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多関節マイクロロボットの骨折治療への応用に関する研究
本研究は,多関節マイクロロボットを骨折治療に応用する目的で行った.従来,骨折の治療を行う際,治癒の経過を観測する手段として用いられてきた方法は主としてX線撮影であった. X線撮影は,わずかな侵襲で骨折部の状態を知ることができる.しかし,得られる情報は,定性的であいまいである.とくに,骨折部へ荷重を開始する時期の判断をX線画像から読み取る作業は,重要でありながら困難なものであった.医師の徒手による診断(触診)も一般に用いられている.しかし,これもあいまいである.こうした背景のもとに,骨折部の力学的な強度を正確に測定し,その判断の材料とする方法の開発が望まれている.本研究では,測定系に多関節ロボットを応用することにより,骨折部の強度を直接的に正確に知る方法の開発を試みた.この方法を臨床に応用するためには,測定精度の検定の問題と患者とロボットの接続の問題がある.そこでまず測定精度の検定のため,家兎を用いた動物実験を行った.固定台上で家兎の左下肢を創外固定し,他の3肢はギプス固定した.その状態で健丈な左下肢の強度測定を行った.まず創外固定の遠位端をはずし,ロボットのフィンガー部に固定した.次に,逐次制御でロボットのフィンガー部を回旋させた.そのときのモーメントと回旋角の関係から骨の強度(剛性)を求めた.回旋角の測定は別のロボットに変位トランスデミューサ(非接触形変位計)を支持させて行った.つぎに同じ左下肢中央付近に人工的な横骨折を作成し,同様の測定を行った.その後, 3日ごとに測定をくり返した.そして,得られた剛性の経時変化を求めた.それをX線観察により求めた影像と比較した.一回の測定は,同じ条件で3回くり返した.その結果,測定ごとのばらつきは極めて小さく,その再現性は良好だった.このことから, 1.多関節ロボットを骨折部の強度測定に応用できる. 2.測定による侵襲は小さく無視できることを確かめた.本研究は,多関節マイクロロボットを骨折治療に応用する目的で行った.従来,骨折の治療を行う際,治癒の経過を観測する手段として用いられてきた方法は主としてX線撮影であった. X線撮影は,わずかな侵襲で骨折部の状態を知ることができる.しかし,得られる情報は,定性的であいまいである.とくに,骨折部へ荷重を開始する時期の判断をX線画像から読み取る作業は,重要でありながら困難なものであった.医師の徒手による診断(触診)も一般に用いられている.しかし,これもあいまいである.こうした背景のもとに,骨折部の力学的な強度を正確に測定し,その判断の材料とする方法の開発が望まれている.本研究では,測定系に多関節ロボットを応用することにより,骨折部の強度を直接的に正確に知る方法の開発を試みた.この方法を臨床に応用するためには,測定精度の検定の問題と患者とロボットの接続の問題がある.そこでまず測定精度の検定のため,家兎を用いた動物実験を行った.固定台上で家兎の左下肢を創外固定し,他の3肢はギプス固定した.その状態で健丈な左下肢の強度測定を行った.まず創外固定の遠位端をはずし,ロボットのフィンガー部に固定した.次に,逐次制御でロボットのフィンガー部を回旋させた.そのときのモーメントと回旋角の関係から骨の強度(剛性)を求めた.回旋角の測定は別のロボットに変位トランスデミューサ(非接触形変位計)を支持させて行った.つぎに同じ左下肢中央付近に人工的な横骨折を作成し,同様の測定を行った.その後, 3日ごとに測定をくり返した.そして,得られた剛性の経時変化を求めた.それをX線観察により求めた影像と比較した.一回の測定は,同じ条件で3回くり返した.その結果,測定ごとのばらつきは極めて小さく,その再現性は良好だった.このことから, 1.多関節ロボットを骨折部の強度測定に応用できる. 2.測定による侵襲は小さく無視できることを確かめた.多関節マイクロロボットを用いた骨折治癒経過の触診法の具体的な手順を考案した。そして、微小ねじり測定と名ずけたこの方法による診断の精度を、in vitroでの骨の回旋試験の結果と比較して検討した。1.実験動物として家兎を選び、固定台の上に上半身伏臥位、下半身横臥位に固定した。この状態で実験の全期間にわたって飼育した。左の下腿部に人工的な骨折を作成し創外固定を施した。他の3肢はギブス固定を施した。2.レントゲン撮影を3日ごとに行った。そして、骨折部の形態的な変化、とくに仮骨の形成の様子を観察した。3.多関節マイクロロボットを用いた骨折部の剛性の測定をin vivoで行った。本予算で購入した産業用多関節マイクロロボットにて荷重計を支持し、それを介してウサギの下腿骨折部にねじり方向の変位を与えた。そのときの回旋角は、もうひとつのロボット(既設の低精度のもの)で支持した変位計により電気計測した。この方法による剛性の測定を微小ねじり測定と名ずけた。4.回旋角と回旋モーメントの関係から、骨折部のねじり剛性を算出した。それを、治癒の経過時間ごとに求めて整理した。
KAKENHI-PROJECT-61570727
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61570727
多関節マイクロロボットの骨折治療への応用に関する研究
5.微小ねじり測定の精度を検討するため、実験モデルによるin vitroでのねじり試験を行った。その結果、健丈な家兎の脛骨のねじり剛性を、ロボットによる微小ねじり測定により求めた場合、真の剛性の約2/3の値となることを確かめた。真の剛性との差は、荷重計と家兎の脛骨との間の固定ピンの撓みに由来するものである。よって、真の剛性との比例関係は保たれると考えられた。また、その実験結果をもとに、トーションバーの理論による解析を試みた。そして、骨の治癒経過にともなう形状の変化が、骨折部の剛性にどのような影響を及ぼすかを検討した。6.健丈な家兎の脛骨のin vitroでのねじり剛性と、ねじり破壊強度を比較し、両者の相関関係について検討を試みた。
KAKENHI-PROJECT-61570727
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61570727
糸状菌におけるフェニルアラニンアナログが引き起こすチューブリン関与の形態異常
出芽酵母Saccharomycescerevisiaeは、糸状菌とは異なり、通常の培養条件下では酵母状の丸い細胞形態を示すが、イソアミルアルコール(IAA)存在下で、細胞が伸張し出芽が形成された後も娘細胞の分離が遅れて伸長し続け、偽菌糸型の形態を示すことが知られている。今回、細胞の形態が偽菌糸に変化するときに起こっていると予想される細胞骨格分子(チューブリンおよびアクチン)への影響について調べた。まず、ウェスタン解析の結果、IAAによる偽菌糸形成時にα-およびβ-チューブリン量が相対的に低下し、アクチンは低下しないことが明らかになった。加えてFACS解析の結果、アクチン量は細胞容積の増大と共に比例するが、チューブリンのそれは相対的に減少していくことがわかった。しかし顕微鏡下では紡錘体の消失は観察されず、染色体分配は正常に進行しているものとしていないものの両方が観察された。さらにチューブリン消失の原因がmRNAへの転写阻害によるものかをRT-PCR法によって調べたが、mRNAの発現量にコントロールとの大きな差違は認められなかった。また免疫沈降法によりα-チューブリンを精製したが、ユビキチン化されたものは検出されなかった。従って、現在のところ、相対チューブリン量の低下の原因は不明である。しかしながら、フェニルアラニン誘導体以外にも糸状菌の形態異常とチューブリン量の低下に相関が見られる化合物が見いだされ、それはIAAであることがわかった。糸状菌の形態形成に重要な役割を果たしている細胞骨格の微小管に焦点を当てて、フェニルアラニンアナログL-2,5-dihydrophenylalanine(DHPA)による菌糸の形態異常誘導機構の解明を試みている。DHPAはAspergillus nidulansの野生株に菌糸先端の過剰な分岐を誘導し、その際、微小管やαおよびβチューブリンの消失を引き起こす。加えて、DHPAはA.nidulansのβチューブリン変異株benA33の温度感受性を回復させる。DHPAのような生理活性を示す物質を検索した結果、3つのフェニルアラニンの誘導体N-tosyl-L-phenylalaninechloromethylketone(TPCK), N-carbobenzoxy-L-phenylalanine chloromethyl ketone(ZPCK)およびarphamenine Aが得られた。このうち、TPCKとZPCKはDHPAと同じように細胞質微小管とチューブリン自身の消失を引き起こすことがわかった。従って、DHPAが示す活性は、ある種のフェニルアラニン誘導体に共通の性質であることが示唆された。また、DHPAによって高温下での生育が回復したbenA33株ではチューブリンの消失は見られなかった。さらに、DHPAは他の微小管阻害剤と違い、チューブリンに親和性を示さないことがわかった。これはDHPAが既知の微小管阻害剤と異なる作用機構を持つことを支持している。一方、DHPAは出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeにおいてチューブリンの細胞内レベルを低下させることがわかったが、その際、微小管の分布や丸い酵母型の細胞の形態には影響を与えなかった。DHPAによって細胞の形態が異常になるにはチューブリンの完全な消失がもたらす微小管の構造の破壊が必要であると思われる。出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeは、糸状菌とは異なり、通常の培養条件下では酵母状の丸い細胞形態を示すが、イソアミルアルコール(IAA)存在下で、細胞が伸張し出芽が形成された後も娘細胞の分離が遅れて伸長し続け、偽菌糸型の形態を示すことが知られている。今回、細胞の形態が偽菌糸に変化するときに起こっていると予想される細胞骨格分子(チューブリンおよびアクチン)への影響について調べた。まず、ウェスタン解析の結果、IAAによる偽菌糸形成時にα-およびβ-チューブリン量が相対的に低下し、アクチンは低下しないことが明らかになった。加えてFACS解析の結果、アクチン量は細胞容積の増大と共に比例するが、チューブリンのそれは相対的に減少していくことがわかった。しかし顕微鏡下では紡錘体の消失は観察されず、染色体分配は正常に進行しているものとしていないものの両方が観察された。さらにチューブリン消失の原因がmRNAへの転写阻害によるものかをRT-PCR法によって調べたが、mRNAの発現量にコントロールとの大きな差違は認められなかった。また免疫沈降法によりα-チューブリンを精製したが、ユビキチン化されたものは検出されなかった。従って、現在のところ、相対チューブリン量の低下の原因は不明である。しかしながら、フェニルアラニン誘導体以外にも糸状菌の形態異常とチューブリン量の低下に相関が見られる化合物が見いだされ、それはIAAであることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-16780062
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16780062
DNAチップを用いた小胞体ストレスを起源とする肝不全の病態解析
細胞内タンパク質の品質管理の破綻による疾患の概念が確立され、フォールデイング病と総称される脊髄神経変性疾患などの遺伝疾患に注目が集まっている。からだのタンパク質の工場である肝臓は、小胞体負荷による細胞傷害の典型的な病像を観察することができる。研究代表者は、肝がんの根治目的で行われる広範囲肝切除に際して、残存肝のoverloadingによる小胞体ストレスを起源とする急性肝不全が生じることを見いだした。95%の広範囲肝切除ラットの残存肝では、タンパク質の異常蓄積による特徴的な小胞体の膨化が観察される。さらに、HSP70の誘導剤として考えられてきたgeranylgeranylacetone(GGA)がこの実験モデルにも極めて有効であることを見いだし報告した。本研究は、研究代表者らが開発したストレス評価用DNAチップを用いて小胞体機能異常を網羅的に解析し、その病態と治療戦略を探ることを目的とした。本年度は、ラットの90%肝切除モデルを作成し、ラットのストレス解析用DNAチップ(1200遺伝子を搭載)を用いて切除後の遺伝子発現を網羅的に解析した。その結果、72遺伝子の発現がup-regulationし、96遺伝子の発現がdown-regulationされていた。なかでも、Bip,Hsp22,chaperonine10の特徴的な発現亢進とHsp27の発現低下をみとめた。GGAを前投与すると、Hsp72,Bip,Hsp27の発現が亢進し、新規サイトカインであるGro1の発現が著明に抑制された。これらの変化は、RT-PCRならびにウエスタンブロット法により確認している。このように、広範囲肝切除後の急性肝不全の病態とGGAによる治療効果を確認することが出来た。現在、本研究成果の論文を作成中である。細胞内タンパク質の品質管理の破綻による疾患の概念が確立され、フォールデイング病と総称される脊髄神経変性疾患などの遺伝疾患に注目が集まっている。からだのタンパク質の工場である肝臓は、小胞体負荷による細胞傷害の典型的な病像を観察することができる。研究代表者は、肝がんの根治目的で行われる広範囲肝切除に際して、残存肝のoverloadingによる小胞体ストレスを起源とする急性肝不全が生じることを見いだした。95%の広範囲肝切除ラットの残存肝では、タンパク質の異常蓄積による特徴的な小胞体の膨化が観察される。さらに、HSP70の誘導剤として考えられてきたgeranylgeranylacetone(GGA)がこの実験モデルにも極めて有効であることを見いだし報告した。本研究は、研究代表者らが開発したストレス評価用DNAチップを用いて小胞体機能異常を網羅的に解析し、その病態と治療戦略を探ることを目的とした。本年度は、ラットの90%肝切除モデルを作成し、ラットのストレス解析用DNAチップ(1200遺伝子を搭載)を用いて切除後の遺伝子発現を網羅的に解析した。その結果、72遺伝子の発現がup-regulationし、96遺伝子の発現がdown-regulationされていた。なかでも、Bip,Hsp22,chaperonine10の特徴的な発現亢進とHsp27の発現低下をみとめた。GGAを前投与すると、Hsp72,Bip,Hsp27の発現が亢進し、新規サイトカインであるGro1の発現が著明に抑制された。これらの変化は、RT-PCRならびにウエスタンブロット法により確認している。このように、広範囲肝切除後の急性肝不全の病態とGGAによる治療効果を確認することが出来た。現在、本研究成果の論文を作成中である。
KAKENHI-PROJECT-14037247
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14037247
環状プラズマの非局所応答についてのシミュレーション研究
過渡的な密度揺動をトカマクプラズマに与えたときに起きる非局所応答のプロセスを数値シミュレーションにより詳細に解析した。過渡的に与えられる圧力揺動の長波長成分の間の、非線形結合および環状磁場の非一様性による結合の両方が、非局所応答に不可欠であることを明らかにした。さらにイオン系の微視的乱流を含むマルチスケールシミュレーションを実施し、微視的乱流が非局所応答を妨げることを明らかにした。これは非局所応答に不可欠な長波長の圧力揺動が、非局所応答を引き起こすよりも短い時間で乱流により散逸されるからである。簡約化電磁流体力学(RMHD)モデル(密度、磁力線方向のイオン流速、静電ポテンシャル、磁場ポテンシャルの4場からなる)に基づくトカマクプラズマのシミュレーションで観測されたプラズマの非局所応答を詳細に解析した。その結果、過渡的な密度ソースで入力される圧力揺動のcosθ成分(θはトーラスの小円周方向の角度)が、非局所応答においてプラズマの炉心部と端領域をつなぐ重要な役割を果たしていることを明らかにした。次に磁力線方向のイオン流速、静電ポテンシャル、イオン温度の3場からなるランダウ流体モデルに基づくコードで、密度ソースの代わりに温度シンクを加えて同様のシミュレーションを様々な条件で行ったが、RMHDシミュレーションで見られたようなプラズマの非局所応答は起きなかった。このシミュレーションを詳細に解析した結果、圧力揺動のcosθ成分が、イオン温度勾配で駆動された乱流によって散逸され、プラズマの炉心部と端領域をつなぐことができなくなっていることを明らかにした。また、上記のシミュレーションに用いられる簡約化流体モデルをジャイロ運動論モデルから厳密に導出する理論的な手法についての研究を行い、短波長の効果を考慮する際、従来の手法ではジャイロ中心変換の高次の情報が必要であったのが、新しい手法では最低次の情報で十分であることを明らかにした。これまで2つの相補的なモデル、(1)密度、磁力線方向のイオン流速、静電ポテンシャル、磁場ポテンシャルの4場モデル+密度ソース、(2)磁力線方向のイオン流速、イオン温度、静電ポテンシャルの3場モデル+温度シンク、に基づくトカマクプラズマのシミュレーションを行い、イオン温度勾配(ITG)駆動乱流が、プラズマの端領域に外部から与えられた過渡的なソース/シンクによる長波長の揺動を散逸し、4場モデルのシミュレーションで観測されたような非局所応答を妨げることを明らかにしていた。平成27年度は、上記2つのモデルを包含する5場モデル(4場+イオン温度)で、過渡的な密度ソース、温度シンクの両方を与えるシミュレーションが可能となるようにコードを拡張し、その拡張コードを用いてプラズマのベータ値(=プラズマ圧力と磁場の圧力の比)を変化させたシミュレーションを行った。詳細な解析の結果、ベータ値を0%から0.5%まで大きくすると、ITG乱流が弱まり(揺動エネルギーが半分程度まで減少)、ソース/シンクで与えられた長波長揺動の散逸も弱まるものの、4場シミュレーションで見られるような非局所応答は起きなかった。一方、4場+電子温度という別の5場モデルに基づくコードも開発した。このモデルではITG乱流は励起されず上記のものと対照的なシミュレーションが可能である。過渡的な密度ソースと電子温度シンクを与えるシミュレーションを行い、中心付近で過渡的に電子温度が上昇するという非局所応答が見られた。当初計画していた5場モデルコードの拡張とそれによるシミュレーションは予定通り実施できているため。電子温度のダイナミクスを含めた簡約化電磁流体(RMHD)コードを用いて、トカマクプラズマの周辺領域に過渡的な電子温度のシンク(コールドパルス)を与えるシミュレーションを行い、中心付近の電子温度が上昇するという非局所応答が見られた。これについて解析を進め、安全係数が2の半径を中心に形成される磁気島構造が非局所応答に影響を与えることを明らかにした。また、ランダウ流体コードを用いた大域的なシミュレーションで、非局所応答を引き起こしうる過渡的なソース/シンクのポロイダル面における位置を変化させたところ、ソース/シンクにより時間的に振動する帯状流を励起することができたものの、微視的乱流を抑制するまでには至らなかった。環状プラズマの非局所応答を引き起こしうる巨視的な揺動と微視的乱流との相互作用を明らかにするため、これまで微視的な揺動に主眼が置かれていた運動論モデルを、巨視的な揺動も取り扱えるように拡張した。この拡張では、単一荷電粒子運動の相空間ラグランジアンに対しリー変換による摂動解析を行うという、現代的な手法を用いた。摂動解析では高次の計算が必要で、微分方程式に対して摂動解析を行う伝統的な手法は計算が複雑になり、系の保存量も自明ではないが、この現代的な手法では、様々な保存量をネーターの定理で導くことができる利点がある。さらに、シミュレーションでよく用いられる案内中心(ジャイロ中心)の熱ソース/シンクについての理論的考察も行い、案内中心熱ソース/シンクが案内中心密度に影響を与えなくても、粒子フラックスを生み出し、密度分布を変化させうることを明らかにした。過渡的な密度揺動をトカマクプラズマに与えたときに起きる非局所応答のプロセスを数値シミュレーションにより詳細に解析した。過渡的に与えられる圧力揺動の長波長成分の間の、非線形結合および環状磁場の非一様性による結合の両方が、非局所応答に不可欠であることを明らかにした。さらにイオン系の微視的乱流を含むマルチスケールシミュレーションを実施し、微視的乱流が非局所応答を妨げることを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-26400538
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26400538
環状プラズマの非局所応答についてのシミュレーション研究
これは非局所応答に不可欠な長波長の圧力揺動が、非局所応答を引き起こすよりも短い時間で乱流により散逸されるからである。当初予定していた4場モデルと3場モデルによるシミュレーションは問題なく実施できた。シミュレーション結果の解析には手間取ったものの、非局所応答が起きる基本的メカニズムと、それに乱流が及ぼす影響を明らかにすることができたため。5場モデルのシミュレーションをより幅広いパラメータ空間で実施し、乱流と非局所輸送についてのより詳細なデータを収集し、解析していく。さらに理論モデルの研究も進め、当初計画の5場モデルを超えたモデルの探求も行う。プラズマ科学4場モデル、3場モデルのシミュレーションは互いに相補的な関係にある。これらのシミュレーションで明らかにした非局所応答の基本的なメカニズムやそれに対する乱流の影響が、これらを包含する5場モデルのシミュレーションにおいても変わらないか、それとも変わるのかを明らかにしていく。また、密度ソースの与え方などを変化させ、それにより非局所応答がどのような影響を受けるのかについてもシミュレーションを行い明らかにしていく。2016年2月から3月の期間に、ドイツのマックス・プランク研究所を訪問し、プラズマ乱流の理論シミュレーション研究を行っている研究者と、理論モデルの拡張やシミュレーションに関する議論と情報交換を行う予定であったが、双方のスケジュールが合わず、次年度に延期したため、旅費に大きな次年度使用額が生じたものである。応募時の計画では高性能ワークステーションとデータ解析、可視化ソフトウェアで65万円を希望していたが、認められた助成金で物品費に使用可能であったのはこれより少なかったため、これらの導入を1年先送りした。年度の早い時期(5月6月)に延期したドイツ、マックス・プランク研究所訪問旅費に40万円、研究代表者および連携研究者の学会参加のための旅費や参加費で40万円、研究打ち合わせなどの旅費に10万円、論文出版費、データ保存用機器や参考文献などの購入で15万円を計画している。次年度使用額と翌年度分として請求した助成金とを合わせ、導入を先送りした高性能ワークステーションおよびソフトウェアの購入に使用する。それ以外には主に旅費として使用する。
KAKENHI-PROJECT-26400538
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26400538
中枢神経における水チャンネルの発現分布とその機能調節機構の解析-脳浮腫発生機構解明と新しい治療法の開発を目指して-
本研究は、水チャネルであるアクアポリン(AQP)の生理機能を解明し、さらに脳浮腫の発症に果たすAQPの機能の解析を目的とした。まず、中枢神経におけるAQPの発現を詳細に検討した結果、脳には多種類のAQPが発現していることが分かった。なかでも、脳浮腫に関与するアストロサイト(Ast)には、AQP3、AQP4、AQP5、AQP8、AQP9と多種類が発現しており、水の移動だけでなく多機能を有している可能性が示唆された。次に、生理的状態におけるAQPの発現調節機構を調べたところ、PKA、PKC、p38MAPKなどの細胞内情報伝達系により複雑に調節されていることが分かってきた。また、AQP蛋白発現後の膜への移送や移動に係わる分子をいくつか見出したが、これについては今後の検討を要する。さらには、低酸素によりAstにおけるAQPの発現が増強することがわかり、脳浮腫の発症や進行に何らかの機能を果たしていることが分かった。このことは、脳が損傷を受けた際に、AQPの機能を調節することにより、脳浮腫が軽減できる可能性があると考えられた。生理的な状態におけるAQP調節機構をさらに詳しく解明できれば、AQP機能の調節は可能になると考える。本研究により、生理的あるいは病的状態におけるAQPの機能がある程度解明できた。この成果は、AQPをターゲットとした新しい脳浮腫治療薬の開発への手掛かりとなる。本研究は、水チャネルであるアクアポリン(AQP)の生理機能を解明し、さらに脳浮腫の発症に果たすAQPの機能の解析を目的とした。まず、中枢神経におけるAQPの発現を詳細に検討した結果、脳には多種類のAQPが発現していることが分かった。なかでも、脳浮腫に関与するアストロサイト(Ast)には、AQP3、AQP4、AQP5、AQP8、AQP9と多種類が発現しており、水の移動だけでなく多機能を有している可能性が示唆された。次に、生理的状態におけるAQPの発現調節機構を調べたところ、PKA、PKC、p38MAPKなどの細胞内情報伝達系により複雑に調節されていることが分かってきた。また、AQP蛋白発現後の膜への移送や移動に係わる分子をいくつか見出したが、これについては今後の検討を要する。さらには、低酸素によりAstにおけるAQPの発現が増強することがわかり、脳浮腫の発症や進行に何らかの機能を果たしていることが分かった。このことは、脳が損傷を受けた際に、AQPの機能を調節することにより、脳浮腫が軽減できる可能性があると考えられた。生理的な状態におけるAQP調節機構をさらに詳しく解明できれば、AQP機能の調節は可能になると考える。本研究により、生理的あるいは病的状態におけるAQPの機能がある程度解明できた。この成果は、AQPをターゲットとした新しい脳浮腫治療薬の開発への手掛かりとなる。本研究の目的は水チャンネルであるアクアポリン(AQP)の調節機構を解明することにより、AQPの関与する脳浮腫発生機構の解明と新しい治療法確立を目指すものである。平成13年度の達成目標は、1.中枢神経系培養細胞におけるAQPファミリーの発現分布、2AQP結合分子の検索、以上2点であった。1.中枢神経系培養細胞におけるAQPファミリーの発現分布中枢神経系を構成する細胞(ニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、ミクロダリア、血管内皮細胞)を単離培養し、AQP19のmRNAの発現をRT-PCRにて検討した。これまでに報告されているisoformに加えて他種類のAQPが発現していることがわかった。ニューロンにはAQP3、5、8、アストロサイトにはAQP3、4、5、8、9、オリゴデンドロサイトにはAQP8の発現が確認されたが、ミクログリアには発現が認められなかった(Yamamoto et al.,2001)。これらのことから、AQPが中枢神経において多彩な機能を持っている可能性が示唆された。来年度より、これら培養細胞に低酸素負荷を行い、新たに発現が認められたAQPの発現変化を検討し、脳浮腫発生機構の解明に迫りたい。2.AQP結合分子の検索AQPの調節機構の解明を目的に、AQPと結合する新規物質の検索をyeast two-hybrid法により行った。現在、C末端側細胞内ドメインをコードする遺伝子を使用し、一回目のライブラリースクリーニングを行った。AQP結合タンパクの候補として10種類の遺伝子が検出された。来年度は、これらの候補遺伝子についてさらに詳細な検討を行っていく予定である。また、N末端側細胞内ドメインをコードする遺伝子を使用し、再度ライブラリースクリーニングを行う予定である。本研究の目的は水チャンネルであるアクアポリン(AQP)の調節機構を解明することにより、AQPの関与する脳浮腫発生機構の解明と新しい治療法確立を目指すものである。平成13年度は、1.中枢神経系培養細胞におけるAQPファミリーの発現分布、2.AQP結合分子の検索、以上2点であった。平成14年度の研究目標は、1.低酸素負荷による培養細胞内のAQPファミリーの発現変化、とし、より臨床に近づいた研究を行った。また、2.AQP発現の生理的調節機構、についても検討し、病的状態におけるAQP調節機構を理解する一助とする。1.酸素負荷による培養細胞内のAQPファミリーの発現変化脳浮腫の初期変化はアストロサイト(Ast)の膨化である。そこで培養Astに低酸素負荷を行い、AQP4、AQP5、AQP9の発現変化を検討した。
KAKENHI-PROJECT-13671603
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13671603
中枢神経における水チャンネルの発現分布とその機能調節機構の解析-脳浮腫発生機構解明と新しい治療法の開発を目指して-
AQP mRNAの変化はRT-PCRにより、AQP蛋白質の変化はウエスタンブロットで行った。その結果、低酸素・再酸素化によりいずれのAQPも発現が上昇することが分かった。このことは、脳浮腫の発生あるいは治癒過程にAQPが関与している可能性が示唆された。2.AQP発現の生理的調節機構以上、AQPの脳浮腫への関与、ならびに生理的な調節機構がin vitroで理解できた。来年度は、実験動物脳損傷モデルを用いて、in vivoにおいてAQPが脳浮腫へ果たす機能を解明し、新しい脳浮腫治療法の発見への一歩を踏み出したい。脳血管障害や心停止による脳虚血や外傷により脳浮腫が生じ、それによって二次的脳損傷が発生する。臨床的に脳浮腫をコントロールすることは神経学的予後を改善する。最近、水チャンネルであるアクアポリン(AQP)が脳浮腫の発生に関与するとの報告があり、本研究ではAQPの脳浮腫への関与に注目する。本研究の目的は、水チャンネルであるアクアポリン(AQP)の調節機構を解明することにより、AQPの関与する脳浮腫発生機構の解明と新しい治療法廃立を目指すものである。平成15年度の研究目標は、1.ラット脳虚血モデルにおけるAQPファミリーの発現変化、2.AQP結合分子の検索の継続、3.AQP結合分子の脳における発現、以上3点を掲げた。1.ラット脳凍結損傷モデルと脳虚血モデルにおけるAQPの発現変化ラット脳凍結損傷モデルにおけるAQPの発現は、超急性期には低下し、急性期には発現増強、長期的な発現増強も認められた。また、ラット中大脳動脈結紮モデルについても、現在検討中である。2.AQP結合分子の検索昨年度から引き続き、AQP結合分子の検索を行った。AQPと結合する新規物質の候補が3種類検出できた。3.AQP結合分子の脳における発現候補となったAQP結合分子のいくつかについて、脳における発現が確認できた。以上のように、in vivoにおいてAQPが脳浮腫の発生および治癒過程に関与する可能性が示唆された。また、AQPの機能を調節する機構のひとつとして、AQP結合分子の検索を行い、候補となる分子を見出すことが出来た。今後のさらなる詳細な機能解析へつながる成果と考える。
KAKENHI-PROJECT-13671603
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13671603
「形質アプローチ」でせまる森林の植物―土壌フィードバック
本研究では、樹木群集形成や多種共存機構の包括的理解のため、形質アプローチにより樹木群集における植物-土壌フィードバックの役割を検証する。本年度は、動態、機能形質データベースの充実・再整理のため、2018年5および9月に調査区内の毎木調査を行った。また、機能形質データベースに実生の形質情報を追加するため、6、7月に1年生以上の実生106個体(33種)の採取を行い、物理形質の測定を行った。これにより、実生、稚樹、成木の葉の機能形質の一部が揃い、群集レベルで成長段階間の比較を行ったところ、LMAや葉の強度は成木の値が最も高く、ついで稚樹、実生の順に低くなっていったが、個葉サイズは実生が一番小さいものの、成木と稚樹は大きく変わらないことなどが明らかとなった。さらに、実生の根を59個体(22種)から採取し、菌根菌、病原菌測定用に保管した。土壌特性データベースの新規構築のため、前年度の7-9月に1.2haプロット内の10m x 10m格子点(計143点)で採取し、保管してあった土壌試料の分析を開始した。現在までに、土壌含水率、bulk density,土壌pH,アンモニウム態窒素、硝酸態窒素、無機化速度、硝化速度、PLFA法による微生物量・組成の測定が終了しており、地上部の葉の炭素やタンニン含量が多いと、土壌の菌類やバクテリアが増える可能性があることが明らかとなった。また、前年度の12月に、土壌試料を採取した場所と同じ場所で採取・保管してあった地表面の落葉試料(新規落葉と1年以上前の落葉)を樹種ごとに仕分け、現在乾燥重量を測定中である。これらの試料を採取した場所で、光、温度環境の通年測定も開始した。来年度以降も動態、機能形質、土壌、環境データベースの拡充を継続し、土壌特性の決定要因解析などを行う予定である。本年度は、計画していた動態データベース、機能形質データベースの充実・再整理を予定通り行うことができた。また、様々な分析を順調に遂行し、予定していた土壌特性データベースの構築を進めることができている。以上のことから、計画は概ね順調に進展していると考える。i)動態、機能形質データベースの充実・再整理:6 ha全域の胸高直径1 cm以上の個体の継続調査を行い、動態データベースの充実および再整理を継続して行う。また、未採取の種の実生の探索・採取・形質測定を継続し、形質データベースに追加する。ii)土壌特性データベースの充実:乾燥、冷凍保管している土壌サンプルの化学成分分析、土壌微生物分析を継続する。iii)土壌特性の決定要因解析:上記で取得したデータを利用し、土壌の化学・生物特性の決定要因を明らかにする解析を開始する。本研究は小川群落試験地(北茨城)の落葉広葉樹林に設置した6ha調査区で実施している。本年度は、動態、機能形質データベースの充実・再整理のため、2017年5月に調査区内の毎木調査を行った。特に、1.2haのコアプロットでは、胸高直径1cm以上の個体全ての調査を行った。また、機能形質データベースに実生の形質情報を追加するため、5月、6月に十分に個体数を十分採取できる種の当年生実生の採取を行った。また、土壌特性データベースの新規構築のため、8月にコアプロット内の10m x 10m格子点(計144点)で土壌試料の採取を行った。無機態窒素はサンプリング直後から無機化によりその量が変化してしまうため、まず現地で2M KClによる抽出を行った。その後、低温状態で実験室に持ち帰り、2mmで篩った後、サブサンプルを105度で絶乾させた。更に無機化速度測定用にサブサンプルを2M KClで抽出し、別のサブサンプルを22°Cで4週間培養した後2M KClで抽出した。2M KClで抽出した溶液は冷凍保存した。別のサブサンプルは微生物測定のために冷凍保存した。残りの土壌は風乾させ、土壌pHの測定に用いた。これらの保管したサンプルは、来年度にかけて随時分析を行う。12月には、土壌サンプルと同じくコアプロット内の10m x 10m格子点で落葉のサンプリングを行った。各地点で33cm x 33cmの枠内の新規落葉と1年以上前の落葉をそれぞれ分けてサンプリングした。この落葉サンプルは、今後種ごとに分けて乾燥重量を測定する予定である。今年度採取したサンプルの分析を進めることにより、植物-土壌フィードバックの役割を検証するための土壌特性データベースを構築することが可能となる。本年度は、計画していた動態データベース、機能形質データベースの充実・再整理を予定通り行うことができた。また、予定していた土壌特性データベースの新規構築を開始することができた。土壌サンプルはコアプロット内の10m x 10m格子点の全てで行うことができ、サンプルは測定項目ごとに適切に処理し、順次分析を開始しており、分析が終了している項目もあれば、次年度にかけて分析を予定している項目もある。落葉サンプルも、現在種ごとに仕分けを継続している最中である。以上のことから、計画は概ね順調に進展していると考える。本研究では、樹木群集形成や多種共存機構の包括的理解のため、形質アプローチにより樹木群集における植物-土壌フィードバックの役割を検証する。本年度は、動態、機能形質データベースの充実
KAKENHI-PROJECT-17H03736
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「形質アプローチ」でせまる森林の植物―土壌フィードバック
・再整理のため、2018年5および9月に調査区内の毎木調査を行った。また、機能形質データベースに実生の形質情報を追加するため、6、7月に1年生以上の実生106個体(33種)の採取を行い、物理形質の測定を行った。これにより、実生、稚樹、成木の葉の機能形質の一部が揃い、群集レベルで成長段階間の比較を行ったところ、LMAや葉の強度は成木の値が最も高く、ついで稚樹、実生の順に低くなっていったが、個葉サイズは実生が一番小さいものの、成木と稚樹は大きく変わらないことなどが明らかとなった。さらに、実生の根を59個体(22種)から採取し、菌根菌、病原菌測定用に保管した。土壌特性データベースの新規構築のため、前年度の7-9月に1.2haプロット内の10m x 10m格子点(計143点)で採取し、保管してあった土壌試料の分析を開始した。現在までに、土壌含水率、bulk density,土壌pH,アンモニウム態窒素、硝酸態窒素、無機化速度、硝化速度、PLFA法による微生物量・組成の測定が終了しており、地上部の葉の炭素やタンニン含量が多いと、土壌の菌類やバクテリアが増える可能性があることが明らかとなった。また、前年度の12月に、土壌試料を採取した場所と同じ場所で採取・保管してあった地表面の落葉試料(新規落葉と1年以上前の落葉)を樹種ごとに仕分け、現在乾燥重量を測定中である。これらの試料を採取した場所で、光、温度環境の通年測定も開始した。来年度以降も動態、機能形質、土壌、環境データベースの拡充を継続し、土壌特性の決定要因解析などを行う予定である。本年度は、計画していた動態データベース、機能形質データベースの充実・再整理を予定通り行うことができた。また、様々な分析を順調に遂行し、予定していた土壌特性データベースの構築を進めることができている。以上のことから、計画は概ね順調に進展していると考える。i)動態、機能形質データベースの充実・再整理:6 ha全域の胸高直径1 cm以上の個体の継続調査を行い、動態データベースの充実および再整理を行う。また、各種対象サイズの実生の探索・採取・形質測定の継続調査を行い、形質データベースに追加するii)土壌特性データベースの充実:昨年夏に採取して保管してある土壌サンプルで、全炭素、全窒素、全リン、可給態リン、土壌微生物群集を測定する。また、昨年の秋に採取して乾燥、保管してある落葉サンプルを種毎に分け、乾燥重量を測定する。iii)多種共存機構におけるPSFの効果の数理モデルによる解析:PSFを組み込まない地上部種間競争のみのシミュレーションモデルの開発と解析を継続して行う。i)動態、機能形質データベースの充実・再整理:6 ha全域の胸高直径1 cm以上の個体の継続調査を行い、動態データベースの充実および再整理を継続して行う。また、未採取の種の実生の探索・採取・形質測定を継続し、形質データベースに追加する。ii)土壌特性データベースの充実:乾燥、冷凍保管している土壌サンプルの化学成分分析、土壌微生物分析を継続する。iii)土壌特性の決定要因解析:上記で取得したデータを利用し、土壌の化学・生物特性の決定要因を明らかにする解析を開始する。
KAKENHI-PROJECT-17H03736
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含フッ素キノロンカルボン酸系抗菌剤のドラッグデザインと生物活性試験
(イ)ハロゲン化トリフルオロアセトイミドイルの合成法の確立本研究課題の合成目標化合物の合成鍵化合物であるイミドイル(1)の新しい合成法を開発した。(ロ)鍵化合物(1)の反応性の開発と増炭反応の確立(1)と求核剤および求電子剤との反応を開発した。特に、(1)のメタル化として、パラジウム、亜鉛、リチウム、シリコン化を開発し、これにより、増炭反応を確立した。この際、イミドイル-金属化合物の安定性と反応性に関し、イミドイル炭素と金属の共有結合性と安定性との間にある関係を究明した。(ハ)電気化学的手法を用いる2-トリフルオロメチルベンズイミダゾールの合成法を確立した。約20種の新規化合物の電解酸化により、6-水酸化および置換ベンズイミダゾールを好収率で合成した。(ニ)3-N-アリール-4,4,4-トリフルオロ-2-ブテノエ-トの電解酸化により、2-トリフルオロメチル-3-カルボキシインドールの新合成法を確立した。(ホ)トリフルオロメチル化した、スピロジアザカルボサイクルの合成および、関連の1,3-ジアゼピン誘導体の合成法を確立した。(ヘ)(1)のパラジウム触媒による炭酸化および、不斉水素化により、3,3,3-トリフルオロアラニンの光学活性体を合成した。(ト)N-(2,2,2-トリフルオロ-1-トリチルアゾエチリデン)アニリンの新合成法と熱分解を経る3-置換インドールの新合成法を確立した。(チ)生物活性試験上記で述べた新化合物について、殺菌剤のスクリーニングを実施した結果、スピロジアザカルボンサイクル体の一部が稲のいもち病に対し効果を示した。(イ)ハロゲン化トリフルオロアセトイミドイルの合成法の確立本研究課題の合成目標化合物の合成鍵化合物であるイミドイル(1)の新しい合成法を開発した。(ロ)鍵化合物(1)の反応性の開発と増炭反応の確立(1)と求核剤および求電子剤との反応を開発した。特に、(1)のメタル化として、パラジウム、亜鉛、リチウム、シリコン化を開発し、これにより、増炭反応を確立した。この際、イミドイル-金属化合物の安定性と反応性に関し、イミドイル炭素と金属の共有結合性と安定性との間にある関係を究明した。(ハ)電気化学的手法を用いる2-トリフルオロメチルベンズイミダゾールの合成法を確立した。約20種の新規化合物の電解酸化により、6-水酸化および置換ベンズイミダゾールを好収率で合成した。(ニ)3-N-アリール-4,4,4-トリフルオロ-2-ブテノエ-トの電解酸化により、2-トリフルオロメチル-3-カルボキシインドールの新合成法を確立した。(ホ)トリフルオロメチル化した、スピロジアザカルボサイクルの合成および、関連の1,3-ジアゼピン誘導体の合成法を確立した。(ヘ)(1)のパラジウム触媒による炭酸化および、不斉水素化により、3,3,3-トリフルオロアラニンの光学活性体を合成した。(ト)N-(2,2,2-トリフルオロ-1-トリチルアゾエチリデン)アニリンの新合成法と熱分解を経る3-置換インドールの新合成法を確立した。(チ)生物活性試験上記で述べた新化合物について、殺菌剤のスクリーニングを実施した結果、スピロジアザカルボンサイクル体の一部が稲のいもち病に対し効果を示した。1.塩化トリフルオロアセトイミドイル(1)の合成含フッ素複素環合成の鍵化合物としての塩化トリフルオロアセトイミドイル(1)の新規合成法を確立した。従来法である5塩化リンを用いる方法では収率が1030%と悪く、塩化水素及びオキシ塩化リンが副生する問題点があった。今回確立した方法は、収率が8090%と高く、後処理が容易であることから、研究目的である含フッ素キノロンカルボン酸類の合成に供する出発原料の供給が容易となった。本合成法はトリフルオロ酢酸以外の一般のペルフルオロアルカン酸にも応用できた。同様に、四塩化炭素を四臭化炭素に代えることで、相当する臭化物も合成できた。また、1の金属化に必要なヨウ代物も、1をアセトン中、ヨウ化ナトリウムと室温下、24時間反応させることで、定量的に合成できる方法を確立した。2.イミドイルのメタル化1と親電子剤を反応させ、新しく炭素-炭素研究を作ると、キノロンカルボン酸合成に有用である。そこて、1をメタル化するため、1のヨウ素体(2)を、ブチルリチウム、金属亜鉛、金属ナマリ、金属銅、パラジウム錯体に作用させた。リチウム代は-78°Cで進行し、ベンゾイル化などができた。パラジウム錯体とは室温下反応し、カルボニル化、ヘック型アルケニル、アルキニル化ができた。3.含フッ素トリアゾール、トリアゾリン類の合成1とアセトンヒドラゾンとの反応により、N-置換-トリフルオロエタンイミン酸の1-メチルエチリデンヒドジンを合成し、これを3級ブチルハイポクロリドで酸化的環代することによる、トリアゾール、トリアゾリン類の合成法を確立した。含フッ素キノロンカルボン酸系化合物として、トリフルオロメチル含有インドール(1),ベンズイミダゾール(2),アシルインドール(3),ジアザスピロジエノン(4)を合成した。
KAKENHI-PROJECT-04555204
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04555204
含フッ素キノロンカルボン酸系抗菌剤のドラッグデザインと生物活性試験
(1),(2)はトリフルオロイミドアミド及び関連エナミンの電気化学的酸化法による新しい合成法を確立することで達成した。一方、ベンゼンテルロイミドイルの光反応によるイミドイルラジカルの生成と分子内の環化反応を経る新合成法を開発した。さらに、トリフルオロメチル含有キノンイミンのDMSO中、分子内電子環状環化反応を経る新しいジアザスピロジエノン合成法をも開発した。(イ)電気化学的手法を用いる2-トリフルオロメチルベンズイミダゾールの合成N、N′置換トリフルオロエタンイミダミドを白金電極を用い、単一槽中で、定電流密度電解酸化を行なった。溶媒として、乾燥アセトニトリルと含水アセトニトリルを検討した。前者の場合、圧倒的に、目的のベンゾイミダゾールが生成した。一方、後者の溶液では、キノンイミン体が収率7090%で生成した。いづれの反応も、低い電流密度電解が好ましい結果を得た。置換基を変え、約20種の化合物を調べたが、一般にはパラ-置換体が良い収率を与えた。キノンイミン体はBF_3触媒で6-位に水酸基を有するベンゾイミダゾールに変換できた。(ロ)2-トリフルオロメチルインドールの合成;上記の反応を3-N-アリール-4,4,4-トリフルオロ-2-ブテノエ-トに適用するとキノンイミンを経て、2-トリフルオロメチル-3-カルボキシインドールになった。(ハ)トリフルオロメチル化したスピロジアザカルボサイクルの合成(イ)で得た、キノンイミンをDMSO中120°Cで熱環化するとスピロジアザカルボサイクル体となった。これをTFA触媒で転位させると、1,3-ジアゼピン誘導体となった。生物活性試験;(ハ)で合成したスピロジアザカルボサイクル体の一部は殺菌剤のスクリーニングの結果稲のいもち病に対し、効果を示した。
KAKENHI-PROJECT-04555204
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二酸化炭素ゼロ排出を目指しての核熱の長期的役割に関するシステム分析
本報告書には、二酸化炭素ゼロ排出を目指しての核熱の長期的役割に関するシステム解析がまとめられており、対象は西暦2000年から2080年に至る我が国のトータルエネルギーシステムである。主な分析項目を記すと、1)西暦2080年に至る社会経済発展シナリオの創出、2)核熱による水素製造方法とエネルギー収支解析、3)火力発電所からのCO_2排出量とCO_2の再燃料化(メタノール燃料)試算、4)水素燃料電池車等技術特性のレビュー、5)MARKALモデルによるトータルシステム解析である。分析を通して得られている主な結果を記すと、1)火力発電所から排出されるCO_2は再燃料化(例:メタノール)されて自動車燃料として利用される潜在力がある、2)その際、核熱からの水素は大きな役割を持つ、3)CO_2をリサイクル利用するには自動車に燃料電池の他に小型リフォーマ、冷凍機を搭載する必要がある。本報告書には、二酸化炭素ゼロ排出を目指しての核熱の長期的役割に関するシステム解析がまとめられており、対象は西暦2000年から2080年に至る我が国のトータルエネルギーシステムである。主な分析項目を記すと、1)西暦2080年に至る社会経済発展シナリオの創出、2)核熱による水素製造方法とエネルギー収支解析、3)火力発電所からのCO_2排出量とCO_2の再燃料化(メタノール燃料)試算、4)水素燃料電池車等技術特性のレビュー、5)MARKALモデルによるトータルシステム解析である。分析を通して得られている主な結果を記すと、1)火力発電所から排出されるCO_2は再燃料化(例:メタノール)されて自動車燃料として利用される潜在力がある、2)その際、核熱からの水素は大きな役割を持つ、3)CO_2をリサイクル利用するには自動車に燃料電池の他に小型リフォーマ、冷凍機を搭載する必要がある。標記の研究(6.研究課題名欄参照)は平成9年度を初年度とし3カ年間の実施期間をもって実施する研究であり、当該年度の実施項目には1)核熱供給炉、核熱利用技術を主とするエネルギー技術の特性化を進めてデータベースの作成を行ったこと、2)MARKAL計算ソフトを金沢工業大学所有のパーソナル・コンピュータでも暫定的に使用できるように変換整備を行い、核熱利用分析を日本原子力研究所と金沢工業大学の2カ所で同時並行して進めうるようにしたこと、さらに3)我が国のエネルギーシステムをモデル化して長期社会経済発展シナリオの下にMARKALランを行ったこと、が挙げられる。特に、上記3)では核熱による天然ガスの改質、同水の熱分解、によって得られる水素を石炭の水添ガス化やメタノール化および火力発電所等からの回収二酸化炭素のメタノール化に使い、それらの製品を自動車や民生用熱機器へ利用した場合に見込める石油消費削減量、二酸化炭素排出削減量を分析したところ、核熱利用は熱物質収支的にはこの両面において有意な寄与を行えることを定量的に明らかにした。なを、解析の成果は代替的な方法とも比較分析した上で学会や研究会で発表してゆく予定である。標記の研究(6.研究課題名欄参照)は平成9年度より3カ年間の実施期間をもって実施する研究であり、当該年度は第2年度である。当該年度に実施した研究項目は以下に示す3項目であった。1)物質循環に役立つエネルギー技術の特性調査とそのMARKALデータベース化、2)コンプュータソフトMARKAL-MACRO及びVALUE-FLOWの整備・改良、3)我が国の長期エネルギーシステムを対象にMARKALソフトによる「核熱によるCO2の再燃料化」、「プラスチックリサイクル利用における核熱の役割」、「運輸部門における最適燃料ミックスの最適化」の分析。特に上記3)の研究では核熱によって製造された水素が火力発電所から排出されるCO2を再燃料化(例:メタノール)して運輸部門用の燃料として利用する潜在力を資源、経済、環境の三面から分析評価している。その成果は今年8月末に開催される「20th Annual NorthAmerican Confe-rence of theUSAEE/IAEE」で一括報告する予定であり、また他の成果は国内の関連の学会誌へ論文として投稿を行う。標記の研究(6.研究課題欄参照)は平成9年度より3カ年の実施期間をもって実施した研究であり当該年度で終了する。研究内容と成果の概要を以下に記す。1)MARKAL等の整備とデータベース(社会経済発展シナリオ、核熱水素製造、化石火力CO_2排出等)の作成2)我が国の長期エネルギーシステムを対象にエネルギー経済環境システム解析をMARKALモデルにて実施3)化石火力から排出されるCO_2の核熱水素による再燃料化と最終需要部門における利用の技術評価。これらの分析作業を通して、(1)火力発電所から排出されるCO_2は再燃料化(例:メタノール)されて自動車用燃料として利用される潜在力がある、(2)その際、核熱からの水素は大きな役割を持ち、他に石油製品の脱硫、重質油の軽質化、プラスッチクの再燃料化等にも役立つ。(3)CO_2フリーのエネルギーシステムを構築するにはCO_2のリサイクル利用、例えばリフォーマと冷凍機を搭載した燃料電池車、が欠かせない。なお、本研究の成果は国際エネルギー経済学会[米・フロリダ(1999年8月に発表済み)、豪・シドニイ(2000年6月発表予定)]で発表した。
KAKENHI-PROJECT-09680485
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09680485
原始環境に存在したと推定されるアミノ酸のみで発現可能なタンパク質機能の探索
生命の起源に関してRNAワールド仮説が支持を得てきており、「RNAワールドにどのようにタンパク質が誕生したか?」が次の重要な課題となる。本研究では、原始タンパク質が担った機能として、RNA結合、ATP結合、鉄ー硫黄クラスター形成を仮定し、これらの機能が原始環境に存在したと推定される少数アミノ酸種から発現可能か検討する。これらの機能の発現に必要な最少アミノ酸種類が、原始環境に存在したと推定されるアミノ酸と一致すれば、これらの機能を原始タンパク質が担った可能性を強く示唆することになる。生命の起源に関してRNAワールド仮説が支持を得てきており、「RNAワールドにどのようにタンパク質が誕生したか?」が次の重要な課題となる。本研究では、原始タンパク質が担った機能として、RNA結合、ATP結合、鉄ー硫黄クラスター形成を仮定し、これらの機能が原始環境に存在したと推定される少数アミノ酸種から発現可能か検討する。これらの機能の発現に必要な最少アミノ酸種類が、原始環境に存在したと推定されるアミノ酸と一致すれば、これらの機能を原始タンパク質が担った可能性を強く示唆することになる。
KAKENHI-PROJECT-19K21903
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K21903
卵巣癌、子宮体癌、絨毛癌の増殖、進展に関与する増殖因子と情報伝達系の解析
1)卵巣癌の進展に関与するシグナル伝達系我々は卵巣癌細胞株を用いてHGF刺激による細胞運動能・浸潤能への影響,及びシグナル伝達経路について検討した.HGF受容体蛋白発現をウエスタンブロット法で解析したところ、卵巣癌細胞株8株中6株でHGF-Rの過剰発現を認めたが、ELISA法による測定では、各細胞株培養液上清中に有意なHGFの産生は認めなかった。Boyden chamberを用いたHGF刺激による細胞運動能・浸潤能への影響を検討では、8株中6株で促進を認め、HGF刺激によりHGF-Rのリン酸化,MAPKの活性化の亢進も認めた。ras dominant negative(ras DN)を発現するアデノウィルスを感染させると、HGF刺激によるMAPKの活性化を抑制し、細胞運動能・浸潤能も抑制した。さらにMEK阻害剤とPI3-K阻害剤を用いて解析したところ両薬剤ともにHGF刺激による細胞運動能・浸潤能を抑制したがPI3-K阻害剤の効果の方が優位であった。以上よりHGFR→rasのシグナル伝達経路は卵巣癌細胞の運動能・浸潤能に関与することが示唆された。2)子宮体癌の発生に関与するシグナル伝達系子宮内膜の機能制御におけるRas蛋白の役割を分化・増殖・アポトーシスについて解析した。1.c-AMP-PKAの経路は子宮内膜細胞の腺上皮細胞への分化を促進した。Ras蛋白はPKAを活性化し、この作用を増強した。4.活性化型K-Rasはアポトーシスを誘導し、H-Rasは回避させた。また、アポトーシス回避にはRas-P13K-AKTの経路が作用していた。1)卵巣癌の進展に関与するシグナル伝達系我々は卵巣癌細胞株を用いてHGF刺激による細胞運動能・浸潤能への影響,及びシグナル伝達経路について検討した.HGF受容体蛋白発現をウエスタンブロット法で解析したところ、卵巣癌細胞株8株中6株でHGF-Rの過剰発現を認めたが、ELISA法による測定では、各細胞株培養液上清中に有意なHGFの産生は認めなかった。Boyden chamberを用いたHGF刺激による細胞運動能・浸潤能への影響を検討では、8株中6株で促進を認め、HGF刺激によりHGF-Rのリン酸化,MAPKの活性化の亢進も認めた。ras dominant negative(ras DN)を発現するアデノウィルスを感染させると、HGF刺激によるMAPKの活性化を抑制し、細胞運動能・浸潤能も抑制した。さらにMEK阻害剤とPI3-K阻害剤を用いて解析したところ両薬剤ともにHGF刺激による細胞運動能・浸潤能を抑制したがPI3-K阻害剤の効果の方が優位であった。以上よりHGFR→rasのシグナル伝達経路は卵巣癌細胞の運動能・浸潤能に関与することが示唆された。2)子宮体癌の発生に関与するシグナル伝達系子宮内膜の機能制御におけるRas蛋白の役割を分化・増殖・アポトーシスについて解析した。1.c-AMP-PKAの経路は子宮内膜細胞の腺上皮細胞への分化を促進した。Ras蛋白はPKAを活性化し、この作用を増強した。4.活性化型K-Rasはアポトーシスを誘導し、H-Rasは回避させた。また、アポトーシス回避にはRas-P13K-AKTの経路が作用していた。卵巣癌は腹膜播種を特徴とする疾患である。我々は卵巣癌細胞株を用いてHGF刺激による細胞運動能・浸潤能への影響,及びシグナル伝達経路について検討した.HGF受容体蛋白発現をウエスタンブロット法で解析したところ、卵巣癌細胞株8株中6株でHGF-Rの過剰発現を認めたが、ELISA法による測定では、各細胞株培養液上清中に有意なHGFの産生は認めなかった。Boyden chamberを用いたHGF刺激による細胞運動能・浸潤能への影響を検討では、8株中6株で促進を認め、HGF刺激によりHGF-Rのリン酸化、MAPKの活性化の亢進も認めた。ras dominant negative(ras DN)を発現するアデノウィルスを感染させると、HGF刺激によるMAPKの活性化を抑制し、細胞運動能・浸潤能も抑制した.さらにMEK阻害剤とP13-K阻害剤を用いて解析したところ両薬剤ともにHGF刺激による細胞運動能・浸潤能を抑制したがP13-K阻害剤の効果の方が優位であった。以上よりHGFR→rasのシグナル伝達経路は卵巣癌細胞の運動能・浸潤能に関与することが示唆された。次にHGF→Rasの下流で作用する因子として、MMP2、9の活性をgelatin Zymograohyにより解析した。HGF刺激により4株中2株でMMP2活性の亢進が見られたがMMP9活性には変化がなかった。P13-K阻害剤の添加により細胞運動能、浸潤能と同様にMMP2活性も抑制された。以上により1)HGFはRasを介して卵巣癌細胞の運動・浸潤能を亢進することが示された。2)Rasの下流で,HGF刺激による卵巣癌細胞の運動・浸潤能の亢進はRas-P13Kを介するシグナル伝達が優位に関与し、MMP2が標的の一つであることが示唆された。Ras-MAPK経路の関与は部分的であった。我々はこれまでに肝細胞増殖因子(HGF)が、Rasを介して卵巣癌細胞の運動・浸潤能を亢進することを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-11671629
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11671629
卵巣癌、子宮体癌、絨毛癌の増殖、進展に関与する増殖因子と情報伝達系の解析
今年度はHGF→Rasの下流で作用する因子として癌の浸潤・転移に関わる重要な因子の1つと考えられているMMPについて検討した。HGFを卵巣癌細胞株SKOV-3に添加して、Gelatin zymographyにより培養中のMMP2、9の活性を解析したところ、両者の活性化を認めた。次にdominant negative Ras(DN Ras)蛋白を発現するアデノウイルスを感染させると、DN Rasの発現によりHGF刺激に伴うMMP2、9の活性が消失した。さらにMEK阻害剤(UO125)PI3K阻害剤(LY294002)を添加し、MMP2、9活性への影響を検討したところ、HGF刺激によるMMP2の活性化はPI3K阻害剤により抑制されたが、MEK阻害剤には影響されなかった。MMP9の活性化は両阻害剤により消失した。以上より卵巣癌細胞株においてHGFはRasを介してMMP2、9を活性化することが示され、MMP2の活性化には、PI3Kを介するシグナル伝達経路が、MMP9の活性化にはPI3K、MAPKの両方の経路が関与することが明らかとなった。次にRas→MMPの経路が他の細胞にも存在するかを検討するため、ラット子宮内膜細胞株RENT4細胞に活性型[12Val]K-Ras、[61Leu]H-Rasを形質導入し、MMP2、9の活性を解析したところ、MMP2の活性化が認められた。卵巣癌細胞だけではなく、子宮内膜癌細胞においてもこの経路が作用していることが示された。子宮内膜細胞のアポトーシス誘導におけるRas蛋白(H-Ras、K-Ras)とその下流のシグナル伝達系の関与を解析した。方法(1)活性化型のH-Ras、K-Ras、活性化型Raf、PI3-kinase及び活性化型H-Rasのエフェクター結合領域に点突然変異をもつ変異体H12V35S(Rafの経路が機能)、H12V40C(PI3-Kの経路が機能)を用いた。それぞれのcDNAをラット子宮内膜細胞のRENT4細胞に形質導入しそれぞれの蛋白が発現している細胞株を樹立し、蛋白機能はRafはMAPK、PI3KはAktのリン酸化亢進で確認した。(3)Rasの下流の経路を選択的に抑制するために、MEK阻害剤とPI3-K阻害剤を用いた。成績(1)アポトーシスはベクターのみを発現するmock細胞に比べて、活性化型K-Ras発現細胞(RK12V細胞)では増加,活性化型H-Ras発現細胞(RH61L細胞)では低下、活性化型Raf発現細胞では増加、活性化型PI3-K発現細胞では低下した。(2)アポトーシスは、mock細胞とRK12V細胞ではMEK阻害剤で低下しPI3-K阻害剤で増加した。これに対し、RH61L細胞では両阻害剤により増加した。(3)活性化型H-Rasのエフェクター変異体の発現はどちらもアポトーシスを抑制した。結論(1)子宮内膜細胞においてK-Rasはアポトーシスを誘導し、H-Rasは抑制する。(2)活性化型K-Rasの下流のRafの経路はアポトーシスを誘導しPI3-Kの経路は抑制する。(3)活性化型H-Rasの下流のRaf、PI3Kの経路は共にアポトーシスを抑制する。(4)子宮内膜細胞のアポトーシス誘導においてRasを介するシグサル伝達系路間に作用の違いが存在する。
KAKENHI-PROJECT-11671629
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進行神経芽腫モデルマウスを用いたSeV/DCによる新規免疫治療の開発
MYCNトランスジェニックマウスと同系統のマウスの骨髄から得られた造血幹細胞を元にして、サイトカインカクテルを用いた浮遊培養を行う事で高純度の樹状細胞を大量に培養することに成功した。MYCNトランスジェニックマウスのheterozygoteに対し、肉眼的に腫瘍が発生していない5週齢の段階で樹状細胞を投与することで、腫瘍発生を高率に抑制することに成功した。また、各エフェクター除去実験によりこの樹状細胞の効果はCD4陽性細胞に依存していることが示唆された。以上より、臨床においてDCワクチンの神経芽腫への抗腫瘍効果が期待される結果となった。MYCNトランスジェニックマウスと同系統のマウスの骨髄から得られた造血幹細胞を元にして、サイトカインカクテルを用いた浮遊培養を行う事で高純度の樹状細胞を大量に培養することに成功した。MYCNトランスジェニックマウスのheterozygoteに対し、肉眼的に腫瘍が発生していない5週齢の段階で樹状細胞を投与することで、腫瘍発生を高率に抑制することに成功した。また、各エフェクター除去実験によりこの樹状細胞の効果はCD4陽性細胞に依存していることが示唆された。以上より、臨床においてDCワクチンの神経芽腫への抗腫瘍効果が期待される結果となった。MYCNトランスジェニックマウスと同系統の129+ter/SvJclマウス骨髄から得られた樹状細胞前駆細胞を、Flt-3L/IL-3/IL-6/SCFの4種類のサイトカインカクテルで3週間培養することで樹状細胞前駆細胞を大量増幅。その後、GM-CSF/IL4で1週間培養することで大量の樹状細胞が作成できることを確認。さらに樹状細胞にセンダイウイルスをMOI100で感染させることで、樹状細胞が活性化されることをFACSで解析した。MYCN Tg Mのheterozygoteを用いて、腫瘍の自然発生率と各免疫担当細胞との関係を検討した。MYCN Tg M heterozygoteにおいて、約半数のマウスが腹腔内や縦隔内に腫瘍発生し、20週以内に死亡した。その一方、2,3週齢マウスの上腸間膜動脈神経節を組織学的に検討すると、全てのマウスの神経節において癌細胞を認め、その頻度は週齢が進むごとに減少していた。すなわち、MYCN Tg M heterozygoteにおいて神経芽腫の自然退縮が起こっていることが示唆された。この自然退縮に免疫細胞が関与していると仮定し検討を行った結果、各免疫細胞をdepletionすることで腫瘍発生率が変化することが判明し、このモデルマウスの自然退縮に免疫が関与していることが考えられた。治療として、同系統マウス骨髄から得られた前駆細胞をサイトカインカクテルによって大量増幅して誘導した樹状細胞を使用。樹状細胞に提示する抗原としては腫瘍のLysateを使用し、活性化の方法としてOK-432をパルスした。上述の樹状細胞をマウスに皮下投与し、腫瘍発生率並びに生存率の検討を行った結果、腫瘍が発生していない5週齢の段階で樹状細胞を投与することで、腫瘍発生を高率に抑制することに成功し、この効果は特にCD4・NK細胞に依存していた。26年度が最終年度であるため、記入しない。小児外科学26年度が最終年度であるため、記入しない。研究計画書に記載した平成25年度の実験はほぼ全て終了できているため。MYCNトランスジェニックマウスを繁殖し、腫瘍発生状況と生存率を検討した後に、放射線治療+免疫治療を開始する。
KAKENHI-PROJECT-25893169
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黒髪白肌の系譜-上村松園の技法と表現-
上村松園が活躍した近代日本画壇では、西洋絵画の影響と大会場での公募展覧会を発表の場とする新潮流が興り、近世までの絵画と比較して作品が巨大化した。巨大化した画面に対応するように新しい材料、技法、表現が生まれたと考えられる。しかしこれまで、その新しい技法表現に関する学術的な研究はほとんどされてこなかった。明治から大正期の日本画材について少しずつ新知見が蓄積される中で、同時代の中核となる画家、上村松園の技法材料とその表現を調査分析し、芸術性を技術面から解明する必要性を大きく感じるようになった。また、上村松園作品の多くが制作されてから100年前後を経過し、平成28年度には「序の舞」東京藝術大学大学美術館所蔵(国指定重要文化財)が修復されるなど、作品群が修復時期を迎えつつある。この現状を踏まえ、松園の技法を分析することは作品をよりよいコンディションで修復するために必要不可欠となっている。また、技法や表現を解明するには、画材の科学的な分析に加えて、日本画実技に立脚した技法の実証実験による結果を集積することが重要であると考える。本研究では、スケッチ、模写、下絵、本画作品を調査し、上村松園の使っていた技法とその表現の種類について分析する。それを日本画実技による再現実験によって検証し、松園の技法と表現の特徴を明らかにしたい。さらに、技法材料の同定、絵画構造、表現効果の研究成果は所蔵先の博物館及び美術館と共有して、作品展示や修復に活用できることを期待している。「焔」の調査結果は第40回文化財保存修復学会にて発表した。科学調査結果を提示するとともに、顕微鏡写真から観察されたぼかしや塗重ねなどについて考察を述べた。また、制作年である1918年の文展図録掲載画像と比較し、現在黒色を呈している打掛の蜘蛛の巣模様が、本来は銀色をしていることが判明した。それによって、本作を現在見て感じる重さや精神的な暗さが、作家の意図したものより強く出てしまっていることが明らかになった。また、制作からかなり後年に発行された作家のエッセイでは裏彩色を行ったという言葉があったが、顕微鏡による観察から、すべて表から彩色されていることが確認された。「花嫁」の調査報告は、JR西日本奈良ホテルへの報告書としてまとめた。調査時に額を外したことで、素絹と思われていた背景の絹地にうっすらと薄墨と思われる下色が塗られていたことが分かった。本作にも裏彩色はなく、表からの重ね塗りであった。これら2点の調査結果と、他の松園作品の修復に携わった修復者の発言を根拠にすると、40歳ごろ以降の松園作品で裏彩色は用いられていないということになる。ほとんどの絵絹作品には裏彩色が使われていると考えられてきたことについて、検証しなくてはならないことが分かった。縮図帖全7冊については、調査分析が完了した。すべての文字を書起こし、描かれたモチーフを分類し、模写については原本の特定をできる範囲で行った。描き込まれた色名には頻度にばらつきがみられ、作家の感度が高い色相は赤、白、黒であることが伺えた。図帖全7冊についての調査分析結果をPDF化してPC、タブレット上で画像の拡大縮小、キーワード検索による選択表示閲覧ができる方法を試験している。これらは所蔵美術館での活用を目指している。デジタル上での表示種手法については未完了のため、来年度研究期間延長を行い使いやすいものを完成させる予定である。上村松園が活躍した近代日本画壇では、西洋絵画の影響と大会場での公募展覧会を発表の場とする新潮流が興り、近世までの絵画と比較して作品が巨大化した。巨大化した画面に対応するように新しい材料、技法、表現が生まれたと考えられる。しかしこれまで、その新しい技法表現に関する学術的な研究はほとんどされてこなかった。明治から大正期の日本画材について少しずつ新知見が蓄積される中で、同時代の中核となる画家、上村松園の技法材料とその表現を調査分析し、芸術性を技術面から解明する必要性を大きく感じるようになった。技法や表現を解明するには、画材の科学的な分析に加えて、日本画実技に立脚した技法の実証実験による結果を集積することが重要であると考える。本年度は、松園の視点を明確にするため、松柏美術館所蔵の上村松園縮図帳を調査分析した。縮図帳には、松園が行った写生や模写が描かれており、さらに岩絵具や色の名称が描きこまれている。今回調査対象とした縮図帳、「松園画帖」は61枚で、古画の模写、動植物の写生、画家と同時代の市井の人々のスケッチなどが墨線と淡彩で描かれていた。模写の原本が特定できたものは、春日権現験記絵、随身庭騎絵巻、円山応挙「布袋、南天、芭蕉図」「狗子図」であった。特定には至っていないものでは、桃山時代風俗図、祭礼図、水墨山水図があった。古代中国風の人物像には、中国春秋戦国時代の故事にちなんだ人物名が描き込まれており、松園が幅広いジャンルの絵画を目にし、学んでいたことがわかった。色彩については、ロク(緑青)、グン・郡(群青)、コフン(胡粉)、朱、金、など伝統的な顔料名が簡潔に記載され、ボカシなどの技法に関する言葉も散見された。地色と模様の色を意識的に書き分けていた。
KAKENHI-PROJECT-16K02258
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黒髪白肌の系譜-上村松園の技法と表現-
特に着物や小物の模様について詳細に書き込まれており、時には水彩絵の具で彩色している部分もあった。縮図帳の情報量が当初想定より多く、その分析に時間がかかっている。今年度は本画作品の科学調査を中心に、描画表現についての考察を行った。調査できた作品は、東京国立博物館所蔵「焔」(1918年・〈大正7〉年、松園43歳)、JR西日本所蔵奈良ホテル保管「花嫁」(1935年・〈昭和10〉年、松園60歳)の2点で、蛍光X線分析、顕微鏡画像撮影、赤外線撮影を実施した。「焔」からはいわゆる伝統的な画材のほかに、クロムやケイ素などが検出された。顕微鏡撮影で確認した技法としては艶墨を用いて瞼や黒目、お歯黒を光らせる、白目部分に金泥を用いるという松園独特の質感へのこだわりが感じられた。また絵の具層は薄く、絹目が露呈するほどながら、美しいグラデーションが作られている様子も見られた。「花嫁」は、主に帯部分の黄緑からケイ素やクロムなどが検出された。赤色から検出された元素は1種類だが、目視認識では5種類ほどの違いがあった。彩色技法では、黒無垢の手前部分(絵画空間のなかで鑑賞者に近い場所)には絵の具を厚くぬり、影や奥になる部分は薄めに塗る傾向がみられた。こめかみの髪の生え際部分では、顔の白色グラデーションからほぼ絹地に移り変わり、そこから具墨や艶墨で髪の描き起しを行っている様子がうかがえた。細部の質感へのこだわりとしては、唐織帯の織糸のふっくらとした量感や鈍く光る質感、びらびら簪に雲母を使用して立体感と艶感を出していた。高年期の作品で技術的にも円熟していると思われ、必要最低限で最大の効果を生むような絵具の使用感であった。縮図帖については新たに6冊分の分類を開始した。主に墨線による模写と色彩名の書き込みが多く、モチーフと文字の種類の分析を進めている。模写部分の原本特定は来年度の課題である。上村松園の重要な作品である「焔」の調査を実施するとともに、学会での発表(2018年6月)を行うことができた。その結果から、次の作品調査への手がかりを得ることができた。また熟年期の作例「花嫁」の調査を行い、「焔」と比較して顔料の使い方、表現方法について知見を得た。縮図帖調査は手元にあるデータの文字読み取り作家の意向をよみとる手がかりとなる出現回数の分析が完了した。上村松園が活躍した近代日本画壇では、西洋絵画の影響と大会場での公募展覧会を発表の場とする新潮流が興り、近世までの絵画と比較して作品が巨大化した。巨大化した画面に対応するように新しい材料、技法、表現が生まれたと考えられる。しかしこれまで、その新しい技法表現に関する学術的な研究はほとんどされてこなかった。明治から大正期の日本画材について少しずつ新知見が蓄積される中で、同時代の中核となる画家、上村松園の技法材料とその表現を調査分析し、芸術性を技術面から解明する必要性を大きく感じるようになった。また、上村松園作品の多くが制作されてから100年前後を経過し、平成28年度には「序の舞」東京藝術大学大学美術館所蔵(国指定重要文化財)が修復されるなど、作品群が修復時期を迎えつつある。この現状を踏まえ、松園の技法を分析することは作品をよりよいコンディションで修復するために必要不可欠となっている。また、技法や表現を解明するには、画材の科学的な分析に加えて、日本画実技に立脚した技法の実証実験による結果を集積することが重要であると考える。本研究では、スケッチ、模写、下絵、本画作品を調査し、上村松園の使っていた技法とその表現の種類について分析する。
KAKENHI-PROJECT-16K02258
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診療チーム意思決定のバスケット分析とAPMLを用いた道筋解析と行動予測
診療チームにおける意思決定の道筋解析と展開予測法を確立するために、非構造化データである日本語自然文で記載された診療記録のアセスメント記述の解析にAPMLとアソシエーション分析を適用した。診療記録のアセスメント記述から予測した診療計画と、実際の処置・処方との比較から、主にアソシエーション分析を用いた隠蔽情報・暗黙知の顕在化によって的中率の向上(40%前後->6070%)が示された。他方、自然文処理精度の重要性が判明したため、異なったアルゴリズムを組み合わせた構文解析法を開発して日本語自然文の処理過程に導入し、予測精度を向上させ(的中率約80%)、意思決定の過程と展開の予測を概ね可能とした。1)少量の(偽造された)SMTPエンベロープ情報から419 scam(詐欺メール)送信者の送信方略等に関する意図およびその後の展開予測のためのアルゴリズムを構築し、大手フリーメールのサーバから送信される419scamを対象として実証実験を行った。送信者の送信方略に関する意図を顕在化させるステップをアルゴリズムに組み込んだうえでエンベロープ情報をバスケット分析とベイズ推定を用いて解析することによって、419scamの高効率の検出と阻止(現時点における感度90%、特異度98%)が可能となるとともに、少量データを用いた意思決定の道筋解析と展開予測に際し、暗黙知を顕在化して形式知とすることの重要性が示された。2)同病名が付与された患者の電子カルテのアセスメントおよびplanの記載(日本語、自然文)を抽出し、個人情報を除去した後に解析用サーバに移出して、まず、MeCabを用いた形態素解析、次にCocke-Younger-Kasami (CYK法)を用いた構文木解析および係り受け解析(CaboCha,辞書にはmecab-jumandicを利用)を実施するとともに、GNU Rを用いて因子分析、多重対応分析、バスケット(アソシエーション)分析およびベイズ推定を行って記載者の治療指針・アウトカムの推定を試みた。また、推定結果をオーダ発行歴を含むプラン記載と比較して推定の精度を調べるとともに、推定結果に影響を及ぼす要因を洗い出した。精度は80%強と日本語自然文解析としては良好であったが、医療従事者・診療チームの暗黙知が診療記録に記載されない、クリニカルパス適用症例ではパスの内容を補充する必要がある、記載量の多寡によって推定精度が大きく影響されること等に加え、自然文処理の方法、および同義語・同義フレーズ記載対応のためのシソーラス整備の必要性が明らかとなった。1.本研究で構築した展開予測アルゴリズムの妥当性検証、およびアソシエーション分析とAPMLの予測能力特性の評価を目的とし、構造化データ(某フリーメール業者から当方の受信中継サーバ群に送信されている漏洩クレデンシャルを利用した詐欺メールのSMTPヘッダ情報)を材料、詐欺メールの検出効率を指標に用い、予測と検出をリアルタイム(プログレッシブ)解析した。検証期間中に捕捉した詐欺メールのエンベロープ送信者アドレスの20%弱が漏洩・流出アドレスで、アソシエーション分析、APMLとも、流出ログイン情報は詐欺メールのフィルタリング回避を企図して用いられたことが推定された。アソシエーション分析の結果に基づいたたフィルタでの検出精度99%以上に対して、APMLでは、やや、低値(87%)を示した。また、予測された事象が実際に生起するまでのタイムラグの予測はいずれの方法を用いても困難であった。2.非構造化データである電子カルテのアセスメント項の記載から、記載者のその後の行動予測を試みた。前年度に隠蔽情報の顕在化等によって80%強まで上昇した的中率は、一時、足踏み状態であったが、的中度の向上を阻む要因が日本語自然文記述の構文把握および単語の相互関係把握の正確性不足であるを明らかにした。そこで、異なったアルゴリズムに基づいた手法(構文木解析と係り受け解析)を組み合わせた解析法を開発した。この解析法は医療情報学会から論文掲載推薦を受けたが、発表時点では、解析対象が特定の疾患を中心とした記載であったため、追試を行って汎用性を確認した(論文作成中)。また、この手法で前処理した文を、用手的に作成したパラレルコーパスまたは機械学習法を用いて正しい構文に変換することで、2次利用が容易なデータに変換するためのアルゴリズムの概要を検討・提示した。診療チームにおける意思決定の道筋解析と展開予測法を確立するために、非構造化データである日本語自然文で記載された診療記録のアセスメント記述の解析にAPMLとアソシエーション分析を適用した。診療記録のアセスメント記述から予測した診療計画と、実際の処置・処方との比較から、主にアソシエーション分析を用いた隠蔽情報・暗黙知の顕在化によって的中率の向上(40%前後->6070%)が示された。他方、自然文処理精度の重要性が判明したため、異なったアルゴリズムを組み合わせた構文解析法を開発して日本語自然文の処理過程に導入し、予測精度を向上させ(的中率約80%)、意思決定の過程と展開の予測を概ね可能とした。1.転帰・事後の結果が判明している76事例のカルテのアセスメント記載について開発済のアルゴリズムを適用し、アルゴリズムの問題点を洗い出した。記載量が多い場合には、ほぼ所期どおりの結果が得られたが、記載が短フレーズや単語の羅列であった場合の予測能力は低かった。また、経過に問題が生じたケースでは記載が多く、順調だった場合には記載が少ない傾向があることから、評価に際して記載量の多寡によるバイアスが生ずることが判明した。2.RDF/RDF
KAKENHI-PROJECT-23590629
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診療チーム意思決定のバスケット分析とAPMLを用いた道筋解析と行動予測
Schemaに基づいて記載事項を定型化変換して上述の事例を再解析した。定型化によってデータ量の多寡によるバイアスは軽減したが、予測能力の低下は顕著となった。この過程で、APML解析前のバスケット分析による特徴抽出精度が結果を左右すること、および予測精度を向上させる動詞・助動詞の使用頻度が実際には低く、名詞と暗黙知の処理が精度向上の鍵となることが明らかとなった。これらの結果をもとにアルゴリズムを改変し、単純系モデルとして419scamと呼ばれる詐欺メールの出現予測とリアルタイム検出に適用して検証した。電子メールのエンベロープ情報程度の情報量があれば、多くの場合、名詞だけでも95%以上の確率で出現を予測し捕捉できることが判明した。しかしながら、エンベロープ情報から送信サーバに関する情報を除いた256Byte未満のデータでは、的中度は50%程度に低下した。その後、この状態を常時シミュレートできる検出モデルが得られて恒常的にPDCAサイクルを廻すことが可能となったため、アルゴリズムの改良によって、現在、この程度のデータの種類・量でも70%程度の的中率が得られるようになりつつある。1) 23,24年度の研究成果、特に上述の詐欺メール検出を対象とした「展開予測のプロスペクティブ解析」によって、当初予定していた意思決定の道筋を解析するためのアルゴリズムの概要(基本部分)がほぼ固まり、実証試験で高い予測精度が得られることを示した。ただ、実証実験の結果から、APMLよりもバスケット(アソシエーション)分析の方が暗黙知を顕在化して処理に組み込みやすいことが判明したため、24年度よりAPMLとバスケット分析の主従を逆転させた。その結果、誤検出(偽陽性)が減少したことで、このアルゴリズムを用いた詐欺メールフィルタを実用に供することが可能となり、大手フリーメール業者に対し根拠を明示して判定結果を通知(bounce messageで送信サーバに通知)することも、また実現できた。2)診療録の解析では、まだ、解析例数が予定の50%程度であるにもかかわらず、暗黙知の顕在化による推定精度の著しい向上が観察され、当初予測していた推定精度(80%)にほぼ到達できたことから、本研究の方向性が間違っていなかったことが判明したことは大きな収穫であった。3)当初の計画では、日本語自然文で記載された診療録の意味解析にはセマンティクスと定型語句変換技法を援用して対応する予定であった。しかしながら、実際に解析を進めてゆく過程で、他の研究成果を援用して対応する予定であったそれらの意味解析(特に日本語医療記述の意味解析)法が期待していたレベルに到達していないことが判明し、調書記載の「他の研究成果を援用」が困難であることが明らかとなった。そのため、日本語自然文の形態素解析、構文木解析、係り受け解析を組み合わせて実施する機構を自力で開発する必要が生じた。まだプロトタイプの段階ではあるが、上述の診療録解析での推定精度向上には、この機構の寄与も小さくないと推定される。「1.レトロスペクティブアプローチを用いた診療チーム意志決定推測アルゴリズムの改良と検証」については、実績概要に記載のように、問題点の洗い出し、ポイントの把握、アルゴリズムの改良について、ほぼ、所期の目的を達成できた。
KAKENHI-PROJECT-23590629
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視空間成立過程の発生的研究
1.本研究は,視覚還元事態であるガンツフェルト(GANZFELD:等質視野)における心理体験の発生・発達過程を解明しようとするものである.すなわち,この原初的空間における「外界」と「自己」意義のダイナミズムに着目し,「空間以前」ともいうべき位相を解析するとともに,その特性を視空間知覚の諸現象と関連づけて検討することを目的とした.2.前年度に引き続き,ガンツフェルトにおける印象の時間的変化を自由口述法によって追跡し,同時計測した瞳孔径の値との対応を求めた.その結果,(1)みえの明るさの変化の報告に5001500ms先行して瞳孔径の顕著な変化が起きること,(2)この種の比較的断続的な変化とともに,呈示開始からの時間経過にともなって瞳孔が漸進的に収縮する傾向が認められること,(3)外界と自己の境界が希薄になり,見るという行為の主体性が失われたとされる事態では,瞳孔径の微細な変動が生じなくなること,(4)視野の明るさ(輝度)は,暗化に至る時間と逆の関係にあること,(5)これらの特性は,色光のうち赤に特異的に認められること,(6)印象報告の豊かさには個人差が著しいが,印象内容およびその時間的変化については一般性が高いこと,などが主要な所見として得られた.3.前項の所見のうち,一部((3)・(5)・(6))は研究代表者による先行研究の所見を確認したものであるが,結果の(1)・(2)・(4)は本研究によって新たに得られたものである.これらの所見を総合しモデル化することによって,視空間の発生過程の解明に多大の示唆が与えられると思われるので,その作業を急ぎたい.4.本研究で得られたガンツフェルト事態における印象の自由口述記録は,単に視覚心理学に限定されることなく,人格・病態心理学との関連においても,今後興味深い分析の素材となりうるものと考えられる.そのような理由から,その表現に加工を加えることなく保存することにした.この種の資料に関心をもつ研究者の利用に供したい.1.本研究は,視覚還元事態であるガンツフェルト(GANZFELD:等質視野)における心理体験の発生・発達過程を解明しようとするものである.すなわち,この原初的空間における「外界」と「自己」意義のダイナミズムに着目し,「空間以前」ともいうべき位相を解析するとともに,その特性を視空間知覚の諸現象と関連づけて検討することを目的とした.2.前年度に引き続き,ガンツフェルトにおける印象の時間的変化を自由口述法によって追跡し,同時計測した瞳孔径の値との対応を求めた.その結果,(1)みえの明るさの変化の報告に5001500ms先行して瞳孔径の顕著な変化が起きること,(2)この種の比較的断続的な変化とともに,呈示開始からの時間経過にともなって瞳孔が漸進的に収縮する傾向が認められること,(3)外界と自己の境界が希薄になり,見るという行為の主体性が失われたとされる事態では,瞳孔径の微細な変動が生じなくなること,(4)視野の明るさ(輝度)は,暗化に至る時間と逆の関係にあること,(5)これらの特性は,色光のうち赤に特異的に認められること,(6)印象報告の豊かさには個人差が著しいが,印象内容およびその時間的変化については一般性が高いこと,などが主要な所見として得られた.3.前項の所見のうち,一部((3)・(5)・(6))は研究代表者による先行研究の所見を確認したものであるが,結果の(1)・(2)・(4)は本研究によって新たに得られたものである.これらの所見を総合しモデル化することによって,視空間の発生過程の解明に多大の示唆が与えられると思われるので,その作業を急ぎたい.4.本研究で得られたガンツフェルト事態における印象の自由口述記録は,単に視覚心理学に限定されることなく,人格・病態心理学との関連においても,今後興味深い分析の素材となりうるものと考えられる.そのような理由から,その表現に加工を加えることなく保存することにした.この種の資料に関心をもつ研究者の利用に供したい.1.本研究は,視覚還元事態であるガンツフェルト(GANZFELD;等質視野)における心理的体験の発生・発達過程を解明しようとするものである.すなわち,この原初的空間における「外界」および「自己」の意識のダイナミズムに着目し,「空間以前」ともいうべき位相を,言語的・生理的・行動的測度によって解析するとともに,その特性を奥行情報検出機構・視空間構造・空間表象などの心理学的諸問題と関連づけて検討することを目的としている.2.今年度は,ガンツフェルトにおける諸印象を自由口述法によって報告させ,その内容にもとづいて特性分析をおこなうとともに,同時収録した瞳孔反応を計測し,両者の関連を検討した.その結果,基本的な現象特性を明らかにすることができ,そのうち特に空間印象・暗化・色変化と対応して生起する眼球・瞳孔系活動の特徴を明らかにすることができた.この成果は新たな知見であり,視空間の心理学的研究に多大の示唆を与えるものと考えられるので,現在欧文論文にまとめて投稿中である.3.実験的分析と並行して,ガンツフェルト事態における現象分析の報告例の収集に努めた.
KAKENHI-PROJECT-06301012
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視空間成立過程の発生的研究
その結果,本研究と類似の発想にもとづく研究は他に例をみないことが確認されたが,本研究の主目的を達成する上で,われわれの実験的成果をそれら先行研究の所見とどのように関連づけるかについても種々の観点から検討した.4.研究はほぼ計画どおりに進行している.ただ,瞳孔・眼球系反応の計測にあたって,当初予期し得なかった問題が生じたこと,膨大な言語反応データの収集・整理予想以上の労力を要したことのために,さらに解析すべき課題が残っている.しかし,技法を確定して有意義な知見を得ることに成功しているので,本研究期間内に当初計画の目標を達成できる見込みである.1.本研究は,視覚還元事態であるガンツフェルト(GANZFELD:等質視野)における心理体験の発生・発達過程を解明しようというものである.すなわち,この原初的空間における「外界」と「自己」意識のダイナミズムに着目し,「空間以前」ともいうべき位相を解析するとともに,その特性を視空間知覚の諸現象と関連づけ検討することを目的とした.2.前年度に引き続き,ガンツフェルトにおける印象の時間的変化を自由口述法によって追跡し,同時計測した瞳孔径の値との対応を求めた.その結果,(1)みえの明るさの変化の報告に5001500ms先行して瞳孔径の顕著な変化が起きること,(2)この種の比較的断続的な変化とともに,呈示開始からの時間経過にともなって瞳孔が漸進的に収縮する傾向が認められること,(3)外界と自己の境界が稀薄になり,見るという行為の主体性が失われたとされる状態では,瞳孔径の微細な変動が生じなくなること,(4)視野の明るさ(輝度)は,暗化に至る時間と逆の関係にあること,(5)これらの特性は,色光のうち赤に特異的にみとめられること,(6)印象報告の豊かさには個人差が著しいが,印象内容およびその時間的変化については一般性が高いこと,などが主要な所見として得られた.3.前項の所見のうち,一部((3)・(5)・(6))は研究代表者による報告を確認したものであるが,所見(1)・(2)は本研究によって新たに得られたものである.これらの所見を総合しモデル化することによって,視空間の発生に多大の示唆が与えられるように思われるので,その作業を急ぎたい.4.本研究で得られたガンツフェルト事態における印象の自由口述記録は,単に視覚心理学に限定されることなく,人格・病態心理学などとの関連においても,今後興味深い分析の素材となりうるものと考えられる.そのような理由から,その表現に加工を加えることなく保存することにした.この種の資料の関心をもつ研究者の利用に供したい.
KAKENHI-PROJECT-06301012
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津波による流出木材の破壊力推定に関する研究
砕波段波に伴う場合,サージ・フロントに伴う場合と2本連なった場合の流木衝撃力に関する実験的検討を行った.弾性波理論に基づく流木の最大衝撃力,弾塑性理論に基づく流木の最大衝撃力,衝撃力立ち上がり時間と反発係数に関する理論的検討も行った.本研究で得られた主な結論は次の通りである.1.砕波段波とサージ・フロントに伴う流木の見かけの質量係数,移動速度と衝撃力継続時間の検討を行い,任意開度を有する構造物への流木の最大衝撃力の一評価法を考案した.2.2本連なった場合の流木衝撃力は1本の場合の2倍と1本の場合の長さを2倍にしたものとの間になる.3.流木の移動速度と衝撃力継続時間には,Froudeの相似則がほぼ成立する.4.水の緩衝機能を考慮した弾性波理論に基づき,マッシブな構造物に対する流木衝撃力の評価法を考案した.5.弾塑性理論に基づき,構造物へ任意角度で衝突する流木の最大衝撃力,衝撃力立ち上がり時間と反発係数の評価法を考案した.本評価は構造物の撓みや流木の水平回転角速度をも考慮したものとなっている.流木の内部減衰が無視できる場合の最大衝撃力については近似解を,さらに構造物の剛性が無限大の場合については解析解を誘導した.今後は,櫓を組み,流木を吊って振る方法で実際規模に近い実験を行い,流木の先端部降伏応力,反発係数,衝撃力立ち上がり時間,最大衝撃力等の検討を行い,弾塑性理論に基づいた評価法の精緻化を行っていきたい.砕波段波に伴う場合,サージ・フロントに伴う場合と2本連なった場合の流木衝撃力に関する実験的検討を行った.弾性波理論に基づく流木の最大衝撃力,弾塑性理論に基づく流木の最大衝撃力,衝撃力立ち上がり時間と反発係数に関する理論的検討も行った.本研究で得られた主な結論は次の通りである.1.砕波段波とサージ・フロントに伴う流木の見かけの質量係数,移動速度と衝撃力継続時間の検討を行い,任意開度を有する構造物への流木の最大衝撃力の一評価法を考案した.2.2本連なった場合の流木衝撃力は1本の場合の2倍と1本の場合の長さを2倍にしたものとの間になる.3.流木の移動速度と衝撃力継続時間には,Froudeの相似則がほぼ成立する.4.水の緩衝機能を考慮した弾性波理論に基づき,マッシブな構造物に対する流木衝撃力の評価法を考案した.5.弾塑性理論に基づき,構造物へ任意角度で衝突する流木の最大衝撃力,衝撃力立ち上がり時間と反発係数の評価法を考案した.本評価は構造物の撓みや流木の水平回転角速度をも考慮したものとなっている.流木の内部減衰が無視できる場合の最大衝撃力については近似解を,さらに構造物の剛性が無限大の場合については解析解を誘導した.今後は,櫓を組み,流木を吊って振る方法で実際規模に近い実験を行い,流木の先端部降伏応力,反発係数,衝撃力立ち上がり時間,最大衝撃力等の検討を行い,弾塑性理論に基づいた評価法の精緻化を行っていきたい.研究実施計画に従い、砕波段波に伴う流木を対象として、任意開度を有する構造物に衝突時の見かけの質量係数、同構造物への衝撃力継続時間、流木の移動速度などについて実験的検討を行い、対象流木による最大衝撃力の評価方法の開発を試みた。本年度に得られた主な結論は次の通りである。1.構造物の開度、段波の強さ、段波波高と流木径の比や細長比など次第で、流木の衝撃力は、段波そのものの衝撃力に比べて、無視できない。2.流木の質量係数は約1.5であった。この値は従来の報告値1.51.6とほぼ同じである。3.砕波段波に伴う流木の見かけの質量係数は、開度に対してほぼ放物分布するが、段波の強さ、段波波高と流木径の比や細長比にはほとんど依存しない。4.流木の衝撃力継続時間は、開度が大きくなるにつれて長くなり、しかも開度に対して相似性を有する。ただし、開度≧20%での衝撃力継続時間の変化は小さい。5.流木の移動速度と衝撃力継続時間には、Froudeの相似則がほぼ成立する。6.流木の衝撃力継続時間は、実際的な細長比の範囲内では、細長比にあまり依存しない。7.限られた条件での実験結果に基づき、流木による最大衝撃力の一評価方法を提案した。次年度は、データの蓄積と共に、衝撃力継続時間や最大衝撃力の理論的評価方法の検討を行いたい。沿岸貯木場の実態、サージ・フロントに伴う場合や複数本連なった場合などの流木衝撃力についても検討を行いたい。砕波段波に伴う流木を対象に,前年度とは異なった条件で実験を行い,データを蓄積すると共に,サージ・フロントに伴う場合と2本連なった場合の流木衝撃力等の実験も行った.弾塑性理論に基づく流木の最大衝撃力,衝撃力立ち上がり時間と反発係数に関する理論的検討も行った.本年度に得られた主な結論は次の通りである.1.データ蓄積後の解析においても,砕波段波に伴う流木に対する主な結論は前年度と変わらなかった.2.サージ・フロントに伴う流木の見かけの質量係数,移動速度と衝撃力継続時間の検討を行い,最大衝撃力の一評価法を示した.
KAKENHI-PROJECT-04650450
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津波による流出木材の破壊力推定に関する研究
3.サージ・フロントの場合の見かけの質量係数は砕波段波の場合のものよりやや大き目である.4.サージ・フロントの場合の衝撃力継続時間は開度に関係なくほぼ一定である.5.2本連なった場合の最大衝撃力は1本の場合の2倍と1本の場合の長さを2倍にしたものとの間になる.6.弾塑性理論に基づき,被衝突物へ任意角度で衝突する流木の最大衝撃力,衝撃力立ち上がり時間と反発係数の評価法を考案した.本評価法は被衝突物の撓みや流木の水平回転角速度をも考慮したものとなっている.流木の内部減衰が無視できる場合の最大衝撃力については近似解を,さらに被衝突物の剛性が無限大の場合については解析解を誘導した.今後は,櫓を組み,流木を吊って振る方法で実際規模に近い実験を行い,流木の先端部降伏応力,反発係数,衝撃力立ち上がり時間,最大衝撃力等の検討を行い,弾塑性理論に基づいた評価法の精緻化を行っていきたい.
KAKENHI-PROJECT-04650450
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小学校教員養成における授業力向上プログラムの開発
本研究の目的は、小学校教員志望学生の授業力の向上を図るため、(1)現職教師が1単位時間の授業を実施する際に用いた教授方略の決定プロセスを明らかにし、教授方略の決定指標を作成すること、(2) (1)で作成した教授方略の決定指標を含めた授業設計法について学び、それらの知識や技能を実際に活用できる、小学校教員志望学生を対象とした教育プログラムを開発すること、の2点である。本研究は20132015年度までの3カ年で実施する予定であったが、2014年度後半から約1年半の研究中断期間が生じたため、研究を再開した2016年度にこれまでの研究成果と、中断期間に生じた教員養成課程に対する社会的ニーズの変化をふまえ、研究の期間延長を含めた2018年度までの3カ年において本研究の目的が達成できる研究計画の見直しを行った上で実施した。まず、研究目的(1)は、20132014年度に行った調査および2016年度に行った調査をふまえ、開かれた課題(探究活動などにおいて学習者が自ら設定する課題)と、閉じた課題(教科教育などにおいて教師が設定する課題)の異なるタイプの授業において教師が用いている教授方略の決定指標を明らかにした。次に、研究目的(2)では、(1)で明らかにした教授方略の決定指標を含めた授業設計法を学び、そこで学んだ知識や技能を実際に活用できる小学校教員志望学生を対象とした教育プログラムの開発を2017年度に行い、その教育プログラムの実施・評価を行った。2018年度には2017年度に開発・実施した教育プログラムの評価結果をふまえ、教育プログラムの改善を行い、開かれた課題と閉じた課題それぞれの授業設計を学ぶ授業(研修)において、改善した教育プログラムの実施および評価を行った。本教育プログラムでは指導すべき事項は確定させ、それを習得するための時間を弾力的に設定できるようにした。平成25年度は、現職教師が1単位時間の授業を実施する際に用いた教授方略の決定プロセスを明らかにし、教授方略の決定指標を作成し、その指標をふまえた教育プログラムを開発することを目的とし、研究を実施した。本年度の調査において想定していた対象である「授業がうまい」と言われている教師の選定方法に難航したため、一般的に「授業がうまい」と言われている教師の教職経験が長い点に注目し、普通学級において学習に困難を抱えている児童への教授方略が、教師の教職経験年数や専門性(取得免許状による視点の相違)によって異なるのか、また、その違いは経験でしか乗り越えられないのかという点をインタビュー調査の結果より分析し、児童の困難を抱える学習の種類に応じた教授方略の指標を明らかにした(柵木・今井2014)。この調査と並行して、本研究で開発する教育プログラムを展開する科目の過去2年分の授業データを整理し(今井2013)、学習者が授業力の向上を図るために改善しなければいけない授業内容を検討した。その結果、授業を設計するための土台となる学習者の分析(把握)に関する教育内容の改善が必要ではないかという点が見えてきた。これに関しては上述した調査の成果をふまえて、平成26年度に実施する授業では改善ができるのではないかと考え、平成25年度のカリキュラムにおいて、上述した点を改善した平成26年度版のカリキュラムの開発を行った。本研究では小学校教員志望学生の授業力の向上を図るために、(1)現職教師が1単位時間の授業を実施する際に用いた教授方略の決定プロセスを明らかにし、教授方略の指標を作成する、(2)その指標を踏まえた授業設計法を学び、それを実際に活用できる小学校教員志望学生を対象とした教育プログラムを開発することである。「授業がうまい」現職教師の教授方略の決定プロセスを明らかにするため、昨年度は教師の教職経験に注目し、授業における学習者の状況をもとにした教授方略の決定プロセスを、普通学級における学習に困難を抱えている学習者を対象にどのように行っているかを明らかにした。本年度は昨年度同様、教師の教職経験に注目し、学習者の状況を授業においてどのように教師は把握し、教授方略に生かしているのかをインタビュー調査によって明らかにしようとした。現在、その結果は分析中である。上記の調査と並行して、本研究で開発するプログラムを展開する科目の1期生が卒業を迎えるため、これまでの当該プログラムの課題点を明らかにするための授業データの年度間の分析を行った。この分析では、授業で学んで知識を実際に活用できるプログラムが実施できていたかという点に焦点を絞って行った。その結果、初年度は指導技術は実際に活用していたが、授業目的や授業内容と教授方略の関係を考え、授業を行うという点では課題が見られたが、2年目・3年目にはこの点が知識を実際に活用するカリキュラムを修正したことにより改善することができたことが明らかになった。また、カリキュラム開発の初段階として重要な学生のニーズ分析を行う為、1期生への質問紙調査を実施した。後者の調査については現在データを分析中である。育児休業の取得に伴い、研究を中断していたため、平成27年度は研究を行っていない。産前産後の休暇及び育児休業の取得に伴い、本研究を中断したため。本研究は、小学校教員志望学生の授業力の向上を図るために、(1)現職教師が1単位時間の授業を実施する際に用いた教授方略の決定プロセスを明らかにし、教授方略の指標を作成すること、(2)その指標を踏まえた授業設計法を学び、それを実際に活用できる小学校教員志望学生を対象とした教育プログラムを開発することが目的である。以下、平成28年度に行なった活動である。
KAKENHI-PROJECT-25350326
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小学校教員養成における授業力向上プログラムの開発
<1.授業力及び教授方略の定義の見直し>本研究を休止した時期以降に出された文部科学省の答申等の各種資料、および教員養成・教師教育関係の文献調査より、今後の小学校教員に求められる資質・能力について整理を試みた。並行して、小学校教員養成のゴールに位置するH27年度教員採用試験募集資料(全68教育委員会対象)に記述されている求める教師像から授業力に関する言及及びその詳細を調査した。さらに、次期学習指導要領に関する資料や、教員の育成指標に関する先行事例より、今後の小学校教員に必要とされる授業力に関わる事項の整理を試みた。上述した活動より、本研究で着目する授業力とは何かを見直した。<2.研究目的(1)の教授方略の指標のプロトタイプの作成>上記の活動で見直した授業力・教授方略の定義をもとに、教科を問わず、小学校の教員に必要とされる授業設計に必要な視点および教授方略の決定プロセスに関する仮説を立てた。その仮説をもとに、研究目的(1)の教授方略の指標を作成するための調査対象の見直しを図った。この見直しをふまえ、調査対象の条件を満たしている現職教員一名に対し、インタビュー調査を実施し、その調査結果より指標のプロトタイプを作成した。<3.研究目的(2)の小学校教員志望学生を対象とした教育プログラムの試行版の開発>上述した指標のプロトタイプをふまえ、授業設計法を学ぶことのできる学校教員志望学生を対象とした教育プログラムの施行版の開発を行なった。本研究の休止期間において教員養成に関わる様々な答申等が出され、教育現場を取り巻く状況が変化しており、学校教員志望学生に求められる授業力とは何かを再度見直す必要があると考え、定義の見直しにかかる資料・文献調査及びその分析を行った。これらの活動は、本年度当初には計画していなかった活動であったが、本研究目的を達成するためには必要不可欠であると判断し、この活動を行った上で、当初予定した研究活動を遂行したため、平成28年度前半に行うべき活動が、平成28年度後半に行わざるを得ず、結果的に進捗状況はやや遅れことになった。本研究の目的は,次の2点である。(1)現職教師が1単位時間の授業を実施する際に用いた教授方略の決定プロセスを明らかにし、教授方略の決定指標を作成する。ここでいう教授方略の決定とは、学習内容をどのような教材を用いながら如何に指導するかを決定する行為を指す。(2)(1)で作成した教授方略の決定指標を含めた授業設計法について学び、それらの知識や技能を実際に活用できる、小学校教員志望学生を対象とした教育プログラムを開発する。平成29年度は,前年度に試作した教授方略の決定指標をふまえた小学校教員志望学生を対象とした教育プログラム(90分×15回)を開発し,平成29年4月から7月までの期間で実施した。開発した教育プログラムを構成する各教育内容の評価は,確認テストや課題(実際に学習活動を設計・実施する課題)の進捗状況より,形成的評価にておこなった。その結果,使用可能な教材の種類や手立てが少ない場合の問題点が示唆された。そこで,多様な教材を活用していると考えられる教育場面(日本語指導が必要な児童生徒を対象とした教科等の指導場面)を対象に,どのような学習場面においてどのような教材が使用されているのかを調査した。
KAKENHI-PROJECT-25350326
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放電加工シミュレータの開発研究
放電加工シミュレータの開発を行ない,目標とする工作物形状を得るために必要な工具電極形状や加工条件を自動的に決定できるシステムを構築した.つまり,放電面を放電痕と同じ程度の大きさのメッシュに分割し,各メッシュにはギャップ長と,メッシュ中の加工屑数をデータとして持たせる.そして,1回の放電ごとに,[放電点の決定]→[放電点における工具電極と工作物の除去]→[加工屑の発生と排出]→[工具電極の送り],なるルーチンを実行し,これを放電回数分だけ単純に繰り返す.本研究では金型などの複雑曲面の加工に適応可能なシミュレータの開発を目的とし,次の成果を得た.1.曲面への適用曲面状工具電極の先端が徐々に工作物に対向し加工面積が増加していく過程がシミュレーションできるように,上記ルーチンの[放電点の決定]と,[工具電極の送り]のステップに修正を加えた.その結果,球面状の工具電極による加工がシミュレーションできた.さらに,加工前後の工作物形状から加工前の工具電極形状を予測する逆方向シミュレーションについても,曲面形状への適用が可能であることが確かめられた.2.放電偏在と集中のシミュレーション極間の加工屑濃度,ギャップ,温度の分布を考慮した放電位置のシミュレーションを行い,放電の偏在と集中の発生メカニズムについて考察した.その結果,加工屑の偏在が放電位置の偏在を生じさせる原因であるが,加工屑濃度分布を考慮しただけでは放電集中は生じず,電極表面温度分布を考慮して始めて放電集中がシミュレーションできることが分かった.3.ワイヤ放電加工の加工精度シミュレーションワイヤ放電加工では,放電点で発生する衝撃力や工作物とワイヤ電極間に働く静電力に起因したワイヤ振動とたわみが加工精度の低下をもたらす.そこで,形彫り放電加工のために開発した上記のシミュレーションプログラムにワイヤの振動解析を追加し,振動するワイヤと工作物との間隔がもっとも狭い箇所に放電が生じるようなワイヤ放電加工用のプログラムを新たに開発した.その結果,仕上げ面の板厚方向の真直度が実験結果と良い一致を見た.放電加工シミュレータの開発を行ない,目標とする工作物形状を得るために必要な工具電極形状や加工条件を自動的に決定できるシステムを構築した.つまり,放電面を放電痕と同じ程度の大きさのメッシュに分割し,各メッシュにはギャップ長と,メッシュ中の加工屑数をデータとして持たせる.そして,1回の放電ごとに,[放電点の決定]→[放電点における工具電極と工作物の除去]→[加工屑の発生と排出]→[工具電極の送り],なるルーチンを実行し,これを放電回数分だけ単純に繰り返す.本研究では金型などの複雑曲面の加工に適応可能なシミュレータの開発を目的とし,次の成果を得た.1.曲面への適用曲面状工具電極の先端が徐々に工作物に対向し加工面積が増加していく過程がシミュレーションできるように,上記ルーチンの[放電点の決定]と,[工具電極の送り]のステップに修正を加えた.その結果,球面状の工具電極による加工がシミュレーションできた.さらに,加工前後の工作物形状から加工前の工具電極形状を予測する逆方向シミュレーションについても,曲面形状への適用が可能であることが確かめられた.2.放電偏在と集中のシミュレーション極間の加工屑濃度,ギャップ,温度の分布を考慮した放電位置のシミュレーションを行い,放電の偏在と集中の発生メカニズムについて考察した.その結果,加工屑の偏在が放電位置の偏在を生じさせる原因であるが,加工屑濃度分布を考慮しただけでは放電集中は生じず,電極表面温度分布を考慮して始めて放電集中がシミュレーションできることが分かった.3.ワイヤ放電加工の加工精度シミュレーションワイヤ放電加工では,放電点で発生する衝撃力や工作物とワイヤ電極間に働く静電力に起因したワイヤ振動とたわみが加工精度の低下をもたらす.そこで,形彫り放電加工のために開発した上記のシミュレーションプログラムにワイヤの振動解析を追加し,振動するワイヤと工作物との間隔がもっとも狭い箇所に放電が生じるようなワイヤ放電加工用のプログラムを新たに開発した.その結果,仕上げ面の板厚方向の真直度が実験結果と良い一致を見た.形彫り放電加工の加工精度や加工安定性の評価のためのシミュレータの開発を行った.その基本的な方法は,放電面を放電痕と同じ程度の大きさのメッシュに分割し,各メッシュにはギャップ長と,メッシュ中に存在する加工屑数をデータとして持たせる.そして,1回の放電に関して,[放電点の決定]→[放電点に選ばれたメッシュにおける工具電極と工作物の除去]→[加工屑の発生と排出]→〔工具電極の送り],なるルーチンを実行し,これを放電回数分だけ単純に繰り返す.[放電点の決定]には放電点探索アルゴリズムを用いる.すなわち,ギャップが狭くかつ加工屑濃度が高い場合に大きな値を示す評価関数を定義し,評価関数の値の最も大きなメッシュを放電点に選ぶ.本年度は特に上記シミュレータを金型などの複雑な曲面の放電加工に適応可能にすることと,加工速度と加工精度の低下の原因となる放電位置の偏在や集中のシミュレーションを行った.まず,曲面への適用については,曲面状工具電極の先端が徐々に工作物に対向し加工面積が増加していく過程がシミュレーションできるように,上記ルーチンの内の[放電点の決定]と,[工具電極の送り]のステップに修正を加えた.その結果,球面状の工具電極による加工がシミュレーションできることが分かった.さらに,加工前後の工作物形状から加工前の工具電極形状を予測する逆方向シミュレーションを行い,曲面形状の逆方向シミュレーションが可能であることが確かめられた.次に,極間の加工屑濃度,ギャップ,温度の分布を考慮した放電位置のシミュレーションを行い,放電の偏在と集中の発生メカニズムについて考察した.
KAKENHI-PROJECT-11450054
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11450054
放電加工シミュレータの開発研究
その結果,加工屑の偏在が放電位置の偏在を生じさせる原因であるが,加工屑濃度分布を考慮しただけではシミュレーション上で放電集中は生じず,電極表面温度分布を考慮して始めて放電集中がシミュレーションできることが分かった.放電加工シミュレータの開発を行ない,目標とする工作物形状を得るために必要な工具電極形状や加工条件を自動的に決定できるシステムを構築した.つまり,放電面を放電痕と同じ程度の大きさのメッシュに分割し,各メッシュにはギャップ長と,メッシュ中の加工屑数をデータとして持たせる.そして,1回の放電ごとに,[放電点の決定]→[放電点における工具電極と工作物の除去]→[加工屑の発生と排出]→[工具電極の送り],なるルーチンを実行し,これを放電回数分だけ単純に繰り返す.本研究では金型などの複雑曲面の加工に適応可能なシミュレータの開発を目的とし,次の成果を得た.1.曲面への適用曲面状工具電極の先端が徐々に工作物に対向し加工面積が増加していく過程がシミュレーションできるように,上記ルーチンの[放電点の決定]と,[工具電極の送り]のステップに修正を加えた.その結果,球面状の工具電極による加工がシミュレーションできた.さらに,加工前後の工作物形状から加工前の工具電極形状を予測する逆方向シミュレーションについても,曲面形状への適用が可能であることが確かめられた.2.放電偏在と集中のシミュレーション極間の加工屑濃度,ギャップ,温度の分布を考慮した放電位置のシミュレーションを行い,放電の偏在と集中の発生メカニズムについて考察した.その結果,加工屑の偏在が放電位置の偏在を生じさせる原因であるが,加工屑濃度分布を考慮しただけでは放電集中は生じず,電極表面温度分布を考慮して始めて放電集中がシミュレーションできることが分かった.3.ワイヤ放電加工の加工精度シミュレーションワイヤ放電加工では,放電点で発生する衝撃力や工作物とワイヤ電極間に働く静電力に起因したワイヤ振動とたわみが加工精度の低下をもたらす.そこで,形彫り放電加工のために開発した上記のシミュレーションプログラムにワイヤの振動解析を追加し,振動するワイヤと工作物との間隔がもっとも狭い箇所に放電が生じるようなワイヤ放電加工用のプログラムを新たに開発した.その結果,仕上げ面の板厚方向の真直度が実験結果と良い一致を見た.
KAKENHI-PROJECT-11450054
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初期イスラーム時代のアラブ=ムスリム社会における系譜集団の構造と機能
まず本年度は、これまでの研究成果を「初期イスラーム時代のアラブ系譜集団」と題し、日本オリエント学会第44回大会(2002年10月20日)において発表した。この報告では、各種のアラビア語系譜学書に書き出されたアラブ系譜体系の具体的な特徴を順々に紹介すると共に、北アラブ系カイス・アイラーン族の一派であるガタファーンGhatafan族の系譜構造を例として、アラブの系譜体系が整理されてきた過程の再構成を試みた。本発表は、初期イスラーム時代におけるアラブの系譜体系が、個別の系譜群を系譜の上位に向けて統合することによって成立したという研究代表者の主張を、最終的に証明するものである。また、本研究によって得られた知見をもとに執筆した研究ノート「ハワーリジュ派の騎士シャビーブの反乱」を『オリエント』第45巻2号(2003年3月予定)に発表した。同研究ノートは、ウマイヤ朝時代の中期に勃発したシャビーブ・アルハルーリーShabib al-Haruriの反乱について、その通時的経過と社会的背景を分析したものである。従来の研究が、ハワーリジュ派の思想的特徴および政治党派としての位置に注目してきたのに対し、本研究では反乱に参加した主要人物の構成を分析することによって、それが系譜集団化理論に支配されていた側面のある事実を指摘した。さらに未発表の研究成果として、(1)アラブ系譜学史の発展過程に関する分析、(2)北アラブ系ラビーア族の系譜が確立した過程の再構成、(3)系譜集団の単位性に関する分析、などを行った。これらの研究内容についても、順次、学術雑誌に投稿していく予定である。まず本年度は、これまでの研究成果を「初期イスラーム時代のアラブ系譜集団」と題し、日本オリエント学会第44回大会(2002年10月20日)において発表した。この報告では、各種のアラビア語系譜学書に書き出されたアラブ系譜体系の具体的な特徴を順々に紹介すると共に、北アラブ系カイス・アイラーン族の一派であるガタファーンGhatafan族の系譜構造を例として、アラブの系譜体系が整理されてきた過程の再構成を試みた。本発表は、初期イスラーム時代におけるアラブの系譜体系が、個別の系譜群を系譜の上位に向けて統合することによって成立したという研究代表者の主張を、最終的に証明するものである。また、本研究によって得られた知見をもとに執筆した研究ノート「ハワーリジュ派の騎士シャビーブの反乱」を『オリエント』第45巻2号(2003年3月予定)に発表した。同研究ノートは、ウマイヤ朝時代の中期に勃発したシャビーブ・アルハルーリーShabib al-Haruriの反乱について、その通時的経過と社会的背景を分析したものである。従来の研究が、ハワーリジュ派の思想的特徴および政治党派としての位置に注目してきたのに対し、本研究では反乱に参加した主要人物の構成を分析することによって、それが系譜集団化理論に支配されていた側面のある事実を指摘した。さらに未発表の研究成果として、(1)アラブ系譜学史の発展過程に関する分析、(2)北アラブ系ラビーア族の系譜が確立した過程の再構成、(3)系譜集団の単位性に関する分析、などを行った。これらの研究内容についても、順次、学術雑誌に投稿していく予定である。
KAKENHI-PROJECT-00J08283
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拡張重力理論とその宇宙論
29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。この半年間で2本の論文を査読雑誌に発表し,さらにもう1本の論文を完成し査読雑誌に投稿した。新たなアイデアに基づいた理論の構築も進んでおり,論文発表も順調に進んでいる。これまで通りに,新たなアイデアを取り入れつつ,着実に研究を進める。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-15F15321
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15F15321
海水打ち込みによる船舶の転覆機構の研究
昭和62年度の研究成果として、海水打ち込みによって船の甲板上の海水が増加したり、流れ出したりする場合の横波中における過渡的な船体運動の数値計算法を開発し、数値シミュレーションができるようになった。しかし、横軸に時間を取り数値シミュレーションの結果を時刻歴としてグラフ化しても、それだけでは、海水が打ち込みつつある過渡的な状況下での船体挙動の全体像は把握しにくい。そこで本年度の研究では、数値シミュレーションの結果をコンピュータ画面にアニメーションとして表示することにより、船体運動と海水打ち込み、転覆の関係を連続した画像で理解し、船の安全性を検討する際に有益な情報を提供できるようにした。海水打ち込み量の推定に関しては、まず船側での相対水位を厳密に計算して海水打ち込みが起こるか起こらないかを純理論的に判定し、次に打ち込み速度に簡単な近似式を使うことによって時々刻々打ち込み水量を計算できるようにした。船体挙動を記述する運動方程式そのものは、実用的観点から周波数領域における従来の式を採用しているが、海水打ち込みや大傾斜による流体力の変化が考慮できるように運動方程式の係数は時間の関数とし、計算の時間ステップごとに逐次計算していくように工夫した。転覆に至るまでのシミュレーション結果を実験と比較したところ、両者はかなり良く一致しており、計算法の妥当性が確認できた。グラフィック・アニメーションでは、入射波、相対水位、海水打ち込み量などが、復原力を失なって転覆する瞬間まで船体動揺と共に表示されるようになっており、現象を理解する上で大変有効である。今後は、三次元的な斜め追波中での海水打ち込みをともなった船体挙動の数値シミュレーション、及びその画像表示が十分な精度で行えるよう、研究の積み重ねが必要である。昭和62年度の研究成果として、海水打ち込みによって船の甲板上の海水が増加したり、流れ出したりする場合の横波中における過渡的な船体運動の数値計算法を開発し、数値シミュレーションができるようになった。しかし、横軸に時間を取り数値シミュレーションの結果を時刻歴としてグラフ化しても、それだけでは、海水が打ち込みつつある過渡的な状況下での船体挙動の全体像は把握しにくい。そこで本年度の研究では、数値シミュレーションの結果をコンピュータ画面にアニメーションとして表示することにより、船体運動と海水打ち込み、転覆の関係を連続した画像で理解し、船の安全性を検討する際に有益な情報を提供できるようにした。海水打ち込み量の推定に関しては、まず船側での相対水位を厳密に計算して海水打ち込みが起こるか起こらないかを純理論的に判定し、次に打ち込み速度に簡単な近似式を使うことによって時々刻々打ち込み水量を計算できるようにした。船体挙動を記述する運動方程式そのものは、実用的観点から周波数領域における従来の式を採用しているが、海水打ち込みや大傾斜による流体力の変化が考慮できるように運動方程式の係数は時間の関数とし、計算の時間ステップごとに逐次計算していくように工夫した。転覆に至るまでのシミュレーション結果を実験と比較したところ、両者はかなり良く一致しており、計算法の妥当性が確認できた。グラフィック・アニメーションでは、入射波、相対水位、海水打ち込み量などが、復原力を失なって転覆する瞬間まで船体動揺と共に表示されるようになっており、現象を理解する上で大変有効である。今後は、三次元的な斜め追波中での海水打ち込みをともなった船体挙動の数値シミュレーション、及びその画像表示が十分な精度で行えるよう、研究の積み重ねが必要である。本研究の目的は,海水が打ち込みつゝあり,その結果,甲板上の海水が増加している場合の船体動揺をシミュレートし,海水打込みによって生じる転覆の機構を明らかにし,船舶の安全性を評価しようとするものである.本年度実施した研究の内容と成果は次の通りである.1.船体が横波中で動揺している時,ブルワークを越えて打ち込んでくる海水の量を推定する簡単な理論の開発を実施した.解析的な方法は非常に簡単なもの以外は困難であり,数値解析的手法の適用が今後必要と考える.2.海水が打ち込みつゝある過渡的な条件下での甲板上の海水の船体運動に対する影響を考慮して,横波中の船体運動方程式を導いた.完全な時間領域の方程式ではなく,近似的に周波数領域で問題が取り扱われたが,船体運動の全体的な傾向はこのような近似によってもある程度把握できることがわかった.時間領域で,転覆にいたる過渡的な船体運動をシミュレートするためには,打ち込み海水の過渡的な力学について,より詳しい数値解析が必要である.3.ワイヤ・フレームによって船体を表示し,転覆にいたる船体運動をコンピュータ画像のアニメーションとして表示することが出来るようになった.次年度では,シミュレーションの結果を画像表示する予定である.昭和62年度の研究成果として、海水打ち込みによって船の甲板上の海水が増加したり、流出したりする場合の過渡的な船体挙動の数値シミュレーションができるようになった。しかし、横軸に時間を取り、数値シミュレーションの結果を時刻歴としてグラフ化しても、それだけでは海水が打ち込みつつある過渡的な状況下での船体挙動の全体像は把握しにくい。そこで本年度の研究では、数値シミュレーションの結果をコンピュータ画面にアニメーションとして表示することにより、船体運動と海水打ち込み、転覆の関係を連続した画像で理解し、船の安全性を検討する際に有益な情報を提供できるようにした。このグラフィック・アニメーションでは、入射波、相対水位、海水打ち込み量などが復元力を失って転覆する瞬間まで船体動揺と共に表示される。本研究では横波中の転覆を扱ったので画像は二次元表示であるが、コンピュータ・グラフィックスは三次元になっても原理は同じであり、それへの拡張は容易である。
KAKENHI-PROJECT-62550324
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62550324
海水打ち込みによる船舶の転覆機構の研究
三次元的な船の転覆現象は、船が斜め追波中を航走する時に起こることが知られている。その現象は複雑で、現在でも不明な点が多いが、本年度の研究ではこの分野の研究の端緒となることを目ざして、斜め追波中で横傾斜して航走する船に作用する流体力の計算方法についても理論的に検討した。若干の数値計算も行い、その結果、斜め追波中での横傾斜角に比例する、いわゆる転倒モーメントは、低速の場合は入射波の圧力分布によるFroude-Krylou力の計算で十分であるが、高速になると船の動揺の影響が大きくなり、その推定が重要になることなどを示した。今後は、斜め追波中での海水打ち込みをともなった船体挙動の数値シミュレーション、及びその画像表示が十分な精度で行えるよう根気強い研究の積み重ねが必要である。
KAKENHI-PROJECT-62550324
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軸索再生阻害因子の抑制による顔面神経再生の誘導
本研究では神経再生を阻害する細胞外基質であるプロテオグリカンを分解することで、ラットの顔面神経切断・再縫合後の機能回復がより促進されることが示された。しかしながらその回復効果は正常側の4割程度にとどまり不十分であることも示された。リハビリテーション効果を有するマッサージを追加することで、神経機能の回復は6割程度に上昇したが、完全回復には至らなかった。本研究では神経再生を阻害する細胞外基質であるプロテオグリカンを分解することで、ラットの顔面神経切断・再縫合後の機能回復がより促進されることが示された。しかしながらその回復効果は正常側の4割程度にとどまり不十分であることも示された。リハビリテーション効果を有するマッサージを追加することで、神経機能の回復は6割程度に上昇したが、完全回復には至らなかった。末梢神経は中枢神経と比較して再性能が高いことが知られているが、臨床例においてその程度は必ずしも十分とはいえない。このためより高いレベルの機能回復を得ることを目的とした研究は以前より多数なされてきたが、いまだ十分な効果は得られていない。近年、中枢神経系の再生過程において複数の因子が軸索再生を阻害していることが示され、その作用を抑制すると中枢神経系においても相応の神経再生が誘導されることが明らかとなっている。末梢神経系においてはもともと神経細胞が再生能を有していることから、これらの因子の関与は少ないものと考えられていたが、軸索再生阻害因子が末梢神経においてもその再生を阻害し、結果として機能回復が不十分に終了する一因となっている可能性が示されつつある。これら軸索再生阻害因子の末梢神経再生過程における関与を検討するため、本研究ではまずラットの坐骨神経を切断・再縫合するモデルを作成し、手術後7日目、14日目、21日目で神経を採取し、軸索再生阻害因子であるMAG、RGM、プロテオグリカンの免疫染色を行った。MAG、プロテオグリカンはコントロールにおいてもシュワン細胞および神経上膜を含んだ結合識にそれぞれ認められ、これらは手術後も明らかな経時的変化は認められなかった。一方RGMは術後7日目に神経周膜および神経上膜周囲の結合識で染色が増加している傾向を認めた。以上より上記いずれの因子も末梢神経再生に関与しうる可能性が示唆された。今後はこれらの関与を顔面神経の切断・再縫合モデルで検討し、阻害因子をブロックすることの効果を検討する予定である。昨年度坐骨神経で確立した神経切断・再縫合モデルを顔面神経において作成し、軸索再生阻害因子であるMAG、RGM、プロテオグリカンの発現変化を免疫染色にて検討した。プロテオグリカンについては切断後3ヶ月以上の慢性期において、非手術側のコントロールに比し神経鞘における発現が有意に亢進していることが確認された。一方でRGMについては血管周囲結合識および神経周膜において発現を認めるものの、コントロール側に比して有意な変化は認められなかった。このことからプロテオグリカンの顔面神経再生阻害への関与を検討すべく、コンドロイチナーゼを用いてプロテオグリカンを分解処理した場合の再生の程度を観察した。顔面神経切断後にコンドロイチナーゼ0.1Uを末梢側断端に注入し、すぐに縫合した。顔面神経の再生は鼻毛の運動幅の回復程度で評価した。切断・再縫合手術を施行したがコンドロイチナーゼ処理を行っていない群をコントロールとした。鼻毛の運動はコントロール群では21日目くらいから徐々に回復を認めるのに対し、コンドロイチナーゼ処理群では14日目より回復を認め、28日目、35日目以降においてもコントロール郡では運動幅は正常の約5%の回復にとどまるのに対し、コンドロイチナーゼ処理群では10%以上の回復を認めた。今後組織学的検証を追加し、鼻毛運動を定量的に評価するシステムを作成する予定である。前年度までの検討で、顔面神経切断後の神経機能回復が急性期にコンドロイチナーゼ注入により促進されることが示唆されたが、その程度は依然正常側の10%強と不十分であることから、コンドロイチナーゼ投与を0.1から1.0Uに増量して検討した。その結果、第3週目までに鼻毛運動の回復は20%弱に達した。しかしそれ以降の回復は極めて軽度で、またコンドロイチナーゼ非処理群でも7週目以降までの慢性期に20%弱の回復傾向を認めたことから、コンドロイチナーゼの損傷神経内への投与が顔面神経回復の早期化を来たすものの、慢性期での最終的な運動の有為な回復に寄与していない可能性が示唆された。一方で慢性期での組織学的検討では、コンドロイチナーゼ処理群でGAP43陽性の再生神経数は増加している傾向が認められた。これより神経損傷時のコンドロイチナーゼ投与は、その再生をうながすものの、機能的な神経筋単位の再構築に結びついていないと考えられる。近年、ラットにおけるwhisker padのマッサージが顔面神経切断・再縫合後の効果的な神経筋単位の再構築を促し、著明な機能回復をもたらすとの報告がなされた。これより、コンドロイチナーゼ処理した群にwhiske rpadのマッサージを加えることでリハビリテーション効果を上乗せし、更なる機能回復が得られるかを検討中である。急性期においては、マッサージ単独あるいはコンドロイチナーゼ処理単独群と比較して、両者を組み合わせたモデルにおいて早期の有為な機能の回復を認めている。現在、慢性期の評価を行い、GAP43染色による組織学的検証を追加しているところである。
KAKENHI-PROJECT-21591838
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相同グループ法による系統プロファイリングを用いた植物遺伝子機能の大規模推定
本研究では,系統プロファイリングによる遺伝子機能推定の有効性を検証することを目的とし,シアノバクテリアに起源を持つ植物の葉緑体タンパク質(CPRENDO)を新たに大量に発見した。1.ゲノムが完読された生物の全推定タンパク質配列について,総当たりBLASTPの結果に基づいてクラスタリングを行い,これに基づいて「相同グループ」をつくるGclustソフトウェアの開発を行い,145種の生物のゲノムのクラスタリングまでできるようになった。2.この結果に基づき,特定の生物群にのみ保存されている相同グループ(タンパク質)を選び出す系統プロファイリングを行った。3.系統プロファイリングを,9種のシアノバクテリア,3種光合成細菌,2種の非光合成細菌,2種の非光合成真核生物,2種の光合成真核生物(原始紅藻,シロイヌナズナ)からなるデータセットに適用し,シアノバクテリアと真核光合成生物に共通に存在するタンパク質を選び出した。この際,条件検討を行い,非光合成生物には存在しないという条件は必要ないことなどが判明した。これに基づき,最も緩い条件では,シロイヌナズナの1,192個,紅藻の676個のタンパク質がCPRENDO候補となったが,その約半数が機能未知であった。4.実験的解析のため最少セットを選んだ。非光合成生物には存在しないという最も厳しい条件で選択される84個の相同グループに含まれる44個の機能未知タンパク質の機能解析を,シロイヌナズナとSynechocystisで行った。56個のシロイヌナズナのタンパク質について調べたが,53個が確かに葉緑体に局在することがわかり,CPRENDOと証明された。対応するSynechocystisの40個の遺伝子について破壊株を作ったが,30個で光合成機能に異常があり,細胞内共生の前後で保存されているタンパク質の大部分が光合成に「関わることが実証された。本研究では,系統プロファイリングによる遺伝子機能推定の有効性を検証することを目的とし,シアノバクテリアに起源を持つ植物の葉緑体タンパク質(CPRENDO)を新たに大量に発見した。1.ゲノムが完読された生物の全推定タンパク質配列について,総当たりBLASTPの結果に基づいてクラスタリングを行い,これに基づいて「相同グループ」をつくるGclustソフトウェアの開発を行い,145種の生物のゲノムのクラスタリングまでできるようになった。2.この結果に基づき,特定の生物群にのみ保存されている相同グループ(タンパク質)を選び出す系統プロファイリングを行った。3.系統プロファイリングを,9種のシアノバクテリア,3種光合成細菌,2種の非光合成細菌,2種の非光合成真核生物,2種の光合成真核生物(原始紅藻,シロイヌナズナ)からなるデータセットに適用し,シアノバクテリアと真核光合成生物に共通に存在するタンパク質を選び出した。この際,条件検討を行い,非光合成生物には存在しないという条件は必要ないことなどが判明した。これに基づき,最も緩い条件では,シロイヌナズナの1,192個,紅藻の676個のタンパク質がCPRENDO候補となったが,その約半数が機能未知であった。4.実験的解析のため最少セットを選んだ。非光合成生物には存在しないという最も厳しい条件で選択される84個の相同グループに含まれる44個の機能未知タンパク質の機能解析を,シロイヌナズナとSynechocystisで行った。56個のシロイヌナズナのタンパク質について調べたが,53個が確かに葉緑体に局在することがわかり,CPRENDOと証明された。対応するSynechocystisの40個の遺伝子について破壊株を作ったが,30個で光合成機能に異常があり,細胞内共生の前後で保存されているタンパク質の大部分が光合成に「関わることが実証された。
KAKENHI-PROJECT-17018010
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GPSを用いたフィリピン海南東部のテクトニクスの研究
北マリアナ諸島のテクトニックな運動を明らかにするためのGPS観測と2003年5月に噴火活動を開始したアナタハン島の地質学的な調査を実施した.GPS観測は2003年1月,同年7月及び2004年5-6月に実施,以前の観測データとあわせて解析を実施した.今回は,1回のみ観測が実施されていた北方の3島を中心とした観測を実施した.西マリアナ海盆の背弧拡大の影響が明瞭に見て取れるものの,北方3島については,繰り返し観測の期間が短いせいか,必ずしも明瞭な背弧拡大の影響は見られない.アナタハン島噴火の調査は2003年7月及び2004年1月に実施した.2003年7月の調査では,噴火はプリーニ式噴火から水蒸気爆発に移行し,一旦形成された溶岩ドームが破壊されたことが分かった.2004年1月調査で計測した噴火口は,直径400m,深さ約80mであり,火口底には周囲から流れ込んだ土砂が厚く堆積し,間欠泉状に土砂放出が起きていた.2003年7月には最高摂氏300度であった火口の温度が2004年1月には約150度と減少し高温域も縮小した.カルデラ縁や外斜面には水蒸気爆発堆積物が厚く一面に堆積しているものの,大規模噴火を示す軽石流堆積物層等は認められない.このため,アナタハン島の山頂カルデラの成因は地下あるいは海底へのマグマ移動であると推定される.この噴火についての地殻変動を調査するためにGPS観測を強化することとなった.火口の西北西約7kmに位置する観測点では,連続観測を開始したほか,2004年1月には島の北東部に新たな連続観測点を設置して観測を行っている.2003年1月と7月の観測データの比較では,水平成分がほとんど変化せず沈降約21cmが観測された.観測された地殻変動は主に噴火によるマグマ移動によって引き起こされたと考えられ,マグマ溜まりが噴火口の直下よりも島の西端にある可能性を示している.北マリアナ諸島のテクトニックな運動を明らかにするためのGPS観測と2003年5月に噴火活動を開始したアナタハン島の地質学的な調査を実施した.GPS観測は2003年1月,同年7月及び2004年5-6月に実施,以前の観測データとあわせて解析を実施した.今回は,1回のみ観測が実施されていた北方の3島を中心とした観測を実施した.西マリアナ海盆の背弧拡大の影響が明瞭に見て取れるものの,北方3島については,繰り返し観測の期間が短いせいか,必ずしも明瞭な背弧拡大の影響は見られない.アナタハン島噴火の調査は2003年7月及び2004年1月に実施した.2003年7月の調査では,噴火はプリーニ式噴火から水蒸気爆発に移行し,一旦形成された溶岩ドームが破壊されたことが分かった.2004年1月調査で計測した噴火口は,直径400m,深さ約80mであり,火口底には周囲から流れ込んだ土砂が厚く堆積し,間欠泉状に土砂放出が起きていた.2003年7月には最高摂氏300度であった火口の温度が2004年1月には約150度と減少し高温域も縮小した.カルデラ縁や外斜面には水蒸気爆発堆積物が厚く一面に堆積しているものの,大規模噴火を示す軽石流堆積物層等は認められない.このため,アナタハン島の山頂カルデラの成因は地下あるいは海底へのマグマ移動であると推定される.この噴火についての地殻変動を調査するためにGPS観測を強化することとなった.火口の西北西約7kmに位置する観測点では,連続観測を開始したほか,2004年1月には島の北東部に新たな連続観測点を設置して観測を行っている.2003年1月と7月の観測データの比較では,水平成分がほとんど変化せず沈降約21cmが観測された.観測された地殻変動は主に噴火によるマグマ移動によって引き起こされたと考えられ,マグマ溜まりが噴火口の直下よりも島の西端にある可能性を示している.平成910年度にかけて,科学研究費補助金(国際学術研究)において,北マリアナ諸島を中心とする地域でGPS観測を実施した.その結果,グアムを含む北マリアナ諸島がフィリピン海の剛体部分と異なり,数cmの速度でフィリピン海に相対的に東に移動していることが明らかとなった.しかしながら,そこで求められた北マリアナブロックの剛体的回転のオイラー極位置は地質学・地形学的に認められる北マリアナの拡大開始場所からかなり南に寄った位置であった.そこで,より正確なオイラー極位置を推定するため,本研究で再度北マリアナ諸島においてGPS観測を実施すると共に,前回観測できなかった北マリアナ北部のアスンシオン島,マウグ島,ウラカス島においてもGPS観測を実施することとした.本年度はまず観測に必要なGPS受信機を購入した.GPS観測は平成15年1月14日25日の期間内に実施した.参加者は4名である.先遣隊がまずヤップとパラオに観測点を設置し,17日にサイパンで後発隊と合流した.折から季節外れの台風が接近していたため,北マリアナヘの渡航は2日間延期せざるを得ず,そのため,当初予定していたトラック島行きは中止した.
KAKENHI-PROJECT-14403003
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GPSを用いたフィリピン海南東部のテクトニクスの研究
幸い台風はそれたので,1月20日にヘリコプターと船を利用して観測点設置を行った.日程の関係から撤収はサイパンの研究協力者である緊急管理局のJuan T.Camacho氏に任せることとし,全員が1月26日までに帰国した.本報告執筆時には観測資材がまだ戻ってきていないが,戻って来次第観測データの整理及び解析に着手する予定にしている.なお,前回までの観測で一応の成果が出ていること,並びに最近のデータ解析技術の進展を考慮し,データ解析に関してはこれまでのBerneseソフトウエアからGIPSYソフトウェアに変更し,再度1992年以来の全データの解析を実施する予定である.2003年5月に同諸島の中のアナタハン島において有史以来の噴火活動が始まった.そこで,計画を若干変更し,今年度はこの噴火活動に伴う総合調査を実施することとした.GPS観測に基づくテクトニクス研究の立場からは,各島のテクトニックな変位と火山活動に伴う変位を精密に分離しなくてはならない.また,北マリアナにおける火山活動に伴う変形は過去にあまり例がなく,火山噴火のメカニズム解明のためにも緊急に実施すべき事項と考えられた.2003年7月14-20日に調査を実施した.まず,サイパン島に固定観測点を設置した.この観測点は北マリアナ諸島におけるはじめての測地用固定観測局として基準点の役割を今後果たすものと考えられる.また,土地測量局の局舎には旧来からの臨時観測点を設置した.続いて,船舶をチャーターしてアナタハン島に上陸し,繰り返し観測を実施してきた島北西にある基準点に固定の基台を装着し,連続観測の態勢を整えた.続いて,地質調査を実施した.5-6月の噴火に伴う噴出物調査,熱赤外温度計による火口温度測定,レーザー測距儀による火口調査を行った.その結果,噴火活動は山頂部,東カルデラの内部にある大火口の底で起こったこと,プリニー式噴火から水蒸気爆発に移行し,途中で一旦形成された溶岩ドームが破壊されたことが分かった.なお,その後の調査で,現在の噴火口は直径400m深さ約80mで,火口底標高は1020mであるが噴火直後では-30mであったと考えられる.また,昨年7月に認められた火口北縁の潜在ドームの一部と見られる隆起部は崩壊した.火口の温度は約300度から約150度へと低下し高温領域も縮小した.調査は山頂カルデラの形成前後の噴出物についても行った.カルデラ縁や外斜面には水蒸気爆発堆積物が厚く一面に堆積しているものの,大規模噴火を示す軽石流堆積物等は認められなかった.2004年56月に調査を実施した。昨年度に引き続き北マリアナ諸島の北部を中心としたGPS観測及びアナタハン島のGPS観測ならびに火山活動調査を行うこととした。このため、観測隊を2班に分け、1班は船をチャーターして北マリアナ北部GPSを実施し、他班はアナタハン調査を行った。北マリアナ北部GPSでは東大加藤、高知大田部井及び渡部の3名が参加し、ウラカス、モーグ及びアスンシオンでそれぞれ2日間程度のGPS観測を行った。また、アナタハン調査は九州大学の松島及び杉本が参加した。観測は順調に行われた。持ち帰ったデータを解析し、北マリアナ諸島全体の2004年までの変位速度ベクトルを算出した。解析にはGIPSY-OASYS IIソフトウェアを用い、フィリピン海プレートを固定するためにSella eta1.(2002)の速度場を用いた。この結果、北マリアナ諸島中央部及び南部では拡大速度が22mm/yrから46mm/yrと推定された。この結果はKato et al.(2003)の結果よりも6-10mm/yr程度遅い。また、北マリアナ諸島北部ではモーグで15mm/yr程度の拡大を示唆する結果となった。しかし、1年半程度の間隔の2回の観測からの結果であり、推定誤差は大きいと考えられる。今後より長期にわたる観測が必要である。
KAKENHI-PROJECT-14403003
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免疫制御および増悪の運命決定機構
これまで、IkB-zeta欠損マウス(KOマウス)は、加齢に伴いシェーグレン症候群様の自己免疫疾患を発症する。本研究では、その原因が制御性T細胞の免疫抑制能・安定性および分化誘導能のいずれかにあると仮定し、研究を行い、以下の事を明らかとした。1KOマウス由来の制御性T細胞は、免疫抑制能力が低下していた。2KOマウス由来の制御性T細胞の安定性については、野生型マウスと比較して、顕著な違いは認められなかった。3IkB-zetaは、制御性T細胞の分化誘導過程においても影響を与える事、またその分子メカニズムについても明らかとした。【Foxp3の転写メカニズムの解明】について免疫恒常性維持機構に携わる制御性T細胞のマスターレギュレーターFoxp3に対するIkB-zetaの役割についての検証を行った。当初、IkB-zetaを欠損したT細胞は、TGF-beta刺激による制御性T細胞の分化誘導能を欠損しているかのように見えたが、実は、過剰なIFN-gamaと呼ばれる炎症性サイトカイン産生をするため、TGF-beta刺激存在下でも、Th1と呼ばれるヘルパーT細胞に分化誘導する事がわかった。このIFN-gammaなどの炎症性サイトカインの影響を排除するため、中和抗体を用いて再びIkB-zetaを欠損したT細胞にTGF-beta刺激を行うと、制御性T細胞の分化誘導能が回復し、野生型マウス由来のT細胞よりもむしろ分化誘導能が向上しているように見えた。Foxp3リポータープラスミドを用いたリポーターアッセイを行った結果、IkB-zetaは、Foxp3のプロモーターと呼ばれる遺伝子発現制御部位に作用し、その発現を負に制御している事が明らかとなって来た。また、レトロウイルスを使用したIkB-zetaの過剰発現の系においては、TGF-beta刺激存在下において、Foxp3の発現を負に制御しているとの基礎データも得る事が出来た。これまで、IkB-zeta欠損マウス(KOマウス)は、加齢に伴いシェーグレン症候群様の自己免疫疾患を発症する。本研究では、その原因が制御性T細胞の免疫抑制能・安定性および分化誘導能のいずれかにあると仮定し、研究を行い、以下の事を明らかとした。1KOマウス由来の制御性T細胞は、免疫抑制能力が低下していた。2KOマウス由来の制御性T細胞の安定性については、野生型マウスと比較して、顕著な違いは認められなかった。3IkB-zetaは、制御性T細胞の分化誘導過程においても影響を与える事、またその分子メカニズムについても明らかとした。生体内の免疫系は、Forkhead box p3 (Foxp3)と呼ばれる転写因子を発現する制御性T細胞(Treg)によって恒常性が保たれており、Foxp3の欠損マウスおよび一部変異の入ったヒトでは重篤な自己免疫疾患が引き起こされる事が知られている。近年、このTregの分化誘導にはTransforming Growth Factor(TGF)-βと呼ばれるサイトカインの刺激が必須である事が報告された。一方このTGF-βは、interleukin (IL)-6などの炎症性サイトカインの共存によって、Tregへの分化誘導が阻害され、自己免疫疾患の増悪を担うIL-17産生T細胞(Th17)へと分化誘導を促進する事が明らかとなった(Nature. 2006, 441;35-3)。つまり免疫系の制御あるいは増悪は、TGF-β刺激を介したTregおよびTh17の分化誘導バランスによってコントロールされている事が明らかとなってきた。そこで本研究では、TGF-β刺激を介したTregおよびTh17の分化バランスを決定する新しい分子の役割について検討を行った。申請者はこの新しい分子が、TGF-β刺激のみで発現が上昇する事を明らかとした。また、この分子の遺伝子欠損マウスを作成した所、末梢リンパ節におけるT細胞が活性化している事、またTregの免疫抑制能が減少している事から、免疫恒常性が破綻している事が示唆された。その原因として、Tregの免疫抑制に関与する分子(CTLA-4, GITRなど)の発現に差が認められるかを調べたところ、野生型マウス由来のTregと同程度の発現が認められた。さらに、抑制性サイトカイン(Interleukin-10)の発現についても、両者で違いは認められなかった。Tregの安定性については、申請者が着目している分子の関与はあまり認められなかった。申請者は、平成24年度の研究計画にそって、遺伝子欠損マウスを用いた免疫恒常性破綻機構の解明を行った。すでに申請者は、本研究を遂行するにあたり、十分な実験技術を習熟している事、また実験に必要な道具や遺伝子改変マウスの準備が十分であった事から、計画書通りに研究が遂行できたと感じている。しかし、着目している転写制御因子のTreg分化誘導能への影響については、in vitroの実験系において当初考えていたものとは逆の結果が得られた。本年度では、Tregの免疫抑制能、分化誘導能および安定性について、着目している転写制御因子を介した詳しい分子メカニズムを明らかとする予定である。【Foxp3の転写制御メカニズムの解明】Foxp3の遺伝子発現は、様々な転写制御因子の相乗効果によって複雑に制御されている事が報告されている。Foxp3の遺伝子発現制御領域は複数存在する事が報告されており、転写開始点から1kbほど上流までの【プロモーター】、約2kb下流に存在する【エンハンサー】、約4kb下流に存在する【スタビライザー】などである。
KAKENHI-PROJECT-24790458
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免疫制御および増悪の運命決定機構
申請者は、これら様々な領域を含むFoxp3リポータープラスミドを用いて、転写制御因子の過剰発現と組み合わせることで、着目している転写制御因子が、どの領域に対してどのように働くのかを明らかとする。また、クロマチン免疫沈降法を用いて、TGF-β刺激によるTregの分化過程において、この転写制御因子はFoxp3の遺伝子発現制御領域に直接結合する事が出来るかを確認する。該当なし
KAKENHI-PROJECT-24790458
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24790458
マイクロビームを用いた重イオン照射細胞内DNA損傷の分布と細胞応答機構の解析
高LET放射線である重粒子線の飛跡周辺の局所的エネルギー付与分布の違いが、細胞のDNA損傷と放射線応答に及ぼす影響を明らかにすることを目的として、重イオンマイクロビームを用いて、イオンが直接ヒットした細胞と、バイスタンダー細胞におけるアポトーシス誘発などの照射効果を個別に解析する実験系を確立した。互いに同一のLET値を持っようにエネルギーを調整した^<12>Cイオン及び^<20>NeイオンをCHO-K1細胞に照射し、細胞核内のDNA損傷領域の広がりを蛍光免疫学的手法で解析、同一LET値を有する重イオンのトラック構造の違いが、DNA損傷の生成様式に影響することを明らかにした。このとき、抗γH2AX抗体を用いて可視化されたDNA2本鎖切断の局在部位に非相同性末端結合を担うKu80が局在する過程を、GFPを用いて観察し、異なるトラック構造を有するイオン種によって、DNA損傷に対する修復蛋白質の動態が異なることを明らかにした。さらに、重イオンマイクロビームを用いて個別のCHO-K1細胞の核以外の領域に照準した照射実験により、DNA損傷の生成を出発点とするアポトーシス誘発機構以外に、細胞膜損傷が引き金となる別のアポトーシス誘発機構が存在することを示唆する結果を得た。一方、高密度接触阻害培養条件下のヒト正常線維芽細胞への照射実験により、二次コロニー形成能を指標とするヒト正常線維芽細胞の遅延的細胞死はLETに依存しないこと、重イオンを照射したヒト正常線維芽細胞AGOI522の生存子孫細胞に形態学的な異常が誘導されること、コンフルエントに培養1された細胞のごく一部に対して重イオンマイクロビームを照射しただけで、圧倒的多数を占める周囲のバイスタンダー細胞においてもアポトーシスが誘発されること、などを明らかにした。高LET放射線である重粒子線の飛跡周辺の局所的エネルギー付与分布の違いが、細胞のDNA損傷と放射線応答に及ぼす影響を明らかにすることを目的として、重イオンマイクロビームを用いて、イオンが直接ヒットした細胞と、バイスタンダー細胞におけるアポトーシス誘発などの照射効果を個別に解析する実験系を確立した。互いに同一のLET値を持っようにエネルギーを調整した^<12>Cイオン及び^<20>NeイオンをCHO-K1細胞に照射し、細胞核内のDNA損傷領域の広がりを蛍光免疫学的手法で解析、同一LET値を有する重イオンのトラック構造の違いが、DNA損傷の生成様式に影響することを明らかにした。このとき、抗γH2AX抗体を用いて可視化されたDNA2本鎖切断の局在部位に非相同性末端結合を担うKu80が局在する過程を、GFPを用いて観察し、異なるトラック構造を有するイオン種によって、DNA損傷に対する修復蛋白質の動態が異なることを明らかにした。さらに、重イオンマイクロビームを用いて個別のCHO-K1細胞の核以外の領域に照準した照射実験により、DNA損傷の生成を出発点とするアポトーシス誘発機構以外に、細胞膜損傷が引き金となる別のアポトーシス誘発機構が存在することを示唆する結果を得た。一方、高密度接触阻害培養条件下のヒト正常線維芽細胞への照射実験により、二次コロニー形成能を指標とするヒト正常線維芽細胞の遅延的細胞死はLETに依存しないこと、重イオンを照射したヒト正常線維芽細胞AGOI522の生存子孫細胞に形態学的な異常が誘導されること、コンフルエントに培養1された細胞のごく一部に対して重イオンマイクロビームを照射しただけで、圧倒的多数を占める周囲のバイスタンダー細胞においてもアポトーシスが誘発されること、などを明らかにした。高LET放射線である重粒子線の飛跡周辺の局所的エネルギー付与分布(トラック構造)の違いが細胞のDNA損傷と放射線応答に及ぼす影響を明らかにすることを目的として、原子番号(実効電荷)やエネルギー(粒子速度)が異なる種々の重イオンマイクロビームを用いて哺乳動物培養細胞を照射した場合のヒット位置・個数と細胞内DNA損傷あるいはアポトーシス誘発の対応関係、DNA損傷の生成やアポトーシス誘発をエンドポイントとした非ヒット細胞におけるバイスタンダー効果、及び放射線応答蛋白質の発現誘導と局在性などの細胞内動態の解析のための細胞照射実験系を確立した。1)これまでにCHO-K1細胞で確立した重イオンマイクロビーム照準照射実験系をヒト正常線維芽細胞に適用するための培養系及び照射用細胞試料調製法を検討し、ヒト正常線維芽細胞を用いた重イオンマイクロビーム照射実験系を確立した。2)細胞への実際のイオンヒット位置・個数を照射後に確認するため飛跡検出用プラスチックCR-39上に接着させたCHO-K1細胞に対して、互いに同一のLET値を与えるようにエネルギーを調整したCイオン及びNeイオンを照射し、蛍光免疫学的に検出されたDNA鎖切断末端及びγH2AXの細胞内分布がイオンのヒット位置に一致することを確認するとともに、細胞核内のDNA損傷領域の広がりを解析し、同一LET値を有する重イオンのトラック構造の違いがDNA損傷の生成様式に影響することを明らかにした。3)非相同性末端結合を担うKuの細胞内挙動をGFPを用いて追跡観察することを試み、重イオンを照射したCHO-K1細胞において照射の1030分後にγH2AXとKuが共局在することが観察された。高LET放射線である重粒子線の飛跡周辺の局所的エネルギー付与分布の違いが細胞のDNA損傷と放射線応答に及ぼす影響を明らかにすることを目的として、実効電荷や粒子速度が異なる種々の重イオンマイクロビームを用いて哺乳動物培養細胞を照射した場合のヒット位置と細胞内DNA損傷あるいはアポトーシス誘発、非ヒット細胞におけるバイスタンダー効果、及び放射線応答蛋白質の発現誘導と局在性などの細胞内動態の解析のための細胞照射実験系を確立した。
KAKENHI-PROJECT-17510055
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17510055
マイクロビームを用いた重イオン照射細胞内DNA損傷の分布と細胞応答機構の解析
1)細胞への実際のイオンヒット位置・個数を照射後に確認するため飛跡検出用プラスチッグCR-39上に接着させたCHO-K1細胞に対して、互いに同一のLET値を持っようにエネルギーを調整した^<12>Cイオン及び^<20>Neイオンを照射し、細胞核内のDNA損傷領域の広がりを蛍光免疫学的手法で解析、同一LET値を有する重イオンのトラック構造の違いがDNA損傷の生成様式に影響することを明らかにした。2)照射後にCR-39のエッチングによって確認された重イオンヒット位置と一致して抗γH2AX抗体を用いて可視化されたDNA2本鎖切断の局在部位に非相同性末端結合を担うKu80が局在する過程をGFPを用いて観察し、照射の1030分後にγH2AXとKu80が共局在することを確認するとともに、異なるトラック構造を有するイオン種によってDNA損傷に対する修復蛋白質の動態が異なることを明らかにした。3)放射線抵抗性細菌Deinococcusradiodurans由来のDNA鎖切断末端結合蛋白質PprAを用いて哺乳動物細胞内に生じたDNA鎖切断損傷を可視化検出する技術を開発した。4)放射線照射細胞におけるDNA損傷の修復に中心的な役割を果たすDNA-PKcsは、低LETおよび高LET放射線によるバイスタンダー効果で誘発されるDNA損傷の修復にも関与していることを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-17510055
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17510055
東北日本における地域自立に関する比較ミニマムの研究
本研究は、昭和64年度から2年間にわたるものであるが、研究目的は、多極分散型国土形成について、東北地方の地域社会を対象に実証するものである。その際、理論的には地域社会発展・自立のミニマムの検討,実証的方法としては地域類型化にもとづく細密化が内容とされていた。しかし12回の研究会で明らかにされたことは、(1)都市ー農村を問わず、今日の地域社会づくりに関する理論的実証的検討は、相当すすんでおり、むしろその整理が必要なこと、(2)対象とした東北地方は、特色ある地域が分散的に存在し、その中でも首都圏との関係で広域都市化しつつ発展する地域と北東北のように過疎化の新時代を迎えている地域など構造的にも多様である。従ってそれを統一的全体的に把握する必要がある、(3)しかし、一部の地域社会の実証も必要,ということであった。上記の研究会にあわせて、今年度は南東北広域都市圏の調査にあわせて,北東北の資料収集につとめた。地域調査については、新潟県燕三条の洋食器産業の技術革新の実態調査を行なった。目下報告書の作成にむけて課題を整理中であるが,その内容は、(1)研究経過と東北地方問題,(2)東北各県の「綜合計画」の検討,(3)東北地方地域開発論の分析(東北地方社会論を含くむ),(4)新潟県洋食器産業の技術革新、(5)内発的地域社会発展理論の検討となっている。地域の実態分析をあわただしくまとめるよりも、問題空間を拡大、研究者の今後の仕事につなげる方が、研究主題の追及にかえってよいとする判断が、そこにはたらいた。本研究は、四全総策定過程で、多極分散型国土の形成を鋭く打ち出した、東北日本を対象に、地域社会発展の論理、地域自立の内在的要件を検証するものである。本年度の実積は以下の通りである。1.東北地方の県庁所在地において、5回の研究会を行こない、四全総以後の地域政策の動向、にもかかわらない地域社会の現実、研究者の批判的論理について検討した。2.東北日本社会の認識については、函館・青森インタ-ブロック構想、FIT構想などの推移を確認しつつ、東北各県の地域開発の現状、地域問題の諸相を、県庁の企画調整課を窓口に実態の認識につとめた。3.東北地方問題は、二重の側面、すなわち国際化を前提に、高度情報化、都市化、先端産業化をめざす動向と、人口流出、高令化、産業の停滞的内容から構成されている。前者については、東北の経済・行政主体がその柱とし展開中である。「第2国土軸論」「東北インテリジェント・コスモス」「重都論」「仙台市の政令指定都市」化、「東北開発促進計画」に焦点をあわせ、内容の認識につとめた。後者は、秋田、青森、岩手に強くみられるものであるが、そのことが県の総合計画に反映していることも検証した。4.市町村レベルにおいては、釜石等の加工貿易型素材産業の停滞状況を追認識するかたわら、地場資源、文化、人づくりを柱に、「町づくり」「村おこし」に成功している多くの自治体の現実の把握につとめた。5.理論的整理、東北地方問題の総合的握、一層の地域社会に下降した事実認識が、今年度の課題である。本研究は、昭和64年度から2年間にわたるものであるが、研究目的は、多極分散型国土形成について、東北地方の地域社会を対象に実証するものである。その際、理論的には地域社会発展・自立のミニマムの検討,実証的方法としては地域類型化にもとづく細密化が内容とされていた。しかし12回の研究会で明らかにされたことは、(1)都市ー農村を問わず、今日の地域社会づくりに関する理論的実証的検討は、相当すすんでおり、むしろその整理が必要なこと、(2)対象とした東北地方は、特色ある地域が分散的に存在し、その中でも首都圏との関係で広域都市化しつつ発展する地域と北東北のように過疎化の新時代を迎えている地域など構造的にも多様である。従ってそれを統一的全体的に把握する必要がある、(3)しかし、一部の地域社会の実証も必要,ということであった。上記の研究会にあわせて、今年度は南東北広域都市圏の調査にあわせて,北東北の資料収集につとめた。地域調査については、新潟県燕三条の洋食器産業の技術革新の実態調査を行なった。目下報告書の作成にむけて課題を整理中であるが,その内容は、(1)研究経過と東北地方問題,(2)東北各県の「綜合計画」の検討,(3)東北地方地域開発論の分析(東北地方社会論を含くむ),(4)新潟県洋食器産業の技術革新、(5)内発的地域社会発展理論の検討となっている。地域の実態分析をあわただしくまとめるよりも、問題空間を拡大、研究者の今後の仕事につなげる方が、研究主題の追及にかえってよいとする判断が、そこにはたらいた。
KAKENHI-PROJECT-01301016
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01301016
DNAの特性を利用した積層型ナノ構造体の構築と光電変換への応用
分子材料としてのDNAの特徴を生かし、センシングや光電変換機能を持つボトムアップ型新規DNAナノ構造体の構築を目的とし、電極に固定したDNA上での機能性分子の集積化に関する研究を行った。光機能性分子を修飾した核酸塩基三リン酸体を合成し、その修飾塩基をポリメラーゼによってテンプレートDNAに対して連続的に取り込ませることでDNA上への機能性分子の集積化を行い、光電応答を示すDNAデバイスの作製を行った。分子材料としてのDNAの特徴を生かし、センシングや光電変換機能を持つボトムアップ型新規DNAナノ構造体の構築を目的とし、電極に固定したDNA上での機能性分子の集積化に関する研究を行った。光機能性分子を修飾した核酸塩基三リン酸体を合成し、その修飾塩基をポリメラーゼによってテンプレートDNAに対して連続的に取り込ませることでDNA上への機能性分子の集積化を行い、光電応答を示すDNAデバイスの作製を行った。DNAは遺伝情報を司る生体高分子であるとともに、高度な相補塩基認識能から実現されるナノ構造体を構築するための分子材料としての性質も合わせ持っている。さらに、DNAはそのらせん軸に沿って一次元状に電子あるいはホールを輸送することが明らかにされており、導電性材料としての応用も期待されている。本研究では、“生体分子"としてのDNAと“分子材料"としてのDNAの特徴を生かし、空間・配向・距離が制御された機能性分子の集積化を電極上で実現し、センシングや光電変換機能を持つボトムアップ型新規ナノ構造体の構築を研究の目的とする。具体的には、光機能性分子を修飾した核酸塩基三リン酸体を設計し、その修飾塩基をポリメラーゼによってテンプレートDNAに対して連続的に取り込ませることで、DNA上への機能性分子の集積化を行う。この手法により、DNAをホール輸送層、DNA周囲に電子輸送層が形成された同軸型ナノケーブル、電子ドナー分子とアクセプター分子を並べた積層型ナノ構造体の構築を行い、高い効率で光エネルギー捕集と光電変換を実現するDNAナノデバイスの構築を目指す。今年度は、光レドックス活性を有するアントラキノンを光機能分子として選択し、ウリジンの5位にアセチレンを介してアントラキノンを修飾した三リン酸誘導体の合成を行った。合成した三リン酸誘導体のポリメラーゼによるプライマー伸長反応についてゲル電気泳動を用いて検討した結果、アデニンに対して修飾ウリジン三リン酸体が効率よく、選択的に取り込まれることを明らかにした。アデニン-チミン繰り返し配列においても効率よく反応が進行し、本手法を用いることで光機能分子であるアントラキノンを複数、連続的にDNAに導入することが可能であることを示した。生体高分子であるDNAは、高度な自己相補認識能を有しており、DNA配列をプログラムすることでナノ構造体を構築することができるため、ナノ材料としての応用が期待されている。さらに、電子あるいはホールを輸送する分子ワイヤーとして働くことが明らかとなっており、導電性材料としての応用も期待されている。本研究では、生体分子および分子材料としてのDNAの特徴を生かし、機能性分子の集積化を電極上で行うとともに、光電応答を示すDNAナノ構造体を構築することを目的として研究を行った。光によって電子移動を誘起する性質を持つアントラキノン(AQ)およびナフタルイミド(NI)を導入した修飾核酸塩基三リン酸体の合成を行い、テンプレート配列に対応した修飾核酸塩基の配列選択的な導入を試みるとともに、作製した機能性核酸の光電応答について検討した。ポリメラーゼの基質としてデオキシウリジン三リン酸体の5位にアセチレンリンカーを介して、AQおよびNIを導入した修飾三リン酸体を合成した。修飾三リン酸体を基質としたポリメラーゼ反応を行うことで配列情報に基づいた機能分子の導入が可能であることを、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法を用いて明らかにした。さらに、電極上におけるポリメラーゼ反応を利用してDNAのへの機能分子の連続的な取り込みを行うことで、光電応答を示すDNA修飾電極の作製が可能であることを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-20850031
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20850031
採餌行動の脳内機構:多元的価値に基づく意思決定に関する研究
ふ化直後のヒヨコを用いて神経経済学的研究を行った。これまでに競争的な環境で採餌をさせると選択衝動性が著しく亢進することを見出してきた。本研究では大脳線条体と扁桃体相同領域に着目して、意思決定が報酬量・近さ・コスト・リスク・公共情報等多様な価値によってどのように決まるか、を実験的に調べ、次の結果を得た。(1)競争の下では手がかり刺激から報酬量を想起するシステムが抑制を受ける、(2)競争下ではより多くのエフォートを払うが、これは中脳の報酬系(ドーパミン系)ではなく情動系(扁桃体)によって担われている、(3)餌量のリスクと競争が共にある場合に衝動性が亢進する、(4)競争の結果餌の情報は共有される。衝動性は、ヒトを含む動物の行動特性を、経済的価値判断と意思決定に基づいて評価する指標のひとつである。期待される報酬の「近さ」と「大きさ」を独立に操作して、「近くて小さな報酬」と「大きいが遠い報酬」の二者から択一選択をおこなわせるタスクを異時点間選択という。このタスクによって計られる「近さ」を優先する行動形質を、衝動性の一要因として特に選択衝動性と呼ぶのである。我々は競争採餌を経験させることによってヒヨコの衝動性が高まる、という知見を得て、その神経機構を解析してきた。この機構を理解することが、価値の多元性を理解する鍵となるからである。また、大脳線条体(側坐核を含む、腹内側部)に注目するが、それはこの領域の局所破壊が衝動性を高めることを見出していたからである。実際、この領域から自由行動条件の下で単一ニューロン活動を記録すると、報酬の近さを符号化する細胞、量を符号化する細胞などがこの領域に見出された。これらのニューロン活動が競争採餌の文脈でどのような修飾を受けるか検討したところ、以下の知見を得た。(1)競争文脈は、報酬手がかりの提示期に一過的に生じる興奮性活動に対して、抑制的に作用した。(2)競争文脈は、オペラント後の遅延期(報酬の供給に先立つ時期)の活動、また報酬期(餌が与えられてそれを消費する時期)の活動には影響をしなかった。更に、競争採餌に伴う歩行運動量が増加(社会的促進)について解析した。他者が存在すとき、採餌に投資する運動量が増える現象である。従来、動機付けが高まる事によって生じる、と解釈されてきた。そこでセロトニン・ドーパミン等、線条体に作用する一連の神経修飾物質に着目した。その結果、(3)セロトニンの取り込み阻害剤の全身投与は、内側線条体の局所破壊と同様に、運動量を減少させたが、(4)中脳ドーパミンの枯渇(ただし片側性のみ)は効果がなかった。選択衝動性は、ヒトを含む多くの動物において、経済的意思決定の行動特性を評価する重要な指標の一つである。遅延を伴う報酬の価値を、遅延時間に対して如何に強く割り引くか、この時間割引きの高さを現す。具体的には「近くて小さな報酬」と「遠いが大きな報酬」の二者択一選択において、前者を選ぶ割合を以って測る。孵化直後のヒヨコ(ニワトリ雛)が競争採餌を経験することによって、選択衝動性を徐々に高めていくことを見出した。この衝動性発達の神経機構を理解することによって、「近さ」「大きさ」「コスト」「リスク」等、脳内の多様な価値表現について理解を深めることが期待される。我々は大脳線条体(側坐核と近傍の内側線条体)に注目して、研究を進めている。従来の研究によって、この領域の破壊が衝動性を高めること、この領域から記録された単一ニューロン活動が報酬の「近さ」と「大きさ」を符号化していること、などを見出したからである。本研究では、一連の行動実験と神経生理学的実験を行い、以下の知見を得た。(1)競争的文脈は、線条体ニューロンの手掛かり期活動(手掛かりとなる視覚刺激の提示に対して予期報酬に応じた活動を生じるもの)を選択的に抑制する。(2)競争的文脈は、採餌エフォートを亢進し社会的促進をもたらすが、これは中脳ドーパミンから線条体への投射を枯渇させても影響を受けない。(3)社会的促進は、弓外套皮質の両側性破壊によって著しく損なわれる。(4)競争採餌は衝動性発達に対して必要だが十分ではなく、動物が実際に受け取る餌のばらつき(試行毎の良の変動によるリスク)も必要な要件である。(5)競争的個体間の利益相反(獲得報酬の不一致)は、衝動性発達にとって必須ではない。選択衝動性は、ヒトを含む多くの動物において、経済的意思決定の行動特性を評価する重要な指標の一つである。遅延を伴う報酬の価値を、遅延時間に対していかに強く割り引くか、この時間割引きの高さを現す。具体的には「近くて小さな報酬」と「遠いが大きな報酬」の二者択一選択において、前者を選ぶ割合を以って測る。孵化直後のヒヨコ(ニワトリ雛)が競争採餌を経験することによって、選択衝動性を徐々に高めていくことを見出した。この衝動性発達の神経機構を理解することによって、「近さ」「大きさ」「コスト」「リスク」等、脳内の多様な価値表現について理解を深めることが期待される。我々は大脳線条体(側坐核と近傍の内側線条体)に注目して、研究を進めている。
KAKENHI-PROJECT-25291071
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25291071
採餌行動の脳内機構:多元的価値に基づく意思決定に関する研究
従来の研究によって、この領域の破壊が衝動性を高めること、この領域から記録された単一ニューロン活動が報酬の「近さ」と「大きさ」を符号化していること、などを見出したからである。本研究では、一連の行動実験と神経生理学的実験を行い、以下の知見を得た。(1)競争的文脈は、線条体ニューロンの手掛かり期活動(手掛かりとなる視覚刺激の提示に対して予期報酬に応じた活動を生じるもの)を選択的に抑制する。(2)競争的文脈は、採餌エフォートを亢進し社会的促進をもたらすが、これは中脳ドーパミンから線条体への投射を枯渇させても影響を受けない。(3)社会的促進は、弓外套皮質の両側性破壊によって著しく損なわれる。(4)競争採餌は衝動性発達に対して必要だが十分ではない。動物が実際に受け取る餌のばらつき(試行毎の良の変動によるリスク)もまた、必要である。(5)競争的個体間の利益相反(獲得報酬の不一致)は、衝動性発達にとって必須ではない。平成27年度は主に次の研究を進めた。(1)26年度までの予備的な研究の結果、競争採餌が衝動性発達を亢進するに当たって、報酬量の分散(リスク要因)が重要であることを見出していた。27年度はリスク要因の寄与について更に詳細に検討した。その結果、二項分布に基づく報酬量分散が選択肢(SS:近くて小さな餌、LL:遠くて大きな餌)のいずれかにあっても、衝動性亢進が生じることが判明した。衝動性亢進は特定の手掛かりと連合した報酬価値の低減ではなく、時間割引きの強化であることを示唆する。なお、これらの結果はAnimal Behaviour誌に投稿して受理され、現在最終的な修正の段階である。(2)予期された報酬量と実報酬量との差を予期誤差と呼ぶ。標準的な理論として広く受け入れられている強化学習理論では、状態価値関数は大脳外套(皮質)および基底核に分散表現されていると考えられている。さらに、中脳ドーパミン作動性ニューロンが予期誤差を符号化し、その活動が状態価値を更新すると考えられている。平成27年度は基底核(腹側線条体)及び中脳被蓋部(黒質緻密部とその周辺)より単一ニューロン活動を導出し、報酬消去に伴う活動の変化を調べた。その結果、TD学習(temporal difference learning)から予測される価値の部分表現が、これらのニューロンによって担われていることが判明した。さらに、一連の神経解剖学的検討を行い、TD誤差を計算するアルゴリズムについてモデルを構築した。この結果も、現在学術誌に投稿準備中である。選択衝動性は、ヒトを含む多くの動物において同じ手続きによって経済的意思決定の行動特性を評価することができる、重要な行動指標の一つである。報酬の価値を遅延時間によっていかに強く割り引くか、この時間割引きの強さをあらわす指標となる。具体的には「近くて小さな報酬」と「遠いが大きな報酬」の二つの選択肢を動物に与え、前者を選ぶ割合をもって評価する。前者を選ぶ割合が高い時、衝動性が高いという。我々これまで孵化直後のヒヨコ(ニワトリ雛)を対象とした研究を行い、競争採餌の経験が衝動性を亢進する事を報告してきた。他方、競争的他者の存在は餌に向かう労働投資量を著しく高める。衝動性発達と労働投資量亢進の神経機構を理解することによって、「近さ」「大きさ」「コスト」「リスク」「社会的競争」等、多様な価値とその脳内表現について理解を深めることが期待される。これまでは大脳線条体(側坐核と近傍の内側線条体)に着目してきた。
KAKENHI-PROJECT-25291071
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25291071
胆膵領域癌における微少リンパ節転移とリンパ流に関する研究
【はじめに】消化器癌のリンパ節転移の診断は通常最大割面のHematoxylin and Eosin (HE)染色で行われるため、最大割面にまで至らないような転移病巣はリンパ節転移陰性と診断される。従ってリンパ節転移陰性と診断されたなかには微小な転移がある程度の頻度で含まれていることを認識する必要がある。消化器癌ではリンパ節転移陽性例は陰性例に比較し予後不良であるが、リンパ節微小転移陽性例が微小転移陰性例と比較して予後不良かどうかは現時点のところ結論は出ていない。一方、胆管系悪性腫瘍でもリンパ節転移は重要な予後規定因子になっているがこの領域での微小転移に関する報告はこれまでに2、3の報告を見るのみである.そこで本研究では胆管系悪性腫瘍におけるリンパ節微小転移の検出頻度と予後との相関を検討し、その臨床的意義を明らかにすることを試みた.【方法】対象は肝門部胆管癌17例、漿膜下浸潤胆嚢癌15例、中下部胆管癌44例.うち最大割面のHE染色でおこなわれ、通常の病理組織検索でリンパ節転移陰性と診断された症例のそれぞれ19例、15例、10例に対し連続切片の作成をおこなった.各切片レベルにつき2枚の切片を作成し、1枚をHE染色、あとの1枚を免疫組織学的染色を施行した.各切片レベルの間隔は40mmとした.1つのリンパ節につき平均17.1レベルで観察を行った.免疫組織学的染色は1次抗体に抗サイトケラチン抗体を用いた.微小転移を来しやすい臨床病理的背景因子およびその予後を検討した.【結果】微小転移の検出率はそれぞれ17.5%、20.0%、0.0%であった.微小転移を微小転移を来しやすい臨床病理的背景に特徴はなかった.微小転移を来した症例は予後不良である傾向を示した.しかし微小転移を来さなかった症例との有意差は認めなかった.【結論】連続切片の作成と免疫染色によって検出された胆管系悪性腫瘍の微小転移の臨床的意義は明らかではなかったが、今後大規模な研究が必要であると考えられた.【はじめに】消化器癌のリンパ節転移の診断は通常最大割面のHematoxylin and Eosin (HE)染色で行われるため、最大割面にまで至らないような転移病巣はリンパ節転移陰性と診断される。従ってリンパ節転移陰性と診断されたなかには微小な転移がある程度の頻度で含まれていることを認識する必要がある。消化器癌ではリンパ節転移陽性例は陰性例に比較し予後不良であるが、リンパ節微小転移陽性例が微小転移陰性例と比較して予後不良かどうかは現時点のところ結論は出ていない。一方、胆管系悪性腫瘍でもリンパ節転移は重要な予後規定因子になっているがこの領域での微小転移に関する報告はこれまでに2、3の報告を見るのみである.そこで本研究では胆管系悪性腫瘍におけるリンパ節微小転移の検出頻度と予後との相関を検討し、その臨床的意義を明らかにすることを試みた.【方法】対象は肝門部胆管癌17例、漿膜下浸潤胆嚢癌15例、中下部胆管癌44例.うち最大割面のHE染色でおこなわれ、通常の病理組織検索でリンパ節転移陰性と診断された症例のそれぞれ19例、15例、10例に対し連続切片の作成をおこなった.各切片レベルにつき2枚の切片を作成し、1枚をHE染色、あとの1枚を免疫組織学的染色を施行した.各切片レベルの間隔は40mmとした.1つのリンパ節につき平均17.1レベルで観察を行った.免疫組織学的染色は1次抗体に抗サイトケラチン抗体を用いた.微小転移を来しやすい臨床病理的背景因子およびその予後を検討した.【結果】微小転移の検出率はそれぞれ17.5%、20.0%、0.0%であった.微小転移を微小転移を来しやすい臨床病理的背景に特徴はなかった.微小転移を来した症例は予後不良である傾向を示した.しかし微小転移を来さなかった症例との有意差は認めなかった.【結論】連続切片の作成と免疫染色によって検出された胆管系悪性腫瘍の微小転移の臨床的意義は明らかではなかったが、今後大規模な研究が必要であると考えられた.【目的】肝門部胆管癌における微小転移の有無を免疫組織学的手法を用いて観察し予後との関連を検討した.【方法】組織学的に治癒切除(だだしem1を含む)が行なわれた肝門部胆管癌n0症例18例で、術後2年以上経過したものを対象とした.リンパ節のパラフィン包埋標本から40μm間隔の亜連続切片を作成しHE染色、抗サイトケラチン抗体(CAM5.2, Becton Dickinson社.US)を用いた免疫染色をおこなった.【結果】免疫染色では7/109個,4/18例に転移を認めた.転移部位は12h,12b1,12p1,8a,8pであった.転移巣の大きさは301000μmで,30μm,70μm,130μmの大きさの転移巣は、HE染色による近接切片の観察では同じ転移巣を確認できなかった.HE染色で確認できた他の2例では最大割面から各々440880μm離れた割面に認めた.
KAKENHI-PROJECT-12671197
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胆膵領域癌における微少リンパ節転移とリンパ流に関する研究
微小転移の4例はいずれも再発をきたしており、50%生存期間は13カ月、5生率25.0%であった.再発形式は局所断端再発が1例、腹膜播種2例、大動脈周囲リンパ節転移1例であった.また4例の分化度は中分化1例、低分化2例、未分化1例.深達度はss3例、se1例、神経周囲浸潤はpn0が1例、pn2が1例、pn3が2例であった.em1を含む肝門部胆管癌治癒切除例29例の従来法でのリンパ節転移の有無で生存率を比較(Kaplan-Meier法、Logrank test)すると、転移陽性例11例の5生率は18.2%で陰性例18例の5生率50.0%との有意差はなかった(p=0.07).これに対し微小転移症例を含めて比較すると、5生率はそれぞれ22.2%と56.1%となり、有意差を認めた(p=0.012).【結論】連続切片の作成と免疫染色による検索によりリンパ節転移の診断率が向上した.微小転移の有無は予後を反映した.胆膵領域癌においてもリンパ節転移は予後を予測する重要な因子である.しかしこれまでの検出方法では見逃されてきた微小なリンパ節内の癌病巣が同定されるに至り、その臨床上の意義が問われるようになった.【方法】肝門部胆管癌治癒切除43症例および胆嚢癌治癒切除30症例で従来の代表1切片のHematoxilin Eosin(HE)染色による検索でリンパ節転移陰性と診断された肝門部胆管癌23症例、胆嚢癌19症例のリンパ節を対象に微小癌病巣を検索した.フォルマリン固定パラフィン包埋された摘出リンパ節の亜連続切片を937レベル(平均23レベル)作成した.各レベルの間隔は40μmとした.各レベルにおいて2枚の切片の作成し1枚をHE染色,1枚を抗サイトケラチン抗体を用いた免疫染色を行い検索した.1次抗体はCAM5.2(Becton Dickinson,US)を用い、LSAB法にて染色した.抗サイトケラチン抗体を用いた免疫染色では正常は上皮細胞、形質細胞も染色されるため同レベルにおけるHE染色で癌細胞の存在を確認できるものを転移陽性と判定した.【結果】肝門部胆管癌、胆嚢癌において微小転移の有無を検索した結果それぞれ17.8%、14.2%の症例に微小転移を検出した.転移巣の大きさは25μmから110μmであり、細胞集塊を形成していた.単細胞の形で検出されたものはなかった.微小転移巣を認めたレベルは最大割面の比較的近傍に観察され最大でも440μmの距離であった.その予後であるが前者ではリンパ節転移陽性症例と同様に予後不良であった.後者での生存率は症例数が少なく関連性は検討できなかった.今後症例を集積し、予後との関連を検討する必要がある.また亜連続切片による微小リンパ節の検出では最大割面から500μmの範囲の検索で十分な検出率を得られると思われた.
KAKENHI-PROJECT-12671197
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腸内細菌叢プロファイリングによる肝性脳症の分子機序解明と革新的治療の開発
本年度は、末期肝不全患者の腸内細菌叢の肝移植後のプロファイリングを行う目的で腸内細菌叢とその代謝産物である胆汁酸および短鎖脂肪酸の組成を明らかにし、生体肝移植における腸内細菌叢の組成や術後経過との関連性について検討した。【対象・方法】対象は2017年6月から2018年6月までに当科にて生体肝移植を施行したレシピエント18名と健常人コントロールとしてドナー17名。術前の便と血清を採取した。1)腸内細菌叢の同定:便中の16s rRNAの解析により細菌叢を同定した。2)短鎖脂肪酸・胆汁酸解析:糞便・血清の質量分析により血清中の短鎖脂肪酸及び胆汁酸、便中の短鎖脂肪酸の質量分析を行った。3)臨床因子との関連を検討した。【結果】1)腸内細菌叢の同定:レシピエントではドナーに比してFirmicutes門が有意に少なく(p=0.023)、Proteobacteria門が有意に多かった(p=0.032)。2)短鎖脂肪酸・胆汁酸解析:レシピエントでは、一次胆汁酸値が有意に高く(p=0.0427)、血清短鎖脂肪酸ではレシピエントで血清中のプロピオン酸(p=0.049)がドナー群と比較して有意に高かった。3)臨床因子との関連性:レシピエントの開腹時門脈圧は、Bacteroidetes門及び便中プロピオン酸値と有意に正の相関を示した(R2=0.260、p=0.0307、R2=0.588、p=0.0014)。本解析でレシピエントの腸内細菌叢の組成は、既報での肝硬変患者の腸内細菌叢と同様の傾向を示した。また腸内細菌叢、短鎖脂肪酸および臨床因子間の解析では、Bacteroidetes門とその代謝産物であるプロピオン酸値と門脈圧が互いに正の相関を示した。腸内細菌が代謝産物を介して門脈圧上昇に寄与する可能性を示唆し、肝硬変治療標的開発にむけた新たな知見といえる。臨床肝移植患者での研究であり、初年度より18名の肝移植患者、17名の健常者(ドナー)の便、血清の解析ができた。さらに症例を増やし、腸内細菌叢と短鎖脂肪酸、門脈圧亢進症、肝性脳症との関係につき検討する。本年度は、末期肝不全患者の腸内細菌叢の肝移植後のプロファイリングを行う目的で腸内細菌叢とその代謝産物である胆汁酸および短鎖脂肪酸の組成を明らかにし、生体肝移植における腸内細菌叢の組成や術後経過との関連性について検討した。【対象・方法】対象は2017年6月から2018年6月までに当科にて生体肝移植を施行したレシピエント18名と健常人コントロールとしてドナー17名。術前の便と血清を採取した。1)腸内細菌叢の同定:便中の16s rRNAの解析により細菌叢を同定した。2)短鎖脂肪酸・胆汁酸解析:糞便・血清の質量分析により血清中の短鎖脂肪酸及び胆汁酸、便中の短鎖脂肪酸の質量分析を行った。3)臨床因子との関連を検討した。【結果】1)腸内細菌叢の同定:レシピエントではドナーに比してFirmicutes門が有意に少なく(p=0.023)、Proteobacteria門が有意に多かった(p=0.032)。2)短鎖脂肪酸・胆汁酸解析:レシピエントでは、一次胆汁酸値が有意に高く(p=0.0427)、血清短鎖脂肪酸ではレシピエントで血清中のプロピオン酸(p=0.049)がドナー群と比較して有意に高かった。3)臨床因子との関連性:レシピエントの開腹時門脈圧は、Bacteroidetes門及び便中プロピオン酸値と有意に正の相関を示した(R2=0.260、p=0.0307、R2=0.588、p=0.0014)。本解析でレシピエントの腸内細菌叢の組成は、既報での肝硬変患者の腸内細菌叢と同様の傾向を示した。また腸内細菌叢、短鎖脂肪酸および臨床因子間の解析では、Bacteroidetes門とその代謝産物であるプロピオン酸値と門脈圧が互いに正の相関を示した。腸内細菌が代謝産物を介して門脈圧上昇に寄与する可能性を示唆し、肝硬変治療標的開発にむけた新たな知見といえる。臨床肝移植患者での研究であり、初年度より18名の肝移植患者、17名の健常者(ドナー)の便、血清の解析ができた。さらに症例を増やし、腸内細菌叢と短鎖脂肪酸、門脈圧亢進症、肝性脳症との関係につき検討する。(理由)当該年度は、物品費が未執行となり、また旅費による支出が、当初の計画より少なかった。その結果、486,108円が次年度使用額として発生した。(使用計画)次年度は、当初の計画通り、肝不全モデルマウスに対するウアレーゼ低産生性腸内細菌カクテルの開発を行い、肝不全・肝性脳症に対する効果を検証する。
KAKENHI-PROJECT-18K08684
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遺伝性血管性浮腫における線溶凝固系の異常の病態解明と早期診断・治療を目指す研究
現在のところ、当院に通院するすでに確定診断が得られている遺伝性血管性浮腫患者の非発作時の血液検体と、発作時の血液検体を合わせて40検体ほど採取完了している。いずれも当院受診時に血液採取し、線溶系・凝固系を中心とした各種項目の測定を行い、結果が得られている(D-dimer、プロトロンビンフラグメントF1+2、プロトロンビン時間、活性化部分トロンボプラスチン時間、トロンボテスト、へパプラスチンテスト、活性化全血凝固時間、フィブリノゲン、第VIII因子、第IX因子、第XIII因子、アンチトロンビンIII、トロンビン・アンチトロンビンIII複合体、フィブリノペプチドA、可溶性フィブリンモノマー複合体、可溶性フィブリン、プロテインC、プロテインS、ユーグロブリン溶解時間、フィブリノゲン/フィブリン分解産物、プラスミノゲン、α2-プラスミンインヒビター、プラスミン・α2-プラスミンインヒビター複合体、プラスミノゲンアクチベーターインヒビター1、t-PA-PAI-1複合体、トロンボモジュリン、血清補体価、C3、C4、C1-インアクチベーター活性、軽カルシウムイオン、末梢血液一般)。また、発作時の発作部位や、重症度、発作頻度、発作のトリガーなどの臨床症状を詳細に病歴を聴取し、記録し保存している。当初予定していたよりも血液検体採取数が少ないため、今後はこれら血液検査データと臨床症状のデータを比較検討しながら、さらなる検体数の増加を目指している状況である。当初予定していたより得られる血液検体採取数が少ない理由としては、発作の発症は予見できず突発的偶発的に起こり得るためと考えられる。遺伝性血管性浮腫発作時の検体採取については、発作を予知することができない点から、採取できる検体を予め詳細に予想することは難しく、現時点で当初想定していた採取検体数よりも少ない状況となっており、今後もデータの解析を行いながら、さらなる検体採取数の増加に努める。今後、目標とする検体採取数に到達したら、それまでに逐次得られている血液検体の測定結果を、臨床情報を交えながらすべて比較検討し、統計学的に集計する。これにより得られる結果を、遺伝性血管性浮腫において認められる線溶凝固系異常の病態を解明する一助となり得るか評価し、適切な学会で成果を発表し、論文化することを目標とする。現在のところ、当院に通院するすでに確定診断が得られている遺伝性血管性浮腫患者の非発作時の血液検体と、発作時の血液検体を合わせて20検体ほど採取完了している。いずれも当院受診時に血液採取し、線溶系・凝固系を中心とした各種項目の測定を行い、結果が得られている(D-dimer、プロトロンビンフラグメントF1+2、プロトロンビン時間、活性化部分トロンボプラスチン時間、トロンボテスト、へパプラスチンテスト、活性化全血凝固時間、フィブリノゲン、第VIII因子、第IX因子、第XIII因子、アンチトロンビンIII、トロンビン・アンチトロンビンIII複合体、フィブリノペプチドA、可溶性フィブリンモノマー複合体、可溶性フィブリン、プロテインC、プロテインS、ユーグロブリン溶解時間、フィブリノゲン/フィブリン分解産物、プラスミノゲン、α2-プラスミンインヒビター、プラスミン・α2-プラスミンインヒビター複合体、プラスミノゲンアクチベーターインヒビター1、t-PA-PAI-1複合体、トロンボモジュリン、血清補体価、C3、C4、C1-インアクチベーター活性、軽カルシウムイオン、末梢血液一般)。また、発作時の発作部位や、重症度、発作頻度、発作のトリガーなどの臨床症状を詳細に病歴を聴取し、記録し保存している。これら、血液検査データと臨床症状のデータを比較検討しながら、さらなる検体数の増加を目指している状況である。遺伝性血管性浮腫発作時の検体採取については、発作を予知することができない点から、採取できる検体を予め詳細に予想することは難しいが、当初想定していた予想通り、概ね順調に進展していると考える。現在のところ、当院に通院するすでに確定診断が得られている遺伝性血管性浮腫患者の非発作時の血液検体と、発作時の血液検体を合わせて40検体ほど採取完了している。いずれも当院受診時に血液採取し、線溶系・凝固系を中心とした各種項目の測定を行い、結果が得られている(D-dimer、プロトロンビンフラグメントF1+2、プロトロンビン時間、活性化部分トロンボプラスチン時間、トロンボテスト、へパプラスチンテスト、活性化全血凝固時間、フィブリノゲン、第VIII因子、第IX因子、第XIII因子、アンチトロンビンIII、トロンビン・アンチトロンビンIII複合体、フィブリノペプチドA、可溶性フィブリンモノマー複合体、可溶性フィブリン、プロテインC、プロテインS、ユーグロブリン溶解時間、フィブリノゲン/フィブリン分解産物、プラスミノゲン、α2-プラスミンインヒビター、プラスミン・α2-プラスミンインヒビター複合体、プラスミノゲンアクチベーターインヒビター1、t-PA-PAI-1複合体、トロンボモジュリン、血清補体価、C3、C4、C1-インアクチベーター活性、軽カルシウムイオン、末梢血液一般)。また、発作時の発作部位や、重症度、発作頻度、発作のトリガーなどの臨床症状を詳細に病歴を聴取し、記録し保存している。当初予定していたよりも血液検体採取数が少ないため、今後はこれら血液検査データと臨床症状のデータを比較検討しながら、さらなる検体数の増加を目指している状況である。当初予定していたより得られる血液検体採取数が少ない理由としては、発作の発症は予見できず突発的偶発的に起こり得るためと考えられる。
KAKENHI-PROJECT-17K15783
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K15783
遺伝性血管性浮腫における線溶凝固系の異常の病態解明と早期診断・治療を目指す研究
遺伝性血管性浮腫発作時の検体採取については、発作を予知することができない点から、採取できる検体を予め詳細に予想することは難しく、現時点で当初想定していた採取検体数よりも少ない状況となっており、今後もデータの解析を行いながら、さらなる検体採取数の増加に努める。今後、目標とする検体採取数に到達したら、それまでに逐次得られている血液検体の測定結果を、臨床情報を交えながらすべて比較検討し、統計学的に集計する。これにより得られる結果を、遺伝性血管性浮腫において認められる線溶凝固系異常の病態を解明する一助となり得るか評価し、適切な学会で成果を発表し、論文化することを目標とする。今後、目標とする検体採取数に到達したら、それまでに逐次得られている血液検体の測定結果を、臨床情報を交えながらすべて比較検討し、統計学的に集計する。これにより得られる結果を、遺伝性血管性浮腫において認められる線溶凝固系異常の病態を解明する一助となり得るか評価し、適切な学会で成果を発表し、論文化することを目標とする。当初予定していた検査費用よりも少ない経費使用となっているが、今後引き続き検体測定を行う予定であり、十分な検体数を検査するために必要な額であり、次年度使用額として妥当である。当初予定していた検査費用よりも少ない経費使用となっているが、今後引き続き検体測定を行う予定であり、十分な検体数を検査するために必要な額であり、次年度使用額として妥当である。
KAKENHI-PROJECT-17K15783
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K15783
イヌ組織球増殖性疾患に対する抗マラリア薬アルテミシニン誘導体の評価
悪性組織球症は、人においてみられるまれな組織球増殖性疾患であり有効な治療法が確立されていない。一方、犬においては同様の病態である組織球性肉腫が比較的好発し、優れた自然発生モデルと考えられる。犬組織球性肉腫および人悪性組織球症では、高フェリチン血症の発生が知られており、腫瘍細胞による鉄の取り込み促進が腫瘍の増殖に関与しているとされる。マラリア治療薬として知られるアルテミシニンは、鉄と反応してフリーラジカルを発生する薬剤である。本研究では、各種犬腫瘍細胞株においてアルテミシニンが抗腫瘍効果を示すことを確認し、各腫瘍細胞株のアルテミシニン感受性と鉄代謝タンパクの発現量との関係を明らかにした。本年度は培養腫瘍細胞株パネルにおけるアルテミシニン類の生体内活性型であるジヒドロアルテミシニン(DHA)の抗腫瘍作用スペクトラムを調査し、細胞毒性効果に関与する細胞側の要因の分析を目的とした。2つの犬組織球性肉腫細胞株を含む8種の犬またはマウス由来腫瘍細胞株および犬/マウスの正常線維芽細胞を用いin vitro試験を実施したところ、犬組織球性肉腫細胞株2種では、他の腫瘍細胞株より高い感受性が認められた。また、正常線維芽細胞では100uMまでの範囲で細胞毒性は認められなかった。正常犬にて血中濃度を測定したところ、IC50には達しなかった。しかしながら、犬組織球性肉腫移植マウスにおいては効果は認められており、in vivoでは効果発現が異なることが示された。上記パネルのうち、最もDHA感受性の低かったマウス扁平上皮癌細胞(IC50>100uM)を用いた移植マウスにおいても、in vivoではDHAによる腫瘍増殖の有意な遅延が認められた。10種の腫瘍細胞株/正常細胞にて、鉄のキレートによりDHAの効果は完全に消失することが確認された。鉄を単体またはホロトランスフェリンの形で添加した場合において各細胞のDHA感受性の変化をみたところ、単体の鉄添加によりIC50の低下を認めた細胞株と、ホロトランスフェリンの添加時にIC50の低下を認めた細胞株が認められた。また、正常線維芽細胞においては、鉄添加によるDHA細胞毒性効果の増強は認められなかった。具体的な鉄代謝関連因子としてトランスフェリン受容体およびフェリチンについて、リアルタイムPCR法を用いて、細胞内mRNAの相対定量を行った。本実験では、単体の鉄添加によりIC50の低下を認めた細胞株ではフェリチンの遺伝子発現量の増加傾向が、ホロトランスフェリンの添加時にIC50の低下を認めた細胞株ではトランスフェリン受容体の遺伝子発現量の増加傾向がそれぞれ認められた。悪性組織球症は、人においてみられるまれな組織球増殖性疾患であり有効な治療法が確立されていない。一方、犬においては同様の病態である組織球性肉腫が比較的好発し、優れた自然発生モデルと考えられる。犬組織球性肉腫および人悪性組織球症では、高フェリチン血症の発生が知られており、腫瘍細胞による鉄の取り込み促進が腫瘍の増殖に関与しているとされる。マラリア治療薬として知られるアルテミシニンは、鉄と反応してフリーラジカルを発生する薬剤である。本研究では、各種犬腫瘍細胞株においてアルテミシニンが抗腫瘍効果を示すことを確認し、各腫瘍細胞株のアルテミシニン感受性と鉄代謝タンパクの発現量との関係を明らかにした。本年度の研究では、犬組織球性肉腫が鉄を多く含有していると推測し、鉄反応性物質であるアルテミシニン類が抗腫瘍効果を持つという仮説に基づいて各実験を実施した。まず、犬組織球性肉腫症例より採材した腫瘍組織を用いて、腫瘍組織内鉄含有量をICP-MS法およびベルリンブルー組織染色法にて定量した。結果、ICP-MS法による定量では血液混入の影響が大きく、他の腫瘍との単純比較は不可能であったものの、ベルリンブルー染色法においてすべての組織球性肉腫で染色陽性であり、犬組織球性肉腫は細胞内に高濃度の鉄を含有することが示唆された。次に、樹立した犬組織球性肉腫細胞株を持ちいて、In vitroにて細胞障害性試験を行ったところ、用いたすべての細胞株においてジヒドロアルテミシニンは細胞障害性を示すことが確認された(IC50=7.6-10uM)。細胞内鉄含有量が細胞障害性に関連しているという仮説の照明のため、犬組織球性肉腫細胞にクエン酸鉄アンモニウム(FeAC)およびヒトホロトランスフェリン(hTf)を作用させ、細胞内鉄量の測定およびジヒドロアルテミシニンに対する感受性の変化を観察したところ、FeAC・hTfどちらの場合でも細胞内鉄含有量は増加し、それに伴ってジヒドロアルテミシニンの細胞障害性も増強されることが示された。逆に、細胞内鉄を減少させる条件を設定したところ、ジヒドロアルテミシニンの細胞障害性はほぼ完全に抑制された。また、上記の細胞障害性は、アポトーシスの誘導によるものであることを、アネキシンV染色法により確認し、鉄添加条件および鉄キレート条件において、ジヒドロアルテミシニンのアポトーシス誘導効果がそれぞれ増強および抑制されることを確認した。現在、犬組織球性肉腫細胞をヌードマウス皮下に移植した担癌マウスモデルを作成し、ジヒドロアルテミシニンのIn vivoでの抗腫瘍効果を確認中である。本年度の研究では、昨年度に引き続き、腫瘍細胞株パネルにおいてジヒドロアルテミシニン(DHA)感受性と鉄代謝タンパク質発現量の関係性について分析した。
KAKENHI-PROJECT-24780304
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イヌ組織球増殖性疾患に対する抗マラリア薬アルテミシニン誘導体の評価
また、研究者らが過去に実施した正常犬におけるDHAの薬物動態実験の追試を行った。各細胞株におけるDHAのIC50は8.1654.5uMと感受性に幅があることが確認された。また、犬およびマウス正常線維芽細胞においてDHAが細胞障害性を示さないことが確認された。また、全腫瘍細胞株においてDHAの細胞障害性は鉄のキレートにより抑制され、鉄の添加により増強された。次いで、犬組織球性肉腫細胞株およびマウス扁平上皮癌細胞株の担癌マウスモデルを作成し、in vivoでの抗腫瘍効果の検証を行った。前年度に作成が難航していた血球貪食性組織球性肉腫細胞株の担癌マウスの作成は、本年度も成功せず、in vivoでの試験は日血球貪食性の細胞株でのみ実施された。In vitroにおいて中等度のDHA感受性を示したCHS-4犬組織球性肉腫細胞株では、有意な抗腫瘍効果は認められなかった。一方、in vitroにおいてDHA感受性が認められず(IC50>100uM)、鉄添加により顕著にDHA感受性が増強した(IC50: 1.42uM)細胞株において、担癌マウスモデルでは有意な腫瘍増殖抑制効果が観察された。同細胞においては、トランスフェリン受容体の発現量が、正常線維芽細胞と比較して約10倍に増加していることが確認され、in vivoにおける有意な抗腫瘍効果が、トランスフェリンを介した鉄の細胞内取り込みにより増強されたものと考えられた。In vivoにおいて抗腫瘍効果が認められなかったCHS-4細胞株においては、トランスフェリン受容体発現量は正常線維芽細胞よりも有意に低かった。一昨年度の実験結果から推測された、血球貪食を介した直接的なヘム分子の取り込みによる細胞内鉄含有量の増加がDHA細胞毒性を増強させる可能性については、担癌マウスでの検討ができず、今後の課題と考えられた。腫瘍以上の様に、本研究は、当初の予定に従って概ね良好に進行している。ただし、昨年度計画した、犬組織球性肉腫移植マウスモデルの作成においては、血球貪食性組織球性肉腫細胞株のマウスへの生着が不良であり、現在も作成を試みている。本研究は、当初の予定にしたがって、おおむね順調に進行している。本年度に得られた結果を踏まえて、今後は:1.犬およびマウス腫瘍細胞株と犬/マウス正常繊維芽細胞におけるフェリチン、トランスフェリン受容体の遺伝子発現量とDHA感受性の関連性の検討(継続)2.犬およびマウス腫瘍細胞株と犬/マウス正常繊維芽細胞におけるフェリチン、トランスフェリン受容体の遺伝子発現量と鉄添加方式の違いによるDHA感受性増強効果の関連性の検討(継続)3.血球貪食性犬組織球性肉腫細胞移植マウスモデルの作成(継続)による、生体内でも血球貪食現象の確認およびそれによるDHA感受性の効果の検証4.犬組織球性肉腫に対する新規治療法の模索:アルテミシニン類化合物による従来の化学療法薬の増強効果の検討、新規化学療法薬の模索、細胞介在性免疫療法のin vitroにおける検討を予定している。1および2では、犬組織球性肉腫がアルテミシニン誘導体に感受性を示す機序として、トランスフェリン受容体高発現、フェリチン高発現および直接的赤血球貪食の3つが考えらえれているが、そのうちトランスフェリン受容体発現量およびフェリチン発現量が細胞のDHA感受性に与える影響について検証する。
KAKENHI-PROJECT-24780304
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24780304
河川の蛇行形状変化に伴う河床堆積物層厚時系列変化モニタリング手法の開発
本研究に関連して機材を設置した犬上川では,2001年8月に大きな出水があり,このため河川高水敷に設置した機材のデーターロガーまでもが冠水する被害を受けた.しかし,本研究の目的とするような地形変化は,このような大きな出水にこそ生じるものなので,すくなくともセンサー部が不可抗力的に破壊されるまでのデータを良好に記録できなくてはならない.そこで2002年度は2001年のような出水でもデータを良好に記録できるようなロガーの設置方法を検討した.データロガーを収納するボックスを高水敷のなるべく堤防よりでかつ地表面より1.5m程度のところに再設置した.この場合,センサーからロガーまでのケーブル長がこれまでより長くなり,このままでは出水時に断線の危険が高くなる.そこで,同様の機械を北海道パンケナイ川に設置したときの経験から,ケーブルをプラスチック製保護管内に入れ,出水時には水面上に浮けるようにした.また,ロガーの設置は高水敷の河辺林内にし,すこしでも水の衝撃が弱まるようにするとともに,一般人の目に付きにくいようにした.残念ながら2002年度には出水がほとんどなく,河床地形が変化することはなかった.しかし上記のような再設置をおこなったことで,今後も観測を継続することができるので,今後に期待している.また,本研究で使用しているシステムを用いた観測結果の一部を,2002年9月にオーストラリアで開かれた国際会議で発表することができたとともに,この会議のプロシーディングに英文論文を掲載することができた.Kurashige(1999)は改良型プレッシャーピローを用いて河床堆積物層厚を自記測定する手法を開発し,実際に出水中の河床堆積物層厚変化を北海道北部・パンケナイ川で成功させた.このモニタリング方法は,既に滋賀県より特許申請中である(平成11年特許願第240260号).この手法を蛇行河川に応用すれば,出水中における蛇行形状変化の実態を知ることができると期待できる.しかし,蛇行域のどのような場所で計測するのが効果的かを試行錯誤的に決定していかなくてはならない.そこで2000年度には,滋賀県立大学近くを流れる犬上川下流部の蛇行部を一つ選定した.ここは,この数年に一度程度の出水で蛇行形状が大きく変化したことが明らかな地点であり,本研究に好適な場所であると判断した.そして,この蛇行部に形成された砂礫堆の下流側先端部分にプレッシャーピロー一式をセットした.また別途予算により購入できたプレッシャーピロー一式も,この砂礫堆側方に形成されている副流路内に設置することができた.即ち,一蛇行区間の2地点で計測を開始することができた.計測は2000年9月より開始した.ところが2000年には好適な出水に恵まれず,砂礫堆の移動が生じるような出水はなかった.このため,測定データを地形変化との関連で論じることはまだできない.しかし測定そのものは継続中であり,2001年の梅雨期および台風期の出水に期待をしている.滋賀県犬上川の単列砂礫堆で、平成12年度に砂礫堆下流端にプレッシャーピローセンサーをとりつけ、自記計測を開始した。その結果平成13年春から8月にかけ、ここでは徐々に堆積が進行し、約10cmの層圧増加が生じたことを計測できた。また、8月21日の出水ではこの砂礫堆は下流側へ大きく前進したが、このときの計測点での地形変化は急激であり、出水中のある10分間で約80cmの河床上昇を生じさせたことも判明した。ただ、現在のシステムでは洪水中にデータロガー部が浸水等により故障しやすく、このため今年度後半はこの復旧・修理と、より故障しにくい方法の開発に時間をとられることになった。これらの知見をもとに、平成14年度もモニタリング法を改良していく予定である。本研究に関連して機材を設置した犬上川では,2001年8月に大きな出水があり,このため河川高水敷に設置した機材のデーターロガーまでもが冠水する被害を受けた.しかし,本研究の目的とするような地形変化は,このような大きな出水にこそ生じるものなので,すくなくともセンサー部が不可抗力的に破壊されるまでのデータを良好に記録できなくてはならない.そこで2002年度は2001年のような出水でもデータを良好に記録できるようなロガーの設置方法を検討した.データロガーを収納するボックスを高水敷のなるべく堤防よりでかつ地表面より1.5m程度のところに再設置した.この場合,センサーからロガーまでのケーブル長がこれまでより長くなり,このままでは出水時に断線の危険が高くなる.そこで,同様の機械を北海道パンケナイ川に設置したときの経験から,ケーブルをプラスチック製保護管内に入れ,出水時には水面上に浮けるようにした.また,ロガーの設置は高水敷の河辺林内にし,すこしでも水の衝撃が弱まるようにするとともに,一般人の目に付きにくいようにした.残念ながら2002年度には出水がほとんどなく,河床地形が変化することはなかった.しかし上記のような再設置をおこなったことで,今後も観測を継続することができるので,今後に期待している.また,本研究で使用しているシステムを用いた観測結果の一部を,2002年9月にオーストラリアで開かれた国際会議で発表することができたとともに,この会議のプロシーディングに英文論文を掲載することができた.
KAKENHI-PROJECT-12878012
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12878012
卵由来物質による精子活性化・走化性現象の分子機構の解明
受精の際、精子が卵に遭遇する確率を高める仕組みのひとつとして精子活性化・走化性現象が知られている。しかし、その精子活性化・誘引物質が微量なため精製が困難であることなどから、この現象の分子機構の研究はほとんど解明されていない。本研究では卵による精子の活性化及び誘引現象の分子メカニズムの全容解明のため、まずユウレイボヤ精子活性化・誘引物質(SAAF)の分子構造の解析を行い、さらに精子走化性における分子機構についての研究を行った。まずSAAFの精製標品についてESI-TOF/MSを用いて分子量解析を行ったところ、m/z=297.132の二価陰イオンの単一ピークを得た。次に3H-NMR解析を行ったところ、この物質の構造はコレスタン骨格を持つ分子量594.256の新規の硫酸化ステロイドであることが推定された。さらにFAB/MSによる分子フラグメント解析を行ったところ、NMRによる推定構造式より予想される分子ピークパターンと良く一致する結果が得られ、また加水分解反応による脱硫酸化により精子活性化・誘引活性は消失することが明らかとなった。以上の結果より、SAAFの構造が実際にNMRによる推定構造を持つことが強く示唆された。また、SAAFによる精子走化性時の分子機構の解析を行った。精子走化性においては細胞外カルシウムが必要であることが解っている。そこでどのようなカルシウムチャネルが関与しているのかを検定した。その結果、電位依存性カルシウムチャネルの特異的阻害剤であるニフェジピン等が全く効果を持たないのに対して容量作動性カルシウムチャネルの阻害剤であるSK&F96365等が効果的に精子の走化性運動を抑制すること、実際に精子中において容量作動型カルシウム流入が見られることから、精子走化性においては容量作動性カルシウムチャネルが働いていると思われる。受精の際、精子が卵に遭遇する確率を高める仕組みのひとつとして精子活性化・走化性現象が知られている。しかし、その精子活性化・誘引物質が微量なため精製が困難であることなどから、この現象の分子機構の研究はほとんど解明されていない。本研究では卵による精子の活性化及び誘引現象の分子メカニズムの全容解明のため、まずユウレイボヤ精子活性化・誘引物質(SAAF)の分子構造の解析を行い、さらに精子走化性における分子機構についての研究を行った。まずSAAFの精製標品についてESI-TOF/MSを用いて分子量解析を行ったところ、m/z=297.132の二価陰イオンの単一ピークを得た。次に3H-NMR解析を行ったところ、この物質の構造はコレスタン骨格を持つ分子量594.256の新規の硫酸化ステロイドであることが推定された。さらにFAB/MSによる分子フラグメント解析を行ったところ、NMRによる推定構造式より予想される分子ピークパターンと良く一致する結果が得られ、また加水分解反応による脱硫酸化により精子活性化・誘引活性は消失することが明らかとなった。以上の結果より、SAAFの構造が実際にNMRによる推定構造を持つことが強く示唆された。また、SAAFによる精子走化性時の分子機構の解析を行った。精子走化性においては細胞外カルシウムが必要であることが解っている。そこでどのようなカルシウムチャネルが関与しているのかを検定した。その結果、電位依存性カルシウムチャネルの特異的阻害剤であるニフェジピン等が全く効果を持たないのに対して容量作動性カルシウムチャネルの阻害剤であるSK&F96365等が効果的に精子の走化性運動を抑制すること、実際に精子中において容量作動型カルシウム流入が見られることから、精子走化性においては容量作動性カルシウムチャネルが働いていると思われる。
KAKENHI-PROJECT-12045215
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蛍光生体イメージング技術を駆使した細胞競合現象の解明
近年、上皮由来がんの発生初期において、変異細胞がその周囲を正常上皮細胞に囲まれた状態で存在し、両者が生存を争う細胞競合現象が生じていることが明らかとなってきた。これまでに細胞競合に関与する細胞間シグナルや蛋白質が数多く同定されてきたが、生体内における細胞競合を制御する分子メカニズムを詳細に解明するためには、in vitroでの哺乳類培養細胞系の解析に加えて、個体を生かしたままin vivoで生きた組織内の生きた細胞を観察し、時空間的な挙動を明らかにすることが大変重要である。本研究では、二光子励起顕微鏡を駆使して、動物個体を生かしたまま生理的な環境を維持しながら、生体腸管組織内の生きた細胞動態を可視化する生体イメージング手法を確立した。さらに、確立した生体二光子励起イメージング技術を用いて、細胞競合モデルマウス(Villin-CreERT2; CAG-LSL-RasV12-IRES-EGFP)の生体腸管組織内を観察し、細胞競合によりRas変異がん細胞が正常上皮細胞層より排除される様子をリアルタイムで可視化することに成功した。一方、Ras変異が誘導されないコントロールマウス(Villin-CreERT2; CAG-LSL-IRES-EGFP)では、EGFP陽性細胞は腸上皮層より排除されなかった。これらの結果から、ショウジョウバエやin vitroの哺乳類上皮培養細胞系で明らかになった細胞競合現象が、哺乳類生体内のin vivoの系でも実際に起こっている現象であることが明らかとなった。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。近年、上皮由来がんの発生初期において、変異細胞がその周囲を正常上皮細胞に囲まれた状態で存在し、両者が生存を争う細胞競合現象が生じていることが明らかとなってきた。本研究は、蛍光生体イメージング技術を活用して、哺乳類の生体内で生じる細胞競合現象を観察する新規の生体イメージング系を確立し、細胞競合により変異細胞が正常上皮層より排除される様子を可視化する。さらに、細胞競合を行う正常上皮細胞と変異細胞を顕微鏡下で選別して抽出し、細胞競合の際に起こる多彩な遺伝子発現変化を個々の細胞レベルで定量的に解析する新たな方法論を構築することで、従来の研究手法では明らかにできなかった細胞競合に重要な分子やシグナルを同定し、細胞競合制御機構を統合的に解明する。平成27年度はまず、マウスを生かしたまま長時間生理的な環境を維持しながら生体腸管組織を観察する新規の生体イメージング系を確立した。さらに、確立した生体イメージング技術を用いて、細胞競合モデルマウス(Villin-CreERT2;LSL-RasV12-IRES-EGFP)の生体腸管組織を観察し、哺乳類における細胞競合現象を経時的に可視化することに成功した。平成28年度は、これらの成果をもとに、細胞競合により変異細胞がどのようにして正常上皮層より排除されるのか時空間的に解析を行うとともに、細胞競合の制御に関わる分子やシグナルを探索し、細胞競合の生理的意義を明らかにする。これまでin vitroの哺乳類上皮培養細胞系で明らかになった細胞競合現象が、マウス生体内のin vivoの系でも観察できることが明らかとなり、平成27年度終了時としては順調に経過している。近年、上皮由来がんの発生初期において、変異細胞がその周囲を正常上皮細胞に囲まれた状態で存在し、両者が生存を争う細胞競合現象が生じていることが明らかとなってきた。これまでに細胞競合に関与する細胞間シグナルや蛋白質が数多く同定されてきたが、生体内における細胞競合を制御する分子メカニズムを詳細に解明するためには、in vitroでの哺乳類培養細胞系の解析に加えて、個体を生かしたままin vivoで生きた組織内の生きた細胞を観察し、時空間的な挙動を明らかにすることが大変重要である。本研究では、二光子励起顕微鏡を駆使して、動物個体を生かしたまま生理的な環境を維持しながら、生体腸管組織内の生きた細胞動態を可視化する生体イメージング手法を確立した。さらに、確立した生体二光子励起イメージング技術を用いて、細胞競合モデルマウス(Villin-CreERT2; CAG-LSL-RasV12-IRES-EGFP)の生体腸管組織内を観察し、細胞競合によりRas変異がん細胞が正常上皮細胞層より排除される様子をリアルタイムで可視化することに成功した。一方、Ras変異が誘導されないコントロールマウス(Villin-CreERT2; CAG-LSL-IRES-EGFP)では、EGFP陽性細胞は腸上皮層より排除されなかった。これらの結果から、ショウジョウバエやin vitroの哺乳類上皮培養細胞系で明らかになった細胞競合現象が、哺乳類生体内のin vivoの系でも実際に起こっている現象であることが明らかとなった。生体組織内では、個々の細胞の遺伝子発現レベルは周りの環境に応じて経時的に変化する。がんの発症過程において、細胞間相互作用を介して個々の細胞の運命が決定される細胞競合の複雑な制御メカニズムを解明するためには、組織全体の細胞を回収して遺伝子発現レベルを解析する従来の研究手法ではなく、生理学的・病理学的ながん微小環境を維持した上で、1細胞レベルで遺伝子発現を解析する新たな方法論の構築が必要である。今後、蛍光生体イメージング技術の特徴を生かし、細胞競合の制御に関わる分子やシグナルの探索を行う。さらに、得られた分子やシグナルを阻害し細胞競合を破綻させた際に、がん細胞がどのように進展するか解析を行い、細胞競合の生理的・病理的意義を明らかにする。28年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-15H01492
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-15H01492
蛍光生体イメージング技術を駆使した細胞競合現象の解明
28年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-15H01492
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-15H01492
表面プラズモン励起が金属ナノ構造形成に与える影響の解明
球形の銀コロイド粒子に対する光照射によるナノプリズム等の結晶状ナノ粒子の生成する現象がいくつかの系で報告されており、金属ナノ粒子の形状制御の新たな方法としての利用が期待されている。本課題では、基板上にパターンニングされた金属ナノ格子を金属コロイドのモデルとして用いることによって、ナノ結晶生成現象の機構、特に局所表面プラズモン励起(LSPR)の役割を明らかにすることを目的としている。昨年度まではハロゲン化物溶液中の銀ナノ粒子の光誘起形状変化のメカニズムの解析を主に行い、ハロゲン化物溶液中の金属の酸化反応であるハロゲンエッチングをLSPRが促進する効果を有することを明らかにした。本年度は、本課題のもう一つの柱である、結晶成長過程に対するLSPRの効果についての解析を主に行うこととした。結晶成長について調べる系としては、Mirkin等によって報告されているクエン酸溶液中の銀ナノ粒子を用いることにした。ただし本課題では、コロイド作製に化学合成法ではなく、液中レーザーアブレーション法を用いることとした。実験の結果、24時間程度でナノ結晶生成を観察する為には、溶液中の酸素濃度、粒子径が重要な因子であり、またクエン酸が銀ナノ粒子に吸着していることも反応を促進する効果を有することが明らかになった。さらに、形状変化過程はいくつかの段階に分かれていることが明らかになり、ナノプリズムから多角形ナノ結晶へさらに形状変化が起きることがわかった。一方、銀コロイドクエン酸溶液中に設置した金ナノ格子に光を照射することによって、銀析出反応に対するLSPRの効果の明確化することを試みたが、析出現象は観察されなかった。これは、金ナノ格子上に吸着しているクエン酸の量が不十分であったことが原因であると考えられる。金属ナノ構造の様々な性質がその形状に強く依存することから、形状を精密に制御することは、金属ナノ構造の作製において非常に重要である。光照射によって球形の銀ナノ粒子が、ナノプリズムへと形状変化を起こす現象が見出されており、光を利用したナノ構造体形状制御の新たな方法を拓く現象として注目されている。我々は、ハロゲン化物(NaCl等)水溶液中に分散された銀コロイドにおいて、蛍光灯やキセノンランプの光を照射による、球形からプリズムやロッド等様々な形状の銀ナノ結晶への形状変化を見出している。これまでに、このような反応には銀イオンを生成するハロゲンエッチングが含まれていることを明らかにしているが、光照射の役割は不明である。本課題では、このようなハロゲン溶液中の金属ナノ粒子の形状変化に対する光の役割を明らかにするために、形状や位置が定義された金属ナノブロックを用いて解析を行っている。昨年度の研究で、NaI水溶液中に設置した金ナノ格子が光照射下ではハロゲンエッチングによって形状が変化(縮小)することを見出した。本年度は、この現象に対するプラズモン励起の効果を明確にするために、配向およびギャップ間隔の異なるダイマー構造のナノブロックに光を同時に照射してその形状変化を調べた。実験の結果、長軸が偏光方向に沿った配向のダイマー構造のブロックがより大きくハロゲンエッチングを受けていることが分かった。さらに、このような配向方向による違いは、ギャップ間隔がより小さいダイマー構造でさらに顕著になった。照射光の偏光方向がダイマー構造の長軸に沿った条件では、ダイマー構造のギャップ間に二つのブロックの電場の重ね合わせによる強い電場(ダイマーモード)が生じる。さらに、ダイマーモードの電場強度はギャップ間隔の減少と共に増加する。これらのことから、プラズモン励起がハロゲンエッチングを促進していることが強く示唆される。球形の銀コロイド粒子に対する光照射によるナノプリズム等の結晶状ナノ粒子の生成する現象がいくつかの系で報告されており、金属ナノ粒子の形状制御の新たな方法としての利用が期待されている。本課題では、基板上にパターンニングされた金属ナノ格子を金属コロイドのモデルとして用いることによって、ナノ結晶生成現象の機構、特に局所表面プラズモン励起(LSPR)の役割を明らかにすることを目的としている。昨年度まではハロゲン化物溶液中の銀ナノ粒子の光誘起形状変化のメカニズムの解析を主に行い、ハロゲン化物溶液中の金属の酸化反応であるハロゲンエッチングをLSPRが促進する効果を有することを明らかにした。本年度は、本課題のもう一つの柱である、結晶成長過程に対するLSPRの効果についての解析を主に行うこととした。結晶成長について調べる系としては、Mirkin等によって報告されているクエン酸溶液中の銀ナノ粒子を用いることにした。ただし本課題では、コロイド作製に化学合成法ではなく、液中レーザーアブレーション法を用いることとした。実験の結果、24時間程度でナノ結晶生成を観察する為には、溶液中の酸素濃度、粒子径が重要な因子であり、またクエン酸が銀ナノ粒子に吸着していることも反応を促進する効果を有することが明らかになった。さらに、形状変化過程はいくつかの段階に分かれていることが明らかになり、ナノプリズムから多角形ナノ結晶へさらに形状変化が起きることがわかった。一方、銀コロイドクエン酸溶液中に設置した金ナノ格子に光を照射することによって、銀析出反応に対するLSPRの効果の明確化することを試みたが、析出現象は観察されなかった。これは、金ナノ格子上に吸着しているクエン酸の量が不十分であったことが原因であると考えられる。
KAKENHI-PUBLICLY-21020027
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-21020027
聞き手による吃音と正常発話との聴覚認識バウンダリーに関する研究
本研究の目的は,正常な発話の一部に,人工的に吃音の中核症状を挿入し,その重症度を変化させることにより,吃音の中核症状と正常発話との聴知覚バウンダリーを明らかにすることであった。その結果,(1)連発性吃音(繰り返し)については,概して繰り返し数が2ユニット以上になることで,(2)伸発性吃音(引き伸ばし)については,概して引き伸ばしの長さが300msec.以上になることで,(3)難発性吃音(阻止)については,無声ブロック,有声ブロックともにその長さが200msec.以上になることで,聞き手の発話サンプルに対する反応が正常から吃音へと変化した。(1)20年度の計画は,吃音の中核症状の1つである連発性吃音の重症度や、それが発生する頻度が変化した場合、聞き手の発話に対する反応がどのように変化するかを明らかにすることであった。(2))21年度の計画は,吃音の中核症状の1つである伸発性吃音の重症度や、それが発生する頻度が変化した場合、聞き手の発話に対する反応がどのように変化するかを明らかにすることであった。(3))22年度の計画は,吃音の中核症状の1つである難発性吃音の重症度や、それが発生する頻度および発症位置が変化した場合、聞き手の発話に対する反応がどのように変化するかを明らかにすることであった。本研究の目的は,正常な発話の一部に,人工的に吃音の中核症状を挿入し,その重症度を変化させることにより,吃音の中核症状と正常発話との聴知覚バウンダリーを明らかにすることであった。その結果,(1)連発性吃音(繰り返し)については,概して繰り返し数が2ユニット以上になることで,(2)伸発性吃音(引き伸ばし)については,概して引き伸ばしの長さが300msec.以上になることで,(3)難発性吃音(阻止)については,無声ブロック,有声ブロックともにその長さが200msec.以上になることで,聞き手の発話サンプルに対する反応が正常から吃音へと変化した。本年度は, Matlab等のソフトウェアを使用し,吃音症状の発話サンプルを人工的に作成した。音響学的にNaturalな吃音症状の発話サンプルを作成するには莫大な時間がかかり,今年度予定していた実験の開始を遅らせることとなったが,これまで作成したサンプルをもとに,次年度以降は比較的スムーズに実験を遂行できるものと考えられる。なお本年度は,吃音の重症度や発生頻度が変化した場合の聞き手の反応の変化を明らかにするための手続きとして,以下の作業を実施した。1.実験の実施に先立ち,実験刺激としてシュミレートされた吃音の核症状を含む発話サンプルを作成した。非吃音の成人(男性1名,女性1名)の発話を録音し,コンピューター処理により連発性吃音(繰り返し)を人工的に作成した。繰り返しのユニット数を増減させることにより,吃症状の重症度を変化させた発話サンプルを作成し,それらの発生頻度を変化させることにより,吃頻度を変化させた発話サンプルを作成した。また,実験参加者が発話サンプルの評価を行うためのコンピュータソフトウェアを作成した。2.パイロット実験の実施広島大学の学生計4名(男性2名,女性2名)が実験に参加した。そのうち2名(男性1名,女性1名)には,連発性吃音の重症度を変化させた発話サンプルを聞かせ,残り2名(男性1名・女性1名)には,連発性吃音の重症度を一定にし,吃頻度を変化させた発話サンプルを聞かせた。実験は,防音設備の整った広島大学大学院教育学研究科内の音響実験室・聴覚検査室内で実施した。参加者は,発話サンプルの評価を行うための上記コンピュータソフトウェアにより,発話サンプルそれぞれを1=流暢, 100=吃音の尺度で評価を行った。Matlab等のソフトウェアを使用し,人工的に作成した連発性吃音を含む非流暢発話のサンプルを,非吃音成人(男性25名,女性25名)に聞かせた。実験の条件は2つで,(1)異なるユニット数(03ユニット)の連発性吃音と(2)吃音が発症している間(発吃時)の発話速度(倍速,通常,通常の1/2の速度)であった。各実験参加者には,(1)については全ユニット数を聞かせ,(2)についてはそのうちの1つを聞かせた。各サンプルを聞き終えた後,実験参加者には,コンピュータプログラム化されたマグニチュードスケール(1=流暢,100=非流暢)によって各発話サンプルの流暢度を判定させた。この実験を(1)音の繰り返しをするタイプの連発性吃音を含む場合,(2)単語の一部の繰り返しをするタイプの連発性吃音を含む場合,(3)単語を繰り返すタイプの連発性吃音を含む場合に分けて実施した。本研究の結果,音の繰り返しをするタイプと単語の一部の繰り返しをするタイプの連発性吃音を聞いた場合,聞き手は2ユニット数以上の連発性吃音を含み,かつ発吃時の発話速度が通常の発話サンプルを聞いた時,01ユニット数の連発性吃音を含む発話サンプルを聞いた時よりも有意に,その発話サンプルをより非流暢と判定することがわかった。
KAKENHI-PROJECT-20700428
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20700428
聞き手による吃音と正常発話との聴覚認識バウンダリーに関する研究
しかし,発吃時の発話速度が倍速,通常の1/2の速度の発話サンプルを聞いた者は,1ユニット数以上の連発性吃音を含むサンプルを聞いた場合,0ユニット数の場合と比較すると,有意により非流暢と判定することが分かった。単語を繰り返すタイプの連発性吃音の場合は,発吃時の発話速度が通常,通常の1/2の速度の発話サンプルを聞いた者は,2ユニット以上の連発性吃音を聞いた場合,有意により非流暢と判定し,発話速度が倍速の発話サンプルを聞いた者は1ユニット以上の連発性吃音を聞いた場合,有意により非流暢と判定した。本研究では,人工的に作成した無声音の難発性吃音を含む非流暢発話のサンプルを,非吃音成人(男性30名,女性30名)に聞かせた。実験の条件は3つで,(1)難発性吃音が発症している長さ(200,300,400ms),(2)難発性吃音の発症頻度(5%,10%,15%),それから(3)難発性吃音が発症する位置(単語と単語の間,文と文の間,単語内)であった。実験参加者対し,(1)については全種類の長さを含む発話サンプルを聞かせ,(2)についてはそのうちの1つを聞かせた。各サンプルを聞き終えた後,実験参加者には,コンピュータプログラム化されたマグニチュードスケール(1=流暢,100=非流暢)によって各発話サンプルの流暢度を判定させた。この実験を(1)難発性吃音が単語と単語の間に発症する場合,(2)難発性吃音が文と文の間に発症する場合,(3)難発性吃音が単語内で発症する場合に分けて実施した。その結果,無声音の難発性吃音が発症する位置に関わらず,難発性吃音の長さが300ms以上の時,聞き手はその発話サンプルをより非流暢と判定することがわかった。ただし,難発性吃音が発症している長さに関わらず,平均得点の比較では,(3)難発性吃音が単語内で発症する場合,(1)難発性吃音が単語と単語の間に発症する場合,(2)難発性吃音が文と文の間に発症する場合の順に,聞き手は発話サンプルをより非流暢であると判定した。また,難発性吃音の発症頻度が10%と15%の時,難発性吃音が420msの時の方が,300msの時よりも,聞き手はより非流暢であると判定した。しかし,難発性吃音の発症頻度が5%の時に関しては,これら2種類のサンプルに対する聞き手の判定に有意差は認められなかった。本研究では,人工的に作成した有声音の難発性吃音を含む非流暢発話のサンプルを,非吃音成人(男性30名,女性30名)に聞かせた。実験の条件は3つで,(1)難発性吃音が発症している長さ(200,300,400ms),(2)難発性吃音の発症頻度(5%,10%,15%),それから(3)難発性吃音が発症する位置(単語と単語の間,文と文の間,単語内)であった。実験参加者対し,(1)については全種類の長さを含む発話サンプルを聞かせ,(2)についてはそのうちの1つを聞かせた。各サンプルを聞き終えた後,実験参加者には,コンピュータプログラム化されたマグニチュードスケール(1=流暢,100=非流暢)によって各発話サンプルの流暢度を判定させた。この実験を(1)難発性吃音が単語と単語の間に発症する場合,(2)難発性吃音が文と文の間に発症する場合,(3)難発性吃音が単語内で発症する場合に分けて実施した。その結果,無声音の難発性吃音が発症する位置に関わらず,難発性吃音の長さが300ms以上の時,聞き手はその発話サンプルをより非流暢と判定することがわかった。ただし,難発性吃音が発症している長さに関わらず,平均得点の比較では,(3)難発性吃音が単語内で発症する場合,(1)難発性吃音が単語と単語の間に発症する場合,(2)難発性吃音が文と文の間に発症する場合の順に,聞き手は発話サンプルをより非流暢であると判定した。
KAKENHI-PROJECT-20700428
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20700428
公共空間としてみた都市内中小河川の地域共同管理に関する研究
地域住民が河川利用や維持管理することには一定の法的制約があるため、公共空間として都市内を流れる中小河川や農業用水が有効に利用され、適切に維持管理されるためには、法的管理者と共同した河川の管理運用が期待される。本研究は、法的管理者と地域住民等が共同して公共空間を管理運営することを地域共同管理と呼び、その実態と地域住民等が河川管理に参加する可能性について検討したものである。以下、その概要を示す。(1)住民の河川、農業用水への関わりの把握東海4県の県および市町村、土地改良区を対象にアンケート調査を行い、整備のための計画策定、維持管理、河川を使った活動について、地域住民等の関わりを把握し、これら3つの組み合わせから地域共同管理を類型的に把握した。(2)地域共同管理の事例分析(1)の類型の中から計画策定、維持管理、河川利用の側面において、地域住民や市民活動組織の積極的な参加がある事例として県管理河川の愛知県豊橋市朝倉川、農業用水である静岡県三島市源兵衛川と豊橋市牟呂用水を取り上げ、地域住民や市民活動組織が計画策定や維持管理に参加するようになった経緯を把握した。これらの事例から、河川管理者による計画づくりへの参加の働きかけが、地域住民や市民活動組織の参加のきっかけになっていたことがわかった。(3)地域住民が維持管理に参加する条件の解明アンケート調査を行い、県および市町村、土地改良区が地域住民等の参加に期待する条件、河川愛護団体が今後も河川の維持管理活動を継続するための条件を分析した。さらに、愛知県豊橋市朝倉川において、住民へのアンケートなどを行い、市民活動組織が河川管理者と共同して活発な地域共同管理を展開することが、地域住民等の参加の拡大と継続性につながる可能性があることを明らかにした。地域住民が河川利用や維持管理することには一定の法的制約があるため、公共空間として都市内を流れる中小河川や農業用水が有効に利用され、適切に維持管理されるためには、法的管理者と共同した河川の管理運用が期待される。本研究は、法的管理者と地域住民等が共同して公共空間を管理運営することを地域共同管理と呼び、その実態と地域住民等が河川管理に参加する可能性について検討したものである。以下、その概要を示す。(1)住民の河川、農業用水への関わりの把握東海4県の県および市町村、土地改良区を対象にアンケート調査を行い、整備のための計画策定、維持管理、河川を使った活動について、地域住民等の関わりを把握し、これら3つの組み合わせから地域共同管理を類型的に把握した。(2)地域共同管理の事例分析(1)の類型の中から計画策定、維持管理、河川利用の側面において、地域住民や市民活動組織の積極的な参加がある事例として県管理河川の愛知県豊橋市朝倉川、農業用水である静岡県三島市源兵衛川と豊橋市牟呂用水を取り上げ、地域住民や市民活動組織が計画策定や維持管理に参加するようになった経緯を把握した。これらの事例から、河川管理者による計画づくりへの参加の働きかけが、地域住民や市民活動組織の参加のきっかけになっていたことがわかった。(3)地域住民が維持管理に参加する条件の解明アンケート調査を行い、県および市町村、土地改良区が地域住民等の参加に期待する条件、河川愛護団体が今後も河川の維持管理活動を継続するための条件を分析した。さらに、愛知県豊橋市朝倉川において、住民へのアンケートなどを行い、市民活動組織が河川管理者と共同して活発な地域共同管理を展開することが、地域住民等の参加の拡大と継続性につながる可能性があることを明らかにした。本研究は、河川から便益を受ける地域住民が河川管理者と共同して、河川環境を維持改善するための営為を地域共同管理と定義し、その成立条件を明らかにするために取り組んだ。東海4県の出先機関および市町村を対象としたアンケート調査によって、計画策定、維持管理、河川利用の3つの段階にわけ、住民等が積極的な関わりをもつ事例を収集した。地域共同管理としては、維持管理のみが65%と多いが、複数の段階にわたって住民等が関わりをもつ河川が17%あった。河川管理者が住民等の参加に期待する河川は、計画策定では地域の声を反映した整備が必要な場合、維持管理では河川管理者だけでは維持管理が困難な場合、河川利用では地域に親しまれてきた河川の利用を促したい場合であった。一方、住民等が維持管理に参加する理由を把握するために、各県の河川維持管理組織の支援事業に登録されている組織を対象にアンケート調査をした。維持管理に取り組む理由は、河川への愛着、環境悪化による危機感、昔からの慣習等であった。さらに、住民等が河川利用する理由を把握するために、日本河川協会の「川や水の活動団体名簿」を使ってアンケート調査をした。親水活動する理由は川に親しむ実践、きれいな河川景観の維持、清潔な河川環境の維持、生態系保全等であった。したがって地域共同管理が成立するためには、河川管理者が住民等の参加に期待している河川であり、かつ住民等が維持管理や河川利用に関わる意向をもつ河川であることが必要と考えられる。次に、地域共同管理の効果を検証するために、住民等が維持管理と河川利用に関わっている豊橋市朝倉川、維持管理のみの豊橋市柳生川の沿線住民を対象にアンケート調査によって、維持管理への参加、河川利用の実態および河川環境に対する評価を把握した。朝倉川の沿線住民の方が、河川利用や維持管理に幅広い参加があり、愛着をもつものが多いことがわかった。本年度は、都市内を流れる農業用水路を対象に、管理者としての土地改良区と住民による地域共同管理を取り上げた。
KAKENHI-PROJECT-17560546
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公共空間としてみた都市内中小河川の地域共同管理に関する研究
東海4県の土地改良区を対象としたアンケート調査から、農業用水の問題点として、漏水や断面不足など農業用施設としての物的状態ばかりでなく、ゴミの増加や雑排水による汚濁に対応するための維持管理、時代のニーズにあわせた親水空間整備などを指摘する土地改良区が少なくないことがわかった。そこで農業用水の整備計画づくり、農業用水の維持管理あるいは農業用水を活用した催事への参加の3つの段階にわけ、地域共同管理の実態を把握した。住民関与がない農業用水を管理する土地改良区が59%あるが、維持管理のみに関わりがあるもの18%、農業用水を活用した催事への参加だけがみられるもの10%、複数の段階に住民が関わりをもっている土地改良区が13%あることがわかった。地域共同管理の展開が農業用水沿川住民の参加意識に及ぼす影響を検証するために、複数の段階に住民関与がある土地改良区の中から三島市源兵衛川と豊橋市牟呂用水を取り上げ、地域共同管理の経緯と特徴を把握した。前者はNPO、後者は豊橋市や町内会、小中学校が中心となった地域共同管理である。沿川住民を対象にアンケート調査から、清掃活動へ参加したことがある住民は源兵衛川22%、牟呂用水42%であるが、農業用水を地域全体で管理すべきと考える住民が前者57%、後者40%、さらに今後の清掃活動への参加意志も前者では61%、後者では75%もいた。これらの参加意志のある住民が清掃活動に参加する条件は、農業用水の利用実態、愛着、維持管理に参加しない理由などの分析から、利用によって農業用水から何らかの便益を享受していること、農業用水に愛着を持っていること、清掃活動に関する情報が伝わること、時間的都合がつくことなどであることがわかった。本年度は、地域共同管理が継続的に行われる条件を検討するために、沿川住民や市民団体が都市内中少河川の清掃活動に参加する条件について調査研究を行った。前年度の調査をもとに、農業用水管理者である土地改良区と市民団体が住民に参加を働きかけながら清掃活動をしている愛知県豊橋市の牟呂用水、市民団体と地縁組織が住民に働きかけて清掃活動している静岡県三島市の源兵衛川、土地改良区が用水管理し、特に住民に働きかけていない愛知県豊川市の松原用水を抽出し、用水管理者へのヒアリングと沿川住民へのアンケート調査を実施した。その結果、土地改良区や市民団体による働きかけの有無が住民の清掃活動への参加に影響していること、清掃活動に参加した経験がある住民は用水に対する愛着の向上につながっていることがわかった。また、清掃活動へ参加経験のあるものには今後の参加意向が多いため、土地改良区や市民団体の働きかけが住民の継続的な参加につながる可能性があることが示唆された。このように市民団体が参加の機会と場を提供することが地域共同管理の継続性につながっているので、日本河川協会に登録レた市民団体の中から東海・近畿にある480団体を対象にアンケート調査を行った。市民団体は市民サークルのほか、NPO・地縁組織・学校などである。河川の清掃活動はその約8割が行っていた。その理由は景観や生態系保全など河川環境の維持であるが、多項目選択の理由を踏まえると川に親しむという活動目的に適うことや流域の生活環境向上につながることが清掃活動に取り組む要因と考えられる。
KAKENHI-PROJECT-17560546
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大量虐殺と集団暴力の比較研究:その普遍的形態の分析と防止策の考察
本研究では、以下の四点に重点的に取り組んだ。ルワンダ、ブルンジにおける過去の大量虐殺と集団暴力、コンゴ民主共和国の集団暴力、少数民族(特に脅威にさらされている少数民族と先住民族の権利)のための国際的な人権保護機構について。1.中央アフリカにおける実地調査は、主要アクターへのインタビューと観察調査により行った。ルワンダには「ガチャチャ(フランス語ではガカカ)」として知られる大量虐殺を裁く法廷がある。この調査では、近代化し、改良されたガカカ法廷の進展に注目した。試験期間を2005年に終了したガカカ法廷は、100万を超える事例を抱え、大量虐殺を裁く世界最大の法廷となった。事例のうち8割はすでに取り上げられている。シェラーは199495年以降、大量虐殺後の裁判に深く関与している。2.破綻国家ブルンジとコンゴ民主共和国での活動-ブルンジ新政府の政策は、国家統一を目標としている。しかし、同国は説明責任を欠き、裁判の開廷にも解放国民軍(FNL)との話合いにも失敗し、その結果として人権侵害が増加した。キヴ州における衝撃的状況のため、コンゴ民主共和国は世界最悪の緊急事態に陥っており、国連組織と国際救済委員会の調査によると、1998年以来、530万人が亡くなっている(現在も紛争と大量虐殺による残虐行為が続いている)。3.人権保護機構に関する活動は、2007年の7月8月にかけて、ジュネーブにある国連で継続して行われた。しかし、そこでは、国連人権理事会によって、主要アクターである国連先住民作業部会(WGIP)が、時期尚早の段階で廃止されていた。先住民族の人権保護を目的とした恒久的な機構に関する交渉は、滞っている。WGIPの主な業績である「先住民族の権利に関する国連宣言」の草案は、2007年9月に国連総会によって採択された。本研究では、以下の四点に重点的に取り組んだ。ルワンダ、ブルンジにおける過去の大量虐殺と集団暴力、コンゴ民主共和国の集団暴力、少数民族(特に脅威にさらされている少数民族と先住民族の権利)のための国際的な人権保護機構について。1.中央アフリカにおける実地調査は、主要アクターへのインタビューと観察調査により行った。ルワンダには「ガチャチャ(フランス語ではガカカ)」として知られる大量虐殺を裁く法廷がある。この調査では、近代化し、改良されたガカカ法廷の進展に注目した。試験期間を2005年に終了したガカカ法廷は、100万を超える事例を抱え、大量虐殺を裁く世界最大の法廷となった。事例のうち8割はすでに取り上げられている。シェラーは199495年以降、大量虐殺後の裁判に深く関与している。2.破綻国家ブルンジとコンゴ民主共和国での活動-ブルンジ新政府の政策は、国家統一を目標としている。しかし、同国は説明責任を欠き、裁判の開廷にも解放国民軍(FNL)との話合いにも失敗し、その結果として人権侵害が増加した。キヴ州における衝撃的状況のため、コンゴ民主共和国は世界最悪の緊急事態に陥っており、国連組織と国際救済委員会の調査によると、1998年以来、530万人が亡くなっている(現在も紛争と大量虐殺による残虐行為が続いている)。3.人権保護機構に関する活動は、2007年の7月8月にかけて、ジュネーブにある国連で継続して行われた。しかし、そこでは、国連人権理事会によって、主要アクターである国連先住民作業部会(WGIP)が、時期尚早の段階で廃止されていた。先住民族の人権保護を目的とした恒久的な機構に関する交渉は、滞っている。WGIPの主な業績である「先住民族の権利に関する国連宣言」の草案は、2007年9月に国連総会によって採択された。2004年から2005年の初年度における研究活動は、主として以下4つのテーマを中心に行った。1.ルワンダ問題2.少数民族保護及び人類に対する犯罪への説明責任のための国連メカニズム3.スリランカにおけるジェノサイド防止と少数民族保護4.2004年10月14日から16日のジェノサイドに関する国際会議において発表された基調講演(米カリフォルニア州サクラメントにて開催)1.ルワンダのジェノサイドから10年が過ぎた。これを記念して2004年4月3日から6日までキガリにおいてジェノサイドに関する国際会議が開催されたのであるが、筆者は同会議のための寄稿文を手掛けた。その内容はルワンダのジェノサイドに加担した諸外国の責任を問うもので、本来のプログラムには含まれていなかったテーマである。更に、ルワンダ政府に対する提言作成にも参加した。そして翌日の4月7日には、やはりキガリで催された、ジェノサイド10周年国家記念式典にも参列した。その後、政府関係者、NGO指導者、ジェノサイド研究者等との会合を持った。中でも司法関連問題については、Jean de Dieu Mucyoルワンダ検事長、Richard Renaud国連ルワンダ国際法廷(ICTR)主席捜査官、それにDallaire将軍らも交えた最高レベルの会議となった。ガチャチャ・プロセスの上級顧問を務めるAnastase Balinda氏との会合では、近々予定されている裁判に向けての体制作りが話題になった。【ガチャチャ裁判の傍聴が2005年から2006年にかけて予定されている。】ICTR主席捜査官Renaud氏との話し合いの一部、及びガチャチャ裁判に関する報告の一つがスイス・ロマンド放送に送られた。
KAKENHI-PROJECT-16530338
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大量虐殺と集団暴力の比較研究:その普遍的形態の分析と防止策の考察
(http://www02.couleur3.ch/rwanda/archives/2004/05/07/)ルワンダでの調査における主眼は、ガチャチャ(gachacha、フランス語の綴りはgacaca)と呼ばれる伝統的裁判形態が現代社会においてどのような機能を果たしているか考察することにあったが、これについては以下の人々にインタビューを行った:最高裁判事Muzinsi氏、第7ガチャチャ部門関係者(a/o. Balinda)、人権委員会ガチャチャ監視官Ph Kagabo博士、否認に関する検査官Ndahiro氏、最高裁副長官M.Ngoga氏(ルワンダ-ICTR間の折衝担当)、国連ルワンダ支援団前司令官RomeoDallaire将軍(4月1日、アディス・アババにて)、ジェノサイド研究者(Erwin Staub教授、Eric Markusen博士など)、ルワンダ人学者Anastase Shyaka博士、地元NGO指導者達2.2004年7月19日から29日まで、ジュネーブにおいて先住民に関する作業部会第22次会合、及び国連人権委員会第二小委員会開会式に参加した。「先住民と紛争解決」という主要テーマに関する筆者の講話が人権高等弁務官のサイトに掲載されている。アドレスは以下の通り:又、第二小委員会に対する更なる勧告を特別報告者Alfonso Martinez氏及び人権高等弁務官事務所(OHCHR)に対して行った。8月13日には、ハーグのユーゴスラビア法廷(ICTY)主任検察官であるCarla Del Ponte氏にインタビューを行い、刑事裁判やミロセビッチ氏の処遇、具体的にはジェノサイドに関する告訴などについて同氏の見解を尋ねた。説明責任を追求する上での非政府間国際機構(INGO)の役割に関しては、アムネスティ・インターナショナル事務局長Irene Khan氏にインタビューを行った。ルワンダのジェノサイド、その事後処理、及びジェノサイド発生の危機全般における同組織の役割などについても尋ねた。3.2005年2月に行ったスリランカの現地調査は、津波やバティカロアでのタミール人指導者殺害に大きく影響された。この調査の大きな収穫は何といっても、ジャフナで国連人権委員会北東事務局(NESOHR)局長のKarunaratnam神父に会うことが出来、同じくジャフナのLTTEメンバーであるElamparithi氏、そしてタミール人国会議員でありTNA指導者でもあるSampanthan氏などに直接話を聞くことが出来たことである。バティカロアでは1990年7月のスリランカ軍による大量虐殺の証人を何人か探し当てることが出来た。更に、特にユニセフなどの国連機関や国内外のNGO協力者、政府関係者に対しても聞き取り調査を行った。2年目となる2005年-2006年の研究活動として重点的に取り組んだのは、大量虐殺および集団暴力問題である。(1)スレブレニカの大虐殺から10年後のボスニア:司法および説明責任はどうなのか?--暫定司法に対する選択肢(2)集団虐殺から11年後のルワンダ:ガチャチャ(gacaca)の大量虐殺に関する裁判の全国的な開始および試験段階分野での裁判の開始(全管轄区の約10%):キガリおよび5つの州でのガチャチャの観察;主な関係者のインタビュー
KAKENHI-PROJECT-16530338
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新規抗糖鎖抗体を用いたがん悪性化における糖鎖の機能解明と糖鎖バイオマーカーの探索
独自に樹立した抗糖鎖抗体のがんバイオマーカーとしての有用性を検証するとともに、がん転移における糖鎖の機能を解明することを目的として、以下の研究を行った。はじめに、抗糖鎖抗体を用いた組織学的検討の結果、大腸がん組織において90%以上の高頻度でF2抗体反応性のシアリルルイスX糖鎖抗原が発現することを見出した。そこで、シアリルルイスXを効率よく検出する糖鎖バイオマーカー検出系の樹立を行うとともに、シアリルルイスXを過剰発現するマウス大腸がん細胞株を樹立し、同糖鎖抗原のがん転移における機能解明を行った。本研究の成果は、がんの早期診断・早期治療に寄与することが期待される。独自に確立した方法に基づいて作製したフコシル化糖鎖シアリルルイスXに対する抗糖鎖モノクローナル抗体を用いた解析の結果、数種のヒト大腸がん細胞株において同糖鎖抗原の明確な発現を認めた。そこでシアリルルイスXを発現しないマウス大腸がん細胞株CT26に同糖鎖抗原の発現に関わるフコース転移酵素Fuc-TVII遺伝子を導入し、安定発現株を樹立した。同細胞株および親株をBALB/cマウスに尾静脈内注射し、肺への転移を比較解析したところ、転移結節の数には有意な差を認めなかった。現在、それらのがん細胞株を尾静脈内注射したマウスに一定間隔で抗シアリルルイスX抗体を投与し、肺転移巣におけるFucT-II安定発現株および親株の増殖に対する効果を検討中である。シアリルルイスX糖鎖抗原を発現するがん細胞を同定するとともに、同糖鎖抗原安定発現株の樹立に成功したため。がん関連フコシル化糖鎖抗原であるシアリルルイスX(Sialic acidα2-3Galβ1-4(Fucα1-3)GlcNAcβ1-R)に対する新規抗糖鎖モノクローナル抗体を用いた解析により、同糖鎖抗原の明確な発現の認められたヒト大腸がん細胞株の培養上清を用いてウエスタンブロット解析を行った。その結果、シアリルルイスX糖鎖抗原が高分子量の糖タンパク質上に選択的に存在することが明らかとなった。そこで次に、この糖鎖抗原の簡便かつ高感度な検出系の開発を試みた。その結果、非標識およびビオチン標識した同抗体を用いたサンドイッチELISA系を樹立し、ヒト大腸がん細胞株の培養上清中における同糖鎖抗原を検出することに成功した。血清存在下でも同糖鎖抗原を高感度で検出できたことから、このサンドイッチELISA系はがんバイオマーカー検出系として有用と考えられた。次に、この糖鎖発現のがん転移における役割を解析するために、シアリルルイスX糖鎖抗原の発現に関わるフコース転移酵素Fuc-TVII遺伝子を導入したマウス大腸がん細胞株CT26および親株をBALB/cマウスに静脈内投与して比較解析を行った。しかし、予想外なことに肺転移に有意差を認めなかった。一つの可能性として、正常の肺血管にはシアリルルイスX糖鎖抗原と結合するセレクチン等の糖鎖結合分子が発現しない可能性が考えられる。そこで現在、同遺伝子導入株と親株をBALB/cマウスの脾臓内に移植し、門脈経由で肝臓に転移する過程を比較解析しているところである。シアリルイルイスX発現がん細胞のマウス移植実験を継続する必要が生じたため。我々は、独自に開発した新しい方法論に基づいて様々な新規抗糖鎖抗体を樹立し、種々の疾患における糖鎖発現とその病理学的機能を解明し、疾患の早期診断および新規治療薬の開発に寄与することを全体構想として研究を推進している。本研究では特に、フコース転移酵素欠損マウスをその強制発現株で免疫することによって新規抗フコシル化糖鎖抗体を樹立し、糖鎖のがんバイオマーカーとしての有用性を検証するとともに、腫瘍の悪性化およびがん転移における糖鎖の機能を解明し、がんの早期診断・早期治療に向けた分子基盤を整備することを目的とする。これまでに我々は、フコース転移酵素-VIIを安定発現する遺伝子導入株でフコース転移酵素Fuc-TIV/Fuc-TVIIダブルノックアウトマウスを免疫することによって作製した新規抗フコシル化糖鎖抗体はがん関連糖鎖抗原であるシアリルルイスXを特異的に認識することを明らかにした。この抗体を用いてヒト大腸がん組織の免疫組織染色を行ったところ、90%以上の高頻度で陽性染色が認められた。そこで前年度から引き続き、マウス大腸がん細胞株CT26の親株(CT26-WT)およびシアリルルイスX強制発現株(CT26-F7)を用いた検討を行った。両細胞株を脾内投与して門脈経由で肝臓に形成される転移巣を観察したところ、CT26-F7においてCT-26-WTよりも転移巣が縮小する傾向が認められた。シアリルルイスX糖鎖抗原は、セレクチンのリガンドとなりがん細胞の転移に有利に働くと考えられてきたが、生体内にはシアリルルイスX糖鎖発現細胞の転移もしくは増殖を制御する機構が備わっている可能性が示唆された。独自に樹立した抗糖鎖抗体のがんバイオマーカーとしての有用性を検証するとともに、がん転移における糖鎖の機能を解明することを目的として、以下の研究を行った。はじめに、抗糖鎖抗体を用いた組織学的検討の結果、大腸がん組織において90%以上の高頻度でF2抗体反応性のシアリルルイスX糖鎖抗原が発現することを見出した。そこで、シアリルルイスXを効率よく検出する糖鎖バイオマーカー検出系の樹立を行うとともに、シアリルルイスXを過剰発現するマウス大腸がん細胞株を樹立し、同糖鎖抗原のがん転移における機能解明を行った。
KAKENHI-PROJECT-15K14955
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K14955
新規抗糖鎖抗体を用いたがん悪性化における糖鎖の機能解明と糖鎖バイオマーカーの探索
本研究の成果は、がんの早期診断・早期治療に寄与することが期待される。当初計画に従って着実に研究を推進する。シアリルルイスXを強制発現させたマウス大腸がん細胞株およびその親株をBALB/cマウスに脾内移植し、肝転移を解析する。免疫学、生化学物品購入経費の節約のため。シアリルルイスX糖鎖抗原を発現するがん細胞のマウスへの移植実験の結果、想定外の結果が得られたため。次年度の研究の経費に充当。がん細胞の投与経路を変更した実験の実施に必要な物品の購入に使用する。
KAKENHI-PROJECT-15K14955
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デンプン糖化工程の効率化をめざした枝切り酵素の構造機能解析と機能改変
澱粉枝切り酵素とは、アミロペクチンやグリコーゲンなどの分岐鎖を特異的に加水分解する酵素で、澱粉糖化工業などに利用される産業的に重要な酵素である。本研究では、食品加工プロセスによく用いられる数種の澱粉枝切り酵素の立体構造と機能の関係を明らかにし、工業的な加工プロセスに最適な酵素を設計することを目的とした。その結果、酵素の活性中心に位置する可動ループ上のアミノ酸残基に変異を加えることにより、反応速度と熱安定性が向上した産業的に価値の高い変異酵素を得ることができた。澱粉枝切り酵素とは、アミロペクチンやグリコーゲンなどの分岐鎖を特異的に加水分解する酵素で、澱粉糖化工業などに利用される産業的に重要な酵素である。本研究では、食品加工プロセスによく用いられる数種の澱粉枝切り酵素の立体構造と機能の関係を明らかにし、工業的な加工プロセスに最適な酵素を設計することを目的とした。その結果、酵素の活性中心に位置する可動ループ上のアミノ酸残基に変異を加えることにより、反応速度と熱安定性が向上した産業的に価値の高い変異酵素を得ることができた。デンプン枝切り酵素は、アミロペクチンなどのα-1,6-グルコシド結合を特異的に加水分解する酵素で、微生物由来酵素は澱粉糖化や食品加工に使われる産業的に重要な酵素である。枝切り酵素は、基質特異性の違いによりイソアミラーゼ(ISA)とプルラナーゼ(PUL)に大別され、産業利用目的ではそれぞれ一長一短がある。そこで本研究では両酵素の構造・機能解析を進め、両酵素の長所を生かしたより利用価値の高い酵素を創製する事を目標としている。この観点から平成20年度に行った研究成果は以下の通りである。まず京都大学の三上、SPring-8サービスの勝矢らと共同で、産業的に最もよく利用されるBacillus由来PULについて酵素の立体構造解析を進めた。その結果、活性中心構造が基質特異性の異なるPseudomonas由来ISAとよく似ている事がわかった。この研究成果から、両酵素の構造を比較する事により同酵素の基質特異性を改変したり、より産業的に利用価値の高い酵素を設計したりする事が可能になると考えられる。実際に本研究でも得られた立体構造を参考にKlebsiella由来PULの基質特異性の改変を試みたところ、基質特異性は変化したものの酵素活性が大きく低下した変異酵素が得られた。この点は今後の検討が必要である。立体構造解析に関しては、現在澱粉糖化工程の現場で使用されているBacillus由来PULの立体構造解析を進めている。次に基質特異性とともに利用の現場で重要なファクターである熱安定性獲得機構について、立体構造情報をもとにCa、Mgなどの金属イオンの役割について明らかにした。本研究成果により、熱安定性発現に大きく関与する金属イオンの部位を特定することができ、より熱安定な酵素の設計に役立つかもしれない。さらに現在可動性ループ構造が関与するデンプン枝切り酵素のユニークな活性発現機構の解明を行っている。デンプン枝切り酵素は、アミロペクチンなどのα-1,6-グルコシド結合を特異的に加水分解する酵素で、デンプン糖化や食品加工に用いられる産業的に重要な酵素である。本研究では、工業的なデンプン糖化や食品加工に用いられるデンプン枝切り酵素の立体構造や基質特異性発現機構を明らかにし、新規有用酵素を創製することを目的としている。平成21年度にはこれまでに得られた研究成果に基づき、次のような研究を行った。Bacillus由来プルラナーゼについては、昨年に引き続き酵素-基質アナログ複合体のX線結晶構造解析を行い、Klebsiella由来プルラナーゼと比較した。次にKlebsiella由来プルラナーゼについては、プルラナーゼと基質特異性が大きく異なるPseudomonas由来イソアミラーゼと基質アナログ複合体の立体構造を比較することにより、基質特異性発現機構の解明を試みた。最初にプルラナーゼのサブサイト中最も親和力が高いサブサイト-2の構造をイソアミラーゼと比較したところ、プルラナーゼの方が酵素-基質間の水素結合数が1本多い事がわかった。この水素結合数の違いが、両酵素の基質特異性の違いと関係するかどうか確かめるため、水素結合に関与するアミノ酸残基を置換した変異酵素を作成して解析したところ、サブサイト親和力に違いは見られたが、基質特異性とはあまり関係しないことがわかった。一方、サブサイト+2の構造の違いについても検討した。Klebsiella由来プルラナーゼでは、活性中心に基質が結合すると、Trp727の側鎖が回転して+2のサブサイトに結合するグルコース残基とスタッキング相互作用する。そこで本残基をAlaやPheに置換した変異酵素を作成して解析したところ、本残基を含むループの主鎖のコンホメーション変化が、活性発現には必須であることが示唆された。デンプン枝切り酵素は、アミロペクチンなどのα-1,6-グルコシド結合を特異的に加水分解する酵素で、デンプン糖化や食品加工に用いられる産業用酵素である。本研究では、このデンプン枝切り酵素の立体構造や基質特異性発現機構を明らかにし、新規有用酵素を創製することを目的としている。最終年度である今年度は、これまでに得られた研究成果に基づき次のような研究を行った。まずBacillus由来プルラナーゼについては、昨年に引き続き酵素-基質アナログ複合体のX線結晶構造解析を行い、Klebsiella
KAKENHI-PROJECT-20580147
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デンプン糖化工程の効率化をめざした枝切り酵素の構造機能解析と機能改変
由来プルラナーゼと比較した。次に幻Klebsiella由来プルラナーゼについては、活性中心に位置しα-アミラーゼファミリーの保存領域3を含むフレキシブルループの構造と機能について検討した。アポおよび基質アナログ複合体のX線結晶構造解析を比較した結果、本フレキシブルループは基質(アナログ)が存在する場合としない場合でそのコンホメーションを大きく変化させることがわかった。まず活性中心に基質(アナログ)が結合すると、フレキシブルループ上にあるTrp727がサブサイト+2のグルコース残基とスタッキング相互作用するように側鎖を約90°回転させ、これに伴いループ全体のコンホメーションが変化し、ループ上にある触媒残基Glu725が触媒位置へと約4.4AÅ移動して活性を発現すると推定される。一方同じデンプン枝切り酵素で、基質特異性が異なるイソアミラーゼではこの様にフレキシブルな構造が見られない事から、両酵素の保存領域3のアミノ酸配列を比較し、ループのフレキシビリティーを生み出すと推定されるGly724とGly726に変異を導入することにより、基質特異性が変化した変異酵素を作成することに成功した。
KAKENHI-PROJECT-20580147
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20580147
医療・環境浄化用ナノ粒子プラズマ流体システムの最適制御
本研究の目的は,汎と用的・高効率・高精度のサイズ選別性および高制御性を有する医療・環境浄化用ナノ粒子創製のためのプラズマ流体システムの最適制御を実現することで,医療(バイオ)工学・環境科学・ヘルスサイエンスの分野に学術的かつ社会的に貢献することである.機能性ナノ粒子創製の素過程は当該研究により明らかにされつつあるが,依然として詳細は未解明であり,産業レベルにおける粒径・組成・物質機能の制御性は高くはない.そこで本研究では原料の瞬間的蒸発および核生長を同時に行えるプラズマ流を利用した創製プロセスに焦点を当てきた.プラズマ流は流体力学・熱力学・伝熱学・電磁気学の立場から複雑干渉系として定式化され,さらに異種気体の混合により化学反応場さえ制御可能になるという利点に着目し,実験計測の困難な熱流動場の詳細な情報を数値計算によって得ることに成功した.加えて機能性ナノ粒子の核生成および共凝縮過程のみならず,凝集,拡散,熱泳動をも考慮した創製過程の新たな物理モデルを構築し,実験研究結果との比較を行い,粒径分布や組成の一致が得られたことから,プラズマ流による機能性ナノ粒子創製プロセスのモデル化に成功し,創製機構を明らかにすることができたと言える.さらにナノ粒子創製プロセスを促進するための効果的な急冷方法についても数値計算を用いた仮想実験を行うことで,最適な装置の設計指針を明示することができた.自動車の排ガス浄化触媒として,またドラッグ・デリバリー・システムといった医療の分野において,粒径が制御された機能性ナノ粒子の創製が急務である.しかし金属・非金属からなる化合物のナノ粒子創製の素過程および機構は未解明であり,目的とする粒径や組成,物質機能の制御性が依然として低い.特にシリサイドやボライドのナノ粒子創製は蒸気圧の異なる物質の共凝縮過程を伴うため,極めて困難なプロセスであるが,本研究では高エンタルピーを有し,かつ急冷速度が大きいことで,原料の瞬間的蒸発および核生長を同時に行えるプラズマ流を利用した創製プロセスに焦点を当てた.プラズマ流は流体力学・熱力学・伝熱学・電磁気学の立場から複雑干渉系として定式化され,さらに異種の気体を混合することで化学反応場をも制御可能になるという利点に着目し,2原子分子の解離・電離・再結合に起因する化学的非平衡性を組み込むことで,実験計測の困難な熱流動場のより詳細な情報を数値計算によって得ることに成功した.加えて機能性ナノ粒子の核生成および共凝縮過程のみならず,ナノ粒子間凝集,拡散,熱泳動をも考慮した創製過程の新たな物理モデルを構築し,実験的研究結果との比較を行った結果,粒径分布や組成の一致が得られたことから,プラズマ流による機能性ナノ粒子創製プロセスのモデル化に成功し,創製機構を明らかにすることができたと言える.本研究の目的は,汎と用的・高効率・高精度のサイズ選別性および高制御性を有する医療・環境浄化用ナノ粒子創製のためのプラズマ流体システムの最適制御を実現することで,医療(バイオ)工学・環境科学・ヘルスサイエンスの分野に学術的かつ社会的に貢献することである.機能性ナノ粒子創製の素過程は当該研究により明らかにされつつあるが,依然として詳細は未解明であり,産業レベルにおける粒径・組成・物質機能の制御性は高くはない.そこで本研究では原料の瞬間的蒸発および核生長を同時に行えるプラズマ流を利用した創製プロセスに焦点を当てきた.プラズマ流は流体力学・熱力学・伝熱学・電磁気学の立場から複雑干渉系として定式化され,さらに異種気体の混合により化学反応場さえ制御可能になるという利点に着目し,実験計測の困難な熱流動場の詳細な情報を数値計算によって得ることに成功した.加えて機能性ナノ粒子の核生成および共凝縮過程のみならず,凝集,拡散,熱泳動をも考慮した創製過程の新たな物理モデルを構築し,実験研究結果との比較を行い,粒径分布や組成の一致が得られたことから,プラズマ流による機能性ナノ粒子創製プロセスのモデル化に成功し,創製機構を明らかにすることができたと言える.さらにナノ粒子創製プロセスを促進するための効果的な急冷方法についても数値計算を用いた仮想実験を行うことで,最適な装置の設計指針を明示することができた.
KAKENHI-PROJECT-18860003
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18860003
GaN系HEMTにおける電流コラプス現象の抑制と耐圧向上に関する研究
Feドープ半絶縁性バッファ層を対象とし,伝導帯下端から0.5 eV程度の位置に深いアクセプタを有するAlGaN/GaN HEMTのオフ状態耐圧特性を計算した。特に耐圧のパシベーション膜比誘電率依存性やゲート・ドレイン間距離依存性を調べた。その結果,パシベーション膜の比誘電率が高いいわゆるhigh-k膜を有する場合に高い耐圧が得られ,またゲートドレイン間距離が長い程高い耐圧が得られた。具体的には,パシベーション膜の比誘電率が60の時,ゲートドレイン間距離が1.5um, 3um及び5umに対し,耐圧はそれぞれ504 V, 932 V,及び1362 Vとなった。これらは,それぞれゲート・ドレイン間の平均電界強度が3.3 MV/cm, 3.1 MV/cm及び2.7 MV/cmとなりGaNの理論限界3.3 MV/cmに近い値となっている。また,フィールドプレート構造を有するAlGaN/GaN HEMTの耐圧特性のSiNパシベーション膜厚依存性を計算した。その結果,パシベーション膜が薄くなると耐圧が極端に低下することを見出した。これは,パシベーション膜が薄いとフィールドプレートがゲート電極と同じ働きをし,フィールドプレート端の電界が著しく高くなってしまうためと解釈された。このほか,SiN膜と高誘電率膜(high-k膜)からなる2重パシベーション膜を有するAlGaN/GaN HEMTの耐圧特性の解析を続け,高い耐圧を得る条件について検討した。Feドープ半絶縁バッファ層と高誘電率パシベーション膜を有するAlGaN/GaN HEMTの耐圧特性のゲート・ドレイン間距離依存性の解析をこの距離が10um程度となる場合まで続け,耐圧がどの程度向上するか検討する。フィールドプレートを有するAlGaN/GaNHEMTの耐圧特性のパシベーション膜厚依存性を調べ,この膜厚の最適値について検討する。2重パシベーション膜を有するAlGaN/GaN HEMTの解析を続け,その設計指針について検討する。Feドープ半絶縁性バッファ層を対象とし,GaN禁制帯中央より上に深いアクセプタを有するAlGaN/GaN HEMTの過度応答特性を計算し,アンドープ半絶縁性バッファ層を有する場合(禁制帯中央より上にある深いドナーが禁制帯中央より下にあるアクセプタを補償するとモデル化した)と比較した。その結果,Feドープ半絶縁性バッファ層内の深いアクセプタとアンドープ半絶縁性バッファ層内のドナーのエネルギーレベルや電子や正孔に対する捕獲断面積を同じように設定した場合,いわゆるドレインラグや電流コラプスといった緩やかな電流応答が極めて似た特性になることを見出した。また,両者のアクセプタ濃度が等しい場合,ラグや電流コラプスの程度が定量的に極めて類似した値になることを見出した。これらより,Feドープ半絶縁性内の深いアクセプタとアンドープ半絶縁性バッファ層内の深いドナーが電子トラップとして極めて似た挙動を示すことが示された。また,ラグ現象や電流コラプスのFeドープ半絶縁性バッファ層内アクセプタ濃度依存性について調べた。その結果,いわゆるフィールドプレートを有しない場合は,予想どうりアクセプタ濃度が高くなると共にラグ現象や電流コラプスの程度は大きくなった。しかしながら,フィールドプレートを有する場合には,アクセプタ濃度が高くなるにつれラグ現象や電流コラプスの程度が小さくなることを見出した。これは,アクセプタ濃度が高い場合,電子がバッファ層内に余り進入せず,従ってデバイス表面のフィールドプレートの効果が大きく現れたものと解釈された。さらに,SiNと高誘電率薄膜の二重パシベーション膜を有するAlgaN/GaN HEMTの耐圧特性を計算した。その結果高誘電率薄膜の導入により,耐圧が向上することを見出した。Feドープ半絶縁性バッファ層内の深いアクセプタとアンドープ半絶縁性バッファ層内の深いドナーが電子トラップとして似た働きをすることを示すことができた。また,フィールドプレートを有するAlGaN/GaN HEMTでは,バッファ層内のアクセプタ濃度が高い程ラグ現象や電流コラプスが抑えられうるという新たな知見を得た。さらに,SiNと高誘電率薄膜を有する二重バシベーション構造AlGaN/GaN HEMTでは耐圧が向上することを示すことができた。Feドープ半絶縁バッファ層を対象とし,GaN禁制帯中央より上に深いアクセプタを有するAlGaN/GaN HEMTの耐圧特性を計算した。特に,耐圧の深いアクセプタ濃度依存性,及びパシベーション膜の比誘電率依存性を調べた。その結果,パシベーション膜の比誘電率が高い程高い耐圧が得られたが,これはゲートのドレイン端の電界が軽減されるためと解釈された。また,バッファ層内の深いアクセプタが高い程高い耐圧が得られたが,これはバッファ層を介するリーク電流が軽減されるためと解釈された。比誘電率を60,ゲート・ドレイン間距離を1.5 umとした時,アクセプタ濃度が高い場合耐圧は約500Vとなり,ゲート・ドレイン間の平均電界が3.3 MV/cmとほぼ理論限界に近いものが得られた。また,フィールドプレートと高誘電率パシベーション膜を有するAlGaN/GaN HEMTの耐圧特性を計算した。その結果,高誘電率膜を有することによる耐圧の向上は,フィールドプレート長が短い場合に顕著となることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-16K06314
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K06314
GaN系HEMTにおける電流コラプス現象の抑制と耐圧向上に関する研究
これは,フィールドプレートによる寄生容量を増やさないという点で好都合である。フィールドプレート長がある程度長い場合にも耐圧の向上が得られたが,これは高誘電率膜を有する場合フィールドプレート端とドレイン間の電界がより一様に近いものになるためであることが示された。さらに,SiN膜と高誘電率膜の2重パシベーション膜を有するAlGaN/GaN HEMTの耐圧特性を計算した。それぞれの層の膜厚と耐圧特性の間の関係を明らかにし,その設計指針を与えた。Feドープ半絶縁性バッファ層を対象とし,伝導帯下端から0.5 eV程度の位置に深いアクセプタを有するAlGaN/GaN HEMTのオフ状態耐圧特性を計算した。特に耐圧のパシベーション膜比誘電率依存性やゲート・ドレイン間距離依存性を調べた。その結果,パシベーション膜の比誘電率が高いいわゆるhigh-k膜を有する場合に高い耐圧が得られ,またゲートドレイン間距離が長い程高い耐圧が得られた。具体的には,パシベーション膜の比誘電率が60の時,ゲートドレイン間距離が1.5um, 3um及び5umに対し,耐圧はそれぞれ504 V, 932 V,及び1362 Vとなった。これらは,それぞれゲート・ドレイン間の平均電界強度が3.3 MV/cm, 3.1 MV/cm及び2.7 MV/cmとなりGaNの理論限界3.3 MV/cmに近い値となっている。また,フィールドプレート構造を有するAlGaN/GaN HEMTの耐圧特性のSiNパシベーション膜厚依存性を計算した。その結果,パシベーション膜が薄くなると耐圧が極端に低下することを見出した。これは,パシベーション膜が薄いとフィールドプレートがゲート電極と同じ働きをし,フィールドプレート端の電界が著しく高くなってしまうためと解釈された。このほか,SiN膜と高誘電率膜(high-k膜)からなる2重パシベーション膜を有するAlGaN/GaN HEMTの耐圧特性の解析を続け,高い耐圧を得る条件について検討した。SiNと高誘電率薄膜を有する二重パシベーション膜を有するAlGaN/GaN HEMTについて,それぞれの膜厚や高誘電率薄膜の比誘電率により耐圧がどのように変化するのか詳細に調べる。また,フィールドプレートと高誘電率薄膜を有する構造の耐圧特性を計算し,どのように耐圧特性が変化するか調べる。Feドープバッファ層と高誘電率パシベーション膜を有するAlGaN/GaN HEMTの耐圧特性についてさらに検討し,それらのゲート長やゲート・ドレイン間距離依存性などを明らかにする。また,2重パシベーション膜を有するAlGaN/GaN HEMTの耐圧特性についてさらに検討する。Feドープ半絶縁バッファ層と高誘電率パシベーション膜を有するAlGaN/GaN HEMTの耐圧特性のゲート・ドレイン間距離依存性の解析をこの距離が10um程度となる場合まで続け,耐圧がどの程度向上するか検討する。フィールドプレートを有するAlGaN/GaNHEMTの耐圧特性のパシベーション膜厚依存性を調べ,この膜厚の最適値について検討する。2重パシベーション膜を有するAlGaN/GaN HEMTの解析を続け,その設計指針について検討する。物品費としてワークステーションを購入する予定であったが,諸般の事情より既存のものを活用することにしたため。
KAKENHI-PROJECT-16K06314
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K06314
ポリアミントランスポーター群を標的とする新規抗がん剤DDSに関する基礎的研究
マイクロアレイ解析及びヒト遺伝子データベースのバイオインフォマティクス解析により,ポリアミントランスポーターの同定を試みたが,その同定には至らなかった.一方,HEK293細胞をジフルオロメチルオルニチン処理することにより,未処理時とは異なる特性を持つポリアミントランスポーターが誘導される可能性が示唆された.ポリアミントランスポーターを利用した薬物輸送システムを確立するにあたり,有用な情報を得ることができた.(1)ポリアミントランスポーターの分子実体の探索ヒト遺伝子データベースのバイオインフォマティクス解析及びマイクロアレイデータの解析により,複数回膜貫通タンパクをポリアミントランスポーター候補遺伝子として選び出した.これら数十種のトランスポーター候補遺伝子を発現ベクターに単離し,コンストラクトを作製した.一過性発現系により,放射性ラベルしたプトレスシンを用いてその輸送活性を評価したが,ポリアミン輸送活性を示すトランスポーターは見出だせず,その分子実体の同定には至らなかった.(2)ポリアミン枯渇処理による輸送特性の変化ポリアミン生合成の律速酵素であるオルニチンデカルボキシラーゼの阻害剤であるジフルオロメチルオルニチン(DFMO)を用い,ポリアミン枯渇処理によるプトレスシン取り込み活性への影響を検討した.モデル細胞として,プトレスシン取り込み活性の低いHeLa細胞及びその活性の高いHEK293細胞を用いた.両細胞株においてポリアミン枯渇処理により,その取り込み活性が著しく増加し,取り込みの誘導現象が観察された.さらに,取り込み溶液中のNaClをマンニトールで置換した際,その取り込み活性が上昇することを見出した.その一方で,DFMO未処理のHEK293細胞においてはマンニトール置換による取り込み活性の上昇はみられなかった.このことから,DFMO未処理のHEK293細胞及び両細胞株のポリアミン枯渇時に誘導されるポリアミン取り込み機構は,異なる駆動力をもつメカニズムである可能性が示唆された.なお,プトレスシン輸送のpH依存性及びその濃度依存性については,DFMO処理の有無に対し,大きな差はみられなかった.ポリアミントランスポーターの分子実体の同定には至らなかったが,その特性を生かした応用を検討するにあたり,有用な情報を得ることができた.マイクロアレイ解析及びヒト遺伝子データベースのバイオインフォマティクス解析により,ポリアミントランスポーターの同定を試みたが,その同定には至らなかった.一方,HEK293細胞をジフルオロメチルオルニチン処理することにより,未処理時とは異なる特性を持つポリアミントランスポーターが誘導される可能性が示唆された.ポリアミントランスポーターを利用した薬物輸送システムを確立するにあたり,有用な情報を得ることができた.放射性同位体ラベルされたプトレスシンを用い,各種培養細胞におけるポリアミン取り込み活性を検討した結果,HEK293細胞においてプトレスシン取り込み活性が高く,一方,Hela細胞においてその取り込み活性が低いことを見出した.ポリアミン生合成の律速酵素であるオルニチンデカルボキシラーゼの阻害剤であるジフルオロメチルオルニチンを用い,ポリアミン枯渇処理によるプトレスシン取り込み活性への影響を検討した結果,Hela細胞においてその取り込み活性が著しく増加し,取り込みの誘導現象が観察された.この取り込み活性のイオン要求性を検討した結果,HEK293細胞における通常時の取り込みとは異なる特性を示すことを見出した.このことから,HEK293細胞の通常時及びHela細胞のポリアミン枯渇時に誘導されるポリアミン取り込み機構は,異なる駆動力をもつメカニズムである可能性が示唆された.ポリアミントランスポーターの分子実体について,いくつか報告はあるものの,未だ不明な点は多い.ポリアミン枯渇処理によるmRNA発現変動を調べるため,マイクロアレイ解析を行った.既にポリアミン取り込みに関わるとの報告があるSLC22A16の発現は観察されず,SLC12A8及びglypican-1においては,ポリアミン枯渇処理によるmRNAの発現変動は観察されなかった.現在,ポリアミン枯渇処理により,これらタンパクの膜局在が変化する可能性や,未知のポリアミントランスポーター分子が存在する可能性を含め,その検討を進めている.ポリアミン輸送活性を有する細胞株とともに,輸送活性のバックグラウンドの低い細胞株を見出すことができた.これらはポリアミンの輸送解析実験に用いるためのツールとして有用である.また,マイクロアレイ解析の結果は,未知のポリアミントランスポーターの同定に役立つものと期待される.HEK293細胞における通常時のプトレスシン取り込み機構及びHela細胞においてポリアミン枯渇時に誘導される取り込み機構の輸送特性を詳細に検討し,既知のタンパクによるポリアミン取り込み機構との比較を行う.また,並行してマイクロアレイ解析の結果に基づき,未知のポリアミントランスポーター分子の同定を目指す.さらに,ジフルオロメチルオルニチンとは異なる機序により細胞内ポリアミンを枯渇させる,ポリアミン代謝酵素の誘導剤であるジエチルスペルミンを用い,プトレスシン取り込み活性への影響を検討する予定である.マイクロアレイ解析にかかった費用が現在処理中であり,「次年度使用額」の大半を占める.残りの研究費は次年度分とともに,概ね上記の計画に従い,ポリアミン輸送実験及びポリアミントランスポーターの同定のための実験等に使用する試薬及び器具等の消耗品購入に充てる予定である.また,情報収集のための研究旅等にも一部を充てる予定である.
KAKENHI-PROJECT-23790205
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23790205
線虫を用いた表皮水疱症の分子機構の解析
膜4回貫通タンパク質テトラスパニンは、ヒトでは30種類以上の分子ファミリーを形成し、細胞の接着・遊走・癌転移・細胞膜融合など、細胞間相互作用におけるさまざまな生理現象に機能していることが示唆されている。線虫C.elegansを用いることによって、テトラスパニンの生理的役割を遺伝学的アプローチで明らかにする研究を開始したところ、線虫テトラスパニンのひとつであるtsp-15遺伝子の遺伝子機能低下(ハイポモルフ)個体において皮膚疾患である表皮水疱症に類似する表皮の剥離を見いだした。tsp-15機能低下個体の表皮異常はクチクラ層の剥離だけでなく下皮細胞の変性も伴う新しいタイプのものであり、またtsp-15変異体では表皮のバリア機構の維持に異常が生じていることが分かった。この維持機構の異常によって下皮細胞の変性が惹起され、結果、下皮細胞およびクチクラ層の機能と形態に影響を与えていると思われる。以上の結果より、テトラスパニンが表皮統合性に関与する分子であること、また線虫のテトラスパニンの機能を初めて明らかにした。また機能欠失解析と同時に全ての線虫テトラスパニンの発現様式を明らかにした。その結果、少なくとも数種類のテトラスパニンが表皮細胞において機能していることが示唆された。また最近tsp-15の新たな遺伝子変異座が複数単離され、これらは機能欠失(ヌル)変異体であることが示唆された。この変異体では全ての個体においてハイポモルフ変異体よりも早い時期に致死となることから、tsp-15は成体の表皮における機能だけでなく、個体の正常な発生に必須の因子であることが明らかとなった。一方で、tsp-15ハイポモルフ変異体の表皮異常を抑制する変異体の探索を開始したところ、9系統の抑制変異体を得た。その変異遺伝子座の連鎖解析とマッピングを行ったところ、そのうちのひとつは第3染色体の中央にマップされた。これまでのゲノム情報との比較から、この変異の責任遺伝子はtsp-15の遺伝的上流に位置する新規遺伝子と思われる。膜4回貫通タンパク質tetraspaninは20種類以上の分子ファミリーからなり、細胞の接着・遊走・癌転移・細胞膜融合など、細胞間相互作用におけるさまざまな生理現象に機能していることが示唆されている。一方でtetraspaninは分子的特徴に乏しく、また実際の生理的機能がほとんど不明であることから、特に遺伝学的手法により生体内での役割を明らかにしていくことが必要である。そこで遺伝学的解析に優れた特質を持つ線虫C. elegansにおいてRNA干渉法(RNAi)を用い、線虫に存在する20種類すべてのtetraspanin機能欠失個体を作製することを試みた。すべての線虫tetraspaninのcDNAを単離し、RNAiを試行した結果、tsp-15遺伝子のRNAi個体において表皮の異常を見いだした。この表皮異常は我々が新たに分離したtsp-15変異体と一致し、tsp-15遺伝子の導入によって補償されることからTSP-15の機能欠失によるものと判断された。tsp-15機能欠失個体の表皮異常はクチクラ層の剥離だけでなく下皮細胞の変性も伴う新しいタイプのものであり、これまでに知られている表皮異常の変異体とは一致しないことから、表皮の発生・維持において未知の分子機構が関与していることが示唆された。現在までのところTSP-15の機能を補償する哺乳類tetraspaninは同定されていないが、tsp-15変異体を用いた機能補償実験からTSP-15タンパク質の細胞内領域がその機能に必要である可能性が示された。GFP融合遺伝子法と免疫電子顕微鏡観察によってTSP-15の発現様式を解析した結果、TSP-15は下皮細胞において発現されており、特に基底膜側に局在することが示された。現在TSP-15の機能と表現型の関連について解析中である。膜4回貫通タンパク質テトラスパニンは30種類以上の分子ファミリーからなり、細胞の接着・遊走・癌転移・細胞膜融合など、細胞間相互作用におけるさまざまな生理現象に機能していることが示唆されている。一方でテトラスパニンは分子的特徴に乏しく、また実際の生理的機能はほとんど不明である。そこで線虫C.elegansを用いることによって、テトラスパニンの生理的役割を遺伝学的アプローチで明らかにする研究を開始したところ、テトラスパニンのひとつであるtsp-15遺伝子の遺伝子機能欠失個体において皮膚疾患である表皮水泡症に類似する表皮の剥離を見いだした。GFP融合遺伝子法と免疫電子顕微鏡観察によってTSP-15の発現様式を解析した結果、TSP-15は下皮細胞において発現されていた。またモザイク個体の解析から、TSP-15の下皮細胞における発現が生体に必要かつ十分であることが明らかになった。電子顕微鏡による形態観察から、tsp-15機能欠失個体の表皮異常はクチクラ層の剥離だけでなく下皮細胞の変性も伴う新しいタイプのものであること、また膜不透過性蛍光色素を用いた機能検証実験から、tsp-15変異体では表皮のバリア機構の維持に異常が生じていることが分かった。この維持機構の異常によって下皮細胞の変性が惹起され、結果、下皮細胞およびクチクラ層の機能と形態に影響を与えていると思われる。以上の結果より、テトラスパニンが表皮統合性に関与する分子であること、また線虫のテトラスパニンの機能を初めて明らかにした。一方で、新たにtsp-15変異体の表皮異常を抑制する変異体の探索を開始したところ、現在までに4系統の抑制変異体を得ており、現在その変異alleleのマッピングを行っている。変異体の単離とそれらの原因
KAKENHI-PROJECT-02J61440
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02J61440
線虫を用いた表皮水疱症の分子機構の解析
遺伝子の性状同定を通して、tsp-15が制御している表皮統合性における遺伝的階層を明らかにしたい。膜4回貫通タンパク質テトラスパニンは、ヒトでは30種類以上の分子ファミリーを形成し、細胞の接着・遊走・癌転移・細胞膜融合など、細胞間相互作用におけるさまざまな生理現象に機能していることが示唆されている。線虫C.elegansを用いることによって、テトラスパニンの生理的役割を遺伝学的アプローチで明らかにする研究を開始したところ、線虫テトラスパニンのひとつであるtsp-15遺伝子の遺伝子機能低下(ハイポモルフ)個体において皮膚疾患である表皮水疱症に類似する表皮の剥離を見いだした。tsp-15機能低下個体の表皮異常はクチクラ層の剥離だけでなく下皮細胞の変性も伴う新しいタイプのものであり、またtsp-15変異体では表皮のバリア機構の維持に異常が生じていることが分かった。この維持機構の異常によって下皮細胞の変性が惹起され、結果、下皮細胞およびクチクラ層の機能と形態に影響を与えていると思われる。以上の結果より、テトラスパニンが表皮統合性に関与する分子であること、また線虫のテトラスパニンの機能を初めて明らかにした。また機能欠失解析と同時に全ての線虫テトラスパニンの発現様式を明らかにした。その結果、少なくとも数種類のテトラスパニンが表皮細胞において機能していることが示唆された。また最近tsp-15の新たな遺伝子変異座が複数単離され、これらは機能欠失(ヌル)変異体であることが示唆された。この変異体では全ての個体においてハイポモルフ変異体よりも早い時期に致死となることから、tsp-15は成体の表皮における機能だけでなく、個体の正常な発生に必須の因子であることが明らかとなった。一方で、tsp-15ハイポモルフ変異体の表皮異常を抑制する変異体の探索を開始したところ、9系統の抑制変異体を得た。その変異遺伝子座の連鎖解析とマッピングを行ったところ、そのうちのひとつは第3染色体の中央にマップされた。これまでのゲノム情報との比較から、この変異の責任遺伝子はtsp-15の遺伝的上流に位置する新規遺伝子と思われる。
KAKENHI-PROJECT-02J61440
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02J61440
新規サイクリン様分子依存性キナーゼによる染色体複製及び減数分裂の制御機構の研究
Cdc7-Dbf4キナーゼ複合体は真核細胞の染色体複製開始を制御する。我々は、Cdc7キナーゼに類似する、キナーゼ複合体を分裂酵母、マウス、ヒトにおいて同定し、その機能解析を行ってきた。本研究により以下の事実が明らかとなった。1 Cdc7タンパク質の発現は細胞周期を通じてほぼ一定であるが、制御サブユニットDbf4/Askの発現はM-G2期で低く、S期に高い。これに従って、Cdc7キナーゼ活性も同様な細胞周期の変動をする。2 Cdc7キナーゼはMCM複合体のMCM2タンパク質を特異的にリン酸化する。3 MCM2はCdkによってもN端の特異的な部位をリン酸化され、このリン酸化により、MCM2のCdc7によるリン酸化が著しく促進される。すなわちMCMはCdlkとCdc7の共同作用によりリン酸化され、活性化されると考えられる。4 Cdc7遺伝子ノックアウトマウスは胎生3.5から6.5日の間に死亡する。また、Cdc7遺伝子欠損ES細胞は致死である。5 ES細胞においてCdc7を誘導的に欠失させると、直ちに細胞増殖とDNA合成が停止し、細胞はその後細胞死を起こした。これは、Cdc7欠損によるS期停止の結果、異常な複製構造が蓄積し、それがチェックポイント反応を誘導したと考えられる。このとき、p53蛋白質の蓄積も観察された。6 Dbf4/ASK活性制御サブユニットに保存された3つのモチーフ(N, M, C)を同定しこのうちMとCがそれぞれ独立に触媒サブユニットに結合し、ギナーゼ活性化に必要であることが明らかになった。Nはクロマチンとの相互作用に関与することが示唆された。Cdc7-Dbf4キナーゼ複合体は真核細胞の染色体複製開始を制御する。我々は、Cdc7キナーゼに類似する、キナーゼ複合体を分裂酵母、マウス、ヒトにおいて同定し、その機能解析を行ってきた。本研究により以下の事実が明らかとなった。1 Cdc7タンパク質の発現は細胞周期を通じてほぼ一定であるが、制御サブユニットDbf4/Askの発現はM-G2期で低く、S期に高い。これに従って、Cdc7キナーゼ活性も同様な細胞周期の変動をする。2 Cdc7キナーゼはMCM複合体のMCM2タンパク質を特異的にリン酸化する。3 MCM2はCdkによってもN端の特異的な部位をリン酸化され、このリン酸化により、MCM2のCdc7によるリン酸化が著しく促進される。すなわちMCMはCdlkとCdc7の共同作用によりリン酸化され、活性化されると考えられる。4 Cdc7遺伝子ノックアウトマウスは胎生3.5から6.5日の間に死亡する。また、Cdc7遺伝子欠損ES細胞は致死である。5 ES細胞においてCdc7を誘導的に欠失させると、直ちに細胞増殖とDNA合成が停止し、細胞はその後細胞死を起こした。これは、Cdc7欠損によるS期停止の結果、異常な複製構造が蓄積し、それがチェックポイント反応を誘導したと考えられる。このとき、p53蛋白質の蓄積も観察された。6 Dbf4/ASK活性制御サブユニットに保存された3つのモチーフ(N, M, C)を同定しこのうちMとCがそれぞれ独立に触媒サブユニットに結合し、ギナーゼ活性化に必要であることが明らかになった。Nはクロマチンとの相互作用に関与することが示唆された。今年度は、これまでに我々が単離した分裂酵母とヒトのCdc7キナーゼ触媒および活性制御サブユニット(それぞれHsk11/Him1およびhuCdc7/H7タンパク質)の機能について、遺伝学的生化学的に検討した。Hsk1/Him1の転写とタンパク質およびhuCdc7/H37の転写の細胞周期における変動を検討した結果、いずれの生物種においても、触媒サブユニットは細胞周期を通じてほぼ一定のレベルで発現されること、制御サブユニットの発現はG1期で低下しG1後期からS期にかけて上昇しS期を通じて高く保たれることが示された。hsk1(ts)株の解析および、him1変異体の解析から、分裂酵母のCdc7類似キナーゼのHsk1/Him1複合体は、体細胞分裂および減数分裂時のDNA複製の他に、ヒドロキシ尿素などによるDNA複製阻害時のチェックポイント制御にも関与することが明かとなった。G1期のヒト正常繊維芽細胞にH37の抗体を微注入すると、80%以上の細胞でDNA複製が阻害された。この事実はH37の機能がヒト細胞のDNA複製の開始に必須であることを示す。また、muCdc7遺伝子の2つのalleleを欠損したマウスは胎生3.5日から6.5日の間に死亡した。以上の結果はCdc7キナーゼ複合体の機能が動物細胞の増殖とくにDNA複製に必須であることを強く示唆する。一方ヒトCdc7/H37複合体を精製し、in vitroリン酸化反応による解析を行った結果、MCM複合体の中のMCM2サブユニットが特異的にリン酸化されin vivoで観察されるリン酸化パターンと類似したリン酸化パターンが得られた。リン酸化されたMCM2タンパク質は主に、可溶性画分に回収されることがらMCM2のリン酸化によりMCM複合体の集合状態が変化し、その結果MCM複合体(DNAヘリカーゼ活性?)が活性化され複製が開始するというモデルを提出した。
KAKENHI-PROJECT-10480164
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新規サイクリン様分子依存性キナーゼによる染色体複製及び減数分裂の制御機構の研究
分裂酵母とヒトのCdc7類似キナーゼ複合体である、Hsk1/Him1およびhuCdc7/H37の転写とタンパク質の細胞周期における変動を検討した結果、いずれの生物種においても、触媒サブユニットは細胞周期を通じてほぼ一定のレベルで発現されること、制御サブユニットの発現はG1期で低下しG1後期からS期にかけて上昇しS期を通じて高く保たれることが示された。hsk1(ts)株の解析および、him1変異体の解析から、分裂酵母のCdc7類似キナーゼのHsk1/Him1複合体は、体細胞分裂および減数分裂時のDNA複製の他に、ヒドロキシ尿素などによるDNA複製阻害時のチェックポイント制御にも関与することが明かとなった。また、Hsk1キナーゼはRad 21コーヒーシンタンパク質を通じて、S期の姉妹染色分体の接着制御に関与することを示した。muCdc7遺伝子の2つのalleleを欠損したマウスは胎生3.5日から6.5日の間に死亡した。さらに、muCdc7遺伝子の不活性化を誘導できる変異E S株を作製し、muCdc7の機能が動物細胞のDNA複製に必須であることを証明した。一方ヒトCdc7/H37複合体を精製し、in vitroリン酸化反応による解析を行った結果、MCM複合体の中のMCM2サブユニットが特異的にリン酸化されin vivoで観察されるリン酸化パターンと類似したリン酸化パターンが得られた。またMCM2上のリン酸化部位の詳細な解析から重要なリン酸化部位をほぼ同定し、Cdc7はMCM2のリン酸化を通じてその複合体の組成を変化することによりヘリカーゼ活性を制御する可能性を指摘した。Cdc7-Dbf4キナーゼ複合体は真核細胞の染色体複製開始を制御する。我々は、Cdc7キナーゼに類似する、キナーゼ複合体を分裂酵母、マウス、ヒトにおいて同定し、その機能解析を行ってきた。本研究により以下の事実が明かとなった。1 Cdc7タンパク質の発現は細胞周期を通じてほぼ一定であるが、制御サブユニットDbf4/ASKの発現はM-G2期で低く、S期に高い。これにしたがって、Cdc7キナーゼ活性も同様な細胞周期の変動をする。2 Cdc7キナーゼはMCM複合体のMCM2タンパク質を特異的にリン酸化する。3 MCM2はCdkによってもN端の特異的な部位をリン酸化され、このリン酸化により、MCM2のCdc7によるリン酸化が著しく促進される。すなわちMCMはCdkとCdc7の共同作用によりリン酸化され、活性化されると考えられる4 Cdc7遺伝子ノックアウトマウスは胎生3.5から6.5日の間に死亡する。また、Cdc7遺伝子欠損ES細胞は致死である。5 ES細胞においてCdc7を誘導的に欠失させると、直ちに細胞増殖とDNA合成が停止し、細胞はその後細胞死を起こした。これは、Cdc7欠損によるS期停止の結果、異常な複製構造が蓄積し、それがチェックポイント反応を誘導したと考えられる。このとき、p53蛋白質の蓄積も観察された。6 Dbf4/ASK活性制御サブユニットに保存された3つのモチーフ(N,M,C)を同定しこのうちMとCがそれぞれ独立に触媒サブユニットに結合し、キナーゼ活性化に必要であることが明かになった。Nはクロマチンとの相互作用に関与することが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-10480164
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含ケイ素小員環化合物の遷移金属錯体反応
本研究は、ケイ素-ケイ素結合をもつ小員環化合物の遷移金属錯体存在下における化学的挙動、特にその立体化学を明らかにする目的で行った。まず、シスおよびトランス-3,4-ベンゾ-1,2-ジ(t-ブチル)-1,2-ジメチル-1,2-ジシラシクロブト-3-エンを合成し、そのシス体およびトランス体を分離することに成功した。分離したシス体およびトランス体をパラジウム錯体触媒存在下、アセチレン類との反応を行い、ベンゾジシラシクロブテンの立体化学について検討した。その結果、立体特異的にそれぞれの付加物を高収率で与えることを明らかにした。1,2-ジメチル-1,2-ジフェニル-1,2-ジシラシクロペンタンの合成を行い、シス体およびトランス体を蒸留により分離した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム錯体触媒存在下、シス体およびトランス体とアセチレン類との反応を行うと、立体特異的に反応が進行し、各々の付加物を与えることを明らかにした。また、ニッケル錯体触媒および白金錯体触媒存在下においても、立体特異的に反応が進行し、付加物が得られることを報告した。1,1-ジメチル-2,2-ジフェニル-1,2-ジシラシクロペンタンを合成し、パラジウムおよび白金錯体触媒存在下、末端アセチレンとの反応を行い、そのレジオケミストリーについての検討を行った。その結果、位置特異的に反応が進行し、常にジメチルシリル基側に末端アセチレンの水素部位が位置した付加物を与えることを明らかにした。本研究は、ケイ素-ケイ素結合をもつ小員環化合物の遷移金属錯体存在下における化学的挙動、特にその立体化学を明らかにする目的で行った。まず、シスおよびトランス-3,4-ベンゾ-1,2-ジ(t-ブチル)-1,2-ジメチル-1,2-ジシラシクロブト-3-エンを合成し、そのシス体およびトランス体を分離することに成功した。分離したシス体およびトランス体をパラジウム錯体触媒存在下、アセチレン類との反応を行い、ベンゾジシラシクロブテンの立体化学について検討した。その結果、立体特異的にそれぞれの付加物を高収率で与えることを明らかにした。1,2-ジメチル-1,2-ジフェニル-1,2-ジシラシクロペンタンの合成を行い、シス体およびトランス体を蒸留により分離した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム錯体触媒存在下、シス体およびトランス体とアセチレン類との反応を行うと、立体特異的に反応が進行し、各々の付加物を与えることを明らかにした。また、ニッケル錯体触媒および白金錯体触媒存在下においても、立体特異的に反応が進行し、付加物が得られることを報告した。1,1-ジメチル-2,2-ジフェニル-1,2-ジシラシクロペンタンを合成し、パラジウムおよび白金錯体触媒存在下、末端アセチレンとの反応を行い、そのレジオケミストリーについての検討を行った。その結果、位置特異的に反応が進行し、常にジメチルシリル基側に末端アセチレンの水素部位が位置した付加物を与えることを明らかにした。我々はこれまでベンゾジシラシクロブテン類のニッケル、パラジウム、および白金錯体触媒存在下での反応を行い、生成する化合物の構造は触媒として用いた金属の種類に大きく依存することを報告した。本年度は、シスおよびトランス-3,4-ベンゾ-1,2-ジ(t-ブチル)-1,2-ジメチル-1,2-ジシラシクロブト-3-エンを合成し、そのシス体およびトランス体を分離することに成功した。分離したシス体およびトランス体をパラジウム錯体触媒存在下、アセチレン類との反応を行い、ベンゾジシラシクロブテンの立体化学について検討した。触媒量のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム錯体存在下、シス-3,4-ベンゾ-1,2-ジ(t-ブチル)-1,2-ジメチル-1,2-ジシラシクロブト-3-エン(1a)とフェニルアセチレンとの反応を200°C、24時間の条件で行うと、シス-5,6-ベンゾ-1,4-ジ(t-ブチル)-1,4-ジメチル-2-フェニル-1,4-ジシラシクロヘキサ-2,5-ジエン(2a)が84%の収率で得られた。同条件下、トランス-3,4-ベンゾ-1,2-ジ(t-ブチル)-1,2-ジメチル-1,2-ジシラシクロブト-3-エン(1b)とフェニルアセチレンの反応を行うと、トランス体の付加物(2b)が唯一の揮発性生成物として収率良く得られた。また、化合物1aおよび1bを同条件下、1-ヘキシンやt-ブチルアセチレンと反応させると、立体特異的にそれぞれの付加物を高収率で与えることを明らかにした。また、1,2-ジメチル-1,2-ジフェニル-1,2-ジシラシクロペンタンの合成を行い、シス体(3a)およびトランス体(3b)を蒸留により分離した。3aおよび3bをテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム錯体触媒存在下、アセチレン類との反応を行うと、立体特異的に反応が進行し、各々の付加物を与えることを明らかにした。本年度は、ニッケル錯体および白金錯体触媒存在下、シス-またはトランス-1,2-ジメチル-1,2-ジフェニル-1,2-ジシラシクロペンタンとアセチレン類との反応を行い、シラシクロペンタンの立体化学について検討した。
KAKENHI-PROJECT-12650858
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含ケイ素小員環化合物の遷移金属錯体反応
触媒量のエチレンビス(トリフェニルホスフィン)白金錯体存在下、シス-1,2-ジメチル-1,2-ジフェニル-1,2-ジシラシクロペンタンとジフェニルアセチレンとの反応を150°C、24時間の条件で行うと、シス-1,4-ジメチル-1,2,3,4-テトラフェニル-1,4-ジシラシクロヘプト-2-エンが93%の収率で得られた。同条件下、トランス-1,2-ジメチル-1,2-ジフェニル-1,2-ジシラシクロペンタンとジフェニルアセチレンの反応を行うと、トランス体の付加物が唯一の揮発性生成物として89%の収率で得られた。また、1-ヘキシンやフェニルアセチレンと反応させても、立体特異的にそれぞれの付加物を与えることを明らかにした。触媒量のジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル錯体存在下の反応においても、同様に立体特異的に反応が進行した。また1,1-ジメチル-2,2-ジフェニル-1,2-ジシラシクロペンタンを合成し、パラジウムおよび白金錯体触媒存在下、末端アセチレンとの反応を行い、そのレジオケミストリーについての検討を行った。1,1-ジメチル-2,2-ジフェニル-1,2-ジシラシクロペンタンを触媒量のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムまたはエチレンビス(トリフェニルホスフィン)白金錯体存在下、フェニルアセチレンと反応させると、位置特異的に4,4-ジメチル-1,1,2-トリフェニル-1,4-ジシラシクロヘプト-2-エンが高収率で得られた。t-ブチルアセチレンおよび1-ヘキシンとの反応においても、同様に位置特異的に反応が進行することを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-12650858
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分散型方程式の解の性質
線形分散型方程式の解の諸性質と方程式の表象の幾何との関連を研究した。階数が2以上で、係数が非有界であるような変数係数分散型方程式に対するコーシー問題をユークリッド空間上で考え、コーシー問題が適切であるための必要条件および十分条件を得た。また波動方程式の計量に空間的にコンパクトな時間依存の摂動を加えたときの解作用素のノルムの時刻無限大での増大度について新しい結果を得た。分散型方程式は、KdV方程式、シュレディンガー方程式、薄板の方程式などを代表として含む偏微分方程式の重要なクラスであり、また着目する性質によってはスケール変換して考えることにより、双曲型方程式とも密接に関係していることが知られている。本研究では、線形分散型方程式、特にシュレディンガー方程式の解の諸性質を方程式の表象の幾何との関連から解明することを目標としている。まず偏微分方程式の記述する波動現象と表象の幾何との関連を調べるため、特性根の多重度が一定である対称双曲型擬微分方程式系の発展方程式を考察し、マイナス1階の作用素を法とした解の表示式を用いることにより、解のエネルギーの初期値に関する一様増大度の下からの評価が、方程式の主表象の陪特性曲線と副主表象を用いて記述できることがわかった。これは弾性方程式やマクスウェル方程式などにも適用できると考えられる。次に、ポテンシャルの零点集合が非有界であっても、零点集合の形状とそこから離れたときのポテンシャルの増大度によっては、シュレディンガー作用素のレゾルベントがコンパクトとなりうることに着目し、ポテンシャルの零点集合が必ずしも斉次ではない写像のグラフで表せる非有界集合であり、ポテンシャルがその零点集合からの距離に応じて増大していく場合に、シュレディンガー作用素のレゾルベントがコンパクトとなり、ワイル型とは限らない、固有値の漸近分布公式が成立することがわかった。分散型方程式は、シュレディンガー方程式を典型例とする偏微分方程式の代表的なクラスであり、注目する性質によっては尺度を変えて考えることにより、一見すると別の偏微分方程式のクラスである双曲型方程式とも密接に関係していることが知られている。本研究では、線形分散型方程式、特にシュレディンガー方程式の解の諸性質を方程式の表象の幾何との関連から解明することを目標としている。本年度は、偏微分方程式の記述する波動現象と表象の幾何との関連を調べるため、ユークリッド空間上の定数係数波動方程式に対し、主要部であるシュレディンガー作用素に、空間的にコンパクトな集合上で、時空間に依存する摂動を加えたものを考え、その摂動をもつ波動方程式の解作用素のノルムが、与えられた増大度をもつようにすることが可能であるかどうか考察した。これまで高々1次の指数的増大度の場合にしか、解作用素が丁度同じ増大度をもつような例が構成されていなかったが、今回、任意のm次の指数的増大度(ただしmは1以上の実数)を含むような、より大きな増大度をもつ場合にも、解作用素が丁度同じ増大度をもつような例を構成することに成功した。証明の鍵は、特性曲線が空間的には周期的であるが、ハミルトニアン自身は陪特性帯に沿ってしかるべき増大度で無限大に発散し、さらに様々な技術的要請をみたすように主表象を構成することであり、それ以外の部分、つまり超局所解析的手法による解のエネルギーの下からの評価ならびに部分積分の方法による解のエネルギーの上からの評価は従来の方法に従った。分散型方程式は、シュレディンガー方程式や薄板の方程式などを代表例とする偏微分方程式の重要なクラスであり、スケール変換して考えることにより、波動現象を記述する偏微分方程式のもう一つのクラスである双曲型方程式とも密接に関係していることが知られている。本研究では、線形分散型方程式、特にシュレディンガー方程式の解の諸性質を方程式の表象の幾何との関連から解明することを目標としている。今年度は、偏微分方程式の記述する波動現象と表象の幾何との関連を超局所的な観点から調べるため、主表象が相異なる実固有値をもつような正値対称偏微分方程式系のあるモデルに対する境界値問題を考え、境界値の滑らかさと境界値問題の解の滑らかさの関係、特に境界値の特異性が境界値問題の解の特異性にどのように伝播するか解析し、以下に述べるような結果を得た。まず、モデルとなる境界値問題に対して、境界条件として与える関数に、境界条件としては与えない、解の境界値を対応させる作用素は、同じ指数のソボレフ空間の間の有界作用素であり、この作用素は異なる正準変換に付随する2種類のフーリエ積分作用素の有限個の合成を展開項とするような漸近展開をもつ。次に、解の特異性に関しては、粗く表現すると、境界条件として与える関数がある点で超局所的特異性をもてば、その点を通過し、境界で反射するような古典軌道上で解は超局所的特異性をもち、その超局所的特異性のソボレフ指数の意味でので強さは境界で反射するごとに弱くなる。この解析を精密化することにより、境界条件として与える関数の波面集合は1点からなるが、対応する解はいたるところ滑らかでないような例を構成することができる。偏微分方程式の記述する波動現象と表象の幾何に関し、境界値問題のモデルに対しては一定の結果が得られたが、それ以外の部分に関しては予想以上に困難であり、一定の結果が得られたという段階ではないため、全体としてやや遅れているという評価となった。
KAKENHI-PROJECT-25400162
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25400162
分散型方程式の解の性質
分散型方程式は、KdV方程式、シュレディンガー方程式、薄板の方程式などを代表例とする偏微分方程式の重要なクラスであり、着目する性質によっては尺度を換えて考えることにより、一見すると異なる偏微分方程式のクラスである双曲型方程式とも密接に関係していることが知られている。本研究では、線形分散型方程式、特にシュレディンガー方程式の解の諸性質を方程式の表象の幾何との関連から解明することを目標としている。ユークリッド空間上で、変数係数の主要部をもつようなシュレディンガー作用素に対して、ポテンシャルの零点集合が必ずしも斉次ではない写像のグラフで表せる非有界集合であり、ポテンシャルがその零点集合からの距離に応じて増大していく場合に、レゾルベントがコンパクトとなる十分条件、半古典的極限でワイル型とは限らない固有値の漸近分布公式が成立する十分条件について研究した。ユークリッド空間上で優2次的に増大するポテンシャルをもつシュレディンガー方程式の解の特異性について研究した。1次元シュレディンガー方程式に関する谷島氏の結果の多次元版を目標としたが、多次元の場合は固有値・固有関数の詳しい性質が得られないため、予想以上に難しく、次年度も継続して取り組む予定である。滑らかな境界をもつ非有界領域において適当な境界条件の下、シュレディンガー作用素を考え、レゾルベントがコンパクトとなり、非ワイル型の固有値の漸近分布が成り立つための十分条件を領域の形状との関連で研究中で次年度も継続して取り組む予定である。退化したポテンシャルを持つ場合の固有値の漸近分布に関しては一定の結果が得られたが、それ以外の部分に関しては予想以上に困難であり、一定の結果が得られたという段階ではないため、全体としてやや遅れているという評価となった。分散型方程式は、KdV方程式、シュレディンガー方程式、薄板の方程式などを代表例とする偏微分方程式の重要なクラスであり、着目する性質によっては超局所的にスケール変換して考えることにより、双曲型方程式とも関係していることが知られている。本研究では、線形分散型方程式、特にシュレディンガー方程式の解の諸性質を方程式の表象の幾何との関連から解明することを目標としている。その一環として時間変数に関しては1階であるが空間変数に関しては2階以上であるような変数係数の分散型方程式に対する初期値問題の適切性を2乗可積分関数空間をもとにした枠組みで研究し、以下に述べるような結果を得た。まず、主要部が楕円型と限らず、階数も2階とは限らない、一般の変数係数の分散型方程式に対して、初期値問題が適切であるためには、主表象に対する陪特性曲線に沿っての副主表象の積分の虚部の有界性が必要であることを示した。これは主要部が2階楕円型の場合についての既存の結果の自然な拡張となっている。次に、主要部が楕円型と限らず、階数も2階とは限らない、変数係数の分散型方程式に対して、主要部の係数は有界であるが、主要部の階数に応じて低階項の係数があるオーダーで増大することを許容するような枠組みで、初期値問題が適切であるための十分条件を与えた。これは係数が有界な場合の既存の結果の拡張になっている。また楕円型とは限らない分散型方程式に対して、その主表象のハミルトン流に関する非捕捉性条件とある種のリヤプノフ関数の存在とが同等であることを示した。線形分散型方程式の解の諸性質と方程式の表象の幾何との関連を研究した。階数が2以上で、係数が非有界であるような変数係数分散型方程式に対するコーシー問題をユークリッド空間上で考え、コーシー問題が適切であるための必要条件および十分条件を得た。
KAKENHI-PROJECT-25400162
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糖尿病患者の療養関連QOLの向上とその血縁者の予防行動促進に関する研究
糖尿病療養関連QOLを評価する尺度の作成にあたり、以下の2点を目的として、3070歳の2型糖尿病患者を対象に自記式質問紙調査を行った。1.糖尿病腎症患者にも適用拡大した糖尿病食事関連QOL尺度改訂版の信頼性・妥当性を検討し、さらに短縮版を作成すること。2.糖尿病運動関連QOL尺度の信頼性・妥当性を検討すること。糖尿病食事関連QOL尺度改訂版は、昨年度実施した医療者対象の調査に用いた原案を、昨年度の調査結果に基づいて一部修正し、調査に用いた。糖尿病運動関連QOL尺度は、昨年度の文献レビューと患者・医療者への面接結果を基に作成した原案を調査に用いた。対象となった都内2クリニック通院中の2型糖尿病患者202名のうち、181名から有効回答を得た。糖尿病食事関連QOL尺度改訂版は、因子分析の結果、原版と同様の3因子構造であることが確認された。内的整合性はクロンバックのα係数が0.7以上、再現性は級内相関係数が0.530.78と概ね良好であった。因子分析で因子負荷量の高かった項目は、昨年度の医療者対象の調査結果でも重要度が高いとの回答を得た項目であったため、これらの項目を用いて短縮版を作成した。糖尿病運動関連QOL尺度は、因子分析の結果、「運動の受益感(目常生活)」「運動の負担感」「運動の楽しさ」「運動の受益感(疾患管理)」の4因子構造が確認された。内的整合性はクロンバックのα係数が0.7以上、再現性は級内相関係数が0.690.79といずれも良好であった。本年度の調査結果から、糖尿病食事関連QOL尺度改訂版および短縮版と糖尿病運動関連QOL尺度は、いずれも糖尿病療養関連QOLを評価する尺度として、妥当性・信頼性を有することが示された。現在、これらの尺度を用いて糖尿病療養関連QOLを測定し、QOLに影響を与える因子を同定するための縦断調査を実施中である。本研究では平成19年度に食事関連QOL尺度改訂版および短縮版の作成,運動関連QOL尺度(案)の作成の2つの成果を挙げた。これらを合わせた糖尿病療養行動関連尺度が次年度はじめには完成され,糖尿病患者の療養生活におけるQOLを簡便に評価することが可能となる。それぞれの成果の詳細は以下のとおりである。1.食事関連QOL尺度改訂版および短縮版の作成本研究に先んじて作成した食事関連QOL尺度をさらに臨床的に有用なものとするため,糖尿病腎症にも適用範囲を広げた改訂版(案)を作成した。改訂版(案)は,日本糖尿病学会専門医,糖尿病看護認定看護師,糖尿病療養指導士の資格を持つ管理栄養士,各1名により表面妥当性,内容妥当性が確認された。さらに,尺度のアセスメントツールとしての利便性を向上させるべく,短縮版を作成することを計画した。日本糖尿病学会専門医,糖尿病看護認定看護師,糖尿病療養指導士の資格を持っ管理栄養士,計62名にDelphi法による2回の自記式質問紙調査を実施し,尺度の各項目の重要度を6段階で尋ねた。回答率は90.3%,対象者の7割以上が「非常に重要」「重要」と回答した項目は9項目であり,医療専門職が食事関連QOL評価として重要視する内容が明らかとなった。2.運動関連QOL尺度(案)の作成先行研究,文献レビューから尺度の項目案を収集し,糖尿病運動関連QOL尺度(案)を作成した。その後,医療専門職(医師,看護師,運動療法士)および患者,計10名を対象に,インタビューと実際に糖尿病運動関連QOL尺度(案)への回答を依頼し,尺度の内容妥当性,実施可能性を確認した。現在,東京都にある糖尿病患者を診療する2つのクリニックにおいて,20歳以上70歳未満の2型糖尿病患筆を対象として尺度の信頼性,妥当性を検証するための質問紙調査を実施中であり,中間解析では良好な結果を得ている。糖尿病療養関連QOLを評価する尺度の作成にあたり、以下の2点を目的として、3070歳の2型糖尿病患者を対象に自記式質問紙調査を行った。1.糖尿病腎症患者にも適用拡大した糖尿病食事関連QOL尺度改訂版の信頼性・妥当性を検討し、さらに短縮版を作成すること。2.糖尿病運動関連QOL尺度の信頼性・妥当性を検討すること。糖尿病食事関連QOL尺度改訂版は、昨年度実施した医療者対象の調査に用いた原案を、昨年度の調査結果に基づいて一部修正し、調査に用いた。糖尿病運動関連QOL尺度は、昨年度の文献レビューと患者・医療者への面接結果を基に作成した原案を調査に用いた。対象となった都内2クリニック通院中の2型糖尿病患者202名のうち、181名から有効回答を得た。糖尿病食事関連QOL尺度改訂版は、因子分析の結果、原版と同様の3因子構造であることが確認された。内的整合性はクロンバックのα係数が0.7以上、再現性は級内相関係数が0.530.78と概ね良好であった。因子分析で因子負荷量の高かった項目は、昨年度の医療者対象の調査結果でも重要度が高いとの回答を得た項目であったため、これらの項目を用いて短縮版を作成した。
KAKENHI-PROJECT-19390555
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19390555
糖尿病患者の療養関連QOLの向上とその血縁者の予防行動促進に関する研究
糖尿病運動関連QOL尺度は、因子分析の結果、「運動の受益感(目常生活)」「運動の負担感」「運動の楽しさ」「運動の受益感(疾患管理)」の4因子構造が確認された。内的整合性はクロンバックのα係数が0.7以上、再現性は級内相関係数が0.690.79といずれも良好であった。本年度の調査結果から、糖尿病食事関連QOL尺度改訂版および短縮版と糖尿病運動関連QOL尺度は、いずれも糖尿病療養関連QOLを評価する尺度として、妥当性・信頼性を有することが示された。現在、これらの尺度を用いて糖尿病療養関連QOLを測定し、QOLに影響を与える因子を同定するための縦断調査を実施中である。
KAKENHI-PROJECT-19390555
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歯髄幹細胞の効率的回収と輸送中の歯髄組織培養を可能とする新規凍結保存法の開発
医療廃棄物である抜去歯の歯髄組織内に間葉系幹細胞が存在することが確認されている。この細胞はdentalpulp stem cells:DPSCsと呼ばれ、現在臨床応用されている骨髄および脂肪組織由来の幹細胞と同程度の分化能を有していながらそれらの幹細胞と比較して高い増殖能を持つこと、遺伝子変異の蓄積が少ないことから、最近、再生医療における重要な細胞ソースとして注目されるようになってきた。将来の再生医療に向けてより多くの歯髄幹細胞を確保する上では、低コストで簡便、且つ安全な細胞回収保存システムの構築が必要であると考えた。そこで、本研究では歯髄幹細胞の簡便な回収と確実な保存を可能とし、抜去歯より歯髄組織を採取後、培養を行いながら移送するシステムの構築を目指す。これにより、歯髄幹細胞による再生医療の裾野が拡大することが期待される。患者またはボランティアの抜去歯より歯髄組織を採取後、組織片を細切し、多孔性メンブレンで挟み、48時間培養を行う。そして、採取直後の歯髄組織と48時間培養後の歯髄組織をパラフィン切片にして、HE染色を行い、組織片内の細胞の挙動を確認する。尚、ポアサイズは細胞が通れないサイズである0.4μmのものを使用予定である。次に、サンド法で回収した組織片を1週間凍結保存後に解凍し、Explant法にて60mm-dishに再度培養し、コンフルエントに達するまでの時間をコントロール(未凍結の歯髄組織片)と比較する。最後に、分離した細胞の特性について検討する。具体的には細胞増殖能、骨芽細胞・脂肪細胞・軟骨細胞への分化能をコントロールの細胞と比較し、また、フローサイトメーターによる細胞表面マーカー(間葉系幹細胞マーカーと造血系幹細胞マーカー)の確認を行い、得られた結果をとりまとめ、成果の発表を行う。現在、採取した歯髄組織を多孔性メンブレンで挟んで培養することで、組織辺縁への幹細胞の遊走が確認された。多孔性メンブレンによる培養のと通常の培養法を比較検討予定。医療廃棄物である抜去歯の歯髄組織内に間葉系幹細胞が存在することが確認されている。この細胞はdentalpulp stem cells:DPSCsと呼ばれ、現在臨床応用されている骨髄および脂肪組織由来の幹細胞と同程度の分化能を有していながらそれらの幹細胞と比較して高い増殖能を持つこと、遺伝子変異の蓄積が少ないことから、最近、再生医療における重要な細胞ソースとして注目されるようになってきた。将来の再生医療に向けてより多くの歯髄幹細胞を確保する上では、低コストで簡便、且つ安全な細胞回収保存システムの構築が必要であると考えた。そこで、本研究では歯髄幹細胞の簡便な回収と確実な保存を可能とし、抜去歯より歯髄組織を採取後、培養を行いながら移送するシステムの構築を目指す。これにより、歯髄幹細胞による再生医療の裾野が拡大することが期待される。患者またはボランティアの抜去歯より歯髄組織を採取後、組織片を細切し、多孔性メンブレンで挟み、48時間培養を行う。そして、採取直後の歯髄組織と48時間培養後の歯髄組織をパラフィン切片にして、HE染色を行い、組織片内の細胞の挙動を確認する。尚、ポアサイズは細胞が通れないサイズである0.4μmのものを使用予定である。次に、サンド法で回収した組織片を1週間凍結保存後に解凍し、Explant法にて60mm-dishに再度培養し、コンフルエントに達するまでの時間をコントロール(未凍結の歯髄組織片)と比較する。最後に、分離した細胞の特性について検討する。具体的には細胞増殖能、骨芽細胞・脂肪細胞・軟骨細胞への分化能をコントロールの細胞と比較し、また、フローサイトメーターによる細胞表面マーカー(間葉系幹細胞マーカーと造血系幹細胞マーカー)の確認を行い、得られた結果をとりまとめ、成果の発表を行う。現在、採取した歯髄組織を多孔性メンブレンで挟んで培養することで、組織辺縁への幹細胞の遊走が確認された。多孔性メンブレンによる培養のと通常の培養法を比較検討予定。フローサイトメトリーを用いて細胞表面マーカーを調べるための抗体購入費用が当初の計画より多く発生したため。
KAKENHI-PROJECT-18K17183
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自然発症糖尿病ラットにおける実験的歯周炎の病理組織学的研究
【方法】実験には、自然発症糖尿病(GK)ラット45匹と、JCLウイスター系ラット45匹の計90匹を用いた。動物は、上顎右側第1臼歯(M_1)と第2臼歯(M_2)の歯間部ら糸を挿入し、J-1,2,3群(JCLラット)、G-1,2,3群(GKラット)の6群(各群15匹)に分けた。J-1とG-1群は、普通食で飼育し、J-2群とG-2群は、糸挿入後3週より高シヨ糖食で飼育し、J-3群とG-3群は、糸挿入後3週より高シヨ糖溶液で飼育した。各群の動物は、糸挿入時、挿入後6,9,12週でブドウ糖負荷試験を行い、6,9,12週で各群5匹ずつ屠殺した。通法に従い臼歯部の近遠心方向の連続切片を作製し、HE染色を施してM_1とM_2の歯間部を組織学的に観察した。さらに、組織形態計測学的に、歯槽骨の高さを画像解析装置を使用して計測した。【結果】ブドウ糖負荷試験では、G群は、J群と比較して、有意に高い血糖値を示した。J-1,2,G-1群は、経時的な耐糖能の変化はみられなかった。しかし、G-2,3群は、シヨ糖投与後、経時的に耐糖能が悪化しており、G-2群よりG-3群のほうが耐糖能が悪かった。組織学的には、J群、G群は、ともに歯肉結合組織に軽度から中等度の炎症性細胞浸潤、経時的な歯槽骨の高さの減少が認められた。組織形態計測学的にM_1、M_2の長さに対する歯槽骨長比は、各群とも経時的に小さくなっていく傾向がみられ、G群では、G-1群、G-2群、G-3群の順で小さかった。【考察】GKラットの耐糖能を悪化させると、病理組織学的ならびに組織形態計測学的に歯周組織の破壊が促進されることが認められた。このことは、全身因子として糖尿病は歯周組織破壊に何らかの影響を与えている可能性が示唆された。さらに今後、ストレスの影響を加えて行く予定である。【方法】実験には、自然発症糖尿病(GK)ラット45匹と、JCLウイスター系ラット45匹の計90匹を用いた。動物は、上顎右側第1臼歯(M_1)と第2臼歯(M_2)の歯間部ら糸を挿入し、J-1,2,3群(JCLラット)、G-1,2,3群(GKラット)の6群(各群15匹)に分けた。J-1とG-1群は、普通食で飼育し、J-2群とG-2群は、糸挿入後3週より高シヨ糖食で飼育し、J-3群とG-3群は、糸挿入後3週より高シヨ糖溶液で飼育した。各群の動物は、糸挿入時、挿入後6,9,12週でブドウ糖負荷試験を行い、6,9,12週で各群5匹ずつ屠殺した。通法に従い臼歯部の近遠心方向の連続切片を作製し、HE染色を施してM_1とM_2の歯間部を組織学的に観察した。さらに、組織形態計測学的に、歯槽骨の高さを画像解析装置を使用して計測した。【結果】ブドウ糖負荷試験では、G群は、J群と比較して、有意に高い血糖値を示した。J-1,2,G-1群は、経時的な耐糖能の変化はみられなかった。しかし、G-2,3群は、シヨ糖投与後、経時的に耐糖能が悪化しており、G-2群よりG-3群のほうが耐糖能が悪かった。組織学的には、J群、G群は、ともに歯肉結合組織に軽度から中等度の炎症性細胞浸潤、経時的な歯槽骨の高さの減少が認められた。組織形態計測学的にM_1、M_2の長さに対する歯槽骨長比は、各群とも経時的に小さくなっていく傾向がみられ、G群では、G-1群、G-2群、G-3群の順で小さかった。【考察】GKラットの耐糖能を悪化させると、病理組織学的ならびに組織形態計測学的に歯周組織の破壊が促進されることが認められた。このことは、全身因子として糖尿病は歯周組織破壊に何らかの影響を与えている可能性が示唆された。さらに今後、ストレスの影響を加えて行く予定である。
KAKENHI-PROJECT-05771660
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05771660
極端環境を計測する小型慣性センシングデバイス
水晶の縦振動(内部歪み振動)を検出原理とした角速度センサを中心に、極めて高い加速度(>1000G)、角速度(10000deg/s)が印加される環境下で、正確に加速度・角速度を共に計測する慣性センシングデバイスおよびシステムを構築する。デバイス精密加工にはMEMS技術を用い、検出システムとしては早期にA/D変換を行い、ディジタル信号での信号処理を行うことによって安定で自由度の高いシステムを構築する。水晶の縦振動(内部歪み振動)を検出原理とした角速度センサを中心に、極めて高い加速度(>1000G)、角速度(10000deg/s)が印加される環境下で、正確に加速度・角速度を共に計測する慣性センシングデバイスおよびシステムを構築する。デバイス精密加工にはMEMS技術を用い、検出システムとしては早期にA/D変換を行い、ディジタル信号での信号処理を行うことによって安定で自由度の高いシステムを構築する。
KAKENHI-PROJECT-19H02575
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H02575
泌尿器癌細胞に対する細胞外基質の影響と細胞接着受容体の発現に関する研究
1.ヒト正常尿路上皮細胞及び泌尿器癌細胞株を含む様々な培養細胞の、各種細胞外基質上、あるいは基質内部への包埋培養法を確立した。さらに標本の固定法、切り出し法、染色の方法を含め光学顕微鏡、蛍光顕微鏡、電子顕微鏡による形態学的観察法を確立した。2.MTT法を応用することにより、細胞外基質を用いた培養系における細胞増殖能を定量化する方法を確立した。これによって細胞外基質の量的、質的な違いによる細胞の増殖能の変化を評価することが可能になった。3.ICAM-1、インテグリンファミリー群などの細胞接着分子に対するモノクローナル抗体を用いて、まず実際の泌尿器系腫瘍表面へのこれらの分子発現を、外科的に切除した標本上で検討した。さらに培養癌細胞株表面への発現をフローサイトメトリーならびに免疫組織化学的方法によって解析した。4.培養細胞よりmRNAを抽出し、RT-PCR法、northern blotting法を用いて、インテグリンファミリー群を含む様々な細胞接着分子の遺伝子レベルでの発現を検討する方法を確立した。5.上記の実績をふまえて、現在、各種細胞外基質成分あるいは細胞接着分子に対するモノクローナル抗体、細胞外基質の特定のドメインより得られる生理活性ペプチドなどを用いて細胞と細胞外基質の接触阻止試験を行い、細胞形態、増殖能に及ぼす影響を検討しつつある。更に今後は各種増殖因子、サイトカインの細胞増殖、細胞外基質産生調節に対する影響、増殖因子受容体、細胞接着分子の発現に及ぼす効果などについても総合的な検討を加えてゆく予定である。1.ヒト正常尿路上皮細胞及び泌尿器癌細胞株を含む様々な培養細胞の、各種細胞外基質上、あるいは基質内部への包埋培養法を確立した。さらに標本の固定法、切り出し法、染色の方法を含め光学顕微鏡、蛍光顕微鏡、電子顕微鏡による形態学的観察法を確立した。2.MTT法を応用することにより、細胞外基質を用いた培養系における細胞増殖能を定量化する方法を確立した。これによって細胞外基質の量的、質的な違いによる細胞の増殖能の変化を評価することが可能になった。3.ICAM-1、インテグリンファミリー群などの細胞接着分子に対するモノクローナル抗体を用いて、まず実際の泌尿器系腫瘍表面へのこれらの分子発現を、外科的に切除した標本上で検討した。さらに培養癌細胞株表面への発現をフローサイトメトリーならびに免疫組織化学的方法によって解析した。4.培養細胞よりmRNAを抽出し、RT-PCR法、northern blotting法を用いて、インテグリンファミリー群を含む様々な細胞接着分子の遺伝子レベルでの発現を検討する方法を確立した。5.上記の実績をふまえて、現在、各種細胞外基質成分あるいは細胞接着分子に対するモノクローナル抗体、細胞外基質の特定のドメインより得られる生理活性ペプチドなどを用いて細胞と細胞外基質の接触阻止試験を行い、細胞形態、増殖能に及ぼす影響を検討しつつある。更に今後は各種増殖因子、サイトカインの細胞増殖、細胞外基質産生調節に対する影響、増殖因子受容体、細胞接着分子の発現に及ぼす効果などについても総合的な検討を加えてゆく予定である。
KAKENHI-PROJECT-05671305
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情報物理学でひもとく生命の秩序と設計原理
本領域は、生命現象を分子レベルから定量的に計測する技術の発展と、非平衡系の統計力学・情報熱力学理論の深化を背景とした、両者の融合領域である。生命現象の理解という具体的な課題に対して「情報を力、エネルギーと同列に物理的対象として議論する新しい物理学」を構築することで、生物学と物理学の間の新たな学際領域を開拓する。この目的を達成するために、本総括班は、領域内での生物系の実験研究と物理系の理論研究の学際融合研究を推進する本領域は、生命現象を分子レベルから定量的に計測する技術の発展と、非平衡系の統計力学・情報熱力学理論の深化を背景とした、両者の融合領域である。生命現象の理解という具体的な課題に対して「情報を力、エネルギーと同列に物理的対象として議論する新しい物理学」を構築することで、生物学と物理学の間の新たな学際領域を開拓する。この目的を達成するために、本総括班は、領域内での生物系の実験研究と物理系の理論研究の学際融合研究を推進する
KAKENHI-ORGANIZER-19H05794
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腫瘍幹細胞に立脚した悪性リンパ腫の性格付けに関する解析
悪性リンパ腫において腫瘍幹細胞としての役割をもつ細胞を同定するためには,リンパ腫細胞からマーカーを利用してソートされた細胞をNOD/SCIDマウスに移植する必要がある.悪性リンパ腫の一組織型であるホジキンリンパ腫の細胞株において活性酸素のレベルが低い細胞が小型単核細胞群の一部にみられ,高い細胞は大型多核細胞群に多くみられた。これらの小型単核細胞は大型多核細胞に比べて腫瘍形成能が高いことがin vitrocolony形成能およびNOD/SCIDマウスへの移植により確認された.以上より悪性リンパ腫においても腫瘍内に腫瘍形成能を有する一群が存在することが示唆された.悪性リンパ腫において腫瘍幹細胞としての役割をもつ細胞を同定するためには,リンパ腫細胞からマーカーを利用してソートされた細胞をNOD/SCIDマウスに移植する必要がある.悪性リンパ腫の一組織型であるホジキンリンパ腫の細胞株において活性酸素のレベルが低い細胞が小型単核細胞群の一部にみられ,高い細胞は大型多核細胞群に多くみられた。これらの小型単核細胞は大型多核細胞に比べて腫瘍形成能が高いことがin vitrocolony形成能およびNOD/SCIDマウスへの移植により確認された.以上より悪性リンパ腫においても腫瘍内に腫瘍形成能を有する一群が存在することが示唆された.悪性リンパ腫において腫瘍幹細胞としての役割をもつ細胞を同定するためには,リンパ腫細胞からマーカーを利用してソートされた細胞をNOD/Scidマウスに移植する必要がある.そのためには腫瘍幹細胞マーカーを検索しなければならない.本年度は,腫瘍幹細胞が多く含まれていると考えられるside-populationをソートし,その画分に回高発現する遺伝子を調べることで腫瘍幹細胞マーカーを検討した.まずside-population画分を多く含む肺腺癌細胞株よりside-populationで高発現する遺伝子として同定されたNR0B1を用いて,その発現と予後との関係を肺腺癌臨床検体を用いて検討したところ,NR0B1を高発現する細胞を多く含む症例では予後不良であった.また,外陰部扁平上皮癌の腫瘍幹細胞のマーカーの一つとして発現が報告されているpodoplaninについて,食道扁平上皮癌の臨床検体を用いてその発現と予後との関係について検討したところ,podoplaninの発現が高い症例の方が,低い症例に比較し有意に予後不良であった.これらのことから腫瘍幹細胞の存在の多寡が予後を決定することが示唆された.次に悪性リンパ腫の一組織型であるホジキンリンパ腫の細胞株より,造血幹細胞や乳癌細胞のside-populationにおいて除去能が高い活性酸素をマーカーとして用いて検討した結果、活性酸素の発現が低い細胞が小型単核細胞群の一部にみられ.発現が高い細胞は大型多核細胞群に多くみられた。これらの小型単核細胞は大型多核細胞に比べて腫瘍形成能が高いことがin vitrocolony形成能およびNOD/Scidマウスへの移植により確認された.以上より悪性リンパ腫においても腫瘍内に腫瘍形成能を有する一群が存在することが示唆された.悪性リンパ腫において腫瘍幹細胞としての役割をもつ細胞を同定するためには,リンパ腫細胞からマーカーを利用してソートされた細胞をNOD/Scidマウスに移植する必要がある.そのためには腫瘍幹細胞マーカーを検索しなければならない.本年度は,まず子宮内膜癌細胞株について腫瘍幹細胞を多く含むとされるALDH1発現と増殖能や浸潤能との関係を検討したところ,ALDH1の発現が高い細胞群において低い細胞群と比較して増殖能や浸潤能が高く,薬剤抵抗性を示した.次に予後との関係を子宮内膜癌の臨床検体を用いて検討したところ,ALDH1を高発現する細胞を多く含む症例では予後不良であり,腫瘍幹細胞の存在の多寡が予後を決定することが示唆された.また,悪性リンパ腫の一組織型であるホジキンリンパ腫の細胞株より,造血幹細胞や乳癌細胞のside-populationにおいて除去能が高い活性酸素をマーカーとして用いて検討した結果,活性酸素の発現が低い細胞が小型単核細胞群の一部にみられ,発現が高い細胞は大型多核細胞群に多くみられた。これらの小型単核細胞は大型多核細胞に比べて腫瘍形成能が高いことがin vitrocolony形成能およびNOD/Scidマウスへの移植により確認された.さらにホジキンリンパ腫細胞株ではALDH1を発現する細胞群が一部にみられ,それらは活性酸素が低い群の細胞と同様に腫瘍形成能が高いことが確認された.以上より悪性リンパ腫においても腫瘍内に腫瘍形成能を有する一群が存在することが示唆された.
KAKENHI-PROJECT-21790350
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超音波画像を用いた大腸の可視化による新しい便秘ケアの構築
便秘は多くの人が抱える障害であり、適切な排便ケアのためには貯留便の評価が最も重要となる。そこで、超音波検査装置(エコー)を用いて、適切な排便ケア方法の確立を目的とした。対象者は慢性便秘の患者で、調査手順は排便状態と大腸のエコー画像を比較検討した。結果は便貯留と大腸ガスの区別と便秘を直腸性便秘又は結腸性便秘に区別することが可能であった。よって、便秘者にエコーを行うことで、適切な排便ケアを行うことが可能ではないかと考える。・便秘は小児から高齢者まで多くの人が抱える一般的な障害であるが,時として深刻な腸疾患を発症する原因ともなる.特に、介護を必要とする高齢者の便秘は、当事者だけでなく介護者にも大きな負担となっている。したがって,排便の適切な治療やケアが必要であり、そのためには便性状の評価が最も重要となる.しかし、腹部触診や問診ではその区別は困難であり、適切なケアを提供できていない現状がある。そこで、申請者は利便性と安全性を兼ね揃えた超音波検査装置(エコー)を用いて大腸を可視化することでこの問題の解決を目指した。本研究では、便秘患者を対象とした排便ケアにおいて、エコーを用いた適切な排便ケア方法の確立を目的とした。・調査方法:エコーを用いた大腸内容物のアセスメント方法の有効性を検証するためには、対照群を設定し前向きに検討する必要がある。さらに、エコー以外の要因が排便ケアと便秘へ及ぼす影響を排除するため、介入群と対照群はランダムに割り付ける必要がある。そこで、エコーによる排便ケアの変化とそれにともなう便秘日数の短縮、適切な排便、薬剤による排便ケアの減少を示すことを目的としたランダム化比較対照試験を実施している。・対象者:排便困難でRomeIIIによる機能性便秘と判断し排便ケア実施が決まった患者とした。・調査手順:問診(既往歴、排便の頻度、排便時の困難感と下痢症状の有無、および排便方法)及び排便状態(King's stool char)と大腸のエコー画像を比較検討している。エコーは排便ケアの翌日から便秘が改善するまで1日1回実施している。・便秘は小児から高齢者まで多くの人が抱える一般的な障害であるが,時として深刻な腸疾患を発症する原因ともなる.特に、介護を必要とする高齢者の便秘は、当事者だけでなく介護者にも大きな負担となっている。したがって,排便の適切な治療やケアが必要であり、そのためには貯留便の評価が最も重要となる.しかし、腹部触診や問診ではその区別は困難であり、適切なケアを提供できていない現状がある。そこで、申請者は利便性と安全性を兼ね揃えた超音波検査装置(エコー)を用いて大腸を可視化することでこの問題の解決を目指した。本研究では、便秘患者を対象とした排便ケアにおいて、エコーを用いた適切な排便ケア方法の確立を目的とした。・調査方法:エコー検査で大腸内容物を評価し、排便ケアにおけるエコー検査の有効性を検証するためには、前向き観察研究を実施した。・対象者:排便困難でRomeIIIによる機能性便秘と判断し排便ケア実施が決まった患者とした。・調査手順:問診(既往歴、排便の頻度、排便時の困難感と下痢症状の有無、および排便方法)及び排便状態(King's stool chart)と大腸のエコー画像を比較検討している。エコーは排便ケア実施の前日から便秘が改善するまで1日1回実施した(入院期間中:最大14日を限度とした)。・結果:便貯留と大腸ガスの区別は可能で、便秘に対しては直腸性便秘又は結腸性便秘に区別が可能であった。さらには、貯留した便の硬さと貯留部位が確認できた。よって、排便困難な患者にエコーを行うことで、適切な排便ケア(下剤、浣腸、摘便、坐薬)、便秘日数の短縮、薬剤の減少による排便を行うことが可能ではないかと考える。便秘は多くの人が抱える障害であり、適切な排便ケアのためには貯留便の評価が最も重要となる。そこで、超音波検査装置(エコー)を用いて、適切な排便ケア方法の確立を目的とした。対象者は慢性便秘の患者で、調査手順は排便状態と大腸のエコー画像を比較検討した。結果は便貯留と大腸ガスの区別と便秘を直腸性便秘又は結腸性便秘に区別することが可能であった。よって、便秘者にエコーを行うことで、適切な排便ケアを行うことが可能ではないかと考える。・本研究課題の当初研究目的の達成度は現時点で65%である。・本研究の目的は、エコー検査以外の要因が排便ケアと便秘へ及ぼす影響を排除するため、介入群と対照群はランダムに割り付ける必要がある。そこで、エコーによる排便ケアの変化とそれにともなう便秘日数の短縮、適切な排便、薬剤による排便ケアの減少を示すことを目的としたランダム化比較対照試験を実施している。現在、介入群と対照群のデータ収集のため、週に1名から2名の排便困難な患者に対してエコーを行っており、着実にデータ収集を実施している。・ただし、本研究は、排便困難なRomeIIIによる機能性便秘と判断し排便ケア実施が決まった患者を対象としており、研究実施前に患者又は家族からの承諾を得る必要がある。研究対象者の中には認知機能の低下があり意思決定が困難な患者も含まれており、家族から同意を得る前に排便ケアが行なわれ場合がある。
KAKENHI-PROJECT-26893099
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26893099
超音波画像を用いた大腸の可視化による新しい便秘ケアの構築
また、研究者が、排便ケアの翌日から便秘が改善するまで1日1回エコー検査を実施するが、患者の都合により継続的なエコー観察が困難な場合がある。・今後は、患者への十分な倫理的配慮を行いながら、エコーを用いた適切な排便ケア方法の確立を目指した更なる調査を行う予定である。27年度が最終年度であるため、記入しない。老年看護学超音波画像による排便ケアの適性や有効性の評価・対象:排便困難でRomeIIIによる機能性便秘と判断し排便ケア実施が決まった患者とする。・調査手順:問診(既往歴、排便の頻度、排便時の困難感と下痢症状の有無、および排便方法)及び排便状態(King's stool char)と大腸のエコー画像を比較検討している。エコーは排便ケアの翌日から便秘が改善するまで1日1回実施する。・排便ケアの適性や有効性の評価は、排便ケア実施後の排便状態から下剤又は浣腸を選択した排便ケア方法の適性と有効性を評価する。便秘症患者を対象に触診と聞き取り調査で推測される排便状態は、一般的に行われている看護アセスメントであるが、超音波画像を追加することで、ガス貯留か便塊かを区別することができ、より精度の高いアセスメントになると考える。そこで、排便ケアの前に超音波画像による評価を加えることが有益であると推測される。・研究が当初計画どおりに進まない時の対応:聞き取り調査及びエコー画像が計画通りに進まないときは、その時点までのデータを使用して研究を進める。又は、他の病院施設(金沢大学医学部付属病院、東京大学医学部附属病院、金沢市近郊の介護保険施設)での実施を依頼する。27年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-26893099
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ラノステロ-ルの生合成研究
1.まず高比放射活性の^3Hーオキシドスクアレンを化学合成し、閉環生成物であるラノステロ-ルの分離に逆相HPLCを導入することにより、簡便かつ高感度な生成物特異的アッッセイ法を確立した。2.コレスチラミン投与ラットの肝臓ミクロソ-ム画分に、ラノステロ-ル閉環活性を検出した。各種界面活性剤による可溶化を検討し、0.2%TritonXー100処理により効率良く可溶化することができた。また、可溶化酵素は、バッファ-に20%glycerol,1mM EDTAおよび1mM DTTを添加することにより比較的安定に取り扱えることを見出だした。3.ミクロソ-ム可溶化タンパクをHydroxylapatite,Isoelectric forcusing,Qーsepharose,高速ゲル濾過のカラムクロマトグラフィ-を組み合わせることにより、精製倍率1860倍、回収率28%でSDSーPAGE上単一なバンドとして精製することに成功した。4.精製酵素は、分子量75kDのサブユニットからなるhomodimerであり、等電点5.5,至適pH6.5ー8.0,基質に対するKm値55μMであった。アッセイバッファ-へのTritonXー100添加により約5倍活性化され、高塩濃度下で阻害を受けるなど、ブタ肝あるいは高等植物由来の閉環酵素とはかなり異なる性質を示した。5.精製酵素をLysーCで消化し、逆相HPLCにより2種のペプチドを単離した。アミノ酸配列分析の結果、このうちの1種ーAーHーEーFーLーRーLーSーQーVーTーDーNーNーPーDーYーQーKーはデ-タベ-スに見当たらないシ-クエンスであり、本酵素をコ-ドする遺伝子のクロ-ニングに際して用いるプロ-ブとして利用できる。以上のように、従来精製困難とされていたステロ-ル生合成における鍵酵素の精製に成功し、その性状を明らかにした。本研究の成果は、今後の活性部位探索研究を進める上で大きなステップとなるものである。1.まず高比放射活性の^3Hーオキシドスクアレンを化学合成し、閉環生成物であるラノステロ-ルの分離に逆相HPLCを導入することにより、簡便かつ高感度な生成物特異的アッッセイ法を確立した。2.コレスチラミン投与ラットの肝臓ミクロソ-ム画分に、ラノステロ-ル閉環活性を検出した。各種界面活性剤による可溶化を検討し、0.2%TritonXー100処理により効率良く可溶化することができた。また、可溶化酵素は、バッファ-に20%glycerol,1mM EDTAおよび1mM DTTを添加することにより比較的安定に取り扱えることを見出だした。3.ミクロソ-ム可溶化タンパクをHydroxylapatite,Isoelectric forcusing,Qーsepharose,高速ゲル濾過のカラムクロマトグラフィ-を組み合わせることにより、精製倍率1860倍、回収率28%でSDSーPAGE上単一なバンドとして精製することに成功した。4.精製酵素は、分子量75kDのサブユニットからなるhomodimerであり、等電点5.5,至適pH6.5ー8.0,基質に対するKm値55μMであった。アッセイバッファ-へのTritonXー100添加により約5倍活性化され、高塩濃度下で阻害を受けるなど、ブタ肝あるいは高等植物由来の閉環酵素とはかなり異なる性質を示した。5.精製酵素をLysーCで消化し、逆相HPLCにより2種のペプチドを単離した。アミノ酸配列分析の結果、このうちの1種ーAーHーEーFーLーRーLーSーQーVーTーDーNーNーPーDーYーQーKーはデ-タベ-スに見当たらないシ-クエンスであり、本酵素をコ-ドする遺伝子のクロ-ニングに際して用いるプロ-ブとして利用できる。以上のように、従来精製困難とされていたステロ-ル生合成における鍵酵素の精製に成功し、その性状を明らかにした。本研究の成果は、今後の活性部位探索研究を進める上で大きなステップとなるものである。
KAKENHI-PROJECT-03670992
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03670992
学術的文書作成のための文体差のある語の計量的分析
(1)「書き言葉的」と「話し言葉的」として示される語・表現をすでに約1,900語収集していたが,追加の文献調査を行った。現在,約2,500語。これについて,品詞の付与を行っている。語ではなく表現とすべきエントリーもある。それらは「品詞+品詞+品詞」や「連語(品詞&品詞&品詞)」といった形で記述している。また、特に長いものについては細かな分解を避けて、単に「名詞句」「動詞句」などとしている。テキストに書かれている品詞名と、実際の品詞名が異なる場合もあるが,誤りというよりは品詞判定のゆれの問題が出てくる。たとえば,「非常に」「絶対に」「同様に」などを副詞ととらえるか,ナ形容詞連用形ととらえるか,「更に」は接続詞ととらえるか,副詞ととらえるか,等々。(2) 2019年3月6日に研究打合せを行い,「白書・国会会議録を用いた話し言葉的な語と書き言葉的な語の抽出」「ベトナム人日本語学習者の卒業論文・修士論文の文末表現」「高校教科書で調査した文体差のある語の問題点」「大学生のアカデミックライティングにおける「話し言葉かもしれないと思う語」のアンケート」「日本語教育教科書で扱われている接続表現の調査分析」等について,議論した。文末表現に関し,特に,論文の指南書には「思う」の代わりに「思われる」や「考える」を使うとよいとするものがあるが,論文は自分の考えを書くものであるため,「思われる」「考える」も不要であるという点について確認,議論した。(3) 2019年3月22日に,早稲田大学にて開催された,第7回早稲田大学ライティング・フォーラムにて,「学術的文章作成時に留意すべき『話し言葉的な語』とは」(柏野和佳子)の講演を行った。今年度も,『現代日本語書き言葉均衡コーパス』のレジスタ別の頻度調査と分析,ベトナムの日本語学習者の論文や,学習者作文コーパス「なたね」による,頻度調査と分析等は予定通り進めることができている。しかしながら,文献調査を追加で行うこととしたため,『現代日本語書き言葉均衡コーパス』の発話アノテーション結果等との頻度調査が先延ばしになった。最終年度に実施する。(1)文献調査結果を利用しやすいのものにするよう,調査語の品詞情報の付与を仕上げる。(2)モニター公開のされた『日常会話コーパス』を利用し,頻度調査結果をデータベースに取り込み,データベースを完成させる。(3)調査・分析の過程で明らかになった文体差のある語の問題について学会発表を行う。(1)「書き言葉的」と「話し言葉的」として示される語・表現,約1,900語について,『現代日本語書き言葉均衡コーパス』のレジスタ別頻度一覧表を作成した。また,科学技術論文の頻度情報も付与した。これにより,文体差を客観的に確認できる資料を一つ得ることができた。(2)2017年6月2日にハノイ貿易大学にて開催された,国際シンポジウム『ビジネス日本語教育とグローバル人材育成』にて,「日本語教育における音声言語と文字言語」(星野和子),「ベトナム人日本語学習者の卒業論文・修士論文に見られる話し言葉的な副詞」(NGUYEN THI BICH HA)以上2件の口頭発表を行った。(3)2018年2月26日に研究打合せを行い,接続表現の『現代日本語書き言葉均衡コーパス』のレジスタ別使用傾向,日本語教育教科書での扱われ方,ベトナム人学習者の論文の使用傾向,日本語学習者コーパスの分析について,議論した。(4)2018年3月19日に国語研にて開催された,シンポジウム「日常会話コーパス」IIIにて,「フォーマルな話し言葉に現れやすい書き言葉的な語」(柏野和佳子)以上1件のポスター発表を行った。『現代日本語書き言葉均衡コーパス』のレジスタ別の頻度調査と分析,ベトナムの日本語学習者の論文や,学習者作文コーパス「なたね」による,頻度調査と分析等は予定通り進めることができている。しかしながら,当初予定していた,『現代日本語書き言葉均衡コーパス』の発話アノテーション結果,『名大会話コーパス』,『言語処理学会論文誌LaTeXコーパス』等による,頻度調査と分析が未着手である。順次取り組んでいく。(1)「書き言葉的」と「話し言葉的」として示される語・表現をすでに約1,900語収集していたが,追加の文献調査を行った。現在,約2,500語。これについて,品詞の付与を行っている。語ではなく表現とすべきエントリーもある。それらは「品詞+品詞+品詞」や「連語(品詞&品詞&品詞)」といった形で記述している。また、特に長いものについては細かな分解を避けて、単に「名詞句」「動詞句」などとしている。テキストに書かれている品詞名と、実際の品詞名が異なる場合もあるが,誤りというよりは品詞判定のゆれの問題が出てくる。たとえば,「非常に」「絶対に」「同様に」などを副詞ととらえるか,ナ形容詞連用形ととらえるか,「更に」は接続詞ととらえるか,副詞ととらえるか,等々。(2) 2019年3月6日に研究打合せを行い,「白書・国会会議録を用いた話し言葉的な語と書き言葉的な語の抽出」「ベトナム人日本語学習者の卒業論文・修士論文の文末表現」「高校教科書で調査した文体差のある語の問題点」
KAKENHI-PROJECT-17K02800
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学術的文書作成のための文体差のある語の計量的分析
「大学生のアカデミックライティングにおける「話し言葉かもしれないと思う語」のアンケート」「日本語教育教科書で扱われている接続表現の調査分析」等について,議論した。文末表現に関し,特に,論文の指南書には「思う」の代わりに「思われる」や「考える」を使うとよいとするものがあるが,論文は自分の考えを書くものであるため,「思われる」「考える」も不要であるという点について確認,議論した。(3) 2019年3月22日に,早稲田大学にて開催された,第7回早稲田大学ライティング・フォーラムにて,「学術的文章作成時に留意すべき『話し言葉的な語』とは」(柏野和佳子)の講演を行った。今年度も,『現代日本語書き言葉均衡コーパス』のレジスタ別の頻度調査と分析,ベトナムの日本語学習者の論文や,学習者作文コーパス「なたね」による,頻度調査と分析等は予定通り進めることができている。しかしながら,文献調査を追加で行うこととしたため,『現代日本語書き言葉均衡コーパス』の発話アノテーション結果等との頻度調査が先延ばしになった。最終年度に実施する。(1)科研費の前課題で行っていた文献調査から時間がたったため,日本語の作文技術に関する文献及び,書き言葉と話し言葉の相互関係に関する文献の再調査を行う。(2)『現代日本語書き言葉均衡コーパス』の発話アノテーション結果,『名大会話コーパス』,『言語処理学会論文誌LaTeXコーパス』や,所内で構築の進む『日常会話コーパス』などによる,頻度調査と分析を進める。(1)文献調査結果を利用しやすいのものにするよう,調査語の品詞情報の付与を仕上げる。(2)モニター公開のされた『日常会話コーパス』を利用し,頻度調査結果をデータベースに取り込み,データベースを完成させる。(3)調査・分析の過程で明らかになった文体差のある語の問題について学会発表を行う。当初購入を予定していたソフト類の購入が不要になったこと,今年度の成果発表には出張費が伴わなかったこと,予定していた役務の発注量が少なかったことなどによる。国際会議の発表の予算を計上していたが,実施しなかった。最終年度にベトナムにてワークショップを開催し,成果の公開と普及を広く行う予定でいる。
KAKENHI-PROJECT-17K02800
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涙液サイトカインと共焦点生体顕微鏡から考える角膜移植の新しい治療指針
今回の研究の意義は、角膜内皮移植術後の予後について涙液サイトカインの測定や共焦点生体顕微鏡といった新しい技術を用いて評価する事である。今回の研究にて、角膜内皮移植術後の患者26眼、水疱性角膜症の患者21眼、白内障手術予定の患者32眼の涙液と共焦点生体顕微鏡のサンプルを得ることができた。今後はこれらのサンプルの解析と結果を論文にまとめ、学会発表まで施行する予定である。平性29年度は必要な機器が納入されず、研究は進めれなかった。プロトコールの作成を終えて、検査機器が納入・実施できる体制が整ったため今後は対象患者をリクルートし、解析していく予定である。必要機器の納入が大幅に遅れたため今回の研究の意義は、角膜内皮移植術後の予後について涙液サイトカインの測定や共焦点生体顕微鏡といった新しい技術を用いて評価する事である。今回の研究にて、角膜内皮移植術後の患者26眼、水疱性角膜症の患者21眼、白内障手術予定の患者32眼の涙液と共焦点生体顕微鏡のサンプルを得ることができた。今後はこれらのサンプルの解析と結果を論文にまとめ、学会発表まで施行する予定である。今後、機器は納入されたので、対象患者をリクルートし、解析をしていきたい。必要機材の納入が遅れたため、そのレンタル費用ならびに、サンプル解析に関わる試薬などの購入は控えていたため
KAKENHI-PROJECT-17K16986
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日本語諸方言における中舌母音生成に関する通時論的研究
本研究においては、日本語諸方言における中舌母音生成に関して、研究代表者による調査資料が蓄積されている琉球諸方言を中心にして、主として以下の3点についで標記研究を遂行した。1)既存の音声資料の整理と音響分析的手法による分析2)新たな臨地調査による中舌方言資料の補完及び分析3)中舌母音生成に関する仮説作りと仮説の修正1)においては、「南琉球方言の中舌母音の音声実質」『音声研究4-1』(日本音声学会)に、「南琉球大神島方言の音対応と音変化」『岩手大学教育学部研究年報59-2』を発表した。2)に関して、平成11年度においては鹿児島県名瀬市における音韻体系調査およびDATによる良質のディジタル媒体録音を行った。平成12年度においては、沖縄県宮古郡伊良部町長浜および伊良部において音韻体系調査およびDATによる録音を、鹿児島県大島郡喜界町塩道等において音韻体系調査を行った。音声研究におけるマルチメディア媒体利用に関しては、「方言研究とマルチメディア」と題して日本音声学会300回例会において発表した。また、名瀬方言を中心に適宜音響分析による中舌母音の定量化を行っている。3)に関して、「日本語音韻史における琉球宮古方言」『日本語学18-5』を発表、その後の調査資料をもとに検討を継続している。舌先調音子音と結合するu母音の中舌化について、四つ仮名音声の消失過程と歴史的関係を有する可能性が喜界島調査によって明らかになった。また、青森の下北方言の歴史的資料であるタターリノフ『レキシコン』の検討から、東北地方の中舌母音が比較的新しい時代に生成されたものである可能性も明らかになってきた。本研究においては、日本語諸方言における中舌母音生成に関して、研究代表者による調査資料が蓄積されている琉球諸方言を中心にして、主として以下の3点についで標記研究を遂行した。1)既存の音声資料の整理と音響分析的手法による分析2)新たな臨地調査による中舌方言資料の補完及び分析3)中舌母音生成に関する仮説作りと仮説の修正1)においては、「南琉球方言の中舌母音の音声実質」『音声研究4-1』(日本音声学会)に、「南琉球大神島方言の音対応と音変化」『岩手大学教育学部研究年報59-2』を発表した。2)に関して、平成11年度においては鹿児島県名瀬市における音韻体系調査およびDATによる良質のディジタル媒体録音を行った。平成12年度においては、沖縄県宮古郡伊良部町長浜および伊良部において音韻体系調査およびDATによる録音を、鹿児島県大島郡喜界町塩道等において音韻体系調査を行った。音声研究におけるマルチメディア媒体利用に関しては、「方言研究とマルチメディア」と題して日本音声学会300回例会において発表した。また、名瀬方言を中心に適宜音響分析による中舌母音の定量化を行っている。3)に関して、「日本語音韻史における琉球宮古方言」『日本語学18-5』を発表、その後の調査資料をもとに検討を継続している。舌先調音子音と結合するu母音の中舌化について、四つ仮名音声の消失過程と歴史的関係を有する可能性が喜界島調査によって明らかになった。また、青森の下北方言の歴史的資料であるタターリノフ『レキシコン』の検討から、東北地方の中舌母音が比較的新しい時代に生成されたものである可能性も明らかになってきた。平成11年度は、中舌母音方言を中心とする日本語諸方言音韻体系の通時論的研究を推進するためには、以下の段階に沿った諸方言音韻データの収集・整理・分析を行った。1)既存の音声資料の整理及び音響分析手法による分析2)新たな臨地調査による上記資料の補完および分析3)仮説IIIIに照らした諸方言音韻体系間の通時的関係の把握と、必要に応じた仮説の修正。1)においては、研究代表者の保有する南琉球方言における中舌母音関連の音声資料を中心に、音対応の観点から中舌母音の通時的特性を定位づける単著「南琉球大神島方言の音対応と音変化」『岩手大学教育学部研究年報59-2』(1999)と、音響分析の手法を用いて中舌母音の通時的多様性を論じた共著「南琉球方言の中舌母音の音声実質」『音声研究4-1』(2000刊行予定)を執筆した。また、中舌母音を含めて方言音声研究における○ティメディア利用の緊急性について「方言研究とマルティメディア」と題して日本音声学会第300回例会で共同研究発表を行った。琉球方言の中舌母音関係資料については謝金を用いた資料整理を2月に集中的に行った。2)においては、琉球方言調査の豊富なキャリアを持つ大学教員3名を調査補助員として、特質的な中舌母音を有する鹿児島県名瀬市方言の臨地調査を11月に行った。併せて、調査時にDAT録音した音声資料をコンピュータ上でディジタル編集しCD化するための設備を整えた。3)については、本土方言における中舌母音と琉球方言における中舌母音の生成の歴史を統合的に説明する仮説を構築中である。本年度においては、平成11年度の実績を踏まえ下記の3点について標記研究を遂行した。1)既存の音声資料の整理と音響分析的手法による分析2)新たな臨地調査による中舌方言資料の補完及び分析3)中舌母音生成に関する仮説作りと仮説の修正
KAKENHI-PROJECT-11610549
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11610549
日本語諸方言における中舌母音生成に関する通時論的研究
1)においては、南琉球方言の中から中舌母音を有する八重山諸島新城下地島方言・宮古諸島大神島方言・宮古島狩俣方言を取り上げて、音響分析の手法を用いてそれらの中舌母音の音声実質を相対化した論考「南琉球方言の中舌母音の音声実質」を、日本音声学会の機関誌『音声研究4-1』に発表した。2)に関して、沖縄県宮古郡伊良部町長浜および伊良部において音韻体系調査およびDATによる録音を、また、鹿児島県大島郡喜界町塩道等において音韻体系調査を行った。このほか、岩手県内数地点において中舌母音関係の音韻体系調査を遂行した。これらの調査によって得られた音声資料は、CD-RWを用いてDATと同じディジタル媒本であるCD化を試行している。また、名瀬方言を中心に適宜音響分析による中舌母音の定量化を行った。3)に関して、研究開始当初の仮説を、その後の調査資料をもとに検討を継続した。ことに、舌先調音子音と結合するu母音の中舌化は、四つ仮名音声の消失過程と歴史的関係を有する可能性が喜界島調査によって明らかになった。また、青森の下北方言の歴史的資料であるタターリノフ『レキシコン』中に中舌母音の表記が舌先調音子音と結合する場合以外に見られないことから、東北地方の中舌母音が比較的新しい時代に生成されたものである可能性が見いだされた。
KAKENHI-PROJECT-11610549
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植物のストレス応答性受容体型キナーゼのシグナル伝達機構の解析
細胞膜は様々な外部環境因子感受の場である。乾燥・塩および低温などの水分ストレスに対する植物の耐性機構に関与する、細胞膜局在性の水分ストレス応答性受容体型キナーゼについて研究を行った。水分ストレス応答に重要な植物ホルモンであるアブシジン酸(ABA)誘導性シロイヌナズナ受容体型キナーゼRPK1を過剰発現する形質転換植物体は、ABAによる根の伸長抑制,気孔閉鎖等に対し高感受性を示し,さらに乾燥ストレスに対し強い耐性を示した。マイクロアレイ解析の結果, RPK1過剰発現体では,水分ストレス応答性遺伝子および活性酸素(ROS)応答性遺伝子の発現が上昇していた。さらに,RPK1過剰発現体はROS消去系酵素活性が上昇しており、活性酸素ストレスに対する耐性を示した。以上の結果はRPK1の高発現により、水分ストレスだけでなく、活性酸素ストレス耐性に関与するシグナル伝達経路が増強されたことを示唆している。また、RPK1のホモログ遺伝子であるRPK2は葯や花粉の分化発達に重要な因子であることが示され、マイクロアレイ解析の結果、様々な代謝経路やシグナル伝達制御因子の転写を制御することが明らかになった。以上のことから受容体型キナーゼRPK1およびRPK2はストレスシグナル伝達に関わる因子であるだけでなく、植物の生長分化を制御する重要な因子であることが示唆された。細胞膜は様々な外部環境因子感受の場である。乾燥・塩および低温などの水分ストレスに対する植物の耐性機構に関与する、細胞膜局在性の水分ストレス応答性受容体型キナーゼについて研究を行った。水分ストレス応答に重要な植物ホルモンであるアブシジン酸(ABA)誘導性シロイヌナズナ受容体型キナーゼRPK1を過剰発現する形質転換植物体は、ABAによる根の伸長抑制,気孔閉鎖等に対し高感受性を示し,さらに乾燥ストレスに対し強い耐性を示した。マイクロアレイ解析の結果, RPK1過剰発現体では,水分ストレス応答性遺伝子および活性酸素(ROS)応答性遺伝子の発現が上昇していた。さらに,RPK1過剰発現体はROS消去系酵素活性が上昇しており、活性酸素ストレスに対する耐性を示した。以上の結果はRPK1の高発現により、水分ストレスだけでなく、活性酸素ストレス耐性に関与するシグナル伝達経路が増強されたことを示唆している。また、RPK1のホモログ遺伝子であるRPK2は葯や花粉の分化発達に重要な因子であることが示され、マイクロアレイ解析の結果、様々な代謝経路やシグナル伝達制御因子の転写を制御することが明らかになった。以上のことから受容体型キナーゼRPK1およびRPK2はストレスシグナル伝達に関わる因子であるだけでなく、植物の生長分化を制御する重要な因子であることが示唆された。細胞膜は様々な外部環境因子感受の場である。これまで乾燥・塩および低温などの水分ストレスに対する植物の耐性機構を解明する為に、申請者らは細胞膜局在性の水分ストレス応答性受容体型キナーゼに着目し解析した。水分ストレス及びその応答に重要な植物ホルモンであるアブシジン酸(ABA)に誘導性を示す、シロイヌナズナ受容体型キナーゼRPK1は種子休眠、根の伸長成長、気孔閉鎖、遺伝子発現の調節等、様々なABA応答反応の制御を行うこと、およびRPK1が細胞膜上で機能する受容体タンパク質でるため、細胞膜でのABAシグナル伝達に重要な役割がもつことが示唆された。さらに、RPK1高発現体が水分ストレス耐性を示すことが明らかになった。一方で、RPK1のホモログ遺伝子であるRPK2は、欠失変異体が葯の形態異常による不稔性を示し、葯組織の分化同調性が欠如した。マイクロアレイ解析より多くの細胞壁形成関連酵素、糖および脂質代謝関連酵素およびストレスシグナル伝達関連因子遺伝子群の発現が抑制されることが明らかになった。さらにRPK2は側芽の分化発達に抑制的に働く可能性が示唆された。Rpk1rpk2二重変異体は胚生致死を示し、これらの受容体が胚の発達分化において細胞死を制御し、活性酸素種(ROS)の制御が関わることが示唆された。以上のことから、受容体型キナーゼRPK1およびRPK2はストレスシグナル伝達に関わる因子であるだけでなく、植物の生長分化を制御する重要な因子であることが示唆された。RPK1およびRPK2に結合する水分ストレスおよび分化生長を制御する新規のペプチドホルモン等によるシグナル伝達経路が存在することが考えられる。細胞膜は様々な外部環境因子感受の場である。これまで乾燥・塩および低温などの水分ストレスに対する植物の耐性機構を解明する為に、申請者らは細胞膜局在性の水分ストレス応答性受容体型キナーゼに着目し解析した。水分ストレス及びその応答に重要な植物ホルモンであるアブシジン酸(ABA)に誘導性を示す、シロイヌナズナ受容体型キナーゼReceptor-like Protein Kinasel,RPKlは,膜局在性の受容体型キナーゼであり、我々は欠失変異体rpkl-1,rpkl-2が,植物の水ストレス応答に重要な植物ホルモンであるアブシジン酸(ABA)に対し非感受性を示すことを明らかにした。RPKlは種子休眠、根の伸長成長、気孔閉鎖、一遺伝子発現の調節等、様々なABA応答反応の制御を行うこと、およびRPKlが細胞膜上で機能する受容体タンパク質でるため、細胞膜でのABAシグナル伝達に重要な役割がもつことが示唆された。シロイヌナズナのRPKlの高発現がシロイヌナズナに与える影響を解析するために,CaMv35Sプロモーター制御下でRPKlを過剰発現する形質転換植物体を作製した。
KAKENHI-PROJECT-19580121
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19580121
植物のストレス応答性受容体型キナーゼのシグナル伝達機構の解析
得られた植物体はABAによる根の伸長抑制、気孔閉鎖等に対しABA高感受性を示した。また,RPKl過剰発現植物体は乾燥ストレスに対し耐性を示すことが明らかになった。さらに、マイクロアレイ解析の結果,RPKl過剰発現体では,水分ストレス応答性遺伝子および活性酸素(ROS)生成系遺伝子の発現が誘導されており、ROS消去系酵素活性が上昇していた。RPKl過剰発現体は活性酸素ストレスに対する耐性を示した。以上の結果はRPKlの高発現により、水分ストレスだけでなく活性酸素ストレス耐性に関与するシグナル伝達経路が増強されたことを示唆している。RPKl-GFPの局在性の解析の結果,RPKlは通常の生育条件下では細胞膜に局在し,高浸透圧下では細胞膜および未知の顆粒状の細胞内小器官に局在がみられた。RPKlの局在する細胞膜の動態が浸透圧条件下で変動することにより、RPKlの機能が制御されることが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-19580121
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19580121
ワインバーグ・サラム模型におけるスファレロン励起
弱電磁相互作用を記述するワインバーグ・サラム模型によると、バリオン数とレプトン数保存則を破る遷移が原理的に起こり得る。しかし、この遷移の起きる確率は、地上の如何なる現象によっても測定できない程小さい。ところが、宇宙進化の過程で、弱い相互作用に特徴的なスケールが凝縮し始めた時に、この遷移は、バリオンをレプトンに変換したり、逆の変換を起こす形で実現し、重要な効果を生じたと推定されている。この効果は、宇宙のバリオン数の非対称性の起源を説明しようとする問題に深いつながりをもっている。バリオン数とレプトン数の和を緩和させる遷移は、スファレロンと呼ばれる不安定状態を経由して起きる。本研究の目的は、Phys.Rev.誌の二つの論文に発表した、スファレロンに関するわれわれの計算を推進することである。同時に、スファレロン過程と整合する宇宙のバリオン数の起源を解明することも目指している。本研究は、平成2年度から4年度までの間科学研究費を交付されたが、この間に得た主な成果は次の如くである。1.一般化されたLevinson定理を証明した。4)これによって、スファレロンの周りの場の揺らぎの離散的固有モードの数を知ることができ、ヒッグス粒子のいろいろな質量値に対してスファレロンの自由エネルギーを求める計算が、見通しの良いものになる。また、スファレロン解を与える方程式に起きる分岐現象を研究するときにも役立つ筈である。2.スファレロン過程とレプトン数を破る過程とが共謀して宇宙のバリオン数を零にしてしまう可能性を分析した結果、マヨナラ・ニュートリノの質量に対する制限を幾つか得た。2)、5)これらの制限は、標準模型の次にくると期待される素粒子模型7)と宇宙のバリオン数の起源についてのシナリオの両方に貴重なヒントを与える。以上の他に、スファレロン過程に伴ってフェルミオンのエネルギー準位が変動する様子を具体的に示したこと1)、スファレロンに似た配位を用いてボゾン星の構造を記述したこと3)、超対称性大統一理論に基づいた、宇宙のバリオンの起源についてシナリオを提案したこと6)、を本研究の成果として挙げることかできる。弱電磁相互作用を記述するワインバーグ・サラム模型によると、バリオン数とレプトン数保存則を破る遷移が原理的に起こり得る。しかし、この遷移の起きる確率は、地上の如何なる現象によっても測定できない程小さい。ところが、宇宙進化の過程で、弱い相互作用に特徴的なスケールが凝縮し始めた時に、この遷移は、バリオンをレプトンに変換したり、逆の変換を起こす形で実現し、重要な効果を生じたと推定されている。この効果は、宇宙のバリオン数の非対称性の起源を説明しようとする問題に深いつながりをもっている。バリオン数とレプトン数の和を緩和させる遷移は、スファレロンと呼ばれる不安定状態を経由して起きる。本研究の目的は、Phys.Rev.誌の二つの論文に発表した、スファレロンに関するわれわれの計算を推進することである。同時に、スファレロン過程と整合する宇宙のバリオン数の起源を解明することも目指している。本研究は、平成2年度から4年度までの間科学研究費を交付されたが、この間に得た主な成果は次の如くである。1.一般化されたLevinson定理を証明した。4)これによって、スファレロンの周りの場の揺らぎの離散的固有モードの数を知ることができ、ヒッグス粒子のいろいろな質量値に対してスファレロンの自由エネルギーを求める計算が、見通しの良いものになる。また、スファレロン解を与える方程式に起きる分岐現象を研究するときにも役立つ筈である。2.スファレロン過程とレプトン数を破る過程とが共謀して宇宙のバリオン数を零にしてしまう可能性を分析した結果、マヨナラ・ニュートリノの質量に対する制限を幾つか得た。2)、5)これらの制限は、標準模型の次にくると期待される素粒子模型7)と宇宙のバリオン数の起源についてのシナリオの両方に貴重なヒントを与える。以上の他に、スファレロン過程に伴ってフェルミオンのエネルギー準位が変動する様子を具体的に示したこと1)、スファレロンに似た配位を用いてボゾン星の構造を記述したこと3)、超対称性大統一理論に基づいた、宇宙のバリオンの起源についてシナリオを提案したこと6)、を本研究の成果として挙げることかできる。1.AkibaーYanagidaは、Physical Review誌に発表したAkibaーKikuchiーYanagidaの論文に基づいて、スファレロンの周りのエントロピ-の計算をする仕事を継続している。また、Levinsonの定理をつかって、スファレロンの周りの不安定な振動モ-ドの数を調べる方法を考案し、数値計算をおこなっている。2.AkibaーKikuchiーYanagidaは、スファレロン効果によってバリオン数が緩和する現象を分析し、Prog.Theor.Phys.の論文として発表した。その後RabiーMottolaが非平衡統計力学の線形応答理論をこの現象に応用したので、彼らの理論と我々の理論の間の関係を明らかにするため研究を進めている。3.FukugitaーYanagidaは、ある種のマヨラナ型相互作用の存在とスファレロン効果とが、宇宙にバリオン数の非対称性が存在する事実と矛盾しないことを要請すると、中性微子の質量の上限が得られることを示した。Physical Review誌に発表。
KAKENHI-PROJECT-02640210
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02640210
ワインバーグ・サラム模型におけるスファレロン励起
4.Akibaは、(1+3)次元量子場の自由度を(1+1)次元量子力学の自由度に制限する近似で、スファレロン効果と束縛条件つきトンネル効果との関係を分析し、モレキュ-ル型研究会「Sphaleronと宇宙のバリオン数」(京大、基研、1990年7月)で報告した。1.Akibaは,一般化したLevinsonの定理の証明を最終的にまとめた.これはスファレロンの周りの,離散スペクトルに属する場の揺らぎのモ-ドを確認するのに有効である.実際,それを|H|=0チャネル(H≡L+S+T)に応用した結果,スファレロンを不安定にするモ-ドと束縛状態(あるいは、励起状態)がそれぞれ一個ずつ存在することを確認できた.前者は既発表のAkibaーKikuchiーYanagidaの論文で求められていたが後者は今回始めて確認された.論文の投稿を準備中.2.今後のスファレロン遷移確率の計算を(1)上記定理を用いて、|H|=0以外のチャネルのスペクトル構造も調べる.(2)スファレロンの自由エネルギ-の対する連続スペクトルの寄与を計算するための新しい公式(未発表)を導いたが、それを基づく数値計算を行う.のステップで進める計画である.3.Yanagidaは,最近標準模型を越える理論として有望視されている超対称SU(5)理論におけるヒッグス場の性質を詳しく調べた.そして,それらのヒッグス場がバリオン数非保存に関与する可能性について調べている.4.Futamaseは,スファレロン解に類似する解析的構造をもつ,球対称重力場内での非可換ゲ-ジ場の解を研究し,それに基づいてボゾン星の可能性を調べた.結果は都立大で開かれた「重力波」研究会で報告した.1.秋葉は,スファレロンの周りの場の揺らぎについての研究を継続した.特に,離散スペクトルに属する揺らぎの固有モードの数を特定するのに有効な一般化化されたLevinson定理を導き,また,それを応用して興味ある結果を得た.研究成果はProg.Theor.Phys.誌に発表した(黒岩,柿崎と共著).また,国際シンポジウムISQM-TOKYO'92や日本物理学会1992年秋の分科会で発表した.3.柳田は,宇宙のバリオン数非対称性とスファレロン効果とから生じるニュートリノ質量に対する制限について,研究を継続した.特に,一般には強い制限が付くにも拘らず,17kev程度の比較的大きい質量をもつニュートリノが存在し得る可能性を指摘した.研究成果をPhys.Lett.B誌に発表した(G.Gelminiと共著).また,同様な観点からextennded gauge模型を分析し,模型の問題点を明らかにした(W.Buchmullerと共同研究,プレプリントDESY 92-172,Dec.1992).柳田は,また,超対称GUT模型に基づいて宇宙のバリオン数非対称性の起源を説明することを試みた(村山,鈴木,横山と共同研究,プレプリントTU-423,Nov.1992).
KAKENHI-PROJECT-02640210
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02640210
カスケード型環化反応を基盤とした多環式化合物の効率的合成法の開発とその応用
ワンポットで多段階の反応が準行する「カスケード型反応」は,省資源化へとつながるため,次世代の「環境調和型分子変換プロセスの開発」という観点からも注目されており,現在精力的に研究が行われている分野である.本研究課題の目的は,遷移金属触媒によって進行する反応を組み合わせ,多環式化合物の合成にも適用でき得る「カスケード型反応」の開発及びその応用研究である.本年度は特に,地球温暖化の抑制という観点からも興味深い,「二酸化炭素の固定化」を伴う環化-カルボキシル化反応の開発に焦点を当て研究を行ったところ,ニッケル触媒を用いると,エニンのアルケン上に電子求引性基を持たせた基質において環化-カルボキシル化反応が効率よく進行することを見出した.この環化-カルボキシル化反応は幅広い応用性を有し,pyrrolizidine, indolizidine,及びquinolizidine骨格の構築にも適用可能であった.更に,本環化-カルボキシル化反応を利用し,インドールアルカロイドの一種である(-)-corynantheidineの全合成にも成功した.自然界では植物のみが二酸化炭素を光合成によって消費しており,人類を含む他のすべての動物は呼吸により二酸化炭素を産出している.特に人類は,その社会活動・経済活動によってもより多くの二酸化炭素を産出しており,地球温暖化の抑制のためには二酸化炭素を消費するプロセスの確立が重要である.本研究では,ニッケル触媒を用いることにより二酸化炭素を消費しつつ有用な化合物の合成に成功したことになり,地球温暖化対策の第一ステップとしても意義深いと考える.申請者らはこれまでの研究において,Rh(I)錯体によるヒドロアシル化反応-環化異性化反応を組み合わせたカスケード型環化反応を開発し,本カスケード型反応を鍵工程とした天然物(±)-Epiglobulolの全合成にも成功している.しかし,本カスケード型環化反応が進行する基質は現在までのところ一例のみであり,基質一般性に関する知見が全く得られていない.そこで本年度は,様々な基質を用いた環化反応を検討し,環サイズの異なる多環式化合物の合成にも適用可能であるか検討した.その結果,6員環を組み込んだ基質においても本カスケード型環化反応は進行し,Guanacastepene類に見られる5-7-6の3環性骨格の構築にも適用可能であることが分かった.また,この反応系においては基質の側鎖の立体化学が重要であることも明らかとした.すなわち,6員環に接続しているアルデヒド部位とテトラエン部位がcisの関係である場合,反応は立体選択的に進行し,5-7-6の3環性化合物が得られるのに対し,transの関係にある場合は1段階目のヒドロアシル化の反応の際の化学選択性が低下し7員環ではなく5員環が生成され,その結果2段階目の環化異性化反応が進行せずに5-6の2環性化合物が生成してしまうことが明らかとなった.また,cisの関係にある基質も系内でtransに異性化し,収率の低下を招いていることが示唆された.そこで,cisの基質に対し異性化を防ぐ目的でMS4Aを添加して反応を行ったところ収率良く5-7-6の3環性化合物が得られることが分かった.Guanacastepene類は抗MRSA,抗VRSA,及び抗インフルエンザ活性を持つことが知られている天然物の一群であり,今後本カスケード型環化反応を用いたGuanacastepene類の全合成研究にも取り組んでいく予定である.ワンポットで多段階の反応が準行する「カスケード型反応」は,省資源化へとつながるため,次世代の「環境調和型分子変換プロセスの開発」という観点からも注目されており,現在精力的に研究が行われている分野である.本研究課題の目的は,遷移金属触媒によって進行する反応を組み合わせ,多環式化合物の合成にも適用でき得る「カスケード型反応」の開発及びその応用研究である.本年度は特に,地球温暖化の抑制という観点からも興味深い,「二酸化炭素の固定化」を伴う環化-カルボキシル化反応の開発に焦点を当て研究を行ったところ,ニッケル触媒を用いると,エニンのアルケン上に電子求引性基を持たせた基質において環化-カルボキシル化反応が効率よく進行することを見出した.この環化-カルボキシル化反応は幅広い応用性を有し,pyrrolizidine, indolizidine,及びquinolizidine骨格の構築にも適用可能であった.更に,本環化-カルボキシル化反応を利用し,インドールアルカロイドの一種である(-)-corynantheidineの全合成にも成功した.自然界では植物のみが二酸化炭素を光合成によって消費しており,人類を含む他のすべての動物は呼吸により二酸化炭素を産出している.特に人類は,その社会活動・経済活動によってもより多くの二酸化炭素を産出しており,地球温暖化の抑制のためには二酸化炭素を消費するプロセスの確立が重要である.本研究では,ニッケル触媒を用いることにより二酸化炭素を消費しつつ有用な化合物の合成に成功したことになり,地球温暖化対策の第一ステップとしても意義深いと考える.
KAKENHI-PROJECT-18032003
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18032003