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秩序状態の局所的空間構造と巨視的位相の結合による量子輸送現象 | 今年度は、強磁性薄膜における強磁性共鳴の線幅が、磁気ゆらぎによって狭まることを示した。磁化の時間変化というゲージ場が誘起する物理量やその変化について進展が見られた。一方、磁壁やスキルミオンなど、磁化の空間変化によるゲージ場によってもたらされる物性の開拓について、更に推し進める必要がある。スピンゼーベック効果は、強磁性体と金属の単純な積層構造に温度勾配を与えると電位差が生じる物理現象である。単純な積層構造で熱電変換が可能になるため、廃熱利用への応用研究が進められている。このため、磁性体中における高効率なスピン流生成方法および金属への注入方法が盛んに研究されている。このような背景のもと、初年度に開始した研究の定量的評価を進めた。反強磁性絶縁体と強相関金属の2層系を考える。そして、反強磁性層のスピン波に対する自己エネルギーを、層間の飛び移り積分2次の範囲で求めた。金属層の電子相関はGutzwiller近似で扱う。電子相関が強まると、その効果を表すGutzwiller因子は小さくなる。スピン波の線幅は、Gutzwiller因子は小さくなるに連れて、それに反比例して増大することを示した。電子相関により重くなった電子系の磁気励起は、小さなエネルギー幅に大きな状態密度を持つことになる。このため、強相関金属と接した磁性絶縁体の磁気励起は、低エネルギー領域においてスペクトルの線幅が広がる。つまり、コヒーレンスが失われることになる。ここでは強相関金属を考えたが、同様な状況はスピントロニクスの舞台となる強磁性体と金属の界面にも当てはまる。コヒーレンスが悪くなることは、スピントロニクスで求められる効率的スピン流生成を阻害することになるため、界面における電子状態の重要性を示唆している。この他に、フラストレートスピン梯子系の磁気相図を理論的に求めた。そして、相図中に現れる磁気プラトー近傍の素励起の性質を明らかにした。また、磁場下において、交替磁気異方性が生じる磁性体の磁気励起スペクトルの研究を行い、中性子散乱実験で得られる強度分布の起源を解明した。これまで、2次元系や薄膜の磁性体における磁気励起の計算を進めてきた。反強磁性体やフェリ磁性体と金属との接合において、電子相関によって磁気励起の線幅が増大し得ることを示した。昨年度、強磁性薄膜における強磁性共鳴の線幅が、磁気ゆらぎによって狭まることを示した。磁化の時間変化というゲージ場が誘起する物理量やその変化について進展が見られた。今年度、磁化の空間変化に伴うゲージ場によってもたらされる物性の開拓を進めた。この過程で、磁化の空間変化がクーパー対の対称性を変える点に着目した。磁化の量子化軸が異なる領域をクーパー対が伝搬すると、一重項と三重項の混成が起こる。この混成を利用することで、スピン流駆動によるジョセフソン効果が可能になることが期待される。スピン流は、磁気共鳴や温度勾配などで駆動できる。現在、スピン流の駆動方法とそれによる超伝導現象の解明を進めている。局所構造の変化が、磁場下において横熱伝導度を誘起する現象(熱ホール効果)について研究を行った。熱ホール効果とは、熱の流れに対して垂直に磁場を与えたとき、この両者に直交する方向に温度差が生じる現象である。 | KAKENHI-PROJECT-15K05192 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K05192 |
外国人児童生徒の健康支援に向けた保健サービスシステム構築の検討 | 本研究は、これまで焦点が当てられなかった外国人の子どもの、不安や悩みや健康課題を明らかにし、彼らの健全育成を支援するものである。対象は、近畿・四国の公立小中学校に在籍する外国人児童生徒(日本語指導の必要な子ども90人と、そうでない子ども90人合計180人)を抽出する。方法は、母国語で半構造化インタビューと質問紙調査を行い、不安や悩みについて(学校生活、家庭生活、地域・海外の親戚との関係)、健康観、健康状態等を調査する。本研究から彼らが日本で健康に暮らすために必要な支援とは何かの示唆を得、保健サービスシステムを構築し検討する。本研究は、これまで焦点が当てられなかった外国人の子どもの、不安や悩みや健康課題を明らかにし、彼らの健全育成を支援するものである。対象は、近畿・四国の公立小中学校に在籍する外国人児童生徒(日本語指導の必要な子ども90人と、そうでない子ども90人合計180人)を抽出する。方法は、母国語で半構造化インタビューと質問紙調査を行い、不安や悩みについて(学校生活、家庭生活、地域・海外の親戚との関係)、健康観、健康状態等を調査する。本研究から彼らが日本で健康に暮らすために必要な支援とは何かの示唆を得、保健サービスシステムを構築し検討する。 | KAKENHI-PROJECT-19K21722 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K21722 |
調和解析および関連する諸問題の研究 | (1)半線形放物型偏微分方程式で記述される制御対象の境界制御問題において,靜的フィ-ドバックによる安定化の限界を示し,有限次元動的補償器の構成法とその結果による非線形系の指数位安定化可能性を示した。(2)表面張力作用下での(等エントロピ-)圧縮性粘性流体の自由境界問題の時間局所的一意可解性,外力および表面張力作用下での非圧縮性粘性流体の自由境界問題の時間大域的一意可解性,境界上での滑りをも考慮に入れた圧縮性粘性流体の初期一境界値問題の時間局所的一意可解性、(3)バナッハ空間内の閉有界凸集合C円の方程式のt→∞のときのx(t)の存在または非存在について、ある結果を得ている、これは統計力学におけるBoltzman型の方程式の一種で応用が広い。(4)同時測定におけるハイゼンベルグの不確定性原理を数学的に定式化し、これを証明した。さらに不確定性原理の数学的定式化を正当づけるための量子力学の公理化を提案した。(5)Gを半単純リ-群とし,Kを極大コンパクト群,M=Zk(A)とするAはGの極大ベクトル群である。この時,J〓K,σ〓Mに対して定義されるSzego作用素:S_J(σ,r)の間に関係式が成立することがわかった。特にS_J(6,r)とS_1(1,r)をつなぐ関係式は重要で,それを用いてPaleyーWienen型の定理の別証明を与えることができた。(6)差分ー楕遼型偏微分方程式の解のカンパナ-ト型評価を得た。(1)半線形放物型偏微分方程式で記述される制御対象の境界制御問題において,靜的フィ-ドバックによる安定化の限界を示し,有限次元動的補償器の構成法とその結果による非線形系の指数位安定化可能性を示した。(2)表面張力作用下での(等エントロピ-)圧縮性粘性流体の自由境界問題の時間局所的一意可解性,外力および表面張力作用下での非圧縮性粘性流体の自由境界問題の時間大域的一意可解性,境界上での滑りをも考慮に入れた圧縮性粘性流体の初期一境界値問題の時間局所的一意可解性、(3)バナッハ空間内の閉有界凸集合C円の方程式のt→∞のときのx(t)の存在または非存在について、ある結果を得ている、これは統計力学におけるBoltzman型の方程式の一種で応用が広い。(4)同時測定におけるハイゼンベルグの不確定性原理を数学的に定式化し、これを証明した。さらに不確定性原理の数学的定式化を正当づけるための量子力学の公理化を提案した。(5)Gを半単純リ-群とし,Kを極大コンパクト群,M=Zk(A)とするAはGの極大ベクトル群である。この時,J〓K,σ〓Mに対して定義されるSzego作用素:S_J(σ,r)の間に関係式が成立することがわかった。特にS_J(6,r)とS_1(1,r)をつなぐ関係式は重要で,それを用いてPaleyーWienen型の定理の別証明を与えることができた。(6)差分ー楕遼型偏微分方程式の解のカンパナ-ト型評価を得た。 | KAKENHI-PROJECT-02640148 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02640148 |
未分化型胃癌の進展にエピジェネティックな発現調節がどのようにかかわっているか | 腫瘍の進展とともにエピジェネティックな調節が外れることによって、ゲノムコピー数を反映した遺伝子発現パタンになることを示唆するデータが得られた。これが正しければ、特定の遺伝子のコピー数変化のパタンから腫瘍の進展リスクを診断できるようになる。そのような遺伝子の候補として、胃癌ではMYCとTP53に加えて、分化型では腸型や上皮間葉転換に関連する遺伝子等、未分化型ではインテグリン遺伝子があることを示した。腫瘍の進展とともにエピジェネティックな調節が外れることによって、ゲノムコピー数を反映した遺伝子発現パタンになることを示唆するデータが得られた。これが正しければ、特定の遺伝子のコピー数変化のパタンから腫瘍の進展リスクを診断できるようになる。そのような遺伝子の候補として、胃癌ではMYCとTP53に加えて、分化型では腸型や上皮間葉転換に関連する遺伝子等、未分化型ではインテグリン遺伝子があることを示した。本研究の目的は、胃癌組織においてゲノム(遺伝子)のコピー数と発現との関係を調べ、ゲノムコピー数に非依存性に変化する遺伝子発現が、どのようにエピジェネティックに調節されているのかを明らかにすることである。初年度は、未分化型胃癌の組織像の多様性に関係していると考えられるインテグリンとカドヘリンを中心に蛋白発現の側面でのデータを収集するとともに、次年度に向けてゲノムコピー数解析やqMSPの実験を開始した。(1)インテグリンは間質細胞にも発現するものがあるので、癌細胞での発現を評価するためにはサイトケラチンとインテグリンの二重染色と、結果の定量的解析が必要であった。方法論を工夫し、癌細胞では浸潤とともに上皮性インテグリンサブユニット(α2、α3、α6、β4)を失い、間葉性インテグリンサブユニット(α1、α5)の発現が亢進することを明らかにした。これは癌の上皮間葉転換(EMT)を反映していると考えられる。またこのEMシフト以外に、β1からαVグループへの脱分化シフトも早期癌より進行癌でより顕著に見られた。(2)カドヘリンは、Eカドヘリン、Pカドヘリン、LIカドヘリンを調べた。早期癌より進行癌で発現低下が顕著なのは、PカドヘリンとEカドヘリンの細胞外ドメインであった。(3)ゲノムマイクロアレイ解析にむけて、レーザ・マイクロダイセクションで採取した未分化型胃癌細胞のDNA抽出を進めている。(4)qMSPによるメチル化解析をhMLH1のプロモータ領域に対して行い、hMLH1の蛋白発現が低下していても、プロモータのメチル化が無いこともしばしばあること、逆にhMLH1の蛋白発現があるのに、プロモータメチル化が部分的に見られることもあることが分かった。これまでhMLH1発現とマイクロサテライト不安定性を調べてきた材料で、hMLH1のコピー数との対比を次年度に行なう予定である。今年度は未分化型胃癌のレーザマイクロダイセクションからのDNA抽出に難渋し、繰り返し採取してもなかなかアレイ解析ができる程、量的に十分なDNAが採取できず、やむなくDNA抽出の容易な分化型胃癌でアレイCGH解析を進めた。しかしながら、これによって、胃癌の進展パタンと遺伝子コピー数変化との間に、意外にも明瞭な関係があること、遺伝子としては、TP53、MYCの他に、(昨年度未分化型胃癌で発現を検討した)上皮間葉転換(EMT)にかかわるインテグリンとカドヘリン(ITGA1、ITGA2、ITGA5、ITGA6、CDH1)だけでなくREG4、CDX2、MUC2、等腸型関連遺伝子にも注目すべきことが明らかになった。EMTについては、dormantな腫瘍では上皮性インテグリンのコピー数の減少が、aggressiveな腫瘍では間葉性インテグリンのコピー数の増加が見られた。腸型形質については、分化型胃癌で腸形質のゲノタイプとフェノタイプを比較したところ、発現レベルではほとんどの症例に腸型形質が混在していたが、ゲノムレベルではdormantな腫瘍では腸型遺伝子のコピー数減少、aggressiveな腫瘍では逆にコピー数の増加がみられるものがあった。これらの発現とゲノムコピー数のデータから、aggressiveな腫瘍ではゲノムコピー依存性に発現亢進が起こるものがあったのに対し、dormantな腫瘍ではエピジェネティックに発現増加が起こることが示唆された。次年度はこれらのことが未分化型胃癌についても言えるのかどうかを明らかにしたい。また、マイクロサテライト不安定性の腫瘍内多様性については、hMLH1のプロモータメチル化の蓄積が時間依存性、局所的に起こり、late eventとしてマイクロサテライト不安定性が獲得されることに起因することを示し、Cancer Lettersに論文として掲載された。今年度は未分化型胃癌15例、26サンプルにアレイCGHを行い、分化型でdormantパタン(MYC-/TP53+)とaggressiveパタン(MYC+and/or TP53-)との間で逆のコピー数変化を示した、上皮間葉転換(EMT)や腸形質等に関連する遺伝子のコピー数解析、分化型との比較、クラスター解析および遺伝子コピー数と蛋白発現との関係の解析を行った。EMT関連では、CDH1にはあまり変化はなく、ITGA6(上皮性)とITGA5(間葉性)は粘膜内癌の多いクラスターで、それぞれコピー数増加と減少を示し、浸潤癌の多いクラスターでは逆に、それぞれ減少と増加を示し、分化型と基本的に同様であった。 | KAKENHI-PROJECT-21590369 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21590369 |
未分化型胃癌の進展にエピジェネティックな発現調節がどのようにかかわっているか | またこれは、発現レベルで未分化型の粘膜内癌から浸潤部へ行くにつれてEMTが起こっていたことと平行していた。一方、腸形質の遺伝子、特にMUC2は、未分化型の粘膜内癌でコピー数が増加、浸潤癌で減少する傾向があり、発現とは平行する一方、分化型のコピー数変化とは逆であった。しかし発現レベルではepigeneticに補正されたためか、分化型と未分化型との間では大差が無かった。このように、未分化型では(層構造を含む)粘膜内癌からゲノムコピー数依存性に遺伝子が発現する傾向があった。遺伝子コピー数変化の方向もaggressiveパタンが多く、分化型粘膜内癌の約70%で見られたdormantパタンは、検索した未分化型粘膜内癌8例中に1例も見出せなかった。つまり、分化型はゲノムレベルで2つの系譜が識別できたが、未分化型はゲノムレベルでは粘膜内癌から進行癌と共通した遺伝子コピー数変化を示す単一の系譜に属すると推定された。振舞いとしてdormantな層構造では基本的にaggressiveなコピー数変化が既に存在しているが、epigeneticに補正されていると考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-21590369 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21590369 |
多数派信念を見誤らせるのは誰か?多元的無知の先行要因としてのリーダー行動の役割 | 本研究の目的は,多元的無知の先行要因としてのリーダー行動の機能の解明である。多元的無知とは,「集団の多数派意見を人々が誤って思い込む現象」を指す。従来は,多元的無知の先行要因として,個人内における認知過程が注目されてきたものの(cf.対応バイアス),個々人の相互作用を通じて動的に生み出される対人・社会的相互影響過程の視点からの実証的検討は十分ではなかった。本研究では,個人が集団において優勢な意見や規範を推測する際,リーダーの行動を手がかりとして利用することが不正確な推測へとつながると予測し,この仮説について検討する。本研究の目的は,多元的無知の先行要因としてのリーダー行動の機能を明らかにすることである。2018年は,リーダーと多元的無知との関連性について基礎的なデータ収集を実施した。本研究は,小集団におけるリーダーの機能に注目しているため,特定の実在小集団(e.g.,大学サークルや部活)を対象としている。データ収集の効率性の観点から,実験参加者は大学生を対象としているため,実験には1)多元的無知が関連している,2)日本の大学生に馴染みがある,の2点を満たす題材を材料として用いる必要がある。したがって,これまで過去の研究において多元的無知との関連性が示唆されてきたトピック(e.g.,男性の育児休業,大学生の過度な飲酒)に加えて,web調査等を用いた探索的検討も実施しながらトピックを見極め,慎重な題材の選定を行った。予備調査の結果を踏まえ,現在は「性的マイノリティに対する偏見」を題材にすることを検討している。すなわち,「多くの個人は性的マイノリティの人々に対してそれほど否定的態度を抱いていないにもかかわらず,自分以外の他者は否定的な態度を抱いているのだろう」と推測している,というものである。題材の選定後は,実験刺激を作成するとともに,質問項目の精緻化も進めた。具体的には,サークル集団のリーダーが性的マイノリティに対して肯定的な意見を述べている動画(実験条件)と性的マイノリティとは無関係のトピックについて意見を述べている動画(統制条件)等を撮影し,それを集団成員に提示して,LGBTに対する態度尺度等へ回答を求めるかたちでリーダー行動の機能について検証する。既に複数の大学サークルの協力を得て,予備実験を実施しており,今後は得られた結果を踏まえ,問題点を修正しながら,本実験の準備と実施に取り組む予定である。当初の計画通り,サークル集団を対象とした実験刺激の作成と調査項目の選定を進められているため。既に実施された予備実験をもとに,新たに実験に協力してくれる集団をリクルートし,迅速な本実験の実施とデータ収集へと繋げる。得られた結果は,1)リーダーの性別,2)集団の性質(i.e.,文化系か理科系か)などの影響を受けると考えられるため,複数の集団を対象に実験を実施する。成果は学会大会等において発表・議論し,学術雑誌での公刊を目指す。本研究の目的は,多元的無知の先行要因としてのリーダー行動の機能の解明である。多元的無知とは,「集団の多数派意見を人々が誤って思い込む現象」を指す。従来は,多元的無知の先行要因として,個人内における認知過程が注目されてきたものの(cf.対応バイアス),個々人の相互作用を通じて動的に生み出される対人・社会的相互影響過程の視点からの実証的検討は十分ではなかった。本研究では,個人が集団において優勢な意見や規範を推測する際,リーダーの行動を手がかりとして利用することが不正確な推測へとつながると予測し,この仮説について検討する。本研究の目的は,多元的無知の先行要因としてのリーダー行動の機能を明らかにすることである。2018年は,リーダーと多元的無知との関連性について基礎的なデータ収集を実施した。本研究は,小集団におけるリーダーの機能に注目しているため,特定の実在小集団(e.g.,大学サークルや部活)を対象としている。データ収集の効率性の観点から,実験参加者は大学生を対象としているため,実験には1)多元的無知が関連している,2)日本の大学生に馴染みがある,の2点を満たす題材を材料として用いる必要がある。したがって,これまで過去の研究において多元的無知との関連性が示唆されてきたトピック(e.g.,男性の育児休業,大学生の過度な飲酒)に加えて,web調査等を用いた探索的検討も実施しながらトピックを見極め,慎重な題材の選定を行った。予備調査の結果を踏まえ,現在は「性的マイノリティに対する偏見」を題材にすることを検討している。すなわち,「多くの個人は性的マイノリティの人々に対してそれほど否定的態度を抱いていないにもかかわらず,自分以外の他者は否定的な態度を抱いているのだろう」と推測している,というものである。題材の選定後は,実験刺激を作成するとともに,質問項目の精緻化も進めた。具体的には,サークル集団のリーダーが性的マイノリティに対して肯定的な意見を述べている動画(実験条件)と性的マイノリティとは無関係のトピックについて意見を述べている動画(統制条件)等を撮影し,それを集団成員に提示して,LGBTに対する態度尺度等へ回答を求めるかたちでリーダー行動の機能について検証する。既に複数の大学サークルの協力を得て,予備実験を実施しており,今後は得られた結果を踏まえ,問題点を修正しながら,本実験の準備と実施に取り組む予定である。当初の計画通り,サークル集団を対象とした実験刺激の作成と調査項目の選定を進められているため。既に実施された予備実験をもとに,新たに実験に協力してくれる集団をリクルートし,迅速な本実験の実施とデータ収集へと繋げる。 | KAKENHI-PROJECT-19K21016 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K21016 |
多数派信念を見誤らせるのは誰か?多元的無知の先行要因としてのリーダー行動の役割 | 得られた結果は,1)リーダーの性別,2)集団の性質(i.e.,文化系か理科系か)などの影響を受けると考えられるため,複数の集団を対象に実験を実施する。成果は学会大会等において発表・議論し,学術雑誌での公刊を目指す。 | KAKENHI-PROJECT-19K21016 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K21016 |
障害物を越える動作局面における筋相互間の協調性の研究:高齢者の転倒予防の視点から | 本研究よ障害物を越える動作に伴う協調的な筋の共同運動(筋シナジー,synergy)の変化を解析し、予測的姿勢制御(APA)が外乱条1牛における姿勢保持機箔こいかなる影響を与えるかについて明らかにすることができた。本年度は、昨年度の健常若年者を対象とした研究成果を基に、神経系またば運動器障害のない健常高齢者8名を対象にデータ収集、分析を行った。実験手順としては、1、最大身体動揺シフトの確認;2、身体動揺課題(筋活動モードの同定);3、障害物を越える課題(筋シナジーを求める)であった。被検者はフォースプレート上に安静立位で姿勢を保持し、静止立位姿勢から異なる高さの障害物(身長の5%、10%、15%)をまたき越える動作を行った(各条件で12回ずつ施行)。その際のCOPの軌跡とFxの数値変動および10姿勢筋の筋活動から、それぞれCOPとFxにおける筋シナジしを求めた。その結果健常高齢者における障害物を越える動作に伴う筋シナジーは、健常若年者に類似した協調性がみられたしかし、体幹・下肢筋群の積分筋電値を主成分分析した結果高齢者群は若年者群に比べて有意にco-contractioh Modesの数が多かった。健常高齢者においては、前麦方向のバランス保持機能を反映するパラメータとしてのCOPと、下肢筋力発揮のパラメータとしてのFx成分における筋シナジーの機能が備わったことを明らかとなった6本研究では、障害物を越える動作に伴う筋の共同作用(筋シナジー, synergy)の変化を解析し、予測的姿勢制御(anticipatory postural control)の協調性が外乱条件における姿勢保持機能にいかなる影響を与えるかについて明らかにすることができた。今年度は、神経系または運動器障害のない健康な若年成人8名を対象にデータ収集・分析を行った。実験手順としては、1、最大身体動揺シフトの確認:被験者の前方にはモニター画面が設置され、リアルタイムで、被験者のCenter of Pressure (COP)の位置と軌跡を提示した。その際、足圧中心の軌跡をモニターで示し、最大前方シフトと最大後方シフトを確認した。2、身体動揺課題(筋活動モードの同定):足圧中心の軌跡の最大前方シフトの80%と最大後方シフトの60%をターゲットに、モニター画面上に指標(標的)を提示し、出来るだけ円滑に身体を動揺させながら(cyclic body sway task)足圧中心のカーソルをターゲットにシフトさせた(10回施行)。その際のCOPの軌跡と筋電図の活動記録から筋活動モードを同定した。3、障害物を越える課題(筋シナジーを求める):被検者は、フォースプレート上に安静立位で姿勢を保持し、静止立位姿勢から異なる高さの障害物(身長の5%、10%、15%)をまたぎ越える動作を行った(各条件で12回ずつ施行)。その際のCOPの軌跡とFxの数値変動および筋電図の活動記録から、それぞれCOPとFxにおける筋シナジーを求めた。その結果、健康若年者においては、障害物を越える際、前後方向のバランス保持機能を反映するパラメータとしてのCOPと、下肢筋力発揮のパラメータとしてのFx成分における筋シナジーの機能が保持されていることを示された。本研究よ障害物を越える動作に伴う協調的な筋の共同運動(筋シナジー,synergy)の変化を解析し、予測的姿勢制御(APA)が外乱条1牛における姿勢保持機箔こいかなる影響を与えるかについて明らかにすることができた。本年度は、昨年度の健常若年者を対象とした研究成果を基に、神経系またば運動器障害のない健常高齢者8名を対象にデータ収集、分析を行った。実験手順としては、1、最大身体動揺シフトの確認;2、身体動揺課題(筋活動モードの同定);3、障害物を越える課題(筋シナジーを求める)であった。被検者はフォースプレート上に安静立位で姿勢を保持し、静止立位姿勢から異なる高さの障害物(身長の5%、10%、15%)をまたき越える動作を行った(各条件で12回ずつ施行)。その際のCOPの軌跡とFxの数値変動および10姿勢筋の筋活動から、それぞれCOPとFxにおける筋シナジしを求めた。その結果健常高齢者における障害物を越える動作に伴う筋シナジーは、健常若年者に類似した協調性がみられたしかし、体幹・下肢筋群の積分筋電値を主成分分析した結果高齢者群は若年者群に比べて有意にco-contractioh Modesの数が多かった。健常高齢者においては、前麦方向のバランス保持機能を反映するパラメータとしてのCOPと、下肢筋力発揮のパラメータとしてのFx成分における筋シナジーの機能が備わったことを明らかとなった6本年度は、当初の計画の通り、健康な若年成人を用いて障害物をまたぎ超える条件での基礎的資料を得ることができた。すなわち、8名の被験者の筋電図情報と共に、地面反力の資料を得た。その結果、予測的姿勢制御に関する筋群間相互のシナジーを解析することができた。とくに、障害物をまたぎ越える際、前後方向のバランス保持機能を反映するパラメーターとしてのCOPと下肢筋力発揮のパラメーターであるFx成分発現仮定の筋シナジー機能を解析できた。この資料は、高齢者の動作特性を明らかにするための比較研究の重要な知見が得られたものと考える。次年度には、同様の条件において、健康な高齢者を被験者として実験を行う予定である。 | KAKENHI-PROJECT-23500681 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23500681 |
障害物を越える動作局面における筋相互間の協調性の研究:高齢者の転倒予防の視点から | とくに、(1)安静立位条件から障害物をまたぎ越えるまでの軸足側のCOP移動軌跡,および筋電図パターンの比較、(2)またぎ越える動作過程における筋群シナジーパターンの比較から、高齢者の安定性および不安定性の原因についての基礎的資料を得たい。研究費の使用計画は次のとおりである。次年度の計上している項目のうち、「消耗品」は、主として筋電図の実験に使用する消耗品関係である。「旅費」は、研究成果を学会・研究会等で研究発表をするために充てる。また、謝金は、本研究目的のための被験者および、実験補助員の経費として充てる予定である。 | KAKENHI-PROJECT-23500681 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23500681 |
早期腎障害における心血管イベント機序解明の基礎的研究 | 【目的】大規模臨床試験で様々な程度の腎障害が冠血管疾患のリスクになることが示されているが、早期腎不全における冠動脈内皮機能障害の有無、機序に関しては不明である。本研究では早期腎不全における冠動脈内皮機能について検討を行った。【方法】成犬に5/6腎摘を施し、慢性腎不全犬を作成。ペントバルビタール麻酔下で開胸し、左回旋枝に超音波プローブをかけて、その中枢側よりアセチルコリンを投与して、冠血流量の変化を観察した。またコントロール群、慢性腎不全群の両群で血管作動性物質等の測定を行った。【成績】慢性腎不全群ではコントロール群に比較し、血清Crは有意に上昇していた(1.63±0.02mg/dl vs 0.86±0.02mg/dl, p<0.001)。アセチルコリン投与時(0.1γ)慢性腎不全群ではコントロール群に比較し、冠血流量増加の反応が弱かった(ΔCBF%:72.6±16.9% vs 28.3%)。血清ADMAはコントロール群2.61±0.12μmol/l、慢性腎不全群3.48±0.43μmol/lと慢性腎不全群で有意に上昇していた(p<0.025)。尚、両群間で血中カテコラミン、アンジオテンシンII、エンドセリン1、総ホモシステインに有意差を認めなかった。【結語】本研究により慢性腎不全の早期の段階で冠動脈内皮機能障害が生じており、それに内因性NOS inhibitorであるADMAが関与していることが示唆された。【目的】大規模臨床試験で様々な程度の腎障害が冠血管疾患のリスクになることが示されているが、早期腎不全における冠動脈内皮機能障害の有無、機序に関しては不明である。本研究では早期腎不全における冠動脈内皮機能について検討を行った。【方法】成犬に5/6腎摘を施し、慢性腎不全犬を作成。ペントバルビタール麻酔下で開胸し、左回旋枝に超音波プローブをかけて、その中枢側よりアセチルコリンを投与して、冠血流量の変化を観察した。またコントロール群、慢性腎不全群の両群で血管作動性物質等の測定を行った。【成績】慢性腎不全群ではコントロール群に比較し、血清Crは有意に上昇していた(1.63±0.02mg/dl vs 0.86±0.02mg/dl, p<0.001)。アセチルコリン投与時(0.1γ)慢性腎不全群ではコントロール群に比較し、冠血流量増加の反応が弱かった(ΔCBF%:72.6±16.9% vs 28.3%)。血清ADMAはコントロール群2.61±0.12μmol/l、慢性腎不全群3.48±0.43μmol/lと慢性腎不全群で有意に上昇していた(p<0.025)。尚、両群間で血中カテコラミン、アンジオテンシンII、エンドセリン1、総ホモシステインに有意差を認めなかった。【結語】本研究により慢性腎不全の早期の段階で冠動脈内皮機能障害が生じており、それに内因性NOS inhibitorであるADMAが関与していることが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-14770557 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14770557 |
妊婦と胎児へのカトマンズ市内大気汚染被害の実態とその緩和策に関する実証研究 | 本研究の目的はネパールの首都カトマンズにおいて大気汚染の健康への影響について、国境封鎖期間を利用した自然実験により、胎児の出生体重について聞き取り調査を行うことで、その深刻さを定量的に明らかにすることである。今年度の進捗は主に二つである。一つは昨年度に行なった本調査のデータ解析である。サンプルサイズを増やした検証を行なったところ、昨年度に行なったプレ調査の結果とは異なり、国境封鎖期間中と封鎖前、封鎖後において、幼児の出生体重に統計的な違いが見られないことが推察された。調査内容についてはGISを用いてカトマンズの区画をランダムに選定されたエリアについて調査を行なったデータを用いたことから、カトマンズ全体としては差が見られないことが考えられる。現在は調査内容のうち他の健康状態に関する調査結果と、他のソースから取得可能なデータを結合させて別途検証を行っており、本研究の仮説を裏付ける結果が得られた場合は次年度には論文を執筆して投稿する予定である。二つ目は論文の執筆である。本研究の主目的である国境封鎖期間中の胎児の健康状態に関する影響については、生活水準が首都カトマンズと、その他の農村地域の住民では異なる可能性がある一方、その証明も必要であることから、首都圏以外での同時期の検証も行う必要があった。そのため、首都圏と農村地域での相対比較を行うために近隣農村地帯の住民に関する社会調査を行なった結果についてまとめて論文を執筆し、現在海外論文誌に投稿中である。昨年度におこっなったプレ調査から予想される、本調査でのサンプルサイズが、実際に得られたサイズよりも少なかったことも可能性として考えられるが、プレ調査において検証した時の結果と今年度に行なった本調査の解析が異なること、さらに本調査で検証した内容が、仮説を裏付ける結果になっていないことから、予定されていた論文の執筆を進めることができず、他のアプローチや仮説の検証を進めている。マスクの配布においては、ネパール国内で市販されているマスクについて、健康被害に特に影響があるとされるPMの除去機能が弱いことが想定されたため、日本国内で市販されている高機能マスクを使用することを想定したが、検証を十分に行うためのサンプルサイズを得るために必要となる購入金額が想定よりも高額であったため、現段階での実施が困難と判断した。本調査のサンプリングについてはカトマンズ全体を網羅可能な手法を使用したが、より大気汚染が深刻な道路沿いや舗装がほとんどされていない箇所に注目した検証を行うことで、対象をより絞って仮説の検証を行いたい。さらに、カトマンズ内にある病院の調査も行なっており、国境封鎖中、およびその前後での来院者に関するデータの取得について交渉中であることから、データが入手できた場合には他の健康指標を用いた解析を行いたい。本研究の目的はネパールの首都カトマンズにおいて大気汚染の健康への影響について、国境封鎖期間を利用した自然実験により、胎児の出生体重について聞き取り調査を行うことで、その深刻さを検証するものである。今年度は主に二点、進捗が得られた。一つ目は論文の執筆である。プレ調査の結果を元に、本研究の主目的である国境封鎖期間中の胎児の健康状態について解析を行った。その結果、国境封鎖期間に母体に居た時期が長いほど、また封鎖期間の後半により多く母体に居た胎児ほど、出生体重が多い可能性があることが検証できた。この結果から、仮説通りカトマンズの大気汚染性は母体及び胎児の健康状態に悪影響を及ぼしている可能性があること、さらに、国境封鎖期間で物資が手に入りにくい状態ですら、胎児の体重が高いことから、大気汚染被害がとりわけ深刻である可能性が考えられることなどが推測される。今年度はこの結果について論文を執筆し、国民経済雑誌に投稿し、受理された。二つ目はカトマンズにおける現地調査員のトレーニング及びデータ収集である。本研究に必要なサンプルサイズを確保するため、8月から9月にかけて現地調査員のトレーニングを行い、10月から翌年の3月にかけてカトマンズを中心にアンケート調査を行った。その結果、解析に必要なサンプルの取得ができた。次年度はこの結果についてデータ整理を行い、解析することで本研究の仮説に関する頑強性を確かめると共に、論文を執筆して投稿する予定である。本研究については、当初の目標通り調査員のトレーニングを終え、データ収集が完了済みである。ただし、サンプルサイズについては1600家計を想定していたが、時間の都合と、回収したデータの欠損等により半分以下になる可能性もある。本研究の目的はネパールの首都カトマンズにおいて大気汚染の健康への影響について、国境封鎖期間を利用した自然実験により、胎児の出生体重について聞き取り調査を行うことで、その深刻さを定量的に明らかにすることである。今年度の進捗は主に二つである。一つは昨年度に行なった本調査のデータ解析である。サンプルサイズを増やした検証を行なったところ、昨年度に行なったプレ調査の結果とは異なり、国境封鎖期間中と封鎖前、封鎖後において、幼児の出生体重に統計的な違いが見られないことが推察された。調査内容についてはGISを用いてカトマンズの区画をランダムに選定されたエリアについて調査を行なったデータを用いたことから、カトマンズ全体としては差が見られないことが考えられる。現在は調査内容のうち他の健康状態に関する調査結果と、他のソースから取得可能なデータを結合させて別途検証を行っており、本研究の仮説を裏付ける結果が得られた場合は次年度には論文を執筆して投稿する予定である。二つ目は論文の執筆である。 | KAKENHI-PROJECT-17K12854 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K12854 |
妊婦と胎児へのカトマンズ市内大気汚染被害の実態とその緩和策に関する実証研究 | 本研究の主目的である国境封鎖期間中の胎児の健康状態に関する影響については、生活水準が首都カトマンズと、その他の農村地域の住民では異なる可能性がある一方、その証明も必要であることから、首都圏以外での同時期の検証も行う必要があった。そのため、首都圏と農村地域での相対比較を行うために近隣農村地帯の住民に関する社会調査を行なった結果についてまとめて論文を執筆し、現在海外論文誌に投稿中である。昨年度におこっなったプレ調査から予想される、本調査でのサンプルサイズが、実際に得られたサイズよりも少なかったことも可能性として考えられるが、プレ調査において検証した時の結果と今年度に行なった本調査の解析が異なること、さらに本調査で検証した内容が、仮説を裏付ける結果になっていないことから、予定されていた論文の執筆を進めることができず、他のアプローチや仮説の検証を進めている。マスクの配布においては、ネパール国内で市販されているマスクについて、健康被害に特に影響があるとされるPMの除去機能が弱いことが想定されたため、日本国内で市販されている高機能マスクを使用することを想定したが、検証を十分に行うためのサンプルサイズを得るために必要となる購入金額が想定よりも高額であったため、現段階での実施が困難と判断した。初年度に行った調査によって得られた回答についてデータ整理を行い、予定通り解析を進めて論文の執筆をする予定である。またその内容によって国内、及び国際学会で発表する予定である。本調査のサンプリングについてはカトマンズ全体を網羅可能な手法を使用したが、より大気汚染が深刻な道路沿いや舗装がほとんどされていない箇所に注目した検証を行うことで、対象をより絞って仮説の検証を行いたい。さらに、カトマンズ内にある病院の調査も行なっており、国境封鎖中、およびその前後での来院者に関するデータの取得について交渉中であることから、データが入手できた場合には他の健康指標を用いた解析を行いたい。 | KAKENHI-PROJECT-17K12854 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K12854 |
細胞外放出されるimportin α1が肝がん微小環境で果たす役割 | Importin α1は、核輸送因子として知られ、細胞内で核移行シグナルを有する蛋白質の核輸送を介在する。近年、多くのがん症例の腫瘍組織においてimportin α1が高発現していることが明らかとなり、importin α1とがん病態との関与が推測されている。申請者は最近、肝がん細胞株の細胞膜上や培養上清中にimportin α1が局在・存在することを見出した。そこで本研究では、がん細胞から放出されるimportin α1に注目し、がん微小環境における役割と腫瘍構築への関与を細胞・個体レベルで詳細に検討することで、がん病態におけるimportin α1の意義を明らかにする。そして本解析を通して、細胞外に存在するimportin α1を標的とした新たな肝がんの診断法や生物学的製剤の開発へと展開していく研究基盤を確立することが本研究の狙いである。本研究は核輸送因子であるImportin α1が肝癌細胞株の細胞増殖に寄与する知見を得ることに成功した。さらに、皮下移植モデルマウスを用いた解析を通して、腫瘍細胞から細胞外放出されたImportin α1が腫瘍細胞以外にマウス由来の血管内皮細胞の細胞膜にも局在することを見出した。このデータは、がん微小環境におけるImportin α1の機能的役割を示唆している。また、細胞株を用いた網羅的な細胞外因子の探索も行った。結果的に、細胞内キナーゼの肝癌特異性を見いだすことができた。本成果は、肝癌において核移行するタンパク質の細胞外放出の機能的意義を提示する基盤的研究となった。核輸送因子であるimportin α1は肝がん含め、様々なタイプのがん種の組織で高発現しているが、その機能的役割は依然不明のままである。最近、研究代表者らは、肝がん細胞株の細胞膜上やその培養液中に、importin α1が存在することを見出し、現在その機能解析を行っている。これまでに肝がん細胞株(HepG2, Hep3B)を免疫不全マウス(NOD/Scid)の皮下に移植し、腫瘍形成後に腫瘍塊を摘出し、生細胞を単離してフローサイトメトリー解析を試みたところ、腫瘍細胞の細胞膜にimportin α1の発現が確認された。また、形成腫瘍内にはがん細胞のみならず、多様な間質細胞が存在することから、各種間質細胞の表面抗原の抗体を利用して細胞膜importin α1の発現の解析を計画したところ、現在までにマウス由来の血管内皮細胞の細胞膜にヒトimportin α1が検出されることを見出した。このことから、がん細胞から放出されるimportin α1が周囲の微小環境に影響を与えている可能性が示唆された。現在、血管内皮以外の細胞(線維芽細胞や各種免疫細胞など)に対しても、各マーカータンパク質に対する抗体を獲得し、同様のアッセイを試みている。また、肝がん細胞株は、低血清含有培地で培養することで、importin α1の細胞外放出量を増大させることも突き止めた。このことから、importin α1は能動的な機構に依存して細胞外に放出されていることが示された。今後、血管内皮細胞と栄養飢餓状態の肝がん細胞株との共培養系を行い、細胞外importin α1による血管内皮細胞機能への影響を明らかにすると共に、動物モデルを用いて血管形成における細胞外importin α1の役割を検討していく予定である。本年度では、importin α1の細胞外局在が生体内でも起きていることを示せただけでなく、がん細胞周囲の細胞にも影響を与える可能性を示すことができた。これはがん微小環境におけるimportin α1の役割を明らかにする上で貴重な結果であるといえる。これらの成果は国際学会および査読付き国際誌において公表されている。以上よりおおむね順調に進展していると考えられる。核輸送因子であるimportin α1は肝がん含め、様々なタイプのがん種の組織で高発現しているが、その機能的役割は依然不明のままである。最近、研究代表者らは、肝がん細胞株の細胞膜上やその培養液中に、importin α1が存在することを見出し、現在その機能解析を行っている。これまでに肝がん細胞株(HepG2, Hep3B)を免疫不全マウス(NOD/Scid)の皮下に移植し、腫瘍形成後に腫瘍塊を摘出し、生細胞を単離してフローサイトメトリー解析を試みたところ、腫瘍細胞の細胞膜にimportin α1の発現が確認された。また、形成腫瘍内にはがん細胞のみならず、多様な間質細胞が存在することから、各種間質細胞の表面抗原の抗体を利用して細胞膜importin α1の発現の解析を計画したところ、現在までにマウス由来のCD31陽性の一部の血管内皮細胞の細胞膜にヒトimportin α1が検出されることを見出した。このことから、がん細胞から放出されるimportin α1が周囲の微小環境に影響を与えている可能性が示唆された。現在、血管内皮以外の細胞(主に線維芽細胞)に対しても、各マーカータンパク質に対する抗体を獲得し、同様のアッセイを試みているほか、血管内皮における細胞外importin α1の役割解析を行っている。また、肝がん細胞株は、低血清含有培地で培養することで、importin α1の細胞外放出量を増大させることも突き止めた。このことから、importin α1は能動的な機構に依存して細胞外に放出されていることが示された。 | KAKENHI-PROJECT-16K18434 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K18434 |
細胞外放出されるimportin α1が肝がん微小環境で果たす役割 | 現在主に、ER-Golgi系の分泌系路の阻害が関与する可能性を示すデータも出ており、さらなるメカニズム解明に向けた研究を推進させている。研究施設の変更に伴い、実験系の立ち上げに時間を要した。Importin α1は、核輸送因子として知られ、細胞内で核移行シグナルを有する蛋白質の核輸送を介在する。近年、多くのがん症例の腫瘍組織においてimportin α1が高発現していることが明らかとなり、importin α1とがん病態との関与が推測されている。申請者は最近、肝がん細胞株の細胞膜上や培養上清中にimportin α1が局在・存在することを見出した。そこで本研究では、がん細胞から放出されるimportin α1に注目し、がん微小環境における役割と腫瘍構築への関与を細胞・個体レベルで詳細に検討することで、がん病態におけるimportin α1の意義を明らかにする。そして本解析を通して、細胞外に存在するimportin α1を標的とした新たな肝がんの診断法や生物学的製剤の開発へと展開していく研究基盤を確立することが本研究の狙いである。本研究は核輸送因子であるImportin α1が肝癌細胞株の細胞増殖に寄与する知見を得ることに成功した。さらに、皮下移植モデルマウスを用いた解析を通して、腫瘍細胞から細胞外放出されたImportin α1が腫瘍細胞以外にマウス由来の血管内皮細胞の細胞膜にも局在することを見出した。このデータは、がん微小環境におけるImportin α1の機能的役割を示唆している。また、細胞株を用いた網羅的な細胞外因子の探索も行った。結果的に、細胞内キナーゼの肝癌特異性を見いだすことができた。本成果は、肝癌において核移行するタンパク質の細胞外放出の機能的意義を提示する基盤的研究となった。細胞外importin α1の血管内皮細胞機能に与える影響を解明する。具体的には、血管内皮細胞株を用いて、増殖能や移動能、産生サイトカインの変化をプレートアッセイにより解析していく。また細胞外importin α1の機能を生体内で評価するために、既存の自作抗importin α1モノクローナル抗体を用いて解析する。すでに細胞株を用いた解析から、当該抗importin α1モノクローナル抗体が、細胞増殖抑制効果を示すことがわかっているので、マウスモデルを用いて抗腫瘍効果はもちろん、転移や血管分布など腫瘍環境にどのように関わるかを明らかにする。移転先の研究室が得意とする実験システム(例えばマウスのイメージング技術等)を用いた解析を行う予定である。今年度は、研究により得られた成果を国際学会および国際誌に公開しており、研究は順調に進展している。しかし、対外的な活動に伴った実験消耗品および試薬などの購入の遅れにより当該助成金が生じた。研究に時間を要しており、研究を完遂する目的のため。主な使用としては、マウス解析に要する支出と、雑誌の投稿料を計画している。細胞外importin α1の機能を解明するために以下の消耗品を使用予定である。生化学実験に係る抗体や、細胞培養実験に用いる新規細胞株(血管内皮細胞)、培養液、ディッシュ、ピペット等の細胞培養関連製品に加え、siRNAの作成・購入、阻害剤の購入といった消耗品を想定している。また、学会参加や打ち合わせ等の出張に伴う旅費、その他、論文投稿に係る英文校正や投稿料などが見込まれる。 | KAKENHI-PROJECT-16K18434 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K18434 |
顎顔面部外傷性および神経因性疼痛における幹細胞移植による細胞再生メカニズムの解明 | 何らかの手術後や炎症、傷害、癌の発生などによって、本来痛みとならない刺激により痛みが生じるような異常疼痛が発生することがよく知られている。口腔顔面領域における異常疼痛の発生は、摂食困難に陥るため、症状はより重篤となる。この発生メカニズムや効果的な治療法に関しては未だ不明な点も多い。そこで、本研究ではラット炎症モデルと癌モデルにおける抗炎症剤による異常疼痛抑制効果を検討したところ、炎症誘発異常疼痛には効果が認められたが、癌誘発異常疼痛にはほとんど影響が見られなかった。何らかの手術後や炎症、傷害、癌の発生などによって、本来痛みとならない刺激により痛みが生じるような異常疼痛が発生することがよく知られている。口腔顔面領域における異常疼痛の発生は、摂食困難に陥るため、症状はより重篤となる。この発生メカニズムや効果的な治療法に関しては未だ不明な点も多い。そこで、本研究ではラット炎症モデルと癌モデルにおける抗炎症剤による異常疼痛抑制効果を検討したところ、炎症誘発異常疼痛には効果が認められたが、癌誘発異常疼痛にはほとんど影響が見られなかった。昨年度は癌性疼痛および炎症における神経因性疼痛がラット三叉神経脊髄路角尾側亜角ニューロンに与える影響を病理学的ならびに電気生理学的検討を行った。すなわち、Wstar系ラットに対し癌細胞ならびに炎症物質の摂取を行った。癌細胞(ラット乳癌細胞: Walker 256B細胞)を、炎症物質(Comp-ete Freud Adlubant : CFA)をラット右側顔面上部に26G針、1mlシリンジを用いて摂取した。癌ならびに急性炎症発症の成否は接種後3日目以降に摂取部位の腫脹が引き起こされているか否かで判断した。また、癌および急性炎症を確認したラットを4、7、10日目にチオペンタールの腹腔内大量投与により安楽死させ、4%パラホルムアルデヒドで灌流固定した後、神経および三叉神経脊髄路角尾側亜核を摘出、凍結しクライオスタットにて厚さ10μmの凍結切片を作成した。これらの組織切片に対しc-fos遺伝子発現をin situ hybridization法にて検討を行った。本研究では、癌性疼痛ラットおよび炎症性疼痛ラットに対して、神経幹細胞や神経栄養因子を使用することで疼痛抑制が可能であるかどうかを検討することにある。平成21年度では、癌性疼痛ラットと炎症性疼痛ラットを作製し、行動学的観察ならびに三叉神経節・三叉神経脊髄路核尾側亜核における神経化学的変化について検討を行った。癌性疼痛ラットの作成には、Walker 256B細胞をラット右側鼻毛部に接種した。炎症性疼痛ラットの作成には、Complete Freund's adjuvant(CFA)を同部位に投与した。モデル作成当日から7日後までにわたって疼痛テストを行った。疼痛テストとして、von Frey毛による機械刺激逃避閾値と輻射熱による熱刺激逃避潜時を測定した。機械刺激逃避閾値と輻射熱による熱刺激逃避潜時の低下が、癌性疼痛ラットでは接種後2日目より発生し4-5日目でピークに達したのに対し、炎症性疼痛ラットでは投与翌日より発生し2日目でピークに達した。抗炎症剤のインドメタシン腹腔内投与により、癌性疼痛ラットでは疼痛抑制がほとんど見られなかったのに対し、炎症性疼痛ラットでは強い疼痛抑制効果が見られた。また、三叉神経脊髄路核尾側亜核においてP物質やカルシトニン遺伝子関連ペプチドの発現が、癌性疼痛ラットでは変化が見られなかったのに対し、炎症性疼痛ラットでは強い増強が見られた。これらの結果より、癌性疼痛は炎症による疼痛影響をあまり受けていない可能性が示唆された。この結果はJournal of Dental Researchに掲載された。炎症による神経栄養因子の発現がP物質やカルシトニン遺伝子関連ペプチドの増強を引き起こし、落痛の原因となっていることはよく知られている。今回の結果より、癌性疼痛ラットでは神経栄養因子関連の物質を使った治療は効果が低いかもしれないということを示唆する。 | KAKENHI-PROJECT-20791540 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20791540 |
心臓および脳血管病の発症と進展メカニズムの解明 | 血管におけるマルチスケール/マルチフィジックスの生体力学現象を統合する計算力学アプローチにより,ヒト循環系内の複雑な流れの中の特殊な部位において粥状動脈硬化や動脈瘤が発症・進展し,生命に重篤な危機を及ぼす心筋梗塞や脳卒中,動脈瘤破裂を引き起こすメカニズムを解明するため、医用画像から心臓血管系の形態を抽出してモデル化するソフトウエアを開発し、これに基づき、実形状の血管系について流体力学的計算解析を行うことを目的として研究を実施した。このため、収縮・弛緩する左心室と大動脈および主要分枝のリアリスティックモデルを開発し、その内部の流れを可視化した。また、血管壁・血球などの有形の構造・成分と、血漿などの流体成分の力学的相互作用を解析するために、各種の粒子法による離散的方法を開発し、ミクロレベルにおける流体・固体相互作用を解析した。さらに、質点・バネモデルなどにより成長現象を組み込んだ血管壁モデルと、血流計算を連成することにより、動脈瘤などの発生過程をモデルした。これらから得られる複雑形状の動脈瘤モデルについて、内部の流れとATPなど低分子物質の輸送現象を連成解析した。この結果、心臓内の流れの乱れや、旋回流、さらに弁口の形状による複雑な流れの影響は、大動脈弓の頂上付近で、ほとんど消失するので、我々が提案している部分的モデリングの技法が有効であることが示された。また、血小板血栓(一次血栓)の形成におけるvWF(von Willebrand Factor)および血小板と血管壁に存在するGP(糖タンパク)レセプタの力学的性質による血小板血栓の形成過程の変化を明らかにした。また、脳動脈瘤の形成における、血管壁の脆弱化の影響を血流との関係で見積もることが可能となり、さらに、これに関与する物質輸送の意義が明らかになった。血管におけるマルチスケール/マルチフィジックスの生体力学現象を統合する計算力学アプローチにより,ヒト循環系内の複雑な流れの中の特殊な部位において粥状動脈硬化や動脈瘤が発症・進展し,生命に重篤な危機を及ぼす心筋梗塞や脳卒中,動脈瘤破裂を引き起こすメカニズムを解明するため、医用画像から心臓血管系の形態を抽出してモデル化するソフトウエアを開発し、これに基づき、実形状の血管系について流体力学的計算解析を行うことを目的として研究を実施した。このため、収縮・弛緩する左心室と大動脈および主要分枝のリアリスティックモデルを開発し、その内部の流れを可視化した。また、血管壁・血球などの有形の構造・成分と、血漿などの流体成分の力学的相互作用を解析するために、各種の粒子法による離散的方法を開発し、ミクロレベルにおける流体・固体相互作用を解析した。さらに、質点・バネモデルなどにより成長現象を組み込んだ血管壁モデルと、血流計算を連成することにより、動脈瘤などの発生過程をモデルした。これらから得られる複雑形状の動脈瘤モデルについて、内部の流れとATPなど低分子物質の輸送現象を連成解析した。この結果、心臓内の流れの乱れや、旋回流、さらに弁口の形状による複雑な流れの影響は、大動脈弓の頂上付近で、ほとんど消失するので、我々が提案している部分的モデリングの技法が有効であることが示された。また、血小板血栓(一次血栓)の形成におけるvWF(von Willebrand Factor)および血小板と血管壁に存在するGP(糖タンパク)レセプタの力学的性質による血小板血栓の形成過程の変化を明らかにした。また、脳動脈瘤の形成における、血管壁の脆弱化の影響を血流との関係で見積もることが可能となり、さらに、これに関与する物質輸送の意義が明らかになった。先進工業国において国民死因の極めて大きな部分を占める心臓および脳血管病の発症と進展メカニズムには、共通して粥状動脈硬化症の存在があることは周知である。粥状動脈硬化症は、とくに、その前駆的変化ならび初期病変に極めて明瞭な局所性が観察されており、その原因の一つは血流のもたらす力学的影響と血管壁の生物学的反応の相互作用にあると考えられている。本研究では、このような力学-生物学的相互作用の解明を計算生体力学の手法で推進することを目的とする。このためには、血液、血管、血流など、生物学的存在ないし現象を適切にモデル化し、これを計算力学の手法で解析する必要がある。特に、血液は、流体である血漿と、変形しやすい固体である血球成分からなる複雑な流れであり、従来の計算流体力学の手法では解析が難しい問題が多い。そこで、本研究では血流の数値モデル化においては、従来の連続体力学にもとづく方法に替わり得る新しい方法として、いわゆる粒子法の開発と応用を試みている。本法によれば血液の多相性あるいは血漿と血球の相互作用などをモデリングできる。これまで、比較的低レイノルズ数の領域における血漿流れの2次元モデル問題と、この中に、複数の赤血球および血小板の存在を仮定するモデルが開発でき、血沈あるいは血栓形成過程の解析が可能となった。また、粥状動脈硬化症をもたらすと考えられている、血流と血管壁の力学的相互作用を解明するための、流体-固体連成計算手法の導入を図っている。流体側にニュートン粘性流体、血管壁に圧肉線形弾性体近似を導入することにより比較的現実的な血管モデルにおける壁振動(圧脈波)と流体運動(流れ)との相互作用が解析できるようになった。この結果、圧脈波による血管壁物性の評価の限界があきらかになった。今後、これらの開発された手法を現実的問題に適用し、血管内の流れと各種血管病の病因、進展機構などとの関連を検討する。 | KAKENHI-PROJECT-15086204 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15086204 |
心臓および脳血管病の発症と進展メカニズムの解明 | 本研究においては、先進工業国において国民死因の極めて大きな部分を占める心臓および脳血管病の発症と進展メカニズムの解明を計算生体力学の手法で推進することを目的とする。特に、粥状動脈硬化症は、その前駆的変化ならび初期病変に極めて明瞭な局所性が観察されており、その原因の一つは血流のもたらす力学的影響と血管壁の生物学的反応の相互作用にあると考えられている。本研究では、このような力学的問題を計算力学の手法で解析するが、この際、血液は、流体である血漿と、変形しやすい固体である血球成分からなる複雑な流れであり、従来の計算流体力学の手法では解析が難しい問題が多い。さらに、その上、生体を構成する成分の力学的特性は非常に非線形性が強い。このために、昨年度までの、いわゆる粒子法の開発と応用と、血流と血管壁の相互作用を解明するための、流体ム固体連成計算手法の導入を基礎に、前者の粒子法の応用については、複雑な血漿流れの2次元モデル問題と、この中に、複数の赤血球および血小板の存在を仮定するモデルについて、とくに血球の物性と血流の分配比の問題、後者では、各種疾患血管モデルにおける壁振動(圧脈波)と流体運動(流れ)との相互作用を流体側にニュートン粘性流体、血管壁に圧肉線形弾性体近似を導入することにより解析した。今後も、これらの開発された手法を現実的問題に適用し、血管内の流れと各種血管病の病因、進展機構などとの関連を検討する研究を続行する。本研究においては、先進工業国において国民死因の極めて大きな部分を占める心臓および脳血管病の発症と進展メカニズムの解明を計算生体力学の手法で推進することを目的とする。特に、粥状動脈硬化症は、その前駆的変化ならび初期病変に極めて明瞭な局所性が観察されており、その原因の一つは血流のもたらす力学的影響と血管壁の生物学的反応の相互作用にあると考えられている。本研究では、このような力学的問題を計算力学の手法で解析するが、この際、血液は、流体である血漿と、変形しやすい固体である血球成分からなる複雑な流れであり、従来の計算流体力学の手法では解析が難しい問題が多い。さらに、その上、生体を構成する成分の力学的特性は非常に非線形性が強い。このために、一昨年度までの、いわゆる粒子法の開発と応用と、血流と血管壁の相互作用を解明するための、流体-固体連成計算手法の導入を基礎に、昨年度は粒子法の応用については、複雑な血漿流れの2次元モデル問題と、この中に、複数の赤血球および血小板の存在を仮定するモデルについて、とくに血球の物性と血流の分配比の問題、後者では、各種疾患血管モデルにおける壁振動(圧脈波)と流体運動(流れ)との相互作用を流体側にニュートン粘性流体、血管壁に圧肉線形弾性体近似を導入することにより解析した。本年度は、これらの開発された手法を現実的問題に適用し、血管内の流れと各種血管病の病因、進展機構などとの関連を検討する研究を行い、特に、大規模並列計算を用いた赤血球1万個のオーダーの計算を成功させることができた。本年度の研究実績1新しい細胞モデルと血球・血漿相互作用の解析法の探索(山口、石川、坪田)本年度は、境界要素法を新たに導入し、変形する赤血球や遊泳する細胞まわりの流れ場を詳細に調べた。これらの結果をデータベース化することにより、ストークス動力学法で多粒子の相互干渉を効率良く解く数理モデルの基礎を確立した。 | KAKENHI-PROJECT-15086204 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15086204 |
新情報通信用デバイスの創出のための非線形固有値問題の自動求解 | 高精度な数値計算による情報通信用デバイスの特性解析が期待できる解析法において,最終的に解く代数方程式が非線形固有値問題に帰着する手法は自動求解による解析の効率化が難しく,デバイスの自動最適設計への適用が困難であった.本研究は,今後益々高性能化,多様化することが予想される情報通信用デバイスの自動最適設計を目指し,自動求解が困難であった非線形固有値問題に帰着する解析法の自動求解アルゴリズムを開発する.高精度な数値計算による情報通信用デバイスの特性解析が期待できる解析法において,最終的に解く代数方程式が非線形固有値問題に帰着する手法は自動求解による解析の効率化が難しく,デバイスの自動最適設計への適用が困難であった.本研究は,今後益々高性能化,多様化することが予想される情報通信用デバイスの自動最適設計を目指し,自動求解が困難であった非線形固有値問題に帰着する解析法の自動求解アルゴリズムを開発する. | KAKENHI-PROJECT-19K11996 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K11996 |
小学6年及び中学1年学級における,1年間の学習規律指導過程の実証的研究 | 本研究の目的は,小学6年から中学1年への進学に際し,児童生徒の学習規律の認識がどのように変化するのか,また,それが児童生徒の学校生活に関わる諸認識とどのように関係するのか,質問紙調査の結果を分析して明らかにすることである。学習規律の認識を調査するために質問紙を3種開発した。学校生活に関わる諸認識は,「短縮版学級風土質問紙」(伊藤, 2009)と「学校適応感質問紙」(石田, 2009)を使用して調査を行い,以下3点の結果を得た。(1)小学校,中学校共通して,教師と児童生徒の間の学習規律の認識,特に重要度の認識について,相違があり続ける。(2)小学校,中学校共通して,すでに成立している学習規律について,学習規律の重要度の認識の高低が学級風土や学校適応感の各因子と,おおむね相関関係にある。(3)中学1年生の学習規律重要度の1年間の推移について,年度前半で出身小学校による生徒間の差が小さくなり,年度末までその小さな差が小さいまま維持される場合と,年度後半で出身小学校による生徒間の認識の差が顕在化する場合の2種類がある。これらの結果から,中一ギャップへの対応として2点の示唆を得た。(1)中学校において,学習規律の重要性について授業中に学習機会が必要であり,それが生徒の学校適応感の向上や,よりよい学級風土の構築につながる。もしくは学習規律の重要性の理解が生徒の学校適応感や学級風土の特徴の目安となる。(2)生徒が中学校に進学した後,中学校の授業の特徴に一度は慣れるものの,その後に学習規律の学習が展開されないと生徒は小学校での授業経験を基に学習規律の認識を変化させ,その変化した認識が生徒の中学校での学校適応感や学級風土と関係する。本研究は中学校進学に際して児童生徒の授業中の学習規律認識がどのように変化するのか,また,その認識が児童生徒の学校生活にどのような影響を及ぼすのかについて,小学6年と中学1年にまたがる2年間の追跡調査により明らかにすることが目的である。現在のところ,小学6年学級での調査を終え,進学先の中学1年学級での調査を開始している。また,文献調査を並行している。平成29年度実施の調査結果については分析に着手している。質問紙調査の結果から,教師と児童の間に学習規律の認識のうち,学習規律の重要度に関する認識について,また,学習規律の設定理由についての認識について,両者間で相違があることが明らかとなった。さらに,教師と児童の間の学習規律認識のズレが,概して児童の学校適応感と負の相関関係にあることが明らかとなった。これらの調査結果やその分析で明らかとなった研究成果の一部は,平成30年度中に各学会(日本教育心理学会など)で発表する予定である。今後,質問紙調査から明らかになった事実が実際の授業でどのように表れていたのか,その検討が必要となる。加えて,教師インタビューから明らかとなった,児童生徒の小学校と中学校の間の学習規律の違いに教師たちがどのように対応しているのか,その対応方法について明らかとなった実践的示唆をWorld Association of Lesson Studies(WALS)の2017年大会にて発表した。小学6年と中学1年,2年間にわたる追跡調査のうち,小学6年学級については調査を計画通り終了した。進学先の中学1年学級についても,平成30年度実施の研究について打ち合わせが完了し,計画通り研究を展開できる予定である。また,文献調査,先行研究レビューも並行して実施している。小学6年学級について,調査結果の分析から児童の学習規律認識の特徴の一部は明らかとなったが,分析は途上である。小学6年学級の調査結果分析と,中学1年学級での調査を並行して実施し,2年間の追跡調査の成果をまとめていくことが今後の課題となる。これらの理由から「おおむね順調に進展している」と判断した。本研究の目的は,小学6年から中学1年への進学に際し,児童生徒の学習規律の認識がどのように変化するのか,また,それが児童生徒の学校生活に関わる諸認識とどのように関係するのか,質問紙調査の結果を分析して明らかにすることである。学習規律の認識を調査するために質問紙を3種開発した。学校生活に関わる諸認識は,「短縮版学級風土質問紙」(伊藤, 2009)と「学校適応感質問紙」(石田, 2009)を使用して調査を行い,以下3点の結果を得た。(1)小学校,中学校共通して,教師と児童生徒の間の学習規律の認識,特に重要度の認識について,相違があり続ける。(2)小学校,中学校共通して,すでに成立している学習規律について,学習規律の重要度の認識の高低が学級風土や学校適応感の各因子と,おおむね相関関係にある。(3)中学1年生の学習規律重要度の1年間の推移について,年度前半で出身小学校による生徒間の差が小さくなり,年度末までその小さな差が小さいまま維持される場合と,年度後半で出身小学校による生徒間の認識の差が顕在化する場合の2種類がある。これらの結果から,中一ギャップへの対応として2点の示唆を得た。(1)中学校において,学習規律の重要性について授業中に学習機会が必要であり,それが生徒の学校適応感の向上や,よりよい学級風土の構築につながる。もしくは学習規律の重要性の理解が生徒の学校適応感や学級風土の特徴の目安となる。 | KAKENHI-PROJECT-17K13980 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K13980 |
小学6年及び中学1年学級における,1年間の学習規律指導過程の実証的研究 | (2)生徒が中学校に進学した後,中学校の授業の特徴に一度は慣れるものの,その後に学習規律の学習が展開されないと生徒は小学校での授業経験を基に学習規律の認識を変化させ,その変化した認識が生徒の中学校での学校適応感や学級風土と関係する。2年間計画の追跡調査の2年目となり,進学先の中学校での調査が中心となる。合わせて,小学6年学級での調査結果分析,文献調査を並行して実施する。中学1年学級の調査結果と小学6年学級の調査結果とを比較しながら,2年間での児童生徒の学習規律認識の変化の推移,また,小学校での認識と中学校での認識それぞれの特徴を明らかにしていく。平成30年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。消耗品の必要数が当初の計画よりも少なかったために残額が生じた。残額分は平成30年度の消耗品購入に充てる予定である。 | KAKENHI-PROJECT-17K13980 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K13980 |
LCS-NRFによる同位体3Dイメージング法の基盤確立 | 計画通り、ファイバーレーザー等の整備を完了し、ガンマ線発生とその測定を年度内に終了した。同位体を用いた2次元CT画像の取得を次年度までに終了し、1mmの高空間分解能を目指す。更に3次元画像の取得と本手法の確立、更には実用に向けた課題抽出を最終年度に行う。計画通り、ファイバーレーザー等の整備を完了し、ガンマ線発生とその測定を年度内に終了した。同位体を用いた2次元CT画像の取得を次年度までに終了し、1mmの高空間分解能を目指す。更に3次元画像の取得と本手法の確立、更には実用に向けた課題抽出を最終年度に行う。 | KAKENHI-PROJECT-18H01916 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H01916 |
微生物を利用した石油の増回収に関する共同研究 | 微生物を利用する石油増回収法(MEOR)は、火攻法や熱攻法に比べ地球に優しい方法である。研究代表者を中心とするグループは,以前より微生物攻法に適した条件を満たしている中国吉林油田において微生物増進回収法に関する研究を進めており、有用微生物のスクリーニングや貯留層の評価などを行い多くの知見を得てきた。本研究では、これまでの研究で明らかになった最適条件に基づいて中国吉林油田の生産中の坑井に栄養塩および微生物を注入し、ハフ&パフおよびフラッディング試験を実施し,目的微生物の増殖状態や産油量などを測定することにより微生物攻法の実用性に関して検討を行った。ハフ&パフ試験の場合、油層内の先住微生物が活性化され産油量の増加が認められる場合が見られた。また、各種能力の優れた微生物の培養液と栄養塩を注入した場合にも産油量の増加が認められた。この際、注入微生物の挙動を把握するために、MPN-Direct-PCR法やFISH法などの遺伝子工学的解析法を確立した。フラッディング試験においては、使用微生物はポリマー生産能力に優れ,かつ油層内先住微生物に対する競合性の強いものとしてCJF-002株を用意した。この微生物は油層内において,ポリマーを生産し、高浸透率の部分をプラッギングすることにより、油層の透水係数を均一化して、その後の水攻法による石油増回収に大きな効果をもたらすと推定される。そのため微生物およびモラセスを圧入前後において、トレーサーを圧入し,モニター井および生産井におけるトレーサー応答を検討した。一方、同様にポリマーを生産する微生物TU-15Aを使用した模擬油層による室内実験を行い、微生物による石油の増回収に関わる各種パラメータを獲得した。そのパラメータを用いて、油層に対して微生物攻法を適用した際のシュミレーターを開発した。これらの結果をふまえて、平成12年8月23日に東北大学において、微生物攻法に関するシンポジウムを開催し総合的な検討を行った。微生物を利用する石油増回収法(MEOR)は、火攻法や熱攻法に比べ地球に優しい方法である。研究代表者を中心とするグループは,以前より微生物攻法に適した条件を満たしている中国吉林油田において微生物増進回収法に関する研究を進めており、有用微生物のスクリーニングや貯留層の評価などを行い多くの知見を得てきた。本研究では、これまでの研究で明らかになった最適条件に基づいて中国吉林油田の生産中の坑井に栄養塩および微生物を注入し、ハフ&パフおよびフラッディング試験を実施し,目的微生物の増殖状態や産油量などを測定することにより微生物攻法の実用性に関して検討を行った。ハフ&パフ試験の場合、油層内の先住微生物が活性化され産油量の増加が認められる場合が見られた。また、各種能力の優れた微生物の培養液と栄養塩を注入した場合にも産油量の増加が認められた。この際、注入微生物の挙動を把握するために、MPN-Direct-PCR法やFISH法などの遺伝子工学的解析法を確立した。フラッディング試験においては、使用微生物はポリマー生産能力に優れ,かつ油層内先住微生物に対する競合性の強いものとしてCJF-002株を用意した。この微生物は油層内において,ポリマーを生産し、高浸透率の部分をプラッギングすることにより、油層の透水係数を均一化して、その後の水攻法による石油増回収に大きな効果をもたらすと推定される。そのため微生物およびモラセスを圧入前後において、トレーサーを圧入し,モニター井および生産井におけるトレーサー応答を検討した。一方、同様にポリマーを生産する微生物TU-15Aを使用した模擬油層による室内実験を行い、微生物による石油の増回収に関わる各種パラメータを獲得した。そのパラメータを用いて、油層に対して微生物攻法を適用した際のシュミレーターを開発した。これらの結果をふまえて、平成12年8月23日に東北大学において、微生物攻法に関するシンポジウムを開催し総合的な検討を行った。微生物を利用する石油の増回収法は微生物により石油を資化させ,生成物を利用するものであり,化学攻法や熱攻法に比べ地球にやさしい方法である。研究代表者を中心とするグループは,以前より微生物攻法に適した条件を満たしている中国吉林油田において微生物増進回収法に関する研究を進め,有用微生物のスクリーニングや貯留層の評価等を行い多くの研究成果を得てきた。本研究では,まず室内実験とその数値解析から油層内に栄養塩類を注入する際の最適条件を明らかにした。また,これまでの研究で明らかになった最適条件に基づいて中国吉林油田の生産中の坑井に栄養塩および微生物を注入し,目的微生物の増殖状態や産油量等を測定することにより微生物攻法の実用性に関して検討を行った。栄養塩のみを坑井に注入した場合,油層内の先住微生物が活性化され産油量の増加が認められた。また,二酸化炭素生産や界面活性剤等の生産能力に優れた微生物の培養液と栄養塩をを用いて同様の実験を行ったところ,やはり産油量の増加は認められたが,先住微生物と注入微生物との間に競合関係があることが判明した。この関係についてPCR-RFLP法などの遺伝子工学的解析法により検討を行うとともに,注入微生物を活発に増殖させる注入条件の検討を行った。また,このフィールドテストと並行して,二酸化炭素生産,界面活性剤生産,重質油資化等の能力の優れた微生物の採取とスクリ一二ングを行うとともに,油層温度50°Cで生育する微生物の採取を試み,多くの有望な菌株を分離した。 | KAKENHI-PROJECT-10044116 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10044116 |
微生物を利用した石油の増回収に関する共同研究 | 以上の結果より,まだ基礎的な段階であるが微生物攻法が石油増進回収法として実用化の可能性が高いことが明らかになり,来年度以降その実用化に向けさらに検討を行っていく。微生物を利用する石油の増回収法は微生物により石油を資化させ,生成物を利用するものであり,化学攻法や熱攻法に比べ地球にやさしい方法である。研究代表者を中心とするグループは,以前より微生物攻法に適した条件を満たしている中国吉林油田において微生物増進回収法に関する研究を進め,有用微生物のスクリーニングや貯留層の評価等を行い多くの研究成果を得てきた。本研究では,これまでの研究で明らかになった最適条件に基づいて中国吉林油田の生産中の坑井に栄養塩および微生物を注入し,目的微生物の増殖状態や産油量等を測定することにより微生物攻法の実用性に関して検討を行った。単一坑井法により栄養塩のみを坑井に注入した場合,油層内の先住微生物が活性化され産油量の増加が認められる場合が多かったが,坑井によっては栄養塩がき裂を通じて油層内部に浸透してしまい,効果が生じない事例も見られた。また,各種能力の優れた微生物の培養液と栄養塩を用いて同様の実験を行ったところ,やはり産油量の増加は認められた。注入微生物の菌体数の推移やその活動状況を把握するために,MPN-Direct-PCR法やFISH法などの遺伝子工学的解析法を確立した。さらに,フィールドテストの次のステップであるフラッティング試験のための準備を行った。一方,フィールドテストと並行して,二酸化炭素生産,界面活性剤生産,重質油資化等の能力の優れた微生物の採取とスクリーニングを行い,特にMEORに有効なポリマー生産能力の優れた微生物を分離した。また,油層温度50°Cで生育する微生物の採取とその培養方法の検討を行った。以上の結果より,微生物攻法が石油増進回収法として実用化の可能性が高いことが明らかになり,その実用化に向けさらに検討を行っていく。微生物を利用する増回収法は、火攻法や熱攻法に比べ地球に優しい方法である。研究代表者を中心とするグループは、以前より微生物攻法に適した条件を満たしている中国吉林油田において微生物増進回収法に関する研究を進めており、有用微生物のスクリーニングや貯留層の評価、吉林油田におけるハフ&パフ試験などを行い多くの知見を得てきた。本研究では、これまでの知見を発展させるため、より実用的なフラッデイング試験を吉林油田の実操業中の油層を使用して実施した。この際、使用微生物はポリマー生産能力に優れ、かつ油層内先住微生物に対する競合性の強いものとしてCJF-002株を用意した。この微生物培養液と栄養塩となるモラセスを試験坑井に圧入し、一定期間の密閉後、水押しをして生産井における挙動を検討した。油層水試料における圧入微生物であるCJF-002株は、各生産井においてその存在がDirect-PCR法によって確認された。この微生物は油層内において、ポリマーを生産し、高浸透率の部分をプラッギングすることにより、油層の透水係数を均一化して、その後の水攻法による石油増回収に大きな効果をもたらすと推定される。そのため微生物およびモラセスを圧入前後において、トレーサーを圧入し、モニター井および生産井におけるトレーサー応答を検討した。 | KAKENHI-PROJECT-10044116 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10044116 |
歩行中の方向転換におけるプロアクティブ姿勢制御戦略障害に関する基礎的研究 | 若年者と高齢者、脳卒中者、認知症者を対象に歩行中の方向転換課題における頭部定位反応時間とステップ運動戦略を記録した。頭部定位反応時間は、若年者・高齢者・脳卒中者・認知症者で相違があり、認知症者が最も遅延していた。方向転換運動は若年者、高齢者、脳卒中者では支持脚方向でステップターン運動戦略を、遊脚方向でスピンターン運動戦略を取るに対して、認知症者では両方向でステップターン運動戦略を取った。このような方向転換指示に対する頭部定位反応時間の遅延と方向転換ステップ運動戦略の特異性から、認知症者においては認知-運動情報処理機能及びongoing programの修正機能に問題があることが示唆された。本年度は、分析パラダイムの構築と健常成人を対象に歩行中の方向転換動作課題における頭部・腰部の方向転換反応時間と方向転換時にステップ運動戦略パターンの基礎データを収集した。対象は健常成人男性10名(平均24.5歳)と健常成人女性10名(平均27.0歳)とした.課題は10m歩行路において,45m程度の定常歩行後,方向指示刺激装置(イリスコ社)により矢印ランプで転換方向を提示し(光刺激),その方向にできるだけ早く左右90°方向転換するものとした.光刺激は足底に付けたフットスイッチを用いて右または左足踵接地のタイミングとした.光刺激脚(支持脚)と転換方向の組み合わせで4パターンに分類(支持脚/転換方向:左足/左,右足/右,左足/右,右足/左)し,各5試行ずつ計20試行実施した.光刺激後のステップ戦略はビデオカメラ(JVC社;GC-YJ40)を用いて分析した.ステップ戦略は転換方向と反対側の足を軸足として転換方向側の足を踏み出した場合をstep turn,転換方向と同側の足を軸足とし,反対方向の足が軸足をクロスした場合をspin turnとした.また,光刺激から頭部・腰部が回旋するまでの潜時は慣性センサ(ATR-Promotions;TSDN121)を方向指示刺激装置と同期して計測した.結果は、ステップ戦略に関して,全ての対象者が支持脚方向の2パターン(左足支持/左方向,右足/右)でstep turnを,遊脚方向の2パターン(左足/右,右足/左)でspin turnを行った.頭部・腰部の方向転換運動は男女とも頭部が腰部に先行し、支持脚方向と比較して遊脚方向の頭部反応時間が速く出現した.頭部の支持脚方向反応時間は、362.5msec、遊脚方向反応時間は320.6msecであった。本年度は、昨年実施した健常成人を対象とした歩行中の歩行転換動作課題における頭部と腰部の方向転換開始反応時間と方向転換時のステップ運津戦略パターンの計測方法と集積した基礎データに基づき、健康高齢者及び脳卒中片麻痺患者を対象に昨年度の計測パラダイム従いデータの集積と分析を行った。結果は、頭部と腰部の方向転換開始反応時間は、若年成人ー高齢者ー脳卒中者の順で反応時間が速く、有意差が認められた。方向転換時のステップ運動戦略パターンについては、昨年度の基礎データから、若年成人は合図提示のステップ下肢と同側への方向転換(例えば右の足のステップ時に右方向への方向転換指示)の場合は、全員ステップターン、合図提示のステップ下肢と反対側への方向転換(例えば右の足のステップ時に左方向への方向転換指示)の場合は、全員スピンターンであった。今年度集積したデータでは、高齢者では、合図提示のステップ下肢と同側への方向転換(例えば右の足のステップ時に右方向への方向転換指示)の場合は、ステップターンをとる者92.5%で、他は混合パターンであった。合図提示のステップ下肢と反対側への方向転換(例えば右の足のステップ時に左方向への方向転換指示)の場合は、スピンターンをとる者が45%、他は混合パターンであった。脳卒中者の場合は、麻痺側-非麻痺側の関係から場合分けを行い、非麻痺側合図ー非麻痺側への方向転換の場合、麻痺側合図ー麻痺側への方向転換の場合、共に全員ステップターンをとった。一方、非麻痺側合図ー麻痺側への方向転換の場合、スピンターンをとる者45%、他は混合パターンをとった。麻痺側合図ー非麻痺側への方向転換の場合、スピンターンをとる者55%、他は混合パターンをとった。これらの事から、高齢者及び脳卒中者の反応時間が遅延するとともに、立位バランスを確保するためにより安全な運動戦略をとる傾向にあることが示唆された。昨年確定した計測方法と基礎データに従って、高齢者及び脳卒中者のデータを集積することができた。高齢者及び脳卒中者の結果は、おおよそ予測されら結果ではあったが、脳卒中者の症例数が十分ではなく、データ数の確保が求められると共に日常生活機能との関連性に関するデータ比較を行う必要性があり、次年度の計画に脳卒中者の対象者数を増加させることと副次的データとして日常生活レベル、認知機能等のデータを集積する事が必要である。平成28年度は、認知症者16名を対象に歩行中の方向転換動作課題における頭部の方向転換動作開始反応時間と方向転換ステップ動作パターンの分析を行った。認知症者は、平均年齢83.6歳(SD:4.6)、平均MMSE15.9(SD:3.8)、平地平均歩行速度は0.9m/秒(SD:0.2)、平均TUG時間15.1秒(SD:4.3)であった。認知症の診断名は、15名がアルツハイマー認知症、1名がレビー小体認知症と診断されていた。性別は男性3名、女性13名であった。 | KAKENHI-PROJECT-26350622 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26350622 |
歩行中の方向転換におけるプロアクティブ姿勢制御戦略障害に関する基礎的研究 | 結果は、歩行周期中の立脚支持側へ方向転換を提示したときの頭部の方向転換方向への回旋反応時間は、535.6m秒(SD:535.6)で、遊脚側へ方向転換を提示したときの頭部の方向転換方向への回旋反応時間は、555.0m秒(SD:169.6)であった。方向転換時のステップの運動パターンは、立脚支持側へ方向転換を提示したときの運動パターンの出現率は、100%ステップターンであり、遊脚側へ方向転換を提示したときの運動パターンの出現率は、ステップパターンが95.3%、スピンターンが4.7%でほとんどの者が転換方向に関わらずステップターンを用いていた。平成28年度の結果を、平成26年度、平成27年度の実施した若年成人と健康高齢者と比較すると、支持脚方向への方向転換平均反応時間、若年者362.5m秒、高齢者395.8m秒、遊脚方向への方向転換平均反応時間、若年者320.6m秒、高齢者389.7m秒、に比べ有意に遅延していた。また、方向転換時のステップ運動パターンは、遊脚方向への方向転換時に若年者は100%スピンターン、高齢者は71%スピンターンを使用するのに対して、認知症はほとんどのものがステップターンを使用していた。これらのことから、認知症者の歩行中の方向転換動作の特異性として情報処理の遅延と方向転換運動戦略発現に関する問題が示唆された。若年者と高齢者、脳卒中者、認知症者を対象に歩行中の方向転換課題における頭部定位反応時間とステップ運動戦略を記録した。頭部定位反応時間は、若年者・高齢者・脳卒中者・認知症者で相違があり、認知症者が最も遅延していた。方向転換運動は若年者、高齢者、脳卒中者では支持脚方向でステップターン運動戦略を、遊脚方向でスピンターン運動戦略を取るに対して、認知症者では両方向でステップターン運動戦略を取った。このような方向転換指示に対する頭部定位反応時間の遅延と方向転換ステップ運動戦略の特異性から、認知症者においては認知-運動情報処理機能及びongoing programの修正機能に問題があることが示唆された。歩行中の方向転換指示信号に対する頭部躯幹の回転開始反応時間および方向転換ステップ運動のパターン化に関する記録分析パラダイムがほぼ構築し、基準とする基礎データとして健康成人のデータを収集した。26年度、27年度で集積した反応時間及び運動戦略パターンのデータを基準に、27年度は脳卒中者の症例数の補填と副次的データの集積を行う。また、認知機能と歩行中の方向転換時に求められるバランス機能、姿勢制御の関連を検討するために、運動機能に問題のない認知症者を対象にしたデータ集積を行う。理学療法学26年度で構築した分析パラダイムと健常成人の基礎データに対して、高齢者および脳卒中者を対象に加齢および片側性脳損傷に伴う障害特性を明らかにすべく、臨床データの収集を進める。高齢者は歩行機能に支障を来す整形外科疾患や神経疾患等がない者を対象とし、脳卒中者は下肢に整形外科疾患の合併がなく、高次神経機能に障害がない独歩可能な歩行機能を有する者を対象とする。また基礎的身体能力評価として、10m歩行速度計測、TUGやFRTのバランス機能評価、ADL活動レベルの評価等を測定する。さらに、高齢者および脳卒中者のデータ収集に加え、軽度認知症者のデータ収集へ研究を展開して行く。実験補助者が大学院生を含むボランティアによる支援が得られらこと。 | KAKENHI-PROJECT-26350622 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26350622 |
認知症予防に向けた腸管脂質センサーと神経発達における腸脳相関解明 | 腸管など消化管に発現している食事性肥満原因遺伝子FFAR4の機能不全が、肥満をはじめとする生活習慣病の発症にかかわることが知られている。また近年生活習慣病における認知症のリスクが高まることが報告されている。故にFFAR4の機能不全は認知症やアルツハイマー病の引き金になっている可能性が考えられる。本研究はFFAR4KOマウスを用いて、腸管FFAR4機能不全により引き起こされる生活習慣病が、認知症リスクを増加させるメカニズムを解析することを目的とする。本年度はFFAR4KOマウスを用い生活習慣病・認知症リスクに関わる分子の探索を行い、抑制する試薬の長期投与を行った。そのマウスを用いローターロッド(運動能力試験)、Y字迷路・morriswater迷路・8時迷路(記憶学習試験)、オープンフィールド(情動行動)、高床式十字迷路(不安様行動)などの行動解析を行った。またターゲット分子が神経細胞、アストロサイト、ミクログリアのに与える影響を検討するため、初代培養系を用いた実験を行う。本年度はその初代培養実験の検討を行い、実施に向けた準備を行った。認知症患者数は、近年食生活の変化(DHA摂取量の低下)に随伴するように急激な増加傾向を示している。FFAR4は、腸管など消化管に発現しており、DHAなど中鎖脂肪酸をリガンドとする。つまり、DHA摂取量の低下によるその受容体であるFFAR4生理活性不全が認知症発症率の増加に関わっている可能性がある。本研究の進展はメタボリックシンドロームと神経疾患のいまだ未知なメカニズムに対して、新たな疾患および創薬の観点を提供する。FFAR4を介した腸脳相関を解析することは脂質栄養学的・神経科学的にも大きな意義がある。本年度の課題は、ターゲット分子の探索・抑制効果のある試薬の長期投与である。3ヶ月、12ヶ月投与したマウスの作製は完了した。おおむね順調に進展していると言える。作製したマウスの行動試験の解析、また初代培養系を用いターゲット分子に与える影響を解析する。腸管など消化管に発現している食事性肥満原因遺伝子FFAR4の機能不全が、肥満をはじめとする生活習慣病の発症にかかわることが知られている。また近年生活習慣病における認知症のリスクが高まることが報告されている。故にFFAR4の機能不全は認知症やアルツハイマー病の引き金になっている可能性が考えられる。本研究はFFAR4KOマウスを用いて、腸管FFAR4機能不全により引き起こされる生活習慣病が、認知症リスクを増加させるメカニズムを解析することを目的とする。本年度はFFAR4KOマウスを用い生活習慣病・認知症リスクに関わる分子の探索を行い、抑制する試薬の長期投与を行った。そのマウスを用いローターロッド(運動能力試験)、Y字迷路・morriswater迷路・8時迷路(記憶学習試験)、オープンフィールド(情動行動)、高床式十字迷路(不安様行動)などの行動解析を行った。またターゲット分子が神経細胞、アストロサイト、ミクログリアのに与える影響を検討するため、初代培養系を用いた実験を行う。本年度はその初代培養実験の検討を行い、実施に向けた準備を行った。認知症患者数は、近年食生活の変化(DHA摂取量の低下)に随伴するように急激な増加傾向を示している。FFAR4は、腸管など消化管に発現しており、DHAなど中鎖脂肪酸をリガンドとする。つまり、DHA摂取量の低下によるその受容体であるFFAR4生理活性不全が認知症発症率の増加に関わっている可能性がある。本研究の進展はメタボリックシンドロームと神経疾患のいまだ未知なメカニズムに対して、新たな疾患および創薬の観点を提供する。FFAR4を介した腸脳相関を解析することは脂質栄養学的・神経科学的にも大きな意義がある。本年度の課題は、ターゲット分子の探索・抑制効果のある試薬の長期投与である。3ヶ月、12ヶ月投与したマウスの作製は完了した。おおむね順調に進展していると言える。作製したマウスの行動試験の解析、また初代培養系を用いターゲット分子に与える影響を解析する。物品費に多く支出を出していたが、消費する実験物品の購入が次年度となり差異が生じた。次年度の支出が多くなる計画となった。 | KAKENHI-PROJECT-18K17933 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K17933 |
タイミング依存可塑性による大脳皮質神経ネットワーク活動変化の研究 | 大脳皮質聴覚野のスライス標本に、電位感受性色素を用いたオプティカルイメージング法を適用することにより、神経活動の時空間パターンを記録し皮質内の信号伝達様式変化を調べた。麻酔下のラットから脳を取り出し、大脳皮質聴覚野を含むスライス標本を厚さ400μmで前額断に切り出した。これらを蛍光性電位感受性色素であるDi-4-ANEPPSを用いて染色した後、記録を行った。画像取得装置として、90×60のチャネル数を持つCCD型の高速カメラを使用し、1フレームあたり1msで蛍光画像を取り込んだ。下顆粒層を刺激すると、興奮活動は下顆粒層に拡がると共に上顆粒層に伝播し、さらに上顆粒層に沿って伝播するという応答が見られる。20Hz以上で多発繰り返し刺激を与えると、時間的空間的に興奮活動が次第に増大した。下顆粒層に40Hz以上の多発繰り返し刺激を与えた時、5回目の刺激に対する応答強度と最初の刺激に対する応答強度との比は、上顆粒層と下顆粒層で異なることが観測された。上顆粒層で観測される応答比の方が、第4層および下顆粒層で観測される応答比より有意に小さかった。刺激部位を上顆粒層にした時にも第4層にした時にも、同様に上顆粒層における応答比の方が、下顆粒層における応答比より有意に小さかった。その結果、最初の刺激後には、上顆粒層のみが強い応答を示したのに対し、5回目の刺激後においては、ほぼ大脳皮質全層が強い応答を示した。これらの結果は、繰り返し刺激に対する応答様式は層によって異なり、特に、上顆粒層と下顆粒層との間で差異があり、この応答様式の違いは繰り返し刺激の頻度に依存していることを示している。したがって、大脳皮質各層は、可塑的変化様式においてもそれぞれ異なることが示唆された。大脳皮質聴覚野のスライス標本に、電位感受性色素を用いたオプティカルイメージング法を適用することにより、神経活動の時空間パターンを記録し皮質内の信号伝達様式変化を調べた。麻酔下のラットから脳を取り出し、大脳皮質聴覚野を含むスライス標本を厚さ400μmで前額断に切り出した。これらを蛍光性電位感受性色素であるDi-4-ANEPPSを用いて染色した後、記録を行った。画像取得装置として、90×60のチャネル数を持つCCD型の高速カメラを使用し、1フレームあたり1msで蛍光画像を取り込んだ。下顆粒層を刺激すると、興奮活動は下顆粒層に拡がると共に上顆粒層に伝播し、さらに上顆粒層に沿って伝播するという応答が見られる。20Hz以上で多発繰り返し刺激を与えると、時間的空間的に興奮活動が次第に増大した。下顆粒層に40Hz以上の多発繰り返し刺激を与えた時、5回目の刺激に対する応答強度と最初の刺激に対する応答強度との比は、上顆粒層と下顆粒層で異なることが観測された。上顆粒層で観測される応答比の方が、第4層および下顆粒層で観測される応答比より有意に小さかった。刺激部位を上顆粒層にした時にも第4層にした時にも、同様に上顆粒層における応答比の方が、下顆粒層における応答比より有意に小さかった。その結果、最初の刺激後には、上顆粒層のみが強い応答を示したのに対し、5回目の刺激後においては、ほぼ大脳皮質全層が強い応答を示した。これらの結果は、繰り返し刺激に対する応答様式は層によって異なり、特に、上顆粒層と下顆粒層との間で差異があり、この応答様式の違いは繰り返し刺激の頻度に依存していることを示している。したがって、大脳皮質各層は、可塑的変化様式においてもそれぞれ異なることが示唆された。大脳皮質聴覚野のスライス標本に、電位感受性色素を用いたオプティカルイメージング法を適用し、神経活動の時空間パターンを記録することにより皮質内の信号伝達様式変化を調べた。ラットあるいは、マウスの脳をアイソフルレン麻酔下でとりだし、大脳皮質聴覚野を含む厚さ400μmのスライス標本を前額断に切り出した。このスライス標本を蛍光性電位感受性色素であるDi-4-ANEPPSを用いて染色した後、正立型顕微鏡に設置した浸漬型記録槽内に移し変えて記録を行った。電位感受性色素を用いた記録速度の速いオプティカルイメージングのために、画像取得装置として、90×60のチャネル数を持つCCD型の高速カメラを使用し、1フレームあたり1msで蛍光画像を取り込んだ。まず、同一個所での一発刺激に対する応答と多発刺激に対する応答とにおいて、どのような違いがあるかを調べた。5・6層あるいは、白質と6層の間を電気刺激すると、興奮は5・6層に拡がると共に、2・3層に伝播しそこで振幅が増大し、2・3層に伝播した興奮はさらに上顆粒層に沿って伝播した。この興奮活動は一発刺激でも起こるが、2OHz以上で多発刺激を与えると興奮活動が次第に増大し、空間的には興奮活動の大きさが拡がり、時間的には興奮活動の延長が見られた。この結果は、2・3層刺激でも、4・5層刺激でも同様であった。さらに、刺激を2箇所、上顆粒層および下顆粒層に与えるとどうなるかも調べた。その結果、2箇所刺激に対する応答は、それぞれの個所の刺激に対する応答のほぼ線形的な加算になった。したがって、同一個所の高頻度多発刺激と異なる個所での刺激とを組み合わせると、可塑性などのような神経活動様式の変化に十分な興奮が生じることが示された。 | KAKENHI-PROJECT-15500196 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15500196 |
タイミング依存可塑性による大脳皮質神経ネットワーク活動変化の研究 | 大脳皮質聴覚野のスライス標本に、電位感受性色素を用いたオプティカルイメージング法を適用することにより、神経活動の時空間パターンを記録し皮質内の信号伝達様式変化を調べた。麻酔下のラットから脳を取り出し、大脳皮質聴覚野を含むスライス標本を厚さ400μmで前額断に切り出した。これらを蛍光性電位感受性色素であるDi-4-ANEPPSを用いて染色した後、記録を行った。画像取得装置として、90×60のチャネル数を持つCCD型の高速カメラを使用し、1フレームあたり1msで蛍光画像を取り込んだ。下顆粒層を刺激すると、興奮活動は下顆粒層に拡がると共に上顆粒層に伝播し、さらに上顆粒層に沿って伝播するという応答が見られる。20Hz以上で多発繰り返し刺激を与えると、時間的空間的に興奮活動が次第に増大した。一方、上顆粒層を刺激すると、興奮活動は上顆粒層に沿って拡がるが、下顆粒層への伝播の程度は弱く、下顆粒層に沿った興奮伝播は見られない。多発繰り返し刺激を与えても、上顆粒層での興奮活動は増大したが、下顆粒層での興奮は弱いままであった。さらに、このような刺激を2箇所、上顆粒層および、下顆粒層に時間的に接近した状態で与えた場合も検討した。その結果、刺激間隔が50ms以下(刺激頻度20Hz以上)であれば、興奮の重畳が起こり神経活動が増大した。このことは、同一箇所あるいは異なる箇所においても、50ms以下の刺激間隔であれば、神経活動は時空間的に増大することを示しており、可塑性などのような神経活動様式の変化に十分な興奮が生じることが示された。また、上顆粒層での興奮の増大は、必ずしも下顆粒層の興奮の増大を伴わないことが分かり、上顆粒層と下顆粒層とでは活動様式の変化がそれぞれ独立に行われる可能性を示唆する。 | KAKENHI-PROJECT-15500196 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15500196 |
再生可能なヒドリドを用いた一酸化炭素の多電子還元触媒の開発 | 本研究は、二酸化炭素の多電子還元によるメタノール生成を行う上で必須である一酸化炭素の還元的活性化を実現するための技術を開発するものである。一酸化炭素を論理的に還元するための手法を確立するため、異種二核錯体を用いた検討を行った。一酸化炭素の捕捉および活性化を行うRu錯体と、電気化学的に再生可能なヒドリドを供給しうるRh錯体を組み合わせた新規二核錯体を創製し、その化学的・電気化学的性質を明らかにした。Rh上にCp*配位子をもつRu-Rh二核錯体が、電解還元反応条件下でメタノールの生成を示したこと、および電解反応後もその構造を保っていることから、電解還元反応触媒として有用であることが示唆された。本研究は、二酸化炭素の電気化学的多電子還元反応において解決すべき問題となっている一酸化炭素の還元的活性化を目指し、この反応を触媒できる金属錯体の開発を行うことを目的としている。平成26年度は、上記目的を達成するための金属錯体のデザインを行い、合成および化学的・電気化学的性質の解明を行った。本反応(一酸化炭素の還元的活性化)を達成するためには、一酸化炭素を捕捉し且つ活性化する部位と、一酸化炭素を還元するためのヒドリドを供給する部位が必要であり、さらにこれらがお互いに近い位置に固定されていることが望ましい。このような観点から、以下の分子デザインを行った。すなわち、一酸化炭素の捕捉・活性化部位としてルテニウム錯体を、電気化学的にヒドリドを供給できる部位としてロジウム錯体を選定し、これらをお互いに近い位置に固定する架橋配位子として3,5-ビス(2-ピリジル)ピラゾール(bppH)を用いて錯体の調製を行った。合成した錯体は[(tpy)Ru(CO)(mu-bpp)RhCl(tpy)](PF6)3 (1)であり、錯体の構造をX線結晶構造解析により明らかにした。その結果、Ru-Rh間の距離が約4.8 Åであり、それぞれの金属上に配位した基質が反応するのに都合のよい距離にあることがわかった。錯体1の赤外吸収スペクトルでは、Ruに配位したCOの伸縮振動が1998 cm-1に観測された。この結果より、錯体1のCOは求核攻撃を受けやすくなっているとの知見を得た。錯体1の電気化学的性質を明らかにするために、サイクリックボルタンメトリーを測定した。その結果、錯体1は-1.3 V (vs. Fc+/Fc, in MeCN)に非可逆な還元波を示し、Rhが最初に還元されることがわかった。プロトンの存在により電気化学的還元によってRh上にヒドリドが生成し、その先の反応が進行することが期待できる。本研究は、二酸化炭素の他電子還元反応を電気化学的に行う上で最も大きな課題の一つとなっている一酸化炭素の還元的活性化を目指し、新しい金属錯体触媒の開発を目的としている。平成26年度は、新しい金属錯体のデザインを行い、これに基づいて触媒となる金属錯体の合成および電気化学的性質の解明を行った。平成27年度は、前年度に得られた結果に基づき、合成した異種二核錯体[(tpy)Ru(CO)(bpp)RhCl(tpy)](PF6)3 (tpy = 2,2':6',2"-terpyridine)の電解還元を行い、Ru金属上に配位した一酸化炭素がどのような反応を起こすか検討を行った。電解還元反応を行った後の生成物について各種測定による同定を行ったところ、大部分は二核構造が壊れ、[Rh(tpy)]ユニットが外れたRu単核錯体に帰属される化学種となっていた。一部残存している二核錯体についてはその詳細な構造は明らかになっていないが、単結晶X線解析の結果、[(tpy)Ru(CO)(bpp)RhH(tpy)](PF6)と思われる錯体の生成が確認された。以上の結果を踏まえ、錯体の再設計を行った。Rhユニットが外れることを防ぐため、配位子としてtpyの代わりにCp*(Cp*= pentamethylcyclopentadienyl)基を導入した錯体の合成を検討した。その結果、[Cp*RhCl(dpp)Ru(CO)(tpy)](PF6)2の合成に成功した。赤外吸収スペクトルでは、Ruに配位したCOの伸縮振動が2014 cm-1に観測され、先に合成した錯体[(tpy)Ru(CO)(bpp)RhCl(tpy)](PF6)3よりも高波数側にシフトしていることから、より還元が起こりやすいことが期待できる。サイクリックボルタモグラムの測定の結果、還元電位は-1.4 V(vs. Fc+/Fc)であった。平成27年度は、まずはじめに前年度に合成した異種二核錯体の性質および反応性の検討から、問題点を明らかにした上で、一酸化炭素の還元的活性化を実現するために必要な触媒の構造に関する知見を得ることを目標とした。その結果、合成した錯体において[Rh(tpy)]ユニットが外れることを明らかにできたので、この部分の改良を行い、より柔軟な配位子であるCp*配位子を導入することに成功した。当初、Cp*配位子は嵩高いため、導入は難しいと考えていたが、合成法を工夫することにより達成することができた。これは触媒の安定性を高める上で重要な知見であり、好ましい結果であると言える。 | KAKENHI-PROJECT-26410113 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26410113 |
再生可能なヒドリドを用いた一酸化炭素の多電子還元触媒の開発 | さらに、新しく合成した錯体のCOに基づく伸縮振動が2014 cm-1に観測されたことは、この錯体に配位した一酸化炭素がより還元されやすくなっていることを意味しており、正しい分子設計ができたと言える。さらに、この錯体の電気化学的性質の測定の結果、還元電位(Epc = -1.4 V(vs. Fc+/Fc))は[(tpy)Ru(CO)(bpp)RhCl(tpy)](PF6)3(Epc = -1.3 V(vs. Fc+/Fc))よりもより負側であるが、電解還元反応を行う上で大きな問題になる値ではないと考えられ、今後の研究を行っていく上で障害となるものではない。以上のことから、今回合成した異種二核錯体は、前年度に合成した錯体よりも高性能であることが期待できることから、本研究は概ね順調に進行していると言える。本研究は、二酸化炭素の電気化学的多電子還元反応の実現に向けて、解決すべき問題の一つである一酸化炭素の還元的活性化を目指している。一酸化炭素還元を論理的に進行できるシステムを組み込んだ金属錯体を開発することを目的としている。平成27年度は、前年度に合成した異種二核錯体[(tpy)Ru(CO)(μ-bpp)RhCl(tpy)](PF6)3 ([1](PF6)3, tpy = 2,2':6',2"-ターピリジン)および[(tpy)Ru(CO)(μ-bpp)RhCl(Cp*)](PF6)2 ([2](PF6)2, Cp*=ペンタメチルシクロペンタジエニル)を用いて、前年度に得られた錯体の電気化学的反応に関する知見に基づいて、一酸化炭素の触媒的電解還元反応について検討した。錯体[1](PF6)3および[2](PF6)2を触媒に用いて、一酸化炭素の電気化学的還元反応を試みた。錯体[1](PF6)3を用いて反応させると、溶液の色が赤褐色から暗紫色と変化し、錯体の還元が起こったことが強く示唆された。溶媒として10%の水を加えて電解還元反応を行ったところ、僅かではあるが新しいピークが観測され、分析の結果メタノールであることが強く示唆された。その収率は3%であった。反応後の溶液のESI-MSスペクトルを測定した結果、[Rh(tpy)]ユニットが外れた錯体と考えられるシグナルが観測されたことから、電解還元条件下ではRhユニットが解離しやすいと考えられる。次に[2](PF6)2を触媒に用い、[1](PF6)3の場合と同様の条件で電解還元反応を行ったところ、溶液の色は変化したが、メタノールの生成は認められなかった。そこで、溶媒に含まれる水の量を調整して電解反応を試みた結果、5%含水アセトニトリルを溶媒に用いた時にメタノールと考えられるシグナルをGCおよびGC-MSより観測した。前年度までに合成に成功したヒドリド生成部位であるロジウムを中心金属とするユニットと、一酸化炭素の捕捉および活性化を行うルテニウム部位を、2個の金属を適切な位置に固定可能であると期待される配位子(3,5-ビス(2-ピリジル)ピラゾレート、dpp)で連結した錯体[1](PF6)3および[2](PF6)2について、合成法を確立できた。電気化学的還元反応は、セパレート型セルを用い、アセトニトリルー水溶媒中、触媒である[1](PF6)3あるいは[2](PF6)2を1 mmol l-1、電解質としてMe4NPF6を0.1 mol -1の濃度になるように調製し、一酸化炭素を溶液中にゆっくりと導入しながら-1.7 V (vs. Ag+/Ag)で行った。 | KAKENHI-PROJECT-26410113 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26410113 |
ロタキサンの動的特性制御を基盤とする機能素子・素材の創成 | 今年度は1)ロタキサン構造を有する分解性ゲル、2) CD含有ロタキサンの不斉特性解析について検討した。1)ロタキサン構造を有する分解性ゲル前年度合成した、サイズ相補性ロタキサン架橋高分子の分解性について、蛍光を用いることで定量的な評価を行った。加熱によってサイズ相補性ロタキサン部位が解離することで、蛍光性を示すダンベル分子が溶液中に拡散する。加熱時間に対して溶液中の蛍光強度をプロットすることで、解架橋の速度を評価した結果、この解架橋は120時間程度まで速く進行した後、速度は緩やかになることが分かった。この時点ではゲルの存在がはっきりと確認されるため、ゲルの完全な分解には数少ない架橋点の解架橋も必要であることが示唆された。2) CD含有ロタキサンの不斉特性解析CD含有ロタキサンにおいて、アキラルなダンベル部位に、CDのキラリティーが転写され、軸末端置換基のCDスペクトルにCotton効果が観測された。特に興味深いのはNativeのCDを輪とするロタキサンのCotton効果が負なのに対して、アシル体では正となる点である。この発現機構について調べた結果、CDの修飾による軸末端吸収団の被覆が、誘起CDの正負に大きく影響していることが示唆された。すなわち、Native CDのロタキサンにおいては輪がベンゼン環から離れて存在するが、アシル化されると輪が空孔に沿って拡大し、ベンゼン環をある程度包接するように変化したことが示唆される。また、Native CDにおいてはCDユニット間に水素結合が働き輪成分同士が近づくが、アシル化CDにおいてその相互作用がないこともこの被覆に影響することが、[3]ロタキサンのX線結晶構造解析の結果からも支持された。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。本研究では構造明確な低分子ロタキサンを基盤とした機能素子・素材の創成を目指す。まずは高分子系へと展開することを計画した。サイズ相補性ロタキサンを高分子系に拡張することで、高分子ロタキサン中の輪成分の数、向き、位置及び運動性の制御が可能であると考えた。まず低被覆率高分子ロタキサンの合成を目標とする。この分子は報告がないため合成面、物性面および応用面において非常に興味深い。具体的には片方の末端に嵩高い置換基を有するポリマーをサイズ相補性ロタキサンに導入することで合成できると考えられる。この分子が期待通り機能すれば、加熱によって2つの輪成分の位置が変化するような熱応答性分子スイッチの創出が期待される。この他にもサイズ相補性ロタキサンの動的特性制御を基盤とした機能性超分子の開発を目指す。今年度は主に低被覆率高分子ロタキサンついて検討した。サイズ相補性軸末端基を持つ[3]ロタキサンの両末端にポリマーを導入し、高分子ロタキサンを合成した。完全アセチル化α-CD含有サイズ相補性[3]ロタキサンの、軸末端を開始点としたラクトンの開環重合によりサイズ相補性ポリマー[3]ロタキサンを得た。生成物をDMSO中で加熱するとサイズ相補性部位のデスリップ反応が進行し、各コンポーネントへと分解した。そこでNMRによりデスリップ反応の動力学的解析を行った。また末端封鎖反応により得られるポリマー[3]ロタキサンについても同様の検討を行った。その結果、デスリップ反応は末端封鎖剤の存在により大幅に遅くなることが分かった。また高分子鎖の長さにデスリップ速度は依存しないことも分かった。またロタキサン構造を有する分解性ゲルの合成も検討している。現在合成の鍵となるロタキサン架橋剤の合成途中である。本研究では構造明確な低分子ロタキサンを基盤とした機能素子・素材の創成を目指す。まずは高分子系へと展開することを計画した。サイズ相補性ロタキサンを高分子系に拡張することで、高分子ロタキサン中の輪成分の数、向き、位置及び運動性の制御が可能であると考えた。まず低被覆率高分子ロタキサンの合成を目標とする。この分子は報告がないため合成面、物性面および応用面において非常に興味深い。具体的には片方の末端に嵩高い置換基を有するポリマーをサイズ相補性ロタキサンに導入することで合成できると考えられる。この分子が期待通り機能すれば、加熱によって2つの輪成分の位置が変化するような熱応答性分子スイッチの創出が期待される。この高分子ロタキサンに関しては、昨年度開発に成功した。この他にもサイズ相補性ロタキサンの動的特性制御を基盤とした機能性超分子の開発を目指す。また今年度は、サイズ相補性[3]ロタキサンを架橋剤に用いてポリマーを重合し、刺激応答性ゲルを合成した。メチルメタクリレートのフリーラジカル重合にこのロタキサン架橋剤を添加し、ロタキサン架橋ゲルを得た。ゲルを溶媒に膨潤させて加熱するとサイズ相補性部位のデスリップ反応が進行し、ゲル全体の解架橋が進行した。また蛍光性の[3]ロタキサン架橋剤を用いた系についても同様の検討を行った。その結果、ゲルの解架橋の様子は蛍光を用いても観測することが出来た。さらに今年度はシクロデキストリン(CD)含有ロタキサンの不斉特性解析も行った。CD含有ロタキサンにおいて、アキラルな軸末端置換基に、CDのキラリティーが転写され、CDスペクトルにCotton効果が観測された。この発現機構について調べている。 | KAKENHI-PROJECT-13J08481 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13J08481 |
ロタキサンの動的特性制御を基盤とする機能素子・素材の創成 | 今後はさらに詳細を検討し、不斉触媒やCPLへの応用を試みるつもりである。今年度は1)ロタキサン構造を有する分解性ゲル、2) CD含有ロタキサンの不斉特性解析について検討した。1)ロタキサン構造を有する分解性ゲル前年度合成した、サイズ相補性ロタキサン架橋高分子の分解性について、蛍光を用いることで定量的な評価を行った。加熱によってサイズ相補性ロタキサン部位が解離することで、蛍光性を示すダンベル分子が溶液中に拡散する。加熱時間に対して溶液中の蛍光強度をプロットすることで、解架橋の速度を評価した結果、この解架橋は120時間程度まで速く進行した後、速度は緩やかになることが分かった。この時点ではゲルの存在がはっきりと確認されるため、ゲルの完全な分解には数少ない架橋点の解架橋も必要であることが示唆された。2) CD含有ロタキサンの不斉特性解析CD含有ロタキサンにおいて、アキラルなダンベル部位に、CDのキラリティーが転写され、軸末端置換基のCDスペクトルにCotton効果が観測された。特に興味深いのはNativeのCDを輪とするロタキサンのCotton効果が負なのに対して、アシル体では正となる点である。この発現機構について調べた結果、CDの修飾による軸末端吸収団の被覆が、誘起CDの正負に大きく影響していることが示唆された。すなわち、Native CDのロタキサンにおいては輪がベンゼン環から離れて存在するが、アシル化されると輪が空孔に沿って拡大し、ベンゼン環をある程度包接するように変化したことが示唆される。また、Native CDにおいてはCDユニット間に水素結合が働き輪成分同士が近づくが、アシル化CDにおいてその相互作用がないこともこの被覆に影響することが、[3]ロタキサンのX線結晶構造解析の結果からも支持された。今年度はロタキサン架橋剤を用いた刺激応答性ゲル、およびロタキサンの不斉特性解析を行った。いずれも難関である化合物の合成法は確立出来、また十分に興味深い結果が得られている。また初年度開発に成功した高分子ロタキサンの結果も合わせると、ロタキサンの動的特性制御を応用した系を3つ開発出来たことになる。それぞれ論文1本分以上の結果が得られていることから、研究は順調に進展していると言える。27年度が最終年度であるため、記入しない。当初の計画通りに研究を進める予定である。今までに大きく3つの系を新たに開発出来たことから、それらのさらに詳細な検討と、論文化を行う。その後4つ目となる系の開発に着手する。特にロタキサンの不斉特性解析に関してはまだ十分な知見が得られていないので、その系について十分に調べ、CPLや不斉触媒への応用可能性を検討する。第一の合成ターゲット分子である高分子ロタキサンは、今までシクロデキストリンを輪成分とした系での合成報告がなく、予想通り困難を伴ったが合成を達成した。またその特性評価も順調に進んだと言える。さらにロタキサン架橋剤の合成においては最終段階の官能基変換を残すのみであり、難所は越えたと考えられる。27年度が最終年度であるため、記入しない。次の1件のテレビ番組に出演した。 | KAKENHI-PROJECT-13J08481 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13J08481 |
生活習慣病予防におけるアミノ酸の中枢性肝糖産生抑制作用の有用性の解明 | 代表者らは、ヒスチジンが中枢神経ヒスタミン作用に依存して肝糖産生を抑制し、血糖減少作用を発揮する事を見出している。ヒスチジンの耐糖能異常改善食材としての有用性が期待されるが、中枢神経ヒスチジン作用の肝臓での分子メカニズムは明らかではない。本研究では、中枢神経ヒスチジン作用は、迷走神経を介し、肝臓STAT3シグナルを活性化し、肝糖新生系酵素の遺伝子発現を抑制することを明らかにした。迷走神経は、クッパー細胞α7型ニコチン性アセチルコリン受容体を介して、肝臓STAT3シグナルを抑制しており、中枢神経ヒスチジン作用が、迷走神経活動を抑制することにより、肝臓STAT3シグナルを活性化することを見出した。個体糖代謝調節と血中アミノ酸の「質」との関連が明らかにされ、生活習慣病予防を目指した食生活改善の標的として、アミノ酸・ペプチドの重要性が指摘されている。その中で、ヒスチジン・トリプトファン(摂食抑制系アミノ酸)は、それぞれ中枢神経ヒスタミン・セロトニン作用を介して耐糖能改善作用を有する可能性が示されている。代表者は、ヒスチジンによる耐糖能改善効果が、中枢神経ヒスタミン作用を介した肝糖産生抑制により引き起こされることを明らかにしてきた。本研究課題では、ヒスチジン・トリプトファンによる中枢性肝糖産生抑制作用の、生活習慣病、特に糖尿病の発症予防における有用性の解明を行う。ヒスチジン・トリプトファンによる中枢神経性肝糖産生抑制のメカニズムを解明し、長期間投与法の効果について検討を行う。このような摂食抑制系アミノ酸の機能性解明は、アミノ酸の「質」に基づいた糖尿病・生活習慣病予防の新たなアプローチの開発に繋がるという重要性を有している。本年度には、中枢神経性の肝糖産生抑制メカニズムの解明を行った。そのなかで、脳室内にヒスチジンを投与することによって、インスリン投与時と同様に、迷走神経活動が変化することを見出している。また、脳室内インスリンまたはヒスチジン投与による肝糖産生抑制作用が、クッパー細胞除去により消失することも明らかにしている。これらの結果が、中枢神経が、インスリンなどの液性因子のみならず、栄養素を感知することによっても、迷走神経・クッパー細胞系を介して、肝臓糖代謝を制御することを示唆している。迷走神経の阻害剤を用いた検討から、迷走神経・クッパー細胞を介した、中枢神経と肝臓クロストークにアセチルコリンの関与を見出している。個体糖代謝調節と血中アミノ酸の「質」との関連が明らかにされ、生活習慣病予防を目指した食生活改善の標的として、アミノ酸・ペプチドの重要性が指摘されている。その中で、ヒスチジン・トリプトファン(摂食抑制系アミノ酸)は、それぞれ中枢神経ヒスタミン・セロトニン作用を介して耐糖能改善作用を有する可能性が示されている。代表者は、ヒスチジンによる耐糖能改善効果が、中枢神経ヒスタミン作用を介した肝糖産生抑制により引き起こされることを明らかにしてきた(Diabetes, 2013)。本研究課題では、ヒスチジン・トリプトファンによる中枢性肝糖産生抑制作用の、生活習慣病、特に糖尿病の発症予防における有用性の解明を行う。ヒスチジン・トリプトファンによる中枢神経性肝糖産生抑制のメカニズムを解明し、長期間投与法の効果について検討を行う。摂食抑制系アミノ酸の機能性解明により、アミノ酸の「質」に基づいた糖尿病・生活習慣病予防の新たなアプローチの開発に繋がると考えている。本年度には、中枢神経作用による肝糖産生調節に、迷走神経活動およびクッパー細胞のα7型アセチルコリン受容体作用の抑制が必須であることを明らかにした。α7型アセチルコリン受容体欠損マウスでは、中枢神経作用による肝糖産生抑制が障害され、当該マウスに野生型マウス由来クッパー細胞を移植することで、その障害が回復した。中枢神経性の肝糖代謝調節において、迷走神経活動の抑制が必須であることに加え、その分子メカニズムとして、クッパー細胞α7型アセチルコリン受容体の重要性を明らかにしており、当初の研究計画に先んじて、研究成果を得ているため。ヒスチジンは、ヒスタミンの基質であり、中枢神経ヒスタミン作用を介して摂食抑制を誘導することが明らかにされている。また、ヒスチジンは、血糖値の増加と逆相関することが知られている。しかし、ヒスチジンによる血糖調節メカニズムは明らかにされていなかった。研究代表者らの検討から、ヒスチジン投与による血糖値減少作用が肝糖産生の抑制に起因することが明らかになった(Diabetes, 2013)。肝糖産生は、血糖値と密接に関連しており、その増加が2型糖尿病・インスリン抵抗性の誘因に、その減少が耐糖能異常を改善することが知られている。肝糖産生は、肝臓へのホルモンの作用により調節されるとともに、中枢神経作用から迷走神経を介したメカニズムによっても制御を受けている。研究代表者らは、ヒスチジンによる肝糖産生抑制作用が、中枢神経におけるヒスタミン作用、特にヒスタミンH1受容体依存性のメカニズムを介することを見出している。これらの知見は、ヒスチジンのような摂食抑制系アミノ酸の耐糖能改善作用は、食生活改善の標的となりうると考えている。しかし、ヒスチジンの抗耐糖能異常食材としての有用性を解明するためには、ヒスチジンの耐糖能異常の改善効果、特に肝糖産生抑制作用についての、より一層の詳細な解明が必要である。そこで、本研究課題では、ヒスチジンによる中枢神経性肝糖代謝メカニズムの解明を実施した。 | KAKENHI-PROJECT-26282022 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26282022 |
生活習慣病予防におけるアミノ酸の中枢性肝糖産生抑制作用の有用性の解明 | 中枢神経ヒスチジン作用は、肝臓IL-6/STAT3シグナルを活性化し、肝糖新生系酵素の遺伝子発現を抑制する。今回、我々は、迷走神経が、クッパー細胞α7型ニコチン性アセチルコリン受容体を介して、肝臓IL-6/STAT3シグナルを抑制すること、さらに、中枢神経ヒスチジン作用が、迷走神経活動を抑制することにより、肝臓IL-6/STAT3シグナルを活性化することを見出した。代表者らは、ヒスチジンが中枢神経ヒスタミン作用に依存して肝糖産生を抑制し、血糖減少作用を発揮する事を見出している。ヒスチジンの耐糖能異常改善食材としての有用性が期待されるが、中枢神経ヒスチジン作用の肝臓での分子メカニズムは明らかではない。本研究では、中枢神経ヒスチジン作用は、迷走神経を介し、肝臓STAT3シグナルを活性化し、肝糖新生系酵素の遺伝子発現を抑制することを明らかにした。迷走神経は、クッパー細胞α7型ニコチン性アセチルコリン受容体を介して、肝臓STAT3シグナルを抑制しており、中枢神経ヒスチジン作用が、迷走神経活動を抑制することにより、肝臓STAT3シグナルを活性化することを見出した。本年度の研究計画では、中枢神経ヒスチジン作用の検討から、中枢神経・肝臓クロストークによる糖代謝調節のメカニズムの解明を行っており、論文に報告を行っている。また、実際に、クロストークの実体が、アセチルコリンを介した迷走神経・クッパー細胞連関であることを見出している。トリプトファン・セロトニン系の中枢神経作用の肝糖代謝調節における役割についても、検討をすすめており、おおむね研究計画は予定通り順調に進展している。中枢神経トリプトファン作用による肝臓作用の解明とともに、トリプトファン・ヒスチジンの長期作用が、肝臓および個体糖代謝に及ぼす作用を検討する。28年度が最終年度であるため、記入しない。食生活学平成27年度には、中枢神経・肝臓クロストークのメカニズムにおけるアセチルコリンの作用機序を解明するとともに、中枢神経トリプトファン・セロトニン系の糖代謝調節における重要性の検討も進めていく。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-26282022 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26282022 |
人道的地雷除去のための地雷原走行用作業移動型ロボットの開発 | 本研究は、歩行しながら行う現行の人道的地雷探知除去作業をより安全に効率的に行うための画期的な方策として「埋設された対人地雷を起爆させることなく地雷原を安全に走行できる作業移動型ロボット」を開発することを内容としている。従来の移動方式(車輪型、クローラ型、多脚型歩行)は対地接触面積が小さく接地圧力が大きいため埋設対人地雷の起爆感知力をはるかに越えることから、これに代わる移動方式として、本研究では「対地適応性・重量物可搬性の高い斜毛駆動による毛状多足型移動方式」を新たに開発した。この方式は、「車輪・クローラ・脚等」の代わりに数万本の斜毛を配し、円筒カム型斜毛駆動機構によって斜毛群に蠕動的運動を与え、斜毛の順方向と逆方向移動時に発生する接地摩擦力差を利用して移動する安定低速型の走行方式である。その実現可能性を試作機(自動35kg、斜毛本数10万本、直径0.6mmナイロン製斜毛)による実証実験でまず確認し、起爆感知力が最も小さいとされる対人地雷PMN2を想定した実機設計を行い、以下に示す仕様をもつ作業移動型ロボットを開発した。仕様:最大可搬重量120kg、自重480kg、総重600kg、斜毛本数4万5千本(直径2.5mm、長さ430mm、材質ポリエステル)、全長3.52m×全幅1.66m×全高1.2m、作業床面高さ0.7m。4万5千本の斜毛への重量負荷分散により接地圧力を90g/cm^2以下に、対人地雷への負荷力を2.5kg以下に抑えることを可能にし、起爆感知力が5kg以上の対人地雷(PMN2相当)に対して、これを起爆させることなく走行できる作業移動型ロボットの実現が基本的に可能であることを明らかにした。開発したロボットは、ガソリン発電機・主電動機により主軸円筒カムを回転させ左右に配置した斜毛群によって走行し、走行速度は分速4m、前進・後退・左右への旋回及び信地旋回も可能である。柔軟な斜毛による接地移動により、最大踏破段差高さは約12cm、凹凸地面走行に強いことが確認された。本研究は、歩行しながら行う現行の人道的地雷探知除去作業をより安全に効率的に行うための画期的な方策として「埋設された対人地雷を起爆させることなく地雷原を安全に走行できる作業移動型ロボット」を開発することを内容としている。従来の移動方式(車輪型、クローラ型、多脚型歩行)は対地接触面積が小さく接地圧力が大きいため埋設対人地雷の起爆感知力をはるかに越えることから、これに代わる移動方式として、本研究では「対地適応性・重量物可搬性の高い斜毛駆動による毛状多足型移動方式」を新たに開発した。この方式は、「車輪・クローラ・脚等」の代わりに数万本の斜毛を配し、円筒カム型斜毛駆動機構によって斜毛群に蠕動的運動を与え、斜毛の順方向と逆方向移動時に発生する接地摩擦力差を利用して移動する安定低速型の走行方式である。その実現可能性を試作機(自動35kg、斜毛本数10万本、直径0.6mmナイロン製斜毛)による実証実験でまず確認し、起爆感知力が最も小さいとされる対人地雷PMN2を想定した実機設計を行い、以下に示す仕様をもつ作業移動型ロボットを開発した。仕様:最大可搬重量120kg、自重480kg、総重600kg、斜毛本数4万5千本(直径2.5mm、長さ430mm、材質ポリエステル)、全長3.52m×全幅1.66m×全高1.2m、作業床面高さ0.7m。4万5千本の斜毛への重量負荷分散により接地圧力を90g/cm^2以下に、対人地雷への負荷力を2.5kg以下に抑えることを可能にし、起爆感知力が5kg以上の対人地雷(PMN2相当)に対して、これを起爆させることなく走行できる作業移動型ロボットの実現が基本的に可能であることを明らかにした。開発したロボットは、ガソリン発電機・主電動機により主軸円筒カムを回転させ左右に配置した斜毛群によって走行し、走行速度は分速4m、前進・後退・左右への旋回及び信地旋回も可能である。柔軟な斜毛による接地移動により、最大踏破段差高さは約12cm、凹凸地面走行に強いことが確認された。人道的地雷除去作業をより安全に効率的に行うためには、地雷探知・除去作業の機械化・自動化が必要であり、そのためには対人地雷に感知することなく地雷原を自由に走行移動できる重量物搭載可能な移動体(モバイル・プラットフォーム)の開発が不可欠である。本研究は、地雷除去作業者の地雷探知器携行による歩行移動方式に基づく現行の人力作業に代わる方法として、作業者が上記移動体に乗車して地雷原を走行移動し車上で対人地雷の探知・除去作業を安全に展開できる地雷除去作業方式を考え、そのための移動体として「人道的地雷除去のための地雷原走行用作業移動型ロボット」を開発する。これまでに以下に示す研究実績を得た。負荷重量700kgに対する移動ロボットの接地面における最大負荷圧力を35g/cm^2(地雷1個当たりの起爆力1000g以下に相当)に設定し、これを可能にする新しい移動方式として「対地適応性・重量物可搬性の高い斜毛駆動による毛状多足型駆動方式」を採用する。 | KAKENHI-PROJECT-13650445 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13650445 |
人道的地雷除去のための地雷原走行用作業移動型ロボットの開発 | この方式は、接地面での負荷圧力が大きい「車輪・クローラ・足等」による走行方式の代わりに数万本の斜毛を配し、円筒カム型斜毛駆動機構によってこれらの斜毛群に蠕動的運動を与え、斜毛の順方向移動と逆方向移動時に発生する接地摩擦力差を利用して移動する安定低速型の凹凸路面走行方式である。この方式の実現可能性を既存の試作機(自重35kg、斜毛本数10万本、直径0.6mmナイロン製の斜毛、斜毛1本当たりの負荷荷重1g以下)による実証実験によって確認した。これを踏まえ、地雷原走行用作業移動型ロボットの実機の開発設計を行い、次に示す設計仕様を得た。最大可搬重量200kg(作業者1名と作業器具等の重量)、自重500kg、直径2.5mmポリエステル製斜毛・斜毛長43cm、斜毛本数4.5万本、斜毛1本当たりの最大負荷荷重16g以下、全長3.5m×全幅1.6m×全高1.2、最大踏破段差高20cm、ガソリン発電機搭載・直流モータ駆動による自走型。本研究は、地雷探知器を携帯して歩行移動しながら対人地雷の探知・除去作業を行う現行の人道的地雷除去作業の危険性を解消するため、作業者が地雷原を歩行せず移動作業車に乗車して地雷原を走行移動し車上で探知・除去作業を安全に行えるための移動作業車の開発が不可欠とする考えに基づき、「対人地雷を起爆させることなく安全に走行移動できる地雷原走行用作業移動ロボット」を新たに開発した。地雷原表面への負荷重量による接地圧力が高い従来型駆動方式(車輪駆動、クローラ駆動、脚式)では対人地雷の起爆圧力(最小100g重/cm^2)・感知力(最小5kg重)を越えるため、従来にない新しい駆動方式を開発した。本研究では、接地圧力を小さくするための駆動方式として4万5千本の斜毛(直径2.5mm、長さ430mm、材質ポリエステル)を用いた「対地適応性・重量物可搬性の高い斜毛駆動による毛状多足型駆動方式」を開発し、最大可搬重量120kg重・自重480kg重による総重量600kg重のロボットに対して、接地圧力を90g重/cm^2に、対人地雷への負荷力を2.5kg重以下に抑え、ロボット総重量を4万5千本の斜毛に負荷分散(斜毛1本当たりの負荷重量を35g重以下に抑制)することを可能にした。これにより、起爆感知力が5kg重以上の対人地雷に対して、これを起爆させることなく走行移動できる移動作業車の実現が基本的に可能であることが判明した。開発したロボットは、全長3.52m、全幅1.66m、全高1.2m、作業面高さ0.7mの車体を持ち、ガソリン発電機・主電動機により主軸円筒カムを回転させ左右それぞれに配置した8斜毛ブロック間に蠕動的運動を与えて、斜毛の順方向と逆方向移動時に発生する接地摩擦力差を利用して移動する。ロボットの最高移動速度は分速4m、前進、後退、左右への旋回及び信地旋回も可能である。柔軟な斜毛による接地移動により最大踏破段差高さは約20cmであり、凹凸地面の走行に強いことが確認された。 | KAKENHI-PROJECT-13650445 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13650445 |
地域の産業連関を考慮した省資源・省エネルギー型地域経済システムの形成に関する研究 | 最近のわが国では,地球温暖化,酸性雨,オゾン層の破壊を始めとする地球環境問題の深刻化,さらには石油や石炭などの化石燃料の枯渇に対する懸念から,社会全体で省資源・省エネルギーや資源リサイクルを進め,環境負荷の小さい資源循環型社会を実現していく機運が高まっている。資源循環型社会の形成に向けては,国や地域における省資源・省エネルギーの進展状況を把握することが必要であるが,その際には国全体あるいは地域全体で財貨及びサービスの流れを総合的に把握できる産業連関表の利用が有効である。本研究では,「昭和45-50-55年接続産業連関表」及び「昭和55-60-平成2年接続産業連関表」から作成した1970年,75年,80年,85年,90年の全国8地域別の地域内産業連関表を用いて,これまで十分な研究が行われてこなかった全国地域別の産業構造変化と省資源・省エネルギー動向の関連を分析した。資源・エネルギー誘発係数を用いた実証分析の結果より,地域による差異はあるものの,分析対象期間を通じて,全国,各地域ともに,省資源・省エネルギー化が進展したことが明らかになった。また,資源・エネルギー消費構造要因の分析結果から,省資源・省エネルギー化の過程では,技術構造変化の貢献が大きいことが示された。しかし一方で,最終需要面での省資源・省エネルギー化は,各地域ともに顕著な進展が見られなかった。従って,今後の環境政策では,ライフスタイルの改善を始めとする最終需要面の対応が必要と考えられる。最近のわが国では,地球温暖化,酸性雨,オゾン層の破壊を始めとする地球環境問題の深刻化,さらには石油や石炭などの化石燃料の枯渇に対する懸念から,社会全体で省資源・省エネルギーや資源リサイクルを進め,環境負荷の小さい資源循環型社会を実現していく機運が高まっている。資源循環型社会の形成に向けては,国や地域における省資源・省エネルギーの進展状況を把握することが必要であるが,その際には国全体あるいは地域全体で財貨及びサービスの流れを総合的に把握できる産業連関表の利用が有効である。本研究では,「昭和45-50-55年接続産業連関表」及び「昭和55-60-平成2年接続産業連関表」から作成した1970年,75年,80年,85年,90年の全国8地域別の地域内産業連関表を用いて,これまで十分な研究が行われてこなかった全国地域別の産業構造変化と省資源・省エネルギー動向の関連を分析した。資源・エネルギー誘発係数を用いた実証分析の結果より,地域による差異はあるものの,分析対象期間を通じて,全国,各地域ともに,省資源・省エネルギー化が進展したことが明らかになった。また,資源・エネルギー消費構造要因の分析結果から,省資源・省エネルギー化の過程では,技術構造変化の貢献が大きいことが示された。しかし一方で,最終需要面での省資源・省エネルギー化は,各地域ともに顕著な進展が見られなかった。従って,今後の環境政策では,ライフスタイルの改善を始めとする最終需要面の対応が必要と考えられる。深刻化する地球環境問題に対処し,地域間でバランスの取れた循環型経済システムを形成していくためには,地域経済構造の変化と省資源・省エネルギー化の関係を長期的に分析するとともに,資源・エネルギー需給面での地域間の相互依存関係を把握し,モデル化しておくことが必要である。本研究では,日本の国全体,地域別,さらには地域間で,財貨及びサービスの流れを総合的かつ詳細に把握できる地域間産業連関表及び地域産業連関表を利用し,高度経済成長期以後の地域経済構造の変化と省資源・省エネルギー化の関連,並びに資源・エネルギー需給から見た地域間の相互依存関係を分析し,今後の省資源・省エネルギーの促進や循環型経済システムの構築に向けた地域課題を明らかにすることを目的とした。平成13年度の研究では,まず,域経済構造の長期的変動を明らかにするために,研究代表者が既往研究の中で提案した地域分析手法及び地域連関構造の分析手法を用いて,各地域における産業構造と経済循環の特徴を把握するとともに,地域産業構造の変動と経済成長の関係,及び地域経済の相互依存関係を検討した。次に,わが国の各地域における省資源・省エネルギーと資源・エネルギー需給の動向を把握するために,研究代表者と分担者が既往研究の中で提案した二つの分析手法を地域産業連関表に適用した。第一は,資源・エネルギー供給産業に対する依存度め分析であり,地域別に資源・エネルギー供給産業に対する感応度の経年的変動を分析し,各地域の投入構造面での省資源・省エネルギー動向を検討した。第二は,省資源・省エネルギー化の要因分析であり,各地域における資源・エネルギー消費の変動要因を投入構造要因と最終需要構造要因に分解し,生産技術と需要構造の二つの側面から省資源・省エネルギー動向を分析した。環境負荷の小さい資源循環型の地域経済構造を形成していく際には,地域における資源・エネルギーの需給関係や省資源・省エネルギーの進展状況を定量的に把握する必要がある。そして,このような目的のためには,国全体あるいは地域全体で財貨及びサービスの流れを総合的に把握できる産業連関表の利用が有効である。特に,わが国で整備が進んでいる地域間産業連関表を使用すれば,産業間・地域間の資源・エネルギー需給構造や省資源・省エネルギーの進展を統一した分析フレームの下で,時系列的に把握することが可能となる。 | KAKENHI-PROJECT-13680645 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13680645 |
地域の産業連関を考慮した省資源・省エネルギー型地域経済システムの形成に関する研究 | 本研究では,経済産業省が全国9地域を対象として公表している地域間産業連関表のうち,1975年1995年の20年間・5時点のデータを用いて,地域経済構造の変動と資源・エネルギー消費との関連を分析した。この際,資源・エネルギーの需給構造を定式化するために,わが国における石油・石炭製品,鉱業製品,'電力,ガス等のエネルギー・フローに基づいて,鉱業製品及び石油・石炭製品の2部門を資源・エネルギー供給部門と仮定し,各産業部門や各最終需要項目が資源・エネルギー供給部門の生産誘発に及ぼす影響から,地域の省資源・省エネルギー動向を検討した。既往研究で適用されてきた影響力係数,感応度係数,資源・エネルギー誘発係数,DPG(Deviation from Proportional Growth)分析等を用いた検討結果から,わが国の各地域では,分析期間を通じて省資源・省エネルギー化が進んでおり,特に投入構造に起因する技術構造の変化,及び移出構造の変化による影響が大きいことが明らかになった。また,本研究の成果を地球温暖化分析に応用するため,国立環境研究所が作成している二酸化炭素排出原単位を利用して,全国9地域間で,資源・エネルギー消費構造と二酸化炭素排出量を推計できるプロトタイプの地域間産業連関モデルを開発した。 | KAKENHI-PROJECT-13680645 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13680645 |
冠血管床と心内膜において産生される血管抵抗調節物質の特質とその遊離機序ー正常生理と病態生理の差異についてー | 冠循環抵抗血管床から遊離される血管平滑筋弛緩物質の薬理学的特徴とその遊離機構を検討した。[I]冠血管床から遊離される血管抵抗調節物質の生物活性の定量日本白色家兎の心臓を摘出し、ランゲンドルフ潅流心標本を作製した。37°Cの酸素化したKreds液を潅流し、肺動脈から流出させた。流出潅流液に含まれる血管平滑筋作用物質の活性値は摘出血管平滑筋の弛緩度を計測し定量化した。生物活性検定用大腿血管標本作製法と弛緩物質の失活を防ぐ為のSOD(Super Oxide Dismutase)の量は前年度の研究で確立した。大腿血管中膜標本を37°Cの温浴槽に懸垂し、フェニレフリンで予め等尺性に張力を発生させた。SODを添加した潅流液を肺動脈から流出させ、血管中膜標本を表面潅流すると有意の弛緩が生じた。本現象は冠血管床で弛緩物質が常時産出遊離されていることを示すもので、基礎遊離量を反映すると考えられた。SOD存在下にアセチルコリンやブラディキニン潅流液を投入した所、いずれの場合も用量依存性に血管中膜標本を弛緩した。すなわち、弛緩物質は刺激によってさらにその遊離量が増大することが明かになった。メチレンブルーやLNMAを前投与した場合は基礎遊離も刺激による遊離も観察されなかった。したがって、冠循環血管床で産出遊離される血管弛緩物質はNO(一酸化窒素)と考えられる。[II]高脂血症家兎血管床におけるNOの遊離:10カ月齢のWHHL家兎の心臓を摘出し、ランゲンドルフ潅流装置に装着した。生物活性検出用の中膜平滑筋標本は日本白色家兎大腿動脈から作製し、37°C温浴槽に懸垂した。SODによって検出される基礎遊離、アセチルコリンやブラディキニンによって観察される刺激による遊離は、いずれも有意に存在した。しかし、その程度は[I]で示した日本白色家兎(正常コレステロール)より低値であった。冠循環抵抗血管床から遊離される血管平滑筋弛緩物質の薬理学的特徴とその遊離機構を検討した。[I]冠血管床から遊離される血管抵抗調節物質の生物活性の定量日本白色家兎の心臓を摘出し、ランゲンドルフ潅流心標本を作製した。37°Cの酸素化したKreds液を潅流し、肺動脈から流出させた。流出潅流液に含まれる血管平滑筋作用物質の活性値は摘出血管平滑筋の弛緩度を計測し定量化した。生物活性検定用大腿血管標本作製法と弛緩物質の失活を防ぐ為のSOD(Super Oxide Dismutase)の量は前年度の研究で確立した。大腿血管中膜標本を37°Cの温浴槽に懸垂し、フェニレフリンで予め等尺性に張力を発生させた。SODを添加した潅流液を肺動脈から流出させ、血管中膜標本を表面潅流すると有意の弛緩が生じた。本現象は冠血管床で弛緩物質が常時産出遊離されていることを示すもので、基礎遊離量を反映すると考えられた。SOD存在下にアセチルコリンやブラディキニン潅流液を投入した所、いずれの場合も用量依存性に血管中膜標本を弛緩した。すなわち、弛緩物質は刺激によってさらにその遊離量が増大することが明かになった。メチレンブルーやLNMAを前投与した場合は基礎遊離も刺激による遊離も観察されなかった。したがって、冠循環血管床で産出遊離される血管弛緩物質はNO(一酸化窒素)と考えられる。[II]高脂血症家兎血管床におけるNOの遊離:10カ月齢のWHHL家兎の心臓を摘出し、ランゲンドルフ潅流装置に装着した。生物活性検出用の中膜平滑筋標本は日本白色家兎大腿動脈から作製し、37°C温浴槽に懸垂した。SODによって検出される基礎遊離、アセチルコリンやブラディキニンによって観察される刺激による遊離は、いずれも有意に存在した。しかし、その程度は[I]で示した日本白色家兎(正常コレステロール)より低値であった。 | KAKENHI-PROJECT-04263205 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04263205 |
藻類の摂取による消化管機能への影響 | 摂取された食物繊維は糞の性状や栄養素の拡散状況等に影響を与え、結果として成人病予防に有効となる。とりわけ水溶性食物繊維にはその効果が大きいと言われる。筆者らはラットの小腸細胞表層にコンカナバリンA結合性糖タンパク質が存在し糞中に排泄されることを見いだし、それが摂取した飼料組成に影響を受けることを報告している。藻類は食物繊維に富む食品であり、水溶性食物繊維の含量も多い。そこで今回は藻類を試料としてその摂取と小腸表層の機能との関連をラットを用いて検討した。藻類試料としてはわかめ・ひじき(褐藻類)、のり(紅藻類)、青のり(緑藻類)を用い、食物繊維として3%添加した飼料を調製し、飼育期間は7日間とした。小腸機能は糞中コンカナバリンA(Con A)結合性糖タンパク質の実験期間後半の糞中への排泄量(アフィニティークロマトグラフィーによる分離後定量)および小腸表層に局在する小腸スクラーゼ活性を実験終了時に測定し、指標として用いた。試料として用いた藻類の総食物繊維量を酵素-重量法により測定した結果、試料乾燥重量に対して40%から65%の含量で、水溶性食物繊維/不溶性食物繊維比はおおむね1:1であり、野菜など他の食物と比較して不溶性食物繊維の良い給源といえた。飼育期間中ラット各飼料群間の体重増加量に有意な差は見られなかった。しかし糞量はいずれの群においても食物繊維無添加群に比較して顕著に増加し、糞中のCon A結合性糖タンパク質量も糞量の増加とともに増加した。また、Con A結合性糖タンパク質画分のSDS-PAGEによる泳動パターンには食物繊維添加による差は見られなかった。小腸スクラーゼ活性についても食物繊維の有無による差は見られず、小腸での栄養吸収機能に影響は見られなかった。従って、藻類食物繊維は小腸の機能を損なうことはないが、Con A結合性糖タンパク質の排泄を増加させることから、小腸表層細胞の代謝亢進を促す作用を有することが示唆された。摂取された食物繊維は糞の性状や栄養素の拡散状況等に影響を与え、結果として成人病予防に有効となる。とりわけ水溶性食物繊維にはその効果が大きいと言われる。筆者らはラットの小腸細胞表層にコンカナバリンA結合性糖タンパク質が存在し糞中に排泄されることを見いだし、それが摂取した飼料組成に影響を受けることを報告している。藻類は食物繊維に富む食品であり、水溶性食物繊維の含量も多い。そこで今回は藻類を試料としてその摂取と小腸表層の機能との関連をラットを用いて検討した。藻類試料としてはわかめ・ひじき(褐藻類)、のり(紅藻類)、青のり(緑藻類)を用い、食物繊維として3%添加した飼料を調製し、飼育期間は7日間とした。小腸機能は糞中コンカナバリンA(Con A)結合性糖タンパク質の実験期間後半の糞中への排泄量(アフィニティークロマトグラフィーによる分離後定量)および小腸表層に局在する小腸スクラーゼ活性を実験終了時に測定し、指標として用いた。試料として用いた藻類の総食物繊維量を酵素-重量法により測定した結果、試料乾燥重量に対して40%から65%の含量で、水溶性食物繊維/不溶性食物繊維比はおおむね1:1であり、野菜など他の食物と比較して不溶性食物繊維の良い給源といえた。飼育期間中ラット各飼料群間の体重増加量に有意な差は見られなかった。しかし糞量はいずれの群においても食物繊維無添加群に比較して顕著に増加し、糞中のCon A結合性糖タンパク質量も糞量の増加とともに増加した。また、Con A結合性糖タンパク質画分のSDS-PAGEによる泳動パターンには食物繊維添加による差は見られなかった。小腸スクラーゼ活性についても食物繊維の有無による差は見られず、小腸での栄養吸収機能に影響は見られなかった。従って、藻類食物繊維は小腸の機能を損なうことはないが、Con A結合性糖タンパク質の排泄を増加させることから、小腸表層細胞の代謝亢進を促す作用を有することが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-07680018 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07680018 |
アジア・オセアニアにおけるトウガラシ属植物の遺伝資源・文化資源の体系化 | アジア・オセアニアにおけるトウガラシ属植物の利用および酒文化(麹のつくり方、醸造・蒸留方法、それらに伴う儀礼)についての文献調査を行うとともに、インドネシアおよびミクロネシアにおいてトウガラシ属植物の遺伝資源・文化資源に関する現地調査を行った。また、種分類が未定のネパール産トウガラシ、ダレクルサニ系統群についてSSR、AFLP、GBSSの配列解析を用いて種分類を試みた結果、トウガラシとハバネロ類の種間雑種由来で、他栽培種と遺伝的に距離があることが明らかになった。そして、SSRおよびAFLPを用いて、国内の在来トウガラシ品種等の多型解析を行った結果、大きく7つのグループに分けられ、大まかに地域や果実形質によって分類できたが、異なる果実型でも近縁と思われる集団の存在が明らかとなった。さらに、トウガラシ属植物の遺伝資源の大規模分子系統解析に向けた準備を行った。具体的には、アジア・オセアニアのキダチトウガラシ404系統およびハバネロ類246系統を栽培し、合計650系統のDNAを抽出した。カプサイシン類の定量分析については、アジアのトウガラシ属植物を栽培し、HPLC分析により各系統の辛味成分組成を明らかにした。ネパール系統の中から、高いカプサイシノイド含量を示すキダチトウガラシの系統を見出した。葉緑体配列に基づくプライマーセットにより、トウガラシ属植物の細胞質の種分類を検討した。今年度に得られたデータについては、国内外における学会発表や国際誌の論文として来年度以降に公表する予定である。当初の予定通り現地調査が進んでいる。また国内外における学会発表がなされており、おおむね順調に進展しているといえる。引き続きアジア・オセアニアにおいてトウガラシ属植物の民族植物学的な調査を行う。調査項目は、トウガラシ属植物の呼称、食文化(香辛料、果実以外の利用の有無、系統による味・辛味・嗜好性の違いなど)、酒文化、薬用、儀礼、禁忌、麹のつくり方などとする。また、国内の在来トウガラシ品種等については他の遺伝子領域の配列解析による種内類縁関係を明らかにしていくとともに、種分類が未定のネパール産トウガラシ、ダレクルサニ系統群についても同様の方法で種間の関係を明らかにしていく。そして、平成30年度と同様にキダチトウガラシおよびハバネロ類の追加系統の栽培を行い、DNAを収集する。さらに、平成30年度にDNAを抽出したハバネロ類についてRad-seq解析を行い、解析の課題等を抽出するとともに、令和2年度に本研究課題の中心であるキダチトウガラシの解析を行えるように準備を行う。カプサイシン類の定量分析については、オセアニア地域産のキダチトウガラシを栽培し、HPLC分析により各系統の辛味成分組成を明らかにし、アジア地域産のトウガラシと比較を行う。また、高いカプサイシノイド含量を示したキダチトウガラシの系統について、カプサイシン合成経路遺伝子に関する解析を行う。研究成果を国内外の学会において随時発表するとともに、論文を執筆する。アジア・オセアニアにおけるトウガラシ属植物の利用および酒文化(麹のつくり方、醸造・蒸留方法、それらに伴う儀礼)についての文献調査を行うとともに、インドネシアおよびミクロネシアにおいてトウガラシ属植物の遺伝資源・文化資源に関する現地調査を行った。また、種分類が未定のネパール産トウガラシ、ダレクルサニ系統群についてSSR、AFLP、GBSSの配列解析を用いて種分類を試みた結果、トウガラシとハバネロ類の種間雑種由来で、他栽培種と遺伝的に距離があることが明らかになった。そして、SSRおよびAFLPを用いて、国内の在来トウガラシ品種等の多型解析を行った結果、大きく7つのグループに分けられ、大まかに地域や果実形質によって分類できたが、異なる果実型でも近縁と思われる集団の存在が明らかとなった。さらに、トウガラシ属植物の遺伝資源の大規模分子系統解析に向けた準備を行った。具体的には、アジア・オセアニアのキダチトウガラシ404系統およびハバネロ類246系統を栽培し、合計650系統のDNAを抽出した。カプサイシン類の定量分析については、アジアのトウガラシ属植物を栽培し、HPLC分析により各系統の辛味成分組成を明らかにした。ネパール系統の中から、高いカプサイシノイド含量を示すキダチトウガラシの系統を見出した。葉緑体配列に基づくプライマーセットにより、トウガラシ属植物の細胞質の種分類を検討した。今年度に得られたデータについては、国内外における学会発表や国際誌の論文として来年度以降に公表する予定である。当初の予定通り現地調査が進んでいる。また国内外における学会発表がなされており、おおむね順調に進展しているといえる。引き続きアジア・オセアニアにおいてトウガラシ属植物の民族植物学的な調査を行う。調査項目は、トウガラシ属植物の呼称、食文化(香辛料、果実以外の利用の有無、系統による味・辛味・嗜好性の違いなど)、酒文化、薬用、儀礼、禁忌、麹のつくり方などとする。また、国内の在来トウガラシ品種等については他の遺伝子領域の配列解析による種内類縁関係を明らかにしていくとともに、種分類が未定のネパール産トウガラシ、ダレクルサニ系統群についても同様の方法で種間の関係を明らかにしていく。そして、平成30年度と同様にキダチトウガラシおよびハバネロ類の追加系統の栽培を行い、DNAを収集する。さらに、平成30年度にDNAを抽出したハバネロ類についてRad-seq解析を行い、解析の課題等を抽出するとともに、令和2年度に本研究課題の中心であるキダチトウガラシの解析を行えるように準備を行う。 | KAKENHI-PROJECT-18H03446 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H03446 |
アジア・オセアニアにおけるトウガラシ属植物の遺伝資源・文化資源の体系化 | カプサイシン類の定量分析については、オセアニア地域産のキダチトウガラシを栽培し、HPLC分析により各系統の辛味成分組成を明らかにし、アジア地域産のトウガラシと比較を行う。また、高いカプサイシノイド含量を示したキダチトウガラシの系統について、カプサイシン合成経路遺伝子に関する解析を行う。研究成果を国内外の学会において随時発表するとともに、論文を執筆する。 | KAKENHI-PROJECT-18H03446 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H03446 |
浸透破壊に対する土構造物の短期および長期的侵食を考慮した統一的評価手法の確立 | 本研究では,これまであまり検討されてこなかった土構造物のライフサイクル全体で使用できる内部侵食現象に関する性能劣化の評価する侵食開始後の土の内部侵食特性について着目した.土の侵食の進展の速さを把握するため,洪水時に噴砂が確認された付近で採取された22つの堤防土試料に対して,基本的な土の物理特性試験の実施とHoleerosion testや上向き侵食試験により土の侵食特性を評価した.また,得られた土の侵食特性と過去の諸外国で実施された実験結果を分析し,土の侵食特性とその土の基本的な物性値との相関を確認した.検討した土の物性は,液性限界,塑性限界,塑性指数,細粒分含有率,粘土含有量,最大乾燥密度,最適含水比である.これにより,適用範囲が不明確なHoleerosion testが対象とする土の液性限界の値を確認した.また,土の固有の物性値である最適含水比と粘土含有率から侵食速度指標(Erosion rate index)の概算式を提案した.また,日本の河川堤防の土を対象に侵食特性を調べた事例研究は少ないため,ある河川の堤防から採取された土についての侵食速特性についてもとりまとめをおこなった.本研究で対象とした日本の河川から採取した試料の侵食速度は,緩慢なものであると推定され,対象とした河川堤防の試料は,土内部の侵食に対して耐性が大きいと評価できる.また,得られた土の侵食特性とその土の基本的な物性値には,ある程度の相関があることを確認した.浸透流による土内部の侵食現象は内部侵食と呼ばれ,土構造物の健全性を阻害し壊滅的な被害を引き起こす一因である.本研究では,日本のみならず諸外国における社会資本の整備および維持管理技術の向上に寄与すべく,土構造物の性能劣化の一因である浸透流による土内部の侵食現象を考慮した盛土の性能評価法を構築することを長期的な目標としている.これを達成すべく,本申請研究の目的は,定量的な内部侵食現象の予測に寄与することである.この実現のため,1)代表的な土の侵食速度を4種類の異なる実験法で測定する.そして,2)これらの実験結果を比較,分析することで各評価法の互換性を見出す.これにより,3)土構造物のライフサイクル全体で統一的に使用できる評価法の確立を目指す.初年度である平成28年度は,欧州諸国で広く使用されている短期間の侵食特性の評価を可能とする侵食実験装置とイタリアで考案された長期的な侵食特性の評価を可能とする上向き浸透流実験装置の2つを導入した.また,鬼怒川堤防および基礎地盤で採取された砂質土試料を中心とした8か所9つの土質試料に対して,粒度試験,締固め試験,透水試験などの土の基本的性質を調べた.各試料の粒度試験から得られた土の粒度分布によって,侵食が開始する初期動水勾配がよく知られたTerzahiの限界動水勾配より小さい値で開始するかどうか(土の内部安定評価)を評価した.そして,上記の導入した実験装置を使用した実験によって,侵食開始後の侵食速度を評価した.この結果はこれにより,対象とした土試料の侵食の発生および進展に関する特性を把握した.申請期間の間,同一土試料に対して,4種類の試験法でそれぞれの試験法毎に土の侵食特性を評価する予定である.このうち,平成28年度は2種類の試験法で9つの土試料の侵食特性を評価した.一方で予定していた残り2つの試験法による侵食試験は実施できなかった.これは,予定より多くの鬼怒川堤防およびその基礎地盤の土質試料の基本的な土質物性を調べていたためである.これらの土質物性の多くは次年度に予定していた実験を前倒しに実施し得られた結果であり,これは次年度の研究において必要な基礎データである.以上より,現在の研究の全体的な達成度は,おおむね順調に進展していると判断している.浸透流に起因する土内部で生じる侵食現象は,堤防などの水利構造物の壊滅的な被害を引き起こす原因のひとつである.本研究では,土構造物の性能劣化の一因である浸透流による土内部の侵食現象を考慮した盛土の性能評価法を構築することを長期的な目標である.これを達成するため,本申請研究の目的は,定量的な内部侵食現象の予測に寄与することである.初年度の平成28年度は,欧米諸国で広く使用されている短期間の侵食特性の評価を可能とする侵食実験装置とイタリアで考案された長期的な侵食特性の評価を可能とする上向き浸透実験装置の開発をした.そして,鬼怒川堤防およびその基礎地盤で採取された砂質試料を中心とした土試料に対して,粒度試験,締固め試験,透水試験などの土の基本的性質を調べた.平成29年度は,昨年度に引き続いて鬼怒川堤防および基礎地盤で採取された土試料の基本的物性を調べる試験を実施した.これらの土の基物性から対象とする土試料の侵食が開始する初期動水勾配が,よく知られたTerzaghiの限界動水勾配より小さい値で開始するかどうかである内部安定評価をいくつかの内部安定指標を用いて分析した.さらに,前年度作製した2種類の侵食試験装置を用いた実験によって,各土試料の侵食特性の把握,そして,上記で使用した代表的な内部安定指標の有用性と使用範囲を確認した.そして,各種の侵食試験によて,侵食開始後の侵食速度を評価した. | KAKENHI-PROJECT-16K18145 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K18145 |
浸透破壊に対する土構造物の短期および長期的侵食を考慮した統一的評価手法の確立 | これらから鬼怒川堤防で採取されたいくつかの試料の発生およびその後の進展に関する侵食特性を把握した.計画当初においては,主に人工的に粒度や塑性指数等を調整した土試料を使用する予定であったが,補助期間中,鬼怒川堤防とその基礎地盤の周辺で採取された試料の提供を受けた.補助事業の目的を精緻に達成するため,当初計画していなかった土試料の基礎的な物性試験を含め追加的な試験と,各試料を対象とした各種侵食試験を実施する必要があった.本研究では,これまであまり検討されてこなかった土構造物のライフサイクル全体で使用できる内部侵食現象に関する性能劣化の評価する侵食開始後の土の内部侵食特性について着目した.土の侵食の進展の速さを把握するため,洪水時に噴砂が確認された付近で採取された22つの堤防土試料に対して,基本的な土の物理特性試験の実施とHoleerosion testや上向き侵食試験により土の侵食特性を評価した.また,得られた土の侵食特性と過去の諸外国で実施された実験結果を分析し,土の侵食特性とその土の基本的な物性値との相関を確認した.検討した土の物性は,液性限界,塑性限界,塑性指数,細粒分含有率,粘土含有量,最大乾燥密度,最適含水比である.これにより,適用範囲が不明確なHoleerosion testが対象とする土の液性限界の値を確認した.また,土の固有の物性値である最適含水比と粘土含有率から侵食速度指標(Erosion rate index)の概算式を提案した.また,日本の河川堤防の土を対象に侵食特性を調べた事例研究は少ないため,ある河川の堤防から採取された土についての侵食速特性についてもとりまとめをおこなった.本研究で対象とした日本の河川から採取した試料の侵食速度は,緩慢なものであると推定され,対象とした河川堤防の試料は,土内部の侵食に対して耐性が大きいと評価できる.また,得られた土の侵食特性とその土の基本的な物性値には,ある程度の相関があることを確認した.平成29年度は,前年度に実施できなかった2種類の試験法による土の侵食試験と日本に存在する地盤材の侵食特性のデータを集積するため,前年度実施した2種類の試験法によって,前年度とは異なる土試料を対象に侵食試験を実施する.その後,すべての実験結果を整理し,短期および長期の二つの侵食特性を考慮にいれた侵食評価法を提案する.昨年度と同様に河川周辺から採取された試料を用いて侵食試験を実施する.実験補助業務を担当する研究協力者を昨年度の1名から2名に増員し,上記の実験を実施する.平成28年度には,3種類の実験装置の導入を予定していたが,そのうち2種類の実験装置の設計が予定以上に時間を費やしたこと,予定しいたより多くの土を対象に土の基本的な土質物性を測定したため,該当年度中で残り1種類の実験装置は製作には至らなかったため.平成29年は,研究協力者が当初の予定の2名でなく,1名のみしか得ることができなかった.そのため,当初想定していた実験数を実施することができず,研究計画に遅れが発生した.このため,成果をまとめる段階まで到達できず,その成果発表のための旅費および論文投稿料は当初の予定を下回った.平成30年は6月から,研究協力者の人員を増加し,その人件費として使用する.また,取りまとめた成果の成果物の発表のために,次年度使用額を充てる予定である.平成29年度は,前年度,実施できなかった2種類の試験法による土の侵食試験と日本に存在する地盤材の侵食特性のデータを集積するため,前年度実施した2種類の試験法によって,前年度と土試料を変えた侵食試験を実施する.その後,すべての実験結果を整理し,短期および長期の二つの侵食特性を考慮にいれた侵食評価法を提案する. | KAKENHI-PROJECT-16K18145 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K18145 |
微小血管病態に基づく抗MAG抗体関連ニューロパチーの新規治療法の探索 | 本研究の目的は,真に有効な治療法が確立されてない抗MAG抗体関連ニューロパチーについて,末梢神経の微小血管系の病態に着目し,研究代表者の研究室で近年確立されたヒトin vitro BNBモデルを用いて,本疾患で生じる血液神経関門(blood-nerve barrier: BNB)の破綻メカニズムを細胞レベル・分子レベルで解析することにより,本疾患の病態解明に寄与することである.初年度の検討として,IgM型抗MAG抗体関連ニューロパチー血清が,血液神経関門(BNB)の首座である末梢神経神経内膜内微小血管内皮細胞(以下,BNB構成内皮細胞)のバリア機能に与える影響の検討を行った.具体的には,BNB構成内皮細胞株をcell culture insertに単層培養してin vitro BNB modelを作成し,患者血清をinsertの上室(流血側)に作用させた後に,バリア機能の指標である電気抵抗値を,健常者血清を対照として測定した.さらに,患者血清で処理した血管内皮細胞のtight junction分子の蛋白量への影響についても,健常者を対照としてwestern blot法で評価した.患者血清は,健常者血清に比較し,単層培養したBNB構成内皮細胞の電気抵抗値を有意に低下させることが明らかとなった.また患者血清の作用により,バリア維持のために重要な複数のtight junction分子の蛋白量の低下がみられた.これらのことから抗MAG抗体関連ニューロパチー患者血清中のなんらかの因子がBNBのバリア機能を低下させることが明らかとなった.抗MAG抗体関連ニューロパチー血清が,BNBの首座である血管内皮細胞のバリア機能に直接的影響を与え,さらに,バリア構成分子であるtight junction分子の発現量への影響を明らかにした点は,初年度の検討で得られた新たな成果であり,本疾患の病理所見で認められるBNB破綻を,in vitro BNBモデルを用いることで再現できる可能性を示すことができた.培養細胞を用いた研究の利点を生かし,バリア破綻の分子レベルでの解析を引き続き行っていく.BNB構成細胞には,内皮細胞の他に周皮細胞がありBNBのバリア機能を維持するのに重要な役割を持つとされる.本研究では,BNB構成内皮細胞だけでなく,周皮細胞にも着目しており,当研究室で樹立した周皮細胞株を用いて,患者血清による周皮細胞の細胞傷害への影響について,現在検討を行っている.IgM型抗MAG抗体関連ニューロパチー患者血清から精製したIgMが,血液神経関門(BNB)の首座である末梢神経神経内膜内微小血管内皮細胞(以下,BNB構成内皮細胞)のバリア機能を低下させることを明らかにした.具体的には,cell culture insertに単層培養したBNB構成内皮細胞株(in vitro BNBモデル)を用いて,insertの上室(流血側)に患者由来IgMを作用させた後のバリア機能(電気抵抗値)を,健常者を対照として測定した.患者由来IgMは,健常者に比較し,単層培養したBNB構成内皮細胞の電気抵抗値を有意に低下させた.本疾患を特徴づける血清中のIgM単クローン抗体が,BNB構成内皮細胞のバリア機能に直接的影響を与えることを明らかにした点は,本年度に得られた新たな成果である.本年度は,類縁の免疫性ニューロパチーである慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(以下,CIDP)でみられるBNB破綻の病態についても,in vitro BNBモデルを用いて上記と同様の解析を行い,CIDP患者血清がBNBを破綻させる作用を持つこと,バリア破綻の機序として,BNB構成内皮細胞が産生するmatrix metalloproteinase(MMPs)が関与する可能性を明らかにした.CIDPでみられるBNB破綻の病態についても,in vitro BNBモデルを用いて再現できることを示すことができた.抗MAG抗体が,BNB構成内皮細胞のバリア機能に直接的影響を与えることを示す知見が得られたが,抗体が認識するBNB構成内皮細胞中の抗原が何かという問題や,抗体が作用した後にバリア機能が低下する詳細な機序については、まだ明らかにできていないため,培養細胞を用いてバリア破綻の分子メカニズムの解析を引き続き行う必要がある.昨年度までに、血液神経関門(blood-nerve barrier: BNB)を構成する内皮細胞を用いたインヴィトロモデルを作成し、IgM型抗MAG抗体関連ニューロパチー患者血清から精製したIgM抗体をこのBNBモデルに作用させる検討を行い、本疾患のIgM抗体がBNBを直接破綻させることを明らかにした。初年度の検討で,in vitro BNBのバリア機能を低下させることが明らかとなった抗MAG抗体関連ニューロパチー血清中の液性因子の候補としては,炎症性サイトカインや免疫グロブリンなど様々な分子が考えられる.疾患を特徴づける血清中のIgM単クローン抗体(抗MAG抗体)は,候補分子の一つとして考えられるため検証を行う.方法としては,ヒトIgMの分離カラムを用いて,患者および正常血清から単クローンIgMを回収し,健常者血清由来のIgMを対照として,同濃度の患者由来の単クローンIgMを培養液に添加した条件で,BNB構成内皮細胞を一定時間培養し,バリア機能におよぼす影響やtight junction分子の定量解析を行う予定である.さらに,本疾患において流血中のIgMがBNBを越えて神経実質内に浸潤するメカニズムに関して,BNB構成内皮細胞にIgMの輸送担体が存在する可能性に着目し検討していく予定である. | KAKENHI-PROJECT-15K15340 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K15340 |
微小血管病態に基づく抗MAG抗体関連ニューロパチーの新規治療法の探索 | 患者由来のIgM型抗MAG抗体がBNB構成細胞を直接傷害する仮説(患者由来の抗MAG抗体が,血管内皮細胞や周皮細胞の持つ特定の分子を認識し,バリア機能に影響をおよぼす可能性)について引き続き細胞学的検討を行う.免疫沈降法と質量分析法を用いて,抗MAG抗体が,内皮細胞や周皮細胞中のどのような分子を認識し結合するのか特定したい.その後のBNB破綻の分子メカニズム(MMPsやVEGFの関与の可能性,tight junction分子の発現量や分布の変化等)について,遺伝子・蛋白質レベルでの詳細な解析を行う予定である.神経内科学 | KAKENHI-PROJECT-15K15340 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K15340 |
せん断応力を受けた培養内皮細胞が示すF-アクチンフィラメントの動的反応過程の解析 | ウシ大動脈由来の血管内皮細胞をカバーガラス上に培養し、顕微鏡下でコンフル-エントになったことを確認した後、まず、細胞に色素を取り込ませる穴をあけるため、サポニン処理(0.5mg/mlの濃度でハンクス平衡塩類溶液に溶解した)を20分間施した。その後、150nMの濃度のロ-ダミンファロイジンに20分間浸し、細胞が生きたままの状態でアクチンフィラメントを染色した。この細胞を平行平板型フローチャンバにセットし、蛍光顕微鏡で観察を行いながら、2Paの定常的なせん断応力を負荷した。平行平板型フローチャンバには、10%牛胎児血清と蛍光色素の褪色防止剤であるn-プロピルガレート(0.01g/ml)を混ぜたダルベッコ改変イ-グルメディウムを灌流させた。観察と同時に高感度ビデオカメラで撮影を行い、ビデオテープに映像を記録した。1時間にわたって実験を行った結果、一部のアクチンフィラメントが徐々に成長する様子が観察されたが、流れの方向への配向などは観察されなかった。サボニン処理により、細胞を固定化せずにアクチンフィラメントを染色し、せん断応力を受けた血管内皮細胞のアクチンフィラメントの動的な反応過程の解析が可能であることは確認できた。しかし、蛍光色素であるロ-ダミンファロイジンが蛍光顕微鏡で観察中に褪色してしまい、長時間にわたった観察が不可能であるため、今後、高感度ビデオカメラをとおした映像の記録方法などを改善し、アクチンフィラメントの動的な反応過程を詳細に観察する予定である。ウシ大動脈由来の血管内皮細胞をカバーガラス上に培養し、顕微鏡下でコンフル-エントになったことを確認した後、まず、細胞に色素を取り込ませる穴をあけるため、サポニン処理(0.5mg/mlの濃度でハンクス平衡塩類溶液に溶解した)を20分間施した。その後、150nMの濃度のロ-ダミンファロイジンに20分間浸し、細胞が生きたままの状態でアクチンフィラメントを染色した。この細胞を平行平板型フローチャンバにセットし、蛍光顕微鏡で観察を行いながら、2Paの定常的なせん断応力を負荷した。平行平板型フローチャンバには、10%牛胎児血清と蛍光色素の褪色防止剤であるn-プロピルガレート(0.01g/ml)を混ぜたダルベッコ改変イ-グルメディウムを灌流させた。観察と同時に高感度ビデオカメラで撮影を行い、ビデオテープに映像を記録した。1時間にわたって実験を行った結果、一部のアクチンフィラメントが徐々に成長する様子が観察されたが、流れの方向への配向などは観察されなかった。サボニン処理により、細胞を固定化せずにアクチンフィラメントを染色し、せん断応力を受けた血管内皮細胞のアクチンフィラメントの動的な反応過程の解析が可能であることは確認できた。しかし、蛍光色素であるロ-ダミンファロイジンが蛍光顕微鏡で観察中に褪色してしまい、長時間にわたった観察が不可能であるため、今後、高感度ビデオカメラをとおした映像の記録方法などを改善し、アクチンフィラメントの動的な反応過程を詳細に観察する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-06770478 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06770478 |
気分障害外来患者の再発や自殺を予防する精神科外来看護ケアガイドラインの開発 | 気分障害外来患者の再発や自殺予防のためのケア実施上の困難について、熟練看護師の実践を明らかにすることを研究目的とした。当該ケア実施上の困難とは、平成29年度に実施した精神科外来看護師を対象とした質問紙調査で、半数以上の回答者が困難だと回答した項目とした。研究参加者は6名の5年以上の精神科外来看護の経験を有する熟練看護師であった。研究参加者に対し、半構造的インタビューを個別に実施した。インタビュー内容は、患者-看護師関係の構築、治療の方向性や経過の把握の方法、患者とかかわる時間の確保の方法、自殺や再発のリスクアセスメントと、ハイリスクと判断した時の対応についてとした。逐語録を作成し、外来看護師が困難だと感じている項目に対する実践について語られている部分を抽出し、質的手法を用いて分析を行った。参加者の属性は、平均精神科外来看護経験年数10.8年、範囲619年)であった。分析の結果、患者-看護師関係の構築では、患者のことを気にかけている姿勢を積極的に示すこと、相談できる機会があることを示すなどの行動が示された。治療の方向性の共有については、定期的なカンファレンスの開催、把握した情報の共有などの行動が示された。患者と関わる時間の確保については、業務時間内での相談時間の設定や相談対応ができるスタッフの配置の工夫などが示された。自殺や再発のリスクアセスメントの方法については、外来受診時のさまざまな場面での観察や、患者の状態を的確にとらえられるような具体的な質問方法などが示された。自殺や再発がハイリスクと感じた時の介入方法については、院内外での多職種との連携を活かした介入や刺激を軽減するための待ち時間中の介入などが支援された。本研究の目的は気分障害外来患者の再発や自殺を予防する精神科外来看護ケアガイドラインの開発である。今年度の研究目的は、ガイドラインに含むべき気分障害外来患者の再発や自殺を予防する精神科外来看護における臨床課題を明らかにすることである。精神科病院または精神科診療所にて気分障害外来患者に対し再発や自殺の予防を目的にケアを実施している看護師で、かつ精神科外来看護の経験を3年以上有する者を対象にインタビュー調査を実施した。質的記述的手法を用いて分析を行った。気分障害外来患者に対し再発や自殺の予防を目的にケアを実施している中での困難や課題として、精神科外来看護における看護師の役割が不明確であることや、外来患者の経過や治療の方針などが共有されていないことがケアの実施を困難にさせていることが示された。その他、業務量が多い、人手が足りないなど、患者に対しケアを実施できる体制が十分に整っていないことも課題であることが示された。以上のように、気分障害外来患者に対し再発や自殺の予防を目的としたケアの実施のために、検討すべき課題が示されたが、外来看護師のケアの実施には、各施設における診療体制や人員配置、看護師のケアのスキルなども影響すると考えられる。そのため、全国的の精神科外来および精神科診療所の外来看護師を対象とした、気分障害外来患者に対する再発や自殺の予防を目的としたケアの実施状況についての調査を準備している。インタビュー調査の対象者とした、精神科病院または精神科診療所にて気分障害外来患者に対し再発や自殺の予防を目的にケアを実施している看護師で、かつ精神科外来看護の経験を3年以上有する者をリクルートすることに時間がかかった。看護相談を実施している施設や縁故などを頼りに研究依頼をしたが、外来看護師としての経験はあってもケアについて語れないことを理由に辞退されることも多かった。平成28年度中に臨床課題を特定し、それをもとにした質問調査の実施を予定していたが、リクルートに時間を割いたため、現時点では質問紙を作成する段階である。平成28年度に調査した気分障害外来患者の再発や自殺を防ぐためのケア実施における困難や課題の現状を明らかにすることを目的に、全国の精神科医療機関の看護管理者と看護師を対象とした質問紙調査を実施した。日本精神科看護協会の会員施設名簿に記載されている精神科医療機関から無作為抽出をした400施設と、名簿に記載されている全精神科診療所47施設、合わせて447施設を対象に調査を依頼し、69施設から調査への協力を得た(回収率15.4%)。外来看護管理者が感じている精神科外来看護における課題について、自由記述を求め、内容分析を行った。分析の結果、外来看護管理者が精神科外来において感じている課題として看護ケアの質の向上に関することが最も多く、その他人材育成や、多職種連携に関すること等に課題を感じていた。また69施設に所属する293名の外来看護師を対象に、看護師の属性、外来での担当業務、気分障害外来患者に対し再発や自殺を防ぐためにケアを実施する上で感じている困難、気分障害外来患者に対する感情労働測定尺度(片山ら,2005)の程度や医師と看護師の協働に対する態度(小味ら,2011)、看護師の仕事意欲測定尺度(佐野ら,2005)等について質問紙調査を実施した。当該ケアを実施する上で感じている困難として、外来患者の病名の把握や経過の把握、リスクアセスメント等10項目について困難を感じているかを質問した。外来での担当業務は先行研究(長井,2008)を参考に、対話や看護記録、多職種連携など15種の業務とし、各業務の担当の有無を質問した。 | KAKENHI-PROJECT-16K20828 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K20828 |
気分障害外来患者の再発や自殺を予防する精神科外来看護ケアガイドラインの開発 | 202名から回答を得、181名を分析対象とした(有効回答率61.7%)。担当業務の有無による感情労働の違いを明らかにするためにt検定を行った結果、複数の業務において、感情労働の程度に違いがあることや、当該ケアにおいて感じている困難の有無によって、感情労働や医師との協働性に違いがあることが示された。平成29年度において、気分障害外来患者の再発や自殺を防ぐためのケアの実施における困難や課題の全国の臨床の状況について明らかにすることができた。今後、当該ケアにおけるガイドラインを作成する上で、取り上げる困難や課題については特定できる結果を得たと考えている。気分障害外来患者の再発や自殺予防のためのケア実施上の困難について、熟練看護師の実践を明らかにすることを研究目的とした。当該ケア実施上の困難とは、平成29年度に実施した精神科外来看護師を対象とした質問紙調査で、半数以上の回答者が困難だと回答した項目とした。研究参加者は6名の5年以上の精神科外来看護の経験を有する熟練看護師であった。研究参加者に対し、半構造的インタビューを個別に実施した。インタビュー内容は、患者-看護師関係の構築、治療の方向性や経過の把握の方法、患者とかかわる時間の確保の方法、自殺や再発のリスクアセスメントと、ハイリスクと判断した時の対応についてとした。逐語録を作成し、外来看護師が困難だと感じている項目に対する実践について語られている部分を抽出し、質的手法を用いて分析を行った。参加者の属性は、平均精神科外来看護経験年数10.8年、範囲619年)であった。分析の結果、患者-看護師関係の構築では、患者のことを気にかけている姿勢を積極的に示すこと、相談できる機会があることを示すなどの行動が示された。治療の方向性の共有については、定期的なカンファレンスの開催、把握した情報の共有などの行動が示された。患者と関わる時間の確保については、業務時間内での相談時間の設定や相談対応ができるスタッフの配置の工夫などが示された。自殺や再発のリスクアセスメントの方法については、外来受診時のさまざまな場面での観察や、患者の状態を的確にとらえられるような具体的な質問方法などが示された。自殺や再発がハイリスクと感じた時の介入方法については、院内外での多職種との連携を活かした介入や刺激を軽減するための待ち時間中の介入などが支援された。今年度のインタビュー調査の結果から、精神科外来看護ケアについてのインタビュー調査の対象者のリクルートに困難を要することや、外来において要ケア者の特定が困難であること、看護師の役割が不明確といった、ケア実施の根本ともなる問題が抽出されたことにより、ケアガイドラインの試案の検討までは時間的に困難だと考えている。そのため、気分障害外来患者への再発や自殺の予防を目的としたケアの実施を可能にするための臨床状況に即した指針を作成することを最終目的とする。文献検討においては自殺率の低い諸国の自殺予防のための介入に関する文献を参考にすることや、学会や研修会などに積極的に参加し、気分障害患者への再発や自殺を予防するための多職種によるアプローチ方法などについても情報収集を行う。その他精神科外来に携わる多職種へのインタビューも実施する。臨床課題にそったエビデンスの収集と整理に時間をかけることで、我が国の精神科外来の状況を踏まえた指針の作成に努める。 | KAKENHI-PROJECT-16K20828 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K20828 |
様々な形態を持つ貴金属ナノ粒子に近接する色素会合体の分光学的特性 | 本研究では、色素J会合体を貴金属ナノ粒子に近接させた時に起こる特異な分光学的特性と、表面プラズモン励起に大きな影響を与える貴金属ナノ粒子の形態との関係を明らかにした。これまで、表面プラズモンの影響下に置かれた単分子の挙動は、表面増強ラマン散乱あるいは近接場光学に関連して広く研究されてきたが、色素会合体に励起されるフレンケル励起子と表面プラズモンとの相互作用について研究された例は少なく本研究は有意義である。色素会合体と貴金属ナノ粒子を近接して配置したナノ構造体では、色素会合体の励起子吸収帯の強度が、近接する貴金属ナノ粒子に誘起される表面プラズモンにより強く影響を受ける。本研究において、この特異な分光特性と表面プラズモン励起に大きな影響を与えるナノ粒子の形態との関係を明らかにするため、本年度は次のような研究を行った。(1)表面プラズモン吸収帯が可視域にある銀ナノ粒子に着目し、様々な軸比をもった回転楕円体銀ナノ粒子(本年度は、ディスク状銀ナノ粒子(銀ナノディスク))の作製を試み、その生成反応条件を詳しく検討した。その結果、単分散性は必ずしも良くないものの、望みの軸比と表面プラズモン吸収ピーク位置を持つ銀ナノディスクを作製することができた。単分散性の向上については来年度も引き続き検討する予定である。(2)表面をハロゲン化した様々な軸比をもった銀ナノディスクにシアニン色素を吸着させることによりJ会合体被覆銀ナノディスクを作製し、その吸収・発光特性を検討した。その結果、特異な分光特性の発現強度と、銀ナノディスクの軸比に依存する表面プラズモン吸収ピーク位置との間には相関関係があることを見いだした。(3)会合体を形成する他の色素で覆われた銀ナノ粒子(球状銀ナノ粒子および銀ナノディスク)を作製し、その吸収・発光特性を評価した。シアニン色素以外の色素(ポルフィリン)が会合体として吸着した場合も、シアニン色素の時と同様、特異な分光特性が現れることが明らかになった。これまで、表面プラズモンの影響下に置かれた単分子の分光学的挙動は広く研究されてきたが、表面プラモンと色素会合体に励起されるフレンケル励起子との相互作用について研究された例は少なく本研究は有意義である。色素会合体と貴金属ナノ粒子を近接して配置したナノ構造体では、色素会合体の励起子吸収帯の強度が、近接する貴金属ナノ粒子に誘起される表面プラズモンにより強く影響を受ける。この特異な分光特性と表面プラズモン励起に大きな影響を与えるナノ粒子の形態との関係を明らかにするため、本研究課題では次のような研究を行った。(1)液相において球状および様々な軸比をもった回転楕円体銀ナノ粒子(銀ナノディスクおよび銀ナノロッド)の作製を試み、単分散性は必ずしも良くないものの、望みの軸比と表面プラズモン吸収ピーク位置を持つ銀ナノディスクおよび銀ナノロッドを得ることができた。(2)球状および様々な軸比をもった銀ナノディスクおよび銀ナノロッドにシアニン色素を吸着させることによりJ会合体被覆銀ナノ粒子を作製し、その吸収・発光特性を検討した。表面プラズモン励起が起こらないJ会合体被覆有機ナノ粒子の吸収・発光特性の評価も比較のため行った。特異な分光特性の発現強度と、銀ナノ粒子の軸比に依存する表面プラズモン吸収ピーク位置との間に相関関係があることを見いだした。(3)様々な軸比をもった金ナノロッドにシアニン色素を吸着させたJ会合体被覆金ナノロッド、あるいは、ポルフィリン色素のJ会合体で覆われた様々な軸比をもつ銀ナノ粒子(球状銀ナノ粒子、銀ナノディスク、銀ナノロッド)においても、シアニン色素J会合体被覆銀ナノ粒子と同様な特異な分光特性が現れ、その分光特性の発現強度と、貴金属ナノ粒子の軸比に依存する表面プラズモン吸収ピーク位置との間に相関関係があることを明らかにした。これまで、表面プラズモンの影響下に置かれた単分子の分光学的挙動は広く研究されてきたが、表面プラモンと色素会合体に励起されるフレンケル励起子との相互作用について研究された例は少なく本研究は有意義である。本研究では、色素J会合体を貴金属ナノ粒子に近接させた時に起こる特異な分光学的特性と、表面プラズモン励起に大きな影響を与える貴金属ナノ粒子の形態との関係を明らかにした。これまで、表面プラズモンの影響下に置かれた単分子の挙動は、表面増強ラマン散乱あるいは近接場光学に関連して広く研究されてきたが、色素会合体に励起されるフレンケル励起子と表面プラズモンとの相互作用について研究された例は少なく本研究は有意義である。色素会合体と貴金属ナノ粒子を近接して配置したナノ構造体では、色素会合体の励起子吸収帯の強度が、近接する貴金属ナノ粒子中に誘起される表面プラズモンにより強く影響を受ける。本研究において、この特異な分光特性と表面プラズモン励起に大きな影響を与えるナノ粒子の形態との関係を明らかにするため、本年度は次のような研究を行った。(1)まず、表面プラズモン吸収帯が可視域にある銀ナノ粒子(液相に分散)に着目し、球状および様々な軸比をもった回転楕円体ナノ粒子の作製を試みその生成反応条件を検討した。その結果、ナノ粒子の単分散性は必ずしも良くないものの、望みの軸比と表面プラズモン吸収ピーク位置を持つ回転楕円体銀ナノ粒子を作製することができた。単分散性の向上については来年度も引き続き検討する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-23655184 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23655184 |
様々な形態を持つ貴金属ナノ粒子に近接する色素会合体の分光学的特性 | (2)表面をハロゲン化した球状および様々な軸比をもった回転楕円体ナノ粒子(液相に分散)にシアニン色素を吸着させることによりJ会合体被覆銀ナノ粒子を作製し、その吸収・発光特性の予備的評価を行った。また、J会合体被覆リポソームの吸収・発光特性の評価も行った。表面プラズモンの励起が起こらない有機ナノ粒子であるリポソーム(液相に分散)上に形成されたJ会合体は、銀ナノ粒子上のJ会合体の吸収・発光特性を評価するうえでの参照試料として有用である。これまで、表面プラズモンの影響下に置かれた単分子の分光学的挙動は広く研究されてきたが、表面プラモンと色素会合体に励起されるフレンケル励起子との相互作用について研究された例は少なく本研究は有意義である。研究の前半で、様々な軸比をもった回転楕円体銀ナノ粒子の作製を試みたところ、その作製条件の設定に想定以上の期間を要した。その結果、種々色素会合体被覆銀ナノ粒子の作製とその分光特性評価は実施できたものの、金ナノ粒子を用いた同様な系に関しては予備的な検討段階にとどまっている。また、銀ナノ粒子を用いた系に関しても、均一性を向上させる新しい方法が最近明らかになり、再評価の必要がある。以上を総合的に判断すると、当初の研究計画より遅れている。研究の前半で、様々な軸比をもった回転楕円体銀ナノ粒子の作製を試みたところ、その作製条件の設定に想定以上の期間を要した。その結果、シアニン色素J会合体被覆銀ナノ粒子の作製とその分光特性評価は予備的な検討段階にある。また、回転楕円体銀ナノ粒子作製に関しては次年度も引き続き検討をする必要がある。以上を総合的に判断すると、当初の研究計画よりやや遅れている。平成2324年度に実施した、(1)様々な形態をもつ銀ナノ粒子の作製、(2)シアニン色素J会合体被覆銀ナノ粒子の作製とその吸収・発光特性の評価、(3)会合体を形成する他の色素で覆われた銀ナノ粒子の作製とその吸収・発光特性の評価を、今後も継続して行うとともに、平成25年度は、貴金属として金にも着目し、(4)様々な形態をもつ金ナノ粒子の作製、(5)シアニン色素J会合体被覆金ナノ粒子の作製とその吸収・発光特性の評価を試みる。以上の3年間の研究により、貴金属ナノ粒子に近接する色素会合体の特異な分光特性と、ナノ粒子の形態との関係を明らかにする。平成23年度に実施した、(1)様々な形態をもつ銀ナノ粒子の作製、(2)シアニン色素J会合体被覆銀ナノ粒子の作製とその吸収・発光特性の評価を、今後も継続して行うとともに、平成24年度は、貴金属として金にも着目し、(3)様々な形態をもつ金ナノ粒子の作製、(4)シアニン色素J会合体被覆金ナノ粒子の作製とその吸収・発光特性の評価を試み、更に、(5)会合体を形成する他の色素についても同様な系の作製と評価を試みる。以上の2年間の研究により、貴金属ナノ粒子に近接する色素会合体の特異な分光特性と、ナノ粒子の形態との関係を明らかにする。研究の前半で、様々な軸比をもった回転楕円体銀ナノ粒子の作製を試みたところ、その作製条件の設定に想定以上の期間を要した。その結果、本年度試みる予定であった回転楕円体金ナノ粒子の作製は予備的な検討段階にとどまっており、「次年度に使用する予定の研究費」が生じた。また、銀ナノ粒子に関しても均一性を向上させる新しい方法が最近明らかになり、再評価が必要である。 | KAKENHI-PROJECT-23655184 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23655184 |
過熱水蒸気雰囲気におけるプラスチック粉体燃焼の安定化機構の解明 | 過熱した水蒸気と酸素からなる高温の酸化剤を用いてプラスチック粉体火炎の安定燃焼範囲が拡大することを確認した.また,常温では自立火炎の形成が困難である大きな粉体や難燃性プラスチック粉体において燃焼範囲に著しい拡大がみられた.小さな粉体や高温の酸化剤温度を用いた実験では,プラスチック粉体を燃焼させた際に生じる揮炎からの発光が減少した.これは,高温酸化剤によりプラスチック粉体のガス化が促進され予混合火炎が形成されているためである.このため,燃焼ガス中の未燃物質の量が著しく減少していることが確認された.過熱した水蒸気と酸素からなる高温の酸化剤を用いてプラスチック粉体火炎の安定燃焼範囲が拡大することを確認した.また,常温では自立火炎の形成が困難である大きな粉体や難燃性プラスチック粉体において燃焼範囲に著しい拡大がみられた.小さな粉体や高温の酸化剤温度を用いた実験では,プラスチック粉体を燃焼させた際に生じる揮炎からの発光が減少した.これは,高温酸化剤によりプラスチック粉体のガス化が促進され予混合火炎が形成されているためである.このため,燃焼ガス中の未燃物質の量が著しく減少していることが確認された.対向流バーナーを用いて、粉砕したプラスチック粉体が高温に過熱された蒸気中で安定に火炎を形成することを確認した。バーナー出口直径は10mmで、バーナー間隔は火炎に与える伸長率により決定した。上部バーナーから常温の空気で搬送された粉体流を、下部バーナーから高温に過熱した酸化剤を供給した。使用したプラスチック種は、年間廃棄量を考慮し、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、PETの4種とし、5μm200μmに粉砕したものを用いた。粉体は、微量フィーダーを用いて流れに精度よく供給した。蒸気は、IHヒーターを用いて1000°Cまで加熱し、大気と同じ酸素組成となるように21%の酸素を混合した。しかし、バーナーへの熱損失や酸素の混合により、バーナー出口での蒸気温度は最大750°Cであった。よどみ面近傍の流れはPIVを用いて等方性、対称性を確認した。火炎はよどみ面近傍に形成され、輝炎の強い発光が観察されたが、径の小さな粉体では、不輝炎である平面状の予混合を観察することができた。ただし、難燃材料であるPETでは安定した火炎を形成することが困難であった。粉体の径が大きくなると火炎は不安定になる現象がみられた。酸化剤に蒸気を用いた場合、高温空気よりも消炎限界が狭くなる結果が得られたが、熱移動においてふく射熱移動が重要である粉体燃焼では、より高温の蒸気を用いることにより消炎限界の拡大を期待する。昨年度と同様に対向流バーナーを用いて,今年度は主に過熱蒸気温度,酸素濃度,粉体サイズを変化させた場合の消炎限界の測定を行った.用いた粉体はポリメチル酸メチル(PMMA)およびポリプロピレンである.昨年度,サイズの小さな粉体やポリエチレンのような安息角の大きな粉体で粉体供給に問題が生じることもあったが,エアーバイブレーターの適切な配置,バッファボックスの大型化および流れの最適化,バーナー上流速度の上昇でより長時間安定な流れを形成させることが可能となった.直径5μmのPMMA粉体では,常温から750°Cの過熱蒸気温度の変化に対し,消炎限界が著しく(10倍以上)上昇することが分かった.これは,気体燃料の場合と同様,主に気体温度の上昇によるものであるが,低温域では,画像の観察から粉体の気化が促進されていることが確認され,その影響も消炎限界拡大に寄与していることがわかった.また5μmのPMMAを用いた過熱蒸気温度500°C,火炎の伸長率300 1/sにおいて,酸素濃度の低下により火炎は不安定になり,消炎限界が急速に低下してしまうことが確認できた.これは,火炎の安定性において,伸長率や温度よりも酸素濃度の影響は大きく,消炎限界を著しく変化させるためである.また,粉体の搬送気体を空気から窒素に変えた実験では,どの酸化剤温度においても消炎限界の大きな変化は確認できなかった.粉体の消炎限界濃度が当量比の表現でおおよそ等しいPMMA,ポリプロピレン,ポリエチレンにおいて,過熱蒸気温度,酸素濃度に対する消炎限界の変化に大きな違いを確認することができなかった.また,ふく射の再吸収に対する消炎限界の影響も,温度変化による影響と切り分けすることが困難であり,今後の課題であろう. | KAKENHI-PROJECT-22760156 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22760156 |
履帯上での進行波生成により任意方向移動を可能とする超柔軟無限軌道メカニズムの研究 | 無限軌道と進行波の双方を駆動させることによる任意方向移動を実現し,高い走破性を有する進行波生成クローラの具現化目指す.このために,第一に進行波生成式クローラの基盤技術の確立として基本要素である進行波生成アクチュエータの推進機構を構築し,第二に駆動システム全体の実装と移動体のモデル化,制御手法の構築,第三に模擬環境への導入と実験的検証を行う.本研究では,履帯上での進行波の生成により任意方向移動を可能とする超柔軟無限軌道メカニズムを構築し,高い不整地踏破性を示す移動機構の実現を目的とする.本年度は進行波を生成クローラの履帯の構成要素となる進行波生成装置・アクチュエータの開発を主に行った.まず,進行波生成装置として柔軟性や耐衝撃性に優れる流体駆動アクチュエータに着目した.複数の圧力室を順次加圧することで各節が伸縮運動を行い,蠕動運動を生成するユニットを開発した.試作実験により,簡素な構成で実現できることがわかったが,応答の遅れから推進速度が十分得られないことが明らかとなった.続いて,進行波を機構的に生成する機械装置を2つ開発した.第1の装置は,チェーン状のリンク内に単一の螺旋状の駆動軸を配置した機構である.大きな推進速度が得られるものの,構造上耐荷重性に限界があることや,コンパクトな設計が困難な点が明らかとなった.次の第2に装置は,メッシュチューブ内に螺旋状の駆動軸を円周配置した蠕動運動生成機構である.軸対称構造で連続的な波を生成可能,全周囲に推進力を生成可能という特徴を有する.それぞれ試作した結果,モータの回転数によって速度を制御しやすいこと,地面に対して駆動力を伝達しやすいこと,剛体部品で構成されるため履帯との取り付けがしやすいなどの製作上のメリットがあることが明らかとなった.以上の進行波により1軸方向に推進するユニットに関して,その推進原理の検証を達成したことが,本年度の成果である.本研究の目的である進行生成式全方向移動機構の実現で最も重要で主要な構成要素となる進行波生成装置を試作し,推進原理を実機により検証することができた.特に,螺旋を用いた機械的な進行波生成装置は,軸対称構造で連続的な波を生成可能,全周囲に推進力を生成可能という,これまでに類の無い機構であり,本研究は当然ながら移動機構,搬送機構など様々に応用可能な構造を実現することができた.以上のように成果はおおむね当初の計画通りであり,本研究は進展していると考える.目的である進行波による全方向移動可能なクローラ機構の構築ため,今年度に開発した進行波生成装置をクローラ履帯に統合する.また,そのクローラの推進速度やペイロード,移動効率,段差乗り越え性能などの基本的な移動特性を明らかにするための実験を行い,設計手法を明らかにする.また,最終的には自律走行可能な全方向クローラを凹凸のある応用模擬環境へ導入し,走行面の軟弱さ,空間の狭さを含めた性能の評価を行い,得られた知見をフィードバックすることで研究を進める.無限軌道と進行波の双方を駆動させることによる任意方向移動を実現し,高い走破性を有する進行波生成クローラの具現化目指す.このために,第一に進行波生成式クローラの基盤技術の確立として基本要素である進行波生成アクチュエータの推進機構を構築し,第二に駆動システム全体の実装と移動体のモデル化,制御手法の構築,第三に模擬環境への導入と実験的検証を行う.本研究では,履帯上での進行波の生成により任意方向移動を可能とする超柔軟無限軌道メカニズムを構築し,高い不整地踏破性を示す移動機構の実現を目的とする.本年度は進行波を生成クローラの履帯の構成要素となる進行波生成装置・アクチュエータの開発を主に行った.まず,進行波生成装置として柔軟性や耐衝撃性に優れる流体駆動アクチュエータに着目した.複数の圧力室を順次加圧することで各節が伸縮運動を行い,蠕動運動を生成するユニットを開発した.試作実験により,簡素な構成で実現できることがわかったが,応答の遅れから推進速度が十分得られないことが明らかとなった.続いて,進行波を機構的に生成する機械装置を2つ開発した.第1の装置は,チェーン状のリンク内に単一の螺旋状の駆動軸を配置した機構である.大きな推進速度が得られるものの,構造上耐荷重性に限界があることや,コンパクトな設計が困難な点が明らかとなった.次の第2に装置は,メッシュチューブ内に螺旋状の駆動軸を円周配置した蠕動運動生成機構である.軸対称構造で連続的な波を生成可能,全周囲に推進力を生成可能という特徴を有する.それぞれ試作した結果,モータの回転数によって速度を制御しやすいこと,地面に対して駆動力を伝達しやすいこと,剛体部品で構成されるため履帯との取り付けがしやすいなどの製作上のメリットがあることが明らかとなった.以上の進行波により1軸方向に推進するユニットに関して,その推進原理の検証を達成したことが,本年度の成果である.本研究の目的である進行生成式全方向移動機構の実現で最も重要で主要な構成要素となる進行波生成装置を試作し,推進原理を実機により検証することができた. | KAKENHI-PROJECT-19K21061 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K21061 |
履帯上での進行波生成により任意方向移動を可能とする超柔軟無限軌道メカニズムの研究 | 特に,螺旋を用いた機械的な進行波生成装置は,軸対称構造で連続的な波を生成可能,全周囲に推進力を生成可能という,これまでに類の無い機構であり,本研究は当然ながら移動機構,搬送機構など様々に応用可能な構造を実現することができた.以上のように成果はおおむね当初の計画通りであり,本研究は進展していると考える.目的である進行波による全方向移動可能なクローラ機構の構築ため,今年度に開発した進行波生成装置をクローラ履帯に統合する.また,そのクローラの推進速度やペイロード,移動効率,段差乗り越え性能などの基本的な移動特性を明らかにするための実験を行い,設計手法を明らかにする.また,最終的には自律走行可能な全方向クローラを凹凸のある応用模擬環境へ導入し,走行面の軟弱さ,空間の狭さを含めた性能の評価を行い,得られた知見をフィードバックすることで研究を進める. | KAKENHI-PROJECT-19K21061 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K21061 |
迷走神経系活動の刺激による脳‐免疫機能関連の修飾 | 安静時心拍変動が大きい個人はストレス制御能力が高い。そこで本研究では、人為的に心拍変動を高めることでストレス制御能力が促進するのではないかという仮説に基づき、呼吸統制に基づいたバイオフィードバック訓練により心拍変動を高め、その後に時間圧を伴う暗算課題により急性ストレスを負荷してストレス反応性への影響を検討した。実験群では10分間のバイオフィードバック訓練を、休憩を挟んで2回行うことにより、心拍変動の低周波成分が頑健に増強した。また実験群では、訓練を行わなかった統制群と比較し、主観的ストレス反応と炎症性サイトカイン反応が減衰しており、心拍変動上昇がストレス制御能力を促進することが検証された。安静時心拍変動が大きい個人はストレス制御能力が高い。そこで本研究では、人為的に心拍変動を高めることでストレス制御能力が促進するのではないかという仮説に基づき、呼吸統制に基づいたバイオフィードバック訓練により心拍変動を高め、その後に時間圧を伴う暗算課題により急性ストレスを負荷してストレス反応性への影響を検討した。実験群では10分間のバイオフィードバック訓練を、休憩を挟んで2回行うことにより、心拍変動の低周波成分が頑健に増強した。また実験群では、訓練を行わなかった統制群と比較し、主観的ストレス反応と炎症性サイトカイン反応が減衰しており、心拍変動上昇がストレス制御能力を促進することが検証された。本年度は、心拍変動性のバイオフィードバックの最適な方法を確立するために約10名の被験者を対象として、予備的実験を繰り返した。その結果、呼吸を1分間6回のペースに統制することにより、10分間のバイオフィードバックを休憩を挟んで2回繰り返すことで、心拍変動性の低周波成分が顕著に増加することを確認した。この現象はほぼ全員の被験者において認められ、頑健なものであることが確認された。これにより、本研究課題の独立変数部分である実験操作に関しては、方法が確立された。さらに、本研究課題の目的である、バイオフィードバックにより心拍変動性を増すことで急性ストレス反応からの回復性が促進されるか否かを検討するために、3名の被験者を対象として予備的実験を行った。心拍変動性バイオフィーバック条件と、これを行わない統制条件を設け、急性ストレス課題としては時間圧を負荷した連続暗算課題を使用した。急性ストレス反応としては、心拍、皮膚伝導反応を測定し、また唾液検体を採取して代表的なストレス・ホルモンであるコルチゾールを測定した。その結果、心拍変動性バイオフィードバックにより、急性ストレス負荷後の心拍がより早くベースラインに回帰する傾向が認められた。被験者が3名と少数なため、この結果についてはまだ評価することは難しい。今後さらに例数を増やして頑健な成果が得られるよう努力すると共に、神経画像研究を行って、神経メカニズムについての探索を行う。本研究では、バイオフィードバックの手法により心拍変動性を高め、これにより迷走神経系活動を亢進することにより脳と免疫系のストレス反応性を抑制することが可能か否かを検討することを目的としていた。平成25年度には、まず10名の参加者を対象とした予備的実験を行い、心拍変動性バイオフィードバックの最適な方法を確立した。呼吸を1分間6回のペース(吸気4秒、呼気6秒)に統制し、参加者自身の心拍変動性をリアルタイムで観察する、10分間のバイオフィードバック訓練を、休憩を挟んで2回繰り返すことで、心拍変動性の低周波成分を頑健に増強できることが確認された。平成26年度には、上記の知見に基づき、前年度に確立した方法による心拍変動性バイオフィードバック訓練を行う群(BF群)とこの訓練を行わないで安静状態を保つ統制群を設け、その期間の前後に、連続加算課題により急性ストレスを負荷し、そこにおける主観的ストレス感、心拍、皮膚伝導水準、唾液中コルチゾールと炎症性サイトカイン(IL-6)を測定する実験を、24名の参加者を対象として行った。その結果、バイオフィードバック訓練あるいは安静期間の前の急性ストレス負荷では、いずれの指標にも群間差はみられなかった。一方、バイオフィードバック訓練あるいは安静期間の後の2回目の急性ストレス負荷に対しては、BF群では統制群と比較して、主観的ストレスと炎症性サイトカインの反応性が有意に低減された。さらに、訓練あるいは安静期間中の心拍変動性低周波成分のパワー値が高いほど、2回め負荷に対する主観的ストレス感、炎症性サイトカインの値はいずれも低くなった。これらの結果は、心拍変動性バイオフィードバック訓練により一過性に亢進された迷走神経系活動が心理的・生理的ストレス反応を抑制する効果があったことを示している。生理心理学心拍変動性バイオフィードバックの最適な方法について検討を重ね、方法を確立できたことで、本年度の目的の半分は達成された。しかし、このために時間を要したために、心拍変動性バイオフィードバックが急性ストレス反応からの回復を促進する効果については、十分な検討を行うことができなかった。現在行っている実験を継続し、今後さらに例数を増やして心拍変動性バイオフィードバックが急性ストレス反応からの回復を促進する効果について、頑健な成果が得られるよう努力する。上記の効果について頑健な結果が得られたならば、fMRIによる神経画像研究を行って、神経メカニズムについての探索を行う。予備的実験研究に時間を要し、予定していた実験が全て終了しなかったため。平成26年度に行う実験研究において必要な物品費として使用する。 | KAKENHI-PROJECT-25590204 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25590204 |
貝類における還元環境への進出と適応に関する進化学的研究 | 1.沖縄県石垣島、同西表島、北海道知床半島、小樽市忍路の各地において潮間帯還元環境の生物相調査を行い、多数のユキスズメ科貝類を採集した。これらのサンプルには、これまでに確認されていない未記載種が少なくとも2種含まれていた。また、海洋科学技術センター調査船なつしまNT03-06航海に乗船し、小笠原諸島海域の明神海丘および海形海山において深海熱水噴出域固有生物群の調査を行ったが、ここでも多数のユキスズメ科貝類を観察、採集することができた。2.これまでに生体が得られているユキスズメ科貝類の24種47個体について、アルコール保存した組織からtotal DMAを抽出、PCR法を用いミトコンドリアDMA (COI,16S,12S)の約2500塩基対配列を決定した。最節約法ならびにベイズ法により系統樹を構築した結果、検討した24種は深海の種群と浅海の種群の2群に大別されることがわかった。このうち、浅海の種群は属レベルの4単系統群を形成したが、既存の属レベルの分類体系とは全く異なる結果となった。また、同種内個体群間の遺伝的差異はいずれもごく小さいことが判明した。3.干潟潮間帯に生息するミヤコドリの成熟雌個体を室内水槽にて観察し、産卵行動ならびに同種の初期発生について検討した。その結果、同種が1日平均約8個の卵カプセル(各々のカプセルには平均25個の卵が含まれる)を産み付ける多産小卵型であることがわかった。孵化には約4週間を要し、孵化幼生はプランクトン栄養型であった。飼育下では2ヶ月で着底サイズにまで成長したが、腹足の発達などの変態や着底行動は見られず、その後死亡した。本科貝類が長期浮遊幼生期をもつことを初めて飼育により示したが、これは上述の地域個体群間の遺伝的均一性をよく説明する。1.沖縄県石垣島、同西表島、北海道知床半島、小樽市忍路の各地において潮間帯還元環境の生物相調査を行い、多数のユキスズメ科貝類を採集した。これらのサンプルには、これまでに確認されていない未記載種が少なくとも2種含まれていた。また、海洋科学技術センター調査船なつしまNT03-06航海に乗船し、小笠原諸島海域の明神海丘および海形海山において深海熱水噴出域固有生物群の調査を行ったが、ここでも多数のユキスズメ科貝類を観察、採集することができた。2.これまでに生体が得られているユキスズメ科貝類の24種47個体について、アルコール保存した組織からtotal DMAを抽出、PCR法を用いミトコンドリアDMA (COI,16S,12S)の約2500塩基対配列を決定した。最節約法ならびにベイズ法により系統樹を構築した結果、検討した24種は深海の種群と浅海の種群の2群に大別されることがわかった。このうち、浅海の種群は属レベルの4単系統群を形成したが、既存の属レベルの分類体系とは全く異なる結果となった。また、同種内個体群間の遺伝的差異はいずれもごく小さいことが判明した。3.干潟潮間帯に生息するミヤコドリの成熟雌個体を室内水槽にて観察し、産卵行動ならびに同種の初期発生について検討した。その結果、同種が1日平均約8個の卵カプセル(各々のカプセルには平均25個の卵が含まれる)を産み付ける多産小卵型であることがわかった。孵化には約4週間を要し、孵化幼生はプランクトン栄養型であった。飼育下では2ヶ月で着底サイズにまで成長したが、腹足の発達などの変態や着底行動は見られず、その後死亡した。本科貝類が長期浮遊幼生期をもつことを初めて飼育により示したが、これは上述の地域個体群間の遺伝的均一性をよく説明する。 | KAKENHI-PROJECT-03J10630 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03J10630 |
ミトコンドリア機能強化による抗メタボリックシンドローム機能性食品の開発 | 筋肉細胞を用いたミトコンドリア機能培養細胞評価系を構築しミトコンドリア機能亢進効果の検討を行った。(1) 5'-AMP-activated protein kinase、およびAcetyl-CoA carboxylaseの活性化を介した筋肉細胞のエネルギー代謝亢進効果、(2)細胞内でのミトコンドリア生合成に関与するPeroxisome proliferator-activated receptor-γcoactivator-1α分子のmRNA発現量増加、(3)細胞の呼吸活性の亢進効果、に代表される発酵乳ケフィアのミトコンドリア機能強化を介した抗メタボリックシンドローム効果を見いだした。平成24年度は前年度に構築した培養細胞評価系を用い、細胞のエネルギー代謝機能亢進効果の検討を行った。主な検討項目として筋肉細胞におけるミトコンドリア呼吸能の増強効果と肝細胞におけるエネルギー代謝亢進効果に関して検討を行った。筋肉細胞のモデルとして、マウス骨格筋由来筋芽細胞株C2C12細胞を用いて筋肉細胞のエネルギー代謝を亢進する機能性を有する食品に関して検討を行った。細胞のミトコンドリアにおける呼吸活性を定量化できるテトラゾリウム塩の一種であるWST-1を用いて調べたところ、C2C12筋管細胞に対して発酵乳ケフィア処理を48時間行った結果、細胞ミトコンドリアの呼吸活性の亢進効果が確認された。発酵乳ケフィアの4時間処理において脂肪酸β酸化経路活性化が前年度に確認されており、これらを併せて筋肉細胞へのエネルギー代謝亢進効果が強く示唆される結果を得た。肝細胞のモデルとして、ヒト肝ガン由来HepG2細胞、またはマウス初代肝細胞を用いて、細胞のエネルギー代謝への機能性を有する食品に関して検討を行った。発酵乳ケフィア処理により肝細胞モデルにおけるパルミチン酸β酸化の亢進が確認された。発酵乳ケフィア処理は細胞内でエネルギー代謝に大きく関与している5'-AMP-activated protein kinaseを活性化することが確認され、また同時にエネルギー代謝制御における上流因子の一つであるperoxisome proliferator-activated receptor-αのmRNA発現量の上昇が確認された。以上のことから発酵乳ケフィア処理はこれらのシグナル経路を介してエネルギー代謝亢進効果を生じさせていると考えられた。本研究の遂行にあたり、筋肉細胞を用いてミトコンドリア機能培養細胞評価系を構築し、ミトコンドリア機能亢進効果の検討を行った。その結果、発酵乳ケフィア処理を行うことで、細胞のミトコンドリアでのエネルギー代謝制御に関与する5'-AMP-activated protein kinase (AMPK)、および脂肪酸酸化に関与するAcetyl-CoA carboxylaseのリン酸化増強が確認されたことから筋肉細胞のミトコンドリア機能活性化が示唆された。また、細胞内でのミトコンドリア生合成に関与しているPeroxisome proliferator-activated receptor-γcoactivator-1α分子のmRNA発現量増加が確認された。また、テトラゾリウム塩の一種であるWST-1を用いて筋肉細胞のミトコンドリアにおける呼吸活性を調べたところ、発酵乳ケフィア処理を48時間行った結果、細胞のミトコンドリア呼吸活性の亢進効果が確認された。以上の結果を併せて、発酵乳ケフィアのミトコンドリア機能強化を介した筋肉細胞のエネルギー代謝亢進効果が強く示唆された。肝細胞モデルを用いて、エネルギー代謝への機能性を有する食品に関して検討を行ったところ、発酵乳ケフィア処理により肝細胞モデルにおける脂肪酸β酸化の亢進が確認された。また、発酵乳ケフィア処理は肝細胞でAMPKを活性化することが確認され、また同時にエネルギー代謝制御に関わる上流因子の一つであるperoxisome proliferator-activated receptor-αのmRNA発現量の上昇が確認された。メタボリックシンドロームモデルマウスを用いて検討したところ、発酵乳ケフィア投与による血中アディポネクチン量の変化は見られなかったが、耐糖能の改善と血中インスリン量の低下が認められ2型糖尿病症状の改善が強く示唆された。筋肉細胞を用いたミトコンドリア機能培養細胞評価系を構築しミトコンドリア機能亢進効果の検討を行った。(1) 5'-AMP-activated protein kinase、およびAcetyl-CoA carboxylaseの活性化を介した筋肉細胞のエネルギー代謝亢進効果、(2)細胞内でのミトコンドリア生合成に関与するPeroxisome proliferator-activated receptor-γcoactivator-1α分子のmRNA発現量増加、(3)細胞の呼吸活性の亢進効果、に代表される発酵乳ケフィアのミトコンドリア機能強化を介した抗メタボリックシンドローム効果を見いだした。平成23年度は主に筋肉細胞を用いてミトコンドリア機能培養細胞評価系を構築し、ミトコンドリア機能亢進効果の検討を行った。主な検討項目として、筋肉細胞の脂肪酸燃焼機能の制御、およびグルコース取り込み機能の制御に関して研究を遂行した。マウス由来C2C12筋管細胞に4時間以上の発酵乳NKGケフィア処理を行うことで、ミトコンドリアにおける脂肪酸β酸化に関与している5'-AMP-activated protein kinase(AMPK)およびAcetyl-CoA Carboxylase(ACC)のリン酸化の増強が確認されたことより、ミトコンドリア機能の活性化が生じていると考えられた。さらに、脂肪細胞が分泌するホルモンの一種アディポネクチンは骨格筋に対して運動と同様の効果を示すことが知られている。このアディポネクチンの受容体であるAdipoR1の発現量が発酵乳NKGケフィア処理時間依存的に増加していた。 | KAKENHI-PROJECT-23580172 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23580172 |
ミトコンドリア機能強化による抗メタボリックシンドローム機能性食品の開発 | また、ミトコンドリア生合成に関与しているPeroxisome proliferator-activated receptor-γcoactivator-1α(PGC-1α)のmRNA発現量は比較対照群において12時間以上の時点で減少していくのに対し、ケフィア処理群においてはmRNA発現量が維持されていることが確認された。以上のように、NKGケフィアが筋肉のエネルギー代謝向上効果を持つことが強く示唆された。一方で、細胞外のグルコースを筋肉細胞内に取り込むことは筋肉の重要な機能の一つである。そこでグルコースの細胞内取込み活性を増強する食品成分の探索を行ったところ、発酵乳NKGケフィアに加え、還元水においても増強活性が確認された。さらにこの細胞内グルコース取込み増強効果はインスリン刺激の有無にかかわらず増強することが確認された。おおむね研究開始時に立案した研究実施計画に基づき研究を遂行できている。平成24年度は研究初年度に構築した培養細胞による機能評価系を利用し、ミトコンドリア呼吸活性と細胞のエネルギー代謝亢進を指標としたミトコンドリア機能亢進効果を有する機能性食品の検討を行い、次年度の研究につながる成果が挙げられた。研究開始時に立案した研究実施計画に基づき研究を遂行できている。平成23年度は研究初年度として研究遂行の柱となる機能性培養細胞を用いたミトコンドリア機能評価系構築を行うことが第一の目的であり、その構築したミトコンドリア機能評価系を用い、ミトコンドリア機能亢進効果を有する機能性食品の検討を行うことが第二の目的であった。平成23年度は順調にこの二つの目的を達成でき、次年度以降の研究につながる成果が挙げられた。培養細胞評価系により筋肉細胞・肝細胞のそれぞれにおける脂肪酸燃焼機能制御、細胞へのグルコース・脂質取込み機能制御、エネルギー代謝機能制御などの抗メタボリックシンドローム効果を有する機能性食品成分の単離・同定、加えて活性成分の作用点を明確にするための検討を行う。また、タンパク質品質管理機能増強、DNA修復機能増強が抗メタボリックシンドロームに寄与する効果の検討を行う。さらに、メタボリックシンドロームのモデル動物を使用した動物実験により包括的な抗メタボリックシンドローム機能を有する機能性食品の評価を行う。今後は構築されたin vitro培養細胞評価系により筋肉・肝細胞それぞれにおける脂肪酸燃焼機能制御、細胞へのグルコース・脂質取込み機能制御、エネルギー代謝機能制御などの抗メタボリックシンドローム効果を有する機能性食品成分の単離・同定、加えて活性成分の作用点を明確にするための検討を行う。また、タンパク質品質管理機能増強、DNA修復機能増強が抗メタボリックシンドロームに寄与する効果の検討を行う。 | KAKENHI-PROJECT-23580172 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23580172 |
プレス加工に依る自在な結晶方位制御法の検討 | プレス加工を利用し鋼板の結晶方位を制御する方法を検討した。まず繰り返し剪断応力を加えるためのプレス加工実験装置を開発した。純鉄板を試験片として繰り返し剪断応力を加えた後、種々の条件で焼鈍した。試験片の断面をEBSDで分析し、結晶粒の方位分布を求めた。その結果特定の方位の結晶粒が粗大化することが確認された。これにより繰り返し剪断応力の付与により結晶方位を制御する可能性が示された。H25年度は、昨年度開発した振動プレス加工実験装置を用いて、プレス加工条件が熱処理後の静的再結晶組織に及ぼす影響を調べた。純鉄板より試験片を切り出し、ひずみ取り焼鈍を行った後、振動プレス加工実験に用いた。平均プレス荷重は試験片が剪断変形を起こし始める値に設定し、ピエゾアクチュエータにて十分大きい振幅で荷重振動を与えた。荷重振動を18000回加えたのち、700°C900°C×1時間の条件で焼鈍を行った。それらの試験片の断面を研磨し、EBSD分析により結晶粒の分布およ結晶方位分布を調べた。その結果、1焼鈍温度700°C800°Cの試験片において、プレスで剪断ひずみを加えた部分に大きな結晶が成長している試験片が見られた。2これらの大きく成長した結晶粒はRD穂軸方向に対して<111>方向が10度以内の方位を有していた。3同条件で加工・熱処理しても結晶粒が粗大化しなかった試験片の結晶方位は2とは大きく異なる方位を有していた。これらの結果から、剪断変形を加えたことにより特定方向の結晶が大きく成長したことが推察される。すなわち変形域内の結晶は結晶方位によって変形し易さが異なるため、結晶法によって転位の蓄積量が異なるはずであり、その後試験片を焼鈍したときこれらの転位の蓄積量の違いにより、粒成長のし易さが異なったものと推察される。そのため、剪断域内に適当な結晶方位の粒が存在した場合、優先的にその粒が成長し、一方、そのような粒が存在しない場合、粒成長が見られなかったものと説明できる。以上より、本手法により再結晶粒の方位を制御する可能性が示された。プレス加工を利用し鋼板の結晶方位を制御する方法を検討した。まず繰り返し剪断応力を加えるためのプレス加工実験装置を開発した。純鉄板を試験片として繰り返し剪断応力を加えた後、種々の条件で焼鈍した。試験片の断面をEBSDで分析し、結晶粒の方位分布を求めた。その結果特定の方位の結晶粒が粗大化することが確認された。これにより繰り返し剪断応力の付与により結晶方位を制御する可能性が示された。小型モーターは自動車、家電、情報機器など多くの工業製品に多数用いられており、そのエネルギー効率の向上は世界レベルでの電力消費量削減ならびにCO2排出量削減に非常に大きな効果がある。小型モーターの効率向上には、ローターやステーターなどモーターの鉄芯の磁気特性の向上が有効であることから、本研究ではモーターの鉄芯のプレス加工を利用し、鉄芯中の磁力線の経路・分布に沿って鋼板の結晶の磁化容易軸(<100>方位)を揃えることが出来れば、各種小型モーターの効率を向上させることができると期待される。そこで本研究では純鉄板を試験材料とし、剪断塑性ひずみ付与による結晶方位制御の可能性を明らかにし、その原理を検討することを目的としている。平成24年度は試験片に種々の剪断ひずみを与えるためにプレス装置を模擬した実験装置を開発した。本装置は鉄板の剪断加工を行いながら同時に工具に微細な振動を加える装置であり、パンチとダイのクリアランス部に繰返し剪断応力を与えることが出来る。さらにこの試験片を焼鈍し再結晶を起こさせる。焼鈍前後の試験片についてEBSD装置で分析し、結晶粒径、結晶方位分布などの違いを検討した。H24年度の目標であった実験装置の開発が完了し、また一連の実験手順およびEBSD装置による分析方法も確立した。この実験により、再結晶による結晶方位分布変化が検討できることが確認できた。今後はプロセス条件を変え、それが結晶方位分布にどの様な影響を与えるかを定量的に検討する予定である。よって当初目標を達成しており、順調に進んでいると考えている。H24年度で実験方法が確立できたので、H25年度はプレス加工条件、応力振動条件、熱処理条件を様々に変化させ、EBSD分析により再結晶粒の結晶方位分布を調べ、加工条件・熱処理条件が結晶方位分布にどの様に影響するかを定量的に検討する。再結晶粒方位と加工条件との間に相関が見つかれば、結晶方位を任意に制御することが可能になる。H25年度は実験結果について学会等で積極的に発表して行く予定である。H24年度は、実験装置の開発に研究費の多くを使用する予定であったが、装置開発のコストを低く抑えることができ、また国内旅費および人件費が予定より少なかったため、未使用額が生じた。次年度は、未使用額も含めて実験経費(消耗品、工具、素材、装置使用料)、旅費、学会参加費などに用いる。 | KAKENHI-PROJECT-24656100 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24656100 |
妊娠糖尿病予防のための構造化された簡易な食事支援プログラムの開発に関する研究 | 本研究の目的は妊娠糖尿病(GDM)予防のための構造化された簡易な食事プログラムを開発することである。1)妊婦データベースでGDMを持つ妊婦は分娩時出血量が多かった。3,500g以上の新生児の予測因子として、非妊娠時のBMIと妊娠中の体重増加が有意に関連していた。逆に、低出生体重児の予測因子は非妊娠時の低BMI値、妊娠中の低体重増加量、喫煙が有意に関連。2)臍帯血とGDMにおけるDNAメチル化の測定系を確立した。3)日本版ポーションコントロールプレートを用いたランダム化比較試験を実施し、3か月後に体重の有意な減少を認めた。本プログラムは肥満を伴う妊婦の体重増加予防に有効であるかもしれない。わが国では晩婚・晩産化に伴い,妊娠糖尿病を持つ人の割合が増加している。2010年に妊娠糖尿病の診断基準が改訂され、わが国における妊娠糖尿病の頻度は今後50%程増加することが推測される。妊娠糖尿病は母体や周産期合併症(巨大児、先天奇形など)のみならず、将来の母と児の糖尿病発症の温床となることが知られている。一方、今まで妊婦に対する食事調査は行われているが、妊娠糖尿病予防を目的とした調査研究や介入研究はわが国ではほとんど行われていない。そこで本研究では妊産婦のデータベースを作成し、「妊娠糖尿病予防のための構造化された簡易な食事支援プログラム」を開発し、その有用性(効果と安全性)を検証することが目的としている。本年度は昨年度に引き続き、糖尿病合併妊娠、妊娠糖尿病を含めた妊産婦のデータベースの作成を行った(約1000名)。イギリスのデービッド・バーカーによる成人病胎児期発症説や「オランダ冬の飢餓事件」などから、低出生体重児が将来の糖尿病をはじめとする生活習慣病や心血管疾患のリスクとなること考えられる。我々のデータベースの解析結果からも低出生体重児の予測因子として、喫煙と独立して、非妊娠時のBMI低値と妊娠中の体重増加量が少ないことが関連していたことが明らかとなった。最近、母親の年齢とDNAのメチル化、出生時にある特定の遺伝子のメチル化を多く持つ児は小児肥満リスクが高い、妊娠初期に炭水化物をしっかりとらなかった母親から生まれた児のDNAメチル化が促進などの報告がされている。そこで、我々は刷り込み遺伝子IGF2など8つの遺伝子のメチル化の測定系を確立し、国際会議で報告した。また、医療従事者に対してワークショップを開催し、妊娠糖尿病に対する介入プログラムや妊娠糖尿病検定を作成した。また食事バランスガイドと体重測定を用いた簡易な食事プログラムの開発を行い、介入研究に向けての準備を行った。本研究の目的は妊娠糖尿病(GDM)予防のための構造化された簡易な食事プログラムを開発することである。1)妊婦データベースでGDMを持つ妊婦は分娩時出血量が多かった。3,500g以上の新生児の予測因子として、非妊娠時のBMIと妊娠中の体重増加が有意に関連していた。逆に、低出生体重児の予測因子は非妊娠時の低BMI値、妊娠中の低体重増加量、喫煙が有意に関連。2)臍帯血とGDMにおけるDNAメチル化の測定系を確立した。3)日本版ポーションコントロールプレートを用いたランダム化比較試験を実施し、3か月後に体重の有意な減少を認めた。本プログラムは肥満を伴う妊婦の体重増加予防に有効であるかもしれない。わが国では晩婚・晩産化に伴い、妊娠糖尿病患者数が増加している。また、2010年に妊娠糖尿病の診断基準が改訂されたことにより、日本で妊娠糖尿病の頻度は今後50%程度増加すると推測されている。妊娠糖尿病は母体や周産期合併症(巨大児、先天奇形など)のみならず、将来の母児の糖尿病発症の温床となることが知られている。今まで妊婦の食事調査は行われているが、妊娠糖尿病予防を目的とした介入研究は本邦では行われていない。そこで、本研究では「妊娠糖尿病予防のための構造化された簡易な食事支援プログラム」を開発し、その有用性について検証することを目的とする。本年度は、介入研究に向けて、糖尿病合併妊娠、妊娠糖尿病を含めた妊産婦のデータベース(約3000名)の作成を行った。データベースに含まれる測定項目は、身長、体重、BMI、血圧など身体組成、食事調査、血液検査(Hb、血糖など)、尿検査、超音波検査、生活習慣(喫煙、食事、飲酒、運動)などである。妊娠糖尿病については、75gブドウ糖負荷試験(空腹時、1時間値、2時間値)、HbA1c、GAなどである。プライマリエンドポイントは、巨大児あるいはLarge-for-gestational-ageの割合.セカンダリエンドポイントは、妊娠糖尿病、母体合併症、周産期合併症、低出生体重児(<2.5kg)、巨大児、APGARスコア、新生児低血糖などである。中間解析では、妊娠糖尿病を持つ妊婦では、持たない人に比べ、分娩時出血量が多かった。3,500g以上の新生児の予測因子として、非妊娠時のBMIと妊娠中の体重増加が有意に関連していた。逆に、低出生体重児の予測因子として、非妊娠時のBMI低値と独立して、妊娠中の体重増加が少ないことと喫煙が有意に関連していた。わが国では晩婚・晩産化に伴い、妊娠糖尿病を持つ人の割合が増加している。 | KAKENHI-PROJECT-24501029 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24501029 |
妊娠糖尿病予防のための構造化された簡易な食事支援プログラムの開発に関する研究 | 2010年に妊娠糖尿病の診断基準が改訂されたことにより、わが国における妊娠糖尿病の頻度は今後50%程度増加することが推測されている。妊娠糖尿病は母体や周産期合併症(巨大児、先天奇形など)のみならず、将来の母と児の糖尿病発症の温床となることが知られている。一方、今まで妊婦に対する食事調査は行われているが、妊娠糖尿病予防を目的とした調査研究や介入研究はわが国ではほとんど行われていない。そこで、本研究では妊婦のデータベースを作成し、「妊娠糖尿病予防のための構造化された簡易な食事支援プログラム」を開発し、その有用性(効果と安全性)を検証することを目的としている。本年度は、食事バランスガイドと体重測定を用いた簡易な食事支援プログラムの開発とポーションコントロールプレートを用いた食事介入試験を行った。過体重及び肥満を伴う糖尿病を持つ成人19名をポーションコントロールプレート(ヘルシープレート)を用いたグループ指導教室を行う介入群(10名)と対照群(9名)に無作為に割り付けた。介入群では管理栄養士によるグループ指導を毎月、受けた。体重、血糖コントロール指標、その他の代謝パラメーター、食事調査(介入群のみ)、心理社会的因子、本プログラムに対する満足度(構造化された調査票)について調査した。対照群で1名の脱落が認められた。介入群において有害事象は認めなかった。介入3か月後、対照群に比べ、介入群では有意な体重減少が認められた。介入群のほとんどの被験者が本プログラムを他人に勧めたいと報告した。日本版のポーションコントロールプレートを用いた食事介入は糖尿病を持つ成人の体重管理に有用であり、食事バランスガイドと体重測定を併用することで妊婦に対する介入プログラムとして利用可能であると考えられた。糖尿病当初予想された人数よりも多くの人数のデータベースの作成ができた。介入に向けての準備を行えたから。さらに、臍帯におけるエピゲノムを測定できる系の確立ができたから。当初予想された人数よりも多くの人数のデータベースの作成ができたからである。来年度は引き続き、妊婦のデータベース化を行うと共に、妊娠糖尿病予防のための食事指導支援プログラムの効果検証を行う。来年度は引き続き、妊婦のデータベース化を行うと共に、糖尿病予防に役立つ食事支援プログラムの開発を行う。次年度の介入研究に関する費用、学会報告や論文を作成するため。データ入力に関わる人件費、介入研究開発、成果発表に関わる旅費等に使用する。データ入力に関わる人件費、介入研究開発、成果発表に関わる旅費等に使用する。 | KAKENHI-PROJECT-24501029 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24501029 |
注目画素の周辺エッジ情報を元にした可変しきい値法による雑音検出型フィルタの開発 | インパルス性雑音は、デジカメ等に使われるイメージセンサのセルの感度差や、画像の伝送時、熱雑音などにより生じる。これを効果的に除去する手法として、スイッチング型の雑音除去フィルタが提案されている。我々もその手法として多方向スイッチングメジアンフィルタ(多方向SMF)および発展型の画像分割型多方向SMFの開発を行い、それらの有効性を論文にて報告した。画像分割型多方向SMFは画像を分割し、分割画像ごとのエッジ量に比例したしきい値を設定することで画質を以前の多方向SMFよりも改善する手法である。しかしながら、しきい値を設定する新たな処理が前処理として加わり冗長である問題があった。しきい値を設定するには雑音が除去されている画像が必要であり、前処理中に仮の雑音除去画像を取得する処理が含まれる点が特に冗長であった。そこで、仮の雑音除去を省き、この前処理を従来の多方向SMFの処理中に可能な限り少ない処理で組み込む手法の開発を行った。多方向SMFは雑音除去した画像を劣化画像に上書きし、その上書きした画素を雑音検出や雑音除去に利用する再起処理を行う特徴がある。今回新たに提案する手法は、再起処理された画素を用いることで多方向SMFの処理中に注目画素周辺のエッジ量に比例したしきい値設定を行う。これにより、処理の簡略化と、画像分割型多方向SMFと同等以上の画質の両立を可能としている。2016年度は手法の開発と検討を行い、2016年度から2017年度にかけて論文の執筆を行い、2017年度4月末に論文の投稿を行った。本報告に記載してある発表は、その関連のものである。インパルス性雑音は、デジカメ等に使われるイメージセンサのセルの感度差や、画像の伝送時、熱雑音などにより生じる。これを効果的に除去する手法として、スイッチング型の雑音除去フィルタが提案されている。我々もその手法として多方向スイッチングメジアンフィルタ(多方向SMF)および発展型の画像分割型多方向SMFの開発を行い、それらの有効性を論文にて報告した。画像分割型多方向SMFは画像を分割し、分割画像ごとのエッジ量に比例したしきい値を設定することで画質を以前の多方向SMFよりも改善する手法である。しかしながら、しきい値を設定する新たな処理が前処理として加わり冗長である問題があった。しきい値を設定するには雑音が除去されている画像が必要であり、前処理中に仮の雑音除去画像を取得する処理が含まれる点が特に冗長であった。そこで、仮の雑音除去を省き、この前処理を従来の多方向SMFの処理中に可能な限り少ない処理で組み込む手法の開発を行った。多方向SMFは雑音除去した画像を劣化画像に上書きし、その上書きした画素を雑音検出や雑音除去に利用する再起処理を行う特徴がある。今回新たに提案する手法は、再起処理された画素を用いることで多方向SMFの処理中に注目画素周辺のエッジ量に比例したしきい値設定を行う。これにより、処理の簡略化と、画像分割型多方向SMFと同等以上の画質の両立を可能としている。2016年度は手法の開発と検討を行い、2016年度から2017年度にかけて論文の執筆を行い、2017年度4月末に論文の投稿を行った。本報告に記載してある発表は、その関連のものである。 | KAKENHI-PROJECT-16H00395 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H00395 |
バイオリソース事業の展開に必須の、高圧法を用いた万能型受精卵凍結法の開発 | 多様な哺乳動物バイオリソース維持の費用対効果と確実性を高める支援技術として、高圧法を用いた生殖細胞の万能凍結保存の開発に着手した。電顕試料固定に用いられる高圧ガラス化凍結法を基礎に、大型の生殖細胞に応用するために、細胞毒性の低い凍結溶液条件を決定した。また融解時の脱ガラス化問題を克服するための物理条件測定系と微小チャンバーの改良を行い、本法の胚凍結保存技術としての可能性を示した。多様な哺乳動物バイオリソース維持の費用対効果と確実性を高める支援技術として、高圧法を用いた生殖細胞の万能凍結保存の開発に着手した。電顕試料固定に用いられる高圧ガラス化凍結法を基礎に、大型の生殖細胞に応用するために、細胞毒性の低い凍結溶液条件を決定した。また融解時の脱ガラス化問題を克服するための物理条件測定系と微小チャンバーの改良を行い、本法の胚凍結保存技術としての可能性を示した。生命科学の主流が個体を対象とした生命機能解析研究へ移るとともに、実験動物の重要性が高まっている。このためヒトの生命現象を解明するためのモデル動物を体系的に整備する哺乳動物バイオリソースの構築が進んでおり、多系統の実験動物を維持する機関が出現している。一方、実験動物として遺伝的な統御を受けていない野生齧歯類種や、マウス、ラット以外の哺乳動物も、生物多様性に富んだ独自性の高い科学基盤として今後のリソースの価値を高める要件であると考えられる。維持動物種の多様化に従い、リソースの効率的な管理には動物種や系統を限定しない生殖細胞の万能凍結法の開発が急務である。われわれは電顕試料作成技術として開発された高圧凍結法の応用を中心に、従来の凍結保存法の問題点を克服する試みを開始した。初年度はまず瞬間高圧凍結過程で生じる物理的な細胞傷害を評価するため、液体窒素温下の生殖細胞の形態観察のための低温置換法等、電顕試料の作成条件の確立を開始した。その結果、生理的な培養液や、1-1.5M程度の低濃度の耐凍剤を添加した溶液を用いて高圧凍結した試料の低温置換条件等が決定され、高圧凍結時の細胞の内外の氷晶形成や損傷の観察が可能になった。しかしガラス化溶液を用いた試料では低温置換時に高濃度の糖類が電顕試料作成に悪影響を及ぼし、良好な試料観察条件が得られないとがわかった。次年度は、高濃度溶液を用いたサンプルの固定観察条件の精査が必要である。また高圧法を用いる事で、ガラス化凍結の常識である超高濃度の耐凍剤溶液を用いずとも、胚のガラス化が達成されている事が証明できたため、より生理的条件に近い溶液の開発に向けた研究を継続することとした。さらに、細胞への耐凍剤透過を膜表面の水チャンネルの発現から評価した研究や、齧歯類精子の耐凍性の系統差克服のための研究も同時に行い、これらについては論文および学会で報告した。昨年度は凍結装置加圧部の故障が続き、高圧凍結試験が十分に実施できなかったが、胚凍結に関して常法でガラス化したマウス胚の液体窒素温度下での電顕観察のための試料作成条件の決定と、魚類受精卵の高圧凍結法の応用を目指し、メダカ卵の水透過性に関する基礎特性の測定を行った(学会発表2)。これと並行し、バイオリソース維持技術か一発に関連して、齧歯類精子の凍結法に関する基礎データ収集を行った。まず本学で維持する野生バイオリソースであるアレチネズミ亜科の精子凍結保存法の検索を行った。その結果、Tatera indica種では浸透圧を450mOsmに調整したラフィノース濃度14-18%を含む希釈単純PBS液を用いて良好生存率の凍結精子が得られ、ハムスターテストによってその受精能力を始めて実証した(論文1)。さらにGerbillus perpallidus種の凍結精子でも、450mOsmに調整したラフィノース濃度14-18%を含む希釈単純PBS液を用いて良好な生存率が得られる事が判明し、これら動物種のコロニーのバックアップに凍結精子が利用できる可能性が高まった。また、マウス精子凍結技術の改善のために凍結精子に見られる精子凝集塊に着目し、凝集のメカニズムと融解後生存率に及ぼす影響の検討を開始した。精子凝集の主因を細胞膜表面の糖鎖にあると仮説をたて、32種類のレクチン染色を試みたが、原因の同定には至らなかった(学会発表2,6)。さらに精子前培地中のコレステロールレセプターとしてBSEに代えてMethyl-β-cyclodextrin添加の効果(学会発表1)と、その系統間差(学会発表4,5)について検討した。その結果、Methyl-ss-cyclo dextrin至適濃度(lmM)と前培養時問(30-60分)に系統間差は見られないが、受精率の改善効果には系統間差があり、B6系統で特に良好に機能することを見出した。我々は、ヒトの生命現象を解明するためのモデル動物を遺伝的な統御を受けていない野生哺乳類に求め、独自性の高い科学基盤としてのバイオリソース整備を目指している。本研究は、多様な小型齧歯類からなるリソースを効率的に管理するために必要な基盤技術の開発が目的である。そのため、動物種や系統を限定しない生殖細胞凍結法の開発をゴールに見据え、高圧凍結の洗練を中心とした基礎研究に取り組んできた。本年度は初年度に実施した高圧ガラス化凍結による大型細胞(マウス1細胞期受精卵)の凍結溶液を無毒化するために、耐凍剤の濃度を漸減しながら必要最小濃度を実験的に検索した。 | KAKENHI-PROJECT-19500364 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19500364 |
バイオリソース事業の展開に必須の、高圧法を用いた万能型受精卵凍結法の開発 | 高圧法は通常サイズの細胞に適用した場合、生理的溶液のみでガラス化の達成が可能であるとされている。しかし直径100μmの巨大なマウス胚を高い再現性をもってガラス化するためには生理溶液のみでは不可能で、透過型耐凍剤の添加が必須であることが本研究から示された。しかし必要最低濃度は緩慢凍結で求められる透過型耐凍剤濃度より低く、1.0Mであった。すなわち高圧法を利用することで、細胞に対しての毒性がほとんど無く、細胞選択性の低い万能凍結溶液を用いたガラス化保存の可能性が示され、本研究の第一段階を完了することができた。本件に関しては現在投稿論文作成中である。一方、もう一方の問題点であった細胞融解法については、手技的な問題からのサンプルロストが克服できず充分なデータ集積には至らなかった。しかしサンプルポルダの形状改善が進み、単位温度あたり熱容量を従来の2.14Jから0.40Jにまで縮減したルダの開発に至った。これにより理論的に加温速度を5倍以上に高める事が可能となった事や、超高速温度変化測定装置を本研究に適用するための極小プローブを改良したことで、融解時の問題点克服に向けた今後の展開に向けての整備ができた。 | KAKENHI-PROJECT-19500364 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19500364 |
家族介護力の将来予測と介護における地域役割の明確化 | 本研究は地域での継続的な介護の実現のため、要介護者を家族と地域、介護保険サービスで支える仕組みを検討するための基礎資料の提供を目的とした。国民生活基礎調査の解析から日本の家族介護の変遷が明らかとなり、従来の三世代世帯における介護が減少し、未婚の子どもや独居・高齢者夫婦世帯の増加、要介護者を支える家族の多様化の現状を整理した。米国のNational Health and Aging Trends Studyの解析からは、介護の分担における日米の介護形態の違いを検討した。本研究は、多様化する介護が要介護者や介護者の精神的健康に与える影響を検討するための重要な基礎的知見となることが期待される。本研究は、地域における継続的な介護の実現のために、介護保険制度のみならず、家族、地域がどのように関わることで、地域での介護を支え合っていく必要があるかということについて、将来を見据えた具体的な福祉施策を提言することである。平成26年度は、我が国の介護状況の変遷の整理と家族介護力の将来予測を目的として、国民生活基礎調査のマクロデータを用いて経時的に分析を行った。ここでは要介護高齢者と介護者の関係に焦点をあて、介護の担い手としての家族がどのように変化してきたのかを記述し、その変化に関連のある要因と変化に伴う介護保険システムの影響について考察した。また、家族員における介護タスク分担の可能性を明らかにするため、米国のNational Health and Aging Trends Studyデータの解析に着手した。ここでは、2011年のデータを用いて、家族内における介護タスクの分担の状況とその関連要因を解析し、介護内容によって、家族における介護分担の状況が異なることが明らかになった。また、在宅介護を支援する地域役割を明確にするため、福井縦断介護者調査のデータの解析から、多重介護、災害支援における地域の役割が明らかになった。本研究は、地域における継続的な介護の実現のために、要介護高齢者を家族と地域、および介護保険サービスでいかに支えるかについて、将来を見据えた研究知見を提供することを目的とした。本研究ではまず、国民生活基礎調査を用いて日本の家族介護の変遷を整理し、従来の三世代世帯における家族介護が減少し、未婚の子どもとの世帯や独居・高齢者夫婦世帯が増加するとともに、要介護高齢者を支える世帯が多様化している現状を報告した。さらに、第4期介護保険レセプトデータを用いて、日本の家族介護の変遷、介護保険サービス利用パターンが施設入所に与える影響について解析を行い、利用するサービスの違いによる施設入所への影響を明らかにした。米国のナショナルデータNational Health and Aging Trends StudyおよびNational Study of Caregivingのデータ解析においては、日本と米国の介護提供形態の違いを検討した。また、家族介護者および要介護高齢者への質問紙及びインタビュー調査の解析から、地域の環境が認知症高齢者の介護にとって重要であること、さらに地域住民とのネットワークが要介護高齢者の災害準備にも有用であることを報告した。これらの研究知見は、要介護高齢者と家族の実態を記述し将来の介護の行方を見据え、これらを支える公的介護保険サービス、地域との関連を検討したもので、各知見を包括的に検討することで、介護保険、家族、地域の介護における役割を考察した。今後は、本研究知見を発展させ、日米の介護形態の違いが要介護高齢者や介護者の精神的健康に与える影響を検討するとともに、新たな介護者像の介護の状況と介護者の負担感や身体・精神健康への影響について検討を行う予定である。本研究は地域での継続的な介護の実現のため、要介護者を家族と地域、介護保険サービスで支える仕組みを検討するための基礎資料の提供を目的とした。国民生活基礎調査の解析から日本の家族介護の変遷が明らかとなり、従来の三世代世帯における介護が減少し、未婚の子どもや独居・高齢者夫婦世帯の増加、要介護者を支える家族の多様化の現状を整理した。米国のNational Health and Aging Trends Studyの解析からは、介護の分担における日米の介護形態の違いを検討した。本研究は、多様化する介護が要介護者や介護者の精神的健康に与える影響を検討するための重要な基礎的知見となることが期待される。本研究は、地域における継続的な介護の実現のために、介護保険制度のみならず、家族、地域がどのように関わり支え合っていくかについて、将来を見据えた具体的な福祉施策を提言することであり、この目的遂行のために、本プロジェクトでは3つの研究を予定している。今年度はこれら3つの研究にすべて着手し、特に、国民生活基礎調査と米国のNational Health Aging Trends Studyのデータ解析が順調に進んでいる。老年社会、公衆衛生、健康科学平成26年度の研究成果を踏まえ、国民生活基礎調査、米国のNational Health Aging Trends Study、地域介護研究についてそれぞれ詳細に解析を進める。これらのエビデンスをもとに、地域における継続的な介護の実現のために、介護保険制度、家族、地域がどのように関わり支え合っていくかについて、具体的な福祉施策の提言について考察する。おおむね計画通りの支出であった。残金190円については、次年度の研究計画の一部として使用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-26860351 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26860351 |
大気の保護に関する国際立法の研究 | 国連国際法委員会では2013年以降「大気の保護」を議題に採択した。申請者は本議題の特別報告者に任命され12か条のガイドライン草案を起案、2018年の会期で第1読が終了した。この間、特別報告者として、全300頁、5篇に及ぶ報告書を執筆・提出し、さらに「大気の保護」に関する幾篇かの学術論文を公表したほか、欧州およびアジア各国の学会・研究機関・大学等での講演・講義を通して、「大気の保護」の重要性を訴えてきた。以上をもとに、2020年における国際法委員会における本議題の第2読審議を経てガイドライン草案の最終確定とともに、国際法委員会に提出する報告書ならびに学術論文を土台に、単行本を纏める予定である。本研究は、越境大気汚染・オゾン層破壊・気候変動など、およそ大気の環境損害について、これを包括的に捉え、将来における国際法枠組みの構築を構想することにある。2013年8月、国連国際法委員会(ILC)は筆者の提案を受け入れ「大気の保護」を議題として採択、筆者をその特別報告者に指名した。また、国際法協会(ILA)「気候変動委員会」の委員長として、2013年6月、フランス・エクサンプロヴァンスにおいて委員会会合を主宰し、2014年3月には、気候変動の法的原則に関する条文草案・注釈案を取り纏めて、ILAに提出した。2013年11月にはマレーシアでアジア・アフリカ法律諮問機構(AALCO)主催のワークショップがマレーシア国立大学で行われ、「大気の保護」について講演し、各国の専門家から貴重な助言を得ルことが出来た。こうして、当初の研究目的に照らして、予想以上の実績を上げることが出来ていると考えている。気候変動の実態調査のため、2014年1月にパラオを訪問、同国大統領・国務大臣・上院議員等と面談し、同国がILCにおける筆者担当の議題について国際的に支持を表明することを依頼したのに対し、大統領はその趣旨に従い、国連総会および島嶼国フォーラムでの演説等で支持表明することを確約、同国上院でも決議を行うことを考慮するとの好意的回答を得た。また同年1月には、ハーグおよびストックホルムを訪問し、ハーグ国際法アカデミーの関係者と意見交換するとともに、スエーデン環境研究所および環境省の関係者と面談し、筆者がILCに提出する「大気の保護に関する第1報告書」案の内容について詳しく検討する機会を得た。同年2月には中国・上海および北京を訪問し、中国の専門家と、同国で深刻な問題となっている大気汚染への対応について意見交換した。本研究は、越境大気汚染・オゾン層・気候変動など、およそ大気の環境損害について、これを包括的に捉え、将来における国際法枠組みの構築を構想することにある。筆者は、2013年に国連国際法委員会の「大気の保護」に関する特別報告者に指名され、2014年5月から6月には、筆者が提出した「第1報告書」について、同委員会で審議され、その内容については概ね了承された。同年10月から11月には、国連総会第6(法律)委員会でも、筆者の「第1報告書」について審議され、了承された。2014年11月には北京を訪問し、中国社会科学院国際法部会で「大気の保護」について報告したほか、北京大学法学院に設けられた「大気の保護」研究会で、2015年3月に提出した「第2報告書」の草案について、北京大学・中国青年政治学院等の教授・研究者等から貴重な意見交換・資料提出を受けることが出来た。また、2015年1月にはオランダ・ハーグで、欧州各国の専門家と意見交換の機会を得た。本研究は、研究代表者が国連国際法委員会で提案した「大気の保護」に関するテーマが2013年正式に議題として採択され、研究代表者がその特別報告者に任命されたことによる。研究代表者は2014年に「大気の保護に関する第1報告書」(A/CN.4/667)を執筆したが、そこでは、大気の国際法の歴史、条約慣行、国際判例等の分析を行った。この報告書については同年5月ー6月の委員会で議論され、同年10月の国連総会第6委員会(法律委員会)でも審議された。2015年には「第2報告書」(A,CN.4/681)を提出し、そこでは大気の法的な定義、大気に関するガイドライン草案の範囲、国際協力に関する検討を行った。これについては、同年5月の委員会で審議されたほか、同年11月の国連総会第6委員会でも審議された。これらの報告書の執筆に当たっては、我が国を含む各国の国際法研究者から多くの支援を得た。国際法委員会がこのテーマを取り上げたことで、多くの学者が注目することとなり、ドイツ・ゲッチンゲン大学の当初の計画では、研究成果をガイドライン草案に纏める作業をゆっくり進める予定であったが、2015年における国際法委員会での審議がスムーズに進行したため、計画を前倒しにして、2019年までに完了の予定である(当初は2020年を作業完了予定としていた)。国連国際法委員会で申請者が特別報告者を務める「大気の保護」の議題に関しては、これまで9カ条のガイドライン草案が採択されており、国連総会(第6委員会)でも了承された。2017年の国際法委員会の会期では、さらに3カ条のガイドライン採択が見込まれ、本研究の目的は達成されつつある。諸外国の関心も高く、平成29年初夏にはノルウェー学士院やフランス主催の国際法環境会議に招かれて、「大気の保護」に関する報告を行うことになっている。 | KAKENHI-PROJECT-25301014 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25301014 |
大気の保護に関する国際立法の研究 | なお、申請者の体調不良のため、平成28年度に終了予定だった本研究の期間は1年間継続が承認された。座骨神経症の悪化のため国際学会、国際シンポジウムなどへの参加を控えざるを得なかった。「大気の保護」のテーマは、国際法における科学的知見の導入という課題を内包しているので、本研究の最終段階では、この問題の解明を主として行ってきた。申請者は「科学と国際法」のテーマについて、日本語と英語で論文を公表したほか、国際立法過程における科学者との意見交換が不可欠なので、申請者が特別報告者を務める国連国際法委員会でも「科学者との対話」を過去3回に渡って開催し好評であった。この「大気の保護」の議題に関しては、これまで、9カ条のガイドライン草案が採択されており、国連総会(第6委員会)でも了承された。申請者が提出した第5報告書では、大気に関する国際紛争における「科学的証拠」が大きな争点であったが、平成30年(2018年)5月ー8月の国際法委員会の会期では、この報告書を踏まえ、さらに最終の3カ条のガイドライン採択が見込まれており、本研究の目的は達成されるとになる。諸外国の関心も高く、平成29年4月にはノルウエー学士院、オスロ大学に招かれて講演を行なったほか、同年12月には北京大学で公開講演を行なったほか、平成30年1月にはシンガポール、マレーシア、ヴェトナムの大学・研究機関に招かれて、「大気の保護」に関する報告を行った。さらに、平成30年4月には、中国・武漢および上海での講演も行なった。平成30年9月に予定される国際法学会総会(札幌)では国連国際法委員会に関する報告で「大気の保護」に論及する予定である。本研究の実績を基礎に、将来、大気に関する包括的な多数国間条約が(国連海洋法条約のような形で)採択されること、そして「大気の国際法」という新しい独立の分野が国際法学に確立されることが期待できる。国連国際法委員会では2013年以降「大気の保護」を議題に採択した。申請者は本議題の特別報告者に任命され12か条のガイドライン草案を起案、2018年の会期で第1読が終了した。この間、特別報告者として、全300頁、5篇に及ぶ報告書を執筆・提出し、さらに「大気の保護」に関する幾篇かの学術論文を公表したほか、欧州およびアジア各国の学会・研究機関・大学等での講演・講義を通して、「大気の保護」の重要性を訴えてきた。以上をもとに、2020年における国際法委員会における本議題の第2読審議を経てガイドライン草案の最終確定とともに、国際法委員会に提出する報告書ならびに学術論文を土台に、単行本を纏める予定である。国連国際法委員会の特別報告者として、2014年5月に、筆者の執筆による「大気の保護に関する第1報告書」を提出し、委員会の審議を受け、同様に、同年10月から11月にかけて、国連総会第6(法律)委員会でも審議・了承された。欧州・中国の学者・専門家とのネットワークが広がり、筆者への研究支援体制が確立している。2016年3月に提出した「大気の保護に関する第3報告書」では、予定していた2年間分の研究対象をカバーすることができた。すなわち、国家の大気保護に関する義務、環境影響評価、持続的可能な大気の利用形態、環境改変技術の法的問題などである。今後の計画としては、大気国際法と関連の国際法(海洋法、国際貿易法、国際人権法)との相互関係、大気保護の義務の履行、遵守、紛争処理などの問題について報告書を執筆するとともに、ガイドライン草案を提案していく計画である。 | KAKENHI-PROJECT-25301014 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25301014 |
なぜ効果が見込めない化学療法を医師は続けるのか? | 終末期医療に何がどこまでなされるべきかは、医療倫理における最重要テーマの一つであり、中でも進行がんに対する化学療法は重要な研究対象である。終末期の化学療法の継続・中止に関する話し合いには、余命などの難しい内容が含まれ、医師に負担があることを示す研究もある。医療者がこの問題にどう対処するべきか論じるためには、医療者のどのような要因が治療を継続させるのかについてのより本質的な実証研究が必要と考える。申請者は乳腺専門医を対象とした予備調査を行い、仮説を生成したが、本研究はその研究対象と研究手法を拡張して仮説を検証し、現場の医療者が準拠すべきガイドラインの策定につながる考察を行うことを目的とする。終末期医療に何がどこまでなされるべきかは、医療倫理における最重要テーマの一つであり、中でも進行がんに対する化学療法は重要な研究対象である。終末期の化学療法の継続・中止に関する話し合いには、余命などの難しい内容が含まれ、医師に負担があることを示す研究もある。医療者がこの問題にどう対処するべきか論じるためには、医療者のどのような要因が治療を継続させるのかについてのより本質的な実証研究が必要と考える。申請者は乳腺専門医を対象とした予備調査を行い、仮説を生成したが、本研究はその研究対象と研究手法を拡張して仮説を検証し、現場の医療者が準拠すべきガイドラインの策定につながる考察を行うことを目的とする。 | KAKENHI-PROJECT-19K19382 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K19382 |
細胞分裂や器官形成を支配する硫酸化複合糖質-その合成と修飾の研究- | 本研究は、複合糖質硫酸化修飾の生物機能を明らかにするために、多細胞モデル生物である線虫C.elegansを用いてその関連遺伝子(PAPS合成酵素[pps-1]、PAPSトランスポーター[pst-1,pst1-1,pst1-2]、硫酸基転移酵素[hst-1,hst-2,hst-3,hst-6,cst-1cst-25]等)の機能的解析(遺伝子ノックアウト、RNA干渉、遺伝子レポーター解析等)を試みたものである。前年度は、硫酸化の普遍的供与体であるPAPSの合成が及ぼす発生現象をpps-1遺伝子の機能的解析で明らかにしたが、今年度は、pps-1遺伝子の遺伝子阻害によって生じる形態形成の異常を分子レベルで更に詳細に調べ、その結果を国際学会(C.elegans Development and evolution topic meeting #1,June 22-25,2006 at the Univ.of Wisconsin-Madison)で発表した。また、pps-1の解析で得られた情報を生かして線虫の主たる硫酸化糖鎖と考えられるヘパラン硫酸グリコサミノグリカンの合成に関与する遺伝子の一つであるrib-1やrib-2の機能喪失変異体の解析にも携わり、ヘパラン硫酸が線虫の上皮形態形成において重要であることを示すのに貢献した。PAPSトランスポーターの解析では、当初その候補としていたpst1-1遺伝子の解析を中心に行った。その機能阻害と他の硫酸化関連遺伝子群や糖鎖合成遺伝子の網羅的RNAiを行って、その表現型比較から、本分子は硫酸化修飾には関与せず、小胞体の糖鎖合成に密接に関連するらしいということが判明し、現在その関連遺伝子とそれらの機能の詳細を調べた。複合糖質の生物学的素過程における役割、特にその硫酸化修飾の生物機能を明らかにするために、全ての硫酸化修飾に必須な供与体である3'-phosphoadenosine 5'-phosphosulfate(PAPS)の代謝に関わる遺伝子(PAPS合成酵素[pps-1]、PAPSトランスポーター[pst-1,pstl-2,pstl-2]、硫酸基転移酵素[hst-1,hst-2,hst-3,hst-6,cst-1cst-25]等)を、線虫C.elegansに対して、網羅的にRNAi法や欠質変異体の単離によって機能阻害を行った。更には、硫酸化修飾全般がどういった生物学的過程に関与するかといった基盤的情報を得るために、PAPS合成酵素に焦点を絞り、その機能解析を行った。具体的には、蛍光融合タンパク質を利用しpps-1遺伝子の発現解析を行い、本遺伝子が線虫において発生を通じて発現していること、上皮細胞など特定の組織において発現することを証明した。また、共同研究にて、本酵素の生化学的特性を明らかにし、pps-1遺伝子を機能阻害して生じる糖質の硫酸化様式の変動を生化学的に調べた。更には、上皮組織や筋肉組織の異常を、様々な蛍光融合タンパク質や抗体を用いて詳細に解析し、硫酸化修飾がこれらの組織の発生に必須であることを明らかにした。また、pps-1欠質変異体は、致死となったが、外来のpps-1遺伝子を導入することでこれを回復させることも示し、pps-1遺伝子が発生に必須であるという確証を得た。本研究は、複合糖質硫酸化修飾の生物機能を明らかにするために、多細胞モデル生物である線虫C.elegansを用いてその関連遺伝子(PAPS合成酵素[pps-1]、PAPSトランスポーター[pst-1,pst1-1,pst1-2]、硫酸基転移酵素[hst-1,hst-2,hst-3,hst-6,cst-1cst-25]等)の機能的解析(遺伝子ノックアウト、RNA干渉、遺伝子レポーター解析等)を試みたものである。前年度は、硫酸化の普遍的供与体であるPAPSの合成が及ぼす発生現象をpps-1遺伝子の機能的解析で明らかにしたが、今年度は、pps-1遺伝子の遺伝子阻害によって生じる形態形成の異常を分子レベルで更に詳細に調べ、その結果を国際学会(C.elegans Development and evolution topic meeting #1,June 22-25,2006 at the Univ.of Wisconsin-Madison)で発表した。また、pps-1の解析で得られた情報を生かして線虫の主たる硫酸化糖鎖と考えられるヘパラン硫酸グリコサミノグリカンの合成に関与する遺伝子の一つであるrib-1やrib-2の機能喪失変異体の解析にも携わり、ヘパラン硫酸が線虫の上皮形態形成において重要であることを示すのに貢献した。PAPSトランスポーターの解析では、当初その候補としていたpst1-1遺伝子の解析を中心に行った。その機能阻害と他の硫酸化関連遺伝子群や糖鎖合成遺伝子の網羅的RNAiを行って、その表現型比較から、本分子は硫酸化修飾には関与せず、小胞体の糖鎖合成に密接に関連するらしいということが判明し、現在その関連遺伝子とそれらの機能の詳細を調べた。 | KAKENHI-PROJECT-05J06112 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05J06112 |
麹菌の高電圧パルス電界による増殖促進効果と食品関連プロセス設計 | この研究で、我々はパルス電界(PEF)刺激によってAspergillus nigerの生物学的な機能変化を調査した。特に増殖とクエン酸発酵のプロフィールを評価した。すべてのPEFによって処理されたA. nigerはサイズと細胞重量で顕著な増加を示した。これらの増加はクエン酸発酵の中でグルコース消費量とクエン酸生産量のプロフィールを変えていた。PEF処理、未処理のA. nigerの発酵中で最大のクエン酸集中に到達する培養期間はそれぞれ、16と29日だった。PEF処理、未処理のA. niger発酵におけるクエン酸生産速度はそれぞれ1.67、0.96g/L/dayだった。食品プロセスや物質生産技術において有用な微生物であるAspergillus属(麹菌)の培養において、高電圧パルス電界(HV-PEF)を利用すると大幅に増殖速度が増加することが予備実験により確認されている。本研究ではHV-PEFによる増殖促進メカニズムの解明とその物質生産技術への応用の可能性を調査研究している。具体的にはHV-PEF印加条件ならびに培養条件が増殖促進に及ぼす影響の解明、増殖促進に伴う細胞機構の変化の調査、増殖促進を利用した物質生産技術の開発の3点に着目した研究遂行を行っている。まず麹菌の増殖を促進するHV-PEF印加条件については胞子を培養開始後8時間で10kVのHV-PEFを1分間印加することで最も増殖促進効果が認められた。このタイミングを顕微鏡観察したところ、おおよそ発芽が開始したタイミングであった。また培養18日後の乾燥菌体重量はおよそ1.2倍であった。本研究ではグルコースを基質としたクエン酸発酵への影響も調査している。麹菌の増殖促進に伴い、グルコースの消費速度も増加し、またクエン酸発酵速度もおよそ1.75倍に増加することを確認した。回分培養において生成するクエン酸濃度はコントロールに比べて若干低いが、最大クエン酸濃度を達成する培養日数はコントロールが17日後なのに対し、HV-PEF印加培養では8日後であった。この結果から麹菌を用いたクエン酸発酵期間を半分以下にする可能性が示唆された。本研究ではグルコース濃度をある程度コントロールした流加培養についても検討している。流加培養で最終日まで培養した場合、クエン酸生成速度が1.75倍となっていた(Control:0.96 g/(L・Day) PEF:1.68 g/(g/L・Day))。またPEF印加によってクエン酸の生成期間をControlの57%に短縮できることが示された。申請書の計画ではH27年度には以下の2点の検討を予定していた。(1)HV-PEF印加ならびに培養条件が増殖促進現象に及ぼす影響の解明HV-PEF印加時の黒麹菌の各増殖フェーズならびにHV-PEFの印加電圧・印加時間が増殖促進現象に与える影響を調査する。麹菌の胞子、発芽時、対数増前期・後期それぞれにおいてHV-PEFを印加し増殖に与える影響を明らかとする。またこの際のHV-PEFの印加電圧・印加時間、さらにHV-PEFの間欠的な印加が増殖に与える影響についても調査し、培養系中への投入電気エネルギーに着目した観点からも考察を行う。また、黒麹菌を培養する際の培養条件として炭素源に着目し増殖促進現象に及ぼす影響を調査する。工業的に使用することを前提に、炭素源としてグルコース・スクロースなど単糖・二糖に加え、米といった高分子状炭素源を使用しHV-PEFにより誘導される増殖促進を調査する。(2)増殖促進に伴う細胞機構の変化の調査-その1-増殖促進に伴う黒麹菌のタンパク質生産プロファイルの変化を特に酵素生産に焦点を当て解析する。黒麹菌は多数の有用加水分解酵素を有し、外部環境や外的刺激により誘導される表現型によりその生産量と種類を変化させる。HV-PEFが誘導する増殖促進により黒麹菌で生産される酵素群の量・種類の変化について固体培養を含む様々な培養条件下にて調査を行い、食品工業系および酵素生産系への応用のための知見を集積する。このうち(1)については炭素源の影響について現在進行中であるが、グルコースを用いた時の培養条件は確定できている。また(2)に関してはクエン酸発酵のプロファイルを調査することで成果を得られており、おおよそ予定通りの進行状況である。食品プロセスや物質生産技術において有用な微生物であるAspergillus属(麹菌)の培養において、高電圧パルス電界(HV-PEF)を利用すると大幅に増殖速度が増加することが予備実験により確認されている。本研究ではHV-PEFによる増殖促進メカニズムの解明とその物質生産技術への応用の可能性を調査研究する。具体的にはHV-PEF印加条件ならびに培養条件が増殖促進に及ぼす影響の解明、増殖促進に伴う細胞機構の変化の調査、増殖促進を利用した物質生産技術の開発の3点に着目した研究遂行を行っている。PEFを印加することで培養したA. nigerの外観に変化が観察された。通常の培養(control)と比較しPEF印加を行った培養では菌体量が増加している様子が確認された。培養18日後の菌体重量の測定を行ったところ、controlとPEF印加を行った培養では菌体乾燥重量はそれぞれ0.33 g、0.40 gであり、PEFを印加することで増殖が促進されることが確認された。 | KAKENHI-PROJECT-15K06574 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K06574 |
麹菌の高電圧パルス電界による増殖促進効果と食品関連プロセス設計 | 培養時のグルコースの経時変化を測定したところ全てのグルコースが消費されるまでに要した時間はcontrolでは18日であったが、PEF印加培養では培養8日であった。グルコースが全て消費された時点でのクエン酸収率はそれぞれ32.0%、20.2%とPEF印加培養では収率は低下したものの、生産速度では0.70 g/(L・day)、0.95 g/(L・day)と1.4倍の増加が確認された。グルコース濃度が一定値を下回るとクエン酸が消費されてしまうことが確認されたため、グルコース濃度を保つため流加培養を実施したところ、controlとPEF印加培養それぞれで収率は37.8%、39.0%、生産速度は0.96 g/(L・day)、1.68 g/(L・day)とPEF印加培養では大幅に向上した。回分培養においてはAspergillus属(麹菌)が高電圧パルス電界(HV-PEF)により大幅に増殖速度が増加することが確認でき、これに伴いクエン酸発酵の期間短縮が立証されている。今年度はこの成果をもとにジャーファーメンターを用いた流加培養を試みてきた。ジャーファーメンターをAspergillus属に最適化する条件の選定に時間を要し、流加培養における結果が現時点では乏しい状態である。麹菌は、醤油、味噌、日本酒や焼酎といった日本古来の発酵・醸造食品の製造に用いられる微生物である。また黒麹カビ(Aspergillus niger)は、泡盛の醸造だけでなく、クエン酸を発酵によって生成する。世界で生産されるクエン酸は、ほぼ黒麹カビのクエン酸の工業発酵法により生産されている。当研究室では高電圧パルス(PEF)を用いた研究をしており、黒麹カビにPEF印加を行なうことで、黒麹カビの増殖とクエン酸生成の促進を試みた。A. nigerをグルコースの炭素源で培養するとき、PEF印加を施すと菌体重量通常の1.2倍ほど増加した。最適な印加条件は、植菌から8時間後に電界強度10 kV/cmを一分間行なうことだった。A.nigerにおけるクエン酸の生成に適した炭素源はグルコースだった。PEFの印加により、A. nigerのクエン酸生成速度を早めることができた。A. nigerのクエン酸生成に適したグルコース濃度は1025 g/Lだった。炭素源を数回に分けて与える流加培養を行なうことで、回分培養よりも多くのクエン酸を生成できた。(Controlー回分培養:21.75 g/L、流加培養:27.80 g/L、PEFー回分培養:18.30 g/L、流加培養:26.87 g/L)流加培養においてもPEFによるクエン酸生成速度の促進が可能であった。(Control:0.96 g/(L・Day)、PEF:1.68 g/(L・Day))。流加培養とPEF印加を組み合わせることでクエン酸の生成期間をControlの57%に短縮できた。よってA. nigerにPEF印加を行なうことで、菌体重量の増加効果が得られ、クエン酸生成速度を高めることができた。また回分培養ではなく流加培養で培養することで、クエン酸生成量が増加し、クエン酸生成速度を更に高めることが可能であった。この研究で、我々はパルス電界(PEF)刺激によってAspergillus nigerの生物学的な機能変化を調査した。 | KAKENHI-PROJECT-15K06574 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K06574 |
多発性嚢胞腎におけるリンパ管新生の意義の解明と新規治療法の開発 | 多発性嚢胞腎は最も頻度の高い遺伝性腎疾患であり、半数以上の患者が最終的に透析療法や腎移植を必要とするが、未だ有効な治療法は確立されていない。一方、脈管系のリンパ管は過剰な組織液を再吸収して血液循環に戻す働きを持ち、組織間質の恒常性を保つ重要な役割を担っている。本研究では、ヒト多発性嚢胞腎の臨床経過に類似した2種類のマウスモデルを用いて、VEGF-Cに誘導されるリンパ管新生の意義の解明を目的としている。本研究によってリンパ管新生を標的とした多発性嚢胞腎の新しい治療法の開発に貢献できると考える。多発性嚢胞腎は最も頻度の高い遺伝性腎疾患であり、半数以上の患者が最終的に透析療法や腎移植を必要とするが、未だ有効な治療法は確立されていない。一方、脈管系のリンパ管は過剰な組織液を再吸収して血液循環に戻す働きを持ち、組織間質の恒常性を保つ重要な役割を担っている。本研究では、ヒト多発性嚢胞腎の臨床経過に類似した2種類のマウスモデルを用いて、VEGF-Cに誘導されるリンパ管新生の意義の解明を目的としている。本研究によってリンパ管新生を標的とした多発性嚢胞腎の新しい治療法の開発に貢献できると考える。 | KAKENHI-PROJECT-19K17725 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K17725 |
ブラジルの日系コミュニティにおける日本語の集合的継承 | 本研究は、ブラジルの日系コミュニティという集団によって継承される日本語とその表出を観察し、コミュニティでの日本語教育の効果と志向性を明らかにすることを目的とする。現地調査をもとに、集団活動で選択され利用される日本語と日本文化の展開を考察し、継承日本語教育及び継承されてきた日本語の機能と役割を検討する。日本人移住から110年以上が経過し、ブラジルの地域社会で日系コミュニティの再編成が進むなか、コミュニティでの日本語教育、集団活動での日本語使用状況、コミュニティ構成員の変化等を観察し、日系人の日本語使用の活動が地域社会に与える影響を考察する。海外での日本語教育の方向性の一つを提示する研究とする。本研究は、ブラジルの日系コミュニティという集団によって継承される日本語とその表出を観察し、コミュニティでの日本語教育の効果と志向性を明らかにすることを目的とする。現地調査をもとに、集団活動で選択され利用される日本語と日本文化の展開を考察し、継承日本語教育及び継承されてきた日本語の機能と役割を検討する。日本人移住から110年以上が経過し、ブラジルの地域社会で日系コミュニティの再編成が進むなか、コミュニティでの日本語教育、集団活動での日本語使用状況、コミュニティ構成員の変化等を観察し、日系人の日本語使用の活動が地域社会に与える影響を考察する。海外での日本語教育の方向性の一つを提示する研究とする。 | KAKENHI-PROJECT-19J15159 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19J15159 |
グローバル化時代におけるベトナムのインフォーマル部門と労働集約型工業化の可能性 | 今日の経済のグローバル化がもたらす途上国のインフォーマル部門への影響については、多くの研究者や開発関係者が関心を寄せるようになってきた。こうした関心の拡大を背景に、本研究では、多くのインフォーマル企業が活躍するベトナムの国内市場を中心に担う縫製産業に焦点を当て、グローバル経済化が地場企業・産業にもたらす影響と途上国の労働集約型の工業化戦略について、グローバル・バリュー・チェーンの分析枠組みを用いて研究を実施した。その結果、グローバル経済化において、途上国の産業高度化に対するインフォーマル経済の可能性と、これまで輸出志向型の開発政策では見過ごされてきた国内市場の重要性が明らかとなった。今日の経済のグローバル化がもたらす途上国のインフォーマル部門への影響については、多くの研究者や開発関係者が関心を寄せるようになってきた。こうした関心の拡大を背景に、本研究では、多くのインフォーマル企業が活躍するベトナムの国内市場を中心に担う縫製産業に焦点を当て、グローバル経済化が地場企業・産業にもたらす影響と途上国の労働集約型の工業化戦略について、グローバル・バリュー・チェーンの分析枠組みを用いて研究を実施した。その結果、グローバル経済化において、途上国の産業高度化に対するインフォーマル経済の可能性と、これまで輸出志向型の開発政策では見過ごされてきた国内市場の重要性が明らかとなった。本年度はホーチミン市の調査対象地域のインフォーマルな縫製部門の生産と流通組織の実態を明らかにするため、事前準備を開始した。具体的にはホーチミン市経済大学と打ち合わせを行い、同大学の協力を得て予備調査を行った。また、東アジアの労働集約型工業化の開発経験の文献などを収集し、比較検討をする際の視点や政策事例などをまとめる作業を行った。現地機関との打ち合わせの内容としては、まずは調査票の質問事項についての協議とサンプル・フレームの作成が中心となった。サンプル・フレームの作成では、ホーチミン市統計局や民間企業の持つ情報を活用した。さらに、調査票のテストと修正も現地で行い、来年度以降の本調査のベースラインを築くことに主眼を置きながらも、企業調査も小規模ながら実施した。この結果、ある程度まとまったサンプル・データがとれたため、これをもとに英語論文を2本作成し、投稿した。そのうち一本はカンボジアを主眼に置いた労働集約型工業化に関する共著論文であるが、本研究で得たデータが本論文においても比較軸として重要な位置を占めている。当論文は既に査読を経て公刊予定である。また、残り一本はベトナムの労働集約型産業(縫製産業)の発展に関するものであり、現在査読中である。途上国のインフォーマル経済をグローバル・バリュー・チェーンで論じ、労働集約型工業化論の中に位置づけた論文は国内外でほとんど見られないが、これらの論文の査読が通り公刊されれば、途上国で重要な位置を占めるインフォーマル経済を労働集約型工業化との関連を明らかにすることができ、現在の途上国の工業化政策に重要な示唆を与えうるものと思われる。本年度は、まずは昨年実施した予備的調査の追加調査を実施した。そのうえで調査票を修正・完成させ、昨年度に作成したサンプルフレームを用いて抽出したサンプル企業へのベースライン調査(1回目)を実施した。およそ100社への訪問調査を行い、調査対象地であるベトナム・ホーチミン市のインフォーマル縫製企業および同産業の基礎的データを収集した。ただし農村-都市部の労働力移動の調査が限定的にしか実施できなかったため、その調査は今後行う予定である。また、インフォーマル経済および東アジアの労働集約型工業化についての文献収集も引き続き行い、インフォーマル経済関連のプロジェクトを実施している国際労働機関(タイ、バンコク)等への資料収集及び聞き取り調査も実施した。その結果、中国やタイなど競合国で賃金上昇にともなった大掛かりな産業再編が起きていることが明らかとなった。こうした事態は、今後のベトナムのインフォーマル縫製産業にも強い影響を及ぼすものであると思われる。今までの研究成果としては、まずは昨年度に投稿した2つの論文のうち一つ(グローバル・バリュー・チェーンおよびベトナムの労働集約型産業の高度化について、中国との関係で論じたもの)がいくつかの修正を経て査読を通り、国際学術誌に掲載決定となったことが挙げられる(掲載は2011年7月の予定)。もう一つの論文も査読の結果、修正のうえ再投稿し、現在再査読中である。さらに本年度も新たに1本の英語論文を作成、これも国際査読付き学術誌へ投稿中し、現在査読中である。本年度はホーチミン市のインフォーマルな縫製部門の個別企業への訪問調査を実施した。その結果、下記のことが明らかとなった。1)ベトナムでは賃金の上昇圧力から多くの輸出志向型縫製企業が仕様や生地などを海外バイヤーから無償で供給され、縫製部分のみを担当する、いわゆるCMT(Cut, Make and Trim)型委託加工による生産流通形態をとっており、デザインやマーケティングなどにかかわっていない。しかしこれに対し、国内市場を中心に担うインフォーマルな縫製企業では、自ら製品企画から資材の調達、縫製までを行っていることが多い。また自社小売店を整備し、衣類品の流通まで担うなど市場形成にまでかかわる企業も少なくない。輸出型縫製企業が比較的単純で労働集約的な組み立て工程に特化していたのに対し、国内市場を中心とした縫製企業は上述のような、より知識集約度の高い機能を担ってきたのである。この結果、縫製工程に関してはより進んだ海外の先進的な設備や生産システムへのアクセスがあった輸出型企業が効率性・品質という側面において強い優位性を発揮したものの、国内市場型企業は市場の不確実性にまつわるリスクが高いが付加価値も比較的高い機能を担うことで成長を実現してきた。 | KAKENHI-PROJECT-21530281 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21530281 |
グローバル化時代におけるベトナムのインフォーマル部門と労働集約型工業化の可能性 | 2)賃金水準に関しては、インフォーマル企業の中でもばらつきがあり、基本的には担っている工程の付加価値水準で決まるものである。こうした高付加価値な機能を担う主体でも多くは資本集約的な技術に依存せず、基本的には労働集約的である。こうした点の研究を今後さらに進めることで、産業高度化における労働集約産業の新たな発展形態を模索できると思われる。上記の研究成果に基づき、2011年度は査読付き国際学術誌への掲載論文3本を含む5本の論文が公刊された。本年度は最終年度であるため、前年度の研究・分析を継続させつつ、これまでの5年間の研究を総括し、その成果の一部を国際会議の場および論文として発表してきた。まずは2013年7月にジュネーブで行われたWTOの会議で、本研究案件で得られた知見をベースに、アジア経済研究所のプロジェクトに関連させる形で発表を行った。また、前年度以前に実施したサンプルサーベイの補足調査を、ベトナムのホーチミン市のインフォーマル縫製企業を中心に行った。さらに、ホーチミン市の国家統計局支局での資料収集も実施し、現在投稿論文用草稿の執筆中である。さらに、このベトナムでの調査で得た知見を他の研究案件に応用させる形で、タイに関する縫製産業についての論文も2本公刊した(Journal of the Asia Pacific EconomyおよびJournal of Contemporary Asia)。本年度はホーチミン市のインフォーマルな縫製部門のサンプル調査(n=150)を実施した。その結果、下記のことが明らかとなった。1)多くのインフォーマル企業でも、著しい賃金の上昇圧力の影響を受け、高度化を成功させることが死活問題となってきている。輸出型企業と異なり、インフォーマル企業の多くは製品仕様の決定や自主的な資材調達にかかわる機能も担っており、自社小売店を整備し、衣類品の流通まで担うなど市場形成にまでかかわる企業も少なくない。輸出型縫製企業が比較的単純で労働集約的な組み立て工程に特化していたのに対し、国内市場を中心とした縫製企業は上述のような、より知識集約度の高い機能を担ってきたのである。この結果、縫製工程に関してはより進んだ輸出型企業と比較して、国内市場を中心に展開するインフォーマル企業のいくつかは、市場の不確実性にまつわるリスクが高いが付加価値も比較的高い、高度な機能を担うことで成長を実現してきた。2)2009年に収集したサンプルデータを2012年度に収集したデータと照らし合わせ、現在こうした高度な機能を担う能力がどのような条件によって規定されるかに関する計量的な分析を進めている最中である。この分析結果を2013年度中に国際学術誌に投稿する予定である。2012年度も、昨年度に引き続き、査読付き国際学術誌への掲載論文1本を含む計5本の論文・書籍が公刊された。現地での調査のアレンジをホーチミン市経済大学に依頼しているが、これまでの協力関係から順調に進んでいる。25年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-21530281 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21530281 |
濾過特性値の理論的推定とその工業的応用 | 中程度の圧縮性スラリーについて圧縮透過実験を行い、圧縮透過特性を実測した。同一のスラリーの定圧濾過実験を行って定圧濾過特性値を求めるとともに、濾過理論に従って圧縮透過特性を推定した。これらの結果を用いて、濾過ケ-クの総括的な濾過特性値を数値計算法によって理論的に求め実測値と比較したところ、定圧濾過実験値からの推定値が実験結果をよく再現した。さらに一般性を高めるために、生物工学的な材料である酵母および高圧縮性物質である寒天ゲル粒子スラリーの定圧濾過実験を行った。特に、ゲルケ-ク層内の液圧分布を、超小型圧力センサーを組み込んだ新しい濾過装置を用いて実測した。その結果、実測した液圧分布の測定値は、各々のケ-ク圧縮性に対応した曲線形状を示した。また、タンパク質溶液の定圧限外濾過実験における膜近傍ゲル層の電気電導度を白金線電極法を用いて良好に測定することができ、ゲル層の平均空隙率を算出した。定圧濾過実験結果から得られた平均濾過比抵抗および平均空隙率対濾過圧力の関係を圧縮透過データ、すなわち、部分濾過比抵抗および部分空隙率対圧縮圧力の関係に変換し、圧縮性ケ-ク濾過理論に基づいて理論推定計算を行った。その結果、計算値は本研究で実測した全てのスラリー、すなわち、カオリン、酵母、寒天ゲル粒子、ポリスチレンラテックス粒子スラリーおよび牛血清アルブミン溶液に関する実験結果とかなり良い一致が得られた。以上の結果より、ケ-ク濾過理論が限外濾過のレベルまでその拡大適用が可能なことが明らかとなり、総括的な濾過テスト結果に基づく本推定計算法が、濾過器のスケールアップや濾過プロセスの設計など、その工業的応用において大きな寄与を与えることが示唆された。中程度の圧縮性スラリーについて圧縮透過実験を行い、圧縮透過特性を実測した。同一のスラリーの定圧濾過実験を行って定圧濾過特性値を求めるとともに、濾過理論に従って圧縮透過特性を推定した。これらの結果を用いて、濾過ケ-クの総括的な濾過特性値を数値計算法によって理論的に求め実測値と比較したところ、定圧濾過実験値からの推定値が実験結果をよく再現した。さらに一般性を高めるために、生物工学的な材料である酵母および高圧縮性物質である寒天ゲル粒子スラリーの定圧濾過実験を行った。特に、ゲルケ-ク層内の液圧分布を、超小型圧力センサーを組み込んだ新しい濾過装置を用いて実測した。その結果、実測した液圧分布の測定値は、各々のケ-ク圧縮性に対応した曲線形状を示した。また、タンパク質溶液の定圧限外濾過実験における膜近傍ゲル層の電気電導度を白金線電極法を用いて良好に測定することができ、ゲル層の平均空隙率を算出した。定圧濾過実験結果から得られた平均濾過比抵抗および平均空隙率対濾過圧力の関係を圧縮透過データ、すなわち、部分濾過比抵抗および部分空隙率対圧縮圧力の関係に変換し、圧縮性ケ-ク濾過理論に基づいて理論推定計算を行った。その結果、計算値は本研究で実測した全てのスラリー、すなわち、カオリン、酵母、寒天ゲル粒子、ポリスチレンラテックス粒子スラリーおよび牛血清アルブミン溶液に関する実験結果とかなり良い一致が得られた。以上の結果より、ケ-ク濾過理論が限外濾過のレベルまでその拡大適用が可能なことが明らかとなり、総括的な濾過テスト結果に基づく本推定計算法が、濾過器のスケールアップや濾過プロセスの設計など、その工業的応用において大きな寄与を与えることが示唆された。濾過ケ-クの部分濾過特性値を圧縮圧力の関数として得ることは、これを用い濾過理論に従って種々の濾過形式・濾過条件の場合の総括的な濾過特性値が正しく推定出来ることから、実用上も要求度の高い事柄である。しかしながら、現在この目的のために行われている、いわゆる圧縮透過実験は、長時間と高熱練度が要求される実験で、、また精度の高い値を得るためには考慮すべき事項も多く、研究の場以外で普及しているとは言い難い状況である。工業の現場で広く行われている最も簡単な総括的な濾過テストの結果から、ケ-クの部分特性値を推算する手法を確立することができるならば、濾過器のスケールアップや濾過プロセスの設計等々において、工業的な応用が大いに期待できる。1.本年度の実験計画に従って、(1)中程度の圧縮性スラリーについて、圧縮透過実験を行い圧縮透過特性を実測した。(2)同スラリーの定圧濾過実験を行って定圧濾過特性値(総括的な値の実測値)を求めるとともに、濾過理論に従って圧縮透過特性を推定した。(3)上記(1)、(2)を用いて、濾過ケ-クの総括的な濾過特性(総括的な値の推定計算値)を数値計算法によって理論的に求め、実測値と比較したところ、(2)からの推定値が実験結果をよく再現した。2.以上の結果は当初予期しなかった結果であり、さらに一般性を高めるために次年度以降、次の実験と計算が必要であることがわかった。(1)液圧分布の測定値と計算結果を比較し、推定の妥当性を検討する。(2)圧縮性の高いケ-クについて、同様の実験を行う。(3)圧縮圧力の低い範囲の圧縮透過特性の推定法と、それらが全体の計算結果に及ぼす効果について知見を得る必要がある。生物工学的な材料である酵母および高圧縮性物質である寒天ゲル粒子スラリーの定圧濾過実験を行った。 | KAKENHI-PROJECT-06650883 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06650883 |
濾過特性値の理論的推定とその工業的応用 | 特に,ゲルケ-ク層内の液圧分布を,超小型圧力センサーを組み込んだ新しい濾過装置を用いて実測した。その結果,酵母および寒天ゲル粒子のケ-クの圧縮性指数として,それぞれ0.54および0.93の値が得られ,これは,実測した液圧分布の無次元化曲線の形状比較結果ともほぼ良い対応関係を示した。また,アクリル製濾過器の底部に3対の白金線電極を取り付け,電気電導度法を用いてケ-クの空隙率分布を実測した。サブミクロンポリスチレンラテックス粒子についての測定より,本装置の健全性を確認ののち,タンパク質試料である牛血清アルブミン溶液を用いて定圧限外濾過実験を行った。膜近傍におけるタンパク質ゲル層の形成過程を良好に測定することができ,ゲル層の平均空隙率を算出した。定圧濾過実験結果から得られた平均濾過比抵抗および平均空隙率対濾過圧力の関係を圧縮透過データ,すなわち,部分濾過比抵抗および部分空隙率対圧縮圧力の関係に変換し,圧縮性ケ-ク濾過理論に基づいてシミュレート計算を行った。その結果,理論推定計算値は本研究で実測した全てのスラリー,すなわち,カオリン,酵母,寒天ゲル粒子,ポリスチレンラテックス粒子スラリーおよび牛血清アルブミン溶液に関する実験結果とかなり良い一致が得られた。以上の結果より,ケ-ク濾過理論が限外濾過のレベルまでその拡大適用が可能なことが明らかとなり,本推定計算法が濾過器のスケールアップや濾過プロセスの設計など,その工業的応用において大きな寄与を与えることが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-06650883 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06650883 |
脂肪由来間葉系幹細胞の遺伝子解析を利用した治療メカニズム解明と細胞治療法の改良 | 間葉系幹細胞(MSC)は近年臨床応用されているが、その詳細な治療メカニズムについては不明である。申請者らは脂肪由来MSC(ASC)に着目し、低血清培養によるASC(LASC)が骨髄由来MSCや高血清培養ASC(HASC)と比べ、各種疾患モデルで高い治療効果を示すことを報告してきた。我々はmicroarrayの解析から、LASCの高い有効性を説明しうる候補分子としてTLR3およびCXCR7を抽出、これらが高い治療効果に繋がっていると仮説を立てた。免疫調整能へのTLR3活性化の影響や、細胞遊走におけるCXCR7の役割を明らかにし、免疫調整能、細胞遊送能に優れた高機能化LASCを開発していく。間葉系幹細胞(MSC)は近年臨床応用されているが、その詳細な治療メカニズムについては不明である。申請者らは脂肪由来MSC(ASC)に着目し、低血清培養によるASC(LASC)が骨髄由来MSCや高血清培養ASC(HASC)と比べ、各種疾患モデルで高い治療効果を示すことを報告してきた。我々はmicroarrayの解析から、LASCの高い有効性を説明しうる候補分子としてTLR3およびCXCR7を抽出、これらが高い治療効果に繋がっていると仮説を立てた。免疫調整能へのTLR3活性化の影響や、細胞遊走におけるCXCR7の役割を明らかにし、免疫調整能、細胞遊送能に優れた高機能化LASCを開発していく。 | KAKENHI-PROJECT-19K17705 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K17705 |
カイラル有効模型に基づいたハドロン間相互作用とエキゾチックな励起状態の研究 | カイラル動力学におけるエキゾチックハドロンについて調べた。任意のハドロンと南部ゴールドストーンボソンの2体系のs波の相互作用をカイラル対称性の低エネルギー定理により導いた。この相互作用はいくつかのハドロン励起状態を2体の共鳴として動的に生成することが知られているが、我々はエキゾチックチャンネルの相互作用が多くの場合斥力で、引力の場合とりうる相互作用の強さが一意的に決まることを、群論を用いて一般的に示した。この相互作用が束縛状態をつくる条件を調べ、物理的に知られている質量のハドロンを標的とすると、エキゾチックなチャンネルに束縛状態を作れないことを示した。この研究は、エキゾチックハドロンが実験でほとんど観測されていないという事実に対し、QCDのカイラル対称性をよりどころにして、模型に依存しない議論で半定量的な説明を与えた。これらの研究成果は以下の研究会等で発表され、関連する分野の研究者との議論が行われた。国際会議1:HYPO6(ドイツ、マインツ)3:HNP07(韓国、釜山)国内研究会1:KEK研究会「現代の原子核物理-多様化し進化する原子核の描像-」(つくば)2:日本物理学会秋季大会(奈良)4:特定領域研究会「ストレンジネスとエキゾティクス・理論の課題」(志摩)5:日本物理学会春季大会(東京)セミナー発表1:基研談話会(京都大学基礎物理学研究所)2:セミナー(東京工業大学)エキゾチック励起状態の構造を明らかにし、低エネルギーQCDの理解を深めるために以下の研究を行った。1、これまでの研究で我々が明らかにしたΘ+を含むエキゾチック状態のフレーバー表現の枠組みをもとに、Θ+の2メソン結合を表現混合が起こる場合や、異なる量子数を持つ場合に拡張して評価した。ここで得られた従来の一般的な結合を用いて、Θ+のメソン入射生成反応を計算し、内部構造が実験でどのような観測量に反映されるかを明らかにした。現在稼働中のKEKの実験結果と組み合わせることで、内部構造について知見を得ることが出来る。2、Λ(1520)とベクトルK中間子、核子の間の結合定数をカイラルユニタリー法で評価した。Λ(1520)はこれまで3クォーク状態として理解されてきたが、最近メソンとバリオンの束縛状態として記述する研究が活発に行われている。各々の状態を記述する模型を用意し、同じ結合定数を評価してみると、3クォーク状態とメソンバリオン状態で大きく異なる結果を得た。この結合定数は崩壊実験で直接観測は出来ないが、反応計算と実験を組み合わせることで調べられる可能性があり、この粒子の内部構造に関して知見を得ることができる。Θ+のようにあからさまにエキゾチックな状態以外の、これまで知られていた状態の中に含まれる5クォークの成分を引き出すことができる。これらの研究結果は国際会議PANIC05(米国)、PENTA05(米国)、HNP06(奈良)HFDO06(京都)や日本物理学会(日米合同、ハワイ)などで発表され、関連する分野の研究者と議論を行った。カイラル動力学におけるエキゾチックハドロンについて調べた。任意のハドロンと南部ゴールドストーンボソンの2体系のs波の相互作用をカイラル対称性の低エネルギー定理により導いた。この相互作用はいくつかのハドロン励起状態を2体の共鳴として動的に生成することが知られているが、我々はエキゾチックチャンネルの相互作用が多くの場合斥力で、引力の場合とりうる相互作用の強さが一意的に決まることを、群論を用いて一般的に示した。この相互作用が束縛状態をつくる条件を調べ、物理的に知られている質量のハドロンを標的とすると、エキゾチックなチャンネルに束縛状態を作れないことを示した。この研究は、エキゾチックハドロンが実験でほとんど観測されていないという事実に対し、QCDのカイラル対称性をよりどころにして、模型に依存しない議論で半定量的な説明を与えた。これらの研究成果は以下の研究会等で発表され、関連する分野の研究者との議論が行われた。国際会議1:HYPO6(ドイツ、マインツ)3:HNP07(韓国、釜山)国内研究会1:KEK研究会「現代の原子核物理-多様化し進化する原子核の描像-」(つくば)2:日本物理学会秋季大会(奈良)4:特定領域研究会「ストレンジネスとエキゾティクス・理論の課題」(志摩)5:日本物理学会春季大会(東京)セミナー発表1:基研談話会(京都大学基礎物理学研究所)2:セミナー(東京工業大学) | KAKENHI-PROJECT-05J09596 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05J09596 |
侵害刺激に対するアセチルカルニチンの鎮痛効果について | 実験1ラットアストログリァ細胞(以下RCR-1細胞)におけるLPS及びATP刺激によるTNFα産生試験実験(2)ラットミクログリ7細胞(住友ベークライト社)におけるアセチルLカルニチン(ALC)によるLPS刺激下TNFα産生抑制試験1)ラットミクログリア細胞を5×105/m2に調整iし,100μ2を96穴プレートにて37°Cで12時間培養した。PBS洗浄後,専用ミクログリア試験液を150μG添加し,LPSO,10,100ng,1,10μg/m1で刺激し,37°Cで6時間培養後,TNFα産生量を測定した。2)同様に調整したラットミクログリア細胞に,ALC濃度0,1,10,100μM,1,5mMを添加後15分後にLPS100ng/m2を加えた。37°Cで6時間培養後,TNFα産生量を測定した。結果実験(1)実験(2)1)LPS濃度依存性にTNF-α産生が増加する傾向は認められたが,データのばらつきが大きく,有意な濃度依存性は認めなかった。TNF-α産生が得られやすいLPS濃度100ng/mlで刺激したが,ALCが濃度依存性にTNF-α産生を有意に抑制する結果は現在のところ得られていない。実験(1)ラットアストログリア細胞(以下RCR-1細胞)におけるLPS及びATP刺激によるTNFα産生試験RCR-1細胞を5×105/mlに調整し、500μlを24穴プレートにて37°Cで12時間培養した。PBS洗浄後、DMEM+10%FBS 500μlを添加し、LPS濃度0,0.1,1,10,20 n g/mlまたはATP濃度0,1,10,100,500mM,1Mを加えた。37°Cで6時間培養後、TNFα産生量を測定した。実験(2)RCR-1細胞におけるアセチルLカルニチン(以下ALC)によるLPS及びATP刺激下TNFα産生抑制試験実験(3)ラットミクログリア細胞におけるALCによるLPS及びATP刺激下TNFα産生抑制試験ラットミクログリア細胞を5×105/mlに調整し、100μlを96穴プレートにて37°Cで12時間培養した。PBS洗浄後、専用ミクログリア試験液を150μl添加し、ALC濃度0,1,10,100μM、1,5mMを添加後15分後にLPS10ng/mlまたはATP1mMを加えた。37°Cで6時間培養後、TNFα産生量を測定した。結果実験(2)及び(3) RCR-1、ミクログリアともにLPS及びATP刺激下での有意なTNFα産生が認められないためALCのTNFα産生抑制効果の有無は現在のところ検定出来ておらず、研究中である。実験1ラットアストログリァ細胞(以下RCR-1細胞)におけるLPS及びATP刺激によるTNFα産生試験実験(2)ラットミクログリ7細胞(住友ベークライト社)におけるアセチルLカルニチン(ALC)によるLPS刺激下TNFα産生抑制試験1)ラットミクログリア細胞を5×105/m2に調整iし,100μ2を96穴プレートにて37°Cで12時間培養した。PBS洗浄後,専用ミクログリア試験液を150μG添加し,LPSO,10,100ng,1,10μg/m1で刺激し,37°Cで6時間培養後,TNFα産生量を測定した。2)同様に調整したラットミクログリア細胞に,ALC濃度0,1,10,100μM,1,5mMを添加後15分後にLPS100ng/m2を加えた。37°Cで6時間培養後,TNFα産生量を測定した。結果実験(1)実験(2)1)LPS濃度依存性にTNF-α産生が増加する傾向は認められたが,データのばらつきが大きく,有意な濃度依存性は認めなかった。TNF-α産生が得られやすいLPS濃度100ng/mlで刺激したが,ALCが濃度依存性にTNF-α産生を有意に抑制する結果は現在のところ得られていない。 | KAKENHI-PROJECT-18659466 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18659466 |
PBN: 異種ネットワーク混在環境における論理ネットワーク構築に関する研究 | 二年目の平成21年度は,前年度の成果に加えて3つの研九行よっこ.一つ目は、PBNゲートウェイ間のネットワークを、首藤らによるOverlayWeaverというDHTベースの実装を採用した.昨年度のプロトタイプ実装では、10台程度までしかスケールしない設計であったのに対し、今年度は数万台単位でのPBNゲートウェイの接続も可能としている.今後は、PBNの想定する環境に最も適したDHTアルゴリズムの選定を行なって行く予定である.二つ目は、異種ネットワークノードにより構成されるオーバレイの管理APIの整備である.前年度は単一のオーバレイの利用のみ可能であったが、今年度のAPI整備により、任意の名前を持つ任意個数のオーバレイの作成が可能となった.異種ネットワークノードは、任意の数のオーバレイに参加可能である.今後は異なるオーバレイを結合させる際、どのようにアドレスやルーティングを変更するべきかについて研究を進めて行く予定である.最後は、仮想アドレスに関してである.昨年度のプロトタイプ実装では、仮想アドレスはスタティックなアドレス空間しか利用できなかったが、本年度の実装では、任意のアドレス空間を指定し、オーバレイネットワークのアドレスとして利用可能にした.また、異なるオーバレイが結合した際に発生しうる、アドレスの衝突の回避アルゴリズムについて考案した.一年目の平成20年度は,研究実施計画に記述した「アドレスマッピング機能」と「経路選択機能」に相当するプロトタイプ実装を行った.現在アドレスマッピング機能は「ネットワークマスカレード機能」と呼んでおり,アドレス変換に加え,異種ネットワークにより異なるネットワークセマンティクス,例えば生存確認の有無など,を吸収する機能も有する.ネットワークマスカレード機能により,各ネットワークに接続されているノードは,異なるネットワークのセマンティクス(アドレスや機能の有無など)を意識することなく,通信可能となる.異種ネットワークのセマンティクスは,PBNゲートウェイにおいてアドレス変換と機能補完を行うことで実現されている.現在,経路選択機能は異種ノードによるオーバレイネットワーク構築により実現されている.本機能は,ネットワークセマンティクスの異なるネットワークノードを構成要素とし,さらに離れた空間に存在するネットワークノードも構成要素とするオーバレイネットワークを構築し,全ての参加ノードに対してフラットなネットワークを提供する.フラットなネットワークとは,構造化されていないネットワークを指し,たとえばTCP/IPネットワークでは同一サブネットのネットワークを意味する.以上2機能を利用することで,たとえばTCP/IPネットワークに接続するノートから,センサネットワークに接続するセンサノードに対して,IPアドレスを利用してデータ送信が可能となる.これはネットワークマスカレード機能により実現される.また,TCP/IPネットワークノードがブロードキャストによりデータを配布すると,離れた空間に存在するノードに対してもデータが配信される.2機能により,コンテキストアウェアサービス開発者は,異なるセンサノードの存在を意識せず,一つのネットワークを利用したプログラミングのみでサービス構築が可能となるため,開発コストが低減されることが目される.二年目の平成21年度は,前年度の成果に加えて3つの研九行よっこ.一つ目は、PBNゲートウェイ間のネットワークを、首藤らによるOverlayWeaverというDHTベースの実装を採用した.昨年度のプロトタイプ実装では、10台程度までしかスケールしない設計であったのに対し、今年度は数万台単位でのPBNゲートウェイの接続も可能としている.今後は、PBNの想定する環境に最も適したDHTアルゴリズムの選定を行なって行く予定である.二つ目は、異種ネットワークノードにより構成されるオーバレイの管理APIの整備である.前年度は単一のオーバレイの利用のみ可能であったが、今年度のAPI整備により、任意の名前を持つ任意個数のオーバレイの作成が可能となった.異種ネットワークノードは、任意の数のオーバレイに参加可能である.今後は異なるオーバレイを結合させる際、どのようにアドレスやルーティングを変更するべきかについて研究を進めて行く予定である.最後は、仮想アドレスに関してである.昨年度のプロトタイプ実装では、仮想アドレスはスタティックなアドレス空間しか利用できなかったが、本年度の実装では、任意のアドレス空間を指定し、オーバレイネットワークのアドレスとして利用可能にした.また、異なるオーバレイが結合した際に発生しうる、アドレスの衝突の回避アルゴリズムについて考案した. | KAKENHI-PROJECT-08J05611 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08J05611 |
東シナ海及び黄海の海洋科学研究 | 長崎大学と釜慶大学校は学術協淀に基づき、長崎大学水産学部附属船練習船長崎丸を用いて、両大学の研究者が乗船し、東シナ海及び黄海の海洋科学に関する共同研究を行い、これまでに次の結果を得た。1)動物プランクトンの生態:プランクトンの種組成及び日周期垂直移動の特性を解明した。2)稚仔魚分布:50種以上、数万個体の稚仔魚を得た。その多くはカタクチイワシで、サンマ、アジ類、サバ類等の浮魚類ガンゾウビラメ類、カナガシラ類の底魚類が多く出現した。3)底魚類の生物学的特性:トロールネットで漁獲される底魚類の年齢と成長、産卵と成熟について研究し、最近の年齢組成は若年齢群が多くなり、成熟年齢が早い傾向が認められた。また、産卵期は長くなる傾向が認められ、産卵盛期が春と秋の2回認められる魚種もあった。4)海洋の物理環境:予報的結果によれば大陸系淡水によって東シナ海及び黄海に搬入され、さらに対馬暖流によって日本海へ運搬され中国大陸産排出物は、年変化等の長期変動よりも、潮流等の短期変動が卓越していると推定された。5)海底堆積:対馬西北海域で、過去1万年の地殻変動に関して新しい見地が示唆された。6)計量魚探による魚群密度:底魚資源としては、キアンコウ、キグチ、クロソイ、コウライガジ、ジンドウイカ、ナシフグマナガツオ等、浮魚量としては、カタクチイワシ、マサバ、ゴマサバ、コノシロ等が認められた。長崎大学と釜慶大学校は学術協淀に基づき、長崎大学水産学部附属船練習船長崎丸を用いて、両大学の研究者が乗船し、東シナ海及び黄海の海洋科学に関する共同研究を行い、これまでに次の結果を得た。1)動物プランクトンの生態:プランクトンの種組成及び日周期垂直移動の特性を解明した。2)稚仔魚分布:50種以上、数万個体の稚仔魚を得た。その多くはカタクチイワシで、サンマ、アジ類、サバ類等の浮魚類ガンゾウビラメ類、カナガシラ類の底魚類が多く出現した。3)底魚類の生物学的特性:トロールネットで漁獲される底魚類の年齢と成長、産卵と成熟について研究し、最近の年齢組成は若年齢群が多くなり、成熟年齢が早い傾向が認められた。また、産卵期は長くなる傾向が認められ、産卵盛期が春と秋の2回認められる魚種もあった。4)海洋の物理環境:予報的結果によれば大陸系淡水によって東シナ海及び黄海に搬入され、さらに対馬暖流によって日本海へ運搬され中国大陸産排出物は、年変化等の長期変動よりも、潮流等の短期変動が卓越していると推定された。5)海底堆積:対馬西北海域で、過去1万年の地殻変動に関して新しい見地が示唆された。6)計量魚探による魚群密度:底魚資源としては、キアンコウ、キグチ、クロソイ、コウライガジ、ジンドウイカ、ナシフグマナガツオ等、浮魚量としては、カタクチイワシ、マサバ、ゴマサバ、コノシロ等が認められた。長崎大学水産学部附属練習船長崎丸の研究航海は、平成7年4月826日に行われた。乗船研究者は、長崎大学から教官4名、大学院生等6名、釜山水産大学校から教官2名、大学院生等6名の、計20名であった。今回以下の調査が行われた。1)稚仔魚類調査は、ウナギネットの傾斜びき、マルチネットの水平びきで、毎夕日没1時間後に、計6点で行われ、計300個体以上が採集された。最も多いのはマイワシ、カタクチイワシ等の浮魚類であった。他は精査中である。2)動物プランクトンの採集はボンゴネットによる海底からの傾斜びきを、東シナ海と黄海の計14点で行い、計20個のサンプルを得て、現在分析中である。3)海洋の物理環境はCTD(15点)及びXBT(3点)によって観測した。予備的分析によれば、大陸からの淡水輸送には短期変動が認められた。4)海底堆積の調査は、ピストンコアラー(2点)及びスミスマッキンタイア-(9点)で行われた。5)計量魚探による生物資源調査のため1390マイルの航走を行った。6)トロールの試験操業は、底層7点、中層2点、計9点で行われた。多数の魚類、甲殻類、頭足類等が得られたので、計量魚探の結果との対応関係を検討する。多獲された魚類はコノシロ、カタクチイワシ等が認められた。以上の観測、採集結果についてこれまで、釜山水産大学校、韓国海洋研究所、京都大学において共同検討、討論を行い、この他、水産大学校、東京大学海洋研究所等においても種査定、討論等を行って、来年度の研究航海計画を検討した。長崎大学水産学部附属練習船長崎丸の研究航海は、平成8年5月923日の間に行われた。乗船研究者は、長崎大学から教官2名、大学院生等4名、釜慶大学校から教官2名、大学院生6名の、計14名であった。今回は以下の調査、研究が行われた。1)稚仔魚類調査は、ウナギネットの傾斜びき、マルチネットの表層水平びきを、毎夕日没1時間後に、計7点で行われ、数千個体のカタクチイワシを除いて、ウナギネットでは12種以上、197個体、マルチネットでは10種以上、387個体が採集された。 | KAKENHI-PROJECT-07045041 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07045041 |
東シナ海及び黄海の海洋科学研究 | ウナギネットでは中下層稚魚類、マルチネットでは表層性稚魚類がみられ、両ネットの出現種は明らかに異なった。2)動物プランクトンの採集はボンゴネットによる海底からの傾斜びきを、東シナ海と黄海にお12点で行い、計24個のサンプルを得て、現在分析中である。3)海洋の物理環境はCTD(15点)及びXBT(3点)によって観測した。予備的分析によれば、大陸起源の浮遊物及び淡水の海流による輸迭には短期及び長期の2つの変動が認められた。4)海底堆積の調査は、ピストンコアラー(2点)及びスミスマッキンタイア-(9点)で行われ、目下精査中である。5)計量魚探による生物資源調査のため1500マイルの航走を行い、同時に種類確認のためトロール操業は、底層、中層の計11点で行われた。多数の魚類、甲殻類、頭足類等が得られ、計量魚の結果との対応関係を検討している。多獲種はカタクチイワシ、コノシロ、スルメイカ等であった。以上の観測、採集結果についてわが国及び韓国の各大学、研究機関において、種査定、結果の討議を行い、来年度の研究航海計画を検討した。また、長崎大学で行われた海洋シンポジウム、九州大学で行われた日本水産学会秋季大会等で講演発表した。長崎大学水産学部附属練習船長崎丸の研究航海は平成9年5月721日に行われた。乗船研究者は、長崎大学から教官等7名、釜慶大学校から教官ら10名の、計17名であった。1)稚仔魚類調査は、ウナギネットの傾斜びき、マルチネットの表層水平びき計6点で行われ、数千個体のカタクチイワシを除いて、ウナギネットでは15種以上、300個体以上、マルチネットでは15種以上、約400個体が採集された。ウナギネットでは中下層稚魚類、マルチネットでは表層性稚魚類がみられ、両ネットの出現種は明らかに異なった。2)動物プランクトンの採集はボンゴネットによる傾斜びきを、東シナ海と黄海において12点で行い、計24個のサンプルを得て現在分析中である。ノルパックネットによる微少プランクトンの採集は4点で行われ、そのサンプルについても現在分析中である。3)海洋の物理環境はCTD及びXBTによって観測した。本年度は昨年度予想された大陸起源の浮遊物及び淡水の海流による輸送の短期及び長期変動を確認した。4)海底堆積の調査は、ビストンコアラー及びスミスマッキンタイマーで行われ、目下精査中である。5)計量魚探による生物資源調査のため1200マイルの航走を行い、同時に種類確認のためトロール操業は、底層、中層の計9点で行われた。多数の魚類、甲殻類、頭足類等が得られ、計量魚の結果との対応関係を検討している。以上の観測、採集結果についてわが国及び韓国の各大学、研究機関において、種査定、結果の討議を行い、釜慶大学校の海洋シンポジウム、広島大学の日本水産学会秋季大会等で講演発表した。 | KAKENHI-PROJECT-07045041 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07045041 |
腱板断裂術後における肩関節運動量及び筋活動量を指標とした評価法の開発 | 本研究では肩腱板断裂に対して外科的に修復手術を行った後に日常生活でどれくらい肩関節や周囲の筋を動かしているか、およびどの時期に正常レベルまで回復するのかを調べた。腱板修復術後1、3、6、9、12ヶ月の患者(計24名)、および健常者(10名)を対象とした。データロガーを用いて肩関節運動量と三角筋中部線維の筋活動を日中の8時間計測した。腱板断裂術後患者の肩関節運動量は術後1か月で健常者の22%と少なかったが、3ヶ月以降は健常者の60%程度まで回復し、手術していない側と差はなくなった。一方で、三角筋中部線維の筋活動量は術後早期から健常者より大きく活動し、次第に減少していることが明らかとなった。本研究の目的は肩腱板修復術後の患者において日常生活における肩関節運動量および筋活動量がそれぞれ術後1年間でどのように推移していくか測定し、既存の主観的・客観的指標との一致度や修復腱板の再断裂発生との関連について調べることである。本研究では下記の3点を明らかにする。1)肩腱板修復術後の患者において日常生活における肩関節筋活動量、および運動量がそれぞれ術後1年間でどのように推移していくか、2)肩関節筋活動量、および運動量の推移は肩関節疾患に関する既存の主観的・客観的指標の推移とどの程度一致するか、あるいは既存の評価法では捉えられない変化を示しているか、3)肩腱板修復術後の肩関節筋活動量、および運動量は再断裂発生に関係するか、である。そのために肩関節の筋活動量や運動量を長時間計測できる小型のデータロガーが必要となる。そして実際にデータロガーを症例に装着して筋活動量や運動量を正しく計測することが可能か、また長時間計測することが可能かどうかを確認する必要がある。平成27年度には選定したデータロガーを購入し、それを用いて肩関節の筋活動量や運動量を測定する妥当性を既存の三次元動作解析装置や筋電計と同時に計測することで比較検討した。その結果、短時間計測での比較ではあるが、データロガーと既存の計測機器のデータは良好な相関を示していた。これはデータロガーで肩関節の筋活動量や運動量を正しく計測できていることを証明している。また、健常者のボランティアにデータロガーを長時間装着してもらい、不快感を最小限にして装着する方法を決定することができた。これらの前実験により、本実験での測定が実現可能となり妥当性をもって行うことができる。発注先の問題で測定機器の発注から納品まで予定より大幅に時間がかかった。また、機器の性能に関する問い合わせに対する返答にも2か月以上時間がかかり、測定の信頼性や妥当性を確認する前実験に遅れが生じた。本研究の目的は肩腱板断裂に対する腱板修復を受けた患者が、術後の日常生活で手術を受けた方をどの程度動かし、どのような回復過程を経ていくかを計測することである。さらに、この計測が既存の評価指標と独立した要因の評価として有用であるかどうかを検討し、腱板術後に一定の確率で生じる腱板再断裂と術後の肩関節活動量や筋活動量が関連しているかを調べることを目的としている。平成27年度には肩関節活動量や筋活動を長時間計測可能な小型のデータロガーを購入した。それに続き、これらのデータロガーを当施設に既存の三次元動作解析装置や筋電計と同時に用い、測定の信頼性や妥当性を確認している。平成28年度では、これらのデータロガーを現実的に被験者に装着して長時間計測できるかを確認し、機器トラブルの有無や計測のエラーが生じないかを確認した。開始当初はデータの計測や取り込みにエラーを生じていたが、28年度後半より本実験に取り掛かることができ、現時点では腱板修復術後1か月の症例を5名、術後3ヶ月の症例を8名、術後6ヶ月の症例を7名、術後9ヶ月の症例を5名、術後12ヶ月の症例を1名計測した。今後計測を継続するとともに、術後6か月または12か月で行うMRI検査の結果で腱板再断裂の有無を確認し、肩関節活動量や筋活動の術後推移や再断裂との関連性を評価する予定である。また、再断裂が術後6か月の時点で生じていても、その後の肩関節活動量を調査することで再断裂が肩関節活動量に及ぼす影響についても評価していく。長時間計測に伴うデータロガーの電池消費のコントロール、およびデータの取り込み障害といった機器トラブルが続き、本実験の計測の開始に遅れが生じた。本研究は肩腱板断裂に対する腱板修復術を受けた患者が、術後の日常生活で手術を受けた肩を健常レベルまで活動させていくまでの過程と、その間の筋活動量の推移を明らかにすることを目的とした。また、術後1年まで追跡調査することで再断裂が生じる症例において術後の肩関節の活動量および筋活動量が影響しているかどうかを調べた。肩関節活動量と筋活動の計測には小型のデータロガーを使用し、日中8時間連続の計測を実現することができた。これを使用し、1年追跡しえた腱板断裂術後患者24名、および年齢をマッチングさせた健常者10名と対象とし、日中の肩関節活動量および三角筋中部線維の筋活動量を計測した。腱板断裂術後患者は術後1か月、3か月、6カ月、9カ月、1年の時点で計測を行い、3か月の時点では術後と反対側肩の計測も行った。健常者は任意の1日に測定を行った。 | KAKENHI-PROJECT-15K01410 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K01410 |
腱板断裂術後における肩関節運動量及び筋活動量を指標とした評価法の開発 | その結果、術後1か月の時点では健常者の肩関節活動量より有意に少ない活動量を示していたが、術後3か月からは術後1か月と比べて有意に肩関節活動量が多くなり、健常者の活動量と有意差はなくなった。一方、三角筋の筋活動量は術後3か月まで健常者より有意に多い結果となり、術後経過に伴って増加していく肩関節活動量の推移パターンと反対の推移パターンを示していた。術後再断裂は1例のみであり、関連因子を特定することはできなかった。本研究により、肩関節活動量は術後3か月には健常レベルに到達していることがわかった。このことより、活動量としては社会復帰レベルに到達できているといえるが、一方で再断裂が多いとされる術後3か月以内に肩関節活動量が増加しており、再断裂に寄与している可能性も考えられた。また、術後早期は三角筋活動量が多く、腱板筋群との筋活動バランスの速やかな是正が術後リハビリテーションでは重要となる可能性が示唆された。本研究では肩腱板断裂に対して外科的に修復手術を行った後に日常生活でどれくらい肩関節や周囲の筋を動かしているか、およびどの時期に正常レベルまで回復するのかを調べた。腱板修復術後1、3、6、9、12ヶ月の患者(計24名)、および健常者(10名)を対象とした。データロガーを用いて肩関節運動量と三角筋中部線維の筋活動を日中の8時間計測した。腱板断裂術後患者の肩関節運動量は術後1か月で健常者の22%と少なかったが、3ヶ月以降は健常者の60%程度まで回復し、手術していない側と差はなくなった。一方で、三角筋中部線維の筋活動量は術後早期から健常者より大きく活動し、次第に減少していることが明らかとなった。前実験が完了しているため、順次腱板断裂患者の測定を開始していく。測定は術後1年まで行う予定でいるが、腱板修復術後に再断裂してしまう症例の89割は術後6か月以内に再断裂が生じる。そのため、平成28年度末の段階で術後6か月までのデータについて一度統計解析を行い、測定人数の再検討や学会での中間経過報告を行っていく。計測は開始しており、定期的に腱板断裂手術の予定が組まれているため被験者数の確保は十分に行えると見込んでいる。再断裂の有無はMRIで行う予定でいるが、整形外科医の診察時に超音波検査でも確認することが可能であるため、再断裂症例については術後12か月まで待たずにデータ処理を行う。総合領域次年度の研究使用額は生じたのは、今年度の予算を効率的に使用したことと、機器納入遅延などによる計測開始の遅れによる消耗品や謝金などの経費発生しなかったことによって未使用額が生じたためである。計測開始が遅れ、当該年度に予定していた被験者数よりも実際に計測した被験者数が少ない分、謝金および物品費の支払額が少なかったため。平成28年度請求額とあわせ、平成27年度では行えなかった測定に関連する経費と合わせて平成28年度の研究遂行に使用する予定である。平成29年度に予定していた被験者数を増やし、それに伴う物品費と謝金に使用する。 | KAKENHI-PROJECT-15K01410 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K01410 |
非線形分散型方程式の解の長時間挙動について | 本研究では流体中の渦糸運動といった,物理学,工学に現れる非線形偏微分方程式の解の振る舞いを調べることを通して,流体運動の数学的理論の構築を試みた.具体的には,軸対称な渦糸の運動を近似する非線形偏微分方程式の解の長時間挙動をフーリエ解析といった数学の手法を用いて解析した.更にこの方程式よりも,より渦糸の運動を高次近似している非線形偏微分方程式の解の長時間挙動についても調べた.この方程式は非線形性が強いため解析が難しいが,本研究では特殊解の構成,線形化方程式の解析により解の挙動についてのいくつかの見通しを与えることができた.本研究では流体中の渦糸運動といった,物理学,工学に現れる非線形偏微分方程式の解の振る舞いを調べることを通して,流体運動の数学的理論の構築を試みた.具体的には,軸対称な渦糸の運動を近似する非線形偏微分方程式の解の長時間挙動をフーリエ解析といった数学の手法を用いて解析した.更にこの方程式よりも,より渦糸の運動を高次近似している非線形偏微分方程式の解の長時間挙動についても調べた.この方程式は非線形性が強いため解析が難しいが,本研究では特殊解の構成,線形化方程式の解析により解の挙動についてのいくつかの見通しを与えることができた.本年度は、渦糸運動の高次近似モデルとして福本-モハットにより提唱された4階非線形シュレディンガー型方程式について研究を行った。具体的には4階非線形シュレディンガー型方程式の解の存在と一意性について、定在波解の具体的な形状について、という2つの問題に取り組んだ。1、4階非線形シュレディンガー型方程式の解の存在と一意性現象から導かれた微分方程式が解を持つか?また微分方程式の解が存在するとき、ある初期条件の下で解が唯一つに定まるか?という問題は方程式を研究する上で最も基本的な問題である。4階非線形シュレディンガー型方程式の解の存在と一意性についてはいくつかの既存の結果があるが、それらの証明は煩雑であった。そこでわれわれは、ある調和解析の定理を用いることにより、既存の結果より見通しのよい証明を与えた。2、4階非線形シュレディンガー型方程式の定在波解の形状について微分方程式の解の長時間挙動を調べることは数学的に興味深いだけでなく物理学的にも重要である。しかしながら4階非線形シュレディンガー型方程式は方程式自体がかなり複雑なため、その解の長時間挙動を調べるのは容易ではない。われわれは4階非線形シュレディンガー型方程式の解の長時間挙動を調べる第一歩として、4階非線形シュレディンガー型方程式の特殊解、特に定在波解について研究を行った。われわれは福本-モハットのモデルが非線形シュレディンガー方程式の高次近似モデルであるという事実からそれらの定在波解の形は類似しているだろうと予測し、4階非線形シュレディンガー型方程式の定在波解の具体的な構成を試みた。その結果、福本-モハットのモデルが完全可積分となる、ある特別な場合には、非線形シュレディンガー方程式に類似した定在波解を見つけることが出来た。平成20年度は,平成19年度に引き続き非線形分散型方程式の解の長時間挙動について,調和解析的手法を用いて研究を行なった.具体的には4階非線形シュレディンガー型方程式の線形化方程式の解の挙動について解析を行なった.これまでは線形項が未知関数の時間1階偏導関数と空間4階偏導関数のみからなる場合の線形分散型方程式の解の性質を調べてきたが,今年度は上記の線形方程式にさらに空間2階偏導関数が加わった場合の線形分散型方程式の解の長時間挙動の解析を行なった.この方程式は3次元非圧縮非粘性流体中の渦糸運動の高次近似モデルを解析する際に現れる.この方程式を解析する場合,空間4階偏導関数の項と2階偏導関数の項がどのように影響を及ぼしあうか?ということを調べる必要があるが,われわれは解の表示式で現れる振動積分の停留点の近くの挙動を詳しく解析することによりこの方程式の解の長時間挙動を得ることができた.今年度得られた線形化方程式の解に対する漸近公式を用いることにより,4階非線形シュレディンガー型方程式の解の漸近形を形式的に求めることができた.しかしながらこの結果を数学的に正当化するためには非線形項に含まれる微分項の処理をしなければならない.今後はこの問題の解決方法を模索し4階非線形シュレディンガー型方程式の解の長時間挙動に対する数学的理論を構築していきたい. | KAKENHI-PROJECT-19840036 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19840036 |
制約付き包含と排除の原理に基づく画像分解に関する研究 | 本研究で提唱しているオーバーラップ制約付き分解法は,領域4分木の正規化という問題に対して有効であることが知られている.そこで、オートマトン理論でよく知られている決定性有限オートマトンの状態数最少化アルゴリズムをグラフ圧縮技術の一種と見なし,領域4分木のポインター構造を簡略化するアルゴリズムとして適用することで4分木圧縮形式の実用性を検討した。結果として,2値画像ではGIFやPNGといった既存の画像圧縮形式に対して圧倒的に優位な圧縮率を達成できることが分かった.次に,矩形の紙を規則的に折り畳んだ際に生成される図形パターンの生成過程をモデル化し,行列Lシステムと呼ぶ新たな形式文法を提案した。更にこのような折り畳み操作とともに紙を切断するという操作を併用することで,これまで知られていない多種多様な2次元画像を生成し得ることを計算機シミュレーションによって確認した。一方理論面においては,2次元交代性インクドット有限オートマトンは2次元非決定性ペブル有限オートマトンよりも真に受理能力が高いかどうかという長年の未解決問題を解決した。更に,loglog n以上log n未満の領域計算量において、1ペブル交代性チューリング機械は非決定性のものより真に受理能力が高いことを示した。また,2次元画像を回転して走査した結果を総合した上で受理の可否が決定されるオートマトンの認識能力に関し,回転入力をもつ3方向2次元決定性ならびに交代性有限オートマトンにおいて,結合するオートマトンの個数に関する受理能力の階層性,AND型とOR型の比較不能性等の結果が得られた。本研究で提唱しているオーバーラップ制約付き分解法は,領域4分木の正規化という問題に対して有効であることが知られている.そこで、オートマトン理論でよく知られている決定性有限オートマトンの状態数最少化アルゴリズムをグラフ圧縮技術の一種と見なし,領域4分木のポインター構造を簡略化するアルゴリズムとして適用することで4分木圧縮形式の実用性を検討した。結果として,2値画像ではGIFやPNGといった既存の画像圧縮形式に対して圧倒的に優位な圧縮率を達成できることが分かった.次に,矩形の紙を規則的に折り畳んだ際に生成される図形パターンの生成過程をモデル化し,行列Lシステムと呼ぶ新たな形式文法を提案した。更にこのような折り畳み操作とともに紙を切断するという操作を併用することで,これまで知られていない多種多様な2次元画像を生成し得ることを計算機シミュレーションによって確認した。一方理論面においては,2次元交代性インクドット有限オートマトンは2次元非決定性ペブル有限オートマトンよりも真に受理能力が高いかどうかという長年の未解決問題を解決した。更に,loglog n以上log n未満の領域計算量において、1ペブル交代性チューリング機械は非決定性のものより真に受理能力が高いことを示した。また,2次元画像を回転して走査した結果を総合した上で受理の可否が決定されるオートマトンの認識能力に関し,回転入力をもつ3方向2次元決定性ならびに交代性有限オートマトンにおいて,結合するオートマトンの個数に関する受理能力の階層性,AND型とOR型の比較不能性等の結果が得られた。オートマトン理論でよく知られている決定性有限オートマトンの状態数最少化アルゴリズムをグラフ圧縮技術の一種と見なし,画像圧縮の一手法として古くから知られている領域4分木のポインター構造を簡略化するアルゴリズムとして適用することで4分木圧縮形式の実用性を検討した.なお,本研究で提唱しているオーバーラップ制約付き分解法は,領域4分木の正規化という問題に対して有効であることが知られている.結果として,2値画像ではCIFやPNGといった既存の画像圧縮形式に対して圧倒的に優位な圧縮率(簡略化4分木では平均28%であるのに対してGIF, PNGではそれぞれ38%,43%)を達成できることが分かった,しかしながら,グレースケール画像やカラー画像に対しては2値画像用の簡略化4分木を単純に重ね合わせただけの構造を採用したために思うような圧縮効率が得られなかった.このことは2値画像からカラー画像へ圧縮法を一般化する際には画像ビットプレーン間の関連性を十分考慮する必要があることを示している.なお,本手法に基づく画像圧縮解凍ルーチンを初心者でも気軽に行なえるようGUIインターフェースを持つJavaシステムを開発した.一方,純粋な理論ではあるが2次元画像上で動作するオートマトンの認識能力に関して,o(log n)以下の領域計算量しか持たない1ペブル決定性チューリング機械は非決定性のものより真に受理能力が劣るという結果が得られた.領域計算量とはアルゴリズムを実行する際に作業用に用いる内部メモリーの使用量のことであり,また決定性1ペブル2次元有限オートマトンが2値画像の連結性を認識できるという事実を考えれば実用的にも興味深い結果である.まず、純粋な理論ではあるが、2次元画像上で動作するオートマトンの認識能力に関して,回転入力をもつ3方向2次元決定性有限オートマトンにおいて、結合するオートマトンの個数に関する受理能力の階層性、AND型とOR型の比較不能性等の結果が得られた。この種のオートマトンはCT(Computer Tomography)に代表される断層画像技術をモデル化しており、2次元画像を様々な方向から走査(投影)し、得られた複数の低次元情報を1つに統合することで原画像の特徴を判別するという2段階の動作からなる。本結果は、特定の圧縮操作を行うことで原画像の情報がどの程度欠落するかを理論的に例示している。また、2次元交代性インクドット有限オートマトンは2次元非決定性ペブル有限オートマトンよりも真に受理能力が高いかどうかという長年の未解決問題を解決できた。これらの2次元オートマトンはいずれも2値画像の連結性を認識できるという事実を考えれば、実用的にも興味深い結果である。 | KAKENHI-PROJECT-15500012 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15500012 |
制約付き包含と排除の原理に基づく画像分解に関する研究 | なお、現時点では未投稿論文ではあるが、L-システムと呼ばれる形式文法を用いた伝統的パターンの生成に関する研究も行った。具体的には、日本で馴染み深い桜・梅・松・竹などの樹木や和紙に描かれた模様を表現する際の最適な文法パラメータを探索し、市販のレンダリングソフトを用いてCG画像を作成した。その結果、各樹木の特徴を的確に捉えるようなパラメータの規則性をそれぞれ見出すことができた。1.loglog n以上log n未満の領域計算量において、1ペブル交代性チューリング機械は非決定性のものより真に受理能力が強いことを示した。領域計算量とはアルゴリズムを実行する際に作業用に用いる内部メモリーの使用量のことであり、また決定性2次元1ペブル有限オートマトンが2値画像の連結性を認識できるという事実を考えれば実用的にも興味深い結果である。2.2次元画像上で動作するオートマトンの認識能力に関して、1触手を持つ2次元コミュニケーションPシステムを新に導入し、細胞膜の深さが1で決定性の場合は有限オートマトンよりも真に受理能力が弱いが、深さが2以上であれば決定性、非決定性いずれの場合にも通常の有限オートマトンと等価であることを示した。Pシステムとは、細胞内で並列分散的に起こる生化学反応過程をオートマトン理論的に解釈した計算モデルであり、我々のPシステムでは触手を通じて外部にある画像情報を細胞内に取り込みながら細胞内で化学反応を進める。2次元有限オートマトンが2値画像の連結性を認識できるかどうかは未解決な問題であるが、それと等価なPシステムが見出されたことは当該オートマトンを設計する際により自由度をもたらすはずである。上記以外に、矩形の紙を規則的に折り畳んだ際に生成される図形パターンの生成過程をモデル化し、行列Lシステムと呼ぶ新たな形式文法を提案した。Lシステムは植物などのCG画像を生成するための枠組みとしてよく知られている。このような折り畳み操作とともに紙を切断するという操作を併用することで、どのような2次元画像が生成されるかを計算機シミュレーションによって調査した。当結果は国際会議に投稿中である。 | KAKENHI-PROJECT-15500012 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15500012 |
希土類元素を含む銅系合金および酸化物の製造プロセシングに関する基礎的研究 | 1.銅-希土類合金の溶製に関する研究を行った。平成910年度で希土類元素としてLa.Nd,Sm,Ce,Gd及びYに対する実験を行った。Arガス雰囲気中でグラファイトるつぼにより15001800Kの温度領域で合金を溶解した。溶銅中の希土類の溶解度は希土類炭化物の析出により飽和に達した。採取試料の希土類金属の分析から溶銅中の希土類金属の溶解度は以下のように温度の関数として得られた。2.固体のCu-RE-O(RE:La,Nd,Gd)系の相関係を10001300Kにおいて試料急冷後の粉末X線回折により求め、等温断面図を作成した。その結果、La系では複合酸化物としてLa_2CuO_4およびLaCuO_2が、Nd系ではNd_2CuO_4およびNdCuO_2が、Gd系ではGd_2CuO_4が存在することを明らかにした。また、それぞれの系内に存在する3凝縮相平衡に対してジルコニア固体電解質を用いて酸素分圧を測定し、それぞれの複合酸化物の安定に存在する領域を温度と酸素分圧の関数として求めた。3. Cu_xO-Gd_2O_3系の状態図の作成を0.21atmの酸素分圧下で示差熱分析および熱重量測定を併用して行った。現在若干の確認実験を続行中である。1.銅-希土類合金の溶製に関する研究を行った。平成910年度で希土類元素としてLa.Nd,Sm,Ce,Gd及びYに対する実験を行った。Arガス雰囲気中でグラファイトるつぼにより15001800Kの温度領域で合金を溶解した。溶銅中の希土類の溶解度は希土類炭化物の析出により飽和に達した。採取試料の希土類金属の分析から溶銅中の希土類金属の溶解度は以下のように温度の関数として得られた。2.固体のCu-RE-O(RE:La,Nd,Gd)系の相関係を10001300Kにおいて試料急冷後の粉末X線回折により求め、等温断面図を作成した。その結果、La系では複合酸化物としてLa_2CuO_4およびLaCuO_2が、Nd系ではNd_2CuO_4およびNdCuO_2が、Gd系ではGd_2CuO_4が存在することを明らかにした。また、それぞれの系内に存在する3凝縮相平衡に対してジルコニア固体電解質を用いて酸素分圧を測定し、それぞれの複合酸化物の安定に存在する領域を温度と酸素分圧の関数として求めた。3. Cu_xO-Gd_2O_3系の状態図の作成を0.21atmの酸素分圧下で示差熱分析および熱重量測定を併用して行った。現在若干の確認実験を続行中である。本年度は銅-希土類合金の溶製に関する研究を主に行った。希土類元素としてLa,Nd,SmおよびCeを選び、Ar雰囲気下、グラファイトるつぼにて1500-1900Kの温度域で銅-RE(希土類、以後RE)合金を溶解した。使用したREは炭化物が安定なため溶銅中へのREの溶解度は希土類炭化物の生成により飽和に達した。サンプリング試料のRE分析を行った結果、溶銅合金-グラファイト-RE炭化物の3凝縮相平衡で決まる溶銅中のREの溶解度はそれぞれ温度の関数として次式で与えらる結果を得ている。また、Y,Gdについて現在実験を続行中である。一方、固体Cu-La-O,Cu-Nd-OおよびCu-Gd-Oの相関系を10001300Kにおいて試料急冷後の粉末X線回折により求め、等温断面図を作成した。その結果、La系では複合酸化物としてLa_2CuO_4およびLaCuO_2が、Nd系ではNd_2Cu0_4およびNdCuO_2が、Gd系ではGd_2CuO_4が存在することを明らかにした。現在、それぞれの系内に存在する3凝縮平衡に対してジルコニア固体電解質を用いて酸素分圧を測定中である。1.昨年度に続き、銅一希土類合金の溶製に関する研究を行った。溶銅中への溶解度について希土類元素として9年度はLa,Nd,SmおよびCeを行ったが、本年度はSmおよびGdを選び、Ar雰囲気下、グラファイトるつぼにて1500-1800Kの温度域で銅-RE(希土類、以後RE)合金を溶解した。使用したREは炭化物が安定なため溶銅中へのREの溶解度は希土類炭化物の生成により飽和に達した。サンプリング試料のRE分析を行った結果、溶銅合金-グラファイト-RE炭化物の3凝縮相平衡で決まる溶銅中のREの溶解度はそれぞれ温度の関数として次式で与えられる結果を得ている。なお、Yに関しては確認実験を行っている。2.固体Cu-La-O,Cu-Nd-OおよびCu-Gd-Oの相関係を10001300Kにおいて試料急冷後の粉末X線回折により求め、等温断面図を作成した。その結果、La系では複合酸化物としてLa_2CuO_4およびLaCuO_2が、Nd系ではNd_2CuO_4およびNdCuO_2が、Gd系ではGd_2CuO_4が存在することを明らかにした。また、それぞれの系内に存在する | KAKENHI-PROJECT-09650816 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09650816 |
希土類元素を含む銅系合金および酸化物の製造プロセシングに関する基礎的研究 | 3凝縮相平衡に対してジルコニア固体電解質を用いて酸素分圧を測定し、それぞれの複合酸化物の安定に存在する領域を温度と酸素分圧の関数として求めた。3. CU_xO-Gd_2O_3系の状態図の作成を0.21atmの酸素分圧下で示差熱分析および熱重量測定を併用して行っており、現在若干の確認実験を続行中である。 | KAKENHI-PROJECT-09650816 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09650816 |
児童・家族問題への早期公的介入システムの構築に関する研究 | 今回の研究を通して明らかになったことは、多くのケースで養護問題発生の早い時期から福祉事務所、保健所、保育所、学校等地域により密着している機関・施設が一時的にも、ある程度継続的にも介入し、続いて児童相談所、施設での介入(援助)となっている。しかしこれらの公的・私的機関、施設による介入(援助)は、それぞれの機関、施設が個別のケースに対して個別的に行っていることが少なくないいことであった。養護問題は家族の問題であり、子どもに起こっている現象としての問題だけを見て介入を行っても根本的解決は因難であり、家族全体をケースとして他機関との連携の中でトータル的な介入を行っていく必要のあることが調査をとおして明らかになり、この度の研究の仮説が裏付けられたともいえる。本研究では、養護問題の経過に沿ってエコマップ(eco-map)の作成を試みた。どのケースを見ても援助を必要とする児童や家族を支援する資源が、問題や状況の変化、児童・家族自身の成長・変化等に応じて段階毎に増加している。したがって親・家族の養育機能の遂行に何らかの困難が生じた時、親以外の全てを社会資源と捉えて、養育のためのサポートシステムを構築していく必要のあることが再確認できた。ただエコマップの作成にあたっては、家族を支援するいくつかの資源が当の児童や家族に対してどのように関わり、どの程度関わったかを図示することができず今後の課題である。児童・家族の福祉的ニーズの早期発見と早期介入に関する基礎的な資料をうるため、相談機関では宮城県(仙台市、塩竃市)、沖縄県における児童相談所、婦人相談所、福祉事務所(家庭児童相談室)の利用者に対して、また児童福祉施設等では北海道(富良野市)、東北(仙台市)、関東(東京都)、東海(名古屋市)、関西(京都市、大阪市)、九州(福岡県、沖縄県)の地域で乳児院、養護施設、自立援助ホーム利用者に対して事例調査(予備調査)を行った。予備調査をとおして明かになったことは、問題発生の早い時期から、親子を分離することなく家族ぐるみでの公的・私的機関施設による介入(援助)は、それぞれの機関・施設が特別なケースに対して極めて個別的に行っていることであった。この介入(援助)が普遍的なシステムとして確立していないことから、多くの場合、問題が深刻化してから児童の福祉を守るために、問題の家族から引き離し施設等に入所させる措置をとってきている。そのため各々の児童は養護問題の根本的な解決をみないままに成長し、自立に向けて努力しながらも、現実の社会のなかで困難に遭遇するものも少なくないのが実情であった。特に今年度の自立援助ホーム利用者(15歳20歳)57名の事例調査では、その入所経路が養護施設からの依頼10名、非行等があり家庭裁判所からの試験観察による委託8名、児童相談所からの依頼19名、福祉事務所9名、婦人相談所2名、保護観察所2名、その他7名といったように多岐にわたっており、そのいずれもが乳幼児期からの問題が未解決のまま現在に至っていることが明らかであった。親等の家族による支援が希薄なままでの彼らの社会での自立の困難さが容易に予測されることからも、彼らの問題の早期に親子ぐるみ、家族ぐるみで何らかの援助が与えられ、問題の解決が図られていることが最重要課題として再認識された。今回の研究を通して明らかになったことは、多くのケースで養護問題発生の早い時期から福祉事務所、保健所、保育所、学校等地域により密着している機関・施設が一時的にも、ある程度継続的にも介入し、続いて児童相談所、施設での介入(援助)となっている。しかしこれらの公的・私的機関、施設による介入(援助)は、それぞれの機関、施設が個別のケースに対して個別的に行っていることが少なくないいことであった。養護問題は家族の問題であり、子どもに起こっている現象としての問題だけを見て介入を行っても根本的解決は因難であり、家族全体をケースとして他機関との連携の中でトータル的な介入を行っていく必要のあることが調査をとおして明らかになり、この度の研究の仮説が裏付けられたともいえる。本研究では、養護問題の経過に沿ってエコマップ(eco-map)の作成を試みた。どのケースを見ても援助を必要とする児童や家族を支援する資源が、問題や状況の変化、児童・家族自身の成長・変化等に応じて段階毎に増加している。したがって親・家族の養育機能の遂行に何らかの困難が生じた時、親以外の全てを社会資源と捉えて、養育のためのサポートシステムを構築していく必要のあることが再確認できた。ただエコマップの作成にあたっては、家族を支援するいくつかの資源が当の児童や家族に対してどのように関わり、どの程度関わったかを図示することができず今後の課題である。児童・家族の福祉的ニーズの早期発見と早期介入に関する基礎的な資料をうるための事例調査を実施した。調査対象は、相談機関では、児童相談所(宮城県2、沖縄県1)、福祉事務所[家庭児童相談室](宮城県2、沖縄県2)、婦人相談所(宮城県1、沖縄県1)の9機関で77ケースであった。児童福祉施設は、乳児院(宮城県1、神奈川県1、福岡県1)3施設18ケース、児童養護施設(北海道1、宮城県2、山梨県1、福岡県1、沖縄県2)7施設59ケース、母子生活支援施設(神奈川県1)1施設6ケース、自立援助ホーム(東京都1)1施設75ケースであり、機関、施設の両方合わせて235ケースであった。 | KAKENHI-PROJECT-09410063 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09410063 |
児童・家族問題への早期公的介入システムの構築に関する研究 | 調査をとおして明かになったことは、養護問題発生の早い時期から、親子を分離することなく家族ぐるみでの公的・私的機関、施設による介入(援助)は、相談機関、児童福祉施設ともそれぞれの機関、施設が特別なケースに対して極めて個別的に行っていることであった。この早期の公的介入(援助)が普遍的なシステムとして確立していないことから、多くの場合、問題が深刻化してから児童の福祉を守るために、問題の家族から引き離し施設等に入所させる措置をとってきている。そのため各々の児童は養護問題の根本的な解決をみないままに成長し、自立に向けて努力しながらも、現実の社会のなかで困難に遭遇するものも少なくないのが実情であった。ただこのようななかでも事例によっては、児童相談所や保健所、学校等が連携を密にしながら早期に児童・家族の問題解決をはかっているものもあり、公的介入、援助システム構築のための貴重な示唆が得られた。事例一つ一つのもっている意味、特にそれぞれの事例にみられる児童の正常な成長発達を保障するために、養護問題発生の早い時期からの支援システムの構築が最重要課題であることが再認識された。本年度は、前年度までに収集した事例についての分析を行った。分析の対象は、相談機関では、児童相談所45、福祉事務所[家庭児童相談室]23、婦人相談所14の82ケース、児童福祉施設では、乳児院18、児童養護施設63、母子生活支援施設6、自立援助ホーム43の130ケースで、機関、施設の両方合わせて212ケースであった。また児童を直接対象とするものは192ケース、親を対象とするもの20ケースであった。分析作業をとおして明らかになったことは、養護問題発生の早い時期からの公的・私的機関、施設による介入(支援)は、相談機関、児童福施設ともそれぞれの機関、施設が個別のケースに対して極めて個別的に行っていることが多いことであった。研究目的である早期介入(支援)システムという視点からこれらの機関、施設考えるとき、養護問題の発生に際して、最も身近な親族、近隣をはじめとして、児童委員、保育所、幼稚園、児童館、学校、児童相談所、福祉事務所(家庭児童相談室)、婦人相談所等の支援のためのネットワークをどう構築していくかということと、これらのシステムの中でそれぞれの機関、施設をどう位置づけ、どのような役割を果たしていくのかを、それぞれのケース毎に考えなければならないということであった。この度の研究では養護問題の経過に沿ったエコマップの作成を試みたが、どのケースにおいても援助を必要とする児童や家族を支援する資源が経過(段階)毎に増加していた。ただ、これらの資源が本児や家族に対してどのように関わり、どの程度関わっているのかなど質、量を図示することができず今後の課題として残されている。 | KAKENHI-PROJECT-09410063 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09410063 |
イオンビーム照射にて変異誘発した冬虫夏草菌による薬理活性物質の高効率生産法の開発 | キノコは、食物繊維、ビタミン、ミネラルなどの栄養素が豊富であり、薬理活性成分を含む場合も多いため、古くから漢方薬や民間薬として利用されてきた。なかでも、アガリクス・ブラゼイ、ハタケシメジ、ヤマブシタケ、メシマコブ、カバノアナタケ、冬虫夏草などは健康食品素材や薬用キノコとして特に注目を集めている。コルジセピンは、冬虫夏草の有効成分の中でも特に注目されている、抗菌・抗腫瘍・転移抑制作用を持つ物質(HIV感染症、白血病治療薬としてフェーズIIIの段階)であり、医薬品への利用が大いに期待されている。天然物由来のものには供給量に限りがあるため、現在、人工培養による生産研究が盛んに行われている。これまでに報告されている最大のコルジセピン生産量は、本研究で行われた野生株Cordyceps militarisの培養によるもので、2.5g/lであった。産業化を目指すために、その指標となる生産量10g/lを達成するような冬虫夏草菌による薬理活性物質"コルジセピン"の大量生産法の確立を目的として、まず、野生株Cordyceps militarisの菌糸体にイオンビームを照射し、突然変異を誘発させ、続いて、コルジセピン高生産株のスクリーニングを行った。さらに、得られたコルジセピン高生産株に対する最適培地条件の検討を行い、コルジセピン生産量6.8g/lを実現した。さらに、アデノシンを添加した培地で、コルジセピン高生産株によるコルジセピンの高生産化を試みた。アデノシンを6g/L以上添加することにより、Contrlと比較して有意にコルジセピン生産量が上昇した。アデノシン6g/Lの場合が最高で、生産量は8.6g/Lとなった。本研究の成果は野生株の最大生産量2.5g/lを大きく上回るものである。本研究では、冬虫夏草菌による薬理活性物質"コルジセピン"の大量生産法の確立を目的として、まず、野生株Cordyceps militarisの菌糸体にイオンビームを照射し、突然変異を誘発させ、続いて、コルジセピン高生産株のスクリーニングを行った。さらに、得られたコルジセピン高生産株に対する最適培地条件の検討を行った。その結果を以下に示す。1.Cordyceps militaris野生株への600および800グレイのプロトンビーム照射により変異を誘発し、照射菌株から8-アザアデニン耐性菌、8-アザグアニン耐性菌株を分離2.得られた8-アザグアニン耐性菌の中から、コルジセピン高生産株を選別(G81-3株と命名)3.実験計画法の適用により、コルジセピン高生産株(G81-3)に対する培地条件の最適化を行い、コルジセピン生産量6.8g/1を実現(培地条件:酵母エキス93.8g/L、グルコース86.2g/L)コルジセピンは、冬虫夏草の有効成分の中でも特に注目されている、抗菌・抗腫瘍・転移抑制作用を持つ物質(HIV感染症、白血病治療薬としてフェーズIIIの段階)であり、医薬品への利用が大いに期待されている。天然物由来のものには供給量に限りがあるため、現在、人工培養による生産研究が盛んに行われている。これまでに報告されている最大のコルジセピン生産量は、当研究室で行われた野生株Cordyceps militarisの培養によるもので、2,5g/1であった。本研究の成果はこの値を大きく上回るものである。キノコは、食物繊維、ビタミン、ミネラルなどの栄養素が豊富であり、薬理活性成分を含む場合も多いため、古くから漢方薬や民間薬として利用されてきた。なかでも、アガリクス・ブラゼイ、ハタケシメジ、ヤマブシタケ、メシマコブ、カバノアナタケ、冬虫夏草などは健康食品素材や薬用キノコとして特に注目を集めている。コルジセピンは、冬虫夏草の有効成分の中でも特に注目されている、抗菌・抗腫瘍・転移抑制作用を持つ物質(HIV感染症、白血病治療薬としてフェーズIIIの段階)であり、医薬品への利用が大いに期待されている。天然物由来のものには供給量に限りがあるため、現在、人工培養による生産研究が盛んに行われている。これまでに報告されている最大のコルジセピン生産量は、本研究で行われた野生株Cordyceps militarisの培養によるもので、2.5g/lであった。産業化を目指すために、その指標となる生産量10g/lを達成するような冬虫夏草菌による薬理活性物質"コルジセピン"の大量生産法の確立を目的として、まず、野生株Cordyceps militarisの菌糸体にイオンビームを照射し、突然変異を誘発させ、続いて、コルジセピン高生産株のスクリーニングを行った。さらに、得られたコルジセピン高生産株に対する最適培地条件の検討を行い、コルジセピン生産量6.8g/lを実現した。さらに、アデノシンを添加した培地で、コルジセピン高生産株によるコルジセピンの高生産化を試みた。アデノシンを6g/L以上添加することにより、Contrlと比較して有意にコルジセピン生産量が上昇した。アデノシン6g/Lの場合が最高で、生産量は8.6g/Lとなった。本研究の成果は野生株の最大生産量2.5g/lを大きく上回るものである。 | KAKENHI-PROJECT-20560726 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20560726 |
パーソナライズド学習を支援する学習者知識モデルに関する研究 | 本研究は,認知診断モデルに基づいて,学習者の躓きや学習状況を詳細に診断し,学生一人ひとりに応じたオーダーメイド学習支援を行うことを目標とする。ネット学習時代の到来を見据え,学習ログデータの活用による個別化学習支援の観点から,問題項目を認知的スキルにマッピングするQ-matrix自動学習に焦点を当て,学習データ駆動によりQ-matrixと学習者の知識習得状態を推定するアルゴリズムの検討を進めている。初年度では,まずBoolean Matrix積の基本原理を利用し,Q-matrixに基づいて,学習者の項目に対する理想反応パタンと知識習得状態の関係を示すBoolean Description Function (BDF)関数を解析的に表現した。また,得られたQ-matrixを制約条件とし,教師なし学習に用いられる人工ニューラルネットワークである自動エンコーダを利用したQ-matrix生成自動エンコーダ(Q-matrix-generated Auto Encoder: QAE)モデルを提案した。提案手法は,ディープラーニング手法を用いるため大規模データを取り扱うことができ,専門家判断によるQ-matrixを制約条件としてQAEモデルに取り入れることができるため,認知診断モデルの解釈可能性を保持できるという特徴を持っている。シミュレーションデータ,および分数の認知診断テスト等の実データに適用し,従来の認知診断モデルや行列分解法等との比較実験を行った結果,提案したQAEモデルの方が, Q-matrix自動学習において高い精度と頑健性を示した。研究成果は,該当分野のトップカンファレンスであるEDM2018等に採択され,国際学会で成果発表を行った。Q-matrixの自動学習において,ブール行列分解法のみならず,人口ニューラルネットワーク法を用いてQAEモデルを提案し,提案モデルの有効性と頑健性を示すことができた。論文は当該分野のトップカンファレンスに採択された。計画どおり推進する。本研究は,認知診断モデルに基づいて,学習者の躓きや学習状況を詳細に診断し,学生一人ひとりに応じたオーダーメイド学習支援を行うことを目標とする。ネット学習時代の到来を見据え,学習ログデータの活用による個別化学習支援の観点から,問題項目を認知的スキルにマッピングするQ-matrix自動学習に焦点を当て,学習データ駆動によりQ-matrixと学習者の知識習得状態を推定するアルゴリズムの検討を進めている。初年度では,まずBoolean Matrix積の基本原理を利用し,Q-matrixに基づいて,学習者の項目に対する理想反応パタンと知識習得状態の関係を示すBoolean Description Function (BDF)関数を解析的に表現した。また,得られたQ-matrixを制約条件とし,教師なし学習に用いられる人工ニューラルネットワークである自動エンコーダを利用したQ-matrix生成自動エンコーダ(Q-matrix-generated Auto Encoder: QAE)モデルを提案した。提案手法は,ディープラーニング手法を用いるため大規模データを取り扱うことができ,専門家判断によるQ-matrixを制約条件としてQAEモデルに取り入れることができるため,認知診断モデルの解釈可能性を保持できるという特徴を持っている。シミュレーションデータ,および分数の認知診断テスト等の実データに適用し,従来の認知診断モデルや行列分解法等との比較実験を行った結果,提案したQAEモデルの方が, Q-matrix自動学習において高い精度と頑健性を示した。研究成果は,該当分野のトップカンファレンスであるEDM2018等に採択され,国際学会で成果発表を行った。Q-matrixの自動学習において,ブール行列分解法のみならず,人口ニューラルネットワーク法を用いてQAEモデルを提案し,提案モデルの有効性と頑健性を示すことができた。論文は当該分野のトップカンファレンスに採択された。計画どおり推進する。 | KAKENHI-PROJECT-18K11597 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K11597 |
経頭蓋超音波ドプラ法を用いた脳血流評価:発作モニタリングの新規指標の確立へ | 獣医療において、重度なけいれん発作の治療モニタリングはほとんど行われてこなかった。脳波検査に基づく電気活動的な“Seizure Free"が治療の目標であるが、獣医療において現状利用可能な肉眼的観察では“Seizure Free"が達成されているかは分からない。本研究では近年獣医療で急速に普及している超音波診断装置を利用し、経頭蓋超音波ドプラ法による脳血流評価を用いたけいれん発作の新規治療モニタリング法を検討することとした。本研究では1実験的けいれん発作モデルにおける脳血流波形変化の解析、2集中治療中のけいれん発作症例犬における経時的な脳血流波形解析、のアプローチを計画した。2018年度は実験的けいれん発作モデル犬における脳血流波形変化の解析を目標とし、実験的にけいれん発作モデルを作出し、発作によって生じる脳血流波形の変化を経頭蓋超音波ドプラ法を用いて解析した。全身麻酔下の正常実験犬にペンテトラゾール持続点滴により実験的けいれん発作モデル犬を作出した。本モデルにおける発作時には脳底動脈平均血流速度の120-160%上昇、中大脳動脈平均血流速度の120-220%上昇を認め、経頭蓋超音波ドプラ法において脳血流速度上昇が発作の指標となることが示唆された。また、脳血管抵抗指標は脳底動脈で低下傾向を認め、発作時において脳血管拡張が生じていることを経頭蓋超音波ドプラ法が捉えているものと考えられた。今後、血流波形の更なる解析や他の生理的パラメータとの組み合わせにより、さらに鋭敏に発作時の血流変化を捉える指標を検討し、臨床症例において蓄積されたデータを検討する予定である。また、同手法の研究を通じて、犬の脳梗塞症例における経時的な脳血流変化を獣医学領域で初めて捉えることに成功した。学会報告および国際誌への投稿を予定している。今後も経頭蓋超音波ドプラ法の適応拡大を目標に研究を実施する。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。獣医療において、重度なけいれん発作の治療モニタリングはほとんど行われてこなかった。脳波検査に基づく電気活動的な“Seizure Free"が治療の目標であるが、獣医療において現状利用可能な肉眼的観察では“Seizure Free"が達成されているかは分からない。本研究では近年獣医療で急速に普及している超音波診断装置を利用し、経頭蓋超音波ドプラ法による脳血流評価を用いたけいれん発作の新規治療モニタリング法を検討することとした。本研究では1実験的けいれん発作モデルにおける脳血流波形変化の解析、2集中治療中のけいれん発作症例犬における経時的な脳血流波形解析、のアプローチを計画した。2018年度は実験的けいれん発作モデル犬における脳血流波形変化の解析を目標とし、実験的にけいれん発作モデルを作出し、発作によって生じる脳血流波形の変化を経頭蓋超音波ドプラ法を用いて解析した。全身麻酔下の正常実験犬にペンテトラゾール持続点滴により実験的けいれん発作モデル犬を作出した。本モデルにおける発作時には脳底動脈平均血流速度の120-160%上昇、中大脳動脈平均血流速度の120-220%上昇を認め、経頭蓋超音波ドプラ法において脳血流速度上昇が発作の指標となることが示唆された。また、脳血管抵抗指標は脳底動脈で低下傾向を認め、発作時において脳血管拡張が生じていることを経頭蓋超音波ドプラ法が捉えているものと考えられた。今後、血流波形の更なる解析や他の生理的パラメータとの組み合わせにより、さらに鋭敏に発作時の血流変化を捉える指標を検討し、臨床症例において蓄積されたデータを検討する予定である。また、同手法の研究を通じて、犬の脳梗塞症例における経時的な脳血流変化を獣医学領域で初めて捉えることに成功した。学会報告および国際誌への投稿を予定している。今後も経頭蓋超音波ドプラ法の適応拡大を目標に研究を実施する。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。当該webページは研究者本人が作成。 | KAKENHI-PROJECT-18J11947 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J11947 |
中性子ラジオグラフィ技術の応用と実用化に関する研究 | 我が国の中性子ラジオグラフィの研究は、基礎研究においては世界的レベルにあるが、応用面や実用化の面では欧米と比較してかなり遅れていると云わざるを得ない。そこで各研究機関で個々別々に実施されている研究を統合して問題点を明らかにし、これらを解決していくことによって、実際にどのように応用に対処できるかを討論し、実用化に際して利用できる分野を検討することとした。具体的には、中性子ラジオグラフィ標準試料の開発、高速中性子ラジオグラフィ技術の確立、中性子テレビジョンの高速化・高解像度化、中性子ラジオグラフィおよび画像のデータベースシステムの開発、小型中性子源の開発、高感度・高解像度コンバータの開発などである。(]SY京都大学と日本原子力研究所の共同研究として行われた気液二相流の可視化と解析、●○2(〕SY名古屋大学で行われた二相流の中性子テレビジョンによる観察、●○3(〕SY東京大学研究炉YAYOIによる高速中性子による映像の標準化、●○4(〕SY武蔵工業大学原子炉による画像処理標準化、●○5(〕SY立教大学原子炉の標準試料の映像化などである。これらをまとめて、我が国の中性子ラジオグラフィ研究の現状を「放射線と産業」第42号(1988年12月)に特集号として出版した貰った。また、平成元年5月14日ー18日に、大阪国際交流センターで開催される第3回中性子ラジオグラフィ国際会議に向けて、本研究班が中心的役割を果した。平成元年3月末現在、28ケ国から155人の参加者と121編の論文発表が行われる予定で準備が進められている。科学研究費が大変有効に使われた例と云えよう。我が国の中性子ラジオグラフィの研究は、基礎研究においては世界的レベルにあるが、応用面や実用化の面では欧米と比較してかなり遅れていると云わざるを得ない。そこで各研究機関で個々別々に実施されている研究を統合して問題点を明らかにし、これらを解決していくことによって、実際にどのように応用に対処できるかを討論し、実用化に際して利用できる分野を検討することとした。具体的には、中性子ラジオグラフィ標準試料の開発、高速中性子ラジオグラフィ技術の確立、中性子テレビジョンの高速化・高解像度化、中性子ラジオグラフィおよび画像のデータベースシステムの開発、小型中性子源の開発、高感度・高解像度コンバータの開発などである。(]SY京都大学と日本原子力研究所の共同研究として行われた気液二相流の可視化と解析、●○2(〕SY名古屋大学で行われた二相流の中性子テレビジョンによる観察、●○3(〕SY東京大学研究炉YAYOIによる高速中性子による映像の標準化、●○4(〕SY武蔵工業大学原子炉による画像処理標準化、●○5(〕SY立教大学原子炉の標準試料の映像化などである。これらをまとめて、我が国の中性子ラジオグラフィ研究の現状を「放射線と産業」第42号(1988年12月)に特集号として出版した貰った。また、平成元年5月14日ー18日に、大阪国際交流センターで開催される第3回中性子ラジオグラフィ国際会議に向けて、本研究班が中心的役割を果した。平成元年3月末現在、28ケ国から155人の参加者と121編の論文発表が行われる予定で準備が進められている。科学研究費が大変有効に使われた例と云えよう。 | KAKENHI-PROJECT-63306030 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63306030 |
転写因子DAF-16/FOXOによる寿命延長機構のin vivoにおける解明 | 線虫の転写因子DAF-16は様々な長命変異体において寿命延長に必須であることから、長寿遺伝子と考えられている。しかしながらそれらの研究成果は遺伝学的解析に基づくものであり、実際に長命変異体でDAF-16の転写活性が亢進しているかについては不明であった。本研究は、新たに線虫のin vivo luc systemを確立することで、寿命延長とDAF-16の転写活性との間に正の相関があることを明らかにした。本研究の目的は、独自に構築した線虫のin vivo lucシステムを駆使して、DAF-16をはじめとする長寿転写因子の活性を直接的・定量的に評価するとともに、それら転写因子による寿命延長メカニズムの解明を目指すものである。平成26年度の研究成果は以下の通りである。1. daf-2長命変異体におけるDAF-16の活性と寿命延長との相関を検証すべく、DAF-16応答性Lucレポーター遺伝子を導入した線虫をdaf-2長寿変異体と掛け合わせ、そのLuc活性を野生型と比較した。意外なことにLuc活性に差はみられなかったが、Luc遺伝子のmRNA量は上昇していた。この結果はdaf-2変異体でDAF-16の転写活性は亢進していることを示すとともに、同変異体でグローバルに翻訳レベルが低下するという先行報告に一致する。2.様々な長寿シグナルにおける寿命調節転写因子の活性制御機構の解明するため、他の長寿転写因子であるSKN-1の活性化に応答する線虫の樹立し、現在その有用性を検証している。またDAF-16応答性Luc線虫は飢餓ストレスで転写が活性化するが、RNAi法により、このシグナルがTORを介していることが明らかになった。3. in vivoにおけるDAF-16の翻訳後修飾の同定とその機能的意義の解析するため、FLAG-HAタグ付きのDAF-16を安定発現するトランスジェニック線虫を用いて、翻訳後修飾の同定を試みている。一方、培養細胞に発現させたDAF-16をアセチル化リジン抗体で精製し、MALDI-TOF/TOF MSに供することで、3カ所のアセチル化部位を同定した。現在までに、このうち2カ所についてリジンをアルギニンに置換した変異体を作製し、転写活性を評価している。本研究の目的は、独自に確立した線虫のin vivoレポーターアッセイを駆使して、様々な環境下における長寿転写因子DAF-16の活性を直接的・定量的に評価することで、寿命制御メカニズムの解明を目指すものである。平成27年度の研究成果は以下の通りである。1.飢餓や高温、紫外線、活性酸素などのストレスに対するDAF-16の応答をin vivoレポーターアッセイで検証したところ、飢餓と高温でのみDAF-16の転写活性が顕著に亢進した。この時、DAF-16の核凝集とAKTによるリン酸化の低下も認められたことから、これらのストレス刺激がAKTシグナルと拮抗することで内在性DAF-16の活性化を引き起こすことが示された。2. DAF-16はAKTシグナル経路の他にも、TORシグナルの低下や生殖細胞の欠失などの長寿環境下において、その活性が必要であることが分子遺伝学的に示されている。このとき実際にDAF-16の転写活性化が起こっているかをin vivoレポーター検証したところ、いずれにおいても活性化がみられた。一方で、DAF-16非依存的な寿命延長を示すカロリー制限模倣変異体eat-2においては、DAF-16による転写活性化はみられなかった。以上の結果は、寿命延長とDAF-16活性の間に正の相関があることを強く示唆している。3.線虫においてSirtuinファミリーのひとつであるsir-2.1は、DAF-16を脱アセチル化することでその転写活性を亢進させ、寿命延長に寄与すると考えられている。しかしながら一方で、それとは相反する報告もされており、未だ議論は続いている。これを検証するため、sir-2.1変異におけるDAF-16の活性を評価したところ、sir-2.1がDAF-16のコアクチベーターとして機能する可能性が示された。上述した研究成果に加え、線虫からのDAF-16タンパク質の精製と質量分析による翻訳後修飾部位の同定にも着手している。また新たにCRISPR-Cas9システムによるゲノム編集技術も確立できており、DAF-16転写活性ドメインを欠失した変異体の樹立とその解析も進んでいる。本研究の目的は、独自に構築した線虫のin vivo lucシステムを駆使して、DAF-16をはじめとする長寿転写因子の活性を直接的・定量的に評価するとともに、それら転写因子による寿命延長メカニズムの解明を目指すものである。最終年度の研究成果は以下の通りである。1. daf-2長命変異体におけるDAF-16の活性と寿命延長との相関を検証すべく、DAF-16応答性Lucレポーター遺伝子を導入した線虫をdaf-2長寿変異体と掛け合わせたところ、予想通りLuc活性が野生型と比較して有意に上昇していた。2.同システムを用いてストレスに対するDAF-16の応答性を検討した結果、熱ストレスや飢餓ストレスでDAF-16の活性が亢進することが明らかになった。またこの時、DAF-16は核に局在し、Aktによるリン酸化は顕著に減弱していた。一方で、DAF-16の標的として報告されているいくつか遺伝子の発現パターンは必ずしもDAF-16の活性と相関していなかった。 | KAKENHI-PROJECT-26450500 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26450500 |
転写因子DAF-16/FOXOによる寿命延長機構のin vivoにおける解明 | 以上の結果は、本システムがDAF-16のin vivoにおける活性を評価する上で優れた実験系であることを示している。3. in vivoにおけるDAF-16の翻訳後修飾の同定とその機能的意義の解析するため、FLAG-HAタグ付きのDAF-16を安定発現するトランスジェニック線虫を用いて、翻訳後修飾の同定を試みた。3種類のプロテアーゼを組み合わせてタンパク質を断片化することで、MALDI-TOF-MS/MSによる分析のカバレッジを高め方法を確立した。またリン酸基を特異的にトラップするカラムを通すことで、高効率にリン酸化部位を同定することも可能になった。線虫の転写因子DAF-16は様々な長命変異体において寿命延長に必須であることから、長寿遺伝子と考えられている。しかしながらそれらの研究成果は遺伝学的解析に基づくものであり、実際に長命変異体でDAF-16の転写活性が亢進しているかについては不明であった。本研究は、新たに線虫のin vivo luc systemを確立することで、寿命延長とDAF-16の転写活性との間に正の相関があることを明らかにした。申請時に計画していた遺伝子組換え線虫は全て樹立済みであり、すでに解析を始めている。またDAF-16の翻訳後修飾部位の同定にも成功しており、現在検討を行っている線虫からのDAF-16タンパク質の精製条件が整えば、さらなる進展が期待できる。最終年度は、本研究成果を論文として投稿すべく、補足的なデータも含めて完成度を高める。また新たにCRISPR-Cas9システムによるノックインにより、DAF-16リン酸化部位への変異導入による恒常的活性化型DAF-16を発現する系統の樹立を目指す。分子生物学今年度以降は、すでに確立したLuc線虫を用いてDAF-16の活性化に関わるシグナル経路を同定するとともに、線虫からDAF-16タンパク質の精製して翻訳後修飾部位の同定を試みる。また申請内容には記載しなかったが、CRISPR-Cas9システムによる線虫のゲノム編集にも成功しており、現在、DAF-16の転写活性化ドメインを欠失した変異体の作製にも取り組んでいる。線虫の飼育維持に関わる費用が、前年度に想定していた額より抑えられた。また抗体等の購入にかかる費用も安く抑えることができた。論文投稿にかかる諸費用、および研究成果の海外学会発表等に使用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-26450500 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26450500 |
幕末維新期の政治改革と「民政学」-『海南政典』と『芸藩通志』の分析- | 本研究では、土佐藩参政の吉田東洋が中心となって編纂した『海南政典』と、安芸藩が化政期に編纂した『芸藩通志』を素材に、19世紀前中期に獲得された統治理念と技術・知識、及びその維新変革への影響を考察することを目指した。3か年にわたる研究の結果、次のような成果と展望を得ることができた。1、幕末土佐藩における吉田東洋および彼の門下による藩政改革は、藩政組織の再整備と役人の規律の確立、海防体制のための軍事力強化、政治儀礼の再編成をめざしたものであり、そうした内容が『海南政典』としてまとめられた。こうした政治文書は他に例を見ないもので、その内容は明治維新の政体構想の基礎になった。2、また、王政復古に行われた土佐藩の藩政改革は、「士民平均」を理念として、身分制度の廃止を実施しようとしたもので、こうした先進的な改革は『海南政典』に現れた改革思想を背景にもつと同時に、その理念は米沢藩や彦根藩などにも影響を与え、土佐藩を中心とした政治的連携を生み出すことになった。この点をよりいっそう解明していくことによって、廃藩置県の政治的背景を新たな側面から明らかにできる。3、19世紀に入り、幕府や大名は支配地の歴史・地理・生産などを把握するために、地誌の編纂に着手したが、それを可能にした知識の集積、地誌に反映された文明意識と歴史意識について明らかにした。また、20世紀初頭の地域史編纂にいたる出発点となった点を検討し、この100年間の地誌編纂史の流れを把握することができた。4、『芸藩通志』の編纂過程について、町村が作成した「国郡志御用につき下調べ書出帳」などを収集し、『芸藩通志』の内容との比較のための材料を得た。また、郡村毎の石高・戸口・牛馬数・物産・社寺・宗教者数など基本項目のデータベースを作成し、それらが藩政改革にどの程度生かされたのかを、今後検討していく基礎を作った。5、今後は藩政改革のために編纂されたこれら二書を、人民統治のための技術と知識が集積された政治文書としてとらえ、「民政学」という範疇でとらえて、近代化の上で果たした役割を検討したいと考えている。本研究では、土佐藩参政の吉田東洋が中心となって編纂した『海南政典』と、安芸藩が化政期に編纂した『芸藩通志』を素材に、19世紀前中期に獲得された統治理念と技術・知識、及びその維新変革への影響を考察することを目指した。3か年にわたる研究の結果、次のような成果と展望を得ることができた。1、幕末土佐藩における吉田東洋および彼の門下による藩政改革は、藩政組織の再整備と役人の規律の確立、海防体制のための軍事力強化、政治儀礼の再編成をめざしたものであり、そうした内容が『海南政典』としてまとめられた。こうした政治文書は他に例を見ないもので、その内容は明治維新の政体構想の基礎になった。2、また、王政復古に行われた土佐藩の藩政改革は、「士民平均」を理念として、身分制度の廃止を実施しようとしたもので、こうした先進的な改革は『海南政典』に現れた改革思想を背景にもつと同時に、その理念は米沢藩や彦根藩などにも影響を与え、土佐藩を中心とした政治的連携を生み出すことになった。この点をよりいっそう解明していくことによって、廃藩置県の政治的背景を新たな側面から明らかにできる。3、19世紀に入り、幕府や大名は支配地の歴史・地理・生産などを把握するために、地誌の編纂に着手したが、それを可能にした知識の集積、地誌に反映された文明意識と歴史意識について明らかにした。また、20世紀初頭の地域史編纂にいたる出発点となった点を検討し、この100年間の地誌編纂史の流れを把握することができた。4、『芸藩通志』の編纂過程について、町村が作成した「国郡志御用につき下調べ書出帳」などを収集し、『芸藩通志』の内容との比較のための材料を得た。また、郡村毎の石高・戸口・牛馬数・物産・社寺・宗教者数など基本項目のデータベースを作成し、それらが藩政改革にどの程度生かされたのかを、今後検討していく基礎を作った。5、今後は藩政改革のために編纂されたこれら二書を、人民統治のための技術と知識が集積された政治文書としてとらえ、「民政学」という範疇でとらえて、近代化の上で果たした役割を検討したいと考えている。本研究では、土佐藩参政の吉田東洋が中心となって編纂した『海南政典』と安芸藩が化政期に編纂した『芸藩通志』を素材に、19世紀前中期に獲得された統治理念と技術・知識、及びその維新変革への影響を考察することを目指している。本年度は、両史料に関する基礎資料の確認と収集に力を注いだ。『海南政典』については、これまでの諸本以外に、国立国会図書館にも仙石家本と呼ばれる写本が存在することを今回新たに確認した。そしてすでに石尾芳久氏が著書『海南政典の研究』で翻刻した高知県立図書館本との比較検討を行う作業を進めた。また『芸藩通志』については、領内の町村が作成した「国郡志御用につき下調べ書出帳」が、広島県文書館所蔵の『波多野家文書』、『三上家文書』、『横山家文書』、『中野町役場文書』ほか、24にのぼる文書に残されていることを確認した。 | KAKENHI-PROJECT-10610324 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10610324 |
幕末維新期の政治改革と「民政学」-『海南政典』と『芸藩通志』の分析- | その中には書上帳の控のみならず、村での調査の実態(例えば「国郡志編賛-件緒用控帳」、「国郡志-件集会諸控」)や、調査に要した費用を記録した文書(例えば「国郡志相約メ候諸入用帳」、「国郡志相調諸入用仕出シ帳」)もあり、これまで未解明であった編纂事業の様相を再構成する手がかりを得た。さらに、幕末維新期の「民政」に関する文献をいくつかの資料館で確認した。中国において官吏の任務と規律を書いた『牧民忠告』、『牧民心鑑』の注釈書である、山縣禎『民政要論』、樋口好古『牧民忠告解』、鈴木雅之『民政要論』、平塚飄斎『牧民心鑑解』などである。これらは中国が生み出した官吏論が幕末期に研究されていたことを示すものであり、これらの文献の存在は維新変革への中国の影響を測定する鍵となるとの結論を得た。本研究では、土佐藩参政の吉田東洋が中心となって編纂した『海南政典』と安芸藩が化政期に編纂した『芸藩通志』を素材に、19世紀前中期に獲得された統治理念と技術・知識、及びその維新改革への影響を考察することを目指している。本年度は、昨年度に引き続いて両書に関連する資料の確認と収集をおこなった。『海南政典』については、国立公文書館内閣文庫所蔵の『土佐郡書類従』の調査をおこなって、『海南政典』に関わる資料や土佐藩政改革に関する資料を収集した。また、西尾市立岩瀬文庫においては、土佐藩政関係の資料を調査した。一方『海南政典』の内容の分析を諸本を比較対照しつつ進め、構成上の特徴などに関する知見を得ることができた。さらに今後は、土佐藩が編纂した領域地誌である『南路志』についても検討をすすめ、『海南政典』の理解を深める予定である。『海南政典』編纂の経緯については、幕末期の土佐藩政の推移を『山内家史料幕末維新』所収の史料を分析しつつ、安政慶応期の藩体制の特徴を考察した。他方『芸藩通志』については、各群村毎の石高・戸口・牛馬数・物産・社寺・宗教者数など基本的データのパソコンへの入力をおこない、さらに領内の町村が作成した「国群志御用につき下調べ書出帳」のデータの入力を進めつつある。こうした基礎データを解析する作業によって、19世紀前期における安芸藩の実態を地域的な対比をおこないつつ明らかにすることが可能となった。また「国群志御用につき下調べ書出帳」の所在確認のために継続的な調査をおこなった。とくに三原則については、『三原志』(内閣文庫所蔵写本)を得て、『芸藩通志』との記載事項・内容の比較検討を行った。さらに19世紀前半期安芸国の風俗調査に関する資料を内閣文庫で入手でき、『芸藩通志』・『三原志』に見られる歴史や風俗の叙述との対比をおこなうことができた。本研究では、土佐藩の『海南政典』と安芸藩の『芸藩通志』を素材に、19世紀前中期に獲得された統治理念と技術・知識、及びその維新変革への影響を考察することを目指している。本年度は、昨年度に引き続いて両書に関連する資料の確認と収集を継続し、また得られた成果に関して口頭発表をおこないつつ、成果とりまとめの準備に入った。『海南政典』および幕末維新期の土佐藩政、吉田東洋とその改革グループの動向に関しては、国立公文書館内閣文庫所蔵の幕末政治関係史料の調査をおこない、また高知市民図書館において土佐藩関係の研究文献および藩政史料の収集をおこなった。さらに、西尾市立岩瀬文庫においては、『土佐勤王編年一覧』という、嘉永6年から王政復古にいたる土佐藩政関係史料を得て、『山内家史料』では欠落している当該期の史料を補うことができた。一方『海南政典』の内容の分析を諸本を比較対照しつつ進め、「『海南政典』と幕末期の土佐藩」と題する研究報告をおこなった。加えて、土佐藩の藩政改革の影響を受けた諸藩、とりわけ彦根藩との比較藩政史的検討を進め、この成果を現在とりまとめている。 | KAKENHI-PROJECT-10610324 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10610324 |
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