスの代表分子であるhistonedeacetylase (HDAC)に着目した。以前、HDAC阻害剤としてTrichostatin A(TSA)を選択し、in vitroでケロイド細胞と正常皮膚線維芽細胞における影響を検討した。その結果TSAの投与によりCOL1A2やVersicanの低下がみられた。また、マイクロアレイを行い、様々な解析を行ったところ、CREBBP/p300やHIF1α, IGF-1などが変動することが示唆された。今回、ケロイド細胞と正常線維芽細胞を4サンプルずつin vitroで培養し、TSAを投与後にRNAを回収、その後RT-PCRで解析することとした。まずCREBBP/p300の発現をRT-PCRで確認したが、ケロイド細胞、正常線維芽細胞いずれもTSA投与前後で差はみられなかった。一方、HIF1-αはTSAの投与前後で遺伝子発現の低下をみとめ、IGF-1は総じてTSA投与前後で遺伝子発現が増加することを見出した。だが、上記のなかでケロイド細胞に特異的な遺伝子変動はみられなかった。次に、HDAC阻害剤として、Suberoylanilide hydroxamic acid (SAHA)に注目し、COL1A2やVersicanの変動を検討した。だがSAHA投与前後では発現の程度に有意な変動はみられなかった。一方で、HDAC各種の遺伝子発現について正常線維芽細胞とケロイド細胞の遺伝子発現を詳細に検討した所、HDAC2がケロイドで特異的に発現が増強していることを見出した。今後はHDAC2をより選択的に阻害するHDAC阻害剤を検討し、COL1A2やVersicanなどの細胞外マトリックスやHIF1α、IGF-1などの転写因子に及ぼす影響を検討する。HDAC阻害剤の選択ならびに遺伝子発現の解析に時間を要したため。肥厚性瘢痕・ケロイドでは病変部に細胞外マトリックスの過剰沈着が認められる。本研究ではエピジェネティクスの代表分子であるhistonedeacetylase (HDAC)に着目した。以前にHDAC各種の遺伝子発現について正常線維芽細胞とケロイド細胞の遺伝子発現を詳細に検討したところ、HDAC2がケロイドで特異的に発現が増強していることを見出した。そこで今回は、HDAC2をより選択的に阻害するHDAC阻害剤を選択することとし、細胞外マトリックスや転写因子などに与える影響を検討した。評価の方法として、in vitroで正常線維芽細胞とケロイド細胞を培養し、HDAC2阻害剤を加え、mRNAの発現の差を検討した。その結果、HDAC2選択的阻害薬の1つであるMocetinostatは、COL1A2やVersicanなどの細胞外マトリックスの発現を抑制し、加えてTGF-βの発現を抑制しうることを見出した。また、MMP-1やMMP3などの発現が上昇していることを見出した。だが、IGF-1やHIF1αなどの転写因子に関しては有意な変動はえられなかった。これらのことからMocetinostatは様々な転写因子やマトリックスプロテアーゼを変化させることで、ケロイド細胞でのコラーゲン産生を抑制させることが示唆された。今後、症例数を増やすとともに、蛋白レベルで発現が抑制されうるかどうかを検討してゆく。また、他のHDAC2阻害剤についても今後検討を加え、比較検討を行う予定である。HDAC阻害剤がケロイド細胞において細胞外マトリックスや転写因子の遺伝子発現にどのような影響を及ぼすか検討を行った。以前の検討でケロイド組織中のHDAC2が高発現していることを見出したため、HDAC阻害剤として、SAHAに加えMocetinostat、Apicidinを選択した。その結果、いずれのHDAC阻害剤もCOL1A2抑制し得たが、Apicidinが抑制効果に優れていた。また、ApicidinはHIF-1αを抑制することを見出した。以上よりApicidinは局所の低酸素を改善し、線維化を抑制する可能性が示唆された。今後検討数を増やし、さらなるメカニズムの解明が望まれる。1.H28年度は、HDAC2選択的なHDAC阻害剤を選択しながら、以前TSAで変動が大きかった遺伝子のmRNA発現を詳細に検討する。またWestern blot法などで蛋白レベルでの変動を確認する。また、候補遺伝子の特異抗体を購入し、免疫染色を行いin vivoでの発現の有無を検討する。2.HIF1-αやIGF-1などTSA投与により大きく変動した転写因子の遺伝子の機能を解析する。候補遺伝子のsiRNA作成による発現抑制、もしくは遺伝子発現増強を行い、細胞外マトリックスや線維化に関与する因子の発現の変化を評価する。3.Ex vivoケロイドモデルマウスを用い、HDAC阻害剤の濃度を振り、連日3-4日間局所に投与する。
KAKENHI-PROJECT-15K19693
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ケロイド発生病態にHDAC阻害剤が及ぼす影響の検討
その後マウスの皮下に埋め込んだケロイド組織を経時的に採取し、膠原線維や細胞外マトリックスの発現を免疫染色で検討し、mRNAの発現もRT-PCR法で評価する。皮膚科学ケロイド特異的に発現している候補分子の再現性の確認、特異的な遺伝子の発現を検討するため、プライマー、プローブのデザイン、siRNAの作成や導入、マウスの維持費などが必要となる。H28年度もRT-PCRを複数回行い、ケロイド特異的に発現している候補分子の再現性を確認する(50万円)。ケロイド特異的な遺伝子の発現を検討するため、プライマー、プローブのデザインが必要である(35万円)。次に、siRNAの作成や導入などに費用を要する(85万円)。また、Ex vivoモデルマウスの維持費として50万程度が必要である。
KAKENHI-PROJECT-15K19693
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アプリケーショントランスペアレントな大域データインテンシブ計算機構
実験科学の新しい手法として注目されるデータインテンシブコンピュテーションをターゲットとして、複数の研究機関が超高速大域ネットワークにより結合された環境で、CPU付加の少ないセキュアな通信を実現し、低レベルプロトコルとストライピング技法の組み合わせによる自動マルチストリームの実現による超高速データ転送を実現するために、(1)通常、難しいといわれる遠距離通信において、地球3/4周にあたる30,000kmの実際のネットワークで、10Gbpsネットワークを90%という高効率で利用し、動的にデータを分散共有するシステムのプロトタイプを作成した。この結果、TCPストリーム通信およびストレージデータのiSCSI通信で、それぞれ、世界最高バンド幅距離積記録を達成した。(2)高速ネットワーク実験のためのField Programmable Gate Arrayを利用したプログラマブルなMiddle Hardware-Box(MH-Box)を提案・実装した。このMH-Boxは10Gbps Ethernet portを2口持ち、`10Gbpsワイヤーレートを達成するパケット生成、トラフィック解析、遅延発生機能をプログラムし、ブリッジ型で動作をさせた。MH-Boxは予備実験およびデータ解析に非常に有効に活用された。(3)セキュアかつネットワーク効率を落とさない通信のために、10Gbpsワイヤレートに対応可能なSBTアルゴリズムを提案し、Field Programmable Gate Arrayに実装し、TCPのコンテクストスイッチに対応できるハードウェアIDSシステムを実現した、(4)IPv4/IPv6デュアルスタックの試験環境を構築し、自律的バンド幅制御方式のプロトタイプを動作させた。(5)超高速計算アクセラレータ用にメモリ階層を意識したコンパイラを提案・実装した。実験科学の新しい手法として注目されるデータインテンシブコンピュテーションをターゲットとして、複数の研究機関が超高速大域ネットワークにより結合された環境で、CPU付加の少ないセキュアな通信を実現し、低レベルプロトコルとストライピング技法の組み合わせによる自動マルチストリームの実現による超高速データ転送を実現するために、(1)通常、難しいといわれる遠距離通信において、地球3/4周にあたる30,000kmの実際のネットワークで、10Gbpsネットワークを90%という高効率で利用し、動的にデータを分散共有するシステムのプロトタイプを作成した。この結果、TCPストリーム通信およびストレージデータのiSCSI通信で、それぞれ、世界最高バンド幅距離積記録を達成した。(2)高速ネットワーク実験のためのField Programmable Gate Arrayを利用したプログラマブルなMiddle Hardware-Box(MH-Box)を提案・実装した。このMH-Boxは10Gbps Ethernet portを2口持ち、`10Gbpsワイヤーレートを達成するパケット生成、トラフィック解析、遅延発生機能をプログラムし、ブリッジ型で動作をさせた。MH-Boxは予備実験およびデータ解析に非常に有効に活用された。(3)セキュアかつネットワーク効率を落とさない通信のために、10Gbpsワイヤレートに対応可能なSBTアルゴリズムを提案し、Field Programmable Gate Arrayに実装し、TCPのコンテクストスイッチに対応できるハードウェアIDSシステムを実現した、(4)IPv4/IPv6デュアルスタックの試験環境を構築し、自律的バンド幅制御方式のプロトタイプを動作させた。(5)超高速計算アクセラレータ用にメモリ階層を意識したコンパイラを提案・実装した。超高速ネットワーク網の実現により、実験科学の分野では、ローカルな計算ファシリティと、ネットワークの先にある実験観測機器あるいは共同研究機関内計算ファシリティとのシームレスな利用が期待されているが、現実には、遠距離通信におけるレイテンシの問題、および広バンド幅ゆえのバッファリング問題が遠隔地間の協調計算において大きな障害となっている。また現在の高速ネットワークの特性として、小さいデータサイズでの通信を行うと、ネットワークの性能が引き出せないことが知られており、なんらかの形で通信データをまとめ、大きなサイズでの通信を行うことが重要な課題となっている。本年度の研究では、実験科学の新しい手法として注目されるデータインテンシブコンピュテーションをターゲットとして、複数の研究機関が超高速大域ネットワークにより結合された環境で、CPU負荷が高く巨大メモリを必要とし大量データ入力のあるソフトウェアが繰り返し実行されるという前提のもと、プログラマブルなインテリジェントネットワークインターフェースボードを利用し、CPU負荷の少ないセキュアな通信を実現し、低レベルプロトコルとストライビング技法の組み合わせによる自動マルチストリームの実現による超高速データ転送を実現した。これらはSuperComputing (SC 2003)を始めとした国際会議で広く成果を発表し、国際的にも高い評価を受けた。また、研究協力者の伊藤と、これらの研究の背景となる理論について検討し、その成果も採択率が低い国際会議で採択された。このように、システム実装の面から理論まで大きな成果をあげることができた。地球規模の10Gbの超高速ネットワーク網の実現により、大量データの高次処理を必要とする実験科学の分野では、LANでの計算環境と、ネットワークの先にある実験観測機器あるいは共同研究機関内の計算環境とのシームレスな利用が期待されている。しかし、現実には、遠距離通信におけるレイテンシの問題、および広バンド幅ゆえのバッファリング問題、いわゆるLFN問題、が遠隔地間の協調計算において大きな障害となっている。また現在の高速ネットワークの特性として、小さいデータサイズでの通信を行うと、ネットワークの性能が引き出せないことが知られており、なんらかの形で通信データをまとめ、大きなサイズでの通信を行うことが重要な課題となっている。本年度の研究では、初年度の研究成果を発展させ、さらに大規模な実験を行った。
KAKENHI-PROJECT-15300014
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15300014
アプリケーショントランスペアレントな大域データインテンシブ計算機構
具体的には、実験科学の新しい手法として注目される大量データ駆動計算を目標として、複数の研究機関が超高速大域ネットワークにより結合された環境で、CPU負荷が高く巨大メモリを必要とし大量データ入力のあるソフトウェアが繰り返し実行されるという前提のもと、プログラマブルな知的ネットワークインターフェースボードを活用して、CPU負荷の少ない安全な通信を実現し、低レベルプロトコルとストライピング技法の組み合わせによる自動マルチストリームの実現による超高速データ転送を実現した。これらはSuperComputing(SC 2004)を始めとした国際会議で広く成果を発表し、国際的にも高い評価を受けた。また、研究協力者の伊藤と、これらの研究の背景となる理論について検討し、その成果を採択率が低い国際会議で発表した。また、インターネットのリンク情報の活用技術についても論文を発表し、昨年度に続いて、このようにシステムから理論までの成果をあげることができた。本年度の研究においては、実験科学のデータインテンシブコンピューティングに関するこれまでの研究で得た成果をさらにスケールアップさせる研究を実施した。具体的には、世界の数箇所の機関を結んだ超高速大域ネットワークにおいて、プログラマブルなインテリジェントネットワークインタフェースボードを利用することによってCPU負荷を軽減する等の通信実験を行い、高速データ転送を実現した。これらを広く国際会議で発表するとともに、実験データに関して次のような受賞と世界記録更新を成し遂げ、当初の目的を十二分に達成した。受賞:遠距離データ転送世界記録更新履歴:
KAKENHI-PROJECT-15300014
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生理活性脂質スフィンゴシン1リン酸の肝細胞増殖抑制作用の機序と肝再生における意義の解明
スフィンゴシン1リン酸(sphingosine 1-phosphate : S1P)が、ラット培養肝細胞の増殖を抑制することを明らかにした。この系において、まず受容体であるEDG5のアンタゴニストを用いたところ、その存在下では増殖抑制作用は消失した。従って、S1Pの当該作用にEDG5が関与することが明らかとなった。さらに、G蛋白質Rhoの活性化を抑制するボツリヌス菌体外毒素を作用させるとS1Pの増殖抑制作用は消失した。以上より、S1PがEDG5を介してRhoを活性化することにより、ラット培養肝細胞の増殖を抑制することが明らかとなった。次に、ラット70%肝切除モデルにおいて、切除後にS1Pを腹腔内投与したところ、切除より24時間目のDNA合成ピークが著しく減少した。同実験系において、腹腔内に投与したS1Pにより肝臓のRhoが活性化することが確認された。また、ラット70%肝切除モデルにおいて、経時的に肝細胞におけるEDG5 mRNAの発現を検討したところ、DNA合成が収束に向かう48-72時間目において発現の亢進が明らかとなった。以上より、S1Pはin vivoにおいても肝細胞の増殖を抑制することが明らかとなった。また、生理的な肝再生の収束機転に関与する可能性が示唆された。さらにS1Pの肝再生における意義を明らかにすべく、血中濃度の測定を行ったが、測定精度の問題で、変化を捉えることが難しく、新たな測定系の確立について模索中である。スフィンゴシン1リン酸(sphingosine 1-phosphate : S1P)が、ラット培養肝細胞の増殖を抑制することを明らかにした。この系において、まず受容体であるEDG5のアンタゴニストを用いたところ、その存在下では増殖抑制作用は消失した。従って、S1Pの当該作用にEDG5が関与することが明らかとなった。さらに、G蛋白質Rhoの活性化を抑制するボツリヌス菌体外毒素を作用させるとS1Pの増殖抑制作用は消失した。以上より、S1PがEDG5を介してRhoを活性化することにより、ラット培養肝細胞の増殖を抑制することが明らかとなった。次に、ラット70%肝切除モデルにおいて、切除後にS1Pを腹腔内投与したところ、切除より24時間目のDNA合成ピークが著しく減少した。同実験系において、腹腔内に投与したS1Pにより肝臓のRhoが活性化することが確認された。また、ラット70%肝切除モデルにおいて、経時的に肝細胞におけるEDG5 mRNAの発現を検討したところ、DNA合成が収束に向かう48-72時間目において発現の亢進が明らかとなった。以上より、S1Pはin vivoにおいても肝細胞の増殖を抑制することが明らかとなった。また、生理的な肝再生の収束機転に関与する可能性が示唆された。さらにS1Pの肝再生における意義を明らかにすべく、血中濃度の測定を行ったが、測定精度の問題で、変化を捉えることが難しく、新たな測定系の確立について模索中である。スフィンゴシン1リン酸(sphingosine 1-phosphate : S1P)が、ラット培養肝細胞の増殖を抑制することを明らかにした。この系において、まず受容体であるEDG5のアンタゴニストを用いたところ、その存在下では増殖抑制作用は消失した。従って、S1Pの当該作用にEDG5が関与することが明らかとなった。さらに、G蛋白質Rhoの活性化を抑制するボツリヌス菌体外毒素を作用させるとS1Pの増殖抑制作用は消失した。以上より、S1PがEDG5を介してRhoを活性化することにより、ラット培養肝細胞の増殖を抑制することが明らかとなった。次に、ラット70%肝切除モデルにおいて、切除後にS1Pを腹腔内投与したところ、切除より24時間目のDNA合成のピークが著しく減少した。同実験系において、腹腔内に投与したS1Pにより肝臓のRhoが活性化することが確認された。また、ラット70%肝切除モデルにおいて、経時的に肝細胞におけるEDG5 mRNAの発現を検討したところ、DNA合成が収束に向かう48-72時間目において発現の亢進が明らかとなった。以上より、S1Pはin vivoにおいても肝細胞の増殖を抑制することが明らかとなった。また、生理的な肝再生の収束機転に関与する可能性が示唆された。今後、さらにS1Pの肝再生における意義を明らかにすべく、血中濃度の測定、アンタゴニストのin vivoにおける作用の検討が目指す。スフィンゴシン1リン酸(sphingosine 1-phosphate : S1P)が、ラット培養肝細胞の増殖を抑制することを明らかにした。この系において、まず受容体であるEDG5のアンタゴニストを用いたところ、その存在下では増殖抑制作用は消失した。従って、S1Pの当該作用にEDG5が関与することが明らかとなった。さらに、G蛋白質Rhoの活性化を抑制するボツリヌス菌体外毒素を作用させるとS1Pの増殖抑制作用は消失した。以上より、S1PがEDG5を介してRhoを活性化することにより、ラット培養肝細胞の増殖を抑制することが明らかとなった。次に、ラット70%肝切除モデルにおいて、切除後にS1Pを腹腔内投与したところ、切除より24時間目のDNA合成のピークが著しく減少した。同実験系において、腹腔内に投与したS1Pにより肝臓のRhoが活性化することが確認された。
KAKENHI-PROJECT-14570451
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14570451
生理活性脂質スフィンゴシン1リン酸の肝細胞増殖抑制作用の機序と肝再生における意義の解明
また、ラット70%肝切除モデルにおいて、経時的に肝細胞におけるEDG5 mRNAの発現を検討したところ、DNA合成が収束に向かう48-72時間目において発現の亢進が明らかとなった。以上より、S1Pはin vivoにおいても肝細胞の増殖を抑制することが明らかとなった。また、生理的な肝再生の収束機転に関与する可能性が示唆された。さらにS1Pの肝再生における意義を明らかにすべく、血中濃度の測定を行ったが、測定精度の問題で、変化を捉えることが難しく、新たな測定系の確立について模索中である。
KAKENHI-PROJECT-14570451
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単分散酸化チタンコロイド懸濁液の開発と光の局在現象
輻射場と物質を相互に量子制御して強く結合させることにより、光の局在現象に関わる新しい量子現象を探索することを目指し、まず初めに単分散微粒子が容易に手に入れやすいポリスチレン懸濁液による実験を計画した。そこで色素を混入させた単分散ポリスチレンの懸濁液の蛍光寿命の測定を行なった。ポリスチレンの粒径は光の波長程度、色素はロ-ダミンである。その結果、ポリスチレン微粒子の粒子間隔及び粒径が共に放出光の波長程度の場合に、通常の指数関数的成分に加えごく速い寿命成分が観測され、この成分は指数関数的振る舞いはしていないことが分かった。この異常な成分は時間の平方根に依存し、色素間の双極子-双極子相互作用に由来する成分であることが示唆される。この現象は光の波長程度の粒径の誘電体微細構造の存在によって出現したものと考えられ、我々の目指す物質と輻射場の強く結合した状態を示している。すなわちこの速い成分は光の波長程度のポリスチレン微粒子の存在により通常では観測されない双極子-双極子相互作用がミ-共鳴散乱により増幅され観測されたと考えられる。この現象は分子間の共鳴エネルギー輸送によって解釈されるが、このことが光バンドモードの形成を意味することになる。このように我々は高屈折率の誘電体微細構造に囲まれた空間における色素発光に関わる新しい現象を見出だした。今後はより高屈折率である酸化チタン微粒子の微細構造中の色素発光の研究により、輻射場と物質との強く結合した系の研究を進めてゆきたい。輻射場と物質を相互に量子制御して強く結合させることにより、光の局在現象に関わる新しい量子現象を探索することを目指し、まず初めに単分散微粒子が容易に手に入れやすいポリスチレン懸濁液による実験を計画した。そこで色素を混入させた単分散ポリスチレンの懸濁液の蛍光寿命の測定を行なった。ポリスチレンの粒径は光の波長程度、色素はロ-ダミンである。その結果、ポリスチレン微粒子の粒子間隔及び粒径が共に放出光の波長程度の場合に、通常の指数関数的成分に加えごく速い寿命成分が観測され、この成分は指数関数的振る舞いはしていないことが分かった。この異常な成分は時間の平方根に依存し、色素間の双極子-双極子相互作用に由来する成分であることが示唆される。この現象は光の波長程度の粒径の誘電体微細構造の存在によって出現したものと考えられ、我々の目指す物質と輻射場の強く結合した状態を示している。すなわちこの速い成分は光の波長程度のポリスチレン微粒子の存在により通常では観測されない双極子-双極子相互作用がミ-共鳴散乱により増幅され観測されたと考えられる。この現象は分子間の共鳴エネルギー輸送によって解釈されるが、このことが光バンドモードの形成を意味することになる。このように我々は高屈折率の誘電体微細構造に囲まれた空間における色素発光に関わる新しい現象を見出だした。今後はより高屈折率である酸化チタン微粒子の微細構造中の色素発光の研究により、輻射場と物質との強く結合した系の研究を進めてゆきたい。
KAKENHI-PROJECT-06640522
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06640522