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小胞体-ゴルジ装置移行部の細胞化学的研究
活性はG6Paseに代わる小胞体の標識酵素として有用であることが判明した。この酵素活性の分布は腸陰窩の最も未分化な部位では細胞のいずれの部位にも反応産物が認められないが、絨毛の上部に向かうにつれて、まずゴルジ装置に反応産物が現われ、次いで小胞体、形質膜へと分布する領域が広がって観察されたことから、この細胞の成熟と同酵素の分布に明瞭な関連性を得ることが出来た。特に小胞体に分布する同酵素の反応産物は比較的疎な分布を呈するのに対して、ゴルジ装置のそれは比較的密であり、両者を反応産物の形状から充分、識別可能であった。この点から吸収上皮細胞の絨毛基部において小胞体とゴルジ装置の移行部のそれぞれの領域分布を観察すると、小胞体がゴルジ装置へ密着、あるいは侵入している部分が認められ、小胞体成分のゴルジ装置への関与が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-05670009
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05670009
ワイドギャップ半導体ヘテロ接合における電荷移送ドーピング法の開発
本萌芽研究の目的は、ダイヤモンド半導体内に室温において十分なキャリアを発生させる手法として、窒化物半導体/ダイヤモンド・ヘテロ接合を提案し、十分なキャリア濃度制御性の可能性を実験的に探索することが目標である。最終年度は昨年度の結果を踏まえて、以下のことがわかった。(1)ダイヤモンド(100)および(111)単結晶基板上に有機金属化合物気相成長(MOVPE)法を用いて,AlN薄膜のエピタキシャル成長を行い、急峻なダイヤモンド/AlN界面を持つエピタキシャル薄膜を得ることに成功した。(2)X線回折法および電子顕微鏡観察による微細構造解析から、エピタキシャル方位関係およびAlN薄膜の結晶学的構造を以下の通り決定した。(3)(100)面上では成長初期に不均一方位の結晶粒が形成され、成長とともに(0001)AlN結晶粒が優先的に成長し、最終的に等価な方位関係を持つ<10<1>^^-0>AlNまたは<11<2>^^-0>AlN//[110]diamondなる二つのドメイン構造となることがわかった。(4)(111)面上では成長初期に等価な2つの(0001)AlN結晶粒(<11<2>^^-0>AlN,<10<1>^^-0>AlN||(111)[1<1>^^-0]diamond)が形成され、最終的には(0001)<11<2>^^-0>AlN結晶方位関係からなる単結晶AlN薄膜が形成されることがわかった。(5)以上ダイヤモンド/AlN界面でのキャリア輸送には、ダイヤモンド(111)面上に成長させたAlNが最適であることが判明した。本萌芽研究の目的は,ダイヤモンド半導体内に室温において十分なキャリアを発生させる手法として,窒化物半導体/ダイヤモンド・ヘテロ接合を提案し,十分なキャリア濃度制御性の可能性を実験的に探索することにある.本研究は,この着想点を実験的に確認することが大きな目標である同時に,ワイドギャップ半導体ヘテロ接合の新たな分野を開拓する可能性を秘めている.本年度は第1ステップとして,ダイヤモンド(100)単結晶基板上に有機金属化合物気相成長(MOVPE)法を用いて,AIN薄膜のエピタキシャル成長を試みた。その結果以下のことがわかった。(1)水素キャリアガス,トリメチルアルミニウム(TMA)およびアンモニアを用いるMOVPE法において総流量を51/min以上および基板温度1150°Cにすることによって,ダイヤモンド(100)基板上にAINのクラックフリーの連続膜を成長させることに成功した。(2)成長直前にTMAを流すとダイヤモンド/AIN界面の密着力が弱く,剥離することが判明した。これを防ぐためには,昇温状態でアンモニアを流すことによってダイヤモンド表面を窒化することが必要であることがわかった。(3)X線回折法により,ダイヤモンド(100)基板上にAIN(0001)面が配向したエピタキシャル膜であることがわかった。(4)原料ガスとしてCp_2Mgを用いてp型ドーパントのMgを添加したAIN膜を成長させ,同様に鏡面表面を持つC軸が配向したエピタキシャル膜を得ることに成功した。本萌芽研究の目的は、ダイヤモンド半導体内に室温において十分なキャリアを発生させる手法として、窒化物半導体/ダイヤモンド・ヘテロ接合を提案し、十分なキャリア濃度制御性の可能性を実験的に探索することが目標である。最終年度は昨年度の結果を踏まえて、以下のことがわかった。(1)ダイヤモンド(100)および(111)単結晶基板上に有機金属化合物気相成長(MOVPE)法を用いて,AlN薄膜のエピタキシャル成長を行い、急峻なダイヤモンド/AlN界面を持つエピタキシャル薄膜を得ることに成功した。(2)X線回折法および電子顕微鏡観察による微細構造解析から、エピタキシャル方位関係およびAlN薄膜の結晶学的構造を以下の通り決定した。(3)(100)面上では成長初期に不均一方位の結晶粒が形成され、成長とともに(0001)AlN結晶粒が優先的に成長し、最終的に等価な方位関係を持つ<10<1>^^-0>AlNまたは<11<2>^^-0>AlN//[110]diamondなる二つのドメイン構造となることがわかった。(4)(111)面上では成長初期に等価な2つの(0001)AlN結晶粒(<11<2>^^-0>AlN,<10<1>^^-0>AlN||(111)[1<1>^^-0]diamond)が形成され、最終的には(0001)<11<2>^^-0>AlN結晶方位関係からなる単結晶AlN薄膜が形成されることがわかった。(5)以上ダイヤモンド/AlN界面でのキャリア輸送には、ダイヤモンド(111)面上に成長させたAlNが最適であることが判明した。
KAKENHI-PROJECT-19656183
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19656183
肺癌オルガノイドライブラリーを用いた新規治療標的の同定
本研究では肺癌患者検体からオルガノイドライブラリーを作成する。ライブラリーに対して全遺伝子を個別にノックアウトできるシステムであるCRISPR/Cas9スクリーニングを施行する。同じ遺伝子学的バックグラウンドを持つ非癌部肺からもオルガノイドを作成し対照として使用できることから、癌部に特異的な新規治療標的を同定し、副作用が少ない治療開発につなげることができる。また、オルガノイドはその樹立にかかる期間が短いことが知られていることから、得られた有用薬剤などの情報を患者生存中に還元することも可能になると考えられる。本研究では肺癌患者検体からオルガノイドライブラリーを作成する。ライブラリーに対して全遺伝子を個別にノックアウトできるシステムであるCRISPR/Cas9スクリーニングを施行する。同じ遺伝子学的バックグラウンドを持つ非癌部肺からもオルガノイドを作成し対照として使用できることから、癌部に特異的な新規治療標的を同定し、副作用が少ない治療開発につなげることができる。また、オルガノイドはその樹立にかかる期間が短いことが知られていることから、得られた有用薬剤などの情報を患者生存中に還元することも可能になると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-19K08610
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K08610
新しい血小板由来成長因子受容体の機能および発現調節機構の解析
NIH3T3線維芽細胞に対するPDGFーA鎖およびーB鎖のトランスフォ-ミング活性は,後者が著しく高いが,多くのヒト腫瘍細胞においてはPDGFーA鎖の発現が見られ,オ-トクリン型の受容体活性が認められた。ヒトPDGF受容体は2種類(α型およびβ型)存在し,3種類のPDGFアイソフォ-ム(AA,AB,BB)に対する親和性が異なる。新しく見い出されたα型受容体のみA鎖と高親和性を有し,β型と独立して種々の生物学的機能を誘導することができる。α型またはβ型受容体のみを発現させた造血幹細胞に,PDGFーA鎖またはーB鎖を同時に発現させ,ヌ-ドマウスでの腫瘍形成能を検討した。B鎖はいづれの受容体発現細胞においても腫瘍形成がみられたが,A鎖はα型受容体発現細胞においてのみ腫瘍を形成させることができた。しかしα型受容体発現細胞におけるA鎖の腫瘍形成能は,B鎖によるものとは明らかな違いは見られなかった。本年度,上述のごとくPDGF受容体発現造血幹細胞を用い,ヌ-ドマウスでのオ-トクリン型腫瘍形成能を検討したばかりではなく,cーfms/CSFー1受容体とPDGF受容体のキメラ遺伝子により,これらの受容体ファミリ-に特徴的なキナ-ゼ挿入部の機能解析を発表した。また免疫グロブリン様構造をもつα型およびβ型受容体のリガンド結合部のキメラにより,PDGFーAA結合部の同定を行ない発表した。さらに種々の細胞系での,細胞特異的受容体発現調節の存在を明らかにし発表した。今後PDGF受容体を介する形質転換能の解析には,上皮細胞を用いたcDNA発現系が必要と考えられるが,本年度に確立された実験系を用いさらに詳細なキメラ遺伝子による受容体の構造と機能の解析は,ヒト腫瘍細胞におけるPDGF受容体を介する形質転換の機構の解明に有用である。NIH3T3線維芽細胞に対するPDGFーA鎖およびーB鎖のトランスフォ-ミング活性は,後者が著しく高いが,多くのヒト腫瘍細胞においてはPDGFーA鎖の発現が見られ,オ-トクリン型の受容体活性が認められた。ヒトPDGF受容体は2種類(α型およびβ型)存在し,3種類のPDGFアイソフォ-ム(AA,AB,BB)に対する親和性が異なる。新しく見い出されたα型受容体のみA鎖と高親和性を有し,β型と独立して種々の生物学的機能を誘導することができる。α型またはβ型受容体のみを発現させた造血幹細胞に,PDGFーA鎖またはーB鎖を同時に発現させ,ヌ-ドマウスでの腫瘍形成能を検討した。B鎖はいづれの受容体発現細胞においても腫瘍形成がみられたが,A鎖はα型受容体発現細胞においてのみ腫瘍を形成させることができた。しかしα型受容体発現細胞におけるA鎖の腫瘍形成能は,B鎖によるものとは明らかな違いは見られなかった。本年度,上述のごとくPDGF受容体発現造血幹細胞を用い,ヌ-ドマウスでのオ-トクリン型腫瘍形成能を検討したばかりではなく,cーfms/CSFー1受容体とPDGF受容体のキメラ遺伝子により,これらの受容体ファミリ-に特徴的なキナ-ゼ挿入部の機能解析を発表した。また免疫グロブリン様構造をもつα型およびβ型受容体のリガンド結合部のキメラにより,PDGFーAA結合部の同定を行ない発表した。さらに種々の細胞系での,細胞特異的受容体発現調節の存在を明らかにし発表した。今後PDGF受容体を介する形質転換能の解析には,上皮細胞を用いたcDNA発現系が必要と考えられるが,本年度に確立された実験系を用いさらに詳細なキメラ遺伝子による受容体の構造と機能の解析は,ヒト腫瘍細胞におけるPDGF受容体を介する形質転換の機構の解明に有用である。
KAKENHI-PROJECT-02152076
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02152076
イミド複合型超原子価ヨウ素を用いた天然物合成志向型反応の開発
本研究の目的は超原子価ヨウ素を用い、医薬品合成に利用可能な炭素-窒素結合形成反応を開発することである。近年、環境低負荷型社会への転換が求められている中で、有機合成化学の分野においても環境面への配慮が非常に重要な課題の1つとなっている。当分野で重宝されている重金属試薬は、様々な特異的な反応を進行させる非常に有用な試薬であるが、環境や生体への悪影響が懸念されるため、これらに代わる試薬の開発が現在盛んに研究されている。特に、超原子価ヨウ素化合物は、重金属と似たような性質を示すことから、重金属代替試薬としての利用が期待されている。しかし、超原子価ヨウ素の医薬品合成への利用は置換基を酸化する酸化剤としての役割がほとんどであり、新しく結合を形成する反応を利用する例は少ない。そこで私は、医薬品骨格に多く含まれるインドールをターゲットとし、新しい医薬品化合物の合成ルートを開拓できるような窒素官能基を導入する反応を探索した。その結果、独自開発したインドールを含む超原子価ヨウ素を鍵中間体とした3つの反応の開発に成功した。具体的には、超原子価ヨウ素とハロゲン化剤を組み合わせたハロ-アミノ化反応と、カップリング反応によるアミノ化反応である。まず、ハロ-アミノ化反応ではインドールの炭素-水素結合を位置選択的に炭素-窒素結合に変換できるだけでなく、同時にもう1つの炭素-水素結合も位置選択的に炭素-ハロゲン結合に変換することができる。さらに、導入したハロゲン結合の誘導化によって効率的に医薬品の部分骨格を構築できることも見出した。次にカップリング反応では、反応の選択性を超原子価ヨウ素のデザインによってコントロールし、インドールに効率的に窒素官能基を導入することに成功した。本年度は前年度の成果に加え、3つの反応の基質一般性の改善や反応機構の実験的考察、誘導化について大幅な進展が見られた。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。本研究の目的は、医薬品合成に利用できる超原子価ヨウ素を用いた炭素-水素結合を炭素-窒素結合に変換する反応を開発することである。近年、環境低負荷型社会への転換が求められている中で、有機合成化学の分野においても環境面への配慮が非常に重要な課題の1つとなっている。有機化学の分野で重宝されている重金属試薬は、様々な特異的な反応を進行させる非常に有用な試薬であるが、環境や生体への悪影響が懸念されるため、これらに代わる試薬の開発が現在盛んに研究されている。特に、超原子価ヨウ素化合物は、重金属と似たような性質を示すことから、重金属代替試薬としての利用が期待されている。しかし、超原子価ヨウ素の医薬品合成への利用は置換基を酸化する酸化剤としての役割がほとんどであり、新しく結合を形成する反応を利用する例は少ない。そこで私は、医薬品骨格に多く含まれるインドールをターゲットとし、新しい医薬品化合物の合成ルートとなる窒素官能基を導入する反応を探索した。その結果、独自開発したインドールを含む超原子価ヨウ素を中心とした3つの天然物志向型反応の開発に成功した。具体的には、超原子価ヨウ素とハロゲン化剤を組み合わせたハロ-アミノ化反応と、カップリング反応によるアミノ化反応である。いずれの反応もインドールの炭素-水素結合を位置選択的に炭素-窒素結合に変換でき、ハロ-アミノ化反応ではもう1つの炭素-水素結合を炭素-ハロゲン結合に同時に変換することができる。本年度はカップリング反応の最適条件の探索において、反応点周辺の環境を変えることで反応をコントロールできることを発見した。また、ハロ-アミノ化反応では得られた生成物が実際に医薬品合成へと利用できるか確認するために、医薬品によく見られる骨格へと誘導できる変換ルートを開拓した。さらに、反応機構の解明にも着手し、想定していたよりも複雑な機構であることがわかった。インドールのブロモ-アミノ化反応では得られた生成物の医薬品骨格への誘導化、インドールのベンジル位へのハロ-アミノ化反応では反応条件の最適化、基質一般性の確認、反応機構の検証を計画していた。ブロモ-アミノ化反応の誘導化では、2つの誘導化のプロセスを発見した。1つ目はハロゲン-リチウム交換反応を利用した求電子剤との反応である。本反応を用いることでインドール誘導体から僅か2工程で2つの水素原子を窒素原子と炭素やケイ素原子に置き換えることができることが示された。2つ目はα,β不飽和イミンを経由する誘導化である。生成物をα,β不飽和イミンへ誘導し、この化合物からスピロ化合物、6員環を構築できることがわかった。これらの構造は天然物の基本骨格であり、本反応生成物が誘導化によって生理活性物質へ展開できることがわかった。これらの成果はChemical Communication誌に掲載された。ベンジル位へのハロ-アミノ化反応については、最適条件を見出し、その最適条件を基に基質検討を行ったところ、様々な置換基で目的物が得られた。しかし、一部の基質で収率の低下が見られたため、収率改善を目指し、反応機構の検討を行った。検討の結果、申請書提出時の想定とは異なる機構であることが示唆された。想定していた反応機構に加えて別の機構が競合しており、詳細な反応機構の解明に予定より時間がかかってしまった。この2つの過程の詳細と、どちらが主過程なのかなどついてはまだわかっていない点もあるが、今までの知見を活かし、複数の化合物について収率の改善ができた。
KAKENHI-PROJECT-15J04745
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15J04745
イミド複合型超原子価ヨウ素を用いた天然物合成志向型反応の開発
一方で、上記2つの反応に加えて、銅触媒を用いた炭素-窒素カップリング反応によってインドールの3位に窒素官能基を導入することに成功した。さらなる有用性の展開は次年度の予定であったため、これについては予定より早く進行している。本研究の目的は超原子価ヨウ素を用い、医薬品合成に利用可能な炭素-窒素結合形成反応を開発することである。近年、環境低負荷型社会への転換が求められている中で、有機合成化学の分野においても環境面への配慮が非常に重要な課題の1つとなっている。当分野で重宝されている重金属試薬は、様々な特異的な反応を進行させる非常に有用な試薬であるが、環境や生体への悪影響が懸念されるため、これらに代わる試薬の開発が現在盛んに研究されている。特に、超原子価ヨウ素化合物は、重金属と似たような性質を示すことから、重金属代替試薬としての利用が期待されている。しかし、超原子価ヨウ素の医薬品合成への利用は置換基を酸化する酸化剤としての役割がほとんどであり、新しく結合を形成する反応を利用する例は少ない。そこで私は、医薬品骨格に多く含まれるインドールをターゲットとし、新しい医薬品化合物の合成ルートを開拓できるような窒素官能基を導入する反応を探索した。その結果、独自開発したインドールを含む超原子価ヨウ素を鍵中間体とした3つの反応の開発に成功した。具体的には、超原子価ヨウ素とハロゲン化剤を組み合わせたハロ-アミノ化反応と、カップリング反応によるアミノ化反応である。まず、ハロ-アミノ化反応ではインドールの炭素-水素結合を位置選択的に炭素-窒素結合に変換できるだけでなく、同時にもう1つの炭素-水素結合も位置選択的に炭素-ハロゲン結合に変換することができる。さらに、導入したハロゲン結合の誘導化によって効率的に医薬品の部分骨格を構築できることも見出した。次にカップリング反応では、反応の選択性を超原子価ヨウ素のデザインによってコントロールし、インドールに効率的に窒素官能基を導入することに成功した。本年度は前年度の成果に加え、3つの反応の基質一般性の改善や反応機構の実験的考察、誘導化について大幅な進展が見られた。インドールのベンジル位へのハロ-アミノ化反応については反応機構の検証を第一に行い、その後収率の改善を行い、医薬品への誘導化を行う。申請書提出時に想定していた反応機構に加えて別の機構が競合していることは突き止めたが、この2つの過程の詳細と、どちらが主過程なのか、基質によってその偏りに変化があるのかを検証することが今後の目標である。特に、反応点であるベンジル位が1級炭素と2級炭素とでさらに反応機構が異なっていることが示唆される結果も得ており、なぜ異なる機構を経るのかについても集中的に検討する。一方で、すでにこれらの知見を活かし、複数の化合物について収率の改善ができたことから、まず反応機構の詳細を調査することに主眼を置き、その後収率の改善や基質一般性の拡大を図り、最終的に論文投稿を行う計画である。加えて、7月に本研究を超原子価ヨウ素専門の国際学会で発表することが予定されており、他の研究者の意見も取り入れて研究を加速させる。また、医薬品への誘導化については目標とする化合物を決定し、文献を参考に合成ルートも策定した。
KAKENHI-PROJECT-15J04745
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15J04745
超酸素不均化酵素(SOD)-高分子結合体による肝阻血再潅流障害に関する研究
初年度には,合成高分子ポリアニオンであるDIVEMA(divinylether and maleic anhydride)を合成し、生体内投与で毒性のほとんどない、分子量5千、及び3万のDIVEMAにSODを生理活性を保持したまま共有結合させて徐放化する方法を確立し報告した。このDIVEMA-SODハイブリットは血清(in vitro)投与、及びマウス静脈(in vivo)内投与のいずれでもSOD投与に比較して酵素活性の半減期が約10倍延長することを薬物動態的に解明し報告した。また生理活性蛋白であるSODはDIVEMAと結合することにより免疫原性が低下し、熱安定性が増加することを解明し、報告した。一方、肝臓が生体内に生理的に存在する状態で肝小葉レベルで門脈、類洞、中心静脈の微小循環動態を観察できる蛍光生体顕微鏡ビデオ観察、録画、解析装置の作製に研究助成の最終年度(平成7年度)の大半を費やしたが、分子量3万と5千のDIVEMA-SODハイブリットによる肝の温阻血再潅流障害防止効果を検討した。小葉内の全類洞中に占める潅流類洞の比率(潅流率)、全類洞中の20秒間膠着した白血球数、及び後類洞中心静脈(100μ)内を20秒間に通過する全白血球中に占める血管内皮粘着回転白血球数の比率などを微小循環障害の指標とした。sodium fluoresceinを静注して微小循環血行を可視化し、肝小葉を傍門脈域、中間域、傍中心静脈域及び後類洞中心静脈に分けて観察した。また、ロ-ダミン-6Gで循環白血球を蛍光染色した。門脈本幹を30分間遮断し、遮断解除1分前に薬剤を投与して30分経過後、30分間連続録画した。非治療群に較べてSOD単独、DIVEMA単独投与群では類洞潅流比、類洞内膠着白血球数、後類洞中心静脈内、粘着回転白血球数いずれも改善したが、有意差はなかった。これに対して、SODを分子量3万、或いは分子量5千とDINVEMAの結合体投与で全ての微小循環パラメーターが有意に改善した。初年度には,合成高分子ポリアニオンであるDIVEMA(divinylether and maleic anhydride)を合成し、生体内投与で毒性のほとんどない、分子量5千、及び3万のDIVEMAにSODを生理活性を保持したまま共有結合させて徐放化する方法を確立し報告した。このDIVEMA-SODハイブリットは血清(in vitro)投与、及びマウス静脈(in vivo)内投与のいずれでもSOD投与に比較して酵素活性の半減期が約10倍延長することを薬物動態的に解明し報告した。また生理活性蛋白であるSODはDIVEMAと結合することにより免疫原性が低下し、熱安定性が増加することを解明し、報告した。一方、肝臓が生体内に生理的に存在する状態で肝小葉レベルで門脈、類洞、中心静脈の微小循環動態を観察できる蛍光生体顕微鏡ビデオ観察、録画、解析装置の作製に研究助成の最終年度(平成7年度)の大半を費やしたが、分子量3万と5千のDIVEMA-SODハイブリットによる肝の温阻血再潅流障害防止効果を検討した。小葉内の全類洞中に占める潅流類洞の比率(潅流率)、全類洞中の20秒間膠着した白血球数、及び後類洞中心静脈(100μ)内を20秒間に通過する全白血球中に占める血管内皮粘着回転白血球数の比率などを微小循環障害の指標とした。sodium fluoresceinを静注して微小循環血行を可視化し、肝小葉を傍門脈域、中間域、傍中心静脈域及び後類洞中心静脈に分けて観察した。また、ロ-ダミン-6Gで循環白血球を蛍光染色した。門脈本幹を30分間遮断し、遮断解除1分前に薬剤を投与して30分経過後、30分間連続録画した。非治療群に較べてSOD単独、DIVEMA単独投与群では類洞潅流比、類洞内膠着白血球数、後類洞中心静脈内、粘着回転白血球数いずれも改善したが、有意差はなかった。これに対して、SODを分子量3万、或いは分子量5千とDINVEMAの結合体投与で全ての微小循環パラメーターが有意に改善した。本研究の主目的は肝臓の阻血再灌流で生ずる肝微小循環障害を高分子と超酸素不均化酵素(SOD)のハイブリットを用いて防止する事である。本研究遂行の初年度である平成6年度では主として下記の4点を遂行した。2:このDIVEMA・SODハイブリットは血清(in vitro)投与あるいは、マウス静脈内(in vitro)投与の何れにおいてもSOD投与に比較して酵素活性の半減期が約20・10倍延長する事を薬物動態的に解明し学会誌に報告した。3:生理活性蛋白であるSODはDIVEMAと結合する事により免疫原性が低下し、熱安定性が増加する事を解明し学会誌に報告した。(J.Cont.,Release投稿中)4:肝微小循環に及ぼすDIVEMA・SOD投与の影響を肝臓が生体内に生理的に存在する状態で観察する装置を作成し、予備実験を遂行した。蛍光顕微鏡を用い、ラットの白血球や血清を蛍光染色して肝臓小葉の門脈、類洞および中心静脈を300・700倍の倍率で数時間ビデオモニターで観察し、録画する。この際、ラットの全身循環動態を動脈圧をモニターしながら生理的に保持する工夫をしている。
KAKENHI-PROJECT-06455003
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06455003
超酸素不均化酵素(SOD)-高分子結合体による肝阻血再潅流障害に関する研究
肝微小循環の解析は収録したビデオテープから類洞内や中心静脈内の白血球動態、類洞血行阻害、等を指標にコンピュータ画像解析する。以上の成果を踏まえて次年度(平成七年度)には主として肝微小循環に及ぼすDIVEMA・SODの影響を血行動態・血管内皮細胞障害、肝機能障害、肝細胞障害、ラジカル反応等を指標として解析を進める。平成7年度の研究実績は以下の二点に要約できる。1)平成6年度の本研究助成金より作製した生体内エピルミネッセンス顕微鏡下でラットの肝臓の微小循環(肝小葉内の類洞内血行動態)を白血球動態を指標に約700倍の倍率でビデオ画像上で観察し録画する実験方法を完成した。録画した微小循環の各種パラメーターを定量解析するには市販の解析ソフトウエアから更に、本実験用のマクロを開発する必要があり現在はこの開発に取り組んでいる。2)従来、ミュンヘン大学外科研究所で開発された半定量的解析ソフトを好意により借用して分子量3万のDIVEMA-SOD結合体と分子量5千のDIVEMA-SOD結合体について肝の温阻血再灌流障害防止効果を検討した。小葉内の全類洞中に占める灌流類洞の比率(灌流率)、全類洞中の20秒間膠着した白血球数、及び後類洞中心静脈(100μ)内を20秒間に通かする全白血球中に占める血管内皮粘着回転白血球数の比率などを微小循環動態の指標とした。上記微小循環血行の可視化にはsodium fluoresceinを静注して、傍門脈域、中間域、傍中心静脈域及び後類洞中心静脈との4区域に分けて観察しビデオに録画した。また、ロ-ダミン-6Gを静注して白血球を蛍光染色した。温阻血は門脈本幹を30分間遮断し、薬剤は遮断解除1分前に行って30分経過後ビデオに30分連続して録画した。その結果、非治療群に較べてSOD単独、DIVEMA単独投与群では類洞灌流比、類洞内膠着白血球数、後類洞中心静脈内、粘着回転白血球数いずれも改善したが有意差は無かった。これに対して、SODを分子量3万或いは分子量5千とDIVEMAの結合体投与で全ての微小循環パラメーターが有意に改善した。しかし、分子量3万のDIVEMAとの結合体投与ではショック状態を惹起したラットが有り、今後の検討を要する。
KAKENHI-PROJECT-06455003
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06455003
製品開発の制度化プロセスに関する日米比較研究:携帯電話端末開発組織の動態比較から
平成16年度は、日米における携帯電話産業、携帯電話端末メーカー、通信事業者について、さらに実態把握を進めた。こうしたデータをふまえ、メーカー-通信事業者間の取引関係と関連づけて、メーカーの端末開発活動について整理し、日米間の相違を検討した。その中で、日米間で異なった製品開発能力の制度化が進んできた背景には、メーカー-通信事業者間の取引関係の相違があることが明らかにされた。日本では、特定の通信事業者からの受注をめぐり、メーカーは、新規性の高い機能・仕様を実現することで、相互に競争してきた。こうした競争を通じ、メーカーは、短いサイクルで設計を刷新し、特定の通信事業者の要望に高度にカスタマイズされた端末を開発してきた。その結果、日本メーカーの製品開発能力は、国内の特定の通信事業者に合わせて新規性の高い端末を提供する、関係特殊的な能力(知識)として制度化されてきた。これに対し、従来、米国では、メーカーは、様々な通信事業者との取引を行ってきた。このため、特定の通信事業者の要望に合わせるための、関係特殊的な製品開発能力の必要性はより少なかった。こうした事情から、米国では、長期にわたって様々な通信事業者に対応可能な端末の開発が競われ、より汎用性の高い端末を開発する能力が制度化されてきた。以上の相違が、日米間で、端末のあり方(すなわち支配的な製品コンセプト)の相違を生み、端末開発活動に違いをもたらしてきたことが、平成16年度には理解された。ただし、近年では、米国でも、通信サービスの高度化が進む中で、通信事業者の要望に合わせて、よりカスタマイズした端末の開発を行うことが、以前より求められている。こうした事情を反映し、米国においても、メーカーには、通信事業者の高度な要望を吸収し対応する能力として、対通信事業者向けのインターフェースの能力が必要となりつつあることも明らかとなった。平成14年度は、主に米国において調査を行い日本の場合と比較を行うとともに、学会等での発表や関係分野の研究者と日米で意見交換を行い、開発活動の制度化をもたらしている要因と要因間の因果関係を検討した。まず、以上の調査と日米比較の結果、日米間では、製品コンセプトの特徴が系統的に異なり、それにともなって製品開発プロセスのあり方にも相違が生じていることが明らかになった。日本メーカーの製品コンセプトは小型・軽量化と多機能化で特徴づけられる一方、米国におけるメーカーの製品コンセプトは通信機能等の基本的性能の充実、操作性、デザインを念頭に置いたものであった。さらに、日本メーカーでは半年以下での短期間での新モデル開発が行われていたが、米国のメーカーではコスト(端末価格)が強く意識されていた。こうした相違は、両国の市場では、それぞれ携帯電話端末の持つ意味、すなわち支配的な製品コンセプトが異なっており、製品開発競争の焦点が異なっていることを示唆している。日米それぞれにおける支配的な製品コンセプトのあり方は、メーカー間の競争の中で形作られてきたと考えられる。しかしながら、こうした競争は、日米それぞれにおいて支配的な製品コンセプトを実現する価値ネットワーク、とくにメーカーと通信事業者との制度的な取引関係にもとづいて行われている。調査の結果は、日米それぞれにおいて支配的な製品コンセプトを実現するように、制度的取引関係にロック・インされて、メーカーは競争を行っていることを示唆していた。そして、こうした競争の中で、日米それぞれの開発プロセスは方向付けられていることが明らかとなってきた。以上のことから、平成14年度には、製品開発ルーチンは、それぞれの市場における制度的な取引関係と競争の中で、一定の支配的な製品コンセプトを実現することによって制度化されているという見通しが、提示された。(790字)まず、平成15年度には、前年度までの成果と既存研究をまとめ、過渡的な成果の発表を行った。こうした途中成果発表は、既存研究と他産業を含む事例をもとに理論的な分析枠組を検討したものと、これまでの調査結果を用い日米間での携帯電話端末開発の相違について現状を概観したものに大別される。理論的な分析枠組については、新制度学派の論考をレビューし、製品イノベーションに関する研究への応用可能性を検討した。ある製品の使い方(機能)とそれを実現する技術について、一定の社会的な意味、すなわち支配的な製品コンセプトとともに、それを実現する製品開発能力が形作られていく中に、製品開発の制度化プロセスは見出すことができる。そうした制度化プロセスを構成する主な社会的プロセスとして、競争と取引関係を考えることができる。したがって、日米間での製品開発の制度化プロセスの相違は、競争と取引関係のあり方の相違を分析することで明らかになると予測される。一方、以上の考察と前年度までの成果を反映させ、より詳細なインタビュー調査と業界データの検討を行った。その結果、日本における制度化プロセスの特徴として、メーカー-通信事業者間の取引関係にメーカー間の競争が組み込まれていることが明らかとなった。このような取引関係における制度化された競争を通じ、日本における製品コンセプトは急速に小型・軽量化と多機能化に収斂し、その実現に適した製品開発能力がいずれのメーカーでも一様に形作られた。こうした一方向への同形化圧力の強い制度化プロセスに、アメリカにおけるほぼメーカー間の競争による自生的な制度化プロセスとの大きな相違点は見出せると考えられる。さらに詳細な検討は平成16年度に委ねられるが、平成15年度には、競争や取引関係を通じていかに製品開発が制度化されてきたのかを検討することにより、日米間の相違の概要を把握した。平成16年度は、日米における携帯電話産業、携帯電話端末メーカー、通信事業者について、さらに実態把握を進めた。
KAKENHI-PROJECT-14710127
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14710127
製品開発の制度化プロセスに関する日米比較研究:携帯電話端末開発組織の動態比較から
こうしたデータをふまえ、メーカー-通信事業者間の取引関係と関連づけて、メーカーの端末開発活動について整理し、日米間の相違を検討した。その中で、日米間で異なった製品開発能力の制度化が進んできた背景には、メーカー-通信事業者間の取引関係の相違があることが明らかにされた。日本では、特定の通信事業者からの受注をめぐり、メーカーは、新規性の高い機能・仕様を実現することで、相互に競争してきた。こうした競争を通じ、メーカーは、短いサイクルで設計を刷新し、特定の通信事業者の要望に高度にカスタマイズされた端末を開発してきた。その結果、日本メーカーの製品開発能力は、国内の特定の通信事業者に合わせて新規性の高い端末を提供する、関係特殊的な能力(知識)として制度化されてきた。これに対し、従来、米国では、メーカーは、様々な通信事業者との取引を行ってきた。このため、特定の通信事業者の要望に合わせるための、関係特殊的な製品開発能力の必要性はより少なかった。こうした事情から、米国では、長期にわたって様々な通信事業者に対応可能な端末の開発が競われ、より汎用性の高い端末を開発する能力が制度化されてきた。以上の相違が、日米間で、端末のあり方(すなわち支配的な製品コンセプト)の相違を生み、端末開発活動に違いをもたらしてきたことが、平成16年度には理解された。ただし、近年では、米国でも、通信サービスの高度化が進む中で、通信事業者の要望に合わせて、よりカスタマイズした端末の開発を行うことが、以前より求められている。こうした事情を反映し、米国においても、メーカーには、通信事業者の高度な要望を吸収し対応する能力として、対通信事業者向けのインターフェースの能力が必要となりつつあることも明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-14710127
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電気伝導性パイロクロア型酸化物の合成と物性
本研究課題では金属伝導を示すBi_2Ru_2O_7と半導体であるLn_2Ru_2O_7との固溶系を合成し、電気的性質がどのように変化するかを調べた。さらにX線リ-トベルド法を用い、固溶に伴う構造変化の面からパイロクロア型酸化物の金属伝導に関する知見を得た。以下に結果をまとめる。2.抵抗の測定を20-300Kで行なった結果、抵抗率の室温での絶対値は固溶した希工類元素の組成の増加に伴ない増加した。また、すべての系においてX=1.2までは金属伝導を示し、X=1.4以上では半導体的挙動を示した。比較的大きなイオン半径を持つPr、Na、Smは固溶させた系ではX=1.41.6の領域において、温度依存性の金属半導体転移を示すことをはじめて見出した。この転移について詳細な検討を行った結果、転移温度はLnの組成の増加に伴ない上昇すること、半導体領域においてpとT^<ー1/4>との間で直線関係を示すことがわかった。伝導は高度にド-プされた半導体でみられるバリアブルレンジ・ホッピング機構で起こっていて、金属半導体転移にはアンダ-ソンタイプの局在化現象が関与している。3.伝導機構と内部構造との関連を明らかにするために構造解析を行った。(Bi_<2-x>Nd_x)Ru_2O_7ではNdの固溶に伴ない格子がのび、RuーO距離が増大しAーO距離が減少する。イオン半径の小さなDyを固溶した(Bi_<2-x>Dy_x)Ru_2O_7系ではDyの固溶に伴ない格子が縮みRuーO距離が増加しOーA距離は減少する。つまり格子定数の増減にかかわりなくRuーO距離が増加して、相互作用が低下している金属半導体転移に影響を与える。RuO_6八面体の歪みも希工類元素の固溶に伴ない増加し、RuーOーRu相互作用の低下と対応する。以上より頂点共有で三次元的に連なったRuO_6八面体の相互作用が伝導機構に影響を与えていることが明らかになった。本研究課題では金属伝導を示すBi_2Ru_2O_7と半導体であるLn_2Ru_2O_7との固溶系を合成し、電気的性質がどのように変化するかを調べた。さらにX線リ-トベルド法を用い、固溶に伴う構造変化の面からパイロクロア型酸化物の金属伝導に関する知見を得た。以下に結果をまとめる。2.抵抗の測定を20-300Kで行なった結果、抵抗率の室温での絶対値は固溶した希工類元素の組成の増加に伴ない増加した。また、すべての系においてX=1.2までは金属伝導を示し、X=1.4以上では半導体的挙動を示した。比較的大きなイオン半径を持つPr、Na、Smは固溶させた系ではX=1.41.6の領域において、温度依存性の金属半導体転移を示すことをはじめて見出した。この転移について詳細な検討を行った結果、転移温度はLnの組成の増加に伴ない上昇すること、半導体領域においてpとT^<ー1/4>との間で直線関係を示すことがわかった。伝導は高度にド-プされた半導体でみられるバリアブルレンジ・ホッピング機構で起こっていて、金属半導体転移にはアンダ-ソンタイプの局在化現象が関与している。3.伝導機構と内部構造との関連を明らかにするために構造解析を行った。(Bi_<2-x>Nd_x)Ru_2O_7ではNdの固溶に伴ない格子がのび、RuーO距離が増大しAーO距離が減少する。イオン半径の小さなDyを固溶した(Bi_<2-x>Dy_x)Ru_2O_7系ではDyの固溶に伴ない格子が縮みRuーO距離が増加しOーA距離は減少する。つまり格子定数の増減にかかわりなくRuーO距離が増加して、相互作用が低下している金属半導体転移に影響を与える。RuO_6八面体の歪みも希工類元素の固溶に伴ない増加し、RuーOーRu相互作用の低下と対応する。以上より頂点共有で三次元的に連なったRuO_6八面体の相互作用が伝導機構に影響を与えていることが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-01550599
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01550599
言語獲得理論に基づく小学校英語教育の高度化学習プログラムの開発
対人コミニケーションにおいて他者の意図の読み取りは本質的な営みである。意図を読むことができれば発話された英語が完全でなくても理解することができるし、逆に意図を読むことができなければ発話された英語が完全であっても他者を理解したとは言いがたい。小学生による意図の読み取りは、母語、すなわち日本語での会話においてはごく普通に行われているが、外国語の学習になると突然のように出来なくなってしまう。こうした状況を踏まえて、日本語での会話における意図の読み取りをメタ言語的に意識化する練習をした上で、英語における意図の読み取りを向上させようとするものである。対人コミニケーションにおいて他者の意図の読み取りは本質的な営みである。意図を読むことができれば発話された英語が完全でなくても理解することができるし、逆に意図を読むことができなければ発話された英語が完全であっても他者を理解したとは言いがたい。小学生による意図の読み取りは、母語、すなわち日本語での会話においてはごく普通に行われているが、外国語の学習になると突然のように出来なくなってしまう。こうした状況を踏まえて、日本語での会話における意図の読み取りをメタ言語的に意識化する練習をした上で、英語における意図の読み取りを向上させようとするものである。
KAKENHI-PROJECT-19K02758
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K02758
分子病態解析を行うための簡便なBAC改変システムの開発
1)標識遺伝子群挿入系の構築部位特異的組換え(Cre/loxP系)を利用した既存のBAC/PACの改変を行うためのプラスミドベクター(pNEL,pNELI,pNELγ,pNELγI)を作製し、これら改変用ベクターを、大腸菌内(in vivo)でBAC/PACへ挿入できる系を構築した。新規に温度感受性変異型ori、アラビノース発現誘導型Cre発現ユニットを持つプラスミドを作成し、大腸菌内での一過性Creタンパク発現を可能にした。この新規ベクターと上記改変用ベクターを、BACを保持している大腸菌へ形質導入し、アラビノース誘導、高温培養による新規ベクターの不活化を行うことによって効率よくBACへの標識遺伝子の挿入が行えることを確認した。改変効率は、約8090%であった。また、薬剤選択後のコロニー出現数は、BACインサートの長さに逆比例せず、300kb以上のBACにも有効であると考えられた。さらに、改変を行ったBACクローン(含HPRT遺伝子など)を線維肉腫細胞株(HT1080)へ導入し、安定な遺伝子発現が得られることを確認した。これらベクター系は、イタリア、米国、英国、イスラエル、国内の計9施設へ供与を行った。2)ヒト人工染色体形成能をもつBAC改変系の構築ライブラリーよりヒトアルフォイド配列を持ち、セントロメア形成能をもつBAC/PACを単離した。このアルフォイドBAC/PACへ標識遺伝子群を組込み、さらに改変し、Cre/loxP系によりori部分が切り離され任意のBACへ挿入される系を構築した。改変は、1)で構築した大腸菌内組換え系を用いて行った。導入効率は、520%と高効率ではないものの、任意のゲノム遺伝子を含むアルフォイドBACが得られた。このアルフォイド改変BACをHT1080へ導入し、ヒト人工染色体を形成できることを確認した。遺伝子発現は、アルフォイドDNAが短いと高くなる傾向が認められた。(投稿中)1)標識遺伝子群挿入系の構築部位特異的組換え(Cre/loxP系)を利用した既存のBAC/PACの改変を行うためのプラスミドベクター(pNEL,pNELI,pNELγ,pNELγI)を作製し、これら改変用ベクターを、大腸菌内(in vivo)でBAC/PACへ挿入できる系を構築した。新規に温度感受性変異型ori、アラビノース発現誘導型Cre発現ユニットを持つプラスミドを作成し、大腸菌内での一過性Creタンパク発現を可能にした。この新規ベクターと上記改変用ベクターを、BACを保持している大腸菌へ形質導入し、アラビノース誘導、高温培養による新規ベクターの不活化を行うことによって効率よくBACへの標識遺伝子の挿入が行えることを確認した。改変効率は、約8090%であった。また、薬剤選択後のコロニー出現数は、BACインサートの長さに逆比例せず、300kb以上のBACにも有効であると考えられた。さらに、改変を行ったBACクローン(含HPRT遺伝子など)を線維肉腫細胞株(HT1080)へ導入し、安定な遺伝子発現が得られることを確認した。これらベクター系は、イタリア、米国、英国、イスラエル、国内の計9施設へ供与を行った。2)ヒト人工染色体形成能をもつBAC改変系の構築ライブラリーよりヒトアルフォイド配列を持ち、セントロメア形成能をもつBAC/PACを単離した。このアルフォイドBAC/PACへ標識遺伝子群を組込み、さらに改変し、Cre/loxP系によりori部分が切り離され任意のBACへ挿入される系を構築した。改変は、1)で構築した大腸菌内組換え系を用いて行った。導入効率は、520%と高効率ではないものの、任意のゲノム遺伝子を含むアルフォイドBACが得られた。このアルフォイド改変BACをHT1080へ導入し、ヒト人工染色体を形成できることを確認した。遺伝子発現は、アルフォイドDNAが短いと高くなる傾向が認められた。(投稿中)
KAKENHI-PROJECT-16012251
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16012251
DNA損傷チェックポイント遺伝子T-fimbrinの消化器癌診断・治療への応用
我々はこれまでに細胞周期のG2/M期におけるチェックポイント因子としてアクチン結合蛋白T-fimbrinを同定した.さらにいくつかの癌細胞株および症例サンプルにおいて,プロモーター領域の異常メチル化によるT-fimbrin発現消失が高率に認められること,およびT-fimbrinの発現レベルといくつかの抗癌剤感受性が逆相関することを明らかにしてきた.本研究では癌の悪性度および抗癌剤感受性に関与する候補遺伝子としてのT-fimbrinの機能を解析し,従来の評価法を補完する新しい診断・治療予測システムを開発することを目的とし,以下のような成果を認めた.1.ヒト腫瘍細胞株,症例におけるT-fimbrinのプロモーター領域のメチル化の有無を解析した.その結果,胃癌,大腸癌,肝癌などの固形腫瘍に比べ,血液系腫瘍細胞株および症例サンプルにおいて,より高率に異常メチル化によるT-fimbrin発現消失が認められることが明らかになった.特に,ヒト骨髄腫,急性骨髄性白血病症例の約40%でプロモーター領域の異常メチル化を検出した.臨床への応用をめざし,より簡便なDNAメチル化の検出法であるメチライト法による診断システムを確立した.2.T-fimbrinに対するsiRNAを作成し,ヒト骨髄腫細胞株におけるT-fimbrinの発現レベルと抗癌剤感受性との相関を解析した.その結果,T-fimbrinの発現抑制は,アドリアマイシン,メルファランなどの抗癌剤の感受性を高めることが明らかになった.また細胞周期,アポトーシスの解析から,T-fimbrinの発現抑制は抗癌剤による細胞周期停止を減弱させ,結果的にアポトーシス誘導を促進した.以上よりT-fimbrinの発現が抗癌剤感受性の指標となるとともに,癌治療の標的となる可能性が考えられた。我々はこれまでに細胞周期のG2/M期におけるチェックポイント因子としてアクチン結合蛋白T-fimbrinを同定した.さらにいくつかの癌細胞株および症例サンプルにおいて,プロモーター領域の異常メチル化によるT-fimbrin発現消失が高率に認められること,およびT-fimbrinの発現レベルといくつかの抗癌剤感受性が逆相関することを明らかにしてきた.本研究では癌の悪性度および抗癌剤感受性に関与する候補遺伝子としてのT-fimbrinの機能を解析し,従来の評価法を補完する新しい診断・治療予測システムを開発することを目的とし,以下のような成果を認めた.1.ヒト腫瘍細胞株,症例におけるT-fimbrinのプロモーター領域のメチル化の有無を解析した.その結果,胃癌,大腸癌,肝癌などの固形腫瘍に比べ,血液系腫瘍細胞株および症例サンプルにおいて,より高率に異常メチル化によるT-fimbrin発現消失が認められることが明らかになった.特に,ヒト骨髄腫,急性骨髄性白血病症例の約40%でプロモーター領域の異常メチル化を検出した.臨床への応用をめざし,より簡便なDNAメチル化の検出法であるメチライト法による診断システムを確立した.2.T-fimbrinに対するsiRNAを作成し,ヒト骨髄腫細胞株におけるT-fimbrinの発現レベルと抗癌剤感受性との相関を解析した.その結果,T-fimbrinの発現抑制は,アドリアマイシン,メルファランなどの抗癌剤の感受性を高めることが明らかになった.また細胞周期,アポトーシスの解析から,T-fimbrinの発現抑制は抗癌剤による細胞周期停止を減弱させ,結果的にアポトーシス誘導を促進した.以上よりT-fimbrinの発現が抗癌剤感受性の指標となるとともに,癌治療の標的となる可能性が考えられた。我々はこれまでに細胞周期のG2/M期におけるチェックポイント因子としてアクチン結合蛋白T-fimbrinを同定した.本研究はがんの悪性度および化学療法効果に関与する候補遺伝子としてのT-fimbrinの機能を詳細に解析し,従来の評価法を補完する新しい癌の診断・治療予測システムを開発しようとするものであり,以下のような成果を認めた.1.ヒト腫瘍細胞株,症例におけるT-fimbrinのプロモーター領域のメチル化の有無を解析した.その結果,さらに胃癌,大腸癌,肝癌などの固形腫瘍に比べ,血液系腫瘍細胞株および症例サンプルにおいて,効率に異常メチル化によるT-fimbrin発現消失が認められることが明らかになった.臨床への応用をめざし,より簡便なDNAメチル化の検出法であるメチライト法による診断システムを構築中である.2.T-fimbrinに対するsiRNAおよびshRNAを作成し,T-fimbrinの発現レベルといくつかの抗癌剤感受性との相関を解析した.その結果,T-fimbrinの発現抑制は,VP-16,CDDPなど細胞周期のG2/M期停止を引き起こすような抗癌剤の感受性を高めることが明らかになった.また細胞周期,アポトーシスの解析から,T-fimbrinの発現抑制は抗癌剤による細胞周期停止を減弱させ,結果的にアポトーシス誘導を促進した.以上よりT-fimbrinの発現が抗癌剤感受性の指標となるとともに,癌治療の標的となる可能性が考えられた.またT-fimbrinの発現抑制は細胞増殖には影響を及ぼさないが,細胞の接着能を著しく抑制することも明らかになった.我々はこれまでに細胞周期のG2/M期におけるチェックポイント因子としてアクチン結合蛋白T-fimbrinを同定した.さらにいくつかの癌細胞株および症例サンプルにおいて,プロモーター領域の異常メチル化によるT-fimbrin発現消失が高率に認められること,およびT-fimbrinの発現レベルといくつかの抗癌剤感受性が逆相関することを明らかにしてきた.
KAKENHI-PROJECT-16590609
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16590609
DNA損傷チェックポイント遺伝子T-fimbrinの消化器癌診断・治療への応用
本研究では癌の悪性度および抗癌剤感受性に関与する候補遺伝子としてのT-fimbrinの機能を解析し,従来の評価法を補完する新しい診断・治療予測システムを開発することを目的とし,以下のような成果を認めた.1.ヒト腫瘍細胞株,症例におけるT-fimbrinのプロモーター領域のメチル化の有無を解析した.その結果,胃癌,大腸癌,肝癌などの固形腫瘍に比べ,血液系腫瘍細胞株および症例サンプルにおいて,より高率に異常メチル化によるT-fimbrin発現消失が認められることが明らかになった.特に,ヒト骨髄腫,急性骨髄性白血病症例の約40%でプロモーター領域の異常メチル化を検出した.臨床への応用をめざし,より簡便なDNAメチル化の検出法であるメチライト法による診断システムを確立した.2.T-fimbrinに対するsiRNAを作成し,ヒト骨髄腫細胞株におけるT-fimbrinの発現レベルと抗癌剤感受性との相関を解析した.その結果,T-fimbrinの発現抑制は,アドリアマイシン,メルファランなどの抗癌剤の感受性を高めることが明らかになった.また細胞周期,アポトーシスの解析から,T-fimbrinの発現抑制は抗癌剤による細胞周期停止を減弱させ,結果的にアポトーシス誘導を促進した.以上よりT-fimbrinの発現が抗癌剤感受性の指標となるとともに,癌治療の標的となる可能性が考えられた.
KAKENHI-PROJECT-16590609
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16590609
鴎外たちを取り巻く近代都市のネットワーク十九世紀末べルリンにおける生の変容と文学
最終年度にあたる2007年度には、テーマである鴎外のベルリン体験を、メディアという視点から考察した。特に、彼が足繁く通ったメインストリートのカフェ・バウアーに注目し、この店が単なる喫茶店ではなく、世界各国の新聞・雑誌をはじめ、文学や医学の専門誌にいたるまで600紙を自由に閲覧できた、当時最先端の情報センターであった事実を明らかにした。続いて、この施設やそこに訪れた人々が、鴎外の思想や文学にどのように関わったのか調査した。とりわけ、アウグスト・シェールというー人の常連客に焦点を当て、彼が「ベルリン・ローカル新聞」を皮切りに、ドイツのジャーナリズムに与えた影響いついて論じた。具体的には、シェールが難解な論説中心のドイツ紙ではなく、「ニューヨーク・ヘラルド」や「イヴニング・ポスト」などアメリカの新聞に範を仰いでいた点を踏まえ、彼が、簡潔かつ明快で、最新のニュースにあふれ、記事がセンセーショナルであるアメリカのジャーナリズムを初めて導入し、庶民にも講読層を広めてドイツで報道革命をおこした事実を論究した。さらに、こうした情報革命が、まさに鴎外の滞在期とシンクロしていた事実を考慮し、『舞姫』をはじめとする彼の文学作品に、情報センターとしての喫茶店の実景と機能が書き込まれていることを検証した。そして。当時の鴎外が、活字化された情報がいかに一般のベルリン市民にまで浸透・流通しているか評価していた点に注目し、こうしたジャーナリズムを後進の日本に導入しようとしていた事を、「椋鳥通信」などジャーナリストとしての鴎外し活動と関連させて述べた。(1)本年度は、十九世紀後半におけるベルリンの衛生事情を主要テーマとし、その時代、都市空間を覆い始めたインフラ・ネットワーク、とりわけ、上下水道の展開の実体を調査するため、ベルリンの水道史を含む社会史や市政史、そして技術論や都市衛生論を分析し、その歴史的経緯や配(排)水構造を調査した。(2)先の研究と平行して、当時の市民の生活を反映したドイツ文学、具体的にはA.デープリーンの『容赦なし』やP.リンダウの『西区への移動』、また『迷い、もつれ』をはじめとするTh.フォンターネのベルリン小説等の諸作品を精読し、都市の衛生化にともなう庶民生活の変化が分析された。その際、(1)衛生と引き換えに失われた「井戸端」の人間関係、(2)均質な水が行き渡ると同時に、大衆という単位にまとめ上げられた市民像、(3)コレラやチフスが大衆心理に果たした効果、等の問題が要点として浮き彫りになった。(3)上記のベルリンの諸状況と比較しつつ、『舞姫』や『妄想』をはじめとする鴎外の文学に表されたベルリン、ならびに、『独逸日記』や『隊務日記』等に見られる彼自身の都市体験が検証された。特に、鴎外が(1)で検証された水道ネットワークに取り込まれる過程、また彼はそのシステムをどう認識していたのか、という問題に焦点を当て、現在、次年度発表予定の論文「衛生都市ベルリン-鴎外のもう一つの都市体験-」を執筆中である。※研究代表者作成論文(単著)「衛生年ベルリン-鴎外のもう一つの都市体験」を執筆。衛生学を修めるべく、ドイツ留学した軍医官森林太郎(鴎外)が、ベルリンでどのような衛生政策に触れたのかを論述した。第一章は、ベルリンの都市建築を扱い、中庭を取り囲む「ミーツカゼルネ」式の集合住宅を、鴎外が衛生上間題とした事実を、彼の衛生学論文から詳述した。そして『舞姫』などの文学作品の叙述においても、こうした彼の見解が反映されていることを論究した。第二章ではベルリンの上水道敷設の歴史とその展開をテーマにし、鴎外が積極的に視察したベルリンの水道網について調査して、当時の日本では想像すらつかないこの衛生ネットワークを、鴎外がどのようにとらえて紹介しているのかを論じた。第三章ではベルリンの下水道を扱い、当時蔓延していたコレラやチフスなどの伝染病を、下水道敷設を筆頭とするペルリンの衛生政策がどのように駆逐していったのか、その歴史的プロセスと鴎外との関わりについてまとめた。最後の四章では、こうした衛生政策をドイツで学んだ鴎外が、帰朝後、東京の市区改正事業に参与したことを踏まえ、立ち後れた祖国の衛生と彼がいかに向き合ったのかを論究した。鴎外が問題視したのは、衛生とは必然的に一般大衆を相手にしなければならないのに対し、当時の日本では、この「大衆」という均質な単位が発見されていないことであった。ゆえに、全市に衛生ネットワーが展開したベルリンとは異なり、東京の衛生政策は、結局は部分的な事業に留まった。こうした祖国の限界を、鴎外が悒悒たる思いで見つめていた点を論述し、本論のまとめとした。最終年度にあたる2007年度には、テーマである鴎外のベルリン体験を、メディアという視点から考察した。特に、彼が足繁く通ったメインストリートのカフェ・バウアーに注目し、この店が単なる喫茶店ではなく、世界各国の新聞・雑誌をはじめ、文学や医学の専門誌にいたるまで600紙を自由に閲覧できた、当時最先端の情報センターであった事実を明らかにした。続いて、この施設やそこに訪れた人々が、鴎外の思想や文学にどのように関わったのか調査した。とりわけ、アウグスト・シェールというー人の常連客に焦点を当て、彼が「ベルリン・ローカル新聞」を皮切りに、ドイツのジャーナリズムに与えた影響いついて論じた。
KAKENHI-PROJECT-17720072
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17720072
鴎外たちを取り巻く近代都市のネットワーク十九世紀末べルリンにおける生の変容と文学
具体的には、シェールが難解な論説中心のドイツ紙ではなく、「ニューヨーク・ヘラルド」や「イヴニング・ポスト」などアメリカの新聞に範を仰いでいた点を踏まえ、彼が、簡潔かつ明快で、最新のニュースにあふれ、記事がセンセーショナルであるアメリカのジャーナリズムを初めて導入し、庶民にも講読層を広めてドイツで報道革命をおこした事実を論究した。さらに、こうした情報革命が、まさに鴎外の滞在期とシンクロしていた事実を考慮し、『舞姫』をはじめとする彼の文学作品に、情報センターとしての喫茶店の実景と機能が書き込まれていることを検証した。そして。当時の鴎外が、活字化された情報がいかに一般のベルリン市民にまで浸透・流通しているか評価していた点に注目し、こうしたジャーナリズムを後進の日本に導入しようとしていた事を、「椋鳥通信」などジャーナリストとしての鴎外し活動と関連させて述べた。
KAKENHI-PROJECT-17720072
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17720072
ラット血中に存在する無限寿命化した細胞に特異的な増殖因子の精製と機能の解析
R-SGF(rat serum growth factor、ラット血清性細胞増殖因子)は、我々がラット血清から精製した新種のヘパリン結合性増殖因子である。その物理化学的性質や作用発現の細胞特異性について、又、この因子がラット生体内での発癌に関与する可能性を示す実験については既に報告した。一方、アミノ酸配列を決定するため、当科研費で購入したラット血清1300mlから通算2回目の精製を行ったが、この蛋白質の非特異的吸着が極めて大きいこと等の原因で収率が大幅に低下し、アミノ酸配列の決定は不可能になった。そこで、平成7年度購入血清の残りと、8年度交付金の殆どを使って購入した血清、それに他の手段で集めた血清の計約3.5リットルを使用し、第3回目の精製を開始した。今回は、従来、オープンカラムとHPLCで2度行っていたヘパリン親和性クロマトグラフィーを3度行うことにより、この段階で共存蛋白質をかなり減少することが出来た。又、最終精製品のN末端がブロックされている可能性を考え、精製のポリシ-を変更した。即ち、最後の疎水性相互作用クロマトグラフィー(この過程で収率が1/5-1/10になる)で、90%程度ピュアになった精製品をシークエンスするのではなく、前段階のイオン交換クロマトグラフィーからの溶出分画を使用し、クリーブランド法やPVDF膜へのブロット後に消化する方法で部分一次構造を決定することにした。現在、その条件を検討中である。その後、1pm程度の微量でも可能なアミノ酸シークエンサーを使用し、近い将来、アミノ酸配列を決定できる予定である。一方、この因子は、無限寿命化した株化肝細胞の増殖を促進することは既に報告したが、今回正常の初代培養肝細胞で試したところ、EGFと同程度の増殖促進活性を示した。又、BALB/c 3T3細胞での情報伝達経路を、各種インヒビターを使用して調べると、この因子のリセプターはPDGFRと似ている可能性が示唆された。これらの結果より、R-SGFは、今までに報告のない新規の増殖因子である可能性が更に強まった。R-SGF(rat serum growth factor,ラット血清性細胞増殖因子)は、ラット、マウス、サルの血清中に我々が発見した、新種のヘパリン結合性細胞増殖因子である。ラット血清から4段階のクロマトグラフィーで精製され、S-S結合を持つ酸および熱に不安定な、分子量約32kDaの蛋白質であることが判明している。今回は、この因子の精製を、これまで貯めておいたウィスター系雄ラット血清約600mlから開始した。しかし、最後の疎水性相互作用クロマトグラフィーに於て、蛋白質分解酵素阻害剤をPMSFからABSFに変更したところ、活性が1/2以下に減少してしまい、初期の目的であるアミノ酸組成の決定は不可能な収量となってしまった。この結果から、アミノ酸組成の情報を得るには2-3リットル以上の血清が必要なことが分かったので、交付された補助金の大半をラット血清購入に充てざるを得なくなった。今回得たR-SGFの精製品を用いて、その増殖促進活性の細胞特異性を調べた。既に、この因子が、ラット胎児線維芽細胞に対して、初代培養後の有限寿命細胞には増殖活性を示さないが、それらを長期継代して無限寿命化した細胞には高い活性を示すことを見出しているが、今回、マウスおよびウサギの線維芽細胞でも同様の結果を得た。一方、無限寿命化したヒト線維芽細胞に対しては、活性を示さなかった。この結果は、この因子がヒト血清中には存在せず、又、ヒト細胞は容易に無限寿命化しないことから、妥当なものと考えられた。R-SGFは又、ラットとウシの肝臓および腎臓由来の株化(無限寿命化)上皮細胞の増殖を著しく促進した。これらの結果から、R-SGFがラット生体内で、何らかのイニシエーターの刺激により変異した(=無限寿命化した)上皮および繊維芽細胞にプロモーターとして作用し、癌発症に関わっている可能性が示唆された。R-SGF(rat serum growth factor、ラット血清性細胞増殖因子)は、我々がラット血清から精製した新種のヘパリン結合性細胞増殖因子である。その物理化学的性質や作用発現の細胞特異性は既に報告した。本年度は昨年に引き続き、アミノ酸組成を決定するための大量精製を試みた。7年度の補助金から92万円で購入したラット血清約1800mlと、他に集めた200mlの計2リットルから出発した。前々回の試みでは、100mlの血清から小規模のクロマトグラフィーを繰返し精製に成功した(SDS-PAGEで単一バンドになった)が、今回はスケールアップによるデメリットが強く現れた。即ち血清中の他の大量の蛋白による妨害や、使用しているHPLCの不備(旧式の分析用なので分取に不適)等のため、極めて微量な(血清濃度は多くて数ng/mlと予想される)この因子の精製は困難を極めている。特に回収率が予定の1/2-1/3と低いので、シークエンス決定に必要な最低量(2μg程度)を得るため、本年度は補助金の殆どを血清購入に費やした(51.5万円)。現在はこれら血清からの精製の最終段階である。昨年報告したようにR-SGFは無限寿命化した細胞に特異的に高い増殖活性を示すので、ラット生体での癌発症に関わっている可能性が考えられる。
KAKENHI-PROJECT-07640916
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ラット血中に存在する無限寿命化した細胞に特異的な増殖因子の精製と機能の解析
そこで今回、5週齢ウイスター雄ラットに、肝発癌剤である3'MDAB(3'-methyl-4-dimethylamino azoben zene)を12週間投与し、血漿中のR-SGF量を調べた。この因子は正常時は血小板に局在しており、血漿中には全く存在しない。投与2週目から4週にかけて血漿R-SGF量は著しく増加し、やがて減少した。が、癌死直前に再び増加した。R-SGFは、発癌剤投与により血小板から遊離され、その後、発癌剤で変異した細胞の増殖を促進すると考えられ、この実験結果は、R-SGFがラット生体内でプロモーターとして作用するという我々の仮説を支持していると思われる。R-SGF(rat serum growth factor、ラット血清性細胞増殖因子)は、我々がラット血清から精製した新種のヘパリン結合性増殖因子である。その物理化学的性質や作用発現の細胞特異性について、又、この因子がラット生体内での発癌に関与する可能性を示す実験については既に報告した。一方、アミノ酸配列を決定するため、当科研費で購入したラット血清1300mlから通算2回目の精製を行ったが、この蛋白質の非特異的吸着が極めて大きいこと等の原因で収率が大幅に低下し、アミノ酸配列の決定は不可能になった。そこで、平成7年度購入血清の残りと、8年度交付金の殆どを使って購入した血清、それに他の手段で集めた血清の計約3.5リットルを使用し、第3回目の精製を開始した。今回は、従来、オープンカラムとHPLCで2度行っていたヘパリン親和性クロマトグラフィーを3度行うことにより、この段階で共存蛋白質をかなり減少することが出来た。又、最終精製品のN末端がブロックされている可能性を考え、精製のポリシ-を変更した。即ち、最後の疎水性相互作用クロマトグラフィー(この過程で収率が1/5-1/10になる)で、90%程度ピュアになった精製品をシークエンスするのではなく、前段階のイオン交換クロマトグラフィーからの溶出分画を使用し、クリーブランド法やPVDF膜へのブロット後に消化する方法で部分一次構造を決定することにした。現在、その条件を検討中である。その後、1pm程度の微量でも可能なアミノ酸シークエンサーを使用し、近い将来、アミノ酸配列を決定できる予定である。一方、この因子は、無限寿命化した株化肝細胞の増殖を促進することは既に報告したが、今回正常の初代培養肝細胞で試したところ、EGFと同程度の増殖促進活性を示した。又、BALB/c 3T3細胞での情報伝達経路を、各種インヒビターを使用して調べると、この因子のリセプターはPDGFRと似ている可能性が示唆された。これらの結果より、R-SGFは、今までに報告のない新規の増殖因子である可能性が更に強まった。
KAKENHI-PROJECT-07640916
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量子群の組合せ論的表現論
量子群の表現論と、それにまつわる組み合わせ論について、いくつかの立場から研究を行った。まず、研究代表者は量子群の表現論において、その重要性を増している結晶基底の理論について多面体表示の手法で研究を行った。多面体表示とは、無限階数の整数格子内に結晶基底を埋め込み、ある凸多面体内の格子点の集合として、結晶基底を実現する方法である。この手法の特徴は具体的な計算などが可能になる点であり、例えば、いくつかのタイプの量子群はその結晶基底が具体的に多面体内に実現されている。また、extremal vectorとよばれる表現論において重要な元も多面体上のある点として、記述されることを明確にした。また、研究代表者は1の巾根における量子群についても考察を行い、A型の場合に非制限型とよばれる量子群と制限型のよばれる量子群の表現論の関係について論じた。具体的に述べると極大巡回表現といういくつかの連続パラメーターを含む非制限型量子群の加群を用いて、そのパラメーターを特殊化することにより制限型量子群の既約加群を得ることに成功した。また、そうして得られた加群と無限小ヴァーマ加群というものとの構造の比較も行った。筱田は有限シュバレー群、Hecke環について研究を行った。まず、シュバレー群$G_2(q)$につき、その7次のモジュラー表現と11個の巾単既約表現につき対応するガウス和を具体的に求めた。さらに、証明の過程で有限体上のさまざまな和に関する関係式も得た。また、有限体上のn次一般線型群のGelfand-Graev表現について、そのHecke環の表現と指標値について考察した。特に、ある元の上での指標値は一般Kloosterman和となることを示した。量子群の表現論と、それにまつわる組み合わせ論について、いくつかの立場から研究を行った。まず、研究代表者は量子群の表現論において、その重要性を増している結晶基底の理論について多面体表示の手法で研究を行った。多面体表示とは、無限階数の整数格子内に結晶基底を埋め込み、ある凸多面体内の格子点の集合として、結晶基底を実現する方法である。この手法の特徴は具体的な計算などが可能になる点であり、例えば、いくつかのタイプの量子群はその結晶基底が具体的に多面体内に実現されている。また、extremal vectorとよばれる表現論において重要な元も多面体上のある点として、記述されることを明確にした。また、研究代表者は1の巾根における量子群についても考察を行い、A型の場合に非制限型とよばれる量子群と制限型のよばれる量子群の表現論の関係について論じた。具体的に述べると極大巡回表現といういくつかの連続パラメーターを含む非制限型量子群の加群を用いて、そのパラメーターを特殊化することにより制限型量子群の既約加群を得ることに成功した。また、そうして得られた加群と無限小ヴァーマ加群というものとの構造の比較も行った。筱田は有限シュバレー群、Hecke環について研究を行った。まず、シュバレー群$G_2(q)$につき、その7次のモジュラー表現と11個の巾単既約表現につき対応するガウス和を具体的に求めた。さらに、証明の過程で有限体上のさまざまな和に関する関係式も得た。また、有限体上のn次一般線型群のGelfand-Graev表現について、そのHecke環の表現と指標値について考察した。特に、ある元の上での指標値は一般Kloosterman和となることを示した。量子群の表現論について、特に、qが1の巾根でA型の量子群に対して研究を行った。qが1の巾根の場合はqがgenericな場合に比して、完全可約性がくずれたり、必ずしも最高ウェイト表現ではない既約表現が存在したりと、様々な困難が生じる。この研究ではA型に限ったものではあるが、従来とは異なる手法、つまり、極大cyclic表現のパラメーターの特殊化というもので、いわゆる"小さい量子群"の表現を構成することに成功した。また、結晶基底-つまり量子群のパラメーターを0にした-の理論について、Demazure moduleとよばれるものの考察を行った。これは、extremal vectorとよばれるものから正部分のみで生成されるもので古来、表現論において興味深い対象としてとりあつわれてきたものである。これの結晶基底の立場からの組合せ論的な記述とextremal vectorの具体的な形を多面体表示の理論の応用として研究した。今後の展望としては小さい量子群の表現をJantzen filtrationとよばれるものを導入し、より精密に研究していきたいと考えている。中島は量子群の表現論について研究を行った。まず、結晶基底の多面体表示についての応用として、デマズール加群の結晶基底をある有限次元の多面体内の格子点として表示し、更にその極外ベクトルをその多面体の頂点=ある線形方程式系の一意解として与えた。また、1の巾根の表現論についても、A型の場合に非制限型量子群の既約極大巡回加群のパラメーターを特殊化することにより制限型量子群の既約表現を取り出すことに成功した。更にその表現と無限小バーマ加群の構造の比較についても考察を行った。筱田はゲルファント-グラエフ表現についての研究を行い、自然表現に付随するゼータ関数の関数等式に現れるε因子と重複度がない誘導表現の自己準同型環のフーリエ変換に現れるε因子について明らかにした。量子群の表現論と、それにまつわる組み合わせ論について、いくつかの立場から研究を行った。
KAKENHI-PROJECT-13640043
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13640043
量子群の組合せ論的表現論
まず、研究代表者は量子群の表現論において、その重要性を増している結晶基底の理論について多面体表示の手法で研究を行った。多面体表示とは、無限階数の整数格子内に結晶基底を埋め込み、ある凸多面体内の格子点の集合として、結晶基底を実現する方法である。この手法の特徴は具体的な計算などが可能になる点であり、例えば、いくつかのタイプの量子群はその結晶基底が具体的に多面体内に実現されている。また、extremal vectorとよばれる表現論において重要な元も多面体上のある点として、記述されることを明確にした。また、研究代表者は1の巾根における量子群についても考察を行い、A型の場合に非制限型とよばれる量子群と制限型のよばれる量子群の表現論について論じた。具体的に述べると極大巡回表現といういくつかの連続パラメーターを含む非制限型量子群の加群を用いて、そのパラメーターを特殊化することにより制限型量子群の既約加群を得ることに成功した。また、そうして得られた加群と無限小ヴァーマ加群というものとの構造の比較も行った。筱田は有限シュバレー群、Hecke環について研究を行った。まず、シュバレー群$G_2(q)$につき、その7次のモジュラー表現と11個の巾単既約表現につき対応するガウス和を具体的に求めた。さらに、証明の過程で有限体上のさまざまな和に関する関係式も得た。また、有限体上のn次一般線型群のGelfand-Graev表現について、そのHecke環の表現と指標値について考察した。特に、ある元の上での指標値は一般Kloosterman和どなることを示した。
KAKENHI-PROJECT-13640043
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13640043
点字楽譜XMLの標準化とデータベース構築
1.データベースについて:プロトタイプを構築した。同一楽譜の異なる点訳に対応でき、五線譜から点字楽譜への変換機構も自動的に呼び出せる。ホームページ等により公開していく予定である。2.点字楽譜ビューア(統合環境)について:点字楽譜の構成要素ごとの色分けや点字プリンタへの出力機能を持つ。点訳作業の検証工程や、晴眼者の点字楽譜習得、視覚障害者教育での利用も可能である。3.点字楽譜XMLの仕様策定について:Contrapunctusプロジェクト(20062009)でBMMLと呼ばれるXMLが公開され、これを採用する。1.データベースについて:プロトタイプを構築した。同一楽譜の異なる点訳に対応でき、五線譜から点字楽譜への変換機構も自動的に呼び出せる。ホームページ等により公開していく予定である。2.点字楽譜ビューア(統合環境)について:点字楽譜の構成要素ごとの色分けや点字プリンタへの出力機能を持つ。点訳作業の検証工程や、晴眼者の点字楽譜習得、視覚障害者教育での利用も可能である。3.点字楽譜XMLの仕様策定について:Contrapunctusプロジェクト(20062009)でBMMLと呼ばれるXMLが公開され、これを採用する。この年度では、次の進展があった。(1)、(2)については、学会等で5件の研究発表がある。(1)すでにMusicXMLによる五線譜を点字楽譜へ自動変換する実験システムを運用、Web上で公開しているが、電子楽譜集(「スコアメーカのページ」)とのリンク機能を追加し、先方との協議の下、同ページのミラーサイトという利用形式で、同ページに収容されている約4000曲の電子楽譜を、点字楽譜に自動翻訳して提供できるシステムを構築した。一日数十件のアクセスがあり、利用者に定常的に楽譜を提供できている。(2)上述の点字楽譜へのアクセスとは別に、点字楽譜とMusicXMLの五線譜を収容できる楽譜データベースのプロトタイプシステムが構築された。MusicXMLによる五線譜へのアクセスは、楽譜の著作権に配慮し制限する必要があるが、五線譜を検索者から隔離して自動点訳結果のみを返送するメカニズムが考案、実現されている。今後(1)のWebページと統合し、検索などのデータベース機能を提供できるように拡張する予定である。(3)点字楽譜教育や、ボランティアのための点訳支援点字楽譜ビューアが作成された(今後試験的な利用実験の後、学会等で発表予定)。このビューアでは、点字楽譜中のシンボルにフィルタをかけ、機能ごとに色分けしたり、一部の情報のみを表示したりする機能がある。点訳ボランティアの作業の効率化や、点字プリンタを駆動して点字楽譜教育における教材作成への利用を考えている。当初予定のBNML(点字楽譜XML)の仕様策定、その後の展開については、十分進まなかったが、(1)の自動変換システムの内部形式が音楽的意味をベースとしたXML形式、(3)のビューアの内部形式が点字楽譜の文字列の統語構造をベースにしたXML形式であり、双方調整によりBNMLの仕様を確定していく予定である。この年度では、次の進展があった。(1)点字楽譜データベース構築のために、著作権を考慮したプロトタイプ・システムを構築した(次頁i-CREATe2008)。さらに、データのスキーマにFRBRモデルを応用し、点字楽譜データベース・システムを構築した(21年5月公開予定)。このデータベースには、電子楽譜集「スコアメーカのページ」との協議の下、同ページに収容されている約4000曲の電子楽譜をデータベースに収容し、点字楽譜に変換して利用者に配信するシステムへと展開予定である。(2)商用の楽譜記述様式の楽譜や、MusicXMLによる五線譜を点字楽譜へ自動変換する実験システムを運用、Web上で公開している(次頁IWAIT2008、BACH)。国内外各所から利用されている。(3)前年度作成された点字楽譜ビューアに点字プリンタを接続し、点字楽譜教育支援環境として整備中である。BACHでのディスカッション時に公開し、一応の評価を得た(デモンストレーションのみ)。この支援環境では、点字楽譜中のシンボルにフィルタをかけ、機能ごとに色分けしたり、一部の情報のみを表示したりする機能がある。導入が難しい点字楽譜の初期教育やその後の教育、教師への教育用などの応用に絞り、教育現場などで利用が見込まれる。当初予定のBNML(点字楽譜XML)の仕様策定については、十分進まなかったが、BACHへの参加によりイタリアのチームが同様のものを公開予定であることがわかった。利用可能であれは、これを代用する方向で検討している。本申請課題では、点字楽譜XMLの仕様策定、およびデータベース構築と、点訳者や視覚障害者が点字楽譜データを扱う統合環境の構築を目的としていた。1.データベースについて:構築されたデータベースシステムのプロトタイプはFABRモデルをもとにしたもので、同一楽譜の異なる点訳に対応して様々な(翻訳)形態に対応できる。また、検索機能の他、必要な場合には五線譜から点字楽譜への変換機構も自動的に呼び出せ、ユーザには統一感あるインターフェースを持つ。システムでは、我々が所有する点字楽譜、「スコアメーカのページ」やその他の電子楽譜データベースを収容しており、機械点訳したものを含め、結果をユーザに公開できる段階となった。公開は、研究代表者のホームページ等により公開していく予定である。
KAKENHI-PROJECT-19500078
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19500078
点字楽譜XMLの標準化とデータベース構築
2.点字楽譜ビューア(統合環境)と入出力機器との結合について:点字楽譜をその構成要素ごとに色分けしたり非表示にしたりする機能や点字プリンタへの出力機能を持つ、点字楽譜ビューアが公開可能となった。これに、データベース検索機能を組み合わせれば、統合環境を形成する。ビューアとして、点訳作業の検証工程に利用可能である他、晴眼者の点字楽譜習得のため、あるいは、複雑な記述を省略して簡単な表現のみを表示する機能など初等の視覚障害者教育での利用も可能である。3.点字楽譜XMLの仕様策定について:ヨーロッパを中心としたContrapunctusプロジェクト(20062009)でBMMLと呼ばれる本課題と似た目的のXMLが公開されており、これを採用することとした。
KAKENHI-PROJECT-19500078
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19500078
少子化現象と男性アイデンティティ-日本文化の変容プロセス-
本研究は文化人類学的フィールド調査をもとに、21世紀の男性アイデンティティと日本文化変容プロセスの関連を探求することを目的としている。現在、「少子化」問題が政府・民間レベルで頻繁に議論されている。この問題が語られるとき、女性の未婚化・晩婚化現象、育児と仕事が両立しにくい状況など、女性の側からのみこの問題が捉えられがちである。そこで、本研究は、30代以上の未婚男性に、フィールドワークをもとにした聞き取り調査を行うことにより、少子化現象を男性の側からアプローチした。また、政府白書、教科書、新聞、雑誌、小説など様々な媒体で、少子化現象と男性に関する資料を収集し、「男性性」(マスキュリニティ)がどのように表象されているかを考察した。また、「マスキュリニティ・スタディーズ」をめぐる動向を探るため、文化人類学を中心に日本内外のジェンダー文献資料を収集した。本研究は、女性の側からのみ語られがちな「少子化問題」を男性の側からの調査で補完することにより、女性学を超えたジェンダー研究の確立に貢献するものである。本研究の最終目標は、少子化現象と男性アイデンティティに焦点をあてることにより、日本文化の動的なプロセス(変容プロセス)を考察することにある。その際、少子化問題の根底に位置している「家族観の変容」について検討を加えた。このため、平成17年6月、The Ninth Annual Asian Studies Conference Japanにおいて、パネル「The Family Revisited」に参加した。同パネルに参加した海外研究者とともに、後に論文集『The Family Revisited: Working Papers』をまとめ刊行した。本研究は文化人類学的フィールド調査をもとに、21世紀の男性アイデンティティと日本文化変容プロセスの関連を探求することを目的としている。現在、「少子化」問題が政府・民間レベルで頻繁に議論されている。この問題が語られるとき、女性の未婚化・晩婚化現象、育児と仕事が両立しにくい状況など、女性の側からのみこの問題が捉えられがちである。そこで、本研究は、30代以上の未婚男性に、フィールドワークをもとにした聞き取り調査を行うことにより、少子化現象を男性の側からアプローチした。また、政府白書、教科書、新聞、雑誌、小説など様々な媒体で、少子化現象と男性に関する資料を収集し、「男性性」(マスキュリニティ)がどのように表象されているかを考察した。また、「マスキュリニティ・スタディーズ」をめぐる動向を探るため、文化人類学を中心に日本内外のジェンダー文献資料を収集した。本研究は、女性の側からのみ語られがちな「少子化問題」を男性の側からの調査で補完することにより、女性学を超えたジェンダー研究の確立に貢献するものである。本研究の最終目標は、少子化現象と男性アイデンティティに焦点をあてることにより、日本文化の動的なプロセス(変容プロセス)を考察することにある。その際、少子化問題の根底に位置している「家族観の変容」について検討を加えた。このため、平成17年6月、The Ninth Annual Asian Studies Conference Japanにおいて、パネル「The Family Revisited」に参加した。同パネルに参加した海外研究者とともに、後に論文集『The Family Revisited: Working Papers』をまとめ刊行した。本研究は文化人類学的フィールド調査をもとに、21世紀の男性アイデンティティと日本文化変容の関連を探求することを目的としている。現在、「少子化」問題が政府・民間レベルで頻繁に議論されている。この問題が語られるとき、女性の晩婚化現象、及び、育児と仕事が両立しにくい状況など、女性の側からのみこの問題が捉えられがちである。そこで、本研究は、30代の未婚男性及びその親の世代に、フィールドワークをもとにした聞き取り調査を行うことにより、少子化現象を男性の側からアプローチすることを目的としている。また、男性アイデンティティの変容に焦点をあてることにより、日本文化の動的なプロセス(変容のプロセス)を考察する。本研究は、女性の側からのみ語られがちな「少子化問題」を男性の側からの聞き取り調査で補完することにより、女性学を超えたジェンダー研究の確立に貢献するものである。平成16年度はフィールド調査の予備調査として、白書、新聞、雑誌などを中心に、男性と少子化現象に関する資料を収集した。さらに、日本内外のジェンダー文献資料・調査の収集を行った。その際、「男性アイデンティティ」をめぐる文化人類学的考察を中心に文献資料の収集に努め、国内、海外文献に分類して、文献資料調査結果のコンピュータ入力、データベース構築にむけての準備を行った。また、調査対象者(首都圏に在住する30代未婚男性及び同居する親)へ聞き取り調査の交渉を開始した。本格的な聞き取り調査(フォーマル・インタビュー、インフォーマル・インタビュー)については、平成17年度より開始する予定である。平成16年11月に、Anthropology of Japan in Japan(AJJ)7th Annual meetingにおいて、日本のセクシュアリティ教育(結婚、出産)と少子化の関連について学会報告を行った。本研究の目的は、21世紀の男性アイデンティティと日本文化変容プロセスの関連を探求することにある。本研究は女性の側からのみ語られがちな「少子化問題」を男性の側からの調査で補完することにより、女性学を超えたジェンダー研究の推進に貢献するものである。平成17年度は、平成16年度のフィールド予備調査をふまえ、調査対象者(首都圏に在住する30代以上の未婚男性)に聞き取り調査を行った。恋愛、結婚、仕事、余暇、家族などについてフォーマル・インタビュー/インフォーマル・インタビューを実施した。これと併行して、政府白書、教科書、新聞、雑誌、小説などを中心に少子化現象と男性に関する資料を収集し、「男性性」(マスキュリニティ)がどのように表象されているかを考察した。
KAKENHI-PROJECT-16510205
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16510205
少子化現象と男性アイデンティティ-日本文化の変容プロセス-
また、「マスキュリニティ・スタディーズ」をめぐる海外の動向について、文化人類学的考察を中心にまとめた。
KAKENHI-PROJECT-16510205
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16510205
超音波画像誘導による生体回収ウシ卵子の発育能力と遺伝子発現に関する研究
本研究プロジェクトでは、超音波断層像によって生体内の卵巣卵子の卵胞発育の動態を解析し、体外受精に利用する卵子の回収技術を体系化すると共に、体外培養胚の移植後の発育異常(過大児)が高頻度に起こる原因を究明することを目的としている。得られた結果は以下のとおりである。ウシ卵巣画像から卵胞波の動態を観察し、排卵後に残存する卵胞の吸引除去によって、あるいは卵胞液中に存在するFSH分泌抑制効果を持つインヒビンの活性を抗インヒビン抗体で中和することによって、次期卵胞波における小卵胞の著しい発育が誘導され、さらに処置後2日目に過剰排卵処置を常法に従って行うことによって、従来の方法に比べて、安定して過剰排卵が誘起され、さらにこのような方法で排卵誘起された胚を移植することによって、高率に産児まで発育することを明らかした。さらに、この方法を、長期間空胎期間が長い繁殖不適牛に適用したところ、過剰排卵を誘起することが可能になることを明らかにすることができた。一方経膣採卵卵子の発生条件を明らかにすることを試みた。その結果、卵胞液中にウシ卵子の成熟と受精後の胚発生を促進する活性(細胞質成熟促進活性)が存在し、それはヘパリン結合性物質であることを明らかにした。卵胞液に存在するヘパリン結合性を有するミッドカイン(MK,マウスリコンビナントタイプ)について検討したところ、それにはウシ卵子の細胞質成熟促進活性を有することか認められらた。そこで、ウシリコンビナントMKの大量生産を目的に、ウシMKcDNAの全塩基配列を決定し、バキュロウイルスでの発現系を確立した。ウシMKは、cDNA配列においてマウスと約70%の相同性を持ち、ウシ卵子の細胞質成熟促進活性、特に受精後の胚盤胞期への発生率では、マウス由来のものより高いことが明かとなった。本研究プロジェクトでは、超音波断層像によって生体内の卵巣卵子の卵胞発育の動態を解析し、体外受精に利用する卵子の回収技術を体系化すると共に、体外培養胚の移植後の発育異常(過大児)が高頻度に起こる原因を究明することを目的としている。得られた結果は以下のとおりである。ウシ卵巣画像から卵胞波の動態を観察し、排卵後に残存する卵胞の吸引除去によって、あるいは卵胞液中に存在するFSH分泌抑制効果を持つインヒビンの活性を抗インヒビン抗体で中和することによって、次期卵胞波における小卵胞の著しい発育が誘導され、さらに処置後2日目に過剰排卵処置を常法に従って行うことによって、従来の方法に比べて、安定して過剰排卵が誘起され、さらにこのような方法で排卵誘起された胚を移植することによって、高率に産児まで発育することを明らかした。さらに、この方法を、長期間空胎期間が長い繁殖不適牛に適用したところ、過剰排卵を誘起することが可能になることを明らかにすることができた。一方経膣採卵卵子の発生条件を明らかにすることを試みた。その結果、卵胞液中にウシ卵子の成熟と受精後の胚発生を促進する活性(細胞質成熟促進活性)が存在し、それはヘパリン結合性物質であることを明らかにした。卵胞液に存在するヘパリン結合性を有するミッドカイン(MK,マウスリコンビナントタイプ)について検討したところ、それにはウシ卵子の細胞質成熟促進活性を有することか認められらた。そこで、ウシリコンビナントMKの大量生産を目的に、ウシMKcDNAの全塩基配列を決定し、バキュロウイルスでの発現系を確立した。ウシMKは、cDNA配列においてマウスと約70%の相同性を持ち、ウシ卵子の細胞質成熟促進活性、特に受精後の胚盤胞期への発生率では、マウス由来のものより高いことが明かとなった。本研究では、超音波断層像によって生体内の卵巣卵子の動態を解析し、体外受精に利用する卵子の回収技術を体系化すると共に、これまでに問題とされている体外培養胚の移植後の発育異常(過大児)が高頻度に起こる原因を究明することを目的としている。ウシの過剰排卵処置時の卵胞動態を超音波画像診断装置により解析し、卵胞動態が採胚成績におよぼす影響を調べた。その結果、小卵胞数が少なく優勢卵胞が存在するウシ個体において、優勢卵胞の卵胞液を吸引除去することによって小卵胞の著しい発育が観察されること、および吸引除去後、2日目に従来からの過剰排卵処置を施すことによって安定した排卵誘起できることを明らかにした。またこの方法で採卵された胚のほとんどが移植可能と判定される良質のものであった。さらに卵胞液中のインヒビンが小卵胞の発育を抑制している可能性が考えられることから、次にインヒビンに対する抗体による卵胞液中のインヒビンを中和することを試みた。その結果、ブタインヒビンのC末端の27残基のアミノ酸から成るペプチドを抗原としてウシで調整された抗体を卵胞吸引の代わりにウシ個体に投与した結果、多数の小卵胞の発育が誘起され、さらに、過剰排卵処置によって多くの発育卵胞からの排卵が誘起されることを明らかにした。一方、体外培養胚の移植後の発育異常が起こる原因については全く明らかにされていないが、おそらく培養条件が体内での発生条件と大きく異なるために胚発生の調節にかかわる遺伝子発現に何らかの異常が生じるためであろうと推察されている。従って胚の遺伝子発現量を半定量的に測定する方法の開発を行った。
KAKENHI-PROJECT-08556045
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08556045
超音波画像誘導による生体回収ウシ卵子の発育能力と遺伝子発現に関する研究
その結果、CCDイメージカメラを用いた解析システムによって、体外培養胚の発現する微量なmRNAをRT-PCR法で半定量化出来るシステムを確立することができた。本研究プロジェクトにおいて、超音波断層像から生体内の卵巣卵子の卵胞発育の動態を解析し、体外受精に利用する卵子の回収技術を体系化すると共に、体外培養胚の移植後の発育異常(過大児)が高頻度に起こる原因を究明することを目的としている。これまでに、ウシ卵巣の超音波画像から卵胞波の動態を観察することによって、排卵後に残存する中卵胞の卵胞液を吸引除去することによって、次期の卵胞波において小卵胞の著しい発育が誘導され、さらに吸引除去後、2日目に従来からの過剰排卵処置を施すことによって安定した過剰排卵を誘起できることを明らかにした。さらに、卵胞液中のインヒビンが小卵胞の発育を抑制する可能性が考えられることから、インヒビン抗体によるインヒビン活性の中和を試みた結果、卵胞液吸引に匹敵する小卵胞の発育を誘起できることが判明した。この様な方法で排卵誘起された胚を移植したところ、高率に産児まで発育することが確認された。一方、体外培養胚の移植後の発育異常を改善するために、卵胞卵子の生体内での成熟および受精後の発生機構を解明する目的で以下の実験を行った。卵胞液中には卵子の成熟を促進する活性と逆に抑制する活性とが共存することが報告されていること、および成長因子がヘパリンとの親和性によって大別されていることから、ウシ卵胞液をヘパリン結合分画と非結合分画とに分画し、それぞれの卵子成熟におよぼす効果について検討した。その結果、結合分画にウシ卵胞卵子の細胞質成熟を促進し、受精後の胚盤胞期への発生を著しく促進する活性が存在することが明らかにされた。さらに卵胞液中に存在するヘパリン結合性成長因子のひとつであるミッドカイン(マウスリコンビナントミッドカイン)が同等のウシ卵胞卵子の細胞質成熟促進活性を示すことから、卵胞液中の促進活性のひとつとして新たにミッドカインが同定された。現在、ウシミッドカインをバキュロウイルス発現系をもちいて作製し、そのウシ卵胞卵子の細胞質成熟への効果を検討するよう実験を遂行している。これまでに、ウシ卵巣画像から卵胞波の動態を観察し、排卵後に残存する中卵胞の卵胞液を吸引除去することによって、あるいは卵胞液中に存在するFSH分泌抑制効果を持つインヒビンの活性を抗インヒビン抗体で中和することによって、次期卵胞波における小卵胞の著しい発育が誘導され、さらに処置後2日目に過剰排卵処置を常法に従って行うことによって、従来の方法に比べて、安定して過剰排卵が誘起されることを、さらにこのような方法で排卵誘起された胚は移植後、高率に産児まで発育することを明らかにしている。今回、残存卵胞の卵胞液吸引あるいは抗インヒビン抗体投与後に過剰排卵処置を行う方法を、長期間空胎期間が長い繁殖牛に適用したところ、過剰排卵を誘起することが可能になることを、また同一個体においてくり返し処置を行っても、過剰排卵誘起の効果は低下することがないことを明らかにすることができた。一方、体外培養胚の移植後の発育異常をの原因を解明するために、卵子の体内での発生条件を明らかにすることを試みた。まず、卵子の成熟が卵胞液中で行われることから、卵胞液中をヘパリンアフィニティークロマトグラフィーで分画することによって、ヘパリン結合分画中にウシ卵子の成熟と受精後の胚発生を促進する活性(細胞質成熟促進活性)が存在することを明らかにした。卵胞液に存在し、ヘパリンに結合するマウスリコンビナントミッドカインについて検討したところ、ウシ卵子の細胞質成熟促進活性を有することが認められらた。
KAKENHI-PROJECT-08556045
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08556045
口腔・顔面・舌感覚と咀嚼時に生じる顎・顔面・頭部運動の制御機構解明
本研究では第1に前庭神経核刺激により、リズミックな顎運動と頸筋活動が変調するか実験を行った。リズミックな顎運動は顎顔面運動野の連続電気刺激により誘発した。板状筋筋電図は開口相の間もしくは開口相から閉口相へ移行する間にリズミックな群発活動を示した。しかしながら、胸鎖乳突筋筋電図はリズミックな顎運動中に群発活動は示さなかった。閉口相での内側前庭神経核刺激は、閉口運動の振幅を増加させ、胸鎖乳突筋筋電図に群発活動を誘発し、板状筋筋電図活動の持続時間を増加させた。開口相での内側前庭神経核刺激は、顎運動のリズムを妨げ、小さな閉口運動、胸鎖乳突筋筋電図の群発活動と板状筋筋電図活動の抑制期間を誘発した。開口相での外側前庭神経核刺激や上前庭神経核刺激は、開口運動の振幅を増加させた。閉口相での下前庭神経核刺激は閉口運動の振幅を減少させ、開口相での下前庭神経核刺激は開口運動の振幅を減少させた。これらの結果は前庭神経核がリズミックな顎運動と頸筋活動の変調に関与していることを意味する。次にリズミックな顎運動中の前庭神経核ニューロン活動を検索した。リズミックな顎運動は口蓋粘膜の機械刺激により誘発した。リズミックな顎運動中、約25%の前庭神経核ニューロンは発火頻度が増加し、10%の前庭神経核ニューロンは発火頻度が減少した。発火頻度の変化と顎運動の相(開口相と閉口相)との間に相関はなかった。これらの結果は前庭神経核ニューロンが顎運動の制御に関与していることを示唆している。本研究では第1に前庭神経核刺激により、リズミックな顎運動と頸筋活動が変調するか実験を行った。リズミックな顎運動は顎顔面運動野の連続電気刺激により誘発した。板状筋筋電図は開口相の間もしくは開口相から閉口相へ移行する間にリズミックな群発活動を示した。しかしながら、胸鎖乳突筋筋電図はリズミックな顎運動中に群発活動は示さなかった。閉口相での内側前庭神経核刺激は、閉口運動の振幅を増加させ、胸鎖乳突筋筋電図に群発活動を誘発し、板状筋筋電図活動の持続時間を増加させた。開口相での内側前庭神経核刺激は、顎運動のリズムを妨げ、小さな閉口運動、胸鎖乳突筋筋電図の群発活動と板状筋筋電図活動の抑制期間を誘発した。開口相での外側前庭神経核刺激や上前庭神経核刺激は、開口運動の振幅を増加させた。閉口相での下前庭神経核刺激は閉口運動の振幅を減少させ、開口相での下前庭神経核刺激は開口運動の振幅を減少させた。これらの結果は前庭神経核がリズミックな顎運動と頸筋活動の変調に関与していることを意味する。次にリズミックな顎運動中の前庭神経核ニューロン活動を検索した。リズミックな顎運動は口蓋粘膜の機械刺激により誘発した。リズミックな顎運動中、約25%の前庭神経核ニューロンは発火頻度が増加し、10%の前庭神経核ニューロンは発火頻度が減少した。発火頻度の変化と顎運動の相(開口相と閉口相)との間に相関はなかった。これらの結果は前庭神経核ニューロンが顎運動の制御に関与していることを示唆している。咀嚼時に生じる顎運動と頭部運動の中枢性制御機構を解明するため、まずラットをウレタンで麻酔し、皮質顎顔面運動野の連続電気刺激によりリズミックな顎運動を誘発させた。この時、顎運動ならびに咬筋、顎二腹筋前腹、胸鎖乳突筋、板状筋から筋電図を記録した。次に顎運動中に、顎運動と頭部運動の制御に関係していると考えられる前庭神経核の電気刺激を行った。そして顎運動と各筋電図活動にどのような変調が見られるか検索し、以下のことが明らかとなった。1、板状筋は口腔顔面運動野刺激後、最初に生じる開口運動に伴って活動が上昇した。そしてリズミックな顎運動中、開口運動の開始約34ms後から、閉口運動の開始前後まで、リズミックな群発活動が見られた。一方、胸鎖乳突筋は顎運動中、群発活動は見られなかった。2、閉口相で前庭神経内側核を刺激した場合、閉口運動の振幅が増大し、前庭神経内側核刺激と同側への側方運動の振幅が増大した。また咬筋活動の持続時間が増大し、胸鎖乳突筋で群発活動が誘発した。3、開口相で前庭神経内側核を刺激した場合、小さな閉口運動が誘発し、側方運動の持続時間が増大した。また咬筋と胸鎖乳突筋で群発活動が誘発され、顎二腹筋前腹の抑制が生じた。4、閉口相で前庭神経外側核と前庭神経上核を刺激した場合、閉口運動の振幅に影響を及ぼさなかった。5、開口相で前庭神経外側核と前庭神経上核を刺激した場合、開口運動の振幅が増大した。6、閉口相で前庭神経下核を刺激した場合、閉口運動の振幅が減少した。7、開口相で前庭神経下核を刺激した場合、開口運動の振幅が減少した。
KAKENHI-PROJECT-22592079
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22592079
口腔・顔面・舌感覚と咀嚼時に生じる顎・顔面・頭部運動の制御機構解明
これらのことから、前庭神経核は皮質誘発性顎運動、顎筋と頸筋の変調に関与していることが示唆された。咀嚼時に生じる顎運動と頭部運動の中枢性制御機構を解明するため、まずラットをウレタンで麻酔し、皮質顎顔面運動野の連続電気刺激によりリズミックな顎運動を誘発させた。この時、顎運動ならびに咬筋、顎二腹筋前腹、胸鎖乳突筋、板状筋から筋電図を記録した。次に顎運動中に、顎運動と頭部運動の制御に関係していると考えられる内側前庭神経核の電気刺激を行った。そして顎運動と各筋電図活動にどのような変調が見られるか検索し、以下のことが明らかとなった。1、板状筋は口腔顔面運動野刺激後、最初に生じる開口運動に伴って活動が上昇した。そしてリズミックな顎運動中、開口相の間、または開口相から閉口相へ移行する間、リズミックな群発活動が見られた。一方、胸鎖乳突筋は顎運動中、群発活動は見られなかった。2、閉口相で内側前庭神経核を刺激した場合、閉口運動の振幅が増加し、咬筋と胸鎖乳突筋で群発活動が誘発され、板状筋の活動時間が増加した。3、開口相で内側前庭神経核を剃激した場合、小さな閉口運動が誘発された。また咬筋と胸鎖乳突筋で群発活動が誘発され、顎二腹筋前腹と板状筋の抑制が生じた。これらのことから、内側前庭神経核は皮質誘発性顎運動中の顎筋と頸筋の変調に関与していることが示唆された。次にウレタン麻酔下ラットを用いて。硬口蓋の機械刺激により、リズミックな顎運動を誘発させた。そして前庭神経核ニューロンからの細胞外記録と咬筋・顎二腹筋前腹からの筋電図記録を行った。その結果、内側前庭神経、外側前庭神経核、上前庭神経核と下前庭神経核から、顎運動中、発火頻度が増加または減少するニューロンが記録された。発火頻度の変化と顎運動の相(開口相と閉口相)の間に関係はなかった。また、これらニューロンの発火頻度は、受動的な開口に対し変化しなかった。これらのことから、前庭神経核は顎運動の調節に関与していることが示唆された。咀嚼時に生じる顎運動と頭部運動の中枢性制御機構を解明するため、まずラットをウレタンで麻酔し、硬口蓋の機械刺激により、リズミックな顎運動を誘発させた。この時、顎運動ならびに咬筋と顎二腹筋前腹から筋電図を記録した。そして顎運動中に、顎運動と頭部運動の制御に関係していると考えられる前庭神経核ニューロンからの細胞外記録を行い、ニューロン活動にどのような変調が見られるか検索し、以下のことが明らかとなった。1、リズムが遅く大きな側方運動を伴うものと、リズムが速く単純な開閉口運動からからなるものの2種類のリズミックな顎運動が誘発された。2、内側前庭神経、外側前庭神経核、上前庭神経核と下前庭神経核から、2種類の顎運動中、発火頻度が増加または減少するニューロンが記録された。3、2種類の顎運動中、発火頻度が増加するニューロンは減少するニューロンより、内側前庭神経、外側前庭神経核、上前庭神経核で多く記録された。一方、発火頻度が減少するニューロンは、下前庭神経核で最も多く記録された。4、顎運動中、変調したニューロンは前庭神経核内に混在していた。5、発火頻度の変化と顎運動の相(開口相と閉口相)の間に関係はなかった。6、変調したニューロンの発火頻度は、受動的な開口や硬口蓋・咬筋・側頭筋の圧刺激に対し変化しなかった。これらのことから、前庭神経核は顎運動の調節に関与していることが示唆された。平成22年度から23年度に計画した4つの実験のうち2つが完了し、残り2つを遂行しなくても、当初の目的がおおよそ達成されたため。24年度が最終年度であるため、記入しない。これまでは麻酔下ラットを使用した急性実験のみ行ってきたので、今後は自由運動下のラットを用いて慢性実験を行うことを予定している。具体的には、実際に咀嚼している際の前庭神経核ニューロン活動の記録や前庭神経核刺激を行った際の咀嚼運動や咀嚼筋筋電図活動を検索する。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22592079
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22592079
重力ストレス環境下における痛みの変調とその機序
様々なストレスを動物に与えることによって、stress-induced analgesia (SIA)と呼ばれる鎮痛効果があることが報告されている。本研究ではラットを用いて、重力刺激が侵害刺激による引っ込め反射にどのような作用をもたらすか調べた。30匹の135-140gのWistarラットを対象とした。ラットをランダムに1.0g、1.5g、2.0g、4.0gと2.0gNの3つのグループに分けた。フォンフライタイプの針で侵害刺激を与える8つの部位(鼻、両前肢、両後肢、背、腰、尾)を決定した。重力刺激を与える前に、全てのラットは引っ込め反射のベースラインの閾値を測定した。重力刺激は、1.0gグループでは遠心機に10分間ラットを入れたのみで回転させず、1.5gグループは98r.p.m.で、2.0gグループは116r.p.m.で、4.0gグループは165r.p.m.で回転した。4.0gN決められた8つの部位に針を当て、各部位の闇値を重力刺激後測定した。ベースラインの引っ込め反射の閾値は、上半身で低くかった。コントロールである1.0gグループでは鎮痛効果はみられなかった。1.5gでは痛覚過敏にかることがあった。2.0gと4.0gでは鎮痛効果が認められ、20.gでは4.0gよりも効果が大きく、上半身で効果が大きい傾向にあった。2.0gでは弓状核と室傍核にfos発現がみられ、2.0gNグループではナロキソン投与により鎮痛効果が完全に拮抗された。以上より、重力ストレスにもSIAと呼ばれる鎮痛効果があり、内因性オピオイド機構が働いている。またこの効果はdose-dependentではなかった。Stress induced analgesiaという概念で、様々なストレス環境下で、動物に鎮痛効果がみられることが報告されている。しかし重力ストレスでの鎮痛効果の研究は少なく、人においては報告がない。本研究ではラットにおいて、重力ストレスが痛みにどう影響するかを調べる。痛みの評価としてvon Freyタイプの器具でwithdrawal reflexが起こる閾値を測定した。鼻、両前肢、両後肢、背、腰、尾の8箇所の閾値を3回ずつ測定し、平均値を算出した。重力ストレスを加える直前に、ベースラインとしての閾値を測定した。2.0G相当の重力ストレスとして、16匹のラットを、遠心機を用いて116rpmで10分間回転した。コントロールグループの5匹のラットは、回転させずに遠心機に10分間拘束した。遠心機からラットを出して直ぐに閾値を測定し始め、10分ごとに1時間後まで同様に測定した。重力ストレス負荷前のベースラインの閾値は、鼻で有意に低く、両前肢では低い傾向にあった。重力ストレス刺激直後より、全部位で有意に閾値は上昇し、1時間後までその鎮痛効果は持続した。最も顕著な鼻では、閾値はベースラインの3倍以上に上昇した。ベースラインで鼻と両前肢が敏感であり、鎮痛効果は鼻で最も大きく、両前肢で下半身(両後肢、腰、尾)よりも大きい傾向にあった。ラットにおいて、重力ストレス刺激には鎮痛効果がある。様々なストレスを動物に与えることによって、stress-induced analgesia (SIA)と呼ばれる鎮痛効果があることが報告されている。本研究ではラットを用いて、重力刺激が侵害刺激による引っ込め反射にどのような作用をもたらすか調べた。30匹の135-140gのWistarラットを対象とした。ラットをランダムに1.0g、1.5g、2.0g、4.0gと2.0gNの3つのグループに分けた。フォンフライタイプの針で侵害刺激を与える8つの部位(鼻、両前肢、両後肢、背、腰、尾)を決定した。重力刺激を与える前に、全てのラットは引っ込め反射のベースラインの閾値を測定した。重力刺激は、1.0gグループでは遠心機に10分間ラットを入れたのみで回転させず、1.5gグループは98r.p.m.で、2.0gグループは116r.p.m.で、4.0gグループは165r.p.m.で回転した。4.0gN決められた8つの部位に針を当て、各部位の闇値を重力刺激後測定した。ベースラインの引っ込め反射の閾値は、上半身で低くかった。コントロールである1.0gグループでは鎮痛効果はみられなかった。1.5gでは痛覚過敏にかることがあった。2.0gと4.0gでは鎮痛効果が認められ、20.gでは4.0gよりも効果が大きく、上半身で効果が大きい傾向にあった。2.0gでは弓状核と室傍核にfos発現がみられ、2.0gNグループではナロキソン投与により鎮痛効果が完全に拮抗された。以上より、重力ストレスにもSIAと呼ばれる鎮痛効果があり、内因性オピオイド機構が働いている。またこの効果はdose-dependentではなかった。
KAKENHI-PROJECT-14770760
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14770760
バイオイメージングによるウイルス感染と細胞応答の定量解析
本研究においては、細胞への感染成立には、インフルエンザウイルス粒子が何個必要かという命題を解くために、研究を行っている。そのため、ウイルス粒子が細胞内侵入する際に重要なシグナル伝達経路の解析と、ウイルス粒子の精密計測により粒子数とその経路の関係性を検討した。シグナル伝達解析においては感染時のカルシウム上昇に着目し、その責任分子の機能解析を進めた。同定した責任分子は24回膜貫通型の膜タンパク質であり、生化学的解析を行うための可溶化が困難であった。種々の界面活性剤を用いて可溶化条件を検討したところ、凝集せずに単量体として可溶化することに成功した。この条件を用いることで、この責任分子とウイルス粒子の結合を介してカルシウム上昇が引き起こされることが明らかになった。また、領域内の東京大学工学系研究科・野地先生、田端先生との共同研究により、用いるウイルスサンプルの粒子数とMOIの関係を明らかにしたうえで、感染性の評価を行った。その結果、ウイルス感染効率はこれまで考えられていたMOIよりも、粒子数に依存することが明らかになった。また、粒子数が多い時と少ない時では異なる細胞の応答性が観察された。粒子数が多い時には感染にある種の正のフィードバックのようなブースト機構が存在すること、そのブースト機構にカルシウムが重要であることが解った。実際に高い複製が認められ、多くの粒子が取り込まれたと考えられる細胞には、上記の責任分子が多く発言していた。一方で、複製が盛んではない(0ではない)細胞においては上記の責任分子の発現量が低く、カルシウム応答も見られないことから、カルシウム非依存性のメカニズムによりウイルスが感染するものと考えられた。両者の境界は細胞1つあたりウイルス粒子20個程度であり、感染には数10個程度の粒子が必要であることが明らかになった。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。本研究では、蛍光ラベルしたウイルス粒子あるいはウイルス様粒子と、FRETの原理を利用した各種バイオセンサーによるバイオイメージングを中心に、生化学・分子生物学・細胞生物学手法を統合的に用い、全体をシステムとして扱うことで、「何個のウイルス粒子が、その後の細胞応答と感染成立に必要か?」という命題にチャレンジする。本年度は以下の項目について研究を行った。(A)粒子取込に必要な細胞内シグナルは何個のウイルス粒子により発動するか:蛍光標識したウイルス粒子の吸着・侵入をライブセルで可視化すると同時に、FRETバイオセンサーを用いた細胞内シグナルの動態観察を、2秒毎のタイムラプスイメージングで行った。その結果、細胞全体でのカルシウム上昇に先行する、ウイルス粒子結合部位周辺で感染直後に一過性に生じるカルシウム上昇の検出に成功した。(1)ウイルス粒子数の精密測定に共同研究で成功した。この粒子数が既知のウイルス粒子をカルボシアニン膜色素DiDで染色し、ポリエチレンイミンでコーティングしたカバーガラスに、粒子1つ1つが独立して存在するように吸着させる。ここで観察されるスポットの蛍光強度から、ウイルス粒子1つあたりの蛍光強度を算出する。同時に標準蛍光色素溶液を作製し、1粒子当たり蛍光色素の標識量と、粒子ラベル化効率のばらつきと平均蛍光強度を決定した。(2)粒子数依存的なウイルス粒子の細胞内動態:上記で作製したウイルス粒子の吸着・侵入をライブセルで可視化した。(3)粒子数依存的な細胞応答の定量解析:各種シグナル伝達因子の活性化をモニターするFRETバイオセンサーを発現させた細胞に、上記で決定した条件のウイルス粒子数を感染させ、生じる細胞応答を定量的に解析した。これにより、細胞応答に必要なウイルス粒子すを決定することができた。本研究においては、細胞への感染成立には、インフルエンザウイルス粒子が何個必要かという命題を解くために、研究を行っている。そのため、ウイルス粒子が細胞内侵入する際に重要なシグナル伝達経路の解析と、ウイルス粒子の精密計測により粒子数とその経路の関係性を検討した。シグナル伝達解析においては感染時のカルシウム上昇に着目し、その責任分子の機能解析を進めた。同定した責任分子は24回膜貫通型の膜タンパク質であり、生化学的解析を行うための可溶化が困難であった。種々の界面活性剤を用いて可溶化条件を検討したところ、凝集せずに単量体として可溶化することに成功した。この条件を用いることで、この責任分子とウイルス粒子の結合を介してカルシウム上昇が引き起こされることが明らかになった。また、領域内の東京大学工学系研究科・野地先生、田端先生との共同研究により、用いるウイルスサンプルの粒子数とMOIの関係を明らかにしたうえで、感染性の評価を行った。その結果、ウイルス感染効率はこれまで考えられていたMOIよりも、粒子数に依存することが明らかになった。また、粒子数が多い時と少ない時では異なる細胞の応答性が観察された。粒子数が多い時には感染にある種の正のフィードバックのようなブースト機構が存在すること、そのブースト機構にカルシウムが重要であることが解った。実際に高い複製が認められ、多くの粒子が取り込まれたと考えられる細胞には、上記の責任分子が多く発言していた。一方で、複製が盛んではない(0ではない)細胞においては上記の責任分子の発現量が低く、カルシウム応答も見られないことから、カルシウム非依存性のメカニズムによりウイルスが感染するものと考えられた。両者の境界は細胞1つあたりウイルス粒子20個程度であり、感染には数10個程度の粒子が必要であることが明らかになった。計画調書で記載した平成26年度の予定に加え、翌年度実施される予定の研究も着手し、成果が得られつつあるので。
KAKENHI-PUBLICLY-26115701
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-26115701
バイオイメージングによるウイルス感染と細胞応答の定量解析
27年度が最終年度であるため、記入しない。当初の計画通り以下の研究を推進する。(B)ウイルス粒子の取込および感染性子孫粒子の形成に必要な細胞応答の強度の決定。(C)感染成立・伝搬力可能な子孫ウイルス形成に至る必要十分はウイルス量・シグナル強度の決定。(D)隣接する細胞へ感染を伝播するために必要最小条件の決定。(E)得られたパラメータの統合的解析。27年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-26115701
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-26115701
日本近世出版法制研究補完及び文学史との相関追求
最終年度においては、幕府が藩に知らせた出版法があるかないかの確認作業を終え、論文化することを試みた。これまで幕府が藩に出版法を伝えたかどうかを確かめた者がいないからである。幕府が藩に知らせた法令を記録した史料として知られている地方法制史料のうち、岡山藩の史料である岡山大学附属図書館池田家文庫の『東御法令』と加賀藩の史料である金沢市立玉川図書館近世史料館加越能文庫『公儀御触』の内容を点検し、幕府が藩に出版法を知らせた形跡がないことを確認した。しかし、岡山藩の史料は年次順、加賀藩の史料は分類体であり、形態がことなっているし、岡山藩の分類体法令集『法例集』に使用された史料名を見ると、江戸時代岡山藩には『東御法令』とは別の逐次記録史料があったようであり、もし『東御法令』が採択実施法令集だとすると、『東御法令』以外にも幕府が岡山藩に伝えた法令があった可能性がある。一方、加賀藩の史料は江戸時代前期の法令を収録していない江戸時代後期の法典である。『東御法令』と『公儀御触』に出版法が収録されないからと言って、単純に幕府が出版法を藩に伝えなかったとは言えないかもしれない。そのため加賀藩の諸史料を網羅的に拾った編年体の史料集『加賀藩史料』(全17巻)の内容を補足点検する作業に入って年度末に至った。また、念のため幕府が藩に伝えた法令を記録する史料として知られるもうひとつの(最後の)史料である熊本大学附属図書館永青文庫の収録内容を点検すべきであると考えている。なお、研究期間全体を振り返れば、研究期間前半年度に行った作業によって、大阪出版法の補足作業を終えた研究期間となった。今後、研究期間中に未完成となった文学史との相関の追求、特に大阪の西鶴作品に注目して法と文学との具体的関係を考察していくことになろう。本研究計画にはその目的に二つの柱がある。江戸時代出版法制度の実態究明とその文学史動向との関係追求である。現在未解明の三都(江戸、京都、大阪)以外の出版法については、『御触書集成目録』解題執筆者服藤弘司氏の論文集『幕府法と藩法』によって、それを確認すべき史料の存在を洗い出し、翻刻史料の収集を行い、未翻刻史料の研究期間中の閲覧あるいは複製計画を立てつつある。また、それでは把握できない代官史料の存在についても法制史料解題の類からその存在を洗い出し、計画の中に入れつつある。また、三都のうち最も法令文の欠落の多い大阪に関してその補充作業を試みている。今年度は活字紹介の行われていた『大坂御仕置御書出之写』中にふくまれる新出出版法令によって大阪のみならず、江戸・京都の元禄二年不明法令を推定し、江戸時代前期法令の不明状況を推定する手がかりを得た(「元禄二年「異説」の捜索」)。また、江戸に関して、京都と同じく、江戸時代前期に奉行所への出版申請制があったことが、国学者荷田在満が書き残した記録からわかることを明らかにした(「江戸時代前期の江戸における町奉行所出版許可制の存在について」)。江戸では人の噂に関する出版を規制する法令があったから、この町奉行所出版申請制度は江戸における人の噂に関する出版規制を人々に厳守させる結果をもたらしたはずである。現在、三都出版法と三都浮世草子の作品内容及び質の相違との相関関係の有無につき考定すべく、江戸浮世草子の内容確認を行いつつある。研究課題に関しては、史料の所在確認、史料の収集計画、成果執筆計画、等、すべてに関して順調に進めており、今後の見通しに関しても特に問題はないと思われ、さらに、すでに研究成果を論文として発表しつつある。本研究計画にはその目的に二つの柱がある。江戸時代出版法制度の実態究明とその文学史動向との関係追求である。現在未解明の三都(江戸、京都、大阪)以外の出版法については、岡山大学附属図書館池田家文庫所蔵の岡山藩法制史料を複写収集し、幕府発令の出版法がどの程度岡山藩に通達されるものかを確認中である。また、『御触書集成目録』解題執筆者服藤弘司氏の論文集『幕府法と藩法』に使用される翻刻史料等について内容を確認中である。また、未翻刻史料について閲覧あるいは複製計画を立てた。また、三都のうち最も法令文の欠落の多い大阪に関してその補充作業を試みている。今年度は大阪市史史料編纂所所蔵の御八幡宮文書(紙焼写真)および尼崎地域歴史史料館所蔵の庄屋文書を閲覧調査し、必要な史料の複写収集を行った。また、すでに紹介のある大阪触補充史料につき、出版令にしぼった観点からその意義を考察し、また、未紹介の岡山藩法制史料によってその省略部分が補えることを報告した(「『せん年より御ふれふみ』『大坂岡山御触留』で補われる江戸時代大阪出版法令についてー附、岡山大学附属図書館池田家文庫蔵『宝暦三癸酉八月ヨリ大坂岡山御触留』所収大阪触達番号一覧ー」)。さらには、紹介済みであるにもかかわらず、あまり分析の進展しない史料・大坂本屋仲間記録を用いて、江戸時代中後期の出版法制度維持の中心的役割をになった大阪本屋仲間の中心的存在である行司の固定的性格について史料的に跡づけ、行司の行政的責任の重さとその資格について考察した(「江戸時代大阪本屋仲間行司の固定的性格」)。出版法制史と文学史との相関考察については、課題として次年度以降に持ち越した。
KAKENHI-PROJECT-15K02248
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日本近世出版法制研究補完及び文学史との相関追求
研究課題に関しては、史料の所在確認、史料の収集計画、成果執筆計画、等、全方面に関して進んでおり、今後の見通しに関しても特に問題はないと思われ、さらに、すでに研究成果を論文として発表しつつある。本研究計画では、江戸時代出版法制度の実態究明とその文学史動向との関係追求を二本の柱としている。そして、本研究計画最終年度の前年度にあたる今年度は、それらの課題について行ってきた昨年度までの作業をふまえて、平成21年時の作業認識である山本秀樹『江戸時代三都出版法大概ー文学史・出版史のためにー』(岡山大学文学部研究叢書29、岡山大学文学部)を再度見直し、本研究計画の総括形としての公開に向けて修正しつつある。その修正点を例記するとすれば、たとえば江戸時代の書籍法が原則出版法ではなく、(写本をも対象とする)書物法であり、書物の存在自体を許さない禁書法ではなく、禁流通法であったこと。あるいは、これまでに発掘した大阪書物法データの補充。そして、それによって明らかになった、元禄時点において三都出版業者の幕府権力による把握が行われていたこと。及び、享保期江戸本屋仲間の成立が出版検閲権の民間への委託を意味したのではないかということ、等の修正である。一方、本研究計画の第一の柱である江戸時代出版法制度の実態究明の中心作業の一つに位置づけた、三都(江戸・京都・大阪)以外の出版法制度の解明については、前年度来の継続作業として、収集した岡山大学附属図書館池田家文庫・金沢市立玉川図書館近世史料館加越能文庫所蔵史料の分析作業を継続中である。また、幕領を管轄した代官史料の発掘については、著名な大規模史料である伊豆の国市韮山の江川文庫が今なお整理中非公開であるため、他の代官史料を探し求めているが、法令史料をふくむような代官史料にいまだ見当たっていない。今後も情報収集につとめなければならない。少なくとも岡山大学附属図書館池田家文庫及び金沢市立玉川図書館近世史料館加越能文庫所蔵の幕府法令史料によって、当初の課題として設定した三都(江戸・京都・大阪)以外の出版法の有無の確認は取れるであろう。一方、当初見込んでいた幕府代官史料がいまだ未確認の状態となっているが、もし来年度までに幕府代官史料が未発掘のまま研究計画終了を迎えたとしても、少なくとも上記史料によって三都以外の出版法状況を推知する手段は得られたことになり、三都の状況しか知られなかったこれまでとは認識の地平の広がりが決定的に異なることになろう。最終年度においては、幕府が藩に知らせた出版法があるかないかの確認作業を終え、論文化することを試みた。これまで幕府が藩に出版法を伝えたかどうかを確かめた者がいないからである。幕府が藩に知らせた法令を記録した史料として知られている地方法制史料のうち、岡山藩の史料である岡山大学附属図書館池田家文庫の『東御法令』と加賀藩の史料である金沢市立玉川図書館近世史料館加越能文庫『公儀御触』の内容を点検し、幕府が藩に出版法を知らせた形跡がないことを確認した。しかし、岡山藩の史料は年次順、加賀藩の史料は分類体であり、形態がことなっているし、岡山藩の分類体法令集『法例集』に使用された史料名を見ると、江戸時代岡山藩には『東御法令』とは別の逐次記録史料があったようであり、もし『東御法令』が採択実施法令集だとすると、『東御法令』以外にも幕府が岡山藩に伝えた法令があった可能性がある。一方、加賀藩の史料は江戸時代前期の法令を収録していない江戸時代後期の法典である。
KAKENHI-PROJECT-15K02248
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東アジア漂海民の家船居住と陸地定住化に関する比較研究
東アジアから東南アジアにかけて広範囲に分布する家船居住の実態をあきらかにするための前提として、これまでの研究史を整理し、この地域における家船の分布図と家船呼称の分布図を作成した。一方、山口県の見島、マレーシアのペナン島とケタム島、ベトナムの香河、カンボジアのトンレサップ湖などで水上居住に関するフィールドワークを進めた。ベトナムのフエには約2万艘の家船が現存する。すてに相当の研究が蓄積されており、関係論文2篇を入手し、これを翻訳した。最も集中的な調査をおこなったのは、カンボジアのトンレサップ湖である。トンレサップは東南アジア最大の淡水湖であり、雨期と乾季で水位が約6メートル上下する。ここにチョンクニアスという大規模な水上集落が形成されており、そこにはおびただしい数の家船・筏住居・杭上住居が共存している。水上居住民の陸地定住化のプロセスを考察するにあたって、きわめて示唆にとむ。また、湖岸のスクウォッターとしての杭上住居だけでなく、一般農村の高床住居についても調査し、両者の構造・間取りを比較した。トンレサップ湖には、クメール人だけてなく、ベトナムからの難民が多数流入している点も興味深い。東南アジアでは、日本・中国では消滅しつつある家船居住が現在なお迫力をもって息づいており、これらの調査研究成果を中心にして、報告書を刊行した。東アジアから東南アジアにかけて広範囲に分布する家船居住の実態をあきらかにするための前提として、これまでの研究史を整理し、この地域における家船の分布図と家船呼称の分布図を作成した。一方、山口県の見島、マレーシアのペナン島とケタム島、ベトナムの香河、カンボジアのトンレサップ湖などで水上居住に関するフィールドワークを進めた。ベトナムのフエには約2万艘の家船が現存する。すてに相当の研究が蓄積されており、関係論文2篇を入手し、これを翻訳した。最も集中的な調査をおこなったのは、カンボジアのトンレサップ湖である。トンレサップは東南アジア最大の淡水湖であり、雨期と乾季で水位が約6メートル上下する。ここにチョンクニアスという大規模な水上集落が形成されており、そこにはおびただしい数の家船・筏住居・杭上住居が共存している。水上居住民の陸地定住化のプロセスを考察するにあたって、きわめて示唆にとむ。また、湖岸のスクウォッターとしての杭上住居だけでなく、一般農村の高床住居についても調査し、両者の構造・間取りを比較した。トンレサップ湖には、クメール人だけてなく、ベトナムからの難民が多数流入している点も興味深い。東南アジアでは、日本・中国では消滅しつつある家船居住が現在なお迫力をもって息づいており、これらの調査研究成果を中心にして、報告書を刊行した。東アジアから東南アジアにかけて広範囲に分布する家船居住の実態をあきらかにするために、これまでの研究史を整理し、関係文献を集成した上で、この地域における家船の分布図と家船呼称の分布図を作成した。これら文献研究を進める一方、日本と東南アジアでのフィールドワークも進めてきた。日本ではこれまでおこなってきた日本海沿岸離島調査の一環として、山口県の見島を訪れ、萩・見島一帯でもかつては家船居住民の存在したことを確認できた。東南アジアの水上居住民については、01年9月にタイとマレーシア、02年2月にヴェトナムで調査をおこなった。タイでは、現地の水上居住民研究研究者であるChaweewan Denpaiboon女史に導かれ、ピサノロークとウータイタニで筏住居を調査した。マレーシアではペナン島とケタム島で華人の水上集落を調査した。ヴェトナムでは、まずホーチミン市内とその近郊のミトーでメコン支流沿岸域の水上住居を調査した。ついで、フエではヴェトナム文化芸術研究所中央ヴェトナム支局のNgyen Huu Tong支局長と意見交換を交わした。フエでは香河の上流域から下流のラグーンにかけて、2万艘以上の家船居住民がいる。そのうち、市内の家船居住民は都市域での労働(自転車タクシーの運転手兼ポン引や土砂運搬など)に携わり、上流とラグーンの家船居住民は漁労を生業としている。これについては、すでにNgyen Huu Tong氏の指導する大学院生が論文を著しており、関係する2篇の論文コピーをいただいた。いずれもヴェトナム語の論文であり、来年度、ヴェトナム語の専門家に翻訳を依頼する予定である。フエでは上流から下流まで広い範囲をクルージングし、多数の家船を写真撮影もしくはスケッチした。フエの成果は予想以上であり、来年度以降も主要なフィールドとして継続調査することにした。今年度はこれまで蓄積してきた研究、とくに初年度に作成した日本・東アジア・東南アジアにおける家船分布図・家船呼称分布図に基づく研究論文を鳥取環境大学紀要創刊号と台湾中央研究院APARP(中央研究院東北亜研究論文系列)No.17に発表した。また、2002年2月に訪れたベトナム・フエ市で意見交換したNgyen Huu Tong氏(ベトナム文化芸術研究所中央ベトナム支局長)に提供していただいた論文2篇(いずれもフエを中心とするベトナムの水上居住に関する論考)のうちの一篇を、ベトナム語の専門家に依頼して翻訳した。一方、2002年12月には、カンボジアのトンレサップ湖において約1週間の調査をおこなった。トンレサップはきわめて広大な湖であり、雨期と乾季で水位が数メートルも上下する。
KAKENHI-PROJECT-13650707
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東アジア漂海民の家船居住と陸地定住化に関する比較研究
代表者の浅川は、アンコール遺跡群で名高いシェムレアップ市に滞在し、その東の郊外にあたるトンレサップ湖西岸の水上集落を調査した。そこには家船・筏住居・杭上住居が共存しており、学校や教会などの公共施設までもが筏の上に築かれている。家船・筏住居・杭上住居の共存という点は、水上居住民の陸地定住化のプロセスを考察するにあたって、きわめて示唆にとむものである。また、湖岸のスクウォッターとしての杭上住居だけでなく、一般農村の高床住居についても調査し、両者の構造・間取りを比較した。トンレサップ湖には、クメール人だけでなく、ベトナムからの難民が多数流入している点も興味深く、可能ならば、来年度以降も継続的に調査をおこないたい。今年度は3ヶ年計画の研究の最終年度にあたり、研究成果報告書の編集を第一とした。報告書の構成は以下のとおりである。序家船と水上居住-日本海島嶼から東南アジア内陸水域まで(浅川)第1章東アジア漂流民と家船居住(浅川)第2章東亜的漂海民和家船住宅(同上中国語論文)第3章家船の陸上がりと水陸の境界-中国広東省中山市の事例(長沼さやか)第4章1975年以前の香河におけるヴアンと船上生活(ファン・ホアン・クイ/訳グエン・テ・フン&山形真理子)第6章香河水上居民の住居と生活-実態と問題提起116ホアン・バオ(訳山形真理子&グエン・テ・フン)第8章トンレサップ湖の水上居住-家船・筏住居・高床住居-(浅川)第12章は東方アジアの水上居住を広域的に捉えた総論である。第3章は中国の蛋民を「水陸の境界」という視点からとらえた論考。第47章は、本科学研究費で訪れたベトナム・フエ市で提供された関係論文の翻訳と原典、第8章は本科学研究費で訪れたカンボジア・トンレサップ湖の水上居住に関するレポートである。日本・中国では消滅しつつある家船居住が東南アジア各地では現在なお迫力をもって息づいており、とくにベトナム香河流域の家船とカンボジアのトンレサップ湖で展開する水上居住の多彩さは驚異的である。これらの調査研究成果をできるだけくわしく取り上げた報告書としたつもりである。
KAKENHI-PROJECT-13650707
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精神分裂病における新しい細胞内セカンドメッセンジャー標的遺伝子群の遺伝解析
平成14年度より開始した本研究について、その成果について以下に記した。1)候補遺伝子の遺伝子構造の決定:cAMP-GEFI、cAMP-GEFII、CalDAG-GEFI、CalDAG-GEFII、それぞれの遺伝子の遺伝子構造の決定に関しては終了した。手法は、データベースに登録されている、Human Genome Projectのドラフトシーケンスとそれぞれの遺伝子のmRNAの配列を比較し、エクソン領域、イントロン領域、プロモータ領域の決定を行った。2)SNPの分離:それぞれの遺伝子に関して、エクソン領域をはさむ領域及びプロモータ領域についてプライマー対の作成を行い、それぞれの領域を増幅し、塩基配列の決定を行った。約100名の配列を比較し、データベースの情報とともにSNPの同定を行った。3)統合失調症罹患群・対照群の検体収集:統合失調症の患者及び非罹患対照群のサンプル収集は、九大病院・精神科神経科及び関連病院で行い、総数約900名となった。4)多型のゲノタイピングの決定:5)ゲノタイプのデータの統計処理、ハプロタイプを使った相関解析:統計解析は、カイニ乗検定を用いて、それぞれの多型に関して対照群、統合失調症群でアレル頻度に有意差がないかを検討した。また、それぞれの遺伝子群における、多型同士の相関がないかの検討もロジスティック回帰分析にて行った。ゲノタイプデータをもとに、ハプロタイプを推定し、推定されたハプロタイプの頻度におけるさも検討した。1)候補遺伝子の遺伝子構造の決定:(川嵜)ヒューマン・ゲノム・プロジェクト(Human Genome Project)によってデータベースに登録されているそれぞれの遺伝子が含まれる領域の染色体DNA塩基配列のファイルを利用し、我々がクローニングによって得たcDNAの塩基配列をコンピューター上で比較することによって、プロモーター領域及びニクソン・イントロン構造を決定した。この操作には、当初の予定通り、塩基配列比較を目的としたソフトウェア(DNA・蛋白解析ソフトウェア(Lasergene))を用いた。2)SNPの分離:(川嵜、林)3)精神分裂病罹患群・対照群の検体収集:(川嵜)精神分裂病罹患群については、臨床チームによる半構造化面接を行い診断、発症、治療経過、病型、薬剤反応性、生活歴、家族歴などの詳細な医学的情報の収集、データ解析を行った。健常対照群についても心理検査のアンケートを行い、DNAサンプルを収集した。精神分裂病患者約200名、健常対照群約400名の収集を行った。4)アレル頻度と多型の評価(川嵜、林)精神分裂病群、健常対照群について、上記で分離されたSNPを含む多型に関して、ゲノタイピングを行いそれぞれの群におけるアレル頻度を計算し、統計解析を行った。現在のところ、それぞれ約100名のサンプルの解析を行っている。一部の多型に関しては、ハプロタイプの決定法の実験系を確立し、その決定を行っている。平成14年度より開始した本研究について、その成果について以下に記した。1)候補遺伝子の遺伝子構造の決定:cAMP-GEFI、cAMP-GEFII、CalDAG-GEFI、CalDAG-GEFII、それぞれの遺伝子の遺伝子構造の決定に関しては終了した。手法は、データベースに登録されている、Human Genome Projectのドラフトシーケンスとそれぞれの遺伝子のmRNAの配列を比較し、エクソン領域、イントロン領域、プロモータ領域の決定を行った。2)SNPの分離:それぞれの遺伝子に関して、エクソン領域をはさむ領域及びプロモータ領域についてプライマー対の作成を行い、それぞれの領域を増幅し、塩基配列の決定を行った。約100名の配列を比較し、データベースの情報とともにSNPの同定を行った。3)統合失調症罹患群・対照群の検体収集:統合失調症の患者及び非罹患対照群のサンプル収集は、九大病院・精神科神経科及び関連病院で行い、総数約900名となった。4)多型のゲノタイピングの決定:5)ゲノタイプのデータの統計処理、ハプロタイプを使った相関解析:統計解析は、カイニ乗検定を用いて、それぞれの多型に関して対照群、統合失調症群でアレル頻度に有意差がないかを検討した。また、それぞれの遺伝子群における、多型同士の相関がないかの検討もロジスティック回帰分析にて行った。ゲノタイプデータをもとに、ハプロタイプを推定し、推定されたハプロタイプの頻度におけるさも検討した。
KAKENHI-PROJECT-14657233
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東濃西部方言プロソディの音声学的研究
継続的におこなってきた東濃(岐阜県南東部)西部の方言の音声に関する調査のうち、平成30年度は、多治見市の高齢層の談話音声データを収集し、そのプロソディの分析をおこなった。調査対象者に録音の許可を得たものではあるが、これまでの読み上げ式によるアクセント調査とは異なり、自然な会話におけるリズムとイントネーションを分析することができたことにより、次のことが明らかになった。第一に、モーラ方言でありながら文や節の末尾以外の位置で1拍音節の長さのばらつきが大きく、その要因は文初頭1拍音節が長いことである。この結果は10人の調査対象差全員に見られ、文初頭拍と語中拍の持続時間には有意差が認められた。また、文初頭拍のうちでも、初頭拍に頭子音がない場合には延伸しないことも明らかになり、頭高型アクセントによりその初頭拍が高い場合も延伸が少ないことがわかった。第二に、頭高型以外のアクセントを持つ語が文頭にある場合に見られる文頭のイントネーションの上昇が、当該方言では東京方言等に比べて遅く、いわゆる遅上がりの現象が見られることがわかった。特にアクセント核が3拍目以降ないし無核の場合にその傾向が顕著であり、文頭拍の延伸と文頭イントネーションの上昇幅との相関も認められた。これらの結果は学術論文にまとめたほか、初学者向けの叢書への寄稿「音声面での「○○語(方言)らしさ」の定義は可能かー東濃西部方言の実例をもとにー」(2019年)にまとめ、公開研究交流会第12回「人文知」コレギウムで発表した。調査地域においてもコミュニティラジオFMPiPiで取り上げられたほか、HP「多治見弁の部屋」およびブログサイト「多治見弁blog」において市民向けに簡易な形で紹介している。本研究では、岐阜県東濃地方西部のうち多治見市の方言を対象に、アクセントやイントネーションの特徴を音声学的に整理するための取り組みを行っている。今年度は、これまでにおこなってきたアクセント調査のデータから、形容詞の諸活用形のアクセントについて分析した。その結果、終止形のアクセントは、語類による区別がなく、すべて中高型(ただし、2拍目が引き音の「遠い」「多い」は頭高型と中高型が拮抗)であり、内輪東京式アクセントの特徴を示していることがわかった。そのほか、「けりゃ」または「けや」となる仮定形では、「け」の直後でピッチが下がる型、「かった」という過去形では「か」の直後で下がる型、「(く)なる」となる連接形では「な」と直後で下がる型が優勢であることがわかった。また、「ても」となる中接形と「ない」という否定形では、語幹にピッチの下がり目があるほかに、「ても」の「て」、「ない」の「な」の直後にも急激な下がり目が見られる例が多く、1つの文節に2つの下がり目があるということが確かめられた。この2段下がりの現象は、今後の音声学的分析の中心になるところである。また、読み上げ式のアクセント調査では観察されにくい、自然発話の中でのイントネーションで、こうした2段下がりがどのような場合に現れるかを調査するために、調査対象者の許可を得て、3組で計約1時間の自然な会話の録音をおこない、次年度の分析の準備とした。これまでの調査の整理を行い論文を発表するとともに、今後の研究のための準備となるデータ収集を順調におこなうことができたため。本研究では、岐阜県東濃地方西部のうち多治見方言を中心に、アクセントやイントネーション、リズムといったプロソディ上のの特徴を音声学的に整理するための取り組みをおこなっている。これまでに整理したアクセントの特徴をもとに、今年度は、読み上げ音声では抽出することのできない自発音声のリズムを確認するため、調査と分析をおこなった。具体的には、一定のテーマで方言話者2組に会話してもらった音声を録音し、音響分析・計測した。多治見方言は共通語と同様に、モーラを基準としたリズムを持つと考えられるが、今回の調査により、文中での位置によって拍の長さが変動することが明らかになった。具体的には次のとおりである。1)文や節の末尾では、共通語と同様に延伸することがあり、長さのばらつきが大きい。2)文や節の初めでは、1拍音節が語中の位置に比べておよそ1.4倍の長さをもつ。3)節の初めを除く語頭では、語中のおよそ1.3倍の長さとなるが、ばらつきが大きい。このうち2)、3)は先行研究に見られる共通語の特徴と異なる点であり、イントネーション上の特徴と合わせて、東濃西部方言らしさを形成するプロソディの特徴であると考えられる。こうした研究成果を、今年度、学術論文として発表した。さらに、老人会での講演・同地域のコミュニティラジオFMPiPiへの出演・前研究課題から継続している一般市民向けホームページやブログの更新により、地域への還元をおこなった。これまでに収集したデータの量は十分ではないが、質の高いデータを得られているため、効率よく分析を行うことができ、リズムに関する調査としては目的を達成することができた。さらに、これまでの研究の成果を学術論文だけでなく、老人会での講演・同地域のコミュニティラジオFMPiPiへの出演・前研究課題から継続している一般市民向けホームページやブログの更新により、地域への還元を進めることができた点が挙げられる。継続的におこなってきた東濃(岐阜県南東部)
KAKENHI-PROJECT-16K02622
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東濃西部方言プロソディの音声学的研究
西部の方言の音声に関する調査のうち、平成30年度は、多治見市の高齢層の談話音声データを収集し、そのプロソディの分析をおこなった。調査対象者に録音の許可を得たものではあるが、これまでの読み上げ式によるアクセント調査とは異なり、自然な会話におけるリズムとイントネーションを分析することができたことにより、次のことが明らかになった。第一に、モーラ方言でありながら文や節の末尾以外の位置で1拍音節の長さのばらつきが大きく、その要因は文初頭1拍音節が長いことである。この結果は10人の調査対象差全員に見られ、文初頭拍と語中拍の持続時間には有意差が認められた。また、文初頭拍のうちでも、初頭拍に頭子音がない場合には延伸しないことも明らかになり、頭高型アクセントによりその初頭拍が高い場合も延伸が少ないことがわかった。第二に、頭高型以外のアクセントを持つ語が文頭にある場合に見られる文頭のイントネーションの上昇が、当該方言では東京方言等に比べて遅く、いわゆる遅上がりの現象が見られることがわかった。特にアクセント核が3拍目以降ないし無核の場合にその傾向が顕著であり、文頭拍の延伸と文頭イントネーションの上昇幅との相関も認められた。これらの結果は学術論文にまとめたほか、初学者向けの叢書への寄稿「音声面での「○○語(方言)らしさ」の定義は可能かー東濃西部方言の実例をもとにー」(2019年)にまとめ、公開研究交流会第12回「人文知」コレギウムで発表した。調査地域においてもコミュニティラジオFMPiPiで取り上げられたほか、HP「多治見弁の部屋」およびブログサイト「多治見弁blog」において市民向けに簡易な形で紹介している。今年度おこなった会話の音声データを効率よく分析するため、謝金を活用して学生アルバイトを雇用し、文字起こしの下書きを依頼する。また、そのうちで、特定のイントネーションの個所を音響的に分析するため、今年度購入したソフトウェアを活用する。さらに、分析に適した音声データを得るための協力者を増やすために、市民向けの方言HPの拡充や、研究成果の一部を還元する講演を積極的におこなっていく。最終年度は、今年度の研究による結論を補強するべくデータを増やして分析するとともに、プロソディ上の特徴の核となると考えられるイントネーションの角度からも分析をすすめる。そのために、多治見市を中心に一週間程度、会話音声の収集をおこない、データ整理の補助に謝金を支払うことで学生に作業を依頼する予定である。最終的には調査結果を学術論文にまとめるとともに、公開講演会で一般向けの講演を行い、その内容を講演会関連の論文集に発表する。主として、データ収集の際に使用する文具類の納品が次年度4月に持ち越されたため。次年度使用額が生じたのは、購入物品の金額の見積もりが実際と異なったことと、購入予定の図書の発行が遅れたため。現有のノート型PCが故障し調査に使用することができなくなったため、次年度使用額に余裕が生じた分は、次年度の調査用PC購入に充てる。既に次年度使用分となった文具類の発注・受注は完了し、納品・支払いが行われたことにより、持ち越された分は消化された。翌年度使用分は当初の予定通り執行する。
KAKENHI-PROJECT-16K02622
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K02622
異なる陰イオン界面を利用した室温強磁性半導体の探索
本研究は,キャリアドーピングを界面から試みることにより,最近盛んなワイドギャップ半導体研究において問題となっている少ないキャリアドーピング量を劇的に改善させることを目的としている。旧来の半導体では,自身の一部の原子を置換し,キャリアドーピングを行っていたが,キャリアドーピングを,伝導層を乱さないように,銅酸化物高温超伝導体のブロック層のように層状構造の界面を利用してできれば,大きなブレークスルーになることが期待される.もしこのようなことが実現させられれば,今まで不可能だったワイドギャップ半導体への十分なキャリアドーピングもできるようになり,紫外光レーザーや表題の室温強磁性半導体が実現でき,産業上の影響は計り知れない.今年度に研究室現有のNd : YAGレーザーを用いたレーザーアブレーション薄膜作成装置の整備として,多層膜を可能にするターゲット自動交換システムを導入した.現在,基板としてc面(0001)サファイア基板を用いて,ZnOを500°Cでバッファー層として積層し,その後700°Cで積層させ,Crを蒸着し,その後,AlNをAl基板を用いて窒素ガス中で積層させている.当初はMnを界面に挿入する予定であったが,Cr_2O_3はコランダム型の構造であり,a軸長は4.96Åで,α-Al_2O_3の4.76Åと格子ミスマッチが5%と十分に小さいことからCrへと方針を変えた.さらにCr_2O_3はc面内でのスピン構造が強磁性的であることから,もし面内のスピン構造を保ちながら,積層方向でも層間に挿入するZnO, AlNやα-Al_2O_3膜の厚さを調節して,強磁性相互作用が得られれば,試料全体が強磁性体となりうる.ちなみにZnOはウルツ鉱型であり,18%と大きな格子不整をもつことから,α-Al_2O_3層を含めて積層方法は実験を行いながら,現在最善の方法を模索している.本研究は,キャリアドーピングを界面から試みることにより,最近盛んなワイドギャップ半導体研究において問題となっている少ないキャリアドーピング量を劇的に改善させることを目的としている。旧来の半導体では,自身の一部の原子を置換し,キャリアドーピングを行っていたが,キャリアドーピングを,伝導層を乱さないように,銅酸化物高温超伝導体のブロック層のように層状構造の界面を利用してできれば,大きなブレークスルーになることが期待される.もしこのようなことが実現させられれば,今まで不可能だったワイドギャップ半導体への十分なキャリアドーピングもできるようになり,紫外光レーザーや表題の室温強磁性半導体が実現でき,産業上の影響は計り知れない.今年度に研究室現有のNd : YAGレーザーを用いたレーザーアブレーション薄膜作成装置の整備として,多層膜を可能にするターゲット自動交換システムを導入した.現在,基板としてc面(0001)サファイア基板を用いて,ZnOを500°Cでバッファー層として積層し,その後700°Cで積層させ,Crを蒸着し,その後,AlNをAl基板を用いて窒素ガス中で積層させている.当初はMnを界面に挿入する予定であったが,Cr_2O_3はコランダム型の構造であり,a軸長は4.96Åで,α-Al_2O_3の4.76Åと格子ミスマッチが5%と十分に小さいことからCrへと方針を変えた.さらにCr_2O_3はc面内でのスピン構造が強磁性的であることから,もし面内のスピン構造を保ちながら,積層方向でも層間に挿入するZnO, AlNやα-Al_2O_3膜の厚さを調節して,強磁性相互作用が得られれば,試料全体が強磁性体となりうる.ちなみにZnOはウルツ鉱型であり,18%と大きな格子不整をもつことから,α-Al_2O_3層を含めて積層方法は実験を行いながら,現在最善の方法を模索している.
KAKENHI-PROJECT-15654039
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15654039
熱帯地方におけるブロイラーの脂肪蓄積の低減化に関する共同研究
平成8年度1)ブロイラーを7日齢から17日齢までの10日間、自由採食の75、65、55及び45%を給与し、その後56日齢まで自由採食させた。2)27日齢の体重は雌雄ともに対照区が処理区より大きかった。3)その後、処理区の増体量が大きくなり、67週齢には対照区の体重に追いつき、8週齢では、雌では65と45%給与区が、雄では55と45%給与区が対照区より大きかった。4)飼料要求率はいずれの処理区においても対照区より低く、改善された。5)8週齢終了時での腹腔内脂肪重量及び屠体中の脂肪含量は、雌では55と45%給与区が低かったが、雄では処理によって影響が観察されなかった。6)屠体中のタンパク質含量は雄では処理区の方が増加する傾向を示した。平成9年度1)低タンパク質飼料の利用が可能ならば、飼料費を低廉化することができるが、成長の抑制及び脂肪蓄積が増大する。2)低タンパク質飼料(CP17%)に色々なレベルでメチオニンとシスチンを添加し、ブロイラーの肥育前期(03週齢)と後期(36週齢)に給与した。3)ブロイラーの肥育前期に、0.54%のメチオニンとシスチンを添加した低タンパク質飼料を給与し、その後、6週齢まで通常の飼料を給与することにより、増体重は改善され、脂肪蓄積、特に、筋肉中のトリグリセリド含量が低下した。平成8年度1)ブロイラーを7日齢から17日齢までの10日間、自由採食の75、65、55及び45%を給与し、その後56日齢まで自由採食させた。2)27日齢の体重は雌雄ともに対照区が処理区より大きかった。3)その後、処理区の増体量が大きくなり、67週齢には対照区の体重に追いつき、8週齢では、雌では65と45%給与区が、雄では55と45%給与区が対照区より大きかった。4)飼料要求率はいずれの処理区においても対照区より低く、改善された。5)8週齢終了時での腹腔内脂肪重量及び屠体中の脂肪含量は、雌では55と45%給与区が低かったが、雄では処理によって影響が観察されなかった。6)屠体中のタンパク質含量は雄では処理区の方が増加する傾向を示した。平成9年度1)低タンパク質飼料の利用が可能ならば、飼料費を低廉化することができるが、成長の抑制及び脂肪蓄積が増大する。2)低タンパク質飼料(CP17%)に色々なレベルでメチオニンとシスチンを添加し、ブロイラーの肥育前期(03週齢)と後期(36週齢)に給与した。3)ブロイラーの肥育前期に、0.54%のメチオニンとシスチンを添加した低タンパク質飼料を給与し、その後、6週齢まで通常の飼料を給与することにより、増体重は改善され、脂肪蓄積、特に、筋肉中のトリグリセリド含量が低下した。[研究目的]ブロイラーの急速な育種選抜によって、出荷時の体重は年々、大きくなっているが、栄養生理学分野の研究が完全に追いついているとはいえず、ブロイラーの代謝障害が数多く発生している。その典型的なものが脂肪肝症と腹腔内脂肪の過剰蓄積である。一年中高温であるタイ国では日本以上に脂肪肝症や脂肪の過剰蓄積が発生し、家禽産業に大きな損失をもたらしており、解決が急がれている。このような脂質代謝異常の発生メカニズムを解明し、その予防法を確立する。[実験方法]7日齢のブロイラーを5区に分け、7日齢から17日齢までの10日間、自然採食(対照、100%)区、自然採食量の75%、65%、55%及び45%の5段階の飼料をそれぞれの区に給与した。その後、56日齢(出荷時)まで自由に採食させた。[結果]27日齢の体重は、雄、雌ともに対照区が飼料制限区に比べて大きかった。しかし、その後、雄、雌ともに処理区の増体量が大きくなり、6から7週齢終了時には対照区の体重に追いつき、8週齢終了時には、雄では55と45%制限区が、雌では65と45%制限区が対照区より大きかった。飼料要求率は雌では75%以外の処理区、雌では65と45%が対照区より大きかった。飼料要求率は雌では75%以外の処理区、雌ではいずれの処理区においても対照区より低く、改善された。8週齢終了時の腹腔内脂肪重量は、雌では55と45%制限区が低かったが、雄では飼料制限による影響は観察されなかった。屠体中の脂肪含量は、雌では55%と45%給与区が低く、水分含量はいずれの処理区も対照区より高かった。タンパク質含量は、雄では飼料制限区の方が増加する傾向を示した。タイ、カセサート大学における実験においても同様の結果が得られ、ブロイラーを7日齢から10日間、自由採、飼料要求率が改善され、腹腔内脂肪重量及び屠体中の脂肪含量も低下した。また雄、雌、ともに斃死率は大きく改善された。「研究目的」
KAKENHI-PROJECT-08045052
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熱帯地方におけるブロイラーの脂肪蓄積の低減化に関する共同研究
平成8年度の両大学の実験から、ブロイラーを7日齢から10日間、自由採食量の55%から45%に飼料給与量を減らすことによって、8週齢時には体重、試料要求率が改善され、腹腔内脂防重量及び屠体中の脂肪含量も低下する結果を得た。ブロイラーの制限給与は総エネルギーの摂取量を制限とするよりもタンパク質の摂取量を制限する方が経済的にも、管理面からも好ましい。しかし飼料中のタンパク質含量を低くすると脂肪蓄積、すなわち腹腔内脂肪含量が増大するために一般的には行われていない。それで本研究は、ブロイラーの飼料中粗タンパク質含量を低い値とし、その飼料にメチオニン(met〉及びシスチン(cys)などの含硫アミノ酸を添加することによってブロイラーの脂肪蓄積の増加を抑制、さらに減少させることができるかを検討した。「方法」ブロイラーヒナを平飼い条件下で7日齢から21日齢まで粗タンパク質含量(CP)23%及び17%の飼料に種々のレベルでメチオニンとシスチン添加した飼料を21から56日齢まで市販の飼料を給与し、体重、試料摂取量及び斃死率を測定した。「結果」実験終了時において、met+cysを1.07%含有している17%CP区の方が23%CP飼料区より体重、増体量及び胸筋重量は有意に大きかった。腹腔内脂肪重量は17%CP飼料区が23%CP飼料区に比べて大きかったが、17%CP飼料区にmet+cysを1.07%添加した区では23%CP飼料区とほぼ同じ値にまで減少した。そして実験終了時では処理間で有意な差は観察されなかった。実験終了時における血清中の各脂質画濃度及び肝臓中トリグリセリド含量は23%CP飼料区より17%CP飼料区にmet+cysを添加した区の方が低かった。本研究結果から、ブロイラーの成長初期にmet+cysを添加した低タンパク質飼料を給与し、その後、出荷時まで市販の飼料を給与することによって、成長の改善及び脂肪の蓄積を減少させることができた。
KAKENHI-PROJECT-08045052
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山林火災後の植生回復と微気象の変化及び斜面全体の地表面温度分布について
1992年2月に林野火災が発生した岡山県倉敷市と玉野市にまたがる瀬戸内海に面した王子が岳において、火災跡地での浅層部の土壌水分の観測、地表面温度やその他の微気象要素の観測を行った。その結果、同じ林野火災でもその燃焼の程度によって、後の微気象や植生回復に大きな違いが生じることが明らかになった。すなわち、木本まですべて燃焼した場所、木本は残存し林床植物のみが燃焼した場所、火災の影響を受けなかった場所で比較してみると、放射温度計(サーモトレーサ)による地表面温度の面的な観測値や、テンションメータによる土壌水分の観測値に違いがみられた。まず、晴天日の日中、サーモトレーサによる地表面温度の観測では、木本まで全焼した場所が他の場所に比べてやや高温であることが確かめられた。逆に林床植物のみが燃焼した場所では、かえって何も影響を受けなかった場所よりも若干低温になる様子がみられた。また土壌水分の秋季から冬季にかけての連続測定の結果をみると、林床植物のみが焼失した場所で最もPF値が低い場合が多く、他の場所に比べて湿潤であった。林床植物のみが焼失した場所では、火災時に地温がさほど上昇せず、再生のための種子や地下茎が生存していた。またコシダを中心とする林床植物の地上部が燃え、炭化した有機体となって植生回復のための肥料となった。それ故下草が再生し、以前よりも繁茂する様子が観察された。このことと共に火災時に木本が生き残ったため、この林が日射を遮断し、地表面温度の上昇を抑えたことが、蒸発散を抑制し、より湿潤な状態が保たれる結果となった。本研究では、これらについても定量的に裏付けることができた。今後も観測を継続し、より大きなスケールの気象現象との関わりについても考察したい。1992年2月に林野火災が発生した岡山県倉敷市と玉野市にまたがる瀬戸内海に面した王子が岳において、火災跡地での浅層部の土壌水分の観測、地表面温度やその他の微気象要素の観測を行った。その結果、同じ林野火災でもその燃焼の程度によって、後の微気象や植生回復に大きな違いが生じることが明らかになった。すなわち、木本まですべて燃焼した場所、木本は残存し林床植物のみが燃焼した場所、火災の影響を受けなかった場所で比較してみると、放射温度計(サーモトレーサ)による地表面温度の面的な観測値や、テンションメータによる土壌水分の観測値に違いがみられた。まず、晴天日の日中、サーモトレーサによる地表面温度の観測では、木本まで全焼した場所が他の場所に比べてやや高温であることが確かめられた。逆に林床植物のみが燃焼した場所では、かえって何も影響を受けなかった場所よりも若干低温になる様子がみられた。また土壌水分の秋季から冬季にかけての連続測定の結果をみると、林床植物のみが焼失した場所で最もPF値が低い場合が多く、他の場所に比べて湿潤であった。林床植物のみが焼失した場所では、火災時に地温がさほど上昇せず、再生のための種子や地下茎が生存していた。またコシダを中心とする林床植物の地上部が燃え、炭化した有機体となって植生回復のための肥料となった。それ故下草が再生し、以前よりも繁茂する様子が観察された。このことと共に火災時に木本が生き残ったため、この林が日射を遮断し、地表面温度の上昇を抑えたことが、蒸発散を抑制し、より湿潤な状態が保たれる結果となった。本研究では、これらについても定量的に裏付けることができた。今後も観測を継続し、より大きなスケールの気象現象との関わりについても考察したい。
KAKENHI-PROJECT-05780143
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新規な生体用近赤外蛍光プローブの開発
生体物質の挙動を調べる有力な手段となる蛍光イメージングプローブ法では、600 nm以下のヘモグロビンの吸収や、1000 nm以上の水の吸収の影響を受けない650 nm900 nmの“生体の窓"と呼ばれる近赤外領域の光の利用が重要となっている。本研究では、650 nm900 nmで蛍光発光する生体用近赤外蛍光プローブの開発を計画し、幾つかの新規近赤外蛍光プローブの合成に成功した。2-アミノトリプタンスリンを基本骨格構造とする650nm以上に蛍光極大波長を持つ新規近赤外蛍光色素の開発を行うため、平成25年度は、環拡張型、アルキニル基導入型、分子内FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)型の新規2-アミノトリプタンスリン誘導体を合成し、その吸収・発光特性について検討した。環拡張型としては、2-アミノトリプタンスリンの5員環の隣のベンゼン環をナフタレン環、アントラセン環に拡張した。その結果、2-アミノトリプタンスリンの蛍光極大波長はメタノール中での632 nmが最長波長であったが、環を拡張することで650 nm以上に蛍光極大波長を示すようになることがわかった。但し、アントラセン環を含む系では、蛍光強度が著しく低下するというマイナス面も見られた。アルキニル基導入型としては、2-アミノトリプタンスリンの7-位又は9-位にフェニルエチニル基を導入した系を合成した。これらの系も、650 nm以上で蛍光極大波長が観測された。特に9-位にフェニルエチニル基を導入した系ではメタノール中で662 nmの蛍光極大波長を示すことがわかった。分子内FRET型としては、2-アミノトリプタンスリンと7-メトキシクマリン又はウンベリフェロン(7-ヒドロキシクマリン)を、長さの異なるポリエーテル鎖でつないだ系を合成した。これらの系は、分子内FRETにより溶媒極性の違いによって紫又は青から赤色迄の可視領域全般の色を示す事が可能であり、非常に優れた蛍光ソルバトクロミズを示すことがわかった。650nm900nmの生体の窓と呼ばれる波長領域に蛍光極大波長を持つ新規近赤外蛍光色素の開発を行うため、平成25年度から行っている2-アミノトリプタンスリンを基本骨格に持つ環拡張型、アルキニル基導入型、分子内FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)型の各種誘導体の合成に加えて、平成26年度は鈴木ー宮浦クロスカップリングによる共役拡張型とトリプタンスリンの2-位のアミノ基をジメチルアミノ基やヒドロキシル基に変換した系の合成を中心に行い吸収・発光挙動について検討した。その結果、トリプタンスリンの2-位のアミノ基をより強い電子供与性基であるジメチルアミノ基にすることで6-位のカルボニル基との間で起こるICT(分子内電荷移動)の度合いが高まり蛍光極大波長が大きく長波長側にシフトすることがわかった。更に、2-ジメチルアミノトリプタンスリンの8-位又は9-位にブロモ基を導入すると蛍光極大波長は更に長波長側にシフトし、プロトン性溶媒及び非プロトン性極性溶媒において650nm以上の近赤外領域で蛍光極大が観測されることがわかった。また、トリプタンスリンの2-位のアミノ基をヒドロキシル基に変換した系では、プロトン解離したアルカリ水溶液中で吸収極大波長及び蛍光極大波長がともに近赤外領域で観測されることがわかった。2-アミノトリプタンスリンのベンゼン環をアントラセン環に環拡張すると、蛍光極大波長は長波長側にシフトするがほとんど蛍光を示さなくなることがわかったが、金属イオンに対する応答性の実験ではアルミニウムイオンが存在するときのみ選択的に蛍光強度の増大が起こることがわかった。650 nm900 nmのヘモグロビンや水の吸収の影響を受けない所謂“生体の窓"と呼ばれる波長領域に蛍光極大波長をもつ新規近赤外蛍光プローブの開発のため、平成25年度及び平成26年度に引き続き、トリプタンスリンの2-位に強い電子供与性基が導入された種々のトリプタンスリン誘導体を合成し、吸収・発光挙動について調べた。また、14種類の金属イオン対する蛍光応答性について調べた。2-ヒドロキシトリプタンスリンは、アセトニトリル中での蛍光極大波長は約500 nmであり、Mg(II), Ba(II), Co(II), Ni(II), Ag(I), Zn(II), Cd(II), Pb(II)の存在による蛍光スペクトルの変化は示さなかったが、Fe(II), Fe(III)を添加すると蛍光消光しながら蛍光極大波長はレッドシフトし、Cu(II)存在下では完全に蛍光消光した。一方、Ca(II), Hg(II), Al(III)を添加すると長波長側の約600 nmに新たな蛍光バンドが観測された金属イオンの蛍光検出が可能であることがわかった。一方、水溶液中では金属イオンが存在の有無に関わらず、即ち周辺環境の変化に影響せず、近赤外領域の約660 nmで蛍光を示すことが分かった。また、2-ヒドロキシトリプタンスリンの1-位にベンゾチアゾールを導入すると励起状態分子内プロトン移動(ESIPT)により固体状態でも600 nm以上の波長で赤色蛍光を示すことなどがわかった。
KAKENHI-PROJECT-25410137
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25410137
新規な生体用近赤外蛍光プローブの開発
生体物質の挙動を調べる有力な手段となる蛍光イメージングプローブ法では、600 nm以下のヘモグロビンの吸収や、1000 nm以上の水の吸収の影響を受けない650 nm900 nmの“生体の窓"と呼ばれる近赤外領域の光の利用が重要となっている。本研究では、650 nm900 nmで蛍光発光する生体用近赤外蛍光プローブの開発を計画し、幾つかの新規近赤外蛍光プローブの合成に成功した。トリプタンスリンの2-位の置換基をアミノ基からジメチルアミノ基やヒドロキシル基に置換することで、多くの溶媒中で近赤外蛍光を示す系の合成に成功している。特に、ヒドロキシル基を持つ系(或いはそのナトリウム塩)は水溶性であり、生体蛍光プローブとしての応用に適している。以上のように、研究はおおむね順調に進展していると言える。有機光化学,超分子化学2-ヒドロキシトリプタンスリンはエステル化反応で2-アセトキシトリプタンスリンにすることで細胞膜の透過性が向上し細胞内に入り、エステラーゼによりエステル結合が切れると細胞内に留まり蛍光を発する蛍光イメージングプローブとしての性質を示すことが期待できる。今後は、その様なことが実際に起こるか実験で確認するとともに、トリプタンスリン骨格を持つ近赤外蛍光色素とBODIPYなどの既存の蛍光色素とを組み合わせた系を用いてFRETのon, offなどを利用した蛍光プローブを検討していく予定である。平成25年度の研究実施計画で予定していた2-アミノトリプタンスリンを基本骨格構造とする650nm以上に蛍光極大波長を持つ幾つかの新規近赤外蛍光色素の合成に成功しており、研究はおおむね順調に進展していると言える。物品の調達方法の工夫や所属機関の校費利用などにより、当初計画よりも経費の使用が節約できたため。引き続き2-アミノトリプタンスリンを基本骨格構造とする650nm以上に蛍光極大波長を持つ新規近赤外蛍光色素の開発を進める。また、蛍光ソルバトクロミズムによる周囲の環境(極性)変化を調べる蛍光プローブとしての応用や、近赤外蛍光色素とCa(II), Na(I), K(I), Zn(II), Fe(II), Fe(III), Mn(II)等の必須金属イオンを含む各種金属イオンとの相互作用による蛍光変化、分子内に2種類の蛍光色素を含む系ではFRETのon, off挙動による蛍光変化等について検討し、金属イオン用蛍光プローブとしての性質を調べる。過度に節約することなく、翌年度分として請求した助成金と合わせて研究遂行のために適切に使用する計画である。物品の調達方法の工夫や所属機関の校費利用などにより、当初計画よりも経費の使用が節約できたため。過度に節約をすることなく、翌年度分として請求した助成金と合わせて研究遂行のために適切に使用する計画である。
KAKENHI-PROJECT-25410137
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25410137
抗アポトーシスタンパクHSP27の細胞内導入法を用いた効果的な骨造成法の開発
我々は骨増成法に併用される細胞移植時の移植細胞アポトーシスを抑制する方法として抗アポトーシスタンパクHSP27の移植骨芽細胞への影響を解析した。マウス骨芽細胞を用いたin vitroの実験系においてHSP27一過性過剰発現は分化能、石灰化能に大きな変化はみられなかったが、骨芽細胞のアポトーシスを抑制した。さらに、移植細胞への影響を解析するために行ったラット頭蓋欠損部細胞移植実験では、移植細胞のアポトーシスが抑制および生存細胞中の細胞増殖マーカーの発現上昇が確認された。本研究の目的は抗アポトーシ能が期待されるHSP27を用いて、効果的な骨増生法を開発することである。第一段階として、HSP27の骨芽細胞分化に及ぼす影響を解析するためにHSP27過剰発現ベクターの構築を行った。HSP27の過剰発現により、骨芽細胞株(MC3T3-E1)においてTNF-αに誘導されるアポトーシスへの抵抗能が確認された。また骨芽細胞の増殖能をMTTアッセイにより解析したところ、HSP27の過剰発現による影響は検出されなかった。さらに骨芽細胞の石灰化能へ及ぼす影響をアリザリンレッド染色によって評価したところ、HSP27の過剰発現による影響は検出されなかった。また骨芽細胞関連遺伝子(Cbfa1/Runx2、Col1a2、Alpl)の発現において抑制が認められた。以上の結果からHSP27は骨芽細胞において抗アポトーシス能を示すものの、細胞の分化増殖には影響を及ぼさない可能性が示唆された。これらの知見を細胞移植法に応用するために、移植細胞の初期挙動についての解析を行った。温度応答性細胞培養皿上にてヒト骨由来細胞をシート状に培養し、細胞シートを免疫不全ラット(F344/NJcl-rnu)頭蓋骨骨膜下へ移植し、移植細胞の増殖能、アポトーシス並びにHSP27の発現を免疫組織化学的に評価した。移植部位において、移植後3日よりPCNA陽性細胞が認められ、5日目に最大となった。また、移植後5日には移植部への血管の侵入が認められた。移植細胞のアポトーシスはTUNEL染色にて評価した。移植細胞のTUNEL陽性細胞率は移植後3日に最大となった。更に、移植細胞ではHSP27の産生が認められ、移植3日後に最大となり、その後産生は低下した。以上の結果より、一定数の移植細胞がアポトーシスによって失われていること、初期の移植細胞においてHSP27の発現の更新が認められることが明らかとなった。本研究の目的は抗アポトーシ能が期待されるHSP27を用いて、効果的な骨増生法を開発することである。前年度に、第一段階として、HSP27の骨芽細胞分化に及ぼす影響を解析を行い、HSP27は骨芽細胞において抗アポトーシス能を示すものの、細胞の分化増殖には影響を及ぼさない可能性が示唆された。今年度は、さらに、HSP27過剰発現骨芽細胞のラット頭蓋骨欠損部への移植野におけるアポトーシスをTUNEL染色にて検出したところ、3および7日後においてはHSP27過剰発現によりTUNEL陽性細胞率が有意に減少していた。細胞増殖能を示すPCNA陽性細胞率は移植7日後においてHSP27過剰発現細胞が有意に高値を示した。しかしながら、移植4, 6週後の移植野における新生骨量をマイクロCTにて解析したところ、両群間において有意差は認められなかった。本研究では抗アポトーシス遺伝子であるHSP27を移植骨芽細胞に導入して、より効果的な骨増成を期する試みを行ったが、細胞の生存率は向上したものの、最終的な新生骨量に変化は見られなかった。骨形成能を有する細胞の移植は盛んに試みられているものの、本研究結果でも見られるように、その効果については依然として議論が分かれるところである。移植細胞の生存率を改善することによる効率的な骨増成を今後臨床応用に直接結び付けるためには、より長期的な解析と、骨形成の場における移植細胞の直接的な寄与についても検討することが必要であろう。我々は骨増成法に併用される細胞移植時の移植細胞アポトーシスを抑制する方法として抗アポトーシスタンパクHSP27の移植骨芽細胞への影響を解析した。マウス骨芽細胞を用いたin vitroの実験系においてHSP27一過性過剰発現は分化能、石灰化能に大きな変化はみられなかったが、骨芽細胞のアポトーシスを抑制した。さらに、移植細胞への影響を解析するために行ったラット頭蓋欠損部細胞移植実験では、移植細胞のアポトーシスが抑制および生存細胞中の細胞増殖マーカーの発現上昇が確認された。本研究の目的は抗アポトーシスタンパクHSP27をPTD法を用いて骨芽細胞に安全に導入し、効果的な骨増生法を開発することである。マウス頭蓋冠由来細胞株(MC3T3-E1,subclone4)を分化培地にて分化誘導し、骨芽細胞分化過程におけるHSP27の発現を解析した。石灰化起点とHSP27遺伝子発現の上昇に相関が認められ、骨芽細胞分化への寄与が強く示唆された。更に一過性過剰発現ベクター(pCMV-SPORT6-HSP27)を用い、骨芽細胞における細胞増殖能、骨芽細胞関連遺伝子発現、TNF-α誘導アポトーシスへの影響について解析を行った。HSP27の過剰発現により細胞増殖能に変化は認められなかったが、骨芽細胞関連遺伝子であるCbfa1/Runx2、Col1a2、Alpl、Opnの発現抑制が観察された。
KAKENHI-PROJECT-23792215
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23792215
抗アポトーシスタンパクHSP27の細胞内導入法を用いた効果的な骨造成法の開発
さらに石灰化能は抑制され、TNF-αに誘導されるアポトーシスのに対しては抵抗能が認められた。以上の結果より、骨芽細胞におけるHSP27の過剰発現は、抗アポトーシス作用を示すも、骨芽細胞への分化を抑制する事から、移植初期には有効であるが、長期的な骨増生にはネガティブ抑制的に作用する可能性が示唆された。更に細胞の移植条件を検討する為に、骨芽細胞をコラーゲン溶液、β-TCP顆粒と混合し、ラット皮下に移植を行った。移植1日後では、ある程度の移植細胞の生存が確認されたが、移植3日後、7日後では移植細胞の生存はほとんど確認されず、観察された細胞の大部分は炎症性細胞であった。移植細胞の生着率と骨増生能の相関についてはこれを裏付ける基礎的データが依然として欠如していることから、HSP27の骨芽細胞に及ぼす影響の解析と並行して移植条件とその評価法についての検討が必要である。当初の予定通り、HSP27が骨芽細胞に及ぼす影響の解析は順調に進んでいる。また上述の通り一定の成果を上げている。HSP27過剰発現・骨芽細胞の抗アポトーシス能、石灰化能への影響の解析についてはおおむね順調に進んでおり、現段階では移植条件の検討を行なっている。H24年度までは、HSP27が骨芽細胞に及ぼす影響について、一過性過剰発現ベクターを用いてその影響の解析を行った。しかしながら一過性過剰発現ベクターの効果が約7日程度であるのに対し骨芽細胞の分化、石灰化には3ー4週間を要する。このために実験の後期では過剰発現の状態は維持されていない。従って現在、恒常性発現ベクターの構築を行い、その解析を進めているところである。さらにHSP27過剰発現細胞の抗アポトーシス能、石灰化能への影響を動物実験にて行う予定である。更に、PTD法を用いて導入するHSP27タンパクの精製についての準備を進めている。HSP27が骨増生に対して抑制的に働く可能性があることから、細胞への導入時期、期間の検討が必要である。移植初期の短期間に導入する方法について検討を行なっている。骨芽細胞の移植条件の検討を行なっているが、更に移植細胞の生着率と骨増生能との相関についてはこれを裏付ける基礎的データが欠如していることから、これについても意欲的に並行して取り組んでいる。PTD法を用いて導入するHSP27タンパクの精製のため、実験動物の購入および薬品(抗体・酵素・試薬)、ガラス・プラスチック器具に前年度未使用研究費を含めて使用する計画である。移植条件の検討のため、実験動物の購入および薬品(抗体・酵素・試薬)、ガラス・プラスチック器具に前年度未使用研究費を含めて使用する計画である。
KAKENHI-PROJECT-23792215
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23792215
Fast Graph Algorithms for Phylogenetics
本研究では、同意木の中でもよく使われる、過半数に基づく同意木、緩やかな同意木、貪欲同意木、頻度差同意木、アダムス同意木、R*同意木と2種類の局地同意木に関して高速アルゴリズムを構築した。上記のうちのいくつかは、数十年ぶりに改善に成功したものである。次に、いくつかの基礎的な合成木問題の計算複雑さを示し、NP困難性を示す派生問題に対し近似アルゴリズムを設計した。ふたつの進化系統樹に対する根付き三つ組を計算するための、高速かつメモリ効率的な重心道に基づくアルゴリズムを示した。最後に、閉路が互いに素な進化系統ネットワークであるゴールド木間の根付き三つ組距離を高速に計算する手法を示した。本研究では、同意木の中でもよく使われる、過半数に基づく同意木、緩やかな同意木、貪欲同意木、頻度差同意木、アダムス同意木、R*同意木と2種類の局地同意木に関して高速アルゴリズムを構築した。上記のうちのいくつかは、数十年ぶりに改善に成功したものである。次に、いくつかの基礎的な合成木問題の計算複雑さを示し、NP困難性を示す派生問題に対し近似アルゴリズムを設計した。ふたつの進化系統樹に対する根付き三つ組を計算するための、高速かつメモリ効率的な重心道に基づくアルゴリズムを示した。最後に、閉路が互いに素な進化系統ネットワークであるゴールド木間の根付き三つ組距離を高速に計算する手法を示した。
KAKENHI-PROJECT-26330014
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26330014
統計的欠損性の階層構造の解明とその応用
統計的推測において、様々な前提条件の下で推測方式を比較することが多く、またその定量的評価も重要になる。本研究では、ある母集団分布から得られた大きさnの無作為標本に基づいて、特定の推測方式A、Bについて、nが無限に大きいときに、AがBよりも漸近的に優れていることを示すとともに、Aに対するBの漸近損失を求め、次数による階層構造を解明した。その際、或る次数では漸近的に同等でも、次の次数ではその差異が漸近損失として現れる階層構造を有しており、また漸近損失を漸近欠損量として捉えられる。統計的推測において、様々な前提条件の下で推測方式の比較をすることが多く、またその定量的評価も重要になる。そこで、或るサイズの標本に基づく推測方式Aとそれに何らかの意味で同等にためには、より大きいサイズの標本を必要とする推測方式Bを考える。このときBが必要とする付加サイズに関する量をBのAに対する欠損量といい、その極限が存在するときにそれを漸近欠損量という。一方、通常、2標本問題において、正規性の仮定の下で2つの平均の同等性の検定や、それらの差の区間推定において、非心t統計量が用いられ非心t分布のパーセント点が必要となるが、解析的に求めることは困難である.そのためにその数表が作成され、種々の近似式も提案されてきた。また、正規性の仮定は強いので、それを外す試みが行われてきた(Bentkus et al. (2007), Akahira et al. (2013)).本研究において、統計的検定問題における検定方式の漸近欠損性を考察に際して、まず、非心t統計量に基づく検定の検出力による比較をするための基盤を与えた。従来、研究代表者らによって非正規性の下で非心t統計量のの分布のパーセント点の高次の近似が得られている(Akahira, et al.(2013))。そこで、2標本問題において母集団分布の平均が0であるという帰無仮説に対して隣接性(contiguity)の対立仮説を考え、パーセント点の高次近似およびEdgeworth展開を用いて、検出力関数の2次の近似を求めた。その例として、正規分布、対称分布、指数分布の場合を挙げた。研究の初年度であるが、2標本問題において、非心t統計量に基づく検定の検出力による比較をするために2次の近似を与えて、欠損性の研究基盤を整えた。特に、非心t統計量に基づく推測は適用範囲が広くその基盤整備は必要不可欠なので、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。統計的推測において、様々な前提条件の下で推測方式の比較をすることが多く、またその定量的評価も重要になる。そこで、或るサイズの標本に基づく推測方式Aとそれに何らかの意味で同等になるために、より大きいサイズの標本を必要とする推測方式Bを考える。このとき、Bが必要とする付加サイズに関する量をBのAに対する欠損量といい、その極限が存在するときにそれを漸近欠損量という。特に、正則推定論においてはその漸近欠損量は推定量A、Bのそれぞれの漸近分散の2次のオーダーの差として表現される(Akahira and Takeuchi (1981, Springer LNS 7参照)。本研究においては、正則と非正則の性質を併せ持つ分布族として切断指数型分布族Pにおいて、自然母数は正則な構造を特徴付け、切断母数は非正則な構造を特徴付ける。そこで、自然母数が既知のときの切断母数の補正最尤推定量A'に対して、自然母数が未知のときの切断母数の補正最尤推定量B'の2次の漸近損失をB'の漸近分散の2次のオーダーの係数からA'のそれを引いた値dと定義すると、これは丁度、漸近欠損量に対応する量になる。まず、Bayes推定の観点から2次の漸近損失量を導出した。その結果、Bayes推定量の2次の漸近平均は事前密度πに依存するが、2次の漸近分散にはπには無関係になるため、2次の漸近損失量もπに無関係であることが分かった。また、Pに属する切断ベータ分布、切断Erlang分布、切断対数指数分布の場合に具体的にその量も計算した。漸近欠損性を2次の漸近損失量として捉え、Bayes的観点から検討を重ねその量が事前密度πに無関係になることを明らかにした。常識的には、πに依存すると考えられるが、そうではないという知見を得たことは意外であり興味深い結果と思われるので、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。統計的推測において、様々な前提条件の下で推測方式を比較することが多く、またその定量的評価も重要になる。本研究では、ある母集団分布から得られた大きさnの無作為標本に基づいて、推測方式A、Bについて、nが無限に大きいときに、AがBよりも漸近的に優れていることを示すとともに、Aに対するBの漸近損失を求め、その構造を解明した。その際、1次の次数では漸近的に同等でも、2次の次数ではその差異が漸近損失として現れる階層構造を有しており、また漸近損失を漸近欠損量として捉えられる。最終年度の研究では、切断母数と自然母数をもつ切断指数型分布族において、自然母数を局外母数として、切断母数の推定問題を考えた。本問題では、従来、大きさnの無作為標本に基づいて、切断母数の補正最尤推定量が、滑らかな事前密度に関するBayes推定量とは2次の次数まで漸近分散が等しいという意味で2次の漸近的同等になることが示された。
KAKENHI-PROJECT-15K11992
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統計的欠損性の階層構造の解明とその応用
さらに、先の3次の次数で補正最尤推定量とBayes推定量の差異が出現するか否かは興味深い。そこで、自然母数が既知のときに、切断母数の補正最尤推定量と補正Bayes推定量の確率展開を3次の次数まで求めて、さらにそれらの3次の漸近分散を比較すると、3次の次数では両者に差異が現れ、補正Bayes推定量B'が補正最尤推定量M'より漸近分散が小さく、B'に対するM'の3次の漸近損失を求めることができた。正則な場合には、両者は3次の次数まで漸近的に同等であることが知られているが、正則と非正則を併せ持つ切断指数型分布族においてその差異が認められたことは意義深いと思われる。統計的推測において、様々な前提条件の下で推測方式を比較することが多く、またその定量的評価も重要になる。本研究では、ある母集団分布から得られた大きさnの無作為標本に基づいて、特定の推測方式A、Bについて、nが無限に大きいときに、AがBよりも漸近的に優れていることを示すとともに、Aに対するBの漸近損失を求め、次数による階層構造を解明した。その際、或る次数では漸近的に同等でも、次の次数ではその差異が漸近損失として現れる階層構造を有しており、また漸近損失を漸近欠損量として捉えられる。検定の検出力関数の2次の近似を用いて検出力の差による欠損量を定義し、それに基づいて検定の比較を行うとともに、種々の推測問題において欠損性の構造を探って研究を推進する。従来は、最尤推定の枠組み又はBayes推定の枠組みの中で漸近欠損性を考察したが、今後、それらの枠組みを越えて、最尤推定量とBayes推定量の漸近的比較を2次の漸近損失量を用いて行う。数理統計学研究を推進に当たって、研究資料の収集等で謝金を使用するとともに従来の成果をまとめて研究資料の印刷物も作成する予定でしたが、適当な研究支援者を見つけることができず実行することができませんでした。研究を推進するに当たって、研究資料の収集等で謝金を使用するとともに従来の成果をまとめて研究資料の印刷物も作成する予定でしたが、適当な研究支援者を見つけることができず実行することができませんでした。研究資料の収集、研究関連の情報収集等に注力するために助成金を使用し、本研究において十分な成果を得るように遂行する予定です。研究資料の収集、研究関連の情報収集等に注力するために助成金を使用し、本研究において十分な成果を得るように遂行する予定です。
KAKENHI-PROJECT-15K11992
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全球多媒体モデルを用いた残留性有機汚染物質の海洋水産資源への曝露予測手法の開発
多様な化学物質の内、残留性有機汚染物質(POPs)は広域多媒体に亘って輸送され、かつ高い生物濃縮性を持つ。本課題では研究代表者らが開発してきたPOPsの全球多媒体モデルFATEに、衛星データを利用して海洋生物の生態系構造を推定する生態系モデルと、経験則に基づく生物濃縮モデルを導入した。これを用いて、全栄養段階における海洋水産資源(魚類)へのPOPsの曝露量を地球規模で推定し、さらに、漁業によるPOPsの陸域への輸送量を推定した。多様な化学物質の内、残留性有機汚染物質(POPs)は広域多媒体に亘って輸送され、かつ高い生物濃縮性を持つ。本課題では研究代表者らが開発してきたPOPsの全球多媒体モデルFATEに、衛星データを利用して海洋生物の生態系構造を推定する生態系モデルと、経験則に基づく生物濃縮モデルを導入した。これを用いて、全栄養段階における海洋水産資源(魚類)へのPOPsの曝露量を地球規模で推定し、さらに、漁業によるPOPsの陸域への輸送量を推定した。多様な化学物質の内、残留性有機汚染物質(POPs)は広域多媒体に渡って輸送され、かつ生物濃縮性と毒性が高い。このため、地球規模における生物への悪影響が特に懸念されてきた化学汚染物質である。近年、気候モデルより得られた物理データを用い、POPsの大気-海洋-陸域に渡る循環を詳細に推定する多媒体モデルの開発が進められている。これらのモデルを用いてPOPsの環境媒体中における濃度レベルを推定することは可能となってきている。一方、地球規模において、生態系全般への曝露量を推定できる段階には至っていない。本研究では、中-高次消費者を含めた海洋生物へのPOPsの生物移行を計算するサブモデルを開発し、我々が開発を進めている全球多媒体モデルFATEに導入する。これを用いて、全栄養段階における海洋水産資源(魚類)へのPOPsの曝露量を地球規模で推定し、さらに、漁業による陸域への輸送量を国別に評価する。H25年度には、まず、主要な塩素・臭素系POPsにFATEを拡張する。その後、衛星データのみを用いて、中-高次消費者を含めた海洋生物の存在量と生物学的に駆動される炭素循環を推定するサブモデルを開発する。これと既存の生物濃縮モデルをFATEに導入し、POPs(既存、新規、及び候補物質)の全栄養段階にある海洋水産資源への曝露量を推定する。H26年度には、水産統計データ(漁業海域、国別の漁獲高)を整理する。これと、H25年度に得られた、海洋水産資源への曝露量の推定結果を用い、POPsの漁業による陸域への輸送量(陸域生態系への潜在的な曝露量)を国別に評価する。多様な化学物質の内、残留性有機汚染物質(POPs)は広域多媒体に渡って輸送され、かつ生物濃縮性と毒性が高い。このため、地球規模における生物への悪影響が特に懸念されてきた化学汚染物質である。近年、気候モデルより得られた物理データを用い、POPsの大気-海洋-陸域に渡る循環を詳細に推定する多媒体モデルの開発が進められている。これらのモデルを用いてPOPsの環境媒体中における濃度レベルを推定することは可能となってきているが、生態系全般への曝露量を推定できる段階には至っていない。本研究では、中-高次消費者を含めた海洋生物へのPOPsの生物移行を計算するサブモデルを開発し、我々が開発を進めている全球多媒体モデルFATEに導入する。これを用いて、全栄養段階にある海洋水産資源(魚類)へのPOPsの曝露量を地球規模で推定し、さらに、漁業による陸域への輸送量を国別に評価する。H25年度には、主要な塩素・臭素系のPOPs、及びPOPs候補物質にFATEを拡張した。また、衛星データを用いて、中-高次消費者を含めた海洋生物の存在量と生物学的に駆動される炭素循環を推定するサブモデルを開発し、これと経験則に基ずく生物濃縮モデルをFATEに導入した。これにより、全栄養段階にある海洋生物中のPOPs濃度を推定することが可能となった。H26年度には、海棲哺乳類中のPCBs濃度を検証した。また、水産統計データ(漁業海域、国別の漁獲高)を整理し、漁業によるPOPsの陸域への輸送量(陸域生態系への潜在的な曝露量)を国別に推定した。以上、研究期間を通して得られた成果を学会、及び誌上発表を通して配信した。環境学「研究実績の概要」のH25年度の計画に記した、FATEの主要な塩素・臭素系有機汚染物質への拡張と、海洋生物への生物移行に関する全てのモデル開発は完了している。また、H26年度の計画に記した全球水産統計データの整理まで既に行っている。現在、代表的な塩素系のPOPsであるポリ塩化ビフェニル(PCBs)を取り上げ、海洋水産資源への曝露量と漁業による陸域への輸送量の推定を行っているが、この他のPOPs、及びPOPs候補物質を対象とした解析は行えていない。生物移行に関連する物質固有のモデルパラメーターには大きな不確実性がある。特に、低次から高次消費者への生物濃縮を計算する際に用いるTMF (trophic magnification factor)は結果に及ぼす感度が大きく、情報の不足しているパラメーターである。また、現在モデル検証が行えているのは溶存態と低次消費者(粒子状有機物)中のPCBs濃度のみである。
KAKENHI-PROJECT-25871087
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全球多媒体モデルを用いた残留性有機汚染物質の海洋水産資源への曝露予測手法の開発
今後はPCBs以外の塩素・臭素系有機汚染物質を対象とした解析を行うとともに、パラメーター(TMF)推定の精緻化と魚類を対象としたモデル検証を実施する。FATEを用いて多数の物質のシミュレーションを実施するためには巨大な計算機資源(計算機とストレージ)が必要となる。本課題では直接経費の大部分をこのような計算資源の購入に割り当てている。「現在までの達成度」に記したように、本課題で予定しているモデル開発は既に完了しているが、多数の塩素・臭素系有機汚染物質を対象とした解析行える段階に至っていない。前年度より繰り越した直接経費を用いて、極力早期に申請時に予定していた計算機資源を購入し、PCBs以外の塩素・臭素系POPsと候補物質を対象とした解析を実施する。
KAKENHI-PROJECT-25871087
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神経特異遺伝子とその発現ー記憶の分子機構を目指してー
本研究班は、平成6年度発足の重点領域研究申請の準備のために、平成4年12月17日に、大阪にて、「神経活動による遺伝子応答」と題して、公開研究会を開催した。演者および演題を以下に挙げる。1)栗山欣弥(京都府立医大):受容体刺激に伴うGABA-A受容体α1サブユニットmRNAについて、2)遠山正弥(大阪大・医):グルタミン酸受容体の遺伝子発現と末梢神経、3)吉川和明:ニューロン分化に特異的な遺伝子解析、4)影山龍一郎(京都大・医):神経機能・分化に関与する新たな転写制御因子、5)池中一裕(国立生理研):神経系の分化と遺伝子発現、6)芳賀達也(東京大・医):ムスカリン受容体刺激によるZ2f268遺伝子の発現、7)津田正明(岡山大・薬):シナプス応答に関わる転写制御因子、8)小幡邦彦(国立生理研):海馬における神経活動と遺伝子応答、9)三木直正(大阪大・医):薬物依存形成と遺伝子発現。研究会の後、神経系における、長期遺伝子発現を中心課題として、平成6年度発足の重良領域研究の申請を行うことを決議し、申請書の原稿作成および、研究内容と方向性についての討論を行った。平成6年度発足の重点研究に、「脳における長期遺伝子応答」(代表者:三木直正)という研究課題で、平成5年度2月に申請書を文部省に提出した。研究班は、(A)ニューロンに特異的な遺伝子発現の機序(班長:山内卓)、(B)神経活動による長期遺伝子発現機能(班長:三木直正)の2班に分かれており、脳内情報保持機構を分子レベルで追求することを目指している。本研究班は、平成6年度発足の重点領域研究申請の準備のために、平成4年12月17日に、大阪にて、「神経活動による遺伝子応答」と題して、公開研究会を開催した。演者および演題を以下に挙げる。1)栗山欣弥(京都府立医大):受容体刺激に伴うGABA-A受容体α1サブユニットmRNAについて、2)遠山正弥(大阪大・医):グルタミン酸受容体の遺伝子発現と末梢神経、3)吉川和明:ニューロン分化に特異的な遺伝子解析、4)影山龍一郎(京都大・医):神経機能・分化に関与する新たな転写制御因子、5)池中一裕(国立生理研):神経系の分化と遺伝子発現、6)芳賀達也(東京大・医):ムスカリン受容体刺激によるZ2f268遺伝子の発現、7)津田正明(岡山大・薬):シナプス応答に関わる転写制御因子、8)小幡邦彦(国立生理研):海馬における神経活動と遺伝子応答、9)三木直正(大阪大・医):薬物依存形成と遺伝子発現。研究会の後、神経系における、長期遺伝子発現を中心課題として、平成6年度発足の重良領域研究の申請を行うことを決議し、申請書の原稿作成および、研究内容と方向性についての討論を行った。平成6年度発足の重点研究に、「脳における長期遺伝子応答」(代表者:三木直正)という研究課題で、平成5年度2月に申請書を文部省に提出した。研究班は、(A)ニューロンに特異的な遺伝子発現の機序(班長:山内卓)、(B)神経活動による長期遺伝子発現機能(班長:三木直正)の2班に分かれており、脳内情報保持機構を分子レベルで追求することを目指している。
KAKENHI-PROJECT-04354011
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04354011
立体的な高臨場感再生音場再現のためのコンテンツ情報処理と感性的評価に関する研究
本研究では,高臨場感音場の再現を指向したAVコンテンツ視聴環境の構築における,広空間領域での音声の提示手法に関する指針を得ることを目的とし,マルチメディア環境下での,映像と音像の大きさ知覚および提示時間差の効果について検討した.まず,映像の大きさの印象に対する等価音圧レベル(映像刺激の大きさに相当すると知覚される音声刺激の音圧レベル)について調査を行った.その結果,中心領域に比べ周辺領域の方が,等価音圧レベルは小さかった.すなわち,中心領域より周辺領域の方が,音声の印象が強いと知覚され易かった.ただし,映像が大きくなると,中心領域と周辺領域での等価音圧レベルはほとんど等しくなった.次に,AVメディア間の提示時間差に関する順応効果に着目し,短時間の視聴覚刺激(順応刺激)を一回提示した際の順応効果について検討した.その結果,テスト刺激(順応効果量を測るための刺激)における映像と音声の時間差が30msと110msの場合については順応効果が観察された.しかし,被験者によって,順応しやすい人と順応しにくい人が存在し,個人差の影響が大きかった.今後,個人差を考慮した検討が必要であると考えられる.また,低受聴明瞭度環境下における,音声及び映像の遅延が単語認識に与える影響について調査を行った.その結果,±4F(フレーム)以上の音声遅延は,視覚情報が単語認識の妨げとなるが,±32Fの音声遅延のように,映像と音声それぞれが完全に独立するほどの大きなずれの場合には,視覚情報が単語認識の妨げとはならないということがわかった.さらに,音の大きさ知覚に関する聴覚増強作用について調査を行った.ここでは,先行音を対象耳の反対側の耳(交互耳)または同じ側の耳(同側耳)に提示した場合の,最小可聴値の変化を調べた.その結果,先行音を交互耳に提示した場合,最小可聴値は有意に低下した,すなわち感度が上昇した.その効果量の平均値は約2dBであった.また,先行音の音圧レベルが増加すると,聴覚中枢系の感度上昇作用は増加した.以上の知見は,今後のAVコンテンツ視聴環境の構築に有効であると考えられる.本研究では,高臨場感音場の再現を指向したAVコンテンツ視聴環境の構築における,広空間領域での音声の提示手法に関する指針を得ることを目的とし,マルチメディア環境下での,映像と音像の大きさ知覚および提示時間差の効果について検討した.まず,映像の大きさの印象に対する等価音圧レベル(映像刺激の大きさに相当すると知覚される音声刺激の音圧レベル)について調査を行った.その結果,中心領域に比べ周辺領域の方が,等価音圧レベルは小さかった.すなわち,中心領域より周辺領域の方が,音声の印象が強いと知覚され易かった.ただし,映像が大きくなると,中心領域と周辺領域での等価音圧レベルはほとんど等しくなった.次に,AVメディア間の提示時間差に関する順応効果に着目し,短時間の視聴覚刺激(順応刺激)を一回提示した際の順応効果について検討した.その結果,テスト刺激(順応効果量を測るための刺激)における映像と音声の時間差が30msと110msの場合については順応効果が観察された.しかし,被験者によって,順応しやすい人と順応しにくい人が存在し,個人差の影響が大きかった.今後,個人差を考慮した検討が必要であると考えられる.また,低受聴明瞭度環境下における,音声及び映像の遅延が単語認識に与える影響について調査を行った.その結果,±4F(フレーム)以上の音声遅延は,視覚情報が単語認識の妨げとなるが,±32Fの音声遅延のように,映像と音声それぞれが完全に独立するほどの大きなずれの場合には,視覚情報が単語認識の妨げとはならないということがわかった.さらに,音の大きさ知覚に関する聴覚増強作用について調査を行った.ここでは,先行音を対象耳の反対側の耳(交互耳)または同じ側の耳(同側耳)に提示した場合の,最小可聴値の変化を調べた.その結果,先行音を交互耳に提示した場合,最小可聴値は有意に低下した,すなわち感度が上昇した.その効果量の平均値は約2dBであった.また,先行音の音圧レベルが増加すると,聴覚中枢系の感度上昇作用は増加した.以上の知見は,今後のAVコンテンツ視聴環境の構築に有効であると考えられる.最近のIT技術の普及とディジタル信号技術の急速な進歩によって、三次元の音場再生が容易に可能となった。それに伴い、より臨場感あふれる音場再生技術が望まれてきており、様々な観点からの研究が行われている。それらの一つに、ある音場の空間情報を持つ頭部伝達関数(Head-Related Transfer Functions; HRTFs)を模擬して、音像定位を実現させる方法がある。その処理を行うには、FIR(Finite Impulse Response)フィルタを用いるのが一般的であるが、FIRフィルタによる処理は高速な演算を必要とするため、実際の視聴音場での実時間処理、特にフィルタ係数の切り替えが困難であるという問題があった。このために、より安価で簡易なシステムへの移行を妨げてきた。このような背景の下、より簡易なシステムで、臨場感のある音場を再現するために、FIRフィルタと比較して少ないフィルタ次数での実現が可能であり、フィルタ係数の変更が容易なIIR(Infinite Impulse Response)フィルタを用いた手法が提案され、音像の方向定位に関する研究が数多く行われている。しかしながら、音像の距離定位に関する研究は数少ない。
KAKENHI-PROJECT-15500127
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15500127
立体的な高臨場感再生音場再現のためのコンテンツ情報処理と感性的評価に関する研究
そこで、本論文では、音像の距離定位の実現を目的とし、HRTFをFIRフィルタで模擬する方法と、IIRフィルタで近似する方法を用いた。さらにIIRフィルタで近似する際に、後方に定位しやすい周波数帯域に注目し、この点を考慮した条件を設定した。そして、それらの設計条件に従って近似したHRTFを用いて、2スピーカ再生による音像の距離に関する定位実験を行った。また、得られた臨場感に対して、視聴者の感性的観点から評価する手法の検討も行った。その結果、FIRフィルタを用いた場合、左右と前方向では、50cmと100cmの位置において音像の距離定位は可能であり、後方向では、50cmの位置において定位可能であった。また、実験では、IIRフィルタを用いた場合、FIRフィルタに比べて若干精度が劣る結果となったが、検討の結果、後方に定位しやすい周波数帯域での近似精度を高め、これにより後方への定位精度を向上させることができた。さらに、2スピーカを搭載した携帯電話を用いた音像定位の実験も行った。その結果、見開き60°の範囲では音像定位の実現が可能であるとの新しい知見が得られた。本研究では,高臨場感音場の再現を指向したAVコンテンツ視聴環境の構築における,広空間領域での音声の提示手法に関する指針を得ることを目的とし,マルチメディア環境下での,映像と音像の大きさ知覚および提示時間差の効果について検討した.まず,映像の大きさの印象に対する等価音圧レベル(映像刺激の大きさに相当すると知覚される音声刺激の音圧レベル)について調査を行った.その結果,中心領域に比べ周辺領域の方が,等価音圧レベルは小さかった,すなわち,中心領域より周辺領域の方が,音声の印象が強いと知覚され易かった.ただし,映像が大きくなると,中心領域と周辺領域での等価音圧レベルはほとんど等しくなった.次に,AVメディア間の提示時間差に関する順応効果に着目し,短時間の視聴覚刺激(順応刺激)を一回提示した際の順応効果について検討した.その結果,テスト刺激(順応効果量を測るための刺激)における映像と音声の時問差が30msと110msの場合については順応効果が観察された.しかし,被験者によって,順応しやすい人と順応しにくい人が存在し,個人差の影響が大きかった.今後,個人差を考慮した検討が必要であると考えられる.また,低受聴明瞭度環境下における,音声及び映像の遅延が単語認識に与える影響について調査を行った.その結果,±4F(フレーム)以上の音声遅延は,視覚情報が単語認識の妨げとなるが,±32Fの音声遅延のように,映像と音声それぞれが完全に独立するほどの大きなずれの場合には,視覚情報が単語認識の妨げとはならないということがわかった.さらに,音の大きさ知覚に関する聴覚増強作用について調査を行った.ここでは,先行音を対象耳の反対側の耳(交互耳)または同じ側の耳(同側耳)に提示した場合の,最小可聴値の変化を調べた.その結果,先行音を交互耳に提示した場合,最小可聴値は有意に低下した,すなわち感度が上昇した.その効果量の平均値は約2dBであった.また,先行音の音圧レベルが増加すると,聴覚中枢系の感度上昇作用は増加した.以上の知見は,今後のAVコンテンツ視聴環境の構築に有効であると考えられる.
KAKENHI-PROJECT-15500127
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15500127
マルチビーム・レーザーによる高速コンクリート欠陥探傷に関する研究
コンクリート面から反射して戻ってきた散乱光をダイナミックホログラム結晶を用いることによりリアルタイムで2次元の振動が計測できる。この装置を用いてコンクリートひび割れ深さを健全部分と欠陥部分を同時に計測してひび割れ深さを計測する実験を行った。検出レーザーは2本照射して健全部分とひび割れ部分との計測を行った。信号強度比はひび割れが深くなるにつれて小さくなった。この結果から健全箇所とひび割れ箇所で信号強度比を同時に計測することによりひび割れ深さを推定できることが分かった。コンクリート表面の振動計測について述べる。衝撃波励起用パルスレーザーをコンクリート表面に照射し、コンクリート表面に微小振動を発生させる。次いで、検出用レーザー(連続光)をコンクリート表面に照射し反射された光を検出する。しかし、反射された光はコンクリート表面粗さの影響で検出感度が低下する。これを防ぐために、ダイナミックホログラム結晶を用いた光検出を行った。振動検出用レーザーを検出装置内でビームスプリッターにより信号光と参照光に分け、信号光をコンクリート表面に照射する。コンクリート表面形状の情報を持った反射光と擾乱を受けていない参照光をダイナミックホログラム結晶中で干渉させ、コンクリート表面形状のホログラムを形成する。このダイナミックホログラムには、微小振動の情報を持つ信号光が来る前にコンクリート表面粗さの情報が書き込まれているので、位相共役効果で表面粗さに起因する信号は差し引きされ、シグナル/ノイズ比(S/N比)の高い微小振動の検出ができる。マルチチャンネル光検出器は64チャンネルの光電子増倍管を平面に配置した素子を用いた(1チャンネルの大きさ5.8×5.8 mm、浜松ホトニクス製)。今年度は光検出器を16チャンネルの光検出器で受光した。コンクリート面から反射して戻ってきた散乱光は第1像転送レンズによりダイナミックホログラム結晶内で結像され位相共役効果により振動成分のみが出力される。この散乱光を第2像転送レンズで結像してマルチチャンネル光検出器に入射させた。振動板はピエゾアクチュエーターを用いた。レーザーを遮断した箇所とアクチュエーターに入射した箇所で明らかに信号波形が異なることを確認した。これにより、リアルタイムで2次元の振動を計測した。レーザーを用いたコンクリート覆工コンクリートの健全性評価技術の開発を行ってきた。これを基にレーザー本数を増やすことで検査速度の向上を目指す研究を行った。16セルのマルチチャンネルレーザー照射によって16点同時計測が可能である。計測原理は衝撃波励起用パルスレーザーをコンクリート表面に照射し、コンクリート表面に微小振動を発生させる。次いで、検出用レーザー(連続光)をコンクリート表面に照射し反射された光を検出する。しかし、反射された光はコンクリート表面粗さの影響で検出感度が低下する。これを防ぐために、ダイナミックホログラム結晶を用いた光検出を行った。振動検出用レーザーを検出装置内でビームスプリッターにより信号光と参照光に分け、信号光をコンクリート表面に照射する。コンクリート表面形状の情報を持った反射光と擾乱を受けていない参照光をダイナミックホログラム結晶中で干渉させ、コンクリート表面形状のホログラムを形成する。このダイナミックホログラムには、微小振動の情報を持つ信号光が来る前にコンクリート表面粗さの情報が書き込まれているので、位相共役効果で表面粗さに起因する信号は差し引きされ、シグナル/ノイズ比(S/N比)の高い微小振動の検出ができる。浜松ホトニクス製の64チャンネルの光電子増倍管を用いてマルチチャンネル光検出器を構築した。今年度はコンクリートまでの距離に依存しない方式(第1レンズを使用しない方式)で実験を行った。この場合、反射して戻ってくる光量が小さくなり十分なフォトリフラクティブ効果が得られなかったため振動を計測することが出来なかった。最終年度ではまた、像転送する方式に変更してマルチチャンネルリアルタイム検出を行う予定である。コンクリートまでの距離に依存しない方式で実験を行ったため、反射光量が小さく、十分なフォトリフラクティブ効果が得られなかった。レーザーを用いたコンクリート覆工コンクリートの健全性評価技術開発をさらに発展させて、レーザー本数を増やすことで検査速度の向上を目指す研究を行った。16セルのマルチチャンネルレーザー照射による16点同時計測である。64チャンネルのマルチチャンネル光検出器を用いて計測を行った。光検出器は光電子増倍管を8×8チャンネルの2次元配置となっている。(1チャンネルの大きさ5.8×5.8 mm、浜松ホトニクス製)。コンクリート面から反射して戻ってきた散乱光は第1像転送レンズによりダイナミックホログラム結晶内で結像され位相共役効果により振動成分のみが出力される。この散乱光を第2像転送レンズで結像してマルチチャンネル光検出器に入射させた。振動板はピエゾアクチュエーターを用いた。レーザーを遮断した箇所とアクチュエーターに入射した箇所で明らかに信号波形が異なることを確認した。これにより、リアルタイムで多チャンネルの振動を計測したと思われる。コンクリート面から反射して戻ってきた散乱光をダイナミックホログラム結晶を用いることによりリアルタイムで2次元の振動が計測できる。この装置を用いてコンクリートひび割れ深さを健全部分と欠陥部分を同時に計測してひび割れ深さを計測する実験を行った。検出レーザーは2本照射して健全部分とひび割れ部分との計測を行った。信号強度比はひび割れが深くなるにつれて小さくなった。この結果から健全箇所とひび割れ箇所で信号強度比を同時に計測することによりひび割れ深さを推定できることが分かった。装置の組み込みが完了し、検出器の信号受信に成功した。
KAKENHI-PROJECT-26420473
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マルチビーム・レーザーによる高速コンクリート欠陥探傷に関する研究
これにより当初の計画をクリアーしており順調に研究が推移していると考える。最終年度では像転送する方式に変更してマルチチャンネルリアルタイム検出を行う予定である。レーザー計測平成27年度は装置のリファインとマイコン(PC)ですべての制御が出来るように制御系を構築する。プロトタイプに組み込み、510m遠方からコンクリート供試体で計測を行い、課題を抽出する。平成28年度は、複数本レーザービームに合致した欠陥検出アルゴリズムの新規構築とデータ処理の対応を行う。その後、大型コンクリート供試体あるいは実欠陥で探傷実験を行い、装置の信頼性等を検証する。反射ミラーのマウントホルダーや光学レンズ等を既存の小型ホルダーや小口径レンズで代用したため。制御ソフトを用いずに計測が可能であったため。来年度はミラー、レンズサイズにあった光学部品を購入する。平成26年度に購入しなかった制御ソフトを平成27年度に購入予定である。
KAKENHI-PROJECT-26420473
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ロケットフェアリングの革新的音響低減手法の研究
昨年度から引き続き、ロケットフェアリングの一部を模擬した板構造物と圧電素子から成る実験装置を用いて音響透過低減実験を行った。提案するエネルギ回生型音響低減手法を適用することより透過音響レベルが10dBも低減することが確認した。そこで、我々の提唱する革新的な音響低減手法が現実可能である事が実証した。音響低減効果を高めるために電気回路の改良を図った。これまで我々が提唱してきた電気回路では、圧電素子にかかる電圧値が急激に変化するために、高周波音響の励起が見られた。そこで、電圧値を急激に変化させることない制御回路を考案した。キャパシタ内に一時的に回生エネルギを保管させ、少しずつ圧電素子に戻す制御回路である。本アイデアを取り入れた音響透過実験を模擬した数値計算により、意図通りに高周波音響の励起が緩和される事が示した。高周波音響励起を緩和する機構を有する電気回路を自作し、実験装置に取り付けた。その結果、改良の余地はあるものの、想定する動作をする電気回路の実装が確認した。更に、実験だけでは用意に得られないパラメトリックスタディを目的として、振動解析と音場解析を結合した数値計算プログラムを自作し、音響低減の効果を定量的に評価した。そのプログラムを用いて、構造物に貼る圧電素子の貼り付け位置を変数とした透過音響低減制御効果の定量的な最適化を図った。更に、ロケットフェアリングのみならず、航空機キャビンにおける騒音低減に適用する事を念頭に、人間の音響感覚フィルタ(A特性)を通した音圧レベルに基づく音響低減手法の評価も行った。我々が提唱する革新的音響低減手法を他の低減手法と比較しながら総合的に評価した。ロケットフェアリングを模擬した板構造物と圧電素子から成る音響制御実験を構築した。音源スピーカを内部に設置する密閉音響箱(直径1m、厚さ12mm、高さ1m、鉄製)を作製した。その密閉音響箱の一部を開口にし、その開口を板構造物で塞いだ。その板構造物に圧電素子を貼り付け、電気回路とプロセッサからなる音響制御装置を接続した。作製した音響実験装置を用いて音響実験を行い、提案する音響低減手法により音響が10dBも低減した。つまり、この画期的なエネルギ回生音響制御のアイデアが現実可能であることを実証した。電気回路内のインダクタンス値の変化によって、音響低減効率が大幅に上昇する一方、高周波音響を励起するという非常に興味深い知見を得た。提案する本手法の本質に迫る興味深い現象である。本手法は、圧電素子に繋がれた電気回路のスイッチを切り替えるのみで、系の状態を変化さるバンバン型準能動的手法に属する。制御入力量と見なせる電圧の切り替えが急激であるために、高周波の音響を増幅していることを突き止めた。この原因究明を受けて、圧電素子にかかる電圧値を急激に変化させることない制御回路を考案した。キャパシタ内に一時的に回生エネルギを保管させ、少しずつ圧電素子に戻す制御回路である。結果的に圧電素子の電圧値反転の急激さを緩和し、高周波音響を励起しないことが可能となる。現実のアナログ回路上で実装中である。また、実験だけでは得られないパラメトリックスタディや実験解析補助を目的として、実験を模擬する数値計算プログラムを自作した。フェアリング構造物の振動解析に有限要素法を用い、音場解析に境界要素法を用いて、本音響低減手法における振動・音場練成解析を行った。昨年度から引き続き、ロケットフェアリングの一部を模擬した板構造物と圧電素子から成る実験装置を用いて音響透過低減実験を行った。提案するエネルギ回生型音響低減手法を適用することより透過音響レベルが10dBも低減することが確認した。そこで、我々の提唱する革新的な音響低減手法が現実可能である事が実証した。音響低減効果を高めるために電気回路の改良を図った。これまで我々が提唱してきた電気回路では、圧電素子にかかる電圧値が急激に変化するために、高周波音響の励起が見られた。そこで、電圧値を急激に変化させることない制御回路を考案した。キャパシタ内に一時的に回生エネルギを保管させ、少しずつ圧電素子に戻す制御回路である。本アイデアを取り入れた音響透過実験を模擬した数値計算により、意図通りに高周波音響の励起が緩和される事が示した。高周波音響励起を緩和する機構を有する電気回路を自作し、実験装置に取り付けた。その結果、改良の余地はあるものの、想定する動作をする電気回路の実装が確認した。更に、実験だけでは用意に得られないパラメトリックスタディを目的として、振動解析と音場解析を結合した数値計算プログラムを自作し、音響低減の効果を定量的に評価した。そのプログラムを用いて、構造物に貼る圧電素子の貼り付け位置を変数とした透過音響低減制御効果の定量的な最適化を図った。更に、ロケットフェアリングのみならず、航空機キャビンにおける騒音低減に適用する事を念頭に、人間の音響感覚フィルタ(A特性)を通した音圧レベルに基づく音響低減手法の評価も行った。我々が提唱する革新的音響低減手法を他の低減手法と比較しながら総合的に評価した。
KAKENHI-PROJECT-17656278
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電解法によるFe-Ni合金系応力インピーダンス素子の作成と加速度センサへの応用
Fe-Ni電析合金膜は,高透磁率,低保磁力という特徴を持つため,磁気記録の薄膜ヘッド材として幅広く用いられている。近年,磁性体に歪みを与えると磁気特性が変化するという逆磁歪効果を利用して,測定対象物にかかる張力,トルク,圧力,重量などを磁気特性の変化によって検出するいわゆる磁歪型応力センサーへの適用が期待されている。このFe-Ni合金電析は,電気化学的に卑なFeが貴なNiより優先析出する変則型共析という特異的な挙動を示す。薄膜の磁気特性は,その構造,厚さ等様々な因子に依存するが,Fe-Ni合金においてはその組成への依存性が大きいため,合金組成の制御が必須である。このため,Fe-Ni合金の変則型共析機構を解明することは重要と考えられる。硫酸塩浴から種々の電解条件においてFe-Ni合金電析を行い,その電析機構を検証した結果,以下のことが明らかになった。Fe-Ni合金電析は,広い電解条件下で,より卑なFeが優先電析する変則型共析となることが確認された。この特異な現象は,Feとの共析によりNiの電析が大きく抑制されるため出現した。変則型共析時の陰極層pHは,鉄族金属の水酸化物生成の臨界値まで上昇しているものの,FeとNiの水酸化物生成臨界pHはほぼ同じであることから,この水酸化物抑制機構では変則型共析機構を説明できない。鉄族金属の電析はMOH^+およびMOH_<ad>(M=Fe,Ni)という反応中間体を経由することに着目すると,FeOH^+の解離定数がNiOH^+と比較して圧倒的に小さいことから,FeとNiの共析時においてはNiOH_<ad>の吸着サイトがFeOH_<ad>よって奪われNiの電析反応が抑制された結果,変則型共析挙動が出現するという機構を提案した。FeOHの吸着を形成し難い電解条件下では合金電析時の変則性がいずれも緩和されることが確認された。また、Fe-Ni電析膜の保持力は,皮膜の組成および結晶粒径に依存した。Fe-Ni電析合金膜は,高透磁率,低保磁力という特徴を持つため,磁気記録の薄膜ヘッド材として幅広く用いられている。近年,磁性体に歪みを与えると磁気特性が変化するという逆磁歪効果を利用して,測定対象物にかかる張力,トルク,圧力,重量などを磁気特性の変化によって検出するいわゆる磁歪型応力センサーへの適用が期待されている。このFe-Ni合金電析は,電気化学的に卑なFeが貴なNiより優先析出する変則型共析という特異的な挙動を示す。薄膜の磁気特性は,その構造,厚さ等様々な因子に依存するが,Fe-Ni合金においてはその組成への依存性が大きいため,合金組成の制御が必須である。このため,Fe-Ni合金の変則型共析機構を解明することは重要と考えられる。硫酸塩浴から種々の電解条件においてFe-Ni合金電析を行い,その電析機構を検証した結果,以下のことが明らかになった。Fe-Ni合金電析は,広い電解条件下で,より卑なFeが優先電析する変則型共析となることが確認された。この特異な現象は,Feとの共析によりNiの電析が大きく抑制されるため出現した。変則型共析時の陰極層pHは,鉄族金属の水酸化物生成の臨界値まで上昇しているものの,FeとNiの水酸化物生成臨界pHはほぼ同じであることから,この水酸化物抑制機構では変則型共析機構を説明できない。鉄族金属の電析はMOH^+およびMOH_<ad>(M=Fe,Ni)という反応中間体を経由することに着目すると,FeOH^+の解離定数がNiOH^+と比較して圧倒的に小さいことから,FeとNiの共析時においてはNiOH_<ad>の吸着サイトがFeOH_<ad>よって奪われNiの電析反応が抑制された結果,変則型共析挙動が出現するという機構を提案した。FeOHの吸着を形成し難い電解条件下では合金電析時の変則性がいずれも緩和されることが確認された。また、Fe-Ni電析膜の保持力は,皮膜の組成および結晶粒径に依存した。本年度は,硫酸塩,スルファミン酸塩および塩化物浴を用いて,主として電析挙動を調べた。種々の電解因子を変更させ,電析Fe-Ni合金の電流効率および合金組成を測定した結果,より卑なFeが優先析出する異常型共析が,硫酸塩およびスルファミン酸塩浴において,広い電解条件で顕著に認められた。一方,塩化物浴では,異常型共析領域は存在はするもののその領域も狭く,またFeの優先析出の程度は小さいことがわかった。次に,上記三種類の浴を用いて,定電流密度下で合金析出の分極曲線およびFe, Ni単独析出の分極曲線を測定した。この結果,Fe-Ni合金析出の異常型現象は,Niの高電流密度下での分極現象および低電流密度下でのFeの復極現象の結果起こっていることがわかった。典型的な異常型共析を示す鉄族金属-Zn合金電析においては,鉄族金属の大きな分極現象によりZnの優先析出が起こっているので,鉄族金属一Zn合金系で異常型共析機構の通説とされている水酸化物抑制説が本Fe-Ni系でも適用できるかさらになる検討が必要である。
KAKENHI-PROJECT-14350391
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14350391
電解法によるFe-Ni合金系応力インピーダンス素子の作成と加速度センサへの応用
電析物の表面は,低電流密度域で得られた電析物の場合,上記三種類のいずれの浴を用いても鏡面上の良好な外観を呈したが,高電流密度域では硫酸塩からの電析物が最も良好であった。一方,張力センサ作成のために,直径0.1mmのCu線上への電析を試みた。なお,電析皮膜の厚さは1mmを目指した。その結果,従来の実験条件および装置を若干改良することで,目的の組成の皮膜を得ることが可能となった。前年度において,硫酸塩,スルファミン酸塩および塩化物浴を用いて,Fe-Ni合金の電析挙動を調べた結果,Fe-Ni合金析出の異常型現象は,Niの高電流密度下での分極現象および低電流密度下でのFeの復極現象の結果起こっていることがわかった。そこで本年度は,主として硫酸塩浴を用いて,Fe-Ni合金電析膜の表面性状の改善と磁気特性の基本的特徴および磁気特性に及ぼす電解因子について調べた。その結果,電析法で作製したFe-Ni合金膜の保磁力は,乾式膜と同様に合金組成への依存性を強く示すことがわかった。また,前年度行った合金電析においては,高電流密度域において電析物の外観に劣悪なものが認められた。そこで,添加剤による表面性状の改善を検討した。電解浴にホウ酸を添加すると,表面性状は広い電流密度範囲にわたって光沢をもたらすことがわかった。磁気特性として,電析合金膜の保磁力を調査した結果,10Oe以上であり改善されなかった。しかし,電解浴にサッカリン,チオ尿素を添加することで保磁力低下(5Oe以下)が可能となり,乾式膜とほぼ同程度のものが得られることがわかった。低保磁力を示した電析膜の結晶粒径は,いずれも無添加浴から得られた電析膜に比べ減少していた。ただし,サッカリン、チオ尿素の添加による保磁力低下は、Ni含有率の高い電析膜についてのみ生じることから,電析膜の保磁力を低下させるためには,適正な電解条件,添加剤により,膜の組成および結晶粒径を制御することが重要であることがわかった。ただし,これらの制御のみでは,保磁力の低減に限界が認められたので,膜構造,内部応力および表面粗さなどの他の要因についても今後さらなる検討が必要である。また、実用材料上(SUS304)に電析法でのFe-Ni合金膜を作製し,実際に磁気センサとして作動するかを試験をした結果,Ni92.7%電析膜は出力値こそ若干劣るものの,直線性に優れており十分実用可能であることが確認された。センサ材として求められているFe-Ni合金薄膜の磁気特性は軟磁気特性,つまり磁化材料である。前年度までの研究において,Fe-Ni合金電析は,広い電解条件下で,より卑なFeが優先電析する変則型共析となる。この特異な現象は,Feとの共析によりNiの電析が大きく抑制されるため出現した。変則型共析時の陰極層pHは,鉄族金属の水酸化物生成の臨界値まで上昇しているものの,FeとNiの水酸化物生成臨界pHはほぼ同じであることから,この水酸化物抑制機構では変則型共析機構を説明できない。鉄族金属の電析はMOH^+およびMOH_<ad>(M=Fe, Ni)という反応中間体を経由することに着目すると,FeOH^+の解離定数がNiOH^+と比較して圧倒的に小さいことから,FeとNiの共析時においてはNiOH_<ad>の吸着サイトがFeOH_<ad>によって奪われNiの電析反応が抑制された結果,変則型共析挙動が出現するという機構を提案した。FeOHの吸着を形成し難い電解条件下では合金電析時の変則性がいずれも緩和されることが確認された。また,硫酸塩浴からの電析めっき膜の磁気材料への有効性などの知見が得られた。しかし,浴因子の違いによる磁気特性への影響についての結果は不十分であった。そこで,塩化物浴を用いて,Fe-Ni合金電析膜の磁気特性に与える影響について調査した。
KAKENHI-PROJECT-14350391
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腹部内臓動脈急性閉塞による、腸管壊死範囲縮小化に関する実験的研究
【目的】本研究は腹部内臓動脈急性閉塞において虚血・壊死に陥る腸管の範囲を術中に迅速に確定する方法を確立することを目的として遂行した。【方法】ビーグル成犬(n=3)を開腹し、空腸から回腸までの小腸全体を5等分して定点側定部位とした。各点で1)腸管内へラテックス製バルーン付き圧transducerを用いて、腸管運動に伴う腸管内圧変動を測定・観察した。2)小腸漿膜面腸管壁内へ白金電極を刺入し誘発電位検査装置(日本光電MEB-7202)を用いて腸管筋電図測定を行った。3)ニードルタイプ酸素電極を小腸漿膜面腸管壁内へ刺入し酸素分圧測定装置(Inter Medical PO_2-100)を用いて組織内酸素分圧を測定した。以上についてControlを測定後、Cranial mesenteric arteryを閉塞し一定時間(1時間、6時間、12時間)後、再灌流を行った後上記を測定した。【結果】1時間動脈閉塞では再灌流により速やかに腸管のcyanosisは消失し、1012回/分頻度の腸管収縮運動とそれに伴う腸管筋電図の現出を認めた。組織内酸素分圧はControl値(3540mmHg)に復した。6時間動脈閉塞後再灌流では腸管のcyanosisは全体的に消失したが、3040%程度の領域が壊死に陥った。壊死部以外では腸管運動、腸管電気的活動の回復を認めた。組織内酸素分圧も3035mmHgに復した。組織学的には絨毛の脱落を認めたが一部では陰窩は保たれていた。一方、12時間動脈閉塞では、再灌流後も腸管運動を示す所見は認められず、組織内酸素分圧は0mmHgのままであった。組織学的には腸管壁全体の出血性梗塞を認めた。【まとめ】1.12時間動脈閉塞では小腸全体が出血性壊死に陥り腸管運動は認められなかった。2.6時間動脈閉塞では一部は壊死に陥ったが、陰窩層が保たれている所見が認められた。3.腸管のviabilityを左右するturning pointは動脈閉塞時間6時間前後にあることが示唆された。4.動脈閉塞時間6時間においても斑状に壊死に陥った個体や小腸の中間点のみ壊死に陥った個体など所見に差があり部位に関しては一定の傾向を認めなかった。5.今回、測定した3項目に関しては組織所見との明らかな相関は見られなかった。今後、例数を増やし再実験するとともに、新たなモニター項目の追加や実験方法の検討が必要と思われた。【目的】本研究は腹部内臓動脈急性閉塞において虚血・壊死に陥る腸管の範囲を術中に迅速に確定する方法を確立することを目的として遂行した。【方法】ビーグル成犬(n=3)を開腹し、空腸から回腸までの小腸全体を5等分して定点側定部位とした。各点で1)腸管内へラテックス製バルーン付き圧transducerを用いて、腸管運動に伴う腸管内圧変動を測定・観察した。2)小腸漿膜面腸管壁内へ白金電極を刺入し誘発電位検査装置(日本光電MEB-7202)を用いて腸管筋電図測定を行った。3)ニードルタイプ酸素電極を小腸漿膜面腸管壁内へ刺入し酸素分圧測定装置(Inter Medical PO_2-100)を用いて組織内酸素分圧を測定した。以上についてControlを測定後、Cranial mesenteric arteryを閉塞し一定時間(1時間、6時間、12時間)後、再灌流を行った後上記を測定した。【結果】1時間動脈閉塞では再灌流により速やかに腸管のcyanosisは消失し、1012回/分頻度の腸管収縮運動とそれに伴う腸管筋電図の現出を認めた。組織内酸素分圧はControl値(3540mmHg)に復した。6時間動脈閉塞後再灌流では腸管のcyanosisは全体的に消失したが、3040%程度の領域が壊死に陥った。壊死部以外では腸管運動、腸管電気的活動の回復を認めた。組織内酸素分圧も3035mmHgに復した。組織学的には絨毛の脱落を認めたが一部では陰窩は保たれていた。一方、12時間動脈閉塞では、再灌流後も腸管運動を示す所見は認められず、組織内酸素分圧は0mmHgのままであった。組織学的には腸管壁全体の出血性梗塞を認めた。【まとめ】1.12時間動脈閉塞では小腸全体が出血性壊死に陥り腸管運動は認められなかった。2.6時間動脈閉塞では一部は壊死に陥ったが、陰窩層が保たれている所見が認められた。3.腸管のviabilityを左右するturning pointは動脈閉塞時間6時間前後にあることが示唆された。4.動脈閉塞時間6時間においても斑状に壊死に陥った個体や小腸の中間点のみ壊死に陥った個体など所見に差があり部位に関しては一定の傾向を認めなかった。5.今回、測定した3項目に関しては組織所見との明らかな相関は見られなかった。今後、例数を増やし再実験するとともに、新たなモニター項目の追加や実験方法の検討が必要と思われた。(方法)ビーグル成犬を開腹し、空腸から回腸までの小腸全体を5等分して定点測定部位とする。
KAKENHI-PROJECT-15591482
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15591482
腹部内臓動脈急性閉塞による、腸管壊死範囲縮小化に関する実験的研究
各点の1)腸管内圧測定による腸管運動の観測、2)腸管筋電図測定による腸管電気的活動の観測、3)漿膜面における組織PO_2測定による組織酸素分圧の観測をおこなう。腸管運動は2つの方法で行っている。(1)腸管内へ、ラテックス製バルーン付き圧transducerを挿入し、腸管運動に伴う腸管内圧変動を測定・観測する。(2)小腸漿膜面腸管壁内へ白金電極を刺入し、腸管筋電図を測定・観測する。(結果)a)前値においては、1)腸管内圧測定による腸管運動は認められない。2)腸管筋電図測定では、平滑筋波形を検知する。3)組織PO_2は、38-42mmHgであった。b)Cranial mesenteric arteryを完全閉塞1時間後では、腸管壁がチアノーゼを呈する。同時に腸管収縮運動が視認され、また1)腸管内圧測定による腸管運動が10-12 cycle/min.程度の周期性の腸管収縮運動が認められる。2)腸管内圧測定による腸管運動に先立ち腸管筋電図が認められる。3)漿膜側における組織内酸素分圧は10mmHg前後に低下した。c)12時間の動脈閉塞後、小腸全範囲に渡って高度のCyanosisを認め、同時に全小腸に渡って腸管内出血を認めた。1)、2)の腸管筋の運動を示す所見は認められなかった。3)腸管漿膜PO_2は0mmHgであった。d)12時間動脈閉塞後の閉塞動脈の再開放により腸管のCyanosisは全体的に消失するも、部分的に壊死に陥った部分が認められた。(方法)ビーグル成犬を開腹し、空腸から回腸までの小腸全体を5等分して定点測定部位とする。各点の1)腸管内圧測定による腸管運動の観測、2)腸管筋電図測定による腸管電気的活動の観測、3)漿膜面における組織PO_2測定による組織酸素分圧の観測をおこなう。腸管運動は2つの方法で行っている。(1)腸管内へ、ラテックス製バルーン付き圧transducerを挿入し、腸管運動に伴う腸管内圧変動を測定・観測する。(2)小腸漿膜面腸管壁内へ白金電極を刺入し、腸管筋電図を測定・観測する。(結果)Cranial mesenteric arteryを1時間閉塞後では、腸管壁がチアノーゼを呈するが、同時に腸管収縮運動が視認され、また1)腸管内圧測定による腸管運動が10cycle/min.程度の周期性の腸管収縮運動が認められる。2)腸管内圧測定による腸管運動に先立ち腸管筋電図が認められる。3)漿膜側における組織内酸素分圧は10mmHg前後に低下した。組織学的には壊死の部分は認められなかった、6時間の動脈閉塞後は腸管壁のチアノーゼを呈し、且つ部分的に壊死が認められる。1)、2)の腸管筋の運動を示す所見は認められなかった。組織学的には小腸腺窩は壊死像が認められなかった。12時間の動脈閉塞後、小腸全範囲に渡って高度のチアノーゼを認め、同時に全小腸に渡って腸管内出血を認めた。1)、2)の腸管筋の運動を示す所見は認められなかった。3)腸管漿膜PO_2は0mmHgであった。組織学的には小腸全体に渡って、出血性壊死像が認められた。以上より、動脈閉塞6時間を境に組織変化が大きく、その前後の腸管Viabilityの変化を今後詳細に検討していく。【目的】本研究は腹部内臓動脈急性閉塞において虚血・壊死に陥る腸管の範囲を術中に迅速に確定する方法を確立することを目的として遂行した。【方法】ビーグル成犬(n=3)を開腹し、空腸から回腸までの小腸全体を5等分して定点側定部位とした。
KAKENHI-PROJECT-15591482
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覚醒サルを用いた三叉神経痛覚過敏発症機構に関する研究
昨年度は初年度に引き続き、温度刺激強度変化弁別課題をトレーニングしたサルの大脳皮質第一次体性感覚野からニューロン活動記録を行った。大脳皮質第一次体性感覚野(SI)から検出される温度受容ニューロンは顔面皮膚のキャプサイシン処理により、未処理動物に比べより高い反応を示した。また、この活動性の増強は温度刺激強度変化弁別速度と強い相関を示した。しかし、ベース温度である、T1刺激温度が46°Cと侵害レベルに達すると、ニューロン活動と弁別速度とは有意の相関を示さなくなり、弁別速度が非常に速くなったのにもかかわらず、皮質ニューロン活動の増加は顕著でなかった。また、本年度は熱刺激だけでなく、冷刺激弁別課題を用いてサルを訓練し、SIからニューロン活動を記録し、弁別速度とニューロン活動との相関についても検索を行った。冷刺激に反応を示すニューロンは現在までに数個しか記録されていないが、記録されたもののほとんどは、冷刺激弁別課題試行中に活動性を減弱した抑制性ニューロンに分類された。また、このニューロンの中には光刺激、あるいは熱刺激に対しても活動性を減弱するものが認められた。以上の結果から、大脳皮質第一次体性感覚野に分布する温度受容性ニューロンは、刺激のモダリテイーを忠実に他の皮質領域に伝え、刺激が加えられた場所や刺激の強さの弁別に重要な働きを有するものと、モダリテイーに関係なく刺激が加えられという現象がニューロン活動の変調を誘導し、刺激のオンセットとオフセットの情報処理に関係した役割を担うものに分類された。今後は、これら2つのタイプのニューロンが、キャプサイシン処理によって過敏化した状態で、どのような変調を受けるかを解明していく予定である。昨年度は初年度に引き続き、温度刺激強度変化弁別課題をトレーニングしたサルの大脳皮質第一次体性感覚野からニューロン活動記録を行った。大脳皮質第一次体性感覚野(SI)から検出される温度受容ニューロンは顔面皮膚のキャプサイシン処理により、未処理動物に比べより高い反応を示した。また、この活動性の増強は温度刺激強度変化弁別速度と強い相関を示した。しかし、ベース温度である、T1刺激温度が46°Cと侵害レベルに達すると、ニューロン活動と弁別速度とは有意の相関を示さなくなり、弁別速度が非常に速くなったのにもかかわらず、皮質ニューロン活動の増加は顕著でなかった。また、本年度は熱刺激だけでなく、冷刺激弁別課題を用いてサルを訓練し、SIからニューロン活動を記録し、弁別速度とニューロン活動との相関についても検索を行った。冷刺激に反応を示すニューロンは現在までに数個しか記録されていないが、記録されたもののほとんどは、冷刺激弁別課題試行中に活動性を減弱した抑制性ニューロンに分類された。また、このニューロンの中には光刺激、あるいは熱刺激に対しても活動性を減弱するものが認められた。以上の結果から、大脳皮質第一次体性感覚野に分布する温度受容性ニューロンは、刺激のモダリテイーを忠実に他の皮質領域に伝え、刺激が加えられた場所や刺激の強さの弁別に重要な働きを有するものと、モダリテイーに関係なく刺激が加えられという現象がニューロン活動の変調を誘導し、刺激のオンセットとオフセットの情報処理に関係した役割を担うものに分類された。今後は、これら2つのタイプのニューロンが、キャプサイシン処理によって過敏化した状態で、どのような変調を受けるかを解明していく予定である。本年度は顔面皮膚上に温度刺激用プローブを設置し、熱刺激強度変化弁別課題、冷刺激強度変化および光刺激強度変化弁別課題できるように覚醒サルを訓練し、このサルの顔面皮膚上にcapsaicinを貼付し痛覚過敏モデルサルを作製した。Capsaicinを貼付2時間後に、温度刺激強度変化弁別課題を試行させた。Capsaicin貼付していないサルにおいては、温度変化弁別時間はT1=44°Cの時にT2=0.2°Cで2.8秒、T2=0.4で1.6秒、T2=0.6で1.4秒およびT2=0.8においては1.3秒であり、T2温度変化が大きいほど弁別時間は縮小する傾向が認められた。さらに、各T2温度に対する弁別時間はT1が46°Cとより高くなると、減少する傾向を示した。顔面皮膚にCapsaicinを貼付した場合にもほぼ同様の傾向を認めた。すなわち、T1=44°Cの時よりもT1=46°Cの場合の方が、T2温度変化に対する弁別時間は縮小していた。しかし、capsaicinを貼付するとTl=44°Cにおける弁別時間の縮小はT1=46°Cにおける弁別時間の縮小に比べ有意に大きくなった。以上の結果はcapsaicin貼付によって顔面皮膚に誘導される痛覚過敏は、刺激温度(T1)が侵害レベル(T1=46°C)になると、その程度が減弱する可能性を示している。このように、顔面皮膚に与えた刺激が非侵害レベル(T1=44°C)の場合には、capsaicin貼付により、44°C刺激を侵害刺激として受容し侵害刺激強度変化を弁別するのに対し、刺激強度がすでに侵害刺激(46°C)に達している場合には、46°C刺激をさらに強い侵害刺激として受容することはないのである。来年度はさらにこの研究を進め、capsaicinにより誘導される痛覚過敏の神経機構を解明していく予定である。
KAKENHI-PROJECT-14571761
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覚醒サルを用いた三叉神経痛覚過敏発症機構に関する研究
本研究では、カプサイシンを顔面皮膚に貼付することにより痛覚過敏モデルサルを作製し、痛覚過敏の中枢神経機構を電気生理学的に解明することを目的とした。顔面皮膚上に温度刺激用プローブを設置し、熱刺激強度変化弁別課題、冷刺激強度変化および光刺激強度変化弁別課題ができるように覚醒サルを訓練する。顔面皮膚上にカプサイシンを塗布し痛覚過敏モデルサルを作製し、同サルが上記課題を遂行している間に、第一次体性感覚野から単一ニューロン活動を記録する。熱刺激としては、T1を44°Cに、またT2温度変化は0.2-0.8°Cとし、各刺激温度変化に対する弁別時間、および逃避行動の出現率を算出する。同様の課題について、カプサイシン塗布により、弁別時間の短縮および逃避行動の発現頻度の増加が観察された。痛覚過敏が発症していることを確認した後、大脳皮質第一次体性感覚野から単一ニューロン活動を記録した。同一のサルにおいて,カプサイシン処理および未処理時における行動とニューロン活動との関係を検索した。カプサイシン処理をすることにより、大脳皮質ニューロン活動は著しく更新した。一方、カプサイシン処理によってサルの熱刺激弁別時間も短縮傾向を認めたものの、弁別時間の短縮率はニューロン活動の増加率と完全に一致しなかった。現在は、延髄に薬物注入用のプローブを慢性的に埋め込み、NMDA受容体およびAMPA受容拮抗薬を三叉神経脊髄路核に注入し、グルタミン酸の痛覚過敏発症における役割について検索中である。
KAKENHI-PROJECT-14571761
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液液界面に生成するナノ集積体の外部場による移動制御と分離への展開
研究代表者が世界に先駆けて開発した薄層二相マイクロセルと光学顕微鏡を用いて,ドデカン/硫酸水溶液界面で,5,10,15,20-テトラフェニルポルフィン(tpp)の中心の2つの窒素原子がプロトン化してH_2tpp^<2+>になり,それが集積化して大きさ10-200μmのひし形状マイクロドメインが生成することをin situで明らかにした。新たに,顕微鏡の対象物上において,直径40μmの範囲の光の強度を分光して計測するシステムを作成した。そのin situ顕微分光計測装置を用いて,ドデカン/硫酸水溶液界面に生成したH_2tpp^<2+>集積体のマイクロドメイン1つの吸収スペクトルを測定し,473nm付近に吸収極大を示すことを明らかにした。また,その吸光度の値から,マイクロドメインの厚みが車分子層レベルであることが判った。次に,入射光(473nm)を直線偏光として,その偏光方向を変えて顕微画像を取得した。その結果,それぞれのマイクロドメインは均一であることが判った。さらに,偏光方向とマイクロドメインの長軸のなす角度の関数として,吸光度を測定した結果,その長軸方向に一種類の遷移双極子モーメントが存在することが明らかになった。さらに,このマイクロドメインの泳動を検討するために,微小な先端を有する2本の電極をドデカンに浸漬した。この2本の電極は,マニピュレーターにセットして,電極間距離を100-300μm,電極と界面の距離を100-170μmになるように配置した。この2本の電極に,-100Vから100Vの直流電圧を印加した結果,このマイクロドメインは,負の電圧を印加した電極に向かって泳動した。このことは,これらか正の電荷を有しており,主にクーロン力によって泳動していることを意味している。他の微粒子についても検討した結果,この手法が,液液界面に存在する物質の選択的な泳動法になり得ることが示唆された。研究代表者が世界に先駆けて開発した薄層二相マイクロセルと光学顕微鏡を用いて,ドデカン/硫酸水溶液界面で,5,10,15,20-テトラフェニルポルフィン(tpp)の中心の2つの窒素原子がプロトン化してH_2tpp^<2+>になり,それが集積化して大きさ10-200μmのひし形状マイクロドメインが生成することをin situで明らかにした。新たに,顕微鏡の対象物上において,直径40μmの範囲の光の強度を分光して計測するシステムを作成した。そのin situ顕微分光計測装置を用いて,ドデカン/硫酸水溶液界面に生成したH_2tpp^<2+>集積体のマイクロドメイン1つの吸収スペクトルを測定し,473nm付近に吸収極大を示すことを明らかにした。また,その吸光度の値から,マイクロドメインの厚みが車分子層レベルであることが判った。次に,入射光(473nm)を直線偏光として,その偏光方向を変えて顕微画像を取得した。その結果,それぞれのマイクロドメインは均一であることが判った。さらに,偏光方向とマイクロドメインの長軸のなす角度の関数として,吸光度を測定した結果,その長軸方向に一種類の遷移双極子モーメントが存在することが明らかになった。さらに,このマイクロドメインの泳動を検討するために,微小な先端を有する2本の電極をドデカンに浸漬した。この2本の電極は,マニピュレーターにセットして,電極間距離を100-300μm,電極と界面の距離を100-170μmになるように配置した。この2本の電極に,-100Vから100Vの直流電圧を印加した結果,このマイクロドメインは,負の電圧を印加した電極に向かって泳動した。このことは,これらか正の電荷を有しており,主にクーロン力によって泳動していることを意味している。他の微粒子についても検討した結果,この手法が,液液界面に存在する物質の選択的な泳動法になり得ることが示唆された。液液二相系において,タンパク質やDNAといった生体高分子を有機相に抽出できる逆ミセルが注目されており,その生成過程や取込み過程を明らかにすることが,本年度の目的である。薄層二相マイクロセルを作成し,アルカン/水界面で自発的に生成および消滅を起こすAOT(sodium bis(2-ethylhexyl)sulfosuccinate)の巨大逆ミセルを,in situで顕微鏡(透過光)によって測定し,以下のような逆ミセルの特性を明らかにした。1×10^<-3>Mまたは1×10^<-2>MのAOTを含んだドデカンと水を接触させると,ドデカン/水界面は接触直後から対流し,数分後には,界面近傍のドデカン相中に,自発的に生成した多くの逆ミセルが見られるようになった。これらの逆ミセルは,すべて三次元的なブラウン運動をしていた。また,水相には何もみられなかった。ブラウン運動の解析から,これら逆ミセルの半径は,1001200nmの範囲であることがわかった。この値は,一般的な逆ミセルと比べて,10100倍も大きい。また,この巨大逆ミセルのサイズは,界面作成直後は小さいが,時間とともに大きくなる傾向があった。いくつかの巨大逆ミセルは,界面近傍において突然消滅した。
KAKENHI-PROJECT-16350046
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液液界面に生成するナノ集積体の外部場による移動制御と分離への展開
このような消滅は,界面の極近傍でのみ観測されたことから,界面との融合が巨大逆ミセルの唯一の消滅過程であると言える。このように,巨大逆ミセルは,界面において生成と消滅を繰り返し,消滅しなかった巨大逆ミセルはドデカン相に拡散することが明らかになった。二相接触から数時間経過すると,巨大逆ミセルの総数は減少し,界面の対流もほとんどなくなり,平衡へ向かって系が収束した。研究代表者らは既に,トルエン/硫酸水溶液界面で,5,10,15,20-テトラフェニルポルフィン(tpp)の中心の2つのN原子がプロトン化してH_2tpp^<2+>となり,それが集積化することを巨視的な測定から明らかにしている。本研究では,研究代表者が世界に先駆けて開発した薄層二相マイクロセルを用いて,まずトルエン/硫酸水溶液界面,および,ドデカン/硫酸水溶液界面で,H_2tpp^<2+>の分子集積体のドメインが生成することをin situ顕微法により見出した。そのドメインの大きさや形状にはtppや硫酸の濃度依存性があったが,特に,硫酸の濃度6.0mol dm^<-3>のドデカン/硫酸水溶液界面において,大きさ5-100μmの微小なひし形状のドメインが観察された。次いで,顕微鏡の対象物上において,直径4μmの範囲の光の強度を分光して計測するシステムを作成した。そのin situ顕微分光計測装置を用いて,ドデカン/硫酸水溶液界面に生成したH_2tpp^<2+>集積体のドメイン1つの吸収スペクトルを測定し,473nm付近に吸収極大を示すことを明らかにした。この波長は,先の巨視的な測定結果と一致していた。また,その吸光度から,ドメインにおけるH_2tpp^<2+>分子のみかけの厚みを算出した。また,入射光を直線偏光として,その偏光方向を変えて顕微画像を取得した。その結果,一つのドメインは均一であることが判った。さらに,偏光方向とドメインの長軸のなす角度の関数として,吸光度を測定した結果,H_2tPP^<2+>集積体のドメインは,その長軸方向に一種類の遷移双極子モーメントを有することが明らかになった。研究代表者らは既に,ドデカン/硫酸水溶液界面で,5,10,15,20-テトラフェニルポルフィン(tpp)の中心の2つの窒素原子がプロトン化してH_2tpp^<2+>になり,それが集積化してひし形状のマイクロドメインが生成することを明らかにしている。そのマイクロドメインは,10-200μmの大きさ,単分子層レベルの厚みである。また,光吸収異方性の測定結果から規則構造を有していることも判っている。本年度は,このマイクロドメインの泳動を検討するために,研究代表者が開発した薄層二相マイクロセルを用いて,ドデカン/硫酸水溶液界面でH_2tpp^<2+>会合体のマイクロドメインを生成させ,微小な先端を有する2本の電極をドデカンに浸漬した。この2本の電極は,マイクロマニピュレーターにセットして,電極間距離を100-300μm,電極と界面の距離を97-166μmになるように配置した。この2本の電極に,-100Vから100Vの直流電圧を印加した結果,H_2tpp^<2+>会合体のマイクロドメインは,負の電圧を印加した電極の真下に向かって泳動することが観測された。また,正の電圧を印加した電極からは離れる泳動を示した。これらのことは,このマイクロドメインが正の電荷を有しており,主にクーロン力によって泳動していることを意味している。他の微粒子についても検討した結果,この手法が,液液界面に存在する物質の選択的な泳動法になり得ることが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-16350046
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着色眼内レンズがサーカディアンリズムに及ぼす影響に関する無作為化比較試験
生体リズムと外部環境の不一致は、睡眠障害・うつ病・肥満・高血圧・糖尿病・脂質異常症・心血管疾患・がんなど多様な疾患のリスクを上昇させることがシフトワーカーにおける疫学調査で示され、その機序は動物実験やコントロール下の実験研究で研究されている。網膜の内因性光感受性網膜神経節細胞(intrinsically photosensitive retinal ganglion cell)を介して生体リズムの制御中枢である視交叉上核に入力される非視覚的光情報は、生体リズムを外部環境に同調させる上で最も重要なシグナルであり、その作用は464nm付近の短波長光で最も強いことが報告されている。白内障手術は、視力を改善する効果に加えて、網膜への非視覚的光情報を増加させ、生体リズムと外部環境の同調を促進する効果が期待されるが、白内障手術には、短波長光を遮断する着色眼内レンズと非着色眼内レンズの両方が一般的に用いられている。着色眼内レンズは短波長による網膜障害の軽減が期待される一方、生体リズム同調効果は劣る可能性がある。本研究の目的は無作為化比較試験により着色レンズ群と非着色レンズ群の2群間で、生体リズムに関連するうつ症状・睡眠障害・糖・脂質代謝や、生体リズム指標であるメラトニン分泌量を比較することである。平成30年度までに174名の白内障患者において、着色レンズ群と非着色レンズ群の比較を行うことができた。当初予定していなかった白内障手術を行っていないコントロール群との比較分析を行った結果から、白内障手術のメラトニン分泌への短期的影響を明らかにすることができた。一方、現段階で当初予定より少ない対象者数にとどまった。また白内障重症度と血圧サーカディアンリズムに関する観察研究の結果が科学誌に掲載された点は評価できる。本研究の目的は、白内障手術に際して対象者を着色眼内レンズ群と非着色眼内レンズ群の2群に無作為割り付けし、介入後の生体指標について比較検討することである。研究計画での検査項目は睡眠の質(アクチフラフ、Pittsburg Sleep Questionnaire Index、エプワース睡眠調査票)、うつ症状(Geriatric Depression Scale)、認知機能検査(Mini Mental State Examination)、糖脂質代謝異常、サーカディアンリズム指標(皮膚温リズム、身体活動リズム、メラトニン分泌量、光曝露リズム)、光感受性:対光反射(Post Illumination pupil Response)、網膜障害:網膜色素(ドルーゼン発生)である。当初研究計画の初年度目標対象者数であった160名には研究開始が遅れたため届かなかったが、100名についてベースライン測定を行うことができた。測定項目は以下のとおりである。うつ症状、糖脂質代謝指標、肥満指標、睡眠の質、サーカディアンリズム指標、光感受性、網膜障害など。本研究のプロトコル論文(BMJ Open. 2015; 5:e007930)が科学誌に掲載されたことは、今後の研究結果の妥当性を示す上で重要な点である。また白内障手術に関する観察研究の成果も科学誌に掲載され(J Epidemiol. 2015;25:529-535)、本研究の重要な先行知見となる。初年度目標対象者数には若干届かなかったものの100名についてベースライン測定を行うことができ、関連論文が科学誌に掲載されたため。外部環境と生体リズムの不一致(サーカディアンリズム障害)は、睡眠障害・うつ病・肥満・高血圧・糖尿病・脂質異常症・心血管疾患・がんのリスクを上昇させる。網膜の光受容細胞(ipRGCs)を介する光情報はサーカディアンリズムを外部環境に同調させる最も重要なシグナルで、464nm付近の短波長光の作用が最も強い。白内障手術には短波長光を遮断する着色眼内レンズと非着色眼内レンズの両方が一般的に用いられている。着色眼内レンズは短波長による網膜障害の軽減が期待されるが、サーカディアンリズム障害が生じる可能性がある。本研究の目的は無作為化比較試験により着色レンズ群と非着色レンズ群の2群間で、サーカディアンリズム障害に関連するうつ病・睡眠障害・糖尿病・脂質異常症・肥満の新規発症やメラトニン分泌量の変化を比較することである。研究計画での検査項目は、アクチグラフを用いて測定した睡眠の質、黄斑色素密度の変化、うつ、睡眠障害、糖尿病、脂質異常症、肥満といったサーカディアンリズム障害関連疾患の罹患率と、メラトニン分泌、光感受性を2群間において比較する。平成28年度は74名についてベースライン測定を行うことができ、当初計画の2年目予定対象者数(80名)をおおむね達成した。また本研究の関連論文である、白内障手術に関する観察研究の結果も科学誌に掲載され、(Rejuvenation Res. 2016Jun;19(3):239-43,J Epidemiol 25 529-535 2015)本研究の重要な先行知見となる。ベースライン測定を74名の対象者に実施することができ、当初計画の2年目予定対象者数(80名)をおおむね達成した。また本研究の関連論文が科学誌に掲載されたため。研究協力者と研究プロトコル立案から共同で実施しており連携が取れている。外部環境と生体リズムの不一致は、睡眠障害・うつ病・糖尿病・脂質異常症・心血管疾患・がんのリスクを上昇させる。網膜の光受容細胞を介する光情報は生体リズムを外部環境に同調させる最も重要なシグナルで、短波長光の作用が最も強い。
KAKENHI-PROJECT-15K20276
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着色眼内レンズがサーカディアンリズムに及ぼす影響に関する無作為化比較試験
白内障手術は、網膜に届く光情報を増加させ、外部環境と生体リズムの不一致を減少させる可能性がある。また眼内レンズの波長特性によって、効果が異なる可能性がある。本研究は無作為化比較試験によって、白内障手術が生体リズム指標に及ぼす影響を検討することである。奈良県立医科大学付属病院を受診した白内障患者2309名の適格基準を検討した結果577名が該当し、参加に同意した対象者のうち、データが欠損のない169名の結果を以下に示す。術後3か月時点結果から白内障手術を受けた介入群(85名)では、コントロール群(84名)と比べて尿中メラトニン分泌代謝産物濃度が有意に高かった(P = 0.003)。非着色眼内レンズを使用した白内障手術群では、コントロール群と比べて尿中メラトニン分泌代謝産物濃度が有意に高かったのに対し、着色眼内レンズを用いた白内障群もコントロール群に比べて高いものの、有意な差を認めなかった。コントロール群は3か月の待機後に白内障手術が施行され、手術に用いた眼内レンズの種類は無作為に割り付けられた。全参加者のうち、着色眼内レンズ群(86名)と非着色眼内レンズ群(83名)の術後1年の時点の比較では、うつ症状を呈する対象者の割合、睡眠効率低値の割合、空腹時血糖高値の割合、高LDLコレステロール血症の割合に有意な差を認めなかった。当初の予定よる少ない対象者の分析となったが、今後対象者を増やして研究を進めたいと考えている。白内障手術がメラトニン分泌量に及ぼす影響に関する無作為化比較試験の結果は新規性が高く、白内障手術の全身の健康影響を示す重要な結果である。本研究では奈良県立医科大学付属病院を受診した白内障患者2309名に対して適格基準を検討したが、結果として当初予定していた対象者数より若干少なかった。生体リズムと外部環境の不一致は、睡眠障害・うつ病・肥満・高血圧・糖尿病・脂質異常症・心血管疾患・がんなど多様な疾患のリスクを上昇させることがシフトワーカーにおける疫学調査で示され、その機序は動物実験やコントロール下の実験研究で研究されている。網膜の内因性光感受性網膜神経節細胞(intrinsically photosensitive retinal ganglion cell)を介して生体リズムの制御中枢である視交叉上核に入力される非視覚的光情報は、生体リズムを外部環境に同調させる上で最も重要なシグナルであり、その作用は464nm付近の短波長光で最も強いことが報告されている。白内障手術は、視力を改善する効果に加えて、網膜への非視覚的光情報を増加させ、生体リズムと外部環境の同調を促進する効果が期待されるが、白内障手術には、短波長光を遮断する着色眼内レンズと非着色眼内レンズの両方が一般的に用いられている。着色眼内レンズは短波長による網膜障害の軽減が期待される一方、生体リズム同調効果は劣る可能性がある。本研究の目的は無作為化比較試験により着色レンズ群と非着色レンズ群の2群間で、生体リズムに関連するうつ症状・睡眠障害・糖・脂質代謝や、生体リズム指標であるメラトニン分泌量を比較することである。平成30年度までに174名の白内障患者において、着色レンズ群と非着色レンズ群の比較を行うことができた。
KAKENHI-PROJECT-15K20276
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K20276
非接触ケルビンプローブを用いた摩耗状態その場評価法の開発
摩耗現象を正確に把握するためには,摩擦繰返し毎に時々刻々変化している何らかの物理量を,摩擦面にダメージを与えることなくその場で検出することが必要である.本研究課題では摩耗状態を反映する物理的因子として,ケルビン法により測定される仕事関数を用い,摩擦面での仕事関数と摩擦摩耗特性との相関を調べる.これにより摩擦面での一回のすべり毎に変化する摩耗状態(酸化摩耗やトライボ膜の形成・脱落過程など)をその場で定量的に評価する全く新しい摩耗モニタリング手法を確立することを目的とする.平成12年度の目標は,昨年度開発した非接触ケルビンプローブの測定精度をさらに向上させ,データの信頼性を高めるとともに,申請者が開発した摩擦面ライブ観察システムと組合わせることによる摩耗状態のその場監視システムの構築を試行する.1.現有の真空摩耗試験装置に環境制御装置とケルビンプローブを組込んだ.2.雰囲気気体が摩擦摩耗特性に及ぼす影響を,摩擦力や摩耗量のデータに加えて仕事関数の変化から定量的に調べた.3.摩耗面の変化と仕事関数の変化の相関を調べるために,試験中のある回転数毎に試験を中断し,摩耗面や摩耗粉の観察・分析を行った.4.摩擦面ライブ観察システムと組合わせて,摩耗状態の複合的なその場監視システムを構築した.5.研究成果を全世界的な国際会議である「ゴードン会議2000年」にて公表した.摩耗現象を正確に把握するためには,摩擦繰返し毎に時々刻々変化している何らかの物理量を,摩擦面にダメージを与えることなくその場で検出することが必要である.本研究課題では摩耗状態を反映する物理的因子として,ケルビン法により測定される仕事関数を用い,摩擦面での仕事関数と摩擦摩耗特性との相関を調べる.これにより摩擦面での一回のすべり毎に変化する摩耗状態(酸化摩耗やトライボ膜の形成・脱落過程など)をその場で定量的に評価する全く新しい摩耗モニタリング手法を確立することを目的とする.平成11年度では,摩擦試験に適した小型の非接触ケルビンプローブの設計及び製作を行い,それを摩耗試験機に組み入れて予備試験を実施することで非接触ケルビンプローブの有用性を確認した.具体的な手順を以下に示す.1.ケルビンプローブの駆動用及び仕事関数測定用の電子回路の設計と製作を行った.2.プローブの応答性や測定値の信頼性を保証するために,すべり速度や測定位置,プローブの駆動周波数が仕事関数に及ぼす影響を調べた.3.DCカード型のデータ収集システムにより,プローブからの信号などの実験データを高速で収集・処理するプロセスを十分に確立した.4.プローブを摩耗試験機に組み入れて予備試験を行い,データの再現性などを確認しながら最終的な仕様を決定した.5.非接触ケルビンプローブを摩耗試験に用いて仕事関数のその場計測を行った結果,仕事関数は摩耗面の変化を敏感にとらえることができ,摩耗面に占めるトライボ膜の割合の差によって大きく影響を及ぼされることがわかった.摩耗現象を正確に把握するためには,摩擦繰返し毎に時々刻々変化している何らかの物理量を,摩擦面にダメージを与えることなくその場で検出することが必要である.本研究課題では摩耗状態を反映する物理的因子として,ケルビン法により測定される仕事関数を用い,摩擦面での仕事関数と摩擦摩耗特性との相関を調べる.これにより摩擦面での一回のすべり毎に変化する摩耗状態(酸化摩耗やトライボ膜の形成・脱落過程など)をその場で定量的に評価する全く新しい摩耗モニタリング手法を確立することを目的とする.平成12年度の目標は,昨年度開発した非接触ケルビンプローブの測定精度をさらに向上させ,データの信頼性を高めるとともに,申請者が開発した摩擦面ライブ観察システムと組合わせることによる摩耗状態のその場監視システムの構築を試行する.1.現有の真空摩耗試験装置に環境制御装置とケルビンプローブを組込んだ.2.雰囲気気体が摩擦摩耗特性に及ぼす影響を,摩擦力や摩耗量のデータに加えて仕事関数の変化から定量的に調べた.3.摩耗面の変化と仕事関数の変化の相関を調べるために,試験中のある回転数毎に試験を中断し,摩耗面や摩耗粉の観察・分析を行った.4.摩擦面ライブ観察システムと組合わせて,摩耗状態の複合的なその場監視システムを構築した.5.研究成果を全世界的な国際会議である「ゴードン会議2000年」にて公表した.
KAKENHI-PROJECT-11750119
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11750119
食道扁平上皮癌の発癌初期段階におけるマクロファージ・線維芽細胞の協調作用の解析
食道扁平上皮癌の発癌初期段階におけるがん関連線維芽細胞(cancer-associated fibroblast, CAF)の役割を検討するため、ヒト食道正常扁平上皮細胞株(Het-1A)と線維芽細胞との間接共培養系を確立した。線維芽細胞としてヒト骨髄由来間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell, MSC)とヒト食道由来線維芽細胞(fibroblast)を用いた。Transwell上層のHet-1Aとtranswell下層のMSCあるいはfibroblastを間接共培養した。3日間あるいは7日間の間接共培養後にMSCあるいはfibroblastからmRNA、タンパク質、培養上清を抽出・回収した。MSCあるいはfibroblastのいずれにおいてもHet-1Aと間接共培養後にCAFマーカーであるfibroblast activation protein (FAP)とpodoplaninの発現上昇を定量的PCRやwestern blotにて確認できた。別のCAFマーカーであるαSMAについては間接共培養による発現量の変化は見られなかった。MSCでは3日間の間接共培養と7日間の間接共培養との間でFAPやpodoplaninの発現上昇率に差はなかったが、fibroblastでは7日間の間接共培養の方が3日間の間接共培養よりもFAPやpodoplaninの発現上昇率が有意に高かった。がん関連線維芽細胞の由来については種々の細胞が言われており、当初はMSCのみを用いる予定であったが、ヒト食道由来の線維芽細胞が手に入ったため、これについても間接共培養系に用いることにした。間接共培養の条件設定(細胞の種類、培養細胞数、培養時間、培地の条件)に時間を要したため、「間接共培養後のMSCあるいはfibroblast」と「単独培養後のMSCあるいはfibroblast」を用いた表現型解析(増殖能、運動・浸潤能)、サイトカインアレイ解析、cDNAマイクロアレイ解析を実施することができなかった。前年度に条件設定したHet-1AとMSCあるいはfibroblastの間接共培養系からmRNA、タンパク質、培養上清を抽出・回収した。これらを用いてまず「間接共培養後のMSCあるいはfibroblast」と「単独培養後のMSCあるいはfibroblast」との間でサイトカインアレイ解析やcDNAマイクロアレイ解析を施行し、間接共培養後に発現上昇する遺伝子や分泌亢進する液性因子を網羅的に抽出する。食道扁平上皮癌の発癌初期段階におけるがん関連線維芽細胞(cancer-associated fibroblast, CAF)の役割を検討するため、ヒト食道正常扁平上皮細胞株(Het-1A)と線維芽細胞との間接共培養系を確立した。線維芽細胞としてヒト骨髄由来間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell, MSC)とヒト食道由来線維芽細胞(fibroblast)を用いた。Transwell上層のHet-1Aとtranswell下層のMSCあるいはfibroblastを間接共培養した。3日間あるいは7日間の間接共培養後にMSCあるいはfibroblastからmRNA、タンパク質、培養上清を抽出・回収した。MSCあるいはfibroblastのいずれにおいてもHet-1Aと間接共培養後にCAFマーカーであるfibroblast activation protein (FAP)とpodoplaninの発現上昇を定量的PCRやwestern blotにて確認できた。別のCAFマーカーであるαSMAについては間接共培養による発現量の変化は見られなかった。MSCでは3日間の間接共培養と7日間の間接共培養との間でFAPやpodoplaninの発現上昇率に差はなかったが、fibroblastでは7日間の間接共培養の方が3日間の間接共培養よりもFAPやpodoplaninの発現上昇率が有意に高かった。がん関連線維芽細胞の由来については種々の細胞が言われており、当初はMSCのみを用いる予定であったが、ヒト食道由来の線維芽細胞が手に入ったため、これについても間接共培養系に用いることにした。間接共培養の条件設定(細胞の種類、培養細胞数、培養時間、培地の条件)に時間を要したため、「間接共培養後のMSCあるいはfibroblast」と「単独培養後のMSCあるいはfibroblast」を用いた表現型解析(増殖能、運動・浸潤能)、サイトカインアレイ解析、cDNAマイクロアレイ解析を実施することができなかった。前年度に条件設定したHet-1AとMSCあるいはfibroblastの間接共培養系からmRNA、タンパク質、培養上清を抽出・回収した。これらを用いてまず「間接共培養後のMSCあるいはfibroblast」と「単独培養後のMSCあるいはfibroblast」との間でサイトカインアレイ解析やcDNAマイクロアレイ解析を施行し、間接共培養後に発現上昇する遺伝子や分泌亢進する液性因子を網羅的に抽出する。前年度にサイトカインアレイ解析やcDNAマイクロアレイ解析で使用する予定であったが、サンプルの準備が遅れたため、これらの解析を実施できなかった。今年度にサイトカインアレイ解析やcDNAマイクロアレイ解析を実施する際に使用予定である。
KAKENHI-PROJECT-18K07015
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衛星観測を活用した水災害の早期警戒システムの構築
人工衛星による観測を用いて、洪水などの水災害を検知し、防災に役立てるための研究を行った。衛星観測をもとに降水強度を推定した衛星降水マップを、日本の気象庁の雨量計による観測値を用いて検証した結果、20mm/hを境に弱い雨の推定は良好だが、強い雨の推定には改善の余地があることが示された。修正を行った衛星降水マップを用いて、大雨特別警報に相当する50年に一度程度の豪雨を検知できることが示された。そのほか、衛星観測による浸水域の検出や、九州地方を対象に高空間分解能で水資源のシミュレーションを行った。これらの成果を、今後は世界の他地域に応用し、水災害の減災に貢献することが十分期待できる。GSMaPプロダクトに示されている降水強度推定値を、高時間分解能の雨量計データを用いて検証した。雨量計データは、気象業務支援センターから入手した1分単位のものである。GSMaPの降水強度推定に使われたマイクロ波センサの観測時刻から10分間の雨量計データの平均値をとり、当該のGSMaP降水強度推定値と比較した。なお、平均時間やタイムラグについて、最適な値を詳細に調査した結果として、この設定を選択した。空間方向のマッチアップは、雨量計を含む0.1°格子のGSMaP推定値を、当該の雨量計による観測値と比較した。GSMaP推定値が020mm/hの範囲では、雨量計による10分平均値と良い一致を見せたが、GSMaP推定値が20mm/hを超える場合は、GSMaP推定値が過大評価であることが強く示唆される。GSMaPの降水強度推定に用いられたセンサ別にみると、マイクロ波サウンダが使われた場合に、マイクロ波放射計が使われた場合よりも、高い降水強度推定値が目立つが、それらは地表面の積雪などを強い降水と誤判定した可能性が高い。また、GSMaPに雨量計補正を入れたプロダクト(GSMaP_gauge)についても同様の評価を行った。020mm/hの範囲では、本研究で用いた雨量計との一致が良くなっているが、20mm/hを超える降水の推定値は、依然として過大評価である。次に、水災害リスクを計算するための基礎となる水文モデルとしてH08(Hanasaki et al. 2008)を導入した。解像度1度の全球版を用いて、陸面モジュールや河川モジュールのパラメータの感度実験などを行い、高解像度な領域版を作成するための準備を進めた。水災害の早期警戒システムの試験地域として、九州地方(東経129度132度、北緯31度から34度)を選定した。基本となる水文モデルとして、統合水資源モデルH08を利用することにした。分解能を緯度1分×経度1分として、九州地方にH08を適用した。まず、海陸分布・土地被覆分類・標高などのデータを準備した。土地被覆分類に対して、既存の文献資料を参考に、アルベドの値を決定した。次に、2002年を対象に、陸面モデルに入力する地表面気象データセットを日単位で作成した。降水量・気温・風速・湿度・気圧については、気象庁のアメダスデータを利用し、下向き長波放射および下向き短波放射については、農業環境技術研究所よりデータを取得した。内挿してグリッドデータを作成する際に、降水量・気温・気圧・下向き長波放射については、標高依存性を考慮した。降水量については、グリッドデータを、内挿に使用しなかった独立した観測データで検証し、良好な結果を得た。また、雨雪判別の影響を見るため、降雪量についての検証も行った。陸面モデルのパラメータについては、Hanasaki et al.(2014)によるタイ・チャオプラヤ川流域にH08を適用した研究を参考にして、4つの主要パラメータの感度分析を行い、土壌の深さに関係するパラメータ(SD)の影響が大きいこと、九州地方ではSD=2mが適切であり、グローバルによく使われる1mより大きく、タイで適切とされる24mよりも小さい傾向があることが分かった。さらに、河道網データを作成し、九州地方の20の一級河川が適切に表現されるようにした。陸面モデルと河道流下モデルを結合して計算された河川流量を、各河川の代表的な流量観測所において、実測値と比較し、月単位の推定にはついては良好な結果を得た。そのほか、衛星観測の降水量データに、極値統計理論をあてはめ、降水危険度を算出する手法を検討した。平成27年度は以下のように大きく3つの研究成果が得られた。九州地方を対象とした統合水資源モデルH08を用いた水文・水資源シミュレーションの改良を行った。入力となる気象データを1990年2014年までの25年間分作成した。河道網データをSRTMの観測に基づき修正した。H08の貯水池・作物成長・取水のサブモデルを導入するため、九州地方の貯水池・作物種類・工業および生活用水利用量に関するデータを収集し、実装した。これらの人間活動を表すサブモデルを導入することで、一級河川の月単位流量の再現に改善が見られた。衛星観測に基づく全球降水マップGSMaPを利用して、日本における大雨特別警報に相当する豪雨の検出を行った。大雨特別警報の発表基準の一つである「48時間降水量の50年に一度の値」をGSMaPから0.1°格子で算出した。
KAKENHI-PROJECT-25820226
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衛星観測を活用した水災害の早期警戒システムの構築
これを超える過去の事例を調べたところ、2004年の前線及び台風23号による豪雨、平成18年7月豪雨、平成27年9月の関東・東北豪雨などが該当し、大雨特別警報に相当する主要な豪雨を検出することに成功した。複数のマイクロ波放射計で観測される輝度温度を用いて、関東地方を中心に、地表面の水分量に関するプロダクトを作成した。水分量の指標となる、2つの周波数を用いるNDFIと2つの偏波を用いるNDPIについて、0.1°・6時間の分解能のプロダクトを作成した。可視・赤外放射計MODISによる水分量指標NDWIと比較したところ、2015年9月の鬼怒川堤防決壊による氾濫域など水分量の増加した地域を適切にとらえていることを確認できた。九州地方を対象とした水文・水資源シミュレーションについて改良を行い、月単位流量の推定値を観測値に近づけることができたことは大きな進歩である。ただし、河道流下モデルが単純なままであるため、洪水・氾濫災害と直接結びつけるためには、この部分を別のモデルへ変更することが必要である。GSMaPを利用した大雨特別警報に相当する豪雨の検出は、過去の事例に対して良好な検出結果を示しており、その成果は土木学会論文集(水工学)に発表されている。マイクロ波放射計を利用した地表面水分量の推定と氾濫域の検出は、平成27年度から始めた研究であるが、鬼怒川の決壊事例などで良い結果を得ることができた。このように、当初計画にあった複数の研究項目について、成果が上がっており、研究は順調に進んでいると言える。平成28年度は以下に示す2つの結果が得られた。(1)衛星観測に基づく全球降水マップGSMaPを利用した確率年の推定について、前年度の手法を改良した。GSMaPのデータ期間を9年間から15年間に拡大し、使用したデータバージョンもVersion5から6へ変更した。48時間降水量だけでなく、1,3,6,24時間降水量についても対象とした。また、GSMaPの解像度0.1°をそのまま使うのではなく、0.2°、0.5°、1.0°格子を対象とした。様々な時空間スケールを対象とするいわゆるDAD解析をGSMaPを用いて行うことができた。国交省が示す最大規模豪雨のDAD解析結果との比較を行い、GSMaPによる解析結果が特に時空間スケールの比較的大きい場合(日本の主要河川のスケール)には、妥当であるとの結論を得た。(2)複数のマイクロ波放射計を用いた地表面水分量指標の算出について、対象範囲を全球に拡大した。その際、計算時間の制約から、格子への内挿方法を変更した。研究期間全体を通して、衛星降水マップGSMaPや衛星搭載マイクロ波放射計の輝度温度データを用いて、水災害に関する情報を、地上観測や他の衛星観測に近い精度で得ることができることを示した。検証は主に日本域で行ったが、衛星観測データのみを使うことから、今後世界の他地域への応用が期待できる。また、人間活動を含めた水循環を表現するH08モデルの九州地域への適用も行い、今後、衛星観測と組み合わせて、洪水や渇水などの災害のシミュレーションに利用する準備ができた。人工衛星による観測を用いて、洪水などの水災害を検知し、防災に役立てるための研究を行った。衛星観測をもとに降水強度を推定した衛星降水マップを、日本の気象庁の雨量計による観測値を用いて検証した結果、20mm/hを境に弱い雨の推定は良好だが、強い雨の推定には改善の余地があることが示された。修正を行った衛星降水マップを用いて、大雨特別警報に相当する50年に一度程度の豪雨を検知できることが示された。
KAKENHI-PROJECT-25820226
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生体恒常系の日内変動を考慮した薬物投与計画設定法の検討
近年,生体内(内因性)物質を起源とする効力の極めて強い薬物が次々に開発され臨床的に使用されている.このような薬物には,従来の「最適投与計画設定法」の考え方はもはや適用できず,生体の持つ生理学的な要因,すなわち薬物受容体のDown Regulationや生体恒常系の日内変動の影響などを積極的に考慮した,新しい投与計画設定法の確立が待たれている.本研究は,この点を考慮した薬物投与計画設定法を確立することが目的である.(1)アンジオテンシン変換酵素阻害(ACEI)系降圧薬カプトプリル,(2)骨粗鬆症治療薬サケ・カルシトニン(sCT),そして(3)尿崩症治療薬アルギニン・バソプレッシン(AVP)について,それぞれ検討を行った.この要点は,投与計画設定の指標として,「血漿中薬物濃度」の代わりに,「薬理効果」と,「生体恒常系のモデル」を使用する点である.実験の結果,血圧,Ca,尿中Naのそれぞれの恒常系の日内変動は,当初考えていたよりも小さいが,外的に投与されたCP,sCT,AVPの薬理効果とその生体内動態は,これら生体恒常系の影響を強く受けること,従来の薬物速度論によって投与計画を算定することは,きわめて危険であることを明らかにした.一方,薬理効果を指標とし,生体恒常系を考慮した,「投与計画,bioavailabilityの算定法」は比較的有用であることを示し,特にCPのような通常の医薬品ばかりでなく,内因性生理活性ペプチドであるカルシトニンやバソプレッシンの投与製剤の評価にも適用可能であることを示した点,意義深い.この方法は,「生体恒常系のモデル化」を行っているため,種々の日内変動を組み入れた投与計画の変更には即時に対応できる.しかし,今回用いたCP,sCT,AVPとも,結果的には「生体恒常系の日内変動」の影響は小さく,その投与計画にほとんど影響しなかった.近年,生体内(内因性)物質を起源とする効力の極めて強い薬物が次々に開発され臨床的に使用されている.このような薬物には,従来の「最適投与計画設定法」の考え方はもはや適用できず,生体の持つ生理学的な要因,すなわち薬物受容体のDown Regulationや生体恒常系の日内変動の影響などを積極的に考慮した,新しい投与計画設定法の確立が待たれている.本研究は,この点を考慮した薬物投与計画設定法を確立することが目的である.(1)アンジオテンシン変換酵素阻害(ACEI)系降圧薬カプトプリル,(2)骨粗鬆症治療薬サケ・カルシトニン(sCT),そして(3)尿崩症治療薬アルギニン・バソプレッシン(AVP)について,それぞれ検討を行った.この要点は,投与計画設定の指標として,「血漿中薬物濃度」の代わりに,「薬理効果」と,「生体恒常系のモデル」を使用する点である.実験の結果,血圧,Ca,尿中Naのそれぞれの恒常系の日内変動は,当初考えていたよりも小さいが,外的に投与されたCP,sCT,AVPの薬理効果とその生体内動態は,これら生体恒常系の影響を強く受けること,従来の薬物速度論によって投与計画を算定することは,きわめて危険であることを明らかにした.一方,薬理効果を指標とし,生体恒常系を考慮した,「投与計画,bioavailabilityの算定法」は比較的有用であることを示し,特にCPのような通常の医薬品ばかりでなく,内因性生理活性ペプチドであるカルシトニンやバソプレッシンの投与製剤の評価にも適用可能であることを示した点,意義深い.この方法は,「生体恒常系のモデル化」を行っているため,種々の日内変動を組み入れた投与計画の変更には即時に対応できる.しかし,今回用いたCP,sCT,AVPとも,結果的には「生体恒常系の日内変動」の影響は小さく,その投与計画にほとんど影響しなかった.(1)ACEI系降圧薬カプトプリル(CP)について---CPの降圧降下を,正常ラット(NR)と高血圧自然発症ラット(SHR)を用いて,数種の投与量レベルで検討した。これらの結果を,従来から当研究室で行っているモデル解析法を用いてPK/PD解析を行ったが,SHRにおいては,両者を定量的に関係付けることは出来なかった。この原因は,【.encircled1.】病態時のMAP,血漿中ACE活性は,約25時間周期の著しい日内変動があること,【.encircled2.】実際のMAPの日内変動幅は,血漿中ACE活性の日内変動から予測される値よりも遥かに大きいこと,【.encircled3.】組織中ACE活性を用いると,CPの降圧効果と体内動態とを定量的に結び付けられる可能性があることなどである。現在日内変動のモデル化を検討中である。(2)サケカルシトニン(sCT)について---NRを使用して血漿中Ca濃度の日内変動を血漿中PTH,無機リン(Pi),内因性CTとともに測定した。その結果【.encircled1.】NRにおけるCa日内変動は,約25時間周期,午前2時頃が最低で日照とともに午後2時頃が最高値をとる顕著な日内リズムが存在すること,【.encircled2.】その変動幅は余り大きくないが,sCT投与時に影響していることがわかった。すでに血漿中Ca恒常系とsCTの効果,sCTの体内動態とを用いてPK/PD解析を完成しているので,現在日内変動のモデル化を検討中である。
KAKENHI-PROJECT-05671797
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05671797
生体恒常系の日内変動を考慮した薬物投与計画設定法の検討
(3)アルギニンバソプレッシン(AVP)について---AVP投与後血漿中AVPをRIAを用いて測定し,MAPとの関連性を検討しはじめている。本研究の目的は,生体恒常系を介して薬効が発現される薬物を取り上げ,生体恒常系の,特に日内変動リズムがこれらの薬効に及ぼす影響を検討し,次にこれらを積極的に組み込んだ新しい薬物投与計画を設定することにある。これを遂行するにはまず生体恒常系そのもののモデル化と日内変動の影響を検討する必要がある。これまでのところ上記のように,順調に研究が進展している。しかし【.encircled1.】当初考えていたよりも薬効に及ぼす日内変動因子の寄与は小さいこと,【.encircled2.】生体恒常系の日内変動をあらわすモデルは文献的には皆無に近く,これを如何に数学モデル化するかは大きな問題点であること,【.encircled3.】最終目的である新しい投与計画設定法の確立にはまだかなりの検討事項が残されている。各種内因性生理活性ペプチドが,医薬品として繁用される様になって久しい.これらは正常時には,体内に一つの恒常系を持ち,一定のリズム(日内変動)で分泌と消失を繰り返している.従って生理活性ペプチドが医薬品として使用されるときには,これら内因性物質の動向を考慮した投与計画を設計しなければならない.私たちは前年度,サケ・カルシトニンの最適投与計画には,内因性カルシトニン,PTHの変動を考慮した投与設計が必要であることを明らかにした.本年度は,主として尿崩症の治療薬であるアルギニンバソプレッシン(AVP)について,その最適投与設計と生体恒常系との関連を検討した.まずAVPを投与後の生体内動態を測定するとともに,薬理効果として,反応機構の異なる2種の薬効--平均動脈血圧(MAP)変化と尿中ナトリウム濃度変化を経時的に測定した.その結果,生体内で分泌されるAVPの日内変動は,当初考えていたよりも小さいが,カルシトニン同様,外的に投与されたAVPの薬効および生体内動態は,生体恒常系の影響を強く受け,従来の薬物速度論によって投与計画を算定することはきわめて危険であることを初めて明らかにした.私たちはこれに代わるものとして,薬効を指標とした,投与計画,bioavailabilityの算定法を新たに提出することとした.すなわち,以下の7点を明らかにすることで,薬効効果のみからAVPの最適投与計画を設計した.(1)AVPによる平均動脈血圧変化は血漿中AVP濃度と直接的に関連していること,(2)血漿中AVP濃度は,速度論的なモデルを用いれば,MAPから算定できること,(3)このモデルを用いればAVPを経口投与後あるいは鼻腔内投与後のbioavailabilityを推定可能であること,(4)AVPによるもう一つの薬理効果である尿中ナトリウム濃度変化は,血漿中AVP濃度と直接的には関連せず間接効果であること,(5)この間接作用には腎ナトリウム調節系が関与していること,(6)この尿中ナトリウム調節系の数学的モデル化は可能であり,このモデルを介して薬理効果を血漿中AVP濃度と関連させることができること,(7)このモデルを用いればAVPを経口投与後のbioavailabilityを正確に推定可能であること.このように,私たちの提出した方法は,薬理効果のみからbioavailabilityの評価を行う新しい解析方法を提出した点,およびペプチド性医薬品投与製剤の剤形の評価に具体的で有用な情報を提供した点意義深いと思われる.
KAKENHI-PROJECT-05671797
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05671797
ビニルエポキシドによるエンド環化選択的芳香族分子内フリーデルクラフツ反応
天然には7員環や8員環といった中員環を有する生理活性物質が多く存在するため、それらの効率的な構築法の開拓は有機合成化学における重要な課題の一つである。既に多くの方法論が開発されているが、まだまだ多くの問題がある。特に環化の際に不斉炭素が生じるようなケースでは、立体化学の制御が困難な問題となる。そこでFriedel-Crafts反応に着目し、求電子基としてエポキシドを用いることを考えた。香月-Sharplessにより開発されたアリルアルコールの不斉酸化により、エポキシドは極めて容易にかつ高光学純度で合成できることが知られている。またエポキシドは種々の求核剤と反応し,二つの連続した不斉炭素を有する化合物を立体選択的に与える。しかしエポキシドは二つの反応点を有するため、その反応では2種の異性体が生成してしまう。そのためエポキシドのFriedel-Crafts反応で7員環形成を試みても、望まぬ6員環化合物だけが優先して生成する。本課題ではビニルエポキシドをFriedel-Crafts反応の基質として用い、7員環化合物を高立体選択的、かつ高位置選択的に合成できる方法を開発した。その適用範囲は炭素環だけでなく、ハイドロベンザゼピンのような窒素原子を含んだ7員環合成にも及ぶ。また、この手法を利用して、ヒガンバナ科アルカロイドのモンタニンの骨格合成に成功した。本手法を一般性が高く、さまざまな天然物や生理活性物質の合成に利用できるものと考える。天然には7員環や8員環といった中員環を有する生理活性物質が多く存在するため、それらの効率的な構築法の開拓は有機合成化学における重要な課題の一つである。既に多くの方法論が開発されているが、まだまだ多くの問題がある。特に環化の際に不斉炭素が生じるようなケースでは、立体化学の制御が困難な問題となる。そこでFriedel-Crafts反応に着目し、求電子基としてエポキシドを用いることを考えた。香月-Sharplessにより開発されたアリルアルコールの不斉酸化により、エポキシドは極めて容易にかつ高光学純度で合成できることが知られている。またエポキシドは種々の求核剤と反応し,二つの連続した不斉炭素を有する化合物を立体選択的に与える。しかしエポキシドは二つの反応点を有するため、その反応では2種の異性体が生成してしまう。そのためエポキシドのFriedel-Crafts反応で7員環形成を試みても、望まぬ6員環化合物だけが優先して生成する。本課題ではビニルエポキシドをFriedel-Crafts反応の基質として用い、7員環化合物を高立体選択的、かつ高位置選択的に合成できる方法を開発した。その適用範囲は炭素環だけでなく、ハイドロベンザゼピンのような窒素原子を含んだ7員環合成にも及ぶ。また、この手法を利用して、ヒガンバナ科アルカロイドのモンタニンの骨格合成に成功した。本手法を一般性が高く、さまざまな天然物や生理活性物質の合成に利用できるものと考える。分子内フリーデルクラフツ反応は古くより知られている反応で、さまざまな環状構造の天然物合成に応用されてきている。さまざまな求電子基が利用されてきている中で、エポキシドは二つの反応点があるという点で、着目すべき官能基である。従来の報告例では6-エキソと7-エンドが競合する場合は、6-エキソ環化が優先するということになっている。私はビニルエポキシドを用いれば、その位置制御によって7-エンド環化を優先させることができるものと考えた。そこで、分子内に芳香環を有する種々のビニルエポキシドを合成し、CH_2Cl_2中、BF_3でのエンド選択的な環化反応を検討した。その結果、予想通り7-エンド環化が高選択的に進行し、高収率で7員環成績体が得られた。環化にともなう立体化学の結果はビニルエポキシがエステル基と共役しているかどうかで大きく異なった。すなわち、エステル基が共役したビニルエポキシドの場合、立体反転で環化が進行し、単一の立体異性体が得られた。一方、エステル基が共役しないビニルエポキシドの場合には、生成物は1:1のエピメマー混合物となった。本反応を他のリングシステムに適用することも検討した。6-エンド環化は選択的に進行したが、8-エンド環化は進行しなかった。BF_3以外のルイス酸も検討したが、現在のところBF_3が最適のようである。芳香環状の置換基効果を検討したところ、メタ位とパラ位のメトキシル基がともに反応活性を向上させる役目を担うことが明らかとなった。私はこのユニークな結果が、本反応の反応機構に対して重要な示唆を与えるものと考えている。平成15年度に、分子内に芳香環を有する種々のビニルエポキシドを合成し、ルイス酸によるFriedel-Crafts環化を検討した。結果として、6-エキソ環化ではなく7-エンド環化が優先的に進行し、高収率で炭素原子からなる7員環成績体を与えること見出した。本年度はこの知見を参考に、側鎖部分に窒素原子を含むビニルエポキシドを合成し、そのFriedel-Crafts環化による複素環の合成を検討した。ベンジルアミン誘導体をトシル化後、アルキル化をおこない、trans-1-benzylamino-4-chloro-2-buteneを合成した。置換反応により、trans-1-benzylamino-4-hydroxy-2-buteneに変換した後、エポキシ化することにより、対応するエポキシアルコール体に導いた。
KAKENHI-PROJECT-15590017
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ビニルエポキシドによるエンド環化選択的芳香族分子内フリーデルクラフツ反応
さらに、Dess-Martin酸化後、Wittig反応を順次行うことにより、目的とするビニルエポキシドを合成した。最初、ルイス酸としてBF_3を用いビニルエポキシドの反応を検討したところ、目的の7-エンド環化はほとんど進行せず、芳香環が転位したアミナール化合物が主生成物として得られた。次にTMSOTfをルイス酸として用い、再度ビニルエポキシドの環化を検討したところ、7-エンド環化が選択的に進行し、高収率で2-ベンザゼピン誘導体が生成した。いくつかの実験的根拠から、2-ベンザゼピン誘導体の生成は単純な機構ではなく、スピロ型フェノニウムカチオン中間体を経由したタンデム反応であると考えられる。平成16年度に、6-benzylamino-4,5-epoxy-2-hexenoate 1の分子内Friedel-Crafts反応を検討したところ、ルイス酸の種類によって反応挙動が全く異なることを発見した。すなわち、TMSOTfにより1を処理すると、7-エンド環化が進行して目的の2-benzazepine誘導体2を与え、BF_3による処理では芳香環の転位によりアミナール化合物3が生成した。本年度はこの知見を参考に、以下の2点について検討した。1.ベンゼンとシクロヘキサンの縮環構造にアミノ基とビニルエポキシドを基本とする側鎖を導入した基質を合成し、そのBF_3による反応を検討した。その結果、反応中間体として一旦生成した三環性スピロ型フェノニウムカチオンの環拡大反応が生起し、10員環アミナールが生成した。この環拡大反応は窒素ローンペアの電子供与とスピロ型フェノニウムカチオンの再芳香化がドライビングフォースとなるグローブ開裂に基づいている。2.TMSOTfによる1の7-endo選択的Friedel-Crafts環化により得られた2-benzazepine誘導体2からヒガンバナ科アルカロイドの1種であるMontanineの合成を目指して、以下の検討を行った。2のオゾン分解、続くオゾニドの還元的処理によりジオール誘導体を得、一方の水酸基をベンジル保護した後、渡環反応をおこなうことにより2,5-methanohydro-2-benzazepine誘導体を合成した。平成16、17年度に、6-benzylamino-4,5-epoxy-2-hexenoateの分子内Friedel-Crafts反応をTMSOTfの存在下でおこない、2-benzazepine誘導体を合成した。またそこからオゾン分解、続くオゾニドの還元的処理によりジオール誘導体へ変換し、さらに渡環反応と続く水酸基の酸化を行うことにより、2,5-methanohydro-2-benzazepinone誘導体を合成した。そこで本年度はヒガンバナ科アルカロイドの1種であるMontanineの全合成を目指し、最終段階である2置換シクロヘキセノン環の構築を検討した。最初に2,5-methanohydro-2-benzazepinone誘導体のアルキル化を行うことにより、シクロヘキセノン環構築のための側鎖導入を試みた。しかし、各種塩基条件を検討したにもかかわらず目的とするアルキル化体を合成することはできなかった。そこでこの側鎖部分に相当する炭素鎖をあらかじめ有するビニルエポキシドを合成し、その7-エンド環化選択的Friedel-Crafts反応をおこなった。
KAKENHI-PROJECT-15590017
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80年代日本文学における民俗学・神話学との関係性―雑誌「潭」を中心に―
本研究は、1980年代日本文学における民俗学・神話学との関係性について、文芸雑誌「潭」同人の作品を中心として解明するものである。1980年代、多くの民俗学・神話学的な研究成果が発表され、日本文学においてもその成果が大いに取り入れられた。1984年から87年にかけて、粟津則雄、渋沢孝輔、入沢康夫、中上健次、古井由吉を同人として刊行された文芸誌「潭」においても、その傾向は色濃く認められる。「潭」同人の持つ、文学についての危機意識が、実作としてどのように結実したかを、文化活動の根源を問い直す民俗学・神話学との関わりという観点から分析し、現代にも通ずる思考の可能性を明らかにしたい。本研究は、1980年代日本文学における民俗学・神話学との関係性について、文芸雑誌「潭」同人の作品を中心として解明するものである。1980年代、多くの民俗学・神話学的な研究成果が発表され、日本文学においてもその成果が大いに取り入れられた。1984年から87年にかけて、粟津則雄、渋沢孝輔、入沢康夫、中上健次、古井由吉を同人として刊行された文芸誌「潭」においても、その傾向は色濃く認められる。「潭」同人の持つ、文学についての危機意識が、実作としてどのように結実したかを、文化活動の根源を問い直す民俗学・神話学との関わりという観点から分析し、現代にも通ずる思考の可能性を明らかにしたい。
KAKENHI-PROJECT-19K13065
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加工限界のひずみ履歴・材料組織依存性評価のためのミクロ数理損傷モデルの構築
二相組織鋼材中のひずみや応力の局在化挙動を再現するための数値解析モデルとして,ボロノイ法を利用して実材料不均質組織形態を再現可能な三次元不均質組織形態モデル化手法の提案とプログラミングを完了させた。さらに,数理損傷モデルとして,過去に提案した数理損傷モデルに,バウシンガー特性の力学的特性と材料学的特性を導入することで,ひずみ履歴変化に伴う材料強度と損傷の発展をシミュレートする新数理損傷モデルを提案した。提案した解析モデルと数理損傷モデルを併用することで,フェライトーパーライト二相組織鋼材の延性損傷限界とそのひずみ履歴依存性が概ね予測できることを示した。前年度までに,不均質組織鋼であるフェライトーパーライト二相組織鋼材を対象として,延性損傷限界に及ぼすひずみ履歴依存性と組織形態の関係を解明するための実験・観察を行った。これにより,破断するまで一軸引張負荷を与える場合に比べて,途中で負荷方向を90°変化させた場合の方が延性が向上し,またその程度は,パーライト分率が大きい材料の方が顕著であることを見いだした。これは,硬さが異なる二相組織の分率に応じて,フェライト境界部での損傷進展挙動が異なり,さらに,ひずみ履歴が変化した際にその蓄積挙動が変化することが主たる要因の一つであることが示唆された。本年度は,これらの現象を定量的に予測するための手法を構築することを目的として,ひずみや応力の局在化挙動を再現するための数値解析モデルの構築と,ひずみ履歴に応じた損傷進展をシミュレート可能な数理損傷モデルの提案を試みた。数値解析モデルとしては,ボロノイ法を利用して実材料不均質組織形態を再現可能な三次元不均質組織形態モデル化手法の提案とプログラミングを完了させた。また,数理損傷モデルとしては,過去の提案した数理損傷モデルに,バウシンガー特性の力学的特性と材料学的特性を導入することで,ひずみ履歴変化に伴う材料強度と損傷の発展をシミュレートする新数理損傷モデルを提案し,プログラミングを完了させた。提案した解析モデルと数理損傷モデルを併用することで,フェライトーパーライト二相組織鋼材の延性損傷限界とそのひずみ履歴依存性を予測する準備が整った。二相組織鋼材中のひずみや応力の局在化挙動を再現するための数値解析モデルとして,ボロノイ法を利用して実材料不均質組織形態を再現可能な三次元不均質組織形態モデル化手法の提案とプログラミングを完了させた。さらに,数理損傷モデルとして,過去に提案した数理損傷モデルに,バウシンガー特性の力学的特性と材料学的特性を導入することで,ひずみ履歴変化に伴う材料強度と損傷の発展をシミュレートする新数理損傷モデルを提案した。提案した解析モデルと数理損傷モデルを併用することで,フェライトーパーライト二相組織鋼材の延性損傷限界とそのひずみ履歴依存性が概ね予測できることを示した。延性損傷限界に及ぼすひずみ履歴依存性と組織形態の関係を解明するための実験的検討に着手した。材料は,フェラートーパーライト二相組織鋼材を対象とし,各相の粒径や組成,硬度がほぼ同じとなるようにパーライト体積分率のみを20%と65%に変化させた二種類の鋼材を作製した。さらに,不均質の影響を抽出することを目的に,各構成相であるフェライトおよびパーライトの単相材料を作製して試験に供した。全ての材料に対して,一方向に引張って破断させる単調負荷試験に加えて,所定のひずみレベルまで単調負荷した試験片から,第一負荷方向に対して同方向,および垂直方向に採取した微小試験片の引張破断試験を行うことで,延性損傷限界のひずみ履歴依存性の基礎特性を調査した。その結果,単調負荷の場合に比べて負荷方向を90°変化させた場合の方が延性が向上し,またその程度は,パーライト分率が大きい材料の方が顕著であることがわかった。このような二相組織鋼材の破断に至るまでの損傷挙動の観察を行ったところ,パーライト分率やひずみ履歴によらず,いずれも破断直前の最終段階になって,主としてフェライトとパーライトの境界のフェライト相側にて損傷が蓄積して微視き裂を形成することがわかった。すなわち,硬さが異なる二相組織の分率に応じて,フェライト境界部での損傷進展挙動が異なり,さらに,ひずみ履歴が変化した際にその蓄積挙動が変化することが,上記の実験結果をもたらす要因であることが示唆された。また,本実験・観察により,硬質のパーライト単相材は非常に脆いにも関わらず,フィライト相中に分散した際には延性的な損傷挙動を呈するという新たな知見を得た。延性損傷限界に及ぼすひずみ履歴依存性と組織形態の関係を解明するため,パーライト体積分率が異なる二種類のフェラートーパーライト二相組織鋼材と各構成相であるフェライトおよびパーライトの単相材料を作製して,負荷履歴を極端に変化させた場合の引張損傷限界評価試験を実施した。これにより,単調載荷の場合に比べて負荷履歴が変化することにより延性損傷限界が向上すること,また,その効果はパーライト分率が高いものほど顕著であることを見いだした。さらに,破断に至るまでの損傷進展の内部挙動の観察を行うことで,当該二相組織材料では,硬いパーライト相の破断ではなく,主として軟質のフェライトと硬質のパーライトの境界近傍のフェライト相側にて損傷が蓄積して微視き裂を形成し,最終破断を支配するとの知見を得た。
KAKENHI-PROJECT-24560132
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24560132
加工限界のひずみ履歴・材料組織依存性評価のためのミクロ数理損傷モデルの構築
また,新たな知見として,硬質のパーライト単相材では脆性的な破断(へき開型破壊)が生じるにもかかわらず,フェライト相中に分散した二相組織材料中では延性的な損傷挙動を呈することがわかった。このような新たな実験・観察事実から,部材内部での硬質パーライトの損傷挙動を解明するための実験・観察手法を提案し,設計・製作した。二相組織鋼材中のひずみや応力の局在化挙動を再現するための数値解析モデルとして,ボロノイ法を利用して実材料不均質組織形態を再現可能な三次元不均質組織形態モデル化手法の提案とプログラミングを完了させた。さらに,数理損傷モデルとして,過去に提案した数理損傷モデルに,バウシンガー特性の力学的特性と材料学的特性を導入することで,ひずみ履歴変化に伴う材料強度と損傷の発展をシミュレートする新数理損傷モデルを提案し,プログラミングを完了させた。提案した解析モデルと数理損傷モデルを併用することで,フェライトーパーライト二相組織鋼材の延性損傷限界とそのひずみ履歴依存性が概ね予測できることを示した。損傷・破壊力学不均質組織鋼であるフェライトーパーライト二相組織鋼材の延性破壊限界に及ぼすひずみ履歴依存性と組織形態の関係を予測するためには,不均質組織に依存した微視的な損傷進展挙動を再現するシミュレーション手法の構築が不可欠と考えられる。そこで,ひずみや応力の局在化挙動を再現するための数値解析モデルの構築を試み,ボロノイ法を利用して実材料不均質組織形態を再現可能な三次元不均質組織形態モデル化手法の提案とプログラミングを完了させた。また,ひずみ履歴に応じた損傷進展をシミュレート可能な数理損傷モデルの提案を試み,過去の提案した数理損傷モデルにバウシンガー特性の力学的特性と材料学的特性を導入することで,ひずみ履歴変化に伴う材料強度と損傷の発展をシミュレートする新数理損傷モデルを提案し,プログラミングを完了させた。これにより,昨年度までの実験で現象を捉えた,フェライトーパーライト二相組織鋼材の延性損傷限界とそのひずみ履歴依存性を予測する準備が整い,当初の年度目的を達成することができた。しかし,本手法により定量的に延性損傷限界を予測するためには,特殊な材料特性を取得する必要性が見いだされた。そのための特殊試験機の製作を進めているが,特性取得のためには次年度の継続研究が必要となる。延性損傷限界に及ぼすひずみ履歴依存性と組織形態の関係を解明するための実験的検討を行うことを目的として,パーライト体積分率が異なる二種類のフェラートーパーライト二相組織鋼材と各構成相であるフェライトおよびパーライトの単相材料を作製して,負荷履歴を極端に変化させた場合の引張損傷限界評価試験を実施した。これにより,単調載荷の場合に比べて負荷履歴が変化することにより延性損傷限界が向上すること,また,その効果はパーライト分率が高いものほど顕著であることを見いだし,当初の実験目的を達成することができた。さらに,破断に至るまでの損傷進展の内部挙動の観察を行うことで,当該二相組織材料では,硬いパーライト相の破断ではなく,主として軟質のフェライトと硬質のパーライトの境界近傍のフェライト相側にて損傷が蓄積して微視き裂を形成し,最終破断を支配するとの知見を得た。また,新たな知見として,硬質のパーライト単相材では脆性的な破断(へき開型破壊)が生じるにもかかわらず,フィライト相中に分散した二相組織材料中では延性的な損傷挙動を呈することがわかった。
KAKENHI-PROJECT-24560132
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24560132
銀イオンによる含砒素鋼鉱物の選択的バイオリーチング
本研究では、現在の乾式精錬法では処理が困難な含砒素銅鉱物に対しパイオリーチング法を適用し、銅を回収する省エネルギー・環境調和型プロセスの基礎を確立することを目的としている。本年度においては、昨年度に選抜した銀耐性鉄酸化細菌単離株を用いて、その銀イオン耐性について詳細な検討を行うとともに、含砒素銅鉱物の主要な脈石鉱物である黄鉄鉱の溶解に及ぼす銀イオンの作用を検討した。その結果、銀耐性鉄酸化細菌であるAcidithiobacillus ferrooxidans E-24株は、銀イオンにより阻害されるが、そのメカニズムは混合阻害であることが見い出された。また、基質である第一鉄イオンや生成物である第二鉄イオンによっても阻害されることも確認された。上記の結果をふまえ、E-24株の鉄酸化活性に及ぼす銀イオン、基質、生成物の影響を考慮した新しい数学モデルを構築した。また、黄鉄鉱を用いた銀イオンを含むバイオリーチング試験を行い、黄鉄鉱のリーチングは銀イオンにより抑制されることが見い出された。その抑制は、銀イオンが鉄酸化細菌に対して阻害を及ぼさない濃度範囲においても起こるものであることが分かった。すなわち、銀イオンは第二鉄イオンによる黄鉄鉱の溶解反応自体を抑制することが確認された。この抑制メカニズムには、未だ不明な点が多いものの、主に単体銀の析出によるものであると推測される。以上のことから、銀イオンを添加した含砒素銅鉱石のバイオリーチングを実施した場合、2×10^<-4>mol/l以下の銀イオン添加量であれば、鉄酸化細菌は銀イオンによる阻害されることなく活動でき、銀イオンにより銅鉱石の浸出が促進されるとともに、脈石鉱物である黄鉄鉱の溶解は抑制されるという選択的バイオリーチングが実施可能であることが見い出された。本研究では、現在の乾式精錬法では処理が困難な含砒素銅鉱物に対しバイオリーチング法を適用し、銅を回収する省エネルギー・環環調和型のプロセスの基礎を確立することを目的としている。本年度においては、鉱物に対する銀イオンの作用を検討し、さらに銀イオン存在下においてバイオリーチングを実施するために、銀耐性鉄酸化細菌の選抜を行った。また、浸出条件の最適化のために、銀イオン存在下におけるバイオリーチングを実施した。その結果、硝酸銀溶液において処理された含砒素銅鉱物は、通常よりも第二鉄イオンによる酸化が進み、銅の浸出が向上することが確認された。その際に、銀イオンは鉱物の一部と置換され、鉱物表面に存在することが、EDXによる解析の結果判明した。そのとき、銀の周辺には銅が集まっていることが確認され、銀イオンによる含砒素銅鉱物は銀の直接的作用により溶解が促進されることが推定された。一方、硝酸銀溶液で処理した黄鉄鉱は、溶解が抑制されることが確認され、銀イオンにより選択的浸出の可能性が高いことを示された。さらに、鉄酸化細菌の集積培養菌を用いて、銀イオンで処理した含砒素銅精鉱のバイオリーチングを行ったところ、60%以上の銅が進出したにも関わらず、鉄の浸出は20%に抑制された。この時の精鉱表面をXRDにより調べたところ、含砒素鉱物のみが溶解し、黄鉄鉱が残っていることが示された。すなわち、含砒素銅鉱物の選択的浸出が行われたことになる。本研究では、現在の乾式精錬法では処理が困難な含砒素銅鉱物に対しパイオリーチング法を適用し、銅を回収する省エネルギー・環境調和型プロセスの基礎を確立することを目的としている。本年度においては、昨年度に選抜した銀耐性鉄酸化細菌単離株を用いて、その銀イオン耐性について詳細な検討を行うとともに、含砒素銅鉱物の主要な脈石鉱物である黄鉄鉱の溶解に及ぼす銀イオンの作用を検討した。その結果、銀耐性鉄酸化細菌であるAcidithiobacillus ferrooxidans E-24株は、銀イオンにより阻害されるが、そのメカニズムは混合阻害であることが見い出された。また、基質である第一鉄イオンや生成物である第二鉄イオンによっても阻害されることも確認された。上記の結果をふまえ、E-24株の鉄酸化活性に及ぼす銀イオン、基質、生成物の影響を考慮した新しい数学モデルを構築した。また、黄鉄鉱を用いた銀イオンを含むバイオリーチング試験を行い、黄鉄鉱のリーチングは銀イオンにより抑制されることが見い出された。その抑制は、銀イオンが鉄酸化細菌に対して阻害を及ぼさない濃度範囲においても起こるものであることが分かった。すなわち、銀イオンは第二鉄イオンによる黄鉄鉱の溶解反応自体を抑制することが確認された。この抑制メカニズムには、未だ不明な点が多いものの、主に単体銀の析出によるものであると推測される。以上のことから、銀イオンを添加した含砒素銅鉱石のバイオリーチングを実施した場合、2×10^<-4>mol/l以下の銀イオン添加量であれば、鉄酸化細菌は銀イオンによる阻害されることなく活動でき、銀イオンにより銅鉱石の浸出が促進されるとともに、脈石鉱物である黄鉄鉱の溶解は抑制されるという選択的バイオリーチングが実施可能であることが見い出された。
KAKENHI-PROJECT-13875197
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13875197
がん集積の向上を目指す標識抗体の新規設計法
RI標識抗体を用いるがんのアイソトープ治療では、RI標識抗体の肝臓等への非特異的な集積を低減してがんへの集積を促進する目的で、標識抗体に比べて大過剰の非標識抗体が同時投与されている。一方、PET薬剤では、超高比放射能標識体の投与で、標的分子への特異的かつ高い集積が達成されている。しかし標識抗体では、その方法論の欠如から高比放射能標識体の体内動態は明らかでない。そこで、非標識の1価Fab'2分子との反応で1分子の高比放射能RI標識2価F(ab')_2抗体を与える放射性ヨウ素標識薬剤の作製を行った。標識薬剤として両端にキシレン構造を介してマレイミド基を有する有機スズ体を設計した。放射性ヨウ素標識体(I-BDBM)をRP-HPLCで精製後、Fab'と反応し、原料のNa[^<125>I]Iと同じ比放射能(2。22×10^6Ci/mol)の[^<125>]BDBM-F(ab')_2を作製した。[^<125>I]BDBM-F(ab')_2にウシ血清アルブミン(BSA)またはFabを加えた際のマウス体内分布を、従来の方法で作製した[^<125>I]-F(ab')_2と比較した。[^<125>I]BDBM-F(ab')_2は[^<125>I]-F(ab')_2に比べて血液からの消失が緩徐で、腎臓への集積は少なく、経時的な肝臓への集積が観察された。また、キャリアとしてBSAおよびFabを加えた場合で体内動態に相違は見られなかった。本研究により、超高比放射能の標識抗体の作製法が確立し、マウスに極微量(6.8ng)の標識抗体を投与した場合の体内動態が明らかとなり、specificな抗体を用いた場合の特異的並びに非特異的集積に及ぼす非標識1価抗体の影響についての検討が可能となった。本研究成果は、抗体を母体とするアイソトープ治療薬剤の設計に対して従来にない新たな指針を与えることが期待される。標識抗体を用いるがんのアイソトープ治療では、標識抗体の肝臓などへの非特異的な集積を低減してがんへの集積を促進するため、標識抗体は大過剰の非標識抗体と同時投与される。これにより非特異的な集積は低減されるが、その一方で、非標識抗体は標識抗体とがん細胞の抗原との結合を阻害するためがんへの集積をも低減する。申請者らは標的に対する非標識抗体の阻害を低減する目的で抗体の多価効果に着目した。すなわち、1価の抗体が極微量に存在する標識薬剤との反応により極微量の2価の標識抗体を生成できれば、非特異的な集積は大過剰存在する1価の非標識抗体により解消され、かつ、多価効果により2価の標識抗体が1価の非標識抗体に比べて高いがんへの集積を達成すると考えた。これを検証する目的で、1価抗体として抗体Fab'フラグメントを選択し、抗体分子のチオール基同士を架橋して安定な2価の標識抗体を与えるビスマレイミドを有する放射性ヨウ素標識薬剤の設計、合成を計画した。本年度は、ビスマレイミド誘導体の化学合成を行った。フェニレンジアミンを母体として、この2位に放射性ヨウ素を導入するため、その前駆体である有機スズの導入反応を行った。しかし、フェニレンジアミンへの有機スズの導入反応収率はきわめて低かったため、これに代わり、テレフタル酸を母体に選択し、この2位への有機スズの導入、次いで、末端にアミノ基を有するマレイミド誘導体との結合反応を考案した。現在、この経路で化学合成を進めている。本年度の夏前にはプロットタイプの標識薬剤を合成し、その後、抗体との架橋反応、本標識抗体の体内動態についての評価を実施する予定である。RI標識抗体を用いるがんのアイソトープ治療では、RI標識抗体の肝臓等への非特異的な集積を低減してがんへの集積を促進する目的で、標識抗体に比べて大過剰の非標識抗体が同時投与されている。一方、PET薬剤では、超高比放射能標識体の投与で、標的分子への特異的かつ高い集積が達成されている。しかし標識抗体では、その方法論の欠如から高比放射能標識体の体内動態は明らかでない。そこで、非標識の1価Fab'2分子との反応で1分子の高比放射能RI標識2価F(ab')_2抗体を与える放射性ヨウ素標識薬剤の作製を行った。標識薬剤として両端にキシレン構造を介してマレイミド基を有する有機スズ体を設計した。放射性ヨウ素標識体(I-BDBM)をRP-HPLCで精製後、Fab'と反応し、原料のNa[^<125>I]Iと同じ比放射能(2。22×10^6Ci/mol)の[^<125>]BDBM-F(ab')_2を作製した。[^<125>I]BDBM-F(ab')_2にウシ血清アルブミン(BSA)またはFabを加えた際のマウス体内分布を、従来の方法で作製した[^<125>I]-F(ab')_2と比較した。[^<125>I]BDBM-F(ab')_2は[^<125>I]-F(ab')_2に比べて血液からの消失が緩徐で、腎臓への集積は少なく、経時的な肝臓への集積が観察された。
KAKENHI-PROJECT-20659186
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20659186
がん集積の向上を目指す標識抗体の新規設計法
また、キャリアとしてBSAおよびFabを加えた場合で体内動態に相違は見られなかった。本研究により、超高比放射能の標識抗体の作製法が確立し、マウスに極微量(6.8ng)の標識抗体を投与した場合の体内動態が明らかとなり、specificな抗体を用いた場合の特異的並びに非特異的集積に及ぼす非標識1価抗体の影響についての検討が可能となった。本研究成果は、抗体を母体とするアイソトープ治療薬剤の設計に対して従来にない新たな指針を与えることが期待される。
KAKENHI-PROJECT-20659186
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20659186
パーソナル・バイオテクノロジー
多様な個人がバイオテクノロジーを扱うための知識や実験機材を手元に備え、自分たちの問題意識に基づいて芸術表現や文化活動、課題解決、さらに衣食住など身近な日常生活での活用に取り組む動きを「パーソナル・バイオテクノロジー」として定義づけ、多様なグループや個人との連携による作品制作および学習プログラム開発等を通じて、その可能性や具体像を素描し、その成果を広く一般に共有する。多様な個人がバイオテクノロジーを扱うための知識や実験機材を手元に備え、自分たちの問題意識に基づいて芸術表現や文化活動、課題解決、さらに衣食住など身近な日常生活での活用に取り組む動きを「パーソナル・バイオテクノロジー」として定義づけ、多様なグループや個人との連携による作品制作および学習プログラム開発等を通じて、その可能性や具体像を素描し、その成果を広く一般に共有する。
KAKENHI-PROJECT-19K02994
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K02994
白血球の免疫機構に学ぶ血流内DDS用マイクロカプセル推進機構の開発
本研究においては,駆動力が界面張力勾配のみが働く水溶液中下で,濃度勾配を実験的に変化させて,顕微鏡を用いた白血球粒子移動の観察と原子力間顕微鏡による働く力の計測を行い,界面張力勾配による白血球運動機構の解明を行うことを目的とする.白血球運動の速度に関しては,(1)白血球が一定の溶液中において濃度勾配を受けて移動するときの界面張力のみによる速度(2)重力や自由表面の影響による溶液中の対流から生じる速度,の2つが挙げられるが,このうち(1)についての速度を測定する.そのため,倒立顕微鏡に取り付けられたCCDカメラを用いて,液体中に分散している白血球にサイトカインを滴下したときの挙動を観察しその速度を計測し,滴下したときの濃度勾配をCFDにより予測し,これらの結果から総合的に界面張力の濃度依存を調べる.これらから,白血球膜の濃度による依存性について調べることができる.また,一方で,これらの速度計測から推定される白血球にはたらく力を原子間力顕微鏡によって測定する.本年度の成果としては,白血球膜上でのサイトカインの輸送機構の解明を可視化を中心とした界面機構と拡散機構のモデル化とCFDによる解析ならびに実験結果との対比を行った.その結果,白血球が活性化している状態では,濃度勾配に比例する力が発生し,その向きは,白血球膜の濃度と界面張力の関係が負の相関関係(界面張力が濃度に対して負の勾配)を持つときに,高濃度側に異動することがわかった.本年度の研究計画に従い、研究を遂行した結果以下のことが明らかになった。(1)溶液中白血球のサイトカイン濃度勾配による運動の観察と測定顕微鏡下で、誘因物質であるサイトカイン(IL-8)の濃度勾配をマイクロシリンジ等を用いて生成し、水溶液のセル内に浮遊している白血球に2次元的に作用させた。液膜の中心部にある白血球の動きを、位相差顕微鏡でCCDカメラに撮影し、各白血球の速度を粒子追跡計測(Particle Tracking Velocity Analysis)の画像処理から、白血球速度の平均を求めることができた。これらの測定系を用いて、白血球膜の界面張力の濃度依存性を求めた。この濃度依存性は、白血球の溶液中での運動をマランゴニ効果で規定するものとして重要なものとなり、この依存性について、滴下する濃度や白血球の周囲液体の環境(生理食塩水や培養液、純水)などによる変化を調べた結果、いずれの周囲流体の環境においても濃度依存性が特異的であることが明かとなった。また、壁面で拘束された液体内に白血球を分散し、自由表面系と同様に速度および界面張力の濃度依存性を調べ、自由表面の場合の対流の影響部分が小さいことがわかった。(2)サイトカイン滴下による濃度場解析と拡散係数同定サイトカインの濃度輸送を数値計算および1次元濃度方程式の解を用いて解析し、サイトカイン(タンパク質)の拡散係数を求めた。その結果、1.Ox10(-10)(m2/s)程度であることがわかった。次年度に本結果を使用して、膜上での拡散係数との対比を行う。本研究においては,駆動力が界面張力勾配のみが働く水溶液中下で,濃度勾配を実験的に変化させて,顕微鏡を用いた白血球粒子移動の観察と原子力間顕微鏡による働く力の計測を行い,界面張力勾配による白血球運動機構の解明を行うことを目的とする.白血球運動の速度に関しては,(1)白血球が一定の溶液中において濃度勾配を受けて移動するときの界面張力のみによる速度(2)重力や自由表面の影響による溶液中の対流から生じる速度,の2つが挙げられるが,このうち(1)についての速度を測定する.そのため,倒立顕微鏡に取り付けられたCCDカメラを用いて,液体中に分散している白血球にサイトカインを滴下したときの挙動を観察しその速度を計測し,滴下したときの濃度勾配をCFDにより予測し,これらの結果から総合的に界面張力の濃度依存を調べる.これらから,白血球膜の濃度による依存性について調べることができる.また,一方で,これらの速度計測から推定される白血球にはたらく力を原子間力顕微鏡によって測定する.本年度の成果としては,白血球膜上でのサイトカインの輸送機構の解明を可視化を中心とした界面機構と拡散機構のモデル化とCFDによる解析ならびに実験結果との対比を行った.その結果,白血球が活性化している状態では,濃度勾配に比例する力が発生し,その向きは,白血球膜の濃度と界面張力の関係が負の相関関係(界面張力が濃度に対して負の勾配)を持つときに,高濃度側に異動することがわかった.
KAKENHI-PROJECT-19656051
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DESI・冷却イオン分光によるコンフォメーションイメージング法の確立
分子選択性の高い質量イメージングと分子の構造や電子状態の情報が得られる分光測定を組み合わせることで、分子のコンフォメーションの空間分布が測定できるコンフォメーションイメージング法を確立する。これを実現するために、脱離エレクトロスプレーイオン化(DESI)法と応募者が開発した冷却イオントラップレーザー分光法(冷却イオン分光法)を組み合わせた新手法を開発する。分子選択性の高い質量イメージングと分子の構造や電子状態の情報が得られる分光測定を組み合わせることで、分子のコンフォメーションの空間分布が測定できるコンフォメーションイメージング法を確立する。これを実現するために、脱離エレクトロスプレーイオン化(DESI)法と応募者が開発した冷却イオントラップレーザー分光法(冷却イオン分光法)を組み合わせた新手法を開発する。
KAKENHI-PROJECT-19K22163
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血液循環エクソソームが膵がんに与える影響と解析
本研究では、健常人および膵がん患者の循環血液より抽出されたエクソソームを用いて比較解析および膵がん細胞株への添加実験を行うことにより、メカニズムを解析し治療標的となりうる機序が存在するかを検証することを目的とした。本研究では、健常人および膵がん患者の循環血液より抽出されたエクソソームを用いて比較解析および膵がん細胞株への添加実験を行うことにより、メカニズムを解析し治療標的となりうる機序が存在するかを検証することを目的とした。
KAKENHI-PROJECT-19K18115
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K18115
刑事責任能力の本質と判断方法
本年度は、これまでに公表した私見の理論枠組みの検証作業として、裁判実務における責任能力の認定手法に焦点を合わせて研究を進めた。学説・実務ともに責任能力の判断基準としては、「精神の障害」(生物学的要素)と弁識・制御能力(心理学的要素)を併せて考慮する、混合的方法が前提とされている。しかし、裁判実務における責任能力の判断場面では、犯行当時の病状や犯行前の生活状態、犯行の動機・態様等が総合考慮されている。本研究は、こうした責任能力の認定手法が刑法理論上の要件と整合していないとの問題意識から、責任能力が争点となった裁判例の総合分析を試みた。その結果、裁判実務における総合的判断方法の下では、犯行当時の病状・精神状態を出発点としながらも、幻覚妄想(およびそれと密接に関係する動機の了解可能性)を軸に様々な要素が考慮され、各考慮要素は等価ではなく、最も重視される幻覚妄想(および動機の了解不能性)が認められるかどうかによって、他の事情の評価方法が変化する点が明らかとなった。もっとも、「精神の障害」および弁識・制御能力に関するわが国の通説的見解を前提とした場合には、認定手法と刑法理論上の要件の間に矛盾が生じることは避けられない。これに対して、私見の理論枠組みは、行為者の(合)理性に着目した形で弁識・制御能力要件を一元的に理解することにより、責任能力の重要な判断要素とされる「了解可能性」とも親和的な実体要件として心理学的要素が再構成され、「精神の障害」を心理学的要素の認定資料に位置づけることにより、犯行当時の病状・精神状態を総合的判断の一要素とする裁判実務の考え方とも整合性が図られていることを提示した。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。本研究は、刑法39条が定める触法精神障害者に対する刑の減免につき、責任の本質に立ち返った形でその個別的要件を明らかにし、また、裁判過程における精神鑑定のあるべき位置付けにつき、手続法の議論にも踏み込んだ形で提示することを目的としている。上記研究目的のうち、今年度は、刑事責任能力判断における精神鑑定人の役割論を中心に研究を進め、その成果を一部論文として発表した(拙稿「刑事責任能力判断における精神鑑定人の役割(1)(2・完)」早稲田法学会誌65巻2号(2015年)151-202頁、同66巻1号(2015年)頁数未定・採録決定済)。同論文では、平成19年度司法研究による提言に着想を得て、「心神喪失」、「心神耗弱」、ないし「完全責任能力」等の表現を用いた形での、精神鑑定医による意見陳述の妥当性につき検討を加えた。具体的には、精神鑑定の拘束性を中心に展開された従来の議論枠組みでは、上記司法研究の提言の根底に存すると思われる、「一般の人々が適切に証拠を評価するための配慮」を十分に加味することができないとの問題意識から、「参考意見」として従来許容されていた鑑定意見が制限される理論的根拠を明らかにし、どの限度まで鑑定人に意見を述べてもらうべきかという線引き問題解決の糸口を得るため、アメリカの連邦証拠規則704条(b)項の立法動向ならびに連邦裁判所における運用状況を比較対象としつつ、刑事裁判における精神鑑定人の証言範囲とその証拠法則上の位置付けを明らかにした。本年度は、刑事責任能力の実体論的な側面を中心として研究を進めた。具体的には、責任能力要件の第二段階要素(弁識・制御能力)および第一段階要素(精神の障害)の内実と実体要件上の地位を明らかとするため、アメリカ法に示唆を得つつ、法哲学・精神医学における知見を参照しながら分析した。その結果、1弁識能力要件において問題とされるべきは行為者の認識内容ではなく、認識プロセスの異常性であり、従来的な意味における弁識・制御能力要件は「実質的弁識能力」へと解消されること、2「精神の障害」は実質的弁識能力に並ぶ実体要件としてではなく、実質的弁識能力の認定上の資料に位置づけられ、こうした理解は昨年度の手続論的分析で示した精神鑑定人の役割論とも整合的であることを明らかにした。本年度は、ペンシルヴェニア大学ロースクール(アメリカ)での1年間の在外研究の機会を得て、アメリカ法(判例・学説)に関する研究を集中的に遂行することができた。これらの成果は、1「刑事責任能力論における弁識・制御能力要件の再構成(1)(2・完)」早稲田法学会誌66巻2号・67巻1号、および2「『精神の障害』と刑事責任能力(1)(4・完)」早稲田法研論集158号161号において結実した。次年度は、これまでの手続論的・実体論的な分析を総合して、博士論文の完成に多くの時間を費やす予定である。具体的には、これまでの分析結果が刑事実務における責任能力の判断プロセスと整合することを明らかにするために、責任能力が争われた過去の裁判例を検討することが課題である。本年度はアメリカでの在外研究の機会を得て、自分の研究に集中することができた。紀要論文を2本公開できたことは、当初の計画以上の収穫であった。本年度は、これまでに公表した私見の理論枠組みの検証作業として、裁判実務における責任能力の認定手法に焦点を合わせて研究を進めた。学説・実務ともに責任能力の判断基準としては、「精神の障害」(生物学的要素)と弁識・制御能力(心理学的要素)を併せて考慮する、混合的方法が前提とされている。
KAKENHI-PROJECT-14J02485
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J02485
刑事責任能力の本質と判断方法
しかし、裁判実務における責任能力の判断場面では、犯行当時の病状や犯行前の生活状態、犯行の動機・態様等が総合考慮されている。本研究は、こうした責任能力の認定手法が刑法理論上の要件と整合していないとの問題意識から、責任能力が争点となった裁判例の総合分析を試みた。その結果、裁判実務における総合的判断方法の下では、犯行当時の病状・精神状態を出発点としながらも、幻覚妄想(およびそれと密接に関係する動機の了解可能性)を軸に様々な要素が考慮され、各考慮要素は等価ではなく、最も重視される幻覚妄想(および動機の了解不能性)が認められるかどうかによって、他の事情の評価方法が変化する点が明らかとなった。もっとも、「精神の障害」および弁識・制御能力に関するわが国の通説的見解を前提とした場合には、認定手法と刑法理論上の要件の間に矛盾が生じることは避けられない。これに対して、私見の理論枠組みは、行為者の(合)理性に着目した形で弁識・制御能力要件を一元的に理解することにより、責任能力の重要な判断要素とされる「了解可能性」とも親和的な実体要件として心理学的要素が再構成され、「精神の障害」を心理学的要素の認定資料に位置づけることにより、犯行当時の病状・精神状態を総合的判断の一要素とする裁判実務の考え方とも整合性が図られていることを提示した。当初の計画とは前後したものの、精神鑑定の手続論的分析を一通り終え、その成果を一部公表できたことによる。上記で示したように、今後は、これまでに明らかにした手続論的・実体論的な分析結果と裁判例の整合性を提示することが課題となる。そのために来年度は、責任能力が争われた国内の裁判例を網羅的に収集・分析する予定である。28年度が最終年度であるため、記入しない。上記の手続論的分析を離れ、責任能力の判断枠組み(実体論的分析)を精緻化する作業に研究時間を割く。また、次年度はペンシルバニア大学ロースクールに在外研究を予定している。同大学には、アメリカにおける責任能力研究の第一人者であるスティーヴン・モース教授が籍を置いており、同教授と親交を深めて意見の交換を行うことで、本研究の推進に有益な示唆が得られると考えている。28年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-14J02485
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実機から採取した微小素材を用いた高温多軸引張クリープ試験による寿命評価法開発
高温構造機器の安全稼動を持続させるためには,ボイラー配管やタービン動翼等の部品の経年劣化損傷を定量的に把握した上で,高精度な評価式を用いた寿命診断が重要である。とくに,実機では複雑な応力状態(=多軸応力)で,高温環境に特有のクリープ損傷を受けることから,本研究課題では十字型形状試験片を用いた新たな高温多軸応力クリープ試験を提案し,高精度な寿命評価式を開発する。さらに,評価対象素材の大きさを微小化することにより実機の任意の局所位置からの素材採取を可能として,寿命評価精度を向上させる。実機配管等から採取可能な微小サイズ素材のみで,高温・多軸応力環境下での損傷量を高精度に評価できる手法を確立する。高温構造機器の安全稼動を持続させるためには,ボイラー配管やタービン動翼等の部品の経年劣化損傷を定量的に把握した上で,高精度な評価式を用いた寿命診断が重要である。とくに,実機では複雑な応力状態(=多軸応力)で,高温環境に特有のクリープ損傷を受けることから,本研究課題では十字型形状試験片を用いた新たな高温多軸応力クリープ試験を提案し,高精度な寿命評価式を開発する。さらに,評価対象素材の大きさを微小化することにより実機の任意の局所位置からの素材採取を可能として,寿命評価精度を向上させる。実機配管等から採取可能な微小サイズ素材のみで,高温・多軸応力環境下での損傷量を高精度に評価できる手法を確立する。
KAKENHI-PROJECT-19K04089
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K04089
高次に自己組織化されたCNT-化合物ナノ構造体の創成とデバイス化に関する研究
本研究で提案するのはCNTと多様な物質をナノレベルで融合すると共に、高密度に自己組織化配列させるプロセスをほぼone stepで構築することを最大の特徴である。CNTの配列化などの研究は多いが、この様なone stepナノ複合化に関する研究は殆どなく、非常に高い独創性を持っていると考えている。平成20年度ではまず数ナノメートル以下の粒子とCNTを合成することを成功した。そこで得られた結果を元に様々な条件を変更してその二つの物質をone stepで複合化する方法を成功した。合成した複合構造は今まで使われた方法とは違い、簡単な方法で合成することが可能なので経済的にも良い方法であり、優れた電気特性を現すため、ナノ構造体はデバイスとして十分、応用できる可能性がある。また、現在注目されている透明電極など様々な分野で応用できると考えている。その観点で本研究では「ナノ構造化プロセスの融合・自己組織化低次元ナノ複合体構造化・新規なセンシング機能導入」などを実現し同時に多数の機能化・改善を指向した材料デバイス創成を行うと言う点に、その特色と独創性が秘めていると考えており、ナノ科学技術上の点からも応用化の観点からもインパクトが高いと考えている。本研究は自己組織化ナノ構造化法を開発し、低次元ナノ構造複合化手法と併用することで目的構造を得ることである。このようなナノ複合体をセンサーに応用し、高効率を実現すると共に、このコンセプトは他のデバイス、例えばエネルギー、バッテリ、大容量コンデンサーなどのデバイス分野のみならず環境調和システムへも適用可能であるため、これらへの応用を目指す。そして1次年度はその複合体を実現するため、ナノ粒子の合成及びカーボンナノチューブの成長と共にその複合体の構造まで実現した。その内容を下記に現す。1段階(平成20年度)・ナノ複合体合成-金属ナノパーティクル・ナノクラスタ合成・構造分析・メカニズム解明-XRD,SEM,TEM;ナノチューブと金属ナノパーティクルの構造解析-時間分割レーザーフォトラジオリシス法などによる電荷移動特性分析、その他の分析本研究で提案するのはCNTと多様な物質をナノレベルで融合すると共に、高密度に自己組織化配列させるプロセスをほぼone stepで構築することを最大の特徴である。CNTの配列化などの研究は多いが、この様なone stepナノ複合化に関する研究は殆どなく、非常に高い独創性を持っていると考えている。平成20年度ではまず数ナノメートル以下の粒子とCNTを合成することを成功した。そこで得られた結果を元に様々な条件を変更してその二つの物質をone stepで複合化する方法を成功した。合成した複合構造は今まで使われた方法とは違い、簡単な方法で合成することが可能なので経済的にも良い方法であり、優れた電気特性を現すため、ナノ構造体はデバイスとして十分、応用できる可能性がある。また、現在注目されている透明電極など様々な分野で応用できると考えている。その観点で本研究では「ナノ構造化プロセスの融合・自己組織化低次元ナノ複合体構造化・新規なセンシング機能導入」などを実現し同時に多数の機能化・改善を指向した材料デバイス創成を行うと言う点に、その特色と独創性が秘めていると考えており、ナノ科学技術上の点からも応用化の観点からもインパクトが高いと考えている。
KAKENHI-PROJECT-08J01672
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08J01672
情報論的規準に基づくデータ分布空間の距離構造学習フレームワークの構築及び応用
判別に適した形で特徴量が分布するように,データから特徴量を抽出する手法を開発した.本手法はデータが属するクラスを判別する問題一般に適用可能であるが,特に音声データによる話者判別問題に応用し,既存手法を大きく上回る判別精度を達成した.さらに,データが有する情報量の推定法を開発し,種々の応用を提案した.特に,太陽光発電量予測の信頼性評価へ応用し,再生可能エネルギー導入時に問題となる発電量の安定性評価に寄与した.判別に適した形で特徴量が分布するように,データから特徴量を抽出する手法を開発した.本手法はデータが属するクラスを判別する問題一般に適用可能であるが,特に音声データによる話者判別問題に応用し,既存手法を大きく上回る判別精度を達成した.さらに,データが有する情報量の推定法を開発し,種々の応用を提案した.特に,太陽光発電量予測の信頼性評価へ応用し,再生可能エネルギー導入時に問題となる発電量の安定性評価に寄与した.本研究は,解析の対象となるデータが分布している空間の距離構造の学習問題を研究対象とするものである.従来の機械学習手法の多くて採用されている,特徴空間における判別平面とデータとの距離を最大化するというマージン最大化に基づくアプローチに対して,特徴空間におけるデータ分布を最適化することで,目的とする処理に応じて特徴空間における距離構造を学習することを目的とする.特徴空間における距離構造の学習の基準として,申請者はクラス条件付きエントロピー最小化を提案している.平成22年度は,まず,条件付きエントロピー最小化基準に基づき特徴空間の距離構造を学習する手法を,Multiple Kernel Learningの枠組みで提案し,高精度な判別機を実現した.,さらに,提案した手法を,音声による話者識別という困難なタスクに適用し,既存手法を上回る性能を得た.一方,提案する学習の枠組みの根幹をなす,エントロピーの推定手法と最適化手法の研究も進めた.観測したデータから,そのデータを生成した確率分布のエントロピーを推定する問題は古くから研究されている.我々は,ノンパラメトリックなエントロピー推定手法としてよく知られているk最近傍法を,分位点を用いて再定式化し,観測したデータに重みが与えられている状況でも利用出来るエントロピー推定手法を開発した.時系列解析や重点サンプリングなど,データに重みを考慮すべき局面は多い.我々は,新たに開発したエントロピー推定手法を,1.単一クラス学習例を用いた2クラス判別問題,2.データ分布を保ったデータ圧縮問題,3.アンサンブル学習における学習機の重み最適化問題,4.時系列データの変化点検出問題,といった種々の問題に適用し,有用性を確認した.情報量は、統計科学、機械学習を始めとする多くの分野において基礎的な量であり、観測したデータの価値を測る尺度として多くの応用が考えられる。本年度はまず、基礎原理として提案した推定量の統計的性質の解明に努めた。具体的には、統計量のバイアスの算出、種々の既存統計量との比較実験を行ない、提案する情報量推定量が高次元、重み付きデータに対して有効であることを明らかにした。次に情報量推定手法の応用として、特に太陽光による発電の予測に付随する予測の信頼性の評価への応用を提案し、国内外の学会にて発表を行った。本応用は、再生可能エネルギーの導入における問題点である発電量の不安定性の評価と対策に寄与するものである。CEM基準による学習方法に関しては、判別問題に適用した際に、クラス内でのデータの変動に対してロバストであることを、音声認識システムに対する応用を通して実証した。その成果を、国内外の学会にて発表し、さらに国際学会に関連研究成果を2件投稿した。CEM基準による学習の枠組みをさらに推し進め、データから抽出した特徴量がその後のデータ解析に望ましい形で分布するように特徴空間の構造を学習する手法を提案した。本成果を国内学会にて発表し、論文誌にも論文掲載が決定された。特徴量の分布に特定の形を仮定するデータ解析手法は数多く有り、本研究の成果を応用することで、そうした分布形に依存する手法の性能を底上げすることが出来ると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-22800067
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22800067
難治性重症心不全患者におけるロボットスーツHALを用いた革新的治療の開発
計画1)健常者におけるHALの呼吸循環系への負荷軽減効果の評価健常者10名を対象とし、エルゴメータを用いた自転車こぎ運動負荷を、両脚用HALを用いた状態と両脚用HALを用いない状態で計2回施行した。その結果、中等度の運動負荷においては、HALによる呼吸循環系への有意な負荷軽減効果が認められた。以上の結果を国際学会で発表するとともに原著論文として報告した。立ち座り動作における腰用HALの有用性を検証すべく、健常者12名を対象として、中腰状態と立位を繰り返すスクワット運動(3分間)を、腰用HALありと腰用HALなしで、計2回行う研究を施行した。その結果、腰用HALを用いることで、運動中の心拍数と酸素摂取量が有意に低下し、スクワット運動時の呼吸循環系に対する腰用HALの有効性が示された。以上の結果を国内外の学会で発表するとともに、原著論文としてまとめた(現在投稿中)。計画2)起立困難もしくは通常の歩行が困難な心不全患者におけるHALの使用方法の考案・開発とその有効性の証明自力では起立困難な患者、もしくは通常速度の歩行が困難な慢性心不全患者において、腰用HALの有用性を検証する研究を行った。具体的には、これらの心不全患者をランダムにHALあり群とHALなし群に分け、HALあり群は腰用HALを装着し、HALなし群はHALを用いずに、各々医療従事者の介助下で手すりにつかまりながら坐位と立位を繰り返す運動を、1日あたり530分間程度、週35日を目標として行った。2019年3月の時点で計26例が登録されており、中間結果として、HALあり群の方は運動療法終了時に、大腿筋厚、大腿伸展筋力、BNPの有意な改善を認めたが、HALなし群ではこれらに有意な変化を認めなかった。以上の結果を国内の学会で発表した。計画1)の「健常者におけるHALの呼吸循環系への負荷軽減効果の評価」の課題のうち、エルゴメータを用いた運動負荷における両脚用HALの有効性に関しては、既に原著論文として公表済みである。立ち座り動作における腰用HALの有用性に関しては、データ収集、解析、論文作成が既に完了しており、現在英語原著論文として投稿中である。計画2)の「起立困難もしくは通常の歩行が困難な心不全患者におけるHALの使用方法の考案・開発とその有効性の証明」に関しては、計26例が登録完了し、新規症例のエントリーも順調に推移している。また、登録された症例のフォローアップ(イベント発症の調査)も遅滞なく行っている。計画1)健常者におけるHALの呼吸循環系への負荷軽減効果の評価立ち座り動作における腰用HALの有用性に関する研究成果を、今年度中に原著論文として公表する。計画2)起立困難もしくは通常の歩行が困難な心不全患者におけるHALの使用方法の考案・開発とその有効性の証明2019年3月の時点で、起立困難症例と通常歩行困難症例を合わせて計26例が登録されている。そのうち起立困難症例の登録はまだ3例のみであるが、3例の結果から起立困難症例におけるHALの有効性の証明は困難と判断されるに至った。したがって今年度は、通常歩行困難な症例(現在23例登録済み)に焦点をあてて、今年度中に目標の30例の登録(7例の新規登録)を目指す。また、登録された症例のフォローアップ(イベント発症の調査)も継続する。計画1)健常者におけるHALの呼吸循環系への負荷軽減効果の評価平成29年度の前半は、健常者10名を対象とし、トレッドミルを用いた同一の強度(速度・傾斜)の歩行運動負荷とエルゴメータを用いた自転車こぎ運動負荷を、各々両脚用HALを用いた状態と両脚用HALを用いない状態で計4回施行した。その結果、トレッドミル負荷においては、運動中の呼吸循環系の指標において、HALあり運動とHALなし運動の間に有意差を認めず、HALの有効性を示すことができなかった。一方エルゴメータを用いた中等度の運動負荷においては、HALによる呼吸循環系への有意な負荷軽減効果が認められた。平成29年度の後半は、立ち座り動作における腰用HALの有用性を検証すべく、健常者12名を対象として、座位と立位を繰り返す起立運動と中腰状態と立位を繰り返すスクワット運動を、各々腰用HALありと腰用HALなしで、計4回行う研究を着手した。平成29年度末の段階で5例が終了しており、5例中4例において、特にスクワット運動時のHALの有効性が示されている。計画2)起立困難もしくは通常の歩行が困難な心不全患者におけるHALの使用方法の考案・開発とその有効性の証明平成29年度の後半から、自力では起立困難な患者、もしくは通常速度の歩行が困難な慢性心不全患者において、腰用HALの有用性を検証する研究を着手した。具体的には、これらの心不全患者をランダムにHALあり群とHALなし群の2群に分け、HALあり群は腰用HALを装着し、HALなし群はHALを用いずに、各々医療従事者の介助下で、手すりにつかまりながら、坐位と立位を繰り返す運動を1日あたり530分間程度、週35日を目標として行う研究を開始し、平成29年末の段階で3例がエントリーした。
KAKENHI-PROJECT-17K09485
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K09485
難治性重症心不全患者におけるロボットスーツHALを用いた革新的治療の開発
平成29年度の健常者における研究は、健常者10名を対象とし、トレッドミルを用いた同一の強度の歩行運動を、HALを用いた場合とHALを用いない場合で2回施行することを計画していたが、本研究は完了しており、更にはエルゴメータを用いた自転車こぎ運動におけるHALありとHALなしの比較研究も追加し、これも既に完了している。加えて、健常者における立ち座り動作における腰用HALの有用性を検証すべく、平成29年度後半に座位と立位を繰り返す起立運動と中腰状態と立位を繰り返すスクワット運動を、各々腰用HALありと腰用HALなしで、計4回行う研究を着手し、こちらも順調に推移している。起立困難な重症心不全患者を対象とした研究は、当初は下肢の屈曲・伸展運動に対する下肢用HALの有効性を検証する予定であったが、健常者の立ち座り運動に対して腰用HALの有効性が示されつつある状況から、起立困難な慢性心不全患者に対しては、下肢用HALではなく腰用HALを用いたプロトコールに変更し、こちらも順調に推移している。計画1)健常者におけるHALの呼吸循環系への負荷軽減効果の評価健常者10名を対象とし、エルゴメータを用いた自転車こぎ運動負荷を、両脚用HALを用いた状態と両脚用HALを用いない状態で計2回施行した。その結果、中等度の運動負荷においては、HALによる呼吸循環系への有意な負荷軽減効果が認められた。以上の結果を国際学会で発表するとともに原著論文として報告した。立ち座り動作における腰用HALの有用性を検証すべく、健常者12名を対象として、中腰状態と立位を繰り返すスクワット運動(3分間)を、腰用HALありと腰用HALなしで、計2回行う研究を施行した。その結果、腰用HALを用いることで、運動中の心拍数と酸素摂取量が有意に低下し、スクワット運動時の呼吸循環系に対する腰用HALの有効性が示された。以上の結果を国内外の学会で発表するとともに、原著論文としてまとめた(現在投稿中)。計画2)起立困難もしくは通常の歩行が困難な心不全患者におけるHALの使用方法の考案・開発とその有効性の証明自力では起立困難な患者、もしくは通常速度の歩行が困難な慢性心不全患者において、腰用HALの有用性を検証する研究を行った。具体的には、これらの心不全患者をランダムにHALあり群とHALなし群に分け、HALあり群は腰用HALを装着し、HALなし群はHALを用いずに、各々医療従事者の介助下で手すりにつかまりながら坐位と立位を繰り返す運動を、1日あたり530分間程度、週35日を目標として行った。2019年3月の時点で計26例が登録されており、中間結果として、HALあり群の方は運動療法終了時に、大腿筋厚、大腿伸展筋力、BNPの有意な改善を認めたが、HALなし群ではこれらに有意な変化を認めなかった。以上の結果を国内の学会で発表した。計画1)の「健常者におけるHALの呼吸循環系への負荷軽減効果の評価」の課題のうち、エルゴメータを用いた運動負荷における両脚用HALの有効性に関しては、既に原著論文として公表済みである。立ち座り動作における腰用HALの有用性に関しては、データ収集、解析、論文作成が既に完了しており、現在英語原著論文として投稿中である。計画2)の「起立困難もしくは通常の歩行が困難な心不全患者におけるHALの使用方法の考案・開発とその有効性の証明」に関しては、計26例が登録完了し、新規症例のエントリーも順調に推移している。また、登録された症例のフォローアップ(イベント発症の調査)も遅滞なく行っている。平成30年度は、主に以下の2つの研究を推進する予定である。計画1)健常者におけるHALの呼吸循環系への負荷軽減効果の評価
KAKENHI-PROJECT-17K09485
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ストレスにより誘導されるメタロチオネインを指標としたストレスの客観的評価法の開発
種々の身体的・心理的ストレスによって、メタロチオネイン(重金属結合低分子量蛋白質)が誘導・生合成され、肝・血液・尿中のメタロチオネイン量が増加することが知られてきた。本研究は、このストレスの際誘導される蛋白質(メタロチオネイン)を利用し、ストレスの客観的評価法を確立することを目的としている。すなわち、遺伝子工学的手法で大量に得られたヒト・メタロチオネインを抗原として、モノクローナル抗体を調製し、それを用いて、ストレス状態の際の尿・血液中のメタロチオネイン量を抗原抗体反応を用いた方法によって測定し、ヒトのストレスを他覚的に高精度で評価する方法を確立する計画である。得られた成果は次の如くである。1.メタロチオネインの遺伝子を全く持たない大腸菌に、ヒト・メタロチオネインIIの遺伝子を導入し、発現させることに成功した。2.1.で得られた大腸菌を大量培養し、その菌体破砕液を出発材料として、ゲル濾過、高速液体クロマトグラフィー等により、ヒト・メタロチオネインIIを大量に精製した。3.2.で得られたヒト・メタロチオネインIIを抗原として、マウスに注射し、抗体をつくらせ。ヒト・メタロチオネイン抗体を産生しているマウス脾臓由来のB細胞と、マウス・ミエローマ細胞を融合させ、抗体を産生するハイブリドーマのクローニングを行った。4.3.で得られた抗体を用いて、ELISA法(Enzyme-linked Immunosorbent assay,酵素免疫測定法)によるヒト・メタロチオネインの定量法を確立すべく努力したが、抗原の分子量が低すぎるためなのか、まだ成功していない。そのため、方針を変更し、Radio-immunoassayも同時に試みている。Radioimmunoassayは、微量定量に適しているため、ヒトの尿、血液中のメタロチオネインの定量に有効であると思われる。種々の身体的・心理的ストレスによって、メタロチオネイン(重金属結合低分子量蛋白質)が誘導・生合成され、肝・血液・尿中のメタロチオネイン量が増加することが知られてきた。本研究は、このストレスの際誘導される蛋白質(メタロチオネイン)を利用し、ストレスの客観的評価法を確立することを目的としている。すなわち、遺伝子工学的手法で大量に得られたヒト・メタロチオネインを抗原として、モノクローナル抗体を調製し、それを用いて、ストレス状態の際の尿・血液中のメタロチオネイン量を抗原抗体反応を用いた方法によって測定し、ヒトのストレスを他覚的に高精度で評価する方法を確立する計画である。得られた成果は次の如くである。1.メタロチオネインの遺伝子を全く持たない大腸菌に、ヒト・メタロチオネインIIの遺伝子を導入し、発現させることに成功した。2.1.で得られた大腸菌を大量培養し、その菌体破砕液を出発材料として、ゲル濾過、高速液体クロマトグラフィー等により、ヒト・メタロチオネインIIを大量に精製した。3.2.で得られたヒト・メタロチオネインIIを抗原として、マウスに注射し、抗体をつくらせ。ヒト・メタロチオネイン抗体を産生しているマウス脾臓由来のB細胞と、マウス・ミエローマ細胞を融合させ、抗体を産生するハイブリドーマのクローニングを行った。4.3.で得られた抗体を用いて、ELISA法(Enzyme-linked Immunosorbent assay,酵素免疫測定法)によるヒト・メタロチオネインの定量法を確立すべく努力したが、抗原の分子量が低すぎるためなのか、まだ成功していない。そのため、方針を変更し、Radio-immunoassayも同時に試みている。Radioimmunoassayは、微量定量に適しているため、ヒトの尿、血液中のメタロチオネインの定量に有効であると思われる。種々の身体的・心理的ストレスによって,メタロチオネイン(重金属結合低分子量蛋白質)が誘導・生合成され,肝・血液・尿中のメタロチオネイン量が増加することが知られてきた。本研究は,このストレスの際誘導される蛋白質(メタロチオネイン)を利用し,ストレスの客観的評価法を確立することを目的としている。すなわち,遺伝子工学的手法で大量に得られたヒト・メタロチオネインを抗原として,モノクロナル抗体を調製し,それを用いて,ストレス状態の際の尿・血中のメタロチオネイン量を測定し,ヒトのストレスを他覚的に評価する方法を確立する。当該年度の実績は次の如くである。1.ヒト・メタロチオネイン遺伝子の実現メタロチオネインの遺伝子を全く持たない大腸菌に,ヒト・メタロチオネインIIの遺伝子を導入し,発現させることに成功した。2.ヒト・メタロチオネインIIの大量精製1.で得られた大腸菌を大量培養し,その菌体破砕液を出発材料として,ゲル濾過,高速液体クロマトグラフィ-等により,ヒト・メタロチオネインIIを大量に精製した。3.ヒト・メタロチオネインIIのモノクロナル免疫抗体の調製2.で得られたヒト・メタロチオネインIIを抗原として,マウスに注射し,抗体をつくらせた。ヒト・メタロチオネイン抗体を産生しているマウス脾臓由来のB細胞と,マウス・ミエロ-マ細胞を融合させ,抗体を産生するハイブリド-マのクロ-ニングを行った。これらの実験に,本研究費で購入したELISA法装置が大変役に立っている。
KAKENHI-PROJECT-03557028
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ストレスにより誘導されるメタロチオネインを指標としたストレスの客観的評価法の開発
今後ハイブリオド-マの培養上清より,また同細胞をマウス腹腔内に移植し,その腹水より抗体を調節する予定である。種々の身体的・心理的ストレスによって,メタロチオネイン(重金属結合低分子量蛋白質)が誘導・生合成され,肝・血液・尿中のメタロチオネイン量の増加することが知られてきた。本研究は,このストレスの際誘導される蛋白質(メタロチオネイン)を利用し,ストレスの客観的評価法を確立することを目的としている。すなわち,遺伝子工学的手法で大量に得られたヒト・メタロチオネインを抗原として,モノクロナル抗体を調製し,それを用いて,ストレス状態の際の尿・血中のメタロチオネイン量を測定し、ヒトのストレスを他覚的に評価する方法を確立する。当該年度の実績は次の如くである。1.大腸菌を用いたヒト・メタロチオネインの大量精製メタロチオネインの遺伝子を全く持たない大腸菌に,ヒト・メタロチオネインIIの遺伝子を導入し、その大腸菌を大量培養した。菌体破砕液よりゲル濾過,高速液体クロマトグラファー等により、ヒト・メタロチオネインIIを大量に調製した。2.ヒト・メタロチオネインIIのモノクロナル免疫抗体の調製1.で得られたヒト・メタロチオネインIIを抗原として,マウスに注射し,抗体をつくらせた。ヒト・メタロチオネイン抗体を産生しているマウス脾臓由来のB細胞と,マウス・ミエローマ細胞を融合させ,抗体を産生するハイブリドーマのクローニングを行った。ハイブリドーマの培養上消より、また同細胞をマウス腹腔内に移植し,その腹水より杭体を調製した。今後,この抗体を用い,ELISA法とラジオイミコノ・アッセイの確立に努力している。これが確立すれば,ストレスに曝露された物動の生体試料中のメタロチオネインの定量を行う。本研究は,ストレスの際誘導される蛋白質(メタロチオネイン)を利用し,ストレスの客観的評価法を確立することを目的としている。すなわち,遺伝子工学的手法で大量に得られたヒト・メタロチオネインを抗原として,モノクローナル抗体を調製し,それを用いて,ストレス状態の際の尿・血液中のメタロチオネイン量を抗原抗体反応を用いた方法によって測定し,ヒトのストレスを他覚的に高精度で評価する方法を確立する計画である。現在までに,遺伝子工学的手法で大量に得られたヒト・メタロチオネイン-2型を抗原として,モノクローナル抗体を調製することに成功している。この抗体を用いて,ELISA法(Enzyme-linked Immunosorbent assay,酵素免疫測定法)によるヒト・メタロチオネインの定量法の確立すべく努力したが,抗原の分子量が低すぎるためなのか,まだ成功していない。そのため,方針を変更し,Radioimmunoassayも同時に試みている。Radioimmunoassayは,微量定量に適しているため,ヒトの尿,血液中のメタロチオネインの定量に有効であると思われる。本研究費の期限は,本年度末で終わるが,本研究を引続き行い,できるだけ早い時期に,残されている実験,すなわち,種々のストレッサーに曝露された被験者の,尿・血液のメタロチオネイン量を定量し,ストレス状態とメタロチオネイン量との関係を調べ,ヒトのストレスを他覚的に高精度で評価する方法を確立する予定である。
KAKENHI-PROJECT-03557028
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外国語コミュニケーションに表れるチャンクと文法、チャンク学習有効性の検討
本研究では外国語学習者の外国語のチャンク処理過程を明らかにするため、「処理可能性理論」を用いたライティングとスピーキング実証研究を行っている。平成30年度には平成29年度に引き続き、実験用に構築したプログラムを使って、日本人英語学習者とネイティブ・スピーカーによる予備実験を行い、プログラムとタスクの修正を行った。その後に本実験を開始した。当初の計画では、実験で用いるライティング・タスクはHSPプログラムによって可能な限りの提示を自動化して、タイピングによるデータ収集を行うことを予定していた。オンラインのプログラムを用いる理由には、「処理可能性理論」が必要とする諸条件を一律にコントロールすることがあり、これにより学習者のライティングとタイピングの環境を統制することが当面の重要課題であった。しかしながら予備実験の結果からは、学習者のタイピング速度や経験の個人差が予想以上に大きく、収集するデータにさまざまな要因が関連してしまうことや、質の異なるものが含まれてしまうことが予測され、プログラムと従来の記述式ライティングを併用することとした。その他予備実験からは、タスクの表示や掲示順序、タスクの数の調整、タスクで用いる絵の修正など必要となり、プログラムの修正とタスクの変更も行った後に本実験を開始した。本実験においては、目下、予定しているデータの収集がすべて終わっておらず引き続き収集を続けており、収集したデータから順次処理を行っている。実験用プログラムの構築が遅れたため、実験の実施自体にも遅れが生じている。慎重にデータ処理を行うため1年の計画延長を行っており、本年度は当初の予定にしたがって、最終年度の研究計画を進めていく予定である。上述のように、目下、実験によってデータを収集している最中で、また収集したデータから順次処理を行っている。近日中に学会発表を行いたいと考えている。本年度は最終年度であるため、データ分析の後に学会発表と論文投稿行う。データ処理については、収集したすべてのデータについて人権上の問題も含め入念に確認を行い、最終作業を進めていく。早急の課題としては、1点目に、音声データの処理についてもある程度自動化をしたいと考えており、実験データの収集と並行して、処理用プログラムの構築を進めている。ただし音声処理と音声ソフトの扱いに関しては種々の問題があり、慎重に検討した上で作業を進めていきたい。2点目には、データの分析では処理可能性理論の示す言語発達段階に照らし合わせて分析を進めるが、改めてチャンクに関する先行研究を読み進めていく中で、L1のチャンク習得から得られる知見が多くあり、L1とL2のチャンクの関係を検討していく必要があると感じている。3点目には、実験用プログラムについて、今後の研究でも引き続き利用できるように有効な方法と形を検討していきたい。最終年度の研究を通して問題点と改良点を検討し、今後の研究と教育実践につなげるよう研究を進めていく。本研究の目的は,1点目に外国語学習者の外国語のチャンク処理過程を明らかにすることであり、また2点目にはチャンク学習の効果を検討することである。これらチャンク処理過程と外国語学習過程は,第2言語習得理論「処理可能性理論」(Pienemann, 2011)を用いて、学習者の外国語産出に関連する文法と外的要因(指導,インプット)の関係から検討する。これまでの本研究代表者の研究からは「処理可能性理論」を用いて日本人EFL学習者の英語の発達を検証する場合に、いくつかの課題と実証の手法的問題点があることが明らかになった。そこで、初年度はそれらの問題が日本人EFL学習者に特有のものかを検討することため、また日本人EFL学習者を対象とする場合には、それらの問題を回避して実証研究を行う必要があるために、関連する先行研究と他の第二言語習得理論研究などの文献整理とデータのメタ分析を行った。そして、翌年度の実証研究(実験)に向けた必要な理論の証明と実験計画の作成を行った。また実証研究に参加する外国語学習者(EFL学習者,英語・日本語バイリンガル学習者)を対象に実験協力を募り、参加予定者の外国語学習の実態把握に向けたアンケート調査を実施した。その一部であるバイリンガル(マルチリンガル)学習者を対象とした調査結果については、学習へ取り組みやその要因の観点から学会発表を行った。さらに学習者のチャンク「理解」の側面からも検討することが必要であると考え、複数のチャンク表示機能を持つ読解システムを構築し、学習者が英文テキストにおいてどのようにチャンクをとらえているのか、読み進め,戻り読みのタイミングなど、チャンク表示の軌跡やチャンクごとの滞在時間を記録し,学習者の読解過程で戻り読みがどのような箇所,タイミングで発生するのか,その過程や読解時間の変化などの学習履歴を分析するためのシステムを構築した。現在までに、関連研究の整理と2017年度に行う予定の実験計画の作成を行い、一部実験資材を用いたパイロット・スタディを実施した。しかしパイロット・スタディの一部が完了しておらず、まだ修正が必要な部分もあるためやや遅れている。チャンク「産出」に関連する先行研究からは、スピーキングとライティングによる言語(チャンクを含む)産出の異なりが明らかにされて、学習者がスピーキングで産出できな現在までに、関連研究の整理と本年度行う実証(実験)計画の作成を行った。関連する先行研究からは、スピーキングとライティングによる言語(チャンクを含む)「産出」の異なりが明らかにされており、学習者がスピーキングで産出できない特定の項目を,ライティングのタスクにおいては産出する例も複数報告されている。よって、本研究では、ライティングとスピーキングのタスクを用いて実証研究を行うこと予定し、それらタスクと実験計画の作成を行った。
KAKENHI-PROJECT-16K02950
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外国語コミュニケーションに表れるチャンクと文法、チャンク学習有効性の検討
一部のタスクについては、小規模のパイロット・スタディも実施し、タスクの有効性の検討を行っているが、スピーキングの実験で用いるオンラインのタスクについては、システムの構築が遅れており、本年度までにパイロット・スタディが完了していない。したがって、研究全体に遅れが生じている。一方、学習者のチャンク「理解」の側面からは、構築したCALLシステムを用いたリーディングの実験に参加した学習者の結果(学習履歴とアンケート)の分析から、学習者のチャンク処理において個々の単語の「意味」と「難易度」、テキスト読解過程におけるなんらかのストレスが学習者のチャンク処理に影響を与えていることが明らかになった。これらの要因が産出にどのように影響を及ぼしているのか、さらに詳細な分析が必要であると考えている。本研究の目的は,1点目に、外国語学習者の外国語のチャンク処理過程を明らかにすることであり、また2点目にはチャンク学習の効果を検討することである。そして、チャンク処理過程と外国語学習過程に対しては,第2言語習得理論「処理可能性理論」(Pienemann, 2011)を中心的に用いて分析を行う。当初の計画では、平成29年度にはその実証研究(実験)とデータ分析を中心に行う予定であったが、28年度よりスピーキング・タスクで用いるシステムの構築とそれを用いたパイロット・スタディが完了しておらず、研究に遅れが生じていたため、29年度には、それらの課題を継続しながら、その他実験で用いるタスクとプログラムの検討を行うことが主となった。まず平成29年度は、HSPプログラムを用いて、スピーキングとタイピング(ライティング)のタスクを実施するシステムを構築した。目下、高専生によるパイロット・スタディを繰り返し、システムの運用に問題がないかを確認している最中である。目下の課題は、学習者のライティングとタイピングの環境の異なりを調整にすることで、今後もシステムと実験計画の修正は必要であると考えている。また、以前から課題であったタスク間の影響(刺激)の抑制、必要な文法項目がタスクによって引き出せるかについても、さらに微調整は必要である。さらに、本研究では「処理可能性理論」を用いたスピーキングとライティング(タイピング)の実証研究を行うが、これまでに実証方法が確立されていないライティングによる処理可能性理論実証に向けて、理論と方法的問題を明確にするために研究論文をまとめた。特に、処理可能性理論を実証する上では、ライティング・タスクにおけるタイム・コントロールの問題が不可避であると考えており、タイピングによって回避できるか、上述の実験用システムの構築と合わせて、理論的な検討を繰り返し行った。上述のように、平成29年度は実証研究(実験)とそのデータ分析を中心に行う予定であったが、28年度より遅れが生じていた実証用プログラムの構築とそれを用いたパイロット・スタディを行い、その他実験で用いるタスクとプログラムの検討を行うことが主となったため、研究全体の進捗状況は遅れている。
KAKENHI-PROJECT-16K02950
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プルシアンブルー系ナノ結晶多層膜の陽イオンサイズ選択型電子整流効果
プルシアンブルー(PB)、及び、そのNi置換類似体(Ni-PBA)ナノ結晶の水分散液を作製した。PBナノ結晶層(下層)とNi-PBAナノ結晶層(上層)からなる二層膜をスピンコート法でITOガラス基板上に作製し、その電子整流現象について調べた。120150°Cの低温加熱によりナノ結晶同士のd-π結合ネットワークが再構築され、ナノ結晶膜の脆さが劇的に改善された。下層が上層に対して高い電子ブロッキング機能を発揮できることを見出した。カリウムイオンに対して選択的に電子整流性が発現することを見出した。ナノ結晶はその表面を改質することで溶媒に高濃度で安定分散させることができる。その分散液の獲得により、スピンコート法やディップコート法などの簡便な方法により、基板に均一にナノ結晶薄膜を作製することができる。一方、結晶界面改質は、ナノ結晶個々を独立させる機能を付与するため、逆に薄膜全体での機能を低下させてしまう=薄膜全体のイオン伝導や電気伝導を阻害する=結晶粒界がその機能・性能を支配してしまう、トレードオフの関係が問題になる。24年度の研究では、プルシアンブルー(PB)ナノ結晶分散液を用いたスピンコート法により得られた薄膜について、粒子同士を接合する目的で、100°C程度の低温アニーリング行った。その薄膜は電子顕微鏡観察により致命的なボイドやクラックが発生していない極めて緻密な構造であること見出した。25年度では、そのアニーリング粒子接合による膜全体の機能向上が実現しているか?を明らかにするため、自己組織化膜上、その末端官能基を介してPBナノ結晶を結合させその単層膜を作製、更に低温アニーリングを行い、そのイオン伝導挙動について評価した。併せてそのイオン伝導メカニズムについて議論を行った。ITO透明電極基板上に、スピンコート法により作製したPBナノ結晶(下層)及びNi系PBAナノ結晶(上層)2層膜の低温アニーリング膜は、その電子とイオン伝導性が連動したゲート機能により、良好な整流が発現する。25年度は、本研究の概念の普遍性を提案し、且つ、本研究を飛躍的に加速させるため、2層膜の下層を可逆な酸化還元活性を有するルテニウムポリピジン錯体に置換、上層にPBナノ結晶薄膜を作製し、同様な整流性が発現するかを調べた。PBナノ結晶を繰り返し積層した場合、その積層数に依存して、整流性を示す電流が単調に増加することを見出し、下層の電子伝導ゲート効果の重要性を明らかにすることができた。プルシアンブルー(PB)、及び、そのNi置換類似体(Ni-PBA)ナノ結晶の水分散液を作製した。PBナノ結晶層(下層)とNi-PBAナノ結晶層(上層)からなる二層膜をスピンコート法でITOガラス基板上に作製し、その電子整流現象について調べた。120150°Cの低温加熱によりナノ結晶同士のd-π結合ネットワークが再構築され、ナノ結晶膜の脆さが劇的に改善された。下層が上層に対して高い電子ブロッキング機能を発揮できることを見出した。カリウムイオンに対して選択的に電子整流性が発現することを見出した。プルシアンブルー(PB)とその類似体(PBA)ナノ結晶、及びその高濃度安定分散液の簡便・合成技術を基盤に、その分散液塗布法により得た多成分積層膜の陽イオンサイズ選択型電子整流効果のメカニズム解明を本研究の主たる研究目的とした。PB・PBAの以下の特性を生かし研究展開した:1d-π多重電子系で連結された配位高分子、2陽イオンサイズ選択ナノ空間を内含する配位高分子、3金属組成に依存した酸化還元電位制御が可能。24年度の研究計画として具体的には:1塗布膜の直接観察、2整流メカニズムの解明(イオンゲート・電子ゲートの機能検証=サイズ選択的アルカリ金属イオン取り込みに関わるPBの構造因子の解明)、を実施した。ITO透明電極基板上に、PB及びNi3[Fe(CN)6]2の2種類の水分散液を用いて簡便なスピンコート法により、2層膜(下層/上層:PB/Ni3[Fe(CN)6]2)を作製した。その断面では、組成の異なるナノ粒子層が明確に区別されて電界放出型走査電子顕微鏡で観察された。100°Cの加熱処理(アニーリング)を施すことで、大きなボイドやクラックのない粒子同士の緻密膜(PBは緻密球状粒子層、Ni3[Fe(CN)6]2は緻密板状粒子層)が形成されていた。200 nmを超える膜厚の粒子層であっても良好な電気化学応答性を示すのは、この緻密な粒子接合によりと考えられる。2層膜(下層/上層:PB/Ni3[Fe(CN)6]2)の整流発現の駆動力となっているアルカリ金属イオンのサイズ選択的取り込み機構の解明を進めた。EQCM測定により2層膜が連動した酸化還元に伴うカリウムイオンの選択的脱着を明らかにした。また、カリウムイオンのサイズ選択的取り込みは、ナノ結晶内のフェロシアン酸イオンの欠損サイトが重要な機能を果たしていることを、セシウムイオンの自然吸着機構との比較から明らかにすることができた。プルシアンブルー(PB)、及び、そのNi置換類似体(Ni-PBA)ナノ結晶の表面に露出している配位不飽和場をフェロシアン酸イオンで修飾することで、水分散インクを作製した。ITOガラス基板上に、PBナノ結晶層(下層)とNi-PBA結晶層(上層)をスピンコート法で作製し、その電子整流効果について、論文投稿に向けた精密評価を実施した。
KAKENHI-PROJECT-24550069
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24550069
プルシアンブルー系ナノ結晶多層膜の陽イオンサイズ選択型電子整流効果
電子整流に対してリーク電流が発生しない最適な塗布膜条件(アニーリング温度・膜厚)について調べた。そのアニーリング温度では、上・下層とも120150°Cが最適な温度範囲であった。膜厚についてPBナノ結晶層(下層)は、20 nm以上であれば、Ni-PBA結晶層(上層)への電子ブロッキング機能を十分に発揮できることを見出した。透過電子顕微鏡観察からPBナノ結晶個々の大きさが8 nm程度であることから、膜厚20 nmは、僅かに23粒子がスタックした粒子層であり、それが電子整流性を制御していることになる。その下層を走査電子顕微鏡で観察すると、ITO結晶粒子層上に、PBナノ結晶が均一かつ緻密に連結した膜(致命的なクラックやボイドを一切含まない)が形成されていた。また、原子間力顕微鏡(コンタクトモード)による強度試験において、アニーリングにより膜強度が劇的に向上することも見出した。Ni-PBA結晶層(上層)はナノからサブミクロンまで水分散インクの濃度に応じて膜厚制御が可能で、その整流電子密度は膜厚に依存して変化した。電解質イオンの依存性も明らかになった。アルカリ金属イオンで比較すると、カリウムに対して選択的に電子整流性が出現することを見出した。これは、PBナノ結晶層(下層)のカチオン選択性と類似した挙動である。無機・錯体化学基板上に自己組織化膜(SAM)を作製、その末端の官能基を介してPBナノ結晶の単粒子層膜の調製法を確立することができた。特に、PBナノ結晶分散液に含まれる粗大粒子を遠心分離により除去することで、粒子径において比較的狭い分布からなる分散液を得ることに成功した(動的光散乱粒度分布の測定から)。その結果、SAM膜上には、均一・緻密な単粒子層膜の作製が可能にとなり、そのイオン伝導及び電子伝導の系統的な評価が可能になったことは、本研究を更に進展させるための独創性の高い大きな成果言える。また、アニーリングによるナノ結晶同士の接合は、ナノ結晶界面と結晶内の空孔を介したイオン伝導性を比較する上で重要である。電子とイオン伝導性が連動したゲート機能により発現する整流現象は、そのメカニズムの議論から、これまで採用したPBナノ結晶及びNi系PBAナノ結晶2層膜以外の系でも適用できることが想定された。そこで、これを実証するため、2層膜の下層を可逆な酸化還元活性を有するルテニウムポリピジン錯体に置換、上層にPBナノ結晶薄膜を作製し、同様な整流性を見出すことができた。当初、下層のルテニウムポリピジン錯体膜の作製法と上層のPBナノ結晶薄膜のマッチングに試行錯誤したものの、一定の成果を修めることができ、本研究の概念の普遍性と、今後の研究が加速度的に進むと期待される。フェロシアン酸とフェリシアン酸イオンが共存するベルリングリーンは、電子伝導性が飛躍的に向上するとの理論的な報告がなされた。酸化還元電位が金属組成に依存して系統的にシフトするNi系PBAナノ結晶も同様に、フェロシアン酸とフェリシアン酸イオンが共存する系であり、今後、そのイオン伝導性と電子伝導性の評価を実施するため、SAM膜を介したその単粒子膜の調製法とその評価法は、新たな展開に進んでいる。24年度で想定した研究計画を実施した結果、以下の知見や良好な成果が得られた。プルシアンブルー及びその類似体の酸化還元はその結晶空孔へのアルカリ金属イオンのサイズ選択的出し入れと連動して起こる。
KAKENHI-PROJECT-24550069
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24550069
3次元VLSI配置設計における並列アルゴリズムに関する研究
本研究で得られた成果の概要を以下にまとめる.1.3次元グラフィックスを用いたレイアウト可視化ツールの開発当初,平成11年度から開発を始める予定であったが,3次元VLSI初期配置アルゴリズムを開発するときにレイアウト結果を確認することが必要なため,アルゴリズムの開発に先立って開発を始めた.開発したレイアウト可視化ツールの以下の機能を用いて,レイアウトの詳細な検討が可能となった.(1)ポップアップメニューとマウスを用いた,レイアウトデータに対する回転・拡大・縮小(2)アルゴリズムや配置パラメータの異なる2つのレイアウトデータの同時表示(3)配置領域内部の仮想配線領域の重なり具合の表示(4)特定の仮想配線領域以外の消去,もしくは半透明化(5)色および透明度を変化させることによる,配線混雑度の表示2.3次元配置設計のための並列アルゴリズムの開発まず,3次元VLSI初期配置問題を定式化し,比較対象とする最適解を求めるための並列アルゴリズムを開発した.また,その性能を評価するため,並列計算機上で実験を行った.実験の結果,提案したアルゴリズムは,CPUを2個使った場合で平均約40%,4個使ったときで平均約60%,それぞれ計算時間を短縮することができた.次に並列計算機を対象とした,3次元VLSI初期配置のためのヒューリスティックアルゴリズムを開発し,その性能を評価するため,並列計算機上で実験を行った.実験の結果,提案したアルゴリズムは,CPUを2個使った場合で平均約35%,4個使ったときで平均約50%,それぞれ計算時間を短縮することができた.これらのアルゴリズムは,3次元VLSI初期配置を決定する上で,有効であることが確認できた.本研究で得られた成果の概要を以下にまとめる.1 3次元配置設計のための並列アルゴリズムの開発まず,3次元VLSI初期配置問題を定式化し,並列アルゴリズムの基礎として,対交換法と組み合わせた逐次アルゴリズムを開発し,その性能評価を行った.また,比較対象とする最適解を求めるための並列アルゴリズムを開発した.更に開発した並列アルゴリズムの性能を評価するため,実際の並列計算機上でシミュレーション実験を行い,その有効性を確認した。2 3次元グラフィックスを用いたレイアウト可視化ツールの開発当初,平成11年度から開発を始める予定であったが,3次元VLSI初期配置アルゴリズムを開発するときにレイアウト結果を確認することが必要なため,今年度,3次元グラフィックスを用いたレイアウト可視化ツールを開発した.開発したツールは,以下の機能を持つ.(1)ポップアップメニューとマウスを用いて,レイアウトデータに対する回転・拡大・縮小ができる.(2)アルゴリズムや配置パラメータの異なる2つのレイアウトデータを同時に表示し,(1)の操作を同時に行うことができる.(3)配置領域内部の仮想配線領域の重なり具合を確認することができる.(4)特定の仮想配線領域以外を消去,もしくは半透明化することにより,検討したい仮想配線領域だけを詳細に調べることができる.(5)配線混雑度を,色および透明度を変化させることにより,表示することができる.このレイアウト可視化ツールは,アルゴリズムを開発する上で,有効であることを確認した.本研究で得られた成果の概要を以下にまとめる.1.3次元グラフィックスを用いたレイアウト可視化ツールの開発当初,平成11年度から開発を始める予定であったが,3次元VLSI初期配置アルゴリズムを開発するときにレイアウト結果を確認することが必要なため,アルゴリズムの開発に先立って開発を始めた.開発したレイアウト可視化ツールの以下の機能を用いて,レイアウトの詳細な検討が可能となった.(1)ポップアップメニューとマウスを用いた,レイアウトデータに対する回転・拡大・縮小(2)アルゴリズムや配置パラメータの異なる2つのレイアウトデータの同時表示(3)配置領域内部の仮想配線領域の重なり具合の表示(4)特定の仮想配線領域以外の消去,もしくは半透明化(5)色および透明度を変化させることによる,配線混雑度の表示2.3次元配置設計のための並列アルゴリズムの開発まず,3次元VLSI初期配置問題を定式化し,比較対象とする最適解を求めるための並列アルゴリズムを開発した.また,その性能を評価するため,並列計算機上で実験を行った.実験の結果,提案したアルゴリズムは,CPUを2個使った場合で平均約40%,4個使ったときで平均約60%,それぞれ計算時間を短縮することができた.次に並列計算機を対象とした,3次元VLSI初期配置のためのヒューリスティックアルゴリズムを開発し,その性能を評価するため,並列計算機上で実験を行った.実験の結果,提案したアルゴリズムは,CPUを2個使った場合で平均約35%,4個使ったときで平均約50%,それぞれ計算時間を短縮することができた.これらのアルゴリズムは,3次元VLSI初期配置を決定する上で,有効であることが確認できた.
KAKENHI-PROJECT-10780208
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10780208