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水中界面反応による多目的天然高分子複合繊維の創成と実用化
ポリイオン複合体(PIC)は、繊維、ミクロカプセル、フィルムなどの高度に分子設計され、複合効果を発揮するための新素材として有用である。我々は、有用バイオマスとして広く研究されているカチオン性多糖であるキトサン、およびアニオン性多糖であるジェランガムが新規な複合繊維を形成すること、さらに、この繊維の紡糸法、機械的強度、耐水性、染色性、生分解性などの諸性質が実用的な新繊維材料として極めて有望であることを見いだした。この研究成果をさらに展開し、(i)天然高分子の種々の組み合わせの中で、どれが強靭な繊維を与えるのか、(ii)その強靭さの起因するところは何か、という問題を解き明かしつつ、より高性能な複合繊維を実用化することを目指して以下の研究を行った。1.工業生産のための紡糸装置の開発とPIC繊維織物の作成複合繊維が、連続的に、且つ、大量に得られる紡糸装置をデザインし、試験的な繊維作成を行った結果、低コストと高い安全性、簡便さを兼ね備えた紡糸装置の開発に成功した。研究成果に関する工業所有権を取得した。この技術をもとに、PIC繊維織物の作成初めて成功した。2.酵素および光架橋構PIC繊維の作成と高強度化酵素架橋、特に、キノン架橋、ジチロシン架橋、イソペプチド架橋など、生体高分子に見られる架橋構造形成をヒントに、酵素架橋部位を含む官能基を用いて化学修飾した天然高分子化合物を合成し、PIC繊維の高強度化を試みた。その結果、酵素架橋により、繊維の力学的強度が上昇し、複合材料系の繊維素材としての有用性を明らかにした。天然高分子の水中化学反応によって光反応性基を導入し、光架橋によって高強度化する繊維を作成した。3.ポリアミノ酸複合繊維表面および内部構造のキャラクタリゼーション4.PIC繊維の微細構造を、蛍光顕微鏡、電子顕微鏡、NMRなどを用いて詳細に解析し、機械延伸前後の繊維内部周期構造の変化を明らかにした。この結果から、繊維の強度・伸縮性を自在に発現するための高分子のデザインに関する基礎知見が得られた。この知見をもとに、ポリアミノ酸を複合化し、絹様新繊維の作成に成功した。ポリイオン複合体(PIC)は、繊維、ミクロカプセル、フィルムなどの高度に分子設計され、複合効果を発揮するための新素材として有用である。我々は、有用バイオマスとして広く研究されているカチオン性多糖であるキトサン、およびアニオン性多糖であるジェランガムが新規な複合繊維を形成すること、さらに、この繊維の紡糸法、機械的強度、耐水性、染色性、生分解性などの諸性質が実用的な新繊維材料として極めて有望であることを見いだした。この研究成果をさらに展開し、(i)天然高分子の種々の組み合わせの中で、どれが強靭な繊維を与えるのか、(ii)その強靭さの起因するところは何か、という問題を解き明かしつつ、より高性能な複合繊維を実用化することを目指して以下の研究を行った。1.工業生産のための紡糸装置の開発とPIC繊維織物の作成複合繊維が、連続的に、且つ、大量に得られる紡糸装置をデザインし、試験的な繊維作成を行った結果、低コストと高い安全性、簡便さを兼ね備えた紡糸装置の開発に成功した。研究成果に関する工業所有権を取得した。この技術をもとに、PIC繊維織物の作成初めて成功した。2.酵素および光架橋構PIC繊維の作成と高強度化酵素架橋、特に、キノン架橋、ジチロシン架橋、イソペプチド架橋など、生体高分子に見られる架橋構造形成をヒントに、酵素架橋部位を含む官能基を用いて化学修飾した天然高分子化合物を合成し、PIC繊維の高強度化を試みた。その結果、酵素架橋により、繊維の力学的強度が上昇し、複合材料系の繊維素材としての有用性を明らかにした。天然高分子の水中化学反応によって光反応性基を導入し、光架橋によって高強度化する繊維を作成した。3.ポリアミノ酸複合繊維表面および内部構造のキャラクタリゼーション4.PIC繊維の微細構造を、蛍光顕微鏡、電子顕微鏡、NMRなどを用いて詳細に解析し、機械延伸前後の繊維内部周期構造の変化を明らかにした。この結果から、繊維の強度・伸縮性を自在に発現するための高分子のデザインに関する基礎知見が得られた。この知見をもとに、ポリアミノ酸を複合化し、絹様新繊維の作成に成功した。再生産可能であり、自然分解性をそなえた天然高分子化合物を存在量とともに再び見直し、積極的に高付加価値材料に利用する研究は世界的に重要性を増すことは確実である。今年度の研究成果について下に列挙する1有用バイオマスとしてのカチオン性多糖であるキトサン、およびアニオン性多糖であるジェランガムが新規なポリイオン複合体(PIC)繊維を形成すること、さらに、この繊維の紡糸法、機械的強度、耐水性、染色性、生分解性などの諸性質が実用的な新繊維材料として極めて有望であることを見いだした。2分子設計した水溶性高分子物質の水中界面反応による水不溶性の多目的天然高分子複合繊維が種々の多糖およびタンパク質間で創製できることが実証された。3天然高分子化合物である、タンパク質、ポリアミノ酸、多糖、核酸(特にバイオマスとしてのDNA、例えば鮭精子DNAなど)の種々の組み合わせから、高いPIC形成能、紡糸効率、および紡糸時における低コストを併せ持つ素材を実験的に検討した。4連式単繊維強度試験機を用いて、繊維強度、伸び率、および結節強度を中心に実用性の最も高いPIC繊維数種類を選定し、PIC繊維形成素材とそれらの官能基修飾による機械的特性変化を体系的に把握する手がかりを得ることができた。
KAKENHI-PROJECT-13555178
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13555178
水中界面反応による多目的天然高分子複合繊維の創成と実用化
5電子顕微鏡(SEM)により繊維の表面を観察し、分子の配向と繊維物性の関連の知見が得られ、今後の分子設計が可能になった。上記の項目1-5の成果は別紙のように国内外の学術論文に報告した。ポリイオン複合体(PIC)は、繊維、ミクロカプセル、フィルムなどの高度に分子設計され、複合効果を発揮するための新素材として有用である。我々は、有用バイオマスとして広く研究されているカチオン性多糖であるキトサン、およびアニオン性多糖であるジェランガムが新規な複合繊維を形成すること、さらに、この繊維の紡糸法、機械的強度、耐水性、染色性、生分解性などの諸性質が実用的な新繊維材料として極めて有望であることを見いだした。この研究成果をさらに展開し、(i)天然高分子の種々の組み合わせの中で、どれが強靭な繊維を与えるのか、(ii)その強靭さの起因するところは何か、という問題を解き明かしつつ、より高性能な複合繊維を実用化することを目指して以下の研究を行った。1.生体高分子の架橋構造形成に学ぶPIC繊維の高強度化酵素架橋、特に、キノン架橋、ジチロシン架橋、イソペプチド架橋など、生体高分子に見られる架橋構造形成をヒントに、酵素架橋部位を含む官能基を用いて化学修飾した天然高分子化合物を合成し、PIC繊維の高強度化を試みた。その結果、酵素架橋により、繊維の力学的強度が上昇し、複合材料系の繊維素材としての有用性を明らかにした。2.工業生産のための紡糸装置の設計・開発複合繊維が、連続的に、且つ、大量に得られる紡糸装置をデザインし、試験的な繊維作成を行った結果、低コストと高い安全性、簡便さを兼ね備えた紡糸装置の開発に成功した。研究成果に関する工業所有権を取得した。3.複合繊維表面および内部構造のキャラクタリゼーションPIC繊維の微細構造を、蛍光顕微鏡、電子顕微鏡、NMRなどを用いて詳細に解析し、機械延伸前後の繊維内部周期構造の変化を明らかにした。この結果から、繊維の強度・伸縮性を自在に発現するための高分子のデザインに関する基礎知見が得られた。ポリイオン複合体(PIC)は、繊維、ミクロカプセル、フィルムなどの高度に分子設計され、複合効果を発揮するための新素材として有用である。我々は、有用バイオマスとして広く研究されているカチオン性多糖であるキトサン、およびアニオン性多糖であるジェランガムが新規な複合繊維を形成すること、さらに、この繊維の紡糸法、機械的強度、耐水性、染色性、生分解性などの諸性質が実用的な新繊維材料として極めて有望であることを見いだした。この研究成果をさらに展開し、(i)天然高分子の種々の組み合わせの中で、どれが強靭な繊維を与えるのか、(ii)その強靭さの起因するところは何か、という問題を解き明かしつつ、より高性能な複合繊維を実用化することを目指して以下の研究を行った。1.工業生産のための紡糸装置の開発とPIC繊維織物の作成複合繊維が、連続的に、且つ、大量に得られる紡糸装置をデザインし、試験的な繊維作成を行った結果、低コストと高い安全性、簡便さを兼ね備えた紡糸装置の開発に成功した。研究成果に関する工業所有権を取得した。この技術をもとに、PIC繊維織物の作成初めて成功した。2.酵素および光架橋構
KAKENHI-PROJECT-13555178
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13555178
垂直磁気トンネル接合における困難軸特性モデルの構築とセンサー応用
垂直磁気異方性を有するCoFeB/MgO/CoFeB磁気トンネル多層膜をdc/RFマグネトロンスパッタリング法により、室温で形成した。固定層はRuを介して反強磁性結合したCo/Pt多層膜により構成された。ピンド層(磁化方向が外部磁界で変化しない層)はWを介して固定層と強磁性結合したCoFeB層とした。トンネル障壁としてはMgOを用いた。ピンド層/固定層はMgOトンネル障壁の下に配置(ボトムピン構造)し、その磁化方向はMgO界面に対して垂直である。フリー層(磁化方向が外部磁界に依存して変化する層)はCoFeBとし、MgO上に接した真上に形成された。電子線リソグラフィーとアルゴンイオンミリングにより、多層膜を加工し、フリー層の直径は5nm80nmの円形とした。フリー層直径が20nmから80nmの磁気トンネル接合素子においてはフリー層の磁化はMgO界面に対し、垂直磁気異方性を示し、磁気抵抗比は100%以上を示した。素子寸法10nm程度では、面内磁気異方性を示した。これらの変化は定性的には素子寸法の低下に伴う垂直磁気異方性の低下と思われる。直径9nm12nmのフリー層が面内異方性を示す素子を3個選び、それらの素子のダイナミックレンジ(素子の動作磁場範囲)(mT)、リニアリティーエラー(%)、感度(%/mT)を評価した。ダイナミックレンジは1030 mT、リニアリティーエラーは510%、感度は0.20.6%/mTとなった。ダイナミックレンジを小さくすると感度は増加した。リニアリティーエラーは従来の文献値より高く、その直線からのずれの傾向(逆S字的なもの、お椀型のもの)は素子毎に異なっており、その原因を現在調査中である。素子のノイズ測定を行い、1/fノイズが支配的であることを確認した。55Hz及びその3倍高調波のノイズも確認でき、現在その原因を調査中である。研究計画では(1)素子構造および作製法とフリー層垂直磁気異方性の関係の明瞭化、(2)垂直磁気異方性と磁気感度との関係の評価、(3)良好な磁気感度を有する素子でのノイズ特性の評価、(4)新作製法、新構造の提案となっている。昨年度は(1)と(2)の一部と(3)の評価法の確立に向けた検討を行っており、おおむね順調に進展していると思われる。研究計画で述べた(a)フリー層膜厚、酸化状態を変化させ、磁気異方性を制御し、その関係を明らかにする、(b)ノイズ特性から極薄トンネル膜の知見を得る等の部分に関しては、強化していく予定である。当初の研究計画の通り(1)素子構造および作製法とフリー層垂直磁気異方性の関係の明瞭化、(2)垂直磁気異方性と磁気感度との関係の評価、(3)良好な磁気感度を有する素子でのノイズ特性の評価、(4)新作製法、新構造の提案を実施する予定である。特に学術的な深堀に関しては、強化していきたい。垂直磁気異方性を有するCoFeB/MgO/CoFeB磁気トンネル多層膜をdc/RFマグネトロンスパッタリング法により、室温で形成した。固定層はRuを介して反強磁性結合したCo/Pt多層膜により構成された。ピンド層(磁化方向が外部磁界で変化しない層)はWを介して固定層と強磁性結合したCoFeB層とした。トンネル障壁としてはMgOを用いた。ピンド層/固定層はMgOトンネル障壁の下に配置(ボトムピン構造)し、その磁化方向はMgO界面に対して垂直である。フリー層(磁化方向が外部磁界に依存して変化する層)はCoFeBとし、MgO上に接した真上に形成された。電子線リソグラフィーとアルゴンイオンミリングにより、多層膜を加工し、フリー層の直径は5nm80nmの円形とした。フリー層直径が20nmから80nmの磁気トンネル接合素子においてはフリー層の磁化はMgO界面に対し、垂直磁気異方性を示し、磁気抵抗比は100%以上を示した。素子寸法10nm程度では、面内磁気異方性を示した。これらの変化は定性的には素子寸法の低下に伴う垂直磁気異方性の低下と思われる。直径9nm12nmのフリー層が面内異方性を示す素子を3個選び、それらの素子のダイナミックレンジ(素子の動作磁場範囲)(mT)、リニアリティーエラー(%)、感度(%/mT)を評価した。ダイナミックレンジは1030 mT、リニアリティーエラーは510%、感度は0.20.6%/mTとなった。ダイナミックレンジを小さくすると感度は増加した。リニアリティーエラーは従来の文献値より高く、その直線からのずれの傾向(逆S字的なもの、お椀型のもの)は素子毎に異なっており、その原因を現在調査中である。素子のノイズ測定を行い、1/fノイズが支配的であることを確認した。55Hz及びその3倍高調波のノイズも確認でき、現在その原因を調査中である。研究計画では(1)素子構造および作製法とフリー層垂直磁気異方性の関係の明瞭化、(2)垂直磁気異方性と磁気感度との関係の評価、(3)良好な磁気感度を有する素子でのノイズ特性の評価、(4)新作製法、新構造の提案となっている。
KAKENHI-PROJECT-18K04278
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K04278
垂直磁気トンネル接合における困難軸特性モデルの構築とセンサー応用
昨年度は(1)と(2)の一部と(3)の評価法の確立に向けた検討を行っており、おおむね順調に進展していると思われる。研究計画で述べた(a)フリー層膜厚、酸化状態を変化させ、磁気異方性を制御し、その関係を明らかにする、(b)ノイズ特性から極薄トンネル膜の知見を得る等の部分に関しては、強化していく予定である。当初の研究計画の通り(1)素子構造および作製法とフリー層垂直磁気異方性の関係の明瞭化、(2)垂直磁気異方性と磁気感度との関係の評価、(3)良好な磁気感度を有する素子でのノイズ特性の評価、(4)新作製法、新構造の提案を実施する予定である。特に学術的な深堀に関しては、強化していきたい。サンプルの作製に時間がかかり、素子の電気測定に重点を置いたため、評価用のプローブの作成、断面TEM評価は未実施となった。今年度は計画通りのノイズ測定用プローブの作成に加えて、評価用プローブの作成、断面TEM評価を実施する予定である。また、実験結果をまとめて国内学会の発表を行う予定である。
KAKENHI-PROJECT-18K04278
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K04278
IgA腎症惹起性抗原によるメサンギウム細胞の活性化機構の解析
1.糸球体細胞に発現するチロシンキナーゼ分子の同定と発現様式の解析2.メサンギウム細胞における受容体型チロシンキナーゼFlt-1の役割これまで、血管内皮細胞特異的VEGF受容体と考えられていた受容体型チロシンキナーゼFlt-1が培養メサンギウム細胞で発現していることを明らかにした。さらに、非血管細胞でのFlt-1の役割を明らかにする目的で、培養メサンギウム細胞に各種サイトカインを作用させ、Flt-1の遺伝子発現動態を検討した。その結果、PDGF刺激によるメサンギウム増殖過程でVEGF、Flt-1ともに遺伝子発現が特異的に増強することを明らかにした。これらの結果は、VEGF/Flt-1系のシグナルもPDGFとともにメサンギウム増殖性腎病変に関与している可能性を示唆した。3.新生仔マウス胸腺摘出が糸球体におけるIgA沈着に及ぼす影響ddYマウスの糸球体IgA沈着におけるT細胞の役割を明らかにするために、新生仔マウスの胸腺を摘出し、糸球体におけるIgA沈着を検討した。胸腺摘出群のマウスは対照群マウスと同様の腎病変を示したが、糸球体におけるIgA沈着は明らかに減少していた。血中IgAおよび高分子IgAには量的な差を認めなかったが、脾臓におけるT細胞は有意に減少し、PHA、ConAに対する反応が有意に低下していた。これらの結果は、胸腺由来のT細胞が糸球体におけるIgA沈着に関与していることを強く示唆した。1.糸球体細胞に発現するチロシンキナーゼ分子の同定と発現様式の解析2.メサンギウム細胞における受容体型チロシンキナーゼFlt-1の役割これまで、血管内皮細胞特異的VEGF受容体と考えられていた受容体型チロシンキナーゼFlt-1が培養メサンギウム細胞で発現していることを明らかにした。さらに、非血管細胞でのFlt-1の役割を明らかにする目的で、培養メサンギウム細胞に各種サイトカインを作用させ、Flt-1の遺伝子発現動態を検討した。その結果、PDGF刺激によるメサンギウム増殖過程でVEGF、Flt-1ともに遺伝子発現が特異的に増強することを明らかにした。これらの結果は、VEGF/Flt-1系のシグナルもPDGFとともにメサンギウム増殖性腎病変に関与している可能性を示唆した。3.新生仔マウス胸腺摘出が糸球体におけるIgA沈着に及ぼす影響ddYマウスの糸球体IgA沈着におけるT細胞の役割を明らかにするために、新生仔マウスの胸腺を摘出し、糸球体におけるIgA沈着を検討した。胸腺摘出群のマウスは対照群マウスと同様の腎病変を示したが、糸球体におけるIgA沈着は明らかに減少していた。血中IgAおよび高分子IgAには量的な差を認めなかったが、脾臓におけるT細胞は有意に減少し、PHA、ConAに対する反応が有意に低下していた。これらの結果は、胸腺由来のT細胞が糸球体におけるIgA沈着に関与していることを強く示唆した。本研究はで、IgA免疫複合体を構成する分子が糸球体メサンギウム細胞の活性化を引き起こす可能性を明らかにする。そのため、1.IgA免疫複合体のメサンギウム細胞の増殖、細胞外基質代謝に及ぼす効果、2.メサンギウム細胞の活性化にともなう情報伝達分子の同定を研究目標にしている。平成5年度は以下の研究実績を得た。(1)ヒトメサンギウム細胞の培養系の確立:腎癌症例の手術で摘出された腎臓の健常部分を用い、sieving法にて糸球体を採取して20%胎児牛血清添加培養液にて培養し、継代培養後ヒトメサンギウム細胞のcell lineを確立した。(2)糸球体ならびに血清からのIgA免疫複合体の抽出:糸球体腎炎の疑いで入院した患者から血清を採取し、腎生検にてIgA腎症と診断された症例の血清をプールした。HPLCにて分子量別に分画後、ERISA法にてmacromolecular IgAを含む分画を採取した。さらに、IgA免疫複合体はafinity columnにて抽出した。(3)メサンギウム細胞の活性化にともなう情報伝達分子の同定:メサンギウム細胞の増殖や細胞外基質代謝には、tyrosine kinaseが関与すると思われるので、従来報告されている種々のtyrosine kinaseのcDNAのsequenceから、conserveされているkinase domeinをdegenerate primerとして用い、RT-PCR法にてメサンギウム細胞のm-RNAをamplifyした。その結果10種類のtyrosine kinaseが得られた。そのsequence analysisから、これはnon receptor flk,ufo,flt-1,Tyro-6,IGF-R,c-abl,B-raf.c-yes,JRK2と同定されたが、一つは既知のsequenceと異なり、新たなtyrosine kinaseと考えられた。したがって、メサンギウム細胞でも細胞内の情報伝達に、receptortypeやnon-receptortypeの多数のtyrosine kinaseが関与することが推測され、tyrosine phosphorylationがメサンギウム細胞の活性化に関与していることを強く示唆するものと考えられる。1.糸球体細胞に発現するチロシンキナーゼ分子の同定と発現様式の解析2.メサンギウム細胞における受容体型チロシンキナーゼFlt-1の役割これまで、血管内皮細胞特異的VEGF受容体と考えられていた受容体型チロシンキナーゼFlt-1が培養メサンギウム細胞で発現していることを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-05670965
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05670965
IgA腎症惹起性抗原によるメサンギウム細胞の活性化機構の解析
さらに、非血管細胞でのFlt-1の役割を明らかにする目的で、培養メサンギウム細胞に各種サイトカインを作用させ、Flt-1の遺伝子発現動態を検討した。その結果、PDGF刺激によるメサンギウム増殖過程でVEGF、Flt-1ともに遺伝子発現が特異的に増強することを明らかにした。これらの結果は、VEGF/Flt-1系のシグナルもPDGFとともにメサンギウム増殖性腎病変に関与している可能性を示唆した。3.新生仔マウス胸腺摘出が糸球体におけるIgA沈着に及ぼす影響ddYマウスの糸球体IgA沈着におけるT細胞の役割を明らかにするために、新生仔マウスの胸腺を摘出し、糸球体におけるIgA沈着を検討した。胸腺摘出群のマウスは対照群マウスと同様の腎病変を示したが、糸球体におけるIgA沈着は明らかに減少していた。血中IgAおよび高分子IgAには量的な差を認めなかったが、脾臓におけるT細胞は有意に減少し、PHA、Con Aに対する反応が有意に低下していた。これらの結果は、胸腺由来のT細胞が糸球体におけるIgA沈着に関与していることを強く示唆した。
KAKENHI-PROJECT-05670965
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05670965
脳機能・生体情報統合による4KTVのユーザ体感品質測定とスマートTVへの応用
脳血流や表情筋筋電を用いた4KTVのユーザ体感品質測定について様々な観点から検討した。まず、JPEG符号化したHDTV静止画像を観察した場合の表情筋筋電情報により符号化劣化の客観的評価ができることを検証した。次に、表示デバイスの画素解像度が異なる4K・PC・iPhoneに静止画像を提示した場合、「臨場感」に対して左右の側頭葉(ch2とch16)に有意差が見られ脳血流との相関変化あった。4K2K静止画像で嗜好の違いによって脳血流の変化量と主観評価値の相関性が一番高かったのは前頭葉の右側頭野(ch6)であることを明らかとした。・表情筋筋電図の利用について:JPEG符号化したHDTV静止画像を刺激素材とし、表情筋筋電情報により符号化劣化の客観評価の可能性があることを世界で初めて示した。さらに,主観評価値は,有意な表情筋筋電情報に加え,評価画像のエントロピー値と原画像のエントロピーの差分値を用いた回帰モデルにより精度よく推定できたことを示した.・HDTV静止画像とHDTV動画像におけるNIRS利用について:生体情報はNIRS(Near-infrared spectroscopy)によって得られる脳血行動態について着目し,静止画像と動画像を観察した被験者の脳血行動態が,その呈示された動画像の画質と関連性が見受けられるか検証を行った.また,静止画像を観視する時の脳活動を分離するために,画像内容注目と画質注目の脳血行動態を測定した.その結果,好きな静動画像を観視する時,嫌い静動画像と比較して,前頭葉の右側頭野での脳血行動態においてoxy-Hbの上昇傾向が見られた.また,前頭葉の両側側,劣化静止画像を観視する時のoxy-HbのZ-scoreは減る傾向が見られたが,劣化動画像を観視する時にoxy-HbのZ-scoreは増加する傾向が見られた.・4K2K静止画像におけるNIRS利用について:4K2K解像度において,好みによってΔOxy-Hbと主観評価値の相関性に変化が見られるかを検討した.好きの画像群ではch16,嫌いの画像群ではch14で有意傾向が見られた.また,どちらでもない画像群に対してはch15で有意差があった.各画像群で有意水準p<0.10となったchに対してΔOxy-Hbの平均値と主観評価値で相関の近似曲線をとったところ,好き,嫌いの画像群では二次曲線となり,どちらでもない画像群では一次直線となった.よって,4K2K解像度においては,画像に対する好みの違いによってΔOxy-Hbと主観評価値の相関性に変化が認められた.・画像表示デバイスの種類や解像度の違いが,ユーザの満足度に影響を与えるかを検討した.4K2K-TV (3840 ×2160), PC (1366 ×768), iPhone-6plus (1920×1080)の3種類の画素解像度が異なるコンテンツを対象とし,被験者の額にNIRS脳機能計測装置を装着し,画像を鑑賞している際のΔOxy-Hbを測定した.測定実験後には主観評価実験を行い,各画像に対して5段階で画質評価を行った.このNIRSによる脳機能計測実験と主観評価の実験から異なる端末で画像を閲覧するときのΔOxy-Hbと「臨場感」と「迫力感」との関連性を調査した.各評価画像の全16chのデータを4K,PC,iPhoneの群に分類し,情報端末を因子として一元配置分散分析を行った結果,ch2とch16が有意水準を満たした.よって,画像を様々な情報端末で閲覧することによって情報端末のサイズや解像度によってΔOxy-Hbに相関変化が生じる事を明らかとした.・画像コンテンツに対する嗜好の影響を検証するため,NIRSを用いた脳血流の計測実験と好き嫌いのアンケートを採る主観評価実験を行った.評価画像を15秒間呈示して,計20枚の画像を鑑賞した.測定実験後に主観評価実験を行い,各画像に対して好き嫌いを5段階で評価してもらった.被験者は学生15名,画像解像度は3840 ×2160 pixelである.画像毎で各チャンネルにおいて被験者の15秒間の脳血流の変化量の加算平均を求め,それぞれch毎にその結果と全ての被験者の主観評価値の平均の相関係数を求めた.脳血流の反応が上昇傾向にあった画像群では,画像に対する反応が大きく,嗜好の違いによって脳血流の変化量と主観評価値の相関性が一番高かったのはch6であることを明らかとした.・画素解像度の異なる3種類の画像コンテンツに対して脳機能測定と主観評価測定の両面から,脳血流量と「臨場感」や「迫力感」との関連性が調査できており,前頭葉の2と16チャンネルが関係していることを明確にしている.・高精細な4K画像コンテンツに対する嗜好を検証するために,脳機能測定と主観評価測定の両面から,脳血流量と「好き嫌い」との関連性が調査できており,前頭葉の6チャンネルが関係していることを明確にしている.画像表示デバイスの解像度とサイズの違いが,ユーザーの満足度にどのような影響を与えるかを検討した. 4K2K-TV(3840×2160),PC(1980×1080),iPhone 6s Plus(1980×1080)の3種類のデバイスを用意し,「臨場感」の感じ方の影響を調査した.NIRSを用いた脳血流の計測実験と「臨場感」について主観評価実験を行った.
KAKENHI-PROJECT-26330131
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26330131
脳機能・生体情報統合による4KTVのユーザ体感品質測定とスマートTVへの応用
ΔOxy-Hbと「臨場感」との関連性を調査するため,各画像の全16chのデータを4K,PC,iPhoneの群に分類し,t検定を行った結果,4Kの画像視聴時,ch13に有意傾向が見られた.異なる画像コンテンツに対する嗜好,快・不快の影響を検証するため, NIRSを用いた脳血流の計測実験と好き・嫌い,快・不快のアンケートを行った.画像の解像度は,3840×2160ピクセル,1980×1080ピクセルである.画像毎で各chにおいて被験者のΔOxy-Hbの加算平均を求め,それぞれのch毎にその結果と全ての被験者の主観評価値との比較を行うためt検定,スピアマンの相関係数を算出した.結果,ch5,7が嗜好に関連しており,主にch6が不快と感じた際に関連していた.嗜好,快・不快による脳血流の影響が見られ,QoE評価への可能性が示唆された.画質と志向度が異なる画像を評価対象として,異なる教示法(教示なし,コンテンツ内容に注目,画質劣化に注目)の時のOxy-Hb変化量を測定し脳活動の影響を検討した.結果,教示なしのコンテンツに着目した時,「画質」間には有意差はなかったが,ch2,ch6には「嗜好」に関する有意差が見られた.画質劣化に注目した時,「画質」間にはch5,ch14に有意な差が見られた上,「嗜好」についてch2,ch6,ch14に有意差が見られた.画質劣化より嗜好のほうがより脳活動に影響しやすいことがわかった.脳血流や表情筋筋電を用いた4KTVのユーザ体感品質測定について様々な観点から検討した。まず、JPEG符号化したHDTV静止画像を観察した場合の表情筋筋電情報により符号化劣化の客観的評価ができることを検証した。次に、表示デバイスの画素解像度が異なる4K・PC・iPhoneに静止画像を提示した場合、「臨場感」に対して左右の側頭葉(ch2とch16)に有意差が見られ脳血流との相関変化あった。4K2K静止画像で嗜好の違いによって脳血流の変化量と主観評価値の相関性が一番高かったのは前頭葉の右側頭野(ch6)であることを明らかとした。NIRSと表情筋筋電情報をそれぞれ用いて、HDTV静止画像、HDTV動画像、4K2K静止画像の生体情報計測が行え、それぞれの条件下でさまざまな知見が順調に得られていること。これまでの研究成果を利用して、スマートTV対応のアプリ開発に利活用できる知見の整理を以下の観点から行う。・さまざまな4K高精細映像コンテンツを多くの評定者に視聴してもらい、本研究課題で開発したユーザ体感品質推定システムを用いて、ユーザ体感品質を定量的に時系列に抽出する。併せて、視聴者からアンケート方式により視聴コンテンツの好みを調査し、視聴者の平均的な好み度も抽出することで、これらの関連性を検証する。・4K高精細映像をその他の3スクリーン(PC、タブレット、スマートフォン)に対応した映像コンテンツにダウンコンバートし、それぞれの情報端末において同様の実験を行うことで、提示素材の画素解像度や情報端末の違いなどが与える影響について調査する。この一連の研究遂行を通して、4K高精細TVと他の3スクリーンとの連携アプリの画面設計や、メディア視聴者の好みを反映したターゲット広告アプリの選定方法など、次世代のスマートTV対応の様々なアプリ開発に利活用できる知見を整理する。マルチメディア情報処理・4K静止画像から画像処理による表情認識情報抽出の調査:表情筋筋電は人に接触して計測する必要があるので、実応用を考えた場合は人に非接触での情報計測が望まれる。そこで、画像処理による表情認識法の調査を別途行い、4K高精細TVカメラ映像やサーモグラフィ映像などを用いて、その抽出精度の検証を行いその課題の整理を行う。
KAKENHI-PROJECT-26330131
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26330131
チンパンジーの高次視覚情報処理における大脳半球機能差と階層性
チンパンジーの高次情報処理の特性を非侵襲的な手法によってヒトと直接に比較し、ヒトに固有の情報処理様式とその系統発生的起源を、比較神経科学・比較認知科学の視点から明らかにすることを目的とした。本研究では、視覚性シンボルの習得訓練を受けてきたアイ・アキラの2個体と、未経験の若いチンパンジー4個体の計6個体のチンパンジーを主たる対象として、チンパンジーのもつ認知機能の神経科学的側面を、大脳半球機能の側性化(Lateralization)という視点から検討した。とくに視覚のシンボルのもつフィジカル・コーディング(物理的特性の知覚)とセマンティック・コーディング(意味的な理解)という「シンボル操作」の階層構造という視点から捉えた。昨年度開始したシステムを運用し、人工言語習得の研究を継続してきた合計6個体のチンパンジーを主たる対象として、ヒトとの比較研究により、以下に述べる大脳半球機能の左右差と情報処理の階層性について実験的に分析した。ラテラリティー(高次情報処理における大脳半球の機能的非対称性)については、これまでヒトの健常者や分断脳(split-brain)患者を被験者として、あるいは分断脳手術をしたマカクザルを被験者として研究されてきた。本研究ではチンパンジーを被験者として、タキストスコープによる視覚シンボル(図形文字、漢字、数字などの)認知にみられる左右の半視野差を検討するための予備実験として、チンパンジーの顔認識を調べた。コンピューター用タッチパネルを導入し、既存のシステムの画像処理能力を高めた新システムを新たに作製した。シンボル操作と概括する上述の高次認知機能をひきだす場面は、具体的には、見本合わせ場面である。アイは、11の色名漢字(赤・橙・黄・緑・青・紫・桃・茶・白・灰・黒)を識別した。そこで漢字それ自体の物理的特性にもとづく識別課題(フィジカル・コーディング)と、漢字の意味的情報処理課題(セマンティック・コーディング)について、ストループ干渉課題で検討した。チンパンジーの高次情報処理の特性を非侵襲的な手法によってヒトと直接に比較し、ヒトに固有の情報処理様式とその系統発生的起源を、比較神経科学・比較認知科学の視点から明らかにすることを目的とした。本研究では、視覚性シンボルの習得訓練を受けてきたアイ・アキラの2個体と、未経験の若いチンパンジー4個体の計6個体のチンパンジーを主たる対象として、チンパンジーのもつ認知機能の神経科学的側面を、大脳半球機能の側性化(Lateralization)という視点から検討した。とくに視覚のシンボルのもつフィジカル・コーディング(物理的特性の知覚)とセマンティック・コーディング(意味的な理解)という「シンボル操作」の階層構造という視点から捉えた。昨年度開始したシステムを運用し、人工言語習得の研究を継続してきた合計6個体のチンパンジーを主たる対象として、ヒトとの比較研究により、以下に述べる大脳半球機能の左右差と情報処理の階層性について実験的に分析した。ラテラリティー(高次情報処理における大脳半球の機能的非対称性)については、これまでヒトの健常者や分断脳(split-brain)患者を被験者として、あるいは分断脳手術をしたマカクザルを被験者として研究されてきた。本研究ではチンパンジーを被験者として、タキストスコープによる視覚シンボル(図形文字、漢字、数字などの)認知にみられる左右の半視野差を検討するための予備実験として、チンパンジーの顔認識を調べた。コンピューター用タッチパネルを導入し、既存のシステムの画像処理能力を高めた新システムを新たに作製した。シンボル操作と概括する上述の高次認知機能をひきだす場面は、具体的には、見本合わせ場面である。アイは、11の色名漢字(赤・橙・黄・緑・青・紫・桃・茶・白・灰・黒)を識別した。そこで漢字それ自体の物理的特性にもとづく識別課題(フィジカル・コーディング)と、漢字の意味的情報処理課題(セマンティック・コーディング)について、ストループ干渉課題で検討した。
KAKENHI-PROJECT-06260222
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06260222
プルシアンブルー系ナノ結晶の規則配列と低温界面接合による擬似的単結晶化
PBナノ結晶を自己組織化膜に吸着させ単粒子膜を作製した。その単粒子膜を120°C加熱し粒子間を化学接合した。ボードプロット解析から、未加熱膜では、結晶界面支配の低周波数・低プロトン伝導が、加熱膜では、その低周波数成分が消失し、高周波数・高プロトン伝導が発現した。加熱膜の超プロトン伝導(10-1 Scm-1)は、湿度依存性(保水力)においてもナフィオン膜よりも高性能だった。未加熱膜のvehicleから、低温加熱によってGrotthuss機構に変化することが分かった。この「Grain-boundary free」伝導は、ナノ結晶集合膜でありながら、疑似的単結晶膜として機能する初めての報告である。プルシアンブルー(PB)・ナノ結晶の独自の水分散液合成法により、「ナノ結晶同士の低温界面接合技術」を確立する。交流インピーダンス電極をガラス基板に作製し、そのガラス基板上にSAM膜を作製、PBナノ結晶水分散液に浸漬することで、SAM基板上に、PBナノ結晶の緻密な単粒子膜の作製に成功し、これを120°Cで加熱することで、ナノ結晶同士の界面接合を行った。加熱前後での膜強度の比較から、原子間力顕微鏡(AFM)のコンタクトモードによる膜強度の微視的可視化法(ナノスクラッチ評価法)の開発に成功した。加熱後の膜では吸収スペクトルにおいて電荷移動吸収極大が短波長側にシフトすることを見出し、加熱後の結晶界面の電子状態の変化から、化学結合が生じていることを証明し、分光化学的手法による「低温界面接合の可視化法」にも成功した。交流インピーダンス測定から、単粒子膜では湿度依存性が顕著な伝導度が得られ、活性化エネルギーからイオン伝導はvehicle機構であることを明らかにした。一方で、加熱膜では、湿度依存を殆ど示さない10-1 Sm-1に迫る極めて高い伝導度が発現した。この伝導度は、これまで報告されてきたMOFやPCP結晶での最高値に属する値である。活性化エネルギーから伝導はGrotthuss機構(Grain-boundary-free)であることを明らかにした。重水環境下での交流インピーダンス測定を実施し、伝導が水に比べて減少したことから、プロトンが伝播する機構であることが確かめられた。温度・湿度プログラムが可能なTG-DTA装置で、加熱・非加熱によるPBナノ結晶の水分子の出入情報から、そのプロトン伝導と湿度依存性の因果関係、伝導機構や結晶界面の構造変化について評価を行っており、湿度変化とPBナノ結晶の水和数の変化が連動し、プロトン伝導機構や伝導度湿度依存性を支配していることを見出し、更なる解析を進めている。概ね計画通りに研究が進んでいる。研究実績で示したPBナノ結晶の単粒子膜は加熱後、プロトン伝導機構がvehicleからGrotthuss機構へと変化した。また、極めて高い10-1 Sm-1に迫る極めて高い伝導度を示す膜が得られた。これは、これまでの結晶ではペレットによる評価が一般的であったが、ナノ結晶分散液を用いた簡便な溶液プロセス膜で初めて見出された画期的な成果であり、その実践的なデバイス応用への道を拓くものである。X線回折法では、その加熱膜は、ナノ結晶が接合した多結晶膜としての情報を得ており、結晶界面の接合は、Grain-boundary-free伝導を示す「機能的=擬似的」単結晶膜であることを示しており、研究計画の若干の修正を行う。独自で開発したプルシアンブルー(PB)・ナノ結晶の水分散液合成により、「配高分子ナノ結晶同士の低温界面接合技術」を確立することを目的とした。具体的には、溶液プロセス(スピンコート法や自己組織化膜(SAM)法)により作製したPBナノ結晶薄膜のイオン伝導挙動を調べるため、Nafionに代表される高分子膜に適用される相互貫入(くし形)電極をガラス基板に作製した。その電極間(ガラス基板上)にSAM膜を作製、PBナノ結晶水分散液に浸漬することで、SAM基板上に、PBナノ結晶の緻密な単粒子膜の作製に成功した。これを120°Cで加熱することで、ナノ結晶同士の界面接合を行った。粒子膜の緻密性(ピンホールフリーであること)や膜厚(単粒子膜であること)をAFM観察により明らかにし、更に、シリコン基板上に同様な方法でPB単粒子膜を作製し、その表面をSEM観察し、広範囲で、緻密性が確認できた。同じくし形電極を用いて、Nafion膜と粒子膜の比較を世界で初めて実施することに成功した:(1)交流インピーダンス測定から、加熱PB単粒子膜は、10-1 Sm-1に迫る極めて高い伝導度が発現し、それは、Nafion膜よりも高い伝導性を示した;(2) PB単粒子膜の伝導度は、湿度依存性(> 60% RH)を殆ど示さないが、Nafion膜では、これまでの報告通り、湿度依存性を示した;(3)直流電流測定から、PB単粒子膜とNafion膜は、同様な電流ー時間依存性を示し、イオン伝導であることが示された;(4)Bode plotから、PB単粒子膜とNafion膜は、同様に単一周波数成分(単一並列RC回路)で解析できた=プロトン伝導がGrotthuss機構(Grain-boundary-free)であることが証明された;(5)そのプロトン伝導の活性化エネルギーはPB単粒子膜の方がNafion膜より小さいことが分かった。概ね計画通りに研究が進んでいる。
KAKENHI-PROJECT-15H03783
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H03783
プルシアンブルー系ナノ結晶の規則配列と低温界面接合による擬似的単結晶化
研究実績で示したように、PBナノ結晶の単粒子膜は、低温加熱後、プロトン伝導度・湿度依存性の両方おいて、Nafion膜を凌駕する性能を有していることを明らかにできた。このNafion膜と固体結晶膜を直接実験で比較した例は世界で初めてである。結晶評価においてはペレットに依存しているのが一般的である中で、本研究における「ナノ結晶分散液を用いた溶液プロセス膜」で見出された成果は画期的であり、これを纏め、高いIFの論文に投稿した。結果、Angew. Chem. Int. Ed.でin pressになっている。独自に開発したプルシアンブルー(PB)ナノ結晶の水分散液とこれを用いた低温・溶液プロセスによる「ナノ結晶同士の低温界面接合技術」の確立により、ナノ結晶からなる疑似的単結晶膜の創製とその機能開拓を研究目的とした。規則的ナノ空孔を有する配位高分子ナノ結晶の疑似的単結晶膜に期待される機能として、(1)電子/ホール伝導の連続性、(2)空間の連続性から生まれる物性を挙げることができる。本研究では、(2)を明らかにするため、SAM上に作製した単粒子・疑似的単結晶膜のプロトン伝導機構を明らかにし、昨年度までの研究として、Nafion膜よりも高いプロトン伝導度やそのプロトン伝導がGrotthuss機構(Grain-boundary-free)であることを見出し、Angew.Chem.Int.Ed.にその成果が掲載された。掲載後、MOFプロトン伝導の研究を先導するG.K.H. Shimizuは、従来のペレット法を用いたプロトン伝導評価の問題点を指摘、我々の結晶界面に着目した研究の重要性が示された。本研究では、更に、プロトン伝導度・湿度依存性におけるPB単粒子膜の加熱温度の依存性を調べ、その低温加熱による界面接合状態とプロトン伝導機構の関係を追及した。結果、低温加熱では、Grain-boundaryの影響が残り、120°C以上の加熱で、Grain-boundary-free機構に移行することが分かった。また、多層膜(スピンコート膜)でのプロトン伝導度・湿度依存性についても評価も進めており、界面と結晶内でのプロトン伝導機構の解明において、単分子膜の結果と比較しながら詳細なボードプロット周波数解析が今後必要であることが分かった。併せて、界面接合による電子/ホール伝導の連続性とその機能を発展させるため、半導体膜とのヘテロ接合膜の作製と電子機能について、その電子的接合が可能であることを見出した。PBナノ結晶を自己組織化膜に吸着させ単粒子膜を作製した。その単粒子膜を120°C加熱し粒子間を化学接合した。ボードプロット解析から、未加熱膜では、結晶界面支配の低周波数・低プロトン伝導が、加熱膜では、その低周波数成分が消失し、高周波数・高プロトン伝導が発現した。加熱膜の超プロトン伝導(10-1 Scm-1)は、湿度依存性(保水力)においてもナフィオン膜よりも高性能だった。未加熱膜のvehicleから、低温加熱によってGrotthuss機構に変化することが分かった。この「Grain-boundary free」伝導は、ナノ結晶集合膜でありながら、疑似的単結晶膜として機能する初めての報告である。結晶界面の接合によって、得られた膜はGrain-boundary-free伝導を示す「機能的=擬似的」単結晶膜、つまり、多結晶膜であることが分かった。
KAKENHI-PROJECT-15H03783
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H03783
DNA塩基配列の解析と修飾による新しい酵素タンパク質の設計とその利用
大腸菌のグルタチオン合成酵素(GSH-II)は, ATP存在下でγ-グルタミルシスティンとグリシンよりグルタチオン(GSH)を合成する酵素である.本酵素の構造と触媒機能の関連を明らかにするため,(イ)他の酵素のアミノ酸配列との相同性を利用した三次構造の予測,および, (ロ)位置特異的変異による変異酵素の機能解析,を行なった.その結果, GSH-IIのアミノ酸配列は,ジヒドロ葉酸還元酵素のそれと高い相同性を示し,この相同領域は両酵素の機能と密接な関係にあることを明らかにした.また,この相同領域の両酵素間での機能的互換性についても検討した.GSH-IIは, 4コの同一サブユニットより成る分子量16万の酵素であり,サブユニット当り4コのシスティンを含む.そこで, 4コのシスティン残基のコドンをアラニンのコドンに変換した変異遺伝子を作製し, GSH-IIの活性とシスティン残基との関係を検討した.その結果, 4コのシスティン残基はGSH-IIの活性発現に必須ではないが,酵素活性の向上に何らかの寄与をしていることを明らかにした.GSH-IIの構造と機能の関係を更に解明するため, GSH-IIの単結晶について解析を進めている.GSHの合成に関与するもう一つの酵素γ-グルタミルシスティン合成酵素(GSH-I)は, ATP存在下でグルタミン酸とシスティンを縮合させγ-グルタミルシスティンを合成する. GSH-I遺伝子の翻訳開始コドンはTTGであり,一般的なATGではない.そこで,位置特異的変異によりTTGをATGに変換した.その結果, GSH-Iの翻訳効率は約50%増大し,医薬・試薬として重要なGSHの生産性を上げることができた.現在, GSH-Iについても,その構造と機能の関係を追究している.大腸菌のグルタチオン合成酵素(GSH-II)は, ATP存在下でγ-グルタミルシスティンとグリシンよりグルタチオン(GSH)を合成する酵素である.本酵素の構造と触媒機能の関連を明らかにするため,(イ)他の酵素のアミノ酸配列との相同性を利用した三次構造の予測,および, (ロ)位置特異的変異による変異酵素の機能解析,を行なった.その結果, GSH-IIのアミノ酸配列は,ジヒドロ葉酸還元酵素のそれと高い相同性を示し,この相同領域は両酵素の機能と密接な関係にあることを明らかにした.また,この相同領域の両酵素間での機能的互換性についても検討した.GSH-IIは, 4コの同一サブユニットより成る分子量16万の酵素であり,サブユニット当り4コのシスティンを含む.そこで, 4コのシスティン残基のコドンをアラニンのコドンに変換した変異遺伝子を作製し, GSH-IIの活性とシスティン残基との関係を検討した.その結果, 4コのシスティン残基はGSH-IIの活性発現に必須ではないが,酵素活性の向上に何らかの寄与をしていることを明らかにした.GSH-IIの構造と機能の関係を更に解明するため, GSH-IIの単結晶について解析を進めている.GSHの合成に関与するもう一つの酵素γ-グルタミルシスティン合成酵素(GSH-I)は, ATP存在下でグルタミン酸とシスティンを縮合させγ-グルタミルシスティンを合成する. GSH-I遺伝子の翻訳開始コドンはTTGであり,一般的なATGではない.そこで,位置特異的変異によりTTGをATGに変換した.その結果, GSH-Iの翻訳効率は約50%増大し,医薬・試薬として重要なGSHの生産性を上げることができた.現在, GSH-Iについても,その構造と機能の関係を追究している.大腸菌のグルタチオン合成酵素(GSH-【II】)は、ATP存在下でΥ-グルタミルシスティンとグリシンよりグルタチオン(GSH)を合成する酵素である。この酵素の活性発現に関与しているアミノ酸残基については、未だよく知られていない。そこで、本酵素の構造と触媒機能の関係を明らかにするため、(1)他の酵素のアミノ酸配列との相同性を利用した三次構造の予測、及び(2)位置特異的点突然変異による変異型酵素遺伝子の作製と、その遺伝子産物の触媒特性の解析により、GSH-【II】の活性発現に関与するアミノ酸配列及びアミノ酸残基の効果を検討した。まず、GSH-【II】の三次元構造と機能の関係を解明するため他の種々の酵素のアミノ酸配列との相同性を調べた結果、GSH-【II】のアミノ酸配列は、ジヒドロ葉酸還元酵素(DFR)のそれと高い相同性を示した。DFRの基質ジヒドロ葉酸及び特異的阻害剤であるメトトレキセートは、極めて低濃度でGSH-【II】活性を阻害し、これらの化合物が特異的にGSH-【II】に結合することが判明した。この結果より、アミノ酸配列の相同性が基質や阻害剤の結合部位や高次構造を解明する有力な手段となると考えられた。GSH-【II】は、4ケのサブユニットより成る分子量16万の酵素で、サブユニット当り4ケのシスティン(Cys)残基(Cys-122,195,222,289)を有する。そこで、4ケのCys残基のコドンをアラニン(Ala)のコドンに変換した変異酵素遺伝子及びCys289コドンをターミナルコドンに変換した変異酵素遺伝子を作製し、GSH-【II】の活性とCys残基の関係を検討した。Cys122とCys222のAlaへの変換は、GSH-【II】
KAKENHI-PROJECT-61480057
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61480057
DNA塩基配列の解析と修飾による新しい酵素タンパク質の設計とその利用
活性を夫々50%及び20%低下させた。このことより、Cys122とCys222はGSH【II】の活性発現に必須ではないが、酵素活性の向上に寄与していると推定たれた。その他、γ-グルタミルシスティン合成酵素(GSH-I)遺伝子の翻訳開始コドンTTGを、使用頻度の高いATGに変換することにより、GSH-I遺伝子の翻訳効率を50%高めることが出来た。
KAKENHI-PROJECT-61480057
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61480057
大統一理論の構築とその現象論の研究
1990年代LEP実験によりゲージ結合定数が精密に測定され超対称大統一模型においてゲージ結合定数の統一が実現されていることが分かって以来、超対称大統一模型は有望な模型として注目されている。この模型のさらなる検証の可能性として、陽子崩壊とフレーバー転換過程に我々は注目し、その研究を行った。SU(5)超対称大統一模型におけるXボゾンの陽子崩壊は模型の詳細のあまり依存しない予言と考えられている。我々は陽子崩壊過程に対する様々な量子補正を評価し、大統一模型の模型にどれくらい予言が依存するかを検証した。特に、Missing partner模型などの大統一のゲージ対称性を破るヒッグス場の次元が大きい模型でも、大きな補正が生まれないことを示した。この結果は査読付き学術雑誌のNucl. Phys. Bに掲載された。SO(10)超対称大統一模型は物質場の統一を実現する魅力的な模型である一方で、測定されたクォーク、レプトンの質量を正しく予言できない問題があった。1つの提案として、物質場の統一はSO(10)超対称大統一模型では実現できておらず、標準模型のクォーク、レプトンは、重いベクター的物質場との混合によって実現されているというものがある。SO(10)超対称大統一模型が低エネルギーにZ'ボゾンの存在を予言する場合、その混合によってハドロン、レプトンの新たなフレーバー転換過程を導く。我々は、ハドロンとレプトンの新たなフレーバー転換過程の間の相関を明らかにし、将来実験との関係を明らかにした。この結果は現在、査読付き学術雑誌に投稿中である。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。1990年代LEP実験によりゲージ結合定数が精密に測定され超対称大統一模型においてゲージ結合定数の統一が実現されていることが分かって以来、超対称大統一模型は有望な模型として注目されている。この模型のさらなる検証の可能性として、陽子崩壊とフレーバー転換過程に我々は注目し、その研究を行った。SU(5)超対称大統一模型におけるXボゾンの陽子崩壊は模型の詳細のあまり依存しない予言と考えられている。我々は陽子崩壊過程に対する様々な量子補正を評価し、大統一模型の模型にどれくらい予言が依存するかを検証した。特に、Missing partner模型などの大統一のゲージ対称性を破るヒッグス場の次元が大きい模型でも、大きな補正が生まれないことを示した。この結果は査読付き学術雑誌のNucl. Phys. Bに掲載された。SO(10)超対称大統一模型は物質場の統一を実現する魅力的な模型である一方で、測定されたクォーク、レプトンの質量を正しく予言できない問題があった。1つの提案として、物質場の統一はSO(10)超対称大統一模型では実現できておらず、標準模型のクォーク、レプトンは、重いベクター的物質場との混合によって実現されているというものがある。SO(10)超対称大統一模型が低エネルギーにZ'ボゾンの存在を予言する場合、その混合によってハドロン、レプトンの新たなフレーバー転換過程を導く。我々は、ハドロンとレプトンの新たなフレーバー転換過程の間の相関を明らかにし、将来実験との関係を明らかにした。この結果は現在、査読付き学術雑誌に投稿中である。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-16H00867
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-16H00867
アブレシブジェット加工法の開発研究
アブレシブジェット技術は、微粒子を高速噴流によって加速し、その衝撃破壊力を金属ないし非金属材料の特殊加工や高圧洗浄、原子力発電所を含む各種建築物の切断・解体など多くの分野に応用するもので、ウォ-タ-ジェット応用の先端技術のひとつとして近年産業界の強い関心が寄せられ、実用化への期待が急速に高まっている。本研究の目的はこの新しい技術を高能率、高精度なものとして確立し、実用技術として広く産業界に普及させるため、アブレシブジェットによる加工特性を測定し、最適加工条件を決定することである。さらに本研究では、それらの基礎研究と所要デ-タを積み上げ広く実用化できるアブレシブジェット加工法を開発することを目的としている。得られた研究成果は次のとおりである。1.ノズルヘッドの設計はアブレシブジェット加工法の主要事項であるため各種形状のノズルヘッドが設計・製作され、実験によって性能の比較が行われ高性能を示すノズルヘッドが決定された。2.固体微粒子、液体塊および周囲から混合する気体からなる三相の高速混相流動であるアブレシブジェットの二重露光法による撮影に成功し、その複雑な構造をファジ-推論を応用したコンピュ-タ画像処理によって分析し、砥粒の飛行速度の光学的計測に成功した。3.アブレシブジェットによる加工の動的過程の詳細を、透明なアクリル樹脂を切断材料に用いて写真に記録し、コンピュ-タによるデ-タ解析を行った。その結果、加工精度に直接影響を及ぼす加工面の縞模様の特性が定量的に明らかになった。4.ノズルからの噴流の吐出し圧力とノズルの送り速度の大きさの関係を最適条件に選べば粗さを僅少に止どめることができることなどを解明した。アブレシブジェット技術は、微粒子を高速噴流によって加速し、その衝撃破壊力を金属ないし非金属材料の特殊加工や高圧洗浄、原子力発電所を含む各種建築物の切断・解体など多くの分野に応用するもので、ウォ-タ-ジェット応用の先端技術のひとつとして近年産業界の強い関心が寄せられ、実用化への期待が急速に高まっている。本研究の目的はこの新しい技術を高能率、高精度なものとして確立し、実用技術として広く産業界に普及させるため、アブレシブジェットによる加工特性を測定し、最適加工条件を決定することである。さらに本研究では、それらの基礎研究と所要デ-タを積み上げ広く実用化できるアブレシブジェット加工法を開発することを目的としている。得られた研究成果は次のとおりである。1.ノズルヘッドの設計はアブレシブジェット加工法の主要事項であるため各種形状のノズルヘッドが設計・製作され、実験によって性能の比較が行われ高性能を示すノズルヘッドが決定された。2.固体微粒子、液体塊および周囲から混合する気体からなる三相の高速混相流動であるアブレシブジェットの二重露光法による撮影に成功し、その複雑な構造をファジ-推論を応用したコンピュ-タ画像処理によって分析し、砥粒の飛行速度の光学的計測に成功した。3.アブレシブジェットによる加工の動的過程の詳細を、透明なアクリル樹脂を切断材料に用いて写真に記録し、コンピュ-タによるデ-タ解析を行った。その結果、加工精度に直接影響を及ぼす加工面の縞模様の特性が定量的に明らかになった。4.ノズルからの噴流の吐出し圧力とノズルの送り速度の大きさの関係を最適条件に選べば粗さを僅少に止どめることができることなどを解明した。アブレシブジェット技術は,微粒子を高速噴流によって加速し,その衝撃破壊力を金属ないし非金属材料の特殊加工や高圧洗浄,原子力発電所を含む各種建築物の切断・解体など多くの分野に応用するもので,ウォ-タ-ジェット応用の先端技術のひとつとして近年産業業界の強い関心が寄せられ,実用化への期待が急速に高まっている。本研究の目的はこの新しい技術を高能率,高精度なものとして確立し,実用技術として広く産業界に普及させるため,応用の予想される各種の金属材料および非金属材料についてアブレシブジェットによる加工特性を測定し,最適加工条件を決定することである。さらに本研究では,それらの基礎研究と所要デ-タを積み上げ広く実用化できるアブレシブジェット加工法を開発することを目的としている。本年度の研究の目的は高性能ノズルヘッドの開発とアブレシブジェットの高速混相流動機構の解明であった。ノズルヘッドの設計はアブレシブジェット加工法の主要事項のひとつである。本年度において,各種形状のノズルヘッドが設計・製作され,実験によって性能の比較が行われ高性能を示すノズルヘッドが決定された。もう一つの目標であるアブレシブジェットの高速混相流動機構の解明についても,固体微粒子,液体塊および周囲から混合する気体からなる三相の高速混相流動であるアブレシブジェットの二重露光法による撮影に成功し,その複雑な構造をファジ-推論を応用したコンピュ-タ画像処理によって分析し,砥粒の飛行速度の光学的計測に成功した。これは,この種の計測として初めての成功例であり,来年度に引き続く今後の研究の進展が期待できる。アブレシブジェット技術は,微粒子を高速噴流によって加速し,その衝撃破壊力を金属ないし非金属材料の特殊加工や高圧洗浄,原子力発電所を含む各種建築物の切断・解体など多くの分野に応用するもので,ウォ-タ-ジェット応用の先端技術のひとつとして近年産業界の強い関心が寄せられ,実用化への期待が急速に高まっている.本研究の目的はこの新しい技術を高能率,高精度なものとして確立し,実用技術として広く産業界に普及させるため,応用の予想される各種の金属材料および非金属材料についてアブレシブジェットによる加工特性を測定し,最適加工条件を決定することである。
KAKENHI-PROJECT-02555037
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02555037
アブレシブジェット加工法の開発研究
さらに本研究では,それらの基礎研究と所要デ-タを積み上げ広く実用化できるアブレシブジェット加工法を開発することを目的としている.本年度においては,まず前年度に引き続いてアブレシブジェットにおけるアブレシブの加速特性の測定が行われ,新たに開発した光学的計測法によって,高速水噴流の中のアブレシブの飛行速度は水噴流速度の80%に達していることが明らかになった。つぎに,アブレシブジェットによる加工の動的過程の詳細を,透明なアクリル樹脂を切断材料に用いて写真に記録し,コンピュ-タによるデ-タ解析を行った.その結果,加工精度に直接影響を及ぼす加工面の縞模様の特性が定量的に明らかになった。その縞模様特性は加工材料の種類によらないこと,加工前面はノズルの送りに伴って連続的に進行しておらず周期性をもっていること,縞模様発生による粗さの大きさは加工材料の深さ方向に増大すること,しかしノズルからの噴流の吐出し圧力とノズルの送り速度の大きさの関係を最適条件に選べば粗さを僅少に止どめることができることなどを解明した。また,加工面に対するノズルの噴射方向を適切に選べば加工精度が向上することを見出した.
KAKENHI-PROJECT-02555037
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02555037
刑事制裁論の基礎研究
国家による刑罰権の行使については、現代社会において犯罪予防の名目で過剰な形での投入がなされてしまっている。本研究では、このような方向性に歯止めをかけるために、ドイツにおける応報刑論のルネサンスを参照しながら、カント主義的な応報刑論の再評価に基づいた、人格の自律性と国家刑罰権を調和させるための理論的な視座の意義を明らかにした。国家による刑罰権の行使については、現代社会において犯罪予防の名目で過剰な形での投入がなされてしまっている。本研究では、このような方向性に歯止めをかけるために、ドイツにおける応報刑論のルネサンスを参照しながら、カント主義的な応報刑論の再評価に基づいた、人格の自律性と国家刑罰権を調和させるための理論的な視座の意義を明らかにした。研究目的は刑事制裁論の法哲学的な基礎付けである。そこで、2008年度は最近のドイツにおける応報刑論の再評価を参考にしながら、刑事制裁論の法哲学的な基礎付けを図るために、特に刑罰を規定する2つの大きなパラダイムである応報の観点と予防の観点の関係について集中的に研究を行なった。従来、応報刑論は否定的に捉えられてしまい、あくまでも予防の観点をベースにして刑罰、つまり刑事制裁を構想する見解が支配的なものとなっていた。しかし、最近のドイツではそのような予防の観点は刑法を通じた治安維持の観点と結び付いてしまい、むしろ人間の自律性、人権を抑圧する道具として刑法を捉えるものではないかとの反省がなされるようになっている。そこで、応報刑論の再評価、応報思想を積極的に主張したカントの法思想の再評価がなされるようになっている。この点に着目し、昨年度はカント刑罰論をカント法思想体系全体の中で再定位しながら、カントの刑罰論も予防の観点を一定の範囲で考慮するものであること、応報の観点はただ単に予防の観点を制限するだけではなく、応報の観点そのものにそもそも内在的な限界があることを明らかにし、それを論文にまとめた次第である。本研究は刑事制裁論の基礎理論をテーマとするものである。従来、刑法(刊罰)の働きについては、犯罪を予防し鎮圧する目的の文脈だけで機能的に捉えられてきた。本研究では、このような刑罰積極主義の動向に歯止めをかけるための理論的な論拠を探求するために、ドイツにおける応報刑論のルネサンスを手がかりにしながら、刑事制裁論に関する基礎理論的な視座の獲得に努めた。具体的には以下の3点を研究上の成果として挙げることができる。1応報刑論のルネサンスの根底にあるカント主義の再評価の具体的な内容を明らかにし、その要諦である自律性の保障という観点が有する法秩序のあり方に対する理論上の意義を明らかにした。2ドイツにおける応報刑論のルネサンスでは、犯罪予防に対して応報の観点が有する枠組みを設定する意義しか重視されていないが、そもそも応報の観点そのものには内在的な限界があること、刑罰積極主義の動向に対して応報刑論を用いて歯止めをかけるためには、そもそもそのような応報の内在的な限界を意識しておかなければならないことを明らかにした。3国家機関による刑法上の権力行使は、刑罰と法的強制に二分化される。広義では、国家による法的強制も刑事制裁の一種である。従来、我が国では、刑罰については考察が行われてきたが、法的強制は等閑視されてきた。国家による刑事制裁に関する基礎理論を探求する際には、刑罰と法的強制の差異の明確化が不可避となる。本研究では、ドイツにおいて盛んに議論がなされている「救助のための拷問」を具体例にして、法的強制が有する刑罰とは異なる意義を明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-20730046
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弓部大動脈全置換術における順行性選択的脳灌流の確立
我々の220例の順行性選択的脳灌流法(SCP)補助下の弓部大動脈全置換術症例における多変量解析の検討で、脳梗塞の既往歴は術後脳神経障害の独立した予後規定因子であった。脳梗塞の既往歴が術後脳神経障害の危険性を高めることを実験的に立証するため、雑種成犬を用いてシリコン円柱をウイリス動脈輪を超えて、中大脳動脈基部の穿通枝付近に留置し、第一病日に脳梗塞の身体的所見を有し、術後4週間以上経過した慢性脳梗塞犬7頭(脳梗塞群)と正常犬7頭(コントロール群)を用いて灌流実験を施行した。人工心肺確立後、直腸温20度まで冷却し、120分間の順行性選択的脳灌流を行い、その後36度まで復温した。術中送血管および顎静脈に逆行性に挿入したカテーテルから採血をし、顎静脈酸素飽和度(SmvO_2)、動脈-静脈酸素含量較差(AVDO_2)、静脈-動脈乳酸較差(VADL)を1)冷却前、2)SCP開始時、3)SCP60分後、4)SCP120分後、5)直腸温24度、6)直腸温28度、7)直腸温32度、8)直腸温36度、にそれぞれ計測し、2群間で比較した。また血中グルタミン酸濃度を1)冷却前、2)復温後に計測し、2群間で比較した。慢性脳梗塞の作成率は58.3%であった。SmvO_2、AVDO_2、VADLは復温時には両群間で差がみられた。32°Cにおいて、統計学的な有意差はなかったもののSmvO_2は脳梗塞群でより低下し(p=0.06)、AVDO_2はより増加した(p=0.34)。VADLは脳梗塞群で有意に上昇した(p=0.006)。グルタミン酸濃度は人工心肺開始時(冷却前)には両群間に差を認めなかったが、復温終了後には脳梗塞群で有意に高値を示した(p=0.046)。術前術後のグルタミン酸較差は脳梗塞群で有意な高値を示した(p=0.01)。7頭のうち、6頭は基底核に梗塞を有し、1頭は前頭葉に広範な梗塞を有し、GFAP抗体を用いた免疫組織染色では梗塞巣周囲にgliosisの発現が確認された。脳梗塞を有する脳では術中脳虚血に陥っていた可能性が高く、術後脳障害の危険性が高まる可能性が示唆された。我々の220例の順行性選択的脳灌流法(SCP)補助下の弓部大動脈全置換術症例における多変量解析の検討で、脳梗塞の既往歴は術後脳神経障害の独立した予後規定因子であった。脳梗塞の既往歴が術後脳神経障害の危険性を高めることを実験的に立証するため、雑種成犬を用いてシリコン円柱をウイリス動脈輪を超えて、中大脳動脈基部の穿通枝付近に留置し、第一病日に脳梗塞の身体的所見を有し、術後4週間以上経過した慢性脳梗塞犬7頭(脳梗塞群)と正常犬7頭(コントロール群)を用いて灌流実験を施行した。人工心肺確立後、直腸温20度まで冷却し、120分間の順行性選択的脳灌流を行い、その後36度まで復温した。術中送血管および顎静脈に逆行性に挿入したカテーテルから採血をし、顎静脈酸素飽和度(SmvO_2)、動脈-静脈酸素含量較差(AVDO_2)、静脈-動脈乳酸較差(VADL)を1)冷却前、2)SCP開始時、3)SCP60分後、4)SCP120分後、5)直腸温24度、6)直腸温28度、7)直腸温32度、8)直腸温36度、にそれぞれ計測し、2群間で比較した。また血中グルタミン酸濃度を1)冷却前、2)復温後に計測し、2群間で比較した。慢性脳梗塞の作成率は58.3%であった。SmvO_2、AVDO_2、VADLは復温時には両群間で差がみられた。32°Cにおいて、統計学的な有意差はなかったもののSmvO_2は脳梗塞群でより低下し(p=0.06)、AVDO_2はより増加した(p=0.34)。VADLは脳梗塞群で有意に上昇した(p=0.006)。グルタミン酸濃度は人工心肺開始時(冷却前)には両群間に差を認めなかったが、復温終了後には脳梗塞群で有意に高値を示した(p=0.046)。術前術後のグルタミン酸較差は脳梗塞群で有意な高値を示した(p=0.01)。7頭のうち、6頭は基底核に梗塞を有し、1頭は前頭葉に広範な梗塞を有し、GFAP抗体を用いた免疫組織染色では梗塞巣周囲にgliosisの発現が確認された。脳梗塞を有する脳では術中脳虚血に陥っていた可能性が高く、術後脳障害の危険性が高まる可能性が示唆された。我々の220例の順行性選択的脳灌流法(SCP)補助下の弓部大動脈全置換術症例における多変量解析の検討で、脳梗塞の既往歴は術後脳神経障害の独立した予後規定因子であった。
KAKENHI-PROJECT-11671313
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弓部大動脈全置換術における順行性選択的脳灌流の確立
脳梗塞の既往歴が術後脳神経障害の危険性を高めることを実験的に立証するため、雑種成犬を用いてシリコン円柱をウイリス動脈輪を超えて、中大脳動脈基部の穿通枝付近に留置し、第一病日に脳梗塞の身体的所見を有し、術後4週間以上経過した慢性脳梗塞犬7頭(脳梗塞群)と正常犬7頭(コントロール群)を用いて灌流実験を施行した。人工心肺確立後、直腸温20度まで冷却し、120分間の順行性選択的脳灌流を行い、その後36度まで復温した。術中送血管および顎静脈に逆行性に挿入したカテーテルから採血をし、顎静脈酸素飽和度(SmvO_2)、動脈-静脈酸素含量較差(AVDO_2)、静脈-動脈乳酸較差(VADL)を1)冷却前、2)SCP開始時、3)SCP60分後、4)SCP120分後、5)直腸温24度、6)直腸温28度、7)直腸温32度、8)直腸温36度、にそれぞれ計測し、2群間で比較した。また血中グルタミン酸濃度を1)冷却前、2)復温後に計測し、2群間で比較した。慢性脳梗塞の作成率は58.3%であった。SmvO_2,、AVDO_2、VADLは復温時には両群間で差がみられた。32°Cにおいて、統計学的な有意差はなかったもののSmvO_2は脳梗塞群でより低下し(p=0.06)、AVDO_2はより増加した(p=0.34)。VADLは脳梗塞群で有意に上昇した(p=0.006)。グルタミン酸濃度は人工心肺開始時(冷却前)には両群間に差を認めなかったが、復温終了後には脳梗塞群で有意に高値を示した(p=0.046)。術前術後のグルタミン酸較差は脳梗塞群で有意な高値を示した(p=0.01)。7頭のうち、6頭は基底核に梗塞を有し、1頭は前頭葉に広範な梗塞を有し、GFAP抗体を用いた免疫組織染色では梗塞巣周囲にgliosisの発現が確認された。脳梗塞を有する脳では術中脳虚血に陥っていた可能性が高く、術後脳障害の危険性が高まる可能性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-11671313
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ケミカルドーピング法を用いた超伝導薄膜のナノエンジニアリング
Zrをケミカルドーピングした有機金属原料溶液を用いた有機金属塗布法(MOD法)により数nmサイズの絶縁性ナノ粒子を含むGd系超伝導薄膜の形成に成功した。このナノ粒子ドープ超伝導薄膜は磁場中で高い臨界電流密度特性を示した。また、MOD法により約3nmの絶縁性ナノアイランドを形成した表面装飾基板上に、MOD法により形成した超伝導薄膜は、臨界電流密度100万A/cm2以上を示し、印加磁場1T以上で臨界電流密度が向上することを明らかにした。Zrをケミカルドーピングした有機金属原料溶液を用いた有機金属塗布法(MOD法)により数nmサイズの絶縁性ナノ粒子を含むGd系超伝導薄膜の形成に成功した。このナノ粒子ドープ超伝導薄膜は磁場中で高い臨界電流密度特性を示した。また、MOD法により約3nmの絶縁性ナノアイランドを形成した表面装飾基板上に、MOD法により形成した超伝導薄膜は、臨界電流密度100万A/cm2以上を示し、印加磁場1T以上で臨界電流密度が向上することを明らかにした。本研究は、ケミカルドーピングを用いたナノエンジニアリング法(CD-NE法)によりナノ組織が制御された高機能超伝導薄膜形成プロセスを開発するとともに、高分解能その場観察技術および独自の3次元可視化技術により、これまで未解明であったナノ構造結晶化メカニズムについて解明することを目的としている。平成22年度は、計画通り2つの項目について検討した。まず第1に、超伝導薄膜導入に適した人工ピニングセンタ(APC)材料について検討を行った。固相反応法により非超伝導酸化物を添加した超伝導体バルクを作製し、超伝導特性を評価した。その結果見出したBa_3Cu_3In_4O_<12>およびBaTbO_3が超伝導相中において極めて安定であり、磁場中臨界電流密度向しに効果があり、APC材料として有望であることを明らかにした。次に、上記で得られた知見を基にして、CD-NE法を用いて、薄膜中のナノAPC相形成について調べるために、塗布原料としてIn有機金属溶液を超伝導体用有機金属溶液に添加した複合溶液を用いて有機金属塗布法(MOD法)によりInを1mol%ドープしたMOD-GdBa_2Cu_3O_y薄膜を作製した。その結果、Inドープにより、磁場中でJ_c特性が向上することが明らかとなった。この結果は、本研究計画のバルク材料を用いた基礎実験は、新しいAPC材料発見に繋がることを示唆している。また、Zr1mol%ドープ添加MOD-GdBa_2Cu_3O_y薄膜も同様に磁場中でのJ_c値が向上した。このZr添加超伝導薄膜をTEM解析した結果、超伝導相中に数nmサイズのBZOナノ粒子が形成されていることが明らかとなった。このことから、Zr有機金属塩溶液を超伝導薄膜形成溶液にケミカルドーピングするという本研究提案のCD-NE法により、超伝導相中に非超伝導相のナノ組織を形成できることが明らかとなった。本研究は、ケミカルドーピングを用いたナノエンジニアリング法(CD-NE法)によりナノ組織が制御された高機能超伝導薄膜形成プロセスを開発するとともに、高分解能その場観察技術および独自の3次元可視化技術により、これまで未解明であったナノ構造結晶化メカニズムについて解明することを目的としている。平成23年度は、本研究提案のケミカルドーピングを用いたナノエンジニアリング法(CD-NE法)を用いて、ナノサイズの人工ピニングセンター(APC)の密度の制御について研究した。具体的手法としては、基板表面修飾化法を用いてAPCの導入を検討した。LaAlO_3(100)単結晶基板上に有機金属塗布法(MOD法)によりBaZrO_3(BZO)用有機金属塗布溶液を用いて平均密度10個/μm^2、大きさ約100nm、高さ約3nmのナノアイランドの形成に成功した。このBZOナノアイランドを形成したLaAlO_3基板上に、GdBa_2CuO_3O_y(GdBCO)形成用有機金属塗布溶液を用いてGdBCO超伝導薄膜を形成した。その結果、ゼロ磁場中では、臨界電流密度1MA/cm^2以上を示し、かつ、印加磁場1T以上で磁場中臨界電流密度が向上した。したがってCD-NE法と基板表面装飾法を組み合わせることによりAPC導入が可能であることが明らかとなった。これらの結果は本手法を用いてAPCの大きさや密度を制御することにより、捕捉できる磁場強度を変化させることが出来ることを示しており、超伝導薄膜の使用目的にマッチした最適なAPC構造・分布の設計が期待される。本研究は、ケミカルドーピングを用いたナノエンジニアリング法(CD-NE法)によりナノ組織が制御された高機能超伝導薄膜形成プロセスを開発するとともに、高分解能その場観察技術および独自の3次元可視化技術により、これまで未解明であったナノ構造結晶化メカニズムについて解明することを目的としている。平成24年度は、本研究提案のケミカルドーピングを用いたナノエンジニアリング法(CD-NE法)を用いて、人工ピニングセンター(APC)を含む高機能薄膜の結晶化と微細組織観察について研究した。具体的手法としては、Zrを含む有機金属塗布溶液を用いて、超伝導相中にZrを添加したGd系超伝導薄膜を作製した。この薄膜は磁場中臨界電流特性が無添加のものと比べて飛躍的に向上している。この薄膜について透過画家電子顕微鏡により断面を微細構造観察した結果、超伝導薄膜中にBZOナノ粒子が観察された。
KAKENHI-PROJECT-22560009
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ケミカルドーピング法を用いた超伝導薄膜のナノエンジニアリング
この結果から、BZOナノ粒子がAPCとして働いたため磁場中臨界電流特性が向上したことが明らかとなった。また、結晶化挙動について観察した結果、基板直上から、基板に平行方法に超伝導相が結晶化・成長していることが観察された。今後は、超伝導相中のAPCサイズおよび密度のコントロールを可能とするプロセスの開発およびAPCの結晶化挙動についての3次元的計測を進めていく予定である。今年度の目標であった本研究提案のケミカルドーピングによる超伝導薄膜のナノエンジニアリング法と基板表面装飾法とを組み合わせることによる超伝導薄膜特性の向上を達成できたため。24年度が最終年度であるため、記入しない。平成24年度は、ケミカルドーピングによる超伝導薄膜のナノエンジニアリング法により作製したナノ人工ピニングセンター(APC)導入超伝導薄膜について、透過電子顕微鏡などを用いた薄膜微細組織観察により、これまで未知であったナノAPCが形成される過程について詳細に解析を行なう。また、この解析で得られた知見を基に、熱処理プロセスの最適化を行い、更なる超伝導薄膜の電流輸送特性の改善を目指す。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22560009
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くも膜下出血後早期脳損傷の病態解明と脳低温療法の脳保護効果の検討
くも膜下出血(subarachnoid hemorrhage; SAH)後の遅発性虚血性脳障害は予後不良因子とされており、近年、SAH後の早期脳損傷(early brain injury; EBI)が原因の一つとして注目されている。SAHにおけるEBIのメカニズムを解明するためにラットのSAHモデルにおいて、SAH後超急性期の細胞外電位や頭蓋内圧、脳血流、細胞外グルタミン酸濃度の変化を観察し、神経学的予後と組織学的脳障害との関連を評価する。さらにSAH後超急性期に咽頭冷却による脳低温療法を行い、EBIに対する脳低温療法の脳保護効果を検討する。くも膜下出血(subarachnoid hemorrhage; SAH)後の遅発性虚血性脳障害は予後不良因子とされており、近年、SAH後の早期脳損傷(early brain injury; EBI)が原因の一つとして注目されている。SAHにおけるEBIのメカニズムを解明するためにラットのSAHモデルにおいて、SAH後超急性期の細胞外電位や頭蓋内圧、脳血流、細胞外グルタミン酸濃度の変化を観察し、神経学的予後と組織学的脳障害との関連を評価する。さらにSAH後超急性期に咽頭冷却による脳低温療法を行い、EBIに対する脳低温療法の脳保護効果を検討する。
KAKENHI-PROJECT-19K09508
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外傷性ショックの診断法の開発とその法医学的応用
外傷性ショックの診断法を確立する目的で、末梢血管を拡張させるとされているロイコトキシン(LTx)に着目し、研究の結果、以下の成績が得られた。1.LTxの精製分離:リノール酸と過酢酸を反応させて得られた9,10-epoxy-12-octadecenoic acid (LTx)とその異性体12,13-epoxy-9-octadecenoic acidおよび9,10-12,13-diepoxy octadecanoic acidをシリカゲル薄層クロマトグラフィーで分離後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分離し、LTxの純度を90%以上として以下の実験に供した。2.LTxをハプテンとする抗体の作製:LTxを酸無水物法により牛血清アルブミンと結合させたものを抗原としてウサギおよびニワトリに免疫中であり、その抗体価の上昇をラジオイムノアッセイにより追跡している。3.合成LTxの生理活性:合成LTxを用いて、in vitroとin vivoで検討した。(1)in vitroでは、内皮細胞を取除いたモルモットの肺動脈と内皮細胞を有するウサギ大動脈とを灌流しながら動脈の張力をモニターする装置の中で、灌流液中にLTxを添加してやると、内皮細胞の有無に拘らずLTxが血管を拡張させる働きがあることが確認された。(2)in vivoでは、麻酔下でモルモットの血圧と心拍数をモニターしながら、モルモットの希釈血清に混和したLTxを静脈内に投与したところ、最初は持続性の血圧上昇と心拍数の増加が認められたが、10数分後には急激な心停止をもたらした。なお、対照として用いたリノール酸では(1)、(2)のような反応は認められなかった。外傷性ショックの診断法を確立する目的で、末梢血管を拡張させるとされているロイコトキシン(LTx)に着目し、研究の結果、以下の成績が得られた。1.LTxの精製分離:リノール酸と過酢酸を反応させて得られた9,10-epoxy-12-octadecenoic acid (LTx)とその異性体12,13-epoxy-9-octadecenoic acidおよび9,10-12,13-diepoxy octadecanoic acidをシリカゲル薄層クロマトグラフィーで分離後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分離し、LTxの純度を90%以上として以下の実験に供した。2.LTxをハプテンとする抗体の作製:LTxを酸無水物法により牛血清アルブミンと結合させたものを抗原としてウサギおよびニワトリに免疫中であり、その抗体価の上昇をラジオイムノアッセイにより追跡している。3.合成LTxの生理活性:合成LTxを用いて、in vitroとin vivoで検討した。(1)in vitroでは、内皮細胞を取除いたモルモットの肺動脈と内皮細胞を有するウサギ大動脈とを灌流しながら動脈の張力をモニターする装置の中で、灌流液中にLTxを添加してやると、内皮細胞の有無に拘らずLTxが血管を拡張させる働きがあることが確認された。(2)in vivoでは、麻酔下でモルモットの血圧と心拍数をモニターしながら、モルモットの希釈血清に混和したLTxを静脈内に投与したところ、最初は持続性の血圧上昇と心拍数の増加が認められたが、10数分後には急激な心停止をもたらした。なお、対照として用いたリノール酸では(1)、(2)のような反応は認められなかった。
KAKENHI-PROJECT-63570266
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63570266
変温脊椎動物皮膚の斑紋形成の組織科学的、発生学的研究
脊椎動物の体色は、特定の色素細胞の部域的発現によって形成される。本研究では、色斑形成に関わる色素細胞の分化、行動および形態発現の機構を、細胞外マトリックス、細胞接着因子、細胞内要因の観点からメダカ成体およびアフリカツメガエル胚・幼生の培養細胞を主な材料として検討した。二次元、三次元の細胞配列の直接の要因とみられる細胞接着分子については、蛍光抗体法、免疫電顕によってN-CAM,N-cadherinの存在が分化した両種の黄色素胞およびメダカの白色素胞で確認されたが、黒色素胞、虹色素胞では発現は認められなかった。色素胞単位を構成する異種の色素胞間に別種の接着分子が存在する可能性もあり、in situの色素胞単位構成部域での接着分子の同定には抗原の保存と解像力の改善が必要であり、急速凍結・凍結置換法による電顕的検索を準備中である。ツメガエル胚の神経管には135kdおよび112kdのN-cadherinが発現しているが、細胞の移動・分化とともに消長が認められる。培地・基質の選択によって特定の色素細胞の分化をコントロールできる可能性があり、黒色素胞についてはほぼ100%の抑制、誘導に成功している。この系では、色素芽細胞で発現しているN-cadherinがメラニン形成とともに消失することが明らかになった。他種の色素胞の分化誘導条件は現在検討中である。細胞形態発現の内的要素である細胞骨格系については、魚類の微小管および中間系フィラメントに対して両生類ではアクチン・ミオシンの存在が微小管とともに重要である。細胞分化過程、色素胞単位形成にともなう変化は今後の検討課題である。虹色素胞ではプリン小板の形態が紡錘形および非対象型の細胞形態発現に直接関係している。脊椎動物の体色は、特定の色素細胞の部域的発現によって形成される。本研究では、色斑形成に関わる色素細胞の分化、行動および形態発現の機構を、細胞外マトリックス、細胞接着因子、細胞内要因の観点からメダカ成体およびアフリカツメガエル胚・幼生の培養細胞を主な材料として検討した。二次元、三次元の細胞配列の直接の要因とみられる細胞接着分子については、蛍光抗体法、免疫電顕によってN-CAM,N-cadherinの存在が分化した両種の黄色素胞およびメダカの白色素胞で確認されたが、黒色素胞、虹色素胞では発現は認められなかった。色素胞単位を構成する異種の色素胞間に別種の接着分子が存在する可能性もあり、in situの色素胞単位構成部域での接着分子の同定には抗原の保存と解像力の改善が必要であり、急速凍結・凍結置換法による電顕的検索を準備中である。ツメガエル胚の神経管には135kdおよび112kdのN-cadherinが発現しているが、細胞の移動・分化とともに消長が認められる。培地・基質の選択によって特定の色素細胞の分化をコントロールできる可能性があり、黒色素胞についてはほぼ100%の抑制、誘導に成功している。この系では、色素芽細胞で発現しているN-cadherinがメラニン形成とともに消失することが明らかになった。他種の色素胞の分化誘導条件は現在検討中である。細胞形態発現の内的要素である細胞骨格系については、魚類の微小管および中間系フィラメントに対して両生類ではアクチン・ミオシンの存在が微小管とともに重要である。細胞分化過程、色素胞単位形成にともなう変化は今後の検討課題である。虹色素胞ではプリン小板の形態が紡錘形および非対象型の細胞形態発現に直接関係している。1.メダカとアフリカツメガエルの培養色素胞を用いて,免疫組織化学的に細胞接着分子の発現と分布を検討した。両種共に黄色素胞においてN-CAMおよびN-cadherinの同部位での発現が認められたが,黒色素胞,虹色素胞ではこれらの接着因子の存在は確認されなかった(第63回日本動物学会第7回日本色素細胞学会,国際両生類内分泌シンポジウム・東京・1992)。生体内での接着分子の分布については,微細構造的な検討とともに現在予備段階にあるが,蛍光抗体法によって培養黄色素胞について示された知見は生体皮膚における細補の分布状態を矛盾なく説明できる。比較的散在性の他の色素胞が培養系でも接着分子を発現していないことも,生体内状況を反映するものと考えてよさそうである。2.腹腔壁において特異的な「住み分け」の発現・分布パターンを示す虹色素胞と黒色素胞を培養条件下で共存させると,皮膚には虹色素胞を持たないメダカではランダムな混在を,ツメガエルでは黒色素胞上に虹色素胞が重層する。この配位は両生類にみられる真皮性色素胞単位の配列と同様であるが,腹腔色素胞の培養条件下の行動と皮膚の色斑形成機構との共通性は即断できない。3.両種の虹色素胞から分離・精製されたプリン結晶は共にグアニンと同定されるが,その結晶の構造は著しく異なる。結晶の形態と細胞の形態には密接な関連性があり,形態形成にどのような内的要因が働いているのか,今後の検討が必要である(第7回日本色素細胞学会)。4.生理学的に虹色素胞との類縁関係を示すメダカ白色素胞は発生学的に,また含有色素からも全く異質の細胞である可能性が示唆されている。
KAKENHI-PROJECT-04640671
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変温脊椎動物皮膚の斑紋形成の組織科学的、発生学的研究
色素パターン形成に関与すると考えられる要因のうち、細胞接着分子N-CAMとN-cadherinの色素細胞における発現様式を蛍光抗体法およびパーオキシダーゼを用いた免疫細胞化学法によって検討した。材料としては培養(primary culture)のメダカ黒色素胞、黄色素胞、白色素胞、虹色素胞、アフリカツメガエルの黒色素胞、黄色素胞、虹色素胞を用いた。両種を通じて、黒色素胞、虹色素胞には細胞接着分子は検出されず、黄色素胞においては樹状突起先端または基部、あるいは樹状突起間の周辺に2種の接着分子がほぼ同様に発現していることが2重染色によってたしかめられた。メダカ白色素胞(ツメガエルには白色素胞は存在しない)においても細胞接着分子の発現が黄色素胞同様に観察された。この結果から、皮膚における虹色素胞以外の細胞による明色カラーパターン形成にはこれらの接着分子が関与していることが示唆された(福澤・小比賀:第64回日本動物学会大会(沖縄);Zool Sci,10 Suppl;154(1993),第15回国際色素細胞学会(London),Pigment Cell Res,6;306(1993))。虹色素胞と白色素胞は共に光反射性であり、色素パターン形成における役割りには共通点があるようにみえるが、白色素胞の細胞学的研究はまだ十分にはなされていない。背地適応によって白色素胞を誘導したメダカ皮膚を用いた解析によって、白色素胞はプテリジン誘導体は含有せず、虹色素胞とは異なるプリン様物質をもつことが吸収スペクトル分析によって示された(小比賀・福澤:第15回国際色素細胞学会(London),Pigment Cell Res,6;306(1993))。パターン形成の要因の一つである細胞形態の発現にあずかる細胞骨格系(微小管、中間系フィラメント、アクチン)の分布様式はメダカの3種の培養細胞について蛍光抗体法による詳細な検討がおこなわれた(Obika & Fukuzawa Pigment Cell Res,6;417-422(1993))。メダカの培養およびin situの色素胞を用いて、細胞接着因子N-cadherin,N-CAMとvinculinの電顕による免疫細胞化学的検索を化学固定標本について金コロイド法によっておこなった。前二者については、黄色素胞の細胞表面に局部的にシグナルが検出され、その分布は蛍光抗体法によって認められたものとほぼ一致していたが、シグナルは微弱で密接した黄色素胞間には確認されなかった。vinculinは黄色素胞,黒色素胞細胞質に散在がみとめられたが,paraformaldehyde,glutaraldehyde固定による微細構造の保持は不十分であり、現在急速凍結置換法による無固定標本による検討を準備中である。分化した色素胞の中でN-cadherin,N-CAMを発現しているのは黄色素胞のみであり、黒色素胞、虹色素胞、白色素胞では検出されない。発生過程中の色素芽細胞では細胞接着分子の一過性発現も想定され、その可能性についてはアフリカツメガエル胚の神経冠培養細胞で検討した。培養細胞は、チロシンあるいはウシ胎児血清の存在下で多数の黒色素胞に分化するが、神経上皮細胞、神経細胞およびメラニン形成以前の黒色素芽胞ではN-cad-herinの強い発現が認められるのに対して、メラニン形成とともにN-cadherinは急激に消失することが確認された(福澤・小比賀第9回日本色素細胞学会年次大会)。ダルマガエルアルビノのamelanotic melanophoreは、チロシナーゼのcDNA導入によって黒色素胞に分化するが(奥本・西岡・三浦・小比賀第65回日本動物学会大会)、この過程における接着分子の消長についても現在検討が進められている。
KAKENHI-PROJECT-04640671
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イギリスにおける地域政策の展開と小売商業の地域システムに関する地理学的研究
本研究は、イギリスにおける第2次世界大戦以降の地域政策の展開過程と小売商業の開発・小売商業の地域システムの動向について考察することを目的としたものである。主要な研究結果は、次のように要約される。1.第2次世界大戦以降から1970年代では、既存の小売商業地区の階層的な地域システムを存続・強化する地域政策が実施され、小売商業施設の開発はタウンセンターなどの小売商業地の再生化をめざした事業を中心に展開してきたのに対して、郊外地域での小売商業の開発は、計画的規制によって大きな進展はみられなかった。2.地域計画に関する立地制限的な諸規制が緩和された1980年代になると、郊外型ショッピングセンター、スーパーストアなどの郊外型小売商業施設は急速な発展をみることとなり、その結果小売商業の離心化、小売商業立地の多様化が大きく進展することとなった。3. 1990年代になると、タウンセンターの再生、自動車交通量の削減といった課題への対応が求められ、小売商業の地域政策は再び既存の小売商業地区の地域システムを存続・強化する方向に向かうこととなり、郊外地域での小売商業の開発は抑制されることとなった。4.小売商業の離心化や消費者購買行動の分極化の進展によって、今日の小売商業の地域システムは、既存の小売商業地区の地域システムと新しい大規模な小売商業施設のネットワークの二つ、のシステムが併存している。また、その一般的な動向としては、後者の小売商業施設のネットワークが相対的に優勢なものとなってきたものといえる。本研究は、イギリスにおける第2次世界大戦以降の地域政策の展開過程と小売商業の開発・小売商業の地域システムの動向について考察することを目的としたものである。主要な研究結果は、次のように要約される。1.第2次世界大戦以降から1970年代では、既存の小売商業地区の階層的な地域システムを存続・強化する地域政策が実施され、小売商業施設の開発はタウンセンターなどの小売商業地の再生化をめざした事業を中心に展開してきたのに対して、郊外地域での小売商業の開発は、計画的規制によって大きな進展はみられなかった。2.地域計画に関する立地制限的な諸規制が緩和された1980年代になると、郊外型ショッピングセンター、スーパーストアなどの郊外型小売商業施設は急速な発展をみることとなり、その結果小売商業の離心化、小売商業立地の多様化が大きく進展することとなった。3. 1990年代になると、タウンセンターの再生、自動車交通量の削減といった課題への対応が求められ、小売商業の地域政策は再び既存の小売商業地区の地域システムを存続・強化する方向に向かうこととなり、郊外地域での小売商業の開発は抑制されることとなった。4.小売商業の離心化や消費者購買行動の分極化の進展によって、今日の小売商業の地域システムは、既存の小売商業地区の地域システムと新しい大規模な小売商業施設のネットワークの二つ、のシステムが併存している。また、その一般的な動向としては、後者の小売商業施設のネットワークが相対的に優勢なものとなってきたものといえる。本年度は、おもにイギリスの地域政策(小売商業の地域政策)の変遷過程と小売商業の開発について検討してきた。その結果の概要は、以下のようにまとめられる。1970年代末までの小売商業の地域政策の基調は、中心地理論を政策ベースとする既存の小売商業地区の階層的な地域システムを存続・強化することに主眼点が置かれてきたことにある。そのため、郊外地域(out-of-town)の小売商業の開発・立地は規制され、一方タウンセンターを筆頭に、既存の小売商業地区での再開発・拡張などの小売商業開発がさかんに実施されてきた。1970年代末以降、ことにサチャー政権の誕生以降の1980年代からは、従来の政策はいわばなし崩し的に変更され、小売商業の地域政策の基本理念は、小売商業の立地規制(開発適地の制限)を中心とする小売商業開発のコントロールを緩和し、民間部門の活動を柱に開発を促進するスタンスに移行してきた。その結果、各種の大規模小売商業施設の発展、小売商業立地の多様化、小売商業の離心化などの進展によって、既存の小売商業地区の地域システムは大きく揺らぐこととなった。1980年代末には、郊外化の急速な発展による既存の小売商業地区の衰退、明確な開発基準の欠如による混乱などの問題が顕在化し、小売商業の地域政策の課題として、既存の小売商業地区と新しいタイプの小売商業施設とのバランスをいかに保つか、という問題がクローズアップされることとなった。また、1990年代以降になって、車利用の抑制、公共交通を主体としたコンパクトな都市構造への転換といった環境保護的アプローチからも小売商業の地域政策の見直しが進められてきている。本年度は、前年度に検討したイギリスの小売商業の地域政策の変遷過程に関する検討結果を踏まえ、第2次世界大戦以降の小売商業の開発と小売商業の地域システムの動向について考察するとともに、研究の総括(報告書作成)を行った。本年度の研究結果の概要は、次のようである。1970年代までは、既存の小売商業地区の階層的な地域システムの存続・強化すべく、タウンセンターなどでの小売商業施設の開発など小売商業地の再生化をめざした事業が活発に行われ、一方郊外地域での小売商業の開発は計画的規制によってあまり進展しなかった。地域計画に関する立地制限的規制が緩和された1980年代になると、郊外型ショッピングセンター、スーパーストアなどの郊外型小売商業施設は急速な開発・発展をみることとなり、その結果小売商業の離心化、小売商業立地の多様化が進展することとなった。
KAKENHI-PROJECT-09680170
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イギリスにおける地域政策の展開と小売商業の地域システムに関する地理学的研究
こうした小売商業の離心化は、大都市圏を典型に、消費者購買行動の分極化を進展させることとなり、小売商業の地域システムは、既存の小売商業地区の地域システムと新しい大規模な小売商業施設のネットワーク、の二つのシステムが併存するものとなった。小売商業の地域システムの動向は、一般的にはモータリゼーションへの対応が優れている新しい小売商業施設のネットワークが相対的に優勢となってきた過程とみることができる。ことに、最寄品部門における消費者購買行動の分極化を進めてきたスーパーストアの地域へのインパクトは、普遍的かつ大きく、その結果ディストリクトセンター以下の階層に位置する既存の小売商業地区では、衰退化が進むこととなった。
KAKENHI-PROJECT-09680170
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クニッツ型セリンプロテアーゼインヒビターによる増殖因子活性調節に関する研究
まず、マウスHGF Activator,HAI-1,HAI-2 cDNA及びGenomic DNAをクローニングし、mutationを加え、遺伝子を不活化したtargeting vectorを作製し、第一段階として、熊本大学動物資源センターの山田源教授らのグループの協力を得て、ES細胞にエレクトロポレーション法によりHGFAのTargeting vectorの導入を行なった。相同組み替え体をポジティブネガティブ選択法によって選別、8細胞胚に注入した後、偽妊娠マウスに移植しキメラマウスを得た。さらにC57BL/6マウスと交配し現在数匹のへテロマウスを得て、ホモ欠損マウスを作成すべく現在交配中である。また、関連研究としてマウスHAI-1が実験大腸潰瘍モデルの治癒期に高発現してくることや、マウスHAI-2の新しいスプライシングバリアントを発見した他、抗HAI抗体を用いた免疫組織学的検索により、HAI-1が再生上皮や癌細胞浸潤先端に検出されることやHAI-1の細胞膜上でのreservoirとしての役割を報告した。まず、マウスHGF Activator,HAI-1,HAI-2 cDNA及びGenomic DNAをクローニングし、mutationを加え、遺伝子を不活化したtargeting vectorを作製し、第一段階として、熊本大学動物資源センターの山田源教授らのグループの協力を得て、ES細胞にエレクトロポレーション法によりHGFAのTargeting vectorの導入を行なった。相同組み替え体をポジティブネガティブ選択法によって選別、8細胞胚に注入した後、偽妊娠マウスに移植しキメラマウスを得た。さらにC57BL/6マウスと交配し現在数匹のへテロマウスを得て、ホモ欠損マウスを作成すべく現在交配中である。また、関連研究としてマウスHAI-1が実験大腸潰瘍モデルの治癒期に高発現してくることや、マウスHAI-2の新しいスプライシングバリアントを発見した他、抗HAI抗体を用いた免疫組織学的検索により、HAI-1が再生上皮や癌細胞浸潤先端に検出されることやHAI-1の細胞膜上でのreservoirとしての役割を報告した。本年度はまず、マウスHGF Activator,HAIー1,HAIー2 cDNA及びGenomic DNAをクローニングし(Biochim.Biophys.Acta,in press)、マウスHAI-1が実験大腸潰瘍モデルの治癒期に高発現してくることや(Am.J.Phys.,in press)、マウスHAI-2の新しいスプライシングバリアントを発見した(Biochem.Biophys.Res.Commun,255:740-748,1999)他、抗HAI抗体を用いた免疫組織学的検索により、HAIが再生上皮や癌細胞浸潤先端に検出され(J.Histochem.Cytochem.,47:673-682,1999)、特に大腸がんにおいて、全体的には発現が減弱しているものの、浸潤先端では逆に過剰発現していることなどを見い出した。(Cancer lett.,148:127-134,2000)(他一遍投稿中)。現在、クローン化したマウスHGFA,HAI-1,HAI-2 genomic DNAにmutationを加え、遺伝子を不活性化したtargeting vectorを作製し終えた段階で、以降は熊本大学の山村教授らのグループの協力を得られることになったので、今春にはES細胞にエレクトロポーション法によって遺伝子導入する予定である。予定より数ヶ月遅れているが、次年度は相同組み替え体をポジティブネガティブ選択法によって選別、8細胞胚に注入した後、偽妊娠マウスに移植しキメラマウスを得られる予定である。計画年度内にノックアウトマウスが得られるよう全力を尽くしている。すでにマウスHGF Activator,HAI-1,HAI-2 cDNA及びGenomic DNAをクローニングしたので、今年度はクローン化したマウスHGFA,HAI-1,HAI-2 genomic DNAにmutationを加え、遺伝子を不活化したtargeting vectorを作製し、第一段階として、熊本大学動物資源センターの山田源教授らのグループの協力を得て、ES細胞にエレクトロポレーション法によりHGFAのTargeting vectorの導入を行なった。相同組み替え体をポジティブネガティブ選択法によって選別、8細胞胚に注入した後、偽妊娠マウスに移植しキメラマウスを得た。さらにC57BL/6マウスと交配しヘテロマウスを得て、十数匹のホモ欠損マウスを作成した。また、HAI-1,HAI-2遺伝子についてもgenomic DNAにmutationを加えたTargeting vectorを作成し、ES細胞へのエレクトロポレーションを熊本大学に依頼した。
KAKENHI-PROJECT-11670221
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胎児発育と成長因子IGF familyの動態とその生理学的意義
1.臨床的検討インフォームドコンセントが得られた正常妊婦,糖代謝異常合併妊婦,肥満妊婦,妊娠中毒症,重症妊娠悪阻妊婦,早産妊婦,その他各種合併症を持つ妊婦,また喫煙妊婦,および超音波断層法にて子宮内胎児発育遅延や巨大児と推定された妊婦より血液を,またこれら妊婦の分娩時に新生児臍帯血を採取し、血中総IGF-I測定を行った。結果,母体血では妊娠中毒症,重症妊娠悪阻妊婦では総IGF-Iは有意に低かった。新生児臍帯血では児の出生時体重と有意な相関を示した。今後、同サンプルのIGFBP分析を行う。また,得られた結果を妊娠週数,採血時の母体体重,母体体格Body Mass Index(BMI),採血時の母体体重増加(妊娠母体体重・非妊時体重),合併症別,その病勢の経過,新生児の出生時体重,児の体格等で分析する。基礎的検討ラットを用いて交配させて胎仔期より新生仔期,成体までの血清および肝臓のサンプリングを行った。今後,血中GH,肝のGHレセプター,IGF-Iの血中濃度,肝のIGFレセプターおよびIGFBPを分析し,それらの相互の関連を検討する。1.臨床的検討インフォームドコンセントが得られた正常妊婦,糖代謝異常合併妊婦,肥満妊婦,妊娠中毒症,重症妊娠悪阻妊婦,早産妊婦,その他各種合併症を持つ妊婦,また喫煙妊婦,および超音波断層法にて子宮内胎児発育遅延や巨大児と推定された妊婦より血液を,またこれら妊婦の分娩時に新生児臍帯血を採取し、血中総IGF-I測定を行った。結果,母体血では妊娠中毒症,重症妊娠悪阻妊婦では総IGF-Iは有意に低かった。新生児臍帯血では児の出生時体重と有意な相関を示した。今後、同サンプルのIGFBP分析を行う。また,得られた結果を妊娠週数,採血時の母体体重,母体体格Body Mass Index(BMI),採血時の母体体重増加(妊娠母体体重・非妊時体重),合併症別,その病勢の経過,新生児の出生時体重,児の体格等で分析する。基礎的検討ラットを用いて交配させて胎仔期より新生仔期,成体までの血清および肝臓のサンプリングを行った。今後,血中GH,肝のGHレセプター,IGF-Iの血中濃度,肝のIGFレセプターおよびIGFBPを分析し,それらの相互の関連を検討する。
KAKENHI-PROJECT-07770919
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大動脈平滑筋の新しいミオシン重鎖キナーゼの同定とミオシン重鎖燐酸化の意義
ブタ大動脈平滑筋抽出液をDEAE-Toyopearl650Sカラムクロマトグラフィに供し、0.15および0.2M KCI付近で溶出する二種類のミオシン重鎖キナーゼ活性の存在を見いだした。それぞれを、myosin kinase I(MKI)、およびmyosin kinase II(MKII)と命名した。[γ-^<32>P]ATPを基質とし、130倍まで精製されたMKIで燐酸化したミオシン重鎖から、燐酸化部位(Ser*)付近の配列、Arg-Gly-Asn-Glu-Thr-Ser*-Phe-Val-Proを持つペプチドを単離した。既に報告されているミオシン重鎖のアミノ酸配列と比較すると、ペプチドC末端のProは、平滑筋ミオシン204-kDa重鎖アイソフォーム尾部先端の近くにあって、ヘリックスを崩すProの位置に相当していた。これよりC末端部分はミオシン分子の会合に寄与すると考えられているnon-helical tail pieceとなる。燐酸化部位付近のアミノ酸配列は、平滑筋の204-kDa重鎖にのみ保存され、200-kDaアイソフォームや、非筋ミオシンでは全く異なる配列になっていた。MKIにより燐酸化した大動脈ミオシンの測定から、MKIによる燐酸化は、大動脈ミオシンの溶解度を減少させることを見いだした。MKIによる燐酸化は、弛緩状態における大動脈平滑筋において、ミオシンフィラメントの安定化に寄与している可能性がある。一方、MKIIはほぼ均一に精製され、分子量、サブユニット構成、酵素的性質、抗体との交差反応などから、カゼインキナーゼII(CKII)であることが示された。MKII/(CKII)による燐酸化部位は、non-helical tail pieceに存在し、大動脈平滑筋において内在性のCKIIが、ミオシン重鎖の燐酸化に作用していることを直接的に示す結果になった。しかし、MKII/CKIIによるミオシン重鎖燐酸化の意義は本研究においても、解明されず残された。燐酸化されるSer周辺のアミノ酸配列は非筋ミオシンにおいても保存され、MKII/CKIIによる燐酸化は平滑筋ミオシンに特異的でない可能性が高い。また、トリ砂のうミオシンでは相当するSerがGlyに置換されていることも、今後この燐酸化の意義を解明する上で考慮に値する。ブタ大動脈平滑筋抽出液をDEAE-Toyopearl650Sカラムクロマトグラフィに供し、0.15および0.2M KCI付近で溶出する二種類のミオシン重鎖キナーゼ活性の存在を見いだした。それぞれを、myosin kinase I(MKI)、およびmyosin kinase II(MKII)と命名した。[γ-^<32>P]ATPを基質とし、130倍まで精製されたMKIで燐酸化したミオシン重鎖から、燐酸化部位(Ser*)付近の配列、Arg-Gly-Asn-Glu-Thr-Ser*-Phe-Val-Proを持つペプチドを単離した。既に報告されているミオシン重鎖のアミノ酸配列と比較すると、ペプチドC末端のProは、平滑筋ミオシン204-kDa重鎖アイソフォーム尾部先端の近くにあって、ヘリックスを崩すProの位置に相当していた。これよりC末端部分はミオシン分子の会合に寄与すると考えられているnon-helical tail pieceとなる。燐酸化部位付近のアミノ酸配列は、平滑筋の204-kDa重鎖にのみ保存され、200-kDaアイソフォームや、非筋ミオシンでは全く異なる配列になっていた。MKIにより燐酸化した大動脈ミオシンの測定から、MKIによる燐酸化は、大動脈ミオシンの溶解度を減少させることを見いだした。MKIによる燐酸化は、弛緩状態における大動脈平滑筋において、ミオシンフィラメントの安定化に寄与している可能性がある。一方、MKIIはほぼ均一に精製され、分子量、サブユニット構成、酵素的性質、抗体との交差反応などから、カゼインキナーゼII(CKII)であることが示された。MKII/(CKII)による燐酸化部位は、non-helical tail pieceに存在し、大動脈平滑筋において内在性のCKIIが、ミオシン重鎖の燐酸化に作用していることを直接的に示す結果になった。しかし、MKII/CKIIによるミオシン重鎖燐酸化の意義は本研究においても、解明されず残された。燐酸化されるSer周辺のアミノ酸配列は非筋ミオシンにおいても保存され、MKII/CKIIによる燐酸化は平滑筋ミオシンに特異的でない可能性が高い。また、トリ砂のうミオシンでは相当するSerがGlyに置換されていることも、今後この燐酸化の意義を解明する上で考慮に値する。ブタ大動脈平滑筋ホモジェネートよりDEAE-Toyopearl,CM-Toyopearl,Sephacryl S300,Heparin-Agarose等を用いたカラムクロマトグラフィによりミオシン重鎖キナーゼを均一に精製した。精製酵素は40-kDaと23-kDaサブユニットが1:1の組成で含まれ、総分子量はゲル濾過から160-kDaと見積られた。収量は1kgの大動脈から41μgであった。酵素活性のpH依存性はベル型を示し、最大pHは8.5であった。KC1,MgC1_2で活性化され、それぞれ0.24Mおよび10mMで最大活性を示した。
KAKENHI-PROJECT-06455001
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06455001
大動脈平滑筋の新しいミオシン重鎖キナーゼの同定とミオシン重鎖燐酸化の意義
予め、酸ホスファターゼで処理し、重鎖を脱燐酸化した大動脈ミオシンでは、この酵素によってミオシン1モル当たり1モルの燐酸基が導入された。大動脈ミオシンには200-kDaおよび204-kDaの分子量を持つ二つのアイソフォームが存在するが、この精製酵素は204-kDa重鎖のみを特異的に燐酸化した。[γ^<32>P]-ATPを用い燐酸化した大動脈ミオシン重鎖から燐酸化ペプチドを単離し一次構造を決定した。燐酸化部位周辺のアミノ酸配列はVIENADGS*DEEMD-ARであり、S*が燐酸化されていた。この構造はラット大動脈、ウサギ子宮等の平滑筋ミオシンの204-kDa重鎖アイソフォームのC末端付近のnon-helical tail pieceに存在する構造と相同であり、この燐酸化は大動脈ミオシンのフィラメント形成と何等かの関連をもつことが示唆された。しかし、精製ミオシンのフィラメント形成能にはこの燐酸化により有意な変化は見いだされなかった。フィラメント形成に関与する他のタンパク質との関連を探る必要がある。ブタ大動脈平滑筋抽出液をDEAE-Toyopearl 650Sカラムクロマトグラフィに供し、昨年度報告したミオシン重鎖キナーゼの他に、新たにEGTA存在下で活性を持つミオシン重鎖キナーゼが0.15M KCl付近で溶出することを見いだした。昨年度報告したキナーゼを、myosin kinase II(MKII)、新しいキナーゼをmyosin kinase I(MKI)と命名した。MKIを更にAffigel blue,およびSephacryl S 300カラムクロマトグラフィを用いて130倍まで精製した。ゲル濾過の溶出量から、分子量は4万と推定され、基質特異性は低く、プロタミンやカゼインの他に、ミオシンLC20のSerlおよびSer2も燐酸化した。[γ-^<32>P]ATPを基質とし、MKIで燐酸化したミオシン重鎖をトリプシン消化し、燐酸化ペプチドを単離した。配列分析から、燐酸化部位付近のアミノ酸配列はRGNETSFVPと決定され、6番目のSerが燐酸化されていた。この配列と既に報告されているミオシン重鎖のアミノ酸配列を比較すると、ペプチドC末端のProは、平滑筋ミオシン204-kDa重鎖のアミノ酸配列を比較すると、ペプチドC末端のProは、平滑筋ミオシン204-kDa重鎖アイソフォーム尾部先端の近くにあって、ヘリックスを崩すProの位置に相当していた。一方、MKIIは分子量、サブユニット構成、酵素的性質、抗体との交錯反応から、カゼインキナーゼII(CKII)であることが示された。昨年度報告したように、MKII/(CKII)の燐酸化部位は、C末端のヘリックスの崩れた領域に存在していた。このように大動脈平滑筋ミオシン重鎖204-kDaアイソフォームにおいて、C末端付近のProをはさんで、ヘリックスおよびヘリックスの崩れた両領域に燐酸化部位の存在することは大変興味深い。MKIおよびMKII/(CKII)により燐酸化した大動脈ミオシンは、アクチンで活性化されるATPase活性を変化させなかったが、MKIによる燐酸化は、ミオシンフィラメントを安定化することを見いだした。
KAKENHI-PROJECT-06455001
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酸素・電子滴定とESR分光によるヘムオキシゲナーゼ反応の再検討と結晶構造の解析
ヘムオキシゲナーゼ(HO)はヘム分解経路において中心的役割を果たす膜結合型ミクロソーム蛋白質である。NADPHチトクロームP-450還元酵素存在下、HOに結合したヘムはα-メソ位の水酸化を受けα-ヒドロキシヘムとなり、次にCOの遊離を伴ってベルドヘムが形成され、最後に環開裂が起こりビリベルジンまで分解されるが、反応中間過程で必要とされる電子当量および中間体の磁気的性質については議論がある。今回、ラットHO-1からC末端22残基の膜結合部位を除いた可溶性HOを用いてヘム-およびα-ヒドロキシヘム-HO複合体を調製し、様々な条件のもと電子・酸素滴定を行い、その吸収スペクトルとESRスペクトル変化をもとにベルドヘム生成過程を検討した。好気条件ではヘムは約3当量のNADPHによりビリベルジンにまで分解されることがわかった。次にα-ヒドロキシヘムを化学合成し、HOとの複合体を形成させ、ESRスペクトルを測定したところ、α-ヒドロキシヘムはFe(III)high spin体とFe(II)πneutral radical体の共鳴混成状態にあることがわかった。このradicalのシグナルは5Kにおいてマイクロ波強度1mW10mWで飽和した。厳密な嫌気条件下α-ヒドロキシヘム-HO複合体に酸素を徐々に添加したところ、酸素1.0当量を消費した時点でスペクトル変化は止まり、CO結合型および非結合型Fe(II)ベルドヘムの生成がみたれた。また、時間経過とともにCOの解離も観測された。このベルドヘムはCO再添加により完全にCO結合型に変換した。CO結合型および非結合型はいずれもESR-si1entであり、Fe(II)ベルドヘムの生成を裏付けた。また、K_3[Fe(CN)_6]添加によって生じた酸化体はFe(III)low spin typeのESRシグナルを示した。以上の結果から、ベルドヘム生成機構について、πradical体が酸素と反応してCO結合型ベルドヘムが形成され、この反応には電子の供給を必要とそないことが明らかになった。ヘムオキシゲナーゼ(HO)はヘム分解経路において中心的役割を果たす膜結合型ミクロソーム蛋白質である。NADPHチトクロームP-450還元酵素存在下、HOに結合したヘムはα-メソ位の水酸化を受けα-ヒドロキシヘムとなり、次にCOの遊離を伴ってベルドヘムが形成され、最後に環開裂が起こりビリベルジンまで分解されるが、反応中間過程で必要とされる電子当量および中間体の磁気的性質については議論がある。今回、ラットHO-1からC末端22残基の膜結合部位を除いた可溶性HOを用いてヘム-およびα-ヒドロキシヘム-HO複合体を調製し、様々な条件のもと電子・酸素滴定を行い、その吸収スペクトルとESRスペクトル変化をもとにベルドヘム生成過程を検討した。好気条件ではヘムは約3当量のNADPHによりビリベルジンにまで分解されることがわかった。次にα-ヒドロキシヘムを化学合成し、HOとの複合体を形成させ、ESRスペクトルを測定したところ、α-ヒドロキシヘムはFe(III)high spin体とFe(II)πneutral radical体の共鳴混成状態にあることがわかった。このradicalのシグナルは5Kにおいてマイクロ波強度1mW10mWで飽和した。厳密な嫌気条件下α-ヒドロキシヘム-HO複合体に酸素を徐々に添加したところ、酸素1.0当量を消費した時点でスペクトル変化は止まり、CO結合型および非結合型Fe(II)ベルドヘムの生成がみたれた。また、時間経過とともにCOの解離も観測された。このベルドヘムはCO再添加により完全にCO結合型に変換した。CO結合型および非結合型はいずれもESR-si1entであり、Fe(II)ベルドヘムの生成を裏付けた。また、K_3[Fe(CN)_6]添加によって生じた酸化体はFe(III)low spin typeのESRシグナルを示した。以上の結果から、ベルドヘム生成機構について、πradical体が酸素と反応してCO結合型ベルドヘムが形成され、この反応には電子の供給を必要とそないことが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-10129229
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植物マイコプラズマの宿主決定機構の解析
植物マイコプラズマ(Candidatus Phytoplasma asteris)の宿主決定の分子機構を解明するため、今年度はその全ゲノム塩基配列の解読を行った。そのゲノムは約860kbの染色体と、2つのプラスミド(約5kbと4kb)から構成されていた。染色体には754個のORFが見いだされ、2つのrRNA遺伝子オペロンや32個のtRNA遺伝子をはじめ、複製、転写、翻訳、蛋白質輸送に関与する基本的な遺伝子がコードされていた。また、解糖系や脂質合成、核酸の再利用系であるサルベージ経路に関する遺伝子は存在していた一方で、それ以外の代謝系関連遺伝子の多くを欠いており、必要な物質の多くを宿主に依存しているものと考えられた。植物マイコプラズマに近縁な、動物マイコプラズマはTCA回路、電子伝達系、アミノ酸合成、脂肪酸合成、コレステロール合成に関する遺伝子をもっていないことが知られているが、植物マイコプラズマにおいてもこれらの遺伝子は認められなかった。さらに、植物マイコプラズマゲノムでは、ペントースリン酸回路やphosphotransferase system、ATP合成酵素に関する遺伝子も欠いており、自律増殖する生物で、最少遺伝子を持つとされてきた動物マイコプラズマより代謝関連遺伝子が少なかった。これは植物マイコプラズマが動物マイコプラズマと異なり、細胞内に寄生し、栄養豊富な植物篩部に生息するため、退行的進化により遺伝子の多くを失ったのではないかと考えられた。逆に、植物マイコプラズマゲノムには、動物マイコプラズマには無い膜輸送系遺伝子が多数コードされており、植物の生育に必要な物質が、植物マイコプラズマ感染により収奪され、病徴の一因となっている可能性が考えられた。生物の「最少ゲノム」については、これまで数多くの研究があるが、植物マイコプラズマはエネルギー合成系をも欠き、栄養豊富な環境に生活するライフスタイルに適応した、新しいタイプの最少ゲノムを持つ生物であるといえる。またこの知見は、生物は生活する環境によって想像以上に多様な遺伝子構成で生きてゆけることを示唆している。本研究は、植物マイコプラズマ(phytoplasma)の宿主決定機構について分子生物学的レベルで研究を行い、その分子機構を解明するものである。タマネギ萎黄病ファイトプラズマ野生株(OY-W)、及び昆虫伝搬能喪失変異株(OY-NIM)よりプラスミドをクローン化したところ、他のバクテリアプラスミドには見られない特徴が認められたため、更に解析を行った。OY-Wよりクローン化したプラスミドpOYMは、全長3933bpで5つのORFが認められ、これらのうちでORF5にコードされるアミノ酸配列(pOYW-Rep,377aa)のN末端側、約190aaはrolling circle型複製(RCR)を行うpLS1 familyに属するプラスミドの複製開始蛋白質(plasmid Rep)と高い相同性が見られた。しかしplasmid Repに比べ、pOYW-RepはC末端側が約100aa長く、この領域はcircovirusesなどRCRを行うssDNAウイルスの複製タンパク質(viral Rep)のヘリカーゼドメインと相同で、ヌクレオチド結合モチーフも保存されていた。viral Repはplasmid Repから進化したと考えられてきたが、ヘリカーゼドメインのあるRepをもつプラスミドはこれまで例がなかった。次に、OY-NIMにおける同種のプラスミドpOYNIMをクローン化し、塩基配列を解析した。その結果、pOYNIMではpOYWに存在する2つのORF(ORF3,ORF4)が欠失しており、これらの遺伝子が昆虫伝搬能に関わっている可能性が考えられた。そこでこのORFに対し機能予測を行ったところ、膜貫通領域を2つ持つ膜タンパク質であると予想されたことから、このタンパク質が媒介昆虫体内において、何らかの相互作用をし、昆虫伝播能に関わっている可能性が考えられた。植物マイコプラズマ(Candidatus Phytoplasma asteris)の宿主決定の分子機構を解明するため、今年度はその全ゲノム塩基配列の解読を行った。そのゲノムは約860kbの染色体と、2つのプラスミド(約5kbと4kb)から構成されていた。染色体には754個のORFが見いだされ、2つのrRNA遺伝子オペロンや32個のtRNA遺伝子をはじめ、複製、転写、翻訳、蛋白質輸送に関与する基本的な遺伝子がコードされていた。また、解糖系や脂質合成、核酸の再利用系であるサルベージ経路に関する遺伝子は存在していた一方で、それ以外の代謝系関連遺伝子の多くを欠いており、必要な物質の多くを宿主に依存しているものと考えられた。植物マイコプラズマに近縁な、動物マイコプラズマはTCA回路、電子伝達系、アミノ酸合成、脂肪酸合成、コレステロール合成に関する遺伝子をもっていないことが知られているが、植物マイコプラズマにおいてもこれらの遺伝子は認められなかった。さらに、植物マイコプラズマゲノムでは、ペントースリン酸回路やphosphotransferase system、ATP合成酵素に関する遺伝子も欠いており、自律増殖する生物で、最少遺伝子を持つとされてきた動物マイコプラズマより代謝関連遺伝子が少なかった。これは植物マイコプラズマが動物マイコプラズマと異なり、細胞内に寄生し、栄養豊富な植物篩部に生息するため、退行的進化により遺伝子の多くを失ったのではないかと考えられた。逆に、植物マイコプラズマゲノムには、動物マイコプラズマには無い膜輸送系遺伝子が多数コードされており、植物の生育に必要な物質が、植物マイコプラズマ感染により収奪され、病徴の一因となっている可能性が考えられた。
KAKENHI-PROJECT-01J04787
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植物マイコプラズマの宿主決定機構の解析
生物の「最少ゲノム」については、これまで数多くの研究があるが、植物マイコプラズマはエネルギー合成系をも欠き、栄養豊富な環境に生活するライフスタイルに適応した、新しいタイプの最少ゲノムを持つ生物であるといえる。またこの知見は、生物は生活する環境によって想像以上に多様な遺伝子構成で生きてゆけることを示唆している。
KAKENHI-PROJECT-01J04787
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考古学と人類学のコラボレーションによる縄文社会の総合的研究
考古学研究者と人類学研究者が協力をして、愛知県田原市保美貝塚の発掘調査を行い、新規の人骨出土資料を入手し、共同研究を行った。その結果、保美貝塚からは多数合葬・複葬例が検出され、これに対して様々な分析が行われ、縄文社会に対して新たな仮説を立てたとともに、考古学と人類学のコラボレーションモデルを提示した。考古学研究者と人類学研究者が協力をして、愛知県田原市保美貝塚の発掘調査を行い、新規の人骨出土資料を入手し、共同研究を行った。その結果、保美貝塚からは多数合葬・複葬例が検出され、これに対して様々な分析が行われ、縄文社会に対して新たな仮説を立てたとともに、考古学と人類学のコラボレーションモデルを提示した。平成22年度は、愛知県田原市に所在する保美貝塚の発掘調査を、試掘(2010年9月)・本調査(2011年2月)の2回にわたって行った。総面積は24m^2である。これらの調査の結果、全国で10例目、およそ28年ぶりの発見となる盤状集骨墓を1基検出することができた。さらには、これに近接する土器棺墓を1基、および別個体の集骨葬例を1基確認することができた。また、これらの遺構に隣接して土坑墓も1基確認され、この中からは単独・単葬された人骨が出土した。この人骨は、鹿角製の腰飾を着装しており、赤色顔料が散布されるなど、特殊な埋葬状況を考えさせるものであった。このような事例の出土は、保美貝塚では初めてである。これらの人骨出土例については、研究の目的にも記したように、詳細な考古学的情報を入手するため、実測図・デジタル写真・ビデオ撮影によって、その埋葬方法や人骨各部位の位置関係などを逐一記録した。これにより、従来は情報として残されることがほとんど無かった人骨各部位の位置関係や埋葬状況について詳細な記録を残すことができた。このことは、縄文時代における特殊な墓制である盤状集骨葬について、より一層の考古学的分析を行うことを可能とするとともに、人骨から得られる人類学的情報と比較することによって、過去の社会に対してさらなる理解を導くものとなるであろう。なお、出土人骨については、現在人類学的な分析を行っている最中である。このような発掘調査や分析以外にも、考古学・人類学的見地からの教養教育・社会教育の一環として、地元の小中学校および高等学校の先生方を対象として、田原市の文化財、特に保美貝塚の重要性についてレクチャーを行い、地元の教育機関と連携しながら、文化的アイデンティティの育成についても貢献を行った。平成23年度は,愛知県田原市に所在する保美貝塚の発掘調査を,本調査として(2011年9月および2012年2月)2回に分けて行った。総面積は32m^2である。これらの調査の結果,昨年発見した盤状集骨墓が実は大きな人骨集積墓の一部であったことが判明した。このような事例は,全国的にも稀有なものであり,慎重な調査が要求されるため,昨年にもまして精度の高い調査を行った。また,昨年度にはこの遺構に隣接して土坑墓も1基確認されたが,今回はこの土坑墓に埋葬されていた人骨を取り上げて,分析を開始した。これらの人骨出土例については,詳細な考古学的情報を入手するために実測図・デジタル写真・ビデオ撮影によって,その埋葬方法や人骨各部位の位置関係などを逐一記録した。これにより,従来は情報として残されることがほとんど無かった人骨各部位の位置関係や埋葬状況について詳細な記録を残すことができた。これにより,縄文時代における特殊な墓制である盤状集骨葬について,より一層の考古学的分析を行うことを可能とするとともに,人骨から得られる人類学的情報と比較することによって,過去の社会に対してさらなる理解を導くことができる。このような発掘調査や分析以外にも、考古学・人類学的見地からの教養教育・社会教育の一環として,田原市立頭部小学校において,地元文化財の出前授業を行い,また地元の一般の人々を対象として,田原市の文化財,特に保美貝塚の重要性について講演会を行い,地元の教育機関と連携しながら文化的アイデンティティの育成についても貢献を行った。愛知県田原市に所在する保美貝塚の発掘を行い、人骨の多数合葬・複葬例(盤状集骨を含む)の調査および当該人骨の取り上げを行った。これにより、現在の研究水準から検討を加えることのできる新規の人骨資料を入手することができた。これらの人骨出土例に対し、考古学的な分析(埋葬地点・埋葬形態・装身具および副葬品の有無・土坑墓周辺における関連施設の有無など)を行い、今回の調査地点が保美貝塚の中でも特殊な場所であったことを確認した。出土人骨については、人骨のクリーニング・接合などの基礎的整理を開始し、その形態の分析が行われた。その結果、土坑墓出土の単独・単葬例は熟年期後半段階の男性例であり、体格的にも大柄で、骨病変が観察されるとの結果が提示された。
KAKENHI-PROJECT-22320155
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考古学と人類学のコラボレーションによる縄文社会の総合的研究
また、上記の研究の進展を受けて、日本考古学協会第78回総会研究発表(2012年5月27日、於立正大学)では、研究発表会セッション4「考古学と人類学のコラボレーションによる遺跡研究の試みー愛知県保美貝塚を事例としてー」を開催し、研究代表者および共同研究者5名によって、遺跡そのものの調査研究史・今回調査した多数合葬・複葬例の検出状況・遺跡出土動物遺存体の分析結果・保美貝塚出土人骨における炭素・窒素同位体分析による食性分析・同人骨におけるDNA分析・Sr同位体分析の発表時点までにおける結果などを発表した。これらの研究状況の進展に合わせて研究会を2回(於歴博・東大)開催し、各分担者の研究の進捗状況を確認するとともに、研究成果の取りまとめを行った。二年間にわたる発掘調査によって,当初の目的であった新規の資料を入手することができたとともに,それについての人類学的分析も進んでいる。また,本研究に基づく報告や学会発表,講演会なども行っており,これらを総括するとおおむね順調に研究は進展していると言えるだろう。24年度が最終年度であるため、記入しない。今後は出土した人骨資料を基にして,その埋葬形態や人類学的な属性について調査分析を進め,平成24年度末には報告書として刊行する予定である。ただ,今回発見した人骨集積の規模が当初の予想を大幅に上回り,設定期間以上の時間が発掘調査にかかったが,これについても今年度前半における調査で完掘し,分析対象とする予定でいる。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22320155
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インドネシアの人類化石包含層に関するアルゴン-アルゴン年代測定
インドネシア・ジャワ島では、古人類化石骨資料が多数発見されている。これらは、人類進化史において、アフリカで誕生したと考えられる人類が、世界各地へ、いつ、どのようにして拡散していったかを推察する上で重要な情報を与えるものである。また、これらは東方アジアの前期中期更新世の文化のルーツを探る上でも鍵となる情報を与えるものとして、重要視されている。一部のジャワ原人化石については、かつて、東アフリカ出土の約190170万年前の資料との形態的な類似が指摘されたこともあったが、1980年代1990年代に行われた日本の研究者ら(近藤恵を含む)による地質学的・年代学的研究成果からは、ジャワの古人類は最も古いものでも110万年を超えることはないと結論づけられ、東アフリカの資料との対比は年代的にも矛盾すると考えられた。しかしながら、近年、米国の研究チームにより、堆積物中鉱物のアルゴン-アルゴン測定の結果から、人類化石の出土層は180万年を超えるという結果が発表されたことにより、ジャワの古人類の年代に関して議論が再燃している。しかし、これらの人類化石骨が発見された地域は、ダイナミックな地殻変動の結果、その層序が非常に複雑化している上、各地層において二次的な堆積物も多量に含まれている状況が確認されており、地質学・層序学の専門家によっても正確な把握には困難を極めるほどである。このような状況下においては、年代測定の対象とする試料を正しく選別することが必須である。そこで本年度は、申請者が研究分担者となっていた神戸大学兵頭教授らの科研費基盤(B)「ジャワ鮮新更新世の古環境変遷と原人の出現・進化に関する研究」において採取された鉱物試料および前年度までに採取された同一遺跡の鉱物試料について、鉱物の専門家とともに試料の選別・選定を厳密に行い、一昨年度までに改良した精製ラインを使用して、試料中のアルゴン同位体測定を実施した。昨年度までの予備実験により確立した測定方法を生かし、それを用いて予定していた試料について本測定を実施した。インドネシア・ジャワ島では、古人類化石骨資料が多数発見されている。これらは、人類進化史において、アフリカで誕生したと考えられる人類が、世界各地へ、いつ、どのようにして拡散していったかを推察する上で重要な情報を与えるものである。また、これらは東方アジアの前期中期更新世の文化のルーツを探る上でも鍵となる情報を与えるものとして、重要視されている。一部のジャワ原人化石については、かつて、東アフリカ出土の約190170万年前の資料との形態的な類似が指摘されたこともあったが、1980年代1990年代に行われた日本の研究者ら(近藤恵を含む)による地質学的・年代学的研究成果からは、ジャワの古人類は最も古いものでも110万年を超えることはないと結論づけられ、東アフリカの資料との対比は年代的にも矛盾すると考えられた。しかしながら、近年、米国の研究チームにより、堆積物中鉱物のアルゴン-アルゴン測定の結果から、人類化石の出土層は180万年を超えるという結果が発表されたことにより、ジャワの古人類の年代に関して議論が再燃している。しかし、これらの人類化石骨が発見された地域は、ダイナミックな地殻変動の結果、その層序が非常に複雑化している上、各地層において二次的な堆積物も多量に含まれている状況が確認されており、地質学・層序学の専門家によっても正確な把握には困難を極めるほどである。このような状況下においては、年代測定の対象とする試料を正しく選別することが必須である。そこで申請者は本年度、神戸大学兵頭教授らと共に科研費基盤(B)「ジャワ鮮新更新世の古環境変遷と原人の出現・進化に関する研究」に研究分担者として現地調査に参加し、新たな鉱物試料を採取してきた。これまでの予備的実験により、同種の鉱物は、質量測定へ試料導入する前段階での精製処理が問題となっていた。そこで、精製ラインに工夫を施し、これを改善するための予備実験を実施した。これにより、改善すべき点が新たに認識され、さらなる変更を行うこととした。インドネシア・ジャワ島では、古人類化石骨資料が多数発見されている。これらは、人類進化史において、アフリカで誕生したと考えられる人類が、世界各地へ、いつ、どのようにして拡散していったかを推察する上で重要な情報を、与えるものである。また、これらは東方アジアの前期中期更新世の文化のルーツを探る上でも鍵となる情報を与えるものとして、重要視されている。一部のジャワ原人化石については、かつて、東アフリカ出土の約190170万年前の資料との形態的な類似が指摘されたこともあったが、1980年代1990年代に行われた日本の研究者ら(近藤恵を含む)による地質学的・年代学的研究成果からは、ジャワの古人類は最も古いものでも110万年を超えることはないと結論づけられ、東アフリカの資料との対比は年代的にも矛盾すると考えられた。しかしながら、近年、米国の研究チームにより、堆積物中鉱物のアルゴン-アルゴン測定の結果から、人類化石の出土層は180万年を超えるという結果が発表されたことにより、ジャワの古人類の年代に関して議論が再燃している。しかし、これらの人類化石骨が発見された地域は、ダイナミックな地殻変動の結果、その層序が非常に複雑化している上、各地層において二次的な堆積物も多量に含まれている状況が確認されており、地質学・層序学の専門家によっても正確な把握には困難を極めるほどである。
KAKENHI-PROJECT-16770185
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インドネシアの人類化石包含層に関するアルゴン-アルゴン年代測定
このような状況下においては、年代測定の対象とする試料を正しく選別することが必須である。そこで本年度は、申請者が研究分担者となっている神戸大学兵頭教授らの科研費基盤(B)「ジャワ鮮新更新世の古環境変遷と原人の出現・進化に関する研究」において新たに採取された鉱物試料及び前年度までに採取されなた同一遺跡の鉱物試料について、鉱物の専門家とともに試料の選別・選定をより厳密に行い、前年度に改良した精製ラインを使用して、試料中のアルゴン同位体測定を実施した。インドネシア・ジャワ島では、古人類化石骨資料が多数発見されている。これらは、人類進化史において、アフリカで誕生したと考えられる人類が、世界各地へ、いつ、どのようにして拡散していったかを推察する上で重要な情報を与えるものである。また、これらは東方アジアの前期中期更新世の文化のルーツを探る上でも鍵となる情報を与えるものとして、重要視されている。一部のジャワ原人化石については、かつて、東アフリカ出土の約190170万年前の資料との形態的な類似が指摘されたこともあったが、1980年代1990年代に行われた日本の研究者ら(近藤恵を含む)による地質学的・年代学的研究成果からは、ジャワの古人類は最も古いものでも110万年を超えることはないと結論づけられ、東アフリカの資料との対比は年代的にも矛盾すると考えられた。しかしながら、近年、米国の研究チームにより、堆積物中鉱物のアルゴン-アルゴン測定の結果から、人類化石の出土層は180万年を超えるという結果が発表されたことにより、ジャワの古人類の年代に関して議論が再燃している。しかし、これらの人類化石骨が発見された地域は、ダイナミックな地殻変動の結果、その層序が非常に複雑化している上、各地層において二次的な堆積物も多量に含まれている状況が確認されており、地質学・層序学の専門家によっても正確な把握には困難を極めるほどである。このような状況下においては、年代測定の対象とする試料を正しく選別することが必須である。そこで本年度は、申請者が研究分担者となっていた神戸大学兵頭教授らの科研費基盤(B)「ジャワ鮮新更新世の古環境変遷と原人の出現・進化に関する研究」において採取された鉱物試料および前年度までに採取された同一遺跡の鉱物試料について、鉱物の専門家とともに試料の選別・選定を厳密に行い、一昨年度までに改良した精製ラインを使用して、試料中のアルゴン同位体測定を実施した。昨年度までの予備実験により確立した測定方法を生かし、それを用いて予定していた試料について本測定を実施した。
KAKENHI-PROJECT-16770185
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16770185
ヒドロキシ安息香酸プレニルトランスフェラーゼの構造生物学的解析による分子解剖
これまでの研究から、ムラサキの膜結合型PHB:ゲラニルトランスフェラーゼLePGT1をSf9で大量発現し、活性を持った状態で可溶化し、C-末端に付加したHis-tagを利用してNi-NTA-agaroseのアフィニティーカラムで単一に精製するプロトコールを至適化した。これは本ファミリーに属する膜蛋白質において最初の成果である。しかし、活性保持と結晶化を両立できる界面活性剤が見いだされなかったことと、この系で得られるLePGT1蛋白質の量から算出されるSf9培養用の血清必要量が膨大になったことにより、この系におけるLePGT1の大量発現には限界があると判断した。最近のNatureの論文より、Pichiaが植物膜蛋白質の発現に適し、大量培養に必要な経費も低く抑えられるとの情報が得られたことより、再検討の結果ホストをPichiaに変更することにした。一方で、ファルネシルジリン酸合成酵素(FPPS)の結晶構造を利用した分子モデリングを行った。得られた3D構造を使い、ドッキングシュミレーションを行ったところ、NdxxDxxxDモチーフの2つのDがマグネシウムを介したキレート結合でGPPを認識すること、さらにこのモチーフのあるヘリックスとHQDxxDを含むヘリックスの間にPHB分子が固定され、置換されるm-位のHがゲラニルのリン酸基と2.7Aの距離にくる3D構造を出すことに成功した。これは、昨年の部位特異的突然変異実験により得られた生化学的データをよく説明できるものであり、基質認識に重要なアミノ酸のほぼ全てがこの基質結合ポケットの内側に向いていることも判明した。この結合ポケットの3D構造は、本研究の当初の目的に対して一定の達成といえる成果であり、また本分子モデリングの手法は、結晶化の困難な他の膜蛋白質にも応用可能と期待される。これまでの研究から、ムラサキの膜結合型PHB:ゲラニルトランスフェラーゼLePGT1をSf9で大量発現し、活性を持った状態で可溶化し、C-末端に付加したHis-tagを利用してNi-NTA-agaroseのアフィニティーカラムで単一に精製するプロトコールを至適化した。これは本ファミリーに属する膜蛋白質において最初の成果である。しかし、活性保持と結晶化を両立できる界面活性剤が見いだされなかったことと、この系で得られるLePGT1蛋白質の量から算出されるSf9培養用の血清必要量が膨大になったことにより、この系におけるLePGT1の大量発現には限界があると判断した。最近のNatureの論文より、Pichiaが植物膜蛋白質の発現に適し、大量培養に必要な経費も低く抑えられるとの情報が得られたことより、再検討の結果ホストをPichiaに変更することにした。一方で、ファルネシルジリン酸合成酵素(FPPS)の結晶構造を利用した分子モデリングを行った。得られた3D構造を使い、ドッキングシュミレーションを行ったところ、NdxxDxxxDモチーフの2つのDがマグネシウムを介したキレート結合でGPPを認識すること、さらにこのモチーフのあるヘリックスとHQDxxDを含むヘリックスの間にPHB分子が固定され、置換されるm-位のHがゲラニルのリン酸基と2.7Aの距離にくる3D構造を出すことに成功した。これは、昨年の部位特異的突然変異実験により得られた生化学的データをよく説明できるものであり、基質認識に重要なアミノ酸のほぼ全てがこの基質結合ポケットの内側に向いていることも判明した。この結合ポケットの3D構造は、本研究の当初の目的に対して一定の達成といえる成果であり、また本分子モデリングの手法は、結晶化の困難な他の膜蛋白質にも応用可能と期待される。ユビキノンやプラストキノンなどの生体キノン類の生合成には、膜貫通型タンパク質である芳香族基質プレニルトランスフェラーゼが鍵酵素として働いている。しかしその広い分布と生物学的重要性にもかかわらず、膜タンパク質であることから生化学的解析が遅れいている。本研究では、その一メンバーで、二次代謝産物のシコニンの鍵酵素であるp-ヒドロキシ安息香酸プレニルトランスフェラーゼLePGT1をモデルとし、その結晶構造解析に向けた大量発現系を確立してきた。なおこの酵素はユビキノン生合成系プレニルトランスフェラーゼと同様のグループに属するが、調べた中で最も高い比活性を示したことから、本酵素を材料とした。これまでに、バキュロウイルスの発現系を用いて、LePGT1-(His)6を機能的に発現させ、活性の高い本膜酵素を含む膜画分を得ている。これをSodium deoxycholateを用いることで活性を保持したまま可溶化することができ、その後のNi-NTA agaroseを用いたアフィニティー精製の段階で界面活性剤をdigitoninに置換することで安定に活性を保持した精製酵素画分を得るプロトコールを確立した。また、この可溶化及び精製のプロトコールを改変することで、収率は犠牲にしても、単一のバンドとしてLePGT1を精製することができた。さらに、発現段階で、従来用いていた静置培養から懸濁培養に変え、培地に血清を加えることで30倍の発現レベルを達成することができた。このプロトコールに従うと、1リッターの培地当りで、3mgの精製膜タンパク質を得ることができる計算となる。発現から一回の精製までに必要な日数は約3日であるため、このプロトコールをもって十分に実用的なレベルで精製膜タンパク質としてLePGT1を供給することが可能となった。現在、結晶化のスクリーニングの準備をしている段階である。
KAKENHI-PROJECT-17310126
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ヒドロキシ安息香酸プレニルトランスフェラーゼの構造生物学的解析による分子解剖
膜貫通型タンパク質である芳香族基質プレニルトランスフェラーゼは、ユビキノンやプラストキノンなどの生体キノン類の生合成鍵酵素として働いている。しかしその広い分布と生物学的重要性にもかかわらず、膜タンパク質であることから生化学的解析が遅れている。本研究では、その一メンバーで、二次代謝産物のシコニンの鍵酵素であるp-ヒドロキシ安息香酸プレニルトランスフェラーゼLePGT1をモデルとし、その結晶構造解析に向けた大量発現系を確立してきた。なおこの酵素はユビキノン生合成系プレニルトランスフェラーゼと同様のグループに属するが、調べた中で最も高い比活性を示したことから、本酵素を材料とした。LePGT1に部位特異的突然変異を導入し、N-末端側のモチーフA内のD87、D91、およびC-末端側のモチーフB内のD208、D212が酵素活性発現に必須であることを明らかにした。これまでのモデルでいわれていたR153の重要性は、生化学的実験の結果からは活性発現に大きな影響がないことを突き止めた。さらにこれらのDを類似アミノ酸のEに置換した場合、D87E、D91Eは全く活性を示さなかったのに対し、D208EとD212Eは野生型の数%ではあるが明確な活性を示した。ただしこの場合、基質に対するアフィニティーを調べてみると、PHBに対してKmが半分あるいは3分の1となった。一方、D212EはGPPに対するアフィニティーが野生型と大きく変わらず、モチーフBがPRBの認識に重要であることを示唆している。さらに、D以外のアミノ酸置換を行った所、モチーフAのR76、N83、R96がPHBに対するKm値を大きく上げるのに対し、モチーフBのS219やK229はGPPに対するKm値を大きく上昇させた。このことから、両基質の認識にどちらのモチーフも深く関わることが示唆された。これまでの研究から、ムラサキの膜結合型PHB:ゲラニルトランスフェラーゼLePGT1をSf9で大量発現し、活性を持った状態で可溶化し、C-末端に付加したHis-tagを利用してNi-NTA-agaroseのアフィニティーカラムで単一に精製するプロトコールを至適化した。これは本ファミリーに属する膜蛋白質において最初の成果である。しかし、活性保持と結晶化を両立できる界面活性剤が見いだされなかったことと、この系で得られるLePGT1蛋白質の量から算出されるSf9培養用の血清必要量が膨大になったことにより、この系におけるLePGT1の大量発現には限界があると判断した。最近のNatureの論文より、Pichiaが植物膜蛋白質の発現に適し、大量培養に必要な経費も低く抑えられるとの情報が得られたことより、再検討の結果ホストをPichiaに変更することにした。一方で、ファルネシルジリン酸合成酵素(FPPS)の結晶構造を利用した分子モデリングを行った。得られた3D構造を使い、ドッキングシュミレーションを行ったところ、NdxxDxxxDモチーフの2つのDがマグネシウムを介したキレート結合でGPPを認識すること、さらにこのモチーフのあるヘリックスとHQDxxDを含むヘリックスの間にPHB分子が固定され、置換されるm-位のHがゲラニルのリン酸基と2.7Åの距離にくる3D構造を出すことに成功した。
KAKENHI-PROJECT-17310126
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血管内皮増殖因子の眼内動態に関する研究
適応外使用として硝子体注射に用いられているbevacizumabの薬物動態をカニクイザルを用いて検討した。硝子体内に投与された通常使用量(1. 25mg)のbevacizumabの効果持続期間は4週間から6週間であった。一方、通常使用量の1/200である6. 25μgであっても短期的には効果があった。無硝子体眼では硝子体内投与されたbevacizumabの半減期が1. 5日であり、正常眼での半減期2. 8日に比べ著しく短縮していた。これらの結果は適応外使用されているbevacizumabの安全で効率的な使用に有益な治験であると考えられた。適応外使用として硝子体注射に用いられているbevacizumabの薬物動態をカニクイザルを用いて検討した。硝子体内に投与された通常使用量(1. 25mg)のbevacizumabの効果持続期間は4週間から6週間であった。一方、通常使用量の1/200である6. 25μgであっても短期的には効果があった。無硝子体眼では硝子体内投与されたbevacizumabの半減期が1. 5日であり、正常眼での半減期2. 8日に比べ著しく短縮していた。これらの結果は適応外使用されているbevacizumabの安全で効率的な使用に有益な治験であると考えられた。ベバシズマブ硝子体内投与における、血清、前房水中のベバシズマブの薬物動態および前房水中の血管内皮増殖因子(VEGF)に与える影響を解析した。ベバシズマブ(1.25mg/50μl)をカニクイザル3匹の片眼の硝子体内に投与し、投与直前および投与後1,3,7日、2,4,6,8週に解析を行った。両眼の前房水および血清中のベバシズマブ濃度、VEGF濃度をELISA法にて測定した。投与眼における前房水中VEGF濃度は投与前、平均80.0±22.6pg/mlであり、いずれの個体においても投与翌日から4週目までは検出感度(31.2pg/ml)以下となり、6週目で投与前のレベルにもどった。非投与眼においては実験期間を通して前房水中VEGF濃度に有意な変化は見られなかった。一方、ベバシズマブ濃度は投与眼では投与翌日にピーク(平均49,500+10,900ng/ml)に達し、次第に減少していった。非投与眼においても3日目をピークにごくわずかの移行を認めた(平均18.5±25.5ng/ml)が、2週間後には検出感度以下となった。血清中のベバシズマブのピーク(平均1,430±186ng/ml)は投与1週間後であった。ベバシズマブの硝子体内投与は投与眼において少なくとも4週間はVEGF濃度を減少させると考えられる。また僚眼への影響は非常に少ないと推察される。ベバシズマブ(Be)の投与量を増やすことで、効果期間が延長するかどうかを検討することを目的として実験を行った。カニクイザル3匹の片眼に、通常の5倍量にあたるベバシズマブ(1.25mg/ml/250μg)を硝子体内注射し、注射前、注射後1日、3日、1週、2週、4週、6週に投与眼の前房水を採取した。前房水中のVEGF濃度とベバシズマブ濃度をELISAを用いて測定した。通常の5倍量のベバシズマブ投与では注射翌日には前房水VEGF濃度は測定感度以下に低下し、投与後4週まで測定感度以下であり、以前に報告した通常量ベバシズマブ投与と比べ効果期間の有意な延長はみられなかった。投与眼の前房水中のベバシズマブの半減期は5倍量で2.9日、以前報告した通常量の2.8日と変わりなかった。ベバシズマブの硝子体内投与において量を5倍に増やしても効果期間の大きな延長は期待できないと考えられた。増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術の術前に、安全に手術を行うためベバシズマブの術前投与が試みられている。通常臨床1.25mg/mlのベバシズマブが硝子体内投与されているが、ベバシズマブ硝子体内投与における必要最低量を把握することを目的に実験を行った。カニクイザル3匹の片眼に、通常の1/1000量にあたるベバシズマブ(1.25μg/ml)を硝子体内注射し、注射前、注射後1日、3日、1週、2週に投与眼および非投与眼の前房水中VEGF濃度を測定した。有意なVEGFの低下が無ければ効果なしと判定し、投与量を5倍ずつ上げて再度同様の実験を行い、有意な低下が認められるまで行った。有意なVEGFの低下が見られたのは、通常の1/200量(6.25μg/ml)の濃度からであった。術前投与でベバシズマブを使用する場合には通常の1/200量である6.25μg/mlの濃度までは減らすことが可能ではないかと推察された。無硝子体眼におけるVEGFおよびbevacizumabの薬物動態を検討した。カニクイザルの片眼に硝子体切除術および水晶体切除術をおこなった。3匹3眼では水晶体嚢を保存し、別の3匹3眼では水晶体嚢も完全の除去した。
KAKENHI-PROJECT-21592255
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血管内皮増殖因子の眼内動態に関する研究
硝子体手術の影響を除去するために手術から3か,月間観察し、安定していることを確認した上で、カニクイザル6匹の無硝子体眼に臨床で通常用いられている投与量であるbevacizumab (1.25mg/0.05ml)を硝子体内投与した。投与前、投与翌日、3日目、1週目、2週目、4週目、8週目に投与眼の前房水を採取し、VEGFならびにbevacizumabの濃度を測定し、眼内の薬物動態を検討した。眼内VEGF濃度およびbevacizumab濃度の薬物動態に水晶体嚢の有無により2群間での差を検討したが、両群間に差を認めなかったので、両群を合わせた6匹6眼について解析した。硝子体手術前には前房水VEGF濃度は81.7±27.Opg/mlであったが、硝子体手術3か月後のbevacizumab投与直前には51.4±20.5pg/mlと有意に低下していた。bevacizumab投与7日目までは全例で前房水VEGF濃度は測定下限未満に低下していた。投与2週後には前房水検出できるようになり、4週後には40.4±28.4pg/mlとなり、投与前と有意な差を認めなくなった。無硝子体眼におけるBevacizumabの半減期はL5±0.6日であり、以前に報告したカニクイザルの正常眼でのbevacizumabの半減期2.8±0.6日に比べ、有意に短縮していた。無硝子体眼では正常眼に比べ、前房水VEGF濃度が低下しており、硝子体手術が黄斑浮腫に有効である原因のひとつである可能性を示した。また、無硝子体眼では硝子体内に投与されたbevacizumabの半減期が短く効果の期間が短縮されることが判明した。
KAKENHI-PROJECT-21592255
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MEMS熱センサによる細胞の代謝モニタリング
本研究は,MEMS技術,高精度温度・熱量計測技術,高度熱安定化技術を駆使して10pWレベルの極微量熱量計測技術を開発し,液中の単一または少数細胞の代謝活性や各種刺激に対する熱応答のモニタ,計測技術の開発を目的としている.この代謝熱計測技術により,細胞の活動状況,化学物質や薬剤等に対する細胞の応答がその活動範囲内で速やかに,定量的に計測可能となることが期待される。平成20年度は,ガラス基板上に微細加工プロセスで形成する薄膜サーモパイルセンサの感度向上のため,製作プロセスの見直しを行い,全域でサーモパイルが動作するセンサを製作した.また,従来,単一センサでの計測であったものを,同型センサ2個を用いた差動計測に変更し,長周期の同相ノイズの除去を可能とした.さらに,温度安定化を促進するため,4重恒温槽の格段にペルチェ素子を用いたフィードバック温度制御系を導入した.試作システムを用い酵母菌の増殖過程を観察した結果,ノイズレベルは酵母菌3000個の代謝熱と同レベルであり,半日程度の計測から増殖曲線が作成され,その対数増殖特性から初期細胞数を推定することができ,100個程度の酵母菌が100,000個レベルへ増殖する過程が観察された,また,植物の種子を試料とした計測では,発芽に伴う代謝発熱を検出し,多様な応用が出来ることが示された.本研究は,MEMS技術,高精度温度・熱計測技術を駆使して10pWレベルの極微量熱量計測技術を開発し,液中の単一または少数細胞の代謝状態や各種刺激に対する熱応答を計測する技術の開発を目的としている.この技術の実現には,高熱抵抗構造と高い感度を持つ熱流センサと微小熱起電力計測技術の開発が必要である.本年度は,ガラス基板上にクロム・ニッケル製の薄膜微小熱電対を350対直列に接続したサーモパイルセンサを微細加工技術を用いて制作し,センサ中央部に設置したガラスセル内に入れた酵母菌を試料とし,その増殖過程のサーマルモニタリング試験を行い,装置および手法の評価を行った.結果として,培養液や酵母の生成するアルコールなどの蒸発により,細胞の代謝熱より格段に大きな熱移動が生じること.この対策として,培養液と細胞を流動パラフィンでカバーし,閉鎖系におくことが有効であることが分った.また,試作したサーモパイルセンサを含む試料セルは,3重の恒温容器内に設置し,PID温度制御とペルチェによる温度制御を併用することで,熱的に十分安定した計測環境が構築できることが分った.さらに,ローパスフィルタとローノイズアンプの使用により,サーモパイルで計測した代謝モニタリング信号に含まれるノイズは,約3000個の酵母菌が代謝により発生する熱量のレベルと同等であり,酵母菌の増殖過程に関し,約10000個以上の細胞の代謝熱をモニター可能なことが実験的に示された.本研究は,MEMS技術,高精度温度・熱量計測技術を駆使し,10pWレベルの極微量熱量計測技術を開発し,液中の単一または少数細胞の代謝活性や各種刺激に対する熱応答のモニタ,計測技術の開発を目的としている.この代謝熱計測技術により,細胞の活動状況,化学物質や薬剤等に対する細胞の応答がその活動範囲内で速やかに,定量的に計測可能となることが期待される。平成19年度には,ガラス基板上に微細加工プロセスで形成した薄膜サーモパイルセンサと,能動的に温度制御系を組み込んだ多層恒温槽を制作し,酵母菌を試料とした代謝熱計測実験を実施した。結果として,10,000個以上の酵母菌の増殖曲線が明確に得られ,ノイズレベルは酵母菌3000個の代謝熱と同レベルであることが計測された.細胞10,000個の代謝熱計測は,従来のバイオカロリメトリと比べ,3桁程度少ない対象の細胞数である。また,代謝熱を感度良く計測するには,試料セルをガラス基板サーモパイル上に設置し,試料セルから周囲への熱伝達を抑制するために,気体層を形成しておくことが有効であることが示された.さらに,対象試料として酵母菌以外にも,ブラインシュリンプ等の微生物の艀化や種子の発芽等も代謝熱計測の代謝とすることを試み,モニタ可能性に関する知見を得た。本研究は,MEMS技術,高精度温度・熱量計測技術,高度熱安定化技術を駆使して10pWレベルの極微量熱量計測技術を開発し,液中の単一または少数細胞の代謝活性や各種刺激に対する熱応答のモニタ,計測技術の開発を目的としている.この代謝熱計測技術により,細胞の活動状況,化学物質や薬剤等に対する細胞の応答がその活動範囲内で速やかに,定量的に計測可能となることが期待される。平成20年度は,ガラス基板上に微細加工プロセスで形成する薄膜サーモパイルセンサの感度向上のため,製作プロセスの見直しを行い,全域でサーモパイルが動作するセンサを製作した.また,従来,単一センサでの計測であったものを,同型センサ2個を用いた差動計測に変更し,長周期の同相ノイズの除去を可能とした.
KAKENHI-PROJECT-18651055
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18651055
MEMS熱センサによる細胞の代謝モニタリング
さらに,温度安定化を促進するため,4重恒温槽の格段にペルチェ素子を用いたフィードバック温度制御系を導入した.試作システムを用い酵母菌の増殖過程を観察した結果,ノイズレベルは酵母菌3000個の代謝熱と同レベルであり,半日程度の計測から増殖曲線が作成され,その対数増殖特性から初期細胞数を推定することができ,100個程度の酵母菌が100,000個レベルへ増殖する過程が観察された,また,植物の種子を試料とした計測では,発芽に伴う代謝発熱を検出し,多様な応用が出来ることが示された.
KAKENHI-PROJECT-18651055
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18651055
低線量全身照射による制癌効果とその修飾に関する研究
基礎研究に於いては低線量全身照射とBRMとの併用によって免疫賦活効果が増強されるか否かの検討が行われた。先ずOK-432に就いてWHT/Htマウスの偏平上皮がんでは、照射2日前に投与した場合に、TD50アッセイによる実験結果は低線量全身照射による免疫賦活効果が増強される事が示された。又、C3H/Heマウスの繊維肉腫を使用し、腫瘍成長曲線を用いてOK-432と低線量全身照射の併用効果を検討した実験でも同しような結果が得られた。一方、放射線照射によるサイトカイン産生能に及ぼす影響を検討しているが、未だ予備実験の段階であるが、IL-2産生能は0.1Gy,1Gy,3Gyの全身照射で何れも強く抑制され、TNF産生能は3Gyで約2倍に増強されていると言う結果を得ている。次にがん細胞膜に於けるYH206矢CEAのような腫瘍関連抗原、主要組織適合抗原の1つであるMHC Class-I及び接着分子の最も代表的なICAM-Iが放射線照射によって高まる事が分かった。次に、臨床研究に於いては、I及びII期の非ホジキンリンパ腫94例の解析を行い、全身及び半身照射と局所照射の併用群と局所照射単独群との効果が比較検討された。その結果は全身または半身照射併用群では、未だ観察期間は十分ではないが、I期、II期共に明らかに良好な結果を予想させるものがある。組織型をintermediate gradeに限定すると併用群と非併用群との間に統計的有意差が認められている。次に、低線量全身または半身照射が行われた肺癌、子宮頚癌、食道癌、悪性リンパ腫などについて、その副作用を検討したが、全例で白血球、リンパ球、血小板の著明な減少とか、悪心、嘔吐などの副作用は認められない事、が明らかになった。次年度には悪性リンパ腫以外の腫瘍に対する全身照射と局所照射の結果が、出てくる予定である。基礎研究に於いては低線量全身照射とBRMとの併用によって免疫賦活効果が増強されるか否かの検討が行われた。先ずOK-432に就いてWHT/Htマウスの偏平上皮がんでは、照射2日前に投与した場合に、TD50アッセイによる実験結果は低線量全身照射による免疫賦活効果が増強される事が示された。又、C3H/Heマウスの繊維肉腫を使用し、腫瘍成長曲線を用いてOK-432と低線量全身照射の併用効果を検討した実験でも同しような結果が得られた。一方、放射線照射によるサイトカイン産生能に及ぼす影響を検討しているが、未だ予備実験の段階であるが、IL-2産生能は0.1Gy,1Gy,3Gyの全身照射で何れも強く抑制され、TNF産生能は3Gyで約2倍に増強されていると言う結果を得ている。次にがん細胞膜に於けるYH206矢CEAのような腫瘍関連抗原、主要組織適合抗原の1つであるMHC Class-I及び接着分子の最も代表的なICAM-Iが放射線照射によって高まる事が分かった。次に、臨床研究に於いては、I及びII期の非ホジキンリンパ腫94例の解析を行い、全身及び半身照射と局所照射の併用群と局所照射単独群との効果が比較検討された。その結果は全身または半身照射併用群では、未だ観察期間は十分ではないが、I期、II期共に明らかに良好な結果を予想させるものがある。組織型をintermediate gradeに限定すると併用群と非併用群との間に統計的有意差が認められている。次に、低線量全身または半身照射が行われた肺癌、子宮頚癌、食道癌、悪性リンパ腫などについて、その副作用を検討したが、全例で白血球、リンパ球、血小板の著明な減少とか、悪心、嘔吐などの副作用は認められない事、が明らかになった。次年度には悪性リンパ腫以外の腫瘍に対する全身照射と局所照射の結果が、出てくる予定である。
KAKENHI-PROJECT-04151009
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04151009
システムバイオロジーのための統合モデリング環境の開発
ポストゲノムにおける中心的課題の一つがシステムバイオロジーのアプローチ及び細胞シミュレーションによる統合的な生命システムの理解であり、このために研究対象を数学的・情報学的に記述する「モデリング」が不可欠となる。本研究では現在システムバイオロジー研究においてボトルネックとなっているこのモデリングを支援するためのソフトウェア環境を開発している。本年度、我々はまず、ゲノム情報をもとにして各種公共データベースを利用する事により大規模代謝モデルを自動生成するGEM Systemを改良した。これにより、精度を保ちつつ大幅な高速化が実現され、さらにCellDesignerソフトウェアにおいて、数百の要素からなる自動生成されたモデルを生化学パスウェイのコンテキストで可視化されるようにした。新システムによってシステムバイオロジーのモデル記述標準規格SBML形式で出力された最新のモデルは、データベースとして公開を開始している。また、本システムによって出力されるモデルに定量的な情報を付加するために、定量的なモデル及び生化学反応式のデータベースを構築し、現在までに1300あまりの定量的パラメータから成る750の酵素反応速度式を公開している(http://ism.iab.keio.ac.jp/)。本データベースを利用する事で、研究者はウェブ上で容易に必要な速度式を組み合わせてモデリングを行うことが可能である。以上により、定量的モデルを自動プロトタイピングするための基盤が整ったといえる。ポストゲノムにおける中心的課題の一つがシステムバイオロジーのアプローチ及び細胞シミュレーションによる統合的な生命システムの理解であり、このために研究対象を数学的・情報学的に記述する「モデリング」が不可欠となる。本研究では現在システムバイオロジー研究においてボトルネックとなっているこのモデリングを支援するためのソフトウェア環境を開発している。本年度、我々はまず、ゲノム情報をもとにして各種公共データベースを利用する事により大規模代謝モデルを自動生成するGEM Systemを改良した。これにより、精度を保ちつつ大幅な高速化が実現され、さらにCellDesignerソフトウェアにおいて、数百の要素からなる自動生成されたモデルを生化学パスウェイのコンテキストで可視化されるようにした。新システムによってシステムバイオロジーのモデル記述標準規格SBML形式で出力された最新のモデルは、データベースとして公開を開始している。また、本システムによって出力されるモデルに定量的な情報を付加するために、定量的なモデル及び生化学反応式のデータベースを構築し、現在までに1300あまりの定量的パラメータから成る750の酵素反応速度式を公開している(http://ism.iab.keio.ac.jp/)。本データベースを利用する事で、研究者はウェブ上で容易に必要な速度式を組み合わせてモデリングを行うことが可能である。以上により、定量的モデルを自動プロトタイピングするための基盤が整ったといえる。
KAKENHI-PROJECT-19810021
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19810021
rRNA/rDNA比を用いた富栄養湖霞ヶ浦におけるアオコの動態評価に関する研究
培養系及び環境中のM. aeruginosaの16S rRNA及び16S rDNA濃度を正確に測定することにより、rRNA/rDNA比が高い場合に高い比増殖速度を示すことが明らかとなった。また、夏のM.aeruginsoaによるブルームは増殖した菌体の表層への集積と空間的な移動により引き起こされることを垂直方向のrDNA濃度分布と、クローン分布及びrRNA/rDNA比から明らかにした。臨湖実験施設付属の護岸の湾外及び湾内において2013年の6月8月にかけて、表層、中層及び低層の湖水のサンプリングを行い、M. aeruginosa rDNA濃度及びrRNA濃度及びTm値の測定を行った。その結果、湾外において8月4日8月10にM. aeruginosa rDNA濃度の急激な上昇が認められ、同時期に湾内にも高濃度のM. aeruginosaが検出された。8月10日の湾内では表層に中層・下層の8倍の濃度のDNAが検出されたが、Tm値に大きな変化はなく、平穏な湾内に於いて表層にM. aeruginosaの藻体が集積したと考えられた。一方、湾外では底層から表層に向かってM. aeruginosa濃度が増加し、底層と表層の濃度の差は20倍以上及んだ。また、表層のTm値は水面下10cmのTm値よりも0.5°C低く、表層とそれ以深のクローンが異なると考えられた。湾外の濃度の増加は、通常考えられるM. aeruginosaの増殖速度よりも早く、別の場所で増殖した細胞が風または流れによって集積した可能性が示唆された。培養系及び環境中のM. aeruginosaの16S rRNA及び16S rDNA濃度を正確に測定することにより、rRNA/rDNA比が高い場合に高い比増殖速度を示すことが明らかとなった。また、夏のM.aeruginsoaによるブルームは増殖した菌体の表層への集積と空間的な移動により引き起こされることを垂直方向のrDNA濃度分布と、クローン分布及びrRNA/rDNA比から明らかにした。M.aeruginosaの増殖に及ぼす光の影響を明らかにするために、群体形成能を保持した菌株(M.aeruginosa NIES604)及びM.aeruginosaのブルームが発生している湖水について培養実験を実施した。その結果、光の供給量が減少すると、増殖速度が減少する傾向が認められた。NIES604株の培養実験に於いては比増殖速度とrRNA/rDNA比間に関連が認められたが、M.aeruginosaのブルームが発生している湖水中のM. aeruginosaについては認められず、この違いが起こった原因については今後検討が必要である。また、光環境及び温度環境がM. aeruginosaの春から夏の増殖及び秋の減衰に及ぼす影響の解明のために、霞ヶ浦湖岸に濁度計及び水温計を設置し、測定を開始した。その結果、風向及び風速の変化に伴う濁度の変化が観察され、底泥の巻き上がりを濁度計で検出できる可能性が示唆された。さらに、夏期及び冬期の湖水及び底泥中のM. aeruginosaのrDNA及びrRNAのクローン解析を開始した。その結果、2010年12月の底泥中のrRNAに多く存在した塩基配列と2011年8月の湖水及び底泥中のrDNAに多く存在した塩基配列が同一である可能性が示された。一方、2011年4月に観察された春のブルームにおけるクローンは2012年8月のクローンとは異なり、底泥中で越冬したM. aeruginosaが翌年6月以降に増加しブルームの種になる可能性が示唆された。夏期の急激な藍藻類濃度の増加を直接把握し、湖水中のMicrocystis aeruginosa増殖活性と濃度増加の関連を検出することを目的として、昨年度に引き続き臨湖実験施設港湾における夏期から秋期のサンプリングを実施した。2013年度の結果から、湾外の表層ブルームは現場以外の場所で増殖したものである可能性が示唆されたことから、2014年度は湾内において調査を実施した。また、2014年度は現場データの取得のために、水質計自動昇降式システムを設置し、7月9月の3ヶ月間1時間おきに水温、pH、濁度、溶存酸素、Chla濃度、及び藍藻類濃度の深さ方向プロファイルを取得した。その結果、7月には午前7時から10時まで藍藻類が表層付近(水深10cm)に集積し、13時16時までは底層付近(底層から10cm)に集積する傾向が示された。8月以降は7時11時までの表層付近への集積は認められたが、午後の底層付近への集積は認められず、9月には8時に表層付近に集積した藍藻は、18時まで表層付近に留まる傾向があった。また、全期間を通して8時18時には表層の水温が以深よりも高い傾向があり、それ以外の時間帯は水温差が少ないか表層の水温が低い傾向が認められた。特に9月の19時以降は表層の水温が底層より低い傾向が認められた。これらのことから、7月の藍藻は表層と深層の間を数時間で移動し、8月以降は表層に集積した藍藻は沈降せず、水温の逆転、風波により混合されたものと推測された。
KAKENHI-PROJECT-24510042
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rRNA/rDNA比を用いた富栄養湖霞ヶ浦におけるアオコの動態評価に関する研究
さらに、16S rDNA解析の結果、7月から8月上旬にかけて表層付近に集積した藍藻類はアオコ形成藻類のM. aeruginosaであり、8月中旬から9月にかけて、表層付近に集積した藍藻類はSynechococcus sp.であることが明らかになった。環境微生物学濁度計のデータは順調に取得できていたが、本研究で重要な期間である夏期にロガーの故障により一部欠失が出たことは設備の管理面で問題があったと思われる。2013年の夏は霞ヶ浦全体でM. aeruginosaによるアオコの発生は少なかった。調査現場でも、表層にマットを形成するほどのアオコは認められず、増殖速度の検討は困難であった。しかしながら、調査期間に1回だけあった表層アオコの分析から、湾内外でのM. aeruginosaのクローンの差異を検出できたのは大きな収穫であり、今後詳細な検討をすることにより、アオコの表層移動についての知見が得られる可能性が示された。また、昨年のM.aeruginosa増殖期(6月7月)の霞ヶ浦土浦入りの湖水中の窒素濃度は土浦入りでアオコが再発生した2007年から2012年までの平均の55%と低く、富栄養湖の霞ヶ浦で、M.aeruginosaの増殖を栄養塩の低減によって制御できる可能性が示されたことは、重要な収穫であったと考えられる。これらを勘案して、本研究はおおむね順調に進展していると判断される。濁度計の設置、解析は順調に推移し、風と濁度の関係を定量化できる可能性が示された。また、底泥中や湖水中のrRNA及びrDNA濃度の解析に併せてクローン解析も開始し、採取時期によりクローンに違いがあり、これにより、ブルームに関与するクローンの挙動が解明できる可能性が示された。この部分については、申請時の予定よりも進展している。一方培養に関しては、湖水の培養を実施することができた。しかしながら、培養実験に於いて、培養株と湖水を使ったデータ間に差異があり、培養株を使った実験の整合性について現在検討中である。これらを総合して、おおむね順調に進展していると判断される。底泥表層に供給され、越冬しているM. aeruginosaの藻体量、rRNA/rDNA比に基づく生残率の推定を行うための、コアの採取を3月に実施した。底泥で越冬しているクローンと、湖水中で優占するクローンの関連を明らかにできると期待している。昨年度は濁度計のデータに欠失が出たので、今年度は安定したデータの取得を心がける。また、昨年度湾内において、一日での現地性のM.aeruginosaの表層への集積を観察することができた。野外における現地性のアオコの集積データはほとんど得られていないので、本年度は蛍光光度計を設置して、藍藻類の水中での挙動を解析し、表面への集積現象の詳細を明らかにしたいと考えている。これらを総合して、冬期の越冬と夏期の環境因子がアオコの発生に及ぼす影響を明らかにするとともに、rRNA/rDNA比とクローンの差異の検討によって、アオコ発生原因となる増殖が、いつ・どこで起こるかの予測につなげて行きたいと考えている。平成25年度から現場でのサンプリングを開始する。静穏日(攪乱における濁度上昇が収まった晴天日)の日の出から日の入りまで、2時間おきに、深さ方向3層について、サンプリングを行い、M.aeruginosaのrDNA・rRNA濃度、細胞数、細胞体積、有機物濃度及び栄養塩濃度を測定する。これにより、ブルーム発生時のM.aeruginosaの挙動を解明できるものと考えている。また、現場試料のM.aeruginosaのrDNA、rRNAについて、クローン解析を行い、クローンの変遷についても情報を得る予定である。
KAKENHI-PROJECT-24510042
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損傷乗り越え合成による染色体複製反応の再開を統括・制御する分子基盤の解析
【ヒトTLS因子の翻訳後修飾に関わる因子の探索と解析】split-GFPシステムを用いてヒトTLSポリメラーゼのユビキチン(Ub)化を解析するため、現在はUb-GFPの高発現細胞の作成を継続している。一方、Poletaと結合する脱Ub化酵素を同定し、この酵素を特異的にノックダウンしたヒト細胞において、Poletaの安定性が低下することを示し、脱Ub化を介したPoletaのリサイクル経路があると考え、細胞のDNA損傷感受性などの応答における脱Ub化酵素の役割を解析中である。【TLS反応に関与するクロマチン構造変換因子の探索と解析】ヒトPoletaのクロマチン結合に関わる因子として同定した複数のクロマチン構造変換因子に対して、紫外線照射に応答したPoletaの損傷部位への局在への関与を解析した。結果、同定した因子のなかに照射部位へのPoletaの効率的な集積に重要な因子が含まれることを新たに見出した。【生細胞イメージングによる染色体複製反応とTLS反応の解析】780 nmフェムト秒レーザーを用いた三光子吸収システムにより、任意の核局所に紫外線照射に相当のDNA損傷を与え、損傷部位へのPoletaの集積をGFPで追跡する系を確立した。これを用い、上記のクロマチン構造変換因子に関する解析を行った。また、複製因子PCNAの局在パターンも追跡することで、特にS期の進行に注目しながら細胞周期を通したPoletaのDNA損傷部位への集積についても解析を継続している。【複製フォークの安定性に寄与する因子の解析】TLS経路の有無で複製フォークの安定性がどのように影響を受け、そこにどのような因子あるいは経路が関わるかを調べる目的で、iPOND(isolation of proteins on nascent DNA)法により複製フォークの安定性に関与する因子の網羅的な解析を始めた。研究計画で掲げた項目について、一部ではやや遅れがあるものの、他の項目では順調に計画が進められていることや課題の進捗に関わる新たな計画に着手するなど、次年度の発展が十分期待されることから全体として「おおむね順調に進展している」と評価した。【現在までの進捗状況】で評価した通り、当初の計画をおおむね順調に推進していることから、計画の大きな変更等は行わない。平成29年度の当初の研究計画に基づく研究実績の概要を、以下、項目ごとに挙げる。【項目1:ヒトTLS因子の翻訳後修飾に関わる因子の探索と解析】蛍光タンパク質GFPを二分割したsplit-GFPシステムを用い、ヒトTLSポリメラーゼとユビキチン(Ub)を融合タンパク質として発現する細胞の樹立を試みた。現在までに複数種類の安定発現細胞を作成したが、Ub-split-GFPの発現が低い問題でスクリーニングに必要な蛍光シグナルの検出に至っていない。現在、発現プロモーターの変更とコピー数調整による改善を試みている。【TLS反応に関与するクロマチン構造変換因子の探索と解析】140種類のクロマチン構造変換因子を標的とするsiRNAライブラリーを用い、ヒトPoletaのシスプラチン損傷依存的なクロマチン結合に関わる因子を複数同定した。【多光子励起生細胞イメージングによる染色体複製反応とTLS反応の解析】イメージングに用いる細胞として、GFP融合タンパク質としてヒトTLSポリメラーゼを安定発現するU2OS細胞を作成した。さらに、細胞周期S期マーカーであるPCNAの核内局在をリアルタイムで検出するため、PCNA特異的なクロモボディと融合したRFPを同時に安定発現させた。オリンパスFV3000共焦点走査型レーザー顕微鏡をベースにした780 nmレーザー三光子照射原理で任意の座標に紫外線損傷を生じさせることのできるシステムを利用し、作成した細胞でのヒトTLSポリメラーゼの挙動を観察している。現在、細胞周期のS期とそれ以外の時期における紫外線損傷部位へのヒトPoletaの応答を中心にデータ収集を行なっている。【TLS反応を特異的に阻害する化合物の探索】先行研究でヒトPoletaへの阻害活性が認められた化合物を用い、他のTLSポリメラーゼ、および複製型DNAポリメラーゼを用いた特異性の検証を行っている。初年度の研究計画で掲げた4項目について、1項目はやや進展が遅れているものの、他の項目については当初の予定通り、あるいはそれ以上に進展している。また遅れのある項目については、当初の計画にはなかった実験をバックアップとして同時進行させており、次年度以降の発展が期待されることから、全体として「おおむね順調に進展している」と評価した。【ヒトTLS因子の翻訳後修飾に関わる因子の探索と解析】split-GFPシステムを用いてヒトTLSポリメラーゼのユビキチン(Ub)化を解析するため、現在はUb-GFPの高発現細胞の作成を継続している。一方、Poletaと結合する脱Ub化酵素を同定し、この酵素を特異的にノックダウンしたヒト細胞において、Poletaの安定性が低下することを示し、脱Ub化を介したPoletaのリサイクル経路があると考え、細胞のDNA損傷感受性などの応答における脱Ub化酵素の役割を解析中である。【TLS反応に関与するクロマチン構造変換因子の探索と解析】ヒトPoletaのクロマチン結合に関わる因子として同定した複数のクロマチン構造変換因子に対して、紫外線照射に応答したPoletaの損傷部位への局在への関与を解析した。結果、同定した因子のなかに照射部位へのPoletaの効率的な集積に重要な因子が含まれることを新たに見出した。【生細胞イメージングによる染色体複製反応とTLS反応の解析】780 nmフェムト秒レーザーを用いた三光子吸収システムにより、任意の核局所に紫外線照射に相当のDNA損傷を与え、損傷部位へのPoletaの集積をGFPで追跡する系を確立した。
KAKENHI-PROJECT-17K00551
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K00551
損傷乗り越え合成による染色体複製反応の再開を統括・制御する分子基盤の解析
これを用い、上記のクロマチン構造変換因子に関する解析を行った。また、複製因子PCNAの局在パターンも追跡することで、特にS期の進行に注目しながら細胞周期を通したPoletaのDNA損傷部位への集積についても解析を継続している。【複製フォークの安定性に寄与する因子の解析】TLS経路の有無で複製フォークの安定性がどのように影響を受け、そこにどのような因子あるいは経路が関わるかを調べる目的で、iPOND(isolation of proteins on nascent DNA)法により複製フォークの安定性に関与する因子の網羅的な解析を始めた。研究計画で掲げた項目について、一部ではやや遅れがあるものの、他の項目では順調に計画が進められていることや課題の進捗に関わる新たな計画に着手するなど、次年度の発展が十分期待されることから全体として「おおむね順調に進展している」と評価した。【現在までの進捗状況】で評価した通り、当初の予定をおおむね順調にクリアしていることから、次年度以降も計画に従って研究を発展させていく方針である。【現在までの進捗状況】で評価した通り、当初の計画をおおむね順調に推進していることから、計画の大きな変更等は行わない。
KAKENHI-PROJECT-17K00551
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サイトカイン反応に対する静脈麻酔薬の修飾メカニズムの解明と炎症反応への影響
静脈麻酔薬は、サイトカイン産生を修飾することが知られている。しかし、静脈麻酔薬が炎症反応に対して、どのような作用機序で影響を及ぼしているかについては、ほとんど解明されていない。本研究では、静脈麻酔薬のサイトカイン反応への影響と抗炎症作用について検討し、さらにその作用機序を解明することを目的とした。LPSで刺激されたヒト末梢血単核球のサイトカイン(インターロイキン6)産生への作用に対して、静脈麻酔薬であるミダゾラムの影響について、cyclooxygenase(COX)経路を焦点にして検討を行った。その結果、COXの非特異的拮抗薬であるインドメタシンおよびCOX-2選択的拮抗薬であるNS-398はミダゾラムの作用を抑制したが、COX-1選択的拮抗薬であるSC-560は影響しなかった。さらに、ミダゾラムはプロスタグランジン(プロスタグランジンE2、プロスタグランジンD2、プロスタグランジンF2)の産生には影響を及ぼさなかったが、peroxisome proliferator-activated receptor γ(PPARγ)のアンタゴニストであるGW9662はミダゾラムの作用を抑制した。以上の結果より、ミダゾラムはCOX-2経路のPPARγ付近に作用して、サイトカイン反応に影響を及ぼすことが示唆された。さらに、in vivo実験においてマウス足蹠へのカラゲニン注入による炎症性浮腫に対して、ミダゾラムと別の静脈麻酔薬であるデクスメデトミジンによる効果を評価した結果、両薬物のin vivoでの抗炎症作用が示唆された。静脈麻酔薬は、サイトカイン産生を修飾することが知られている。しかし、静脈麻酔薬が炎症反応に対して、どのような作用機序で影響を及ぼしているかについては、ほとんど解明されていない。本研究では、静脈麻酔薬のサイトカイン反応への影響と抗炎症作用について検討し、さらにその作用機序を解明することを目的とした。LPSで刺激されたヒト末梢血単核球のサイトカイン(インターロイキン6)産生への作用に対して、静脈麻酔薬であるミダゾラムの影響について、cyclooxygenase(COX)経路を焦点にして検討を行った。その結果、COXの非特異的拮抗薬であるインドメタシンおよびCOX-2選択的拮抗薬であるNS-398はミダゾラムの作用を抑制したが、COX-1選択的拮抗薬であるSC-560は影響しなかった。さらに、ミダゾラムはプロスタグランジン(プロスタグランジンE2、プロスタグランジンD2、プロスタグランジンF2)の産生には影響を及ぼさなかったが、peroxisome proliferator-activated receptor γ(PPARγ)のアンタゴニストであるGW9662はミダゾラムの作用を抑制した。以上の結果より、ミダゾラムはCOX-2経路のPPARγ付近に作用して、サイトカイン反応に影響を及ぼすことが示唆された。さらに、in vivo実験においてマウス足蹠へのカラゲニン注入による炎症性浮腫に対して、ミダゾラムと別の静脈麻酔薬であるデクスメデトミジンによる効果を評価した結果、両薬物のin vivoでの抗炎症作用が示唆された。本研究は、静脈麻酔薬であるミダゾラムのサイトカイン反応への作用機序を解明し、炎症反応への影響を調べることが目的である。まず、本年度は、健康成人ボランティアの末梢血単核球(PBMCs)を用いたin vitro実験で、ミダゾラムのサイトカイン(IL-6)産生への作用に対して、cyclooxygenase(COX)阻害薬またはその関連試薬を併用することによる影響を調べた。その結果、non-selective COXinhibitorであるindomethacinおよびCOX-2 selective inhibitorであるNS-398は、ミダゾラムの作用を抑制したが、COX-1 selective inhibitorであるSC-560は影響しなかった。さらに、peroxisome proliferator-activated receptor γ(PPARγ)のアンタゴニストであるGW9662、細胞内シグナルトランスダクション中の、サイトカイン遺伝子発現を誘導するnuclear factor κB(NFκB)の阻害薬であるCell-Parmeable Inhibitor Peptide(SN50)はミダゾラムの作用を抑制した。一方、ミダゾラムはプロスタグランジン(PGE2、PGD2、PGF2)の産生には影響を及ぼさなかったが、PGD2の代謝産物でありPPARγの内因性アゴニストである15dPGJ2濃度は上昇していた。以上の結果より、ミダゾラムはCOX-2-PPARγ-NFκB経路のPPARγ付近に作用して、サイトカイン反応に影響を及ぼすことが示唆された。今後、炎症関連遺伝子および細胞内シグナルトランスダクション遺伝子発現量を定量評価することによって、ミダゾラムの作用機序をさらに解明していき、また、動物を用いたin vivo実験で、炎症反応に対する影響についても検討する。本研究は、静脈麻酔薬であるミダゾラムのサイトカイン反応への作用機序を解明し、炎症反応への影響を調べることが目的である。本年度は、昨年度の実験結果に基づき、健康成人ボランティアの末梢血単核球(PBMCs)を用いたin vitro実験で、peroxisome proliferator-activated receptor γ(PPARγ)関連物質のサイトカイン反応への影響を調べ、それぞれの反応に対するミダゾラムの効果について検討した。さらに、マウスを用いたin vivo実験で、ミダゾラムの全身投与による局所炎症反応に対する影響についても検討した。
KAKENHI-PROJECT-17390537
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17390537
サイトカイン反応に対する静脈麻酔薬の修飾メカニズムの解明と炎症反応への影響
in vitro実験の結果、PPARγのアゴニストである15-deoxy-Δ^<12,14>-prostaglandin J2(15dPGJ2,10^<-10>10^<-6>M)およびRosiglitazone(10^<-10>10^<-6>M)は、LPS(11000ng/mL)で刺激されたPBMCsのサイトカイン(IL-6)反応に対して、用量によって異なり、低濃度で増強する傾向がみられた。ミダゾラムはそれらの効果を抑制する傾向がみられた。一方、PPARγのアンタゴニストであるGW9662(10^<-6>M)はサイトカイン(IL-6)反応を増強した。これらの結果から、PPARγ経路がサイトカイン反応に複雑に関連しており、ミダゾラムがそれらに影響していることが示唆された。in vivo実験では、カラゲニン(5%,20μL)をICRマウス(8週齢)の後肢足蹠に皮下注射することで、急性炎症を惹起し、足浮腫容積測定装置を用いて注射後6時間まで足容積を測定した。カラゲニン注射後4-5時間で約150%の浮腫がみられたが、カラゲニン注射前にミダゾラム(70mg/kg)を腹腔内投与することよって浮腫が抑制されたことから、ミダゾラムの局所的な抗炎症作用が示唆された。本研究は、静脈麻酔薬のサイトカイン反応への作用機序を解明し、炎症反応への影響について検討することが目的である。本年度は、動物モデルで主に組織および血液サンプルを用いて、静脈麻酔薬のひとつであるミダゾラムのサイトカインおよび炎症関連遺伝子発現に対する影響を調べることを目的とした。さらに、他の静脈麻酔薬の効果についても検討を試みた。マウスを施設内の動物実験施設でストレスを軽減した恒常的な環境下で飼育し、腹腔内にミダゾラムを投与し、カラゲニン注入後の足蹠浮腫による局所性炎症反応への効果を評価し、採血およびカラゲニン注入後の足蹠浮腫組織を採取した。さらに、全身性炎症反応が合やさった局所性炎症反応への影響について評価するために、LPSを腹腔内投与した動物にミダゾラムを投与し、採血およびカラゲニン注入後の足蹠浮腫組織を採取した。得られた組織および血液サンプルから、tota1 RNAを抽出し、リアルタイムPCRを行い、サイトカイン遺伝子および炎症関連遺伝子等の発現量を定量評価した。また血液サンプル中のサイトカインレベルをELISA測定キット等を用いて測定し、全身性炎症反応を評価した。その結果、カラゲニン注射前にミダゾラムを腹腔内投与することよって浮腫の抑制傾向はみられたが、組織および血液サンプルに明らかなサイトカイン遺伝子および炎症関連遺伝子への影響は認められなかった。これらの結果から、ミダゾラムの炎症反応への作用は、より複雑である可能性があること、また、実験モデルの検討がさらに必要であると考えちれた。一方、他の静脈麻酔薬であるデクスメデトミジンをカラゲニンに混合して局所投与した場合、明らかな抗浮腫効果がみられたことから、今後、デクスメデトミジンも抗炎症作用が期待できることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-17390537
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積層チップ間の故障テスト用信号生成・供給回路設計手法の開発
本研究では,ICチップ積層時のチップ間接続における信号遷移に異常が現れる故障および劣化の検出を行い,かつ,各チップのテスト用信号の供給に関して,チップ間接続で起こる遅延の差異を考慮する制御信号生成・供給回路の設計手法の開発を目的としている。平成30年度は,主に遅延故障検査容易化回路・制御信号供給回路における特性ばらつきの補正の検討および検査対象への信号供給回路の検討として,次の3項目の研究を行った。1.遅延付加部に用いる遅延付加ゲートとして内部構造の異なる2種の設計を行い,シミュレーションおよび実測により評価を行った。遅延付加ゲート内部のXORゲートで立上り遅延と立下り遅延に違いがあると観測信号が消滅するなどの問題がある。また,信号選択回路の設計を行うことで従来の遅延付加部より約18%省面積化することができた。2.遅延付加部の遅延量のばらつきとその測定時の補正方法について検討を行った。各遅延付加ゲートの遅延量について試作ICにおいて遷移信号の測定対象経路を複数設けることで,測定箇所による遅延量の差異を調査した。制御信号の印加法の改良により,従来設計を変更することなく,任意の遅延付加ゲートを起点とする信号遷移の測定が可能となった。また,単一の付加遅延量による概算ではなく,複数箇所の付加遅延量を用いて遷移信号の遅延量を計算することで,遅延故障検査に用いるタイミング余裕の測定における遅延付加部のばらつきの補正が可能となった。3.検査容易化回路における遅延付加部の分割などの回路構成の改良を行った。遅延故障検査対象回路への信号供給に関して,検査時間の短縮を行うために,シリコン貫通ビアへの信号供給に用いる遅延付加部と遅延量観測に用いる遅延付加部を分割した。遅延付加部のゲート段数を削減することで,検査時間の短縮が可能となった。研究の目的として挙げた各項目に関して,いずれもおおむね順調に進展していると考えている。「遅延故障検査容易化回路・制御信号供給回路における特性ばらつきの補正の検討」に関しては,これまでに設計した遅延付加・観測回路における遅延ばらつきの測定を行い,遅延量測定の基準となる遅延付加ゲートの遅延量測定を複数箇所で行うための制御信号の印加手順を開発し,遅延ばらつきを補正する手法を提案した。「テスト用の制御信号タイミングを考慮する制御信号生成・供給回路の設計」「センサ回路とロジック回路の積層テストへの提案回路の応用・改良」に関しては,クロック信号生成回路を用いる遅延観測回路についての設計およびシミュレーションによる検討を行っている。今後の研究の推進方策として,「遅延故障検査容易化回路・制御信号供給回路における特性ばらつきの補正の検討」に関しては,引き続き遅延ばらつきの補正を行うための複数箇所での遅延測定について,最適な測定箇所の推定や新たな補正手法についての検討を行う予定である。「テスト用の制御信号タイミングを考慮する制御信号生成・供給回路の設計」に関しては,IC内部のクロック生成回路と積層チップ間の遷移信号の供給に関して検討を進める予定である。「センサ回路とロジック回路の積層テストへの提案回路の応用・改良」に関しては,他の遅延観測回路の積層チップ間検査への適用について評価・検討を行う予定である。本研究では,ICチップ積層時のチップ間接続における信号遷移に異常が現れる故障および劣化の検出を行い,かつ,各チップのテスト用信号の供給に関して,チップ間接続で起こる遅延の差異を考慮する制御信号生成・供給回路の設計手法の開発を目的としている。平成30年度は,主に遅延故障検査容易化回路・制御信号供給回路における特性ばらつきの補正の検討および検査対象への信号供給回路の検討として,次の3項目の研究を行った。1.遅延付加部に用いる遅延付加ゲートとして内部構造の異なる2種の設計を行い,シミュレーションおよび実測により評価を行った。遅延付加ゲート内部のXORゲートで立上り遅延と立下り遅延に違いがあると観測信号が消滅するなどの問題がある。また,信号選択回路の設計を行うことで従来の遅延付加部より約18%省面積化することができた。2.遅延付加部の遅延量のばらつきとその測定時の補正方法について検討を行った。各遅延付加ゲートの遅延量について試作ICにおいて遷移信号の測定対象経路を複数設けることで,測定箇所による遅延量の差異を調査した。制御信号の印加法の改良により,従来設計を変更することなく,任意の遅延付加ゲートを起点とする信号遷移の測定が可能となった。また,単一の付加遅延量による概算ではなく,複数箇所の付加遅延量を用いて遷移信号の遅延量を計算することで,遅延故障検査に用いるタイミング余裕の測定における遅延付加部のばらつきの補正が可能となった。3.検査容易化回路における遅延付加部の分割などの回路構成の改良を行った。遅延故障検査対象回路への信号供給に関して,検査時間の短縮を行うために,シリコン貫通ビアへの信号供給に用いる遅延付加部と遅延量観測に用いる遅延付加部を分割した。遅延付加部のゲート段数を削減することで,検査時間の短縮が可能となった。研究の目的として挙げた各項目に関して,いずれもおおむね順調に進展していると考えている。「遅延故障検査容易化回路・制御信号供給回路における特性ばらつきの補正の検討」に関しては,これまでに設計した遅延付加・観測回路における遅延ばらつきの測定を行い,遅延量測定の基準となる遅延付加ゲートの遅延量測定を複数箇所で行うための制御信号の印加手順を開発し,遅延ばらつきを補正する手法を提案した。「テスト用の制御信号タイミングを考慮する制御信号生成・供給回路の設計」「センサ回路とロジック回路の積層テストへの提案回路の応用・改良」に関しては,クロック信号生成回路を用いる遅延観測回路についての設計およびシミュレーションによる検討を行っている。
KAKENHI-PROJECT-18K11218
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K11218
積層チップ間の故障テスト用信号生成・供給回路設計手法の開発
今後の研究の推進方策として,「遅延故障検査容易化回路・制御信号供給回路における特性ばらつきの補正の検討」に関しては,引き続き遅延ばらつきの補正を行うための複数箇所での遅延測定について,最適な測定箇所の推定や新たな補正手法についての検討を行う予定である。「テスト用の制御信号タイミングを考慮する制御信号生成・供給回路の設計」に関しては,IC内部のクロック生成回路と積層チップ間の遷移信号の供給に関して検討を進める予定である。「センサ回路とロジック回路の積層テストへの提案回路の応用・改良」に関しては,他の遅延観測回路の積層チップ間検査への適用について評価・検討を行う予定である。理由:今年度研究費について,IC試作および測定実験を当初予定額よりも安価に実施することができたため未使用額が生じた。使用計画:試作ICの測定に関する物品費として使用する予定である。
KAKENHI-PROJECT-18K11218
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K11218
グローバル時代の大学経営人材養成方策に関する研究
本研究は、諸環境の変化の中で、高度化や合理化など厳しく対応が求められている大学経営に関し、これを支える人々(大学経営人材)の能力開発に着目し、国際的視野からこれを実証的に明らかにすることを目的に行われた。大学経営人材として考察する対象は、事務職員にとどまらず現実に大学経営に関与している役員、教員も含む。本研究では、研究代表者がこれまでわが国における実態解明のために活用した実績を欧米主要国等に拡張し、それぞれの国における現状や課題を実証的に解明し、わが国における実態や課題と照合することによって、グローバル化時代にふさわしい大学経営人材のあり方およびその養成方策を明らかにすることに務めた。本研究は、諸環境の変化の中で、高度化や合理化など厳しく対応が求められている大学経営に関し、これを支える人々(大学経営人材)の能力開発に着目し、国際的視野からこれを実証的に研究することを目的とするものである。平成25年度においては、第一に、前年度までの調査研究活動をベースとして、引き続き関係国(米・英・独・豪・中)における大学経営がよって立つ高等教育システムの詳細についての調査研究を進め、申請者が平成23年度まで所属していた広島大学高等教育研究開発センターの研究者と連絡を密にしつつ、さまざまな情報を収集し、かつ分析を行った。第二に、諸外国の大学経営人材およびその養成方策に関する制度や実態を調査するため、平成25年10月には本件の経費によって、各国の研究者によって組織された「高等教育改革のための国際シンポジウム」(スロベニアで開催)に出席し、必要な情報を収集するとともに、各国の研究者と交流を深め、更なる情報源を確保した。第三に、これまでに得た調査研究成果を再分析することに努め、企業や他国の大学などとの比較を行うことによって、わが国および各国の大学における管理運営システムやこれを担う人材についての特色を明らかにすべく、過去の資料の体系的検討を進めた。第四に、これまでの調査研究成果を踏まえつつ、学界やその他の関係者からの反応も期待しつつ、雑誌論文および単行本などの各種論稿の執筆・公刊に努めた。本研究は、諸環境の変化の中で、高度化や合理化など厳しく対応が求められている大学経営に関し、これを支える人々(大学経営人材)の能力開発に着目し、国際的視野からこれを実証的に明らかにすることを目的に行われた。大学経営人材として考察する対象は、事務職員にとどまらず現実に大学経営に関与している役員、教員も含む。本研究では、研究代表者がこれまでわが国における実態解明のために活用した実績を欧米主要国等に拡張し、それぞれの国における現状や課題を実証的に解明し、わが国における実態や課題と照合することによって、グローバル化時代にふさわしい大学経営人材のあり方およびその養成方策を明らかにすることに務めた。本研究は、諸環境の変化の中で、高度化や合理化など厳しく対応が求められている大学経営に関し、これを支える人々(大学経営人材)の能力開発に着目し、国際的視野からこれを実証的に研究することを目的とするものである。平成24年度の計画に従い、第一に、欧米主要国(米・英・独・豪)および中国の大学の管理運営および経営体制の実態および外部登用人材にも着目しつつ、予備的に調査を行うこととし、申請者が前年度まで所属していた広島大学高等教育研究開発センターの研究者と連携し、欧米主要国および中国の大学経営人材に係る実態についての彼らとのインタビューを通じて、予備的な調査を進めた。第二に、諸外国の大学経営人材およびその養成方策に関する制度や実態を調査するとの計画に従い、平成24年9月には本件の経費によってOECD/IMHE(高等教育機関マネジメント)の総会に出席し、欧米主要国からの出席者と交流を深め、研究に必要な諸情報およびその更なる入手のためのネットワークを構築した。また、オーストラリアについても、別途の海外調査の機会にメルボルン大学の研究者との情報交換を行った。さらに米国ではピッツバーグ大学での研究出張(別途経費)の機会を利用して、彼の地での大学経営人材の役割や実態について調査を行った。第三に、これまで得た科研費による研究成果を再分析することに努め、企業や他国の大学などとの比較を行うことによって、我が国および各国の大学における管理運営システムやこれを担う人材についての特色を明らかにすべく、過去の資料の体系的検討を進めた。本研究は、諸環境の変化の中で高度化や合理化など厳しく対応が求められている大学経営に関し、これを支える人々(大学経営人材)の能力開発に着目し、国際的視野からこれを実証的に研究することを目的として実施された。その際、大学経営人材として考察する対象は、事務職員にとどまらず現実に大学経営に関与している役員、教員も含めるものとした。研究代表者(山本眞一)は、これまでわが国における大学経営人材に関する研究をリードしてきたが、本研究は、わが国における実態解明のために活用した手法を欧米主要国および中国に拡張し、それぞれの国における大学経営人材の現状や課題を実証的に解明し、これまで蓄積してきたわが国における実態や課題と照合することによって、グローバル化時代にふさわしい大学経営人材のあり方およびその養成方策を明らかにすることに務めた。具体的な研究としては、まず諸外国の大学における大学経営人材の実態について、米国、英国、オーストラリアにおいて大学訪問によるインタビュー調査によって、その解明を行った。その結果、いずれの国においても学術研究のバックグランドを有する専門家と経営上の専門知識・技術を有する実務家とのバランスの上に立ちつつも、前者の優位が確立されている実態が明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-24531007
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24531007
グローバル時代の大学経営人材養成方策に関する研究
次に、この問題に対するより広い視野を得るために、国際研究集会等(OECD/IMHE(高等教育機関のマネジメント・プログラム)、カナダおよびスロベニアにおける国際研究集会)の機会を捉えて調査および意見・情報交換につとめた。また、わが国における近時の大学改革の中で、大学経営人材に関する論点の変化等については、文献・資料および会議等への出席により必要な情報を取得し、これらをもとに研究成果をとりまとめた。教育学平成25年度については、いずれも計画に従い、国内外の研究者や実務家との意見交換、外国の大学における大学経営人材の実態把握、および過去の科研費等による研究成果の分析を行い、ほぼ目的を達する程度の進展を見ている。また国内外の研究会・研修会における講演・講義・研究発表等の機会をとらえて、大学経営人材について単に表面的な理解にとどまらず、背景事情も含めてより深い実態把握に努めてきた。平成24年度の三つの研究実施計画は、いずれもその内容に従い、国内外の研究者や実務家との情報交換、外国の大学における大学経営人材の実態把握、および過去の科研費による研究成果の分析を行い、ほぼ目的を達する程度に進展を見ている。また途中の研究成果についても、大学基準協会の「大学職員論叢」その他に寄稿し、また国内外の研究会・研修会における講演・講義・研究発表等の機会を捉えて、大学経営人材に関するより深い実態把握につとめてきた。当初計画の趣旨に沿い、これまでの調査研究の成果をベースに、大学経営人材の役割や能力開発に係る最新かつ具体的な実態を明らかにするため、各国(米・英・独・豪・中)における大学関係者に対して、アンケート調査あるいはこれに代わる調査を行う。調査は、インターネットの利用など最新のテクノロジーを通じて低廉な経費で行うことが可能であれば、それに依ることとする。また、調査を補強・補充するため、前年度に引き続き外国調査を行う。訪問先としては米国および可能であれば英国・ドイツとし、具体的には米国では高等教育研究に定評あるボストン・カレッジ、英国ではバーミンガム大学、ドイツではカッセル大学、フンボルト大学等を念頭に置いている。その後、最終年度として研究成果を報告書として取りまとめたい。当初計画に従い、前年度の調査研究活動をベースとして、大学経営人材の役割や能力開発に係る最新かつ具体的な実態を明らかにするため、各国(米・英・独・豪・中)における大学関係者に対して、アンケート調査あるいはこれに代わる調査を行う。調査は、前年度に行った予備的な調査研究をベースとして、英文による調査票および説明資料を作成し、各国の研究者ネットワークの中心人物を通じて行うようにする。アンケート調査の場合は、インターネットの利用など最新のテクノロジーを通じて低廉な経費で行うことが可能であれば、そのように努める。また、この調査を補強・補充するために、前年度に引き続き外国調査を行う。訪問先としては、英国およびドイツとし、具体的には、英国についてはこれまで研究者とのコンタクトのあるブライトン大学、バーミンガム大学、サセックス大学等とし、ドイツについては高等教育研究センターのあるカッセル大学および歴史と伝統を有するフンボルト大学を予定する。以上のほか、関係国の研究者が一同に集まる国際的な研究集会に出席して、さらに緊密なネットワークを構築し、調査の効率を高めたい。
KAKENHI-PROJECT-24531007
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人口減少時代における高速交通整備による地域経済効果計測手法の開発
人口減少下での高速交通整備の標準的な時系列評価手法の確立を目指し、労働供給制約、財市場における需給ギャップ、アンケート調査結果等を踏まえた観光需要の変化、都市圏物資流動調査データ等を用いた物流コストの変化を考慮した地域計量経済モデルを開発した。さらに、石川県、首都圏、岩手県を対象とする実証モデルを構築し、北陸新幹線、圏央道、復興道路の整備による経済効果を分析することにより、実証分析の方法を示した。人口減少に伴う労働供給制約、高速鉄道整備による観光行動の変化を考慮した地域計量経済モデルの枠組みを検討した。さらに、検討した枠組みに沿って石川県を対象とする実証モデルを構築し、北陸新幹線整備の地域経済効果の事後的シミュレーション分析を行った。観光行動の変化は、地域間最短所要時間の変化による観光客数の変化の推計、新幹線を利用して観光で石川県を訪れた観光客を対象とする実態調査により把握し、その結果をシミュレーション分析に反映させた。実態調査は、国内観光客については、外部リサーチ企業に依頼してWEBアンケート調査により実施し、直近の北陸新幹線を利用した石川県への観光における周遊行動、消費単価等の実態、仮に新幹線がなかった場合の観光行動の変化等を尋ねた。海外観光客については、同様の内容を現地ヒアリング調査により把握した。なお、実証モデルの構築にあたっては、各関数の被説明変数及びすべての説明変数について時系列データの定常性の検証を行い、定常性が満たされない場合には階差を取ることにより定常化した上で再構築を行った。本研究で開発した手法は、従来の分析手法(従来の地域計量経済モデル、SCGEモデルなど)が観光行動の変化を考慮した時系列の影響を計測できない中で、人口減少の進む日本の地域において高速鉄道整備が観光行動の変化を通じて地域経済に及ぼす長期の効果を分析する標準的なツールとなり得ると考えられる。また、高速道路整備に伴う大型物流施設の立地等による物流コスト削減を考慮した地域計量経済モデルについても、枠組みの検討、東京都市圏および圏央道(首都圏中央連絡自動車道)の整備を対象とする実証モデル構築の予備的検討を行った。平成27年度に計画していた項目のうち、労働市場の実態分析については研究を進めているものの十分な成果を上げることができなかったが、観光需要の実態調査・分析、観光行動の変化を考慮したモデル構築については予定通り実施することができた。一方、平成28年度に計画していた物流効率化を考慮したモデル構築についても取り組み始めており、総合的には、おおむね順調に進展していると判断した。平成29年2月に石川県から公表された平成27年の観光入込客数(県内、県外、海外別)のデータを基に北陸新幹線開業前後での観光客数の変化の実態把握を行うとともに、その結果を踏まえ、平成27年度に構築した石川県を対象とする観光行動の変化を考慮した地域計量経済モデルを用いて北陸新幹線整備による将来にわたる経済効果の計測を行った。また、平成27年度に予備的な検討を行った高速道路整備に伴う大型物流施設の立地等による物流効率化を考慮した地域計量経済モデルについては、モデルの枠組みを確立し、東京都市圏を対象とする実証モデルの構築、平成1532年度にかけての圏央道の段階的な整備・開通の経済効果分析を行った。モデルでは、物流コスト(輸送コスト、在庫コスト)の削減が運輸業とその他の産業の潜在的な生産力を高めることを仮定した他、東京都市圏の労働市場の実態を踏まえ、マッチング関数を用いて労働需給および労働のミスマッチを考慮に入れた。圏央道整備に伴う物流コスト削減については、第4回(平成15年)、第5回(平成25年)の東京都市圏物資流動調査における物流施設立地および搬入・搬出貨物量のデータ、NAVITIMEに基づく各地域間の道路最短所要時間、CBREが公表する地域別の1m2あたり賃借料のデータ等を用いて圏央道沿線の物流施設の立地が平成15年、平成25年時点の輸送コスト、在庫コストに与える影響を算出し、その結果を基に平成1532年度のコスト削減の推計を行った。分析の結果,圏央道整備による東京都市圏の地域経済効果は地域内総生産の額と比較して極めて小さいこと等が示された。平成28年度に計画していた項目のうち、物流企業を対象とするヒアリング調査は実施できなかったが、東京都市圏物資流動調査等の統計資料を用いて物流コストの実態を把握し、その結果と構築した物流コストを考慮した地域計量経済モデルを用いて圏央道整備が首都圏地域にもたらす経済効果を分析することができた。平成27年度に実施できなかった労働市場の実態を踏まえた分析については、今年度のモデルで考慮することができた。以上から、おおむね順調に進展していると判断した。平成27年度に構築した高速交通整備に伴う観光需要の誘発および周遊行動の変化を考慮した地域計量経済モデル、平成28年度に構築した労働供給制約等の労働市場の実態および高速交通整備に伴う物流効率化を考慮した地域計量経済モデルを発展させ、高速交通整備に伴う観光行動および物流効率化への影響を考慮した統合モデルの枠組みを検討した。統合モデルは、マクロ財市場の需給ギャップが物価変動を通じて地域経済に及ぼす影響を分析可能なものとすることができた。さらに、検討した枠組みに基づく実証モデルの例として、人口減少が進む中で復興道路計画が進み、観光資源も豊富な東北地域のうち岩手県を対象に構築し、復興道路整備による地域経済効果の計測を行った。実証分析においては、時系列の年度データを用いたモデル内各変数のパラメータ推定を行っているが、パラメータ推定の信頼性を確保するため、時系列データの定常性の検証を行っており、非定常な変数が含まれる関数については階差系列により関数を再構築している。
KAKENHI-PROJECT-15K06257
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人口減少時代における高速交通整備による地域経済効果計測手法の開発
経済効果計測の結果、復興道路整備が岩手県経済に及ぼす影響は、建設期間中のフロー効果が供用開始後のストック効果を年あたりでは上回ることなどが示唆された。また、3年間のモデル開発の成果を踏まえ、多様な高速交通整備の評価に適用可能な地域計量経済モデルの枠組み、各種データの収集・整備、パラメータ推定およびシミュレーション分析の方法等をとりまとめた指針を作成した。人口減少下での高速交通整備の標準的な時系列評価手法の確立を目指し、労働供給制約、財市場における需給ギャップ、アンケート調査結果等を踏まえた観光需要の変化、都市圏物資流動調査データ等を用いた物流コストの変化を考慮した地域計量経済モデルを開発した。さらに、石川県、首都圏、岩手県を対象とする実証モデルを構築し、北陸新幹線、圏央道、復興道路の整備による経済効果を分析することにより、実証分析の方法を示した。平成28年度の研究項目である物流コストの実態調査・分析、物流効率化を考慮したモデル構築を引き続き進めていく。また、労働市場の実態分析を進め、その結果を踏まえて、観光行動の変化を考慮したモデル、物流効率化を考慮したモデルを改良する。なお、石川県を対象とする観光行動の変化を考慮した実証モデルについては、平成28年度発表予定の平成27年度観光入込客数の統計データを用いて、平成27年度に構築したモデルを検証し、必要に応じてモデルの改良を行う。平成29年度の研究項目である高速交通整備に伴う観光行動および物流効率化への影響を考慮した統合モデルの検討、東北地域の復興道路計画の経済効果の計測を行う。また、3年間のモデル開発の成果を踏まえ、多様な高速交通整備の評価に適用可能な地域計量経済モデルの枠組み、各種データの収集・整備、パラメータ推定およびシミュレーション分析の方法等をとりまとめた指針を作成する。土木計画学平成28年7月に中国・上海で行われるWorld Conference on Transport Researchの論文投稿および参加登録(参加登録費:$800、カード払い)を3月に行ったが、学会開催が次年度のため参加登録費の計上も次年度となったため。平成29年9月にベトナム・ホーチミンシティで開催されるThe 12th EASTSCONFERENCEの登録料・旅費に充てる予定である。
KAKENHI-PROJECT-15K06257
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肺移植における抗T cell receptor Vβ抗体による免疫抑制療法
研究業績概要ラット肺移植モデルを用い急性拒絶反応時および慢性拒絶反応時の移植片浸潤リンパ球におけるTCR Vβgeneの発現状況を検討した。近交系ラットBN(RT1^n)からLEW(RT1^l)への同所性肺移植モデルにおいては、移植後短期間のサイクロスポリン(on day 2 and 3 day after transplantation,25mg/kg,i.m.)の投与により移植肺は長期に生着するが、移植肺を組織学的に検討すると、移植肺の比較的太い気管支において、リンパ球浸潤を伴う気管支粘膜下の線維化や肉芽の形成を伴う気管支病変が認められる。また移植肺長期生着ラットのドナー抗原に対する免疫状態の検討では、レシピエントはアロ抗原反応性を有していることを示した。このような変化はアイソグラフトにおいては認められなかった。このことより我々は免疫抑制を施すこの系を、慢性拒絶反応の系と考えている。急性拒絶反応時の浸潤リンパ球においてはアイソグラフトでのそれと比較してVβ5およびVβ8の発現の増強が認められた。移植後30日の時点での慢性拒絶反応例においてはアイソグラフトのそれと比較してVβ9の発現増強が認められた。BNからLEWへの移植後30日目の移植肺においては、急性拒絶反応におけるvascular pahseに相当する細胞浸認められるが、その後の移植後6ケ月までの観察では、その細胞浸潤は減少する。このことより、移植後30日目において増加するVβ9は、それ以後の細胞浸潤の抑制に関与している可能性が考えられる。この様に移植肺に浸潤するリンパ球のVβのレパートリーは、レシピエントのドナー抗原に対する免疫状態により変化することが示唆されたが、Vβ抗体の作成自体は達成されていない。今後もVβ抗体の作成努力を継続したいと考えている。研究業績概要ラット肺移植モデルを用い急性拒絶反応時および慢性拒絶反応時の移植片浸潤リンパ球におけるTCR Vβgeneの発現状況を検討した。近交系ラットBN(RT1^n)からLEW(RT1^l)への同所性肺移植モデルにおいては、移植後短期間のサイクロスポリン(on day 2 and 3 day after transplantation,25mg/kg,i.m.)の投与により移植肺は長期に生着するが、移植肺を組織学的に検討すると、移植肺の比較的太い気管支において、リンパ球浸潤を伴う気管支粘膜下の線維化や肉芽の形成を伴う気管支病変が認められる。また移植肺長期生着ラットのドナー抗原に対する免疫状態の検討では、レシピエントはアロ抗原反応性を有していることを示した。このような変化はアイソグラフトにおいては認められなかった。このことより我々は免疫抑制を施すこの系を、慢性拒絶反応の系と考えている。急性拒絶反応時の浸潤リンパ球においてはアイソグラフトでのそれと比較してVβ5およびVβ8の発現の増強が認められた。移植後30日の時点での慢性拒絶反応例においてはアイソグラフトのそれと比較してVβ9の発現増強が認められた。BNからLEWへの移植後30日目の移植肺においては、急性拒絶反応におけるvascular pahseに相当する細胞浸認められるが、その後の移植後6ケ月までの観察では、その細胞浸潤は減少する。このことより、移植後30日目において増加するVβ9は、それ以後の細胞浸潤の抑制に関与している可能性が考えられる。この様に移植肺に浸潤するリンパ球のVβのレパートリーは、レシピエントのドナー抗原に対する免疫状態により変化することが示唆されたが、Vβ抗体の作成自体は達成されていない。今後もVβ抗体の作成努力を継続したいと考えている。ラットを用いた同所性肺移植モデルの作成については手技的および拒絶反応の経時的再現性の点からはほぼ完成し得たと思われる。BN(RT1^n)からLEW(RT1^l)への左移植肺における、急性拒絶反応に伴う移植肺組織でのRT-PCR法によるTCRV-betaの発現は、検討した20種類のV-betaの中ではV-beta5とV-beta8の発現が強い。サイクロスポリン(CsA)により免疫抑制を行うと、これらの発現増強は認められない。そこでこれらのV-betaに対する抗体の作成を試みた。TCRV-betaドメインのアミノ酸配列に基づき、抗原性の高いと思われる部分を選び合成ペプチドを作成した。これらを用いて家兎を免疫し抗体作成を試みているが、現在まで有効な抗体は作成できていない。問題点としては、免疫回数、アジュバントの併用、選択するアミノ酸配列部分の問題等が考えられる。そこで今後は、免疫動物としてマウスを用い(得られる血清量、ポリクロナール抗体量は少ないが)、有効な抗原性を有するアミノ酸配列部分の特定を継続して行いたいと考えている。また今回の研究に付随して次の現象が認められた。BN to LEN、LEW to BNの肺移植においては、免疫抑制をなんら施さない場合は、BN to LENの方が移植肺の拒絶反応が早く進行する。それに対し、短期間のCsA(25mg/kg,day2 and day3)投与により、BN to LEWでは移植片はほぼ無期限に生着するが、LEW to BNでは移植片は移植後2週間以内に拒絶されるという逆転現象が認められた。今我々が検討している免疫抑制療法においても、単独での効果と、CsAと併用による相加・相乗効果の検討に有用なモデルではないかと考えられる。従い、LEW to BNの組み合わせにおいても、浸潤リンパ球の内で増加するTCRV-betaを確認したい。
KAKENHI-PROJECT-09671383
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09671383
肺移植における抗T cell receptor Vβ抗体による免疫抑制療法
ラット肺移植モデルを用い急性拒絶反応時および慢性拒絶反応時の移植片浸潤リンパ球におけるTCR V βgeneの発現状況を検討した。近交系ラットBN(RT1^n)からLEW(RT1^1)への同所性肺移植モデルにおいては、移植後短期間のサイクロスポリン(CsA)の投与により移植肺は長期に生着するが、移植肺を組織学的に検討すると、移植肺の比較的太い気管支において、リンパ球浸潤を伴う気管支粘膜下の線維化や肉芽の形成を伴う気管支病変が認められる。また移植肺長期生着ラットのドナー抗原に対する免疫状態の検討では、レシピエントはアロ抗原反応性を有していることを示した。このことより我々は免疫抑制を施すこの系を、慢性拒絶反応の系と考えている。急性拒絶反応時の浸潤リンパ球においてはアイソグラフトでのそれと比較してVβ5およびVβ8の発現の増強が認められた。移植後30日の時点での慢性拒絶反応例においてはアイソグラフトのそれと比較してVβ9の発現増強が認められた。BNからLEWへの移植後30日目の移植肺においては、急性拒絶反応におけるvascular pahseに相当する細胞浸認められるが、その後の移植後6ヶ月までの観察では、その細胞浸潤は減少する。このことより、移植後30日目において増加するVβ9は、それ以後の細胞浸潤の抑制に関与している可能性が考えられる。この様に移植肺に浸潤するリンパ球のVβのレパートリーは、レシピエントのドナー抗原に対する免疫状態により変化することが示唆されたが、Vβ抗体の作成自体は達成されていない。今後もVβ抗体の作成努力を継続したいと考えている。
KAKENHI-PROJECT-09671383
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09671383
確率制御理論の研究
1.不確定性を伴わない確率制御問題の研究について本年度の主な成果は、時間平均コスト確率制御問題に関して解法を求めたことである。これは投稿中の論文で発表する予定である。さらに本研究費を使って他大学の研究者との活発な議論を重ねた結果、2次コスト関数の問題に対しても発展させるための目途がついた。工学のシステム制御との関連では、本研究費を使って資料収集ができた。これによって、確率制御問題と確定的制御問題との間に興味深い関連性のあることが判明してきた。これからの課題となろう。2.不確定性を伴う確率制御問題の研究について不確定性を伴う確率微分方程式に対する自己調整型制御問題は、従来、未解決問題として多くの研究者のテーマとなっていた。すでに本研究費によってこの問題解決のための端諸を切り開くことができていたが、本年度は更にこの研究を発展させることができた。成果は発表する予定である。これからも他大学の研究者との活発な交流を欠かすことができない。3.数理物理に表われる対称性や逆問題の追求について本研究費によって、木曽教官に微分方程式に関する各種の研究会に出張していただいた。4.不確定性によって引き起こされるカオスのフラクタル解析について主として津田、三好教官に本研究費を使って出張していただき、他大学の研究者と活発な議論を重ねて充分な成果を得た。フラクタル理論とその工学への応用への方向が追求された。それらの成果は論文として発表の予定である。1.不確定性を伴わない確率制御問題の研究について本年度の主な成果は、時間平均コスト確率制御問題に関して解法を求めたことである。これは投稿中の論文で発表する予定である。さらに本研究費を使って他大学の研究者との活発な議論を重ねた結果、2次コスト関数の問題に対しても発展させるための目途がついた。工学のシステム制御との関連では、本研究費を使って資料収集ができた。これによって、確率制御問題と確定的制御問題との間に興味深い関連性のあることが判明してきた。これからの課題となろう。2.不確定性を伴う確率制御問題の研究について不確定性を伴う確率微分方程式に対する自己調整型制御問題は、従来、未解決問題として多くの研究者のテーマとなっていた。すでに本研究費によってこの問題解決のための端諸を切り開くことができていたが、本年度は更にこの研究を発展させることができた。成果は発表する予定である。これからも他大学の研究者との活発な交流を欠かすことができない。3.数理物理に表われる対称性や逆問題の追求について本研究費によって、木曽教官に微分方程式に関する各種の研究会に出張していただいた。4.不確定性によって引き起こされるカオスのフラクタル解析について主として津田、三好教官に本研究費を使って出張していただき、他大学の研究者と活発な議論を重ねて充分な成果を得た。フラクタル理論とその工学への応用への方向が追求された。それらの成果は論文として発表の予定である。
KAKENHI-PROJECT-07640313
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07640313
頭頸部領域の前癌病変と扁平上皮癌における癌化および進展のメカニズムの解明
頭頸部領域の前癌病変と扁平上皮癌の標本を用いて病理組織学的手法により癌化および進展のメカニズムの解明と予後因子の検討を行った。喉頭と舌の前癌病変では、癌抑制遺伝子であるFHIT蛋白の発現の低下と上皮成長因子受容体関連遺伝子のEGFR蛋白の発現の増加が癌化の指標となりえた。また、喉頭癌の疾患特異的生存率は、FHITの蛋白の発現の低下とEGFR蛋白の発現の増加が予後不良の予測因子となりえた。頭頸部領域の前癌病変と扁平上皮癌の標本を用いて病理組織学的手法により癌化および進展のメカニズムの解明と予後因子の検討を行った。喉頭と舌の前癌病変では、癌抑制遺伝子であるFHIT蛋白の発現の低下と上皮成長因子受容体関連遺伝子のEGFR蛋白の発現の増加が癌化の指標となりえた。また、喉頭癌の疾患特異的生存率は、FHITの蛋白の発現の低下とEGFR蛋白の発現の増加が予後不良の予測因子となりえた。(目的)頭頸部領域の前癌病変と扁平上皮癌における癌抑制遺伝子(FHIT、p53、p16)の蛋白の発現が癌化の予測因子になるのか、癌の浸潤の程度や予後因子になりうるかを検討した。(対象)症例は、舌の前癌病変の25例(軽度異型15例、高度異型10例)と舌の扁平上皮癌の36例である。(方法)10%ホルマリン固定されパラフィン包埋された標本を用いて、一次抗体は、抗FHIT抗体、抗p53抗体、抗p16抗体そして細胞の増殖マーカーである抗Ki-67抗体を用いて免疫組織学的手法にて蛋白の発現を検討した。また、扁平上皮癌を早期癌と進行癌に分け、カプランマイヤー法を用いて生存率を計測し、蛋白の発現が予後因子になりうるかを有意差検定を行い判定した。(結果)FHIT蛋白は、有意差はないが前癌病変に比べ扁平上皮癌で蛋白の発現低下がみられた。また、p53蛋白は、軽度異型に比べ扁平上皮癌で有意な発現をみとめた。p16蛋白は、前癌病変と扁平上皮癌を比べても発現の差はなかった。細胞増殖マーカーのKi-67は、異型度や癌化に進行に伴い、有意に発現が増大した。生存率の検定では、いずれの癌抑制遺伝子の蛋白の発現の有無に有意差はなかった。(まとめ)口腔の前癌病変では、p53蛋白の発現とKi-67の発現が癌化の指標になりうる可能性が示唆された。しかしながら、様々な刺激(細菌感染やウィルス感染、喫煙、飲酒、栄養障害など)に影響を受けやすい口腔病変では、今回用いた癌抑制遺伝子の蛋白の発現で予後判定を行うのは難しいために他の因子での検討も必要である。(目的)頭頸部領域の前癌病変と扁平上皮癌における癌抑制遺伝子の役割、そして新たに癌遺伝子の蛋白を調べることにより蛋白レベルの発現が癌化の予測因子になるのか、癌の浸潤の程度や転移の予測因子になりうるかを検討した。平成21年度、舌の前癌病変と舌癌症例を用い、癌抑制遺伝子のp53蛋白の発現とp16の発現が癌化の指標になりうる可能性を示唆した。平成22年度は癌遺伝子の細胞増殖因子であるEGFRと細胞周期の影響を調べるためにcyclinD1が癌の浸潤の程度や予後因子となりうるかを検討した。(対象)舌の扁平上皮癌の36例である。(方法)10%ホルマリン固定されパラフィン包埋された標本を用いて、一次抗体は、抗EGFR抗体、抗cyclinD1抗体を用いて免疫組織学的手法にて蛋白の発現を検討した。また、扁平上皮癌をTNM分類に基づきT別に早期癌、浸潤癌に分け、カプランマイヤー法を用いて生存率を計測し、蛋白の発現が予後因子になりうるかを有意差検定を行い判定した。(結果)EGFR蛋白は、早期癌に比べ浸潤癌では過剰発現がみられた。また、cyclinD1蛋白は、早期癌に比べ進行癌での発現に有意差はなかった。生存率の検定では、有意差はなかったがEGFR蛋白の陽性例が陰性例に比べ予後が悪い傾向を認めた。cyclinD1蛋白は、発現の有無での生存率に有意差はなかった。(まとめ)口腔の扁平上皮癌では、EGFR蛋白の発現の有無が予後を判定する因子になりうる可能性が示唆された。更に症例を増やし予後判定が可能な因子があるかの検討が必要である。(目的)頭頸部領域の前癌病変と扁平上皮癌における癌抑制遺伝子の役割、そして新たに癌遺伝子の蛋白を調べることにより蛋白レベルの発現が癌化の予測因子になるのか、癌の浸潤の程度や転移の予測因子になりうるかを検討した。平成21年度、舌の前癌病変と舌癌症例を用い、癌抑制遺伝子のp53蛋白の発現とp16の発現が癌化の指標になりうる可能性を示唆した。平成22年度は癌遺伝子の細胞増殖因子であるEGFRと細胞周期の影響を調べるためにcyclinDlが癌の浸潤の程度や予後因子となりうるかを検討した。今年度は、更に症例を加えて、舌病変と喉頭病変を用いて癌化の進展・予測因子につき検討した。(対象)
KAKENHI-PROJECT-21791649
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頭頸部領域の前癌病変と扁平上皮癌における癌化および進展のメカニズムの解明
喉頭の前癌病変34例、喉頭の扁平上皮癌61例、舌の前癌病変25例、舌の扁平上皮癌の39例である。(方法)10%ホルマリン固定されパラフィン包埋された標本を用いて、一次抗体は、抗Ki-67抗体、抗FHIT抗体、抗p53抗体、抗p16抗体を用いて免疫組織学的手法にて蛋白の発現を検討した。また、扁平上皮癌をTNM分類に基づきT別に早期癌、浸潤癌に分け、カプランマイヤー法を用いて生存率を計測し、蛋白の発現が予後因子になりうるかを有意差検定を行い判定した。(結果)細胞増殖マーカーのKi-67は、両病変ともに異型度や癌化の進行に伴い発現が増大した。また、p53蛋白も、両病変ともに軽度異型に比べ扁平上皮癌で有意な発現をみとめた。しかしながら、p16蛋白は、両病変ともに前癌病変と扁平上皮癌を比べても発現の差はなかった。FHIT蛋白は、喉頭病変のみ軽度異型に比べ扁平上皮癌で蛋白の発現低下がみられた。生存率の検定では、喉頭病変では、早期癌と浸潤癌とで有意差はないが、FHIT蛋白の発現による違いを認めた。(まとめ)FHIT蛋白の発現が、喉頭の前癌病変の癌化の指標及び生命予後の重要なマーカーに成りうる可能性が示唆された。様々な刺激(細菌感染やウイルス感染、喫煙、飲酒、栄養障害など)に反応しやすい舌病変は更なる検討が必要である。
KAKENHI-PROJECT-21791649
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コロイドプロセスによるセラミックス最終形状機械部品の制作
ナノメーター粉(粒径10nmオーダー)の固化成形法を開発し,結晶が著しく微細で高相対密度かつ均質な組織を有するセラミックス材料を製造することを目的として実験した.原料粉には,平均一次粒子径22nmの部分安定化ジルコニア(3mol%Y_2O_3)を使用し,ボールミルを用いて分散してコロイド(泥漿)を作製した.このコロイドを用いて超遠心機により,4×10^41.4×10^5Gの遠心力で成形した.成形体は乾燥後,大気炉で10001300°Cで2時間焼成し,焼成体の相対密度,ビッカース硬度,破壊靱性値を測定してその機械的性質を評価した.その結果,以下のことが明らかになった.1.従来は成形が困難であったナノメーター粉を,そのコロイドを用いて7×10^4G以上の遠心力で遠心成形することで成形が可能である.2.成形体の粒子充填率は,ナノオーダーの原料粉としては5051%と高く,従来より200°C以上低い温度の1100°Cで相対密度99%以上の焼成が可能である.3.焼成体の結晶粒子の平均径は,80nm(1100°C)150nm(1300°C)であり,非常に微細な組織の焼成体が得られる.4.ビッカース硬度及び破壊靱性値は,11001300°Cの焼成温度範囲では,ほぼ一定の値(Hv=12001300,Kc=5.55.8MPa/m^<1/2>)を示した.ナノメーター粉(粒径10nmオーダー)の固化成形法を開発し,結晶が著しく微細で高相対密度かつ均質な組織を有するセラミックス材料を製造することを目的として実験した.原料粉には,平均一次粒子径22nmの部分安定化ジルコニア(3mol%Y_2O_3)を使用し,ボールミルを用いて分散してコロイド(泥漿)を作製した.このコロイドを用いて超遠心機により,4×10^41.4×10^5Gの遠心力で成形した.成形体は乾燥後,大気炉で10001300°Cで2時間焼成し,焼成体の相対密度,ビッカース硬度,破壊靱性値を測定してその機械的性質を評価した.その結果,以下のことが明らかになった.1.従来は成形が困難であったナノメーター粉を,そのコロイドを用いて7×10^4G以上の遠心力で遠心成形することで成形が可能である.2.成形体の粒子充填率は,ナノオーダーの原料粉としては5051%と高く,従来より200°C以上低い温度の1100°Cで相対密度99%以上の焼成が可能である.3.焼成体の結晶粒子の平均径は,80nm(1100°C)150nm(1300°C)であり,非常に微細な組織の焼成体が得られる.4.ビッカース硬度及び破壊靱性値は,11001300°Cの焼成温度範囲では,ほぼ一定の値(Hv=12001300,Kc=5.55.8MPa/m^<1/2>)を示した.
KAKENHI-PROJECT-06650146
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ステレオカメラと複数光源による明度情報を用いた小型形状計測装置の開発
本研究は,3次元物体の形状情報と色情報を,複数の小型カメラと光源を用いて,従来よりも安価で容易に計測する装置の開発を目的とする.本年度は,昨年度考案した計測装置の改良と,その装置を複数台用いて物体の全周形状を計測する方法について検討した.まず,計測装置の改良として,ここで提案する装置では,対象物体への光の照射方法によって,計測範囲や精度に大きく影響することから,特に効果的な光源の配置について検討した.これまでの計測装置は,直管型小型蛍光灯3本を平行に配置しただけであったが,これ以外の配置として,三角形状,鳥居状およびアスタリスク状の配置等を考え,それぞれについて形状計測精度の比較を行なった.なお,光源の配置を様々に変更した装置を試作することが困難であったので,今回は,実際の光源のパラメータを用いたシミュレーション画像を作成し,それを用いて評価を行なった.その結果,蛍光灯3本をアスタリスク状に配置した場合が,最も形状計測に有効であることが分かった.次に,装置一台では,物体の部分形状しか得られないことから,この装置を複数台,物体の周囲に配置して部分形状を取得し,それらを統合して,その物体の全周形状を取得する方法について検討を行なった.具体的には,まず,各装置の鉛直上向きの方向は,全て平行に配置されているとし,各装置で取得された部分形状について,その上向き方向に垂直な面上での断面形状を求める.次に,隣接する部分形状間で,その断面形状を用いて座標変換パラメータを求め,部分形状の統合を行うという方法である.この方法で全周形状を取得することは可能であったが,特に装置台数が少ない場合は,一部誤差が大きくなる場合もあった.しかし,多数の装置を同時に使用することはコストの面から困難であるため,今後は装置を移動させながら部分形状を取得し,統合を行う手法について検討する必要があると考えられる.本研究では,従来よりも安価で容易に3次元物体の形状情報および色情報を計測するために,複数の小型カメラと光源を用いた計測装置の開発を目的としている.本年度は,特に,計測装置の試作と基本的な計測方法の開発について検討を行った.まず,計測装置については,オンボード小型カメラを2台と小型白色蛍光灯を3台購入し,これらを用いて装置を試作することにした.また,装置の試作と並行して,物体の形状計測方法についても検討を行った.ここでは2台のカメラと3台の光源を用いることから,2眼ステレオ法とフォトメトリックステレオ法を組み合わせた形状計測方法について検討した.ただし,試作機が完成していないことから,平成1112年度の奨励研究(A)「イメージスキャナを用いた書籍表面および3次元物体の形状復元」(課題番号11780276)でのイメージスキャナを利用した.このスキャナは,以前の研究において光源の光学的特性が既知であるため本研究において使用し易いという利点がある.ただし,ステレオ画像は撮影できないため,対象物体を手動で移動させ,2回撮影することでステレオ画像を取得するようにした.また,今回検討した形状計測方法は次のようになる.まず,2眼ステレオ法によって物体表面上のエッジ点の3次元情報を取得する.次に,2次曲面によって物体の大まかな形状を近似し,物体表面の明るさや色具合を補正する.そして,複数光源によるフォトメトリックステレオ法によって,物体細部の形状を計測する.さらに,2次曲面近似とフォトメトリックステレオ法を繰り返し適用することで,より正確に形状を計測する.そして,実験の結果,提案手法によって形状計測が可能であることを確認した.今後は,今回の提案手法を試作機に実装して,その有効性を確認する必要がある.また,本装置を複数台作成し,物体の全周形状を取得する方法についても検討する予定である.本研究は,3次元物体の形状情報と色情報を,複数の小型カメラと光源を用いて,従来よりも安価で容易に計測する装置の開発を目的とする.本年度は,昨年度考案した計測装置の改良と,その装置を複数台用いて物体の全周形状を計測する方法について検討した.まず,計測装置の改良として,ここで提案する装置では,対象物体への光の照射方法によって,計測範囲や精度に大きく影響することから,特に効果的な光源の配置について検討した.これまでの計測装置は,直管型小型蛍光灯3本を平行に配置しただけであったが,これ以外の配置として,三角形状,鳥居状およびアスタリスク状の配置等を考え,それぞれについて形状計測精度の比較を行なった.なお,光源の配置を様々に変更した装置を試作することが困難であったので,今回は,実際の光源のパラメータを用いたシミュレーション画像を作成し,それを用いて評価を行なった.その結果,蛍光灯3本をアスタリスク状に配置した場合が,最も形状計測に有効であることが分かった.次に,装置一台では,物体の部分形状しか得られないことから,この装置を複数台,物体の周囲に配置して部分形状を取得し,それらを統合して,その物体の全周形状を取得する方法について検討を行なった.具体的には,まず,各装置の鉛直上向きの方向は,全て平行に配置されているとし,各装置で取得された部分形状について,その上向き方向に垂直な面上での断面形状を求める.次に,隣接する部分形状間で,その断面形状を用いて座標変換パラメータを求め,部分形状の統合を行うという方法である.この方法で全周形状を取得することは可能であったが,特に装置台数が少ない場合は,一部誤差が大きくなる場合もあった.しかし,多数の装置を同時に使用することはコストの面から困難であるため,今後は装置を移動させながら部分形状を取得し,統合を行う手法について検討する必要があると考えられる.
KAKENHI-PROJECT-15700162
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胆汁細胞診の客観的な細胞異型度の基準の確立
胆汁細胞診は膵・胆道癌の重要な質的診断法であり、顕微鏡観察により胆汁中の細胞の形態学的な異型の度合で癌か良性かが診断される。研究代表者らのこれまでの解析で、従来の判定方法では各細胞形態学的所見を異常と判断するこの異型度の基準は曖昧で、客観性に乏しいため、異型度の解釈の個人差を生じ、診断精度を低くする大きな要因の一つとなっていることが示唆された。また、胆管内上皮内腫瘍(BilINと略す)は胆道癌の多段階発癌過程における前癌病変として最近確立した概念で、癌病巣の周辺に高頻度に見られ、切除の対象となっている。胆汁中のこの細胞の存在は癌の併存が強く疑われ、診断上、重要な意義をもつと思われるが、いまだこの細胞に対する形態学的判定基準がないため、見落とされている可能性が高く、診断精度にも大きく影響していると考えられる。本研究ではこれらの改善のため、まず、胆汁中の細胞集塊の構造に関する所見(核の不規則な重積、核の配列不整、不規則分岐集塊など)に対し、不整な構造とする客観的な基準を定義し、該当細胞集塊の出現率から異常所見と判断する閾値を解析した。得られた閾値はいずれの所見も高い感度と特異度を示した。この結果を英文の論文とし、現在、日本臨床細胞学会誌に投稿中である。続いて解析した個々の細胞の所見(核の大小不同、核腫大に伴う核同士の接触像、核形不整)についても同様の結果を得、昨年の上記学会春期大会で発表した。この結果についても、現在、英文で論文を作成中である。また、BilIN病変については、前癌病変も陽性を示す癌マーカーで免疫組織化学的に確認できた症例に対し、この病変に相当する胆汁中の細胞の形態学的特徴をまとめ、昨年の同学会秋期大会で発表した。これらの解析により、個人差のない、客観性の高い細胞判定が可能となり、胆汁細胞診の診断精度は大きく向上するものと期待される。胆汁細胞診は膵・胆道癌の重要な質的診断法であり、顕微鏡観察により胆汁中の細胞の形態学的な異型の度合で癌か良性かが診断される。研究代表者らのこれまでの解析で、従来の判定方法では各細胞形態学的所見を異常と判断するこの異型度の基準は曖昧で、客観性に乏しいため、異型度の解釈の個人差を生じ、診断精度を低くする大きな要因の一つとなっていることが示唆された。また、胆管内上皮内腫瘍(BilINと略す)は胆道癌の多段階発癌過程における前癌病変として最近確立した概念で、癌病巣の周辺に高頻度に見られ、切除の対象となっている。胆汁中のこの細胞の存在は癌の併存が強く疑われ、診断上、重要な意義をもつと思われるが、いまだこの細胞に対する形態学的判定基準がないため、見落とされている可能性が高く、診断精度にも大きく影響していると考えられる。本研究ではこれらの改善のため、まず、胆汁中の細胞集塊の構造に関する所見(核の不規則な重積、核の配列不整、不規則分岐集塊など)に対し、不整な構造とする客観的な基準を定義し、該当細胞集塊の出現率から異常所見と判断する閾値を解析した。得られた閾値はいずれの所見も高い感度と特異度を示した。この結果を英文の論文とし、現在、日本臨床細胞学会誌に投稿中である。続いて解析した個々の細胞の所見(核の大小不同、核腫大に伴う核同士の接触像、核形不整)についても同様の結果を得、昨年の上記学会春期大会で発表した。この結果についても、現在、英文で論文を作成中である。また、BilIN病変については、前癌病変も陽性を示す癌マーカーで免疫組織化学的に確認できた症例に対し、この病変に相当する胆汁中の細胞の形態学的特徴をまとめ、昨年の同学会秋期大会で発表した。これらの解析により、個人差のない、客観性の高い細胞判定が可能となり、胆汁細胞診の診断精度は大きく向上するものと期待される。
KAKENHI-PROJECT-16H00646
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H00646
オントロジーの基礎理論とその開発環境に関する研究
本研究は次世代知識処理システムの基盤となるオントロジーの設計・開発に関する基礎理論とそれに基づくオントロジー構築支援環境を開発することを目的として行われた.具体的には,(1)意味リンクのオントロジー的意味論,identityの理論,関係概念に関する基礎的検討などのオントロジー構築に関わる基礎理論の整備,(2)領域知識と問題解決知識を峻別するドメインオントロジーとタスクオントロジーの理論的検討,及びドメインロールとタスクロールに基づくオントロジー開発方法論の開発,そして(3)開発方法論を支援するコンピュータ環境の設計と開発,を行った.また,石油精製プラントという具体的な対象を設定して実規模のオントロジーを設計し,理論と環境を評価した.本研究はオントロジーに関する基礎から構築支援環境までの具体的な面を含む包括的な研究を行うところに特長がある.実社会の専門家に受け入れられるオントロジーを一つ開発し,理論と環境を評価することも目的としている.現在までにいくつかのオントロジー理論は散見されるがしっかりと裏付けのある理論とそれに基づく構築方法論は得られていない.本研究は研究代表者のこれまでの実問題を指向した知識処理基盤研究に関する実績に基づいて周囲の要請に応える試みであると言うこともできる.技術的な面について言えば,オントロジーに関わる最も重要な課題と考えられている,具体的なオントロジーを開発するために不可欠なクラス認定や関係同定に直接貢献する理論とガイドラインを得ることを目指した.視野を広く取って知識処理研究全体の立場からみれば,「内容」の核となるオントロジーを形式的に記述することを通して,これまでアドホックな傾向があった内容指向研究に,積み重ねができる基盤技術を提供することができた.本研究は次世代知識処理システムの基盤となるオントロジーの設計・開発に関する基礎理論とそれに基づくオントロジー構築支援環境を開発することを目的として行われた.具体的には,(1)意味リンクのオントロジー的意味論,identityの理論,関係概念に関する基礎的検討などのオントロジー構築に関わる基礎理論の整備,(2)領域知識と問題解決知識を峻別するドメインオントロジーとタスクオントロジーの理論的検討,及びドメインロールとタスクロールに基づくオントロジー開発方法論の開発,そして(3)開発方法論を支援するコンピュータ環境の設計と開発,を行った.また,石油精製プラントという具体的な対象を設定して実規模のオントロジーを設計し,理論と環境を評価した.本研究はオントロジーに関する基礎から構築支援環境までの具体的な面を含む包括的な研究を行うところに特長がある.実社会の専門家に受け入れられるオントロジーを一つ開発し,理論と環境を評価することも目的としている.現在までにいくつかのオントロジー理論は散見されるがしっかりと裏付けのある理論とそれに基づく構築方法論は得られていない.本研究は研究代表者のこれまでの実問題を指向した知識処理基盤研究に関する実績に基づいて周囲の要請に応える試みであると言うこともできる.技術的な面について言えば,オントロジーに関わる最も重要な課題と考えられている,具体的なオントロジーを開発するために不可欠なクラス認定や関係同定に直接貢献する理論とガイドラインを得ることを目指した.視野を広く取って知識処理研究全体の立場からみれば,「内容」の核となるオントロジーを形式的に記述することを通して,これまでアドホックな傾向があった内容指向研究に,積み重ねができる基盤技術を提供することができた.従来からよく知られているis-aリンクやpart-ofリンクによるオントロジー構築過程には未解決な問題が多くあった.たとえば,<女郎花is-a秋の七草>か<女郎花part-of秋の七草>のいずれが適切であるかの判定は容易ではない.また,part-of関係は部分を全体から取り去ったときの結果が全て異なっているにもかかわらず一種類しかない.また,part-of関係の推移律は期待に反して成立しない場合がある.まずこのような基礎的問題を洗い上げ,それらを解決するための理論を構築した.次に,物質のidentityの生成,消滅の理論などのidentityの維持,管理に関する統一理論について検討を行った.また,「太郎は学生である」と「太郎は人間である」という陳述に現れる「学生」と「人間」は一見類似しているが教師,夫,妻いずれもロール概念であり本質的に異なっていることを明らかにし,ロール概念と本質概念(人間,鉄など)とを明確に分離し,それらの取り扱いに関する理論を構築した.さらに,結婚している太郎と花子を,夫ロールを持つ太郎と妻ロールを持つ花子の二人の男女が構成する「夫婦」概念と見るか,夫婦関係で関連づけられた男女と見るかの選択は微妙である.そして,その両者の関係も不明確である.関係とは数学では関係にある要素の組の「集合」として定義される.しかし,概念と同様に関係のインスタンスは明確に定義されていない.そこで,関係概念の扱いを明確にした理論を構築した.
KAKENHI-PROJECT-11480076
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オントロジーの基礎理論とその開発環境に関する研究
最後に,以上の基礎理論をまとめて構築支援統合理論を構築するために必要な,クラス/ロール概念認定,概念/関係識別等のオントロジー構築上の本質的なガイドラインの検討を行った本研究では,知識の内容を高度に取り扱う次世代知識処理技術の基盤となるオントロジー設計・開発に関する基礎理論とそれに基づくオントロジー構築支援環境の開発を行っている.昨年度の成果である,意味リンクのオントロジー的意味論,identityの理論,関係概念に関する基礎的検討などのオントロジーに関する基礎理論の整備と領域知識と問題解決知識を峻別するドメインオントロジーとタスクオントロジーの理論的検討結果に基づいて,今年度は,(1)ロール概念主導のオントロジー開発方法論の開発と(2)開発方法論支援システムの設計・開発を行った.ロール概念は妻,学生等の領域に独立に定義できる一般的なものと,領域に固有のものとがある.例えば石油精製プラントでは,原油に含まれるナフサは,軽沸成分,塔頂成分,塔頂製品等と呼び名が変化する.ロール概念基礎理論に基づいてこのような錯綜した概念を整理してその領域において意味のあるオントロジーを構築するためのガイドラインを開発した.開発方法論支援システムの設計・開発に関しては,ロールを決定付ける協力な概念である「タスク」に注目して,タスク依存のロールを先に抽出する方法論を構築して,概念と関係の表示法,定義画面と定義結果を参照した図的表現,図的表示の上でのノードやリンクの操作,等のインタフェース設計を行うと共に,ガイドラインを実装するためのナビゲーション機構を設計した.現在のガイドラインと支援システムの段階で,実際に石油精製プラントドメインにおけるオントロジーを開発し,プラントのモデル構築とそこでの問題解決に適用することによってその評価を行ないながらオントロジーの具体的な利用法とその有用性を実証した.(1)タスクオントロジーの理論:工学的にはオントロジー設計は利用目的依存にならざるを得ない.「利用」を最も的確に規定する概念が「タスク」である.ここでタスクとは,診断,設計,計画等のエキスパートシステムが対象とする問題解決型を指す.申請者はタスクオントロジー概念の提案者であり,これまでに多くの研究を行ってきた.ここでは再検討して理論武装をいっそう強固にした.(溝口,池田)(2)タスク主導のオントロジー開発方法論:タスクオントロジーの利点は問題解決における利用のコンテキストを明示して,ドメイン概念が果たすべきロールを明確化するところにある.このロール情報を有効に用いたドメインの概念化を支援する方法論を開発した.(池田)(3)開発方法論支援システムの設計・開発:上述の方法論を支援するシステムを開発した.(池田,来村)(4)二つの方法論と構築支援環境の融合:2種類のロール概念間の関係を理論的に整備して,両者を融合した方法論を開発した.(溝口,池田,来村)(5)具体的オントロジーの開発と環境の評価:発電プラント,電力系統ネットワーク,石油精製プラント等の申請者が経験を持つプラントを取り上げて本格的なオントロジーを設計して,理論と方法論,そしてオントロジー自身の評価を行った.(溝口,池田,来村)
KAKENHI-PROJECT-11480076
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11480076
理解深化を促す教授・学習方法の開発と教師教育への適用
本研究の目的は、次の3点である。1.人がどのようにして、自然の事物・現象のありようについて首尾一貫した、確信の持てる解釈を探索・発見するのかを明らかにする。2.解釈することを通してどのように人は新しい知識を構成するのか、また理解活動を通じて探索の方略に関する知識を獲得していくのかを明らかにする。3.理解とその深化を促す要件や技能、そして必要な方略を明示した新たな実践的な教授論と教授方法を確立し、教師教育に適用する。そこで、文脈に埋め込まれた学習、認知活動の中途結果を観察可能な形で示す外化、外化物の操作、他者との相互作用といったことをキーワードに児童生徒の理解深化を図るための教授・学習方法を探った。次に、デザインされた教授・学習方法をもとに教師教育への適用を図ることとした。研究は、フィールドワーク、アクションリサーチという研究方法を採用しながら、児童・生徒が科学的知識を構築し理解を深めていく過程について、数量的かつ質的分析を行いながら進めた。研究内容は、(1)学習者同士に話し合いを促すことが理解の深まりに有効であるかを調べた研究、(2)考えを外化する際に外化物を用意することが理解の深まりに有効であるかを調べた研究、(3)外化したものを使って内省を促すことが理解の深まりに有効であるかを調べた研究、(4)理科授業に教師が介入することの効果ど演繹的に学習に取り組むことが理解の深まりに有効であるかを調べた研究の4つに分けることができる。検証された授業の結果からは、小グループで議論させること、議論の際に外化物を用意すること、内省を促すこと、教師が適切に介入をすること、帰納的な学習方法だけでなく演繹的な学習方法を取ることが理解深化に有効であることを見出した。本研究の目的は、次の3点である。1.人がどのようにして、自然の事物・現象のありようについて首尾一貫した、確信の持てる解釈を探索・発見するのかを明らかにする。2.解釈することを通してどのように人は新しい知識を構成するのか、また理解活動を通じて探索の方略に関する知識を獲得していくのかを明らかにする。3.理解とその深化を促す要件や技能、そして必要な方略を明示した新たな実践的な教授論と教授方法を確立し、教師教育に適用する。そこで、文脈に埋め込まれた学習、認知活動の中途結果を観察可能な形で示す外化、外化物の操作、他者との相互作用といったことをキーワードに児童生徒の理解深化を図るための教授・学習方法を探った。次に、デザインされた教授・学習方法をもとに教師教育への適用を図ることとした。研究は、フィールドワーク、アクションリサーチという研究方法を採用しながら、児童・生徒が科学的知識を構築し理解を深めていく過程について、数量的かつ質的分析を行いながら進めた。研究内容は、(1)学習者同士に話し合いを促すことが理解の深まりに有効であるかを調べた研究、(2)考えを外化する際に外化物を用意することが理解の深まりに有効であるかを調べた研究、(3)外化したものを使って内省を促すことが理解の深まりに有効であるかを調べた研究、(4)理科授業に教師が介入することの効果ど演繹的に学習に取り組むことが理解の深まりに有効であるかを調べた研究の4つに分けることができる。検証された授業の結果からは、小グループで議論させること、議論の際に外化物を用意すること、内省を促すこと、教師が適切に介入をすること、帰納的な学習方法だけでなく演繹的な学習方法を取ることが理解深化に有効であることを見出した。本研究は、(1)人がどのようにして、自然の事物・現象のありようについて首尾一貫した、確信の持てる解釈を探索・発見するのか。(2)解釈することを通してどのように人は新しい知識を構成するのか、また理解活動を通じて探索の方略に関する知識を獲得していくのか。の2点を明らかにすることを目的としている。これに加えて、(3)理解とその深化を促す要件や技能、そして必要な方略を明示した新たな実践的な教授論と方法を確立し、教師教育に適用することが研究の最終の目的である。そこで、研究は、臨床的な視座から研究を進める清水が小中学校の教師とともに理論の構築を行い、認知心理学の研究者である高垣が科学的知識を構築し理解を深めていく過程の数量的かつ質的分析を微視的に行い、評価研究を行っている片平が学習者がモニタリングを図る方法を開発するということを見通しながら進めた。平成17年度は、特に下記の3点について具体的に研究を進めた。始めに、人の理解、理解の分析手法、理解深化を促す教授方法に関する国内外の先行研究を総括した。次に、フィールドワーク、アクションリサーチという研究方法を採用しながら、人がどのようにして自然の事物・現象を理解し、再構造化していくのか、その要件や技能は何かを明らかにした。さらに、先行研究やフィールドワークや、アクションリサーチの結果をもとに、研究者と小中学校の教師により理論の構築を行い、2つの授業を試行した。試行した授業の1つは、協調的な学習環境の中に個々の児童の考えを外化させながら概念構築を図る授業である。今、1つは、個々の生徒の考えをモデル図という形で表現することが理解に及ぼす効果を検証した。2つの授業研究からは、いずれも理解深化に効果があることを見出した。
KAKENHI-PROJECT-17500574
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17500574
理解深化を促す教授・学習方法の開発と教師教育への適用
本研究は、(1)人がどのようにして、自然の事物・現象のありようについて首尾一貫した、確信の持てる解釈を探索・発見をするのか。(2)解釈することを通して人はどのように新しい知識を構成するのか、また理解活動を通じて探索の方略に関する知識を獲得していくのか。の2点を明らかにすることを目的としている。これに加えて、(3)理解とその深化を促す要件や技能、そして必要な方略を明示した新たな実践的な教授論と方法を確立し、教師教育に適用することが研究の最終の目的である。平成18年度は、3つの授業を検証した。授業を検証する際には、「1.フィールドワーク、アクションリサーチにより収集したビデオカメラ、MDレコーダの記録をブロトコルや図に起こす。2.Baronnや白水らの研究を踏まえ、児童生徒が自然の事物・現象の理解を深めていく過程を分析する方法を確立し、その分析方法に基づき1で起こした記録の分析を行う。」という方法で進めた。試行した授業の1つは、相互教授を導入した授業における相互作用の効果を調べた。発話ブロトコルの分析結果から、相互教授を導入した議論の場では自分の考えを主張する発話が多く見られるなどの活発な会話が行われ、多様な形での相互作用が行われるなど概念形成に有効な話し合いが行われていた。2つ目の授業は、実験グルーブの人数の違いが理科学習に与える影響を調べた。小グルーブで実験を行うことは、他者との教え合いにより実験が短時間で済み、生徒相互の関わりが活性化することを見いだした。3つ目の授業は、グルーブで解決の手だてを考えることの効果を調べた。その結果、同一の実験を行う群に比べ実験計画の段階でグルーブの話し合いにより問題解決の資質能力の中の条件制御を意識して学習に取り組むことを見いだした。本研究の目的は,次の3点である.1.人がどのようにして,自然の事物、現象のありようについて首尾一貫した,確信の持てる解釈を探索・発見するのかを明らかにする.2.解釈することを通してどのように人は新しい知識を構成するのか,また理解活動を通じて探索の方略に関する知識を獲得していくのかを明らかにする.3.理解とその深化を促す要件や技能,そして必要な方略を明示した新たな実践的な教授論と教授方法を確立し,教師教育に適用する.そこで,文脈に埋め込まれた学習,認知活動の中途結果を観察可能な形で示す外化,外化物の操作,他者との相互作用といったことをキーワードに児童生徒の理解深化を図るための教授、学習方法を探った.次に,デザインされた教授・学習方法をもとに教師教育への適用を図ることとした.研究は,フィールドワーク,アクションリサーチという研究方法を採用しながら,児童・生徒が科学的知識を構築し理解を深めていく過程について,数量的かっ質的分析を行いながら進めた.研究内容は,(1)学習者同士に話し合いを促すことが理解の深まりに有効であるかを調べた研究,(2)考えを外化する際に外化物を用意することが理解の深まりに有効であるかを調べた研究,(3)外化したものを使って内省を促すことが理解の深まりに有効であるかを調べた研究,(4)理科授業に教師が介入することの効果と演繹的に学習に取り組むことが理解の深まりに有効であるかを調べた研究の4つに分けることができる.最終年度である本年度は,小グループで議論させること,議論の際に外化した物を用意し,学習者の内省を促すこと等が理解深化に有効であることを明らかにするとともに,これまでの研究の総括を行い報告書をまとめた.
KAKENHI-PROJECT-17500574
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仮想現実感構築法に関する研究
遠隔操縦の作業効率を向上させるために、実験的研究を行った。遠隔操縦による作業は直視による作業と比較し作業効率が著しく低いことが知られている。これは、人間と遠隔操縦装置のインタフェースに問題があると思われる。本研究では、視覚インタフェースと触覚インタフェースについての検討をおこなった。1.視覚インタフェース複合画面方式立体ビデオシステム(Qシステム)を開発した。このシステムは高解像度映像と広視野映像とを固定焦点レンズで同時に実現する。中心部の高解像度映像と周辺部の広視野映像、両方の有効性を実験的に確認した。右目用映像と左目用映像の重複率について検討した。遠隔操縦装置のカメラの輻輳位置が作業対象に合致していない場合、重複率が低下する。シミュレーション実験、実際のロボットを動かしての実験、双方を実施した。実験の結果、重複率の低下が作業効率の低下をもたらすことが明らかとなった。この結果は、通常のビデオシステムにおいても複合画面方式立体ビデオシステムにおいても確認することが出来た。例えば、ある実験の結果は、重複率が低い条件では高い条件と比較し、間違いが多く、作業に時間がかかることを示した。2.触覚インタフェース触覚フィードバックを検討するため、小さなモータからなる振動素子を用いて実験をおこなった。ロボットアームを用いてある物体をつかみ、作業環境内に設定した穴に挿入させる作業を行わせた。作業中にロボットアームや把持した物体が他の物体に接触した際にこの阻止を振動させた。実験の結果は、触覚フィードバックを与えた条件のほうが作業効率が向上することを示した。遠隔操縦の作業効率を向上させるために、実験的研究を行った。遠隔操縦による作業は直視による作業と比較し作業効率が著しく低いことが知られている。これは、人間と遠隔操縦装置のインタフェースに問題があると思われる。本研究では、視覚インタフェースと触覚インタフェースについての検討をおこなった。1.視覚インタフェース複合画面方式立体ビデオシステム(Qシステム)を開発した。このシステムは高解像度映像と広視野映像とを固定焦点レンズで同時に実現する。中心部の高解像度映像と周辺部の広視野映像、両方の有効性を実験的に確認した。右目用映像と左目用映像の重複率について検討した。遠隔操縦装置のカメラの輻輳位置が作業対象に合致していない場合、重複率が低下する。シミュレーション実験、実際のロボットを動かしての実験、双方を実施した。実験の結果、重複率の低下が作業効率の低下をもたらすことが明らかとなった。この結果は、通常のビデオシステムにおいても複合画面方式立体ビデオシステムにおいても確認することが出来た。例えば、ある実験の結果は、重複率が低い条件では高い条件と比較し、間違いが多く、作業に時間がかかることを示した。2.触覚インタフェース触覚フィードバックを検討するため、小さなモータからなる振動素子を用いて実験をおこなった。ロボットアームを用いてある物体をつかみ、作業環境内に設定した穴に挿入させる作業を行わせた。作業中にロボットアームや把持した物体が他の物体に接触した際にこの阻止を振動させた。実験の結果は、触覚フィードバックを与えた条件のほうが作業効率が向上することを示した。1)仮想現実感環境と実空間における人の空間認識の違いを解明するためのツールとして、HMD搭載型の眼球運動計測装置を開発した。また、それによる予備的な検討を行った。HMD搭載型眼球運動計測装置においては、ビデオカメラが眼球に対し垂直となるように設置することにより、また、本研究で開発した角度・線形校正法を適用することにより、従来約1度の精度であったものを約15分(測定範囲約40度)に向上させることが出来た。予備的な実験により、人の両眼は必ずしも、常に一点に輻輳しているものではないことが示唆された。立体視装置においては、両眼が一点に輻輳することが十分な立体感を得るためには重要で、これが十分な現実感を与えることの出来ない要因の一つであると考えられる。2)仮想現実感環境生成における主要な要素である立体画像に関する研究の中で、観察者の違和感、疲労の要素となっているものとして、左右眼に提示される画像の重複率の問題があることが明らかとなった。すなわち、実環境での人の眼は、注視対象に両眼は輻輳し、網膜上の像は、両眼においてほぼ100%近い重複率となっている。ところが、仮想環境において映像生成のための仮想的な眼の輻輳点は作業環境の中心部付近に固定されているのが普通である。そのため、観察者の注視点が映像生成のための輻輳点と異なると、観察者の両眼の網膜像の重複率は低下する。これにより融合負荷が大きくなり、違和感、疲労感の要因の一つとなっていると言える。1)仮想現実感空間と実空間における人の空間認識の違いを解明するためのツールとして、HMD搭載型の眼球運動計測装置を開発した。ところが、本装置には、まだ調整にかなりの時間を要したので、本年は、本装置の機構部分の改良を行った。これにより、調整時間はかなり短縮できた。2)人が何かを注視するとき、利き目の方が非利き目よりも正確に注視点を注視していることが明らかとなった。これにより、知識が利用できる場合は、片方の目(利き目)からの情報でもって主に視環境の認識を行っていることが考えられる。
KAKENHI-PROJECT-11610081
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仮想現実感構築法に関する研究
これは、より少ない脳の活動で生存しようとする、一種の生体における消費エネルギー節約のメカニズムと考えられる。両眼の情報を利用しようとすると、左右の網膜像を融合させる必要があり、そのためには、脳にかなりの照合操作が必要で、エネルギー消費が大きくなるからであろう。3)平成11年度の仮想環境における実験において、左右眼の網膜像の重複率が低くなると3次元認識の必要な作業においてその効率が低下することが明らかとなった。そこで、本年は、映像下の遠隔作業において、カメラの輻輳と操作者の眼の輻輳とが一致した場合と一致しない場合との作業効率を調べた。その結果、仮想環境での実験結果とほぼ同じ傾向が得られた。仮想環境における違和感や疲労感の発生要因の一つは、左右眼像の一致が保証されていないところにあると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-11610081
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レーザートンネルイオン化の理解に立脚した電子ダイナミクス可視化法の開拓
前年度までに構築した電子ーイオンコインシデンス計測システムを用いて,フェムト秒近赤外強レーザー場(45fs,800 nm, 10^14 W/cm^2)における重水素(D2)分子のトンネルイオン化電子の3次元運動量計測を行った。装置分解能の制限によって飛行時間方向にわずかに拡がった形状をもつことが見出されたものの,光電子トーラスの断面として計測された垂直運動量分布(TMD)はD2分子の最高被占有分子軌道(HOMO)である1sσg軌道から予想されるガウス関数形状をもつことがわかった。トンネルイオン化を決定づけるレーザーパラメータのうちレーザー場強度を変化させて計測を行ったところ,レーザー場強度の増加に伴ってTMD分布の幅が増加することが見出され,トンネルイオン化理論による計算結果と良い一致を示すことがわかった。また,NO分子の2π非対称最高被占有軌道(HOMO)の可視化について,位相を制御した2色強レーザーパルスを用いた研究を行った。解離性イオン化によって生成したフラグメントイオンはπ対称性を反映したバタフライ型の分布を示すとともに,レーザー偏光方向に対して明瞭な非対称性を示した。フラグメントイオン空間非対称性は2色レーザーパルスの相対位相によって変化し,大きな電子密度をもつN原子側からイオン化が起こりやすいことが明らかとなった。得られた結果はHOMOの形状を取り入れた弱電場漸近理論(WFAT)に基づくトンネルイオン化レートの計算結果とよく一致し,トンネルイオン化計測によって非対称HOMOの読み出しが可能であることが示された。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。1.静電場型電子ーイオンコインシデンス計測系の構築:一対のディレイラインアノード位置敏感検出器(PSD)を備えた電子ーイオンコインシデンス計測システムを設計,構築した。多段電極スタックによる一様な静電場と高速時間ーデジタル変換器(TDC)の採用によって,電子とイオンの両方について,全立体角にわたって歪みの少ない運動量計測を実現した。また,単一分子から生成したイオンー電子対をコインシデンス計測することで分子座標系における電子運動量分布の3次元計測を実現した。2.垂直運動量分布(TMD)の観測:分子トンネルイオン化によって生成した電子の垂直運動量分布(TMD)を測定することを目的として,電子ーイオンコインシデンス計測に基づいて分子座標系での3次元光電子分布を調べた。標的分子は重水素分子(D2)とし,光電子分布に対する再衝突過程の影響を抑制するために紫外円偏光レーザー場(波長400 nm,強度3x10^14W/cm2)を用いて実験を行った。強レーザー場との相互作用で生成した光電子の運動量分布は分子座標系で明瞭なトーラス状の構造を示し,その断面から垂直運動量分布(TMD)の読み出しを行うことに成功した。理論グループは,静電場中でのトンネルイオン化の新しい理論を構築した。また,多電子系について,電場強度に関する漸近展開の高次補正項を定式化し,それをもとに最も基礎的な2電子原子系を対象に分析を行った。レーザートンネルイオン化過程のより厳密な理解と,分子内の電子ダイナミクスを直接可視化するための超高速反応イメージング法の開拓に向けて,新たに電子ーイオンコインシデンス運動量画像計測系の構築に成功し,TMD計測に成功した。また、静電場トンネルイオン化に関する新しい厳密理論を構築し、それをもとに基礎的な系について分析を行った。前年度までに構築した電子ーイオンコインシデンス計測システムを用いて,フェムト秒近赤外強レーザー場(45fs,800 nm, 10^14 W/cm^2)における重水素(D2)分子のトンネルイオン化電子の3次元運動量計測を行った。装置分解能の制限によって飛行時間方向にわずかに拡がった形状をもつことが見出されたものの,光電子トーラスの断面として計測された垂直運動量分布(TMD)はD2分子の最高被占有分子軌道(HOMO)である1sσg軌道から予想されるガウス関数形状をもつことがわかった。トンネルイオン化を決定づけるレーザーパラメータのうちレーザー場強度を変化させて計測を行ったところ,レーザー場強度の増加に伴ってTMD分布の幅が増加することが見出され,トンネルイオン化理論による計算結果と良い一致を示すことがわかった。また,NO分子の2π非対称最高被占有軌道(HOMO)の可視化について,位相を制御した2色強レーザーパルスを用いた研究を行った。解離性イオン化によって生成したフラグメントイオンはπ対称性を反映したバタフライ型の分布を示すとともに,レーザー偏光方向に対して明瞭な非対称性を示した。フラグメントイオン空間非対称性は2色レーザーパルスの相対位相によって変化し,大きな電子密度をもつN原子側からイオン化が起こりやすいことが明らかとなった。得られた結果はHOMOの形状を取り入れた弱電場漸近理論(WFAT)に基づくトンネルイオン化レートの計算結果とよく一致し,トンネルイオン化計測によって非対称HOMOの読み出しが可能であることが示された。1.静電場型電子ーイオンコインシデンス計測系の構築:前年度に構築したディレイラインアノード位置敏感検出器(PSD)を備えた電子ーイオンコインシデンス計測システムを用いて,フェムト秒近赤外強レーザー場(45fs,800 nm, 10^14 W/cm^2)におけるトンネルイオン化電子の3次元運動量計測を行った。
KAKENHI-PROJECT-16H04029
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H04029
レーザートンネルイオン化の理解に立脚した電子ダイナミクス可視化法の開拓
コインシデンス画像計測によって単一分子から生成したフラグメントイオンー電子対を捕捉し,イオン運動量から分子座標系を規定することで分子座標系における電子運動量分布の3次元計測を行った。重水素(D2)分子を用いた運動量計測の検証を行ったところ,当初設計のコインシデンス計測装置では検出画像に不感部分が生じ、電子運動量分布の精密な3次元計測が困難であることが判明した。これをうけて電子運動量計測系配置の再検討と装置の改良を行った。2.分子座標系3次元運動量分布の観測:改良された電子ーイオンコインシデンス計測システムを用いて,強レーザー場(45fs,800 nm, 1x10^14 W/cm^2)におけるD2分子から生成したトンネル電子の3次元運動量計測を行ったところ,電子運動量空間に明瞭なトーラス構造が観測された。分子座標系においてトーラスの強度分布から得られたトンネルイオン化レート(収量),およびその断面として得られた垂直運動量分布(TMD)はトンネルイオン化理論(弱電場漸近理論)による計算結果と概ね一致した。これは本計測手法が電子ダイナミクス可視化の達成に対して有用であることを示す成果である。電子ーイオンコインシデンス運動量画像計測系の改良が必要となり,計画に遅れが生じたが,当初予定していた重水素(D2)分子を用いた運動量計測を実施し,運動量トーラスの観測に基づくイオン化レートとTMDの評価を行うことができたトンネルイオン化で生成した電子と,(2) H2の解離性イオン化(H2 →H2+ + e- →H+ + H + e-)によって生じたフラグメントH+とのコインシデンス運動量計測を行う。先行研究で観測された電子収量の異方性分布の検証を行い,これを踏まえて垂直運動量分布(TMD)に着目したデータ解析を行う。特にレーザー場の強度,パルス幅,波長,楕円偏光度を系統的に変化させて計測を行い,トンネルイオン化されるH2の1σg軌道の運動量空間波動関数とTMDの対応を調べる。断熱理論をリファレンスとして,実験条件がトンネルイオン化描像に適合しているか,またレーザー場による軌道の歪みや多電子効果について厳密な検証を行う。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。上記で得られた結果を踏まえて,トンネルイオン化過程がどのようにレーザー場強度などのレーザーパラメータに対して変化するかを検討し,電子ダイナミクス可視化に向けた課題を整理する。D2以外の2原子分子についての研究に着手し,多電子効果について検討を開始する。またこれまで研究を進めてきたNO分子について,イオン運動量画像計測に基づいた2π非対称最高被占有軌道(HOMO)の可視化もあわせて進める。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-16H04029
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抑うつ者に見られる怒り・攻撃発生のメカニズムに関する検討
研究の背景様々な先行研究によって,抑うつが自責感と強い関係があること(e.g., Biaggio & Godwin, 1987),うつ病者は突発的な怒りや興奮状態を示し,特に近親者に対して怒りを表すこと(Painuly, Sharan, & Mattoo, 2005)などが知られている。これらの結果を踏まえ,申請当初は怒りが喚起された後の時間経過と状況変化に焦点を当てた調査,臨床群を対象とした調査を行う予定であったが,これまでに着目してきた健常群における抑うつのサブタイプ(e.g.,樋口,2008)に関する検討を引き続き行った。前年度に行った研究3と4の結果に基づき,本年度は攻撃表出の方法に着目した研究を行った。研究5研究5では,抑うつの高い者がとりやすい攻撃の方法について具体的に検討するために,まず攻撃の方法をその性質によって分類することを試みた。攻撃の方法として,怒りを感じたあとに取られる具体的な対処行動のうち,一般の大学生にとられやすい表出方法の分類を行った。行動のとられやすさを指標として因子分析を行ったところ,強い情動性をもち表出性攻撃の性質を強く示す行動群と情動性が弱く目標志向的な不表出性攻撃の性質を示す行動群という2つの因子に分類可能であることが示された。これまでに怒りを表現するための攻撃行動をその性質によって分類する研究は行われていないことから,この分類に従い,抑うつの高い者の取りやすい攻撃の方法を検討していくこととした。この研究は現在論文投稿準備中である。研究6研究6では研究5で得られた2種類の攻撃行動群にもとづき,抑うつの高い者がとりやすい攻撃の方法について検討を行った。これらの2種類の行動のとられやすさと抑うつの高さとの関連について相関分析を用いて検討したところ,抑うつ者は怒りを感じた際に,情動性が強く表出性攻撃の性質をもつ行動ではなく,情動性が弱く不表出性攻撃の性質をもつ行動を取りやすい傾向があることを示した。今回の研究5,6の結果と前年度行った研究3,4の結果から,行動的な側面から検討しても認知的な側面から検討しても,抑うつの高い者は怒りを感じた際に行動を表に表さないようにしようとする可能性があることが示唆されたといえる。研究の背景様々な先行研究によって,抑うつが自責感と強い関係があること(e.g.,Biaggio&Godwin,1987),うつ病者は突発的な怒りや興奮状態を示し,特に近親者に対して怒りを表すこと(Painuly,Sharan,&Mattoo,2005)などが知られている。これらの結果を踏まえて行った研究によって,怒りをあらわす対象者や怒り発生・表出状況に関して,特に怒り発生から攻撃行動発生までの間の時間の経過を加味した上で,細かく検討していく必要があると考えた。当初は怒りが喚起された後少し変化した状況での反応に焦点を当て,状況の変化により抑うつ者の怒り表出の違いを調査する予定であったが,新たにイライラや気分の変動をもつ非定型うつ(樋口,2008)という視点を取り入れ,抑うつのサブタイプを詳細に検討した。研究1質問紙で測定できる攻撃性のうち,パーソナリティとして個人が持っている特性的攻撃性と実際の攻撃表出に関する状態的攻撃性を別々にとらえ,そのそれぞれと抑うつとの関係に差異があるか検討した。その結果,1)抑うつの高低に関係なく,特性的攻撃性のひとつである怒りやすさは状態攻撃性の怒りと強く関連しており,2)状態的攻撃性のひとつである怒りは攻撃表出に関連していること,3)抑うつの高い人は特性的攻撃性が攻撃表出に強く関与しているが,抑うつの低い人はあまり関与していないことが示唆された。これらの結果から,抑うつの高い人に特異的な攻撃表出のモデルがある可能性が考えられた。研究2研究1の結果から,抑うつの高い者の中でも異なった攻撃表出のタイプや特に怒りが強い者がいる可能性が考えられた。そこで抑うつのサブタイプに着目し,抑うつにおける攻撃性のサブタイプを検討することとした。抑うつと特性怒りの両者が高い者,低い者,どちらかだけが高い者というサブタイプわけを行い,怒りに対する反応傾向に,それぞれ特徴が見られるか探索的に検討した。その結果,1)怒り反応傾向のうち短気と身体的攻撃は,特性怒りの強さに影響されている可能性があること,2)怒り反応傾向のうち敵意と言語的攻撃は,特性怒りではなく抑うつの強さに影響されている可能性かおることが示唆された。この研究により,抑うつの中に攻撃性によるサブタイプがある可能性と,抑うつの高い者においても攻撃性のサブタイプにより攻撃表出の仕方に違いが見られることが示された。研究の背景様々な先行研究によって,抑うつが自責感と強い関係があること(e.g.,Biaggio&Godwin,1987),うつ病者は突発的な怒りや興奮状態を示し,特に近親者に対して怒りを表すこと(Painuly,Sharan,&Mattoo,2005)などが知られている。これらの結果を踏まえて行った研究によって,怒りをあらわす対象者や怒り発生・表出状況に関して,特に怒り発生から攻撃行動発生までの間の時間の経過を加味した上で,細かく検討していく必要があると考えた。
KAKENHI-PROJECT-08J11342
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08J11342
抑うつ者に見られる怒り・攻撃発生のメカニズムに関する検討
当初は怒りが喚起された後の時間経過と状況変化に焦点を当てた調査,臨床群を対象とした調査を行う予定であったが,前年度から取り入れた健常群における抑うつのサブタイプ(e.g.,樋口,2008)に関する検討,怒りの表出に関わる新たな認知要因(増田,2005)に着目した検討を行った。研究3前年度行った抑うつのサブタイプ研究では,抑うつのサブタイプにより攻撃表出の仕方に違いが見られるという結果を得た。しかし抑うつのサプタイプに関しては,健常者にも使用できるような自己記入式のサブタイプ分類尺度はまだ見られていない。そこで抑うつの質問紙の下位尺度得点を用いたクラスター分析を行い,サブタイプと考えられるグループを抽出することを試みた。また,得られたグループで攻撃性に異なる特徴が見られるか検討した。その結果,いくつかのサブタイプの中でも非定型抑うつ,ディスチミア親和型に類似したグループが得られ,攻撃性にも異なる特徴があることが示唆された。研究4研究1,2,3の結果から,抑うつの高い者の中でも異なった攻撃表出のタイプが見られる可能性が考えられた。そこで研究4では,抑うつの違いではなく怒りの表出に関する認知的側面に着目し,抑うつと怒り表出に関する信念,怒りの表出・不表出傾向との関連を検討することとした。その結果,1)怒りの表出に関するポジティブな信念を持つ人は怒りの制御を弱め,抑うつを強める傾向があること,2)怒りの表出に関するネガティブな信念を持つ人は怒りの抑制を強め,抑うつを強める傾向があることが示唆された。研究の背景様々な先行研究によって,抑うつが自責感と強い関係があること(e.g., Biaggio & Godwin, 1987),うつ病者は突発的な怒りや興奮状態を示し,特に近親者に対して怒りを表すこと(Painuly, Sharan, & Mattoo, 2005)などが知られている。これらの結果を踏まえ,申請当初は怒りが喚起された後の時間経過と状況変化に焦点を当てた調査,臨床群を対象とした調査を行う予定であったが,これまでに着目してきた健常群における抑うつのサブタイプ(e.g.,樋口,2008)に関する検討を引き続き行った。前年度に行った研究3と4の結果に基づき,本年度は攻撃表出の方法に着目した研究を行った。研究5研究5では,抑うつの高い者がとりやすい攻撃の方法について具体的に検討するために,まず攻撃の方法をその性質によって分類することを試みた。攻撃の方法として,怒りを感じたあとに取られる具体的な対処行動のうち,一般の大学生にとられやすい表出方法の分類を行った。行動のとられやすさを指標として因子分析を行ったところ,強い情動性をもち表出性攻撃の性質を強く示す行動群と情動性が弱く目標志向的な不表出性攻撃の性質を示す行動群という2つの因子に分類可能であることが示された。これまでに怒りを表現するための攻撃行動をその性質によって分類する研究は行われていないことから,この分類に従い,抑うつの高い者の取りやすい攻撃の方法を検討していくこととした。この研究は現在論文投稿準備中である。研究6研究6では研究5で得られた2種類の攻撃行動群にもとづき,抑うつの高い者がとりやすい攻撃の方法について検討を行った。これらの2種類の行動のとられやすさと抑うつの高さとの関連について相関分析を用いて検討したところ,抑うつ者は怒りを感じた際に,情動性が強く表出性攻撃の性質をもつ行動ではなく,情動性が弱く不表出性攻撃の性質をもつ行動を取りやすい傾向があることを示した。今回の研究5,6の結果と前年度行った研究
KAKENHI-PROJECT-08J11342
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神経堤細胞の分化メカニズムの解析と可塑性の評価
神経堤細胞は、血球系細胞と異なり、背側から腹側方向に遊走し位置情報を得て適切な組織に分化することが特徴である。頭部神経堤細胞は鰓弓に遊走し、骨軟骨、舌筋等に分化して頭頸部の構築を担っている。そこで鰓弓における時空間的な神経堤細胞分化の機序を明らかにするために、全胚培養、下顎の器官培養を用いた発現誘導や、エンドセリン(ET)-1の有無による形態と遺伝子発現パターンの詳細な検討を行った。鰓弓上皮からのET-1シグナルが、胎生8.759.0日に、神経堤細胞のETA受容体を介して核転写因子dHANDやDlx5/6を制御し、鰓弓の背腹軸の形態形成を担うことにより下顎を決定することを示した。即ち、第1鰓弓の間葉細胞は形態的に上顎となる性質を持っているが、鰓弓遠位部の上皮からET-1シグナルを受けることにより遠位部のみ下顎の特性を得ると考えられた。また、dHANDやDlx6の発現は、胎生9.5日以降はFGFシグナルにより誘導・維持されるが、その反応性は先行するET-1シグナルを必要とするという、シグナルリレーの存在が示された。また、神経堤細胞の幹細胞としての特性を核移植による初期化の程度を指標に検討した。神経堤細胞培養2日目(未分化)と培養7日目(分化)で核移植後、「胚盤胞/2細胞」の発生率はどちらも57割であった。この結果はES細胞をドナーとした場合に近く,同じ発生段階の分化細胞;血管内皮細胞3割、胎仔繊維芽細胞3割などに比べ,初期化に対する感受性が高いことが示され、初期化に対する感受性と分化の可塑性の関連について検討を進めている。1.神経堤細胞の分化制御において重要なシグナルの検索エンドセリン-1(ET-1)欠損マウス(ET-1-/-)骨格の形態観察により、下顎における骨・軟骨が上顎構成成分の鏡像重複であることを見出した。さらに、上顎弓(Prx2,Bmp4)および下顎弓(Pitx1,dHAND, eHAND)の遺伝子マーカー発現の解析から、ET-1-/-の下顎弓の遺伝子発現パターンが上顎弓のパターンをとることを明らかにした。また、ET-1-/-胚において第1,2鰓弓の背腹軸パターン形成の決定因子であるDlx5,6の遺伝子発現が第1,2鰓弓腹側(第1鰓弓では下顎弓)で特異的に消失していた。以上より、ET-1が形態形成因子として神経堤細胞に作用し、ホメオティック遺伝子Dlx5,Dlx6を誘導することによって、鰓弓の背腹軸方向のパターン形成を制御していることが証明された。一方、鰓弓形成におけるET-1シグナルの下流としてDlx6→dHANDのシグナル経路があるが、DNAチップ等の結果により、その標的遺伝子の一つとしてカルパイン6遺伝子を同定した。その発現は、鰓弓・心臓などでdHANDと一致すること、細胞骨格に作用して細胞形態や増殖に影響する因子であることを明らかにした。2.核移植を用いた神経堤細胞の可塑性の評価の方の検討核移植後のリプログラミングという新しい視点から幹細胞の分化制御機構の理解をさらに深めるため、予備実験として神経堤細胞をドナーとした核移植を行った。マウス培養神経堤細胞は培養開始直後、分化条件下での培養7日後ともに、マウス胚由来線維芽細胞に比べて高い胚盤胞形成率を示し、胎仔形成をも示した。胚盤胞形成率はES細胞からの核移植の成績と大きく変わらないものであり、神経堤細胞がリプログラミングに対して高い感受性を持つことが示された。神経堤細胞は、血球系細胞と異なり、背側から腹側方向に遊走し位置情報を得て適切な組織に分化することが特徴である。頭部神経堤細胞は鰓弓に遊走し、骨軟骨、舌筋等に分化して頭頸部の構築を担っている。そこで鰓弓における時空間的な神経堤細胞分化の機序を明らかにするために、全胚培養、下顎の器官培養を用いた発現誘導や、エンドセリン(ET)-1の有無による形態と遺伝子発現パターンの詳細な検討を行った。鰓弓上皮からのET-1シグナルが、胎生8.759.0日に、神経堤細胞のETA受容体を介して核転写因子dHANDやDlx5/6を制御し、鰓弓の背腹軸の形態形成を担うことにより下顎を決定することを示した。即ち、第1鰓弓の間葉細胞は形態的に上顎となる性質を持っているが、鰓弓遠位部の上皮からET-1シグナルを受けることにより遠位部のみ下顎の特性を得ると考えられた。また、dHANDやDlx6の発現は、胎生9.5日以降はFGFシグナルにより誘導・維持されるが、その反応性は先行するET-1シグナルを必要とするという、シグナルリレーの存在が示された。また、神経堤細胞の幹細胞としての特性を核移植による初期化の程度を指標に検討した。神経堤細胞培養2日目(未分化)と培養7日目(分化)で核移植後、「胚盤胞/2細胞」の発生率はどちらも57割であった。この結果はES細胞をドナーとした場合に近く,同じ発生段階の分化細胞;血管内皮細胞3割、胎仔繊維芽細胞3割などに比べ,初期化に対する感受性が高いことが示され、初期化に対する感受性と分化の可塑性の関連について検討を進めている。
KAKENHI-PROJECT-15039210
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可制御性構造に基づいた非線形制御-平衡点の制御からふるまいの制御へ-
非線形システムの制御において,対象の性質および制御目的に応じて非線形の意味での可制御性を解析し,その構造を積極的に活かしたコントローラの構成アプローチを提案した.特にシステムがLie群および主ファイバー束の構造を持つものに対して有用なコントローラを導出した.またその特徴的な例として,ヘビ型ロボットおよび半球型移動ロボットを制作し実験によって有効性を検証した.非線形システムの制御において,対象の性質および制御目的に応じて非線形の意味での可制御性を解析し,その構造を積極的に活かしたコントローラの構成アプローチを提案した.特にシステムがLie群および主ファイバー束の構造を持つものに対して有用なコントローラを導出した.またその特徴的な例として,ヘビ型ロボットおよび半球型移動ロボットを制作し実験によって有効性を検証した.1)Lie群上の左不変システムの不連続フィードバック制御与えられたシステムの可制御構造をLie代数の形で与えられたとき、それに対応するLie群上の左不変システムを構築することができる。これはそのような同じ構造のシステムを代表するある種の正準系であり、いわばシステムの骨組みを抜き出したものである。本年度ではこのようなシステムを安定化する有界な切り替え型不連続動的フィードバック制御法を提案した。本研究の効果を明示する具体例として、複雑な可制御構造を積極的に利用して移動する「面歩行ロボットSurface Walker」を考案した。これは重心の移動を制御入力とし、床と球面の転がり接触拘束を利用して移動する新しい移動ロボット機構である。本年度はこのロボットの設計,試作機を製作を行い,基本動作の実験検証に成功した.3)球面型超音波モータの非ホロノミックモデリングと周期入力制御上記課題をすすめる過程で,本研究の成果が「球面型超音波モータ」(球面転動を利用して,単体で3軸の回転出力を発生できる高性能なモータ)の解析に適用できることを見いだした.本年度は非ホロノミック力学に基づいてこのシステムをモデル化し,従来法より効率よく回転制御を行う周期制御入力の設計法を提案した.1) Lie群上,および主ファイバー束の左不変システムの不連続フィードバック制御与えられたシステムの可制御構造をLie代数の形で与えられたとき、それに対応するLie群上の左不変システム,あるいはそれを拡張した主ファイバー東上のシステムを構築することができる。これはそのような同じ構造のシステムを代表するある種の正準系であり,いわばシステムの骨組みを抜き出したものである。本年度は,前年度に(限定された構造に対して)得られていた結果を拡張し,後述するヘビロボットや球面転がり問題を含む複雑な構造を取り扱える有界な切替型不連続フィードバック制御法を提案した.2)面歩行ロボット"Surface Walker",ヘビ型ロボット,および三叉ヘビ型ロボットの制御前年度から引き続き,複雑な可制御構造を積極的に利用して移動するさまざまなロボットの構造解析および周期入力に基づく制御方法の提案と検証を行った.1)主ファイバー束上のシステム制御理論とヘビ型移動機構への適用主ファイバー東上のシステム(複雑で制御しづらい)をリー群上の左不変システム(構造が解明されており制御しやすい)に効率よく近似する方法を提案し,左不変システムの研究で培われた動的フィードバック制御系設計法を複雑な非ホロノミックシステムである三叉ヘビロボットに適用することに成功した.一方,通常の直列ヘビ型移動機構に関しては,前年度までに理論解析を完了していた3リンク型(最小構成)に対する制御方法を一般化し,それを自然な形で拡張したコントローラの設計法を提案した.また,前年度に製作した試験機を用いてその有効性を検証した。前年度までに,複雑な可制御構造を積極的に利用して移動する「面歩行ロボットSurface Walker」を製作し,基礎試験を行っていた.,本年度ではその過程で明らかになった物理的問題を解決するために,特に動特性の同定と解析を集中的に行った.特に,このシステムが(1)高いサーボ剛性を持ち,角度が直接に制御されるアクチュエータ部分(2)ニュートンの運動法則に従う,トルクを入力とした劣駆動機械系の部分,という質的に異なる二つの部分からなることに着目し,アクチュエータ部分の動特性についての合理的なモデルを構築し,系全体の動的モデルを明らかにした.また,実機を用いて動作実験を行った.
KAKENHI-PROJECT-19760285
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弁別訓練がサル大脳一次視覚野の受容野特性に及ぼす影響
本研究では、覚醒アカゲザルを用いて、方位弁別訓練の受容野特性に及ぼす影響を、学習は行動科学的手法として弁別訓練、皮質活動は生理学的手法により内因性信号を用いて調べることを目標としている.麻酔下動物用に開発された装置を目的に合わせ改良し、覚醒動物からの記録を当面の目的とした。今年度は昨年度までの反省から、刺激呈示にはCRTディスプレイを用いたことから、より明瞭な刺激を呈示できるようになった.また、動物のモンキーチェアでの動きをモニターすることに加え、眼球運動をモニターすることにより、動物が刺激を注視できていることを保証した.これらの改善により、記録される画像の信頼性を高められると考えられる.また、今年度は覚醒サルでの実験と平行して、記録装置の動作確認として麻酔下ラットでの体性感覚野からの内因性信号の記録を行い、従来の画像解析プログラムの修正を行った.最終的には、覚醒サルでの記録を開始することができた.また、予備実験としてサルの方位弁別後般化勾配を求めた.その結果、サルでは、従来ハトで観察されているような正刺激と負刺激との対比を示す頂点移動は表れず、角度次元で概念を抽出するのではなく、斜方と直方のカテゴリーを形成しやすいことがわかった.視覚野の受容野特性は麻酔下ネコで方位に鋭敏化させた場合、ハトにおける行動のデータと同じく、理論的な最適方位が頂点移動を示した.このことから、用いられた方位刺激の連続性という物理的特性と一次視覚野の方位受容野の連続性が対応して変化すると考えられる.しかし、サルにおいてはネコと同等の受容野特性を持つにもかかわらず行動レベルでは頂点移動が起こらなかった.このことは、刺激される受容野の興奮・抑制によって行動が決定されない可能性を示唆した。本研究では、覚醒アカゲザルを用いて方位弁別学習の受容野特性に及ぼす影響を、行動科学的手法として弁別訓練・生理学的手法として内因性信号を用いて調べることを目標としている。今年度は、麻酔下動物用に開発された装置を目的に合わせ改良し、覚醒動物からの記録を目的とした。光学測定において覚醒動物を用いる短所は、撮影される大脳皮質の振動によるノイズである。これは、心拍や呼吸による小さなノイズの他、動物の頭部の動きにともなう大きなノイズによる。心拍を制御することは不可能であるため、画像記録の開始を呼吸のリズムに同期させることによって、ノイズを低減させようとした。結果、呼気の温度を測定することによって、呼吸のリズムを画像開始のトリガー信号に変換することができた。しかし、この方法は短期間しか有効ではなかったため実用的ではなかったが、画像を加算することでこうしたノイズを相殺することとした。また、動物の体の動きによる起こるノイズは、モンキーチェアにセンサーを取り付け、体が動いている間は画像取込みトリガーを制御用コンピュータが受け付けないようにすることによってほぼ解決した。また、光学測定が可能なように硬膜を除去すると結合組織が記録部位に進出するため、これまでは1週間以内に記録できなくなっていた。そこでシリコンゴム製の人工硬膜を作成し、切開した硬膜と皮質との間に留置することによっての約1か月間測定可能な状態を維持できた。さらに、実験装置の仕組みにより、動物の状態に応じては実験を中断できないため、動物の注視部位によらず常に同じ条件で刺激できるよう、プロジェクターにより全視野的に刺激を提示した。しかし、刺激は高い空間周波数で提示できず、コントラストも低かったため、標的部位である第一次視覚皮質を十分に活動させることができなかったと考えられる。今後、CRTディスプレイを用いるなど、問題点を解決することとした。本研究では、覚醒アカゲザルを用いて、方位弁別訓練の受容野特性に及ぼす影響を、学習は行動科学的手法として弁別訓練、皮質活動は生理学的手法により内因性信号を用いて調べることを目標としている.麻酔下動物用に開発された装置を目的に合わせ改良し、覚醒動物からの記録を当面の目的とした。今年度は昨年度までの反省から、刺激呈示にはCRTディスプレイを用いたことから、より明瞭な刺激を呈示できるようになった.また、動物のモンキーチェアでの動きをモニターすることに加え、眼球運動をモニターすることにより、動物が刺激を注視できていることを保証した.これらの改善により、記録される画像の信頼性を高められると考えられる.また、今年度は覚醒サルでの実験と平行して、記録装置の動作確認として麻酔下ラットでの体性感覚野からの内因性信号の記録を行い、従来の画像解析プログラムの修正を行った.最終的には、覚醒サルでの記録を開始することができた.また、予備実験としてサルの方位弁別後般化勾配を求めた.その結果、サルでは、従来ハトで観察されているような正刺激と負刺激との対比を示す頂点移動は表れず、角度次元で概念を抽出するのではなく、斜方と直方のカテゴリーを形成しやすいことがわかった.視覚野の受容野特性は麻酔下ネコで方位に鋭敏化させた場合、ハトにおける行動のデータと同じく、理論的な最適方位が頂点移動を示した.このことから、用いられた方位刺激の連続性という物理的特性と一次視覚野の方位受容野の連続性が対応して変化すると考えられる.しかし、サルにおいてはネコと同等の受容野特性を持つにもかかわらず行動レベルでは頂点移動が起こらなかった.このことは、刺激される受容野の興奮・抑制によって行動が決定されない可能性を示唆した。
KAKENHI-PROJECT-12710038
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授業認知の位相転換に基づく授業技術の向上を支援するVR映像プラットフォームの構築
本年度は、保育園、小学校・中学校の授業を対象に、1)授業の設計、2)授業の360°カメラによる記録、3)VR映像による授業検討とその記録を行い、4)授業プロトコルと映像を合成してプラットフォームの基礎データを得た。対象とした保育園では、4月から3月まで、毎月定期的に授業研究を全クラス実施し、それらの授業を全て360度のカメラで記録し、年間72時間の授業を記録した。小学校4校24時間、中学校2校18時間の授業をそれぞれ記録し、基礎情報を収集した。これらのデータを元に、日本教育工学会、日本教育メディア学会、日本教育実践学会、日本教師学学会、日本体育学会、などで研究発表を行い、学会誌、研究紀要等に投稿し、研究成果を公表した。これにより、ほぼ、本年度の計画を達成することができた。成果として、1保育園から中学校までの授業を発達的に収録することができた、2360°カメラでのVR映像を視聴することで、授業者も参観者も非同期的状況でリアルタイムでは見ることのできない自由な視野移動で授業者を再現視聴できた、3VR授業映像を用いての授業検討会により、授業者、観察者の授業をみる観点が確認でき、従来の検討会にくらべて、エビデンスベースでの検討が可能となった、点をあげることができる。研究の中心は、教師の熟達したわざを映像で記録し伝承するためのプラットホームの開発であり、そのための基礎的情報を収集することができた。成果の一部は、上記の学会での発表とともに、姫野完治・生田孝至(編著)「教師のわざを科学する」一莖書房(2019.2.)の出版として公表した。本研究は「これまで伝承が困難とされた教師の暗黙的技術を、授業認知の位相転換に措定し、それをVR(virtual reality)映像のプラットフォームで非同期型学習環境として構築することで、教師の技術向上を促進する」ことを目的とし、以下の4つの課題を達成する。1教師の暗黙的技術を360°カメラで記録、VR映像化し、2授業過程での教師の認知を、認知・判断・行為の位相と認知事象の交差に位置づけ、3熟達者の技術を、VR映像のプラットフォームを介した新たな学習環境上に構築し、4教師の技術向上を図る。本年度は初年度で、上記1を主として実施し、ほぼ目的通りに実施できた。本年度収集したVR授業映像に、次年度はさらにj授業を追加するとともに、わざの世代継承を目的に1授業過程での教師の認知を、認知・判断・行為の位相と認知事象の交差に位置づけ、2熟達者の技術を、VR映像のプラットフォームを介した新たな学習環構を築し、、3教師の技術向上を図る。本年度は、保育園、小学校・中学校の授業を対象に、1)授業の設計、2)授業の360°カメラによる記録、3)VR映像による授業検討とその記録を行い、4)授業プロトコルと映像を合成してプラットフォームの基礎データを得た。対象とした保育園では、4月から3月まで、毎月定期的に授業研究を全クラス実施し、それらの授業を全て360度のカメラで記録し、年間72時間の授業を記録した。小学校4校24時間、中学校2校18時間の授業をそれぞれ記録し、基礎情報を収集した。これらのデータを元に、日本教育工学会、日本教育メディア学会、日本教育実践学会、日本教師学学会、日本体育学会、などで研究発表を行い、学会誌、研究紀要等に投稿し、研究成果を公表した。これにより、ほぼ、本年度の計画を達成することができた。成果として、1保育園から中学校までの授業を発達的に収録することができた、2360°カメラでのVR映像を視聴することで、授業者も参観者も非同期的状況でリアルタイムでは見ることのできない自由な視野移動で授業者を再現視聴できた、3VR授業映像を用いての授業検討会により、授業者、観察者の授業をみる観点が確認でき、従来の検討会にくらべて、エビデンスベースでの検討が可能となった、点をあげることができる。研究の中心は、教師の熟達したわざを映像で記録し伝承するためのプラットホームの開発であり、そのための基礎的情報を収集することができた。成果の一部は、上記の学会での発表とともに、姫野完治・生田孝至(編著)「教師のわざを科学する」一莖書房(2019.2.)の出版として公表した。本研究は「これまで伝承が困難とされた教師の暗黙的技術を、授業認知の位相転換に措定し、それをVR(virtual reality)映像のプラットフォームで非同期型学習環境として構築することで、教師の技術向上を促進する」ことを目的とし、以下の4つの課題を達成する。1教師の暗黙的技術を360°カメラで記録、VR映像化し、2授業過程での教師の認知を、認知・判断・行為の位相と認知事象の交差に位置づけ、3熟達者の技術を、VR映像のプラットフォームを介した新たな学習環境上に構築し、4教師の技術向上を図る。本年度は初年度で、上記1を主として実施し、ほぼ目的通りに実施できた。本年度収集したVR授業映像に、次年度はさらにj授業を追加するとともに、わざの世代継承を目的に1授業過程での教師の認知を、認知・判断・行為の位相と認知事象の交差に位置づけ、2熟達者の技術を、VR映像のプラットフォームを介した新たな学習環構を築し、、3教師の技術向上を図る。
KAKENHI-PROJECT-18H01061
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H01061
視覚性運動課題の学習に伴う大脳皮質活動の変容
ラットなどの齧歯類では、複数の頬ヒゲがどのような時空間系列で刺激されるかということが身体周囲の物体の形や動きあるいは動物自身の動きを知覚するための重要な情報になっていると考えられる。そこで、麻酔したラットの2本のヒゲを様々の時間間隔で組合せ刺激したところ、個々の単一ヒゲ刺激に対する応答の加算以上のスパイク数増大(促通)あるいは減少(抑制)といった相互作用がバレル皮質ニューロンに生じることを見出した。促通は、II/III層のニューロンに多く観察され、また、ヒゲ刺激のパラメータ(時間間隔、方向およびヒゲの組み合わせ)に選択性を示すものが多かった。これらの結果は、応答の相互作用が様々な刺激パターンをニューロンレベルで表現するための基礎になっていることを示唆している。促通性相互作用の形態学的機序を明らかにするために、記録したニューロンとチトクローム酸化酵素により同定したバレルカラムの相対的位置について解析したところ、組合せたヒゲに対応するバレルカラムの境界領域のニューロンで促通が多く観察された。ニューロンが周囲のバレルカラムから受ける入力の大きさはそのカラムからの距離に依存し、皮質表面に沿って配列する錐体細胞群の各ヒゲに対する応答の強さは皮質上の位置に応じて連続的に変化すると考えられる。2つのカラム間の境界領域にあるニューロンは双方からの入力を強く受ける位置にあり、このために顕著な促通が生じたものと考えられる。頬上に散在する各ヒゲからの情報は、身体周囲の3次元空間における点の情報である。カラム間境界領域における促通性相互作用は、これを補間するための神経機構であり、これにより感覚情報処理の共通目的である身体周囲空間についての情報を時空間的に連続表現することが可能になると考えられる。ラットなどの齧歯類では、複数の頬ヒゲがどのような時空間系列で刺激されるかということが対象物の動きあるいは動物自身の運動を知覚するための重要な情報になっていると考えられる。ラット大脳皮膚1次体性感覚野ヒゲ対応領域(バレル皮質)では、ヒゲの体部位対応的配列が維持されており、個々のヒゲの刺激は各々対応した機能的領域(バレルカラム)のニューロン群に強い応答を誘発するが、その一方で、隣接ヒゲに対応した領域のニューロンの応答も惹起することが知られている。そのため、複数のヒゲ刺激の様々な刺激パターンは、ヒゲに対するバレル皮質ニューロンの応答の相互作用に反映され、相互作用の違いにより空間および運動の情報が表現される可能性がある。この点を調べるために、ウレタン麻酔したラットにおいて、2本のヒゲの組合せヒゲ刺激に対するバレル皮質ニューロンの応答をガラス管微小電極を用いて細胞外記録した。その結果、記録した多くの細胞で、組合わせヒゲ刺激による応答の促通性相互作用が観察された。また、その相互作用は、刺激間インターバルや刺激の方向などの刺激条件に強く依存していた。このような刺激特徴選択的な応答の相互作用が3次元空間情報の脳内表現のための基礎になっていると考えられる。ラットなどの齧歯類では、複数の頬ヒゲがどのような時空間系列で刺激されるかということが身体周囲の物体の形や動きあるいは動物自身の動きを知覚するための重要な情報になっていると考えられる。そこで、麻酔したラットの2本のヒゲを様々の時間間隔で組合せ刺激したところ、個々の単一ヒゲ刺激に対する応答の加算以上のスパイク数増大(促通)あるいは減少(抑制)といった相互作用がバレル皮質ニューロンに生じることを見出した。促通は、II/III層のニューロンに多く観察され、また、ヒゲ刺激のパラメータ(時間間隔、方向およびヒゲの組み合わせ)に選択性を示すものが多かった。これらの結果は、応答の相互作用が様々な刺激パターンをニューロンレベルで表現するための基礎になっていることを示唆している。促通性相互作用の形態学的機序を明らかにするために、記録したニューロンとチトクローム酸化酵素により同定したバレルカラムの相対的位置について解析したところ、組合せたヒゲに対応するバレルカラムの境界領域のニューロンで促通が多く観察された。ニューロンが周囲のバレルカラムから受ける入力の大きさはそのカラムからの距離に依存し、皮質表面に沿って配列する錐体細胞群の各ヒゲに対する応答の強さは皮質上の位置に応じて連続的に変化すると考えられる。2つのカラム間の境界領域にあるニューロンは双方からの入力を強く受ける位置にあり、このために顕著な促通が生じたものと考えられる。頬上に散在する各ヒゲからの情報は、身体周囲の3次元空間における点の情報である。カラム間境界領域における促通性相互作用は、これを補間するための神経機構であり、これにより感覚情報処理の共通目的である身体周囲空間についての情報を時空間的に連続表現することが可能になると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-11780015
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肥満度を考慮した抗がん剤の投与量設定に関する研究
【背景・目的】抗がん剤治療は副作用が強いため、患者の体表面積や体重で補正した投与量で施行される。また、近年本邦では、種々生活習慣病の原因となる肥満が増えつつある。本研究では、体型の違いによるがん治療への影響を検討するため、副作用発現頻度に及ぼす肥満度の影響について検討を行った。【方法】2009年に京都大学医学部附属病院にて、脂溶性が高いパクリタキセルとカルボプラチンとの併用療法を行った患者101名を対象とした。末梢神経障害、白血球減少を調査項目とし、患者背景としては性別、年齢、肥満度、抗がん剤投与量、腎機能値(eGFR)、肝機能値(AST,ALT)、化学療法施行前の血球数を調査した。末梢神経障害における副作用関連因子を検討するためロジスティック回帰分析を行った。【結果・考察】末梢神経障害の発現について、BMIが18.5kg/m^2以下のやせ群では有意差は認められなかったものの(p=0.08)、オッズ比は0.24となった。また、パクリタキセルの投与量が1mg/m^2増えるとオッズ比は1.08となり、有意なリスク因子であることが示唆された。白血球減少の発現において、やせ(BMI 18.5kg/m^2以下)及び肥満(BMI 25kg/m^2以上)のオッズ比はそれぞれ0.40(p=0.17)、1.46(p=0.65)であった。また、ASTの増加(オッズ比1.14、p<0.05)、化学療法施行前の白血球数増加(オッズ比0.58、p<0.01)が有意なリスク因子であった。本検討から、統計的有意差は認められなかったものの、やせ型の患者では末梢神経障害が発現しにくい可能性が示唆された。【背景・目的】抗がん剤治療は副作用が強いため、患者の体表面積や体重で補正した投与量で施行される。また、近年本邦では、種々生活習慣病の原因となる肥満が増えつつある。本研究では、体型の違いによるがん治療への影響を検討するため、副作用発現頻度に及ぼす肥満度の影響について検討を行った。【方法】2009年に京都大学医学部附属病院にて、脂溶性が高いパクリタキセルとカルボプラチンとの併用療法を行った患者101名を対象とした。末梢神経障害、白血球減少を調査項目とし、患者背景としては性別、年齢、肥満度、抗がん剤投与量、腎機能値(eGFR)、肝機能値(AST,ALT)、化学療法施行前の血球数を調査した。末梢神経障害における副作用関連因子を検討するためロジスティック回帰分析を行った。【結果・考察】末梢神経障害の発現について、BMIが18.5kg/m^2以下のやせ群では有意差は認められなかったものの(p=0.08)、オッズ比は0.24となった。また、パクリタキセルの投与量が1mg/m^2増えるとオッズ比は1.08となり、有意なリスク因子であることが示唆された。白血球減少の発現において、やせ(BMI 18.5kg/m^2以下)及び肥満(BMI 25kg/m^2以上)のオッズ比はそれぞれ0.40(p=0.17)、1.46(p=0.65)であった。また、ASTの増加(オッズ比1.14、p<0.05)、化学療法施行前の白血球数増加(オッズ比0.58、p<0.01)が有意なリスク因子であった。本検討から、統計的有意差は認められなかったものの、やせ型の患者では末梢神経障害が発現しにくい可能性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-21929010
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21929010
放射線被曝による継世代発がん
放射能被曝による継世代発がん、特にF_1での腫瘍発生に関しては、従来のマウス肺腫瘍に加えて、252^<Cf>中性子を用い、B6C3F_1マウスにヘパトーマ(渡辺)が、X線を用い、LT,N5マウスにリンパ性白血病(野村)が有意に高率に誘発されることが確認された。特に^<252>cf照射実験では、昨年度における精子期照射のみならず、精原細胞期0.5Gy照射でも6/20(30%)と対照射1/31(3%)に比べ、10倍の頻度でヘパトーマが発生した。N5系統でのリンパ性白血病発生もX線5.04Gy精原細胞期照射により9/229(3.9%)と、対照群1/244(0.4%)の約10倍となっている。英、EC、米につづいて、カナダも追試を開始したいとの要望があり、必要なマウス等資材を供与した(野村)。ヒトにおいては、広島、長崎被爆者のF_1調査を1989年(発症年齢42才)まで追加したが、白血病、悪性リンパ腫の有意な増加は見られていない(馬淵)。しかし、セラフィールド核燃料再処理工場従業員の子供における白血病多発については、英国政府機関の追加調査により有意な増加が確認されている(1993年10月発表)。ヒトについては、致死率の低い癌症例と多因子性疾患を含めた成人期の調査が必要である。佐々木は、遺伝性網膜芽細胞腫患者196家系について調査し、染色体突然変異の頻度が20%あり、そのうち突然変異の親の起源が調べられた17例のうち実に16例が父親起源であった。精子被曝の高感受性が示唆される。藤堂は、紫外線による発がん・遺伝子突然変異の主因であるDNA6-4光産物を特異的に修復する新酵素を発見した。放射能被曝による継世代発がん、特にF_1での腫瘍発生に関しては、従来のマウス肺腫瘍に加えて、252^<Cf>中性子を用い、B6C3F_1マウスにヘパトーマ(渡辺)が、X線を用い、LT,N5マウスにリンパ性白血病(野村)が有意に高率に誘発されることが確認された。特に^<252>cf照射実験では、昨年度における精子期照射のみならず、精原細胞期0.5Gy照射でも6/20(30%)と対照射1/31(3%)に比べ、10倍の頻度でヘパトーマが発生した。N5系統でのリンパ性白血病発生もX線5.04Gy精原細胞期照射により9/229(3.9%)と、対照群1/244(0.4%)の約10倍となっている。英、EC、米につづいて、カナダも追試を開始したいとの要望があり、必要なマウス等資材を供与した(野村)。ヒトにおいては、広島、長崎被爆者のF_1調査を1989年(発症年齢42才)まで追加したが、白血病、悪性リンパ腫の有意な増加は見られていない(馬淵)。しかし、セラフィールド核燃料再処理工場従業員の子供における白血病多発については、英国政府機関の追加調査により有意な増加が確認されている(1993年10月発表)。ヒトについては、致死率の低い癌症例と多因子性疾患を含めた成人期の調査が必要である。佐々木は、遺伝性網膜芽細胞腫患者196家系について調査し、染色体突然変異の頻度が20%あり、そのうち突然変異の親の起源が調べられた17例のうち実に16例が父親起源であった。精子被曝の高感受性が示唆される。藤堂は、紫外線による発がん・遺伝子突然変異の主因であるDNA6-4光産物を特異的に修復する新酵素を発見した。
KAKENHI-PROJECT-05151041
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05151041
非線形分散型方程式の特異性形成の解析
非線形分散型方程式の爆発解やソリトン解の時間大域挙動の解析をおこなった。空間的に集中する解の構成としては岸本氏とともに空間周期的なザカロフ方程式の爆発解の構成ならびに鈴木氏とともに細い領域で短い線状に集中する定常非線形シュレディンガー方程式の解の構成を行った。またソリトン解の時間大域挙動の研究としてはCuccagna氏とともに高速で移動するソリトンの漸近安定性解析を行った。特にソリトンの解析の結果としてハミルトン構造に着目した解析力学的手法の発展が得られ今後の非線形分散型方程式の解析に役に立つと期待される。本年度はポテンシャル付き非線形シュレディンガー方程式のソリトンと小さな周期解の弱い相互作用並びに準周期解の非存在について研究を行った。非線形シュレディンガー方程式は1次元3次べきのとき可積分系となり、その場合のソリトン間の衝突現象は逆散乱法などにより詳しく調べられている。しかし、それ以外のときは非線形シュレディンガー方程式は可積分ではないと考えられ、逆散乱法などの可積分であった場合に使うことのできた強力な手法は適用することが難しい。本年度の研究ではポテンシャルの付いた非線形シュレディンガー方程式を考え、ポテンシャルのない場合に発生するソリトン解とシュレディンガー作用素の固有値より分岐する小さな定常解が弱い相互作用をもつとき(互いに非常に離れているか、ソリトン解が非常にはやく動いている場合)に解は漸近安定であることを示した。また、ポテンシャル付き非線形シュレディンガー方程式の小さな解について、そのシュレディンガー作用素が複数個の固有値をもつときの時間大域挙動を調べ、解がどれか一つの固有値から分岐する周期解に散乱成分を除いて収束することを示した。小さな解はスケーリングにより、非線形項が小さな非線形シュレディンガー方程式の解とも思うことができる。その極限としての線形シュレディンガー方程式は各固有値に対応した周期解をもち、ゆえに固有値が2つ以上あるとき、準周期解をもつ。しかし、本年度の研究によってこのような準周期解は任意に小さな非線形摂動によって崩されてしまうことが示された。本年度の二つの結果はいずれも離散スペクトルと連続スペクトル間の非線形相互作用を詳細に調べることによって得られた。非線形分散型方程式の爆発解やソリトン解の時間大域挙動の解析をおこなった。空間的に集中する解の構成としては岸本氏とともに空間周期的なザカロフ方程式の爆発解の構成ならびに鈴木氏とともに細い領域で短い線状に集中する定常非線形シュレディンガー方程式の解の構成を行った。またソリトン解の時間大域挙動の研究としてはCuccagna氏とともに高速で移動するソリトンの漸近安定性解析を行った。特にソリトンの解析の結果としてハミルトン構造に着目した解析力学的手法の発展が得られ今後の非線形分散型方程式の解析に役に立つと期待される。本年度は非線形シュレディンガー方程式のソリトン解の漸近安定性解析ならびにザカロフ方程式の爆発界の構成についての研究を行った。非線形シュレディンガー方程式のソリトン解は数学的、物理学的に非常に重要な解であり、その存在、安定性は多大な関心を集めてきた。ソリトン解のリャプノフ安定性については私自身の結果も含めて多くの研究結果があるが、漸近安定性についてはまだわかっていないことが多い。私はCuccagna氏とともにポテンシャル中を高速で運動するソリトン解がソリトン自身と散乱成分に分解すること、つまり漸近安定であることを示した。この結果は現在までに可積分系の方程式と四次の一般化KdV方程式でしか得られていないソリトン同士の衝突の様子の詳しい解析の研究にもつながると考えられる。我々の証明は半線形非線形方程式の手法、ストリッカーツ評価をソリトンの線形化作用素に用いることと線形化作用素の線形減衰しない固有値の成分に対して解析力学的手法であるバーコフ標準形の議論により非線形減衰を示すことからなる。後者の解析力学的手法は新しいものであり、他のハミルトン方程式の爆発解の様子の解析にも使えると考えられる。ザカロフ方程式の研究では周期境界条件のもとで爆発解を構成した。これにより今まで爆発解の存在が知られていなかった周期境界条件におけるザカロフ方程式も爆発解が存在することがわかった。爆発解は全空間の場合の爆発解をトーラスに貼り付け、誤差項のみたす方程式を解くことによって構成した。この場合の困難は微分の損失と減衰の損失であったがこれらの困難は修正エネルギー法と減衰の損失が起きている箇所と爆発点が乖離していることをもちいて克服した。ポテンシャルをもつ質量優臨界非線形シュレディンガー方程式の小さな定在波解(空間的に局在化された時間周期解)の安定性について調べた。定在波解の安定性はエネルギーが最小の定在波である基底状態解に関してはすでによく知られているが、基底状態解以外の定在波解(励起状態解)に関しては、不安定であると考えられるが数学的な証明が与えられている場合は極めて少ない。研究代表者の前田はCuccagna氏とともにシュレディンガー作用素が複数の固有値を持つ場合にその最小固有値以外から分岐する励起状態解の不安定性を証明することに成功した。通常、定在波解の不安定性はその線形化作用素を解析することによってなされるが、励起状態解の場合、線形化作用素が中立安定であることがあり線形化作用素の解析がただちに不安定性の証明につながるわけではない。
KAKENHI-PROJECT-24740081
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非線形分散型方程式の特異性形成の解析
そこで前年度までに得られた成果である小さな解の時間大域挙動の分類定理に注目し、励起状態解が軌道安定であるならば漸近安定であることと、エネルギー不安定性と漸近安定性は分散波のエネルギーが常に正であることから両立しないことを示すことによって不安定性の証明を行った。エネルギー不安定性と漸近安定性が両立しないことは一般の場合でも示すことが可能であり、仮により大きな解に対してもソリトン分解予想のような時間大域挙動の分類を行うことができれば、励起状態解の不安定性もそこから従うことを示すことができる。ソリトン分解予想は非常に難しいと考えられているが、一般の励起状態解の線形化作用素の詳細なスペクトル解析はほとんど不可能に近いと思われるので、前田らの本年度の研究は励起状態解の安定性解析の手法を広く与えるものであると期待される。偏微分方程式論ソリトンの漸近安定性解析は順調に進んでいる。とくに連続スペクトルと離散スペクトルの非線形相互作用についての理解は深まり、より一般の非線形分散型方程式の漸近安定性解析に用いることのできる状況にある。また、漸近安定性だけでなく爆発現象においてもこの手法の応用が期待される。ソリトンの漸近安定性解析は予想以上に進行した。本年度のソリトンの漸近安定性解析の研究において用いられた解析力学的手法は一般のハミルトン偏微分方程式のソリトン解の漸近安定性解析のみならず爆発解の解析にも応用できると考えられ、ハミルトン偏微分方程式の解の大域挙動に関する研究において新しい強力な研究手法を与えるものとなる。引き続き、ソリトンの漸近安定性の研究を行う。また、爆発解の研究においてソリトンの漸近安定性の研究により得られた離散スペクトルと連続スペクトルの非線形相互作用の解析手法が適用できないかを探っていく。そのためにイタリアなど海外の研究者と緊密に連絡を取り合うとともに国内の研究者にこれまで得られた研究の成果を発表することにより、関連する分野における応用を探求する。本年度に引き続きソリトンの漸近安定性解析ならびにソリトンをリスケールした形状をもつ爆発解の構成とその性質について研究する。本年度に用いられた解析力学的手法はまだ発展途上であり、本年度の研究の対象となった非線形シュレディンガー方程式のソリトンの漸近安定性解析だけでなく、より一般のハミルトン方程式の特殊解の安定性解析に適用することができると考えている。また爆発解もソリトンをリスケールした形状を持つためこの手法は爆発解析にも用いることができる期待される。今後は本年度に用いた解析力学的手法と半線形偏微分方程式の手法の融合をさらに発展させることを目指す。そのためイタリアのCuccagna氏と緊密に連絡を取り合うとともに国内の研究者たちとも意見・情報交換をし、我々の手法がほかの問題に対して応用できる可能性を探っていく。次年度使用額は、当初に計画していたイタリアでの研究打合せを次年度に延期することによって生じたものである。次年度使用額はイタリア・トリエステ大学においてCuccagna氏との研究打ち合わせ・情報交換をすることに必要な経費として平成26年度請求額と合わせて使用する予定である。次年度使用額は、当初に計画していた昨年秋における京都大学への訪問を次年度に延期することによって生じたものであり、京都大学において中西賢次氏、岸本展氏との研究打ち合わせ・情報交換をすることに必要な経費として平成25年度請求額と合わせて使用する予定である。
KAKENHI-PROJECT-24740081
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花の性表現の進化がもたらす遺伝的多様性維持と種多様性創出のメカニズム
野外調査:平成30年度は、5月にオアフ島とマウイ島で野外調査を行った。オアフ島では、Wikstroemia oahuensis var. oahuensisの2集団から、1集団あたり20個体程度の植物を採集した。カウアイ島では、W. uva-ursi var. kauaiensisを2集団、W. oahuensis var. oahuensisを1集団、W. oahuensis var. palstreを1集団から、1集団あたり20個体程度の植物を採集した。また、カウアイ島固有種のW. furcataを3個体採集した。採集した植物は証拠標本として扱い、この試料から遺伝解析用試料と花序の形態観察用試料を得た。ハワイ諸島産アオガンピ属植物の花の性表現様式の決定:オアフ島とカウアイ島で採取したアオガンピ属植物の花序を実体顕微鏡を用いて花序の内部構造を観察し、植物の雌雄性を確認した。次世代シーケンサーを用いたMIG-seq法による塩基多型解析:5月に実施したオアフ島とカウアイ島の野外調査で得られた遺伝解析用試料とハワイ諸島のカウンターパートから分与していただいたオアフ島のW. oahuensis var. oahuensisを2集団、約40個体の遺伝解析用試料から、DNA抽出キットを用いて全ゲノムを抽出した。首都大学東京に設備されているMiSeq(イルミナ株式会社)を用いてMIG-seq法による塩基多型解析を行った。現在、カウアイ島とオアフ島に生育するW. oahuensis var. oahuensisの集団内・集団間の遺伝的多様性を評価している。また、MIG-seq法を用いた集団遺伝解析の予備実験として、小笠原諸島固有種ムニンシラガゴケの遺伝的多様性を評価し、その成果を平成31年3月に開催された日本植物分類学会でポスター発表を行った。野外調査に関して、当初の予定ではハワイ諸島2島(ハワイ島とカウアイ島)で行う予定でだったが、平成30年5月に発生したキラウエア火山の噴火により予定を変更した。しかし、現地のカウンターパートからハワイ島のアオガンピ属植物の証拠標本とそのDNA試料を分与していただいたため、ハワイ島の本属植物を用いた遺伝解析と形態観察を遂行することが可能となった。アオガンピ属植物の形態観察に関して、植物の花の性表現の判別は、花序の内部構造(葯や雌蕊の有無、雌蕊の形態など)を実体顕微鏡を用いて観察することで可能である。平成31年度は、必要に応じて走査型電子顕微鏡を用いた内部構造の観察を行う。次世代シーケンサーを用いたMIG-seq法による塩基多型解析に関しては、当初の予定はRAD-Seq法による塩基多型解析(1レーン100検体)を解析受託サービスに依頼する予定であった。しかし、MIG-seq法はDNAのクオリティに関係なく解析可能で、かつ安価で利便性の高い実験手法であるため、この方法から得られたデータを用いて分子系統解析と集団遺伝解析を行うことにした。これまでハワイ諸島を含む太平洋の島嶼域とアジアに分布するアオガンピ属植物についてMIG-seq法を用いた解析を行い、良好なデータを得ている。次世代シーケンサーを用いた解析はほぼ完了しており、平成31年度はこれらのデータからSNPsを検出し、分子系統解析と集団遺伝解析を行い、本研究をまとめる段階まで進んでいる。成果報告に関しては、平成31年3月に日本植物分類学会第18回大会(東京都八王子市)で、「小笠原諸島固有種ムニンシラガゴケの遺伝的多様性」という題目で発表した。本研究ではMIG-seq法によるクローン解析を行ったものである。1.ハワイ諸島産アオガンピ属植物の花の性表現様式の決定:これまで野外調査で採取した本属植物の形態観察用試料について、実体顕微鏡を用いて花序の内部構造(雄蕊・雌蕊の有無、花粉の表面構造、子房の断面構造など)を観察して、花の性表現様式を決定する。2.次世代シーケンサーを用いたMIG-seq法による塩基多型解析:平成31年度中に次世代シーケンサーを用いた解析をしていないアオガンピ属植物について、DNA抽出キットを用いて全ゲノムを抽出し、次世代シーケンサーを用いたMIG-seq法による塩基多型解析を行う。次世代シーケンサーは所属研究機関に設備されているMiseq(イルミナ社)を使用する。3.分子系統解析:MIG-seq法による解析で得られたアジアおよび太平洋の島嶼域に分布するアオガンピ属の塩基配列について、系統解析用データマトリックスを作成し、最尤法とベイズ法で系統樹を構築する。得られた系統樹から、ハワイ諸島産本属植物の進化系譜を推定し、系統群を認識する。5.仮説の検証:集団遺伝解析の結果を分子系統解析で得られた系統樹にマッピングしたうえで、花の性表現(雌雄異株性/両全性)の割合と遺伝的多様性維持および種多様性創出との間の因果関係について検討する。6.学会発表:本研究成果の一部は、平成31年度に開催される関連学会にて発表する予定である。さらに、本研究に関連する論文を国際学術誌に2本投稿予定である。野外調査:平成30年度は、5月にオアフ島とマウイ島で野外調査を行った。オアフ島では、Wikstroemia oahuensis var. oahuensisの2集団から、1集団あたり20個体程度の植物を採集した。
KAKENHI-PROJECT-17J40194
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花の性表現の進化がもたらす遺伝的多様性維持と種多様性創出のメカニズム
カウアイ島では、W. uva-ursi var. kauaiensisを2集団、W. oahuensis var. oahuensisを1集団、W. oahuensis var. palstreを1集団から、1集団あたり20個体程度の植物を採集した。また、カウアイ島固有種のW. furcataを3個体採集した。採集した植物は証拠標本として扱い、この試料から遺伝解析用試料と花序の形態観察用試料を得た。ハワイ諸島産アオガンピ属植物の花の性表現様式の決定:オアフ島とカウアイ島で採取したアオガンピ属植物の花序を実体顕微鏡を用いて花序の内部構造を観察し、植物の雌雄性を確認した。次世代シーケンサーを用いたMIG-seq法による塩基多型解析:5月に実施したオアフ島とカウアイ島の野外調査で得られた遺伝解析用試料とハワイ諸島のカウンターパートから分与していただいたオアフ島のW. oahuensis var. oahuensisを2集団、約40個体の遺伝解析用試料から、DNA抽出キットを用いて全ゲノムを抽出した。首都大学東京に設備されているMiSeq(イルミナ株式会社)を用いてMIG-seq法による塩基多型解析を行った。現在、カウアイ島とオアフ島に生育するW. oahuensis var. oahuensisの集団内・集団間の遺伝的多様性を評価している。また、MIG-seq法を用いた集団遺伝解析の予備実験として、小笠原諸島固有種ムニンシラガゴケの遺伝的多様性を評価し、その成果を平成31年3月に開催された日本植物分類学会でポスター発表を行った。野外調査に関して、当初の予定ではハワイ諸島2島(ハワイ島とカウアイ島)で行う予定でだったが、平成30年5月に発生したキラウエア火山の噴火により予定を変更した。しかし、現地のカウンターパートからハワイ島のアオガンピ属植物の証拠標本とそのDNA試料を分与していただいたため、ハワイ島の本属植物を用いた遺伝解析と形態観察を遂行することが可能となった。アオガンピ属植物の形態観察に関して、植物の花の性表現の判別は、花序の内部構造(葯や雌蕊の有無、雌蕊の形態など)を実体顕微鏡を用いて観察することで可能である。平成31年度は、必要に応じて走査型電子顕微鏡を用いた内部構造の観察を行う。次世代シーケンサーを用いたMIG-seq法による塩基多型解析に関しては、当初の予定はRAD-Seq法による塩基多型解析(1レーン100検体)を解析受託サービスに依頼する予定であった。しかし、MIG-seq法はDNAのクオリティに関係なく解析可能で、かつ安価で利便性の高い実験手法であるため、この方法から得られたデータを用いて分子系統解析と集団遺伝解析を行うことにした。これまでハワイ諸島を含む太平洋の島嶼域とアジアに分布するアオガンピ属植物についてMIG-seq法を用いた解析を行い、良好なデータを得ている。次世代シーケンサーを用いた解析はほぼ完了しており、平成31年度はこれらのデータからSNPsを検出し、分子系統解析と集団遺伝解析を行い、本研究をまとめる段階まで進んでいる。成果報告に関しては、平成31年3月に日本植物分類学会第18回大会(東京都八王子市)で、「小笠原諸島固有種ムニンシラガゴケの遺伝的多様性」という題目で発表した。本研究ではMIG-seq法によるクローン解析を行ったものである。アオガンピ属植物の花の性表現様式の決定:平成29年度は、小笠原諸島(父島、母島、兄島)に生育する雌雄異株性の固有種ムニンアオガンピの花の性型を実体顕微鏡を用いて決定した。
KAKENHI-PROJECT-17J40194
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結節性硬化症におけるスパイン形成障害の分子病態
結節性硬化症ニューロンのスパイン形成を促進する方法を探索し、Rhebと結合するPSD蛋白質(PSDと仮称)がスパイン形成に関わることを見出したので、この分子メカニズムを解析した。1)RhebとPSDとの結合:ラット脳から抗PSD抗体を用いて免疫沈降し、Rhebが共沈降することを確認した。さらに、Rheb-GTP型、あるいはGDP型のどちらがPSD蛋白質と結合し易いかを調べるため、HEK293細胞にそれぞれのrheb変異体を発現させ、GST-PSDを用いたpull down実験を行った。PSD蛋白質はGDP-Rhebとより強く結合した。2)Rheb阻害薬による結節性硬化症ニューロンのスパイン形成:結節性硬化症ニューロンでは樹状突起スパイン形成が抑制されており、フィロポディア様の形態を示す。mTOR阻害薬のラパマイシンがスパインの分化成熟を促すかどうかを検討したが、全く無効であった。そこで、Rhebの活性化を直接抑えるfarnesyltransferase inhibitor (FTI)を結節性硬化症ニューロンに添加したところ、PSDノックダウンと同様に、スパイン形成が回復することが分かった。これらの結果から、Rhebの活性化がmTOR以外の伝達系を介してスパイン形成阻害を起こしていることが明らかになった。3)PSDによるスパイン形成抑制機構:PSD蛋白質が結節性硬化症において、どのようなメカニズムでスパイン形成を抑制するのかを解析した。その結果、PSDがスパイン形成を制御する膜蛋白質と結合するため、別のPDZ蛋白質が結合出来なくなり、スパインが形成されなくなることが明らかになった。25年度が最終年度であるため、記入しない。25年度が最終年度であるため、記入しない。結節性硬化症は母斑症の一種であり、中枢神経症状としててんかん・精神発達遅滞・自閉症などを高頻度に起こすことが知られている。原因遺伝子はTSC1あるいはTSC2であり、その分子メカニズムとして、「TSC遺伝子の変異により、TSCが制御するRhebのGTPaseが不活化され、下流のmTORが活性化される」機構が考えられている。さらに、TSC2に変異のあるEkerラットでは、培養ニューロンのスパイン形成が遅れている。発達障害において、樹状突起スパインの形成不全や形態異常が多くの研究者から報告されており、本課題では結節性硬化症におけるスパイン形成不全のメカニズムを明らかにする。1)結節性硬化症に関連するスパイン制御分子の同定:Ekerラットのシナプトソーム分画を調整し、野生型と比べて特異的に増加している蛋白質を質量分析により同定した。2)TSC2-Rhebによるミトコンドリア制御:同定した蛋白質がすべてミトコンドリア関連蛋白質(TCA回路酵素、電子伝達系複合体、クレアチンキナーゼなど)であったことから、結節性硬化症においてミトコンドリアの機能亢進あるいは増加が考えられた。そこで、dsRed2-Mito遺伝子導入あるいはMito-Red標識により、培養ニューロンのミトコンドリアを可視化した。その結果、結節性硬化症ニューロンの樹状突起ミトコンドリアが増加していることが明らかになった。3)ミトコンドリアを介するスパイン形成障害機構:次に、ATPase εサブユニットをCFPとYFPで挟んだFRETベクターを用いて、樹状突起内のATPを可視化したところ、結節性硬化症・野生型ともにミトコンドリア近傍のATP濃度が最も高かった。また、結節性硬化症のATP FRET強度が野生型より強いことから、結節性硬化症ではATPがより多く作られていることが確認できた。結節性硬化症ニューロンのスパイン形成を促進する方法を探索し、Rhebと結合するPSD蛋白質(PSDと仮称)がスパイン形成に関わることを見出したので、この分子メカニズムを解析した。1)RhebとPSDとの結合:ラット脳から抗PSD抗体を用いて免疫沈降し、Rhebが共沈降することを確認した。さらに、Rheb-GTP型、あるいはGDP型のどちらがPSD蛋白質と結合し易いかを調べるため、HEK293細胞にそれぞれのrheb変異体を発現させ、GST-PSDを用いたpull down実験を行った。PSD蛋白質はGDP-Rhebとより強く結合した。2)Rheb阻害薬による結節性硬化症ニューロンのスパイン形成:結節性硬化症ニューロンでは樹状突起スパイン形成が抑制されており、フィロポディア様の形態を示す。mTOR阻害薬のラパマイシンがスパインの分化成熟を促すかどうかを検討したが、全く無効であった。そこで、Rhebの活性化を直接抑えるfarnesyltransferase inhibitor (FTI)を結節性硬化症ニューロンに添加したところ、PSDノックダウンと同様に、スパイン形成が回復することが分かった。これらの結果から、Rhebの活性化がmTOR以外の伝達系を介してスパイン形成阻害を起こしていることが明らかになった。3)PSDによるスパイン形成抑制機構:PSD蛋白質が結節性硬化症において、どのようなメカニズムでスパイン形成を抑制するのかを解析した。その結果、PSDがスパイン形成を制御する膜蛋白質と結合するため、別のPDZ蛋白質が結合出来なくなり、スパインが形成されなくなることが明らかになった。計画していた実験はすべて順調に終了したため。25年度が最終年度であるため、記入しない。今後は、Rhebと結合するPSD蛋白質を介するスパイン形成制御機構について解析する。25年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-23110525
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重力波による右巻きニュートリノ質量の解明
極端に小さなニュートリノの質量の起源は、その大元となっている重い右巻きニュートリノの質量とその生成機構の同定によって解明される。本研究では、初期宇宙に起こった右巻きニュートリノ質量生成を引き起こす真空の相転移により発生する重力波観測を通じて、重い右巻きニュートリノの質量を推定すると共に、右巻きニュートリノの質量生成機構を解明する。極端に小さなニュートリノの質量の起源は、その大元となっている重い右巻きニュートリノの質量とその生成機構の同定によって解明される。本研究では、初期宇宙に起こった右巻きニュートリノ質量生成を引き起こす真空の相転移により発生する重力波観測を通じて、重い右巻きニュートリノの質量を推定すると共に、右巻きニュートリノの質量生成機構を解明する。
KAKENHI-PROJECT-19K03860
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K03860
政策決定過程における精神障害当事者委員参画と当事者活動との関連
本研究は政策決定過程における当事者委員の参画の推進と精神に障害のある人々を含めた精神保健福祉コミュニティの実現を目的に計画されたものである。2018年度は1全国67都道府県・政令指定都市(以下、都道府県等)への当事者委員参画に関する質問紙調査の実施と、2地方精神保健福祉審議会(以下、審議会)の当事者委員および行政担当者への聞き取り調査を実施した。また、3オーストラリアのニューサウスウェールズ州(以下、NSW)では精神に障害のある人々の政策決定過程への参画の点で注目すべきしくみがあることから精神保健福祉関係機関の関係者への聞き取り調査を実施した。1は3年ごとに継続実施している調査である。III期目の今回は審議会の設置がある57都道府県等の内、当事者委員の参画が4割を超え、微増傾向がみられ、また、審議会以外の会議にも参画する傾向が見られた。行政担当者が精神に障害のある人々の意見を聴取するあり方と当事者委員の参画の有無の関係を統計的に確認したが、有意な関係はみられなかった。回答があった64都道府県等を精査し、今後、詳細に情報収集する都道府県等を抽出することができた。2の聞き取り調査の中で、行政担当者と当事者委員のつながりがある都道府県等は、当事者委員が行政担当者や会議参画者から当事者の視点での意見表明を受け止められていると感じ、積極的に参画していた。また、行政担当者は複数の当事者団体と交流があり、さまざまな場面で互いに協力しあう関係がみられた。3のNSWでは行政機関とは独立に精神保健委員会を組織し、精神保健福祉に関わる計画の立案や課題解決を取り扱っていた。当委員会内には審議会があり、精神保健委員会に助言する役割を持つ。NSWには行政機関の会議に参画する当事者委員の政策提言のスキルを支援するNGO法人が存在し、精神に障害のある人々の声を行政施策に活かすしくみが作られていた。1質問紙調査については予定通り実施し、結果の分析を終えることができた。本調査は当事者委員の参画に関する3年ごとの変化を把握する面と、参画に関連する要因を検討する目的を持つ。さらに、今回は当事者委員を含め精神保健福祉コミュニティの構築を実現する都道府県等の抽出を兼ねていた。分析の結果、適する都道府県等を抽出でき、2019年度以降多方面にわたり綿密に調査する見通しがたった。22015年度から3年間取得していた科研費調査で実施した聞き取り調査に加え、2018年度に数ケース聞き取り調査を追加した。それらの結果を総合し、当事者委員のタイプ分けと都道府県等のタイプ分けを行うことができた。当事者委員については当事者活動とのつながりと、行政担当者とのつながりの二軸をもとに4分類したが、当事者活動とも行政担当者ともつながりが保てていることで、審議会において政策的な提言を実現できている当事者委員がいた。その一方、両つながりが乏しく、審議会への参画を負担に感じる当事者委員もいた。行政機関の場合は当事者委員の政策提言を尊重し、良好な関係を維持する都道府県等と、当事者委員の参画を活かせていない都道府県等があった。また、当事者委員の参画がない都道府県等のうち、いくつかのステップを経て参画が実現可能な都道府県等と、そのはるか手前に位置づく都道府県等があった。32018年度にNSWの調査をしたことで、2016年に実施したカリフォルニア州の当事者委員の参画とあわせ、わが国の現況を比較することが可能になった。今後、当事者委員の参画と政策提言を焦点化する上で手がかりを得た。研究に着手した時点から一部変更が生じている。これまでは政策決定過程への精神に障害のある人々の参画と参画を進める方略としての当事者活動、および行政機関のサポート体制について検討する予定であった。この点については引き続き実施する。これらに加え、政策決定過程において精神に障害のある人々が政策提言を実現する場合、実現しやすい環境調整が重要であると考えられる。これまで得た情報から、シドニーのように当事者委員の参画を支援するNGO団体が存在する場合、行政担当者も精神に障害のある人々も政策決定過程への参画が容易に見受けられた。わが国においてこうした支援団体が成立し得るかを検証することも本研究の中で実施可能と考えられる。そこで、2019年度は抽出した地域の多方面にわたる詳細な情報収集と共に、当事者委員のアドボカシー(政策提言)を支援する団体についても検討したいと考える。本研究は政策決定過程における当事者委員の参画の推進と精神に障害のある人々を含めた精神保健福祉コミュニティの実現を目的に計画されたものである。2018年度は1全国67都道府県・政令指定都市(以下、都道府県等)への当事者委員参画に関する質問紙調査の実施と、2地方精神保健福祉審議会(以下、審議会)の当事者委員および行政担当者への聞き取り調査を実施した。また、3オーストラリアのニューサウスウェールズ州(以下、NSW)では精神に障害のある人々の政策決定過程への参画の点で注目すべきしくみがあることから精神保健福祉関係機関の関係者への聞き取り調査を実施した。1は3年ごとに継続実施している調査である。III期目の今回は審議会の設置がある57都道府県等の内、当事者委員の参画が4割を超え、微増傾向がみられ、また、審議会以外の会議にも参画する傾向が見られた。行政担当者が精神に障害のある人々の意見を聴取するあり方と当事者委員の参画の有無の関係を統計的に確認したが、有意な関係はみられなかった。回答があった64都道府県等を精査し、今後、詳細に情報収集する都道府県等を抽出することができた。
KAKENHI-PROJECT-18K02113
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K02113
政策決定過程における精神障害当事者委員参画と当事者活動との関連
2の聞き取り調査の中で、行政担当者と当事者委員のつながりがある都道府県等は、当事者委員が行政担当者や会議参画者から当事者の視点での意見表明を受け止められていると感じ、積極的に参画していた。また、行政担当者は複数の当事者団体と交流があり、さまざまな場面で互いに協力しあう関係がみられた。3のNSWでは行政機関とは独立に精神保健委員会を組織し、精神保健福祉に関わる計画の立案や課題解決を取り扱っていた。当委員会内には審議会があり、精神保健委員会に助言する役割を持つ。NSWには行政機関の会議に参画する当事者委員の政策提言のスキルを支援するNGO法人が存在し、精神に障害のある人々の声を行政施策に活かすしくみが作られていた。1質問紙調査については予定通り実施し、結果の分析を終えることができた。本調査は当事者委員の参画に関する3年ごとの変化を把握する面と、参画に関連する要因を検討する目的を持つ。さらに、今回は当事者委員を含め精神保健福祉コミュニティの構築を実現する都道府県等の抽出を兼ねていた。分析の結果、適する都道府県等を抽出でき、2019年度以降多方面にわたり綿密に調査する見通しがたった。22015年度から3年間取得していた科研費調査で実施した聞き取り調査に加え、2018年度に数ケース聞き取り調査を追加した。それらの結果を総合し、当事者委員のタイプ分けと都道府県等のタイプ分けを行うことができた。当事者委員については当事者活動とのつながりと、行政担当者とのつながりの二軸をもとに4分類したが、当事者活動とも行政担当者ともつながりが保てていることで、審議会において政策的な提言を実現できている当事者委員がいた。その一方、両つながりが乏しく、審議会への参画を負担に感じる当事者委員もいた。行政機関の場合は当事者委員の政策提言を尊重し、良好な関係を維持する都道府県等と、当事者委員の参画を活かせていない都道府県等があった。また、当事者委員の参画がない都道府県等のうち、いくつかのステップを経て参画が実現可能な都道府県等と、そのはるか手前に位置づく都道府県等があった。32018年度にNSWの調査をしたことで、2016年に実施したカリフォルニア州の当事者委員の参画とあわせ、わが国の現況を比較することが可能になった。今後、当事者委員の参画と政策提言を焦点化する上で手がかりを得た。研究に着手した時点から一部変更が生じている。これまでは政策決定過程への精神に障害のある人々の参画と参画を進める方略としての当事者活動、および行政機関のサポート体制について検討する予定であった。この点については引き続き実施する。これらに加え、政策決定過程において精神に障害のある人々が政策提言を実現する場合、実現しやすい環境調整が重要であると考えられる。これまで得た情報から、シドニーのように当事者委員の参画を支援するNGO団体が存在する場合、行政担当者も精神に障害のある人々も政策決定過程への参画が容易に見受けられた。わが国においてこうした支援団体が成立し得るかを検証することも本研究の中で実施可能と考えられる。
KAKENHI-PROJECT-18K02113
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中世村落関係史料の史料学的研究
本研究によって写真収集した史料を、従来から東京大学史料編纂所に集積されていたものとあわせると、畿内地域に現存する村落関係史料のうちの大半を把握することができたことになる。これによって、村落関係史料を史料学的に分析するための基礎条件がようやく整えられたといえる。本研究で収集した史料について、その伝来主体と、各史料群の構成要素の相関関係について考察すると、以下のようになる。村落関係の史料群は、伝来主体によって(1)個人所有文書、(2)村有文書、(3)神社文書、(4)寺院文書に大別できる。それぞれの史料群を構成する要素をみると、(1)は、大名発給文書からなる史料群と、土地売券、寄進状、土地台帳、年貢関係帳簿などからなる史料群に明瞭に分けられることが判明した。これは国人層であるが、地侍層であるかという伝来主体の階層の違いを反映していると見られる。(2)は売券や年貢関係帳簿からなり、地侍伝来文書と近い性格を持つ。また(3)は荘郷鎮守系のものと村鎮守系のものに分けられるが、中世に遡る祭礼記録をもつものは前者に限られる。以上のように、史料群の伝来主体と構成要素の相関関係について一定の見通しをつけることができたことによって、村落関係史料群を分析していくうえでの基礎的な視角を提供できたといえる。本研究によって写真収集した史料を、従来から東京大学史料編纂所に集積されていたものとあわせると、畿内地域に現存する村落関係史料のうちの大半を把握することができたことになる。これによって、村落関係史料を史料学的に分析するための基礎条件がようやく整えられたといえる。本研究で収集した史料について、その伝来主体と、各史料群の構成要素の相関関係について考察すると、以下のようになる。村落関係の史料群は、伝来主体によって(1)個人所有文書、(2)村有文書、(3)神社文書、(4)寺院文書に大別できる。それぞれの史料群を構成する要素をみると、(1)は、大名発給文書からなる史料群と、土地売券、寄進状、土地台帳、年貢関係帳簿などからなる史料群に明瞭に分けられることが判明した。これは国人層であるが、地侍層であるかという伝来主体の階層の違いを反映していると見られる。(2)は売券や年貢関係帳簿からなり、地侍伝来文書と近い性格を持つ。また(3)は荘郷鎮守系のものと村鎮守系のものに分けられるが、中世に遡る祭礼記録をもつものは前者に限られる。以上のように、史料群の伝来主体と構成要素の相関関係について一定の見通しをつけることができたことによって、村落関係史料群を分析していくうえでの基礎的な視角を提供できたといえる。本年度は近江・南山城地域の村落文書の調査ならびに写真による収集を行った。調査に赴いた機関、個人は以下のとおりである。滋賀県蒲生郡竜王町橋本左右神社滋賀県坂田郡米原町教育委員会(西山文書・江龍文書・筑摩神社)同町松尾寺同町松原家同町湯谷神社同町蓮華寺滋賀県彦根市滋賀大学経済学部附属史料館(石田文書・東野文書・福永文書・柏原区有文書)滋賀県神崎郡永源寺町永源寺京都府相楽郡山城町山城郷土資料館(多賀神社文書調子文書)同町小林凱之家(狛文書)同町涌出宮京都府城陽市乾敏夫家このうち橋本左右神社文書、永源寺文書には近年の調査で存在が明らかになり、学界に内容の紹介されていない中世文書多数が含まれる。また滋賀大学経済学部附属史料館では、従来近世文書として扱われていた文書群の中から多数の中世文書を見つけることができた。いずれも中世後期畿内の大名領国の支配構造や、村落祭祀を解明する上で貴重な情報を含む内容である。1村落関係史料の現状の調査・写真による収集本年度は大阪府・滋賀県所在の村落文書の調査・写真による収集を行った。調査に赴いた機関、個人およびそれぞれでの所蔵史料は以下のとおりである。大阪府高槻市役所(高槻市役所所蔵文書、富田支所所蔵文書、郡家区有文書)茨木市常称寺(常称寺文書)三島郡島本町藤井則継家(童使出銭日記藤井文書)河内長野市登尾友美家(流谷八幡宮文書)神が丘自治会(鬼住区有文書)町井正雄家(町井文書)富田林市美具久留御魂神社(美具久留御魂神社文書)藤井寺市葛井寺(葛井寺文書)羽曳野市杜本神社(杜本神社文書)滋賀県坂田郡山東町柏原成菩提院(成菩提院文書)このうち流谷八幡宮と町井家においては学界に未紹介の文書と荘園絵図を見つけることができた。また成菩提院文書は学界未紹介の中世文書多数を含んでいる。2収集した史料の整理・分析謝金経費によって、昨年収集した史料の整理と目録化を行った。ア村落関係史料の現状の調査・写真による収集本年度、文書収集のために調査に赴いた機関、個人およびそれぞれでの所蔵史料は以下のとおりである。奈良県奈良市奈良県同和問題関係史料センター(辻文書)・五條市五條市立博物館(古澤文書)・同市表野輝子家(表野文書)・同市下村重義家(下村文書)・同市三箇弘毅家(三箇文書)/滋賀県坂田郡山東町成菩提院(成菩提院文書)
KAKENHI-PROJECT-10410080
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中世村落関係史料の史料学的研究
上記史料は、いずれも中世後期から近世初頭にかけての村財政にかかわる文書を含んでいるが、活字では部分的にしか紹介されたことがなく、学界ではあまり知られていないものである。特に辻文書、表野文書は、中近世移行期の村財政を継続的に分析するうえで、また下村文書は同じ時期の村祭祀を考えるうえでの重要史料である。三箇文書は、戦国期における国人と百姓の重層的な一揆の存在を示す貴重な文書を含んでいる。イ報告書の作成本年度は本研究の最終年度であったため、3年間の成果をまとめた研究成果報告書を作成した。報告書には、研究期間中に調査した46文書群を、その伝来に従って、国人文書、地侍文書、村有文書、神社文書、寺院文書、その他の6類型に分類したうえで、それぞれに含まれる文書一点ごとについて、目録を掲載した。また、調査した史料をもとにした研究として、久留島典子「橋本左右神社文書中の村入り相論関係史料」、榎原雅治「東野文書と東野氏」も掲載した。
KAKENHI-PROJECT-10410080
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企業の創設と成長における地理的効果:1896-1936年の東京の銀行業について
この研究はまだ継続中であるが、平成8年度においては以下のようなことを行った。1。データの収集:研究補助員により、主として「大蔵省銀行総覧」より銀行の本支店の創立と消滅について影響を及ぼしたと思われる事象について、明治から戦前までの東京の銀行の本・支店の変遷や人口の変遷などについてのデータを収集し、データベース化した。2。分析:イヴェントヒストリーという統計的手法を用いて分析を行っている。Greve-Strang-Tuma(1995)で開発した多変数ハザードレートモデルの実践ともなっている。これまでにわかったことを後述の論文にて日本経営研究学会で報告した。また平成9年度に行われる2つの学会に応募中である。3。これまでの分析結果:企業の発生率は、はじめ模倣により高くなりしだいに競争によって低くなることがわかっている。この研究ではさらに地理的位置の効果が加えられた。具体的には東京の区や郡といった大きさの地域でのローカルな競争の効果と、日本全体の銀行業の推移が東京に及ぼす効果の両方が検証された。本店のみの小さな銀行どうしの激しい競争の様子や、こうした1店舗銀行の存在が他銀行の同じ地域の支店には大きな影響を持つが、逆の効果はあまりないことなどがわかった。これらの結果は私がアメリカのデータで行った研究の結果とも一致している。後述の論文でとりあえず現在の結果を発表したが、さらに分析を進め、近いうちには外国の一流雑誌に投稿できるまでにもっていきたい。この研究はまだ継続中であるが、平成8年度においては以下のようなことを行った。1。データの収集:研究補助員により、主として「大蔵省銀行総覧」より銀行の本支店の創立と消滅について影響を及ぼしたと思われる事象について、明治から戦前までの東京の銀行の本・支店の変遷や人口の変遷などについてのデータを収集し、データベース化した。2。分析:イヴェントヒストリーという統計的手法を用いて分析を行っている。Greve-Strang-Tuma(1995)で開発した多変数ハザードレートモデルの実践ともなっている。これまでにわかったことを後述の論文にて日本経営研究学会で報告した。また平成9年度に行われる2つの学会に応募中である。3。これまでの分析結果:企業の発生率は、はじめ模倣により高くなりしだいに競争によって低くなることがわかっている。この研究ではさらに地理的位置の効果が加えられた。具体的には東京の区や郡といった大きさの地域でのローカルな競争の効果と、日本全体の銀行業の推移が東京に及ぼす効果の両方が検証された。本店のみの小さな銀行どうしの激しい競争の様子や、こうした1店舗銀行の存在が他銀行の同じ地域の支店には大きな影響を持つが、逆の効果はあまりないことなどがわかった。これらの結果は私がアメリカのデータで行った研究の結果とも一致している。後述の論文でとりあえず現在の結果を発表したが、さらに分析を進め、近いうちには外国の一流雑誌に投稿できるまでにもっていきたい。
KAKENHI-PROJECT-08730065
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08730065
チリ海嶺沈み込みと陸弧における火成活動の時空的変遷
本研究の目的は、チリ海嶺沈み込み帯近傍に露出するタイタオ・オフィオライトで沈み込む物質のキャラクタリゼーションを行い、海嶺沈み込みに伴って島弧における火成作用が時空間系列の中でどのように変遷してきたかを明らかにすること、海嶺沈み込み帯の深部構造を明らかにすることである。主な成果は以下の通りである。1)チリ南部のパタゴニアを中心に、5トンにおよぶ膨大な岩石試料を系統的に採取し、本地域に関しては世界一の岩石ライブラリーを構築した。2)古地磁気学的手法と構造地質学的手法を用いて、タイタオ・オフィオライトの定置過程を明らかにした。3)タイタオ・オフィオライトはN-MORBとE-MORBにまたがる幅広い組成を持つこと、同時代の島弧的な花崗岩類を付随することが確認された。また、中央海嶺近傍における海洋底変成作用が予察的に示された。4)パタゴニア火山ギャップの両端に位置する、ハドソン火山とラウタロ火山の詳細な地質と活動年代・組成の変遷を初めて明らかにした。5)アンデス南端火山帯に産出するいわゆるアダカイトの詳細な年代学的・地球化学的検討を行い、アダカイトの成因について、新しいモデルを提唱した。6)アルゼンチンの超背弧火山地帯を詳細に研究し、背弧火成作用の新しい成因を提唱した。7)陸弧に沿って2列あるいは3列にわたって、中新世以降の年代を持つ花崗岩類が分布することを認め、一部については年代と組成を明らかにした。8)海嶺沈み込みが生じている南緯46度付近を中心に60台の広帯域をカバーする地震計網を設置した(ケンブリッジ大学のプリーストリー博士と共同)。9)海嶺沈み込み帯における変形・流体移動モデルを構築し、地震波速度構造を予測した。本研究の目的は、チリ海嶺沈み込み帯近傍に露出するタイタオ・オフィオライトで沈み込む物質のキャラクタリゼーションを行い、海嶺沈み込みに伴って島弧における火成作用が時空間系列の中でどのように変遷してきたかを明らかにすること、海嶺沈み込み帯の深部構造を明らかにすることである。主な成果は以下の通りである。1)チリ南部のパタゴニアを中心に、5トンにおよぶ膨大な岩石試料を系統的に採取し、本地域に関しては世界一の岩石ライブラリーを構築した。2)古地磁気学的手法と構造地質学的手法を用いて、タイタオ・オフィオライトの定置過程を明らかにした。3)タイタオ・オフィオライトはN-MORBとE-MORBにまたがる幅広い組成を持つこと、同時代の島弧的な花崗岩類を付随することが確認された。また、中央海嶺近傍における海洋底変成作用が予察的に示された。4)パタゴニア火山ギャップの両端に位置する、ハドソン火山とラウタロ火山の詳細な地質と活動年代・組成の変遷を初めて明らかにした。5)アンデス南端火山帯に産出するいわゆるアダカイトの詳細な年代学的・地球化学的検討を行い、アダカイトの成因について、新しいモデルを提唱した。6)アルゼンチンの超背弧火山地帯を詳細に研究し、背弧火成作用の新しい成因を提唱した。7)陸弧に沿って2列あるいは3列にわたって、中新世以降の年代を持つ花崗岩類が分布することを認め、一部については年代と組成を明らかにした。8)海嶺沈み込みが生じている南緯46度付近を中心に60台の広帯域をカバーする地震計網を設置した(ケンブリッジ大学のプリーストリー博士と共同)。9)海嶺沈み込み帯における変形・流体移動モデルを構築し、地震波速度構造を予測した。平成13年度の主な成果は次の通りである。南から北へ移動してきたチリ海嶺の海嶺沈み込みに伴い、島弧における火成作用の時空間的変遷を明らかにする目的で研究をすすめた。火山班は、深成作用班と共同して、熱い海嶺沈み込みによるスラブ溶融を実証するために、平成14年2月現在、Lautaro火山などのアダカイトや台地玄武岩・中新世花崗岩類の採取を行っている。分析チームは、アンデス山脈中軸部の火山から採取した試料について、分析と年代測定を行い、溶岩ごとの高精度年代値が明らかになりつつある。地形班は2001年12月に北パタゴニア氷原で、溢流氷河の空撮を行った。さらに、ソレール氷河において地形図作成のための基準点のGPS測量と準垂直空中撮影を行った。ハドソン火山からの降下火山灰を採取した。地震班は、地震計網の設置に先立って、沈み込み帯での火成作用-変成作用・地球規模での物質-エネルギー循環を考える上で重要な、沈み込み帯のマントル対流、温度構造、物質循環についての数値モデルの開発を行い、火成作用-変成作用の再現や観測との対比を通して、沈み込み帯の地質現象の総合的理解を目指した。岩石の変形を粘性一定の流体として扱い、(1)平行な2平板にはさまれて押される場合、(2)斜交する2平板の間の角度が狭まって流体を押し出す場合、(3)斜交する2平板の一方の平板が流体を引きずることによって、コーナー流れを生み出す場合、を流体の導入の影響を考慮しながらモデル化した。Transpression-typeや3次元コーナー流れなど、現実的で多様な状況を再現することができた。
KAKENHI-PROJECT-13373004
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13373004
チリ海嶺沈み込みと陸弧における火成活動の時空的変遷
その結果、prolate strainが起こるのは、3次元コーナー流れだけに限られ、他のモードでは、すべてoblate-plane strainが卓越することが分かった。安間ほかの地質班は今年度12月から1月にかけて50日間にわたってチリ海嶺沈み込み帯近傍の南緯46度付近に露出する鮮新世タイタオ・オフィオライトの地質調査と中新世花崗岩類の岩石採取を行った。この結果、タイタオオフィオライトの構造や貫入機構についての知見が得られたとともに、2トン以上の岩石試料が収集された。来年度は、投稿を目指して地質図をまとめるとともに、これらの試料を分析する予定である。折橋ほかの火山班は昨年度までに採取したパタゴニア地方全域の火山岩類のK-Ar年代測定および全岩化学分析に着手し、特に1)チリ・リッジ近傍のHudsonおよびLautaro火山の火成活動の解明、2)extra-back arcに分布する漸新世-中新世玄武岩類のマグマ組成の進化プロセスの解明、を中心に取り組んだ。前者の結果については来年度6月末にRevista Geologica de Chileにて編集予定の特集号に2編の論文を投稿予定である。岩森ほか地震班では、海嶺沈み込み帯の基本場の性質についての理論的研究および来年度の地震波探査の準備を進めた。前者に関しては、沈み込み帯の火成岩および融解実験データの化学組成の広範なコンパイルを進め、全体の組成バリアンスの80パーセント程度が高々2-3つの数で記述可能なことを見出し、今後のモデル化にとって、比較的単純な溶融モデルが有効であることを示した。また、前弧域の変形については、一般的なさまざまな場に適応できる3次元粘性流動モデルを構築し、このモデルを白亜紀海嶺沈み込みの産物と考えられる領家-三波川変成帯の変形に適応した(Iwamori,2002;2003a;2003b)。その結果、前弧城が3次元コーナー流れを起こした可能性を見出した。後者については、日本学術振興会の短期招聘プログラムに、地震班の共同研究者であるプリーストリー博士(ケンブリッジ)とバタイエ博士(コンセプション)の日本への招聘を提案した。残念ながらバタイエ博士については招聘が認められなかったものの、プリーストリー博士については認められ、2003年の5-6月に来日予定である。地震班(責任者:岩森)は、3Maおよび10Maに沈み込んだ2つの海嶺セグメントが位置すると考えられる地域(ジェネラルカレラ湖周辺地域)を中心に、およそ南北300km x東西100km範囲に、広帯域地震計20台を設置した(2004年1月)。今後のデータの蓄積によって自然地震による地下構造の推定および地震メカニズムによる応力場・テクトニクスの推定が可能となった。また、数値実験を繰り返し、海嶺沈み込み帯などのプレート収束域での水循環とマグマ生成のメカニズムについての新たなモデルを提唱した(研究発表参照)。深成作用班(責任者:安間)は、チリ海嶺沈み込みと密接に関連していると考えられる中新世以降の火成活動の時空的変遷を明らかにするため、南緯41度から49度付近にかけて、中新世深成岩類の試料採取を行った(2004年3月)。また、昨年度のタイタオ・オフィオライト調査旅行中に採取された試料の年代学的、地球化学的、古地磁気学的検討を行った。これらの成果の一部を学会などで発表(研究成果参照)し投稿論文を準備中である。火山班(責任者:折橋)は、アンデス弧の背弧地域に広範に見られるextra-back-arc火成作用の起源を探るため、南緯40度から43度付近に分布するソムンクーラ地域の台地玄武岩類の調査と試料採取を行った(2004年2月-3月)。
KAKENHI-PROJECT-13373004
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13373004
相対論的衝撃波における電子加速機構についての磁化強度σに対する包括的研究
PICシミュレーションによる相対論的衝撃波における電磁波放射及び粒子加速研究を引き続き進めた。昨年度までは陽電子・電子系での2次元シミュレーションで磁場が面外配位の垂直衝撃波を明らかにしてきたが、今年度では面内磁場配位に着目し、上流磁場の様々な強度σを変えて研究を行った。その結果、σ>10^(-2)の比較的磁場が強い状況ではこれまでと同じ強度の電磁場が衝撃波面から放射されることがわかったが、予想外にも、σ<10^(-2)の磁場が弱い状況下においても強い電磁場が放射されることが明らかになった。衝撃波面近傍でのワイベル不安定性が局所的に強い磁場を作り、これによる放射効率が高まったと理解された。昨年度の成果と併せて、相対論的衝撃波では電磁場放射が普遍的に起こりうることを明らかにした(Iwamoto et al., Astrophys. J., 2018)。また、イオン・電子系での大規模3次元PICシミュレーションを行い、イオンワイベル不安定による磁場生成とその飽和過程について世界で初めて明らかにした。3次元計算では強い磁場を長時間維持することが可能であることが明らかになり、これまでの研究で示された磁場の急速な散逸は2次元による次元制約であることを示した(Takamoto et al., Astrophys. J. Lett., 2018)。当初計画したように、これまで2次元相対論的衝撃波のダイナミクス・構造の研究が本課題によって大幅に進展している。また、その過程の中で、弱い上流磁場強度条件下でも電磁場放射が高強度で励起されることが明らかになるなど、予想外の成果も得られている。相対論的衝撃波で重要なワイベル不安定の基本的性質も、世界で初めて3次元計算を行い、3次元計算の重要性を示すことができた。これまでは、陽電子・電子プラズマ系での相対論的衝撃波のダイナミクスについて着目してきたが、今後はイオン・電子系プラズマでのダイナミクスについて明らかにしていく予定である。高強度の電磁場放射がイオン・電子系でも期待されることから、電磁場による電子の航跡場加速について着目し、電子加速について議論を進める。また、今年度の3次元ワイベル不安定の研究を踏まえて、陽電子・電子系での相対論的衝撃波の3次元構造についての研究も着手する。本計画では、近年我々が開発した「数値チェレンコフ不安定」を抑制可能なPICコードを用いて、多次元相対論的衝撃波における電子加速機構に着目した研究を行う。上流磁化強度σの大きさに対して、相対論的乱流リコネクション加速、航跡場加速の役割を明らかにし、磁気乱流強度分布及び粒子エネルギースペクトルを包括的に理解することを目的としている。本年度は、1.共同研究体制の構築、2.数値チェレンコフ不安定の抑制法の追加実証、3. 2次元PIC計算の実施、を計画しており、これらに対する実績は以下のようである。1.共同開発体制については、東京大学解析スパコンであるreedbushのノード固定利用申請を行い、解析環境やデータ共有環境を構築した。PICコードの整備を行い、コードを共同利用しやすくした、などを行った。2.数値チェレンコフ不安定の抑制方法について、マジックCFL法(Ikeya & Matsumoto, 2015)の追加実証を行ったその結果、準相対論的衝撃波(バルクローレンツ因子が2-5)では充分に抑制できていないことがわかった。そのため、電磁場の数値解法として新たにCole-Karkkinen法を実装し、不安定の抑制特性を調べた。その結果、準相対論的状況において従来の手法に対して数倍長い時間スケールで数値チェレンコフ不安定を抑制することに成功し、幅広い相対論的衝撃波のパラメタに対して不安定に悩まされることのないプラズマ粒子コードの作成に成功した。3. 2次元PICコードを用いて、複数の上流磁場強度σの下での相対論的衝撃波の計算の実施を行った。その結果、予想に反して、幅広いσの範囲で衝撃波面におけるシンクロトロンメーザー不安定による電磁波放射が起きることが明らかになった。その振幅は、レーザープラズマ分野で知られる航跡場加速を実現するうえで充分な強度であることが明らかになった。相対論的衝撃波の2次元シミュレーションを実施し、高解像度計算を行うことで幅広い磁化強度パラメタσ領域において、シンクロトロンメーザー不安定による電磁場放射が可能であることを示した。これは、当初想定していなかった、ワイベル不安定が卓越する弱い磁場条件(低σ)でも、ワイベル不安定とシンクロトロンメーザー不安定が共存できることを発見した、予想外の結果であった。一方、相対論的衝撃波の多次元計算で弊害となる数値チェレンコフ不安定について対処するため、新たな手法の開発をに迫られた。準相対論的衝撃波(バルクローレンツ因子が2-5程度)では、従来の手法では充分に抑制することができないことが判明したため、新たに電磁場解法としてCole-Karkkainen法を実装し、不安定の抑制特性を調べた。その結果、従来の手法に対して数倍長い時間スケールで数値チェレンコフ不安定を抑制することに成功し、幅広い相対論的衝撃波のパラメタに対して不安定に悩まされることのないプラズマ粒子コードの作成に成功した。共同開発体制の構築については遅れが出ている。PICコードの共有についてはコードの整備を行い順調に進んでいるが、HDF5フォーマットを採択することによるデータ構造の標準化については、コードへの実装が完了していない。PICシミュレーションによる相対論的衝撃波における電磁波放射及び粒子加速研究を引き続き進めた。
KAKENHI-PROJECT-17H02877
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H02877
相対論的衝撃波における電子加速機構についての磁化強度σに対する包括的研究
昨年度までは陽電子・電子系での2次元シミュレーションで磁場が面外配位の垂直衝撃波を明らかにしてきたが、今年度では面内磁場配位に着目し、上流磁場の様々な強度σを変えて研究を行った。その結果、σ>10^(-2)の比較的磁場が強い状況ではこれまでと同じ強度の電磁場が衝撃波面から放射されることがわかったが、予想外にも、σ<10^(-2)の磁場が弱い状況下においても強い電磁場が放射されることが明らかになった。衝撃波面近傍でのワイベル不安定性が局所的に強い磁場を作り、これによる放射効率が高まったと理解された。昨年度の成果と併せて、相対論的衝撃波では電磁場放射が普遍的に起こりうることを明らかにした(Iwamoto et al., Astrophys. J., 2018)。また、イオン・電子系での大規模3次元PICシミュレーションを行い、イオンワイベル不安定による磁場生成とその飽和過程について世界で初めて明らかにした。3次元計算では強い磁場を長時間維持することが可能であることが明らかになり、これまでの研究で示された磁場の急速な散逸は2次元による次元制約であることを示した(Takamoto et al., Astrophys. J. Lett., 2018)。当初計画したように、これまで2次元相対論的衝撃波のダイナミクス・構造の研究が本課題によって大幅に進展している。また、その過程の中で、弱い上流磁場強度条件下でも電磁場放射が高強度で励起されることが明らかになるなど、予想外の成果も得られている。相対論的衝撃波で重要なワイベル不安定の基本的性質も、世界で初めて3次元計算を行い、3次元計算の重要性を示すことができた。標準データフォーマットHDF5で出力するプログラムモジュールのPICコードへの実装を速やかに行う。また、これまで2次元PIC計算は陽電子・電子系の下での議論であったが、今年度よりイオン・電子系での2次元計算に着手し、本コードを用いたことによる強い乱流強度とそれに伴う乱流リコネクション、及び先駆波による上流領域での航跡場加速の効率をより定量的に議論を行うべく、2次元PIC計算の大規模計算を精力的に進める。これまでは、陽電子・電子プラズマ系での相対論的衝撃波のダイナミクスについて着目してきたが、今後はイオン・電子系プラズマでのダイナミクスについて明らかにしていく予定である。高強度の電磁場放射がイオン・電子系でも期待されることから、電磁場による電子の航跡場加速について着目し、電子加速について議論を進める。また、今年度の3次元ワイベル不安定の研究を踏まえて、陽電子・電子系での相対論的衝撃波の3次元構造についての研究も着手する。
KAKENHI-PROJECT-17H02877
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H02877
マイクロクラックから解明するオッセオインテグレーション獲得後の骨リモデリング機構
インプラント周囲骨の骨細胞に着目し、インプラント周囲骨応力応答について検討した。MLO-Y4細胞三次元ゲル包埋にスレッド形態のチタンプレートを配置し反復応力を与えると、周囲骨細胞のアポトーシス、RANKL、connexin43の発現上昇が認められた。ラット顎骨インプラント埋入モデルを用いても同様に応力下における組織学的検討を行い、咬合負荷時の骨細胞においてconnexix43の発現、アポトーシス細胞、TRAP陽性細胞が多く認められ、骨代謝が活発化されている可能性が示唆された。インプラント周囲骨細胞は骨細胞死や様々な因子の発現という現象を生じリモデリングの活性化を行っていることが示された。インプラントがオッセオインテグレーション獲得後に応力を受けた時、インプラント周囲骨のリモデリングはどのように生じているのか、殊に応力を感知する骨細胞に着目した実験をin vivo, in vitro両観点から行っている。in vivo実験:ラット口腔内にインプラントを埋入し、荷重なしの状態で8,12,16,20週間飼育し、研磨標本を作製し、マイクロクラックの発生を観察した。いずれの期間でもインプラントスレッド周囲にマイクロクラックの発生が認められた。マイクロクラックの評価については検討中である。in vitro実験:MLO-Y4細胞の三次元ゲル包埋培養により、骨細胞間の連絡機構、三次元ネットワーク構造を再現し、以下の実験を行った。1)MLO-Y4の三次元培養を行い、10種類の反復伸張刺激(変位量:0.095、0.178、0.223、0.268、0.305、0.380、0.712、0.893、1.07、1.22%)を24時間与え、MLO-Y4の生死や遺伝子発現の変化を観察した。また、MLO-Y4培養上清のマウス骨髄細胞の分化に対する影響を解析した。反復伸張刺激のひずみ量が大きくなるに従って死細胞数が増加した。また、real-time RT-PCR法にてRANKL/OPG比の増加、sclerostinの発現減少、connexin43の遺伝子発現上昇が観察された。MLO-Y4培養上清を添加したマウス骨髄細胞においては、低ひずみ下の培養上清において骨髄細胞のアルカリフォスファターゼ活性上昇を認めた。2)MLO-Y4の三次元ゲル包埋培養系にインプラントスレッド型チタンプレートを設置し、ゲルに反復刺激を与えるシステムを確立した。チタンプレートに反復刺激を付与したところ、スレッド周囲の生死細胞分布の局在は明らかではなかったが、ひずみを与えると死細胞の増加が認められた。インプラントがオッセオインテグレーション獲得後に応力をうけたとき、インプラント周囲骨リモデリングはどのように生じているのか、殊に応力を感知する骨細胞に着目した実験をin vivo、in vitro両観点から行っている。in vitro実験:MLO-Y4細胞の三次元ゲル包埋培養により、骨細胞間の連絡機構、三次元ネットワーク構造を再現し実験を行った。インプラント周囲骨の状態をin vitro系にて模するために、MLO-Y4細胞の三次元ゲル包埋培養系にインプラントスレッド型チタンプレートを設置し、ゲルに反復刺激を与えるシステムを確立した。チタンプレートに反復刺激を付与した時のひずみは圧縮刺激の要素が強いことが明らかになった。スレッド形態におけるMLO-Y4細胞の生死細胞の分布に特徴は認められなかったが、反復刺激により周囲骨細胞の死細胞の増加が認められた。また、アポトーシス細胞の増加も認められた。骨細胞はその特有の構造から、細胞突起間の連絡機構があることが知られている。本実験では細胞間連絡にも着目して検討した。反復刺激によりギャップジャンクション構成細胞であるコネキシン43の発現の増加も認められた。また、TRAP陽性細胞の増加も認められた。また、MLO-Y4細胞培養上清によるマウス骨髄細胞の分化を検討したところALP活性が認められた。in vivo実験:ラット口腔内にインプラントを埋入し、8、12、16、20週間飼育し、インプラント周囲骨のマイクロクラックの産生状態および石灰化度、アポトーシス細胞の局在を検討した。インプラント周囲骨にはマイクロクラックが発生し、その量は経過時的に減少傾向にあった。しかし20週後においてはスクリュー先端より多くのマイクロクラックの発生が認められた。またインプラント周囲には多数のアポトーシス細胞が認められた。in vivoおよびin vitroの実験ともに当初の計画通りに進捗している。特にin vitroの実験ではインプラント周囲特有のひずみを培養系で再現し計測が進んでいる。in vivoの実験も試料の作製は順調に進んでおり解析を行う段階に来ているため。オッセオインテグレーションをしたインプラント周囲の骨動態を解明すべく、長期的に機能させたインプラントの周囲骨を経時的に組織学的および免疫組織学的に検討した。ラット口腔内にインプラントを埋入し、オッセオインテグレーション獲得したのを確認し、咬合力をかけた群とかけない群を経時的(4, 8, 12, 16週間)に観察、比較した。マイクロクラックはどの観察期間でもスクリュー先端から発生しているのが確認できた。各群間では有意差は認められなかった。免疫組織学的においてはスクリュー付近でsclerostinの発現が亢進した。同個体の天然歯周囲骨にはインプラントスクリュー付近に発生したマイクロクラックのような組織像は認められなかった。MLO-Y4細胞の三次元ゲル包埋培養により、骨細胞間の連絡機構、三次元ネットワーク構造を再現した。
KAKENHI-PROJECT-26462925
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26462925
マイクロクラックから解明するオッセオインテグレーション獲得後の骨リモデリング機構
多段階のひずみを付与できるシリコーンウェル製培養装置上でMLO-Y4の三次元培養を行い、10種類の反復伸張刺激(変位量:0.0951.22%)を24時間与え、MLO-Y4の生死や遺伝子発現の変化を観察した。また、MLO-Y4培養上清のマウス骨髄細胞の分化に対する影響を解析した。反復伸張刺激のひずみ量が大きくなるに従って死細胞数が増加した。また、real-time RT-PCR法にてRANKL/OPG比の増加、sclerostinの発現減少が観察された。MLO-Y4培養上清を添加したマウス骨髄細胞においては、低ひずみ下の培養上清において骨髄細胞のアルカリフォスファターゼ活性上昇を認めた。インプラント周囲骨にはマイクロダメージを生じることがわかった。また、荷重により骨吸収因子の発現が亢進することから、荷重の有無にかかわらずインプラント周囲骨には骨代謝がこっていること、荷重により、より強く骨吸収因子が発現され骨代謝の開始を促す可能性が示唆された。インプラント周囲骨の骨細胞に着目し、インプラント周囲骨応力応答について検討した。MLO-Y4細胞三次元ゲル包埋にスレッド形態のチタンプレートを配置し反復応力を与えると、周囲骨細胞のアポトーシス、RANKL、connexin43の発現上昇が認められた。ラット顎骨インプラント埋入モデルを用いても同様に応力下における組織学的検討を行い、咬合負荷時の骨細胞においてconnexix43の発現、アポトーシス細胞、TRAP陽性細胞が多く認められ、骨代謝が活発化されている可能性が示唆された。インプラント周囲骨細胞は骨細胞死や様々な因子の発現という現象を生じリモデリングの活性化を行っていることが示された。in vivoおよびin vitroの実験ともに当初の計画通りに進捗している。特にin vitroの実験では既に2種類の応力をかけ、遺伝子解析まで行った。現在はサンプル数を増やすことで再現性をあげる予定である。in vivoの実験では明らかに歯牙周囲とインプラント周囲ではマイクロクラックのでき方は異なることが明らかになった。非荷重群しか行えていないが観察期間を増やし、長期的に観察を行った。今後は特にin vivoの実験を進めていく。in vitroで再現した培養系との相関も明らかにしたいと考えている。最終的なリモデリングの状況を明らかにするための検討を行っていく。研磨標本によりマイクロクラックと骨質、また凍結切片により周囲骨細胞が産生する因子を免疫学的観点より解析する。手技に関しては習得しているため計画通りに推進できると考える。歯科補綴学in vitroの実験では現在2種類の応力をかけ、遺伝子解析まで行っている。しかし、ばらつきもあるためもう少しサンプル数を増やすことで、再現性をあげる予定である。in vivoの実験では明らかに歯牙周囲とインプラント周囲ではマイクロクラックのでき方は異なる。
KAKENHI-PROJECT-26462925
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26462925