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ナノビジョンサイエンスのための多光子吸収過程による半導体材料の3次元加工
今回は,近赤外フェムト秒レーザーをワイドギャップ半導体結晶に照射すると,フェムト秒レーザーの強度がある値の場合,2光子励起過程によりフォトルミネッセンス強度が増強されることを見出した.励起光源に波長800mm,繰り返し周波数80MHz,パルス幅100fsのチタンサファイアレーザーを用いた.この励起光を倍率60,NA0.65の対物レンズで,ZnSe単結晶内部に集光した.励起光強度は,1.23MW/cm^2,0.99MW/cm^2,0.74MW/cm^2,0.49MW/cm^2,0.25MW/cm^2とした.励起光強度が1.23MW/cm^2の場合,照射時間の経過と共にフォトルミネッセンス強度は減少した.これは,以前報告したクエンチング現象である.一方,励起光強度が0.74MW/cm^2では,フォトルミネッセンス強度が時間の経過と共に増加した.励起光を300s照射した後では,フォトルミネッセンス強度はおよそ20%増加した.励起光強度が0.99MW/cm^2,0.49MW/cm^2,0.25MW/cm^2の場合はフォトルミネッセンス強度は一定であった.これは,0.99MW/cm2ではフォトルミネッセンス強度が低くなる現象と高くなる現象が同時に起きて釣り合っている状態,0.49MW/cm2以下では励起光強度が低すぎて何も起きていない状態と考えられる.次に,励起光強度を0.74MW/cm2として,励起光を走査してフォトルミネッセンス強度の高い領域をZnSe単結晶内部に作製した.励起光を走査した位置は結晶表面から10μmである.励起光はガルバノミラーで走査した.この領域を観察した結果,励起光を走査した部分のみフォトルミネッセンス強度が増加していることが分かった.フォトルミネッセンス強度が増加した領域は,光軸方向,焦平面内共に集光したビームスポット程度の大きさに限定されていた.この現象は,ワイドギャップ半導体結晶内部が局所的にレーザーアニーリングされた結果であると考えている.InGaN結晶において、(1)1光子励起と2光子励起でフォトルミネッセンスのスペクトルに違いが見られたこと、(2)フォトルミネッセンス強度の高い部分と低い部分のスペクトルに違いが見られたことを報告する。実験装置InGaN結晶のスペクトルを測定するために、励起光は1光子励起用にLD(波長373nm)、2光子励起用にチタンサファイアレーザー(波長800nm、パルス幅100fs、繰り返し周波数80MHz)を用いた。対物レンズ(NA0.75、倍率40倍)でビームをInGaN結晶に集光した。InGaNからのフォトルミネッセンスをダイクロイックミラーで反射し、光電子増倍管で検出した。フォトルミネッセンスのスペクトルはモノクロメーターで測定した。結果(1)スペクトルは400700nmの範囲にあった。1光子励起、2光子励起とも、波長479nmで最大のピークを持つことが分かった。最大ピーク(479nm)に対して560nmのピークは、1光子励起では63%、2光子励起では18%だつた。また、1光子励起では403nmにピークが見られたが、2光子励起では403nmのピークは見られなかった。結果(2)励起光はチタンサファイアレーザー(800nm)を用いた。フォトルミネッセンス強度の低い部分は、励起光強度を360mWと高くして照射することにより作製した。通常の観察時は励起光強度を60mWと低くすることにより、このような欠陥を作ってしまうことを避けている。フォトルミネッセン強度の高い部分では、スペクトルのピークは479nmにあり、そこから560nmにかけてなだらかな山があった。フォトルミネッセンス強度の低い部分では、479nmのピークは見られず560nmのみにピークあった。フォトルミネッセンスの減少は波長450-500nmの範囲で顕著であることが分かった。近赤外フェムト秒レーザーをワイドギャップ半導体結晶に照射すると、2光子励起過程によりフォトルミネッセンス強度が増強されることを見出したので報告する。以前、励起光強度を高くすることによってフォトルミネッセンス強度が低くなる現象があり、フォトルミネッセンス強度の低くなる割合と位置を制御できることを報告してきた。今回は、逆にフォトルミネッセンス強度が高くなる現象を発見したので報告する。まず、励起光強度を変えたときのフォトルミネッセンス強度の時間変化を測定した。励起光源には波長800nm,繰り返し周波数80MHz,パルス幅100fsのチタンサファイアレーザーを用いた。励起光強度が1.23MW/cm^2では、時間の経過とともにフォトルミネッセンス強度は減少した。これは以前報告したクエンチング現象である。一方、励起光強度が0.74MW/cm^2では、フォトルミネッセンス強度が時間の経過とともに増加した。励起光を300s間照射した後では、フォトルミネッセンス強度は20%以上増加した。励起光強度が0.99MW/cm^2、0.49MW/cm^2、0.25MW/cm^2の場合はフォトルミネッセンス強度は一定であった。
KAKENHI-PROJECT-04J54161
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04J54161
ナノビジョンサイエンスのための多光子吸収過程による半導体材料の3次元加工
これは0.99MW/cm^2ではフォトルミネッセンス強度が低くなる現象と高くなる現象が同時に起きて釣り合っている状態、0.49MW/cm^2以下では励起光強度が低すぎて何も起きていない状態であると考えている。次に、励起光強度が0.74MW/cm^2のときに励起光を走査して、フォトルミネッセンス強度の高い領域分布を作製した。励起光を走査した位置は試料表面から10μmである。励起光はガルバノミラーで走査した。この領域を観察した結果、励起光を走査した部分のみフォトルミネッセンス強度が増加していた。この現象は、ワイドギャップ半導体結晶内部が局所的にレーザーアニーリングされた結果であると考える。今回は,近赤外フェムト秒レーザーをワイドギャップ半導体結晶に照射すると,フェムト秒レーザーの強度がある値の場合,2光子励起過程によりフォトルミネッセンス強度が増強されることを見出した.励起光源に波長800mm,繰り返し周波数80MHz,パルス幅100fsのチタンサファイアレーザーを用いた.この励起光を倍率60,NA0.65の対物レンズで,ZnSe単結晶内部に集光した.励起光強度は,1.23MW/cm^2,0.99MW/cm^2,0.74MW/cm^2,0.49MW/cm^2,0.25MW/cm^2とした.励起光強度が1.23MW/cm^2の場合,照射時間の経過と共にフォトルミネッセンス強度は減少した.これは,以前報告したクエンチング現象である.一方,励起光強度が0.74MW/cm^2では,フォトルミネッセンス強度が時間の経過と共に増加した.励起光を300s照射した後では,フォトルミネッセンス強度はおよそ20%増加した.励起光強度が0.99MW/cm^2,0.49MW/cm^2,0.25MW/cm^2の場合はフォトルミネッセンス強度は一定であった.これは,0.99MW/cm2ではフォトルミネッセンス強度が低くなる現象と高くなる現象が同時に起きて釣り合っている状態,0.49MW/cm2以下では励起光強度が低すぎて何も起きていない状態と考えられる.次に,励起光強度を0.74MW/cm2として,励起光を走査してフォトルミネッセンス強度の高い領域をZnSe単結晶内部に作製した.励起光を走査した位置は結晶表面から10μmである.励起光はガルバノミラーで走査した.この領域を観察した結果,励起光を走査した部分のみフォトルミネッセンス強度が増加していることが分かった.フォトルミネッセンス強度が増加した領域は,光軸方向,焦平面内共に集光したビームスポット程度の大きさに限定されていた.この現象は,ワイドギャップ半導体結晶内部が局所的にレーザーアニーリングされた結果であると考えている.
KAKENHI-PROJECT-04J54161
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04J54161
環境依存的性決定の分子メカニズム
研究代表者らは、コルチゾルが温度依存的性決定に深く関与することを見出している。そこで本研究では、まず、高水温が及ぼすメダカ生殖腺への影響を調べたところ、高水温またはコルチゾル処理したXXメダカにおいて、fshr及びcyp19a1 mRNAの発現が抑制され、gsdf mRNAの発現が誘導されることが分かった。次に、これら遺伝子の機能解析を行った結果、GSDF過剰発現XXメダカにおいて完全な雄化が誘導された。これらの結果から、高水温によるメダカの雄化は、コルチゾルがgsdf mRNAの発現を誘導し、fshrやcyp19a1 mRNAの発現を抑制することにより引き起こされると考えられた。研究代表者らは、コルチゾルが温度依存的性決定に深く関与することを見出している。そこで本研究では、まず、高水温が及ぼすメダカ生殖腺への影響を調べたところ、高水温またはコルチゾル処理したXXメダカにおいて、fshr及びcyp19a1 mRNAの発現が抑制され、gsdf mRNAの発現が誘導されることが分かった。次に、これら遺伝子の機能解析を行った結果、GSDF過剰発現XXメダカにおいて完全な雄化が誘導された。これらの結果から、高水温によるメダカの雄化は、コルチゾルがgsdf mRNAの発現を誘導し、fshrやcyp19a1 mRNAの発現を抑制することにより引き起こされると考えられた。我々は、ストレスホルモンであるコルチゾルが温度依存的性決定に深く関与することを見出している。しかしながら、ストレスによるコルチゾル合成誘導機構や、コルチゾルによる雄化誘導機構の全貌は明らかとなっていない。そこで本研究では、温度依存性を含めた環境依存的性決定の全貌を明らかにするため、脳(視床下部)でのストレスの受容・応答から生殖腺での性分化(雄化)までの一貫した分子カスケードを解明することを目的とする。今年度は、高水温及びコルチゾルによる雄化において、エストロゲンがどのような役割を果たしているかを明らかにするため、高水温-またはコルチゾル処理により雄化を誘導したメダカ稚魚にエストロゲン(E2)処理を行って表現型解析を行った。その結果、高温ストレスまたはコルチゾル処理したXX個体では、コントロールXX個体に比べて生殖細胞数が有意に減少しているのに対し、これらの処理下でE2を投与したXX個体においては、生殖細胞数の減少が抑制されていた。一方、高温ストレスまたはコルチゾル処理したXX個体では、エストロゲン合成酵素(cyp19a1)や卵母細胞マーカー(42sp50)の発現が抑制され、分泌性増殖因子(gsdf)の発現が誘導されていたが、これら処理下でE2を投与したXX個体においては、これらの発現が回復していた。さらに、メダカ成魚での性比を調べたところ、これら処理下でE2を投与したXX個体においては、完全に雄化が抑制されていることが明らかとなった。これらのことから、高温ストレスまたはコルチゾル処理によるメダカの雄化は、エストロゲン量の減少が原因であると考えられた。我々は、ストレスホルモンであるコルチゾルが温度依存的性決定に深く関与することを見出している。しかしながら、ストレスによるコルチゾル合成誘導機構や、コルチゾルによる雄化誘導機構の全貌は明らかとなっていない。そこで本研究では、温度依存性を含めた環境依存的性決定の全貌を明らかにするため、脳(視床下部)でのストレスの受容・応答から生殖腺での性分化(雄化)までの一貫した分子カスケードを解明することを目的とする。昨年度までの研究結果から、高水温またはコルチゾル処理による雄化は、分泌性増殖因子(gsdf)の発現が誘導された後、濾胞刺激ホルモン(fsh)受容体及びエストロゲン合成酵素(cyp19a1)の発現が抑制され、結果的にエストロゲン量が減少することが原因であると推測された。そこで今年度は、すでにメダカTillingライブラリーから単離しているfsh受容体機能欠損(-/-)メダカ系統の表現型解析を行った。その結果、fsh受容体(-/-)XXメダカは、通常XXメダカと比較して、有意にcyp19a1の発現及びエストロゲン量が減少していた。また、これら個体のほとんどは卵巣を保持していたが不妊であり、一部の個体は精巣を持っていることが明らかとなった。これらの結果から、メダカFSHはエストロゲン量を制御している可能性が示唆された。さらに、メダカgsdfの機能解析を行うため、ゲノム編集技術を用いてgsdf機能欠損メダカ系統の作製を試みた。その結果、エクソン4領域内の塩基が欠損している個体を得ることに成功した。今後は、これらのホモ個体を作製して表現型解析を行う予定である。我々は、ストレスホルモンであるコルチゾルが温度依存的性決定に深く関与することを見出している。しかしながら、ストレスによるコルチゾル合成誘導機構や、コルチゾルによる雄化誘導機構の全貌は明らかとなっていない。そこで本研究では、温度依存性を含めた環境依存的性決定の全貌を明らかにするため、脳(視床下部)でのストレスの受容・応答から生殖腺での性分化(雄化)までの一貫した分子カスケードを解明することを目的とする。今年度は、高温やコルチゾル処理により発現量が上昇する分泌因子GSDFの生理的機能を明らかにするため、GSDFを過剰発現するトランスジェニックメダカ系統を作製して表現型の解析を行った。
KAKENHI-PROJECT-23370030
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23370030
環境依存的性決定の分子メカニズム
その結果、この系統のすべてのXX個体において、エストロゲン合成酵素遺伝子の発現が抑制されて機能的雄へと性分化することが明らかとなった。さらに、このメダカにエストロゲン処理を行うと、エストロゲン合成酵素遺伝子の発現が上昇して雄化が完全に抑制されることが分かった。これらのことから、高温ストレスまたはコルチゾル処理によるメダカの雄化は、分泌因子GSDFの発現が誘導され、このGSDFによりエストロゲン合成酵素遺伝子の発現が抑制されて引き起こされていると考えられた。1.メダカ視床下部における高温ストレス応答因子の機能解析申請者らは、高水温処理したメダカ視床下部を用いてDNAマイクロアレイ解析を実施し、高水温により誘導される因子として、ヒートショックプロテイン70(HSP70)等の分子シャぺロン、副腎刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)等を単離している。そこで、HSPとCRH発現との関連性をより明らかにするため、HSPの発現制御因子であるheat-shock factor 1 (HSF1)及びCRHのノックアウト(KO)メダカ系統の作製と表現型解析を行った。その結果、HSF1-KOメダカにおいては雌が不妊であるが雄は妊性あり、CRH-KOメダカにおいては雌雄ともに妊性があることが分かった。また、HSF1-KOメダカにおけるHSP70 mRNAの発現量は、高温処理を行っても上昇しないことが確認された。今後は、これらKOメダカを利用してHSPとCRH発現との関係を調べる必要がある。2.コルチゾルによるメダカ雄化誘導機構の解析以前の研究により、高温処理またはコルチゾル処理による雄化は、分泌性増殖因子(GSDF) mRNAの発現上昇に伴い、生殖腺刺激ホルモン受容体及びエストロゲン合成酵素(卵巣型アロマターゼ) mRNAの発現が抑制されるためであると考えられる。そこで、これら雄化の原因がエストロゲン量の減少に起因するのかを確かめるため、卵巣型アロマターゼのKOメダカの作製と表現型解析を行った。その結果、アロマターゼ-KOメダカのXX個体は、最初は通常の卵形成を行うが、その後、卵母細胞が退縮して一部では精子形成が進行することが分かった。このことから、卵巣型アロマターゼは、卵母細胞への分化ではなく卵母細胞の維持に関与していることが示唆された。26年度が最終年度であるため、記入しない。比較内分泌学26年度が最終年度であるため、記入しない。計画された実験を順調に実施できており、また興味深い結果も得られているため。計画された実験を順調に実施できており、また興味深い結果も得られているため。計画された実験を順調に実施できており、また興味深い結果も得られているため。今年度、高水温またはコルチゾル処理による雄化は、エストロゲン処理により完全に抑制されること、雄化抑制個体ではエストロゲン合成酵素(cyp19a1)mRNAの発現が回復し、分泌性増殖因子(gsdf)mRNAの発現が抑制されることを見出している。そこで今後は、gsdfを過剰発現したトランスジェニックメダカ系統にエストロゲン処理を行い、cyp19a1及びgsdfの両方の発現を誘導するとどうなるかを解析する。今年度までの研究結果から、高水温またはコルチゾル処理による雄化は、分泌性増殖因子(gsdf)の発現が誘導された後、エストロゲン量が減少することが原因であると考えられている。しかしながら、未だにgsdfの機能欠損個体の表現型は分かっていない。
KAKENHI-PROJECT-23370030
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23370030
酵素的ポリエチレンテレフタレート分解を加速する新規手法の開発
酵素によるpoly(ethylene terephthalate) (PET)分解反応は、廃棄されたPETを環境低負荷に処理できるため、産業上有用な反応として注目されている。しかしその反応速度は十分ではなく、応用に向けて改善が急務とされている。これまでの研究では、微量の界面活性剤の添加によって酵素によるPET分解速度を著しく向上させることに成功し、さらに酵素とPETの相互作用の改善が反応速度向上の鍵となることを突き止めている。そこで本研究では、界面活性剤と酵素間の相互作用をさらに加速させる手法を構築することで、酵素による効率的なPET分解反応の実現を目指す。酵素によるpoly(ethylene terephthalate) (PET)分解反応は、廃棄されたPETを環境低負荷に処理できるため、産業上有用な反応として注目されている。しかしその反応速度は十分ではなく、応用に向けて改善が急務とされている。これまでの研究では、微量の界面活性剤の添加によって酵素によるPET分解速度を著しく向上させることに成功し、さらに酵素とPETの相互作用の改善が反応速度向上の鍵となることを突き止めている。そこで本研究では、界面活性剤と酵素間の相互作用をさらに加速させる手法を構築することで、酵素による効率的なPET分解反応の実現を目指す。
KAKENHI-PROJECT-19J13179
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19J13179
アクチンフィラメントの協同的構造変化とハイパーモバイル水の機能解明
1.アクチンフィラメントの協同的構造変化の方向性の解明アクトS1キメラタンパク質と通常のピレン標識アクチンを共重合させ、ATP添加によりキメラタンパク質内部のS1部分とアクチン部分を解離させたときに、隣接するピレンアクチンの応答を観測することで、アクチン-S1解離に伴う協同的構造変化の検出を試みている。平成21年度は、アクチンフィラメントのP端またはB端にのみ結合すると期待される変異を導入したキメラタンパク質とピレンアクチンを共重合させ、両者の位置関係を規定できたという仮定の下に、構造変化はB端方向に一方向的に伝播すると結論した。しかし今年度電子顕微鏡観察を行ったところ、それぞれの変異キメラタンパク質がフィラメントのいずれかの端だけではなく内部にも取り込まれてしまうことが判明し、上記結論の前提が成立しないことが判明した。そこで全く新しいアプローチとして、B端キャッピングタンパク質、キメラタンパク質、およびピレン標識アクチンをファロイジン存在下で順次重合させることでキメラタンパク質とピレンアクチンの位置関係を規定することに成功し、この実験系において、構造変化がP端方向に一方向的に伝播することを見出した。2.アクチンの疎水的ミオシン結合部位はミオシンの運動に必要か?われわれは以前、アクトS1キメラタンパク質のホモポリマーフィラメントが骨格筋ミオシン断片と相互作用して運動することができることを報告した。この結果は、疎水性ミオシン結合部位に依存しない未知の運動機構の存在を示唆し、その意味するところは極めて重大である。しかし、キメラタンパク質の精製度を高めて再実験したところ運動能は消失し、微量のアクチンを混在させると運動能が回復したことから、以前の実験で運動能が見られたのは、精製度が低く微量のアクチンが混在していたために生じたアーティファクトであろうと結論した。アクチン・ミオシン系の力発生機構に関しては、ミオシンモーター(S1とよぶ)内部の棒状領域が角度変化し、力が発生するという説(レバーアーム説)が有力である。この説で想定されているアクチンフィラメントの役割は、鉄道線路の様な構造要素に過ぎない。しかし、S1との相互作用がアクチンフィラメントに長距離の協同的構造変化をひきおこすことはよく知られており、このときにフィラメント周囲のハイパーモバイル水が増大すること、またピレン標識されたアクチンの蛍光が変化することも報告されている。このため、アクチンフィラメントの協同的構造変化に依存した未知の力発生機構が議論されている。そこで本研究では、アクチンフィラメントの協同的構造変化が力発生に関与するための前提条件、すなわちこうした協同的構造変化が非対称的・一方向的(つまり運動方向と関連する)であることの検証を目指している。21年度は、われわれ独自のアクトS1キメラタンパク質を利用し、上述ピレンの蛍光変化を指標に、S1結合によるアクチンフィラメントの協同的構造変化の方向性の検討に着手した。こうした協同的構造変化はアクチンフィラメントのB端方向に進むことを示唆する予備的データを得ているが、この点をさらに確認するため、効率の良いキメラタンパク質発現系を構築し、実験の準備を進めた。またミオシン結合による近傍のアクチンサブユニットの構造変化が、フィラメントサブユニット間の伝達を介するのか、S1のセカンダリーアクチン結合領域を介するのかを区別するため、セカンダリーアクチン結合領域を欠いたキメラタンパク質を作成、精製し、実験の準備を整えた。また、キメラタンパク質のホモポリマーの運動性を確認する実験にも着手し、実験条件の最適化を進めている。1.アクチンフィラメントの協同的構造変化の方向性の解明アクトS1キメラタンパク質と通常のピレン標識アクチンを共重合させ、ATP添加によりキメラタンパク質内部のS1部分とアクチン部分を解離させたときに、隣接するピレンアクチンの応答を観測することで、アクチン-S1解離に伴う協同的構造変化の検出を試みている。平成21年度は、アクチンフィラメントのP端またはB端にのみ結合すると期待される変異を導入したキメラタンパク質とピレンアクチンを共重合させ、両者の位置関係を規定できたという仮定の下に、構造変化はB端方向に一方向的に伝播すると結論した。しかし今年度電子顕微鏡観察を行ったところ、それぞれの変異キメラタンパク質がフィラメントのいずれかの端だけではなく内部にも取り込まれてしまうことが判明し、上記結論の前提が成立しないことが判明した。そこで全く新しいアプローチとして、B端キャッピングタンパク質、キメラタンパク質、およびピレン標識アクチンをファロイジン存在下で順次重合させることでキメラタンパク質とピレンアクチンの位置関係を規定することに成功し、この実験系において、構造変化がP端方向に一方向的に伝播することを見出した。2.アクチンの疎水的ミオシン結合部位はミオシンの運動に必要か?われわれは以前、アクトS1キメラタンパク質のホモポリマーフィラメントが骨格筋ミオシン断片と相互作用して運動することができることを報告した。この結果は、疎水性ミオシン結合部位に依存しない未知の運動機構の存在を示唆し、その意味するところは極めて重大である。しかし、キメラタンパク質の精製度を高めて再実験したところ運動能は消失し、微量のアクチンを混在させると運動能が回復したことから、以前の実験で運動能が見られたのは、精製度が低く微量のアクチンが混在していたために生じたアーティファクトであろうと結論した。
KAKENHI-PUBLICLY-21118524
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-21118524
二つの人口ボーナスと人的資本および経済成長
まず、人口学の分野で注目を集めている、二つの人口ボーナスの貯蓄や経済成長への影響について、理論的・計量的に分析を行い、先進国では、第二の人口ボーナス(寿命の伸長)の経済成長への正の効果が見込まれることを見出した。また、人口変化の産業構造の変化について、シミュレーション分析を行い、今後、日本で、農業の重要性が増加する可能性を示唆した。さらに、中国・タイのデータを用いた計量分析により、人的資本が経済成長にとって重要であることを見出した。まず、人口学の分野で注目を集めている、二つの人口ボーナスの貯蓄や経済成長への影響について、理論的・計量的に分析を行い、先進国では、第二の人口ボーナス(寿命の伸長)の経済成長への正の効果が見込まれることを見出した。また、人口変化の産業構造の変化について、シミュレーション分析を行い、今後、日本で、農業の重要性が増加する可能性を示唆した。さらに、中国・タイのデータを用いた計量分析により、人的資本が経済成長にとって重要であることを見出した。まず、山口三十四教授(尾道大学)と人口変化と資本蓄積および産業構造の変化について共同研究し、学術誌に論文を投稿し、掲載された。この研究では、人口変化、特に二つの人口ボーナス(第一の入口ボーナス:出生率の低下による若年人口の低下、第二の入口ボーナス:寿命の伸びによる貯蓄の上昇)は資本蓄積を増加させ、それが一国の産業構造、特に農業の重要性に大きな影響を与えることを見出した。これを展開させ、資本蓄積だけでなく人口総数や労働者数を考慮し、人口変化の農業の重要性や一人当たり所得に対する効果について日本のデータを用いてシミュレーション分析を行い、論文を作成中である。ここでも人口ボーナスの資本蓄積に対する効果やそれが農業の重要性に与えた貢献は非常に大きいことが確認された。また、Andrew Mason教授(ハワイ大学)と、二つの人口ボーナスの貯蓄に対する効果についてクロスカントリーデータを用いて計量的に分析し、学術誌に投稿し掲載された。ここで、寿命は国民貯蓄率に重要な影響を及ぼすことが見出され、第二の人口ボーナスは貯蓄において非常に重要であると結論付けた。これを発展させ、Mason教授が作成した二つの人口ボーナスのデータを用いて二つの人口ボーナスの貯蓄率および経済成長に対する貢献について、計量的に分析を行い、査読付学術誌に投稿中である。さらに、黄〓(元神戸大学大学院経済学研究科博士後期過程)・山口三十四教授と共に、中国における人的資本(特に教育)と経済・社会の相互依存関係について計量的に研究し、学術誌に掲載した。この研究で、中国における現在の大学卒業者の全人口に占める割合は一人当たり所得に正の相関があることや、母親の人的資本の蓄積は現在の若い世代の人的資本形成に重要な正の影響を及ぼすことが示された。また、母親の人的資本の蓄積が大きいほど、少年犯罪率が低くなる傾向があることも見出された。まず、山口三十四教授(神戸大学)と、2008年に人口学研究に掲載された論文を展開し、2つの人口ボーナス(第一の人口ボーナス:出生率の低下による若年人口の低下、第二の人口ボーナス:寿命の伸びによる貯蓄の上昇)、人口減少の農業への影響について論文を作成し、米国の学会で発表した。その論文を学会誌に投稿し、現在審査中である。ここでは、筆者の世代重複モデルと山口教授の一般均衡的成長会計分析モデルを組み合わせ、成人と幼児の生存率、子供の数、総人口、総労働の変化を考慮し、日本の人口変化が農業・非農業のインプット・アウトプットにどのような影響を及ぼすのか分析を行った。その結果、人口変化は、戦後から20世紀末までは、非農業に有利に作用してきたが、今後は、農業の重要性を高める可能性があることが示唆された。この論文で、人口ボーナスの力も重要であるが、労働人口がより大きな力を持つことが示された。また、岡田修一研究員(神戸大学)と山口三十四教授とともに、地方自治体(兵庫県市町村・都道府県)の人口要因について計量分析を行い、論文を作成し、学術誌に掲載した。分析結果より、住環境は、居住地選択に大きな影響をあることが見出された。この研究は、今後地域の人口の決定要因、また、人口の経済の影響を考える上で重要である。さらに、中国の姚万軍副教授(南開大学)を神戸大学に招聘し、人口と経済について研究打ち合わせをした。特に、中国では、現在、急速に経済が発展しているが、今後の少子高齢化は非常に不安な要素である。その中で、第二の人口ボーナスの価値を認識し、今後も継続した成長を目指すことは重要であると思われる。そこで、共同研究について話し合い、中国の経済成長の決定要因について、人口ボーナス・脅威を中心とする人的資本形成を考慮に入れ、計量的に分析することにした。現在、論文作成に向けて、資料を収集している段階である。まず、二つの人口ボーナス(第一の人口ボーナス:人口転換の過程で、生産年齢人口の割合が増加すること、第二の人口ボーナス:成人寿命が延びることにより、貯蓄が増加すること)の一人当たり所得の成長率や貯蓄率に対する影響について、世界のクロス・カントリーデータを用いて、計量的に分析を行った。そこで、二つの人口ボーナスは、欧米諸国・日本・韓国・台湾等の先進諸国のサンプルでは、国民貯蓄率や一人当たり所得の成長率に正の影響を及ぼすことが見出された。この研究の重要性として、人口ボーナスは、ポテンシャルであり、人口ボーナスの状態であるからといって、必ずしも経済成長や貯蓄に好影響をもたらすとはいえないが、計量分析により、一定の効果があることが確認されたことである。
KAKENHI-PROJECT-20730181
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20730181
二つの人口ボーナスと人的資本および経済成長
この研究をまとめ上げ、本の一章にする予定である。また、中国の時系列データを用い、中国の人口諸変数の一人当たり所得に対する影響を計量的に分析し、第一の人口ボーナスの一人当たり所得に対する、正の貢献を見出した。さらに、タイのタイムシリーズ・データを用い、人的資本の経済成長への効果を計測した。ここで、人的資本は、人口一人当たり教師の数、政府の教育支出で計測し、教育の重要性が強調された。一つの国に焦点を当てて、人口ボーナスや教育の効果のマクロ経済的な影響について、計量的に分析を行った研究は、これまで、あまり多くなされていなかったため、重要なものである。中国に関する論文は、既にまとめ上げ、査読付き雑誌に投稿し、現在、審査の段階である。さらに、研究の過程で、人口の経済への関係を考える際、農業の役割を無視して考えられないということに、痛感させられていた。人口の農業に対する効果についての論文を、学術誌に投稿する予定である。また、中国畜産物生産成長について、論文を執筆したが、今後、人口の影響も考慮して、さらなる研究を進めていきたい。
KAKENHI-PROJECT-20730181
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20730181
有棘細胞癌の発症及び転移に関与するシグナル伝達系の解析
本研究の目的は皮膚有棘細胞癌(SCC)及び附属器癌の発生メカニズムを解明することである。SCCの発症に関与するシグナル伝達系の異常は不明な点が多い。我々はWntシグナル伝達系に注目しこのシグナルの過剰な活性化が有棘細胞癌や附属器癌の発症に重要な役割を演ずるという仮説の検証を試みる。本年度は前年度樹立させたマウスにおいてAPC遺伝子を欠損させたあと、DMBA-TPAを外用し皮膚腫瘍を発生させる事、皮膚腫瘍を発生させた後APC遺伝子を欠損させ、腫瘍の組織像を検討することを目標とした。まず、genetic backgroundがFVB/Nであり、DMBA-TPAに感受性が高いマウスにTamoxifenを外用しWntシグナルを活性化させ、DMBA-TPAによる腫瘍の発生数やinvasiveなSCCの発生状況が変化するかどうかを検討した。次に、DMBA-TPAの外用により発症した腫瘍にTamoxifenを外用し腫瘍特異的にWntシグナルを活性化させることを試みた。発生した腫瘍においてkeratin5プロモーターが活性化するかどうかは明らかではないので、β-cateninの免疫染色を施行しWntシグナルの活性化をモニターしながら詳細に検討した。最後に、腫瘍発生前にWntシグナルが活性化すると毛包・脂腺系腫瘍になるのか、腫瘍発生後にWntシグナルが活性化するとこれらの分化を示すようになるのかをこれまでの実験で作製した腫瘍の病理組織を解析することで検索していった。懸念されていた問題も起こらず、研究は進行している。研究計画を変更せず、このまま進めていきたい。本研究の目的は皮膚有棘細胞癌(SCC)及び附属器癌の発生メカニズムを解明することである。SCCの発症に関与するシグナル伝達系の異常は不明な点が多い。我々はWntシグナル伝達系に注目しこのシグナルの過剰な活性化が有棘細胞癌や附属器癌の発症に重要な役割を演ずるという仮説の検証を試みる。次にマウス表皮におけるAPC遺伝子欠損の誘導条件の検討を行った。ターゲットとなる遺伝子を効率的に欠損させるtamoxifenの濃度、投与期間などは確立していなかったため、検討を行った。具体的には、tamoxifenAPC遺伝子が欠損しWntシグナルが活性化したかどうかは、APC蛋白が分解に関与するβ-cateninの免疫染色で確認し、APC遺伝子が欠損したかどうかは表皮よりDNAを抽出しPCR法で確認した。大きな問題も起こらず、研究計画書通りに進んでいる。本研究の目的は皮膚有棘細胞癌(SCC)及び附属器癌の発生メカニズムを解明することである。SCCの発症に関与するシグナル伝達系の異常は不明な点が多い。我々はWntシグナル伝達系に注目しこのシグナルの過剰な活性化が有棘細胞癌や附属器癌の発症に重要な役割を演ずるという仮説の検証を試みる。本年度は前年度樹立させたマウスにおいてAPC遺伝子を欠損させたあと、DMBA-TPAを外用し皮膚腫瘍を発生させる事、皮膚腫瘍を発生させた後APC遺伝子を欠損させ、腫瘍の組織像を検討することを目標とした。まず、genetic backgroundがFVB/Nであり、DMBA-TPAに感受性が高いマウスにTamoxifenを外用しWntシグナルを活性化させ、DMBA-TPAによる腫瘍の発生数やinvasiveなSCCの発生状況が変化するかどうかを検討した。次に、DMBA-TPAの外用により発症した腫瘍にTamoxifenを外用し腫瘍特異的にWntシグナルを活性化させることを試みた。発生した腫瘍においてkeratin5プロモーターが活性化するかどうかは明らかではないので、β-cateninの免疫染色を施行しWntシグナルの活性化をモニターしながら詳細に検討した。最後に、腫瘍発生前にWntシグナルが活性化すると毛包・脂腺系腫瘍になるのか、腫瘍発生後にWntシグナルが活性化するとこれらの分化を示すようになるのかをこれまでの実験で作製した腫瘍の病理組織を解析することで検索していった。懸念されていた問題も起こらず、研究は進行している。このまま研究計画書に沿って進めていきたい。研究計画を変更せず、このまま進めていきたい。当初の計画に変更はなく、購入をしている。次年度使用額については誤差範囲と考える。今後も研究計画に沿って購入していく予定である。研究は順調に進んでおり、次年度使用額は誤差範囲内と考える
KAKENHI-PROJECT-17K10256
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K10256
自律移動ロボットの知能獲得に関する基礎研究
本研究は,自律移動ロボットの「入力」の認識問題と「出力」の形成問題の間に存在する双対性に着目して,自律移動ロボットの学習(知能獲得)に関する理論構築を行う.ここでは,ロボットのセンサ系とアクチュエータ系の関係を,平面的グラフおよびその双対グラフを使って表現するアプローチをとる.グラフ上の発展方程式系の基礎理論に,さらに双対性を導入して保存系をも表現できるように拡張し,これを用いて,自律ロボットに対する新しい学習理論の構築を目指す.また,ロボット知能の設計論として,一般の発展方程式系を散逸系(勾配系)とハミルトン系(保存系)に分解して考察し,両者の合成によりダイナミクスを設計する方法論(設計論の基盤)の構築を目指す.今年度は,センサ系とアクチュエータ系の空間的広がりを,グラフ及び双対グラフの対(これを複合グラフと呼ぶ)により表現する方法に関して,基礎的な考察を行った.具体的には,n次元実ベクトル空間を複合グラフと対応させるためのグラフの構成法を明らかにするとともに,複合グラフ上の複合関数の定義,複合グラフにおける微分の定式化を行った.以上の結果より,複合グラフにおける「単体」を「微分形式」と考えることによって,微分可能多様体上の解析力学を複合グラフ上でも展開できることを示した。この理論を発展させることが,自律移動ロボットの知能の獲得の問題を研究する上での強力なツールになると考えられる.本研究は,自律移動ロボットの「入力」の認識問題と「出力」の形成問題の間に存在する双対性に着目して,自律移動ロボットの学習(知能獲得)に関する理論構築を行う.ここでは,ロボットのセンサ系とアクチュエータ系の関係を,平面的グラフおよびその双対グラフを使って表現するアプローチをとる.グラフ上の発展方程式系の基礎理論に,さらに双対性を導入して保存系をも表現できるように拡張し,これを用いて,自律ロボットに対する新しい学習理論の構築を目指す.また,ロボット知能の設計論として,一般の発展方程式系を散逸系(勾配系)とハミルトン系(保存系)に分解して考察し,両者の合成によりダイナミクスを設計する方法論(設計論の基盤)の構築を目指す.今年度は,自律移動ロボットシステムの表現として平面的グラフを用いるための理論的基礎について考察した.まず,グラフ上の勾配1-形式場と双対グラフ上の勾配1-形式場を関係付けることによって,任意の1-形式場(辺上の関数)を表現できることを示した.また,グラフ上の頂点の関数と双対グラフ上の頂点を結びつける素子特性(回路網熱力学における構成素関数)が,システムのダイナミクスを完全に決定することを明らかにした.以上の理論展開から,自律移動ロボットのシステム構成として,センサ系とアクチュエータ系の双対性をグラフの双対性に対応させ,両者の物理量の変換を素子特性によって実現する,という表現方法を提案した.そして,必要なグラフ構造をいかに獲得するか,および,適切な挙動を実現するための,各辺におけるダイナミクス(構成素関数)をいかに決定するかが,基本問題となることを明らかにした.本研究は,自律移動ロボットの「入力」の認識問題と「出力」の形成問題の間に存在する双対性に着目して,自律移動ロボットの学習(知能獲得)に関する理論構築を行う.ここでは,ロボットのセンサ系とアクチュエータ系の関係を,平面的グラフおよびその双対グラフを使って表現するアプローチをとる.グラフ上の発展方程式系の基礎理論に,さらに双対性を導入して保存系をも表現できるように拡張し,これを用いて,自律ロボットに対する新しい学習理論の構築を目指す.また,ロボット知能の設計論として,一般の発展方程式系を散逸系(勾配系)とハミルトン系(保存系)に分解して考察し,両者の合成によりダイナミクスを設計する方法論(設計論の基盤)の構築を目指す.今年度は,センサ系とアクチュエータ系の空間的広がりを,グラフ及び双対グラフの対(これを複合グラフと呼ぶ)により表現する方法に関して,基礎的な考察を行った.具体的には,n次元実ベクトル空間を複合グラフと対応させるためのグラフの構成法を明らかにするとともに,複合グラフ上の複合関数の定義,複合グラフにおける微分の定式化を行った.以上の結果より,複合グラフにおける「単体」を「微分形式」と考えることによって,微分可能多様体上の解析力学を複合グラフ上でも展開できることを示した。この理論を発展させることが,自律移動ロボットの知能の獲得の問題を研究する上での強力なツールになると考えられる.
KAKENHI-PROJECT-14655146
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14655146
イネの花成時におけるジベレリンの作用に関する研究
当該年度の申請において、申請者はMYB型転写因子GAMYBを通して、「葯の発達過程におけるGAの生理作用とGAシグナル伝達機構の理解」を具体的な目的に設定して、これまでに幾つかの研究を行なった。その結果、GAが花粉のエキシン形成とタペータムの細胞死に重要であることを見いだし、且つそのGA応答にはMYB型転写因子GAMYBによる転写制御が重要であることを今までに明らかにした。当該年度では、これらの結果に関してPlant Cell誌に報告した。さらに申請者は、上記の研究と並行しておこなってきたGAによるエキシン形成機構における植物の進化学的な変遷に関しても、シダ植物イヌカタヒバへのGA生合成阻害剤の処理によりイネと同様のエキシン形成異常が引き起こされることを本年度の研究で明らかにした。また当植物種のGAMYBとCYP703Aホモログがイネの各変異体の異常を部分的に回復させたことも考慮すると、これらの結果はGA依存的なエキシン形成機構がシダ植物を含む維管束植物間で高度に保存されていたことを示唆しています。またシダ植物よりも早くに誕生したコケ植物ではGA非依存的な経路でGAMYBがエキシン形成に関与していることが明らかになり、現在これらの研究成果について論文投稿を進めている。またこれまでにGAMYBと共同してGAMYB標的遺伝子の発現制御に関わる新規因子の探索についても、yeast two hybridスクリーニングを行い、幾つかのGAMYB結合新規因子を同定した。現在、これらの因子については、現在それらの分子機構を解析中である。私は、「イネの花成時におけるジベレリンの作用に関する研究」という課題研究に関して、葯の発達過程におけるジベレリン(GA)の生理作用について研究を行った。GA関連遺伝子の機能欠損変異体の表現型の解析により、GAが花粉のエキシン形成とタペータムの細胞死に重要であることを見いだした。さらにGA関連変異体の葯を用いたマイクロアレイの結果、葯におけるGA応答がMYB型転写因子GAMYBによる転写制御によって誘導されることを明らかにした。私は、GA関連変異体やgamyb変異体で発現が減少していた遺伝子群の一つであるCYP703A遺伝子に注目し、この遺伝子がGAMYBの標的遺伝子である可能性を検討した。私は、まずゲルシフトアッセイによりGAMYBがCYP703A遺伝子のプロモーターに結合することを確認した。またCYP703A遺伝子のプロモーターGUS形質転換体の解析の結果、GAMYB結合配列に変異を導入した変異型プロモーターGUS形質転換体では葯でのGUSの発現が減少することが明らかになった。この結果は、GAMYB結合配列がCYP703A遺伝子の発現に必要不可欠であることを示しており、GAMYBが直接CYP703A遺伝子の発現を制御していることを支持している。CYP703A遺伝子の機能欠損変異体もエキシン形成異常を示したことは、GAがGAMYBを介してCYP703Aの発現を制御してエキシン形成を誘導していることを示している。上記の結果に関しては、今後論文に発表する予定である。当該年度の申請において、申請者はMYB型転写因子GAMYBを通して、「葯の発達過程におけるGAの生理作用とGAシグナル伝達機構の理解」を具体的な目的に設定して、幾つかの研究を行なった。まずGA関連遺伝子の機能欠損変異体の表現型の解析により、GAが花粉のエキシン形成とタペータムの細胞死に重要であることを見いだした。さらにGA関連変異体の葯を用いたマイクロアレイの結果、葯におけるGA応答がMYB型転写因子GAMYBによる転写制御によって誘導されることを今までに明らかにした。そこで、当該年度では、上記のGA関連変異体の葯を用いた形態観察やマイクロアレイ解析から選ばれた複数の脂肪酸代謝関連遺伝子が、実際にGAMYBの標的遺伝子であることをプロモーター:GUS形質転換体を用いたin vivoの実験系により証明した。また申請者は、これらの遺伝子の機能欠損変異体の表現型解析も行い、一部の変異体がgamyb変異体と同じ葯の異常を示すことを確認した。さらにGAとタペークムの細胞死の関係をより理解するため、GA処理によりタペータムの細胞死が促進されるかをTUNEL assayにより検証した。これらの結果に関しては、論文に投稿し、採録決定に至った。さらに申請者は、GAMYBと共同してGAMYB標的遺伝子の発現制御に関わる新規因子の探索についても、yeast two hybridスクリーニングを行い、幾つかのGAMYB結合新規因子を同定した。現在、これらの因子については、イネの種子を用いたtransient assayによりGAMYBとの関係を調べている。当該年度の申請において、申請者はMYB型転写因子GAMYBを通して、「葯の発達過程におけるGAの生理作用とGAシグナル伝達機構の理解」を具体的な目的に設定して、これまでに幾つかの研究を行なった。その結果、GAが花粉のエキシン形成とタペータムの細胞死に重要であることを見いだし、且つそのGA応答にはMYB型転写因子GAMYBによる転写制御が重要であることを今までに明らかにした。当該年度では、これらの結果に関してPlant Cell誌に報告した。さらに申請者は、上記の研究と並行しておこなってきたGAによるエキシン形成機構における植物の進化学的な変遷に関しても、シダ植物イヌカタヒバへのGA生合成阻害剤の処理によりイネと同様のエキシン形成異常が引き起こされることを本年度の研究で明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-07J08736
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07J08736
イネの花成時におけるジベレリンの作用に関する研究
また当植物種のGAMYBとCYP703Aホモログがイネの各変異体の異常を部分的に回復させたことも考慮すると、これらの結果はGA依存的なエキシン形成機構がシダ植物を含む維管束植物間で高度に保存されていたことを示唆しています。またシダ植物よりも早くに誕生したコケ植物ではGA非依存的な経路でGAMYBがエキシン形成に関与していることが明らかになり、現在これらの研究成果について論文投稿を進めている。またこれまでにGAMYBと共同してGAMYB標的遺伝子の発現制御に関わる新規因子の探索についても、yeast two hybridスクリーニングを行い、幾つかのGAMYB結合新規因子を同定した。現在、これらの因子については、現在それらの分子機構を解析中である。
KAKENHI-PROJECT-07J08736
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07J08736
分化に付随した生理的な細胞ストレス及びアポトーシス発生機構の解析
今年度は、筋分化過程において発生している小胞体ストレスが筋芽細胞の生死にどのような効果を及ぼし、筋芽細胞にアポトーシスを起こすのか、あるいは筋管形成過程の進行を促して筋分化を促進するのか、その選択の仕組みに関する新たな知見を得た。筋分化に伴い生じる小胞体ストレスを人為的に増強することにより、筋分化とアポトーシスに与える影響について検討した。ストレスの増強は分化初期のアポトーシスを亢進させ、更に生き残った細胞においては筋分化効率を向上させた。通常の分化誘導では筋管細胞の形成には至るが、収縮能を持つ筋繊維には達しない。ストレスの増強は筋繊維形成を可能にし、これらの細胞では筋タンパク質が規則正しく配向したサルコメアが観察された。過去の研究により、筋分化過程の開始とともに、オートクライン性の生存因子としてインシュリン様成長因子II型(IGF-II)が筋芽細胞から分泌され、これが細胞の分化と生存に重要であることが示唆されていた。筋分化時のストレスの増強はIGF-II前駆体の合成量を低下させた。更に細胞外に分泌されたIGF-IIは細胞内に取り込まれて分解を受けやすくなる環境にあることが示された。これらの結果から筋分化過程において小胞体ストレスがIGF-II前駆体のレベルを下げる効果を持ち、筋芽細胞にアポトーシスを誘導する条件を作っていることが示唆された。また筋分化過程にある細胞の中からアポトーシス細胞が生じる仕組みについて、抗アポトーシスタンパク質であるBcl-xLの関与が見出された。筋分化誘導後、筋管形成に進む生細胞は増殖中の筋芽細胞と同レベルのBcl-xLを含んでいるのに対し、筋分化に伴って生じるアポトーシス細胞中ではBcl-xLの存在量が著しく減少していた。死細胞におけるBcl-xLの減少はストレス付加の有無に関わらず起きていた。ストレス付加はより多くの細胞でBcl-xLの減少を引き起こし、それによりアポトーシスを促進していると考えられた。【1.筋分化時における細胞内及び小胞体内カルシウム濃度変化の解析】小胞体内カルシウムの枯渇は病理的小胞体ストレスの発生原因の一つである。カルシウム濃度インディケーターとして小胞体局在型カメレオンを用い、次の二点に注目し検討を始めた。A.筋分化時における小胞体から筋小胞体へのダイナミックな変化に伴い、小胞体からカルシウムの流出が起こり、小胞体内カルシウム濃度の低下が引き起こされている可能性。B.筋小胞体としての機能獲得に伴い、小胞体内にカルシウム結合タンパク質を多く発現させるようになるため、一時的に小胞体内の遊離カルシウム濃度の低下が生じる可能性。【2.筋分化時におけるタンパク質発現パターン変化の解析】筋芽細胞から筋管細胞への構造的・機能的変化に伴い、タンパク質発現調節の変化が生じる。小胞体ストレスが発生する筋分化初期に特に注目し、ディファレンシャル二次元電気泳動法による解析を行った。また病理的な小胞体ストレスとの違いを明らかにするため、増殖中の細胞、筋分化処理細胞、小胞体ストレス誘導細胞の三者間での比較を行った。【3.筋分化に伴って生じる死細胞・生細胞間のタンパク質発現パターンの相違解析】筋分化初期(ストレス発生時)において、アポトーシスによって除かれる細胞、分化過程に進む細胞のいずれの道に向かうかという選択が生じる。この運命決定はいかにしてなされるのか、その決定因子が存在するのかを解明するため、筋分化初期に生じる死細胞と生細胞、それぞれのタンパク質発現パターンをディファレンシャル二次元電気泳動法により解析を行った。今年度は、筋分化過程において発生している小胞体ストレスが筋芽細胞の生死にどのような効果を及ぼし、筋芽細胞にアポトーシスを起こすのか、あるいは筋管形成過程の進行を促して筋分化を促進するのか、その選択の仕組みに関する新たな知見を得た。筋分化に伴い生じる小胞体ストレスを人為的に増強することにより、筋分化とアポトーシスに与える影響について検討した。ストレスの増強は分化初期のアポトーシスを亢進させ、更に生き残った細胞においては筋分化効率を向上させた。通常の分化誘導では筋管細胞の形成には至るが、収縮能を持つ筋繊維には達しない。ストレスの増強は筋繊維形成を可能にし、これらの細胞では筋タンパク質が規則正しく配向したサルコメアが観察された。過去の研究により、筋分化過程の開始とともに、オートクライン性の生存因子としてインシュリン様成長因子II型(IGF-II)が筋芽細胞から分泌され、これが細胞の分化と生存に重要であることが示唆されていた。筋分化時のストレスの増強はIGF-II前駆体の合成量を低下させた。更に細胞外に分泌されたIGF-IIは細胞内に取り込まれて分解を受けやすくなる環境にあることが示された。これらの結果から筋分化過程において小胞体ストレスがIGF-II前駆体のレベルを下げる効果を持ち、筋芽細胞にアポトーシスを誘導する条件を作っていることが示唆された。また筋分化過程にある細胞の中からアポトーシス細胞が生じる仕組みについて、抗アポトーシスタンパク質であるBcl-xLの関与が見出された。筋分化誘導後、筋管形成に進む生細胞は増殖中の筋芽細胞と同レベルのBcl-xLを含んでいるのに対し、筋分化に伴って生じるアポトーシス細胞中ではBcl-xLの存在量が著しく減少していた。死細胞におけるBcl-xLの減少はストレス付加の有無に関わらず起きていた。
KAKENHI-PROJECT-18770183
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18770183
分化に付随した生理的な細胞ストレス及びアポトーシス発生機構の解析
ストレス付加はより多くの細胞でBcl-xLの減少を引き起こし、それによりアポトーシスを促進していると考えられた。
KAKENHI-PROJECT-18770183
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過疎地域に暮らす社会的に孤立した高齢者への看護職による見守り支援モデルの構築
本研究は、過疎地域に暮らす社会的に孤立した高齢者の現状について明らかにすること、および、過疎地域で高齢者を支援する看護職が異なる地域性の中でどのように支援しているかを明らかにした上で、社会的に孤立した高齢者が住み慣れた地域での暮らしの継続を支援するためのモデルを構築することを目的としている。2018年度は、先行研究の整理を行った上で、インタビュー実施に先立ち、高齢化率が約50%で過疎化が進むA県B町の保健師活動の実態について情報収集を行った。B町では、地域包括支援センターを町が直営で運営していること、人口が少なく保健師の経験年数が長いことから、住民の状況を把握することが出来ていた。具体的には、住民同士の親しさ(交友関係)や近所づきあい、親戚や通院先などの状況を把握しており、高齢者の体調の変化については、近隣住民からの情報によって保健師が支援してる実態が把握された。これらの結果から、地域性をどのように考慮していくか検討する必要性が示唆された。2019年度は、2018年度に行った情報収集をもとにインタビューガイドを作成し、インタビュー調査の実施とその分析を進める。2018年度は、先行研究の整理とインタビュー調査を実施する計画であったが、到達状況としては、インタビュー調査の実施に至っていない。しかしながら、過疎地域の高齢者支援の情報収集をしたことで、次年度の実施に有用な情報を得ることができた。したがって、当初の計画よりやや遅れていると判断した。2019年度は、過疎地域にある地域包括支援センターの看護職を対象にインタビュー調査を行う。また、その実施については、看護職のアセスメントの視点に焦点を当てると同時に、地域の特性の考慮して分析していく。本研究は、過疎地域に暮らす社会的に孤立した高齢者の現状について明らかにすること、および、過疎地域で高齢者を支援する看護職が異なる地域性の中でどのように支援しているかを明らかにした上で、社会的に孤立した高齢者が住み慣れた地域での暮らしの継続を支援するためのモデルを構築することを目的としている。2018年度は、先行研究の整理を行った上で、インタビュー実施に先立ち、高齢化率が約50%で過疎化が進むA県B町の保健師活動の実態について情報収集を行った。B町では、地域包括支援センターを町が直営で運営していること、人口が少なく保健師の経験年数が長いことから、住民の状況を把握することが出来ていた。具体的には、住民同士の親しさ(交友関係)や近所づきあい、親戚や通院先などの状況を把握しており、高齢者の体調の変化については、近隣住民からの情報によって保健師が支援してる実態が把握された。これらの結果から、地域性をどのように考慮していくか検討する必要性が示唆された。2019年度は、2018年度に行った情報収集をもとにインタビューガイドを作成し、インタビュー調査の実施とその分析を進める。2018年度は、先行研究の整理とインタビュー調査を実施する計画であったが、到達状況としては、インタビュー調査の実施に至っていない。しかしながら、過疎地域の高齢者支援の情報収集をしたことで、次年度の実施に有用な情報を得ることができた。したがって、当初の計画よりやや遅れていると判断した。2019年度は、過疎地域にある地域包括支援センターの看護職を対象にインタビュー調査を行う。また、その実施については、看護職のアセスメントの視点に焦点を当てると同時に、地域の特性の考慮して分析していく。(理由)2019年度は、2018年度に実施できなかったインタビュー調査とその分析を行う予定となったため、次年度使用額が生じた。(使用計画)2019年度は、計画の実施が遅れている看護職へのインタビューを実施し、インタビューデータを逐語化することやデータの整理のための人件費を使用する。また、学外での研究用のノートPCの購入やインタビュー対象者への謝品を物品費より使用する計画とする。
KAKENHI-PROJECT-18K17634
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日本人の色彩表徴に関する民俗学的研究
本年度は前年度にひき続いて、伝統都市を中心としたフィ-ルドにおける色彩に関する民俗伝承の聞き書きと、文献資料および実物の写真撮影等の調査を実施した。本年度予定した調査地は熊本市・松江市・金沢市・岐阜市・津市の計5か所であったが、実施したのは熊本県人吉市・鹿児島県知覧町・松江市・金沢市・弘前市の5か所である。これらはいずれも中世ならびに近世以降より始まった城下町であって、前年度の伝統都市における色彩表徴の事例研究を補足し、また深めるに足る対象地であった。ちなみに、調査結果をまだ充分に検討していないので、早急に明確な結論を導き出すことは出来ないが、中世鎌倉期より城下町として発達した人吉市の場合、中世的な歴史遺物が少ないながらも、青井阿蘇神社の社殿に残る建築彩色には注目され、赤・青・黒の色彩表徴にひとつの歴史的意味を見つけだすことが出来た。しかし、その他民俗事象としては近世末期の事象の伝承より遡ることができず、また衣裳の染色などの技術も地方的な稚拙なものにとどまり、いわゆる京・大坂との物流関係に規制されることが多く、そこにはこの地方独自の色彩伝統を見出せなかった。このことは前年度の調査研究による都市(マチ)とその周辺農村との対比といった次元での差異でしか、その色の民俗の特色を見出し得ない結果とほぼ同一の傾向にある。しかし、一方で従来からフィ-ルドとしている金沢においては、その後の調査によって五行思想に基づく五色のシンボリズム、すなわち日月山海里を意味する赤・白・黄・青・黒(紫)の儀礼的展開例を見出し、都市の民俗社会が色彩を重視する原理を新たに確認することが出来た。現在、その他の文献資料との照合が出来ていないので、調査終了とともに、さらに分析を行い結果報告をまとめる予定である。本年度は日本の伝統都市を中心としたフィ-ルドにおける色彩に関する民俗伝承の聞き書きと、文献資料および実物の写真撮影等の調査を実施した。また、都市以外の特に山村における染色技術の伝承にも触れる機会があり、基礎的資料として記録した。本年度予定した都市は弘前市・那覇市・高知市・会津若松市の4か所であるが、その他奈良市あるいは白山麓、能登半島の一部においても若干ではあるが民俗的な色の象徴物を調査することが出来た。ちなみに、調査結果をまだ充分に検討していないので、早急に明確なことは述べられないが、全体の傾向としてそれぞれの伝統都市における色彩の特徴を示す事例は鮮明ではなく、当初考えていた各都市の地域的特色を抽出する作業はいささか困難となった。しかし、都市と田舎との差異は明確であり、民俗として使われる彩色の基本原理は都市社会によって生み出されてきた傾向が、今のところ窺われる。例えば藍色は自製することなく、マチの紺屋によって染色されることが多い。従って商家の暖簾やハッピ、幟穂、着物といった染色は紺屋が一手に引き受けていて、そのことが都市社会における藍色の色彩環境を特徴づける傾向を生み出してきたように考えられる。また、紅花染についても、その染料の入手が普通には困難であるため、紺屋の専業仕事といっても過言ではなく、都市の色彩特徴を生み出す原材料とみなしてもよいであろう。その他、郷土玩具に表された彩色傾向も調査したが、玩具における呪術性が顕著なほど彩色が単純であり、例えば白と黒とか赤一色とか、黄色と黒色の組合せが特徴づけられるが、呪術玩具から遊戯玩具および飾り物玩具(鑑賞用玩具)へと変遷するに従い、多色傾向が顕著であることが判明した。これらの理由については今後研究してゆきたい。本年度は前年度にひき続いて、伝統都市を中心としたフィ-ルドにおける色彩に関する民俗伝承の聞き書きと、文献資料および実物の写真撮影等の調査を実施した。本年度予定した調査地は熊本市・松江市・金沢市・岐阜市・津市の計5か所であったが、実施したのは熊本県人吉市・鹿児島県知覧町・松江市・金沢市・弘前市の5か所である。これらはいずれも中世ならびに近世以降より始まった城下町であって、前年度の伝統都市における色彩表徴の事例研究を補足し、また深めるに足る対象地であった。ちなみに、調査結果をまだ充分に検討していないので、早急に明確な結論を導き出すことは出来ないが、中世鎌倉期より城下町として発達した人吉市の場合、中世的な歴史遺物が少ないながらも、青井阿蘇神社の社殿に残る建築彩色には注目され、赤・青・黒の色彩表徴にひとつの歴史的意味を見つけだすことが出来た。しかし、その他民俗事象としては近世末期の事象の伝承より遡ることができず、また衣裳の染色などの技術も地方的な稚拙なものにとどまり、いわゆる京・大坂との物流関係に規制されることが多く、そこにはこの地方独自の色彩伝統を見出せなかった。このことは前年度の調査研究による都市(マチ)とその周辺農村との対比といった次元での差異でしか、その色の民俗の特色を見出し得ない結果とほぼ同一の傾向にある。しかし、一方で従来からフィ-ルドとしている金沢においては、その後の調査によって五行思想に基づく五色のシンボリズム、すなわち日月山海里を意味する赤・白・黄・青・黒(紫)の儀礼的展開例を見出し、都市の民俗社会が色彩を重視する原理を新たに確認することが出来た。現在、その他の文献資料との照合が出来ていないので、調査終了とともに、さらに分析を行い結果報告をまとめる予定である。
KAKENHI-PROJECT-02801042
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02801042
コライダーの物理とCPの破れ
本研究では、CPの破れと密接な繋がりのあるクォーク・レプトンのフレーバーの物理について主に研究を行った。クォークのフレーバーについては、現在KEKおよびSLACで非対称e^+e^-コライダーの建設が進められていることもあって、ボトムクォークの物理が特に注目されている。一方、近年のLEPでの実験が示唆していることや最近の理論的発展によって、超対称模型が注目を集めている。そこで我々は、ボトムクォークのFCNC過程と呼ばれる特殊な崩壊過程の一つであるb→sll^^-崩壊について、最小超重力模型の予言について詳しく調べた。この模型は最小超対称標準模型を含んでいて、非常に予言能力が高いものである。b→sll^^-過程の超対称模型での理論的計算において困難でかつこれまでは見逃されて来た要素として、QCDの長距離効果がある。我々はこの点を詳しく調べ、長距離効果は非常に重要であり、実験結果をもとに標準模型と最小超重力模型の差異を議論するには長距離効果を慎重に分離しなければならないことを示した。レプトンのフレーバーについては、超対称大統一模型でのレプトンフレーバーの破れについて調べた。トップクォークが非常に重いことがはっきりしたことにより、超対称大統一模型でレプトンフレーバーの破れが大きくなることが指摘されていて、μ→eγ崩壊が実験で観測される可能性が真剣に議論されている。我々は、SU(5)超対称大統一模型でμ→eγも含めた実験からの制限のもとで、高エネルギーコライダー実験において、スカラーレプトンの生成崩壊過程でレプトンフレーバーの破れを観測する可能性について調べた。その結果、√s【similar or equal】300500GeV程度のe^+e^-リニアコライダーやミューオンコライダーで10fb程度の断面積が有り得ることがわかった。本研究では、CPの破れと密接な繋がりのあるクォーク・レプトンのフレーバーの物理について主に研究を行った。クォークのフレーバーについては、現在KEKおよびSLACで非対称e^+e^-コライダーの建設が進められていることもあって、ボトムクォークの物理が特に注目されている。一方、近年のLEPでの実験が示唆していることや最近の理論的発展によって、超対称模型が注目を集めている。そこで我々は、ボトムクォークのFCNC過程と呼ばれる特殊な崩壊過程の一つであるb→sll^^-崩壊について、最小超重力模型の予言について詳しく調べた。この模型は最小超対称標準模型を含んでいて、非常に予言能力が高いものである。b→sll^^-過程の超対称模型での理論的計算において困難でかつこれまでは見逃されて来た要素として、QCDの長距離効果がある。我々はこの点を詳しく調べ、長距離効果は非常に重要であり、実験結果をもとに標準模型と最小超重力模型の差異を議論するには長距離効果を慎重に分離しなければならないことを示した。レプトンのフレーバーについては、超対称大統一模型でのレプトンフレーバーの破れについて調べた。トップクォークが非常に重いことがはっきりしたことにより、超対称大統一模型でレプトンフレーバーの破れが大きくなることが指摘されていて、μ→eγ崩壊が実験で観測される可能性が真剣に議論されている。我々は、SU(5)超対称大統一模型でμ→eγも含めた実験からの制限のもとで、高エネルギーコライダー実験において、スカラーレプトンの生成崩壊過程でレプトンフレーバーの破れを観測する可能性について調べた。その結果、√s【similar or equal】300500GeV程度のe^+e^-リニアコライダーやミューオンコライダーで10fb程度の断面積が有り得ることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-08740204
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動学パネルモデルにおける推定の高次漸近的効率性とセミパラメトリック効率性
計量経済モデルの推定を考えるとき、推定量の漸近分布を導出するだけでなく、その効率性(漸近分散の最小性)を評価することも重要な研究課題である。近年のパネルデータ分析では、時系列の標本数も大きくする状態で様々な推定量の漸近分布が求められているが、効率性に関する研究は、その重要性にも関わらず、ほとんどされていない。そこで、本研究では、実証上重要と考えられる様々なパネルモデルを取り上げ、推定の効率性について分析を行った。本年度では、相互効果の入った動学パネルモデル(パネル自己回帰モデルを含む)を考え、共通母数の推定量の漸近分散の下限(効率性限界)を導出するとともに、それを用いて様々な既存推定量の効率性を評価するという研究を行った。より具体的には、パネルデータが定常ガウス過程に従う誤差と相互効果との和として表現されるモデルを考え、ガウス定常過程の自己共分散構造を決める有限次元母数の推定の効率性について分析を行った。特に、Okui (2010)が提案するバイアス修正済みグループ内標本自己共分散が漸近的効率性を持つための必要十分条件を与えた。具体的には、個人の動学が次数(p ; q)のARMA過程に従う場合、自己共分散の次数がp-q以下であるとき、またそのときに限り、Okui (2010)の推定量が効率性を持つことを明らかにした。本年度に取り扱ったモデルは、マクロ経済分析で近年注目を浴びている因子分析モデルとみなすこともできる。そこで、因子や因子負荷量の推定の効率性限界も導出した。その結果から、主成分分析推定量が、(1)因子負荷量を効率的に推定すること、(2)誤差項が時系列方向に無相関の場合には、因子をも効率的に推定することを証明した。昨年度にも報告しだ通り、本研究では、効率性限界の導出に際しHahn and Kursteiner (2002)の手法を土台にする予定であったが、研究を進めるうちに彼らの手法には問題点があることが分かってきた。そこで、Hahn and Kuersteiner (2002)の問題点を克服する手法を提示した。その手法はそれ自体が重要であるだけでなく、今後の研究の基礎になるものであり、研究計画は順調に進んでいると自己評価している。これまでは、推定量の漸近分散の下限を導出することを目的としてきた。今後は、下限の導出だけでなく、それを達成する推定量を構築することに主眼をおいて研究を行う予定である。パネルモデルにおいて時系列の標本数も大きくする場合、時系列モデルの場合と似た漸近的結果が成立すると予想されるため、時系列の既存研究を参照しながら研究を進めていくことになる。ただ、時系列分析と異なり、(1)二重漸近論を扱うこと、(2)個別効果や時間効果などの付随母数が存在することから、時系列の場合より複雑な数学的取扱いが必要となる。それらの点に関してはこれまでの経験によるスキルの蓄積により克服できると考えている。計量経済研究においては推定量を開発するだけでなくそのパフォーマンスを評価することも重要である。近年パネルデータ分析では時系列の標本サイズも大きい状況で種々の推定量が開発され、その漸近分布やバイアス補正の手法が提示されている。しかし、推定量のもっとも基本的かつ重要な評価である効率性(漸近分散の最小性)については殆ど研究がされていない。本研究の目的は、パネルモデルにおける推定の効率性限界を導出し既存推定量の評価を行うことである。本年度では、非線形パネルモデルにおける推定の効率性に関して研究を行った。時系列の標本サイズが大きくなる状況で効率性を議論した先行研究としてパネル自己回帰モデルを考えたHahn and Kursteiner(2002)があるが、非線形モデルに拡張するには多くの修正が必要である。そこで、彼らの手法の問題点を指摘するとともに数理統計学の文献(特に、Strasser(1998)を参考にしてそれらを克服する手法を提示した。具体的には、個別効果の真値に弱収束列(Strasser(1998)の仮定を課し、その上で、個別効果に対する摂動を数列ではなく関数で行うという手法を用いて、非線形パネルモデルにおける推定量の漸近分散の下限を導出することに成功した。その手法は単に数学的な問題点を克服しただけでなく、統計学的解釈のつけやすい仮定(弱収束列の仮定)のもとでなされており、また、その手法の動機付けについても適切な説明を行った。さらに、相互効果の入ったより複雑な非線形パネルモデルにも議論を拡張しそこでの漸近分散の下限も導出し、報告者の提示した手法が拡張性の高いものであることを示した。年度を跨ぐことになるが、研究成果を2013年4月17日の京都大学計量経済学セミナーで発表し、また、2013年5月8日に東京大学ミクロ実証分析ワークショップで発表する予定である。計量経済モデルの推定を考えるとき、推定量の漸近分布を導出するだけでなく、その効率性(漸近分散の最小性)を評価することも重要な研究課題である。近年のパネルデータ分析では、時系列の標本数も大きくする状態で様々な推定量の漸近分布が求められているが、効率性に関する研究は、その重要性にも関わらず、ほとんどされていない。そこで、本研究では、実証上重要と考えられる様々なパネルモデルを取り上げ、推定の効率性について分析を行った。
KAKENHI-PROJECT-12J06892
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動学パネルモデルにおける推定の高次漸近的効率性とセミパラメトリック効率性
本年度では、相互効果の入った動学パネルモデル(パネル自己回帰モデルを含む)を考え、共通母数の推定量の漸近分散の下限(効率性限界)を導出するとともに、それを用いて様々な既存推定量の効率性を評価するという研究を行った。より具体的には、パネルデータが定常ガウス過程に従う誤差と相互効果との和として表現されるモデルを考え、ガウス定常過程の自己共分散構造を決める有限次元母数の推定の効率性について分析を行った。特に、Okui (2010)が提案するバイアス修正済みグループ内標本自己共分散が漸近的効率性を持つための必要十分条件を与えた。具体的には、個人の動学が次数(p ; q)のARMA過程に従う場合、自己共分散の次数がp-q以下であるとき、またそのときに限り、Okui (2010)の推定量が効率性を持つことを明らかにした。本年度に取り扱ったモデルは、マクロ経済分析で近年注目を浴びている因子分析モデルとみなすこともできる。そこで、因子や因子負荷量の推定の効率性限界も導出した。その結果から、主成分分析推定量が、(1)因子負荷量を効率的に推定すること、(2)誤差項が時系列方向に無相関の場合には、因子をも効率的に推定することを証明した。本研究では、効率性限界の導出に際しHahn and Kursteiner(2002)の手法を土台にする予定であった。しかし、研究を進めるうちに彼らの手法には問題点があることが分かってきた。そこで数理統計学の既存研究(Strasser(1998))を参考にしてHahn and Kuersteiner(2002)の問題点を克服する手法を提示した。その手法はそれ自体が重要であるだけでなく、今後の研究の基礎になるものであり、研究計画は順調に進んでいると自己評価している。昨年度にも報告しだ通り、本研究では、効率性限界の導出に際しHahn and Kursteiner (2002)の手法を土台にする予定であったが、研究を進めるうちに彼らの手法には問題点があることが分かってきた。そこで、Hahn and Kuersteiner (2002)の問題点を克服する手法を提示した。その手法はそれ自体が重要であるだけでなく、今後の研究の基礎になるものであり、研究計画は順調に進んでいると自己評価している。パネルデータモデルで個別効果を固定された母数と見た場合、それらは標本数とともに増加する無限次元局外母数を構成し付随母数(incidental parameter)と呼ばれている。本研究の最大の難所は、付随母数の取り扱いである。本年度の研究では、Strasser(1998)の手法を参考にし、付随母数が存在する状況で効率性限界を導出する手法を確立させた。本年度に得られた結果はそれ自体が重要であるだけでなく今後の研究の基礎を成す。特に、来年度に計画している正規性が成立しない下での動学パネルモデルの効率性の評価にも応用可能であり、今後の研究方策は明確である。これまでは、推定量の漸近分散の下限を導出することを目的としてきた。今後は、下限の導出だけでなく、それを達成する推定量を構築することに主眼をおいて研究を行う予定である。パネルモデルにおいて時系列の標本数も大きくする場合、時系列モデルの場合と似た漸近的結果が成立すると予想されるため、時系列の既存研究を参照しながら研究を進めていくことになる。ただ、時系列分析と異なり、(1)二重漸近論を扱うこと、
KAKENHI-PROJECT-12J06892
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直線状のコラーゲン結晶を基にした骨の2分岐パターンの形成原理
魚のヒレ骨は、主に3つの過程を経て形成される。1ヒレの先端にアクチノトリキアと呼ばれるコラーゲンの針状結晶が均一に分布する、2それらを柱状に束ねる、3その基部にリン酸カルシウムを沈着させる。ヒレ骨の配置は、アクチノトリキアの配置に依存し、ヒレ骨が2分岐するためには、2のアクチノトリキアを束ねる過程が重要である。そこで、2の工程を担う細胞群の挙動をin vitro, in vivoで解析することで、ヒレ骨のパターン形成機構を明らかにする。魚のヒレ骨は、主に3つの過程を経て形成される。1ヒレの先端にアクチノトリキアと呼ばれるコラーゲンの針状結晶が均一に分布する、2それらを柱状に束ねる、3その基部にリン酸カルシウムを沈着させる。ヒレ骨の配置は、アクチノトリキアの配置に依存し、ヒレ骨が2分岐するためには、2のアクチノトリキアを束ねる過程が重要である。そこで、2の工程を担う細胞群の挙動をin vitro, in vivoで解析することで、ヒレ骨のパターン形成機構を明らかにする。
KAKENHI-PROJECT-19K16142
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日本における外資系企業の人事労務管理・労使関係と法に関する実証的研究
外資系企業は、日本の全産業においてプレゼンスを高めており、その人事・労務管理は、日本企業においても参考にすべき点が多い。また、集団的労使関係法上の使用者概念、バンド制など成果主義と関連した賃金制度など理論上の課題が少なくない。本国の本社と日本支社との関係では、人事、労働条件、労使コミュニケーションなど二重の権限から生じる問題が存しており、グローバル化に伴う課題である点が明らかになった。外資系企業は、日本の全産業においてプレゼンスを高めており、その人事・労務管理は、日本企業においても参考にすべき点が多い。また、集団的労使関係法上の使用者概念、バンド制など成果主義と関連した賃金制度など理論上の課題が少なくない。本国の本社と日本支社との関係では、人事、労働条件、労使コミュニケーションなど二重の権限から生じる問題が存しており、グローバル化に伴う課題である点が明らかになった。本年度は、主として文献研究とヒアリング調査を行った。1文献研究外資系企業に関わる文献や調査研究等を収集し、担当者が分析を行い、研究会での報告・検討を踏まえて先行研究の到達点と課題を明らかにした。具体的には、以下の通りである。(1)外資系企業の定義はさまざまである。本研究では、多面的な視角から調査研究するので、特定の定義にはよらないが、典型的には、単に株式保有比率が過半数を超えているだけではなく、親企業が海外に拠点を置く企業を中核に据える。(2)従来の研究は経済学の領域がほとんどであり、法律分野からのはほとんど存在しない。(3)当初予定していなかったM&Aや投資ファンドなど企業法からの分析も重要である。(4)親企業の方針が重要性を有しているケースが多い。(5)外資系企業に関わる判例分析をすれば、人事労務管理等について一定の傾向が看取されるので、これも研究の対象にするのが妥当である。2調査研究本年度は、外資系企業労働組合協議会(外労協)の岩川氏へのインタービューを二回実施した。資料の入手も含めて多くの有益な成果が得られたが、主たるのは以下の通りである。(1)外資系企業及び外労協の発展史が明らかになった。(2)外資系企業特有の人事労務管理などが一定程度判明した。(3)バンド給はその一例であり、これを労働法的観点から分析するのは重要である。(4)労使関係を理解するには親企業との関係が重要である。(5)最近、投資ファンドが一定程度重要性を有するに至っており、その分析が不可欠である。(6)外資に買収された企業では、日本的雇用慣行が変容している。3まとめ本年度は研究会の開催が2回であったが、メールなどで各人の研究状況を交流し、研究を進展させることができた。次年度に実施される国内及び海外調査の準備がほぼできたと考えている。1国内調査国内調査は、伍賀と澤田が中心となり、外資系企業のA生命保険会社及びB自動車会社の人事担当者へのインタービュー及び関連文献の分析を行った。いずれも経営不振に陥った日本の会社をアメリカの同業の会社が買収したケースである。共通する大きな特徴は、人事制度や賃金制度などが大きく変更された点である。具体的には、年功序列制から業績主義・成果主義への移行、中途採用・職種別採用の重視などである。これらは、典型的な日本的雇用慣行の変容といえ、21年度の研究において、補充調査をしつつ多面的に実証的な理論研究を行う価値がある。2国外調査ドイツに絞り、名古と緒方が渡独して調査を行った。(1)経済社会研究所では、ドイツ企業の海外進出及び国外企業のドイツへの進出の現状と課題、(2)日本に法人企業を設立しているベーリンガー・インゲルハイムでは、従業員代表委員会の委員から、会社の現状と国外法人に対する政策、従業員代表委員会の活動状況と課題、国外進出に対する関与、賃金システム等、(3)関係労働組合では、賃金が安い国へのドイツ企業の進出に関する雇用確保、ドイツ国内の外資系企業に対する政策等に関するインタービューを行った。ドイツ調査で明らかになったのは以下の点である。第一に、外資系企業に対しても、賃金システムの変更(成果主義賃金の導入等)などに関して組合及び従業員代表委員会が、国内企業同様、重要な規制を及ぼしうる点である。第二に、ドイツ企業の海外進出を阻止するのは困難との認識が組合にも存在し、ドイツ企業は付加価値の高い分野に重点を置くべきであるとされる。他方、予定していたベーリンガー・インゲルハイムの人事部へのインタービューが実現できず、本国の企業と日本法人との関係の詳細が明らかにならなかった。この点は、21年度、補充調査などを通じて明確にする予定である。3個別研究それぞれが独自に本研究に関わる研究を進め、業績を公表した。本年度は、補充調査を行うとともに、2年間の調査研究を踏まえた総括的な研究を実施し、3年間の研究をまとめる作業を行った。(1)総括的研究をする中で、なお不十分な補充調査を主として伍賀が行い、企業インタービューを実施した。(2)2年間の調査研究を総括し、労働法上及び企業法上の理論的問題を析出するとともに、その解明を全員が分担して実施し、研究会において検討を行った。そこで明らかになったのは、以下の点である。(1)調査及びデータ分析によると、外資系企業は、日本の全産業においてプレゼンスを高めており、日本経済の主軸の一つを占めるに至っている。
KAKENHI-PROJECT-19330014
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19330014
日本における外資系企業の人事労務管理・労使関係と法に関する実証的研究
また、経営及び人事管理の決定は、本国の本社の意向が働く余地が大きい。さらに、中途採用が少なくなく、人事・労務管理政策の一貫性からして問題があり、人材の確保及び育成が課題となっている。(2)90年代以降、特に2000年代に入り外資系企業によるM&Aや投資ファンドによる活動が活発化したが、これは、商法、会社法、独禁法改正などと関連しており、法制度改正が一定の役割を果たした。(3)主たる理論上の問題や成果は以下の通りである。第一に、本国の本社との関係において集団的労使関係法上の使用者概念が挙げられる。第二に、バンド制など成果主義と関連した賃金制度が普及しており、日本企業においても参考になる点が少なくない。第三に、本国の本社と日本支社との関係では、人事、労働条件、労使コミュニケーションなど二重の権限から生じる問題が存しており、グローバル化に伴う課題といえる。
KAKENHI-PROJECT-19330014
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沖縄開発庁とその沖縄振興開発政策の検証
本研究は沖縄開発庁の設立と廃止(1972年2001年)、1996年に沖縄県が提唱した国際都市形成構想への日本政府の対応、近年の沖縄振興政策の動向を中心に検証した。第1に、沖縄開発庁の設立から今日の沖縄振興政策に関わった15名の主要人物に面接調査し、その証言を3冊のオーラル・ヒストリー報告書としてまとめた。第2に、沖縄県内の全市町村長に対して、沖縄開発庁とその沖縄振興開発政策についてアンケート調査を実施し集計した。第3に、本研究の集大成として「沖縄開発庁及び沖縄振興開発政策の検証」「スコットランド独立リファレンダムと英国下院総選挙についての考察」と題した論文を『総政研』第4号に掲載した。本研究の研究目的である沖縄開発庁とその沖縄振興開発政策の検証のために、まず第1に、貴重な政府関係基礎資料である『沖縄開発庁十年史』や『沖縄振興開発金融公庫二十年史』をはじめ、沖縄振興開発の政策や組織に関する資料をした。また関連する資料として北海道開発庁やスコットランド振興開発の政策や組織に関する資料も収集した。第2に、沖縄開発庁および沖縄振興開発政策の運営推進に関わってきた日本政府側の元官房副長官の古川貞二郎氏、元官房長官/沖縄開発庁長官の野中広務氏、沖縄県側の元県知事の稲嶺恵一氏や元政策調整監の与儀朝栄氏の各氏に対して面接調査を行ない、質疑応答も行なった。これらの貴重な証言はオーラル・ヒストリーとして本研究の報告書に掲載する予定である。第3に、沖縄開発庁やその振興開発政策に関する学術的なアンケート調査はこれまで実施されていないので、本研究の初年度(平成25年度)の10月に、沖縄県全自治体(42)の行政首長と議会議長を対象に、沖縄開発庁とそのっ振興開発政策の評価等に関するアンケート調査を実施した。この集計結果のデータや考察は本研究におおいに資すると思われる。第4に、本研究に関連して、北海道・札幌市と中国海南島・海口市三亜市に調査研究を行なった。沖縄開発庁は北海道開発庁をモデルにして設立したと言われているが、北海道開発庁やその振興開発政策の専門家である北海道大学の山崎幹根教授に面接調査をして、こうした経緯や両者の類似点や相違点などについて貴重な意見を伺った。また海南島は平成9(1997)年以来、今日まで「島嶼観光政策フォーラム」を通じて、沖縄や済州等やバリ島と観光政策に関して協力提携を行なってきた実績がある。海南島の開発政策や観光政策はわが国でほとんど知られていないので、現地調査を通じて海南大学観光学部の教授たちや海南州観光発展局の部長等から貴重な証言を得た。第1に、前年度に引き続き、沖縄振興政策に関する最新の著書や報告書の資料収集を行った。また北海道開発振興政策の観点から、沖縄の経済振興政策と比較した最新の資料収集を行った。9月より1年間、早稲田大学から特別研究期間(サバティカル)の機会を与えられたので、比較研究対象であるスコットランドの経済振興策や、権限移譲(Devolution)独立住民投票に関する資料収集も行った。第2に、前年度に実施した沖縄開発庁とその経済振興開発政策の評価等に関するアンケート調査の集計結果をもとに、分析作業を行った。第3に、仲井間県政の下で、沖縄県の経済振興計画を主導した上原良幸前副知事に面接調査を行い、これまで沖縄開発庁や内閣府が実施してきた沖縄振興開発政策の評価について見解を鞘腫した。そして研究代表者が平成15年度から16年度にかけて、科研費や早稲田大学の特定課題研究助成費を通じて、沖縄開発庁の設立当初から関わってきた関係者への面接調査結果をオーラル・ヒストリーとして彼らの証言を記録してきたが、本研究の初年度の4名と今年度の上原氏の証言を集大成して、「沖縄開発庁および沖縄振興開発政策オーラル・ヒストリー」(1)を作成した。こうしたオーラル・ヒストリーはこれまで存在せず、後学の貴重な参考資料となると思われる。第4に、9月よりエディンバラ大学の客員研究員として招聘されたので、へお瀬尾26年9月に実施されたスコットランド独立をめぐる住民投票で、スコットランドの地域経済政策がどのように論じられたのか、スコットランド選挙管理委員会の公式のオブザーバーに指名されたので、現地の人々や大学教授への面接調査やマスメディアの報道を通じて考察・分析した。またオクスフォードやロンドンの研究者にもこれらの問題にイングランドや連合王国(UK)の視点から、面接調査を行った。第1に、2001年沖縄開発庁の廃止後、内閣府の沖縄担当部局が国の沖縄振興策をになってきたが、本研究の締めくくりとしてそのトップであった内閣府の沖縄振興局長および政策統括官を務めた安達俊雄氏に面接調査を行い、その証言をオーラルヒストリーに収録した。第2に、2014(平成26)年9月から2015(平成27)年9月まで早稲田大学から特別研究機関を与えられたので、スコットランドの経済振興策や自治・独立の動向に関する資料収集を行った。とくに2015年5月には英国下院総選挙が実施されたので、エディンバラ大学客員研究員の立場で選挙運動の期間中に、スコットランドに関する英国政府のスコットランド省を通じた経済振興策の実情とそれに対するスコットランド国民の評価について考察した。また前年のスコットランド独立投票の結果がこの総選挙にどのような影響を及ぼしたのかについても分析した。そして同年7月、国際交流基金に依頼された「日英両国における中央と地方の政府間関係」と題したロンドン・セミナーで、スコットランドと沖縄の比較研究を中心に基調講演し、スコットランド・スターリング大学のケアニー教授やオクスフォード大学ストックウィン名誉教授を含めた参加者と質疑応答をした。
KAKENHI-PROJECT-25380174
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沖縄開発庁とその沖縄振興開発政策の検証
第3に、帰国後、前年に続いて沖縄開発庁設立当初から今日まで、政府の沖縄振興政策に関わってきた主要人物の証言集である「沖縄開発庁および沖縄振興開発政策」の(2)と(3)を作成した。第4に、本研究の研究成果の一環として、2本の論文「沖縄開発庁及びその沖縄振興開発政策の検証」と「スコットランド独立リファレンダムと英国下院総選挙の考察」を、総政研ジャーナル第4号に掲載した。第5に、「スコットランドの独立住民投票とその後ー沖縄問題への教訓」と題して、早稲田大学や沖縄・琉球新報ホール、東アジア共同体研究所琉球・沖縄センターで公演した・本研究は沖縄開発庁の設立と廃止(1972年2001年)、1996年に沖縄県が提唱した国際都市形成構想への日本政府の対応、近年の沖縄振興政策の動向を中心に検証した。第1に、沖縄開発庁の設立から今日の沖縄振興政策に関わった15名の主要人物に面接調査し、その証言を3冊のオーラル・ヒストリー報告書としてまとめた。第2に、沖縄県内の全市町村長に対して、沖縄開発庁とその沖縄振興開発政策についてアンケート調査を実施し集計した。第3に、本研究の集大成として「沖縄開発庁及び沖縄振興開発政策の検証」「スコットランド独立リファレンダムと英国下院総選挙についての考察」と題した論文を『総政研』第4号に掲載した。前年度に引き続き、沖縄開発庁・沖縄振興開発政策に関して、新刊書や報告書が数多く刊行されたので、本研究に有効な資料収集ができた。北海道振興開発政策に関してもそれほど多くはないが、貴重な最新資料が入手できた。とくに海外の比較研究対象としてきたスコットランドの経済振興政策に関しては、運よく早稲田大学のサバティカルの期間を適用されたので、現地のエディンバラにて重要な資料を収集することができた。また研究代表者の研究蓄積の一環として、沖縄開発庁および沖縄振興開発政策に関係した重要人物の貴重な証言をオーラル・ヒストリーとしてまとめることができた。本年度は前半を(1)として刊行し、次年度に後半を(2)として刊行予定である。海外の研究として、スコットランドやウェールズの比較研究が、平成26年9月よりエディンバラ大学に招聘されたので、予想以上の研究成果を得ることができた。政治学沖縄開発庁および沖縄振興開発政策に関する重要人物のオーラル・ヒストリーの後半部分を(2)としてまとめる。本研究の研究成果を研究論文や講演で発表するとともに、研究報告書を作成する。平成25年度の研究実施計画に沿って、全体として計画通りに実施され、研究実績が蓄積された。まず第1に、計画通り、絶版となっている貴重な政府関係基礎資料を始め、研究目的のための資料収集が順調に進んでいる。第2に、研究代表者は平成15年度から16年度にかけて、科研費や早稲田大学の特定課題研究助成費を通じて、沖縄開発庁の設立当初から関わってきた関係者に対して面接調査を行ない、オーラル・ヒストリーとして彼らの証言を記録に残してきた。平成25年度の本研究実施計画に基づき、4名の中心人物の面接調査を実施することによって、さらにこの部分を補強することができた。第3に、計画通りに、本研究テーマに沿ったアンケート調査の準備と実施を沖縄県内全市町村対象に行なうことができた。
KAKENHI-PROJECT-25380174
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25380174
現代フランス語の位相的前置詞に関する統辞的・意味的研究
本研究は現代フランス語の空間表示に関する前置詞,特に位相的前置詞と呼ばれるa,dans,surの意味と用法を分析することを目的とした。本研究を扱った問題は,1.前置詞aを中心とした位相的前置詞の統辞的・意味的分析2.それらの前置詞によって導かれる状況補語に関わる諸問題の検討の二つに大別される.このうち,1.のうち前置詞aの意味に関する部分の研究結果を研究成果報告書として刊行した.電子化されたデータベースを利用した統計的分析については現在なお作業が進行中である. 2.に関する以下の問題については既に論文の形で発表済みである.(1)他動詞構文に用いられる位格(場所を表す状況補語)の持つ項指向性(2)位格と疑問視ouの対応関係(3)位格と道具格に見られる類似点と相違点本研究は現代フランス語の空間表示に関する前置詞,特に位相的前置詞と呼ばれるa,dans,surの意味と用法を分析することを目的とした。本研究を扱った問題は,1.前置詞aを中心とした位相的前置詞の統辞的・意味的分析2.それらの前置詞によって導かれる状況補語に関わる諸問題の検討の二つに大別される.このうち,1.のうち前置詞aの意味に関する部分の研究結果を研究成果報告書として刊行した.電子化されたデータベースを利用した統計的分析については現在なお作業が進行中である. 2.に関する以下の問題については既に論文の形で発表済みである.(1)他動詞構文に用いられる位格(場所を表す状況補語)の持つ項指向性(2)位格と疑問視ouの対応関係(3)位格と道具格に見られる類似点と相違点現代フランス語の空間表示に関する前置詞、特に類似した用法を持つa,dans,surの意味と用法の違いを、電子化されたデータベースなど大量の資料を調査することによって明らかにすることを目的とする三年計画の研究の初年度である。本年度は以上の作業を行った。1.前置詞の用法に関与するパラメータとして動詞、前置詞の目的語となる名詞(場所に関する意味を持つ名詞)、その名詞に付く限定詞の三つを取りあげ、それぞれの意味的分類を行った。2.フランスで出版された文学作品のテキストデータベースであるDISCOTEXT1を利用した試行的検索を行った。これは本格的な調査を始める前に、より有効な検索方法を検討するためである。以上の1.2.の作業を基に来年度は本格的な調査、分析にとりかかる予定である。3.関連する問題点として、他動詞構文で場所を表す前置詞句が持つ曖昧性について検討した。ここでいう曖昧さとは他動詞構文では前置詞句の表す場所が、主語の空間的位置づけを行う場合、直接目的語の空間的位置づけを行う場合、主語と直接目的語の両方の空間的位置づけを行うと考えられる場合の三通りがあるという意味である。このように一般的に曖昧であると考えられるにも関わらず、なぜ特定の文においては一定の解釈が可能になるのか、その解釈にはどのような要因が関わっているのかという点について検討した。この結果は近く公表される予定である。現代フランス語の空間表示に関する前置詞、特に類似した用法を持つa,dans,surの意味と用法の違いを、電子化されたデータベースなど大量の資料を調査することによって明らかにすることを目的とする三年計画の研究の二年目である。本年度は以下の作業を行った。1.フランスで出版された文学作品のテキストデータベースであるDISCOTEXT1を利用した検索を部分的に開始した。2.文学作品以外のデータとして、フランスの雑誌から例文検索を随時行った。OCRを用いた体系的な入力と検索の方法についても検討した。3.前置詞の用法と関連する問題点として、特に以下の点について検討を行った。(1)他動詞構文に用いられる場所を表す状況補語が持つ曖昧さ(主語で表されるものの位置づけ、直接目的語で表されるものの位置づけ、その両方の位置づけ)。(2)一つの文中に二つ以上の場所の状況補語が共起する際に見られる制約。(3)場所の状況補語と疑問詞ouの対応関係。(4)場所を表す要素と道具を表す要素の類似点と相違点以上の研究結果は最終報告の際にまとめて発表する予定である。現代フランス語の空間表示に関する前置詞,特に類似した性格を持つa,dans,surの意味と用法の分析を目的とする三年計画の研究の最終年度である。本年度は以下の作業を行った.1.電子化されたデータベースを用いた前置詞の用法の分析この作業は現在進行中である.最終報告の際に結果を発表したい.2.前置詞の用法と関連する諸問題の検討昨年度に引き続き,以下の点に関する研究を行った.(1)他動詞構文に用いられる位格(場所を表す状況補語)の持つ頃指向性(2)位格と疑問詞ouの対応関係(3)位格と道具格に見られる類似点と相違点(4)一つの文中に二つの位格が共起する際に見られる制約(5)位格の解釈に語順が及ぼす影響これらの研究結果については一部発表済みであるが,最終報告の際に改めてまとめて発表する予定である.
KAKENHI-PROJECT-06610453
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06610453
塩基性アミノポリマー内包Yolk-shell構造触媒の創製と新奇触媒機能の発現
中空シリカの中空空間に種々の触媒活性種を内包した構造体(Yolk-shell構造体)は、i)巨大ゲスト分子の内包、ii)内包した触媒活性種の凝集抑制・触媒再利用性の向上、iii)シェル構造の精密制御による分子選択性の付与といった、高度な触媒を設計する上での魅力的な数々の特性を有している。本研究では、中空シリカの中空空間に金属ナノ粒子とともに塩基性アミノポリマーを内包し、中空シリカのナノ空間と塩基性アミノポリマーによって誘起される特殊反応場を有するYolk-shell構造触媒の開発と触媒反応への応用を行った。アミノポリマーの一つであるpoly(ethyleneimine)(PEI)と金属ナノ粒子の凝集体を鋳型とすることで、金属ナノ粒子とPEIが内包された中空シリカ構造体を一段で合成する手法を開発した。水素化能を有するPdナノ粒子とPEIを内包した中空シリカ構造体をアルキンの部分水素化反応に応用したところ、アミノポリマーの強い被毒作用により高いアルケン選択性を示すことを見出した。また、シリカシェルの保護効果により触媒性能の低下なく繰り返し利用できることも確かめられた。アミノポリマーの種類や分子量が構造・触媒性能に与える影響、X線や放射光を利用した触媒活性種の局所構造・電子状態についても明らかにしている。また、アミノポリマーはアニオン性分子に対する吸着・濃縮作用を有している。Pdナノ粒子とPEIを内包した中空シリカ構造体をCO2の水素化反応に応用したところ、100°C、2.0 MPaの条件下において定量的にCO2をギ酸へと変換することができた。最適なアミノポリマーの選択、PdとAgとの合金化などにより活性は著しく向上し、22hで触媒回転数(TON) 2500以上という既存の触媒を凌駕する活性が発現することを見出した。平成30年度当初の目標であった、1)アミノポリマー内包Yolk-shell構造触媒の開発、2)触媒反応への応用を実施することができた。電子顕微鏡や各種分光分析手法を駆使して粒子形成過程を追跡することで、Yolk-shell構造体の形成メカニズムも明らかにしている。ターゲット反応の一つである“アルキンの部分水素化反応"に関しては反応を実施するだけでなく、当初平成31年度に実施予定であったX線や放射光を利用した測定による触媒活性種の局所構造・電子状態の解析についても踏み込んで実施することができ、得られた成果は既にアメリカ化学会ACS Catalysis誌に発表している。もう一つのターゲット反応である“CO2の水素化によるギ酸合成反応"に関しても、アミノポリマーの最適化、Pdナノ粒子の合金化を検討することで、当初の目標であった「100°C以下、H2 10気圧以下での効率的ギ酸合成」を既に達成しており、今後、触媒構造の最適化により更なる触媒活性の向上が見込める。以上の理由から、当初の計画以上に進展していると判断できる。平成31年度の研究実施計画に沿い、各種分光分析を通じた触媒の詳細なキャラクタリゼーションを行うとともに、反応メカニズムの解明と反応中にアミノポリマーが果たす役割(吸着濃縮効果、電子供与効果、塩基助触媒効果等)について明らかにする。特に、その場X線分析を用いた金属活性種の構造変化や、その場赤外分光分析を用いた基質(CO2)吸脱着・反応過程の追跡を行う。量子化学計算を利用した金属ナノ粒子表面へのアミノポリマーの配位状態や、金属ナノ粒子の電荷密度の変化、反応基質の吸着・配位状態のシミュレーションについても検討を行う。これら結果と、触媒活性・構造との相関を見出し、更に高活性な触媒開発につなげるとともに、アミノポリマーを鍵物質とするYolk-shell構造触媒の設計論を体系化する。また、平成30年度に得られた結果より、中空シリカ触媒はCO2からのギ酸合成反応に活性を示すものの、塩基性水溶液中で反応を行うためシリカシェルの溶解に伴う構造および活性劣化が課題として浮き彫りとなった。そこで、シリカシェル形成時にSi源として有機シランカップリング剤を混合することでシェルに有機官能基を導入し、耐アルカリ性・再利用性を向上させることで実用化に資するCO2還元触媒の創製を目指す。更に、Ptナノ粒子とアミノポリマーを内包した中空シリカ触媒を合成し、より高難度なCO2水素化による低級アルコール(メタノール、エタノール)合成反応についても検討を行う。中空シリカの中空空間に種々の触媒活性種を内包した構造体(Yolk-shell構造体)は、i)巨大ゲスト分子の内包、ii)内包した触媒活性種の凝集抑制・触媒再利用性の向上、iii)シェル構造の精密制御による分子選択性の付与といった、高度な触媒を設計する上での魅力的な数々の特性を有している。本研究では、中空シリカの中空空間に金属ナノ粒子とともに塩基性アミノポリマーを内包し、中空シリカのナノ空間と塩基性アミノポリマーによって誘起される特殊反応場を有するYolk-shell構造触媒の開発と触媒反応への応用を行った。アミノポリマーの一つであるpoly(ethyleneimine)(PEI)と金属ナノ粒子の凝集体を鋳型とすることで、金属ナノ粒子とPEIが内包された中空シリカ構造体を一段で合成する手法を開発した。水素化能を有するPdナノ粒子とPEIを内包した中空シリカ構造体をアルキンの部分水素化反応に応用したところ、アミノポリマーの強い被毒作用により高いアルケン選択性を示すことを見出した。また、シリカシェルの保護効果により触媒性能の低下なく繰り返し利用できることも確かめられた。
KAKENHI-PROJECT-18K14056
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塩基性アミノポリマー内包Yolk-shell構造触媒の創製と新奇触媒機能の発現
アミノポリマーの種類や分子量が構造・触媒性能に与える影響、X線や放射光を利用した触媒活性種の局所構造・電子状態についても明らかにしている。また、アミノポリマーはアニオン性分子に対する吸着・濃縮作用を有している。Pdナノ粒子とPEIを内包した中空シリカ構造体をCO2の水素化反応に応用したところ、100°C、2.0 MPaの条件下において定量的にCO2をギ酸へと変換することができた。最適なアミノポリマーの選択、PdとAgとの合金化などにより活性は著しく向上し、22hで触媒回転数(TON) 2500以上という既存の触媒を凌駕する活性が発現することを見出した。平成30年度当初の目標であった、1)アミノポリマー内包Yolk-shell構造触媒の開発、2)触媒反応への応用を実施することができた。電子顕微鏡や各種分光分析手法を駆使して粒子形成過程を追跡することで、Yolk-shell構造体の形成メカニズムも明らかにしている。ターゲット反応の一つである“アルキンの部分水素化反応"に関しては反応を実施するだけでなく、当初平成31年度に実施予定であったX線や放射光を利用した測定による触媒活性種の局所構造・電子状態の解析についても踏み込んで実施することができ、得られた成果は既にアメリカ化学会ACS Catalysis誌に発表している。もう一つのターゲット反応である“CO2の水素化によるギ酸合成反応"に関しても、アミノポリマーの最適化、Pdナノ粒子の合金化を検討することで、当初の目標であった「100°C以下、H2 10気圧以下での効率的ギ酸合成」を既に達成しており、今後、触媒構造の最適化により更なる触媒活性の向上が見込める。以上の理由から、当初の計画以上に進展していると判断できる。平成31年度の研究実施計画に沿い、各種分光分析を通じた触媒の詳細なキャラクタリゼーションを行うとともに、反応メカニズムの解明と反応中にアミノポリマーが果たす役割(吸着濃縮効果、電子供与効果、塩基助触媒効果等)について明らかにする。特に、その場X線分析を用いた金属活性種の構造変化や、その場赤外分光分析を用いた基質(CO2)吸脱着・反応過程の追跡を行う。量子化学計算を利用した金属ナノ粒子表面へのアミノポリマーの配位状態や、金属ナノ粒子の電荷密度の変化、反応基質の吸着・配位状態のシミュレーションについても検討を行う。これら結果と、触媒活性・構造との相関を見出し、更に高活性な触媒開発につなげるとともに、アミノポリマーを鍵物質とするYolk-shell構造触媒の設計論を体系化する。また、平成30年度に得られた結果より、中空シリカ触媒はCO2からのギ酸合成反応に活性を示すものの、塩基性水溶液中で反応を行うためシリカシェルの溶解に伴う構造および活性劣化が課題として浮き彫りとなった。そこで、シリカシェル形成時にSi源として有機シランカップリング剤を混合することでシェルに有機官能基を導入し、耐アルカリ性・再利用性を向上させることで実用化に資するCO2還元触媒の創製を目指す。更に、Ptナノ粒子とアミノポリマーを内包した中空シリカ触媒を合成し、より高難度なCO2水素化による低級アルコール(メタノール、エタノール)合成反応についても検討を行う。
KAKENHI-PROJECT-18K14056
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歯髄体液調整機構に関する形態学的研究-歯髄内神経分布における免疫電子顕微鏡的アプローチ-
歯髄の血管は豊富な自律神経線維により神経支配を受け、血流調整が行われ、結果として歯髄中の体液調整が行われていると想像される。従来毛細血管および毛細血管後細静脈への神経分布についてはほとんど知られていなかったが、今回の研究成果により、歯髄内の血管は動脈ばかりでなく、毛細血管さらには静脈も自律神経線維の直接の支配を受けていることが明らかとなった。この際、交感神経からの神経伝達物質が放出されると以下のカスケードが働くものと想像される。すなわち、神経伝達物質は平滑筋細胞に直接働き、電位依存性のカルシウムチャンネルを開口するかもしくは、Gタンパクを介したシグナル伝達機構によりフォスフォリバーゼCの活性化にともなうIP_3の細胞内への拡散および滑面小胞体からのカルシウムイオンの放出かのいずれかの機構による細胞内カルシウムイオン濃度上昇が引き起こされ、結果として平滑筋細胞が収縮するという一連の反応である。平滑筋が収縮すると、血管腔は狭小化し、血流量の減少が引き起こされる。平滑筋細胞の先端には指状の無数の突起が血管内皮細胞外側壁に錨を降ろすように接着しているという今回の走査型電子顕微鏡観察結果から、平滑筋が収縮すると、あたかもゴム管をひもで縛るような仕組みで血管腔の狭小化が起こることが示唆された。一方、副交感神経系の神経伝達物質として考えられるP物質の神経線維中の存在が今回の研究成果として免疫電子顕微鏡研究により明らかにされた。このことから、以下のカスケードにより血管腔の拡大が起こり、血流量の増大が起こるものと想像された。すなわち、副交感神経系に作用を及ぼす神経伝達物質は、そのレセプターを有する血管内皮細胞に働き、カルシウムイオンの上昇を引き起こす。内皮細胞内で上昇したカルシウムイオンはカルシウム結合タンパクであるカルモデュリンに結びつき、このカルシウム・カルモデュリン複合体は内皮細胞中の一酸化窒素合成酵素の活性化に働き、合成された一酸化窒素は内皮細胞から周囲の血管平滑筋に拡散する。一酸化窒素は、血管収縮の際に平滑筋細胞内に広がったカルシウムイオンの波に対して抑制性に働き、結果として平滑筋の弛緩、それにともなう、血管腔の拡大が起こるのであろう。歯髄の血管は豊富な自律神経線維により神経支配を受け、血流調整が行われ、結果として歯髄中の体液調整が行われていると想像される。従来毛細血管および毛細血管後細静脈への神経分布についてはほとんど知られていなかったが、今回の研究成果により、歯髄内の血管は動脈ばかりでなく、毛細血管さらには静脈も自律神経線維の直接の支配を受けていることが明らかとなった。この際、交感神経からの神経伝達物質が放出されると以下のカスケードが働くものと想像される。すなわち、神経伝達物質は平滑筋細胞に直接働き、電位依存性のカルシウムチャンネルを開口するかもしくは、Gタンパクを介したシグナル伝達機構によりフォスフォリバーゼCの活性化にともなうIP_3の細胞内への拡散および滑面小胞体からのカルシウムイオンの放出かのいずれかの機構による細胞内カルシウムイオン濃度上昇が引き起こされ、結果として平滑筋細胞が収縮するという一連の反応である。平滑筋が収縮すると、血管腔は狭小化し、血流量の減少が引き起こされる。平滑筋細胞の先端には指状の無数の突起が血管内皮細胞外側壁に錨を降ろすように接着しているという今回の走査型電子顕微鏡観察結果から、平滑筋が収縮すると、あたかもゴム管をひもで縛るような仕組みで血管腔の狭小化が起こることが示唆された。一方、副交感神経系の神経伝達物質として考えられるP物質の神経線維中の存在が今回の研究成果として免疫電子顕微鏡研究により明らかにされた。このことから、以下のカスケードにより血管腔の拡大が起こり、血流量の増大が起こるものと想像された。すなわち、副交感神経系に作用を及ぼす神経伝達物質は、そのレセプターを有する血管内皮細胞に働き、カルシウムイオンの上昇を引き起こす。内皮細胞内で上昇したカルシウムイオンはカルシウム結合タンパクであるカルモデュリンに結びつき、このカルシウム・カルモデュリン複合体は内皮細胞中の一酸化窒素合成酵素の活性化に働き、合成された一酸化窒素は内皮細胞から周囲の血管平滑筋に拡散する。一酸化窒素は、血管収縮の際に平滑筋細胞内に広がったカルシウムイオンの波に対して抑制性に働き、結果として平滑筋の弛緩、それにともなう、血管腔の拡大が起こるのであろう。研究代表者はこれまでに歯髄体液調整機構を主テーマに種々の研究報告を行ってきた。今回の研究期間においては、このうち歯髄内の血流調整を支配する無髄神経線維と歯髄内血管系との関連性を免疫組織化学的手法と酵素消化法を用いて明らかにするつもりである。このうち歯髄を水酸化カリウムを含む酵素で処理後に走査電顕で観察すると、歯髄内に進入した無髄神経線維は動脈あるいは静脈壁を走行し至るところで、側枝を派出していた。この枝はそれぞれ血管外膜から中膜に入り込み動脈の場合平滑筋と内皮細胞を静脈の場合周細胞と内皮細胞を直接支配していた。毛細血管の場合、数多くの神経線維の終末枝が周細胞壁に付着していた。この結果は現在、米国解剖学会機関誌であるAnatomical Record誌に投稿中である。一方免疫組織化学法では1次抗体に種々の血管作動性ペプチドに対する抗体およびニューロンマーカーであるPGP9.5を用いた。それによると、歯髄内の無髄神経線維は至ところにいわゆるヴァリコティー構造を有していた。
KAKENHI-PROJECT-09671859
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歯髄体液調整機構に関する形態学的研究-歯髄内神経分布における免疫電子顕微鏡的アプローチ-
この構造を電子顕微鏡で観察するとsynaptic vesiclesを豊富に含み、その放出像を思わせる開口部も多数観察された。これらの結果は歯髄内無髄神経線維が関接的にも血流調整を行っていることを示唆するものであろう。この結果は今年度発行のEuropen Jorunal of Oral Sciences誌に掲載予定である。以上のことから歯髄内の血管系は無髄神経線維により間接的にもまた、直接的にも支配されていることが明らかになった。このことは歯髄内の血流が(より広く考えると歯髄内の体液が)これらの無髄神経線維により非常に微少な範囲において調節されていることを物語るものであろう。歯髄の血管は豊富な自律神経線維により神経支配を受け、血流調整が行われ、結果として歯髄中の体液調整が行われていると想像される。従来毛細血管および毛細血管後細静脈への神経分布についてはほとんど知られていなかったが、今回の研究成果により、歯髄内の血管は動脈ばかりでなく、毛細血管さらには静脈も自律神経線維の直接の支配を受けていることが明らかとなった。この際、交感神経からの神経伝達物質が放出されると以下のカスケードが働くものと想像される。すなわち、神経伝達物質は平滑筋細胞に直接働き、電位依存性のカルシウムチャンネルを開口するかもしくは、Gタンパクを介したシグナル伝達機構によりフォスフォリパーゼCの活性化にともなうIP_3の細胞内への拡散および滑面小胞体からのカルシウムイオンの放出かのいずれかの機構による細胞内カルシウムイオン濃度上昇が引き起こされ、結果として平滑筋細胞が収縮するという一連の反応である。平滑筋が収縮すると、血管腔は狭小化し、血流量の減少が引き起こされる。平滑筋細胞の先端には指状の無数の突起が血管内皮細胞外側壁に錨を降ろすように接着しているという今回の走査型電子顕微鏡観察結果から、平滑筋が収縮すると、あたかもゴム管をひもで縛るような仕組みで血管腔の狭小化が起こることが示唆された。一方、副交惑神経系の神経伝達物質として考えられるP物質の神経線維中の存在が今回の研究成果として免疫電子顕微鏡研究により明らかにされた。このことから、以下のカスケードにより血管腔の拡大が起こり、血流量の増大が起こるものと想像された。すなわち、副交感神経系に作用を及ぼす神経伝達物質は、そのレセプターを有する血管内皮細胞に働き、カルシウムイオンの上昇を引き起こす。内皮細胞内で上昇したカルシウムイオンはカルシウム結合タンパクであるカルモデュリンに結びつき、このカルシウム-カルモデュリン複合体は内皮細胞中の一酸化窒素合成酵素の活性化に働き、合成された一酸化窒素は内皮細胞から周囲の血管平滑筋に拡散する。一酸化窒素は、血管収縮の際に平滑筋細胞内に広がったカルシウムイオンの波に対して抑制性に働き、結果として平滑筋の弛緩、それにともなう、血管腔の拡大が起こるのであろう。
KAKENHI-PROJECT-09671859
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糖尿病の開示・非開示に関する意思決定支援ツール・ガイドの開発
わが国における糖尿病は増加傾向にある.糖尿病の重症合併症の予防,QOLの低下を防ぐためには,良好な血糖コントロールをめざした適切なセルフマネジメントが重要であり,患者教育の必要性は広く知られている.糖尿病の(自己)開示は患者のセルフマネジメントに影響する要因の一つと考えられる.本研究の目的は糖尿病教育・看護に携わる看護師の面接調査から,糖尿病の(自己)開示の意思決定に関する看護支援の実態と課題を明らかにし,支援ツール・ガイド開発の基礎資料を得ることであった.結果,多くの看護師は糖尿病を他者に(自己)開示していない故に病気のセルフマネジメント行動を優先できないという多くの事例を経験していた.看護師は糖尿病の(自己)開示の意思決定支援の必要性を感じていながらも,その支援に関する情報不足から生じる看護師自身の迷いや患者自身の選択を尊重したいという思いから,患者に対して糖尿病の(自己)開示を勧めたり,それに関しての教育や支援をしたりすることをせず,患者本人が選択した自己開示状況に応じて対処すべき必要なことに対し糖尿病教育を試みる傾向がみられた.しかしながら,多くの看護師は「低血糖症状を頻回に起こす患者」「高齢者」「独居者」「1型糖尿病」「危険な業務に従事する患者」などについては他者に病気を開示した方がよいと考えていた.本年度は,先行研究と本研究に基づき,「糖尿病の自己開示における意思決定支援」ツール・ガイドの内容を検討し,患者が糖尿病の(自己)開示のメリットとデメリットを理解し,その上で患者本人が意識的に意思決定するための「患者版」と,患者への意思決定支援に向けた「医療者版」の糖尿病の自己開示における意思決定支援ツール・ガイドを作成し,WEB上で使用できるようにした(http://www.nursing.osakafu-u.ac.jp/dm-selfdisclosure/).わが国における糖尿病は増加傾向にある。糖尿病の重症合併症の予防、QOLの低下を防ぐためには、良好な血糖コントロールを目指したセルフマネジメントが必要である。糖尿病の疾病の開示、非開示の選択はセルフマネジメント行動に影響する要因の一つとして重要であると考える。しかしながら、糖尿病の疾病開示・非開示の意思決定に関する看護師の関わりやその教育の実態は明らかではない。本研究は、糖尿病の開示・非開示の意思決定に関する看護師の支援の実態と課題を明らかにし、最終的には糖尿病の開示・非開示に関する意思決定支援ツール・ガイドを開発することを目的とする。本年度の研究計画は、本研究を実施するための準備段階として、文献検討を行い、糖尿病の疾病開示・非開示の意思決定に関する看護師の支援の実態と課題を明らかにするための面接調査のインタビューガイドを作成し、研究倫理審査委員会の承認を得ることである。面接調査のインタビューガイドでは、糖尿病開示・非開示の意思決定に関する指導に関する体験・経験、意思決定に携わって生じた問題や葛藤、糖尿病の開示・非開示の意思決定に関する看護支援の課題、看護師が果たす役割などの内容について調査することにした。臨床での看護師を対象とする面接調査にむけて、所属機関での倫理審査委員会の手続きを行った。その結果、倫理審査委員会の承認を得ることができた。このことにより、計画に基づき、看護師を対象とした面接調査の実施にむけて準備が整ったと考える。わが国における糖尿病は増加傾向にある。糖尿病の重症合併症の予防、QOLの低下を防ぐためには、良好な血糖コントロールをめざした適切なセルフマネジメントが重要であり、患者教育の必要性は広く知られている。糖尿病の(自己)開示は患者のセルフマネジメントに影響する要因の一つと考えられる。しかしながら、糖尿病の開示・非開示の意思決定に関する看護師の関わりやその教育の実態は明らかではない。本研究の最終的な目的は糖尿病の開示・非開示に関する意思決定支援ツール・ガイドを開発することであるが、今年度の目的は、そのための基礎資料を得るために、糖尿病の開示・非開示の意思決定に関する看護師の関わりや支援の実態を明らかにすることである。本年度の研究では、糖尿病教育・看護に2年以上携わり、研究について同意を得られた24名(便宜的方法で抽出された近畿周辺の病院や医院に勤務する看護師)に対し、半構成的面接調査を施行した。調査内容は、(1)人口統計学的変数:年代、性別、(2)対象者の特性:職種、糖尿病教育・看護に携わった年数、(3)糖尿病の開示・非開示、その意思決定への看護師の関わりや支援、教育に関する体験や思考などについてである。現在、録音したインタビューのデータについて逐語録を作成中である。今後、作成した逐語録より、意味が損なわないように、内容をコード化し、カテゴライズし、質的に分析する予定である。研究協力予定施設の日程的な都合および研究参加者の確保の都合で、データ収集期間を延長せざるを得なかったため。しかし、予定していた研究参加者24名の半構成的面接調査は終了した。予定では、本年度はデータの分析・結果のまとめまで行う予定であったが、計画どおりできなかった。そのため、予定より「遅れている」と評価した。わが国における糖尿病は増加傾向にある。糖尿病の重症合併症の予防、QOLの低下を防ぐためには、良好な血糖コントロールをめざした適切なセルフマネジメントが重要であり、患者教育の必要性は広く知られている。糖尿病の(自己)開示は患者のセルフマネジメントに影響する要因の一つと考えられる。しかしながら、糖尿病の開示・非開示の意思決定に関する看護師の関わりやその教育の実態は明らかではない。
KAKENHI-PROJECT-26463315
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26463315
糖尿病の開示・非開示に関する意思決定支援ツール・ガイドの開発
今年度は、昨年度実施した糖尿病の開示・非開示の意思決定支援に関する看護師24名のインタビュー調査から、糖尿病の(自己)開示に関する看護師の考えと患者に対する意思決定支援の実態とその課題などを明らかにし、先行研究を参考に、糖尿病の開示・非開示に関する意思決定支援ツール、意思決定ガイドの内容を検討する予定であった。しかし、現在、インタビュー調査の分析途中である。インタビュー調査の対象者24名のうち、分析を終えた13名の看護師のインタビュー結果から、看護師は糖尿病患者に患者の身体上の安全(低血糖のリスク対策)と糖尿病のセルフマネジメント行動をしやすくするために周囲の人的サポートを得るとういう観点から、糖尿病の(自己)開示をすることが望ましいと考えていることがわかった。しかし、糖尿病の開示・非開示の選択に関しては、患者自身の考えや思いを尊重したいと考えており、看護師が患者に糖尿病のセルフマネジメントのために、病気の(自己)開示を勧めるという患者教育はしていなかった。多くの看護師は、「低血糖を頻回におこしている患者」、「一人暮らしの患者」、「高齢者」、「1型糖尿病患者」、「職業上リスクが高いと考える患者」等については糖尿病の(自己)開示をすることが特に望ましいと考えていた。しかし、病気の開示・非開示に関する積極的な意思決定支援や患者教育を行っている看護師は少ないという実態が明らかになった。研究協力予定施設の日程的な都合および研究参加者の確保の都合で、データ収集期間を延長せざるを得なかったため、全体的に研究計画が遅れている。今年度は半構成的面接調査結果をまとめ、質的に分析し、その後、先行研究やオタワ意思決定ガイド(O'Connor A.,2005)等を参考に、糖尿病の開示・非開示に関する意思決定支援ツール、意思決定ガイドの内容を検討する予定であったが、分析に時間がかかっており、計画どおりできなかった。そのため、予定より「遅れている」と評価した。わが国における糖尿病は増加傾向にある。糖尿病の重症合併症の予防、QOLの低下を防ぐためには、良好な血糖コントロールをめざした適切なセルフマネジメントが重要であり、患者教育の必要性は広く知られている。糖尿病の(自己)開示は患者のセルフマネジメントに影響する要因の一つと考えられる。しかしながら、糖尿病の開示・非開示の意思決定に関する看護師の関わりやその教育の実態は明らかではない。今年度は、糖尿病の開示・非開示の意思決定支援に関するインタビュー調査対象の看護師11名のデータを分析し、昨年度分析終了した13名の結果と合わせて、糖尿病の開示・非開示の意思決定に関する看護師の支援の実態と看護師の課題などについて考察した。その結果、昨年と同様、看護師は糖尿病患者に患者の身体上の安全(低血糖のリスク対策)と糖尿病のセルフマネジメント行動をしやすくするために周囲の人的サポートを得るという観点から、糖尿病の(自己)開示をすることが望ましいと考えていることがわかった。しかしながら、看護師は、糖尿病の開示・非開示の選択に関して、患者自身の考えや思いを尊重したいとの考えから、患者に対し糖尿病のセルフマネジメントのために病気の(自己)開示を積極的に勧めるという意思決定支援や患者教育はしていないという実態が明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-26463315
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26463315
葉酸多分岐修飾シクロデキストリンによる腫瘍細胞選択的抗癌剤キャリアの構築
本研究では、腫瘍細胞選択的な細胞障害性を有する抗癌剤およびキャリアを構築するために、メチル-β-シクロデキストリン(M-β-CyD)に癌標的リガンドである葉酸(FA)を修飾したFAn-M-β-CyDを調製した。種々検討した結果、FA1-M-β-CyDは、優れた殺細胞効果およびオートファジー誘導能を有することが明らかとなった。さらに、FA1-M-β-CyDは抗癌剤ドキソルビシン(DOX)と安定な複合体を形成し、癌細胞内に取り込まれた後、DOXの殺細胞効果を増強させることが示唆された。本研究の目的は、葉酸多分岐修飾シクロデキストリンを用いて腫瘍細胞選択的な細胞障害性を有する抗癌剤デリバリー用キャリアを構築することである。即ち、腫瘍細胞で発現が上昇する脂質マイクロドメイン(ラフト)との相互作用により抗腫瘍効果が期待されるメチル-β-シクロデキストリン(M-β-CyD)を用いて、新たに葉酸多分岐修飾M-β-CyDを調製し、腫瘍細胞上に高発現する葉酸レセプター(FR)を特異的に認識する腫瘍細胞選択的な抗癌剤キャリアを構築する。さらに、抗癌剤ドキソルビシン(DOX)をFA-M-β-CyDに包接または結合させることにより、腫瘍細胞選択的抗癌剤デリバリー能を付与させる。本年度は、葉酸多分岐修飾M-β-CyD合成の前段階として、葉酸を1置換したFA-M-β-CyDを調製し、そのDOX包接能、FR発現癌細胞選択的な殺細胞効果について検討した。FA-M-β-CyDとDOXの相互作用を蛍光スペクトル法により検討し、Scottの式から安定度定数を算出したところ、約3.0x10の5乗と極めて高い値が得られた。一般に薬物とCyDとの安定度定数が10の4乗5乗以上あれば、血中でも安定な複合体を維持し、体内動態を制御可能であることから、FA-M-β-CyDは静脈内投与後もDOXと安定な複合体維持し、血中を循環する可能性が示唆された。さらに、ヒト口腔がん細胞由来KB細胞(FR高発現)に対して、DOX単独よりもDOX/FA-M-β-CyD複合体は優れた殺細胞効果を示した。また、DOX/FA-M-β-CyD複合体のKB細胞における殺細胞効果は、FR競合阻害剤である葉酸の添加により、有意に抑制されることが明らかとなった。これらの結果より、FA-M-β-CyDはFR高発現細胞選択的な抗がん剤キャリアとして有用である可能性が示唆された。今後、in vivo抗腫瘍効果を検討する必要がある。また、更なる包接能の向上および腫瘍細胞選択的の向上を企図して、葉酸を多分岐したM-β-CyDの調製を行う必要がある。本研究の目的は、葉酸多分岐修飾シクロデキストリンを用いて腫瘍細胞選択的な細胞障害性を有する抗癌剤デリバリー用キャリアを構築することである。即ち、腫瘍細胞で発現が上昇する脂質マイクロドメイン(ラフト)との相互作用により抗腫瘍効果が期待されるメチル-β-シクロデキストリン(M-β-CyD)を用いて、新たに葉酸多分岐修飾M-β-CyDを調製し、腫瘍細胞上に高発現する葉酸レセプター(FR)を特異的に認識する腫瘍細胞選択的な抗癌剤キャリアを構築する。さらに、抗癌剤ドキソルビシン(DOX)をFA-M-β-CyDに包接または結合させることにより、腫瘍細胞選択的抗癌剤デリバリー能を付与させる。本年度は、葉酸多分岐修飾M-β-CyD合成の前段階として、葉酸を1置換したFA-M-β-CyDを調製し、そのDOX包接能、FR発現癌細胞選択的な殺細胞効果について検討した。FA-M-β-CyDとDOXの相互作用を蛍光スペクトル法により検討し、Scottの式から安定度定数を算出したところ、約3.0x10の5乗と極めて高い値が得られた。一般に薬物とCyDとの安定度定数が10の4乗10の5乗以上あれば、血中でも安定な複合体を維持し、体内動態を制御可能であることから、FA-M-β-CyDは静脈内投与後もDOXと安定な複合体維持し、血中を循環する可能性が示唆された。さらに、ヒト口腔がん細胞由来KB細胞(FR高発現)に対して、DOX単独よりもDOX/FA-M-β-CyD複合体は優れた殺細胞効果を示した。また、DOX/FA-M-β-CyD複合体のKB細胞における殺細胞効果は、FR競合阻害剤である葉酸の添加により、有意に抑制されることが明らかとなった。これらの結果より、FA-M-β-CyDはFR高発現細胞選択的な抗がん剤キャリアとして有用である可能性が示唆された。今後、in vivo抗腫瘍効果を検討する必要がある。また、更なる包接能の向上および腫瘍細胞選択的の向上を企図して、葉酸を多分岐したM-β-CyDの調製を行う必要がある。本研究の目的は、葉酸多分岐修飾シクロデキストリンを用いて腫瘍細胞選択的な細胞障害性を有する抗癌剤デリバリー用キャリアを構築することである。即ち、腫瘍細胞で発現が上昇する脂質マイクロドメイン(ラフト)との相互作用により抗腫瘍効果が期待されるメチル-β-シクロデキストリン(M-β-CyD)を用いて、新たに葉酸多分岐修飾M-β-CyDを調製し、腫瘍細胞上に高発現する葉酸レセプター(FR)を特異的に認識する腫瘍細胞選択的な抗癌剤キャリアを構築する。
KAKENHI-PROJECT-25870537
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25870537
葉酸多分岐修飾シクロデキストリンによる腫瘍細胞選択的抗癌剤キャリアの構築
さらに、抗癌剤ドキソルビシン(DOX)をFA-M-β-CyDに包接または結合させることにより、腫瘍細胞選択的抗癌剤デリバリー能を付与させる。本年度は、葉酸多分岐修飾M-β-CyD合成の前段階として、葉酸を1置換したFA-M-β-CyDを調製し、そのDOX包接能、FR発現癌細胞選択的な殺細胞効果について検討した。FA-M-β-CyDとDOXの相互作用を蛍光スペクトル法により検討し、Scottの式から安定度定数を算出したところ、約3.0x10の5乗と極めて高い値が得られた。一般に薬物とCyDとの安定度定数が10の4乗10の5乗以上あれば、血中でも安定な複合体を維持し、体内動態を制御可能であることから、FA-M-β-CyDは静脈内投与後もDOXと安定な複合体維持し、血中を循環する可能性が示唆された。さらに、ヒト口腔がん細胞由来KB細胞(FR高発現)に対して、DOX単独よりもDOX/FA-M-β-CyD複合体は優れた殺細胞効果を示した。また、DOX/FA-M-β-CyD複合体のKB細胞における殺細胞効果は、FR競合阻害剤である葉酸の添加により、有意に抑制されることが明らかとなった。これらの結果より、FA-M-β-CyDはFR高発現細胞選択的な抗がん剤キャリアとして有用である可能性が示唆された。今後、in vivo抗腫瘍効果を検討する必要がある。また、更なる包接能の向上および腫瘍細胞選択的の向上を企図して、葉酸を多分岐したM-β-CyDの調製を行う必要がある。本研究では、腫瘍細胞選択的な細胞障害性を有する抗癌剤およびキャリアを構築するために、メチル-β-シクロデキストリン(M-β-CyD)に癌標的リガンドである葉酸(FA)を修飾したFAn-M-β-CyDを調製した。種々検討した結果、FA1-M-β-CyDは、優れた殺細胞効果およびオートファジー誘導能を有することが明らかとなった。さらに、FA1-M-β-CyDは抗癌剤ドキソルビシン(DOX)と安定な複合体を形成し、癌細胞内に取り込まれた後、DOXの殺細胞効果を増強させることが示唆された。今年度は申請課題の中間年度にあたり、M-β-CyDに葉酸を一個導入したFA-M-β-CyDを調製し、DOXとの相互作用およびin vitro殺細胞効果に関する検討を行った。得られた結果は概ね期待通りであった。今後、in vivo抗腫瘍効果を検討する必要がある。また、更なる包接能の向上および腫瘍細胞選択的の向上を企図して、葉酸を多分岐したM-β-CyDの調製を行う必要がある。医歯薬学葉酸を多分岐したM-β-CyD (FAn-M-β-CyD)を調製し、FAn-M-β-CyDの溶解性、安定性などの物理化学的性質を評価する。溶液中におけるFRとFAn-M-β-CyDの会合定数を表面プラズモン共鳴装置(SPR)を用いて定量する。FR高発現細胞株であるKB細胞およびFR非発現細胞株であるA549細胞を用いて、FAn-M-β-CyDがFR発現細胞選択的に取込まれることを確認する。また、KB細胞の脂質マイクロドメインに及ぼすFAn-M-β-CyDの影響を明らかにするため、コレステロールやリン脂質などの細胞膜脂質成分の漏出を調べる。これらの結果をもとに、最適な葉酸導入数および構造を決定する予定である。今年度は申請課題の開始年度にあたり、葉酸多分岐修飾M-β-CyDの調製の第一段階として、M-β-CyD葉酸を一個導入したFA-M-β-CyDを調製し、DOXとの相互作用およびin vitro殺細胞効果に関する検討を行った。得られた結果は概ね期待通りであり、論文化することが出来た。今後、in vivo抗腫瘍効果を検討する必要がある。
KAKENHI-PROJECT-25870537
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水源森林流域の保水・水質形成維持機能に及ぼす森林環境要因の影響に関する確率的評価
平成9年度に引き続き,森林の水環境保全機能に関する基礎的知見を収集するとともに,森林域での流出現象における流量・水質時系列の確率的変動特性を森林内環境諸量の関数として評価する手法を確立するために,人為的影響の無視できる流域最上流森林域(岐阜大学流域環境研究センター高山試験地周辺の木曽川水系飛騨川最上流青屋川流域:流域面積約4,500ha)を対象とした水文・水質・気象に関する総合的現地観測を実施した結果,次のような研究成果を得ることができた.・森林流域内での全窒素収支過程を時間発展型の微分方程式として定式化し,1996年の連続4日間と1997年の連続6日間の集中観測データおよび1997年の連続1ヶ月半と1998年の連続4ケ月間の連続観測データを用いてこの全窒素収支モデルを検証することができた.・渓流水質,土壌水分,気象諸量に関する4ヶ月間の連続観測および数値シミュレーションより,渓流水質の時間変化は,入力要因としての降雨水質よりもむしろ,土壌内の水分保持時間に大きく支配され,森林内の植生・土壌分布に依存する確率的構造によって説明されることを明らかにした.・植生分布などの土地被覆分布の考え方を長良川流域などの広い流域にも適用し,森林域での水質形成過程が流域全体に大きな影響を及ぼすことを明らかにした.・植生による光合成作用や土壌表面からの蒸散作用と土壌水分状態との関係を媒介として,森林内での土壌水分状態および物質収支に対して森林内光環境を適正に評価することの重要性を指摘することができた.森林の水環境保全機能に関する基礎的地検を収集するとともに,森林域での流出現象における流量・水質時系列の確率的変動特性を森林内環境諸量の関数として評価する手法を確立するために,人為的影響の無視できる流域最上流森林域(岐阜大学流域環境研究センター高山試験地周辺の木曽川水系飛騨川最上流青屋川流域:流域面積約4,500ha)を対象とした水文・水質・気象に関する総合的現地観測を実施した結果,次のような研究成果を得ることができた.●営林署提供の森林管理簿の解析から,植生と土壌との間の結合確率特性を明らかにし,この結合確率分布は植生成長率と単位面積当たり材積とにより表現されることを示した.●因子分析,主成分分析および重回帰分析より,森林流域内の渓流中の全窒素量および流量が植生成長率,単位面積当たり材積,褐色森林土壌面積割合および常緑針葉樹面積割合に支配されていることを明らかにした.●林内外の降雨量が標高に比例するのに対し,林内降雨中の全窒素量は空間的に一様となることを明らかにした.●森林流域内での全窒素収支過程を時間発展型の微分方程式として定式化し,1996年の連続4日間および1997年の連続6日間の集中観測データを用いてこの全窒素収支モデルを検証することができた.●土壌水分量の時間変化は降雨量のみならず,森林内の水蒸気フラックスに大きく支配されており,こうした影響が流出流量にも大きく影響を及ぼしていることを明らかにした.平成9年度に引き続き,森林の水環境保全機能に関する基礎的知見を収集するとともに,森林域での流出現象における流量・水質時系列の確率的変動特性を森林内環境諸量の関数として評価する手法を確立するために,人為的影響の無視できる流域最上流森林域(岐阜大学流域環境研究センター高山試験地周辺の木曽川水系飛騨川最上流青屋川流域:流域面積約4,500ha)を対象とした水文・水質・気象に関する総合的現地観測を実施した結果,次のような研究成果を得ることができた.・森林流域内での全窒素収支過程を時間発展型の微分方程式として定式化し,1996年の連続4日間と1997年の連続6日間の集中観測データおよび1997年の連続1ヶ月半と1998年の連続4ケ月間の連続観測データを用いてこの全窒素収支モデルを検証することができた.・渓流水質,土壌水分,気象諸量に関する4ヶ月間の連続観測および数値シミュレーションより,渓流水質の時間変化は,入力要因としての降雨水質よりもむしろ,土壌内の水分保持時間に大きく支配され,森林内の植生・土壌分布に依存する確率的構造によって説明されることを明らかにした.・植生分布などの土地被覆分布の考え方を長良川流域などの広い流域にも適用し,森林域での水質形成過程が流域全体に大きな影響を及ぼすことを明らかにした.・植生による光合成作用や土壌表面からの蒸散作用と土壌水分状態との関係を媒介として,森林内での土壌水分状態および物質収支に対して森林内光環境を適正に評価することの重要性を指摘することができた.
KAKENHI-PROJECT-09750591
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09750591
メンタルモデル転移の顕在的・潜在的過程の解明
本研究の目的は,人のメンタルモデル転移の潜在的・顕在的過程を明らかにすることであった.本研究でいうメンタルモデルは,人が対象に対して持つ心的表象(イメージ)や知識,またそれらによって習得された技能を指しており,日常生活の中で人は常にメンタルモデルの構築や転移をすることで円滑な行動をしている.本年度も昨年度に引き続き,ボタンを押しながら系列を学習していく系列学習における潜在的転移および顕在的転移の特性を検討することを目的に,基礎的な実証研究を重ねた.昨年度に,人は学習したことを潜在的に転移できるという結果を踏まえ,本年度は系列学習における顕在的転移の特性を検討した.その結果,人が潜在的に行っている転移と,意図的に行っている転移の効果が非常に類似していることを示した.つまり,人は学習時に覚えた系列と転移時に行う系列の具体的な関係性に気づいていなくても,潜在的転移は生じ,またその効果が顕在的転移の効果と類似していることから,潜在的転移と顕在的転移の認知処理過程は類似,あるいはその大部分を共有している可能性を示唆した.次の研究では,潜在的転移の効果が学習時の成功経験に基づいていることを明らかにした,具体的には,学習課題を行っているときに,与えられたボタン押しの系列の成功回数が多ければ多いほど,転移課題を行ったときの潜在的転移の効果が大きいことを示した、そして,学習時にどの程度間違えたかというエラー回数の多さが,潜在的転移に対して影響していないことを示し,潜在的転移の効果は,学習時の失敗経験ではなく成功経験の多さに相関することを明らかにした.本研究で得られた知見は,実社会で有効に利用できる系列学習手法の開発などを通して教育現場等に今後活かされることが期待できるので,研究の社会的意義は大きい.平成25年度の成果として, 2本の学術論文の掲載が挙げられる.また本研究課題は平成25年度が最終年度のため,本研究の総括となる成果をまとめたものを現在国際誌に投稿している。(抄録なし)本研究の目的ほ、人間のメンタルモデル転移あるいは変容の過程を明らかにすることである。メンタルモデルとは、人間が対象に対して持つ心的表象(イメージ)、であり、日常生活の中で人間は常にメンタルモデルの構築・転移を行い、物事を遂行している。これらに基づく研究成果は、工学を中心とした多くの分野に対して貢献すると期待される。【a】複数の表象を同時に扱うことによって生じる干渉自動化されている心的表象は、非常に頑強である。例えば、数字の表象はメンタルナンバーラインと呼ばれ、数字が左から右に大きくなるような表象を人は得ている。本テーマでは、刺激-反応課題を用いて、自動化された表象と意図的に学習した表象を向時に混在させることで、課題成績にどのような影響を与えるのかについて調べたところ、意図的に学習した表象を混在させた場合,元々ある表象が干渉を受けて、課題成績が下がることが分かった。これは、インタフェース設計における重要な知見であり、人が新たな学習をするときに、自動化されている表象との干渉を生じさせないように設計をするための指標となりうる。【b】視覚運動系列学習における顕在的知識の影響一度学習したスキルを転移する際に、そのヌキルをどのように転移するのかという知識は、運動学習において非常に重要な役割を担っている。本テーマでは、視覚運動系列学習々用いて顕在的知識(Knowing how)が転移に対してどのような影響を与えるのかを調べた。実験では、参加者にある系列を学習させ、転移課題時にどのように転移すればよいかという顕在的知識を与えて効果を調べたところ、顕在的知識を与えられた参加者は、与えられなかった参加者よりも課題遂行の正確性は高いが、達成速度は遅いことを明らかにした。この研究成果は,人がどのように学ぶのか(他人に教わるのか、自分で学ぶのか)において、認知科学だけではなく発達心理学や教育心理学にまで貢献することが期待される。本研究の目的は、人のメンタルモデル転移の特性およびメカニズムを明らかにすることである。メンタルモデルとは、人が対象に対して持つ心的表象(イメージ)や知識を意味しており、日常生活の中で人は常にメンタルモデルの構築・転移をすることで円滑な行動をすることができる。本年度は、系列学習における潜在的な転移の特性を検討することを目的に基礎的な実証研究を重ねた。まず、学習課題と転移課題の間での時間的構造の変換が潜在的転移}こ与える影響について検討したところ、時間構造の変換に気づかなくても、顕在的に認知負荷の低い規則の場合は潜在的転移が起こりやすいことを明らかにした。次の実験で、複数の規則を系列内で混合させたところ、潜在的転移が起こらなかったことから、一貫した規則の適用が潜在的転移を引き起こすために重要であることを示した。次の研究では、空間的構造の変換が潜在的転移に与える影響について検討した。結果として、人は学習課題と転移課題の間の変換に気づかなくても、ある一定の潜在的な転移をすることができ、さらに潜在的転移の効果は課題の認知負荷の高低によって影響を受けることが示された。つまり、潜在的転移は変換に対する気づきを伴わないだけで、顕在的な転移の認知処理過程と非常に類似していることを明らかにした。本研究の特色は、我々が日常生活で気づかずに行っている潜在的転移の特性を明らかにした点にあり、特に学習課題の時空間構造を変換した転移課題を用いることで、潜在的転移の特性を上手く抽出した認知科学的手法は独創的である。
KAKENHI-PROJECT-11J10609
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J10609
メンタルモデル転移の顕在的・潜在的過程の解明
また本研究の知見は、実社会で有効に利用できる系列学習手法の開発などを通して教育現場等に今後活かされることが期待できるため、その社会的意義も大きい。本研究の目的は,人のメンタルモデル転移の潜在的・顕在的過程を明らかにすることであった.本研究でいうメンタルモデルは,人が対象に対して持つ心的表象(イメージ)や知識,またそれらによって習得された技能を指しており,日常生活の中で人は常にメンタルモデルの構築や転移をすることで円滑な行動をしている.本年度も昨年度に引き続き,ボタンを押しながら系列を学習していく系列学習における潜在的転移および顕在的転移の特性を検討することを目的に,基礎的な実証研究を重ねた.昨年度に,人は学習したことを潜在的に転移できるという結果を踏まえ,本年度は系列学習における顕在的転移の特性を検討した.その結果,人が潜在的に行っている転移と,意図的に行っている転移の効果が非常に類似していることを示した.つまり,人は学習時に覚えた系列と転移時に行う系列の具体的な関係性に気づいていなくても,潜在的転移は生じ,またその効果が顕在的転移の効果と類似していることから,潜在的転移と顕在的転移の認知処理過程は類似,あるいはその大部分を共有している可能性を示唆した.次の研究では,潜在的転移の効果が学習時の成功経験に基づいていることを明らかにした,具体的には,学習課題を行っているときに,与えられたボタン押しの系列の成功回数が多ければ多いほど,転移課題を行ったときの潜在的転移の効果が大きいことを示した、そして,学習時にどの程度間違えたかというエラー回数の多さが,潜在的転移に対して影響していないことを示し,潜在的転移の効果は,学習時の失敗経験ではなく成功経験の多さに相関することを明らかにした.本研究で得られた知見は,実社会で有効に利用できる系列学習手法の開発などを通して教育現場等に今後活かされることが期待できるので,研究の社会的意義は大きい.本研究の成果は、学会発表等において高い評価を得ており、また数多くのフィードバックを得ることができた。現在は初年度の研究成果をまとめたものを国際誌へ投稿する準備をしている。本研究の成果は、3本の学術論文として掲載された。また学会発表等を通じて多くのフィードバックを得ることができ、それらを元に、現在は新たな研究成果をまとめたものを国際誌に投稿する準備をしている。平成25年度の成果として, 2本の学術論文の掲載が挙げられる.また本研究課題は平成25年度が最終年度のため,本研究の総括となる成果をまとめたものを現在国際誌に投稿している。今後も初年度と同様に、認知科学的および実験心理学的アプローチにより、本テーマ【メンタルモデル転移の顕在的・潜在的過程の解明】を明らかにしていく。今後も初年度および2年度と同様に、認知科学的アプローチにより、本テーマ【メンタルモデル転移の顕在的・潜在的過程の解明】を明らかにしていく。(抄録なし)
KAKENHI-PROJECT-11J10609
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スンディック諸語の態のシステムに関する比較研究
本研究ではいわゆる「スンディック諸語」ムについて比較研究を行った。ジャワ語、スンダ語、マレー語、バリ語などにおいては、インドネシアタイプの態のシステム、つまり、鼻音接頭辞(me)N-がActor voiceを、動詞の無標の形+人称マーカーという形がUndergoer voiceを標示する。一方、ササク語の一部の方言とスンバワ語においては、インドネシアタイプの態のシステムは見られず、鼻音接頭辞(me)N-はactivityを表す自動詞として用いられる。後者の状況に対して、本来の態のシステムの退化として考える仮説と、鼻音接頭辞の本来の機能activityの残存として考える仮説の二つを提示した。本研究ではいわゆる「スンディック諸語」ムについて比較研究を行った。ジャワ語、スンダ語、マレー語、バリ語などにおいては、インドネシアタイプの態のシステム、つまり、鼻音接頭辞(me)N-がActor voiceを、動詞の無標の形+人称マーカーという形がUndergoer voiceを標示する。一方、ササク語の一部の方言とスンバワ語においては、インドネシアタイプの態のシステムは見られず、鼻音接頭辞(me)N-はactivityを表す自動詞として用いられる。後者の状況に対して、本来の態のシステムの退化として考える仮説と、鼻音接頭辞の本来の機能activityの残存として考える仮説の二つを提示した。本研究の目的はスンディック諸語の態のシステムに関する比較研究である。今年度は、スンディック諸語のうち、比較的研究の進んでいるミナンカバウ語、マレー語(インドネシア語)、ジャワ語、マドゥラ語、バリ語に関してAdelaar (1996)が再建したマレイック祖語の該当部分と対照しながら、特に以下の接辞に関してデータを収集した。・「中動」的な内容を表す動詞を派生する接辞(Proto Malayicの^*mbAr-)・applicativeの接尾辞(Proto Malayicの「増項」要素^*akAnと「所格」接辞^*-i)その一方で、上記の接辞^*akAnに関して現代マレー語における対応形-kanの共時的研究も並行して行い、この接辞が、受益動詞を形成する機能の他に、いわゆる三項動詞(動作主以外に二つ以上の個体が関与するような状況を表す動詞)を語基とする場合、動作主が直接接触するような個体がUndergoerであることを示す機能を果たすこと、また、この機能を受益動詞を形成する機能とは別個に考えることによって-kan形の動詞が持つ両義性の説明が可能になることを明らかにした。この成果は、5月にミネソタ大学で開催されたISMIL14で発表した。今年度は、昨年度同様、スンディック諸語の態についての研究を進めた。昨年度同様、特に以下の接辞に注目した。・「中動」的な内容を表す動詞を派生する接辞(Proto Malayicの^*mbAr-)・アプリカティブの接尾辞(Proto Malayicの「増項」要素^*akAnと「所格」接辞^*-i)昨年度計画していたが調査が完了しなかったガヨ語、アチェ語、バタク語、スンダ語に関して、先行研究から態に関する接辞の機能に関する部分を引用し、一覧表にした。スンダ語については、コンサルタント調査も行った。また、昨年度に引き続き、バリ語についての研究を行った。バリ語に関しては既に昨年度までに態の概略は明らかになっていたが、今年度は過去にオランダなどから出版されているテキスト集も利用し、ディスコースにおける態の機能について明らかにした。バリ語の調査に関しては、東京外国語大学外国人研究員Ketut Artawa氏と共同で行った。さらに、インドネシア語のアプリカティブに関して、コンサルタント調査および文献調査を行い、データの共時的分析の結果を論文Applicatives in Standard Indonesianとしてまとめた。この論文ではインドネシア語のアプリカティブの接辞-iと-kanの機能について、インドネシア語に関する先行研究、およびアプリカティブの通言語的研究をまとめる形で概観し、それぞれの機能を統一的に説明した。ここでの記述は、本研究の目的である言語間の比較研究のベースとなる、各言語の現在のアプリカティブの機能の記述の基準となるものである。今年度は研究協力者Antonia Sorienteを招聘し、広くスンディック諸語についての知見を交換した。また、新しくササク語のデータを文献資料から収集した。その結果、ササク語のいくつかの方言はスンバワ語と同様、インドネシアタイプの態のシステムを持たないことがわかった。この結果を受けて、今年度はインドネシアタイプの態のシステムを持たない言語の歴史的背景に関して研究を進めた。スンバワ語について、Shiohara (2013)では以下の二つの仮説を示した。(1)スンバワ語は本来インドネシアタイプの態のシステムを持っていたが、歴史のある時点でそのシステムは崩壊した。(これはおそらく、マレー語の方言のうち、形態論が簡略されたものの影響を受けた結果である。)(2)スンディック諸語の多くに見られるインドネシアタイプの態のシステムは祖語には存在せず、祖語はスンバワ語のように、無標の動詞述語が唯一の他動詞構文であるという特徴を持っていた。現在のインドネシアタイプの態のシステムは本来activityを示す自動詞接辞であった鼻音接頭辞が新たにActorvoice構文として機能するようになったことに伴う新しい発展であり、スンバワ語はその変化を被らなかった。今年度はこの二つの仮説を検証するため、スンバワ語の述部に現れる他のカテゴリー、テンス・アスペクト・ムードについて調査を行い、その結果をShiohara(2014)に示すとともに、その後スンバワ語話者を招聘することによってデータの再確認を行った。
KAKENHI-PROJECT-22520426
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22520426
スンディック諸語の態のシステムに関する比較研究
その結果、スンバワ語のテンス・アスペクト・ムードは他の言語とは異なる独自の発展を遂げていることがわかった。これは、スンバワ語がマレー語の方言の影響を受けているという(1)の仮説よりは、スンバワ語がインドネシアタイプの他の言語とは比較的早い段階で分化したと考える(2)の仮説を間接的に補強するものになる。昨年度まで調査を行っていない言語(ササク語)などの文献調査を行った。また、現時点で最も豊富なデータがあるスンバワ語に関して集中して調査を行った。その結果、スンバワ語に関しては、インドネシア、ジャワ語、バリ語、スンダ語などのいわゆる「インドネシアタイプ」言語とは逸脱する次のような特徴を示すことがわかった。1インドネシアタイプの態のシステムでUndergoer Voiceを標示する人称接辞のついた動詞形が唯一の他動詞構文として機能している。2インドネシアタイプの態のシステムで、Actor Voiceを標示する鼻音接頭辞(Proto Malayic (Adelaar (1986, 1992))の*mAN-)が単純な自動詞を形成する接辞として機能しており、他の言語で「中動」的な内容を表す動詞を派生する接辞(Proto Malayicの*mbAr-)と重なっている。以上の内容はShiohara (2013)にまとめた。さらに、データのある言語(バリ語、インドネシア語、スンダ語、スンバワ語)に関して、テキストを調べ、ディスコースにおける態のシステムの機能を調査した。その結果、物語などで動作主、動作の対象両方が共通する動作の連続を表す動詞連続ではUndergoer Voiceが用いられる傾向が強いことがわかった。このことはKikusawa(2000)が述べている、インドネシアタイプの態のシステムのうち、Undergoer voiceが基本的な形であるという主張を裏付けるものである。上記の二点はインドネシアタイプの態のシステムの構成要素のうち、鼻音接尾辞の付いた形が、このグループの祖形においてはテンス・アスペクトなど、態以外の機能を主として持っていたという仮説を導くものである。今年度まで、本研究全体で扱う予定の言語のうち、半数程度について態のシステムの概略が把握できている。また、いくつかの言語についてはディスコースにおける機能なども明らかになっており、おおむね順調に進展しているといえる。25年度が最終年度であるため、記入しない。本研究では、スンディック言語の態に関与する以下の(1)-(3)の接辞について、グループに属する言語(アチェ語、バタク語、ミナンカバウ語、マレー語(インドネシア語)、スンダ語、ジャワ語、マドゥラ語、バリ語、ササク語、スンバワ)語における機能を先行記述、あるいは、今回の研究で新しく得るデータから取り出し、一覧することを目的としている。これまで上記の言語に関して、ほぼ目標を達成できている。
KAKENHI-PROJECT-22520426
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22520426
酸窒化物系発光ナノドッドの開発とエネルギー変換材料への展開
本研究は、希土類元素を用いない酸窒化物発光材料として、カーボン系のナノドット作製とその機能評価、応用展開を目的としており、平成30年度は主にカーボンドットの近赤外光吸収特性と光熱療法への展開に関する研究を進めた。具体的には、1)カーボンドット合成条件が近赤外吸収特性に及ぼす影響の評価、2)近赤外光吸収機構の解明、3)近赤外吸収特性と温度上昇効果の評価した結果、以下のことを明らかにした。1)原料にクエン酸、尿素を用いてマイクロ加熱法により合成したカーボンドットは、尿素とクエン酸比および合成温度を最適化することで、近赤外領域である650nmに吸収ピークを持つことが明らかとなった。2)合成したカーボンドットのサイズは、7-9nmであり、Pyrrolic-Nを多く含む(71%)構造が優れた赤外吸収に寄与していることを明らかにした。3)合成したカーボンドット分散液に655nmのレーザーを照射して温度変化を測定したところ、その温度上昇はカーボンドットの初濃度が450mg/mLの時に25度となり、光熱変換効率を計算した結果、54.3%に達した。この結果は既往の研究と比較して高い値を示した。本研究で開発された窒素を多く含むカーボンドットは、365nmの照射により青色発光し、さらに655nmの照射により光を熱に変換できるという性質を持つことからがん細胞などの光熱治療分野への応用が期待される。期間全体を通じての成果は次の通りである。研究期間内に、水熱合成法による窒素ドープカーボンドット粒子の合成と速度論的評価、水溶性ポリマー内でのカーボンドット直接合成と紫外線吸収特性の評価、ビスマステルル板状粒子による窒素ドープカーボンドットの表面プラズモン増強、ピロール窒素を多く含むカーボンドットの合成と光熱治療へ向けた近赤外吸収特性の評価を実施した。期間中にSCI論文5報、国内外の発表6件の成果を挙げた。平成28年度は主に、1)BCNOナノドットの合成と特性評価、2)発光物質の分子構造の評価と発光原理の解明に従事した。詳細を以下に示す。1)オートクレーブを用いて液状のBCNO蛍光体の合成について検討し、その構造解析、発光特性の評価及びポリマー化について検討を行った。ホウ酸、尿素、クエン酸及び溶媒に超純水、エタノール、アセトン、トルエン、1.4-ジオキサン及びN,N-ジメチルホルムアミドを用いて混合し攪拌したものを原料溶液とした。調製した原料溶液をオートクレーブ装置で加熱を行い、高温高圧下で試料を合成した。クエン酸と尿素を原料とした試料について発光強度の経時変化を測定した結果、発光強度は合成時間の経過とともに上昇し、最大値を取った後、低下することが分かった。そこで発光強度の異なる3つの試料について1H-NMR測定を行い、発光物質の構造解析を行った。この測定結果からクエン酸と尿素の反応過程においてクエン酸アミドの単量体では発光を示さないため、クエン酸アミドの会合体または一部縮合したものが発光していることを明らかにした。さらに興味深いことに、ホウ素を用いない場合でも高い発光を示すことがわかり、カーボンドットとして研究を進めることにした。2)カーボンドットの生成過程での特性評価を行うことで、発光に起因するファクターの解明、および合成プロセスの省エネルギー化について検討を行った。カーボンドット合成過程においてサンプリングをして特性評価を行ったところ、高輝度なカーボンドット生成には、最適な反応時間があることを明らかにした。そして強い発光には、粒子径2 nm程度、かつNドープ構造(六員環中に窒素原子がドープされた構造)が関与していることを見出した。そして昇温速度を速くすることで、発光特性を維持したままで既往の研究の約10分の1の反応時間で合成することができた。H28度の計画は、平成28年度は主に、1)BCNOナノドットの合成と特性評価、2)発光物質の分子構造の評価と発光原理の解明であったが、スイスのスイス連邦工科大学、シンガポールの南洋理工大学、およびインドネシアのバンドン工科大学との共同研究の効果もあり、上述する研究成果に加えて、マルチカラーで発光するカーボンドットの合成とその特性評価、異種金属の添加による発光効率の向上、ポリマーとの複合化による紫外線吸収フィルムの開発なども検討しており、研究は極めて順調に進んでいるため、予想以上に研究が進んでいると判断した。本研究は、希土類元素を用いない酸窒化物発光材料BCNOのナノドット作製とエネルギー変換材料への応用展開を目的としており、平成29年度は主に、BCNOナノドットの新たな展開として、Bを除いたCNO、すなわち、カーボンドット(CDs)の合成と特性評価について研究を進めた。具体的には、CDsナノコンポジットフィルムの合成と紫外線吸収特性について研究を実施した。本研究ではポリビニルアルコール(PVA)水溶液中でのCDsの高効率合成および、性能の向上を目的とした。実験方法は次の通りである。まず、PVA水溶液中にCDsの炭素源としてクエン酸を用いて、窒素源として3種類(尿素、ポリビニルピロリドン(PVP)またはポリエチレンイミン(PEI))を用いた。原料を加え室温で攪拌させた3つの原料溶液を用意し、マイクロ波加熱を用いた水熱合成によりCDs-PVA分散液を合成した。CDs-PVAフィルムの作製では、合成したCDs-PVA分散液をガラス上にテーブルコーターを用いて成形、乾燥させる事によって作製した。
KAKENHI-PROJECT-16K13642
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酸窒化物系発光ナノドッドの開発とエネルギー変換材料への展開
窒素源を変更して合成した3種類のCDs分散液の光学特性を比較した結果、PEIから合成したCDs-PVA分散液が可視光域での高い透過率と紫外線領域での高い吸光度の両立できた。さらに、耐久性を評価するためにCDs-PVAフィルムおよび市販の紫外線フィルムに紫外線を長時間照射した場合、市販フィルムでは紫外線カット力が低下した事に比べて、CDs-PVAフィルムはほとんど低下が見られなかった。以上、本研究でCDsをPVA水溶液中で直接合成できる事がわかった。H29度の計画は、近年注目を集めている炭素ナノ物質のCarbon Dots (CDs)の紫外線吸収特性に着目し、CDsナノコンポジットフィルムの合成と操作パラメータの紫外線吸収特性への影響について検討する事を目的としていたが、一連の研究を終えて、発表および論文化まで進めることができたため、予定通り進んでいると判断した。本研究は、希土類元素を用いない酸窒化物発光材料として、カーボン系のナノドット作製とその機能評価、応用展開を目的としており、平成30年度は主にカーボンドットの近赤外光吸収特性と光熱療法への展開に関する研究を進めた。具体的には、1)カーボンドット合成条件が近赤外吸収特性に及ぼす影響の評価、2)近赤外光吸収機構の解明、3)近赤外吸収特性と温度上昇効果の評価した結果、以下のことを明らかにした。1)原料にクエン酸、尿素を用いてマイクロ加熱法により合成したカーボンドットは、尿素とクエン酸比および合成温度を最適化することで、近赤外領域である650nmに吸収ピークを持つことが明らかとなった。2)合成したカーボンドットのサイズは、7-9nmであり、Pyrrolic-Nを多く含む(71%)構造が優れた赤外吸収に寄与していることを明らかにした。3)合成したカーボンドット分散液に655nmのレーザーを照射して温度変化を測定したところ、その温度上昇はカーボンドットの初濃度が450mg/mLの時に25度となり、光熱変換効率を計算した結果、54.3%に達した。この結果は既往の研究と比較して高い値を示した。本研究で開発された窒素を多く含むカーボンドットは、365nmの照射により青色発光し、さらに655nmの照射により光を熱に変換できるという性質を持つことからがん細胞などの光熱治療分野への応用が期待される。期間全体を通じての成果は次の通りである。研究期間内に、水熱合成法による窒素ドープカーボンドット粒子の合成と速度論的評価、水溶性ポリマー内でのカーボンドット直接合成と紫外線吸収特性の評価、ビスマステルル板状粒子による窒素ドープカーボンドットの表面プラズモン増強、ピロール窒素を多く含むカーボンドットの合成と光熱治療へ向けた近赤外吸収特性の評価を実施した。期間中にSCI論文5報、国内外の発表6件の成果を挙げた。今後は、1)カーボンドットのポリマーとの複合化による紫外線吸収フィルムへの応用、2)近赤外吸収特性を持つカーボンドットの合成と生体バイオイメージングへの応用について研究を進めていく。詳細を以下に示す。1)カーボンナノドットは、水および有機溶剤中に分散可能であるため、ポリマー(ポリビニルアルコール、ポリイミドなど)との混合により発光、および紫外赤外遮断フィルムの作製を行う。BCNOナノドットコンポジットポリマーの作製は、濃度調整されたBCNO
KAKENHI-PROJECT-16K13642
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超準解析による極限定理の幾何学的解釈
結晶格子上のランダムウォークの大偏差に関して,幾何学的考察を行った.結晶格子とは,自由アーベル群が自由に作用し,商空間が有限グラフとなる無限グラフである.この周期性から,結晶格子を無限遠から観察すると一様な図形に見える.より正確に述べる.結晶格子をグラフ距離によって距離空間と考え,距離をスケール変換した距離空間の1パラメーター族を得る.このスケールをゼロに近付けたときのグロモフ・ハウスドルフ位相による極限距離空間を,結晶格子の無限遠での接錐という.結晶格子のようなアーベル周期性をもつ距離空間の無限遠での接錐の存在は,グロモフによって知られているが,この極限距離空間を具体的に,また,グラフの幾何の言葉で特徴つけた.距離球はコンパクト凸多面体となり,その端点が,具体的に商空間の閉路の構造で決まることを調べた.更に,この極限空間の単位距離球が,ランダム・ウォークの大偏差源氏に現れるレート関数の本質的定義域と一致することを示し,Math. Z.に発表した.これを非アーベル被覆の場合に拡張することを目標に,ランダム・スネーク,R樹木,超準極限に関するグロモフ,シャピロ,ドルータの結果など,関連研究について情報収集し,検討を行った.その結果,超準解析による定式化を書き下すことができたが,論文として公表するには至らなかった.ランダム・ウォークの長時間挙動,及び磁場付き推移作用素のスペクトルと結晶格子の幾何に関する総説をまとめAmer .Math. Soc. Sugaku Expositoryに公表した.小谷・砂田は結晶格子上のランダムウォークの大偏差に関して,その幾何学的考察を行った.結晶格子は自由アーベル群が作用し,商空間が有限グラフとなる.この周期性から,結晶格子を無限遠から観察すると一様な図形に見える.より正確に述べる.結晶格子をグラフ距離によって距離空間と考え,距離をスケール変換した距離空間の1パラメーター族を得る.このスケールをゼロに近付けたときのグロモフ・ハウスドルフ位相による極限距離空間を,結晶格子の無限遠での接錐という.結晶格子のようなアーベル周期性をもつ距離空間の無限遠での接錐の存在は,グロモフによって知られているが,この極限距離空間を具体的に,また,グラフの幾何の言葉で特徴つけた.距離球はコンパクト凸多面体となり,その端点が,具体的に商空間の閉路の構造で決まることを調べた.この結果をアーベルでない周期性を持つ被覆グラフに拡張することが,本研究の目的である.周期性を与える離散群が指数増大の場合には,上記のようなグロモフ・ハウスドルフ位相による極限空間は存在しないが,超準解析を用いた収束概念があり,その極限空間がR樹木となることがグロモフによって分かっている.R樹木のトポロジーに関する先行結果,特に双曲群との関連について情報収集と理解に務めた.R樹木上のランダムスネークに関する研究結果の調査および超準解析の基礎的情報の収集が本年度の成果である.来年度は,今年度の結果を踏まえ,この枠組みにおける大数の法則,大偏差の定式化を目指す.小谷・砂田は結晶格子上のランダムウォークの大偏差に関して,その幾何学的考察を行った.結晶格子は自由アーベル群が作用し,商空間が有限グラフとなる.この周期性から,結晶格子を無限遠から観察すると一様な図形に見える.より正確に述べる.結晶格子をグラフ距離によって距離空間と考え,距離をスケール変換した距離空間の1パラメーター族を得る.このスケールをゼロに近付けたときのグロモフ・ハウスドルフ位相による極限距離空間を,結晶格子の無限遠での接錐という.結晶格子のようなアーベル周期性をもつ距離空間の無限遠での接錐の存在は,グロモフによって知られているが,この極限距離空間を具体的に,また,グラフの幾何の言葉で特徴つけた.距離球はコンパクト凸多面体となり,その端点が,具体的に商空間の閉路の構造で決まることを調べた.この結果をアーベルでない周期性を持つ被覆グラフに拡張することが,本研究の目的である.周期性を与える離散群が指数増大の場合には,上記のようなグロモフ・ハウスドルフ位相による極限空間は存在しないが,超準解析を用いた収束概念があり,その極限空間がR樹木となることがグロモフによって分かっている.R樹木のトポロジーに関する先行結果,特に双曲群との関連について情報収集と理解に務めた.R樹木上のランダムスネークに関する研究結果の調査および超準解析の基礎的情報の収集が本年度の成果である.来年度は,今年度の結果を踏まえ,この枠組みにおける大数の法則,大偏差の定式化を目指す.結晶格子上のランダムウォークの大偏差に関して,幾何学的考察を行った.結晶格子とは,自由アーベル群が自由に作用し,商空間が有限グラフとなる無限グラフである.この周期性から,結晶格子を無限遠から観察すると一様な図形に見える.より正確に述べる.結晶格子をグラフ距離によって距離空間と考え,距離をスケール変換した距離空間の1パラメーター族を得る.このスケールをゼロに近付けたときのグロモフ・ハウスドルフ位相による極限距離空間を,結晶格子の無限遠での接錐という.結晶格子のようなアーベル周期性をもつ距離空間の無限遠での接錐の存在は,グロモフによって知られているが,この極限距離空間を具体的に,また,グラフの幾何の言葉で特徴つけた.距離球はコンパクト凸多面体となり,その端点が,具体的に商空間の閉路の構造で決まることを調べた.更に,この極限空間の単位距離球が,ランダム・ウォークの大偏差源氏に現れるレート関数の本質的定義域と一致することを示し,Math. Z.に発表した.
KAKENHI-PROJECT-17654036
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17654036
超準解析による極限定理の幾何学的解釈
これを非アーベル被覆の場合に拡張することを目標に,ランダム・スネーク,R樹木,超準極限に関するグロモフ,シャピロ,ドルータの結果など,関連研究について情報収集し,検討を行った.その結果,超準解析による定式化を書き下すことができたが,論文として公表するには至らなかった.ランダム・ウォークの長時間挙動,及び磁場付き推移作用素のスペクトルと結晶格子の幾何に関する総説をまとめAmer .Math. Soc. Sugaku Expositoryに公表した.
KAKENHI-PROJECT-17654036
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カテゴリーの分類空間、Floreホモロジーと無限複体のホモトピー論
当研究課題の成果のうち最も大きなものは次の3点である。(1)無限次元リー群の位相幾何学的研究、(2)無限次元のMorse理論、(3)カテゴリーと力学系理論まず(1)については自由ループ群のホモロジー還を群が単連結の場合に完全に決定することができた。これを用いて自由ループ群の分類空間のコホモロジーを決定する作業が現在継続中である。次にゲージ群の場合についての研究ではコンパクト単連結4-次元多様体の上の主SU(2)-束についてその分類空間のホモトピー型が底空間である多様体のホモトピー型を完全に決め、さらに主束の同型類も自明な例外をのぞいて完全に決めることを示すことに成功した。現在この結果を多様体が単連結でない場合や構造群がSO(3)の場合に拡張する研究を継続中である。自由ループ群のホモロジー還の決定には群の基点付ループ空間への随伴作用が重要な問題であったがこれを有限複体であるホモトピー結合的なHopf空間の場合に拡張して、そのmod pコホモロジーへ誘導する写像が自明なこととそのHopf空間の整係数ホモロジー群がp-torsion freeであることが同値であることを証明した。この結果はすでに得られていた有限次元リー群の場合の拡張である。(3)については圏論的手法を用いて力学形理論で重要なConley homologyの研究を行った。Conley homologyを定義する方法としてある種の圏を構成し、その幾何学的実現(分類空間)の特異ホモロジーと考える方法を発見した。この方法を用いてスペクトル系列を用いてConley homologyの計算に利用する。この研究課題における今年度の主な成果は次のような物であります。当研究課題の中心的目的である無限次元リ一群のホモトピー論的研究とその多様体のトポロジーへの応用については次のような成果が得られた。(1)閉単連結4次元多様体Xの上の2つの主SU(2)束EとE ́についてその自己同型群であるゲージ群のホモトピー型が同じであるための必要充分条件はXが向きを反対にするホモトピー同値写像を持つときにはその2次のChern類の絶対値が等しいことでありそれ以外の時にはChern類そのものが等しいことであることを示しました。さらにXのホモトピー型が分類空間のホモトピー型で決まることも示しました。この成果はJ.Pure and Appl,A1g.に掲載されることが決まっております。(2)コンパクトリー群の上の自由ループ群のホモロジー環の決定とその一般化のための有限Hopf空間の上のループ空間への随伴作用については代表者と分担者濱中裕明氏が協力してすべての単連結な場合にこれを決定した。また後者についてはり一群の場合と同様な結果が得られた。この成果はProc.Roy.Soc.Edinburghに掲載されることが決まっております。これらの結果の4次元多様体のトポロジーへの応用については主として分担者深谷堅治氏が担当しまた力学系理論への応用については分担者國府寛司氏が担当し多くの成果が得られつつあります。当研究課題の成果のうち最も大きなものは次の3点である。(1)無限次元リー群の位相幾何学的研究、(2)無限次元のMorse理論、(3)カテゴリーと力学系理論まず(1)については自由ループ群のホモロジー還を群が単連結の場合に完全に決定することができた。これを用いて自由ループ群の分類空間のコホモロジーを決定する作業が現在継続中である。次にゲージ群の場合についての研究ではコンパクト単連結4-次元多様体の上の主SU(2)-束についてその分類空間のホモトピー型が底空間である多様体のホモトピー型を完全に決め、さらに主束の同型類も自明な例外をのぞいて完全に決めることを示すことに成功した。現在この結果を多様体が単連結でない場合や構造群がSO(3)の場合に拡張する研究を継続中である。自由ループ群のホモロジー還の決定には群の基点付ループ空間への随伴作用が重要な問題であったがこれを有限複体であるホモトピー結合的なHopf空間の場合に拡張して、そのmod pコホモロジーへ誘導する写像が自明なこととそのHopf空間の整係数ホモロジー群がp-torsion freeであることが同値であることを証明した。この結果はすでに得られていた有限次元リー群の場合の拡張である。(3)については圏論的手法を用いて力学形理論で重要なConley homologyの研究を行った。Conley homologyを定義する方法としてある種の圏を構成し、その幾何学的実現(分類空間)の特異ホモロジーと考える方法を発見した。この方法を用いてスペクトル系列を用いてConley homologyの計算に利用する。今年度の研究実績のうちもっとも大きな成果を得たのは次の3点である。(1)無限次元リー群の位相幾何学的研究、(2)無限次元のMorse理論、(3)カテゴリーと力学系理論まず(1)については自由ループ群のホモロジー還群が単連結の場合に完全に決定することができた。これを用いて自由ループ群の分類空間のコモホロジーを決定する作業が現在継続中である。次にゲージ群の場合についての研究ではコンパクト単連結4-次元多様体の上の主SU(2)-束についてその分類空間のホモトピー型が底空間である多様体のホモトピー型を完全に決め、さらに主束の同型類も自明な例外をのぞいて完全に決めることを示すことに成功した。
KAKENHI-PROJECT-10440018
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10440018
カテゴリーの分類空間、Floreホモロジーと無限複体のホモトピー論
現在この結果を多様体が単連結でない場合や構造群がSO(3)の場合に拡張する研究を継続中である。自由ループ群のホモロジー還の決定には群の基点付ループ空間への随伴作用が重要な問題であったが、これを有限複体であるホモトピー結合的なHopf空間の場合に拡張してそのmod pコホモロジーへ誘導する写像が自明なこととそのHopf空間の整係数ホモ路ジー群がp-torsion freeであることが同値であることを証明した。この結果はすでに得られていた有限次元リー群の場合の拡張である。(3)については圏論的手法を用いて力学系理論で重要なConley homologyの研究を行った。Conley homologyを定義する方法としてある種の圏を構成しその幾何学的実現(分類空間)の特異ホモロジーと考える方法を発見した。
KAKENHI-PROJECT-10440018
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10440018
繊維構造形成過程のその場観察による繊維強度発現機構の解明
高速紡糸・延伸などによって配向した高分子材料が配向結晶化を起こし、強度や弾性率などの繊維物性が顕著に増加することは良く知られているが、高強度の繊維では分子の配向や結晶化度が飽和傾向を示すことから、強度設計に有用な新たな構造パラメータが求められていた。繊維・フィルムの延伸等、繊維・高分子材料を高度に配向させると、配向結晶化により数ミリ秒で繊維構造が形成される。本研究では、レーザー光照射加熱を利用した連続延伸とFSBLのアンジュレーター光源の組み合わせによって、ごく短時間で完了するこの構造形成過程を100マイクロ秒以下の時間分解能で測定することに成功した。平成30年度は、Poly(ethylene terephthalate)共重合体の連続ネック延伸過程における繊維構造形成、特にsmectic相の形態・秩序性および量の経時変化に注目し、紡糸・延伸条件の効果を詳細に検討した。実験の結果、ネック変形後0.3ms付近で最大値を示し、その後消滅するsmectic相の量とサイズは、紡糸速度が増すほど減少した。また安定延伸できる最低応力では生じず、80MPaまでで急増した後飽和した。延伸応力がそれ以上増加した場合、量とサイズの変化は小さかったが、ネック変形から0.3msまでの時間帯で、面間隔に明瞭な延伸応力依存性が観察される様になった。得られた面間隔は共重合により明瞭に短くなるのに対し、結晶の面間隔にはほとんど差が見られなかったことから、smectic相から結晶への転移時に共重合成分が結晶外に押し出されることが強く示唆された。高速紡糸・延伸などによって配向した高分子材料が配向結晶化を起こし、強度や弾性率などの繊維物性が顕著に増加することは良く知られている。しかし高強度の繊維では、分子の配向や結晶化度が飽和傾向を示す。このことは従来の構造評価パラメータでは強度設計に不十分なことを意味しており、有用な指針となる新たな構造パラメータが求められていた。繊維・フィルムの延伸等、繊維・高分子材料を高度に配向させると、配向結晶化により数ミリ秒で繊維構造が形成される。短時間で完了するこの構造形成過程は観察が難しかったが、レーザー光照射加熱を利用した連続延伸と高輝度のシンクロトロン放射光の組み合わせることで、繊維構造の形成過程を200マイクロ秒程度の時間分解能で測定できている。本研究では、FSBLのアンジュレーター光源を利用することで、時間分解能を50マイクロ秒まで向上させ、外力を支えるフィブリル構造が形成されていく過程を調べる。測定対象とする繊維材料はPETとPEN,およびPPであり、紡糸・延伸条件が高次構造形成におよぼす効果を定量的に評価することにより、繊維強度向上に際して有用な指針となる構造パラメータを提案することで、繊維・高分子材料の強度設計に新たな視点を提供し、実際の繊維製造工程に応用することを目的とした。平成28年度は、Poly(ethylene terephthalate)の紡糸・延伸条件が繊維構造形成におよぼす効果に注目した。紡糸条件は500 - 2000 m/min。いわゆるUDYからPOYの下限に至る範囲とした。また延伸条件としてはネック延伸が安定する最低の倍率と、最高に近い延伸応力約100 MPaの条件に注目した。実験の結果、形成されるsmectic相の量、結晶化の誘導時間と進行速度、小角X線像の変化、特に長周期の経時変化に、明瞭な紡糸・延伸条件依存性が観察された。Undulatorを装着したシンクロトロン光源(SPring8、BL03XU)を使用することで、PETの繊維構造形成過程を時間分解能100μs以下でその場測定することに成功した。ネック延伸後1 ms以内でほぼ完了する繊維構造形成過程での小角X線散乱像および広角X線回折像を、この時間分解能でその場撮像し、これらの解析によって、フィブリル状のsmectic像が形成され、さらにこれの消滅と平行して結晶化と長周期構造が形成されていく過程を調べた。この結果、延伸前の繊維(as-spun繊維)作成時の紡糸速度および延伸倍率によって顕著に差が有ることが実証され、これらの差を定量的に解析することに成功した。すなわち、低速紡糸繊維を低倍率で延伸した場合にはsmectic相は形成されずに小角像に顕著なX字状のパターンが観察され、均一なラメラ結晶の形成が優先しているとみられるのに対し、低速紡糸繊維を高倍率で延伸した場合にはsmectic相を経たフィブリル状構造の形成が優先し、さらに高速紡糸(いわゆるPOY)繊維では、おそらく紡糸時に形成されていた微結晶核の成長が優先する結果、smectic相はほとんど形成されず、不均一なラメラ構造が形成される。本研究の実験結果より、これらのメカニズムの違いを、smectic相の量および経時変化、結晶化の誘導時間および進行速度、長周期の大きさおよびその経時変化という形で定量的に評価することに成功した。これらの結果は、それぞれの紡糸・延伸条件で作成した延伸繊維が持つ熱的・機械的性質を良く説明している。したがって、繊維構造形成過程の高時間分解能観察によって、繊維の熱・機械物性、特に繊維強度の発現機構を定量的に推定することができることが明らかになった。高速紡糸・延伸などによって配向した高分子材料が配向結晶化を起こし、強度や弾性率などの繊維物性が顕著に増加することは良く知られているが、高強度の繊維では分子の配向や結晶化度が飽和傾向を示すことから、強度設計に有用な新たな構造パラメータが求められていた。
KAKENHI-PROJECT-16K05910
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K05910
繊維構造形成過程のその場観察による繊維強度発現機構の解明
繊維・フィルムの延伸等、繊維・高分子材料を高度に配向させると、配向結晶化により数ミリ秒で繊維構造が形成される。本研究では、レーザー光照射加熱を利用した連続延伸とFSBLのアンジュレーター光源の組み合わせによって、ごく短時間で完了するこの構造形成過程を100マイクロ秒以下の時間分解能で測定することに成功した。平成29年度は、Poly(ethylene terephthalate)の連続ネック延伸過程における繊維構造形成、特にsmectic相の形態・秩序性および量の経時変化に注目し、紡糸・延伸条件の効果を詳細に検討した。紡糸条件は500 - 2000 m/min。いわゆるUDYからPOYの下限に至る範囲とした。また延伸条件としては特に延伸応力約80、100、150 MPa付近の条件に注目した。実験の結果、ネック変形後0.3ms付近で最大値を示し、その後消滅するsmectic相の量とサイズは、紡糸速度が増すほど減少した。また安定延伸できる最低応力では生じず、80MPaまでで急増した後飽和した。延伸応力がそれ以上増加した場合、量とサイズの変化は小さかったが、ネック変形から0.3msまでの時間帯で、面間隔に明瞭な延伸応力依存性が観察される様になった。得られた面間隔を経過時間0に外挿して得られた弾性率は、140-180°Cと高温にもかかわらず約40 GPaであり、延伸後の繊維が示すヤング率よりはるかに大きい。したがって、ネック変形によって引き揃えられ、その後smectic相に成長していくこの配向分子鎖が、ネック延伸時の応力を主に支える構造であることが強く示唆された。当初計画していた様に、Undulatorを装着したシンクロトロン光源(SPring8、BL03XU)を使用することで、PETの繊維構造形成過程を時間分解能100μs以下でその場測定することに成功し、ネック延伸後1 ms以内でほぼ完了する繊維構造形成過程での小角X線散乱像および広角X線回折像のその場測定結果から、フィブリル状のsmectic像が形成されていく過程、およびこれの消滅と平行して結晶化と長周期構造が形成されていく過程におよぼす紡糸速度と延伸倍率の影響について調べることができた。この測定の結果、当初計画どおり、延伸前の繊維(as-spun繊維)作成時の紡糸速度および延伸倍率によって、形成されるsmectic相の量、面間隔、およびサイズに顕著な差を生じることが示され、これらの差を定量的に解析することに成功した。以上の結果は、形成されたPET繊維中で外力を支えている構造の初期状態を可視化したことを意味し、繊維構造形成過程の高時間分解能観察によって、繊維強度の発現機構を定量的に推定し得ることを示している。特にsmectic相の面間隔を外挿することによってネック変形直後での配向分子鎖のみかけ弾性率が約40GPaであることを推定できたことは、繊維構造形成から定量的かつ根源的な物性データを導き出せたことを意味しており、この点を主たる理由として、当初計画以上に順調に研究が進展していると判断した。高速紡糸・延伸などによって配向した高分子材料が配向結晶化を起こし、強度や弾性率などの繊維物性が顕著に増加することは良く知られているが、高強度の繊維では分子の配向や結晶化度が飽和傾向を示すことから、強度設計に有用な新たな構造パラメータが求められていた。
KAKENHI-PROJECT-16K05910
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K05910
汎関数解析とFeynman経路積分の数学理論
1.研究代表者藤原は、熊ノ郷が導入した一般の汎関数を被積分汎関数とするFeynman経路積分の収束の証明を、区分的古典軌道による近似を使って明晰にした。また、大次元空間での停留位相法の剰余項の評価を改良した。その結果、Feynman経路積分の準古典近似の第2項を表現する一般的な公式を得た。これは多分新しい公式と思われる。特殊な場合はBirkhoffの結果と一致する。以上全て熊ノ郷と協力して行った。2.分担者谷島は非相対論的な量子電磁力学の簡単化モデルであるNelson modelのスペクトル・散乱理論について調べた。またポテンシャルが無限遠方でC|x|^m,m>2程度に増大するシュレーディンガー方程式の解u(t,x)はほとんどすべてのtで初期値に比べて1/m階余計にxについて微分できることを示した。3.分担者渡辺は、消散項を持つ線形偏微分方程式について、スペクトルと解の挙動との関係を研究を行った.自己共役作用素ではスペクトルメジャーを使い深い考察がなされているが、消散タイプでは、結果が多くはないが、部分的に結果を得られた.また、Maxwell, Stokes方程式の解の界面正則性についての研究を行った.界面をはさんでMaxwellまたはStokes方程式を満たす解について弱解の領域全体での正則性を考察した.4.分担者下村は、今年度は,主に非線形シュレディンガー方程式の解の長時間的漸近挙動に関して研究した.空間2次元でu^2やu^^-^2の様な2次の非線形項を持つシュレディンガー方程式の解は漸近自由になり得るが,2次の非線形項でも|u|^2の場合には非線形方程式の解は非線形項の寄与を受ける事が分かった.また電磁場ポテンシャル付き非線形シュレディンガー方程式の時間局所解の平滑効果や,シュレデインガー方程式と2階双曲型方程式の連立系の散乱理論に関する結果も得た1.研究代表者藤原は、熊ノ郷が導入した一般の汎関数を被積分汎関数とするFeynman経路積分の収束の証明を、区分的古典軌道による近似を使って明晰にした。また、大次元空間での停留位相法の剰余項の評価を改良した。その結果、Feynman経路積分の準古典近似の第2項を表現する一般的な公式を得た。これは多分新しい公式と思われる。特殊な場合はBirkhoffの結果と一致する。以上全て熊ノ郷と協力して行った。2.分担者谷島は非相対論的な量子電磁力学の簡単化モデルであるNelson modelのスペクトル・散乱理論について調べた。またポテンシャルが無限遠方でC|x|^m,m>2程度に増大するシュレーディンガー方程式の解u(t,x)はほとんどすべてのtで初期値に比べて1/m階余計にxについて微分できることを示した。3.分担者渡辺は、消散項を持つ線形偏微分方程式について、スペクトルと解の挙動との関係を研究を行った.自己共役作用素ではスペクトルメジャーを使い深い考察がなされているが、消散タイプでは、結果が多くはないが、部分的に結果を得られた.また、Maxwell, Stokes方程式の解の界面正則性についての研究を行った.界面をはさんでMaxwellまたはStokes方程式を満たす解について弱解の領域全体での正則性を考察した.4.分担者下村は、今年度は,主に非線形シュレディンガー方程式の解の長時間的漸近挙動に関して研究した.空間2次元でu^2やu^^-^2の様な2次の非線形項を持つシュレディンガー方程式の解は漸近自由になり得るが,2次の非線形項でも|u|^2の場合には非線形方程式の解は非線形項の寄与を受ける事が分かった.また電磁場ポテンシャル付き非線形シュレディンガー方程式の時間局所解の平滑効果や,シュレデインガー方程式と2階双曲型方程式の連立系の散乱理論に関する結果も得た1.研究代表者は熊ノ郷直人氏と協力して同氏が昨年度に得た区分的直線による経路の近似法に由る画期的結果を研究代表者が従来行ってきた区分的古典軌道に由る近似の場合で解釈しその仮定の直感的意味を研究した。十分な検討時間が無く未だ十分解明されていないがかなりおもしろいものとなった。佐賀大学の三苫至教授と熊ノ郷直人博士、研究分担者渡辺一雄と研究代表者は抽象Wiener空間上の振動積分について議論は、まだまとめていないがこの分野は、注目すべきである。2.分担者谷島はSchrodinger方程式の基本解の特異性につき数論とも関係する極めて精緻な議論を展開している。3.分担者水谷は、凸とは限らぬ2次元多角形領域上の重調和Dirichlet問題に対して、有限要素法による近似を考える。その有限要素解の最適な収束の速さが、多角形領域の最大内角に応じて決まると言う興味ある事実を示した。4.分担者渡辺は、(1)界面のある領域でのMaxwell, Stokes方程式の解の正則性に関して研究を行った.区分的に滑らかな(界面で正則性を仮定しない)ときでも解の法成分の正則性があがることがあることを示した。逆に考えると、正則性があるときは界面が消失していることを意味していることが分かった。(2)また、消散項を持つ微分方程式の研究を行った.解の時間減衰は,その方程式に対応する作用素のスペクトルが重要となっているが,実際にスペクトルのみから判定することが困難である.その具体的なものとしていくつかの例を与え,これからの研究の第一歩とした.
KAKENHI-PROJECT-15540184
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汎関数解析とFeynman経路積分の数学理論
5.分担者下村は、非線形発展方程式の代表的な例の一つである非線形Schrodinger方程式や,Schrodinger方程式と波動型方程式の連立系(Klein-Gordon-Schrodinger方程式系やMaxwell-Schrodinger方程式等)の解の時刻無限大に於ける漸近挙動を非線形散乱理論の枠組みで研究した.短距離型と長距離型の丁度境目に相当する散乱理論を扱った.これらの方程式(系)に対する波動作用素(長距離型の場合は修正波動作用素)の存在を示した.1.研究代表者藤原は、熊ノ郷が導入した一般の汎関数を被積分汎関数とするFeynman経路積分の収束の証明を、区分的古典軌道による近似を使って明晰にした。また、大次元空間での停留位相法の剰余項の評価を改良した。その結果、Feynman経路積分の準古典近似の第2項を表現する一般的な公式を得た。これは多分新しい公式と思われる。特殊な場合はBirkhoffの結果と一致する。以上全て熊ノ郷と協力して行った。2.分担者谷島は非相対論的な量子電磁力学の簡単化モデルであるNelson modelのスペクトル・散乱理論について調べた。またポテンシャルが無限遠方でC|x|^m, m>2程度に増大するシュレーディンガー方程式の解u(t, x)はほとんどすべてのtで初期値に比べて1/m階余計にxについて微分できることを示した。3.分担者渡辺は、消散項を持つ線形偏微分方程式について、スペクトルと解の挙動との関係を研究を行った.自己共役作用素ではスペクトルメジャーを使い深い考察がなされているが、消散タイプでは、結果が多くはないが、部分的に結果を得られた.また、Maxwell, Stokes方程式の解の界面正則性についての研究を行った.界面をはさんでMaxwellまたはStokes方程式を満たす解について弱解の領域全体での正則性を考察した.4.分担者下村は、今年度は,主に非線形シュレディンガー方程式の解の長時間的漸近挙動に関して研究した.空間2次元でu^2やu^^<-2>の様な2次の非線形項を持つシュレディンガー方程式の解は漸近自由になり得るが,2次の非線形項でも|u|^2の場合には非線形方程式の解は非線形項の寄与を受ける事が分かった.また電磁場ポテンシャル付き非線形シュレディンガー方程式の時間局所解の平滑効果や,シュレディンガー方程式と2階双曲型方程式の連立系の散乱理論に関する結果も得た
KAKENHI-PROJECT-15540184
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ラオス北部における契約栽培と地方生活の動態的変化
ラオス北部の3つの村は、タバコの契約栽培で現金収入を増加させていた。一つの村はタバコの契約栽培に集中して収入を増やし、技術の習得によりコメの生産量も増やしていた。他の2村は、タバコの栽培を減らし、商業活動などに進出していた。どの村も教育の発展がみられる。他の2県でも調査した。契約栽培はカボチャなど多様な作物で行われていた。契約栽培成功のためには、乾期の水量が必要で灌漑設備が重要である。技術移転などに関して農民の人的資源育成が決定的に重要となる。2014年9月にラオス北部のルアンナムタ県のナムタ郡、シン郡、ロン郡の各郡の3つの村、合計9つの村を訪問して現地調査を行った。中国とフィリピンは領土問題でもめており、その関係でフィリピンは中国にバナナを輸出できなくなっている。したがって、中国商人がラオス北部に来て農民から土地をリースしてバナナプランテーションを経営していた。水田がバナナプランテーションに代わっていることを懸念した県は新規のバナナ・プランテーションへの転換を禁止し、現行のプランテーションは3年限りと規制している。各村に中国商人が来てスイカ、カボチャなどの契約栽培を行っている。中国商人は技術、資本、販路を提供し、ラオス農民は土地と労働を提供する契約栽培を行っているが、最初に資金をもらうが買い取り価格は安い契約と、最初に資金はもらわないが買い取り価格は高くなる契約がある。農民がどれだけリスクをとれるかという点で契約内容が異なっている。村の人的水準、土地の質、水量、立地などの状況、来ている中国商人により契約栽培も異なっている面があることが分かった。ゴムの植林は、ゴムの価格が暴落しており、採取をしていない村もあった。村だけでなく、ゴム工場、中国投資の農業会社、農業試験場、中国国境なども訪問して聞き取り調査を行った。以前訪問したときに比べて中国国境のトラックの数が格段に増え、そのサイズが大きくなっており、国境間での農産物などの輸送が頻繁になっていることがうかがえた。農林省が中心となりアジア開発銀行の資金を利用して収集した「2010-2011年北部地方開発セクタープロジェクト」のポンサリー県、ルアンナムター県、ボケオ県の3件の家計調査個票データを使用して、契約栽培と貧困の分析を行った。その契約栽培は平均して収入の12%を占め、計量経済学分析の結果は契約栽培は貧困削減に役立っているということを示していた。平成27年5月にウドムサイ県の調査を行いナーモー郡のマイナータオ村、ナサバン村、クアンカム村や大規模なバナナプランテーションを訪れて調査した。この地域ではタバコの契約栽培のウエイトが高かったが、タバコに集中して生産している村とタバコ生産のウエイトを減らして別の作物を増やしている村があった。商業活動を行うグループが生じていることも分かった。この3つの村に関するこれまでの調査結果を「ラオス北部における契約栽培の地方生活への影響」という論文にした。2008年から2010年の間に従来の作物生産から契約栽培による新しい作物へと重点が移動したことを明確に示した。またタバコの栽培を行っているかどうかが現金収入の差を決める重要な要因であることを実証的に示した。契約栽培による資金により新しい経済活動が始まっていることなどメリットを上げるとともに問題点も指摘した。今後の解決すべき問題に関してもあげている。平成28年2月にポンサリー県とウドムサイ県のいくつかの村を訪問して調査を行った。契約栽培によるロングビーンズの生産と中国企業による収集倉庫の調査も行った。ロングビーンズに関してはいくつかの企業が来て契約栽培をしていて、ラオス農民側のメリットも大きいようにみえた。各村の灌漑設備の様子も見て回ったが、灌漑が整うと契約栽培を裏作で行えて、収入が増えていることがうかがえた。地方の灌漑設備は1990年代にタイの技術を導入して行われている。しかし、タイの川は流れが緩やかであるため、流れの急なタイ方式の灌漑はラオスには適していなかった。したがって、ラオスの川は流れが速いために石や大木が流れ込み灌漑設備が破壊されたり、砂で埋まってしまうなどの問題点があった。その後、NGOなどが改修を行っているところもあるが、専門的な改修は行われなかった。現在ADBに資金により政府が改修に努めている。長く実施してきたウドムサイ県のナーモー郡の調査から、ルアンナムター県、ポンサリー県へと調査地域を拡大でき、契約栽培で主に生産している商品作物が地域より異なっていること、村により技術の獲得状況が異なることなどを確認することができた。また、ナーモー郡の調査に関して、論文にまとめて雑誌に掲載することができた。ラオス国立大学の国際コンファレンスにおいて、Agricultural Development and Sustainable Growthという基調講演を行った。ラオスの持続的発展のためには工業部門や第三次産業に労働力が流入する必要があるが、ラオスは農業に比較優位があることを考えると、国内需要を充足するだけの農業生産が必要である。したがって、農業の生産性を上げて、余剰労働力を生み出して、その労働力をその他部門に移動する必要がある。生産性を上昇させるための一つの手段が契約栽培の活用であり、契約栽培をスムーズに行うための環境整備が必要である。「ラオスの経済発展と海外直接投資受入れ環境」を掲載し、海外直接投資を受け入れるときにラオスはどのような問題を抱えているかを検討した。
KAKENHI-PROJECT-26380299
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ラオス北部における契約栽培と地方生活の動態的変化
ラオスが着実な発展を続けるためには資本増加、技術移転、雇用促進といった面で直接投資の流入が欠かせない。世界銀行のデータを使用して、外国所有企業の投資環境の評価を検討した。最も大きな障害は「適切に教育された労働力の不足」であり、海外直接投資流入の増加には教育の充実と労働市場の効率化が欠かせない。電力や税率に関しても障害が指摘されている。「ラオス北部における契約栽培と地方生活」を岡山商科大学の研究会で発表した。契約栽培の進展とともに、現金収入が増えて豊かになり、教育や保健も改善している。特に、果物、カボチャ、タバコ、サヤエンドウなどはコメの裏作として収穫するので好都合である。ウドムサイ県の村の調査では、土地の比較的よくない村で契約栽培により現金収入が急速に上昇していた。また現金収入が入ることにより新しい種や肥料を購入できてコメの収穫も増加しするという好循環が生まれていた。計量分析により契約栽培を行っていること、コメを売ることができることと土地の広さが現金収入を増やす重要なポイントとなっていることを示した。ラオス北部の3つの村は、タバコの契約栽培で現金収入を増加させていた。一つの村はタバコの契約栽培に集中して収入を増やし、技術の習得によりコメの生産量も増やしていた。他の2村は、タバコの栽培を減らし、商業活動などに進出していた。どの村も教育の発展がみられる。他の2県でも調査した。契約栽培はカボチャなど多様な作物で行われていた。契約栽培成功のためには、乾期の水量が必要で灌漑設備が重要である。技術移転などに関して農民の人的資源育成が決定的に重要となる。これまでウドムサイ県の村に限定していた調査をルアンナムタ県の9つの村に広げることができて、契約栽培の契約内容、対象の農作物に関してより多様性があるという情報を得た。また、比較的簡単な灌漑の修理により、契約栽培による収穫が急増しているケースを見ることができた。農業技術に関しては中国側が圧倒的に優れていて、ラオス側は太刀打ちできていないこともよくわかった。ビエンチャンで開かれたAsian Rural Sociological Societyにおいて論文を発表することができ、『経済政策ジャーナル』に論文の掲載が決まった。中国の商人や企業が契約栽培に幾つか進出している場合でも、商品作物の棲み分けや価格の統一性が見られる。したがって、中国側の商品流通や作物の購入組織についての情報が必要で、中国側の文献を集めて分析する必要があり、そのことを実行する予定である。また、ラオスに関する契約栽培の研究を調べ、商品作物による違いや、地域的な違いにより我々の研究とどのように違うのかを比較検討する。開発経済学契約栽培は中国商人が生産技術、販路、需要者が要求する品質など重要な情報を握っているため、ラオス農民は受け身にならざるを得ない点は共通である。しかし、村の人的資源、土地の質、水量、立地などにより契約栽培の中身が異なって多様であることが分かった。したがって、より広く契約栽培の実例を見ていくことの重要であり、やや広い範囲で調査地を回る必要があるんので、このことを実行に移す予定である。
KAKENHI-PROJECT-26380299
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日本語意味辞書を用いた名詞句の意味的構造解析技術の研究
本研究では、日本語表現に使用された「名詞」の意味決定の問題を中心に日本語の意味解析技術に挑戦した。従来の研究では、要素合成法の立場から、表現の意味と表現の構造を分離し、別々に扱うのが普通であった。しかし、表現の意味を決定するには、名詞の辞書的な意味とそれが使用された表現構造の知識を組み合わせた処理方式が必要と考えられる。そこで、本研究では、実際に使用された表現の構造に着目して、単語間の意味的関係をパターン化することにより、表現構造の持つ情報の活用を図った。具体的には、日英言語を対比する立場から、「和英辞書」を用いて、名詞の持つ語義の量的構造を明らかにするとともに、最近完成された「日本語意味辞書」を用いて、助詞「の」、「と」及び形容詞を含む日本語名詞句の意味的係り受け関係を決定するパターン規則を実験的に求め、それによる名詞の語義決定能力を明らかにした。また、その結果を拡張して名詞句全体の解析に適用し、名詞訳語の決定に有効な方法を提案すると共に,各種の名詞句に応用してその効果を明らかにした。主な適用対象は,(1)形容詞と名詞の関係に関する解析,(2)名詞と名詞の関係に関する解析,(3)抽象名詞を有する日本語表現の解析,(4)数量型名詞句の翻訳規則に関する研究,(5)名詞の訳語選択技術,(6)時間と空間に関する表現の意味解析,(7)その他の意味解析である。このうち,(8)については,研究途上であるが,他の課題については,解析精度が十分と言えないものもあるが,ほぼ,実用できそうな結果が得られた。本研究では、日本語表現に使用された「名詞」の意味決定の問題を中心に日本語の意味解析技術に挑戦した。従来の研究では、要素合成法の立場から、表現の意味と表現の構造を分離し、別々に扱うのが普通であった。しかし、表現の意味を決定するには、名詞の辞書的な意味とそれが使用された表現構造の知識を組み合わせた処理方式が必要と考えられる。そこで、本研究では、実際に使用された表現の構造に着目して、単語間の意味的関係をパターン化することにより、表現構造の持つ情報の活用を図った。具体的には、日英言語を対比する立場から、「和英辞書」を用いて、名詞の持つ語義の量的構造を明らかにするとともに、最近完成された「日本語意味辞書」を用いて、助詞「の」、「と」及び形容詞を含む日本語名詞句の意味的係り受け関係を決定するパターン規則を実験的に求め、それによる名詞の語義決定能力を明らかにした。また、その結果を拡張して名詞句全体の解析に適用し、名詞訳語の決定に有効な方法を提案すると共に,各種の名詞句に応用してその効果を明らかにした。主な適用対象は,(1)形容詞と名詞の関係に関する解析,(2)名詞と名詞の関係に関する解析,(3)抽象名詞を有する日本語表現の解析,(4)数量型名詞句の翻訳規則に関する研究,(5)名詞の訳語選択技術,(6)時間と空間に関する表現の意味解析,(7)その他の意味解析である。このうち,(8)については,研究途上であるが,他の課題については,解析精度が十分と言えないものもあるが,ほぼ,実用できそうな結果が得られた。平成10年度は、助詞「の」及び形容詞を含む名詞句を対象に、約3,000種類の名詞の意味属性を用いて以下の3種類の実験的研究を行った。1.「AのB」型の名詞句解析名詞句解析規則を名詞Aと名詞Bの意味属性αとβの共起関係を共起マトリックスとして表現する方法を実現するため、実際の文書から抽出された名詞句の名詞Aと名詞Bの意味属性の共起頻度から、このマトリックスを作成することを試みた。その結果、81種からなる意味属性を決定することができた。また、この時の共起マトリックスを使用した係り受け解析では、正解率71.4%が得られることが分かった。2.「AのBのC」型の名詞句の解析係り受け関係に曖昧性の生じる日本語名詞句のうち、最も典型的な「AのBのC」(A,B,Cは名詞)の形の名詞句に対して、係り受け解析に必要な規則を自動生成する方法を考案した。また、実験的検討によれば、得られた規則全体による係り受け解析の正解率は、83.8%であった。3.形容詞型の名詞旬解析用言を含み、係り受け解析で曖昧性の生じる名詞句の中で、最も単純な構造を持つ「形容詞+AのB」(A,Bは名詞)の型の名詞句に対して、名詞の意味属性を用いて、形容詞の係り先を決定する方法(解析正解率の最大=94%)を提案した。名詞語義の量的構造の調査では、重要語と見なせる和語名詞(約1,000語)の半数が、英語訳語の多義を持ち、その平均値は3であること、また、その解消に単語意味属性の情報を使用すれば、平均訳語多義は1.7に減少し、訳語選択の正解率は、ランダム選択の場合に比べて2倍の78%に向上する可能性のあることが分かった。また、名詞の意味的用法の調査では、新聞記事1万文の日英対訳コーパスを対象に、英訳語の多義構造を調べた結果は、おおよそ以下の通りである。重要名詞1,000語中、新聞記事で使用された語は、約750語であった。そのうち、50回以上出現した名詞106語を対象に、各見出し語毎に対応する英語表現を調べ、訳語の構成割合によって下記のように分類した。
KAKENHI-PROJECT-10480073
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10480073
日本語意味辞書を用いた名詞句の意味的構造解析技術の研究
(1)多義のない名詞(2語)(2)訳語がほぼ一意に決定できる名詞(13語)(3)有力な訳語が存在する名詞(32語)(4)同程度の頻度の訳語が複数存在する名詞(11語)(5)訳されないことが多い名詞(7語)(6)名詞以外に訳される名詞(41語)これによると、出現頻度の高い名詞では、多義のないものは少ない。また、(5),(6)が45%を占めるが、これらは、翻訳辞典の使えない名詞であり、それぞれの性質の応じた訳し方の研究が必要である。従って、残りの名詞((3)と(4)で全体の40%)が訳語選択技術のカバーすべき範囲と言うことができる。そこで、単語意味属性の適用効果を調べるため、(3)と(4)の名詞、43語について、意味属性が決まったときの多義数の変化を調べると、平均多義数は、2.91から1.58に減少し、平均正解率は、46.5%から83.3%に向上することが分かった。本研究では、日本語表現に使用された「名詞」の意味決定の問題に挑戦する。従来の研究では、要素合成法の立場から、表現の意味と表現の構造を分離し、別々に扱うのが普通であった。しかし、名詞の意味を決定するには、名詞の辞書的な意味とそれが使用された表現構造の知識を組み合わせた処理方式が必要と考えられる。そこで、本研究では、実際に使用された表現の構造に着目して、名詞間の意味的関係をパターン化することにより、表現構造の持つ情報の活用を図った。本年度は,昨年度までに検討を行った「AのBのC」の型の名詞句の係り受け解析規則の自動生成法につて論文にとりまとめた,形式名詞「の」を含む名詞句の意味解析については,ほかの抽象名詞「もの」,「こと」,「ところ」,「とき」などへ交替可能な場合が多いことに注目して,新しい翻訳方式を提案すると共に,自己組織化を使用した交替現象の解析方式を提案し,いずれも研究会論文としてまとめた。また,数量を表す名詞句,時間と空間を表す名詞句のそれぞれについても,日本語と英語の認識の違い着目した翻訳方式の検討を行い,翻訳規則をまとめると共に,シミュレーション実験によってその翻訳精度を推定した。なお,昨年度までに実施した研究のうち,結合価パターンに使用される単語意味属性を名詞の訳語選択に適用する方法の検討結果については,実験結果を取り纏め,学会誌論文として投稿した。
KAKENHI-PROJECT-10480073
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CD1・脂質免疫応答に着目した、エイズワクチン開発の新戦略
ヒト免疫不全ウイルス感染に対するタンパク質ワクチンは未だ実用化に至っていない。高頻度に生じるエスケープ変異がその主因と考えられ、効果的なワクチンの開発には、変異を許し難いT細胞エピトープの同定が急務である。本研究は、細胞培養系およびサルエイズモデルを用い、ミリスチン酸付加Nefペプチド(リポペプチド)に対するキラーT細胞応答の存在と機能を明らかにした。ミリスチン酸付加は高度に保存された領域で起こり、かつその反応はウイルスの病原性において重要であることから、リポペプチドは有効なエイズワクチンとなる可能性が示された。ヒト免疫不全ウイルス感染に対するタンパク質ワクチンは未だ実用化に至っていない。高頻度に生じるエスケープ変異がその主因と考えられ、効果的なワクチンの開発には、変異を許し難いT細胞エピトープの同定が急務である。本研究は、細胞培養系およびサルエイズモデルを用い、ミリスチン酸付加Nefペプチド(リポペプチド)に対するキラーT細胞応答の存在と機能を明らかにした。ミリスチン酸付加は高度に保存された領域で起こり、かつその反応はウイルスの病原性において重要であることから、リポペプチドは有効なエイズワクチンとなる可能性が示された。サル免疫不全ウイルスが感染細胞内で産生すると考えられるNefタンパク質由来リポペプチドに着目し、この分子に対する免疫応答の強さと質を詳細に解析することにより、新しい抗エイズワクチンとしてのポテンシャルを検証した。まずこれを特異的に認識するT細胞株は、CD8アルファー鎖、ベータ鎖陽性のキラーT細胞であり、活性化に伴い、インターフェロンガンマやパーフォリンを分泌した。抗原をパルスした末梢血単球に対して極めて強い細胞傷害活性を示したが、T細胞やB細胞に対してはほとんど傷害活性を認めなかった。ヒトなど異種の単球、樹状細胞に対しては細胞傷害活性を示さなかった。また、Nef遺伝子を導入した単球がこのT細胞株を刺激したことから、リポペプチド抗原が細胞内で産生され、抗原提示分子によってT細胞に提示されることが示唆された。サル免疫不全ウイルスに感染したアカゲザルの末梢血を採取し、インターフェロンガンマエリスポットアッセイを行ったところ、Nef由来リポペプチド抗原に対する有意な応答を認めた。特異的T細胞数は、血清中のウイルス量と弱い逆相関を示したことから、このリポペプチドに対する応答がウイルス制御に貢献している可能性が示唆された。最後にこの脂溶性リポペプチド分子を溶解しリボソームへの封入を可能にする溶媒の検討を行い、クロロフォルムやアセトン、メタノールなど単一溶媒で効率的溶解はできないが、適切な濃度で組み合わせることにより完全溶解が達成できることを確認した。サル免疫不全ウイルスが産生するNefタンパク質は、そのN末端にミリスチン酸付加を受けることにより、免疫抑制機能を発揮する。前年度までの研究から、ミリスチン酸付加を受けたN末端Nef5残基ペプチドを特異的に認識するアカゲザルT細胞株の存在が明らかとなっていたので、この抗原や類縁アナログ抗原を作製して、感染個体内での特異的T細胞応答について検証を行った。サル免疫不全ウイルス感染アカゲザル計6頭より経時的に末梢血を採取し、種々の抗原存在下でインターフェロンガンマエリスポット法を行ったところ、感染早期(23週)にはミリスチン酸付加Gagペプチドに対する低レベルのT細胞応答を検出した。一方、感染中期以降(5週以降)においては、ミリスチン酸付加Nef5-merペプチドあるいはミリスチン酸付加Nef6-merペプチドに対する優位なT細胞応答を認めた。これまでのT細胞株の解析では、ミリスチン酸付加Nef6-merペプチドに対する応答は想定されなかったが、感染個体内においてはミリスチン酸付加Nef6-merペプチドに対する応答が最も強いことが判明した。同時にパーフォリンを検出するエリスポット法を行ったが、感度に問題があり、結論を得るには至らなかったが、T細胞株がパーフォリンを産生することを確認した。ミリスチン酸付加Nef6-merペプチドを特異的に認識してインターフェロンガンマを産生するT細胞の数と、血清ウイルス価の間には、有意な逆相関を認めた。以上の結果をもとに、ミリスチン酸付加Nef6-merペウチドをエイズワクチン候補として検討することを考え、大量合成を完了した。
KAKENHI-PROJECT-22659188
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22659188
摂食行動で見られる神経回路網可塑性の発現機構の研究
アメフラシはアオサを好んで食べるが、マクサやサナダグサを嫌って吐き出す。摂食から吐き出しへの口の運動パターン変化は、閉口運動ニューロン(JC)の発火パターンの変化が大きな要因である。この神経機構を調べると、サナダグサの場合、JCニューロンを単シナプス性に抑制するMAニューロンの発火パターンが変化するのに対し、マクサの場合、MA発火パターンは変わらずMA⇒JC間のシナプス伝達が大きく抑圧されることがわかった。そこでまず、マクサの場合のシナプス伝達抑圧に寄与する中枢内修飾ニューロンの探索を行った。その結果、脳神経節内Mクラスターに細胞体があり口球神経節に直接軸索をのばすニューロン(CBM1)を見いだした。このニューロンは口唇へのアオサ味刺激よりマクサ味刺激でより高頻度に発火し、また発火によりMAがJCに誘発するシナプス応答を抑制した。さらにカテコールアミンを含有することも示唆された。昨年までのこれら成果に基づき、今年度はCBM1の修飾機構をより詳しく調べた。その結果、MA-JCシナプス領域への微小ピペットからのドーパミン局所添加がCBM1の効果に良く似たシナプス修飾を誘発すること、またドーパミンD1受容体のアンタゴニスト(SCH23390)の存在下、この修飾作用が減少することがわかった。さらにCBM1のシナプス修飾効果もSCH23390存在下で減少することがわかり、CBM1はドーパミンを修飾物質として利用し、シナプス部のD1受容体に作用していることが示唆された。また、MA-JCシナプスの伝達物質がアセチルコリンであることを利用し、シナプス領域へのアセチルコリン添加応答へのドーパミン作用を調べたが変化がみられず、CBM1の作用はシナプス前側であることも示唆された。吐き出し時にMA⇒JCニューロン間のIPSPを抑制する修飾ニューロンは、一連の研究から、脳神経節に細胞体が存在し、口球神経節と連結するCBC神経に軸索をのばしていると考えられる。これまで、CBC神経の断端から逆行性に染色し、脳神経節内に十数個のCBニューロン細胞体を見い出した。この中には修飾ニューロンだけでなく、摂食、吐き出しの司令様ニューロンも含まれると考えられる。そこで吐き出しに関わるニューロンを探すため、海藻味刺激に伴うニューロンの応答を調べる必要があるが、これら細胞体はかなり小さく、微小電極法を用いることが困難であった。そこで、ニューロンのスパイク活動をモニターできるカルシウムイメージング法を用い、海藻味刺激に伴うニューロンの応答を調べた。その結果、脳神経節Mクラスター内に細胞体を持つニューロンの1タイプが、摂食味刺激に比べて吐き出し味刺激でよく応答することをすでに見い出した。本研究ではこの継続として、このタイプのニューロンをきちっと同定し、実際にMA⇒JCニューロン間のIPSPを抑制するかどうかを調べることを目的とした。Mクラスター内に細胞体を持つ4個のCBニューロンのうちの一つCB_M1ニューロンは、両側のCBC神経へ軸索をのばし、FaGlu固定法により蛍光を発してカテコールアミン類を含有すると考えられる。またCB_M1はMA、JCニューロンに単シナプス性EPSPを誘発した。今回、口唇への海藻味刺激により、CB_M1には摂食、吐き出し味刺激で放電活動が誘発されるが、常に吐き出し味刺激の方が大きく活動することがわかった。また、CB_M1の放電によりMA⇒JCニューロン間のシナプス伝達は大きく抑圧された。さらに外液への10^<-6>Mドーパミン添加によりほぼ同程度のシナプス抑圧がおこることも確認した。これらの結果、CB_M1が目的とする修飾ニューロンであることが示唆された。アメフラシはアオサを好んで食べるが、マクサやサナダグサを嫌って吐き出す。摂食から吐き出しへの口の運動パターン変化は、閉口運動ニューロン(JC)の発火パターンの変化が大きな要因である。この神経機構を調べると、サナダグサの場合、JCニューロンを単シナプス性に抑制するMAニューロンの発火パターンが変化するのに対し、マクサの場合、MA発火パターンは変わらずMA⇒JC間のシナプス伝達が大きく抑圧されることがわかった。そこでまず、マクサの場合のシナプス伝達抑圧に寄与する中枢内修飾ニューロンの探索を行った。その結果、脳神経節内Mクラスターに細胞体があり口球神経節に直接軸索をのばすニューロン(CBM1)を見いだした。このニューロンは口唇へのアオサ味刺激よりマクサ味刺激でより高頻度に発火し、また発火によりMAがJCに誘発するシナプス応答を抑制した。さらにカテコールアミンを含有することも示唆された。昨年までのこれら成果に基づき、今年度はCBM1の修飾機構をより詳しく調べた。その結果、MA-JCシナプス領域への微小ピペットからのドーパミン局所添加がCBM1の効果に良く似たシナプス修飾を誘発すること、またドーパミンD1受容体のアンタゴニスト(SCH23390)の存在下、この修飾作用が減少することがわかった。さらにCBM1のシナプス修飾効果もSCH23390存在下で減少することがわかり、CBM1はドーパミンを修飾物質として利用し、シナプス部のD1受容体に作用していることが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-12048214
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12048214
摂食行動で見られる神経回路網可塑性の発現機構の研究
また、MA-JCシナプスの伝達物質がアセチルコリンであることを利用し、シナプス領域へのアセチルコリン添加応答へのドーパミン作用を調べたが変化がみられず、CBM1の作用はシナプス前側であることも示唆された。
KAKENHI-PROJECT-12048214
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高分子のグロビュール形成とその内部構造に関する統計力学的研究
溶液中で高分子が,拡がったランダムコイル状態から,引力的相互作用により緊密に折りたたまれた粒状分子(グロビュール)に移転する現象をコイル・グロビュール転移と言う.一口にグロビュールと言っても,その生成のメカニズムにより異った空間構造を持つ.凝集の主な原因として(2)飽和性化学結合(水素結合,硫黄結合など)(3)溶媒との親和力(疎水性相互作用,混合溶媒など)(4)トポロジー的相互作用(絡まり合いによる力)(5)静電相互作用(双極子,電解質など)(6)溶媒の流れの効果などが考えられる.本研究では以上の順に,それぞれの相互作用の特性と,結果的に出現するグロビュールの内部構造との関係を個別に調べることが目的であった.このうち,本年度は(2)(4)を中心に研究を進めた. (2)では主として水素結合で分子内架橋された網目構造のグロビュールについて,その生成条件を求めた.主鎖上に適当に間隔をおいて結合性のある側鎖を持つ高分子では,温度変化で転移が起こる可能性を示したが,現在未だ実験では観測されていない.分子間架橋で会合体が形成される場合の,溶液全体の性質を研究中である. (3)については,溶媒の混合,他種高分子の添加の効果を調べた.以上の研究成果について,物理学会誌上で解説を行った.高分子鎖の絡まり合いによる相互作用(4)についても,その基本的特性と同時に,分子形態への影響を,生体高分子の例で調べた.DNAにみられる超らせん構造はその代表的なものである.超らせんのエネルギー,安定性,振動などについて統計力学的視点から調べた.環状ポリスチレンの溶液物性を研究中である. (5)(6)は今後の課題.溶液中で高分子が,拡がったランダムコイル状態から,引力的相互作用により緊密に折りたたまれた粒状分子(グロビュール)に移転する現象をコイル・グロビュール転移と言う.一口にグロビュールと言っても,その生成のメカニズムにより異った空間構造を持つ.凝集の主な原因として(2)飽和性化学結合(水素結合,硫黄結合など)(3)溶媒との親和力(疎水性相互作用,混合溶媒など)(4)トポロジー的相互作用(絡まり合いによる力)(5)静電相互作用(双極子,電解質など)(6)溶媒の流れの効果などが考えられる.本研究では以上の順に,それぞれの相互作用の特性と,結果的に出現するグロビュールの内部構造との関係を個別に調べることが目的であった.このうち,本年度は(2)(4)を中心に研究を進めた. (2)では主として水素結合で分子内架橋された網目構造のグロビュールについて,その生成条件を求めた.主鎖上に適当に間隔をおいて結合性のある側鎖を持つ高分子では,温度変化で転移が起こる可能性を示したが,現在未だ実験では観測されていない.分子間架橋で会合体が形成される場合の,溶液全体の性質を研究中である. (3)については,溶媒の混合,他種高分子の添加の効果を調べた.以上の研究成果について,物理学会誌上で解説を行った.高分子鎖の絡まり合いによる相互作用(4)についても,その基本的特性と同時に,分子形態への影響を,生体高分子の例で調べた.DNAにみられる超らせん構造はその代表的なものである.超らせんのエネルギー,安定性,振動などについて統計力学的視点から調べた.環状ポリスチレンの溶液物性を研究中である. (5)(6)は今後の課題.
KAKENHI-PROJECT-62550645
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エアフローティング搬送ウェブに発生するフラッタの励振メカニズム解明と非接触制振
ウェブやシートなどの柔軟媒体に発生するフラッタの解析モデルを構築した.流体の支配方程式には,非定常揚力面理論に基づくクスナの積分方程式を用いた.流体構造連成方程式を導出し,安定性解析と実験によりフラッタの発生条件を示した.また,流体力仕事を求め励振メカニズムを考察した.さらに,アクチュエータである可動板の角度を能動的に変化させて流れを制御し,フラッタを非接触で抑止する制御システムを提案した.解析と実験によりフラッタ抑止効果を調べた.また,実験によりフラッタを非接触で制振できることを示し,フラッタ制御に重要なパラメータを明らかにした.これまでに,フラッタ特性を調べるための実験装置を構築し,基本的なフラッタ特性と支配因子を明らかにした.実験により得られたフラッタ特性と支配因子を基に,フラッタの詳細な解析モデルを構築した.ここで,三次元流れの流体支配方程式には,非定常揚力面理論に基づくクスナの積分方程式を用いた.構造系である有限幅ウェブの面外振動は3次元的な複雑なモードとなるため有限要素法により離散化した弾性体要素モデルを用いた.これらの方程式を基礎として,ウェブの動きと連成した非定常空気力および流体構造連成方程式を導出した.さらに,構築した解析モデルおよび流体構造連成方程式を基礎とするフラッタ(安定性)解析を行った.支配無次元数である質量比とアスペクトを変化させて,フラッタ臨界流速およびフラッタが発生する条件を明らかにした.また,フラッタモードと流体圧力分布,およびウェブ表面上での流体力による仕事の分布であるエネルギ収支分布を調べ,フラッタの励振メカニズムを明らかにした.ウェブやシートなどの柔軟媒体に発生するフラッタの解析モデルを構築した.流体の支配方程式には,非定常揚力面理論に基づくクスナの積分方程式を用いた.流体構造連成方程式を導出し,安定性解析と実験によりフラッタの発生条件を示した.また,流体力仕事を求め励振メカニズムを考察した.さらに,アクチュエータである可動板の角度を能動的に変化させて流れを制御し,フラッタを非接触で抑止する制御システムを提案した.解析と実験によりフラッタ抑止効果を調べた.また,実験によりフラッタを非接触で制振できることを示し,フラッタ制御に重要なパラメータを明らかにした.エアフローティング搬送ウェブに発生するフラッタの基本的なフラッタ特性を調べるための実験装置を構築した.空気圧により浮上した状態でウェブ発生するフラッタの特性を実験により調べた.実験では,ウェブ上の振動変位を測定することで,基本的なフラッタ特性を明らかにした.実験により得られたフラッタ特性と支配因子を基に,ウェブに発生するフラッタの解析モデルを構築した.ここで,ウェブ周りの流体の支配方程式には,非定常揚力面理論に基づくクスナの積分方程式を用いた.構造系であるウェブの面外振動は3次元的なモードとなるため有限要素法により離散化した弾性体要素モデルを用いた.そして,ウェブの動きと連成した非定常空気力を定式化することで,流体構造連成方程式を導出した.流動制御用アクチュエータを用いて,空気の流れを制御して,柔軟媒体であるシートおよびウェブに発生するフラッタを非接触で抑止する新しい制振システムを構築した.流動制御用アクチュエータは柔軟媒体の上流側に配置し,空気の流れを能動的に制御した.アクチュエータの駆動には,電流フィードバック付きパワーアンプを用いた.実験では,流動制御アクチュエータの回転中心の位置を変化させて,基礎的な制振特性およびフラッタの抑止に重要な制御パラメータを明らかにした.制御パラメータとしては,1センサで計測した振動変位から可動板の動きまでの位相,2コントローラゲイン(可動板の可動角度)を変化させて,これらのパラメータの制振特性への影響を明らかにした.アクチュエータ動作による流動制御の効果を考慮した流体・構造連成解析モデルを構築し,その支配方程式を導出した.導出した支配方程式に基づく安定性解析により,上述した2つのパラメータ,1センサで計測した振動変位から可動板の動きまでの位相,2コントローラゲイン(可動板の可動角度)を変化させて制振特性を調べた.そして,実験結果と比較して理論解析結果の妥当性を示すと共に,制振効果を評価した.工学これまでの研究では(1)実験装置の設計・製作が完了し,基本的なフラッタ特性を調べる実験を実施した.(2)実験により基本的なフラッタ特性が明らかになった.(3)実験によりフラッタ現象を支配する因子を抽出し流体構造連成系の支配方程式を導出した.(4)フラッタ解析により,フラッタ臨界流速およびフラッタが発生する条件が明らかになった.(5)流体力による仕事の分布であるエネルギ収支分布,フラッタの励振メカニズムが明らかになった.これらの成果は,当初の計画で予定されたものであり,研究が計画通り進んでいる.2012年度の研究では(1)実験装置の設計・製作が完了し,基本的なフラッタ特性を調べる実験を実施した.(2)実験により基本的なフラッタ特性が明らかになった.(3)実験によりフラッタ現象を支配する因子を抽出し流体構造連成系の支配方程式を導出した.これらの成果は,当初の計画で予定されたものであり,研究が計画通り進んでいる.
KAKENHI-PROJECT-24560272
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24560272
エアフローティング搬送ウェブに発生するフラッタの励振メカニズム解明と非接触制振
今後は,これまでの研究で明らかになった励振メカニズムの知見を基に,アクティブ流動制御による非接触制振システムを構築し,その制振性能を評価する.アクティブ流動制御のために,ウェブ周りの空気の流れを制御して,エアフローティング搬送ウェブに発生するフラッタを非接触で抑止する新しい制振システムを構築する.制御実験では,流動制御アクチュエータの配置位置を変化させて,基礎的な制振特性およびフラッタの抑止に重要な制御パラメータを明らかにする.また,制御パラメータとしては,1センサで計測した振動変位から可動板の動きまでの位相,2コントローラゲイン(可動板の可動角度)を変化させて,これらのパラメータの制振特性への影響を明らかにする.詳細な制振メカニズムを解明するには,制御を行った場合の励振流体力の変化を測定する必要がある.このため,制御と同時にエアバー表面の圧力分布の時間変化も計測する.また,制振実験結果を基に重要な制御パラメータを抽出する.さらに,アクチュエータ動作による流動制御の効果を考慮した流体・構造連成解析モデルを構築し,その支配方程式を導出する.導出した支配方程式に基づく安定性解析により,上述した2つのパラメータ,1センサで計測した振動変位から可動板の動きまでの位相,2コントローラゲイン(可動板の可動角度)を変化させて制振特性を調べる.そして,実験結果と比較して理論解析結果の妥当性を検証すると共に制振効果を評価する.今後は,詳細なフラッタ特性と励振メカニズムを解明する.特に,実験では,振動変位とウェブ表面の非定常流体圧力を多点同時計測することで,フラッタモードと流体圧力分布,およびウェブ表面上での流体力による仕事の分布であるエネルギ収支分布を調べる.また,質量比とアスペクト,ウェブ速度に対するフラッタ臨界流速調べる.さらに構築した流体構造連成方程式を基礎とする安定性解析を行い,フラッタ発生条件を明らかにする.2013年度は,フラッタの励振メカニズムを明らかにし,それによって効果的なフラッタ制振のために必要な機能・機構の知見を得た.しかしながら,アクティブ制御のためのアクチュエータの試作,および実験装置を改良するには至らず,そのための研究費は次年度へ繰り越しとなった.2014年度は,アクティブ制御のためのアクチュエータの製作,および既存の実験装置を改良し,提案するアクティブ流動制御の制振性能を実験により評価する.また,得られた研究成果を発表する.2012年度(前年度)に構築した実験装置では,レーザ変位計を2台組み込むことで基本的なフラッタ特性を調べた.しかしながら,詳細なフラッタ特性を調べるために不可欠な多点同時計測実験は2013年度(次年度)実施となった.このため,追加するレーザ変位計や圧力計などのセンサ購入のための研究費使用は次年度となった.2013年度は,広範囲の流速でフラッタ特性を調べるための大流量ブロワ,ウェブ搬送のためのモータと駆動用インバータを購入し,これらを実験装置組み込むことで,詳細なフラッタ特性を調べるため実験装置の改良を行う.
KAKENHI-PROJECT-24560272
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哺乳類軟口蓋味蕾機能の重要性と種特異性
軟口蓋味蕾は、ラットおよびハムスターでは甘味に対して特異的に大きな応答性を示すが、マウスでは苦味に対して大きな応答性を持つことが明らかになった。また、甘味および苦味の受容変換に関与するα-gustducinをノックアウトしたマウスの大錐体神経と鼓索神経の味覚応答を調べた結果、鼓索神経では甘味応答が、大錐体神経では甘味および苦味応答の大部分が消失した。gustducinは軟口蓋ではIP3R3発現細胞の96.7%に発現するが、茸状乳頭味蕾では42.4%しか発現しなかった。鼓索神経と大錐体神経をすげ替えて、再生した味蕾のIP3R3とgustducinの発現を調べた結果、それぞれの口腔内領域における本来の発現の特徴に変化が認められなかった。これらの結果は、口腔内の味蕾の味感受性の特徴は支配神経に依存するのではなくその領域の上皮に依存することを示唆している。さらに、マウス胎仔の味蕾基底細胞マーカー遺伝子Shh,Prox1,およびMash1の発現を調べた。胎生12.5日に茸状乳頭原基のShhの発現開始の時期から、Prox1はShhと共発現した。軟口蓋では、Shhは胎生14.5日に、最前部では帯状に、後部ではスポット状に発現した。点状のShh発現部分の数(胎生14.5日に21.4±4.3個)は胎生15.5日まで急速に増加してピーク(54.8±4.0個)に達した。また、軟口蓋ではProx1はShhの発現開始の時期から共発現した。これらの結果は、舌前方と軟口蓋ともに味蕾基底細胞の分化がShh発現スポットのパターン形成と同調して起こることを示している。一方、Mash1発現はShhやProx1の発現より遅れ、軟口蓋ではShh発現スポット数がピークに達した後であった。さらに、PGP9.5とShh発現は、舌前方と軟口蓋ともに、上皮の神経支配はMash1の発現よりわずかに先行することがわかった。軟口蓋味蕾は、ラットおよびハムスターでは甘味に対して特異的に大きな応答性を示すが、マウスでは苦味に対して大きな応答性を持つことが明らかになった。また、甘味および苦味の受容変換に関与するα-gustducinをノックアウトしたマウスの大錐体神経と鼓索神経の味覚応答を調べた結果、鼓索神経では甘味応答が、大錐体神経では甘味および苦味応答の大部分が消失した。gustducinは軟口蓋ではIP3R3発現細胞の96.7%に発現するが、茸状乳頭味蕾では42.4%しか発現しなかった。鼓索神経と大錐体神経をすげ替えて、再生した味蕾のIP3R3とgustducinの発現を調べた結果、それぞれの口腔内領域における本来の発現の特徴に変化が認められなかった。これらの結果は、口腔内の味蕾の味感受性の特徴は支配神経に依存するのではなくその領域の上皮に依存することを示唆している。さらに、マウス胎仔の味蕾基底細胞マーカー遺伝子Shh,Prox1,およびMash1の発現を調べた。胎生12.5日に茸状乳頭原基のShhの発現開始の時期から、Prox1はShhと共発現した。軟口蓋では、Shhは胎生14.5日に、最前部では帯状に、後部ではスポット状に発現した。点状のShh発現部分の数(胎生14.5日に21.4±4.3個)は胎生15.5日まで急速に増加してピーク(54.8±4.0個)に達した。また、軟口蓋ではProx1はShhの発現開始の時期から共発現した。これらの結果は、舌前方と軟口蓋ともに味蕾基底細胞の分化がShh発現スポットのパターン形成と同調して起こることを示している。一方、Mash1発現はShhやProx1の発現より遅れ、軟口蓋ではShh発現スポット数がピークに達した後であった。さらに、PGP9.5とShh発現は、舌前方と軟口蓋ともに、上皮の神経支配はMash1の発現よりわずかに先行することがわかった。軟口蓋味蕾を支配する大錐体神経は、ラットおよびハムスターでは甘味に対して特異的に大きな応答性を示すが、マウスでは苦味に対して高い感受性と大きな応答性を持つことが明らかになった。3種の齧歯類(マウス、ラット、ハムスター)について、大錐体神経と鼓索神経の四基本味刺激に対する応答性を比較した結果、それぞれの種の間で大錐体神経応答には有意の種特異性があるが、鼓索神経応答には大きな差が認められないことが分かった。また、甘味および苦味のtransductionに関与するα-gustducinをノックアウトしたマウスの大錐体神経と鼓索神経からの味覚応答を調べた結果、鼓索神経では甘味応答が、大錐体神経では甘味および苦味応答の大部分が消失することが明らかになった。軟口蓋の味蕾は、出生時口腔内の他の部位に先駆けて成熟しているが、さらに、胎生期マウス胚(C57BL/6J)の味蕾の基底細胞のマーカー分子であるShh、Prox1およびMash1の発現を解析した結果、軟口蓋領域では、口蓋突起が融合する前の胎生14.5日からShhとProx1が共発現する味蕾基底細胞様の細胞がスポット状に分布していることが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-18592041
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18592041
哺乳類軟口蓋味蕾機能の重要性と種特異性
一方、舌では、舌の発生過程で茸状乳頭原基に発現するShhが茸状乳頭の分布パターンの形成に重要であることが報告されていたが、胎生12.5日で、ShhはProx1と共発現しており味蕾の基底細胞の特徴を示す細胞の分化が示唆された。また、Mash1の発現の開始も舌の方が早く、軟口蓋領域の胎生15.5日に対して茸状乳頭領域では胎生14.5日から発現することが明らかになった。これらの結果から、軟口蓋の味蕾は、胎生15.5日までは茸状乳頭の味蕾よりも発生が遅れているが、その後、急速に分化が進み、出生時までに茸状乳頭の味蕾よりも成熟することが明らかになった。軟口蓋味蕾は、ラットおよびハムスターでは甘味に対して特異的に大きな応答性を示すが、マウスでは苦味に対して大きな応答性を持つことが明らかになった。また、甘味および苦味の受容変換に関与するα-gustducinをノックアウトしたマウスの大錐体神経と鼓索神経の味覚応答を調べた結果、鼓索神経では甘味応答が、大錐体神経では甘味および苦味応答の大部分が消失した。gustducinは軟口蓋ではIP3R3発現細胞の96.7%に発現するが、茸状乳頭味蕾では42.4%しか発現しなかった。鼓索神経と大錐体神経をすげ替えて、再生した味蕾のIP3R3とgustducinの発現を調べた結果、それぞれの口腔内領域における本来の発現の特徴に変化が認められなかった。これらの結果は、口腔内の味蕾の味感受性の特徴は支配神経に依存するのではなくその領域の上皮に依存することを示唆している。さらに、マウス胎仔の味蕾基底細胞マーカー遺伝子Shh, Prox1,およびMash1の発現を調べた。胎生12.5日に茸状乳頭原基のShhの発現開始の時期から、Prox1はShhと共発現した。軟口蓋では、Shhは胎生14.5日に、最前部では帯状に、後部ではスポット状に発現した。点状のShh発現部分の数(胎生14.5日に21.4±4.3個)は胎生15.5日まで急速に増加してピーク(54.8±4.0個)に達した。また、軟口蓋ではProx1はShhの発現開始の時期から共発現した。これらの結果は、舌前方と軟口蓋ともに味蕾基底細胞の分化がShh発現スポットのパターン形成と同調して起こることを示している。一方、Mash1発現はShhやProx1の発現より遅れ、軟口蓋ではShh発現スポット数がピークに達した後であった。さらに、PGP9.5とShh発現は、舌前方と軟口蓋ともに、上皮の神経支配はMash1の発現よりわずかに先行することがわかった。
KAKENHI-PROJECT-18592041
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18592041
推論機構を持つ遺跡復元作業支援3次元シミュレータの開発
1.遺跡の発掘過程やシステムの観察で得られた知見を基に、遺跡の空間構造を復元的に考察する作業を支援し、考察結果を3次元画像表現するシステムを開発した。システムは大きく3つの機能を持つ。(1)空間構造表現機能:遺跡の発掘経過や発掘直後の状況、さらには復元的考察の内容を3次元CG画像で表示する。(2)画像情報管理検索機能:発掘過程で記録した遺跡の画像情報を集合管理し、対話的に検索表示する。(3)推論機能:遺構の建築的まとまりや時代的区分の推論、遺跡の空間利用の推論、破壊された遺構の原型の推論など、発掘した遺跡を復元的に考察する作業を支援する。2.(1)(2)の機能については、アル・トゥール遺跡を事例に、データベースを構築し、現場での観察が研究室に置かれたシステムでどの程度再現できるか、観察の再現性を検討した。基本的な観察事項を再現できるのはもとより、全体像の把握や図形処理を加えた観察など、優れた特徴を確認した。3.部分的に発掘された遺構の実測情報を基に、設計ルールを推論、それを基に遺構の全体的な空間構成を復元し、画像表現するシステムを構築した。設計ルールを推論する作業の手順に改良すべき点が残されているが、ギリシャ神殿の考察に利用できる見通しを得た。4.発掘された遺跡の、各部分の利用形態を推論するシステムを試作した。すなわち、関連文献や遺跡の観察で得た知識をデータベースに蓄積しておき、観察者が利用形態の仮説を提示すると矛盾が無いかをシステムが検証する形式の推論システムである。事例分析を通じ実用化の見通しを確かめた。遺跡の空間構造に関する知識ベースの蓄積によって応用対象が広がると期待できる。1.遺跡の発掘過程やシステムの観察で得られた知見を基に、遺跡の空間構造を復元的に考察する作業を支援し、考察結果を3次元画像表現するシステムを開発した。システムは大きく3つの機能を持つ。(1)空間構造表現機能:遺跡の発掘経過や発掘直後の状況、さらには復元的考察の内容を3次元CG画像で表示する。(2)画像情報管理検索機能:発掘過程で記録した遺跡の画像情報を集合管理し、対話的に検索表示する。(3)推論機能:遺構の建築的まとまりや時代的区分の推論、遺跡の空間利用の推論、破壊された遺構の原型の推論など、発掘した遺跡を復元的に考察する作業を支援する。2.(1)(2)の機能については、アル・トゥール遺跡を事例に、データベースを構築し、現場での観察が研究室に置かれたシステムでどの程度再現できるか、観察の再現性を検討した。基本的な観察事項を再現できるのはもとより、全体像の把握や図形処理を加えた観察など、優れた特徴を確認した。3.部分的に発掘された遺構の実測情報を基に、設計ルールを推論、それを基に遺構の全体的な空間構成を復元し、画像表現するシステムを構築した。設計ルールを推論する作業の手順に改良すべき点が残されているが、ギリシャ神殿の考察に利用できる見通しを得た。4.発掘された遺跡の、各部分の利用形態を推論するシステムを試作した。すなわち、関連文献や遺跡の観察で得た知識をデータベースに蓄積しておき、観察者が利用形態の仮説を提示すると矛盾が無いかをシステムが検証する形式の推論システムである。事例分析を通じ実用化の見通しを確かめた。遺跡の空間構造に関する知識ベースの蓄積によって応用対象が広がると期待できる。【.encircled1.】発掘の過程で光測量機器を用いて測定した遺構の形状モデル(現場サブシステム)から、研究室のグラフィックワークステーションを使って遺構の詳細な再現モデルを構築(研究室サブシステム)し、発掘過程の追跡や遺構の空間構造の検討を行なうシステムを試作した。また、アル・トゥールの発掘資料を用いてケースステダィを行なった。【.encircled2.】発掘現場で撮影した遺構の写真画像に、文字や図面情報を加えたマルチメディアデータベースを試作し、【.encircled1.】と同様にケーススタディを行なった。また、システムの構築にあたり、現場での撮影、記録から資料整理の方法までを確立することをあわせて行った。【.encircled3.】遺跡の空間構成推論支援システムの構築に向けて、イスラム社会の都市と住居構成に関する文献調査を行ない、知識表現の形式について検討した。【.encircled4.】前回のプロジェクトにおいて開発した、非単調推論の形式によるTMS(Truth Maintenance System:真理保全機構)のモデルの拡張について検討した。具体的には、従来のシステムは、利用者があらかじめ矛盾解消のルールをシステムに入力しておく必要がないため、利用の過程でシステムを成長させながら推論の支援を行なわせることができるものであったが、新に入力した知識が以前に入力した知識と矛盾した場合、矛盾解消機構が無限ループにおちいる可能性を否定できなかった。そこで、推論機構としてTMSを拡張したATMS(Asumption based TMS:仮説推論真理保全機構)の採用について検討した。ATMSでは、アドホックに入力した知識の不整合は、異なる環境下での推論として処理を進めることが可能となる。1.発掘調査の過程で収集した大量の情報を扱えるよう、画像情報管理システムや遺跡の空間構造表現システムを改良した。合わせて、これまで5年間、6期の調査で収集したアル・トゥール遺跡の3次元実測データを組み合わせて遺構配置や遺物分布を3次元画像表現し、遺跡の鳥瞰的考察を行った。現地では捉えにくかった建築遺構と発掘前地形の関係、建築遺構と遺物の広域的な分布の関係、建築遺構の配置に内在する3系統の軸線などが容易に読み取れるようになった。
KAKENHI-PROJECT-05555161
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推論機構を持つ遺跡復元作業支援3次元シミュレータの開発
2.発掘現場における考古学者との観察・討論、さらには文献資料を手がかりに、遺構の材料・形状・施工単位から、断片的に発掘された遺構の建築としてのまとまりや施工順序、さらには空間用途を推測するための知識を収集整理した。3.建設時の設計ルールを想定し、それらを手がかりに、部分的に発掘された建築遺構から、残りの部分の空間構成や部材構成を復元的に考察する方法を提案し、ギリシャ神殿について支援システムを試作した。全体から部分まで体系的なルールがあったと仮定したシステムでは、特定の実測情報から全体を推測し、3次元モデルを描画したり、入力したもの以外の実測値との誤差を検討できるようになった。しかし、実際には神殿毎に個別的な設計ルールがかなり組み込まれていたとの判断から、研究者が試行錯誤しながら、作業過程で適宜ルールを組み込んだり変更したりできるような、柔軟なシステムに変更中である。平面的考察の部分までは改訂を終了した。4.8mmビデオカメラを使って発掘現場における観察を記録し、即日的に画像データベースを作成する技術をほぼ確立した。発掘過程で1日あたり延べ1時間の観察を録画するものとして、一人の作業者が、毎日5060枚の画像データや撮影位置・方向等の基礎データを登録し、検索情報を付加するなどの一連の処理を完了できるような作業性が得られるようになった。1.研究とりまとめの一貫として、研究室サブシステムで発掘現場における観察作業をどの程度再現できるか、システムの再現性を評価した。基本的な観察事項を十分再現できるのはもとより、全体像の把握や、高さ関係など情報に加工処理を加えるなど、現場とは異なる視点で観察できるというメリットを確認した。2.ギリシャ神殿の復元作業支援システムについて昨年度明らかになった問題点を改良した。すなわち観察者が実測値を分析しながら、対話的に設計ルールを検討・提案し、それを基に空間構成を復元するなど、推論のエンジンとなるルールを定義する作業に柔軟性を持たせた。オリンピアのゼウス神殿を事例に、設計ルールの抽出や、部分しか残存して居なかったとの想定で残りの部分の空間構成を復元する作業を試行した。実用化には、分析に組み込む寸法項目選択の自由度を増すべきことが分かったが、手直しは可能であり、基幹システムとして当初予定した開発の成果は得られた。3.発掘した遺構の材料・形状・施工単位を手がかりに建築としてのまとまりや時代的区分を推論し、また観察や文献資料を手がかりに遺構の空間利用を推論する目的で、真理保全機構(TMS)を用いた推論システムを開発し、推論エンジンのデータとなるルール収集を行った。遺構の物理的条件記述モデルや推論エンジンを構築した。チュニスの住宅を事例に全発掘の場合や部分発掘の場合を想定して空間利用を推論する作業にシステムを試験運用し、実用の可能性を確かめた。前者のタイプの推論についても、ルール蓄積を続ける事により、開発したシステムの応用は十分可能である。
KAKENHI-PROJECT-05555161
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自然共生型の生活文化・行動を内包するマイナーサブシステンス(遊び仕事)研究の構築
研究成果の概要(和文):本研究は、生活と自然が乖離し、ゆえに自然が荒廃しつつある現代社会において、自然共生型の生活文化と行動を内包する「遊び仕事」に着目し、「遊び仕事」が現代日本人の生活行動を自然共生に向かわせる第一歩、人間生活と自然を結びつけるブレークスルー(突破口)となり得ると確信し、「遊び仕事」の今日的あり方について検討を重ねてきた。その結果、サブシステンスの今日的価値として、必要十分、もったいない、互酬性、共同体規範、非市場経済などの視点を抽出した。研究成果の概要(和文):本研究は、生活と自然が乖離し、ゆえに自然が荒廃しつつある現代社会において、自然共生型の生活文化と行動を内包する「遊び仕事」に着目し、「遊び仕事」が現代日本人の生活行動を自然共生に向かわせる第一歩、人間生活と自然を結びつけるブレークスルー(突破口)となり得ると確信し、「遊び仕事」の今日的あり方について検討を重ねてきた。その結果、サブシステンスの今日的価値として、必要十分、もったいない、互酬性、共同体規範、非市場経済などの視点を抽出した。本研究は、人間生活と自然が乖離し、ゆえに自然が荒廃しつつある現代において、自然共生型の生活文化・行動を内包する「マイナーサブシステンス(遊び仕事)」に着目し、地域・生活デザイン計画学、生活科学、農学、生態学、道具学、博物館学などの視点から、領域を超えた「知の融合」として、1)丹後半島全域を対象とした「遊び仕事」の踏査・発見、2)消滅が危惧される「遊び仕事」の生活文化・技術の記録・保全・伝承、3)「遊び仕事」を可能ならしめてきた自然環境の保全、4)「遊び仕事」を活用した自然共生教育と地域活性化計画について考究し、5)現代日本人をして「自然共生行動」の第一歩、ブレークスルー(突破口)となり得る「遊び仕事」の今日的価値・役割について検討するものである。1)「遊び仕事」の生活文化・民俗学的採集:「遊び仕事」の実態を、丹後半島の宮津市由良、福知山市雲原を中心として、調査・採集した。2)丹後半島全域を対象とした「遊び仕事」に関する集落単位調査とデータベース化、優先的調査アイテムの抽出:自然的資源の空間的把握と今後の動向を探るためのデータベース化、消滅が危惧される優先的調査アイテムの抽出等について検討した。3)「遊び仕事」の自然共生的価値に関する科学的解明と保全・管理研究:地域・生活デザイン計画学、生活科学、生態学、道具学などの視点から、学際的に「遊び仕事」の自然共生的価値について検討した。4)「遊び仕事」研究の先行的事例調査についての文献等の調査を行った。本研究は、人間生活と自然が乖離し、ゆえに自然が荒廃しつつある現代において、自然共生型の生活文化・行動を内包する「マイナーサブシステンス(遊び仕事)」に着目し、地域・生活デザイン計画学、生活科学、農学、生態学、道具学、博物館学などの視点から、領域を超えた「知の融合」として、1)丹後半島全域を対象とした「遊び仕事」の踏査・発見、2)消滅が危惧される「遊び仕事」の生活文化・技術の記録・保全・伝承、3)「遊び仕事」を可能ならしめてきた自然環境の保全、4)「遊び仕事」を活用した自然共生教育と地域活性化計画について考究し、5)現代日本人をして「自然共生行動」の第一歩、ブレークスルー(突破口)となり得る「遊び仕事」の今日的価値・役割について検討するものである。1)「遊び仕事」の生活文化・民俗学的採集:京都府丹後半島に位置する宮津市由良地区、福知山市雲原地区を主たるフィールドとして、海・山・川における「遊び仕事」の実態について、インタビュー・参与観察を軸に、調査・採集を実施した。2)「遊び仕事」に見られるサブシステンス(自立自存)の価値:今日の市場経済に頼らない人間の生き方、人間と自然とが対等な立場でふれあえる自然共生のあり方などの視角から、その現代的意味(サブシステンス)について検討した。3)「遊び仕事」の自然共生的価値に関する科学的解明と保全・管理研究:地域・生活デザイン計画学、森林科学、生態学、道具学などの視点から、「遊び仕事」に関する自然共生的価値について、学際的な視点から解析・検討した。2002年12月の国連総会において,「国連持続可能な開発のための教育の10年(Education for Sustainable Development, 20052014)」が決議された.それは,持続可能な世界の実現、人と人,人と自然のつながりを大切にする地域づくり,そして,それらの基礎となる教育の重要性をうたったものである.本研究は,京都府北部の丹後半島全域を対象として,人間生活と自然が乖離し,ゆえに自然が荒廃しつつある現代社会において,自然共生型の生活文化と行動を内包する「遊び仕事」に着目し,「遊び仕事」が現代日本人の生活行動を自然共生に向かわせる第一歩,人間生活と自然を結びつけるブレークスルーとなり得ると確信し,「遊び仕事」の今日的あり方について検討を重ねた.
KAKENHI-PROJECT-22300248
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自然共生型の生活文化・行動を内包するマイナーサブシステンス(遊び仕事)研究の構築
一方,筆者は,イヴァン・イリイチの主張である「サブシステンス(自立自存)」概念との出逢いを契機として,従来の「遊び仕事=マイナーサブシステンス」という捉え方が,単に「遊び仕事」を経済的活動としてのサブシステンス(生業)との関連で定義付けされていることに対して,「遊び仕事」を人間のサブシステンス(自立自存)な行為(遊び仕事=サブシステンス)として捉え直そうと考えた.本研究では,元来,自然との共生の中で行われてきた人間生活の諸活動が「体制・市場・産業的サービス」の受け手に甘んじ,その結果,ヴァナキュラーな生活・活動が消失し,生活の自立・自存の基盤が破壊されつつある現在,ほんとうの豊かさや人間らしい生き方,そして社会とは何かを求めて,現代社会において忘れかけ,消滅しかけている「遊び仕事」を,人間のサブシステンスな行為・活動としてとらえ直し,その結果、サブシステンスの今日的価値として、必要十分、もったいない、互酬性、共同体規範、非市場経済などの視点を抽出した.「遊び仕事」の丹後半島広域調査を計画中であるが、自治体にアンケート配布依頼するにはその概念が理解されにくく、遊び仕事の実践者まで届きにくいことが判明した。そこで、現在、面接調査を計画中であり、計画がやや遅れている状態である。24年度が最終年度であるため、記入しない。上述した丹後半島広域を対象とした「遊び仕事」の踏査・発見、消滅が危惧される「遊び仕事」の生活文化・技術の記録、「遊び仕事」を活用した自然共生教育についてまとめていく予定である。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22300248
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流動層内水平円管周りの粒子挙動と熱伝達特性に及ぼす粒子間付着力の影響
本研究の目的は、粒子間付着力の増加が水平伝熱管を有する流動層の全体的な流動状態に与える影響および、伝熱管周りの粒子挙動や熱伝達特性に与える影響を定量的に評価・解明することである。流動層のコールドモデルを用い、流動化空気の湿度を変えることによって流動媒体であるガラスビーズ間の液架橋による粒子間付着力を制御し、伝熱管周りの粒子挙動と熱伝達率の同時測定および流動状態の可視化観察によって、上記の目的を実験的に達成することを試みた。主要な実験方法は次のようである。◇伝熱管上の粒子挙動(接触粒子の濃度と速度)を光ファイバープローブで捉え、熱伝導逆問題解析の手法により極細線熱電対を用いて、同じ位置で同時に局所熱伝達率を測定する。◇ガラス管製伝熱管を用いて、管に貼り付けた液晶シートの発色を管内部からマイクロカメラで観察し、色分布から温度分布をニューラルネットワーク法で計算し、熱伝達率分布を求める。◇管内部から、レーザーライトシートを照射し、管内部からマイクロカメラを用いて管外表面に接触する粒子を可視化する。得られた主要な結果を要約して以下に示す。◇粒子間付着力の増加による熱伝達率の低下は、主に、管底部や側面では空隙率の増加から、管頂部では接触する粒子の移動速度の低下に起因する。◇伝熱管周りの平均熱伝達率に及ぼす粒子間付着力の影響は、層の圧力損失から求められるチャンネリング指数を用いて表すことができる。ガラス製伝熱管による可視化観察からは、◇粒子間付着力が増加すると、伝熱管上の熱伝達率分布の空間・時間的な変動が小さく緩やかになる。◇気泡の接触時間割合は管頂部で低く、管底部で高く、側面では両者の中間的な値となる。◇管内部からレーザーライトシートを用いて可視化する手法は、粒子と気泡の接触を明確に識別でき、光ファイバーによる方法と共に今後の流動層研究の進展に大きな武器となるであろう。本研究の目的は、粒子間付着力の増加が水平伝熱管を有する流動層の全体的な流動状態に与える影響および、伝熱管周りの粒子挙動や熱伝達特性に与える影響を定量的に評価・解明することである。流動層のコールドモデルを用い、流動化空気の湿度を変えることによって流動媒体であるガラスビーズ間の液架橋による粒子間付着力を制御し、伝熱管周りの粒子挙動と熱伝達率の同時測定および流動状態の可視化観察によって、上記の目的を実験的に達成することを試みた。主要な実験方法は次のようである。◇伝熱管上の粒子挙動(接触粒子の濃度と速度)を光ファイバープローブで捉え、熱伝導逆問題解析の手法により極細線熱電対を用いて、同じ位置で同時に局所熱伝達率を測定する。◇ガラス管製伝熱管を用いて、管に貼り付けた液晶シートの発色を管内部からマイクロカメラで観察し、色分布から温度分布をニューラルネットワーク法で計算し、熱伝達率分布を求める。◇管内部から、レーザーライトシートを照射し、管内部からマイクロカメラを用いて管外表面に接触する粒子を可視化する。得られた主要な結果を要約して以下に示す。◇粒子間付着力の増加による熱伝達率の低下は、主に、管底部や側面では空隙率の増加から、管頂部では接触する粒子の移動速度の低下に起因する。◇伝熱管周りの平均熱伝達率に及ぼす粒子間付着力の影響は、層の圧力損失から求められるチャンネリング指数を用いて表すことができる。ガラス製伝熱管による可視化観察からは、◇粒子間付着力が増加すると、伝熱管上の熱伝達率分布の空間・時間的な変動が小さく緩やかになる。◇気泡の接触時間割合は管頂部で低く、管底部で高く、側面では両者の中間的な値となる。◇管内部からレーザーライトシートを用いて可視化する手法は、粒子と気泡の接触を明確に識別でき、光ファイバーによる方法と共に今後の流動層研究の進展に大きな武器となるであろう。1.雰囲気の相対湿度を自由に制御できるチャンバーを製作し、このチャンバー内に購入したパウダーテスター設置し、雰囲気の湿度を自由に変えながら粉粒体特性を計測できるシステムを整えた。2.上記システムにより実験に用いる粒子(平均粒子径1.0,0.42及び0.2mmの3種類のガラスビーズ)の粉粒体物性値(安息角、崩壊角、ゆるめ見かけ比重など)を測定した。いずれの粒子も雰囲気の相対湿度が約60%以下では物性値はほとんど変化しないが、60%を越えると液架橋の形成により粉粒体物性値が変化し、安息角は増加する。3.上記の粒子について、流動層のコールドモデルを用いて層内水平伝熱管周りの粒子挙動と熱伝達率の測定を行った。流動化空気の相対湿度を変えることによって粒子間付着力を制御した。先ず、粒子間付着力の影響を受けない相対湿度の範囲で、流動層内伝熱管周りの粒子挙動と熱伝達率の同時測定を行い、両者の関係を詳細に調べた。測定結果より、平均粒子径の相違が、管周りの粒子挙動と熱伝達特性に与える影響を明らかにし、平均粒子径の相違により管周上の伝熱増進のメカニズムが異なることを明らかにした。4.平均粒子径0.42mmの粒子については、流動化空気の相対湿度を3080%変化させて管周上の平均熱伝達率を実測し、相対湿度(粒子間付着力)と平均熱伝達率の関係を明らかにした。5.ガラス
KAKENHI-PROJECT-10650213
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10650213
流動層内水平円管周りの粒子挙動と熱伝達特性に及ぼす粒子間付着力の影響
ビーズ粒子をアルカリ液で洗浄し、表面性状を変化させ粉粒体特性を変えることも今後の新たな課題として考えている。今年度は、年度当初の計画に従って、次の2種類の実験研究を実施した。1.粒子間付着力を制御できるガラスビーズの作成。4種類の表面処理(グリシロシラン、アクリルシランとアミノシラン処理及びインク塗布)を行った平均粒径230及び440μmのガラスビーズについて、雰囲気湿度を3585%変化させパウダーテスターを用いて粉体特性を測定した。これらの内、グリシロシラン処理とインキ塗布粒子は、雰囲気湿度の増加とともに安息角が増加する特性が、他の処理粒子に比べて顕著であり、流動化空気の湿度を変えることによって、液架橋による粒子間付着力を制御できることがわかった。2.感温液晶シートによる流動層内水平円管周りの熱伝達特性の可視化観察感温液晶シートとステンレス鋼箔を重ねて両面接着テープで貼り付けた50mm径のガラス製円管を作成、流動層内に設置し、ステンレス鋼箔に通電加熱し液晶シートの発色を管内からマイクロカメラで観察した。発色分布から求めた平均熱伝達率分布は、従来の熱電対による測定結果と大差なかった。面的に同時にとらえられた管表面温度分布の時間変化から管表面に接触する気泡や粒子群の挙動を知ることができ、粒子間付着力が強くなると、管表面上の粒子群の動きが遅くなり、表面上の広がりは、より限定的であること等が観察された。今後の課題は、円管内面の広い範囲を同時観察できるように鏡やマイクロカメラの配置を工夫すること、及びマイクロカメラの信号をディジタル化し、画像処理ができるようにすること等である。本年度の研究実施計画に従って、主に次の2種類の可視化観察実験を実施した。1)感温液晶シートによる温度場の可視化観察ガラス管製伝熱管(外径50 mm)にステンレス鋼薄膜発熱体(厚さ15μm)と感温液晶シートを貼り付け、管内側からマイクロカメラと鏡を用いて、感温液晶の発色(43.7°C48.3°C)を可視化し温度場の観察を行った。鏡の形状を楕円形状とし、同時に観察できる可視化範囲を管軸方向に8cm、周方向に120°まで広げた。又、発色の可視化ビデオ信号からニューラルネットワーク法により温度分布を計算し、定量的な熱伝達率分布を求めた。これらの結果からは、空気の相対湿度が増加(約60%→80%)し粒子間付着力が大きくなると、管周りの熱伝達率が低下し、分布の時間的変動が非常に緩やかになることが観察された。2)レーザーライトシートによる管周りの可視化観察透明なガラス管の内側から、レーザーライトシートを管軸に垂直に管表面に照射し管周りの粒子と気泡の挙動を可視化観察した。管外表面に蛍光塗料を塗布することにより管表面が明確に識別でき、粒子接触の状態、気泡の形状、粒子間付着力の増加により生じた粒子塊などが極めて明瞭に可視化観察できた。観察結果から気泡の接触時間割合などの管周りの分布を求めて、粒子間付着力が管周りの気泡および粒子挙動に与える影響を定量的に評価した。この可視化法は、管に接触する粒子挙動を直接観察するための優れた手法の一つであると思われる。
KAKENHI-PROJECT-10650213
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新しいビタミンPQQ測定とそれによる肝疾患のスクリ-ニング
最近、種々の酵素の補酵素として発見されたピロロキノリンキノン(PQQ)は新なビタミンの可能性をもっている。しかし生体試料中の全PQQ定量法や種々疾患々者の血清PQQ量は全く不明である。そこで血清中の全PQQ量の測定法を確立し、それによって健康者及び肝疾患々者の血清PQQ定量を目的とする研究を行った。1.血清を塩酸々性(pH1.02.0)にして遠心、全PQQを含む上清を陰イオン交換セルロ-スに吸着させたのち,セルロ-スをカラムに充填。カラムを洗〓後、PQQを0.2N苛性ソ-ダで溶離回収。回収液を燐酸々性にし直ちに蛍光モニタ-とデ-タ処理機を装備したHPLCでPQQを分析した。PQQは再現性よく完全に分離された。しかし血清PQQは極めて微量で、肝疾患々者のそれは検出限界量であった。従って多量の血清からPQQを分離濃縮することなく正確な定量をすることは困難で,スクリ-ン法として用いるには一層の改良を要することが判明した。2.PQQをハプテンとするヘモシアニン及びメチルアルブミン複合体を作製し,これらで兎の免疫した。この結果、えられた兎血清はPQQーヘモシアニン及びPQQーメチルアルブミン複合体と強い反応を示したが、同時にヘモシアニンやメチルアルブミンそのものとも反応した。一般にPQQは蛋白やアミノ酸と容易に,かつ非特異的に反応し、これらと複合体を形成する。このため上記の抗血清がPQQそのものと特異的に抗原抗体反応することを明らかにする必要がある。PQQと蛋白等との,特に抗血清蛋白との非特異的反応を除去しない限り,PQQ定量にこの抗血清との反応を利用することは現実に困難である。そこで目下PQQと抗血清との反応から非特異的反応を除外する方法を検討中である。最近、種々の酵素の補酵素として発見されたピロロキノリンキノン(PQQ)は新なビタミンの可能性をもっている。しかし生体試料中の全PQQ定量法や種々疾患々者の血清PQQ量は全く不明である。そこで血清中の全PQQ量の測定法を確立し、それによって健康者及び肝疾患々者の血清PQQ定量を目的とする研究を行った。1.血清を塩酸々性(pH1.02.0)にして遠心、全PQQを含む上清を陰イオン交換セルロ-スに吸着させたのち,セルロ-スをカラムに充填。カラムを洗〓後、PQQを0.2N苛性ソ-ダで溶離回収。回収液を燐酸々性にし直ちに蛍光モニタ-とデ-タ処理機を装備したHPLCでPQQを分析した。PQQは再現性よく完全に分離された。しかし血清PQQは極めて微量で、肝疾患々者のそれは検出限界量であった。従って多量の血清からPQQを分離濃縮することなく正確な定量をすることは困難で,スクリ-ン法として用いるには一層の改良を要することが判明した。2.PQQをハプテンとするヘモシアニン及びメチルアルブミン複合体を作製し,これらで兎の免疫した。この結果、えられた兎血清はPQQーヘモシアニン及びPQQーメチルアルブミン複合体と強い反応を示したが、同時にヘモシアニンやメチルアルブミンそのものとも反応した。一般にPQQは蛋白やアミノ酸と容易に,かつ非特異的に反応し、これらと複合体を形成する。このため上記の抗血清がPQQそのものと特異的に抗原抗体反応することを明らかにする必要がある。PQQと蛋白等との,特に抗血清蛋白との非特異的反応を除去しない限り,PQQ定量にこの抗血清との反応を利用することは現実に困難である。そこで目下PQQと抗血清との反応から非特異的反応を除外する方法を検討中である。
KAKENHI-PROJECT-02557027
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02557027
中世末期浄土寺院における学問の研究-良定の著書を通して-
本研究は、浄土宗名越派の学侶である良定(袋中)の著作の調査(資料収集)を通して、中世末期における、浄土宗寺院の学問のあり方を探るものである。ただし、良定の学問を規定していく上で重要になってくる名越派や白旗派の学問体系は、良定研究と同様、いまだ未解明な部分が多い。したがって、本研究では、如来寺、専称寺など、名越派寺院の悉皆調査をも併せて行った。名越派のいわきにおける拠点であった如来寺(いわき市平山崎矢ノ目)蔵聖教の悉皆調査は、書肆カードを用いての整理を行ったが、蔵書量が膨大(約3000冊)なため、整理・分類までに、まだ数年を要する。書肆データは、コンピューターを用い、データベース化を進めている。また、スキャナーなどを用い、画像データの蓄積も行っている。専称寺(いわき市平山崎梅福)では聖教の予備調査を行い、悉皆調査に入る準備を進めている。調査を進めるなかで、名越派の根本書『題額集』を発見した。いまだ未紹介の書である。如来寺には、6種の写本があり、他寺蔵のものとも校合した上で、紹介を予定している。また、良定の叔父の著作『三語集』を発見した。天竺・震旦・本朝の持経者の伝を集めた本書は、名越派・良定の学問を知る上で重要である。調査と並行して、良定の著作の内、『題額聖讃』、『涅槃像考文抄』の諸本収集を行った。『題額聖讃』は、『題額集』の注釈書である。如来寺から唯一の写本を発見した。『涅槃像考文抄』は、その内容から、絵解きと深く関わる重要な作品であることがわかった。11年度5月より毎月2日(8月は5日)の割合で如来寺(いわき市山崎)の聖教悉皆調査を始めた。調査はカード取りと写真撮影(カメラ・デジタルカメラ・デジタルビデオ)を中心に進めている。カードによって得た情報は、データベース化を考え、雛形作りをしている。如来寺蔵の聖教は総点数1500を優に超え、調査終了にはあと2年は最低でもかかることが予想される。特に月形箱に納められている名越派の秘書類は、浄土宗全書に収められている該書と字句の異同が著しく、名越派の教説を考えてゆく際に、重要なものとなる。月形箱の秘書の内、『題額集』は浄土宗全書には採られていないが、名越派を支える根本の書である。良定の『題額聖〓讃』(以下『聖〓讃』と記す)も、『題額集』の注釈書であることが確認できた(『題額集』は国書総目録にも単独の項目がないが、大谷大学蔵『題額聖〓讃』では『聖〓讃』とセットになっている。但し版本であり、如来寺蔵の写本群とは、やはり字句の異同が見られる)。将来的には、如来寺、壇王法林寺(末見。12年度調査予定)の蔵書調査の成果をもとに、テキストクリティークを重ね、名越(派)叢書の刊行を目指したいと考えている。如来寺の聖教調査を進める中で、良定の著書の内『聖〓讃』の写本を発見した。書写年代は近世前期と目される。内閣文庫蔵本・大正大学蔵本・東洋大学蔵本・大谷大学蔵本・龍谷大学蔵本ともに版本であり、写本は確認されていない。貴重なものであることは言うまでもない。諸本と校合しつつ、翻刻を進めている。本研究は、浄土宗名越派の学侶である良定(袋中)の著作の調査(資料収集)を通して、中世末期における、浄土宗寺院の学問のあり方を探るものである。ただし、良定の学問を規定していく上で重要になってくる名越派や白旗派の学問体系は、良定研究と同様、いまだ未解明な部分が多い。したがって、本研究では、如来寺、専称寺など、名越派寺院の悉皆調査をも併せて行った。名越派のいわきにおける拠点であった如来寺(いわき市平山崎矢ノ目)蔵聖教の悉皆調査は、書肆カードを用いての整理を行ったが、蔵書量が膨大(約3000冊)なため、整理・分類までに、まだ数年を要する。書肆データは、コンピューターを用い、データベース化を進めている。また、スキャナーなどを用い、画像データの蓄積も行っている。専称寺(いわき市平山崎梅福)では聖教の予備調査を行い、悉皆調査に入る準備を進めている。調査を進めるなかで、名越派の根本書『題額集』を発見した。いまだ未紹介の書である。如来寺には、6種の写本があり、他寺蔵のものとも校合した上で、紹介を予定している。また、良定の叔父の著作『三語集』を発見した。天竺・震旦・本朝の持経者の伝を集めた本書は、名越派・良定の学問を知る上で重要である。調査と並行して、良定の著作の内、『題額聖讃』、『涅槃像考文抄』の諸本収集を行った。『題額聖讃』は、『題額集』の注釈書である。如来寺から唯一の写本を発見した。『涅槃像考文抄』は、その内容から、絵解きと深く関わる重要な作品であることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-11710237
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肺胞内で異物を捕捉するレクチン様蛋白質SPーDによる受容体を介した炎症制御機構
正常及びKOマウスのアレイ解析によって,KOマウスでは次のような遺伝子の発現量が著増していることが明らかになった:Cytokines, TNF-alpha, IL-1 beta, CXCL9, CXCL16, CCL3, CCL8, CCL9, CCL21, Ctsk, Mmp12, Saa3, and Gpnmb。炎症性サイトカインに関しては定量qPCRによっても確認すると共に,発現の経時変化を追跡した。その結果,サーファクタントの蓄積よりも遅れて炎症性サイトカインが誘導され,主として肺胞マクロファージから分泌されることが分かった。Matrix metalloproteinases (Mmps)に関しては肺気腫との相関も期待されるので,より詳細に発現誘導にいたるシグナル伝達経路を解析したところ,SP-Dの蓄積によってマクロファージ内に多量の活性酸素ROSが生成し,NFkBを介して発現が誘導されていることが明らかになった。従って,膜7回貫通型受容体Ig-Heptaはサーファクタント量を最適化することにより肺におけるガス交換を助けるのみならず,その成分であるSP-Dを介して,マクロファージが起点となる自然炎症の制御もするという2重の役割を果たしていることになり,興味深い結果といえる。2.メタボローム解析Ig-Hepta/GPR116ノックアウトマウスの肺胞では,サーファクタントが大過剰に合成されており,代謝系が更新していると考えられる。代謝系のどこにIg-Hepta/GPR116のシグナルが作用しているかを明らかにする手掛かりを得るために,メタボローム解析を行なった。その結果,正常マウスとKOマウスの肺組織では,数個の代謝産物で差があるという今後の展開につながる結果を得た。25年度が最終年度であるため、記入しない。25年度が最終年度であるため、記入しない。正常及びKOマウスのアレイ解析によって,KOマウスでは次のような遺伝子の発現量が著増していることが明らかになった:Cytokines, TNF-alpha, IL-1 beta, CXCL9, CXCL16, CCL3, CCL8, CCL9, CCL21, Ctsk, Mmp12, Saa3, and Gpnmb。炎症性サイトカインに関しては定量qPCRによっても確認すると共に,発現の経時変化を追跡した。その結果,サーファクタントの蓄積よりも遅れて炎症性サイトカインが誘導され,主として肺胞マクロファージから分泌されることが分かった。Matrix metalloproteinases (Mmps)に関しては肺気腫との相関も期待されるので,より詳細に発現誘導にいたるシグナル伝達経路を解析したところ,SP-Dの蓄積によってマクロファージ内に多量の活性酸素ROSが生成し,NFkBを介して発現が誘導されていることが明らかになった。従って,膜7回貫通型受容体Ig-Heptaはサーファクタント量を最適化することにより肺におけるガス交換を助けるのみならず,その成分であるSP-Dを介して,マクロファージが起点となる自然炎症の制御もするという2重の役割を果たしていることになり,興味深い結果といえる。2.メタボローム解析Ig-Hepta/GPR116ノックアウトマウスの肺胞では,サーファクタントが大過剰に合成されており,代謝系が更新していると考えられる。代謝系のどこにIg-Hepta/GPR116のシグナルが作用しているかを明らかにする手掛かりを得るために,メタボローム解析を行なった。その結果,正常マウスとKOマウスの肺組織では,数個の代謝産物で差があるという今後の展開につながる結果を得た。1.発生段階及び炎症依存性のIg-Heptaの発現量の変動と発現細胞の特定(1) Ig-Heptaの発現部位の決定と各発生段階での発現量の推定:本研究では,最近作製に成功したKOマウス(Ig-Hepta-/-)の特徴,すなわちTargeting vectorにnls-LacZが組み込まれており,発現部位と発現量をb-galactosidaseアッセイによって同定・定量できる性質を活用して,Ig-Heptaが肺のどの細胞に多く発現しているかを発生段階を追って決定した。その結果,サーファクタントを合成分泌している肺胞II型細胞に特異的に発現していること,及び分娩1日前から合成が盛んになり,分娩に伴う肺呼吸に備えていることが明らかになった。(2)肺胞内炎症とIg-Heptaの発現量との相関:KOマウスでは,通常の施設で飼育した場合,生後数日で肺胞サーファクタントが過剰となり,その後白血球の浸潤も顕著となる。これが飼育環境中に浮遊する異物によるものか,Ig-Hepta欠損に伴う本質的なものかを明らかにするために,理化学研究所バイオリソースセンターの高度清浄環境下で飼育したKOマウスについて,週齢を追って白血球の浸潤の有無を調べた。その結果,高度清浄環境下で飼育した場合でも,同様に肺胞サーファクタントの過剰が起き,それに伴って二次的にマクロファージの肥大化やマクロファージからの炎症性サイトカインの放出が起きていることが明らかになった。2. KOマウスの肺胞内へ浸潤・集積する白血球集団のプロファイリングIg-Heptaノックアウトマウスの肺胞には多数の白血球が浸潤し蓄積している。炎症性細胞のマーカータンパク質に対する抗体を用いて,肺胞洗浄液BALF中に含まれる浸潤性白血球細胞の種類を同定したところ,大多数のマクロファージの中に少数のリンパ球が混在することが分かった。計画した以下の2項目に関し,興味深い結果を得,現在論文を投稿中である。
KAKENHI-PUBLICLY-24117707
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肺胞内で異物を捕捉するレクチン様蛋白質SPーDによる受容体を介した炎症制御機構
1.発生段階及び炎症依存性のIg-Heptaの発現量の変動と発現細胞の特定2. KOマウスの肺胞内へ浸潤・集積する白血球集団のプロファイリング平成25年度は,アレイ解析やメタボローム解析など網羅的な解析を行い肺胞サーファクタントと自然免疫の調節においてかなめとなっている受容体Ig-Hepta/GPR116のシグナリング機構を解明する方針である。25年度が最終年度であるため、記入しない。25年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-24117707
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食・栄養が脳・神経系に及ぼす影響の解析-うつ病危険因子としての葉酸欠乏-
平成30年度は、葉酸欠乏によるメチル基修飾異常が神経成熟抑制を引き起こすメカニズムを追究するために、葉酸欠乏条件下で分化させた培養神経幹細胞および葉酸欠乏マウスを用いて検討を行った。また、葉酸欠乏が視床下部-下垂体-副腎皮質系(HPA系)機能に与える影響を葉酸欠乏マウスを用いて評価した。まず、培養神経幹細胞を用いて葉酸欠乏が神経成熟関連遺伝子群のmRNA発現に及ぼす影響を解析したところ、神経幹細胞の維持や神経細胞の成熟に関与する遺伝子群の発現減少および神経細胞への分化に関与する遺伝子群の発現増加が観察された。発現変動が顕著であったTbr2とNeuroD1は、葉酸欠乏マウスの歯状回においても同様の発現変動が見られ、メチル基供与体であるS-アデノシルメチオニンの投与により対照群と同等にまで回復した。葉酸欠乏によるメチル基修飾異常と遺伝子発現変動の関連性を見出すため、葉酸欠乏により発現が変動した遺伝子において転写開始点付近のDNAメチル化およびヒストンH3K27トリメチル化をin vitroで解析した。その結果、葉酸欠乏により大部分の遺伝子において転写開始点付近の低メチル化が確認できた。以上の結果から、転写開始点付近の低メチル化に起因する神経成熟関連遺伝子群の発現変動が葉酸欠乏性の神経成熟抑制を引き起こすものと推察された。一方、葉酸欠乏がHPA系ネガティブフィードバック機構に与える影響をデキサメタゾン抑制試験により評価した。その結果、対照マウス、葉酸欠乏マウスともに、ネガティブフィードバックが正常に引き起こされていることが確認できた。また、強制水泳ストレス負荷後に血清コルチコステロン濃度を測定することでストレス応答性に与える影響を評価したところ、両マウスともに血清コルチコステロン濃度の有意な増加が見られた。以上の結果から、葉酸欠乏はHPA系機能に影響を及ぼさないものと考えられた。本年度研究計画として、1)葉酸欠乏条件で培養した神経幹細胞における神経成熟関連遺伝子群のmRNA発現量の解析、2)葉酸欠乏条件において発現が変動した遺伝子の転写開始点付近におけるDNAメチル化およびヒストンメチル化状態の解析、3)葉酸欠乏マウスにおけるデキサメタゾン抑制試験、4)ストレス曝露後における葉酸欠乏マウスの血中グルココルチコイド濃度の測定を挙げていた。項目1)、2)では、細胞の培養条件や解析条件の検討をしていたため、解析がやや遅れており、次年度においても引き続き検討していく予定である。項目3)、4)については研究実施計画通りに実施した。平成31年度は、葉酸欠乏が神経細胞の形態および神経活動に与える影響を明らかにするために、葉酸欠乏マウスの海馬における神経細胞樹状突起の長さおよび樹状突起スパイン数をゴルジ染色法により解析する。神経活動に関しては、葉酸欠乏マウスに強制水泳ストレスを負荷した2時間後に、海馬におけるc-fos(神経活動マーカー)の陽性細胞数を免疫染色法により解析する。一方、予備的検討から葉酸欠乏マウスの白血球数が増加傾向にあることを見出しており、葉酸欠乏マウスでは軽度な炎症が生じている可能性が考えられる。また、葉酸欠乏によりマクロファージの炎症反応が増強されることや末梢組織の炎症反応がうつ様行動を誘発することが報告されるており、免疫機能の変化が脳・神経系機能に影響を与えるものと考えられる。そこで、葉酸欠乏が免疫系に与える影響及びうつ様行動と免疫系との関連性を明らかにするために、葉酸欠乏マウスの炎症反応について解析する。具体的には、葉酸欠乏マウスの血液および脳内における炎症性サイトカインのmRNA発現量をreal-time PCR法により解析する。葉酸欠乏マウスにおいて炎症反応が見られた場合は、うつ様行動に対する抗炎症薬の作用を解析する。定常状態において炎症反応が見られない場合は、細菌由来内毒素であるlipopolysaccharideを葉酸欠乏マウスの腹腔内に投与することで炎症を引き起こし、炎症性サイトカインのmRNA発現量とうつ様行動を解析する。mRNA発現量に変化が見られた炎症性サイトカインについては、遺伝子転写開始点付近のDNAやヒストンのメチル化をmethylated-CpG island recovery assayおよびクロマチン免疫沈降法により解析し、炎症におけるエピゲノム変動の関与を追究する。本年度は、葉酸欠乏により神経細胞の成熟異常が引き起こされるメカニズムを明らかにするために、葉酸欠乏培地で培養したマウス胎仔脳由来神経幹細胞および葉酸欠乏マウスを用いて検討を行った。まず、マウス胎仔脳由来神経幹細胞を葉酸欠乏培地または対照培地で7日間接着培養することで分化させ、免疫染色法により細胞の分化・成熟を評価した。葉酸欠乏条件で分化した細胞では、神経細胞であるTuj1陽性細胞の数が増加しており、神経細胞への分化が促進しているものと考えられた。しかしながら、成熟神経細胞であるMAP2陽性細胞の数は減少しており、in vitroにおいても神経成熟抑制が確認できた。また、葉酸欠乏条件で分化させた細胞ではDNAメチル化やヒストンH3K27トリメチル化といったメチル基修飾が減少していた。こうしたメチル基修飾の減少は、葉酸欠乏によるメチル基供与体の不足によるものであり、神経成熟抑制に関与するものと推測される。そこで、メチル基供与体不足によるメチル基修飾減少と神経成熟抑制の関連性を明らかにするために、メチル基供与体であるS-アデノシルメチオニン(5 μM)を葉酸欠乏培地中に添加したところ、葉酸欠乏によるMAP2陽性細胞数の減少は対照培地で培養した場合と同程度にまで改善した。In vitroにおいて神経成熟抑制におけるメチル基修飾減少の関与が示唆されたことから、in vivoにおいてS-アデノシルメチオニンの影響を検討した。
KAKENHI-PROJECT-17J03416
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食・栄養が脳・神経系に及ぼす影響の解析-うつ病危険因子としての葉酸欠乏-
葉酸欠乏マウスに対して、7週齢時から2週間S-アデノシルメチオニン(50 mg/kg/day)を腹腔内投与した結果、葉酸欠乏によるうつ様行動と神経成熟抑制の改善が見られた。以上の結果から、葉酸欠乏によりメチル基供与体の不足が生じることでメチル基修飾が減少し、神経細胞の成熟が抑制されることでうつ様行動が誘発されるものと推察される。本年度研究計画として、1)葉酸欠乏培地で培養した神経幹細胞における細胞の分化・成熟度の評価、2)培養神経幹細胞における神経細胞への分化・成熟に対するメチル基供与体の影響の解析、3)神経細胞の分化・成熟に関わる遺伝子のDNAメチル化状態の解析、4)葉酸欠乏マウス海馬のメチル化シトシン陽性細胞の局在の解析を挙げていた。項目1)、2)において、培養神経幹細胞の培養条件やS-アデノシルメチルメチオニン濃度の検討をしていたため、項目3)および4)に関しては解析途中であり、次年度においても引き続き検討していく予定である。平成30年度は、葉酸欠乏によるメチル基修飾異常が神経成熟抑制を引き起こすメカニズムを追究するために、葉酸欠乏条件下で分化させた培養神経幹細胞および葉酸欠乏マウスを用いて検討を行った。また、葉酸欠乏が視床下部-下垂体-副腎皮質系(HPA系)機能に与える影響を葉酸欠乏マウスを用いて評価した。まず、培養神経幹細胞を用いて葉酸欠乏が神経成熟関連遺伝子群のmRNA発現に及ぼす影響を解析したところ、神経幹細胞の維持や神経細胞の成熟に関与する遺伝子群の発現減少および神経細胞への分化に関与する遺伝子群の発現増加が観察された。発現変動が顕著であったTbr2とNeuroD1は、葉酸欠乏マウスの歯状回においても同様の発現変動が見られ、メチル基供与体であるS-アデノシルメチオニンの投与により対照群と同等にまで回復した。葉酸欠乏によるメチル基修飾異常と遺伝子発現変動の関連性を見出すため、葉酸欠乏により発現が変動した遺伝子において転写開始点付近のDNAメチル化およびヒストンH3K27トリメチル化をin vitroで解析した。その結果、葉酸欠乏により大部分の遺伝子において転写開始点付近の低メチル化が確認できた。以上の結果から、転写開始点付近の低メチル化に起因する神経成熟関連遺伝子群の発現変動が葉酸欠乏性の神経成熟抑制を引き起こすものと推察された。一方、葉酸欠乏がHPA系ネガティブフィードバック機構に与える影響をデキサメタゾン抑制試験により評価した。その結果、対照マウス、葉酸欠乏マウスともに、ネガティブフィードバックが正常に引き起こされていることが確認できた。また、強制水泳ストレス負荷後に血清コルチコステロン濃度を測定することでストレス応答性に与える影響を評価したところ、両マウスともに血清コルチコステロン濃度の有意な増加が見られた。以上の結果から、葉酸欠乏はHPA系機能に影響を及ぼさないものと考えられた。本年度研究計画として、
KAKENHI-PROJECT-17J03416
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大口径望遠鏡による超高エネルギーガンマ線観測
最終年度にあたる今年度は以下の望遠鏡各部の調製を国内で行い12月オーストラリアに移送し99年1月に現地紐み上げを行った、また3.8m望遠鏡による観測データ解析を今年も続け以下のような成果を得た。[1]7mチェレンコフ望遠鏡は98年度までに望遠鏡各部の製作は終了している。今年度は、6月に三菱工場において、経緯儀台の動作確認とコントロール調製用ソフトの試験を行い、望遠鏡の姿勢制御が予定の精度で行えることを確認した。7月から10月にかけ、反射面を構成する小型球面鏡の改良を行い最終的に0.1度以下の集差で光を集光出来る鏡の製作に成功し、当初の目標を十分満たすものが出来た。さらに11月、小型球面鏡の反射面への取り付け調製作業を行う。この作業は大型鏡の性能を決定する重要な作業である。この調製により大型鏡全体での0.1度程度での集光を達成できるよう調製を行った。同時に現地でのより精度を上げる為の調製を行うために取り付けた小型鏡の位置調製用モータの制御試験を行い十分な精度で現地で調製を行えることが判明した。今年度は、ケーブルを一式そろれまず、すべてのPMTおよびアンプBOXのゲイン調製を行い仕様を満たしていることを確認した。さらに、全読みだし回路を組み上げオンラインの調製、オンラインソフトの開発を行った。特にTDCを用いたADCシステムの校正用パラメータを求めた。望遠鏡の各部の調製を終え12月にオーストラリアに輸送し、99年1月にウーメラで組み上げ作業を行い2月初旬に組み上げ完了動作試験を行い正常に動作することを確認。3月までにカメラおよび電子回路を組み上げ3月に最初の調製を兼ねた観測を行う。[2]オーストラリアでの観測の成果として我々の装置の特徴である各PMTの時間情報を使い、1台の望遠鏡では従来不可能な3次元的なシャワーの到来方向決定に成功し、これを超新星残骸SN1006から検出されたTeVγ線に使いその精度を改良し、1TeVから20TeVにおける微分スペクトルの検出に成功した。このデータと他波長のデータをもとに、加速されている粒子が電子であることが判明しさらには、加速機構を解明する為に重要な磁場、拡散計数、最高加速エネルギーなど多くの情報を得ることに成功した。これはいままで全く謎であった衝撃波加速の機構を初めて観測した大きな成果である。さらに98年度はSN1006と似たRXJ1713の観測を行い現在解析中である。これら超新星残骸の研究により宙線加速の謎を明らかにして行くことが出来る。最終年度にあたる今年度は以下の望遠鏡各部の調製を国内で行い12月オーストラリアに移送し99年1月に現地紐み上げを行った、また3.8m望遠鏡による観測データ解析を今年も続け以下のような成果を得た。[1]7mチェレンコフ望遠鏡は98年度までに望遠鏡各部の製作は終了している。今年度は、6月に三菱工場において、経緯儀台の動作確認とコントロール調製用ソフトの試験を行い、望遠鏡の姿勢制御が予定の精度で行えることを確認した。7月から10月にかけ、反射面を構成する小型球面鏡の改良を行い最終的に0.1度以下の集差で光を集光出来る鏡の製作に成功し、当初の目標を十分満たすものが出来た。さらに11月、小型球面鏡の反射面への取り付け調製作業を行う。この作業は大型鏡の性能を決定する重要な作業である。この調製により大型鏡全体での0.1度程度での集光を達成できるよう調製を行った。同時に現地でのより精度を上げる為の調製を行うために取り付けた小型鏡の位置調製用モータの制御試験を行い十分な精度で現地で調製を行えることが判明した。今年度は、ケーブルを一式そろれまず、すべてのPMTおよびアンプBOXのゲイン調製を行い仕様を満たしていることを確認した。さらに、全読みだし回路を組み上げオンラインの調製、オンラインソフトの開発を行った。特にTDCを用いたADCシステムの校正用パラメータを求めた。望遠鏡の各部の調製を終え12月にオーストラリアに輸送し、99年1月にウーメラで組み上げ作業を行い2月初旬に組み上げ完了動作試験を行い正常に動作することを確認。3月までにカメラおよび電子回路を組み上げ3月に最初の調製を兼ねた観測を行う。[2]オーストラリアでの観測の成果として我々の装置の特徴である各PMTの時間情報を使い、1台の望遠鏡では従来不可能な3次元的なシャワーの到来方向決定に成功し、これを超新星残骸SN1006から検出されたTeVγ線に使いその精度を改良し、1TeVから20TeVにおける微分スペクトルの検出に成功した。このデータと他波長のデータをもとに、加速されている粒子が電子であることが判明しさらには、加速機構を解明する為に重要な磁場、拡散計数、最高加速エネルギーなど多くの情報を得ることに成功した。これはいままで全く謎であった衝撃波加速の機構を初めて観測した大きな成果である。さらに98年度はSN1006と似たRXJ1713の観測を行い現在解析中である。これら超新星残骸の研究により宙線加速の謎を明らかにして行くことが出来る。重点領域研究(1)「大口径望遠鏡による超高エネルギーガンマ線観測」の初年度にあたる今年度は以下の開発・製造を行なった。特に開発において得られた成果も述べる。[1]研究の中心となる7m方物面反射鏡の、全体設計をまず行なった。
KAKENHI-PROJECT-07247103
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大口径望遠鏡による超高エネルギーガンマ線観測
さらに主鏡を構成する小型球面鏡の開発および製作と、その小型球面鏡を取り付け一枚の大型方物面鏡を構成するための支持板の製作を、東大宇宙線研究所および東工大でおこなった。その開発で方物面を採用することにより、時間特性を使った新しい解析が可能であることがわかり、100GeV以下のγ線検出のバックグランドとなる宇宙線μ粒子がほぼ、除去できることがわかった。また、小型球面鏡をCFRPで製作するという全く新しい試みを行なっている。これにより望遠鏡の大幅な計量化が可能になった。どちらも世界で最初の試みであり、これからの大型チェレンコフ望遠鏡の雛型となると確信している。[2]ガンマ線カメラの設計、および光電子増倍管(PMT)の選択、カメラの回路部の開発を東工大で行なった。また、それに必要なシステムを設置した。さらに、読みだし電子回路の設計および製作の一部を行なった。特に、時間測定装置のみで、到来時間、および電荷を測定する回路システムの開発を行ない、実現可能であることがわかった。さらに、大量の夜光に対するPMTの影響および対策を検討し、低ゲインでPMTを動作し、これらの影響を除去できることがわかった。[3]約600本必要なPMTの評価システムの開発を名古屋大および神戸大で行なった。重点領域研究(1)「大口径望遠鏡による超高エネルギーガンマ線観測」の次年度にあたる今年度は以下の開発・製造を行ない、また現存の装置からのデータ解析を行い、以下のような成果を得た。[1]望遠鏡本体で、放物面鏡の反射鏡骨組み構造体の製作、駆動電力部、制御部の製作、及び小型球面鏡の精度評価システムの製作を行なった。[2]γ線カメラではPMTモジュールの開発および製作およびカメラの取付部の設計行なった。電子回路システムにおいてはアンプーディスクリカードの製作および、回路全体の動作試験を行なった。またデータ収集システムの試作を行なった。[3]オーストラリアでの観測の成果として北天のかに星雲からのTeVγ線の統計を7σにまで増やし、7TeVから70TeVまでのエネルギースペクトルを出すことに成功した。このデータは天文学史上、天体からの最高エネルギーの信号であり、カニ星雲の粒子加速解明に非常に重要なデータとなった。さらに、超新星残骸SN1006から、ASCAで観測から予測されたTeVγ線を発見した。これは、広く信じられている超新星残骸の宇宙線起源を示す最初の発見である。さらには、銀河空間の磁場の始めて仮定なしで求めることに成功した。このように、宇宙の高エネルギー現象を理解するに画期的な成果を得ることが出来た。重点領域研究(1)「大口径望遠鏡による超高エネルギーガンマ線観測」の3年度にあたる今年度は以下の開発・製造を行ない、また現存の装置からのデータ解析を行い、以下のような成果を得た。[1]望遠鏡本体の経緯儀台および駆動機構部の製作を行なう。他反射鏡骨組み構造体の借り組み上げを行ない、自重による歪み等の計測、制御ソフトの開発等を行なう。[2]γ線カメラではPMTのゲイン調整と回路調整を行なった。小型鏡の取り付け精度測定装置を製作する。[3]オーストラリアでの観測の成果としてまず超新星残骸SN1006から、ASCAで観測から予想されたTeVγ線を97年度も確認し、検出を確かなものにした。
KAKENHI-PROJECT-07247103
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07247103
血中滞留性を向上した網膜標的光応答型 siRNA 送達システムの構築
血液網膜関門(BRB)等の存在により薬物送達が困難な後眼部(特に網膜)を標的とし、網膜色素上皮細胞に発現するトランスフェリン(Trf)受容体を指標とし、かつ血中でも高い安定性を示すTrf修飾核酸内封リポソーム製剤を構築した。非侵襲的な点眼で投与可能であり、結膜、強膜、脈絡膜血管を介して網膜近傍に核酸を送達可能であることをラットによるin vivo評価で明らかにした。さらにリポソームの構成脂質および組成により核酸放出のトリガーとなる光・温度に対する感受性を付与する可能性を示唆し、核酸医薬による網膜疾患治療への応用を期待する基礎的成果を得た。血液網膜関門(BRB)等の存在により薬物送達が困難な後眼部(特に網膜)を標的とし、網膜色素上皮細胞に発現するトランスフェリン(Trf)受容体を指標とし、かつ血中でも高い安定性を示すTrf修飾核酸内封リポソーム製剤を構築した。非侵襲的な点眼で投与可能であり、結膜、強膜、脈絡膜血管を介して網膜近傍に核酸を送達可能であることをラットによるin vivo評価で明らかにした。さらにリポソームの構成脂質および組成により核酸放出のトリガーとなる光・温度に対する感受性を付与する可能性を示唆し、核酸医薬による網膜疾患治療への応用を期待する基礎的成果を得た。眼には血液網膜関門(BRB)が存在し、点眼や静脈注射では後眼部への薬物送達は困難であるため、加齢黄斑変性症などの網膜疾患には硝子体内注射による治療が適用されている。本研究は、疾患関連因子の産生を遺伝子レベルで抑制する短鎖リボ核酸(siRNA)をくすりとし、これを非侵襲的かつ効率的に網膜などの後眼部に送達させるためのデリバリーシステムの構築を目指す。平成22年度は、先ず、核酸を内封する脂質ナノ粒子(リポソーム)の調製法について検討した。薄膜法では核酸はほとんど内封されなかったのに対し、カチオン性高分子ポリエチレンイミン(PEI)と複合体を形成させた核酸をコアとして界面活性剤除去法によってリポソームを調製したところ、封入率が約80%、粒子径約180nmの負電荷を持つ核酸内封リポソームを得た。このとき、脂質量の増加に伴う封入率の増大が確認された。さらに、生体内での核酸の安定性向上を期待して、ヒアルロン酸およびポリエチレングリコール(PEG)の修飾を試みた。siRNA単独では、RNase Aにより速やかに分解されたのに対し、PEGを修飾した群では試験開始24時間後も約60%のsiRNA残存率を示し、生体内のヌクレアーゼによる分解から核酸を保護するキャリアとなっていることが確認された。また、網膜色素上皮細胞への選択的な送達を期待して、網膜細胞に発現するトランスフェリン(Trf)受容体に着目し、Trfをリガンドとして修飾した核酸内封リポソームの調製を試みた。その結果、調製したリポソームは、網膜細胞において高い遺伝子導入能を示し、細胞表面のTrf受容体を介して取り込まれることが確認された。さらにラットに点眼し、網膜組織周辺への分布について、ラット眼球切片の共焦点顕微鏡観察によって、調製したTrf修飾リポソームが点眼後網膜近傍に特異的に分布することが示唆された。現在、さらに小さくヒト網膜細胞におけるリポソームの細胞内取込みならびに凍結乾燥による粉末化について検討を進めている。はじめに、凍結乾燥リボソーム再水和時に核酸溶液を加えて核酸を内封することを目的として、凍結保護剤として機能するピアルロン酸を修飾したDOTAP/DOPEリボソームを調製し、凍結乾燥前後の物性を評価した。リボソームは粒子径約100nmを示したものの再水和後は約3倍の粒子径増大を示し、凝集あるいは多層リボソームとなることが確認された。また、核酸封入率は極めて低く調製段階での核酸のロスが大きく製造効率が低いことが判った。これを踏まえ、核酸を内封する調製法を界面活性剤除去法に変更し検討を行った。脂質(DOPE/CHEMS/DSPE-PEG)の薄膜に界面活性剤溶液を添加して得た混合ミセル溶液に核酸と塩基性高分子(ポリエチレンイミン)の複合体を滴下後、界面活性剤を除去し核酸封入リボソームを調製した。得られたリボソームは粒子径100150nm、70-100%の核酸内封率を示した。また、スクロースを凍結保護剤とした乾燥前後の粒子径および封入率に変化はなく1ヶ月以上安定であることを確認した。さらに、網膜指向性を付与するため、網膜色素上皮細胞に発現するトランスフェリン(Trf)受容体に着目した。リボソーム表面へのTrf修飾を試み、ヒト網膜色素上皮細胞(ARPE-19)における取込み挙動および遺伝子発現性、ラットへの点眼投与による眼内挙動を評価した。その結果、本リボソームがTrf受容体を介してARPE-19に取り込まれること、血清存在下でも高い遺伝子発現性を示すこと、ラット眼組織切片において網膜近傍に選択的に滞留することが確認され、Trfをリガンドとした網膜指向性付与の可能性を示唆した。また、将来的に光応答性リボソームを設計する基礎検討として、まずは温度感受性リボソームの処方を検討した。DOPE/CHEMSに温度感受性脂質DPPCとリゾ脂質(MSPC)を添加したリボソームを調製し、温度による内封物の放出性を評価した。
KAKENHI-PROJECT-22500429
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血中滞留性を向上した網膜標的光応答型 siRNA 送達システムの構築
その結果、一般的に安定性が低いことで知られるDPPC含有リボソームの安定性を高め、相転移温度以上の温度ではMSPC添加リボソームにおいてのみ放出される可能性を示した。今後さらに処方を確立すべく検討を進める予定である。本年度は、網膜指向性核酸内封リポソームの調製ならびに投与経路によるラットでの体内分布について検討した。網膜色素上皮細胞に発現するトランスフェリン(Trf)受容体に指向性を示すTrf修飾核酸内封リポソームに蛍光標識し、ラットまたはマウスに点眼、硝子体内注射、尾静脈内投与を行い、一定時間後の眼組織切片、尾静脈投与においては各臓器を摘出し、蛍光量測定および蛍光イメージングシステムIVISにて体内挙動を観察した。その結果、尾静脈投与では、全身に分布するものの肝臓にトラップされる傾向がみられ眼内への移行量は少なく、点眼による前眼部への投与では確実に後眼部の網膜近傍に核酸内封リポソームが送達できることを示した。また、硝子体内投与は侵襲的投与であるにも関わらず点眼に比べ網膜への送達性は低いことを確認した。さらに、点眼投与においては、Trf修飾リポソームは血管が豊富に存在する脈絡膜中にも安定に存在し、網膜近傍に局在するのに対し、Trf未修飾のリポソームは前眼部の角膜に多く局在したのち涙液等によって速やかに排泄されることが観察され、Trf修飾リポソームは主に結膜および強膜を介して脈絡膜に入ったのち網膜近傍に送達されることが推察された。また、光応答性を付与するためのリポソーム処方検討も行った。本研究は、金ナノ粒子を含有させることで光照射による発熱が生じ、これによりリポソーム膜が不安定となり核酸を放出させるストラテジーであるため、前年度と同様に先ず温度感受性の高い組成について検討した。体温付近の相転移温度を示すDPPCとリゾ脂質(MSPC)をベースとし、膜安定性を確保するためコレステロール等も処方した核酸内封リポソームを調製し、物性および加温による内容物の放出性等を評価し、体温以上の45°Cで核酸放出を示す温度感受性核酸内封リポソームが得られ、金ナノ粒子含有による光応答性の可能性を示唆した。核酸を高効率で内封し、血中滞留性を向上し網膜への指向性を付与したリボソーム調製の可能性は示しているが、光応答性を示し得る処方設定および調製法の検討が未だ基礎検討の段階である。24年度が最終年度であるため、記入しない。今後、投与経路による後眼部への指向性(体内動態)をラットで評価する。また、当初、凍結保護作用および血中滞留性向上機能を有するビアルロン酸を修飾したリボソームとする予定であったが、最終的な後眼部への核酸送達を確実にするためには前眼組織などにも発現するヒアルロン酸受容体への結合を回避し、より指向性を付与する必要性があり、このため他のリガンドあるいは脂質を用いた処方検討も積極的に進めていく。さらに、血管新生因子を阻害するsiRNAによる疾患モデル動物での治療効果の評価法についても検討を進める。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22500429
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神経難病患者・家族の家族看護に関する研究
難病患者とその家族への支援に関する文献検討では、家族ダイナミクスの良循環を促進する看護師の役割について[情報収集]、[医療職の連携]、[患者・家族の教育]、[関係作り]などが挙がった。訪問看護を行う看護師へのインタビュー調査では、難病患者とその家族への介入において、看護師は介入初期から信頼関係を築き、療養前からの家族関係や主となる介護者の信頼する家族の存在を把握することが大切であることがわかった。難病患者とその家族への支援に関する文献検討では、家族ダイナミクスの良循環を促進する看護師の役割について[情報収集]、[医療職の連携]、[患者・家族の教育]、[関係作り]などが挙がった。訪問看護を行う看護師へのインタビュー調査では、難病患者とその家族への介入において、看護師は介入初期から信頼関係を築き、療養前からの家族関係や主となる介護者の信頼する家族の存在を把握することが大切であることがわかった。選定された文献を要約し、家族ダイナミクスの良循環を促進する看護師の役割について24のコードが抽出され、7カテゴリーが抽出された。7つのカテゴリーとコード数は、[情報収集: 3]、[認知領域への支援: 8]、[情緒領域への支援: 4]、「行動領域への支援: 4」、[医療職の連携: 2]、[患者・家族の教育: 2]、[関係作り: 1]であった。また家族ダイナミクスの悪循環を形成する要因については、<コミュニケーション不足>、<介護疲労>、<介護への不安と自信のなさ>、<家族間の遠慮と期待>、<マンパワー不足>5つのコードが抽出された。神経難病患者は病気の発症と身体機能の衰え、告知を経て患者を含む家族成員は不安といら立ちを抱え、通常の家族機能が維持できなくなる。難病状態にある患者の家族は、予後の不安や介護負担などでパワーレス状態となりやすいため、家族ダイナミクスが悪循環とならないよう、また悪循環を断ち切るには、家族のセルフケア機能を促進させる第3者の介入が必要と考えられる。看護師は家族機能のアセスメントを通して行動を解釈し、信頼関係を築きながら情緒的支援を行い、単なる介護技術や退院調整への教育だけでなく、その家族が自分自身の問題に気づいて対処できるよう家族をエンパワーメントしていくことが求められていることが示唆された。以上より、来年度はこれらのカテゴリーについての質問項目を整理し、医療従事者に向けて神経難病患者・家族の家族システム看護についての意識・実態調査を行う。訪問看護を受ける家族を対象にしたアンケート結果からは、訪問看護・介護職に求められる家族支援のあり方として、家族の訴えや要望に耳を傾け、それを理解して適当なケアや情報を提案・提供してもらいたいという内容が指摘されていた。一方では訪問看護師を対象としたインタビューでは、訪問看護師が病状の段階によって家族のニーズが変化している事、その時期を十分に捉えきれていない現状があるのではないかと感じている事実があり、適切な時期に家族のセルフケア機能を円滑にするための介入について、看護職へのアドバイスを必要としていることが考えられた。これらの文献よりインタビューガイドを作成し、予備調査を行い訪問看護師を対象とした調査を行う予定である。難病患者とその家族への支援に関する文献検討では、家族ダイナミクスの良循環を促進する看護師の役割について7カテゴリーが抽出された。7つのカテゴリーは、[情報収集]、[認知領域への支援]、[情緒領域への支援]、「行動領域への支援」、[医療職の連携]、[患者・家族の教育]、[関係作り]であった。また家族ダイナミクスの悪循環を形成する要因については、〈コミュニケーション不足〉、〈介護疲労〉、〈介護への不安と自信のなさ〉、〈家族間の遠慮と期待〉、〈マンパワー不足〉5つのコードが抽出された。これらをもとに訪問看護を行う看護師へのインタビュー調査を行った。対象者は神経難病患者とその家族のケアに5年以上携わる訪問看護師8名で、家族ダイナミクスが良循環あるいは悪循環を辿ったと思われる事例を通して、その要因についてどう考えるかのインタビューを行った。インタビュー結果を質的に分析した結果、難病患者とその家族のセルフケア能力を左右する要因には、先行文献の要因に加えて「療養前からの家族関係」が影響していることがわかった。また、コミュニケーション不足を良循環に変化する要因として、医療職など第三者の関わりが緩衝材的に影響することも明らかとなった。神経難病患者は病気の発症と身体機能の衰え、告知を経て患者を含む家族成員は不安といら立ちを抱え、通常の家族機能が維持できなくなる。難病状態にある患者の家族は、予後の不安や介護負担などでパワーレス状態となりやすいため、家族ダイナミクスが悪循環とならないよう、また悪循環を断ち切るには、家族のセルフケア機能を促進させる第三者の介入が必要と考えられる。看護師は家族機能のアセスメントを通して行動を解釈し、信頼関係を築きながら情緒的支援を行い、家族をエンパワーメントしていくことが求められていることが考えられた。本研究の成果は平成23年8月に日本難病看護研究学会で発表予定である。
KAKENHI-PROJECT-20791746
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20791746
特異的感染阻害ペプチドを用いたHIV-1の細胞侵入分子機構の解析
今回の研究課題において、HIV-1Gag蛋白質の構成成分であるマトリックス蛋白質(MA)とカプシド蛋白質(CA)の部分ペプチドライブラリーを作製し、これらを細胞内に導入することによってHIV-1の複製を阻害できるかを検討した。その結果、MAでは9番目の部分ペプチド、CAではCAのN末端領域とC末端領域のリンカー部分を含む15番目の部分ペプチド、C末端領域の二量体相互作用に重要な部分を含む19番目の部分ペプチドをはじめとする数カ所のCA部分ペプチドが抗HIV-1活性を示すことが明らかになった。われわれが見出したHIV複製を阻害するHIV-1MA(マトリックス蛋白質)の部分ペプチド(15mer)の中で、その抗HIV-1活性が高かったMA-8LとMA-9Lについてどの領域(またはアミノ酸)が活性にとって重要かを明らかにするため、1)ペプチドの長さ(15 mer)を変えずに、MA-8LとMA-9Lの間で1残基ずつずらした部分ペプチドを作製し、2)細胞内に導入した部分ペプチドの活性発現に有用と考えられるクロロキンを培養液に添加して、X4HIV-1とR5 HIV-1に対する抗HIV-1活性を評価した。その結果、C末端側のペプチド配列(ほぼMA-9Lに近い)が抗HIV-1活性発現に重要であることが明らかになった(論文投稿中)。MAの部分ペプチドについては、MA9Lのアミノ酸を一部改変したもの中から、抗HIV-1活性がより高く、細胞毒性がより低いものを見出すべく見当を行った。その結果、残念ながらoriginalのMA9Lと同等以上の性質をもつものは見出せなかった。一方、CAの部分ペプチドについては、スクリーニングで抗HIV-1活性が認められたfragment15の抗HIV-1活性発現に重要なアミノ酸残基の検討を行った。fragment15そのものが一番高い活性を示した(論文投稿中)。研究分担者である玉村教授の協力もあり、今年度も概ね順調に計画を遂行できた。昨年度より継続中のHIV-1CAの部分ペプチドでは、C-terminal domainのdimerの相互作用面に相当する領域の部分ペプチド(19L)についてアルファへリックス性の向上を考慮して種々の部分ペプチドの配列についてそれらの抗HIV-1活性および細胞毒性の検討を行った。その結果、MUP004と命名した部分ペプチドが細胞毒性なしに顕著なHIV-1活性を示すことが明らかになり、新たなメカニズムの抗体HIV-1薬のリード化合物になることが示唆された。今回の研究課題において、HIV-1Gag蛋白質の構成成分であるマトリックス蛋白質(MA)とカプシド蛋白質(CA)の部分ペプチドライブラリーを作製し、これらを細胞内に導入することによってHIV-1の複製を阻害できるかを検討した。その結果、MAでは9番目の部分ペプチド、CAではCAのN末端領域とC末端領域のリンカー部分を含む15番目の部分ペプチド、C末端領域の二量体相互作用に重要な部分を含む19番目の部分ペプチドをはじめとする数カ所のCA部分ペプチドが抗HIV-1活性を示すことが明らかになった。研究分担者の玉村先生のご協力もあり、概ね順調に計画を遂行できている。CA部分ペプチドについては、活性の向上が難しそうなfrangemt15にかわり、CA-CA間の相互作用に影響を与えることが期待されるfrangemt19の最適化に重点をおいて検討を行う。ウイルス学MAの部分ペプチドについては、9Lの配列を基本として25mer程度のより長い部分ペプチドでへリックス構造をとらせたり、stapling法を用いて構造の安定化を図り、より高い抗HIV-1活性を有する部分ペプチドの創製を試みる。CA(カプシド)の部分ペプチドについてもそのライブラリーの中で見つかった複数の抗HIV-1活性を有する部分ペプチドについて詳細に評価する。残額に相当する消耗品がなかったため。年度未納品等にかかる支払いが平成27年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。平成26年度分についてはほぼ使用済みである。H28年度の消耗品の購入に充当する。上記の通り。
KAKENHI-PROJECT-26460566
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26460566
規則細孔構造を有する膜を利用したダブルエマルションプロセッシング技術の開発
本研究では,液滴径(0.1100 μm)と液滴の階層構造が任意に制御可能な単分散複合エマルション調製法の開発を目指している.より具体的には,複合エマルションのなかでもダブルエマルションにターゲットを絞り,マイクロフルイディック技術で調製する液滴径の大きな(液滴径100μm以上)ダブルエマルションを,規則的な細孔構造を有する膜で処理するという新しい技術を開発すること,さらにこれをテンプレートとした機能性微粒子調製技術を開発することを目的としている.最終年度となる平成30年度は,平成29年度までに得られた成果を基に,規則的な細孔構造を有する多孔体を膜と見立てたPDMSマイクロ流体デバイスの構造の最適化を図り,これまで以上に精度よくダブエルエマルション液滴の分裂を制御することに成功した.その一例として,ダブルエマルション液滴が分裂前に楕円形に圧縮されるような流路構造を設計することで,2つの体積が等しいダブルエマルション液滴へ分裂する確率を向上させることができた.また,流路分岐点のディメンションとダブルエマルション液滴径の比の値も,等体積分裂に大きな影響を与えることが明らかとなった.さらにこれらの成果を踏まえて,複数の流路分岐点を直列に配置した規則多孔体を作製し,ダブルエマルション液滴を複数回分裂することにも挑戦した.その結果,1つのダブルエマルション液滴の分裂を繰り返し,8つの小さなダブルエマルション液滴を作ることなど,高度な分裂制御を実現することができた.本研究では,液滴径(0.1100 μm)と液滴の階層構造が任意に制御可能な単分散複合エマルション調製法の開発を目指している.より具体的には,複合エマルションのなかでもダブルエマルションにターゲットを絞り,マイクロフルイディック技術で調製する液滴径の大きな(液滴径100μm以上)ダブルエマルションを,規則的な細孔構造を有する膜で処理するという新しい技術を開発すること,さらにこれをテンプレートとした機能性微粒子調製技術を開発することを目的としている.初年度となる平成28年度は,当初の計画通り,マイクロフルイディック技術で調製したOil-in-Water-in-Oil (O/W/O)型ダブルエマルションを,SPG膜,金属メッシュといった規則的な細孔構造を有する多孔体で処理すること,さらに規則的な細孔構造を有する多孔体と見立てたPDMSマイクロ流体デバイスを設計しこれを用いて処理することを行った.その結果,処理に用いる多孔体の構造によって,処理後のダブルエマルションの液滴径が縮小すること,および処理後のダブルエマルションの中間層厚みが減少することを明らかにした.とくに,規則的な細孔構造を有する多孔体中をダブルエマルションが透過する挙動をハイスピードカメラで可視化することに成功したことは,今年度の大きな成果と言える.このハイスピードカメラ観察により,多孔体を透過する際に液滴径が縮小するメカニズム,および中間層が薄くなるメカニズムを,規則的な細孔構造を特徴づけるパラメータとの関係から推定することができた.おおむね研究実施計画通り研究を進めることができている.本研究では,液滴径(0.1100 μm)と液滴の階層構造が任意に制御可能な単分散複合エマルション調製法の開発を目指している.より具体的には,複合エマルションのなかでもダブルエマルションにターゲットを絞り,マイクロフルイディック技術で調製する液滴径の大きな(液滴径100μm以上)ダブルエマルションを,規則的な細孔構造を有する膜で処理するという新しい技術を開発すること,さらにこれをテンプレートとした機能性微粒子調製技術を開発することを目的としている.2年度目となる平成29年度は,第1に,規則的な細孔構造を有する多孔体を膜と見立てたPDMSマイクロ流体デバイスを用い,分裂により生成される液滴径と液滴構造を制御する手法の確立を試みた.その結果,平成28年度に得られた結果より推定された規則的な細孔構造を特徴づけるパラメータとの関係を,より詳細に理解することができた.また,分裂前の液滴径や,液滴に最内相が占める割合といったダブルエマルション自体を特徴づけるパラメータも,分裂による液滴径制御に重要な役割を果たすことを明らかにした.第2に,これまでの検討はOil-in-Water-in-Oil (O/W/O)型ダブルエマルションを用いて行ってきたが,Water-in-Oil-in-Water (W/O/W)型ダブルエマルションでも同様の検討を行い,W/O/WエマルションでもO/W/Oエマルションと同様のメカニズムで分裂がおきることを明らかにした.第3に,分裂後の液滴をテンプレートとして粒子化する手法を検討し,液滴構造を転写した微粒子を調製することに成功した.研究実施計画通り研究を進めることができている.本研究では,液滴径(0.1100 μm)と液滴の階層構造が任意に制御可能な単分散複合エマルション調製法の開発を目指している.より具体的には,複合エマルションのなかでもダブルエマルションにターゲットを絞り,マイクロフルイディック技術で調製する液滴径の大きな(液滴径100μm以上)ダブルエマルションを,規則的な細孔構造を有する膜で処理するという新しい技術を開発すること,さらにこれをテンプレートとした機能性微粒子調製技術を開発することを目的としている.最終年度となる平成30年度は,平成29年度までに得られた成果を基に,規則的な細孔構造を有する多孔体を膜と見立てたPDMS
KAKENHI-PROJECT-16K06835
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K06835
規則細孔構造を有する膜を利用したダブルエマルションプロセッシング技術の開発
マイクロ流体デバイスの構造の最適化を図り,これまで以上に精度よくダブエルエマルション液滴の分裂を制御することに成功した.その一例として,ダブルエマルション液滴が分裂前に楕円形に圧縮されるような流路構造を設計することで,2つの体積が等しいダブルエマルション液滴へ分裂する確率を向上させることができた.また,流路分岐点のディメンションとダブルエマルション液滴径の比の値も,等体積分裂に大きな影響を与えることが明らかとなった.さらにこれらの成果を踏まえて,複数の流路分岐点を直列に配置した規則多孔体を作製し,ダブルエマルション液滴を複数回分裂することにも挑戦した.その結果,1つのダブルエマルション液滴の分裂を繰り返し,8つの小さなダブルエマルション液滴を作ることなど,高度な分裂制御を実現することができた.当初の研究実施計画通り研究を進めていく.当初の研究実施計画通り研究を進めていく.当初は,規則的な細孔構造を有する多孔体として,より多くの可能性を検討する予定であったが,平成28年度の検討で用いた3種類の多孔体だけでも多くの興味深い結果が得られることが分かったため,これら物品消耗品に充てる予算が当初計画ほどはかからなかった.当初は,W/O/W型ダブルエマルションの検討には,新しく規則多孔体デバイスを作製する必要があると考えていたが,O/W/O型の検討で用いたデバイスの表面処理を施すことで対応できたため,これに充てる予算が当初計画より小さくて済んだ.平成30年度は,新しい構造を有する規則多孔デバイスを作製したり,これまで以上に消耗品を使用する予定であり,予算総額としては当初予定通りの使用を計画している.平成29年度以降はさまざまな構造を有するPDMSマイクロ流路を作製する予定であり,本次年度使用額はこれに充てる計画である.また平成29年度で予定している予算は,研究実施計画書通りに研究を進めるために,予定通り使用する.
KAKENHI-PROJECT-16K06835
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水環境試料を対象とした医薬品代謝物の機器分析法の開発および適用
水環境試料中の医薬品3物質及び代謝物5物質を対象として、LC/MS/MSによる同時分析法を開発し、下水処理および浄水処理過程の対象物質濃度の測定を行った。下水試料中の対象物質濃度を測定したところ、7物質が数十ng/Lからμg/Lの範囲で検出された。水道原水及び浄水からもカルバマゼピンとその代謝物が同程度で検出されたことより、医薬品原体だけでなく代謝物が水道原水に存在し、また、浄水中に残留する可能性が示された。水環境試料中の医薬品3物質及び代謝物5物質を対象として、LC/MS/MSによる同時分析法を開発し、下水処理および浄水処理過程の対象物質濃度の測定を行った。下水試料中の対象物質濃度を測定したところ、7物質が数十ng/Lからμg/Lの範囲で検出された。水道原水及び浄水からもカルバマゼピンとその代謝物が同程度で検出されたことより、医薬品原体だけでなく代謝物が水道原水に存在し、また、浄水中に残留する可能性が示された。本研究の分析対象として、国内の水環境での検出事例、下水処理における原体の除去性等について考慮した上で、医薬品原体として解熱鎮痛剤のアセトアミノフェン(AAP)、抗てんかん剤のカルバマゼピン(CBM)、消炎鎮痛剤のジクロフェナク(DCF)の3物質を選択した。次に、ヒト体内における代謝経路や代謝産物、各々のヒト尿中排泄率及び標準品の入手性について考慮し、AAPの主要尿中排泄物としてアセトアミノフェングルクロン酸抱合体(AAP-GuL)及びアセトアミノフェン硫酸抱合体(AAP-SuL)、CBMの代謝産物の一種であり薬理活性を有するカルバマゼピン10,11エポキシ体(CBM-EPO)、DCFの主要尿中排泄物としてジクロフェナク4^'水酸化体(4^'OH-DCF)及びジクロフェナク5水酸化体(5OH-DCF)の5物質を選択した。医薬品原体として解熱鎮痛剤のアセトアミノフェン(AAP)、抗てんかん剤のカルバマゼピン(CBM)、消炎鎮痛剤のジクロフェナク(DCF)の3物質、代謝物としてアセトアミノフェングルクロン酸抱合体(AAP-GuL)および硫酸抱合体(AAP-SuL)、カルバマゼピン10,11エポキシ体(CBM-EPO)、ジクロフェナク4'水酸化体(4'OH-DCF)および5水酸化体(5OH-DCF)の5物質を対象として、昨年度までに開発したLC/MS/MSを用いた高感度同時分析法を用い、下水処理および浄水処理過程の対象物質濃度の測定により、それらの除去効果や水環境中の存在状況について調査を行った。下水試料中の対象物質濃度を測定したところ、AAP-GuLを除く7物質が全試料から数十ng/Lからμg/Lレベルで検出され、医薬品原体と同程度の濃度で代謝物が下水処理水中に存在していることが明らかとなった。浄水場の工業用水系原水からはAAP-GuLおよびAAP-SuLを除く6物質が数十ng/Lレベルで検出され、上水系原水及び浄水からもCBMおよびCBM-EPOが同程度で検出されたことより、医薬品原体だけでなく代謝物が水道原水に存在し、また浄水中に残留する可能性が示された。本研究の結果より、下水及び水環境中に医薬品代謝物がその原体と同程度の濃度で存在する可能性が明らかとなり、その中にはCBM-EPOのように原体と同様の薬理活性を有するものもあることから、今後、水環境における汚染の全体像や挙動を把握し、有効適切な処理方法を明確にすること、また、水環境中における水生生物等への影響の有無を評価することが必要である。
KAKENHI-PROJECT-21760424
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21760424
強い物理的制約下でも実現可能な量子情報処理
多体量子系の制御へ向け、引き続き限定アクセス下でのハミルトニアン推定の問題に注力した。まず、これまでに得たスピンネットワークに対する同種の問題を、外界との相互作用が存在する状況下でいかに扱うかを考察した。スピンネットワークの「端部」のみへのアクセス(状態準備、観測)により全系のハミルトニアンを同定する"gatewayscheme"では、端部から注入した「信号」が系内を伝播して端部へ戻る様子を観測してすべてのスピン間結合係数を求める。しかし、外界との相互作用がある場合、この信号が外界へ逃げてしまい、ハミルトニアンの情報を織り込んだ信号が端部へ戻らない。そこで、端部アクセスの条件を緩和し、gateway scheme遂行上最低限必要な物理量を制御・観測する方法を考案した。状態準備は端部のみで行い、観測は全系のエネルギー固有状態で行う。実際、これは生体分子系等の、観測を一部に限定することが困難な場合には現実的な仮定であり、本手法の応用例として光合成機構内のエネルギー輸送に関わるシステムのひとつであるFMO複合体への適用を論じた(UC Berkeleyとの共同研究)。また、本gateway schemeの実証のため、近畿大学のグループとともに3つの核スピンをもつ分子を用いたNMR実験を行い、ハミルトニアン推定を試みた。この実験では、サンプル内の磁場の不均一さが災いし、本手法をそのまま適用することはできなかったが、(効率は下がるものの)代替手法を用いて所望のパラメーター推定が可能であることを実証できた。多体量子系をその量子性を保ったまま自在に制御することは非常に難しい。量子力学的制御には、各構成要素(量子ビット)、およびそれら要素間の相互作用をすべて意のままに操ることが求められる。しかし、これは技術的に困難であるばかりでなく、マクロな制御系とミクロな被制御系との相互作用を通して全体の量子コヒーレンスを壊してしまうことにつながる。この影響を最小限に抑えるために、すべての要素を制御する代わりに、量子系への人為的制御を最小限に抑えて上述の困難を軽減する手法を探るのが本研究の目的である。具体的には、N個のスピン1/2粒子からなるネットワークの一部だけにアクセスして、2^N次元をなす空間内で系を制御することを考える。まず、制御するにあたっては、当該スピンシステムのダイナミクスを記述するための種々のパラメータを限られたアクセス下で推定する必要がある。したがって、「ハミルトニアン・トモグラフィ」は量子制御において非常に重要な問題であり、本年度はこれに注力した。例えば、1次元スピン鎖であれば、端部のスピンのみの状態制御と観測を通して残りのスピン間相互作用の結合定数や局所磁場強度を推定するタスクなどである。全磁化を保存する場合に加え、イジングモデルなど物理的にも重要な多くのケースにも適用可能な推定方法を構築する必要があった。そこで、(準)粒子の生成・消滅演算子について2次であるハミルトニアンに対するパラメータ推定方法を提案した。これは特別な場合としてイジングモデルを含んでおり、当該推定法は(準)粒子がフェルミオン、ボソンのいずれでも適用可能である。NMRや超伝導量子回路において検証・実践可能な方法であり、またさらに広いクラスの問題への応用可能性を秘めるものと期待している。多体量子系の制御へ向け、引き続き限定アクセス下でのハミルトニアン推定の問題に注力した。まず、これまでに得たスピンネットワークに対する同種の問題を、外界との相互作用が存在する状況下でいかに扱うかを考察した。スピンネットワークの「端部」のみへのアクセス(状態準備、観測)により全系のハミルトニアンを同定する"gatewayscheme"では、端部から注入した「信号」が系内を伝播して端部へ戻る様子を観測してすべてのスピン間結合係数を求める。しかし、外界との相互作用がある場合、この信号が外界へ逃げてしまい、ハミルトニアンの情報を織り込んだ信号が端部へ戻らない。そこで、端部アクセスの条件を緩和し、gateway scheme遂行上最低限必要な物理量を制御・観測する方法を考案した。状態準備は端部のみで行い、観測は全系のエネルギー固有状態で行う。実際、これは生体分子系等の、観測を一部に限定することが困難な場合には現実的な仮定であり、本手法の応用例として光合成機構内のエネルギー輸送に関わるシステムのひとつであるFMO複合体への適用を論じた(UC Berkeleyとの共同研究)。また、本gateway schemeの実証のため、近畿大学のグループとともに3つの核スピンをもつ分子を用いたNMR実験を行い、ハミルトニアン推定を試みた。この実験では、サンプル内の磁場の不均一さが災いし、本手法をそのまま適用することはできなかったが、(効率は下がるものの)代替手法を用いて所望のパラメーター推定が可能であることを実証できた。
KAKENHI-PROJECT-22540405
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22540405
摂食障害と消費社会:飽食の時代における拒食と過食嘔吐
平成十四度の研究実績は、二月末の時点で、九件のインタビュー収録と一本の論文発表となる。九件のインタビューの内訳は、男性二件と女性七件である。特筆すべきは、男性のインタビューが二件収録できたことである。摂食障害者のほとんどは女性とされ、男性は数少ないとされている。男女比は、一対二十から一対十の割合と言われている。今回初めて男性の摂食障害者の事例を収集できたことで、摂食障害研究における新たにジェンダー的な対比と考察が可能となった。男性摂食障害者の事例研究は、論文発表の形でまとめたいと思う。また女性の摂食障害者についても、興味深い事例が得られた。それは、摂食障害という症状と、美的身体へのこだわりとの関連である。この美的身体へのこだわりは、美的身体を形成するための消費行動という点と、美的身体にかかわる仕事へのこだわりという点に現れていた。ある女性摂食障害者は美容師の見習いとして働いており、他の女性摂食障害者はエステ勤務の後、コンパニオンとして働いている。摂食障害と美的な産業との関連について、今後考察を深めたいと思う。論文は、二十五人の摂食障害者へのインタビューをもとに、摂食障害とその家族との関連を考察したものである。「摂食障害は家族によって生み出される」とする家族要因説を批判的に検討している。結論的には、家族要因説のみで摂食障害を語ることはできず、そしてそのように語ってしまうことの危険性を指摘している。平成十四度の研究実績は、二月末の時点で、九件のインタビュー収録と一本の論文発表となる。九件のインタビューの内訳は、男性二件と女性七件である。特筆すべきは、男性のインタビューが二件収録できたことである。摂食障害者のほとんどは女性とされ、男性は数少ないとされている。男女比は、一対二十から一対十の割合と言われている。今回初めて男性の摂食障害者の事例を収集できたことで、摂食障害研究における新たにジェンダー的な対比と考察が可能となった。男性摂食障害者の事例研究は、論文発表の形でまとめたいと思う。また女性の摂食障害者についても、興味深い事例が得られた。それは、摂食障害という症状と、美的身体へのこだわりとの関連である。この美的身体へのこだわりは、美的身体を形成するための消費行動という点と、美的身体にかかわる仕事へのこだわりという点に現れていた。ある女性摂食障害者は美容師の見習いとして働いており、他の女性摂食障害者はエステ勤務の後、コンパニオンとして働いている。摂食障害と美的な産業との関連について、今後考察を深めたいと思う。論文は、二十五人の摂食障害者へのインタビューをもとに、摂食障害とその家族との関連を考察したものである。「摂食障害は家族によって生み出される」とする家族要因説を批判的に検討している。結論的には、家族要因説のみで摂食障害を語ることはできず、そしてそのように語ってしまうことの危険性を指摘している。
KAKENHI-PROJECT-02J03934
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02J03934
流れ盤斜面の地震時崩壊の誘因となる層理面の力学特性の類型化
層理面が有する典型的な力学特性について、地震時を想定した載荷条件下での研究が極めて少ないことから、これを明らかにするため、多様な試験条件下での結果を蓄積してきた。繰返しせん断試験を行うと、処女載荷時に大きなせん断抵抗を示した後、急激にせん断強度を失うことが観察された。過去に日本国内で発生した典型的な流れ盤斜面地すべりを対象に、それぞれの斜面で地すべりの原因となった層理面の繰返し載荷時の力学特性を明らかにした。また、これに基づく地すべりの数値シミュレーション(動的弾塑性FEM)を実施した。また、層理面の繰返し載荷時のせん断特性を把握する研究過程において、その面に垂直な引張強度が極めて低いこと、特に急速載荷時にこの傾向が顕著になることを発見した。その引張強度特性を詳細かつ定量的に調べるため、専用の岩盤打撃試験機を開発した。この装置は、層理面を挟在する岩盤の供試体の端部を層理面と垂直な方向に打撃することで、その衝撃波が層理面を波動として通過する際に層理面を引張り破壊させることを想定した新たな実験装置であり、段階的に打撃力を操作することで、層理面の引張り破壊に必要な最低限の引張力を逆算する仕組みとなっている。これを用いた層理面の引張り強度の計測結果から、地震時の層理面の引張り破壊と地すべりとの関連性を分析した。層理面が有する典型的な力学特性について、地震時を想定した載荷条件下での研究が極めて少ないことから、これを明らかにするため、多様な試験条件下での結果を蓄積してきた。繰返しせん断試験を行うと、処女載荷時に大きなせん断抵抗を示した後、急激にせん断強度を失うことが観察された。過去に日本国内で発生した典型的な流れ盤斜面地すべりを対象に、それぞれの斜面で地すべりの原因となった層理面の繰返し載荷時の力学特性を明らかにした。また、これに基づく地すべりの数値シミュレーション(動的弾塑性FEM)を実施した。また、層理面の繰返し載荷時のせん断特性を把握する研究過程において、その面に垂直な引張強度が極めて低いこと、特に急速載荷時にこの傾向が顕著になることを発見した。その引張強度特性を詳細かつ定量的に調べるため、専用の岩盤打撃試験機を開発した。この装置は、層理面を挟在する岩盤の供試体の端部を層理面と垂直な方向に打撃することで、その衝撃波が層理面を波動として通過する際に層理面を引張り破壊させることを想定した新たな実験装置であり、段階的に打撃力を操作することで、層理面の引張り破壊に必要な最低限の引張力を逆算する仕組みとなっている。これを用いた層理面の引張り強度の計測結果から、地震時の層理面の引張り破壊と地すべりとの関連性を分析した。自然斜面、特に「流れ盤斜面」が地震時に平面すべり様の大規模崩壊を起こすことが良く知られている。本課題研究では、流れ盤斜面の内部に弱面として存在する層理面の力学特性を類型化するための各種の基礎的研究を行うことを目的とした。このような研究は、中山間地が巨大地震に襲われた際の土砂災害の軽減に極めて有効である。今年度は以下の3点の研究作業に着手した。(1)層理面を挟在するブロック状不撹乱試料の採取法の検討(2)層理面の地震時力学特性を把握するための室内試験法の検討(3)地震時に層理面に作用する荷重条件の解析的検討(1)について、新潟県柏崎市の聖ヶ鼻地区の大規模地すべり(2007年新潟県中越沖地震で発生)の現場近傍の流れ盤構造の顕著な露頭から、地震時に強度低下することが懸念される層理面を挟在するブロック状の不撹乱試料の採取を試みた。予想以上に層理面の引張り強度が小さく採取作業は難航したが、必要な物品の購入、専門技術者の協力等の試行錯誤により、室内試験に供しうる試験体の削出が成功した。(2)について、採取試料の室内試験の実施にあたり、地震時に実際に層理面に作用した力学条件(繰返し載荷、等体積条件、適切なせん断モードなど)を考慮した試験方法を検討した。既存の試験装置を製作・改造し、地震時に層理面が強度低下するメカニズムを試験室内で再現することに成功した。以上を踏まえて(3)の検討を行った。数値解析には研究代表者が開発した動的弾塑性有限要素解析コードを使用した。(2)で得られた力学特性を表現しうる構成モデルを導入して、既往地震の観測波形を用いた地震応答解析を行い、解析の結果得られた層理面内の応力ひずみ径路等から実際の地震中に層理面に作用する外力の条件を明らかにした。次年度には、以上の成果を取りまとめ、流れ盤斜面の力学的特徴と減災対策について考察を行う。本課題研究において取り組み、明らかにした点は以下のとおりである。層理面が有する典型的な力学特性がどのようなものであるか、地震時を想定した載荷条件下での研究が極めて少ないことから、これを明らかにするため、多様な試験条件下での結果を蓄積してきた。繰返しせん断試験を行うと、処女載荷時に大きなせん断抵抗を示した後、急激にせん断強度を失うことが観察された。過去に日本国内で発生した典型的な流れ
KAKENHI-PROJECT-21760367
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21760367
流れ盤斜面の地震時崩壊の誘因となる層理面の力学特性の類型化
盤斜面地すべりを対象に、それぞれの斜面で地すべりの原因となった層理面の繰返し載荷時の力学特性を明らかにした。また、これに基づく地すべりの数値シミュレーション(動的弾塑性FEM)を実施した。また、層理面の繰返し載荷時のせん断特性を把握する研究過程において、その面に垂直な引張強度が極めて低いこと、特に急速載荷時にこの傾向が顕著になることを発見した。その引張強度特性を詳細かつ定量的に調べるため、専用の岩盤打撃試験機を開発した。この装置は、層理面を挟在する岩盤の供試体の端部を層理面と垂直な方向に打撃することで、その衝撃波が層理面を波動として通過する際に層理面を引張り破壊させることを想定した新たな実験装置であり、段階的に打撃力を操作することで、層理面の引張り破壊に必要な最低限の引張力を逆算する仕組みとなっている。これを用いた層理面の引張り強度の計測結果から、地震時の層理面の引張り破壊と地すべりの誘発との関連性を分析した。この成果は現在論文として取りまとめ中であるが、地震動による斜面内のせん断力が地すべりを引き起こす主因と考えられてきた中で、新たに地震動の斜面直角方向成分が地すべりに寄与する可能性を指摘するものであり、今後の更なる研究の継続が望まれる。
KAKENHI-PROJECT-21760367
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21760367
神経芽腫モデルマウスを用いた新規制御因子の探索と機能解析
申請者らは、これまでの結果として、MYCN-トランスジェニックマウスの腫瘍組織から単離・培養したtumor sphereとマウス海馬由来の神経幹細胞との網羅的遺伝子解析からtumor sphereと腫瘍発生を結びつけるヒントを掴むに至らなかった。また、我々は昨年までの網羅的解析から得られた候補遺伝子の中から、NeuroD1と神経芽腫の進展について報告をした(Huang et al. 2011 Cancer Res)。しかし、候補遺伝子が多いこと、多くの候補遺伝子に対して並列化できるスクリーニング系を持っていないこと、そして将来的な研究の効率を考慮して候補の絞り込みに必要な情報を再構築することとした。はじめに、tumor sphereが腫瘍発生因子や進展因子をenrichしていると仮定し、tumor sphereと腫瘍組織の発現プロファイルを次世代シークエンサーで解析した。その結果、tumor sphereで発現量が2倍以上高い遺伝子を111個ピックアップした。次に、正常な腹腔交感神経節と腫瘍組織の発現プロファイルについてマイクロアレイを用いて解析した。その結果、腫瘍組織で発現量が2倍以上高い遺伝子を726個ピックアップした。続いて、それらで共通してピックアップした遺伝子について、オランダの臨床データベースR2を用いて発現量と生存曲線の相関をとり、有意差のある遺伝子を3つ(Csrnp3,Dock4,Pik3r1)ピックアップした。そして、絞り込んだ3つの遺伝子についてin situ hybridizationとqPCRを用いて時系列毎の発現プロファイルを解析した。その結果、モデルマウスにおいて腫瘍が発生すると考えている生後2週の段階で3遺伝子とも興味深い挙動を示した。現在、過剰発現ベクターとshRNA、siRNAのデザインを進め、神経芽腫細胞株を用いて候補遺伝子の詳細な機能解析を進めている。一般に,幹細胞はgrowth conditionにおいて,種々の未分化マーカーの発現が確認される.そこで,MYCNトランスジェニックマウスの神経芽腫腫瘍組織から初代培養したtumor sphereについて未分化マーカー(Oct3/4,SOX-2,Nanog等)の発現を免疫蛍光染色あるいはRT-PCR法を用いて解析した.その結果,典型的な未分化マーカーの発現プロファイルの確認ができた.また,tumor sphereと神経幹細胞(野生型マウスのE14から初代培養した細胞)の未分化マーカーの発現プロファイルについてreal-time RT-PCR法を用いて比較した結果,複数の遺伝子の発現量に有意な差が認められた.癌幹細胞と称される細胞は腫瘍原生を有していることが種々の固形癌で報告されている.そこで,tumor sphereの腫瘍原生を評価するために,tumor sphereを腎臓の皮膜下あるいは皮下に移植した際に腫瘍が形成されるかどうかを調べた.その結果,ヌードマウス,野生型問わず腫瘍を形成することをH&E染色を用いた組織染色により確認した.このことからtumor sphereが腫瘍原生を有していることがわかった.オリジナルの腫瘍組織とtumor sphereについてマイクロアレイを用いて比較したところ,gain,lossともに40個ほどの候補遺伝子を絞り込んでいる.絞り込んだ候補遺伝子には,既知の神経芽腫関連遺伝子もいくつか含まれている一方で全く報告のない遺伝子も多数含まれていた.現在,これらの遺伝子について解析すべく過剰発現ベクターの作製やノックダウンのためのsiRNA,shRNAのデザインに取り組んでいる.MYCNトランスジェニックマウスの腫瘍組織より単離・培養したtumor sphereについて,当初,安定した継代培養や細胞保存が困難であった.安定した培養系を確立させることで,同時期に由来の異なるtumor sphereを評価・検討することが可能となり,初代培養細胞を実験に用いる際に生じる個体差の影響を最小限に抑えた実験が可能になると考えた.そこで,tumor sphereの安定した継代培養や細胞保存の条件検討を行うことにした.初めに,他の肝細胞の培養を参考にすることを考え,これまで培養経験のある神経細胞以外の幹細胞(マウスES細胞やヒトES/iPS細胞)を用いて継代方法や細胞保存について学び,tumor sphereの系に応用することが可能なものを一つ一つ検討した.条件検討と改変の結果,tumor sphereは少なくとも3ヶ月以上の継続培養が可能になった.また,継続培養中において,細胞の形態や遺伝子発現プロファイルに異常は認められなかった.次に,免疫不全マウスを用いて腫瘍形成脳を検討した結果,初代培養した直後のtumor sphereと同様に,長期培養したtumor sphereも腫瘍形成能を示したことから,tumor sphereは長期培養しても腫瘍形成能を維持することがわかった.さらに,繰り返しの連結保存も可能になった(腫瘍形成能,遺伝子発現プロファイル,細胞の形態確認済み).これらの結果から,tumor sphereはESあるいはiPS細胞のようにある程度株化が可能な細胞であることがわかった.よって,今後は文頭に示した目的である"同時期に複数の株をスクリーニングすること"が可能になった.他方,マイクロアレイの結果より絞り込んだ遺伝子における過剰発現ベクターの作製やノックダウンのためのsiRNA,shRNAのデザインは継続して取り組んでいる.申請者らは、これまでの結果として、MYCN-トランスジェニックマウスの腫瘍組織から単離・培養したtumor sphereとマウス海馬由来の神経幹細胞との網羅的遺伝子解析からtumor sphereと腫瘍発生を結びつけるヒントを掴むに至らなかった。また、我々は昨年までの網羅的解析から得られた候補遺伝子の中から、NeuroD1と神経芽腫の進展について報告をした(Huang et al. 2011 Cancer Res)。
KAKENHI-PROJECT-09J00808
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09J00808
神経芽腫モデルマウスを用いた新規制御因子の探索と機能解析
しかし、候補遺伝子が多いこと、多くの候補遺伝子に対して並列化できるスクリーニング系を持っていないこと、そして将来的な研究の効率を考慮して候補の絞り込みに必要な情報を再構築することとした。はじめに、tumor sphereが腫瘍発生因子や進展因子をenrichしていると仮定し、tumor sphereと腫瘍組織の発現プロファイルを次世代シークエンサーで解析した。その結果、tumor sphereで発現量が2倍以上高い遺伝子を111個ピックアップした。次に、正常な腹腔交感神経節と腫瘍組織の発現プロファイルについてマイクロアレイを用いて解析した。その結果、腫瘍組織で発現量が2倍以上高い遺伝子を726個ピックアップした。続いて、それらで共通してピックアップした遺伝子について、オランダの臨床データベースR2を用いて発現量と生存曲線の相関をとり、有意差のある遺伝子を3つ(Csrnp3,Dock4,Pik3r1)ピックアップした。そして、絞り込んだ3つの遺伝子についてin situ hybridizationとqPCRを用いて時系列毎の発現プロファイルを解析した。その結果、モデルマウスにおいて腫瘍が発生すると考えている生後2週の段階で3遺伝子とも興味深い挙動を示した。現在、過剰発現ベクターとshRNA、siRNAのデザインを進め、神経芽腫細胞株を用いて候補遺伝子の詳細な機能解析を進めている。
KAKENHI-PROJECT-09J00808
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09J00808
魚類の筋成長に関連した筋線維形成機構に関する研究
筋肉は動物の動きを司る基本的な器官でその生理および代謝は生命の根幹をなす。一方、産業的に重要な生物種で筋肉は可食部のほとんどを占め、食品化学的見地からも重要な器官である。このように基礎および応用の両面で重要な筋肉であるが、発生や発達の機構は長年の多くの研究にもかかわらず、未知の部分が多く残されている。そこで本研究では脊椎動物の中で最もゲノムサイズが小さく、遺伝子解析が容易であるトラフグを対象に、従来からの生化学的手法に加え、分子生物学的技法をも駆使し、筋肉の主要タンパク質であるミオシンの重鎖サブユニット(MYH)をコードする遺伝子(MYH)の諸性状を調べることで、筋線維形成機構を明らかにすることを目的とした。トラフグ速筋型ミオシン重鎖遺伝子AYH_<M2528>およびMYH_<M454>,につき転写産物の発現状況を調べたところ、いずれも成体の外眼筋・速筋、遅筋に発現が認められた。また、MYH_<M454>,は腸にも発現がみられたが、胚体では転写産物はみられなかった。一方、MYH_<M2528>は胚体に発現がみられ、腸には発現がみられなかった。さらに、の5'上流域の配列をGFP遺伝子の上流域に組み込みレポーターベクターを作成し、メダカ受精卵にマイクロインジェクションで導入したところ、MYH_<M454>、ではいかなる部位でも発現は観察されなかった。一方、MYH_<M252>、は速筋で主に発現し、遅筋でも発現がわずかにみられた。さらに、をゼブラフィッシュ受精卵に導入したところ、MYH_<M2528>は目、顎、胸びれにも発現がみられた。これらの結果は、MYH遺伝子の発現調節領域が魚類間で共通しており、筋線維の形成機構に重要な役割を果たしていることを示唆する。筋肉は動物の動きを司る基本的な器官でその生理および代謝は生命の根幹をなす。一方、産業的に重要な生物種においては筋肉は可食部のほとんどを占め、食品化学的見地からも重要な器官である。このように基礎および応用の両面で重要な筋肉であるが、発生や発達の機構は長年の多くの研究にもかかわらず、未知の部分が多く残されている。本研究は、従来からの生化学的手法に加えて近年、進展が著しい分子生物学的技法をも駆使し、系統進化学的には脊椎動物では最も下等であるが、多産性であること、体外受精で胚発生が容易に観察できることなどの利点が多い魚類を対象として、筋線維の増殖と筋管形成の機構を明らかにすることを目的とした。1.モデルゲノムとしてゲノムデータベースの利用価値が高いトラフグから既に多くのミオシン重鎖(MYH)遺伝子(MYH)をクローン化している。そこで成体遅筋型MYH_<M2528>および胚型MYH_<M454,>につき、10kbpの5'上流域をトラフグ全ゲノムデータベースから抽出し、rVistaプログラムを利用してこの領域に存在する転写因子の結合配列を探索した。その結果、myoDファミリーなど、種々の転写因子の結合配列が同定された。2.次に、Multi-LAGANプログラムを用いてMYH_<M2528>およびMYH_<M454,>の5'上流域を、メダカ成体速筋型mMYH1mMYH11の相同領域と比較した。しかしながら、トラフグ両MYHの5'上流域と、メダカのそれとは相同性が認められなかった。3.ゲノムDNAを鋳型にトラフグ両MYHの5'上流域をPCRで増幅して、phrGFPベクターに挿入して組み換えDNAコンストラクトを作製した。4.上述のように作製したコンストラクトをメダカ受精卵にマイクロインジェクションで導入し、現在、MYHの5'上流域の転写活性をin vivoで調べている。筋肉は動物の動きに機能する基本的な器官でその生理および代謝は生命の根幹をなす。一方、産業的に重要な生物種においては筋肉が可食部のほとんどを占め、食品化学的見地からも重要な器官である。このように基礎および応用の両面で重要な筋肉であるが、発生や成長の機構は長年の多くの研究にもかかわらず、未知の部分が多く残されている。本研究は、従来からの生化学的手法に加えて近年、進展が著しい分子生物学的技術をも駆使し、系統進化学的には脊椎動物では最も下等であるが、多産性であること、体外受精で胚発生が容易に観察できることなどの利点が多い魚類を対象として、筋線維の増殖と筋管形成の機構を明らかにすることを目的とした。1.トラフグの胚体に特異的に発現し、成体では発現のみられないミオシン重鎖(MYH)遺伝子(MYH)、MYHM743につき、TFSEARCHプログラムで開始コドンから2kbの5'上流域のcis配列を調べた。その結果、myoDファミリーなど、筋特異的遺伝子の発現に関与する転写因子など、種々の転写因子の予想結合配列が同定された。2.次に上記の上流域をゲノムDNAを鋳型とするPCRに付して増幅し、phrGFPベクターに挿入した。このベクターを12細胞期のゼブラフィッシュ胚に顕微注入してゼブラフィッシュの発生に伴うGFP遺伝子の発現変動を調べた。その結果、GFPは受精後2448時間の体節に発現することがわかった。3.さらに、GFPの発現は胚体および艀化仔魚の頭蓋筋や胸鰭筋にも発現したが、非筋組織には発現が認められなかった。
KAKENHI-PROJECT-06F06438
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06F06438
魚類の筋成長に関連した筋線維形成機構に関する研究
4.以上の結果は5'上流域の2kb中にMYHM743の発現に重要な役割を果たす筋分化制御因子の結合配列を含まれていることを示唆する。筋肉は動物の動きを司る基本的な器官でその生理および代謝は生命の根幹をなす。一方、産業的に重要な生物種で筋肉は可食部のほとんどを占め、食品化学的見地からも重要な器官である。このように基礎および応用の両面で重要な筋肉であるが、発生や発達の機構は長年の多くの研究にもかかわらず、未知の部分が多く残されている。そこで本研究では脊椎動物の中で最もゲノムサイズが小さく、遺伝子解析が容易であるトラフグを対象に、従来からの生化学的手法に加え、分子生物学的技法をも駆使し、筋肉の主要タンパク質であるミオシンの重鎖サブユニット(MYH)をコードする遺伝子(MYH)の諸性状を調べることで、筋線維形成機構を明らかにすることを目的とした。トラフグ速筋型ミオシン重鎖遺伝子AYH_<M2528>およびMYH_<M454>,につき転写産物の発現状況を調べたところ、いずれも成体の外眼筋・速筋、遅筋に発現が認められた。また、MYH_<M454>,は腸にも発現がみられたが、胚体では転写産物はみられなかった。一方、MYH_<M2528>は胚体に発現がみられ、腸には発現がみられなかった。さらに、の5'上流域の配列をGFP遺伝子の上流域に組み込みレポーターベクターを作成し、メダカ受精卵にマイクロインジェクションで導入したところ、MYH_<M454>、ではいかなる部位でも発現は観察されなかった。一方、MYH_<M252>、は速筋で主に発現し、遅筋でも発現がわずかにみられた。さらに、をゼブラフィッシュ受精卵に導入したところ、MYH_<M2528>は目、顎、胸びれにも発現がみられた。これらの結果は、MYH遺伝子の発現調節領域が魚類間で共通しており、筋線維の形成機構に重要な役割を果たしていることを示唆する。
KAKENHI-PROJECT-06F06438
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06F06438
DNA修復蛋白の発現を利用した放射線治療効果の予測
前立腺癌の放射線治療において、Ku70の発現は臨床所見(グリソンスコア、D'amicoリスク分類)と相関がなく、独立した予測因子であった。PSA再発の予測因子として、グリソンスコア単独と比較してグリソンスコアとKu70発現を組み合わせると予測能が向上した。放射線治療とホルモン治療を併用した患者において、グリソンスコア7以下またはKu70低発現の患者ではPSA再発は一例も認めなかった。一方で、グリソンスコア8以上かつKu70高発現の患者では高いPSA再発率を示した。放射線による細胞死では、DNA損傷の一つであるDNA二重鎖切断が重要であり、その主な修復機構の一つに非相同末端結合がある。これに関与する蛋白として、XRCC4、DNA-PKcs、Ku70、Ku86があるが、これらの蛋白発現の強度と放射線治療成績の相関性を解析し、治療効果の予測因子となりうるかを検討した。対象は2001年から2010年において前立腺癌と診断された100例である。病期分類はUICCによるTstage分類でT1c 57例、T2以上43例、D'amicoのリスク分類でlow risk 13例、intermediate risk 37例、high risk 50例であった。放射線治療は、3D CRTで70グレイ、IMRTで76グレイを照射した。ホルモン療法は、intermediated risk,high risk群で施行された。治療前における、生検組織を用いて、前述した蛋白について免疫染色を行った。標本の腫瘍組織の中で最も強く染色される領域について、蛋白の発現率を算出した。PSA非再発率をエンドポイントとして解析すると、Ku70の発現率は単変量解析において、T stage、照射方法(照射線量)と共に、有意な、独立した予後因子であった。PSA非再発率を従属変数、年齢(70歳)、照射方法、T stage、グリソンスコア、などの因子を独立変数として多変量解析を行うと、グリソンスコア、照射方法とともに、有意な、独立した予後因子であった。前立腺癌の治療方針は、T stage、グリソンスコア、PSA値によって決定される。これらの臨床所見は放射線治療後の前立腺癌の局所再発を予測するリスク因子としては十分ではない。放射線感受性に関する指標が局所再発の可能性を予測するうえで必要とされる。方法:2007年8月から2010年10月までの期間にIMRT(強度変調放射線治療)による放射線治療を受けた前立腺癌患者の58例について探索群として解析し、2001年3月から2007年5月までの期間に3DCRT(3次元放射線治療)を受けた前立腺癌患者42例について検証群として解析した。病理標本を用いて非相同末端結合修復に関与する蛋白について免疫組織染色を施行した。結果:Ku70の発現は様々な臨床所見(例えばグリソンスコア、D'amicoリスク分類)と相関がなく、独立した予測因子であった。PSA再発の予測因子として、グリソンスコア単独と比較してグリソンスコアとKu70発現を組み合わせると予測能が著しく上昇した。放射線治療とホルモン治療を併用した患者において、グリソンスコア7以下またはKu70低発現の患者ではPSA再発は一例も認めなかった。一方で、グリソンスコア8以上かつKu70高発現の患者では高いPSA再発率を示した。検証群でも同様の結果を得た。結論:76Gyの放射線治療とホルモン療法はグリソンスコア7以下またはKu70低発現の患者においては効果的な治療方法であるが、グリソンスコア8以上かつKu70高発現の患者においては十分ではなく、他の治療アプローチを必要とするかもしれない。前立腺癌の放射線治療において、Ku70の発現は臨床所見(グリソンスコア、D'amicoリスク分類)と相関がなく、独立した予測因子であった。PSA再発の予測因子として、グリソンスコア単独と比較してグリソンスコアとKu70発現を組み合わせると予測能が向上した。放射線治療とホルモン治療を併用した患者において、グリソンスコア7以下またはKu70低発現の患者ではPSA再発は一例も認めなかった。一方で、グリソンスコア8以上かつKu70高発現の患者では高いPSA再発率を示した。研究目的の一つとして、生検標本を使用した免疫組織染色による放射線治療効果予測法の確立を目指すことがあるが、前立腺癌で、有望な結果が得られた。医歯学生検標本を使用した免疫組織染色による放射線治療効果予測法の確立のための研究をさらに進める。この研究と並行して、リンパ細胞のDNA-PK活性の測定による放射線障害予測法の確立の研究も行う。すでに研究室にあった消耗品を使用して研究を行ったため、残額が生じた。平成26年度の残額と平成27年度の直接経費を使用して、免疫組織染色やリンパ細胞のDNA-PK活性の測定、in vitroの研究を行う。これらの研究における消耗品、実験補助のための人件費、学会参加のための費用などに使用する予定である。
KAKENHI-PROJECT-26861010
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26861010
干渉計のデータ処理とイベント選別・相関解析
H17年度は、米国LIGOグループとの国際共同研究の最終結果がまとまり、成果を論文および国際会議での発表に至った。このことは本計画研究のもっとも大きな目的である「重力波イベントの相関解析による探索」が一応の成功を納めたことになる。連星合体からのインスパイラル重力波探索については、TAMA DT8およびLIGO S2観測の同時観測データから、我々の銀河系について1年あたり49イベント以下(信頼度90%)という上限値を得た。またバースト重力波については、h_<rss>>2x10^<-19>についておよそ0.2以下[トリガー/日](信頼度90%)の結果を得、これはLIGO S2単体での結果を更新し、TAMA実験との同時性を要求した解析による改善を示した。本計画研究で世界に先駆けて行ってきたブラックホール準固有振動からのリングダウン重力波の探索については、TAMA DT6,7,8,9についての探索が行われ、我々の銀河系内での20太陽質量以下のイベントについて、3.4x10^<-2>[Hz]という上限値を得た。これらの上限値は、天文学的には他の観測や予測に比して、まだ十分なインパクトをもつものではないが、重力波研究において国際協力あるいは先鞭をつけた手法によって、実データの解析から上限を得られたことは大きな価値をもつ。まず、主にいままでTAMAでは手つかずであったブラックホールのリングダウン重力波イベントの探索を中心に研究を開始した。これらの環境として、計算用のPC(Linux)クラスターマシンを導入した。1CPUあたりの性能は600800Mflopsであるが、今回MPI並列計算を探索に導入したことにより、効率的に16倍の性能で予想波形とデータの相関計算をおこなえるようになった。またイベント探索と平行して、探索用のソフトウエアを整備し、汎用性をもたせて、他の波形の探索に応用できるような形式で開発した。つぎに相関解析については、我々の実験であるTAMAと競合する感度に達して運転を開始した米国のLIGO実験との間で、相関運転・解析を計画し、LIGOグループとのあいだに協定(Memorandom of Understanding)を結んだ。これに従って、相関イベントを探索する共同ワーキンググループができ、本計画研究においては、合成した感度、重力波源の方向決定についての角度分解能についての予想計算をおこなった。全天平均で合成感度は0.77(1台の場合は平均で0.44)、角度分解能は2度程度との結果であった。実際にイベント探索を行う実データは2002年度末の観測のものになる。相関を探す内容は、連星合体からのチャープ重力波イベント、バースト重力波イベントがあげられ、本研究の成果次第ではブラックホールリングダウン重力波イベントを加える。今年度は、TAMA検出器が2回の観測をおこなった。(うち一つは昨年度末からのもの。)これらは相関解析の協定を結ぶ米国LIGO計画の観測と同期して行われた。これらのデータを使用するために、クラスタ計算機のRAIDディスク容量を3TB増設した。イベント探索解析については、昨年度に着手したブラックホール準固有振動からのリングダウン重力波の探索について、多くの進捗が得られた。最も重要なのはマッチドフィルター解析において、最適なテンプレート群を用いるためのデザインと、実際の計算における最小マッチ率の確認である。これはシミュレーション等を用いて、TAMA実機データで確認しされた。リングダウン波形についてのこのようなテストは、まだよく考察されていない内容であり、世界に先駆けてリングダウン探索が成熟しつつある。現在、銀河系内でのイベント(質量の3%が重力波になると仮定)であれば、50%以上の検出効率でとらえることが可能である。次に雑音による疑似イベント棄却の手法(veto解析)をテスト中である。ここではフィルター出力の非対称性や指数関数的な減衰の性質をもちいた棄却方法、マッチしたテンプレート数の不自然さをもちいたveto判定を試みている。vetoの方法は、最終的に観測上限値を得るために、十分に雑音起因の偽イベントを棄却する必要がある。相関解析については、TAMA-LIGO間で、バースト重力波、連星合体のインスパイラル波形、γ線バースト(GRBO30329)との相関解析が進行中である。今年度は、特にブラックホール準固有振動からのリングダウン重力波探索について進展があった。我々はマッチドフィルタ解析をこの重力波波形にも応用してきたが、これによる検出において、もし実際の重力波であればどの程度でブラックホールの物理量を推定できるのかの評価が見積もられた。それによれば平均的な銀河イベントについては、ブラックホールの質量を210%程度で、Kerrパラメーターについては4060%程度で推定できることがわかった。特に質量分解能については、将来的にブラックホールの物理について知見を得られる可能性が大きい。また一方ではTAMA-LIGOの同時イベント解析も進んだ。TAMA計画の他研究者およびLIGO側研究者の協力を得て、バースト重力波についてはTAMA DT8-LIGO S2のデータ解析が終わり、連星合体重力波については10%のテストデータでの各種パラメーターの分布や閾値設定が終わった。バーストについてはLIGO単体での観測上限値を改善し、連星合体については検出器を組み合わせたことにより銀河イベントに対する検出効率が20%近く改善された。これらとはべつに、将来計画LCGT干渉計での同時解析のシミュレーションも開始した。
KAKENHI-PROJECT-14047201
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干渉計のデータ処理とイベント選別・相関解析
LCGTでは2台が同一サイトに建設予定であるので、雑音自体が2台の間でクロストークして真のイベントの検出性能を悪化させることが懸念である。シミュレーションの結果、定常的な雑音が30%程度クロストークしても、連星合体やブラックホールリングダウン解析では偽イベントの増加は10倍程度に収まることが確かめられた。H17年度は、米国LIGOグループとの国際共同研究の最終結果がまとまり、成果を論文および国際会議での発表に至った。このことは本計画研究のもっとも大きな目的である「重力波イベントの相関解析による探索」が一応の成功を納めたことになる。連星合体からのインスパイラル重力波探索については、TAMA DT8およびLIGO S2観測の同時観測データから、我々の銀河系について1年あたり49イベント以下(信頼度90%)という上限値を得た。またバースト重力波については、h_<rss>>2x10^<-19>についておよそ0.2以下[トリガー/日](信頼度90%)の結果を得、これはLIGO S2単体での結果を更新し、TAMA実験との同時性を要求した解析による改善を示した。本計画研究で世界に先駆けて行ってきたブラックホール準固有振動からのリングダウン重力波の探索については、TAMA DT6,7,8,9についての探索が行われ、我々の銀河系内での20太陽質量以下のイベントについて、3.4x10^<-2>[Hz]という上限値を得た。これらの上限値は、天文学的には他の観測や予測に比して、まだ十分なインパクトをもつものではないが、重力波研究において国際協力あるいは先鞭をつけた手法によって、実データの解析から上限を得られたことは大きな価値をもつ。
KAKENHI-PROJECT-14047201
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細胞極性制御因子aPKCによる毛包幹細胞の休眠制御機構
表皮には細胞極性に関わる2種類のaPKC (atypical protein kinase C)分子種(aPKCζ, aPKCλ)が発現している。本研究で私たちは、創傷治癒と創傷後毛包新生という、皮膚恒常性の維持に関わる重要な過程に、これらのaPKC分子種がどのように関与しているのかを調べた。表皮特異的aPKCλ欠損マウスでは創傷治癒が遅延し、Wnt経路の活性化を伴う創傷後毛包新生が亢進したが、aPKCζ欠損マウスではこのような現象は観察されなかった。本研究により、aPKCλが創傷治癒と創傷後毛包新生を繋ぐ重要な分子であることが初めて明らかになった。私たちは、これまでに細胞極性制御因子であるaPKCλ(atypical protein kinase C lamda)を表皮細胞特異的に欠損させた変異マウスを解析し、aPKCλが毛包幹細胞の休眠状態を制御することによって、皮膚恒常性の維持に関わっていることを明らかにした。本研究では、この成果をさらに発展させ、aPKCによる毛包幹細胞の休眠制御、および創傷治癒後毛包新生に関わるシグナル経路を明らかにすることを目的とし、以下の研究計画を進めている。1表皮から全aPKC分子種を欠損させた遺伝子改変マウスの作製:マウス表皮では、aPKCλ、aPKCζの2種のaPKCが発現している。両者の機能上の相補性を完全に除去し、皮膚恒常性維持におけるaPKCの役割を調べるために、aPKCλ・ζダブルノックアウトマウスの作製を目指している。その前段階として、aPKCλ、aPKCζがそれぞれ単独で欠損した遺伝子改変マウスの繁殖を進めた。2毛包幹細胞の休眠シグナル経路に関わる因子の網羅的スクリーニング:進行性の脱毛をきたす表皮特異的aPKCλcKOマウスの表皮とコントロールマウスの表皮で発現が変化する遺伝子をマイクロアレイにより解析した。3創傷治癒後毛包新生におけるaPKCの役割:創傷は、毛包幹細胞を休眠状態から目覚めさせる刺激といえる。マウス背側皮膚に1cmx1cm大以上の傷を作ると、その治癒過程で創傷中央部に、Wnt経路依存的に毛包の新生が観察される。この創傷治癒後毛包新生におけるaPKCの役割を調べるために、コントロールマウス、表皮特異的aPKCλcKOマウス、aPKCζKOマウスマウスで解析を行った。1表皮から全aPKC分子種を欠損させた遺伝子改変マウスの作製:表皮特異的aPKCλcKOマウスとaPKCζKOマウスそれぞれのコロニーは順調に繁殖している。現在、両者を交配し、aPKCλ・ζダブルノックアウトマウス(DKO)の作製を目指している。2毛包幹細胞の休眠シグナル経路に関わる因子の網羅的スクリーニング:生後23日目の休止期のコントロールマウス、および表皮特異的aPKCλcKOマウスの背側皮膚を採取し、RNAを抽出後cDNAを合成した。合成したcDNAをCy3, Cy5で蛍光ラベルし、マイクロアレイ解析を行い、cKOマウスで発現が2倍以上増減している遺伝子を網羅的に探索した。そのデータを基にパスウェイ解析を行った結果、2倍以上増減する遺伝子は、Focal Adhesion-PI3K- Akt-mTOR経路、Chemokine経路、Cell cycle経路、Hedgehog経路、Toll-like receptor経路、Delta-Notch経路、Wnt経路、MAPK経路、TGFβ経路などを構成する要素であることが判明した。これまで毛包形成に関わることが報告されているHedgehog経路やWnt経路、表皮の極性形成に関与しているDelta-Notch系経路の構成成分が検出されたことは、この解析の正しさを示している。現在、増減を示した遺伝子の発現をreal-time PCRで検証している。3創傷治癒後毛包新生におけるaPKCの役割:コントロールマウス、表皮特異的aPKCλcKOマウスについては目安としていた20匹の解析が終了した。aPKCζノックアウトマウスについては5匹の解析が終了した。私たちは、これまでに細胞極性制御因子であるaPKCλ(atypical protein kinase C lamda)を表皮細胞特異的に欠損させた変異マウスを解析し、aPKCλが毛包幹細胞の休眠状態を制御することによって、皮膚恒常性の維持に関わっていることを明らかにした。本研究では、この成果をさらに発展させ、表皮に2種類存在するaPKC分子種が制御する毛包幹細胞の休眠制御、創傷治癒、創傷治癒後毛包新生に関わるシグナル経路を明らかにするとともに、両分子種間の機能的差異を解析することを目的に研究を進めている。平成28年度は以下の研究成果を得た。1表皮から全aPKC分子種を欠損させた遺伝子改変マウスの作製:マウス表皮では、aPKCλ、aPKCζの2種のaPKCが発現している。両者の機能上の相補性を完全に除去し、aPKCの皮膚恒常性維持における役割を調べるために、aPKCλ・ζダブルノックアウトマウスを作製して解析した。2毛包幹細胞の休眠シグナル経路に関わる因子の網羅的スクリーニング:進行性の脱毛をきたす表皮特異的aPKCλcKOマウスの表皮とコントロールマウスの表皮で発現が変化する遺伝子をマイクロアレイにより解析した。3創傷治癒後毛包新生におけるaPKCの役割:創傷は毛包幹細胞を休眠状態から目覚めさせる刺激と言える。
KAKENHI-PROJECT-15K09755
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K09755
細胞極性制御因子aPKCによる毛包幹細胞の休眠制御機構
マウス背側皮膚に大きな傷(1cm2以上)を作るとその再生過程で、創傷中央部にWnt経路依存的に毛包の新生が観察される。この創傷治癒後毛包新生におけるaPKCの役割を調べるために、表皮特異的aPKCλcKOマウスとaPKCζKOマウスマウスで創傷治癒過程、および創傷治癒後毛包新生の解析を行った。1表皮から全aPKC分子種を欠損させた遺伝子改変マウスの作製:表皮特異的aPKCλcKOマウスとaPKCζKOマウスを交配し、aPKCλ・ζダブルノックアウトマウス(DKO)を作製した。生まれてきた仔マウスの中に、遺伝子型がDKOマウスを示すものがなかったため詳しく解析したところ、DKOマウスは普通に生まれてくるものの、生後すぐに死亡することがわかった。2毛包幹細胞の休眠シグナル経路に関わる因子の網羅的スクリーニング:生後23日目の休止期のコントロールマウス、および表皮特異的aPKCλcKOマウスの背側皮膚を採取してマイクロアレイ解析を行い、cKOマウスで発現が2倍以上増減している遺伝子を網羅的に探索した。そのデータを基にパスウェイ解析を行った結果、2倍以上増減する遺伝子の中に、これまで毛包形成に関わることが報告されているHedgehog経路やWnt経路、表皮の極性形成に関与しているDelta-Notch系経路の構成成分が検出された。このことは、行った解析の正しさを意味している。増減を示した遺伝子の発現をreal-time PCRで検証した。3創傷治癒後毛包新生におけるaPKCの役割:表皮特異的aPKCλcKOマウスについては目安としていた20匹の解析が終了した。その結果、表皮特異的aPKCλcKOマウスでは、コントロールマウスに比べ創傷治癒が遅延する一方、創傷治癒後毛包新生数はむしろ増加していることがわかった。aPKCζKOマウスについても20匹の解析が終了した。aPKCλの場合と異なり、aPKCζでは創傷治癒、および創傷治癒後毛包新生数にコントロールとの差は見られなかった。以上の結果から、マウスにおいてはaPKCλが主に創傷治癒、および創傷治癒後毛包新生に関与し、aPKC分子種間で機能に差があることが明らかになった。私たちは、これまでに細胞極性制御因子であるaPKCλ(atypical protein kinase C lamda)を表皮細胞特異的に欠損させた変異マウスを解析し、aPKCλが毛包幹細胞の休眠状態を制御することによって、皮膚恒常性の維持に関わっていることを明らかにした。本研究では、この成果をさらに発展させ、表皮に2種類存在するaPKC分子種(aPKCζ, aPKCλ)が、毛包幹細胞の休眠制御、創傷治癒、創傷治癒後毛包新生にどのように関与するのかを明らかにするとともに、両分子種間の機能的差異を解析することを目的に研究を進めた。平成29年度は以下の研究成果を得た。1表皮特異的aPKCλ欠損マウスでは、創傷治癒過程がコントロールに比べ著しく遅延したのに対し、aPKCζ欠損マウスでは創傷治癒の遅延は見られなかった。2表皮特異的aPKCλ欠損マウスおける創傷治癒の遅延は、細胞増殖の異常ではなく、創傷部への表皮細胞の移動の異常であることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-15K09755
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妊娠糖尿病妊婦の妊娠から産後1年までの継続支援プログラムの構築
妊婦は正常耐糖能の妊婦に比べ、高い非妊時体格、低い自己効力感、高い炭水化物エネルギー比率、少ない食物繊維摂取量などバランスの悪い食事を摂取している傾向にあった。分娩時は回旋異常から吸引分娩、鉗子分娩、緊急帝王切開に至る傾向にあり、LGA児の発症率が高く、高ビリルビン血症の出現率が高かった。また、2割の女性が産後に境界型または2型糖尿病と診断された。GDMと診断された妊婦に対して、妊娠期から産後まで継続的にフォローアップする必要性が示唆された。妊婦は正常耐糖能の妊婦に比べ、高い非妊時体格、低い自己効力感、高い炭水化物エネルギー比率、少ない食物繊維摂取量などバランスの悪い食事を摂取している傾向にあった。分娩時は回旋異常から吸引分娩、鉗子分娩、緊急帝王切開に至る傾向にあり、LGA児の発症率が高く、高ビリルビン血症の出現率が高かった。また、2割の女性が産後に境界型または2型糖尿病と診断された。GDMと診断された妊婦に対して、妊娠期から産後まで継続的にフォローアップする必要性が示唆された。妊娠糖尿病は母子ともに周産期異常の発症を高めるばかりでなく、将来、2型糖尿病に移行するリスクをも高める。しかし、妊娠から産後まで継続した支援により、その発症率は最小限に抑えられる。本研究の目的は、2010年の妊娠糖尿病(gestational diabetes mellitus;GDM)の診断基準の改定に伴い、GDMの発症率が今後約4倍(10%)に増加すると推測されているGDMと診断された妊婦に対し、妊娠から産後までの継続支援プログラムを構築することである。調査は下記の2段階で実施する。第1段階として、妊娠中期(2026週)に実施する75gブトウ糖負荷試験でGDMと診断された妊婦と、非GDM妊婦をリクルートし、診断時点での栄養摂取状況からGDMの発生要因を明らかにする。第2段階として、GDM妊婦に対し、バランス栄養指導または低糖質食事指導の介入を行い、妊娠から産後1年の期間の血糖コントロールに影響する因子、低糖質食事療法が血糖コントロールに及ぼす効果を明らかにする。加えて、産後3か月時点で再度75gブトウ糖負荷試験を実施し、血糖コントロール状況を調査する。H24年度は、GDM妊婦、非GDM妊婦をリクルートし、妊娠経過を調査中である。H26年度は1前年度までにリクルートした59名のGDM妊婦と正常耐糖能妊婦119名のデータより、GDMと診断される妊婦の特徴、周産期異常の発症率を分析、2GDM妊婦59名を産後1年までフォローアップしたデータより、産後の耐糖能異常の発症率を分析した。結果1GDMと診断される妊婦の特徴と周産期異常の発症について:非妊時体格、セルフエフィカシー尺度を用いた自己効力感、診断時の簡易型自記式食事歴質問票による栄養摂取状況から評価した。その結果、GDMと診断される妊婦は正常耐糖能妊婦に比べ、非妊時BMI25kg/m2以上の割合が有意に高かった(p<0.05)。セルフエフィカシー総得点に差は見られなかったが、「自己管理・遂行能力」が高いと評価される11点以上の割合が正常耐糖能妊婦に比べて有意に低かった(p<0.05)。炭水化物エネルギー比率60%以上を占める割合が正常耐糖能の妊婦に比べて有意に高く(p<0.05)、1日の食物繊維摂取量が有意に低かった(p<0.05)。GDM妊婦の周産期異常の発症率は、分娩時に回旋異常となりやすく(p<0.05)、吸引分娩、鉗子分娩、緊急帝王切開に至るケースが多い傾向にあった。LGA児の発症率は有意に高く(p<0.05)、高ビリルビン血症の出現率が有意に高かった(p<0.05)。2産後の耐糖能異常の発症率について:GDM妊婦53名のうち産後12週時に75g糖負荷試験を受検した44名(83.0%)を分析した所、7名(15.3%)が境界型2型糖尿病、2名(4.5%)が2型糖尿病と診断された。産後の糖代謝異常の発症率は非妊時BMI≧25.0kg/m2以上の女性に有意に高く(p<0.05)、GDMのポイント数には関連が見られなかった。産後12ヶ月までフォローアップが終了している産婦は26名。2015年6月末までには約10名がフォローアップ終了予定である。データ終了を待ち、今後は妊娠から産後12ヶ月までの血糖値の変動をGDMポイント別、5大栄養素摂取量別に評価し、継続支援プログラムを構築する予定である。26年度が最終年度であるため、記入しない。助産学26年度が最終年度であるため、記入しない。協力施設での妊婦健診者が減少していることから、妊娠糖尿病と診断される妊婦の数も減少している。加えて妊娠中期から産後1年まで追跡することから、研究参加者の確保がやや困難となっている。現時点でのリクルート数は予定の約5割であるため、計画に遅延が生じている。GDM妊婦のリクルートがH25年度まで要したため、介入終了時期に遅れが生じた。26年度が最終年度であるため、記入しない。協力施設を1施設増やし、GDM妊婦のリクルート確保に努める。
KAKENHI-PROJECT-24390496
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24390496
妊娠糖尿病妊婦の妊娠から産後1年までの継続支援プログラムの構築
妊娠中期、末期、産後1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月の血糖検査より、血糖値の推移、血糖コントロール状況を評価する。GDM妊婦および非GDM妊婦の診断時点での栄養調査から、GDM発生要因を評価する。GDM妊婦にバランス栄養指導または低糖質食事指導の介入を行い、血糖コントロール状況を評価する。リクルートしたGDM妊婦を産後1年までフォローアップする予定である。最終年度は低糖質食事療法の効果を妊娠中の血糖コントロールの推移、周産期異常の発症などから包括的に評価する予定である。また、第一段階、第二段階の介入研究の結果を基に、血糖コントロールを良好に保つための栄養・体重管理を含めた生活指導に関する継続支援プログラムを構築し、臨床で活用可能なツールを作成する予定である。26年度が最終年度であるため、記入しない。初年度からの妊娠糖尿病妊婦のリクルート期間が予定以上に延長したため、栄養調査実施時期および血液検査の時期も延長した。リクルートしたGDM妊婦を産後1年まで継続的に調査することから、今年度にリクルートしたGDM妊婦の産後1年間の栄養調査の分析費用、血液検査費用に使用する。
KAKENHI-PROJECT-24390496
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24390496
発生期腎臓におけるS字体形成の3Dロジック解明
腎臓の機能単位すなわちネフロンは胎生期の後腎間葉から形成される。間葉から上皮への転換によって球状の腎胞が形成され、これがC字体、さらにはS字体に変形し、最終的にネフロン(糸球体や尿細管)に分化する。C字体からS字体に変化する際にはそれまでと反対側の膜が収縮する必要があると考えられるが、何がこれを制御するのか、どんな力学的機構が働いているかは一切不明である。よって本計画は、マウスの腎臓形成におけるS字体の形成過程を可視化し、その物理的な変化を理論で説明することによって、細胞集団の交互の湾曲による3D形態形成のロジックを解明することを目的とした。S字体形成時の細胞表面(細胞膜)を蛍光標識できるマウスをCre-loxPシステムによって作成し、胎生12.5日の腎臓をフィルター上で数日間器官培養した。その過程を共焦点顕微鏡でタイムラプス解析を行ったが、解像度の高い画像は得られなかった。そこで、様々な発生段階のS字体が混在する胎生15.5日の腎臓の静止画に絞って解析を行った。具体的には、上記遺伝子改変マウスの胎生15.5日の腎臓を、さらに核や管腔面を共染色した。それを透明化した後、画像処理ソフトウェアImarisで処理することによって高解像度静止画像を得た。これをもとに本領域数理班と議論した結果、S字体の下部はこれまで考えられてきたような屈曲した細い管ではなく、船の底のように扁平で丸みをもった構造であることを見出した。管腔の体積を一定と仮定したシミュレーションなど多くの提言を受けており、S字体形成に働く力学的原理を引き続き検討したい。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。腎臓の機能単位すなわちネフロンは胎生期の後腎間葉から形成される。間葉から上皮への転換によって球状の腎胞が形成され、これがC字体、さらにはS字体に変形し、最終的にネフロン(糸球体や尿細管)に分化する。C字体からS字体に変化する際にはそれまでと反対側の膜が収縮する必要があると考えられるが、何がこれを制御するのか、どんな力学的機構が働いているかは一切不明である。よって本計画は、マウスの腎臓形成におけるS字体の形成過程を可視化し、その物理的な変化を理論で説明することによって、細胞集団の交互の湾曲による3D形態形成のロジックを解明することを目的とした。S字体形成時の細胞表面(細胞膜)を蛍光標識できるマウスをCre-loxPシステムによって作成し、胎生12.5日の腎臓をフィルター上で数日間器官培養した。その過程を共焦点顕微鏡でタイムラプス解析を行ったが、解像度の高い画像は得られなかった。原因としては、蛍光が弱い上にフィルター越しの観察になること、タイムラプス蛍光顕微鏡の解像度が不十分なこと、器官培養すると生体内と比較してS字体の形成が悪いことなどが考えられた。そこで、様々な発生段階のS字体が混在する胎生15.5日の腎臓の静止像に焦点を絞って、高解像度3次元データを取得することとした。そのためにはwhole mount染色法とそれに続く透明化法、そして画像を処理するソフトウェアImarisの習得が必要となった。S字体の細胞膜を可視化できる遺伝子改変マウスの妊娠率が想定以上に悪く、さらにタイムラプス共焦点顕微鏡の作動が安定しなかったため。腎臓の機能単位すなわちネフロンは胎生期の後腎間葉から形成される。間葉から上皮への転換によって球状の腎胞が形成され、これがC字体、さらにはS字体に変形し、最終的にネフロン(糸球体や尿細管)に分化する。C字体からS字体に変化する際にはそれまでと反対側の膜が収縮する必要があると考えられるが、何がこれを制御するのか、どんな力学的機構が働いているかは一切不明である。よって本計画は、マウスの腎臓形成におけるS字体の形成過程を可視化し、その物理的な変化を理論で説明することによって、細胞集団の交互の湾曲による3D形態形成のロジックを解明することを目的とした。S字体形成時の細胞表面(細胞膜)を蛍光標識できるマウスをCre-loxPシステムによって作成し、胎生12.5日の腎臓をフィルター上で数日間器官培養した。その過程を共焦点顕微鏡でタイムラプス解析を行ったが、解像度の高い画像は得られなかった。そこで、様々な発生段階のS字体が混在する胎生15.5日の腎臓の静止画に絞って解析を行った。具体的には、上記遺伝子改変マウスの胎生15.5日の腎臓を、さらに核や管腔面を共染色した。それを透明化した後、画像処理ソフトウェアImarisで処理することによって高解像度静止画像を得た。これをもとに本領域数理班と議論した結果、S字体の下部はこれまで考えられてきたような屈曲した細い管ではなく、船の底のように扁平で丸みをもった構造であることを見出した。管腔の体積を一定と仮定したシミュレーションなど多くの提言を受けており、S字体形成に働く力学的原理を引き続き検討したい。様々な発生段階のS字体が混在する胎生15.5日の腎臓をwhole mount染色し、透明化して高解像度3次元データを取得する。それをImarisで画像処理した後、理論班と共同で解析することにより、3次元的構造の理解を目指す。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-16H01448
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-16H01448
ケモカインCXCL12の細胞動態制御、血管研成における作用機構に関する研究
骨髄の微小環境は血液系腫瘍、骨転移腫瘍など、がんの病態形成においても重要である。骨髄の主要血球成分のひとつであるBリンパ球において、最も初期の前駆細胞(プレプロB細胞)、最終分化した形質細胞は、ケモカインCXCL12を必要とする。骨髄のCXCL12発現細胞とIL-7発現細胞を可視化すると、CXCL12発現細胞は、ストローマ細胞の一部であり、IL-7発現細胞と異なる細胞で、両者は一定の間隔をあけて分布していた。プレプロB細胞は、CXCL12発現細胞の細胞体に結合、さらに、プレプロB細胞の次の発生段階でありIL-7を必要とするプロB細胞は、CXCL12発現細胞を離れ、IL-7発現細胞に結合していた。骨髄で産生されたBリンパ球は、脾臓に至り、抗原刺激後、形質細胞に分化し骨髄に帰るが、形質細胞の大部分は、CXCL12発現細胞に結合していた。以上より、骨髄において、CXCL12発現細胞、IL-7発現細胞は、Bリンパ球の分化段階特異的なニッチ(特定の機能を担う特定の微小環境)として機能する細胞であること、血球の分化に伴う局在とニッチ間の移動がはじめて明らかになり、その局在と維持をCXCL12が正に制御することが示唆された。これらの知見は、CXCL12発現細胞が、形質細胞由来の多発性骨髄腫細胞を含む血液系腫瘍細胞のニッチである可能性を提示する他、CXCL12の白血病の病態形成、がんの骨転移における役割が報告されていることから、腫瘍細胞とニッチを含む骨髄の微小環境との相互作用の理解においてきわめて重要であると考えられる。一方、胎生期の腸を栄養する血管の形成においては、臓器特異的な血管形成機構が存在し、CXCL12は、隣接する大型の動脈と原始血管叢を結合させることにより、血管形成を支持することが示唆された。骨髄の微小環境は血液系腫瘍、骨転移腫瘍など、がんの病態形成においても重要である。骨髄の主要血球成分のひとつであるBリンパ球において、最も初期の前駆細胞(プレプロB細胞)、最終分化した形質細胞は、ケモカインCXCL12を必要とする。骨髄のCXCL12発現細胞とIL-7発現細胞を可視化すると、CXCL12発現細胞は、ストローマ細胞の一部であり、IL-7発現細胞と異なる細胞で、両者は一定の間隔をあけて分布していた。プレプロB細胞は、CXCL12発現細胞の細胞体に結合、さらに、プレプロB細胞の次の発生段階でありIL-7を必要とするプロB細胞は、CXCL12発現細胞を離れ、IL-7発現細胞に結合していた。骨髄で産生されたBリンパ球は、脾臓に至り、抗原刺激後、形質細胞に分化し骨髄に帰るが、形質細胞の大部分は、CXCL12発現細胞に結合していた。以上より、骨髄において、CXCL12発現細胞、IL-7発現細胞は、Bリンパ球の分化段階特異的なニッチ(特定の機能を担う特定の微小環境)として機能する細胞であること、血球の分化に伴う局在とニッチ間の移動がはじめて明らかになり、その局在と維持をCXCL12が正に制御することが示唆された。これらの知見は、CXCL12発現細胞が、形質細胞由来の多発性骨髄腫細胞を含む血液系腫瘍細胞のニッチである可能性を提示する他、CXCL12の白血病の病態形成、がんの骨転移における役割が報告されていることから、腫瘍細胞とニッチを含む骨髄の微小環境との相互作用の理解においてきわめて重要であると考えられる。一方、胎生期の腸を栄養する血管の形成においては、臓器特異的な血管形成機構が存在し、CXCL12は、隣接する大型の動脈と原始血管叢を結合させることにより、血管形成を支持することが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-16022235
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16022235
活性酸素DNA損傷修復酵素欠損の分子病態
酵母mutT funactional homologをクローニングするために、mutT欠損大腸菌のミューテーター活性を相補する酵母遺伝子をgenomic libraryから検索した。その結果1つのクローンが得られ、塩基配列を求めたところ、脱ユビキチンに関わる遺伝子であることが明らかとなった。この遺伝子のアミノ酸配列中には非常に弱いながらmutT-box様の配列が認められた。MutT欠損大腸菌は、mutT^+株に比べて約100倍高い自然突然変異となるが、酵母の遺伝子を持つmutT欠損株では約10倍となり、1/10に低下した。この遺伝子を破壊した酵母株は野生株に比べて2.56倍高い変異率となった。突然変異体の塩基配列変化を求めたところ、A:T→C:G transversionのみが有意に増加していた(P<0.05)。A:T→C:G transversion変異は大腸菌mutT欠損に特徴的な塩基置換突然変異である。以上の結果は、この遺伝子が、mutT-functional homologであることを強く示唆している。一方、遺伝子破壊株で観察される突然変異の増加は、大腸菌mutT欠損株で観察されるほどには高くはならなかった。このことは、今回クローニングした遺伝子以外にもmutTを相補する遺伝子があるのかもしれない。大腸菌のmutT欠損を相補するものとしてクローニングしてきた経緯から、脱ユビキチンの作用は今回の観察には関わらないと考えられる。酵母mutT funactional homologをクローニングするために、mutT欠損大腸菌のミューテーター活性を相補する酵母遺伝子をgenomic libraryから検索した。その結果1つのクローンが得られ、塩基配列を求めたところ、脱ユビキチンに関わる遺伝子であることが明らかとなった。この遺伝子のアミノ酸配列中には非常に弱いながらmutT-box様の配列が認められた。MutT欠損大腸菌は、mutT^+株に比べて約100倍高い自然突然変異となるが、酵母の遺伝子を持つmutT欠損株では約10倍となり、1/10に低下した。この遺伝子を破壊した酵母株は野生株に比べて2.56倍高い変異率となった。突然変異体の塩基配列変化を求めたところ、A:T→C:G transversionのみが有意に増加していた(P<0.05)。A:T→C:G transversion変異は大腸菌mutT欠損に特徴的な塩基置換突然変異である。以上の結果は、この遺伝子が、mutT-functional homologであることを強く示唆している。一方、遺伝子破壊株で観察される突然変異の増加は、大腸菌mutT欠損株で観察されるほどには高くはならなかった。このことは、今回クローニングした遺伝子以外にもmutTを相補する遺伝子があるのかもしれない。大腸菌のmutT欠損を相補するものとしてクローニングしてきた経緯から、脱ユビキチンの作用は今回の観察には関わらないと考えられる。
KAKENHI-PROJECT-12213013
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12213013
迅速な肺炎・敗血症診断を可能にする細菌ゲノム抽出・増幅・同定システムの構築
肺炎・敗血症は、誰もが罹患する可能性があり、本邦での死因の上位を占めている。敗血症は、臓器障害を呈する重症な状態で、死亡率は約10-50%と高く、迅速な診断と適切な治療が必要である。臨床では、症状や所見から総合的に診断され、感染源から想定される微生物を考慮した経験的抗菌薬の治療が開始される。その後、培養検査結果を参考に、抗菌薬が選別され治療が確立する。しかし、各種培養から微生物が検出されないことも多く経験する。培養されにくい微生物、検体採取前の抗菌薬投与、検体採取のタイミングなど、様々な原因が考えられる。そこで近年報告されつつある、次世代DNAシークエンサー(NGS)を用いた原因微生物の同定法に注目して、実際の臨床診断や治療経過を考慮した上で、同定方法として有効であるのかを検証した。今回、2017年4月以降に、臨床的に敗血症と診断した症例を対象とした。研究の同意を得られた場合に検体を採取して、連携体制にある各研究室で、検体の匿名化と処理(DNA抽出、細菌由来DNA(16S rRNA領域)のPCR増幅)、NGS(Ion PGM)による塩基配列データとGSTK解析(メタゲノム解析ソフト)を行い、原因微生物の同定を試みた。敗血症患者126名中で同意が得られたのは10名であり、NGSにより原因微生物を同定したのは、尿路感染症の3例で、残りの検体は現在解析中である。解析した3例では、尿培養と尿NGS解析の主要な同定微生物がEscherichia coliで全て一致した。また、NGS解析では、培養検査より多くの微生物が検出され、複合感染の可能性も示唆された。一方では、真の原因微生物を特定するには、検出された各々の微生物の占拠率や病原菌の統計学的頻度を参考に判断する必要がある。さらに、検体解析数を増やしていき、敗血症におけるゲノム解析による原因微生物の同定法の有効性を検証する必要がある。肺炎・敗血症は、季節や流行状況により症例数が変動する。また、敗血症は感染症で最も重症であり生死にかかわる状態のため、患者様だけでなく家族様からも研究の同意を得るのは困難なことが多い。さらに、初期抗菌薬投与後や検体採取のタイミング次第では、原因微生物が検出されづらいため、検体採取のタイミングも限定されてしまい、症例数が不足している。また、検体採取や処理の段階での常在菌の混入が問題となり、研究解析が一時中断していた。丁寧かつ平易な説明による研究同意の取得、原因微生物を特定するのに質の高い検体の採取、採取時や検体処理時の常在菌の混入防止の強化など、を推進していく。また、敗血症のゲノム解析による原因微生物の同定方法を確立するのに、培養検査結果やゲノム解析結果の微生物占拠率に加えて、病原菌の統計学的頻度、臨床診断や臨床経過も考慮した上で、臨床に活用できる真の原因微生物の同定方法を検証する。また、従来の培養検査結果とゲノム解析結果が異なる場合に、どのように判断するかを適切に解釈する。さらに、近い将来に、臨床現場で一般的な検査として使用されるには、検査の簡便性や迅速性や費用対効果も追及する必要がある。肺炎・敗血症は、誰もが罹患する可能性があり、本邦での死因の上位を占めている。敗血症は、臓器障害を呈する重症な状態で、死亡率は約10-50%と高く、迅速な診断と適切な治療が必要である。臨床では、症状や所見から総合的に診断され、感染源から想定される微生物を考慮した経験的抗菌薬の治療が開始される。その後、培養検査結果を参考に、抗菌薬が選別され治療が確立する。しかし、各種培養から微生物が検出されないことも多く経験する。培養されにくい微生物、検体採取前の抗菌薬投与、検体採取のタイミングなど、様々な原因が考えられる。そこで近年報告されつつある、次世代DNAシークエンサー(NGS)を用いた原因微生物の同定法に注目して、実際の臨床診断や治療経過を考慮した上で、同定方法として有効であるのかを検証した。今回、2017年4月以降に、臨床的に敗血症と診断した症例を対象とした。研究の同意を得られた場合に検体を採取して、連携体制にある各研究室で、検体の匿名化と処理(DNA抽出、細菌由来DNA(16S rRNA領域)のPCR増幅)、NGS(Ion PGM)による塩基配列データとGSTK解析(メタゲノム解析ソフト)を行い、原因微生物の同定を試みた。敗血症患者126名中で同意が得られたのは10名であり、NGSにより原因微生物を同定したのは、尿路感染症の3例で、残りの検体は現在解析中である。解析した3例では、尿培養と尿NGS解析の主要な同定微生物がEscherichia coliで全て一致した。また、NGS解析では、培養検査より多くの微生物が検出され、複合感染の可能性も示唆された。一方では、真の原因微生物を特定するには、検出された各々の微生物の占拠率や病原菌の統計学的頻度を参考に判断する必要がある。さらに、検体解析数を増やしていき、敗血症におけるゲノム解析による原因微生物の同定法の有効性を検証する必要がある。肺炎・敗血症は、季節や流行状況により症例数が変動する。
KAKENHI-PROJECT-17K16232
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K16232