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宮崎県の方言動態および方言使用と話者心理に関する研究 | 宮崎県の宮崎市(日向南部方言)、延岡市(日向北部方言)、都城市(薩隅方言)をフィールドに多人数調査および文法現象に関する詳細調査をおこなった。その結果から方言動態の現況を記述し、現在宮崎県で起きている方言変化のメカニズムを分析した。さらに話者のパーソナリティ(志向性)が方言使用とどのように関係しているかを分析するためのデータベースを作成した。宮崎県の宮崎市(日向南部方言)、延岡市(日向北部方言)、都城市(薩隅方言)をフィールドに多人数調査および文法現象に関する詳細調査をおこなった。その結果から方言動態の現況を記述し、現在宮崎県で起きている方言変化のメカニズムを分析した。さらに話者のパーソナリティ(志向性)が方言使用とどのように関係しているかを分析するためのデータベースを作成した。本研究では、宮崎県の宮崎市(日向南部方言)、延岡市(日向北部方言)、都城市(薩摩・諸県方言)をフィールドに多人数調査および重点調査を行い、方言動態の現況を記述し、現在起きている方言変化のメカニズムを分析する。さらに、話者心理(志向性)が方言使用にどのような影響を与えているかを明らかにする。21年度の計画では、84名(各世代12×7世代)を対象とした延岡市多人数調査(面接調査)を主な事項としていたが、97名という、予定以上の話者に対して調査できた。これで、同一調査票における宮崎市(19年度終了)、都城市(17年度終了)、延岡市の宮崎県の3大都市調査が完了したことになる。本調査は宮崎県方言に関する最大規模(人数および項目数)の調査であり、過去最大の世代差・地域差のデータを得ることができた。宮崎県は方言研究のもっとも遅れた地域とされ、特に世代差調査に関する報告が少ない状況であった。そのような状況において、本調査の意義は大きいといえる。各都市の調査結果は、既にコーディングおよびエクセルを用いたデータ入力が済んでおり、今後はグラフ化等を行うことにより、データベース化が完成する。このデータベースをさらに分析することによって、宮崎県方言の言語動態の主要部分を明らかにすることができるものと考えられる。また、話者心理(話者イメージ・言語イメージ)に関する調査も行っており、社会心理言語学における最先端の研究テーマにおける分析を行うことも可能となった。現在、「研究実施計画」の記載以上のデータを収集できている状態である。宮崎県方言は、先学の貴重な研究はあるものの、他県と比べると研究報告は非常に少ない。それでも九州全域で170地点(宮崎県で22地点)について調査した九州方言学会編(1967)『九州方言の基礎的研究』、国立国語研究所編(1989-2006)『方言文法全国地図』などにより、概観できるようになった。しかし、各県ではかなり詳しい言語地図等が作成されているのが現状である。また世代差等の言語動態に関する調査は、中学生とその保護者を対象に30項目調査した加藤正信他編(2003)『宮崎県方言における地域差・世代差』もあるが、通信調査という性質と項目数および話者数の少なさから、十分な成果を得られたとはいえない。本研究は、宮崎県内で約70地点、200項目を対象とした、宮崎県でもっとも大規模な地域差調査といえる。本調査では、ほぼ全域が無アクセント域といわれていた地域に東京式アクセント域があることや、過去の報告で区別がないといわれたアスペクトによる「ヨル」「チョル」の区別も確認できた。宮崎市・延岡市・都城市の多人数調査は、宮崎県で初めての大規模な言語動態調査と言える。各都市で約130名行っているが、この世代差調査と地域差調査を合わせて分析することで宮崎方言の実態が見えてくる。世代差調査には志向性項目等も含まれており、同じ地域で使用されるバリエーションが、どのような志向性と結びつくかという最新の研究分野の報告も行う。宮崎方言の研究だけでなく、社会言語学的にも重要な研究と言える。宮崎県の宮崎市日向南部方言)、延岡市(日向北部方言)、都城市(薩隅方言)をフィールドに多人数調査および文法事象に関する詳細調査を行う。そこから方言の現況および動態を記述し、現在起きている方言変化のメカニズムを分析する。さらに話者の志向性(パーソナリティ)が方言使用とどのように関係しているかを分析するためのデータベースを作成する。これらが、本研究の主な目的であった。多人数調査では予定よりも多いデータを収集でき、本研究は当初の目的を概ね達成できたと考えられる。宮崎県の方言研究は、先学の貴重な研究はあるものの、他県と比べると研究報告が非常に少ない。そのような状態で、早野を代表とする研究グループが2005年2011年にかけて地域差調査を行ってきた。その結果と本研究の調査を合わせることで、宮崎県方言の地域差および方言動態が把握できるようになった。調査報告の少ない宮崎県方言において、本研究の果たした意義は大きい。宮崎県方言でも伝統方言は急速に消滅してきており、ネオ方言化が進んでいる。たとえば同意要求表現おいて伝統方言では「ネ・ガネ」で表現していたが、活躍層では形容詞「コツネ」、動詞「ゴツゼン」などの否定疑問で表現されるようになり、若年層では「コッセン」「クナイ」が主流となっている。「ゴツセン」を共通語訳したネオ方言形「ヨーニシナイ」も発生している。コッセンはコツネとゴツセンのコンタミネーションによる新方言形、クナイは東京新方言形である。若年層においては、話者の志向性と関係しながら、それぞれの形態が使用されている。 | KAKENHI-PROJECT-21520474 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21520474 |
宮崎県の方言動態および方言使用と話者心理に関する研究 | 宮崎県方言は、伝統方言形、新方言形、ネオ方言形が入り交じり非常に複雑化してきているが、本研究により、その実態の一部が明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-21520474 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21520474 |
三酸素同位体組成を指標に用いた陸水環境中の硝酸の総同化速度定量法開発 | 湖沼水中の硝酸の三酸素同位体組成が、大気からの硝酸沈着速度と、湖沼内の硝化速度の相対比を反映する性質を利用して、溶存硝酸の総同化速度や、湖沼内の総硝化速度を、簡便かつ高確度に定量化する新手法の開発に挑戦した。また従来からの培養法に基づく硝酸同化速度も観測して比較することで、従来法との整合性や、従来法の問題点を評価した。各湖沼で初夏と晩夏の二回ずつの観測を行い、硝酸濃度と三酸素同位体組成の鉛直分布から、各湖沼における年平均の硝酸同化速度や、夏季の硝酸同化速度を算出した。また河川経由の硝酸の流入や流出が無視出来ないと考えられる湖沼では、その効果を実測値から補正した。湖沼等の閉鎖的な水系内に存在する硝酸の三酸素同位体組成の平均値は、その系に対して系外から大気沈着を経て供給される硝酸と、系内の硝化を経て供給される硝酸の供給速度比を反映する。本研究では、湖沼水中の硝酸の三酸素同位体組成の持つこの特質を、北海道の支笏湖や倶多楽湖といった貧栄養湖や、滋賀県の琵琶湖といった中栄養湖の窒素循環解析に応用して、個々の湖沼における硝酸の総同化速度の簡便かつ高確度の定量化に挑戦した。また硝酸の総同化速度の算出に際して流入・流出河川の影響を補正する必要があるので、支笏湖や琵琶湖では、流入・流出河川水における硝酸の三酸素同位体組成の実測も同時進行で進めた。さらに従来法である培養法に基づく硝酸同化速度も同時に観測して比較し、従来法との整合性や、従来法の問題点を評価した。本手法を用いることで、従来法に比べて観測に必要な労力を格段に減らしつつ、より高確度の定量値が得られるようになった。硝酸の同化速度や平均滞留時間の観測を広く一般化・普遍化することが出来たので、今後は環境科学系の幅広い分野に大きな発展をもたらすことが期待される。湖沼水中の硝酸の三酸素同位体組成が、大気からの硝酸沈着速度と、湖沼内の硝化速度の相対比を反映する性質を利用して、溶存硝酸の総同化速度や、湖沼内の総硝化速度を、簡便かつ高確度に定量化する新手法の開発に挑戦した。また従来からの培養法に基づく硝酸同化速度も観測して比較することで、従来法との整合性や、従来法の問題点を評価した。各湖沼で初夏と晩夏の二回ずつの観測を行い、硝酸濃度と三酸素同位体組成の鉛直分布から、各湖沼における年平均の硝酸同化速度や、夏季の硝酸同化速度を算出した。また河川経由の硝酸の流入や流出が無視出来ないと考えられる湖沼では、その効果を実測値から補正した。支笏湖および倶多楽湖においては初夏と晩夏の二回分、また十和田湖で晩夏の一回分の解析を終えた。また琵琶湖では平成24年度末に初春の観測を行った。最深点直上を観測点として、表層は5から20m間隔、深層は25から50m間隔で最深層まで湖水を各層採水するともに、CTD計やクロロフィル計、溶存酸素計等を用いた機器観測も同時に行った。また支笏湖と琵琶湖に関しては、流入・流出河川についても、同時に解析を行った。NO3-等の栄養塩分析用試料については、採取後ただちに湖畔で濾過作業を行い、冷蔵保存した。また濾紙も回収し、粒子状有機体窒素(PON)等の分析に供した。また培養用試料には湖畔でただちに15Nトレーサーを適量添加し、光量調整用の袋に入れて、湖畔の湖水中で最大24時間の培養を行った。培養は15NO3-添加区画に加えて、15NH4+添加、さらに無添加の各区画も作成し、同時に培養した。培養終了後ただちに濾過作業を行ってPONを濾紙上に回収した。支笏湖および倶多楽湖における解析から、湖内に存在するNO3-のΔ17O値の平均値は、その系に対して系外から大気沈着を経て供給されるNO3-と、系内の硝化を経て供給されるNO3-の供給速度比を反映することが証明され、各湖沼におけるNO3-の総同化速度を、簡便かつ高確度に定量することが出来た。また従来法である培養法に基づくNO3-同化速度も同時に観測して比較し、従来法との整合性を評価した。十和田湖を除いて当初予定の観測を終え、また主要な分析を終えた。また当初予定では平成25年度に実施予定だった琵琶湖の観測を、平成24年度中から開始することが出来たため。平成24年度3月に観測を開始した滋賀県の琵琶湖で、前年度と同様の観測・分析・解析を行う。但し琵琶湖では水平方向にも大きな不均一が存在することが予想されるため、北湖3点と南湖1点の計4測点において各層採水観測を行い、これを元に湖水の加重平均Δ17O値や、総NO3-量の算出を行う。また流入・流出河川の数も膨大であるため、代表的な20程度の河川を選んで採水を行う。湖水の採水観測は、京都大学生態学研究センターの共同利用を利用する予定で、既に6月および8月分の観測を申請済みである。さらに結果の解析に際して、琵琶湖では同化に加えて、脱窒でNO3-が湖水中から除去されている可能性があるため、この点に関しても、評価を行う。なお、琵琶湖は初年度の湖沼に比べてNO3-濃度は高く、また総一次生産量も大きい。湖水NO3-のΔ17 | KAKENHI-PROJECT-24651002 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24651002 |
三酸素同位体組成を指標に用いた陸水環境中の硝酸の総同化速度定量法開発 | O値は、初年度の各湖沼に比べて、格段に小さい可能性がある。そこで琵琶湖では、同一の湖水試料に対して、NO3-のN2O化と、そのΔ17O値測定を多数回繰り返し、測定精度を向上させる予定である。新製品の発売予定に伴い前年度に購入を保留した溶存酸素計を購入し、観測に活用する。また琵琶湖を中心とした観測の旅費、試料採取や分析に必要な消耗品費に充てる。 | KAKENHI-PROJECT-24651002 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24651002 |
川崎病類似Nod1リガンド誘発冠動脈炎におけるオートファジー機構の解析 | 川崎病類似Nod1リガンド誘発冠動脈炎マウスモデルでのオートファジー機構について検討を行った。まず、オートファジー亢進薬であるラパマイシンにより冠動脈炎が改善することが明らかとなった。さらに、ヒト冠動脈内皮細胞でも炎症性サイトカイン(IL-6、IL-8)産生が抑制された。ラパマイシンはmTOR阻害薬の一種であり、他のmTOR阻害薬でも同様の実験を行ったところ、他のmTOR阻害薬でもマウス、細胞で同様に冠動脈炎の改善とサイトカイン産生の抑制結果が得られた。以上から、オートファジー亢進薬であるmTOR阻害薬が川崎病の新規治療法となりうると考えられた。川崎病類似Nod1リガンド誘発冠動脈炎マウスモデルでのオートファジー機構について検討を行った。まず、オートファジー亢進薬であるラパマイシンにより冠動脈炎が改善することが明らかとなった。さらに、ヒト冠動脈内皮細胞でも炎症性サイトカイン(IL-6、IL-8)産生が抑制された。ラパマイシンはmTOR阻害薬の一種であり、他のmTOR阻害薬でも同様の実験を行ったところ、他のmTOR阻害薬でもマウス、細胞で同様に冠動脈炎の改善とサイトカイン産生の抑制結果が得られた。以上から、オートファジー亢進薬であるmTOR阻害薬が川崎病の新規治療法となりうると考えられた。当教室において開発したNod1リガンドによる川崎病類似冠動脈炎マウスモデルに対して、オートファジー亢進薬であるラパマイシンを投与することにより冠動脈炎が抑制され、オートファジー抑制薬であるバフィロマイシンA1を投与すると冠動脈炎が増悪することを確認した。さらに、ヒト冠動脈内皮細胞を用いた細胞実験でも、ラパマイシンがサイトカイン産生を抑制することを確認した。最終年度では、まず、ラパマイシンがmTOR阻害薬であることから、他のmTOR阻害薬でも同様の結果が得られるかについて検討を行った。すると、他のmTOR阻害薬でも同様の冠動脈炎抑制結果を得ることができた。mTOR阻害薬1世代といわれるラパマイシン以外のmTOR阻害薬でも同様の効果が得られたことは、今後の臨床応用へ向けた重要な結果であると考えられた。小児感染免疫 | KAKENHI-PROJECT-25461623 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25461623 |
サステイナブルな物質生産を目指したプレニル基転移酵素の構造・機能解析 | プレニル基転移酵素(PT)によって修飾された天然化合物は母骨格化合物にはない強力な生物活性を示すものがある。PTのうち、インドールへプレニル基を修飾可能なプレニル基転移酵素(IPT)は、非天然化合物の生合成研究や結晶構造解析が進められているものの、IPTによる効率的な物質生産へは応用できていない。そこで、本研究では、IPTの中でもこれまで構造解析がされておらず、またその機能についても詳細が不明であった新規IPTの立体構造や基質・酵素反応生成物を同定する。さらに、既知IPTと比較することで基質特異性を発揮する構造要素を解明し、効率的に有益物質を生産可能な変異型IPTの創出を目指す。本目的を達成するために、平成29年度までの問題点であった精製試料の不安定性を解消するため、平成30年度では、タンパク質の安定性を向上させるためのコンストラクトの作成と試料調製法を確立した。さらに、この確立した調製方法を用いて、IPTの基質特異性の解析をLC-MSを用いて実施した。タグの種類やTEVプロテアーゼ等による精製後のタグ切断、HisタグをN末端からC末端へと付け替えることで、タンパク質の凝集を抑えることに成功し、4°Cで数日安定な試料を調整することに成功した。さらに、安定な試料を用いてIPTの基質特異性をLC-MSを用いて確認した。昨年度までは、試料の安定性に問題があったために反応生成物の生成量は非常に微量であったが、安定な資料を用いた結果、昨年までに確認できていたインドールを基質とした反応生成物以外にも、トリプタミンのインドール環に対しても、本IPTはファルネシル基を付加できIPTであることを明らかにし、現在は、いくつかのTrp含有ポリペプチドに対する活性測定を行っている。プレニル基転移酵素(PT)によって修飾された天然化合物は強力な生物活性を獲得することがある。PTのうち、多様な基質を触媒可能なインドールPT(IPT)は、非天然化合物の生合成研究と結晶構造解析が進められているが、IPTによる効率的な有益物質の生産へは応用できていない。そこで、本研究は、IPTの中でも基質特異性の異なるいくつかのIPTの立体構造・酵素反応の相違点を明らかにし、IPTの普遍的な基質認識機構と、基質特異性を発揮する構造的特徴を解明することで効率的に有益物質を生産可能な変異型IPTの創出を目指す。本目的を達成するために、平成28年度は、複数のIPTの同定、大腸菌発現系の構築、精製法の確立と結晶化を行った。その結果、次世代ゲノムシーケンサーやデータベースより5種類のIPT候補遺伝子を得ることに成功した。これらの候補遺伝子はN末端HisタグまたはC末端Hisタグ融合タンパク質として発現可能な大腸菌発現用プラスミドのpQE80LまたはpET22bへ組み込み、発現用大腸菌株へ形質転換した。その結果、4種類の候補遺伝子からHisタグ融合IPTを調製することに成功した。得られた各IPTはIPTの濃度、結晶化温度や結晶化条件を変えて条件検討を行い結晶化を試みた。その結果、2種類のIPTより初期結晶が得られたが、現在のところ、4オングストローム程度の分解能を示す結晶しか得られていない。より高分解能なデータを取得できる良質な結晶を調製するために結晶化条件を再検討している。本年度の達成目標は、少なくとも1種類の新規IPTの構造決定、および、新規IPTのプレニル基転移反応解析であった。以下に、2項目に分け、それぞれの事項に対する達成度を自己評価した。1.立体構造解析において、2種類の新規IPTの初期結晶を得ることができた。しかし、各結晶の分解能は4オングストローム未満であり、酵素反応機構の詳細な理解に必要な分解能は達成できていない。現在、高分解能結晶の取得に向けて条件検討を行っており、目標より進捗はやや遅れていると評価した。2.新規IPTの基質特異性の解析のために、酵素反応条件、HPLCの分離条件の検討を行い、これらの反応・分析条件はおおよそ決定できた。しかし、結晶構造解析に向けた試料調製および結晶化に注力したため、目標である反応生成物の解析等は実施できておらず、目標より進捗はやや遅れていると評価した。プレニル基転移酵素(PT)によって修飾された天然化合物は母骨格化合物にはない強力な生物活性を示すものがある。PTのうち、インドールへプレニル基を修飾可能なプレニル基転移酵素(IPT)は、非天然化合物の生合成研究や結晶構造解析が進められているものの、IPTによる効率的な物質生産へは応用できていない。そこで、本研究では、IPTの中でもこれまで構造解析がされておらず、またその機能についても詳細が不明であった新規IPTの立体構造や基質・酵素反応生成物を同定する。さらに、既知IPTと比較することで基質特異性を発揮する構造要素を解明し、効率的に有益物質を生産可能な変異型IPTの創出を目指す。本目的を達成するために、平成29年度では、前年度に放線菌より同定した新規IPTの基質特異性や結晶構造解析に向けた結晶化を行った。既に平成28年度においてIPTの初期結晶を得ていた。しかし、精製条件を変更しただけでは高分解能結晶を得ることができなかったため、平成29年度はN末端HisタグからC末端HisタグやN末端GSTタグへの変更とタグを切断可能な酵素認識サイトの付加を試みた。 | KAKENHI-PROJECT-16K18501 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K18501 |
サステイナブルな物質生産を目指したプレニル基転移酵素の構造・機能解析 | しかし、タグの変更により不溶化や発現量の低下が見られ、IPTのNまたはC末端の数残基を欠損させたN末端Hisタグ欠損体を調製と結晶化を進めている。一方、IPTの酵素反応解析では、基質と予想されるインドールとファルネシル二リン酸を用いた酵素反応条件を検討した。その結果、20°C、pH 8.0条件下で最も効率よく生成物が産生された。さらに、IPTの基質特異性を確認するために、複数の基質候補化合物を用いて酵素反応を試験した。現在まで、L-Trpやトリプタミンなどのインドール環を持つ化合物に対して本IPTはファルネシル基を付加できず、当初の推測どおり本IPTが基質特異性IPTである可能性を示す結果を得ることに成功している。本年5月に現在の所属へ異動し、また、研究室の立ち上げに関わったため、当初予定していた計画よりも実際の進捗状況は遅れ気味である。各種実験機器の導入や研究環境の整備、遺伝子組換え申請等が受理され、現在は研究室の立ち上げがほぼ終了し、概ね実験は軌道に乗り始め、H29年度に完了予定だったIPTの酵素反応解析は当初予定に近い進捗状況まで遅れを取り戻す事ができている。プレニル基転移酵素(PT)によって修飾された天然化合物は母骨格化合物にはない強力な生物活性を示すものがある。PTのうち、インドールへプレニル基を修飾可能なプレニル基転移酵素(IPT)は、非天然化合物の生合成研究や結晶構造解析が進められているものの、IPTによる効率的な物質生産へは応用できていない。そこで、本研究では、IPTの中でもこれまで構造解析がされておらず、またその機能についても詳細が不明であった新規IPTの立体構造や基質・酵素反応生成物を同定する。さらに、既知IPTと比較することで基質特異性を発揮する構造要素を解明し、効率的に有益物質を生産可能な変異型IPTの創出を目指す。本目的を達成するために、平成29年度までの問題点であった精製試料の不安定性を解消するため、平成30年度では、タンパク質の安定性を向上させるためのコンストラクトの作成と試料調製法を確立した。さらに、この確立した調製方法を用いて、IPTの基質特異性の解析をLC-MSを用いて実施した。タグの種類やTEVプロテアーゼ等による精製後のタグ切断、HisタグをN末端からC末端へと付け替えることで、タンパク質の凝集を抑えることに成功し、4°Cで数日安定な試料を調整することに成功した。さらに、安定な試料を用いてIPTの基質特異性をLC-MSを用いて確認した。昨年度までは、試料の安定性に問題があったために反応生成物の生成量は非常に微量であったが、安定な資料を用いた結果、昨年までに確認できていたインドールを基質とした反応生成物以外にも、トリプタミンのインドール環に対しても、本IPTはファルネシル基を付加できIPTであることを明らかにし、現在は、いくつかのTrp含有ポリペプチドに対する活性測定を行っている。平成28年度の実施状況を踏まえ、平成29年度は以下の通り研究を推進する方策を取る。1.高分解能結晶を調製する目的で、4種類のHisタグ融合IPTについて、タグの切断や、タグ結合部位を変更することでより良質な結晶を調製する。この結晶を用いてIPTのX線結晶構造および、IPT-基質複合体結晶構造を決定する。2.条件検討済みの精製条件を用いて、in vitro酵素反応で得られた酵素反応生成物を単離精製し、化学構造の決定を進める。 | KAKENHI-PROJECT-16K18501 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K18501 |
自己抗原クリプティクエピトープを中心とした全身性エリテマトーデス病因の解明 | 全身性エリテマトーデス(Systemic lupus erythematosus、SLE)は自己抗体の産生などの免疫学的異常を特徴とする慢性全身性疾患である。その病因に関わる因子のひとつとしてT細胞の異常な感作が挙げられる。自己抗原に対するT細胞の反応が観察されたり、マウスでは自己抗原のクリプティックなエピトープが自己反応性T細胞の活性化に関与しているなどの報告がある。これまで、我々は患者において末梢血中にオリゴクローナルなT細胞の増殖があることを報告しているが、これらのT細胞の対応抗原は明らかでない。本研究ではクリプティックなエピトープも含め、SLE急性増悪時に集積するT細胞のエピトープ(抗原ペプチド)を同定するために1個のT細胞からT細胞受容体のα鎖およびβ鎖遺伝子をクローニングする方法を開発した。これにより、患者体内に実際に集積しているT細胞のT細胞受容体が容易に再構築されると考えられる。また、それをプローブとしてペプチドライブラリーをスクリーニングすれば抗原ペプチドの同定が可能となる。そのためにMHCクラスIとともに抗原ペプチドがファージ上に発現されたライブラリーの作成をめざし、まず、実際にMHCクラスI分子遺伝子をβ2-マイクログロブリン遺伝子に接続し、一本鎖蛋白としてファージ上に発現されうることを確認した。現在、1個のT細胞からクローニングしたT細胞受容体の再構築と実際に使用可能なライブラリーを構築を行っている。全身性エリテマトーデス(Systemic lupus erythematosus、SLE)は自己抗体の産生などの免疫学的異常を特徴とする慢性全身性疾患である。その病因に関わる因子のひとつとしてT細胞の異常な感作が挙げられる。自己抗原に対するT細胞の反応が観察されたり、マウスでは自己抗原のクリプティックなエピトープが自己反応性T細胞の活性化に関与しているなどの報告がある。これまで、我々は患者において末梢血中にオリゴクローナルなT細胞の増殖があることを報告しているが、これらのT細胞の対応抗原は明らかでない。本研究ではクリプティックなエピトープも含め、SLE急性増悪時に集積するT細胞のエピトープ(抗原ペプチド)を同定するために1個のT細胞からT細胞受容体のα鎖およびβ鎖遺伝子をクローニングする方法を開発した。これにより、患者体内に実際に集積しているT細胞のT細胞受容体が容易に再構築されると考えられる。また、それをプローブとしてペプチドライブラリーをスクリーニングすれば抗原ペプチドの同定が可能となる。そのためにMHCクラスIとともに抗原ペプチドがファージ上に発現されたライブラリーの作成をめざし、まず、実際にMHCクラスI分子遺伝子をβ2-マイクログロブリン遺伝子に接続し、一本鎖蛋白としてファージ上に発現されうることを確認した。現在、1個のT細胞からクローニングしたT細胞受容体の再構築と実際に使用可能なライブラリーを構築を行っている。本研究はヒト自己免疫疾患のプロトタイプとされる全身性エリテマトーデス(SLE)の病因解明のため、自己抗原のクリプティクエピトープに対する活性化T細胞が存在するか否かおよび自己抗原クリプティクエピトープ反応性T細胞が実際に生体内でクローナルに増殖しているか否かを検討する。最近、我々はTCRβ鎖遺伝子の配列解析から、SLE患者末梢血中にはオリゴクローナルなT細胞の増殖があることを見いだしたので(Int.Immunol.)、対象自己抗原を52kD蛋白やカルレティクリンなどのSS-A関連蛋白に絞らす、上記SLE患者の生体内で増殖しているT細胞の認識する抗原全般について検討することとした。そのために、今年度行った増殖T細胞クローンの解析ではSLEの急性増悪の前後で増殖T細胞のクロノタイプが変わってしまうこと(論文作成中)、および急性増悪時にはCD4陽性T細胞のクローナルな増殖が著しいこと(論文作成中)を発見した。この急性増悪時に出現するT細胞の対応抗原を広く検索する目的で、当該T細胞のTCRを再構築を目指した。具体的には単一細胞からT細胞受容体遺伝子を増幅する方法を確立した。現在、この方法を用い、当該T細胞のT細胞受容体を蛋白レベルで再構築することを試みている。来年度はこれを用いて対応自己抗原を同定し、クリプティクエピトープに対する反応性を含め、自己抗原T細胞エピトープを検討する予定である。これまで全身性エリテマトーデスの免疫学的異常に関わる因子のひとつとしてT細胞の異常な感作が報告されている。また、自己抗原に対するT細胞の反応が観察されたり、マウスでは自己抗原のクリプティックなエピトープが自己反応性T細胞の活性化に関与しているなどの報告がある。これまで、我々は患者において末梢血中にオリゴクローナルなT細胞の増殖があることを報告しているが、これらのT細胞の対応抗原は明らかでない。本研究ではクリプティックなエピトープも含め、全身性エリテマトーデス急性増悪時に集積するT細胞のエピトープ(抗原ペプチド)を同定するために1個のT細胞からT細胞受容体のα鎖およびβ鎖遺伝子をクローニングする方法を開発した。これにより、患者体内に実際に集積しているT細胞のT細胞受容体が容易に再構築されると考えられる。また、MHCクラスIとともに抗原ペプチドがファージ上に発現されたライブラリーの作成をめざし、まず、実際にMHCクラスI分子遺伝子をβ2-マイクログロブリン遺伝子に接続し、一本鎖蛋白としてファージ上に発現されうることを確認した。 | KAKENHI-PROJECT-09670496 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09670496 |
生物分子モーターの構造・機能の1分子動態解析研究 | 1)ミオシンVのプロセッシブ運動:ひよこ脳より抽出精製したミオシンVのカルモジュリンを蛍光標識した牛脳カルモジュリンと部分置換する方法により、個々のミオシンVを蛍光顕微鏡で可視化することに成功した。アクチンフィラメントを機能を損なわずにガラス基板に固定する方法を開発した。これらに基づき、アクチンフィラメント上を個々のミオシンVが長距離アクチンから解離せずに滑り運動すること、すなわち高度にプロセッシブであることの直接的な証明を世界で初めて与えた。Run Length、1分子滑り速度のイオン強度依存性、最大ATPase活性を決定した。1分子滑り速度は最大1um/sec、最大ATPase活性は2.5/secであった。これらの値より、1ATPの分解で平均400nm滑ることを示唆した。レーザートラップ法ですでに観察されているステップサイズが40nm程度であることから、1ATPの加水分解で10ステップ滑ることになる。極めてルースな化学・力学カップリングであることが示唆された。このカップリングの直接的な証明は今後の大きな課題である。2)ミオシンIIの力学特性とATPase反応との定量的関係:筋肉のミオシンIIによって起こされるアクチンフィラメントの滑り運動の速度、力発生の大きさがATPase反応のキネティクスとがどのように関係しているかは、1950年代からの大きなテーマの一つである。それ故、これは多くの研究者によって研究されてきたが、はっきりした答えが見出せないまま半世紀が経った。この重要問題を解決すべく、滑り運動速度、発生張力を様々な条件で測定し、また、対応するATPase活性を測定した。膨大なデータを集積し、また滑り運動の現象論的なモデルを構築し、その結果、極めて美しく単純な定量的な関係を見出すことに成功した。この関係は我々のデータばかりでなく、過去に世界のいくつかの研究室で発表されたデータをも包括的に説明した。筋肉研究の歴史に残る研究成果と自負している。1)ミオシンVのプロセッシブ運動:ひよこ脳より抽出精製したミオシンVのカルモジュリンを蛍光標識した牛脳カルモジュリンと部分置換する方法により、個々のミオシンVを蛍光顕微鏡で可視化することに成功した。アクチンフィラメントを機能を損なわずにガラス基板に固定する方法を開発した。これらに基づき、アクチンフィラメント上を個々のミオシンVが長距離アクチンから解離せずに滑り運動すること、すなわち高度にプロセッシブであることの直接的な証明を世界で初めて与えた。Run Length、1分子滑り速度のイオン強度依存性、最大ATPase活性を決定した。1分子滑り速度は最大1um/sec、最大ATPase活性は2.5/secであった。これらの値より、1ATPの分解で平均400nm滑ることを示唆した。レーザートラップ法ですでに観察されているステップサイズが40nm程度であることから、1ATPの加水分解で10ステップ滑ることになる。極めてルースな化学・力学カップリングであることが示唆された。このカップリングの直接的な証明は今後の大きな課題である。2)ミオシンIIの力学特性とATPase反応との定量的関係:筋肉のミオシンIIによって起こされるアクチンフィラメントの滑り運動の速度、力発生の大きさがATPase反応のキネティクスとがどのように関係しているかは、1950年代からの大きなテーマの一つである。それ故、これは多くの研究者によって研究されてきたが、はっきりした答えが見出せないまま半世紀が経った。この重要問題を解決すべく、滑り運動速度、発生張力を様々な条件で測定し、また、対応するATPase活性を測定した。膨大なデータを集積し、また滑り運動の現象論的なモデルを構築し、その結果、極めて美しく単純な定量的な関係を見出すことに成功した。この関係は我々のデータばかりでなく、過去に世界のいくつかの研究室で発表されたデータをも包括的に説明した。筋肉研究の歴史に残る研究成果と自負している。 | KAKENHI-PROJECT-12030211 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12030211 |
ロドコッカス・エクイの病原性プラスミドがコードする蛋白の感染と免疫における役割 | これまでの研究成果を要約すると、(1)本菌には強毒株(マウスLD_<50>=10^6)と無毒株(LD_<50>>10^8)が存在する、(2)強毒株は菌体表層に15-17kDa抗原を発現する、(3)強毒株は15-17kDa抗原遺伝子をコードした病原性プラスミドを保有する、(4)強毒株は仔馬に本症を再現するが、病原性プラスミドの脱落により弱毒化する、(5)自然感染仔馬の病変部からは強毒株のみが分離される、(6)病原性プラスミドはDNA分子が類似した85kbと90kbの2種類が存在する、(7)これら毒力マーカーを用いた疫学調査から本症発生牧場の馬飼育環境は強毒株に汚染されている、(8)毒力関連抗原遺伝子の塩基配列が決定され、強毒株の迅速同定法としてPCR法が開発された、(9)仔馬の実験感染モデルを確立し、強毒株の最小感染量を10^4と決定した。さらに15-17kDa抗原は、(10)菌体表層に発現し、(11)培養温度と、(12)培養pHに発現調節され、(13)マクロファージ内で抗原が発現され、(14)免疫組織学的手法で感染仔馬もこの抗原を宿主体内で認識すること、などを明らかにした。さらに、(15)マウス感染モデルにおいても病原性プラスミドが感染に必要不可欠な病原因子であること、(16)強毒株の生菌免疫(致死量以下)は再感染(致死量の数倍)に対して感染防御するが、強毒株死菌及び弱毒株生菌免疫は強毒株の攻撃を防御しない、(17)胸腺欠損ヌードマウスでは少量の強毒株が持続的に感染し、免疫血清を移入しても強毒株の増殖は阻めないが、免疫脾臓細胞の移入は強毒株を体内から排除する、(18)強毒株感染マウスの主要臓器(肝臓、脾臓、肺)からの菌の排除にはIFN-γとTNF-αが動員される、(19)一方、弱毒株感染マウスのクリアランスにはこれらのサイトカイン応答を必要としない、(20)抗IFN-γ及びTNF-αモノクローナル抗体を投与したマウスでは致死量以下の強毒株でも感染が増悪・致死すること、などを細菌学、免疫学並びに病理学的手法を用いて明らかにした。これまでの研究成果を要約すると、(1)本菌には強毒株(マウスLD_<50>=10^6)と無毒株(LD_<50>>10^8)が存在する、(2)強毒株は菌体表層に15-17kDa抗原を発現する、(3)強毒株は15-17kDa抗原遺伝子をコードした病原性プラスミドを保有する、(4)強毒株は仔馬に本症を再現するが、病原性プラスミドの脱落により弱毒化する、(5)自然感染仔馬の病変部からは強毒株のみが分離される、(6)病原性プラスミドはDNA分子が類似した85kbと90kbの2種類が存在する、(7)これら毒力マーカーを用いた疫学調査から本症発生牧場の馬飼育環境は強毒株に汚染されている、(8)毒力関連抗原遺伝子の塩基配列が決定され、強毒株の迅速同定法としてPCR法が開発された、(9)仔馬の実験感染モデルを確立し、強毒株の最小感染量を10^4と決定した。さらに15-17kDa抗原は、(10)菌体表層に発現し、(11)培養温度と、(12)培養pHに発現調節され、(13)マクロファージ内で抗原が発現され、(14)免疫組織学的手法で感染仔馬もこの抗原を宿主体内で認識すること、などを明らかにした。さらに、(15)マウス感染モデルにおいても病原性プラスミドが感染に必要不可欠な病原因子であること、(16)強毒株の生菌免疫(致死量以下)は再感染(致死量の数倍)に対して感染防御するが、強毒株死菌及び弱毒株生菌免疫は強毒株の攻撃を防御しない、(17)胸腺欠損ヌードマウスでは少量の強毒株が持続的に感染し、免疫血清を移入しても強毒株の増殖は阻めないが、免疫脾臓細胞の移入は強毒株を体内から排除する、(18)強毒株感染マウスの主要臓器(肝臓、脾臓、肺)からの菌の排除にはIFN-γとTNF-αが動員される、(19)一方、弱毒株感染マウスのクリアランスにはこれらのサイトカイン応答を必要としない、(20)抗IFN-γ及びTNF-αモノクローナル抗体を投与したマウスでは致死量以下の強毒株でも感染が増悪・致死すること、などを細菌学、免疫学並びに病理学的手法を用いて明らかにした。これまでに私達はR.equiの強毒株には菌体表層に15-17kDa抗原が発現し、この遺伝子がプラスミド上に存在する事を明らかにした。この15-17kDa抗原遺伝子をプラスミドからクローニングし、塩基配列を決定し、さらに強毒株の迅速同定法としてこの遺伝子をターゲットにしたのPCR法も開発した。この抗原の機能を解析する目的で、マウス実験モデルを用いて15-17kDa抗原が感染防御に働くか否かを検討した。 | KAKENHI-PROJECT-06454119 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06454119 |
ロドコッカス・エクイの病原性プラスミドがコードする蛋白の感染と免疫における役割 | まずKSCN抽出により15-17kDa抗原を部分精製し、これをマウスに頻回免疫し、感染防御試験を行った。15-17kDa抗原免疫マウスでは抗体価の上昇を確認後、強毒株を攻撃したが完全な感染防御は成立しなかった。しかし、免疫マウスで臓器中菌数の有意な増加抑制効果が認められた。次に、マクロファージ内での強毒株の15-17kDa抗原が発現するか否かを検討した。実験感染マウスおよび自然感染子馬の病変部の病理組織切片を15-17kDa抗原に対するモノクローナル抗体を用いた酵素抗体法で染色したところ、マクロファージ内の全ての菌で15-17kDa抗原を発現していることが明らかとなった。これは、15-17kDa抗原が生体内で発現する事を初めて直接証明したものである。15-17kDa抗原遺伝子のR.equi弱毒株への導入は、これまでジーンパルサーを用いた電気穿孔法で試みてきたが、全て失敗した。これは本菌菌体が厚い莱膜に被われ、グラム陽性菌の堅い細胞壁などの複数の障碍と、ベクターの不適切などが考えられ、今後も更にベクター等を変え検討を加えていきたい。子馬に重篤な化膿性肺炎を引き起こすロドコッカス・エクイ(Rhodococcus equi)強毒株は85kb或いは90kbの病原性プラスミドを保有し、菌体表層には15-17kDa抗原を発現する。本菌は細胞内寄生菌であり、病原性プラスミド保有株はマウス(LD_<50>=10^<60>)に致死毒性を示すがプラスミド脱落株は毒力が完全に消失する。これまでに私たちはマウスを用いた感染モデルで本菌の感染防御には細胞性免疫が重要である成績を得てきた。そこで、平成7年度はサイトカインから見た強毒株と弱毒株の感染防御応答に関する研究を計画し、以下の様な実験を行い成績を得た。強毒株ATCC33701株とそのプラスミド脱落株P-を用い、5-6週齡のddYマウスに約10^6の菌を静脈内投与した。経時的に主要臓器を採材し、生菌数とELISA法によりIFN-γ、TNF-α、IL-4及びIL-10を測定した。また、抗サイトカインmAb投与試験も行った。成績は以下の通りである。(1)強毒株の臓器中菌数は菌接種1日目に一過性の減少後4日目まで増加し、7日目以降減少した。(2)一方、弱毒株の臓器中菌数は感染直後から減少し、7日目には全ての臓器からクリアランスされた。(3)IFN-γは強毒株感染マウスの肝臓、脾臓、肺、血清中に検出され、臓器中菌数が最高となった4日目に何れもピークを迎えた。(4)TNF-αの誘導も臓器中菌数の動態と一致した。(5)弱毒株感染マウスではIFN-γは検出限界以下であったが、TNF-αは脾臓で感染直後に最も多く産生され、以後減少した。(6)IL-4及びIL-10の産生は何れのマウスも検出限界以下であった。(7)致死量以下の強毒株で攻撃した抗IFN-γ抗体投与マウスでは生存率80%、抗TNF-α抗体投与マウスでは生存率が33%となった。一方、弱毒株攻撃では無処置対照と比較して臓器中菌数の増加も認められなかった。マウス感染モデルでは強毒株の感染により誘導されたIFN-γとTNF-αが感染防御因子として中心的役割を果たすことが明らかとなった。子馬に重篤な化膿性肺炎を引き起こすロドコツカス・エクイ(Rhodococcus equi)強毒株は85kb或いは90kbの病原性プラスミドを保有し、菌体表層に15-17kDa抗原を発現する。これまでに私たちはマウスを用いた感染モデルで本菌の感染防御には細胞性免疫が重要であり、特にIFN-γとTNF-α等のサイトカインの重要性が明らかにされた。そこで、今回、(1)致死量感染させた場合の内在性サイトカインの動態、(2)生菌免疫マウスでの強毒株攻撃時の臓器からの菌排除およびサイトカイン産生、(3)サイトカイン産生細胞の一つであるT細胞マーカー(CD4,CD | KAKENHI-PROJECT-06454119 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06454119 |
遍歴多極子と多極子超伝導体 | これまでの一連の研究から、第一原理計算に基づいて低エネルギー有効模型を構築し、その多極子相関関数の半定量的な評価から、URu2Si2、CeCu2Si2、UPt3などの重い電子系物質においては遍歴多極子が重要な役割をする可能性を指摘したが、前年度はそのような多極子の概念を超伝導の秩序変数に一般化し、多軌道超伝導体の群論的な分類からスピン1重項と3重項を一般化した多極子ペアの可能性について考察した。その結果、多軌道系超伝導体では、一電子軌道のもつ波動関数の対称性が超伝導ペアの対称性に影響し、これまで考えられてきた以上に多彩なギャップ構造を取りうることを示した。例えば、ノンシンモルフィックな磁気構造と共存する超伝導では必然的にブリルアンゾーン境界において超伝導ギャップがゼロとなるノード構造が出現したり、電子軌道の異方性を反映した異方的s波超伝導が出現したりし得ることが特徴的である。今年度は、これら超伝導多極子ペアの研究の発展として、局所的なペアリング状態から異方的超伝導が出現しうる可能性の具体例として、f^2結晶場基底状態がそのままボーズ凝縮するような可能性について研究した。加えて、BiS2層状超伝導体において観測されたギャップ異方性を引力機構から説明できる可能性についても検討し、さらに、その可能性をより具体的に研究する上で必要となる電子格子相互作用の軌道依存性や波数依存性の第一原理的な評価に取り組んだ。これらの研究成果は当該分野の今後の発展を支える基盤を与えるものと考えられる。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。超伝導体のギャップ構造が結晶の持つ点群によって分類されることはよく知られている。このようなギャップ構造の分類学はこれまでによく研究されているが,最近の多軌道系超伝導の理論の発展から,新たに軌道ベースの分類学が注目を集めるようになった。そこで,我々はいくつかの代表的な空間群に対して,多軌道系超伝導体のギャップ構造がどのように分類されうるかについて,スピン軌道相互作用も考慮して,群論に基づいた研究を行った。その結果,多軌道系超伝導体において,これまでの分類学では見逃されてきた,以下のような重要な点を発見することができた:1.六方晶系超伝導体におけるΓ9軌道の超伝導ペアでは,容易に縦ノードが出現しうること。2.電子格子相互作用による引力系BCS超伝導でも,多軌道系では異方的超伝導と成りうること。3.ペアを作る電子軌道の対称性を反映して,対称性には守られないが不可避のギャップノード,あるいは,ギャップ異方性が自然に出現すること。4.さらに,UPd2Al3のようなノンシンモルフィックな反強磁性体中の超伝導では,ブリルアンゾーン境界に水平ノードを生じ,通常の等方ギャップをもつBCS超伝導が出現できない場合もあること。5. UCoGeのようなノンシンモルフィックな強磁性超伝導体では,ブリルアンゾーン境界か,Γ点を含む面のどちらかに水平ノードを生じるため,フェルミ面の構造を考慮すると,必ずラインノードをもつと考えられること。空間群による多軌道系超伝導体の分類学が,当初考えていたような,これまでの分類学の見直しに留まらず,これまでの研究で見逃されてきたような新奇なギャップ構造の可能性を示唆し,さらに,次年度に繋がる発展を促したため。これまでの一連の研究から、第一原理計算に基づいて低エネルギー有効模型を構築し、その多極子相関関数の半定量的な評価から、URu2Si2、CeCu2Si2、UPt3などの重い電子系物質においては遍歴多極子が重要な役割をする可能性を指摘したが、前年度はそのような多極子の概念を超伝導の秩序変数に一般化し、多軌道超伝導体の群論的な分類からスピン1重項と3重項を一般化した多極子ペアの可能性について考察した。その結果、多軌道系超伝導体では、一電子軌道のもつ波動関数の対称性が超伝導ペアの対称性に影響し、これまで考えられてきた以上に多彩なギャップ構造を取りうることを示した。例えば、ノンシンモルフィックな磁気構造と共存する超伝導では必然的にブリルアンゾーン境界において超伝導ギャップがゼロとなるノード構造が出現したり、電子軌道の異方性を反映した異方的s波超伝導が出現したりし得ることが特徴的である。今年度は、これら超伝導多極子ペアの研究の発展として、局所的なペアリング状態から異方的超伝導が出現しうる可能性の具体例として、f^2結晶場基底状態がそのままボーズ凝縮するような可能性について研究した。加えて、BiS2層状超伝導体において観測されたギャップ異方性を引力機構から説明できる可能性についても検討し、さらに、その可能性をより具体的に研究する上で必要となる電子格子相互作用の軌道依存性や波数依存性の第一原理的な評価に取り組んだ。これらの研究成果は当該分野の今後の発展を支える基盤を与えるものと考えられる。前年度の研究から,多軌道系超伝導のギャップ構造が思った以上に多彩で,これまでの研究では見逃されてきたような風変わりなギャップ構造を取りうることが示された。結果はかなり一般的であり,これまで電子格子相互作用による通常のBCS超伝導として分類されてきた超伝導体をもう一度見直す必要がある。 | KAKENHI-PUBLICLY-16H01081 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-16H01081 |
遍歴多極子と多極子超伝導体 | 今後は,多軌道系超伝導体,特に,ノンシンモルフィックな空間群に属する物質の超伝導について,第一原理計算に基づいて,これまで見逃されてきた超伝導をより定量的に調べる。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PUBLICLY-16H01081 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-16H01081 |
アンダーソン転移の数値的研究 | 本研究では不規則性によつて生ずる電気伝導度の消失というアンダーソン転移を数値的に調べた。ここでは反復法による局在長の計算を行い、これと有限サイズスケーリング法を組み合わせて、局在長の発散の臨界指数を決定した。モデルとしては3次元のrandom phase model(物理的には磁場がランダムな系に対応する)を用いてた。この系は従来のスカラーポテンシャルによる局在とは異なる、ベクトルポテンシャルによる局在を示す大変興味深い系である。転移点付近での局在長の発散の様子から局在長の臨界指数の値を1.1程度と評価した。これとの比較のため、ベクトルポテンシャルとスカラーポテンシャル双方が乱れている系での計算を行い、この系は従来の磁場が0のときのアンダーソン模型の示す1.4程度の臨界指数を示すことを明らかにした。これらよりrandom phase modelが新しいユニヴァーサリティクラスに属しているのではないかと推測した。また、本研究では不規則電子系の量子順位統計を調べた。不規則ハミルトニアンが示す、準位間反撥は古くは1950年代から知られている。本研究では局在状態と非局在状態では準位間反撥のサイズ依存性がことなるという視点に立って、臨界指数が決定できることを示し、新しい数値計算結果の解析方法を見いだした。この方法を具体的には強磁場中の2次元電子系に対して適用して、従来の方法から得られた臨界指数の値を再現した。他の膜型に対してこの方法が同じように有効かどうかは現在確認中である。本研究では不規則性によつて生ずる電気伝導度の消失というアンダーソン転移を数値的に調べた。ここでは反復法による局在長の計算を行い、これと有限サイズスケーリング法を組み合わせて、局在長の発散の臨界指数を決定した。モデルとしては3次元のrandom phase model(物理的には磁場がランダムな系に対応する)を用いてた。この系は従来のスカラーポテンシャルによる局在とは異なる、ベクトルポテンシャルによる局在を示す大変興味深い系である。転移点付近での局在長の発散の様子から局在長の臨界指数の値を1.1程度と評価した。これとの比較のため、ベクトルポテンシャルとスカラーポテンシャル双方が乱れている系での計算を行い、この系は従来の磁場が0のときのアンダーソン模型の示す1.4程度の臨界指数を示すことを明らかにした。これらよりrandom phase modelが新しいユニヴァーサリティクラスに属しているのではないかと推測した。また、本研究では不規則電子系の量子順位統計を調べた。不規則ハミルトニアンが示す、準位間反撥は古くは1950年代から知られている。本研究では局在状態と非局在状態では準位間反撥のサイズ依存性がことなるという視点に立って、臨界指数が決定できることを示し、新しい数値計算結果の解析方法を見いだした。この方法を具体的には強磁場中の2次元電子系に対して適用して、従来の方法から得られた臨界指数の値を再現した。他の膜型に対してこの方法が同じように有効かどうかは現在確認中である。 | KAKENHI-PROJECT-05215229 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05215229 |
酸化物ヘテロ接合界面におけるショットキー障壁高さ変調メカニズムの解明と制御 | ペロブスカイト型酸化物を用いた酸化物デバイスは、従来の半導体デバイスでは得られなかった特有の新規機能が発現する。そのような酸化物デバイス開発において、ショットキー接合界面の空乏層内部のポテンシャル分布を詳細に決定することは非常に意義深い。そこで本研究では、ショットキー障壁高さ変調を引き起こす「界面ダイポール」の有無に起因した界面電子状態を明らかにするため、極性不連続に着目した酸化物ヘテロ接合の空乏層内部のポテンシャル分布を、放射光光電子分光測定を用いて詳細に調べた。その結果、以下のような知見を得た。1.界面ダイポールの有無に伴う空乏層内部のポテンシャル分布について調べるため、無極性/無極性酸化物SrRuO3/Nb:SrTiO3および極性/無極性酸化物La0.6Sr0.4MnO3(LSMO)/Nb:SrTiO3ヘテロ接合について、放射光光電子分光測定を行った。その結果、極性不連続を有するLSMO/Nb:STOでは、界面近傍に急峻なポテンシャル変調層が存在することがわかった。2.極性不連続に伴う、急峻な界面ポテンシャル変調層制御のため、終端面構造を制御したLSMO/Nb:STOヘテロ接合について、放射光光電子分光測定を行った。その結果、La0.6Sr0.40/TiO2層から構成される界面では急峻な界面ポテンシャル変調層が存在するのに対し、MnO2/SrO層から構成される界面では、そのようなポテンシャル変調層が消失することがわかった。以上の結果より、つまり、従来は考慮されていなかった界面構造が、接合特性に重要な役割を果たしていることを実験的に示したものである。本研究より得られた知見は、酸化物ヘテロ接合デバイス開発において、界面構造制御によりデバイス特性のコントロールが可能であるといった非常に重要な設計指針を与えるものである。ペロブスカイト型酸化物を用いた酸化物デバイスは、従来の半導体デバイスでは得られなかった特有の新規機能が発現する。そのような酸化物デバイス開発において、ショットキー障壁高さの制御は非常に意義深い。そこで本研究では、ショットキー障壁高さ変調を引き起こす界面ダイポール起源解明を目的として、「電荷不連続」と「格子不整合」の制御を行ったLa_<1-x>Sr_xMnO_3/Nb doped SrTiO_3(LSMO/Nb:STO)ヘテロ接合について、その場放射光光電子分光測定による研究を行った。1.終端面制御による電荷小連続順序の制御LSMO(x=0.4)/TiO_2終端化Nb:STOヘテロ接合では、界面ダイポールによるショットキー障壁高さの増大が見られたのに対し、SrOを一層挿入することにより極性を反転させたLSMO(x=0.4)/SrO終端化Nb:STOヘテロ接合では、ショットキー障壁高さが低下することを明らかにした。界面ダイポールは電荷不連続と格子不整合を共に有する組成において形成され、特にLSMO(x=0.4)において極大値を取ることを明らかにした。一方、格子不整合が非常に小さいLSMO(x=0.1)、および電荷不連続を持たないLSMO(x=1.0)(SrMnO_3)においては界面ダイポールが形成されないことを見出した。以上の結果より、界面ダイポールは、「電荷不連続」と「格子不整合」が協奏的に寄与することにより形成されたものと結論づけられる。つまり、従来は考慮されていなかった界面構造が、接合特性に重要な役割を果たしていることを実験的に示したものである。本研究より得られた知見は、酸化物ヘテロ接合デバイス開発において、界面構造制御により望みのショットキー障壁高さを得られる、といった非常に重要な設計指針を与えるものである。ペロブスカイト型酸化物を用いた酸化物デバイスは、従来の半導体デバイスでは得られなかった特有の新規機能が発現する。そのような酸化物デバイス開発において、ショットキー接合界面の空乏層内部のポテンシャル分布を詳細に決定することは非常に意義深い。そこで本研究では、ショットキー障壁高さ変調を引き起こす「界面ダイポール」の有無に起因した界面電子状態を明らかにするため、極性不連続に着目した酸化物ヘテロ接合の空乏層内部のポテンシャル分布を、放射光光電子分光測定を用いて詳細に調べた。その結果、以下のような知見を得た。1.界面ダイポールの有無に伴う空乏層内部のポテンシャル分布について調べるため、無極性/無極性酸化物SrRuO3/Nb:SrTiO3および極性/無極性酸化物La0.6Sr0.4MnO3(LSMO)/Nb:SrTiO3ヘテロ接合について、放射光光電子分光測定を行った。その結果、極性不連続を有するLSMO/Nb:STOでは、界面近傍に急峻なポテンシャル変調層が存在することがわかった。2.極性不連続に伴う、急峻な界面ポテンシャル変調層制御のため、終端面構造を制御したLSMO/Nb:STOヘテロ接合について、放射光光電子分光測定を行った。その結果、La0.6Sr0.40/TiO2層から構成される界面では急峻な界面ポテンシャル変調層が存在するのに対し、MnO2/SrO層から構成される界面では、そのようなポテンシャル変調層が消失することがわかった。以上の結果より、つまり、従来は考慮されていなかった界面構造が、接合特性に重要な役割を果たしていることを実験的に示したものである。 | KAKENHI-PROJECT-08J00499 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08J00499 |
酸化物ヘテロ接合界面におけるショットキー障壁高さ変調メカニズムの解明と制御 | 本研究より得られた知見は、酸化物ヘテロ接合デバイス開発において、界面構造制御によりデバイス特性のコントロールが可能であるといった非常に重要な設計指針を与えるものである。 | KAKENHI-PROJECT-08J00499 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08J00499 |
アミノ酸代謝酵素(LAO)が脳内アミノ酸濃度と記憶・学習に与える影響 | 生命の源であるアミノ酸は、体の中で様々な生理活性物質として働いています。本研究ではアミノ酸を代謝する酵素であるLAOが脳の記憶を司る部位である海馬で発現することを確認しました。また、LAOを持たないマウスと正常のマウスを比較したところ、LAOを持たないマウスは記憶と学習脳が弱い結果が得られました。今後、LAOが制御するアミノ酸を詳しく調べることで、脳機能を高める因子が見つかるかもしれません。本研究の目的は、これまでミルク中の抗菌物質として知られていたアミノ酸代謝酵素L型アミノ酸オキシダーゼ(LAO)の新しい機能、海馬における記憶と学習効果を明らかにすることである。今年度の成果は以下の通りである。<LAOノックアウトマウスの行動解析評価>海馬依存性の記憶と学習テストの一つである受動的回避試験において、LAOノックアウトマウスは野生型マウスに比べ、学習および長期記憶成績が有意に悪い結果が得られた。しかしながら、空間学習を評価するモリス式水迷路においては、ノックアウトマウスの方が野生型マウスに比べ成績が良い傾向が得られている。一方、活動量や情動性を評価するオープンフィールド試験、不安行動を評価する高架式十字迷路において、両マウスの成績に差は認められなかった。<養母交換および仮親処置による行動解析評価>LAOノックアウトマウスに認められる記憶と学習能の変化が、母マウスのミルクLAOに起因するかどうかを検討するため養母交換をおこなった結果、受動的回避試験については母マウスのミルクに関係なく、仔マウスのLAO遺伝子型によって成績が変化することが明らかとなった。一方、モリス式水迷路については、母マウスのミルクの違いにより成績結果に影響が認められた。<マウス脳内LAO発現解析>脳内の各部位におけるLAO遺伝子発現を確認するため、嗅球、大脳皮質、海馬、小脳からRNAを回収しリアルタイムPCRを行った結果、微量ながら海馬においてLAO mRNAの発現が確認された。<マウスミルク中メタボローム解析>野生型マウスおよびLAOノックアウトマウスのミルクを用い、アミノ酸や有機酸など400成分についてメタボローム解析を行った結果、主成分分析により明らかに差が認められ、特にフェニルアラニン、タウリン、ケトグルタル酸などの含有量が異なることが明らかとなった。本研究は、アミノ酸代謝酵素の一つであるL型アミノ酸オキシダーゼ(LAO)の海馬における記憶と学習に対する影響を明らかにすることであり、以下に2年間の研究成果について報告する。<LAOノックアウトマウスの行動解析評価>海馬依存性の記憶と学習テストの一つである受動的回避試験、およびモリス式水迷路において、LAOノックアウトマウスは野生型マウスに比べ、学習成立および長期記憶成績が有意に悪い結果が得られた。一方、活動量や情動性を評価するオープンフィールド試験、不安行動を評価する高架式十字迷路において、両マウスの成績に優位な差は認めらなかった。<養母交換による行動解析評価>LAOノックアウトマウスに認められる記憶と学習能の変化が、母マウスのミルク中LAOが仔マウスの脳発育に影響を与えた結果かどうかを検討するため、養母交換をおこなった結果、受動的回避試験については母マウスのミルクに関係なく、仔マウスのLAO遺伝子型によって成績が変化することが明らかとなった。また、脳海馬においてLAOタンパクが存在することを確認した。興味深いことに、モリス式十字迷路については、母マウスのミルクの違いにより成績結果に影響が認められた。<マウスミルクおよび海馬中メタボローム解析>野生型マウスおよびLAOノックアウトマウスのミルクおよび海馬抽出物を用い、アミノ酸や有機酸など400成分についてメタボローム解析を行った結果、主成分分析により明らかに差が認められ、特にフェニルアラニン、タウリン、ケトグルタル酸などの含有量がミルクと海馬内ともに異なることが明らかとなった。以上の結果から、LAOノックアウトに認められる記憶と学習の変化は、海馬に発現するLAOが局所的にアミノ酸代謝を行い脳機能に関与することと、ミルク中に含まれるLAOが代謝するアミノ酸が子の脳発達に影響を及ぼす2通りの可能性が示唆された。生命の源であるアミノ酸は、体の中で様々な生理活性物質として働いています。本研究ではアミノ酸を代謝する酵素であるLAOが脳の記憶を司る部位である海馬で発現することを確認しました。また、LAOを持たないマウスと正常のマウスを比較したところ、LAOを持たないマウスは記憶と学習脳が弱い結果が得られました。今後、LAOが制御するアミノ酸を詳しく調べることで、脳機能を高める因子が見つかるかもしれません。現在の進捗は順調に進展していると言える。受動的回避試験、オープンフィールド試験、高架式十字迷路試験、さらに今年度の備品により購入したモリス式水迷路試験といった一連の行動解析が順調に実施され、LAOノックアウトマウスは明らかに記憶と学習能に変化が生じていることが明らかとなった。また、養母交換や仮親処置後の行動解析試験も前倒しで開始しており、LAOノックアウトマウスの行動様式における全体像が見えつつある。受動的回避試験においては仔マウスのLAO発現遺伝型が、モリス式水迷路においては母マウスのLAO遺伝型によるミルクの違いが関与するといった新しい発見が得られた。すなわち、同じ記憶と学習試験でも、そのモチベーションの違いによりLAOが関与する脳機能も関与の仕方も異なることが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-26660248 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26660248 |
アミノ酸代謝酵素(LAO)が脳内アミノ酸濃度と記憶・学習に与える影響 | 事実、LAOはミルクの成分を大きく変化させており、また、ミルク中のみならず微量ではあるが海馬の局所において発現が認められることが今年度の研究結果により明らかとなり、生体内におけるLAOの役割は多岐にわたる可能性が考えられる。今年度に実施しなかった「マウス脳内メタボローム解析」については、既にサンプリングは済んでおり、進捗の遅れに影響は無い。より有益なデータとするため海馬サンプルだけでなく、同個体の血液サンプルも併せて解析を行う予定である。生理学基本的には前年度に引き続き解析を行う。養母交換および仮親処置後の行動解析を完了させ、LAOノックアウトマウスの行動様式における全体像を把握する。記憶と学習を制御する海馬について、BrdUの取り込みや神経細胞マーカの染色といった組織学的検査や脳機能を司る遺伝子群について解析を行う。マウスの海馬内と血中メタボローム解析を早急に行い、これまでの結果(LAOノックアウトマウスの海馬にて、グリシンとGABA濃度が低下している)に加え、海馬内、または血液中で変化するアミノ酸および有機酸代謝物のリストアップを行う。その上で、マウスに対する静脈内、または海馬内直接投与実験を行い、記憶と学習試験に与える効果の検証を開始する。一方、ミルクのメタボローム解析の結果より、LAOにより含有量が大きく異なるアミノ酸や有機酸代謝産物が明らかとなった。これらの因子が、哺乳期における仔マウスの脳発育に重要な役割をもつことが推察されることから、同様にマウスに対する投与実験を行う。また、新しい研究計画として、ミルク中成分が脳発育に効果を示すかの検討をin vitroでも検討を行いたい。マウスのニューロン、またはグリア細胞の分離培養を行い、各成分が軸索の伸長やスパイン形成の促進など神経発達の指標について解析を行いたい。今年度、実施予定であった脳内のメタボローム解析を次年度に延期したため、その消耗品等分の助成金の繰越を希望いたします。次年度は、主に実験動物品、遺伝子解析試薬、メタボローム解析試薬などの消耗品費を中心に、旅費として京都大学での研究打ち合わせを2回、国内研究発表1回、その他として論文投稿費の使用を予定している。 | KAKENHI-PROJECT-26660248 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26660248 |
カエルのアルドステロン合成酵素の構造と機能 | 哺乳動物においては,アルドステロンは腎臓におけるNa^+の再吸収能を高め,またK^+の尿中への排泄を増加させることによって血持している。その生合成と分泌は副腎皮質において行われ,レニンア-アンジオテンシン,心房性ナトリウム利尿ペプチドやACTHによって調節される。一方カエルなどの両生類においては,アルドステロンはNa^+の皮膚からの流出を防ぎ体液のイオン平衡を保つのに必須のホルモンであり,腎臓表面にある中腎組織で生合成される。われわれは先にウシのアルドステロン合成酵素の本体がP450(11β)であることを明らかにした。つまりウシではP450(11β)がデオキシコルチコステロンのコルチコステロンへの変換を触媒するばかりでなく,コルチコステロンのアルドステロンへの変換も触媒する。われわれはさらにラットではP450(11β)に2亜型があり,1つは11-水酸化酵素(コルチコステロン合成を触媒する)であり,他方がアルドステロン合成酵素(デオキシコルチコステロンから直接アルドステロンを合成する)であることも明らかにした。本研究においては,高いアルドステロン合成活性を持つカエルの中腎組織からウシP450(11β)cDNAをプローブに用いてカエルのアルドステロン合成酵素をクローニングしてその性質を調べた。その結果,カエルのP450(11β)前駆体は517個のアミノ酸からなるタンパク質で,ミトコンドリアに輸送されるときに約45個のアミノ酸からなるエクステンションペプチドが切り離される。成熟酵素のアミノ酸配列はラットのP450(11β)あるいはP450(11β,aldo)とおよそ50%の相同性を持つ。この酵素はウシと同様に単一の酵素分子がデオキシコルチコステロンからアルドステロンまでの変換活性をもつことなどがわかった。哺乳動物においては,アルドステロンは腎臓におけるNa^+の再吸収能を高め,またK^+の尿中への排泄を増加させることによって血持している。その生合成と分泌は副腎皮質において行われ,レニンア-アンジオテンシン,心房性ナトリウム利尿ペプチドやACTHによって調節される。一方カエルなどの両生類においては,アルドステロンはNa^+の皮膚からの流出を防ぎ体液のイオン平衡を保つのに必須のホルモンであり,腎臓表面にある中腎組織で生合成される。われわれは先にウシのアルドステロン合成酵素の本体がP450(11β)であることを明らかにした。つまりウシではP450(11β)がデオキシコルチコステロンのコルチコステロンへの変換を触媒するばかりでなく,コルチコステロンのアルドステロンへの変換も触媒する。われわれはさらにラットではP450(11β)に2亜型があり,1つは11-水酸化酵素(コルチコステロン合成を触媒する)であり,他方がアルドステロン合成酵素(デオキシコルチコステロンから直接アルドステロンを合成する)であることも明らかにした。本研究においては,高いアルドステロン合成活性を持つカエルの中腎組織からウシP450(11β)cDNAをプローブに用いてカエルのアルドステロン合成酵素をクローニングしてその性質を調べた。その結果,カエルのP450(11β)前駆体は517個のアミノ酸からなるタンパク質で,ミトコンドリアに輸送されるときに約45個のアミノ酸からなるエクステンションペプチドが切り離される。成熟酵素のアミノ酸配列はラットのP450(11β)あるいはP450(11β,aldo)とおよそ50%の相同性を持つ。この酵素はウシと同様に単一の酵素分子がデオキシコルチコステロンからアルドステロンまでの変換活性をもつことなどがわかった。1.食用カエルの中腎組織のcDNAライブラリ-を作成し、ウシP450(11β)をプロ-ブに用いてプラ-クハイブルダイゼ-ション法でスクリ-ニングした。その結果、5個のポジティブクロ-ンが得られた。これらのクロ-ンのDNA塩基配列の決定を現在行っている。ウシ、ラット、ヒトのP450(11β)cDNAの塩基配列との類似性から、5個のクロ-ンはすべてP450(11β)をコ-ドしていることが予想された。2.完全長のcDNAを持つと思われるクロ-ンを発現ベクタ-に組み込み、このものを培養COS細胞にエレクトロポ-レイション法で導入して発現させるため、現在予備実験を行っている。3.ラットのP450(11β)とP450(11β,aldo)の各cDNAについて、制限酵素により切断ーライゲ-ション法によって、キメラcDNAを作成した。このものをCOS細胞中で発現させて、11、18、19水酸化活性とアルドステロン合成活性を担うタンパク示の領域の向定を行った。その結果、NH_2末端から約3分の2付近にあるオゾル(人名)の領域およびP450camのIーヘリックスに相当する領域が、酵素活性の特異性を決定するのに重要であることが分かった。目的:カエルでは、哺乳動物の副腎に相当する臓器は中腎組織である。カエルの中腎組織のミトコンドリアにおけるアルドステロン合成活性はウシなどと比較して高いことが知られている。カエルのアルドステロン合成酵素の性質を調べ、哺乳動物のそれ(P450(11β)あるいはP450(11β,aldo))と比較する目的で、本酵素のクローニングを行った。 | KAKENHI-PROJECT-03680168 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03680168 |
カエルのアルドステロン合成酵素の構造と機能 | 結果:20,000個のファージをスクリーニングして21個のポジティブクローンを得た。このうち、比較的に長いクローン、1.9,1.9,1.7kbの独立したクローンを各々シークエンスしたところ、5'-noncoding領域の長さ、poly A tail、poly A tail開始直前の塩基配列が少し異なるだけで3種とも同じ塩基配列を持っていた。最長のクローンは全長1,919b、openreading frameは190-174bで517アミノ酸をコードしていた。約45個のアミノ酸からなるエクステンションペプチドを含む。成熟酵素部分の相同性はラットのP450(11β)およびP450(11β,aldo)と比較して約47%および51%であった。活性の発現を調べたところ、デオキシコルチコステロンを基質として、コルチコステロン、18-ヒドロキシデオキシコルチコステロン、18-ヒドロキシコルチコステロン、アルドステロンの生成を認めた。以上の結果はカエルでは単一の酵素がデオキシコルチコステロンからアルドステロンまでの全ての反応を触媒することを示している。 | KAKENHI-PROJECT-03680168 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03680168 |
ゼオライトのCore-Shell構造化による省エネルギー型CO2吸着剤の開発(国際共同研究強化) | Core-shell構造化MFI型ゼオライトにPtを微量担持し、C6炭化水素の水素異性化反応の生成物選択性に対するcore-shell構造化の効果を検討した。コアのみにPtを担持したPt/ZSM-5,core-shell構造化後にPtを担持したPt/silicalite/ZSM-5それぞれを調製し、n-ヘキサンおよび2,2-ジメチルブタンの水素異性化反応を実施した。Pt/ZSM-5を用いたn-ヘキサンの異性化では、生成物の大部分はモノアルキル体であり、転化率38%における異性化選択性は98.7%を示した。これに対し、Pt/silicalite/ZSM-5では、転化率33%において異性化選択性は98.7%であり、core-shell構造化の影響は認められなかった。一方、2,2-ジメチルブタンを原料としたところ、Pt/ZSM-5では転化率37.7において異性化選択性は5.6であったのに対し、Pt/silicalite/ZSM-5では同反応条件において転化率は0.1%であり、2,2-ジメチルブタンはほとんど反応しない結果となった。つまり、Pt/ZSM-5では付加価値の高いジアルキル体はクラッキングが選択的であるのに対し、core-shell構造化によってそれが著しく抑制可能であること、さらに、ノルマル体の異性化において、core-shell構造化はその生成物選択性にはほとんど影響しないと言える。内定年度:2015ゼオライトのミクロ構造制御手法の一つとして、アルミノシリケートの外表面に純シリカゼオライトを被覆したCore-shell構造化ゼオライトの合成を進めた。MFI型ゼオライトのCore-shell構造化は、MFI型アルミノシリケート(ZSM-5)にフッ化物法を用いて純シリカMFI型ゼオライト(silicalite-1)を被覆することで実施した。ZSM-5のSi/Alはおよそ34であったが、Core-shell構造化後のSi/Alはおよそ55まで低下した。また、SEM観察より、Core-shell構造化後の結晶はZSM-5が二次成長した形態を示していたことから、ZSM-5外表面にsilicalite-1が被覆されていると判断した。次に、触媒および吸着剤として優れた性能が期待されているCHA型ゼオライトのCore-shell構造化を試みた。CoreとなるCHA型アルミノシリケートおよび、それへの純シリカCHA型ゼオライトの被覆はともにフッ化物法を用いて実施した。Core-shell構造化の際、Core結晶と合成ゲルの質量比が小さい条件では、Core結晶よりも微小なCHA型の結晶が多数生成しており、Coreの二次成長のみでなく、合成ゲル中においても核生成が起きていることがわかった。Core結晶と合成ゲルの質量比を大きくしていくことで、微小なCHA型の生成量は低下したことから、Core結晶を選択的に二次成長させるには、Coreと合成ゲルの質量比が大きく影響することがわかった。MFI型およびCHA型ゼオライトのCore-shell構造化手法を確立し、国際共同研究に必要な試料の準備を完了した。1.MFI型ゼオライトのCore-shell構造化が吸着性能におよぼす影響MFI型ゼオライトのCore-shell構造化が分離特性におよぼす影響について評価した。MFI型アルミノシリケート(ZSM-5)の外表面を純シリカMFI型ゼオライト(silicalite-1)で被覆することで、ジアルキルパラフィンの吸着が大きく阻害される一方、直鎖状およびモノアルキル体の吸着にはほとんど影響しないことがわかった。これは、MFI細孔径と同程度の分子サイズの分子に対する分子ふるい能が向上していることを示唆している。そこで、MFI型ゼオライトのCore-shell構造化がキシレン異性体の分離におよぼす影響について検討した。キシレン異性体分離においても、Core-shell構造化することで、o-およびm-キシレンの吸着を大きく阻害する一方、分子サイズの小さなp-キシレンの吸着にはほとんど影響していない結果が得られ、Core-shell構造化はMFI型ゼオライトのキシレン吸着におけるp-キシレン選択性を向上させることを明らかにした。CHA型ゼオライトはバイオブタノール分離に有用であることがわかっている。そこで、CHA型ゼオライトのCore-shell構造化がバイオブタノール分離性能におよぼす影響について評価した。ブタノール発酵における共存物質、アセトン、エタノールおよび水と1-ブタノールの混合系による破過曲線測定の結果、Core-shell構造化することで、1-ブタノールの吸着が大幅に阻害される一方、エタノールの吸着量はほとんど変化しておらず、エタノール選択性が大きく向上することを明らかにした。本研究では、ゼオライトのCore-shell構造化がゼオライトの持つ吸着特性におよぼす影響を評価することを目的とした。これまでの検討で、MFI型ゼオライトではCore-shell構造化によりキシレン吸着におけるp-キシレン選択性が向上する結果、これまでに明らかとなっている触媒反応における高いp-キシレン選択性は、外表面酸点の不活性化のみではなく、分子ふるい能の向上も寄与していることを明らかにした。また、CHA型ゼオライトのCore-shell構造化にも取り組み、Core-shell構造化CHA型ゼオライトの吸着性能が通常のCHA型ゼオライトと異なることを確認した。いずれのゼオライトにおいても、Core-shell構造化による効果は、ゼオライトの有する細孔径と同等の分子径を有する分子に対する分子ふるい能の向上であり、Core-shell構造化の影響は、ゼオライトの結晶構造を問わないことを示差している。 | KAKENHI-PROJECT-15KK0234 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15KK0234 |
ゼオライトのCore-Shell構造化による省エネルギー型CO2吸着剤の開発(国際共同研究強化) | このことは、ゼオライトの機能性向上に向けた本手法の普遍性を示すものであり、新規ゼオライト触媒、吸着剤の開発に極めて有用な知見であると言える。Core-shell構造化MFI型ゼオライトにPtを微量担持し、C6炭化水素の水素異性化反応の生成物選択性に対するcore-shell構造化の効果を検討した。コアのみにPtを担持したPt/ZSM-5,core-shell構造化後にPtを担持したPt/silicalite/ZSM-5それぞれを調製し、n-ヘキサンおよび2,2-ジメチルブタンの水素異性化反応を実施した。Pt/ZSM-5を用いたn-ヘキサンの異性化では、生成物の大部分はモノアルキル体であり、転化率38%における異性化選択性は98.7%を示した。これに対し、Pt/silicalite/ZSM-5では、転化率33%において異性化選択性は98.7%であり、core-shell構造化の影響は認められなかった。一方、2,2-ジメチルブタンを原料としたところ、Pt/ZSM-5では転化率37.7において異性化選択性は5.6であったのに対し、Pt/silicalite/ZSM-5では同反応条件において転化率は0.1%であり、2,2-ジメチルブタンはほとんど反応しない結果となった。つまり、Pt/ZSM-5では付加価値の高いジアルキル体はクラッキングが選択的であるのに対し、core-shell構造化によってそれが著しく抑制可能であること、さらに、ノルマル体の異性化において、core-shell構造化はその生成物選択性にはほとんど影響しないと言える。Core-shell構造化MFI型およびCHA型ゼオライトの吸着特性を吸着等温線、パルスクロマトグラムなど複数の手法により評価し、Core-shell構造化がゼオライトの吸着特性および細孔内の分子拡散に及ぼす影響を明らかにする。Core-shell構造化MFI型ゼオライトは、直鎖上およびモノアルキルパラフィンに比べ、ジアルキル体の吸着阻害効果が高く、分子ふるい能が向上する結果が得られている。本知見を元に、Core-shell構造化MFI型ゼオライトの触媒反応への応用を進める。具体的には炭化水素の異性化反応へ用いることとし、Core-shell構造化が生成物選択性へおよぼす影響を評価する。 | KAKENHI-PROJECT-15KK0234 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15KK0234 |
サイレンサー結合蛋白質の機能制御機構 | 胎盤型グルタチオン-S-トランスフェラーゼ遺伝子(GST-P)は、ラット肝化学発癌過程で特異的に発現するが、正常肝ではその発現はほとんど観察されない。そこで、その発現制御機構について研究し、転写を負に制御するサイレンサーの存在を明らかにしてきた。本研究においては、このサイレンサーに結合する蛋白質の機能を解析することにより、遺伝子を負に制御する機構を明らかにすることを目的とし以下のことを明らかにした。1。サイレンサー部位には少なくとも三種の蛋白質(SF-A,B,C,Silencer Factor)が数箇所に結合することが明らかとなった。このうち、クローニングしたSF-Bは、転写活性化遺伝子であるC/EBPβ(=NF-IL6=LAP/LIP)と同一と思われた。C/EBPはファミリーを形成し、同一のエレメントに複数の蛋白質が結合する。そこで、これらの影響を検討したところ、SF-B結合部位にはC/EBPα,C/EBPδ,DBPの効果は小さくC/EBPβの効果が最も顕著であった。C/EBPβは機能の相反する二種の蛋白質LAP(活性化因子)とLIP(不活性化因子)より成るが、GST-Pサイレンサーにおいては特にLIPの果たす役割が大きかった。LIPの機能ドメインを解析したところ転写不活性化ドメインと思われる部位が見いだされた。LIPはこれまで転写活性化ドメインを欠き転写活性化因子と競合するだけと考えられてきたが、より積極的な作用をしていると推察された。これらの実験で用いた培養細胞は、主に本年度納入した炭酸ガス培養装置を使用した。2。SF-Aについては、ほぼ精製を終了した。興味あることにα-フェトプロテイン、ホメオボックス、甲状腺刺激ホルモン等のプロモーターに、その結合配列がみいだされた。これらの結果はSF-Aが種々の遺伝子に働く一般的な転写抑制遺伝子であることを強く示唆しておりこれらとの関連性は今後の課題である。胎盤型グルタチオン-S-トランスフェラーゼ遺伝子(GST-P)は、ラット肝化学発癌過程で特異的に発現するが、正常肝ではその発現はほとんど観察されない。そこで、その発現制御機構について研究し、転写を負に制御するサイレンサーの存在を明らかにしてきた。本研究においては、このサイレンサーに結合する蛋白質の機能を解析することにより、遺伝子を負に制御する機構を明らかにすることを目的とし以下のことを明らかにした。1。サイレンサー部位には少なくとも三種の蛋白質(SF-A,B,C,Silencer Factor)が数箇所に結合することが明らかとなった。このうち、クローニングしたSF-Bは、転写活性化遺伝子であるC/EBPβ(=NF-IL6=LAP/LIP)と同一と思われた。C/EBPはファミリーを形成し、同一のエレメントに複数の蛋白質が結合する。そこで、これらの影響を検討したところ、SF-B結合部位にはC/EBPα,C/EBPδ,DBPの効果は小さくC/EBPβの効果が最も顕著であった。C/EBPβは機能の相反する二種の蛋白質LAP(活性化因子)とLIP(不活性化因子)より成るが、GST-Pサイレンサーにおいては特にLIPの果たす役割が大きかった。LIPの機能ドメインを解析したところ転写不活性化ドメインと思われる部位が見いだされた。LIPはこれまで転写活性化ドメインを欠き転写活性化因子と競合するだけと考えられてきたが、より積極的な作用をしていると推察された。これらの実験で用いた培養細胞は、主に本年度納入した炭酸ガス培養装置を使用した。2。SF-Aについては、ほぼ精製を終了した。興味あることにα-フェトプロテイン、ホメオボックス、甲状腺刺激ホルモン等のプロモーターに、その結合配列がみいだされた。これらの結果はSF-Aが種々の遺伝子に働く一般的な転写抑制遺伝子であることを強く示唆しておりこれらとの関連性は今後の課題である。 | KAKENHI-PROJECT-05273211 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05273211 |
頚部前屈姿勢保持に伴う瞬目への影響の運動経験による差異と神経系トレーニング効果 | 本研究では、(1)自発性瞬目の出現数の頚部前屈保持に伴う変化の運動経験による差異、(2)頚部前屈保持を伴う眼球運動反応トレーニング後の、眼球運動反応時間および自発性瞬目数の頚部前屈保持による変化、および(3)自発性瞬目及び随意性瞬目時の運動関連脳電位への頚部前屈保持による影響について検討した。検討の結果、以下のような知見を得た。(1)頚部前屈保持を伴う自発性瞬目数の減少は、高速ボール追従群でのみみられた。(2)頚部前屈を伴う眼球運動反応トレーニングを行うと、反応時間短縮効果がみられるようになったが、自発性瞬目数の減少効果はみられなかった。(3)随意性瞬目時のみ運動関連脳電位がみられ、その電位の立ち上がり先行時間は頚部前屈を保持すると短くなり、その電位のピークは大きくなった。本研究では、(1)自発性瞬目の出現数の頚部前屈保持に伴う変化の運動経験による差異、(2)頚部前屈保持を伴う眼球運動反応トレーニング後の、眼球運動反応時間および自発性瞬目数の頚部前屈保持による変化、および(3)自発性瞬目及び随意性瞬目時の運動関連脳電位への頚部前屈保持による影響について検討した。検討の結果、以下のような知見を得た。(1)頚部前屈保持を伴う自発性瞬目数の減少は、高速ボール追従群でのみみられた。(2)頚部前屈を伴う眼球運動反応トレーニングを行うと、反応時間短縮効果がみられるようになったが、自発性瞬目数の減少効果はみられなかった。(3)随意性瞬目時のみ運動関連脳電位がみられ、その電位の立ち上がり先行時間は頚部前屈を保持すると短くなり、その電位のピークは大きくなった。本研究では、頚部前屈保持に伴う眼球運動反応時間短縮および自発性瞬目数減少の運動経験による差異について検討した。被験者は、スポーツクラブに在籍したことのない対照群30名と卓球、野球あるいはテニスのいずれかのクラブに4年以上在籍したことのある高速ボール追従群30名からなる。頚部前屈角0度にて下顎部を支持台に置いた座位姿勢(安静頚部姿勢)と、下顎部を支持台に置かずに頚部前屈角20度を保持した座位姿勢(頚部前屈姿勢)にて、(1)2点交互に点灯する視標を注視する眼球運動反応課題および(2)中心点を注視する課題を行った。いずれの課題もそれぞれ30秒間、5回ずつ測定した。眼球運動反応時間は、視標の移動開始に対する眼球運動の反応開始までの遅延時間とした。1試行ごとに分析を行った。自発瞬目数は、150秒間(30秒間×5回)で生じた垂直眼球運動の数をもとに1分間値を算出した。対照群では、安静頚部姿勢および頚部前屈姿勢の条件間で眼球運動反応時間に有意差がみられなかった。一方、高速ボール追従群では、反応時間は、頚部前屈姿勢が安静頚部姿勢に比べて有意に短かった。対照群では、安静頚部姿勢および頚部前屈姿勢の条件間で自発性瞬目数に有意差がみられなかった。一方、高速ボール追従群では、瞬目数は、頚部前屈姿勢が安静頚部姿勢に比べて有意に少なかった。高速ボール追従群では、頚部前屈を保持すると脳賦活作用が生じ、それが眼球運動の反応開始の機能を向上させるとともに、視覚情報の空白をもたらす自発性瞬目を抑制させるものと推察された。スポーツクラブにこれまで在籍したことがなく、頚部前屈保持に伴う眼球運動反応時間短縮が認められない被験者を対象として、安静頚部姿勢もしくは頚部前屈保持姿勢にて眼球運動反応トレーニングを行った。そのトレーニング前後で、頚部前屈姿勢保持時の眼球運動反応時間および自発性瞬目数の変化を比較した。被験者は、頚部前屈角度を20度に保持した姿勢にて眼球運動反応トレーニングを行う群(頚部前屈群)10名、安静頚部姿勢にてそのトレーニングを行う群(安静姿勢群)10名、およびコントロール群10名からなる。眼球運動反応トレーニングは、24秒の時間間隔で左右交互に点灯する視標に対して衝動性眼球運動にて素早く注視するというものである。そのトレーニングは、1日につき1分間を10回ずつ、14日間行った。コントロール群は、トレーニング前後、および安静と頚部前屈の条件間で反応時間に有意差が認められなかった。両トレーニング群とも、トレーニング後、安静時のサッケード反応時間が有意に短くなった。その短縮値は、安静姿勢群では9.6±9.1ms、頚部前屈群では、13.2±12.5msであった。さらに、頚部前屈群でのみ、トレーニング後、頚部前屈保持に伴う有意な反応時間短縮が認められた。その短縮値は8.7±6.0msであった。一方、自発性瞬目数は、いずれの群においても、トレーニング前後、および安静と頚部前屈の条件間で有意差が認められなかった。頚部前屈を伴う眼球運動反応トレーニングを行うと、これまでに報告されてきた眼球運動トレーニング効果に加えて、頚部前屈保持短縮効果が認められるようになることが示唆された。この短縮効果と自発性 | KAKENHI-PROJECT-19500497 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19500497 |
頚部前屈姿勢保持に伴う瞬目への影響の運動経験による差異と神経系トレーニング効果 | 瞬目数減少それぞれの神経機構のトレーニングによる形成は、関連性が低いことが推察された。本年度は、自発性瞬目及び随意性瞬目の頚部前屈姿勢保持による影響について検討を行い、瞬目に関与する機構への頚部前屈姿勢保持による影響について検討を行った。被験者は、いずれかのスポーツクラブに4年以上在籍した大学生12名からなる。安静頚部姿勢と頚部前屈姿勢にて、自発性瞬泪が生じる安静課題、随意瞬目課題および眼球運動反応課題を行った。水平眼球運動および瞬目に伴う垂直眼球運動は、電気眼球図法を用いて記録した。水平眼球運動では左右の外眼角部に表面電極を、垂直眼球運動では右眼の眉毛上部と眼窩下部に表面電極を置き、さらに前頭部中央にアース電極を置いた。瞬目に伴う脳電位を記録するため、国際10-20法で定められたFz、Cz,Pzから脳波を記録した。眼球運動反応時間は、頚部前屈保持姿勢の方が安静頚部姿勢よりも有意に短かった。この結果は、頚部前屈保持に伴い脳の賦活作用が生じるとのこれまでの我々の知見を支持するものとなった。自発性瞬目数は、頚部前屈姿勢の方が安静頚部姿勢よりも有意に少なかった。これは、頚部前屈保持に伴い、自発性瞬目が生じる神経機能に抑制が生じることが推察された。運動関連脳電位は、自発性瞬目時では認められず、随意瞬目時のみ認められた。さらに、頚部前屈保持に伴い、この関連脳電位のNS'成分の立ち上がり時間は遅延し、その成分の振幅が低くなった。これは、運動と関連した実行に関わる役割が頚部前屈保持によって小さくなることが推察された。 | KAKENHI-PROJECT-19500497 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19500497 |
血液免疫細胞におけるHippo経路の機能解析 | 1. MOB1 floxマウスとLck-Cre Tgマウスとを交配し、T細胞特異的MOB1欠損マウスを作製した。当マウスでは胸腺細胞数の低下を認め、脾臓や各リンパ節、末梢血白血球でも細胞数が低下した。胸腺のT細胞分画では、DN細胞の割合増加を認め、絶対数でみるとDP細胞、CD4+SP細胞、CD8+SP細胞数は低下していた。DN細胞分画ではDN3細胞の上昇とDN4細胞の減少傾向が認められ、β選択の障害とそれに伴う以降の分化障害の可能性が考えられた。β選択やpre-TCR形成の確認のため、CD27やCD28、細胞内TCRβなどの染色も行ったが、それらに差は認められなかった。末梢リンパ組織ではnaïve T細胞数の減少が認められ、一方でeffector/memory T細胞数に差はなく、T細胞の活性化能は保たれていると考えられた。胸腺、脾臓、リンパ節の組織学的構造に明らかな差異はなく、細胞増殖能とアポトーシスについても検討したが、有意差を得るには至らなかった。また、胸腺細胞の遊走能も検証したが、有意差を得られなかった。加えて、加齢マウスでの検討も行ったが、4ヶ月齢の時点ではT細胞特異的MOB1欠損マウスで胃へのリンパ球浸潤を認め(n=1のみ)、1年齢では胸腺の萎縮が強く、脾臓も小さかった。2. CD19-Cre Tgマウスを用い、B細胞特異的MOB1欠損マウスを作製した。当マウスの各種リンパ組織での細胞表面グロブリンやCD21/CD23を解析したが、有意差は得られなかった。3. FSP1-Cre Tgマウスを用い、FSP+特異的MOB1欠損マウスを作製した。当マウスは5-6週齢で胸腺の著しい萎縮が起こり、10週齢までに全個体が死亡した。胸腺内線維芽細胞の機能解析を進めたが、ROSA YFPマウスとの交配よりT細胞でもFSP1が発現している可能性が考えられた。本研究課題は平成26年度が最終年度のため、記入しない。本研究課題は平成26年度が最終年度のため、記入しない。1. MOB1 floxマウスとLck-Cre Tgマウスとを交配し、T細胞特異的MOB1欠損マウスを作製した。当マウスでは胸腺細胞数の低下を認め、脾臓や各リンパ節、末梢血白血球でも細胞数が低下した。胸腺のT細胞分画では、DN細胞の割合増加を認め、絶対数でみるとDP細胞、CD4+SP細胞、CD8+SP細胞数は低下していた。DN細胞分画ではDN3細胞の上昇とDN4細胞の減少傾向が認められ、β選択の障害とそれに伴う以降の分化障害の可能性が考えられた。β選択やpre-TCR形成の確認のため、CD27やCD28、細胞内TCRβなどの染色も行ったが、それらに差は認められなかった。末梢リンパ組織ではnaïve T細胞数の減少が認められ、一方でeffector/memory T細胞数に差はなく、T細胞の活性化能は保たれていると考えられた。胸腺、脾臓、リンパ節の組織学的構造に明らかな差異はなく、細胞増殖能とアポトーシスについても検討したが、有意差を得るには至らなかった。また、胸腺細胞の遊走能も検証したが、有意差を得られなかった。加えて、加齢マウスでの検討も行ったが、4ヶ月齢の時点ではT細胞特異的MOB1欠損マウスで胃へのリンパ球浸潤を認め(n=1のみ)、1年齢では胸腺の萎縮が強く、脾臓も小さかった。2. CD19-Cre Tgマウスを用い、B細胞特異的MOB1欠損マウスを作製した。当マウスの各種リンパ組織での細胞表面グロブリンやCD21/CD23を解析したが、有意差は得られなかった。3. FSP1-Cre Tgマウスを用い、FSP+特異的MOB1欠損マウスを作製した。当マウスは5-6週齢で胸腺の著しい萎縮が起こり、10週齢までに全個体が死亡した。胸腺内線維芽細胞の機能解析を進めたが、ROSA YFPマウスとの交配よりT細胞でもFSP1が発現している可能性が考えられた。本研究課題は平成26年度が最終年度のため、記入しない。本研究課題は平成26年度が最終年度のため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-14J11799 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J11799 |
表現志向に考慮した造形メソッドの開発と、ディジタルアーカイブを用いた教育及び評価 | 本研究では学生の表現志向を調査し、表現志向と造形要素による分類を用いた学生作品のディジタルアーカイブを開発を行った。また「造形要素の組み合わせによる造形メソッド」で考えられていた造形プロセスに、作家の内的なイメージと表現志向の概念を加え、新たな造形プロセスのモデル化を試み、授業における作品制作の際に発生する、具象・抽象の表現志向による個人差を考慮した、基礎造形教育カリキュラムの開発を行い、基礎造形教育の教育効果の向上を図った。本研究では学生の表現志向を調査し、表現志向と造形要素による分類を用いた学生作品のディジタルアーカイブを開発を行った。また「造形要素の組み合わせによる造形メソッド」で考えられていた造形プロセスに、作家の内的なイメージと表現志向の概念を加え、新たな造形プロセスのモデル化を試み、授業における作品制作の際に発生する、具象・抽象の表現志向による個人差を考慮した、基礎造形教育カリキュラムの開発を行い、基礎造形教育の教育効果の向上を図った。1999年から2009年までに行った基礎造形の授業と、それに関わる先行研究の再検討を行い、造形メソッドが効果的に機能しなかった課題について、それぞれの事例の研究を進めると共に、その原因となったと推測される、学生の表現志向の分析について分類を行い、日本基礎造形学会あいつ大会にて口頭発表を行った。また2010年に行われた基礎造形の授業において制作された作品についても同様に分析を進め、更にアンケートによって課題の作品について、趣向の調査を行った。以上の研究の結果、15週間にわたる基礎造形の課題のうち、「ネガティブな線の構成・断線」、「ネガティブな線の構成・欠線」、「欠損した円の構成」、「同形分割と等量分割」の4つの課題に、「具象的表現」と「幾何学的・抽象的表現」という表現志向の差異が特にみられた。また、作品中に使用された色・形・コンポジションといった造形要素の数と、各個人の表現志向の違いをクロス集計した結果、具象的表現を志向する学生は、作品中に使用される造形要素の数が比較的に少なく、複雑で高度な造形要素の組み合わせを行うことを苦手としている傾向が明らかになった。これは研究当初の疑問であった、「具象的表現志向の高い学生と、造形メソッドを用いた教育カリキュラムとの親和性の低くさ」が証明する結果となった。今後は学生の内的なイメージと表現志向と実際の形になった作品の関係について、その造形プロセスから明らかにするとともに、他の美術・造形の授業との比較を行うことによって、基礎造形に対する趣向を明らかにすると共に、造形メソッドの問題点を明らかにする予定である。本年度は、平成21年度に口頭発表を行った「基礎造形教育法における表現志向と造形能力」について、基礎造形の授業と、それに関わる先行研究の検討を行い、造形メソッドが効果的に機能しなかった課題について、それぞれの事例の研究を進め、「基礎造形教育法における表現志向の影響」として論文にまとめた。また「基礎造形教育法における表現志向と造形能力」については、平成21年度に行った表現志向調査の調査結果から調査方法の問題点を明らかにした。そして、その結果をフィードバックし、調査フォーマットの作成・決定を行い、岐阜市立女子短期大学の学生に対して、嗜好調査を実施した。その結果、現在の基礎造形教育法の問題点が、「幾何学的・抽象的表現」に対する嗜好の違いに有ることが判明し、日本基礎造形学会西宮大会にて口頭発表を行った。作品のデータ収集と整理に関しては、平成21年度から引き続き、本年度も同様に収集、整理を行った。また、これらのデータを効果的に利用が可能となるように、ディジタルアーカイブのインデックスを元にした、学生の造形志向と表現の概念を加えたディジタルアーカイプの設計を開始した。先に設計したアーカイブはMicrosoft Accessによるものであったが、今回は多くの人が利用できるよう、オープンオフィスを利用する方向で検討を進めた。また今後は、平成23年度に基礎造形教育法テキストの試作を行い、平成24年度に試行、平成25年度にフィードバックを行い基礎造形教育法を完成させる予定である。その為、本年度は、それに必要な調査と資料の整理などを行った。本年度は、作品の制作過程において使用される造形要素の数が比較的に少なく、複雑で高度な造形要素の組み合わせを行うことを苦手としている傾向が強い具象的表現を志向する学生に対して、新たな題材を開発することを目的に、イメージの可視化のプロセスの調査を行った。調査方法は指定された動物をモチーフとした記憶画と、その動物に対するイメージを自由記述させ、そのイメージ語と描かれた動物を比較し、作者のそれぞれの動物に対するイメージが、どの様に表現(可視化)されるかについて分析を行った。調査の結果、多くの作例の場合、描かれた動物とイメージ語の相関関係が薄く、必ずしも作者の心的イメージが、表現に反映されていないことが分かった。これは動物のような具象的な物は、内的なイメージから再現するのではなく、記憶された視覚的な情報から直接的に描くといったプロセスを経ているからだと思われる。またこの様な視覚化のプロセスから、抽象的表現の場合は、記憶された視覚的な情報が無いために、内的なイメージのみから視覚化されることから、内的なイメージからの可視化の繋がり(構想)が弱い場合、苦手意識が発生するのだと思われる。 | KAKENHI-PROJECT-21530967 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21530967 |
表現志向に考慮した造形メソッドの開発と、ディジタルアーカイブを用いた教育及び評価 | 以上のようなことから、基礎造形教育法が定めた課題のうち、特に「具象的表現」と「幾何学的・抽象的表現」という表現志向の差異がみられた、「ネガティブな線の構成・断線」、「ネガティブな線の構成・欠線」、「欠損した円の構成」、「同形分割と等量分割」について、制作過程における内的なイメージからの可視化の繋がりを強めるため、構想をアシストする制作フォーマットを作成した。本年度は研究の最終年度として、前年度までの継続な作業の実施と研究の総括を行った。継続的な作業としては、作品データの収集および整理を行った。作品のデータ収集と整理に関しては、例年と同様に授業で制作された作品を中心に収集、整理を行った。また24年度に作成したディジタルアーカイブに、ディジタルデータ化が済んだものから順次、登録をおこなった。またディジタル資料の利用にあたって改良を行った。平成24年度に制作したディジタルアーカイブの追補、修正を行うとともに、従来パソコンブラウザのみの対応となっていた表示方法を、スマートフォン及び携帯情報端末(PDA)への対応を試みた。研究の総括としては、研究授業用「基礎造形教育法テキスト」の試作をおこない、利用・評価を行った。平成24年度までに検討した、授業における作品制作の際に発生する、具象・抽象の表現志向による個人差の影響を軽減した研究授業の「基礎造形教育法テキスト」を試作し、授業での利用および具象・抽象の表現志向による教育効果を測定・分析をし、基礎造形教育法の再検討を行った。また授業で得られたデータを元に、基礎造形教育法テキストの修正を図り、具象・抽象の表現志向による個人差の影響を軽減した基礎造形教育法のテキスト「あたらしい基礎造形」を作成した。基礎造形の授業では各課題を実施する際に、基礎造形教育法のテキストと、課題ごとに作成された作品のポートフォリオを利用している。このポートフォリオは、課題説明時の作品例提示としての利用や、学生が作品制作時に発想の助けとしての利用が主であるが、冊子としてまとめているため、全てを見るためには時間がかかることや、見られる人数が限られるなどの問題があった。これらの問題に対し、造形要素をインデックスとしたディジタルアーカイブを開発することによって、教員が教具として利用し、より効率的な教育が出来るだけではなく、学生が作品制作の過程で利用することによって、自然に造形要素への理解が促進され、基礎造形教育法全体として、教育効果の上昇が期待できると考えた。そこで本年度は主にFile Maker Proを用いたディジタルアーカイブの開発を行った。このディジタルアーカイブは、試用によって概ね以下の効果が認められた。1基礎造形教育法によって制作された作品を記録・保存・集積する。2基礎造形教育法を用いた授業を実施するにあたって、作例紹介の教具として利用する。3学生が課題を制作するにあたり、学生自ら作品を検索することによって、新しい発想を生み出すなど、制作の支援を行う。4検索のインデックスに、4大造形要素(色・形・コンポジション・テクスチュア)と、それに連なる従属造形要素を用いる事によって、学生の造形要素に対する理解をより深める。研究代表者の所属研究機関移動により、研究方法の変更を要したものの、方法の変更によって、現在はおおむね順調に研究が進展している。25年度が最終年度であるため、記入しない。概ね当初の計画通り、基礎造形教育法の改良、ディジタルアーカイブの制作まで実施している。 | KAKENHI-PROJECT-21530967 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21530967 |
弾性表面波によるアモルファス構造材料の残留応力測定に関する研究 | 1.アモルファス構造材料の製作基材に生体材料として用いられているオーステナイト系ステンレス鋼SUS316、コーティング材にバイオセラミックスとして注目されている窒化チタンTiNを選択し、スパッタリングによるコーティングを行った。そして、コーティング層の割れや剥離の生じないスパッタリング条件を検討した。その結果、以下の条件の下で膜厚3.4μmの良好なコーティング層が得られた。◎投入電力:100W、放電圧(Ar+N_2):1.0Pa,N_2分圧:0.014Pa、蒸着時間10hrしかしながら、X線で確認した結果、得られた試料は結晶構造であった。アモルファス構造となるスパッタリング条件を現在検討中である。アルミナなど他のコーティング材料も検討している。2.弾性表面波によるアモルファス構造材料の残留応力測定ディジタルストレージスコープ1台、ユニバーサルカウンタ1台、パルス発生器1台、くさび形トランスジューサ3個を用いて測定システムを構築した。予備実験として、SUS316の弾性表面波に対応したくさび形トランスジューサを用いて、タイムインターバル法の検討を行っている。現在までに明らかになっていることは以下のとおりである。1)入力強度5V、周波数5MHzのパルスの場合、トランスジューサ間距離50mmまでは弾性表面波の検出が可能である。2)トランスジューサの試験片への装着圧力や接触媒体の厚さによって弾性表面波の強度が変化する。これらについて、定量的検討を引き続き行う。アモルファス構造材料が作製でき次第、本実験を行う。1.アモルファス構造材料の製作基材に生体材料として用いられているオーステナイト系ステンレス鋼SUS316、コーティング材にバイオセラミックスとして注目されている窒化チタンTiNを選択し、スパッタリングによるコーティングを行った。そして、コーティング層の割れや剥離の生じないスパッタリング条件を検討した。その結果、以下の条件の下で膜厚3.4μmの良好なコーティング層が得られた。◎投入電力:100W、放電圧(Ar+N_2):1.0Pa,N_2分圧:0.014Pa、蒸着時間10hrしかしながら、X線で確認した結果、得られた試料は結晶構造であった。アモルファス構造となるスパッタリング条件を現在検討中である。アルミナなど他のコーティング材料も検討している。2.弾性表面波によるアモルファス構造材料の残留応力測定ディジタルストレージスコープ1台、ユニバーサルカウンタ1台、パルス発生器1台、くさび形トランスジューサ3個を用いて測定システムを構築した。予備実験として、SUS316の弾性表面波に対応したくさび形トランスジューサを用いて、タイムインターバル法の検討を行っている。現在までに明らかになっていることは以下のとおりである。1)入力強度5V、周波数5MHzのパルスの場合、トランスジューサ間距離50mmまでは弾性表面波の検出が可能である。2)トランスジューサの試験片への装着圧力や接触媒体の厚さによって弾性表面波の強度が変化する。これらについて、定量的検討を引き続き行う。アモルファス構造材料が作製でき次第、本実験を行う。 | KAKENHI-PROJECT-06750076 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06750076 |
源氏物語本文に関する伝承と本文変容の連動性について | 本研究では、現在一般的に読まれている『源氏物語』の歴史的意義について再検討した。この作品には、同じ"源氏物語"の名を有しながらも内実を異にした様々な源氏物語が存在していた。本研究では、そうした同名異体の源氏物語に着目し、成立から約200年後には既に本来の形態がわからなくなってしまっていたとされる本作品が、「作者最終稿」という概念のもとに変容し、現在の形態へと固定化されていくまでの過程を明らかにした。本研究では、現在一般的に読まれている『源氏物語』の歴史的意義について再検討した。この作品には、同じ"源氏物語"の名を有しながらも内実を異にした様々な源氏物語が存在していた。本研究では、そうした同名異体の源氏物語に着目し、成立から約200年後には既に本来の形態がわからなくなってしまっていたとされる本作品が、「作者最終稿」という概念のもとに変容し、現在の形態へと固定化されていくまでの過程を明らかにした。本研究の目的は、源氏物語諸本における異文の発生原因とその過程を解明することある。この目的を達成するための第一段階として、本年度は当初の計画通り、以下の2点の作業を行った。<A>鎌倉室町時代成立の『源氏物語』注釈書における異文注記の摘出とデータ化<B>鎌倉室町時代成立の『源氏物語』注釈書、並びに関連史料に見える『奥入』に関する伝承の収集と分析これらの作業を通して得られた成果<A>をもとに発表したものが、「淘汰された定家筆本源氏物語-《青表紙本》形成のモノガタリ」(本書類「11.研究発表(平成21年度の研究成果)」-〔図書〕項参照)である。本論文は、源氏注釈書『仙源抄』に焦点をあて、(1)長慶天皇が所持していたとされる定家本『源氏』の実態を明らかにした上で、(2)かつては本文の異なる定家本が複数存在していたこと、(3)それら内容の異なる複数の定家本が、時代の変化とともに青表紙本という一つの術語・概念のもとに、一つの形へと統合・淘汰されていく過程を明らかにしたものである。この研究結果は、"正統な青表紙本本文とは何か"を判断しようとする際に用いられる基準が、現在のわれわれと、鎌倉室町時代当時の人々とでは根本的に異なっていたことを示すものとしてある。ならば、鎌倉室町時代における基準はどこに置かれていたのか?この問題を明らかにするための作業が<B>である。諸注釈等を調査した結果、鎌倉室町時代においては、現代の源氏研究が重視する<本文>の形態に関する基準(=<A>)よりも、むしろ<伝本>の形態に関する基準(=<B>)の方に重きが置かれていたのではないかとの見通しを得ることができた。この点に関しては、22年度に研究成果を発表する予定である。本年度は、前年度に引き続き研究遂行に必要な文献の調査とデータ化を行った。A;本文の形態に関する本文分別の基準の分析鎌倉室町時代成立の『源氏物語』注釈書(紫明抄岷江入楚)における異文注記の摘出を行い、その一部(桐壺巻幻巻)をデータ化した。これらの作業を通して、(1)異文注記の数は、実際の本文異同の数とは無関係に、巻が進むごとに減少傾向にあること、(2)本来であれば指摘されるべき異同であっても、無視されている場合があること等々の現象が確認された。これらの現象は、鎌倉室町時代の人々にとって本文分類の基準が、現代のような各巻全体を通しての本文の一致率ではなく、巻中のある特定の箇所がどのような形態を有しているかという一点に置かれていたことを示していよう。この仮説を検証するべく、さらなる調査を行っていきたい。B;伝本の形態に関する本文分別の基準の分析青表紙本系統伝本の中には、各帖末に、藤原定家が作成した注釈書『奥入』を備える伝本が存在する。池田亀鑑は、この形態的特徴を備えていることこそが、真の"青表紙(原)本"であることの証しとして認定した。しかし、鎌倉室町時代成立の『源氏物語』注釈書には、池田が主張する(1)各帖末に『奥入』を附載する形態ではなく、(2)『奥入』を附載しない形態(=『奥入』を別帖仕立てとするもの)こそが正統な青表紙本であるとの伝承もまた存在したことが確認された。この伝承が、果たして「A;本文の形態に関する本文分別の基準の分析」の調査結果と関係を有するものであるか否か、さらなる検証を進めていきたい。本年度は、前年度に引き続き研究遂行に必要な文献の調査とデータ化を行った。1本文の形態に関する本文分別の基準の分析鎌倉室町時代成立の『源氏物語』注釈書(紫明抄眠江入楚)における異文注記の摘出を行い、その一部(桐壺巻幻巻)をデータ化した。これらの作業を通して、(1)異文注記の数は、実際の本文異同の数とは無関係に、巻が進むごとに減少傾向にあること、(2)本来であれば指摘されるべき異同であっても、無視されている場合があること等々の現象が確認された。今年度までに基本的なデータの作成は終了した。以後未調査の注釈書のデータの追加を行いつつ、順次公開していく予定である。2神宮文庫蔵『源氏肝要』の調査 | KAKENHI-PROJECT-21720080 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21720080 |
源氏物語本文に関する伝承と本文変容の連動性について | 神宮文庫蔵『源氏肝要』に関して、内閣文庫本蔵の同書との差異に着目しつつ、源氏物語、並びに本書の享受のあり方について調査した。この調査を通して、(1)『源氏肝要』が、源氏物語本体ではなく、古注釈書等の二次資料をもとに記述されていること、(2)『源氏肝要』には、本書の成立の問題だけでなく、『源氏小鏡』といった他の注釈書の成立の問題をも解決しうる記述が存在することを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-21720080 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21720080 |
寒冷地における土壌中の熱・水分移動および凍結量解析モデルの構築 | 砂質土壌を用いた水の電気伝導度および温度変化速度が異なる条件における不凍水曲線の同定実験,さらに土壌の違いによる不凍水曲線の違いを検討するために,真砂土を用いた不凍水曲線の同定実験を試みた.その結果砂質土壌において不凍水曲線は水の電気伝導度が異なる場合,温度変化条件および初期の体積含水率がほぼ同じであっても,大きく異なること,初期体積含水率がほぼ同じであれば,温度変化速度が異なっていても,形状は大きく変わらない,ことが分かった.また真砂土と豊浦珪砂では,温度変化条件が同じで初期体積含水率が0.25程度であれば,両者の不凍水曲線は,過冷却終了直後を除いて,ほぼ同じ形状を示すことが分かった.種々の土壌の不凍水曲線を求めるために,山形珪砂を使用して土壌凍結・融解実験を行い,これまでの実験で使用した豊浦珪砂の不凍水曲線(氷点下温度と体積含水率の関係)との比較を試みた.土壌カラムに所定の体積含水率(初期体積含水率)に設定した山形珪砂を詰め,低温水槽およびクーラーボックスを用いてカラムごと冷却・加熱し,連続的にカラム内の温度をサーミスタにより,体積含水率をTDRセンサーにより計測した.初期体積含水率を0.15から0.27までの4ケースとした.計測結果を基に,土壌温度と体積含水率の関係を調べ,不凍水曲線を得る.その結果,山形珪砂の不凍曲線は豊浦珪砂のそれと同様に,初期体積含水率の違いに関わらず,カラム内温度が-1°C以下ではではほぼ同じ分布形状を示すが,それ以上では形状が異なり,0°C付近で概ね初期体積含水率の値に近づくことが確認された.ただし山形珪砂と豊浦珪砂の不凍水曲線を比較すると,-1°Cから0°Cの範囲で分布形状に大きな違いが観られた.これらの結果について,研究協力者のカルガリー大学M. Hyashi教授と検討した結果,分布形状の違いの原因としては,土壌の粒径成分,実験に使用した水の化学的組成(塩類などの濃度),体積含水率の算定方法などが挙げられ,これらの点について改善を検討すべきとの結論を得た.不凍水曲線(温度と未凍結の土壌水分量の関係)を基にした合理的な凍結量(融解量)算定式を組み込んだ,凍結・融解過程を受ける不飽和土壌中の熱・水分移動解析モデルの構築を目指して引き続き土壌凍結実験を実施し,不凍水曲線の同定を試みた.特に水質(水の電気伝導度)の違いによる不透水曲線の違いの検討も目的として,温度変化条件および初期体積含水率の異なる条件下での砂質土壌と蒸留水を用いた不凍水曲線の同定を試み,水道水のそれとの比較・検討を行った.その結果として,温度変化条件および初期体積含水率(約0.25および0.15)の異なる条件下での砂質土壌と蒸留水の不凍水曲線が得られ,水道水のそれとの比較によって,以下のような知見が得られた.(1)水の電気伝導度が異なる場合,不凍水曲線は大きく異なる.特に水道水の不凍水曲線は凍結時および融解時ともほぼ同じ分布を示すのに対して,蒸留水のそれは凍結時・融解時の分布がそれぞれ大きく異なる.(2)水の電気伝導度の違いに関わらず,初期体積含水率が同じであれば,温度の変化速度が異なっていても,不凍水曲線の分布形状は大きく変わらない.(3)水の電気伝導度の違いに関わらず,初期体積含水率が異なる場合,低含水率時では不凍水曲線の分布形状に違いはあまり無いが,含水率が高くなるに従って初期体積含水率に漸近するような分布になる.本研究の課題遂行のために当面,土壌の凍結実験により,種々の条件下における不凍水曲線の同定を試みているが,実験遂行上土壌凍結のために使用するエチレングリコール水溶液の供試体土壌への侵入などが生じ,実験に時間がかかるため,不凍水曲線の同定にやや時間を要したため.不凍水曲線を基にした合理的な土壌水の凍結量(融解量)算定式を組み込んだ,凍結・融解過程を受ける不飽和土壌中の熱・水分移動解析モデルの構築を目指して,引き続き土壌凍結実験を試みた.今年度は特に,土壌の違いによる不透水曲線の違いの検討も目的として,温度変化条件および初期体積含水率の異なる真砂土の不凍水曲線を求め,昨年度までに求めた豊浦珪砂のそれとの比較・検討も試みた.その結果,初期体積含水率約0.15と0.25の場合の真砂土の不凍水曲線が得られ,同じ温度変化条件および初期体積含水率での豊浦珪砂のそれとの比較により,次のような知見を得た.(1)真砂土においても豊浦珪砂と同様に,温度変化速度の違いに関わらず,初期体積含水率が同じであれば,不凍水曲線はほぼ同じ形状になること,(2)温度変化条件が同じで初期体積含水率が0.15および0.25程度であれば,真砂土と豊浦珪砂の不凍水曲線は,過冷却終了直後除いて,ほぼ同じ形状を示すこと.(3)真砂土の不凍水曲線は豊浦珪砂のそれと同様,初期体積含水率が異なる場合,低含水率領域においては不透水曲線の分布形状に違いはあまり無いが,含水率が高くなるに従って初期体積含水率に漸近するような分布となる.また豊浦珪砂の体積含水率とマトリックポテンシャルの関係(水分特性曲線)を不飽和領域について実験により求め,これまで求めた不凍水曲線との比較を試みた. | KAKENHI-PROJECT-26420507 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26420507 |
寒冷地における土壌中の熱・水分移動および凍結量解析モデルの構築 | 一般に飽和状態の場合,水分特性曲線と不透水曲線は相似の関係にあることが指摘されているが,今回の実験結果では両者の分布形状に違いがあることが確認された.砂質土壌を用いた水の電気伝導度および温度変化速度が異なる条件における不凍水曲線の同定実験,さらに土壌の違いによる不凍水曲線の違いを検討するために,真砂土を用いた不凍水曲線の同定実験を試みた.その結果砂質土壌において不凍水曲線は水の電気伝導度が異なる場合,温度変化条件および初期の体積含水率がほぼ同じであっても,大きく異なること,初期体積含水率がほぼ同じであれば,温度変化速度が異なっていても,形状は大きく変わらない,ことが分かった.また真砂土と豊浦珪砂では,温度変化条件が同じで初期体積含水率が0.25程度であれば,両者の不凍水曲線は,過冷却終了直後を除いて,ほぼ同じ形状を示すことが分かった.当初の年度計画において,数種類の土壌を用いて実験を実施することとなっていたが,現状では山形珪砂および豊浦珪砂の2種類に留まっている.また,熱・水分移動モデルに組み込む予定の豊浦珪砂の凍結・融解量予測式の構築には至っていない.また当初の年度計画において挙げていた,土壌の熱伝導率などの熱・水分パラメータの測定の実施も途中段階にある.本研究の当初の目的である,不凍水曲線(温度と未凍結の土壌水分量の関係)を基にした合理的な凍結量(融解量)算定式を組み込んだ,凍結・融解過程を受ける不飽和土壌中の熱・水分移動解析モデルの構築を目指して,熱・水分移動解析モデルコードを作成するとともに,これまで得られた不透水曲線を用いて,凍結土壌熱・水分移動解析モデルの妥当性の検証を進める.水文学凍結土壌中の熱・水分移動モデル構築を図るため,他の熱・水分物性がよく知られている豊浦珪砂を用い,初期の体積含水率の異なる場合の不凍水曲線同定の実験を重点的に実施する.土壌水に含まれる物質量や体積含水率の算定方法を再検討しつつ,体積含水率の異なる豊浦珪砂の凍結・融解実験を行い,これまで得られたデータとともに解析し,凍結量・融解量算定式を求める.また他の土壌,特に現地土壌を用いた凍結・融解実験および熱伝導率測定実験を行い,熱・水分移動モデル構築に必要となる不凍水曲線および水分量と熱伝導率の関係の同定を試みる.さらに,凍結過程を受ける不飽和土壌中の熱・水分移動解析モデルのコードの作成を引き続き続ける.実験遂行に時間を要したため,研究協力者であるUniversity of CalgaryのM. Hayashi教授との研究打ち合わせの実施が困難となり,そのための旅費の使用を見送ったため.不凍水曲線の計測を円滑に進めることを目的として,物品の購入計画を変更し,土壌水分測定のためのTDRセンサーに関する物品を購入し,また土壌の熱物性値を求めるための実験の準備が途中段階で終了したため,当初計画で挙げていた熱流板などの購入に至らなかった.その結果,次年度使用額が生じた.熱・水分移動解析モデルによる解析を,室内実験に適用する予定であり,この室内実験の遂行のために助成金を使用するとともに,論文投稿・University of CalgaryのM. Hayashi教授との研究打ち合わせの旅費に使用する予定である.設備備品として地中熱流板などの熱物性値を求めるための実験装置を購入するとともに,各種土壌などの消耗品を購入する. | KAKENHI-PROJECT-26420507 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26420507 |
創造性が持続する安全都市としての復興のための研究 | これまでの研究では、機械時代の都市について、安全学の視点から進めてきた。安全の担保は、都市の持続プログラムの有無、特に内発的なコミュニティの創造力が重要となる。これは、免疫の自己組織化過程に似ている。この視点に立つ知恵時代の都市イメージを「土地利用・規模・創造のためのコミュニケーション構造・物質循環システム」で規定し、これを「セルシティ」と呼ぶ。一方、経済的拡大志向を持つ機械時代の都市には免疫的な持続プログラムが存在しにくく、機械時代の都市の死を予見した。本研究では、都市安全の視点から、多様化する都市リスクの意味を整理した。物・金・人・心、等の複合的リスク波及に加え、機会の喪失、時間喪失といった活動リスクも存在している。さらに急速な技術進化への不適応から起こる、個人や組織の身体性の喪失も見えてきた。これらは都市の効用がリスクに転化する過程である。また市場操作につながる経済犯罪は杜会基盤を破壊し、機械時代の都市を否定することになる。多様で根元的なリスクが存在する都市は、資源、環境問題に加え、リスク拡大を食い止める猶予時間の欠乏といった、新たなリスクが存在している。知恵時代の都市への移行は、根本的な都市の意味を内発的に切り替えることである。そのためには、都市のリスクを自ら認識すること、そのリスクを軽減する身近な方策を自ら学習するプログラムが必要となる。軽減リスクを測る価値基準は、金銭だけではなく未来へ再投資するための時間や知識、や基本的な生存資源である水やミネラルとなる。一方、それらの学習には時間が必要であり、時間を創り出すプログラムも用意しなくてはならない。究極の課題は、都市形成の基盤となる新たな経済社会システムの具体化であり、現在、世界でそのイメージを具体化した例は見あたらない。切り替えのための社会プログラムの実践、及び社会システムのイメージ形成は継続的な研究課題となる。これまでの研究では、機械時代の都市について、安全学の視点から進めてきた。安全の担保は、都市の持続プログラムの有無、特に内発的なコミュニティの創造力が重要となる。これは、免疫の自己組織化過程に似ている。この視点に立つ知恵時代の都市イメージを「土地利用・規模・創造のためのコミュニケーション構造・物質循環システム」で規定し、これを「セルシティ」と呼ぶ。一方、経済的拡大志向を持つ機械時代の都市には免疫的な持続プログラムが存在しにくく、機械時代の都市の死を予見した。本研究では、都市安全の視点から、多様化する都市リスクの意味を整理した。物・金・人・心、等の複合的リスク波及に加え、機会の喪失、時間喪失といった活動リスクも存在している。さらに急速な技術進化への不適応から起こる、個人や組織の身体性の喪失も見えてきた。これらは都市の効用がリスクに転化する過程である。また市場操作につながる経済犯罪は杜会基盤を破壊し、機械時代の都市を否定することになる。多様で根元的なリスクが存在する都市は、資源、環境問題に加え、リスク拡大を食い止める猶予時間の欠乏といった、新たなリスクが存在している。知恵時代の都市への移行は、根本的な都市の意味を内発的に切り替えることである。そのためには、都市のリスクを自ら認識すること、そのリスクを軽減する身近な方策を自ら学習するプログラムが必要となる。軽減リスクを測る価値基準は、金銭だけではなく未来へ再投資するための時間や知識、や基本的な生存資源である水やミネラルとなる。一方、それらの学習には時間が必要であり、時間を創り出すプログラムも用意しなくてはならない。究極の課題は、都市形成の基盤となる新たな経済社会システムの具体化であり、現在、世界でそのイメージを具体化した例は見あたらない。切り替えのための社会プログラムの実践、及び社会システムのイメージ形成は継続的な研究課題となる。0.研究環境の設定:情報共有による相互認識環境異分野の研究者の相互認識の向上をはかるための、インターネット双方向ポータルサーバーを設置した。最新情報の確認が容易となるような機能を追加し、次年度以降の運用に備えた。1.知恵時代の都市の命題(位置づけと機能)の整理研究過程でのキーワード「自己組織化」から、都市コミュニティの未来を検討した。近代コミュニティとして意味づけられるゲゼルシャフトも、本来の人間性とは異なるとすると、そこに新たなコミュニティを見いだす事が可能となる。一方過去のコミュニティにある、参加性、自立性と相互性は、現代のコミュニティで失ったものであり人間本来の姿を示している。自己組織化状態には、シナリオを書く姿勢、自分以外の環境とのコラボレーションが存在する。つまり、自分と外界とのシステムの接続性が重要となる。この視点で生まれたキーワードは、地域通貨、知恵時代のNGO、など。2.知恵時代の都市パターン(形式と規模)の整理ローマ時代から現代まで、都市の発展は、人口規模の歴史である。人口数万の都市は様々な技術により、数百万人以上の人口を支える事が可能となった。その意味でも機械時代の都市は、技術によって支えられた。自然を排除した都市は、基本的な矛盾をはらんでいる。ゲゼルシャフトに対する人間的な根幹のような視点が新しい課題として見えてくる。人間スケール、コミュニティの自立性がキーワードとなる知恵の都市と、国土、国際関係などのスケールとの関わりを創り出すためのシステムが必要となる。これを生命体との比較から、細胞、組織、臓器、システム、生体に準ずるレベルを都市空間を見直した。 | KAKENHI-PROJECT-14209006 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14209006 |
創造性が持続する安全都市としての復興のための研究 | これまでの研究から、デザイン、マネージメント、コントロール、プロダクトといったそれぞれの都市の意味を、物理的な条件から整理を行った。3.知恵時代の新たな危機の想定知恵時代の都市の意味は、コミュニケーションの自由性と蓄積性である。しかしテロ活動からの安全確保は、必然的に自由な移動やコミュニケーションを妨げる。これは、都市機能を放棄するという矛盾となる。自己組織化を行う都市は、小さなシステムと大きなシステムのコミュニケーション構造が成立しているはずである。そこにシステムの内部にある自浄作用は、ハッカーのようなテロ活動を自然に阻止ついていく。1.新たなリスクの顕在化今回の研究期間中も前年度同様、多様な災害が顕在化した。その範囲は疫病から社会災害まで独立した事象であるが、国際的で俊足な社会流動、自然生態のシステムを越えた経済システム、災害の拡大に対処できない社会システムなどが共通している。1-1国境のない新たなリスクの顕在化:SARS、BSE、鳥インフルエンザ、ワーム、ウイルス、情報流出、国際的停電1-2社会災害の防止機能の停止の現実化:イラク戦争におけるアメリカとフランス、国際テロの慢性化2.リスクに係わる現代課題社会リスクと個人のリスクの区分を再認識する必要がでてきている。また、地球資源の問題などマクロな避けられない課題に対し地球的な社会システムが構築できない現状がある。個人、地域と世界が一体化していることを認識できないことは根本的課題とである。2-1社会リスクと個人の権利の区分が曖昧になっていること:村上、公文:自由意志による種痘接種の影響懸念、テロ以降のアメリカの人権監理:情報化、流動化社会の中で、リスク管理が単純でなくなっていること:岩崎2-2水資源のように地球的な絶対リスク(有限資源のリスク)の危険は、:社会資本の整備と共にさらに強まっていること:岩崎:資源自給率の低い我が国では、根本的に自国リスクを下げにくいこと:岩崎3.新時代の社会システム地域と世界の一体化を前提として、社会システムの新しい構造が提案されつつある。いずれも複層的なセクタのコラボレーションが前提となっている。:時代の知恵化情報化の新たな取り組み=社会システム:公文提案:地域システムの国際化について:リシャール論文:小さなシステムと大きなシステムのコミュニケーション構造による自浄作用=自己組織化都市:岩崎提案4.地域社会の持続性と文化社会リスクの回避、持続社会の実現で忘れられる文化的視点。ユネスコ世界遺産には無形文化財も登録されるようになったが、リスク回避を文化として考える視点も必要だ。:文化的持続は、地域の持続の一表現:鳥越コメント5.課題リスクを考える基本は、リスクを社会での共通認識とすること。そのための情報流通の不足、学習機会の不足。 | KAKENHI-PROJECT-14209006 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14209006 |
食物アレルギー,感染症,自然災害等の保健・安全問題に対する教員の力量とその形成 | 現職教員の保健・安全のニーズ調査とヒヤリ・ハット体験の調査を実施し,それに基づく教員養成のためのモデルカリキュラムを作成した。発達障害への対応,心のケア,けがの応急手当,心肺蘇生法,AED,エピペン,保護者との連携に加えて,アレルギー疾患への対応,熱中症の対応,過呼吸への対応,慢性疾患への対応,感染症への対応,などの内容を含んだ教員の保健・安全の力量を形成する教員養成カリキュラムが必要と考えられた。本研究の目的は,食物アレルギー,感染症,自然災害に対する教員の保健・安全の力量を形成するモデルカリキュラムを作成し,その実験的施行によって,教員養成段階での保健・安全の力量を形成し評価することである。この目的に基づき,平成26年度は,現職教員の保健・安全に関するニーズ調査とヒヤリ・ハット体験の調査を実施した。研究対象は,全国の10都府県の小学校,中学校,高等学校の学級担任である。1905名を対象とする調査を実施し,1283名より回答を得た。調査内容は,健康観察,けがの応急手当,熱中症,心肺蘇生法,AED,アレルギー疾患,アナフィラキシー時のエピペン,過呼吸,起立性調節障害,摂食障害,感染症,慢性疾患,心のケア,健康診断における教師の役割,発達障害,教室の環境衛生,自然災害,保護者との連携,教員同士の連携,養護教諭との連携についての対応を問う内容とこれまでに経験した保健・安全に関係した「ヒヤリ・ハット体験」を問うものである。担任教員を対象とするこのような大規模な調査は,本邦初めてであり,このニーズと実態に基づきながら,モデルカリキュラム試案を作成することは大きな意義を持つ。データ入力が終了した時点で,一部のデータ分析を実施したところ,発達障害,けがの手当て,過呼吸,自然災害への対応などで苦慮した経験が多く認められている。また調査した内容の多くについて大学で学んでおくべきとする回答が多かった。現在調査結果の詳細な分析とまとめの作業を行っている。教員を対象とする学校保健・安全のニーズ調査のデータ分析,その分析に基づく教員養成のためのカリキュラムの仮説的枠組みを作成,そしてその内容について国内外の専門家の意見を聴取したうえで精査した。10都府県1905名の小・中・高校の学級担任の保健・安全に関するニーズについて,苦慮した経験としては,発達障害への対応,心のケア,けがの応急手当の割合が高かった。また,大学で学んでおくべき内容については,発達障害への対応,心のケアは,苦慮経験と同様に高く,さらに心肺蘇生法,エピペン,AEDは,苦慮経験は低いものの,大学で学ぶべきと思う割合が高かった。これら調査結果については日本学校保健学会第62回学術大会で発表した。また教員養成のためのモデルカリキュラムの仮説的枠組みについて,学校保健学,教育行政学を専門とする国内外の研究者との詳細な検討,意見聴取を行った。以上により,健康観察の仕方,けがの応急手当,熱中症の対応,心肺蘇生法,AEDの使い方,アレルギー疾患への対応,アナフィラキシー時のエピペンの使い方,過呼吸への対応,起立性調節障害への対応,摂食障害への対応,感染症への対応,慢性疾患への対応,心のケア,学校での健康診断における教師の役割,発達障害への対応,教室の環境衛生,自然災害で被災した際の対応,自然災害での防災の対応,保健・安全に関する保護者との連携,保健・安全に関する教員同士の連携,保健・安全に関する養護教諭との連携という24の内容を含む枠組みに精査した。このように,教員のニーズを踏まえ,かつ専門家の意見を広く聴収したうえでの教員養成のための保健・安全のモデルカリキュラムを作成する試みは本邦初である。モデルカリキュラムの枠組みを精査して作成する作業に時間がかかり,教員養成段階の学生の保健・安全の力量について測定する尺度の開発研究がやや遅れてしまっている。教員を対象とする学校保健・安全のニーズ調査のデータ分析,その分析に基づく教員養成のためのカリキュラムの仮説的枠組みを作成した。教員の「ヒヤリ・ハット体験」の事例の分析により,けがの応急手当,アレルギー疾患への対応が量的には多く,熱中症の対応,過呼吸への対応,感染症への対応,慢性疾患への対応,発達障害への対応,心のケアに関わる事例が多く認められた。心肺蘇生法,AEDの使い方,起立性調節障害への対応,摂食障害への対応,自然災害で被災した際の対応,自然災害での防災の対応,安全に関する教員同士の連携なども事例が認められた。すでに分析された教員の苦慮経験と対応を学んでおくべきかの調査結果を加味し,教員養成カリキュラムを仮説的に作成し,15コマの授業を実施した。授業の目標は「現職教員の持つ保健・安全のニーズとヒヤリ・ハット体験の調査データに基づき,担任教師に必要性が高いと考えられる内容について,その基本的な文献を予備的に学習するとともに,実際の教育現場での事例に対応できる基本的力量を形成する」である。そして,1.教師に求められる学校保健・安全の基本的な資質・能力とは2.教育としての学校保健・安全ー子どもの健康・安全を守る,発育・発達を保障する,保健・安全の認識を高めるー3.子どもの健康・安全を守る活動、健康観察の視点(1) 4.子どもの健康・安全を守る活動、健康観察の視点(2),疾病管理5.応急手当(1)6.応急手当(2) 7.学校におけるアレルギー疾患児童への対応(1) 8.学校におけるアレルギー疾患児童への対応(2) 9.子どものストレスと心身の課題 | KAKENHI-PROJECT-26590240 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26590240 |
食物アレルギー,感染症,自然災害等の保健・安全問題に対する教員の力量とその形成 | (1) 10.子どものストレスと心身の課題(2) 11.発達障害への支援(1) 12.発達障害への支援(2) 13.自然災害への対応(1) 14.自然災害への対応(2) 15.学校保健・安全における連携,の授業を実施した。現職教員の保健・安全のニーズ調査とヒヤリ・ハット体験の調査を実施し,それに基づく教員養成のためのモデルカリキュラムを作成した。発達障害への対応,心のケア,けがの応急手当,心肺蘇生法,AED,エピペン,保護者との連携に加えて,アレルギー疾患への対応,熱中症の対応,過呼吸への対応,慢性疾患への対応,感染症への対応,などの内容を含んだ教員の保健・安全の力量を形成する教員養成カリキュラムが必要と考えられた。当初の計画では,調査結果に基づき,モデルカリキュラム案と保健・安全能力の自己効力感尺度の開発までを進める予定であったが,調査の信頼性と妥当性をより高めるために,調査票の開発,対象者の選定ならびに倫理審査の依頼検討を慎重に行ったことによる。学生の保健・安全の力量について測定する尺度の開発研究を平成28年度前半に行い,平成28年度後半には,モデルカリキュラムによる授業を実施し,その効果性について明らかにする。学校保健学現職教員の保健・安全に関するニーズ調査とヒヤリ・ハット体験の調査の詳細な分析とまとめを終了し,学術論文を作成する。調査結果に基づき,15単位時間からなる教育養成段階でのモデルカリキュラム案を作成する。それと並行して,調査結果に基づき,保健・安全能力の自己効力感尺度を開発する。平成26年度中に調査結果をまとめることができなかったため,それに係る経費を次年度に使用する。調査結果のまとめに係る消耗品費と人件費に充てる。 | KAKENHI-PROJECT-26590240 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26590240 |
乱雑さを持つ複雑ネットワーク上の共存ダイナミクスへの繰込み群的アプローチ | 次数による選択的ノード除去に対する強相関複雑ネットワーク上のパーコレーション転移を記述する解析的表式を導出し,その表式を用いてスケール・フリー・ネットワークの選択的ノード除去に対する脆弱性を著しく改善するネットワーク構造を見つけることができた。この構造はほぼ同じ次数を持つノード同士が結合し,さらにそれらの同次数ネットワークがゆるやかに相互結合するという独特な階層構造を持っている。その他にも,囚人のジレンマゲームにおいて協力者同士が形成するクラスターがパーコレーション転移を起こすことなどを含む有益な結果を数多く得ることができた。次数による選択的ノード除去に対する強相関複雑ネットワーク上のパーコレーション転移を記述する解析的表式を導出し,その表式を用いてスケール・フリー・ネットワークの選択的ノード除去に対する脆弱性を著しく改善するネットワーク構造を見つけることができた。この構造はほぼ同じ次数を持つノード同士が結合し,さらにそれらの同次数ネットワークがゆるやかに相互結合するという独特な階層構造を持っている。その他にも,囚人のジレンマゲームにおいて協力者同士が形成するクラスターがパーコレーション転移を起こすことなどを含む有益な結果を数多く得ることができた。平成20年度の研究実施状況は以下の通りである。平成20年4月:研究分担者(東京大学大学院増田講師)の主宰する複雑ネットワークにかんするワークショップで研究発表,および研究計画についての打合せ。平成20年7月:研究実施計画に従って,数値計算・シミュレーション用計算機(MacPro)を購入。この計算機を用いて,ノード間の遷移確率に乱雑さを持つ正規グラフ上における共存ダイナミクスに関する数値シミュレーションを開始。平成20年7月:アメリカ合衆国ボストン大学において海外研究協力者のスタンリー教授,ポール博士と研究内容についての打合せ。平成20年8月:「ネットワークが創発する知能研究会第4回国内ワークショップ(JWEIN 08,東京工業大学大岡山キャンパス)」で「多極次数分布ネットワークの構造的性質」に関する研究発表。平成20年9月:日本物理学会秋の分科会(岩手大学上田キャンパス)で「多極次数分布ネットワークの解析的な性質」に関する研究発表。平成20年12月:アメリカ合衆国ボストン大学において海外研究協力者のスタンリー教授,ポール博士と研究内容についての打合せ。平成20年10月平成21年3月:進行中の共存ダイナミクスに関する数値シミュレーション結果について研究分担者と電子メールを介した議論を重ねる。1月には,シミュレーション結果をまとめ,考察を加えて,原著論文としてまとめるための準備に着手している。平成21年度の研究実績概要は以下の通りである。これは,リンクの重みに乱雑さを持つ正規グラフ上において競合する3種類のノード種がある場合の共存ダイナミクスを数値シミュレーションによって調べたものであり,本研究課題の研究実施計画に基づくものである。この研究によって,リンク重みの無秩序さを規定するパラメタがある値を超えるところで3種のノードの共存状態が安定化する鋭いクロスオーバーが見ら、れることがわかった。preliminaryな内容は9月の日本物理学会秋の分科会(熊本大学黒髪キャンパス)での講演において報告されており,現在さらに考察を重ねている。次数相関を持つ複雑ネットワークの構造安定性についてこれは,本研究課題を遂行する中で生じた新たな研究課題である。現在の複雑ネットワーク理論は次数分布のみを用いた考察が主であり,現実のネットワークに存在する次数相関はほとんど考慮されてこなかった。この研究課題はそのギャップを埋めようとするものであり,複雑ネットワークの理論を大きく進展させる可能性を持っている。この研究により次数相関を持つ複雑ネットワークにおいても巨大連結成分等の重要な物理量を計算することが可能となった。現在,論文投稿の準備中である。当初の研究実施計画では、平成22年度は複雑ネットワーク上における繰込理論の構築を行う予定であったが、前年度(平成21年度)の研究計画実行の中で、これまで積極的には取り入れられてこなかったノード間結合における次数相関の影響を考慮し、平均場近似を超えた複雑ネットワーク上のパーコレーション理論を構築できる可能性が開けてきた。構成要素間の相関を取り入れた相転移の一般論構築は繰込理論のみに留まらず統計物理学全般において重要な問題の一つである。そこで、最終年度の研究計画を修正し、研究代表者(谷澤)はノード間の次数相関を取り入れたパーコレーション理論の構築を行い、研究分担者(増田)は、主として階層構造を持つ複雑ネットワーク上のさまざまな動的現象の解析を行うこととした。主な成果は以下の通りである。まず、次数による選択的ノード除去に対する複雑ネットワーク上のパーコレーション転移を次数相関を取り入れた形で記述する解析的表式を得ることができた。次に、その表式を用いて、スケール・フリー・ネットワークの選択的ノード除去に対する脆弱性を著しく改善するネットワーク構造を見つけることができた。この構造はほぼ同じ次数を持つノード同士が結合し、さらにそれらの同次数ネットワークがゆるやかに相互結合するという独特な階層構造を持っている。また、階層構造を持つ複雑ネットワーク上での動的現象の解析に関しては、囚人のジレンマゲームにおいて協力者同士が形成するクラスターがパーコレーション転移を起こすこと、ガウシアン・ノイズが入ったCollective Dynamicsにおいては中心極限定理の要請よりもゆらぎが抑制される傾向にあること、などを含む有益な結果を数多く得ることができた。これらの結果を踏まえ、最終目的である複雑ネットワークにおける繰込理論構築に向けて今後さらに考察を進めていきたい。 | KAKENHI-PROJECT-20540382 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20540382 |
大規模縦断研究による咀嚼能率と動脈硬化性疾患との関連の検討 | 日本人の主要な死因に悪性新生物と共に心疾患、脳血管疾患が含まれており、これら動脈硬化性疾患の予防の必要性はますます高まっている。近年、歯周病と動脈硬化との関連が議論されているが、咀嚼能力との関連についてはほとんど検討されていない。また、多くの口腔健康と動脈硬化との関連についての研究は横断研究であり、その因果関係については明らかとなっていない。そこで本研究は、都市部一般住民のランダムサンプルを対象とした前向きコホート研究より、歯周病と咀嚼能力の低下が動脈硬化に及ぼす影響、さらには脳卒中、心筋梗塞の発症との関係を縦断研究で明らかにすることを目的とする。日本人の主要な死因に悪性新生物と共に心疾患、脳血管疾患が含まれており、これら動脈硬化性疾患の予防の必要性はますます高まっている。近年、歯周病と動脈硬化との関連が議論されているが、咀嚼能力との関連についてはほとんど検討されていない。また、多くの口腔健康と動脈硬化との関連についての研究は横断研究であり、その因果関係については明らかとなっていない。そこで本研究は、都市部一般住民のランダムサンプルを対象とした前向きコホート研究より、歯周病と咀嚼能力の低下が動脈硬化に及ぼす影響、さらには脳卒中、心筋梗塞の発症との関係を縦断研究で明らかにすることを目的とする。 | KAKENHI-PROJECT-19K19123 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K19123 |
新しい波動解析手法による非線形超音波法特性の解明に関する研究 | 本研究では、新しい時間領域境界要素法を開発し、開発した手法を非線形超音波シミュレーションへ応用した。本手法により、波動現象を小さい時間増分を扱った場合においても安定に解析できることが可能となった。解析対象としたモデルは、異種材料接合界面における界面き裂である。数値解析結果より、界面き裂の開口状態(stick-separation)に依存して分調波や2次高調波が発生し、向かい合う界面の水平方向摩擦現象(stick-slip)により3次高調波が発生したことを確認できた。本研究では、新しい時間領域境界要素法を開発し、開発した手法を非線形超音波シミュレーションへ応用した。本手法により、波動現象を小さい時間増分を扱った場合においても安定に解析できることが可能となった。解析対象としたモデルは、異種材料接合界面における界面き裂である。数値解析結果より、界面き裂の開口状態(stick-separation)に依存して分調波や2次高調波が発生し、向かい合う界面の水平方向摩擦現象(stick-slip)により3次高調波が発生したことを確認できた。非線形超音波法とは、音響インピーダンス差に基づき欠陥を評価する線形超音波法では検出することが難しいとされる欠陥に対して期待されている新たな超音波非破壊検査手法の1つである。平成21年度は、非線形超音波法のモデルとなる欠陥を、異種材料接合界面における欠陥として考慮した。このモデルは、2つの半無限固体領域の接合界面に欠陥を有する反射・透過問題へと帰着される。通常の超音波非破壊検査では、試験片全域に渡り超音波を測定するよりも、出来るだけ少ない点での測定結果を用いて欠陥の有無を判定することが望まれる。これらのことから、境界面のみの離散化で、かつ必要最低限の位置で超音波波形データを得られる時間領域境界要素法を数値解析のベースとした。ただし、時間領域境界要素法は、時間増分が小さい時に数値解が不安定となることが知られている。そのため、本年度は、時間領域境界要素法を改良し、時間増分が小さい場合に対しても安定に解析を実行できる新しい波動解析手法、Convolution Quadrature境界要素を開発した。解析精度においても、異種材料の性質から計算される反射・透過係数を用いて解析的に求まる反射波・透過波と、開発手法で求めたそれらが、時間増分が小さい場合においても精度良く一致することを示すことができた。さらにそれらにOpenMPの並列化を施すことで、計算時間の削減も可能となった。開発した手法を用いて、実際に非線形超音波法の数値シミュレーションを行い、3次高調波の励起を確認することができた。これらより、平成21年度の主な目的である(1)新しい波動解析手法の開発と(2)開発した手法の高度化と基礎的な非線形超音波法の数値シミュレーションは概ね、達成できたと言える。土木構造物や原子力機器等の維持管理のために、超音波非破壊評価手法が広く利用されている。しかしながら、従来用いられてきた線形な超音波非破壊評価法では、閉じたき裂や異種材料接合界面における微少剥離といった欠陥を検出することができない。そのため、現在そのような線形超音波非破壊評価法では評価することのできない欠陥を検出することが期待できる非線形超音波非破壊評価法が注目を集めている。非線形超音波法では、従来の方法と異なり、欠陥からの反射波ではなく、透過波に含まれる高調波や分調波を利用することで欠陥の有無を評価するが、特に分調波の発生メカニズムについては未だ解明されていない。そのため、分調波の発生メカニズムを明らかにすることは定量的な非線形超音波非破壊評価法を確立する上で非常に重要である。申請者は、このような研究意義、重要性に基づき、平成22年度は、平成21年度に開発した境界要素法を用いた安定な時間領域弾性波動解析手法を用いて分調波のシミュレーションを行い、その発生メカニズムについて検討した。対象とした欠陥は、アルミニウムと鋼材から成る異種材料接合部に発生しているき裂とし、それぞれの材料は線形弾性体として扱った。ただし、き裂欠陥に対して考慮する境界条件として、接触面が固着した状態(stick状態)、界面の滑りを許容した状態(slip状態)、界面が開口している状態(separation状態)の3種類を仮定した。き裂面に対して超音波を垂直に入射させた場合に、き裂の開閉口に応じた一部の条件下で分調波が発生することを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-21760352 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21760352 |
知的複合構造体による遮音のアクティブコントロール | (1)遮音実験装置の製作;発音源,ダクト部,遮音板取り付け部,などからなる実験装置について,既設の遮音実験装置の一部を利用し,これを改造することにより,約150mm(長さ)×40mm(幅)の知的複合構造体の遮音性能を測定できる実験装置を製作した.(2)知的複合構造体の製作;現在国内で入手可能な最大寸法のバイモルフ圧電素子38mm(幅)×160mm(長さ)×0.6tを,2枚のステンレス鋼板(0.1t)でサンドウィッチし,圧電素子の両面に3個のアクチュエータと3個のセンサの電極を形成した「知的複合構造体」を2回にわたって製作した.2回目のこの構造体のセンサ及びアクチュエータの機能は所期の性能仕様を満たすことを確認した.(3)知的複合構造体による遮音制御実験;上記複合構造体を用いて,1回目の試作ではフィードフォワード制御システムを,2回目の試作ではフィードバック制御システムを構築して遮音制御実験を行った.1回目の試作で,3個のアクチュエータから3個のセンサに至る伝達関数行列をシステム同定し,これに基づく適応フィードフォワード制御を試みたが,精度のよいシステム同定が実現できず,所期の遮音性能を得るに至らなかった.しかし,2回目の試作では,システム同定に基づく,ロバスト制御システムを構築して,遮音制御実験を行った結果,所期の目標を達成した.(4)小型圧力センサの試作;MEMS技術を応用し,超小型マイクロフォンを試作したが,音圧の微圧力を検知可能な膜電極を製作できず,試作は失敗に終わった.(1)遮音実験装置の製作;発音源,ダクト部,遮音板取り付け部,などからなる実験装置について,既設の遮音実験装置の一部を利用し,これを改造することにより,約150mm(長さ)×40mm(幅)の知的複合構造体の遮音性能を測定できる実験装置を製作した.(2)知的複合構造体の製作;現在国内で入手可能な最大寸法のバイモルフ圧電素子38mm(幅)×160mm(長さ)×0.6tを,2枚のステンレス鋼板(0.1t)でサンドウィッチし,圧電素子の両面に3個のアクチュエータと3個のセンサの電極を形成した「知的複合構造体」を2回にわたって製作した.2回目のこの構造体のセンサ及びアクチュエータの機能は所期の性能仕様を満たすことを確認した.(3)知的複合構造体による遮音制御実験;上記複合構造体を用いて,1回目の試作ではフィードフォワード制御システムを,2回目の試作ではフィードバック制御システムを構築して遮音制御実験を行った.1回目の試作で,3個のアクチュエータから3個のセンサに至る伝達関数行列をシステム同定し,これに基づく適応フィードフォワード制御を試みたが,精度のよいシステム同定が実現できず,所期の遮音性能を得るに至らなかった.しかし,2回目の試作では,システム同定に基づく,ロバスト制御システムを構築して,遮音制御実験を行った結果,所期の目標を達成した.(4)小型圧力センサの試作;MEMS技術を応用し,超小型マイクロフォンを試作したが,音圧の微圧力を検知可能な膜電極を製作できず,試作は失敗に終わった.(1)遮音実験装置の改造;知的複合構造体の遮音実験を行うに先立って,試作する知的複合構造体の寸法を従来の遮音実験装置に適合するよう「変断面ダクト」を作成し,その性能を音響加振実験により検証した.(2)圧力センサーの製作;遮音板に作用する外乱としての音波の圧力を検出するための超軽量圧力センサを,立命館大学に既設の半導体プロセス実験設備を利用し,マイクロマシニング研究グループの協力を得て試作した.(3)知的構造体モデルの製作;知的複合体の第1次試作モデルとして,PZT圧電素子(0.6mm厚さ)を2枚のSUS板(各0.3mm厚さ)でサンドウィッチした複合板を試作した.PZT圧電素子には,それぞれ3個のセンサーとアクチュエータの電極を形成した.電極の製作法と配線の方法に関して予想を越える製作上の困難が生じたため,知的構造体の特性測定に至らなかった.(4)振動特性の予備特性測定と振動制御の予備検討上記により,知的複合構造体の特性測定を年度内に終了できなかったため,知的複合構造体と同一の寸法を持つ複合板を製作し,その加振実験と振動特性計測を行った.またそれに先だって,振動制御の制御アルゴリズムをシミュレーションにより予備検討した.この際,共同研究者の三谷祐一朗は3回にわたって立命館大学に出張した.なお,これらの検討結果の一部は日本機械学会第76期全国大会講演会(10月4日,東北大学)において発表した.また他は日本機械学会関西支部講演会(3月19日,関西大学)にて発表予定.(1)システム同定実験とモデル化前年度のまでの成果に基付いて,多入力多出力制御システムとしてのシステム同定実験を行った.3個のアクチュエータから3個のセンサまでの伝達関数行列を,2個のアクチュエータから2個のセンサまでの伝達関数行列モデルに簡易化し,部分空間同定法を適用した結果,ほぼ妥当な伝達関数行列を同定できた.さらに外乱としての入射波の音圧から2個のセンサまでの伝達関数行列については,入射音圧測定マイクロファンの位置の選定に困難さを伴ったが,部分空間法を用いて妥当な同定結果を得た.(2)制御系の設計と制御実験;上の同定結果に基付いて,2通りの制御システムを設計し,制御実験を行った.1)フィードフォワードとフィードバックを併用した2自由度制御システム | KAKENHI-PROJECT-10650250 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10650250 |
知的複合構造体による遮音のアクティブコントロール | 2)内部モデル制御に基付くフィードバック制御システムこれらの制御システムは制御用センサーの数に関連して,それぞれの利害得失を持つが,いずれも良好な制御性能を持つことを立証できた.これらの実験を行うため,共同研究者の三谷祐一朗は4回にわたって立命館大学に出張した.また,これらの実験結果は,1)日本機械学会・日本音響学会共催シンポジウム-音響・振動に係わる両学会の交流拡大を目指して-2000年3月16日(木),17日(金),日本大学船橋校舎(千葉),2)日本機械学会関西支部第75期定時総会・講演会,3月16日(木),17日(金),立命館大学琵琶湖草津キャンパス,において講演発表の予定.1.圧力センサの試作;昨年度に引き続き,小型圧力センサを試作した.音圧を検知するための基本性能は確認したが,信頼性の点で問題があることがわかり,制御システムへの実装には至らなかった.2.知的構造体の試作;昨年度の試作に基つき,バイモルフ圧電素子を用い,センサ及びアクチュエータを形成し,さらにステンレス板で補強した知的複合構造体を設計し,試作した.特に電極の形成とリード線の取り付けを改良した結果,所期の性能を持つ構造体を確認できた.3.制御システムの設計と制御実験;前年度に用いた2自由度制御システムでは圧力センサを要するが,上記のように,小型圧力センサにおいて所期の性能を得られなかったので,このような外乱センサを用いずに,フィードバック制御システムのみで構成する方式への変更を図った.その候補として内部モデル制御システムを検討した.内部モデル制御システムは知的構造体による遮音のアクティブコントロールに適することを確認できた.本研究では,この上にさらにH無限大ロバスト制御システムを重ねることを検討した結果,画期的な性能を期待できることがわかった.この制御システムは実験上でも性能を確認でき,所期の目標性能を達成できた.4.研究成果の公表;前年度までの研究結果については,国際会議Inter-noise 2000(8/27-8/30,Nice)において発表し,多大の反響を得た.上記の今年度の制御システムの成果については,日本機械学会第7回「運動と振動の制御」シンポジウム(2001,4/25-27,大阪府千里)において発表の予定であり,講演原稿を作成した.なお,この内容は日本機械学会論文集(C編)に投稿の予定である. | KAKENHI-PROJECT-10650250 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10650250 |
幾何構造を持つ多様体の不変量と群作用に関する研究 | 平成16年度は最終年度であり,これまで問題にしてきた擬4元数構造のとりまとめを行った。単連結4元数(n+1)次元4元数双曲空間は自然に境界をもちその境界球面にリー群PSp(n+1,1)が射影変換として作用している。我々はこのとき4元数CR幾何学(PSp(n+1,1),S^<4n+3>)を得る。我々は(4n+3)次元多様体上に擬共形4元数CR構造と呼ばれる幾何構造を導入し,この幾何不変量が消滅するとき上記の4元数CR幾何学に一意化されることを示した。これまで,様々な試みのもとに消滅が上記の幾何を導く幾何構造を模索してきたが,なかなか思うようにできず,まずは一般論(Cartan接続理論)から(4n+3)次元多様体上に擬共形4元数構造を自然に導いた。しかし,これが表す形式的不変量はそれが消滅しても,確かに上記の4元数CR幾何学も部分的には出てくるが4元数CR幾何構造を許す多様体まで出てくるわけではなかった。さらにそれよりも細かいことが経験的に知られていた。その後,局所共形的に(4n+3)次元多様体上の擬共形4元数構造をみたとき,4元数共役同値のもとでそれが擬共形4元数CR構造を持つことが証明できた。この発見により,(4n+3)次元多様体上に擬共形4元数CR構造と呼ばれる概念を導入して,さらにこの4元数共役同値のもとでの不変量を構成してみると,確かに不変テンサーの消滅が(4n+3)次元多様体を4元数CR幾何学(PSp(n+1,1),S^<4n+3>)の中に局所的展開することが可能になった。当該年度の成果として一つはChern-MoserのCR幾何構造の4元数アナロジーを構成したこと,また二つ目にはWeyl共形理論を4元数構造を持つ(4n+3)次元の多様体に構築したと言うことが出来る。これらにより以下の結果が整理された。(1)(4n+3)次元擬共形4元数CR多様体には4元数ケーラー多様体の曲率テンサーと同様の形を持つ4次曲率テンサーTが存在する。(2)球面上の標準擬共形CR構造は局所共形的に擬共形4元数CR構造を持つ。(3)その曲率テンサーTが消滅する際,(4n+3)次元擬共4元数CR多様体は4元数CR幾何学(Psp(n+1,1),S^<4n+3>)に一意化される。(4)(4n+3)次元多様体上の擬共形4元数構造が大域的に存在するための障害類は多様体上のポントリャーギン類であらわすことができる。平成16年度は最終年度であり,これまで問題にしてきた擬4元数構造のとりまとめを行った。単連結4元数(n+1)次元4元数双曲空間は自然に境界をもちその境界球面にリー群PSp(n+1,1)が射影変換として作用している。我々はこのとき4元数CR幾何学(PSp(n+1,1),S^<4n+3>)を得る。我々は(4n+3)次元多様体上に擬共形4元数CR構造と呼ばれる幾何構造を導入し,この幾何不変量が消滅するとき上記の4元数CR幾何学に一意化されることを示した。これまで,様々な試みのもとに消滅が上記の幾何を導く幾何構造を模索してきたが,なかなか思うようにできず,まずは一般論(Cartan接続理論)から(4n+3)次元多様体上に擬共形4元数構造を自然に導いた。しかし,これが表す形式的不変量はそれが消滅しても,確かに上記の4元数CR幾何学も部分的には出てくるが4元数CR幾何構造を許す多様体まで出てくるわけではなかった。さらにそれよりも細かいことが経験的に知られていた。その後,局所共形的に(4n+3)次元多様体上の擬共形4元数構造をみたとき,4元数共役同値のもとでそれが擬共形4元数CR構造を持つことが証明できた。この発見により,(4n+3)次元多様体上に擬共形4元数CR構造と呼ばれる概念を導入して,さらにこの4元数共役同値のもとでの不変量を構成してみると,確かに不変テンサーの消滅が(4n+3)次元多様体を4元数CR幾何学(PSp(n+1,1),S^<4n+3>)の中に局所的展開することが可能になった。当該年度の成果として一つはChern-MoserのCR幾何構造の4元数アナロジーを構成したこと,また二つ目にはWeyl共形理論を4元数構造を持つ(4n+3)次元の多様体に構築したと言うことが出来る。これらにより以下の結果が整理された。(1)(4n+3)次元擬共形4元数CR多様体には4元数ケーラー多様体の曲率テンサーと同様の形を持つ4次曲率テンサーTが存在する。(2)球面上の標準擬共形CR構造は局所共形的に擬共形4元数CR構造を持つ。(3)その曲率テンサーTが消滅する際,(4n+3)次元擬共4元数CR多様体は4元数CR幾何学(Psp(n+1,1),S^<4n+3>)に一意化される。 | KAKENHI-PROJECT-14340026 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14340026 |
幾何構造を持つ多様体の不変量と群作用に関する研究 | (4)(4n+3)次元多様体上の擬共形4元数構造が大域的に存在するための障害類は多様体上のポントリャーギン類であらわすことができる。今年度は(4n+3)次元多様体M上の積分可能非退化四元数CR-構造(研究計画ではPseudo-Quternionic構造と呼んでいた)を考えた。これはM上で定義されたsp(1)-値1-形式ωであってω=ω_1i+ω_2j+ω_3kとおくとき,条件(1), (2)を満たすものである。(1)2-形式p_αをp_α=dω_α+2ω_β∧ω_γ,(α,β,γ,)(1,2,3,)とするとKerρ_1=Kerρ_2=Kerρ_3.これをVとおけばV上ω_1∧ω_2∧ω_3≠0.また,H=∩^^3__<α=1>Kerω_αとおけば,直和分解TM=V【symmetry】Hがある。(2)ρ_α|HはH上非退化で,写像J_γをJ_γ=(ρβ|H)^<-1>o(ρα|H):H→Hとして定義する時,J_γ(γ=1,2,3,)はH上の四元数構造を導く。これから特にV={ξ_α, α=1,2,3|ω_α(ξ_β)=δ_<αβ>}で各実1-形式ω_αはξ_αを特性ベクトル場とするコンタクト形式である。自然に、各J_αはKerω_α=H【symmetry】{ξ_β,ξ_γ}上の概複素構造に拡張される: J^^-_α|H=J_α, J^^-_αξ_β=ξ_γ, J^^-_αξ_γ=-ξ_β.この時我々は次のことを示した。主定理:(4n+3)-多様体M上の積分可能非退化四元数CR-構造{ω_α,J_α}_<α=1,2,3,>は三つの非退化CR-構造(Ker ω_α,J^^-_α)(α=1,2,3)を生成する。この結果の応用として,古典的なコンタクト擬計量3-構造に焦点をあてた。実際,コンタクト擬計量3-構造は非退化四元数CR-構造の例になることが示され,我々のJ^^-_α(α=1,2,3)の積分可能性はコンタクト擬計量3-構造に対する正規性条件の消滅を与える。このことは,系I:コンタクト擬計量3-構造は実は指数(4p+3,4q)の擬佐々木3-構造である。与えられた非退化四元数CR-構造{ω_α,J_α}_<α=1,2,3,>は一意的に指数(4p+3,4q)の擬リーマン計量g=ω_1・ω_1+ω_2・ω_2+ω_3・ω_3+π^*g^^^を与える。このとき逆に、系II:非退化四元数CR-多様体Mは指数(3+4p,4q)の擬佐々木3-構造{g,(ω_α,J^^-_α,ξ_α)_<α=1,2,3>}を導く。さらに我々の非退化四元数CR-多様体は四元数多様体と関係があり、次のような構造定理を得た。定理: (M^<4n+3>,{ω_α},{J_α};α=1,2,3)をコンパクト非退化四元数CR-多様体(n【greater than or equal】2)とするとき,GをSp(1)あるいはSO(3)とするような,局所主擬リーマンサブマーション:G→(M,g)→^^π(M^^^,g^^^)がある。さらに(i)π_*:H→TM^^^)は擬リーマン等長写像である(ただし特異点集合を除いて)。(ii)(M^^^,g^^^,{J^^^^V^^^_α}_<α=1,2,3>)は四元数擬ケーラー軌道体である(dim M^^^=4n【greater than or equal】8)。(iii)もしξ_α(α=1,2,3)のいずれか一つでも正則ならば,M^^^は可微分四元数擬ケーラー多様体になる。この応用として,コンパクト(4n+3)-多様体M上の非退化四元数CR-構造は(4n+2)次元複素軌道体N=M/S^1上に複素コンタクト構造を導く。ここで,S^1はξ_αが生成するワン-パラメター部分群で実際それはリー群S^1になる。 | KAKENHI-PROJECT-14340026 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14340026 |
富士火山における火山体形成史と土石流の発生要因に関する研究 | 富士山は約10万年前から1万年前までの古富士火山と1万年前以降の新富士火山に分けられている.新富士火山については,最近の研究によりその全貌が明らかになりつつある.一方,古富士火山の活動史は,富士山の東遠方のテフラや山麓部での泥流堆積物に基づいて構築されており,泥流堆積物を構成する溶岩流などの噴出活動については不明な点が多い.また,富士火山の活動以前には,現在の小御岳付近に僅かに露出する溶岩の浸食地形や組成から,愛鷹火山と同時期に小御岳火山が活動していたと考えられているが,小御岳火山の活動の詳細に関してはほとんど分かっていない.本研究では,富士山の活動史を明らかにするため,東京大学地震研究所所有の富士山北東麓から東麓にかけての5つの掘削試料の岩相解析および地表調査をおこなった.掘削試料中の岩石の解析結果,泥流堆積物中に含まれる岩石の構成物分析で主要な構成要素を占めるものは,泥流堆積の時期に近い噴火の噴出物の可能性が高いことが明らかとなった.この結果と掘削試料と富士火山の化学組成の比較から,小御岳火山直下にはデイサイトから玄武岩質の溶岩流および火砕物を放出する活動を行った先小御岳火山の存在が明らかとなった.一方,小御岳火山の活動は,玄武岩質安山岩質の溶岩流を主体とした活動であった.また東麓の掘削調査および地表調査の結果,古富士火山は数万年以上にわたって,ここ数千年と同様スコリアの噴出を中心とした活動を続けてきた.この堆積物にうち,およそ3万年以降は降下スコリア堆積物からなるのに対し,それ以前には泥流堆積物で占められていた.この堆積物の変化は,気候変動による山頂氷河の消長によって引き起こされた可能性が高いことが明らかとなった.富士山は約10万年前から1万年前までの古富士火山と1万年前以降の新富士火山に分けられている.新富士火山については,最近の研究によりその全貌が明らかになりつつある.一方,古富士火山の活動史は,富士山の東遠方のテフラや山麓部での泥流堆積物に基づいて構築されており,泥流堆積物を構成する溶岩流などの噴出活動については不明な点が多い.また,富士火山の活動以前には,現在の小御岳付近に僅かに露出する溶岩の浸食地形や組成から,愛鷹火山と同時期に小御岳火山が活動していたと考えられているが,小御岳火山の活動の詳細に関してはほとんど分かっていない.本研究では,富士山の活動史を明らかにするため,東京大学地震研究所所有の富士山北東麓から東麓にかけての5つの掘削試料の岩相解析および地表調査をおこなった.掘削試料中の岩石の解析結果,泥流堆積物中に含まれる岩石の構成物分析で主要な構成要素を占めるものは,泥流堆積の時期に近い噴火の噴出物の可能性が高いことが明らかとなった.この結果と掘削試料と富士火山の化学組成の比較から,小御岳火山直下にはデイサイトから玄武岩質の溶岩流および火砕物を放出する活動を行った先小御岳火山の存在が明らかとなった.一方,小御岳火山の活動は,玄武岩質安山岩質の溶岩流を主体とした活動であった.また東麓の掘削調査および地表調査の結果,古富士火山は数万年以上にわたって,ここ数千年と同様スコリアの噴出を中心とした活動を続けてきた.この堆積物にうち,およそ3万年以降は降下スコリア堆積物からなるのに対し,それ以前には泥流堆積物で占められていた.この堆積物の変化は,気候変動による山頂氷河の消長によって引き起こされた可能性が高いことが明らかとなった.富士山は約10万年前から1万年前までの古富士火山と1万年前以降の新富士火山に分けられている.新富士火山については,最近の研究によりその全貌が明らかになりつつある.一方,古富士火山の活動史は,富士山の東遠方のテフラや山麓部での泥流堆積物に基づいて構築されており,泥流堆積物を構成する溶岩流などの噴出活動については不明な点が多い・また,富士火山の活動以前には,現在の小御岳付近に僅かに露出する溶岩の侵食地形や組成から,愛鷹火山と同時期に小御岳火山が活動していたと考えられているが,小御岳火山の活動の詳細に関してはほとんど分かっていない.本研究では,富士山の活動史を明らかにするため,東京大学地震研究所所有の富士山北東麓から東麓にかけての5つの掘削試料の岩相解析および地表調査をおこなった.北東麓の掘削試料の解析結果と富士火山の化学組成の比較から,小御岳火山直下にはデイサイトから玄武岩質の溶岩流および火砕物を放出する活動を行った先小御岳火山の存在が明らかとなった.一方,小御岳火山の活動は,玄武岩質安山岩質の溶岩流を主体とした活動であった.また東麓の掘削調査および地表調査の結果,古富士火山は数万年以上にわたって,ここ数千年と同様スコアの噴出を中心とした活動を続けてきた.この堆積物にうち,およそ3万年以降は降下スコリア堆積物からなるのに対し,それ以前には泥流堆積物で占められていた.この堆積物の変化は,気候変動による山頂氷河の消長によって引き起こされた可能性が高いことが明らかとなった.富士山は約10万年前から1万年前までの古富士火山と1万年前以降の新富士火山に分けられている.新富士火山については,最近の研究によりその全貌が明らかになりつつある. | KAKENHI-PROJECT-16510134 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16510134 |
富士火山における火山体形成史と土石流の発生要因に関する研究 | 一方,古富士火山の活動史は,富士山の東遠方のテフラや山麓部での泥流堆積物に基づいて構築されており,泥流堆積物を構成する溶岩流などの噴出活動については不明な点が多い.また,富士火山の活動以前には,現在の小御岳付近に僅かに露出する溶岩の浸食地形や組成から,愛鷹火山と同時期に小御岳火山が活動していたと考えられているが,小御岳火山の活動の詳細に関してはほとんど分かっていない.本研究では,富士山の活動史を明らかにするため,東京大学地震研究所所有の富士山北東麓から東麓にかけての5つの掘削試料の岩相解析および地表調査をおこなった.掘削試料中の岩石の解析結果,泥流堆積物中に含まれる岩石の構成物分析で主要な構成要素を占めるものは,泥流堆積の時期に近い噴火の噴出物の可能性が高いことが明らかとなった.この結果と掘削試料と富士火山の化学組成の比較から,小御岳火山直下にはデイサイトから玄武岩質の溶岩流および火砕物を放出する活動を行った先小御岳火山の存在が明らかとなった.一方,小御岳火山の活動は,玄武岩質安山岩質の溶岩流を主体とした活動であった.また東麓の掘削調査および地表調査の結果,古富士火山は数万年以上にわたって,ここ数千年と同様スコリアの噴出を中心とした活動を続けてきた.この堆積物にうち,およそ3万年以降は降下スコリア堆積物からなるのに対し,それ以前には泥流堆積物で占められていた.この堆積物の変化は,気候変動による山頂氷河の消長によって引き起こされた可能性が高いことが明らかとなった.富士山は約10万年前から1万年前までの古富士火山と1万年前以降の新富士火山に分けられている.新富士火山については,最近の研究によりその全貌が明らかになりつつある.一方,古富士火山の活動史は,富士山の東遠方のテフラや山麓部での泥流堆積物に基づいて構築されており,泥流堆積物を構成する溶岩流などの噴出活動については不明な点が多い.また,富士火山の活動以前には,現在の小御岳付近に僅かに露出する溶岩の浸食地形や組成から,愛鷹火山と同時期に小御岳火山が活動していたと考えられているが,小御岳火山の活動の詳細に関してはほとんど分かっていない.本研究では,富士山の活動史を明らかにするため,東京大学地震研究所所有の富士山北東麓から東麓にかけての5つの掘削試料の岩相解析および地表調査をおこなった.掘削試料中の岩石の解析結果,泥流堆積物中に含まれる岩石の構成物分析で主要な構成要素を占めるものは,泥流堆積の時期に近い噴火の噴出物の可能性が高いことが明らかとなった.この結果と掘削試料と富士火山の化学組成の比較から,小御岳火山直下にはデイサイトから玄武岩質の溶岩流および火砕物を放出する活動を行った先小御岳火山の存在が明らかとなった.一方,小御岳火山の活動は,玄武岩質安山岩質の溶岩流を主体とした活動であった.また東麓の掘削調査および地表調査の結果,古富士火山は数万年以上にわたって,ここ数千年と同様スコリアの噴出を中心とした活動を続けてきた.この堆積物にうち,およそ3万年以降は降下スコリア堆積物からなるのに対し,それ以前には泥流堆積物で占められていた.この堆積物の変化は,気候変動による山頂氷河の消長によって引き起こされた可能性が高いことが明らかとなった. | KAKENHI-PROJECT-16510134 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16510134 |
漢方薬によるがん患者のQOL向上:六君子湯のグレリン受容体を介した悪液質改善作用 | がん悪液質は、体重低下および食欲不振などを特徴とし、QOL低下を招く。我々はヒト胃がん細胞株由来の新規細胞株から、新規がん悪液質モデルを確立した。本モデルでは、摂食促進ペプチドであるグレリンの反応性が低下していた。漢方処方である六君子湯は、本モデルの悪液質を改善した。その作用機序としてグレリン受容体シグナル増強が示唆された。以上の研究より、六君子湯は悪液質を示すがん患者のQOL向上に貢献する可能性が期待される。がん悪液質は、体重低下および食欲不振などを特徴とし、QOL低下を招く。我々はヒト胃がん細胞株由来の新規細胞株から、新規がん悪液質モデルを確立した。本モデルでは、摂食促進ペプチドであるグレリンの反応性が低下していた。漢方処方である六君子湯は、本モデルの悪液質を改善した。その作用機序としてグレリン受容体シグナル増強が示唆された。以上の研究より、六君子湯は悪液質を示すがん患者のQOL向上に貢献する可能性が期待される。本研究の目的は、食欲不振に臨床適応を有する漢方処方である六君子湯のがん悪液質に対する有効性、およびグレリン受容体を介した作用機序に対する影響を基礎研究レベルで明らかにすることである。当該年度では、六君子湯の評価をするための(1)がん悪液質モデルの作製および(2)六君子湯のグレリン受容体に対する作用の検討を行った。(1)がん悪液質モデルの作製がん悪液質は、胃がん患者で高率に発現することが知られているが、胃がん細胞による適した悪液質モデルは少ない。そこで我々は、低分化型ヒト胃がん細胞株(MKN45)由来の細胞株MKN45clone85および85As2(安田女子大学薬学部柳原教授より譲受)を用いて、がん悪液質モデルの作製を試みた。これらの細胞をヌードラットに皮下移植すると、全例においてがん悪液質の臨床診断基準である、有意な体重減少、摂食量低下、脂肪量および除脂肪量の減少、血中炎症性マーカーの上昇(急性期蛋白およびサイトカイン)及び血中アルブミン値の減少を認めた。これらの結果は、今回作製したモデルラットが臨床でのがん悪液質を反映することを示唆した。以上、当該年度において、六君子湯の薬効評価が可能ながん悪液質モデルを作製した。(2)六君子湯のグレリン受容体に対する作用グレリン受容体安定発現COS-7細胞にG-CAMP2をトランスフェクションし、細胞内カルシウム濃度上昇を指標に、六君子湯のグレリン受容体に対する作用を検討した。その結果、六君子湯単独添加では、カルシウム上昇を起こさなかったが、グレリン添加によるカルシウム上昇は、六君子湯の前処置により増強された。この結果から、六君子湯はグレリン受容体に対し、固有活性を示さないが、正のアロステリック作用を示すことが示唆された。このようなグレリン受容体への作用増強効果が六君子湯の作用機序の一部として寄与する可能性が考えられた。本研究の目的は、食欲不振に臨床適応を有する漢方処方である六君子湯のがん悪液質に対する有効性、およびグレリン受容体を介した作用機序を基礎研究レベルで明らかにすることである。当該年度では、昨年度に作製した(1)がん悪液質モデルの病態生理研究、(2)がん悪液質モデルに対する六君子湯の作用および(3)六君子湯のグレリン受容体シグナルに対する作用の検討を行った。(1)がん悪液質モデルの病態生理研究昨年度の研究において、低分化型ヒト胃がん細胞株(MKN45)由来の細胞株MKN45clone85および85As2を用いて、がん悪液質モデルラットを作製した。本モデルは、がん悪液質に特徴的な症状を示し、さらに血中グレリン値が上昇しており、グレリン投与に対する反応性が低下しており、グレリン抵抗性が惹起されていることが示唆された。(2)がん悪液質モデルに対する六君子湯の作用六君子湯は、がん悪液質発症後からの7日間経口投与(1g/kg)で、摂食量低下を有意に改善し、体重低下を抑制した。また、悪液質発症前からの六君子湯1%混餌投与も改善効果を示した。(3)六君子湯のグレリン受容体シグナルに対する作用humanグレリン受容体(GHSR)安定発現HEK293T細胞を用いて、六君子湯によるグレリン受容体シグナルへの影響をラベルフリーセルベースアッセイシステム(CellKey^<TM>システム)で検討した。その結果、GHSR発現細胞へのグレリン添加によりGq特異的シグナルが示され、六君子湯前処置により、本グレリンシグナルの増強効果が認められた。以上の結果、グレリン抵抗性が惹起されているがん悪液質モデルラットに対し、六君子湯は摂食量低下改善効果を示した。グレリン受容体へのシグナル増強効果が六君子湯の作用機序の一部として寄与する可能性が示唆された。本研究の目的は、食欲不振に臨床適応を有する漢方処方である六君子湯のがん悪液質に対する有効性、およびグレリン受容体を介した作用機序を基礎研究レベルで明らかにすることである。昨年度までに以下の成果を報告した。低分化型ヒト胃がん細胞株(MKN-45)由来の細胞株MKN45clone85および85As2を用いて、新規がん悪液質モデルラットを作製した。 | KAKENHI-PROJECT-22590510 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22590510 |
漢方薬によるがん患者のQOL向上:六君子湯のグレリン受容体を介した悪液質改善作用 | 本がん悪液質モデルは、がん悪液質に特徴的な症状を示し、さらに血中グレリン値上昇、グレリン投与に対する反応性が低下しており、グレリン抵抗性が惹起されていることが示唆された。本がん悪液質モデルラットに対し、六君子湯は摂食量低下改善などの悪液質改善効果を示した。さらに、in vitroの検討から、六君子湯のグレリン受容体へのシグナル増強効果が認められ、六君子湯の悪液質改善効果には、グレリン受容体シグナル増強によるグレリン抵抗性の改善が作用機序の一部として寄与する可能性を示唆した。当該年度では、1.本がん悪液質モデルの病態生理研究および発症機序の解明、および2.がん細胞に対する六君子湯成分の作用(in vitro)の検討を行った。1.本がん悪液質モデルでは、活動期における自発運動量低下、安静期における消費カロリー亢進が認められた。悪液質誘発因子として炎症性サイトカインであるleukemiainhibitoryfactor (LIF)が関与している可能性が明らかとなった。悪液質誘発能は、MKN-45<MKN45clone85<85As2であり、85As2細胞では、Toll-like receptor(TLR)系のシグナルが活性化していることが明らかとなり、TLRやLIFが悪液質誘発能の相異に寄与している可能性が示唆された。2.六君子湯含有成分は、がん細胞増殖を抑制し、特にNobiletinが強いがん細胞増殖作用を示した。本研究の柱である(1)がん悪液質モデルの作製、(2)がん悪液質モデルに対する六君子湯の改善作用の評価および(3)六君子湯のグレリン受容体に対するアロステリック作用の研究、は終了しているため、おおむね順調に進展していると考えられる。24年度が最終年度であるため、記入しない。本研究で作製したがん悪液質モデルにおいて、悪液質症状発症の起因となっている因子を明らかにし、その因子のグレリン受容体や摂食行動に対する影響を検討する。さらに、その悪液質発症因子によるグレリン受容体への影響に対する六君子湯の作用を検討し、六君子湯の悪液質改善作用メカニズムのさらに詳細な検討を行う。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22590510 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22590510 |
高融点金属ゲートAlGaN/GaN HFETに関する研究 | 本研究の目的は、高温動作やセルフアライゲートのAlGaN/GaN HFETを目指し、高融点金属によるゲート、オーミック電極の形成とアニール過程における界面反応、電気特性の研究を行うことである。n-GaN上にNi,Cuと、高融点金属のIr,Pt,Rh,Ruとその窒化物(TaN,TiN,HfN,ZrN)を成膜し、その膜性質とそれらを用いたショットキーダイオードの評価を行った。各サンプルを室温から200度まで動作特性と熱安定性を調査した。800度アニール後、TiNデバイスはほぼ変化がなかった。ZrNのリークは800度アニール後2桁程度減少した。障壁は低温の0.66eVから0.77eVに増加し、理想因子も低温の1.16から1.06になった。窒化物TiN,ZrNを用いてAlGaN/GaN HFETを製作し、デバイス特性を調査した。完成したデバイスを850°C、30秒間でアニールすると、特性が変わらなく、ゲートリークが減少したことが分かった。セルフアライゲートAlGaN/GaN HFETを研究するために、ゲート先のデバイスを試作した。TiN,ZrNを完成してから、Ti/Al/Ti/Au金属をつけた。次にオーム接触になるため、サンプルを一斉に850°C、30秒間アニールした。完成したデバイスが正しく動作することを確認した。n-GaN上に高融点材料W,WTi,WSi,Mo,MoSiとその窒化物のショットキー特性を製作し、評価した。窒化物にすることでリーク電流が減少し、障壁が増加したことが分かった。その中、MoNのショットキー接触はNiAuと匹敵ほどの特性を得た。n値は1.03、φ_bは0.74eV程度となった。さらに、サンプルを300°C800°Cまで100°C刻みで10分アニールしたあと室温での電気特性を評価した。MoNはアニール温度を上げると、徐々にリーク電流が増えショットキー特性が悪くなるものの、その変化はなだらかであるため、界面が安定していると思われる。TiNのウェットエッチングができた。TiNゲートを用い、セルフアライゲートAlGaN/GaN HFETの試作を行った。以上の成果は耐熱デバイス、セルフアライゲートAlGaN/GaN HFETの開発の基礎技術になると思われる。本研究の目的は、高温動作やセルフアライゲートのAlGaN/GaN HFETを目指し、高融点金属によるゲート、オーミック電極の形成とアニール過程における界面反応、電気特性の研究を行うことである。n-GaN上にNi,Cuと、高融点金属のIr,Pt,Rh,Ruとその窒化物(TaN,TiN,HfN,ZrN)を成膜し、その膜性質とそれらを用いたショットキーダイオードの評価を行った。各サンプルを室温から200度まで動作特性と熱安定性を調査した。800度アニール後、TiNデバイスはほぼ変化がなかった。ZrNのリークは800度アニール後2桁程度減少した。障壁は低温の0.66eVから0.77eVに増加し、理想因子も低温の1.16から1.06になった。窒化物TiN,ZrNを用いてAlGaN/GaN HFETを製作し、デバイス特性を調査した。完成したデバイスを850°C、30秒間でアニールすると、特性が変わらなく、ゲートリークが減少したことが分かった。セルフアライゲートAlGaN/GaN HFETを研究するために、ゲート先のデバイスを試作した。TiN,ZrNを完成してから、Ti/Al/Ti/Au金属をつけた。次にオーム接触になるため、サンプルを一斉に850°C、30秒間アニールした。完成したデバイスが正しく動作することを確認した。n-GaN上に高融点材料W,WTi,WSi,Mo,MoSiとその窒化物のショットキー特性を製作し、評価した。窒化物にすることでリーク電流が減少し、障壁が増加したことが分かった。その中、MoNのショットキー接触はNiAuと匹敵ほどの特性を得た。n値は1.03、φ_bは0.74eV程度となった。さらに、サンプルを300°C800°Cまで100°C刻みで10分アニールしたあと室温での電気特性を評価した。MoNはアニール温度を上げると、徐々にリーク電流が増えショットキー特性が悪くなるものの、その変化はなだらかであるため、界面が安定していると思われる。TiNのウェットエッチングができた。TiNゲートを用い、セルフアライゲートAlGaN/GaN HFETの試作を行った。以上の成果は耐熱デバイス、セルフアライゲートAlGaN/GaN HFETの開発の基礎技術になると思われる。本研究の目的は、高温動作やセルフアライゲートのAIGaN/GaNHFETを目指し、高融点金属によるゲート、オーミック電極の形成とアニール過程における界面反応、電気特性の研究を行うことである。n-GaN上に数種類の金属のショットキーダイオードを作った。オーミック電極としてスパッタ装置を用いてTiAl/Al/Ti/Auを50/200/40/30nm蒸着し、窒素雰囲気中で850°C、30秒間のアニールを行った。 | KAKENHI-PROJECT-18560337 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18560337 |
高融点金属ゲートAlGaN/GaN HFETに関する研究 | その後、スパッタ装置(DCとRF)を用いて、Arの雰囲気中、通常のゲート金属Ni, Cuと、高融点金属のIr, Pt, Rh, Ruをゲート金属成膜し、その膜性質とダイオードの評価を行った。次に、Arと窒素の混合ガス雰囲気中金属の窒化物膜TaN, TiN, HfN, ZrNをスパッタ装置で成膜し、その膜性質とダイオードの評価を行った。HfNとn-GaNはオーム性接触が現れた。他のダイオードはすべてショットキー接触であり、理想因子は1.121.31である。Ni, Cu, Pt, Rh接触の障壁はほぼ1eVであり、Ir, Ruと金属の窒化物の障壁はほぼ0.8eVであることが分かった。各サンプルを室温から200度まで動作特性を測ると、TaNダイオードのリークの増加は大きく、他のダイオードのリークも一桁程度増加した。NiゲートHFETを500°Cまで測定したら、ゲートの制御が効かなくなり破壊したようだ。各サンプルを300度から900度まで窒素中30秒アニールし、室温に戻って測ると、TaNとHfNのリークはもともと大きく、一部のダイオードのリークもある程度増加した。但し、800度アニール後、TiNデバイスはほぼ変化がなかった。ZrNのリークは800度アニール後2桁程度減少した。障壁は低温の0.66eVから0.77eVに増加し、理想因子も低温の1.16から1.06になった。TiN, ZrNは高温デバイスのゲートとして有望であることが見られる。窒化物TiN, ZrNを用いてAIGaN/GaNHFETを製作し、デバイス特性を調査した。TiN, ZrNの抵抗率はそれぞれ117.6Ωμcm、475.7Ωμcmである。完成したデバイスを850°C、30秒間のアニールすると、特性が変わらなく、ゲートリークが減少したことが分かった。現在、TiN, ZrNを用いたデバイスの高温動作も評価している。セルフアライゲートAIGaN/GaNHFETを研究するために、ゲート先のデバイスを試作した。TiN, ZrNを完成してから、Ti/Al/Ti/Au金属をつけた。次にオーム接触になるため、サンプルを一斉に850°C、30秒間アニールした。完成したデバイスが正しく動作することを確認した。n-GaN上に高融点材料W、Wti、Wsi、Mo、MoSiのショットキー特性を製作し、評価した。オーミック電極完成後、スパッタ装置を用いて、Arの雰囲気中、各金属をゲート金属成膜し、その膜性質とダイオードの評価を行った。すべてのショットキー接触にはリーク電流が大きい。障壁は0.4eVであり、理想因子は2.0程度である。次に、以上の各金属をArと窒素の混合ガス雰囲気中スパッタ装置で成膜し、その膜性質とダイオードの評価を行った。窒化物にすることでリーク電流が減少し、障壁が増加したことが分かった。その中、MoNのショットキー接触はNiAuと匹敵ほどの特性を得た。アルゴンと窒素の流量が10sccmと2sccmでスパッタしたMoNの場合、15V逆バイアスのリーク電流は1×10^-5A程度で、同基板に製作したNiAuダイオードより1桁大きくなったが、n値は1.03、φbは0.74eV程度となった。さらに、サンプルを300°C800°Cまで100°C刻みで10分アニールしたあと室温での電気特性を評価した。MoNはアニール温度を上げると、徐々にリーク電流が増えショットキー特性が悪くなるものの、その変化はなだらかであるため、界面が安定していると思われる。 | KAKENHI-PROJECT-18560337 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18560337 |
象牙質シートを用いた生体機能付加インプラントシステムの開発 | 本研究は、樹立した象牙質シート形成性培養細胞を用いてチタンインプラント周囲に象牙質を誘導し、新規生体機能付加インプラントシステムの開発を行うことを目的としている。当該年度研究ではGFPトランスジェニックラット歯髄組織から樹立した象牙芽細胞株が、新規生体機能付加インプラントシステムとして機能するか、細胞の生体外および生体内での動態、さらに象牙芽細胞の骨組織との反応性について詳細に検討した。象牙芽細胞をコンフルエントに達するまでに培養し、石灰化培地による誘導を行ったところ、石灰化開始が観察されるのは約3日後であったが、細胞外基質の産生は予想に反してより早期から開始されていることが分かった。そこで象牙芽細胞の石灰化培地による処理期間を1日間に短縮し生体内に移植、細胞分化について観察した。細胞の移植は形成される象牙質と骨組織との反応性および結合性を観察するため、SCIDマウス頭蓋骨骨膜下に移植を行った。細胞移植後4週目に組織の観察を行ったところ、硬組織の形成が認められ石灰化処理1日でも細胞の誘導が行われると考えられた。形成された硬組織を組織学的に観察すると不規則な改造線を有する象牙質様の硬組織が頭蓋骨上に観察された。既存骨と象牙質様組織の境界部分には紡錘形の細胞群が存在し、直接的な結合は観察されなかった。既存骨と象牙質様組織に存在する細胞は、象牙質様組織の周囲に前象牙質様の組織が認められたことから未分化な象牙芽細胞が含まれていると考えられた。本研究は、チタンインプラント周囲に象牙質を誘導し、象牙質周囲に歯根膜組織等歯周組織を形成する新規生体機能付加インプラントシステムの開発を行うことを目的としている。当該年度研究では昨年度GFPトランスジェニックラット歯髄組織から樹立した象牙芽幹細胞株の研究データを基として、引き続き象牙芽幹細胞株が新規生体機能付加インプラントシステムとしての適正な性格を有するか否かについて細胞生物学的な解析を行った。細胞環境が象牙芽幹細胞株の分化過程に及ぼす影響について解析した結果、培養条件下では経時的にDSP等歯牙関連遺伝子の発現増加が認められた。象牙芽細胞の生体内と培養条件下における細胞分化を比較すると、生体内における分化誘導系において上記遺伝子の発現がより増強される傾向が認められた。以上から本細胞は生体内でも象牙芽細胞の性格を維持しており生体機能付加インプラントシステム開発に有用な細胞であると考えられた。また象牙質周囲に人工的に歯根膜組織等歯周組織を形成するため、骨髄由来細胞の歯周組織構成細胞への分化能について検討した。その結果、線維芽細胞、破骨細胞、歯根膜組織中に紡錘形の細胞、血管を構成すると考えられる細胞など、骨髄由来の細胞が歯周組織構成細胞として多数存在することが明らかとなった。これら骨髄由来の細胞は歯周組織への持続的な機械的刺激により増加する傾向が認められたことから、メカニカルストレスが細胞の遊走や分化に関与している可能性が示唆された。本研究は、樹立した象牙質シート形成性培養細胞を用いてチタンインプラント周囲に象牙質を誘導し、新規生体機能付加インプラントシステムの開発を行うことを目的としている。当該年度研究ではGFPトランスジェニックラット歯髄組織から樹立した象牙芽細胞株が、新規生体機能付加インプラントシステムとして機能するか、細胞の生体外および生体内での動態、さらに象牙芽細胞の骨組織との反応性について詳細に検討した。象牙芽細胞をコンフルエントに達するまでに培養し、石灰化培地による誘導を行ったところ、石灰化開始が観察されるのは約3日後であったが、細胞外基質の産生は予想に反してより早期から開始されていることが分かった。そこで象牙芽細胞の石灰化培地による処理期間を1日間に短縮し生体内に移植、細胞分化について観察した。細胞の移植は形成される象牙質と骨組織との反応性および結合性を観察するため、SCIDマウス頭蓋骨骨膜下に移植を行った。細胞移植後4週目に組織の観察を行ったところ、硬組織の形成が認められ石灰化処理1日でも細胞の誘導が行われると考えられた。形成された硬組織を組織学的に観察すると不規則な改造線を有する象牙質様の硬組織が頭蓋骨上に観察された。既存骨と象牙質様組織の境界部分には紡錘形の細胞群が存在し、直接的な結合は観察されなかった。既存骨と象牙質様組織に存在する細胞は、象牙質様組織の周囲に前象牙質様の組織が認められたことから未分化な象牙芽細胞が含まれていると考えられた。本研究は、チタンインプラント周囲に樹立した象牙質シート形成性培養細胞を用いてチタンインプラント周囲に象牙質を誘導し、新規生体機能付加インプラントシステムの開発を行うことを目的としている。当該年度研究ではGFPトランスジェニックラット歯髄組織から樹立した象牙芽幹細胞株が、新規生体機能付加インプラントシステムとして利用する際、適正な性格を有するか否かについてin vitro条件下において検討した。細胞の性状に関する検討では石灰化培地による細胞分化課程の詳細について観察した。またマイクロアレイ法RT-PCR法を用いて象牙芽幹細胞株の遺伝子発現等について検討を行った。象牙芽幹細胞株は細胞がコンフルエントに達した状態で、石灰化誘導培地を用いて培養すると2層の細胞層からなる象牙質シートを形成するが、細胞密度等、誘導条件を変化させると象牙質シート形成を制御できることが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-23592990 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23592990 |
象牙質シートを用いた生体機能付加インプラントシステムの開発 | 細胞密度の低い状態で石灰化誘導すると象牙質シートを形成せず、細胞が単層のまま直接シャーレ底面に強固に付着していた。細胞の石灰化ノジュール形成は同程度であり細胞分化には影響がないと考えられる。チタンインプラント表面に象牙質を形成する場合、強固に細胞が結合した状態で移植、または象牙質シートを使用するなど状況に応じて細胞分化誘導を調節、生体機能付加インプラントに応用できる可能性が示唆された。マイクロアレイ解析では、象牙芽幹細胞株が石灰誘導培地による誘導条件下において、歯および骨組織に関連する特異的な多数の遺伝子に発現量増加が認められた。以上のことから樹立した細胞は象牙芽細胞の性格を有しており本研究目的に適した細胞であることが確認された。当該年度研究では人歯髄から得られた細胞を用いて研究を推進させる予定であった。しかしながら前年度に得られた象牙芽幹細胞株が非常に興味深い性格を有しており、本細胞の解析を行うことにより、より有用な研究データが得られると判断した。そのため昨年度に引き続き象牙芽幹細胞株が新規生体機能付加インプラントシステムとしての適正な性格を有するか否かについて細胞生物学的な解析を行った。また一方で骨髄幹細胞の歯根膜線維芽細胞への分化機構解析を一部前倒しで行っており、興味深いデータが得られつつある。研究進捗状況に関しては、研究の遅れている項目もあるが、進行している項目もあり総合的に判断しておおむね順調に進展していると判断した。当該年度研究ではGFPトランスジェニックラット歯髄組織から樹立した象牙芽幹細胞株が、新規生体機能付加インプラントシステムに利用する場合、適正な性格を有するか否かについて検討した。その結果本細胞は象牙芽細胞の性格を有しており、また培養細胞の細胞接着性が調節可能であることなどが判明し、研究進行状況は概ね順調であると判断した。象牙芽幹細胞株の研究データを基として、引き続き同培養細胞株を用いてチタンインプラントもしくはセラミック等の人工生体材料と象牙質との結合実験を進める。また象牙芽幹細胞株の生体内での細胞分化について詳細に解析するととともに、骨組織環境中で象牙芽幹細胞がどのような組織を誘導するかについて解析する。実験方法としては象牙芽幹細胞をコンフルエントに達するまで培養し石灰化誘導培地にて誘導を行う。その後細胞を回収し骨組織中に移植する。細胞の移植は細胞単体、上記のチタンインプラントもしくはセラミック等の人工生体材料と共に行い、象牙質周囲にどのような組織が形成されるか組織学的に観察を行う。同時にチタンインプラント体と象牙質が強固に結合する条件を検討する為、チタンプレート上で象牙芽培養細胞を培養し、細胞分化能に及ぼす影響について検討するとともに、培養象牙細胞とチタンプレートをマウス背部皮下に埋入し、象牙質とチタンプレートとの接着性を組織学的に判定する。またヒト歯髄細胞を用いてチタンインプラント結合性の細胞培養法開発を行う為、ヒト抜去歯の歯髄組織から培養細胞樹立を試みる。同時にヒト抜去歯歯根組織から歯根膜線維芽細胞の樹立を行う。樹立した歯髄細胞に関しては細胞の性格、分化能の検定、効率的な細胞分化誘導法について検討する。昨年度象牙芽幹細胞株の研究データを元として、引き続き同培養細胞株を用いてチタンインプラントと象牙質との結合実験を進める。またヒト歯髄細胞を用いてチタンインプラント結合性の細胞培養法開発を行う為、ヒト抜去歯の歯髄組織から培養細胞樹立を試みる。 | KAKENHI-PROJECT-23592990 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23592990 |
低電圧駆動の微少流量送出可能な医療用カプセル型マイクロポンプ | 柔軟で,低電圧駆動が可能で,応答性に優れ,生体内での安全性を兼ねそなえたマイクロポンプを開発するために,駆動源としての新型アクチュエータが求められている、当該研究者はここ数年ICPF(Ionic Conducting Polymer Film)アクチュエータについての基礎研究を行ってきた.当該研究では,今までの研究成果(ICPFの力特性測定と評価モデル)に基づき,具体的に医療用カプセル型マイクロポンプの応用に着目し,ポンプの設計・試作及び特性評価などの基礎研究を行った.本年度では,前年度の研究成果を踏まえて,カプセル型マイクロポンプを最適に設計,試作した.先ず,マイクロポンプの構造や動作機構について定量的な検討を行い,マイクロポンプの圧力損失や流量評価モデルを提案した.また,CCDカメラ付き顕微鏡や高速カメラにより,マイクロポンプ(透明材質)のチャンバや能動一方向弁の位置と動作を確認した.そして,駆動回路をポンプに組み込み,駆動電圧と周波数に対して,CCDカメラ付きレーザ変位計を用いてポンプ送出端の液面高さを測定し,ポンプの輸出圧力と流量を評価した.微少流量を精密に測定するマイクロ流量計がないため,輸出液体の重さを電子天秤で計って,輸出流量を精密に評価を行った.更に,シフト制御(PWM制御)により,輸出流量のコントロール実験を行い,提案した新型マイクロポンプの特性を総合的に評価する.実験結果に基づき,提案した新型マイクロポンプは低電圧駆動の微少流量送出が可能であることを確認し,今後の医療分野での応用を見込めることが分った.柔軟で,低電圧駆動が可能で,応答性に優れ,生体内での安全性を兼ねそなえたマイクロポンプを開発するために,駆動源としての新型アクチュエータが求められている.当該研究者はここ数年ICPF(Ionic Conducting Polymer Film)アクチュエータについての基礎研究を行ってきた.当該研究では,今までの研究成果(ICPFの力特性測定と評価モデル)に基づき,具体的に医療用カプセル型マイクロポンプの応用に着目し,漏れ電流の防止策(数10mA以下),物理モデル化や動特性などの基礎研究を行う.本年度では、先ずICPFアクチュエータの基礎研究を行い、それに基づき,パラメータを同定して,間接的に力特性を評価する計算方法を提案した.また,漏れ電流の防止策(数10mA以下)として,絶縁膜で覆いと駆動電圧のPWM制御を行った.また,レーザ式変位センサとデジタルオシロスコープを利用して,空気中や生理食塩水などでICPFアクチュエータの湾曲変位-駆動電圧(駆動電流,パルス周波数)特性やカプセル型ポンプ用特殊ゴムの力特性を測定した.そして,測定結果を基に,アクチュエータのサイズを考慮し,最小二乗法で物理モデルのパラメータ同定を行った.さらに,ICPF湾曲特性の円弧モデルに基づき,変位測定値(レーザ式変位センサ)を用いて中心部の湾曲変位などを評価し,理論研究を基にカプセル型マイクロポンプを最適に設計,試作した.柔軟で,低電圧駆動が可能で,応答性に優れ,生体内での安全性を兼ねそなえたマイクロポンプを開発するために,駆動源としての新型アクチュエータが求められている、当該研究者はここ数年ICPF(Ionic Conducting Polymer Film)アクチュエータについての基礎研究を行ってきた.当該研究では,今までの研究成果(ICPFの力特性測定と評価モデル)に基づき,具体的に医療用カプセル型マイクロポンプの応用に着目し,ポンプの設計・試作及び特性評価などの基礎研究を行った.本年度では,前年度の研究成果を踏まえて,カプセル型マイクロポンプを最適に設計,試作した.先ず,マイクロポンプの構造や動作機構について定量的な検討を行い,マイクロポンプの圧力損失や流量評価モデルを提案した.また,CCDカメラ付き顕微鏡や高速カメラにより,マイクロポンプ(透明材質)のチャンバや能動一方向弁の位置と動作を確認した.そして,駆動回路をポンプに組み込み,駆動電圧と周波数に対して,CCDカメラ付きレーザ変位計を用いてポンプ送出端の液面高さを測定し,ポンプの輸出圧力と流量を評価した.微少流量を精密に測定するマイクロ流量計がないため,輸出液体の重さを電子天秤で計って,輸出流量を精密に評価を行った.更に,シフト制御(PWM制御)により,輸出流量のコントロール実験を行い,提案した新型マイクロポンプの特性を総合的に評価する.実験結果に基づき,提案した新型マイクロポンプは低電圧駆動の微少流量送出が可能であることを確認し,今後の医療分野での応用を見込めることが分った. | KAKENHI-PROJECT-12750222 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12750222 |
新生鎖の合成速度を段階的に変える翻訳システムの創成 | リボソームによる新生鎖合成のメカニズムが明らかになってきた現在,その得られた情報をもとに,新生鎖合成を自在に制御できるような次世代型新生鎖合成システムの創成が期待されている.本研究は,大腸菌をモデルとして,新生鎖合成に必要なエネルギーを供給するGTPaseを運搬するストークの足場タンパク質L10の改変によって真核の性質を持つキメラ型L10を作製し,それに結合するL12二量体(バクテリア)又はP1二量体(真核型)の個数を調節することで,新生鎖の合成速度を人工的に数段階調節できるタンパク質合成システムを創出することを試みる.その目的に達成するため,平成29年度に得られた結果に基づいて研究を進めた.H29年度に作製したキメラL/PストックL10(CH1)P0(CH2)を用いて,L12,およびP1との結合をさらに再現性を確認し,翻訳GTPase因子である古細菌伸長因子aEF-2との結合実験へ進めた.その結果,キメラL/Pストックが古細菌伸長因子aEF-2との結合が見られた.次に,キメラL/Pストックが翻訳速度に対する影響があるかかとうかを確認するため,他の種類のL10変異体,例えば,L10(CH2P0(CH1)の作製より,キメラL/Pストックの翻訳速度をin vitroで調べることを先に進めた.in vitroの調べは,東大の網藏和晃助教の協力をいただき,研究協力者である内海教授が作製したL11欠損株を用いて,大腸菌の無細胞発現系を利用することにした.コントロールとして, WTのL10-L12L12-L12L12の5量体も必要であり,大量調製を行った.L10-L12L12-L12L12の調製もキメラL/Pストックを作成した場合と同様にL12と共発現系を用いて,精製には尿素を使用する必要がるので,refolding-reconstruct方法で大量調製ができた.それらのサンプルを用いて,大腸菌の無細胞発現系で調べたところ,キメラL/Pストックが機能することが分かった.平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。リボソームによる新生鎖合成のメカニズムが明らかになってきた現在,その得られた情報をもとに,新生鎖合成を自在に制御できるような次世代型新生鎖合成システムの創成が期待されている.本研究は,大腸菌をモデルとして,新生鎖合成に必要なエネルギーを供給するGTPaseを運搬するストークの足場タンパク質L10の改変によって真核の性質を持つキメラ型L10を作製し,それに結合するL12二量体(バクテリア)又はP1二量体(真核型)の個数を調節することで,新生鎖の合成速度を人工的に数段階調節できるタンパク質合成システムを創出することを試みる.そのため,平成29年度に,予備実験に基づいて大腸菌リボソームストークの足場タンパク質L10のL12結合部位の改変を最適化し,1個L12二量体しか結合できないL10変異体L10(CH1)の作製を試みた.さらに,L10(CH1)にP0(CH2)を融合し,1個L12二量体と1個P1二量体にそれぞれ結合できる変異体L10(CH1)P0(CH2)を作製してみた.L10,およびL10変異体の大量調製には,文献を参考にし,L12と共発現した複合体(WT:L10-L12L2-L12L12の5量体、変異体:L10-L12L2の3量体)を変性することによってL10とL12をそれぞれ抽出し,精製することができた.また,別々に精製したL10とL12を用いて複合体の再構築も確認できた.P1については,すでに確立した方法で大量調製した.それぞれ精製したL10の変異体,L12とP1を混合して,ゲルろ過クロマトグラフィーとSDS-pageを用いて確認したところ,L12とP1がL10(CH1)P0(CH2)に結合していることが分り,キメラL10の変異体を確定することができた.今後,大腸菌と真核型の伸長因子EF-G,EF-2を用いてキメラストークとの結合を確認する.また,現在のL10, L12の精製法によって得られたサンプルの純度が不十分であかり,小角散乱により溶液中の会合状態を解析するため,精製条件の検討が必要であることがわかった.平成29年は、研究計画の通りに、1個L12二量体しか結合できない変異体L10(CH1),1個L12二量体と1個P1二量体のそれぞれに結合する変異体L10(CH1)P0(CH2)の作製ができた.作製したL10変異体L10(CH1)がL12,L10(CH1)P0(CH2)がL12,およびP1との結合も確認できた.このことから,大腸菌の変異株の作製設計が可能となる.今後,大腸菌と真核型の伸長因子EF-G,EF-2を用いてキメラストークL10(CH1)P0(CH2)-L12L12-P1P1との結合が確認できれば,大腸菌変異株の作製が始められる.以上の結果から、本研究はおおむねに順調に進展しているといえる. | KAKENHI-PUBLICLY-17H05656 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-17H05656 |
新生鎖の合成速度を段階的に変える翻訳システムの創成 | リボソームによる新生鎖合成のメカニズムが明らかになってきた現在,その得られた情報をもとに,新生鎖合成を自在に制御できるような次世代型新生鎖合成システムの創成が期待されている.本研究は,大腸菌をモデルとして,新生鎖合成に必要なエネルギーを供給するGTPaseを運搬するストークの足場タンパク質L10の改変によって真核の性質を持つキメラ型L10を作製し,それに結合するL12二量体(バクテリア)又はP1二量体(真核型)の個数を調節することで,新生鎖の合成速度を人工的に数段階調節できるタンパク質合成システムを創出することを試みる.その目的に達成するため,平成29年度に得られた結果に基づいて研究を進めた.H29年度に作製したキメラL/PストックL10(CH1)P0(CH2)を用いて,L12,およびP1との結合をさらに再現性を確認し,翻訳GTPase因子である古細菌伸長因子aEF-2との結合実験へ進めた.その結果,キメラL/Pストックが古細菌伸長因子aEF-2との結合が見られた.次に,キメラL/Pストックが翻訳速度に対する影響があるかかとうかを確認するため,他の種類のL10変異体,例えば,L10(CH2P0(CH1)の作製より,キメラL/Pストックの翻訳速度をin vitroで調べることを先に進めた.in vitroの調べは,東大の網藏和晃助教の協力をいただき,研究協力者である内海教授が作製したL11欠損株を用いて,大腸菌の無細胞発現系を利用することにした.コントロールとして, WTのL10-L12L12-L12L12の5量体も必要であり,大量調製を行った.L10-L12L12-L12L12の調製もキメラL/Pストックを作成した場合と同様にL12と共発現系を用いて,精製には尿素を使用する必要がるので,refolding-reconstruct方法で大量調製ができた.それらのサンプルを用いて,大腸菌の無細胞発現系で調べたところ,キメラL/Pストックが機能することが分かった.平成29年度の実験結果から、分かった問題を解決しながら,申請当初に計画した実験を実施する.1.平成29年度の実験結果から分かったL10とL12の精製純度について,今年度中に精製方法と条件を検討することによって,改善する.2.L10(CH1)P0(CH2)の作製法と同様に,L12とP1結合部を交換したL10変異体L10(CH2)P0(CH1),およびその変異ストークの作製を成功させ,L12およびP1との結合能力を調べる.必要に応じて研究協力者である内海教授が構築した活性系でin vitroの活性測定を行う.L10(CH2)P0(CH1)とL10(CH1)P0(CH2)のGTPaseの運搬能力を検討する.3.異なる合成速度をもつ新生鎖合成システムの構築について、既に作製したL10(CH1),L10(CH1)P0(CH2),L10(CH2)P0(CH1)に基づいて発現用の大腸菌変異株の作製を試みる.L10は必須タンパク質であるため,これを欠損させた変異株は,通常の条件では生育できない.よって,本研究では,Cas9を用いたゲノム編集法で、大腸菌ゲノムのL10遺伝子を直接操作してL10(CH1),L10(CH1)P0(CH2),L10(CH2)P0(CH1)の変異株を作製する.必要に応じて,L10の変異体を最適化する.変異株の発現能力が確認できたら,大腸菌のWTと変異株を用いて,様々な条件でモデルタンパク質の発現量を比較することによって変異株の新生鎖合成速度を評価する.平成30年度が最終年度であるため、記入しない。本研究には,プレリミナリーな結果が得られ、論文する前に、研究成果をwebページに公開することができないが、研究室のホームページに新生鎖の合成についての研究を掲載している。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PUBLICLY-17H05656 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-17H05656 |
Srcファミリ-遺伝子fynのリンホ-マ並びに正常リンパ球における発現と機能 | srcファミリ-遺伝子fynの発現制御機構と、その産物p59^<fyn>チロシンキナ-ゼ(fyn)の生理的機能を解析して以下の知見を得た。(1)発現:lprマウスで腫大リンパ節を構成する異常Tリンパ球においては、正常Tリンパ球に比べて約15倍のfyn mRNAの増大が認められるが、nuclear run on assayとactinomycinDを用いたfyn mRNA代謝速度の検定結果から、Iprリンパ球ではfyn nRNAのstabilityが増大していることが判明した。一方、活性化正常Tリンパ球に認められる一過性誘導発現では、核における転写量が増大していた。更に現在、前年度見だした前駆Bリンパ球におけるfynの高レベル発現がいずれの機序によるか検討している。(2)機能:免疫沈降法とin vitro kinase assayとを組み合わせることによって、FynがTリンパ球抗原レセプタ-(TcR)と会合していることを見出した。このことはTcRと共にdown modulationされることからも示唆され、またFynの5乃至10%がTcRに会合していた。TcRへの会合量はlprTリンパ球では正常の2.5倍であり、リンパ腺腫脹の形成との関連が示唆された。このlprTリンパ球においては、活性化Tリンパ球と同様にTcRのシグナル伝達分子CD3ζ鎖が構成的にチロシン燐酸化されているが、CD3ζ遺伝子とfynとのcoーtransfectionの系を用いて、CD3ζがFynの基質になり得ることが示された。更にlprTリンパ球でGAP(GTPaseーactivating protein)のチロシン燐酸化も判明し、Fynを介した伝達系の一端が明らかとなった。TcRに会合するFynの機能を知るため、現在更に、作成した種々の活性型及び不活性型fynを導入発現させた抗原特異的T細胞ハイブリド-マの反応性を解析している。srcファミリ-遺伝子fynの発現制御機構と、その産物p59^<fyn>チロシンキナ-ゼ(fyn)の生理的機能を解析して以下の知見を得た。(1)発現:lprマウスで腫大リンパ節を構成する異常Tリンパ球においては、正常Tリンパ球に比べて約15倍のfyn mRNAの増大が認められるが、nuclear run on assayとactinomycinDを用いたfyn mRNA代謝速度の検定結果から、Iprリンパ球ではfyn nRNAのstabilityが増大していることが判明した。一方、活性化正常Tリンパ球に認められる一過性誘導発現では、核における転写量が増大していた。更に現在、前年度見だした前駆Bリンパ球におけるfynの高レベル発現がいずれの機序によるか検討している。(2)機能:免疫沈降法とin vitro kinase assayとを組み合わせることによって、FynがTリンパ球抗原レセプタ-(TcR)と会合していることを見出した。このことはTcRと共にdown modulationされることからも示唆され、またFynの5乃至10%がTcRに会合していた。TcRへの会合量はlprTリンパ球では正常の2.5倍であり、リンパ腺腫脹の形成との関連が示唆された。このlprTリンパ球においては、活性化Tリンパ球と同様にTcRのシグナル伝達分子CD3ζ鎖が構成的にチロシン燐酸化されているが、CD3ζ遺伝子とfynとのcoーtransfectionの系を用いて、CD3ζがFynの基質になり得ることが示された。更にlprTリンパ球でGAP(GTPaseーactivating protein)のチロシン燐酸化も判明し、Fynを介した伝達系の一端が明らかとなった。TcRに会合するFynの機能を知るため、現在更に、作成した種々の活性型及び不活性型fynを導入発現させた抗原特異的T細胞ハイブリド-マの反応性を解析している。 | KAKENHI-PROJECT-02152030 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02152030 |
教職志望の学生を対象としたチーム型授業観察力養成プログラムの開発と試行 | 教職志望学生の実践的指導力を高めるためには,指導観や生徒観,教材観を推測できるような授業観察力の向上が重要である.そのために,教育実習や事前事後指導の限られた時間の中で授業観察力の向上を図る教育実習事前・事後指導プログラムの開発を目的とする.申請者は,授業観察者同士が授業認知を即時的に共有,協議することで授業設計力の向上を図るプログラムを開発してきた.この枠組みを応用し,教育実習生の観察チームが異なる観察視点からの観察情報を共有しながら協議できるようにすることで,教育実習生が1学習上の課題と2指導意図の予測を観察記録や指導案に明示し,エビデンスに基づく授業改良ができるようになることを目指す.教職志望学生の実践的指導力を高めるためには,指導観や生徒観,教材観を推測できるような授業観察力の向上が重要である.そのために,教育実習や事前事後指導の限られた時間の中で授業観察力の向上を図る教育実習事前・事後指導プログラムの開発を目的とする.申請者は,授業観察者同士が授業認知を即時的に共有,協議することで授業設計力の向上を図るプログラムを開発してきた.この枠組みを応用し,教育実習生の観察チームが異なる観察視点からの観察情報を共有しながら協議できるようにすることで,教育実習生が1学習上の課題と2指導意図の予測を観察記録や指導案に明示し,エビデンスに基づく授業改良ができるようになることを目指す. | KAKENHI-PROJECT-19K14334 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K14334 |
ディジタルメディアの認知障害いついての研究 | 映像と音声を統合的に利用するマルチモーダル環境において,音声理解における話者映像の提示効果について着目し,その評価方法を検討した.本研究ではまず,通常映像とISDN映像について,話者映像効果を比較分析し,ISDN映像では,話者映像効果が低いこと,特に唇音においてその傾向が顕著であること,また多数の視聴者の中にISDN映像では話者映像効果の認められないものが30%程度あることを報告した.通信環境におけるISDNと共に,蓄積メディアにおいてはJPEG, MPEGなどデジタル圧縮・再生技術が広く活用されるものと期待されており,これらの圧縮・再生映像についての比較評価が求められている,JPEGとは,静止画に利用される世界的に標準のアルゴリズムである.このJPEGで圧縮した映像を,実時間再生(30フレーム/sec. )するMJPEG(Motion JPEG)が実用化されている.本研究ではMJPEGで再生した話者映像の提示効果についての実験をおこない,MJPEG映像では話者映像効果がISDNと異なっており,唇音に映像の効果が顕著であるが,非唇音では低いことが明らかになった.MJPEGの話者映像では,実時間再生が保証されているので,画質が多少劣化しても,動きが検知できる程度であれば,動的効果は十分に発揮される,それに対して画質は圧縮率と共に劣化するので,静的効果は低下すると理解される.これらの結果はテレビ会議や映像エンタテイメント等マルチメディアの開発に重要な知見である.映像と音声を統合的に利用するマルチモーダル環境において,音声理解における話者映像の提示効果について着目し,その評価方法を検討した.本研究ではまず,通常映像とISDN映像について,話者映像効果を比較分析し,ISDN映像では,話者映像効果が低いこと,特に唇音においてその傾向が顕著であること,また多数の視聴者の中にISDN映像では話者映像効果の認められないものが30%程度あることを報告した.通信環境におけるISDNと共に,蓄積メディアにおいてはJPEG, MPEGなどデジタル圧縮・再生技術が広く活用されるものと期待されており,これらの圧縮・再生映像についての比較評価が求められている,JPEGとは,静止画に利用される世界的に標準のアルゴリズムである.このJPEGで圧縮した映像を,実時間再生(30フレーム/sec. )するMJPEG(Motion JPEG)が実用化されている.本研究ではMJPEGで再生した話者映像の提示効果についての実験をおこない,MJPEG映像では話者映像効果がISDNと異なっており,唇音に映像の効果が顕著であるが,非唇音では低いことが明らかになった.MJPEGの話者映像では,実時間再生が保証されているので,画質が多少劣化しても,動きが検知できる程度であれば,動的効果は十分に発揮される,それに対して画質は圧縮率と共に劣化するので,静的効果は低下すると理解される.これらの結果はテレビ会議や映像エンタテイメント等マルチメディアの開発に重要な知見である. | KAKENHI-PROJECT-07680429 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07680429 |
高分子ナノシートを用いた光駆動型論理演算素子の作製 | 本年度は昨年度成功した擬固体型PNPDを応用し擬固体型のAND論理演算素子とEXOR論理演算素子の作製に関する研究を行った。擬固体型AND論理演算素子の構築ルテニウム錯体(Ru)とフェロセン(Fc)を有する高分子ナノシートを用い、ITO電極上に順次積層することでアノードPNPD電極とカソードPNPD電極を作製した。続いて1M NaClO_4と電子供与体または電子受容体をさらに光遮光剤を含むアガロースゲル(donor-gel, acceptor-gel)を作製した。これらをアノードPNPD電極/donor-gel/acceptor-gel/カソードPNPD電極の順に集積化しAND素子とした。この素子ではgel層が非透過性であるためそれぞれのPNPDを独立に駆動させることができる。そのため各々を選択的に励起した場合では一方の電極のPNPDにともなう光電流しか観測されないのに対し両方を同時に励起するとそれぞれのPNPDに伴う光電流が観測される。そのためどちらの電極を励起するかを入力信号、またその際に観測される電流を出力信号とするとonとoffの値が2倍離れた光駆動型AND論理素子として用いることができる。擬固体型EXOR論理演算素子の構築アノードPNPDを二つ作製し、これらの電極で1M NaClO_4,TEOA,1wt%グラファイトを加えたdonor-gelを挟み込み擬固体型EXOR素子とした。電極一方のみを励起した場合は3.5nAもしくは-3.5nAの光電流が観測されたのに対し同時に励起した場合の光電流値がほとんど観測されなかった。これはそれぞれの電流方向が逆方向であるために、電流が相殺されたためである。そのため電極を励起するかを入力信号、またその際に観測される電流を出力信号とする光駆動型EXOR論理素子として用いることができる。本研究は高分子ナノシートフォトダイオードを集積化し、光入出力駆動型論理演算素子の作製を目的とする。本年度はレドックス性高分子ナノシートの作製とそれらを用いた光駆動型論理演算素子の作製を試みた。以下に本年度の研究実績を示す。(1)レドックス性高分子ナノシートの作製ルテニウム錯体、フェロセン誘導体を含有するレドックス性高分子ナノシート、p(DDA/Ru),p(DDA/Fc)の合成を行った。表面圧-面積等温線よりこれらレドックス性高分子ナノシートは水面上で安定な単分子膜を形成することが明らかとなり、Langmuir-Blodgett法を用いることにより基板に一層ずつ転写することが可能であった。また転写されたナノシートは電気化学的に活性であった。(2)レドックス性高分子ナノシートのヘテロ積層による光電流制御p(DDA/Ru)とp(DDA/Fc)をヘテロ積層しルテニウム錯体の励起にともなう光電流応答について検討を行った。電極よりp(DDA/Ru),p(DDA/Fc)の順序で積層した基板ではルテニウム錯体に励起に伴いanodicな光電流が、逆にp(DDA/Fc),p(DDA/Ru)と積層するとcathodicな光電流が観測され、積層順序により光電流の制御が可能なポリマーナノシートフォトダイオード(PNPD)の作製が可能である。(3)レドックス性PNPDを用いた光駆動型AND回路の作製(2)で作製したPNPDとすでに作製に成功しているアントラセンを光吸収層とするPNPDを組み合わせてルテニウム錯体とアントラセンの励起光を入力信号、得られる光電流を出力信号とする光駆動型AND回路の作製を行った。ルテニウム錯体、アントラセンをおのおの励起波長を照射する場合と比較し、両方照射した場合、光電流が2倍増加し閾値をもうけることによりこのPNPD積層体はAND論理として働くことが示された。本研究は高分子ナノシートフォトダイオード(PNPD)を集積化し、光入出力駆動型論理演算素子の作製を目的とする。本年度はPNPDの固体化を目指し研究を行った。一般に光化学反応において光機能界面の構成材料として固相を用いた場合では、分子の拡散は極めて遅く、反応性や電荷伝搬性も小さい。一方でアガロースなどの多糖類は、らせん構造が絡み合うことで三次元網目構造中に多量の水を含んだ含水ゲルを形成する。このように多量の水を含んだ擬固体中では、分子拡散、イオン伝導などが溶液中と同様に起こることが報告されている。そこで本研究では擬固体型の電解質を用いた場合のPNPDの光電流挙動について検討した。疑固体型ゲル電解質の作製ゲル化剤にアガロースを用い1M NaClO_4および犠牲試薬として電子供与性のトリエタノールアミン(TEOA)または電子受容性のビオローゲン誘導体(V^<2+>)を所定量溶解させた。80°C以上に熱しながら2wt%のアガロース粉末を徐々に加え、攪拌し均一な溶液を得た。その後、室温に戻し硬く弾力のある擬固体型の電解質を作製した。疑固体型ポリマーナノシートの作製ルテニウム錯体、フェロセン誘導体を含有するレドックス性高分子p(DDA/Ru), p(DDA/Fc)をITO基板上にp(DDA/Ru), p(DDA/Fc)の順に所定層累積し、上記の手法で作製した固体電解質(TEOA含有)を膜が累積された電極と、bareのITOで挟むことで光活性電極を作製した。 | KAKENHI-PROJECT-16750107 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16750107 |
高分子ナノシートを用いた光駆動型論理演算素子の作製 | この基板にRu錯体の吸収波長を照射するとアノード方向の光電流が観測された。一方で積層順序をp(DDA/Fc), p(DDA/Ru)と逆にし、固体電解質としてV^<2+>を含有したものを用いた場合、Ru錯体励起に伴いカソード方向の電流が観測された。これより疑固体型の電解質を用いることでポリマーナノシートフォトダイオードの作製に成功した。本年度は昨年度成功した擬固体型PNPDを応用し擬固体型のAND論理演算素子とEXOR論理演算素子の作製に関する研究を行った。擬固体型AND論理演算素子の構築ルテニウム錯体(Ru)とフェロセン(Fc)を有する高分子ナノシートを用い、ITO電極上に順次積層することでアノードPNPD電極とカソードPNPD電極を作製した。続いて1M NaClO_4と電子供与体または電子受容体をさらに光遮光剤を含むアガロースゲル(donor-gel, acceptor-gel)を作製した。これらをアノードPNPD電極/donor-gel/acceptor-gel/カソードPNPD電極の順に集積化しAND素子とした。この素子ではgel層が非透過性であるためそれぞれのPNPDを独立に駆動させることができる。そのため各々を選択的に励起した場合では一方の電極のPNPDにともなう光電流しか観測されないのに対し両方を同時に励起するとそれぞれのPNPDに伴う光電流が観測される。そのためどちらの電極を励起するかを入力信号、またその際に観測される電流を出力信号とするとonとoffの値が2倍離れた光駆動型AND論理素子として用いることができる。擬固体型EXOR論理演算素子の構築アノードPNPDを二つ作製し、これらの電極で1M NaClO_4,TEOA,1wt%グラファイトを加えたdonor-gelを挟み込み擬固体型EXOR素子とした。電極一方のみを励起した場合は3.5nAもしくは-3.5nAの光電流が観測されたのに対し同時に励起した場合の光電流値がほとんど観測されなかった。これはそれぞれの電流方向が逆方向であるために、電流が相殺されたためである。そのため電極を励起するかを入力信号、またその際に観測される電流を出力信号とする光駆動型EXOR論理素子として用いることができる。 | KAKENHI-PROJECT-16750107 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16750107 |
分散ステレオマイクロフォンアレイに基づく音空間認識とその実世界応用 | 本研究では、複数のステレオマイクを分散配置して連携させる「分散ステレオマイクアレイ理論」を提案し、同理論に基づく音空間認識技術の確立を目指す。そこで、具体的には次の項目について研究を行う。1)多数のステレオマイクを連携させた目的音源強調を最適化問題として定式化、新たなビームフォーミング技術の開発、2)音の波形情報ではなく、到来方向情報の推定値のみを用いたステレオマイクと音源座標の同時推定理論の確立。以上により、広い空間においても目的の音のみを強調し、かつ、その位置情報も推定することで、空間上における統一的な音情報の利用を実現する枠組み、音空間認識技術を検討する。本研究では、複数のステレオマイクを分散配置して連携させる「分散ステレオマイクアレイ理論」を提案し、同理論に基づく音空間認識技術の確立を目指す。そこで、具体的には次の項目について研究を行う。1)多数のステレオマイクを連携させた目的音源強調を最適化問題として定式化、新たなビームフォーミング技術の開発、2)音の波形情報ではなく、到来方向情報の推定値のみを用いたステレオマイクと音源座標の同時推定理論の確立。以上により、広い空間においても目的の音のみを強調し、かつ、その位置情報も推定することで、空間上における統一的な音情報の利用を実現する枠組み、音空間認識技術を検討する。 | KAKENHI-PROJECT-19J20420 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19J20420 |
肝不全治療に対する経腸栄養を利用した遺伝子治療の試み | 本研究は、遺伝子治療における遺伝子ベクターの経口投与の可能性と肝不全治療の応用を考え、ラット肝不全モデルを使用し実験を行った。研究成果は以下の3つの項目に大別できる。95%肝切除肝不全モデルにおいて5日生存率を未処置群、10%ブドウ糖経静脈的投与群、各種経腸的投与群と比較すると、経腸栄養群はすべて5日生存率は60%以上で生存率の延長を認めたがその投与成分では差が認められなかった。2、遺伝子ベクターの経口(腸)投与は可能かどうか?3、肝不全モデルでの遺伝子投与により効果は発現するか?肝不全という特殊な環境下にてHGF遺伝子の投与が生存率の向上に有効であるかどうかを検討したが、遺伝子ベクター単独および経腸栄養併用投与は肝不全モデルにおける生存率の延長に寄与しなかった。以上より、経口投与により投与遺伝子の蛋白発現がみられ、経口投与の可能性が期待できると考えられたが、実際の治療遺伝子では治療効果は認められず、有効となる発現量に達していなかったと推測された。今後、経口投与の隙の吸収と発現を促進する遺伝子本体や薬剤の開発、発見が急務であると考えられた。本研究は、遺伝子治療における遺伝子ベクターの経口投与の可能性と肝不全治療の応用を考え、ラット肝不全モデルを使用し実験を行った。研究成果は以下の3つの項目に大別できる。95%肝切除肝不全モデルにおいて5日生存率を未処置群、10%ブドウ糖経静脈的投与群、各種経腸的投与群と比較すると、経腸栄養群はすべて5日生存率は60%以上で生存率の延長を認めたがその投与成分では差が認められなかった。2、遺伝子ベクターの経口(腸)投与は可能かどうか?3、肝不全モデルでの遺伝子投与により効果は発現するか?肝不全という特殊な環境下にてHGF遺伝子の投与が生存率の向上に有効であるかどうかを検討したが、遺伝子ベクター単独および経腸栄養併用投与は肝不全モデルにおける生存率の延長に寄与しなかった。以上より、経口投与により投与遺伝子の蛋白発現がみられ、経口投与の可能性が期待できると考えられたが、実際の治療遺伝子では治療効果は認められず、有効となる発現量に達していなかったと推測された。今後、経口投与の隙の吸収と発現を促進する遺伝子本体や薬剤の開発、発見が急務であると考えられた。色素発現遺伝子を使用したベクターの経口投与における消化器での発現方法)Beta-galactosidaseを含んだadenoviralvectorをH2ブロッカー投与後,全身麻酔下に開腹し,胃内及び小腸内に投与した.48時間後,肝,胃,上部小腸,下部小腸での発現をみた.さらに,gulutamic acid投与下での吸収,発現を比較した.臓器別では胃,肝臓,上部小腸,下部小腸の順に発現が高かった.結語)以上より多く,adenoviralvectorの経口投与によってある程度の肝での発現がみられ,H2ブロッカーおよびgulutamic acidの併用によりさらに吸収,発現が増加した.平成13年度交付申請書研究実施計画のとおり施行した.1.HGF遺伝子を含むadenoviral vectorを利用して,経腸投与における発現を測定した.Beta-galactosidase遺伝子での結果に基づき,胃内投与を施行し,48時間後に血清濃度および肝,胃,上部小腸,下部小腸でのHGFの組織内濃度を測定したが,肝にわずかに認められるのみであった.2.Beta-galactosidase遺伝子を含むadenoviral vectorを肝不全モデルへ胃内投与し,臓器分布を検索した結果,正常ラットと同様,胃,上部小腸,下部小腸の順に発現がみられたが,肝では認められなかった.なお,このモデルは10%グルコースを定時的に与えない限りは,全例3日以内に死亡した.3.肝不全モデルへのHGF遺伝子を含むadenoviral vectorの投与は,1.のコントロール実験においてさらにadenoviralvectorの濃度をあげて投与しており,血清内にて検出できるレベルになり次第開始する予定である.1.HGF遺伝子を含むadenoviral vectorの至適投与量の決定HGF遺伝子を含むadenoviral vectorを使用して、経腸投与における各臓器における発現と毒性を検討した。10^7pfuから10^<10>pfuまで投与したが、10^7,10^8では、胃、小腸、肝にHGFは認められず、10^9,10^<10>で胃、小腸、肝に発現が認められ,10^9と10^<10>で差を認めなかった.また,死亡ラットは存在しなかった.よって10^9pfuを至適投与量とした.2.肝不全モデルの確立と経腸栄養の有効性10%グルコースを定時的に与えない限りは全例3日以内に死亡する95%肝不全モデルを作成した.肝臓切除後,胃管チューブを留置した.術後胃管チューブより,10%グルコースのみ,分岐鎖アミノ酸のみ,10%グルコース+分岐鎖アミノ酸を投与すると生食のみ投与に比べ,生存率がいずれも上昇した.3.治療実験肝不全モデルへのHGF遺伝子を含むadenoviral vectorの経腸投与を行い,生存率,死因,各臓器へのHGF濃度の測定を行った.生食投与群,lacZ-adenovirus群HGF-adenovirus群で生存率に有意差を認めなかった.3日生存率は,それぞれ20%,0%,20%で,胃,小腸にlacZ, HGFの発現認められたが,肝には認めなかった.血清からもHGFは検出されなかった. | KAKENHI-PROJECT-12671269 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12671269 |
肝不全治療に対する経腸栄養を利用した遺伝子治療の試み | 4.本研究での結論と課題(1)肝不全時の経腸栄養の有用性は証明されたが,HGF遺伝子導入のみでは生存率を改善させられなかった.(2)さらなる経腸投与による遺伝子導入効率の向上と,経腸栄養+HGF遺伝子導入にて肝不全モデルの成績を検討する.本研究は,遺伝子治療における遺伝子ベクターの経口投与の可能性と肝不全治療の応用を考え,ラット肝不全モデルを使用し実験を行った.本年度は過去3年間の実験の結果,経腸栄養の肝不全モデルへの有用性は証明できたため,HGF遺伝子を含むadenoviral vectorの投与が肝不全における生存率を向上させるかの最終段階の実験を行った.95%肝切除モデルに,術後5%グルコースを経口であたえると5日間生存率は25%であった.本モデルに以下の実験群を設定し,生存率を比較した.生理的食塩水を経胃的に投与した群は5日生存率は10%であった.LacZ-adenovirusを経胃的に投与した群は,5日生存率は20%であった.HGF-adenovirusを経胃的に投与した群は,5日生存率は20%であった.10%グルコースを経胃的に投与した群は,5日生存率は70%であった.HGF-adenovirus+10%グルコースを経胃的に投与した群は,5日生存率は60%であった.また,HGF-adenovirus投与ラットの血中にはHGFは検出されなかった.結論として,HGF-adenovirusの単独投与および併用投与は成績を向上させなかった.このことにより,今後遺伝子治療を遂行する上では,経腸栄養が有効であることは証明されたが,HGFなどの遺伝子導入による治療効果をえるためには,adenovirusの吸収,感染効率の向上の努力と,至適の治療濃度の設定が必要であると考えられた. | KAKENHI-PROJECT-12671269 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12671269 |
熱力学的視点によるBayes予測の新展開 | 理論研究として,前年度に引き続き,α-ダイバージェンス損失関数の下でのBayes予測を研究している.これは東京大学の丸山祐造教授との共同研究である.推定問題の拡張である,確率分布の推定問題は予測問題と呼ばれる.これをBayes統計学の枠組みで行うのがBayes予測問題である.α-ダイバージェンスと呼ばれる確率分布間の乖離度を用いて予測の良さを測るとき,優れたBayes予測分布を導くための条件を調べた.この研究成果はジャーナルに投稿中であり,現在,リバイスしたものが査読されている.もう1つの理論研究として,Jeffreys事前分布を用いた共役解析を研究している.これは統計数理研究所の柳本武美名誉教授との共同研究である.Jeffreys事前分布は,事前情報がないときに仮定される代表的な事前分布である.事前分布と事後分布が同一の関数形をもつとき,その事前分布は共役事前分布と呼ばれ,役事前分布を用いたBayes解析が共役解析である.この研究では,Jeffreys事前分布の特徴づけを行うとともに,尤度を用いた推論への含意を明らかにしている.研究成果を国際研究集会で発表した.応用研究として,Tweedie分布における経験Bayes推定を行った.これはサンシャインコースト大学(オーストラリア)のPeter Dunn准教授との共同研究である.Tweedie分布は降水量などのデータ解析に用いられる確率分布である.原点において離散的であり,正の領域において連続的という特徴をもち,応用上非常に有用である.確率密度の計算が難しいことで知られるが,Dunn准教授が開発した優れたパーケージソフトにより,高い精度での計算が可能となっている.事前分布に含まれる超パラメータをデータから推定するのが経験Bayes推定法であり,今年度はTweedie分布においてこの推定法を考案した.管理職(経済工学科長)に就いているため学内業務が多く,研究に集中できる時間がなかなか確保できない.また,入試業務など避けられない業務のために例年参加している研究集会に参加できなかった.理論研究については,1α-ダイバージェンス損失関数の下で,Jeffreys事前分布を用いたBayes予測分布を優越するようなBayes予測分布を導出すること,および,2対応する事後分布を用いてJeffreys事前分布の特徴づけを行うことに取り組みたいと考えている.応用研究については,今年度考案した「Tweedie分布における経験Bayes法による推定法」の性能を数値シミュレーションによって明らかにしたいと思っている.理論研究として,「α-ダイバージェンス損失関数の下でのStein現象」についての研究を行った.これは東京大学の丸山祐造教授との共同研究である.Kullback-Leiblerダイバージェンスを損失関数として採用するとき,2種類の双対な損失関数を考えることができる.これらを一般化したのがα-ダイバージェンス損失関数である.この損失関数の下でBayes予測問題を考える.確率密度関数の推定問題が予測問題であり,パラメータ推定問題の一般化である.Stein現象とは,improperな一様事前分布に基づくBayes予測分布を頻度主義の意味で改善できることを意味する.分散に関する一定の条件の下で,この改善が可能であることを証明した.また,αの値が+1または-1に近いとき,それぞれ+1または-1のときの状況と連続的につながっていることも明らかにした.研究成果をジャーナルに投稿した.応用研究として,Tweedie分布における経験Bayes推定について研究を行った.これはオーストラリアのサンシャインコースト大学のPeter Dunn准教授との共同研究である.将来的にはTweedie分布をベースにした一般化線形モデルにおける経験Bayes推定を考察したいと考えている.今年度は第1ステップとして回帰構造のないモデルにおける経験Bayes推定を考察した.Tweedie分布は指数型分布族に属し,共役事前分布が存在する.研究代表者の以前の研究により,Tweedie分布の尤度関数はlocation familyのそれと似ていることが分かっている.また,このlocation familyは曲指数型分布族に属し,かつ,共役事前分布をもつことが分かっている.これらの事実を上手く利用して経験Bayes推定量を構成することに取り組んでいる.管理職(経済工学科長)になったため学内業務が多く,研究に集中できる時間がなかなか確保できない.また,入試業務など避けられない業務のために例年参加している研究集会に参加できなかった.理論研究として,前年度に引き続き,α-ダイバージェンス損失関数の下でのBayes予測を研究している.これは東京大学の丸山祐造教授との共同研究である.推定問題の拡張である,確率分布の推定問題は予測問題と呼ばれる.これをBayes統計学の枠組みで行うのがBayes予測問題である.α-ダイバージェンスと呼ばれる確率分布間の乖離度を用いて予測の良さを測るとき,優れたBayes予測分布を導くための条件を調べた.この研究成果はジャーナルに投稿中であり,現在,リバイスしたものが査読されている.もう1つの理論研究として,Jeffreys事前分布を用いた共役解析を研究している.これは統計数理研究所の柳本武美名誉教授との共同研究である.Jeffreys事前分布は,事前情報がないときに仮定される代表的な事前分布である.事前分布と事後分布が同一の関数形をもつとき,その事前分布は共役事前分布と呼ばれ,役事前分布を用いたBayes解析が共役解析である. | KAKENHI-PROJECT-17K00053 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K00053 |
熱力学的視点によるBayes予測の新展開 | この研究では,Jeffreys事前分布の特徴づけを行うとともに,尤度を用いた推論への含意を明らかにしている.研究成果を国際研究集会で発表した.応用研究として,Tweedie分布における経験Bayes推定を行った.これはサンシャインコースト大学(オーストラリア)のPeter Dunn准教授との共同研究である.Tweedie分布は降水量などのデータ解析に用いられる確率分布である.原点において離散的であり,正の領域において連続的という特徴をもち,応用上非常に有用である.確率密度の計算が難しいことで知られるが,Dunn准教授が開発した優れたパーケージソフトにより,高い精度での計算が可能となっている.事前分布に含まれる超パラメータをデータから推定するのが経験Bayes推定法であり,今年度はTweedie分布においてこの推定法を考案した.管理職(経済工学科長)に就いているため学内業務が多く,研究に集中できる時間がなかなか確保できない.また,入試業務など避けられない業務のために例年参加している研究集会に参加できなかった.理論研究については,「α-ダイバージェンス損失関数の下でのStein現象」の「完全な」(分散に関する一定の条件を取り除いたという意味)証明を与えることを目指したい.応用研究については,Tweedie分布における経験Bayes法による推定手法の開発を行い,数値シミュレーションによってその性能を明らかにしたいと思っている.理論研究については,1α-ダイバージェンス損失関数の下で,Jeffreys事前分布を用いたBayes予測分布を優越するようなBayes予測分布を導出すること,および,2対応する事後分布を用いてJeffreys事前分布の特徴づけを行うことに取り組みたいと考えている.応用研究については,今年度考案した「Tweedie分布における経験Bayes法による推定法」の性能を数値シミュレーションによって明らかにしたいと思っている.管理職(経済工学科長・経済工学専攻長・経済工学部門長)に就いているため,管理運営業務が多かった.また,入試業務を担当し,以前参加していた研究集会を欠席せざるを得なかった.これらが次年度使用額が生じた理由である.ただ,勤務先である九州大学の会計ルールのため,年度をまたぐ出張(2019年3月4月)の経費を2018年度に計上できていない.金額が70万円超になったのはこのためであり,実質的な次年度使用額は30万円程度である. | KAKENHI-PROJECT-17K00053 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K00053 |
中世ロシアの国家・教会関係の緊密化の人的研究 | 「中世ロシアの国家・教会関係の緊密化の人的研究」の研究において、昨年に一応のまとめの成果(「14世紀後半から15世紀初頭のモスクワの国家と教会ー府主教宮廷と大公宮廷との人的関係を中心に」)をだしたが、これらを全てまとめて刊行する意図を実現するために、今年度はこれまでやり残してきた緊密化の研究を法的側面から深めた。具体的には、全ルーシ的な緊密化ではなく、特定の地域のみで見られる緊密化現象が対象であり、13ー15世紀のものとされる「ノヴゴロドのフセヴォロド大公の教会規定」の研究を進めた。これはまだ原稿の提出にはこぎ着けていないが、既に最終段階に入っている。また、教会における緊密化の具体的実態を探るために「府主教ヨアン2世の教会規定」の研究も進めた。他には刊行した成果として、時期はやや課題より後になるが、近世のロシア、ウクライナ、ポーランドにおける教会合同の研究動向をまとめて発表した(「フィレンツェ合同のロシア、ウクライナ、ポーランド地域への波及」)。その他は近世ロシアの聖俗関係について、「第三ローマ」論についても原稿を提出した。こうした成果は、その一方で、夏期のモスクワ渡航時にモスクワのステパノーヴィチ博士より受けた貴重な助言を受けてのものでもある。博士とはとりわけ本科研課題についての検討を縁にして、今年、或いは来年度にも来日を要請しており、研究会等で更に本研究に関する議論を深めていきたい。昨年度は丁度、所属機関より海外研修の機会を得て、ロシア、ウクライナにおいて本研究を進める機会を得た。研究計画に記載したА・В・クジミンの近著『モスクワへの道』において進められている人的関係の研究を批判的に受容しながら、「府主教宮廷」と「大公宮廷」における勤務人の人的関係を分析した。その結果、事前の想定通り、14世紀末から15世紀半ばまでの時期について、同族中に府主教宮廷に勤める者と大公宮廷に勤める者が存在する事例、あるいは大公宮廷から府主教宮廷に勤務替えをした(或いは勤務替えを命じられた)事例を見いだすことができた。現在はこれを文章にまとめる段階にある。その他、ウクライナのキエフ及びリヴィウにおいて、本研究課題に関わる資料を入手できた。とりわけ、ロシア革命以前のウクライナ語資料は日本国内で入手のできないものが多く、今後の研究に活用できる。とりわけ『キエフ大学紀要』には、15世紀の教会内の人事に関わる研究が三点ほど存在していたため、その入手は今後の研究に役立つ。またこの方面については、多くのロシア人(A・ホロシケーヴィチ博士ら)、ウクライナ人研究者(В・ウリヤノフシキー教授ら)から多くのアドヴァイスを得ることができた。またこの時期のロシア教会に関する研究書(J・フェンネル『ロシア中世教会史』。原題A History of Russian Church)の邦訳を教文館より出版した。それにより、この時期の教会史に関する知見を高めるとともに、市井に研究を公開することができた。海外研修で当初の予定とは変わったものの、運良く研究場所を提供され、また資料を見いだすことができたため、概ね順調に進展している。残された課題は成果をまとめ上げることである。これまでの成果につき、所属大学紀要にて発表した(拙稿「14-15世紀モスクワの国家と教会ー府主教宮廷と大公宮廷との人的関係を中心に」『岐阜聖徳学園大学教育学部紀要』)。すなわち、府主教フェオグノスト以前の時期において、人的結合関係の増加を論じたクジミンに対し、筆者はそれが殆ど、府主教宮廷との人的関係の増加とは確定できないことを論じた。代わって、府主教アレクシー時代以降の緊密化について、これまでよりも早い時期にその開始を設定できることを論じた。更にヴャコント家の他にも代々ほぼ世襲で府主教ボヤーレを務める諸家門の各々について検討した。1392年の「聖俗ボヤーレの交換」の検討が課題として残ったことを結びで述べた。更に諸史料の調査のため(特にリトアニア大公国の聖俗ボヤーレの関係について)、リトアニアのヴィルニュス大学図書館で調査した。この成果の一部については『西洋中世研究』の依頼を受け、これに投稿した。その他は長期的な課題(中世ロシア国家の聖俗関係の解明)の一部として、モスクワ第三ローマ論について発表した(『ロシアを知る事典』)。プスコフの修道士フィロフェイの第三ローマ論に関する最新の研究に依拠して、ロシア中世宗教史のイデオロギーが当初は国家とは全く無縁だったものの、次第にこれが政治イデオロギーとして使用されていくこと、また写本伝統上の操作により、多くがフィロフェイのものにされてしまった過程を論じた。基本的には計画通り進んでいる。今期はクジミンの研究の後半部を再検討する作業を進める。「中世ロシアの国家・教会関係の緊密化の人的研究」の研究において、昨年に一応のまとめの成果(「14世紀後半から15世紀初頭のモスクワの国家と教会ー府主教宮廷と大公宮廷との人的関係を中心に」)をだしたが、これらを全てまとめて刊行する意図を実現するために、今年度はこれまでやり残してきた緊密化の研究を法的側面から深めた。具体的には、全ルーシ的な緊密化ではなく、特定の地域のみで見られる緊密化現象が対象であり、13ー15世紀のものとされる「ノヴゴロドのフセヴォロド大公の教会規定」の研究を進めた。これはまだ原稿の提出にはこぎ着けていないが、既に最終段階に入っている。 | KAKENHI-PROJECT-16K03140 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K03140 |
中世ロシアの国家・教会関係の緊密化の人的研究 | また、教会における緊密化の具体的実態を探るために「府主教ヨアン2世の教会規定」の研究も進めた。他には刊行した成果として、時期はやや課題より後になるが、近世のロシア、ウクライナ、ポーランドにおける教会合同の研究動向をまとめて発表した(「フィレンツェ合同のロシア、ウクライナ、ポーランド地域への波及」)。その他は近世ロシアの聖俗関係について、「第三ローマ」論についても原稿を提出した。こうした成果は、その一方で、夏期のモスクワ渡航時にモスクワのステパノーヴィチ博士より受けた貴重な助言を受けてのものでもある。博士とはとりわけ本科研課題についての検討を縁にして、今年、或いは来年度にも来日を要請しており、研究会等で更に本研究に関する議論を深めていきたい。15世紀半ば以降の時期におけるロシアの府主教座と国家との人的関係を探っていく。ここはクジミンの研究がカバーしていない時期であるので、丹念な史料の研究が必須である。具体的にはラズリャードなどの史料と、С・ヴェセロフスキーの古典的研究との摺り合わせが課題となろう。リトアニア地域の聖俗勤務関係について、クジミンの研究の再検討を継続する。その他時期を16世紀に移して検討する。また前稿でで明らかになった「ボヤーレの交換」について考察する。リトアニア地域の考察については、ウクライナにて史料集め、研究者との交流を図る予定。大学の海外研修で一年間ロシア・ウクライナに滞在していたため、科研研究費の使用可能な用途が限られていたため、使い切ることが出来なかった。初年度に海外研修で使い切れなかったことが原因である。ただ昨年度については、調査費用をはじめ、当該年度分を使用できた。今年度は通常の生活に戻ったため、早速研究費で図書の購入、また国内及び海外への出張に使う予定がある。 | KAKENHI-PROJECT-16K03140 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K03140 |
MEMS駆動型電磁誘起透明化メタマテリアルによる動的光制御 | 本研究ではMEMS(微小電気機械システム)駆動可変構造による電磁誘起透明化(Electromagnetically induced transparency-like:EIT)メタマテリアルの動的光制御の実現を目的とする。また、MEMS駆動可変構造に適し、かつ高効率なメタマテリアル構造を探求するために、MEMS駆動の前段階として基板上に静的なメタマテリアルを製作し、理論および実験の両面から光学特性を調べることを目的とする。なお、対象波長は光領域およびテラヘルツ領域とする。本年度は、以下のデバイスを試作評価した。(1)光領域で動作するMEMS駆動EITメタマテリアルの試作を行った。波長800nm帯を設計波長とし自立構造上にメタマテリアルを製作することに成功した。透過スペクトル測定から共鳴によるディップを波長800nm付近で確認することができた。また、MEMSアクチュエータのみの動作に成功し36Vの駆動電圧で97nmの変位特性を得ることができた。(2)テラヘルツ領域で動作するMEMS駆動EITメタマテリアルの試作を行った。シリコンの自立構造上にEITメタマテリアルを製作し、MEMS駆動によるEITメタマテリアルの可動に成功した。(3)光メタマテリアルの屈折率、位相変調量を評価するための顕微干渉計を開発し、光領域で動作する静的なEITメタマテリアルの位相制御特性評価を行った。(4)テラヘルツ領域で動作する静的なEITメタマテリアルを再試作し、明瞭なEIT応答の観察に成功した。(5)非対称性を導入したFano共鳴型Asymmetric double bars(ADB)メタマテリアルの提案と実証を行い、波長1300nm近辺でFano共鳴の観察に成功した。また、ADBメタマテリアルのユニットセルの配列を変化させることによるFano共鳴のQ値向上に成功した。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。本研究ではMEMS(微小電気機械システム)駆動可変構造による電磁誘起透明化(EIT)メタマテリアルの動的光制御の実現を目的とする。本年度は、(1)光領域および(2)テラヘルツ領域で動作するMEMS駆動EITメタマテリアルの1次試作を行った。また、MEMS駆動を想定した静的なEITメタマテリアル構造を光領域およびテラヘルツ領域においてそれぞれ設計・製作し、光学特性の評価を行った。以下にそれぞれの成果を示す。(1)光領域で動作するEITメタマテリアルMEMS駆動EITメタマテリアルの試作を行った。ガラス基板に成膜した材質を電子線描画、エッチングにより加工し、最後にXeF2ガスでシリコンを除去して自立構造を作製する。今年度、メタマテリアルの自立構造を実現した。また、MEMSアクチュエータ部分の駆動を確認した。メタマテリアル構造に形成されたギャップをMEMSアクチュエータで精密位置決めして光の動的制御を行う。そこで、ギャップの異なる静的なEITメタマテリアル構造を高精度に製作し、光学特性とギャップの関係を調べた。同時に、サイズや材質の影響も調べた。ギャップに依存して光学特性が変化することが確認でき、ギャップの調整で光学特性を制御できることを明らかにした。また、サイズや材質を適切にすることで波長462832nmでEIT特性を確認した。(2)テラヘルツ領域で動作するEITメタマテリアルMEMS駆動EITメタマテリアルの試作を行った。今年度、メタマテリアルの自立構造を実現した。また、基板上に静的なEITメタマテリアルを製作し、周波数約1.55THzにおいてEIT特性を確認した。本研究ではMEMS(微小電気機械システム)駆動可変構造による電磁誘起透明化(Electromagnetically induced transparency-like:EIT)メタマテリアルの動的光制御の実現を目的とする。また、MEMS駆動可変構造に適し、かつ高効率なメタマテリアル構造を探求するために、MEMS駆動の前段階として基板上に静的なメタマテリアルを製作し、理論および実験の両面から光学特性を調べることを目的とする。なお、対象波長は光領域およびテラヘルツ領域とする。本年度は、以下のデバイスを試作評価した。(1)光領域で動作するMEMS駆動EITメタマテリアルの試作を行った。波長800nm帯を設計波長とし自立構造上にメタマテリアルを製作することに成功した。透過スペクトル測定から共鳴によるディップを波長800nm付近で確認することができた。また、MEMSアクチュエータのみの動作に成功し36Vの駆動電圧で97nmの変位特性を得ることができた。(2)テラヘルツ領域で動作するMEMS駆動EITメタマテリアルの試作を行った。シリコンの自立構造上にEITメタマテリアルを製作し、MEMS駆動によるEITメタマテリアルの可動に成功した。(3)光メタマテリアルの屈折率、位相変調量を評価するための顕微干渉計を開発し、光領域で動作する静的なEITメタマテリアルの位相制御特性評価を行った。(4)テラヘルツ領域で動作する静的なEITメタマテリアルを再試作し、明瞭なEIT応答の観察に成功した。(5)非対称性を導入したFano共鳴型Asymmetric double bars(ADB)メタマテリアルの提案と実証を行い、波長1300nm近辺でFano共鳴の観察に成功した。また、ADBメタマテリアルのユニットセルの配列を変化させることによるFano共鳴のQ値向上に成功した。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。光領域で動作するMEMS駆動EITメタマテリアルに関して、デバイスの構造設計、光学設計を予定通り行うことができた。 | KAKENHI-PUBLICLY-25109702 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-25109702 |
MEMS駆動型電磁誘起透明化メタマテリアルによる動的光制御 | さらに1次試作に着手し、MEMSアクチュエータの駆動実証およびメタマテリアルの自立構造の製作に成功した。したがって、おおむね順調に進展している。さらに、静的なEITメタマテリアルを高精度に製作し、可視波長での明確なEIT特性を世界で初めて実現したことは、特筆すべき成果である。テラヘルツ領域で動作するMEMS駆動EITメタマテリアルに関して、デバイスの構造設計、光学設計を予定通り行うことができた。また、1次試作に着手するに至った。また、静的なEITメタマテリアルを高精度に製作し、周波数約1.55THzにおいてEIT特性を実験により確認し、数値計算との良好な一致を得た。したがって、おおむね順調に進展している。今後、1次試作で明らかとなったプロセスの問題を解決し、引き続き試作を行い、デバイスの完成を目指す。現在明らかとなっているプロセスの問題点の多くは、実験の条件だしまたは軽微なマスクパターンの修正で解決できると考えている。試作したデバイスの駆動特性や光学特性を調べる。駆動特性は駆動周波数や位置決め精度を評価し、光学特性は共鳴の波長や帯域、動的制御による変調量を評価していく。 | KAKENHI-PUBLICLY-25109702 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-25109702 |
科学衛星観測による粒子デ-タの解析のための粒子トレ-サの開発 | 地球磁気圏で生起する物理現象を解明するために、科学衛星「あおぞら」と「あけぼの」に低エネルギ-粒子分析器を搭載した。この分析器で観測されたデ-タには、極域における興味深い粒子の特性が見いだされている。例えば、イオン・コニックスにおける質量分散、カスプ領域におけるエネルギ-分散、上昇イオンに伴う電子ビ-ムやピッチ角分布の異方性など数多くの例があげられる。これらの現象のメカニズムを解明するために、統計的処理や他の観測デ-タとの比較検討は当然必要ではあるが、単なる観測デ-タの処理だけでは説得力のある解釈はなかなか難しい。そこで、観測された粒子をトレ-サ-とし、その軌道を計算することにより、粒子の起源、加速プロセスや分散過程を検討することが容易に可能となる。本研究では観測された粒子をトレ-サ-とするテスト粒子シミュレ-タを開発した。特に、衛星デ-タのハンドリングやデ-タ表示の点から、ワ-クステ-ションでの処理を目指した。開発した粒子トレ-サを用いて、1989年7月24日に観測されたイオン・コニックスにおける質量分散過程の解明をおこなった。このイオン・コニックスではイオンの質量分散とピッチ角分散が同時に観測されている。粒子トレ-サ-による検討結果は、dawnーtoーdusk電場による質量の大きいイオンほど低緯度側へE×Bドリフトされたため、質量分散が起こることを定量的に示した。また、ピッチ角分散はイオンが加速された高度に依存することも明かとなった。さらに、イオン・コニックスの生成過程に電場加速の可能性を示唆する結果を得ている。以上示すように、本研究で開発された粒子トレ-サ-は、従来のモデルだけのシミュレ-ションではなく、実際に観測された粒子をトレ-サ-に用いた点が大きな特徴で、今後各種の現象での成果が期待される。地球磁気圏で生起する物理現象を解明するために、科学衛星「あおぞら」と「あけぼの」に低エネルギ-粒子分析器を搭載した。この分析器で観測されたデ-タには、極域における興味深い粒子の特性が見いだされている。例えば、イオン・コニックスにおける質量分散、カスプ領域におけるエネルギ-分散、上昇イオンに伴う電子ビ-ムやピッチ角分布の異方性など数多くの例があげられる。これらの現象のメカニズムを解明するために、統計的処理や他の観測デ-タとの比較検討は当然必要ではあるが、単なる観測デ-タの処理だけでは説得力のある解釈はなかなか難しい。そこで、観測された粒子をトレ-サ-とし、その軌道を計算することにより、粒子の起源、加速プロセスや分散過程を検討することが容易に可能となる。本研究では観測された粒子をトレ-サ-とするテスト粒子シミュレ-タを開発した。特に、衛星デ-タのハンドリングやデ-タ表示の点から、ワ-クステ-ションでの処理を目指した。開発した粒子トレ-サを用いて、1989年7月24日に観測されたイオン・コニックスにおける質量分散過程の解明をおこなった。このイオン・コニックスではイオンの質量分散とピッチ角分散が同時に観測されている。粒子トレ-サ-による検討結果は、dawnーtoーdusk電場による質量の大きいイオンほど低緯度側へE×Bドリフトされたため、質量分散が起こることを定量的に示した。また、ピッチ角分散はイオンが加速された高度に依存することも明かとなった。さらに、イオン・コニックスの生成過程に電場加速の可能性を示唆する結果を得ている。以上示すように、本研究で開発された粒子トレ-サ-は、従来のモデルだけのシミュレ-ションではなく、実際に観測された粒子をトレ-サ-に用いた点が大きな特徴で、今後各種の現象での成果が期待される。 | KAKENHI-PROJECT-02640326 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02640326 |
宿主免疫細胞から攻撃されアポトーシスに陥った細胞を組織学的に同定する方法の開発 | 胎児・胎盤は母体にとり異物であるが、免疫学的胎児許容機構が働き、胎児は拒絶されない。この機構が破錠すると母体免疫細胞は胎児を攻撃し流産が起こると推定されるが、これまでにヒトでは母体免疫細胞が直接胎児組織を攻撃した証拠を得ることができていなかった。そこで、本研究では細胞傷害性T細胞(CTL)や活性化NK細胞の細胞傷害に関与する顆粒内蛋白であるPerforin (P)、GranzymeB (GrB)、Granulysin (GL)の発現を流産検体で検討したところ、流産例の胎盤付着部(着床部)においてGL陽性のリンパ球が有意に増加していた。一方、P、GrB陽性細胞数には差を認めなかった。Flow cytometryにてGL陽性細胞はCD16^-CD56^<bright>NK細胞であることが判明した。脱落膜CD16^-CD56^<bright>NK細胞を分離後、IL-2で活性化させヒト絨毛外トロホブラスト(EVT)細胞株を共培養させたところ、12時間後にGLはEVT細胞の細胞質に発現し、24時間後にGLはEVT細胞の核に移行し、その後、EVT細胞はアポトーシスに陥った。この反応は細胞接触を必要とし、Pの発現も必要であることを確認した。GL発現ベクターにGFPを連合させたベクターをEVT細胞に発現させても同様の現象が認められた。GFP遺伝子をタンデムに2分子連合したベクターを用い単純拡散で核膜を移行できなくしても、GLは核に移行したことからGLは能動的に核内に移送され、その後アポトーシスを引き起こすことが判明した。次に免疫組織学的に流産胎盤の核にGLが発現していないかを検討したところ、流産例のEVTでは正常妊娠例に比し核内GL陽性細胞数が有意に多かった。また、核内GL陽性EVT細胞はTUNEL陽性でアポトーシスに陥っていた。今回の成績はヒト流産症例において宿主免疫担当細胞(NK細胞)がEVTを攻撃してアポトーシスを引き起こすことを初めて証明したものである。今後、妊娠高血圧腎症の胎盤や癌組織での応用が期待される。異物である胎児や、癌精巣抗原を持つ癌細胞を宿主は認識しており、着床不全・流産や癌細胞の排除に働いていることは実験動物では証明されてきたが、ヒトにおける疾患レベルでは未だに直接的に証明されていない。これは宿主免疫細胞から攻撃されて死に至った細胞を同定する良い指標がないからである。我々は活性化NK細胞や細胞傷害性T細胞に発現する顆粒内蛋白で、標的細胞をアポトーシスに至らしめるGranulysin(Gr)に着目し、まず流産症例で、絨毛細胞が宿主免疫細胞から産生されるGrで傷害されるかを検討した。免疫組織染色法で流産症例基底脱落膜中のGr、Granzyme B, Perforin発現細胞を検討すると、Gr陽性細胞のみが正常妊娠例に比して増加していた。さらにFlow cytometry法にてGr発現細胞がCD16^-CD56^<bright>NK細胞であることを同定した。脱落膜リンパ球をIL-2で24時間培養するとNK細胞はGrを発現するようになり、絨毛外トロホブラスト(EVT)のcell lineであるHTR8細胞をアポトーシスに陥らせた。活性化NK細胞とHTR8細胞の共培養12h後ではHTR8細胞の細胞質にGrを認め、24h後にはGrは核に移行し、その後アポトーシスが生じた。GFPにGrを連結したプラスミッドをHTR8細胞に遺伝子導入しても、細胞内のGrが核内に移行した後にアポトーシスが生じた。アポトーシスは種々のカスパーゼ阻害剤を使用しても減少せず(カスパーゼ非依存症)、核内にGrが移行してからapoptosis induce factor(AIF)が核内に集積することも見出した。以上より、標的細胞の核内へのGr集積が、宿主細胞の攻撃によるアポトーシスの一指標となる事が判明した。EVTならびに自由絨毛細胞の核内のGr染色を検討すると、流産症例の基底脱落膜のEVT核内にGr染色が認められ、本細胞ではTUNEL染色陽性であった。以上より、宿主細胞により攻撃されアポトーシスに陥った細胞をヒト疾患レベルで初めて同定できた。今後、癌症例においても検討を予定している。胎児は母体にとって異物であるため、母体免疫細胞により攻撃されれば流産となる可能性がある。事実、流産例で絨毛外トロホブラスト(EVT)にアポトーシスが生じることは、これまで多く報告されてきたが、これが免疫細胞の攻撃によるものかは証明されていない。我々は、まず免疫組織学検討で、CTL、NK細胞から産生され細胞死を引き起こすGranzyne B(Gr)、Perforin (Perf)、Granulysin (Grn)につき検討したところ、流産症例の基底脱落膜中にGrn陽性の細胞が多数存在することを見い出した。一方、Perf陽性細胞、GrB陽性細胞数には差を認めなかった。そこでGrn陽性細胞を二重免疫組織法ならびにflow cytometry法にて検討したところ、CD56^bright NK細胞にGrnが強発現していることが判った。さらに流産症例でアポトーシスを起こしているEVT細胞の核にGrnが存在することを免疫蛍光染色法で見い出した。そこで脱落膜CD16^-CD56^+NK細胞を純化し、IL-2で刺激してからEVT cell lineと共培養させると、EVT細胞の細胞質内にまずGrnが局在し、やがて核に移行するに従いアポトーシスが生じた。 | KAKENHI-PROJECT-18659482 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18659482 |
宿主免疫細胞から攻撃されアポトーシスに陥った細胞を組織学的に同定する方法の開発 | そこでGrnを可視化するためGFP-Grnベクターを作製し、EVT細胞株にトランスフェクションしたところ、細胞質から核へGrnが移行するにつれ、EVT細胞がアポトーシスになることが判明した。また40KD以上のGFP・GFP-Grnベクターを作製し単純拡散で核に移行できないGrnを発現させてもGrnは核に移行したことから、Grnは能動的に核へ移行し、細胞をアポトーシスに陥らせることを証明した。以上、流産症例のEVT細胞の核に認められたGrnは、母体由来の子宮NK細胞に由来し、これらNK細胞が児のEVT細胞を攻撃しアポトーシスを起こしていることを初めて証明した。胎児・胎盤は母体にとり異物であるが、免疫学的胎児許容機構が働き、胎児は拒絶されない。この機構が破錠すると母体免疫細胞は胎児を攻撃し流産が起こると推定されるが、これまでにヒトでは母体免疫細胞が直接胎児組織を攻撃した証拠を得ることができていなかった。そこで、本研究では細胞傷害性T細胞(CTL)や活性化NK細胞の細胞傷害に関与する顆粒内蛋白であるPerforin (P)、GranzymeB (GrB)、Granulysin (GL)の発現を流産検体で検討したところ、流産例の胎盤付着部(着床部)においてGL陽性のリンパ球が有意に増加していた。一方、P、GrB陽性細胞数には差を認めなかった。Flow cytometryにてGL陽性細胞はCD16^-CD56^<bright>NK細胞であることが判明した。脱落膜CD16^-CD56^<bright>NK細胞を分離後、IL-2で活性化させヒト絨毛外トロホブラスト(EVT)細胞株を共培養させたところ、12時間後にGLはEVT細胞の細胞質に発現し、24時間後にGLはEVT細胞の核に移行し、その後、EVT細胞はアポトーシスに陥った。この反応は細胞接触を必要とし、Pの発現も必要であることを確認した。GL発現ベクターにGFPを連合させたベクターをEVT細胞に発現させても同様の現象が認められた。GFP遺伝子をタンデムに2分子連合したベクターを用い単純拡散で核膜を移行できなくしても、GLは核に移行したことからGLは能動的に核内に移送され、その後アポトーシスを引き起こすことが判明した。次に免疫組織学的に流産胎盤の核にGLが発現していないかを検討したところ、流産例のEVTでは正常妊娠例に比し核内GL陽性細胞数が有意に多かった。また、核内GL陽性EVT細胞はTUNEL陽性でアポトーシスに陥っていた。今回の成績はヒト流産症例において宿主免疫担当細胞(NK細胞)がEVTを攻撃してアポトーシスを引き起こすことを初めて証明したものである。今後、妊娠高血圧腎症の胎盤や癌組織での応用が期待される。 | KAKENHI-PROJECT-18659482 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18659482 |
p97/p37新規膜融合経路に関する研究-SNARE複合体の同定と機能解析 | p97/p37経路は細胞周期問期におけるゴルジ体と小胞体の維持に必須であるが、本研究ではゴルジ体を対象としてSNARE分子の同定を試みた。CHAPSにより可溶化することで、ショ糖密度勾配塵心分離により、p97, p37, SMRE分子よりなると考えられる複合体を維持したまま高密度側に分離し、低密度画分のGS15やp37分子と分離することに成功した。また、CHAPSにより可溶化したゴルジ体よりp97/p37ビーズに特異的に結合する分子量約30, 28, 23, 18kDaの因子を見出した。p97/p37経路は細胞周期問期におけるゴルジ体と小胞体の維持に必須であるが、本研究ではゴルジ体を対象としてSNARE分子の同定を試みた。CHAPSにより可溶化することで、ショ糖密度勾配塵心分離により、p97, p37, SMRE分子よりなると考えられる複合体を維持したまま高密度側に分離し、低密度画分のGS15やp37分子と分離することに成功した。また、CHAPSにより可溶化したゴルジ体よりp97/p37ビーズに特異的に結合する分子量約30, 28, 23, 18kDaの因子を見出した。p97/p37膜融合経路に関して、必須SNARE分子はこれまでGS15しか明らかになっていないが、膜融合が進行するためにはこれ以外のSNARE分子も必要である。そこで、本研究では、p97/p37膜融合経路に必要なSNARE複合体の同定と機能解析を目指す。p97/p37経路は細胞周期間期におけるゴルジ体と小胞体の維持に必須であるが、本年度はゴルジ体を対象としてSNARE分子の同定を試みた。間期細胞のゴルジ体を1M KCLで処理し塩に感受性を示す結合因子を除去したゴルジ体(swG)を調製した。swG上のにSNARE複合体を維持するために、すでにp97/p37/GS15を含む複合体を解離しないことが明らかなCHAPSを用いて可溶化した。これを、ショ糖密度勾配遠心分離により分画しGS15の分布を調べると、GS15は分子量約15kDaと小さくGS15のみでは複合体を形成することはないと考えられているにも関わらす、その分布は非常に重い分子量の画分に存在していることが明らかとなった。つまり、この条件においてGS15を含む複合体(他の必須SNARE分子を含む)は解離することなく維持されていると考えられ、この条件でゴルジ体を可溶化することにより、SNARE複合体の同定が可能であると考えられた。そして、p97/p37を結合させたswGも同様に分画したところ、p97の分布にp97/p37のみで見られるピークよりも重い画分に新たなピークが確認された。また、この画分には、GS15も存在していることから、p97/p37/SNARE複合体(GS15を含む)が存在していると考えられ、この画分に含まれるSNARE分子を同定することによりp97/p37経路に必須なSNARE複合体を明らかに出来ると考えられる。今後は、この画分を対象に、抗p37抗体による免疫共沈殿を行い共沈される因子の同定を行う。p97/p37膜融合経路に関して、必須SNARE分子はこれまでGS15しか明らかになっていないが、膜融合が進行するためにはこれ以外のSNARE分子も必要である。そこで、本研究では、p97/p37膜融合経路に必要なSNARE複合体の同定と機能解析を目指す。p97/p37経路は細胞周期間期におけるゴルジ体と小胞体の維持に必須であるが、ゴルジ体を対象としてSNARE分子の同定を試みた。当初予定していたショ糖密度勾配遠心分離により分画したp97/p37/GS15複合体を含む画分を対象とした抗p37抗体による免疫共沈殿では、抗体に由来するバンドの影響等で目的とする因子を見出すことが出来なかった。そこで、抗体を用いないために、ビオチン化したp37をアビジンビーズに結合しp37ビーズを作製した。そして、このp37ビーズをp97とインキュベートすることによりp97/p37ビーズを作成した。間期細胞のゴルジ体を1M KCLで処理し塩に感受性を示す結合因子を除去したゴルジ体(sw-Golgi)を調製し、これをCHAPSにより可溶化しp97/p37ビーズとインキュベートし、p97/p37ビーズに結合したsw-Golgi成分をSDS-PAGEにより分離したところ、p97/p37ビーズに特異的に結合する分子量約30kDaのタンパク質が得られた。この結合因子の同定を行うために、スケールアップして同様の操作を行い、目的とする因子を含む領域を切り出しこのゲル断片に含まれるタンパク質をマススペクトロメトリーにより解析した。解析結果は、十分量の目的因子が得られていなかったためケラチンのシグナルしか得られず、その同定には至らなかった。現在、このコンタミネーションを抑え目的因子の同定を行うために再度解析を行っているところである。 | KAKENHI-PROJECT-19570195 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19570195 |
蛋白質摂取に対する生体エネルギーの応答ー細胞生理学的解析ー | 本研究では、まず、a)蛋白質摂取にともなう小腸粘膜や骨格筋の酸化的リン酸化能の変化を調べ、ATP合成系が肝臓や心臓以外の臓器でも修飾を受けるか否かを確認するため、プロイラー雛に蛋白質含量な異なる試験飼料を14日間自由摂取させ、小腸粘膜および骨格筋ミトコンドリアの酸化的リン酸化能を測定した結果、深胸筋、大腿二頭筋のいずれにおいても、STATE3、STATE4およびADP/0比の増減は認められなかったが、小腸粘膜のSTATE4は、61%区で7%、25%、43%区と比較して有意に増加した。次に、b)蛋白質摂取にともなう肝臓の酸化的リン酸化能の低下の基質依存性を調べたところ、基質として、電子伝達複合体1に電子を供与するピルビン酸+リンゴ酸、あるいはグルタミン酸を用いた場合、肝臓ミトコンドリアのADP/0比が蛋白質レベルの増加にともない有意に低下したが、電子伝達複合体III、IVにそれぞれ電子を供与するコハク酸、アスコルビン酸を用いた場合には有意な変化は認められなかった。さらに、C)蛋白質摂取にともなう肝臓の酸化的リン酸化能の低下に、ミトコンドリア内膜に内在するF_0F_1-ATPaseの関与の可能性があるか否かを調べたところ、F_0F_1-ATPaseの活性は、単離直後ミトコンドリアでは、蛋白質レベルの増加により有意に増加したが、凍結融解処理後のミトコンドリアでは、変化は認められなかった。このことから、F_0F_1-ATPaseの関与より電子伝達複合体1のプロトンポンプ能の低下とミトコンドリア内膜のプロトンの透過性の増大による可能性が考えられた。最後に、c)この蛋白質レベルが各種主要臓器の細胞内のNa^+/K^+-ATPase活性に影響を及ぼすか否かを調べたところ、腎臓・小腸粘膜とは異なり、肝臓や特に筋肉で低蛋白質レベルで低下した。今後、蛋白質摂取にともなう肝臓の脱共役反応や筋肉におけるATP利用の促進反応の作用機構をさらに解明する必要があることが解った。本研究では、まず、a)蛋白質摂取にともなう小腸粘膜や骨格筋の酸化的リン酸化能の変化を調べ、ATP合成系が肝臓や心臓以外の臓器でも修飾を受けるか否かを確認するため、プロイラー雛に蛋白質含量な異なる試験飼料を14日間自由摂取させ、小腸粘膜および骨格筋ミトコンドリアの酸化的リン酸化能を測定した結果、深胸筋、大腿二頭筋のいずれにおいても、STATE3、STATE4およびADP/0比の増減は認められなかったが、小腸粘膜のSTATE4は、61%区で7%、25%、43%区と比較して有意に増加した。次に、b)蛋白質摂取にともなう肝臓の酸化的リン酸化能の低下の基質依存性を調べたところ、基質として、電子伝達複合体1に電子を供与するピルビン酸+リンゴ酸、あるいはグルタミン酸を用いた場合、肝臓ミトコンドリアのADP/0比が蛋白質レベルの増加にともない有意に低下したが、電子伝達複合体III、IVにそれぞれ電子を供与するコハク酸、アスコルビン酸を用いた場合には有意な変化は認められなかった。さらに、C)蛋白質摂取にともなう肝臓の酸化的リン酸化能の低下に、ミトコンドリア内膜に内在するF_0F_1-ATPaseの関与の可能性があるか否かを調べたところ、F_0F_1-ATPaseの活性は、単離直後ミトコンドリアでは、蛋白質レベルの増加により有意に増加したが、凍結融解処理後のミトコンドリアでは、変化は認められなかった。このことから、F_0F_1-ATPaseの関与より電子伝達複合体1のプロトンポンプ能の低下とミトコンドリア内膜のプロトンの透過性の増大による可能性が考えられた。最後に、c)この蛋白質レベルが各種主要臓器の細胞内のNa^+/K^+-ATPase活性に影響を及ぼすか否かを調べたところ、腎臓・小腸粘膜とは異なり、肝臓や特に筋肉で低蛋白質レベルで低下した。今後、蛋白質摂取にともなう肝臓の脱共役反応や筋肉におけるATP利用の促進反応の作用機構をさらに解明する必要があることが解った。 | KAKENHI-PROJECT-04660303 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04660303 |
高度好熱菌house‐cleaning酵素群の立体構造解析および分子機能解析 | Nudix蛋白質は,細胞にとって有害なヌクレオチドや過剰に増加したヌクレオチド代謝産物を分解するヒドロラーゼの総称であり,その働きからhouse-cleaning酵素とも呼ばれる。その基質はいずれもヌクレオチドニリン酸に何かが結合した(nucleoside diphosphate-linked X)化合物である。Nudix蛋白質はそれらを分解することによって,遺伝情報の維持,細胞増殖やシグナル伝達の制御などに関わっている。本研究では,高度好熱菌Thermus thermophilus HB8のNudix蛋白質群(Ndx18)を大腸菌体内で大量発現させ,立体構造解析および分子機能解析を行って,各種ヌクレオチドの認識および分解機構を,原子レベルで詳細に解明することを目的としている。Ap6Aを分解するNdx1については,基質複合体の結晶構造を決定した。これに基づいて作製した変異体を解析することによって,基質であるジアデノシンポリリン酸の認識には,アデニン塩基からγ位までの部分が重要であること,さらに二価金属イオンに配位するグルタミン酸残基が触媒に必須であることを明らかにした。次に,ADP-riboseを分解するNdx4については,金属イオンや基質,生成物などをそれぞれ含む6種類の結晶構造を決定し,さらに変異体解析の結果にもとづき,従来提唱されていた反応機構(特に触媒残基)は誤りであり,Nudixモチーフ内の2つのグルタミン酸残基が触媒に必須であることを明らかにした。また,他のNdx蛋白質においても,オリゴマー状態や基質特異性などが大きく異なるものの,活性部位で重要な残基や反応機構は非常によく似ていた。これらのことから,基質認識を担う部分は多様性だが,触媒反応を担う部分は共通であるという,多様なNudix蛋白質の機能発現機構を明らかにした。Nudix蛋白質は,細胞にとって有害なヌクレオチドや過剰に増加したヌクレオチド代謝産物を分解するヒドロラーゼの総称であり,その働きからhouse-cleaning酵素とも呼ばれる。その基質はいずれもヌクレオチドニリン酸に何かが結合した(nucleoside diphosphate-linked X)化合物である。Nudix蛋白質はそれらを分解することによって,遺伝情報の維持,細胞増殖やシグナル伝達の制御などに関わっている。本研究では,高度好熱菌Thermus thermophilus HB8のNudix蛋白質群(Ndx18)を大腸菌体内で大量発現させ,立体構造解析および分子機能解析を行って,各種ヌクレオチドの認識および分解機構を,原子レベルで詳細に解明することを目的としている。Ap6Aを分解するNdx1については,基質複合体の結晶構造を決定した。これに基づいて作製した変異体を解析することによって,基質であるジアデノシンポリリン酸の認識には,アデニン塩基からγ位までの部分が重要であること,さらに二価金属イオンに配位するグルタミン酸残基が触媒に必須であることを明らかにした。次に,ADP-riboseを分解するNdx4については,金属イオンや基質,生成物などをそれぞれ含む6種類の結晶構造を決定し,さらに変異体解析の結果にもとづき,従来提唱されていた反応機構(特に触媒残基)は誤りであり,Nudixモチーフ内の2つのグルタミン酸残基が触媒に必須であることを明らかにした。また,他のNdx蛋白質においても,オリゴマー状態や基質特異性などが大きく異なるものの,活性部位で重要な残基や反応機構は非常によく似ていた。これらのことから,基質認識を担う部分は多様性だが,触媒反応を担う部分は共通であるという,多様なNudix蛋白質の機能発現機構を明らかにした。Nudix蛋白質は,細胞にとって有害なヌクレオチドや過剰に増加したヌクレオチド代謝産物を分解するヒドロラーゼの総称であり,その働きからhouse-cleaning酵素とも呼ばれる。その基質はいずれもヌクレオチド二リン酸に何かが結合した(nucleoside diphosphate-linked X)化合物である。Nudix蛋白質はそれらを分解することによって,遺伝情報の維持,細胞増殖やシグナル伝達の制御などに関わっている。本研究では,高度好熱菌Thermus thermophilus HB8のNudix蛋白質群(Ndx18)を大腸菌体内で大量発現させ,立体構造解析および分子機能解析を行って,各種ヌクレオチドの認識および分解機構を,原子レベルで詳細に解明することを目的としている。本年度は,Ndx1とNdx4を中心に解析を行った。まずNdx1については,基質複合体の結晶構造を決定した。これに基づいて作製した変異体を解析することによって,基質であるジアデノシンポリリン酸の認識には,アデニン塩基からγ位までの部分が重要であること,さらに二価金属イオンに配位するグルタミン酸残基が触媒に必須であることを明らかにした。次に,Ndx4については,金属イオンや基質,生成物などをそれぞれ含む6種類の結晶構造を決定し,さらに変異体解析の結果にもとづき,従来提唱されていた反応機構(特に触媒残基)は誤りであり,Nudixモチーフ内の2つのグルタミン酸残基が触媒に必須であることを明らかにした。また,Ndx1とNdx4は,オリゴマー状態や基質特異性などが大きく異なるものの,活性部位で重要な残基や反応機構は非常によく似ていた。このことは,多様なNudix蛋白質の触媒反応を担う部分は共通で,基質認識を担う部分に多様性があることを示している。Nudix蛋白質は,細胞にとって有害なヌクレオチドや過剰に増加したヌクレオチド代謝産物を分解するヒドロラーゼの総称であり,その働きからhouse-cleaning酵素とも呼ばれる。 | KAKENHI-PROJECT-15570114 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15570114 |
高度好熱菌house‐cleaning酵素群の立体構造解析および分子機能解析 | その基質はいずれもヌクレオチド二リン酸に何かが結合した(nucleoside diphosphate-linked X)化合物である。Nudix蛋白質はそれらを分解することによって,遺伝情報の維持,細胞増殖やシグナル伝達の制御などに関わっている。本研究では,高度好熱菌Thermus thermophilus HB8のNudix蛋白質群(Ndx18)を大腸菌体内で大量発現させ,立体構造解析および分子機能解析を行って,各種ヌクレオチドの認識および分解機構を,原子レベルで詳細に解明することを目的としている。Ap6Aを分解するNdx1については,基質複合体の結晶構造を決定した。これに基づいて作製した変異体を解析することによって,基質であるジアデノシンポリリン酸の認識には,アデニン塩基からγ位までの部分が重要であること,さらに二価金属イオンに配位するグルタミン酸残基が触媒に必須であることを明らかにした。次に,ADP-riboseを分解するNdx4については,詳細な変異体解析の結果にもとづき,昨年度,触媒残基の同定を中心に提唱した反応機構は誤りであり,Nudixモチーフ内の2つのグルタミン酸残基およ金属イオンに配位した水分子が触媒に必須であることを明らかにした。また,他のNdx蛋白質においても,オリゴマー状態や基質特異性などが大きく異なるものの,活性部位で重要な残基や反応機構は非常によく似ていた。これらのことから,基質認識を担う部分は多様性だが,触媒反応を担う部分は共通であるという,多様なNudix蛋白質の機能発現機構を明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-15570114 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15570114 |
ヒト細胞傷害性T細胞が認識するHIV-1エピトープの解析 | (1)前年度に明らかにしたHLA-A^*2402が提示する12種類のHIV-1 CTLエピトープペプチドを用いて、12人のHLA-A24陽性、HIV-1感染者末梢血単核球を刺激して、これらのCTLエピトープに対するCTL活性能を調べた。その結果、8種類のエピトープがこれらの患者で強く認識されるエピトープである事が明らかになった。今後、これらの免疫学的に強く認識されるエピトープ上の抗原変異を調べるとともに、この変異がCTLの認識にどのように影響を与えるかを検討する予定である。(2)HLA-B51をもっているHIV-1感染者は、AIDSを発症するまでの期間が長い事が知られている。そこで、HLA-B51(B^*5101)が提示するHIV-1 CTLエピトープを、リバース・イムノジェネティックス法を用いて同定することを試みた。その結果、6種類のHIV-1 CTLエピトープを同定できた。さらにこれらのエピトープを認識するCTLクローンを作製し、抗原認識を詳細に解析した。またこの6種類のエピトープに対するCTL活性を、12人のHLA-B51陽性、HIV-1感染者で調べたところ、3つのエピトープに対するCTL活性は少なくとも6人以上でみられ、これらのCTLエピトープが、免疫学的に強く認識されるエピトープであると考えられた。今後、これらのエピトープの変異が、実際の患者がもっているウイルスでどのようにおきているかを解析する予定である。(1)前年度に明らかにしたHLA-A^*2402が提示する12種類のHIV-1 CTLエピトープペプチドを用いて、12人のHLA-A24陽性、HIV-1感染者末梢血単核球を刺激して、これらのCTLエピトープに対するCTL活性能を調べた。その結果、8種類のエピトープがこれらの患者で強く認識されるエピトープである事が明らかになった。今後、これらの免疫学的に強く認識されるエピトープ上の抗原変異を調べるとともに、この変異がCTLの認識にどのように影響を与えるかを検討する予定である。(2)HLA-B51をもっているHIV-1感染者は、AIDSを発症するまでの期間が長い事が知られている。そこで、HLA-B51(B^*5101)が提示するHIV-1 CTLエピトープを、リバース・イムノジェネティックス法を用いて同定することを試みた。その結果、6種類のHIV-1 CTLエピトープを同定できた。さらにこれらのエピトープを認識するCTLクローンを作製し、抗原認識を詳細に解析した。またこの6種類のエピトープに対するCTL活性を、12人のHLA-B51陽性、HIV-1感染者で調べたところ、3つのエピトープに対するCTL活性は少なくとも6人以上でみられ、これらのCTLエピトープが、免疫学的に強く認識されるエピトープであると考えられた。今後、これらのエピトープの変異が、実際の患者がもっているウイルスでどのようにおきているかを解析する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-09258205 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09258205 |
蛋白質工学的手法による細菌シトクロム耐熱機構の解明 | 1.シトクロムc遺伝子のクロ-ニング(1)好熱性水素細菌のシトクロムc_<552>遺伝子のクロ-ニング・シ-クエンシングシトクロムc_<551>の蛋白質の配列から作成した2本のプロ-ブを用い、クロ-ニング・シ-クエンシングを行った。(2)緑膿菌のシトクロムc_<551>遺伝子のクロ-ニング既知の蛋白質配列から作成した2本のプロ-ブを用い、(1)と同様にして塩基配列を決定した。2.シトクロムc遺伝子の発現(1)好熱性水素細菌のシトクロムc_<552>遺伝子の大腸菌中での発現上記シトクロムc_<552>遺伝子のシグナル配列を持たない遺伝子を調製し、プラスミドpKK223ー3のマルチクロ-ニングサイトに導入し大腸菌JM 109株を形質転換した。形質転換した大腸菌を硝酸呼吸条件下に培養した。この無細胞抽出液中にシトクロムc_<552>遺伝子が発現していることが示され、さらにここからシトクロムc_<552>蛋白質を精製した。(2)緑膿菌のシトクロムc_<551>遺伝子の緑膿菌中での発現上記シトクロムc_<551>遺伝子のシグナル配列を持つ遺伝子を調製し、発現ベクタ-pHA10のtacプロモ-タ-の直後に挿入し三親接合法により、緑膿菌PAO1161株に導入した。これらのプラスミドにより形質転換した緑膿菌を培養し、シトクロムc_<551>遺伝子の発現について調べた結果、シトクロムc_<551>が高発現していること及びシグナル配列も正しく除去されていることが明らかとなった。3.アミノ酸置換によるシトクロムc耐熱性の変化(1)シトクロムc_<552>の場合には耐熱性減少を目的とし、site directed mutagenesisの手法を用いて、アラニン26→リジン、リジン30→アラニン、アラニン26→リジン:リジン30→アラニンの二重変異、アスパラギン酸37→グリシンという変異シトクロムc_<552>蛋白質を調製した。(2)シトクロムc_<551>の場合には耐熱性増加を目的とし、site directed mutagenesisの手法を用いて、リジン28→アラニン、アラニン32→リジン、グリシン39→アスパラギン酸という変異シトクロムc_<551>蛋白質を調製した。(3)いづれの場合にも耐熱性の変化は殆どなかった。1.シトクロムc遺伝子のクロ-ニング(1)好熱性水素細菌のシトクロムc_<552>遺伝子のクロ-ニング・シ-クエンシングシトクロムc_<551>の蛋白質の配列から作成した2本のプロ-ブを用い、クロ-ニング・シ-クエンシングを行った。(2)緑膿菌のシトクロムc_<551>遺伝子のクロ-ニング既知の蛋白質配列から作成した2本のプロ-ブを用い、(1)と同様にして塩基配列を決定した。2.シトクロムc遺伝子の発現(1)好熱性水素細菌のシトクロムc_<552>遺伝子の大腸菌中での発現上記シトクロムc_<552>遺伝子のシグナル配列を持たない遺伝子を調製し、プラスミドpKK223ー3のマルチクロ-ニングサイトに導入し大腸菌JM 109株を形質転換した。形質転換した大腸菌を硝酸呼吸条件下に培養した。この無細胞抽出液中にシトクロムc_<552>遺伝子が発現していることが示され、さらにここからシトクロムc_<552>蛋白質を精製した。(2)緑膿菌のシトクロムc_<551>遺伝子の緑膿菌中での発現上記シトクロムc_<551>遺伝子のシグナル配列を持つ遺伝子を調製し、発現ベクタ-pHA10のtacプロモ-タ-の直後に挿入し三親接合法により、緑膿菌PAO1161株に導入した。これらのプラスミドにより形質転換した緑膿菌を培養し、シトクロムc_<551>遺伝子の発現について調べた結果、シトクロムc_<551>が高発現していること及びシグナル配列も正しく除去されていることが明らかとなった。3.アミノ酸置換によるシトクロムc耐熱性の変化(1)シトクロムc_<552>の場合には耐熱性減少を目的とし、site directed mutagenesisの手法を用いて、アラニン26→リジン、リジン30→アラニン、アラニン26→リジン:リジン30→アラニンの二重変異、アスパラギン酸37→グリシンという変異シトクロムc_<552>蛋白質を調製した。(2)シトクロム | KAKENHI-PROJECT-01470122 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01470122 |
蛋白質工学的手法による細菌シトクロム耐熱機構の解明 | c_<551>の場合には耐熱性増加を目的とし、site directed mutagenesisの手法を用いて、リジン28→アラニン、アラニン32→リジン、グリシン39→アスパラギン酸という変異シトクロムc_<551>蛋白質を調製した。(3)いづれの場合にも耐熱性の変化は殆どなかった。H.thermophilus染色体DNAをHind IIIで消化し、シトクロムCの蛋白の配列から作成した2種類の合成オリゴヌクレオチドをプロ-ブとしてシトクロムC遺伝子をクロ-ニングした。得られた2.5kbの断片をAcc I-Pst I処理により1.1kbまでサブクロ-ニングしたのちシ-クエンスを行った。(1)酵母における発現宿主としてヘムCを著量合成することが知られているSaccharomyces cerevisiaeを用いた。シトクロムC遺伝子のうち5'上流のリ-ダ-シ-クエンスまで含むものと含まないものの2種の遺伝子を用いて宿主の形質転換を行った。どちらの遺伝子を用いた場合でもアポ蛋白は宿主内で合成されなかったが、リ-ダ-シ-クエンスを含まない遺伝子を用いて形質転換された宿主内ではホロ蛋白が合成されていることがシトクロムCに対する抗体を用いることにより明らかとなった。(2)大腸菌における発現(1)と同様に2種の遺伝子を用いて大腸菌を形質転換し、硝酸呼吸条件下に培養した。リ-ダ-シ-クエンスを含まない遺伝子を用いて形質転換された宿主内でアポ蛋白が合成されていることが示された。3.Pseudomonasaeruginosa由来シトクロムC遺伝子のクロ-ニング及びシ-クエンス決定既に報告のあるP.aeruginosaシトクロムC蛋白のアミノ酸配列から2種類のオリゴヌクレオチドを合成し、これをプロ-ブとしてP.aeruginosa染色体DNAからシトクロムC遺伝子をクロ-ニングした。得られた9kbのPst I断片をSal I処理により1kbまでサブクロ-ニングしたのちシ-クエンスを行った。1。細菌由来シトクロムc遺伝子の大腸菌における発現(1)<Hydrogenobacter thermophilus>___ーシトクロムc__ー_<552>遺伝子より、site directed mutagenesisの手法を用い、シグナル配列を含むもの(CH11)と含まないもの(CH12)を調製した。(2)CH11とCH12を含む組換えプラスミドを用いて大腸菌を形質転換し、形質転換株を硝酸呼吸条件下嫌気的に培養し、ホロシトクロムc__ー_<552>生産性を確かめた所、CH12を含む組換えプラスミドを用いて形質転換された大腸菌中にのみその生産が確認された。得られたホロシトクロムc__ー_<552>に対し酸性メチルエチルケトン処理を行ってもヘムの離脱が観察されなかったことからヘムCを共有結合として含むホロシトクロムc__ー_<552>が生産されていることが確認された。(3)上記ホロシトクロムc__ー_<552>の宿主(大腸菌)中の局在性はサイトプラズムであることが確認された。(2)上記変異遺伝子を用いて形質転換した大腸菌を培養し、得られる無細胞抽出液からシトクロムc__ー_<552>の変異蛋白質を調製した。(3)上記の各種変異シトクロムc__ー_<552>の熱安定性をCDスペクトルの測定により調べた所、シトクロムc__ー_<552>のものとの有意差はなかった。 | KAKENHI-PROJECT-01470122 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01470122 |
マリファナ様物質(カンナビノイド)の味覚修飾作用とそれを介する食嗜好調節 | ヒトの肥満や高脂血症をもたらす食調節系の異常は、通常野生動物では考えられない生理的調節系の制御範囲をこえる極めて強い食への嗜好性や嗜癖性によりもたらされているものと思われる。しかし、その成因やメカニズムについてはまだ多くは謎のままである。我々は近年、脂肪細胞由来の飽食ホルモン・レプチンが味細胞に受容体をもち、甘味を選択的に抑制することを発見し、レプチンは脳における食調節とともに、末梢の味覚器を介して食嗜好性調節に関与する可能性を示した。しかし、レプチンの甘味抑制効果はコントロールの約20%と弱く、肥満マウスの甘味感受性の増大は数10%と大きいことからレプチン以外のシステムの存在の可能性も考えられる。そこで、本研究では、カンナビノイドに着目し、その味細胞における受容体の発現、味応答の修飾効果、そのレプチンとの拮抗性について調べ、末梢味覚器からの情報による食嗜好性の形成・調節のメカニズムについて検索する。マウス味細胞における受容体分子発現についてはIn Situ hybridization法および免疫組織化学法により検索した。その結果カンナビノイド受容体がいくつかの味蕾内の細胞に発現していることが確認された。また、甘味受容体との共発現についても限られた細胞で認められた。次に、カンナビノイド投与による鼓索神経応答の変化を測定したところ、甘味応答がコントロールの約30%程度増大することが明らかになった。しかし、投与後の時間経過が必ずしも安定しておらず、神経応答による解析には限界があることが分かった。単離味蕾標本による活動電位発生味細胞のルースパッチクランプ法による解析では、カンナビノイド、その拮抗薬などによる応答修飾効果が認められた。結果は神経応答において得られたものと類似していた。味覚は食物中に含まれる化学物質が生理的に必要な物質かどうかの認知や摂食の判断に重要な情報を脳に伝え、生体の恒常性維持に重要な役割を果たしている。一方、ヒトの肥満や高脂血症をもたらす食調節系の異常は、通常野生動物では考えられない生理的調節系の制御範囲をこえる極めて強い食への嗜好性や嗜癖性によりもたらされているものと考えられる。本研究では、マリファナに含まれ摂食促進作用を持つカンナビノイドの味細胞における受容体の発現、味応答の修飾効果について、正常あるいは肥満マウスを用い調べ、末梢味覚器からの情報による食嗜好性の形成・調節のメカニズムについて検索する。本年度は正常マウスを用いて検索した。正常系C57BLマウスを用い、舌前部に分布する茸状乳頭及び舌後部の有郭乳頭の味蕾味細胞におけるカンナビノイド受容体CB1及びCB2mRNAの発現についてRT-PCR法とIn situ hybridization法をにより検索したところ、それらの発現が示唆される結果がえられた。次に舌前部の味蕾を支配する鼓索神経の甘味(糖、アミノ酸、人工甘味料)、うま味物質(グルタミン酸、核酸関連物質など)をはじめ、各種味物質に対する応答を記録し、内因性カンナビノイドであるアナンダミド投与後の変化について解析した。その結果、カンナビノイド投与後、甘味応答が増大する傾向が認められた。味細胞応答については酵素処理により単離した味蕾の味孔部周辺上皮部分を刺激ピペットで固定し、細胞基底部からルースパッチ法により味細胞の活動電位を記録し、内因性カンナビノイドによる変化を解析した。その結果、味細胞の甘味に対する応答が増大する傾向がみられた。さらに、各種味物質に対する摂取量を短時間(10秒)リック測定法により求め、アナンダミド投与後の変化について検索したが、まだ明確な結果は得られていない。ヒトの肥満や高脂血症をもたらす食調節系の異常は、通常野生動物では考えられない生理的調節系の制御範囲をこえる極めて強い食への嗜好性や嗜癖性によりもたらされているものと思われる。しかし、その成因やメカニズムについてはまだ多くは謎のままである。我々は近年、脂肪細胞由来の飽食ホルモン・レプチンが味細胞に受容体をもち、甘味を選択的に抑制することを発見し、レプチンは脳における食調節とともに、末梢の味覚器を介して食嗜好性調節に関与する可能性を示した。しかし、レプチンの甘味抑制効果はコントロールの約20%と弱く、肥満マウスの甘味感受性の増大は数10%と大きいことからレプチン以外のシステムの存在の可能性も考えられる。そこで、本研究では、カンナビノイドに着目し、その味細胞における受容体の発現、味応答の修飾効果、そのレプチンとの拮抗性について調べ、末梢味覚器からの情報による食嗜好性の形成・調節のメカニズムについて検索する。マウス味細胞における受容体分子発現についてはIn Situ hybridization法および免疫組織化学法により検索した。その結果カンナビノイド受容体がいくつかの味蕾内の細胞に発現していることが確認された。また、甘味受容体との共発現についても限られた細胞で認められた。次に、カンナビノイド投与による鼓索神経応答の変化を測定したところ、甘味応答がコントロールの約30%程度増大することが明らかになった。しかし、投与後の時間経過が必ずしも安定しておらず、神経応答による解析には限界があることが分かった。単離味蕾標本による活動電位発生味細胞のルースパッチクランプ法による解析では、カンナビノイド、その拮抗薬などによる応答修飾効果が認められた。結果は神経応答において得られたものと類似していた。 | KAKENHI-PROJECT-17659588 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17659588 |
アルミノリン酸塩結晶細孔中の一次元分子鎖の構造と物性 | 断面がほぼ円形の均一な細孔を持つマイクロポーラス結晶AIPO_4-5(径7.3Å)の良質な単結晶試料の合成法を確立し、その1次元トンネル中に分子間相互作用を有する分子鎖を封じ込める目的でp-ベンゾキノン及びハイドロキノンのインターカレションを試みた。得られた試料について、単結晶を用いた偏光赤外線及びラマンスペクトル、ESR、NMR,電子スペクトルの温度依存性を測定した。その結果、赤外吸収測定から一次元細孔中でベンゾキノンの分子面は細孔軸にほぼ垂直方向に配向していることが明らかになった。ESRの測定から、ベンゾキノンラジカルに帰属できるラジカルが生成していることを発見した。このアニオンラジカルの分子面が細孔軸とほぼ平行であるという新事実を明らかにした。一方、ハイドロキノンをインターカレートした系においても、細孔中の分子に配向はベンゾキノンと同様であることが確認された。また、ハイドロキノンをやや多量に吸着した試料はキンヒドロンに近い着色が観測され、ESRスペクトルの強度も高く、ラジカルが生成していることが示された。赤外、ラマン分光の振動スペクトルの測定結果から、ハイドロキノンが細孔中でセミキノンラジカル、さらにベンゾキノンにまで酸化されていることが確認された。これらの実験結果から、ハイドロキノンと酸化により生じた、セミキノンラジカルあるいはベンゾキノン分子が隣接し、分子間に電子移動が生じている可能性が高いことが明らかになった。断面がほぼ円形の均一な細孔を持つマイクロポーラス結晶AIPO_4-5(径7.3Å)の良質な単結晶試料の合成法を確立し、その1次元トンネル中に分子間相互作用を有する分子鎖を封じ込める目的でp-ベンゾキノン及びハイドロキノンのインターカレションを試みた。得られた試料について、単結晶を用いた偏光赤外線及びラマンスペクトル、ESR、NMR,電子スペクトルの温度依存性を測定した。その結果、赤外吸収測定から一次元細孔中でベンゾキノンの分子面は細孔軸にほぼ垂直方向に配向していることが明らかになった。ESRの測定から、ベンゾキノンラジカルに帰属できるラジカルが生成していることを発見した。このアニオンラジカルの分子面が細孔軸とほぼ平行であるという新事実を明らかにした。一方、ハイドロキノンをインターカレートした系においても、細孔中の分子に配向はベンゾキノンと同様であることが確認された。また、ハイドロキノンをやや多量に吸着した試料はキンヒドロンに近い着色が観測され、ESRスペクトルの強度も高く、ラジカルが生成していることが示された。赤外、ラマン分光の振動スペクトルの測定結果から、ハイドロキノンが細孔中でセミキノンラジカル、さらにベンゾキノンにまで酸化されていることが確認された。これらの実験結果から、ハイドロキノンと酸化により生じた、セミキノンラジカルあるいはベンゾキノン分子が隣接し、分子間に電子移動が生じている可能性が高いことが明らかになった。本年度、まず一次元細孔を持つマイクロポーラス結晶AlPO_4-5,SAPO-5を水熱合成法により作製し、良質結晶を得る方法の開発を行った。細孔中分子の挙動を調べる目的で、得られた結晶中にテンプレートとして入っているトリエチルアミン分子について、^1H NMRの共鳴線の2次モーメントとスピン格子緩和時間の温度依存性を測定した。その結果、細孔中に吸着されたトリエチルアミン分子の束縛は非常に小さく、AlPO_4-5においては、200K付近からすでに分子が等方的に回転しており、バルクの状態ときわめて異なる一次元分子系が形成されていることが明らかになった。一方、SAPO-5においては、細孔中のトリエチルアミン分子の運動はAlPO_4-5中に比べて束縛は強く、室温付近においても、等方的回転が励起されておらず、一軸周りの回転と回転軸の揺らぎが起こっていることがNMRの測定から明らかになった。さらに、^1H NMR緩和時間の温度依存性の測定によって、分子回転の速さの逆数で定義される相関時間が、SAPO-5中では分布しないが、AlPO_4-5中では大きな分布を示すことが明らかになった。この違いの解釈として、SAPO-5の細孔内壁にはブルンステッド酸点(OH基)が存在しており、この酸点とアミンが水素結合を形成していることが予想される。そのため、分子軸がほぼ細孔軸と垂直に配向している。一方、AlPO_4-5中では、分子は均一な細孔壁に囲まれているため、分子の配向は無秩序になり、分子回転の障壁の高さに分布がることを考慮することによって、AlPO_4-5とSAPO-5中の分子運動の違いを説明することに成功した。昨年度、一次元細孔を持つマイクロポーラス系AlPO_4-5,SAPO-5の合成法を確立し、細孔中分子の挙動を調べる目的で、細孔径と同程度の分子サイズのトリエチルアミン分子について、NMRの温度依存性を測定した。その結果、細孔中に吸着されたトリエチルアミン分子の配向、束縛状態が明らかになり、細孔中分子の挙動の研究に固体NMRが有効な手法であることを示した。本年度は、吸着分子を細孔径より小さくして、分子運動が起こり易い系について研究を行った。選んだ分子として、比較的分子間相互作用が小さいアセトニトリルと強い水素結合系の水を選び、^1H,^2H NMRスペクトル、スピン格子緩和時間の温度依存性の測定を行った。 | KAKENHI-PROJECT-12440192 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12440192 |
アルミノリン酸塩結晶細孔中の一次元分子鎖の構造と物性 | その結果、AlPO_4-5中のアセトニトリルは、230K以上で分子の等方的回転が励起され液体的であることが明らかにされたが、SAPO-5中では室温まで束縛運動状態であることが示された。この差はCN基とSAPO-5壁面の酸点との水素結合が形成されるため、運動が束縛されることによって説明された。水を吸着した系については、水分子は細孔中で分子間水素結合が形成され、バルクの水とは異なる水素結合集合体の形成が予想されるので熱測定を行った。その結果、AlPO_4-5中の水は、245Kに熱異常を示した。この温度は^1H,^2H NMRの吸収線が先鋭化し分子全体の回転運動が励起される温度と一致することから、細孔中で水素結合によって部分的に凝集してできた集合体の融解及び凝固が観測されたと判断される。これは細孔中の水が低温まで凍らないという一般的実験結果とも良く一致した。以上の研究結果から、バルクには存在しない細孔中の水の挙動、一次元分子系の構造と運動などについて新情報が得られた。断面がほぼ円形の均一な細孔を持つマイクロポーラス結晶AlPO_4-5(径7.3Å)の良質な単結晶試料の合成法を確立し、その1次元トンネル中に分子間相互作用を有する分子鎖を封じ込める目的でp-ベンゾキノン及びハイドロキノンのインターカレションを試みた。得られた試料について、単結晶を用いた偏光赤外線及びラマンスペクトル、ESR、NMR,電子スペクトルの温度依存性を測定した。その結果、赤外吸収測定から一次元細孔中でベンゾキノンの分子面は細孔軸にほぼ垂直方向に配向していることが明らかになった。ESRの測定から、ベンゾキノンラジカルに帰属できるラジカルが生成していることを発見した。このアニオンラジカルの分子面が細孔軸とほぼ平行であるという新事実を明らかにした。一方、ハイドロキノンをインターカレートした系においても、細孔中の分子に配向はベンゾキノンと同様であることが確認された。また、ハイドロキノンをやや多量に吸着した試料はキンヒドロンに近い着色が観測され、ESRスペクトルの強度も高く、ラジカルが生成していることが示された。赤外、ラマン分光の振動スペクトルの測定結果から、ハイドロキノンが細孔中でセミキノンラジカル、さらにベンゾキノンにまで酸化されていることが確認された。これらの実験結果から、ハイドロキノンと酸化により生じた、セミキノンラジカルあるいはベンゾキノン分子が隣接し、分子間に電子移動が生じている可能性が高いことが明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-12440192 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12440192 |
遺伝性運動異常疾患における嚥下障害とその改善 | 本研究課題は、遺伝子異常による運動障害が摂食嚥下にどのように影響するかを、ミュータントマウスを用いて明らかにし、その障害を改善する方法を探索する目的で行われている。摂食嚥下は、三叉神経・舌咽神経・迷走神経・舌下神経による感覚と運動の情報伝達により、円滑に行われる。食塊を口腔から咽頭に移動させる時期を食物摂取の嚥下における咀嚼期と呼ぶが、この咀嚼期における口腔粘膜へのさまざまな刺激に対する感覚が脳に伝達され、次なる咽頭や軟口蓋、或いは喉頭蓋の運動へと連続する。今年度においては、この口腔粘膜の感覚を伝える三叉神経節に対するSMN遺伝子異常の影響について調べた。今年度には、まず幼弱なワイルドタイプマウスにおける顔面皮膚・口唇・舌・硬口蓋を支配する三叉神経節の切片を作製し、ニッスル染色を施して、感覚ニューロンの大きさや数を調べた。三叉神経節には多くのニューロンが存在し、それらの大きさは小型から大型まで様々であった。特に小型から中型のニューロンが豊富に観察された。現在、切片の厚さや枚数から、三叉神経節におけるニューロンの推定総数を明らかにしようとしている。一方、SMNマウスの三叉神経節は肉眼的な観察しか行っていないが、ワイルドタイプマウスに比べ幅・厚さ・長さともに小さかった。この所見から、SMNマウスでは三叉神経節の感覚ニューロンに変性が生じている可能性が示唆された。したがって、SMNの遺伝子異常では、摂食・嚥下に関わる感覚ニューロンに変性が生じ、口腔粘膜の感覚情報の伝達が障害され、摂食困難や嚥下障害をもたらすと推測された。本研究課題では、運動障害を示すSMNマウスにおける口腔感覚障害を明らかにするため、現在ワイルドタイプマウスの三叉神経節ニューロンを詳細に分析している。また肉眼的ではあるが、三叉神経節ニューロンの変性、おそらくは感覚ニューロン数の減少を示唆する所見も得られている。SMNマウスにおける三叉神経節ニューロンの減少が摂食・嚥下の困難をもたらす可能性は非常に高い。このような所見は現在までに報告されたことがなく、今後の本研究課題においてSMNマウスの三叉神経節を詳細に分析するという新たな方向性を見出すことができた。したがって、本研究課題は現在までに、おおむね順調に進捗していると思われる。現在までの研究では、SMN遺伝子の異常により摂食・嚥下に関わる感覚情報を伝達する三叉神経節の大きさが減少していることを明らかにした。しかしながら、感覚ニューロンに関する形態学的変化やそれらの数の減少については、いまだ明らかではない。したがってSMNマウスにおける三叉神経節の感覚ニューロンについても切片を作製し、ニッスル染色を施して詳細に分析する予定である。さらに、三叉神経節の感覚ニューロンには温覚に関係するニューロンや痛みに関係するニューロン、触覚や圧覚に関係するニューロンなどが存在している。SMNマウスにおける三叉神経節感覚ニューロンがどのような分布であるかを調べるため、Transient receptor potential cation channel subfamily (TRPチャネル)についても検討する予定である。本研究課題は、遺伝子異常による運動障害が摂食嚥下にどのように影響するかを、ミュータントマウスを用いて明らかにし、その障害を改善する方法を探索する目的で行われている。摂食嚥下は、三叉神経・舌咽神経・迷走神経・舌下神経による感覚と運動の情報伝達により、円滑に行われる。食塊を口腔から咽頭に移動させる時期を食物摂取の嚥下における咀嚼期と呼ぶが、この咀嚼期における口腔粘膜へのさまざまな刺激に対する感覚が脳に伝達され、次なる咽頭や軟口蓋、或いは喉頭蓋の運動へと連続する。今年度においては、この口腔粘膜の感覚を伝える三叉神経節に対するSMN遺伝子異常の影響について調べた。今年度には、まず幼弱なワイルドタイプマウスにおける顔面皮膚・口唇・舌・硬口蓋を支配する三叉神経節の切片を作製し、ニッスル染色を施して、感覚ニューロンの大きさや数を調べた。三叉神経節には多くのニューロンが存在し、それらの大きさは小型から大型まで様々であった。特に小型から中型のニューロンが豊富に観察された。現在、切片の厚さや枚数から、三叉神経節におけるニューロンの推定総数を明らかにしようとしている。一方、SMNマウスの三叉神経節は肉眼的な観察しか行っていないが、ワイルドタイプマウスに比べ幅・厚さ・長さともに小さかった。この所見から、SMNマウスでは三叉神経節の感覚ニューロンに変性が生じている可能性が示唆された。したがって、SMNの遺伝子異常では、摂食・嚥下に関わる感覚ニューロンに変性が生じ、口腔粘膜の感覚情報の伝達が障害され、摂食困難や嚥下障害をもたらすと推測された。本研究課題では、運動障害を示すSMNマウスにおける口腔感覚障害を明らかにするため、現在ワイルドタイプマウスの三叉神経節ニューロンを詳細に分析している。また肉眼的ではあるが、三叉神経節ニューロンの変性、おそらくは感覚ニューロン数の減少を示唆する所見も得られている。SMNマウスにおける三叉神経節ニューロンの減少が摂食・嚥下の困難をもたらす可能性は非常に高い。 | KAKENHI-PROJECT-18K10667 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K10667 |
遺伝性運動異常疾患における嚥下障害とその改善 | このような所見は現在までに報告されたことがなく、今後の本研究課題においてSMNマウスの三叉神経節を詳細に分析するという新たな方向性を見出すことができた。したがって、本研究課題は現在までに、おおむね順調に進捗していると思われる。現在までの研究では、SMN遺伝子の異常により摂食・嚥下に関わる感覚情報を伝達する三叉神経節の大きさが減少していることを明らかにした。しかしながら、感覚ニューロンに関する形態学的変化やそれらの数の減少については、いまだ明らかではない。したがってSMNマウスにおける三叉神経節の感覚ニューロンについても切片を作製し、ニッスル染色を施して詳細に分析する予定である。さらに、三叉神経節の感覚ニューロンには温覚に関係するニューロンや痛みに関係するニューロン、触覚や圧覚に関係するニューロンなどが存在している。SMNマウスにおける三叉神経節感覚ニューロンがどのような分布であるかを調べるため、Transient receptor potential cation channel subfamily (TRPチャネル)についても検討する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-18K10667 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K10667 |
治療と予防効果を合せ持つ低毒性トポイソメラーゼ阻害抗がん薬の開発 | ガロイール基をもつ新規誘導体TGBAを合成し、ヒトトポイソメラーゼI型とII型に対する阻害活性を測定した。多くの水酸基をもつTGBAは強い阻害を示した。従来のトポイソメラーゼ阻害薬であるカンプトテシンやエトポシドは、DNA-酵素切断複合体を形成するが、TGBAは酵素反応の初期段階に作用するため、DNAを切断することなく阻害した。また、TGBAは肺がや脳の癌細胞の増殖を抑制したことから、新しいタイプのトポイソメラーゼ阻害抗がん薬のリード化合物として期待できる。ガロイール基をもつ新規誘導体TGBAを合成し、ヒトトポイソメラーゼI型とII型に対する阻害活性を測定した。多くの水酸基をもつTGBAは強い阻害を示した。従来のトポイソメラーゼ阻害薬であるカンプトテシンやエトポシドは、DNA-酵素切断複合体を形成するが、TGBAは酵素反応の初期段階に作用するため、DNAを切断することなく阻害した。また、TGBAは肺がや脳の癌細胞の増殖を抑制したことから、新しいタイプのトポイソメラーゼ阻害抗がん薬のリード化合物として期待できる。(3)Topoisomerase II阻害活性: HU-Topo IIに対して、TGBA誘導体はEtoposideよりも強い阻害を示し、特に、135-TGBAは、Etoposideよりも1200倍強く阻害した。TGBA (OMe)誘導体に阻害は認められず、Topo IおよびTopo IIの阻害に水酸基が重要であると考えられた。また、galloyl基の付加位置によっても阻害活性が変化することが明らかとなった。(1)細胞のDNA代謝にかかわる酵素トポイソメラーゼ(以下、トポ)は、増殖の激しいがん細胞に多く存在するため、トポ阻害薬は抗がん薬として利用されている。以前、我々が放線菌の培養液から単離したイソオーロスタチンは、カンプトテシンやエトポシド等のトポ阻害薬と異なり、DNA鎖に障害を与えない新しいタイプのトポ阻害薬であった。さらに、水酸基をイソオーロスタチンに付加することで、トポ阻害活性が増強することが明らかになった。そこで、水酸基を多く含むガロイール基をイソオーロスタチンに付加した3種の誘導体(13-TGBA)を合成し、そのトポ阻害活性および阻害様式について検討した。(2)トポ阻害活性、複合体形成及び阻害様式の検討は、誘導体と基質pBR322プラスミド及びトポを加えて37°Cで30分間酵素反応した後、アガロース電気泳動を行い、DNAのRelaxation量を画像解析ソフト(CS Analyzer 3、ATTO社)を用いて測定した。(3)ガロイール基を付加した3種の新規な誘導体(13)は、強いトポI及びII阻害活性を示した。また、これらの誘導体はイソオーロスタチンと同様にトポI及びIIと切断複合体を形成することなく、阻害様式は非拮抗的で、従来のカンプトテシンやエトポシドとは異なる阻害作用と考えられた。(1)【方法】トポイソメラーゼI型とII型に対する阻害力、DNA障害性および阻害形式の検討は、トポイソメラーゼと酵素基質(pBR322)に阻害薬を加え、37°C、30分反応後、アガロース電気泳動を行い、DNAの変化量を画像解析ソフト(Analyzer3、ATTO社)で解析する。さらに、分子結合解析ソフト(MOE)を用いて阻害メカニズムをコンピューター・シュミレーション法で解析した。(2)【結果】ガロイール基を付加した新規化合物(3種類)は、トポイソメラーゼを強く阻害し、さらに、既知の阻害薬とは異なる阻害形式(非拮抗阻害)のため、DNA障害を引き起こさなかった。また、MOEの解析からも、阻害薬は酵素(トポイソメラーゼ)の活性中心以外の部位に結合して安定な複合体を形成すると考えられた。(3)【考察】水酸基を多く含むガロイール基付加化合物は、トポイソメラーゼI型とII型の活性をDNAに障害を起こさずに阻害することから、抗がん薬の新しい基本骨格として期待できる。 | KAKENHI-PROJECT-20590109 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20590109 |
Cスター環上の流れ | 統計力学モデルで現れるようなCスター環上の流れについて調べる。「準対角的流れ」「MF流れ」などの概念を導入した。これらはAF環上の流れのなかでも「AF流れ」といわれる行列環上の流れで正確に近似できる流れを一般化する概念である。またそのような流れによる接合積の分類に向けて、そのイデアル構造とトレース構造とを調べる。特に原始イデアル構造が双対流れのもとで単調になる条件を特徴づける。統計力学モデルで現れるようなCスター環上の流れについて調べる。「準対角的流れ」「MF流れ」などの概念を導入した。これらはAF環上の流れのなかでも「AF流れ」といわれる行列環上の流れで正確に近似できる流れを一般化する概念である。またそのような流れによる接合積の分類に向けて、そのイデアル構造とトレース構造とを調べる。特に原始イデアル構造が双対流れのもとで単調になる条件を特徴づける。Cスター環上の流れ(1径数自己同型群)に関してはいろいろな性質が考えられている。そのひとつは内部近似可能という性質で、統計力学モデルから多様な例をもつことも分かっている。しかしながら一般の状況でまだ有効な判定条件、流れ固有の内在的な特徴づけ、をもたない。それと関係がある性質として、準対角という性質を強弱ふたつ導入した(quasi-diagonalとpseudo-diagonal)。これは作用素論に淵源をもつ概念を流れの場合に適用したものである。具体的には、Cスター環と、流れを惹起する非有界の自己随伴作用素とが同時に「準対角的」とみなされる性質となるように定義した(これは計算可能性と関係ある性質とみなされる)。その過程で今の場合定義としてはふたつの可能性があることに気づいた。Cスター環が準対角的で流れが内部近似的ならばその流れは弱準対角的である。Cスター環が単位元をもち流れが弱準対角的ならば、その流れは平衡状態をもつ。流れがAF流れならば、それは強準対角的である。ただし、準対角という概念は連続な変化に対して不変である。このことより、少なくともCスター環がAF環のように射影をたくさんもつ環ならば、内部近似性と弱準対角性とは大いに関係があると予測されるが、その関係をつまびらかにすることは出来ていない。また強弱二つの定義を導入したのだが、弱準対角がほんとうに強準対角にならないことは示していない。しかしながら様々な例を与えるとともに、Cスター環が準対角である場合に知られた幾つかの結果(主にVoiculescuによる)をこの場合に拡張した。以上はD. W. Robinson氏(昨9月に来日)との共同研究である。Cスター環上の流れを物理系の時間発展としてとらえる立場から調べることを目標として、流れの内部摂動での普遍量について考察した。よく知られた普遍量として、Cスター環と流れによる接合積とその上の双対流れがある。(これは竹崎高井の定理により、完全な普遍量である。)現在Cスター環の分類論が進展していることに鑑み、まずこの接合積のCスター環としての特徴づけへの第一歩として、そのトレースすべてからなる錐を、流れそのものから決定することを試みた。無限に広がった物理系では当然に満たされる条件のもとで、これはもとの流れに対する平衡状態と完全に対応する。(Cスター環を特徴づける性質として、K理論、イデアル構造、トレース構造の3者がよく知られている。第1の観点からは、コンヌの理論により、流れの性質をくみ取ることができない。第2の構造については前年に、原始イデアルが双対流れのもとで単調であるための性質を調べた。基本的にはもとの流れに対する基底状態と天井状態から決定されると思われるが、詳細は分からない。イデアル構造はトレース構造とまったく独立というわけではない。)また、今の場合、イデアル構造の複雑さから、これだけでは特徴づけが不可能なことが予想される。これは70年代からこの方面の研究者の関心事であると思われるが、今のところ新たな普遍量は見つかっていない。そのほかに準対角的流れについても考察した(これはある種の有限次元空間での近似可能性を表す)。AF流れ(正確に有限次元Cスター環上の流れで近似できる流れ)を規定するかもしれない性質として、強準対角的流れ(どういう表現も準対角的であるという条件をみたす流れ)が有望であると考える。ただしこれはAF流れよりは緩い条件であるが、両者の正確な関係はまだ分かっていない。その他有限次元空間上の流れでの近似という性質には幾通りもの定義が可能であると考える。ヒルベルト空間上の作用素に対する準対角性(QD)の概念を、具体的流れ(ヒルベルト空間上に表現された流れ)及び(抽象的)流れに対して拡張する。その拡張の仕方として二通りQDとPDが考えられたが、その両者が流れに対する概念としては一致すること示す。具体的流れに対しては両者は異なると思われ、流れのどういう表現がQDを満たすかは流れの性質を探求する上で興味深いが詳細は分からない。さらに、準対角性の概念よりは弱いMF流れの概念を導入した。これは行列環上の流れで一番弱い意味で近似されると思われる流れのことで、MF環上に環の定義に従って自然に定義される。定義よりMF環は可分であるが、ある意味でMF流れに対して普遍的な流れが非可分なC*環上に構成される。 | KAKENHI-PROJECT-20540199 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20540199 |
Cスター環上の流れ | (それに対して行列環上の流れで一番強い意味で近似されると思われる流れがAF流れであり、AF環上に環の定義に従って自然に定義される。)これは統計力学モデルとなりうる時間発展を記述する流れとして一番一般的であると思われる。ただしCスター環が核型の場合はMF流れは準対角流れとなりこの二つの概念は一致する。(この場合MF流れは核型の定義とも両立する。)また双対MF流れの概念も導入した。これは実数軸上行列環に値をとる関数環の平行移動で近似される流れのことで、MF流れの内部摂動類を分類しようとすれば必然的に考察しなければならない流れである。その他にUHF流れについてもそのスペクトル分布にもとづく考察を行い、普遍的UHF流れの性質を探求した。 | KAKENHI-PROJECT-20540199 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20540199 |
画期的な気管挿管器具の開発を目指した研究 | 既存のMEMSセンサを用い、原理実証試作機を開発した。気管モデルを用いた実験の結果、以下の2点が明らかとなった。すなわち、13つのセンサの出力を均一になるようにデバイス先端を屈曲させることで、風上に先端を誘導することができる、2気道と食道の分岐部ではセンサすべての出力が上昇しその後下降するため、万が一食道挿管が行われた際もセンサの出力が大幅に下がることからすぐに食道挿管と判別することが可能である、であった。1は提案手法のアイディアが実現できることを裏付ける結果であり、2は本デバイスにより気管挿管が安全に行うことができることを示す結果となった。全身麻酔や心肺蘇生時の気道確保は生命維持に不可欠な手技であり、確実かつ迅速に行われなければ死に直結する。このため気道確保は100%の成功率が求められる。しかし、ビデオ喉頭鏡など既存の手技・デバイスでは、極端な肥満や猪首、開口制限や小顎症の患者といった気管挿管が困難でかつマスクによる気道確保も難しい患者を数分で死の危険にさらすことがある。我々は、どんな患者に対しても、また、どんな術者でも100%の気道確保を実現することを目指し、既存手法のような視認による気道確保ではなく、患者の呼吸という気管機能の本質を活用した新規デバイスの開発を行うことを本研究の目的として研究を遂行している。これまで、口腔および気道を模したモデルにおいて流速を感知するセンサーを用い最大流速を感知する原理実証および評価・改良を行った。具体的には、口腔内で自発呼吸の吸気流速を感知し最大流速を生む方向に向かうデバイスの開発のため、まず、呼気から声門の方向を特定するセンシング部の作成を行った。呼気から生じる流速センシングシステムの開発は行えており、今後、提案手法の原理検証を行うためにシミュレーターや生体での流速計測、流体数値解析および3Dモデルでの模擬実験を行う予定である。本年度は首ふり運動と直動を組み合わせた挿入機構を開発して初年次に開発したセンシングシステムと統合し、評価実験を行う。これらは強力な医工連携体制のもと、将来的な臨床応用および製品化を目指して精力的に取り組まれる。今後将来的な産学連携や臨床応用に結び付くレベルのデバイス開発を目指している。本研究では,視覚によらない新しい気管挿管法として,患者の呼気を感知し声門へと向かうデバイスを開発している.本年度は提案手法の根幹である呼気の感知と声門方向の特定の原理実証を行うために試作機を開発した.試作機は既存のスタイレットと似た形状・使い方を想定しており,気管チューブを挿管したあとは引き抜くようになっている.先端に3つの風口が点対称に配置してあり,末端のMEMSフローセンサにて風速を検出する.なお,MEMSフローセンサは人の呼吸時の風速を参考に決定した.試作機先端が風の流れに対し垂直である場合はそれぞれの出力は等しくなり,そうでない場合は流れの上流に近いセンサの出力が大きくなるはずである.また,試作機は先端にてリンク機構による1屈曲自由度を持ち,風向きに対し先端を振ることができる.このデバイスを評価するために,口腔を模した簡易モデルを作製した.気道方面から一定風速にて送風し,センシングを行いながら挿管操作を行った.まず,モデル内にて先端を様々な角度に向けたところ,風上に向いた際に3つのセンサの出力が最も大きくなり,かつ出力がほぼ均一になっている結果が得られた.これにより,呼気の感知による声門の特定が可能であるという基本的な原理の実証ができた.一方,食道の先端は閉塞されており風の流れは気道側からしか生じないが,気道と食道の分岐点付近では複雑な風の流れが生じ,先端のわずかな位置変位でも大きくその出力が変わることがわかった.加えて,より風向きを特徴的に捉えるための先端形状の検討を,いくつかの試作機を通し行った.その結果,先端に平面的に風口を配置している場合と比較し,鋭角な先端に斜めに風口が取り付けられている場合はより3つのセンサ出力に差が出ることを見出した.誰でも気管挿管が可能なデバイスの開発を目指し、1)呼気から声門の方向を特定するセンシング技術の開発と、2)声門へ向け進んでいく挿入機構の開発を行い、その後にシステムを統合することで、呼気を検出する新しい挿管デバイスを開発することを考えた。本デバイスのカギとなるのは、3つのセンサで検出される呼吸流から声門の向きを特定するというアイディアであり、東京大学大学院工学系研究科の中川桂一先生の協力を得て既存のMEMSセンサを用い、原理実証試作機を開発した。気管モデルを用いた実験の結果、以下の2点が明らかとなった(髙野ら、「呼吸流の検出をする気管挿管デバイスの基礎検討」、第56回日本生体医工学会大会、2017年)。すなわち、13つのセンサの出力を均一になるようにデバイス先端を屈曲させることで、風上に先端を誘導することができる、2気道と食道の分岐部ではセンサすべての出力が上昇しその後下降するため、万が一食道挿管が行われた際もセンサの出力が大幅に下がることからすぐに食道挿管と判別することが可能である、であった。1は提案手法のアイディアが実現できることを裏付ける結果であり、2は本デバイスにより気管挿管が安全に行うことができることを示す結果となった。 | KAKENHI-PROJECT-16K15677 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K15677 |
画期的な気管挿管器具の開発を目指した研究 | しかし、現状のデバイスは大型であり臨床では用いることができないこと、分泌物によるセンシングの不具合が生じること、実際の患者の状態は様々でありどれくらいの呼吸流が生じているか不明であることなど、いくつかの問題があった。また、声門に向かう直進機構がないこと、センサの出力から声門の位置を特定するアルゴリズムが完成していないこと、医師に挿管の状態を提示するインタフェースがないことなどが不足している点として挙げられた。現在は最も本質的な問題であるデバイスの小型化について、新しいMEMSセンサを開発することで解決を図っている。既存のMEMSセンサを用い、原理実証試作機を開発した。気管モデルを用いた実験の結果、以下の2点が明らかとなった。すなわち、13つのセンサの出力を均一になるようにデバイス先端を屈曲させることで、風上に先端を誘導することができる、2気道と食道の分岐部ではセンサすべての出力が上昇しその後下降するため、万が一食道挿管が行われた際もセンサの出力が大幅に下がることからすぐに食道挿管と判別することが可能である、であった。1は提案手法のアイディアが実現できることを裏付ける結果であり、2は本デバイスにより気管挿管が安全に行うことができることを示す結果となった。昨年度は試作機の開発を行い,提案手法の原理実証を行った.これを踏まえ本年度はより高い完成度のデバイスの開発を行う.それらは大きく,1)風速検出機構の改良,2)先端を屈曲させるためのワイヤ機構の開発,3)医師の操作のためのインターフェースの開発,の3点となる.1の風速検出に関して,現在使用しているフローセンサは先端に取り付けるには大きく,開発した試作機では根元に取り付けているため,風の流れが弱くかつ時間応答が遅いという問題がある.この解決のため,より小型なセンサをデバイス先端に取り付けることにより高い感度かつ早い応答にて流れを検出できるようにする.2のデバイス先端屈曲に関して,試作機ではリンク機構による1自由度屈曲を実現している.屈曲は安定するものの,自由度が不足しており,実際の挿管でスムーズな操作ができるとは考えにくい.そこで本年度に開発するデバイスにはワイヤ機構を採用する.ワイヤはデバイスの2方向に沿わせ,屈曲2自由度を実現する.デバイス根元にワイヤを巻き取るプーリを取り付け,医師が操作可能なものとする.ワイヤ機構の採用により,デバイスの細径化も実現できると考えている.3のインターフェースの開発に関して,現在はオシロスコープの表示をみながら挿管操作を行っている.より直感的な操作を実現するため,どの方向に先端を向けるべきかを示すディスプレイを開発する.コストと軽量化の点から,ディスプレイは十字に並べられたLEDとし,誘導すべき方向のLEDが点灯するような仕組みとする.また,人間工学的に扱いやすい屈曲操作部を設計し実装することで,医師の使いやすいデバイスを目指す.麻酔科学当初計画で必要と考えていた物品が最小限の購入で行われたこと、および臨床研究の準備がまだ整わなかったことが挙げられる。現在作成している気道モデルをより生体に近い形に作成すること、流速感知センサーの狭小化、気道モデルの上質化、生体での流速測定のデバイス購入などに充てたいと考えている。 | KAKENHI-PROJECT-16K15677 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K15677 |
衣料用染料のビリルビンオキシダーゼによる分解 | 酵素を利用した染色廃水処理を検討する目的で、衣料用染料の酵素による脱色実験を行なった。染料としては、10種のアントラキノン染料および8種のアゾ染料の市販品を用いた。酵素としては銅フタロシアニン染料を効率よく分解する糸状菌ミロテシウムベルカリア由来のビリルビンオキシダーゼ(BOと略す)を用いた。アントラキノン染料については、染料水溶液にBO酵素を添加し、紫外及び可視部吸収スペクトルを測定したところ、10種すべての染料が効率よく脱色した。C. I. Acid. Blue.40(A. B.40と略す)については染料を精製し、この水溶液に酵素を添加し40°Cに保ち、一定時間経過後の試料を採取し、酵素を除いた後にHPLC分析を行なったところ、A. B.40は酵素が添加されると直ぐに分解が始まり、分解化合物ピークBを生成しながら脱色が進んでいくことがわかった。保持時間5.2分付近に出現したピークB由来の分解化合物は、酵素添加後から約3時間で最大量となり幾分減りながらも24時間後も比較的大きなピークとして存在していた。フォトダイオードアレイ分析によりこの分解化合物の吸収スペクトルが確認できた。アゾ染料についても同様に、8種それぞれの染料水溶液にBO酵素を添加し、一定時間恒温振とう後に試料液を抜き取りBOを除去し、吸収スペクトル測定とHPLC分析を行う方法によりBOの脱色効果を検討した。BO添加後の染料水溶液の変色具合は、染料によって異なり、供試染料水溶液が濃色から薄い色へと変化したものや、全く色相が変わったもの等があった。これらについて供試染料水溶液の極大吸収波長における吸光度変化からBO添加後24時間の脱色率を計算した場合には6種については9098%であったが、色相が変化したC. I. Direct Black 22とC. I. Direct Violet 48の2種は約40%と低い値となった。しかしながらこれら2種についても同時に実施したHPLC分析の結果から、BO添加後24時間で染料由来のピーク高が90%以上減少したことが明らかになった。以上、本研究では、糸状菌ミロテシウムベルカリア由来の酵素ビリルビンオキシーダーゼが、代表的な衣料用染料であるアントラキノン染料およびアゾ染料を効率よく分解することが明らかになった。酵素を利用した染色廃水処理を検討する目的で、衣料用染料の酵素による脱色実験を行なった。染料としては、10種のアントラキノン染料および8種のアゾ染料の市販品を用いた。酵素としては銅フタロシアニン染料を効率よく分解する糸状菌ミロテシウムベルカリア由来のビリルビンオキシダーゼ(BOと略す)を用いた。アントラキノン染料については、染料水溶液にBO酵素を添加し、紫外及び可視部吸収スペクトルを測定したところ、10種すべての染料が効率よく脱色した。C. I. Acid. Blue.40(A. B.40と略す)については染料を精製し、この水溶液に酵素を添加し40°Cに保ち、一定時間経過後の試料を採取し、酵素を除いた後にHPLC分析を行なったところ、A. B.40は酵素が添加されると直ぐに分解が始まり、分解化合物ピークBを生成しながら脱色が進んでいくことがわかった。保持時間5.2分付近に出現したピークB由来の分解化合物は、酵素添加後から約3時間で最大量となり幾分減りながらも24時間後も比較的大きなピークとして存在していた。フォトダイオードアレイ分析によりこの分解化合物の吸収スペクトルが確認できた。アゾ染料についても同様に、8種それぞれの染料水溶液にBO酵素を添加し、一定時間恒温振とう後に試料液を抜き取りBOを除去し、吸収スペクトル測定とHPLC分析を行う方法によりBOの脱色効果を検討した。BO添加後の染料水溶液の変色具合は、染料によって異なり、供試染料水溶液が濃色から薄い色へと変化したものや、全く色相が変わったもの等があった。これらについて供試染料水溶液の極大吸収波長における吸光度変化からBO添加後24時間の脱色率を計算した場合には6種については9098%であったが、色相が変化したC. I. Direct Black 22とC. I. Direct Violet 48の2種は約40%と低い値となった。しかしながらこれら2種についても同時に実施したHPLC分析の結果から、BO添加後24時間で染料由来のピーク高が90%以上減少したことが明らかになった。以上、本研究では、糸状菌ミロテシウムベルカリア由来の酵素ビリルビンオキシーダーゼが、代表的な衣料用染料であるアントラキノン染料およびアゾ染料を効率よく分解することが明らかになった。酵素を利用した染色廃水の処理方法を検討する目的で染料の酵素による脱色実験を行った。 | KAKENHI-PROJECT-13680130 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13680130 |
衣料用染料のビリルビンオキシダーゼによる分解 | 酵素としてはミロテシウムベルカリア由来のビリルビンオキシダーゼを、染料としてはアントラキノン系12種(C.I.Acid Blue 25,40,41,45,80,138,C.I.Acid Green 25,27,C.I.Reactive Blue 2,4,5,19),アゾ系10種(C.I.Direct Blue 6,15,C.I.Direct Green 59,C.I.Direct Violet 48,C.I.Direct Red 2,C.I.Direct Yellow 86,C.I.Direct Black 22,51,C.I.Reactive Red 120,C.I.Reactive Black 5),フタロシアニン系1種(C.I.Direct Blue 86),およびC.I.Direct Blue 106,の24種を用い、それぞれの水溶液に酵素を添加し、一定時間経過後の水溶液の吸収スペクトル変化およびHPLC変化から脱色過程を追跡した。実験した22種は数時間で脱色または変色が生じたが、C.I.Direct Yellow 86,C.I.Reactive Red 120の2種は、ほとんど変化が見られなかった。脱色または変色をした染料についてはHPLCによる分析条件の詳細な検討を行っているが、入手した染料の純度があまり良くないので染料の精製に時間が掛かること、および染料そのものの、および酵素による脱色反応によって生じた中間体の保持時間が短い等のために、中間体を分離することが困難な染料が多かった。条件については現在も検討を続けている。この中でフタロシアニン系のC.I.Direct Blue 86については、銅フタロシアニンに発煙硫酸を作用させて製造した異性体を多く含む市販品とは異なった合成法によって造った純度の高い染料を入手し、この染料に対する酵素による脱色過程の追跡を行ったところ、染料水溶液のHPLCには一つのピーク(保持時間3.75分)のみが、また、酵素添加後24時間経過した完全に脱色した水溶液のHPLCからは前とは別のピーク(保持時間4.21分;吸収特性、およびHPLC特性はo-フタル酸と類似)一つのみが出現した。平成14年度にはこの反応生成物を分取し構造解析を進める予定である。銅フタロシアニン染料に対して分解能を有する、糸状菌ミロテシウムベルカリア由来の酵素である、ビリルビンオキシダーゼ(BOと略す)に因る衣料用染料の分解について検討した。酵素による衣料用染料の分解に関する他機関からの報告例としては過酸化水素による漂白処理にペルオキシダーゼを併用する系に関するものは多いが酵素単独で衣料用染料を分解する系に関する報告例は少なくラッカーゼに関する報告例が見られる程度でしかも分解率が低かったが、本BO酵素の場合には銅フタロシアニン染料を分解するだけでなく、アントラキノン系やアゾ系の多種の染料に対しても強い分解能を有する事が本研究により明らかになった。1,いずれの染料についてもHPLCに因る脱色過程の追跡は以下の分析条件で可能であった。カラム(ODS;6Φ×200mm)、溶離液アセトニトリル:メタノール:0.05Mリン酸水素アンモニウム水溶液3:1:6、流量1.5ml/min、注入量20μml、ポンプ圧65kgf/cm^2、分析温度20°C。2,BO酵素によりいずれの染料も著しく吸収スペクトルが変化し、無色になったものA.G.25,A.G.27,A.B.25,R.B.4,R.B.19,淡黄色になったものA.B.41,A.B.45,D.G.59,淡赤色になったものA.B.40,R.B.2,D.B.6,D.B.15,色相は変わらず薄くなったものA.B.80,黒から濃い赤になったものR.BK.5,黒から濃い黄色になったものD.BK.51,赤から濃い黄色になったものD.B.2があった。3,HPLC分析により、いずれの染料についてもBOによる分解が確認できた。4,ピークの分離の良い染料について分解生成物の分取を試みている。 | KAKENHI-PROJECT-13680130 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13680130 |
半導体自由表面の表面準位分布の非接触測定とそれにもとづく表面の工学的制御 | 本研究では、フォトルミネセンス(PL)測定による半導体表面準位密度分布の評価法の確立と表面の工学的制御に関して検討を行い、以下に示す成果を得た。(1)バンド端PL強度の励起光強度依存性の測定と表面・界面準位を介した再結合過程の厳密な計算機シミュレーションの比較から、準位密度分布を非接触・非破壊で定量的に評価することが可能な新しい方法として、フォトルミネセンス表面準位スペクトロスコピー(PLS^3)法を開発した。(2)新しいPLS^3法を用いて、化学エッチング、化学的表面処理、アニーリングが行われた表面など、従来測定が不可能であった半導体「自由表面」やMBE結晶成長、光CVD絶縁膜堆積など超高真空プロセス中の表面・界面の準位密度分布をはじめて明らかにした。また、これにより、本手法の有用性を実証した。(3)MBE GaAs再成長界面およびGaAs系ヘテロ界面のPLS^3測定,CVシミュレーションから、これらの界面には、DIGSモデルの特性エネルギーEHOに極小値を持つU字形の連続準位が形成されること、また、この準位が成長中断界面,ヘテロ界面で観測される種々の異常性の原因であることを明らかにした。(4)GaAs表面に形成したショットキー障壁の構造・組成・結合・電子状態をRHEED,XPS,C-V,I-V法等で評価し、界面層の効果を考慮したショットキー障壁の新しい形成機構を提唱した。また、界面層として、不純物をドープしたSi超薄膜界面制御層(Si ICL)を用いることにより、GaAsショットキー障壁高が広範囲に、しかも、精密に制御できることを示した。さらに、GaAs表面をフッ酸処理した後、低温でPCVD SiO_2膜を堆積すると、アニール時のSiO_2/GaAs界面反応が大幅に抑制されることを明らかにした。本研究では、フォトルミネセンス(PL)測定による半導体表面準位密度分布の評価法の確立と表面の工学的制御に関して検討を行い、以下に示す成果を得た。(1)バンド端PL強度の励起光強度依存性の測定と表面・界面準位を介した再結合過程の厳密な計算機シミュレーションの比較から、準位密度分布を非接触・非破壊で定量的に評価することが可能な新しい方法として、フォトルミネセンス表面準位スペクトロスコピー(PLS^3)法を開発した。(2)新しいPLS^3法を用いて、化学エッチング、化学的表面処理、アニーリングが行われた表面など、従来測定が不可能であった半導体「自由表面」やMBE結晶成長、光CVD絶縁膜堆積など超高真空プロセス中の表面・界面の準位密度分布をはじめて明らかにした。また、これにより、本手法の有用性を実証した。(3)MBE GaAs再成長界面およびGaAs系ヘテロ界面のPLS^3測定,CVシミュレーションから、これらの界面には、DIGSモデルの特性エネルギーEHOに極小値を持つU字形の連続準位が形成されること、また、この準位が成長中断界面,ヘテロ界面で観測される種々の異常性の原因であることを明らかにした。(4)GaAs表面に形成したショットキー障壁の構造・組成・結合・電子状態をRHEED,XPS,C-V,I-V法等で評価し、界面層の効果を考慮したショットキー障壁の新しい形成機構を提唱した。また、界面層として、不純物をドープしたSi超薄膜界面制御層(Si ICL)を用いることにより、GaAsショットキー障壁高が広範囲に、しかも、精密に制御できることを示した。さらに、GaAs表面をフッ酸処理した後、低温でPCVD SiO_2膜を堆積すると、アニール時のSiO_2/GaAs界面反応が大幅に抑制されることを明らかにした。現在、工学的に重要な半導体自由表面、すなわち、エッチング、ビ-ム照射、リソグラフィ-工程などが加えられた表面や化学的表面処理が施された表面、結晶成長や再成長表面の表面準位分布を直接測定する手段は存在しない。本研究は、従来、定性的にしか用いられていなかったフォトルミネセンス(PL)の発光機構と測定法に詳細な検討を加え、(1)ルミネセンス測定により、半導体自由表面の表面準位分布を非接触・非破壊に測定する新手法を確立すること、さらに(2)新手法により、従来測定されていない各種自由表面の表面準位分布を明らかにし、表面準位発生機構と発生を工学的に抑制するための知見を得ることを目的とする。平成3年度には、このような新しい原理にもとづく測定法そのものの確立を目標に、研究を推進し次の成果を得た。(1)表面再結合に関する厳密な計算機シミュレ-ションプログラムを開発し、PLデ-タの定量的解釈の理論的基礎となるPL表面準位スペクトロスコピ-法を確立した。これにより、フォトルミネセンスの発光効率の照射光強度依存性から、表面準位の分布形状、表面準位密度、フェルミ準位のピンニング位置が決定される。(2)コンピュ-タ制御によりPL発光効率を自動測定するシステムを完成した。このシステムでは、既存のMBE/XPS/CVDシステムに接続されたPLチャンバにより、InーSitu測定が可能であると共に、PL測定中の表面の光化学変化が防止される。(3)種々の半導体自由表面の形成とRHEED,XPS評価を行なった。(4)CーV測定が可能な絶縁体ー半導体界面についてPL測定を行い、新しい測定法の妥当性を検討・確立した。(5)Si,GaAs,InP,InGaAsの種々の表面について、PL測定を行い表面準位分布を測定した。 | KAKENHI-PROJECT-03452147 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03452147 |
半導体自由表面の表面準位分布の非接触測定とそれにもとづく表面の工学的制御 | 本年度は、主として、代表者らが新たに開発したフォトルミネセンス表面準位スペクトロスコピー(PLS^3)法を用いて、従来測定されていない各種プロセス後の半導体表面・界面の準位密度分布を定量的に評価するとともに、表面の工学的制御手法を確立する研究を行い、以下の新たな知見を得た。(1)代表者らが確立したPLS^3法を用いて、自然酸化面、化学エッチング面、化学的処理面、アニール面など、これまで測定されたことがない、GaAs、InP、InGaAs「自由表面」の表面準位密度分布やMBE結晶成長、光CVD絶縁膜堆積など超高真空プロセス中の表面・界面の準位密度分布をはじめて明らかにした。(2)PLS^3法を適用することにより、種々の条件で形成した熱酸化、プラズマCVD SiO_2/Si界面およびSi自由表面における再結合速度の照射光強度依存性を明らかにした。これにより太陽電池の動作状態における表面再結合速度の評価がはじめて可能となった。(3)MBE GaAs成長中断界面の実効準位密度分布がPLS^3法を用いて測定可能であることを示すとともに、成長中断界面に見られるキャリア密度分布の異常性は、従来提唱されているモデルではなく、DIGSモデルの特性エネルギーE_<HO>に極小値をもつU字形の連続準位の形成によるものであることを明らかにした。(4)不純物をドープした、MBE Si超薄膜界面制御層(Si ICL)を金属/GaAs界面に挿入することにより、GaAsショットキー障壁高が広範囲にわたって、精密に制御できることを示した。(5)GaAs表面をフッ酸処理した後、低温でPCVD SiO_2膜を堆積すると、アニール時のSiO_2/GaAs界面反応が大幅に抑制されることを示した。 | KAKENHI-PROJECT-03452147 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03452147 |
授業研究を通じたプロフェッショナル・キャピタルの構築に関する実証的研究 | 昨年度は研究の2年目として、国内の授業研究事例をプロフェッショナル・キャピタルの枠組みで分析した。初年度は授業研究の指導者を対象に調査し、授業研究の焦点が指導者により異なること、それをプロフェッショナル・キャピタルの枠組みで説明できることを示したが、学校で行われている授業研究も同様の分析が可能であることが示された。日本の授業研究は伝統的に教材研究を中心にした指導法の検討を行ってきた。それに対し近年は、授業における子どもの学びに焦点をあてた分析を行う傾向がある。子どもの学びに焦点をあてるとき、指導法の観点が弱くなる場合と指導法の観点と子どもの学びの双方に焦点をあてる場合がある。現実的には、1旧来型の指導法のみに焦点をあてた授業研究、2子どもの学びのみに焦点をあてた授業研究、3子どもの学びの姿を見取り、指導法の改善を考える授業研究の3パターンに分類できると思われる。授業研究において目指している教師の力量(ヒューマン・キャピタル)、個々の教師の内省や独自の判断をどの程度認めるか(ディシジョナル・キャピタル)、教師間の信頼や相互研鑽の密度(ソーシャル・キャピタル)が相互に影響し合う関係を、13のパターンを代表する学校を事例として分析した。1のパターンの学校では教師の知識を外部に求める傾向(ディシジョナル・キャピタルの低下)、教師間の関係(ソーシャル・キャピタル)が希薄になる傾向が見られた。3を目指す学校では、結果として2のパターンにとどまることがあること、それでもディシジョナル・キャピタルとソーシャル・キャピタルは増加する様子を見ることができた。2年目の事例分析は、分析対象の学校数が4校と限られた事例であったが、それぞれの学校の歴史的経緯を踏まえた分析を行うことができた。分析を通じて、日本の文脈に即した我々独自の枠組みを構築する必要性が認識されてきているが、それを生み出すまでに至っていない(現状はハーグリーブスの枠組みを追認し、それをもとに授業研究の多様性を分析するにとどまっている)。3年目は質問紙調査を予定している。そのためにも分析枠組みの練り上げが急務である。今後は質問紙調査を予定しているが、そのための分析枠組みを見直す必要がある。ハーグリーブスがプロフェッショナル・キャピタルの概念を構築したのは、シンガポールやカナダ、フィンランド等の教育行政や学校運営の状況を観察した上でのことである。本研究は、日本の授業研究の多様性を解明するだけでなく、それを改善する方向性を示すことを意図しており、ハーグリーブスの枠組みを超えた独自の枠組みを構築する必要がある。昨年度は研究の初年度として、プロフェッショナル・キャピタルの文献研究と授業研究に取り組む研究者を対象にした調査を実施した。自由記述で行われた研究者調査の回答内容をキーワードを元に分析したところ、ペダゴジー重視対子ども重視、教師の成長重視対組織重視などの対立軸が浮かび上がった。この対立軸は、ヒューマン・キャピタル、ソーシャル・キャピタル、ディシジョナル・キャピタルという本研究の枠組みに添うものである。ヒューマン・キャピタル重視の授業研究は授業者の指導力量向上、ソーシャル・キャピタル重視の授業研究は組織開発を目的にしたワークショップ式授業研究や学校全体で取り組む校内研究、ディシジョナル・キャピタル重視の授業研究は子どもの実態に応じた授業構築などが考えられる。研究者調査により、授業研究の指導者はプロフェッショナル・キャピタルの一部の要素に焦点を当てた指導や考察を行っていることが示された。次年度以降はこの枠組みを使って学校の授業研究体制の分析を行っていく予定である。初年度の進展は順調だったと言える。ただし、予定していた授業研究の事例収集が不十分となっているため、次年度以降の調査計画を若干修正しながら進めたい。昨年度は研究の2年目として、国内の授業研究事例をプロフェッショナル・キャピタルの枠組みで分析した。初年度は授業研究の指導者を対象に調査し、授業研究の焦点が指導者により異なること、それをプロフェッショナル・キャピタルの枠組みで説明できることを示したが、学校で行われている授業研究も同様の分析が可能であることが示された。日本の授業研究は伝統的に教材研究を中心にした指導法の検討を行ってきた。それに対し近年は、授業における子どもの学びに焦点をあてた分析を行う傾向がある。子どもの学びに焦点をあてるとき、指導法の観点が弱くなる場合と指導法の観点と子どもの学びの双方に焦点をあてる場合がある。現実的には、1旧来型の指導法のみに焦点をあてた授業研究、2子どもの学びのみに焦点をあてた授業研究、3子どもの学びの姿を見取り、指導法の改善を考える授業研究の3パターンに分類できると思われる。授業研究において目指している教師の力量(ヒューマン・キャピタル)、個々の教師の内省や独自の判断をどの程度認めるか(ディシジョナル・キャピタル)、教師間の信頼や相互研鑽の密度(ソーシャル・キャピタル)が相互に影響し合う関係を、13のパターンを代表する学校を事例として分析した。1のパターンの学校では教師の知識を外部に求める傾向(ディシジョナル・キャピタルの低下)、教師間の関係(ソーシャル・キャピタル)が希薄になる傾向が見られた。3を目指す学校では、結果として2のパターンにとどまることがあること、それでもディシジョナル・キャピタルとソーシャル・キャピタルは増加する様子を見ることができた。2年目の事例分析は、分析対象の学校数が4校と限られた事例であったが、それぞれの学校の歴史的経緯を踏まえた分析を行うことができた。 | KAKENHI-PROJECT-17H02674 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H02674 |
授業研究を通じたプロフェッショナル・キャピタルの構築に関する実証的研究 | 分析を通じて、日本の文脈に即した我々独自の枠組みを構築する必要性が認識されてきているが、それを生み出すまでに至っていない(現状はハーグリーブスの枠組みを追認し、それをもとに授業研究の多様性を分析するにとどまっている)。3年目は質問紙調査を予定している。そのためにも分析枠組みの練り上げが急務である。2年目は初年度に不十分だった事例調査を継続し、事例調査の成果を元にプロフェッショナル・キャピタルの枠組みとその構築状況を測る指標を開発する。この指標を活用して学校の授業研究実態を調査する調査票を作成する。今後は質問紙調査を予定しているが、そのための分析枠組みを見直す必要がある。ハーグリーブスがプロフェッショナル・キャピタルの概念を構築したのは、シンガポールやカナダ、フィンランド等の教育行政や学校運営の状況を観察した上でのことである。本研究は、日本の授業研究の多様性を解明するだけでなく、それを改善する方向性を示すことを意図しており、ハーグリーブスの枠組みを超えた独自の枠組みを構築する必要がある。 | KAKENHI-PROJECT-17H02674 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H02674 |
十九世紀琉球王国をめぐる国際情勢 | 本年度の研究実績は大きく以下の二点ある。第一に、琉球西洋間交渉における通事の働きを分析した前年度の研究実績を、投稿論文の形に結実させた。その上で、上記課題をさらに発展させ、同時期の長崎オランダ通詞との比較を加えて、近世から近代への時代転換期における東アジアというより広い舞台において、通事が果たした役割を特に前近代との比較を通して検討し、国際シンポジウムにおいて英語発表を行った。第二に、琉球西洋関係に続いて、同時期の琉球-中国関係の研究に入った。その中でも、琉球から清に対して行われた「逗留西洋人退去請願運動」を取り上げた。これは、道光24年(1844年)仏アルクメーヌ号の来航と宣教師フォルカードの逗留を嚆矢として、彼の後継者であるルテュルデ,アドネ、道光26年(1846年)イギリス人宣教師ベッテルハイム一家が逗留したこと、更には仏提督セシルによる和親・通商要求などを受けて、宣教師たちの退去及び交渉取りやめを、清の力に頼って果たそうと琉球側が複数回、あるいは通常の進貢使節に言付けて、あるいは特使を仕立てて派遣し、清に働きかけた一連の動きである。従来の研究が「王府」「福建当局」「皇帝」間の文書のやり取りを中心に、国家間の大きな枠組みでこの問題を論じてきたのに対し、本研究では、請願運動が主に行われた場であり、琉清間交渉の主たる場であった福州に注目し、実際に派遣された琉球側の使者と、福州において彼らに対応した清朝側諸衙門の役人(胥吏・幕友)たちの働きの実態とその意義を中心に考察した。これを通して、第一に、伝統的な朝貢関係の下で、琉球がいかなる手段を用いて自らの願いを通したのかを解明するとともに、第二に、福州駐在イギリス領事の存在が琉清双方に与えた影響を考察することで、「伝統」と「近代」の交錯する場としての福州を提示し、そこにおける琉球の主体的な働きを明らかにすることが期待される。本年度の主要研究課題である琉球-中国関係について、本来目標としていた年度内の論文投稿には至らなかった。しかしながら、未刊行史料『尚家文書』をはじめ、史料の読解は順調に進みつつある。特に、当該時期の琉球史を研究するにあたり、最重要史料と目される『尚家文書』は、刊行されている『琉球王国評定所文書』中には未収録の史料が多く、様々な新史実を発掘できている。例えば、尚家文書六二〇号「異國一件唐より御問合抜書」は、1843年(道光23年)から1852年(咸豊2年)の時期に、福州あるいは北京における琉球使節が本国へ送った業務報告の一部であり、そのほとんどが西洋人退去請願に関わるものである。同史料中には全23件の報告が含まれており、そこには各使節の福州における交渉過程が極めて詳細に記されている。研究を進めるにあたり、沖縄において尚家文書等の史料収集を行い、また国立国会図書館で史料・文献調査を数ヶ月に一度の頻度で行った。本年度も引き続き、若手琉球史研究者の会合に定期的に参加し、情報交換や自らの研究に対する助言を得た。東洋史研究会大会、東方学会大会等全国規模の学会、シンポジウムへも積極的に参加した。引き続き、琉球・清(中国)・薩摩(日本)・西洋の各者の関係性を探っていく。特に、琉球-薩摩間の関係性を対象とする。これまで検討してきた琉球-西洋、琉球-清朝の関係において、申請者は実際に接触・交渉が行われた「場」とそれを担った「人員」に着目し、琉西関係においては琉球側の通事係を、琉清関係においては福州における琉球使節と河口通事、中国側の胥吏・幕友といった人員に着目してきた。本年度の研究もこれにならい、1当該時期における鹿児島琉球館の役割を、特にそこに駐在した琉球役人たちの側面から検討するほか、2薩摩の琉球における出先機関である在番奉行についても、従来の研究が見出した課題を展開させ、薩摩藩の影響力を正しく把握した上で、琉球が発揮し得た主体性について考える。これまでの研究を統合するにあたって、3通事係を輩出した首里の中下級士族、存留通事ら渡唐使節として中国へ渡った久米村人、鹿児島琉球館に派遣される役人たちが、琉球国内において、どのように相互に位置付けられていたかを分析する。史料については、前年度に引き継づき、未刊行史料である尚家文書の利用を中心に据える。現在尚家文書は沖縄県内のみにて入手が可能なため、沖縄への史料調査は複数回必要となると見込まれる。合わせて、鹿児島における現地調査も不可欠である。琉薩関係史は重厚な先行研究の蓄積を有する分野であり、関連書籍も膨大であるため、引き続き必要な資料収集につとめていきたい。また、申請者の本年度のテーマについて、沖縄県内では数多くのシンポジウムや学会が開催されており、これらに積極的に参加し、自らも発表を行う。同時に、申請者の研究は常に東アジア地域という広がりを意識したものであって、東洋史やグローバルヒストリーなどを冠した学術交流についても、積極的に参加していきたい。本研究は「十九世紀琉球国をめぐる国際情勢」を主題とし、東アジアが近世・近代転換期にあった当該時期の琉球に焦点をあて、琉球をめぐる国際情勢を包括的に把握することで、「東アジアの近代」を再構築、評価するための視座を獲得することを目指す。本研究は十九世紀前中期に琉球が構築・維持した様々な関係性に着目し、これを解き明かす。 | KAKENHI-PROJECT-17J10174 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J10174 |
十九世紀琉球王国をめぐる国際情勢 | 具体的には、琉球と西洋諸国・琉球と清・琉球と薩摩、という三つの関係性(一対一ではなく、四者が絡み合う場合も当然ありうる)を丁寧に検証し統合して、一つの時代像を提示することが重要となる。本年度は、琉球-西洋関係を主に取り扱った。研究方法としては、第一に、琉球側の根本資料である『琉球王国評定所文書』を精読し、その中に見える西洋船の来航・西洋人滞在関連史料は全て目を通し、整理した。第二に、西洋側の史料として艦隊の航海記、逗留宣教師の日記、新聞等の出版物を収集し、精読して整理した。第三に、琉球側が要請した英語・仏語を操る通事の存在に焦点をあて、通事が果たした役割の大きさを主題とすることで翻って琉球-西洋交渉の特徴、意義を垣間見ようと試みた。以上、本年度の研究を通して、従来顧みられることの少なかったこれら「通事」職の役割を解明し、彼らが十九世紀琉球の西洋船(人)対応において中心的な役割を果たしていたことを示し、この時代に構築された琉球西洋関係の一端を窺い知れた。研究成果は、まず10月に京都大学人文研究所「転換期中国における社会経済制度」共同研究班において発表した。続いて研究班での指摘をもとに論文の執筆を進め、既に最後の微修正を経て投稿を待つ段階である。上記の琉球と西洋諸国・琉球と清・琉球と薩摩、という三つの関係性のうち、琉球ー西洋関係について網羅的に史料を入手・精読し、その全体像を把握することができた。また、本年度中の公刊に至らなかったものの、論文化の作業も進んでいる。研究のかたわら、本年度は東洋史研究会大会、東方学会大会、明清史夏合宿といった全国規模の学会、シンポジウムに参加し、東アジア史という大きなフィールドでの研究の最前線を常に把握しようとつとめた。本年度の研究実績は大きく以下の二点ある。第一に、琉球西洋間交渉における通事の働きを分析した前年度の研究実績を、投稿論文の形に結実させた。その上で、上記課題をさらに発展させ、同時期の長崎オランダ通詞との比較を加えて、近世から近代への時代転換期における東アジアというより広い舞台において、通事が果たした役割を特に前近代との比較を通して検討し、国際シンポジウムにおいて英語発表を行った。第二に、琉球西洋関係に続いて、同時期の琉球-中国関係の研究に入った。その中でも、琉球から清に対して行われた「逗留西洋人退去請願運動」を取り上げた。これは、道光24年(1844年)仏アルクメーヌ号の来航と宣教師フォルカードの逗留を嚆矢として、彼の後継者であるルテュルデ,アドネ、道光26年(1846年)イギリス人宣教師ベッテルハイム一家が逗留したこと、更には仏提督セシルによる和親・通商要求などを受けて、宣教師たちの退去及び交渉取りやめを、清の力に頼って果たそうと琉球側が複数回、あるいは通常の進貢使節に言付けて、あるいは特使を仕立てて派遣し、清に働きかけた一連の動きである。従来の研究が「王府」「福建当局」「皇帝」間の文書のやり取りを中心に、国家間の大きな枠組みでこの問題を論じてきたのに対し、本研究では、請願運動が主に行われた場であり、琉清間交渉の主たる場であった福州に注目し、実際に派遣された琉球側の使者と、福州において彼らに対応した清朝側諸衙門の役人(胥吏・幕友)たちの働きの実態とその意義を中心に考察した。 | KAKENHI-PROJECT-17J10174 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J10174 |
加齢に伴う老化細胞に対する免疫応答システムの変化とその意義の解明 | 本研究課題では、生体内で老化細胞が蓄積すると加齢性疾患を発症するのか、老化細胞の誘導方法が異なると生体内での機能や免疫系との相互作用が異なるのか、について研究を行った。タモキシフェン(TM)投与によって、機能的マーカーであるp16Ink4aの発現を全身で誘導できるマウス(p16-Tgマウス)は、誘導後脱毛や筋力低下、さらには骨量の低下など個体老化で見られる変化が観察された。また、TM投与によって、発がんストレスにより細胞老化を誘導するHRASV12の発現を全身で誘導できるマウス(HRAS-Tgマウス)では、誘導後3-4週間で衰弱死することが判明した。血清検査の結果、HRASを誘導したマウスでは腎不全を示唆するBUN,クレアチニンの増加がみられた。また、p16-Tgマウスでは、上記の腎不全のマーカーには変化はみられず、腎臓は細胞老化の質の違いを観察するのに適した臓器である可能性が高い。また、4-OHTを皮膚塗布することによって、p16Ink4aとHRASを誘導する組織を皮膚上皮細胞のみに限定し観察することにした場合、短期的にはp16過剰発現細胞が減少しないのに比べ、RAS過剰発現細胞は誘導後1-2週間程度で半減する。長期的に観察すると、4-OHT塗布後の皮膚はp16-Tgマウスは毛周期が停止し体毛が生えてこないのに対し、HRAS-Tgマウスは皮膚が肥厚し腫瘍が発生する。腫瘍内部にはHRAS誘導細胞がクラスターを形成しており、初期に除去されなかったHRAS誘導細胞が増殖したことが想定されるが、腫瘍内のHRAS誘導細胞は細胞増殖のマーカーKi67陰性でありその周囲の細胞がKi67陽性であった。さらには、HRAS誘導細胞はDNAダメージマーカーが陽性であることからも、細胞老化により増殖停止している可能性が高い。老化細胞が周囲の細胞をがん化させる可能性について現在調査中である。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。In vitroにおいて研究が進められてきた細胞老化は、in vivoにおいても細胞老化を起こした細胞(老化細胞)が加齢に伴い蓄積していることが明らかにされ、老化細胞の蓄積が加齢性疾患の原因の一つではないかと考えられるようになってきている。また、発がんストレスにより細胞老化が引き起こされた場合、老化細胞に対する免疫応答の存在を示唆する研究が報告されてきている。本研究課題では、1老齢の個体において老化細胞が除去されることが加齢やそれに伴う疾患に影響を及ぼすのか、2免疫細胞はどのように老化細胞を認識・除去しているのか、3なぜ加齢に伴い免疫系の攻撃を回避した老化細胞が蓄積するのか、以上3点の解明に取り組んでいる。1老齢マウスにおける老化細胞除去の実験系構築のため、前年度に老化細胞の蛍光標識及び薬剤投与による除去を目的とし作製したp16DTR-GFPマウスの解析を行った。しかしながら、マウス個体において加齢に伴うGFP蛍光の増強は見られず、DTRの発現も確認できなかった。p16DTR-GFPマウスでは当初の実験計画を遂行できないと判断し、計画を変更した。2で作製予定であったin vivoで細胞老化を誘導できるトランスジェニックマウス(Tgマウス)と、1の老化細胞を除去できるマウスを組み合わせたTgマウスを作製することにした。このマウスは細胞老化を誘導するHRASV12またはp16をin vivoで過剰発現できることに加え、p16DTR-GFPと同様にGFPとDTRも同時に発現するように設計し作製した。p16とp21のin vivo imagingから、腫瘍により誘導されたmyeloid-derived suppressor cellにおいてp16とp21が発現していることを突き止めた。腫瘍の進展に対し、この細胞種におけるp16/p21の発現が関与していることを示唆するデータも得られている。In vitroにおいて、正常な体細胞はDNAダメージを受けると細胞老化を起こすことが知られている。近年、in vivoにおいても細胞老化を起こした細胞(老化細胞)が加齢に伴い蓄積していることが明らかにされ、老化細胞の蓄積が加齢性疾患の原因の一つではないかと考えられるようになってきている。また、発がんストレスにより細胞老化が引き起こされると、老化細胞に対する免疫応答の存在を示唆する研究が報告されてきている。そこで、本研究課題では、加齢に伴う様々な難治疾患の予防・克服を最終目的とし、生体内で老化細胞が蓄積すると加齢性疾患を発症するのか、免疫細胞はどのように老化細胞を認識・除去しているのか、なぜ加齢に伴い免疫系の攻撃を回避した老化細胞が蓄積するのか、の解明に取り組んでいる。免疫系における老化細胞の除去・認識メカニズムを探るため、まずは、生体内で誘導された老化細胞がどのようなタイミングで減少するのか、または維持されるのか、を継時的に観察した。p16-Tgマウスにおいて、GFPをもとに、末梢血中にどれだけ老化細胞が存在するかモニターした。TM投与によって誘導された老化細胞の割合は、誘導直後から23週後には半減してしまったが、その後は15週後まで老化細胞が維持されていた。本研究課題の肝にあたるp16-TgマウスとHRAS-Tgマウスが完成し、生体内での細胞老化誘導とそれに伴う個体の表現型が観察できたことは大きい。生体内で急激に誘導された老化細胞の挙動についても、実験系が固まり、老化細胞が免疫系により除去されるのか、そのまま維持されるのかについて観察できるようになったことは進展である。 | KAKENHI-PROJECT-14J10280 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J10280 |
加齢に伴う老化細胞に対する免疫応答システムの変化とその意義の解明 | また、昨年度から引き続き、本研究課題のin vivo imagingのデータから派生して、担がんマウスにおいてmyeloid-derived suppressor cell (MDSC)が細胞老化の機能的マーカーであるp16Ink4a及びp21Cip1/Waf1を発現しており、がんの進展を促進する機能を持っていることを発見し、そのメカニズムを探った。これによりMDSCのがん部への遊走能にp16Ink4a及びp21Cip1/Waf1が関与しており、腫瘍の進展に影響していることが判明した。この結果は現在投稿準備中であり、一つの大きな成果である。本研究課題では、生体内で老化細胞が蓄積すると加齢性疾患を発症するのか、老化細胞の誘導方法が異なると生体内での機能や免疫系との相互作用が異なるのか、について研究を行った。タモキシフェン(TM)投与によって、機能的マーカーであるp16Ink4aの発現を全身で誘導できるマウス(p16-Tgマウス)は、誘導後脱毛や筋力低下、さらには骨量の低下など個体老化で見られる変化が観察された。また、TM投与によって、発がんストレスにより細胞老化を誘導するHRASV12の発現を全身で誘導できるマウス(HRAS-Tgマウス)では、誘導後3-4週間で衰弱死することが判明した。血清検査の結果、HRASを誘導したマウスでは腎不全を示唆するBUN,クレアチニンの増加がみられた。また、p16-Tgマウスでは、上記の腎不全のマーカーには変化はみられず、腎臓は細胞老化の質の違いを観察するのに適した臓器である可能性が高い。また、4-OHTを皮膚塗布することによって、p16Ink4aとHRASを誘導する組織を皮膚上皮細胞のみに限定し観察することにした場合、短期的にはp16過剰発現細胞が減少しないのに比べ、RAS過剰発現細胞は誘導後1-2週間程度で半減する。長期的に観察すると、4-OHT塗布後の皮膚はp16-Tgマウスは毛周期が停止し体毛が生えてこないのに対し、HRAS-Tgマウスは皮膚が肥厚し腫瘍が発生する。腫瘍内部にはHRAS誘導細胞がクラスターを形成しており、初期に除去されなかったHRAS誘導細胞が増殖したことが想定されるが、腫瘍内のHRAS誘導細胞は細胞増殖のマーカーKi67陰性でありその周囲の細胞がKi67陽性であった。さらには、HRAS誘導細胞はDNAダメージマーカーが陽性であることからも、細胞老化により増殖停止している可能性が高い。老化細胞が周囲の細胞をがん化させる可能性について現在調査中である。老齢マウスにおける老化細胞除去の実験系のために作製したp16DTR-GFPマウスにおいて、蛍光タンパク質のGFPと老化細胞除去のためのdiphtheria toxin receptor (DTR)の発現量はともに著しく低く、このマウスでは目的を果てせないことが判明した。この結果は本研究課題の達成度の観点において大きなマイナスポイントである。そこで、当初予定していた、マウスの生体内で細胞老化を誘導するトランスジェニックマウス作製において、DTRも同時に発現し人為的に老化細胞を除去できるように変更した。これにより、老齢個体における実験系は不可能であるものの、生体内で老化細胞を誘導・除去できるため、本研究目的の主要な部分は解析可能になった。 | KAKENHI-PROJECT-14J10280 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J10280 |
居住環境における微量化学物質の生物学的モニタリング | 研究目的新築建造物内に居住・就労する人々に様々な健康障害が発生する「シックハウス症候群」が問題となっている。本研究は、居住環境に存在する化学物質の健康影響を予知し、予防対策を立案するための一助とすることを目的とする。今年度はトルエン、キシレン、スチレン等芳香族の揮発性有機化合物(VOC)の尿中代謝物を対象として、GC/MSによる微量定量法を検討した。実験方法測定対象とした尿中代謝物は、馬尿酸(HA):トルエン、o-,m-,p-メチル馬尿酸(o-,m-,p-MHA):キシレン、マンデル酸(MA)およびフェニルグリオキシル酸(PGA):スチレンとした。試料尿に内部標準(I.S.)としてベンゾイルロイシンを添加し、酸性条件下でジエチルエーテルで抽出した。溶媒留去後、塩酸-メタノール法でメチルエステル誘導体化を行い、ペンタンで抽出・溶媒留去した。その残渣を酢酸エチルに溶解し、DB-1キャピラリーカラム付きGC/MSを用いて、カラム温度150°Cから250°Cまで10°C/minで昇温分析した。SIMモード分析は、m/z=105(HA)、m/z=119(MHA)、m/z=107(MA)、m/z=105(PGA)を選択した。また気中濃度との対応を検討するために、アクティブ法により活性炭チューブエアーサンプラーを用いてVOCを捕集し、二硫化炭素で溶出してGC/MS法で分離定量を行なった。結果と考察GC/MS法により、尿中代謝物6種及びI.S.は良好なピークとして分離溶出した。SIMモードでの検出限界は注入量として40450pgであり、検量線は良好な直線性を示した。次にトルエン、キシレン、スチレンなどのVOCが高濃度に検出された新築建物に就労する人の尿中から、HA、MHA、MA、PGAの全てが検出された。HAは食事に由来する量も多く微量のトルエン曝露の指標とはなり得ないが、低濃度のキシレン及びスチレンの曝露評価は可能となる。まとめ今回開発したGC/MS法は高感度であり、動物およびヒトにおける室内VOCに対する生物学的曝露モニタリングとしての有効性が確認できた。研究目的新築建造物内に居住・就労する人々に様々な健康障害が発生する「シックハウス症候群」が問題となっている。本研究は、居住環境に存在する化学物質の健康影響を予知し、予防対策を立案するための一助とすることを目的とする。今年度はトルエン、キシレン、スチレン等芳香族の揮発性有機化合物(VOC)の尿中代謝物を対象として、GC/MSによる微量定量法を検討した。実験方法測定対象とした尿中代謝物は、馬尿酸(HA):トルエン、o-,m-,p-メチル馬尿酸(o-,m-,p-MHA):キシレン、マンデル酸(MA)およびフェニルグリオキシル酸(PGA):スチレンとした。試料尿に内部標準(I.S.)としてベンゾイルロイシンを添加し、酸性条件下でジエチルエーテルで抽出した。溶媒留去後、塩酸-メタノール法でメチルエステル誘導体化を行い、ペンタンで抽出・溶媒留去した。その残渣を酢酸エチルに溶解し、DB-1キャピラリーカラム付きGC/MSを用いて、カラム温度150°Cから250°Cまで10°C/minで昇温分析した。SIMモード分析は、m/z=105(HA)、m/z=119(MHA)、m/z=107(MA)、m/z=105(PGA)を選択した。また気中濃度との対応を検討するために、アクティブ法により活性炭チューブエアーサンプラーを用いてVOCを捕集し、二硫化炭素で溶出してGC/MS法で分離定量を行なった。結果と考察GC/MS法により、尿中代謝物6種及びI.S.は良好なピークとして分離溶出した。SIMモードでの検出限界は注入量として40450pgであり、検量線は良好な直線性を示した。次にトルエン、キシレン、スチレンなどのVOCが高濃度に検出された新築建物に就労する人の尿中から、HA、MHA、MA、PGAの全てが検出された。HAは食事に由来する量も多く微量のトルエン曝露の指標とはなり得ないが、低濃度のキシレン及びスチレンの曝露評価は可能となる。まとめ今回開発したGC/MS法は高感度であり、動物およびヒトにおける室内VOCに対する生物学的曝露モニタリングとしての有効性が確認できた。13年度は3年計画の初年度であり、既存の方法を文献検索するとともに一部の追試を行った。またアルデヒド類については、その生物学的曝露モニタリングの可能性について検討し、以下の結果を得た。1試料濃縮法は固相マイクロ抽出法(SPME)を検討した。多環化合物の一部については良好な結果を得たが、トルエン、キシレンについてはなお検討が必要である。2尿中の化学物質と代謝産物の微量定量法については、アルデヒド類はホルムアルデヒド、芳香族ではキシレンをモデル化合物として検討した。(1)ホルムアルデヒドの測定方法は、DNPH誘導体としたHPLC-UV法とアンピシリン誘導体とした蛍光検出-HPLC法を検討した。蛍光検出器による方法は感度と特異性で優れていたが低濃度(1μg/mL以下)では安定せず、定量性が十分とは言えない結果となった。 | KAKENHI-PROJECT-13670365 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13670365 |
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