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NK細胞のリステリア感染における役割と2本鎖RNAによる感染抵抗性増強機構の解明 | 即ち、PolyI:C投与後の標的臓器における各種細胞の動態を解析すると共に、L. monocytogenes (EGD株)を感染し、感染抵抗性(臓器内菌数)、標的臓器の肉眼的変化、標的臓器に存在・集積する各種細胞の動態を解析した。また、PolyI:Cによるリステリア感染抵抗性の増大に関与する細胞を、NK細胞および/またはインバリアントNKT細胞を欠損あるいは消失させたマウスのリステリアに対する感染抵抗性を比較することにより明らかにした。その結果、これまでNK細胞は感染後Interferon-γを多量に産生することから、細胞内寄生細菌に対して防御的に働いていると考えられていたが、実際は増悪的に働くこと、また逆にPolyI:Cを投与するとリステリアに対する感染抵抗性が増大するだけでなく、そこにNK細胞が深く関与していることが明らかとなった。このように、本研究はこれまでの既成概念を打ち破るだけでなく、細胞内寄生細菌感染における新たな役割を明らかにしたという点において、細菌学、更には免疫学の発展に寄与するところが極めて大である。腰椎変性側弯症と診断され手術を受けたが、術後の回復が思った以上に悪く、療養に時間を要したため。24年度が最終年度であるため、記入しない。今後は、NK細胞の強力な活性化剤であるPolyI:Cを投与することにより、感染抵抗性がどのようになるか、また標的臓器における炎症はどのようになるかを、細胞並びにタンパクレベルで解析する予定である。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22590388 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22590388 |
学生の個性に応じた安全教育を可能にするICT教材の開発 | 大学や高専で行われている実験・実習などの実技教育において、安全は最優先のキーワードである。本研究では、機械工作実習での安全教育に焦点を当て、学生の個性に応じた指導を行うことを目的に「動画教材」と「危険予知教材」という2種類のICT教材を開発し、授業での実践を行った。具体的な題材としては、機械工作実習で学生が使い方を学習する様々な工作機械の中から、基本的な工作機械で学生の使用頻度が高い"ボール盤"を題材として取り上げた。開発した「動画教材」は動画や音声等で構成され、視覚・聴覚といった五感に訴える情報から、安全な作業方法を学習できる。さらに、インターネット経由で、個々の学生が、習熟度や必要に応じ、授業の予習復習などにいつでも利用できるようにした。もうひとつの教材が「危険予知教材」である。大学や高専で、力学や機械工作理論を学習した学生は、講義で学習した理論や法則を、実習作業に当てはめて考察することで、作業に潜む危険性を明確に予測できるはずである。しかし、このような点に着目した指導計画や危険予知訓練手法は確立されていない。そこで、ボール盤作業における安全上の留意点として最も重要な"ドリルの巻き込み"を題材として、講義で学習した知識を使って、作業の危険性を具体的に考察し予測する、危険予知教材を開発した。この教材は随時、問題に対する学生の回答から、学生一人ひとりの理解度を判定し、その結果に応じた補足説明をフィードバックすることで、学生の個性や能力に応じた指導を行う構成とした。開発した以上2つの教材を授業に導入し、アンケートや小テストなどから効果を検証した結果、学生は教材による指導を好意的に受け止め、安全作業に対する理解や意識を高めていることがわかった。大学や高専で行われている実験・実習などの実技教育において、安全は最優先のキーワードである。本研究では、機械工作実習での安全教育に焦点を当て、学生の個性に応じた指導を行うことを目的に「動画教材」と「危険予知教材」という2種類のICT教材を開発し、授業での実践を行った。具体的な題材としては、機械工作実習で学生が使い方を学習する様々な工作機械の中から、基本的な工作機械で学生の使用頻度が高い"ボール盤"を題材として取り上げた。開発した「動画教材」は動画や音声等で構成され、視覚・聴覚といった五感に訴える情報から、安全な作業方法を学習できる。さらに、インターネット経由で、個々の学生が、習熟度や必要に応じ、授業の予習復習などにいつでも利用できるようにした。もうひとつの教材が「危険予知教材」である。大学や高専で、力学や機械工作理論を学習した学生は、講義で学習した理論や法則を、実習作業に当てはめて考察することで、作業に潜む危険性を明確に予測できるはずである。しかし、このような点に着目した指導計画や危険予知訓練手法は確立されていない。そこで、ボール盤作業における安全上の留意点として最も重要な"ドリルの巻き込み"を題材として、講義で学習した知識を使って、作業の危険性を具体的に考察し予測する、危険予知教材を開発した。この教材は随時、問題に対する学生の回答から、学生一人ひとりの理解度を判定し、その結果に応じた補足説明をフィードバックすることで、学生の個性や能力に応じた指導を行う構成とした。開発した以上2つの教材を授業に導入し、アンケートや小テストなどから効果を検証した結果、学生は教材による指導を好意的に受け止め、安全作業に対する理解や意識を高めていることがわかった。 | KAKENHI-PROJECT-20909020 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20909020 |
色素含有高分子・金属複合超薄膜への閉込め光と光電子移動反応制御による分子情報処理 | 我々はイオン対問の光誘起電子移動反応と逆電子移動反応によって可視光通信波長域に大きなかつ超高速の吸収変化を示す高分子などを開発と異相界面を用いる反射型光デバイスへの展開をしてきた。本年度は、高いガラス転移温度をもつ新しいフォトエレクトロクロミック高分子の合成、光通信波長域で高感度な超高速並列光情報処理デバイスの構築、エバネッセント光による高分子薄膜表面あるいは固体基板界面での分子運動特性評価などの成果をあげた。成果の一つとして、バナジルオキソフタロシアニン(VOPc)をトリシクロデカン高分子Artonに分散し、低屈折率高分子とで形成した複合薄膜の結果を述べる。このような系の900-1600nm領域での導波モード形成による光閉込めの状況をフェムト秒白色光の反射率変化として調べた。光通信波長領域で反射光強度が入射角に依存して特定の波長で著しぐ低下していることが示され、導波モード形成が確認できた。次にこのような系を800nmのフェムト秒レーザーで励起すると、直後に入射角に依存して光通信波長域で異なる反射率変化が観測された。これはVOPcの励起状態生成によって吸収スペクトルが変化し、それに伴ってArton膜の複素屈折率変化が生じ、反射強度が入射角に依存して大きく変化したためである。同じ成膜条件で通常の単純透過法によっては、プローブ光の強度変化は測定できない。これらの結果は光機能界面に基づく本導波モードデバイスが非常に高感度な超高速光変調・光スイッチとして有望であることを示している。光と分子の相互作用を適当な構造のデバイスと組み合わせることにより、高度な情報処理を行うための分子フォトニクスの研究を進めている。本研究では広い波長域で光誘起電子移動により大きな吸収・屈折率・蛍光変化を示す材料の開発、それらやDNAを含む有機・金属複合超薄膜あるいは低屈折率高分子と光応答高分子複合膜への閉込め光と分子との相互作用による超高速光情報処理デバイスや高性能センサの実現をめざした。光誘起電子移動反応と逆反応で可視光通信波長域に大きなかつ超高速の吸収変化を示す高分子などを開発してきた。本年度は主にそのデバイス応用について検討した。以前に提案した有機・金属複合薄膜型導波モードデバイスの光耐久性をあげ、変調感度をあげるために、低屈折率高分子と光応答高分子複合膜を用いて、光を閉込め、別の光でそれを制御する新しいデバイスを提案した。このデバイスでは、全反射角度よりもかなり大きな入射角で光応答薄膜の消衰係数kがゼロでない時にのみ非常にシャープな導波モードが形成され、反射率はk値が増加すると最初は低下し、ある値(K_c)でほとんどゼロになりそれ以上では再び増加した。そのようなk依存性は近赤外に吸収をしめすフタロシアニン誘導体を高分子膜に種々の濃度で分散させて確認した。このデバイスは低屈折率層を有する導波モードの光による条件変化に依存するので、単純透過型に比べて非常に感度が高い。本研究で開発した光誘起電子移動と逆反応により光通信波長で超高速応答を示す高分子を用いたところ、異なる3つの入射角で励起前には見られなかった反射率減少のピークが励起直後に異なる波長に見られ、同じ膜の単純透過法による過渡吸収スペクトルに比べて大きな変化を示すことを確認した。これらの結果は光機能界面に基づく導波モードデバイスによる超高速光変調・光スイッチとして有望であることを示している。我々はイオン対問の光誘起電子移動反応と逆電子移動反応によって可視光通信波長域に大きなかつ超高速の吸収変化を示す高分子などを開発と異相界面を用いる反射型光デバイスへの展開をしてきた。本年度は、高いガラス転移温度をもつ新しいフォトエレクトロクロミック高分子の合成、光通信波長域で高感度な超高速並列光情報処理デバイスの構築、エバネッセント光による高分子薄膜表面あるいは固体基板界面での分子運動特性評価などの成果をあげた。成果の一つとして、バナジルオキソフタロシアニン(VOPc)をトリシクロデカン高分子Artonに分散し、低屈折率高分子とで形成した複合薄膜の結果を述べる。このような系の900-1600nm領域での導波モード形成による光閉込めの状況をフェムト秒白色光の反射率変化として調べた。光通信波長領域で反射光強度が入射角に依存して特定の波長で著しぐ低下していることが示され、導波モード形成が確認できた。次にこのような系を800nmのフェムト秒レーザーで励起すると、直後に入射角に依存して光通信波長域で異なる反射率変化が観測された。これはVOPcの励起状態生成によって吸収スペクトルが変化し、それに伴ってArton膜の複素屈折率変化が生じ、反射強度が入射角に依存して大きく変化したためである。同じ成膜条件で通常の単純透過法によっては、プローブ光の強度変化は測定できない。これらの結果は光機能界面に基づく本導波モードデバイスが非常に高感度な超高速光変調・光スイッチとして有望であることを示している。 | KAKENHI-PROJECT-17029047 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17029047 |
食用油摂取による脳卒中ラット寿命短縮での18:1脂肪酸の役割 | 特定の食用油摂取による脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット(SHRSP)寿命短縮における18:1脂肪酸の寄与を検討するために、我々はSHRSPに菜種油由来で18:1含量が異なる様々な油脂を摂取させて、その病態の変化を観察した。その結果、18:1脂肪酸のcis-体であるオレイン酸の増加に伴い、血圧上昇、腎障害促進などと共に、寿命が有意に短縮されたのに対し、18:1脂肪酸をほとんど含まない完全水添処理菜種油(FHCO)ではSHRSPの病態が回復し、実験中に死亡個体は観察されなかった。これらの結果より摂取油脂中の18:1脂肪酸含量はSHRSPの病態を促進させることが明らかとなった。菜種油をはじめとした特定の油脂を脳卒中易発症性高血圧ラット(SHRSP)に摂取させると、その寿命が著しく短縮する。本研究ではいくつかの食用油でSHRSPの寿命短縮を示す原因について、18:1脂肪酸が関与する可能性を検討した。当該年度では以下の2点について検討を行った。1.菜種油を完全水添処理することにより、18:1オレイン酸をほとんど含まない完全水添菜種油(FHCO)を作成し、これをSHRSPに摂取させて1%食塩水負荷の条件で寿命を測定したところ、実験期間中に致死性の脳卒中で死亡した個体は観察されなかった。FHCOを摂取したSHRSPは致死性脳卒中の原因となる高血圧に対して低下作用が認められた。また、菜種油摂取で観察される血中脂質含量の増加が抑制されることも観察されており、FHCOの摂取は高血圧を含めたSHRSPの一連の病態を改善できる可能性が示唆された。2.18:1オレイン酸を多く含む高オレイン酸菜種油を用意し、これをSHRSPに摂取させ0.5%食塩水負荷で寿命を測定した結果、菜種油を摂取したSHRSPと比べて寿命をさらに10%短縮させた。これらの結果から、同じ菜種油を起源とする油脂で18:1脂肪酸の増減させることにより、SHRSPの寿命もそれに対応して変化することが明らかとなり、原因物質の一つとして考えられることが明らかとなった。また、1の結果からは菜種油の完全水添処理により、血圧減少や血中脂質含量低下作用を含む脳卒中予防効果が生じることが明らかとなった。脳卒中易発症性高血圧ラット(SHRSP)に菜種油をはじめとした特定の油脂を摂取させると、ラットの寿命が著しく短縮する。本研究では、SHRSPの寿命短縮を示す原因として、油脂中の18:1脂肪酸含量に着目し、動物実験を中心に検討を行っている。当該年度では、以下の点について調べた。1.菜種油による寿命短縮の原因を探索するために、各種臓器の遺伝子発現並びに酵素活性を調べた。菜種油を含む実験飼料を7週間摂取したSHRSPは、寿命短縮を示さないコントロールである大豆油を摂取した群に比べて、肝臓において脂質代謝並びにエネルギー代謝に関連する酵素の発現、活性に大きな変化が見られた。しかし、これらの変化はSHRSPの病態改善作用を示す完全水添菜種油(FHCO)においても同様の変化が認められたことから、寿命短縮とは独立した変化と推測された。2.各臓器における組織学的変化を検討した結果、菜種油を摂取した群では脳における出血の他に、腎障害の進行、脾臓における髄外造血などの特徴が観察された。これらの変化はFHCO摂取群では観察されなかったことから、腎障害を原因とする高血圧の亢進とともに、造血組織における変化もSHRSPの病態進行に大きくかかわる可能性が示唆された。以上の結果より、菜種油の摂取によるSHRSPへの影響は腎障害と造血障害の両方に影響を及ぼす可能性が示唆された。一方で、7週間摂取の条件では脂質・エネルギー代謝に関連する酵素は病態進行と相関して変化しないことから、油脂摂取による病態の進行には脂質代謝は大きくは影響を及ぼさないのかもしれない。菜種油をはじめとするいくつかの食用油は脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット(SHRSP)の寿命を著しく短縮させる。本研究では、その原因物質が18:1脂肪酸であるという作業仮説の元に、動物実験を中心として様々な実験を実施した。当該年度では以下の点について検討を行った。(1)血清、肝臓及び腎臓における脂肪酸含量とステロール含量について検討を行った。3つの臓器において、寿命短縮を示す菜種油は総脂質含量、18:1脂肪酸含量並びに植物ステロール含量が、短縮を示さない大豆油に対して有意に多かったのに対し、病態改善作用を示す完全水添菜種油(FHCO)では、逆にこれらの成分が大きく減少していた。そのため、これらの脂質成分は、SHRSP臓器において病態の進行に大きな影響を与える因子であることを示唆する。(2)FHCOでは組織中DHA含量が有意に増加していた。また、18:1脂肪酸の吸収・排泄を確認するために、C-14で標識した18:1脂肪酸を用意し、これをSHRSPに投与して、トレーサー実験を行った。その結果、遊離型18:1脂肪酸では、トリアシルグリセロールの形状と比べて、ラットの体内に残留する時間が短かった。このことはリパーゼやアルカリで処理した食用油ではSHRSPに対する寿命短縮活性が確消失する結果を反映しており、この現象における18:1脂肪酸の関与を裏付ける結果であった。今までの結果を含めて総括すると、食用油摂取によるSHRSPの寿命短縮には、食用油中の18:1含量が大きく関与することが明らかとなり、植物ステロールなどと共に腎臓、脾臓等に障害を与え、高血圧に伴う脳卒中の誘発を促進すると推測された。 | KAKENHI-PROJECT-25870606 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25870606 |
食用油摂取による脳卒中ラット寿命短縮での18:1脂肪酸の役割 | 本結果は病態動物における特殊な例かもしれないが、さらに組織障害のメカニズムを検討することにより、脂質栄養による健康増進に寄与してゆきたいと考えている。特定の食用油摂取による脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット(SHRSP)寿命短縮における18:1脂肪酸の寄与を検討するために、我々はSHRSPに菜種油由来で18:1含量が異なる様々な油脂を摂取させて、その病態の変化を観察した。その結果、18:1脂肪酸のcis-体であるオレイン酸の増加に伴い、血圧上昇、腎障害促進などと共に、寿命が有意に短縮されたのに対し、18:1脂肪酸をほとんど含まない完全水添処理菜種油(FHCO)ではSHRSPの病態が回復し、実験中に死亡個体は観察されなかった。これらの結果より摂取油脂中の18:1脂肪酸含量はSHRSPの病態を促進させることが明らかとなった。本研究では以下の3点の内容を明らかとすべく、検討を行っている。1.油脂によるSHRSPラット寿命短縮要因として、18:1脂肪酸の関与を検討する。2. SHRSPラットの病態(寿命短縮)進行における18:1脂肪酸の役割を解析する。3. 18:1脂肪酸と植物ステロールの過剰摂取による他の有害作用の可能性を検討する。このうち、平成25年度において、1.の内容に関しては明らかな相関性を確認しており、平成26年度では2.について検討を進める予定であった。しかし、菜種油独自の変化だと思われていた遺伝子発現や酵素活性のいくつかは、病態改善作用を持つ完全水添菜種油(FHCO)でも確認されたことから、検討の方針を大きく変換する必要が生じた。また、3.についての検討も、2.の結果を踏まえて実験条件を整えたいと考えているため、現在のところ手を付けられていない。脂質栄養学今後は引き続き以下の3点について検討を行う。1. 18:1脂肪酸がSHRSPの寿命短縮においてどのような役割を示すかを明らかにするために、寿命測定と同じ条件における脂質蓄積量、遺伝子発現量を解析し、今まで明らかとしてきた他のデータと共に、どのようなメカニズムで寿命短縮が起こるのかを推察できるようにする。2.油脂によるSHRSPの寿命短縮はリパーゼやアルカリ処理で消失することから、18:1脂肪酸の分子系が吸収代謝に影響を及ぼす可能性がある。これを検討するためにC-14標識をしたオレイン酸又はエライジン酸を用意し、これを遊離型またはトリアシルグリセロールの型にして、臓器への蓄積性、排泄速度等を調べ、リパーゼ処理による活性消失を分子の動態で説明できるかを検討する。3.今までSHRSPで認められた有害作用が種や系統を超えて別の形で確認できるのかを検討するため、正常型のマウスを用いて、18:1脂肪酸と植物ステロールを過剰摂取させ、これらの動物が血圧上昇や腎障害などを示すかを観察する。これらの結果を総合的に判断し、食用油の安全性について新たなる情報を提供していきたいと考えている。当該研究では以下の三つの内容を明らかとするために検討を行った。1.油脂によるSHRSP寿命短縮要因として、18:1脂肪酸の関与を検討する。2.SHRSPの病態(寿命短縮)進行における18:1脂肪酸の役割を解析する。3.18:1脂肪酸と植物ステロールの過剰摂取による他の有害作用の可能性を検討する。 | KAKENHI-PROJECT-25870606 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25870606 |
ヒトiPS細胞を利用した心臓領域特異的心筋細胞および心内膜細胞の誘導法開発 | 平成30年度は初年度の計画に引き続き、レポーターiPS細胞株の樹立を目指した。NKX2.5遺伝子を利用した全心臓前駆細胞の選別に加え、二次心臓領域由来前駆細胞に特異的に発現する転写因子ISL1の開始コドン直前にP2A配列を挟んでCre組み換え酵素を、またヒトにおける遺伝子発現のsafety siteであるPPP1R12C遺伝子のイントロン内に、EF1aプロモーター下にCre依存性にEGFPを発現するトランスジーンを挿入するための遺伝子組み換え用ドナーベクターを新たに構築した。前モデルでは、蛍光タンパクと転写因子間をIRES配列を用いて接続したが、転写因子の発現低下につながる可能性が疑われたため、P2A配列を用いた。しかし、前年度に構築したNKX2.5遺伝子の直前にP2A配列を挟んでturboRFPを導入したiPS細胞が、心筋分化過程で心臓前駆細胞に分化する途中一過性のみに赤色蛍光を発現し、その発現が安定しない問題が生じた。P2A配列がうまく作用していない可能性を疑い、再度IRES配列を用いたトランスジーンに計画を変更した。さらにEF1aプロモーターにLoxP配列で挟まれたNeo耐性遺伝子およびEGFP遺伝子を連結したトランスジーンは、HeLa細胞にCre強制発現遺伝子とともに共発現させると、EGFPをCre依存性に発現することが確認されたが、iPS細胞にゲノム編集して導入した後に、Cre強制発現ベクターをトランスフェクションしてもEGFPの発現が認められなかった。原因として、Creタンパクの核内移行の問題、トランスフェクション効率の問題、iPS細胞内でのEF1aプロモーターのサイレンシングなどが疑われており、現在確認中である。心内膜細胞ソートシステムについては、ゲノム編集に必要なドナーベクターおよびCRISPR/Cas9ベクターを構築し、現在ゲノム編集効率を解析中である。本来、半永続的に発現すると思われたRFP-P2A-NKX2.5トランスジーンが、短い期間の一過性発現に終わってしまっている問題、およびEF1a-loxP-Neo-loxP-EGFPトランスジーンが細胞内でCre依存性にEGFPを発現できることの確認が、HeLa細胞の強制発現系では確認されているにもかかわらず、ゲノム編集後のiPS細胞で確認できていない点が研究の進捗を遅らせる原因となっている。最終年度にあたり、レポーター細胞株の樹立および有用性の確認をめざす。克服すべき課題として、心筋前駆細胞のラベルのための半永続的蛍光タンパク発現が挙げられ、IRES配列の活用およびCre発現効率の改善により、トランスジーンの機能を確認する。技術的にはトランスジーンを3重でゲノム編集することは可能となっており、早期のトリプルトランスジェニックiPS細胞を樹立し、心臓前駆細胞の単離を実現する。心内膜細胞ソートシステムについても、ベクターは構築済みであり、この2年間で確立したゲノム編集プロトコルを用いて、早急にラインを確立する。平成29年度は初年度の計画に基づき、代表的な心筋細胞の起源である、第一および第二心臓領域由来心臓前駆細胞を単離するためのCRISPR/Cas9およびPiggyBacを用いたゲノム編集によるシステム構築を行ってきた。検討過程において、全心臓前駆細胞に発現する転写因子NKX2.5および一次心臓領域に発現する転写因子TBX5をマーカーとして各前駆細胞を選別する方法では、二次心臓領域由来心臓前駆細胞(NKX2.5+TBX5-)の占める割合が5%前後と非常に低率であったため、二次心臓領域由来心臓前駆細胞に発現する新たなマーカーを用いてソートする系を再構築する必要が認められた。そこで我々は、NKX2.5遺伝子を利用した全心臓前駆細胞の選別に加え、二次心臓領域由来前駆細胞に特異的に発現する転写因子ISL1の開始コドン直前にP2A配列を挟んでCre組み換え酵素を、またヒトにおける遺伝子発現のsafety siteであるPPP1R12C遺伝子のイントロン内に、EF1aプロモーター下にCre依存性にEGFPを発現するトランスジーンを挿入するための遺伝子組み換え用ドナーベクターを新たに構築した。また、従来のiPS細胞にプラスミドを導入するためのエレクトロポレーション法は、細胞死を惹起する率が高く、3種類のドナーベクターを導入し、薬剤選択するためにより細胞生存率の高いプロトコルを確立する必要が生じた。Lipofectamin3000を用いたリポフェクション法で条件検討を行った結果、エレクトロポレーション法に比して高率な細胞生存と50%以上のプラスミド導入効率を得ることが可能となった。本法を用いて、各1種類ずつのドナーベクターは問題なくゲノム編集可能であることを確認した。また、NKX2.5遺伝子の直前にP2A配列を挟んでturboRFPを導入したiPS細胞は、心筋分化過程で心臓前駆細胞に分化すると赤色蛍光を発現し、ゲノム編集によるトランスジーンの発現が問題なく起こることを確認した。目的としている2種の心臓前駆細胞の内で、二次心臓領域由来心臓前駆細胞のソート効率が、TBX5遺伝子をマーカーとしてネガティブセレクションする場合、非常に低くなってしまい、新たな心臓領域特異的マーカー遺伝子としてISL1を用いて、異なる系の作製が必要となったため。平成30年度は初年度の計画に引き続き、レポーターiPS細胞株の樹立を目指した。NKX2.5遺伝子を利用した全心臓前駆細胞の選別に加え、二次心臓領域由来前駆細胞に特異的に発現する転写因子ISL1の開始コドン直前にP2A配列を挟んでCre組み換え酵素を、またヒトにおける遺伝子発現のsafety siteであるPPP1R12C | KAKENHI-PROJECT-17K10151 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K10151 |
ヒトiPS細胞を利用した心臓領域特異的心筋細胞および心内膜細胞の誘導法開発 | 遺伝子のイントロン内に、EF1aプロモーター下にCre依存性にEGFPを発現するトランスジーンを挿入するための遺伝子組み換え用ドナーベクターを新たに構築した。前モデルでは、蛍光タンパクと転写因子間をIRES配列を用いて接続したが、転写因子の発現低下につながる可能性が疑われたため、P2A配列を用いた。しかし、前年度に構築したNKX2.5遺伝子の直前にP2A配列を挟んでturboRFPを導入したiPS細胞が、心筋分化過程で心臓前駆細胞に分化する途中一過性のみに赤色蛍光を発現し、その発現が安定しない問題が生じた。P2A配列がうまく作用していない可能性を疑い、再度IRES配列を用いたトランスジーンに計画を変更した。さらにEF1aプロモーターにLoxP配列で挟まれたNeo耐性遺伝子およびEGFP遺伝子を連結したトランスジーンは、HeLa細胞にCre強制発現遺伝子とともに共発現させると、EGFPをCre依存性に発現することが確認されたが、iPS細胞にゲノム編集して導入した後に、Cre強制発現ベクターをトランスフェクションしてもEGFPの発現が認められなかった。原因として、Creタンパクの核内移行の問題、トランスフェクション効率の問題、iPS細胞内でのEF1aプロモーターのサイレンシングなどが疑われており、現在確認中である。心内膜細胞ソートシステムについては、ゲノム編集に必要なドナーベクターおよびCRISPR/Cas9ベクターを構築し、現在ゲノム編集効率を解析中である。本来、半永続的に発現すると思われたRFP-P2A-NKX2.5トランスジーンが、短い期間の一過性発現に終わってしまっている問題、およびEF1a-loxP-Neo-loxP-EGFPトランスジーンが細胞内でCre依存性にEGFPを発現できることの確認が、HeLa細胞の強制発現系では確認されているにもかかわらず、ゲノム編集後のiPS細胞で確認できていない点が研究の進捗を遅らせる原因となっている。本年度はさらに、3種のドナーベクターを同時にゲノム編集し、二次心臓領域由来心臓幹細胞を効率的にソートするレポーターiPS細胞を樹立後、各心臓領域特異的心臓前駆細胞および心筋細胞の表現型解析を進める。また本年度より、心内膜細胞マーカーとなるNFATC1およびPECAM遺伝子発現に従い、蛍光蛋白を発現する、ヒト心内膜細胞選別用iPS細胞の作製を同時に進めていく予定である。最終年度にあたり、レポーター細胞株の樹立および有用性の確認をめざす。克服すべき課題として、心筋前駆細胞のラベルのための半永続的蛍光タンパク発現が挙げられ、IRES配列の活用およびCre発現効率の改善により、トランスジーンの機能を確認する。技術的にはトランスジーンを3重でゲノム編集することは可能となっており、早期のトリプルトランスジェニックiPS細胞を樹立し、心臓前駆細胞の単離を実現する。心内膜細胞ソートシステムについても、ベクターは構築済みであり、この2年間で確立したゲノム編集プロトコルを用いて、早急にラインを確立する。高額のiPS細胞培養関連製品を購入不可能な1万円未満の少額の残金が発生したが、次年度の消耗品代として使用予定である。 | KAKENHI-PROJECT-17K10151 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K10151 |
細胞死に対する生体応答の変容に基づくNASH・肝細胞癌発症機構の解明 | 慢性炎症では組織障害や死細胞に対するストレス応答が遷延化し、正常な修復機転を障害することで組織線維化に至ること、さらに修復機転の遷延化は発癌に繋がることが指摘されている。NASHは肝臓における過剰な脂質蓄積を背景に、細胞死の増加と炎症性変化を特徴とし、肝硬変・肝癌の原因疾患としても注目されている。本研究では申請者らが独自に開発したNASHマウスモデルを用いて、代謝性ストレスによる肝細胞死がもたらす間質細胞の機能的変化が組織修復過程を障害し、NASH・肝細胞癌の発症に結びつく分子機構を検討する。慢性炎症では組織障害や死細胞に対するストレス応答が遷延化し、正常な修復機転を障害することで組織線維化に至ること、さらに修復機転の遷延化は発癌に繋がることが指摘されている。NASHは肝臓における過剰な脂質蓄積を背景に、細胞死の増加と炎症性変化を特徴とし、肝硬変・肝癌の原因疾患としても注目されている。本研究では申請者らが独自に開発したNASHマウスモデルを用いて、代謝性ストレスによる肝細胞死がもたらす間質細胞の機能的変化が組織修復過程を障害し、NASH・肝細胞癌の発症に結びつく分子機構を検討する。 | KAKENHI-PROJECT-19K07475 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K07475 |
植物の鉄栄養制御 | オオムギから細胞質型とプラスチド型の2種のグルタチオン還元酵素遺伝子を単離した。グルタチオン還元酵素は、酸化型グルタチオンを還元して還元型グルタチオンに変換することにより、細胞内のレドックス制御に深く関与している酵素である。興味深いことに、我々が単離した2種のグルタチオン還元酵素遺伝子は、いずれも酸化ストレスを生じる鉄過剰ではなく、鉄欠乏に応答してその発現が誘導された。さらに、我々はイネから鉄欠乏によって強く発現が誘導されるグルタチオントランスポーター遺伝子、OsIGT1を単離した。アフリカツメガエル卵母細胞の系を用いて、このトランスポーターが酸化型グルタチオンを輸送することを明らかにした。プロモーターGUS解析により、この遺伝子は鉄欠乏の根の先端部、葉に発現していることが明らかとなった。T-DNA挿入により、OsIGT1の機能を欠失したイネ種子を韓国より入手した。鉄を除いた水耕栽培により、その表現型を解析したところ、鉄欠乏に感受性であることが確認された。グルタチオン還元酵素遺伝子や、グルタチオントランスポーター遺伝子の発現が鉄欠乏によって上昇する事実は、鉄濃度を感知する鉄センサーから遺伝子発現制御までの鉄栄養シグナル伝達経路と、グルタチオンを介したレドックス制御機構の間にクロストークが存在する可能性を示唆している。植物は、細胞内の鉄の過不足を感知するメカニズムを備えて鉄の吸収と代謝を厳密に制御し、生体内の鉄のホメオスタシスを維持している。しかしながら、細胞内の鉄の過不足を感知するセンサー、あるいはそのシグナルを伝達して遺伝子発現を制御する情報伝達のメカニズムについては、これまで全く明らかになっていない。本研究では、細胞内レドックス制御と細胞内鉄ホメオスタシスの維持との間の関係を明らかにし、細胞内の鉄の過不足を感知するセンサー、あるいはそのシグナルを伝達して遺伝子発現を制御する情報伝達のメカニズムの解明に迫ることを目的とした。オオムギから細胞質型とプラスチド型の2種のグルタチオン還元酵素遺伝子を単離し、さらにこれらの遺伝子について解析を進め、植物の鉄栄養制御におけるグルタチオンの関与という新たな分野を開拓した。イネから鉄欠乏によって強く発現が誘導されるグルタチオントランスポーター遺伝子、OsIGT1を単離した。アフリカツメガエル卵母細胞の系を用いて、このトランスポーターが酸化型グルタチオンを輸送することを明らかにした。プロモーターGUS解析により、この遺伝子は鉄欠乏の根の先端部、葉に発現していることが明らかとなった。T-DNA挿入により、OsIGT1の機能を欠失したイネ種子を韓国より入手した。鉄を除いた水耕栽培により、その表現型を解析したところ、鉄欠乏に感受性であることが確認された。今後は、グルタチオンを介したレドックス制御と鉄欠乏応答との関係を明らかにする。オオムギから細胞質型とプラスチド型の2種のグルタチオン還元酵素遺伝子を単離した。グルタチオン還元酵素は、酸化型グルタチオンを還元して還元型グルタチオンに変換することにより、細胞内のレドックス制御に深く関与している酵素である。興味深いことに、我々が単離した2種のグルタチオン還元酵素遺伝子は、いずれも酸化ストレスを生じる鉄過剰ではなく、鉄欠乏に応答してその発現が誘導された。さらに、我々はイネから鉄欠乏によって強く発現が誘導されるグルタチオントランスポーター遺伝子、OsIGT1を単離した。アフリカツメガエル卵母細胞の系を用いて、このトランスポーターが酸化型グルタチオンを輸送することを明らかにした。プロモーターGUS解析により、この遺伝子は鉄欠乏の根の先端部、葉に発現していることが明らかとなった。T-DNA挿入により、OsIGT1の機能を欠失したイネ種子を韓国より入手した。鉄を除いた水耕栽培により、その表現型を解析したところ、鉄欠乏に感受性であることが確認された。グルタチオン還元酵素遺伝子や、グルタチオントランスポーター遺伝子の発現が鉄欠乏によって上昇する事実は、鉄濃度を感知する鉄センサーから遺伝子発現制御までの鉄栄養シグナル伝達経路と、グルタチオンを介したレドックス制御機構の間にクロストークが存在する可能性を示唆している。 | KAKENHI-PROJECT-07F07161 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07F07161 |
金属窒化物結晶の照射損傷の特徴:構造空位と選択的はじき出し損傷効果の検証 | 窒化ジルコニウム(ZrN)は、次世代原子炉燃料および核変換処理用の材料として期待されているが、放射線照射に伴う微細組織変化に関する知見は殆ど得られていない。本研究では、原子炉環境を模擬した電子ならびに各種イオン照射を施したZrNの照射に伴う微細組織変化を透過電子顕微鏡法で調べ、その特徴を整理することを試みた。ZrNでは蛍石型酸化物に見られる陰イオンの選択的はじき出し損傷に起因する照射欠陥集合体の形成は見られないことや、核分裂によって発生する高速重イオンによるイオントラック形成が起こり難いこと、高密度電子励起の重畳によりナノサイズの結晶粒が形成されることなどが明らかになった。窒化ジルコニウム(ZrN)は、次世代原子炉燃料および核変換処理用の材料として期待されているが、放射線照射に伴う微細組織変化に関する知見は殆ど得られていない。本研究では、原子炉環境を模擬した電子ならびに各種イオン照射を施したZrNの照射に伴う微細組織変化を透過電子顕微鏡法で調べ、その特徴を整理することを試みた。ZrNでは蛍石型酸化物に見られる陰イオンの選択的はじき出し損傷に起因する照射欠陥集合体の形成は見られないことや、核分裂によって発生する高速重イオンによるイオントラック形成が起こり難いこと、高密度電子励起の重畳によりナノサイズの結晶粒が形成されることなどが明らかになった。本研究は、原子炉燃料および核変換処理母相の候補材料である窒化ジルコニウム(ZrN)の照射損傷過程の特徴を整理することを目的としており、電子顕微鏡を用いて各種放射線照射により形成された照射欠陥集合体の微細構造観察を行なった。この際、ZrN結晶の照射損傷過程に関する知見がほとんど得られていないという現状を踏まえ、まず(1)単純な形態のフレンケル対を導入する超高圧電子顕微鏡による「その場」法により、ZrN中の照射欠陥集合体の形成・成長過程を調べ、次いで、(2)核分裂片の照射効果を模擬する高速重イオン照射による高密度電子励起に伴うイオントラックの形成について調べた。以下に、得られた成果の概要を記す。(1)300K990Kの温度範囲で、1000keV電子を3x10^23e/m^2sの照射線束密度で照射しながら、微細構造変化の「その場」観察を行なった。370Kまでの照射温度では、0.7dpa(N原子換算)まで照射しても照射欠陥は観察されなかった。650K以上の温度でドット状コントラストが形成され、温度と共に照射欠陥のサイズは増加した。(2)ZrN結晶では構成元素の質量差が大きいため、電子照射下では軽元素の窒素副格子に優先的なはじき出し損傷が生じると考えられる。しかしながら、ZrO_2やCeO_2に形成された陰イオン格子間原子集合体と考えられる照射欠陥は形成されず、顕著な選択的はじき出し損傷の効果は現れなかった。(3)210MeV高速重イオンを照射した試料中にはイオントラックが観察されたが、その分布は極めて不均一であった。この結果については、試料中の不純物の効果も含めてH21年度に研究を継続する。窒化ジルコニウムは,原子炉燃料および核変換処理母相の候補材料に挙げられているが,放射線照射により形成される照射欠陥の性状,形成・成長過程などに関する情報は不十分である.本研究では,電子励起ならびにはじき出し損傷を付与する放射線を照射したZrN結晶の照射欠陥集合体の形成・成長過程、ならびに安定性を透過電子顕微鏡法により調べ、照射誘起微細構造の特長を明らかにすることを目的としている.平成21年度に得られた主な結果を以下のとおりである.(1)不純物濃度ならびに不定比性(N/Zr原子比)の異なるZrN原料粉末から,HIP法により焼結体を作製した.ZrN粉末にはC, Oなどの不純物が含まれており,ZrO2相が存在していた.焼結体を整形、研磨して作製した試料に210MeV Xeイオンあるいは2.4MeV Cuイオンを室温にて照射した.210 MeV Xeイオンの照射量は1.0×10^<16>1.0×10^<19>ions/m^2であり,2.4MeV Cuイオンの照射量は1.0×10^<19>ions/m2とした.これらの試料から透過電子顕微鏡用薄膜試料を作製し,電顕観察に供した.(2) 210MeV Xeイオン照射により,31 keV/nmの高密度電子励起を付与した試料には,過不足焦点条件にてコントラストが反転するイオントラックに特有なコントラストを有する照射欠陥が観察された.しかしながらイオントラックの分布は極めて不均一であり,大部分の領域には形成されていなかった.EDXによる元素マッピングにより,ZrおよびN原子は試料に均一に分布していたのに対し,O原子はイオントラックが形成された領域にのみ偏って分布していた.すなわち,イオントラックはZrO_2相にのみ形成され,ZrNには形成されていない可能性が高いと考えている.以上の結果は,MgAl_2O_4, Al_2O_3, ZrO_2, CeO_2等の酸化物結晶とは大きく異なっている.不純物濃度の異なる試料を用いて研究を継続する予定である.(3) 2.4McV銅イオン照射により約1 dpaのはじき出し損傷を付与した試料には,試料全面にわたって5nm程度の転位ループと考えられるドット状のコントラストが高密度に形成された.本研究は、プルトニウムや長寿命核種の削減 | KAKENHI-PROJECT-20560617 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20560617 |
金属窒化物結晶の照射損傷の特徴:構造空位と選択的はじき出し損傷効果の検証 | ・消滅処理のための母相材料として期待されている窒化ジルコニウム(ZrN)の原子炉照射環境下における微細構造安定性を明らかにすることを目的とし、210MeV Xeイオンならびに2.4MeV Cuイオンを照射したZrN焼結体の微細構造観察・分析を透過電子顕微鏡法により行った。210MeVXeイオンおよび2.4MeV Cuイオンは、それぞれ、主として高密度電子励起および弾性的はじき出し損傷を誘起する。焼結体試料は、不純物濃度の異なる3種類の原料粉末から作製したものを用い、照射欠陥形成の差異を比較した。本研究により、以下のことが明らかになった。(1)比較的高濃度のCおよびO原子を不純物として含む焼結体には、イオントラックと考えられる照射欠陥が極めて不均一にフレネルコントラストとして観察された。これらの欠陥は、ジルコニア等の析出物相や窒素濃度の低い領域にのみ形成された。(2)ZrN母相には、210MeVのXeイオンを1×10^<18>ions/m^2の照射量まで照射してもイオントラックは形成されず、さらに転位ループ等の照射欠陥も形成されなかった。すなわち、ZrN母相は高密度電子励起に対してこの照射量までは強い耐性を示すことが分かった。(3)不純物濃度の低い試料に、210MeVのXeイオンを1×10^<19>ions/m^2の照射量まで照射すると、イオントラックは形成されないものの、転位等の照射欠陥及びボイドが高密度で形成され、一部の領域の結晶粒が微細化していることが分かった。これは、高密度電子励起の重畳に伴って蓄積された点欠陥の離合集散によって生じたものと考えられる。(4)2.4MeVのCuイオンを高照射量施した試料では、2nmのドット上の転位ループが形成され、照射量の増加に伴い、成長、合体していくことが観察された。 | KAKENHI-PROJECT-20560617 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20560617 |
ラオスにおける腸管寄生虫症対策-学校・地域の連携による公衆衛生改善の取り組み- | ラオスにおいて、学童の健康の改善・向上を目指し、公衆衛生的課題のひとつである腸管寄生虫症対策に焦点を当てた研究を行った。駆虫薬の複数回投与と手洗いを行った群では、回虫、鞭虫、鉤虫のすべての虫卵の減少率が最も高かった。複数回投与と手洗いいずれかの介入群は、介入後もベースラインと若干の減少がみられた。少なくとも、回虫については投薬方法に関わらず、ある程度の駆虫効果が得られた上、手洗いにより再感染が防げる可能性が示唆された。さらに、学童対象の駆虫や健康教育により、村民の行動にも影響を与える事が示唆された。研究1年目で、ラオス国北部の農村地域の小学校8校において、1検便を行い、腸管寄生虫症(回虫・鉤虫・鞭虫)の虫卵陽性率のモニタリング、2小学校に常に石鹸を常設し帰宅前に手洗いを確実に実施する介入を行った。対象校の選定に、調査可能地域で、同じような条件の学校を見つけることが難しく、様々な条件が統制できない状態で、腸官寄生虫症の陽性率にもばらつきがあったが、それぞれの学校で一定時期にベースラインをとり、ケースコントロールスタディーを行った。1については、2012年に2回の駆虫を、ラオスの標準的治療法であるMebendazole(MBZ)500mgの1回投与から、より効果的なMBZ100mgの6回投与に変更した学校を含めモニタリングした。2012年の検便結果と比較すると約2年間のうちに、ほとんどの学校で陽性率が減少傾向にあった。しかし、効果的駆虫を行った学校でも、回虫・鉤虫・鞭虫ともに、ほぼプレコントロールレベルと変化がない学校が1校あった。今回の調査方法では、投薬と検便の実施時期から、薬効に問題があるのか、再感染がおこっているのか、判断・評価することができない。今後、当該校で虫卵陽性率が低下しない原因について、さらに詳細な調査を進めていく。また、この学校が所在する村落を対象に、アクションリサーチの手法で、介入研究を行っていく。効果的駆虫に加え、手洗い介入を行った学校では、ばらつきがみられるものの虫卵陽性率にある程度の減少傾向を示したが、手洗い非介入校では変化がない学校もあった。回虫は、比較的駆虫が容易な寄生虫であるため、駆虫薬の投薬方法に関わらず、手洗いにより再感染が防げる可能性が期待できる。さらに、効果的な駆虫を行った上で、学校での継続的・積極的な健康教育を行うことにより、鉤虫・鞭虫についても、陽性率を下げる効果が期待できると考え、今後の調査を継続していく。平成26年度は、研究2年目として、2回のフィールド調査を行った。主に、対象郡の9つの小学校及び、コントロールとして、プラス3校において、検便により、寄生虫症の感染状況を客観的に把握した。さらに、介入群の小学校での衛生教育への取り組みとその波及効果について、学童および地域の住民にヒアリングを行った。寄生虫症感染状況については、いずれの学校も、継続的な駆虫薬の内服により、回虫については、かなり効果的に駆虫されている。しかし、鞭虫、鉤虫については、地域により、駆虫率および再感染率に差があり、学校・地域による差がみられる。特に、経皮感染する鉤虫については、駆虫率が悪く、また予防に対する人々の考えも曖昧であるため、今後、詳細を分析しつつ、対策の強化が必要である。現地では、電気やインフラの整備が、徐々に進んでいるが、水道の普及や、トイレの所有率に比べ、スマートフォンの普及率がめまぐるしく、中高生世代から、SNSの利用が進み、情報の入手経路が想定外の広がりを見せている。よって、これまでのような、コミュニティーベースの健康教育ではなく、IT教材を活用した健康教育など、時代の流れに応じた方法のシフトが必要であると考え、今後、研究の計画の見直しを行っていく予定である。平成27年度は、研究3年目となり、調査対象の9つの小学校におけるモニタリングの継続と、1村でのアクションリサーチの手法を用いた村落における調査を実施した。対象9つの小学校において、手洗いの介入と手洗いの非介入の2群にわけ、介入調査を実施していたが、手洗いの効果による差ではなく、舗装された幹線道路から遠方になるほど、腸管寄生虫の感染率が高い傾向にあった。本来、土壌伝播性の寄生虫症は、土壌を伝播するため、トイレ所有率に反比例するが、今回の結果は、回虫、鞭虫に関しては、幹線道路からの距離が遠くなればなるほど、感染率が高くなる傾向にあった。回虫は、幹線道路に近いほど、ほぼ10%以下の感染率であった。鞭虫は回虫よりも高い感染率を示すが徐々に減少傾向である。鉤虫は、地域により、引き続き40%近い感染率である。鉤虫は経皮的に感染をするため、手洗いでは予防できない。しかし、この高感染率の継続は、現行のメベンダゾール500mgの半年ごとの投薬では、駆虫自体が困難であり、再感染対策防止の健康教育だけでは不十分であるという結果が得られた。村落におけるアクションリサーチの結果は、寄生虫症対策に関する成人の意識は、子どもたちに向いており、成人は、「大人には関係のないこと」と感じていたことが明らかとなった。そこで成人も対象に検便を行ったことにより、より寄生虫症感染に対する意識が強くなり、「子どもたちに恥ずかしくないように大人たちも対策をしなければいけない」という意識の変化がみられた。 | KAKENHI-PROJECT-25463659 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25463659 |
ラオスにおける腸管寄生虫症対策-学校・地域の連携による公衆衛生改善の取り組み- | しかし、村全体でどのように対策をとるのか、組織的な取り組みには至らず、個々人の意識の変化にとどまり、具体的な行動の変化までには至らず、引き続き課題を残した。当初は3年間の計画をたて、調査を行ってきた。当初より、悪天候によるアクセスの悪さから調査が遅れていたことに加え、この2,3年スマートフォンの急速な普及に伴い、人々の生活様式や価値観の変化がみられると考えたため、調査期間を延長した。当初計画になかったスマートフォンの普及による影響までを調査内容に含むことは、期間的には無理であるが、行動の変化に関する一要因として、当初の研究目的は達成できるよう調査を継続する。2014年から2017年の4年間に渡り、ラオス国北部農村地域の8小学校の学童と小学校が所在する1地域の住民を対象に、腸管寄生虫症に対する感染状況の動向の把握と小学校での石鹸と流水での手洗いの実施による対策の効果、およびその地域への波及の実態を検討した。対象8小学校を2校ずつ4群に分け、介入1年目のみMBZの単回から複数回(100mg×6回)への投薬方法の変更と、小学校での手洗いの励行の介入をおこなった。手洗い介入は、学校で手洗い用水の確保ができる4校を、複数回投与は、複数回の投薬が可能な4校を選択した。複数回投与を行なわない群は従来の単回投与をした。手洗い介入として小学校に常に石鹸を常設し帰宅前に手洗いを励行した。介入前後で検便を行い、回虫、鉤虫、鞭虫の虫卵陽性率の変化で評価を行った。2013年先行研究において行ったベースライン調査の結果と2017年3月の結果を比較した。複数回投与と手洗いを行った群では、すべての虫卵の減少率が最も高かった。その他の群では介入後もベースラインとほぼ同等もしくは、若干の減少がみられた。少なくとも、回虫については投薬方法に関わらず、ある程度の駆虫効果が得られた上、手洗いにより再感染が防げる可能性が示唆された。また、本調査における検便は、駆虫薬投薬前に行っており、再感染の影響により駆虫効果判定が困難であるが、特に鉤虫は、MBZ単回投与を数年継続したとしても、駆虫には効果が期待されにくいことが示唆された。最も虫卵陽性率の低かった学校をターゲットのその要因をインタビューと参加観察によって調査した。教員の衛生教育に関する意識が高く、主体的に感染学生には個別なフォローがなされていた。また、学校で手洗いを始めたことにより、両親や地域住民の衛生行動も改善される機会になり、学童を中心とした衛生行動の改善により、村内全体の陽性率が下がる可能性があると示唆された。ラオスにおいて、学童の健康の改善・向上を目指し、公衆衛生的課題のひとつである腸管寄生虫症対策に焦点を当てた研究を行った。駆虫薬の複数回投与と手洗いを行った群では、回虫、鞭虫、鉤虫のすべての虫卵の減少率が最も高かった。複数回投与と手洗いいずれかの介入群は、介入後もベースラインと若干の減少がみられた。少なくとも、回虫については投薬方法に関わらず、ある程度の駆虫効果が得られた上、手洗いにより再感染が防げる可能性が示唆された。さらに、学童対象の駆虫や健康教育により、村民の行動にも影響を与える事が示唆された。初年度より、天候不良により調査フィールドへのアクセスの面で、遅れをとっていた。さらに、近年、東南アジアを中心にスマートフォンの普及によるIT化がめまぐるしく、ラオスも例外ではない。 | KAKENHI-PROJECT-25463659 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25463659 |
看護者-患者関係における言語的・非言語的コミュニケーションの計量行動学的分析 | 看護者-患者関係における言語的・非言語的コミュニケーションを計量行動学的に分析するために下記のごとき調査を施行した。1)入院または外来患者に対し看護婦が看護介入を実践し、患者との言語的あるいは非言語的コミュニケーションの場面を作った。2)当該場面のプロセスレコードより、検討資料を作成した。3)言語学的に、情報量を各種言語因子により計測した。5)各例の疾患の消長を病歴より分析した。6)3),4),5)のデータを解析し、それらの相関を検討した。今回は、23の病院の患者を被検者として、看護介入,看護面接,看護観察の場面を設定し、録音の集録を施行、研究室に戻り、そのプロセスレコードを言語学的に分析,計量行動学的に分析,数量化して、コンピュータによる多変量解析を行ない、各患者ならびに看護者の言語ならびに行動の特性を観察し、病状の経過との関係を検討した。まず、最初の分析の目標として、時間的経過と患者ならびに看護者との関係について調査した。両者の発言時間の記録から、相手の発言中の沈黙を観察し、そのときの心境を推定し、「第一沈黙時間」と「第二沈黙時間」とを定め、その移動をグラフ化して、対話効率を判定した。患者の症状の改善のためには、ある程度の心理的満足感を前提とするが、「第二沈黙時間」の増大と共に、不満がつのり、看護指導が不徹底になる像が確認された。更に、「医療用語」の出現頻度の測定により、患者の不安緊張と看護者の指導力未熟が時間軸のパラメーターで示され、被医療者に対する医療側の言語的対応の重要性が示唆された。非言語的コミュニケーションの計量行動学的分析,数量化に関しては今後の問題とする。看護者-患者関係における言語的・非言語的コミュニケーションを計量行動学的に分析するために下記のごとき調査を施行した。1)入院または外来患者に対し看護婦が看護介入を実践し、患者との言語的あるいは非言語的コミュニケーションの場面を作った。2)当該場面のプロセスレコードより、検討資料を作成した。3)言語学的に、情報量を各種言語因子により計測した。5)各例の疾患の消長を病歴より分析した。6)3),4),5)のデータを解析し、それらの相関を検討した。今回は、23の病院の患者を被検者として、看護介入,看護面接,看護観察の場面を設定し、録音の集録を施行、研究室に戻り、そのプロセスレコードを言語学的に分析,計量行動学的に分析,数量化して、コンピュータによる多変量解析を行ない、各患者ならびに看護者の言語ならびに行動の特性を観察し、病状の経過との関係を検討した。まず、最初の分析の目標として、時間的経過と患者ならびに看護者との関係について調査した。両者の発言時間の記録から、相手の発言中の沈黙を観察し、そのときの心境を推定し、「第一沈黙時間」と「第二沈黙時間」とを定め、その移動をグラフ化して、対話効率を判定した。患者の症状の改善のためには、ある程度の心理的満足感を前提とするが、「第二沈黙時間」の増大と共に、不満がつのり、看護指導が不徹底になる像が確認された。更に、「医療用語」の出現頻度の測定により、患者の不安緊張と看護者の指導力未熟が時間軸のパラメーターで示され、被医療者に対する医療側の言語的対応の重要性が示唆された。非言語的コミュニケーションの計量行動学的分析,数量化に関しては今後の問題とする。 | KAKENHI-PROJECT-60571119 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-60571119 |
計量テキスト分析による権威主義体制の中国における商業紙の研究 | 平成30年度は主に二つの点で成果があった。第一に、研究手法において進展があった。中国語の計量テキスト分析の手法として、Pythonの機械学習用ライブラリや、Rのパッケージを検討した。一方で、日本語のWindowsでは分析の過程で文字化けを起こしやすい問題など、引き続き課題に取り組む必要があることを確認した。以上の成果として、2018年10月20日に駒澤大学で行われた日本マス・コミュニケーション学会において「中国語ソーシャルメディアの分析手法ー変化する中国メディアをどのようにとらえるかー」のタイトルで報告を行った。本ワークショップでは、データ収集や検閲など中国研究における特有の問題など、中国語の計量テキスト分析に関する議論を深めることができた。さらには、これまで中国語の計量テキスト分析を用いていない研究者と交流するきっかけになり、分野を越えて計量テキスト分析の応用可能性を議論することができた点で有意義なものとなった。第二に、研究内容における進展である。中国において自己検閲を生み出すメカニズムの一つである新聞統制制度の変遷を明らかにした。具体的には、上海の商業紙がニュースサイトを設立した事例を対象に新聞統制制度の変遷や限界を指摘した。以上から、中国共産党が直面する独裁者のジレンマを解消するメカニズムを検討した。この成果として、2019年3月22日に公立小松大学の「高度情報化時代と国家の適応ー中東と中国の事例からー」のワークショップにおいて、「中国におけるメディア統制制度の変遷ー情報化による変化とその適応」のタイトルで報告を行った。本ワークショップはアラブと中国におけるメディア統制の共通点と差異を検討するなど、将来比較研究に発展するきっかけとなった点で意義があるものとなった。以上の成果を共同研究や平成31年度採択の若手研究へとつなげていくことが今後の課題である。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。本研究の目的は、中国の商業紙が行う自己検閲を対象として、中国共産党が直面する独裁者のジレンマを解消するメカニズムを検証することである。商業紙が自己検閲によって党への批判をあいまいにすることで党へ情報を伝達する役割を果たすという命題を検証する。分析には中国の新聞記事テキストを対象にした分析を行う。計量テキスト分析の手法の一つである機械学習を使用する予定である。一部のデータを教師データとすることで質と量を合わせた分析ができる。また、記事テキストは大量のデータとなるが、機械学習によって多くの記事を分類することが可能になると考えている。2016年度は分析のための準備として記事データの収集を中心に行った。記事データの収集はプログラマーの協力を得て機械的に記事収集のできるプログラムを作成した。これによって、本研究が対象とする新聞のすべての記事を対象に記事を抽出することが可能になった。また、特定のキーワードに当てはまる記事のみを抽出することができる。その他にプログラミング言語の一つであるPythonや、機械学習の習得に力を入れた。さらに3月に中国上海でフィールドワークを実施した。上海でのフィールドワークでは現地の研究者や記者と意見交換を行うことができた。主に中国の新聞をめぐる状況の変化やメディア研究の現状について貴重な意見を得た。図書館での資料収集では、上海図書館などで資料を収集し自己検閲に関わる資料を入手した。最も懸念していた新聞のテキストデータ収集が実行できた。とりわけプログラムで機械的に記事収集ができるようになったため、分析者の見落としなどのミスを防ぐ利点があるなど手法面で著しい進展があった。フィールドワークでは資料は少ないものの自己検閲に関する資料を入手することができた。申請段階ではRを用いた分析を行う予定であったがPythonを用いることに変更したため、Pythonの習得にやや時間がかかっている。本研究の目的は、中国の商業紙が行う自己検閲を対象として、中国共産党が直面する独裁者のジレンマを解消するメカニズムを検証することである。商業紙が自己検閲によって党への批判をあいまいにすることで党へ情報を伝達する役割を果たすという命題を検証する。分析には中国の新聞記事テキストを対象にした分析を行う。計量テキスト分析の手法の一つである機械学習を使用する予定である。本年度は主に以下の三点を中心に進展があった。(1)中国語の計量テキスト分析の手法を検討した。分析ツールであるPythonを用いて中国語の形態素分析が可能となった点に重要な成果があった。これによって、次年度以降に形態素分析の結果を元にした機械学習の実行に向けた取り組みを行うことが可能となった。(2)昨年度に引き続きデータの収集を中心に行った。中国の商業紙2紙を対象にキーワードを用い記事を収集した。(3)コーディング基準の設定を行った。記事分析に必要なコーディング基準を中国語母語話者との議論を経て検討した。自己検閲というあいまいな記述を抽出できるよう記事の分類に用いる基準を簡潔にし、さらにコーダー間の信頼性を担保できるよう、様々な可能性を検討した。以上のように、平成29年度は中国の新聞を対象にした計量テキスト分析の可能性を検討することができた。しかし、自身の妊娠出産により研究を中断せざるを得なかった。そのため、今後はこの成果を元に分析を実行に移すとともに、引き続き中国の新聞を対象とした計量テキスト分析の可能性を検討したい。本年度は申請者の妊娠出産により研究計画の中断があり、当初の計画より遅れている。当初は分析の実行を目標としていたが、記事収集とコーディング基準の設定など基礎的な段階にとどまった。そのため、研究課題を次年度に繰り越すこととなった。 | KAKENHI-PROJECT-16H07276 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H07276 |
計量テキスト分析による権威主義体制の中国における商業紙の研究 | 平成30年度は主に二つの点で成果があった。第一に、研究手法において進展があった。中国語の計量テキスト分析の手法として、Pythonの機械学習用ライブラリや、Rのパッケージを検討した。一方で、日本語のWindowsでは分析の過程で文字化けを起こしやすい問題など、引き続き課題に取り組む必要があることを確認した。以上の成果として、2018年10月20日に駒澤大学で行われた日本マス・コミュニケーション学会において「中国語ソーシャルメディアの分析手法ー変化する中国メディアをどのようにとらえるかー」のタイトルで報告を行った。本ワークショップでは、データ収集や検閲など中国研究における特有の問題など、中国語の計量テキスト分析に関する議論を深めることができた。さらには、これまで中国語の計量テキスト分析を用いていない研究者と交流するきっかけになり、分野を越えて計量テキスト分析の応用可能性を議論することができた点で有意義なものとなった。第二に、研究内容における進展である。中国において自己検閲を生み出すメカニズムの一つである新聞統制制度の変遷を明らかにした。具体的には、上海の商業紙がニュースサイトを設立した事例を対象に新聞統制制度の変遷や限界を指摘した。以上から、中国共産党が直面する独裁者のジレンマを解消するメカニズムを検討した。この成果として、2019年3月22日に公立小松大学の「高度情報化時代と国家の適応ー中東と中国の事例からー」のワークショップにおいて、「中国におけるメディア統制制度の変遷ー情報化による変化とその適応」のタイトルで報告を行った。本ワークショップはアラブと中国におけるメディア統制の共通点と差異を検討するなど、将来比較研究に発展するきっかけとなった点で意義があるものとなった。以上の成果を共同研究や平成31年度採択の若手研究へとつなげていくことが今後の課題である。データ分析を進める。まずは機械学習の教師用データの作成を行う。さらに、Pythonの機械学習を学び早急にデータ分析を行いたい。必要があれば専門家の助言を得ながら進めていく。また、事例の候補をいくつか挙げより適切な事例を選択できるよう対応する。分析結果を整理し学会報告を行い論文としてまとめる。平成30年度は主にデータの分析と結果のまとめ・報告に力を入れて取り組む。データ分析は専門家の助言を得ながら進めていく。結果のまとめと報告は分析を進め次第学会報告や論文投稿などの形で達成したい。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-16H07276 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H07276 |
通信プロセスモデルにもとづく実時間並行プログラムの検証と実現に関する研究 | 本年度は,以下の項目について研究を行った。●実時間通信プロセスのテスト擬順序に対する証明技法の開発実時間通信プロセスモデルを既存の通信プロセスモデルを拡張して定義し、従来直接扱うことのできなかった量的な時間の概念を計算モデルに導入した。この拡張モデルにおいて、テスト擬順序による意味論を展開し、その証明技法を正則なクラスに対して確立した。ここでは、時間は実数領域を用いるため、無限の状態が存在するが、正則な実時間通信プロセスでは、振舞いが変化するポイントは、その記述から記号的に有限に表現できることに着目して、証明技法を提案した。●命令レベル並列プロセッサ向きのコンパイラ仕様記述実時間性をもつ通信プロセスでモデルの応用として、RISCプロセッサのような演算ユニットを複数有する計算プロセッサに対するコンパイラの振舞いを、同期的な並行計算の記述体系であるSCCS[Milner'83]を用いて抽象的に記述した。ここでは、命令レベル並列プロセッサを資源、その上で実行されるプログラムを消費者とみなし、並行システムとして定式化した。コンパイラの記述では、タイミングが本質的であるので動作の実時間性が要求される。この定式化によって、細部に立ち入らずにコンパイラの振舞いを記述でき、論理的なレベルでコンパイラの検証を行うことができるようになった。さらに、効率的な仕様検証のために、SCCSが表現するラベル付き遷移システムの効率的構成法についても検討したい。本年度は,以下の項目について研究を行った。●実時間通信プロセスのテスト擬順序に対する証明技法の開発実時間通信プロセスモデルを既存の通信プロセスモデルを拡張して定義し、従来直接扱うことのできなかった量的な時間の概念を計算モデルに導入した。この拡張モデルにおいて、テスト擬順序による意味論を展開し、その証明技法を正則なクラスに対して確立した。ここでは、時間は実数領域を用いるため、無限の状態が存在するが、正則な実時間通信プロセスでは、振舞いが変化するポイントは、その記述から記号的に有限に表現できることに着目して、証明技法を提案した。●命令レベル並列プロセッサ向きのコンパイラ仕様記述実時間性をもつ通信プロセスでモデルの応用として、RISCプロセッサのような演算ユニットを複数有する計算プロセッサに対するコンパイラの振舞いを、同期的な並行計算の記述体系であるSCCS[Milner'83]を用いて抽象的に記述した。ここでは、命令レベル並列プロセッサを資源、その上で実行されるプログラムを消費者とみなし、並行システムとして定式化した。コンパイラの記述では、タイミングが本質的であるので動作の実時間性が要求される。この定式化によって、細部に立ち入らずにコンパイラの振舞いを記述でき、論理的なレベルでコンパイラの検証を行うことができるようになった。さらに、効率的な仕様検証のために、SCCSが表現するラベル付き遷移システムの効率的構成法についても検討したい。 | KAKENHI-PROJECT-08780260 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08780260 |
広域における未知の遺跡の発見と分布の検討手法を確立することを目的として、LiDARをはじめとするリモートセンシング技術による微地形の確認と検討手法の研究をおこなうことを目的とする。空中LiDARは広範囲を計測可能であるが、微地形の計測については解像力が低い。このため、他手法や踏査と連携する必要がある。本年度はその初年度として基礎データの取得と技術の検討をおこなった。基礎データとしては当初より予定していた春日大社周辺について、空中LiDARの取得を予定して方法の検討などを空撮会社と進めていたが、奈良県が同じ範囲の計測を計画、実施していることが判明し、県との協議により取得データの提供を頂けることが明らかとなった。このため、基礎データ取得の対象範囲の決定とデータ取得を次年度に変更し、代わって機器のや手法の検討を進めた。技術の検討としては入力用のコンピューターを導入し、LiDAR解析用のソフトウェアについて試験をおこなった。この結果、複数の候補を選定し、導入をおこなった。手持ちLiDARについては、実際の遺跡での計測試験をおこない、迅速に地形情報を取得し、またフィルター処理により植生を除去することが可能になり、その有効性について確認ができた。これにより、空中LiDARの広範囲をカバーする能力と地上レーザースキャナーの詳細さの中間にあたるものとして活用が期待される。また、関連遺跡の検討として、三輪山周辺遺跡出土資料の調査をおこない、地形の分析を含めて検討を進める方向で関係者と検討を進めている。空中LiDARの解析手法および地上LiDARのデータ取得および解析手法を進め、処理の基礎的な思考と、機器・ソフトウェアの導入を完了し、実際のデータを用いて試験的な解析をおこなった。基礎データとしては当初より予定していた春日大社周辺について、空中LiDARの取得を予定していたが、奈良県が同じ範囲の計測を実施していることが判明し、県との協議により取得データの提供を頂けることが明らかとなった。このため、基礎データの取得と対象範囲を次年度に変更し、現在複数の候補地と交渉を進めている。技術の検討としては入力用のコンピューターを導入し、LiDAR解析用のソフトウェアについて試験をおこなった。この結果、複数の候補を選定し、導入をおこなった。手持ちLiDARについては、新沢千塚古墳群、瓢箪山古墳など実際の遺跡で計測試験をおこない、その有効性について確認ができた。また、関連遺跡の検討として、三輪山周辺遺跡出土資料の調査をおこない、地形の分析を含めて検討を進める方向で関係者と検討を進め、学会での発表を予定している。本年度、奈良県より御蓋山、春日山周辺の空中LiDARデータについては提供の手続きが完了した。これを入手後、地形を検討するためのベースマップの作成をおこなう。これにより人為的な改変の可能性がある場所について抽出をおこない、落葉後に踏査および微地形の詳細測量を手持ちLiDARによっておこないたい。また、遺跡の性格を示す採集・出土資料の調査をすすめ、学会などで中間発表をおこないたい。また、現在三輪山周辺をはじめとした空中LiDAR探査について検討をおこなっている。宗教上重要な地でもあり、考慮する面も多いため、慎重に協議し、関係者との合意が整い次第、データの取得を実施したい。広域における未知の遺跡の発見と分布の検討手法を確立することを目的として、LiDARをはじめとするリモートセンシング技術による微地形の確認と検討手法の研究をおこなうことを目的とする。空中LiDARは広範囲を計測可能であるが、微地形の計測については解像力が低い。このため、他手法や踏査と連携する必要がある。本年度はその初年度として基礎データの取得と技術の検討をおこなった。基礎データとしては当初より予定していた春日大社周辺について、空中LiDARの取得を予定して方法の検討などを空撮会社と進めていたが、奈良県が同じ範囲の計測を計画、実施していることが判明し、県との協議により取得データの提供を頂けることが明らかとなった。このため、基礎データ取得の対象範囲の決定とデータ取得を次年度に変更し、代わって機器のや手法の検討を進めた。技術の検討としては入力用のコンピューターを導入し、LiDAR解析用のソフトウェアについて試験をおこなった。この結果、複数の候補を選定し、導入をおこなった。手持ちLiDARについては、実際の遺跡での計測試験をおこない、迅速に地形情報を取得し、またフィルター処理により植生を除去することが可能になり、その有効性について確認ができた。これにより、空中LiDARの広範囲をカバーする能力と地上レーザースキャナーの詳細さの中間にあたるものとして活用が期待される。また、関連遺跡の検討として、三輪山周辺遺跡出土資料の調査をおこない、地形の分析を含めて検討を進める方向で関係者と検討を進めている。空中LiDARの解析手法および地上LiDARのデータ取得および解析手法を進め、処理の基礎的な思考と、機器・ソフトウェアの導入を完了し、実際のデータを用いて試験的な解析をおこなった。基礎データとしては当初より予定していた春日大社周辺について、空中LiDARの取得を予定していたが、奈良県が同じ範囲の計測を実施していることが判明し、県との協議により取得データの提供を頂けることが明らかとなった。このため、基礎データの取得と対象範囲を次年度に変更し、現在複数の候補地と交渉を進めている。技術の検討としては入力用のコンピューターを導入し、LiDAR解析用のソフトウェアについて試験をおこなった。この結果、複数の候補を選定し、導入をおこなった。手持ちLiDARについては、新沢千塚古墳群、瓢箪山古墳など実際の遺跡で計測試験をおこない、その有効性について確認ができた。 | KAKENHI-PROJECT-17H06184 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H06184 |
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また、関連遺跡の検討として、三輪山周辺遺跡出土資料の調査をおこない、地形の分析を含めて検討を進める方向で関係者と検討を進め、学会での発表を予定している。本年度、奈良県より御蓋山、春日山周辺の空中LiDARデータについては提供の手続きが完了した。これを入手後、地形を検討するためのベースマップの作成をおこなう。これにより人為的な改変の可能性がある場所について抽出をおこない、落葉後に踏査および微地形の詳細測量を手持ちLiDARによっておこないたい。また、遺跡の性格を示す採集・出土資料の調査をすすめ、学会などで中間発表をおこないたい。また、現在三輪山周辺をはじめとした空中LiDAR探査について検討をおこなっている。宗教上重要な地でもあり、考慮する面も多いため、慎重に協議し、関係者との合意が整い次第、データの取得を実施したい。 | KAKENHI-PROJECT-17H06184 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H06184 |
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非機能性変異二量体S19リボソーム蛋白質産生マウス作製 | RP S19単量体機能は保持し、RP S19多量体機能が欠損したノックインホモマウスは、僅かではあるが有意差を持って骨随細胞数、脾臓細胞数、末梢血中の赤血球数が減少していました。さらに、好塩基性赤芽球の割合を調べるために骨随細胞と脾臓細胞をCD71・TER119で染色しFACSで解析すると、コントロールマウスに比べてノックインマウスの好塩基性赤芽球の割合も減少していました。また、溶血性貧血等をフェニルヒドラジンで誘導し赤血球数の回復動態を観察すると、コントロールマウスに比べてノックインマウスの赤血球数の回復動態も減少していました。現在、日本のDBA患者にRP S19多量体が関与するかを臨床の先生にお願いして骨髄液、末梢血、尿などの資料を使用できるかを検討しています。その後、RP S19多量体による造血島形成作用を介した赤芽球の品質管理機構の発表をする予定です。RP S19単量体機能は保持し、RP S19多量体機能が欠損したノックインホモマウスは、僅かではあるが有意差を持って骨随細胞数、脾臓細胞数、末梢血中の赤血球数が減少していました。さらに、好塩基性赤芽球の割合を調べるために骨随細胞と脾臓細胞をCD71・TER119で染色しFACSで解析すると、コントロールマウスに比べてノックインマウスの好塩基性赤芽球の割合も減少していました。また、溶血性貧血等をフェニルヒドラジンで誘導し赤血球数の回復動態を観察すると、コントロールマウスに比べてノックインマウスの赤血球数の回復動態も減少していました。現在、日本のDBA患者にRP S19多量体が関与するかを臨床の先生にお願いして骨髄液、末梢血、尿などの資料を使用できるかを検討しています。その後、RP S19多量体による造血島形成作用を介した赤芽球の品質管理機構の発表をする予定です。S19リボソーム蛋白質遺伝子異常が、先天性赤芽球癆ダイヤモンドブラックファン貧血症患者25%に発見された。我々は、赤血球形成におけるS19リボソーム蛋白質単量体の抗アポトーシス作用による増殖期分化細胞の維持とS19リボソーム蛋白質二量体のアポトーシス増幅作用による成熟期分化細胞の脱核を想定している。この理論は、S19リボソーム蛋白質遺伝子ノックアウトマウスが胎生致死であったととが増殖期分化細胞へのアポトーシス作用が想定される。一方、非機能性変異S19リボソーム蛋白質二量体産生をマウスに導入すると、正常機能性変異S19リボソーム蛋白質単量体により増殖期分化細胞は維持されるので胎生致死は免れ、脱核不全による赤芽球激減の再現が期待できる。この仮説を証明するために、非機能性変異S19リボソーム蛋白質二量体産生マウス作成の計画を立案する。平成22年度の計画どおりに、マウスS19リボソーム蛋白質遺伝子の第5エクソン末端CAGをGAGに置換した変異マウスS19リボソーム蛋白質遺伝子をブルースクリプトベクターに導入した。変異マウスS19リボソーム蛋白質遺伝子は、エレクトロポレーション法を用い、ホモロガスリコンビネイションによりマウスES細胞に導入した。変異マウスS19リボソーム蛋白質遺伝子の導入をPCR法で確認したマウスES細胞は、アグリゲイション法によりファウンダーマウスへ生着させた。現在、変異マウスS19リボソーム蛋白質遺伝子の導入をPCR法で確認したヘテロマウスをB6マウスにバッククロスしている。S19リボソーム蛋白質遺伝子異常が、先天性赤芽球癆ダイヤモンドブラックファン貧血症患者25%に発見された。我々は、赤血球形成におけるS19リボソーム蛋白質単量体の抗アポトーシス作用による増殖期分化細胞の維持とS19リボソーム蛋白質二量体のアポトーシス増幅作用による成熟期分化細胞の脱核を想定している。この理論は、S19リボソーム蛋白質遺伝子ノックアウトマウスが胎生致死であったことが増殖期分化細胞へのアポトーシス作用が想定される。一方、非機能性変異S19リボソーム蛋白質二量体産生をマウスに導入すると、正常機能性変異S19リボソーム蛋白質単量体により増殖期分化細胞は維持されるので胎生致死は免れ、脱核不全による赤芽球激減の再現が期待できる。この仮説を証明するために、非機能性変異S19リボソーム蛋白質二量体産生マウス作成の計画を立案する。平成22年度の計画どおりに、マウスS19リボソーム蛋白質遺伝子の第5エクソン末端CAGをGAGに置換した変異マウスS19リボソーム蛋白質遺伝子をブルースクリプトベクターに導入した。変異マウスS19リボソーム蛋白質遺伝子は、エレクトロポレーション法を用い、ホモロガスリコンビネイションによりマウスES細胞に導入した。変異マウスS19リボソーム蛋白質遺伝子の導入をPCR法で確認したマウスES細胞は、アグリゲイション法によりファウンダーマウスへ生着させた。平成22年度の計画どおりに、ノックインホモマウスの作製に成功した。現在、各週令の貧血状態を検討している。抹消赤血球数及びヘモグロビン量は、自動血液解析装置Advia2010で測定している。 | KAKENHI-PROJECT-22590362 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22590362 |
非機能性変異二量体S19リボソーム蛋白質産生マウス作製 | また、赤血球分化段階は、CD71・TER119で染色しFACSで解析している。また、溶血性貧血等を誘導し、赤血球数の回復動態を検査している。最後に、移植実験をして論文投稿予定である。RP S19遺伝子異常が、DBA患者25%に発見された。RP S19単量体がタンパク質合成装置リボソーム形成時の必須タンパク質であることが判明し、タンパク質合成阻害によるアポトーシス誘導に赤血球前駆細胞の感受性が高いことを発見しました。また、RP S19遺伝子ノックアウトマウスが胎生致死でした。我々は、アポトーシス細胞がCD88を発現し、そのアンタゴニスト/アゴニストであるRP S19多量体を放出することを発見しました。また、共通のCD88をRP S19多量体で接着されたアポトーシス細胞とマクロファージの貪食島形成と貪食島上のアポトーシス細胞へのCD88を介した細胞死促進を報告しました。近年、共通のCD88をRP S19多量体で接着された赤芽球とマクロファージの造血島形成を発見しました。そこで、RP S19多量体による赤芽球の品質管理作用を想定しています。RP S19単量体機能は保持し、RP S19多量体機能が欠損したノックインホモマウスは、僅かではあるが有意差を持って骨随細胞数、脾臓細胞数、末梢血中の赤血球数が減少していました。さらに、好塩基性赤芽球の割合を調べるために骨随細胞と脾臓細胞をCD71・TER119で染色しFACSで解析すると、コントロールマウスに比べてノックインマウスの好塩基性赤芽球の割合も減少していました。また、溶血性貧血等をフェニルヒドラジンで誘導し赤血球数の回復動態を観察すると、コントロールマウスに比べてノックインマウスの赤血球数の回復動態も減少していました。現在、日本のDBA患者にRP S19多量体が関与するかを臨床の先生にお願いして骨髄液、末梢血、尿などの資料を使用できるかを検討しています。その後、RP S19多量体による造血島形成作用を介した赤芽球の品質管理が不足することによる貧血症の発表をする予定です。ノックインホモマウスの作製に成功し、貧血の解析が終わると論文投稿の予定である。24年度が最終年度であるため、記入しない。ノックインホモマウスの作製に成功し、貧血の解析を行なっている。しかし、驚くべきことにS19リボソーム蛋白質多量体機能不全マウスは、末梢血リンパ球数が激減していた。従って、次回の研究計画としてリンパ球分化におけるS19リボソーム蛋白質多量体の機構解析を考えている。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22590362 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22590362 |
胃腸管内在ニューロンのシグナル伝達における容量性Ca流入機構の分子機能解析 | 本研究の目的は、胃腸管内在ニューロンにおける容量性Ca流入機構の性質とその制御メカニズムを解明することである。そのため、初代培養した内在ニューロンを用いて、ストア内Ca濃度に影響を与える薬物によって生じるCa流入の性質やそのキネティクス解析、細胞内メッセンジャーによる制御及びCa流入経路としてのイオンチャネル分子の同定を試み、以下の成績を得た。1)新生ラット内在神経の初代培養系を用いて、細胞内Caシグナルを可視化する実験系を確立した。2)ATPは細胞内ストアからのCa遊離、容量性Ca流入及びP2X2受容体を介した[Ca^<2+>]i増加反応を引き起こすことを明らかにした。4)ブラジキニンによる[Ca^<2+>]i増加反応はB2受容体を介した細胞内CaストアからのCa遊離に加えて、容量性Ca流入機構が関与することが示された。また、その反応にはグリア細胞からのPGE2放出が関与していることを見出した。5)PC12細胞に発現させたTRPC5蛋白質はGTP結合型受容体と関連したイオンチャネルを形成することを明らかにした。6)新規Ca流入チャネルであるTRPV1を遺伝子クローニングし、HEK293細胞へ発現させ機能解析を行った。TRPV1蛋白質はバニロイドアゴニスト、酸および熱により活性化されるポリモーダル受容体チャネルであることが示された。本研究により壁内神経細胞における容量性Ca流入機構が存在すること、この機構は神経伝達物質であるATP及びブラジキニンにより活性化されることが明らかになった。また、遺伝子クローニング及び発現・機能解析によりTRPC5及びTRPV1はCa流入チャネルとして機能すること、細胞内ストアはこれらのチャネル活性を制御している可能性が示唆された。本研究の目的は、胃腸管内在ニューロンにおける容量性Ca流入機構の性質とその制御メカニズムを解明することである。そのため、初代培養した内在ニューロンを用いて、ストア内Ca濃度に影響を与える薬物によって生じるCa流入の性質やそのキネティクス解析、細胞内メッセンジャーによる制御及びCa流入経路としてのイオンチャネル分子の同定を試み、以下の成績を得た。1)新生ラット内在神経の初代培養系を用いて、細胞内Caシグナルを可視化する実験系を確立した。2)ATPは細胞内ストアからのCa遊離、容量性Ca流入及びP2X2受容体を介した[Ca^<2+>]i増加反応を引き起こすことを明らかにした。4)ブラジキニンによる[Ca^<2+>]i増加反応はB2受容体を介した細胞内CaストアからのCa遊離に加えて、容量性Ca流入機構が関与することが示された。また、その反応にはグリア細胞からのPGE2放出が関与していることを見出した。5)PC12細胞に発現させたTRPC5蛋白質はGTP結合型受容体と関連したイオンチャネルを形成することを明らかにした。6)新規Ca流入チャネルであるTRPV1を遺伝子クローニングし、HEK293細胞へ発現させ機能解析を行った。TRPV1蛋白質はバニロイドアゴニスト、酸および熱により活性化されるポリモーダル受容体チャネルであることが示された。本研究により壁内神経細胞における容量性Ca流入機構が存在すること、この機構は神経伝達物質であるATP及びブラジキニンにより活性化されることが明らかになった。また、遺伝子クローニング及び発現・機能解析によりTRPC5及びTRPV1はCa流入チャネルとして機能すること、細胞内ストアはこれらのチャネル活性を制御している可能性が示唆された。本年度は新生ラット小腸より単離培養した壁内神経細胞の細胞内Ca動態を解析する実験系の確立とアゴニストによるCa動員機構の解析、並びに容量性Ca流入チャネル蛋白質候補であるTRP遺伝子を神経モデル細胞に強制発現させ機能解析を行い、以下の成績を得た。新生ラットからコラゲナーゼ処理により壁内神経を単離し、初代培養系を確立した。神経細胞は神経特異的抗体であるPGP9.5免疫陽性の有無により同定した。蛍光Ca指示薬を負荷した壁内神経細胞へ種々のアゴニストを適用し、本年度設置した画像解析装置により細胞内Caシグナルを可視化した。ブラジキニン及びATPは濃度依存性に細胞内Caを増加させた。Ca反応は一過性の初期相とその後の持続相よりなる二相性からなっていた。初期相の一部は細胞内貯蔵部位からのCa遊離により生じ、持続相は細胞外からのCa流入により生じることがわかった。ATPによるCa増加は容量性Ca流入阻害薬により有意に抑制された。膜電位固定した細胞ではATPによりCa透過性の非選択的陽イオン電流が発生し、薬理学的、免疫組織化学的解析によりこの電流は主にP2X2受容体を介して生じていることが分かった。クローニングした容量性Ca流入チャネルの候補分子(TRPC5)をラット褐色細胞腫へ遺伝子導入した。TRPC5発現細胞では、ブラジキニン及びUTPによるCa反応が有意に増大し、容量性Ca流入遮断薬はこの反応を強く抑制した。しかし、タプシガルジンにより活性化した容量性Ca流入の大きさは本遺伝子導入により変化しなかった。本研究により胃腸管内在ニューロンのシグナル伝達に容量性Ca流入機構が機能していることが明らかになった。これまで、報告されていたTRPC5は受容体作動性Ca流入として機能するが、容量性Ca流入チャネルとは異なっていることが示された。現在、このシグナルの活性化機構を解明するとともに、他のTRP分子のクローニングと遺伝子発現実験から、このチャネルを担っている分子を同定するための実験を行っている。 | KAKENHI-PROJECT-15380200 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15380200 |
胃腸管内在ニューロンのシグナル伝達における容量性Ca流入機構の分子機能解析 | ブラジキンは炎症性メディエーターとして胃腸管内在ニューロンのシグナルとして働き、内在神経の興奮性を調節することが知られている。今年度は新生ラット消化管内在ニューロンの細胞内Ca動態と細胞膜電位に対するブラジキンの作用を単一細胞レベルで検討した。1)パッチクランプによる活動電位波形とCa結合蛋白質の局在から神経細胞を機能的に分類した。活動電位後過分極を伴う細胞(AH型神経細胞)及びカルビンジン免疫陽性細胞は全体の10%、多くの細胞は過分極を伴なわず、抗カルレチニン免疫陽性を示すS型神経細胞と同定された。2)いずれの神経細胞においてもブラジキニンにより細胞内Ca増加反応を起こした。3)RT-PCTによりラット内在神経細胞叢にB1及びB2受容体mRNAが検出された。4)ブラジキニンによるCa増加反応はB2受容体アンタゴニストにより消失した。一方、B1アゴニストはCa増加反応を引き起こさなかった。神経細胞の殆どは抗B2受容体免疫陽性を示した。5)ブラジキニンによるCa増加反応はシクロオキシゲナーゼ抑制薬、プロスタグランジンEP1受容体遮断薬により抑制された。プロスタグランジンE2はブラジキニン反応を増強した。6)ブラジキニンは培養内在神経叢からプロスタグランジンE2放出を惹起した。7)ブラジキニンは内在神経細胞に持続的な脱分極反応を引き起こし、この脱分極はインドメサシンにより抑制された。7)ブラジキニン存在下で活動電位の発生閾値が有意に低下した。8)これらの結果より、内在神経細胞においてブラジキニンはB2受容体を介してCa増加反応を引き起こし、この反応にはブラジキニンにより放出されたプロスタグランジンが関与していることが明らかになった。また、ブラジキニンは神経細胞の電気的興奮性を増大させることが示された。胃腸管内在神経に存在する炎症性メディエーターのブラジキンによる細胞内Ca増加反応に関与するCaソースについて蛍光画像解析装置を用いた蛍光イメージング法により詳細に検討し、以下の成績を得た。1)ブラジキニンは初代培養ラット内在神経細胞において細胞内Ca増加を引き起こし、そのパターンは(a)一過性反応、(b)一過性反応後持続するもの、(c)持続反応がアゴニスト除去後も長く続く3つのパターン分類された。各種の条件で反応を調べた結果、パターン(c)が半数をしめた。2)細胞内Ca増加反応は外液Ca除去により一過性となり、細胞内Caストアが寄与することが明らかになった。3)細胞内ストアのCaポンプを特異的遮断薬で抑制すると、ブラジキンにより持続的反応が顕著に見られ、この反応は電位依存性Caチャンネル遮断薬で抑制されず、Laで抑制された。それ故、ブラジキンンは容量性Ca流入機構を活性化させることが示された。4)ブラジキンによる細胞内Ca増加反応はグリア細胞が共存している条件では大きな反応を示した。また、この条件下ではシクロオキシゲナーゼ阻害薬により反応は有意に減弱した。 | KAKENHI-PROJECT-15380200 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15380200 |
中等教育学校の教師に求められる資質についての質的研究 | 本研究の目的は、中等教育学校の教師に求められる資質についての研究である。6年一貫教育に携わる教師に求められる資質は、中学、高校、それぞれに求められる教師の資質を両方持ち合わせればよいのだろうか。思春期から青年期へと至る発達段階を全体に理解することが求められるのではないか。これが本研究の出発点である。本研究では、田中孝彦が提唱する「当事者の生活史・実践史の聴きとりと記録の吟味」という臨床教育学の方法を援用した。その手順は以下のとおりである。まず、現在、社会人となった卒業生4名に、小学校時代から現在までの生活について、半構造化インタビューを実施した。次に、インタビュー記録を分析に耐えうる資料とするために「ききがき(トランススクリプト)」を作成した。最後に、この資料について、現在に至る人生の歩みにおいて中等教育学校時代の持つ意味についての「語り」に焦点を絞り、その「語り」の構造を分析することを通じて、私自身の教育的働きかけの「痕跡」を検討し、課題に迫っていった。煎じ詰めて言うならば、現時点で形成している「自己」に対して中等教育学校時代がどのような影響を与えているのかを描き出し、そこから中等教育学校の教師に求められる資質を導き出そうと試みたのである。本研究を通じて中等教育学校の教師に求められる資質の一端を明らかにすることができた。その資質とは、無力感を抱え込みながらもなお、人間には、与えられた諸条件の中で、自分の持ち合わせている力を最大限に活用して、自分を変えていく力があることを信頼する力である。この力を土台に、生徒が突き付けてくる現実に向き合い続ける力(生徒を理解する力)と教育実践を構想する力が磨き上げられていく。また、この三つの力が結びついたとき、生徒のみならず教師の人間形成の契機や中身がつくりだされる可能性が高まる傾向にあるということである。本研究の目的は、中等教育学校の教師に求められる資質についての研究である。6年一貫教育に携わる教師に求められる資質は、中学、高校、それぞれに求められる教師の資質を両方持ち合わせればよいのだろうか。思春期から青年期へと至る発達段階を全体に理解することが求められるのではないか。これが本研究の出発点である。本研究では、田中孝彦が提唱する「当事者の生活史・実践史の聴きとりと記録の吟味」という臨床教育学の方法を援用した。その手順は以下のとおりである。まず、現在、社会人となった卒業生4名に、小学校時代から現在までの生活について、半構造化インタビューを実施した。次に、インタビュー記録を分析に耐えうる資料とするために「ききがき(トランススクリプト)」を作成した。最後に、この資料について、現在に至る人生の歩みにおいて中等教育学校時代の持つ意味についての「語り」に焦点を絞り、その「語り」の構造を分析することを通じて、私自身の教育的働きかけの「痕跡」を検討し、課題に迫っていった。煎じ詰めて言うならば、現時点で形成している「自己」に対して中等教育学校時代がどのような影響を与えているのかを描き出し、そこから中等教育学校の教師に求められる資質を導き出そうと試みたのである。本研究を通じて中等教育学校の教師に求められる資質の一端を明らかにすることができた。その資質とは、無力感を抱え込みながらもなお、人間には、与えられた諸条件の中で、自分の持ち合わせている力を最大限に活用して、自分を変えていく力があることを信頼する力である。この力を土台に、生徒が突き付けてくる現実に向き合い続ける力(生徒を理解する力)と教育実践を構想する力が磨き上げられていく。また、この三つの力が結びついたとき、生徒のみならず教師の人間形成の契機や中身がつくりだされる可能性が高まる傾向にあるということである。 | KAKENHI-PROJECT-25907019 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25907019 |
新規腎病理概念IgM形質細胞尿細管間質性腎炎の疾患概念の確立と病態機序の解明 | そこで、本疾患の診断を確実に行うために、感度・特異度に優れた「IgMPC-TINの診断基準」の作成が必要である。診断基準の作成にあたって、これまで以上に多くの症例の集積が必要であり、今年度はこれまでの13例に加えて、20以上の機関に連絡をとり共同研究を開始した。各共同研究機関での倫理審査委員会の承認を待ってパラフィン固定の未染色標本と患者の臨床情報の提供が行われるため、現在すべての共同研究機関における倫理審査委員会の承認を待っている状況である。新たな症例の追加は30例を予定しており、すでに10数例のサンプルが当方に到着し、順次染色を開始し、興味深い成果が得られはじめている。症例の集積に力を入れているが、提供する共同研究機関における倫理審査委員会の承認が必要な状態で、倫理審査委員会の承認に時間を要している。しかし現在の臨床研究倫理からすると、各共同研究期間の倫理審査委員会による承認は必須であり、やむを得ない状況である。サンプルの提供機関の倫理審査委員会の承認を待って、サンプルが到着次第、解析を行なう予定である。提供されたホルマリン固定パラフィン未染標本を免疫染色し、顕微鏡400倍1視野中に何個以上のIgM陽性形質細胞が存在すれば診断できるか、あるいは、全形質細胞中に占めるIgM陽性形質細胞の割合が何%以上であれば診断できるか、さらには、血清IgM値がどれくらい高ければ診断できるかを、コントロールTIN症例の各パラメーターと比較し、ROC解析を行い、感度・特異度が最も優れた個々のカットオフ値を算定する。ROC解析では個々のカットオフ値しか決まらないため、決定木による予測を用いることで、確定診断のため必要な組織・臨床パラメーターの順番も決定することも可能になる。臨床的特徴として、遠位型尿細管性アシドーシス(酸性血状態でも尿の酸性化できない)、ファンコニー症候群(アミノ酸や糖やリンが尿中に漏れ出す)、抗ミトコンドリア抗体(原発性胆汁性胆管炎に高頻度に認める自己抗体)陽性を高頻度に合併していることを世界で初めて突き止めた。病理組織学的特徴として、IgM陽性形質細胞が間質に多数存在していたが、尿細管の障害はTリンパ球が主体であった。また、尿細管性アシドーシスの原因は、集合管のプロトンポンプや陰イオン交換輸送体の発現が低下していることを免疫組織学的に明らかにした。IgMPC浸潤領域のLaser microdissection法を用いたcDNA Arrayで、炎症カスケード、B細胞分化、T細胞プロファイルなどを網羅的に解析することを29年度中に予定していたが、まだ実施出来ていない。しかし30年度予定していたマウス培養近位尿細管上皮細胞に患者血清を添加し、尿細管機能障害を生じるかを検討をすでに開始している。そこで、本疾患の診断を確実に行うために、感度・特異度に優れた「IgMPC-TINの診断基準」の作成が必要である。診断基準の作成にあたって、これまで以上に多くの症例の集積が必要であり、今年度はこれまでの13例に加えて、20以上の機関に連絡をとり共同研究を開始した。各共同研究機関での倫理審査委員会の承認を待ってパラフィン固定の未染色標本と患者の臨床情報の提供が行われるため、現在すべての共同研究機関における倫理審査委員会の承認を待っている状況である。新たな症例の追加は30例を予定しており、すでに10数例のサンプルが当方に到着し、順次染色を開始し、興味深い成果が得られはじめている。症例の集積に力を入れているが、提供する共同研究機関における倫理審査委員会の承認が必要な状態で、倫理審査委員会の承認に時間を要している。しかし現在の臨床研究倫理からすると、各共同研究期間の倫理審査委員会による承認は必須であり、やむを得ない状況である。まずは、IgMPC浸潤領域をLaser microdissection法を用いRNAを抽出し、DNA Arrayを用い、炎症カスケード、B細胞分化、T細胞プロファイルなどを網羅的に解析を行う。単なる尿細管間質性腎炎の症例群をコントロールとして用いる。本疾患の病態形成にAutoantidodyが関与していることが推定されるため、マウス培養近位尿細管上皮細胞、集合管細胞に、本疾患患者血清を添加し、尿細管機能障害を生じるかのin vitroの検討を行う。障害が惹起された場合、ミトコンドリア機能異常を伴うかどうかも検討する。また、原発性胆汁性肝硬変のモデルマウスの選考に入る。サンプルの提供機関の倫理審査委員会の承認を待って、サンプルが到着次第、解析を行なう予定である。提供されたホルマリン固定パラフィン未染標本を免疫染色し、顕微鏡400倍1視野中に何個以上のIgM陽性形質細胞が存在すれば診断できるか、あるいは、全形質細胞中に占めるIgM陽性形質細胞の割合が何%以上であれば診断できるか、さらには、血清IgM値がどれくらい高ければ診断できるかを、コントロールTIN症例の各パラメーターと比較し、ROC解析を行い、感度・特異度が最も優れた個々のカットオフ値を算定する。ROC解析では個々のカットオフ値しか決まらないため、決定木による予測を用いることで、確定診断のため必要な組織・臨床パラメーターの順番も決定することも可能になる。レーザーマイクロダイセクションによるmRNAの検討が実施出来ておらず、繰り越しが生じた。30年度は実験に用いる試薬を購入し、検討を行う予定。共同研究機関からの標本の到着を待っているため、抗体・染色キットなどの試薬代が予想より少ない状態になり、次年度使用額が生じた。 | KAKENHI-PROJECT-17K09692 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K09692 |
新規腎病理概念IgM形質細胞尿細管間質性腎炎の疾患概念の確立と病態機序の解明 | 次年度は、多くの標本が到着する予定であり、それらの解析のための試薬・抗体・染色キットなどの消耗品の出費が増える予定である。 | KAKENHI-PROJECT-17K09692 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K09692 |
細胞周期制御における多機能性蛋白質14-3-3 の役割 | 細胞の増殖・成長において、リン酸化やメチル化などの翻訳後修飾が蛋白質の機能調節に重要な役割を果たしている。本研究では、リン酸化蛋白質に結合する分子である14-3-3ファミリーに着目し、14-3-3が結合する分子群を同定・解析することで、細胞の増殖・成長を制御する新たなリン酸化シグナル伝達の解析を進めた。その結果、DNA障害チェックポイントや細胞分裂における中核因子であるChk1やPlk1といったリン酸化酵素の新たな制御メカニズムを明らかにすることに成功した。細胞の増殖・成長において、リン酸化やメチル化などの翻訳後修飾が蛋白質の機能調節に重要な役割を果たしている。本研究では、リン酸化蛋白質に結合する分子である14-3-3ファミリーに着目し、14-3-3が結合する分子群を同定・解析することで、細胞の増殖・成長を制御する新たなリン酸化シグナル伝達の解析を進めた。その結果、DNA障害チェックポイントや細胞分裂における中核因子であるChk1やPlk1といったリン酸化酵素の新たな制御メカニズムを明らかにすることに成功した。細胞周期の進行やその監視システムであるチェックポイント機構においては、蛋白質リン酸化修飾による機能制御が重要な役割を担う。我々は、細胞周期進行/チェックポイントにおける新たなリン酸化シグナル伝達経路を明らかにするため、リン酸化結合蛋白質である14-3-3の機能解析からアプローチを進めている。これまでに以下のことを明らかにした。1)Chk1キナーゼの自己リン酸化反応の生理的意義DNA障害チェックポイントの中核的キナーゼあるChk1が活性化後、Ser296を自己リン酸化すること、このリン酸化反応依存的にChk1が14-3-3γと結合すること見出した。さらに、この一連の反応がCdc25Aの蛋白質分解とDNA障害後の細胞周期停止に必要不可欠であることを明らかにした。2)Chk1の細胞内局在と機能の相関これまでChk1が機能する場所(細胞内小器官)として、細胞核内と中心体が報告されてきた。我々は、遺伝学や分子細胞生物学的な手法を用いて、Chk1が機能する場所は中心体ではなく細胞核内であることを明らかにした。細胞周期の進行やその監視システムであるチェックポイント機構においては、蛋白質リン酸化修飾による機能制御が重要な役割を担う。我々は、細胞周期進行/チェックポイントにおける新たなリン酸化シグナル伝達経路を明らかにするため、リン酸化結合蛋白質である14-3-3の機能解析からアプローチを進めている。これまでに以下のごとを明らかにした。細胞分裂期(M期)に14-3-3が結合する分子としてPlk1を同定し、さらに、その結合がPlk1のSer99リン酸化反応に依存することを見出した。このリン酸化は、Plk1の活性化に必要不可欠であり、M期の分子メカニズムを理解する上で重要性が高いと思われる。2)増殖生存シグナルにおけるチェックポイントキナーゼ1(Chk1)の生理的意義増殖生存シグナルが亢進すると、Chk1がp90 RSKによりリン酸化されることで細胞核へ局在し、DNAの保全に機能していることを明らかにした。本成果は、増殖生存シグナルとDNA保全チェックポイントを連係するシグナルとして重要性が高いと思われる。細胞周期の進行やその監視システムであるチェックポイント機構においては、蛋白質リン酸化修飾による機能制御が重要な役割を担う。我々は、細胞周期進行/チェックポイントにおける新たなリン酸化シグナル伝達経路を明らかにするため、リン酸化結合蛋白質である14-3-3の機能解析からアプローチを進めている。これまでに以下のことを明らかにした。細胞分裂期(M期)に14-3-3が結合するタンパク質として分裂期の中核因子であるPlk1を同定した。分子生物学・細胞生物学・生化学的な解析から、リン酸化部位がSer99であることを同定した。さらに、Plk1-Ser99リン酸化は増殖・生存シグナルであるPI3キナーゼの活性に依存して起こることを見出した。このPI3キナーゼからPlk1に至るシグナル伝達経路が分裂期スピンドルチェックポイントに必要不可欠であることも明らかにした。増殖生存シグナルにおけるチェックポイントキナーゼ1(Chk1)の生理的意義増殖生存シグナルが亢進すると、Chk1がp90 RSKによりリン酸化されることで細胞核へ局在し、DNAの保全に機能していることを明らかにした。本成果は、増殖生存シグナルとDNA保全チェックポイントを連係するシグナルとして重要性が高いと思われる。特定の細胞周期において特異的に14-3-3と結合する複数の分子を同定した。その中の1つChk1(Check point kinase1)については、Chk1の自己リン酸化依存的に14-3・3が結合すること、この結合がDNA障害チェックポイントにおけるChk1機能に必要不可欠であることを明らかにした。この成果は、国際的科学雑誌であるThe EMBO Journal(査読付き)に掲載された。24年度が最終年度であるため、記入しない。新たに細胞分裂期(M期)特異的に14-3-3と結合する分子として見出したPlk1(Polo-H:kinase1)について解析を進めていく。既に、14-3-3の結合部位としてPlklSer99を同定し、この部位のリン酸化がPlk1の活性化に必要不可欠であることを明らかにしている。今後、(1)PlklSer99のリン酸化を遂行する上流キナーゼの同定、 | KAKENHI-PROJECT-22790103 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22790103 |
細胞周期制御における多機能性蛋白質14-3-3 の役割 | (2)Ser99をリン酸化されないAla(S99A)もしくはリン酸化を模倣するAsp/Glu(S99D/S99E)に置換した変異体を用いた機能解析、(3)14-3-3およびPlklSer99リン酸化がM期進行に及ぼす影響について解析を進めていく。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22790103 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22790103 |
微小圧子押込みによる岩石亀裂の圧力溶解現象と物性変化の直接観測 | X線CT画像からの花崗岩き裂開口幅分布測定の高度化を目指した研究を実施した.前年度までの研究から,Canny法に基づくエッジ検出によってき裂面の正確な位置は抽出できる(平成28年度)ものの,鉱物境界やホワイトノイズなどの非き裂エッジをノイズとして除去する作業の効率化が課題となっていた(平成29年度).ガウスフィルタ等の平滑化フィルタによる画像事前処理はノイズ除去には有効であるがき裂位置の正確な抽出には悪影響を及ぼす.また,画像を小領域に分割してCT値ヒストグラムからき裂を含む小領域を自動判別する処理を検討したところ,画像全体としての非き裂エッジを大幅に除去することには成功したものの,き裂近傍のノイズは除去できない.単一の特徴量だけでは材料のセグメンテーションが困難であることから,本研究では最終的に,複数の特徴量を使って機械学習により材料を識別する方法を採用することとした.手作業により千数百枚を超える教師画像を作成した.同時に,X線CTによるき裂形状計測の精密さに関わる実験を実施した.すなわち,X線CTで計測したラフネス標高分布と,3Dレーザプロファイラで計測したラフネス標高分布を比較し,凹凸の計測精度を比較するものである.レーザプロファイラにはXY面内の測定間隔0.023 mm,Z方向の精度0.0005 mmの測定器を用いた.前年度までの成果から,CT画像については単なる2次元的なエッジ検出では計測エラーが多く生じること,CTによる計測時とプロファイラによる計測時の供試体の姿勢(3次元回転等)を考慮した解析が必要であることが明らかとなっていた.そこで本研究では3次元エッジ検出および姿勢補正法を検討し,CT画像から高精度にラフネスを計測可能であることを確認した.圧力溶解現象による岩石亀裂の間隙構造,接触状況を直接的に観測する手段のひとつとしてX線CTによる手法を試みた.含水飽和した花崗岩の単一亀裂に拘束圧を作用させて長時間保持し,定期的なX線CT撮像を行うものである.X線CT画像から亀裂を抽出する画像処理法として,従来の二値化法,領域拡張法(region growing)を試行したが,岩石実質部と亀裂部を分離する閾値の設定の困難さやノイズの影響等により,幅の細い亀裂や,高密度鉱物を貫く亀裂の抽出が困難であることが明らかとなった.花崗岩のような不均質な岩石材料ではその傾向は強い.一方,画素値の空間勾配を利用したエッジ検出法(Canny edge detector)は,亀裂壁面の位置を感度良く検出し,二値化法や領域拡張法では困難な幅の細い亀裂も抽出することが可能であることが明らかとなった.エッジ検出法を用いて拘束圧載荷初期のCT画像から亀裂を抽出したところ,平均開口幅0.14 mm,接触率7%という比較的妥当な結果を得た.また,拘束圧3.0 MPaで100日間保持したときの亀裂の開口幅の変化をX線CT画像から測定したところ,亀裂全体で0.030 mm程度の閉口が生じている結果となった.拘束圧の長期載荷による亀裂の閉口の傾向は,パルス法による透水試験の結果と概ね整合するものである.ただし,X線CTスキャナの空間解像度を考慮すると有意な変位量とは言い難い.拘束圧の増大,加温,保持期間の長期化等による圧力溶解現象の加速が必要と考えられる.当該年度は,岩石亀裂の圧力溶解現象についてX線CTによる可視化,亀裂抽出のための画像処理法の開発に注力した.微小圧子実験のための圧力条件,温度条件について一定の目安が得られたことは成果であり,おおむね順調に進展しているといえる.微小圧子押込み試験に関しては実験の設計を実施し,次年度以降の準備を行った.前年度に引き続き,X線CT画像からの花崗岩き裂開口幅分布測定の高度化を目指した研究を実施した.第一に,Canny法に基づくエッジ検出によってき裂を抽出する際のノイズ除去法を検討した.ここでいうノイズとは,き裂ではないエッジ(鉱物境界やホワイトノイズによるエッジ)を指す.非き裂エッジのうち,CT値の空間的なゆらぎによるノイズは,エッジ検出前の段階で,CT値のヒストグラムに基づいて除去可能である.通常はガウスフィルタ等によるノイズ除去が行われるが,き裂開口幅を正確に抽出するためには処理として適当ではない.そこで本研究では,CT画像全体を複数の小領域に分割し,小領域内に基準値を超えて低いCT値が存在すれば「き裂を含む小領域」,存在しなければ「き裂を含まない小領域」と判断し,き裂を含まない小領域はエッジ検出の対象領域としないとする前処理を行うこととした.この処理の結果,前処理の段階で60%以上の非き裂エッジは除去されることが明らかとなった.第二に,X線CTによるき裂形状計測の精密さに関わる実験を実施した.すなわち,X線CTで計測したラフネス標高分布と,レーザプロファイラで計測したラフネス標高分布を比較し,凹凸の計測精度を比較するものである.レーザプロファイラにはXY面内の測定間隔0.023 mm,Z方向の精度0.0005 mmの測定器を用いた.測定の結果,CTによるラフネス計測では0.8%未満の計測エラーが生じた. | KAKENHI-PROJECT-16K14306 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K14306 |
微小圧子押込みによる岩石亀裂の圧力溶解現象と物性変化の直接観測 | このエラーについては,エッジ検出の3次元性が影響している可能性があることから,今後は3次元のエッジ検出を行ない,レーザプロファイラの結果との比較を実施していく必要があると考える.前年度に引き続き,岩石き裂の圧力溶解現象についてのX線CTによる可視化,き裂抽出のための画像処理法の開発に注力した.微小圧子実験のための圧力条件,温度条件について一定の目安が得られたこと,エッジ検出によるき裂計測の高度化・効率化が得られたことは成果であり,おおむね順調に進展している.微小圧子押込み試験については,次年度以降に実施を予定する.X線CT画像からの花崗岩き裂開口幅分布測定の高度化を目指した研究を実施した.前年度までの研究から,Canny法に基づくエッジ検出によってき裂面の正確な位置は抽出できる(平成28年度)ものの,鉱物境界やホワイトノイズなどの非き裂エッジをノイズとして除去する作業の効率化が課題となっていた(平成29年度).ガウスフィルタ等の平滑化フィルタによる画像事前処理はノイズ除去には有効であるがき裂位置の正確な抽出には悪影響を及ぼす.また,画像を小領域に分割してCT値ヒストグラムからき裂を含む小領域を自動判別する処理を検討したところ,画像全体としての非き裂エッジを大幅に除去することには成功したものの,き裂近傍のノイズは除去できない.単一の特徴量だけでは材料のセグメンテーションが困難であることから,本研究では最終的に,複数の特徴量を使って機械学習により材料を識別する方法を採用することとした.手作業により千数百枚を超える教師画像を作成した.同時に,X線CTによるき裂形状計測の精密さに関わる実験を実施した.すなわち,X線CTで計測したラフネス標高分布と,3Dレーザプロファイラで計測したラフネス標高分布を比較し,凹凸の計測精度を比較するものである.レーザプロファイラにはXY面内の測定間隔0.023 mm,Z方向の精度0.0005 mmの測定器を用いた.前年度までの成果から,CT画像については単なる2次元的なエッジ検出では計測エラーが多く生じること,CTによる計測時とプロファイラによる計測時の供試体の姿勢(3次元回転等)を考慮した解析が必要であることが明らかとなっていた.そこで本研究では3次元エッジ検出および姿勢補正法を検討し,CT画像から高精度にラフネスを計測可能であることを確認した.マイクロインデンテーションによって岩石表面に圧力溶解沈殿を発生させるための実験仕様(圧子・試料・載荷・環境条件)と計測手法の最適化を行い,試験装置を開発する.また,花崗岩亀裂をサンプルとして,圧力・温度・時間に依存する鉱物ごとの溶解沈殿量と,それに伴う固着度・摩擦強度の変化を測定し,別途行われる花崗岩単一亀裂のせん断・透水試験の結果との比較を行って妥当性の評価を行う.マイクロインデンテーションによって岩石表面に圧力溶解沈殿を発生させるための実験仕様(圧子.試料・載荷・環境条件)と計測手法の最適化を行い,試験装置を試作する.また,花崗岩き裂をサンプルとして,圧力・温度・時間に依存する鉱物ごとの溶解沈殿量とそれに伴う固着度・摩擦強度の変化の測定を試み,別途行われるき裂のせん断・透水試験結果との比較を行って妥当性の評価を行う.当該年度内に,圧子押込み実験システムの開発を完了予定であったが,実験仕様が確定しきれなかったため,次年度に持ち越した.(理由)当該年度内に圧子押込み実験システムを開発予定であったが,X線CT画像処理の研究に注力したため,実験仕様が確定せず,やむを得ず次年度に持ち越すこととした.(使用計画)圧子押込み実験システムの開発および実験実施を予定している.圧子押込み実験システムを開発する計画である. | KAKENHI-PROJECT-16K14306 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K14306 |
病態モデル動物を用いた脳血管性痴呆の成因・病態・治療に関する研究 | われわれは以前に砂ネズミを用いて、慢性脳血流低下モデルを作製した。今年度は同モデルの狭窄3ケ月後のものについて実験を行い、以下の結果を得た。(1)大脳皮質の血流量を水素クリアランス法を用いて測定したところ、狭窄群は対照群の6575%に低下していた。(2)われわれが開発した自動動物観察装置OUCEMー86を用いて行動学的検討を行った結果、狭窄群は対照群に対し、学習の獲得という点で障害があることが示された。記憶の保持に関しては両群に有意の差は認められなかった。(3)光顕、電顕により病理組織学的検討を行った結果、狭窄群の一部において明らかに異常が認められた。つまり、脳室の拡大、皮質の菲薄化、白質の粗鬆化が認められ、光顕では、海馬CA1領域の神経細胞脱落、大脳皮質の小軟化巣、視床の神経細胞脱落とグリオ-ジスが認められた。電顕では、一部の大脳皮質において、グリア繊維の増生、樹状突起の膨化と変性などがみられ、白質においてもグリア線維の増生、神経突起の変性がみられた。これらの変化は、これまで知られている一温性脳虚血による組織変化とは、とくにその多様性という点において異っていた。(4)脳の細胞骨格蛋白の変化を生化学的に検討を行った結果、抗MAP2抗体を用いたimmunoblottingでは、狭窄群の前頭葉皮質、線条体において、MAP2の分解産物と思われるバンドが認められた。抗tau抗体によるimmunoblottingにおいても、tauの分解産物と思われるバンドが狭窄群において対照群のそれより濃く染め出された。抗200Kneurofilament抗体による同様の検討では、200K蛋白の免疫染色の程度が、狭窄群において明らかにより濃く染め出された。抗GFAP抗体による検討においても、狭窄群の中に、染色性が著しく上昇するものが認められた。以上の結果から、慢性的な脳血流低下によって、学習能力の障害、脳組織障害、細胞骨格蛋白質の変化などが出現する可能性が示唆された。われわれは以前に砂ネズミを用いて、慢性脳血流低下モデルを作製した。今年度は同モデルの狭窄3ケ月後のものについて実験を行い、以下の結果を得た。(1)大脳皮質の血流量を水素クリアランス法を用いて測定したところ、狭窄群は対照群の6575%に低下していた。(2)われわれが開発した自動動物観察装置OUCEMー86を用いて行動学的検討を行った結果、狭窄群は対照群に対し、学習の獲得という点で障害があることが示された。記憶の保持に関しては両群に有意の差は認められなかった。(3)光顕、電顕により病理組織学的検討を行った結果、狭窄群の一部において明らかに異常が認められた。つまり、脳室の拡大、皮質の菲薄化、白質の粗鬆化が認められ、光顕では、海馬CA1領域の神経細胞脱落、大脳皮質の小軟化巣、視床の神経細胞脱落とグリオ-ジスが認められた。電顕では、一部の大脳皮質において、グリア繊維の増生、樹状突起の膨化と変性などがみられ、白質においてもグリア線維の増生、神経突起の変性がみられた。これらの変化は、これまで知られている一温性脳虚血による組織変化とは、とくにその多様性という点において異っていた。(4)脳の細胞骨格蛋白の変化を生化学的に検討を行った結果、抗MAP2抗体を用いたimmunoblottingでは、狭窄群の前頭葉皮質、線条体において、MAP2の分解産物と思われるバンドが認められた。抗tau抗体によるimmunoblottingにおいても、tauの分解産物と思われるバンドが狭窄群において対照群のそれより濃く染め出された。抗200Kneurofilament抗体による同様の検討では、200K蛋白の免疫染色の程度が、狭窄群において明らかにより濃く染め出された。抗GFAP抗体による検討においても、狭窄群の中に、染色性が著しく上昇するものが認められた。以上の結果から、慢性的な脳血流低下によって、学習能力の障害、脳組織障害、細胞骨格蛋白質の変化などが出現する可能性が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-01570604 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01570604 |
赤道地帯の成層圏オゾン消長に与えるエアロゾルの影響 | 本研究計画は、成層圏エアロゾルや成層圏オゾンが最も活発に生成されている赤道地域において、成層圏エアロゾルがオゾン層の消失反応にどのような影響を与えているかを明らかにすることを目的として実施された。本研究で実施した観測(1996年9月、インドネシアに於て実施)では、両者の鉛直分布は必ずしも一致しておらず、エアロゾル層のピークはオゾン層の下部に位置し不均一反応にともなうオゾン消失の影響を比較的受けない構造になっていた。しかし、両者の分布は、この地方独特の大気運動(活発な上昇運動、準2年周期運動、など)によって強く左右される可能性があり、今後は大気の運動も含めて観測する必要があろう。観測計画の実施するに当たって、中国(北京郊外の香河)で1995年実施された予備観測から種々の技術上の情報(エアロゾルの採集装置の性能、空気取り込み用のポンプの性能、電源の能力、その他)などを得、エアロゾル採集装置などの改良に資することができた。この予備観測は、装置の開発上有用な情報をあたあたばかりでなくアジア大陸上の大気に関する極めて興味ある知見を与えてくれた。大陸大気中には、対流圏上部にまで土壌粒子が巻き上げられていることが観測から示され、エアロゾルの大気放射や太陽放射への影響、大気エアロゾルの酸性原因物質との関わり、などを理解する上で極めて有用な知見が得られた。予備観測後は、エアロゾル採集装置の改良が加えられ、極めて軽量で3kgのゴム気球2個を連結させた気球によって容易に成層圏高度にまで飛揚出来るものが開発された。インドネシアでの観測は、インドネシア航空科学技術庁(LAPAN)の協力を得て、インドネシアのワトコセで1996年9月に観測が実施され、無事エアロゾル試料の直接採集に成功した。観測結果は、この地球の成層圏エアロゾルが硫酸液滴を主成分とするものであり、オゾン層の主要部分に重なるように分布することがあれば有意のオゾン消失を引き起こす可能性があることを示している。本研究計画は、成層圏エアロゾルや成層圏オゾンが最も活発に生成されている赤道地域において、成層圏エアロゾルがオゾン層の消失反応にどのような影響を与えているかを明らかにすることを目的として実施された。本研究で実施した観測(1996年9月、インドネシアに於て実施)では、両者の鉛直分布は必ずしも一致しておらず、エアロゾル層のピークはオゾン層の下部に位置し不均一反応にともなうオゾン消失の影響を比較的受けない構造になっていた。しかし、両者の分布は、この地方独特の大気運動(活発な上昇運動、準2年周期運動、など)によって強く左右される可能性があり、今後は大気の運動も含めて観測する必要があろう。観測計画の実施するに当たって、中国(北京郊外の香河)で1995年実施された予備観測から種々の技術上の情報(エアロゾルの採集装置の性能、空気取り込み用のポンプの性能、電源の能力、その他)などを得、エアロゾル採集装置などの改良に資することができた。この予備観測は、装置の開発上有用な情報をあたあたばかりでなくアジア大陸上の大気に関する極めて興味ある知見を与えてくれた。大陸大気中には、対流圏上部にまで土壌粒子が巻き上げられていることが観測から示され、エアロゾルの大気放射や太陽放射への影響、大気エアロゾルの酸性原因物質との関わり、などを理解する上で極めて有用な知見が得られた。予備観測後は、エアロゾル採集装置の改良が加えられ、極めて軽量で3kgのゴム気球2個を連結させた気球によって容易に成層圏高度にまで飛揚出来るものが開発された。インドネシアでの観測は、インドネシア航空科学技術庁(LAPAN)の協力を得て、インドネシアのワトコセで1996年9月に観測が実施され、無事エアロゾル試料の直接採集に成功した。観測結果は、この地球の成層圏エアロゾルが硫酸液滴を主成分とするものであり、オゾン層の主要部分に重なるように分布することがあれば有意のオゾン消失を引き起こす可能性があることを示している。エアロゾルゾルデの改良を行ない、従来のものに比して格段に軽量なものを作ることが出来た。このゾンデの屋外テストとして、1995年の12月から1996年の3月にかけてノルウェーで行なわれた北極成層圏のオゾン・エアロゾル観測に使用した。結果はきわめて良好であり、以後成層圏観測用に使用できるとの結論をえた。これを受けて、1996年にインドネシアで、気球の放送オペレーションや気球からの信号を受信するための種々の施設の状況を点検することを兼ねて予備観測を行なう。また、エアロゾルの直接採集に基づいてオゾンの消長に与えるエアロゾル表面反応の影響を調べる準備も平行して行なっており、エアロゾルの形状観察などについては航空機観測によって得られた試料や中国大陸で行なわれた気球観測によって得られた試料を利用し、観察手法の開発・確立を行なっている。現段階では、硫黄化合物などについてはきわめて良好な結果が得られており、インドネシアでの直接採集が成功すれば硫黄化合物の有無を中心とした検討は充分に行なえるとの見通しをえた。インドネシア上空でのエアロゾルの直接採集を目的とした回収気球の制作を平行して行なっている。現時点では、次年度の観測に充分対応できるとの見通しをえている。 | KAKENHI-PROJECT-07408012 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07408012 |
赤道地帯の成層圏オゾン消長に与えるエアロゾルの影響 | 本研究計画は、赤道域成層圏において活発に生成されている成層圏エアロゾルがこの地域の成層圏オゾンの消失反応に寄与しているかどうかを知るために、成層圏エアロゾルの成分や濃度を気球観測によって明らかにすること、およびその結果に基づいてオゾン消失反応に対する寄与を評価することであった。これらの問題を解明するために、インドネシアに於て1996年9月気球搭載したパーティクルカウンターによる成層圏エアロゾルのサイズと数濃度の観測、および気球搭載したインパクター式エアロゾル採集器を使ってエアロゾル粒子を直接採集し粒子の電子顕微鏡観察が行なわれた。1997年の観測は器たる3月に行なわれる予定で準備中である。1996年に実施された観測では、順調に気球搭載した速記が作動し、初期の目的が達成された。来たる1997年の観測も同様の気球搭載装置で行なわれるので、観測が成功する確立は極めて高いと予想される。気球搭載型パーティクルカウンターを用いたエアロゾルサイズおよび濃度分布の観測では、成層エアロゾルのピーク高度は、成層圏オゾン層のピーク高度より低く不均一反応によるオゾン消失反応はオゾン層の中心部では不均一反応によるオゾン消失は比較的少ないと考えられた。しかし、下部では進行している可能性もあると考えられる。直接採集したエアロゾルの電子顕微鏡観察では、成層圏エアロゾルの主成分は硫酸液滴であることが初めて直接的に実証された。観測された濃度分布を中高緯度での観測と比べて見ると、対流圏界面からエアロゾル層のピーク高度までの距離が大きく、エアロゾルを作る原料物質(カルボニルサルファイド、COS)あるいはエアロゾル粒子が赤道域特有の強い大気の上昇運動の影響を受けていることを示唆していた。このようなことから、上昇運動の強弱がエアロゾルの濃度分布をかなり左右することが考えられ、間接的にはオゾン消失の不均一反応の大きさも左右されることも予想された。 | KAKENHI-PROJECT-07408012 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07408012 |
めっき法による三次元多孔質構造を有する集電体一体型ナトリウム二次電池負極の創製 | 典型的な硫酸Cuめっき浴に対してポリアクリル酸(PAA)を添加した系で電析を行った結果,基板上にCuがシート状に成長することを見出した.電気化学的測定および電子線後方散乱回折による種々解析から,めっき浴中のPAA分子が表面エネルギーの大きいCu (110)や(100)に優先的に吸着し,これらの方向へのCu析出が抑制された結果として[111]方向にのみCuが析出・成長しシートを形成したものと推察できる.このシート状成長を利用し,粗面化Cu基板を作製しナトリウムイオン電池用高容量Sn負極の集電体に適用した.その結果,従来の平滑基板と比較して電極性能を大きく向上させることに成功した.スズ(Sn)はNaと合金化することで炭素系材料の3倍以上の極めて高い理論容量を有するため,有望なナトリウムイオン電池用負極活物質となり得る.しかしながら,Snはその大きな容量を発現する反面,Na吸蔵ー放出(充放電)時の激しい体積変化により集電体基板から剥離するため,その性能は乏しいものとなる.この課題解決のためには活物質ー集電体間の密着性の改善に加え,電極構造にSnの体積変化を収容する空間を設計・導入することが必要となる.研究代表者らはこれまでに,硫酸銅(Cu)めっき浴にポリアクリル酸を添加することで基板からCuシートが成長したような三次元構造体を作製することに成功している.本年度はシート成長のメカニズム,すなわちポリアクリル酸が銅の析出に及ぼす効果について詳細に検討した.ポリアクリル濃度の増大にともない基板表面の粗さが大きくなり,1.0×10<sup>4<sup>M以上において,シート状の成長が認められた.また,透過型電子顕微鏡解析より,1つのシートは粒界をもたない極めて高い結晶性を有していることが分かった.X線回折装置を用いた極点解析などから,そのシートが(1 1 1)方向に優先的に成長していることが示唆された.種々の粗面化度を有する基板に対してSn合剤層を塗布した電極において,スタッドピン型引張試験により活物質層ー基板間の密着性を評価した結果,一般的な平滑基板と比較して最大で2倍近く強度が増すことが分かった.このように高められたアンカー効果は,充放電中のSnの体積変化時において極めて有効に機能し,長期サイクルにわたって元来備え持つ高容量を発揮させることができるものと期待される.初年度に予定していたポリアクリル酸が銅の析出形態に与える影響については概ね明らかにすることができた.また,電池性能を決定付けるものと予想される表面形状について,その濃度,めっき時の電流密度を調節することで基板表面の粗面化度を任意に制御することが可能となった.めっき浴中およびめっき膜内部でのポリアクリル酸の状態については明らかになっていない部分があるが,当初に目標としていた三次元基板の設計指針を構築し,電極集電体への応用に早い段階で着手することができた.前年度までに明らかにしたシート状Cuの成長メカニズムをもとに,ポリアクリル酸(PAA,分子量5000)の濃度を最適化し,面粗度が異なる3種類の粗面化基板を作製した(0.01M, 0.05 M, 0.1 M).これらをナトリウムイオン電池用高容量Sn負極の集電体として適用した.0.1 Mの濃度で作製した粗面化基板上に合剤層を塗布したものでは,Cuシートが活物質層内部まで突き刺さった状態であり,高い密着性が期待されたが,0.005-2.000 Vの電圧範囲で動作させたものでは,優位性は確認されず20サイクル後にほとんど容量を失った.そこで,Naの放出電位を制御することで,過度な体積変化を抑制し,サイクル安定性のさらなる向上を試みた(上限電圧を0.65 Vに変更).その結果,サイクル安定性が大きく改善された.ここで,重要なことは,粗面化基板を用いたものでは,初回サイクルから2サイクル目にかけてその容量が大きく増大したことにある.平滑基板では,2サイクル目にかけて,その容量が100 mA h g-1程度大きくなったのに対し,粗面化度が最も大きい基板では,210 mA h g-1も増大した.これは,基板上に成長したCuシートが合剤層内部まで突き刺さった状態であるために,集電性が改善され活物質の利用率が向上したためであると考えられる.実際に交流インピーダンス測定から,NaとSnとの合金化反応に起因する電荷移動抵抗が小さくなることを確認した.さらに,粗面化基板を用いたものでは,80回の比較的長いサイクル後においても従来の炭素系材料の2倍を超える容量を維持する優れた電極性能を達成した.充放電後の電極断面像から,平滑基板では大きな亀裂が見られたのに対し,粗面化基板を用いたものでは崩壊は認められず,本研究で作製した粗面化基板の集電体としての有用性が見出された.典型的な硫酸Cuめっき浴に対してポリアクリル酸(PAA)を添加した系で電析を行った結果,基板上にCuがシート状に成長することを見出した.電気化学的測定および電子線後方散乱回折による種々解析から,めっき浴中のPAA分子が表面エネルギーの大きいCu (110)や(100)に優先的に吸着し,これらの方向へのCu析出が抑制された結果として[111]方向にのみCuが析出・成長しシートを形成したものと推察できる. | KAKENHI-PROJECT-16H06838 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H06838 |
めっき法による三次元多孔質構造を有する集電体一体型ナトリウム二次電池負極の創製 | このシート状成長を利用し,粗面化Cu基板を作製しナトリウムイオン電池用高容量Sn負極の集電体に適用した.その結果,従来の平滑基板と比較して電極性能を大きく向上させることに成功した.めっき浴中におけるポリアクリル酸の溶存状態・Cuイオンへの配位状態については赤外線・ラマン分光装置を,基板表面への吸着現象については水晶振動子マイクロバランスを用いて明らかにする予定である.初年度に構築した三次元基板の設計指針に基づき,Sn負極に適した集電体を作製する.H29年度は基板形状がSn電極のナトリウムイオン電池負極特性におよぼす効果について検討する.Snの激しい体積変化時において基板表面に成長したCuシートの倒伏・崩壊が懸念されるため,充放電後の電極の断面構造を詳細に観察する.また,これを克服する機械的強度を持たせるべく電気めっき条件についてもさらなる検討を行う.また,リチウムイオン電池負極およびマグネシウムイオン電池負極などにも適用を検討する.29年度が最終年度であるため、記入しない。電気化学・材料化学29年度が最終年度であるため、記入しない。清水雅裕信州大学学術研究院工学系新井・清水研究室(応用電気化学研究室) | KAKENHI-PROJECT-16H06838 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H06838 |
CpGODNの肺傷害モデルにおける炎症反応抑制作用の検討 | 昨年度CpG ODNに炎症反応を抑える傾向が認められたが、有意差は認められなかったので、ラットlipopolysaccharide(LPS)肺傷害モデルで、投与法、投与時間等の条件を変え、CpG ODNが肺傷害を抑制する作用が最も顕著に現れる条件を見つけ出し、その上でCpG ODNの肺傷害抑制作用の詳細を検討することを目的とした。方法は、週齢8週のSDラットにCpG ODNを投与し、その一定時間後に全身麻酔下に気管切開、LPSを気管内投与、4時間人工呼吸し、その経過中の動脈血血液ガス分析、動脈圧、心拍数、体温、気道内圧、4時間後の血液、気管支肺胞洗浄液の浸潤細胞数、炎症性サイトカイン、肺の乾湿重量比を測定し、また肺の病理組織像を観察した。はじめに、投与方法による違いを検討した。昨年度行った腹腔内投与と静脈内投与とを比較した。動脈血血液ガス分析、動脈圧、心拍数、体温、気道内圧、4時間後の血液、気管支肺胞洗浄液の浸潤細胞数で腹腔内投与と静脈内投与とで有意差が認められなかった。そのため、以後の実験は腹腔内投与で行う方針とした。CpG ODN投与からLPS投与までの時間を24、48、72、96時間に設定した。動脈血酸素分圧、気管支肺胞洗浄液の浸潤細胞数、動脈圧、心拍数、体温、気道内圧において、投与間隔によって、有意差を認めることができなかった。以上の結果より、基礎実験で認められた作用がその後の実験で再現ができず、"CpG ODNの前投与はこれに引き続くLPSによる肺傷害を抑制する"のに最適な条件を見つけ出し、その詳細を検討するという、本年度の目的は果たされなかった。【目的】ラットlipopolysaccharide(LPS)肺傷害モデルを用いて、CpG ODNの肺傷害抑制作用の詳細を検討する。【方法】週齢8週のSDラットにCpG ODN, neutral ODN,生理食塩水のいずれかを腹腔内投与し、その72時間後に全身麻酔下に気管切開、LPSまたは生理食塩水を気管内投与、4時間人工呼吸し、その経過中の動脈血血液ガス分析、動脈圧、心拍数、体温、気道内圧、4時間後の血液、気管支肺胞洗浄液の浸潤細胞数、炎症性サイトカイン、肺の乾湿重量比を測定し、また肺の病理組織像を観察した。【結果】saline-saline群(SS群)、saline-LPS群(SL群)、CpG ODN-LPS群(CL群)、neutral ODN-LPS群(NL群)の4群に分けた。動脈血酸素分圧は4時間の時点でCL群、NL群でSS群、SL群と比べて、有意に低かったが、CL群とNL群との間ではCL群で高い傾向が見られたが統計学的に有意な差は認められなかった。気管支肺胞洗浄液の浸潤細胞数、肺乾湿重量比、炎症性サイトカイン(TNF-α、MIP=2)においても同様のCL群でやや炎症反応が抑えられる傾向があった。動脈圧、心拍数、体温、気道内圧、病理組織所見は群間で有意な差は認められなかった。以上の結果は予備実験の結果と異なり、"CpG ODNの全投与はこれに引き続くLPSによる肺傷害を抑制する"という、仮説を証明することはできなかったが、CpG ODNの投与はLPSによる炎症反応を抑える傾向が認められた。【今後の方針】CpG ODNに炎症反応を抑える傾向が認められたので、上記と同様の実験系を用い、CpG ODNの投与法、CpG ODNの種類、CpG ODNの量を調節し、最も効果が認めやすい実験系を構築中である。昨年度CpG ODNに炎症反応を抑える傾向が認められたが、有意差は認められなかったので、ラットlipopolysaccharide(LPS)肺傷害モデルで、投与法、投与時間等の条件を変え、CpG ODNが肺傷害を抑制する作用が最も顕著に現れる条件を見つけ出し、その上でCpG ODNの肺傷害抑制作用の詳細を検討することを目的とした。方法は、週齢8週のSDラットにCpG ODNを投与し、その一定時間後に全身麻酔下に気管切開、LPSを気管内投与、4時間人工呼吸し、その経過中の動脈血血液ガス分析、動脈圧、心拍数、体温、気道内圧、4時間後の血液、気管支肺胞洗浄液の浸潤細胞数、炎症性サイトカイン、肺の乾湿重量比を測定し、また肺の病理組織像を観察した。はじめに、投与方法による違いを検討した。昨年度行った腹腔内投与と静脈内投与とを比較した。動脈血血液ガス分析、動脈圧、心拍数、体温、気道内圧、4時間後の血液、気管支肺胞洗浄液の浸潤細胞数で腹腔内投与と静脈内投与とで有意差が認められなかった。そのため、以後の実験は腹腔内投与で行う方針とした。CpG ODN投与からLPS投与までの時間を24、48、72、96時間に設定した。動脈血酸素分圧、気管支肺胞洗浄液の浸潤細胞数、動脈圧、心拍数、体温、気道内圧において、投与間隔によって、有意差を認めることができなかった。 | KAKENHI-PROJECT-16790884 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16790884 |
CpGODNの肺傷害モデルにおける炎症反応抑制作用の検討 | 以上の結果より、基礎実験で認められた作用がその後の実験で再現ができず、"CpG ODNの前投与はこれに引き続くLPSによる肺傷害を抑制する"のに最適な条件を見つけ出し、その詳細を検討するという、本年度の目的は果たされなかった。 | KAKENHI-PROJECT-16790884 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16790884 |
活動的な高齢者におけるセルフ・エフィカシーの縦断研究 | 本研究では,地域で自立した生活を送り,さらに経年的に追跡が可能な者として高齢者大学に在籍する者を対象として,生活満足感やその向上にかかわると考えられるセルフ・エフィカシー(自分の行動に対しての見通し)について3年の間隔をおいて調査を実施した。結果,高齢者大学に在籍する者について, 3年後に生活満足感の向上がみられた。セルフ・エフィカシー等の関連要因については変化がみられなかった。本研究では,地域で自立した生活を送り,さらに経年的に追跡が可能な者として高齢者大学に在籍する者を対象として,生活満足感やその向上にかかわると考えられるセルフ・エフィカシー(自分の行動に対しての見通し)について3年の間隔をおいて調査を実施した。結果,高齢者大学に在籍する者について, 3年後に生活満足感の向上がみられた。セルフ・エフィカシー等の関連要因については変化がみられなかった。本研究では,活動的な高齢者のセルフ・エフィカシー及びその関連要因について縦断研究を実施することにより,高齢者のセルフ・エフィカシーの維持・向上の要因を明らかにし,高齢者福祉実践における基礎的研究に資することを目的としている。活動的な高齢者として高齢者大学の在籍者を対象とした調査の結果,一般的セルフ・エフィカシーについて1年後に変化はみられなかったが,対人的セルフ・エフィカシーの向上がみられた(九十九,2007)。さらに関連要因として,近所づきあいや友人との交流,外出といった個人的活動が増加し,生活に対する満足感も高まる傾向がみられた。この結果では,一般的セルフ・エフィカシーの変化がみられなかったが,対人的セルフ・エフィカシーの向上がみられているため,今後一般的セルフ・エフィカシーも変化する可能性があり,さらに経年による変化を追う必要があると考えられる。また,在宅高齢者を対象としたこれまでの縦断研究では,加齢に伴いセルフ・エフィカシーが低下すると報告されており(Woodward, et. al.,1987;Mendes, et. al.,1996;McAway, et. al.,1996),先の調査結果とは異なっている。このため,高齢者大学に在籍する高齢者については経年データを収集することによって,さらなる検討が必要と考えられる。そこで,本研究では高齢者大学に在籍する高齢者を対象として,その特定的セルフ・エフィカシーが経年に従ってその向上が顕著にみられ,その後一般的セルフ・エフィカシーの向上もみられるようになるとの仮説を立て,それを明らかにすることを具体的課題とした。現在,調査を継続して実施しており,経年データを蓄積している。本研究では,活動的な高齢者のセルフ・エフィカシー及びその関連要因について縦断研究を実施することにより,高齢者のセルフ・エフィカシーの維持・向上の要因を明らかにし,高齢者福祉実践における基礎的研究に資することを目的としている。活動的な高齢者として高齢者大学の在籍者を対象とした調査の結果,一般的セルフ・エフィカシーについて1年後に変化はみられなかったが,対人的セルフ・エフィカシーの向上がみられた(九十九,2007)。さらに関連要因として,近所づきあいや友人との交流,外出といった個人的活動が増加し,生活に対する満足感も高まる傾向がみられた。この結果では,一般的セルフ・エフィカシーの変化がみられなかったが,対人的セルフ・エフィカシーの向上がみられているため,今後一般的セルフ・エフィカシーも変化する可能性があり,さらに経年による変化を追う必要があると考えられる。また,在宅高齢者を対象としたこれまでの縦断研究では,加齢に伴いセルフ・エフィカシーが低下すると報告されており(Woodward et al., 1987; Mendes et al., 1996; McAway et al., 1996),先の調査結果とは異なっている。このため,高齢者大学に在籍する高齢者については経年データを収集することによって,さらなる検討が必要と考えられる。そこで,本研究では高齢者大学に在籍する高齢者を対象として,その特定的セルフ・エフィカシーが経年に従ってその向上が顕著にみられ,その後,一般的セルフ・エフィカシーの向上もみられるようになるとの仮説を立て,それを明らかにすることを具体的課題とした。2年間にわたり調査を実施後,データ入力を終え,経年データについて分析した。 | KAKENHI-PROJECT-19830104 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19830104 |
基本波ウォークオフ補償型第2種第2高調波発生の研究 | レーザーの発振波長域を拡大するための一つの方法として非線型光学結晶を用いて入射波長の倍波を発生する第二高調波発生法(SHG)がある。基本入射波とそれにより発生する第二高調波との間には光の運動量保存則に対応する位相整合条件が必要である。従来の位相整合条件では基本波と高調波との波面法線方向を一致させていた(スカラー位相整合)ため実際のエネルギー流の方向であるポインティングベクトルは基本波と高調波間で異なり(ウォークオフ)、高調波発生効率の低下に繋がっていた。KTPやLBOはYAGレーザー(1064nm)の倍波を発生するのに有用な結晶であるが従来ウォークオフの存在するまま使用されていた。具体的に記すとKTPでは波面法線方向はすべてXY面内X軸から24度方向(24度カット)、LBOではYZ面内Z軸から20度方向(20度カット)で位相整合させていた。それゆえ結晶はそれら位相整合方向に垂直に面出しされていた(レーザーの入射方向は面に垂直)。今回申請者は二つの基本波と高調波との間のベクトル的な位相整合条件を総合的に考察し、基本波のポインティングベクトルを一致させるためKTPでは29度カットにしレーザーの入射角を結晶表面垂線から7度とすることで、LBOでは40度カットとし入射角を31度とすることで従来法に比し約二倍の第二高調波発生効率を実験的に確認した。現在この方式を共振器内SHGに用い高効率グリーンレーザーの実現を目指しているが共振器の作成に手間取っており残念ながら今回の報告には結果が間に合わなかった。レーザーの発振波長域を拡大するための一つの方法として非線型光学結晶を用いて入射波長の倍波を発生する第二高調波発生法(SHG)がある。基本入射波とそれにより発生する第二高調波との間には光の運動量保存則に対応する位相整合条件が必要である。従来の位相整合条件では基本波と高調波との波面法線方向を一致させていた(スカラー位相整合)ため実際のエネルギー流の方向であるポインティングベクトルは基本波と高調波間で異なり(ウォークオフ)、高調波発生効率の低下に繋がっていた。KTPやLBOはYAGレーザー(1064nm)の倍波を発生するのに有用な結晶であるが従来ウォークオフの存在するまま使用されていた。具体的に記すとKTPでは波面法線方向はすべてXY面内X軸から24度方向(24度カット)、LBOではYZ面内Z軸から20度方向(20度カット)で位相整合させていた。それゆえ結晶はそれら位相整合方向に垂直に面出しされていた(レーザーの入射方向は面に垂直)。今回申請者は二つの基本波と高調波との間のベクトル的な位相整合条件を総合的に考察し、基本波のポインティングベクトルを一致させるためKTPでは29度カットにしレーザーの入射角を結晶表面垂線から7度とすることで、LBOでは40度カットとし入射角を31度とすることで従来法に比し約二倍の第二高調波発生効率を実験的に確認した。現在この方式を共振器内SHGに用い高効率グリーンレーザーの実現を目指しているが共振器の作成に手間取っており残念ながら今回の報告には結果が間に合わなかった。固体レーザーの発振波長領域を拡大するための方法の1つに非線形光学結晶による波長変換法がある。その中で第2高調波発生(SHG)法はほぼ確立された技術として現在広範囲に用いられている。代表的な非線形光学結晶であるKTPやLBOの第2種位相整合を用いて第2高調波を発生させる場合、波面法線ベクトルを共軸とするいわゆるスカラー位相整合法を用いるのが一般的である。しかしこの方法では2つの基本波のエネルギー流であるポインティングベクトルは同軸進行とはならない。すなわち2つに分かれた基本波同士の間にもウォークオフ角が存在する。そのため第1種位相整合法の場合と比較して高調波発生効率が低下する。本研究ではベクトル位相整合法の考え方を用いて、基本波ポインティングベクトル同軸進行型第2種SHG位相整合法の解析法を確立した。その結果12mm長KTPで従来方の1.2倍、10mm長のLBOでは従来方の2倍の第2高調波を得ることができた。レーザーの発振波長域を拡大するための一つの方法として非線型光学結晶を用いて入射波長の倍波を発生する第二高調波発生法(SHG)がある。基本入射波とそれにより発生する第二高調波との間には光の運動量保存則に対応する位相整合条件が必要である。従来の位相整合条件では基本波と高調波との波面法線方向を一致させていた(スカラー位相整合)ため実際のエネルギー流の方向であるポインティングベクトルは基本波と高調波間で異なり(ウォークオフ)、高調波発生効率の低下に繋がっていた。KTPやLBOはYAGレーザー(1064nm)の倍波を発生するのに有用な結晶であるが従来ウォークオフの存在するまま使用されていた。具体的に記すとKTPでは波面法線方向はすべてXY面内X軸から24度方向(24度カット)、LBOではYZ面内Z軸から20度方向(20度カット)で位相整合させていた。それゆえ結晶はそれら位相整合方向に垂直に面出しされていた(レーザーの入射方向は面に垂直)。今回申請者は二つの基本 | KAKENHI-PROJECT-09650058 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09650058 |
基本波ウォークオフ補償型第2種第2高調波発生の研究 | 波と高調波との間のベクトル的な位相整合条件を総合的に考察し、基本波のポインティングベクトルを一致させるためKTPでは29度カットにしレーザーの入射角を結晶表面垂線から7度とすることで、LBOでは40度カットとし入射角を31度とすることで従来法に比し約二倍の第二高調波発生効率を実験的に確認した。現在この方式を共振器内SHGに用い高効率グリーンレーザーの実現を目指しているが共振器の作成に手間取っており残念ながら今回の報告には結果が間に合わなかった。 | KAKENHI-PROJECT-09650058 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09650058 |
マクロパイノサイトーシスに関連する新規エンドサイトーシス経路の分子基盤と機能解析 | 本研究は、マクロパイノサイトーシスから派生するRab10陽性管状構造をRac1光制御で選択的に誘導し、その形態及び分子局在の特徴から新規エンドサイトーシス経路としての存在とその分子基盤を確立することを目的とする。RAW264マクロファージ様培養細胞にphotoactivatable-Rac1(PA-Rac1, LOV融合-Rac1Q61L)ないしPHR-iSHーPI3Kを核内遺伝子導入で発現させ、Rac1とPI3Kを顕微鏡下オプトジェネティクスで活性化し、それによって誘起されるマクロパイノサイトーシス過程を比較解析した。RFP-Rab10との共発現系ライブセルイメージングでRab10陽性となるものとならないものを経時的に追跡した結果、PI3Kの活性化により誘起されたマクロパイのサイトーシスでは、初期のマクロパイノサイティックカップにはRab10がリクルートされず、そのままマクロパイノゾームが形成されたが、Rac1活性化により誘起したものはマクロパイノサイティックカップがRab10強陽性となりそこからRab10陽性の管状構造が伸張し、マクロパイノゾーム自身は小さくなって消失した。また、RAW264細胞にPKC活性化剤であるPMAを添加した場合にも、通常のマクロパイノサイトーシスが誘起されるが、PI3K阻害剤のwortmannin存在下でPMAを添加した場合は、典型的なマクロパイノゾームはできずPA-Rac1で誘起の場合とよく似たRab10陽性管状構造が多数見られた。このことからRab10陽性のエンドサイトーシス経路は、PI3K非依存性でRac1活性化により誘起され、PI3Kの阻害状態でより亢進することが分かった。当初の研究計画通り、マクロパイノサイトーシスから派生するRab10陽性管状構造をRac1光制御で選択的に誘導し、PI3K活性の光制御によるもの、PI3K阻害剤存在下での場合とも比較検討して、PI3K非依存性の新規エンドサイトーシス経路の存在を明確にすることができた。前年度の結果を受けて、まずPI3K抑制下でRab10陽性のエンドサイトーシス経路が亢進する理由を解明したい。異なるPI3Kクラスに対する特異的な阻害剤を用いRab10陽性エンドサイトーシス経路への影響を見る。また、PI(3,4,5)P3などのホスフォイノシチドを可視化し、管状構造形成との関連を探る。Rab10のRNA干渉により管状構造形成や輸送への影響を明らかにしてゆく。本研究は、マクロパイノサイトーシスから派生するRab10陽性管状構造をRac1光制御で選択的に誘導し、その形態及び分子局在の特徴から新規エンドサイトーシス経路としての存在とその分子基盤を確立することを目的とする。RAW264マクロファージ様培養細胞にphotoactivatable-Rac1(PA-Rac1, LOV融合-Rac1Q61L)ないしPHR-iSHーPI3Kを核内遺伝子導入で発現させ、Rac1とPI3Kを顕微鏡下オプトジェネティクスで活性化し、それによって誘起されるマクロパイノサイトーシス過程を比較解析した。RFP-Rab10との共発現系ライブセルイメージングでRab10陽性となるものとならないものを経時的に追跡した結果、PI3Kの活性化により誘起されたマクロパイのサイトーシスでは、初期のマクロパイノサイティックカップにはRab10がリクルートされず、そのままマクロパイノゾームが形成されたが、Rac1活性化により誘起したものはマクロパイノサイティックカップがRab10強陽性となりそこからRab10陽性の管状構造が伸張し、マクロパイノゾーム自身は小さくなって消失した。また、RAW264細胞にPKC活性化剤であるPMAを添加した場合にも、通常のマクロパイノサイトーシスが誘起されるが、PI3K阻害剤のwortmannin存在下でPMAを添加した場合は、典型的なマクロパイノゾームはできずPA-Rac1で誘起の場合とよく似たRab10陽性管状構造が多数見られた。このことからRab10陽性のエンドサイトーシス経路は、PI3K非依存性でRac1活性化により誘起され、PI3Kの阻害状態でより亢進することが分かった。当初の研究計画通り、マクロパイノサイトーシスから派生するRab10陽性管状構造をRac1光制御で選択的に誘導し、PI3K活性の光制御によるもの、PI3K阻害剤存在下での場合とも比較検討して、PI3K非依存性の新規エンドサイトーシス経路の存在を明確にすることができた。前年度の結果を受けて、まずPI3K抑制下でRab10陽性のエンドサイトーシス経路が亢進する理由を解明したい。異なるPI3Kクラスに対する特異的な阻害剤を用いRab10陽性エンドサイトーシス経路への影響を見る。また、PI(3,4,5)P3などのホスフォイノシチドを可視化し、管状構造形成との関連を探る。Rab10のRNA干渉により管状構造形成や輸送への影響を明らかにしてゆく。過年度に購入した消耗品のストックを消費し、新規の消耗品購入を遅らせた。蛍光顕微鏡のランプ交換なども次年度に繰り下げている。次年度には、これらの出費が必要となる。 | KAKENHI-PROJECT-18K06831 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K06831 |
高度情報検索システムのための言語情報処理に関する研究 | 本研究において知見を得たいことの一つは,研究代表者らが開発した1,667単語の否定辞書をもとに,約2,000語の英文科学技術文献用機能語を定め,それらの機能語の構文.意味情報によって,抄録文がどの程度"理解"できるかということである.1,667単語のうち,動詞を品詞としてもつ単語が最も多いということは,これらの機能語による"理解"についてある程度の可能性を示唆するものである.しかし,動詞に関しては,これらの機能語に含まれる動詞だけでは十分ではない.その原因の一は,動詞makeの用法がある.例えば, "make measurements"というとき,大意は動詞measureである.従って,この場合,形式的にはmakeが動詞であっても, mesurementのような名詞が実質的に動詞の役割を果している.そこで,本年度は科学技術抄録文におけるmakeの用法を調査した.ここでは, "make measurements"のような用法を行為化用法というと,行為化用法はmakeの用法の約半分(53.6%)を占めることがわかった.また,行為化用法の名詞数Dは,行為化用法数Tの平方根に比例することが判明した.単語の異なり数も単語の延べ数の平方根に比例することが知られているが,行為化用法の名詞数の場合の比例定数は一般の単語の場合の1/3.5である.更に,行為化用法の低頻度名詞の相対生起頻度(生起確率)が低頻度単語と同様に,生起順位の二乗に逆比例するとしたら,比例係数は一般の単語の1/12であることを示すことができる.以上のことから, 87万の調査文の範囲内では,行為化用法の名詞数には上限は認められないが,用法数の増加に伴う名詞の異なり数の増加は緩やかであり,かつ低頻度名詞を伴う用例は比較的少数であるので,高頻度名詞だけでも,かなりの文章理解が可能であると判断できる.つまり, makeの行為化用法は比較的少数の機能語による"理解"を防げるものではないことが示された.本研究において知見を得たいことの一つは,研究代表者らが開発した1,667単語の否定辞書をもとに,約2,000語の英文科学技術文献用機能語を定め,それらの機能語の構文.意味情報によって,抄録文がどの程度"理解"できるかということである.1,667単語のうち,動詞を品詞としてもつ単語が最も多いということは,これらの機能語による"理解"についてある程度の可能性を示唆するものである.しかし,動詞に関しては,これらの機能語に含まれる動詞だけでは十分ではない.その原因の一は,動詞makeの用法がある.例えば, "make measurements"というとき,大意は動詞measureである.従って,この場合,形式的にはmakeが動詞であっても, mesurementのような名詞が実質的に動詞の役割を果している.そこで,本年度は科学技術抄録文におけるmakeの用法を調査した.ここでは, "make measurements"のような用法を行為化用法というと,行為化用法はmakeの用法の約半分(53.6%)を占めることがわかった.また,行為化用法の名詞数Dは,行為化用法数Tの平方根に比例することが判明した.単語の異なり数も単語の延べ数の平方根に比例することが知られているが,行為化用法の名詞数の場合の比例定数は一般の単語の場合の1/3.5である.更に,行為化用法の低頻度名詞の相対生起頻度(生起確率)が低頻度単語と同様に,生起順位の二乗に逆比例するとしたら,比例係数は一般の単語の1/12であることを示すことができる.以上のことから, 87万の調査文の範囲内では,行為化用法の名詞数には上限は認められないが,用法数の増加に伴う名詞の異なり数の増加は緩やかであり,かつ低頻度名詞を伴う用例は比較的少数であるので,高頻度名詞だけでも,かなりの文章理解が可能であると判断できる.つまり, makeの行為化用法は比較的少数の機能語による"理解"を防げるものではないことが示された. | KAKENHI-PROJECT-62210012 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62210012 |
コンドライト隕石による未分化天体形成・進化過程の解明 | 平成30年度は主にパラサイト隕石のタングステン同位体比及び白金同位体比の測定を行い、パラサイト隕石中の鉄-ニッケルメタルのモデル182Hf-182W年代を決定した。平成29年度に鉄-ニッケルメタルの溶解方法及び元素分離法を確立させたが、当年度ではこの手法を複数のパラサイト隕石に適用した。これまでに分析を行っていたBrenham隕石に加え、新たにBrahin, Esquel, Imilac, Seymachan隕石のタングステンと白金同位体比の分析を行った。いずれの隕石からも元素合成に起因する不均質を反映する183W/184W同位体比に異常が見られず、これらの母天体が地球と同様に内側太陽系で集積したことが示唆された。また、パラサイト隕石の白金同位体比はEsquel隕石を除きわずかに正の同位体比異常を示し、宇宙線照射の影響を被っていることが示された。宇宙線照射による182W/184W同位体比の変動を補正したところ、パラサイト隕石の母天体では太陽系最古の物質であるCAIの形成後約2.1Myr以内に惑星分化が起こっていたことが示唆された。上記に加え、平成30年度ではマグネシウムを多く含む試料のタングステンの分離法についての検討を行った。これはパラサイト隕石の主要構成鉱物であるカンラン石にマグネシウムが多く含まれており、フッ化水素酸で溶解する際にフッ化マグネシウムの沈殿を形成してしまうことが問題となっているためである。分離法についての検討を行ったところ、濃塩酸に岩石試料を溶解させた状態で陰イオン交換樹脂に試料導入を行うことでマグネシウムとタングステンを分離できることが確認できた。平成30年度ではこれまでに確立したタングステン・白金同位体分析手法を用いて複数のパラサイト隕石の初生タングステン同位体比の組成を決定することに成功した。これによりパラサイト隕石の母天体上では、太陽系最古の物質であるCAI形成の約2.1Myr以内には惑星分化が起こっていたことが示唆された。この成果は国際学会であるLunar and Planetary Science Conferenceで口頭発表に採択された。このため、進捗状況が順調に進展していると判断した。またこれまで課題であったマグネシウムを多く含む岩石試料のタングステン分離法についても、新たにカラムケミストリーを検討することで解決しつつある。この分離手法を確立することで世界で初めてパラサイト隕石のアイソクロン年代を得ることが可能になる。またこの分離手法はパラサイト隕石だけではなく、その他の隕石・地球試料にも適用することが出来る。特にコンドライト隕石や始原的エコンドライトに含まれるカンラン石の分析においても使用できるため、マグネシウムを多く含む岩石試料のタングステン分離手法を確立しつつある現状を踏まえると研究がおおむね順調に進展していると判断した。まず、平成30年度に検討を行ったマグネシウムを多く含む試料におけるタングステン分離法のタングステンの回収率が低いため、タングステン回収溶液を変えることで収率の改善を行う。岩石試料に関してタングステンの分離法を確定させたのちにパラサイト隕石のカンラン石についてハフニウム及びタングステン同位体比分析を行い、これまでに得られているパラサイト隕石メタルのW同位体比分析の結果と合わせてパラサイト隕石のHf-Wアイソクロン年代を得ることを試みる。パラサイト隕石のモデルHf-W年代とHf-Wアイソクロン年代を組み合わせることでパラサイト隕石の形成過程に強い制約を与えることが期待できる。パラサイト隕石のHf-W年代測定に加え、始原的エコンドライトであるNWA6704のHf-W年代測定も行う予定である。内側太陽系物質であるパラサイト隕石に対し、NWA6704は外側太陽系由来の隕石であり、炭素質コンドライト隕石に関連している隕石であると考えられる。またNWA6704は始原的エコンドライトであり、始原的であるコンドライト隕石と分化隕石であるパラサイト隕石の中間の状態の隕石である。この為この隕石のHf-W年代と過去の岩石学的な研究を組み合わせることで、炭素質コンドライト形成領域における天体の進化過程についてより詳細に記載することが期待できる。平成29年度は主に182Hf-182W年代測定の確立を行った。パラサイト隕石のFeNiメタルとカンラン石それぞれの溶解方法及び元素分離法について検討し、安定的に高精度W同位体比分析が行えるように手法の改良を行った。また近年Hf-W同位体年代を変えうる要素として、太陽系初期における元素合成に起因する不均質と宇宙線照射による中性子捕獲が知られてきた。特にパラサイト隕石にはこれまでの研究から二次的な中性子捕獲の影響があることが分かり、この効果を補正するために新たに白金同位体分析の手法を確立した。これにより、パラサイト隕石のFeNiメタルの初生的なタングステン同位体組成を決定することに成功しつつある。パラサイト隕石のカンラン石はマグネシウムに富む組成であるため、フッ化水素酸による融解によってMgFの沈殿物を形成し、そこにハフニウムが濃集してしまうという問題があった。この問題も先行研究で指摘されているように、アルミニウムを加えることで克服できることを確認した。これらの手法の確立を行った後に、パラサイト隕石のFeNiメタル試料の分析を行った。現在までにタングステン同位体比の分析を2試料(Brahin, Brenham)、白金同位体比の分析を1試料(Brenham)に対して行っている。 | KAKENHI-PROJECT-17J04987 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J04987 |
コンドライト隕石による未分化天体形成・進化過程の解明 | タングステン同位体比分析からはいずれの試料も元素合成に起因する不均質が存在しないことを確認し、年代測定で用いる182W/184W同位体比を0.06εの高精度で分析することに成功した。Brenhamに関しては中性子捕獲の影響の評価も行い、鉄隕石と同様に太陽系最初期の分化年代を得ることが出来た。また、補正後のタングステン同位体組成から、Brenham隕石の母天体が内側太陽系で形成されたことが示唆された。平成29年度の当初の計画としては、試料融解法およびハフニウム、タングステンの元素分離法の改良、パラサイト隕石、コンドライト隕石の182Hf-182W年代の測定、コンドライト隕石の組織観察であった。このうち平成29年度に行ったのは試料融解法およびハフニウム、タングステンの分離法の改良とパラサイト隕石の182Hf-182W年代の測定である。ハフニウム、タングステン共にケイ酸塩とメタル試料で高回収率を達成し、メタル試料に関してはppmオーダーの誤差での分析が可能になった。現在は平成29年度に新たに購入した複数のパラサイト隕石の高精度分析を進めており、順調に進展している。近年タングステン同位体組成が中性子捕獲の影響により二次的に動かされてしまうことが分かってきている。このため当初の予定を変更してコンドライト隕石の分析・観察は行う代わりに、中性子捕獲の影響の評価方法の立ち上げを新たに行った。具体的には白金同位体の試料前処理方法及び元素分離法の確立とマルチコレクター型誘導結合プラズマ質量分析(MC-ICP-MS)による分析設定の調整を行った。この結果、パラサイト隕石のメタル部分から、中性子捕獲の影響による白金同位体異常を検出し、初生的なタングステン同位体組成を決定することに成功しつつある。白金同位体分析手法を確立させたことを受けて、進捗状況はおおむね順調であると判断した。平成30年度は主にパラサイト隕石のタングステン同位体比及び白金同位体比の測定を行い、パラサイト隕石中の鉄-ニッケルメタルのモデル182Hf-182W年代を決定した。平成29年度に鉄-ニッケルメタルの溶解方法及び元素分離法を確立させたが、当年度ではこの手法を複数のパラサイト隕石に適用した。これまでに分析を行っていたBrenham隕石に加え、新たにBrahin, Esquel, Imilac, Seymachan隕石のタングステンと白金同位体比の分析を行った。いずれの隕石からも元素合成に起因する不均質を反映する183W/184W同位体比に異常が見られず、これらの母天体が地球と同様に内側太陽系で集積したことが示唆された。また、パラサイト隕石の白金同位体比はEsquel隕石を除きわずかに正の同位体比異常を示し、宇宙線照射の影響を被っていることが示された。宇宙線照射による182W/184W同位体比の変動を補正したところ、パラサイト隕石の母天体では太陽系最古の物質であるCAIの形成後約2.1Myr以内に惑星分化が起こっていたことが示唆された。上記に加え、平成30年度ではマグネシウムを多く含む試料のタングステンの分離法についての検討を行った。 | KAKENHI-PROJECT-17J04987 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J04987 |
サッカー中の心拍出量の測定とGPS位置情報で測定した試合中の走能力との関連の解明 | GPSによる位置情報と心拍数測定システムを用いて、サッカー選手が試合や練習中に走行した距離・速度・心拍数などを連続的に測定する。同時に携帯型インピーダンス式心拍出量計にて心拍出量・1回拍出量も連続的に測定する。サッカー選手がどのような動作をしている時に、心拍出量・1回拍出量・心拍数がどのような動態を取るかを検討する。またトレッドミル負荷中に呼気ガス分析にて最大酸素摂取量や嫌気性代謝閾値(AT)を測定し、また心拍出量・1回拍出量を測定し、走フォームの動作解析も行う。試合での選手の走行距離・速度などの指標と、最大酸素摂取量やAT、最大運動時の心拍出量、ランニングフォームとの関連を検討する。GPSによる位置情報と心拍数測定システムを用いて、サッカー選手が試合や練習中に走行した距離・速度・心拍数などを連続的に測定する。同時に携帯型インピーダンス式心拍出量計にて心拍出量・1回拍出量も連続的に測定する。サッカー選手がどのような動作をしている時に、心拍出量・1回拍出量・心拍数がどのような動態を取るかを検討する。またトレッドミル負荷中に呼気ガス分析にて最大酸素摂取量や嫌気性代謝閾値(AT)を測定し、また心拍出量・1回拍出量を測定し、走フォームの動作解析も行う。試合での選手の走行距離・速度などの指標と、最大酸素摂取量やAT、最大運動時の心拍出量、ランニングフォームとの関連を検討する。 | KAKENHI-PROJECT-19K11447 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K11447 |
蛋白質結晶における全体振動のラマンスペクトルとノーマルモード | 我々は,リゾチーム結晶を用いた偏光ラマン測定により、200cm^<-1>以下の領域に分子内の振動に由来すると考えられる複数の散乱ピークが存在することを示した。結晶対称性に依存するスペクトルのわずかな違いは無視して,リゾチーム分子の基準振動の計算結果(京大・郷グループによる)と比較したところ,ラマンスペクトルは,基準振動のDensity of stateでおおよそ記述できるらしいことがわかった.また,リゾチームの結晶の水分量を減らした際のスペクトル変化から,振動に対する結晶水の影響を見積もることができるが、最も低い振動数領域に変化が現れることが分かった。今後,水和水の関与をどの程度計算に取り入れるか,振動の対称性での分離が可能かなどを考慮して,ラマンスペクトルと基準振動の関係を明らかにしていきたい.湿った状態のリゾチーム結晶のラマンスペクトルの中心成分は、第2水和水の緩和モードに由来するが,その緩和時間は10^<-11>sと10^<-10>sと見積もられた.この緩和時間は自由水の数倍程度であり,予想以上に動きやすい水和水が存在することは明らかである.乾いた状態では,緩和モードの強度が減り,緩和時間も長くなることが確かめられた.(投稿中)低温の熱測定から,リゾチーム結晶には明確に異なった凍結温度を持つ数種の"凍結水"が存在することがわかった.さらに結晶中の蛋白質の熱変性における吸熱量は,水溶液中における変性エンタルピーとほぼ同じであった。(Urabe et al.,1996)現在、熱測定とラマン散乱を並行して行い、水和水の凍結および熱変性の前後での,水和水の緩和時間の変化、および分子の全体振動の変化を見積もることを開始した.我々は,リゾチーム結晶を用いた偏光ラマン測定により、200cm^<-1>以下の領域に分子内の振動に由来すると考えられる複数の散乱ピークが存在することを示した。結晶対称性に依存するスペクトルのわずかな違いは無視して,リゾチーム分子の基準振動の計算結果(京大・郷グループによる)と比較したところ,ラマンスペクトルは,基準振動のDensity of stateでおおよそ記述できるらしいことがわかった.また,リゾチームの結晶の水分量を減らした際のスペクトル変化から,振動に対する結晶水の影響を見積もることができるが、最も低い振動数領域に変化が現れることが分かった。今後,水和水の関与をどの程度計算に取り入れるか,振動の対称性での分離が可能かなどを考慮して,ラマンスペクトルと基準振動の関係を明らかにしていきたい.湿った状態のリゾチーム結晶のラマンスペクトルの中心成分は、第2水和水の緩和モードに由来するが,その緩和時間は10^<-11>sと10^<-10>sと見積もられた.この緩和時間は自由水の数倍程度であり,予想以上に動きやすい水和水が存在することは明らかである.乾いた状態では,緩和モードの強度が減り,緩和時間も長くなることが確かめられた.(投稿中)低温の熱測定から,リゾチーム結晶には明確に異なった凍結温度を持つ数種の"凍結水"が存在することがわかった.さらに結晶中の蛋白質の熱変性における吸熱量は,水溶液中における変性エンタルピーとほぼ同じであった。(Urabe et al.,1996)現在、熱測定とラマン散乱を並行して行い、水和水の凍結および熱変性の前後での,水和水の緩和時間の変化、および分子の全体振動の変化を見積もることを開始した. | KAKENHI-PROJECT-08272228 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08272228 |
手術支援のための人腹腔の力学モデルの構築 | 本研究課題の目的は,手術支援の基板となる腹腔内組織全体を表現した力学モデルを構築することである.そこで,膜・網組織の力学的モデル化手法として,臓器には非圧縮超弾性体に対する圧力安定化四面体1次ソリッド要素,膜・網組織には初期張力を考慮した三角形1次膜要素を適用し,臓器と膜の相互作用を摩擦の無い接触状態として,ピンボールアルゴリズムで評価する計算手法を提案した.また,腹腔内において臓器が膜・網で被われた幾何学モデルとして,膜・網組織を閉じた曲面とし,自己釣り合いを満足する初期状態を生成すアルゴリズムを開発した.さらに,これらの数値シミュレーションで用いるための物性値の取得方法についても検討した.手術支援の基盤となる腹腔内組織全体を表現した力学モデルを構築することが本研究課題の目的である.腹腔内組織において,臓器は基本的に膜・網組織によって腹壁に固定されている.したがって,腹腔内組織全体の変形を再現するための有限要素解析解析では,腹腔における臓器の膜・網組織による力学的な支持状態を考慮することが鍵となる.平成25年度は,まず腹腔内組織変形の有限要素解析において膜・網組織の力学的モデル化手法の開発に取り組んだ.軟組織の力学的挙動を表す材料モデルについては,生体の分野では一般的となっている非圧縮超弾性体を適用した.臓器については,研究代表者が開発した圧力安定化四面体1次ソリッド要素を用いた.一方,膜・網組織については,幾何学的には厚さの小さい曲面構造と考えられ,材料剛性も小さいことから,曲げ変形を考慮しない膜要素を用いることとした.当初計画では,異方性連続体としてモデル化することを想定していたが,後述する臓器と膜・網組織との接触状態を表現するため,モデルの変更を行った.要素としては三角形1次要素を適用した.また,膜・網組織の観察からは,これらの内部には初期張力が導入されているものと考えられ,構造全体で自己釣り合い状態が満足される初期張力導入手法を開発し,膜要素に適用した.さらに,臓器と膜・網組織は固着状態ではなく,滑りが許容される接触状態としてモデル化することが適切であると考え,臓器と膜・網組織の間にピンボールアルゴリズムによる摩擦無し接触モデルを導入した.以上の膜・網組織と臓器をモデル化するための数値計算プログラムを開発した.また,3次元CADモデルとして表された腹腔内の内蔵を表す幾何学的モデルを作成し.数値計算手法の妥当性の検証を実施した.手術支援の基板となる腹腔内組織全体を表現した力学モデルを構築することが本研究課題の目的である.腹腔内組織において,臓器は基本的に膜・網組織によって固定されている.したがって,腹腔内組織全体の変形を再現するためには,腹腔における臓器の膜・網組織に支持された状態を有限要素解析のための力学モデルとして作成することが必要となる.平成25年度の研究では,有限要素法に基づく数値計算手法の構築を行ったことから,平成26年度の研究では膜・網組織が考慮された有限要素解析のための幾何学モデルの生成と物性値の同定試験に取り組んだ.腹腔内において臓器が膜・網で被われた幾何学モデルとしては,膜・網組織がな閉じた曲面となっていることを再現しなければ,膜・網組織が担う力学的機能を考慮することはできない.当初計画では,CT, MRIなどの医用画像から画像処理のみで膜・網組織の生成を行うことを考えていたが,閉じた曲面となるよう生成することは困難であることが分かった.そこで,腹腔の空間部に幾何形状とは独立な閉曲面を配置し,それを拡大することで臓器表面を被う閉曲面として膜組織を生成するアルゴリズムを開発した.また,このアルゴリズムの有効性をCADモデルとして作成した腹腔モデルにおいて検討した.一方,生成された力学モデルにより手術支援を行うためには,適切な剛性を与える物性値を決定する必要がある.これに対しては,まず,動物試験においてin vivoで物性値を同定し,それを適用することとした.そのために,in vivoで物性値を測定するための試験方法について検討を行い,試験装置の試作と予備的な実験を実施した.手術支援の基板となる腹腔内組織全体を表現した力学モデルを構築することが本研究課題の目的である.腹腔内組織において臓器は基本的に膜・網組織によって固定されていることから,本研究課題では,これらを考慮した有限要素解析のための腹腔内組織全体の力学モデルの作成を目指す.平成25年度の研究では,有限要素法に基づく数値計算手法の構築,平成26年度の研究では膜・網組織が考慮された有限要素解析のための幾何学モデルの生成と物性値の同定試験の予備検討を実施した.最終年度である平成27年度は,ここまでに開発した数値計算手法の改良と評価とおよび物性値の同定試験法のための3次元計測手法の開発を行った.腹腔内における膜・網組織が担う力学的機能を再現するためには,臓器が閉じた曲面となる膜・網で被われた幾何学モデルが必要であり,本研究課題では,腹腔の空間部に幾何形状とは独立な閉曲面を配置し,それを拡大することで臓器表面を被う閉曲面として膜組織を生成するアルゴリズムを開発してきた.本年度は膜組織と臓器間の力学的相互作用を表す接触モデルについて,適切な幾何学的状態を数値計算において実現するための法線ベクトルを用いたアルゴリズムを開発するとともに,CADモデルとして作成した腹腔モデルにおいて手術シミュレーションで想定される数ケースの問題設定に対する数値計算の妥当性を検討した.一方,生成された力学モデルにより手術支援を行うためには,適切な剛性を与える物性値を決定する必要がある. | KAKENHI-PROJECT-25600155 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25600155 |
手術支援のための人腹腔の力学モデルの構築 | これに対して,当初計画では間接的な物性値の推定を考えていたが,平成27年度の研究としては,手術で摘出された臓器の物性を,適当な点加力に対する3次元計測を行うことにより同定する手法を検討した.本年度の研究ではそのための3次元計測を,複数の3次元カメラを用いて行う方法を検討し,動物の臓器で基本的な検証を実施した.本研究課題の目的は,手術支援の基板となる腹腔内組織全体を表現した力学モデルを構築することである.そこで,膜・網組織の力学的モデル化手法として,臓器には非圧縮超弾性体に対する圧力安定化四面体1次ソリッド要素,膜・網組織には初期張力を考慮した三角形1次膜要素を適用し,臓器と膜の相互作用を摩擦の無い接触状態として,ピンボールアルゴリズムで評価する計算手法を提案した.また,腹腔内において臓器が膜・網で被われた幾何学モデルとして,膜・網組織を閉じた曲面とし,自己釣り合いを満足する初期状態を生成すアルゴリズムを開発した.さらに,これらの数値シミュレーションで用いるための物性値の取得方法についても検討した.平成26年度は,平成25年度の成果に基づく有限要素モデルを実際のCT, MRIなどの医用画像から生成する技術を確立することが達成目標であった.力学モデルとしては膜組織は閉じた曲面とすることが必要であるが,医用画像から直接的に膜を生成することは困難であった.そこで,別のアプローチとして,膜組織を臓器を被う形で人工的に生成する手法に取り組みある程度解決することができた.また,物性値の同定についても取り組み,一定の成果が得られた.したがって,研究は概ね順調に進展していると考えられる.計算力学平成25年度において膜組織と臓器による力学モデルを計算するための有限要素解析プログラムを開発した.平成26年度においては,臓器を被う膜組織を考慮した幾何学モデルの生成プログラムを開発した.また,物性値の同定についても研究を進めた.平成27年度は,以上を統合し,現実の状況に近い腹腔内の臓器変形を再現する数値シミュレーションの実現を目指す.平成25年度は力学的なモデル化の基本的な方針を決定し,それを実現する数値計算プログラムの開発が達成目標であった.当初計画とは膜・網組織の取り扱いは異なる手法を用いることとなったが,膜・網組織の力学モデルにおいて重要と考えられる初期張力と臓器との接触状態の表現については実現できた.また,このような力学モデルを計算可能な数値計算プログラムの開発もほぼ終了した.したがって,研究は概ね順調に進展していると考えている.当初計画どおり力学的なモデル化の手法とそれを実際に計算するための数値計算プログラムの開発がほぼ終了しており,平成26年度は具体的な患者固有データに基づく有限要素モデルの作成手法の開発にに着手する.また,並行して平成27年度に予定している内贈等の物性値の同定手法開発の準備も行う予定である. | KAKENHI-PROJECT-25600155 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25600155 |
免疫グロブリン大量療法の効率化を目標としたアロ活性化マクロファージ抑制法の開発 | マウス腹腔に同種異型(アロ)であるMeth A繊維肉腫細胞を移植し、Meth Aが拒絶される。次に二次移植を行い抗体関連型急性拒絶反応をおこし、腹腔に浸潤する免疫担当細胞(PEC)の細胞障害活性を調査。抗体関連型拒絶反応では補体経路も存在するが、今回は補体による影響を避けるため添加牛血清に含まれる補体は非動化して使用。PECのうちアロ活性化マクロファージ(AIM)が作用することをPECの各細胞分画セルソーターで分離し評価。AIMの細胞障害活性は非特異的IgG抗体により有意に減弱することが判明した。今後、補体を非動化しない状態でIVIGのAIMに対する抑制効果も含め評価する必要性もある。免疫抑制作用があると知られる免疫グロブリン大量療法(IVIG)の作用機序を解明するために解析をすすめた。まず、一次移植(初期感作);マウスのMHC classIIであるH-2D方の異なる移植モデルとして、C57Bl/6マウス(B6マウス;H-2Db)にH-2Ddの系統のマウスであるDBAマウス由来の線維肉腫細胞であるMeth A腫瘍細胞を腹腔内移植した。この移植Meth A細胞は腫瘍であるため腹腔内で増殖をつづけるが、その後、アロであるために拒絶反応がおこり移植後7日を最大として減少に転じ、14日後には拒絶されマウス腹腔内から消滅する。この際に腹腔内浸潤して免疫を担当する細胞群を腹腔浸潤細胞(PEC)として抽出し、抗体と免疫担当細胞群であるPECの関連を51Cr releasing assayを用いて調査した。同様の実験を二次移植モデルとして、一次移植細胞を拒絶したマウスにと一次移植と同様にMeth A細胞を腹腔移植したとところ、一次移植より明らかに早期にMeth A細胞は拒絶された。通説のとおりに二次移植が早期に拒絶される原因として免疫記憶により早急に抗体が産生され免疫を早急に賦活したものと考えられた。ここで、この2次移植におけるPECの細胞障害活性をin vitroにおいて、抗体や抗体のFc Blockerを用いて低下させうることが可能か現在検証しているが一定の結果を得るにいたっていない。ただし、これらのPECの中の免疫担当細胞をin vitroで吸着することでPECの細胞障害活性を強く減弱させうることを確認した。つまり、PECに含まれるeffector細胞が抗体を利用し、オプソニン効果を伴って拒絶反応における細胞障害活性を持っているものと示唆された。マウスのMHC classIIであるH-2D方の異なるアロ移植モデルとして、C57Bl/6マウス(H-2Db)にH-2Ddの系統のマウスであるDBAマウス由来の線維肉腫細胞であるMeth A腫瘍細胞を腹腔内移植する。この移植Meth A細胞は腫瘍であるため腹腔内で増殖するが、アロであるために拒絶反応がおこり移植後7日を最大として減少に転じ、14日後には拒絶されマウス腹腔内から消滅する。この際に腹腔内浸潤して免疫細胞群を腹腔浸潤細胞(PEC)として抽出する。抗体とPECの関連を51Crreleasing assayを用いて調査した。二次移植モデルとして、一次移植細胞を拒絶したマウスに繰り返しMeth A細胞を腹腔移植したとところ、一次移植より明らかに早期に拒絶された。一次移植におけるPECの細胞障害活性がIgGの大量投与により抑制可能か否を再検証したが、in vitroでの51Cr releasing assayにおいてマウスIgGを添加したところ細胞障害活性の減弱傾向がみられた。しかし、IgG投与なしでの細胞障害活性が25-30%と低いため、この減弱効果が有意といえるか否か断定しづらい結果となった。このためさらなる検証実験を予定している。二次移植におけるPECの細胞障害活性をin vitroにおいて、IgG抗体を添加でPECの活性が低下する傾向も確認できたが、これも結果が一部不安定となった。その後PECよりマクロファージ分画(Allograft Induced Macrophage;AIM)をセルソーターで抽出して、AIMの障害活性を調査の中心として行うこととした。IgGの投与によるAIMの抑制効果はFc Blockerを添加するとその作用が減弱する傾向も認められた。また、PECの中のAIMをin vivo、in vitroで除去することで、それぞれPECの細胞障害活性を強く減弱させることを確認した。つまり、PECに含まれるeffector細胞の主体はやはりAIMであり、AIMの細胞障害活性は抗体により左右されることから、AIMの拒絶反応における細胞障害活性にIVIGは作用するものと推察している。IgG抗体投与による細胞障害活性効果の結果がやや安定を欠く結果となったため、想定より実験方法の検証に時間を要したため。マウス腹腔に同種異型(アロ)であるMeht A繊維肉腫細胞を腹腔移植し、Meth A細胞が拒絶される状況を調査した。マウス腹腔をPBSで洗浄し、アロ拒絶に現れる免疫担当細胞として腹腔浸潤細胞(PEC)を採取。マウスに2回目のアロ細胞移植(二次移植)を行うことで、抗体関連型の超急性拒絶反応を起こすことができる。この際のPECの細胞障害活性を51Crreleasing assayで調査した。 | KAKENHI-PROJECT-26462466 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26462466 |
免疫グロブリン大量療法の効率化を目標としたアロ活性化マクロファージ抑制法の開発 | 抗体関連型拒絶反応においては、アロ移植細胞の拒絶はアロ細胞の表面に発現れるMHC(H-2)を抗原として抗体がまず付着しこの抗体により補体が活性化される経路があげられるが、我々の今回の実験では、補体による影響を避けるために、in vitroで使用する細胞培養液に添加する牛血清(FBS)に含まれる補体は非動化して使用した。つまり、抗体関連拒絶反応におけるアロ細胞障害活性のうち補体を除く場合の細胞障害活性を調査した。二次移植の場合も腹腔内に浸潤してくるPECのうち、アロ活性化マクロファージ(AIM;allograft induced macrophage)がeffector細胞として作用することをPECの各細胞分画セルソーターで分離し評価することで示した。AIMの細胞障害活性はIVIGにより有意に減弱することが判明した。IVIGでは完全にAIM活性を抑制するには至らなかった。臨床で行われるIVIGは補体存在下での反応であるため、今後の実験では補体を非動化しない状態でのIVIGのAIMに対する効果も含め評価する必要性もあると考えられた。なお、抗体Fc部分の投与ではAIMの細胞障害活性の抑制効果が不安定であり、IgG抗体によるIVIGよりも効果が落ちると考えられた。今後、補体存在下でのAIMの細胞障害活性をも検証し、IVIGの効果が補体活性も抑制するのか否かも含め検証していくべきと考えている。マウス腹腔に同種異型(アロ)であるMeth A繊維肉腫細胞を移植し、Meth Aが拒絶される。次に二次移植を行い抗体関連型急性拒絶反応をおこし、腹腔に浸潤する免疫担当細胞(PEC)の細胞障害活性を調査。抗体関連型拒絶反応では補体経路も存在するが、今回は補体による影響を避けるため添加牛血清に含まれる補体は非動化して使用。PECのうちアロ活性化マクロファージ(AIM)が作用することをPECの各細胞分画セルソーターで分離し評価。AIMの細胞障害活性は非特異的IgG抗体により有意に減弱することが判明した。今後、補体を非動化しない状態でIVIGのAIMに対する抑制効果も含め評価する必要性もある。抗体関連拒絶反応と細胞性拒絶反応の相関に関して、抗体の量と種類によって、免疫が抑制されたり、抗体の種類によっては逆に賦活化されたりすることが判明した。今後の研究において、in vivoでのIVIGの効率的な成果を得るためには、補体活性によるもの以外のeffector細胞と考えられる単球マクロファージとNK細胞と顆粒球の相関関係をより明らかにすること必要と考えられる結果を得た。このため、当初想定していなかった顆粒球の関与と関連を検討するべきであると考えた。すなわち、アロ移植時の腹腔浸潤細胞(PEC)の組成のうち顆粒球、単球マクロファージ、リンパ球、(NK細胞)のそれぞれの免疫早期での反応性とそれらの一次移植と二次移植での差異と抗体の関連性を確認するべきであり、FACSを用いた検証、各分画の細胞障害活性の実験、抗体との細胞障害活性の関連をそれぞれ、詳細に検討するべきと考えられる。この解析には当初予想したよりも比較的長時間を要するものと考えられるため、やや遅れているとした。アロ移植時の腹腔浸潤細胞(PEC)として顆粒球、単球マクロファージ、リンパ球などの組成があるが、このうち単球マクロファージ | KAKENHI-PROJECT-26462466 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26462466 |
天然林における樹齢構造と生存時間解析に基づく伐採木の選定 | 本研究の目的は,成熟段階に達した天然林の樹木個体群を対象として,樹齢構造を明らかにし,生存時間解析を行い,各個体の樹齢,個体群の平均寿命,樹齢別の平均余命といった樹齢・寿命情報に基づく伐採木の選定を提案することである。本研究では,生存時間解析の手法を成熟段階に達した天然林へ適用した上で,老齢過熟木の淘汰を旨とした,合自然的な伐採木の選定という,新たな天然林管理のあり方を提案する。対象地は,東京大学北海道演習林に多数ある,天然林固定プロットであり,長期にわたり蓄積された豊富な経時調査データを活用できる。調査に際しては,非破壊式年輪解析機器RESISTOGRAPHを利用して,効率的に解析を行う。本研究の目的は,成熟段階に達した天然林の樹木個体群を対象として,樹齢構造を明らかにし,生存時間解析を行い,各個体の樹齢,個体群の平均寿命,樹齢別の平均余命といった樹齢・寿命情報に基づく伐採木の選定を提案することである。本研究では,生存時間解析の手法を成熟段階に達した天然林へ適用した上で,老齢過熟木の淘汰を旨とした,合自然的な伐採木の選定という,新たな天然林管理のあり方を提案する。対象地は,東京大学北海道演習林に多数ある,天然林固定プロットであり,長期にわたり蓄積された豊富な経時調査データを活用できる。調査に際しては,非破壊式年輪解析機器RESISTOGRAPHを利用して,効率的に解析を行う。 | KAKENHI-PROJECT-19K06142 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K06142 |
オノマトペ語義の体系化を目指した文脈情報付きオノマトペデータベースの構築 | 本研究の目的は、多様なコーパスを分析して、オノマトペの出現傾向および語義の傾向、新出の語義・用法、オノマトペの語義と文脈情報の関係などについての基礎研究を完成させ、『文脈情報付き現代日本語オノマトペデータベース』を構築することである。平成30年度はオノマトペの語義と文脈情報の分析を行い、その結果をまとめて対外発表を行うことを計画していた。この実施計画に則り研究を遂行し、当該年度は以下の研究成果を得た。雑誌からオノマトペを抽出すると同時に、各オノマトペの係り先や修飾対象を人手で抽出し、文脈情報としてまとめた。さらに、オノマトペの表記揺れを人手で正規化し、実態に即した出現傾向を明らかにした。ここで得たデータにより、特定のドメインでのオノマトペの用法を明らかにできる。具体的な成果としては、幼児向け雑誌11冊から737語のオノマトペ(延べ数)を抽出した。他のドメインと比較すると、係り先の動詞が省略される例やオノマトペを単独で用いる例、辞書にはないオノマトペを使用する例、同じオノマトペを繰り返し用いる例が特徴的であった。幼児向け雑誌を対象としたオノマトペの文脈分析はこれまでに行われておらず、あらたな知見が得られたといえる。同様の分析を他ドメインでも継続しており、スポーツ、ファッション分野のオノマトペの特徴も明らかにする予定である。さらに、これまでに得られたオノマトペの用法や語義、応用例についての知見をまとめ、学会誌の解説記事や招待講演で広く発信した。オノマトペの文脈情報を抽出する作業を複数のアルバイターに依頼して進めているが、計画時点での想定よりも多大な労力が必要であることが明らかになっている。特に、オノマトペか否かを判断する過程や、オノマトペ周辺の省略された文脈を補完する作業では、研究代表者とアルバイター、および研究協力者で協議する必要がある。したがって、コーパスの規模については当初の目標の達成がやや不十分である。上記の理由から、「進行状況はやや遅れている」と判断する。平成31年度は、引き続きオノマトペの文脈情報の抽出と分析を行う。分析が完了した部分から、データベースの構築と公開を行う。その際、自然言語処理への応用も考慮したデータベースの形式を考案する必要がある。特に、自然言語処理技術の基礎となるシステム(形態素解析器等)に必要な辞書データにはオノマトペの語彙が不足している。この問題の解決に貢献するようなデータベースの構築を目指す。本研究の目的は、多様なコーパスを分析し、オノマトペの出現傾向および語義の傾向、新出の語義・用法、オノマトペの語義と文脈情報の関係を明らかにすることである。平成29年度は、分析対象とするコーパスを構築した上で、実際にオノマトペを抽出・分析し、オノマトペの統計情報について得られた知見を学会発表を行うことを計画していた。当該年度はこの実施計画に則り、種々のコーパスにおけるオノマトペの分析を行った。主な研究成果は、以下の2点である。(1)Webデータと地方議会会議録を対象としてオノマトペの出現傾向やオノマトペの係り先動詞の特徴を分析した。その結果、Webデータは会議録よりもエントロピーが高い傾向にあることが明らかになった。また、ジャンルや文体が異なるコーパスでの動詞「する」に接続するオノマトペの用法、係り先動詞の偏りを比較を行い、新たな知見を得た。(2)ユーモアの文脈でのオノマトペの用法を明らかにするために、駄洒落に出現するオノマトペの出現傾向を定量的に示し、オノマトペの出現位置や音の変化について考察を行った。対象としたコーパスにおいて、553種のオノマトペが1,715件の駄洒落に合計1,737回出現した。それらを分析したところ、23文字の短いオノマトペの出現頻度が高いこと、大部分のオノマトペが変形表現(駄洒落の前半部分)に出現することなどが明らかになった。オノマトペは他の語群にはない独特な音韻的特徴をもつため、駄洒落を作るために種表現の音に近い言葉を探すときオノマトペが多用され、変形表現に出現すると考えられる。また、駄洒落を成立させるためにオノマトペの音を様々な形式で変化させていることが明らかになった。当該年度は3種のコーパス(地方議会会議録、Web文書、ユーモア文)を整備し、オノマトペの抽出を行った。その上で、オノマトペの出現傾向の分析を行った。ユーモアに関するコーパスを対象としたオノマトペ分析は当初の予定には含まれていない新たな試みである。文脈情報の抽出については、1種のコーパス(地方議会会議録)について完了している。上記の理由から、進行状況は実施計画と概ね一致していると判断する。本研究の目的は、多様なコーパスを分析して、オノマトペの出現傾向および語義の傾向、新出の語義・用法、オノマトペの語義と文脈情報の関係などについての基礎研究を完成させ、『文脈情報付き現代日本語オノマトペデータベース』を構築することである。平成30年度はオノマトペの語義と文脈情報の分析を行い、その結果をまとめて対外発表を行うことを計画していた。この実施計画に則り研究を遂行し、当該年度は以下の研究成果を得た。 | KAKENHI-PROJECT-17K12791 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K12791 |
オノマトペ語義の体系化を目指した文脈情報付きオノマトペデータベースの構築 | 雑誌からオノマトペを抽出すると同時に、各オノマトペの係り先や修飾対象を人手で抽出し、文脈情報としてまとめた。さらに、オノマトペの表記揺れを人手で正規化し、実態に即した出現傾向を明らかにした。ここで得たデータにより、特定のドメインでのオノマトペの用法を明らかにできる。具体的な成果としては、幼児向け雑誌11冊から737語のオノマトペ(延べ数)を抽出した。他のドメインと比較すると、係り先の動詞が省略される例やオノマトペを単独で用いる例、辞書にはないオノマトペを使用する例、同じオノマトペを繰り返し用いる例が特徴的であった。幼児向け雑誌を対象としたオノマトペの文脈分析はこれまでに行われておらず、あらたな知見が得られたといえる。同様の分析を他ドメインでも継続しており、スポーツ、ファッション分野のオノマトペの特徴も明らかにする予定である。さらに、これまでに得られたオノマトペの用法や語義、応用例についての知見をまとめ、学会誌の解説記事や招待講演で広く発信した。オノマトペの文脈情報を抽出する作業を複数のアルバイターに依頼して進めているが、計画時点での想定よりも多大な労力が必要であることが明らかになっている。特に、オノマトペか否かを判断する過程や、オノマトペ周辺の省略された文脈を補完する作業では、研究代表者とアルバイター、および研究協力者で協議する必要がある。したがって、コーパスの規模については当初の目標の達成がやや不十分である。上記の理由から、「進行状況はやや遅れている」と判断する。平成29年度に分析したコーパスを対象として、さらに詳細な分析を行い、オノマトペの語義と文脈情報を明らかにする。語義分類に際し、日本語オノマトペ辞典の語義を基準とするが、辞典に掲載されていない語義で使用される用例が存在する可能性が高い。その場合は、研究協力者と協議の上、新たな語義を定義する予定である。語義分類はすべて人手で行う必要があるため、大学院生と共同で作業を行う。語義分類が完了した後、文脈情報の分析を行う。オノマトペの語義の決定には係り先が重要な役割を果たすが、係り先よりも修飾語が有用な例も確認されている。各オノマトペの用法について、大量の語義分類済みデータから統計的に判断する。平成31年度は、引き続きオノマトペの文脈情報の抽出と分析を行う。分析が完了した部分から、データベースの構築と公開を行う。その際、自然言語処理への応用も考慮したデータベースの形式を考案する必要がある。特に、自然言語処理技術の基礎となるシステム(形態素解析器等)に必要な辞書データにはオノマトペの語彙が不足している。この問題の解決に貢献するようなデータベースの構築を目指す。当初の計画では、コーパス構築に関わるデータ整備のためにアルバイターを雇用する予定あった。しかし、予備的な作業を行ったところ、研究代表者が単独行うことが可能な作業量であるという結論に至った。したがって、アルバイターとデータを共有するための記憶メディア(外付けハードディスクやUSBフラッシュメモリ等)の購入に掛かる費用、アルバイターへの謝金が不要となり、次年度使用額が生じた。平成30年度には、オノマトペの文脈情報を複数名でアノテーションする予定である。次年度使用額はその際に必要な物品の購入に使用する予定である。当初の計画では、コーパス構築に必要なデータ抽出のためにアルバイター6名を雇用する予定あった。しかし、当該作業の適任者が3名しか確保できず、アルバイターへの謝金の総額が計画よりも少なくなった。その結果、次年度使用額が生じた。 | KAKENHI-PROJECT-17K12791 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K12791 |
知識蓄積型遺伝的アルゴリズムとその応用に関する研究 | (1)知識蓄積型遺伝的アルゴリズム進化過程において解を構成する有効な遺伝子あるいは部品を蓄積するためにマルチ・ニッチを提案した。マルチ・ニッチは進化的計算法全体に活用できる汎用的な概念であるが、本研究ではマルチ・ニッチが最も有効に働く例として、遺伝的プログラミング(GP)による再帰的プログラムの生成に適用した。まず、個体であるS表現のプログラムの再帰性、終了条件などの構造に基づく構造的マルチ・ニッチを提案し、フィボナッチ数列問題に適応してその有効性を確認した。さらに、適合ケースに基づくマルチ・ニッチを提案し、それを探索問題に適応してその有効性を確認した。一方、遺伝的プログラミングによるロボットの行動制御の進化において、種々の環境を経験することにより知識を蓄積し、環境に対してより汎用的な行動制御プログラムを獲得する実験を行った。この結果、限られてはいるが、異なる環境に対しても対応できる行動制御プログラムを得ることができた。(2)遺伝的アルゴリズムの応用f-θレンズのより実際的なモデルとして、ポリゴンミラーによる偏向系を用い、両面レンズのモデルでの設計を試みた。ポリゴンミラーによりレンズが上下非対称になりパラメータ数が増加し、また両面レンズにしたことによりパラメータ間の依存性が増大し、非常に困難な問題となったが、精度が片面レンズに劣るものの基本的な形状を得ることができた。FM音源の表現力の限界を克服するために、遺伝的プログラミングを使って音響波形を直接数式で表すことを試みた。評価関数として、波形の類似度と周波数特性の類似度を混合して用いた。また、マルチ・ニッチの応用として、波形の類似度と周波数特性の類似度の混合比が異なる評価関数を持つ多集団GPによって進化を行った。FM音源、実際の楽器音、音声をサンプルとして実験を行い良好な結果を得た。1.知識蓄積型遺伝的アルゴリズム遺伝的アルゴリズム(GA)を最適化手法として実際的な工学応用に使用する場合に最適解の安定性またはロバスト性が重要となる。本研究ではRBF(Radical Basis Function)のσパラメータを探索空間のパラメータに加えこれを個体として定義した。また、最適解のピーク形状はRBFと評価関数との類似度を定義し、これを元の評価関数に加える形で修飾した変形評価関数(最小化)を用いて前記個体の進化を行った。最適化手法の評価に使われている代表的な評価関数について実験を行ったところ最適解の探索とピーク形状の抽出が同時に行えることを確認した。また、σパラメータに制限を加えることにより安定なピークを選択的に探索できることを確かめた。現在、ここで抽出したピーク形状の情報を蓄積して他の準最適解を探索する手法の研究を行っている。2.遺伝的アルゴリズムの応用GAの応用については、レーザプリンタに使用されるf-θレンズの設計とFM音源のパラメータ生成へのGAの適用について検討した。f-θレンズについては等速回転平面鏡および振動平面鏡によるレーザビーム偏向系を用い、片面レンズのモデルでGAによる設計を試み、レーザビームを感光ドラム上を等速で走査させるレンズの形状を求めることが出来た。現在、より実際的なモデルとして、ポリゴンミラーを用いた偏向系と両面レンズのモデルでの設計を検討している。FM音源のパラメータ生成については、4オペレータのモデルに対してパラメータの生成をGAを用いて試みた。実験としては、基本的な波形の生成およびオルガン、クラリネットなど実際の楽器音に対するパラメータを生成し、試聴による評価で良好な結果を得た。これらの応用実験を通して解の安定性、GAの収束性等の問題点を抽出した。(1)知識蓄積型遺伝的アルゴリズム進化過程において解を構成する有効な遺伝子あるいは部品を蓄積するためにマルチ・ニッチを提案した。マルチ・ニッチは進化的計算法全体に活用できる汎用的な概念であるが、本研究ではマルチ・ニッチが最も有効に働く例として、遺伝的プログラミング(GP)による再帰的プログラムの生成に適用した。まず、個体であるS表現のプログラムの再帰性、終了条件などの構造に基づく構造的マルチ・ニッチを提案し、フィボナッチ数列問題に適応してその有効性を確認した。さらに、適合ケースに基づくマルチ・ニッチを提案し、それを探索問題に適応してその有効性を確認した。一方、遺伝的プログラミングによるロボットの行動制御の進化において、種々の環境を経験することにより知識を蓄積し、環境に対してより汎用的な行動制御プログラムを獲得する実験を行った。この結果、限られてはいるが、異なる環境に対しても対応できる行動制御プログラムを得ることができた。(2)遺伝的アルゴリズムの応用f-θレンズのより実際的なモデルとして、ポリゴンミラーによる偏向系を用い、両面レンズのモデルでの設計を試みた。ポリゴンミラーによりレンズが上下非対称になりパラメータ数が増加し、また両面レンズにしたことによりパラメータ間の依存性が増大し、非常に困難な問題となったが、精度が片面レンズに劣るものの基本的な形状を得ることができた。FM音源の表現力の限界を克服するために、遺伝的プログラミングを使って音響波形を直接数式で表すことを試みた。評価関数として、波形の類似度と周波数特性の類似度を混合して用いた。また、マルチ・ニッチの応用として、波形の類似度と周波数特性の類似度の混合比が異なる評価関数を持つ多集団GPによって進化を行った。FM音源、実際の楽器音、音声をサンプルとして実験を行い良好な結果を得た。 | KAKENHI-PROJECT-08680417 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08680417 |
地震津波災害リスト軽減に基づいた災害に強い沿岸地域コミュニティの形成に関する研究 | スマトラ地震津波災害の後、インドネシアをはじめとしたインド洋沿岸地域を対象とした津波警報システムが開発された。このシステムを用いて実際に高い減災効果をあげるには、それを活用する地域コミュニティの事前準備が不可欠である。そこで本研究では、事前対策の進んだ理想的な沿岸コミュニティとはどういうコミュニティなのか、そのあるべき姿のモデルを提案した。このモデルは、地域のガバナンス、社会経済状況、沿岸資源管理体制、調和の取れた土地利用と構造物のデザインの有無、リスクに関する知識の程度、警報と避難体制、災害時緊急対応力、災害復興対策の8つの基本指標で評価できるものである。なおこの8つは、UNAIDがスポンサーとなって開発を進めたインド洋沿津波警報システム(IOTWS)プログラムにおいて、地域評価指標として掲げられているものである。次に、沿岸地域で発生する規模と種類の異なる多様な災害に対する沿岸地域コミュニティの事前対策の進捗状況を適切に評価できるシステムを開発し、これを普及させる仕組みを提案した。上記の研究成果は、「津波災害に対応するための研究成果の社会還元のワークショップ(2009年8月にインドネシアのCilacapで開催)」、「インドネシアと日本の津波災害から:津波に対する沿岸地域の対応策に関するパネルディスカッション(2010年9月にインドネシアのCilacapで開催)」、「アジアの都市安全に関する国際シンポジウム(第9回USMCA:2010年10月に神戸で開催)」で発表された。本研究の成果は高く評価され、インドネシアのCilacapの行政機関が、当地の津波被害の軽減のために本研究の成果を採択したいとの意思表示があり、その方向での検討が進められている。また本研究の継続と本研究の成果をCilacapと地域特性の似た周辺地域の地震津波リスクの軽減のために活用していくことへの支援の申し出がPT.PERTAMINA(国家石油・ガス会社)から受けている。スマトラ地震津波災害の後、インド洋沿岸地域を対象とした津波警報システムが開発された。これらの潜在的な有用性は高いが、実際に高い減災効果をあげるには、それを活用する地域コミュニティの事前準備が不可欠である。そこで本研究では、事前対策の進んだ模範的な沿岸コミュニティとはどんなものか、そのあるべきコミュニティモデルの提案を研究目的としている。このモデルは、地域のガバナンス、社会経済状況、沿岸資源管理体制、調和の取れた土地利用と構造物のデザインの有無、リスクに関する知識の程度、警報と避難体制、災害時緊急対応力、災害復興対策の8つの基本指標で評価できるものとする。また本研究では、沿岸地域で発生する規模と種類の異なる多様な災害に対する沿岸地域コミュニティの事前対策の進捗状況を適切に評価できるシステムを開発し、これを普及させる仕組みの提案も目的としている。10月から始まった本研究では、初年度の平成20年度の研究期間は実質半年間であるが、上記の目的を達成するために、次のような研究活動を実施した。まず津波シミュレーションの最新モデリングに関する情報と資料の収集を行った。具体的には、わが国の津波研究のメッカである東北大学工学研究科附属災害制御研究センターの今村教授の研究室を訪問し、津波のモデリングについて最新の研究成果を紹介してもらうとともに意見交換を行い、津波シミュレーションのモデリングに関する最新の情報と資料の収集を行った。また、過去に津波災害を多く受けている岩手県三陸海岸の田老町を訪問し、同町がこれまでに整備を進めてきた津波災害システムの見学と地域コミュニティの防災力を評価する基礎情報の収集と評価法について検討した。また、インドネシアのチラチャップを対象に、津波被害の調査とアンケート調査、さらに道路設備等の調査を行った。これも沿岸コミュニティや津波災害軽減システムの現地調査の一環である。一般に普及している津波災害に対する地域の災害対応力を表す標準的な指標は存在していない.そこで本研究では,CCR-IOTEWS(Coastal Community Resilience-Indian Ocean Tsunami Early Warning System)を参照し,地域の災害対応力を表現するための一般指標の提案を試みる.提案する指標は,地域特性を十分考慮したもので,地域コミュニティ,行政機関さらに非政府機関(NGO)など,複数の関係者が容易に共有し利用できるものとしている.この指標は,1次データと2次データから構成され,1次データは現地調査により収集した.現地調査の対象地域として2地域を選定し,津波被害からの復興状況を評価した.現地の状況把握のために2009年2月に岩手県田老町を訪れたが,本年度はインドネシアのチラチャップリージェンシーを対象とした調査・検討を中心に行った.具体的には,沿岸地域の津波対応力を決めるため,現地での観測とアンケート調査を実施した(2009年3月4月).その結果,沿岸地域の津波対応力を示すために,8つの要素で構成された指標を決定した.これらの指標は,地域統制[Gov],社会経済・生活環境[SEL],沿岸資源運営[CRM],土地利用と構造設計[ER],危険知識[RK],警報と避難[WnE],応急対応[ER],そして災害復興[DR]の8つである.実際の観測結果に基づき8つの指標を評価した結果,全ての観測地域において,平均値が2以下を示し,基準に達してない結果となった.これらのチラチャップリージェンシーにおける調査結果を,2009年8月11日から12日にチラチャップで開催された会議「将来の津波被害を軽減するための津波研究結果の社会普及」で発表した.また研究論文を,2010年7月に、2年に1回の頻度で開催される | KAKENHI-PROJECT-08F08832 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08F08832 |
地震津波災害リスト軽減に基づいた災害に強い沿岸地域コミュニティの形成に関する研究 | ICCE(International Conference on Coastal Engineering)に投稿した.今後の予定としては,チラチャップリージェンシーで取得したデータ分析と共に,これまでに用いた調査手法を使って,2010年4月から,岩手県田老町での現地調査とアンケート調査を実施する予定である.スマトラ地震津波災害の後、インドネシアをはじめとしたインド洋沿岸地域を対象とした津波警報システムが開発された。このシステムを用いて実際に高い減災効果をあげるには、それを活用する地域コミュニティの事前準備が不可欠である。そこで本研究では、事前対策の進んだ理想的な沿岸コミュニティとはどういうコミュニティなのか、そのあるべき姿のモデルを提案した。このモデルは、地域のガバナンス、社会経済状況、沿岸資源管理体制、調和の取れた土地利用と構造物のデザインの有無、リスクに関する知識の程度、警報と避難体制、災害時緊急対応力、災害復興対策の8つの基本指標で評価できるものである。なおこの8つは、UNAIDがスポンサーとなって開発を進めたインド洋沿津波警報システム(IOTWS)プログラムにおいて、地域評価指標として掲げられているものである。次に、沿岸地域で発生する規模と種類の異なる多様な災害に対する沿岸地域コミュニティの事前対策の進捗状況を適切に評価できるシステムを開発し、これを普及させる仕組みを提案した。上記の研究成果は、「津波災害に対応するための研究成果の社会還元のワークショップ(2009年8月にインドネシアのCilacapで開催)」、「インドネシアと日本の津波災害から:津波に対する沿岸地域の対応策に関するパネルディスカッション(2010年9月にインドネシアのCilacapで開催)」、「アジアの都市安全に関する国際シンポジウム(第9回USMCA:2010年10月に神戸で開催)」で発表された。本研究の成果は高く評価され、インドネシアのCilacapの行政機関が、当地の津波被害の軽減のために本研究の成果を採択したいとの意思表示があり、その方向での検討が進められている。また本研究の継続と本研究の成果をCilacapと地域特性の似た周辺地域の地震津波リスクの軽減のために活用していくことへの支援の申し出がPT.PERTAMINA(国家石油・ガス会社)から受けている。 | KAKENHI-PROJECT-08F08832 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08F08832 |
Nrf2を介した慢性炎症応答制御による動脈硬化症進行機構の解明 | 動脈硬化巣では炎症性マクロファージ(M1)や抗炎症性マクロファージ(M2)等の様々なマクロファージが混在し、この局所的な炎症応答バランスと病態進行との関連性が示唆されている。本研究では、転写因子Nrf2がこのマクロファージの炎症応答に関与しているかどうかを遺伝子改変動脈硬化症モデルマウスを用いて検証した。その結果、後期の動脈硬化巣においてNrf2はM1マクロファージに関与して動脈硬化巣の進行に促進的に働くことが明らかになった。これらについての成果論文は国際科学誌FRBMに掲載された。動脈硬化巣では炎症性マクロファージ(M1)や抗炎症性マクロファージ(M2)などのマクロファージが混在し、この局所的な炎症応答バランスと病態進行との関連性が示唆されており、転写因子Nrf2がこのマクロファージ炎症バランスに関与しているかどうかをApoE遺伝子欠損動脈硬化症モデルマウスをNrf2遺伝子との二重欠損マウスにして、高脂肪食投与による動脈硬化巣に与える影響を経時的に解析した。初期の病巣の形成に差はみられないが,進行した病巣では二重欠損マウスでは抑制が起こることが明らかになった。これら病巣における遺伝子の発現について解析したところ、特に後期の硬化巣においてM1を示す遺伝子群が低下していたがM2を示す遺伝子群に変化は見られなかった。このことから、Nrf2欠損では後期の動脈硬化巣においてM1マクロファージへの分化を抑制することにより病巣を抑制することが示唆された。一方、骨髄細胞特異的にNrf2の発現を欠損させたところ、後期の動脈硬化巣の形成が抑制されることが明らかになり、マクロファージのNrf2が動脈硬化巣の進行に影響していることが示された。慢性炎症である動脈硬化症へのNrf2の影響として、Nrf2は動脈硬化巣の初期病変ではあまり関与していないが、後期の病巣の一部のマクロファージで活性化し、マクロファージの性状に関与することが明らかになり、それが病巣の進行に影響することが明らかになった。また、二重欠損マウスの後期の病巣では新規のNrf2の新規標的遺伝子となり得るいくつかの遺伝子の発現が低下していることが明らかになる一方でNrf2の標的遺伝子としてよく知られているNqo1には変化がみられなかった。このことから、後期の動脈硬化巣病変のマクロファージに特異的なNrf2による遺伝子発現が起こっていて、これが病巣の進行に関与するのではないかと考えられる。動脈硬化巣では炎症性マクロファージ(M1)や抗炎症性マクロファージ(M2)等の様々なマクロファージが混在し、この局所的な炎症応答バランスと病態進行との関連性が示唆されている。本研究では、転写因子Nrf2がこのマクロファージの炎症応答に関与しているかどうかを遺伝子改変動脈硬化症モデルマウスを用いて検証した。その結果、後期の動脈硬化巣においてNrf2はM1マクロファージに関与して動脈硬化巣の進行に促進的に働くことが明らかになった。これらについての成果論文は国際科学誌FRBMに掲載された。動脈硬化巣では炎症性マクロファージ(M1)や抗炎症性マクロファージ(M2)などのマクロファージが混在し不均一性を示しており,この局所的な炎症応答バランスと病態進行との関連性が示唆されており,転写因子Nrf2がこのマクロファージ分化に関与しているかどうかを解析した.動脈硬化症モデルマウスであるApoE遺伝子欠損マウスをNrf2遺伝子との二重欠損マウス[ApoE(-/-)::Nrf2(-/-)]を用いて,動脈硬化巣形成に与える影響を解析した.これまでの解析によりApoE(-/-)::Nrf2(-/-)マウスでは,5週間の高脂肪食投与での初期病巣の形成に差はみられないが,12週間投与の後期病巣では抑制が起こることが明らかになっていたので,これらのマウスを用いて5週間,12週間投与での病巣においてRT-qPCR法を用いて経時的にマクロファージの性状に関する遺伝子の発現について解析したところ,特に12週間投与の硬化巣においてM1を示す遺伝子群が低下していた,また過酸化脂質誘導性マクロファージ(Mox)を示す遺伝子群も低下していた,しかしM2を示す遺伝子群に変化は見られなかった.このことから,Nrf2欠損では後期の動脈硬化巣においてM1またはMoxマクロファージへの分化を抑制することにより病巣を抑制することが示唆された.一方,Nrf2遺伝子欠損による動脈硬化巣抑制の責任細胞を明らかにするために,ApoE(-/-)::Nrf2(+/+)マウスに,ApoE(-/-):: Nrf2(-/-)マウスの骨髄細胞を移植することにより骨髄由来細胞特異的にNrf2の発現を欠損させた.このマウスで後期の動脈硬化巣の形成への影響を比較すると,骨髄細胞特異的にNrf2遺伝子を欠損させると動脈硬化巣が抑制されることが明らかになり,マクロファージのNrf2が動脈硬化巣を促進していることが示唆された.慢性炎症である動脈硬化症へのNrf2の影響として,Nrf2は動脈硬化巣の初期病変ではあまり関与していないが,後期の病巣の一部のマクロファージで活性化していることを明らかにした.また,後期の病巣におけるマクロファージの性状に関与することが明らかになり,それが病巣の形成に影響することが示唆された.骨髄移植実験からマクロファージのNrf2が病巣の形成に重要なことが示唆された.これらの結果をまとめた論文が国際学術誌Free Radic Biol Med. | KAKENHI-PROJECT-24790305 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24790305 |
Nrf2を介した慢性炎症応答制御による動脈硬化症進行機構の解明 | に掲載された.抗炎症性作用のあるNrf2を恒常的に活性化させ,動脈硬化症への影響を解析する.これまでにNrf2を抑制性に制御するKeap1を遺伝子欠損させると, Nrf2が恒常的に活性化することが示されている.Keap1コンディショナルノックアウトマウスを用いることで組織選択的にNrf2を恒常的に活性化させることが出来る.このKeap1コンディショナルノックアウトマウスを用いて,血管内皮細胞またはマクロファージ特異的Nrf2過剰発現マウスを作成して,動脈硬化症に対しての影響を,特にマクロファージの性状に注目して解析して行く予定である.また,病巣においてNrf2の活性化しているマクロファージの性状を明らかにするため,Nrf2遺伝子と蛍光タンパク質を融合した遺伝子をトランスジェニックしたNrf2レポーターマウス(Nrf2の発現した細胞で蛍光タンパク質を発現する)を用いて動脈硬化巣で蛍光を発するマクロファージを集めて,その遺伝子発現などの性状を明らかにする.次年度使用額は,今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり,平成25年度請求額とあわせ,平成25年度の研究遂行に使用する予定である. | KAKENHI-PROJECT-24790305 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24790305 |
3次元リアルタイム培養システムによる歯周病とNASH関連機序のイメージング解析 | NASHの発症については、肥満などによる脂肪肝の状態である1st Hitに、エンドトキシン(LPS)や様々なサイトカイン、アディポカインによる2nd Hitが必要であり、この部分は多様なプロセスによるため未解明な部分が多い。本研究では、肝細胞と血管内皮細胞を培養し、歯周病関連細菌由来LPSで刺激後の各々の細胞の動態および細胞表面のICAM-1、P-selectinなどの接着因子発現やTGF-βなどのサイトカイン産生の変化を確認した。現在、人工膜マトリックス上での3D培養やヒト単球系細胞や好中球との共培養における影響についても解析している。NASHの発症については、肥満などによる脂肪肝の状態である1st Hitに、エンドトキシン(LPS)や様々なサイトカイン、アディポカインによる2nd Hitが必要であり、この部分は多様なプロセスによるため未解明な部分が多い。本研究では、肝細胞と血管内皮細胞を培養し、歯周病関連細菌由来LPSで刺激後の各々の細胞の動態および細胞表面のICAM-1、P-selectinなどの接着因子発現やTGF-βなどのサイトカイン産生の変化を確認した。現在、人工膜マトリックス上での3D培養やヒト単球系細胞や好中球との共培養における影響についても解析している。我々はすでにヒト肝細胞株であるHepG2細胞に歯周病原菌由来LPSを加えることで、各種接着因子やサイトカインを産生することを確認している。NASHへの病態は、まず脂肪肝が発生し、さらにエンドトキシンやサイトカイン、アディポカイン刺激によりNASHに進行し、さらに血管異常が積み重なることにより肝硬変、肝癌へ進行するといわれている。(Two hit story)本研究では2nd hitに関わる因子としての歯周病による影響を詳細に解析することを目的とする。NASHの発症や病態の進行において、肥満と関連が深く歯周病によりその産生が確認されているTNF-αは炎症による肝障害やインスリン抵抗性の発現に重要であり、TGF-βは肝線維化に深く関与している。これら炎症性サイトカインに加え、本研究ではまたアディポカインの1つで炎症と関連が示唆されており、我々が研究をすすめているレジスチンがどのように関わるのか、NASHや血栓形成に与える影響を動態的に明らかにする。現在NASHの診断は、肝生検で最終診断を下しているのが現状であるが、病因における鍵となる因子を明らかにすることで、血液や唾液を利用した簡便なNASHマーカー因子の発見につながる可能性もある。本研究では、肝細胞株に歯周病および大腸菌由来LPSを添加することにより、濃度依存的にMMP-9およびTGF-βを産生することを確認した。現在、3D培養の条件を整えており、共培養を開始する予定である。歯周病が全身に及ぼす影響について、我々は歯周病が肝臓の脂肪化に炎症、線維化を伴う非アルコール性脂肪性肝炎(Non-Alcoholic steato-hepatitis (NASH)を引き起こしている可能性を疫学調査にて発表している。NASHの発症については、肥満などによる脂肪肝の状態である1st Hitに、エンドトキシン(LPS)や様々なサイトカイン刺激による2nd HitによりNASHに進行し、さらに血管における継続的な炎症とあわさって肝硬変、肝癌へ進行するといわれている。(Two hit story)NASH患者の歯周病菌保有率が健康な人と比べて約3.9倍もの高率で、歯周病のあるNASH患者10人に歯周治療を行うと3カ月後に肝機能の数値がほぼ正常になったとの報告もあることから、歯周病はNASHの2nd Hitに関与している可能性がり、本研究では2nd hitに関わる因子としての歯周病による影響を詳細に解析することを目的とする。NASHの発症や病態の進行において、肥満と関連が深く歯周病によりその産生が確認されているTNF-αは炎症による肝障害やインスリン抵抗性の発現に重要であり、TGF-βは肝線維化に深く関与している。我々はヒト肝細胞株であるHepG2細胞に歯周病原菌由来LPSを加えることで、TGF-βを産生することを確認した。これら炎症性サイトカインに加え、本研究では接着因子の1つであるICAM-1や発がんとも関連するMMP-9産生を確認しており、炎症と血栓形成に与える影響を動態的に明らかにしつつある。本研究では、現在、3D培養の条件を整えており、血管内皮細胞と好中球や単球との相互作用および肝細胞との相互作用を共培養システムにて解析中である。社会系歯学共培養モデルについては、様々な細胞で条件を整えており、その上清および細胞における各種サイトカイン、アディポカイン産生についての解析を進めている。リアルタイム培養細胞観察システム(長崎大学共同施設)での、経時的なチューブ形成観察の準備をすすめる必要がある。かなり高額である血管内皮細胞チューブ形成アッセイシステム(angiogenesis)の購入が次年度に必要となったため。血栓形成モデルの作成血管内皮細胞チューブ形成アッセイシステム(angiogenesis)を用い、人工膜マトリックス上をコーティングしたプレートに血管内皮細胞(HUVEC)を加え、歯周病原菌由来LPS刺激下で培養し、リアルタイム培養細胞観察システム(長崎大学共同施設)で、経時的なチューブ形成について観察する。 | KAKENHI-PROJECT-25670895 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25670895 |
下水管渠破損による周辺地盤のゆるみ領域発生メカニズムの解明とその対策工の提案 | 下水道管渠周辺地盤を小型土槽内に作成し、土槽内において給排水を繰返してゆるみ・空洞の進展を再現させ、その現象についてX線CT装置を用いて解明した。また、より実際の現象を再現するために土槽底部に下水管模型を設置し、さらに破損形状および規模の違いによるゆるみ発生メカニズムへの影響について比較検討した。特に破損形状、地盤材料、拘束圧の変化および給水圧に着目し、X線CTスキャナを用いてゆるみ・空洞領域の発生メカニズムを3次元的に可視化し、それらを定量的に評価することを試みた。下水道管渠周辺地盤を小型土槽内に作成し、土槽内において給排水を繰返してゆるみ・空洞の進展を再現させ、その現象についてX線CT装置を用いて解明した。また、より実際の現象を再現するために土槽底部に下水管模型を設置し、さらに破損形状および規模の違いによるゆるみ発生メカニズムへの影響について比較検討した。特に破損形状、地盤材料、拘束圧の変化および給水圧に着目し、X線CTスキャナを用いてゆるみ・空洞領域の発生メカニズムを3次元的に可視化し、それらを定量的に評価することを試みた。本研究の目的は、下水道管渠破損による管渠周辺地盤のゆるみ発生メカニズムを解明すると共に、その対策工の提案を行うことである。ここでは、実際の現象を再現するために土槽底部に下水管模型を設置し、さらに破損形状および規模の違いによるゆるみ発生メカニズムへの影響について比較検討する。特に破損形状、地盤材料、拘束圧の変化および給水圧に着目し、X線CTスキャナを用いてゆるみ・空洞領域の発生メカニズムを3次元的に可視化し、それらを定量的に評価することを試みる。本年度については以下の3項目について研究を実施した。1.X線CT専用模型実験装置の開発と実験システムの構築本研究を実施する以前に作成していた簡易模型実験装置を改め、模型サイズと定量的評価のための間隙水圧測定を考慮した新たなX線CT専用模型実験装置を開発し、これを用いた実験システムの構築を行った。2.実験結果に基づくゆるみ発生メカニズムの解明上記(1)で開発した実験装置を用いて、いくつかの管渠破損形状および規模をケースとして実験を行い、破損部より水が給水された場合の地盤のゆるみ状況について、X線CTを用いた現象の解明を行った。その結果、本実験装置がある程度の精度で現象を三次元的に再現可能であることを確認した。3.ゆるみ領域の定量的評価手法の提案また、測定した間隙水圧を用いることにより、地盤のゆるみ現象と給水する水の水圧の関係を用いて、現象の定量的評価を試みた。しかし現象ではゆるみ領域と完全に空洞となる領域が現れ、これらを定量的に評価する手法の提案までには至っていない。これについては次年度の実施内容に加える予定である。本研究の目的は、下水道管渠破損による管渠周辺地盤のゆるみ発生メカニズムを解明すると共に、その対策工の提案を行うことである。下水道管渠周辺地盤を小型土槽内に作成し、土槽内において給排水を繰返してゆるみ・空洞の進展を再現させ、その現象についてX線CT装置を用いて解明する。ここでは、より実際の現象を再現するために土槽底部に下水管模型を設置し、さらに破損形状および規模の違いによるゆるみ発生メカニズムへの影響について比較検討する。特に破損形状、地盤材料、拘束圧の変化および給水圧に着目し、X線CTスキャナを用いてゆるみ・空洞領域の発生メカニズムを3次元的に可視化し、それらを定量的に評価することを試みる。また、以上の実験成果について、数値解析によりこれを検証すると共に、最終的には、これらの結果を基に、ゆるみ領域の発生を軽減する対策工について提案するものである。以下、本年度に実施した内容について説明する。1.実験結果の再検討と必要に応じた再実験の実施:20年度に実施した実験より得られた種々の地盤条件および給排水条件下での結果を再度検討し、必要に応じた再実験の実施および新たな条件下での同様の実験を実施した。2.対策工についての実験的検討:ここでは、対策工法として、管渠周辺に比較的粒径の大きいレキ材層を用いる場合と、ジオテキスタイル(高分子系の補強材料)を敷設した場合の2つについて検討した。結果としては、両工法ともに地盤内のゆるみ領域を軽減する効果が期待できることがわかった。本研究で得られた実験結果を基に、最終年度(22年度)は、数値解析との比較検討を行い、最終的な成果をまとめる予定である。本研究の目的は、下水道管渠破損による管渠周辺地盤のゆるみ発生メカニズムを解明すると共に、その対策工の提案を行うことである。ここでは、下水道管渠周辺地盤を小型土槽内に作成し、土槽内において給排水を繰返してゆるみ・空洞の進展を再現させ、その現象についてX線CT装置を用いて解明した。また、より実際の現象を再現するために土槽底部に下水管模型を設置し、さらに破損形状および規模の違いによるゆるみ発生メカニズムへの影響について比較検討した。特に破損形状、地盤材料、拘束圧の変化および給水圧に着目し、X線CTスキャナを用いてゆるみ・空洞領域の発生メカニズムを3次元的に可視化し、それらを定量的に評価することを試みた。最終年度である22年度では、21年度まで実施した模型実験により解明したゆるみ領域発生メカニズムを軽減させる対策工法の提案をめざし、以下の2つの対策工を対象とした実験を行った。 | KAKENHI-PROJECT-20360213 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20360213 |
下水管渠破損による周辺地盤のゆるみ領域発生メカニズムの解明とその対策工の提案 | そのケースは、(a)補強土技術の導入(ジオテキスタイル等の補強材を敷設することによる対策)、および(b)ゆるみ発生が起こりにくい地盤材料(比較的粒径の大きい砂地盤)の適用である。その結果、礫およびジオテキスタイルを用いた対策工は、地盤中の空洞形成、進展を抑制可能であることがわかった。またこれについては、当初は数値解析を実施することで現象の定量化を行うことを予定していたが、得られた現象が3次元下の複雑な挙動であったため、そこまでには至っていない。しかしここで得られた現象解明とその対策工の提案により、今後の本テーマに関する研究の方向性を示したことは大きな成果であると言える。 | KAKENHI-PROJECT-20360213 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20360213 |
左右非対称性形成の分子機構解明を目指したトランスジェニック淡水産巻貝の開発 | トランスジェニック巻貝の作製技術を開発するために、巻貝初期胚への遺伝子導入および外来遺伝子を生殖細胞で発現させることが可能な発現ベクターの作製を検討した。巻貝の内在性β-アクチンプロモーターを利用した発現ベクターを用いることで、外来遺伝子導入胚の発生率を向上させることができた。また、I-SceI meganuclease法と組み合わせた遺伝子導入法の検討を行い、トランスジェニック巻貝作製に向けた足がかりを得ることにつながった。本研究では淡水産巻貝Lymnaea stagnalisの左右巻型決定遺伝子の機能解析に必要なトランスジェニック巻貝作出法の確立を目指した。巻貝の左右巻型は母性因子である巻型決定遺伝子の働きにより、まだzygoticな転写が開始する前の第3卵割時の割球配置パターンで決定するため、トランスジェニック個体の作成による解析手法が最も有効である。先ずは蛍光タンパク質をレポーターとして組み込んだ発現ベクターを作製し、遺伝子導入法の検討を行った。その結果、受精卵へのマイクロインジェクションによる直接的な導入法によってのみ、レポーター遺伝子の蛍光を確認することができた。成貝の生殖巣への遺伝子導入も試みたが良好な結果は得られなかった。そのため、受精卵にマイクロインジェクションで外来遺伝子を導入し、それを成貝まで成長させた中からトランスジェニック個体を選別する方法を採用することにした。最終年度には、発現ベクターのプロモーターについての検討も行った。この巻貝種では一般的なCMVプロモーターを用いた発現ベクターを初期胚に導入した場合、レポーター遺伝子が過剰に発現して正常な発生が妨げられることが分かった。そこで、内在性のアクチンプロモーターを組み込んだ発現ベクターを作製して用いたところ、蛍光タンパク質を発現させながらも正常に発生を進行させることが可能になった。未だ、内在性アクチンプロモーター発現ベクターの遺伝子導入胚を成貝まで成長させるには至っていないが、今後も継続していく計画である。また、発現ベクターの作製には成功したので、今後はより効率よくゲノム中に取り込まれるための工夫を検討していきたいと考えている。トランスジェニック巻貝の作製技術を開発するために、巻貝初期胚への遺伝子導入および外来遺伝子を生殖細胞で発現させることが可能な発現ベクターの作製を検討した。巻貝の内在性β-アクチンプロモーターを利用した発現ベクターを用いることで、外来遺伝子導入胚の発生率を向上させることができた。また、I-SceI meganuclease法と組み合わせた遺伝子導入法の検討を行い、トランスジェニック巻貝作製に向けた足がかりを得ることにつながった。本研究は淡水産巻貝Lymnaea stagnalisの左右巻型決定遺伝子の機能解析に必要なトランスジェニック巻貝作出法の確立を目指して実施している。この巻貝の左右巻型は第3卵割時の割球配置パターンによって決定しており、それは母性因子として伝わる母貝ゲノムの一遺伝子座にコードされた巻型決定遺伝子の働きによることを明らかにしている。この巻型決定遺伝子の特定・機能解析を行うには、発生の非常に早い時期から導入した候補遺伝子を機能させる必要がある。そのため、導入遺伝子を安定して次世代初期胚で母性遺伝子として発現、機能させることが可能なGerm-lineトランスジェニック巻貝の作成が必要不可欠である。先ずは、適切な発現プロモーターの探索と、その発現ベクターがゲノムに取り込まれることを狙った遺伝子導入方法の検討から開始した。多くのモデル生物で報告されているCMVプロモーターによる発現を試みるため、pCS2+発現ベクターに蛍光タンパク質のEGFPまたはDsRedExpressをレポーターとして組み込んだコンストラクトを作成した。これを直鎖状DNAの形にして1細胞期胚にマイクロインジェクションにより導入した。産卵直後の受精卵は第一減数分裂の途中であり、雌性-雄性前核の融合までに、組み換え修復メカニズムによってゲノムに取り込まれることを期待した。胞胚期に達するまでは発現ベクター由来の蛍光が観察され、この種においても導入したベクター由来のプロモーターが機能することを確認できた。ただ、高度な技術を要する工程もあり、未だ導入遺伝子を組み込んだトランスジェニック巻貝の作出には至っていないが、この手法を基に改良を加えていくことを予定している。発現ベクターに内在性のプロモーターを利用することも検討しており、受精卵で母性遺伝子として発現が確認された遺伝子のクローニングもいくつか行った。2012年3月末に研究代表者の転職・異動があり、DNAシークエンサー、共焦点・蛍光顕微鏡などの装置の移動、巻貝飼育室の設置と関連研究機器及び巻貝の移動など膨大な時間とエネルギーを費やさざるを得なかった。幸い努力の結果、安定して飼育を続ける環境を整えることができた。トランスジェニック巻貝の作出には、マイクロインジェクションにより初期胚へ発現ベクターを導入し、アルブミンカプセルから単離した初期胚を再度アルブミンに戻して人工環境下で発生させ、それを産卵可能な成貝まで成長させるなど、高度な専門技術を要する工程が連続している。これまで我々が開発してきた研究技術の多くを新しい実験担当者が習得しなければならないが、転職に伴い、その研究技術教育にも時間を要した。トランスジェニック巻貝の作成は近隣生物でも成功例がなく、かつ、発現ベクターのゲノムへの挿入は確率的な要素があり、さらにそれが生殖細胞に伝わらなければならないなど、多くの困難さを抱えている。それらを少しずつ工夫して乗り越えていっているところである。今後も継続して、マイクロインジェクションとキャピラリー培養法を組み合わせた方法でトランスジェニック巻貝の作成を目指す。 | KAKENHI-PROJECT-24657149 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24657149 |
左右非対称性形成の分子機構解明を目指したトランスジェニック淡水産巻貝の開発 | そのために、先ずはインジェクションによって導入する発現ベクターの濃度や形状、また導入する時期などの条件を検討していく予定である。また、発現ベクターのプロモーターの最適化は内在性のプロモーターを検討しみる。すでにクローニングしたアクチンやチューブリンのプロモーターはユビキタスプロモーターとして、vasa、PL10は生殖細胞特異的発現プロモーターとして機能させることが可能だと予想される。いずれも、母性遺伝子として初期胚で導入遺伝子を発現させることが期待できる。プロモーター配列の取得にはinverse PCR法などを応用して行う。また、25年度の研究実施計画通り、モデル生物で報告されているI-SceI法やトランスポゾン法をこれまでの手法に組み合わせて行う計画である。当初、巻貝の飼育員をアルバイトとして雇用する予定であった。しかし、DNAシークエンサーや蛍光顕微鏡、巻貝飼育に必須の純水作成装置など、非常に重要な研究機器が、老朽化に伴いメンテナンスないしパーツ交換が順次必要となってきており、研究を遂行するためにもその費用を確保しなければならなくなった。したがって、人件費の使用はあきらめることにした。平成25年度年度は新たに修士1名と卒研生2名の学生を受け入れることになった。巻貝は研究に不可欠の研究材料であり、その飼育には専門的な知識が必要なところもあり、教育も兼ねて、巻貝飼育は学生にも担当してもらうことを予定している。また、学生の研究への参加に伴い、前年度よりも消耗品費を増やす予定である。 | KAKENHI-PROJECT-24657149 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24657149 |
歯科矯正学的歯の移動におけるmRNA分解機構の機能解析 | 歯科矯正学的歯の移動においては、力学的負荷に対する応答として、骨代謝制御機構が厳密に維持されながら柔軟に変化することが重要である。近年、歯科矯正学的歯の移動メカニズムについて遺伝子発現制御機構の観点から様々な知見が明らかになり、特に転写制御に関する知見が増える一方、転写後制御の関与は不明な点が多い。本研究では、転写後制御の中でもmRNA分解制御因子であるCnot3という遺伝子に着目し、Cnot3ノックアウトマウスを用いて、歯科矯正学的歯の移動におけるmRNA分解の作用ならびに標的遺伝子を解明することで、将来的な歯科矯正臨床への展開を目標に、分子細胞生物学的観点から解明することを目的とする。初年度は4ヵ月齢雄性野生型マウスおよびCnot3ヘテロノックアウトマウス各5匹を用い、上顎切歯歯間に矯正歯科用エラスティックスレッドを麻酔下で挿入し歯間離開を行った。歯間離開4日後に解剖し、頭蓋骨および顎骨を採取しパラホルムアルデヒドを用いて固定した。3次元マイクロCT撮影を行い、離開させた前歯歯間の距離計測ならびに頭蓋骨の形態解析を主とした解剖学的解析を行った。組織化学的解析として上顎骨をパラフィン包埋し、切片において移動させた切歯の圧迫側をTRAP染色にて観察した。結果、3次元マイクロCTによる距離計測では有意な差は認められなかったが、組織化学的解析ではCnot3ヘテロノックアウトマウスにおいてTRAP陽性細胞数が多い傾向を認めた。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。歯科矯正学的歯の移動においては、力学的負荷に対する応答として、骨代謝制御機構が厳密に維持されながら柔軟に変化することが重要である。近年、歯科矯正学的歯の移動メカニズムについて遺伝子発現制御機構の観点から様々な知見が明らかになり、特に転写制御に関する知見が増える一方、転写後制御の関与は不明な点が多い。本研究では、転写後制御の中でもmRNA分解制御因子であるCnot3という遺伝子に着目し、Cnot3ノックアウトマウスを用いて、歯科矯正学的歯の移動におけるmRNA分解の作用ならびに標的遺伝子を解明することで、将来的な歯科矯正臨床への展開を目標に、分子細胞生物学的観点から解明することを目的とする。初年度は4ヵ月齢雄性野生型マウスおよびCnot3ヘテロノックアウトマウス各5匹を用い、上顎切歯歯間に矯正歯科用エラスティックスレッドを麻酔下で挿入し歯間離開を行った。歯間離開4日後に解剖し、頭蓋骨および顎骨を採取しパラホルムアルデヒドを用いて固定した。3次元マイクロCT撮影を行い、離開させた前歯歯間の距離計測ならびに頭蓋骨の形態解析を主とした解剖学的解析を行った。組織化学的解析として上顎骨をパラフィン包埋し、切片において移動させた切歯の圧迫側をTRAP染色にて観察した。結果、3次元マイクロCTによる距離計測では有意な差は認められなかったが、組織化学的解析ではCnot3ヘテロノックアウトマウスにおいてTRAP陽性細胞数が多い傾向を認めた。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-26893077 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26893077 |
情報に対する注目と価値判断のモデル化 | 本研究では,以下の2つのアプローチで研究を進める.(1)注目,価値判断の分析,モデル化人間が実際に書いたテキストから,価値判断に関連する個所を抽出し,それを分析することで,注目,価値判断のモデル化を行なう.(2)仮説としての注目,価値判断のモデルの,システムとしての実現,検証(1)で示したモデル化とは別に,現時点で,これまでのサーベイ自動作成研究等から得られた知見を元に,注目,価値判断のモデルを構築し,それをシステムとして実装した上で,評価を行なう.システムの評価結果を元に,モデルの検証,必要な修正等の考察を行なう.今年度は(1)の中で特に以下の(1-1),(1-2)を行なった.(1-1)価値判断に関連する個所を網羅的に抽出するシステムの開発人間の「評価情報」を抽出するシステムの性能は,抽出の際手がかりとなる,評価情報を記述するのに典型的に用いられる表現(「評価表現」)を網羅的に収集できるかどうかに大きく依存する.従来この評価表現は人手で収集する手法が用いられていたが,本研究では,コーパスから「評価表現」を網羅的に獲得する.(1-2)抽出した,価値判断に関連する個所の分析抽出した個所から,評価対象(「どういう情報に対する評価か」,評価内容(「どういう評価か」),評価理由(「どうしてそのような評価になったか」)の3つ組を抽出する.評価理由は明記されていない場合もあり得る.得られた3つ組を分析し,価値判断のモデル化を行なう.なお,分析には統計的手法の利用も検討するが,人手による分析となる可能性もあり,その場合は人的コストがある程度必要となる.本研究では,以下の2つのアプローチで研究を進める.(1)注目,価値判断の分析,モデル化人間が実際に書いたテキストから,価値判断に関連する個所を抽出し,それを分析することで,注目,価値判断のモデル化を行なう.(2)仮説としての注目,価値判断のモデルの,システムとしての実現,検証(1)で示したモデル化とは別に,現時点で,これまでのサーベイ自動作成研究等から得られた知見を元に,注目,価値判断のモデルを構築し,それをシステムとして実装した上で,評価を行なう.システムの評価結果を元に,モデルの検証,必要な修正等の考察を行なう.今年度は(1)の中で特に以下の(1-1)を行なった.(1-1)価値判断に関連する個所を網羅的に抽出するシステムの開発人間の「評価情報」を抽出するシステムの性能は,抽出の際手がかりとなる,評価情報を記述するのに典型的に用いられる表現(「評価表現」)を網羅的に収集できるかどうかに大きく依存する.従来この評価表現は人手で収集する手法が用いられていたが,本研究では,コーパスから「評価表現」を網羅的に獲得する.評価情報が集まったテキストとして,社説(編集者の意見を含む),レビュー(特定の対象に対する評価情報が集まったWebページ),サーベイ論文を網羅的に収集する技術をまず開発する.そして,それらのテキスト集合から,評価表現を統計的に獲得する手法を開発する.そして,獲得された評価表現集合を元に,他のテキスト集合からも評価情報を収集する.本研究では,以下の2つのアプローチで研究を進める.(1)注目,価値判断の分析,モデル化人間が実際に書いたテキストから,価値判断に関連する個所を抽出し,それを分析することで,注目,価値判断のモデル化を行なう.(2)仮説としての注目,価値判断のモデルの,システムとしての実現,検証(1)で示したモデル化とは別に,現時点で,これまでのサーベイ自動作成研究等から得られた知見を元に,注目,価値判断のモデルを構築し,それをシステムとして実装した上で,評価を行なう.システムの評価結果を元に,モデルの検証,必要な修正等の考察を行なう.今年度は(1)の中で特に以下の(1-1),(1-2)を行なった.(1-1)価値判断に関連する個所を網羅的に抽出するシステムの開発人間の「評価情報」を抽出するシステムの性能は,抽出の際手がかりとなる,評価情報を記述するのに典型的に用いられる表現(「評価表現」)を網羅的に収集できるかどうかに大きく依存する.従来この評価表現は人手で収集する手法が用いられていたが,本研究では,コーパスから「評価表現」を網羅的に獲得する.(1-2)抽出した,価値判断に関連する個所の分析抽出した個所から,評価対象(「どういう情報に対する評価か」,評価内容(「どういう評価か」),評価理由(「どうしてそのような評価になったか」)の3つ組を抽出する.評価理由は明記されていない場合もあり得る.得られた3つ組を分析し,価値判断のモデル化を行なう.なお,分析には統計的手法の利用も検討するが,人手による分析となる可能性もあり,その場合は人的コストがある程度必要となる. | KAKENHI-PROJECT-15650022 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15650022 |
超音波/電気化学複合場を利用した汚泥可溶化プロセスの創製とその応用 | 多孔性隔壁で陽・陰極室に分割したラボスケールの可溶化処理槽を作製し、超音波照射/電解同時併用汚泥可溶化処理実験を実施して以下の知見を得た。1.超音波照射単独の処理に比べ、電気分解に伴うアルカリ性環境の形成が主として関与し、陰極室での併用処理による可溶化速度は大幅に向上した。また、比エネルギー消費及び初期可溶化速度を指標とすると、併用処理の前に予めpHをアルカリ性に調整するとさらに効率のよい処理も可能であることが示された。2.平均超音波密度と電流値の増大に伴い可溶化速度は増大するが、それらの条件の組み合わせにより、比エネルギー消費を超音波単独処理の半分程度まで低減させる操作が可能性であることが見出された。また、約40g/Lまでの範囲で初期汚泥濃度の増大に伴い、比エネルギー消費は低減した。対象排水や処理方式等が異なる種々の施設から採取した汚泥に対する同一の操作条件での可溶化速度はほぼ同様で、その影響がほとんどなかった。3.併用処理汚泥では、溶解性窒素/全窒素比や溶解性りん/全りん比がCOD基準の可溶化率とほぼ等しく、タンパク質と炭水化物が溶解性COD成分の約6割を占めた。溶解性窒素成分のうち、概ね67割が有機態であり、硝酸性とアンモニア性が残りをほぼ二分する性状であることがわかった。4.嫌気性消化でのメタン生成を指標とした場合、併用可溶化処理汚泥では、実験初期におけるメタン生成速度が顕著に上昇した。なお、可溶化汚泥中の溶解性CODのメタン転換率は可溶化率によらずほぼ一定であった。一方、好気的分解性に基づいた溶解性CODに占める易分解性成分割合は、超音波単独処理に比べ、同等かやや大きくなる傾向が認められた。5.併用可溶化処理では、陰極室で生成した硝酸性窒素やりん酸イオンの陽極室への移動が確認され、可溶化に併せた有用成分の濃縮や分離への応用可能性が見出された。多孔性隔壁で陽・陰極室に分割したラボスケールの可溶化処理槽を作製し、超音波照射/電解同時併用汚泥可溶化処理実験を実施して以下の知見を得た。1.超音波照射単独の処理に比べ、電気分解に伴うアルカリ性環境の形成が主として関与し、陰極室での併用処理による可溶化速度は大幅に向上した。また、比エネルギー消費及び初期可溶化速度を指標とすると、併用処理の前に予めpHをアルカリ性に調整するとさらに効率のよい処理も可能であることが示された。2.平均超音波密度と電流値の増大に伴い可溶化速度は増大するが、それらの条件の組み合わせにより、比エネルギー消費を超音波単独処理の半分程度まで低減させる操作が可能性であることが見出された。また、約40g/Lまでの範囲で初期汚泥濃度の増大に伴い、比エネルギー消費は低減した。対象排水や処理方式等が異なる種々の施設から採取した汚泥に対する同一の操作条件での可溶化速度はほぼ同様で、その影響がほとんどなかった。3.併用処理汚泥では、溶解性窒素/全窒素比や溶解性りん/全りん比がCOD基準の可溶化率とほぼ等しく、タンパク質と炭水化物が溶解性COD成分の約6割を占めた。溶解性窒素成分のうち、概ね67割が有機態であり、硝酸性とアンモニア性が残りをほぼ二分する性状であることがわかった。4.嫌気性消化でのメタン生成を指標とした場合、併用可溶化処理汚泥では、実験初期におけるメタン生成速度が顕著に上昇した。なお、可溶化汚泥中の溶解性CODのメタン転換率は可溶化率によらずほぼ一定であった。一方、好気的分解性に基づいた溶解性CODに占める易分解性成分割合は、超音波単独処理に比べ、同等かやや大きくなる傾向が認められた。5.併用可溶化処理では、陰極室で生成した硝酸性窒素やりん酸イオンの陽極室への移動が確認され、可溶化に併せた有用成分の濃縮や分離への応用可能性が見出された。多孔性隔壁で陽・陰極室を分割したラボスケールの槽を作製し、超音波照射-電解併用汚泥可溶化処理実験を実施して以下の知見が得られた。1.超音波照射単独の処理に比べ、陰極室での併用処理では、可溶化速度が大幅に向上したのに対して、陽極室での併用処理では、著しく低下した。陰極室での可溶化促進は、電気分解に伴い生じるアルカリ性環境が主として作用しているが、薬品添加でアルカリ性として超音波処理した場合に比べても可溶化率は若干大きくなるため、その他の併用効果も関与している可能性が示唆された。従って、以降の実験は、陰極室での併用可溶化処理を対象とした。2.一定の超音波照射条件下で電解の電流値を増大するに伴い、汚泥の平均可溶化速度は増大した。しかし、電流値は、pH10程度のアルカリ性が維持される程度であれば十分で、過度な通電はエネルギー消費の点から不要であることが分かった。また、一定の電解電流条件下において、400W/Lまでの平均超音波密度の範囲では、併用処理による可溶化促進効果が認められ、比エネルギー消費は超音波単独処理の半分程度まで低減される可能性が示唆された。3.汚泥濃度が約40g/Lまでの範囲では、併用可溶化処理の比エネルギー | KAKENHI-PROJECT-17560482 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17560482 |
超音波/電気化学複合場を利用した汚泥可溶化プロセスの創製とその応用 | 消費は、同じ汚泥濃度かつ超音波照射密度条件での超音波単独照射処理に比べて明らかに小さく、低エネルギー消費での効率的な可溶化処理が可能であることが示された。また、初期汚泥濃度の増大に伴い、通電条件にもよるが、併用処理の比エネルギー消費は大きく低下することがわかった。4.比エネルギー消費及び所定処理時間での可溶化率の2つの指標を用いて、種々の超音波照射と電解の組み合わせ方法を比較検討し、併用処理の前に短時間の電解等でpHを上昇させると、単に超音波照射と電解を同時に作用させる操作に比して、さらに効果的な処理が可能であることが示された。1.ラボスケールの隔壁設置型可溶化処理槽を用い、異なる操作方法(超音波単独、超音波一電解併用および事前pH調整+併用)で得られた可溶化汚泥の溶解性窒素/全窒素比および溶解性りん/全りん比は、CODおよびSS基準の可溶化率とほぼ等しかった。また、溶解性CODの約6割が0.45μm以下の成分であり、その約5割がタンパク質で、約1割が炭水化物で構成されていた。さらに溶解性窒素は、概ね67割が有機態であり、硝酸性とアンモニア性が残りをほぼ二分していることがわかった。これらの傾向は、操作方法によらずほぼ同様であることが見出された。2.嫌気条件下でのメタン生成特性を指標とすると、超音波/電解併用型可溶化処理汚泥は、溶解性CODのメタン転換率が可溶化率によらずほぼ一定であった。つまり、可溶化率の増大に伴いメタン生成量が多くなるが、特に実験初期において生成速度が大きくなった。この傾向は、超音波単独処理でも同様であり、可溶化率が同程度であれば、操作の方法による相違はほとんどないと考えられた。一方、好気的分解性についてOUR試験を実施し、超音波単独処理で生成した溶解性CODに比べ、併用処理汚泥のそれは、易分解性成分割合が大きくなる傾向が認められた。3.対象排水や方式が異なる処理施設から採取した活性汚泥や嫌気性消化汚泥の超音波/電解併用処理では、可溶化速度に大きな差異は認められず、汚泥性状によらずほぼ同様な可溶化性能が得られることが見出された。しかし、可溶化汚泥のメタン発酵性は、汚泥種により異なる可能性が示唆された。4.超音波/電解併用型処理では、陰極室で可溶化に伴い生成した硝酸性窒素やりん酸イオンが電気泳動作用で陽極室へ移動していくことが実験:的に明らかとなり、汚泥の可溶化処理に併せた有用成分の濃縮操作への応用可能性が見出された。 | KAKENHI-PROJECT-17560482 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17560482 |
歯周病原因菌で見つかった新規蛋白分泌装置の解明 | 歯周病原因菌が産生する病原因子ジンジパインの分泌に関わる新規外膜蛋白Sovと新規膜蛋白PG27を同定した。また、SovのC末端領域は菌体外に露出しており、ジンジパインの分泌に必須であることを示した。以上の結果から、ジンジパインは新規の蛋白分泌経路で分泌されること、Sov蛋白やPG27蛋白が新たな歯周病治療の標的と成り得ることを示唆した。歯周病原因菌が産生する病原因子ジンジパインの分泌に関わる新規外膜蛋白Sovと新規膜蛋白PG27を同定した。また、SovのC末端領域は菌体外に露出しており、ジンジパインの分泌に必須であることを示した。以上の結果から、ジンジパインは新規の蛋白分泌経路で分泌されること、Sov蛋白やPG27蛋白が新たな歯周病治療の標的と成り得ることを示唆した。1.新規蛋白分泌装置を構成する蛋白因子の生化学的同定申請者が同定した新規蛋白分泌装置の外膜蛋白因子Sovと複合体を形成している蛋白因子の同定を試みた。Porphyromonas gingivalisの生菌体を蛋白架橋在DSPで処理し、Sov蛋白を精製して、Sov蛋白と架橋した蛋白質をSDS-PAGE法で分画後、目的蛋白質のN末端のアミノ酸配列をエドマン法で解析した。しかし架橋された蛋白質バンドのアミノ酸配列は解析不能であった。これは、Sovの発現量が非常に低いことに起因すると考えられた。2.新規蛋白分泌装置を構成する蛋白因子の遺伝学的同定ジンジパインの分泌に必須であるSovやPorTと同様の特徴を有すると考えられる機能未同定蛋白をコードする遺伝子をゲノムデータベースから収集した。得られた候補遺伝子を一つ一つ挿入変異で破壊して、血液含有寒天培地での黒色色素産生性の消失を指標にスクリーニングを行った。その結果、ジンジパインの発現に必須である新規蛋白質PG27を新たに同定した。一次構造解析の結果、PG27蛋白は新規の膜蛋白質であると推定された。そこでPG27遺伝子の完全欠失株を構築して、その効果を検証した。すると、この欠失株はジンジパインの活性とジンジパインの分泌がほぼ完全に阻害されていることが明らかとなった。以上の結果、PG27蛋白は新規蛋白分泌装置の新規の蛋白因子の一つであることが示唆された。更に、ジンジパインの分泌に必須である蛋白因子Sov, PorT, PG27は全て新規の蛋白質であることから、ジンジパインの蛋白分泌系は既存の経路とは異なる新規の蛋白装置によって媒介されることが強く示唆された。新規蛋白分泌装置を構成する新規蛋白因子PG27の同定歯周病原因菌であるPorphyromonas gingivalisが分泌するジンジパインは、本菌の増殖や病原性に必須である。ジンジパインは新規の蛋白因子(PorT,Sov)が関与することから新規の蛋白分泌系経路によって分泌されると推定されているが、詳細は明らかにされていない。申請者はP.gingivalis W83株のゲノムデータベースを用いたポストゲノム解析から、ジンジパインの分泌に必須である遺伝子候補としてPG27遺伝子を得た。そこでPG27遺伝子を欠失させたP.gingivalisの変異体を構築し、その効果を詳細に検証した。PG27遺伝子の欠失変異はジンジパインの活性をほぼ完全に消失させたが、本菌の他の分泌性プロテアーゼであるジペプチジルペプチダーゼ(DPPIV,DPP-7)やトリペプチジルペプチダーゼ(PTP-A)の活性にはほとんど影響が無かった。次に、ジンジパインに対する抗血清(抗RgpB抗血清)を調製して、Arg-ジンジパインの細胞内局在をウエスタンブロット法で解析した。欠失変異体は異常な分子量のArg-ジンジパインが細胞内に蓄積しており菌体外への分泌が著しく減少していることが明らかとなった。PG27の一次構造解析の結果、PG27蛋白はシグナル配列を有する新規の膜蛋白質であると推定された。そこで、抗PG27抗血清を調製して、P.gingivalisの細胞画分をウエスタンブロット法で解析した結果、PG27蛋白は内膜と外膜の両方に局在することが明らかとなった。以上の結果、PG27蛋白は本菌の新規蛋白分泌に関わる第3番目の蛋白因子であることを示した。申請者はジンジパインの分泌に必須なPorphyromonas gingivalisの新規遺伝子sovを同定した。本年度は、Sov蛋白質の下記に示す生化学的性状を明らかにした。1.Sov蛋白の細胞内局在の同定Sov蛋白のN末とC末に対する抗Sov抗血清32-177:2408-2499と、Sov蛋白のN末領域に対する2種の抗Sov抗血清(178-625と626-1073)を調製した。しかし、Sov蛋白は発現量が低いため、野生型P.gingivalisで発現しているSovの蛋白バンドをイムノブロット法で検出できなかった。そこで、C末端にヒスチジン・タグを導入したSov蛋白を発現するP.gingivalis 83K5株を構築して細胞画分を調製し、ニッケル・カラムで濃縮してから、イムノブロット法による解析を行った。するとSov蛋白バンドは外膜画分に特異的に検出された。従って、Sov蛋白は外膜蛋白であることが示された。2.Sov蛋白のC末端領域の機能必須領域の検定 | KAKENHI-PROJECT-19592135 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19592135 |
歯周病原因菌で見つかった新規蛋白分泌装置の解明 | 抗Sov抗血清存在下でのP.gingivalisの生菌体によるジンジパインの分泌を調べた結果、3種の抗Sov抗血清の中で、抗Sov抗血清32-177:2408-2499のみがジンジパインの分泌阻害を示すことを明らかにした。そこで、Sov蛋白のC末端領域における計11種類の欠失変異体を構築してその効果を検証し、Sov蛋白を構成する2,499残基の内、C末端からの5残基の欠失がSov蛋白の活性を消失させることを見出した。更に、抗ヒスチジン抗体が83K5株によるジンジパインの分泌を阻害することから、Sov蛋白のC末端領域がSovの機能発現に重要な役割をしていることを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-19592135 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19592135 |
研削面創成メカニズムの解明および超安定超精密研削への応用 | 本研究の目的は,研削面を平滑化・均一化するために最適な研削条件を明らかにすることである.そのために新たな砥粒形状モデルや砥石の振動を考慮した研削面創成モデルを提案し,研削条件と研削面の粗さおよびうねりの関係を明らかにした.またその関係を基に研削面のシミュレーションを可能とし,最適な研削条件を選定する指針を示すことを可能とした.本研究は,研削面を平滑化・均一化するために最適な研削条件を明らかにすることを目的とする.そのために平成24年度に確立した統計的研削理論およびナノトポグラフィー創成理論を基に,平成25年度はこの2つの理論の統合および研削条件選定指針の解明を行った.また最適な研削条件として導出された結果を,実際の研削に正確に反映させるシステムの構築を行った.研削条件の最適化に関しては,研削面研削面粗さと研削面うねり(ナノトポグラフィー)分布のそれぞれが良好になる最適条件が周期的に存在することを明らかとし,選定すべき研削条件およびその精度を理論的に求めた.また研削面の均一性を評価する指針としてばらつき幅を定義し,均一性が良好になる研削条件も明らかにした.最適な研削条件を正確に実際の研削条件に反映させるために,まず工作物と砥石の相対的な運動を観測する必要があった.そこで砥石の振動を精密なバランサで測定し,工作物の動きを非接触レーザ変位計で測定することを可能にした.これらの測定結果を基に実際の研削条件のモニタリングを可能にした.この実際の研削条件と理論的に最適な研削条件との差を求め,研削条件に補正を加えるシステムを提案した.研究期間を通じで,研削面創成メカニズムを解明し研削条件が研削面粗さ,ナノトポグラフィー分布,均一性に及ぼす影響を理論的に検討することを可能にした.その結果,研削面の平滑化・均一化が達成される研削条件の導出が可能となった.また実際の研削条件に対して最適な研削条件になるよう補正を加えることにより,実際の研削面を平滑化・均一化することを可能とした.本研究の目的は,研削面を平滑化・均一化するために最適な研削条件を明らかにすることである.そのために新たな砥粒形状モデルや砥石の振動を考慮した研削面創成モデルを提案し,研削条件と研削面の粗さおよびうねりの関係を明らかにした.またその関係を基に研削面のシミュレーションを可能とし,最適な研削条件を選定する指針を示すことを可能とした.本研究は,研削面を平滑化・均一化するために最適な研削条件を明らかにすることを目的とする.そのために平成24年度は統計的研削理論の確立とナノトポグラフィー創成理論の確立を目指して研究を行った.統計的研削理論に関しては砥粒を半頂角が一定ではない形状と近似する研削モデルを新たに提案した.様々な砥粒切込深さ条件下で得られた砥粒切削痕を測定することにより,実際の砥粒半頂角の分布を明らかにした.その結果,砥粒半頂角の分布は一定ではなく,砥粒切込深さによって変化することが明らかとなった.これにより提案した研削モデルの妥当性が確認されたものと考えられる.この砥粒半頂角が一定ではない研削モデルを統計的研削理論に導入することにより,砥石半径切込み深さや,研削点の微小な振動が研削面粗さに大きな影響を与えることを理論的にも示すことが可能となった.ナノトポグラフィー創成理論に関しては研削点の微小な振動が研削面のうねりに与える影響をシミュレートする手法を提案し,その有効性を示した.このシミュレーション法を用いて,研削点の振動周波数と工作物の往復周波数がナノトポグラフィーの分布に与える影響について明らかにした.またナノトポグラフィーの影響を小さくする研削条件が周期的に存在することが明らかとなった.また研削面の断面プロファイルから実際の研削条件を特定し,研削条件を最適値に補正する補正研削法を新たに提案することができた.本研究の目的である「研削面を平滑化」に関しては統計的研削理論の検討を通して,その基盤が十分に確立されたものと考えられる.またもう1つの目的である「研削面の均一化」に関してもナノトポグラフィー創成理論の検討により,理論的に均一化するための基盤が確立された.したがって現在までのところ,計画通り研究が進んでいるものと考えられる.今後はこれまでの理論的な解析を基に,平滑化・均一化を目指して実際の研削条件の最適化を行う.そのために以下の2点に重点を置いて研究を進める.1.超精密研削を実現するための研削条件選定指針を得る(統計的研削理論とナノトポグラフィー創成理論の統合,最適研削条件の導出)ナノトポグラフィーと研削面粗さに関する理論を統合し,両者とも最適化される研削条件の選定指針を明らかにする.また選定した研削条件と実際の研削条件の間には誤差があると考えられるため,研削条件の誤差を判定し補正する機能を有する超安定超精密研削システムの構築を行う.2.研削条件の把握 | KAKENHI-PROJECT-24760096 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24760096 |
研削面創成メカニズムの解明および超安定超精密研削への応用 | 砥石回転数,工作物送り速度,砥石の振動を非接触変位計を用いて測定する.また使用する砥石の砥粒半頂角の分布を事前に測定し,砥石作業面状態の影響も把握する.このような環境下で研削抵抗,研削面粗さの測定も行い,研削面創成メカニズムを推測・確認するためのデータとする.また,この結果を理論解析の結果と比較することにより,理論的に導出された最適な研削条件の妥当性を検討する.該当なし | KAKENHI-PROJECT-24760096 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24760096 |
蚊における細胞質不和合性を起こすリケッチア様因子の分子制御機構 | 細胞質不和合性を起こすリケッチア様因子は異なる種に感染するリケッチア様因子の16SリボソームRNAのDNA配列による系統樹からホストに依存しないことが示されており、蚊における細胞質不和合性の制御機構を調べるためには遺伝学的に優れた系であるショウジョウバエも利用した。PCR法により衛生昆虫のリケッチア様因子の感染を38種調べたが、これまでに報告がある種以外では感染は見られなかった。そのなかで国内のいくつかのオナジショウジョウバエ、キイロショウジョウバエ集団には感染していることがわかった。世界的に感染が報告されているオナジショウジョウバエでは日本の集団はカリホォルニアのRiverside系統と同じ交配型をもつことがわかった。キイロショウジョウバエはこれまで自然界にはオーストラリアのみに感染が知られていたが、福岡と小笠原の集団にも感染していることがわかった。これらの集団とオーストラリアの集団は同じ交配型を示した。日本の集団もオーストラリアの集団と同様に不和合性の割合を示す孵化率はオナジショウジョウバエに見られるほど低くはない。しかしこの孵化率は集団により大きく異なる(約20-80%)。この集団間の変異はホスト側とリケッチア様因子の要因が考えられる。よって現在ホスト側の要因を調べるためそれらの集団を選択し細胞質不和合性感受性の系統を確立を試み、リケッチア様因子の要因を調べるため集団間でリケッチア様因子の交換も試みている。またハマダラカなどのリケッチア様因子に感染が報告されていない種に人為的に導入する試みは、卵にリケッチア様因子を注入する技術的な問題のため現在のところ成功には至っていない。しかし他種からショウジョウバエへの導入は可能なことから、ショウジョウバエ以外の種で注入技術が確立すれば成功の可能性があるとおもわれる。細胞質不和合性を起こすリケッチア様因子は異なる種に感染するリケッチア様因子の16SリボソームRNAのDNA配列による系統樹からホストに依存しないことが示されており、蚊における細胞質不和合性の制御機構を調べるためには遺伝学的に優れた系であるショウジョウバエも利用した。PCR法により衛生昆虫のリケッチア様因子の感染を38種調べたが、これまでに報告がある種以外では感染は見られなかった。そのなかで国内のいくつかのオナジショウジョウバエ、キイロショウジョウバエ集団には感染していることがわかった。世界的に感染が報告されているオナジショウジョウバエでは日本の集団はカリホォルニアのRiverside系統と同じ交配型をもつことがわかった。キイロショウジョウバエはこれまで自然界にはオーストラリアのみに感染が知られていたが、福岡と小笠原の集団にも感染していることがわかった。これらの集団とオーストラリアの集団は同じ交配型を示した。日本の集団もオーストラリアの集団と同様に不和合性の割合を示す孵化率はオナジショウジョウバエに見られるほど低くはない。しかしこの孵化率は集団により大きく異なる(約20-80%)。この集団間の変異はホスト側とリケッチア様因子の要因が考えられる。よって現在ホスト側の要因を調べるためそれらの集団を選択し細胞質不和合性感受性の系統を確立を試み、リケッチア様因子の要因を調べるため集団間でリケッチア様因子の交換も試みている。またハマダラカなどのリケッチア様因子に感染が報告されていない種に人為的に導入する試みは、卵にリケッチア様因子を注入する技術的な問題のため現在のところ成功には至っていない。しかし他種からショウジョウバエへの導入は可能なことから、ショウジョウバエ以外の種で注入技術が確立すれば成功の可能性があるとおもわれる。 | KAKENHI-PROJECT-05857031 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05857031 |
幕末期における為政者の武芸実践および武芸政策にみる武芸思想に関する文献学的研究 | 近世の武芸について考えていくには、社会を主導する幕閣や藩主などの為政者が、どのような武芸観をもって武芸を実践し、どのような武芸思想に至って社会を主導したのかを明らかにしていくことが必要である。本研究は、内憂外患の幕末期に海防を意識しながらも伝統的な武芸の必要性を認め、その存在が失われなかった背景には、為政者にどのような意図があり、その背景にはどのような武芸思想や政治思想があったのかを明らかにすることで、近世武芸の新しい諸相を見出し、近代武芸へとつながる幕末期の武芸実態を明らかにしていくことが目的である。松平定信以降、幕末にかけて、久松松平家は老中、若年寄、奏者番、寺社奉行などの幕閣を輩出している。久松松平家では、軍事力としての砲術など近代化を目指した武芸とあわせて、いわゆる近世以来伝承されてきた伝統的な武芸が実践されていた。その武芸の在り方は、幕閣を務めた為政者の武芸思想やそれに基づいた武芸政策に少なからず影響を及ぼしているものと推察できる。さらに幕末の久松松平家桑名藩主は松平定敬であり、会津藩主松平容保とは実の兄弟であり、幕末最後まで佐幕派を通した両藩である。平成30年度は、このような関係性も視野に入れながら、主に史料蒐集とその整理、資料の解読作業などを行った。神戸大学図書館には、起倒流の関係史料を確認するとともに、会津藩関係の資料にもあたることができ、また国立国会図書館でも幕末最後の老中首座である久松松平家出身の板倉勝静関係の資料にもあたることができ、平成30年度に予定していた史料蒐集の一部を実行することができた。幕末の為政者も行った起倒流については、その道統の発展過程において重要な役割を果たしている堀田佐五右衛門頼庸について、これまでの研究成果をまとめ、第51回日本武道学会(東京学芸大学)において「起倒流堀田佐五右衛門頼庸に関する一考察」と題して発表を行った。本研究の視点から史料蒐集を行うにあたって、幕末の会津藩武芸関係史料や松平容保自身の武芸修行や武芸実践の史料、備中松山藩主板倉勝静の武芸実践に関する直接的な史料が未だなかなか発掘されないことがその大きな理由である。他の幕閣や他の藩主との関係など、調査範囲を拡大していく必要があるかもしれない。これに関連して、「幕末の四賢侯」と呼ばれる山内容堂、島津斉彬、松平春嶽、伊達宗城などの武芸実践や武芸思想などについても調査研究していく必要が出てきている。これらの事前調査、周辺の先行研究や調査準備にもかなりの時間を要している。当初の研究実施計画にそって、平成30年度に引き続き令和元年度は、松平定信につながる松平定永(桑名藩主)、板倉勝静(老中首座)、土よ頼之(若年寄)、松平近説(若年寄)、松平定敬(桑名藩主・京都所司代)に関連する史料調査を進めていく予定である。また、松平定敬の実兄である会津藩主松平容保(京都守護職)の調査も併せて進めていく計画である。令和元年度は、これらの史料蒐集とともに、史料の解読、整理、分析、検討、考察なども進めていく予定である。近世の武芸について考えていくには、社会を主導する幕閣や藩主などの為政者が、どのような武芸観をもって武芸を実践し、どのような武芸思想に至って社会を主導したのかを明らかにしていくことが必要である。本研究は、内憂外患の幕末期に海防を意識しながらも伝統的な武芸の必要性を認め、その存在が失われなかった背景には、為政者にどのような意図があり、その背景にはどのような武芸思想や政治思想があったのかを明らかにすることで、近世武芸の新しい諸相を見出し、近代武芸へとつながる幕末期の武芸実態を明らかにしていくことが目的である。松平定信以降、幕末にかけて、久松松平家は老中、若年寄、奏者番、寺社奉行などの幕閣を輩出している。久松松平家では、軍事力としての砲術など近代化を目指した武芸とあわせて、いわゆる近世以来伝承されてきた伝統的な武芸が実践されていた。その武芸の在り方は、幕閣を務めた為政者の武芸思想やそれに基づいた武芸政策に少なからず影響を及ぼしているものと推察できる。さらに幕末の久松松平家桑名藩主は松平定敬であり、会津藩主松平容保とは実の兄弟であり、幕末最後まで佐幕派を通した両藩である。平成30年度は、このような関係性も視野に入れながら、主に史料蒐集とその整理、資料の解読作業などを行った。神戸大学図書館には、起倒流の関係史料を確認するとともに、会津藩関係の資料にもあたることができ、また国立国会図書館でも幕末最後の老中首座である久松松平家出身の板倉勝静関係の資料にもあたることができ、平成30年度に予定していた史料蒐集の一部を実行することができた。幕末の為政者も行った起倒流については、その道統の発展過程において重要な役割を果たしている堀田佐五右衛門頼庸について、これまでの研究成果をまとめ、第51回日本武道学会(東京学芸大学)において「起倒流堀田佐五右衛門頼庸に関する一考察」と題して発表を行った。本研究の視点から史料蒐集を行うにあたって、幕末の会津藩武芸関係史料や松平容保自身の武芸修行や武芸実践の史料、備中松山藩主板倉勝静の武芸実践に関する直接的な史料が未だなかなか発掘されないことがその大きな理由である。他の幕閣や他の藩主との関係など、調査範囲を拡大していく必要があるかもしれない。 | KAKENHI-PROJECT-18K10979 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K10979 |
幕末期における為政者の武芸実践および武芸政策にみる武芸思想に関する文献学的研究 | これに関連して、「幕末の四賢侯」と呼ばれる山内容堂、島津斉彬、松平春嶽、伊達宗城などの武芸実践や武芸思想などについても調査研究していく必要が出てきている。これらの事前調査、周辺の先行研究や調査準備にもかなりの時間を要している。当初の研究実施計画にそって、平成30年度に引き続き令和元年度は、松平定信につながる松平定永(桑名藩主)、板倉勝静(老中首座)、土よ頼之(若年寄)、松平近説(若年寄)、松平定敬(桑名藩主・京都所司代)に関連する史料調査を進めていく予定である。また、松平定敬の実兄である会津藩主松平容保(京都守護職)の調査も併せて進めていく計画である。令和元年度は、これらの史料蒐集とともに、史料の解読、整理、分析、検討、考察なども進めていく予定である。史料蒐集において、調査に赴く回数が2回しか実施できず、また、調査場所も神戸と東京であり、旅費にかかる経費が少なかった。次年度は、会津、岡山、高知などの調査も行うことも予想され、また、解読や専門的知識の提供を受けた際の謝金の発生なども見込まれるため、これらに使用することを計画している。 | KAKENHI-PROJECT-18K10979 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K10979 |
Wntシグナル制御下に培養した幹細胞由来成長因子による新規骨再生医療 | 幹細胞の培養上清に含まれるサイトカインなどの液性因子(MSC-CM)を用い骨および歯周組織の再生を行うことを確認した。MSC-CMは幹細胞の遊走能を亢進し、さらに骨形成関連遺伝子、血管新生関連遺伝子の発現を上昇させた。さらにラット骨欠損モデルやイヌ歯周組織欠損モデルでは早期の骨あるいは歯周組織再生が確認された。またこれらの効果はWntシグナル阻害剤であるsFRP-3により促進された。本研究によりMSC-CMにより体内に存在する幹細胞を局所に遊走させ、血管新生を経て骨あるいは歯周組織再生がなされるという新たなコンセプトの再生医療の可能性が示唆された。骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)の培養上清(以下MSC-CM)中に含まれる成長因子(にはVEGF、IGF-1、TGF-β1、HGF等が含有されていた。MSC-CMはヒトやラットMSCの遊走能、増殖能させた。Wntシグナルを活性化させる塩化リチウムの存在下で培養を行ったところ、さらにMSCの遊走あるいは増殖能は亢進した。またヒト臍帯静脈血管内皮細胞を用いた血管新生アッセイにおいてもMSC-CMは血管新生能を亢進させた。さらにMSC-CM存在下に培養したヒト、ラットMSCではアルカリフォスファターゼやオステオカルシン、vegfやAng1といった骨形成、血管新生関連遺伝子の発現も亢進した。次いで、ラットを用いた移植実験をおこなった。ラット頭蓋骨に直径5mmの骨欠損を作成し、アテロコラーゲンとともにMSC-CMを移植したところ、コントロール群に比べ移植後2、4週いずれにおいても有意に骨形成の増加を認めた。さらに血管造影を行ったところ、MSCーCM群では新生血管の伸長、およびその周囲での骨再生が確認された。蛍光色素であるQdotを付着させたMSC-CMを同モデルに移植したところ、MSC-CMは移植後数日で移植部より消失していることがわかった。移植後1日、3日、1週と免疫組織学的に移植部での細胞の動態を観察したところ、移植後3日頃より周囲より内在する幹細胞の遊走が起こっていることが確認された。さらに1週間後では血管内皮細胞の遊走、あるいは血管新生が認められた。以上のことから、本法による骨再生は内在性幹細胞を誘導する骨再生法であることが確認され、さらに血管の構築が伴うこと、Wntシグナルを操作することによりこれらの効果が増強される可能性が示唆された。骨髄由来間葉系幹細胞の培養上清(MSCーCM)にはパラクライン因子として様々な液性因子を含んでおり、これまでの検討でIGF-1、VEGF、TGF-β1、HGFなどが含まれていることが分かっていた。さらにMCP-1、IL-6、MーCSFなど骨再生だけではなく、マクロファージ遊走や抗炎症、抗アポトーシスに関連する因子を含むことが分かった。MSC-CM存在下で培養したMSCは骨形成関連遺伝子(アルカリフォスファターゼ、オステオカルシンなど)や血管新生関連遺伝子(Ang-1、Ang-2など)の遺伝子発現を上昇させることも分かった。in vivoではラット頭蓋骨骨欠損モデルにおいてMSC-CMの移植を行うと移植後2週という早期から血管新生を伴う周囲内在性幹細胞の動員が起こり、骨形成が起こることを免疫組織化学的に確認した。さらに疾患モデルとしてラット歯周組織欠損モデルでは歯槽骨のみならずセメント質、歯根膜といった歯周組織の再生も確認された。頭蓋骨骨欠損モデルあるいは歯周組織欠損モデルに於いては組織学的に炎症細胞浸潤が軽微であることが示され、さらにビスホスホネートを用いた顎骨壊死モデルにおいては破骨細胞のアポトーシス抑制などから顎骨壊死の治癒を導くことができる可能性があることも確認した。すなわちMSC-CMは単純に骨再生能に優れているだけではなく抗炎症、抗アポトーシス効果等、MSC-CM移植部において再生環境を整える役割を担うことが示唆された。MSC-CMに存在する液性因子の中から特に骨再生に重要と考えられるリコンビナントサイトカインを使用しその組み合わせによりMSC-CMと同等の骨再生能を有するサイトカインの組み合わせについても検討し、歯周組織再生のための条件の最適化を行った。歯周組織再生および移植部での抗炎症作用を兼ね備えた新規薬剤として有用である可能性が示唆された。幹細胞の培養上清に含まれるサイトカインなどの液性因子(MSC-CM)を用い骨および歯周組織の再生を行うことを確認した。MSC-CMは幹細胞の遊走能を亢進し、さらに骨形成関連遺伝子、血管新生関連遺伝子の発現を上昇させた。さらにラット骨欠損モデルやイヌ歯周組織欠損モデルでは早期の骨あるいは歯周組織再生が確認された。またこれらの効果はWntシグナル阻害剤であるsFRP-3により促進された。本研究によりMSC-CMにより体内に存在する幹細胞を局所に遊走させ、血管新生を経て骨あるいは歯周組織再生がなされるという新たなコンセプトの再生医療の可能性が示唆された。まず、骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)の培養上清中に含まれる成長因子(以下MSC-CM)の検索、それらの幹細胞の細胞特性に及ぼす影響について検討を行った。培養上清中にはVEGF、IGF-1、TGF-β1、HGF等の成長因子が含有されていた。MSC-CM存在下ではヒトやラットMSCの遊走能、増殖能が亢進した。またヒト𦜝帯静脈血管内皮細胞を用いた血管新生アッセイにおいてもMSC-CMは血管新生能を亢進させた。 | KAKENHI-PROJECT-23592883 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23592883 |
Wntシグナル制御下に培養した幹細胞由来成長因子による新規骨再生医療 | さらにMSC-CM存在下に培養したヒト、ラットMSCではアルカリフォスファターゼやオステオカルシンといった骨形成関連遺伝子の発現も亢進した。次いで、ラットを用いた移植実験をおこなった。ラット頭蓋骨に直径5mmの骨欠損を作成し、足場材(アテロコラーゲン、アガロース)とともにMSC-CMを移植したところ、コントロール群に比べ移植後2、4、8週いずれにおいても有意に骨形成の増加を認めた。新生骨は組織学的、エックス線学的にも認められ,本法が骨再生に有用であることが示唆された。新生骨が幹細胞の遊走によって形成されたかを確認するためin vivoイメージングの手法を用いて検討したところ、ラット尻静脈から注入した蛍光色素染色したMSCがMSC-CM移植をおこなった頭蓋骨に集積していることが示された。さらにGFPラットを用い、頭蓋骨骨欠損部にMSC-CMを移植したところ、新生骨はGFP陽性かつ幹細胞に発現するCD44陽性の細胞が集積していた。これらのことは移植したMSC-CMが体内の幹細胞を局所に遊走、増殖させ、骨形成がおこなわれたことを示す結果となった。これらのように、本年度においてMSC-CMが細胞移植を伴わない、新たな骨再生医療に有用であることが示唆される結果が得られた。MSC-CMによる骨再生のメカニズムの解析を行なってきた。その結果、早期からの周囲幹細胞の遊走および血管新生がその中心的役割を担っていることが明らかとなった。これらの細胞の働きは古典的Wntシグナル伝達経路が深く関与している可能性も示唆された。また様々な臨床を念頭に置いた疾患モデルにて移植実験を行い、実用化への目処もついた。初年度の計画である、培養上清の特性、細胞に与える影響を明らかにし、実際、動物実験において良好な骨再生能を確認した。さらにその骨再生には内在性幹細胞の遊走が深く関わっていることを明らかにした。MSC-CMによる骨再生およびそのメカニズムについて当初予定どおりに検討が進行した。今後はWntシグナルの賦活を含めた、細胞培養および投与指摘条件の検討を中心に行なっていく。今後は培養細胞の細胞特性を利用し、より骨再生に特化したMSC-CMを作成することを目標としたい。実際これまでの研究ではMSCの増殖、骨芽細胞への分化においてはWntシグナルが深く関与していることが示されている。今後はこの点に着目し、Wntシグナルを操作することによって得られる培養上清による骨再生について検討を行って行きたい。さらに、今後は疾患モデルを広げ、歯周病、骨粗鬆症、骨折等、より臨床に即したモデルを使用することにより、実用化へ向けた基盤を作成したい。主として動物実験および成果発表に充当される。主としてラットなど、動物の購入・飼育費用、あるいは細胞培養に係る培地や各種成長因子の購入に使用予定である。さらには成果発表のための投稿費、学会参加費等にも充当したい。 | KAKENHI-PROJECT-23592883 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23592883 |
慢性炎症を背景とした肝発がん・再発機序の解明 | 肝硬変を背景とした肝細胞癌患者では、根治的治療後でも肝細胞癌が高率に再発し、再発率は年間約20-25%、5年では70%以上に上ることから肝細胞癌の再発抑制が治療上極めて重要な課題である。そのため、肝線維化・肝硬変による肝発がん機序を解明し、新規治療法につながるための基礎研究が重要である。肝線維化の病態形成の基盤となる慢性炎症に着目し、申請者の施設で開発した高脂肪動脈硬化食(Ath+HF)非アルコール性脂肪肝炎(NASH)からの肝発癌モデルマウス(Matsuzawa N.Hepatology. 2007Nov;46(5))を用いて継時的に解析を行い、肝線維化・肝発癌に対する新規治療標的を探索した。非アルコール性肝炎(NASH)による慢性炎症病態が進行するにつれて肝組織のAtg16L1の発現低下及びAtg5-Atg12-Atg16L1由来のオートファジーが抑制されていることを発見した。オートファジーは、細胞内で蓄積された無駄なタンパク質を分解し、アミノ酸等の栄養に変換する現象である。新規肝細胞癌再発抑制薬ペレチノインは、Atg16L1の発現増加およびオートファジーを活性することで炎症抑制に働き肝細胞癌の発癌を抑制した。この病態モデルマウスだけではなく、NASH-HCCモデルであるSTAMマウスでも同様にペレチノインの炎症抑制及び発癌抑制することを確認した。ペレチノインは、CEBPαを介してヒトAtg16L1のプロモーターを活性を亢進することでAtg16L1の発現を増加させた。さらに、申請者はAtg16L1の発現増加は、オートファジー非依存的にIL6受容体Gp130に結合することで脱リン酸化を促すことを同定した。結果Atg16L1はGp130を介してp-stat3(Tyr705)を抑制する機序が慢性炎症抑制に働き、肝細胞癌の発癌を抑制することを解明した。肝硬変を背景とした肝細胞癌患者では、根治的治療後でも肝細胞癌が高率に再発し、再発率は年間約20-25%、5年では70%以上に上ることから肝細胞癌の再発抑制が治療上極めて重要な課題である。そのため、肝線維化・肝硬変による肝発がん機序を解明し、新規治療法につながるための基礎研究が重要である。肝線維化の病態形成の基盤となる慢性炎症に着目し、申請者の施設で開発した高脂肪動脈硬化食(Ath+HF)非アルコール性脂肪肝炎(NASH)からの肝発癌モデルマウス(Matsuzawa N.Hepatology. 2007Nov;46(5))を用いて継時的に解析を行い、肝線維化・肝発癌に対する新規治療標的を探索した。非アルコール性肝炎(NASH)による慢性炎症病態が進行するにつれて肝組織のAtg16L1由来オートファジーが抑制されていることを発見した。オートファジーは、細胞内で蓄積された無駄なタンパク質を分解し、アミノ酸等の栄養に変換する現象である。新規肝細胞癌再発抑制薬ペレチノインは、Atg16L1の発現増加およびオートファジーを活性することで炎症抑制に働き肝細胞癌の発癌を抑制した。ペレチノインは、CEBPαを介してヒトAtg16L1のプロモーターを活性を亢進することでAtg16L1の発現を増加させた。さらに、Atg16L1の発現増加は、オートファージー非依存的にIL6受容体Gp130の脱リン酸化することでp-stat3(Tyr705)を抑制することで炎症抑制に働くことを解明した。肝線維化の原因である肝星細胞には、Atg16L1の発現増加させると筋線維芽細胞になり細胞外マトリックス(ECM)沈着を有意に亢進することがわかった。肝星細胞に対するオートファージーは逆に線維化を増悪させる。今回使用したペレチノインの肝星細胞に対する効果は、以前の我々の論文でSp1を介してPDGFRα/βの発現抑制することで肝線維化・肝発がんを抑制することを報告している。肝硬変を背景とした肝細胞癌患者では、根治的治療後でも肝細胞癌が高率に再発し、再発率は年間約20-25%、5年では70%以上に上ることから肝細胞癌の再発抑制が治療上極めて重要な課題である。そのため、肝線維化・肝硬変による肝発がん機序を解明し、新規治療法につながるための基礎研究が重要である。肝線維化の病態形成の基盤となる慢性炎症に着目し、申請者の施設で開発した高脂肪動脈硬化食(Ath+HF)非アルコール性脂肪肝炎(NASH)からの肝発癌モデルマウス(Matsuzawa N.Hepatology. 2007Nov;46(5))を用いて継時的に解析を行い、肝線維化・肝発癌に対する新規治療標的を探索した。非アルコール性肝炎(NASH)による慢性炎症病態が進行するにつれて肝組織のAtg16L1の発現低下及びAtg5-Atg12-Atg16L1由来のオートファジーが抑制されていることを発見した。オートファジーは、細胞内で蓄積された無駄なタンパク質を分解し、アミノ酸等の栄養に変換する現象である。新規肝細胞癌再発抑制薬ペレチノインは、Atg16L1の発現増加およびオートファジーを活性することで炎症抑制に働き肝細胞癌の発癌を抑制した。 | KAKENHI-PROJECT-17K15933 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K15933 |
慢性炎症を背景とした肝発がん・再発機序の解明 | この病態モデルマウスだけではなく、NASH-HCCモデルであるSTAMマウスでも同様にペレチノインの炎症抑制及び発癌抑制することを確認した。ペレチノインは、CEBPαを介してヒトAtg16L1のプロモーターを活性を亢進することでAtg16L1の発現を増加させた。さらに、申請者はAtg16L1の発現増加は、オートファジー非依存的にIL6受容体Gp130に結合することで脱リン酸化を促すことを同定した。結果Atg16L1はGp130を介してp-stat3(Tyr705)を抑制する機序が慢性炎症抑制に働き、肝細胞癌の発癌を抑制することを解明した。血管内皮細胞・類洞内皮細胞でのAtg16L1由来オートファージーがどういう影響を及ぼすかを検討する。Rosa26-EYFPマウスやRosa26-Tdtomatoマウスに類洞内皮細胞のマーカーであるLyve-1やCDH5(Ve-cadherin)creマウスと掛け合わせを行い、血管内皮細胞・類洞内皮細胞に対するオートファージーの機能を解明していく。マウスの管理を一緒に行っている実験補助者とマウスの実験計画をこまめに伝えられるよう実験ノートおよび付箋を購入したいと考えている。様々なマウスの餌があり、さらに多数のモデルマウスがあるため間違えないよう工夫をしていきたい。 | KAKENHI-PROJECT-17K15933 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K15933 |
点接触変形のラマン分光法によるその場観察 | 顕微ラマン分光装置に組み込むための,超小型点接触変形装置を設計・製作した.この装置は,結晶にかかる局所応力のその場(in-situ)観察をすることを目的とし,精密可動ステージ,超小型ロードセル,アンプとダイヤモンド圧子からなり,試料への荷重の調製は手動で行う.変形観察する試料は石英の単結晶薄板であり,その下面をダイヤモンド圧子で点接触変形させ,それにともなうラマン・シフトの様子を,上面より薄板を通過させたレーザー光で観察する.1.この装置を利用して点接触変形をおこした際のデータと比較するために,まず応力解放後点接触面の2次元マッピングを行い,接触痕と残留圧力分布の関係を解析し,その結果を論文投稿した(投稿中).2.点接触面の点分析により,石英とは異なる複数のピークが観察された.これは,点接触により,石英とは異なるSiO2相が掲載されたことを強く指示する.現在このピークの同定および,加重のキャリブレーションを行っている.3.ラマン分光分析の鉱物学的研究への適用例として,Enami et al.(2007)によって提唱されたラマン残留圧力計を,三波川変成帯高温部に適用し,エクロジャイト相変成作用の痕跡を検出する試みを前年度に引き続き行った.その結果,(1)従来はエクロジャイト相変成作用の痕跡が報告されていなかった変泥質岩も,エクロジャイト相の圧力に対応する残留圧力を保持している場合があること,(2)そのような岩石中には,エクロジャイト相を代表すると思われるオンファス輝石やアラゴナイトが,ざくろ石中の包有物として産する場合があることが明らかとなった.これらの成果に関する論文2編を投稿中である.顕微ラマン分光装置に組み込むための,超小型点接触変形装置を設計・製作した.この装置は,結晶にかかる局所応力のその場(in-situ)観察をすることを目的とし,精密可動ステージ,超小型ロードセル,アンプとダイヤモンド圧子からなり,試料への荷重の調製は手動で行う.変形観察する試料は石英の単結晶薄板であり,その下面をダイヤモンド圧子で点接触変形させ,それにともなうラマン・シフトの様子を,上面より薄板を通過させたレーザー光で観察する.なお,同装置を用いて,試料を透過させた揚合でも,データ解析をする際に十分なラマン・ピーク強度が得られることが確認できた.この他に,ラマン分光分析の鉱物学的研究への適用例として,以下の2項目を行った.・石英残留圧力の地域的変化: Enami, et. al.(2007)によって提唱されたラマン残留圧力計を,三波川変成帯高温部に適用し,エクロジャイト相変成作用の痕跡を検出する試みを開始した.その結果,(1)高圧変成帯の構造境界を残留圧力の変化として認識できること,および(2)従来はエクロジャイト相変成作用の痕跡が報告されていなかった変泥質岩も,エクロジャイト相の圧力に対応する残留圧力を保持していることが明らかとなった.この成果を受けて,同地域におけるエクロジャイト相変成作用を被った岩石の分布の広がりを検討中である.・Mg, Fe, Mn, Co, CaMgかんらん石端成分のラマン・スペクトルを観察し,それぞれのキャラクタリゼーションを行った.また,Mg-Feかんらん石固溶体について,Mg#[=Mg/(Mg+Fe)]値とラマン・シフトとの関係のキャリブレーションを行った.顕微ラマン分光装置に組み込むための,超小型点接触変形装置を設計・製作した.この装置は,結晶にかかる局所応力のその場(in-situ)観察をすることを目的とし,精密可動ステージ,超小型ロードセル,アンプとダイヤモンド圧子からなり,試料への荷重の調製は手動で行う.変形観察する試料は石英の単結晶薄板であり,その下面をダイヤモンド圧子で点接触変形させ,それにともなうラマン・シフトの様子を,上面より薄板を通過させたレーザー光で観察する.1.この装置を利用して点接触変形をおこした際のデータと比較するために,まず応力解放後点接触面の2次元マッピングを行い,接触痕と残留圧力分布の関係を解析し,その結果を論文投稿した(投稿中).2.点接触面の点分析により,石英とは異なる複数のピークが観察された.これは,点接触により,石英とは異なるSiO2相が掲載されたことを強く指示する.現在このピークの同定および,加重のキャリブレーションを行っている.3.ラマン分光分析の鉱物学的研究への適用例として,Enami et al.(2007)によって提唱されたラマン残留圧力計を,三波川変成帯高温部に適用し,エクロジャイト相変成作用の痕跡を検出する試みを前年度に引き続き行った.その結果,(1)従来はエクロジャイト相変成作用の痕跡が報告されていなかった変泥質岩も,エクロジャイト相の圧力に対応する残留圧力を保持している場合があること,(2)そのような岩石中には,エクロジャイト相を代表すると思われるオンファス輝石やアラゴナイトが,ざくろ石中の包有物として産する場合があることが明らかとなった.これらの成果に関する論文2編を投稿中である. | KAKENHI-PROJECT-19654080 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19654080 |
光励起キャリアーの動的過程を観測した光触媒活性評価法の確立と触媒探索への応用 | 時間分解赤外分光法を用いると、光触媒中の電子を観測し、電子・正孔再結合過程や吸着分子への電荷移動過程を調べることができる。我々は、水分解の活性が高いタンタル酸ナトリウム触媒中のマイクロ秒領域でのキャリアーの挙動と定常反応活性には高い相関があることを報告した。本研究では、本手法を用いて9つの酸化チタン参照触媒の光励起ダイナミクスの観測を行った。酸化チタンに紫外パルスを照射すると、赤外域に光励起電子のブロードな過渡吸収が観測される。この過渡吸収の減衰過程を調べることで光励起電子の再結合過程や反応過程を調べることができる。真空中での減衰速度は再結合速度を反映し、残存する電子の数が多いほど、反応に使える電子の数は多いことになる。ここで、気相に酸素を導入すると、電子が酸素に消費されるため、電子の減衰が加速される。この減少量は反応に消費された電子数を反映し、どれだけ減ったかという減少率は、再結合を逃れて残存した電子の反応活性を示す指標になる。次に、気相にメタノールを導入すると、正孔が消費されて再結合が抑制され、電子数が増加するが、この増加量は反応で消費された正孔数を反映する。そして、電子の増加した割合は、再結合を逃れて残存した正孔の反応活性を反映する。これらの仮定に基づいて参照触媒TIO4,6-13の反応ガス導入による電子の変化量と変化率を計算した。各触媒における光励起電子の赤外吸光係数が同じだと仮定した場合、これらの電子の変化量は大きければ大きいほど、酸化反応や還元反応の活性が高いことになる。TIO8と9は酸素導入による電子の減少量が大きいため、高い還元活性を有しており、逆にTIO8と10はメタノール導入による電子の増加量が多いため、高い酸化活性を有していることが推察される。これらの結果と触媒の表面積を比較すると、活性の高い触媒はいずれも表面積が広いことが分かった。本研究の目的は光励起キャリアーの動的過程を観察することで、光触媒の潜在的な活性を評価し、得られた結果を触媒設計に活かすことである。従来の光触媒に関する研究のほとんどは触媒の構造や電子状態といった静的な測定であり、反応に関しても光照射前後の反応物や生成物の分析に留まっていることが多かった。触媒反応は動的な現象であるため、反応を理解するためには反応を引き起こす光励起キャリアーの動的過程を直接観察する必要がある、と考えられる。申請者はこれまでに、時間分解赤外分光法を用いると、光励起キャリアーの再結合過程や反応分子への電荷移動過程を明らかに出来ることを報告した。本年度は本手法を光触媒の活性評価法として確立するために、まず、様々な触媒の光励起キャリアーの挙動と定常反応活性との相関を調べた。タンタル酸ナトリウムは50%を越える高い量子効率で水を分解することで知られる。この触媒は修飾により活性が数桁変化する。本研究では時間分解赤外分光法を用いて、これらの触媒修飾が及ぼす光励起キャリアーの挙動への影響を調べた。その結果、合成時のナトリウム添加量やランタンのドープにより活性の向上した触媒は、たしかに光励起電子の寿命が長くなっており、電子の寿命と定常反応活性には高い相関があった。一方、水への電子移動を促進すると考えられている酸化ニッケルを触媒に担持すると、触媒から酸化ニッケルへ電子が移動し、水への電子移動速度が促進されていることを実際に観測した。この場合、水への電子移動速度は担持量に依存したが、定常反応活性はこの電子移動速度と高い相関があった。すなわち、定常的な光触媒活性は光励起キャリアーの挙動と高い相関があることがわかった。この結果から、時間分解赤外分光法を用いると、様々な触媒修飾が及ぼす定常反応活性への影響を数日かかる生成物分析によらずとも、数分の測定で予測できることが分かった。時間分解赤外分光法を用いると、光触媒中の電子を観測し、電子・正孔再結合過程や吸着分子への電荷移動過程を調べることができる。我々は、水分解の活性が高いタンタル酸ナトリウム触媒中のマイクロ秒領域でのキャリアーの挙動と定常反応活性には高い相関があることを報告した。本研究では、本手法を用いて9つの酸化チタン参照触媒の光励起ダイナミクスの観測を行った。酸化チタンに紫外パルスを照射すると、赤外域に光励起電子のブロードな過渡吸収が観測される。この過渡吸収の減衰過程を調べることで光励起電子の再結合過程や反応過程を調べることができる。真空中での減衰速度は再結合速度を反映し、残存する電子の数が多いほど、反応に使える電子の数は多いことになる。ここで、気相に酸素を導入すると、電子が酸素に消費されるため、電子の減衰が加速される。この減少量は反応に消費された電子数を反映し、どれだけ減ったかという減少率は、再結合を逃れて残存した電子の反応活性を示す指標になる。次に、気相にメタノールを導入すると、正孔が消費されて再結合が抑制され、電子数が増加するが、この増加量は反応で消費された正孔数を反映する。そして、電子の増加した割合は、再結合を逃れて残存した正孔の反応活性を反映する。これらの仮定に基づいて参照触媒TIO4,6-13の反応ガス導入による電子の変化量と変化率を計算した。 | KAKENHI-PROJECT-15655077 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15655077 |
光励起キャリアーの動的過程を観測した光触媒活性評価法の確立と触媒探索への応用 | 各触媒における光励起電子の赤外吸光係数が同じだと仮定した場合、これらの電子の変化量は大きければ大きいほど、酸化反応や還元反応の活性が高いことになる。TIO8と9は酸素導入による電子の減少量が大きいため、高い還元活性を有しており、逆にTIO8と10はメタノール導入による電子の増加量が多いため、高い酸化活性を有していることが推察される。これらの結果と触媒の表面積を比較すると、活性の高い触媒はいずれも表面積が広いことが分かった。 | KAKENHI-PROJECT-15655077 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15655077 |
ネット理論に基づいた次世代の公開鍵暗号技術の開発に関する研究 | 本研究課題について、平成16年度では以下の研究成果が得られている。(1)これまで提案してきた公開鍵暗号MEPKCにおける暗号化鍵の生成について、以下の新しい手法を提案した。・鍵生成器であるペトリネットから、線形計画法による暗号化鍵である初等T-invariantを生成する際複数の解が同じ目的関数値をもつ場合、これらの内一つしか求めることができなかった。・これまで探索の目印として、目的関数値だけを用いたが、それに解のベクトルの辞書順を加えた解決法を開発した。まず、解のベクトルの辞書順を定義し、それを用いて探索における親子関係を定義した。その親子関係を利用して新しい探索アルゴリズムを設計した。・新しく提案したアルゴリズムは、今までと同様な計算オーダーで、同じ目的関数値をもつ複数の「親」の解を求めることができる。(2)提案してきたMEPKCを発展させるための研究開発・より強度の強い暗号を開発するために、プログラムネットにおける計算困難な問題である(a)不活性問題を提起し、それらがNP完全であることを証明した。・ペトリネットでモデル化されたワークフローと暗号との関わりで、最大スループット計算問題を取り上げ、暗号の応用についての考察研究を行った。本研究課題において、以下の研究成果が得られている(1)次の特徴を有する公開鍵暗合の仕組みを提案した。・ペトリネットの初等T-invariantを暗号化鍵とし、既存の秘密鍵を用いて多段的に暗合化を行う。・暗号化に使われる初等T-invariantをハッシュ関数で保護し、保護した暗号化鍵を暗号文と共に受信側に送信する。・ペトリネットおよびハッシュ関数を公開鍵とし、逆ハッシュを秘密鍵とする。(2)ペトリネットより初等T-invariantを生成する基本的な手法として、線形計画法を用いる方法を提案した。その手法を利用すれば、膨大な数の初等T-invariantをもつペトリネットの中からランダムに必要な初等T-invariantを生成することが可能となる。(3)暗号化鍵である初等T-invariantを保護するためのハッシュ関数を設計した。そのハッシュ関数は、NP-完全である部分和問題を含んでいるため、ハッシュ値から初等T-invariantを割り出すのに指数オーダーの計算時間を要する。よって、提案の公開鍵暗合が指数オーダーの強度をもつことが分かった。(4)逆ハッシュ関数はペトリネットのすべての初等T-invariantとそのハッシュ値の対応表とする。かつその対応表はハッシュ値の昇順または降順にソートしたものとする。そうすることによって、2分探索法を用いれば、ハッシュ値より暗号化鍵として使う初等T-invariantを見つけ出すには容易になり、複合化が高速に行うことができる。提案の暗合は以下の事実に基づいていることに注意されたい。(i)ペトリネットのすべての初等T-invariantを計算することは極めて困難であるが、その内の幾つかを求めるには比較的に容易である。(ii)秘密鍵の持ち主は公開鍵の一部であるペトリネットを生成しているので、そのすべて初等T-invariantを知っているが、それ以外の人はそのペトリネットのすべての初等T-invariantを知り得ない。本研究課題において、平成15年度は以下の研究成果が得られている。これまで提案してきた公開鍵暗号MEPKCにおける暗号化鍵の生成について、以下の手法による実現法を提案した。(1)鍵生成器であるペトリネットから、暗号化鍵である初等T-invariantの生成を特性ベクトルの計算によって行う方法を提案した。まずは、線形計画法による定式化を行い、Simplex法によって特性ベクトルを生成する。そして、得られた特性ベクトルに基づいて、ペトリネットの接続行列からガウス消去法を適用して正確な初等T-invariantを得る。(2)複数の特性ベクトルを求めるために、すべての初等T-invariantを計算するための方法を考案した。その方法として、(i)それぞれの変数を逐次的に非0となるように目的関数を設定し、(ii)Simplex法を適用する際、逆ピボッティング手法を用いて該当の変数の値をmax値から0に近づくように操作することによって、その変数が非0となる時のすべての特性ベクトルを得る。以上の手法は、与えられたペトリネットに対し、O(K|T|2+|T||P|2+CT_s)の計算時間とO(K|T|)のスペースで任意のK個の初等T-invariantを生成することができる。これによって、MEPKCにおける暗号化鍵の生成が可能となった。本研究課題について、平成16年度では以下の研究成果が得られている。(1)これまで提案してきた公開鍵暗号MEPKCにおける暗号化鍵の生成について、以下の新しい手法を提案した。・鍵生成器であるペトリネットから、線形計画法による暗号化鍵である初等T-invariantを生成する際複数の解が同じ目的関数値をもつ場合、これらの内一つしか求めることができなかった。・これまで探索の目印として、目的関数値だけを用いたが、それに解のベクトルの辞書順を加えた解決法を開発した。まず、解のベクトルの辞書順を定義し、それを用いて探索における親子関係を定義した。その親子関係を利用して新しい探索アルゴリズムを設計した。・新しく提案したアルゴリズムは、今までと同様な計算オーダーで、同じ目的関数値をもつ複数の「親」の解を求めることができる。(2)提案してきたMEPKCを発展させるための研究開発・より強度の強い暗号を開発するために、プログラムネットにおける計算困難な問題である(a)不活性問題を提起し、それらがNP完全であることを証明した。 | KAKENHI-PROJECT-14655143 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14655143 |
ネット理論に基づいた次世代の公開鍵暗号技術の開発に関する研究 | ・ペトリネットでモデル化されたワークフローと暗号との関わりで、最大スループット計算問題を取り上げ、暗号の応用についての考察研究を行った。 | KAKENHI-PROJECT-14655143 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14655143 |
鉄触媒を用いる触媒的不斉炭素-炭素結合生成反応の開発 | 本課題研究では,鉄触媒による不斉カルボメタル化反応の開発を行うことを目的とした.研究期間中に新たな鉄触媒炭素炭素結合生成反応を見いだし,低原子価有機鉄活性種の反応制御に有効な配位子,さらには効果的な不斉誘起を可能とする配位子の探索を行った.第一年度は,鉄を触媒とするカルボメタル化反応の可能性を見い出すべく,シクルプロペノンアセタールをオレフィン基質とした検討を行った.その結果,触媒量の塩化鉄(III)の存在下,種々のグリニャール試薬がシクロプロペンに対して,穏やかな条件下付加することが判明した.生成物のシクロプロピルマグネシウム試薬の炭素求電子剤による捕捉を試みたところ,ほぼ完全なシス選択的をもって二段階めの炭素一炭素結合生成反応が起き,シス二置換シクロプロパノンアセタールが良好な収率で得られることを明らかとした.また有機亜鉛試薬類の付加反応を検討した結果,グリニャール試薬と同様に速やかにカルボメタル化反応が進行することが判明した.不斉触媒化を目指して光学活性配位子を種々検討したところ,キレート型のホスフィン配位子を用いた場合に低選択性ながらも不斉誘起を確認できた.第二年度は選択性の向上等,反応条件の最適化を行った.この結果,トルエン-THF溶媒系中でBINAPを不斉配位子として用いた場合,最高で80%eeのエナンチオ選択性が発現した.現段階においては,これらの触媒的カルボメタル化反応の成功の鍵は還元条件下の系中で生成した一価の有機鉄活性種であると考えている.本研究結果において,これまで全く不明であった,活性一価有機鉄錯体に対して,キレートホスフィン配位子が有効であるという新たな知見が得られた.今後の鉄触媒反応系の設計において重要な指針となる研究成果であると言えよう.本研究は鉄触媒による触媒的不斉カルボメタル化反応の開発を行うことを目的とする.研究期間中に低原子価有機鉄活性種の反応制御に有効な配位子を見い出し,さらに効果的な不斉誘起を可能とする不斉配位子の探索を行う.ここで得られる低原子価の有機鉄に関する錯体化学及び配位化学的な知見を基にした効率的物質変換法へ応用の足掛かりを得る.本年度は,鉄を触媒とするカルボメタル化反応の可能性を見い出すべく,シクルプロペノンアセタールをオレフィン基質とした検討を行った.検討の結果,種々のグリニャ-ル試薬が触媒量の塩化鉄(III)の添加でシクロプロペンに対して穏やかな条件の下,付加することが判明した.生成物のシクロプロピルマグネシウム試薬の炭素求電子剤による捕捉を試みたところ,ほぼ完全なシス選択的をもって2段階めの炭素-炭素結合生成反応が起き,シス二置換シクロプロパノンアセタールが良好な収率で得られた(投稿準備中).また有機亜鉛試薬類の付加反応を検討した結果,グリニャ-ル試薬と同様に速やかにカルボメタル化反応が進行することが判明した.現段階においては,これらの触媒的カルボメタル化反応の成功の鍵は還元条件下の系中で生成した低原子価の有機鉄活性種であると考えている.不斉触媒化を目指して光学活性配位子を種々検討したところDIOP,BINAPなどのホスフィン系のキレート配位子を用いた場合に低選択性ながらも不斉誘起が観測できた.この知見を基に次年度は選択性の向上等,反応条件の最適化に努めるとともに,この鉄触媒反応系の応用範囲の探索を行う予定である.選択性の向上に関しては遷移構造の情報が必須であることから分子軌道計算を用いた理論研究を平行して行う.ここで得られるカルボメタル化反応の遷移構造を基に,より効果的な不斉配位子の設計・合成が可能となると考えている.本課題研究では,鉄触媒による不斉カルボメタル化反応の開発を行うことを目的とした.研究期間中に新たな鉄触媒炭素炭素結合生成反応を見いだし,低原子価有機鉄活性種の反応制御に有効な配位子,さらには効果的な不斉誘起を可能とする配位子の探索を行った.第一年度は,鉄を触媒とするカルボメタル化反応の可能性を見い出すべく,シクルプロペノンアセタールをオレフィン基質とした検討を行った.その結果,触媒量の塩化鉄(III)の存在下,種々のグリニャール試薬がシクロプロペンに対して,穏やかな条件下付加することが判明した.生成物のシクロプロピルマグネシウム試薬の炭素求電子剤による捕捉を試みたところ,ほぼ完全なシス選択的をもって二段階めの炭素一炭素結合生成反応が起き,シス二置換シクロプロパノンアセタールが良好な収率で得られることを明らかとした.また有機亜鉛試薬類の付加反応を検討した結果,グリニャール試薬と同様に速やかにカルボメタル化反応が進行することが判明した.不斉触媒化を目指して光学活性配位子を種々検討したところ,キレート型のホスフィン配位子を用いた場合に低選択性ながらも不斉誘起を確認できた.第二年度は選択性の向上等,反応条件の最適化を行った.この結果,トルエン-THF溶媒系中でBINAPを不斉配位子として用いた場合,最高で80%eeのエナンチオ選択性が発現した.現段階においては,これらの触媒的カルボメタル化反応の成功の鍵は還元条件下の系中で生成した一価の有機鉄活性種であると考えている. | KAKENHI-PROJECT-09740539 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09740539 |
鉄触媒を用いる触媒的不斉炭素-炭素結合生成反応の開発 | 本研究結果において,これまで全く不明であった,活性一価有機鉄錯体に対して,キレートホスフィン配位子が有効であるという新たな知見が得られた.今後の鉄触媒反応系の設計において重要な指針となる研究成果であると言えよう. | KAKENHI-PROJECT-09740539 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09740539 |
不斉細孔を持つ配位高分子結晶の合成 | 本年度は、3つのcarboxylethyl基を有するtris(2-carboxylethyl)isocyanurate(tciH_3)を架橋配位子に用いてCu(II)多孔性配位高分子を合成し、溶媒の吸脱着による可逆的な構造および磁気特性変化を検討した。架橋配位子tciH_3は三方向に柔軟架橋構造を展開可能であり、そのねじれにより不斉誘起も可能である。硝酸銅とtciH_3との反応により、{[Cu_2(tci)(OH)(H_2O)_3]1.5H_2O}が青緑色結晶として得られた。この化合物は、水酸化物イオン、カルボン酸と水の架橋による一次元鎖がtciにより連結された2次元構造を形成していた。この結晶を125°Cで加熱処理すると、無水物{[Cu_2(tci)(OH)]}の青色結晶が得られた。配位水の脱離により空いたサイトに隣接するカルボキシル酸素が配位することで、2次元シート間か連結されて3次元骨格構造へと変化した。この構造変化においては架橋している水も除かれるため、Cu(II)間の構造も大きく変わった。それに伴って、Cu(II)間の相互作用が強磁性的から反強磁性的に変化した。また、水蒸気にさらすと速やかにもとの構造、色、磁気特性を復元した。この構造変化は、単結晶相を保持したままsigle-crystal-to-single-crystalで進行した。脱水相は水のみを吸着した。このゲスト選択性には、カルボン酸架橋の開裂とゲストの配位を伴う吸着であり、かつpore sizeが小さいために、ゲストの立体効果と配位能が強く影響している。構造自由度の高い配位子tciH_3を用いることで、単結晶のままゲスト応答による大きな構造変化を示すsoft crystal系の構築に成功した。今後は、化学的応答を利用したゲスト誘起キラリティやゲスト選択的な触媒能の発現が期待される。本年度は、lsocyanurateに柔軟なcorboxylethyl基を3つ導入したtris(2-carboxylethyl)isocyanurate(tciH3)を架橋配位子に用いて、種々の多孔性配位高分子を合成し、主に溶媒の吸脱着による可逆的な構造変化を検討した。架橋配位子tciH3は、三方向に柔軟架橋構造を展開可能であり、そのねじれにより不斉誘起も可能である。希土類金属イオンとtciH3との反応により、{[M(tci)(H20)2]2H20}(M=Ce,Pr)が得られた。両錯体ともにカルボン酸架橋による一次元鎖がtciにより連結された2次元構璋を形成していた。この結晶を150°Cで加熱処理すると、配位水、結晶水ともに取り除かれた。配位水の脱離により空いたサイトに隣接するカルボキシル酸素が配位してμ2-型の架橋を形成することで、2次元シート間が連結されて3次元骨格構造へと変化した。また、水蒸気にさらすと速やかにもとの構造を復元した。この構造変化は、単結晶相を保持したままsigle-crystal-to-single-crystalで進行した。脱水相は単位格子が約20%縮小しており、ゲスト吸着は示さなかった。ゲストが水の場合のみ、0.1P/PO程度の開孔圧を伴う吸着を示した。このゲスト選択性には、脱水後のpore sizeと吸着過程がカルボン酸架橋の開裂とゲストの配位を伴うために、ゲストのサイズと配位能が強く影響していると考えられる。今後は、このsoft crystal系を基に、構造の化学的応答を利用したゲスト誘起キラリティや特異な触媒能の発現を目指す。本年度は、3つのcarboxylethyl基を有するtris(2-carboxylethyl)isocyanurate(tciH_3)を架橋配位子に用いてCu(II)多孔性配位高分子を合成し、溶媒の吸脱着による可逆的な構造および磁気特性変化を検討した。架橋配位子tciH_3は三方向に柔軟架橋構造を展開可能であり、そのねじれにより不斉誘起も可能である。硝酸銅とtciH_3との反応により、{[Cu_2(tci)(OH)(H_2O)_3]1.5H_2O}が青緑色結晶として得られた。この化合物は、水酸化物イオン、カルボン酸と水の架橋による一次元鎖がtciにより連結された2次元構造を形成していた。この結晶を125°Cで加熱処理すると、無水物{[Cu_2(tci)(OH)]}の青色結晶が得られた。配位水の脱離により空いたサイトに隣接するカルボキシル酸素が配位することで、2次元シート間か連結されて3次元骨格構造へと変化した。この構造変化においては架橋している水も除かれるため、Cu(II)間の構造も大きく変わった。それに伴って、Cu(II)間の相互作用が強磁性的から反強磁性的に変化した。また、水蒸気にさらすと速やかにもとの構造、色、磁気特性を復元した。この構造変化は、単結晶相を保持したままsigle-crystal-to-single-crystalで進行した。脱水相は水のみを吸着した。このゲスト選択性には、カルボン酸架橋の開裂とゲストの配位を伴う吸着であり、かつpore sizeが小さいために、ゲストの立体効果と配位能が強く影響している。構造自由度の高い配位子 | KAKENHI-PROJECT-07F07055 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07F07055 |
不斉細孔を持つ配位高分子結晶の合成 | tciH_3を用いることで、単結晶のままゲスト応答による大きな構造変化を示すsoft crystal系の構築に成功した。今後は、化学的応答を利用したゲスト誘起キラリティやゲスト選択的な触媒能の発現が期待される。 | KAKENHI-PROJECT-07F07055 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07F07055 |
人工心肺を用いない心拍動下僧帽弁形成術式の開発 | 本研究では左室拡大・僧帽弁輪拡大に伴う僧帽弁閉鎖不全症に対し、人工心肺を用いず心拍動下に僧帽弁輪形成を行う術式の開発を行った。大動脈基部に接続する前尖弁輪と、房室間溝に接続する対側の後尖弁輪を大動脈基部右側から挟み、僧帽弁輪前後径を縮小させる弁輪形成器具を試作した。ブタ灌流心では、心不全に伴い左室は拡大をきたし、僧帽弁輪拡大を来たし、僧帽弁逆流を呈する。僧帽弁前後径は短縮することにより、僧帽弁接合は深くなり、逆流制御を認めた。本研究では左室拡大・僧帽弁輪拡大に伴う僧帽弁閉鎖不全症に対し、人工心肺を用いず心拍動下に僧帽弁輪形成を行う術式の開発を行った。大動脈基部に接続する前尖弁輪と、房室間溝に接続する対側の後尖弁輪を大動脈基部右側から挟み、僧帽弁輪前後径を縮小させる弁輪形成器具を試作した。ブタ灌流心では、心不全に伴い左室は拡大をきたし、僧帽弁輪拡大を来たし、僧帽弁逆流を呈する。僧帽弁前後径は短縮することにより、僧帽弁接合は深くなり、逆流制御を認めた。人工心肺を用いない心拍動下の心臓手術は、心表面を走行する冠状動脈バイパス術として一般化している。しかし、心筋梗塞による左室リモデリングのため、僧帽弁輪拡大を生じ、僧帽弁逆流を合併した症例には僧帽弁手術の併施が必要である。僧帽弁手術は直視下手術のため人工心肺を使用が不可欠となっている。しかし、症例の中には人工心肺使用が困難な症例があり、人工心肺を用いないで僧帽弁逆流制御の新術式が渇望される。本研究では左室拡大・僧帽弁輪拡大に伴う僧帽弁閉鎖不全症に対し、人工心肺を用いず心拍動下に僧帽弁輪形成を行い、僧帽弁逆流を制御する新規手術器具・術式の開発を行っている。平成19年度は、ブタ灌流心を用い、僧帽弁輪の解剖学的観察を行い、心臓外側からの僧帽弁輪へのアプローチ法を検討するとともに、ブタ灌流心に超高速度カメラを装着し、僧帽弁輪前後径短縮による弁輪形成術に伴う、僧帽弁の開閉状態を左室側から観察し、僧帽弁逆流制御を評価した。僧帽弁輪の前尖側は、大動脈基部に接続する左房前壁基部に該当し、大動脈基部の右側からのアプローチが可能である。左側からは冠動脈左主幹部があり、器具装着は困難である。対側の僧帽弁輪後尖側は房室間溝内に存在し、弁輪部には冠状動静脈が走行しているため、その頭側の左房からアプローチして、冠状動静脈血流を障害しない弁輪形成器具を必要とする。大動脈基部に接続する前尖弁輪と、房室間溝に接続する対側の後尖弁輪を左外側から挟み、僧帽弁輪前後径を縮小させる弁輪形成器具のデザインを進めている。ブタ灌流心による僧帽弁観察では、心不全に伴い左室は拡大をきたし、僧帽弁輪拡大と腱策tetheringのため、僧帽弁逆流を呈する。大動脈基部に接続する前尖弁輪と、房室間溝に接続する対側の後尖弁輪を外側から挟むことにより、僧帽弁前後径は短縮し、前後弁尖の接合領域は拡大を来たし、逆流制御を認めた。以上の観察から僧帽弁逆流制御は可能と判断できた。本研究では左室拡大・僧帽弁輪拡大に伴う僧帽弁閉鎖不全症に対し、人工心肺を用いず心拍動下に僧帽弁輪形成を行う術式の開発を行った。ブタ灌流心を用い、僧帽弁輪の解剖学的観察を行い、心臓外側からの僧帽弁輪へのアプローチ法を検討した。僧帽弁輪の前尖側は、大動脈基部に接続する左房前壁基部に該当し、大動脈基部の右側からのアプローチが可能であるため、大動脈基部に接続する前尖弁輪と、房室間溝に接続する対側の後尖弁輪を大動脈基部右側から挟み、僧帽弁輪前後径を縮小させる弁輪形成器具を試作した。ブタ灌流心では、心不全に伴い左室は拡大をきたし、僧帽弁輪拡大を来たし、僧帽弁逆流を呈する。僧帽弁輪は前後径、左右径ともに約10%の拡大を示し、左室側から超高速度カメラで僧帽弁を観察すると、弁輪径の拡大に伴い、僧帽弁の前尖・後尖の接合が浅くなり、僧帽弁中央部からの逆流を認めるようになった。大動脈基部に接続する前尖弁輪と、房室間溝に接続する対側の後尖弁輪を外側から挟むことにより、僧帽弁前後径は短縮し、前後弁尖の接合は深くなり、逆流制御を認めた。ブタ灌流心に超高速度カメラを装着し、僧帽弁輪前後径短縮に伴う僧帽弁の開閉状態を左室側から観察すると、僧帽弁輪の前後方向への短縮により僧帽弁逆流の制御が可能であり、装具の着脱により僧帽弁逆流の増悪を認めた。正中切開で施行する心臓手術では、僧帽弁輪へのアプローチは制限されるため、大動脈基部右側から左房天井へのアプローチと、房室間溝へのアプローチを同時に施行しなくてはならない。このため僧帽弁輪へのアプローチを容易にする手術支援システムの開発を行った。 | KAKENHI-PROJECT-19591622 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19591622 |
ITを援用した地形実体像のコミュニケーション促進手法に関する研究 | 前年度に引き続いて,地形実体視のコンテンツの作成・公開,地形実体像を組み込んだ地理教育教材の開発と授業実践を交えた検証をおこなったほか,研究成果を学会等で発表し,意見交換をおこなって,実体視を取り入れることの有効性や課題について議論することができた。1.地形実体視のコンテンツの作成・公開地形学に関する書籍,中学校・高校の地理や地学の教科書などを参考にしながら,国内外の典型的な地形について空中写真や数値標高データからアナグリフ画像を作成した。作成した実体視画像は,前年度作成のものと合わせて全部で23地域26枚となった。これらの画像は地理学習用の教材としてインターネットを通じて一般に公開した。2.地形実体像を組み込んだ教材開発と授業実践を交えた検証前年度の授業実践の成果を分析し,効果的な授業での取り入れ方について検討した。本年度は高等専門学校での正規の授業に加えて,中学生向けの公開講座でもアナグリフによる地形実体視を導入したほか,協力関係にある大学教員からの大学および中学校での実践内容の情報を詳細に受け,生徒の発達段階や教育内容の違いによる実体視の導入方法の違いについて検討・整理した。3.研究成果の発表と意見交換本研究の成果を,雑誌「地理」および「地図」において報告し,また,日本地理学会および日本国際地図学会において発表したほか,静岡県内の高校教員によるGIS勉強会で話題提供するなどした。それに加えて,前述のように成果品(画像コンテンツ)をインターネットを通じて積極的に公開した結果,多方面から反響があった。高校や大学教員から地理教育にアナグリフを導入した報告なども寄せられた。社会における地形実体視の活用の拡大,地形に関するコミュニケーションの促進に貢献することを目指して,同時に複数の人が実体像を見ることができ,それを通して地形の立体的な理解・認識を共有していくための手段としての実体視の手法について,以下の研究を行った。1.実体視の技法に関する比較検討裸眼実体視および実体鏡のほか,アナグリフ,レンチキュラー,3D対応液晶モニター等について情報を収集し,実際に試用して比較検討した。その結果,同時に複数の人が実体像を見ることへの対応,必要となる物品,画像作成の容易さなどの面で,アナグリフが最適であると判断できた。その一方で,色彩の再現性のほか,色覚バリアフリーへの対応など,アナグリフを利用する際の課題も明らかになった。2.地形実体視のコンテンツの作成地形学に関する書籍,中学校・高校の地理や地学の教科書などを参考にしながら,国内外の典型的な地形について空中写真やDEMデータからアナグリフ画像を作成した。これらの画像は地理学習用の教材としてインターネットを通じて一般に公開した。3.地形実体像を組み込んだ地理教育教材の開発岐阜県養老町(扇状地)および本巣市(根尾谷断層)を事例として,教材化のための現地調査を実施した。空中写真のアナグリフで地域全体をマクロな視点でとらえるとともに,人間が直接目にする事物や景観というミクロな視点も取り入れることが,地域の理解を深めるうえで非常に有効であることが,アナグリフ画像を持参しての現地調査によって予測できた。4.授業実践を交えた検証作成した地形のアナグリフ画像を勤務校の地理の授業に導入した。実体視が地形の学習に効果的であることのほか,実際の地域を箱庭感覚で実体視することができる面白さが学習への動機付けに有効であること,長時間見続けると目が疲れることへの配慮の必要性などが明らかになった。前年度に引き続いて,地形実体視のコンテンツの作成・公開,地形実体像を組み込んだ地理教育教材の開発と授業実践を交えた検証をおこなったほか,研究成果を学会等で発表し,意見交換をおこなって,実体視を取り入れることの有効性や課題について議論することができた。1.地形実体視のコンテンツの作成・公開地形学に関する書籍,中学校・高校の地理や地学の教科書などを参考にしながら,国内外の典型的な地形について空中写真や数値標高データからアナグリフ画像を作成した。作成した実体視画像は,前年度作成のものと合わせて全部で23地域26枚となった。これらの画像は地理学習用の教材としてインターネットを通じて一般に公開した。2.地形実体像を組み込んだ教材開発と授業実践を交えた検証前年度の授業実践の成果を分析し,効果的な授業での取り入れ方について検討した。本年度は高等専門学校での正規の授業に加えて,中学生向けの公開講座でもアナグリフによる地形実体視を導入したほか,協力関係にある大学教員からの大学および中学校での実践内容の情報を詳細に受け,生徒の発達段階や教育内容の違いによる実体視の導入方法の違いについて検討・整理した。3.研究成果の発表と意見交換本研究の成果を,雑誌「地理」および「地図」において報告し,また,日本地理学会および日本国際地図学会において発表したほか,静岡県内の高校教員によるGIS勉強会で話題提供するなどした。それに加えて,前述のように成果品(画像コンテンツ)をインターネットを通じて積極的に公開した結果,多方面から反響があった。高校や大学教員から地理教育にアナグリフを導入した報告なども寄せられた。 | KAKENHI-PROJECT-17700648 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17700648 |
白質線維束描出と皮質間機能的結合の融合による器質的脳疾患の描出 | マルチバンド励起を用いた高速拡散強調MRI撮影法を確立し、新しい拡散MRI解析法(NODDI)が利用可能となった。白質異方性を楕円体モデルで表す拡散テンソルに代わって、NODDIは神経細胞密度と軸索走行の多様性の2種類を独立変数で表示することで大脳皮質の微細構造を表現出来る。また、NODDIデータから同時に白質も従来より高い角度分解能を有する白質線維束描出(q-ball imaging)が可能となった。京都大学に設置された3テスラMRI装置にて拡散テンソル画像のシークエンスをマルチバンド撮影法を用いたもの、比較目的にて従来のパラレルイメージングを用いたものを作成した。健常被験者および種々の神経変性疾患や脳腫瘍症例、脳血管障害症例において撮影を行い約30例の拡散テンソルデータ、安静時脳機能MRIデータを得た。第52回米国神経放射線学会、第100回北米放射線学会において情報収集を行った。マルチバンド法は従来拡散テンソル画像の撮影に用いられているスピンエコー型エコープラナー画像の歪み低減に用いられているパラレルイメージング法と併用した場合、共にジオメトリーファクターと呼ばれるノイズ増幅因子の影響を受けて画像のノイズやエラーが増加したため、歪み補正の方法を評価するためパラレルイメージングのみ併用のエコープラナー撮影とマルチバンド法のみ併用のエコープラナー撮影を行い、両者の違いを比較することにした。マルチバンド法に対する歪み補正の方法として先行研究ではSPM8ソフトウェアを用いたwarpingによるMNI spaceへの標準化と、FSLソフトウェアのコンポーネントであるtopupを用いた歪み補正を比較検討した結果、SPM8は標準化のみにしか用いることはできないがtopupは個別症例において歪み補正を独立して行え、個別症例におけるtract specific analysisに応用することができるため、まずはマルチバンド法にtopupを用いた歪み補正とマルチバンド法を用いないパラレルイメージング法による歪み補正を検討することに決定し、現在解析中が進行中である。また、安静時脳機能MRIについては現在得られたデータにより解析方法の確立を現在検討中で、今後は筋萎縮性側索硬化症を始めとした神経変性疾患における線維間連絡の変化を拡散テンソル画像との比較により解析する予定である。昨年度に収集した拡散テンソルデータ、安静時脳機能MRIデータを元にマルチバンド撮影法と従来のパラレルイメージングの比較を行い、錐体路を構築する拡散テンソルtractographyの一部のパラメータにて線維束の左右差がマルチバンド撮影法のほうが少ないという所見は得られたが、本検討は従来から用いられているFACT (fiber assignment by means of contiguous tracking)法という手法を用いており、交差線維の存在する部位において描出が低下する欠点がありtractographyの手法改善が必要と考えられた。topup, eddyプログラムを実装しているFSLソフトウェアライブラリに含まれるprobabilistic tractographyの方法、また別のソフトウェアライブラリであるMRtrix3で開発されているprobabilistic tractographyに加えてconstrained spherical deconvolutionといった新たな手法を用いて、交差線維部の描出低下を克服した状態における線維束描出能の比較検討を現在行っている。拡散強調画像の応用として近年、NODDI (neurite orientation dispersion and density imaging)が開発されているが、拡散強調画像の撮影を追加することでテンソルとNODDIの両方の解析が可能となるため、このNODDIの撮影方法を決定して正常ボランティアおよび神経変性疾患、てんかん患者での撮影を開始した。NODDIは神経細胞密度と軸索走行の収束度を各ボクセル毎に独立して計算可能であり、次年度はボランティアと患者群における神経細胞および線維束密度の相違を検討して神経画像診断におけるNODDIの有効性を検証する予定である。当初のマルチバンド撮影法とパラレルイメージングの比較検討はtractography解析手法の追加が必要となり遅れている。一方、正常ボランティアと患者群における新たな拡散強調画像解析であるNODDIの撮影、データ集積を開始した。拡散強調画像や安静時fMRIにおけるマルチバンド法の有用性自体は商用ベースでも確立されつつあるため、前年度に撮影を開始したNODDIの撮影方法を用いた正常ボランティアおよび神経変性疾患、てんかん患者のデータを利用してDSI studioでの線維束描出を開始した。NODDIについても神経細胞密度(neurite density)や軸索走行の収束度(orientation dispersion)の分布と線維束描出を関連づけて解析を進めている。マルチバンド励起を用いた高速拡散強調MRI撮影法を確立し、新しい拡散MRI解析法(NODDI)が利用可能となった。白質異方性を楕円体モデルで表す拡散テンソルに代わって、NODDIは神経細胞密度と軸索走行の多様性の2種類を独立変数で表示することで大脳皮質の微細構造を表現出来る。また、NODDIデータから同時に白質も従来より高い角度分解能を有する白質線維束描出(q-ball imaging)が可能となった。マルチバンド法+TOPUPによる補正とパラレルイメージング法の比較検討論文の投稿には至っていないためマルチバンドEPIと従来のパラレルイメージング撮影法の比較に加え、NODDIを用いた神経変性疾患、てんかん症例の病変局在診断や質的診断の向上を目指す。中枢神経画像診断昨年来収集した先行データ検討を元にして、本年(平成27年)4月に筋萎縮性側索硬化症を中心とした神経変性疾患におけるマルチバンド法を用いた拡散テンソル画像を用いた画像診断の前向き観察研究を開始すべく、当院倫理委員会に申請を行った。今後は先行データを元にしたマルチバンド法の有用性に関する検討を早期にまとめ、神経変性疾患を対象とした前向き観察研究へと移行していく予定である。 | KAKENHI-PROJECT-26461824 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26461824 |
白質線維束描出と皮質間機能的結合の融合による器質的脳疾患の描出 | この前向き診断観察研究では、本年7月より当院にて稼動を開始する独シーメンス社製の最新3テスラMRI装置(SIEMENS Prisma)を従来の3テスラMRI装置(SIEMENS Trio)に代えて用いる予定となっている。このSIEMENS Prismaは、米国ミネソタ大学とアイオワ大学の共同研究であるhuman connectome project (ヒト全脳の白質線維連絡解析計画)の為に同社で特別に設計された専用MRIと同等の強力な傾斜磁場発生装置を備えており、本装置を用いて前向きに健常者および神経変性疾患患者の拡散テンソル画像データの収集を行うことは病態解明に大きく寄与するものと思われる。本年度はMacコンピューターを導入したが、本年度の解析に用いたワークステーションとしては同一研究科内に存在する既設のLinuxコンピューターをホストワークステーションとして共同利用してMacはリモート操作用端末へと変更した為、予定よりもスペックの低いマシンで対応可能となった為。解析の為に導入予定であったワークステーション装置が、他プロジェクトにて取得した機器を共同利用する事で本年度は解析可能であり、導入を見送ったため。次年度はLinuxワークステーションの能力増強により、パイプライン化された拡散強調画像のデータ解析処理能力の向上を目指す共同利用している該当プロジェクトが本研究の最終年度を待たずに終了しており共同利用は本研究の中途年次で不可能となるため、次年度以降により性能が向上したワークステーションの導入を目指すこととした。 | KAKENHI-PROJECT-26461824 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26461824 |
ITの成果への知的財産権の保護・競争政策に関する理論的・実証的研究 | IT技術革新の果実を利用する情報通信技術分野では、製品の生産には互いに連関性をもつ複数の技術革新の成果が必要である。一般に、これら互いに連関性をもつ複数の技術革新に関する特許は別々の企業や発明家が持っている可能性が高い。それゆえ、各技術の特許の所有者が自己以外の技術使用の排除権を過剰に行使すると、それらを利用する製品の生産が著しく制限されるため、技術知識の利用が阻害され技術革新自体が停滞する。このような場合には、特許権の保護範囲やライセンシングに対する競争政策上のスタンスが技術開発インセンティブに果たす役割はきわめて大きい。そこで本研究では、Cournot複占財市場で競争する複占企業が、ともに利用しなければ製品が生産できないが、或いは1つの技術よりも2つの技術利用が著しく生産費用を削減するという意味で、「互いに補完的な」複数の技術の開発競争する経済理論モデルを構築し、(クロス)ライセンシング制度を明示的に組み込み、常識に反し(クロス)ライセンシング制度の存在が複占企業の「互いに補完的な」複数の技術開発のインセンティブを弱めることもあることを明らかにした。さらに、このモデルに、政府の特許保護範囲の程度を表すパラメータを明示的に組み込み、製品生産に「互いに補完的な」複数の技術が必要なケースでは「プロパテント政策の強化」は、複占市場での技術開発投資競争を阻害することを明らかにした。また、同質財市場で競争する二企業が、それぞれ互いに完全補完的な二技術ABの特許権を一つずつ保有するとき、特許権の侵害による損害賠償を明示的に組み込んだモデルを構築し、技術A、Bと累積性をもつ新技術Cをめぐって展開される開発競争を分析した。このとき、損害賠償額の増加は、新技術開発競争均衡での投資インセンティブを低下させることを示し、事前的なクロスライセンス契約の有用性の根拠を示した。IT技術革新の果実を利用する情報通信技術分野では、製品の生産には互いに連関性をもつ複数の技術革新の成果が必要である。一般に、これら互いに連関性をもつ複数の技術革新に関する特許は別々の企業や発明家が持っている可能性が高い。それゆえ、各技術の特許の所有者が自己以外の技術使用の排除権を過剰に行使すると、それらを利用する製品の生産が著しく制限されるため、技術知識の利用が阻害され技術革新自体が停滞する。このような場合には、特許権の保護範囲やライセンシングに対する競争政策上のスタンスが技術開発インセンティブに果たす役割はきわめて大きい。そこで本研究では、Cournot複占財市場で競争する複占企業が、ともに利用しなければ製品が生産できないが、或いは1つの技術よりも2つの技術利用が著しく生産費用を削減するという意味で、「互いに補完的な」複数の技術の開発競争する経済理論モデルを構築し、(クロス)ライセンシング制度を明示的に組み込み、常識に反し(クロス)ライセンシング制度の存在が複占企業の「互いに補完的な」複数の技術開発のインセンティブを弱めることもあることを明らかにした。さらに、このモデルに、政府の特許保護範囲の程度を表すパラメータを明示的に組み込み、製品生産に「互いに補完的な」複数の技術が必要なケースでは「プロパテント政策の強化」は、複占市場での技術開発投資競争を阻害することを明らかにした。また、同質財市場で競争する二企業が、それぞれ互いに完全補完的な二技術ABの特許権を一つずつ保有するとき、特許権の侵害による損害賠償を明示的に組み込んだモデルを構築し、技術A、Bと累積性をもつ新技術Cをめぐって展開される開発競争を分析した。このとき、損害賠償額の増加は、新技術開発競争均衡での投資インセンティブを低下させることを示し、事前的なクロスライセンス契約の有用性の根拠を示した。IT技術革新の果実を利用する情報通信技術分野では、製品の生産には互いに連関性をもつ複数の技術革新の成果が必要である。一般に、これら互いに連関性をもつ複数の技術革新に関する特許は別々の企業や発明家が持っている可能性が高い。それゆえ、各技術の特許の所有者が自己以外の技術使用の排除権を過剰に行使すると、それらを利用する製品の生産が著しく制限されるため、技術知識の利用が阻害され技術革新自体が停滞する。このような場合には、特許権の保護範囲やライセンシングに対する競争政策上のスタンスが技術開発インセンティブに果たす役割はきわめて大きい。そこで本年度、本研究では以下の理論的研究成果を得た。1.Cournot複占財市場で競争する複占企業が、ともに利用しなければ製品が生産できないか、或いは1つの技術よりも2つの技術利用が著しく生産費用を削減するという意味で、「互いに補完的な」複数の技術の開発競争する経済理論モデルを構築した。2.1で構築したモデルに、(クロス)ライセンシング制度を明示的に組み込んで、我々の常識的推測とは異なり、(クロス)ライセンシング制度の存在が複占企業の「互いに補完的な」複数の技術開発のインセンティブを弱めることを明らかにした。3.また、1で構築したモデルに、政府の特許保護範囲の程度を表すパラメータを明示的に組み込み、「プロパテント政策の強化は、技術開発インセンティブを高める」という常識的には妥当な推論が成立するかどうかを吟味した。その結果、製品生産に必要な技術革新が1つの場合は、政府のプロパテント政策の強化は特許保護範囲を広げ、複占市場での技術開発投資競争は促進するが、製品生産に「互いに補完的な」複数の技術が必要なケースでは「プロパテント政策の強化」は、複占市場での技術開発投資競争を阻害することを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-14530066 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14530066 |
ITの成果への知的財産権の保護・競争政策に関する理論的・実証的研究 | 近年、知的財産権の保護は世界的にきわめて重要な政策となってきている。また、現代では一つの財の生産に、非常に多くの技術の使用が必要であるという「技術の補完性」が存在する場合が多い。加えて、こうした財に関するイノベーションの遂行には、しばしば既存の技術の利用も必要とされる(累積性)。研究発表した第一論文「補完的技術革新下での損害賠償額と研究開発インセンティブ」では、同質財市場で競争する二企業が、それぞれ互いに完全補完的な二技術A,Bの特許権を一つずつ保有するとき、技術A、Bと累積性をもつ新技術Cをめぐって展開される開発競争を分析した。両企業とも技術Cの開発には他企業が特許権を持つ技術の利用が不可欠である一方で、無断利用すると特許権の侵害により損害賠償の責を負う。このとき、損害賠償額の増加は、新技術開発競争均衡での投資インセンティブを低下させることを示し、事前的なクロスライセンス契約の有用性の根拠を示した。また競争均衡での投資インセンティブの、各企業の新技術開発の結果実現する複占利潤、瞬間割引率に関する比較静学を行った。その結果、財市場での競争が激しくてかつ開発の成功確率が低いとき、政府のプロ・パテント政策の強化は企業の投資を促進し、社会厚生を増加させることを示した。 | KAKENHI-PROJECT-14530066 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14530066 |
障害者を位置づけた哲学的人間学の研究 | (1)この研究により、障害者(障害を持つ人)の存在と生命自体とを、強力に肯定するQOL(生命の質)の新たな本質的カテゴリーを捉えることができた。(2)また、新たな優生学、すなわち商業的優生学に関する本質的カテゴリーを把握し、またこの優生学の新たな諸問題も提示した。その結果、障害者を尊重しまたケアするオリジナルな観点をも捉えることができた。同時に、新自由主義的な不平等概念を批判することができ、また、能力や他者の援助をも機会概念の内に含み得る新たな機会の平等も特定することができた。(3)こうした主題に関する研究によって、障害者差別に反対する議論は、徐々に、新たなものに革新されてきている。というのは、本研究は、かの差別の内的な本質-つまり、能力不全やハンディキャップの近代主義的観念-とこうした差別の原因を明らかにしてきたからである。(4)通常の倫理学と障害者を位置づけた新たな哲学的人間学との関係を明らかにすることを通じては、また、二種類の「何故」を問う倫理的問いに関する根本的な観念を提供することができた。(5)この二種類の「何故」とは、事柄の原因を問う「何故」と、事柄の正当化もしくは非正当化を図る「何故」である。(1)この研究により、障害者(障害を持つ人)の存在と生命自体とを、強力に肯定するQOL(生命の質)の新たな本質的カテゴリーを捉えることができた。(2)また、新たな優生学、すなわち商業的優生学に関する本質的カテゴリーを把握し、またこの優生学の新たな諸問題も提示した。その結果、障害者を尊重しまたケアするオリジナルな観点をも捉えることができた。同時に、新自由主義的な不平等概念を批判することができ、また、能力や他者の援助をも機会概念の内に含み得る新たな機会の平等も特定することができた。(3)こうした主題に関する研究によって、障害者差別に反対する議論は、徐々に、新たなものに革新されてきている。というのは、本研究は、かの差別の内的な本質-つまり、能力不全やハンディキャップの近代主義的観念-とこうした差別の原因を明らかにしてきたからである。(4)通常の倫理学と障害者を位置づけた新たな哲学的人間学との関係を明らかにすることを通じては、また、二種類の「何故」を問う倫理的問いに関する根本的な観念を提供することができた。(5)この二種類の「何故」とは、事柄の原因を問う「何故」と、事柄の正当化もしくは非正当化を図る「何故」である。社会思想や哲学史等々の諸思想を、生命倫理学琴ど障害者を直接扱う分野に生かす今年度の研究目的に関しては、公刊した論文「新自由主義は史上最大の不平等主義」に記したように、思想上での大きな問題が障害者問題でも無視しえないことを示し、同時にベッドサイドストーリーの限界を示すこことによって、一定の成果があった。また、生殖医療に関わっては、中部哲学会シンポジウム提題者として「商業的優生学への対抗」と題する報告の中で、重度障害者へのケアの人間存在全般にとっての意義を明らかにしながら、障害者問題をより広い視野の下で捉えることを提起して一定の評価を得た。この内容は原稿化して『中部哲学会紀要』に納められることになっている。近代主義的発想の問題を、障害者擁護に関わって把握する点では、この科学研究費補助金によって面談することのできた研究者から思想史上での貴重な文献・アドバイスを得たことによって、研究が進行中である。加えて、本年4月から実施予定の障害者福祉における支援費支給制度や公立障害者福祉施設の社会福祉法人への移管問題を扱うことによって、法的・制度的側面が個々の障害者の生存・生活次元に如何に大きな影響を及ぼすかを、具体的かつ原理的に捉えることができた。この成果は、公刊した論文「公設公営障害者施設の社会福祉法人への委譲」で、その詳細を論じた。本年度の研究計画の内、(1)障害者のコミュニケーションの在り方については、重度障害者施設での若干の経過観察及び資料調査による若干の進展があっただけだが、そうした中でも私がここ十年来提唱してきた「能力の共同性」という把握が重度障害者のコミュニケーション及びその存在自体の豊かさに繋がることは確認された。また研究計画の(2)障害者の存在意義を捉えた人間観・社会観については、『中部哲学会紀要』に公表した論文「生殖医療と倫理」---なおこの論文は前年度の中部哲学会シンポジウムでの私の報告内容でもある---で明示したように、現代においても優生学(特に商業的優生学)が出生前診断を嚆矢とする生殖医療の進展に大きく関わっているため、重度障害者が根幹においては排除の対象でしかないことが改めて実証された。なお、現在進められている新生児医療に関するガイドライン(積極的医療停止を含む)作りに関して意見を求められた際にも、本研究の成果を援用しながら、このガイドラインについても、死なせる論理と倫理の問題性を優生学の浸透の問題として把握すべきことを提唱した。加えて、研究計画の(3)の障害者倫理学の体系構想に確実な基礎を与える点については、単に重度障害者に限定して考察すべきではない、という観点から教育基本法改正問題や経団連の新ビジョンにも示されている新たな新自由主義的人間観を批判する中で、真に社会的弱者を含み得る議論(社会法的議論など)は社会・文化全体の健全な維持・発展にとっても意義深いことを、様々な側面から示した。 | KAKENHI-PROJECT-14510009 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14510009 |
障害者を位置づけた哲学的人間学の研究 | 1.(1)人間の生命に関わる事柄、特に生死の決定が社会-文化的にしかありえないことを明らかにし、人間生命の把握を巡って具体的とされることの多い生物学的生命が、実際には抽象の産物でしかないことを提示した。(2)あわせて、生命把握を巡る具体と抽象の両者の関連の既存の把握の難点を示し、社会-文化と生物-自然との一体化としての現実の生命の把握こそが、障害者等の弱者を真に位置づけた人間の把握には必須であることを、生命の中の社会・文化という把握や「能力の共同性」論や優生思想批判論等々を主張しつつ提示した。2.(1)研究代表者の既存の平等論及び障害者論の内、障害者の発達保障研究に資する内容として、「能力の共同性」論を示すと共に、現段階での弱者を位置づけた人間学の豊富化には、平等概念を同一性と非同一性との関連という枠組みと、反差別・反抑圧という枠組みの二つから同時に捉える必要があることを論証した。(2)機会の平等論を、少なくとも、反前近代という意味での他者危害禁止を遵守させて他者の妨害を排する次元での機会、能力主義的差別を温存したままでの経済的また政治的等々の差別禁止という意味の機会均等の次元での機会、更には、個別能力に相応しい成長のためのケアや教育態勢等々を整えるという次元での機会の、三次元で理解し、この理解を種々の社会科学や人文科学において定着させるべきこと論証した。3.不平等の跋扈という現状をみすえつつ、(1)法[権利]観の問題として社会権[法]と市民権[法]との関連、特に平等論が社会権[法]抜きでは成立しないこと、(2)現代日本の不平等論=「平等」論という構図の問題性や近年北米で盛んな「運-平等主義」などを生かして、平等主義に基づく人間学の端緒を示した。 | KAKENHI-PROJECT-14510009 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14510009 |
滞日ベトナム難民の『定住化』促進のための支援方法-3カ国の国際比較をつうじて | 本研究の目的は、スウェーデン在住のベトナム難民(滞瑞ベトナム難民)に対する調査により、彼らの「定住化」のプロセスや「定住化」促進のために利用した支援やその効果を明らかにする事であり、また既知の知見とともに、日本在住のベトナム難民(滞日ベトナム難民)の「定住化」を促進させるための支援方法を開発することである。研究の進捗に従い「定住化」よりも「統合」がより適切と判断したため、本研究では「統合」という概念を用い、滞瑞・滞日ベトナム難民の生活の様相を明らかにすることとした。本研究では主に先行研究の検討をつうじ「統合」概念の内容を検討した(2017年度)。また生活史を中心とする滞瑞ベトナム難民に対する調査(20162018年度)及び調査結果の分析をつうじた「統合」に対する促進・阻害要因の明確化を行った(2018年度)。「統合」概念について「滞日難民が、平時活動する社会において周囲の人々と同等の権利義務を有し、かつ日本での生活にあたって必須な有形無形の要素を取得した上で、周囲の人々と交流しながら生活できる状態、及びこのような生活の過程」と定義した。また調査結果を分析した結果、滞瑞ベトナム難民の生活には「統合」に関係する要素が含まれており、それらは【住環境】【就職・就労】【就学・学習】【言語サポート】、さらにこれらに対して影響を与える【後押し】【立ち止まり】の6カテゴリーが含まれていることを明らかにした。またこれらに含まれる要素の大部分は「統合」促進に寄与するものであるが、わずかに「統合」に対する阻害的な要因も確認された。本研究では以上の点を論文として公刊した。滞日ベトナム難民に対する支援方法に関し、本研究の結果及び既知の知見からインフォーマルサポートで支援しうる部分と、フォーマルサービスが必要な部分を明確にして支援することと、諸サポートの創出の必要性が示唆された。今年度は、当初の予定どおりスウェーデンに在住の難民7名に対するインタビュー調査を行った。インタビュー調査では、主に彼らの定住化のプロセス(スウェーデン定住の理由、スウェーデン到達初日の滞在先、スウェーデン語・スウェーデン文化及び生活様式の教育の学習状況、就職状況〔就職時のアプローチの仕方・職業選択の理由・職場での様子〕、転居の有無、近隣〔同胞及びスウェーデン人〕との関係性など)について聴取した。インタビュー調査の結果は現段階は分析中だが、日本の難民の定住化のプロセスと比べた場合、管見の限り、少なくとも公的な支援(特に言語や文化・生活様式に関する教育)と、就職状況ついて相違があると推測される。日本の場合、難民に対する公的な支援は、定住初期の段階の6ヶ月程度であるが、スウェーデンの場合は最長で2年間と長期にわたっている。そのためか、言語力が低いことで就職に困難が生じたケースは今回のインタビューでは確認できなかった。また就職も、一部外国人ゆえに差別的な扱いをされた旨の回答があったものの、日本の場合と異なり、多くの場合難民の希望や技能を生かせる職に就いている(就いていた)ことが今回のインタビューで明らかになった。今後は、今回インタビューした内容を、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)で分析し、スウェーデンにおける難民の定住化プロセスを概観する。その上で、聴取が不足していると思われる部分を明確化し、2017年度夏に予定しているインタビュー調査のためのインタビューガイドに反映させる。2016年度は、主にベトナム難民に対するインタビュー調査(前半部分)とその分析作業の実施を予定していた。インタビュー調査は実施したが、一方分析作業は途上であるため、「やや遅れている」と評価する。本年度は、昨年度に引き続きスウェーデン在住のベトナム難民(3名。いわゆるボートピープルのみならず、ボートピープルに呼び寄せられた家族も含む。以降総称してベトナム難民、とする)に対するインタビュー調査を行った。調査結果は現在分析中であるが、スウェーデン政府及び自治体などが提供する諸支援が効果的に機能しており、ベトナム難民の円滑な定住に結びついていることが調査結果から読み取れた。その一方で、日本と同様に日常の生活場面において差別的な扱いを受けているなど、微細な部分で困りごとが生じていることが明らかになった。さらに、差別を含む日常生活における困りごとは、ベトナム難民の周囲の専門家(例:在籍している学校の教員)に相談したり、自助努力で解決しようとしていることも読み取れた。但しソーシャルワーカーのような社会福祉専門職は活用については確認できなかった。なおこのインタビューの実施と同時に、ベトナム難民が集う寺院ともコネクションを得ることがでできた。次年度も調査を実施する予定だが、このようなコネクションをつうじて調査を進めたい。また今年度は、本研究の根幹となる「統合」概念について、先行研究のレビューをつうじて明らかにした。レビューの結果「滞日難民が、平時活動する社会において周囲の人々と同等の権利義務を有し、かつ日本での生活にあたって必須な有形無形の要素を取得した上で、周囲の人々と交流しながら生活できる状態、及びこのような生活の過程」と定義した。「研究実績の概要」のとおり、本年度もインタビュー調査を行うことができた。また今後につながるコネクションも得ることができたが、分析作業が途中であるため、この区分とした。本研究の目的は、スウェーデン在住のベトナム難民(滞瑞ベトナム難民)に対する調査により、彼らの「定住化」のプロセスや「定住化」促進のために利用した支援やその効果を明らかにする事であり、また既知の知見とともに、日本在住のベトナム難民(滞日ベトナム難民)の「定住化」を促進させるための支援方法を開発することである。 | KAKENHI-PROJECT-16K04190 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K04190 |
滞日ベトナム難民の『定住化』促進のための支援方法-3カ国の国際比較をつうじて | 研究の進捗に従い「定住化」よりも「統合」がより適切と判断したため、本研究では「統合」という概念を用い、滞瑞・滞日ベトナム難民の生活の様相を明らかにすることとした。本研究では主に先行研究の検討をつうじ「統合」概念の内容を検討した(2017年度)。また生活史を中心とする滞瑞ベトナム難民に対する調査(20162018年度)及び調査結果の分析をつうじた「統合」に対する促進・阻害要因の明確化を行った(2018年度)。「統合」概念について「滞日難民が、平時活動する社会において周囲の人々と同等の権利義務を有し、かつ日本での生活にあたって必須な有形無形の要素を取得した上で、周囲の人々と交流しながら生活できる状態、及びこのような生活の過程」と定義した。また調査結果を分析した結果、滞瑞ベトナム難民の生活には「統合」に関係する要素が含まれており、それらは【住環境】【就職・就労】【就学・学習】【言語サポート】、さらにこれらに対して影響を与える【後押し】【立ち止まり】の6カテゴリーが含まれていることを明らかにした。またこれらに含まれる要素の大部分は「統合」促進に寄与するものであるが、わずかに「統合」に対する阻害的な要因も確認された。本研究では以上の点を論文として公刊した。滞日ベトナム難民に対する支援方法に関し、本研究の結果及び既知の知見からインフォーマルサポートで支援しうる部分と、フォーマルサービスが必要な部分を明確にして支援することと、諸サポートの創出の必要性が示唆された。前述のとおり、日本とスウェーデンにおける難民の定住化のプロセスを比較した場合、いくつかの相違の存在が想定される。今後は分析を進め、2017年度に予定している第2回目の調査に向け、インタビューガイドの改定を行う。その上でインタビュー調査を再度行う。なお課題として、インタビュー対象者を見つける作業に難しさがあるが、研究者が持つ現地のネットワークをつうじ探す予定である。本年度は、これまで得たインタビューデータの分析を進めつつ、夏季に最終のインタビュー調査を行う。その後分析を行い、本年度内に論文として報告したい。次年度使用額の発生は、研究の遅れによって生じたものではなく、会計処理の都合によって生じたものである。次年度使用額が生じたのは、航空賃等について、当初予算との相違が生じたためであり、次年度のインタビュー調査の際に用いる予定である。今年度同様、主に、スウェーデンにおけるインタビュー調査に要する費用(交通・宿泊費及び通訳に要する費用)として用いる予定である。 | KAKENHI-PROJECT-16K04190 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K04190 |
Ras依存的non-apoptoticプログラム細胞死の制御に関わる分子機構 | 本研究課題ではRas依存的non-apoptoticプログラム細胞死のin vitroモデル実験系を用いてRas活性化からnon-apoptotic細胞死に至るシグナル伝達の制御機構について検討を行っている。これまでにRas依存的non-apoptotic細胞死の制御にRhoファミリータンパク質が関与している可能性を明らかにしてきたが、これとは別に種々の細胞内シグナル伝達因子に対する阻害剤等を用いてこのような細胞死の制御に関わる分子のさらなる同定を試みた。その過程で、これまでにRas依存的に活性化されることが明らかにされており、かつnon-apoptoticプログラム細胞死への関与も指摘されているc-Jun N-terminal kinase(JNK)に着目し、Ras依存的non-apoptotic細胞死制御への関与の可能性について検討を行った。その結果、Rasによりnon-apoptotic細胞死が誘導される過程でJNKが活性化されていること、ならびに同じRasでも細胞死誘導能を持たない不活性型のRasによってはJNKが活性化されていないことが確認された。次いでこのようなRas依存的なJNKの活性化がRasによるnon-apoptotic細胞死誘導に必要か否かを明らかにするためJNKの特異的阻害薬を用いて検討を行ったところ、JNKの活性抑制の程度と平行する形でRas依存的細胞死が抑制されることが明らかになった。これらの所見はJMKがRas依存的non-apoptoticプログラム細胞死の細胞死シグナル伝達において重要な役割を果たしている可能性を示唆するものである。Ras依存的non-apoptoticプログラム細胞死のin vitroモデル実験系を用い、Rasからnon-apoptotic細胞死に至るシグナル伝達の制御機構について検討を行った。これまでの解析結果からRas依存的に制御されるnon-apoptoticプログラム細胞死はミトコンドリア膜透過性亢進の関与しないプログラム細胞死であることが判明している。またRasの特定のエフェクターを選択的に活性化できるRas変異体ならびに各エフェクターに対する特異的阻害剤を用いた検討の結果からはPI3キナーゼを介する細胞内シグナル伝達経路が細胞死のシグナル伝達に重要な役割を果たしていることが示唆された。一方、薬理学的阻害剤を用いたスクリーニング実験の結果、Rhoファミリー蛋白質を特異的に不活化するToxin BがRasによる細胞死誘導を抑制することから、Ras依存的非アポトーシス性プログラム細胞死の制御にRho, Rac, Cdc42などのRhoファミリー蛋白質が関わっている可能性も考えられるようになってきた。そこでRhoファミリーの各メンバーについて優性抑制変異体ならびに恒常活性型変異体を作成し、これらの変異体の発現がRasによる細胞死誘導にどのような影響を与えるか検討した。その結果、まずRacがRas依存的細胞死の重要な制御因子であることが明らかになった。すなわちRacの優性抑制変異体の発現はRasによる細胞死誘導を抑制し、Racの恒常活性型変異体の発現はRasによる細胞死誘導を促進した。さらに恒常活性型変異体Cdc42の発現もRasによる細胞死誘導を促進したが、この促進効果がRac依存的であることも判明した。また、恒常活性型変異体RhoAの発現はRasによる細胞死誘導を抑制した。これらの結果はRhoファミリー蛋白質がRasによるnon-apoptotic細胞死の制御において中心的な役割を果たしている可能性を示唆している。本研究課題ではRas依存的non-apoptoticプログラム細胞死のin vitroモデル実験系を用いてRas活性化からnon-apoptotic細胞死に至るシグナル伝達の制御機構について検討を行っている。これまでにRas依存的non-apoptotic細胞死の制御にRhoファミリータンパク質が関与している可能性を明らかにしてきたが、これとは別に種々の細胞内シグナル伝達因子に対する阻害剤等を用いてこのような細胞死の制御に関わる分子のさらなる同定を試みた。その過程で、これまでにRas依存的に活性化されることが明らかにされており、かつnon-apoptoticプログラム細胞死への関与も指摘されているc-Jun N-terminal kinase(JNK)に着目し、Ras依存的non-apoptotic細胞死制御への関与の可能性について検討を行った。その結果、Rasによりnon-apoptotic細胞死が誘導される過程でJNKが活性化されていること、ならびに同じRasでも細胞死誘導能を持たない不活性型のRasによってはJNKが活性化されていないことが確認された。次いでこのようなRas依存的なJNKの活性化がRasによるnon-apoptotic細胞死誘導に必要か否かを明らかにするためJNKの特異的阻害薬を用いて検討を行ったところ、JNKの活性抑制の程度と平行する形でRas依存的細胞死が抑制されることが明らかになった。これらの所見はJMKがRas依存的non-apoptoticプログラム細胞死の細胞死シグナル伝達において重要な役割を果たしている可能性を示唆するものである。 | KAKENHI-PROJECT-18790216 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18790216 |
カーボンナノチューブの可溶化と光機能化 | カーボンナノチューブは次世代のナノカーボン材料として、光・電子機能が注目を集めている。しかしながら、フラーレンが単一分子であることに対して、カーボンナノチューブは長さ、口径、キラリティの異なる混合物であり、また有機溶媒などに不溶であるために、化学的な研究はまだ開始されたばかりである。特にポルフィリンなどのドナー分子との光励起状態での相互作用の解明は、カーボンナノチューブの光機能化の観点から重要である。そこでカーボンナノチューブを有機溶媒に可溶化することにより、その光物性を解明することを試みた。同時にカーボシナノチューブの化学修飾により、カーボンナノチューブの単分散化も期待できる。まず、カーボンナノチューブを酸処理によって、酸化的に切断した。酸化されることにより、短くなったカーボンナノチューブは末端および側壁にカルボキシル基を有する。そこで、長鎖のアルキルアミンと反応させることで、アミド結合でアルキルアミンを縮合させた。この段階で有機溶媒に対する分散性を向上することができた。さらに溶解性を向上させるために、プラート法で側壁に長鎖のデルギル基を導入することを試み、トルエン、クロロホルムなどの有機溶媒に対して、高い溶解性を得ることができた。,化学修飾されたカーボンナノチューブの構造は核磁気共鳴法、ラマン分光法、赤外分光法、紫外可視吸収分光法などで同定できた。また、同様にプラート法を用いることで、ポルフィリンをカーボンナノチューブの側面に化学修飾することに成功した。カーボンナノチューブは次世代のナノカーボン材料として、光・電子機能が注目を集めている。しかしながら、フラーレンが単一分子であることに対して、カーボンナノチューブは長さ、口径、キラリティの異なる混合物であり、また有機溶媒などに不溶であるために、化学的な研究はまだ開始されたばかりである。特にポルフィリンなどのドナー分子との光励起状態での相互作用の解明は、カーボンナノチューブの光機能化の観点から重要である。そこでカーボンナノチューブを有機溶媒に可溶化することにより、その光物性を解明することを試みた。同時にカーボシナノチューブの化学修飾により、カーボンナノチューブの単分散化も期待できる。まず、カーボンナノチューブを酸処理によって、酸化的に切断した。酸化されることにより、短くなったカーボンナノチューブは末端および側壁にカルボキシル基を有する。そこで、長鎖のアルキルアミンと反応させることで、アミド結合でアルキルアミンを縮合させた。この段階で有機溶媒に対する分散性を向上することができた。さらに溶解性を向上させるために、プラート法で側壁に長鎖のデルギル基を導入することを試み、トルエン、クロロホルムなどの有機溶媒に対して、高い溶解性を得ることができた。,化学修飾されたカーボンナノチューブの構造は核磁気共鳴法、ラマン分光法、赤外分光法、紫外可視吸収分光法などで同定できた。また、同様にプラート法を用いることで、ポルフィリンをカーボンナノチューブの側面に化学修飾することに成功した。 | KAKENHI-PROJECT-16655014 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16655014 |
秩序状態の局所的空間構造と巨視的位相の結合による量子輸送現象 | 局所構造の変化が、磁場下において横熱伝導度を誘起する現象(熱ホール効果)について研究を行った。熱ホール効果とは、熱の流れに対して垂直に磁場を与えたとき、この両者に直交する方向に温度差が生じる現象である。熱流がフォノンによって運ばれる場合は、特に「フォノンホール効果」と呼ばれる。元々、非磁性絶縁体Tb3Ga5O12で観測された現象であるが、絶縁体Ba3CuSb2O9 (BCSO)においても同様な現象が報告されている。BCSOは、Cu2+イオンの蜂の巣構造を有し、約50Kのスピンギャップを持ち、磁気長距離秩序を示さない。従って、50K以下の低温領域における熱輸送は、フォノンによって支配されると考えられる。つまり、BCSOの熱ホール効果は、フォノンホール効果だということになる。それでは、BCSOにおけるフォノンホール効果の起源は何か?本研究では、この問いに対する機構を示した。重要だったのは、BCSOに内在する「組み残しスピン」であった。組み残しスピンは、Cu2+六角形の中心に位置する不純物Cu2+スピンで、低温の熱伝導率を支配している。組み残しスピンを含む六角形のスピンクラスターに、ヤーン・テラー歪みが加わると四重極対称の電荷再配置が起こることを見出した。これは、BCSOにおけるスピン-フォノン結合を与え、スピンクラスターによるフォノンのスピンフリップ散乱が可能となる。これこそがBCSOにおけるフォノンホール効果の起源だと考えられる。また、銅酸化物高温超伝導体の磁気励起スペクトルの計算を行い、正孔ドープと電子ドープの違いを示した。スピンをデバイスに応用しようとするスピントロニクス研究において、重要な物理量が磁気(スピン)の流れであるスピン流である。将来は、スピンだけで動作するデバイスも可能になるかもしれないが、現在はスピントロニクス素子と従来のエレクトロニクス素子とを組み合わせて利用する段階にある。そのため、スピン流と電流との相互変換が起こるスピンホール効果はとても重要である。磁性体のダイナミクスによる時間的・空間的変化を誘起する上でも、スピン流が重要になる。そこで、銅に極めて少量の遷移金属酸化物が添加された系のスピンホール効果の遷移金属依存性を系統的に調べた。密度汎関数法を用いて母体の銅と遷移金属との重なり積分を求め、アンダーソン模型にハートリーフォック近似を用いて電子相関の効果を取り込み、軌道の占有率を計算することで、スピンホール角を計算した。その結果、イリジウムや白金において、電子相関の効果が顕著であることが分かった。また、モット絶縁体(反強磁性)とドープされたモット絶縁体(金属)の2層系の磁気励起スペクトルの形状変化に関する研究も行った。反強磁性層のスピン波に対する自己エネルギーを、層間の飛び移り積分2次の範囲で求めた。金属層の電子相関はグッツヴィラー近似で扱った。その結果、金属層で電子相関が効く場合には、スピン波の線幅が著しく増大する場合があることが分かった。この成果は、磁性体と金属の2層構造を用いたスピン流注入の効率を左右する要因の一つを与えていると言える。反強磁性体と金属の接合において、反強磁性体中スピン波の緩和が、金属中の電子相関により増大する可能性を理論的に明かにした。この成果は、磁性体のダイナミクスを誘起する上で不可欠なスピン流注入の効率が、磁性体と接合を作る金属やそれらの界面の電子状態によって大きく左右される可能性を示唆している。スピントロニクス研究は応用面のみならず、従来見過ごされてきた基礎物性の問題を提起している。初期の磁気抵抗効果を中心とした研究から、現在は磁気の流れであるスピン流を利用する研究が主流となっている。スピン流生成に寄与するのは、磁性体の一様な磁気励起である。スピン流は,高周波素子への応用にも、新たな道を開こうとしている。そこで重要になるのは、磁化の時間変化である。このような磁化の等方的な時間変化は、強磁性共鳴によって観測される。一方、スピントロニクスの磁気デバイスにおいて、磁性体は微細加工された薄膜の形で利用されることが多い。ここで、薄膜がバルクとは異なった性質となり得る点に注意が必要となる。実際、強磁性体(CoFeB)薄膜の強磁性共鳴において、線幅が温度と共に減少する振舞いが観測された。強磁性共鳴の線幅の要因の一つとして、磁化運動の緩和項(ギルバート緩和)が寄与していると考えられる。しかし、強磁性共鳴の線幅が、温度と共に細くなることは、ギルバート緩和だけでは説明が出来ない。一方、共鳴エネルギーの測定により、膜厚が不均一であることも分かった。この非一様性によって磁気異方性が不均一になり、それが共鳴エネルギーの変化となって観測されるのである。本研究では、この膜厚の不均一性に着目した。不均一な膜厚による共鳴エネルギーの変化は、磁化の縦成分によるものである。それに対して、共鳴線幅の温度依存性は、不均一性を伴った磁化の横揺らぎによるものであることを明らかにした。この結果は、強磁性体界面および磁気異方性の制御が、スピントロニクスデバイス設計にとって重要であることを示している。これまで、2次元系や薄膜の磁性体における磁気励起の計算を進めてきた。初年度は、反強磁性体やフェリ磁性体と金属との接合において、電子相関によって磁気励起の線幅が増大し得ることを示した。 | KAKENHI-PROJECT-15K05192 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K05192 |
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