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抗ペプチド抗体による花粉症の診断と減感作療法へ向けた基礎研究 | 本研究は花粉症のアレルゲンに対する生体の免疫応答を解析し、病態の予後予測可能な診断系を確立するとともに、ペプチドによる減感作療法への応用可能性について検討することを目的とした。平成18年度より引き続きSBP, Cry j1およびCry j2に対するIgG, IgE,IgM,IgAについて患者を追加しその血液を用いて抗体を検討した。その結果、患者の症状の度合いに伴って抗体比のパターンが得られることが確認された。同様にCry j1およびCry j2に由来する少なくとも84種類のペプチドを用いた抗体測定において、5種類のペプチドについて健常者(非花粉症患者)と花粉症患者との間に統計学的有意差を認めた。花粉症患者及び健常者(非花粉症患者)より末梢血を採血し、そのPBMCを分離し上記ペプチドの存在下で一定期間培養を行い、その培地中に産生されるサイトカインについて検討したが、変化は認められなかった。また、抗原+アジュバントにより一定期間ラットを免疫したが抗原特異的IgE抗体の産生を認めず、ペプチド投与における変化は陰性を示した。上記結果より、SBP,Cry j1およびCry j2、並びに健常者(非花粉症患者)を花粉症患者に抗体価の統計学的有意差を認めたペプチドに対する抗体を末梢血より測定することにより、花粉症の予後予測可能な診断系が確立できた。ペプチドによる減感作療法の可能性については、選択したペプチドでは低いと考えられた。花粉症は花粉によってい引き起こされるアレルギー症状で、くしゃみや鼻水、鼻づまりなどのアレルギー性鼻炎や目のかゆみ、流涙などのアレルギー性結膜炎が見られる。本研究では、花粉症のアレルゲン(主としてスギ花粉)に対する生体の免疫応答をペプチドレベルで解析し、病態の予後予測可能性について検討するとともにペプチドによる減感作療法にむけた基礎的研究を行うことを目的とした。まず、スギ花粉(Sugi Basic Protein)とその精製蛋白質Cry j 1及びCry j 2に対する抗体をスギ花粉患者及び健常者血清において検討した。それぞれの抗原に対するIgE抗体は患者が有意に高い傾向を示しRAST法による結果と相関した。IgAやIgGなどにっいては、必ずしも患者で高値を示すということではなく、健常者でも高値を示すものもあった。また、臨床症状と抗体の相関について検討した結果、IgEとIgAの比をとることが臨床症状と相関することを見出した。Cry j 1及びCry j 2についてアミノ酸15残基ごとのオーバーラップペプチドを合成し、それぞれに対する抗体を調べた結果、花粉症患者と健常者において挙動の異なる配列が存在することを見出した。HLA-Class I分子(主としてHLA-A2及びA24)に拘束性を有するペプチドについて、同様の検討を行ったが、抗体は検出されなかった。以上の結果から、花粉症患者と健常者において血液中の抗体の免疫バランスが異なること、また、抗体の挙動の異なるアミノ酸配列が存在することが示唆された。本研究は花粉症のアレルゲンに対する生体の免疫応答を解析し、病態の予後予測可能な診断系を確立するとともに、ペプチドによる減感作療法への応用可能性について検討することを目的とした。平成18年度より引き続きSBP, Cry j1およびCry j2に対するIgG, IgE,IgM,IgAについて患者を追加しその血液を用いて抗体を検討した。その結果、患者の症状の度合いに伴って抗体比のパターンが得られることが確認された。同様にCry j1およびCry j2に由来する少なくとも84種類のペプチドを用いた抗体測定において、5種類のペプチドについて健常者(非花粉症患者)と花粉症患者との間に統計学的有意差を認めた。花粉症患者及び健常者(非花粉症患者)より末梢血を採血し、そのPBMCを分離し上記ペプチドの存在下で一定期間培養を行い、その培地中に産生されるサイトカインについて検討したが、変化は認められなかった。また、抗原+アジュバントにより一定期間ラットを免疫したが抗原特異的IgE抗体の産生を認めず、ペプチド投与における変化は陰性を示した。上記結果より、SBP,Cry j1およびCry j2、並びに健常者(非花粉症患者)を花粉症患者に抗体価の統計学的有意差を認めたペプチドに対する抗体を末梢血より測定することにより、花粉症の予後予測可能な診断系が確立できた。ペプチドによる減感作療法の可能性については、選択したペプチドでは低いと考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-18689025 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18689025 |
明治後期における戦争画の移入と展開:トモエ会の活動を中心に | 20世紀初頭/明治時代後期において、戦争のイメージは重層的な要因で変容していった。まずは戦争そのものが20世紀の総力戦・大量死の様相へ移行し、それを報じる媒体では写真の使用が広がる。美術概念の浸透とともに芸術としての戦争画のあり方も変化していく。本研究はこうした背景のもと、19世紀から20世紀へと変容のさなかにある戦争画について、その西洋からの受容およびパノラマや水彩など横断的な展開を、洋画の第三の画派であるトモエ会の活動を中心に調査する。そのイメージがどのようなゆらぎをはらんで成立・展開し、そして忘却されていったのかを、作例の調査とともに考察する。20世紀初頭/明治時代後期において、戦争のイメージは重層的な要因で変容していった。まずは戦争そのものが20世紀の総力戦・大量死の様相へ移行し、それを報じる媒体では写真の使用が広がる。美術概念の浸透とともに芸術としての戦争画のあり方も変化していく。本研究はこうした背景のもと、19世紀から20世紀へと変容のさなかにある戦争画について、その西洋からの受容およびパノラマや水彩など横断的な展開を、洋画の第三の画派であるトモエ会の活動を中心に調査する。そのイメージがどのようなゆらぎをはらんで成立・展開し、そして忘却されていったのかを、作例の調査とともに考察する。 | KAKENHI-PROJECT-19K00181 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K00181 |
ルイ14世の戦争指導―フランス絶対王政論の再検討 | 本研究の目的は、スペイン継承戦争中の主要な戦闘の分析を通じて、戦争における作戦指導がどのようになされたのかという点を、とりわけルイ14世と将軍たちが果たした役割を中心に解明することである。この目的達成のために、フランスと日本で関連する史資料を網羅的に調査・収集した。そこから得られた知見は、国王のイニシアチブの重要性と、新貴族(法服貴族)の台頭下で影響力が低下したとされてきた旧貴族(帯剣貴族)が、戦争や政治において重要な役割を果たしたことであった。この知見は、従来の絶対王政像に再修正をもたらすものである。平成24年度は、7月26日から9月3日にかけて、フランス共和国パリ市に出張し、史料調査を実施した。調査を実施した機関と調査内容は以下の通りである。刊行図書を収蔵するフランス国立図書館ミッテラン館では、前年度に引き続き、絶対王政期の作戦指導に関する書籍を調査した。同リシュリュー館の西洋手稿史料部では、昨年の調査にもとづき、軍人や貴族が残した文書の内容を具体的に調べ、一部を収集した。フランス国立古文書館では、昨年収集できなかったものを収集した。また、8月初旬にリール市に赴き、ノール県文書館所蔵史料の調査を行った。日本国内では早稲田大学で『ガゼット』の記事を調査・収集した。また、フランスでの調査を踏まえて購入した書籍の内容を検討し、研究状況を把握した。上記の活動により、ある程度の関連史料を収集することができたとともに、王権による戦争指導の実態を解明するという、本研究の目的を達成するために必要な素材を集める見込みが立った。平成25年1月12日には、関西フランス史研究会(於京都大学)でルイ14世治世下のメダルに関する報告を行った。報告の主題は本研究の内容から若干それるが、報告に関連するかたちで、質疑応答のなかで、専門のフランス史研究者と本研究に関する意見交換を行うことができ、知見を得ることができた。また、平成25年3月2日には早稲田大学高等研究所主催のシンポジウム、「近世国家における武威の表象」で報告を行った。さらに、平成25年3月13日から15日にかけてポツダム大学で開催された軍事史の国際学会に参加し、各国の研究者達と意見を交換した。以上のように、本年度は、昨年からの史料収集に加え、さまざまな研究者との意見交換を行うことができ、研究の方向性をより明確にすることができた。平成25年度は、7月25日から8月26日にかけて、国立図書館(ミッテラン館・リシュリュー館・アルスナル館)、国立古文書館および外務省文書館で史料調査を実施した。特に昨年まで進捗状況に遅れが認められていた国立図書館所蔵手稿史料については、この調査により、昨年度までの不足分を補完することができた。三年間の調査を通じて得られた知見は、本研究開始当初の見通しの正しさを示していた。すなわち、戦争指導にかんしては、収集した史料より、ルイ14世は陸軍卿、財務総監、大貴族、軍司令官などの関係者達と緊密な連絡を取り、そこから生ずるさまざまな問題や当事者間の利害を調整する努力していたことが明らかとなった。また、実際の軍事面における軍隊の指揮官たちの活動を検討してみると、彼らは王権との協力や対立を経つつも、戦争の遂行において重要な役割を果たしたことが明らかとなった。従来の研究では、軍隊の指揮官である旧貴族(帯剣貴族)の影響力の低下と、これにかわり、ルイ14世期には政権の中枢を占めた新興社会層(法服貴族)の役割を強調し、両者の対立を重視する傾向があった。しかし、本研究ではむしろ、軍事問題への対処において両者の協調の側面が認められたのである。その意味で、本研究はこれまでの国制史研究に重要な修正を迫るものであり、研究成果の学術的意義は大きいと考えられる。これらの結果をうけ、9月22日に開催された「ヨーロッパ近世史研究会」第20回例会(於:駒澤大学)において、「近世国家と普遍君主ールイ14世のローマ」という報告を行い、専門家からの意見を得ることができた。今後は調査や意見交換で得られた知見をまとめて、成果を積極的に公表する。さらには、収集した史料の分析を続け、もうひとつの課題である事件としての「戦闘」や「戦争」が国制という「構造」にどのような影響を与えたのかという点を解明するする予定である。本研究の目的は、スペイン継承戦争中の主要な戦闘の分析を通じて、戦争における作戦指導がどのようになされたのかという点を、とりわけルイ14世と将軍たちが果たした役割を中心に解明することである。この目的達成のために、フランスと日本で関連する史資料を網羅的に調査・収集した。そこから得られた知見は、国王のイニシアチブの重要性と、新貴族(法服貴族)の台頭下で影響力が低下したとされてきた旧貴族(帯剣貴族)が、戦争や政治において重要な役割を果たしたことであった。この知見は、従来の絶対王政像に再修正をもたらすものである。平成23年度は、7月26日から8月31日にかけて、フランス共和国パリ市に出張し、史料調査を実施した。調査を実施した機関と調査内容は以下の通りである。フランス国立図書館:刊行図書を収蔵するミッテラン館で絶対王政期の作戦指導に関する書籍を調査した。その結果、必要と判断されるものについては、その場でのメモや複写の実施、現物の購入手続などを行った。 | KAKENHI-PROJECT-23520906 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23520906 |
ルイ14世の戦争指導―フランス絶対王政論の再検討 | また、リシュリュー館の西洋手稿史料部では、軍人や貴族が残した文書の収蔵状況を調査した。フランス国立古文書館:対象時期の財務総監関連文書をおもに調査し、必要なものについては、デジタルカメラで撮影して収集した。日本国内では上智大学等の大学図書館で所蔵されている関係図書の内容を確認するとともに、フランスでの調査を踏まえて購入した書籍の内容を検討し、研究状況を把握した。今年度は現存する史料やこれまでの研究状況を確認することができ、研究をうまく開始することができた。とりわけ、国立古文書館の公文書に対して、貴族などの私文書を所蔵する国立図書館手稿史料部所蔵の史料は、分類が複雑であり、関連史料の所在を把握するのがなかなか難しいのだが、今回、それなりの時間をかけて調査を行ったことにより、今後の研究に使用できるものを把握できたことは大きな成果であった。また、筆者と同じような問題関心で戦争指導の問題を扱った研究や、フランス防衛省の戦史研究機関が刊行している論文集など、最新の研究や日本では調査しづらい文献を、実物により確認できたことも非常に有意義であった。本年度の調査により、史料の残存状況や最新の研究状況を把握できたことは、本研究の立ち位置を定めるにあたって、非常に役立つであろう。史料収集の点でやや遅れが見られる。特に問題なのが、フランス国立図書館の西洋手稿史料部に所蔵されている史料で、昨年同様に調査がやや難航している。ここの史料は目録の整備が進んでおらず、また、貴族に関連する文書の全体像がわかりにくく、請求した史料で本研究の対象であるスペイン継承戦争期の戦争行動にかんするものを探査・収集することに予想以上の手間がかかっている。また、ここでの調査の遅れのためや、夏の休館期間との関係で、防衛省戦史室で直接史料を見て調査をすることができなかった。さらに、夏に所蔵状況を調査したノール県文書館では、史料の残存状況が良くなく、思ったような史料収集はできなかったので、地方文書館所蔵史料を利用する場合には、新たな地域を探す必要がある。ただ、予想していたような史料が存在しないなどの、致命的な問題は発生していないので、次年度の努力により、当初の予定どおりに史料収集を行うことは可能であると考えている。これに対して、二次文献の収集や分析は順調に進んでおり、当該時期の戦争指導についての、全般的な状況や、戦争に参加した貴族と王権との関係の解明はおおむねなされている。さらに、本年1月や3月の発表時やポツダムの国際学会でなされた意見交換により、本研究の方向性やその意義については、特に問題があるわけではないことが確認されている。この点からも、素材(史料)の収集が進めば、研究を当初の予定通りに終了させることは可能である。上述のとおり、史料状況や研究状況の把握は予定通りに進んでいる。今後の研究の方向性や具体的な研究内容への問題点も特に認められず、その意味では研究は順調に進展している。ただし、昨年のパリ市への出張では、国立図書館の手稿史料部での調査に予想以上の時間がかかっかことと、夏の休館期間との関係で、防衛省戦史室で直接史料を見て調査をすることができなかった。史料の内容は国立古文書館に所蔵されている、防衛省戦史室所蔵史料目録では確認しており、防衛省戦史室での作業はマイクロフィルムの複写を請求することが主なので、本研究に不可欠な部分については、平成24年度の夏の調査を待たずに、マイクロフィルムの複写を請求する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-23520906 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23520906 |
翻訳サイクルの広範に働くリボソームストーク蛋白質の多彩な分子機能 | 遺伝情報の翻訳反応(蛋白質合成)は、リボソームと様々な翻訳因子の相互作用を介して正確に進行する。リボソームを構成する蛋白質の一部である“ストーク蛋白質"は、この相互作用の効率と調節に関わることが知られているが、その詳細な分子機構は明確にされていない。本研究では、翻訳反応の材料となるアミノ酸をtRNAを介してリボソームにもたらす因子であるaEF1Aとストーク蛋白質間相互作用とその調節機構、さらに新規に見出された機能未知の因子aYchFとストーク蛋白質間の相互作用とその役割について解明し、これまで得られている知見と併せて、ストーク蛋白質の動的で多彩なはたらきの全貌を分子レベルで解明する。遺伝情報の翻訳反応(蛋白質合成)は、リボソームと様々な翻訳因子の相互作用を介して正確に進行する。リボソームを構成する蛋白質の一部である“ストーク蛋白質"は、この相互作用の効率と調節に関わることが知られているが、その詳細な分子機構は明確にされていない。本研究では、翻訳反応の材料となるアミノ酸をtRNAを介してリボソームにもたらす因子であるaEF1Aとストーク蛋白質間相互作用とその調節機構、さらに新規に見出された機能未知の因子aYchFとストーク蛋白質間の相互作用とその役割について解明し、これまで得られている知見と併せて、ストーク蛋白質の動的で多彩なはたらきの全貌を分子レベルで解明する。 | KAKENHI-PROJECT-19H03155 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H03155 |
環境政策実施原則の効率性と有効性についての研究 | 有効に機能する環境資源管理制度の原則として、従来、国際的な環境政策の原則として半ば経験的に採用されてきた「汚染者支払い原則(PPP)」、「拡大生産者責任(EPR)」等の環境政策実施原則は、制度としての有効性と財政的な実行可能性から検討した場合の環境資源管理制度と整合的であり、これらを基礎として具体的な環境政策の体系を構築する必要があることが明らかとなった。また、環境政策目標の社会的厚生最大化の観点からの効率性達成と同時に、生態学的な考慮から総合的な環境負荷の削減を促す、経済的な手段と直接的規制を組み合わせた政策統合が必要である。これらの理論的考察及び環境政策改革の必要性に関しては「循環型社会の実効性に向けて:日本の環境政策と環境資源管理制度」(藤堂,2005年)として発表した。さらに前提となる環境資源管理制度の必要性に関しては、環境効率性の限界と総量的観点からこれを検証し、交通部門からの環境汚染を事例にとり、「環境効率と環境資源管理制度」(藤堂,2006)において示した。一方、物質循環の持続可能性の観点から経済システムをいかに環境保全と両立させるかについては、F.ソディによる古典的な研究まで遡り、その意義を再評価する研究を「フレデリック・ソディの富の概念、価値及び資本の位置づけと、環境及び経済システムのエントロピー論的理解におけるその現在的意義」(藤堂,2006)において展開している。このほかに関連して地域における交通部門からの環境負荷の管理について、行政とも連携した具体的調査研究を行った。当該研究は、本年度において海外及び国内の環境政策、とりわけその費用支払いや制度設計の原則において、汚染者支払い原則(PPP)および拡張生産者責任原則(EPR)に基づく環境関連税制、持続可能な交通政策、再生可能エネルギー推進政策について調査及び分析を行った。とりわけ、ドイツ・オランダ・デンマークの欧州における環境政策の先進諸国において平成16年9月に渡航して調査を行い、環境関連税制改革(ETR)および持続可能な交通(EST)関連政策、再生可能エネルギーの補助政策等について資料収集、研究者との学術交流及び分析を行った。PPPやEPRは環境関連税制改革を中心としたこれら諸国の環境政策の中心的原則であるが、政策実施の実際は産業の競争力への配慮や所得分配上の争点を巡り既得権益を優先する立場からの抵抗も大きい。それゆえ、環境税制改革の導入時の税減免など、理論的な観点からは非効率な措置も伴っている。しかし、これら諸国では、数度の改革を経て環境政策実施原則に即した有効な環境資源管理制度に向け前進している事を把握した。また、環境関連税制改革において租税による誘因効果が期待される交通部門やエネルギー部門の環境負荷改善について、EST実現のための公共交通関連社会資本と制度の整備やエネルギー部門の実態についても調査分析した。これらの調査により経済的誘因措置を裏づける環境保全的な代替手段整備の必要性が明らかになった。一方、国内においてはESTの観点から新潟市の交通体系と環境負荷について調査し、環境保全型の社会資本整備施策について分析を行った。以上の研究成果については共著図書、栗原隆編『大学における共通知のありか』所収の拙稿「<環境>と<経済>」で述べると共に、『えんとろぴい』Vol.55所収のエントロピー学会第22回シンポジウム(平成16年11月)発表論文「新潟市の水循環と環境」の中でも論じた。平成17年度の当該研究「環境政策実施原則の効率性と有効性についての研究」においては、前年からの研究成果を踏まえ、環境政策と環境資源管理制度についての国内外における実態調査を継続し、より詳細な制度および政策的データ、経済データを収集し、また環境政策実施原則を効率的かつ有効に機能させるために必要な条件について、理論的考察を行った。なお、前年度の成果を反映した研究成果は以下である。藤堂史明「循環型社会の実効性に向けて-日本の環境政策と環境資源管理制度」『アジア太平洋環境の新視点』松原・丸山編,彩流社2005年藤堂史明「新潟市の水循環と環境」エントロピー学会誌「えんとろぴい」vol.552005年藤堂史明「<環境>と<経済>」栗原隆・濱口哲(編)『大学における共通知のありか』東北大学出版会2005年これらの成果を受け、平成17年度は、主要な調査対象地をドイツ及びシンガポールとし、地域における交通部門からの環境負荷の抑制と制御に着目し、これを効率的かつ有効に機能させるため、包括的な取り組みを行っている地域を中心に調査した。調査及び研究により、環境政策実施原則を効率的かつ有効に機能させるためには消費行動の誘導を含む、包括的な政策体系が必要であることが明らかになった。また、交通部門からの環境負荷の削減のためには環境的に持続可能な交通(Environmentally Sustainable Transport:EST)概念が重要であり、環境負荷の総量の制御には個々の排出源の効率性向上だけでなく、環境税等の包括的誘因と制度作りが必要であることが明らかとなった。平成17年度の研究成果を反映した業績は以下のとおりである。藤堂史明「エントロピー法則と経済学」環境経済・政策学会編『環境経済・政策学の基礎知識』有斐閣2006年(刊行予定)藤堂史明「環境効率と環境資源管理制度」新潟大学経済論集第80号2006年3月(刊行予定)藤堂史明「環境効率と環境資源管理制度」環境経済・政策学会2005年大会学会発表 | KAKENHI-PROJECT-16730124 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16730124 |
環境政策実施原則の効率性と有効性についての研究 | 2005年10月9日有効に機能する環境資源管理制度の原則として、従来、国際的な環境政策の原則として半ば経験的に採用されてきた「汚染者支払い原則(PPP)」、「拡大生産者責任(EPR)」等の環境政策実施原則は、制度としての有効性と財政的な実行可能性から検討した場合の環境資源管理制度と整合的であり、これらを基礎として具体的な環境政策の体系を構築する必要があることが明らかとなった。また、環境政策目標の社会的厚生最大化の観点からの効率性達成と同時に、生態学的な考慮から総合的な環境負荷の削減を促す、経済的な手段と直接的規制を組み合わせた政策統合が必要である。これらの理論的考察及び環境政策改革の必要性に関しては「循環型社会の実効性に向けて:日本の環境政策と環境資源管理制度」(藤堂,2005年)として発表した。さらに前提となる環境資源管理制度の必要性に関しては、環境効率性の限界と総量的観点からこれを検証し、交通部門からの環境汚染を事例にとり、「環境効率と環境資源管理制度」(藤堂,2006)において示した。一方、物質循環の持続可能性の観点から経済システムをいかに環境保全と両立させるかについては、F.ソディによる古典的な研究まで遡り、その意義を再評価する研究を「フレデリック・ソディの富の概念、価値及び資本の位置づけと、環境及び経済システムのエントロピー論的理解におけるその現在的意義」(藤堂,2006)において展開している。このほかに関連して地域における交通部門からの環境負荷の管理について、行政とも連携した具体的調査研究を行った。 | KAKENHI-PROJECT-16730124 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16730124 |
植物毛状根細胞培養による天然有用物質の生産とその分離・回収システムの確立 | 種々の植物より毛状根の誘導を試み,毛状根細胞培養に関する工学的観点からの検討を行った結果,以下のような知見を得た。1.ニンジン,西洋ワサビ,パックブン,赤ビ-トなどの植物体に<Agrobacterium>___ー<rhizogenes>___ーを感染させ,これらの植物からの毛状根の誘導に成功した。特にパックブン毛状根では,医療用酵素として有用なパ-オキシダ-ゼの活性が高く,親植物より約5倍高い酵素活性を示した。2.毛状根の先端部に想定した成長点の分枝回数,伸長速度および減衰速度等に基づいて,毛状根の増殖速度を表したところ,種々の毛状根の増殖経過を評価することが可能となった。また,培養中の電気伝導度測定により,毛状根の細胞量および培地中の主要無機イオン(K^+,NH_4^+,NO_3^-)の濃度のモニタリングが可能となった。3.パックブンおよび西洋ワサビから誘導した毛状根は,高いス-パ-オキシドジスムタ-ゼ(SOD)活性を有していた。パックブン毛状根の培養において窒素源の影響を考慮し,二段階培養を行った。すなわち,細胞増殖期は窒素源としてNO_3^-を含有する培地を用い,SOD生産期はNH_4^+を含む培地を用いた。この二段階培養システムでは,NO_3^-だけを窒素源として培養した場合よりも57倍高いSODの生産性が達成された。4.赤ビ-トより誘導された毛状根の培養において,培養中に酸素供給を制限することにより,著量の細胞内色素が培地中に分泌されることが分った。一時的な酸素飢餓期間を伴う反復回分培養により,全細胞内色素の約25%が培地中に生産された。さらに,培地中からの色素の回収を目的として種々の吸着担体を試験したところ,スチレンージビニルベンゼン系樹脂が適していることが分った。種々の植物より毛状根の誘導を試み,毛状根細胞培養に関する工学的観点からの検討を行った結果,以下のような知見を得た。1.ニンジン,西洋ワサビ,パックブン,赤ビ-トなどの植物体に<Agrobacterium>___ー<rhizogenes>___ーを感染させ,これらの植物からの毛状根の誘導に成功した。特にパックブン毛状根では,医療用酵素として有用なパ-オキシダ-ゼの活性が高く,親植物より約5倍高い酵素活性を示した。2.毛状根の先端部に想定した成長点の分枝回数,伸長速度および減衰速度等に基づいて,毛状根の増殖速度を表したところ,種々の毛状根の増殖経過を評価することが可能となった。また,培養中の電気伝導度測定により,毛状根の細胞量および培地中の主要無機イオン(K^+,NH_4^+,NO_3^-)の濃度のモニタリングが可能となった。3.パックブンおよび西洋ワサビから誘導した毛状根は,高いス-パ-オキシドジスムタ-ゼ(SOD)活性を有していた。パックブン毛状根の培養において窒素源の影響を考慮し,二段階培養を行った。すなわち,細胞増殖期は窒素源としてNO_3^-を含有する培地を用い,SOD生産期はNH_4^+を含む培地を用いた。この二段階培養システムでは,NO_3^-だけを窒素源として培養した場合よりも57倍高いSODの生産性が達成された。4.赤ビ-トより誘導された毛状根の培養において,培養中に酸素供給を制限することにより,著量の細胞内色素が培地中に分泌されることが分った。一時的な酸素飢餓期間を伴う反復回分培養により,全細胞内色素の約25%が培地中に生産された。さらに,培地中からの色素の回収を目的として種々の吸着担体を試験したところ,スチレンージビニルベンゼン系樹脂が適していることが分った。土壌細菌Agrobacterium rhizogenesは,植物細胞に感染して形質転換を引起し毛状根を誘発させる。毛状根は,通常の根組織とは異なり植物ホルモン無添加培地でも旺盛な増殖を示すと同時に,二次代謝産物含量が親植物の根と同じレベルであるという特賞を有している。本研究では,種々の植物より毛状根の誘導を試み,得られた毛状根の増殖特性の解析ならびに培養システムの構築など,培養工学的観点からの検討を行い,以下のような知見を得た。1.現在までに,ニンジン,西洋ワサビ,パックブン,ビ-トなどから毛状根の誘導に成功した。特にパックブンの毛状根では,医療用酵素として有用なパ-オキシダ-ゼの活性が高く,親植物より約5倍高い酵素活性を示した。また,ビ-ト毛状根でもベタシアニン系の赤色色素を親植物異常のレベルで含有することが認められた。今後,これら毛状根の培養条件等を詳しく検討する予定である。2.毛状根の育成速度式を提案した。すなわち,毛状根の先端部に想定した生長点の分枝回数,伸長速度および減衰度等に基づいて,`毛状根の増殖速度を表したところ,種々の毛状根培養の増殖経過を評価することが可能となった。また,毛状根の培養に際して認められる培地の電気伝導度低下は,培地中の主要無機イオン(カリウム,アンモニウム,硝酸)の消費の起因しており,電気伝導度の測定によりこれらのイオンのモニタリングが可能となった。3.毛状根の培養に適したバイオリアクタ-を種々検討したところ,タ-ビン型培養槽等で良好な培養成績が得られた。 | KAKENHI-PROJECT-01550763 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01550763 |
植物毛状根細胞培養による天然有用物質の生産とその分離・回収システムの確立 | さらに,毛状根の増殖速度は細胞濃度と酸素移動容量係数の比に比例することが認められ,効率的な毛状根培養を達成する上で,バイオリアクタ-の酸素移動容量係数が重要なパラメ-タであった。種々の植物より毛状根の誘導を試み,毛状根細胞培養に関する工学的観点からの検討を行った結果,以下のような知見を得た。1.パックブンおよび西洋ワサビから誘導した毛状根は,高いス-パ-オキシドジスムタ-ゼ(以下SODと略)活性を有していた。これら両毛状根の培養における窒素源の影響を検討したところ,培地中のNH_<4^+>は毛状根の増殖に対して阻害的に作用した。NH_<4^+>の阻害を非拮抗型の増殖速度式で表わして,分枝増殖モデルを適用したところ,毛状根の増殖経過をよく説明できた。窒素源としてNO_<3^->を含む培地中で毛状根の高い増殖速度が得られたが,NH_<4^+>の存在は毛状根中のSOD活性を向上させる効果を示した。そこで,パックブン毛状根を用いた二段階培養を行った。すなわち,細胞増殖期は窒素源としてNO_<3^->を含有する培地を用い,SOD生産期はNH_<4^+>を含む培地を用いた。この二段階培養システムでは,NO_<3^->を窒素源として培養した場合よりも57倍高いSODの生産性が達成された。2.赤ビ-トより誘導された毛状根細胞の培養において,その培養中に振盪を停止(酸素供給を制限)することにより,著量の細胞内色素(主にベタニンおよびブルガキサンチンーI)が培地中に分泌され,しかも毛状根細胞はその後も再増殖能を保持していることが分かった。毛状根の細胞増殖期と振盪停止による色素の分泌期を繰り返す反復回分培養を行ったところ,全細胞内色素の2025%が培地中に回収できた。また,培地中に分泌された色素成分は,毛状根や原植物の細胞中から得られるものと同一であることが確認された。さらに,培地中からの色素の分離・回収を目的として種々の吸着担体を試験したところ,スチレンージビニルベンゼン系樹脂が適していることが分かり,本樹脂カラムを組み込んだビ-ト毛状根のバイオリアクタ-システムを開発した。 | KAKENHI-PROJECT-01550763 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01550763 |
流星エコー観測に基づく極域中間圏界面領域の大気重力波特性の研究 | 流星の残す電離飛跡をターゲットとしたレーダー観測を主とした手法により、南北両極域の中間圏界面領域(高度90km前後)における大気の振る舞い、特に大気重力波と呼ばれる運動量やエネルギー輸送に重要な役割を果たす大気中の波動について研究を行った。重力波の水平伝播特性は平均流と相互作用を行いながら明瞭な季節および高度依存性を示すことが示された。同時に流星観測用ではないレーダーを流星観測に応用する技術を開発し、極域での流星観測の普及に努めた。大気中の運動量輸送の担い手として、特に中間圏から下部熱圏における平均風速場と温度場の決定に重要な役割を果たす大気重力波を、流星エコー観測により得られる水平風速と温度変動観測から解析する。そのために、以下の観測・研究計画により実施する。(1)北極域の流星レーダー観測:トロムソ(79N, 19E)、ロングイヤビエン(78N, 16E)、ベアアイランド(75N, 19E)は、ほぼ同一経度に沿った3点のチェーンとなっており、北極高緯度における重力波特性の緯度変化を明らかにする。(2)南極域の流星レーダー観測:デービス基地、昭和基地は同じ緯度円に存在し、これまで両基地に既設のMFレーダーを用いた平均流や潮汐波の比較研究が行われている。重力波についても経度変化の有無を明らかにし、平均場との関連を探る。(3)SuperDARNレーダーネットワークを利用した流星観測網構築:同レーダーは両極を取り巻く約20台ほどのレーダーからなる。本来は極域の電離層プラズマ対流観測を目的とするが、研究代表者の開発した流星エコー観測手法により中間圏領域の中性大気研究への積極利用を推進する。流星の残す電離飛跡をターゲットとしたレーダー観測を主とした手法により、南北両極域の中間圏界面領域(高度90km前後)における大気の振る舞い、特に大気重力波と呼ばれる運動量やエネルギー輸送に重要な役割を果たす大気中の波動について研究を行った。重力波の水平伝播特性は平均流と相互作用を行いながら明瞭な季節および高度依存性を示すことが示された。同時に流星観測用ではないレーダーを流星観測に応用する技術を開発し、極域での流星観測の普及に努めた。1北極域レーダー網構築トロムソ、ロングイヤービエン、ベアアイランドの北極高緯度域3点における流星レーダー観測を実施し、同時データ取得を行った。トロムソとロングイヤービエンの2点における風速変動および温度変動データから重力波の水平伝播特性の初期解析を行った。背景流との相互作用による季節変化と思われる重力波の顕著な伝播特性の変化が毎年繰り返し起こっている事を確認した。2南極域流星レーダー網構築申請者が昭和基地に赴いてレーダー小屋およびアンテナを設置し、レーダー本体設置の準備を完了した。レーダー本体は国内にて製造・調整を行ったが、南極観測計画のスケジュールの都合で本体の昭和基地設置には至らず、次年度(H20年度)で設置することとなった。3 SuperDARNレーダーを利用した観測網受信干渉計を併用した観測を昭和基地で開始し、高度情報をより正確に求める事が可能となった。これにより本研究に必要な高精度データを取得するための準備が整った。他国のレーダーも用いた干渉計法による初期結果を国際会議などで報告し、同流星エコー観測手法のSuperDARNレーダー網全体への普及に努めた。1北極域レーダー網構築トロムソ、ロングイヤービエン、ベアアイランドの北極高緯度域3点における流星レーダー観測を継続し、同時データを取得して解析を行った。重力波の伝播特性は3点で同じ季節変化の傾向を示したが、季節内の短期間の変動には緯度差に基づくと思われる違いが見られた。また重力波の周期により伝播方向特性に差があることも見出された。解析結果の一部は国内における招待講演において報告した。2南極域流星レーダー網構築申請者が昭和基地に赴いてレーダー本体を設置した。残念なことに、申請者には不可抗力の輸送時の事故により一部の部品が昭和基地に届かず観測開始には到らなかった。21年度末に再度部品を持ち込み、観測立ち上げを行う予定である。また南極Davis基地における流星レーダーデータを入手し、重力波の伝播特性の解析を行った。3 SuperDARNレーダーを利用した観測網受信干渉計を併用した観測を昭和基地で継続し、本研究に必要な高精度データを取得した。他国の同タイプレーダーを用いた観測手法開発成果を国際学術誌に投稿し掲載された。北欧の3流星レーダーについては、観測データをさらに蓄積して昨年度までの重力波の解析を継続するとともに、背景風の詳細解析を開始した。流星レーダーのエコー受信領域が水平方向に半径200-300kmの広がりを持つ事を利用して、南北1000km以上に広がる水平領域内の背景場の連続的な風速の変化を解析する手法を開発し、背景風の南北構造を示すことができた。従来は個々のレーダーからそれぞれ風速を推定していたが、3台を組み合わせて風速推定を行って地上観測からこのような水平広がりを解析した例は初めての試みである。重力波の伝播特性に大きな影響を与える背景流の構造を示すことができた意義は大きい。得られた成果は学会において報告した。南極においては、昭和基地において流星レーダー観測を立ち上げる予定であったが、南極観測隊の輸送事故により一部の部品が紛失し、昭和基地における2008年度末の観測立ち上げは行うことができなかった。2009年度の終わりに部品を再度持ち込んでの観測立ち上げを試みたが、一部不具合が発生し、残念ながら昭和基地における十分な観測は2009年度には実施できなかった。 | KAKENHI-PROJECT-19340143 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19340143 |
流星エコー観測に基づく極域中間圏界面領域の大気重力波特性の研究 | 一方、2010年度に大型大気レーダーが昭和基地に建設予定となった。このレーダーにより極めて高精度の流星エコー観測が可能となるため、それに向けた各種の準備作業を行った。北欧の3流星レーダーにおいては、さらに観測を継続してデータを蓄積して昨年度までの重力波の解析を継続した。流星レーダーから得られる温度情報を使い、中間圏界面領域の背景温度の季節変化を探り、大気循環や大気波動との関連について研究成果をまとめた[Dyrland et al., 2010]。また共同研究者とともに、流星レーダーにロケットやEISCATレーダーによる風や温度の同時観測を合わせた総合解析を行い、成層圏突然昇温現象の発生時における北極域の成層圏から熱圏領域にいたる広い高度領域の力学的なつながりについて得られた成果をまとめた[Kurihara et al., 2010]。南極域においては、昭和基地に大型大気レーダーを設置して初期観測を開始した。このレーダーは対流圏から熱圏まで広い高度領域が観測可能だが、本研究課題のターゲットとする流星エコー観測にも大変適しており、近い将来の流星観測のための準備を行った。また大気重力波の特性について、南極点における光学装置を用いた解析を行って季節的な振る舞いを探りその成果をまとめて発表した[S.Suzuki,投稿中]。昭和基地においても、中間圏界面領域の振る舞いをレーダーと光学装置を併用して観測し、オーロラの中性大気に与える影響について考察しその成果を発表した[H.Suzuki et al., Ann.Geo., 2010]。さらに昭和基地上空の中間圏界面領域温度の季節的振る舞いについても成果をまとめた[H.Suzuki et al., Earth Planets Space, 2010]。 | KAKENHI-PROJECT-19340143 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19340143 |
水素分子の電子・振動・回転状態を区別した中性粒子輸送コードの構築とその検証 | 分子活性化再結合(MAR)など、プラズマ中の水素分子の各種反応の速度係数は、分子の振動・回転状態に大きく依存する。このため、我々は水素分子の電子・振動・回転状態の計4133準位を区別した水素分子衝突輻射モデルを構築している。電子基底状態については、MARを含む電子・プロトン・水素原子・水素分子との衝突による励起・脱励起や電離・解離が考慮されている。平成30年度、まずこのコードの出力を整備して、中性粒子輸送コードの各種反応速度係数の入力テーブルを作成した。次に、核融合科学研究所LHDおよび我々のRF放電装置の中性粒子輸送コードに上記の反応速度係数の入力テーブルを組み込み、それぞれにおいてプラズマ中の水素分子振動・回転状態ポピュレーション分布の計算ができるようにした。LHDでは、ダイバータ部やダイバータレッグ部のプラズマの電子温度・密度の分布が必要になるため、核融合科学研究所にEMC3- EIRENEを用いた計算を依頼し、このデータをモデルに組み込んだ。RFプラズマでは、実験で水素原子・水素分子発光スペクトルを計測し、発光線強度から水素原子・分子の密度分布を算出した。また、水素原子バルマー発光線のスペクトルプロファイルを計測し、水素原子の速度分布を算出した。これらについて、中性粒子輸送コードで得られる原子・分子密度および水素原子速度分布との比較を始めた。どちらの比較においても、まだ初期段階ではあるが、計算モデル中で水素原子・分子が容器壁に衝突してプラズマに戻る際の扱いが計算結果に大きな影響を及ぼすことが明らかになりつつあり、今後この容器壁での粒子放出について、実験でのスペクトルが計算で再現されるようにモデルを整備していく。重水素分子のモデル構築および中性粒子同士の衝突の中性粒子輸送コードへの組み込みにも着手した。研究実績の概要の項目で示したとおり、水素分子の振動・回転状態を区別した中性粒子輸送コードの構築が一通り完了した。放電実験を行って得られた水素原子・分子の分光計測データ(水素原子・水素分子スペクトル強度および水素原子バルマー線プロファイル)と計算結果との比較を進めており、実験を再現する壁での原子・分子の扱いを調べている。重水素分子のモデル構築および中性粒子同士の衝突の中性粒子輸送コードへの組み込みにも着手している。研究は申請書に沿って順調に進展している。これまで研究が順調に進展していることから、申請書に記載の内容に沿って研究を進めていく予定である。研究実績の概要の項目で示したとおり、中性粒子輸送コード中の容器壁に粒子が衝突した際の扱いについて、実験で得られた原子・分子密度や原子の速度分布を計算が再現するようにコードの整備を進めていく。壁での扱いについては分子動力学による計算結果なども調査して有用なデータがあればコードに組み込んでいく。さらに、分子との衝突により分子の振動・回転励起をを引き起こすプラズマ中の電子・陽子等のエネルギー損失が計算できるようにする。中性粒子同士の衝突の中性粒子輸送コードへの組み込みも進めていく。また、収束計算による水素原子ライマン線の輻射輸送計算を中性粒子輸送コードにおいて行い、その影響を調べていく。これらと平行して、重水素分子のモデル構築を進めていく。分子活性化再結合(MAR)など、プラズマ中の水素分子の各種反応の速度係数は、分子の振動・回転状態に大きく依存する。このため、我々は水素分子の電子・振動・回転状態の計4133準位を区別した水素分子衝突輻射モデルを構築している。電子基底状態については、MARを含む電子・プロトン・水素原子・水素分子との衝突による励起・脱励起や電離・解離が考慮されている。平成30年度、まずこのコードの出力を整備して、中性粒子輸送コードの各種反応速度係数の入力テーブルを作成した。次に、核融合科学研究所LHDおよび我々のRF放電装置の中性粒子輸送コードに上記の反応速度係数の入力テーブルを組み込み、それぞれにおいてプラズマ中の水素分子振動・回転状態ポピュレーション分布の計算ができるようにした。LHDでは、ダイバータ部やダイバータレッグ部のプラズマの電子温度・密度の分布が必要になるため、核融合科学研究所にEMC3- EIRENEを用いた計算を依頼し、このデータをモデルに組み込んだ。RFプラズマでは、実験で水素原子・水素分子発光スペクトルを計測し、発光線強度から水素原子・分子の密度分布を算出した。また、水素原子バルマー発光線のスペクトルプロファイルを計測し、水素原子の速度分布を算出した。これらについて、中性粒子輸送コードで得られる原子・分子密度および水素原子速度分布との比較を始めた。どちらの比較においても、まだ初期段階ではあるが、計算モデル中で水素原子・分子が容器壁に衝突してプラズマに戻る際の扱いが計算結果に大きな影響を及ぼすことが明らかになりつつあり、今後この容器壁での粒子放出について、実験でのスペクトルが計算で再現されるようにモデルを整備していく。重水素分子のモデル構築および中性粒子同士の衝突の中性粒子輸送コードへの組み込みにも着手した。研究実績の概要の項目で示したとおり、水素分子の振動・回転状態を区別した中性粒子輸送コードの構築が一通り完了した。放電実験を行って得られた水素原子・分子の分光計測データ(水素原子・水素分子スペクトル強度および水素原子バルマー線プロファイル)と計算結果との比較を進めており、実験を再現する壁での原子・分子の扱いを調べている。重水素分子のモデル構築および中性粒子同士の衝突の中性粒子輸送コードへの組み込みにも着手している。研究は申請書に沿って順調に進展している。これまで研究が順調に進展していることから、申請書に記載の内容に沿って研究を進めていく予定である。 | KAKENHI-PROJECT-18K03581 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K03581 |
水素分子の電子・振動・回転状態を区別した中性粒子輸送コードの構築とその検証 | 研究実績の概要の項目で示したとおり、中性粒子輸送コード中の容器壁に粒子が衝突した際の扱いについて、実験で得られた原子・分子密度や原子の速度分布を計算が再現するようにコードの整備を進めていく。壁での扱いについては分子動力学による計算結果なども調査して有用なデータがあればコードに組み込んでいく。さらに、分子との衝突により分子の振動・回転励起をを引き起こすプラズマ中の電子・陽子等のエネルギー損失が計算できるようにする。中性粒子同士の衝突の中性粒子輸送コードへの組み込みも進めていく。また、収束計算による水素原子ライマン線の輻射輸送計算を中性粒子輸送コードにおいて行い、その影響を調べていく。これらと平行して、重水素分子のモデル構築を進めていく。 | KAKENHI-PROJECT-18K03581 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K03581 |
インクルーシブ教育が障害児の学力を向上させるのか:ネパールを事例とした実証分析 | 本研究は、インクルーシブ教育プログラムが健常者・障害者すべての児童の学力に与える影響を計量的に推定することを目的としている。インクルーシブ教育の普及は国連が2015年9月に発表した「持続可能な開発目標(SDGs)」にも明文化されたように、国際的な緊急課題となっている。しかしながら、途上国を対象とした実証研究は極めて少ない。そこで本研究ではネパールを対象として現地調査を行い、インクルーシブ教育が生徒に与える効果の実証研究を目的としている。本研究のための2度にわたる現地調査を、予定通りに完了した。本調査はネパールの盲人福祉協会協力のもと、ネパールの極西部開発地域(Far West Region)のダンガルヒ市の小学校にて、障害者および健常者の児童を対象として経済行動の測定を行った。これは差別意識を測定する際に用いられる経済実験の手法を取り入れることにより、差別行動を数値化し議論するためである。一度の調査で2回の測定を行い、1回目と2回目の間に障害者と健常者の交流機会を設けることで、インクルーシブな状況における行動変化を測定することを目的としている。また調査対象の学年では2019年度にインクルーシブ教育を実施していた。したがって、インクルーシブ教育実施前の状態を2018年3月に調査し、インクルーシブ教育実施後に再度同じ児童を対象として2019年2月に調査を行った。これにより、インクルーシブ教育による効果測定が可能となる、世界でも稀な調査成果を上げることができた。1回目の調査の分析結果は学会ならびに研究会で発表し、フィードバックを反映した分析結果で現在国際学術誌に投稿準備中である。2カ年におよぶデータを用いた分析結果は今夏を目処に分析結果を揃え、国際学会で発表する予定である。本研究は、インクルーシブ教育プログラムが健常者・障害者すべての児童の学力に与える影響を計量的に推定することを目的としている。インクルーシブ教育の普及は国連が2015年9月に発表した「持続可能な開発目標(SDGs)」にも明文化されたように、国際的な緊急課題となっている。しかしながら、途上国を対象とした実証研究は極めて少ない。そこで本研究ではネパールを対象として現地調査を行い、インクルーシブ教育が生徒に与える効果の実証研究を目的としている。本年度は現地調査のために、文献レビューおよび質問紙作成を進行中である。また、調査協力に関して2017年3月にネパールのカトマンズや地方の小中高等学校に赴き、学校の校長およびインクルーシブ教育関連の障害者団体と会合を重ね、調査協力の交渉を行った。さらに、現地調査のための倫理委員会審議の手続きを2017年2ー3月に終了した。これで、現地調査のための協力や事務的な手続きは本年度中におおよそ完了することができた。当初の計画では、本年度中に第一回調査まで終了している予定であったがやや遅れている。その理由は、ネパール大地震(2015年)の復興が予想以上に立ち遅れているため、安定した確実な調査を行えないと判断したためである。この状況に対して、今後は復興状況および現地の協力者と相談しながら、現地調査の時期を確かめつつ、さらに文献レビューおよび研究デザインの改善を進めていく予定である。インクルーシブ教育に関する文献レビューとして、教育分野のみならず、教育経済学・実験経済学の知見を大きく取り入れることを意識している。本研究はケーススタディとしての調査ではなく、統計的な分析を主目的としている。つまり現地調査では、健常者・障害者が共に学習する環境によって、彼らの学力などに与える影響を推定する。そのために、計量経済学で用いられるRandamaizerd Control Trialに近似した状況を作り出すための、厳密な方法論をレビューする必要があった。これは今なお進行中である。質問紙作成に関しては原案作成が完了し、筑波大学人間系倫理委員会から承諾を得ている。また、現地調査の対象学校として、ネパールのカトマンズを中心とした小中高等学校に赴き、各校の校長といった責任者と会合し、調査協力の交渉を行った。また、インクルーシブ教育推進に関連する現地の障害者団体とも協力交渉を行った。以上により、学校調査に関する現地の協力についてはほぼ得られた状況であり、現地調査の実現は可能となっている。当初の計画では第1回調査まで終了している予定であったが、2016年度中の実施は見送った。ネパール大震災(2015年)の復興状況が予想以上に進んでおらず、安定した調査を行うことが困難であると判断したためである。本研究は、インクルーシブ教育プログラムが健常者・障害者すべての児童の学力に与える影響を計量的に推定することを目的としている。インクルーシブ教育の普及は国連が2015年9月に発表した「持続可能な開発目標(SDGs)」にも明文化されたように、国際的な緊急課題となっている。しかしながら、途上国を対象とした実証研究は極めて少ない。そこで本研究ではネパールを対象として現地調査を行い、インクルーシブ教育が生徒に与える効果の実証研究を目的としている。本研究のための第1回調査を平成29年度に完了した。本調査はネパールの盲人福祉協会協力のもと、ネパールの極西部開発地域(Far West Region)のダンガルヒ市の小学校にて、障害者および健常者の児童を対象として経済行動の測定を行った。これは差別意識を測定する際に用いられる経済実験の手法を取り入れることにより、差別行動を数値化し議論するためである。 | KAKENHI-PROJECT-16K13356 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K13356 |
インクルーシブ教育が障害児の学力を向上させるのか:ネパールを事例とした実証分析 | 2回の調査を行い、1回目と2回目の間に障害者と健常者の交流機会を設けることで、インクルーシブな状況における行動変化を測定することを目的としている。また、1年後に再度同じ児童を対象として調査することで、2018年度のインクルーシブ教育の効果を測定する予定である。当初予定していた本調査の第1回を完了することができた。またこの調査により現地協力者とのコミュニケーション体制および、調査のための準備やノウハウを獲得するに至った。これにより、第2回以降の調査がスムースに行われることが予想される。本研究は、インクルーシブ教育プログラムが健常者・障害者すべての児童の学力に与える影響を計量的に推定することを目的としている。インクルーシブ教育の普及は国連が2015年9月に発表した「持続可能な開発目標(SDGs)」にも明文化されたように、国際的な緊急課題となっている。しかしながら、途上国を対象とした実証研究は極めて少ない。そこで本研究ではネパールを対象として現地調査を行い、インクルーシブ教育が生徒に与える効果の実証研究を目的としている。本研究のための2度にわたる現地調査を、予定通りに完了した。本調査はネパールの盲人福祉協会協力のもと、ネパールの極西部開発地域(Far West Region)のダンガルヒ市の小学校にて、障害者および健常者の児童を対象として経済行動の測定を行った。これは差別意識を測定する際に用いられる経済実験の手法を取り入れることにより、差別行動を数値化し議論するためである。一度の調査で2回の測定を行い、1回目と2回目の間に障害者と健常者の交流機会を設けることで、インクルーシブな状況における行動変化を測定することを目的としている。また調査対象の学年では2019年度にインクルーシブ教育を実施していた。したがって、インクルーシブ教育実施前の状態を2018年3月に調査し、インクルーシブ教育実施後に再度同じ児童を対象として2019年2月に調査を行った。これにより、インクルーシブ教育による効果測定が可能となる、世界でも稀な調査成果を上げることができた。1回目の調査の分析結果は学会ならびに研究会で発表し、フィードバックを反映した分析結果で現在国際学術誌に投稿準備中である。2カ年におよぶデータを用いた分析結果は今夏を目処に分析結果を揃え、国際学会で発表する予定である。本研究課題の方向性について今後の推進方策として、大幅な変更を加える予定は無い。第1回調査に関しては復興状況と見合わせながら、現地の協力者と協議を重ね、調査時期を可能なかぎり早く設定する予定である。本研究課題については2回以上の調査を目標としているため、本年度中に1度調査を実施することが望ましいためである。文献レビューおよび方法論については、確実な推定方法および調査状況の設定を実現するために、調査実施後までも進行していく。第1回調査の分析を行い、各研究集会や学会でフィードバックを得たのちに、論文として成果物を仕上げる。また、第1回調査を考察し、第2回調査を再度行うことでパネルデータを構築することができ、より深い議論が可能となる。第2回調査は2019年末を予定している。 | KAKENHI-PROJECT-16K13356 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K13356 |
分子疫学的手法を用いた前立腺癌の発生リスクに関与する因子の同定とその臨床応用 | 本研究では、androgen代謝および効果発現に影響を及ぼす遺伝子群や発癌物質の代謝に関連する遺伝子の中から、VDRgeneとCYP17geneの遺伝子多型に着目し解析した。適切なインフォームドコンセントのもと、200名以上の日本人前立腺癌患者および200名以上の前立腺肥大症(BPH)患者の血液からDNAを抽出した。また、コントロールとして前立腺疾患を有さない高齢男性約120名とランダムに選択した女性約200名を解析した。VDRgeneに関しては第8エクソンと第9イントロンに存在するBsmI多型、ApaI多型、TaqI多型に関してPCR-RFLP法にて解析し、CYP17geneに関してはプロモータ領域にあるMspA1多型に関して同様の解析を加えた。最終的には、遺伝子多型に依存したリスクをオッズ比および95%CIとして算出した。VDRgeneにおいては、BsmI多型のうち制限酵素切断アレルをホモ接合で持つ場合、高齢男性コントロールに比較してオッズ比として3.31(95%CI:2.05-5.32)のリスク上昇が認められた。またBPHに関してもオッズ比の有意な上昇(1.67,95%CI:1.07-2.61)が認められた。CYP17gene多型に関しては、MspAI非切断アレルを持つ場合に前立腺癌のリスク上昇が認められ、ホモ接合体の場合にはオッズ比として2.57(95%CI:1.39-4.79)、ヘテロ接合の場合には1.47(95%CI:0.84-2.54)と、アレルの量的効果が有意に認められた(p=0.003)。またこの傾向はBPHにおける検討でも同様に認められた。現在まで前立腺癌の発生と関連ある遺伝子多型としてはandrogen receptor geneを含め種々の遺伝子で検討が始まっている。しかし、今回我々が解析したVDRgene、CYP17geneにおいても様々に相反する結果が報告されており、現時点においては一定の見解は得られていない。この原因としてコントロール群の設定法や対照患者の背景因子の多様性が関与している可能性が挙げられる。今回の検討は、前立腺癌発生に関して環境要因による影響が少ないと考えられ、また遺伝的背景が比較的均一な日本人を対象としたことと、コントロール群として肥大症を除いた高齢男性群を設定したことに特徴がある。これらの工夫によって得られた本研究の解析結果は高い信頼性を有すと思われるが、他の人種での検討や多くの症例を集めた追試によって確認する必要があると思われる。本研究では、androgen代謝および効果発現に影響を及ぼす遺伝子群や発癌物質の代謝に関連する遺伝子の中から、VDRgeneとCYP17geneの遺伝子多型に着目し解析した。適切なインフォームドコンセントのもと、200名以上の日本人前立腺癌患者および200名以上の前立腺肥大症(BPH)患者の血液からDNAを抽出した。また、コントロールとして前立腺疾患を有さない高齢男性約120名とランダムに選択した女性約200名を解析した。VDRgeneに関しては第8エクソンと第9イントロンに存在するBsmI多型、ApaI多型、TaqI多型に関してPCR-RFLP法にて解析し、CYP17geneに関してはプロモータ領域にあるMspA1多型に関して同様の解析を加えた。最終的には、遺伝子多型に依存したリスクをオッズ比および95%CIとして算出した。VDRgeneにおいては、BsmI多型のうち制限酵素切断アレルをホモ接合で持つ場合、高齢男性コントロールに比較してオッズ比として3.31(95%CI:2.05-5.32)のリスク上昇が認められた。またBPHに関してもオッズ比の有意な上昇(1.67,95%CI:1.07-2.61)が認められた。CYP17gene多型に関しては、MspAI非切断アレルを持つ場合に前立腺癌のリスク上昇が認められ、ホモ接合体の場合にはオッズ比として2.57(95%CI:1.39-4.79)、ヘテロ接合の場合には1.47(95%CI:0.84-2.54)と、アレルの量的効果が有意に認められた(p=0.003)。またこの傾向はBPHにおける検討でも同様に認められた。現在まで前立腺癌の発生と関連ある遺伝子多型としてはandrogen receptor geneを含め種々の遺伝子で検討が始まっている。しかし、今回我々が解析したVDRgene、CYP17geneにおいても様々に相反する結果が報告されており、現時点においては一定の見解は得られていない。この原因としてコントロール群の設定法や対照患者の背景因子の多様性が関与している可能性が挙げられる。今回の検討は、前立腺癌発生に関して環境要因による影響が少ないと考えられ、また遺伝的背景が比較的均一な日本人を対象としたことと、コントロール群として肥大症を除いた高齢男性群を設定したことに特徴がある。これらの工夫によって得られた本研究の解析結果は高い信頼性を有すと思われるが、他の人種での検討や多くの症例を集めた追試によって確認する必要があると思われる。 | KAKENHI-PROJECT-12218220 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12218220 |
神経回路形成の後期過程における分子機構の解明 | 申請者らが単離同定した新規分泌因子SPIG1は、神経栄養因子の受容体の一つと結合することが明らかとなり、神経軸索側枝形成及びリファイメントの過程に関わる分子であることが示唆された。さらに、SPIG1がシナプス形成の過程に関与している可能性を調べた。その結果、視蓋の表層が薄くなっていることが観察されたが、シナプスの形態に異常は見られず、正しい層においてシナプスを形成していることが判明した。SPIG1は、神経軸索周辺の細胞外マトリックスの分解調節にも関与していると考えられる。申請者らが単離同定した新規分泌因子SPIG1は、神経栄養因子の受容体の一つと結合することが明らかとなり、神経軸索側枝形成及びリファイメントの過程に関わる分子であることが示唆された。さらに、SPIG1がシナプス形成の過程に関与している可能性を調べた。その結果、視蓋の表層が薄くなっていることが観察されたが、シナプスの形態に異常は見られず、正しい層においてシナプスを形成していることが判明した。SPIG1は、神経軸索周辺の細胞外マトリックスの分解調節にも関与していると考えられる。網膜視蓋投射マップが完成するには、網膜内領域特異化、軸索ガイダンスに引き続いて、軸索分枝形成、神経回路リファイメントの過程を必要とするが、後半の2つの過程に関わる分子基盤は十分明らかにされていない。これまでの我々の研究から、新規分泌因子SPIG1は、軸索の分枝形成および、リファイメントの過程に関わる分子であることが示唆された。しかし、その分子作用メカニズムは全く不明である。そこで、神経軸索の分枝形成、および神経回路リファイメントの分子機構をSPIG1を通してin vivoで明らかにすることを目的としている。分泌因子であるSPIG1は、細胞外の環境を何らかの形で修飾し、機能していると考えられる。その結合分子の候補として、神経栄養分子の受容体の一つを検討した。結果、免疫沈降法によりその結合が示唆された。また、免疫組織化学法により網膜内における受容体の発現分布を調べたところ、SPIG1が発現する層と一致することが明らかとなった。これらのことからSPIG1が結合分子の発現制御あるいは、活性制御に関わることが示される。現在、SPIG1の発現抑制時における結合分子の発現量の変化をin situハイブリダイゼーションにより調べている。また、網膜の分散培養系を用いて活性制御についても詳細に調べているところである。網膜視蓋投射マップが完成するには、網膜内領域特異化、軸索ガイダンスに引き続いて、軸索分枝形成、神経回路リファイメントの過程を必要とするが、後半の2つの過程に関わる分子基盤は十分明らかにされていない。これまでの我々の研究から、新規分泌因子のSPIG1は、軸索の分枝形成およびリファイメントの過程に関わる分子であることが示唆された。しかしながら、その分子作用メカニズムは全く不明である。本研究課題では、神経軸索の分枝形成、および神経回路リファイメントの分子機構をSPIG1を通してin vivoで明らかにすることを目的としている。前年度において、SPIG1の結合分子として神経栄養分子の受容体の一つが同定された。また、免疫組織化学法により網膜内における結合分子の発現分布を調べたところ、SPIG1が発現する層と一致することが明らかとなった。これらのことからSPIG1が結合分子の発現制御あるいは、活性制御に関わることが示唆される。今年度は、SPIG1の発現抑制時における結合分子の発現量変化をウェスタンブロッティング法を用いて解析した。結果、発現量の変化は見られなかった。また、網膜の分散培養系を用いて受容体の下流で働く細胞シグナル伝達分子への影響を検討した。さらに、SPIG1がシナプス形成の過程にも関与している可能性を検討するために、電子顕微鏡を用いてSPIG1の発現抑制時の視蓋の層構造およびシナプスの形態、シナプスを形成する層に異常がないかを調べた。その結果、視蓋の表層(SO層)が薄くなっていることが観察されたが、シナプスの形態に異常は見られず、正しい層においてシナプスを形成していることが判明した。分泌因子であるSPIG1が神経軸索周辺の細胞外マトリックスの分解調節に関与していることが示唆される。 | KAKENHI-PROJECT-21700364 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21700364 |
ウトパラデーヴァ著『主宰神の再認識詳注』の研究 | 本研究は、後代の註釈文献や写本欄外註に散在するウトパラデーヴァ著『主宰神の再認識詳注』断片を蒐集することを通じて、そのテキスト全体を可能な限り復元することを目的とする。2018年6月にフランス・パリ第三大学をへ渡航後、共同研究者であるイザベル・ラティエ博士と研究打合せを行い、写本情報や欄外註に含まれる『主宰神の再認識詳注』の情報を共有した。Chetan Pandey氏によって提供された写本から新たに回収された『主宰神の再認識詳注』断片は、認識章第八日課第10偈から行為章第三日課第八偈までを含む。この内、行為章第二日課についてはトレッラ博士(ローマ大学)が準備を進め、ラティエ博士は残りの箇所の校訂および翻訳を準備中である。研究代表者は、その他の写本欄外註から回収される断片を調査している。これまでに同定されていた断片については、当該部分に対応するアビナヴァグプタの註釈も読解しながら、校訂テキストと翻訳を作成したが、検討の余地を残している。また『主宰神の再認識反省的考察』に対する南インドの註釈『ヴヤーキャー』に含まれる断片の蒐集も行った。カシュミールのOriental Research Libraryに所蔵されている写本の入手に関して、研究協力者の小倉智史博士の協力を仰いだ。同じく研究協力者の石村克氏には、写本欄外註の蒐集およびそのテキスト入力について協力も得て、欄外註の蒐集を進めた。これらの研究成果の一部については、17th World Sanskrit Conferenceで研究発表を行い、パリ第三大学およびローマ大学で講演会を行った。『主宰神の再認識詳注』断片は、南インドの『ヴヤーキャー』にも僅かに含まれている。しかし、作者はその引用を『精神的認識主体の確立』と理解していることから、『主宰神の再認識詳注』が南インドへ伝承されたとは考えがたいことが確認された。写本欄外註の蒐集に関して、検討すべき写本がさらに増加したことや、虫食いや画像の不鮮明さなどの理由により想定以上の時間を要している。『主宰神の再認識詳注』断片の試訳については、ほぼ完了しているが、テキスト校訂に関しては、新たな写本に含まれる断片を検討する必要性が残されている。一方で、写本蒐集に関しては、現状その存在が知られている資料についてはほぼ入手できたと考えられる。新たに調査すべき写本資料も増えたことから、写本欄外註の蒐集完了が目下の急務である。したがって、写本欄外註の蒐集に関して、研究協力者を増員して対応する。蒐集された『主宰神の再認識詳注』断片の読解に関しては、定期的に情報共有しながら、進めていく。研究代表者は、すでに日本に帰国しているため、今後は長期休暇中に、フランスへ渡航あるいはラティエ博士やトレッラ博士を日本に招き研究会を開催することを計画している。内定年度:2017本研究は、後代の註釈文献や写本欄外註に散在するウトパラデーヴァ著『主宰神の再認識詳注』断片を蒐集することを通じて、そのテキスト全体を可能な限り復元することを目的とする。2018年6月にフランス・パリ第三大学をへ渡航後、共同研究者であるイザベル・ラティエ博士と研究打合せを行い、写本情報や欄外註に含まれる『主宰神の再認識詳注』の情報を共有した。Chetan Pandey氏によって提供された写本から新たに回収された『主宰神の再認識詳注』断片は、認識章第八日課第10偈から行為章第三日課第八偈までを含む。この内、行為章第二日課についてはトレッラ博士(ローマ大学)が準備を進め、ラティエ博士は残りの箇所の校訂および翻訳を準備中である。研究代表者は、その他の写本欄外註から回収される断片を調査している。これまでに同定されていた断片については、当該部分に対応するアビナヴァグプタの註釈も読解しながら、校訂テキストと翻訳を作成したが、検討の余地を残している。また『主宰神の再認識反省的考察』に対する南インドの註釈『ヴヤーキャー』に含まれる断片の蒐集も行った。カシュミールのOriental Research Libraryに所蔵されている写本の入手に関して、研究協力者の小倉智史博士の協力を仰いだ。同じく研究協力者の石村克氏には、写本欄外註の蒐集およびそのテキスト入力について協力も得て、欄外註の蒐集を進めた。これらの研究成果の一部については、17th World Sanskrit Conferenceで研究発表を行い、パリ第三大学およびローマ大学で講演会を行った。『主宰神の再認識詳注』断片は、南インドの『ヴヤーキャー』にも僅かに含まれている。しかし、作者はその引用を『精神的認識主体の確立』と理解していることから、『主宰神の再認識詳注』が南インドへ伝承されたとは考えがたいことが確認された。写本欄外註の蒐集に関して、検討すべき写本がさらに増加したことや、虫食いや画像の不鮮明さなどの理由により想定以上の時間を要している。『主宰神の再認識詳注』断片の試訳については、ほぼ完了しているが、テキスト校訂に関しては、新たな写本に含まれる断片を検討する必要性が残されている。一方で、写本蒐集に関しては、現状その存在が知られている資料についてはほぼ入手できたと考えられる。新たに調査すべき写本資料も増えたことから、写本欄外註の蒐集完了が目下の急務である。 | KAKENHI-PROJECT-17KK0037 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17KK0037 |
ウトパラデーヴァ著『主宰神の再認識詳注』の研究 | したがって、写本欄外註の蒐集に関して、研究協力者を増員して対応する。蒐集された『主宰神の再認識詳注』断片の読解に関しては、定期的に情報共有しながら、進めていく。研究代表者は、すでに日本に帰国しているため、今後は長期休暇中に、フランスへ渡航あるいはラティエ博士やトレッラ博士を日本に招き研究会を開催することを計画している。 | KAKENHI-PROJECT-17KK0037 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17KK0037 |
他者のまなざしの意識と自己評価との関連についての研究 | 〈目的〉「まなざし]とは、ある人がある対象に向けての実際の視覚行動に加えて、その底流をなす内面的な心の働きも含む、方向と力を持つベクトルである。また、自己評価は、発達的に自己を対象化することによって成立しているが、それは他者の視点から自分を見ることと関連している。本研究では、特定の他者のまなざしの意識について調査を行い、さらに自己評価との関連を明らかにすることで、自己へのまなざしと他者のまなざしの意識の関わりの構造的なモデルを提示することを目的とした。〈結果と考案〉他者のまなざしの意識については、発達的に高まること、男女差では女子がどの年齢でも高かった。また、他者からの賞賛や非難をどうに感じるかについては、年齢が上がるほど、恥ずかしさや当惑が増え、無関心や嫌悪といった否定的な感情も多くみられた。他者が自分をどのようにみているかの推定につては、年齢が上がるほど複雑になったが、自分が他者をどう見るかについては、余り違いはなかった。自己評価については、年齢とともに、自信、自己受容、優越・劣等感などに分化し、まなざしの意識は特に他者との比較によって生じる優越劣等感との関連が高いことが明らかになった。今後の課題としては、他者認知についての、発達的な検討と、一般的な他者からのまなざしをどのように内面化していくのかを明らかにすることが挙げられるだろう。〈目的〉「まなざし]とは、ある人がある対象に向けての実際の視覚行動に加えて、その底流をなす内面的な心の働きも含む、方向と力を持つベクトルである。また、自己評価は、発達的に自己を対象化することによって成立しているが、それは他者の視点から自分を見ることと関連している。本研究では、特定の他者のまなざしの意識について調査を行い、さらに自己評価との関連を明らかにすることで、自己へのまなざしと他者のまなざしの意識の関わりの構造的なモデルを提示することを目的とした。〈結果と考案〉他者のまなざしの意識については、発達的に高まること、男女差では女子がどの年齢でも高かった。また、他者からの賞賛や非難をどうに感じるかについては、年齢が上がるほど、恥ずかしさや当惑が増え、無関心や嫌悪といった否定的な感情も多くみられた。他者が自分をどのようにみているかの推定につては、年齢が上がるほど複雑になったが、自分が他者をどう見るかについては、余り違いはなかった。自己評価については、年齢とともに、自信、自己受容、優越・劣等感などに分化し、まなざしの意識は特に他者との比較によって生じる優越劣等感との関連が高いことが明らかになった。今後の課題としては、他者認知についての、発達的な検討と、一般的な他者からのまなざしをどのように内面化していくのかを明らかにすることが挙げられるだろう。 | KAKENHI-PROJECT-05851022 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05851022 |
新たな光機能を付与したペロブスカイト材料の開拓 | 本申請課題は、これまでの申請者の研究で浮上した鉛ハライドペロブスカイトのキャリア輸送特性や光物性に関する課題を明らかにするとともに、分光学的解析により新たな光キャリア輸送や機能性を実現できる材料の開拓を目指すものである。今年度はI.金属ハライドペロブスカイトの時間分解光電子分光による光キャリア輸送特性の評価とII.新たな光機能性材料の開発と光キャリア輸送の発現について検討を行った。以下に本研究成果の概要を示す。I.金属ハライドペロブスカイトの時間分解光電子分光による光キャリア輸送特性の評価(1)ペロブスカイト薄膜の形成は大きく気相と液相での結晶成長に分けられるが、これまでの物性評価には大半が気相成長によるものが使われてきた。本研究では太陽電池デバイスで用いられる溶液プロセスによる結晶薄膜の評価を行うべく、あらたな製膜プロセスと測定手法を検討し、光キャリア特性を観測することができた。(2)これまでに金属ハライドペロブスカイトのキャリア輸送は数多くの実験により評価されてきているが、特異的な物質の構造変化に起因した特性の違いを示すことが多い。本研究では新たな分析手法によりそれらを定量的に評価する事を目指し、各種測定条件の検討が行われた。II.新たな光機能性材料の開発と光キャリア輸送の発現(1)鉛ハライドペロブスカイトは薄膜太陽電池へと適応することによって非常に高い性能を示すことで知られているが一方で鉛の有毒性が問題となっている。本研究ではスズを用いた擬ペロブスカイト構造の鉛フリー有機無機ハイブリッド材料を溶液プロセスで合成し、色素増感太陽電池へと適応した。広帯域な波長範囲で光吸収を示すRu錯体増感色素を用いることによって1um帯の近赤外光で発電する全固体光電変換デバイスの実現に成功した。当初の計画において今年度は、ペロブスカイトの光キャリア特性の解析及び新たな光機能性材料の開発を行う予定であり、一部では予定よりも早く進められた課題もあるなど概ね計画以上の成果が得られた。光キャリア特性の解析については従来の研究とは異なる手法を用いた解析を行うため、研究期間内は各種測定条件出しがほとんどを占めた。一方、光キャリアのシグナルを捉えることができたため、今後様々な金属ハライドペロブスカイト薄膜についての調査が行われると考えられる。一方、新たな光機能性材料の開発については当初予定では各種イオンドーピングなどが予定されていたが、Bサイトカチオンである鉛に着目した金属置換を行った。新たに溶液プロセスで合成したスズを用いた有機無機ハイブリッドペロブスカイトは光キャリア輸送性能を示した。研究の進捗が予定よりも早かったため、当初予定では翌年度に実施予定であった太陽電池デバイスへの応用を行い、光電変換を示すことが明らかになった。また近赤外の増感色素と組み合わせることによって、可視領域から1um帯まで発電する全固体型太陽電池を実現できた。本研究課題の目標である、1金属ハライドペロブスカイトのキャリア輸送特性の評価と2新たな光機能性材料の開発については,概ね計画の通り進められている。今後は、各種の金属ハライドペロブスカイトを用い、光キャリア輸送特性の評価を行うと同時に、イオンドーピングや金属置換などにより、新たな光機能の発現を目指す予定である。今年度実施予定であるデバイスの作成については既に目標が達成されているため、デバイスの最適化による高性能化といった、より高い目標を設定し研究を進めて行く予定である。本申請課題は、これまでの申請者の研究で浮上した鉛ハライドペロブスカイトのキャリア輸送特性や光物性に関する課題を明らかにするとともに、分光学的解析により新たな光キャリア輸送や機能性を実現できる材料の開拓を目指すものである。今年度はI.金属ハライドペロブスカイトの時間分解光電子分光による光キャリア輸送特性の評価とII.新たな光機能性材料の開発と光キャリア輸送の発現について検討を行った。以下に本研究成果の概要を示す。I.金属ハライドペロブスカイトの時間分解光電子分光による光キャリア輸送特性の評価(1)ペロブスカイト薄膜の形成は大きく気相と液相での結晶成長に分けられるが、これまでの物性評価には大半が気相成長によるものが使われてきた。本研究では太陽電池デバイスで用いられる溶液プロセスによる結晶薄膜の評価を行うべく、あらたな製膜プロセスと測定手法を検討し、光キャリア特性を観測することができた。(2)これまでに金属ハライドペロブスカイトのキャリア輸送は数多くの実験により評価されてきているが、特異的な物質の構造変化に起因した特性の違いを示すことが多い。本研究では新たな分析手法によりそれらを定量的に評価する事を目指し、各種測定条件の検討が行われた。II.新たな光機能性材料の開発と光キャリア輸送の発現(1)鉛ハライドペロブスカイトは薄膜太陽電池へと適応することによって非常に高い性能を示すことで知られているが一方で鉛の有毒性が問題となっている。本研究ではスズを用いた擬ペロブスカイト構造の鉛フリー有機無機ハイブリッド材料を溶液プロセスで合成し、色素増感太陽電池へと適応した。広帯域な波長範囲で光吸収を示すRu錯体増感色素を用いることによって1um帯の近赤外光で発電する全固体光電変換デバイスの実現に成功した。当初の計画において今年度は、ペロブスカイトの光キャリア特性の解析及び新たな光機能性材料の開発を行う予定であり、一部では予定よりも早く進められた課題もあるなど概ね計画以上の成果が得られた。 | KAKENHI-PUBLICLY-18H04503 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-18H04503 |
新たな光機能を付与したペロブスカイト材料の開拓 | 光キャリア特性の解析については従来の研究とは異なる手法を用いた解析を行うため、研究期間内は各種測定条件出しがほとんどを占めた。一方、光キャリアのシグナルを捉えることができたため、今後様々な金属ハライドペロブスカイト薄膜についての調査が行われると考えられる。一方、新たな光機能性材料の開発については当初予定では各種イオンドーピングなどが予定されていたが、Bサイトカチオンである鉛に着目した金属置換を行った。新たに溶液プロセスで合成したスズを用いた有機無機ハイブリッドペロブスカイトは光キャリア輸送性能を示した。研究の進捗が予定よりも早かったため、当初予定では翌年度に実施予定であった太陽電池デバイスへの応用を行い、光電変換を示すことが明らかになった。また近赤外の増感色素と組み合わせることによって、可視領域から1um帯まで発電する全固体型太陽電池を実現できた。本研究課題の目標である、1金属ハライドペロブスカイトのキャリア輸送特性の評価と2新たな光機能性材料の開発については,概ね計画の通り進められている。今後は、各種の金属ハライドペロブスカイトを用い、光キャリア輸送特性の評価を行うと同時に、イオンドーピングや金属置換などにより、新たな光機能の発現を目指す予定である。今年度実施予定であるデバイスの作成については既に目標が達成されているため、デバイスの最適化による高性能化といった、より高い目標を設定し研究を進めて行く予定である。 | KAKENHI-PUBLICLY-18H04503 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-18H04503 |
「対テロ戦争」の時代のセキュリティ政策:日本・中東間の治安・安全保障協力 | 初年度である平成30年度においては、研究態勢の構築を進めた。本研究の解明しようとする対象は、2001年の9・11事件以後に、米国が「対テロ戦争」を外交・安全保障上の最大課題とする中で、日本と中東・イスラーム世界との間で進んだ治安と安全保障に関わる関係である。この対象に中東研究や国際政治の専門家と、日本政治史・行政学の研究者が協働して調査研究を行っていくために、初年度は日本と中東諸国の間のセキュリティ政策に関する関係を調査するための人的・物理的基盤を構築して行くことが初年度の課題だった。そのために、セキュリティ政策において世界をリードし、セキュリティ研究ににおいても指導的な研究者・研究機関を多く持つイスラエルとの関係を特に重視した。テルアビブ大学やヘブライ大学との研究協力の関係構築を進め、部局間協定や大学間協定を締結することで、日本とイスラエルの間のセキュリティをめぐる関係についての調査研究を恒常的に行える枠組みを構築しつつある。初年度においてはテルアビブ大との部局間協定の締結と、それに基づいて、本プロジェクトの研究代表者・分担者の3名による現地への渡航、外交当局へのヒアリングやセキュリティ研究に関わる機関との非公開セミナーの開催により、セキュリティ政策をめぐる日本と中東諸国の関係についての研究態勢は急速に整いつつある。また、イスラエルと並び、中東におけるセキュリティ政策の重要な当事国となり、日本との関係も深まっているトルコについてはイスラエルと同様に重点的に調査を行なった。トルコにおけるセキュリティに関する有力な研究機関との協力関係を進め、現地で開催されたセキュリティに関する会議に参加して報告し、日本のセキュリティ政策に関するパーセプションのフィードバックを得るなど、複数言語による研究成果の情報発信を通じた、さらなる情報の収集も進めることができた。第一に、本研究に関わる海外の調査拠点の形成が進んだことである。テルアビブ大モシェダヤン中東アフリカ研究センターとの関係構築により、日本とイスラエルのセキュリティ協力に関する調査の拠点形成が想定以上に急速に進んだ。モシェダヤン・センターと東大・先端研との共同ラウンドテーブルを初年度に開催し、研究プロジェクトのメンバーが渡航して報告を行い、今後の客員研究員としての受け入れによる拠点提供の確約も得られるなど、2001年以降のセキュリティ政策に関わる日本・イスラエル間の協力に関する調査研究の態勢を整えつつある。第二に、本研究の基礎となる、セキュリティ研究に関わる実務家と研究者の意見交換の場の設立が急速に進んだことである。「先端研セキュリティ・セミナー」と銘打った、専門家・実務家の意見交換の場を設定し平成30年度に10回開催することで、セキュリティ政策に関して日本側の関係者と、中東における関係者の双方から知見を収集する場を確立しようとしている。本プロジェクトの第二年度の令和元年度においては、初年度に構築した、中東諸国との研究協力や、セキュリティをめぐる日本の実務家と研究者の協議の場を活用し、非公開・公開の研究会やヒアリングの場を多く設け、2001年9・11事件以来の国際安全保障に関する日本の関わりと、現地諸国の動きとの関係を追究していく。第二年度においては中東諸国のセキュリティ研究の専門家、有力な実務家の日本への招聘も行って、日本のセキュリティ専門家との意見交換の場も設け、セキュリティ政策をめぐる国際関係の実態把握に努めたい。研究成果は日本語の媒体だけでなく、英語やアラビア語等、国際共通語や、中東現地諸国の言語による発信も交えて、日本と中東のセキュリティ政策をめぐる関係について、現地からのフィードバックを得ることも考慮する。秘匿性が高いセキュリティ政策に関する知見を集約するために、積極的な情報発信を通じて、当事者を含む各国の担当者からの情報収集を進める、積極的な調査手法を本プロジェクトでは開拓・実践していく。初年度である平成30年度においては、研究態勢の構築を進めた。本研究の解明しようとする対象は、2001年の9・11事件以後に、米国が「対テロ戦争」を外交・安全保障上の最大課題とする中で、日本と中東・イスラーム世界との間で進んだ治安と安全保障に関わる関係である。この対象に中東研究や国際政治の専門家と、日本政治史・行政学の研究者が協働して調査研究を行っていくために、初年度は日本と中東諸国の間のセキュリティ政策に関する関係を調査するための人的・物理的基盤を構築して行くことが初年度の課題だった。そのために、セキュリティ政策において世界をリードし、セキュリティ研究ににおいても指導的な研究者・研究機関を多く持つイスラエルとの関係を特に重視した。テルアビブ大学やヘブライ大学との研究協力の関係構築を進め、部局間協定や大学間協定を締結することで、日本とイスラエルの間のセキュリティをめぐる関係についての調査研究を恒常的に行える枠組みを構築しつつある。初年度においてはテルアビブ大との部局間協定の締結と、それに基づいて、本プロジェクトの研究代表者・分担者の3名による現地への渡航、外交当局へのヒアリングやセキュリティ研究に関わる機関との非公開セミナーの開催により、セキュリティ政策をめぐる日本と中東諸国の関係についての研究態勢は急速に整いつつある。また、イスラエルと並び、中東におけるセキュリティ政策の重要な当事国となり、日本との関係も深まっているトルコについてはイスラエルと同様に重点的に調査を行なった。トルコにおけるセキュリティに関する有力な研究機関との協力関係を進め、現地で開催されたセキュリティに関する会議に参加して報告し、日本のセキュリティ政策に関するパーセプションのフィードバックを得るなど、複数言語による研究成果の情報発信を通じた、さらなる情報の収集も進めることができた。第一に、本研究に関わる海外の調査拠点の形成が進んだことである。テルアビブ大モシェダヤン中東アフリカ研究センターとの関係構築により、日本とイスラエルのセキュリティ協力に関する調査の拠点形成が想定以上に急速に進んだ。 | KAKENHI-PROJECT-18H00822 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H00822 |
「対テロ戦争」の時代のセキュリティ政策:日本・中東間の治安・安全保障協力 | モシェダヤン・センターと東大・先端研との共同ラウンドテーブルを初年度に開催し、研究プロジェクトのメンバーが渡航して報告を行い、今後の客員研究員としての受け入れによる拠点提供の確約も得られるなど、2001年以降のセキュリティ政策に関わる日本・イスラエル間の協力に関する調査研究の態勢を整えつつある。第二に、本研究の基礎となる、セキュリティ研究に関わる実務家と研究者の意見交換の場の設立が急速に進んだことである。「先端研セキュリティ・セミナー」と銘打った、専門家・実務家の意見交換の場を設定し平成30年度に10回開催することで、セキュリティ政策に関して日本側の関係者と、中東における関係者の双方から知見を収集する場を確立しようとしている。本プロジェクトの第二年度の令和元年度においては、初年度に構築した、中東諸国との研究協力や、セキュリティをめぐる日本の実務家と研究者の協議の場を活用し、非公開・公開の研究会やヒアリングの場を多く設け、2001年9・11事件以来の国際安全保障に関する日本の関わりと、現地諸国の動きとの関係を追究していく。第二年度においては中東諸国のセキュリティ研究の専門家、有力な実務家の日本への招聘も行って、日本のセキュリティ専門家との意見交換の場も設け、セキュリティ政策をめぐる国際関係の実態把握に努めたい。研究成果は日本語の媒体だけでなく、英語やアラビア語等、国際共通語や、中東現地諸国の言語による発信も交えて、日本と中東のセキュリティ政策をめぐる関係について、現地からのフィードバックを得ることも考慮する。秘匿性が高いセキュリティ政策に関する知見を集約するために、積極的な情報発信を通じて、当事者を含む各国の担当者からの情報収集を進める、積極的な調査手法を本プロジェクトでは開拓・実践していく。 | KAKENHI-PROJECT-18H00822 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H00822 |
患者iPS細胞由来視細胞標識による網膜色素変性症疾患メカニズムの解析 | 本研究では,これまでに既に作製された網膜色素変性症(RP)患者由来iPS細胞(RP1,RP9,PRPH2,RHO:Jin ZB et al., 2011;RHO#5, RHOmut-induced: Yoshida T et al., 2014)を使用した。これらは理化学研究所バイオリソースセンターに供与申請行い,慶應義塾大学の倫理委員会の承認後に入手することができた。得られたRPのiPS細胞のライン(59M8(RHO_562G>A変異),K10M5(RP9_410A>T変異),K11PD17(RP9_410A>T変異),K21S4(RP1_2162insC変異),K31M28(RHO_520G>A変異, PRPF31_613_615delTAC変異),RHO#5(RHO_541G>A変異, RHOmut-induced(RHO_541G>A変異)のゲノムを抽出しシークエンスでヘテロの変異を確認した。これらのラインから分化させた桿体視細胞を選択的に標識するために、CRISPR/Cas9システムによるノックインを行った。この方法では,ヒトゲノム上のSafe harborと言われるAAVS1サイトに桿体視細胞に特異的なNrl遺伝子のプロモーターGFP発現カセット(Nrlp-GFP)を挿入した。これにより、網膜桿体視細胞に分化した細胞をGFPで標識することができ、その後の遺伝子発現、機能解析を行うことが可能となった。また、コントロールのラインとして網膜視細胞全般(Crx遺伝子)と錐体視細胞(Pde6H遺伝子)を標識するゲノム編集をCRISPR/Cas9で行い、分化した視細胞の遺伝子発現解析を定量PCRによって解析を行った。このラインとNrlp-GFPのノックインラインを用いることで、基準となるコントロールの視細胞の遺伝子発現が解析可能となった。現在、樹立した,網膜錐体視細胞および桿体視細胞を標識することができるコントロールiPS細胞を用いて、遺伝子解析を行っているところである(未発表)。これらコントロールラインと、疾患iPS細胞ノックインラインから分化した蛍光タンパク質標識視細胞を比較することによって疾患メカニズムやドラッグスクリーニングを検討することができる。<平成28年度:網膜色素変性症患者iPS細胞ノックインライン樹立>本研究では,これまでに既に作製された網膜色素変性症患者由来iPS細胞(RP1,RP9,PRPH2,RHO:Jin ZB et al., 2011;CEP290:未発表)を使用する.こちらについて,現在,理化学研究所バイオリソースセンターに供与申請を行っているが,このときに慶應義塾大学の倫理委員会の承認必要となったため現在申請を行っているところである.そこで,まずはコントロールのヒトiPS細胞(454E2)および,以前作製した視細胞標識ヒトiPS細胞ライン(Crx::2A::E2)について,桿体,錐体視細胞を選択的に標識するために,CRISPR/Cas9システムによるノックイン方法を行った.この方法では,ターゲットとなるタンパク質が発現した時に蛍光タンパク質がターゲットのタンパク質と等量発現する.本研究では,桿体視細胞を標識できるNRL,錐体視細胞を標識できるPDE6Hの遺伝子へのノックインを行った.手順としては,各遺伝子の3'末端の遺伝子部位の上流と下流をクローニングして,ドナーベクターに挿入した.このときに,標的遺伝子のストップコドンを削除した.標的遺伝子の後に2Aペプチドと蛍光タンパク質遺伝子を挿入し(同時に,抗生物質耐性遺伝子発現カセットも挿入)した.また,Cas9のターゲットを決めるsingle-guide RNA(20塩基)を発現するベクターを作製する.これらとCas9発現ベクターを同時にエレクトロポレーションでiPS細胞に遺伝子導入し,その後2週間ほど抗生物質を添加した培地で細胞を選択することでシングルコロニーを採取することができた.現在,これらの細胞の維持培養および分化培養を開始している.網膜色素変性症患者由来iPS細胞の取得にやや時間がかかっているが,桿体視細胞,錐体視細胞を標識するためのノックイン方法がうまくいくことをコントロールのヒトiPS細胞で確認することができた.疾患iPS細胞の取得については,理化学研究所バイオリソースセンターの供与申請をする際に,受け入れ研究所の倫理委員会の承認が必要であるということがわかり,申請者が本年1月から所属した慶應義塾大学倫理委員会の承認を得るべく書類を作成し,提出したところである.<平成29年度:網膜色素変性症患者iPS細胞ノックインライン樹立>現在,特にロドプシン(RHO)に変異のある,59M8,K31M28,RHO#5,RHOmut-inducedについて注目して,これらの細胞の維持培養および分化培養を開始している.また,一方で網膜視細胞全般(Crx遺伝子)と錐体視細胞(Pde6H遺伝子)を標識するゲノム編集をCRISPR/Cas9で行い,分化した視細胞の遺伝子発現解析を定量PCRによって解析を行った.今後得られる,Nrlp-GFPのラインを加えることによって,基準となるコントロールの視細胞の遺伝子発現が解析可能となった.網膜色素変性症患者由来iPS細胞の取得にやや時間がかかったが,まずは,これらの細胞への桿体視細胞を標識するためのノックインを確認することができた.現在,昨年度樹立した,網膜錐体視細胞および桿体視細胞を標識することができるコントロールiPS細胞を用いて,RNAシークエンスを用いた遺伝子解析を行っているところである. | KAKENHI-PROJECT-16K11305 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K11305 |
患者iPS細胞由来視細胞標識による網膜色素変性症疾患メカニズムの解析 | 今後,取得することができた疾患iPS細胞ノックインラインの分化培養を行い,コントロール視細胞と比較することによって疾患メカニズムの解析を行っていく.本研究では,これまでに既に作製された網膜色素変性症(RP)患者由来iPS細胞(RP1,RP9,PRPH2,RHO:Jin ZB et al., 2011;RHO#5, RHOmut-induced: Yoshida T et al., 2014)を使用した。これらは理化学研究所バイオリソースセンターに供与申請行い,慶應義塾大学の倫理委員会の承認後に入手することができた。得られたRPのiPS細胞のライン(59M8(RHO_562G>A変異),K10M5(RP9_410A>T変異),K11PD17(RP9_410A>T変異),K21S4(RP1_2162insC変異),K31M28(RHO_520G>A変異, PRPF31_613_615delTAC変異),RHO#5(RHO_541G>A変異, RHOmut-induced(RHO_541G>A変異)のゲノムを抽出しシークエンスでヘテロの変異を確認した。これらのラインから分化させた桿体視細胞を選択的に標識するために、CRISPR/Cas9システムによるノックインを行った。この方法では,ヒトゲノム上のSafe harborと言われるAAVS1サイトに桿体視細胞に特異的なNrl遺伝子のプロモーターGFP発現カセット(Nrlp-GFP)を挿入した。これにより、網膜桿体視細胞に分化した細胞をGFPで標識することができ、その後の遺伝子発現、機能解析を行うことが可能となった。また、コントロールのラインとして網膜視細胞全般(Crx遺伝子)と錐体視細胞(Pde6H遺伝子)を標識するゲノム編集をCRISPR/Cas9で行い、分化した視細胞の遺伝子発現解析を定量PCRによって解析を行った。このラインとNrlp-GFPのノックインラインを用いることで、基準となるコントロールの視細胞の遺伝子発現が解析可能となった。現在、樹立した,網膜錐体視細胞および桿体視細胞を標識することができるコントロールiPS細胞を用いて、遺伝子解析を行っているところである(未発表)。これらコントロールラインと、疾患iPS細胞ノックインラインから分化した蛍光タンパク質標識視細胞を比較することによって疾患メカニズムやドラッグスクリーニングを検討することができる。今後,慶應義塾大学倫理委員会の受け入れ承認を得た後に,理化学研究所バイオリソースセンターから網膜色素変性症患者由来iPS細胞の供与を受け,順次,うまくいったベクターを用いてノックインラインを取得し,分化培養を開始する.現在樹立した網膜色素変性症患者由来iPS細胞のノックインラインの分化培養を順次行っている.順調に行けば,4ヶ月ほどでGFP陽性細胞が得られると考えられる. | KAKENHI-PROJECT-16K11305 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K11305 |
副甲状腺機能異常と副甲状腺ホルモン受容体遺伝子発現の関係 | 副甲状腺ホルモン(PTH)は、骨や腎などの標的細胞上のPTH/PTHrP受容体に結合した後、シグナルを導入して骨吸収などの生理作用を発現する。生理的に機能する細胞表面のこの受容体量は、血中PTH濃度により制御されており、副甲状腺機能亢進症などにおける高血中PTH状態によりdown-regulateされることが知られている。この受容体の制御が遺伝子発現のレベルで行われているかどうかを研究した。PTH/PTHrP受容体mRNA量測定のために、ラット腎から抽出したtotalRNAを用いRT-PCR法でPTH/PTHrP受容体cDNA断片(0.7kb)を作製した。これをプローブとしてノーザンブロットを行い、Cyclophilin mRNA量で補正することによりPTH/PTHrP受容体mRNA量を算出した。血中CaとP濃度はいずれも比色法で、PTH濃度はImmunoradiometric Assayで、1.25(OH)_2D濃度はRadio Receptor Assayで測定した。コントロールラットにおけるPTH/PTHrP受容体mRNAのTissue Distributionを検討したところ、腎でその発現量が最も高く、頭蓋骨と長管骨で比較的高い発現量が認められた。骨のPTH/PTHrP受容体mRNAレベルは絶食2日後より約3倍に上昇し、摂食の再開により絶食前のレベルに戻った。腎のmRNA量は、絶食1日後に約2倍に上昇し、その後はほぼ一定となり、摂食の再開でコントロールレベルとなった。PTH濃度は、絶食によってわずかではあるが有意に上昇し、再摂食により低下してほぼ絶食前のレベルに戻った。絶食ラットにTPTXを施すと、血中Ca濃度及びPTH濃度の著しい低下がみられたにもかかわらず、骨および腎のPTH/PTHrP受容体mRNA量はSham群とほぼ同じレベルであった。以上のことより、in vivoにおけるPTH/PTHrP受容体mRNAレベルの制御には、血中PTHレベルよるむしろ絶食により影響を受けるホルモンなど全身性因子の関与が示唆された。現在、PTH/PTHrP受容体をタンパク質レベルで定量するために、受容体抗体を作製し受容体量の測定系を開発中である。副甲状腺ホルモン(PTH)は、骨や腎などの標的細胞上のPTH/PTHrP受容体に結合した後、シグナルを導入して骨吸収などの生理作用を発現する。生理的に機能する細胞表面のこの受容体量は、血中PTH濃度により制御されており、副甲状腺機能亢進症などにおける高血中PTH状態によりdown-regulateされることが知られている。この受容体の制御が遺伝子発現のレベルで行われているかどうかを研究した。PTH/PTHrP受容体mRNA量測定のために、ラット腎から抽出したtotalRNAを用いRT-PCR法でPTH/PTHrP受容体cDNA断片(0.7kb)を作製した。これをプローブとしてノーザンブロットを行い、Cyclophilin mRNA量で補正することによりPTH/PTHrP受容体mRNA量を算出した。血中CaとP濃度はいずれも比色法で、PTH濃度はImmunoradiometric Assayで、1.25(OH)_2D濃度はRadio Receptor Assayで測定した。コントロールラットにおけるPTH/PTHrP受容体mRNAのTissue Distributionを検討したところ、腎でその発現量が最も高く、頭蓋骨と長管骨で比較的高い発現量が認められた。骨のPTH/PTHrP受容体mRNAレベルは絶食2日後より約3倍に上昇し、摂食の再開により絶食前のレベルに戻った。腎のmRNA量は、絶食1日後に約2倍に上昇し、その後はほぼ一定となり、摂食の再開でコントロールレベルとなった。PTH濃度は、絶食によってわずかではあるが有意に上昇し、再摂食により低下してほぼ絶食前のレベルに戻った。絶食ラットにTPTXを施すと、血中Ca濃度及びPTH濃度の著しい低下がみられたにもかかわらず、骨および腎のPTH/PTHrP受容体mRNA量はSham群とほぼ同じレベルであった。以上のことより、in vivoにおけるPTH/PTHrP受容体mRNAレベルの制御には、血中PTHレベルよるむしろ絶食により影響を受けるホルモンなど全身性因子の関与が示唆された。現在、PTH/PTHrP受容体をタンパク質レベルで定量するために、受容体抗体を作製し受容体量の測定系を開発中である。 | KAKENHI-PROJECT-07771707 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07771707 |
モデルマウスを用いた加齢性難聴原因遺伝子のポジショナルクローニング | (1)遺伝性聴覚障害モデルjsのゲノム解析を行い、その新規原因遺伝子・Sansを単離した。Sansはankyrin repeatsとSAMドメインをもつ蛋白をコードし、聴覚細胞で発現する。本遺伝子はヒト難聴を主訴とするUsher type 1G症候群の原因遺伝子であることも判明した。(2)コンソミック系統を用いた加齢性難聴原因遺伝子(ahl)の遺伝解析系の立ち上げ準備を行ってきた。B6マウスは生後8カ月以内では顕著な聴力低下は認められないが、生後10カ月齢以降になると90dB以上の高度難聴を示す。一方、MSMは聴力低下を18カ月齢でも示さない。MSMマウスから1本の染色体をB6マウスに置換したコンソミック系統をABRで測定した結果、6番、10番および17染色体番が置換したマウス系統は1年を経過しても難聴を示さないことが分かった。すなわち、これらの染色体上に加齢性難聴原因遺伝子が存在する。18カ月齢の13番染色体および17番染色体が置換したマウス系統のコルチ器と聴覚細胞を顕微鏡観察した。どちらも老化に伴う軽度から中等度の細胞障害がみられたが、予想に反し両者に大きな差を認めなかった。17染色体番をMSM由来染色体で置換したコンソミック系統をさらにB6マウスと交配し、約150頭のマウスを作製し、聴覚検査を行っている。同時に、得られた個体の遺伝子型をタイピングし、異なった2cM-4cM領域のMSMゲノムを含むコンジェニックマウス群を選択する準備が整った。(3)ICR系統が早期に難聴を示すことが分かった。すなわち、生後3-6カ月には高度難聴を示す。その内耳を調べると、有毛細胞の欠落が観察された。ICR系統はoutbledであるため、純系化し新しい加齢性難聴モデルになるかどうかを検討している。(1)遺伝性聴覚障害モデルjsのゲノム解析を行い、その新規原因遺伝子・Sansを単離した。Sansはankyrin repeatsとSAMドメインをもつ蛋白をコードし、聴覚細胞で発現する。本遺伝子はヒト難聴を主訴とするUsher type 1G症候群の原因遺伝子であることも判明した。(2)コンソミック系統を用いた加齢性難聴原因遺伝子(ahl)の遺伝解析系の立ち上げ準備を行ってきた。B6マウスは生後8カ月以内では顕著な聴力低下は認められないが、生後10カ月齢以降になると90dB以上の高度難聴を示す。一方、MSMは聴力低下を18カ月齢でも示さない。MSMマウスから1本の染色体をB6マウスに置換したコンソミック系統をABRで測定した結果、6番、10番および17染色体番が置換したマウス系統は1年を経過しても難聴を示さないことが分かった。すなわち、これらの染色体上に加齢性難聴原因遺伝子が存在する。18カ月齢の13番染色体および17番染色体が置換したマウス系統のコルチ器と聴覚細胞を顕微鏡観察した。どちらも老化に伴う軽度から中等度の細胞障害がみられたが、予想に反し両者に大きな差を認めなかった。17染色体番をMSM由来染色体で置換したコンソミック系統をさらにB6マウスと交配し、約150頭のマウスを作製し、聴覚検査を行っている。同時に、得られた個体の遺伝子型をタイピングし、異なった2cM-4cM領域のMSMゲノムを含むコンジェニックマウス群を選択する準備が整った。(3)ICR系統が早期に難聴を示すことが分かった。すなわち、生後3-6カ月には高度難聴を示す。その内耳を調べると、有毛細胞の欠落が観察された。ICR系統はoutbledであるため、純系化し新しい加齢性難聴モデルになるかどうかを検討している。 | KAKENHI-PROJECT-14013023 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14013023 |
赤色光を用いた有機化学反応の開発 | 本研究においてはエネルギー変換効率や安全性に優れた赤色LEDをエネルギー源として用いた、新しい有機化学反応の開発を行う。有機化合物の骨格をなす炭素-炭素結合の生成のみならず、これを切断したり、酸素など他の原子の着脱を赤色光をエネルギー源として自在に行うことを目指す。さらに、青色光と赤色光を使い分けることで、医薬品などに含まれる複雑な分子骨格を一挙に構築することを試みる。本研究においてはエネルギー変換効率や安全性に優れた赤色LEDをエネルギー源として用いた、新しい有機化学反応の開発を行う。有機化合物の骨格をなす炭素-炭素結合の生成のみならず、これを切断したり、酸素など他の原子の着脱を赤色光をエネルギー源として自在に行うことを目指す。さらに、青色光と赤色光を使い分けることで、医薬品などに含まれる複雑な分子骨格を一挙に構築することを試みる。 | KAKENHI-PROJECT-19K15571 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K15571 |
単電子デバイス用ナノスケールシリコン量子細線の機械的特性評価技術の開発 | 本研究では,量子細線用Siナノワイヤに対して,AFM内準静的曲げ試験技術およびオンチップ引張り試験技術を開発することで,これまで困難とされてきたナノスケール電子デバイス材料のヤング率測定および破壊強度評価を実施し,量子デバイス用ナノ材料の機械的性質を定量的に評価することを試みた.具体的には,電解支援酸化加工法により作製した200nm800nm幅の自立型シリコンナノワイヤに対して,ダイヤモンドtip付きステンレス製カンチレバーを用いてAFM内で準静的曲げ試験を実施した.ここでは,常温曲げ試験だけでなく,高温度下での同試験も併せて成功している.一方,オンチップ引張り試験においては,ナノ試験片,櫛歯型静電アクチュエータおよび変位計測カンチレバー機構が一体となった引張り試験デバイスを設計・開発した.得られた結果を以下に示す.(1)ナノスケール単結晶Siは常温では脆性的に破壊したが,373K以上の中温域では塑性変形を生じた.また,ナノスケール単結晶Siの塑性変形範囲には試験片寸法効果が存在することが明らかとなった.(2)295K573Kにおける(111)面上<110>方向の単結晶Siのヤング率は170GPa159GPaに変化して温度依存性を示したが,試験片寸法依存性は見られなかった.これに対して,ナノスケール単結晶Siの破壊強度には,顕著な試験片寸法依存性が存在することが明らかとなった.(3)AFMによるすべり線観察の結果,すべり線の数は試験片寸法の低下および温度上昇に伴って増加し,ナノスケール単結晶Siには塑性変形挙動の寸法・温度依存性が存在することが示された.これは,熱活性エネルギよりも微小寸法材料内に発生する高い弾性ひずみエネルギが,転位発生に大きく寄与するためと考えられる.(4)ナノスケール引張り試験デバイスの設計,および同デバイスによる引張り応力-変位計測法を構築した.また,作製した静電アクチュエーター体型引張り試験デバイスを使用してアクチュエータの動作試験を行い,引張り試験デバイスとして十分機能することを示した本研究では,量子細線用Siナノワイヤに対して,AFM内準静的曲げ試験技術およびオンチップ引張り試験技術を開発することで,これまで困難とされてきたナノスケール電子デバイス材料のヤング率測定および破壊強度評価を実施し,量子デバイス用ナノ材料の機械的性質を定量的に評価することを試みた.具体的には,電解支援酸化加工法により作製した200nm800nm幅の自立型シリコンナノワイヤに対して,ダイヤモンドtip付きステンレス製カンチレバーを用いてAFM内で準静的曲げ試験を実施した.ここでは,常温曲げ試験だけでなく,高温度下での同試験も併せて成功している.一方,オンチップ引張り試験においては,ナノ試験片,櫛歯型静電アクチュエータおよび変位計測カンチレバー機構が一体となった引張り試験デバイスを設計・開発した.得られた結果を以下に示す.(1)ナノスケール単結晶Siは常温では脆性的に破壊したが,373K以上の中温域では塑性変形を生じた.また,ナノスケール単結晶Siの塑性変形範囲には試験片寸法効果が存在することが明らかとなった.(2)295K573Kにおける(111)面上<110>方向の単結晶Siのヤング率は170GPa159GPaに変化して温度依存性を示したが,試験片寸法依存性は見られなかった.これに対して,ナノスケール単結晶Siの破壊強度には,顕著な試験片寸法依存性が存在することが明らかとなった.(3)AFMによるすべり線観察の結果,すべり線の数は試験片寸法の低下および温度上昇に伴って増加し,ナノスケール単結晶Siには塑性変形挙動の寸法・温度依存性が存在することが示された.これは,熱活性エネルギよりも微小寸法材料内に発生する高い弾性ひずみエネルギが,転位発生に大きく寄与するためと考えられる.(4)ナノスケール引張り試験デバイスの設計,および同デバイスによる引張り応力-変位計測法を構築した.また,作製した静電アクチュエーター体型引張り試験デバイスを使用してアクチュエータの動作試験を行い,引張り試験デバイスとして十分機能することを示した初年度に当たる今年度は,主としてシリコン量子細線のオンチップ引張り試験デバイスの設計およびフォトリソグラフィ用マスクの設計・製作を行った.とくに設計に際しては,マイクロマシーニングプロセスを十分に考慮しながら,有限要素解析ソフトを用いて静電アクチュエータの諸元・形状寸法とナノスケール試験片の形状寸法を決定した.具体的には,まず,オンチップシリコン量子細線引張り試験デバイスを作製するに当たり,3層構造シリコンウエハを準備するためのSIMOX(Separation by Implanted Oxygen)基板とSOI(Silicon On Insulator)基板とのフュージョン接合法を確立した.また同時に,量子細線作製のためのAFM陽極酸化加工法,および高アスペクト比構造を有する静電アクチュエータ開発のためのDeep-RIEドライエッチング技術を確立した.次に,デバイス設計において,量子細線部,静電アクチュエータ部,および支持用バネ部を理論解析するとともに,マイクロマシン専用有限要素解析ソフトMEMCADを用いた静電力,応力,変位等を高精度に求めることにより,デバイスの形状寸法の決定を行った.有限要素解析の結果,櫛歯型アクチュエータで得られる変位および分解能は,シリコン量子細線の引張り試験の必要条件を十分満たすことが解った.さらに,シリコン量子細線の破断時に生じる静電アクチュエータ部と支持用バネ部の最大応力は十分小さく,本研究で設計したオンチップシリコン量子細線引張り試験デバイスは強度的に何ら問題ないことが明らかとなった. | KAKENHI-PROJECT-13555030 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13555030 |
単電子デバイス用ナノスケールシリコン量子細線の機械的特性評価技術の開発 | 今後は,マイクロマシーニングによりオンチップ引張り試験デバイスを作製するとともに,同試験をAFMないで実施し,量子細線の力学特性および電気特性のスケール効果について検討する予定である.第2年度に当たる今年度は,主としてシリコン量子細線のオンチップ引張り試験デバイス製作におけるプロセスの確立を試みた.ここでは,オンチップシリコン量子細線引張り試験デバイスを作製するに当たり必要となる3層構造シリコンウエハを準備するため,SIMOX(Separation by Implanted Oxygen)基板とSOI (Silicon On Insulator)基板とのフュージョンボンディングを実施するとともに,反応性イオンエッチング(Deep-RIE)装置による櫛歯型静電マイクロアクチュエータ機構をデバイス上に形成した.Deep-RIEによるシリコンドライエッチングについては,まず,マスク材料の選定,マスクパターニング条件,エッチング条件を詳細に検討し,アスペクト比20以上の深堀エッチング法を確立した.一方,同エッチングによる櫛歯型静電マイクロアクチュエータの作製では,量子細線の寸法に応じて2種類の形状を準備した.具体的には,厚さ150nm,幅1OOnm,長さ3μmの量子細線試験片に対しては,櫛歯幅4μm,櫛歯間距離3μm,高さ20μmの櫛歯を8000個,また,厚さ1OOnm,幅50nm,長さ3μmの量子細線試験片に対しては同寸法の櫛歯を5000個,シリコンチップ上に作製し形成することに成功した.一方,試験片となる量子細線の作製法として採用する走査型プローブナノリソグラフィ技術の確立を試みた.本手法は,自己組織化有機膜をマスクとしてナノスケールのパターニングを実現する手法であり,次年度国際会議にて研究発表予定である.今後は,デバイス作製を完了した後引張り試験を実施し,量子細線の力学特性および電気特性のスケール効果について検討する予定である.最終年度に当たる今年度は,オンチップ引張り試験デバイスの作製およびシリコン量子細線のAFM内曲げ試験を実施した.オンチップ引張り試験デバイスについては,第二年度に開発した櫛歯型静電気力マイクロアクチュエータ機構に,変位計測カンチレバー機構を付加したデバイスの再設計・再製作を行い,アクチュエータの性能評価を試みた.同マイクロアクチュエータは20Vの印加電圧に対して5μmの変位が出力されることが明らかとなった.しかしながら,印加電圧の増加に伴って,櫛歯層-基板層間に静電気力が増加し,40Vで櫛歯層が基板上でスティッキングを起こし,5μm以上の変位駆動には適さない結果となった.このため,オンチップ引張り試験デバイスによるナノワイヤの引張り試験が困難となったことから,ナノワイヤの力学特性評価に対してはAFM内で曲げ試験を実施することとした.AFM曲げ試験においては,電解支援酸化加工法により作製した200nm800nm幅の自立型シリコンナノワイヤに対して,ダイヤモンドtip付きステンレス製カンチレバーを用いて曲げ実験を実施し,ヤング率および破壊強度の試験片サイズ依存性,温度依存性について明らかにした.常温における同ワイヤの弾性定数には試験片サイズ依存性は見られなかったが,破壊強度には明確な寸法効果が現れた. | KAKENHI-PROJECT-13555030 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13555030 |
神経細胞分化制御と層特異的投射の分子機構 | 大脳新皮質には多くの種類の神経細胞が存在し、それぞれが特異的な神経回路形成に関わっている。本研究では、神経発生において中心的な役割を果たす転写制御因子Pax6やその下流分子に着目し、(I)大脳新皮質構築の分子機構に関して、Pax6の下流分子であるnineinおよびDmrta1が神経幹細胞の細胞周期依存的核移動および大脳新皮質における神経細胞分化の制御に関わることを明らかにした。また、(II)神経軸索誘導に関わるplexin-A4が、体性感覚野に加えて視覚野においても視床からの入力を受ける第4層を構成する細胞で発現することを見出し、視床からの投射を制御している可能性が推察された。大脳新皮質には多くの種類の神経細胞が存在し、それぞれが特異的な神経回路形成に関わっている。本研究では、神経発生において中心的な役割を果たす転写制御因子Pax6やその下流分子に着目し、(I)大脳新皮質構築の分子機構に関して、Pax6の下流分子であるnineinおよびDmrta1が神経幹細胞の細胞周期依存的核移動および大脳新皮質における神経細胞分化の制御に関わることを明らかにした。また、(II)神経軸索誘導に関わるplexin-A4が、体性感覚野に加えて視覚野においても視床からの入力を受ける第4層を構成する細胞で発現することを見出し、視床からの投射を制御している可能性が推察された。『I.神経細胞分化制御の分子機構』興奮性神経細胞の分化制御とPax6による多様な標的分子発現制御:Pax6の標的分子として同定したDmrt familyの機能解明のため、興奮性神経細胞分化に必要なNgn2発現の誘導能と、Dmrt遺伝子変異マウスを用いた神経分化異常を調べた。また,神経上皮細胞におけるinterkinetic nuclear migrationについて、中心体関連タンパク質nineinの機能を解明するため、RNAiとタイムラプス法による細胞動態変化の解析を行った。層形成のタイミング制御:Pax6ヘテロ接合ラットにおいて、後期に産生されるべき神経細胞がやや前倒しに産生される傾向があることが見出された。前頭野の領域決定と抑制性神経細胞の分化制御:前脳特異的にPax6遺伝子機能を破壊したマウスを作製するために、Pax6-floxedマウスとnestin-CreERマウスを交配し、その表現型を解析する準備を行った。『II.層特異的投射と新皮質領域間連絡の形成機構』大脳新皮質への入力線維の層特異的な投射に関与する軸索誘導分子Sema6A/Sema6Bとその受容体plexin-A4について、機能部位を特定するため、培養下における投射再構築法による解析に着手した。また、大脳新皮質の領野間連絡を制御する分子機構解明のため、発現遺伝子プロファイルの作成により候補遺伝子を網羅的にスクリーニングし、その機能を遺伝子機能抑制法(RNAiなど)により解析する準備を行った。『I.神経細胞分化制御の分子機構』興奮性神経細胞の分化制御とPax6による多様な標的分子発現制御:Pax6の標的分子として同定したDmrta1の機能解明のため、Dmrta1遺伝子変異マウスを用いて神経分化異常を調べたところ、もっとも早く分化が開始されるreelin陽性の第I層ニューロンの数が減少していることが見出された。他のII層からIV層の形成については、各種層特異的マーカーの発現から著名な変化は見いだせなかった。これらは、Dmrta1の類縁の分子であるDmrta2およびDmrt5がオーバーラップして大脳新皮質原基に発現しており、Dmrta1変異マウス大脳新皮質原基においてDmrta1の機能を代償しているためと考えられた。別のPax6標的因子であるnineinが胎生期神幹細胞のinterkinetic nuclear migration(INM)に果たす役割を解明するため、nineinの機能をRNA干渉法を用いて阻害して微小管伸長アッセイを行ったところ、予測通り微小管の伸長の低下が認められた。したがって、胎生期神経幹細胞で発現しているPax6はnineinの発現制御を介してINMを制御することが示唆された。『II.層特異的投射と新皮質領域間連絡の形成機構』:大脳新皮質への入力線維の層特異的な投射に関与する軸索誘導分子Sema6A/Sema6Bとその受容体plexin-A4について、機能部位を特定するため、培養下における投射再構築法による解析に着手した。また、投射期における分子の分布を明らかにするために、これら分子を特異的に認識する抗体を作製した。さらに、分子機能を明らかにするための培養アッセイ系の確立を試みた。Dmrtファミリーの機能に関して、大脳皮質においてもっとも早く分化する神経細胞であるカハール・レチウス(CR)細胞について詳細に検討した。Dmrta1は大脳皮質原基において、CR細胞を生み出す領域に発現し、Dmrta1 KOマウスにおいて、Reelin陽性CR細胞が野生型胚と比較して減少していることを明らかにした。Dmrta1の下流遺伝子を探索するために、野生型およびDmrta1 KOマウスのE10.5日胚の終脳を用いてマイクロアレイ解析を行ったところ(n=2)、大脳皮質に発現が認められるいくつかの因子の発現量が減少していた。さらにDmrt3がDmrta1と重複して大脳皮質に発現が観察されることから(Kikkawa et al., 2013)、両者の機能重複によってDmrta1 KO胚において脳発生の異常が明瞭でない可能性がある。 | KAKENHI-PLANNED-22123007 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-22123007 |
神経細胞分化制御と層特異的投射の分子機構 | そこで、理研発生・再生センターの松崎文雄博士との共同研究により、両者の二重KOマウスを作製し、次年度に詳細な解析を行う予定である。また、視床皮質投射の分子制御について、軸索ガイド分子受容体plexin-A4の作用部位を明らかにするため、条件付きKOマウスの作製を行った。昨年度作製した標的ベクターを用いて、相同組換えES細胞を単離し、キメラマウスの作製を進めている。また、plexin-A4のリガンド分子であるSema6Bについて、分子作用機序の解析を行うために必要な抗体の作製を、ウサギ、ニワトリ、Sema6Bノックアウトマウスを免疫動物として用いたが、これまでのところ分子分布解析が可能な抗体は得られていない。代替策として、Sema6B遺伝子のBAC組換えコンストラクトを作製した。今後、BACトランスジェニックマウスを作製/解析するとともに、並行して受容体であるplexin-A4のSema6B結合ドメインを利用して、Sema6B分子の局在を解析する。哺乳類の大脳皮質は神経細胞の構築から6層構造を呈し、各層には異なった投射パターンや遺伝子発現を持つ興奮性ニューロンが配置されるが、どの層のニューロンになるかという細胞運命の決定は、それぞれのニューロンが産生された時期に依存する。大脳皮質においてPax6の下流遺伝子として同定されたDmrtファミリー遺伝子であるDmrta1およびDmrt3が大脳皮質の神経幹細胞に発現し、これらが大脳皮質の興奮性神経細胞分化に関与する結果について原著論文として発表した(Kikkawa et al., 2013)。Dmrtファミリー遺伝子は、特に初期の神経細胞に分化する運命の神経幹細胞に発現が強いことから、大脳皮質神経細胞の時期特異的な分化に関与していると考えられ、それによって大脳皮質の層構造形成や皮質ニューロンの多様性分化にも影響を与えている可能性がある。そこで、大脳皮質においてもっとも早く分化する神経細胞であるカハール・レチウス細胞について詳細に検討した。Dmrta1は大脳皮質原基において、カハール・レチウス細胞を生み出す領域に発現し、Dmrta1ノックアウト(KO)マウスにおいてReelin陽性カハール・レチウス細胞が野生型胚と比較して減少していることを明らかにした。さらにDmrt3がDmrta1と重複して大脳皮質に発現が観察されることから、Dmrta1とDmrt3の機能重複によってDmrta1 KO胚において脳発生の異常が明瞭でない可能性がある。そこで理化学研究所発生・再生科学総合センターの松崎文雄グループリーダーとの共同研究によりDmrta1およびDmrt3のダブルKOマウスを作製したところ、Dmrta1/Dmrt3 dKOマウスにおいてカハール・レチウス細胞が激減していた。カハール・レチウス細胞から分泌されるリーリンは、哺乳類特異的な大脳皮質の層構築に重要な役割を果たしている。したがって、Dmrtファミリー因子が協調的に働くことにより、哺乳類の大きな大脳皮質が構築される基盤となっていることが示唆される。1)Dmrtファミリー遺伝子は、特に初期の神経細胞に分化する運命の神経幹細胞に発現が強いことから、大脳皮質神経細胞の時期特異的な分化、大脳皮質の層構造形成、皮質ニューロンの多様性 | KAKENHI-PLANNED-22123007 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-22123007 |
肥満に伴う慢性肝疾患NAFLDにおける免疫の関与とその制御に関する解析 | 前年度までの検討により、高脂肪高コレステロール食(HFHCD)投与によるNAFLDマウスモデルにおいて、肝組織におけるS100A8蛋白の発現が亢進していることを見出した。S100A8は、Toll-like receptor 4の内因性リガンドとして働き、種々の炎症性疾患と関連していることが示唆されている。今年度は、NAFLDおけるS100A8の関与や役割について詳細に検討した。S100A8を発現する細胞は、顆粒球系細胞であるCD11b+ Gr-1high細胞であり、NAFLDマウス群で著明に増加していた。S100A8は肝非実質細胞からのTNF-alpha産生を誘導し、培養肝細胞におけるTNF-alpha発現を増強した。TNF-alpha欠損マウスにおいて野生型マウスに比し、HFHCD投与による肝脂肪化は同等に認めるものの炎症細胞浸潤が有意に減弱していたことから、CD11b+ Gr-1high細胞から分泌されるS100A8がTNF-alpha産生誘導を介してHFHCD投与による炎症増悪に関与していることが示唆された。一方で、HFHCD群の肝組織では顆粒球系細胞の遊走に関わるCXCL1の発現が亢進していた。CXCL1はS100A8および脂肪酸によって産生が誘導された。CXCL1のレセプターであるCXCR2を発現する細胞は、CD11b+ Gr-1high細胞であった。S100A8を産生するCD11b+ Gr-1high細胞は、自身が発現するCXCR2によってCXCL1を認識し肝組織に遊走・集積していることが示唆された。NAFLD症例の肝生検組織において、S100A8陽性となる肝非実質細胞を認め、その陽性細胞数は非アルコール性脂肪肝症例に比しNASH症例で有意に増加していた。S100A8がNAFLDの病態進展に関与していることが示唆された。S100A8はNAFLDの病態において、肝臓におけるCXCL1の発現上昇に伴いCXCR2を介して肝に集積するCD11b+ Gr-1high細胞から分泌され、TNF-alphaの産生を誘導することで炎症を増悪させている可能性が示唆された。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)はメタボリック症候群の肝臓での表現形とされ、近年の肥満人口の増加に伴い注目されている肝疾患である。しかし、長期の経過で進行するため脂肪肝炎の進展から肝硬変、肝発癌といった病態の進展機序は解明されていない。申請者はこれまでにNKT細胞欠損マウスに高脂肪食を与えると、脂肪肝炎が増強することを示し、NAFLDの進展過程において免疫細胞が関与していることを報告している。平成25年度は、野生型マウスに高脂肪食を投与する食餌性肥満マウスを用いて脂肪付加が与える影響について観察した。野生型マウスにおいても長期投与で線維化が進行し、1年で20%、1.6年以上の投与では約70%で自然発癌が起きることが明らかとなった。免疫細胞については脂肪付加により肝臓内の免疫細胞数が増加するが、その細胞の構成は通常飼料を投与した場合と異なり、時間経過に伴いNKT細胞の割合は減少し反対に未熟骨髄細胞は増加することがわかった。なお、NK細胞については有意な変化をみとめなかった。また、肝硬変、発癌をみとめる1年投与群でみると未熟骨髄細胞から分泌されるといわれるS100A8/A9の遺伝子発現が有意に上昇していた。以上より、食餌性肥満マウスにおいて肝硬変、肝癌を発症しその過程においてNKT細胞の低下や未熟骨髄細胞の増加が関与していることが示唆された。本研究結果はNAFLDの進展にはNKT細胞や未熟骨髄細胞の割合の変化があり、その進展予防のためにNKT細胞や未熟骨髄細胞の遊走を制御することが治療ターゲットになりうる可能性を示唆した、臨床的に意義の大きい成果である。前年度までの検討により、高脂肪高コレステロール食(HFHCD)投与によるNAFLDマウスモデルにおいて、肝組織におけるS100A8蛋白の発現が亢進していることを見出した。S100A8は、Toll-like receptor 4の内因性リガンドとして働き、種々の炎症性疾患と関連していることが示唆されている。今年度は、NAFLDおけるS100A8の関与や役割について詳細に検討した。S100A8を発現する細胞は、顆粒球系細胞であるCD11b+ Gr-1high細胞であり、NAFLDマウス群で著明に増加していた。S100A8は肝非実質細胞からのTNF-alpha産生を誘導し、培養肝細胞におけるTNF-alpha発現を増強した。TNF-alpha欠損マウスにおいて野生型マウスに比し、HFHCD投与による肝脂肪化は同等に認めるものの炎症細胞浸潤が有意に減弱していたことから、CD11b+ Gr-1high細胞から分泌されるS100A8がTNF-alpha産生誘導を介してHFHCD投与による炎症増悪に関与していることが示唆された。一方で、HFHCD群の肝組織では顆粒球系細胞の遊走に関わるCXCL1の発現が亢進していた。CXCL1はS100A8および脂肪酸によって産生が誘導された。CXCL1のレセプターであるCXCR2を発現する細胞は、CD11b+ Gr-1high細胞であった。S100A8を産生するCD11b+ Gr- | KAKENHI-PROJECT-25460992 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25460992 |
肥満に伴う慢性肝疾患NAFLDにおける免疫の関与とその制御に関する解析 | 1high細胞は、自身が発現するCXCR2によってCXCL1を認識し肝組織に遊走・集積していることが示唆された。NAFLD症例の肝生検組織において、S100A8陽性となる肝非実質細胞を認め、その陽性細胞数は非アルコール性脂肪肝症例に比しNASH症例で有意に増加していた。S100A8がNAFLDの病態進展に関与していることが示唆された。S100A8はNAFLDの病態において、肝臓におけるCXCL1の発現上昇に伴いCXCR2を介して肝に集積するCD11b+ Gr-1high細胞から分泌され、TNF-alphaの産生を誘導することで炎症を増悪させている可能性が示唆された。NAFLDはヒトにおいて長期の経過で進行するため脂肪肝炎から発癌するまでの過程は明らかでない。平成25年度では食餌性肥満マウスモデルを用いて、脂肪肝炎、肝硬変、自然発癌に至る過程を観察し野生型マウスにおいても脂肪付加により自然発癌することを示した。この結果はNAFLDにおいて脂肪肝から脂肪肝炎がおこる過程で免疫細胞の構成が変化していることから、NAFLDにおける免疫を介した治療の有用性を示唆したものであり、臨床上も非常に有意義であると考えている。研究結果も着実に出ており、本申請課題はおおむね順調に進展していると考えている。平成25年度の結果をもとに、NAFLD病態における未熟骨髄細胞とS100A8/A9の関与について検討を行う。具体的にはS100A8/A9の発現増加が未熟骨髄細胞に由来するかを免疫染色(多重染色)やフローサイトメトリー(細胞内S100A8/A9染色と細胞表面マーカーとの染色で検討する)また、抗S100A8/A9抗体投与やS100A9欠損マウスを用いた解析により、S100A8/A9発現抑制がNAFLD病態に与える影響や、S100A8/A9発現ベクター投与によるS100A8/A9過剰発現系を用いた解析によりS100A8/A9過剰発現がNAFLD病態に与える影響について検討を行う。 | KAKENHI-PROJECT-25460992 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25460992 |
高安定・短パルス幅フラッシュランプの基礎研究 | 本研究の目的は光電子増倍管のゲイン較正に必要な高安定・短パルス幅フラッシュランプの開発を行う事にある。このため、(1)ガスの種類、(2)ガスの圧力、(3)放電電圧、(4)放電回路、(5)電極構造等の諸パラメ-タ-を最適化する事を試みた。まずガスの種類に関しては、アルゴン(Ar)、キセノン(Xe)、水素(H_2)、及び窒素(N_2)をテストした。この結果、Xeは光パルス幅は長いが、発光効率は高い事、N_2は逆に光パルス幅は短い事が判明した。また光量はガス圧を増加させると多くなる事、それに対して光パルス幅はガス圧に若干依存するが大きくは変化しない事が判明した。更に放電電圧も同様に、電圧を高くすると光量は増加するが光パルス幅は影響を受けない事が判った。光パルス幅を短かくする上で、放電回路は、いわゆるクリティカルダンピングの条件を満足する様調整する事が重要である。電極構造に関しては、アノ-ド・カソ-ド間隔が0.5mm、1.5mm及び3.0mmのランプを製作しテストした。この結果ギャップ間隔が広くなるにつれて、放電開始電圧は高くなり、かつ光パルス幅も長くなる事が判明した。これに対して発光効率は、0.5mmギャップ間隔のものは小さく、1.5mm/3.0mmのものは差がない事が判った。以上の結果を総合的に判断し、窒素ガス2気圧、アノ-ド・カソ-ド電極間隔1.5mmのランプの安定性を試した。この結果、相対安定度4%(rms)を得た。これを当初の目標と比較すると、キセノンランプに比べて光パルス幅では非常に短かいものが得られたが、安定性では若干劣る結果となった。光量の点では、キセノンランプの方が多いがこれは主としてパルス幅が長い事に起因している。我々の開発した窒素ランプについては、長期安定性の点を更に追求する必要があろう。本研究の目的は光電子増倍管のゲイン較正に必要な高安定・短パルス幅フラッシュランプの開発を行う事にある。このため、(1)ガスの種類、(2)ガスの圧力、(3)放電電圧、(4)放電回路、(5)電極構造等の諸パラメ-タ-を最適化する事を試みた。まずガスの種類に関しては、アルゴン(Ar)、キセノン(Xe)、水素(H_2)、及び窒素(N_2)をテストした。この結果、Xeは光パルス幅は長いが、発光効率は高い事、N_2は逆に光パルス幅は短い事が判明した。また光量はガス圧を増加させると多くなる事、それに対して光パルス幅はガス圧に若干依存するが大きくは変化しない事が判明した。更に放電電圧も同様に、電圧を高くすると光量は増加するが光パルス幅は影響を受けない事が判った。光パルス幅を短かくする上で、放電回路は、いわゆるクリティカルダンピングの条件を満足する様調整する事が重要である。電極構造に関しては、アノ-ド・カソ-ド間隔が0.5mm、1.5mm及び3.0mmのランプを製作しテストした。この結果ギャップ間隔が広くなるにつれて、放電開始電圧は高くなり、かつ光パルス幅も長くなる事が判明した。これに対して発光効率は、0.5mmギャップ間隔のものは小さく、1.5mm/3.0mmのものは差がない事が判った。以上の結果を総合的に判断し、窒素ガス2気圧、アノ-ド・カソ-ド電極間隔1.5mmのランプの安定性を試した。この結果、相対安定度4%(rms)を得た。これを当初の目標と比較すると、キセノンランプに比べて光パルス幅では非常に短かいものが得られたが、安定性では若干劣る結果となった。光量の点では、キセノンランプの方が多いがこれは主としてパルス幅が長い事に起因している。我々の開発した窒素ランプについては、長期安定性の点を更に追求する必要があろう。現在まで大量の光電子増倍管を使用する実験に於いては、そのゲイン変動をモニタ-するために標準光源からの光を光ファイバ-により分配し、1本1本の光電子増倍管に導き、その光に対応する出力を検出する事でゲイン較正を行って来た。この際標準光源にとって重要な性質は、(a)光量がパルス毎に安定している事、(b)長寿命である事、(c)使用しているシンチレ-タ-等の光源と同じ様な波長で、同じ様な形の光パルスである事、(d)多数の光電子増倍管に一度に分配するため、充分な光量がある事、等である。今まで良く使われて来た標準光源としては、(1)窒素レ-ザ-及びダイレ-ザ-の組み合せ(2)発光ダイオ-ド(LED)、(3)キセノン(Xe)フラッシュランプ、等がある。これらの光源には各々に欠点がある。即ち(1)窒素レ-ザ-を用いたシステムは、短パルスではあるが光量の安定性に劣る。(2)LEDは光量が極端に少ない。(3)Xeランプは安定で長寿命ではあるが、光のパルス幅が長い。本研究の目的は、Xeランプの欠点を、ガス・放電回路・電極等に改良を加える事により、改良する事にある。当初計画どうり、今年度はガスの種類とガス圧を変化させる事、充電回路を適正化する事を試みた。 | KAKENHI-PROJECT-02640226 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02640226 |
高安定・短パルス幅フラッシュランプの基礎研究 | その結果、(1)窒素ガスは他のガスに比較して比較的光パルスの幅が短い事、(2)キセノンは逆に光パルス幅は長いが、発光効率は良い事が分った。又(3)光量はガス圧を増化すると多くなる事、(4)それに対して光パルス幅もガス圧に若干依存するが、大きくは変化しない事が分った。更に、放電回路に関しては、光パルス幅を短かくするには、(5)クリティカルダンピングになる様にパラメ-タ-を調節する事が重要である事が分った。来年度の課題としては、電極構造を最適化する事、及び総合テストをする事がある。本研究の目的は、光電子増倍管のゲイン較正に必要な高安定・短パルス幅フラッシュランプの開発を行う事にある。このため(1)ガスの種類、(2)ガスの圧力(3)放電電圧、(4)放電回路、(5)電極構造等の諸パラメ-タを最適化する事を試みた。本年度の研究に於いては、特にアノ-ド・カソ-ド電極間融を変えて、パラメ-タの最適化を行った。また安定性のテストも実行した。その結果、(1)アノ-ド・カソ-ド間隔を広げると放電開始電圧が上昇する、(2)アノ-ド・カソ-ド間隔を広げると放電電流幅も光パルス幅も一般には大きくなる、(3)入力した電気エネルギ-に対する出力した光エネルギ-の量(光変換エフィシェンシ-)は、アノ-ドカソ-ド間隔が0.5mm、1.5mm、3.0mmの中では、0.5mmのものが小さく、1.5mmと3.0mmでは差があまり存在しない、等の結果が得られた。昨年度に於いては、窒素ガスに於いては他のガスに比較して光パルス幅が小さい事、また放電電圧は光量には関係するが、光パルス幅には余り影響しない事等の結果が得られている。これらの結果を結合的に判断して、窒素ガス2気圧、アノ-ド・カソ-ド電極間隔1.5mmのフラッシュランプについて安定性のテストを行った。その結果、4%(rms)を得た。これを当初の目標と比較すると、キセノンフラッシュランプに比較して、光パルス幅では非常に短かいものが得られたが、安定性では若干劣る結果になった。また光量は、キセノンランプの方が長い裾を持つ分有利である事も判明した。 | KAKENHI-PROJECT-02640226 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02640226 |
寒冷海洋圏におけるメソスケール大気・海洋相互作用に関する研究 | 寒冷海洋圏におけるメソスケール大気-海洋相互作用について,地球上で最も低緯度に位置する代表的な季節海氷域のオホーツク海を対象領域とし、寒気吹き出しによる大気-海洋間の熱交換(気団変質)を調べた.前年度の解析結果を元に、北極海と日本海を比較対象として航空機による乱流観測データを用い大気境界層内の熱輸送過程とそれに伴う雲システムの役割を明らかにすることを目的とした.1.寒気吹き出し時に日本海で行われた航空機観測乱流熱フラックス(<ω'θ'_v>^^^-)を構成する各成分の鉛直・水平分布を4つの領域に分割し,各成分の面積比・寄与率を抽出することのできるJoint Frequency Distribution(JFD)法を用いて解析を行なった.その結果、寒気吹き出し時における雲を伴う大気境界層内の乱流熱輸送は,境界層下部でのサーマルによる効率的な熱輸送(全領域の30%)と雲頂からの冷却の効果(海面熱フラックスの15%)によって引き起こされていることが分かった.2.オホーツク海氷域の開放水面での乱流熱フラックス日本海の観測結果に適用したJFD法をオホーツク海の観測結果にも適用し,気団変質に対する海氷の影響を調べた.風上での開放水面起源の顕熱フラックス(サーマル成分)の水平分布を見ると,個々の開放水面の幅に関係なく風上に位置するものから順に冷却され,その効果は5kmの開放水面に相当する範囲で急激に減衰することが分かった.さらに,雪雲を伴う大気境界層の発達にも個々の開放水面の幅ではなく,その積算値に依存していることが明らかとなった.その水平スケールは3040kmで,日本海に発達する雪雲の離岸距離に相当していた.熱輸送はサーマルとその補償流によって効率的に行なわれていた.3.北極域の海氷上に形成される雲システムの発達・維持過程寒冷海洋圏におけるメソスケール大気-海洋相互作用について,地球上で最も低緯度に位置する代表的な季節海氷域のオホーツク海を対象領域とし、寒気吹き出しによる大気-海洋間の熱交換(気団変質)を調べた.前年度の解析結果を元に、北極海と日本海を比較対象として航空機による乱流観測データを用い大気境界層内の熱輸送過程とそれに伴う雲システムの役割を明らかにすることを目的とした.1.寒気吹き出し時に日本海で行われた航空機観測乱流熱フラックス(<ω'θ'_v>^^^-)を構成する各成分の鉛直・水平分布を4つの領域に分割し,各成分の面積比・寄与率を抽出することのできるJoint Frequency Distribution(JFD)法を用いて解析を行なった.その結果、寒気吹き出し時における雲を伴う大気境界層内の乱流熱輸送は,境界層下部でのサーマルによる効率的な熱輸送(全領域の30%)と雲頂からの冷却の効果(海面熱フラックスの15%)によって引き起こされていることが分かった.2.オホーツク海氷域の開放水面での乱流熱フラックス日本海の観測結果に適用したJFD法をオホーツク海の観測結果にも適用し,気団変質に対する海氷の影響を調べた.風上での開放水面起源の顕熱フラックス(サーマル成分)の水平分布を見ると,個々の開放水面の幅に関係なく風上に位置するものから順に冷却され,その効果は5kmの開放水面に相当する範囲で急激に減衰することが分かった.さらに,雪雲を伴う大気境界層の発達にも個々の開放水面の幅ではなく,その積算値に依存していることが明らかとなった.その水平スケールは3040kmで,日本海に発達する雪雲の離岸距離に相当していた.熱輸送はサーマルとその補償流によって効率的に行なわれていた.3.北極域の海氷上に形成される雲システムの発達・維持過程 | KAKENHI-PROJECT-01J10671 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01J10671 |
新手法によるAzospirillum属細菌の網羅的分離と分類 | Azospirillum属細菌は植物根圏に共生し、窒素固定を行い、植物の生育を促進可能な細菌の一群である。本属細菌の分離には工夫が必要で、また分類系統も良く確立しておらず、共生する植物との関連性も分かっていない。本研究では広く植物から本属細菌を分離することと、質量分析法を用いた新しい手法で効率よく網羅的に分類すること、同時に新種菌を見いだし分類系統に新たな知見を加えることを目的としている。本属細菌の分離には窒素源を含まない培地を用いた微好気条件が重要であることを見いだし、約60株の本属細菌を分離した。質量分析により正確な分類を行った。またイネに対して約20%の生育促進効果を持つ菌を分離した。本研究の目的は、Azospirillum属細菌を広く植物を含む自然界から分離し、新種菌を同定し新種提唱を行うこと、さらにその由来となる植物と分離される菌との特異性を調べ、植物への接種効果を確認することである。本属細菌は多くの植物の根圏に存在し、その高い窒素固定能や植物ホルモン合成能により植物の生育を促進する報告が多くある。しかし16SrRNA遺伝子の系統樹では別の属と入れ子になるなど、その分類体系は混乱しており、また植物種との相互作用特異性についてもよく分かっていない。そこで本研究では、申請者が近年確立した、MALDI型の質量分析器を用いて菌体総タンパク質のスペクトルを比較することにより種レベルで迅速に同定可能な方法を用いて、本属細菌を網羅的に分類する。当該年度は別の研究である、科研費若手(A)の研究費を用いてスイス・チューリヒ工科大学へ海外研修を平成24年5月から平成25年1月まで行っていたことと、研究室に誰もいない状況となったため、本研究を1年間延期する。本研究の目的は、Azospirillum属細菌を広く植物を含む自然界から分離し、新種菌を同定し新種提唱を行うこと、さらにその由来となる植物と分離される菌との特異性を調べ、植物への接種効果を確認することである。本属細菌は多くの植物の根圏に存在し、その高い窒素固定能や植物ホルモン合成能により植物の生育を促進する報告が多くある。しかし16SrRNA遺伝子の系統樹では別の属と入れ子になるなど、その分類体系は混乱しており、また植物種との相互作用特異性についてもよく分かっていない。そこで本研究では、申請者が近年確立した、MALDI型の質量分析器を用いて菌体総タンパク質のスペクトルを比較することにより種レベルで迅速に同定可能な方法を用いて、本属細菌を網羅的に分類する。平成23年度はイネ科の植物を中心とした植物の根圏サンプルからCongo Redを含む寒天培地で赤色を呈するコロニーを分離した。分離の際には寒天プレートをデシケーター内でろうそくを燃やして微好気条件として分離することにより、本属細菌を効率よく分離することが出来た。約70株の本属細菌を得ることに成功し、質量分析によるタイピングと16SrRNA遺伝子解読の結果、A. oryzae, A. lipoferum, A. br asilenseと高い相同性を持つ株と、新種と考えられる(16SrRNA遺伝子の相同性が98.6%以下である)11株を得た。平成24年度は別経費で海外研修に出ており、実質本研究は進んでいない。平成25年度は得られた本属細菌をイネに接種し、温室で生育促進効果の高い菌を選抜した。幼苗までの状態で約20%の生育促進効果を持つ菌が得られた。また新種と考えられる分離菌について、新種提唱のため脂質、キノンの外注分析を行っているところである。Azospirillum属細菌は植物根圏に共生し、窒素固定を行い、植物の生育を促進可能な細菌の一群である。本属細菌の分離には工夫が必要で、また分類系統も良く確立しておらず、共生する植物との関連性も分かっていない。本研究では広く植物から本属細菌を分離することと、質量分析法を用いた新しい手法で効率よく網羅的に分類すること、同時に新種菌を見いだし分類系統に新たな知見を加えることを目的としている。本属細菌の分離には窒素源を含まない培地を用いた微好気条件が重要であることを見いだし、約60株の本属細菌を分離した。質量分析により正確な分類を行った。またイネに対して約20%の生育促進効果を持つ菌を分離した。本研究の目的は、Azospirillum属細菌を広く植物を含む自然界から分離し、新種菌を同定し新種提唱を行うこと、さらにその由来となる植物と分離される菌との特異性を調べ、植物への接種効果を確認することである。本属細菌は多くの植物の根圏に存在し、その高い窒素固定能や植物ホルモン合成能により植物の生育を促進する報告が多くある。しかし16SrRNA遺伝子の系統樹では別の属と入れ子になるなど、その分類体系は混乱しており、また植物種との相互作用特異性についてもよく分かっていない。そこで本研究では、申請者が近年確立した、MALDI型の質量分析器を用いて菌体総タンパク質のスペクトルを比較することにより種レベルで迅速に同定可能な方法を用いて、本属細菌を網羅的に分類する。当該年度は多くの植物サンプルの根圏からNfB培地(窒素を含まない軟寒天培地)で生育する菌体を収集し、さらにRc培地(同様に窒素を含まず、Congo Redを含む寒天培地)でコロニーを精製した。 | KAKENHI-PROJECT-23658080 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23658080 |
新手法によるAzospirillum属細菌の網羅的分離と分類 | 本属細菌はCongo Redの存在下、赤色を呈する。手始めに色にかかわらず約150株を分離した。質量分析スペクトルを取り、本属細菌の基準株と比べ、質量分析スペクトル系統樹での各クラスターの代表株の16S rRNA遺伝子を解読したが、本属細菌に属する株は得られなかった。窒素固定には微好気条件が良いのではないかと考え、デシケーター内でろうそくを燃やし、微好気にした条件で、さらにイネ科の植物に絞って再度100株の赤色のコロニーを分離し、質量分析した結果、約70株の本属細菌を得ることが出来た。各クラスタの33株の16S rRNA遺伝子の解読の結果、A. oryzae, A. lipoferum, A. brasilenseと高い相同性を持つ株と、新種と考えられる(16SrRNA遺伝子の相同性が98.6%以下である)11株を得た。当該年度は別の研究である、科研費若手(A)の研究費を用いてスイス・チューリヒ工科大学へ海外研修を平成24年5月から平成25年1月まで行っていたことと、研究室に誰もいない状況となったため、本研究を1年間延期する。概要に述べたように、当初単純に赤色のコロニーを分離すれば良いと考えていたが、微好気条件に気づくのに時間がかかったため、本属細菌以外の細菌の16SrRNA遺伝子を解読する時間を要した。それでも、質量分析スペクトルに基づくクラスター解析により解析する株の数が大幅に減ったため、浪費する時間は最小限となったと考えられる。微好気条件にしてからは高い頻度で赤色のコロニーは本属細菌であり、他には予想通りRhizobium属細菌が得られた。分離株の多くは基準株と異なる質量分析クラスターを示したので、基準株とは遺伝学的に異なっている種であると考えられる。これまでに、別の属で質量分析クラスターが異なると種が異なることを明らかにしている。今回はイネ科の植物に限って分離を行ったが、分離法が確立できたため、植物種の範囲を広げて同じ方法で培養し、スクリーニングの規模をもう少し大きくしたいと考えている。今後は得られた本属細菌のうち、基準株から系統的に遠いものから、生化学的性状やBIOLOG試験を行い、基準株と異なることを明らかにし、新種提唱を行う論文として発表する。また培養法の確立が出来たため、イネ科以外の植物からの分離も試みる。最終的には植物種との相互作用特異性を明らかにするため、イネ科以外の植物についても検討の余地がある。今後は得られた本属細菌のうち、基準株から系統的に遠いものから、生化学的性状やBIOLOG試験を行い、基準株と異なることを明らかにし、新種提唱を行う論文として発表する。また培養法の確立が出来たため、イネ科以外の植物からの分離も試みる。最終的には植物種との相互作用特異性を明らかにするため、イネ科以外の植物についても検討の余地がある。申請者が所属する研究所では平成25年度の大学院生の配属が見込めないため、微生物の培養、分離、質量分析、同定、植物接種試験等を研究補助員を雇って行う。そのためにほとんどの研究費を使用する。申請者は若手(A)の研究費もいただいており、その研究費で海外研修をすることになった。2012年5月から2013年1月までスイスETHで若手(A)研究費に関連する研究を行うため、基金化されている本萌芽研究は約1年間延期する。そのため研究費の使用計画はないが、5月8日現在ですでにドイツの微生物保存機関DSMZから何株かの本属細菌の取り寄せなどに用いている。 | KAKENHI-PROJECT-23658080 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23658080 |
イミノ・アルドール反応における不斉触媒の開発研究 | 種々のβ-アミノ酸誘導体を合成するためのイミンの反応の一つであるイミノ・アルドール反応において、比較的弱いルイス酸性およびイミノ基との適度な親和性を有するランタノイド塩に着目し、イミノ・アルドール反応の触媒下への展開をはかってきた。本研究では、用いるイミンそしてケテンシリルアセタールの置換基の電子的または立体的効果、そして窒素原子とランタノイド金属との親和能力を考慮しながら、用いるランタノイド塩および反応条件について詳細に検討した。イソ酪酸エチルのケテンシリルアセタールと芳香族そして脂肪族イミンの反応において、ランタノイド塩として極めて入手容易な3価のヨウ化サマリウムを触媒量(10mol%)用いることにより、良好な収率で反応が進行し対応するβ-アミノエステルが得られることを見いだした。またプロピオン酸エチルのケテンシリアセタールとの反応では、良好な選択比で対応するβ-アミノエステルのanti体を高収率で得ることができ、特にシンナミリデンベンジルイミンとの反応によりanti体のみを得ることができた。また本反応における溶媒効果についても検討したところプロピオニトリルが収率および選択性に最も良好な結果を与えることを見いだした。一方、光学活性イミンとの反応において本反応のジアステレオ選択性について検討したところ、酒石酸由来のイミンにおいてはS:R=96:4、またマンデル酸由来のイミンではR:S=>99:1という極めて良好な選択比で対応するβ-アミンノステルを得ることに成功し、本反応の不斉合成における有用性を実証した。上述したように3価のヨウ化サマリウムがイミンと適度な親和能力を有することを見いだし、イミノ・アルドール反応の触媒化に成功し、ルイス酸の触媒的利用による光学活性β-アミノエステルの合成が可能となることから有機合成極めて有用であることを明かにした。種々のβ-アミノ酸誘導体を合成するためのイミンの反応の一つであるイミノ・アルドール反応において、比較的弱いルイス酸性およびイミノ基との適度な親和性を有するランタノイド塩に着目し、イミノ・アルドール反応の触媒下への展開をはかってきた。本研究では、用いるイミンそしてケテンシリルアセタールの置換基の電子的または立体的効果、そして窒素原子とランタノイド金属との親和能力を考慮しながら、用いるランタノイド塩および反応条件について詳細に検討した。イソ酪酸エチルのケテンシリルアセタールと芳香族そして脂肪族イミンの反応において、ランタノイド塩として極めて入手容易な3価のヨウ化サマリウムを触媒量(10mol%)用いることにより、良好な収率で反応が進行し対応するβ-アミノエステルが得られることを見いだした。またプロピオン酸エチルのケテンシリアセタールとの反応では、良好な選択比で対応するβ-アミノエステルのanti体を高収率で得ることができ、特にシンナミリデンベンジルイミンとの反応によりanti体のみを得ることができた。また本反応における溶媒効果についても検討したところプロピオニトリルが収率および選択性に最も良好な結果を与えることを見いだした。一方、光学活性イミンとの反応において本反応のジアステレオ選択性について検討したところ、酒石酸由来のイミンにおいてはS:R=96:4、またマンデル酸由来のイミンではR:S=>99:1という極めて良好な選択比で対応するβ-アミンノステルを得ることに成功し、本反応の不斉合成における有用性を実証した。上述したように3価のヨウ化サマリウムがイミンと適度な親和能力を有することを見いだし、イミノ・アルドール反応の触媒化に成功し、ルイス酸の触媒的利用による光学活性β-アミノエステルの合成が可能となることから有機合成極めて有用であることを明かにした。 | KAKENHI-PROJECT-07750940 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07750940 |
超臨界流体中でのテンプレート電析法を活用する機能性ナノシリンダーアレイの創製 | 高拡散性・高浸透性でありながら液体並の溶解力も兼備する超臨界流体をテンプレート合成のメディアに用いれば、ナノ細孔などを有する複雑な基板に対しても細孔内部への効率的な充填物の輸送を行うことが出来、結果として非常に精密なナノ構造の転写と高いアスペクト比を有するナノ構造物の形成が予想される。このような着想に基づき、本研究は特異なメディア効果を有する超臨界流体中でのテンプレート電析法を利用した超精密なナノ構造の転写技術を構築するとともに、各種デバイスへの応用を実施するための工学技術としての確立を行った。高拡散性・高浸透性でありながら液体並の溶解力も兼備する超臨界流体をテンプレート合成のメディアに用いれば、ナノ細孔などを有する複雑な基板に対しても細孔内部への効率的な充填物の輸送を行うことが出来、結果として非常に精密なナノ構造の転写と高いアスペクト比を有するナノ構造物の形成が予想される。このような着想に基づき、本研究は特異なメディア効果を有する超臨界流体中でのテンプレート電析法を利用した超精密なナノ構造の転写技術を構築するとともに、各種デバイスへの応用を実施するための工学技術としての確立を行った。高拡散性・高浸透性でありながら液体並の溶解力も兼備する超臨界流体をテンプレート合成のメディアに用いればナノ細孔などを有する複雑な基板に対しても細孔内部への効率的な充填物の輸送を行うことが出来、結果として非常に精密なナノ構造の転写と高いアスペクト比を有するナノ構造物の形成が予想される。このような着想に基づき、本研究は特異なメディア効果を有する超臨界流体中でのテンプレート電析法を利用した超精密なナノ構造の転写技術を構築しようとするものである。テンプレート電析法によってさまざまな機能特性をもつさまざまな種類のナノシリンダーアレイの形成が考えられるが、電界放射材料、異方導電性膜や水素吸蔵デバイスなどへの応用に焦点を絞り、充填物に銅、パラジウムといった金属材料やポリピロール、ポリチオフェンといった導電性高分子材料を対象にして、まずこれら電析物の構造および緻密性に対する超臨界流体のメディア効果について現象論および機構論の立場にたって系統的に検討する。ついで、これら材料の導電性、水素吸蔵能などの機能特性との一般的関連を解明して、各種デバイスへの応用を実施するための工学技術としての確立を目指す。これが本研究計画の戦略的基盤である。その方法論的原理は予備研究の成果に基づくものであり、本年度は下記の具体的研究計画に従って研究を進めた。1.超臨界フルオロホルム中でのテンプレート電解重合を、モノマーとしてピロール類、チオフェン類ならびにアニリン類について検討した。また、超臨界フルオロホルムに可溶な銅錯体を用い銅のテンプレート電析による銅ナノシリンダーの作製に成功した。2.超臨界フルオロホルム以外の電解メディアに利用可能な超臨界流体を模索するとともに、発現効果と超臨界流体の種類を整理し、超臨界流体利用のための一般的指針を確立した。3.超臨界流体は温度・圧力によって媒体物性が変化することから、これら諸条件のナノシリンダーの形質や物性への影響を明確にし、超臨界流体利用による精密なナノ転写技術のための基盤的指針を確立した。高拡散性・高浸透性でありながら液体並の溶解力も兼備する超臨界流体をテンプレート合成のメディアに用いればナノ細孔などを有する複雑な基板に対しても細孔内部への効率的な充填物の輸送を行うことが出来、結果として非常に精密なナノ構造の転写と高いアスペクト比を有するナノ構造物の形成が予想される。このような着想に基づき、本研究は特異なメディア効果を有する超臨界流体中でのテンプレート電析法を利用した超精密なナノ構造の転写技術を構築しようとするものである。テンプレート電析法によってさまざまな機能特性をもつさまざまな種類のナノシリンダーアレイの形成が考えられるが、電界放射材料、異方導電性膜や水素吸蔵デバイスなどへの応用に焦点を絞り、充填物に銅、パラジウムといった金属材料やポリピロール、ポリチオフェンといった導電性高分子材料を対象にして、まずこれら電析物の構造および緻密性に対する超臨界流体のメディア効果について現象論および機構論の立場にたって系統的に検討する。ついで、これら材料の導電性、水素吸蔵能などの機能特性との一般的関連を解明して、各種デバイスへの応用を実施するための工学技術としての確立を目指す。これが本研究計画の戦略的基盤である。その方法論的原理は予備研究の成果に基づくものであり、本年度は下記の具体的研究計画に従って研究を進めた。1.平成21年度の研究で得られた銅ナノシリンダーの電界放射材料としての特性評価を行った。2.平成21年度の研究において形成された金属とポリカーボネート系ナノテンプレート殊複合材料においてはテンプレートタ溶解することなくそのまま異方導電性膜としての評価を行った。高拡散性・高浸透性でありながら液体並の溶解力も兼備する超臨界流体をテンプレート合成のメディアに用いれば、ナノ細孔などを有する複雑な基板に対しても細孔内部への効率的な充填物の輸送を行うことが出来、結果として非常に精密なナノ構造の転写と高いアスペクト比を有するナノ構造物の形成が予想される。このような着想に基づき、本研究は特異なメディア効果を有する超臨界流体中でのテンプレート電析法を利用した超精密なナノ構造の転写技術を構築しようとするものである。テンプレート | KAKENHI-PROJECT-21656205 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21656205 |
超臨界流体中でのテンプレート電析法を活用する機能性ナノシリンダーアレイの創製 | 電析法によってさまざまな機能特性をもつさまざまな種類のナノシリンダーアレイの形成が考えられるが、電界放射材料、異方導電性膜や水素吸蔵デバイスなどへの応用に焦点を絞り、充填物に銅、パラジウムといった金属材料やポリピロール、ポリチオフェンといった導電性高分子材料を対象にして、まずこれら電析物の構造および緻密性に対する超臨界流体のメディア効果について現象論および機構論の立場にたって系統的に検討した。ついで、これら材料の導電性、水素吸蔵能などの機能特性との一般的関連を解明して、各種デバイスへの応用を実施するための工学技術としての確立を目指した。その方法論的原理は予備研究の成果に基づくものであり、本年度は下記の具体的研究計画に従って研究を進めた。1.高アスペクト比からなるアルミナナノホールアレイを鋳型に採用し、パラジウム金属のナノシリンダーアレイを作製した。2.1で得られたパラジウムナノシリンダーアレイの水素吸蔵能を評価し、新規水素吸蔵デバイスとしての可能性を探索した。 | KAKENHI-PROJECT-21656205 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21656205 |
RNA-Seqを利用したイカ巨大軸索におけるRNA編集の解析とその生物学的意義 | 国内において実用化されている活イカの輸送・販売を利用して、生きた状態のケンサキイカを入手しRNA供与源とした。1個体のケンサキイカから以下の4つのRNA画分(細胞体・軸索内細胞質(左右)・周辺グリア細胞・筋肉)を抽出した。軸索内細胞質画分のRNA量が以下の解析に充分でなかったことから、既存の1細胞RNA-Seq法を参考にしてmRNAの増幅を行い、シーケンス解析に十分な量のcDNAを合成することができた。得られた3つのRNA画分および増幅cDNAから定法によってRNA-Seqライブラリーを作成し、Illumina HiSeqを用いて大量に配列決定した。得られた配列からCLC genomics work benchによってreference transcriptomeを作成し、BWA, GATK, snpEffを用いて、1個体のRNAに由来するにも関わらず多型的になる塩基サイト、およびその中でアミノ酸変異を伴うサイトを推定する方法を確立した。本解析により全53,109,631残基のうち、AtoGとして検出されるイノシン化RNA編集サイト候補150,108残基を推定した。そのうち3,271残基は軸索内画分およびに見られるが他の画分に見られず、軸索外におけるRNA編集サイトであることが示唆された。さらに遺伝子機能に着目して解析した結果、Synapsin, Synaptotagmin16,ADAR, Kv2などシナプスで働く遺伝子において、軸索内画分特異的に、かつアミノ酸置換を伴うRNA編集サイトを見出した。国内において実用化されている活イカの輸送・販売を利用して、生きた状態のケンサキイカを入手しRNA供与源とした。1個体のケンサキイカから以下の4つのRNA画分(細胞体・軸索内細胞質(左右)・周辺グリア細胞・筋肉)を抽出した。軸索内細胞質画分のRNA量が以下の解析に充分でなかったことから、既存の1細胞RNA-Seq法を参考にしてmRNAの増幅を行い、シーケンス解析に十分な量のcDNAを合成することができた。得られた3つのRNA画分および増幅cDNAから定法によってRNA-Seqライブラリーを作成し、Illumina HiSeqを用いて大量に配列決定した。得られた配列からCLC genomics work benchによってreference transcriptomeを作成し、BWA, GATK, snpEffを用いて、1個体のRNAに由来するにも関わらず多型的になる塩基サイト、およびその中でアミノ酸変異を伴うサイトを推定する方法を確立した。本解析により全53,109,631残基のうち、AtoGとして検出されるイノシン化RNA編集サイト候補150,108残基を推定した。そのうち3,271残基は軸索内画分およびに見られるが他の画分に見られず、軸索外におけるRNA編集サイトであることが示唆された。さらに遺伝子機能に着目して解析した結果、Synapsin, Synaptotagmin16,ADAR, Kv2などシナプスで働く遺伝子において、軸索内画分特異的に、かつアミノ酸置換を伴うRNA編集サイトを見出した。 | KAKENHI-PROJECT-26640118 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26640118 |
推奨身体活動量を満たす成人を増加させるための効果的な支援方法の検討に関する研究 | 本研究では、2006年に厚生労働省が策定した「健康づくりのための運動基準2006」で示されている推奨身体活動量(23メッツ・時/週)を満たしている成人の人口統計学的、心理的、社会的、および環境的関連要因を検討した。その結果、身体活動量増加を目的とした様々な支援プログラムを計画実施して行く際には、男女で異なった介入場面の設定が必要であること、さらには、運動セルフ・エフィカシー(運動実施に対する自信)を高めるなどの心理社会的アプローチだけでなく自宅近隣環境の整備や環境に対する認知の変容に焦点を当てたアプローチも有用であることが明らかとなった。本研究では、2006年に厚生労働省が策定した「健康づくりのための運動基準2006」で示されている推奨身体活動量(23メッツ・時/週)を満たしている成人の人口統計学的、心理的、社会的、および環境的関連要因を検討した。その結果、身体活動量増加を目的とした様々な支援プログラムを計画実施して行く際には、男女で異なった介入場面の設定が必要であること、さらには、運動セルフ・エフィカシー(運動実施に対する自信)を高めるなどの心理社会的アプローチだけでなく自宅近隣環境の整備や環境に対する認知の変容に焦点を当てたアプローチも有用であることが明らかとなった。本研究では、「健康づくりのための運動指針2006」における推奨身体活動量を満たしている者と満たしていない者の特徴の差異について検討した。インターネット調査会社の登録モニターを対象とし、人口統計学的変数(年齢、性別、婚姻状況、教育歴、職業の有無、世帯収入)および自記式による身体活動量を調査した。回答者5177名に対し、「健康づくりのための運動指針2006」を基準に、参加者をA群(推奨身体活動量を満たしている者)、B群(何らかの活動は行っているが推奨身体活動量を満たしていない者)、C群(不活発な者)に分類した。性別で層化した上で、推奨身体活動量の実施を従属変数とし、全ての人口統計学的変数を独立変数とした多項ロジスティック回帰分析を行った。「健康づくりのための運動指針2006」の基準で分類した3群の割合は、男性ではA群で30.3%、B群で44.6%、C群で25.0%、女性ではA群で22.9%、B群で52.4%、C群で24.7%であった。男性では、職業の有無、女性では年齢、婚姻状況、教育歴において有意な関連が認められた。すなわち、男性においては、有職者、女性においては、30歳代が推奨身体活動量を満たしていなかった。また、既婚女性、大学および大学院卒の学歴を持つ女性が推奨身体活動量を満たしている割合が高いことが明らかとなった。本研究の結果は、推奨身体活動の実施に関連している人口統計学的な要因には性差があり、身体活動量増加を目的とした取り組みを行っていく上でのターゲット集団の特定に有用なデータであることが示唆された。今後はさらに、推奨身体活動量を満たすことに関連する心理的、社会的および環境的側面の要因の検討を実施し、それらの結果に基づいて、推奨される身体活動の実施に興味・関心を持たせるような具体的な介入方法やプロモーション戦略を構築していく。本年度は、「健康づくりのための運動指針2006」における推奨身体活動量実施に関連する心理的、社会的、環境的要因について検討した。インターネット調査会社の登録モニターを性別、年齢階層、居住地域(都道府県別)において平成17年国勢調査における人口分布と比率が均等になるように層化した上で、20歳から59歳の対象者を無作為に抽出し、心理的要因(運動セルフ・エフィカシー、運動実施に伴う恩恵と負担)、社会的要因(運動ソーシャルサポート、医療従事者による運動の勧めの有無)、環境的要因(自宅の運動用具、運動施設へのアクセス、近隣の安全性、自宅周辺の景観、役割モデル、居住地)、人口統計学的要因および自記式による身体活動量の調査を実施した。有効回答者1932名に対し、推奨身体活動量の実施(23メッツ・時/週)を従属変数とし、全ての変数を独立変数とした多項ロジスティック回帰分析を行った。男女ともに運動セルフ・エフィカシー(男性:OR=2.13;女性:OR=2.72)および自宅の運動用具(男性:OR=1.55;女性:OR=1.41)は、推奨身体活動量実施と有意な正の関連が認められた。加えて、男性では運動ソーシャルサポート(OR=1.44)、女性では自宅周辺の景観(OR=1.60)においても推奨身体活動量実施と有意な正の相関がみられた。さらに女性のみにおいて、農村部在住(OR=0.50)、運動実施における負担(OR=0.47)は推奨身体活動量実施と有意な負の関連がみられた。これまで繰り返し報告されているセルフ・エフィカシーなどの心理的要因に加え、近年注目を集めている環境的要因にも関連が認められたことから、これまで実施されてきている対人支援に加え、環境支援の重要性も明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-20800054 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20800054 |
脂質メディエーターとしてのスフィンゴシン-1-リン酸の生理機能とその分子機構 | 1)血小板と血管生物学におけるSph-1-Pの役割解明(A)血小板に発現するEdgfamily受容体をRT-PCRで分析し、LPA受容体であるEdg2,4,7とSph-1P受容体のEdg6を同定した。(B)血小板膜結合スフィンゴシンキナーゼの精製を試み、これが新規の酵素である可能性を示すことによって、この酵素のアイソフォームの拡がりとそれぞれの独自の役割を示唆した。(C)血小板からのSph-1-PやLPAの放出を調べ、その二つの脂質のそれぞれ別々の生理的意義を示唆し、またそれらの放出機構の手がかりを掴んだ。(D)Sph-1-Pが血管の内皮細胞平滑筋細胞の受容体を通して、血管新生や平骨筋収縮等を引き起こしたり、病理的役割を果たしていることを示した。2)スフィンゴシンキナーゼの多様性これまで知られている2つのアイソフォーム(Sphk1,Sphk2)以外に、血小板特異的なキナーゼの存在を示唆すると共に、これとは別に新規のキナーゼSphk3をクローニングした。メラノーマに強く発現しているEdg5を介してRho、FAKなどの活性化が細胞運動制御に関与している可能性を示した。(A)スフィンゴシン1-リン酸受容体のEdg1,Edg6などがN末端にアスパラギン結合糖鎖構造を有し、この糖鎖の受容体のinternalizationや受容体のミクロドメインへの集積における役割を始めて明らかにした。(B)Edg6のリガンド結合アミノ酸部位をコンピューター予測に基づく変異体作成を通して、テネシー大学Tigyi教授との共同研究で明らかにした。1)血小板と血管生物学におけるSph-1-Pの役割解明(A)血小板に発現するEdgfamily受容体をRT-PCRで分析し、LPA受容体であるEdg2,4,7とSph-1P受容体のEdg6を同定した。(B)血小板膜結合スフィンゴシンキナーゼの精製を試み、これが新規の酵素である可能性を示すことによって、この酵素のアイソフォームの拡がりとそれぞれの独自の役割を示唆した。(C)血小板からのSph-1-PやLPAの放出を調べ、その二つの脂質のそれぞれ別々の生理的意義を示唆し、またそれらの放出機構の手がかりを掴んだ。(D)Sph-1-Pが血管の内皮細胞平滑筋細胞の受容体を通して、血管新生や平骨筋収縮等を引き起こしたり、病理的役割を果たしていることを示した。2)スフィンゴシンキナーゼの多様性これまで知られている2つのアイソフォーム(Sphk1,Sphk2)以外に、血小板特異的なキナーゼの存在を示唆すると共に、これとは別に新規のキナーゼSphk3をクローニングした。メラノーマに強く発現しているEdg5を介してRho、FAKなどの活性化が細胞運動制御に関与している可能性を示した。(A)スフィンゴシン1-リン酸受容体のEdg1,Edg6などがN末端にアスパラギン結合糖鎖構造を有し、この糖鎖の受容体のinternalizationや受容体のミクロドメインへの集積における役割を始めて明らかにした。(B)Edg6のリガンド結合アミノ酸部位をコンピューター予測に基づく変異体作成を通して、テネシー大学Tigyi教授との共同研究で明らかにした。新しい脂質メデイエーター、スフィンゴシン-1-リン酸(Sph-1-P)の役割とその分子機構の解明を課題とする本研究の初年度における取り組みとして、以下に述べるような成果を得た。1.血小板におけるSph-1-Pの役割解明をめざすプロジェクトでは、(1)血小板に発現するEdgfamily受容体をRT-PCR出分析し、LPA受容体であるEdg2、4、7とリガンド不明のEdg6を同定した(FEBS Lett.印刷中)。(2)血小板膜結合スフィンゴシンキナーゼの精製を試み、これが新規の酵素である可能性を示すことによって、この酵素のアイソフォームの拡がりとそれぞれの独自の役割を示唆した。(3)血小板からのSph-1-PやLPAの放出を調べ、その二つの脂質のそれぞれ別々の生理的意義を示唆し、またそれらの放出機構の手がかりを掴んだ(Blood印刷中)。3.Edg1,3,5,6などSph-1受容体の細胞における機能やその情報伝達機構に関しての初歩的成果を上げ、今後の研究の展望を切り開いた(1999分子生物学会の4発表など)。これらの成果の上に立って次年度では、(1)血小板やその他の新規スフィンゴシンキナーゼのクローニングやその活性制御機構の解明、生理的役割の追求、(2)細胞からのLPA、SPh-1-Pの生成、放出機構の解明、(3)種々のSph-1-pEdg受容体の、それに関与している三量体Gタンパク質や低分子Gタンパク質の役割を含めての情報伝達機構の解明、に集中的に取り組みたい。当初目標に掲げた当該研究期間の主な研究成果は以下の通りである。1)スフィンゴシン1-リン酸受容体のEdg1,Edg 6がN末端にアスパラギン結合糖鎖構造を有し、この糖鎖の受容体のinternarizationや受容体のミクロドメインへの集積における役割を始めて明らかにした(JBC in press)またEdg受容体がその細胞膜発現過程で、N末端領域の切断などのプロセシングを受けることを初めて見い出した(未発表論文)。 | KAKENHI-PROJECT-11480174 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11480174 |
脂質メディエーターとしてのスフィンゴシン-1-リン酸の生理機能とその分子機構 | 2)Yeast two hybrid法を用いてスフィンゴシンキナーゼに結合するタンパク質としてRanBPMとPECAM1を見い出し、この酵素の制御機構の研究に糸口を開いた(未発表論文)。3)血小板細胞からのLPA、スフィンゴシン1-リン酸の生成、放出機構の解明し血管生物学におけるリゾリン脂質の役割の重要性を指摘した(Blood,2000)。4)Edg 6のリガンド結合アミノ酸部位をテネシー大学Tigyi教授との共同研究で明らかにした(未発表論文)。5)スフィンゴシン1-リン酸によるメラノーマ細胞の運動制御がこの細胞に特異的に発現するEdg 5を介して起ることを見い出した。6)ガングリオシドやサルファチド発現による細胞膜リモデリングから、これらの糖脂質のミクロドメイン形成やインテグリン発現における役割を明らかにした(JBC in press)。これらの成果はまだ初歩的ではあるが、今後の本研究の発展の重要な礎となったと評価している。 | KAKENHI-PROJECT-11480174 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11480174 |
自己制御の形成プロセスにおける感情の役割の解明とその臨床的応用 | 平成27年度は、問題解決スキル訓練に含まれる介入要素の中から怒り感情の緩和につながるものを同定することを目的とした。甲信越地方の公立小学校に在籍する小学6年生3学級101名を対象として、1回45分の問題解決スキル訓練のセッションを計2回実施した。対象者は、クラスごとに以下の3つの介入条件に振り分けられた。すなわち、1「即時予期群」:対人葛藤場面の視聴後、すぐに問題解決スキルの個別ワークに移る、2「討論媒介群」:対人葛藤場面の視聴後、35名でのグループディスカッションを行ってから、問題解決スキルの個別ワークに移る、3「リラクセーション媒介群」:対人葛藤場面の視聴後、漸進的筋弛緩法によるリラクセーションを行ってから、問題解決スキルの個別ワークに移る、であった。各群における介入は、Takahashi et al.(under reviewing)が日本人向けに開発した全8回のプログラムを参考に実施した。怒り感情については、セッション中の状態怒りの変化と、全2回の介入の前後における特性怒りの変化の両者が評価された。介入の結果、討論媒介群とリラクセーション媒介群においてセッション中の状態怒りが有意に緩和され、即時予期群の状態怒りおよび各群の特性怒りに変化は認められなかった。この結果から、思春期の感情の自己制御において、リラクセーションによる身体的沈静化だけでなく、他者との対話が有効である可能性が示唆された。環境との相互作用と自己制御との関連性を、毎日通う学校という生態学的妥当性の高い場において明らかにした点に、本研究の特色があるといえる。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。研究者のこれまでの研究成果から、自己制御の形成プロセスにおいては、環境にある多様な刺激への注意が重要であることが明らかになっている。一方、怒り感情喚起時には特に嫌悪刺激のみに対して選択的注意が向けられてしまうことが知られている。そこで、平成26年度は、怒り感情の喚起による自己制御の形成阻害効果について検証した。公立小学校に在籍する小学6年生71名を対象として、1回45分の問題解決スキル訓練のセッションを計2回実施した。訓練は、Takahashi et al. (under reviewing)が日本人向けに開発した全8回のプログラムのうち、対人行動を行った際の相手の反応(環境からのフィードバック)を多様な観点から観察するトレーニングを行った。訓練中には対人葛藤場面の映像を視聴し、視聴直後の怒り感情をVAS(0100点)で測定した。また、日常的な怒りやすさの指標である「特性怒り」および対人行動の自己制御の指標である「反応の結果予期」の測定を訓練前後に行った。訓練の結果、対人葛藤場面視聴後の怒り感情および特性怒りと「反応の結果予期」の改善度との間には有意な関連が見られず、怒り感情による自己制御の形成阻害効果は認められなかった(結果A)。一方、参加児童全体の「特性怒り」および「反応の結果予期」は有意に改善し、全2回の介入で一定の成果が得られることが追認された(結果B)。以上の結果から、思春期における感情の不安定さは自己制御の形成を必ずしも妨げるものではなく(結果A)、自己制御の形成支援が適切に行われることが思春期の感情制御にも寄与する可能性が示唆された(結果B)。平成27年度は、問題解決スキル訓練に含まれる介入要素の中から怒り感情の緩和につながるものを同定することを目的とした。甲信越地方の公立小学校に在籍する小学6年生3学級101名を対象として、1回45分の問題解決スキル訓練のセッションを計2回実施した。対象者は、クラスごとに以下の3つの介入条件に振り分けられた。すなわち、1「即時予期群」:対人葛藤場面の視聴後、すぐに問題解決スキルの個別ワークに移る、2「討論媒介群」:対人葛藤場面の視聴後、35名でのグループディスカッションを行ってから、問題解決スキルの個別ワークに移る、3「リラクセーション媒介群」:対人葛藤場面の視聴後、漸進的筋弛緩法によるリラクセーションを行ってから、問題解決スキルの個別ワークに移る、であった。各群における介入は、Takahashi et al.(under reviewing)が日本人向けに開発した全8回のプログラムを参考に実施した。怒り感情については、セッション中の状態怒りの変化と、全2回の介入の前後における特性怒りの変化の両者が評価された。介入の結果、討論媒介群とリラクセーション媒介群においてセッション中の状態怒りが有意に緩和され、即時予期群の状態怒りおよび各群の特性怒りに変化は認められなかった。この結果から、思春期の感情の自己制御において、リラクセーションによる身体的沈静化だけでなく、他者との対話が有効である可能性が示唆された。環境との相互作用と自己制御との関連性を、毎日通う学校という生態学的妥当性の高い場において明らかにした点に、本研究の特色があるといえる。当初の予定どおり、介入プログラム前後の時系列データを収集し、怒り感情と介入効果の関連性を検討することができた。仮説とは異なり、怒り感情は重要な介入要素にならないという結論になったものの、怒り感情はむしろ自己制御の形成支援によって変化し得る従属変数であることが明らかになった。本研究が想定する思春期の自己制御の形成支援法の有効性が損なわれることなく、介入の新たな意義が見出されたという点で、本研究計画は順調に進展しているといえる。27年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PUBLICLY-26118708 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-26118708 |
自己制御の形成プロセスにおける感情の役割の解明とその臨床的応用 | 本研究課題は、学校教育現場において活用される研究知見の提示を目的としたものであり、学校教員からの協力が必要不可欠である。そのため、学校教員対象の研修会等で研究知見および具体的トレーニング方法を紹介することで、研究成果を積極的に発信するとともに、研究参加希望校の募集を行う。また、学校教員および児童生徒を対象とした簡易なストレス調査を各小中学校に提案し、希望する学校にて実施する。これによって、本研究が提案するトレーニング方法に対する潜在的なニーズを把握し、各小中学校責任者と共有することで、介入を必要とする学校および学級に介入を着実に提供していく。現時点において、研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題点等は浮上していない。27年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PUBLICLY-26118708 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-26118708 |
出水後の河道植生の回復とマイクロハビタットの関係 | 河川生態系において出水によるかく乱とそこからの再生は生態系の動的な維持に重要な役割を持っている。多摩川では2007年に大規模な出水が発生したので,出水による生育地の変化と河川敷に生育している植物の生育のかかわりを検討した。調査の対象とした植物は,上流域で岩場に生育するユキヤナギ,中流域の礫河原に生育するカワラノギク,下流域に生育し,かく乱による裸地に依存して生育するウラギク,中流域の水域に生育し,出水によって流下するカワシオグサであり,それぞれ特徴的であった。我々は河川生態系の固有種の生育環境を明らかにするための研究を1970年代から続けてきたが、この10年ほどの間にマイクロハビタットの重要性が明らかになってきた。ハビタットとしては同一とみなされる場合にも、(細粒土砂の堆積や蘚苔類の生育の有無など)マイクロハビタットの違いによって植物に対する影響がまったく異なることがあることがみいだされたからである。しかし、上流域の岩場を生育地とするユキヤナギでは蘚苔類の生育が実生の定着を助け、中流域の砂礫地を生育地とするカワラノギクでは蘚苔類の生育が実生の定着の妨げとなるように、未だ体系的な理解は得られていない。そこで、首都圏を中心に日本の河川を比較しながら、(1)河川の上流域の岩場のユキヤナギ、(2)中流域の砂礫地のカワラノギク、(3)下流域の干潟のウラギク、(4)中流域の礫質の水域に生育するカワシオグサに着目して、マイクロハビタットの生成、生育初期の植物の反応、出水による破壊からの再生、実験的なアプローチを行って、マイクロハビタットを体系的に理解する。さらに、(5)河川工学の観点から(1)(4)について総合的な理解を深める。河川生態系において出水によるかく乱とそこからの再生は生態系の動的な維持に重要な役割を持っている。多摩川では2007年に大規模な出水が発生したので,出水による生育地の変化と河川敷に生育している植物の生育のかかわりを検討した。調査の対象とした植物は,上流域で岩場に生育するユキヤナギ,中流域の礫河原に生育するカワラノギク,下流域に生育し,かく乱による裸地に依存して生育するウラギク,中流域の水域に生育し,出水によって流下するカワシオグサであり,それぞれ特徴的であった。1.上流域のユキヤナギ2007年の台風9号による大規模な出水が上流域の岩場に生育するユキヤナギの開花に与える影響を明らかにすることを目的として、多摩川上流域における環境の異なる4つのユキヤナギ個体群において、本種個体のサイズ、開花の有無、開花数、マイクロバビタットを調査した。出水の翌春においては、北向き斜面に比べ、南向き斜面にて有花個体の割合が高く、さらに開花数が多い個体が多かった。2.中流域のカワラノギク多摩川中流のカワラノギクの生育環境を記載するため、2月に気象ステーションを設置した。卓越風の方向とは反対方向の風も吹くことが確認されたので、北西から南東に向かって流れる多摩川において、カワラノギクの種子が上流側にも散布されることが説明できた。3.下流域のウラギク多摩川河口の大師橋付近の干潟でウラギクの調査を開始した。4.中流域の水域の付着藻類カワシオグサ早瀬にコドラートを設置して、礫にマーキングし、付着藻類の発達状況とコドラートの物理環境の関係を検討するため、藻類の発達と河床の物理環境、特に堆積物との関係を調べたところ、シルトや粘土などの無機態堆積物が河床に生育する藻類の上に蓄積することで、藻類の生育状況が悪化し、藻類が剥離しやすくなるとの考察をまとめることができた。5.土砂動態多摩川水系秋川・浅川および比較のため荒川水系の入間川の渓流域および中流域で地形測量・河床材料調査を行い、山地河道における土砂動態と中流域における土砂動態および、それらの関連性について検討を行った。その結果、隣り合う渓流であっても生産される土砂の粒度組成やその量は大きく異なっており、れら二つの渓流が合流するとその景観はそのいずれとも異なり、合流部が河相の変換点となっていることを見出した。1.上流域のユキヤナギ上流域の植生について、攪乱頻度の違いがユキヤナギ個体群の遺伝的構造に与える影響を明らかにするために、ユキヤナギのマイクロサテライトマーカー10遺伝子座を開発した。多摩川ほか数河川の局所個体群についてSSR解析を行ったところ、どの河川も遺伝的多様性が低いことが明らかになった。また、2007年の大規模出水がユキヤナギの開花に与える影響を明らかにするために、2008年と同様の開花についての調査を2009年4分月に実施したところ、前年に比べ、開花個体の割合が増加した。2.中流域のカワラノギク実生の成長と相対光量子束密度の関係を被陰実験を行って検討したところ、カワラノギクの成長にはばらつきが大きかった。カワラノギクの変異性を簡便に調査できるようにするため、頭花の舌状花の色とそう果の冠毛の色を多摩川、相模川、鬼怒川で比較したところ、河川間で差がみとめられた。3.下流域のウラギク干潟の縁におけるヨシの被度とウラギクの被度の関係を帯状区を用いて調査した。ヨシの被度が90%以上の区にはウラギクは生育していなかった。 | KAKENHI-PROJECT-20380024 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20380024 |
出水後の河道植生の回復とマイクロハビタットの関係 | ウラギクが永続的な土壌シードバンクを有するかについては過去の発芽実験によって有さないことが予測されていたが、土壌を採取して発芽実験を行い、確認した。4.中流域のカワシオグサ継続的な調査により、剥離して流下する藻類由来の有機物負荷量を推定し、その原因について検討した。5.地質と植物の分布ユキヤナギについて、マクロには日本列島の地史との関連から分布について検討し、ミクロには生育地におけるミクロな分布と基質の関係について検討を行った。6.これらの成果はそれぞれの対象種についてのマイクロハビタットから発展して、河道植生の成り立ちを理解する上で有用な情報が多く含まれている。上流域において、出水が河岸の岩場のユキヤナギ個体群に与える影響を明らかにするために、出水から3年経過した個体群における開花状況について調査を実施した。北向き斜面の個体群においては、開花個体の割合が前年度に比べて増加した。東北地方から四国地方の15河川のユキヤナギ個体群についてSSR多型解析を実施した。河川間では遺伝的分化が確認されたものの、同一河川内は遺伝的に固定されている場合が多かった。中流域のカワラノギクについては、保全区の再造成に伴って、実生の出芽時期を調査した。実験室の中では20°C一定で発芽速度が最高であるので、3月下旬に出芽すると考えられるが、現実には5月下旬にも出芽がみられた。実験室における結果と野外の結果の橋渡しになる知見が必要である。下流域のウラギクは減少が著しいので影響を与えないよう調査を見合わせた。出水後の付着藻類の回復については、付着物の回復を調べるため、河床付着物への人工的な出水のインパクト実験を実施した。人工的に与えた出水規模に応じて付着藻類の現存量は小さくなるが、その後一定時間が経過すると、それぞれの付着藻類量は同程度まで回復した。また、河床を単位面積当たりでみた場合、出水直後の現存量は石のサイズごとに異なるが、回復するにつれて河床面で一様になることが示唆された。土木工学からの知見は、多摩川の上流から永田地区に至るまでの河床材料サイズを調べ、その規定要因を探った。1/40より急勾配では、ステッププールが形成されると共に礫径は河床勾配で規定された。ユキヤナギが自生しているような1/40より緩勾配かつ扇頂より上流では、洪水末期に堆積する細粒土砂が表層を覆い、礫径よりは細かかったので、河原植物は安定しにくい。一方、扇状地区間では洪水流量と河床勾配で河床材料サイズが規定されるが、カワラノギク生育地近くでは堰の影響でアーマー化しており、ヨシで覆われていた。上流域ではユキヤナギ、中流域ではカワラノギク、下流域ではウラギク、中流域の水域では付着藻類を対象にして研究している。上流域のユキヤナギについて、昨年度に続き、SSRマーカーを用いた集団遺伝解析を実施した。由良川の集団は加古川(兵庫県)と遺伝的に近縁であり、高梁川の集団は、園瀬川(徳島県)と遺伝的に近縁であった。2011年度は、ユキヤナギの開花と萌芽の経年変化の調査について取りまとめを行った。その結果、古幹数が開花の有無の変化に影響を与えた可能性が示唆された。ユキヤナギの分布と地質の関係を検討した。堆積層の厚さを見積もる方法と,地質と土砂の量の因果関係が不明であった。そこで,前者については,堆積層の厚さと砂州形状の関係,後者については,流域の地すべりマップと山間集落の立地からの定性的な把握手法を検討した。中流域のカワラノギクは、本年度は中規模の出水があり、水側の個体群が流出した。 | KAKENHI-PROJECT-20380024 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20380024 |
養育者の子ども表象が子どものアタッチメントに及ぼす影響プロセスの解明 | 本研究は、妊娠期における母親の子どもについての表象が、生産後の母親の養育行動を媒介として、子どものアタッチメントの発達にどのように影響するのか、そのプロセスやメカニズムについて解明することを目的とした縦断研究であり、本年度はその二年目の成果について報告する。妊娠期から生後18ヶ月にわたる縦断データの結果より、妊娠期に子どもについての表象が「安定型(子どもについての語りが豊かで柔軟で一貫しており、子どもに対する情緒的関与や心理的受容が高い。また喜びや自信などの感情が強い)」であった母親は、「非関与型(子どもへの情緒的関与に欠けており、子どもからの心理的距離が強い)」や「歪曲型」(混乱や葛藤が強く、表象内にある種の歪みや偏りが見られる)であった母親よりも、生後2・6ヶ月の母子相互作用場面において、子どもに対してより敏感であったり、ポジティブな情緒的トーンをより多く表出していた。また、こうした母親の敏感性やポジティブな情緒的トーンの高さが、生後18ヶ月の子どものアタッチメント安定性と関連しており、子どもに対してより敏感でポジティブな情緒的トーンを多く表出していた母親の子どもほど、生後18ヶ月において母親に対するアタッチメントが安定していたことが示された。このことより、妊娠期における母親の子ども表象は、出産後の母親の子どもへの行動に影響し、ひいてはそれが子どものアタッチメント安定性に関連することが認められ、母親の養育行動が媒介的役割を果たしていることが示唆された。また、家族の情緒的雰囲気や夫婦関係、子どもの気質、母親の抑うつ・不安などもまた、直接的、間接的に子どものアタッチメンチに影響しており、これらが複合的に重なり合いながら、子どものアタッチメントの発達に影響していることも確かめられた。今後は、さらに詳細にデータ分析を推し進め、包括的なプロセスモデルの全解明を目指していきたいと考える。本研究は、妊娠期における養育者の子ども表象が養育行動を媒介として、後の子どものアタッチメントの発達にどのように影響するのか、社会文脈的要因(家族の情緒的雰囲気・夫婦関係etc.)や子どもの要因(気質etc.)、母親の個人的要因(抑うつ・不安etc.)をも考慮に入れながら、そのプロセスやメカニズムについて、縦断的手法を用いて検討することを主要な目的とした研究である。本年度はまず、妊娠期における母親の子ども表象が生後2ヶ月における母親の養育行動にどのように影響するのかについて縦断的検討を行った。その結果、妊娠期に「安定型」(描写が豊かで一貫性があり、子どもに対する情緒的関与や受容が高い)であった母親は、「非関与型」(描写が乏しく冷ややかで、子どもからの心理的距離が強い)や「歪曲型」(描写にまとまりがなく一貫性が低く、不安や葛藤等の感情が強い)であった母親よりも、生後2ヶ月における母子相互作用場面において、子どものシグナルに対してより敏感に反応し、またポジティブな情緒的トーンをより多く表出するという結果が認められた。また、情動の読み取り傾向に関して、妊娠期に歪曲型であった母親は、安定型の母親よりも、乳児の表情写真に対して、「苦痛」の感情やどの情動カテゴリーにも当てはまらない例外的な感情(侮蔑など)をより多く読み取る傾向が見られた。今後は、こうした母親の養育行動や認知の特徴が、ひいては後の子どものアタッチメントの発達にどのように影響するのか、さらに検討を進めていくことが必要であると思われる。本研究は、妊娠期における母親の子どもについての表象が、生産後の母親の養育行動を媒介として、子どものアタッチメントの発達にどのように影響するのか、そのプロセスやメカニズムについて解明することを目的とした縦断研究であり、本年度はその二年目の成果について報告する。妊娠期から生後18ヶ月にわたる縦断データの結果より、妊娠期に子どもについての表象が「安定型(子どもについての語りが豊かで柔軟で一貫しており、子どもに対する情緒的関与や心理的受容が高い。また喜びや自信などの感情が強い)」であった母親は、「非関与型(子どもへの情緒的関与に欠けており、子どもからの心理的距離が強い)」や「歪曲型」(混乱や葛藤が強く、表象内にある種の歪みや偏りが見られる)であった母親よりも、生後2・6ヶ月の母子相互作用場面において、子どもに対してより敏感であったり、ポジティブな情緒的トーンをより多く表出していた。また、こうした母親の敏感性やポジティブな情緒的トーンの高さが、生後18ヶ月の子どものアタッチメント安定性と関連しており、子どもに対してより敏感でポジティブな情緒的トーンを多く表出していた母親の子どもほど、生後18ヶ月において母親に対するアタッチメントが安定していたことが示された。このことより、妊娠期における母親の子ども表象は、出産後の母親の子どもへの行動に影響し、ひいてはそれが子どものアタッチメント安定性に関連することが認められ、母親の養育行動が媒介的役割を果たしていることが示唆された。また、家族の情緒的雰囲気や夫婦関係、子どもの気質、母親の抑うつ・不安などもまた、直接的、間接的に子どものアタッチメンチに影響しており、これらが複合的に重なり合いながら、子どものアタッチメントの発達に影響していることも確かめられた。今後は、さらに詳細にデータ分析を推し進め、包括的なプロセスモデルの全解明を目指していきたいと考える。 | KAKENHI-PROJECT-07J07786 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07J07786 |
赤外円二色性とラマン光学活性による中分子・極性分子の高精度構造解析法の開発 | 新奇分子の構造解析は研究全体のボトルネックとなりうる段階であり、特に極性分子・柔軟分子・中分子に対して実用的な解析法は限られている。代表者はこれまでVCD(赤外円二色性)分光法を用いた構造解析法を種々開発してきたが、本国際共同研究ではVCDと相補的な分光法ROA(ラマン光学活性)を用いる。糖や脂質など各種分子についてROA計算条件を最適化し、VCDと併用で分子構造を高精度に決定する方法論を開発するとともに、得られる知見をVCD計算の最適化へとフィードバックする。また化学ラベル化によって、ラベル部位の周辺構造の情報を抽出して構造解析するROA方法論を開発する。内定年度:2018新奇分子の構造解析は研究全体のボトルネックとなりうる段階であり、特に極性分子・柔軟分子・中分子に対して実用的な解析法は限られている。代表者はこれまでVCD(赤外円二色性)分光法を用いた構造解析法を種々開発してきたが、本国際共同研究ではVCDと相補的な分光法ROA(ラマン光学活性)を用いる。糖や脂質など各種分子についてROA計算条件を最適化し、VCDと併用で分子構造を高精度に決定する方法論を開発するとともに、得られる知見をVCD計算の最適化へとフィードバックする。また化学ラベル化によって、ラベル部位の周辺構造の情報を抽出して構造解析するROA方法論を開発する。 | KAKENHI-PROJECT-18KK0394 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18KK0394 |
鍼灸オントロジーの構築による視覚障害者への鍼灸学の専門教育の高度化の研究 | 【研究目的】オントロジーとは、概念とその背景知識を形式化・体系化したもので、知識処理の基盤である。本研究では、鍼灸分野をドメインとしたオントロジーを構築し、これを用いて視覚障害者へ鍼灸概念を教育する教材を作成する。特に鍼灸の専門教育のうち、経絡と経穴に関する教材の高度化を目標とした。【研究方法】まず当センターで用いている書籍『基礎理療学I(東洋医学概論)』および『基礎理療学II(経絡経穴概論)』(日本ライトハウス)から鍼灸用語を抽出し、オントロジー構築に用いる概念を定義した。次に、抽出した用語に対する概念を決定した。この各概念に対する定義文は、抽出元の書籍に基づいて作成し、概念の属性および概念間の関係を付与した。概念間の関係には、上位下位の関係を表すis-a関係と部分全体の関係を表すpart-of関係を定義した。これらの関係を体系化、組織化して、計22項目の鍼灸オントロジーを構築した。構築には、MacBook Air(13インチ1.8GHzデュアルコアIntel Core i7)と「法造オントロジーエディタVer12.9.0」を用いた。修正を繰り返し、最終的に必要な粒度を持つオントロジーを得た後、計22項目から鍼灸教育指導要綱に準じた4項目のオントロジーを選出した。次に点字と点図で概念間の関係を構造的に理解可能とした、経絡と経穴に関する教材を作成して、実際に講義で4週間用いた。最後に視覚障害者17名の協力の下で試験を行い、学習効果を評価した。【研究成果】学習効果を確認した結果、オントロジー教材を用いて学習した視覚障害者10名の経絡と経穴に関する試験の得点は、用いて学習しなかった視覚障害者7名より有意に高かった。この結果から鍼灸オントロジーの構築は、視覚障害者への鍼灸専門教育に有益であることが示唆された。なおこの研究内容は、第63回福祉情報工学研究会で発表する。【研究目的】オントロジーとは、概念とその背景知識を形式化・体系化したもので、知識処理の基盤である。本研究では、鍼灸分野をドメインとしたオントロジーを構築し、これを用いて視覚障害者へ鍼灸概念を教育する教材を作成する。特に鍼灸の専門教育のうち、経絡と経穴に関する教材の高度化を目標とした。【研究方法】まず当センターで用いている書籍『基礎理療学I(東洋医学概論)』および『基礎理療学II(経絡経穴概論)』(日本ライトハウス)から鍼灸用語を抽出し、オントロジー構築に用いる概念を定義した。次に、抽出した用語に対する概念を決定した。この各概念に対する定義文は、抽出元の書籍に基づいて作成し、概念の属性および概念間の関係を付与した。概念間の関係には、上位下位の関係を表すis-a関係と部分全体の関係を表すpart-of関係を定義した。これらの関係を体系化、組織化して、計22項目の鍼灸オントロジーを構築した。構築には、MacBook Air(13インチ1.8GHzデュアルコアIntel Core i7)と「法造オントロジーエディタVer12.9.0」を用いた。修正を繰り返し、最終的に必要な粒度を持つオントロジーを得た後、計22項目から鍼灸教育指導要綱に準じた4項目のオントロジーを選出した。次に点字と点図で概念間の関係を構造的に理解可能とした、経絡と経穴に関する教材を作成して、実際に講義で4週間用いた。最後に視覚障害者17名の協力の下で試験を行い、学習効果を評価した。【研究成果】学習効果を確認した結果、オントロジー教材を用いて学習した視覚障害者10名の経絡と経穴に関する試験の得点は、用いて学習しなかった視覚障害者7名より有意に高かった。この結果から鍼灸オントロジーの構築は、視覚障害者への鍼灸専門教育に有益であることが示唆された。なおこの研究内容は、第63回福祉情報工学研究会で発表する。 | KAKENHI-PROJECT-23911026 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23911026 |
大地震後の継続使用性を有するプレストレストコンクリート連層耐震壁の構造性能 | 本研究では,損傷制御型の構造システムの一つであるプレキャスト・プレストレストコンクリート(以下,PCaPC)構造における連層耐震壁部材をモデル化した構造実験を実施し,得られた実験データの分析および解析ツールを用いたパラメトリック分析を行った。2018年度は,前年度に製作した壁端部の拘束筋等の配筋を実験変数とする片持ち形式のPCaPC造耐震壁試験体2体の載荷実験を実施するとともに,プレキャスト壁部材,PC鋼材およびエネルギー吸収鉄筋にファイバーモデルを適用することで耐震壁部材全体をモデル化した数値解析プログラム(Opensees)を用いたパラメトリック分析を行った。載荷実験では,いずれの試験体も,大変形後においても残留変形や残留ひび割れ幅が大幅に抑制される結果となり,地震後の継続使用性の観点から非常に優れた構造性能を示した。また,数値解析プログラムにより,載荷実験で得られたPCaPC造耐震壁の履歴復元力特性および各部の挙動を良好な精度で評価できることを示すとともに,エネルギー吸収鉄筋の設置位置や鉄筋量に関するパラメトリック分析を行い,それぞれがエネルギー吸収性能や残留変形に及ぼす影響を明らかにした。また,20162018年度の研究期間全体では,2017年度に実施したPC鋼材付着を実験変数とする試験体2体の実験結果と併せて,数少ないPCaPC造耐震壁の構造性能,損傷および限界状態に関する実験データを取得するとともに,日本建築学会や米国コンクリート協会のPCaPC造耐震壁に関する設計規準・指針類に示される評価手法を用いて各特性点の推定を行い,上述の成果と併せて,PCaPC造耐震壁を実建築物に適用するための設計法の確立に資する知見を得ることができた。プレキャストプレストレストコンクリート造(PCaPC造)連層耐震壁の基本的な力学挙動,およびPC鋼材の付着性状がPCaPC造連層耐震壁の残留変形,損傷性状に及ぼす影響の把握を目的とした片持ち形式のPCaPC造連層耐震壁試験体に対する載荷実験について,試験体の構造性能に関する事前検討を行い,試験体設計を完了した。試験体の実験変数は,PC鋼材種(ボンドおよびアンボンド)とし,地震力に対する抵抗機構が明快なアンボンドPC耐震壁のみならず,実建築物への適用の可能性も勘案して,実験例が極めて少ないボンドPC耐震壁についても検討を行い,アンボンドPC耐震壁も含めて国内の設計体系に対応した設計法を確立することに主眼を置いたものとしている。試験体の設計に際しては,日本建築学会や米国コンクリート協会のPCaPC造耐震壁に関する設計規準・指針類や,2010年にE-Defenseで実施された実大4層PCaPC造連層耐震壁付き架構の振動台実験をはじめとする既往のPCaPC造耐震壁を対象とした実験研究に関する文献調査を実施し,載荷実験の試験体設計や載荷計画などの策定に活用した。具体的には,文献調査から得られた知見に基づいて,PCaPC造耐震壁における各材料(PC鋼材,コンクリートおよび普通強度鉄筋)の応力状態や損傷状態に対応した設計クライテリア(使用限界状態,修復限界状態および終局限界状態)を設定するとともに,試験体に適切なエネルギー吸収性能を付与するための普通強度鉄筋等を用いたエネルギー吸収デバイスの設計や,十分な変形性能を保証するための壁端部拘束筋の配筋詳細などの試験体詳細に反映させた。当初の研究計画では,平成28年度中にPC鋼材種(ボンドおよびアンボンド)を実験変数とした片持ち形式のPCaPC造連層耐震壁試験体に対して載荷実験を実施し,PCaPC造連層耐震壁の基本的な力学挙動を把握するとともに,PC鋼材の付着性状が残留変形,損傷性状に及ぼす影響に関して検討を行う予定であったが,耐震壁試験体の設計における事前検討の結果,試験体の設計変更が必要となり,試験体設計の修正および試験体詳細の確定に時間を要したため,年度内に載荷実験を実施することができなかった。以上より,本研究の進捗を「やや遅れている」と判断した。プレキャストプレストレストコンクリート造(PCaPC造)連層耐震壁の基本的な力学挙動,およびPC鋼材の付着性状や壁端部の拘束筋配筋がPCaPC造連層耐震壁の残留変形,損傷性状に及ぼす影響の把握を目的とした片持ち形式のPCaPC造連層耐震壁試験体に対する載荷実験について,PC鋼材付着を実験変数とする試験体2体の製作および載荷実験,ならびに,壁端部における拘束筋等の配筋を実験変数とする試験体2体の製作を完了した。載荷実験では,いずれの試験体も,大変形後においても残留変形や残留ひび割れ幅が大幅に抑制される結果となり,地震後の継続使用性の観点から非常に優れた構造性能を示した。また,得られた実験データからPCaPC造耐震壁部材の履歴復元力特性上の特性点(プレキャスト壁部材の離間,PC鋼材およびエネルギー吸収鉄筋の降伏,壁脚部コンクリートの圧壊など)を特定し,数少ないPCaPC造耐震壁の構造性能に関する実験データを取得することができた。また,日本建築学会や米国コンクリート協会のPCaPC造耐震壁に関する設計規準・指針類に示される評価手法を用いて各特性点の推定を行うとともに,プレキャスト壁部材,PC鋼材およびエネルギー吸収鉄筋にファイバーモデルを適用することで耐震壁部材全体をモデル化した数値解析プログラム(Opensees)による挙動予測を行った。その結果,載荷実験で得られたPCaPC造耐震壁の履歴復元力特性および各部の挙動を良好な精度で評価できることを示した。 | KAKENHI-PROJECT-16K06572 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K06572 |
大地震後の継続使用性を有するプレストレストコンクリート連層耐震壁の構造性能 | 当初の研究計画では,平成29年度中に壁端部の拘束筋等の配筋を実験変数としたPCaPC造連層耐震壁試験体に対する載荷実験を実施し,損傷性状や変形性能に及ぼす影響を検証する予定であったが,実験装置の使用状況が過密であったことにより,年度内に試験体を製作することはできたものの,載荷実験を実施することができなかった。以上より,本研究の進捗を「やや遅れている」と判断した。本研究では,損傷制御型の構造システムの一つであるプレキャスト・プレストレストコンクリート(以下,PCaPC)構造における連層耐震壁部材をモデル化した構造実験を実施し,得られた実験データの分析および解析ツールを用いたパラメトリック分析を行った。2018年度は,前年度に製作した壁端部の拘束筋等の配筋を実験変数とする片持ち形式のPCaPC造耐震壁試験体2体の載荷実験を実施するとともに,プレキャスト壁部材,PC鋼材およびエネルギー吸収鉄筋にファイバーモデルを適用することで耐震壁部材全体をモデル化した数値解析プログラム(Opensees)を用いたパラメトリック分析を行った。載荷実験では,いずれの試験体も,大変形後においても残留変形や残留ひび割れ幅が大幅に抑制される結果となり,地震後の継続使用性の観点から非常に優れた構造性能を示した。また,数値解析プログラムにより,載荷実験で得られたPCaPC造耐震壁の履歴復元力特性および各部の挙動を良好な精度で評価できることを示すとともに,エネルギー吸収鉄筋の設置位置や鉄筋量に関するパラメトリック分析を行い,それぞれがエネルギー吸収性能や残留変形に及ぼす影響を明らかにした。また,20162018年度の研究期間全体では,2017年度に実施したPC鋼材付着を実験変数とする試験体2体の実験結果と併せて,数少ないPCaPC造耐震壁の構造性能,損傷および限界状態に関する実験データを取得するとともに,日本建築学会や米国コンクリート協会のPCaPC造耐震壁に関する設計規準・指針類に示される評価手法を用いて各特性点の推定を行い,上述の成果と併せて,PCaPC造耐震壁を実建築物に適用するための設計法の確立に資する知見を得ることができた。平成28年度に予定していた載荷実験を早急に実施し,得られた実験結果を分析するとともに,平成29年度に実施予定の載荷実験の計画を並行して進めることで,発生した遅れを解消する予定である。平成29年度に予定していた載荷実験を早急に実施し,得られた実験結果の分析も進めることにより,地震後の継続使用性を考慮したPCaPC造連層耐震壁の設計法の確立に資する検討結果のとりまとめを行う予定である。当初の研究計画では,平成28年度中にPC鋼材種(ボンドおよびアンボンド)を実験変数とした片持ち形式のPCaPC造連層耐震壁試験体に対して載荷実験を実施し,PCaPC造連層耐震壁の基本的な力学挙動を把握するとともに,PC鋼材の付着性状が残留変形,損傷性状に及ぼす影響に関して検討を行う予定であったが,耐震壁試験体の設計における事前検討の結果,試験体の設計変更が必要となり,試験体設計の修正および試験体詳細の確定に時間を要したため,年度内に載荷実験を実施することができず,次年度に繰り越すこととなった。以上の理由により,主に試験体製作および実験実施に関する費用に残額が生じた。平成28年度に予定していた試験体製作および載荷実験を残額分の予算を用いて早急に実施するとともに,平成29年度に実施予定の載荷実験の計画策定を並行して進め,前述の実験が終了した後に,今年度の予算を用いて引き続き載荷実験を実施する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-16K06572 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K06572 |
三次元動作解析システムによる強制吸気・呼気時の胸郭運動評価 | 三次元動作解析システムを用いたOptoelectronic pletysmography(以下、OEP)を用いて、排痰補助装置による強制吸気・呼気を行った際の胸郭運動を解析した。健常者では、±30cmH2O以上の圧では随意の肺活量より多い換気が得られたが、筋ジストロフィー患者ではより低い圧でも肺活量より多い換気が得られた。また、それらの換気は多くは胸郭下部ないし腹部の体積変化の寄与が大きかった。仰臥位と45°リクライニング位での換気については明らかな差異を認めなかった。本研究は、機器による強制吸気・呼気をはじめとするそれぞれの手技を三次元動作解析システムを用いて評価することにより、最終的に有効な呼吸リハビリテーションにつなげることを目的とする。平成25年度は、前年度に確立された実験系を使用して、健常者20名を対象に、仰臥位とセミファウラー位で、排痰補助装置を使用した強制吸気・呼気時の上部胸郭、下部胸郭、腹部のそれぞれの体積変化について検討した。セミファウラー位では、仰臥位に比べ強制吸気・呼気時の体積変化が少なく、仰臥位では±30cmH2Oより高い圧で被験者の自力での深呼吸より体積変化が大きくなったのに対し、セミファウラー位では自力での深呼吸を強制吸気・呼気でこえることはできなかった。一方、同時に測定した換気量は、2つの体位での差異は認められず、静脈還流量など他の要因の関与が推察された。さらに、排痰補助装置を使用する代表的疾患である筋ジストロフィー患者4例において排痰補助装置使用時の体積変化について検討した。筋ジストロフィー患者においては、吸気・呼気圧が±20cmH2Oであっても、最大吸気時の体積は全体積およびすべての区域の体積が随意時にくらべ増大した。健常者においては±20cmH2Oでは上部胸郭の体積変化はみられなかったが、筋ジストロフィー患者では増大した。以上に関しては、関連した学会において2題の発表を行い、次年度に2題の発表を予定している。疾患についてはまだ少数例であり、今後症例を重ねて検討を続ける予定である。本研究は、最終的に機器による強制吸気・呼気をはじめとするそれぞれの手技を三次元動作解析システムを用いて評価することにより、最終的に有効な呼吸リハビリテーションにつなげることを目的とする。初年度は、自力での呼吸、深吸気・呼気と機器による深吸気・呼気による胸郭運動の比較を行うことにより、換気の状況、胸郭の上部・下部での不均等の有無、程度を評価するための実験系の確立および健常者における評価を行う予定であった。まず、実験系については仰臥位とセミファウラー位について健常者で予備実験を行い、三次元動作解析システムによる肺気量指標と電子スパイロメータを用いて測定したそれとは高い相関を示し、信頼性に問題ないと思われた。次に、健常者における分析では、仰臥位とセミファウラー位について安静呼吸、深呼吸、咳嗽、ハフィングについての胸郭運動の評価を14名に行った。咳嗽、ハフィングについては、胸郭運動に個人差が大きくさらに例数をふやして検討する必要があると思われた。機器による強制吸気・呼気における検討も同じく14名に行ったが、設定圧を上げると全例で肺気量が増大し、30cmH2Oより高い圧になると自力での肺活量をこえることがわかった。この実験では、対象20名を予定しておりさらに継続して細かく検討を加える予定である。本年度の研究より、三次元動作解析システムの信頼性が確認され、健常者における強制吸気・呼気時の胸郭運動の特徴が明らかにされつつある。本実験についてはさらに継続し、検討を続ける予定である。本研究は、機器による強制吸気・呼気をはじめとするそれぞれの手技を三次元動作解析システムを用いて評価することにより、最終的に有効な呼吸リハビリテーションにつなげることを目的とする。平成25年度までに健常者での検討を行ったが、被験者は男性のみであったため、平成26年度は性差を検討するために健常女性被験者についてのデータ収集を開始した。さらに、排痰補助装置を使用する代表的疾患である筋ジストロフィー患者4例において体位を変えた場合の排痰補助装置使用時の胸腹部体積変化について検討した。健常者では45°リクライニング位では腹部の体積変化が小さくなっていたが、筋ジストロフィー患者においてはむしろ腹部の体積変化が大きくなる傾向が認められた。また、他の代表的疾患である頸髄損傷患者における検討を開始し、脊髄損傷患者が多い施設での実験システムの構築を開始し、予備的研究として安静時呼吸と深呼吸の呼吸パターンを検討した。頸髄損傷患者5例での検討では、いずれの症例も安静呼吸時に比べ深呼吸時の体積変化は、健常者と比較して上部胸郭、下部胸郭コンパートメントの増加は少なく、腹部コンパートメントの増加が大きかった。以上の知見に関しては、次年度に関連した学会において3題の発表を予定している。今後は、性差についての検討を行うとともに、筋ジストロフィー、脊髄損傷患者においてさらに検討を重ね、それぞれの疾患特性を明らかにするとともに、排痰補助装置の作用についての検討を続ける予定である。本研究は、機器による強制吸気・呼気をはじめとするそれぞれの手技を三次元動作解析システムを用いて評価することにより、最終的に有効な呼吸リハビリテーションにつなげることを目的として行った。 | KAKENHI-PROJECT-24500613 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24500613 |
三次元動作解析システムによる強制吸気・呼気時の胸郭運動評価 | 平成27年度は、平成26年度に行った筋ジストロフィー患者4例における排痰補助装置使用時の胸腹部体積変化についての知見、ならびに頸髄損傷患者5例の仰臥位における安静呼吸時ならびに深呼吸時の胸腹部体積変化の知見につき、日本リハビリテーション医学会ならびにISPRMにて発表を行った。また、頸髄損傷患者について新たに体位による違いを検討した。頸髄損傷患者5例に対し、仰臥位、リクライニング位(30°および60°)における胸腹部体積変化を計測し、安静呼吸時は仰臥位と30°で換気量が大きく、深呼吸時は仰臥位が最も換気量が大きいとの知見が得られた。これは健常者が呼吸の深さにかかわらず仰臥位の換気量が最大であったのと異なる特徴であった。この内容については、日本呼吸ケア・リハビリテーション学会にて発表を行った。排痰補助装置(Mechanical Insufflation-exsufflation)を用いた際の頸髄損傷者の胸腹部体積変化については、脊髄損傷専門施設への導入に時間がかかり、平成27年度中にはまとまった結果は得られなかった。研究成果について論文作成中である。今後、論文作成を進めるとともに、頸髄損傷についての検討を重ね次の研究につなげたい。三次元動作解析システムを用いたOptoelectronic pletysmography(以下、OEP)を用いて、排痰補助装置による強制吸気・呼気を行った際の胸郭運動を解析した。健常者では、±30cmH2O以上の圧では随意の肺活量より多い換気が得られたが、筋ジストロフィー患者ではより低い圧でも肺活量より多い換気が得られた。また、それらの換気は多くは胸郭下部ないし腹部の体積変化の寄与が大きかった。仰臥位と45°リクライニング位での換気については明らかな差異を認めなかった。疾患群の症例が集まらず、また新たに開始した脊髄損傷患者が多数得られる施設でのシステム構築に時間を要した。リハビリテーション医学今後は、健常者においては女性被験者を集めることで性差の検討を行う。また、脊髄損傷専門施設でのシステム構築をさらに進めるとともに、排痰補助装置の導入をはかり、検討を重ねる。神経筋疾患に関してはさらに症例を追加する。健常者については本年度の実験で一定の成果を得たが、代表者の異動もあり、疾患群の症例が予定より集まらなかった。実験系の確立に予想以上に時間を要したこと、被験者の確保が進まなかったことより健常者の実験が予定20名のところ14名までしか終了できなかった。実験計画の遅れにより、消耗品費が少なかったこと、学会参加をとりやめたことなどによる。当初計画していた気管挿管患者等急性期患者での検討は難しい状況であり、今後は慢性期の神経筋疾患、脊髄損傷の症例を対象に実験を継続する予定である。該当する症例が得られる施設においてシステムを構築する予定である。研究計画に大きな変更はない。ただ、三次元動作解析システムのカメラ台数の関係で座位での検討は難しい状況である。仰臥位、セミファウラー位に関しては、予定通りに進めたい。健常者の実験を終了した段階で、成果を発表するとともに、脊髄損傷や神経筋疾患等換気障害を呈する患者につき同様の実験を行いたい。疾患例計測に必要な消耗品、成果発表のための旅費、参加費、論文作成費用、校閲費用、報告書作成費用に充当する。研究代表者の異動、実験計画の遅れにより、消耗品費が少なかったこと、学会参加をとりやめたことなどによる。 | KAKENHI-PROJECT-24500613 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24500613 |
超分子架橋剤を導入した新規エラストマー微粒子の合成と強靭な透明フィルムへの応用 | 本課題の研究目的の一つである強靭な微粒子フィルムを作製するためには、そもそも微粒子フィルムが脆いと言われている要因である微粒子界面間に着目することは必要不可欠である。そこで今回は、微粒子フィルムをアニーリングすることで微粒子界面のポリマー鎖の相互貫入を促進させ、本微粒子フィルムの力学的特性のさらなる向上、およびロタキサン架橋微粒子フィルムの強靭性メカニズムを明らかにすることを目的に実験を行った。自然乾燥によって作製したフィルムは、ロタキサン架橋剤(RC)および化学架橋剤の仕込み量を増加させると、破断エネルギーは小さくなった。これは、架橋点間距離の減少に伴い、微粒子表面の高分子鎖の絡まり合いが生じにくくなるため、微粒子界面からの破断が生じやすくなったと考えられる。次に微粒子のガラス転移温度よりも十分に高い温度で微粒子フィルムをアニーリングした場合、ほとんどのフィルムにおいてアニーリング後に破断ひずみ・破断応力は大きくなる傾向を示し、その積である破断エネルギーは、アニール時間の1/2乗の間に、一定時間まで直線関係が認められた。化学架橋微粒子フィルムを用いた場合は、微粒子内部の架橋剤量が増えるとラテックスフィルムの破断エネルギーは減少したが、ロタキサン架橋した微粒子のフィルムは、微粒子内部のRCの仕込み量が増えても破断エネルギーは減少せず、むしろ増加傾向を示した。これは、RCの導入量が増えても、アニーリング時に架橋点が可動であるため、十分な相互貫入が生じ、さらに微粒子表面から破断しにくくなることで内部のRCの緩和効果がより顕著に表れたためだと予測される。以上の結果から、RCを導入したラテックスフィルムは化学架橋剤とは異なり、アニーリング処理により力学的特性を飛躍的に向上できることを明らかにした。本成果は筆頭著者として学術論文に掲載され、各種国内学会、国際学会で発表を行った。当該年度において、研究テーマは進展していると考えられる。本年度は、微粒子界面の相互貫入に着目し、ラテックスフィルムのさらなる強靭化を目指して実験を行ってきた。既報と同様に、化学架橋微粒子からなるラテックスフィルムは、アニーリング後に示す各フィルムの破断エネルギーは架橋剤の増加に伴い減少する傾向にあった。しかし、開発したロタキサン架橋微粒子のラテックスフィルムは、アニールに伴い増加傾向にあった。これは、微粒子内部の架橋点が動くことにより、アニーリングの際に微粒子表面間の高分子鎖がより絡まり合いやすくなったと結論付けている。本結果は筆頭著者として論文を執筆し、アクセプトされたため、おおむね順調に進展していると考える。1ロタキサン架橋構造が微粒子フィルムの力学的特性に与える影響の調査微粒子内部に導入するロタキサン架橋剤の可動領域を拡張し、微粒子フィルムのさらなる機能性向上のため、ロタキサン架橋剤の軸鎖長を変化させた微粒子フィルムをそれぞれ作製し、架橋点のミクロな変化がマクロな微粒子フィルムの力学的特性にどのような影響を与えるか調査を進めている。2微粒子フィルム評価の確立本研究の目的の一つである微粒子フィルムの強靭性のメカニズムの解明には、微粒子の形状(変形)、微粒子界面間の相互貫入を詳細に調査することは必要不可欠である。現在、原子間力顕微鏡法や散乱法等の多角的評価法により、微粒子の変形や力学的特性がどのように変化するのか調査を行っている。3生体適合性微粒子の開発上記以外にも、生体適合性を示す高分子微粒子の合成・フィルムの力学的特性の向上等にも携わり、微粒子フィルムのさらなる機能化の向上にも努めている。本課題の研究目的の一つである強靭な微粒子フィルムを作製するためには、そもそも微粒子フィルムが脆いと言われている要因である微粒子界面間に着目することは必要不可欠である。そこで今回は、微粒子フィルムをアニーリングすることで微粒子界面のポリマー鎖の相互貫入を促進させ、本微粒子フィルムの力学的特性のさらなる向上、およびロタキサン架橋微粒子フィルムの強靭性メカニズムを明らかにすることを目的に実験を行った。自然乾燥によって作製したフィルムは、ロタキサン架橋剤(RC)および化学架橋剤の仕込み量を増加させると、破断エネルギーは小さくなった。これは、架橋点間距離の減少に伴い、微粒子表面の高分子鎖の絡まり合いが生じにくくなるため、微粒子界面からの破断が生じやすくなったと考えられる。次に微粒子のガラス転移温度よりも十分に高い温度で微粒子フィルムをアニーリングした場合、ほとんどのフィルムにおいてアニーリング後に破断ひずみ・破断応力は大きくなる傾向を示し、その積である破断エネルギーは、アニール時間の1/2乗の間に、一定時間まで直線関係が認められた。化学架橋微粒子フィルムを用いた場合は、微粒子内部の架橋剤量が増えるとラテックスフィルムの破断エネルギーは減少したが、ロタキサン架橋した微粒子のフィルムは、微粒子内部のRCの仕込み量が増えても破断エネルギーは減少せず、むしろ増加傾向を示した。これは、RCの導入量が増えても、アニーリング時に架橋点が可動であるため、十分な相互貫入が生じ、さらに微粒子表面から破断しにくくなることで内部のRCの緩和効果がより顕著に表れたためだと予測される。以上の結果から、RCを導入したラテックスフィルムは化学架橋剤とは異なり、アニーリング処理により力学的特性を飛躍的に向上できることを明らかにした。本成果は筆頭著者として学術論文に掲載され、各種国内学会、国際学会で発表を行った。当該年度において、研究テーマは進展していると考えられる。本年度は、微粒子界面の相互貫入に着目し、ラテックスフィルムのさらなる強靭化を目指して実験を行ってきた。 | KAKENHI-PROJECT-18J21706 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J21706 |
超分子架橋剤を導入した新規エラストマー微粒子の合成と強靭な透明フィルムへの応用 | 既報と同様に、化学架橋微粒子からなるラテックスフィルムは、アニーリング後に示す各フィルムの破断エネルギーは架橋剤の増加に伴い減少する傾向にあった。しかし、開発したロタキサン架橋微粒子のラテックスフィルムは、アニールに伴い増加傾向にあった。これは、微粒子内部の架橋点が動くことにより、アニーリングの際に微粒子表面間の高分子鎖がより絡まり合いやすくなったと結論付けている。本結果は筆頭著者として論文を執筆し、アクセプトされたため、おおむね順調に進展していると考える。1ロタキサン架橋構造が微粒子フィルムの力学的特性に与える影響の調査微粒子内部に導入するロタキサン架橋剤の可動領域を拡張し、微粒子フィルムのさらなる機能性向上のため、ロタキサン架橋剤の軸鎖長を変化させた微粒子フィルムをそれぞれ作製し、架橋点のミクロな変化がマクロな微粒子フィルムの力学的特性にどのような影響を与えるか調査を進めている。2微粒子フィルム評価の確立本研究の目的の一つである微粒子フィルムの強靭性のメカニズムの解明には、微粒子の形状(変形)、微粒子界面間の相互貫入を詳細に調査することは必要不可欠である。現在、原子間力顕微鏡法や散乱法等の多角的評価法により、微粒子の変形や力学的特性がどのように変化するのか調査を行っている。3生体適合性微粒子の開発上記以外にも、生体適合性を示す高分子微粒子の合成・フィルムの力学的特性の向上等にも携わり、微粒子フィルムのさらなる機能化の向上にも努めている。 | KAKENHI-PROJECT-18J21706 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J21706 |
半透過性相変化物質を用いた直接太陽熱蓄熱 | パッシブなソ-ラシステムの中に,太陽熱蓄熱を目的として蓄熱材に相変化物質(PCM)を用いて潜熱蓄熱を行う蓄熱壁あるいは屋根と呼ばれるものがある。これらは面受熱型(SHT型)であり,外気側にある壁あるいは容器の表面は高い温度になり,外気側への輻射や対流による熱損失が多く,蓄熱効率の面で不利な点がある。この欠点を改良する方策の1つとして,太陽光に対して透過性を有するPCMを用いて,本研究代表者らが提案した体積受熱型(VHT型)ソ-ラコレクタと同様に,太陽光の内部透過に基づく内部加熱効果を利用して蓄熱する方式が考えられる。このような系では,表面温度が低いと同時に,融解が内部から起こり,高い蓄熱効率が期待される。そこで本研究では,半透過性PCMを用いた直接太陽熱蓄熱に関して,平板系を対象として,まず屋内において一定入射量下にて設置角度,PCM厚さを変化させて蓄熱過程の系内温度分布の経時変化を実測するとともに,2次元熱移動・運動量移動を考慮した理論解析を試みて両結果を比較し,諸因子の蓄熱特性への影響を検討した。その際,SHT型の潜熱蓄熱およびVHT型の顕熱蓄熱も比較対象とした。ついで屋外において同様に蓄熱特性を調べ,屋内実験の結果とあわせて本方式の適用性について検討を加えた。その結果以下のような結論を得た。1)理論解析結果は実験結果と傾向的に良い一致を示し,本理論解析はおおむね妥当である。2)VHT型の潜熱蓄熱は,SHT型の潜熱蓄熱やVHT型の顕熱蓄熱より蓄熱特性が優れている。3)VHT型の潜熱蓄熱においては,蓄熱過程全般での内部加熱効果,融解過程と液相時での自然対流の流動・伝熱効果が蓄熱特性に大きく影響する。これらの効果は設置角度,試料厚さにより異なる寄与を示す。4)屋外実験の実験範囲では,VHT型の潜熱蓄熱における実用上の最適な設置角度は太陽の南中時の入射角である。パッシブなソ-ラシステムの中に,太陽熱蓄熱を目的として蓄熱材に相変化物質(PCM)を用いて潜熱蓄熱を行う蓄熱壁あるいは屋根と呼ばれるものがある。これらは面受熱型(SHT型)であり,外気側にある壁あるいは容器の表面は高い温度になり,外気側への輻射や対流による熱損失が多く,蓄熱効率の面で不利な点がある。この欠点を改良する方策の1つとして,太陽光に対して透過性を有するPCMを用いて,本研究代表者らが提案した体積受熱型(VHT型)ソ-ラコレクタと同様に,太陽光の内部透過に基づく内部加熱効果を利用して蓄熱する方式が考えられる。このような系では,表面温度が低いと同時に,融解が内部から起こり,高い蓄熱効率が期待される。そこで本研究では,半透過性PCMを用いた直接太陽熱蓄熱に関して,平板系を対象として,まず屋内において一定入射量下にて設置角度,PCM厚さを変化させて蓄熱過程の系内温度分布の経時変化を実測するとともに,2次元熱移動・運動量移動を考慮した理論解析を試みて両結果を比較し,諸因子の蓄熱特性への影響を検討した。その際,SHT型の潜熱蓄熱およびVHT型の顕熱蓄熱も比較対象とした。ついで屋外において同様に蓄熱特性を調べ,屋内実験の結果とあわせて本方式の適用性について検討を加えた。その結果以下のような結論を得た。1)理論解析結果は実験結果と傾向的に良い一致を示し,本理論解析はおおむね妥当である。2)VHT型の潜熱蓄熱は,SHT型の潜熱蓄熱やVHT型の顕熱蓄熱より蓄熱特性が優れている。3)VHT型の潜熱蓄熱においては,蓄熱過程全般での内部加熱効果,融解過程と液相時での自然対流の流動・伝熱効果が蓄熱特性に大きく影響する。これらの効果は設置角度,試料厚さにより異なる寄与を示す。4)屋外実験の実験範囲では,VHT型の潜熱蓄熱における実用上の最適な設置角度は太陽の南中時の入射角である。半透過性相変化物質(以後、PCMと略す)を用いた直接太陽熱蓄熱に関して、蓄熱屋根(水平平板系、傾斜平板系)、蓄熱壁(垂直平板)における蓄熱特性を明らかにするための屋外モデル実験に先立ち、屋内において、潜熱蓄熱材である半透過性PCMの水平、傾斜(30°C、60°C)及び垂直平板試料層をハロゲンランプにて一定時間加熱融解させ、その後自然冷却により凝固させる予備実験を行った。この予備実験において、PCMの相変化に伴う体積変化と液相時の流動(自然対流)が測定上の問題となった。前者については、当初、弾性を有する側壁の採用を検討したが、これは製作上困難であるため、側壁に枝管を設置することにより対処した。後者については、温度測定点を3次元格子点とすることにした。予備実験の結果、固相部分では主に底面側から融解し、液相部分では自然対流が発生し、この対流が液相時の蓄熱過程に大きく影響を及ぼすことが認められた。潜熱蓄熱に対する比較対象であり、液相時の蓄熱過程に相当する顕熱蓄熱について、半透過性液体であるシリコンオイルを用いた屋内実験を行った。 | KAKENHI-PROJECT-01550729 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01550729 |
半透過性相変化物質を用いた直接太陽熱蓄熱 | この実験結果より、内部透過に伴って発生する層内自然対流は、液体の厚さ、光学的厚さ、動粘度、入射輻射熱量ならびに境界条件に依存することが認められた。また、設置角度により層内自然対流及び度合が異なり、温度分布等に及ぼす影響が明確になった。以上の検討において、層内自然対流と輻射の相互干渉効果が種々の因子と関連づけて定量的に明らかにされた。なお、顕熱蓄熱に関する検討を、化学工業会第55年会(平成2年4月)にて発表する予定である。屋外モデル実験は今春からの予定で建物屋上(地上約7m)において、日射量、気温、風速等の気象条件及び試料層の温度を連続記録できるようにし、現在、試料容器等を検討中である。半透過性相変化物質(以後,PCMと略す)を用いた直接太陽熱蓄熱は体積受熱型であり,蓄熱特性の面で有利であると予想される。前年度に引き続き,蓄熱屋根(水平平板系,傾斜平板系)および蓄熱壁(垂直平板系)における蓄熱特性を明らかにするため,種々検討を加えてきている。前年度よりPCMの相変化時の体積膨張が試料容器(コレクタ)の破損をもたらすという問題があり,これの解決に時間を要した。そのため,屋外実験の開始が遅れ,冬季の屋外実験の結果しか得られなかった。また,理論解析は照射熱量一定の屋内実験系に対するものでさえ複雑なものとなり,解析手法は大枠で確立できたもののいくつかの問題点が残っている。以下,現段階までに得られた研究結果の概要を述べる。屋内において,パラフィンワックスによる潜熱蓄熱実験とシリコンオイルによる顕熱蓄熱実験をコレクタ設置角度を水平から垂直まで種々変化させて垂直照射条件下で行った。加えて,表面加熱系である面受熱型についても実験を行った。その結果,体積受熱型の蓄熱は面受熱型の蓄熱より優れていること,体積受熱型の潜熱蓄熱は体積受熱型の顕熱蓄熱より蓄熱効率が高いことが明らかになった。これは,体積受熱型では内部加熱となり,表面温度が低く抑えられるためであり,特に潜熱蓄熱では内部融解の効果も加わるためである。設置角度は垂直照射ということもあって蓄熱効率にはほとんど影響しなかったが,液相での自然対流のパタ-ン(温度分布)には影響した。また,理論計算結果は実験結果と傾向的に一致した。さらに屋外実験においても,体積受熱型の潜熱蓄熱の有利さを認めるとともに,設置角度の蓄熱効率に及ぼす影響が明らかになった。なお,以上の結果を化学工学会第56年会(平成3年3月,東京)にて発表する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-01550729 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01550729 |
マガキの新規なクモ糸様タンパク質の機能解析および制御 | クモ糸タンパク質と類似するアミノ酸配列モチーフを持ち、マガキの貝殻形成を担うと考えられるタンパク質Shelkのうち、特にShelk2についての生物学的な機能解明を目指して、in vivoと、in vitroの両面から検証を試みた。まず、生体内(in vivo)におけるShelk2タンパク質の機能を調べるため、マガキに対しRNA干渉法(RNAi)を用いてshelk2遺伝子をノックダウンし、貝殻形成への影響を確認した。マガキ幼生では、生育阻害(致死)固体の大量発生、という結果が前年に引き続き再現良く得られた。そこで、幼生での試験は諦め、マガキ成体の閉殻筋(貝柱)にdsRNAを注射することで遺伝子ノックダウンを行ったところ、貝殻再生部分の稜柱構造形成に異常が見られたため、引き続き再現性の確認を行う予定である。さらに、生体外(in vitro)における機能を調べるため、濁度測定実験とSEM観察を行った。その結果、炭酸カルシウム結晶形成において、マガキShelk2由来ペプチドの、特にPYY配列が構造決定のカギとなりうることが示唆された。濁度測定時には、Shelk2由来のペプチドの多くは炭酸カルシウム微結晶そのものの形成を阻害したのに対して、SEM観察に用いた長時間の結晶化過程では、対照と比べて結晶の粒径が大きくなった。このことから、各ペプチドが結晶「核」として機能しているというよりも、むしろ結晶成長の過程において関与している可能性が大きいことが予想された。Shelk2由来の各ペプチド配列の組合せが、複雑な貝殻形状の形成に関与していると考えられ、今後のより詳細な解析で明らかにしたい。前年までに、マガキの近縁種であるイワガキ、シカメガキ、アメリカガキ等から、shelk2の相同遺伝子を特定したが、詳細な解析の結果、Shelk2タンパク質には、(G/S)(G/N)S[A]nおよびG(R/Q)N[A]nという、特徴的な2種類のポリアラニンモチーフが存在し、さらにこれらのマガキ近縁種間においては、前述したモチーフ単位での挿入・欠失が起こっていることが、アミノ酸配列での相同性比較により明らかとなった。一部の研究において軌道修正を行ったものの、そのほかの進捗は順調に推移している。前年度までの研究成果は論文としてまとめて公開でき、また今年度の研究成果の一部も既に論文を投稿している。マガキの外套膜おより貝殻中における、Shelk2タンパク質の局在を確認するため、免疫化学的手法を用いた研究を引き続き行う。それにより得られた結果は、今年度の研究成果と共に、Shelk2の機能に関する論文にまとめる。クモ糸タンパク質と類似するアミノ酸配列モチーフを持ち、マガキの貝殻形成を担うと考えられるタンパク質「Shelk」について、生物学的な機能解明を目指すにあたり、in vivoと、in vitroの両面から検証を試みている。まず、生体内(in vivo)におけるShelkタンパク質の機能を調べるため、マガキに対しRNA干渉法(RNAi)を用いてshelk遺伝子をノックダウンし、貝殻形成への影響を確認した。マガキ幼生に対して遺伝子ノックダウンを行った結果、mRNAの発現量の減少、および生育阻害(致死)固体の大量発生、という結果が得られた。果たしてこれが、幼生初期における貝殻原型の形成阻害に伴う影響なのかを確認するべく、引き続き再現性の確認を行う予定である。また、新たに見つかったクモ糸様タンパク質Shelk2に関しては、in vitro実験系において貝殻の主成分である炭酸カルシウムの結晶形成に与える影響を調べ、さらに抗Shelk2抗体を作製する目的で、抗原となる組換えタンパク質の作製を試みた。しかし、β-シート構造を取りうるポリアラニン領域が大半を占めるShelk2の組換えタンパク質作製は困難を極め、現在までにそのN-末端部分配列に対象を制限して、組換え体の作製と精製が完了した。さらに、マガキの近縁種であるイワガキ、シカメガキ、アメリカガキ等からも、shelk2の相同遺伝子と考えられる遺伝子配列を特定した。その一方で、ゲノミックサザンブロッティング法により、マガキや近縁種のshelk2様遺伝子を解析した結果、マルチジーンであることが新たに判明した。これにより、元となった遺伝子の特定が難しくなり、予定していた生物種間での遺伝子の進化的解析は事実上不可能であると判断し、これを中止することとした。遺伝子に代わり、アミノ酸配列での相同性比較を行うことを検討している。クモ糸タンパク質と類似するアミノ酸配列モチーフを持ち、マガキの貝殻形成を担うと考えられるタンパク質Shelkのうち、特にShelk2についての生物学的な機能解明を目指して、in vivoと、in vitroの両面から検証を試みた。まず、生体内(in vivo)におけるShelk2タンパク質の機能を調べるため、マガキに対しRNA干渉法(RNAi)を用いてshelk2遺伝子をノックダウンし、貝殻形成への影響を確認した。マガキ幼生では、生育阻害(致死)固体の大量発生、という結果が前年に引き続き再現良く得られた。そこで、幼生での試験は諦め、マガキ成体の閉殻筋(貝柱)にdsRNAを注射することで遺伝子ノックダウンを行ったところ、貝殻再生部分の稜柱構造形成に異常が見られたため、引き続き再現性の確認を行う予定である。さらに、生体外(in vitro)における機能を調べるため、濁度測定実験とSEM観察を行った。その結果、炭酸カルシウム結晶形成において、マガキShelk2由来ペプチドの、特にPYY配列が構造決定のカギとなりうることが示唆された。濁度測定時には、Shelk2由来のペプチドの多くは炭酸カルシウム微結晶そのものの形成を阻害したのに対して、SEM観察に用いた長時間の結晶化過程では、対照と比べて結晶の粒径が大きくなった。 | KAKENHI-PROJECT-10J00742 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J00742 |
マガキの新規なクモ糸様タンパク質の機能解析および制御 | このことから、各ペプチドが結晶「核」として機能しているというよりも、むしろ結晶成長の過程において関与している可能性が大きいことが予想された。Shelk2由来の各ペプチド配列の組合せが、複雑な貝殻形状の形成に関与していると考えられ、今後のより詳細な解析で明らかにしたい。前年までに、マガキの近縁種であるイワガキ、シカメガキ、アメリカガキ等から、shelk2の相同遺伝子を特定したが、詳細な解析の結果、Shelk2タンパク質には、(G/S)(G/N)S[A]nおよびG(R/Q)N[A]nという、特徴的な2種類のポリアラニンモチーフが存在し、さらにこれらのマガキ近縁種間においては、前述したモチーフ単位での挿入・欠失が起こっていることが、アミノ酸配列での相同性比較により明らかとなった。一部の研究において軌道修正を行ったものの、そのほかの進捗は順調に推移している。前年度までの研究成果は論文としてまとめて公開でき、また今年度の研究成果の一部も既に論文を投稿している。マガキの外套膜おより貝殻中における、Shelk2タンパク質の局在を確認するため、免疫化学的手法を用いた研究を引き続き行う。それにより得られた結果は、今年度の研究成果と共に、Shelk2の機能に関する論文にまとめる。 | KAKENHI-PROJECT-10J00742 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J00742 |
新しい「法と経済学」による社会保障法の動態分析 | 平成19年度は、前年度に引き続き、医療保障制度について経済学的な知見を導入した分析をするめた。とくに新制度派経済学や取引費用経済学の知見をもとに、わが国め医療政策のあり方を検討した。検討にあたっては特に参照したのは、A. S. Preker、A. Hardingらの研究である。Prekerらの分析は、医療サービス市場のコンテスタビリティと情報の非対称性をもとに医療サービスの分類を試みるものである。この作業をもとに、情報の非対称性と市場の競争性、市場への参入可能性を基本的な視点として、近年の医療制度改革(特に第5次療法改正)について検討を行った。この作業では、特に、医療法上の広告規制、医療計画、医療機能情報提供制度、事業者団体による競争制限行為を題材として取り上げた。外来診療と入院医療、慢性疾患と急性疾患などの疾病の煩型に応じて医療サービスの性格が異なること、これに対応して、医療サービス市場のあり方や規制、情報提供のあり方も異なったものとなる可能性があることを指摘した。この研究の成果の一部は、雑誌論文として公表した。このほか、医療・介護サービスにおける情報提供体制のあり方についても検討を行った。検討の成果の一部は、2008年に論文として公表することを予定している。設備備品費については、以上の作業に必要な基礎的文献の整備と資料収集のために用いた。また、旅費については、本研究の参考となる学会や研究会への参加と報告、資料収集などに使用した。本年度は、「法と経済学」に関連する基礎的文献の検討を中心に進めた。とくに市場と組織のあり方に関する取引費用経済学や産業組織論の文献を中心に検討をおこない、わが国の医療法制を分析する上での示唆を求めた。このような作業を通じて得られた知識の一部は、アメリカの医療制度における反トラスト法(独占禁止法)の適用が拡大されていく過程について検討した論文を執筆する際に参考にした。また、上記の課題と平行して、本年度は医療・介護分野における社会保険システムの検討を進めた。この検討作業では、伝統的なリスク分散から保険事故の予防・被保険者の健康管理へと社会保険制度の役割が変化していることを確認した。保険事故の発生を防止する予防的な保険給付の拡大にともない、伝統的な保険者、被保険者の役割及び権利義務関係に変化が生じる可能性を検討した。このような変化のひとつとして、伝統的には故意の事故招致などを理由としていた給付制限法理に変化が生じる可能性を指摘し、これに批判的な観点から検討をおこなった。このほか、被保険者に対する情報提供のあり方及びケアマネジメントの役割、予防給付や保健事業における被保険者の費用負担のあり方、保険者による継続的な健康管理の下での被保険者の権利保護の問題などを検討を加えた。これらの問題については、医療経済学からの研究成果もみられるところであり、これらの成果を踏まえて、さらに検討を進めることとした。本年度は、医療サービス及び医療サービス市場の特質を明らかにし、法制度の分析への示唆を求めることに重点を置いて研究をすすめた。とくに本年度は、新制度派経済学や取引費用経済学の知見をもとに医療政策のあり方を検討したA.S.Preker、A.Hardingらの研究について中心的に検討した。Prekerらの分析は、医療サービス市場のコンテスタビリティと情報の非対称性をもとに医療サービスの分類を試みるものであり、これらの文献の検討をもとに、アメリカの医療制度についての検討を行うとともに、転換期にあるわが国の医療法および医療保険法の分析をすすめる上での示唆を求めた。また、以上の作業を通じて得られた知見の一部は、ヨーロッパ諸国において競争法を社会保険および社会保障制度へ適用される状況を分析した研究を進める際にも参考とした。上記の作業をもとにした研究成果は次年度のはじめに公表する予定であり、現在、準備をすすめている。このほかに、本年度は研究成果としてアメリカの医療制度における反トラスト法の適用状況について検討した論文や社会保障制度に関するテキストを執筆しており、これらを作成する際にも上記の作業から得られた知見を一部、参考にした。本年度に配分を受けた研究費については、上記の作業をすすめる上で必要な資料の収集などにおもに利用した。また、上記の作業結果をもとにした研究報告を研究会などで報告する際にも旅費として使用した。平成19年度は、前年度に引き続き、医療保障制度について経済学的な知見を導入した分析をするめた。とくに新制度派経済学や取引費用経済学の知見をもとに、わが国め医療政策のあり方を検討した。検討にあたっては特に参照したのは、A. S. Preker、A. Hardingらの研究である。Prekerらの分析は、医療サービス市場のコンテスタビリティと情報の非対称性をもとに医療サービスの分類を試みるものである。この作業をもとに、情報の非対称性と市場の競争性、市場への参入可能性を基本的な視点として、近年の医療制度改革(特に第5次療法改正)について検討を行った。この作業では、特に、医療法上の広告規制、医療計画、医療機能情報提供制度、事業者団体による競争制限行為を題材として取り上げた。外来診療と入院医療、慢性疾患と急性疾患などの疾病の煩型に応じて医療サービスの性格が異なること、これに対応して、医療サービス市場のあり方や規制、情報提供のあり方も異なったものとなる可能性があることを指摘した。この研究の成果の一部は、雑誌論文として公表した。このほか、医療・介護サービスにおける情報提供体制のあり方についても検討を行った。検討の成果の一部は、2008年に論文として公表することを予定している。 | KAKENHI-PROJECT-17730038 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17730038 |
新しい「法と経済学」による社会保障法の動態分析 | 設備備品費については、以上の作業に必要な基礎的文献の整備と資料収集のために用いた。また、旅費については、本研究の参考となる学会や研究会への参加と報告、資料収集などに使用した。 | KAKENHI-PROJECT-17730038 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17730038 |
20世紀前半の日本と中国における地理学的知の交流と展開に関する研究 | 今年度行った研究は、次の4つに整理できる。1つ目は、「満洲国」における地理学者の活動に関する研究である。建国大学の宮川善造に関する論文が査読を経て『史林』に掲載された他、満鉄調査部の増田忠雄に関する論文も脱稿し、次に言及する課程博士論文の一章とした。また、来年度刊行予定の『二〇世紀満洲歴史事典』に「地理学者」などの項目を執筆した。さらに、「日本植民地をめぐる歴史地理学再考」を共通テーマとする人文地理学会歴史地理研究部会で口頭発表を行い、満洲の都市に関する地理学研究史の整理を試みた。2つ目は、課程博士論文「アジア・太平洋戦争期における地理学者の思想と実践-地政学を中心に-」の執筆である。同論文は2008年度に一度提出するも、その後取り下げ措置を行ったものであるが、12月に大幅に内容を書き換えた形で再度提出することができた。数回にわたる修正のため、3月末時点で正式な審査ほまだ始まっていないが、審査終了後は大阪の出版社から単著として刊行することが決まっている。3つ目は、軍港都市史研究の一環で行った旅順の都市史研究である。今年度は、昨年度末に『軍港都市史研究II景観編』へ寄稿した論文の校正と、日本地理学会におけるシンポジウム「「軍港都市」の近現代-社会・文化・経済の連続と非連続-」で口頭発表を行った。4つ目は、アメリカ合衆国のニューヨークおよびワシントンDCで行った資料調査である。地政学、植民地理学、中国地理に関する資料を閲覧し、一部をコピーやスキャニングによって収集した。今年度行った研究は,次の4つに整理できる。1つ目は,小川琢治の中国研究が中国の学界に与えた影響に関する研究である。国内の大学・図書館で資料収集をし,その分析結果を国際歴史地理学会(International Conference of Historical Geographers)と京都大学人文科学研究所の共同研究班で口頭発表した。また,国際学会での報告内容は,英文書に発表した。2つ目は,留日中国人地理学者に関する研究である。とりわけ戦前に東京帝国大学に留学した王謨と蔡源明の両名に注目し,資料調査を行った。その成果は,中国・広州で開催されたThe 4th China-Japan-Korea Joint Conference on Geographyで発表する予定だったが,中国教育部からアブストラクトの許可が出ず,取り止めざるを得なかった。戦時中の日中関係に関連する内容だったことが原因とみられるが,残念でならない。3つ目は,満洲の地理学者の活動に関する研究である。活動を概観した論文を人文科学研究所の共同研究報告書に発表したほか,とくに目立った活動をした地理学者(「満洲の地政学」を主張した宮川善造ら)に関する論文を学会誌に投稿した。4つ目は,日本の植民地を対象とした地理学研究の歴史に関する研究である。1930年代の「植民地理学」の議論の展開を中心としつつも,樺太,台湾,朝鮮,関東州・満洲,南洋群島という5つの植民地を対象とする地理学研究の系譜を,19世紀にさかのぼって,全体として整理することを試みた。その成果の一部は,日本植民地研究会で口頭発表した。今年度行った研究は,次の3つに整理できる。1つ目は、日中地理学交流史に関する研究である。まず、11月の国際学会(The 5th Japan-Korea-Cbina Joint Conference on Geography)で、留日中国人地理学者・王謨の地理教育観および対日協力活動に関する口頭発表をおこなった。また、12月の京都大学人文科学研究所の共同研究班における口頭発表で、19201940年代の日中地理学交流史の概観を試みた。とくに翻訳書の数、訳者、内容に注目して分析した本発表により、この期間のおおまかな傾向を把握することができた。2つ目は、「満洲国」における地理学者の活動に関する研究である。とくに目立った活動をしていた地理学者である宮川善造と増田忠雄に関する論文をまとめた。1本は審査中、もう1本はまもなく投稿する予定である。また、大連および旅順の図書館・博物館で、そのほかの地理学者に関する資料調査をおこなった。3つ目は、旅順の都市史的研究である。同研究は軍港都市史研究会からの依頼を受けて始めたもので、今年度は1895年から1945年までの旅順の景観変遷を明らかにすることに努めた。夏に地図類の収集をおこない、その成果を共同研究班で口頭発表したほか、論文を『軍港都市史研究II景観編』に寄稿した。今年度行った研究は、次の4つに整理できる。1つ目は、「満洲国」における地理学者の活動に関する研究である。建国大学の宮川善造に関する論文が査読を経て『史林』に掲載された他、満鉄調査部の増田忠雄に関する論文も脱稿し、次に言及する課程博士論文の一章とした。また、来年度刊行予定の『二〇世紀満洲歴史事典』に「地理学者」などの項目を執筆した。さらに、「日本植民地をめぐる歴史地理学再考」を共通テーマとする人文地理学会歴史地理研究部会で口頭発表を行い、満洲の都市に関する地理学研究史の整理を試みた。2つ目は、課程博士論文「アジア・太平洋戦争期における地理学者の思想と実践-地政学を中心に-」の執筆である。 | KAKENHI-PROJECT-09J01446 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09J01446 |
20世紀前半の日本と中国における地理学的知の交流と展開に関する研究 | 同論文は2008年度に一度提出するも、その後取り下げ措置を行ったものであるが、12月に大幅に内容を書き換えた形で再度提出することができた。数回にわたる修正のため、3月末時点で正式な審査ほまだ始まっていないが、審査終了後は大阪の出版社から単著として刊行することが決まっている。3つ目は、軍港都市史研究の一環で行った旅順の都市史研究である。今年度は、昨年度末に『軍港都市史研究II景観編』へ寄稿した論文の校正と、日本地理学会におけるシンポジウム「「軍港都市」の近現代-社会・文化・経済の連続と非連続-」で口頭発表を行った。4つ目は、アメリカ合衆国のニューヨークおよびワシントンDCで行った資料調査である。地政学、植民地理学、中国地理に関する資料を閲覧し、一部をコピーやスキャニングによって収集した。 | KAKENHI-PROJECT-09J01446 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09J01446 |
慢性脳虚血におけるオリゴデンドロサイトの動態、大脳白質病変発症抑制に関する研究 | SDラット(雄210-250g)を用いて永久両側総頚動脈結紮による慢性脳虚血モデルを作製し、術直後、術後2、4、6、8週において脳血流の測定を行った(n=6)。術後2、4、6、8週において灌流固定後に脳スライスを作成し抗NG2抗体(オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)のマーカー)及び抗GST一π抗体(成熟オリゴデンドロサイト(OLG)のマーカー)を用いて免疫組織化学染色及び蛍光2重染色を行った(n=6)。術後4週目において、抗BrdU抗体(増殖細胞のマーカー)と抗NG2抗体を用いて蛍光2重染色を行った(nニ3)。術後4、6、8、12週において、抗MBP抗体(ミエリンのマーカー)を用いてウエスタンブロットを行った(n=6-7)。術後2、4、6、8、12週において水迷路試験により認知機能評価を行った(n=10-14)。術後1、3、5日及び1-8週目まで各週、ロータロッド試験により運動機能評価を行った(n=6)。脳血流の測定の結果、術直後に約50%の低下を示した後、回復傾向を示した。免疫染色の結果、NG2陽性細胞数は4週で有意に増加し(P〈0.05)、その後も増加傾向を示した。GST一π陽性細胞数は2週では有意に減少し(P〈0.05)、その後増加の傾向にあった。蛍光2重染色の結果、NG2陽性細胞とGST陽性細胞及びBrdU陽性細胞とのマージは増加傾向を示した。ウエスタンブロットの結果、MBPは有意に減少し6週で最低であった(P〈0.05)。水迷路試験の結果、成績が有意に低下し、6週が最低であった(P〈0.05)。ロータロッド試験の結果、明確な低下は見られなかった。以上より組織学的にOPCの増加及びOLGの減少後回復を認めOLGの再生が示唆されたが、ミエリンは減少を示した。また認知機能低下がミエリンと同様に残存していたことから、脱髄が認知機能障害に関与している可能性が示唆された。SDラット(雄210-250g)を用いて永久両側総頚動脈閉塞による慢性脳虚血モデルを作製し、術後2週、4週、6週、8週の4群におけるcorpus callosumを抗NG2抗体(オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)のマーカー)及び、抗GST-π抗体(成熟オリゴデンドロサイト(OLG)のマーカー)を用いた免疫組織化学染色にて評価し(n=6)、またミエリンについて、抗MBP抗体(ミエリンのマーカー)を用いwestern blotによって評価した(n=3)。認知機能評価は、各群のsacrifice前5日間の水迷路試験に行った(n=10-14)。運動機能評価は、Rotarod試験を用い、術前連続した3日間と術後1、3、5日及び1-8週目まで各週行った(n=6)。免疫染色の結果、NG2陽性細胞数は、4週で有意に増加し(P<0.05)、その後も増加傾向を示した。GST-π陽性細胞数は、2週では有意に減少し(P<0.05)、その後増加の傾向にあった。Western blotの結果、MBPは虚血群間において4週以降減少傾向が見られた。水迷路試験の結果、虚血群はSham群に比べ有意に成績が低下し、虚血群間では6週が最低であった(P<0.05)。Rotarod試験の結果、虚血群はSham群と比べ明確な差は見られなかった。以上のことからOLGの減少のピークは術後2週、OPCの増加のピークは4週であった。またOLGは4週にはSham群と同程度にまで増加を認めたことから、OLGの再生が生じた可能性が示唆された。一方ミエリンは術後減少傾向を示し、また脳機能障害においても、運動機能低下は認めなかったものの認知機能低下を認めた。以上より、組織学的にOLGは減少後回復を認めたものの、ミエリンの減少と認知機能障害は残存しており、脱髄が認知機能障害に関与している可能性が示唆された。SDラット(雄210-250g)を用いて永久両側総頚動脈結紮による慢性脳虚血モデルを作製し、術直後、術後2、4、6、8週において脳血流の測定を行った(n=6)。術後2、4、6、8週において灌流固定後に脳スライスを作成し抗NG2抗体(オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)のマーカー)及び抗GST一π抗体(成熟オリゴデンドロサイト(OLG)のマーカー)を用いて免疫組織化学染色及び蛍光2重染色を行った(n=6)。術後4週目において、抗BrdU抗体(増殖細胞のマーカー)と抗NG2抗体を用いて蛍光2重染色を行った(nニ3)。術後4、6、8、12週において、抗MBP抗体(ミエリンのマーカー)を用いてウエスタンブロットを行った(n=6-7)。術後2、4、6、8、12週において水迷路試験により認知機能評価を行った(n=10-14)。術後1、3、5日及び1-8週目まで各週、ロータロッド試験により運動機能評価を行った(n=6)。脳血流の測定の結果、術直後に約50%の低下を示した後、回復傾向を示した。 | KAKENHI-PROJECT-18791011 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18791011 |
慢性脳虚血におけるオリゴデンドロサイトの動態、大脳白質病変発症抑制に関する研究 | 免疫染色の結果、NG2陽性細胞数は4週で有意に増加し(P〈0.05)、その後も増加傾向を示した。GST一π陽性細胞数は2週では有意に減少し(P〈0.05)、その後増加の傾向にあった。蛍光2重染色の結果、NG2陽性細胞とGST陽性細胞及びBrdU陽性細胞とのマージは増加傾向を示した。ウエスタンブロットの結果、MBPは有意に減少し6週で最低であった(P〈0.05)。水迷路試験の結果、成績が有意に低下し、6週が最低であった(P〈0.05)。ロータロッド試験の結果、明確な低下は見られなかった。以上より組織学的にOPCの増加及びOLGの減少後回復を認めOLGの再生が示唆されたが、ミエリンは減少を示した。また認知機能低下がミエリンと同様に残存していたことから、脱髄が認知機能障害に関与している可能性が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-18791011 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18791011 |
HIV-1RNAコア偽結節を標的とした新規抗ウイルス戦略の構築 | HIVのゲノムは粒子内で常に二量体化しており、ウイルスの感染能・病原性に深く関わっていると考えられる。研究代表者はウイルスゲノム上の二量体化シグナル(DLS)中にRNA偽結節様構造の存在を示唆した。本研究では偽結節周辺の構造に着目しSL1やPBS領域の機能構造に関する知見を掘り下げると共に、ウイルスの粒子成熟に関わるp1領域を詳細に解析することでゲノムパッケージや感染性獲得に関する考察を行った。後天性免疫不全症候群(AIDS)はここ四半世紀で最悪の伝染病の一つであり、現在までにその病原体HIVに対する様々な抗ウイルス薬が開発されている。薬しかしHIV特有の易変異性と選択圧逃避能から薬剤耐性ウイルス株の出現は避けられない問題であり、従来の標的と異なる作用点を持った新規薬剤の探索は常に求められている。HIVはレトロウイルス科に属し、そのゲノムは粒子内で常に二量体化していることが知られており、ゲノム二量体化はウイルスの感染能・病原性にも深く関わっていると考えられる。ゲノムはウイルス粒子中に二分子のみ存在するためそれを標的とした阻害剤の開発は効果的な抗ウイルス療法となりうる。応募者は長年にわたりレトロウイルスのゲノムRNAに着目し、様々な角度から研究・考察を行ってきた。ウイルス増殖におけるパッケージングシグナル(Psi)およびPsi内部にあるゲノム二量体化シグナル(Dimer Linkage Structure; DLS)の重要性やゲノム二量体化の果たす役割の新しい可能性を示唆し、DLSの必要十分領域を世界で初めて詳細に同定した。応募者はこれらの研究を継続発展させていく過程で、HIV-1DLS中にRNA偽結節様構造が存在することを強く示唆するデータを得た。この構造はDLS全体の構造を保持し、DLS中の複数のRNAステムーループの配置を決定する非常に重要な役割を果たしている可能性が考えられた。通常のRNA構造と比べて偽結節は特異的な立体構造をとっており、薬剤標的としても好適である。またRNA偽結節の独自構造を解析し、形成機序の考察を行うことにより基礎科学的視点からの新知見を多数得ることも期待される。平成25年度は主としてDLS内部の偽結節周辺の構造に着目し、これまで指摘の無かったSL1やPBS領域の機能構造に関する知見を複数見いだした。後天性免疫不全症候群(AIDS)はここ四半世紀で最悪の伝染病の一つであり、現在までにその病原体HIVに対する様々な抗ウイルス薬が開発されている。しかしHIV特有の易変異性と選択圧逃避能から薬剤耐性ウイルス株の出現は避けられない問題であり、従来の標的と異なる作用点を持った新規薬剤の探索は常に求められている。HIVはレトロウイルス科に属し、そのゲノムは粒子内で常に二量体化していることが知られており、ゲノム二量体化はウイルスの感染能・病原性にも深く関わっていると考えられる。また、ウイルスの遺伝情報がすべて含まれたウイルスゲノムはウイルスのいわば本体であり、レトロウイルス粒子中に二分子のみ存在するためそれを標的とした阻害剤の開発は効果的な抗ウイルス療法となりうる。研究代表者はウイルス増殖におけるパッケージングシグナル(Psi)およびPsi内部にあるゲノム二量体化シグナル(Dimer Linkage Structure; DLS)の重要性やゲノム二量体化の果たす役割の新しい可能性を示唆し、DLSの必要十分領域を世界で初めて詳細に同定した。研究代表者はこれらの研究を継続発展させていく過程で、HIV-1DLS中にRNA偽結節様構造が存在することを強く示唆するデータを得た。通常のRNA構造と比べて偽結節は特異的な立体構造をとっており、薬剤標的として好適である。またRNA偽結節の独自構造を解析し、形成機序の考察を行うことにより基礎科学的視点からの新知見を多数得ることも期待される。平成26年度は引き続きDLS内部の偽結節周辺の構造に着目し、SL1やPBS領域の機能構造に関する知見を掘り下げると共に、ウイルスの粒子成熟に関わる重要なウイルス因子であるp1領域を詳細に解析することでゲノムパッケージや感染性獲得に関する考察を行った。HIVの中枢であるRNAゲノムがウイルス構造蛋白Gagとの相互作用によって粒子に取り込まれるパッケージングは、ウイルス制圧の非常に重要な標的となり得るステップである。しかしウイルス酵素や外被蛋白と異なり、RNAあるいはRNA-Gag結合を標的とした薬剤開発は非常に遅れている。そこで未だ不明な点の多いパッケージングプロセスを解明して抗ウイルス戦略の足がかりを築くことを目的とした。HIVの感染性分子クローンを題材に独自に構築したパッケージングプロセス周辺の現象の解析系(パッケージング、ゲノム二量体化、ゲノム組換え等)を駆使し、HIVの変異体解析を中心に研究を進めた。結果を基に計算機科学を援用したRNA構造モデル構築も行った。HIVゲノム二量体化における最重要領域であるゲノムRNA5'端非翻訳領域のパッケージングシグナル内に存在するステムーループ1(SL1)に着目し、点置換変異導入によりその機能的構造に関する詳細な解析を行った。解析の結果SL1はこれまでの構造予測と異なるバルジ・ループ・ステム構造をとることで様々な機能を発揮している可能性が示唆された。この結果を元に、計算機科学による新規RNA構造モデル構築を試みた。また、HIVの遺伝的多様性を生み出す原動力の一つであるゲノム組換え現象についても独自の解析系を構築して、組換えに必要な重要なパラメーターを算出することに成功した。HIVのゲノムは粒子内で常に二量体化しており、ウイルスの感染能・病原性に深く関わっていると考えられる。研究代表者はウイルスゲノム上の二量体化シグナル(DLS)中にRNA偽結節様構造の存在を示唆した。 | KAKENHI-PROJECT-25460567 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25460567 |
HIV-1RNAコア偽結節を標的とした新規抗ウイルス戦略の構築 | 本研究では偽結節周辺の構造に着目しSL1やPBS領域の機能構造に関する知見を掘り下げると共に、ウイルスの粒子成熟に関わるp1領域を詳細に解析することでゲノムパッケージや感染性獲得に関する考察を行った。偽結節形成に影響を与えるDLS内部内部の偽結節周辺の機能に着目して解析を行った結果、以下のことが示唆された。以下の成果はHIVのゲノムRNAの構造や機能の理解に大きく寄与したものである。○二量体化開始点(Dimer Initiation Site: DIS)を含みDLS内でも非常に重要な領域であるSL1 (Stem-Loop1)の構造に関して、ウイルス学的解析から従来の理解とは異なりヘアピンループ部が大きく、ステム基部が短い可能性が示唆された。計算機科学によるシミュレーションでこの構造を検討した結果、RNA単体では新規構造を保つことは困難であり、RNA構造維持のため介在する他因子の存在を示唆する結果が得られた。○HIV粒子はプロテアーゼによる粒子蛋白Gagの切断を受けて初めて成熟し、感染を持つようになるが成熟過程で明らかになっていないことは多い。Gag内のペプチドであるp1を切断単離されないように変異導入すると、変異体は感染細胞内でのみウイルスRNAの逆転写が不能となることを研究代表者は明らかにしてきた。今回は特殊な変異体を作成することで従来不可能だったp1領域への詳細な変異導入を行うことに成功し、p1とウイルス成熟とウイルスRNAの関係を解析することでゲノムパッケージングのメカニズムの理解を深めることを試みた。ウイルス学偽結節構造に関しては蓄積するゲノムデータベースを利用して周辺領域の保存状態を比較しつつより正しい構造モデル構築の検討を行う。DLS・Psiに関しては翻訳とパッケージングの関係、ウイルス粒子成熟とRNA逆転写との相関など様々な明らかになっていない事象を取り上げ、多面的に解析することでその機能構造に迫りたい。偽結節構造に対するInsilicoスクリーニングに関しては新規のプログラムやデータベースの状況を確認し、実現可能性を検討する。偽結節形成に影響を与えるDLS内部内部の偽結節周辺の機能に着目して解析を行った結果、以下のことが示唆された。二量体化開始点(Dimer Initiation Site: DIS)を含みDLS内でも非常に重要な領域であるSL1 (Stem-Loop1)の構造に関して、ウイルス粒子内における解析は行われたことがなかった。変異導入によりウイルスの増殖能やゲノムパッケージング、ゲノム二量体化の解析を詳細に行った結果、SL1は従来の理解とは異なりヘアピンループ部が大きく、ステム基部が短い可能性が示唆された。この構造をとることによりDLSがより二量体化し易く、偽結節構造も構築しやすくなると考えられ、偽結節構造の理解を深める結果となった。 | KAKENHI-PROJECT-25460567 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25460567 |
PGE2・サイトカイン誘導性ムチンをターゲットとした関節リウマチ治療法の研究 | 関節リウマチでは、罹患関節に存在するムチンが糖鎖異常におちいり、関節リウマチの病因に関与することが予測される。本研究では、可溶性スカベンジャーリセプターが、ムチン結合能を有し実験的関節炎を抑制することから、これらムチン阻害剤が関節リウマチの有力な治療法になることが示された。また、IL-6誘導能のあるムチンがMUC-1であることが判明し、MUC-1が関節リウマチの特異的な治療ターゲットして有力であることが明らかになった。関節リウマチでは、罹患関節に存在するムチンが糖鎖異常におちいり、関節リウマチの病因に関与することが予測される。本研究では、可溶性スカベンジャーリセプターが、ムチン結合能を有し実験的関節炎を抑制することから、これらムチン阻害剤が関節リウマチの有力な治療法になることが示された。また、IL-6誘導能のあるムチンがMUC-1であることが判明し、MUC-1が関節リウマチの特異的な治療ターゲットして有力であることが明らかになった。研究の目的関節液にもともと豊富に存在するムチンは、糖鎖異常におちいりIL-1やTNF-αなどのサイトカインのみならず、COX-2の誘導に続くPGE2の産生亢進による様々な関節破壊につながる免疫現象を起こす可能性がある。申請者らは、関節リウマチ患者関節組織の滑膜細胞、マクロファージでムチンの発現を免疫組織学的で証明し、関節液からPGE2・サイトカイン(IL-1,TNF-α)誘導性ムチンの抽出・精製に成功した。本研究では、精製したムチンの生理活性について関節リウマチの病因機序における役割しての滑膜の増殖・破骨細胞に対する影響などを考察し、また、関節リウマチの関節特異的な治療薬のターゲットとして、この分子の阻害薬を開発して、関節リウマチ治療への応用を検討していくことにある。本研究の結果マウスにCollagen-induced arthritis(CIA)を誘導し、PGE2・サイトカイン誘導性ムチンの単球/マクロファージのスカベンジャーレセプターへの結合阻害剤としてムチンの受容体である可溶性スカベンジャーレセプターを用い、マウスのCIA関節炎モデルを抑制することを示し、特許出願した。今後の展望スカベンジャーレセプターがマウスのCIA関節炎モデルを抑制する機序について、組織レベルで炎症細胞浸潤度、滑膜細胞の増殖度、骨破壊抑制度を検討する。さらに、関節リウマチの病因に関わる現象である滑膜細胞の増殖、破骨細胞の誘導などの関節破壊への同物質の抑制機序について検討する研究の目的関節液にもともと豊富に存在するムチンは、糖鎖異常におちいりIL-1やTNF-αなどのサイトカインのみならず、COX-2の誘導に続くPGE2の産生亢進による様々な関節破壊につながる免疫現象を起こす可能性がある。申請者らは、関節リウマチ患者関節組織の滑膜細胞、マクロファージでムチンの発現を免疫組織学的で証明し、関節液からPGE2・サイトカイン(IL-1,TNF-α)誘導性ムチンの抽出・精製に成功した。本研究では、精製したムチンの生理活性について関節リウマチの病因機序における役割しての滑膜の増殖・破骨細胞に対する影響などを考察し、また、関節リウマチの関節特異的な治療薬のターゲットとして、この分子の阻害薬を開発して、関節リウマチ治療への応用を検討していくことにある。本研究の結果マウスにCollagen-induced arthritis(CIA)を誘導し、PGE2・サイトカイン誘導性ムチンの単球/マクロファージのスカベンジャーレセプターへの結合阻害剤としてムチンの受容体である可溶性スカベンジャーレセプターを用い、マウスのCIA関節炎モデルを抑制することを示し、国際特許出願した。今後の展望スカベンジャーレセプターがマウスのCIA関節炎モデルを抑制する機序について、組織レベルで炎症細胞浸潤度、滑膜細胞の増殖度、骨破壊抑制度を検討する。さらに、関節リウマチの病因に関わる現象である滑膜細胞の増殖、破骨細胞の誘導などの関節破壊への同物質の抑制機序について検討する | KAKENHI-PROJECT-19591174 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19591174 |
一様等方性臨界破砕における統計物理学的性質の実験的研究 | 本年度は,(1)ガラス板の平行サンドイッチ実験における破砕挙動の解析,(2)パルスパワーによるセラミクス管破砕実験の検討・実施を行った.それぞれの概要は以下の通り.(1)ガラス板の平行サンドイッチ実験における破砕挙動の解析ガラス板サンプルを用いて,一様等方な衝撃による脆性破砕の臨界挙動,破片質量分布の様子について調べた.具体的にはガラス板をステンレス板でサンドイッチしておもりを落下させ衝撃を加える実験を行った.その結果,衝撃が十分な場合は破片質量分布がべき分布に従う一方,比較的小さな衝撃による破砕の場合は対数正規分布が現れることが確認された.破片の加重平均質量が擬コントロールパラメータであるマルチプリシティによりスケーリングされることが我々の過去の実験により明らかにされていたが,べき分布から対数正規分布への遷移に伴いこのスケーリングにクロスオーバーがみられることを本研究で明らかにした.また,ガラス管の垂直サンドイッチ実験では,破片質量分布のべき指数が1.5となるのに対し,ガラス板の平行サンドイッチ実験ではそれが2となることも本実験で明らかとなった.(2)パルスパワーによるセラミクス管破砕実験の検討・実施機械的衝突による破砕の他に爆発による破砕の実験についても企画,検討を行った.パルスパワージェネレータを用いて細い銅線にパルスパワーをかけることにより,銅線がジュール熱により溶け飛散する.あらかじめセラミクス管にこの銅線を通しておき,パルスパワーを印加することにより,この爆発のエネルギーを用いてセラミクス管を破砕可能であることを見出した.今後はこの実験系による結果を力学的衝撃による破砕と比較し,脆性破砕の普遍性について考察を行う予定.本年度は,(1)ガラス板の平行サンドイッチ実験における破砕挙動の解析,(2)パルスパワーによるセラミクス管破砕実験の検討・実施を行った.それぞれの概要は以下の通り.(1)ガラス板の平行サンドイッチ実験における破砕挙動の解析ガラス板サンプルを用いて,一様等方な衝撃による脆性破砕の臨界挙動,破片質量分布の様子について調べた.具体的にはガラス板をステンレス板でサンドイッチしておもりを落下させ衝撃を加える実験を行った.その結果,衝撃が十分な場合は破片質量分布がべき分布に従う一方,比較的小さな衝撃による破砕の場合は対数正規分布が現れることが確認された.破片の加重平均質量が擬コントロールパラメータであるマルチプリシティによりスケーリングされることが我々の過去の実験により明らかにされていたが,べき分布から対数正規分布への遷移に伴いこのスケーリングにクロスオーバーがみられることを本研究で明らかにした.また,ガラス管の垂直サンドイッチ実験では,破片質量分布のべき指数が1.5となるのに対し,ガラス板の平行サンドイッチ実験ではそれが2となることも本実験で明らかとなった.(2)パルスパワーによるセラミクス管破砕実験の検討・実施機械的衝突による破砕の他に爆発による破砕の実験についても企画,検討を行った.パルスパワージェネレータを用いて細い銅線にパルスパワーをかけることにより,銅線がジュール熱により溶け飛散する.あらかじめセラミクス管にこの銅線を通しておき,パルスパワーを印加することにより,この爆発のエネルギーを用いてセラミクス管を破砕可能であることを見出した.今後はこの実験系による結果を力学的衝撃による破砕と比較し,脆性破砕の普遍性について考察を行う予定. | KAKENHI-PROJECT-16740206 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16740206 |
マウスの社会性ナビゲーションの神経基盤の解明 | 本年度は、多感覚バーチャル環境における各感覚モダリティの役割を検討した。この実験では、マウスを顕微鏡の対物レンズ下に頭部固定し、バーチャル空間に設定したアリーナを探索させた。このときに異なるモダリティの感覚刺激を操作することで行動の変化を観察した。まず始めに視覚の影響について検討した。アリーナの壁を灰色にしたとき、色つきにしたとき、またインタラクティブな視覚刺激の提示を行わないときで比較したところ、それぞれの条件でアリーナの周辺部と中心部の滞在時間に違いが見られた。したがってマウスは実際に視覚情報を使ってバーチャル空間をナビゲーションしていることが確認できた。続いて触覚の影響について検討した。マウスがバーチャルアリーナの壁に近づいたときに、ヒゲに空気を吹き付けて触覚刺激を与えたところ、アリーナの探索時間の分布に変化が見られた。したがって、バーチャル空間において実世界の行動を再現する上で、触覚が重要な感覚モダリティの一つであることが考えられた。イメージングについては、これまでの二光子カルシウムイメージングに加えて、本年度は広域的な脳活動の変化を可視化するために大脳皮質の広視野カルシウムイメージングをとりいれた実験を行った。またバーチャル空間における行動の違いを明らかにするために、ナビゲーションの軌跡をデータ科学的アプローチで解析することを始めた。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成29年度は、まずマウスの社会行動をバーチャル空間で模倣するための多感覚バーチャル環境の確立を行った。この環境では、バーチャル空間に設定したアリーナの一つの角に実際のマウスを模した仮想マウス(アバター)を提示し、対角線上のもう一つの角には対照として楕円球や立方体などの物体を置く。マウスのアバターは、身づくろいなどの実際のマウスが示す自発行動を模したアニメーションをランダムに示す。このようなマウスアバターの視覚刺激提示に加えて、アバターに接近したときに匂い刺激(マウス尿などの社会的匂い刺激や、バナナやアーモンドなどの非社会的匂い刺激)を提示したり、アリーナの壁やアバターに非常に接近したときに、ヒゲに空気の吹き付けによる触覚刺激を与えることができる多感覚バーチャル環境を構築した。続いて、海馬の領野特異的in vivoカルシウムイメージングの方法を確立した。特定の海馬の領野の錐体細胞に蛍光タンパク質を発現するトランスジェニックマウスの海馬に、異なる波長の蛍光を発する蛍光カルシウムセンサータンパク質を神経細胞特異的に発現するアデノ随伴ウイルスベクターを微量注入することで、遺伝的に標識された海馬領野を単一細胞レベルでイメージングする手法を確立した。さらにこのトランスジェニックマウスを、自閉症モデルマウスと交配することにより、特定の海馬領野が蛍光タンパク質標識された自閉症モデルマウスを作製した。研究初年度である平成29年度は、マウス行動課題の確立、海馬領野特異的in vivoイメージング手法の確立、および今後の実験に用いる自閉症モデルマウスの供給についての見通しが立ったことから、おおむね当初の計画通り進行していると考えられる。本年度は、多感覚バーチャル環境における各感覚モダリティの役割を検討した。この実験では、マウスを顕微鏡の対物レンズ下に頭部固定し、バーチャル空間に設定したアリーナを探索させた。このときに異なるモダリティの感覚刺激を操作することで行動の変化を観察した。まず始めに視覚の影響について検討した。アリーナの壁を灰色にしたとき、色つきにしたとき、またインタラクティブな視覚刺激の提示を行わないときで比較したところ、それぞれの条件でアリーナの周辺部と中心部の滞在時間に違いが見られた。したがってマウスは実際に視覚情報を使ってバーチャル空間をナビゲーションしていることが確認できた。続いて触覚の影響について検討した。マウスがバーチャルアリーナの壁に近づいたときに、ヒゲに空気を吹き付けて触覚刺激を与えたところ、アリーナの探索時間の分布に変化が見られた。したがって、バーチャル空間において実世界の行動を再現する上で、触覚が重要な感覚モダリティの一つであることが考えられた。イメージングについては、これまでの二光子カルシウムイメージングに加えて、本年度は広域的な脳活動の変化を可視化するために大脳皮質の広視野カルシウムイメージングをとりいれた実験を行った。またバーチャル空間における行動の違いを明らかにするために、ナビゲーションの軌跡をデータ科学的アプローチで解析することを始めた。平成30年度は引き続き、バーチャル社会行動課題を遂行しているときの海馬の神経活動をイメージングする。さらに本年度の交配で作製した海馬領野特異的蛍光タンパク質標識自閉症モデルマウスを用いて、上記の課題を遂行中のマウスの海馬活動をイメージングする。もし場所細胞の形成や安定性などに異常が見られる場合には、選択的セロトニン再取り込み阻害薬の投与が、その異常を改善するかどうかの検討を開始する。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PUBLICLY-17H05985 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-17H05985 |
TFIIF,エロンガンの遺伝子発現制御機能の解析 | TFIIFは、転写開始/伸長因子として作用するユニークな転写因子である。一方、エロンガンは、転写伸長因子としてのみ働くが癌抑制因子のVHLと結合することから発癌における働きが注目されている。我々は、この2因子についての機能解析を行い以下の結果を得た。1.TFIIFの機能解析TFIIFのRAP74サブユニットは、そのアミノ酸配列から、N-末、C-末の球状構造、これらの間の中央ドメインから構成されると類推される。我々は、自己免疫疾患患者血清に中央ドメインに高い特異性を示す自己抗体を見い出し、さらに、この領域と特異的に結合する遺伝子産物p32を酵母2ハイブリッド法によって単離した。P32は、HIVウイルスのTatと結合しTFIIFの転写伸長活性を促進するが、p32はHIVの増殖過程で何らかのメカニズムにより核へ移行してTの転写伸長促進作用を介していることが示唆された。一方、RAP30,RAP74の発現M13ウイルスを同時に感染させることによりTFIIFを完全な複合体として発現、精製しトリプシンによる限定分解の結果、RAP74が3極構造をとること、RAP30は、TFIIF分子の内側に存在すること、in vitroでの転写開始複合体においてRAP74は外側にあること、TBP,IIBは、内側に存在することがわかった。C-末領域については、RNA polymeraseII脱リン酸化活性を持つFCP1が結合することが報告された。本領域を細胞内で強制発現させてもリポーター転写には影響は認めなかった。FCP1を介して転写リサイクリングにRAP74が重要な働きをしているというアイデアは今後、さらに検討する必要がある。現在、TFIIF全分子の構造解析を続けている。2.エロンガンの解析新規エロンガンAをヒトゲノムESTより単離しA2と命名した。A2は、Aが組織非特異的に発現されるのに対して精巣特異的に高い発現を示した。リコンビナントA2は、試験管内でRNAポリメラーゼIIによる転写伸長活性を促進し機能的にもエロンガンファミリーであることが確認できた。753アミノ酸で構成されエロンガンAと47%のidentity、61%のsimilarityを有していた。A2はAと同様にエロンガンBCと結合できたが転写伸長活性を促進することはなかった。A2は、精巣において特異的な遺伝子転写の伸長活性を制御している可能性が考えられる。我々は、さらに新規なエロンガンA3をも同定しており、それについても解析を行っている。また、生体内でのこれらの機能を理解するためにノックアウトマウスの作成を試みておりES細胞ノクローニングを終了した段階である。TFIIFは、転写開始/伸長因子として作用するユニークな転写因子である。一方、エロンガンは、転写伸長因子としてのみ働くが癌抑制因子のVHLと結合することから発癌における働きが注目されている。我々は、この2因子についての機能解析を行い以下の結果を得た。1.TFIIFの機能解析TFIIFのRAP74サブユニットは、そのアミノ酸配列から、N-末、C-末の球状構造、これらの間の中央ドメインから構成されると類推される。我々は、自己免疫疾患患者血清に中央ドメインに高い特異性を示す自己抗体を見い出し、さらに、この領域と特異的に結合する遺伝子産物p32を酵母2ハイブリッド法によって単離した。P32は、HIVウイルスのTatと結合しTFIIFの転写伸長活性を促進するが、p32はHIVの増殖過程で何らかのメカニズムにより核へ移行してTの転写伸長促進作用を介していることが示唆された。一方、RAP30,RAP74の発現M13ウイルスを同時に感染させることによりTFIIFを完全な複合体として発現、精製しトリプシンによる限定分解の結果、RAP74が3極構造をとること、RAP30は、TFIIF分子の内側に存在すること、in vitroでの転写開始複合体においてRAP74は外側にあること、TBP,IIBは、内側に存在することがわかった。C-末領域については、RNA polymeraseII脱リン酸化活性を持つFCP1が結合することが報告された。本領域を細胞内で強制発現させてもリポーター転写には影響は認めなかった。FCP1を介して転写リサイクリングにRAP74が重要な働きをしているというアイデアは今後、さらに検討する必要がある。現在、TFIIF全分子の構造解析を続けている。2.エロンガンの解析新規エロンガンAをヒトゲノムESTより単離しA2と命名した。A2は、Aが組織非特異的に発現されるのに対して精巣特異的に高い発現を示した。リコンビナントA2は、試験管内でRNAポリメラーゼIIによる転写伸長活性を促進し機能的にもエロンガンファミリーであることが確認できた。753アミノ酸で構成されエロンガンAと47%のidentity、61%のsimilarityを有していた。A2はAと同様にエロンガンBCと結合できたが転写伸長活性を促進することはなかった。A2は、精巣において特異的な遺伝子転写の伸長活性を制御している可能性が考えられる。我々は、さらに新規なエロンガンA3をも同定しており、それについても解析を行っている。また、生体内でのこれらの機能を理解するためにノックアウトマウスの作成を試みておりES細胞ノクローニングを終了した段階である。1。TFIIF機能の解析(1)TFIIFサブユニットRAP74の中央ドメインと特異的に結合するp32を得た。 | KAKENHI-PROJECT-09470519 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09470519 |
TFIIF,エロンガンの遺伝子発現制御機能の解析 | p32は、核内にも存在するがほとんどがミトコンドリアマトリックスに存在すること、p32のホモログは、ヒトのほかにマウス、線虫、酵母でも認められること、酵母p32ホモログ-p30と命名-のノックアウト株は、呼吸機能の障害がおこりp30がミトコンドリア機能に重要であることがわかった。しかしながら、p32はIIFのほかにも核内蛋白のIIB,ラミン、エイズウイルスの転写因子Tatとも相互作用するので核内転写を制御する可能性がある。実際、転写伸長活性への影響をテストしたところ、p32がIIF活性をTat共存下で促進させる結果を得た。今後、この解析とともにRAP74の他のドメインと結合するクローンのスクリーニングを続ける。(2)核に存在する細胞障害チェック機構であるDNA依存性リン酸化酵素が、TBP,IIBをリン酸化することがわかった。このリン酸化による転写基本活性を明らかにした。2。エロンガン機能の解析(1)エロンガンは活性サブユニットと調節サブユニットで構成されるが、調節サブユニットのホモログ酵母とハエからクローニングしその構造を解析した。これは、エロンガン機能の生物種間での保存を明らかにし、ヒト以外での生物を用いての遺伝学的解析を可能にした。(2)転写伸長因子であるTFIISとエロンガンのRNAポリメラーゼIIホロ酵素との結合を明らかにした。すなわち、転写伸長型のRNAポリメラーゼIIに伸長因子のIIS.エロンガンも複合体として含まれることがわかった。1。TFIIF機能の解析(1) TFIIFサブユニットRAP30.74のバキュロウイルス発現系を用いて、昆虫細胞で同時に感染させることにより両サブユニットが等モル比で会合したIIFを作製した。一方、他の基本因子(ヒトTBP,IIB,IIE)のリコンビナント型、ラットIIH,ヒトRNAポリメラーゼIIを精製し、これらによるin vitro転写活性を再構成した。次に、アデノウイルス主要後期遺伝子の最小プロモーターDNAを用いて、"開始型"IIFモデルを作製した。同時にIIF単独"遊離型IIF"、IIF/PolII/DNA複合体"伸長型IIF"を含めてトリプシン消化によるIIF構造の解析を行った。RAP74は、N-末約20K,C-末15Kほどの球状ドメイン、その間のチャージに富む中央ドメインは高いトリプシン感受性を持つランダム構造をとり、3極(Tripartite)構造をもつことがわかった。RAP30は、74分解後に約14Kの断片に切断されIIF分子内に74に覆われた格好で配位することがわかった。開始型、伸長型RAP74の分解パターンは遊離型のものと大きな変化を認めず、特異的分解産物の出現も認めなかった。しかしながら、RAP30の分解は著明に阻害され、開始/伸長複合体ではRAP30はDNAと結合しトリプシンがさらに作用しにくい状態へ変化するものと考えられた。以上、RAP74の中央ランダム構造はIIF分子の外側に配位しているがこの領域の活性は不明である。ただ、ヒト、ハエ、XenopusRAP74の間で保存されており何らかの機能を持つことが示唆される。 | KAKENHI-PROJECT-09470519 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09470519 |
NOx応答性を向上するセンサ素子の電極構造最適化に関する研究 | 電流検出型ジルコニアNOxセンサの高性能検知極の開発を行った。NOx応答性を向上するために緻密薄膜電極の作製方法を検討したところ、La(NO3)3、Sr(OC3H7)2、Mn(CH3COO)2.4H2Oを含む2-メトキシエタノール溶液にエタノールアミンとアセトインを共添加したゾルゲルコーティング溶液をジルコニア基板上にスピンコーティング法を用いて製膜・焼成することで、La0.8Sr0.2MnO3電極の緻密薄膜化に成功した。また、MnサイトをAlで部分置換することで高温還元雰囲気での安定性が大きく向上し、耐久性と応答性を両立可能な組成・素子作製条件が存在することもわかった。La系ペロブスカイト型酸化物を検知極に用いた電流検出型NOxセンサの研究を行った。平成25年度は、化学的安定性に優れるLa-Al系ペロブスカイト型酸化物に着目し、高温還元雰囲気下で安定に作動するセンサの開発を行った。噴霧熱分解法を用いてLa0.8Sr0.2AlxMn1-xO3(x=0, 0.2, 0.4, 0.6)の合成を行ったところ、いずれも単相のペロブスカイト型酸化物を合成できた。これら酸化物を高温還元雰囲気(4% H2、750°C、2 h)下で処理を行い、その前後のXRD測定結果を比較したところ、Al無置換の場合は構成金属からなる酸化物や金属に分解していたのに対して、Al置換系はペロブスカイトの相を示すことが分かり、高温還元雰囲気下で安定に存在できる材料であることが確認できた。作製した酸化物を検知極に用いたセンサ素子のNO2に対する応答特性は、Bサイト金属のAlをMnで置換していくと応答性が向上し、特に、x=0.4の場合には無置換の場合の約3倍の応答を得られた。しかし、x=0.6の場合は、応答が大きく減少した。素子作製温度である1200°Cでこの酸化物を処理した場合のBET比表面積は、Mnを置換するほどその値が低下し、x=0.6の場合には無置換の場合の1/4程度の比表面積を示したため、焼結性が向上したことによる電極反応面積の低下が原因であることが示唆された。そこで、素子作製温度の最適化を行い、この温度を1000°Cに低温化した結果、x=0.6の場合の200 ppm NO2に対する応答は約10倍向上し、Al無置換の場合とほぼ同等の応答特性を示した。したがって、Bサイト金属をAlとMnで複合化することで高温還元雰囲気の耐久性と応答性を両立可能なことがわかった。電流検出型ジルコニアNOxセンサの高性能検知極の開発を行った。NOx応答性を向上するために緻密薄膜電極の作製方法を検討したところ、La(NO3)3、Sr(OC3H7)2、Mn(CH3COO)2.4H2Oを含む2-メトキシエタノール溶液にエタノールアミンとアセトインを共添加したゾルゲルコーティング溶液をジルコニア基板上にスピンコーティング法を用いて製膜・焼成することで、La0.8Sr0.2MnO3電極の緻密薄膜化に成功した。また、MnサイトをAlで部分置換することで高温還元雰囲気での安定性が大きく向上し、耐久性と応答性を両立可能な組成・素子作製条件が存在することもわかった。La系ペロブスカイト型酸化物を検知極に用いた電流検出型センサの研究を行っており、本年度はセンサ応答メカニズムを検討するための電極作製技術について研究を推進した。本センサのガス反応場としては1LSM/YSZ/ガスの三相界面と、2LSM/ガスの二相界面を想定している。1は燃料電池の酸素還元電極の反応場と考えられているため、NOxセンサ応答に作動条件を最適化した場合でも一定の酸素還元反応が併発している可能性があると考えている。そこで、三相界面へのガス拡散を抑制可能な緻密電極が作製できれば、2のみでガス反応を生じることのできる電極作製が可能なため、実際のガス反応場の検討ができるし、高感度選択的NOx応答を得るための電極構造の知見を得ることができる。緻密電極作製のためにLa0.8Sr0.2MnO3の原料金属を含む硝酸塩および酢酸塩を2-メトキシエタノールに溶解したコーティング溶液を作製した。スピンコーターを用いてYSZペレットに成膜後焼成することで検知極とした。この断面SEM観察の結果、500nm程度の厚みを持つ緻密電極が作製できた。この素子のNO2に対するセンサ応答特性を評価したところ、O2に対する応答電流値は従来の素子(スクリーン印刷使用)と比較して、約1/2となる結果を得た。緻密化による三相界面の反応場低減の結果であると考察できる。O2に対する応答性をより低減するためにコーティグ溶液の改良に取り組んだ。先ほどのコーティング溶液は黒色をしているため構成元素が凝集しており分散性が不十分であることが考えられる。そこで、安定化材について検討した。エタノールアミンとアセトインを2:1の割合でMnに対して0.25モル等量加えることで透明溶液を作製できることを見いだした。この溶液は一月経過後も沈殿の発生や溶液色に変化は見られず非常に安定に存在できることを確認している。従来の噴霧熱分解法で作製したLa0.8Sr0.2MnO3粉末をスクリーン印刷する場合と比較して、薄く、緻密な電極が作製できた。 | KAKENHI-PROJECT-24750153 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24750153 |
NOx応答性を向上するセンサ素子の電極構造最適化に関する研究 | この電極を用いたセンサ素子の応答電流値を測定し従来品と比較したところ、O2に対する応答電流値を半減することに成功した。コーティング溶液の作製方法を工夫することで、さらに緻密膜の形成も可能なコーティング溶液の改良に関する知見が得られており、研究は概ね順調に推移している。自動車排ガスセンサの実用化を考える場合には、高温還元雰囲気となる排ガスに暴露されても安定に存在できる材料の検討が必要となる。そこで来年度は本年度の検討に加えて、化学的安定性に優れる電極材料の開発を行う。具体的にはLa-Al系ペロブスカイト型酸化物に着目し、高温還元雰囲気下での安定性評価とこれらを検知極としたセンサ素子のNOx応答特性を評価する。噴霧熱分解法を用いてLa0.8Sr0.2AlO3(x=0, 0.2, 0.4)の合成ができること、高温還元雰囲気下で安定に存在できる材料であり、NO2に選択的に応答することは確認済みである。ところが、NO2への応答性の低いことが難点となっている。そこで、Alの更なるMnでの部分置換とセンサ作製条件の最適化検討を行うことでより大きなNO2応答を示すセンサ素子を開発する。また、本研究を通して得られた知見を元に新規センサ(炭化水素、臭い成分など)開発の可能性について検討を行う。検知極材料である酸化物合成に必要な試薬、センサ素子作製に必要な貴金属や基材、センサ応答特性評価に必要なガス購入を行う。また、研究動向についての調査研究、研究成果の外部への積極的な発信のための旅費としての使用を計画している。 | KAKENHI-PROJECT-24750153 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24750153 |
消費者責任論に基づく環境・資源管理分析モデルの開発と長期予測への応用 | 多地域産業連関モデルのGLIO modelに金属資源に関する国際マテリアルフローデータを搭載し,日本の最終需要が国際サプライチェーンを通じて誘引する温室効果ガスと資源採掘量(マテリアルフットプリント:MF)を計測した。また,金属資源種別に採掘リスクを採掘量の市場集中度と採掘国の政治的リスクを用いて数値化し,MFの大きさに基づき日本の最終需要が負う採掘リスクを算定した。加えて,少子高齢化に伴う世帯構成および人口の変化に着目して,2005年から2035年までの世帯別の家計消費支出を推計し,それを用いて家計消費由来の消費者基準GHGと希少金属のMFの将来変化を分析した。本年度は2005年産業連関表の「家計消費支出」部門における商品別支出額を出発点として,次のように消費財の将来需要推計を行った。まず,「家計調査」,「全国消費実態調査」等の世帯構成と消費の関係を示す公的統計を用いて,世帯属性別に各消費財の需要量を調査し,家計消費支出を「世帯属性別の家計消費」に分割した。分割においては,家計消費支出の消費別支出額を制約条件とし,消費の統計から得られる各世帯の消費の特性が最も反映されることを目的関数とする数理計画問題を作成して用いた。得られた世帯属性別の家計消費額に将来人口,将来世帯数,将来世帯構成人数のデータを組み合わせることにより,2005年から2035年までの世帯別商品別家計消費支出額を推計した。この時,将来世帯構成人数は将来人口と将来世帯数と整合するよう数理計画法に基づき独自に算定を行った。また,商品別に世帯構成人数との需要の増減との傾向を家計調査から算定し,世帯構成人数の増減に合わせて,各商品の需要額の増減を考慮した。耐久財はまず固定資本全体の経年的な傾向を把握するため,産業連関表に付帯の固定資本形成行列の時系列データを部門統合および価格の実質化を行って整備した。各資本形成ごとに経年変化を定量的に確認し,固定資本形成総額については,GDPとの相関が高いが,固定資本の種類別に見ると,土木・建設の急減な増減と情報系等の急激な資本増加が確認され,時系列データに基づく簡易な回帰分析では長期傾向を捉えられない資本形成を特定した。本年度は日本の生産消費構造を詳細化した国際産業連関分析モデルであるGlobal link input-output model (GLIO)に推計した世帯属性別の家計消費将来需要を付与し,日本の家計消費に起因する消費者基準GHG排出量の将来推計を行い,2035年では1061Mt-CO2eqとなった(2005年比で4.2%減)。世帯間の消費者基準排出量を比較すると,世帯収入が最も高い50代を世帯主とする世帯よりも,40代を世帯主とする世帯からの排出量が最も多く,購入する財やサービスの炭素集約度の違いが反映された結果を得た。また,固定資本需要の将来推計のため,固定資本行列の内生化手法を採用し,家計消費需要に連動した固定資本需要の部門別推計を試みた。しかし,道路・港湾整備といった土木工事需要については内生化ではなく,別途モデル化する必要性を確認した。更に,日本の消費者基準の資源消費量を算定するため,GLIOに金属資源の国際マテリアルフローデータを組み込み,日本の最終需要が誘引する金属資源採掘量(マテリアルフットプリント)を推計した。加えて,マテリアルフットプリントに採掘国のリスクを内包する採掘リスクフットプリントの開発を行った。なお,新エネルギー技術に利用されるレアメタル(ネオジム,コバルト,プラチナ)を対象とした。一方,金属資源の国際マテリアルフローのネットワーク構造に注目し,ネットワーク分析による中心性分析やクラスタリングを試み,日本の最終需要が依存する資源の国際貿易構造の特性を理解するための方法論を検討した。本年度は日本の経済構造を詳細に記述した国際産業連関モデルであるGlobal link input-output model(GLIO)により,レアメタル材料・素材を対象に資源リスクを計測する指標を開発し,ネオジム,コバルト,プラチナを対象に実証分析を行った。着目する素材の国際市場集中度と輸出国の貿易リスクを利用し,先に開発した採掘リスク指標との比較を可能とした。その結果,コバルトについては,採掘時のリスクよりも,材料・素材の調達に関するリスクの方が高いことを確認した。また,貿易に伴うレアメタルの国際移動量をグラビティモデルによる説明を試み,国間距離,一人当たりGDPの他,レアメタル需要に関連する社会指標(自動車保有率,携帯普及率など)を説明変数に組み込み,計量分析を通じて将来推計に有効な説明変数の抽出を行った。一方,資源の国際フローから資源フローが集約する貿易群を特定する手法論の高精度化にも取り組んだ。また,固定資本形成への将来需要が家計消費需要と整合的に連動させるため,固定資本形成をGLIOに内包化する方法論の開発を行い,モデル拡張の基礎を固めた。日本の世帯収入によるカーボンフットプリントとマテリアルフットプリントの相違を定量化し,その特性を解析した。これにより,将来の世帯所得の変化に伴う各フットプリントの推計を可能とした。また将来の震災による国内サプライチェーンへの影響を産業連関モデルに反映する方法を検討し,南海トラフ沖地震による被害予測を例に生産拠点の被害や最終消費額の減少量を見積もった。加えて,資本形成に関わる物質別の資源消費量推計について特に建築・土木構造物を中心に精緻化を実施した。多地域産業連関モデルのGLIO modelに金属資源に関する国際マテリアルフローデータを搭載し,日本の最終需要が国際サプライチェーンを通じて誘引する温室効果ガスと資源採掘量(マテリアルフットプリント:MF)を計測した。 | KAKENHI-PROJECT-25281065 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25281065 |
消費者責任論に基づく環境・資源管理分析モデルの開発と長期予測への応用 | また,金属資源種別に採掘リスクを採掘量の市場集中度と採掘国の政治的リスクを用いて数値化し,MFの大きさに基づき日本の最終需要が負う採掘リスクを算定した。加えて,少子高齢化に伴う世帯構成および人口の変化に着目して,2005年から2035年までの世帯別の家計消費支出を推計し,それを用いて家計消費由来の消費者基準GHGと希少金属のMFの将来変化を分析した。日本の消費者基準のGHG排出量については家計消費需要に着目した長期予測結果を学術論文として公表し,資源需要については現況の解析と採掘リスクを内包する方法論の開発に成功した。固定資本需要については,新たな推計方法を適用することで家計消費と整合的な将来需要を得る見込みが立っており,着実に進展していると考えている。27年度が最終年度であるため、記入しない。環境システム学発電構成変化,新エネルギー技術の普及に着目した国内サプライチェーン構造の将来推計として,「国内サプライチェーン」について,震災後の影響を受けた発電構成の変化と新エネルギー技術の普及に焦点を当て,2050年への国内サプライチェーンの変化をモデル化する。加えて,2050年に向けた将来予測と耐久財の長寿命化に着目したシナリオ分析として,耐久財と消費財の将来需要に基づき,2005年から2050年までの消費者責任論によるGHG排出量および金属資源消費量を算出する。財の種類ごとに,GHG排出と資源消費をどの国へどれだけ誘発するかを詳細に解析し,経年的変化の特徴を明らかにする。日本の消費者責任基準GHG排出量に対する寄与が最も大きい,家計消費支出と固定資本形成について,その長期需要推計の方法論の開発を着実に進め,次年度に改善すべき課題が明確となっており,進捗は着実に行われている。27年度が最終年度であるため、記入しない。研究結果をまとめて国際学術誌へ投稿する準備を年度末に進めていたが,提出準備に時間を要したため,3月末までに翻訳・英文校閲の費用を支出することができなかったため。27年度が最終年度であるため、記入しない。家計消費の将来需要推計において世帯数が2035年までしか予測値が公開されていないため,2050年の推計に向けて独自の推計方法を開発する必要があるなど,明らかになった課題に対して適切に対応していく方針である。また,固定資本においてもデータの追加を行って時系列データの回帰方法を改良し,需要推計の方法論の確度を高める。国際学術誌に向けた論文の翻訳・英文校閲が終了次第速やかに支出する。27年度が最終年度であるため、記入しない。本研究は需要,貿易,技術変化について経年的なデータ整備を行い,モデルによるGHGと資源の将来推計と耐久財寿命に関するシナリオ分析を行うため,膨大かつ煩雑なデータ処理と多くの計算回数を必要とする。そのため,研究支援者(博士研究員を想定)を雇用する予定であったが,適切な人材を確保することが出来なかったため,人件費として計上していた経費が未使用となった。人材確保が困難であることから,研究支援を研究分担者を追加することで補うことにする。そのため,未使用額については,研究分担者への分担金として利用し,分担者の物品費,旅費等に使用する。 | KAKENHI-PROJECT-25281065 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25281065 |
トロンボモデュリン-HMGB1枢軸による生体防御の新機構 | 血管内皮細胞上のトロンボモジュリン(TM)はトロンビン(T)を凝固酵素から抗凝固酵素へと変換するのみならず、"死の因子"として同定されたHMGB1をそのN末端に吸着する。吸着されたHMGB1はT・TMによって分解され、des-HMGB1として遊離する。HMGB1は侵襲局所では止血・自然免疫・修復のメディエーターとして作用するが、その全身化はTMによって防がれていることになる。このようにTMによるHMGB1の吸着分解は、閉鎖循環系を局所の炎症や凝固から守る新たな生体防御システムの一環である。血管内皮細胞上のトロンボモジュリン(TM)はトロンビン(T)を凝固酵素から抗凝固酵素へと変換するのみならず、"死の因子"として同定されたHMGB1をそのN末端に吸着する。吸着されたHMGB1はT・TMによって分解され、des-HMGB1として遊離する。HMGB1は侵襲局所では止血・自然免疫・修復のメディエーターとして作用するが、その全身化はTMによって防がれていることになる。このようにTMによるHMGB1の吸着分解は、閉鎖循環系を局所の炎症や凝固から守る新たな生体防御システムの一環である。以下のような結果を得ることができた。1.TMに結合したHMGB1はトロンビン・TM複合体によって分解される局所の侵襲部位で壊死細胞や樹上細胞などから、細胞外に遊離されたHMGBIが局所では、自然免疫、創傷治癒、そして止血のアジュバントとして作用するが、このHMGBIが血管内に侵入し、循環すると、遠隔臓器に炎症や止血反応が“転移"し、SIRS/DIC/MOFの病態基盤を形成する。このような炎症や止血反応が局所に封じ込める仕組みが内皮細胞のTMであることを我々は明らかにした。引き続き、今回の研究の結果、以下のことを明らかにしえた。1)TMのN末端レクチン様ドメインに結合したHMGB1は生理活性を失い、その後トロンビン・TM複合体により、N末端部位のArg(10)-Gly(11)によって分解されることを突き止めた。このArg-Gly配列は、フィブリノゲンをはじめとするトロンビンの基質に広く分布している配列である。2)DICや実験的DICで遺伝子組換えTM投与ラットの血中にはこのフラグメントが存在することから、トロンビン・TM複合体によるHMGB1の分解はin vivoでも起きうるものと想定された。これらの結果より、血管内皮細胞上のTMは、局所で産生されたHMGB1を局所に留めおき、その全身化を防いでいるものと考えられた。2.HMGB1側の結合部位HMGB1のTMのレクチン様ドメインに結合する部位に関しては明らかにすることができなかった。引き続き解析中である。3.その他の進展TMはそのほかにエンドトキシンや、生体内proinflammatory分子、を吸着・分解することを見出したこれらの結果、TMは侵襲局所で産生された、凝固・炎症・細胞障害性の分子の血管内侵入を広範にブロックし、血管内を“聖域化"しているという新しいコンセプトを提出しつつあるところである。細胞は壊死にあたり、"Alarmins"あるいは"DAMs(Danger Associated Molecular Patterns)"と概念化されている蛋白類を放出して、免疫反応、止血反応をアジバントし、最終的には修復を促進することが判ってきた。その中でも核内DNA結合蛋白のHMGB1はその代表である。しかしこのHMGB1が血中を循環すると、炎症の転移を惹起し、MOF,SIRS,DICなどを引き起こすこと、そしてthromobomodulin (TM)のN末端レクチン様ドメインがこのHMGB1を吸着し、HMGB1の遠隔作用、全身化作用を抑制していることを我々は発見した。今回の研究ではTMがHMGB1の拡散を防ぎ、局所に封じ込め、局所濃度を高めて生体侵襲防御と修復、そして全身化を防御していること;すなわちTM-HMGB1枢軸のよる生体制御しくみ、その全体像を研究した。1.リコンビナントTM(rTM)と血HMGB1のダイナミズムの解明我々はすでにrTMのN末端レクチン様ドメインにHMGB1が吸着・中和されることをex vivoと動物実験で証明し、これがrTMの抗ショック、抗DIC作用である可能性を指摘している。一方既に臨床ではDIC患者の治療にrTMは使用され始めている。そこで本年度は臨床患者において投与されたrTMと患者血中のHMGB1のダイナミズムを検討し、実際にin vivoでもrTMがHMGB1の除去に働いていることを検証した。2.遺伝子改変動物を使用したTM-HMGB1枢軸の証明【トロンボモデュリンーHMGB1枢軸による生体防御】の全体像の描出と検証には、これらの分子の欠損動物を使ってin vivoのデータで裏を取る必要がある。これに関しては、HMGB1ノックアウトマウス、TMトランスジェニックマウスを使用した。【研究目的】【研究結果】研究で判明したことは以下のようなことである。1.生体内では内皮細胞のトロンボモデュリン(TM)が局所で生成されたHMGB1の血管内侵入と全身化を防いでいるということが示唆された。それはin vitroの結果で示されたが実際に遺伝子組換えTMのヒトおよび小動物への静注により、血中HMGB1が低下したことからも推定された。 | KAKENHI-PROJECT-20390274 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20390274 |
トロンボモデュリン-HMGB1枢軸による生体防御の新機構 | 2.このことを直接照明するため、TM・トロンビン複合体により試験管内で生成されたdes-HMGB1(HMGB1によりそのN末端から11残基のアミノ酸が切断された分子)の抗体作成に掛かったが、現時点で得ている抗体はまだ30%くらいはインタクトHMGB1ともクロス反応し、特異的な抗体は得ていない。これは引き続き検討してゆくことにしている。3.HMGB1の催炎症活性は、HMGB1にエンドトキシンが共存すると著しく増強された。4.そのほかにも、HMGB1の催炎症活性を増幅するDAMPs,PAMPsをいくつか発見した。現在その分子細胞機構を研究中である。5.HMGB1の催炎症活性がエンドトキシンやその他のPAMPs,DAMPsなどその他の“コンパニオン"存在下で増強されるという観察は、おそらく生体内部の損傷部位でのHMGB1のヴィヴィッドな生理活性を推定させるものである。すなわちHMGB1は生体内部での損傷部位、感染巣などの“環境"を「読んで」その場に最もふさわしい活性を発揮するのではないか?!ということである。現在この点について研究を推進しつつある。 | KAKENHI-PROJECT-20390274 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20390274 |
誤り動作・注視行動の定量化に基づくMCI早期スクリーニングの基盤技術開発 | 本年度は,非没入型のVR技術を用いたタブレット型IADL環境(VR-IADL)を開発し,ユーザビリティ評価を行った.実験は,アメリカのTemple大学の協力を得た(健常な大学生20名,健常高齢者7名,MCI患者7名).また,VR-IADLタスクにおいて,タブレット操作時の指の動きと視線の情報を計測した.それらの情報をビデオ解析により定性的に解析し,OE, CE, MEの発生個所の特定を行った.特定した個所の行動時系列データから特徴量を簡易的に算出し,機械学習を用いてMEを識別するモデルを実装した.結果,83.3%の精度でMEを識別できることが分かった.また,VR-IADL中の注視行動のデータは,健常な大学生のみ計測実験を行った.実験では,高齢者の認知機能を模擬するため,VR-IADLと並行してアルファベットと数字の組み合わせを発言させるデュアルタスクを行った.結果からは,認知負荷をかけた場合とそうでない場合では,視線の振舞いに違いが表れ,機械学習によるそれらの振舞の識別精度は,87%であった.本年度の研究は,VR-IADL環境の開発とユーザビリティ評価に時間を費やした.また,MCI患者,健常者を被験者としたデータ収集実験の実施,ビデオ映像解析によるOE,CE, MEと注視行動の分類に関しては,おおむね予定通りに進める事が出来た.平28年度は,非没入型のVR技術を用いたタブレット型IADL環境(VR-IADL)を開発し,ユーザビリティ評価を行った.実験は,アメリカのTemple大学の協力を得た(健常な大学生20名,健常高齢者7名,MCI患者7名).また,VR-IADLタスクにおいて,タブレット操作時の指の動きと視線の情報を計測した.それらの情報をビデオ解析により定性的に解析し,OE, CE, MEの発生個所の特定を行った.特定した個所の行動時系列データから特徴量を簡易的に算出し,機械学習を用いてMEを識別するモデルを実装した.結果,83.3%の精度でMEを識別できることが分かった.また,VR-IADL中の注視行動のデータは,健常な大学生のみ計測実験を行った.実験では,高齢者の認知機能を模擬するため,VR-IADLと並行してアルファベットと数字の組み合わせを発言させるデュアルタスクを行った.結果からは,認知負荷をかけた場合とそうでない場合では,視線の振舞いに違いが表れ,機械学習によるそれらの振舞の識別精度は,87%であった.平成29年度は,OE,CE ,MEとそれに関連する注視行動の定量化の精度を上げると共に,有効な特徴量の選定を行った.また,ビデオ映像解析法との比較による感度評価,定量化された特徴量に基づく,OE,CE,MEと注視行動プロセスのモデル化を行った.次年度は,OE,CE ,MEとそれに関連する注視行動の定量化の精度を上げると共に,有効な特徴量の選定を行う.また,ビデオ映像解析法との比較による感度評価,定量化された特徴量に基づく,OE,CE,MEと注視行動プロセスのモデル化,そして,健常者,MCI患者のOE,CE生起傾向のモデル化などを行う予定である.情報工学残額が少額であったため,購入できるものがなかった.残額は,翌年分の消耗品の購入に充てる. | KAKENHI-PROJECT-16K16468 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K16468 |
分子インテグレーション法に基づく細胞内位置モニタリング材料の創製 | 本研究では、分子インテグレーション法を利用した細胞膜外から内に至る細胞内位置モニタリング材料の創製を目的とする。両親媒性のリン脂質ポリマー共重合体を用いて、量子ドットを内包し、更に表面に有機蛍光分子を固定化した粒子を作製した。この粒子は、pH変化に対応して蛍光が変化する。細胞内取り込みにおける蛍光変化を評価した結果、エンドサイトーシスのpH変化に対応した蛍光変化を観察することが可能であった。本研究では、分子インテグレーション法を利用した細胞膜外から内に至る細胞内位置モニタリング材料の創製を目的とする。両親媒性のリン脂質ポリマー共重合体を用いて、量子ドットを内包し、更に表面に有機蛍光分子を固定化した粒子を作製した。この粒子は、pH変化に対応して蛍光が変化する。細胞内取り込みにおける蛍光変化を評価した結果、エンドサイトーシスのpH変化に対応した蛍光変化を観察することが可能であった。本研究では、分子インテグレーション法を利用した細胞膜外から核内に至る細胞内位置モニタリング材料の創製を目的とする。ここで、モニタリング材料として着目したのが数ナノメートルサイズで直径の差異により蛍光を発し、長期間の露光下においても蛍光安定性を有する量子ドットである。しかし、その表面は疎水基で覆われており細胞培養液中で使用するには表面修飾を行う必要がある。ここでは大きく分けて二種類を検討する。一つは、生体分子が固定化可能な両親媒性のリン脂質ポリマーを用いる表面修飾手法である(A)。もう一つは、可逆的付加-開裂連鎖移動(RAFT)剤ミセルによる量子ドットの可溶化である(B)。(A)法に関しては、両親媒性のリン脂質ポリマーを用いる表面修飾手法を用いて、量子ドットを内包し、表面にバイオ分子固定化部位を有する粒子を作製した。固定化部位を保護したリン脂質ポリマー粒子のみでは細胞に取り込まれたいことを確認した上で、種々のペプチドを粒子表面に固定化し、膜透過性を評価した。結果としてオクタアルギニン酸、オクタリジンなど側鎖がカチオン性かつ親水性の構造を有しているペプチドが優れた透過性を示すことを正確に評価することが可能であった。(B)法に関して、トリチオカルボニル基を有するアルキル鎖長が異なる(C8-16)RAFT剤を合成し、鎖長に応じて量子ドットの可溶化率が異なることを明らかとした。長鎖になるにつれ可溶化率は向上したが、クラフト点が向上し、室温ではRAFT剤自体が析出してくるため中間の鎖長が可溶化には適していると考えられる。ジスルフィド(S-S)結合を用いたRAFT剤合成を目的にしていたが水溶液環境において不安定であり合成や保存等で困難であった。この点は、マイケル付加反応を用いたスルフィド結合を介する新規法により改善し、関連する細胞内位置選択性を同様に検討する。本研究では、分子インテグレーション法を利用した細胞膜外から内に至る細胞内位置モニタリング材料の創製を目的とする。モニタリング材料として着目したのが数ナノメートルサイズで蛍光を発し、長期間の露光下においても蛍光安定性を有する量子ドットである。しかし、その表面は疎水基で覆われており水溶液中で使用するには表面修飾を行う必要がある。ここでは二種類の手法を検討する。一つは、生体分子が固定化可能な両親媒性のリン脂質ポリマーを用いる表面修飾手法である(A)。もう一つは、界面活性剤ミセルによる量子ドットの可溶化である(B)。(A)法では、両親媒性のリン脂質ポリマー共重合を用いる表面修飾手法を用いて、量子ドットを内包し、表面に有機蛍光分子固定化部位を有する粒子を作製した。量子ドットと蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を起こす蛍光分子を粒子表面に固定化した。FRETは、二つの分子間の距離によって蛍光が変化する。共重合体にはカチオン性部位を含み、エンドサイトーシスの際に生じるpH変化(7.0から5.5)に対して、膨張・伸縮し、蛍光が変化する設計とした。この粒子を細胞培養液中に添加し、細胞内取り込みにおける蛍光変化を評価した。結果として、エンドサイトーシスのpH変化に対応した蛍光変化を観察することが可能であった。(B)法では、マイケル付加反応を用いて、リン脂質モノマーとアルキルチオール化合物からなる界面活性剤のライブラリを構築した。表面張力測定より水中でミセルを形成していることが確認された。このミセルを用いて量子ドットを水中へ可溶化することに成功した。また、市販の界面活性剤よりもその可溶化能が高いことが分かった。表面がリン脂質で覆われているため細胞内のプローブとして用いることは出来ないが、非特異的なバイオ分子吸着が抑制されるためマイクロチップ流路などの流速可視化プローブへの応用が期待される。 | KAKENHI-PROJECT-21700484 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21700484 |
花崗岩中の流体包有物と熱破壊に関する研究 | 日本の代表的花崗岩の一つであり,岩石力学の研究対象として広く用いられている稲田花崗岩について,流体包有物の熱破壊に関する研究を行った結果,次のことが明らかになった.1.稲田花崗岩の主要構成鉱物である石英および長石中には,多数の流体包有物が含まれている.流体包有物の平均の大きさは,石英では2.2μm,長石では1.9μmで,鉱物1mm^3あたり10^5個オ-ダ-の流体包有物が含まれている.2.稲田花崗岩中の流体包有物は,室温では液相を主とする気液2相からなり,その均質化温度は,石英では85260°C,長石では150230°Cである。流体包有物のデクレピテ-ション温度は,石英では170550°C,長石では230450°Cである.3.流体包有物の加熱により生じたマイクロクラックの長さは,一般に100μm以下であるが,まれに200μmに達するものもある.マイクロクラックの方向は,石英ではC軸に平行又は垂直のものが多く,長石ではへき開に沿って伸びるものが多い.4.稲田花崗岩から単体分離した鉱物試料を用いてAE測定を行った結果,広い温度範囲でAEの発生が認められたが,そのピ-ク温度は,石英では380°C,長石では360°Cにあることが明らかになった.これと花崗岩の円盤状試料のAEプロフィ-ルを比較した結果,石英のαーβ相転移温度以下では,流体包有物のデクレピテ-ションが花崗岩のAEプロフィ-ルに大きな役割を占めていることが明らかになった.5.稲田花崗岩は,加熱後,冷却すると熱ひずみが残留する.残留熱ひずみ量は,加熱ピ-ク温度が高くなるにつれ,指数関数的に増加する.さらに,石英のαーβ相転移温度付近で急増する.これらの残留熱ひずみは,加熱によるマイクロクラックの発生とその開口によるものである.日本の代表的花崗岩の一つであり,岩石力学の研究対象として広く用いられている稲田花崗岩について,流体包有物の熱破壊に関する研究を行った結果,次のことが明らかになった.1.稲田花崗岩の主要構成鉱物である石英および長石中には,多数の流体包有物が含まれている.流体包有物の平均の大きさは,石英では2.2μm,長石では1.9μmで,鉱物1mm^3あたり10^5個オ-ダ-の流体包有物が含まれている.2.稲田花崗岩中の流体包有物は,室温では液相を主とする気液2相からなり,その均質化温度は,石英では85260°C,長石では150230°Cである。流体包有物のデクレピテ-ション温度は,石英では170550°C,長石では230450°Cである.3.流体包有物の加熱により生じたマイクロクラックの長さは,一般に100μm以下であるが,まれに200μmに達するものもある.マイクロクラックの方向は,石英ではC軸に平行又は垂直のものが多く,長石ではへき開に沿って伸びるものが多い.4.稲田花崗岩から単体分離した鉱物試料を用いてAE測定を行った結果,広い温度範囲でAEの発生が認められたが,そのピ-ク温度は,石英では380°C,長石では360°Cにあることが明らかになった.これと花崗岩の円盤状試料のAEプロフィ-ルを比較した結果,石英のαーβ相転移温度以下では,流体包有物のデクレピテ-ションが花崗岩のAEプロフィ-ルに大きな役割を占めていることが明らかになった.5.稲田花崗岩は,加熱後,冷却すると熱ひずみが残留する.残留熱ひずみ量は,加熱ピ-ク温度が高くなるにつれ,指数関数的に増加する.さらに,石英のαーβ相転移温度付近で急増する.これらの残留熱ひずみは,加熱によるマイクロクラックの発生とその開口によるものである.1.岩崗岩の主要構成鉱物である石英および長石には,微細な流体包有物が含まれている。これらはすべて二次包有物で,癒着したマイクロクラック面に配列している。稲田花崗岩中の流体包有物の大きさは,ふつう10μm以下であるが,まれに30μmに達するものがある。石英中の流体包有物の形状は不規則中間型で,完全な負型のものは認められない。長石中のものは主に負型中間型で,不規則型のものは少ない。2.流体包有物を含む癒着マイクロクラック(流体包有物面)およびその形成後に生じた未癒着のマイクロクラックは,異種鉱物が接している場合には,ほとんど粒内にとどまっているが,同種鉱物が接する場合は粒界を越えて延びていることが多い。流体包有物面と未癒着のマイクロクラックは,それぞれ優先方向があるが,両者は一般に斜交している。3.流体包有物は,常温では気液2相であるが,均質化温度以上に加熱すると,流体の圧力が急激に上昇して,マイクロクラックが生じ,破壊する。加熱顕微鏡下で測定の結果,稲田花崗岩の石英の均質化温度は120230°C,長石は150ー215°Cの範囲にある。 | KAKENHI-PROJECT-02452224 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02452224 |
花崗岩中の流体包有物と熱破壊に関する研究 | 破壊温度は,流体包有物の均質化温度,大きさ,形状,配列状態,鉱物の強度,薄片の厚さなどに支配されるが,石英では205550°C,長石では220450°Cの範囲にある。流体包有物の加熱により生じたマイクロクラックは,石英ではC軸に垂直に延びるものが多い。4.繰返し加熱ー冷却実験(同一ピ-ク温度とピ-ク温度逐次上昇の2種類)による冷却後の残留ひずみの検討の結果,加熱ピ-ク温度が高いほど残留ひずみが大きく,その増加率も大きい。同一ピ-ク温度の繰返し加熱実験では,400°Cまでは2回目以降新たな残留ひずみの発生はわずかであるが,ピ-ク温度がこれより高くなると顕著になる。残留ひずみは,主に鉱物の熱膨張に伴うクラックの開口によるものである。日本の代表的花崗岩の1つであり,岩石力学の研究対象として広く用いられている稲田花崗岩について,流体乞有物の熱破壊に関する研究を行った結果,次のことが明らかとなった。1.稲田花崗岩中の流体乞有物は,室温では液相を主とする気液2相からなり,その均質化温度は,石英では85260°C,長石では150230°Cである。流体乞有物のデクンピテ-ション温度は,石英では170550C,長石では230450°Cである。2.流体乞有物の加熱により生じたマイクロクラックの長さは,一般に100μm以下であるが,まれに200μmに達するものもある。マイクロクラックの方向は,石英ではC軸に平行又は垂直のものが多く,長石ではへき開に沿って伸びるものが多い。3.稲田花崗岩から単直分離した鉱物を用いてAE測定を行った結果広い温度範囲でAEの発生が認められるが,そのピ-ク温度は,石英では380°C,長石では360°C付近にあることが明らかになった。これと花崗岩の円盤状試料のAEプロフィ-ルを比較した結果,石英のαーβ転移温度以下では,流体乞有物のデクレピテ-ションによるものが花崗岩のAEプロフィ-ルに大きな役割を占めていることが明らかになった。4.稲田花崗岩は,加熱後冷却すると熱ひずみが残留する。残留熱ひずみ量は,加熱ピ-ク温度が高くなるにつれ,指数関数的に増加する,さらに,石英のαーβ相転移温度付近で急増する。これらの残留熱ひずみは,加熱によるマイクロクラックの発生とその開口によるものである。5.熱ひずみ試験後の試料を顕微鏡観察の結果,400°C以上の熱処理試料では,流体乞有物から生じたクラック数は,新たに発生した花崗岩全体のクラック数の約60%を占めている。なお,流体乞有物から生じたクラックは,比較的短く,残留熱ひずみに対する影響が比較的小さい。 | KAKENHI-PROJECT-02452224 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02452224 |
化学合成を基盤とした新しい抗真菌剤の開発 | AM3のC43-C67部分を持つ蛍光分子プローブを合成し,リポソームとインキュベートして蛍光顕微鏡により観察した結果,蛍光は観測されなかった。AM3のC43-C67部分では脂質膜への親和性が低いことが明らかになり,脂質膜と相互作用する分子を設計する上で有用な情報を得ることができた。抗真菌活性を示す最小構造単位を明らかにするために,アンフィジノール3のC21-C39/C52-C67部分に相当する人工短縮体モデル化合物の合成に成功した。この化合物は抗真菌活性を示さないことが明らかとなり,構造活性相関に関する有用な情報を得ることができた。平成27年度は新奇抗真菌剤として設計したAM3のC20ーC67部分に相当するアナログ分子の合成を検討した。アナログ分子の中で最も不安定であると考えられるポリエン部分は, C53ーC67部分に相当するスルホンを用いたJulia-Kocienski反応を経由して合成の最終段階で導入することにした。そのポリエン部分は`リンチピンストラテジー'を利用し,根岸カップリングおよびStilleカップリングを順次行うことで効率的に合成することに成功した。C20ーC29部分は,クロスメタセシス,オキサMichael反応,およびRoush不斉クロチル化反応を経由して合成した。2つのテトラヒドロピラン(THP)環を含むC31ーC52部分を,同一のTHP中間体からエポキシド(C43ーC52部分)および(C31ーC40部分)へと誘導した後,エポキシドの開環反応を経由して合成する計画を立てたが,その連結法をモデル実験によって確立した。各フラグメントの合成,および連結法を確立することができたため,目的化合物の合成の完成にかなり近づいている。ほぼ当初の計画どおり進行していると評価できる。平成28年度は,抗真菌化合物であるアンフィジノール3の人工類縁体モデル化合物の合成を検討した。まず,テトラヒドロピラン環部分の大量合成を行った。その原料である光学活性な(1S)-(E)-1-ヨードヘキサ-1,5-ジエン-3-オールは,重要な合成中間体である。当研究室ではラセミ体の速度論的光学分割を経由する合成法を既に報告しているが,エステルの部分還元の再現性が低く,またアルデヒドが不安定で揮発性が高いため取り扱いが困難であることが問題であった。そこで,エステルおよびDIBALHの溶液をマイクロフローリアクターによって混合し,生じた反応溶液を臭化アリルマグネシウムの溶液に注ぎ込むことで,エステルから直接ラセミ体の(E)-1-ヨードヘキサ-1,5-ジエン-3-オールを合成することに成功し,これらの問題点を解決した。また,フロー条件でのリパーゼを用いた速度論的光学分割を行うことで,(1S)-(E)-1-ヨードヘキサ-1,5-ジエン-3-オールを95%eeで得ることに成功した。さらに,クロスメタセシス反応,位置および立体選択的なSharpless不斉ジヒドロキシ化反応,鈴木-宮浦クロスカップリング反応,香月ーSharpless不斉エポキシ化反応,および酸触媒による6ーエンド環化反応を経由して合成した。さらに,末端エポシドへと誘導し,プロパルギルリチウムを用いたエポキシドの開環反応による側鎖の導入を行った。さらに,エポキシドの開環を経由する2つのTHP環部の連結法の開発を検討した。AM3のC43-C67部分を持つ蛍光分子プローブを合成し,リポソームとインキュベートして蛍光顕微鏡により観察した結果,蛍光は観測されなかった。AM3のC43-C67部分では脂質膜への親和性が低いことが明らかになり,脂質膜と相互作用する分子を設計する上で有用な情報を得ることができた。抗真菌活性を示す最小構造単位を明らかにするために,アンフィジノール3のC21-C39/C52-C67部分に相当する人工短縮体モデル化合物の合成に成功した。この化合物は抗真菌活性を示さないことが明らかとなり,構造活性相関に関する有用な情報を得ることができた。平成28年度は,目的化合物の合成を完成させる。また,ヒトの細胞(赤血球)と真菌の細胞を区別する分子プローブの合成,および選択毒性の高いアナログ分子の合成を行う。本申請者は,既に疎水性部分であるポリエン部と親水性部分であるテトラヒドロピラン環をひとつ含むAM3のC43ーC67部分を合成し,その生物活性を評価した結果,抗菌活性および溶血活性のいずれも示さないことが明らかとなった。分子構造から考えると,この分子は細胞膜には結合していると予想されるが,分子複合体を形成しないために生物活性を発現しないと考えられる。そこで,この分子に蛍光基を導入した分子プローブを調製し,細胞を破壊することなく蛍光染色できる方法論を開発する。有機合成化学当該助成金は,金額が小額であったため,本研究で使用する物品の購入に使用することが出来なかったため。次年度に消耗品費と合わせて使用する計画である。 | KAKENHI-PROJECT-15K13645 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K13645 |
薬剤溶出性ステントによる気絶または冬眠心筋の機能回復に対する阻害作用に関する研究 | 虚血性心疾患において気絶心筋および冬眠心筋の責任冠動脈に対する再灌流療法は、心筋収縮能の改善を促し長期予後を改善させることが示されている。本研究では多施設共同研究で薬剤溶出性ステント(DES)から溶出される薬物の気絶心筋または冬眠心筋の心機能回復への影響を検討することを目的とした。その結果、溶出した薬剤はDESの末梢側に留置したベアメタルステント内の新生内膜増殖を抑制することが分かった。虚血性心疾患において気絶心筋および冬眠心筋の責任冠動脈に対する再灌流療法は、心筋収縮能の改善を促し長期予後を改善させることが示されている。本研究では多施設共同研究で薬剤溶出性ステント(DES)から溶出される薬物の気絶心筋または冬眠心筋の心機能回復への影響を検討することを目的とした。その結果、溶出した薬剤はDESの末梢側に留置したベアメタルステント内の新生内膜増殖を抑制することが分かった。薬剤溶出性ステントは期待されていた再狭窄抑制効果のみならず、ステント留置血管の内皮機能障害や、ステント留置後1年以上経過したあとにも超遅発性ステント血栓症を認めるなど、予想外の作用を認めた。溶出した薬剤(免疫抑制剤または抗癌剤)による冠動脈への影響を明らかにすることで、それに対する拮抗作用をもつ新しい薬などの開発につなげることが本研究の目的である。平成22年度は遠位側の非薬剤溶出性ステントに対する、近位側の薬剤溶出性ステントの影響を検討し以下のことを明らかにし既に学会報告した。現在本邦で承認されている最小の薬剤溶出ステントは2.5mmであるため、それ以下の血管径の病変に対しては非薬剤溶出性ステントを留置し、1本のステントのみでは治療できないびまん性病変に対しては、近位側に薬剤溶出性ステントを留置した。近位側のステントから溶出した薬剤がどの程度遠位側のステントの新生内膜増殖を抑制するかを、ステント留置8か月後に冠動脈造影と血管内超音波検査による定量的評価を行った。2本とも非薬剤溶出性ステントで治療した群に比べて、近位側を薬剤溶出性ステントで治療した群では、明らかに新生内膜増殖の抑制が確認され、再狭窄パターンも薬剤溶出性ステントと同様、限局性のものが多かった。多変量解析では近位側の薬剤溶出性ステント、遠位側の非薬剤溶出性ステントの長さとも再狭窄の独立危険因子とはならなかった。以上より、薬剤溶出性ステントを留置した冠動脈では、その薬剤の影響はかなり末梢まで及ぶことが分かった。薬剤溶出性ステントは期待されていた再狭窄抑制効果のみならず、ステント留置冠動脈の内皮機能障害や、ステント留置後1年以上経過したあとにも超遅発性ステント血栓症を認めるなど、予想外の有害な作用も認めた。溶出した薬剤(免疫抑制剤または抗癌剤)による冠動脈への影響を明らかにすることで、それに対する拮抗作用をもつ新しい薬などの開発につなげることが本研究の目的である。梗塞責任冠動脈の冠動脈内皮機能障害の回復過程にシロリムス溶出ステントが悪影響を及ぼすこと、冠動脈内皮機能障害が遷延する症例では慢性期の左心室収縮能の回復も悪いことはすでに報告した。本研究の対象患者のソースとなっている山梨PCIレジストリーに登録された多くの症例の中から、平成23年度は血管内皮機能障害と各対象症例における臨床イベントとの関連を調べた。上腕動脈の血流依存性血管拡張反応で血管内皮機能障害を認めた症例は、認めなかった症例と比べて観察期間中に有意に腎機能の低下を認めた。この研究では血管内皮機能障害は他の古典的危険因子とは独立した、腎機能増悪の予測因子であることが分かった。また、エントリー時に血管内皮機能障害を伴った心不全症例を対象とした研究では、介入治療後に血管内皮機能が改善した症例では、改善が見られなかった症例と比べて慢性期の心血管イベントが有意に少ないことが分かった。さらにまた、エントリー時に頚動脈内膜中膜厚(IMT)が軽度肥厚している症例(1.1mm以上)を追跡調査した研究では、短期間にIMTの増大を認めた症例で将来の心血管イベントの発症のリスクが高まることも分かった。薬剤溶出性ステントは再狭窄抑制効果が示された一方、遅発性ステント血栓症、冠攣縮やlate catch up現象と呼ばれる遅発性ステント再狭窄など、当初予想されていなかった有害事象も次第に明らかとなってきた。薬剤溶出性ステント留置後の冠動脈への影響を詳細に検討することで、副次的作用を予防する新しい治療法などの開発につなげることが本研究の目的である。梗塞責任冠動脈の冠動脈内皮機能障害の回復過程にシロリムス溶出ステントが悪影響を及ぼすこと、冠動脈内皮機能障害が遷延する症例では慢性期の左心室収縮能の回復が悪いことはすでに報告している。本研究の対象患者のソースとなっている山梨PCIレジストリーに登録された多くの症例の中から、平成24年度は血管内皮機能障害と各対象症例における臨床イベントとの関連を調べた。2型糖尿病を伴った急性冠症候群では、発症後早期からのアカルボース介入により、1か月後には頸動脈の不安定プラークの安定化を認めた。 | KAKENHI-PROJECT-22590773 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22590773 |
薬剤溶出性ステントによる気絶または冬眠心筋の機能回復に対する阻害作用に関する研究 | 安定狭心症でスタチン治療中にもかかわらず高レムナントコレステロール血症が残存している症例においては、スタチンを増量するよりもエゼチミブを追加投与した方が有意にレムナントコレステロールが低下し、上腕動脈の血流依存性血管拡張反応で血管内皮機能の改善を認めた。冠動脈疾患患者においては、上腕動脈の血流依存性血管拡張反応と頸動脈プラークのエコー輝度を両方評価した方が、それぞれ単独で評価するよりも将来の冠動脈および脳血管イベントの予測に優れていることが分かった。冠動脈疾患患者の頸動脈プラーク内の新生血管を、マイクロバブルを用いた頸動脈エコーで評価したところ、新生血管の程度と冠動脈疾患の重症度に相関を認めた。また、6か月間のスタチン治療は頸動脈プラークの新生血管の退縮をもたらすことも分かった。本研究は第一世代薬剤溶出ステント(DES)のシロリムス溶出ステント(SES)とパクリタキセル溶出ステントを対象として開始したが、その後SESが製造中止により使用できなくなった。次いで承認された第二世代DESに対象を広げて検討を行っているところである。DES全体としてはある程度の症例数が確保できたが、それぞれ違う種類のステントを使用しているため、おのおのの症例数をもう少し増やす必要がある。24年度が最終年度であるため、記入しない。本大学病院を含めて関連施設からのレジストリーへの症例登録は順調に増加しているが、上記の理由などから本研究の対象に該当する症例数が当初予想していたより少なかったため、データ収集が思ったよりはかどっていない状況である。必要症例数を確保するため、引き続きレジストリーの登録を継続し、その中から該当となる症例数を増やしていく予定である。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22590773 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22590773 |
地球温暖化とサケ科魚類:水温上昇に伴う生活史変化を介した個体群過程への影響 | 水温は変温動物である魚類の生理現象を左右する環境因子であるため,地球温暖化に伴う温度上昇は,生活史(成熟年齢,回遊行動など)の変化,ひいては個体群過程に影響すると考えられる。本研究では,(i)サケ科魚類の海洋生活期における適水温帯の選択行動,(ii)サクラマスを例として河川生活期の水温上昇に伴う生活史形質の変化と資源変動への影響について分析した。その結果,海洋生活期においては能動的に適水温帯を選択するのに対し,河川生活期においては水温変化に応じて生活史形質(降海年齢・成熟年齢)が変化した。水温上昇に伴う生活史形質の単純化は資源変動の幅を増大させる可能性が示唆された。水温は変温動物である魚類の生理現象を左右する環境因子であるため,地球温暖化に伴う温度上昇は,生活史(成熟年齢,回遊行動など)の変化,ひいては個体群過程に影響すると考えられる。本研究では,(i)サケ科魚類の海洋生活期における適水温帯の選択行動,(ii)サクラマスを例として河川生活期の水温上昇に伴う生活史形質の変化と資源変動への影響について分析した。その結果,海洋生活期においては能動的に適水温帯を選択するのに対し,河川生活期においては水温変化に応じて生活史形質(降海年齢・成熟年齢)が変化した。水温上昇に伴う生活史形質の単純化は資源変動の幅を増大させる可能性が示唆された。温暖化がサクラマスの生活史および個体群過程に及ぼす影響を調べることを目的とし,分布南限に近い鳥取県を流れる陸上川のサクラマス個体群について個体群統計に関する調査を行った.昨年度までに得られている12個体群のデータと統合し,野外データに基づくサクラマス生活史モデルを構築することにより,温暖化が残留型化率へ及ぼす影響について予察的な数値シミュレーションを行った.その結果,雄については,水温が1°C上昇したり,生息密度が0.1尾/m^2低下したりすると,残留型化率が約10%上昇することが予測された.一方,雌については,夏季水温が15°Cを超えると,低密度時に残留型化率が急激に増すと予測された.また,次年度以降に予定しているサクラマスの銀毛個体の標本採集を行う候補河川(12河川)を選定し,各河川に水温ロガーを設置した.その他,各地の4河川(山梨県・富士川支流寒沢,北斗市・戸切地川,木古内町・大釜谷川,羅臼町・居麻布川)においてサケ科魚類の個体群統計調査を付随して行い,個体群過程の流程変化・年変化と水温との関連性についてデータ収集を行った.また,沖合域における水温に依存したサケ属魚類の水平的・鉛直分布および河川内におけるサケ科魚類の生息密度の季節的・緯度的変化に関する論文の取り纏めおよび公表を行った(Morita et al.,2010 ; Morita and Nagasawa 2010 ; Morita 2011 ; Morita et al.in press).平成22年度に水温データロガーを設置したサクラマスが生息する北海道内の10河川において、サクラマスの降海時期である56月に水温データロガーの回収およびサクラマス・スモルトの標本採集を行った。合計418個体のサクラマス・スモルトが採集され、耳石による年齢査定を含む魚体測定を行った結果、野生サクラマスのスモルト年齢は13歳、スモルトサイズは97163mm(845g)までの範囲であることが分かった。しかし、年平均水温が高い河川では、スモルト年齢が若齢化し、殆どすべて1歳でスモルト化するため、温暖化はスモルト年齢やスモルトサイズの多様性の低下に繋がることが示唆された。本年度はサクラマスの生活史モデルによる温暖化予測を行う.予定であったが、数値シミュレーションを行うのに必要なデータ数が不足していると考えられたため、シミュレーションモデルの構造を考案するにとどまった。その他、主に北海道の複数河川(富士川、戸切地川、大釜谷川、居麻布川)においてサケ科魚類の個体群統計調査を付随して行い、個体群過程の年変動と水温との関連性についてデータ収集を行った。また、北洋さけ・ます資源調査に乗船するとともに、昨年度までの乗船調査で得られたサケの鉛直水温分布に関する研究成果について論文公表した。また、温暖化がサケ属魚類におよぼす影響について、海洋生活期と河川生活期で水温変化が個体群過程に及ぼす影響の違いに着目してレビューを行い、North Pacific Anadromus Commissionの国際ワークショップで口頭発表した。平成23年度にサクラマスの銀毛(幼魚)調査を実施した北海道北部の2河川において,これらの幼魚が回帰する平成24年度にサクラマス親魚調査を行い,銀毛(幼魚)と回帰親魚間で降海年齢の比較を行った。降海年齢が2歳の個体の割合は,降海時より海洋生活期を終えて河川に産卵遡上したサクラマス親魚の方が高く,2歳で降海した方が海洋での生き残りが良いことが示唆された。今年度および前年度までに得られた野外調査の結果をまとめると,川で生まれた稚魚は1歳で海に下るものが大半であるが,水温が低い川では2歳で降海する個体が一定の割合で出現することが明らかになった。また,降海年齢が2歳の個体の割合は,降海時より海洋生活期を終えて河川に産卵遡上したサクラマス親魚の方が高く,2歳で降海した方が海洋での相対的な生存率が高いことが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-22780187 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22780187 |
地球温暖化とサケ科魚類:水温上昇に伴う生活史変化を介した個体群過程への影響 | 一方,雄は海へ下らずに0+で性成熟して残留型となる個体が多く出現し,雄の残留型の出現率は水温が高い川ほど高くなった。これらの野外における生活史過程と水温の関係を考慮したサクラマスの生活史モデルを構築し,個体群動態の数値シミュレーションを行った。その結果,水温が上昇するに従い,1残留型となる雄の割合が増えるため漁業対象となる降海型サクラマスの資源量が減る,2降海年齢が単純化するため環境確率性の影響を受けやすくなりサクラマスの資源変動の幅が増加する(例:極端な不漁年が生じる等),が予測された。以上の研究成果について,日本生態学会静岡大会で口頭発表をおこなった。また,アメマスの遡上時期と河川および沿岸水温の関係について分析し,ロシアサハリン州ユジノサハリンスクで開催されたThe 7th International Charr Symposiumにおいて口頭発表した。平成25年度までに計画していた野外調査はほぼ順調に進み、想定していたデータを得ることができた。数値シミュレーションに関する分析については、やや遅れてはいるが、平成24年度に得られるであろうデータを用いることにより、一定の成果が得られると考えられる。24年度が最終年度であるため、記入しない。数値シミュレーションを行うのに必要な情報が不足していると考えられたため、平成24年度は特にサクラマスの再生産効率に関するデータの収集および近縁種のデータ収集を行い、平成24年度内には一定のシミュレーションに基づく予測が得られるように努める。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22780187 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22780187 |
振動台及び高速オンライン実験法を併用した伝統的木造建築の地震被害と免震特性の解明 | 伝統的木造建築の免震特性と地震被害の解明のため実大の試験体を実際の地震と同様の速度で加振するための新しい加振システムを開発するとともに実際の木造民家を用いた各種の実験を系統的に実施した。得られた結果は以下に要約する通りである。1)任意の地震動を受けた時の木造架構の振動を現地で再現するための小型の起振装置を試作した。能力は最高速度580.8m/s、最大加速度6146mm/s^2である。応答加速度を直接制御することはできないが、従来のオンラン実験と異なり応答速度まで制御可能となった。2)伝統的木造建築の土壁と仕口の力学的な性能評価を模型を使って実験を行った。土壁においては損傷は散りまわりに集中し、しかも変形角1/60程度まで目視で確認できる損傷は生じず、オンライン実験では瞬間損傷エネルギーと応答速度との間には良好な相関関係があることが分かった。胴差し型式の木造仕口の性能評価においては、剛接合とは言えないし、接合部の回転、構面の変形、直行材の影響等を考慮する必要がある。3)伝統木造模型架構の振動観測と静的耐力の相関性の把握、実構造物の振動観測と地盤の波動伝達特性の把握については、模型架構の静的な荷重変形関係と振動観測により得られた荷重変形関係とは大まかに一致している。この事により、実建物の振動観測により当該建物の剛性が把握できることが分かった。更に国重要文化財西本願寺御影堂の修理事業に際して実地適用した結果、時間差をもって入力される地震波の波動現象の特性があきらかになった。4)衝撃的な振動観測手法による構造特性の評価においては、振動観測手法により構面ごとの剛性、水平せん断剛性を求めた結果、静的に求めたものの初期剛性の約2倍であった。また、部材ごとに衝撃的な振動特性をもっていることが分かり、建物が衝撃による部分的な破壊をする可能性を示唆した。伝統的木造建築の免震特性と地震被害の解明のため実大の試験体を実際の地震と同様の速度で加振するための新しい加振システムを開発するとともに実際の木造民家を用いた各種の実験を系統的に実施した。得られた結果は以下に要約する通りである。1)任意の地震動を受けた時の木造架構の振動を現地で再現するための小型の起振装置を試作した。能力は最高速度580.8m/s、最大加速度6146mm/s^2である。応答加速度を直接制御することはできないが、従来のオンラン実験と異なり応答速度まで制御可能となった。2)伝統的木造建築の土壁と仕口の力学的な性能評価を模型を使って実験を行った。土壁においては損傷は散りまわりに集中し、しかも変形角1/60程度まで目視で確認できる損傷は生じず、オンライン実験では瞬間損傷エネルギーと応答速度との間には良好な相関関係があることが分かった。胴差し型式の木造仕口の性能評価においては、剛接合とは言えないし、接合部の回転、構面の変形、直行材の影響等を考慮する必要がある。3)伝統木造模型架構の振動観測と静的耐力の相関性の把握、実構造物の振動観測と地盤の波動伝達特性の把握については、模型架構の静的な荷重変形関係と振動観測により得られた荷重変形関係とは大まかに一致している。この事により、実建物の振動観測により当該建物の剛性が把握できることが分かった。更に国重要文化財西本願寺御影堂の修理事業に際して実地適用した結果、時間差をもって入力される地震波の波動現象の特性があきらかになった。4)衝撃的な振動観測手法による構造特性の評価においては、振動観測手法により構面ごとの剛性、水平せん断剛性を求めた結果、静的に求めたものの初期剛性の約2倍であった。また、部材ごとに衝撃的な振動特性をもっていることが分かり、建物が衝撃による部分的な破壊をする可能性を示唆した。(1)高速アクチュエータの試作並びに静的加力装置の整備伝統的木造建築の動的加力のために高速アクチュエータを試作し、静的加力装置の整備を行った。(2)伝統的木造建築の加力実験(a)伝統的木造建築の力学的特性に関する実験的研究(和様社寺建築の頭貫の水平抵抗性能について)平等院鳳凰堂翼廊の5/8の模型を作成し、静的水平載荷実験並びにオンライン実験、衝撃自由振動実験を行った。静的水平載荷実験については(1)頭貫の水平抵抗力は鉛直荷重の影響によるものと摩擦或いはその他の要因の二つからなる。(2)架構全体の復元力は柱傾斜復元力と頭貫の摩擦による復元力のみを足し合わせたものとなり、柱傾斜復元力はほぼ完全弾性体と考えられるが大斗、柱脚のめり込み等により載荷曲線と除荷曲線は若干のずれを示した。等の結論が得られた。オンライン実験では(1)オンライン実験で得た固有周期と衝撃自由振動実験から得た固有周期はほぼ似た値を示した。(2)鉛直荷重を増やすと水平方向の最大復元力は増加するが、応答加速度、応答速度、応答変位共に減衰する傾向をみせず、一種の共振状態を示した。(b)伝統的木造住宅の水平耐力に関する実験的研究江戸末期建設の農家(屋根は茅葺の上に銅板を被せた寄棟、下屋部分は瓦葺きの木造平屋建)に対する実験結果は、最大耐力8.71トンその時の最大変形角は0.031rad.であった。Co=2.0とすると建物にかかる地震荷重7.93トンよりも大きい。 | KAKENHI-PROJECT-12450252 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12450252 |
振動台及び高速オンライン実験法を併用した伝統的木造建築の地震被害と免震特性の解明 | また、最大耐力は解析値の方が高いが破壊に至る変形の大きさはほぼ一致した。古民家の耐力の向上には大黒柱の断面欠損をできるだけ少なくし、かつ他の柱がそれを活かすだけの水平耐力をもつ必要があるが、特に江戸時代末期の民家では大黒柱構造が形骸化している場合があり、大黒柱の断面欠損や北側の下屋構造等に考慮した計画が必要であると言える。(1)木造社寺モデルに対する振動観測伝統的な社寺建築の構造では水平構面の特性が各垂直構面に大きく影響していることがわかる。また、静的載荷実験と振動観測の結果より算出したモデルの挙動は柱の傾斜が1/500程度まではほぼ一致する結果である.その後柱傾斜が進行するほど剛性は落ちてくる.重心の位置から算出した架構の剛性低下は、・R型試験体(各構面とも頭貫、飛貫、胴貫を有する剛性の高い架構)→変形1/200程度の時の剛性は初期剛性の6割程度。・S型試験体(各構面とも頭貫のみの柔らかい架構)→変形1/200程度の時の剛性は初期剛性の3割程度・T型試験体(1構面は頭貫のみ、他構面は頭貫、飛貫、胴貫を有する剛性の偏心した架構)→変形角1/200程度の時の剛性は初期剛性の4割程度(2)重要文化財行永家住宅における現地観測振動観測の結果、行永家住宅では、土間周りと居室空間でねじれ振動に関しては特性の違う振動を起こしており、床を有する居室空間で部分的に生じたねじれ振動が土間周りに対する影響は変形能力の高い水平構面で変形を吸収するため小さくなる傾向にある.振動観測より算出した各構面の初期剛性は静的載荷実験の結果とほぼ一致するが、部分的に高めに出る傾向が全体的に見られた。(3)重要文化財本願寺大師堂における現地観測本願寺のような巨大建築では、スパンが大きく水平構面の剛性が小さいために多次の振動モードが低い周波数で観測された。また、建物内や地盤中を波動が伝達されるには時間がかかるため、各構面で地震波が入力されるには時間差が生じる。剛床仮定では水平構面の変形によるエネルギー吸収は起きないが、実際には水平構面の変形によるエネルギー吸収が起きており、建物のエネルギー吸収機構に大きく関与している.伝統的木造建築の構造特性評価のために、1)小型で軽微な現地加力装置の開発し、2)伝統的木造建築の振動観測と正確な重量測定による横面の剛性と水平勇断剛性の解明、3)屋根の有無による剛性の比較、4)静的な実験と振動観測で求めた剛性を比較検討した。建物概要は、規模:10.1m桁行き:14.0m高さ:天井面:3.8m軒高さ:7.3m屋根:茅葺のトタン張り、寄せ棟、外屋部分桟瓦葺き特徴:大黒柱が土間の隅にあること、叉首組み構造柱梁部分の軸組の接合部は梁間方向には胴差し、桁行き方向には差しつけの構造である。屋根部分の叉首組みは上屋桁に乗っているだけで接合部はピンに近く屋根は軸組と別構造と考えられる。建物概要は、規模:10.1m桁行き:14.0m高さ:天井面:3.8m軒高さ:7.3m屋根:茅葺のトタン張り、寄せ棟、外屋部分桟瓦葺き特徴:大黒柱が土間の隅にあること、叉首組み構造柱梁部分の軸組の接合部は梁間方向には胴差し、桁行き方向には差しつけの構造である。屋根部分の叉首組みは上屋桁に乗っているだけで接合部はピンに近く屋根は軸組と別構造と考えられる。静的載荷実験:載荷荷重1トン程度の微小変形実験では各柱の変位より天井が剛でないことが分った。大変形実験では載荷荷重3トン程度に対し、水平剪断力がかなり小さく、隣の構面や庇、屋根部分も水平剪断力を伝達していた。 | KAKENHI-PROJECT-12450252 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12450252 |
変形性関節症における核酸修復酵素の活性・発現制御機構と軟骨変性機序との関連解析 | 変形性関節症の発症には、加齢に伴う軟骨マトリックスの組成変化に加えて、肥満や荷重等のメカニカルストレスに伴って誘導される炎症や酸化ストレスの蓄積が関与し、軟骨細胞のDNA損傷や軟骨基質の変性を引き起こすことが示唆されている。我々は、変形性関節症の発症の主要因と考えられる軟骨へのメカニカルストレスによって生じる過剰な活性酸素の産生と、DNA損傷および軟骨変性機序との関連について研究を進め、軟骨細胞のDNA損傷に対する防御機構としてDNA修復酵素APエンドヌクレアーゼ(APEX2)やOgg1(8-oxoguanine DNA glycosylase)の発現変動が関節軟骨変性に関与を見出した。変形性関節症(Osteoarthritis, OA)において、メカニカルストレスや炎症等に対する軟骨細胞のストレス応答・防御機構の変化と軟骨変性との関連については未だ不明な点が多い。我々は平成26年度の研究において、変性軟骨ではグアニン酸化体を始めとする核酸の酸化損傷が蓄積し、かつ、軟骨変性度と核酸酸化損傷度とは相関することをOA軟骨組織において確認した。さらに、OAのin vitro実験系において、軟骨細胞の核酸酸化損傷に対する防御因子としての核酸(DNA)修復酵素[Ogg1, APEX2]は軟骨変性に関連して発現が変動を見いだした。平成26年度の研究成果から、軟骨変性部においては核酸酸化損傷の結果としてグアニン酸化体が高発現しており、これに相反して核酸修復酵素Ogg1活性は低下していることを確認した。この研究結果から、変性軟骨では核酸損傷が蓄積して軟骨細胞活性低下や細胞死が誘導され、軟骨組織の維持・恒常性低下、ついには軟骨変性につながっていくものと考察した。Apex2については、変性軟骨部の軟骨細胞において高発現し、かつ、OA誘導因子(軟骨異化因子)によって細胞にApex 2g発現が誘導されることを明らかとした。Apex2は核酸損傷の修復過程の後半で機能することが知られていることから、軟骨変性部の軟骨細胞自体には細胞生存・核酸損傷修復に向けた抗OA反応もみられることが示唆され、かつ、軟骨細胞活動・軟骨組織の恒常性の破綻がOA発症に関与するものと考察している。これらの研究成果を基盤にして、OAの病因・病態に軟骨細胞の核酸酸化損傷と、その防御機構の異常が関与する可能性について、今後解析を進めていく。国内外における多くの精力的研究から、変形性関節症(OA)の発症は加齢に伴う軟骨基質の組成変化に加えて、肥満や荷重等のメカニカルストレスと、それに伴い誘導される酸化ストレス(活性酸素種)の蓄積が関与し、軟骨細胞活性や軟骨基質の変性を引き起こすとされ、加齢と酸化ストレスならびに関節軟骨変性の発症・進行は密接な関連を持つことが明らかとされてきた(Arthritis Rheum. 2006;54:1357-1360)。本研究課題において、OA発症の主要因とされる関節軟骨組織への炎症、酸化ストレスおよびメカニカルストレス等の因子に対する細胞応答によって軟骨内に生じる過剰なフリーラジカル産生と、軟骨細胞核酸酸化損傷および軟骨基質変性との関連について一連の研究を進め、軟骨変性の発生機序を軟骨細胞の核酸酸化損傷の観点から解析している。平成27年度は、前年度までの研究成果を基盤に、関節軟骨細胞において細胞エネルギー代謝の源であるミトコンドリア機能に注目し、各細胞のエネルギー代謝(解糖系・TCA回路)、ミトコンドリア活性(ATPエネルギー産生量・電子伝達系)、ミトコンドリア機能制御機構(AMP活性化プロテインキナーゼAMPK)およびDNA修復酵素活性調整メカニズムと病態との関連を詳解し、1リウマチ性関節炎(炎症モデル)および関節変性を実験的に再現したin vitro実験系において、の細胞エネルギー代謝(解糖系・TCA回路・ATP産生)は一過性に亢進し、滑膜増生、軟骨基質分解酵素MMPs産生、肥大軟骨化・骨棘形成等の関節異化のエネルギー源となること、2同in vitro実験系の炎症性サイトカイン刺激存在下において、一過性にATP産生が亢進する過程で電子伝達系から漏出する電子e-が増え、この漏出電子が酸素と結合した活性酸素種量(酸化ストレス)も増加し、その結果として酸化ストレス・DNA損傷による細胞活性・組織機能の低下を誘導する可能性、3脱アセチル化・ADPリボシル転写活性を持つSirtuin 1が、ATP産生量の変化を感知することでATP産生量を制御するAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性をコントロールすることを示唆する知見を得た。これらの研究成果の一部は、International journal of Molecular Scienceに投稿、国際変形性関節症学会、日本整形外科学会およびアメリカリウマチ学会(ACR2016)で発表予定であり、概ね計画は順調に進捗していると考える。変形性関節症の病因・病態に関与するメカニカルストレスに対して、軟骨細胞がどのように応答するか(ストレス応答機構)については、未だ不明な点が多い。我々はこれまでの研究から、軟骨変性には細胞のDNA損傷、その防御因子(DNA修復酵素)の発現変化および細胞エネルギー代謝調節機構の変化が関与することを明らかにして報告してきた。これらの研究成果・基盤から我々は、変形性関節症の発症には加齢に伴う軟骨基質マトリックスの組成変化に加えて、肥満や荷重等のメカニカルストレスに伴って誘導される炎症や酸化ストレスの蓄積が関与し、これが軟骨細胞のDNA損傷や軟骨基質の変性を引き起こすことと仮説しして一連の研究を進めてきた。 | KAKENHI-PROJECT-26462323 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26462323 |
変形性関節症における核酸修復酵素の活性・発現制御機構と軟骨変性機序との関連解析 | 平成2328年度科研費基盤研究の成果として我々は、変形性関節症の発症の主要因と考えられる軟骨へのメカニカルストレスによって生じる過剰な活性酸素種の発生機序と抗酸化剤の治療効果、ならびにDNA損傷、DNA損傷修復酵素活性の変化および軟骨変性機序との関連について研究を進めて報告した(Int. J Molecular Science, 15(9),14921-34, 2014;国際変形性関節症学会2014, 2015; J. Osteoarthritis, 1(2), Epub 1000115, 2016; Int. J Molecular Science, 17(7), Epub 17071019, 2016)。変形性関節症の発症には、加齢に伴う軟骨マトリックスの組成変化に加えて、肥満や荷重等のメカニカルストレスに伴って誘導される炎症や酸化ストレスの蓄積が関与し、軟骨細胞のDNA損傷や軟骨基質の変性を引き起こすことが示唆されている。我々は、変形性関節症の発症の主要因と考えられる軟骨へのメカニカルストレスによって生じる過剰な活性酸素の産生と、DNA損傷および軟骨変性機序との関連について研究を進め、軟骨細胞のDNA損傷に対する防御機構としてDNA修復酵素APエンドヌクレアーゼ(APEX2)やOgg1(8-oxoguanine DNA glycosylase)の発現変動が関節軟骨変性に関与を見出した。軟骨細胞のストレス応答因子(核酸損傷修復酵素)に関する研究計画のうち、(1)軟骨細胞のOAストレス応答機構(防御機構)を核酸(DNA)修復酵素活性の観点から解析し、Ogg1, Apex2の発現動態について知見が得た。また、(2)軟骨細胞核酸酸化損傷の程度を正常軟骨と変性軟骨において比較し、(3)軟骨異化因子に応答する核酸修復酵素の活性変化、酵素間クロストークの可能性に関する知見が得られた。これらのことから、計画はおおむね順調に進捗していると考える。平成27ー28年度に準備を進める当初計画に則って、実験的OA異化因子刺激下における軟骨細胞の核酸損傷修復酵素(Ogg1, APEX2など)活性化や調節機構の細胞内情報伝達路を翻訳後修飾の網羅的解析(プロテオミクス解析)の結果を基にして解析していく。かつ、平成27年度の研究成果として、我々が注目している脱アセチル化・ADPリボシル転写酵素Sirtuinは変性軟骨細胞のミトコンドリア活性・エネルギー代謝を制御する重要な因子であることを示す結果が得られたので、関節疾患の骨・軟骨変性のメカニズム(MMPs産生制御、肥大軟骨化変性、骨棘形成等)への関与および変性抑制ターゲットとして解析を進めていく。整形外科様々な外因性ストレス刺激に応答した細胞内蛋白質の多彩な翻訳後修飾の中で、リン酸化・脱リン酸化の反応は細胞内情報伝達経路を制御するメインイベントであるとされている。“どの蛋白質"の“どの部位"が、“いつ"、“どのくらい"リン酸化・脱リン酸化されるのかを知ることは情報伝達機構解明のうえで極めて重要である。そこで、核酸修復酵素(Ogg1, APEX2)について、RNA干渉法を用いた酵素欠損軟骨細胞および遺伝子導入による当該酵素の過剰発現軟骨細胞株を樹立し、各種ストレス条件下におけるこれらの細胞のリン酸化翻訳後修飾の網羅的解析を比較分析し、OA誘導因子に応答した軟骨細胞核酸修復酵素群の細胞内情報伝達路を解析する。 | KAKENHI-PROJECT-26462323 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26462323 |
ネパールの「貧困の文化」に関する定量的実証研究 | 本研究の目的は、オスカー・ルイスがLa Vida(1968)等に述べている「貧困の文化」の諸特徴を我々のネパールの数量的データで検証してみることにあった。その為に、私のポカラ・データベースから、9千戸以上の各世帯の家族情報と家産情報や結婚情報を取り出し、それらの情報を類型化した上で定量的な相関を調べてみることであった。そこで家産情報を一定の相対基準から「富裕階級」、「中産階級」、「貧困階級」とカテゴリー化し、同様に、世帯構成情報を「父系拡大家族」、「疑似父系拡大家族」、「父系直系家族」、「疑似父系直系家族」、「核家族」、「単身世帯」に類型化した。その結果、「貧困階級」と認知される世帯の相対的分布は、「単身世帯」において最大であり、その分布は「核家族」、「疑似父系直系家族」、「父系直系家族」、「疑似父系拡大家族」、「父系拡大家族」に移るに従って、その分布比率は小さくなって行くことが明瞭に実証された。この事実は、ルイスが、貧困の文化には家族分裂や不和が多い(家族的結合の弱体化)という定性的命題を、彼のフィールドとは全く異なるネパール社会において定量的に定式化したものとして評価されよう。更に、我々の研究結果からは、家産が脆弱化するにつれて、大家族(父系拡大家族または父系直系家族)は各家族に分裂し、更に、単身世帯へと再分裂するという仮設を主張出来るであろう。この命題は、特定の家族史を辿ることにより検出される命題ではあるが、多量の共時的家族データにおいて推量されたのは、我々の研究が初めてであると思われる。本研究の目的は、オスカー・ルイスがLa Vida(1968)等に述べている「貧困の文化」の諸特徴を我々のネパールの数量的データで検証してみることにあった。その為に、私のポカラ・データベースから、9千戸以上の各世帯の家族情報と家産情報や結婚情報を取り出し、それらの情報を類型化した上で定量的な相関を調べてみることであった。そこで家産情報を一定の相対基準から「富裕階級」、「中産階級」、「貧困階級」とカテゴリー化し、同様に、世帯構成情報を「父系拡大家族」、「疑似父系拡大家族」、「父系直系家族」、「疑似父系直系家族」、「核家族」、「単身世帯」に類型化した。その結果、「貧困階級」と認知される世帯の相対的分布は、「単身世帯」において最大であり、その分布は「核家族」、「疑似父系直系家族」、「父系直系家族」、「疑似父系拡大家族」、「父系拡大家族」に移るに従って、その分布比率は小さくなって行くことが明瞭に実証された。この事実は、ルイスが、貧困の文化には家族分裂や不和が多い(家族的結合の弱体化)という定性的命題を、彼のフィールドとは全く異なるネパール社会において定量的に定式化したものとして評価されよう。更に、我々の研究結果からは、家産が脆弱化するにつれて、大家族(父系拡大家族または父系直系家族)は各家族に分裂し、更に、単身世帯へと再分裂するという仮設を主張出来るであろう。この命題は、特定の家族史を辿ることにより検出される命題ではあるが、多量の共時的家族データにおいて推量されたのは、我々の研究が初めてであると思われる。ポカラ市の現状から、そこの敷地と農地の市場価格比率を3対2として、各世帯の敷地・農地の所有面積から「資産計数」を算定した。この資産計数に基づき、全世帯を「貧困階級(計数2未満)」、「中産階級(2以上20未満)」、「富裕階級(20以上」と操作定義をして、ポカラの世帯毎の経済的階級構造を特定した。その経済階級構造を階層化した視点からカースト別の相対的特徴を見てみると、以下の諸特徴が明瞭になった。【.encircled1.】最上位のカーストであるブラーマンとチェットリは、他のカーストと比較して、「富裕」に属するものが最大になり、「貧困」が最小となる。【.encircled2.】それに対して、不可触民カーストであるダマイ、カミ、スナール、カサイ、ミヤ、サルキ等は、いずれもが「貧困」での比率が最大になり、「中産」は少々みられるものの、「富裕」は皆無である。【.encircled3.】「マトワリ」と呼ばれるグルン、マガール、ボテ等はカースト階級の中程に位置づけられるが、それらの経済的特徴はどちらかと言えば、不可触民カーストに似た傾向が見られる。しかし、少数ながら「富裕」が見られるのが、不可触民との大きな相違であろう。【.encircled4.】同じ「マトワリ」の中でもネワールとタカリは上記のマトワリ達とは著しく異なった特徴をもつ。これらは、「富裕」、「中産」に属する数も多く、換言すれば、同一カースト内での経済階級的格差が一番大きい特徴を持っていると言えるであろう。以上の諸点から、我々の今年度の研究成果として、ネパールのポカラ市の経済的階級構造が現在時でもなお、基本的に歴史的なカースト的階級構造に規定されていることを数量的に実証出来たものと思われる。本研究の目的は、オスカー・ルイスがLa Vida(1968)等に述べている「貧困の文化」の諸特徴を我々のネパールの数量的データで検証してみることにあった。 | KAKENHI-PROJECT-05832012 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05832012 |
ネパールの「貧困の文化」に関する定量的実証研究 | その為に、私のポカラ・データベースから、9千戸以上の各世帯の家族情報と家産情報や結婚情報を取り出し、それらの情報を類型化した上で定量的な相関を調べてみることであった。そこで家産情報を一定の相対基準から「富裕階級」、「中産階級」、「貧困階級」とカテゴリー化し、同様に、世帯構成情報を「父系拡大家族」、「疑似父系拡大家族」、「父系直系家族」、「疑似父系直系家族」、「核家族」、「単身世帯」に類型化した。その結果、「貧困階級」と認知される世帯の相対的分布は、「単身世帯」において最大であり、その分布は「核家族」、「疑似父系直系家族」、「父系直系家族」、「疑似父系拡大家族」、「父系拡大家族」に移るに従って、その分布比率は小さくなって行くことが明瞭に実証された。この事実は、ルイスが、貧困の文化には家族分裂や不和が多い(家族的結合の弱体化)という定性的命題を、彼のフィールドとは全く異なるネパール社会において定量的に定式化したものとして評価されよう。更に、我々の研究結果からは、家産が脆弱化するにつれて、大家族(父系拡大家族または父系直系家族)は各家族に分裂し、更に、単身世帯へと再分裂するという仮説を主張出来るであろう。この命題は、特定の家族史を辿ることにより検出される命題ではあるが、多量の共時的家族データにおいて推量されたのは、我々の研究が初めてであると思われる。(阪神大震災の為、冊子報告書は、後日、提出することをお許し願いたい。) | KAKENHI-PROJECT-05832012 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05832012 |
胆汁酸代謝異常症の遺伝子診断と内科的治療法の確立~肝移植回避を目指して~ | 先天性胆汁酸代謝異常症(IEBAM)は、乳児期に胆汁うっ滞をきたし、無治療であれば肝硬変へ移行し死亡する予後不良な遺伝性疾患である。しかし、そのほとんどが早期診断すれば治療可能な疾患であるため、早期診断と治療が重要である。我々は、ガスクロマトグラフィー質量分析法による尿中胆汁酸分析とダイレクトシークエンス法による遺伝子解析を用いてIEBAMの診断を行っている。今回の研究期間において、我々が診断・治療に関与したIEBAMは6例であった。全症例に関して、臨床経過、肝機能の推移、定期的な胆汁酸分析を行っている。全例が生存中で良好な経過であり、早期診断と治療の有効性が示されている。IEBAMは早期診断し、経口ケノデオキシコール酸療法を開始すればそのほとんどが内科的治療可能な疾患である。非常に稀な疾患であり、確定診断には血清や尿中の胆汁酸分析と遺伝子解析といった特殊な検査が必要なため、本疾患を小児科医に知ってもらう必要がある。特徴的な所見としては、乳児期に胆汁うっ滞を認めるにもかかわらず、血清γ-GTP及び総胆汁酸値が正常な点である。以上のことを、小児科及び小児肝臓病関連の学会や研究会で発表し、本疾患の理解の普及に努めた。また、本研究により診断がついたIEBAM症例の論文を日本語及び英語にて報告し、病態・予後・治療法の解明を行った。現在、ここ数年間の研究成果をまとめた論文を作成中である。先天性胆汁酸代謝異常症(IEBAM)は、乳児期に胆汁うっ滞をきたし、無治療であれば肝硬変へ移行し死亡する予後不良な遺伝性疾患である。しかし、そのほとんどが早期診断すれば治療可能な疾患であるため、早期診断と治療が重要である。我々は、ガスクロマトグラフィー質量分析法による尿中胆汁酸分析とダイレクトシークエンス法による遺伝子解析を用いてIEBAMの診断を行っている。今回の研究期間において、我々が診断・治療に関与したIEBAMは6例であった。全症例に関して、臨床経過、肝機能の推移、定期的な胆汁酸分析を行っている。全例が生存中で良好な経過であり、早期診断と治療の有効性が示されている。IEBAMは早期診断し、経口ケノデオキシコール酸療法を開始すればそのほとんどが内科的治療可能な疾患である。非常に稀な疾患であり、確定診断には血清や尿中の胆汁酸分析と遺伝子解析といった特殊な検査が必要なため、本疾患を小児科医に知ってもらう必要がある。特徴的な所見としては、乳児期に胆汁うっ滞を認めるにもかかわらず、血清γ-GTP及び総胆汁酸値が正常な点である。以上のことを、小児科及び小児肝臓病関連の学会や研究会で発表し、本疾患の理解の普及に努めた。また、本研究により診断がついたIEBAM症例の論文を日本語及び英語にて報告し、病態・予後・治療法の解明を行った。現在、ここ数年間の研究成果をまとめた論文を作成中である。先天性胆汁酸代謝異常症(IEBAM)は、乳児期に胆汁うっ滞をきたし、無治療であれは肝硬変へ移行し死亡する予後不良な疾患であり、早期診断と治療が重要である。我々は、ガスクロマトグラフィー質量分析法による尿中胆汁酸分析とダイレクトシークエンス法による遺伝子解析を用いてIEBAMの診断を行っている。今年度、新たに2例のIEBAMを遺伝子診断した。1例は、5β-reductase欠損症の女児で、診断後すぐに経口ケノデオキシコール酸療法を開始し、現在1歳で良好な経過を得ている。早期発見・治療により肝移植を回避できた。もう1例は、oxysterol 7α欠損症の女児で、肝移植後に診断がついた。本疾患は現在までのところ、肝移植以外に治療法はないといわれている。世界で2例の報告しかなく、今回が3例目である。本症例は、現在2歳で良好な経過をたどっている。世界で初めての移植救命例であるため、病態解明のためにも遺伝子診断とその後の経過観察が重要である。IEBAMは早期診断し、経口ケノデオキシコール酸療法を開始すればそのほとんどが内科的治療可能な疾患である。非常に稀な疾患であり、確定診断には胆汁酸分析と遺伝子解析が必要なため、本疾患を小児科医に知ってもらう必要がある。特徴的な所見としては、乳児期に胆汁うっ滞を認めるにもかかわらず、血清γ-GTP及び総胆汁酸値が正常な点である。以上のことを、小児科及び小児肝臓病関連の学会や研究会で発表し、本疾患の理解の普及に努めた。また、本研究により診断がついたIEBAM症例の論文を日本語及び英語にて報告し、病態や治療法の解明を行った。先天性胆汁酸代謝異常症(IEBAM)は、乳児期に胆汁うっ滞をきたし、無治療であれば肝硬変へ移行し死亡する予後不良な疾患であり、早期診断と治療が重要である、我々は、ガスクロマトグラフィー質量分析法による尿中胆汁酸分析とダイレクトシークエンス方による遺伝子解析を用いてIEBAMの診断を行っている。今年度、新規診断例はなかったが、以前診断した症例の治療経過や予後を追跡した。現在、我々が診断・治療に関与しているIEBAMは国内に6例いる。全症例に関して、臨床経過、肝機能の推移、定期的な胆汁酸分析を行っている。全例が生存中で良好な経過があり、早期診断と治療の有効性が示されている。 | KAKENHI-PROJECT-22791008 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22791008 |
胆汁酸代謝異常症の遺伝子診断と内科的治療法の確立~肝移植回避を目指して~ | IEBAMは早期診断し、経口ケノデオキシコール酸療法を開始すればそのほとんどが内科的治療可能な疾患である。非常に稀な疾患であり、確定診断には胆汁酸分析と遺伝子解析が必要なため、本疾患を小児科医に知ってもらう必要がある。特徴的な所見としては、乳児期に胆汁うっ滞を認めるにもかかわらず、血清γ-GTP及び総胆汁酸値が正常な点である。以上のことを、小児科及び小児肝臓病関連の学会や研究会で発表し、本疾患の理解の普及に努めた。また、本研究により診断がついたIEBAM症例の論文を日本語及び英語にて報告し、病態や治療法の解明を行った。先天性胆汁酸代謝異常症(IEBAM)は、乳児期に胆汁うっ滞をきたし、無治療であれば肝硬変へ移行し死亡する予後不良な疾患である。しかし、そのほとんどが早期診断すれば治療可能な疾患であるため、早期診断と治療が重要である。我々は、ガスクロマトグラフィー質量分析法による尿中胆汁酸分析とダイレクトシークエンス法による遺伝子解析を用いてIEBAMの診断を行っている。今年度、新規診断例はなかったが、以前診断した症例の治療経過や予後を引き続き追跡した。現在、我々が診断・治療に関与しているIEBAMは国内に6例いる。全症例に関して関係施設の協力のもと、臨床経過、肝機能の推移、定期的な胆汁酸分析を行っている。全例が生存中で良好な経過であり、早期診断と治療の有効性が示されている。IEBAMは早期診断し、経口ケノデオキシコール酸療法を開始すればそのほとんどが内科的治療可能な疾患である。非常に稀な疾患であり、確定診断には血清や尿中の胆汁酸分析と遺伝子解析といった特殊な検査が必要なため、本疾患を小児科医に知ってもらう必要がある。特徴的な所見としては、乳児期に胆汁うっ滞を認めるにもかかわらず、血清γ-GTP及び総胆汁酸値が正常な点である。以上のことを、小児科及び小児肝臓病関連の学会や研究会で発表し、本疾患の理解の普及に努めた。また、本研究により診断がついたIEBAM症例の論文を日本語及び英語にて報告し、病態・予後・治療法の解明を行った。現在、ここ数年間の研究成果をまとめた論文を作成中である。数例のIEBAMを遺伝子診断し、ケノデオキシコール酸治療を行えている。また、学会や医学雑誌などで本疾患を報告し、他の小児科医へ理解の普及が進んでいるため。24年度が最終年度であるため、記入しない。今後も胆汁酸代謝異常症が疑われる症例があれば、生化学的及び分子遺伝学的診断を行い、本邦における診断法を確立する。確定診断がついた症例の経過を追跡し、病態や予後を検討する。以上で得られた結果を学会や論文で報告し、本疾患の理解や予後改善に努めていく。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22791008 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22791008 |
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