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大学評価における指標デザインとその活用方法の開発
本研究の目的は、大学の諸活動を評価する指標デザインとその活用方法の開発である。教育研究の質を保証するには、各大学におけるPDCAサイクルをいかに有効に機能させるかが課題となる。具体的には、大学の特性に応じた施策・計画の成果を的確に測ること、そして評価結果に従って改善するという合意を得た上で、計画を具体的なアクションに落とし込み遂行することがポイントとなる。しかし、国際化を初め大学改革の方向は多方面に及び、今後とるべき改革の方向は容易には判断できない。そこで、平成30年度は階層分析法(AHP)を用いたアンケート調査から得たデータを基にインタビュー調査を行い、大学は自大学の経営の現状をどのように捉え、何を課題としているのかについて聞き取り、量的データだけでは読み取れない具体的な課題について把握した。本研究では、評価基準の観点(「社会的責任」・「持続的成長」・「個性の発揮」の3つを想定)から改革の方向(「教育」、「学生支援」、「研究」、「社会貢献」、「管理運営(マネジメント)」、「ガバナンス・リーダーシップ」の6つを想定)の総合的重要度を求めて、最終目標(大学改革の課題)を決定するという階層図を用いた評価を行った。インタビュー対象大学は、大学の規模や地域性、学部構成、経営体制等の違いを考慮して抽出した。なお、今回のインタビュー調査は経営難が大学の存続に直結する私立大学のみを対象とした。大学経営の経年変化について、アンケート調査から得られた定量的データを用い、効率性・生産性の視点から分析した結果をインタビュー調査と合わせて考察した。効率性は包絡分析法(DEA)、生産性の変化についてはMalmquist生産性指数を用いた。考察の結果、健全な経営を行っている大学にはリーダーシップ、コミュニケーション、協働の組織文化といった共通する特色があることが確認できた。本研究の目的は、大学の諸活動を評価する指標デザインとその活用方法の開発である。教育研究の質を保証するには、各大学におけるPDCAサイクルをいかに有効に機能させるかが課題となる。具体的には、大学の特性に応じた施策・計画の成果を的確に測ること、そして評価結果に従って改善するという合意を得ることがポイントとなる。そのためには、国(文部科学省)や認証評価機関が指定する指標だけではなく、大学自身が評価指標をデザインすることが不可欠である。しかし、未だその手法は開発されていない。そこで、本研究では施策や計画に合致した評価指標のデザイン手法を開発し、学内及びステークホルダーとの合意を形成するプロセスについて考察する。平成27年度に実施する計画は、大学の重要課題を抽出し、具体性のある事例の作成と学内の合意を得ながら課題解決に導くAHP(階層化意思決定法)による指標選択のテンプレート開発であった。そのため、AHP手法に関する先行研究のサーベイを行った。また、選択した指標の活用方法の一つとして、ベンチマーキング手法の検討を始めている。これらの手法に関する先行研究について各時でサーベイした結果を共有するため、外部の有識者や研究協力者等を加えた研究会を開催した。また、AHPをスムーズに使用するには、実施手順や回答方法、説明文書の書き方等、様々な工夫が必要である。そこで、大学経営の実務者や一般社会人を対象に、集団でAHPを実施するシミュレーションを実施した。これらの研究成果については、日本評価学会等で研究発表した。なお、平成27年度は大学の重要課題を抽出するためのアンケート調査を行う予定であったが、AHPの階層図のイメージが固まらなかったため実施しなかった。平成28年度はアンケート調査を行う予定である。平成27年度は大学の重要課題を抽出するためのアンケート調査を行う予定であったが、大学に送られてくるアンケート調査の数は年々増加しており、各大学の担当者の負担増によって回答率は低迷している。そのため、アンケート調査の回数を減らし、一回の調査で得られる情報量を多くするということを検討した。具体的には、アンケート調査の目的を重要課題の抽出だけではなく、抽出した課題解決するための指標選択をAHPによって決定するというプロセスも加え、当初の計画よりもさらに発展的な内容とするというものである。しかし、AHPのフレームワークとなる階層図をどのように設定するのかを研究メンバー内で固めることができなかったため、アンケート調査の実施には至らなかった。ただし、平成28年度に実施する予定であった集団でAHPを行い、課題解決のための意思決定を行うというシミュレーションは、前倒しして平成27年度中に行うことができた。これによって、集団でAHPを実施する際の手順等、留意すべき事項が明らかになった。本研究の目的は、大学の諸活動を評価する指標デザインとその活用方法の開発である。教育研究の質を保証するには、各大学におけるPDCAサイクルをいかに有効に機能させるかが課題となる。具体的には、大学の特性に応じた施策・計画の成果を的確に測ること、そして評価結果に従って改善するという合意を得ることがポイントとなる。そこで、平成28年度の実施計画は、まずAHP(階層化意思決定法)を用いて大学の重要課題を課題解決に導く合意プロセスの試行を重ねることとした。大学行政管理学会の研究会やワークショップ等で、様々な属性を持つ大学関係者や大学院生によるグループワークを行い、AHPの実施方法や説明の仕方、指標設定等における課題について考察した。次に、大学経営に対する大学関係者の意識と実態とのギャップから重要課題を抽出するためのアンケート調査を実施した。
KAKENHI-PROJECT-15K04383
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K04383
大学評価における指標デザインとその活用方法の開発
調査票は三部構成とし、第一部は大学経営の実態を定量的に把握するための設問、第二部は大学の機能を「教育」、「学生支援」、「研究」、「社会貢献」、「管理運営」、「ガバナンス・リーダーシップ」に分け、大学経営全般を把握している大学関係者による自大学の主観的評価を行う設問とした。第一部、第二部に関しては、平成24年・平成26年に実施した「大学経営効率化アンケート」と同様の内容とし、経年変化をみられるようにした。第三部は第二部と同じ機能区分について、社会的責任・持続的成長・個性の発揮の3つの視点(評価基準)から「どの機能がどれぐらい重要か」を総合的に評価するため、AHPを用いた設問とした。これらのアンケートのデータを用いて、研究代表者・分担者・協力者が各自で分析を行った結果を持ち寄り、研究会を行った。当初の計画では、平成27年度に大学経営の実態を把握するためのアンケート調査を行い、平成28年度にIRの実態と課題を把握するためのアンケート調査を実施する予定であった。しかし、平成27年度はAHPのフレームワークとなる階層図をどのように設定するのかを研究メンバー内で固めることができなかったため実施できなかった。そこで、平成28年度は二つの調査目的を効果的に組み合わせた内容のアンケートを作成し、実施することができた。とくにアンケート調査の第二部と第三部の回答データを用いて、大学関係者による大学経営の評価を分析し、大学経営の重要課題を抽出することができた。また、平成27年度に引き続いて集団で行うAHPを行い、学内及びステークホルダーとの合意を形成するプロセスで生じる課題及びその解決方法について考察することができた。AHPを実施する際のテンプレートや演習のための事例作成についてもブラッシュアップすることができた。ただし、平成28年度はIRについて先進的な取組みをしている米国等の大学を訪問し、ヒヤリングを行う予定であったが実施できなかった。海外の大学の調査等は、平成29年度に行う。本研究の目的は、大学の諸活動を評価する指標デザインとその活用方法の開発である。教育研究の質を保証するには、各大学におけるPDCAサイクルをいかに有効に機能させるかが課題となる。具体的には、大学の特性に応じた施策・計画の成果を的確に測ること、そして評価結果に従って改善するという合意を得ることがポイントとなる。そこで、平成29年度の実施計画は、平成28年度に実施した「大学経営効率化」に関するアンケート調査で得たデータを使って、大学経営の全体を把握している人物の主観的評価と大学の実態の関係について分析し、その研究成果の公表を行うこととした。アンケート調査票は三部構成で、第一部は大学経営の実態を定量的に把握するための設問、第二部は大学の機能を「教育」、「学生支援」、「研究」、「社会貢献」、「管理運営」、「ガバナンス・リーダーシップ」に分け、大学経営全般を把握している大学関係者による自大学の主観的評価を行う設問とした。第一部、第二部に関しては、2012年、2014年に実施した「大学経営効率化」に関するアンケートとほぼ同様の内容となっているため、経年変化の分析を行った。
KAKENHI-PROJECT-15K04383
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K04383
卵子加齢の分子特性解明と新しいバイオマーカー開発の橋渡し研究
受精卵全能性獲得に必須の分子機序としてX染色体不活化に焦点をあてた。受精後に精子由来X染色体は不活化され、一方卵子X染色体が優先的に働く仕組みがヒストン3の9番目リジンにメチル基が3つ付加されていること(H3K9me3)を見出した。この非対称的なクロマチン状態を伴う刷込み型Xist遺伝子発現パターンが乱れると着床後早期に胚性致死に陥る。致死的精子ゲノム異常を受精卵段階でのアリルスイッチングにより生仔まで生存可能であることを初めて実証した(Fukuda A, et al. Plos Genetics 2016)。卵子の全能性獲得にはヒストン核タンパク質の化学的修飾も重要であることを見出した。本研究では、加齢卵子の全能性に関する質の低下を受精卵の段階で具体的な分子を明らかにしていく。胎盤機能への影響は、新規に樹立する栄養膜幹(TS)細胞の解析からアプローチする。さらに、将来バイオマーカーとして臨床応用可能な受精卵の分泌型miRNA解析を目指している。今年度は、実験動物マウスを用いたTS細胞樹立のためのβ-Catenin遺伝子欠損胚作出する系を構築した。加えて、着床前期胚でのβ-Catenin遺伝子発現動態をタンパク質レベルで解析するため抗体を選定し、内部細胞塊(ICM)と栄養膜外胚葉組織(TE)でβ-Catenin発現を評価し得た。バイオマーカー開発では、分泌型のマイクロ核酸解析系を目指し、今年度はヒト多能性幹細胞培養液を対象に網羅的なmiRNA解析の可能性について検討した。培地中のエキソソーム抽出を行い得て、エキソソーム由来のRNA抽出が安定して出来ることをバイオアナライザー等により定量的に確認出来た。微量培地(1mL以下)から2000程度のmiRNA解析をするの構築に成功した。重要な成果として、微量サンプル網羅的miRNA解析系構築に加え、培養条件の違いにより培地中に分泌される核酸の量と質(種類)が大きく異なることを見出した。より微量試料、極微量サンプルにより安定して解析できる系が必要であるが、今回得られた多能性と関連する分泌型miRNAをより詳細に解析する必要がある。初期胚の機能性評価であるICMから胚性幹細胞およびTEからTS細胞を通し発生能に連動した分子機能評価を可能とするとともに、よりトランスレーションナルな知見が得られる培地試料由来miRNAの科学的評価も行っていく。今年度は、今後の本研究推進に重要な基盤を構築できた。本研究では、加齢卵子の全能性に関する質の低下を受精卵の段階で具体的な分子を明らかにしていく。胎盤機能への影響は、新規に樹立する栄養膜幹(TS)細胞の解析からアプローチする。今年度は、実験動物マウスを用いたTS細胞樹立を行うとともに、着床前期胚発生と着床周辺期の胎盤発生期までに組織学的および分子発生動態的にも劇的に変動することに着目し卵子得意的な現象を切り口に分子機序を解明していく研究を進めた。私たちはこれまで、受精卵(雌)のX染色体が着床するまでの期間で精子由来細胞核優先に不活性化され、一方で卵子由来X染色体が活性化しているというインプリント型のX染色体不活化機構が卵子細胞核のX染色体ヒストンH3のリジン9番の3つのメチル基修飾(H3K9me3)によるものであることを世界で初めて見出した(Fukuda, et al. Nat. Comm., 2014)。今年度は、卵子が成熟する過程(新生児期から成体)では、DNAメチル化はX染色体不活化機構に関与せずX染色体の一部のクロマチン凝縮が受精後のインプリント型X染色体不活化に寄与していることを見出した。さらに、新生児期卵巣内の未熟な卵子から成体卵巣内の成熟卵子(原始卵胞期)内では、体細胞核と比較し大きく転写活性が低いことを発見した。発現動態からの分布では、極端に発現活性が低い遺伝子の割合が高い二峰性分布を示していた。ヒト卵子でも同様の傾向を示すものの、マウスほど顕著ではないことも初めて明らかにした。これは、いままで報告されていないXist遺伝子発現に依存しないX染色体不活化動態制御機構が卵子成熟過程では存在することを新たに発見した。この機構をさらに解明することで、不育症や加齢に伴う卵子の質に関する分子機序を解明できる可能性がある。卵子成熟とその機能性獲得に関係するクロマチン及びX染色体発現動態を初めて見出すことが出来た。マウスを用いて本質を見出す検証を進めていく。私たちはこれまで、受精卵(雌)のX染色体が着床するまでの期間で精子由来細胞核優先に不活性化され、一方で卵子由来X染色体が活性化しているというインプリント型のX染色体不活化機構が卵子細胞核のX染色体ヒストンH3のリジン9番の3つのメチル基修飾(H3K9me3)によるものであることを世界で初めて見出した(Fukuda, et al. Nat. Comm., 2014)。さらに、卵子が成熟する過程(新生児期から成体)では、DNAメチル化はX染色体不活化機構に関与せずX染色体の一部のクロマチン凝縮が受精後のインプリント型X染色体不活化に寄与していることを見出してきた。
KAKENHI-PROJECT-26293364
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26293364
卵子加齢の分子特性解明と新しいバイオマーカー開発の橋渡し研究
これは、いままで報告されていないXist遺伝子発現に依存しないX染色体不活化動態制御機構が卵子成熟過程では存在することの発見であり、この機構をさらに解明することで、不育症や加齢に伴う卵子の質に関する分子機序を解明できる可能性があることを示してきた。今年度は、これら知見の総括的検証として、卵子のXist発現を抑制する「しるし(H3K9me3)」を、特定の物質で処理することで外し、Xistを活性化させることが可能であることを第一に確認した。致死性精子ゲノム異常を卵子ゲノムが補償することを見出した。致死的精子ゲノム異常を受精卵段階でのアリルスイッチングにより生仔までレスキュー可能であることを世界で初めて実証することができた(Fukuda A, etal.Plos Genetics 2016)。本研究成果で、ゲノムへ手を加えること無しに眠っていた卵子の能力を引き出し受精胚を正常化させることが可能であった。これは、ゲノムの外につく「しるし」は極めて機能的であり、その機能を明らかにしたことで後発性の原因不明不妊・不育症を克服する突破口となり得る成果であった。受精卵全能性獲得に必須の分子機序としてX染色体不活化に焦点をあてた。受精後に精子由来X染色体は不活化され、一方卵子X染色体が優先的に働く仕組みがヒストン3の9番目リジンにメチル基が3つ付加されていること(H3K9me3)を見出した。この非対称的なクロマチン状態を伴う刷込み型Xist遺伝子発現パターンが乱れると着床後早期に胚性致死に陥る。致死的精子ゲノム異常を受精卵段階でのアリルスイッチングにより生仔まで生存可能であることを初めて実証した(Fukuda A, et al. Plos Genetics 2016)。卵子の全能性獲得にはヒストン核タンパク質の化学的修飾も重要であることを見出した。微量培地試料に対する網羅的分子解析としてエキソソーム抽出を行いエキソソーム由来のRNA抽出が安定して出来ることができたのは大きな成果であり、それより得られたmiRNA群が細胞動態と関連性があることが示唆され本研究目的が必要性のあるものであることが裏付けられた。βカテニンノックアウトマウス胚からのTS細胞樹立を進め、胎盤発生の体外培養系構築を目指す。ヒト組織による解析は、近年、本邦では不可能な規模での解析結果が他国から報告されそのデータは公的データバンクへ蓄積されている。その公的データを利用することでマウス解析からヒト発生分子機序への展開を的確に行っていきたい。28年度が最終年度であるため、記入しない。幹細胞生物学胎盤機能評価系として動物実験モデルマウスを用いたTS細胞樹立評価を行っているが、その基盤構築を重点に進める。試薬納期が遅れたため。28年度が最終年度であるため、記入しない。解析に出す予定であった検体の準備に想定よりも時間を要したため、外注解析費の支出が困難となり次年度使用額が生じた。次年度に試薬が届き次第、執行予定。28年度が最終年度であるため、記入しない。今年度に解析準備が整った解析検体について順次外注解析を行っていく予定であり、翌年度分助成金と合わせた支出を計画している。28年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-26293364
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26293364
非線形非凸計画問題に対する大域的・発見的ハイブリッド算法の研究
非線形非凸計画問題に対する大域的・発見的ハイブリッド算法として,当初は分枝限定法における上界値を局所探索によって強化し,計算途中で算法を強制停止させたときに出力させる暫定解を,既存の発見的算法に匹敵する精度に高めるプロトタイプを作成した。しかし収束を待ったときの計算時間が,局所探索を行わない場合に比べて著しく劣るだけでなく,暫定解の精度も予定したよりも向上しないことが判明したため,局所探索の手続きを取り止め,限定操作に用いる下界値を2段階に強化する算法に設計し直し,主として以下の4種類の非線形非凸計画問題にカスタマイズして適用した:(a)線形分数和の最小化問題,(b)低ランク非凸性のある凹最小化問題,(c)分離不能凹費用の生産輸送問題,(d)化学プロセス設計のための2階微分可能非凸計画問題.その結果,(a),(b)に関しては算法の初期段階で暫定解が大域的最適解に等しくなることが明らかになった.このことは発見的算法として十分に実用性のあることを意味する.また大域的算法として用いた場合でも,既存の算法よりもはるかに効率のよいことが計算機による比較実験で確認できた.(c),(d)に関しては,その問題構造を活かして算法をさらに効率の良いものにできる可能性はあるものの,十分な実用性を認めることができた.この他に,算法の途中で何度も解決の求められる緩和問題に対し,内点法の適用を考察し,理論的に良好な知見を得ることができた.非線形非凸計画問題に対する大域的・発見的ハイブリッド算法として,当初は分枝限定法における上界値を局所探索によって強化し,計算途中で算法を強制停止させたときに出力させる暫定解を,既存の発見的算法に匹敵する精度に高めるプロトタイプを作成した。しかし収束を待ったときの計算時間が,局所探索を行わない場合に比べて著しく劣るだけでなく,暫定解の精度も予定したよりも向上しないことが判明したため,局所探索の手続きを取り止め,限定操作に用いる下界値を2段階に強化する算法に設計し直し,主として以下の4種類の非線形非凸計画問題にカスタマイズして適用した:(a)線形分数和の最小化問題,(b)低ランク非凸性のある凹最小化問題,(c)分離不能凹費用の生産輸送問題,(d)化学プロセス設計のための2階微分可能非凸計画問題.その結果,(a),(b)に関しては算法の初期段階で暫定解が大域的最適解に等しくなることが明らかになった.このことは発見的算法として十分に実用性のあることを意味する.また大域的算法として用いた場合でも,既存の算法よりもはるかに効率のよいことが計算機による比較実験で確認できた.(c),(d)に関しては,その問題構造を活かして算法をさらに効率の良いものにできる可能性はあるものの,十分な実用性を認めることができた.この他に,算法の途中で何度も解決の求められる緩和問題に対し,内点法の適用を考察し,理論的に良好な知見を得ることができた.従来から効率的な解決の望まれていた分数関数和の最小化問題を,既存算法の3分の1未満の計算時間で処理することに成功した.これは,研究代表者が02年に設計した台形分枝限定法で用いた分数関数の劣評価関数を,分数がもつ単純な性質に着目し,これを利用することで大幅に強化できたことによる.厳密に実装すれば非常に高速となるが,実装に多大な手間がかかるため,劣評価関数を簡略した算法も併せて設計した.この簡易算法は,問題の中の分数が少ない場合には厳密版さえも凌駕する性能を発揮した.研究成果は論文にまとめ,現在Global Optimization誌に投稿中である.また,逆凸計画問題の特殊ケースとして逆凸制約関数が1変数関数の和に分離可能である問題に対し,その構造を利用した2種類の厳密算法を設計した.いずれも矩形分枝限定法に分類できるが,一方は双対問題となる分離可能凹最小化問題を繰り返し解き,他方は逆凸計画問題としてそのまま処理する方法を採用した.研究成果をまとめた論文は,Applied Mathematics and Decision Sciences誌に採択されて掲載予定である.この種の問題は分離可能凹最小化問題に鑑みて多くの応用が予想され,設計した算法は今後提案されるであろう他の算法との比較基準に用いられることも期待される.以上2つの問題の研究から,一般の非線形非凸計画問題に対するハイブリッド算法では,サブルーチンとして用いる単体法の効率的な運用が鍵となることが明らかとなり,現在その実装に関する論文を執筆中である.生産輸送問題は,生産費用と輸送費用を同時に最適化する単純なサプライチェインモデルである.しかし,規模の経済の働きを考慮すれば,多数の局所解が存在する非凸最適化問題となる.これまで,生産関数は各工場ごとの凹関数の和となることを仮定して算法が提案されてきたが,工場間での原材料の融通を考えると,この仮定は現実的とは言いがたい.そこで分離可能性を仮定せず,限定操作を工場と倉庫数の低次多項式時間で行う矩形分枝限定法を開発した.この限定操作で得られる最適値の下界値は従来よりも劣るが,処理速度は格段に優れており,総計算時間は大幅に改善されることが計算実験によって確認された.研究成果をまとめた論文は,Journal of the Operations Research Society of Japanに採択された.
KAKENHI-PROJECT-15560048
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15560048
非線形非凸計画問題に対する大域的・発見的ハイブリッド算法の研究
生産輸送問題に用いた限定操作のアイデアは,そこで解かれる緩和問題の実行可能領域を矩形に拡げることで緩和問題の処理速度を上げることにある.しかし,これによって下界値が劣化するため,より一般の非凸最適化問題に適用するには下界値の強化手続きが必須である.そこで,ラグランジュ緩和を利用して下界値強化を行う二段階限定操作を備えた汎用矩形分枝限定法を開発した.下界値強化手続きは,非凸関数に含まれる変数の数の二乗の時間で行うことができるため,限定操作に掛かる手間をほとんど変えることなく,強力な下界値を得ることができる.計算実験では,既存算法よりも遥かに効率よく大域的最適解の得られることが確認された.研究成果をまとめた論文は,Pacific Journal of Optimizationに採択された.
KAKENHI-PROJECT-15560048
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15560048
有効かつ安全なナノ医薬品の設計に資するナノマテリアルの安全性評価マーカーの探索
申請者は、ナノ医薬品の安全性を開発段階において、早期に予測・診断できる安全性評価マーカーの探索を図り、その基礎情報の収集を推進している。当該年度は、薬物送達担体として期待される非晶質ナノシリカを対象素材とし、急性期における生体影響を反映した発現変動蛋白質について、血中蛋白質の量的・質的変化の網羅的な解析を実施した。BALB/cマウスに、粒子径が70nmの非晶質ナノシリカ(nSP70)を0.8mg/mouseで尾静脈より単回投与し、投与後24時間に血液を回収した。回収してきた血漿サンプルを用い、二次元ディファレンシャル電気泳動により発現変動蛋白質を網羅的に解析した結果、nSP70投与群において、生理食塩水投与群と比較し2倍以上発現が増加しているスポットが59個、逆に発現が減少しているスポットが23個見出された。質量分析装置により対応する蛋白質の同定を試みたところ、計7種の蛋白質の同定に成功した。同定された蛋白質の中で、本検討では、ヘモペキシンに着目し、以後の解析を進めた。非晶質シリカ曝露後の血中でのヘモペキシンの発現変動を定量解析するために、BALBlcマウスにnSP70、nSP300、mSP1000をそれぞれ0.8mg/mouseで尾静脈投与し、投与後24時間における血中ヘモペキシン量をELISAにより測定した。その結果、血中ヘモペキシン量はnSP70投与群でのみ生理食塩水投与群と比較して有意に増加することが明らかとなった。このことから、血中ヘモペキシン量が、非晶質シリカの粒子径の減少に伴い増加することが明らかとなった。今後は、これら血中ヘモペキシン量の増加と非晶質ナノシリカ投与により誘発される生体影響との連関解析を図ることで、ナノマテリアルの安全性を事前に予測・評価し得るシステムの確立を目指す。申請者は、ナノ医薬品の安全性を開発段階において、早期に予測・診断できる安全性評価マーカーの探索を図り、その基礎情報の収集を推進している。当該年度は、薬物送達担体として期待される非晶質ナノシリカを対象素材とし、急性期における生体影響を反映した発現変動蛋白質について、血中蛋白質の量的・質的変化の網羅的な解析を実施した。BALB/cマウスに、粒子径が70nmの非晶質ナノシリカ(nSP70)を0.8mg/mouseで尾静脈より単回投与し、投与後24時間に血液を回収した。回収してきた血漿サンプルを用い、二次元ディファレンシャル電気泳動により発現変動蛋白質を網羅的に解析した結果、nSP70投与群において、生理食塩水投与群と比較し2倍以上発現が増加しているスポットが59個、逆に発現が減少しているスポットが23個見出された。質量分析装置により対応する蛋白質の同定を試みたところ、計7種の蛋白質の同定に成功した。同定された蛋白質の中で、本検討では、ヘモペキシンに着目し、以後の解析を進めた。非晶質シリカ曝露後の血中でのヘモペキシンの発現変動を定量解析するために、BALBlcマウスにnSP70、nSP300、mSP1000をそれぞれ0.8mg/mouseで尾静脈投与し、投与後24時間における血中ヘモペキシン量をELISAにより測定した。その結果、血中ヘモペキシン量はnSP70投与群でのみ生理食塩水投与群と比較して有意に増加することが明らかとなった。このことから、血中ヘモペキシン量が、非晶質シリカの粒子径の減少に伴い増加することが明らかとなった。今後は、これら血中ヘモペキシン量の増加と非晶質ナノシリカ投与により誘発される生体影響との連関解析を図ることで、ナノマテリアルの安全性を事前に予測・評価し得るシステムの確立を目指す。
KAKENHI-PROJECT-12J00497
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12J00497
単核非ヘム鉄酵素モデル系における高原子価酸化活性種の生成とその性質
例えば単核非ヘム鉄酵素であるドーパミンβ-ハイドロキシラーゼは単核銅イオンを活性中心に有し、分子状酸素を利用してドーパミンのβ位の水酸化を触媒する金属含有タンパク質である。そのような酸素添加反応において重要な活性酸素中間体として、金属に結合したハイドロパーオキソ種が挙げられる。金属-ハイドロパーオキソ種の検討は、酵素反応のみならず種々の低分子量モデル錯体を用いた系についても活発に行われている。しかし、金属-ハイドロパーオキソ種の反応性の完全な制御には至っていない。本研究室においては各種の非共有結合性相互作用を有する三脚型ポリピリジン配位子BPPA(bis(6-pivalamido-2-pyridylmethyl)(2-pyridylmethyl)amine)を用いて、捕捉の困難な単核銅-ハイドロパーオキソ錯体の単離に成功し、その分光学的・物理学的性質を明らかにした。この錯体は、配位子のピリジン6位に導入したピバルアミド基のアミドNHと銅に配位したハイドロパーオキソ種の結合酸素原子Oとの水素結合が熱的安定性に寄与し、室温においても安定に生成する。そこで本研究では、一旦生成した銅-ハイドロパーオキソ種を活性化して酸素添加反応に供与するために、水素結合の位置特異性の制御を試みた。その結果について以下に述べる。今回、BPPA配位子のハイドロパーオキソ種の結合酸素原子O(近位酸素原子)への水素結合を形成するピバルアミド基のかわりに、遠位酸素原子に水素結合できる部位を導入した新規配位子Ll(N'-methyl-N"-pivalamidoethyl-N,N-bis(pyridylmethyl)aminoethylamine)を設計し、過塩素酸銅との反応により錯体([Cu(Ll)](ClO_4)_2,を得た。この錯体はMeCN溶媒中-40°C条件下において、2当量のトリエチルアミンと10当量の過酸化水素を添加することにより、吸収スペクトルにおいて381nm(ε=1000M^<-1>cm^<-1>)にハイドロパーオキソイオンから銅へのLMCTと考えられるピークが観測され、単核銅-ハイドロパーオキソ錯体を形成することが示された。この単核銅-ハイドロパーオキソ錯体の溶液を室温まで昇温すると、LMCT由来の吸収は消失したため、パーオキソ錯体は分解したと考えられる。このパーオキソ錯体の熱分解による生成物をESI-massスペクトルにより追跡したところ、m/z=445,431,318,459にそれぞれ銅錯体由来のピークを観測した。これらは、配位子の脱メチル化により生成した銅錯体、脱アルキル化した銅錯体、一部が酸化された銅錯体にそれぞれ対応することから、配位子LlにおけるN-デアルキレーションおよび酸素移行反応が生じたものと推定できる。合成したMessal Mesenの鉄(III)錯体はクロライド錯体(1)、エトキシ錯体(2)およびアクア錯体(3)でいずれも単結晶として得られた。X線構造解析からエトキシ錯体(2)とアクア錯体(3)は、鉄(III)錯体としては珍しい歪んだTrigonalBipyramidal構造を持つことが分かった。この構造はジオキシゲナーゼであるProtocatechuate3,4-Dioxygenaseの鉄(III)中心の構造に類似しており、大変興味深い。アクア錯体(3)と、エトキシ錯体(2)から生成したヒドロキシ錯体(4)のESRスベクトルは本酵素に特徴的なg=4.3,9.29.4(E/D=0.28,ゼロ磁場分裂定数D=1.52.07cm^<-1>)のシグナルを示した。アクア錯体(3)のpH滴定によりその配位水のpKaは7.21と見積もられた。これは生理的pHにおいて酵素の鉄中心が60%ヒドロキシ体であることを示す。さらにアクア錯体(3)はE=-1.25,0.84,1.04V(vs Fc/Fc)にそれぞれFe(II)/Fe(III),Fe(III)/Fe(III)モノカチオンラジカル,Fe(III)モノカチオンラジカル/Fe(III)ジカチオンラジカルに相当する酸化還元波を示した。Fe(III)ジカチオンラジカル種は高原子価Fe(V)種とは異なるが、Fe(III)錯体をさらに二電子酸化した状態として-40度で準安定に生成することが分かった。例えば単核非ヘム鉄酵素であるドーパミンβ-ハイドロキシラーゼは単核銅イオンを活性中心に有し、分子状酸素を利用してドーパミンのβ位の水酸化を触媒する金属含有タンパク質である。そのような酸素添加反応において重要な活性酸素中間体として、金属に結合したハイドロパーオキソ種が挙げられる。金属-ハイドロパーオキソ種の検討は、酵素反応のみならず種々の低分子量モデル錯体を用いた系についても活発に行われている。しかし、金属-ハイドロパーオキソ種の反応性の完全な制御には至っていない。本研究室においては各種の非共有結合性相互作用を有する三脚型ポリピリジン配位子BPPA(bis(6-pivalamido-2-pyridylmethyl)(2-pyridylmethyl)amine)を用いて、捕捉の困難な単核銅-ハイドロパーオキソ錯体の単離に成功し、その分光学的・物理学的性質を明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-12740368
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単核非ヘム鉄酵素モデル系における高原子価酸化活性種の生成とその性質
この錯体は、配位子のピリジン6位に導入したピバルアミド基のアミドNHと銅に配位したハイドロパーオキソ種の結合酸素原子Oとの水素結合が熱的安定性に寄与し、室温においても安定に生成する。そこで本研究では、一旦生成した銅-ハイドロパーオキソ種を活性化して酸素添加反応に供与するために、水素結合の位置特異性の制御を試みた。その結果について以下に述べる。今回、BPPA配位子のハイドロパーオキソ種の結合酸素原子O(近位酸素原子)への水素結合を形成するピバルアミド基のかわりに、遠位酸素原子に水素結合できる部位を導入した新規配位子Ll(N'-methyl-N"-pivalamidoethyl-N,N-bis(pyridylmethyl)aminoethylamine)を設計し、過塩素酸銅との反応により錯体([Cu(Ll)](ClO_4)_2,を得た。この錯体はMeCN溶媒中-40°C条件下において、2当量のトリエチルアミンと10当量の過酸化水素を添加することにより、吸収スペクトルにおいて381nm(ε=1000M^<-1>cm^<-1>)にハイドロパーオキソイオンから銅へのLMCTと考えられるピークが観測され、単核銅-ハイドロパーオキソ錯体を形成することが示された。この単核銅-ハイドロパーオキソ錯体の溶液を室温まで昇温すると、LMCT由来の吸収は消失したため、パーオキソ錯体は分解したと考えられる。このパーオキソ錯体の熱分解による生成物をESI-massスペクトルにより追跡したところ、m/z=445,431,318,459にそれぞれ銅錯体由来のピークを観測した。これらは、配位子の脱メチル化により生成した銅錯体、脱アルキル化した銅錯体、一部が酸化された銅錯体にそれぞれ対応することから、配位子LlにおけるN-デアルキレーションおよび酸素移行反応が生じたものと推定できる。
KAKENHI-PROJECT-12740368
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分子動力学計算に基づくペロブスカイト太陽電池における有機カチオンの機能の解明
固体中の正電荷または負電荷は周囲の構造変形を伴う。このような構造変形を伴った電荷はポーラロンと呼ばれ、その性質の理解は太陽電池をはじめとした各種デバイスにおいて重要である。近年、変換効率の高い太陽電池として、鉛ハライドペロブスカイト(LHP)を用いたペロブスカイト太陽電池が注目されている。高い効率が得られる理由として、LHPにおける正電荷および負電荷キャリアの寿命や拡散距離が極めて長いという性質が挙げられており、この要因を明らかにするためLHPにおけるポーラロン形成過程の理解が求められている。本研究では、系の電子状態を量子化学的に解くことで原子に働く力を求め、それをもとに原子の運動をシミュレートする量子的分子動力学法により、LHPにおけるポーラロン形成過程を追跡した。LHPにおけるポーラロン形成は数nmにわたる大きな空間的スケールを持つ現象であることから、同程度の大きさのモデル系を対象に、大規模系に対応した量子化学計算手法である分割統治型密度汎関数強束縛法を用いて計算を行った。計算対象のモデル系は最も代表的なLHPであるMAPbI3 (MA: CH3NH3)とした。系に正電荷または負電荷が存在する状況を再現するため、系全体の電荷を+1または-1としてシミュレーションを実施した。MAPbI3は、形式的にPbI3-と表される骨格構造と、有機分子カチオンであるMA+からなる。ポーラロン形成過程のシミュレーションにより、PbI3-部分とMA+部分の双方について特徴的なダイナミクスが観察された。以上の結果は、LHPにおける電荷キャリアの性質について微視的理解を与えるものであり、今後の材料設計の指針を得るための基盤となりうる知見である。当初の研究計画では、大規模系でのシミュレーション実施に向けた各種準備に第1年度を充てるものとしていた。計算に用いた分割統治型密度汎関数強束縛法は経験的パラメーターに基づく近似計算手法であるため、計算に先立って系の性質をよく再現するパラメーターを決定する必要があり、主にこれを行う予定であった。また、その他各種の計算条件を決定するためのテストを実行することも予定していた。しかし、パラメーターの決定および各種テストが予定よりも早期に完了したため、当初の計画を前倒しし、実際に大規模系におけるポーラロン形成過程のシミュレーションを実施した。さらに結果の解析も行い、研究実績の概要に述べた通り、各部分における特徴的な構造ダイナミクスの観察およびその重要性の評価を行い、材料設計に資する知見が得られた。当初の研究計画を達成できたので、第2年度以降に行う予定であった内容(系の組成に対する依存性の解析)に向け、今回扱ったMAPbI3以外のLHPについても上記手法で取り扱うためのパラメーターの拡張に着手した。さらに、当初の研究計画を超えて電荷キャリアだけでなく励起子についても取り扱うことを視野に、非断熱遷移の取扱いに向けた計算プログラムの拡張に着手した。また、励起エネルギーを原子ごとに分割して評価する手法を開発・実装したので、励起子の空間的分布の解析への応用を試みている。以上から、研究計画に予定した事項については完了し、追加的な進捗と今後の見通しも得られていることから、研究は当初の計画以上に進展しているといえる。2018年度は、LHPにおけるポーラロン形成のメカニズムを解明する目的で、代表的な組成のLHP(MAPbI3)1種類をモデル系として選び、シミュレーションおよび解析を実施した。2019年度は、得られた知見を材料設計指針確立に活かすことを目的に、系の組成を変化させて同様なシミュレーション・解析を実施し、結果がどのように変化するかを体系的に比較する予定である。(L)HPは一般式ABX3で表され、Aとして1価カチオン、Bとして2価金属、Xとしてハロゲンが用いられる。本研究では、AとしてMAをはじめとする有機カチオンの他、実験的に用いられた実績のあるCs+およびRb+を考慮することを目指す。BとしてはPbとSnの2種類を、XとしてはCl、Br、Iの3種類をそれぞれ考慮することを目指す。現在、当該シミュレーションに必要なパラメーター構築に取り組んでいる。また、研究計画では予定していなかったが、励起子の緩和過程についても同様な分子動力学シミュレーションを実施することを新たに計画している。これには非断熱遷移の取扱が必要となるが、これに対応するプログラム拡張にはすでに着手しており、2019年度中の完成を見込んでいる。当該年度中に予備的な計算まで行い、その後の本格的なシミュレーションに向けて必要な準備を整える計画である。固体中の正電荷または負電荷は周囲の構造変形を伴う。このような構造変形を伴った電荷はポーラロンと呼ばれ、その性質の理解は太陽電池をはじめとした各種デバイスにおいて重要である。近年、変換効率の高い太陽電池として、鉛ハライドペロブスカイト(LHP)を用いたペロブスカイト太陽電池が注目されている。高い効率が得られる理由として、LHPにおける正電荷および負電荷キャリアの寿命や拡散距離が極めて長いという性質が挙げられており、この要因を明らかにするためLHPにおけるポーラロン形成過程の理解が求められている。本研究では、系の電子状態を量子化学的に解くことで原子に働く力を求め、それをもとに原子の運動をシミュレートする量子的分子動力学法により、LHPにおけるポーラロン形成過程を追跡した。LHPにおけるポーラロン形成は数nmにわたる大きな空間的スケールを持つ現象であることから、同程度の大きさのモデル系を対象に、大規模系に対応した量子化学計算手法である分割統治型密度汎関数強束縛法を用いて計算を行った。
KAKENHI-PROJECT-18J21325
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分子動力学計算に基づくペロブスカイト太陽電池における有機カチオンの機能の解明
計算対象のモデル系は最も代表的なLHPであるMAPbI3 (MA: CH3NH3)とした。系に正電荷または負電荷が存在する状況を再現するため、系全体の電荷を+1または-1としてシミュレーションを実施した。MAPbI3は、形式的にPbI3-と表される骨格構造と、有機分子カチオンであるMA+からなる。ポーラロン形成過程のシミュレーションにより、PbI3-部分とMA+部分の双方について特徴的なダイナミクスが観察された。以上の結果は、LHPにおける電荷キャリアの性質について微視的理解を与えるものであり、今後の材料設計の指針を得るための基盤となりうる知見である。当初の研究計画では、大規模系でのシミュレーション実施に向けた各種準備に第1年度を充てるものとしていた。計算に用いた分割統治型密度汎関数強束縛法は経験的パラメーターに基づく近似計算手法であるため、計算に先立って系の性質をよく再現するパラメーターを決定する必要があり、主にこれを行う予定であった。また、その他各種の計算条件を決定するためのテストを実行することも予定していた。しかし、パラメーターの決定および各種テストが予定よりも早期に完了したため、当初の計画を前倒しし、実際に大規模系におけるポーラロン形成過程のシミュレーションを実施した。さらに結果の解析も行い、研究実績の概要に述べた通り、各部分における特徴的な構造ダイナミクスの観察およびその重要性の評価を行い、材料設計に資する知見が得られた。当初の研究計画を達成できたので、第2年度以降に行う予定であった内容(系の組成に対する依存性の解析)に向け、今回扱ったMAPbI3以外のLHPについても上記手法で取り扱うためのパラメーターの拡張に着手した。さらに、当初の研究計画を超えて電荷キャリアだけでなく励起子についても取り扱うことを視野に、非断熱遷移の取扱いに向けた計算プログラムの拡張に着手した。また、励起エネルギーを原子ごとに分割して評価する手法を開発・実装したので、励起子の空間的分布の解析への応用を試みている。以上から、研究計画に予定した事項については完了し、追加的な進捗と今後の見通しも得られていることから、研究は当初の計画以上に進展しているといえる。2018年度は、LHPにおけるポーラロン形成のメカニズムを解明する目的で、代表的な組成のLHP(MAPbI3)1種類をモデル系として選び、シミュレーションおよび解析を実施した。2019年度は、得られた知見を材料設計指針確立に活かすことを目的に、系の組成を変化させて同様なシミュレーション・解析を実施し、結果がどのように変化するかを体系的に比較する予定である。(L)HPは一般式ABX3で表され、Aとして1価カチオン、Bとして2価金属、Xとしてハロゲンが用いられる。本研究では、AとしてMAをはじめとする有機カチオンの他、実験的に用いられた実績のあるCs+およびRb+を考慮することを目指す。BとしてはPbとSnの2種類を、XとしてはCl、Br、Iの3種類をそれぞれ考慮することを目指す。現在、当該シミュレーションに必要なパラメーター構築に取り組んでいる。
KAKENHI-PROJECT-18J21325
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新生児の脳循環と体循環の経時的評価-脳自動調節能の考察-
近赤外線時間分解分光システム(NIR-TRS法)を用い、正期産正常新生児、早産低出生体重児の脳循環代謝指標の基準値(標準値)を設定した。さらに超低出生体重児(ELBW児)、子宮内胎児発育不全児(SGA児)、動脈管開存症(PDA)合併児、新生児仮死児での評価を行い、病的新生児における脳循環代謝指標の変化を検討し、臨床的有用性を考察した。NIR-TRS法により病的新生児の脳循環代謝指標を評価することは、病的新生児の脳循環を安定に保つことに貢献し、その結果、頭蓋内出血(IVH)や低酸素性虚血脳症(HIE)の併発の予防や早期診断に有用である可能性が示唆された。我々は、近赤外線分光装置(NIRS)と心エコーを用い、脳循環、体循環の経時的変化を計測し、脳自動調節能に関して検討を行うことを目的としている。H23年度には正期産新生児、早産児の脳組織血液量(CBV)の正常値を報告した。H24年度には、子宮内発育不全児(IUGR)、動脈管開存症(PDA)合併時、超低出生体重児が低血圧を認めたときなどの状況での脳循環の変化の検討を行い、学会で発表を行った。我々は、近赤外線分光装置(NIRS)と心エコーを用い、脳循環、体循環の経時的変化を計測し、新生児の脳自動調節能に関して検討を行うことを目的としている。研究開始後から、正期産新生児、早産児の脳組織血液量(CBV)、脳組織酸素飽和度(cSO2)の基準値を設定した。その後、子宮内発育不全児(IUGR)、動脈管開存症(PDA)を合併した児、超低出生体重児に関しての検討を行った。H25年度には、CBVとcSO2という指標に加え、新たにμという脳構造の複雑性を反映すると考えられている指標の検討を行った。さらに、新生児仮死を認めた児におけるCBVとcSO2の検討を行い、それらの指標が新生児の急性期脳循環代謝評価の有用な指標となる可能性があることを報告した。近赤外線時間分解分光システム(NIR-TRS法)を用い、正期産正常新生児、早産低出生体重児の脳循環代謝指標の基準値(標準値)を設定した。さらに超低出生体重児(ELBW児)、子宮内胎児発育不全児(SGA児)、動脈管開存症(PDA)合併児、新生児仮死児での評価を行い、病的新生児における脳循環代謝指標の変化を検討し、臨床的有用性を考察した。NIR-TRS法により病的新生児の脳循環代謝指標を評価することは、病的新生児の脳循環を安定に保つことに貢献し、その結果、頭蓋内出血(IVH)や低酸素性虚血脳症(HIE)の併発の予防や早期診断に有用である可能性が示唆された。本研究は、近赤外線分光装置(near-infrared spectroscopy; NIRS)と心臓超音波断層装置(心エコー)を用い、新生児の生後早期の脳循環と体循環の関係を経時的に計測することで、新生児の"脳自動調節能"を検証し、頭蓋内出血(IVH)を予防するための管理指標を設定することを目的としている。本年度は、正常正期産新生児、早産児の脳循環の指標である脳血液量(CBV)、脳組織酸素飽和度(cSO2)、体循環の指標となる心拍出量、心機能の基準値を設定することを目標とした。さらに、子宮内発育不全児(IUGR)との比較検討を行った。これらの検討で得られた結果は、日本周産期新生児医学会、日本未熟児新生児学会、日本循環管理研究会、欧州小児科学会(ESPR)で発表した。当初の計画通り、正常新生児での正常値を報告し、その後、子宮内発育不全児(IUGR)、動脈管開存症(PDA)合併児、超低出生体重児などの病児での検討が行えた。当初の計画では、初年度の検討は正期産児、早産児(超早産児を含む)検討が目標であったが、子宮内発育不全児(IUGR)や低血圧を認めた児の結果も得ることができた。H25年度は、脳循環に大きな影響を及ぼすと考えられる重症新生児仮死児についての検討を行う予定である。また、H23年度、H24年度に国外および国内で発表を行ってきた結果を論文にする作業を行っている。今後は、目的に従い超早産児を中心とした低出生体重児の検討をさらに進めるとともに、病的新生児(動脈管開存症、新生児仮死)などを合併した検討を行っていく。また、現在までに得られた結果を論文として報告する。H25年度は、これまで学会発表を行ってきた内容を英語論文にするための英文校閲費として利用する予定。国際学会(アジアオセアニア周産期学会など)参加における参加費、旅費および論文作成の校閲費など。
KAKENHI-PROJECT-23591604
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23591604
地域特性の歴史的形成に関する基盤的研究
本プロジェクトでは、3年間にわたる研究期間の中で微調整を行いながらも、基本的に次の3つの枠組みを研究目的として掲げ、それぞれのテーマごとに研究組織を構成し、史料収集と研究活動を行った。(1)社会の基礎構造分析、(2)地主・小作関係の再検討、(3)特産地の歴史的形成過程の検討-榑木の生産と流通構造。まず(1)では、(1)御館-被官関係の再検討、(2)身分的周縁からみた地域社会、(3)飯田城下町の構造、の3点にわたり成果を得ることができた。(1)は、古島敏雄氏が研究対象とした大河原村前島家文書の地主経営史料を採集する一方、飯田市千代山中の中山和茂家文書、阿南町千木佐々木忠幸家、同町平久原照夫家、同町和合宮下金善家文書を調査・収集し、中世-近世移行期の兵農分離の身分論を視野に入れて御館-被官関係を再考察した。(2)は、飯田市立石斉藤芳男家文書、豊丘村河野通俊家文書、豊丘村歴史民俗資料館、喬木村宇佐美家文書をはじめ広く下伊那郡に散見する「簓」(説教者)の史料や、松尾村森本家文書、小木曽千恵子家文書などの「笠之者」に関する史料を収集することにより、百姓身分からは疎外された芸能者集団の存在を明らかにし、こうした身分的周縁を組み込んだ地域社会論を展望した。(3)は、城下町飯田の物流構造が、特定の商品目を取引売買できるか否かによって秩序づけられていたことを明らかにし、藩領域内の都市性の存立構造を検討した。(2)では、(1)小作慣行、(2)小農経営における小作農家の位置、という2つの観点から研究を行った。(1)は、近代伊那地方の地主小作関係の特徴として、「刈分小作」という小作慣行に注目し、史料の所在調査を行うとともに、その歴史的意義を考察した。但し現段階では、農商務省・農林省による大正元年および同10年の小作慣行調査で刈分小作慣行が行われている地域と指摘されている上伊那・下伊那地域では、刈分小作慣行に関わる史料を発見できなかった。しかし、従来の近代における小作慣行に関わる議論への問題点を見いだし、さらに小作慣行調査等に示されたデータから、刈分小作の刈分率の考察を行った。(2)は、日本の農家がもつ農業維持への強い指向性を解明するために、小農経営の中でも小作農経営の在り方を考察した。そのために、明治から大正期における飯田市嶋田の森本家の地主-小作関係を分析し、地主小作関係の継続性を明らかにする作業を進めた。(3)では、浪合村千葉家文書、大河原村前島家文書と千村代官所文書(大久保家文書)を収集し、榑木生産の労働組織の検討を進めているところである。本プロジェクトでは、3年間にわたる研究期間の中で微調整を行いながらも、基本的に次の3つの枠組みを研究目的として掲げ、それぞれのテーマごとに研究組織を構成し、史料収集と研究活動を行った。(1)社会の基礎構造分析、(2)地主・小作関係の再検討、(3)特産地の歴史的形成過程の検討-榑木の生産と流通構造。まず(1)では、(1)御館-被官関係の再検討、(2)身分的周縁からみた地域社会、(3)飯田城下町の構造、の3点にわたり成果を得ることができた。(1)は、古島敏雄氏が研究対象とした大河原村前島家文書の地主経営史料を採集する一方、飯田市千代山中の中山和茂家文書、阿南町千木佐々木忠幸家、同町平久原照夫家、同町和合宮下金善家文書を調査・収集し、中世-近世移行期の兵農分離の身分論を視野に入れて御館-被官関係を再考察した。(2)は、飯田市立石斉藤芳男家文書、豊丘村河野通俊家文書、豊丘村歴史民俗資料館、喬木村宇佐美家文書をはじめ広く下伊那郡に散見する「簓」(説教者)の史料や、松尾村森本家文書、小木曽千恵子家文書などの「笠之者」に関する史料を収集することにより、百姓身分からは疎外された芸能者集団の存在を明らかにし、こうした身分的周縁を組み込んだ地域社会論を展望した。(3)は、城下町飯田の物流構造が、特定の商品目を取引売買できるか否かによって秩序づけられていたことを明らかにし、藩領域内の都市性の存立構造を検討した。(2)では、(1)小作慣行、(2)小農経営における小作農家の位置、という2つの観点から研究を行った。(1)は、近代伊那地方の地主小作関係の特徴として、「刈分小作」という小作慣行に注目し、史料の所在調査を行うとともに、その歴史的意義を考察した。但し現段階では、農商務省・農林省による大正元年および同10年の小作慣行調査で刈分小作慣行が行われている地域と指摘されている上伊那・下伊那地域では、刈分小作慣行に関わる史料を発見できなかった。しかし、従来の近代における小作慣行に関わる議論への問題点を見いだし、さらに小作慣行調査等に示されたデータから、刈分小作の刈分率の考察を行った。(2)は、日本の農家がもつ農業維持への強い指向性を解明するために、小農経営の中でも小作農経営の在り方を考察した。
KAKENHI-PROJECT-14390017
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地域特性の歴史的形成に関する基盤的研究
そのために、明治から大正期における飯田市嶋田の森本家の地主-小作関係を分析し、地主小作関係の継続性を明らかにする作業を進めた。(3)では、浪合村千葉家文書、大河原村前島家文書と千村代官所文書(大久保家文書)を収集し、榑木生産の労働組織の検討を進めているところである。本年度の活動は、研究目的である(1)社会の基礎構造分析-16-17世紀の在地社会の変化と、18-19世紀の社会構造分析、(2)物流と運輸機構の分析-城下町飯田の社会構造分析および中馬による物流の構造的把握、(3)特産地の歴史的形成過程の検討-榑木の集荷・販売組織の解明、のうち、(1)に中心的な比重を置き、大河原村前島家文書(飯田市立美術博物館所蔵)の閲覧、マイクロ撮影をおこなった。また、和合村宮下家文書(高森町宮下家所蔵)をはじめ、千代村中山家文書(飯田市地域史研究事業準備室所蔵写真版)や、虎岩村平沢家文書(飯田市立図書館所蔵)などの閲覧、写真撮影による史料収集をおこなった。また、研究目的(2)(3)にかかわる史料所在状況を把握するために、飯田市地域史研究事業準備室と長野県歴史館において調査活動をおこなった。また、下伊那郡と飯田市域で作成されている史料目録を調査し、そのリストを作成した結果、33団体が発行している、合計146冊の目録を入手し、すべての複製を作成した。この複製は、東京外国語大学にて保管し、今後の調査の手がかりとして用いることにしている。さらに2003年1月27日には、本年度の調査によって得た史料所在状況の把握をもとに、研究分担者による個別報告を行い、2002(平成15)年度の活動方針を相談した。その結果、(1)社会の基礎構造分析:御館-被官関係の再検討(吉田ゆり子)、高須藩大庄屋制の考察(志村洋)、近代の地主-小作関係(坂根嘉弘)、(2)物流と運輸機構の分析:通り町野原家の経営分析(谷本雅之)、飯田城下町の構造(吉田伸之)、(3)特産地の歴史的形成過程の検討:榑木の生産と流通構造(後藤雅知)を行う方向が示された。本年度の活動は、研究目的である(1)社会の基礎構造分析-16-17世紀の在地社会の変化と、18-19世紀の社会構造分析、(2)物流と運輸機構の分析-城下町飯田の社会構造分析および中馬による物流の構造的把握、(3)特産地の歴史的形成過程の検討-博木の集荷・販売組織の解明、のうち、(1)に中心的な比重を置き、大河原村前島家文書(飯田市立美術博物館所蔵)の閲覧、マイクロ撮影をおこなった。また、上伊那郡中川村歴史民俗資料館、松川町資料館などにおいて近代の「刈分小作」に関する史料調査を行い、京都大学所蔵の農家経済調査原票の閲覧、写真撮影による史料収集をおこなった。その他、千代村山中の中山和茂家文書の調査・整理作業を開始した。その結果、同家は12世紀に源頼朝に抗して落ち延びた藤原忠親を祖とする由緒を持ち、近世に入る際、開発領主であった同家が百姓身分となるに及んで家来を「被官」として抱えた「御館」家であること、またその後、被官の自立と他村からの来住百姓による民主的な村落へと変容していく過程をたどることのできる、下伊那地域に典型的な姿を明らかにすることができることが判明した。また、松尾村の森本家文書や小木曽知恵子家文書の写真撮影による史料収集、および飯田市歴史研究所所蔵飯田市域の近世文書写真版をコピーにて収集した結果、百姓身分から阻害された「簓」や「笠之者」という芸能者集団の存在が明らかになり、身分的周縁論として新たな知見を得ることができた。2003年8月と2004年3月には、本年度の調査によって得た史料所在状況の把握をもとに、研究分担者による個別報告を行い、2003(平成15)年度の活動方針を相談した。
KAKENHI-PROJECT-14390017
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14390017
水素添加による炭化水素燃料の乱流燃焼特性改善と二酸化炭素、窒素酸化物排出量の低減
近年,省エネルギー,自然環境の保護といった社会的要求の高まりを受け,内燃機関技術にもなんらかの対策が求められている.石油枯渇問題から様々な代替燃料が検討されているが,なかでもメタンは天然ガスの主成分として豊富な埋蔵量を誇り,また,自然エネルギー利用の観点から注目されているバイオガスの主成分でもあるため,その燃焼特性を理解することは応用上重要となっている.一方,高効率な内燃機関燃焼技術として,希薄燃焼技術が注目されており,実用化の段階にあるが,燃焼速度の低下や,希薄限界近傍での失火の問題など未だ解決すべき問題を含んでいる.これら希薄燃焼の問題解決に関して著者等は以前の研究で少量の水素添加が有効であることを報告している.本研究ではメタンを燃料として少量の水素添加を行い希薄燃焼により高効率かつ安定燃焼を実現するために,水素添加がメタン混合気の乱流燃焼特性に及ぼす影響を更に詳細に検討した.本研究ではまず,水素添加が乱流燃焼速度に及ぼす影響を調べ,同じ当量比,層流燃焼速度の混合気でも水素添加量に応じて乱流燃焼促進効果(同一乱れ強さによる乱流燃焼速度の増加量)が大きくなることが分かった.次に本研究では可燃限界近傍の希薄混合気を使用して,水素添加により希薄混合気の乱流燃焼時の消炎限界が拡大することを示した.さらに本研究では水素添加による乱流燃焼促進機構の解明を試み,同一乱れ強さに対する乱流燃焼速度の差異が,乱流火炎の局所火炎片がうける火炎伸張に対する応答性(マークステイン数)の違いによる局所燃焼速度の変化により説明できることを示した.近年,省エネルギー,自然環境の保護といった社会的要求の高まりを受け,内燃機関技術にもなんらかの対策が求められている.石油枯渇問題から様々な代替燃料が検討されているが,なかでもメタンは天然ガスの主成分として豊富な埋蔵量を誇り,また,自然エネルギー利用の観点から注目されているバイオガスの主成分でもあるため,その燃焼特性を理解することは応用上重要となっている.一方,高効率な内燃機関燃焼技術として,希薄燃焼技術が注目されており,実用化の段階にあるが,燃焼速度の低下や,希薄限界近傍での失火の問題など未だ解決すべき問題を含んでいる.これら希薄燃焼の問題解決に関して著者等は以前の研究で少量の水素添加が有効であることを報告している.本研究ではメタンを燃料として少量の水素添加を行い希薄燃焼により高効率かつ安定燃焼を実現するために,水素添加がメタン混合気の乱流燃焼特性に及ぼす影響を更に詳細に検討した.本研究ではまず,水素添加が乱流燃焼速度に及ぼす影響を調べ,同じ当量比,層流燃焼速度の混合気でも水素添加量に応じて乱流燃焼促進効果(同一乱れ強さによる乱流燃焼速度の増加量)が大きくなることが分かった.次に本研究では可燃限界近傍の希薄混合気を使用して,水素添加により希薄混合気の乱流燃焼時の消炎限界が拡大することを示した.さらに本研究では水素添加による乱流燃焼促進効果の定量化を試み,メタン混合気に対して水素添加が最も有効に作用する当量比を見積もった.その結果,メタン混合気への水素添加による乱流燃焼速度の増加効果は当量比0.60.7付近の希薄側で最大となり,本手法がメタンを燃料とする内燃機関の希薄燃焼技術に有効な手法であることが分かった.近年,省エネルギー,自然環境の保護といった社会的要求の高まりを受け,内燃機関技術にもなんらかの対策が求められている.石油枯渇問題から様々な代替燃料が検討されているが,なかでもメタンは天然ガスの主成分として豊富な埋蔵量を誇り,また,自然エネルギー利用の観点から注目されているバイオガスの主成分でもあるため,その燃焼特性を理解することは応用上重要となっている.一方,高効率な内燃機関燃焼技術として,希薄燃焼技術が注目されており,実用化の段階にあるが,燃焼速度の低下や,希薄限界近傍での失火の問題など未だ解決すべき問題を含んでいる.これら希薄燃焼の問題解決に関して著者等は以前の研究で少量の水素添加が有効であることを報告している.本研究ではメタンを燃料として少量の水素添加を行い希薄燃焼により高効率かつ安定燃焼を実現するために,水素添加がメタン混合気の乱流燃焼特性に及ぼす影響を更に詳細に検討した.本研究ではまず,水素添加が乱流燃焼速度に及ぼす影響を調べ,同じ当量比,層流燃焼速度の混合気でも水素添加量に応じて乱流燃焼促進効果(同一乱れ強さによる乱流燃焼速度の増加量)が大きくなることが分かった.次に本研究では可燃限界近傍の希薄混合気を使用して,水素添加により希薄混合気の乱流燃焼時の消炎限界が拡大することを示した.さらに本研究では水素添加による乱流燃焼促進機構の解明を試み,同一乱れ強さに対する乱流燃焼速度の差異が,乱流火炎の局所火炎片がうける火炎伸張に対する応答性(マークステイン数)の違いによる局所燃焼速度の変化により説明できることを示した.
KAKENHI-PROJECT-11750169
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11750169
AD/HDと自閉症の教育援助を目的とした注意機能の分析
本研究では,軽度発達障害の中でも特に注意機能にかかわる障害に焦点を当て,日本人児童生徒を対象に学級単位で集団実施が可能な注意機能検査バッテリーを作成し,その有効性を実証的に検討した.開発にあたり,予備検査を実施した.この予備検査の結果に基づき,検査バッテリーを構成する下位検査を確定し,それぞれの下位検査について材料とマニュアルを完成させた.本検査の特徴として以下の3点を挙げることができる.第1に,注意が複数の異なる機能から構成されているとする認知心理学的枠組みに立脚し,4種の下位検査によって,選択的注意,持続的注意,反応抑制,注意分割という異なる注意機能をそれぞれに査定可能である.第2の特徴として,生態学的妥当性の指向を指摘できる.検査に対する被検児の興味をより喚起するために,UFOに乗っていじわる星人となかよし星人がやってくるという架空の物語を設定した.検査バッテリー内の各下位検査は,いじわる星人をやっつけ,なかよし星人を助けるという課題要求になっている.第3に,学校教育場面での利用を考慮し,学級単位で集団実施が可能な点が挙げられる.生徒を対象に本検査を施行し,学年の経過に伴う注意機能の発達的推移を明らかにした.このデータに基づき,各注意指標について学年ごとの標準化を試みた.この標準化資料によって,当該学年の平均得点との比較という観点から,4種の異なる注意機能のそれぞれについて被検児の発達の度合いをアセスメントすることが可能となった.さらに,被検児の日常の行勲をもっともよく知る立場にある学級担任を対象に,注意にかかわる問題点の評定を依頼し,その評定得点と注意機能検査との関係を検討した.本研究の中で開発された検査は,児童・生徒を対象とした注意機能障害のスクリーニングのために今後有効に活用できることが期待される.医療(医学部附属病院および長野県立子ども病院)と教育(教育部)の連携の中で,この検査を用いた就学指導と援助サービスのための研究を現在継続して展開中である.本研究は,従来より臨床的鑑別が困難とされてきたAD/HD児と自閉症児を対象に,教育援助的観点から考案した検査を実施し,両児童群における注意メカニズムの相違を実証的に検討することを目的とした.今年度は,3つの研究プロジェクトを実施した.まず,作動記憶モデルに基づき,児童版集団式リーディングスパン検査とリスニングスパン検査を開発した.知能と読解力,聴解力を併せて検査し相関分析を試みた結果,リーディングスパン得点は読解力とIQに対し正の相関を示したのに対し,リスニングスパン得点は読解力と聴解力に正の相関を示したもののIQとの相関はなかった.次に,高機能自閉症もしくはアスペルガー症候群と診断された非精神遅滞就学児を対象にWISC-RとK-ABCを実施し,そのプロフィールを分析した.分析の結果,WISC-Rの言語性IQと動作性IQの差の現れ方,K-ABCにおける総合尺度標準得点の差の現れ方,いくつかの下位検査の評価点において相違を確認した.この結果に基づき,アスペルガー症候群と高機能自閉症の認知特性の違いを明らかにし,指導援助の方策を考察した.第3に,小学校1年から6年生までの児童を対象に,選択的注意,持続的注意,反応抑制,注意分割という4種の異なる注意機能を測定するための日本語版集団式注意機能検査を開発した.4検査から得られた6指標について発達的推移を検討したところ,いずれの指標においても学年の経過に伴い得点が上昇していることを確認した.学級担任による不注意評定との関係を分析した結果,低中学年では持続的注意が劣る児童が,高学年では選択的注意が劣る児童が,教師から注意に問題があると評定されやすいことを証明した.本研究では,軽度発達障害の中でも特に注意機能にかかわる障害に焦点を当て,日本人児童生徒を対象に学級単位で集団実施が可能な注意機能検査バッテリーを作成し,その有効性を実証的に検討した.開発にあたり,予備検査を実施した.この予備検査の結果に基づき,検査バッテリーを構成する下位検査を確定し,それぞれの下位検査について材料とマニュアルを完成させた.本検査の特徴として以下の3点を挙げることができる.第1に,注意が複数の異なる機能から構成されているとする認知心理学的枠組みに立脚し,4種の下位検査によって,選択的注意,持続的注意,反応抑制,注意分割という異なる注意機能をそれぞれに査定可能である.第2の特徴として,生態学的妥当性の指向を指摘できる.検査に対する被検児の興味をより喚起するために,UFOに乗っていじわる星人となかよし星人がやってくるという架空の物語を設定した.検査バッテリー内の各下位検査は,いじわる星人をやっつけ,なかよし星人を助けるという課題要求になっている.第3に,学校教育場面での利用を考慮し,学級単位で集団実施が可能な点が挙げられる.生徒を対象に本検査を施行し,学年の経過に伴う注意機能の発達的推移を明らかにした.このデータに基づき,各注意指標について学年ごとの標準化を試みた.この標準化資料によって,当該学年の平均得点との比較という観点から,4種の異なる注意機能のそれぞれについて被検児の発達の度合いをアセスメントすることが可能となった.さらに,被検児の日常の行勲をもっともよく知る立場にある学級担任を対象に,注意にかかわる問題点の評定を依頼し,その評定得点と注意機能検査との関係を検討した.本研究の中で開発された検査は,児童・生徒を対象とした注意機能障害のスクリーニングのために今後有効に活用できることが期待される.医療(医学部附属病院および長野県立子ども病院)と教育(教育部)の連携の中で,この検査を用いた就学指導と援助サービスのための研究を現在継続して展開中である.
KAKENHI-PROJECT-13871016
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数学的アプローチによる様々な流体物理現象の解明
様々な流体物理現象の数理的理解を飛躍させるために、乱流モデルといった近似化モデルを極力使わずに、Navier-Stokes方程式やEuler方程式そのものを使った数学的洞察を進めている。特に流体運動特有の非線形相互作用に着目している。そういった非線形相互作用は、乱流物理研究分野では「渦粘性による乱流変動の近似」が主流となっているが、数学サイドではその非線形相互作用を一切近似化することなく、あくまでノルム評価で対処するのが主流である。例えば、3次元乱流のエネルギーカスケードに対する研究において、フーリエ級数展開されたNavier-Stokes方程式の非線形項の三波相互作用に対する統計的洞察が進められている(例えばOhkitani-Kida Phs. Fluids, 1992)。一方で、数学サイドでは「Littlewood-Paley分解」を使った非線形項のノルム評価によって、その三波相互作用の数学的洞察が進められている。一見すると、全く別の研究のようにみえるが、扱っている対象は同じ「非線形相互作用」である。このような数学・物理二つの研究分野の「非線形相互作用に対する洞察方向の隔たり」が、本研究の主要な着目点である。まとめると、流体運動を記述するNavier-Stokes方程式やEuler方程式を一切簡略化することなく、物理分野でまだ見出されていない様々な流体現象の解明を(数学解析を軸に)目指している。Clay財団の未解決問題と密接に関連している「流体方程式の適切性」の研究に従事していた者が、流体物理現象の解明に挑むという着眼点は今までほとんどなく、独創的である。本研究で、zeroth lawと瞬間的な渦伸長が関係することを示すことができた(韓国のKIAS所属のIn-Jee Jeong氏との共同研究)。Zeroth lawとは、乱流が乱流であるためのcornerstoneの一つであり、特にOnsager予想の起源となっている。しかしながら、このzeroth law自体の数理的理解を目指す研究は今まで皆無であった。それが可能になったのは、Bourgain-Li(2015)やKiselev-Sverak(2014)等によるEuler方程式研究のbreakthroughが起きたからであろう。それら最新の数学解析手法を駆使することで、修正版のzeroth lawを満たすNavier-Stokes流(瞬間的な渦伸長を生成する流れ)を構成することが出来た。また、工学的な要請から、竜巻型流れの物理学的研究がある程度進んではいるが、それらはあくまで乱流モデルを用いたものが主であり、3次元Navier-Stokes方程式そのものを使った研究は皆無であった。そこで、Notsu-Hsu-Yoneda (JFM 2016)では、flatな滑りなし境界条件を考慮に入れた軸対称Navier-Stokes方程式を使って竜巻型流れの数値解析を進めており、回転軸がflatな境界に刺さっている付近で流体速度が上昇し、同時に渦度方向も乱れるという、今まで誰にも知られていなかった新しい流体現象が発見されている。そこで本研究では、微分幾何学的手法を使って、軸付近の渦度自体が、その流体速度及び渦度それ自体を不安定化させるという極めてspace-localなメカニズムがあることを解明した(U. of Pennsylvania所属のLeandro Lichtenfelz氏との共同研究)。実際のzeroth lawを満たすNavier-Stokes流を構成する為には、大規模数値計算によるNavier-Stokes乱流の最新研究結果:Goto-Saito-Kawahara(2017)を考慮に入れないといけないだろう、と予想している。現時点では、scale-locality、渦のspace-filling、そして、そのNS乱流の素過程を駆使することでKolmogorovの-5/3乗則を導出することができている。従って、そのような洞察に基づいて、実際のzeroth lawを満たすNavier-Stokes方程式の解を構成することが、今後の研究の推進方策となるだろう。竜巻型流れに関しては、今後はその回転軸自身が歪んでいる場合や境界が曲がっている場合などの3次元Navier-Stokes方程式の数値シミュレーションを進め、それらに対する微分幾何学的洞察を深めていく。上述のzeroth lawや竜巻型流れは、非線形性が卓越している典型的な流体運動である。ただ、そのどちらも「ノルム不等式における下からの評価」に準拠しており、長時間挙動の解明には適していないと思われる。そのような視点から、そういった非線形性が卓越した流れ(特にEuler流)の長時間挙動を、リーマン幾何の微分同相群のアイデアによって詳しく調べる。より具体的には、C^1に埋め込まれるソボレフ空間による微分同相群から生成される無限次元多様体がその洞察の出発点となる。その多様体上の測地線がEuler方程式の解となることが広く知られている(V. I. Arnold, 1966)。そして、その多様体の共役点のありかたを深く洞察することがカギとなるであろう(幾何学サイドでも、共役点のあり方を調べることは、多様体の大域的構造を調べる際に重要である)。このような解析手法も念頭に置くことが、今後の研究の推進方策となる。様々な流体物理現象の数理的理解を飛躍させるために、乱流モデルといった近似化モデルを極力使わずに、Navier-Stokes方程式やEuler方程式そのものを使った数学的洞察を進めている。特に流体運動特有の非線形相互作用に着目している。
KAKENHI-PROJECT-17H04825
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数学的アプローチによる様々な流体物理現象の解明
そういった非線形相互作用は、乱流物理研究分野では「渦粘性による乱流変動の近似」が主流となっているが、数学サイドではその非線形相互作用を一切近似化することなく、あくまでノルム評価で対処するのが主流である。例えば、3次元乱流のエネルギーカスケードに対する研究において、フーリエ級数展開されたNavier-Stokes方程式の非線形項の三波相互作用に対する統計的洞察が進められている(例えばOhkitani-Kida Phs. Fluids, 1992)。一方で、数学サイドでは「Littlewood-Paley分解」を使った非線形項のノルム評価によって、その三波相互作用の数学的洞察が進められている。一見すると、全く別の研究のようにみえるが、扱っている対象は同じ「非線形相互作用」である。このような数学・物理二つの研究分野の「非線形相互作用に対する洞察方向の隔たり」が、本研究の主要な着目点である。まとめると、流体運動を記述するNavier-Stokes方程式やEuler方程式を一切簡略化することなく、物理分野でまだ見出されていない様々な流体現象の解明を(数学解析を軸に)目指している。Clay財団の未解決問題と密接に関連している「流体方程式の適切性」の研究に従事していた者が、流体物理現象の解明に挑むという着眼点は今までほとんどなく、独創的である。本研究で、zeroth lawと瞬間的な渦伸長が関係することを示すことができた(韓国のKIAS所属のIn-Jee Jeong氏との共同研究)。Zeroth lawとは、乱流が乱流であるためのcornerstoneの一つであり、特にOnsager予想の起源となっている。しかしながら、このzeroth law自体の数理的理解を目指す研究は今まで皆無であった。それが可能になったのは、Bourgain-Li(2015)やKiselev-Sverak(2014)等によるEuler方程式研究のbreakthroughが起きたからであろう。それら最新の数学解析手法を駆使することで、修正版のzeroth lawを満たすNavier-Stokes流(瞬間的な渦伸長を生成する流れ)を構成することが出来た。また、工学的な要請から、竜巻型流れの物理学的研究がある程度進んではいるが、それらはあくまで乱流モデルを用いたものが主であり、3次元Navier-Stokes方程式そのものを使った研究は皆無であった。そこで、Notsu-Hsu-Yoneda (JFM 2016)では、flatな滑りなし境界条件を考慮に入れた軸対称Navier-Stokes方程式を使って竜巻型流れの数値解析を進めており、回転軸がflatな境界に刺さっている付近で流体速度が上昇し、同時に渦度方向も乱れるという、今まで誰にも知られていなかった新しい流体現象が発見されている。そこで本研究では、微分幾何学的手法を使って、軸付近の渦度自体が、その流体速度及び渦度それ自体を不安定化させるという極めてspace-localなメカニズムがあることを解明した(U. of Pennsylvania所属のLeandro Lichtenfelz氏との共同研究)。実際のzeroth lawを満たすNavier-Stokes流を構成する為には、大規模数値計算によるNavier-Stokes乱流の最新研究
KAKENHI-PROJECT-17H04825
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生物型自律システムに関する研究
生物には実世界の中を生き抜く能力とそれを支える知能が備わっている。従って、生物を研究し模倣することは実世界で働く知的機械を目指す上できわめて重要な知見を提供する。本研究では、この立場に立って生物の知能に洞察を加え、その発現のメカニズムを研究し、また、それを機械システムの知能と自律性として現実化してゆくための方法論を研究した。具体的には、本研究は、以下の3つのサブテーマについて進められいずれも所期の成果を得た。1.生物的に行動する自律機械ロボットのセンサに基づく反射行動と、目的地に向かう行動の融合をはかり、環境変化に対してロバストな目標達成行動の実現について研究を行った。2.昆虫規範型自律システム昆虫規範型ロボットのセンサに基づく反射行動の実現をはかった。3.学習・適応能力と自己進化性ならびに協調能力を有する自律システム群の研究サル型ロボットを例とした自己組織化・自己進化性に基づく学習・適応動作を具現化する実験を行った。また、複数台のロボットシステムに関し、自律性と協調性の関連について研究した。生物には実世界の中を生き抜く能力とそれを支える知能が備わっている。従って、生物を研究し模倣することは実世界で働く知的機械を目指す上できわめて重要な知見を提供する。本研究では、この立場に立って生物の知能に洞察を加え、その発現のメカニズムを研究し、また、それを機械システムの知能と自律性として現実化してゆくための方法論を研究した。具体的には、本研究は、以下の3つのサブテーマについて進められいずれも所期の成果を得た。1.生物的に行動する自律機械ロボットのセンサに基づく反射行動と、目的地に向かう行動の融合をはかり、環境変化に対してロバストな目標達成行動の実現について研究を行った。2.昆虫規範型自律システム昆虫規範型ロボットのセンサに基づく反射行動の実現をはかった。3.学習・適応能力と自己進化性ならびに協調能力を有する自律システム群の研究サル型ロボットを例とした自己組織化・自己進化性に基づく学習・適応動作を具現化する実験を行った。また、複数台のロボットシステムに関し、自律性と協調性の関連について研究した。本研究は以下のサブテーマに分けて進められている。いずれも本研究は初年度であり研究のフェーズとしては準備段階であった。しかし、各テーマについて本年度から以下のとおりそれなりの研究成果をあげることができた。(1)油田信一:反射的、非数量的方法を用いた自律移動ロボットによる実験環境内の自律ナビゲーション行動の実現位置ベース走行と壁沿い走行を走行環境に応じて切り替えながら、センサ情報に基づいて移動ロボットの走行制御をするナビゲーションを実現した。(2)三浦宏文:昆虫規範型自立システムの研究雄カイコガの触角を用いてフェロモンに対するセンサを2種類作成し、それぞれの反応のスレッショルド及び寿命を測定した。広瀬茂男:生物的に行動する自立機械の研究斜面での走行として転倒安定性に着目し、重心の各移動方向に対して安定余裕が最大になる基準軌道の求め方を示した。さらに、移動方向を切り替える為の簡潔な歩容を提案した。福田敏男:学習・適応能力と自己進化性および協調能力を有する自立システムの研究テナガザルの形態に近い9リンク12自由度14アクチュエータを持つブラキエーション型移動ロボットBrachiatorIIIを制作し、基本行動の組み合わせに基づく制御法によって基礎実験を行った。(5)長田正:生物的振舞いを考慮したマルチエージェント型自律・協調ロボットシステムに関する研究接触情報と視覚情報のセンサ情報を利用し、複数台のロボットアームが明示的な通信なしに、同期のみを取りながら、斜面上の物体の押し上げ操作を協調的に行うための手法を提案した。各メンバーは本年度も原則として各々独立に分担テーマの研究を進めた以下にその概要を示す。(1)生物的に行動する自立機械の研究(油田)屋内を走行する自立移動ロボットが自分でドアを開閉し通り抜けること、また、ドアの開閉を含んで目的にまでの自律的なナビゲーションを実現した。(2)生物的に行動する自立機械の研究(広瀬)急斜面を走行するための脚の伸縮メカニズムと不整地歩行のための足先機構について開発試作と実験を行った。また、このような環境で作業や移動を行うために、ワイヤーで牽引しロボットの移動に伴いこれをウィンチで巻き上げる動作補助機構を開発した。(3)昆虫規範方自律システムの研究(三浦)昆虫センサについて研究を進め、実際の昆虫が有するセンサの出力の観察やこれを工学的に用いる方法を研究し、さらに、複眼のモデルに基づきセンサの開発を行った。(4)学習能力と自己進化性および協調能力を有する自律システム(福田)動物は多くの関接のアクチュエータを協調的に連動させスムースで的確な動作を実現している。これを機械の上に実現するため、階層型のアーキテクチャを用いて複数のコントローラが学習して一つのシステムを制御する手法を開発した。これを7リンクのブラキエーションロボットの制御に応用した。(5)学習能力と自己進化性および協調能力を有する自律システム(新井)本重点領域研究で広瀬により開発された4脚歩行ロボット2台が協調して長尺物体を運搬するというモデルを考え、2台の間の物体を介した暗黙的通信によってこの協調を実現するシステムを構築し実験を行った。本研究では、3年間にわたり「機械の知能は感覚と知能と密な結合によって発現される」という本重点領域の立場から生物の知能に洞察を加え、その発現メカニズムを明らかにし、それを機械システムの知能と自律性として現実化してゆくことを目的として、その方法論の研究を行ってきた。本研究は、以下の3つのサブテーマに分けて進められてきた。
KAKENHI-PROJECT-07245101
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07245101
生物型自律システムに関する研究
本年度は最終年度であり、そさぞれほぼ所期の目的を達成することができた。1.生物的に行動する自律機械前年度までの研究成果として開発された移動ロボットを用い、ロボットのセンサに基づく反射的行動や、環境変化に対してロバストな目標達成行動の現実について研究を進め、これらの成果について公開のデモンストレーションを行った。2.昆虫規範型自律システム昆虫規範型ロボットのセンサに基づく反射行動の実現をはかった。また、複数のロボットに同一の環境で同時に行動させ、群としての性質を検討した。3.学習・適応能力と自己進化性ならびに協調能力を有する自律システムの群研究猿型ロボットを例に自己組織化・自己進化性に基づく学習・適応動作を具現化する実験を行った。また、複数台のロボットシステムに関し、自律性と協調性の関連について研究を行った。
KAKENHI-PROJECT-07245101
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07245101
インターネットを利用した在宅医療及び老齢者の排尿モニタリングに関する研究
一般病院で施行可能なインターネットを利用したテレビ会議システムを用いて、訪問看護ステーションを利用している在宅患者に対し遠隔医療を試みた。対象は天の橋立訪問看護ステーションを利用している在宅患者5名。方法は、訪問看護ステーションの看護婦がノート型パソコン(Mac PowerBook 1400cs/117)とCCDカメラ(Color QCAM)を在宅患者宅に持参し、テレビ会議システム(CU-SeeMe)をたちあげ、病院のコンピュータに接続する。この時点でお互いのコンピュータに患者と医師の動画映像が共に写しだされる。医師は写し出された2つの動画映像をみながら、音声やチャットによる対話を行うことにより診察を行い、必要事項を患者カルテに記載していく。結果は、この方法で試みた遠隔医療の施行回数は、在宅患者5名に対しのべ15回であり、技術的なトラブルはほとんどなかったが、時には途中でコンピュータがフリーズしたり、音声会話が聞き取りにくいこともあった。在宅患者と家族の意見、感想としては、医師とお互いの顔をみて話をすることで、一般の電話とは異なり病院での診察に近い臨場感がもて、安心できるとの意見が多く好評であった。訪問看護婦の意見、感想としては、コンピュータの操作として、インターネットによるテレビ会議システムをたちあげて病院医局に接続する手順がやや煩雑で、習熟するのに多少の時間を要した。したがって在宅患者の家人や介護人が操作するには、より簡単な操作システムが望ましいとの意見であった。医師の意見、感想としては、患者側の動画映像が微細な診察をするには十分鮮明とはいいがたく、画質の向上が強く望まれた。結論として、今回試みた遠隔医療は、組織的な環境をもたない一般地域病院で十分施行可能であり、今後の普及が期待された。ただし、今後の課題としては操作の簡便化、画質の向上が望まれた。一般病院で施行可能なインターネットを利用したテレビ会議システムを用いて、訪問看護ステーションを利用している在宅患者に対し遠隔医療を試みた。対象は天の橋立訪問看護ステーションを利用している在宅患者5名。方法は、訪問看護ステーションの看護婦がノート型パソコン(Mac PowerBook 1400cs/117)とCCDカメラ(Color QCAM)を在宅患者宅に持参し、テレビ会議システム(CU-SeeMe)をたちあげ、病院のコンピュータに接続する。この時点でお互いのコンピュータに患者と医師の動画映像が共に写しだされる。医師は写し出された2つの動画映像をみながら、音声やチャットによる対話を行うことにより診察を行い、必要事項を患者カルテに記載していく。結果は、この方法で試みた遠隔医療の施行回数は、在宅患者5名に対しのべ15回であり、技術的なトラブルはほとんどなかったが、時には途中でコンピュータがフリーズしたり、音声会話が聞き取りにくいこともあった。在宅患者と家族の意見、感想としては、医師とお互いの顔をみて話をすることで、一般の電話とは異なり病院での診察に近い臨場感がもて、安心できるとの意見が多く好評であった。訪問看護婦の意見、感想としては、コンピュータの操作として、インターネットによるテレビ会議システムをたちあげて病院医局に接続する手順がやや煩雑で、習熟するのに多少の時間を要した。したがって在宅患者の家人や介護人が操作するには、より簡単な操作システムが望ましいとの意見であった。医師の意見、感想としては、患者側の動画映像が微細な診察をするには十分鮮明とはいいがたく、画質の向上が強く望まれた。結論として、今回試みた遠隔医療は、組織的な環境をもたない一般地域病院で十分施行可能であり、今後の普及が期待された。ただし、今後の課題としては操作の簡便化、画質の向上が望まれた。1)ビデオカメラ設置による対象者の1週間の行動モニタリングおよび解析対象者としては独居老人を含む、病院への通院困難な個人と、老人ホーム、老人介護施設等に入所している複数の2つのグループを対象とした。対象者および対象施設への十分なインフォームドコンセントを行ったうえで、個人の部屋および施設にデジタルビデオおよび通信用コンピューターを設置し、昼夜24時間を通してインターネット回線により病院の医局のコンピュータに通信し、対象者の行動を医局モニターにREAL TIMEで描出し、同時に記憶することを試みた。その結果、現在のインターネットのシステムでは、大学など独自のインターネット網を持っている、特殊な2つの機関の間では可能であったが、病院と一般家庭を24時間以上の長時間モニターすることは、電話回線を独占すること、および莫大な情報メモリを必要とすることにより困難であることが判明した。そこで対象者の行動を一旦対象者宅に設置したコンピューターに記憶し、それを病院のコンピューターで解析したが、まだ対象者が少なく一定の傾向は認められたが、有意な知見は得られていない。2)インターネット通信を利用した在宅診療の実施通院困難な患者に対し、病院もしくは大学の医師と在宅の患者が、インターネットを通じてお互いの画像を見ながら直接会話をし、診察を行った。つまり遠隔操作による往診形式となる。お互いの画像や音声の通信は十分可能であったが、現時点では病院側はINS通信を使用しているが、患者側の回線が一般の電話回線を用いているため、映像と音声の通信に少し時間差が生じた。将来的には現存のテレビ会議方式のソフトの改善やインターネットの通信速度の高速化により、より異和感のない遠隔操作による在宅医療が実現すると予測される。一般病院で施行可能なインターネットを利用したテレビ会議システムを用いて、訪問看護ステーションを利用している在宅患者に対し遠隔医療を試みた。対象は天の橋立訪問看護ステーションを利用している在宅患者5名。
KAKENHI-PROJECT-09671640
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09671640
インターネットを利用した在宅医療及び老齢者の排尿モニタリングに関する研究
方法は、訪問看護ステーションの看護婦がノート型パソコン(Mac PowerBook 1400cs/117)とCCDカメラ(Color QCAM)を在宅患者宅に持参し、テレビ会議システム(CU-SeeMe)をたちあげ、病院のコンピュータに接続する。この時点でお互いのコンピュータに患者と医師の動画映像が共に写しだされる。医師は写し出された2つの動画映像をみながら、音声やチャットによる対話を行うことにより診察を行い、必要事項を患者カルテに記載していく。結果は、この方法で試みた遠隔医療の施行回数は、在宅患者5名に対しのべ15回であり、技術的なトラブルはほとんどなかったが、時には途中でコンピュータがフリーズしたり、音声会話が聞き取りにくいこともあった。在宅患者と家族の意見、感想としては、医師とお互いの顔をみて話をすることで、一般の電話とは異なり病院での診察に近い臨場感がもて、安心できるとの意見が多く好評であった。訪問看護婦の意見、感想としては、コンピュータの操作として、インターネットによるテレビ会議システムをたちあげて病院医局に接続する手順がやや煩雑で、習熟するのに多少の時間を要した。したがって在宅患者の家人や介護人が操作するには、より簡単な操作システムが望ましいとの意見であった。医師の意見、感想としては、患者側の動画映像が微細な診察をするには十分鮮明とはいいがたく、画質の向上が強く望まれた。結論として、今回試みた遠隔医療は、組織的な環境をもたない一般地域病院で十分施行可能であり、今後の普及が期待された。ただし、今後の課題としては操作の簡便化、画質の向上が望まれた。
KAKENHI-PROJECT-09671640
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現代日本画制作における伝承的日本画技法の実践的検討
現代では汎用されなくなった伝承的日本画技法のうち、大根の絞り汁と鶏卵の白身の塗布による銀箔の変色防止技法の有効性を認めることができた。同時に、比較のために塗布した各種液体の効果についても、変色防止効果の有無を確認する事ができ、有効な液体については今後の制作への実用性を確認することができた。また、笹の葉による膠液の防腐作用についての実験では、現代の膠に用いられている防腐剤の影響により、防腐効果を確かめるまでには至らなかった。しかし、これらの伝承的技法を検討したことで、それらの現代における有効性とともに、別の素材による技法についての可能性を確認することができた。【内容】研究代表者:太田は、古典技法書に書かれている大根の絞り汁と卵の白身に加え、緑茶、紅茶、みかん果汁等の塗布による銀箔の変色防止についての経年変化を、実験並びに実制作品において考察し、その効果を確認した。笹の葉による膠液の防腐作用については、通年の実験を通して、季節ごとの効果の差異を考察した。コラージュに用いる糊については、薄い和紙のみではあるが、ほぼ予測通りの効果を確かめることができ、技法的にも確証を得ることができた。研究協力者・程塚には、従来から自作品に用いている銀箔の経年変化についての考察を依頼していた。その防止法はドーサ液の塗布によるものであるが、良好な結果を得たとの報告を受けている。研究協力者・吉田には、膠液の成分分析と、笹の葉の防腐効果ならびに抗菌作用との関連性について、そのメカニズムの解析を依頼した。大根の絞り汁の変色防止については、平成25年度の実験のための準備を進めている。【意義】伝承的技法を資料で読むだけでなく、実際の技法として検証することは、研究代表者が勤務する、筑波大学の芸術専門学群及び大学院博士前期課程及び後期課程の学生の実技指導のために必要なことである。近代以前から伝承されて来た日本画技法に対して、科学的根拠を伴って今後の制作ならびに指導に活用するところに本研究の意義がある。【重要性】伝承されて来た「これまでの技法」をベースとして、それらを現代に適合ならびに応用させ「これからの技法」として実用化することの意義は大きいと考える。それらの情報を筆者を含めた日本画制作者に対して提供することは、現代日本画の今後の在り方を考える意味でも重要である。日本画作品の耐久性とも関わる伝承的技法の検証は、今後の日本画制作において重要な位置を占めると思われる。【内容】研究代表者・太田は、主に2件の実験を行った。1前年までの大根の絞り汁と鶏卵の卵白の塗布による本銀箔の変色防止効果について、引き続き経過観察を行うとともに、変色防止効果の経年変化の比較のためのサンプルを新たに作成した。その結果、伝承的技法による変色防止効果は依然持続していることを認めることができた。また比較のために用いた各種の液体については、その効果に大きな差が出現しており、実用には不向きであるものを指摘することができた。2絵の支持体の一つである桐板へのドーサ液の塗布方法についての実証実験では、水分の有無で収縮を繰り返す桐板の性質と塗布方法を確認することができた。二人の研究分担者からは、日本画作品の銀箔部分の変色状況についての継続的な考察結果と2件の実験結果の提供を受けた。1件目の実験では、制作に用いられる絵具に含まれる膠による塗膜が形成されることで、安定的な変色防止効果を得られることが確認された。2件目の実験では1笹の葉を用いた膠液の防腐作用の実証実験で、実験用に用いた膠に防腐成分が混入されているため、笹の葉の防腐効果があまり認められなかったこと。2本銀箔の変色防止について、概ね予想されたメカニズムを解明したが、引き続き検証実験を続けている旨の報告を受けた。【意義等】制作された日本画作品は、作品自体が安定的な状態であることと、それを保証する環境において長期間保存されることが望ましい。それを可能にするのは、前者では確かな技法や技術力である。今回の研究では、その技法に関する再現実験を行うとともにそのメカニズムを解明することであったが概ね目標を達成することができた。なお、銀箔の変色防止については今後も長期にわたって継続的に考察を行うことが必要である。その間の状況の変化については、随時、情報提供という形で日本画の専門教育の現場に還元し後世に伝えていく必要がある。現代では汎用されなくなった伝承的日本画技法のうち、大根の絞り汁と鶏卵の白身の塗布による銀箔の変色防止技法の有効性を認めることができた。同時に、比較のために塗布した各種液体の効果についても、変色防止効果の有無を確認する事ができ、有効な液体については今後の制作への実用性を確認することができた。また、笹の葉による膠液の防腐作用についての実験では、現代の膠に用いられている防腐剤の影響により、防腐効果を確かめるまでには至らなかった。しかし、これらの伝承的技法を検討したことで、それらの現代における有効性とともに、別の素材による技法についての可能性を確認することができた。【内容】銀箔関係では、「大根の絞り汁」および「鶏卵の白身」の塗布による変色防止に関する記述に基づいた実験を行った。この実験では塗布から9ヶ月後の現在でも変色を防いでいることが確かめられた。その他、比較のために「緑茶」「紅茶」「みかん果汁」「フィクサチーフ」など13種類の物質を塗布したが、現代では主流となっている「ドーサ液」とともに効果が確かめられた。
KAKENHI-PROJECT-23520147
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現代日本画制作における伝承的日本画技法の実践的検討
一方、「日本酒」と「梅酒」では銀箔上ではじかれた部分が変色することで思わぬ模様が得られた。銀箔の変色については現在も経過を考察中である。また、「膠液に笹を入れておくと腐りにくい」という記述から、膠液に対する笹の葉の抗菌性実験を行った。この実験は現在も実験を継続中で、平成24年度以降に分析が行われる予定である。コラージュに用いる糊については、分析用資料として研究代表者が実験制作において用いているが、平成24年度において詳細な考察ならびに科学的分析を行う予定である。【意義】銀箔の変色防止実験ならびに変色実験は、実用的な結果と科学的な裏付けが求められるものである。また、膠液に対する笹の葉の抗菌性実験については、これまで長い間用いられてきた三千本膠の生産終了に伴い、新たに市販される三千本膠への効力を分析することが必要になった。今後主流になるであろう膠を調査する意義が新たに生じてきた。【重要性等】現代日本画制作では、これまで科学的根拠を確認しないまま、経験に基づく"勘"によって制作を行ってきた。その技法的な再現実験は研究代表者と一名の研究分担者(程塚)が行ない、その科学的根拠を証明するための実験を、もう一名の研究分担者(吉田)が行う。このように異領域の研究者による共同研究により、有効性が失われることになる従来品のデータに変わる新しい素材や技法の科学的検証は、現代日本画の制作現場への情報還元として待ち望まれているところであると考えている。【研究代表者】大根の絞り汁の銀箔の変色防止効果についてと笹の葉のもつ防腐作用についての実践では、その効果は認められたが、その科学的根拠についての検証がやや遅れている。様々な液体の塗布による変色防止効果について、平成25年度は、本金箔・水金箔・青金箔・白金箔・銅箔でも検証する予定である。【分担者A】自作品における銀箔部分の変色についての考察を依頼している。分担者の技法はドーサ液の塗布によるものであるが、制作数年経た程度では影響はないようであることがわかった。【分担者B】古典技法の根拠となる分析実験を依頼しており、平成24年度は笹の葉の膠液に対する抗菌作用についての実験を継続する中で、随時途中経過の報告を受けていた。現在データを集計・分析中である。また、大根の絞り汁による銀箔の変色防止に関しては、その分析等の実験準備をしている。研究代表者(太田):資料調査については近現代の日本画技法資料を対象としているが、おおむね予定通り現在市販されている資料の調査が進行中である。。新旧技法比較では、様々な液体の塗布による銀箔の変色防止策の実験を行い、現在状況変化を考察中である。主目的の「大根の絞り汁」と「鶏卵の白身」の塗布効果の他、13種類の物質を塗布した比較実験を行うことができた。コラージュの糊については、その分析用資料作成としての制作を予定通り行うことができ、今後の分析のための資料作成を進めることができた。再現実験では、和紙と木材(桐)へのにじみ止めについての効果を作品制作を通して考察中である。研究分担者(程塚)は、銀箔の変色防止の効果について、実際の制作での銀箔使用を通じて経過観察と報告をしている。
KAKENHI-PROJECT-23520147
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超ナノ微結晶ダイヤモンド/アモルファスカーボンの伝導型制御と太陽電池への応用
粒径10nm程度のナノダイヤモンド結晶がアモルファスカーボンマトリックスに内在する,超ナノ微結晶ダイヤモンド薄膜似下,UNCD膜)は,可視から紫外域にかけて大きな光吸収係数を有し,キャリア濃度制御を伴うpn伝導型制御が可能であることから,新規太陽電池材料として興味深い.第3年度目(平成24年度)は,UNCD膜のホモ接合フォトダイオードの創製に向けた基礎研究を行った.デバイス設計に先立ち,マイクロ波光導電率減衰法を用いてフォトキャリアのライフタイムを評価した.その結果,p形UNCD膜において同一材料中で最長である平均寿命2.1マイクロ秒が確認され,受光アクティブ層として有望であることが明らかとなった.これは光吸収とキャリア生成が数百ナノメーターオーダーの膜厚で設計可能であることを意味している.ホモ接合評価では,導電性Si基板上へ縦型ホモpin接合素子を作製し評価した.暗状態・室温下で整流比4桁,理想因子1.0のダイオード特性が得られた.明状態においては光起電力特性が確認され,波長分解フォトレスポンス測定から,ダイヤモンド結晶のバンドギャップ端の光吸収に対応した深紫外光域でのレスポンスに加え,可視光域での光キャリア生成が観測された.可視光吸収による光電変換メカニズムは議論中であるが,膜中に存在する多数の中間準位を介したバンド伝導が関連している可能性がある.1-1のpnヘテロ接合型ダイオード試作では,暗状態において整流比10^3(±1V間)以上の明確な整流特性を確認し,UNCD膜中のキャリア濃度は1.4×10^<17>cm^<-3>,膜側に広がる空乏層幅は-5V逆方向電圧印加下で50nm以上となることを明らかにした.結果を査読付学会誌Japanese Journal of Applied Physicsにまとめた.界面付近でのキャリアの伝導機構については,低電界領域では拡散電流,高電界領域ではトンネル電流が支配的になることを考察している.これはUNCDに特徴的な粒界がトンネルセンターとして働いているためと考えられる.ダイオードの深紫外線照射下における受光特性は70%を超える高い外部量子効率を確認した.このことは生成したフォトキャリアがトラップされることなく有効に回収できていることを意味している.太陽電池特性ではA.M.1.5の疑似太陽光照射下において光起電力特性を確認した.今後UNCD膜中のドーピング量を変化させ,キャリア濃度の最適化を図ることで高い効率が期待できる.1-2のUNCDのn型化では,Li3PO4ドープ,Nドープをそれぞれ試みた.Li3PO4ドープではアンドープ膜に比べて僅かな伝導度の上昇が見られたものの,シンクロトロン光を用いたNEXAFS, XPS, XRD測定では,ドープによって膜構造の大幅な変化が確認され,n型機構の発現には至らなかった.Nドープに関しては有益な結果を得ている.ドープ量によって電気伝導度が10^210^3程度上昇し,キャリア濃度制御が可能であることが明らかとなった.結晶ダイヤモンドと異なり低い活性化エネルギー(約100meV)を形成し,室温でデバイス応用可能である.NEXAFS, FTIRの結果からは,N原子はUNCD膜中の結晶粒界に優先的にドープされることが分かった.結果を査読付学会誌Applied Physics Express, Diamond and Related Materialsにまとめている.第2年度目にあたる平成23年度の研究は,「n型超ナノ微結晶ダイヤモンド(UNCD)膜の創製とそのキャリア濃度コントロール」に重点をおいて実施した.IV族半導体の代表的なn型ドーパンドとして窒素が挙げられるが,ダイヤモンドにおける窒素ドーピングではドナー準位が伝導帯下端より1.7eVの深い位置に形成されてしまい,キャリア濃度の上昇が困難であった.これはダイヤモンド結晶内の置換原子位置に窒素が組み込まれることに起因している.これに対し,本研究では結晶ダイヤモンドとは構造の観点から大きく異なるUNCD膜中への窒素ドープを試みた.その結果,室温で数から数十meVの低い活性化エネルギーが発現することが明らかとなった.これは窒素原子が置換原子位置ではなく,UNCD結晶粒界中に優先的に組み込まれたことによる効果であると考察している.膜の電気伝導度はドープ量に応じて約3桁の変化を示し,室温で最高18[ohm・cm]までコントロールが可能であることを確認した.これは窒素ドープUNCD膜が,n型半導体材料として効果的に機能することを意味している.電気デバイスとしての動作確認のために,p型Si上にn型UNCD膜をヘテロ接合させ電流電圧(J-V)特性を評価したところ,μAオーダーの極めて低いリーク電流を伴う明確な整流特性が確認された.逆方向耐圧特性試験では,-100Vまでブレイクダウン現象は認められず,ダイヤモンド同様に高い破壊電界強度を有していると考えられる.前年度のボロンドープによるp型UNCD膜に続き,今年度は窒素ドープによるn型半導体化を確立することができた.粒径10nm程度のナノダイヤモンド結晶がアモルファスカーボンマトリックスに内在する,超ナノ微結晶ダイヤモンド薄膜似下,UNCD膜)は,可視から紫外域にかけて大きな光吸収係数を有し,キャリア濃度制御を伴うpn伝導型制御が可能であることから,新規太陽電池材料として興味深い.第3年度目(平成24年度)は,UNCD膜のホモ接合フォトダイオードの創製に向けた基礎研究を行った.デバイス設計に先立ち,マイクロ波光導電率減衰法を用いてフォトキャリアのライフタイムを評価した.
KAKENHI-PROJECT-10J02489
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超ナノ微結晶ダイヤモンド/アモルファスカーボンの伝導型制御と太陽電池への応用
その結果,p形UNCD膜において同一材料中で最長である平均寿命2.1マイクロ秒が確認され,受光アクティブ層として有望であることが明らかとなった.これは光吸収とキャリア生成が数百ナノメーターオーダーの膜厚で設計可能であることを意味している.ホモ接合評価では,導電性Si基板上へ縦型ホモpin接合素子を作製し評価した.暗状態・室温下で整流比4桁,理想因子1.0のダイオード特性が得られた.明状態においては光起電力特性が確認され,波長分解フォトレスポンス測定から,ダイヤモンド結晶のバンドギャップ端の光吸収に対応した深紫外光域でのレスポンスに加え,可視光域での光キャリア生成が観測された.可視光吸収による光電変換メカニズムは議論中であるが,膜中に存在する多数の中間準位を介したバンド伝導が関連している可能性がある.窒素ドープによる超ナノ微結晶ダイヤモンド(UNCD)膜のn型化とキャリア濃度コントロールが再現性良く実現可能であることを明らかにした.これは本課題最大の目標であるUNCD膜のpn接合フォトダイオードの創製に向けた重要な基盤研究であり,前年度のp型化に引き続きn型化が実現できたことは大きな成果であると考えている.UNCD膜のpn接合フォトダイオードの創製に取り組み,光電気物性を詳細に明らかにする.
KAKENHI-PROJECT-10J02489
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連続的に把握可能な掃流砂量計の新規開発とその普遍化
掃流砂量計の開発,実験を主とした試験と研究の取りまとめを行った。研究期間内で成果の見通しの悪い項目も実験的に検討し,当初開発メニューに到達させた。まず,掃流砂量計の開発を行い,その後,水中荷重計のフレーム内の水圧開放に関する最終的な検討を行った。次に,当該期間中に構築された流砂理論の適用により水流の底面流速と掃流砂流の平均速度の推定等の演繹された理論を用いて流砂量を算出し,水中荷重計の流砂量の計測データに対する相関関係を検討し,水中荷重計を用いた予測値に対する実験係数を求めた。さらに,副次的な成果として荷重計等を用いた土石流の検知センサー(LVPセンサー)の試作と現地適用性の検証を行った。平成27年度の当初予定では,掃流砂量計一式の開発のための準備を行うと共に,室内水路実験を推進する予定であった。事前の予備検討により,水中重量を計測するための水没するロードセルの仕組みに関する新たなアイディアが生まれたため,これを実現するために,掃流砂量計一式の試作機の作製に注力した。そのため,物品費として,特注品の改良型水中荷重計(一式)の予算を執行した。試作した掃流砂量計の作動確認等を空気中・水中で行い,計測機器の準備を行った。申請者らが,以前に取得した室内水路・現地水路実験データを用いて,掃流砂の移動速度に関する検討を行った。掃流砂流の水中重量や底面付近の水流速度に関する連続データの解析を行った。計測では,カメラ等による流況(静止画,動画)の撮影,ポイントゲージ等による水深,底面流速計による底面付近の清水流速の計測を行った。これらの機器は,研究代表者の組織が所有のものを用いた。一方,流砂理論の適用による水流の底面流速と掃流砂流の平均速度の推定等の理論展開について,掃流砂を含む清水流について,砂礫の移動速度と底面付近の清水流の流速との関係を理論的に演繹し,初年度の段階で,フレームワークの見通しをつけた。例えば,既往の他の手法のレビューを行うと共に,粗面乱流の対数型の流速分布を仮定し,清水流の鉛直方向の流速分布を解き,底面付近(河床から0.3cm)の清水流速を求めた。その流速と掃流砂流の移動速度が比例関係であると仮定し,比例係数を実験データを用いて逆算した。なお,研究成果の一部は,査読付き論文等の学術雑誌への投稿を行い,速報性の高いもの及び本成果を通じて派生的に生まれたアイディア等は,口頭発表(査読なし)に発表している。特段,研究の進捗に関する問題はない。当該年度においては,主として,掃流砂量計一式の試作機を用いて,現地実験を推進した。実験においては,京大穂高観測所(研究協力者1)の所有する現地水路を用いた実験を行った。出水に応じた流水・流砂のある場での底面流速計のデータと掃流砂量計による土砂の重量に関する計測データを収集した。前年度までに,掃流砂の移動速度の予測式を用いた掃流砂量と比較し,室内の水路実験で同定された実験定数との比較検証を行う予定であったが,現地実験において,水中荷重計のフレーム内の水圧(内圧)の開放が緩慢となることが原因で計測荷重が過小となると共に,2組の荷重時系列の波形から相互相関法により求められる流砂の移動時間の予測が過小となった。一方,前年度および今年度において検討した水の底面流速および流砂移動速度の関係に関する理論的な解析と比較しても,その過小性が明らかになった。荷重プレート上に,砂礫を通さず,水のみを通過させる金属フィルターと連通管を用いて,荷重計フレーム内の内圧を開放するための改良を行い,簡易的な現地試験を行って,現地出水をとらえる準備を行った。例年,数回程度の出水が,現地観測水路で発生するが,今年度は発生出水が少なく,現地観測データの取得が困難であった。そのため,次年度において,室内の水路実験を行い,金属フィルターと連通管を用いた水中荷重計の内圧開放に関するデータ取得を行うための計画を策定した。また,現地に設置した掃流砂量計一式の試作機の設置後以降の耐久性・維持管理に必要なデータを取得した。すなわち,フレームや金属天板等の腐食等の発生の有無や,使用機器の劣化等に関する情報であるが,今のところ,いずれにおいても不具合は生じていない。引き続き,これらに関する経年変化に関するデータを取得していく。さらに,掃流砂量計の開発によって付随的に開発できたLVPセンサーの現地データ取得もできた。特段,研究の進捗に関する問題はない。平成29年度においては,研究の取りまとめを行った。研究期間内で成果の見通しの悪い項目についても,実験的に検討して,当初成果の到達に努めた。まず,水中荷重計のフレーム内の水圧(内圧)開放に関する最終的な検討を行った。内圧の除去のために,フレーム天板に金属フィルターを設置し,フレームに連通管を用いた構造とすることで,内圧開放が実現できることを室内直線水路実験により確認した。この改良構造をもった水中荷重計を京大穂高砂防観測所(研究協力者1)の試験水路に設置し,現地での簡易試験を行ったところ,若干の内圧開放が行われない場合もあったが,全般的に,改良前よりも改善されたデータが取得された。
KAKENHI-PROJECT-15K07502
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連続的に把握可能な掃流砂量計の新規開発とその普遍化
次に,前年度に構築された流砂理論の適用による水流の底面流速と掃流砂流の平均速度の推定等の演繹された理論を用いて流砂量を算出し,水中荷重計の流砂量の計測データに対する相関関係を検討し,水中荷重計を用いた予測値に対する実験係数を求めた。算定された実験係数は砂礫の粒径のみの関数となり,一意的な普遍定数を得るまでには至らないと云う課題が残った。さらに,平成27年度の当初予定では想定していなかった副次的な成果も生まれた。現地計測における荷重計の有用性が明らかとなったため,水中荷重計の製作に適用した知見を用いて,荷重計,加速度計,圧力センサーによる土石流の検知センサー(LVPセンサー)の試作を行い,現地適用性の検証が行えるレベルまで,センサーの検証が進展した。掃流砂量計の開発,実験を主とした試験と研究の取りまとめを行った。研究期間内で成果の見通しの悪い項目も実験的に検討し,当初開発メニューに到達させた。まず,掃流砂量計の開発を行い,その後,水中荷重計のフレーム内の水圧開放に関する最終的な検討を行った。次に,当該期間中に構築された流砂理論の適用により水流の底面流速と掃流砂流の平均速度の推定等の演繹された理論を用いて流砂量を算出し,水中荷重計の流砂量の計測データに対する相関関係を検討し,水中荷重計を用いた予測値に対する実験係数を求めた。さらに,副次的な成果として荷重計等を用いた土石流の検知センサー(LVPセンサー)の試作と現地適用性の検証を行った。平成28年度においては,主として,掃流砂量計一式の試作機を用い,室内・現地実験を推進する。室内実験においては,粒径が一様な複数種類の砂礫を購入し,定常・等流場における掃流砂量と掃流砂量計による計測データとの相関関係を確認し,掃流砂量計の計測範囲等に関する検討を行う。現地実験においては,京大穂高観測所(研究協力者1)の所有する現地水路を用いた実験を行う。出水に応じた底面流速計のデータと掃流砂量計による土砂の重量に関する計測データを収集する。得られたデータを理論検討において構築された掃流砂の移動速度の予測式を用いた掃流砂量と比較し,水路実験で同定された実験定数の普遍性の検証を行う。さらに,現地設置された機器一式の耐久性・維持管理に必要なデータも取得する予定である。また,京大穂高観測所の観測水路には大型バケット式のピット流砂箱があるため,これが一杯になるまでの間は掃流砂の土砂量が計測されているため,掃流砂量計一式で計測されるデータとの比較検討を行う予定である。流砂速度は2つの荷重計の波形の相互相関法を用いていたが,粒径・流砂量に対して,同法の適用性の限界が見えつつあり,他の手法の適用性等の検討により流砂移動速度の精度を向上させる。また,底面せん断力・流速および流砂移動速度の関係に関する理論的な検討を行う。掃流砂量計一式の機器の補修のための消耗品(鉄材等)や全般的な消耗品を予定している。当該年度においては,前年度に得られた水路実験のデータ等の結果について,外部からの意見を伺うために,国外内の関連学会発表の旅費・参加費,研究協力者や外部学識者への意見聴取の旅費や謝礼も見込む。当初,協力者(研究協力者2)であったロードセル等の開発者(団体)の荷重計の水中での適用性において不備が生じたため,平成28年度以降では,他の協力者を得て,掃流者量計の改良等を推進する予定である。平成29年度においては,当初の予定通りに,研究成果の取り纏めを行う。さらに,掃流砂量計一式の機器の実用化に向けた最終確認を機器・理論の両面から行う予定である。
KAKENHI-PROJECT-15K07502
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K07502
海洋光合成カロテノイドの超エネルギー伝達効率解明に向けた有機合成からのアプローチ
多官能性カロテノイドのペリジニン及びフコキサンチンは、海洋光合成初期過程を担う補助集光性色素である。これらは、クロロフィルやタンパクと超分子複合体を形成し、吸収光エネルギーを85-95%以上の超効率でクロロフィルへ伝達する。本研究では、両カロテノイドの特徴的官能基や共役鎖長を変えた類縁体をシリーズで合成し、それらの分光学的性質を天然物と比較することにより、両天然物の構造的特徴と機能の関係をほぼ明らかにした。多官能性カロテノイドのペリジニン及びフコキサンチンは、海洋光合成初期過程を担う補助集光性色素である。これらは、クロロフィルやタンパクと超分子複合体を形成し、吸収光エネルギーを85-95%以上の超効率でクロロフィルへ伝達する。本研究では、両カロテノイドの特徴的官能基や共役鎖長を変えた類縁体をシリーズで合成し、それらの分光学的性質を天然物と比較することにより、両天然物の構造的特徴と機能の関係をほぼ明らかにした。多官能性カロテノイドのペリジニンおよびフコキサンチンは、海洋光合成の初期過程を担う主要な補助集光色素である。これらは、クロロフィルおよびタンパク質とアンテナ色素超分子複合体を形成し、吸収光エネルギーを80-95%の超効率でクロロフィルへ伝達する。本研究では、両天然物の構造的特徴と機能の関係を解明したい。先ず1.ペリジニンの特徴的官能基であるイリデンブテノリド環の存在意義を検討するため、この官能基を中央へシフトさせた誘導体の合成法を検討した。その結果、極めて効率的な4段階ワンポット反応を実現し、その合成法の開発に成功した。この合成法は立体化学を十分に制御するばかりでなく、広く応用可能である。次いで、2.類縁体合成にも適用可能な効率的かつ立体選択的なフコキサンチンの全合成を試みた。フコキサンチンは、特に塩基に不安定なβ-ケトエポキシ構造を持ちその合成はこれまでに1例しかなく、その合成も6員環部およびオレフィン部の立体化学は制御されていない。そこでペリジニン合成と同様に、アレンセグメントとβ-ケトエポキシセグメントの2成分から合成することとし、不安定なβ-ケトエポキシ部は合成の最終段階に構築する計画を立てた。検討の結果、ホモアリルアルコールを利用した不斉エポキシ化反応により立体選択的エポキシ化を実現し、手掛かりとした水酸基の立体化学を光延反応により反転させ、6員環部の立体選択的な構築に成功した。その後、共役鎖の伸長を経てエポキシセグメントとし、改良ジュリア反応により両セグメントの結合、アリル位水酸基の選択的酸化、共役オレフィンの異性化を経て、初の立体化学を制御したフコキサンチンの全合成を達成した。1.昨年度開発した共役鎖長を有するイリデンブテノリドのワンポット合成法を基にして、ペリジニンにおけるイリデンブテノリド環を中央方向へ共役オレフィン一つ分および二つ分移動させた二種の類縁体A,Bの合成を達成した。合成した二種の類縁体A,Bの超時間分解吸収スペクトルを測定したところ、イリデンブテノリド環がほぼ中央に位置する類縁体Bでは、溶媒によらず、S_<ICT>(Intramolecular Charge Transfer State)は観測されなかった。このように、メタノール中でもS_<ICT>が観測されないイリデンブテノリド環を有した化合物は初めてであり、S_<ICT>が観測されるためにはカルボニル基に対して分子が非対称でなければならないことが実証されたと言える。2.一方、すでに立体化学を制御したフコキサンチンの全合成を達成しているが、この合成法をさらに発展させ、フコキサンチンに存在する7つの共役オレフィンが2つ少ないC35類縁体、1つ少ないC37類縁体、および1つ多いC42類縁体の合成を達成した。特にC42類縁体は、天然物より共役オレフィン数が1つ多いためその安定性が懸念されたが、特に問題はなかった。またC35、C37類縁体合成では、工程数を減らした効率よい合成法を新たに開発することができた。次いで、これらの超時間分解吸収スペクトルを測定した結果、先にペリジニンで得たS_<ICT>の特異な性質を実証する結果を得た。このようにして、これまで全く解明されていなかった新規な励起エネルギー準位であるS_<ICT>の特異な性質を初めて確証することができた。海洋の光合成初期過程では、多官能性カロテノイドであるペリジニンやフコキサンチンが主な補助集光性色素として働き、クロロフィルが吸収できない青緑色の波長の光を吸収し、クロロフィルおよびタンパクとから形成する超分子複合体において85%以上の超効率でクロロフィルへエネルギー伝達する。本研究では、これらカロテノイドの様々な類縁体を効率よく合成し、両者の構造的特徴と機能の関係を明らかにし、超効率的エネルギー伝達機構の解明を目的とする。この目的のため24年度は以下の成果をあげた。1.ペリジニンのイリデンブテノリド官能基が示す特異な性質の解明と、超効率的エネルギー伝達機能を有する新奇な化合物の開発を目指し、ペリジニンにおいてイリデンブテノリドのみを有する新規類縁体として、C30類縁体の合成に成功した。今後、C32類縁体などを合成し、これらの性質を、酸素官能基を全く持たないβ-カロテンの相当する類縁体と分光学的に比較・検討する。
KAKENHI-PROJECT-22550160
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海洋光合成カロテノイドの超エネルギー伝達効率解明に向けた有機合成からのアプローチ
2.超効率的エネルギー伝達の鍵となる新規なエネルギー準位として注目されるSICT励起エネルギー準位(intramolecular charge transfer state)の特異な性質を解明するため、アレンに共役したオレフィンの数が4のC29ペリジニン類縁体の新規なワンポット合成を実現した。この分子のSICT準位について、既に合成したフコキサンチンの相当する類縁体と、分光学的に比較検討する。3.フコキサンチンにおける分子内電化移動状態に対し、アレン結合がどのような効果を及ぼすかを検討するため、アレンをオレフィンに変換したC32類縁体の合成に成功した。また、この分子は酸で容易に異性化することを見いだした。今後、この類縁体の超高速時間分解吸収スペクトルを測定し、アレンの果たす効果を検討する。以上のように、本年度は十分に予定した成果を上げることが出来た。当初の計画以上に進展している。特にフコキサンチンおよびその類縁体の合成法を確立したことにより、S_<ICT>エネルギー準位の新たな特性の観測に成功している。24年度が最終年度であるため、記入しない。1.ペリジニンのイリデンブテノリド官能基が示すユニークな性質の解明を目指し、β-カロテンとの比較対照を意図してβ-カロテンのイリデンブテノリド類縁体の開発とその特性を検討する。2.ペリジニンにおけるイリデンブテノリド官能基のS_<ICT>エネルギー準位に対する効果を検討するため、共役オレフィンの数が4のC31類縁体の合成を検討する。3.フコキサンチンにおけるアレン結合のS_<ICT>に及ぼす効果を検討するため、アレンをオレフィンに変えたC32、C40類縁体の合成を検討する。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22550160
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多発性筋炎における筋崩壊機構の解明と治療法の開発
多発性筋炎における筋崩壊機構を解明するために、細胞照会性T-リンパ球に存在する膜障害タンパク質パ-フォリン及びセリンエステラ-ゼに関する研究を行い、次の新しい知見が得られた。1、酸性ムコ多糖がパ-フォリン活性を増大させることを明らかにした。脱硫酸化した化合物には活性増大作用はなく、硫酸基あるいは負電荷が重要な働きをしていると考えられた。酸性ムコ多糖のうちでは、ヘパリンが最も活性増大の効果が大きく、数ng/ml以上の濃度でパ-フォリン活性を増大させた。またヘパリンはパ-フォリンの標的細胞への結合は促進せず、パ-フォリン重合による膜障害作用に直接関与することを明らかにした。2.パ-フォリンはGa^<2+>依存的に細胞を障害することは知られていたが、今回Ca^<2+>はパ-フォリン分子が標的細胞膜に結合(Ka=200μM)する過程にも、パ-フォリン重合による「穴」形成過程(Ka=50μM)にも必要であることが明らかとなった。3.従来、細胞障害性T-リンパ球に特異的に存在するプロテア-ゼの基質としてBLTとpro-Rhe-ArgMCAが使用されていたが、BLTの方がこのプロテア-ゼに特異的な基質であることを明らかにした。またこの活性はPMSF、ピュ-ロマイシンで強く阻害され、セリンエステラ-ゼであることも確認された。しかし、セリンエステラ-ゼ分画によってはミオシンの分解は観察されなかった。4.細胞分画法によってパ-フォリンとセリンエステラ-ゼが異なる細胞内顆粒に存在している可能性が高いことを示した。5.ヒト血清より分子量500KDのパ-フォリンインヒビタ-タンパク質が精製され、ヘパリンとは異なりパ-フォリンの膜結合過程を抑制する事が明らかになった。多発性筋炎における筋崩壊機構を解明するために、細胞照会性T-リンパ球に存在する膜障害タンパク質パ-フォリン及びセリンエステラ-ゼに関する研究を行い、次の新しい知見が得られた。1、酸性ムコ多糖がパ-フォリン活性を増大させることを明らかにした。脱硫酸化した化合物には活性増大作用はなく、硫酸基あるいは負電荷が重要な働きをしていると考えられた。酸性ムコ多糖のうちでは、ヘパリンが最も活性増大の効果が大きく、数ng/ml以上の濃度でパ-フォリン活性を増大させた。またヘパリンはパ-フォリンの標的細胞への結合は促進せず、パ-フォリン重合による膜障害作用に直接関与することを明らかにした。2.パ-フォリンはGa^<2+>依存的に細胞を障害することは知られていたが、今回Ca^<2+>はパ-フォリン分子が標的細胞膜に結合(Ka=200μM)する過程にも、パ-フォリン重合による「穴」形成過程(Ka=50μM)にも必要であることが明らかとなった。3.従来、細胞障害性T-リンパ球に特異的に存在するプロテア-ゼの基質としてBLTとpro-Rhe-ArgMCAが使用されていたが、BLTの方がこのプロテア-ゼに特異的な基質であることを明らかにした。またこの活性はPMSF、ピュ-ロマイシンで強く阻害され、セリンエステラ-ゼであることも確認された。しかし、セリンエステラ-ゼ分画によってはミオシンの分解は観察されなかった。4.細胞分画法によってパ-フォリンとセリンエステラ-ゼが異なる細胞内顆粒に存在している可能性が高いことを示した。5.ヒト血清より分子量500KDのパ-フォリンインヒビタ-タンパク質が精製され、ヘパリンとは異なりパ-フォリンの膜結合過程を抑制する事が明らかになった。多発性筋炎における筋崩壊機構を解明するために、細胞障害性T-リンパ球に存在する膜障害タンパク質パーフォリン及びセリンエステラーゼに関する研究を行い、次の新しい知見が得られた。1.酸性ムコ多糖がパーフォリン活性を増大させることを明らかにした。脱硫酸化した化合物には活性増大作用はなく、硫酸基あるいは負電荷が重要な働きをしていると考えられた。酸性ムコ多糖のうちでは、ヘパリンが最も活性増大の効果が大きく、数ng/ml以上の濃度でパーフォリン活性を増大させた。またヘパリンはパーフォリンの標的細胞への結合は促進せず、パーフォリン重合による膜障害作用に直接関与することを明らかにした。2.パーフォリンはCa^<2+>依存的に細胞を障害することは知られていたが、今回Ca^<2+>はパーフォリン分子が標的細胞膜に結合(Ka=200μM)する過程にも、パーフォリン重合による「穴」形式過程(Ka=50μM)にも必要であることが明らかになった。3.従来、細胞障害性T-リンパ球に特異的に存在するプロテアーゼの基質としてBLTとPro-Rhe-ArgMCAが使用されていたが、BLTの方がこのプロテアーゼに特異的な基質であることを明らかにした。またこの活性はPMSF、ピューロマイシンで強く阻害され、セリンエステラーゼであることも確認された。しかし、セリンエステラーゼ分画によってはミオシンの分解は観察されなかった。4.細胞分画法によってパーフォリンとセリンエステラーゼが異なる細胞内顆粒に存在している可能性が高いことを示した。多発性筋炎における骨格筋崩壊機構を解明するために本疾患に特異的浸潤細胞である細胞障害性Tー
KAKENHI-PROJECT-63480219
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多発性筋炎における筋崩壊機構の解明と治療法の開発
リンパ球(CTL)に注目した。CTL中に存在する膜障害性タンパク質パ-フォリン及びタンパク分解酵素を抽出し、その物理化学的、細胞生物学的特性を検索して来たが、本年度はヒト血清がパ-フォリン活性を強く抑制する事を見出しこの抑制物質の抽出を試みた。血清中に存在するパ-フォリン活性抑制物質の抽出四名の健康成人男子から調整したヒト血清20mlを5mMPB(pH7.0)により透析したのち、30mlのDEAEセルロ-スカラムにアプライしNaCl直線濃度勾配にてタンパク質の溶出を行うと、パ-フォリン活性阻害タンパク質はNaCl0.51.5Mにて溶出された。この活性分画を5mMPBにて透析したのち、固型硫酸アンモニウムを加えてタンパク沈澱を行うと活性阻害タンパク質は硫酸アンモニウム30g/dlにより沈澱することが明らかとなった。この活性分画をHPLCゲルろ過(TSKーG3000SW)カラムにアプライすると活性阻害タンパク質は素通り分画(分子量約500KD)に得られた。更にこの活性分画を5mMPBによ透析したのち10mlのHydroxylapatiteカラムにアプライし、5mM0.5MPBによるStepーwise gradientで溶出すると、インヒビタ-活性タンパク質は0.3MPBにより溶出された。以上の過程によりSDSゲル電気泳動上分子量約500KDのパ-フォリン活性阻害タンパク質が精製された。このインヒビタ-タンパク質についてパ-フォリンの膜結合および細胞傷害作用におよぼす影響を検討したところ、このインタヒビタ-タンパク質は主としてパ-フォリンの膜結合過程を抑制することが判明した。
KAKENHI-PROJECT-63480219
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気管支喘息の病態における好酸球機能発現の多面性
気管支喘息の重症化・慢性化には好酸球による気道炎症が重要な役割を果していると考えられている。そして気道組織内に浸潤した好酸球は種々のサイトカインや化学伝達物質により機能的に活性化され組織傷害性を発揮する。本研究では抗好酸球モノクロ-ナル抗体を確立しそれがいかなる活性化好酸球を認識するかを検討した。その結果本抗体は,好酸球増多症患者の好酸球とのみ反応し,健常者好酸球とは反応しないことが明らかにされ,本抗体は活性化好酸球の解析に有用と考えられた。次に好酸球を活性化することが知られているサイトカイン(ILー3,ILー5,GMーCSF)によりヒト末梢血好酸球をin vitroで活性化させ,本抗好酸球抗体との反応性をFACSにて解析した。本抗好酸球抗体はGMーCSFと培養した好酸球とのみ強く反応し,ILー3或いはILー5と培養した好酸球とは反応しなかった。したがって,本抗好酸球抗体はヒト好酸球がGMーCSFにより活性化された際に特異的に発現される細胞表面分子を認識すると考考えられた。本研究では次に,ヒト臍帯血単核球をILー3とILー5と共に4週間培養することにより好酸球のみを選択的に誘導する実験系を確立し,これにより各種サイトカインの好酸球の分化増殖に対する効果を検討した。IFNーγは非常に低濃度(5単位/ml)で好酸球の分化増殖を抑制した。ILー4も同様に10単位/mlから用量依存性に好酸球の分化増殖を抑制した。しかしILー4の添加ではT細胞の増加を認めた。ILー2も低濃度で好酸球の分化増殖を抑制した。以上からILー2,ILー4,IFNーγはいずれも直接または間接的にヒト好酸球の分化増殖を抑制すると考えられた。最後にサブスタンスP(SP)の好酸球活性化作用を検討した。その結果神経性炎症の惹起物質であるSPは好酸球を直接活性化し,気管支喘息の発症に関与することが示された。気管支喘息の重症化・慢性化には好酸球による気道炎症が重要な役割を果していると考えられている。そして気道組織内に浸潤した好酸球は種々のサイトカインや化学伝達物質により機能的に活性化され組織傷害性を発揮する。本研究では抗好酸球モノクロ-ナル抗体を確立しそれがいかなる活性化好酸球を認識するかを検討した。その結果本抗体は,好酸球増多症患者の好酸球とのみ反応し,健常者好酸球とは反応しないことが明らかにされ,本抗体は活性化好酸球の解析に有用と考えられた。次に好酸球を活性化することが知られているサイトカイン(ILー3,ILー5,GMーCSF)によりヒト末梢血好酸球をin vitroで活性化させ,本抗好酸球抗体との反応性をFACSにて解析した。本抗好酸球抗体はGMーCSFと培養した好酸球とのみ強く反応し,ILー3或いはILー5と培養した好酸球とは反応しなかった。したがって,本抗好酸球抗体はヒト好酸球がGMーCSFにより活性化された際に特異的に発現される細胞表面分子を認識すると考考えられた。本研究では次に,ヒト臍帯血単核球をILー3とILー5と共に4週間培養することにより好酸球のみを選択的に誘導する実験系を確立し,これにより各種サイトカインの好酸球の分化増殖に対する効果を検討した。IFNーγは非常に低濃度(5単位/ml)で好酸球の分化増殖を抑制した。ILー4も同様に10単位/mlから用量依存性に好酸球の分化増殖を抑制した。しかしILー4の添加ではT細胞の増加を認めた。ILー2も低濃度で好酸球の分化増殖を抑制した。以上からILー2,ILー4,IFNーγはいずれも直接または間接的にヒト好酸球の分化増殖を抑制すると考えられた。最後にサブスタンスP(SP)の好酸球活性化作用を検討した。その結果神経性炎症の惹起物質であるSPは好酸球を直接活性化し,気管支喘息の発症に関与することが示された。好酸球は気管支喘息の慢性化・遷延化に重要な役割りをはたしていると考えられている。本研究では、ヒト好酸球の機能を解析をするために、気管支喘息患者および好酸球増加症候群患者末梢血液からフロ-サイトメトリ-をもちいて、好酸球を精製した。その結果,好酸球のもつ自家蛍光を指標として純度95%以上の好酸球の分離に成功した。好酸球増加症候群の数例について濃度勾配比重遠心法で分離し、細胞表面に低親和性IgEレセプタ-(FcεRI)が発現されるかいなかを観察した。その結果、低比重好酸球のみに発現していた。この精製好酸球でマウスを免疫してモノクロ-ナル抗体を2クロ-ン得た、一つの抗体(A E700)は好中球,好酸球,単球に反応した。第二の抗体(AE 700)は、好酸球増加を示す患者の好酸球および好中球のみと反応し、リンパ球、単球等とは反応しない抗体であることがわかった。現在この抗体が認識する抗原の解析を進めている。好酸球の分化とその分化段階における好酸球の機能を解析するために、ヒト臍帯血から単核球を分離し、ヒトリコンビナントIL-5を用いて好酸球の培養を試みた。
KAKENHI-PROJECT-01480234
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気管支喘息の病態における好酸球機能発現の多面性
その結果、ある分化段階の好酸球が得られた。現在この好酸球を用いてマウスを免疫し、モノクロ-ナル抗体を作成している。気管支喘息の慢性化には好酸球による気道炎症が重要な役割を果していると考えせれている。そして気道組織内に浸潤した好酸球は種々のサイトカインや化学伝達物質により機能的に活性化されていることが示唆されている。本研究では前年度に開発した抗好酸球モノクロ-ナル抗体がいかなる活性化好酸球を認識するかを検討した。すなわち,好酸球を活性化することが知られているサイトカイン(ILー3,ILー5,或いはGMーCSF)によりヒト末梢血好酸球をin vitroで活性化させ,本抗好酸球抗体との反応性をFACSにて解析した。その結果,本抗好酸球抗体はGMーCSFと培養した好酸球とのみ強く反応し,ILー3或いはILー5と培養した好酸球とは反応しなかった。したがって,本抗好酸球抗体はヒト好酸球がGMーCSFにより活性化された際に特異的に発現される細胞表面分子を認識すると考えられた。次に,ヒト〓帯血単核球をILー3とILー5と共に4週間培養することにより好酸球のみを誘導する実験系を確立した。これにより純度90%以上の好酸球を試験管内で得ることができた。しかしこの好酸球には本抗好酸球抗体は反応しなかった。最後に,気管支喘息の発症には神経性炎症の関与が考えられていることから,サブスタンスP(SP)の好酸球活性化作用を検討した。まずSPによるヒト好酸球のECP遊離,O^-_2産生およびLTC_4産生を検討した。その結果,SPはECP遊離とO^-_2産生を惹起したが,LTC_4産生は認められなかった。この作用はC末端ペプチドSP_<6ー11>でも同様に惹起されたが,N末端ペプチドSP_<1ー9>では惹起されなかった。したがって,神経性炎症の惹起物質であるSPは好酸球を直接活性化することにより気管支喘息の発症に関与することが示された。気管支喘息の重症化・慢性化には好酸球による気道炎症が重要な役割を果していると考えられている。そして気道組織内に浸潤した好酸球は種々のサイトカインや化学伝達物質により機能目に活性化され組織傷害性を発揮する。本研究ではまずヒト臍帯血単核球をILー3とILー5と共に4週間培養することにより好酸球のみを誘導する実験系を確立し、この好酸球の増殖・分化に対する各種サイトカインの調節的役割を検討した。はじめにIFNーγ(5ー500unit/ml)をDay0から添加すると、非常に低濃度(5unit/ml)で好酸球の増殖分化が80%以上抑制された。ILー4(10ー300unit/ml)を添加し好酸球の増殖分化に対する効果が見ると、ILー4も同様に10unit/mlから用量依存性に好酸球の増殖分化の抑制(70ー86%の抑制)を示した。しかしILー4の添加では全細胞数の低下は軽度で、T細胞の増加を認めた。ILー2も低濃度で好酸球の分化増殖を抑制した。以上からILー2、ILー4、IFNーγはいずれも直接または間接的にヒト好酸球の増殖分化を抑制すると考えられた。次に好酸球増多を呈する患者末梢血より得られた精製好酸球を用いて,各種抗アレルギ-薬に化学伝達物質遊離抑制作用を検討した。実験系としては精製ヒト好酸球をカルシウムイオノフォアまたは血小板活性化因子にて刺激し、ロイコトリエンC_4(LTC_4)産生とECP遊離を調べた。その結果β_2刺激薬プロカテロ-ルはLTC_4産生とECP遊離共に抑制し、LTC_4産生をより強く抑制した。さらに新しい抗アレルギ-薬TBXも上記刺激によるヒト好酸球からの化学伝達物質遊離を用量依存性に抑制した。
KAKENHI-PROJECT-01480234
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カルバゾール発色団の光電子物性の解明と新規な光誘起電子伝達系の開発
カルバゾール発色団の励起状態における光電子物性を調べた。ポリ(N-ビニルカルバゾール)が光照射下で生成するエキシマー、ならびにテレフタレート(アクセプター)共存下で生成するエキシプレックス(エキシタープレックス)の構造および物性を解明した。さらに、カルバゾール-アクセプター系の光誘起電子伝達系の開発も行った。1.エキシマーについて2架橋系[3.n](3,9)-および3架橋系[3.3.n](3,6,9)カルバゾロファン類を系統的に合成し、それらの発光挙動を蛍光およびりん光スペクトルから調べた。部分重なり型と完全重なり型エキシマーが生成するための構造上の特徴、すなわち二つのカルバゾール環の相対配置を明らかにすることができた。特に、完全重なり型については三重項エキシマーの生成を確認することができた。2.エキシプレックスについてテレフタレート-カルバゾール型シクロファン1を合成し、その蛍光スペクトル測定からエキシプッレクス型発光であることを見出した。発光波長と溶媒の極性との関係を調べるため、Lippert-Matagaプロットを行ったところ直線関係が成立した。この特異な発光現象を利用して、1のエキシプレックス発光波長から種々の高分子のような媒体中での局所的な極性の見積もりが算出できること(蛍光プローブとしての応用)を明らかにした。3.光誘起電子伝達系の開発についてカルバゾロファンと種々のテレフタレート誘導体の連結系を合成した。テレフタレート誘導体のアクセプター性が弱いときはカルバゾロファンのエキシマー発光が現れ、アクセプター性の増大とともにエキシマー発光の減少とエキシタープレックス発光の出現、さらなるアクセプター性の増大はエキシタープレックス発光の減少と光誘起電子移動が起こることがわかった。カルバゾール発色団の励起状態における光電子物性を調べた。ポリ(N-ビニルカルバゾール)が光照射下で生成するエキシマー、ならびにテレフタレート(アクセプター)共存下で生成するエキシプレックス(エキシタープレックス)の構造および物性を解明した。さらに、カルバゾール-アクセプター系の光誘起電子伝達系の開発も行った。1.エキシマーについて2架橋系[3.n](3,9)-および3架橋系[3.3.n](3,6,9)カルバゾロファン類を系統的に合成し、それらの発光挙動を蛍光およびりん光スペクトルから調べた。部分重なり型と完全重なり型エキシマーが生成するための構造上の特徴、すなわち二つのカルバゾール環の相対配置を明らかにすることができた。特に、完全重なり型については三重項エキシマーの生成を確認することができた。2.エキシプレックスについてテレフタレート-カルバゾール型シクロファン1を合成し、その蛍光スペクトル測定からエキシプッレクス型発光であることを見出した。発光波長と溶媒の極性との関係を調べるため、Lippert-Matagaプロットを行ったところ直線関係が成立した。この特異な発光現象を利用して、1のエキシプレックス発光波長から種々の高分子のような媒体中での局所的な極性の見積もりが算出できること(蛍光プローブとしての応用)を明らかにした。3.光誘起電子伝達系の開発についてカルバゾロファンと種々のテレフタレート誘導体の連結系を合成した。テレフタレート誘導体のアクセプター性が弱いときはカルバゾロファンのエキシマー発光が現れ、アクセプター性の増大とともにエキシマー発光の減少とエキシタープレックス発光の出現、さらなるアクセプター性の増大はエキシタープレックス発光の減少と光誘起電子移動が起こることがわかった。カルバゾール発色団は、光電導性を示すことで有名なポリ(N-ビニルカルバゾール)の構成単位であり、その励起状態における光電子物性は興味が持たれている。ポリ(N-ビニルカルバゾール)は光照射下でエキシマーを、またカルバゾールとスチレンの共重合体はテレフタレートのようなアクセプター共存下でエキシプレックスを生成することが知られているが、それらの構造ならびに物性は未解明なことが多い。そこで今回、カルバゾールとテレフタレートとの種々の連結体の合成を行い、エキシプレックスの性質を調べるとともに、その蛍光プローブとしての応用を検討することにした。以下に得られた結果を示す。[2.2]パラシクロ(3,6)カルバゾロファン骨格のベンゼン環にジエステルを導入したテレフタレート-カルバゾール型シクロファン1を合成し、各種スペクトルからその電子物性を検討した。まず、^1HNMRやX線結晶解析から1の構造は極めて堅固なことを明らかにし、吸収スペクトルから基底状態では電荷移動相互作用はほとんど起こっていないことを確かめた。一方、発光スペクトルにおいて、1はエキシプッレクス型発光のみを示し、しかも発光波長は溶媒の極性に依存して極性溶媒ほど長波長側で発光することがわかった。発光波長と溶媒の極性などからLippert-Matagaプロットを行ったところ直線関係が成立した。よって1のエキシプレックス構造における双極子モーメントは13Dであること、1のエキシプッレクス構造は溶媒によって変化しないことがわかった。さらに、このような1の特異な発光現象を利用して、1の発光波長からある与えられた温度における種々のポリマー中での局所的な極性の見積もりが可能なこと(蛍光プローブとしての応用性)を明らかにした。カルバゾール発色団は、光電導性を示し青色発光することから、その励起状態における光電子物性は大変興味が持たれている。
KAKENHI-PROJECT-16550037
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16550037
カルバゾール発色団の光電子物性の解明と新規な光誘起電子伝達系の開発
光照射下、カルバゾール発色団は部分重なり型と完全重なり型の2種類のエキシマーを生成すると言われている。そこで、二つのカルバゾール環が重なった三架橋系カルバゾロファンを合成し、蛍光スペクトルから完全重なり型のエキシマーの性質を調べた。さらに、2架橋系カルバゾロファンの時間分解EPRスペクトルから、三重状態における性質について検討した。また、前年度はカルバゾールーテレフタレート型シクロファン1の合成を行い、エキシプレックスの性質を明らかにすることができた。そこで、今年度は1のエキシプレックス発光から高分子内での光誘起電荷分離過程について検討することにした。以下に得られた結果を示す。カルバゾールの3,6,9位で架橋した[3.3.n](3,6,9)カルバゾロファン2n(n=36)を合成した。nの数が増大するにつれて二つのカルバゾールの面角は大きくなることをNMR,X線結晶解析から明らかにした。2nは蛍光スペクトルにおいて、すべてエキシマー型発光を示し、しかもnの数が増大するにつれて発光波長が短波長シフトしていた。以上のことからカルバゾール環がほとんど平行になった[3.3.3]系で最も安定なエキシマーが生成することがわかった。次に2架橋系カルバゾロファンのEPR測定におけるゼロ磁場分裂パラメータから、T_1状態において上下のカルバゾール環に励起子が非局在化する割合は、部分重なり型では約40%、完全重なり型では約90%にも達することがわかった。さらに、1のエキシプッレクス構造は溶媒によって変化しないこと利用して、1の発光波長からガラス転移温度以下における種々のポリマー中での局所的な極性の見積もりが可能なこと(蛍光プローブとしての応用性)を明らかにした。前年度に引き続き、カルバゾール発色団の光電子物性を解明するためにカルバゾロファン(カルバゾール系シクロファンの合成を行った。カルバゾロファンのアミン誘導体は、これまではジカルバゾリルアルカンのジブロモ体から三段階で合成可能であったが、その合成収率が低かったので収率改善を検討した。その結果、ジブロモ体から一段階で合成できる方法を見出し、従来に比べて収率が約2倍に向上した。また、カルバゾールの3位と9位で架橋した2架橋の酸素およびシアンアミド系のカルバゾロファンを合成し、その構造をX線解析から明らかにするとともに、光物性を電子吸収スペクトルと蛍光スペクトルから検討した。その結果、部分重なり型のエキシマーが生成するためには、二つのカルバゾール環の二面体角が8度以下であること、二つのカルバゾールの非結合N-N距離が3.5Å以下であることが必要条件であることがわかった。さらに、カルバゾールはドナーとしても作用でき、アクセプター存在下でエキシプレックスや光誘起電子移動をすることが知られている。今年度はカルバゾロファンと種々のテレフタレート誘導体の連結系を合成した。それらの光挙動は、テレフタレート誘導体のアクセプター性と溶媒の影響を大きく受けることがわかった。すなわち、アクセプター性が弱いときはカルバゾロファンのエキシマー発光が現れ、アクセプター性の増大とともにエキシマー発光の減少とエキシタープレックス発光の出現、さらなるアクセプター性の増大はエキシタープレックス発光の減少と光誘起電子移動をもたらすことがわかった。
KAKENHI-PROJECT-16550037
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MYCN-PRC2を基軸にしたエピゲノム異常による神経芽腫発生機構の解明
神経芽腫を含む小児がんではゲノム異常は少なく、正常発生の分化過程(≒エピゲノム)に異常が起きることでがん化すると考えられている。先行研究により、がん遺伝子MYCNによる神経芽腫のがん化にエピゲノム制御複合体のPRC2が大きく寄与することを報告した。本研究ではエピゲノム異常が引き起こす神経芽腫の発生機構を解明に取り組んでいる。具体的に、MYCNとEZH2(PRC2の責任分子)の物理的な結合が神経芽腫の発生に必須であるという仮説を検証した。新しく確立したスフェア培養法で神経芽腫の発生を検証し、N-MycとEzh2の局在やエピゲノム修飾、遺伝子発現を網羅的に解析している。これにより、MYCN-PRC2による神経芽腫の発生を多角的に捉え、エピゲノム異常によるがん化機構を解明し、新たな治療法開発の基盤を創る。今年度は、まず始めにMYCNとEZH2の結合について先行研究の再現性を調べた。予想外なことに共免疫沈降実験により、EZH2との結合領域とされていたMB3ドメインを欠損したMYCNもEZH2と結合しうるという結果が明らかになった。このため、MYCNのどの領域にEZH2が結合するかを再度調べ直す必要が出てきた。また、MYCNとEZH2が結合するゲノム領域を同定するためにクロマチン免疫沈降ハイスループットシーケンスを行ったが、残念ながら結合のピークがはっきり見られず解析出来る状態のデータを得ることが出来なかった。これについては再度実験を繰り返す必要がある。神経芽腫におけるPRC2の役割とターゲット遺伝子の発現抑制機構はほとんど分かっていないが、MYCNとPRC2の責任分子であるEZH2が物理的に結合するこを報告した。また、EZH2がN-MycのドメインMyc box III(MBIII)を介して結合するという報告がある。このMYCNとの結合を手がかりにして、神経芽腫へのEZH2(を含むPRC2)の寄与とその分子機構を明らかにするため、本研究課題では以下の3つの実験を遂行している。(実験1)MYCNとEzh2の結合がMYCNによる神経芽腫の発生に必須かどうか。MYCN、EZH2との結合領域を欠損したMYCN(ΔMBIII)、及びEZH2を、未分化な神経芽細胞もしくは分化細胞(交感神経細胞や副腎髄質細胞)に導入し、主にin vitroでのスフェア形成能やin vivoでの皮下腫瘍形成能を指標として形質転換能の比較を行う。本実験について、まず初めに先行研究の再現性を調べたが、予想外なことにEZH2との結合領域とされていたMB3ドメインを欠損したMYCNもEZH2と結合しうるという結果が共免疫沈降実験により明らかになった。そのため、MYCNの真のEZH2結合領域を改めて調べなおすことにした。(実験2)MYCNとEzh2の複合体によって発現制御される遺伝子群の網羅的な同定。本実験について、神経芽腫細胞株を対象にクロマチン免疫沈降シーケンスを行ったが、残念ながら結合のピークがはっきり見られなかった。再度実験を繰り返す必要がある。(実験3)MYCNとEzh2の複合体構造解析。上記2つの実験によってN-MycとEzh2の結合が神経芽腫の発生や悪性化に必須であることが明らになった後に、構造解析による詳細な機構解明を目指す。平成30年度の実験結果から、主に再現性を確かめる実験を計画している。当初の予定とは異なって研究の進捗が遅れているが、MYCNとEZH2の結合がMB3を介して結合している事実を証明するまでは、先の研究が出来ない状況であるため、最優先して今後は調べていく。(実験1)については、EZH2との結合領域とされているMB3領域について再度詳細にMYCNとの結合について再実験を行い、真の結合領域を詳細に調べる。具体的に、MYCNの各種フラグメントを大腸菌で発現させ、in vitroでのEZH2との結合を詳細に調べる。(実験2)については、クロマチン免疫沈降の実験手技や使用した抗体などに問題があったと思われるため、実験プロトコルを改めて見直し再実験を行う予定である。これまで報告されている幾つかの抗体を用いながらMYCNとEZH2のゲノム上での結合領域を明らかにしたい。神経芽腫を含む小児がんではゲノム異常は少なく、正常発生の分化過程(≒エピゲノム)に異常が起きることでがん化すると考えられている。先行研究により、がん遺伝子MYCNによる神経芽腫のがん化にエピゲノム制御複合体のPRC2が大きく寄与することを報告した。本研究ではエピゲノム異常が引き起こす神経芽腫の発生機構を解明に取り組んでいる。具体的に、MYCNとEZH2(PRC2の責任分子)の物理的な結合が神経芽腫の発生に必須であるという仮説を検証した。新しく確立したスフェア培養法で神経芽腫の発生を検証し、N-MycとEzh2の局在やエピゲノム修飾、遺伝子発現を網羅的に解析している。これにより、MYCN-PRC2による神経芽腫の発生を多角的に捉え、エピゲノム異常によるがん化機構を解明し、新たな治療法開発の基盤を創る。今年度は、まず始めにMYCNとEZH2の結合について先行研究の再現性を調べた。予想外なことに共免疫沈降実験により、EZH2との結合領域とされていたMB3ドメインを欠損したMYCNもEZH2と結合しうるという結果が明らかになった。このため、MYCNのどの領域にEZH2が結合するかを再度調べ直す必要が出てきた。
KAKENHI-PROJECT-18K15208
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MYCN-PRC2を基軸にしたエピゲノム異常による神経芽腫発生機構の解明
また、MYCNとEZH2が結合するゲノム領域を同定するためにクロマチン免疫沈降ハイスループットシーケンスを行ったが、残念ながら結合のピークがはっきり見られず解析出来る状態のデータを得ることが出来なかった。これについては再度実験を繰り返す必要がある。神経芽腫におけるPRC2の役割とターゲット遺伝子の発現抑制機構はほとんど分かっていないが、MYCNとPRC2の責任分子であるEZH2が物理的に結合するこを報告した。また、EZH2がN-MycのドメインMyc box III(MBIII)を介して結合するという報告がある。このMYCNとの結合を手がかりにして、神経芽腫へのEZH2(を含むPRC2)の寄与とその分子機構を明らかにするため、本研究課題では以下の3つの実験を遂行している。(実験1)MYCNとEzh2の結合がMYCNによる神経芽腫の発生に必須かどうか。MYCN、EZH2との結合領域を欠損したMYCN(ΔMBIII)、及びEZH2を、未分化な神経芽細胞もしくは分化細胞(交感神経細胞や副腎髄質細胞)に導入し、主にin vitroでのスフェア形成能やin vivoでの皮下腫瘍形成能を指標として形質転換能の比較を行う。本実験について、まず初めに先行研究の再現性を調べたが、予想外なことにEZH2との結合領域とされていたMB3ドメインを欠損したMYCNもEZH2と結合しうるという結果が共免疫沈降実験により明らかになった。そのため、MYCNの真のEZH2結合領域を改めて調べなおすことにした。(実験2)MYCNとEzh2の複合体によって発現制御される遺伝子群の網羅的な同定。本実験について、神経芽腫細胞株を対象にクロマチン免疫沈降シーケンスを行ったが、残念ながら結合のピークがはっきり見られなかった。再度実験を繰り返す必要がある。(実験3)MYCNとEzh2の複合体構造解析。上記2つの実験によってN-MycとEzh2の結合が神経芽腫の発生や悪性化に必須であることが明らになった後に、構造解析による詳細な機構解明を目指す。平成30年度の実験結果から、主に再現性を確かめる実験を計画している。当初の予定とは異なって研究の進捗が遅れているが、MYCNとEZH2の結合がMB3を介して結合している事実を証明するまでは、先の研究が出来ない状況であるため、最優先して今後は調べていく。(実験1)については、EZH2との結合領域とされているMB3領域について再度詳細にMYCNとの結合について再実験を行い、真の結合領域を詳細に調べる。具体的に、MYCNの各種フラグメントを大腸菌で発現させ、in vitroでのEZH2との結合を詳細に調べる。(実験2)については、クロマチン免疫沈降の実験手技や使用した抗体などに問題があったと思われるため、実験プロトコルを改めて見直し再実験を行う予定である。これまで報告されている幾つかの抗体を用いながらMYCNとEZH2のゲノム上での結合領域を明らかにしたい。
KAKENHI-PROJECT-18K15208
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EXAFS法によるイオン導電体CuBrの相転移に関する研究
EXAFS法を用いてイオン導電体CuBrの導電イオンCu原子周りの局所構造の温度変化を詳しく解析した。イオンダイナミクスを論じる上で重要な原子振動の非調和性を見積もるため、キュムラント展開とは全く違う視点を持った数値積分によるボルツマン分布を仮定した解析を行い、Cu-Brの2体間ポテンシャルを決定した。得られたポテンシャルから、グリュナイゼンパラメータ、フォノンの分散関係を計算すると良く文献値と一致し、Cu-Brの熱的な振る舞いを十分よく表していた。大きな非調和振動を有すると言われるCuBrは、室温において4次の非調和項の重要性は見られず、3次までの非調和で十分であることがわかった。(Jpn.J.Appl.Phys.投稿中)また、従来議論となっていたCu-Br原子間距離が温度の上昇とともに収縮する現象は、キュムラント展開項が収束していないことによるEXAFS解析の問題ではなく、CuBrの物性であることを明らかにした。これは非線形熱振動による因子<U>は温度とともに膨張の方向に進むが、ポテンシャル極小位置R_0が大きく減少するため、Cu-Br原子間距離<R>=R_0+<U>の温度依存性は、全体的に負の熱膨張を示していることがわかった。(J.Phys.投稿中)EXAFS法を用いてイオン導電体CuBrの導電イオンCu原子周りの局所構造の温度変化を詳しく解析した。イオンダイナミクスを論じる上で重要な原子振動の非調和性を見積もるため、キュムラント展開とは全く違う視点を持った数値積分によるボルツマン分布を仮定した解析を行い、Cu-Brの2体間ポテンシャルを決定した。得られたポテンシャルから、グリュナイゼンパラメータ、フォノンの分散関係を計算すると良く文献値と一致し、Cu-Brの熱的な振る舞いを十分よく表していた。大きな非調和振動を有すると言われるCuBrは、室温において4次の非調和項の重要性は見られず、3次までの非調和で十分であることがわかった。(Jpn.J.Appl.Phys.投稿中)また、従来議論となっていたCu-Br原子間距離が温度の上昇とともに収縮する現象は、キュムラント展開項が収束していないことによるEXAFS解析の問題ではなく、CuBrの物性であることを明らかにした。これは非線形熱振動による因子<U>は温度とともに膨張の方向に進むが、ポテンシャル極小位置R_0が大きく減少するため、Cu-Br原子間距離<R>=R_0+<U>の温度依存性は、全体的に負の熱膨張を示していることがわかった。(J.Phys.投稿中)
KAKENHI-PROJECT-07239236
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迷走神経心臓枝を標的とした不整脈の外科治療の研究
1)迷走神経刺激装置、高解像度心表面マッピング電極(96チャンネルの双極マット電極、胸腔鏡用の高周波アブレーション電極の開発を行った。2)成犬を用いた動物実験で右肺静脈の左房入口部の心表面脂肪組織を電気刺激(550Hz)し洞性徐脈を誘発し洞結節を支配する迷走神経心臓枝の神経節の部位を決定した。同様に左房後面の脂肪組織を電気刺激内し房室ブロックを誘発し房室結節を支配するに迷走神経心臓枝の神経節の部位を決定した。3)成犬ではこれらの神経節のアブレーションにより頸部の迷走神経刺激で誘発される迷走神経性の徐脈は誘発不能となった。またこの迷走神経心臓枝を標的とした選択的アブレーションは胸腔鏡での操作で可能であった。4)通常の開心術症例に加えて体外循環無しで心拍動下に吻合を行う低侵襲冠動脈バイパス(MIDCAB)症例を対象として迷走神経心臓枝を標的とした不整脈の治療が可能かどうかを検討した。胸腔鏡で洞結節を支配する迷走神経心臓枝の神経節が含まれる脂肪組織は容易に観察可能であったが、房室結節を支配する迷走神経心臓枝の神経節が含まれる脂肪組織の観察には小切開を必要とした。また洞結節を支配する迷走神経心臓枝の神経節を電気刺激することで洞性徐脈が成犬の動物実験同様に誘発されることが確認された。5)この迷走神経心臓枝の神経節を選択的に高周波でアブレーションすることにより臨床においても動物実験同様に迷走神経に由来する徐脈性不整脈を治療できる可能性が大きい。1)迷走神経刺激装置、高解像度心表面マッピング電極(96チャンネルの双極マット電極、胸腔鏡用の高周波アブレーション電極の開発を行った。2)成犬を用いた動物実験で右肺静脈の左房入口部の心表面脂肪組織を電気刺激(550Hz)し洞性徐脈を誘発し洞結節を支配する迷走神経心臓枝の神経節の部位を決定した。同様に左房後面の脂肪組織を電気刺激内し房室ブロックを誘発し房室結節を支配するに迷走神経心臓枝の神経節の部位を決定した。3)成犬ではこれらの神経節のアブレーションにより頸部の迷走神経刺激で誘発される迷走神経性の徐脈は誘発不能となった。またこの迷走神経心臓枝を標的とした選択的アブレーションは胸腔鏡での操作で可能であった。4)通常の開心術症例に加えて体外循環無しで心拍動下に吻合を行う低侵襲冠動脈バイパス(MIDCAB)症例を対象として迷走神経心臓枝を標的とした不整脈の治療が可能かどうかを検討した。胸腔鏡で洞結節を支配する迷走神経心臓枝の神経節が含まれる脂肪組織は容易に観察可能であったが、房室結節を支配する迷走神経心臓枝の神経節が含まれる脂肪組織の観察には小切開を必要とした。また洞結節を支配する迷走神経心臓枝の神経節を電気刺激することで洞性徐脈が成犬の動物実験同様に誘発されることが確認された。5)この迷走神経心臓枝の神経節を選択的に高周波でアブレーションすることにより臨床においても動物実験同様に迷走神経に由来する徐脈性不整脈を治療できる可能性が大きい。1)研究装置として(1)迷走神経刺激装置の開発、(2)高解像度心表面マッピング電極(96チャンネルの双極電極)の開発、(3)胸腔鏡手術用の高周波アブレーション電極の開発を行った。2)成犬を用いた動物実験で、右肺静脈の左房入口部にある心表面の脂肪組織を電気刺激(550Hz)し洞性徐脈洞結節を誘発し、洞結節を支配する迷走神経心臓枝の神経節の部位を決定した。同様に右房後面にある脂肪組織を刺激し房室ブロックを誘発し、房室結節を支配する迷走神経心臓枝の神経節の部位を決定した。この位置は神経生体染色の結果と一致した。また、洞結節を支配する迷走刺激を刺激すると、心表面マッピングで最早期興奮部位が洞結節から分堺稜に沿って移行した。3)成犬では選択的迷走神経刺激により徐脈は誘発されるも効果は持続されず、レートの調節性、持続性には問題が残った。4)実験的に胸腔鏡手術での神経節の選択的高周波アブレーションは十分可能であった。1)迷走神経心臓枝を標的とした選択的刺激法(550Hz)は一過性に徐脈が誘発されるも効果は持続せず、臨床例での長期間の頻脈性不整脈治療には不向きであった。そこで迷走神経心臓枝を標的とした選択的アブレーションが迷走神経由来の徐脈性不整脈の治療法として成り立つかを臨床例で検討した。2)研究対象として通常の開心術症例に加えて体外循環無しで心拍動下に吻合を行う低侵襲冠動脈バイパス(MIDCAB)症例を選んだ。MIDCABでは補助手段として内胸動脈剥離のために胸腔鏡、冠動脈との吻合に一過性の徐脈を得るため迷走神経心臓枝選択的刺激法が用いられるからである。3)胸腔鏡で洞結節を支配する迷走神経心臓枝の神経節が含まれる脂肪組織は容易に観察可能であっが、房室結節を支配する迷走神経心臓枝の神経節が含まれる脂肪組織の観察には小切開を必要とした。4)冠動脈吻合に際し洞結節を支配する迷走
KAKENHI-PROJECT-08457348
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08457348
迷走神経心臓枝を標的とした不整脈の外科治療の研究
神経心臓枝の神経節を電気刺激することで洞性徐脈が成犬の動物実験同様に誘発されることが確認された。以上の結果より臨床においても迷走神経心臓枝の神経節の部位は低侵襲手術で決定できることが判明した。5)この迷走神経心臓枝の神経節を選択的に高周波でアブレーションすることにより成犬の動物実験で得られた結果同様に徐脈による神経性失神を治療できるものと期待された。
KAKENHI-PROJECT-08457348
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08457348
集合財産担保における目的物の処分に対する担保権者の対抗手段とその限界に関する研究
本研究の目的は、包括的な担保手段において債務者が目的物の利用および処分をすることが必然であるにもかかわらず、それによって担保権者の利益が害される場合に、どのように担保権者を救済するのか、あるいは、どこまで担保権者は債務者の目的物の利用・処分を受忍しなければならないのかに関する具体的な基準を検討しようとするものである。そのため昨年度は、主にドイツにおいてこれらの点を検討したほか、破産手続外における債権者の取消権や担保権者の妨害排除請求権などについても検討した。今年度は、昨年度に引き続いて、ドイツにおけるこれらの検討を継続するとともに日本における詐害行為取消権および妨害排除請求権のそれぞれについてその行使の要件についての検討を行なうこととしていた。その上で、債務者による目的物の利用および処分と担保権者の対抗手段に関する具体的基準の総合的検討を行なう予定であった。これらの課題については、各種文献および判例などを収集・整理・検討を通じて、やはり、債務者の経営の自由と担保権者の担保把握の利益との調整が焦点となっていることは明らかであった。さらに、債務者の目的物利用および処分による担保権の危殆化についての議論が担保権に基づく妨害排除請求の可否に関する議論の裏返しであるもやはり確認することができた。しかしながら、従来の議論ではこの点からの検討がなく、ともすれば債権者側の利益保護が重視されてきたことが明らかになった。また、債務者の担保目的物利用および処分の一環として債務者が別途担保的に目的物を利用することの可否についても、債務者の経営の自由という視点から考察することはとりわけ日本ではあまり行なわれていなかった。その結果、目的物に効力を及ぼすことになる異なった担保権者間の利害調整という問題がなお検討事項として残されていることを認識することができた。本研究の目的は、包括的な担保手段において債務者が目的物の利用および処分をすることが必然であるにもかかわらず、それによって担保権者の利益が害される場合に、どのように担保権者を救済するのか、あるいは、どこまで担保権者は債務者の目的物の利用・処分を受忍しなければならないのかに関する具体的な基準を検討しようとするものである。そのため今年度は、第一にドイツにおける担保目的物の利用および処分に対する担保権者の対抗手段とその限界に関して、集合動産讓渡担保と抵当権を取り上げ、いずれにおいても問題となる「通常の経営の範囲」という基準がいかにして成立し、また、どのように用いられているのかを裁判例および学説、さらにはBGBの起草過程や集合動産讓渡担保に関する立法提案に際しての議論などを検討する予定であった。また、第二にドイツにおける破産手続外での債権者取消権の行使の要件についてどのような要素が考慮されていろかを裁判例および学説を通して検討することも予定していた、さらに、第三にこれらの検討を踏まえて,ドイツにおいて担保権の危殆化が生じた際に担保権者がいかなる行動がとりうるかについて、制度横断的に整理・検討することとしていた。これらの課題については、各種文献および判例などを收集・整理・検討しているが、いまだ問題状況の整理にとどまっている。もっとも、今年度の文献および判例の整理および検討を通じて、やはり、債務者の経営の自由と担保権者の担保把握の利益との調整が焦点となっていることは明らかであった。さらに、債務者の目的物利用および処分による担保権の危殆化についての議論が担保権に基づく妨害排除請求の可否に関する議論の裏返しであることから、この点からの検討が有効であることも確認できた。そこで、来年度は、今年度のドイツに関する各課題の検討を継続し、当初の予定である日本の詐害行為取消権に関する議論を整理するとともに、ドイツにおける担保権に基づく妨害排除請求権行使の要件について検討を加えることとしたい。そのうえで、債務者による目的物の利用および処分と担保権者の対抗手段に関する具体的基準の総合的検討を行なうこととしたい。本研究の目的は、包括的な担保手段において債務者が目的物の利用および処分をすることが必然であるにもかかわらず、それによって担保権者の利益が害される場合に、どのように担保権者を救済するのか、あるいは、どこまで担保権者は債務者の目的物の利用・処分を受忍しなければならないのかに関する具体的な基準を検討しようとするものである。そのため昨年度は、主にドイツにおいてこれらの点を検討したほか、破産手続外における債権者の取消権や担保権者の妨害排除請求権などについても検討した。今年度は、昨年度に引き続いて、ドイツにおけるこれらの検討を継続するとともに日本における詐害行為取消権および妨害排除請求権のそれぞれについてその行使の要件についての検討を行なうこととしていた。その上で、債務者による目的物の利用および処分と担保権者の対抗手段に関する具体的基準の総合的検討を行なう予定であった。これらの課題については、各種文献および判例などを収集・整理・検討を通じて、やはり、債務者の経営の自由と担保権者の担保把握の利益との調整が焦点となっていることは明らかであった。さらに、債務者の目的物利用および処分による担保権の危殆化についての議論が担保権に基づく妨害排除請求の可否に関する議論の裏返しであるもやはり確認することができた。しかしながら、従来の議論ではこの点からの検討がなく、ともすれば債権者側の利益保護が重視されてきたことが明らかになった。また、債務者の担保目的物利用および処分の一環として債務者が別途担保的に目的物を利用することの可否についても、債務者の経営の自由という視点から考察することはとりわけ日本ではあまり行なわれていなかった。
KAKENHI-PROJECT-12720025
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12720025
集合財産担保における目的物の処分に対する担保権者の対抗手段とその限界に関する研究
その結果、目的物に効力を及ぼすことになる異なった担保権者間の利害調整という問題がなお検討事項として残されていることを認識することができた。
KAKENHI-PROJECT-12720025
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筋ジストロフィー症の新規治療法としての霊長類胚性幹細胞由来筋細胞の移植応用
デュシェンヌ型筋ジストロフィー症は呼吸筋・骨格筋の障害をもたらし患者のQOLは低下し且つ生命予後も不良である。我々はこれら筋疾患に対する根治療法として幹細胞から筋細胞を分化誘導し、これを用いた移植治療の研究を行なっている。筋ジストロフィー症モデルであるmdxマウスの筋細胞は異常ジストロフィン遺伝子のためジストロフィン蛋白を持たないが、ES細胞由来筋細胞と融合して正常にジストロフィン蛋白を発現する筋線維を形成した。近年、ES細胞の持つ倫理的制約を回避できる誘導多能性幹細胞(iPS)細胞が樹立された。そこでiPS細胞にも同様に遺伝子導入で筋細胞を分化誘導可能であるかを検討した。より強いIGFII産生をもたらすため、CAG promoterの下流にIGFII遺伝子をサブクローニングしたpCAG-IGFIIを作成した。電気穿孔法にて上記プラスミドをiPS細胞に導入しG418耐性の安定した形質転換細胞(IGFII遺伝子を導入した細胞;IGFII細胞)を回収した。しかしこの細胞は過剰な細胞増殖を行い、腫瘍形成能を示したため、その後の検討は中止した。そこでiPS細胞を遺伝子組み換え可溶性IGFIIと共に21日間培養して筋細胞分化を誘導した。この細胞はIGFII受容体、骨格筋特異的蛋白であるMyoD、myogenin、MRF4、myf5、dystrophin mRNAを発現し、dystrophin蛋白も発現した。この成績はiPS細胞をIGFIIとともに培養することで、腫瘍化していない筋細胞を分化誘導できることを示している。今後、mdxマウスへのiPS細胞由来筋細胞の移植も行いその有用性を評価する。筋ジストロフィー症はジストロフィン遺伝子の異常を持ち呼吸筋・骨格筋の障害をもたらし、患者は日常生活に大きな制限を受け且つ生命予後も不良である。我々はこれら筋疾患に対する根本的な治療法として、胚性幹(ES)細胞から筋細胞を分化誘導し、これを用いた移植治療の研究を行なっている。既にマウスES細胞から骨格筋細胞を誘導し、これを筋損傷モデルマウスに移植し、運動機能が改善することを報告した。マウスES細胞を用いた検討ではmdxマウスの筋細胞はES細胞由来筋細胞と融合して、正常にジストロフィン蛋白を発現する筋線維を形成した。そこで、ヒトでの実用化を目指して、よりヒトに近い霊長類ES細胞を用いて、筋細胞を分化誘導して、筋ジストロフィー症の実験動物での治療研究を行った。本年度の研究からcytomegalovirus promoterで誘導される蛋白発現ベクターを用いてサルES細胞をトランスフェクトした場合には、筋細胞への分化誘導されるが、安定した形質変換が行われず、筋細胞の増殖が不安定であるため、培養を継続すると筋細胞が減少・死滅することを見出した。その原因はおそらくIGFの細胞増殖効果が不十分であるためと考えられた。そこで、より強いIGFII産生をもたらすため、CAG promoterの下流にIGFII遺伝子をサブクローニングしたpCAG-hIGFIIを作成した。その後は作成したこのベクターを用いて検討を行っているが、期間が短いため筋細胞株は樹立は未だできていないが今後は有望である。デュシェンヌ型筋ジストロフィー症は呼吸筋・骨格筋の障害をもたらし患者のQOLは低下し且つ生命予後も不良である。我々はこれら筋疾患に対する根治療法として幹細胞から筋細胞を分化誘導し、これを用いた移植治療の研究を行なっている。筋ジストロフィー症モデルであるmdxマウスの筋細胞は異常ジストロフィン遺伝子のためジストロフィン蛋白を持たないが、ES細胞由来筋細胞と融合して正常にジストロフィン蛋白を発現する筋線維を形成した。近年、ES細胞の持つ倫理的制約を回避できる誘導多能性幹細胞(iPS)細胞が樹立された。そこでiPS細胞にも同様に遺伝子導入で筋細胞を分化誘導可能であるかを検討した。より強いIGFII産生をもたらすため、CAG promoterの下流にIGFII遺伝子をサブクローニングしたpCAG-IGFIIを作成した。電気穿孔法にて上記プラスミドをiPS細胞に導入しG418耐性の安定した形質転換細胞(IGFII遺伝子を導入した細胞;IGFII細胞)を回収した。しかしこの細胞は過剰な細胞増殖を行い、腫瘍形成能を示したため、その後の検討は中止した。そこでiPS細胞を遺伝子組み換え可溶性IGFIIと共に21日間培養して筋細胞分化を誘導した。この細胞はIGFII受容体、骨格筋特異的蛋白であるMyoD、myogenin、MRF4、myf5、dystrophin mRNAを発現し、dystrophin蛋白も発現した。この成績はiPS細胞をIGFIIとともに培養することで、腫瘍化していない筋細胞を分化誘導できることを示している。今後、mdxマウスへのiPS細胞由来筋細胞の移植も行いその有用性を評価する。
KAKENHI-PROJECT-20659238
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20659238
再発大腸がん患者の「生を支える力」の尺度開発
まず、大腸がん患者の現状として統計的推移を確認した。その中で、2016年の男性のがんの死亡数は21万9785人、死亡率(男性人口10万対)は361.1人であった。部位別に死亡率の年次推移をみると、肺がんは上昇を続け、1993年には胃がんを抜き第1位となり、引き続き上昇傾向であったが2016年は低下した。胃がんは1994年からは上昇傾向であったが、2008年から低下傾向となっている。大腸がんは上昇傾向にあり、2007年に肝がんを抜き第3位となった。上昇傾向であった肝がんは、近年低下傾向で推移し、大腸がんの死亡率のみ増加傾向にあることは示されていた。2016年の女性のがんの死亡数は15万3201人、死亡率(女性人口10万対)は238.8人であった。部位別に死亡率の年次推移をみると、一貫して上昇を続けていた大腸がんは、2003年に胃がんを抜き、以降第1位となっている。こういった現状を踏まえ、大腸がんに罹患する患者が増加すると共に、再発大腸がん患者も増加傾向にあることが予想され研究を行う上で対象となる患者数の増加も見込まれる。初年度として文献調査を行った。文献調査の中で、初期診断時、治療期、再発時点といった病期に特定した研究は少ない現状があり、まずは大腸がん患者に限定せずに、がん患者全般の精神面に関する研究として、がん治療中や治療後の精神的変化に関する研究を調査し、また大腸がん患者の治療として、ボディーイメージの変容というとても大きな苦痛を伴うことを踏まえ、ストーマ造設に関する研究についても文献調査を行った。がん再発、転移を経験した患者の精神的側面に関する研究として調査を行っている状況である。その上で本研究では、先行研究から継続して、「生を支える力」についてのインタビュー調査を行うため、インタビューガイドの内容を検討するなどインタビュー調査に向けた準備をしていく段階である。現在、文献検討や大腸がん患者の統計的推移についての研究調査が進んでいる。次年度は更なる大腸がん患者、また再発大腸がん患者に関する文献検討を進めると同時に、自身の行った先行研究から継続してインタビューガイド等の作成を行い、インタビュー調査を行って行きたいと考える。そして尺度開発におけるアイテムプールの抽出へ繋げていく予定である。現在、大腸がん患者の現状として統計的推移について把握するとともに、更なる文献調査を行っている。本研究では、「生を支える力」についてのインタビュー調査を先行研究に継続して行う予定であり、先行研究と今回のインタビュー調査結果より統合したアイテムプールを作成していくこととしている。現在、インタビュー調査において遅れている状況のため、今年度中にインタビュー調査を行い、アイテムプールを抽出する予定である。そして来年度には、これをもとに質問紙調査を行い、「生を支える力」の尺度開発を行っていくこととする方向性である。まず、大腸がん患者の現状として統計的推移を確認した。その中で、2016年の男性のがんの死亡数は21万9785人、死亡率(男性人口10万対)は361.1人であった。部位別に死亡率の年次推移をみると、肺がんは上昇を続け、1993年には胃がんを抜き第1位となり、引き続き上昇傾向であったが2016年は低下した。胃がんは1994年からは上昇傾向であったが、2008年から低下傾向となっている。大腸がんは上昇傾向にあり、2007年に肝がんを抜き第3位となった。上昇傾向であった肝がんは、近年低下傾向で推移し、大腸がんの死亡率のみ増加傾向にあることは示されていた。2016年の女性のがんの死亡数は15万3201人、死亡率(女性人口10万対)は238.8人であった。部位別に死亡率の年次推移をみると、一貫して上昇を続けていた大腸がんは、2003年に胃がんを抜き、以降第1位となっている。こういった現状を踏まえ、大腸がんに罹患する患者が増加すると共に、再発大腸がん患者も増加傾向にあることが予想され研究を行う上で対象となる患者数の増加も見込まれる。初年度として文献調査を行った。文献調査の中で、初期診断時、治療期、再発時点といった病期に特定した研究は少ない現状があり、まずは大腸がん患者に限定せずに、がん患者全般の精神面に関する研究として、がん治療中や治療後の精神的変化に関する研究を調査し、また大腸がん患者の治療として、ボディーイメージの変容というとても大きな苦痛を伴うことを踏まえ、ストーマ造設に関する研究についても文献調査を行った。がん再発、転移を経験した患者の精神的側面に関する研究として調査を行っている状況である。その上で本研究では、先行研究から継続して、「生を支える力」についてのインタビュー調査を行うため、インタビューガイドの内容を検討するなどインタビュー調査に向けた準備をしていく段階である。現在、文献検討や大腸がん患者の統計的推移についての研究調査が進んでいる。次年度は更なる大腸がん患者、また再発大腸がん患者に関する文献検討を進めると同時に、自身の行った先行研究から継続してインタビューガイド等の作成を行い、インタビュー調査を行って行きたいと考える。そして尺度開発におけるアイテムプールの抽出へ繋げていく予定である。現在、大腸がん患者の現状として統計的推移について把握するとともに、更なる文献調査を行っている。本研究では、「生を支える力」についてのインタビュー調査を先行研究に継続して行う予定であり、先行研究と今回のインタビュー調査結果より統合したアイテムプールを作成していくこととしている。
KAKENHI-PROJECT-18K17504
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K17504
再発大腸がん患者の「生を支える力」の尺度開発
現在、インタビュー調査において遅れている状況のため、今年度中にインタビュー調査を行い、アイテムプールを抽出する予定である。そして来年度には、これをもとに質問紙調査を行い、「生を支える力」の尺度開発を行っていくこととする方向性である。研究の初年度として進めるにあたり、文献調査や研究に纏わる資料等をまとめていく中で必須であったパソコンを購入し、研究を実行した。また学会へ参加することで、がん看護に纏わる知見を深めることができた。しかし研究の進みとしてアイテムプールの抽出のためのインタビュー調査が今年度中に行うことができなかったため、次年度へ今年度使用予定の費用が次年度へ移行した形である。次年度における使用計画としては、先行研究と今回のインタビュー調査結果より統合したアイテムプールを作成していくに辺り、更に文献を取り寄せ、またがん・大腸がんにおける医療看護関連図書購入が見込まれる。またインタビュー調査をするため、遠方に出向くこととも考えられその際は交通費、また研究協力者への謝礼品が発生する。インタビューの際にはICレコーダにて録音をすることとなるため、その購入費用も必要となる。インタビュー内容におけるテープ起こしをする必要が発生するため、業者への依頼することとなり必要経費が発生する。またインタビュー調査やアイテムプールの抽出等にあたり、様々な研究資料を作成していくこととなり、資料整理をしながら行っていく。その際に、研究補助となる方を1名雇用する可能性がある。そして資料作成等にあたり、印刷をすることが更に増えるためインクカートリッジ等を購入する可能性がある。
KAKENHI-PROJECT-18K17504
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動物モデルによる死後造影画像解析と組織学的検討・死後画像診断への応用
単純CTで行える死後画像診断の評価限界を超えた急性冠症候群や肺動脈血栓塞栓症に代表される血管性病変に対し、死後造影CT画像・MRI画像撮像による定量・定性評価並びにその実務利用を行うことを本研究の目的とした。家兎を用いた実験的検討により、救命処置により生じる輸液が肺野濃度の上昇を生じることが明らかとなり、輸液量によって肺野の濃度上昇には統計学的な有意差が生じること、輸液量が25 ml/kgでは肺野濃度は投与前と統計学的に変化がないことが明らかとなった。この実験結果より、従来まで行われてきた死後造影CTによる大量輸液では、薬毒物評価に必要な指標としての肺重量が不明確になることが明らかとなった。肺野濃度上昇が生じる機序としては、含気良好域並びに肺水腫中程度域の肺野に液体漏出が生じやすく濃度変化を生じる主な領域であることが明らかとなった。以上の動物実験で得られた知見を基にご遺体に対して肺重量を変化させない(最小限に止める)造影法として、非造影CT撮影後、血管確保を行い、希釈造影剤を用手的に注入する方法を考案し、動脈あるいは静脈から造影剤を注入し繰り返しCTを撮影し、血管病変が何れから生じたものかを容易に判定でき、かつ肺重量の変化を最小限に抑えられる利点がある。ご遺体34名に本法による死後造影CTによる死因究明を実施し、血管損傷の有無について解剖所見をgold standardとした評価が可能であった14例では、sensitivity 80.0%, specificity 100%, accuracy 92.9%と良好な結果を得ることができ、血管病変が考えられる事例に対し実用可能な方法と考えられた。以上より、解剖所見(特に肺重量)に与える影響を最低限に抑え、なおかつ血管損傷を明確に同定可能な造影法の有用性が明らかとなり、今後の死後画像診断への応用に更に期待できるものと考えられた。本研究の目的は、いまだ死後CT画像診断に際し、所見の解釈が困難とされる課題について動物モデル実験により解明することである。平成28年度では、死戦期状況による画像修飾を明らかにする目的に、動物頭部を用いた凍結実験を行い、凍結による死後CT画像変化について論文発表した(Legal Medicine 2017;24:19-23)。また、死戦期の状況による画像修飾を明らかにする目的に、溺水モデルの肺野所見について間歇呼吸による肺所見の修飾像を観察し、成果は平成29年度に学術発表を行う予定である(第76回日本医学放射線学会総会・6th International Society of Forensic Radiology and Imaging)。一方、ヒト検体に対する死後画像検査として、脳脊髄液の死後経過時間との関連性についてデータ解析を実施し、両者の関連性について論文発表した(LegalMedicine 2016;22:30-35)。平成29年度では、死後換気CT及び死後造影CTについて実施を行う予定である。また、MRI検査のための施設使用者研修を予定しており、CTで得られた所見とMRI所見の相違のみならず有用性並びに問題点について明らかにしてゆく予定である。加えて、検体を用いた臨床技能トレーニングの際の死後CT利用について、複数の臨床科(消化器外科並びに脳神経外科他)と連携し、実務に直結する研修の場を提供する予定である。動物実験を用いた新知見を得ることができ、学術論文発表も行っている。解剖献体に対する死後CT画像利用について実績を上げることができ、臨床トレーニングに向けた死後CT画像のさらなる可能性について研究を始めている。本研究の目的は、いまだ死後CT画像診断に際し、所見の解釈が困難とされる課題について動物モデル実験により解明することである。平成28年度では、死戦期状況による画像修飾を明らかにする目的に、動物頭部を用いた凍結実験を行い、凍結による死後CT画像変化について論文発表した(Legal Medicine 2017;24:19-23)。また、ヒト検体に対する死後画像検査として、脳脊髄液の死後経過時間との関連性についてデータ解析を実施し、両者の関連性について論文発表した。平成29年度では、死戦期の状況による画像修飾を明らかにする目的に、溺水モデルの肺野所見について間歇呼吸による肺所見の修飾像を観察し、第76回日本医学放射線学会及び6th International Society of Forensic Radiology and Imagingにて発表した。また、平成28年度に実施した動物実験を実務に応用し、従来まで不可能であった腐敗脳の検査を可能とする方法について論文発表した(Legal medicine 2017;26:6-10)。また、従来までは推定不能とされた肺重量について、死後CTを用いた推計式を統計的に算出し、その方法を論文発表した(Legal Medicine 2017;29:77-81)。一方、死後換気及び死後造影CTについて実験を行い、最適な実施条件について明らかにし、検体を用いた臨床技能トレーニングの際の死後CT利用に応用するとともに、法医実務への応用を試み、死後造影CT画像を作成しデータの集積を進めた。平成30年度では、死後造影CT画像を用いた体内状態の評価法の標準化を図る目的に、死後造影CT並びに死後換気CT検査を実施し、その有用性を客観的手法により評価を行う予定である。また、MRI所見との相違及び有用性・問題点について明らかにしてゆく予定である。動物実験を用いた新知見を得ることができ、学術発表も行っている。
KAKENHI-PROJECT-16K10290
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K10290
動物モデルによる死後造影画像解析と組織学的検討・死後画像診断への応用
カダバートレーニング用の献体に加えて、実務解剖体に対する死後造影CTを実施し、死因究明に資する死後造影CTの有用性並びに問題点について新知見を得ることができている。成果についてもデータ解析を進めており、学術発表する予定である。単純CTで行える死後画像診断の評価限界を超えた急性冠症候群や肺動脈血栓塞栓症に代表される血管性病変に対し、死後造影CT画像・MRI画像撮像による定量・定性評価並びにその実務利用を行うことを本研究の目的とした。家兎を用いた実験的検討により、救命処置により生じる輸液が肺野濃度の上昇を生じることが明らかとなり、輸液量によって肺野の濃度上昇には統計学的な有意差が生じること、輸液量が25 ml/kgでは肺野濃度は投与前と統計学的に変化がないことが明らかとなった。この実験結果より、従来まで行われてきた死後造影CTによる大量輸液では、薬毒物評価に必要な指標としての肺重量が不明確になることが明らかとなった。肺野濃度上昇が生じる機序としては、含気良好域並びに肺水腫中程度域の肺野に液体漏出が生じやすく濃度変化を生じる主な領域であることが明らかとなった。以上の動物実験で得られた知見を基にご遺体に対して肺重量を変化させない(最小限に止める)造影法として、非造影CT撮影後、血管確保を行い、希釈造影剤を用手的に注入する方法を考案し、動脈あるいは静脈から造影剤を注入し繰り返しCTを撮影し、血管病変が何れから生じたものかを容易に判定でき、かつ肺重量の変化を最小限に抑えられる利点がある。ご遺体34名に本法による死後造影CTによる死因究明を実施し、血管損傷の有無について解剖所見をgold standardとした評価が可能であった14例では、sensitivity 80.0%, specificity 100%, accuracy 92.9%と良好な結果を得ることができ、血管病変が考えられる事例に対し実用可能な方法と考えられた。以上より、解剖所見(特に肺重量)に与える影響を最低限に抑え、なおかつ血管損傷を明確に同定可能な造影法の有用性が明らかとなり、今後の死後画像診断への応用に更に期待できるものと考えられた。死後換気CT並びに死後造影CTについて、動物実験を重ねるとともにヒト検体に対して実施し、その有用性と課題を明らかにする。画像ワークステーションを用いて定量化指標による死因究明に資する所見を明らかにする。薬毒物分析等、他検査所見との併用による科学的死因究明の推進を進める。死後換気CT並びに死後造影CTについての知見について、データ解析を進め、学術発表を行う。画像ワークステーションを用いて定量化指標による死因究明に資する所見を明らかにする。薬毒物分析など、他検査所見との併用による科学的死因究明の推進を進める。死後画像読影ガイドライン2015について、英語版並びにイタリア語版の作成を通じて、死後画像診断についての意見交換を行い、知見の共有を図った。
KAKENHI-PROJECT-16K10290
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台湾集集地震が残した温度異常の時間変化
我々は,車籠埔断層を横断する温度プロファイルを観測するために,深さ250mのボアホールを掘削した.この掘削場所は1999年集集地震による温度異常が2000年に観測された場所のごく近傍である.2008年と2010年の温度測定では,温度異常は観測されなかった.このことは,2000年に観測された温度シグナルが地震による摩擦発熱による真のシグナルであったことを示している.我々は,車籠埔断層を横断する温度プロファイルを観測するために,深さ250mのボアホールを掘削した.この掘削場所は1999年集集地震による温度異常が2000年に観測された場所のごく近傍である.2008年と2010年の温度測定では,温度異常は観測されなかった.このことは,2000年に観測された温度シグナルが地震による摩擦発熱による真のシグナルであったことを示している.この断層掘削の目的は,断層をまたぐ地中の温度分布を調べ,それを1999年集集地震の摩擦特性と関連付けることである.我々の過去の研究により,集集地震をひきもこした車籠埔断層の北部の地域では摩擦が小さかったことが示唆された.本研究は,すべりは小さかったが摩擦は大きかった可能性のある車籠埔断層の南部で実施する.今年度,台湾の車籠埔断層を貫く250m深のボアホールの掘削を行った.現場は,南投市で,1999年集集地震の断層破壊域の南部にあたる.約3週間かけて掘削が完了し,ボアホールの線上を実施した.ボアホールは孔底まで鉄管によりケーシングされた.孔底はセメンチングしたが,ケーシングの底部10mの区間のみ水を流入させるためスクリーンを設けた.孔口にはステンレス製のケースを設置した.この現場では,以前にも温度測定が行なわれたことがある.しかし,ボアホールがケーシングされていなかったため崩壊し,繰り返し温度測定はできなかった.以前の掘削によりボーリング・コアは取得されているので,ボアホール周辺の地質はよくわかっている.今回の掘削で,171m深で断層を貫通した.掘削中,この深度でカッティングス(掘屑)の変化がみられ,断層より上部の頁岩から下部の礫層へと地質が変化したことがわかった.この目的のために適当な現場を探し,掘削の許可を得ることに時間を要したため,掘削完了が年度の終末にずれこみ,今年度は詳細な温度測定を実施することができなかった.詳細な温度測定は次年度実施する.また,断層近傍の地下水の影響も調べている.掘削作業中に地下水の水量を観察し,41m深においてボアホール内への水の流入がみられた.地表近くで観察されたこの地下水の流れは,断層近傍には大きな影響しないと考えられる.このことは断層近傍の温度測定をするには好条件である。本研究計画の目的は,1999年台湾集集地震の際の大きなすべりによる摩擦熱が残留しているかどうかを確かめるため,車籠埔断層を横断する温度プロファイルを得ることである.この目的を達成するため,断層の南部分に位置する南投市に昨年度250mのボアホールを掘削した.ここは地震発生の1年後に大きな温度異常が発見されたのと同じ場所である.5月7日から9日に,このボアホールの深さ200 mまでの温度測定を行った.得られた温度プロファイルでは,地表から深さ70 mまでは24.5度に減少し,ここから地下200 mまで単調に25度まで増加した.また,連続観測のための温度計も設置した.10月1日から2日に,このボアホールにおいて2度目の温度プロファイルを得た.この温度プロファイルからは,断層付近での明確な温度上昇は見られなかった.これは,過去にこの地層で測定された温度異常は永続的なものではなかったという点で,重要な観測結果である.連続測定からは,ボアホールの掘削そのものが温度プロファイルに与える影響が120日程度で減少することがわかった.この間の温度変化は約0.05度であった.この知見は,将来の地震断層研究において,掘削作業からの回復時間を見積もるために重要である.2010年2月26日から27日にかけて、われわれは南投市近くの車籠埔断層を貫くボアホールで温度プロフィールの観測を行った。ボアホールは深度180mで断層面を突き抜けている。これは2008年5月、2008年10月に次ぐ3回目の観測である。目的は、2000年に測定された断層の摩擦熱の異常(1999年集集地震により発生)に関して、温度が変化したかどうかを調べることにあった。2008年の観測結果と同様に、深度150200mにおける温度はずっと安定している。このプロジェクトではボアホールで使う単純化した高分解能温度観測システム(0.002度)を開発した。断層地域の地下水の影響による大きな温度変化は観測されていない。台湾側の研究者たちとのミーティングは台北と京都で開かれ、観測結果について議論が行われた。
KAKENHI-PROJECT-19403007
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19403007
小学校社会科地理におけるスケールの概念を組み込んだ言語力育成をはかる実践的研究
○研究の仮説と内容申請者は,今まで小学校社会科や総合的な学習の時間におけるICTを活用した実践研究を行ってきた。研究を進める上で,メディアをどのように読み解くかにかかわるメディアリテラシーについて,関心がある。メディアを読み解く力は,スケールが関係してくると考えられる。そこで,本研究では,社会科地理的分野において実践を試みようと考え,以下の仮説を設定する。小学校社会科の学習において,教師が問いと答えのスケールを考慮して学習内容を構成すれば,児童に適切な概念・短識の育成とともに言語力育成ができるであろう。そして,以下の研究内容を設定する。・ミクロなスケールでの研究成果のマクロなスケールへの位置づけ方の理論の構築○成果・学習指導要領における5年生社会科は,我が国の国土の様子や我が国の産業の様子をとらえることが目標となり,中学校の地理的分野の学習とつなげていく上で,「地域の規模(スケール)」をどうとらえるかが問題であることを提案できた。・「自動車をつくる仕事」の知識の構造を見直すことで,児童の学習内容が明らかになり,表現する内容を明確にできた。・小学校6年生の学習において,地理的分野と公民の分野と関連した学習計画の作成と実践ができた。コミュニティ再生問題を扱う上で,(1)住民参加型政治の成功事例を組み込んだ授業設計をすることの必要性を提案できた。授業では,地理的なスケールである縮尺と,経済学,防災の面からのスケールをあつかったことで,災害復細の取組において議論される地域コミュニティの範囲が示された。○研究の仮説と内容申請者は,今まで小学校社会科や総合的な学習の時間におけるICTを活用した実践研究を行ってきた。研究を進める上で,メディアをどのように読み解くかにかかわるメディアリテラシーについて,関心がある。メディアを読み解く力は,スケールが関係してくると考えられる。そこで,本研究では,社会科地理的分野において実践を試みようと考え,以下の仮説を設定する。小学校社会科の学習において,教師が問いと答えのスケールを考慮して学習内容を構成すれば,児童に適切な概念・短識の育成とともに言語力育成ができるであろう。そして,以下の研究内容を設定する。・ミクロなスケールでの研究成果のマクロなスケールへの位置づけ方の理論の構築○成果・学習指導要領における5年生社会科は,我が国の国土の様子や我が国の産業の様子をとらえることが目標となり,中学校の地理的分野の学習とつなげていく上で,「地域の規模(スケール)」をどうとらえるかが問題であることを提案できた。・「自動車をつくる仕事」の知識の構造を見直すことで,児童の学習内容が明らかになり,表現する内容を明確にできた。・小学校6年生の学習において,地理的分野と公民の分野と関連した学習計画の作成と実践ができた。コミュニティ再生問題を扱う上で,(1)住民参加型政治の成功事例を組み込んだ授業設計をすることの必要性を提案できた。授業では,地理的なスケールである縮尺と,経済学,防災の面からのスケールをあつかったことで,災害復細の取組において議論される地域コミュニティの範囲が示された。
KAKENHI-PROJECT-23908031
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23908031
高表面積酸化モリブデンの表面改質によるコアシェル型モリブデン窒化物・炭化物の開発
Pt/MoO3を500°Cで0.5 h還元すると、Mo平均価数3.0で表面積が290 m2/gのMoOxが得られた。12 h及び24 h還元では価数は2.0、1.5、表面積は320、270 m2/gであった。これらのMoOxをHe気流中500-800°Cで1 h熱処理し、表面積を測定した。Mo価数3.0のMoOxの表面積は600°Cでの熱処理で200 m2/gと低下し、800°Cでの熱処理後は25 m2/gとなった。これに対して、価数2.0と1.5では600°Cで熱処理しても表面積はほとんど変化せず、価数3.0のMoOxよりも高い熱安定性を示した。700°C以上での熱処理ではMo価数によらず表面積は低下したが、700°Cでの熱処理でも100 m2/g程度の表面積で、これらのMoOxは高い熱安定性を示した。熱処理したMoOxのXRD測定を行なった。価数3.0では、回折ピークが2θ=38°と44°にみられ、これらはMoOに起因するピークである。600°Cで熱処理してもXRDパターンに変化はみられなかったが、700°Cで熱処理するとMoO2相が生成し、800°CではMoO2とMo金属の混合相となった。価数2.0のMoOxはMoOとMo金属の混合物であった。これを熱処理すると、700°Cまではこれらの相の回折ピーク強度が増大した。800°Cでの熱処理でMoO2が生成し、3相の混合物となった。価数1.5のMoOxでも平均価数2.0の場合と同様の変化がみられた。以上のことより、熱処理によりMoO2及びMo金属が生成するために表面積及び脱水活性が低下すると結論した。2-プロパノール脱水活性も表面積と同様の熱処理温度依存性を示した。NH3の昇温脱離測定より、Mo価数が小さい程NH3の脱離量が低下するが、吸着NH3との反応が進行し、窒素を取り込む、すなわちMo窒化物が生成しやすくなることが明らかとなった。Pt/MoO3を水素流速5 mL/min、温度400600°Cで所定の時間還元して表面積を測定した。400°C還元では、還元1時間後は230m2/gの表面積であったが、表面積は還元時間とともに増大し、48時間後には325m2/gの表面積を示した。これに対して、500°C及び600°C還元では24時間及び1時間の還元で最大表面積となり、その表面積は各々389 m2/g及び314 m2/gであった。表面積をMo平均価数で整理したところ、400°Cと500°C還元では表面積は同一のMo平均価数依存性を示すこと、600°C還元ではMo平均価数が2.5よりも大きい場合には500°C還元と同程度の表面積を示すが、平均価数が2.5以下では500°C還元に比べて低表面積であること、還元温度によらずMo平均価数2.0付近で表面積が最大となることが示された。500°Cで還元した試料を600°Cで熱処理しても表面積は変化しなかった。このことから、500°C以下での還元と600°Cでの還元での表面積の相違は耐熱性によるものではないことが示された。次に、水素流速60 mL/minで還元を行い同様の検討を行った。水素流速60 mL/minの条件では、還元温度によらずMo平均価数で整理することができた。水素流速60 mL/min、400°Cでの還元速度は水素流速5 mL/min、500°Cでの還元速度とほぼ同一であったが、同一Mo価数での表面積は小であった。これらのことから、還元速度は表面積に影響を与えていないことが明らかとなった。XRD測定で、水素流速60 mL/min、400°Cでの還元ではMo価数3.0でMo金属の生成が確認できたが、水素流速5 mL/min、500°Cでの還元ではMo価数2.0でもMo金属の生成はみられなかった。このことから、還元生成物の相違が表面積に影響していると結論した。モリブデン窒化物や炭化物は、活性点当たりで比較すると貴金属よりも大きな反応速度を示すが、表面積が小さいため触媒重量当たりの活性は貴金属よりも低い。昇温反応を適用すると高表面積を有するモリブデン窒化物や炭化物が得られることが報告されているが、これらの生成には700-800°C程度の高温が必要であるため、再生を考えると触媒としては取り扱い難い材料である。高表面積酸化モリブデンの表面を低温でモリブデン窒化物や炭化物に改質し、コアシェル型の窒化物・炭化物を調製できればこれらの問題点を解決することができる。この方法では高表面積酸化モリブデンの表面の反応性が窒化物や炭化物の生成に大きな影響を与える可能性があり、高表面積酸化モリブデンの表面特性や熱安定性を検討し、これらの特性に及ぼすMo平均価数の影響を明らかにする必要がある。
KAKENHI-PROJECT-16K05880
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高表面積酸化モリブデンの表面改質によるコアシェル型モリブデン窒化物・炭化物の開発
このような背景のもと、当該年度において、Pt/MoO3の高表面積化に及ぼす還元温度及び還元時の水素流速の影響を検討し、これらの還元条件によらず表面積はMo平均価数2.0付近で最大になることを明らかにした。また、水素流速を制御することにより表面積が380 m2/gとこれまでに報告例のない大きな表面積を有する酸化モリブデンの調製に成功した。このように高表面積な酸化モリブデン表面は極めて高い反応性を有していると考えられ、低温での窒化物あるいは炭化物の生成が期待出来る。高表面積酸化モリブデンはMoOxあるいはMoOxとMo金属の混合物であるが、水素流速の制御により同一Mo平均価数でもMo金属とMoOxの割合の異なる酸化モリブデンあるいは含有するMo金属の結晶子径が異なる酸化モリブデンを調製できることも明らかにしており、当初の計画通りの成果が得られている。300°C500°Cで所定の時間水素還元したPt/MoO3 (Pt/MoOx)の物性を測定した。300°C、2時間の水素還元ではMo平均価数3.9の酸化モリブデンが得られ、その表面積は145 m2/gであった。表面積はMo価数の減少とともに増大し、Mo価数2.2で281 m2/gと最大になった。水素還元した試料を昇温するとH2及びH2Oが生成し、これらの酸化モリブデンは水素を含有していることが示された。H2及びH2Oの生成量から求めたH/Moモル比はMo価数3.9では0.42であったが、Mo価数1.2では0.03と、Mo価数の低下とともに減少した。NH3-TPDを行なったところ、Mo価数3.9では473Kと693KにNH3の脱離ピークがみられた。Mo平均価数の低下とともに高温側のピークが減少し、価数1.6以下では低温側のピークも減少した。この結果はMo平均価数の低下とともに酸量及び酸強度が低下することを示している。しかし,Pt/MoOxのNH3-TPDではH2及びH2Oも生成し、これらの生成量はPt/MoOxに含まれている水素含有量よりも大であった。またNH3-TPDではN2生成はみられなかった。これらの結果は、Pt/MoOxが吸着NH3と反応して一部がモリブデン窒化物になっていることを示している。NH3-TPDで使用したPt/MoOxの昇温酸化測定でN2が生成したことから、NH3-TPDでモリブデン窒化物が生成していることが明らかとなった。N2の生成量はMo価数3.02.0で最大となった。NH3-TPDでのNH3脱離量とTPOでのN2生成量から酸量を求めたところ、Mo価数3.1で最大となることを明らかにした。高表面積酸化モリブデンのシクロプロパン異性化活性は、Mo価数3.9のPt/MoOxを除くと、この酸量と相関していることを明らかにした。遷移金属窒化物や炭化物は貴金属と類似の触媒作用を示すが、表面積が小さいため触媒重量当たりの活性は低い。このため、窒化物や炭化物を貴金属代替触媒として使用するためには高表面積化が必要である。高表面積酸化モリブデンの表面を低温でモリブデン窒化物や炭化物に改質し、コアシェル型の窒化物・炭化物を調製できればこの問題点を解決することができる。この背景のもと、昨年度はPt/MoO3の高表面積化に及ぼす還元条件の影響を検討し、還元条件によらず表面積はMo平均価数2.0付近で最大になること、水素流速を制御することによりこれまでに報告例のない大きな表面積を有する酸化モリブデンが得られることを明らかにした。当該年度ではこれら高表面酸化モリブデンの組成を昇温分解および再酸化で測定し、高表面酸化モリブデンが水素を含有するモリブデンオキシハイドライトであることを明らかにした。高表面酸化モリブデンは固体酸触媒として機能することをこれまでの研究で明らかにしていることから、これらにNH3を100°Cで吸着させ、昇温した時の生成物を定量的に測定して、窒化物が生成していることを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-16K05880
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アンチエイジングエクソソームを介した食品の機能性とその分子基盤解明
これまで当研究室では、カルノシンによる脳腸相関活性化の分子基盤を明らかにするための研究を行ってきた。これまでに、様々な分泌性因子やエクソソームをその分子基盤として想定し、脳腸相関活性化への寄与を明らかにするための研究を行ってきた。腸管モデル細胞としては、ヒト結腸ガン由来Caco-2細胞を、神経細胞としてヒト神経芽腫細胞SH-SY5Y細胞を用いた。カルノシン処理をしたCaco-2細胞の培養上清から、MagCapture法によりエクソソームを調製した。カルノシン処理をしたCaco-2細胞の培養上清から調製されたエクソソームは、SH-SY5Y細胞の神経突起を伸長する活性を有していることが明らかとなった。そこで、その分子基盤を明らかにするために、カルノシン処理したCaco-2細胞から分泌されたエクソソーム内のmiRNAのマイクロアレイ解析及びそのエクソソームで処理をしたSH-SY5Y細胞におけるmRNAのマイクロアレイ解析の統合解析により、カルノシン処理により発現増強し、さらにSH-SY5Y細胞での神経突起伸長に関わるmiRNAとそのターゲット遺伝子の同定に成功した。これまで当研究室では、カルノシンによる脳腸相関活性化の分子基盤を明らかにするための研究を行ってきた。これまでに、様々な分泌性因子やエクソソームをその分子基盤として想定し、脳腸相関活性化への寄与を明らかにするための研究を行ってきた。腸管モデル細胞としては、ヒト結腸ガン由来Caco-2細胞を、神経細胞としてヒト神経芽腫細胞SH-SY5Y細胞を用いた。カルノシン処理をしたCaco-2細胞の培養上清から、MagCapture法によりエクソソームを調製した。カルノシン処理をしたCaco-2細胞の培養上清から調製されたエクソソームは、SH-SY5Y細胞の神経突起を伸長する活性を有していることが明らかとなった。そこで、その分子基盤を明らかにするために、カルノシン処理したCaco-2細胞から分泌されたエクソソーム内のmiRNAのマイクロアレイ解析及びそのエクソソームで処理をしたSH-SY5Y細胞におけるmRNAのマイクロアレイ解析の統合解析により、カルノシン処理により発現増強し、さらにSH-SY5Y細胞での神経突起伸長に関わるmiRNAとそのターゲット遺伝子の同定に成功した。エクソソーム内miRNAのマイクロアレイ解析及びエクソソームのターゲット細胞におけるmRNAのマイクロアレイ解析の統合解析により、カルノシンの脳腸相関を規定しうるmiRNAとそのターゲット遺伝子候補の同定に成功した。これまで当研究室では、カルノシンによる脳腸相関活性化の分子基盤を明らかにするための研究を行ってきた。これまでに、様々な分泌性因子やエクソソームをその分子基盤として想定し、脳腸相関活性化への寄与を明らかにするための研究を行ってきた。腸管モデル細胞としては、ヒト結腸ガン由来Caco-2細胞を、神経細胞としてヒト神経芽腫細胞SH-SY5Y細胞を用いた。カルノシン処理をしたCaco-2細胞の培養上清から、MagCapture法によりエクソソームを調製した。カルノシン処理をしたCaco-2細胞の培養上清から調製されたエクソソームは、SH-SY5Y細胞の神経突起を伸長する活性を有していることが明らかとなった。そこで、その分子基盤を明らかにするために、カルノシン処理したCaco-2細胞から分泌されたエクソソーム内のmiRNAのマイクロアレイ解析及びそのエクソソームで処理をしたSH-SY5Y細胞におけるmRNAのマイクロアレイ解析の統合解析により、カルノシン処理により発現増強し、さらにSH-SY5Y細胞での神経突起伸長に関わるmiRNAとそのターゲット遺伝子の同定に成功した。近年、脳と腸が密接に関わり影響を及ぼし合う「脳腸相関」という概念が注目されている。当研究室ではこれまでの研究で、食肉成分であるカルノシンが認知機能改善効果を示し、脳腸相関活性化能を有することを明らかにしている。そこで、カルノシンによる脳腸相関活性化の分子基盤として様々な分泌系因子やエクソソームを想定し、その寄与を明らかにすることを目的として研究を行った。腸管モデル細胞として、ヒト結腸癌由来細胞株であるCaco-2細胞を用いた。各種分泌因子の発現は、real time PCR法を用いて検証した。カルノシン処理をしたCaco-2細胞の培養上清から、Exoquickを用いてエクソソームを単離し、エクソソーム内のmiRNAの発現変動をマイクロアレイを用いた網羅的解析により行った。Caco-2培養上清及びエクソソームの機能性は、ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞を用いて検証した。カルノシン処理をしたCaco-2細胞においては、神経栄養因子(BDNF、GDNF)、摂食調節因子(ADM、CCK、NMU)、循環器系制御因子(EDN1、EDN2、APLN)、ストレス応答因子(UCN),神経系制御因子(OSM、FGF9)の発現が優位に増強していることが明らかとなった。次に、カルノシン処理をしたCaco-2細胞由来のエクソソームmiRNAの発現変動を解析した結果、カルノシン処理により発現変動を示す10種類のmiRNAを同定した。これらmiRNAのターゲット遺伝子をTargetScanによりについて予測したところ、神経管の形成・発達、神経伝達物質の分泌・輸送、ニューロンの発達・分化、軸索の誘導といった、神経細胞の分化・成熟に関わる遺伝子が多く含まれていることが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-16K14929
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アンチエイジングエクソソームを介した食品の機能性とその分子基盤解明
当初の予定では、腸管から分泌されるエクソソームの単離同定、及びその機能性検証で終わることが予想されたが、その予想をはるかに上回り、腸管から分泌されて、神経細胞を活性化しうるエクソソームの同定とその機能性検証、そのエクソソームに含まれるmiRNAの同定、さらにそのmiRNAのターゲット遺伝子の同定を行うことができた。つまりこの研究により、脳腸相関活性化効果を有するカルノシンの機能性の分子基盤として、ここで同定されたエクソソームとそこに含まれるmiRNAを想定することができた。カルノシン処理したCaco-2細胞由来のエクソソームの機能性をマウスを用いたin vivo試験により検証するとともに、カルノシンを摂取したマウスにおける血中miRNA及びエクソソームの動態の解析を行う予定である。今後は、カルノシンの脳腸相関活性化効果を担う因子としてのアンチエイジングエクソソームの機能性を、マウスを用いたin vivo実験により明らかにしていく予定である。さらに、腸管から分泌されるアンチエイジングエクソソームのターゲット組織として、腸管神経を想定し、腸管由来のエクソソームによる腸管神経活性化を介した脳機能改善の可能性を明らかにしていきたいと考えている。また、記憶減退及び回復、神経変性疾患に対する本エクソソームの寄与に関しても、その動態解析・機能性解析を含めて明らかにしていきたいと考えている。
KAKENHI-PROJECT-16K14929
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A-ファクターおよび蛋白リン酸化による放線菌の二次代謝・形態分化の制御機構
(1)^3HラベルしたA-ファクターとの結合を指標とし、S. griseusよりA-ファクターレセプターたんぱく質を精製し、遺伝子(arpA)をクローニングした。ArpAは276アミノ酸からなり原核生物にみられるリプレッサータイプの転写制御因子と高いホモロジーを示した。arpAの塩基配列をもとにS. coelicolor A3(2)から2つのarpA相同遺伝子をクローニングした。2つの遺伝子はそれぞれ216アミノ酸からなるORFをコードしていて、おのおのの遺伝子破壊株は、胞子形成は正常であるが色素生産に変化がみられた。(2)S. griseusの気中菌糸形成に関与する遺伝子amfRを含む転写単位のプロモーターはA-ファクターの非存在下で活性が高く、存在下で低かった。このプロモーター領域にA-ファクター非存在下でのみ結合するたんぱく質がゲルシフトアッセイにより同定された。このたんぱく質をゲルシフトアッセイを指標に精製したところ28kDaのたんぱく質が精製された。N末端・内部のアミノ酸配列決定によりPCR法により遺伝子取得に成功した。(3)S. coelicolorの二次代謝を制御するSer-ThrキナーゼAfsKの相同遺伝子をS. griseusより取得しafsK2と名付けた。afsK2破壊株は胞子形成の効率がショ糖による高浸透圧下において顕著に低下していた。AfsK2を大腸菌により大量発現、精製を行い、in vitroリン酸化実験によりAfsK2の自己リン酸化を確認した。(4)A-ファクター欠損株におけるA-ファクター合成遺伝子afsAのプロモーター活性が野生株に比べて低下していることから、その調節に関与する遺伝子がafsAを含む欠失領域に存在していることが示唆され、afsA遺伝子の周辺領域の塩基配列の決定を行ったところ、afsAの上流に原核生物に広く分布する転写調節因子と相同性のある遺伝子が見出された。(5)ストレプトマイシン生合成遺伝子群内のstrRはA-ファクター依存性転写因子(Adp)により転写活性化が起こることが分かっていた。このAdpをゲルシフトアッセイを指標に精製したところ、最終的にSDS-PAGE上で40kDa付近に近接した二本のバンドを得た。S. coelicolor A3(2)の染色体DNAをS. lividansにショットガンクローニングすることによって大量の色素性抗生物質アクチノロ-ジン生産を誘導する約1.2kbのDNA断片を取得した。1.2kbの断片中にはORFが2つ存在し、そのうちの1つは低分子量チロシンフォスファターゼと非常に高い相同性を示した。大腸菌により大量発見を行い、in vitroにおいてフォスファターゼ活性を検出した。(1)^3HラベルしたA-ファクターとの結合を指標とし、S. griseusよりA-ファクターレセプターたんぱく質を精製し、遺伝子(arpA)をクローニングした。ArpAは276アミノ酸からなり原核生物にみられるリプレッサータイプの転写制御因子と高いホモロジーを示した。arpAの塩基配列をもとにS. coelicolor A3(2)から2つのarpA相同遺伝子をクローニングした。2つの遺伝子はそれぞれ216アミノ酸からなるORFをコードしていて、おのおのの遺伝子破壊株は、胞子形成は正常であるが色素生産に変化がみられた。(2)S. griseusの気中菌糸形成に関与する遺伝子amfRを含む転写単位のプロモーターはA-ファクターの非存在下で活性が高く、存在下で低かった。このプロモーター領域にA-ファクター非存在下でのみ結合するたんぱく質がゲルシフトアッセイにより同定された。このたんぱく質をゲルシフトアッセイを指標に精製したところ28kDaのたんぱく質が精製された。N末端・内部のアミノ酸配列決定によりPCR法により遺伝子取得に成功した。(3)S. coelicolorの二次代謝を制御するSer-ThrキナーゼAfsKの相同遺伝子をS. griseusより取得しafsK2と名付けた。afsK2破壊株は胞子形成の効率がショ糖による高浸透圧下において顕著に低下していた。AfsK2を大腸菌により大量発現、精製を行い、in vitroリン酸化実験によりAfsK2の自己リン酸化を確認した。(4)A-ファクター欠損株におけるA-ファクター合成遺伝子afsAのプロモーター活性が野生株に比べて低下していることから、その調節に関与する遺伝子がafsAを含む欠失領域に存在していることが示唆され、afsA遺伝子の周辺領域の塩基配列の決定を行ったところ、afsAの上流に原核生物に広く分布する転写調節因子と相同性のある遺伝子が見出された。(5)ストレプトマイシン生合成遺伝子群内のstrRはA-ファクター依存性転写因子(Adp)により転写活性化が起こることが分かっていた。このAdpをゲルシフトアッセイを指標に精製したところ、最終的にSDS-PAGE上で40kDa付近に近接した二本のバンドを得た。S. coelicolor A3(2)の染色体DNAをS. lividansにショットガンクローニングすることによって大量の色素性抗生物質アクチノロ-ジン生産を誘導する約1.2kbのDNA断片を取得した。1.2kbの断片中にはORFが2つ存在し、そのうちの1つは低分子量チロシンフォスファターゼと非常に高い相同性を示した。大腸菌により大量発見を行い、in vitroにおいてフォスファターゼ活性を検出した。(1)A-factor特異的レセプターの解析-
KAKENHI-PROJECT-06454073
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A-ファクターおよび蛋白リン酸化による放線菌の二次代謝・形態分化の制御機構
A-ファクターは菌体内に存在する特異的レセプターと結合し、二次代謝と形態分化に関与する遺伝子群の発現調節を行っていることがこれまでに明らかになっている。このA-ファクターに特異的に結合するレセプター蛋白質を、^3HラベルしたA-ファクターとの結合を指標として完全精製し、N末端と内部のアミノ酸配列を決定し、この配列を基に遺伝子のクローニングに成功した。(2)形態形成調節遺伝子amfRの転写調節因子の解析-amfRはS.griseusのA-ファクター欠損株に気中菌糸形成を回復させる遺伝子の1つとして同定された遺伝子である。amfRを含む転写単位のプロモーターはA-ファクターの非存在下で活性が高く、存在下で低いことが明らかであり、プロモーター領域中のDNA断片をプローブに用いたゲルシフトアッセイにより、この領域に特異的に結合するA-ファクター非存在下にのみ検出される蛋白質を同定し、最終的にSDS-PAGE上で2本のバンドを与えた。これらの蛋白のN末端配列は同一の配列を示すことから、精製された蛋白は1種類であると判断された。(3)S.griseusのafsK遺伝子の取得と解析-AfsK蛋白はS.coelicolorの二次代謝をグローバルに制御する蛋白AfsRに対する真核生物型のSer-Thrキナーゼであるが、このafsK遺伝子を含むプラスミドをS.griseusのA-ファクター欠損株に導入すると胞子形成の回復が観察されることから、この菌の形態形成制御にAfsKが関与していることが予想され、この菌からのafsK遺伝子の取得並びにその解析を行った。afsK破壊株は胞子形成の効率が、特にショ糖による高浸透圧下において顕著に低下していた。E.coliを宿主に用いてAfsK蛋白の大量発現を行い、精製AfsK蛋白を取得、in vitroリン酸化実験により、AfsK蛋白の自己リン酸化を確認した。(4)A-ファクター合成遺伝子afsAの転写調節因子の取得-A-ファクター欠損株におけるA-ファクター合成遺伝子afsAのプロモーター活性が野生株に比べ低下していることから、その調節に関与する遺伝子がafsAを含む欠失領域に存在していることが示唆され、afsA遺伝子の周辺領域の塩基配列の決定を行った結果、afsAの上流にバクテリアに広く分布する転写調節蛋白群と相同な蛋白をコードする遺伝子が見いだされた。(1)A-ファクターレセプター遺伝子のクローニングと機能解析^3HラベルしたA-ファクターとの結合を指標とし、S.griseusよりA-ファクターレセプターたんぱく質を精製し、遺伝子(arpA)をクローニングした。ArpAは276アミノ酸からなりN末端付近にヘリックスターンヘリックスのDNA結合領域を持っていて、原核生物にみられるリプレッサータイプの転写制御因子と高いホモロジーを示した。arpAの塩基配列をもとにS.coelicolor A3(2)から2つのarpA相同遺伝子をクローニングした。2つの遺伝子はそれぞれ216アミノ酸からなるORFをコードしていた。おのおのの遺伝子破壊株は、胞子形成は正常であるが色素生産に変化がみられた。
KAKENHI-PROJECT-06454073
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エストロゲン受容体遺伝子多型が身体活動による動脈硬化改善効果の個人差に及ぼす影響
閉経前女性において,エストロゲン受容体(ER)αおよびβの遺伝子多型が動脈硬化指数および身体活動による動脈硬化改善効果の個人差への関与について検討した。その結果,ERβ遺伝子多型(既知の5つ)のうちの1つは動脈硬化指数に明らかな影響を及ぼすこと,また,1つのERα遺伝子多型と3つのERβ遺伝子多型は身体活動による動脈硬化抑制効果の程度に関係していた。これらの成果は,エストロゲン受容体に関連する遺伝子多型は,閉経前女性において,習慣的な運動による動脈硬化抑制効果の個人差に関連する可能性を示唆するものである。閉経前女性において,エストロゲン受容体(ER)αおよびβの遺伝子多型が動脈硬化指数および身体活動による動脈硬化改善効果の個人差への関与について検討した。その結果,ERβ遺伝子多型(既知の5つ)のうちの1つは動脈硬化指数に明らかな影響を及ぼすこと,また,1つのERα遺伝子多型と3つのERβ遺伝子多型は身体活動による動脈硬化抑制効果の程度に関係していた。これらの成果は,エストロゲン受容体に関連する遺伝子多型は,閉経前女性において,習慣的な運動による動脈硬化抑制効果の個人差に関連する可能性を示唆するものである。習慣的な身体活動の実施は,心筋梗塞や脳卒中といった疾患の独立した危険因子である動脈硬化の進行を抑制するが,その効果には大きな個人差が存在する。このような個人差には,遺伝的要因が深く関与していることが予測される。この遺伝的要因の一つとして,申請者らは,閉経後女性において,エストロゲン受容体α遺伝子多型の違いにより動脈硬化指数および身体活動量増加に伴う動脈硬化指数の改善度が明らかに異なることを報告している。しかし,閉経後女性における検討は行われていなかった。本研究では,閉経前女性を対象者として,エストロゲン受容体遺伝子多型が動脈硬化指数および身体活動による動脈硬化抑制効果の個人差に及ぼす影響について横断的に検討することを目的とした。現段階において,20-50歳代の女性(400名程度)を対象として,動脈硬化指数を含む生理学的データの集積・DNA抽出・一部の多型判定を行い,エストロゲン受容体α遺伝子多型(-401T/C)と動脈硬化指数(上腕足首間脈波伝播速度:baPWV)との関連について解析した。その結果,若齢および中齢の閉経前女性においては,先行研究で得られたような-401T/C多型の動脈硬化指数への影響は認められなかった。これらの結果は,閉経前後でエストロゲン受容体遺伝子多型(-401T/C)の動脈硬化指数への影響が異なることを示している。平成22年度には,新たにエストロゲン受容体β遺伝子多型の解析を加え,身体活動量の増加と動脈硬化指数の改善の関係にエストロゲン受容体関連遺伝子多型がどのように関与しているのかについて検討を進める予定である。加齢に伴う動脈硬化の進展や,習慣的身体活動の抗動脈硬化作用には大きな個人差が存在する。我々はこれまでに,閉経後女性において,エストロゲン受容体(ER)α遺伝子多型が動脈硬化指数およびその運動効果の個人差に明らかに影響することを報告している。本研究課題では,対象者を閉経前女性(20-50歳代の女性;390名)に拡大し,さらにERβの解析を含めた同様の検討を行った。平成21年度には,ERα遺伝子多型の動脈硬化指数およびその運動効果の個人差に及ぼす影響について検討した。また,それぞれの遺伝子多型のgenotypeごとに最大酸素摂取量の中央値によって有酸素性作業能力によるグループ分けを行い,グループ間の動脈硬化指数を比較することによって,動脈硬化指数への運動効果に及ぼす遺伝子多型の影響を明らかにしようとした。ERα遺伝子多型(既知の1つ)と動脈硬化指数との関連性は認められなかったが,運動による動脈硬化改善効果はこの遺伝子多型により異なっていた。この結果は,閉経後女性において認められた結果と同様であった。平成22年度には,これまでに動脈硬化指数との関連がほとんど検討されていないERβ遺伝子多型(既知の5つ)と動脈硬化指数およびその運動効果の個人差との関連について検討した。その結果,5つの遺伝子多型のうち1つは閉経前女性の動脈硬化指数に明らかな影響を及ぼすことが明らかとなった。さらに,3つの遺伝子多型は運動による動脈硬化抑制効果に明らかに影響していた。これらの成果は,閉経前女性において,エストロゲン受容体に関連する遺伝子多型は運動による動脈硬化改善の個人差に関与していることを示唆するものである。
KAKENHI-PROJECT-21700699
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21700699
AIを用いた全国規模の群落レベルの時空間的変化を表現する植生図化と予測モデル構築
本研究は、陸上生態系の基盤であり、自然資本の持続的な利用や生態系サービスの享受に不可欠な、日本における植生の現況、および気候変動や社会経済的な影響に伴う変化とその要因を群落レベルで明らかにするものである。植生解析手法としては、高分解能の衛星リモートセンシングデータを用いて、人工知能(AI)技術の深層学習の手法で画像分類する。その結果をもとに、気候、地形・地質などの自然環境要因と社会経済・土地利用などの社会環境要因に関してGIS(地理情報システム)を用いて複数のスケールで統合し、群落レベルで植生分布を説明するモデルを構築し、植生の時・空間変化を表現する植生図を作成する。本研究は、陸上生態系の基盤であり、自然資本の持続的な利用や生態系サービスの享受に不可欠な、日本における植生の現況、および気候変動や社会経済的な影響に伴う変化とその要因を群落レベルで明らかにするものである。植生解析手法としては、高分解能の衛星リモートセンシングデータを用いて、人工知能(AI)技術の深層学習の手法で画像分類する。その結果をもとに、気候、地形・地質などの自然環境要因と社会経済・土地利用などの社会環境要因に関してGIS(地理情報システム)を用いて複数のスケールで統合し、群落レベルで植生分布を説明するモデルを構築し、植生の時・空間変化を表現する植生図を作成する。
KAKENHI-PROJECT-19H04320
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H04320
前立腺ラテント癌から顕在癌までの癌浸潤マクロファージの解析
臨床検体を用いたラテント癌での腫瘍関連マクロファージの関与は予想に反して少ないことが判明した。代わりの実験として癌細胞とマクロファージの微小環境における相互作用について培養系での研究が進展した。すなわちTGFβの作用により前立腺癌細胞は炎症細胞の機能を抑制する可能性が示唆された。臨床検体を用いたラテント癌での腫瘍関連マクロファージの関与は予想に反して少ないことが判明した。代わりの実験として癌細胞とマクロファージの微小環境における相互作用について培養系での研究が進展した。すなわちTGFβの作用により前立腺癌細胞は炎症細胞の機能を抑制する可能性が示唆された。目的;前立腺ラテント癌は臨床的に前立腺癌の兆候が見られず、病理解剖によって初めて発見される微小な癌組織であり、病理解剖例の約30%に発見される。ラテント癌の体積が0.46mlを超えると皮膜浸潤が起こり始め予後に影響がある為、治療を要する臨床癌はラテント癌の一部が進展して顕在化したものと考えられる。またラテント癌は30歳代頃より発見され、60歳頃すり急増し70歳代に好発年齢があることから前立腺癌の一部は30-40ほど経過した後、臨床癌に進展するものと考えられている。一般的に癌と炎症との関連性が指摘されており、炎症性疾患は前立腺癌を紿め胃癌、卵巣癌、乳癌など多くの癌発生のリスクを高めることが知られている。本研究は前立腺微小癌と炎症、特にマクロファージについて探求する研究である。病理解剖で得られた組織を用いて、前立腺ラテント癌から顕在癌にいたる過程の,マクロファージの検出、分類、役割・機能解明を目的とする。計画;病理解剖で得られた、ラテント癌、微小癌30例を抗CD68抗体で免疫染色し、癌内部のマクロファージの同定を試みた。病理解剖のラテント癌の中には種々の程度に炎症細胞の浸潤が確認されたが、抗CD68抗体で染まるマクロファージの数は非常に少ないことがわかった。ラテント癌の段階でのTAMのプロファイリングは断念し、900症例以上ある凍結前立腺癌組織すりRNAを抽出し、Real-time PCRによりマーカーそれぞれの遺伝子発現を定量化する。マーカー遺伝子としてはNOS2、Arginase-1、MHC-II、抗Scavenger receptor Aを予定している。すでに凍結前立腺癌組織より20症例のRNAを抽出しcDNA化が終了している。今後症例数を増やし、マーカー遺伝子のPCR条件の至適化後、定量化する。それぞれの前立腺癌の面積を計測しマーカー遺伝子発現量との相関性を検討する。(目的と背景)癌細胞で活性化される炎症メディエーターは、種々の白血球、特に骨髄単球系の細胞を腫瘍組織にリクルートする。癌組織に誘導されるマクロファージは腫瘍関連マクロファージ(tumor-associated macrophage, TAM)と呼ばれ、癌の増殖や浸潤にも促進的に働く。また抗腫瘍免疫を抑制する作用があることもわかっている。腫瘍内のマクロファージの量と不良な予後に相関があるが、前立腺ラテント癌から微小癌をへて,顕在癌に至る過程で炎症、特にマクロファージとの関係を調べた研究は見当たらない。病理解剖で発見された前立腺ラテント癌には種々の程度に炎症細胞が浸潤していることを確認している。マクロファージがラテント癌や微小癌にどの程度含まれているか、それが癌細胞にとって有利あるいは不利に働いているのか、癌の悪性度とマクロファージの量との相関など臨床病理的事項を明らかにする。臨床癌手術標本(顕在癌)を用いて同様のことを行い、微小癌との違いを明らかにする。また癌の微小環境における癌細胞とマクロファージの相互関係を培養条件で検討する。(結果)1)ラテント癌に浸潤する炎症細胞のうちマクロファージの割合は、免疫染色(CD68)を行ったところ非常に少ないことが判明した。そこで臨床検体を用いた研究を一旦中断し以下の実験を進めることとした。2)マクロファージは癌細胞の微小環境を構成する要因の一つである。癌細胞との間でTGFβ、TNFα、IL-6などの増殖因子やサイトカインをやりとりし癌細胞の維持、増殖、浸潤、転移を引き起こすことが知られている。そこで前立腺癌細胞PC3にTGFβを長期処理し微小環境における癌細胞とし、このPC3細胞とマクロファージのモデルである、THP-1・マクロファージ様細胞を共培養することで微小環境の一端を再現した。その後THP-1・マクロファージ様細胞からのサイトカイン産生変化を調べ、癌細胞が及ぼす影響を見た。癌細胞の増殖、浸潤、転移に関わるとされるIL-6、TNFαのTHP-1・マクロファージからの産生が、TGFβ長期処理PC3との共培養で低下した。TGFβは一般に炎症を促進、悪化させる作用があるが条件によっては炎症性細胞の抑制に働く場合があることが示唆された。(目的と背景)癌組織に誘導されるマクロファージは癌の増殖や浸潤に促進的に働く。腫瘍内のマクロファージの量と不良な予後に相関があるが、前立腺ラテント癌から微小癌をへて,顕在癌に至る過程で炎症、特にマクロファージとの関係を調べた研究は見当たらない。病理解剖で発見された前立腺ラテント癌には種々の程度に炎症細胞が浸潤していることを確認している。
KAKENHI-PROJECT-22591765
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前立腺ラテント癌から顕在癌までの癌浸潤マクロファージの解析
マクロファージがラテント癌や微小癌にどの程度含まれているか、それが癌細胞にとって有利あるいは不利に働いているのか、癌の悪性度とマクロファージの量との相関など臨床病理的事項を明らかにする。臨床癌手術標本を用いて同様のことを行い、微小癌との違いを明らかにする。また癌の微小環境における癌細胞とマクロファージの相互関係を培養条件で検討する。(結果)1)ラテント癌に浸潤する炎症細胞のうちマクロファージの割合は、免疫染色(CD68)を行ったところ非常に少ないことが判明した。そこで臨床検体を用いた研究を一旦中断し以下の実験を進めることとした。2)マクロファージは癌細胞との間でTGFβ、TNFα、IL-6などの増殖因子やサイトカインをやりとりし癌細胞の維持、増殖、浸潤、転移を引き起こすことが知られている。そこで前立腺癌細胞PC3にTGFβを長期処理し微小環境における癌細胞とし、このPC3細胞とマクロファージのモデルである、THP-1・マクロファージ様細胞を共培養することで微小環境の一端を再現した。その後THP-1・マクロファージ様細胞からのサイトカイン産生変化を調べ、癌細胞が及ぼす影響を見た。癌細胞の増殖、浸潤、転移に関わるとされるIL-6、TNFαのTHP-1・マクロファージからの産生が、TGFβ長期処理PC3との共培養で低下した。TGFβは一般に炎症を促進、悪化させる作用があるが条件によっては炎症性細胞の抑制に働くことが示唆された。当初の目的である臨床検体を用いたラテント癌での腫瘍関連マクロファージの関与を調べることは一旦中断したが、癌細胞とマクロファージの微小環境における相互作用について培養系での研究が進展した。すなわちTGFβの作用により癌細胞のあるものは炎症担当細胞の機能を抑制する可能性が示唆された。24年度が最終年度であるため、記入しない。培養実験ではTGFβ長期処理PC3細胞がTHP-1・マクロファージの機能を抑制したが、この機序の解明を目指す。具体的にはTGFβ長期処理PC3細胞内での遺伝子変化に注目し、発現上昇する遺伝子の中で重要と思われるものをピックアップする。その遺伝子を前立腺癌細胞に高発現させTHP-1・マクロファージに対する影響を見る。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22591765
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イネの節間形成・伸長を制御する遺伝的メカニズムの解析
イネの節間組織の形成および節間伸長の遺伝的制御機構を解明するために、植物の茎伸長に重要な役割をもつことが明らかになっているブラシノステロイド(BR)のイネにおける作用特性について解析した。イネ植物体が示すBRに関連する生理的特徴、すなわちBRに対する反応性および暗黒下における形態形成に着目して、BRの合成および応答・伝達に関する突然変異体のスクリーニング法を確立し、その方法に従って、既存の矮性突然変異体の中からBRの合成に関する変異体を14系統、BRの受容に関する変異体を7系統同定した。これら変異体の原因遺伝子を明らかにするために、変異体間の交雑による対立性検定を行うとともに、各変異体のインド稲との交雑F_2における分子マーカーを利用した連鎖解析を行った。その結果、昨年度に本研究で単離したBRの合成系遺伝子OsDWARFに関する変異体を2系統、既知のBR受容遺伝子OsBRI1に関する変異体を2系統獲得し、さらにこれまでに報告されていない新規の遺伝子が原因とみられる変異体を多数同定することができた。このことは、本研究で確立したスクリーニング法の有効性を示すとともに、変異体を利用してBRに関する新規遺伝子の単離が可能となることを示している。また、同定したBR関連突然変異体が示す形態的特徴について詳細に解析したところ、葉鞘の特異的短縮、節間の完全な非伸長が認められた。組織学的には、植物体全体の細胞の伸長抑制が見られるとともに、節間における介在分裂組織の形成阻害、および葉における維管束の形態異常が認められた。これらのことから、ブラシノステロイドはイネの発育において細胞分裂・細胞伸長に密接に関与するのみならず、茎葉における組織分化/形態形成にも重要な役割をもっていることが示唆された。イネの節間組織の形成および節間伸長の遺伝的制御機構を解明するために、植物の茎伸長に重要な役割をもつことが明らかになっているブラシノステロイドのイネにおける作用特性について解析した。1)イネにおけるブラシノステロイドの生合成に関与する遺伝子の単離およびその機能解析・・・アラビドプシスなど数種の植物において、ブラシノステロイドの生合成に関与する遺伝子が単離されている。それら遺伝子のイネにおけるホモログをイネDNAデータベースを用いて探索するとともに、PCRによってクローニングを行った。その結果、既知の9種類の遺伝子全て(既に報告されている2遺伝子を含む)について、イネホモログを同定した。その内、トマトDwarfのイネホモログ(OsDwarf)については、全長cDNA・ゲノムクローンを単離し、詳細な解析を行った。OsDwarfの合成産物の酵素活性をyeast fucrional assayによって確認した。また、Osdwarfのアンチセンスコンストラクトをもつ組換え体イネを作出し、組換え体が示す形態的特徴を解析している。2)ブラシノステロイドの合成および応答・伝達に関する突然変異体のスクリーニング・・・イネにおいて唯一知られている、ブラシノステロイドの受容に関する突然変異体d61は、濃緑色・直立葉の矮性を示す。d61の形態的特徴を指標にして、これまでに得られている多数のイネ矮性突然変異体の中から、以下の方法を用いてにブラシノステロイドの合成および応答・伝達に関する突然変異体をスクリーニングした。すなわち、d61に類似した草型を示す変異体について、(1)ブラシノステロイドの投与による反応性および(2)暗黒条件下での発芽における節間伸長について調査し、その結果、ブラシノステロイドの合成に関与すると考えられる変異体を10系統、ブラシノステロイドの受容に関与すると考えられる変異体を3系統獲得した。イネの節間組織の形成および節間伸長の遺伝的制御機構を解明するために、植物の茎伸長に重要な役割をもつことが明らかになっているブラシノステロイド(BR)のイネにおける作用特性について解析した。イネ植物体が示すBRに関連する生理的特徴、すなわちBRに対する反応性および暗黒下における形態形成に着目して、BRの合成および応答・伝達に関する突然変異体のスクリーニング法を確立し、その方法に従って、既存の矮性突然変異体の中からBRの合成に関する変異体を14系統、BRの受容に関する変異体を7系統同定した。これら変異体の原因遺伝子を明らかにするために、変異体間の交雑による対立性検定を行うとともに、各変異体のインド稲との交雑F_2における分子マーカーを利用した連鎖解析を行った。その結果、昨年度に本研究で単離したBRの合成系遺伝子OsDWARFに関する変異体を2系統、既知のBR受容遺伝子OsBRI1に関する変異体を2系統獲得し、さらにこれまでに報告されていない新規の遺伝子が原因とみられる変異体を多数同定することができた。このことは、本研究で確立したスクリーニング法の有効性を示すとともに、変異体を利用してBRに関する新規遺伝子の単離が可能となることを示している。また、同定したBR関連突然変異体が示す形態的特徴について詳細に解析したところ、葉鞘の特異的短縮、節間の完全な非伸長が認められた。組織学的には、植物体全体の細胞の伸長抑制が見られるとともに、節間における介在分裂組織の形成阻害、および葉における維管束の形態異常が認められた。これらのことから、ブラシノステロイドはイネの発育において細胞分裂・細胞伸長に密接に関与するのみならず、茎葉における組織分化/形態形成にも重要な役割をもっていることが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-12760006
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積極的栄養治療による軽度栄養不良HIV陽性者の病態改善効果の検討
低栄養の免疫能に対する影響は数多く報告され、またレプチンが栄養と免疫能の関係性に関連していることが明らかになってきた。そこで、ARTによるウイルスコントロールの良好なHIV陽性者にとっても、栄養状態の改善が免疫能の向上に効果を及ぼすのか解明することを目的とした。具体的には、下記の2点について明らかにする。1)CD4カウントが500/mm3未満、かつCONUTにより軽度栄養不良と判定されるHIV陽性者が、1日当たり250kcalのサプリメントを3か月間摂取した場合、CD4カウントが30%以上上昇するかどうか。2)CD4カウントの上昇が、体脂肪量の増加と血清中のレプチン濃度の上昇に関連するかどうか。エンシュア・リキッド(明治)250kcal/1缶のCD4カウントへの効果を検討する為、クロスオーバーのあるランダム化比較介入試験を実施した。介入群は3カ月間の経口栄養剤摂取の後、3か月間のフォローアップの計6か月とする。一方コントロール群は、3か月間のコントロール期間ののち、3か月間の介入期間の計6か月とした。ランダム化はブロックランダム割り付け法により行った。介入群とコントロール群の比較の結果、1日250kcalの栄養付加は、体重の有意な増加と、血清レプチンレベルの上昇傾向を示した。しかしながら、CD4カウントに変化は見られず、CD4<500/mm3かつCONUTにより軽度栄養不良と判定される者への栄養付加が免疫能を向上させる効果を認めることはできなかった。平成28年度は目標症例数の3分の2にあたる約60例をリクルートした。BMI<22.5では、総リンパ球数が有意に低く、CD4カウントが低い傾向にあった。一方、27.5≦BMIでは、メタボリックシンドロームの検査値が有意に高くなり、メタボリックシンドロームと予備群を合わせた併存率は85%以上となった。以上のことから、HIV陽性者における適正なBMIは、下限は22.5、上限は27.5であることが示唆された。また、CD4カウント高値群では、低値群と比較して体脂肪率が高い傾向にあり、BMI及び体脂肪量が有意に高かった。腹囲は大きい傾向にあり、T-chol, LDLが有意に高かった。以上の結果は、第31回日本エイズ学会総会・学術集会(平成28年11月25日、鹿児島市)および第20回日本病態栄養学会(平成29年1月13日、京都市)において発表した。現代のHIV陽性者は、過栄養の問題を抱える者と、低栄養の問題を抱える者の両方がおり、画一的な栄養介入では通用しない。本研究は潜在的な低栄養患者を抽出し、特定のリスクを持つ者に積極的に介入を行うという、HIV陽性者のテーラーメード栄養療法の確立につながるものである。目標症例数は、適切なサンプルサイズの計算に基づき、当初の予定では90症例(介入群45症例、対照群45症例)と設定していた。平成29年3月31日現在のリクルート症例数は約60例で、3分の2が終了したことになる。今後、当初に比べて新規リクルートがペースダウンしてきていることを考慮すると、目標までの残り30症例を終了するには1年程度を要する見込みであり、解析に要する時間を考慮すると今年度中にリクルートを終了する必要がある。今年度は、CD4 countが500/mm3未満かつ潜在的な軽度低栄養のHIV陽性患者を妥当性の証明されている評価法で的確に抽出すること、経腸栄養剤により3ヶ月間の栄養介入を行うことで栄養状態だけでなく免疫能を表すCD4 countが改善するかどうかをランダム化クロスオーバーデザインにより検証した。主要評価項目は介入期間後のCD4 countの増加(30%以上)、副次評価項目はCONUTの改善(1以下への低下)、糖・脂質代謝指標の変化とした。結果として、介入群では3ヶ月時の結果よりAlb、T-chol、CONUTスコア、TLC、CD4 countは増加しなかった。介入群患者は栄養付加により、食事からの摂取エネルギー量が減った可能性が考えられた。一方、対照群では、3ヶ月時の結果よりAlb、T-cholは変数なしであったが、CONUTは介入群よりも改善傾向を示し、TLCは増加傾向であった。また、CD4 countは増加傾向を示した。リクルート時に研究の目的として低栄養と免疫状態について簡単に説明しているため低栄養であることを指摘された対照群患者は、自らの食生活を改善し、食事摂取量が増加した可能性が考えられた。現代のHIV陽性者は過栄養と低栄養の問題を抱える者の両方がおり、画一的な栄養介入では通用しない。潜在的な低栄養患者を抽出し、特定のリスクを持つ者に積極的に介入を行うテーラーメード栄養療法の確立につながるものである。以上の結果は現在論文にまとめ投稿準備中である。目標症例数は適切なサンプルサイズの計算により、90例(介入群45例、対照群45例)と想定していた。約70例がリクルートされたが、データ欠損例があり、実際解析できるのは平成30年3月末時点で50例程度と見込まれる。また、データ解析に要する時間を考慮すると平成30年度前半にはリクルートを終了する必要がある。低栄養の免疫能に対する影響は数多く報告され、またレプチンが栄養と免疫能の関係性に関連していることが明らかになってきた。そこで、ARTによるウイルスコントロールの良好なHIV陽性者にとっても、栄養状態の改善が免疫能の向上に効果を及ぼすのか解明することを目的とした。
KAKENHI-PROJECT-16K00903
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K00903
積極的栄養治療による軽度栄養不良HIV陽性者の病態改善効果の検討
具体的には、下記の2点について明らかにする。1)CD4カウントが500/mm3未満、かつCONUTにより軽度栄養不良と判定されるHIV陽性者が、1日当たり250kcalのサプリメントを3か月間摂取した場合、CD4カウントが30%以上上昇するかどうか。2)CD4カウントの上昇が、体脂肪量の増加と血清中のレプチン濃度の上昇に関連するかどうか。エンシュア・リキッド(明治)250kcal/1缶のCD4カウントへの効果を検討する為、クロスオーバーのあるランダム化比較介入試験を実施した。介入群は3カ月間の経口栄養剤摂取の後、3か月間のフォローアップの計6か月とする。一方コントロール群は、3か月間のコントロール期間ののち、3か月間の介入期間の計6か月とした。ランダム化はブロックランダム割り付け法により行った。介入群とコントロール群の比較の結果、1日250kcalの栄養付加は、体重の有意な増加と、血清レプチンレベルの上昇傾向を示した。しかしながら、CD4カウントに変化は見られず、CD4<500/mm3かつCONUTにより軽度栄養不良と判定される者への栄養付加が免疫能を向上させる効果を認めることはできなかった。本年度中に症例リクルートを終える予定である。栄養バランスの取れた経口栄養剤(250kcal/1缶/日)を3ヶ月間飲み続ける栄養介入により、臨床的に意義があるとされる30%以上のCD4カウントの増加、つまり免疫能の向上がみられるかどうか検証する。介入期間後もCD4カウント増加の効果が維持かどうか、引き続きフォローアップを行う。また、先行研究より、HIV陽性者の体重とCD4カウントの関連が示唆されているが、そのメカニズムは明らかではない。CD4カウントの増加が、体脂肪量の増加によりレプチン分泌が増加することによるCD4陽性T細胞の分化促進によるものかどうかを検証するため、保存血清においてレプチン濃度の測定を行う。アディポサイトカインである脂肪細胞から分泌されるレプチンが、CD4細胞の分化及び増殖に関連していると報告されており、今後保存血清にてレプチンを測定し、体組成測定の結果も併せて、体脂肪量とレプチン量及びCD4カウントとの関連を検討する。また、対象者のリクルートを引き続き行い、対象者数を増やす。現段階で目標症例数の3分の2程度につき研究が実施されているが、引き続き症例数を増やす必要があるため。引き続き対象患者をリクルートし、経口栄養剤を投与、送付する必要があるため。また、レプチンも測定しその関連をみる。最終的な成果は国内外の学会などで発表、論文投稿の予定としている。引き続き30症例程度をリクルートする予定であり、経口栄養剤の投与およびその送付に費用を要する見込みである。また、研究の成果を国内外の学会で発表、論文投稿を行う予定である。
KAKENHI-PROJECT-16K00903
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K00903
がん治療用小型陽子加速器の実用機完成のための研究
放射線によるがん治療は、身体の機能及び形状の保全に優れており、患者に対する身体的負担も比較的軽いという長所のため、近年注目を集めている。中でも、荷電粒子線によるがん治療は、ブラッグピークの存在による線量の腫瘍部への集中が可能であるため、その有効性が実証されつつあるが、その広範な普及を目指して、小型で維持・運転の容易な陽子シンクロトロンの専用機の設計例を確立する目的で、機能結合型小型陽子シンクロトロンの研究を進めてきた。このタイプは、機能分離型に比して、・偏向電磁石と四重極電磁石が分離していないので、これらの電源間で励磁電流のトラッキングを取る必要がないため、電源の制御が簡略化され、建設コストの大幅な低減が可能となる。・水平及び垂直方向のベータトロン振動数の動作点が固定されており、日常の運転がきわめて容易になる。という利点を有している。しかしながら、この第二の点は、運転のフレキシビリティーが無いことにつながるため、当初に良好な設計を確立することが、この方式を採用するための、不可欠の条件となる。こうした観点から、本研究では、平成8年度に機能結合型のシンクロトロンのラティスの設計を確定したうえで、平成9年度にそれに用いられる6台の同一の機能結合型電磁石の一台を、実機と同寸のモデル電磁石として製作を行った。その際、3次元磁場計算の結果に基づき、FセクターとDセクターの境界の位置の調整を行い、最適な動作点を実現するための調整を実施した。またこのモデル電磁石の磁場測定を行い、漏洩磁場やFセクターとDセクターの遷移領域を重点的にマッピングを行った。このデータを内挿し、ビームのべータトロン振動の軌道から遷移行列を計算して、水平及び垂直方向のベータトロン振動数の算出を行った。放射線によるがん治療は、身体の機能及び形状の保全に優れており、患者に対する身体的負担も比較的軽いという長所のため、近年注目を集めている。中でも、荷電粒子線によるがん治療は、ブラッグピークの存在による線量の腫瘍部への集中が可能であるため、その有効性が実証されつつあるが、その広範な普及を目指して、小型で維持・運転の容易な陽子シンクロトロンの専用機の設計例を確立する目的で、機能結合型小型陽子シンクロトロンの研究を進めてきた。このタイプは、機能分離型に比して、・偏向電磁石と四重極電磁石が分離していないので、これらの電源間で励磁電流のトラッキングを取る必要がないため、電源の制御が簡略化され、建設コストの大幅な低減が可能となる。・水平及び垂直方向のベータトロン振動数の動作点が固定されており、日常の運転がきわめて容易になる。という利点を有している。しかしながら、この第二の点は、運転のフレキシビリティーが無いことにつながるため、当初に良好な設計を確立することが、この方式を採用するための、不可欠の条件となる。こうした観点から、本研究では、平成8年度に機能結合型のシンクロトロンのラティスの設計を確定したうえで、平成9年度にそれに用いられる6台の同一の機能結合型電磁石の一台を、実機と同寸のモデル電磁石として製作を行った。その際、3次元磁場計算の結果に基づき、FセクターとDセクターの境界の位置の調整を行い、最適な動作点を実現するための調整を実施した。またこのモデル電磁石の磁場測定を行い、漏洩磁場やFセクターとDセクターの遷移領域を重点的にマッピングを行った。このデータを内挿し、ビームのべータトロン振動の軌道から遷移行列を計算して、水平及び垂直方向のベータトロン振動数の算出を行った。機能及び形状の保全という長所のため、近年注目を集めている放射線によるがん治療のうちでも、ブラックピークによる照射線量の腫瘍部分への集中が可能な荷電粒子線によるがん治療の広範な普及を実現する目的から、機能結合型の小型陽子シンクロトロンのラティス設計を進め、実際に量産機を作製し、病院で設置する際の精度及び必要なマンパワーといった観点からも最適化したラティス設計を確定した。このラティスでは6台の同一の機能結合型電磁石を使用するが、一台の中でFDFという構造を有し、断面席が変化するため、遷移部分での磁場の評価は2次元の磁場計算では不可能で、製作が難しい難点があるが、一度良好な設計が確定してしまえば、自由度がない点日常の運転は極めて簡単に行えるので、がん治療専用の量産機に最適である。本研究においては、この機能結合型の電磁石の最適設計を確立すべく、2次元及び3次元の磁場計算コードを駆使して、実物大のモデル電磁石の試作を実施した。磁石の曲率半径は1.9m,F及びD部での偏向角はそれぞれ15°及び30°であり、F,D部の値はそれぞれ-5.8560及び6.1641を理想値とする設計とした。現在までの計算によれば、1.35Tまでの広範な磁場範囲にわたって、【plus-minus】60mmの水平方向の領域内における磁場の理想値からのずれが、【plus-minus】5x10^<-4>以下におさまる設計が得られたと考えており、この設計に基づきモデル電磁石を製作した。来年度には,この電磁石の磁場測定を実施し、三次元の磁場計算結果との比較を行うと共に、マッピングした磁場による粒子トラッキングを行い、この磁石によって実現されるn値の推定を行い、機能結合型小型陽子シンクロトロンの最適設計を確定する予定である放射線によるがん治療は、身体の機能及び形状の保全に優れており、患者に対する身体的負担も比較的軽いという長所のため、近年注目を集めている。
KAKENHI-PROJECT-08559010
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08559010
がん治療用小型陽子加速器の実用機完成のための研究
中でも、荷電粒子線によるがん治療は、ブラッグピークの存在による線量の腫瘍部への集中が可能であるため、その有効性が実証されつつあるが、その広範な普及を目指して、小型で維持・運転の容易な陽子シンクロトロンの専用機の設計例を確立する目的で、機能結合型小型シンクロトロンの研究を進めてきた。このタイプは、機能分離型に比して、・偏向電磁石と四重極電磁石が分離していないので、これらの電源間で励磁電流のトラッキングを取る必要がないため、電源の制御が簡略化され、建設コストの大幅な低減が可能となる。・水平及び垂直方向のベータトロン振動数の動作点が固定されており、日常の運転がきわめて容易になる。という利点を有している。しかしながら、この第二の点は、運転のフレキシビリティーが無いことにつながるため、当初に良好な設計を確立することが、この方式を採用するための、不可欠の条件となる。こうした観点から、本研究では、平成8年度に設計を確立した機能結合型のシンクロトロンエラティスに基づき、それに用いられる6台の同一の機能結合型電磁石の一台を、実機と同寸のモデル電磁石として製作を行った。その際、3次元磁場計算の結果に基づき、FセクターとDセクターの境界の位置の調整を行った。本年度は、平成8年度に試作したがん治療専用の陽子シンクロトロン用の機能結合型電磁石のモデル電磁石の磁場測定を行い、漏洩磁場やFセクターとDセクターの遷移領域を重点的にマッピングを行った。このデータを内挿し、ビームのベータトロン振動の軌道から遷移行列を計算して、水平及び垂直方向のベータトロン振動数を算出し、この結果に基づき、最適な動作点を実現するために、BL積の調整を実施した。
KAKENHI-PROJECT-08559010
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08559010
社会的立場と性ホルモンの交互作用による注意制御の適応的メカニズムの解明
本研究では,社会的な地位に対して選択的に働く視覚的注意に,性ホルモンが及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。3年計画の2年目となる本年度は,実験参加者に対して実験的に割り当てられた社会的地位の高低と,その実験参加者の性ホルモンの分泌量バランスが認知課題の遂行成績に影響を与えるか否かについて検討した。このとき実験参加者はペアとして実験に参加して,2つの課題でそれぞれリーダーまたはフォロワーとしての役割が与えられた。また,課題を遂行する前に唾液を採取し社会的地位に対する関心度の高さに関わる,ソーシャルホルモンと呼ばれる男性ホルモンのテストステロンの分泌量を測定した。実験はテストステロンの高低(2)×割り当てられた社会的地位のパターン(4)として2要因被験者間計画として実施された。実験参加者らには,ペアで協力して可能な限り早く正確に課題を行ない高得点を目指すようにあらかじめ教示された。認知課題としては心的回転課題とマウス反転課題を用いた。心的回転課題では,標準刺激としての三次元物体と,それらを回転させて他の角度から見た状態となる2つの物体と,2つの異なる物体が提示され,実験参加者は標準刺激と同じ物体を2つとも選ぶように求められた。マウス反転課題では,実際の動きと反転してディスプレイに呈示されるマウスの軌跡を見ながら指定された英数字を交互に辿ってそれぞれに対してクリックをするように求めた。いずれの課題でも制限時間内に回答された正答数を測定した。実験参加者に与えられた役割は,2つの課題ともにリーダーを任される場合とフォロワーを任される場合,いずれか1つの課題でリーダーを,もう一方の課題でフォロワーを任される場合があった。本研究は多くの実験参加者を必要とするが十分な人数が集まっておらず,さらに多くの参加者を呼集する必要がある。報告した研究概要の実験は条件数が多いため,多数の実験参加者が必要となる。そのため現在も実験を継続中であるため,当初の予定より計画に遅れが認められる。実験を継続することによってデータ数を増やす。その後,注意機能を反映する課題を用いて社会的地位の高低による注意課題の遂行成績に性ホルモンの分泌量の寡多が影響を及ぼす可能性について検討する。本研究は,テストステロンなどの性ホルモンが,社会的地位や価値の高さに敏感に反応する視覚的注意に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。そのため本年度は,社会的地位の1つと考えられる魅力に対する注意の効果について検討を行った。実験では,事前に魅力評価された顔写真のうち,同性ごとに高魅力の顔写真と低魅力の顔写真をペアにした。それらの写真は,固視点の上下に試行ごとにランダムに提示した。実験参加者は女性のみだった。彼女らに課せられた課題は,指定された魅力度の顔写真(例えば,魅力度の高い顔写真)が上下のいずれかに提示されたかをできるだけ素早く答えるというものだった。実験の結果,参加者は女性の顔写真を判断するときのほうが男性の顔写真を判断するときよりも素早く判断することができた。また,答えるべき顔写真が上にあるときのほうが下にあるときに比べて素早く判断することができた。また,女性の顔写真に対して魅力度の判断を行うとき,魅力的な顔写真の位置を答えるときのほうが魅力的でない顔写真を答えるときに比べて素早く答えることができた。魅力度の高い顔写真の位置を答えるとき,男性の顔写真に比べて女性の顔写真のほうが素早く答えることができた。以上のことから,女性は異性に比べて同性の魅力判断を素早く行うことができ,特に同性の魅力的な人物に注意が向きやすいことが示唆された。性ホルモンと社会的立場に応じた注意機能の解明のために用いる注意課題の選定が実施途中である。そのため,当初の計画より若干の遅れが認められる。本研究では,社会的な地位に対して選択的に働く視覚的注意に,性ホルモンが及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。3年計画の2年目となる本年度は,実験参加者に対して実験的に割り当てられた社会的地位の高低と,その実験参加者の性ホルモンの分泌量バランスが認知課題の遂行成績に影響を与えるか否かについて検討した。このとき実験参加者はペアとして実験に参加して,2つの課題でそれぞれリーダーまたはフォロワーとしての役割が与えられた。また,課題を遂行する前に唾液を採取し社会的地位に対する関心度の高さに関わる,ソーシャルホルモンと呼ばれる男性ホルモンのテストステロンの分泌量を測定した。実験はテストステロンの高低(2)×割り当てられた社会的地位のパターン(4)として2要因被験者間計画として実施された。実験参加者らには,ペアで協力して可能な限り早く正確に課題を行ない高得点を目指すようにあらかじめ教示された。認知課題としては心的回転課題とマウス反転課題を用いた。心的回転課題では,標準刺激としての三次元物体と,それらを回転させて他の角度から見た状態となる2つの物体と,2つの異なる物体が提示され,実験参加者は標準刺激と同じ物体を2つとも選ぶように求められた。マウス反転課題では,実際の動きと反転してディスプレイに呈示されるマウスの軌跡を見ながら指定された英数字を交互に辿ってそれぞれに対してクリックをするように求めた。いずれの課題でも制限時間内に回答された正答数を測定した。実験参加者に与えられた役割は,2つの課題ともにリーダーを任される場合とフォロワーを任される場合,いずれか1つの課題でリーダーを,もう一方の課題でフォロワーを任される場合があった。
KAKENHI-PROJECT-17K04511
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K04511
社会的立場と性ホルモンの交互作用による注意制御の適応的メカニズムの解明
本研究は多くの実験参加者を必要とするが十分な人数が集まっておらず,さらに多くの参加者を呼集する必要がある。報告した研究概要の実験は条件数が多いため,多数の実験参加者が必要となる。そのため現在も実験を継続中であるため,当初の予定より計画に遅れが認められる。社会的地位の高低による認知課題の遂行の程度の変化に性ホルモンが及ぼす影響について,注意機能が果たす役割について検討する。実験を継続することによってデータ数を増やす。その後,注意機能を反映する課題を用いて社会的地位の高低による注意課題の遂行成績に性ホルモンの分泌量の寡多が影響を及ぼす可能性について検討する。当初予定していた実験の実施が途中段階であるため,そのために確保していた予算が次年度に繰越しとなった。諸事情により学会に参加出来なかったことと実験参加者の集まりが芳しくなかったことにより,主に旅費と謝金及び唾液の分析費用に割り当てられた費用が次年度に持ち越しされた。最終年度では,継続中の実験を遂行するとともに当初予定していた実験を行うため,それらの費用にあてる。
KAKENHI-PROJECT-17K04511
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首都圏における苛酷な使用条件下にある鋼橋の安全性
本研究では首都圏における苛酷な使用条件にある鋼橋に対して,疲労や座屈を中心とした耐荷口,風,地震や苛酷な自動車荷重の外国評価,耐震設計,地震防災システム等に関する検討を総合し,その安全性を効率的に高めることを目的として研究を進め,以下の成果をあげた.1)疲労に対しては,鋼橋の疲労損傷のデータベースの構築とその分析による疲労発生原因や問題となる構造形式の解明,対傾構取付部のきれつ発生原因究明と補修対策,溶接欠陥の寸法や形状が疲労強度に及ぼす影響の破壊力学を用いた検討,道路橋に生じる変動応力下での疲労きれつ進展挙動の実験的検討,疲労亀裂検出に対する各種非破壊試験の適用性の調査,及び微小な疲労亀裂のTIG dressingによる補修方法の有効性の理論的検証などを行った.2)耐荷口に関しては,供用期間中の構造物の安全性は確保するにあたって,設計の段階で明確にすることを目的とし,鋼橋部材の荷重作用に対する応答値すなわち荷重効果の計算法と,部材の静的強度すなわち耐荷口の評価法について考察し,構造物の安全性照査法の精密化を計った.3)道路橋に作用する苛酷な自動車荷重に対しては,走行車両の重量測定方法の確立,道路橋最大活荷重評価のためのコンピュータシュミレーションの効率化,車両の同時載荷が道路橋の疲労損傷に及ぼす影響の理論的評価等を行った.4)地震に対する検討としては,免震支承の動的特性と破壊モードの検討,同調液体ダンパーの基本特性に関する実験的検討,弾性地盤上での構造物の動的浮き上りに関する検討を行った.5)設計における安全性の確保に関しては,設計における安全率設定の影響の解析と評価,人的過誤等の要因が安全率設定に及ぼす影響に関する考案等を行った.本研究では首都圏における苛酷な使用条件にある鋼橋に対して,疲労や座屈を中心とした耐荷口,風,地震や苛酷な自動車荷重の外国評価,耐震設計,地震防災システム等に関する検討を総合し,その安全性を効率的に高めることを目的として研究を進め,以下の成果をあげた.1)疲労に対しては,鋼橋の疲労損傷のデータベースの構築とその分析による疲労発生原因や問題となる構造形式の解明,対傾構取付部のきれつ発生原因究明と補修対策,溶接欠陥の寸法や形状が疲労強度に及ぼす影響の破壊力学を用いた検討,道路橋に生じる変動応力下での疲労きれつ進展挙動の実験的検討,疲労亀裂検出に対する各種非破壊試験の適用性の調査,及び微小な疲労亀裂のTIG dressingによる補修方法の有効性の理論的検証などを行った.2)耐荷口に関しては,供用期間中の構造物の安全性は確保するにあたって,設計の段階で明確にすることを目的とし,鋼橋部材の荷重作用に対する応答値すなわち荷重効果の計算法と,部材の静的強度すなわち耐荷口の評価法について考察し,構造物の安全性照査法の精密化を計った.3)道路橋に作用する苛酷な自動車荷重に対しては,走行車両の重量測定方法の確立,道路橋最大活荷重評価のためのコンピュータシュミレーションの効率化,車両の同時載荷が道路橋の疲労損傷に及ぼす影響の理論的評価等を行った.4)地震に対する検討としては,免震支承の動的特性と破壊モードの検討,同調液体ダンパーの基本特性に関する実験的検討,弾性地盤上での構造物の動的浮き上りに関する検討を行った.5)設計における安全性の確保に関しては,設計における安全率設定の影響の解析と評価,人的過誤等の要因が安全率設定に及ぼす影響に関する考案等を行った.研究第二年度として研究打合せ会を四回開き、初年度における成果をふまえて、首都圏における使用条件の極めて厳しい鋼橋に対して、その設計上の問題点、耐荷力や疲労などの限界状態の評価法、風・地震・苛酷な自動車荷重の外力評価、地震防災システム等の基礎的な検討をさらに発展させ、以下のような成果を上げた。1)シミュレーションによる道路橋の疲労設計活荷重の検討を行った。車両の配列、重量および車間距離を確率変量として荷重列のシミュレーションを行い、生ずる曲げモーメントの変動範囲に対する統計量を疲労損傷の基準に用いることにより、設計活荷重に対する検討を行った。2)橋梁上に複数の車両が同時載荷した場合の疲労損傷に及ぼす影響に力点をおき、シュミレーションによる疲労損傷予測を試みた。結果に基づき、設計示方書に疲労照査を取り入れることの是非、及びその方法等に関して考察を行った。3)鋼橋の限界状態として代表的な座屈崩壊の把握と設計法の検討を行った。これまでは構造物の非線形挙動に対しては設計示方書の中で対処し、設計者には線形計算のみを課してきた。計算機の急速な普及と能力の向上、及び構造解析プログラムの信頼度の向上を鑑みて、新しい設計法の体系を模索した。座標の更新を伴わない簡便な有限変位解析に基づく設計法を検討した。4)自然災害として特に重要な地震による被害防止を目的とした設計法の検討と防災システムの開発に必要な基礎データを収集した。過去の地震に関して、その規模、震源、観測データ、被害状況などの情報をデータベース化し、それを管理・利用するシステムの開発を試みた。本研究では首都圏における苛酷な使用条件にある鋼橋に対して,疲労や座屈を中心とした耐荷力,風,地震や苛酷な自動車荷重の外力評価,耐震設計,地震防災システム等に関する検討を総合し,その安全性を効率的に高めることを目的として研究を進め,以下の成果をあげた.
KAKENHI-PROJECT-60302058
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-60302058
首都圏における苛酷な使用条件下にある鋼橋の安全性
1)疲労に対しては,鋼橋の疲労損傷のデータベースの構築とその分析による疲労発生原因や問題となる構造形式の解明,対傾構取付部のきれつ発生原因究明と補修対策,溶接欠陥の寸法や形状が疲労強度に及ぼす影響の破壊力学を用いた検討,道路橋に生じる変動応力下での疲労きれつ進展挙動の実験的検討,疲労亀裂検出に対する各種非破壊試験の適用性の調査,及び微小な疲労亀裂のTIG dressingによる補修方法の有効性の理論的検証などを行った.2)耐荷力に関しては,供用期間中の構造物の安全性を確保するにあたって,設計の段階で明確にすることを目的とし,鋼橋部材の荷重作用に対する応答値すなわち荷重効果の計算法と,部材の静的強度すなわち耐荷力の評価法について考察し,構造物の安全性照査法の精密化を計った.3)道路橋に作用する苛酷な自動車荷重に対しては,走行重両の重量測定方法の確立,道路橋最大活荷重評価のためのコンピュータシミュレーションの効率化,車両の同時載荷が道路橋の疲労損傷に及ぼす影響の理論的評価等を行った.4)地震に対する検討としては,免震支承の動的特性と破壊モードの検討,同調液体ダンパーの基本特性に関する実験的検討,弾性地盤上での構造物の動的浮き上りに関する検討等を行った.5)設計における安全性の確保に関しては,設計における安全率設定の影響の解析と評価,人的過誤等の要因が安全率設定に及ぼす影響に関する考察等を行った.
KAKENHI-PROJECT-60302058
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マイクロバブルを用いたドラッグデリバリーの開発
肝細胞癌の化学療法としては主に動注化学療法が行われ、長期にわたって薬剤をリリースする担体の開発が必要とされている。そこで、各種粉末性抗がん剤(CDDP,MMC,epi-ADR)について、肝の造影にも使用される超音波用造影剤(界面活性剤パルミチン酸とガラクトースの混合物)と混和し、安定性の確認を行い、マイクロバブルを表面に含有する本造影剤が、ドラッグデリバリーとして適当かの検討を行った。超音波造影剤に含まれるマイクロバブルと各種抗癌剤の親和性はいずれも不良で、早期に分離することから、有効なドラッグデリバリーシステムとはならないと考えられた。肝細胞癌の化学療法としては主に動注化学療法が行われ、長期にわたって薬剤をリリースする担体の開発が必要とされている。そこで、各種粉末性抗がん剤(CDDP,MMC,epi-ADR)について、肝の造影にも使用される超音波用造影剤(界面活性剤パルミチン酸とガラクトースの混合物)と混和し、安定性の確認を行い、マイクロバブルを表面に含有する本造影剤が、ドラッグデリバリーとして適当かの検討を行った。超音波造影剤に含まれるマイクロバブルと各種抗癌剤の親和性はいずれも不良で、早期に分離することから、有効なドラッグデリバリーシステムとはならないと考えられた。平成22年度は、3種類の抗がん剤(CDDP、epiADR、MMC)とガラクトース、パルミチン酸の混合物を様々な混合比で混和し、シリンジと三方活栓を用いたポンピング法にてホイップ(マイクロバブルと液体との界面に抗がん剤粉末が封入され、液体に溶解しない状態)として安定する配合条件があるかどうか検索した。現時点の暫定的結果としては、事前の文献検索から予想された通り、単純な混和、撹拌のみでは安定したホイップ化は困難であり、現時点ではいずれの薬剤も比較的速やかに液体に溶解してしまっている。特に、単剤として最も肝細胞がんに対する抗腫瘍効果が高いとされているCDDPの粉末製剤は、粒子径が大きく、マイクロバブルのとのサイズのミスマッチからホイップ化は困難であることが判明した。現在、epiADR、MMCにつき、超音波撹拌なども導入する事を計画しており、さらに専門家の意見を求めることとている。一方、上記にさらにヨード化ケシ油を加えた検討では、epiADRを用いた混和実験にて、濃度の異なる2層には分離するものの、それぞれの濃度で24時間以上エマルジョンとして安定するという結果が得られている。エマルジョンの安定化にはパルミチン酸の界面活性効果が大きく影響している可能性が高いが、マイクロバブルの存在がどの程度安定化に関与しているかを調べるため、平成23年度は、これに超音波診断装置を用いたマイクロバブル破砕を行い、溶液中の抗がん剤濃度の上昇が得られるかどうかを薬理学的に検討する予定である。平成22年度までの実験結果をふまえ、抗がん剤としてはCDDP製剤を除くepiADR、MMCの2種類にしばり、超音波発生装置を利用したホイップ化に挑戦した。具体的には、ガラクトースとパルミチン酸の混合物の溶解によって形成されるマイクロバブルの量と抗がん剤粒子を混合し、バブルと液体の界面に捕獲可能な抗がん剤の量の決定に挑戦したが、安定したホイップ化は得られなかった。ドラッグデリバリーシステムとしてはすでに市販の殿粉球(DSM)や自己凝血塊などの短期塞栓物質が存在し、30分から2時間程度の薬剤停留が可能となっている。本研究は、病変局所での選択的な薬剤溶出の目的で、その前段階としてこれ以上の長時間、薬剤を局所に停留させるためにマイクロバブルの安定した作成を目標とし、混和のための超音波照射に関しては、マイクロバブルを破壊せず、かつ抗がん剤粒子を界面上で分散させるのに適当な照射条件を検討したが、現在の方法では困難なことが判明した。
KAKENHI-PROJECT-22659220
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22659220
消化器癌の代謝を応用した新しい化学療法剤の作製とその効果
2. Invitroにおける実験ヒト食道扁平上皮癌(KE-3)を用い、1wellあたり6×10^4cell/mlの細胞を培養用96穴平底マイクロプレート内で、48時間培養(5%CO_2,37°C)し、methionine free培養液と通常培養液の2群に分け612時間培養後、各群各種濃度のMMCおよびConjをそれぞれ添加し、24時間培養した後、上清を捨て、さらに新たに通常の培養液を加えて36時間培養後、生細胞数と死細胞数をcountし、%生細胞数を算出し、殺細胞効果を検討している。Met-MMC conjugateは、MMC単独投与に比べて、有意な殺細胞効果を示す結果を得つつある。2. Invitroにおける実験
KAKENHI-PROJECT-09770982
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09770982
量子もつれ状態にある2電子の生成および量子干渉現象に関する実験的検証
1)電子銃作製および性能確認:昨年度までに設計を終えた電子銃の作製を行い、作製した電子銃チャンバーを組み上げた。納入搬送の際に装置の一部が破損するトラブルがあり、部品の再加工および組み上げが必要となったが、スケジュールを変更して対応した。真空および高圧の確認し、半導体フォトカソードの設置を完了した。2)電子顕微鏡装置の設置:本電子銃を搭載する電子顕微鏡装置の設置し、通常の電子銃をもちいた装置の性能評価を行った。また新規開発する重量の大きな電子銃を支えるための指示棒を取り付けたが、装置の除震性能に影響がないことを確認した。さらに電子銃と電子顕微鏡本体の接続部である差動排気システムの取り付けを行い、真空の確認を行った。3)電子線放出実験:設置した電子顕微鏡装置に今回開発した電子銃を搭載し、電子銃部のベークアウト、真空の確認、NEA活性化を行い、装置全体での電子線放出実験を行った。まだ装置全体の電子線経路を通過させることまではできてないが、電子銃部分を通過することは確認できた。4)構造化レーザー光生成の予備実験:量子もつれ電子を生成するための量子もつれ光生成の予備準備として、光渦の生成実験を行った。生成した光から得たホログラムには光渦の特徴を表すフォーク状の干渉縞が現れており、光渦であることが確認できた。5)量子もつれ電子の干渉および計測に関する理論的考察:量子状態のもつれの度合いを、負確率で特徴づける研究を行った。装置全体の組み上げまで完了し、電子線発生まで行うことができた。また量子もつれ光生成の予備的実験として光渦の生成およびフォトカソードへの導入まで完了した。理論面の研究として、量子状態のもつれの度合いを,負確率で特徴づける研究を行った.1)電子線の評価:昨年度までに電子顕微鏡本体に新規開発した電子銃を搭載するところまで完了しており、今年度は装置全体での電子線放出実験を行う。装置全体としての軸調整を行い、電子線の電流量、輝度、干渉性等の確認を開始する。干渉性の評価にもちいる電子線バイプリズムを新規開発する。またパルスレーザーをもちいてパルス電子線の発生を行い、パルス特性の評価も行う。2)量子もつれ状態の生成の実験:昨年度までの偏光レーザーによる干渉実験をさらに進め、量子もつれ電子を生成するための量子もつれ光生成の実験を行う。装置付属のレーザー光学系をもちいて量子もつれ光生成の実験を行う。量子もつれ光生成の確認には、量子もつれ状態特有の量子干渉効果を観察することにより行う。3)量子もつれ電子の干渉および計測に関する理論的考察:電子スピンを用いて生成した量子状態のもつれの度合いを定量的に測定する方法を考案する.装置の設計:今年度予定していた電子銃チャンバー、加速電極、表面活性化チャンバー、電子顕微鏡との接続部、高圧導入部等の設計を完了した。また、量子もつれ電子を生成するのに用いる量子もつれ光生成のための光学系の構築を開始した。本来計画には含まれていないが、本研究課題遂行に重要となる単電子検出可能なピクセル検出器を利用できる機会を得たため、旧装置にその検出器を導入し性能評価を行った。その結果、単電子検出が行えることを示唆する結果が得られた。半導体フォトカソードの作製:半導体フォトカソードとして用いるGaAs薄膜結晶を作製し、旧装置を用いて放出電子ビームの性能評価を行い、輝度、電流量、エネルギー幅、パルス応答性等が問題ないことを確認した。スピン偏極電子の強度干渉実験:旧装置をもちいた予備実験として、スピン偏極電子による世界初の強度干渉(2次干渉)の実験を行い、アンチバンチングを確認した。このことから、本装置が量子干渉現象を観察するのに十分な性能を有していることが確認された。また、電子らせん波を生成するフォーク型回折格子を導入し、電子線の軌道角運動量とスピン角運動量の相互作用の効果が電子ビームの強度分布に現れるの検証実験を開始した。理論的考察:電磁気学・量子力学を微分幾何学的に定式化する研究を行った。また,代数的量子論の方法を用いて、量子干渉効果とベル不等式の破れを記述する理論を構築した。これらの成果を解説記事の体裁で『数理科学』誌に発表した。旧装置をもちいた予備実験として、スピン偏極した電子線をもちいた強度干渉(2次干渉)実験を世界で初めて行い、アンチバンチングの効果を観測した。この結果は、本スピン偏極電子顕微鏡装置で量子干渉効果が観察できることを示すものである。29年度までに電子銃チャンバーの設計が完了し、30年度の電子銃部作製に向けた準備が整っている。また、新規に作製した半導体フォトカソードのテストを行い、問題なく動作することを確認している。量子もつれ状態を記述する量子論の研究も進めており、電磁場解析などにおいて有用な電磁場の幾何学的記述理論を研究している。1)電子銃作製および性能確認:昨年度までに設計を終えた電子銃の作製を行い、作製した電子銃チャンバーを組み上げた。納入搬送の際に装置の一部が破損するトラブルがあり、部品の再加工および組み上げが必要となったが、スケジュールを変更して対応した。真空および高圧の確認し、半導体フォトカソードの設置を完了した。2)電子顕微鏡装置の設置:本電子銃を搭載する電子顕微鏡装置の設置し、通常の電子銃をもちいた装置の性能評価を行った。また新規開発する重量の大きな電子銃を支えるための指示棒を取り付けたが、装置の除震性能に影響がないことを確認した。
KAKENHI-PROJECT-17H01072
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H01072
量子もつれ状態にある2電子の生成および量子干渉現象に関する実験的検証
さらに電子銃と電子顕微鏡本体の接続部である差動排気システムの取り付けを行い、真空の確認を行った。3)電子線放出実験:設置した電子顕微鏡装置に今回開発した電子銃を搭載し、電子銃部のベークアウト、真空の確認、NEA活性化を行い、装置全体での電子線放出実験を行った。まだ装置全体の電子線経路を通過させることまではできてないが、電子銃部分を通過することは確認できた。4)構造化レーザー光生成の予備実験:量子もつれ電子を生成するための量子もつれ光生成の予備準備として、光渦の生成実験を行った。生成した光から得たホログラムには光渦の特徴を表すフォーク状の干渉縞が現れており、光渦であることが確認できた。5)量子もつれ電子の干渉および計測に関する理論的考察:量子状態のもつれの度合いを、負確率で特徴づける研究を行った。装置全体の組み上げまで完了し、電子線発生まで行うことができた。また量子もつれ光生成の予備的実験として光渦の生成およびフォトカソードへの導入まで完了した。理論面の研究として、量子状態のもつれの度合いを,負確率で特徴づける研究を行った.量子もつれ光生成の予備的な実験を行うために本装置とは別に構築したレーザー光学系をもちいて量子もつれ光生成に必要な条件を詰め、本装置での量子もつれ電子生成が迅速に行えるようにする。フォトカソードから放出される電子はフォトカソード内に残されたホールと量子もつれ状態にあるため、ホールの振る舞いが重要である。ホールの寿命がなるべく長くなるようフォトカソード結晶のバンド構造を検討しながら、本研究に最適なフォトカソード結晶の選択を行う。旧装置をもちいたスピン軌道相互作用観察の予備実験では、電子顕微鏡の軸調整によっては電子らせん波の生成に十分なコヒーレンスが達成されない場合があることがわかった。電子ビームのコヒーレンスを高めるような光学系の調整を行い、スピン軌道相互作用の検証を試みる。理論的な立場から電子スピンを用いて量子もつれ状態の生成を検証する方法を考案する。1)電子線の評価:昨年度までに電子顕微鏡本体に新規開発した電子銃を搭載するところまで完了しており、今年度は装置全体での電子線放出実験を行う。装置全体としての軸調整を行い、電子線の電流量、輝度、干渉性等の確認を開始する。干渉性の評価にもちいる電子線バイプリズムを新規開発する。またパルスレーザーをもちいてパルス電子線の発生を行い、パルス特性の評価も行う。2)量子もつれ状態の生成の実験:昨年度までの偏光レーザーによる干渉実験をさらに進め、量子もつれ電子を生成するための量子もつれ光生成の実験を行う。装置付属のレーザー光学系をもちいて量子もつれ光生成の実験を行う。量子もつれ光生成の確認には、量子もつれ状態特有の量子干渉効果を観察することにより行う。3)量子もつれ電子の干渉および計測に関する理論的考察:電子スピンを用いて生成した量子状態のもつれの度合いを定量的に測定する方法を考案する.
KAKENHI-PROJECT-17H01072
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H01072
加齢に伴う脊椎変性の進行抑制に関わる因子の分子生物学的研究
加齢に伴い生じる脊椎・椎間板変性は腰痛や脊柱管狭窄、脊柱変形など脊椎疾患の主な原因と考えられている。しかし、脊椎・椎間板変性過程でどのような因子が関与するのか未解明な部分が多い。そこで髄核に発現するSonic hedgehog(Shh)と椎体終板に発現するIndian hedgehog (Ihh)の双方のHedgehogシグナル伝達に関与する膜蛋白のSmoothened (Smo)を生後に欠失させた(cKO群: Rosa Cre-ER(T);Smof/f))マウスを作成し、両側の椎間関節を切除した椎間板変性促進モデルにて検討したところ、control群と比べ椎間板変性が有意に抑制される結果を得た。そこで平成29年度では、変性のメカニズムにHedgehogがどのように関わっているのか組織切片を作成し免疫染色等で検討したところ、control群の変性した椎間板には終板軟骨細胞の肥大化とVEGFならびにCD31の発現がみられたが、cKO群では軟骨細胞の肥大化は有意に抑制されVEGFならびにCD31の発現は見られなかった。平成30年度では、椎間関節切除手術後にSmoの阻害薬であるSonidegib (Erismodegib, NVP-LDE225)を週3回腹腔内注射し椎間板変性の抑制が起こるか否か確認した。結果、control群と比較して椎間板高の低下は有意に抑制され、組織学的にも椎間板変性は抑制されていた。椎間板変性促進モデルにおいて、Smoothenedの阻害薬を腹腔内投与したところ、smoothenedのcKOマウスで得られた椎間板変性抑制結果と同様の椎間板変性の抑制効果を得られた。Smoothenedの阻害薬Sonidegibを腹腔内投与したところ、smoothenedのcKOマウスで得られた椎間板変性抑制結果と同様の椎間板変性の抑制効果が得られた。Sonidegibは局所進行基底細胞癌の治療薬として米国のFDAにすでに承認されている薬物である。本研究での結果は、がん治療のみならず変性疾患に対する治療薬にもなり得る可能性も秘めており、現在、Sonidegibによる変性抑制メカニズムや他臓器への影響など詳細に解析中である。加齢に伴い生じる脊椎・椎間板変性は腰痛や脊柱管狭窄、脊柱変形など脊椎疾患の主な原因と考えられている。しかし、脊椎・椎間板変性過程でどのような因子が関与するのか未解明な部分が多い。そこで髄核に発現するSonic hedgehog(Shh)と椎体終板に発現するIndian hedgehog (Ihh)の双方のHedgehogシグナル伝達に関与する膜蛋白のSmoothened (Smo)を生後に欠失させた(cKO群: Rosa Cre-ER(T);Smof/f))マウスを作成し、椎間板変性促進モデルにて検討したところ、control群と比べ有意に椎間板変性が抑制される結果を得た。そこで平成29年度では、変性のメカニズムにHedgehogがどのように関わっているのか組織切片を作成し免疫染色等で検討したところ、control群の変性した椎間板には終板軟骨細胞の肥大化とVEGFならびにCD31の発現がみられたが、cKO群では軟骨細胞の肥大化は有意に抑制されVEGFならびにCD31の発現は見られなかった。加齢に伴い生じる脊椎・椎間板変性は腰痛や脊柱管狭窄、脊柱変形など脊椎疾患の主な原因と考えられている。しかし、脊椎・椎間板変性過程でどのような因子が関与するのか未解明な部分が多い。そこで髄核に発現するSonic hedgehog(Shh)と椎体終板に発現するIndian hedgehog (Ihh)の双方のHedgehogシグナル伝達に関与する膜蛋白のSmoothened (Smo)を生後に欠失させた(cKO群: Rosa Cre-ER(T);Smof/f))マウスを作成し、両側の椎間関節を切除した椎間板変性促進モデルにて検討したところ、control群と比べ椎間板変性が有意に抑制される結果を得た。そこで平成29年度では、変性のメカニズムにHedgehogがどのように関わっているのか組織切片を作成し免疫染色等で検討したところ、control群の変性した椎間板には終板軟骨細胞の肥大化とVEGFならびにCD31の発現がみられたが、cKO群では軟骨細胞の肥大化は有意に抑制されVEGFならびにCD31の発現は見られなかった。平成30年度では、椎間関節切除手術後にSmoの阻害薬であるSonidegib (Erismodegib, NVP-LDE225)を週3回腹腔内注射し椎間板変性の抑制が起こるか否か確認した。結果、control群と比較して椎間板高の低下は有意に抑制され、組織学的にも椎間板変性は抑制されていた。椎間板変性促進モデルにおいて、Smoothenedの阻害薬を腹腔内投与したところ、smoothenedのcKOマウスで得られた椎間板変性抑制結果と同様の椎間板変性の抑制効果を得られた。また、SmoのInhibitorを静注もしくは椎間板内に注入した場合にcKOの結果と同様の結果が得られるのか薬物を購入し実験を開始した。Smoothenedの阻害薬Sonidegibを腹腔内投与したところ、smoothenedのcKOマウスで得られた椎間板変性抑制結果と同様の椎間板変性の抑制効果が得られた。Sonidegibは局所進行基底細胞癌の治療薬として米国のFDAにすでに承認されている薬物である。
KAKENHI-PROJECT-17K10952
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加齢に伴う脊椎変性の進行抑制に関わる因子の分子生物学的研究
本研究での結果は、がん治療のみならず変性疾患に対する治療薬にもなり得る可能性も秘めており、現在、Sonidegibによる変性抑制メカニズムや他臓器への影響など詳細に解析中である。購入したマウスが予定より安価だったため、残りを次年度の物品購入等に使用したい。
KAKENHI-PROJECT-17K10952
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ミトコンドリア遺伝子異常症患者の精神神経学的検討
ミトコンドリア遺伝子異常を有する患者の精神神経学的な精査および臨床検査を施行し、経時的な観察の中で中枢神経障害が進行する症例と中枢神経障害を有しない症例をさらに比較検討した。また新たに、中年なってから精神病様症状を初発症状として発症した発端者を得て、この症例の臨床観察および検査を行い、これまでの研究の対象にした症例との比較検討を行った。ミトコンドリア遺伝子異常を有する患者を8年間追跡調査した結果、各患者の家系内で新しく精神神経学的所見を呈した人は発端者以外には現れなかった。新たな発端者に関しても、現在までの解析では後記のまとめのとおり従来の対象患者と較べて大きな差異は検出されていない。うつ病を呈した患者はその後も寛解状態が継続しており、小脳障害も目立っていない。しかしながら、脳卒中様発作を起こした症例では、大脳・小脳萎縮は進行性で、痴呆症状がより悪化した。経時的な臨床観察の結果として、中枢神経障害が進行する症例では、(1)乳酸、ピルビン酸が経時的に上昇する、(2)難聴の進行が急速であるが、その出現時期は様々である、(3)痴呆、失語症が比較的早期に出現する、(4)画像所見では、脳梗塞様の所見に加え大脳皮質の萎縮が加わる、(5)糖尿病、難聴の発生率が高いことが判明した。また、今回新たに加わった症例なども含め、痴呆・失語などは認めないものの、難聴、糖尿病が比較的急速に進行するが、精神症状の持続に関しては様々で、乳酸・ピルビン酸値が上昇傾向も一様ではなかった。精神症状のうち、抑うつ状態の持続する患者と一過性の精神病症状を呈した患者の症状・検査結果の推移などの大きな差異は、現在のところ明瞭ではない。なお、一部の患者の皮膚生検では立毛筋や汗腺細胞、pericyteに異常ミトコンドリアの集積をみ、発汗テストも遅延していた。また、老人または老年痴呆患者で見られることが知られているミトコンドリア遺伝子の欠失については、今のところ一定の傾向性を指摘できる結果は得られていない。年齢や臨床経過など様々な要因が影響すると考えられるため、更に分析して検討を加える必要がある。ミトコンドリア遺伝子異常を有する患者の精神神経学的な精査および臨床検査を施行し、経時的な観察の中で中枢神経障害が進行する症例と中枢神経障害を有しない症例をさらに比較検討した。また新たに、中年なってから精神病様症状を初発症状として発症した発端者を得て、この症例の臨床観察および検査を行い、これまでの研究の対象にした症例との比較検討を行った。ミトコンドリア遺伝子異常を有する患者を8年間追跡調査した結果、各患者の家系内で新しく精神神経学的所見を呈した人は発端者以外には現れなかった。新たな発端者に関しても、現在までの解析では後記のまとめのとおり従来の対象患者と較べて大きな差異は検出されていない。うつ病を呈した患者はその後も寛解状態が継続しており、小脳障害も目立っていない。しかしながら、脳卒中様発作を起こした症例では、大脳・小脳萎縮は進行性で、痴呆症状がより悪化した。経時的な臨床観察の結果として、中枢神経障害が進行する症例では、(1)乳酸、ピルビン酸が経時的に上昇する、(2)難聴の進行が急速であるが、その出現時期は様々である、(3)痴呆、失語症が比較的早期に出現する、(4)画像所見では、脳梗塞様の所見に加え大脳皮質の萎縮が加わる、(5)糖尿病、難聴の発生率が高いことが判明した。また、今回新たに加わった症例なども含め、痴呆・失語などは認めないものの、難聴、糖尿病が比較的急速に進行するが、精神症状の持続に関しては様々で、乳酸・ピルビン酸値が上昇傾向も一様ではなかった。精神症状のうち、抑うつ状態の持続する患者と一過性の精神病症状を呈した患者の症状・検査結果の推移などの大きな差異は、現在のところ明瞭ではない。なお、一部の患者の皮膚生検では立毛筋や汗腺細胞、pericyteに異常ミトコンドリアの集積をみ、発汗テストも遅延していた。また、老人または老年痴呆患者で見られることが知られているミトコンドリア遺伝子の欠失については、今のところ一定の傾向性を指摘できる結果は得られていない。年齢や臨床経過など様々な要因が影響すると考えられるため、更に分析して検討を加える必要がある。本年度の研究では、ミトコンドリア遺伝子異常患者のスクリーニングを行ない、新たに1家系にミトコンドリア遺伝子3243番にA→G変異があることを発見した。現在この家系について精神神経学的な調査を行なっている。患者本人は、精神神経学的に特に異常は見られないが、糖尿病が認められ、この遺伝子異常と糖尿病の関連が示唆された。この他、現在までに臨床的にミトコンドリア遺伝子異常が考えられる家系が2家系あるため、現在遺伝子解析中である。現在までに遺伝子異常が判明している家系については、精神神経学的調査を継続中である。血液生化学的検査も継続中であるが、血中乳酸、ピルビン酸の高い患者とそうでない患者がいるため、精査中である。放射線医学的な検査では、脳梗塞が多発する患者から、所見の見られない患者まで所見にばらつきが見られる。数人の患者で小脳の萎縮が見られるが、この所見がミトコンドリア遺伝子異常と関連するのか現在調査中である。
KAKENHI-PROJECT-11670959
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ミトコンドリア遺伝子異常症患者の精神神経学的検討
今回、患者遺伝子をスクリーニング中に、ミトコンドリア遺伝子内にlarge poly-C insertionを見出した。この所見はアフリカ人にしか見られていなかったが、今回の研究で日本人にも存在する事が新たに判明した。約1.5%程度の日本人がこの所見を有しているものと思われ、遺伝子マーカーとして有用になることが考えられた。今後も、上記の検索を継続し、ミトコンドリア遺伝子異常を有する患者について精神神経学的な状態像を明らかにしていきたい。本年度は、ミトコンドリア遺伝子異常を有する患者の精神神経学的な精査および臨床検査を施行し、経時的な観察のなかで中枢神経障害が進行する症例と中枢神経障害を有しない症例を比較検討した。ミトコンドリア遺伝子異常を有する患者を6年間追跡調査した結果、新しく精神神経学的所見を呈した患者は発端者以外には現れなかった。うつ病を呈した患者はその後寛解状態が継続しており、小脳萎縮も進行していない。しかしながら、脳卒中様発作を呈した症例は、大脳、小脳萎縮が進行しており、痴呆症状が発現した。経時的な臨床観察の結果として、中枢神経障害が進行する症例では、(1)乳酸、ピルビン酸が経時的に上昇する、(2)難聴の進行が急速であることが、(3)臨床的には痴呆、失語症を呈する、(4)画像所見では、梗塞様の所見に加え、大脳皮質の萎縮が加わる、(5)糖尿病、難聴の発生率が高いことが判明した。中枢神経障害を呈さない症例でも難聴、糖尿病を合併するが、乳酸、ピルビン酸は経時的変化を呈さないことが判明した。このことは、患者の予後を予測する上で有用と考えられた。また、患者の臨床観察を行うなかで、多毛の患者が多いことに気づき、皮膚所見を検討したところ、中枢神経障害を呈する患者では、全員に多毛を認めた。多毛を呈している患者の皮膚生検を行ったところ、立毛筋に異常ミトコンドリアの集積を認め、また汗腺細胞およびpericyteにも同様の所見を認めた。このことから、ミトコンドリア遺伝子異常が発汗に及ぼす影響の可能性を考え、発汗テストを施行したところ、発汗の遅れがみられた。立毛筋、および汗腺は人体の体温調節に重要な働きを有している器官であることから、ミトコンドリア遺伝子異常を有する患者では体温調節障害が生じる可能性がある。本年度は、前年度に引き続き、ミトコンドリア遺伝子異常を有する患者の精神神経学的な精査および臨床検査を施行し、経時的な観察の中で中枢神経障害が進行する症例と中枢神経障害を有しない症例をさらに比較検討した。ミトコンドリア遺伝子異常を有する患者を7年間追跡調査した結果、新しく精神神経学的所見を呈した患者は発端者以外には現れなかった。新たな発端者を得てこの症例の臨床観察および検査を行い、これまでの研究の対象にした症例との比較検討を行った。うつ病を呈した患者はその後も寛解状態が継続しており、小脳障害も目立っていない。しかしながら、脳卒中様発作を起こした症例は、さらに大脳・小脳萎縮が進行し、痴呆症状が悪化した。経時的な臨床観察の結果として、中枢神経障害が進行する症例では、(1)乳酸、ピルビン酸が経時的に上昇する、(2)難聴の進行が急速である、(3)痴呆、失語症が比較的早期に出現する、(4)画像所見では、脳梗塞様の所見に加え、大脳皮質の萎縮が加わる、(5)糖尿病、難聴の発生率が高いことが判明した。中枢神経障害を呈さない症例でも難聴、糖尿病を合併するが、乳酸値、ピルビン酸値は経時的変化に乏しかった。
KAKENHI-PROJECT-11670959
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氷核蛋白質タンデムリピートの立体構造と分子進化の研究
氷核活性細菌には氷核蛋白質が存在し、-5°C以上の温度で細胞外の水を凍らせ、細菌がみづからの細胞内での致命的な凍結を防ぐ働きをしている。この氷核蛋白質は、1000残基以上のアミノ酸からなる大きな蛋白質であり、3つのドメインに分けられる。それらは、N末端側のNドメイン、中央のリピードドメインであるRドメイン、そしてC末端側のCドメインである。Rドメインは、互いに似たオクタペプチドが連続して100回以上も繰り返している。特に、1番目のアラニンと5番目のセリンが強く保存されている。本研究の目的は、これまで知られている氷核蛋白質タンデムリピート配列を詳細に解析しその分子進化を議論し、また立体構造の研究に利用することである。また、タンデムリピートを形成するペプチド合成し、NMR法によりその立体構造を明らかにすることである。これまで、10個の氷核蛋白質の塩基配列およびアミノ酸配列が決定されている。ドットプロット解析を含めたさまざまな解析から、Rドメインが4つのサブドメイン(R_N、R_1、R_2、R_C)に分けられることをみいだした。また、R_1とR_2ドメインでは、生物種内および生物種間においてリピート数が異なる著しい多型を示した。これらの結果にもとづいて、Rドメインのけるリピート配列の形成過程に関する一つの可能な進化モデルを提案した。上述の配列解析の結果を踏まえ、すべての氷核蛋白質において保存性のよいオクタペプチドが3回繰り返した塩基性の24残基からなる次のアミノ酸配列(H-SGLRSVLTAGYGSSLISGRRSSLT-OH)を選択し、合成したペプチドのNMRによる立体構造研究を行った。NOEの結果は、LTAGYの配列においてターン構造をとることを示した。この結果から、オクタペプチドが2回繰り返した16残基ごとにターン構造をとることが示唆され、Rドメインの立体構造に関して三角形モデルを提案した。氷核活性細菌には氷核蛋白質が存在し、-5°C以上の温度で細胞外の水を凍らせ、細菌がみづからの細胞内での致命的な凍結を防ぐ働きをしている。この氷核蛋白質は、1000残基以上のアミノ酸からなる大きな蛋白質であり、3つのドメインに分けられる。それらは、N末端側のNドメイン、中央のリピードドメインであるRドメイン、そしてC末端側のCドメインである。Rドメインは、互いに似たオクタペプチドが連続して100回以上も繰り返している。特に、1番目のアラニンと5番目のセリンが強く保存されている。本研究の目的は、これまで知られている氷核蛋白質タンデムリピート配列を詳細に解析しその分子進化を議論し、また立体構造の研究に利用することである。また、タンデムリピートを形成するペプチド合成し、NMR法によりその立体構造を明らかにすることである。これまで、10個の氷核蛋白質の塩基配列およびアミノ酸配列が決定されている。ドットプロット解析を含めたさまざまな解析から、Rドメインが4つのサブドメイン(R_N、R_1、R_2、R_C)に分けられることをみいだした。また、R_1とR_2ドメインでは、生物種内および生物種間においてリピート数が異なる著しい多型を示した。これらの結果にもとづいて、Rドメインのけるリピート配列の形成過程に関する一つの可能な進化モデルを提案した。上述の配列解析の結果を踏まえ、すべての氷核蛋白質において保存性のよいオクタペプチドが3回繰り返した塩基性の24残基からなる次のアミノ酸配列(H-SGLRSVLTAGYGSSLISGRRSSLT-OH)を選択し、合成したペプチドのNMRによる立体構造研究を行った。NOEの結果は、LTAGYの配列においてターン構造をとることを示した。この結果から、オクタペプチドが2回繰り返した16残基ごとにターン構造をとることが示唆され、Rドメインの立体構造に関して三角形モデルを提案した。氷核活性細菌には水が凍ることを促進する氷核蛋白質が存在し、細菌は自らの細胞内での致命的な凍結を防御している。この氷核蛋白質は、AGYxSxxxからなるコンセンサス配列が100回以上繰り返すタンデムリピートをもつ。これら反復配列の立体構造は不明である。本研究では、これら蛋白質における反復配列の立体構造情報を得るために、反復配列部分の合成モデルペプチドのNMR解析を実行した。氷核蛋白質の反復配列部分の24残基からなるペプチドのNMR測定を実行した。この結果、Tyrの芳香環側鎖と数残基離れたアミノ酸側鎖との間にNOEが観測された。この結果は反復配列がループ構造をとることを示している。以前我々が行なった結果(Tsuda S, Ito A, Matsushima N.(1997)FEBS Lett.409:227-231)と比較検討している。氷核活性細菌には氷核蛋白質が存在し、-5°C以上の温度で細胞外の水を凍らせ、細菌がみづからの細胞内での致命的な凍結を防ぐ働きをしている。この氷核蛋白質は、1000残基以上のアミノ酸からなる大きな蛋白質であり、3つのドメインに分けられる。それらは、N末端側のNドメイン、中央のリピードドメインであるRドメイン、そしてC末端側のCドメインである。Rドメインは、互いに似たオクタペプチドが連続して100回以上も繰り返している。特に、1番目のアラニンと5番目のセリンが強く保存されている。本研究の目的は、これまで知られている氷核蛋白質タンデムリピート配列を詳細に解析しその分子進化を議論し、また立体構造の研究に利用することである。
KAKENHI-PROJECT-13680746
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13680746
氷核蛋白質タンデムリピートの立体構造と分子進化の研究
また、タンデムリピートを形成するペプチド合成し、NMR法によりその立体構造を明らかにすることである。これまで、10個の氷核蛋白質の塩基配列およびアミノ酸配列が決定されている。ドットプロット解析を含めたさまざまな解析から、Rドメインが4つのサブドメイン(R_N、R_1、R_2、R_c)に分けられることをみいだした。また、R_1とR_2ドメインでは、生物種内および生物種間においてリピート数が異なる著しい多型を示した。これらの結果にもとづいて、Rドメインのけるリピート配列の形成過程に関する一つの可能な進化モデルを提案した。上述の配列解析の結果を踏まえ、すべての氷核蛋白質において保存性のよいオクタペプチドが3回繰り返した塩基性の24残基からなる次のアミノ酸配列(H-SGLRSVLTAGYGSSLISGRRSSLT-OH)を選択し、合成したペプチドのNMRによる立体構造研究を行った。NOEの結果は、LTAGYの配列においてターン構造をとることを示した。この結果から、オクタペプチドが2回繰り返した16残基ごとにターン構造をとることが示唆され、Rドメインの立体構造に関して三角形モデルを提案した。
KAKENHI-PROJECT-13680746
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金融監督規制の国際調和と相互承認の研究
本研究成果の概要としては、概要2つに分類できる。第一に、日本法の透明化に資するべく、金融法班の取引法グループ(代表:野村教授)と連携し、日本の判例・法令を英訳しチェックしてホームページ上で公開した。第二に、法学研究の深化と日本からの発信に資するべく、金融監督規制の国際調和と相互承認に関する研究を進めて論文発表・内外の学会報告を何度も行ったほか、アメリカから成果の一部を研究書として商業出版し、本テーマに関わる国際シンポジウムを開催した。本研究成果の概要としては、概要2つに分類できる。第一に、日本法の透明化に資するべく、金融法班の取引法グループ(代表:野村教授)と連携し、日本の判例・法令を英訳しチェックしてホームページ上で公開した。第二に、法学研究の深化と日本からの発信に資するべく、金融監督規制の国際調和と相互承認に関する研究を進めて論文発表・内外の学会報告を何度も行ったほか、アメリカから成果の一部を研究書として商業出版し、本テーマに関わる国際シンポジウムを開催した。「金融監督規制の国際調和と相互承認の研究」は合計6年間の研究プロジェクトで、初年度の今年は形になった研究実績はまだ少ない。弥永が「海外におけるコーポレート・ガバナンスに関する開示の状況」など会計規制に関する論文と5冊の著書を著し、久保田が「資金決済システムの法的課題」など銀行規制に関する論文とバーゼル銀行監督規制を例に「規制の国際調和と相互承認」について学会報告(4月9日予定)する。平成16年度の活動は主に研究体制作りに当てられた。即ち、参加メンバー各位がパソコンを購入し「国際金融法コンポーネント」にアクセスできる体制を整備し、総括班の翻訳プロジェクトに供する銀行・証券・保険・会計規制法の英訳情報(英訳例・英訳候補法文のリストアップ)を提供し、国際金融法コンポーネント上で公表した。これに伴い、取引法研究との間で合同打合せを10月に東京で、3月に京都で合計2回行った。一方、金融規制の実態調査として、弥永・田澤がロンドン大学で会計規制・証券規制(国際会計基準、EU指令、ハーグ条約等)に関する資料収集を実施し、久保田がロンドン大学・スペイン中央銀行・ハーバード大学・アメリカ連邦準備銀行で銀行・決済・証券規制(BIS規制、EU指令、米国法、ハーグ条約および各国動向)に関する資料収集を行った。また、日本国内規制の特例で国際競争力強化を目指す沖縄特区(金融特区)の動向が「金融監督規制の国際調和」を考える参考になるため、沖縄でヒアリング調査を行った。この間、ヤフー事業室長からインターネット金融の実務動向、日本銀行企画役からBIS2次規制に関するインタビュー調査を実施した。平成17年度は、海外(米国・EU等)と国内における金融実態調査を継続すると共に、沖縄県庁主査・名護市役所主査を招き、早大で講演していただく予定である。「金融監督規制の国際調和と相互承認の研究」は合計6年間の研究プロジェクトで、2年目の今年は、弥永、木下、久保田が担当領域で論文を出版したほか、田澤、久保田が4月22日、29日に金融法中間ワークショップとして、国際取引法フォーラムおよび日本金融学会で学会報告する。また、研究成果の海外発信の一環として、久保田を編者、科研メンバーを筆者として英語の研究書(題名:Cyberlaw for Global E-Business : Finance, Payment, and Dispute Resolution, 2007年夏出版予定)を出版予定であり、既に米国の出版社Idea Group Inc.と出版契約を交わした。一方、「日本法の透明化」に直接資する金融法令・判例の翻訳についても、取引法研究と共同で「国際金融法コンポーネント」の充実を進め、判例・法令の英訳を相当数進めた。これに伴い、取引法研究との間で合同打合せを複数行った。一方、金融法中間ワークショップに向けた実態調査として、田澤がEUでハーグ条約やUNIDROIT条約の、久保田がEU、米国、アジアでハーグ条約とバーゼルIIの資料収集やヒアリング調査を実施した。この間、日本国内規制の特例で匡際競争力強化を目指す沖縄特区(金融特区)の動向が「金融監督規制の国際調和」を考える参考になるため、沖縄でヒアリング調査を行い、県担当者(県庁主幹、名護市主査)を招いて早大で講演して頂き、3月には県主催の沖縄金融専門家会議にも出席した。平成18年度は、4月に金融法中間ワークショップを済ませた後も、内外の金融規制法関係の文献調査および実態調査を継続するとともに、英語の研究書の執筆を進めて海外発信に努め、併せて取引法研究と協働し、可能な限り「国際金融法コンポーネント」の中に金融法に関する解説記事や主要学術論文の紹介などを加える方向で検討する。本研究プロジェクトは、金融規制法に関する法令・判例の英訳を通じた「日本法の透明化」(特定領域研究全体と関わる)と、金融規制法に関する研究を深め、海外発信することを目的とする「金融監督規制の国際調和と相互承認の研究」の2本立てで成立する。これまで「日本法の透明化」については、英訳する判例・法令を選定し、翻訳業者の成果物をチェックし、ホームページ上で公表する作業を順次続けてきた。一方、「金融監督規制の国際調和と相互承認の研究」については、法の調和と外国制度の相互承認という考え方を金融規制法に適用し、最初の2年間で現行規制の総合的理解を行い、次の2年間で評価を行った。今後、理論モデルの提示、研究成果の海外発信が予定されている。
KAKENHI-PROJECT-16090101
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金融監督規制の国際調和と相互承認の研究
平成18-19年度は、(1)取引法グループと共同で行う「日本法の透明化」作業に関して、英訳法令・判例の検討を行い、ホームページ上に掲載し、平成19年2-3月にオーストラリア国立大学において本テーマに関する共同シンポジウムを開催した(当グループから弥永、木下が参加、久保田がレポート提出)ほか、(2)当グループが独自で行う「金融監督規制の国際調和と相互承認の研究」に関して、現行金融規制の評価に関する研究成果を英語で海外向けに発信する試みの1つとして、久保田が編者になり、米国出版社Idea GroupからCuberlaw for Global E-Business : Finance, Payments, and Dispute Resolutionという題名の研究書を出版予定であり、18名の執筆者中、当グループから田澤、弥永、久保田が寄稿した。本書籍は平成19年4月15日までに出版社に提出され、編集作業を経て平成19年中に出版される見通しである。本研究は、(1)日本の金融監督規制に関する法令・判例・学説を分かり易く英語に翻訳して国際金融法コンポーネントや国際シンポジウムの開催を通じて体外発信し、(2)併せて金融監督法の研究を進め、「法の調和と外国制度の相互承認」という国際経済法等で用いられてきた考え方を金融監督規制法に応用して、現行規制の総合的理解および評価、金融規制法の理論モデルの提示、研究成果の英語による海外発信を行うことを目的とし、既に一定の成果を挙げているが、今年度は更に具体的な成果物を数多く公表した。まず、日本法の対外発信については、金融班の内部における取引法研究グループ(代表者:阪大・野村教授)や総括班と連携して国際金融法コンポーネントを順調に構築し(HPアップ済み判例3、翻訳済み判例27・法令4、翻訳予定判例10)、オーストラリア国立大学(ANU)と共同で昨年度にオーストラリア・キャンベラにて国際ワークショップを開催した成果を纏め、国際商事法務36巻3号327-338頁(2008年3月)に掲載した。また、次年度に金融班とその他の班との共同で行うワークショップを計画し、準備を進めている。一方、研究成果の対外発信については、2007年12月に米国の出版社IGI Globalより英語研究書(題名:Cyberlaw for Global E-Business: Finance, Payments, and Dispute Resolution)を刊行したほか、久保田がハーバード大学・スコット教授の先行研究を元に「金融規制の国際調和と相互承認」の理論化を試みた著作を早稲田法学83巻3号(2008年3月刊行予定)に発表したほか、各研究分担者により活発な研究成果の公表や対外発信が進められた。今後は、上記理論化の完成度を高め、対外発信することを予定している。本共同研究の目的である(1)各班の有機的連携による「日本法の透明化」、(2)金融規制法の理論モデルの提示と研究成果の海外発信の2点に照らし、本年度も十分な研究成果を果たしたものと考える。すなわち、本年度は、(1)金融法班取引法G(野村教授ほか)と共同の「国際金融法コンポーネント」の拡充(詳細は取引法Gの報告に委ねる)に務め、総括班主催の国際シンポジウムに参加し、当規制法Gからは木下教授、弥永教授が発表し、上柳敏郎氏(弁護士)・浅田隆氏(住友銀行法務部)と金融法の課題について討論した(詳細は総括
KAKENHI-PROJECT-16090101
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細胞の増殖と停止・分化における核ー細胞質間タンパク質輸送機構の役割
核-細胞質間の分子輸送は、主に運搬体Importin βファミリー分子によって厳密に制御されている。タンパク質の細胞内局在と機能は密接に関連しているため、タンパク質の細胞内局在化機構の解析は非常に重要である。ヒトには、核-細胞質間を往来する機能タンパク質が推定1万種近く存在するが、運搬体分子が判明しているのは3%ぐらいにすぎない。そこで、本年度は、輸送基質同定のための新しいアッセイ系の構築と分子シャペロンhsc70の核内移行の解析を行った。Importin βファミリー分子は非常に弱いイオン強度下でも疎水性カラムに効率よく吸着する。よって、疎水性カラムにより、細胞抽出液からImportin βファミリー分子を比較的高い選択性で吸収することができた。この運搬体分子欠損細胞抽出液のみでは、セミインタンクト細胞における核-細胞質間の能動的タンパク質輸送を再構築できない。しかし、リコンビナントImportin βファミリー分子を加えることで、任意の輸送経路のみを再構築することが出来た。この系は特定の輸送経路で運ばれる輸送基質の同定に、今後有用である。Hsc70は、熱ショックストレスに応答し、細胞質から核に移行する。我々は以前、hsc70が核内に移行することにより、幾つかのImportin βファミリー分子の核から細胞質へ移行が促進されることを示していた。しかし、その詳細な分子機構は不明であり、hsc70の核内移行機構も不明であった。そこで、上記解析系を用いて、hsc70の核内移行解析を行った。Hsc70の核内移行はRanGTPにより強く阻害されたが、どのImportinもhsc70の核内移行を促進出来なかった。Ran依存的であるが、Importin βファミリー非依存的である輸送経路はこれまでに報告がなく、非常に興味深い結果である。核-細胞質間の選択的輸送は、主に運搬体importin βファミリー分子によって行われる。ヒトゲノムには、全21種importin βファミリー分子と、アダプター分子として機能するimportin αファミリー分子が全6種コードされている。しかし、これらの多様な輸送経路を細胞が持つ生理的意義は明らかになっていない。本年度は、細胞機能と輸送経路の関連性を解析するため、分化誘導や増殖停止に伴う核-細胞質間分子輸送システムの変化を解析した。急性前骨髄性白血病由来のヒト細胞株HL-60を、PMAもしくはレチノイン酸(RA)により、それぞれマクロファージと顆粒球に分化誘導した。この時、細胞内importin βファミリー分子のmRNA発現量変化をリアルタイムPCRによって解析した。その結果、分化誘導に伴う細胞機能変化により、細胞内輸送経路網の量的バランス変化が確認出来た。この各運搬体分子のmRNA発現量変化は、分化誘導の方向性によって異なっていた。例えば、マクロファージへの分化誘導により、transportinの発現亢進とimportin 5,CASの発現量が顕著に低下するが、顆粒球への場合には、これらの遺伝子の顕著な発現量変化は確認出来ず、RanBP6の発現亢進とimportin 4の発現変化が確認された。これらの結果は、細胞内では、細胞機能変化に伴い、ダイナミックな輸送経路システムの変化が起きることを示している。また、その輸送経路システム変化は、獲得する細胞機能によって異なっていた。これらのことから、細胞は、個々の細胞機能の獲得や維持のために細胞内輸送経路網を最適化している可能性が考えられ、また、特定の輸送経路によって運搬される分子が特定の細胞機能に非常に重要である可能性を示唆している。核-細胞質間の分子輸送は、主に運搬体Importin βファミリー分子によって厳密に制御されている。タンパク質の細胞内局在と機能は密接に関連しているため、タンパク質の細胞内局在化機構の解析は非常に重要である。ヒトには、核-細胞質間を往来する機能タンパク質が推定1万種近く存在するが、運搬体分子が判明しているのは3%ぐらいにすぎない。そこで、本年度は、輸送基質同定のための新しいアッセイ系の構築と分子シャペロンhsc70の核内移行の解析を行った。Importin βファミリー分子は非常に弱いイオン強度下でも疎水性カラムに効率よく吸着する。よって、疎水性カラムにより、細胞抽出液からImportin βファミリー分子を比較的高い選択性で吸収することができた。この運搬体分子欠損細胞抽出液のみでは、セミインタンクト細胞における核-細胞質間の能動的タンパク質輸送を再構築できない。しかし、リコンビナントImportin βファミリー分子を加えることで、任意の輸送経路のみを再構築することが出来た。この系は特定の輸送経路で運ばれる輸送基質の同定に、今後有用である。Hsc70は、熱ショックストレスに応答し、細胞質から核に移行する。我々は以前、hsc70が核内に移行することにより、幾つかのImportin βファミリー分子の核から細胞質へ移行が促進されることを示していた。しかし、その詳細な分子機構は不明であり、hsc70の核内移行機構も不明であった。そこで、上記解析系を用いて、hsc70の核内移行解析を行った。Hsc70の核内移行はRanGTPにより強く阻害されたが、どのImportinもhsc70の核内移行を促進出来なかった。Ran依存的であるが、Importin βファミリー非依存的である輸送経路はこれまでに報告がなく、非常に興味深い結果である。
KAKENHI-PROJECT-18770182
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降雪地域の高齢者の心身機能向上を目的とした歩行機能サポートプログラムの構築と評価
65歳以上の住民を対象としたセルフケアによるフットケアプログラムを作成し、介入6か月後の身心の変化を評価した。予備調査では、足底の形態(足型)は、対照群で介入後に改善した者はおらず、標準足型の者の割合が有意に低下した(p<0.01)。過去6か月間の転倒歴は、介入群の1名は介入後0名に減少し、対照群は1名から介入後4名に増加した。3年目以降の調査は介入群のみとし、介入6か月後と1年後を評価した。足の手入れは平均週2回以上であった。BMIは1年後有意に低下し(P<0.05)、ファンクショナルリーチは継続に伴い改善がみられた。バランスの安定感や接地感覚は、ほぼ全員があると評価した。平成25年度は歩行機能サポートプログラム(以下、プログラム)の検討、評価指標の検討を行い、プレ調査を開始した。プレ調査の対象は、日常生活において身体活動に援助の必要がなく、質問や指示の理解及び判断が出来、介護保険の認定を受けておらず、足のセルフケアが可能な65歳以上の住民である。プログラムは、足・爪の構造と機能、足の手入れ、靴の選択、歩き方についての知識と足のケア技術の習得と月一回のサポートとして、平成25年12月から調査を開始した。プログラムの計画及び評価指標は研究分担者会議で検討し決定した。評価項目は先行研究において高齢者のフットケアの評価に用いられている、足の把持力、バランス、足底圧分布、10m歩行速度、足の形態、1週間の平均歩数・活動量、足の表面温度、認知機能、セルフケアの状況、歩行に関する意識、転倒不安、サポートの方法等とし、評価時に効果の検証に用いる指標の精選を行うこととした。対象者の同意を得て介入群と対照群を設けた。会場は大学会議室を使用した。平成25年12月に開始したプレ調査参加者の平均年齢は介入群72.3歳、対照群74.4歳で有意差はなかった。1週間の平均歩数は介入群7061歩、対照群7794歩であり、健康日本21の70歳以上の男女平均を上回っていた。主観的に健康であると思っている者は介入群、対照群いずれも約7割であった。足の手入れに関して、足の指が動くと回答した者は両群とも9割、足の運動をしていると回答した者は介入群5割、対照群7割であった。足の表面温度や足底圧分布は、プレ調査期間前後の比較を質的・量的に行うよう評価方法について検討中である。介入群に対する知識、技術の習得のための教室では、PPTと資料を用いた講義と小グループによる足の観察や手入れを行った。介入群には月一回の電話サポートとプログラムの実施状況の確認を継続中である。平成26年6月に6か月後評価を行いプレ調査の評価を行う予定である。平成26年度は,前年度冬に開始した歩行機能サポートプログラム(以下、プログラム)継続して実施し、プログラムの評価を行った。評価は介入群・非介入群別の実施前後及び介入群・非介入群の比較により行った。調査の対象は、日常生活において身体活動が自立しており、足のセルフケアが可能な65歳以上の住民である。プログラムは、1講義:足・爪の構造と機能、足の手入れ、靴の選択、歩き方についての知識と足の手入れ、2演習:足の観察、足の手入れ、足の運動、3サポート:定期的な状況確認と支援として、月一回の電話サポートとカレンダーの記入、6か月の期間の中間の振り返り演習を実施した。6か月の期間中、介入群の対象者には、週に1回以上の自宅での足の手入れを促した。6カ月間の評価可能な対象は、介入群11名、非介入群10名、全員女性であった。平均年齢は介入群71.8歳、非介入群74.3歳で有意差はなかった。6か月間の転倒歴では、介入群は1人から0人に減少したが、非介入群では1人から4人に増加した。身体機能では、左足趾間把持力のみ介入群、非介入群とも有意な低下があったが、他の項目に有意差はなかった。主観的な足の動きに有意な変化はなかった。足の手入れでは、足の観察、足の運動、角質の手入れにおいて介入群の実施割合が増えていたが、非介入群と比較し有意差はなかった。第一趾の圧が他の指より高い者の割合は、介入群では6か月後全員に増加し、非介入群は減少した。前後・左右の荷重バランスに有意な変化はなかった。介入群に行った月1回の電話は全員がよかったと回答し、やる気につながったと回答した。足の手入れカレンダーは9名が記録し、全員が週1回以上足の手入れを実施した。平成26年度の評価結果から、高齢者のセルフケアによる足の手入れにおいても、接地やバランスへの効果が期待できると考える。本研究は歩行機能サポートプログラムを実施することによる、高齢者の心身の機能の改善・維持への効果を明らかにすることである。平成27年度の結果は以下の通りである。1平成25年度、平成26年度の2年間で行った介入・非介入調査の結果に基づき、健康な高齢者グループ2つの協力を得て介入調査を開始した。コントロール群の設定が難しく、自己対照型のデザインとし、2グループの参加希望者33名に介入を行った。5月と11月に介入前調査を行い、11月から介入を実施した。
KAKENHI-PROJECT-25293471
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降雪地域の高齢者の心身機能向上を目的とした歩行機能サポートプログラムの構築と評価
実施内容は前年度作成したプログラムの実施と、心身機能の測定を実施であり、足底圧の結果をさらに検証するために、姿勢測定を新たに追加した。平成28年5月まで介入を行い、その後評価を行う予定である。2全国のフットケア実態調査を実施した。対象は、全国の市町村において介護予防事業を担当する地域包括支援センター882センターを選択し、郵送留置調査を実施した。返信は275施設あり、直営型53施設、委託型、219施設その他3施設であった。平成15年度から26年度までにフットケアを実施した施設は59施設(21.5%)であり、毎年実施している施設は19施設であった。実施主体は地域包括支援センターが78%であった。フットケアを実施していない216施設において、どのような体制があれば実施可能かの質問には、指導ができる専門職のサポート63%、実施に利用できるパンフレット・資料48.6%、専門職の情報42.6%であった。本結果は平成28年度の成果とともに回答施設に送付予定である。介入調査を継続して実施しており、結果の公表や提言の為の調査も実施できおおむね順調である。本研究の目的は、歩行機能サポートプログラム(自求自足講座)を実施することによる、高齢者の心身の機能改善・維持への効果を明らかにすることである。平成28年度は、平成27年度11月に同意を得てセルフケアによるフットケアの介入を行った対象者への継続評価を行った。介入後半年間、月に一度電話によるサポートを行った。平成27年11月、平成28年5月、平成28年11月の計3回、継続してプログラムに参加した28人を評価の対象とした。対象者の年齢は平均71.9歳であった。6ヶ月間のセルフケアによるフットケア実施率は、マッサージ15.6%98.7%、足指体操9.1%100%、足の観察15.6%100%であり、週2回実施している人は28人中23人以上(約8割)であった。歩数の平均は、平成28年5月9012歩、平成28年11月8448歩、認知得点は平成28年5月46.5点、平成28年11月47.5点であった。足指間力の平均は平成28年5月2.7kg、平成28年11月2.7kgであった。フットビューについては、加重バランス、足底圧を測定した。また姿勢への変化の有無を評価するため、PA200により姿勢を撮影した。介入後の足の動きに関する主観的評価では、バランスの安定感や接地感覚について、9割以上があると評価していた。今後すべての測定項目の分析を行い結果を公表する予定である。平成25年度、平成26年度に実施した調査結果は国際誌に投稿中である。平成27年度に実施したフットケアの全国調査結果は日本公衆衛生学会で発表し、国内誌に投稿中である。全国調査において結果の送付を希望した地域包括支援センター131施設に対し、調査結果及び自求自足講座で使用した資料一式を送付した。講座資料は研究代表者のHPで公開した。65歳以上の住民を対象としたセルフケアによるフットケアプログラムを作成し、介入6か月後の身心の変化を評価した。予備調査では、足底の形態(足型)は、対照群で介入後に改善した者はおらず、標準足型の者の割合が有意に低下した(p<0.01)。過去6か月間の転倒歴は、介入群の1名は介入後0名に減少し、対照群は1名から介入後4名に増加した。3年目以降の調査は介入群のみとし、介入6か月後と1年後を評価した。足の手入れは平均週2回以上であった。BMIは1年後有意に低下し(P<0.05)、ファンクショナルリーチは継続に伴い改善がみられた。
KAKENHI-PROJECT-25293471
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女子高等教育のトランスナショナルな交流とネットワーク構築に関する歴史的研究
平成30年度は明治期から大正期までの日本の女子留学生によるトランスナショナルな活動に焦点を絞り、それを支えた人的ネットワークの実態を解明した。具体的には、官費でイギリスに留学した大江スミ、黒田チカ、私費でアメリカに留学した成瀬仁蔵、河井道、上代タノ等の事例を取り上げてその生涯と教育経験、教育者としての実践を考察し、その成果を二つの国際学会で報告した。まず'Educaiton and Nature'を大会テーマとして8月にベルリン大学で開催された国際教育史学会(International Standing Conferece of the History of Education)では、研究代表者、研究分担者、研究協力者4名によるパネル'Western Impacton Women's Higher Education in Japan'を設けて、戦前期の東京女子高等師範学校と日本女子大学校の教育内容や教育方針における英米からの影響を検討した。具体的な事例として、成瀬仁蔵の身体教育、大江スミや河井道による園芸・農業教育、黒田チカによる自然科学研究を取り上げ、これらの人物の欧米留学とそれを支援した大学人のネットワークを分析し、留学経験が帰国後の教育実践に与えた影響について検討した。また11月にアイルランドのリムリックで開催されたイギリス教育史学会(History of Education Society 51th Conference)においては、上記全員が個別研究報告を行なった。研究代表者の香川は日本の初期女性科学者の教育研究と留学経験およびキャリア形成について、分担者の佐々木は日本における初期の女性医師と教育について、中込は大江スミの英国留学と家庭科教育実践について、研究協力者の内山は上代タノと国際平和運動について研究の成果を発表し、海外の研究者からの批判を仰いだ。本年度は戦前期の女子留学生に焦点をあてることにより、女子高等教育をめぐるトランスナショナルな交流と大学人のネットワークについて考察した。戦前期の留学生のうち圧倒的多数を占めた男性留学生の動向を分析した先行研究はかなり存在するが、女性の留学の実態を包括的に検討した研究は少なく、津田梅子や安井てつ等の著名人とその周辺人物に限定されている。今日ではあまり知られていない人物も含めて、留学に至った動機や背景、帰国後の活動を追跡することにより、ジェンダーによる留学の目的や経験の相違が明らかになると考えた。こうした展望のもと、東京女子高等師範学校からイギリスに官費留学した大江スミと黒田チカ、日本女子大学校や津田英学塾で教鞭を執りアメリカに留学した河井道と上代タノのライフストーリーを追跡し、その家庭環境、教育経験、留学に至るまでの経緯、留学前後の社会的ネットワーク、帰国後の活動を明らかにした。その成果を国際教育史学会では共同のパネルを組むことで、またイギリス教育史学会では個別の研究発表を行って海外に発信した。その結果、国内外の研究者からの質問やコメントを受けるとともに、研究交流の機会を得た。二つの国際学会での報告と交流から多くの示唆を与えられ、次年度以降の調査研究にむけての課題を具体化することができた。今後は、より多くの女性の留学生の事例を検討し、留学の時期や専攻分野別に分類・整理することにより、戦前期女性留学の全体像と特徴を明らかにしたい。こうした作業を通して、ジェンダー、国家政策、宗教、階層、地域等による留学の教育史的意義の差異が明らかにできると考える。しかし、19世紀末から20世紀にかけて活発化した女子高等教育関係者のトランスナショナルな交流は、留学生の交換だけにとどまらない。20世紀初頭には国際的な女性参政権運動や平和運動の隆盛を背景に、国際女性大学連盟(International Federation of University Women)に代表される女性大学人の国境を超えた連帯や協働活動が展開された。次年度以降は、女性の大学人による協同活動の全容を明らかにするために、イギリスやアメリカ合衆国での調査を実施する。その成果を国内・国外の学会で発表するとともに、学術論文としてまとめ、学会誌に投稿したい。平成30年度は明治期から大正期までの日本の女子留学生によるトランスナショナルな活動に焦点を絞り、それを支えた人的ネットワークの実態を解明した。具体的には、官費でイギリスに留学した大江スミ、黒田チカ、私費でアメリカに留学した成瀬仁蔵、河井道、上代タノ等の事例を取り上げてその生涯と教育経験、教育者としての実践を考察し、その成果を二つの国際学会で報告した。まず'Educaiton and Nature'を大会テーマとして8月にベルリン大学で開催された国際教育史学会(International Standing Conferece of the History of Education)では、研究代表者、研究分担者、研究協力者4名によるパネル'Western Impacton Women's Higher Education in Japan'を設けて、戦前期の東京女子高等師範学校と日本女子大学校の教育内容や教育方針における英米からの影響を検討した。具体的な事例として、成瀬仁蔵の身体教育、大江スミや河井道による園芸・農業教育、黒田チカによる自然科学研究を取り上げ、これらの人物の欧米留学とそれを支援した大学人のネットワークを分析し、留学経験が帰国後の教育実践に与えた影響について検討した。また11月にアイルランドのリムリックで開催されたイギリス教育史学会(History of Education Society 51th Conference)においては、上記全員が個別研究報告を行なった。研究代表者の香川は日本の初期女性科学者の教育研究と留学経験およびキャリア形成について、分担者の佐々木は日本における初期の女性医師と教育について、中込は大江スミの英国留学と家庭科教育実践について、研究協力者の内山は上代タノと国際平和運動について研究の成果を発表し、海外の研究者からの批判を仰いだ。本年度は戦前期の女子留学生に焦点をあてることにより、女子高等教育をめぐるトランスナショナルな交流と大学人のネットワークについて考察した。
KAKENHI-PROJECT-18K02323
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女子高等教育のトランスナショナルな交流とネットワーク構築に関する歴史的研究
戦前期の留学生のうち圧倒的多数を占めた男性留学生の動向を分析した先行研究はかなり存在するが、女性の留学の実態を包括的に検討した研究は少なく、津田梅子や安井てつ等の著名人とその周辺人物に限定されている。今日ではあまり知られていない人物も含めて、留学に至った動機や背景、帰国後の活動を追跡することにより、ジェンダーによる留学の目的や経験の相違が明らかになると考えた。こうした展望のもと、東京女子高等師範学校からイギリスに官費留学した大江スミと黒田チカ、日本女子大学校や津田英学塾で教鞭を執りアメリカに留学した河井道と上代タノのライフストーリーを追跡し、その家庭環境、教育経験、留学に至るまでの経緯、留学前後の社会的ネットワーク、帰国後の活動を明らかにした。その成果を国際教育史学会では共同のパネルを組むことで、またイギリス教育史学会では個別の研究発表を行って海外に発信した。その結果、国内外の研究者からの質問やコメントを受けるとともに、研究交流の機会を得た。二つの国際学会での報告と交流から多くの示唆を与えられ、次年度以降の調査研究にむけての課題を具体化することができた。今後は、より多くの女性の留学生の事例を検討し、留学の時期や専攻分野別に分類・整理することにより、戦前期女性留学の全体像と特徴を明らかにしたい。こうした作業を通して、ジェンダー、国家政策、宗教、階層、地域等による留学の教育史的意義の差異が明らかにできると考える。しかし、19世紀末から20世紀にかけて活発化した女子高等教育関係者のトランスナショナルな交流は、留学生の交換だけにとどまらない。20世紀初頭には国際的な女性参政権運動や平和運動の隆盛を背景に、国際女性大学連盟(International Federation of University Women)に代表される女性大学人の国境を超えた連帯や協働活動が展開された。次年度以降は、女性の大学人による協同活動の全容を明らかにするために、イギリスやアメリカ合衆国での調査を実施する。その成果を国内・国外の学会で発表するとともに、学術論文としてまとめ、学会誌に投稿したい。平成30年度は、研究代表者(1名)、研究分担者(2名)、研究協力者(1名)の全員が、国際教育史学会(8月にドイツで開催)、イギリス教育史学会(11月にアイルランドで開催)の二つの学会で研究発表を行った。これに伴って海外出張旅費が年度初めの計画よりも多く必要となったため、平成31年度分として請求していた助成金の一部を前倒し請求して旅費の支出に備えた。
KAKENHI-PROJECT-18K02323
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網膜における視覚情報の階層的情報処理機構
網膜GABA作動性のニューロンには水平細胞とアマクリン細胞とがある。水平細胞は錐体視細胞へ、アマクリン細胞は双極細胞へネガティブフィードバックをかけ、受容野周辺部を形成にあずかっている。最近、水平細胞自身もGABAに対する感受性を持っていることが明らかになった。そこで本研究では、アメリカナマズから単離した網膜水平細胞からパッチ電極で記録を行い、GABA受容体の性質とその生理学的意義を解析した。その結果、水平細胞のGABA応答にはGABA_C受容体を介する応答と、GABAの輸送に伴う電流の2成分が見いだされた。Cl^-によって運ばれるGABA_C応答は全電流応答の約80%を占め、脱感作を示さず、ピクロトキシン(100μM)によってブロックされた。EC_<50>は2μM、反転電位はCl^-の平衡電位に極めてよく一致した。水平細胞の細胞内Cl^-濃度は約40mM、この値から求めたCl^-の平衡電位は約-30mVであった。水平細胞からのGABAの放出は水平細胞の脱分極に伴って起こるから、この結果は、GABAは水平細胞を脱分極させ、水平細胞にポジティブフィードバックを掛けることを意味している。一方、GABAの輸送に伴う電流は細胞外液のNa^+とCl^-を必要とし、nipecoticacidやSKF89976Aによってブロックされた。この輸送は2Na^+:1Cl^-:1GABAの比で作動しているものと考えられ、水平細胞の細胞内GABA濃度を10mM,Na^+濃度を10mM,Cl^-濃度を40mMとすると、細胞間隙のGABA濃度は光応答に伴って2-10μMの範囲で変化するものと考えられた。網膜GABA作動性のニューロンには水平細胞とアマクリン細胞とがある。水平細胞は錐体視細胞へ、アマクリン細胞は双極細胞へネガティブフィードバックをかけ、受容野周辺部を形成にあずかっている。最近、水平細胞自身もGABAに対する感受性を持っていることが明らかになった。そこで本研究では、アメリカナマズから単離した網膜水平細胞からパッチ電極で記録を行い、GABA受容体の性質とその生理学的意義を解析した。その結果、水平細胞のGABA応答にはGABA_C受容体を介する応答と、GABAの輸送に伴う電流の2成分が見いだされた。Cl^-によって運ばれるGABA_C応答は全電流応答の約80%を占め、脱感作を示さず、ピクロトキシン(100μM)によってブロックされた。EC_<50>は2μM、反転電位はCl^-の平衡電位に極めてよく一致した。水平細胞の細胞内Cl^-濃度は約40mM、この値から求めたCl^-の平衡電位は約-30mVであった。水平細胞からのGABAの放出は水平細胞の脱分極に伴って起こるから、この結果は、GABAは水平細胞を脱分極させ、水平細胞にポジティブフィードバックを掛けることを意味している。一方、GABAの輸送に伴う電流は細胞外液のNa^+とCl^-を必要とし、nipecoticacidやSKF89976Aによってブロックされた。この輸送は2Na^+:1Cl^-:1GABAの比で作動しているものと考えられ、水平細胞の細胞内GABA濃度を10mM,Na^+濃度を10mM,Cl^-濃度を40mMとすると、細胞間隙のGABA濃度は光応答に伴って2-10μMの範囲で変化するものと考えられた。
KAKENHI-PROJECT-06260238
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06260238
金属面への垂直配向単層カーボンナノチューブ膜の接合
目的:垂直配向単層カーボンナノチューブ膜(VA-SWNT膜)が有する高熱伝導性を熱交換機器、CPU、電子機器等の冷却性能向上に応用できると着想し、私はすでにVA-SWNT膜へ貴金属材料を蒸着した後、銅加熱面上へ強固に接合させることに成功している。しかしながら工程を簡略化する要望から、蒸着をせずに直接各種金属面上へVA-SWNT膜が強固に接合する時の最適条件を実験で明らかにすることを目的とした。方法:伝熱ブロック面に適度なアニール温度・圧力を与えると強固にVA-SWNT膜を接合できると考えた。アニール用実験装置を試作し、チャンバー内部に母材I(伝熱ブロック)と母材II(VA-SWNT膜+石英基板)の間に(ロウ付け材料)を挟みこみ、Arガス中において、外側に設置したQCHヒーターにて600°C900°Cの範囲でアニール温度を設定し、上方より圧力を加えながら10分間程度加熱した。どの条件が強固な接合に一番適しているのかをアニール温度・圧力等を変化させデータを整理検討した。接合膜の接合強度の評価は、膜を接合させた高温伝熱加熱面上に水滴を衝突させる冷却実験やプール沸騰実験を行ない、膜にとって過酷な環境下で剥離の有無を確認した。実験前後の膜表面の状況は、走査型電子顕微鏡(SEM)を利用して画像を観察・比較検討した。成果:接合を何度も試みたが、蒸着した金属面と比べて、蒸着をしない金属面にVA-SWNT膜を広い面積に接合することは今の段階では非常に困難であり、更なる検討が必要である。しかしながら、銅面に狭い面積ではあったがVA-SWNT膜を接合できた加熱面を利用したプール沸騰実験と液滴衝突実験を行ない、それぞれ特徴のある伝熱特性を示している。また、VA-SWNT膜にとって過酷と思われる高温での沸騰実験を繰り返したがVA-SWNT膜の剥離は見られず、強固に接合できていることを実証できた。目的:垂直配向単層カーボンナノチューブ膜(VA-SWNT膜)が有する高熱伝導性を熱交換機器、CPU、電子機器等の冷却性能向上に応用できると着想し、私はすでにVA-SWNT膜へ貴金属材料を蒸着した後、銅加熱面上へ強固に接合させることに成功している。しかしながら工程を簡略化する要望から、蒸着をせずに直接各種金属面上へVA-SWNT膜が強固に接合する時の最適条件を実験で明らかにすることを目的とした。方法:伝熱ブロック面に適度なアニール温度・圧力を与えると強固にVA-SWNT膜を接合できると考えた。アニール用実験装置を試作し、チャンバー内部に母材I(伝熱ブロック)と母材II(VA-SWNT膜+石英基板)の間に(ロウ付け材料)を挟みこみ、Arガス中において、外側に設置したQCHヒーターにて600°C900°Cの範囲でアニール温度を設定し、上方より圧力を加えながら10分間程度加熱した。どの条件が強固な接合に一番適しているのかをアニール温度・圧力等を変化させデータを整理検討した。接合膜の接合強度の評価は、膜を接合させた高温伝熱加熱面上に水滴を衝突させる冷却実験やプール沸騰実験を行ない、膜にとって過酷な環境下で剥離の有無を確認した。実験前後の膜表面の状況は、走査型電子顕微鏡(SEM)を利用して画像を観察・比較検討した。成果:接合を何度も試みたが、蒸着した金属面と比べて、蒸着をしない金属面にVA-SWNT膜を広い面積に接合することは今の段階では非常に困難であり、更なる検討が必要である。しかしながら、銅面に狭い面積ではあったがVA-SWNT膜を接合できた加熱面を利用したプール沸騰実験と液滴衝突実験を行ない、それぞれ特徴のある伝熱特性を示している。また、VA-SWNT膜にとって過酷と思われる高温での沸騰実験を繰り返したがVA-SWNT膜の剥離は見られず、強固に接合できていることを実証できた。
KAKENHI-PROJECT-21919034
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21919034
超高圧処理による畜産食品のアレルゲン性低減化
わが国の食物アレルギー患者数は年々増加している。食物アレルギーの原因となる食品24品目が指定され、食物アレルギーに対する正確な診断と適切な治療及び予防が緊急の課題になっている。本研究は、熱に代わる食品加工法として注目をあびている超高圧処理によりアレルゲン蛋白質の構造を操作することにより免疫系を含む生体を制御し、アレルギー反応を抑制することを目指している。得られた成果を以下に示す。牛肉アレルゲンタンパク質、γ-グロブリン(Bovine γ-globulin ; BGG)への影響1)BGGに100-600MPaの超高圧を加えたところ、牛肉アレルギー患者から得られた血清中のIgEとの結合性は処理圧力の増加に伴い減少した。また、患者血清に感作したヒト好塩基様細胞に超高圧処理したBGGを作用させたところ、好塩基様細胞から遊離するβ-ヘキソミニダーゼの活性は処理圧力が高くなる程、低くなる傾向が認められた。このことは、超高圧処理によって、BGGのアレルゲン性を低下させる可能性を示している。2)超高圧処理によるBGGの高次構造の変化をCDスペクトル、蛍光および紫外吸収スペクトル、疎水性基の反応性などにより測定した結果、BGGのエピトープ周辺の3次構造に、圧力による不可逆的な構造変化が起こり、これがアレルゲン性の低下をもたらすことが示唆された。卵白アレルゲンタンパク質、オボムコイド(OVM)に及ぼす影響1)超高圧処理したOVMの卵アレルギー患者血清IgG抗体およびIgE抗体との結合性はいずれも圧力が低い領域では圧力に依存して低下した。500,600MPaと圧力を上昇させるとIgG抗体との結合性は未処理OVMと変わらず、IgE抗体との結合性はむしろ増加した。加熱処理による変化は認められなかった。2)CDスペクトルの測定からOVMは圧力および熱処理に対して2次構造的に強固であるが、蛍光スペクトルの測定から3次構造的には不可逆的な変化を生ずる事が明らかになった。前述のBGGの場合と同様に、高圧処理による高次構造の変化が、IgG抗体エピトープおよびIgE抗体エピトープの変化を誘導し、抗体結合性を低下させたものと考えられる。即時型アレルギーの要因であるIgE抗体との結合性の低下はアレルゲン性の低下につながる。以上の結果から超高圧処理による畜産食品アレルゲン性低減化の可能性が明らかになった。この方法は他の食品アレルゲン性の低減化に役立つものと考えられる。わが国の食物アレルギー患者数は年々増加している。食物アレルギーの原因となる食品24品目が指定され、食物アレルギーに対する正確な診断と適切な治療及び予防が緊急の課題になっている。本研究は、熱に代わる食品加工法として注目をあびている超高圧処理によりアレルゲン蛋白質の構造を操作することにより免疫系を含む生体を制御し、アレルギー反応を抑制することを目指している。得られた成果を以下に示す。牛肉アレルゲンタンパク質、γ-グロブリン(Bovine γ-globulin ; BGG)への影響1)BGGに100-600MPaの超高圧を加えたところ、牛肉アレルギー患者から得られた血清中のIgEとの結合性は処理圧力の増加に伴い減少した。また、患者血清に感作したヒト好塩基様細胞に超高圧処理したBGGを作用させたところ、好塩基様細胞から遊離するβ-ヘキソミニダーゼの活性は処理圧力が高くなる程、低くなる傾向が認められた。このことは、超高圧処理によって、BGGのアレルゲン性を低下させる可能性を示している。2)超高圧処理によるBGGの高次構造の変化をCDスペクトル、蛍光および紫外吸収スペクトル、疎水性基の反応性などにより測定した結果、BGGのエピトープ周辺の3次構造に、圧力による不可逆的な構造変化が起こり、これがアレルゲン性の低下をもたらすことが示唆された。卵白アレルゲンタンパク質、オボムコイド(OVM)に及ぼす影響1)超高圧処理したOVMの卵アレルギー患者血清IgG抗体およびIgE抗体との結合性はいずれも圧力が低い領域では圧力に依存して低下した。500,600MPaと圧力を上昇させるとIgG抗体との結合性は未処理OVMと変わらず、IgE抗体との結合性はむしろ増加した。加熱処理による変化は認められなかった。2)CDスペクトルの測定からOVMは圧力および熱処理に対して2次構造的に強固であるが、蛍光スペクトルの測定から3次構造的には不可逆的な変化を生ずる事が明らかになった。前述のBGGの場合と同様に、高圧処理による高次構造の変化が、IgG抗体エピトープおよびIgE抗体エピトープの変化を誘導し、抗体結合性を低下させたものと考えられる。即時型アレルギーの要因であるIgE抗体との結合性の低下はアレルゲン性の低下につながる。以上の結果から超高圧処理による畜産食品アレルゲン性低減化の可能性が明らかになった。この方法は他の食品アレルゲン性の低減化に役立つものと考えられる。
KAKENHI-PROJECT-18658100
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18658100
有用な養殖用餌料候補であるクリプト藻類の培養安定性向上に向けた研究
これまで,海産クリプト藻類Rhodomonas sp.は藻体内に赤色色素タンパク質結合体Phycobiliprotein(PBP)を有することを理由に,海産養殖における有用な餌料候補になりうると期待されてきた。しかし,人口培養下ではPBPが分解されたことに起因するであろう培養不調,栄養価の低減が発生するため,未だ餌料としての現場導入は困難であるのが現状である。本研究では,このPBPの分解の際に発生する藻体の緑変減少に着目し,その緑変メカニズムの解明,緑変からの回復方法の考案,さらには細胞色からPBP量を推量し,間接的に餌料価値を判断するという全く新しい微細藻類の餌料価値判断方法の開発を目指す。これまで,海産クリプト藻類Rhodomonas sp.は藻体内に赤色色素タンパク質結合体Phycobiliprotein(PBP)を有することを理由に,海産養殖における有用な餌料候補になりうると期待されてきた。しかし,人口培養下ではPBPが分解されたことに起因するであろう培養不調,栄養価の低減が発生するため,未だ餌料としての現場導入は困難であるのが現状である。本研究では,このPBPの分解の際に発生する藻体の緑変減少に着目し,その緑変メカニズムの解明,緑変からの回復方法の考案,さらには細胞色からPBP量を推量し,間接的に餌料価値を判断するという全く新しい微細藻類の餌料価値判断方法の開発を目指す。
KAKENHI-PROJECT-19J13027
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19J13027
国際選挙監視活動の機能と逆機能―何が民主主義を促進し何が民主主義を阻害するのか―
研究初年度となる平成30年度は、国際的な選挙監視活動の機能(成果・意義)と逆機能(マイナスの効果)を分析する枠組みを確立するうえで必要となってくる基本データの整備を中間目標に据え、これまでに代表者自身が参加した8ヵ国10回の選挙監視業務の公式・非公式の資料の追加収集・整理・データベース化を行うこと、および、民主主義支援・擁護に関する欧州と米州における地域機構の役割変化を中・長期的な視座から捉えることに力を注いだ。具体的には、(1)に関しては、とくに1994年の国連エルサルバドル監視団(ONUSAL)選挙監視部門、および2014年の欧州安保協力機構(OSCE)ウクライナ選挙監視団に関する公開・非公開の情報(文書類)の収集と整理を行った。時代と地域が異なるこれら2つの事例を中心に作業を進めたことには、今後の事例研究やその比較研究のためのモデルの構築を試みるとの狙いもあった。なお、エルサルバドルに関する研究では、平和協力分野における日本政府の政策決定過程に詳しい専門家の協力も得て、これまでにその存在を把握できていなかった派遣団決定過程に関する外交文書を入手することができ、その内容が今後の研究に資するのみならず、インターネット普及前の時期のデータをいかに収集していくべきかについての重要な手がかりを得られた点でも意義が大きかった。2年目以降、この手法を他の事例研究にも応用し、データベースの充実につなげていきたい。(2)に関しては、まだ研究の初期段階にあるもの、文献や一般情報の分析などにより、米州における民主主義支援の領域における協力の機軸となる国際機構・フォーラムの移ろいやすさを把握し、今後の研究上の論点整理を行うことができた(とくに南米諸国機構[UNASUR]の行ってきた選挙監視活動は、近年の同機構の活動が急速に停滞しているだけに、情報収集を急ぐべきことを認識した)。2018年度に予定していた中米諸国(エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス)、およびベネズエラにおける現地調査のための時間が、所属機関における多忙な用務などに妨げられて確保できず(なお、ベネズエラに関しては治安情勢の急速な悪化も調査断念の理由となった)、現地の関連機関からの聞き取りや資料収集を思うように進められなかった。したがって、厳しめに自己評価し、「やや遅れている」としておきたい。ただし他方で、欧州安保協力機構(OSCE)の組織したウクライナ大統領選挙監視団に外務大臣からの委嘱で参加するという予定外の貴重な機会に恵まれた(2019年3月)。本件は、予算の面では本助成金と関連をもつものではないが、2014年に続いての同国におけるOSCE選挙監視団への参加を通じ、同機構による選挙監視活動の連続性と変化を実地で体感ことはできたのは想定外の大きな成果であり、進捗の遅れを別のかたちでかなり補うことができた。この点を付記しておきたい。2019年度は、基本的には当初の研究計画どおりに研究を進めていく予定である。すなわち、研究対象国における選挙監視活動のデータベース化、および国連や国際機構における選挙監視に関する理念の変遷についての分析を進めていく。とくに2018年度に行うことができなかった現地調査に関しては、着実に遂行していきたい。研究初年度となる平成30年度は、国際的な選挙監視活動の機能(成果・意義)と逆機能(マイナスの効果)を分析する枠組みを確立するうえで必要となってくる基本データの整備を中間目標に据え、これまでに代表者自身が参加した8ヵ国10回の選挙監視業務の公式・非公式の資料の追加収集・整理・データベース化を行うこと、および、民主主義支援・擁護に関する欧州と米州における地域機構の役割変化を中・長期的な視座から捉えることに力を注いだ。具体的には、(1)に関しては、とくに1994年の国連エルサルバドル監視団(ONUSAL)選挙監視部門、および2014年の欧州安保協力機構(OSCE)ウクライナ選挙監視団に関する公開・非公開の情報(文書類)の収集と整理を行った。時代と地域が異なるこれら2つの事例を中心に作業を進めたことには、今後の事例研究やその比較研究のためのモデルの構築を試みるとの狙いもあった。なお、エルサルバドルに関する研究では、平和協力分野における日本政府の政策決定過程に詳しい専門家の協力も得て、これまでにその存在を把握できていなかった派遣団決定過程に関する外交文書を入手することができ、その内容が今後の研究に資するのみならず、インターネット普及前の時期のデータをいかに収集していくべきかについての重要な手がかりを得られた点でも意義が大きかった。2年目以降、この手法を他の事例研究にも応用し、データベースの充実につなげていきたい。(2)に関しては、まだ研究の初期段階にあるもの、文献や一般情報の分析などにより、米州における民主主義支援の領域における協力の機軸となる国際機構・フォーラムの移ろいやすさを把握し、今後の研究上の論点整理を行うことができた(とくに南米諸国機構[UNASUR]の行ってきた選挙監視活動は、近年の同機構の活動が急速に停滞しているだけに、情報収集を急ぐべきことを認識した)。2018年度に予定していた中米諸国(エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス)、およびベネズエラにおける現地調査のための時間が、所属機関における多忙な用務などに妨げられて確保できず(なお、ベネズエラに関しては治安情勢の急速な悪化も調査断念の理由となった)、現地の関連機関からの聞き取りや資料収集を思うように進められなかった。したがって、厳しめに自己評価し、「やや遅れている」としておきたい。
KAKENHI-PROJECT-18K01477
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K01477
国際選挙監視活動の機能と逆機能―何が民主主義を促進し何が民主主義を阻害するのか―
ただし他方で、欧州安保協力機構(OSCE)の組織したウクライナ大統領選挙監視団に外務大臣からの委嘱で参加するという予定外の貴重な機会に恵まれた(2019年3月)。本件は、予算の面では本助成金と関連をもつものではないが、2014年に続いての同国におけるOSCE選挙監視団への参加を通じ、同機構による選挙監視活動の連続性と変化を実地で体感ことはできたのは想定外の大きな成果であり、進捗の遅れを別のかたちでかなり補うことができた。この点を付記しておきたい。2019年度は、基本的には当初の研究計画どおりに研究を進めていく予定である。すなわち、研究対象国における選挙監視活動のデータベース化、および国連や国際機構における選挙監視に関する理念の変遷についての分析を進めていく。とくに2018年度に行うことができなかった現地調査に関しては、着実に遂行していきたい。研究者との交流を通じて本研究を深めることを目的に、当初、2019年3月に開催されるISA(国際関係学会)(カナダ・トロント)に出席することを計画し、そのための資金を留保していたが、急遽、それと重なる時期に実施された欧州安保協力機構(OSCE)ウクライナ大統領選挙監視団に外務省からの派遣で参加することになった。これが未使用額が生じた最大の理由である。2019年度は、この未使用分と2019年度分として交付される助成金とを合わせ、とくに現地調査をいっそう充実させるかたちで使用していきたい。
KAKENHI-PROJECT-18K01477
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K01477
都市生活空間の快適性向上のための気候環境調整手法に関する研究
都市生活空間の温熱的快適性向上のための気候環境調整に関して、各年度とも環境側からのアプローチと人間側からのアプローチに大別して研究を進めた。1.環境側からのアプローチ都市の外部空間は構成要素が複雑多様であり、各空間に形成される温熱環境を把握することは非常に困難である。このようなことから、まず、街区の建物構成・配置を簡略化することにより、都市外部空間の温熱環境の概略を把握するための街区モデル化方法を提案した。次いで、実測調査により沖縄県那覇市中心部の温熱環境の特性を把握するとともに、この街区モデル化手法を適用して求めた各地点の天空率と気温実測値の相関を調べたところ、天空率が増加するにつれて気温が減少する傾向が見られた。風環境については、街区の簡略化モデルと実際の建物配置そのままの模型を用いて風速分布に関する風洞模型実験を行ったが、地表面付近の性状把握についてはさらなる検討が必要である。2.人間側からのアプローチ着衣は屋外環境における温熱的快適性の調整方法として人間側が有している最も有効で唯一の手段である。まず、被験者実験により着衣状態の相異が生理量・心理量に対して及ぼす影響について検討した。次いで、着衣の現状を把握するために福岡市中心市街地のオープンスペースにおいて歩行者を対象として1ヶ月おきに1年間にわたって着衣量調査を行い、着衣量と季節・回答者属性等との比較解析に基づいて、年齢と日平均気温(気象台観測値)を独立変数として性別に着衣量推定式を構築した。推定式を適用して他の研究者の調査値との比較を試みたところ、全体的に良好な結果が得られた。さらに、同様な着衣量調査を気候条件の異なる那覇においても行い、福岡で導出された推定式に那覇のデータの適用を試みたところ、男性の場合は推定値が若干大きくなったものの、女性の場合は推定値は実測値とおおむね一致した。都市生活空間の温熱的快適性向上のための気候環境調整に関して、各年度とも環境側からのアプローチと人間側からのアプローチに大別して研究を進めた。1.環境側からのアプローチ都市の外部空間は構成要素が複雑多様であり、各空間に形成される温熱環境を把握することは非常に困難である。このようなことから、まず、街区の建物構成・配置を簡略化することにより、都市外部空間の温熱環境の概略を把握するための街区モデル化方法を提案した。次いで、実測調査により沖縄県那覇市中心部の温熱環境の特性を把握するとともに、この街区モデル化手法を適用して求めた各地点の天空率と気温実測値の相関を調べたところ、天空率が増加するにつれて気温が減少する傾向が見られた。風環境については、街区の簡略化モデルと実際の建物配置そのままの模型を用いて風速分布に関する風洞模型実験を行ったが、地表面付近の性状把握についてはさらなる検討が必要である。2.人間側からのアプローチ着衣は屋外環境における温熱的快適性の調整方法として人間側が有している最も有効で唯一の手段である。まず、被験者実験により着衣状態の相異が生理量・心理量に対して及ぼす影響について検討した。次いで、着衣の現状を把握するために福岡市中心市街地のオープンスペースにおいて歩行者を対象として1ヶ月おきに1年間にわたって着衣量調査を行い、着衣量と季節・回答者属性等との比較解析に基づいて、年齢と日平均気温(気象台観測値)を独立変数として性別に着衣量推定式を構築した。推定式を適用して他の研究者の調査値との比較を試みたところ、全体的に良好な結果が得られた。さらに、同様な着衣量調査を気候条件の異なる那覇においても行い、福岡で導出された推定式に那覇のデータの適用を試みたところ、男性の場合は推定値が若干大きくなったものの、女性の場合は推定値は実測値とおおむね一致した。1.人間側からのアプローチ(1)福岡市のおいて、屋外歩行者を対象とした着衣に関するアンケート調査を、1年間にわたって行った。有効回答者数は1184人。調査結果から着衣量を算出したところ、気温が高いほど着衣量は小さくなること、男性の方が女性に比べ着衣量が大きいこと、年齢が高いほど着衣量が大きいこと等の傾向が認められた。また、これらの調査結果を用い、気象データから屋外日中における着衣量を推定する式を構築した。(2)屋外・室内において異なる2つの着衣条件を設定した被験者実験を行った。着衣の多い場合の方が、着衣を増やした部位を中心に皮膚温・温冷感が高くなり、その効果を確認できた。また、屋外における皮膚温と心理量の解析結果から、日射のある温熱環境をより的確に評価するには、日射の方向を考慮する必要があることを示した。2.環境側からのアプローチ(1)地表面からの状態が夜間の気温低下に及ぼす影響を調べるため、建物の屋上面に薄い砂の層を作り、表面および表面近傍の気温を測定した。基盤となる屋上スラブ面は共通するが、コンクリートのスラブ表面が常に気温よりも高いのに対して、砂の層の表面では温度が低下し、それが近傍の気温を下げていることを明らかにした。(2)那覇市内の小学校10校の百葉箱に温湿度測定器を設置して、市内の温湿度分布の測定を行った。気温の分布から夜間にわずかなヒートアイランド現象が起こっていることを明らかにした。(3)那覇市内の建物の形を調査し、それを50mの正方格子でメッシュデータ化した。
KAKENHI-PROJECT-11450217
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11450217
都市生活空間の快適性向上のための気候環境調整手法に関する研究
そのメッシュデータに基づいて、建物間の道路面における天空率の計算を行い、その分布を求めた。1.人間側からのアプローチ(1)昨年度福岡で行ったのと同様の方法で、沖縄において屋外歩行者を対象とした着衣に関するアンケート調査を行った。7月・10月・12月の3期間に調査を行い、のべ203人分の有効回答を得た。調査結果を用いて、着衣量を男女別に算出した。また、昨年度の福岡での調査結果から構築した着衣量推定式による推定着衣量との比較を行ったところ、両者の値は概ね一致した。(2)昨年度福岡で行った着衣調査のデータを用い、温熱感覚と着衣量との関係について検討を行った。冬季では温冷感が中立に近くなる着衣が選択されているのに対し、夏季では多くの人が暑いと感じており、適切な着衣が選択されていないこと等が分かった。2.環境側からのアプローチ(1)那覇市中心市街地を含む東西8km・南北2kmの範囲について、自動車を用いた気温・湿度の移動測定を行った。また、測定結果を時間補正することにより、気温の等温線図・湿度の分布図を、昼間・夜間別に作成した。気温については、中心市街地と、その東に位置する大規模公園・緑地を含む低層住宅地とで、昼間に最大4°C程度の差がみられた。湿度については、特に特徴的な分布はみられなかった。(2)昨年度の検討結果を用いて、建物モデルを使った那覇市内各所の天空率の計算を行った。また、この計算結果と2.(1)で行った気温の実測結果との関係について検討した。天空率と気温との関係は、対象区域によってその傾向に違いが見られた。3.その他昨年度行った被験者実験・着衣調査で用いた風速計複数台について、風速が同じでも風速計により指示値が異なることが判明した。そこで、これを校正するための実験を風洞・フィールドの双方で行い、補正式を算出するとともに、昨年度の測定結果の補正を行った。1.人間側からのアプローチ昨年に引き続き、沖縄における屋外歩行者を対象とした、着衣と温熱感覚に関するアンケート調査を行った。実施時期は2・5・7・9・l1月。昨年の調査とあわせた有効回答者数は、男性252人・女性242人の計494人である。温冷感申告値についてはSET^*と良く対応していたが、着衣量については、SET^*よりも気温との相関が高い結果となった。昨年度までに福岡における調査結果を用いて作成した着衣量推定式を、沖縄での調査結果にあてはめてみたところ、女性についてはよく対応したが、男性については推定値の方が実測値よりもやや大きな値となる傾向がみられた。また、沖縄での調査結果を用いた着衣量推定式を新たに構築し(入力変数は福岡の場合と同様、平均気温と年齢)、福岡での調査結果から求めた推定式との比較検討を行った。2.環境側からのアプローチ昨年度までに提案した、市街地の建物を単純な直方体にモデル化しメッシュデータとする手法の妥当性について、気流分布の面から検討を行った。単純な直方体にモデル化した建物による市街地の模型と、実際の建物の形態を使った模型とを用いて風洞実験を行い、気流の状態を比較検討した。スクリーンを用いた乱流境界層と、スクリーンなしの風洞気流そのままとの、2種類のアプローチフローによる実験を行ったところ、乱流境界層の場合には2種類の模型(実際の建物形態を用いたものと単純にモデル化したもの)による気流速度プロフィールが比較的良く一致していた。
KAKENHI-PROJECT-11450217
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11450217
日本における授業研究方法論の系譜と体系化に関する総合的研究
本研究の目的は、日本における授業研究について、I.授業記録の方法、II.授業記録の対象、III.授業分析・評価の視点、IV.方法論の4軸からなる分析枠組みを設定し、諸授業研究の特徴・関連構造・系譜を明らかにすることと、将来授業研究に必要とされる、新しい方法論(認知科学・人工知能)などの適用の可能性、授業研究と教師教育との関連を明らかにすることの2点であった。今年度は、昨年度に引き続き、いくつかのアプローチごとに原資料を収集・整理しつつ、授業研究方法論の系譜と関連性を明らかにするとともに、方法論の深化に重点を置いた。具体的にはまず、群馬県島小学校校長斎藤喜博、同校教師であった武田常夫らベテラン教師にみられる教師教育論、授業研究方法論について、原資料の記述内容の構造化、精緻化を通じて、その特質の顕在化を行った。さらに、教育技術の法則化運動にみられる現代の若手教師による授業研究・分析の方法・手続きについて、「教授行動の選択系列のアセスメント」の手法などを用いて、その特徴として発問の意味内容をあげ、発問の遷移過程を明らかにした。これらの成果は、直接的に授業研究方法論の体系化に関するテーマ設定ではないものの、それぞれ日本教育方法学会、日本教育学会、日本教育工学会の年会で報告されている。また、これまでに構築されているデータベースを基に、過去数十年の授業研究の系譜について、最終的な整理・類型化を行うとともにその際の手続きを明らかにした。今後の検討すべき課題としては、授業研究方法論のパラダイム転換が起こりつつある現状を踏まえて、これからの授業研究の方向性を提示していくことであると言えよう。本研究の目的は、日本における授業研究について、I.授業記録の方法、II.授業記録の対象、III.授業分析・評価の視点、IV.方法論の4軸からなる分析枠組みを設定し、諸授業研究の特徴・関連構造・系譜を明らかにすることと、将来授業研究に必要とされる、新しい方法論(認知科学・人工知能)などの適用の可能性、授業研究と教師教育との関連を明らかにすることの2点であった。今年度は、昨年度に引き続き、いくつかのアプローチごとに原資料を収集・整理しつつ、授業研究方法論の系譜と関連性を明らかにするとともに、方法論の深化に重点を置いた。具体的にはまず、群馬県島小学校校長斎藤喜博、同校教師であった武田常夫らベテラン教師にみられる教師教育論、授業研究方法論について、原資料の記述内容の構造化、精緻化を通じて、その特質の顕在化を行った。さらに、教育技術の法則化運動にみられる現代の若手教師による授業研究・分析の方法・手続きについて、「教授行動の選択系列のアセスメント」の手法などを用いて、その特徴として発問の意味内容をあげ、発問の遷移過程を明らかにした。これらの成果は、直接的に授業研究方法論の体系化に関するテーマ設定ではないものの、それぞれ日本教育方法学会、日本教育学会、日本教育工学会の年会で報告されている。また、これまでに構築されているデータベースを基に、過去数十年の授業研究の系譜について、最終的な整理・類型化を行うとともにその際の手続きを明らかにした。今後の検討すべき課題としては、授業研究方法論のパラダイム転換が起こりつつある現状を踏まえて、これからの授業研究の方向性を提示していくことであると言えよう。本研究の目的は、日本における授業研究について、I.授業記録の方法、II.授業記録の対象、III.授業分析・評価の視点、IV.方法論の4軸からなる分析枠組みを設定し、諸授業研究の特徴・関連構造・系譜を明らかにすることと、将来授業研究に必要とされる、新しい方法論(認知科学・人工知能)などの適用の可能性、授業研究と教師教育との関連を明らかにすることの2点であった。今年度は、いくつかのアプローチごとに原資料を収集・整理しつつ系譜と関連性を明らかにすることに重点をおいた。具体的には、まず、大正自由教育の旗手である木下竹次の授業論を解明するために、授業研究および学習指導法の中に含まれた特質を洗い出すことを試みた。また、大村はま、斉藤喜博(島小学校)、東井義雄などに見られる熟練教師の授業研究方法論について、原資料の記述内容の構造化を通じて、その特質を顕在化することを試みた。さらに、教育技術の法則化運動に見られる現代の若手教師による授業研究・分析の方法・手続きについて、「教授行動の選択系列のアセスメント」の手法を用いて、その特徴を明らかにした。これらの成果は、直接的に授業研究方法論の体系化に関するテーマ設定ではないものの、それぞれ日本教育方法学会、日本教育学会、日本教育工学会での年会で報告されている。次年度以降の課題として、以下の点があげられる。まず、過去数十年の授業研究の系譜について整理・類型化されたものを批判的に検討し、再整理を行うとともにその際の手続きを明確化する必要がある。さらに、原資料の収集・整理過程において、データベースの構築が必要不可欠となるが、その整理枠組みもデータの参照有用性を高めるように逐次改善する必要がある。本研究の目的は,日本における授業研究について,I.授業記録の方法,II.授業記録の対象,III.授業分析・評価の視点,IV.方法論の4軸からなる分析枠組みを設定し,諸授業研究の特徴・関連構造・系譜を明らかにすることと,将来授業研究に必要とされる,新しい方法論(認知科学・人工知能)などの適用の可能性,授業研究と教師教育との関連を明らかにすることの2点であった。
KAKENHI-PROJECT-08308009
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08308009
日本における授業研究方法論の系譜と体系化に関する総合的研究
今年度は,昨年度に引き続き,いくつかのアプローチごとに原資料を収集・整理しつつ,系譜と関連性を明らかにするとともに,研究方法論の深化に重点を置いた.具体的にはまず,大正自由教育の旗手である木下竹二の授業論を解明するために,授業研究及び学習指導法の中に含まれた特質を洗い出し,当時の教育環境において整理することを試みた.また,斉藤喜博(島小学校),東井義雄等にみられるベテラン教師の,教師教育論,授業研究方法論についても,原資料の記述内容の構造化,精緻化を通じて,その特質を顕在化することを試みた.さらに,教育技術の法則化運動にみられる現代の若手教師による授業研究・分析の方法・手続きについて,「教授行動の選択系列のアセスメント」の手法などを用いて,その特徴として発問の意味内容をあげ,発問の遷移過程を明らかにした.これらの成果は,直接的に授業研究方法論の体系化に関するテーマ設定ではないものの,それぞれ日本教育方法学会,日本教育学会,日本教育工学会の年会で報告されている.次年度の課題として以下の点があげられる.構築されているデータベースを基に,過去数十年の授業研究の系譜について,最終的な整理・類型化を行うとともにその際の手続きを明らかにする必要がある。また授業研究方法論のパラダイム転換が起こりつつある現状を踏まえて,これからの授業研究の方向性を提示していくことが求められている.本研究の目的は、日本における授業研究について、I.授業記録の方法、II.授業記録の対象、III.授業分析・評価の視点、IV.方法論の4軸からなる分析枠組みを設定し、諸授業研究の特徴・関連構造・系譜を明らかにすることと、将来授業研究に必要とされる、新しい方法論(認知科学・人工知能)などの適用の可能性、授業研究と教師教育との関連を明らかにすることの2点であった。今年度は、昨年度に引き続き、いくつかのアプローチごとに原資料を収集・整理しつつ、授業研究方法論の系譜と関連性を明らかにするとともに、方法論の深化に重点を置いた。具体的にはまず、群馬県島小学校校長斎藤喜博、同校教師であった武田常夫らベテラン教師にみられる教師教育論、授業研究方法論について、原資料の記述内容の構造化、精緻化を通じて、その特質の顕在化を行った。さらに、教育技術の法則化運動にみられる現代の若手教師による授業研究・分析の方法・手続きについて、「教授行動の選択系列のアセスメント」の手法などを用いて、その特徴として発問の意味内容をあげ、発問の遷移過程を明らかにした。これらの成果は、直接的に授業研究方法論の体系化に関するテーマ設定ではないものの、それぞれ日本教育方法学会、日本教育学会、日本教育工学会の年会で報告されている。また、これまでに構築されているデータベースを基に、過去数十年の授業研究の系譜について、最終的な整理・類型化を行うとともにその際の手続きを明らかにした。今後の検討すべき課題としては、授業研究方法論のパラダイム転換が起こりつつある現状を踏まえて、これからの授業研究の方向性を提示していくことであると言えよう。
KAKENHI-PROJECT-08308009
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08308009
日独対照構文論のための基礎研究―格,統語構造,結合価を中心に―
3年間の研究は,「視点」概念を軸にして,文構造と動詞の関連という点から日独両言語を対照することだと要約できる.日本語の文では文構造が常に明示されるとは限らないのに対して,ドイツ語の文では通常は文構造が明示され,動詞も場合によっては文構造に適応して柔軟に用いられうる.すなわちドイツ語は日本語と比べると「文構造優位」と言える.文構造優位ということは,文構造の「柱」となる主語や対格目的語が際立たせられるということであり,「視点」に関連付けるならばドイツ語の構文は「注視点」志向だということになる.一方,日本語では「視座」の違いに応じて異なった動詞表現が用いられる.つまり,誰の側に立って出来事を眺めるかによって使用可能な動詞が変わり得るのである.日本語では「視座」-単に物理的に「どこから見るか」という位置ではなく,話し手がそこに心理的に接近して事態を描く主観的な立場-が動詞表現の適格性や自然さに影響を与える場合が多いのに対して,ドィツ語では文の形成にこのような「視座」は関与しないということになる.日本語との対照の基礎となるドイツ語の記述的研究として,「動詞前つづりの分離・非分離」「不変化詞動詞と対応表現」について論文を発表した他に,格と前置詞の基本的な用法を広く概観した.なおこれらの研究を通じて,「一方の言語の眼鏡をかけて,他方の言語を見る」のは対照研究の方法として決して誤りではなく,むしろ重要であるという認識にいたった.3年間の研究は,「視点」概念を軸にして,文構造と動詞の関連という点から日独両言語を対照することだと要約できる.日本語の文では文構造が常に明示されるとは限らないのに対して,ドイツ語の文では通常は文構造が明示され,動詞も場合によっては文構造に適応して柔軟に用いられうる.すなわちドイツ語は日本語と比べると「文構造優位」と言える.文構造優位ということは,文構造の「柱」となる主語や対格目的語が際立たせられるということであり,「視点」に関連付けるならばドイツ語の構文は「注視点」志向だということになる.一方,日本語では「視座」の違いに応じて異なった動詞表現が用いられる.つまり,誰の側に立って出来事を眺めるかによって使用可能な動詞が変わり得るのである.日本語では「視座」-単に物理的に「どこから見るか」という位置ではなく,話し手がそこに心理的に接近して事態を描く主観的な立場-が動詞表現の適格性や自然さに影響を与える場合が多いのに対して,ドィツ語では文の形成にこのような「視座」は関与しないということになる.日本語との対照の基礎となるドイツ語の記述的研究として,「動詞前つづりの分離・非分離」「不変化詞動詞と対応表現」について論文を発表した他に,格と前置詞の基本的な用法を広く概観した.なおこれらの研究を通じて,「一方の言語の眼鏡をかけて,他方の言語を見る」のは対照研究の方法として決して誤りではなく,むしろ重要であるという認識にいたった.関連文献の購読を通じてデータに基づく実証的な研究をまとめる際の理論的な枠組みの重要性を認識させられた.また,対照研究の方法に関しても「一方の言語の眼鏡をかけて,他方の言語を見る」のは方法論的に決して誤りではなく,むしろ重要な観点であると説く論(井上優「日本語研究と対照研究」)に出会い,対照研究の方法論についても再考させられた.2年目は実証的な研究を定式化する枠組みを確立することをまず目指したい.日本語のデータ検索に関しては,技術的な問題もあり当初の予定より遅れているが,ドイツ語に関しては,語義と統語構造(特に4格目的語化)および前綴りの分離・非分離との関連でdurch-,um-,unter-,uber-を持つ約700の動詞のデータを整理し,それに基づく考察の一部を2001年10月の日本独文学会で発表した.データはさらに整理し,語学教育にも使える資料として残しておきたい.本年度の研究のまとめとした論文「結合価と構文ー日独対照の観点から」では,動的な出来事を表す文に対象を限定した上で,結合価と構文の関係という観点からドイツ語の文と日本語の文を比べ,ドイツ語では構文主導で特定の意味構造の文が作られる傾向が強いが,日本語では動詞の結合価に従って文が作られる傾向が強いということを示し,これと関連してドイツ語では「動詞的意味」を動詞以外の言語手段で表すことが多いが,日本語では「動詞的意味」はあくまでも動詞が表すということ,およびドイツ語の動詞は構文に対する柔軟性が高いが,日本語の動詞は構文に対する柔軟性が低いということを述べた.このような傾向の違いは,出来事の参与者の内のあるものを統語的に卓立した形式で表すことにより際立たせようとする傾向が強いか弱いかという類型論的な違いとも関連していると考えられ,今後さらに追求していきたい.ドイツ語では主語や目的語などによる文構造の明示が必須だが,日本語では述語があれば原則として文は成立し,文構造の明示は任意であるということを再確認し,この観点から(a)ドイツ語における代名詞化と,日本語における「代名詞」(「彼」「彼女」など)の義務的な削除,(b)ドイツ語に他・再帰両用の動詞や自・他両用の動詞が多いが,日本語には自・他両用の動詞は少なく,動詞の形を見れば基本的には自か他かがわかるという相違,(C)ドイツ語の他動詞の「絶対的用法」にみられる行為の焦点化の可能性と,対応する日本語表現の違い,などの言語現象を見直した。日本語に「主語」を認めるかどうかという問題もこの枠内で考えることができる。
KAKENHI-PROJECT-13610621
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13610621
日独対照構文論のための基礎研究―格,統語構造,結合価を中心に―
昨年度の研究実績報告に「ドイツ語では『動詞的意味』を動詞以外の言語手段で表すことが多いが,日本語では。『動詞的意味』はあくまでも動詞が表す」という観察結果を書いたが,これに関連して今年度は,日本語の動詞表現で表される意味内容はどの程度までドイツ語で表現可能かという問題を検討した。具体的には,ドイツ人学習者用和独辞書の例文の調査,および日本語の文学作品とそのドイツ語訳の比較という作業に取り掛かり,たとえば日本語の「テオク,テミル,テアゲル」などが表す意味内容がドイツ語訳で消えてしまうことが多いということ,あるいは受動文の使われ方の違いなどが特に目に付いた。日本語とドイツ語のテキストの比較対照に関してはさらに,いくつかの観察事例から,ドイツ語の構文にとっては「注視点」が,日本語の構文にとっては「視座」がより重要だというような「視点」をキーワードにした違いを想定しているが,そのような相違が具体的なテキストからどの程度浮かび上がってくるかという問題とも絡めて,さらに考察を進める。なお,今年度は機械翻訳のプロジェクトに参加したが,これは研究とはまた別の観点からドイツ語と日本語及び英語の相違を考える機会となった。今年度の研究の要点は,「視点」概念を軸にして,文構造と動詞の関連という点から日独両言語を対照することとまとめられる.「文構造と動詞-日本語と対照しながらドイツ語の特徴を探る」で論じたように,日本語の文では文構造が常に明示されるとは限らないのに対して,ドイツ語の文では通常は文構造が明示され,動詞も場合によっては文構造に適応して柔軟に用いられうる.すなわちドイツ語は日本語と比べると「文構造優位」と言える.文構造優位ということは,文構造の「柱」となる主語や対格目的語が際立たせられるということであり,「視点」に関連付けるならばドイツ語の構文は「注視点」志向だということになる.一方,「あげる」と「くれる」の用法や,「私は彼に電話をかけた」と「彼は私に電話を?かけた/かけてきた/かけてくれた」の比較から読み取れるように,日本語では「視座」の違いに応じて異なった動詞表現が用いられる.つまり,誰の側に立って出来事を眺めるかによって使用可能な動詞が変わり得るのである.ドイツ語ではこの点に対応する区別は表現されないか,表現されるとしても,利害の与格のように動詞以外の手段が用いられる.日本語では「視座」-単に物理的に「どこから見るか」という位置ではなく,話し手がそこに心理的に接近して事態を描く主観的な立場-が動詞表現の適格性や自然さに影響を与える場合が多いのに対して,ドイツ語では文の形成にこのような「視座」は関与しないということになる.また,「不変化詞動詞と対応表現」と「冠詞・前置詞・格」は日独対照研究の基礎作業としてのドイツ語の研究であり,前者はコーパス調査に基づく言語研究の可能生を探ることに重点を置いたもの,後者(第2章「前置詞」と第3章「格」を担当)は格と前置詞の基本的な用法を広く概観し,整理したものである.
KAKENHI-PROJECT-13610621
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13610621
触媒作用を利用したシリコンへの微細配線形成技術の開発
触媒反応を利用したウエットプロセスによるシリコンの微細加工技術開拓の基礎として、触媒針を用い、その電位を外部から制御しながらそれをシリコンウエハに接触させ、シリコンへの孔形成過程を詳しく調べた。触媒針として直径100μmの細線を、金属の種類を変えて用いて孔形成を調べると、Ir,Pt,Pdにより良好な細孔が形成された。ある速度での孔形成を実現するための電位は、Pdが最も低く、IrとPtはほぼ同程度であった。このことは、Pdが孔形成の触媒能が強いことを示しているが、孔の形状を制御しにくいという問題があることが分かった。直径100μmPt針電極を用いて、シリコンウエハの特性と孔形成の関係を調べると、同じ電位においては、p型、n型によらず、ほぼ同じ速度で孔形成が起こることが確認された。ただし、p型のウエハに対しては、形成される孔に対して多くの電流が流れ、特に、比抵抗の小さいウエハについては、孔形成の電流効率は0.1%程度にまで低下した。一方、n型のウエハでは、電流効率が高く、1Ωcm以上の比抵抗のシリコンウエハについては、20%以上の電流効率となった。これらの結果に基づいて、触媒針とシリコンの接触箇所の周辺において、シリコンの電位分布が触媒針の電位、針と溶液界面の電気二重層、シリコンと溶液界面の電気二重層などにより決まっており、それらによってシリコンウエハの特性により、触媒針接触部分での溶解と、シリコン内への正孔注入の量的関係が変化するモデルを提唱した。孔の位置制御のために、マニュピュレーター付触媒針による加工装置を作製し、任意の形状の溝形成が行えることを実証した。ドライプロセスによる微細孔形成、SiCへの微細孔形成は、その速度が遅く、良好な微細加工技術への展開の見通しは立っていない。シリコンへの微細細線を実現するために、1)触媒反応を利用した細孔の形成、2)形成された細孔への銅の充填、を研究した。細孔形成においては、貴金属触媒を利用して、ナノからミクロンサイズの孔の形成を試みた。その結果、ナノサイズの孔は、無電解めっき法で堆積させた銀粒子により効率よく形成させることが出来た。一方、ミクロンサイズの孔は、約1μmの金粒子を用い、異なる粒子数の凝集体を用いて、310μmの孔を形成することに成功した。これらの孔への銅の充填は、銅の電解析出、および超臨界CO2からの化学析出を検討した。その結果、ミクロンサイズの孔に対しては、銅の電解析出法により、細孔内に銅を途切れることなく充填することに成功した。ナノサイズの孔は、銅が浸入しにくいため、電解法ではうまく充填できなかったが、超臨界CO2中において、有機銅錯体(Cu(dibm)2)の還元分解によって、孔径約100nm、深さ約1μmの細孔に銅を充填することに成功した。その際、銅イオンの還元のために、径内に封入したH2を還元剤として用いた。いずれの場合も、孔の先端に存在する銀および金粒子が銅の析出の核として働くことにより、孔の先端から銅の堆積が起こり、良好な充填が可能となっており、孔の形成に利用した触媒粒子が、銅の充填においても有効に機能していることが明らかになった。以上の結果は、シリコン基板への、ナノからミクロンの超微細Cu配線の全く新規な配線法の実現可能性を示したものとして、大きな成果であると判断している。触媒反応を利用したウエットプロセスによるシリコンの微細加工技術開拓の基礎として、触媒針を用い、その電位を外部から制御しながらそれをシリコンウエハに接触させ、シリコンへの孔形成過程を詳しく調べた。触媒針として直径100μmの細線を、金属の種類を変えて用いて孔形成を調べると、Ir,Pt,Pdにより良好な細孔が形成された。ある速度での孔形成を実現するための電位は、Pdが最も低く、IrとPtはほぼ同程度であった。このことは、Pdが孔形成の触媒能が強いことを示しているが、孔の形状を制御しにくいという問題があることが分かった。直径100μmPt針電極を用いて、シリコンウエハの特性と孔形成の関係を調べると、同じ電位においては、p型、n型によらず、ほぼ同じ速度で孔形成が起こることが確認された。ただし、p型のウエハに対しては、形成される孔に対して多くの電流が流れ、特に、比抵抗の小さいウエハについては、孔形成の電流効率は0.1%程度にまで低下した。一方、n型のウエハでは、電流効率が高く、1Ωcm以上の比抵抗のシリコンウエハについては、20%以上の電流効率となった。これらの結果に基づいて、触媒針とシリコンの接触箇所の周辺において、シリコンの電位分布が触媒針の電位、針と溶液界面の電気二重層、シリコンと溶液界面の電気二重層などにより決まっており、それらによってシリコンウエハの特性により、触媒針接触部分での溶解と、シリコン内への正孔注入の量的関係が変化するモデルを提唱した。孔の位置制御のために、マニュピュレーター付触媒針による加工装置を作製し、任意の形状の溝形成が行えることを実証した。ドライプロセスによる微細孔形成、SiCへの微細孔形成は、その速度が遅く、良好な微細加工技術への展開の見通しは立っていない。
KAKENHI-PROJECT-20035008
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20035008
水流を受容する感覚器「感丘」の多様性とその進化
魚類は,水流を知覚するための感覚器「感丘」をもつ.感丘は体表に発達し,その分布パターン(からだのどこに・どの程度あるか)は種やグループによって様々である.本研究では,多様な感丘の分布パターンを示すグループに注目し,感丘のパターンにどのような多様性があるのかの正確な把握,系統上でどのように多様化したかの解明,および,感丘の発達程度の差は生態的特徴の違いを反映しているかを検証する.魚類は,水流を知覚するための感覚器「感丘」をもつ.感丘は体表に発達し,その分布パターン(からだのどこに・どの程度あるか)は種やグループによって様々である.本研究では,多様な感丘の分布パターンを示すグループに注目し,感丘のパターンにどのような多様性があるのかの正確な把握,系統上でどのように多様化したかの解明,および,感丘の発達程度の差は生態的特徴の違いを反映しているかを検証する.
KAKENHI-PROJECT-19J13664
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19J13664