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リン酸化定量プロテオミクスによるTGF-βシグナル伝達機構の解明
これまでTGFβの下流として知られているcalcineurinの基質候補をプロテオミクス解析により多数同定したこれらのcalcineurinの新規基質候補のより生理的刺激下でのリン酸化の変動を明らかにるため抗原刺激のリン酸化プロテオミクス解析との統合を行った。この解祈によりcalcineurinの基質候補分子の中には抗原刺激後脱リン酸化されず、変動しないものやリン酸化されるものが存在することが分かった。これはおそらくカルシウム刺激より複雑なリン酸化経路の活性化が抗原刺激により起こっており、基質候補がcalcineurin以外のリン酸化制御を受けることを示唆した。そこでこのリン酸化制御を行う分子を同定ために新規基質候補の一つであるItpkbに着目した解析を行った。詳細な解析によりItpkbは抗原刺激により脱強くリン酸化されることが明らかとなった。そこでこのリン酸化酵素の同定を試みた。配列情報よりErkがリン酸化を担っている可能性が示唆され、阻害剤を用いた検証を行ったところErkによりやはりリン酸化されていた。さらにErkとcalcineurinは抗原刺激時に同時に活性化することよリン酸化と脱リン酸化を拮抗的に行っているのではないかと考え抗原刺激時に阻害剤を加えることで検証を行った。予想通りErkとcalcineurinはItpkbのリン酸化を拮抗的に制御していた。最後に我々はこの拮抗的な制御がItpkbに特異的な現象なのか、それともたくさんの基質候補で起こっている現象なのかを検証すべくリン酸化プロテオミクスを用いて網羅的に検証した。おどろいたことに多くの基質候補がErkとcalcineurinに拮抗的に制御されていた。以上よりErkとcalcineurinが細胞内で拮抗的に制御するリン酸化のネットワークをプロテオミクス解析を複数重ねることで同定した。新規のリン酸化ネットワーク構造が同定されるとは考えておらずその検証に時間がかかってしまった。本研究は現段階で充分に検証できていると考えるため論文として投稿する。今後はこのネットワークモチーフがincoherent feedfoward loopとしてリン酸化のpulse generatorとして機能するのかどうかを検証する。TGFβ刺激による細胞内でのリン酸化の変化を経時的に解析するためにLC-MSを用いたリン酸化定量プロテオミクス解析の技術習得(試料調整・LC-MSのセットアップ・データ解析)を行った。・細胞内で起こるリン酸化は細胞および刺激により量・質的に異なることが知られている。当研究室ではこれまでHeLa細胞を対象にリン酸化プロテオミクスを行っており、比較的細胞内のリン酸化量が多い実験系を用いて解析を行ってきた。条件検討に際しこれまで使用してきたHeLa細胞に加え、細胞内リン酸化量の少ないことが予想されるマウス胸腺細胞を用いてリン酸化定量プロテオミクスを行うことで低リン酸化状態において今回使用するリン酸化プロテオミクスが測定可能であるかを確認した。・定量的リン酸化プロテオミクスに適したLC-MSとしてAB Sciex社製のQstar eliteのセットアップを行った。LCの取扱い・MSの取扱い・スプレーチップの作製法およびそれぞれの機械のメンテナンス法を習得し試料の測定を行った。HeLa細胞およびマウスの胸腺細胞においてリン酸化プロテオーム解析を行った結果、両細胞において多数のリン酸化ペプチドの同定を行うことに成功した。・リン酸化定量プロテオミクスにより10,000近いリン酸化ペプチドのデータが得られることが予想される。意味のあるリン酸化を膨大なデータより抽出する方法を学ぶため、これまで当研究室で取っていたHeLa細胞にEGF・Insulin・TNFα刺激を加えたリン酸化定量プロテオミクスのデータを用いてデータマイニングを行った。k-means法によるリン酸化ペプチドのクラスタリングおよび各刺激間の比較を行い、TNFα特異的に変動するリン酸化タンパクの抽出を行った。これによりTNFα刺激では刺激5分後に細胞骨格関連のタンパク質群のリン酸化が顕著に増加していることが明らかになった。本研究で解析に用いる細胞のMCF-10AとMCF-10AにRAS/ErbB2を発現させた細胞ではタンパク質およびRNAの発現パターンが大きく異なり、定常状態のリン酸化も大きく変化していることが予想された。よってそれぞれの変動が何に起因しているのかまたどのような結果に結びつくのかを明らかとすることは難しいことが考えられたため、TGF-βの下流に脱リン酸化酵素であるCalcineurinが報告されていることよりCalcineurinの基質を明らかにすることでTGF-βのシグナル伝達機構を明らかにできると考えた。基質同定を行うためにカルシウムイオノフォアであるionomycinとCalcineurinの選択的阻害剤であるcyclosporinA処理した細胞を作成し、それぞれのリン酸化状態を定量的リン酸化フロテオミクスを用いて比較した。このときionomycin刺激により減少し、cyclosporin Aをさらに処理することによりその減少がキャンセルされるヘアチドに含まれるリン酸化部位はCalcineurinにより制御されると考えた。このような方法を用いて基質候補タンパク質を38個を同定した。この中にはCalcilleurinの基質としてすでに報告のあるNFATが含まれていることより今回同定された基質候補には芯の基質が含まれている可能性が高いことが示唆された。またこれまでのCalcineurinの機能はNFATを介した転写制御がほとんどであったが今回同定された基質候補の中には転写以外にもさまざまな生命現象に関与する分子が含まれていた.これらの発見はこれまでに報告のあったCalcineurinにより制御される現象の分子機構解明の新たな糸口となりうる。
KAKENHI-PROJECT-11J02739
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J02739
リン酸化定量プロテオミクスによるTGF-βシグナル伝達機構の解明
またTGFβと今回同定された基質との関係性を明らかにすることでよりTGFβシグナルの新たな分子機構の解明が期待できる。これまでTGFβの下流として知られているcalcineurinの基質候補をプロテオミクス解析により多数同定したこれらのcalcineurinの新規基質候補のより生理的刺激下でのリン酸化の変動を明らかにるため抗原刺激のリン酸化プロテオミクス解析との統合を行った。この解祈によりcalcineurinの基質候補分子の中には抗原刺激後脱リン酸化されず、変動しないものやリン酸化されるものが存在することが分かった。これはおそらくカルシウム刺激より複雑なリン酸化経路の活性化が抗原刺激により起こっており、基質候補がcalcineurin以外のリン酸化制御を受けることを示唆した。そこでこのリン酸化制御を行う分子を同定ために新規基質候補の一つであるItpkbに着目した解析を行った。詳細な解析によりItpkbは抗原刺激により脱強くリン酸化されることが明らかとなった。そこでこのリン酸化酵素の同定を試みた。配列情報よりErkがリン酸化を担っている可能性が示唆され、阻害剤を用いた検証を行ったところErkによりやはりリン酸化されていた。さらにErkとcalcineurinは抗原刺激時に同時に活性化することよリン酸化と脱リン酸化を拮抗的に行っているのではないかと考え抗原刺激時に阻害剤を加えることで検証を行った。予想通りErkとcalcineurinはItpkbのリン酸化を拮抗的に制御していた。最後に我々はこの拮抗的な制御がItpkbに特異的な現象なのか、それともたくさんの基質候補で起こっている現象なのかを検証すべくリン酸化プロテオミクスを用いて網羅的に検証した。おどろいたことに多くの基質候補がErkとcalcineurinに拮抗的に制御されていた。以上よりErkとcalcineurinが細胞内で拮抗的に制御するリン酸化のネットワークをプロテオミクス解析を複数重ねることで同定した。リン酸化定量プロテオミクスを行うにはサンプル調製・LC-MSによる測定・データマイニングを正しくこなすことが必要である。スタートのデータの質が今後の実験全てに影響するため、リン酸化定量プロテオミクスのデータが再現性のあるデータであることは不可欠である。これらの理由より実験条件の決定には時間がかかっている。定量的リン酸化プロテオミクスのデータを取得したことによりこれまで明らかとされていなかったCalcineurinの基質候補を多数同定できた点に関しては大変満足している。今後は個別解析を行いこれらがどのようにCalcineurinに制御されており、どのような生命現象に関わっているかを明らかとする。新規のリン酸化ネットワーク構造が同定されるとは考えておらずその検証に時間がかかってしまった。
KAKENHI-PROJECT-11J02739
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J02739
サプライチェーンネットワークにおいて生じる均衡問題の分析
今年度は、サプライチェインに関する数理モデルの徹底した文献研究を行うとともに,不確実性を含むサプライチェインネットワーク(SCN)均衡モデルに対して以下のような研究を行った.1.不確実性を含むSCNにおける均衡問題の分析:製造業者、小売、市場からなる3層のSCNにおいて,各プレイヤーが他のプレイヤーの正確な情報が得られない状況において,最悪のケースを想定して行動選択を行うモデル(ロバストSCNモデル)を考え,その中でも市場の需要が不確実である状況を取り扱った.その均衡状態を変分不等式問題としてモデル化し,その均衡点の存在性や唯一性を議論した.数値実験を行い,ほかのプレイヤーの情報の精度が悪くなるにつれ,サプライチェイン全体の効率性が低下することを確認した.定式化された変分不等式問題は二次錐制約を含む複雑な問題となる.それらの問題は微分不可能な非線形方程式系や最適化問題へと再定式化されるため,そのような問題に対する数値解法アルゴリズムに関しても議論を行った.2.サービスを考慮したSCNにおける均衡問題の分析:サービスを含めて製品の稼働時間を売る契約形態であるPower By the Hourのモデル化を検討し,顧客がリーダー,製造業者がフォロワーであるようなマルチリーダー・ワンフォロワーゲームへの定式化を試みた.3.複雑な構造や制約を持つSCNにおける均衡問題の分析:食料品など,商品の劣化や賞味期限が存在するようなSCNをに対する研究を行った.SCNに時間軸を取り入れてネットワークを3次元にすることで,コストに商品の劣化や賞味期限切れによるロスを反映することが可能なSCN上の最小費用流モデルを構築した.3つの項目に対して,それぞれ計画通りに着手している.特に,「不確実性を含むSCNにおける均衡問題の分析」に関しては成果をまとめ,学会などで発表を行っており,学術論文への投稿準備中である.その他の2つの項目に関しては,まだ発表などの段階ではないが,次年度以降に向けた着実な成果が得られている.以上より,おおむね順調であると判断できる.本年度に引き続き,各項目に関する文献研究を進めるとともに,前年度の結果を踏まえて内容を発展させていく.研究成果に関しては国内外の学会等で発表を行うとともに学術論文へ積極的に投稿を行う.1.不確実性を含むSCNにおける均衡問題の分析:今年度は不確実性を性格づける集合として楕円領域を仮定していたが,ほかの不確実性を仮定した状況に関してもモデル化を検討する.また,ネットワークの構造などに関しても,より複雑なモデルに拡張を行う.特に,輸送業者や在庫の有無などをモデルに組み込むことを考える.さらに,ネットワークに時間軸を取り入れ,3次元としたSCNにおける均衡問題のモデル化に関しても検討を始める.また,定式化した問題に対する数値解法アルゴリズムに関しても引き続き議論を進める.2.サービスを考慮したSCNにおける均衡問題の分析:Power By the Hourモデルに対して,前年度の結果を発展させて,より効果的なモデル化を試みる.さらに,モデルの数理的な構造を明らかにすることにより,Power By the Hourを分析する.また,本年度のモデルはリーダーである顧客が複数,フォロワーである製造業者一つだけのモデルを考えたが,どちらも複数存在するモデルや,サプライヤーまで含めた3層のSCNに対するモデル化も検討する.3.複雑な構造や制約を持つSCNにおける均衡問題の分析:前年度のモデルは時間軸を取り入れた最適化モデルであったが,今年度は意思決定者(生産者)が複数いるような均衡モデルの定式化を検討する.提案した最適化モデルはコスト最小化問題であったが,販売価格を考慮したモデルを考えることにより,ベルトラン競争への定式化を試みる.今年度は、サプライチェインに関する数理モデルの徹底した文献研究を行うとともに,不確実性を含むサプライチェインネットワーク(SCN)均衡モデルに対して以下のような研究を行った.1.不確実性を含むSCNにおける均衡問題の分析:製造業者、小売、市場からなる3層のSCNにおいて,各プレイヤーが他のプレイヤーの正確な情報が得られない状況において,最悪のケースを想定して行動選択を行うモデル(ロバストSCNモデル)を考え,その中でも市場の需要が不確実である状況を取り扱った.その均衡状態を変分不等式問題としてモデル化し,その均衡点の存在性や唯一性を議論した.数値実験を行い,ほかのプレイヤーの情報の精度が悪くなるにつれ,サプライチェイン全体の効率性が低下することを確認した.定式化された変分不等式問題は二次錐制約を含む複雑な問題となる.それらの問題は微分不可能な非線形方程式系や最適化問題へと再定式化されるため,そのような問題に対する数値解法アルゴリズムに関しても議論を行った.2.サービスを考慮したSCNにおける均衡問題の分析:サービスを含めて製品の稼働時間を売る契約形態であるPower By the Hourのモデル化を検討し,顧客がリーダー,製造業者がフォロワーであるようなマルチリーダー・ワンフォロワーゲームへの定式化を試みた.3.複雑な構造や制約を持つSCNにおける均衡問題の分析:食料品など,商品の劣化や賞味期限が存在するようなSCNをに対する研究を行った.SCNに時間軸を取り入れてネットワークを3次元にすることで,コストに商品の劣化や賞味期限切れによるロスを反映することが可能なSCN上の最小費用流モデルを構築した.3つの項目に対して,それぞれ計画通りに着手している.
KAKENHI-PROJECT-18K11179
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K11179
サプライチェーンネットワークにおいて生じる均衡問題の分析
特に,「不確実性を含むSCNにおける均衡問題の分析」に関しては成果をまとめ,学会などで発表を行っており,学術論文への投稿準備中である.その他の2つの項目に関しては,まだ発表などの段階ではないが,次年度以降に向けた着実な成果が得られている.以上より,おおむね順調であると判断できる.本年度に引き続き,各項目に関する文献研究を進めるとともに,前年度の結果を踏まえて内容を発展させていく.研究成果に関しては国内外の学会等で発表を行うとともに学術論文へ積極的に投稿を行う.1.不確実性を含むSCNにおける均衡問題の分析:今年度は不確実性を性格づける集合として楕円領域を仮定していたが,ほかの不確実性を仮定した状況に関してもモデル化を検討する.また,ネットワークの構造などに関しても,より複雑なモデルに拡張を行う.特に,輸送業者や在庫の有無などをモデルに組み込むことを考える.さらに,ネットワークに時間軸を取り入れ,3次元としたSCNにおける均衡問題のモデル化に関しても検討を始める.また,定式化した問題に対する数値解法アルゴリズムに関しても引き続き議論を進める.2.サービスを考慮したSCNにおける均衡問題の分析:Power By the Hourモデルに対して,前年度の結果を発展させて,より効果的なモデル化を試みる.さらに,モデルの数理的な構造を明らかにすることにより,Power By the Hourを分析する.また,本年度のモデルはリーダーである顧客が複数,フォロワーである製造業者一つだけのモデルを考えたが,どちらも複数存在するモデルや,サプライヤーまで含めた3層のSCNに対するモデル化も検討する.3.複雑な構造や制約を持つSCNにおける均衡問題の分析:前年度のモデルは時間軸を取り入れた最適化モデルであったが,今年度は意思決定者(生産者)が複数いるような均衡モデルの定式化を検討する.提案した最適化モデルはコスト最小化問題であったが,販売価格を考慮したモデルを考えることにより,ベルトラン競争への定式化を試みる.本研究費の申請と同時に申請していた学内競争的資金で国際会議旅費を一部充当したため,その分の金額が未使用となった.研究機関の異動に伴い,科研費研究のための環境整備が必要となるため,それに使用する.
KAKENHI-PROJECT-18K11179
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K11179
農業教育における「きのこ栽培とその利用」の教材開発に関する研究
農業高校では、林業科を中心に食品科、園芸科が教育課程の中で、きのこの栽培が取り上げられているが実際のところ、きのこ栽培は授業にはなかなか取り上げられていないのが現状である。以前おこなったアンケート調査によると、施設設備の問題と、教員がきのこ栽培の経験不足の場合が多くみられ、このことが大きな要因となっている。勤務校である東京都立青梅総合高等学校の場合、総合学科であるが教科「グリーンライフ」「生物活用」「発酵学入門」「自然と農業」などでも、きのこ栽培とその加工を取り上げていないのが現状である。よって教科書に掲載されているきのこ栽培の参考資料的な位置づけとなる、生物実験室レベル程度の環境でも行えることに配慮したテキストを作成することと、生徒の実習も可能なきのこの加工方法を開発することを目標とした。初めにきのこ培養・栽培に必要な環境をつくる方法の研究として、簡易栽培室を暖房機、送風機、扇風機を組み合わせ作った。一室の中にビニールで覆う空間を作り空調を行うが、園芸に使われている温室機器が適していた。常に排気を行わなければCO2濃度の上昇と共にきのこの生育が悪くなるため、換気が必要である。栽培実験では、きのこ菌培養のための培地の研究をおこなったが、かび用培地では栄養素の不足が問題点であったため、いろいろ添加してはみたものの、コンタミネーションが多く発生して思うような培地作成は道半ばである。現時点では、白アワビタケでは、おから、米ぬか。ヒラタケではコーンミール、おから。ハナビラタケではバナナが比較的よい結果となっている。また植物用無機液体肥料も有効である。シイタケは桜、ならの原木栽培をおこなってみたがコンタミネーションが多く発生し、結果を残せなかった。子実体から一次菌糸の培養方法の研究では、子実体の使用部位、使用培地、培養条件などを変えてみて、一次菌糸から二次菌糸への変換の観察方法の研究と菌糸の観察法、二次菌糸から子実体形成への発生条件、発生後の管理などの比較試験を行いデータを収集することができた。栽培したきのこの加工方法の研究では、加工したきのこを真空包装しても、十分な加熱を行わないと異常発酵が発生しやすく、殺菌の温度、時間の管理が重要であり、製造業者は加圧殺菌で安全性を確保している。この点に留意すれば製品化は可能とわかった。産地への訪問と調査では、きのこの各種製品と製造方法、栽培現場、培地材料等参考になった。農業高校では、林業科を中心に食品科、園芸科が教育課程の中で、きのこの栽培が取り上げられているが実際のところ、きのこ栽培は授業にはなかなか取り上げられていないのが現状である。以前おこなったアンケート調査によると、施設設備の問題と、教員がきのこ栽培の経験不足の場合が多くみられ、このことが大きな要因となっている。勤務校である東京都立青梅総合高等学校の場合、総合学科であるが教科「グリーンライフ」「生物活用」「発酵学入門」「自然と農業」などでも、きのこ栽培とその加工を取り上げていないのが現状である。よって教科書に掲載されているきのこ栽培の参考資料的な位置づけとなる、生物実験室レベル程度の環境でも行えることに配慮したテキストを作成することと、生徒の実習も可能なきのこの加工方法を開発することを目標とした。初めにきのこ培養・栽培に必要な環境をつくる方法の研究として、簡易栽培室を暖房機、送風機、扇風機を組み合わせ作った。一室の中にビニールで覆う空間を作り空調を行うが、園芸に使われている温室機器が適していた。常に排気を行わなければCO2濃度の上昇と共にきのこの生育が悪くなるため、換気が必要である。栽培実験では、きのこ菌培養のための培地の研究をおこなったが、かび用培地では栄養素の不足が問題点であったため、いろいろ添加してはみたものの、コンタミネーションが多く発生して思うような培地作成は道半ばである。現時点では、白アワビタケでは、おから、米ぬか。ヒラタケではコーンミール、おから。ハナビラタケではバナナが比較的よい結果となっている。また植物用無機液体肥料も有効である。シイタケは桜、ならの原木栽培をおこなってみたがコンタミネーションが多く発生し、結果を残せなかった。子実体から一次菌糸の培養方法の研究では、子実体の使用部位、使用培地、培養条件などを変えてみて、一次菌糸から二次菌糸への変換の観察方法の研究と菌糸の観察法、二次菌糸から子実体形成への発生条件、発生後の管理などの比較試験を行いデータを収集することができた。栽培したきのこの加工方法の研究では、加工したきのこを真空包装しても、十分な加熱を行わないと異常発酵が発生しやすく、殺菌の温度、時間の管理が重要であり、製造業者は加圧殺菌で安全性を確保している。この点に留意すれば製品化は可能とわかった。産地への訪問と調査では、きのこの各種製品と製造方法、栽培現場、培地材料等参考になった。
KAKENHI-PROJECT-24925002
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24925002
哺乳類精子活性化過程で機能する二次メッセンジャーとイオンチャネルの同定
前年度に引き続き、主としてハムスター精子に対し先体反応誘発物質として卵透明帯を可溶化したものを投与した際の細胞内Q反応について、Ca上昇と先体胞開口分泌の時間的関係および電位依存性L型Caチャネルの関与について解析を進めた。またサイクリックヌクレオチド(cAMP、cGMP)の効果についても検討した。[Ca上昇と先体胞開口分泌の時間的関係]可溶化卵透明帯の投与に対し、精子細胞内Ca濃度は頭部内赤道部付近から上昇が始まり約0.6秒以内に先体胞を除く頭部全体に伝播した後、2分以上にわたり高いレベルに保たれた。その間に、先体胞の蛍光強度が急激に減少する現象が観察された。これは開口分泌により先体胞内部の蛍光色素が細胞外に流出したためと考えられる。Ca上昇の開始から先体胞開口分泌開始までの平均時間は22秒であった。[電位依存性L型Caチャネルの関与の検討]L型Caチャネル阻害剤の存在下では、透明帯によるCa反応の増加相のパターンや速度、およびピークの大きさは影響されなかったが、Ca上昇の持続時間が有意に短くなった。また、先体胞開口分泌も阻害されたことから、L型Caチャネルによって細胞内Caが長時間高濃度に維持されることが開口分泌に必要であることが示唆された。[サイクリックヌクレオチドの効果]予備的な実験において、細胞膜透過性のサイクリックヌクレオチドのアナログ、8-br-cGrS4Pや8-br-cAMPの投与により精子内Ca上昇が観察された例があったが、ケイジドcGMP(膜透過性)をロードした精子のどの部分に紫外線照射しても、Ca上昇は誘発されなかった。サイクリックヌクレオチドと精子内Caの関係については、さらに検討が必要である。本年度は、主としてハムスター精子に対し先体反応誘発物質として卵透明帯を可溶化したものを投与した際の細胞内Ca反応について、その時間的・空間的パターンの解析を行った。[高解像度Ca画像解析法の確立]Ca感受性蛍光色素Ca Green-1とFura RedをAM型を用いて精子にロードし、共焦点レーザー顕微鏡により同時に取得したそれぞれの蛍光像の比を細胞内Ca濃度の指標とした。諸条件を検討し、1μm以下0.2秒程度の分解能でCa画像の時系列が得られるまでに改良された。[卵透明帯によって誘発される反応様式の解析]可溶化卵透明帯の投与に対し、精子頭部からCa上昇が始まり尾部には若干の遅延をもって伝播すること、また頭部内ではまず赤道部付近から上昇が始まり約0.3秒で頭部全体に伝播するが先体内はほとんど上昇しないこと、などを確認した。この結果は透明帯に対する受容体あるいはそれに続く信号伝達系が頭部の赤道部付近に局在することを示唆している。[電位依存性チャネルの関与の検討]高K外液により脱分極刺激をしても細胞内Ca上昇は見られなかった。また、透明帯に対する反応はL型Caチャネル阻害剤によって影響を受けなかった。従って、電位依存性CaチャネルからのCa流入はCa上昇に寄与していないと考えられる。[膜不透過性試薬の導入法の検討]膜不透過性の信号伝達系の各種特異的阻害剤や様々なケイジド化合物を用いた実験を行うため、加工したガラスピペットを用いて細胞膜の一部を吸引・破壊することでピペット内の化合物を直接導入する方法を検討した。具体的には精子尾部先端からピペットに吸い込み、ピペット内と尾部細胞膜が十分接着した後に電圧パルスをかけることによって膜を破壊する方法を試みた。しかし未だ十分な効率で導入できるに至らず、今後さらに改良していく予定である。前年度に引き続き、主としてハムスター精子に対し先体反応誘発物質として卵透明帯を可溶化したものを投与した際の細胞内Q反応について、Ca上昇と先体胞開口分泌の時間的関係および電位依存性L型Caチャネルの関与について解析を進めた。またサイクリックヌクレオチド(cAMP、cGMP)の効果についても検討した。[Ca上昇と先体胞開口分泌の時間的関係]可溶化卵透明帯の投与に対し、精子細胞内Ca濃度は頭部内赤道部付近から上昇が始まり約0.6秒以内に先体胞を除く頭部全体に伝播した後、2分以上にわたり高いレベルに保たれた。その間に、先体胞の蛍光強度が急激に減少する現象が観察された。これは開口分泌により先体胞内部の蛍光色素が細胞外に流出したためと考えられる。Ca上昇の開始から先体胞開口分泌開始までの平均時間は22秒であった。[電位依存性L型Caチャネルの関与の検討]L型Caチャネル阻害剤の存在下では、透明帯によるCa反応の増加相のパターンや速度、およびピークの大きさは影響されなかったが、Ca上昇の持続時間が有意に短くなった。また、先体胞開口分泌も阻害されたことから、L型Caチャネルによって細胞内Caが長時間高濃度に維持されることが開口分泌に必要であることが示唆された。[サイクリックヌクレオチドの効果]予備的な実験において、細胞膜透過性のサイクリックヌクレオチドのアナログ、8-br-cGrS4Pや8-br-cAMPの投与により精子内Ca上昇が観察された例があったが、ケイジドcGMP(膜透過性)をロードした精子のどの部分に紫外線照射しても、Ca上昇は誘発されなかった。サイクリックヌクレオチドと精子内Caの関係については、さらに検討が必要である。
KAKENHI-PROJECT-09770033
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09770033
神経毒タンパクの作用と立体構造変化
神経毒タンパクは,アセチルコリン等のコリン性リガント,クラーレ等の神経毒と競争的にアセチルコリン受容体に結合する.したがって,アセチルコリンやクラーレ等の受容体結合部位と良く似た構造が,神経毒タンパクに存在すると考えることができる.そしてそれらの構造は,すべての神経毒タンパクに共通していると仮定することができる(後述するように,実はこの2番目の仮定は必ずしも正しくない).田宮らは以上の仮定に基づき,神経毒タンパク分子内にクラーレと良く似た構造があることを示し,さらに両者が一致するためには,神経毒タンパクが受容体との結合に伴い受容体に「かみつく」ような構造変化を起こさせねばならないと考えた.本研究では, NMRにより様々な神経毒タンパクについて,分子内の様々な部位のプロトンのシグナルの化学シフトの温度依存性を調べた.その結果,神経毒タンパクには,温度変化に対する応答の異なる複数の構造単位(モジュール)が存在することが分かり,明らかになった「かたい」モジュールを連結する「やわらかい」βシート構造という抽像は,受容体との結合に際して予測された構造変化に良くfitすることが示された.次に神経毒タンパク分子中の「やわらかい」部分のやわらかさ(かたさ)が,受容体との結合の速度(定数)と関連付けられるかどうか,検討した. βシート部分のかたさは,水素結合に関与する主鎖のアミド水素の重水素交換速度を指標とした. βシート部分のかたさは長鎖神経毒と短鎖神経毒の受容体への結合の速度定数の差を説明できるが,短鎖神経毒間の結合速度の違いを説明できない.神経毒タンパク間のアミノ酸置換が結合部位にも何らかの構造的影響を与えているため,受容体への結合の速度定数だけでなく,結合の平衡定数も変化してしまっていることが,解釈を難しくしている一つの理由である.神経毒タンパクは,アセチルコリン等のコリン性リガント,クラーレ等の神経毒と競争的にアセチルコリン受容体に結合する.したがって,アセチルコリンやクラーレ等の受容体結合部位と良く似た構造が,神経毒タンパクに存在すると考えることができる.そしてそれらの構造は,すべての神経毒タンパクに共通していると仮定することができる(後述するように,実はこの2番目の仮定は必ずしも正しくない).田宮らは以上の仮定に基づき,神経毒タンパク分子内にクラーレと良く似た構造があることを示し,さらに両者が一致するためには,神経毒タンパクが受容体との結合に伴い受容体に「かみつく」ような構造変化を起こさせねばならないと考えた.本研究では, NMRにより様々な神経毒タンパクについて,分子内の様々な部位のプロトンのシグナルの化学シフトの温度依存性を調べた.その結果,神経毒タンパクには,温度変化に対する応答の異なる複数の構造単位(モジュール)が存在することが分かり,明らかになった「かたい」モジュールを連結する「やわらかい」βシート構造という抽像は,受容体との結合に際して予測された構造変化に良くfitすることが示された.次に神経毒タンパク分子中の「やわらかい」部分のやわらかさ(かたさ)が,受容体との結合の速度(定数)と関連付けられるかどうか,検討した. βシート部分のかたさは,水素結合に関与する主鎖のアミド水素の重水素交換速度を指標とした. βシート部分のかたさは長鎖神経毒と短鎖神経毒の受容体への結合の速度定数の差を説明できるが,短鎖神経毒間の結合速度の違いを説明できない.神経毒タンパク間のアミノ酸置換が結合部位にも何らかの構造的影響を与えているため,受容体への結合の速度定数だけでなく,結合の平衡定数も変化してしまっていることが,解釈を難しくしている一つの理由である.
KAKENHI-PROJECT-62120006
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62120006
G-C塩基対よりA-T塩基対を安定化させることによる新規DNAナノスイッチの開発
核酸ナノテクノロジーの基盤技術である核酸構造スイッチを構築するために、水和イオン液体であるリン酸二水素型コリン(choline dhp)中におけるDNA二重鎖の安定性を熱力学的に解析した。その結果、cholihe dhp中では、ワトソン・クリック[W・C]塩基対のA-T塩基対がG-C塩基対よりも安定化されることを見出した。また、生化学実験の標準溶液(NaCl水溶液、pH7.0)では非常に不安定なフーグスティーン[H]塩基対でも、choline dhp中ではH塩基対が安定に形成された。さらに、W・C塩基対からH塩基対への構造スイッチを構築し、標的二重鎖配列のセンシングシステムの構築も行った。昨年度の研究で、DNA二重鎖のワトソン・クリック[W・C]塩基対のG-C塩基対よりもA-T塩基対を安定化させることを見出したリン酸二水素型コリン型水和イオン液体(choline dhp)を用いて、本年度は、対象とする核酸構造を機能性核酸内に形成される三重鎖、四重鎖にまで拡張し、choline dhpが種々のDNA構造に及ぼす影響を分子レベルで解析した。その結果、二重鎖内のW・CのA-T塩基対及び三重鎖内のフーグスティーン[H]塩基対がcholine dhp中で標準溶液(NaCl水溶液)よりも顕著に安定化され、この安定化は核酸構造形成時のエンタルピー変化に由来することがわかった(Sci. Rep., 4, 3593 (2014)[日刊工業新聞に掲載])。また、in silicoでの分子動力学的計算によって、このような安定化は二重鎖および三重鎖のグルーブ部位へのコリンイオンの結合によることがわかった(J. Phys. Chem. B., 118, 379(2014)[表紙に選定]など)。さらに、DNA四重鎖や非塩基対部位に分子環境が及ぼす影響についても解析し、核酸の水和状態の重要性を見出した(Angew. Chem. Int. Ed., 52, 13774 (2013) [中表紙に選定]など)。本研究によって得られた種々の分子環境下における核酸構造の定量的知見を基に、choline dhp中で機能するHIV遺伝子を検出するDNAセンサーの構築を試みた。このDNAセンサーは、H塩基対の高い配列特異性を保持したままcholine dhp中で安定化されることを活用し、標的鎖共存下では二重鎖から三重鎖構造への構造スイッチするように設計した。その結果、既存のセンシングシステムより標的配列の選択性を10000倍向上させることに成功した(日本化学会第94春季年会, 2014年3月)。核酸ナノテクノロジーの基盤技術である核酸構造スイッチを構築するために、水和イオン液体であるリン酸二水素型コリン(choline dhp)中におけるDNA二重鎖の安定性を熱力学的に解析した。その結果、cholihe dhp中では、ワトソン・クリック[W・C]塩基対のA-T塩基対がG-C塩基対よりも安定化されることを見出した。また、生化学実験の標準溶液(NaCl水溶液、pH7.0)では非常に不安定なフーグスティーン[H]塩基対でも、choline dhp中ではH塩基対が安定に形成された。さらに、W・C塩基対からH塩基対への構造スイッチを構築し、標的二重鎖配列のセンシングシステムの構築も行った。本年度は、核酸ナノテクノロジーの基盤技術である核酸構造スイッチを構築するために、核酸構造に及ぼす分子環境の影響について定量的な知見(核酸相互作用パラメータ)を収集する研究を行った。まず、DNA及びRNA二重鎖のワトソン・クリック塩基対やミスマッチなどの非塩基対部位に及ぼす分子環境の効果を解析した。その結果、細胞内を模倣した分子クラウディング環境における塩基対部位の安定性は、塩基対部位の水和構造によって決定されていることを見出した(Biophysical Journal, 102, 2808(2012)、J. Phys. Chem. B, 116, 7406 (2012))。さらに、コンピュータの論理素子などへの活用が期待されているDNA四重鎖構造に対する分子環境の効果についても解析した。その結果、分子クラウディング環境下では数珠つなぎ状の特殊な四重鎖構造が形成され、脂質膜内の局所環境下では、四重鎖構造が安定化されることを見出した(J. Am. Chem. Soc., 134, 20060 (2012), Mol Biosyst, 8, 2766 (2012) , Chem. Commun., 48, 4815 (2012))。一方で、分子環境下でのDNAの相互作用パラメータを基に、核酸構造や機能の制御を行う研究も遂行した。具体的には、分子クラウディング環境によって、機能性RNAであるアデニンリボスイッチとリガンドの親和性を向上させた(Chem. Commun., 48, 9669 (2012))。さらに、分子スイッチの開発を目指して、環境的、工業的観点から注目されているイオン液体を用いて、A-T及びG-C塩基対の安定性を塩基対選択的に制御することにも成功した(Angew. Chem. Int. Ed., 51, 1416 (2012)、朝日新聞、2012年掲載)。本研究では、分子環境が核酸構造に及ぼす影響を物理化学的観点から定量的に解析する。
KAKENHI-PROJECT-24655161
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G-C塩基対よりA-T塩基対を安定化させることによる新規DNAナノスイッチの開発
さらに、得られた核酸構造の相互作用パラメータを基に核酸の構造スイッチを活用した核酸マテリアルを創製することを目的としている。本年度は、まず、種々の分子環境下における核酸の相互作用パラメータを蓄積させることを中心に研究を遂行した。その結果、核酸の構造やその機能は、従来、重要視されていた核酸の構造に由来する相互作用(水素結合、スタッキング相互作用、構造エントロピー)以上に、分子環境に由来する相互作用(クーロン相互作用、溶媒和)が重要であることを見出した(J. Am. Chem. Soc., 134, 20060 (2012)、Biophysical Journal, 102, 2808-2817(2012)など)。さらに、本年度は、溶液環境によって核酸構造や機能を制御する研究にも着手した。具体的には、蓄積された核酸と分子環境の相互作用パラメータを基にして、カチオンの種類を選定し、核酸塩基の相互作用を巧みに利用することで、リン酸二水素型コリンからなる水和イオン液体を用いて、核酸塩基対特異的に安定性を変化させた。その結果、DNA二重鎖のA-T塩基対をG-C塩基対より安定化させることに成功した(Angew. Chem. Int. Ed., 51, 1416 (2012))。核酸の構造形成は塩基対の安定性に基づいているため、これらを自在に制御できれば、核酸構造スイッチを容易に構築できる。また、イオン液体は環境的、工業的観点からナノバイオテクノロジーへの応用が期待されている液体であるため、イオン液体を用いた核酸構造スイッチを開発できれば、核酸マテリアル開発分野における応用展開は多岐にわたると期待される。二年間で遂行する本研究課題において、現在までのところ当初の計画通り順調に成果を上げている。次年度は、引き続き分子環境が核酸構造に及ぼす影響を定量的に解析するとともに、核酸の構造スイッチを活用したDNA材料の構築を試みる。まず、本年度の研究で核酸塩基対の安定性を顕著に変化させたリン酸二水素型コリン水和イオン液体に着目し、水和イオン液体が、核酸塩基対の安定性に及ぼす機構をより詳細に分子レベルで解析する。また、水和イオン液体(またはコリンイオン)と核酸塩基の微細な結合様式を、in silicoでMolecular dynamics simulationsを用いても解析を行う。さらに、対象とする核酸構造を機能性核酸に多く見られるフーグスティーン塩基対にまで拡張して、研究を遂行する。種々の分子環境下におけるフーグスティーン塩基対及びワトソン・クリック塩基対の熱力学的パラメータを算出し、分子環境の影響をエネルギー的(ΔHo、ΔSo、ΔGo37)に議論する。安定性の評価は核酸の定量的解析において標準溶液とされるNaCl溶液中での安定性と比較することで行う。同時に、初年度に得られた知見を活用して、核酸構造スイッチを構築し、この核酸構造をセンサーとして活用することを試みる。具体的には、A-T塩基対が劇的に安定化されることを活用して一塩基多型を検出するDNAセンサーの開発を行う。さらに、DNAの二重鎖から三重鎖構造への構造スイッチを活用したHIV遺伝子由来の配列等を検出するセンシングシステムの構築も試みる。核酸と分子環境の相互作用を活用した核酸構造スイッチは、溶媒変化によって構造スイッチを誘起するため、これまでに人工的に作られたスイッチ機能を持つ修飾核酸のような煩雑な合成等が不要である。そのため、様々な核酸に簡便にスイッチング機能を付与できる新規の手法であると期待できる。
KAKENHI-PROJECT-24655161
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半身麻痺者の歩行機能再建のための機能的電気刺激を用いる集中的トレーニングセラピー
本年度は,平成16年度で構築した歩行訓練台と外乱時歩行計測実験結果を用いて,人工反射(Artificial Reflex)を有し,歩行時すべり外乱や障害物外乱に対応できる機能的電気刺激制御法の開発や歩行訓練法の模索と評価を研究開発の目的とし,本年度の研究実施によって,以下の成果が得られた.1.平成16年度の研究で構築した神経・筋・骨格系の歩行シミュレータを用いて,計測実験によって得られた健常者の歩行時反射機能を実現した制御ブロック有する歩行制御が外乱に対応でき,外乱が発生しても,歩行シミュレータがバランスを維持し,歩行を続けることがシミュレーションにおいて確認できた.また,歩行支援のための機能的電気刺激パターンの検討もシミュレータを用いて行った.2.健常者における歩行中外乱に対する反射機能,特に外乱発生のタイミングによって,反射反応が異なること,いわゆる歩行時反射の位相依存性について計測と解析を行った.結果,位相が異なることによって,反射反応の筋活動の潜時よりも,筋活動の大きさが顕著に違うことが得られ,機能的電気刺激で人工反射を実現していく場合,位相に応じて刺激の強さを調整する必要があることが分かった.3.下肢麻痺者を被験者とし,機能的電気刺激を用いる歩行実験を行い,機能的電気刺激による補助が歩行時下肢の負担を軽減し,歩行の姿勢を改善するのみならず,被験者の歩行改善へのモチベーションの向上にも貢献したことを確認した.4.補助機器システムと使用者間の相互作用によって,患者の個人差や個人運動特性の時間変化性に対応できる,相互作用に基づく学習法の提案,検証を行った.この学習法を用いて,通常歩行時のFES制御システムや歩行時外乱の検出システムの学習的構築することができた.5.連続歩行訓練前後の歩行訓練台における歩行速度や左右対称性を評価指標として用い,訓練プロセスを評価し,歩行が改善されたことが確認できた.今後,訓練の後続効果の検証を引き続き行う予定である.本年度は,平成16年度で構築した歩行訓練台と外乱時歩行計測実験結果を用いて,人工反射(Artificial Reflex)を有し,歩行時すべり外乱や障害物外乱に対応できる機能的電気刺激制御法の開発や歩行訓練法の模索と評価を研究開発の目的とし,本年度の研究実施によって,以下の成果が得られた.1.平成16年度の研究で構築した神経・筋・骨格系の歩行シミュレータを用いて,計測実験によって得られた健常者の歩行時反射機能を実現した制御ブロック有する歩行制御が外乱に対応でき,外乱が発生しても,歩行シミュレータがバランスを維持し,歩行を続けることがシミュレーションにおいて確認できた.また,歩行支援のための機能的電気刺激パターンの検討もシミュレータを用いて行った.2.健常者における歩行中外乱に対する反射機能,特に外乱発生のタイミングによって,反射反応が異なること,いわゆる歩行時反射の位相依存性について計測と解析を行った.結果,位相が異なることによって,反射反応の筋活動の潜時よりも,筋活動の大きさが顕著に違うことが得られ,機能的電気刺激で人工反射を実現していく場合,位相に応じて刺激の強さを調整する必要があることが分かった.3.下肢麻痺者を被験者とし,機能的電気刺激を用いる歩行実験を行い,機能的電気刺激による補助が歩行時下肢の負担を軽減し,歩行の姿勢を改善するのみならず,被験者の歩行改善へのモチベーションの向上にも貢献したことを確認した.4.補助機器システムと使用者間の相互作用によって,患者の個人差や個人運動特性の時間変化性に対応できる,相互作用に基づく学習法の提案,検証を行った.この学習法を用いて,通常歩行時のFES制御システムや歩行時外乱の検出システムの学習的構築することができた.5.連続歩行訓練前後の歩行訓練台における歩行速度や左右対称性を評価指標として用い,訓練プロセスを評価し,歩行が改善されたことが確認できた.今後,訓練の後続効果の検証を引き続き行う予定である.本研究は半身麻痺患者がセラピストの監視のもとに,機能的電気刺激(Functional Electrical Stimulation : FES)の補助を用い,安全かつ効率的に,歩行の集中的訓練(Intensive Training Therapy : ITT)を可能とする機器システム,集中的歩行訓練台の構築及び新しい歩行機能訓練療法の評価,確立を目的とし,半身麻痺者に歩行機能の再建,改善のためのより有効な訓練療法の提供をモチベーションとする.具体的に,半身麻痺患者が安全にFESと各種の歩行機能訓練タスクに取り込むことを可能とする集中的歩行訓練台の構築,人工反射(Reflex)とバイオフィードバック機構を組み入れたFES制御法の開発,及び妥当な訓練プロセスや評価法の模索を研究開発目的とする.本年度の研究実施によって,以下の通りの成果が得られた.1)基礎実験や歩行訓練に用いる集中的歩行訓練台の構築を行った.その歩行訓練台は半身麻痺者の歩行訓練中の安全確保や左右の負荷を調整するためのサポートフレームと,左右のベルトを独立に制御できる多機能トレッドミルからなる.2)歩行訓練台を用いて,健常者における歩行中外乱に対する反射機能の計測と解析を行った.筋電センサー,加速度センサー,角速度センサー,カメラからなる計測システムによって,外乱発生時の筋肉の発火と体幹の動的挙動を記録し,さらにその両者間の時空間関係の解析を行った.その結果は学術論文や学会発表に成果報告をした.来年度も引き続き,歩行障害者に関する基礎実験を行う予定である.
KAKENHI-PROJECT-16300178
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半身麻痺者の歩行機能再建のための機能的電気刺激を用いる集中的トレーニングセラピー
3)神経-筋-骨格系の歩行シミュレーションを構築し,歩行時外乱に対する反射機能と体幹挙動の制御メカニズムの解明を試みた.来年度において,項2)の実測結果と新たに取得する実験データをシミュレーションと照合し,さらに歩行外乱時身体のメカニズムを検討する予定である.本研究は半身麻痺患者がセラピストの監視のもとに,機能的電気刺激(Functional Electrical Stimulation:FES)の補助を用い,安全かつ効率的に歩行の集中的訓練(Intensive Training Therapy:ITT)を可能にする機器システム:集中的歩行訓練台の構築及び新しい歩行機能訓練療法の評価,確立を目的とし,半身麻痺者に歩行機能の再建,改善のためのより有効な訓練療法の提供をモチベーションとする.本年度は,昨年度で構築した歩行訓練台と外乱時歩行計測実験結果を用いて,人工反射(Artificial Reflex)を有し,歩行時すべり外乱や障害物外乱に対応できる機能的電気刺激制御法の開発や歩行訓練法の模索と評価を研究開発の目的とし,本年度の研究実施によって,以下の成果が得られた.1.昨年の研究で構築した神経-筋-骨格系の歩行シミュレータを用いて,計測実験によって得られた健常者の歩行時反射機能を実現した制御ブロック有する歩行制御が外乱に対応でき,外乱が発生しても,歩行シミュレータがバランスを維持し,歩行を続けることがシミュレーションにおいて確認できた.また,歩行支援のための機能的電気刺激パターンの検討もシミュレータを用いて行った.2.健常者における歩行中外乱に対する反射機能,特に外乱発生のタイミングによって,反射反応が異なること,いわゆる歩行時反射の位相依存性について計測と解析を行った.結果,位相が異なることによって,反射反応の筋活動の潜時よりも,筋活動の大きさが顕著に違うことが得られ,機能的電気刺激で人工反射を実現していく場合,位相に応じて刺激の強さを調整する必要があることが分かった.3.下肢麻痺者を被験者とし,機能的電気刺激を用いる歩行実験を行い,機能的電気刺激による補助が歩行時下肢の負担を軽減し,歩行の姿勢を改善するのみならず,被験者の歩行改善へのモチベーションの向上にも貢献したことが確認した.4.連続歩行訓練前後の歩行姿勢の評価を行い,歩行が改善されたことが確認できた.今後,訓練の後続効果の検証を引き続き行う予定である.
KAKENHI-PROJECT-16300178
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未利用のCa・Mg・Si系副産物を用いた環境配慮型一万年耐久コンクリートの開発
Ca-Mg-Si系材料であるオケルマナイトをケイ石微粉末と共にセメントに置換し、オートクレーブ(AC)養生を実施した試料について水和反応解析による検討を行った。また、トバモライトの生成過程とAC養生昇温過程が終了した時点での結合材の反応とを関連づけて考察した。その結果、ケイ石微粉末の量を減らした配合においては、オケルマナイト高置換においてトバモライトの生成量が増加した。これはオケルマナイトの置換により、AC養生昇温過程におけるケイ石微粉末の反応が抑制されたため、結果として生成したC-S-HのC/S比が高く維持され、その後の養生温度保持過程時におけるトバモライトの多量生成へ至ったものと考察した。本年度は、Ca-Mg-Si系材料(Mg系材料)を用いた配合および水セメント比を,結晶性トバモライトをはじめとした水和生成物解析をもとに検討すること(2)地中コンクリートにおいて特に問題となっている,硫酸塩,硫酸に対する耐久性試験を実施し,外部劣化因子(SO42-等)の浸透性状に及ぼす影響を,生成物(結晶性トバモライトおよび二次生成物)や空隙構造と関連付けて考察することを目的とし、検討を行った。供試体はOPCをMg系材料で0、10、20、30、40mass%置換した石灰質材料(OPC+Mg系材料)とケイ石微粉末とを5:5の割合で混合し、水粉体比(W/(OPC+Q))を0.5として一定条件で練り混ぜ、打設後、20°Cで湿空養生を行い、材齢1日で脱型し、速やかに180°C、1MPaの条件下にて8時間のAC養生を実施した。主な実験項目として、水和生成物解析にはXRDを、結晶相以外の水和物の分析については、FT-IRおよび29Si NMRによって、試料中に生成するトバモライトやC-S-Hゲルを構成しているシリケートイオンの結合状態を測定した。その結果、アケルマナイトはAC養生下で反応性を示し、Mg型トバモライトやケイ酸カルシウムマグネシウム水和物などの生成に寄与したことがわかった。またXRDによる水和反応解析、FT-IRおよび29Si NMRの結果を総合すると、アケルマナイト置換およびAC養生による耐硫酸塩性向上の要因は、低置換率においてはMg型を含むトバモライトが多量に生成したことにより、高置換率においてはトバモライト構造を維持しつつ、重合度が高いシリケート鎖を有した低C/S比のケイ酸カルシウムマグネシウム水和物等が生成したことによるものと考察した。Ca-Mg-Si系材料であるオケルマナイトをケイ石微粉末と共にセメントに置換し、オートクレーブ(AC)養生を実施した試料について水和反応解析による検討を行った。また、トバモライトの生成過程とAC養生昇温過程が終了した時点での結合材の反応とを関連づけて考察することを目的とした。その結果、ケイ石微粉末の量を減らした配合においては、オケルマナイト高置換においてトバモライトの生成量が増加した。これはオケルマナイトの置換により、AC養生昇温過程におけるケイ石微粉末の反応が抑制されたため、結果として生成したC-S-HのC/S比が高く維持され、その後の養生温度保持過程時におけるトバモライトの多量生成へ至ったものと考察した。さらに、これらの配合に対して硫酸塩浸漬試験を行い、浸漬前後の水和物・二次生成物および原子の結合状態と関連づけて考察・評価をした。その結果、Ca-Mg-Si系材料を置換し、AC養生を施すことで耐硫酸塩性は向上した。天然資源であるケイ石の置換率を減らし、CaO-MgO-SiO2系材料の置換率を増やしても耐硫酸塩性に優れる結果となった。また、硫酸塩抵抗性の向上は、Na2SO4浸漬、MgSO4浸漬ともにトバモライトの生成とトバモライトと同等のSi-O結合量を有したケイ酸カルシウムマグネシウム水和物などの生成に起因するものと考察した。またMgSO4浸漬については上記の理由に加え、ある程度のセメント量を確保することで硫酸イオンの浸透が制御されるものと結論づけた。Ca-Mg-Si系材料であるオケルマナイトをケイ石微粉末と共にセメントに置換し、オートクレーブ(AC)養生を実施した試料について水和反応解析による検討を行った。また、トバモライトの生成過程とAC養生昇温過程が終了した時点での結合材の反応とを関連づけて考察した。その結果、ケイ石微粉末の量を減らした配合においては、オケルマナイト高置換においてトバモライトの生成量が増加した。これはオケルマナイトの置換により、AC養生昇温過程におけるケイ石微粉末の反応が抑制されたため、結果として生成したC-S-HのC/S比が高く維持され、その後の養生温度保持過程時におけるトバモライトの多量生成へ至ったものと考察した。目的の通りに分析が実施できており、困難と思われた29Si-NMRによる分析も予定通り行えたためセメント・コンクリート化学27年度は、実暴露データの解析をメインとし、実際のMg系材料を用いて実験室および実際の温泉地での耐久性試験を行うことにより,化学的に安定な結晶性トバモライトを含み,外部劣化因子に対する抵抗性を飛躍的に向上させた,「経済的かつ環境性にも優れた「一万年耐久コンクリート」の提案を行う.
KAKENHI-PROJECT-26820176
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未利用のCa・Mg・Si系副産物を用いた環境配慮型一万年耐久コンクリートの開発
具体的には、草津温泉西の河原にて屋外暴露試験を行い,外観変化観察,重さ変化を随時実施していく.26年度とと同様の方法で化学分析(XRD,FT-IR等)を行い,空隙構造と併せて,硫酸イオンの浸透性状(抑制メカニズム)を定量的かつ総合的に評価し,実験室のデータと比較検討する.薬品・学会旅費・供試体輸送費等、次年度に使用を回したいと考えたため。前年度に使用しなかった、薬品・学会旅費・供試体輸送費等に残りを使用する。
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不確実事象の予測に関する研究:「フラグを立てる」現象から
本年度は、予測の際に喚起されると考えられる思考と感情に着目し、2つの実験を行った。第一の実験は予測の際の情報量の差異が与える影響に関する実験である。この実験では、実際のFIFAワールドカップの試合に賭けを行ってもらった。その際、賭ける前に試合に関する情報量を冊子を読む時間によりコントロールした。分析の結果、冊子を読む時間が長いほど、またSOGS得点が高いほど賭けた枚数が多く、試合数に関しては情報量高群の方が賭けた試合が多いという影響が見られた。予期後悔の程度については条件間の差は見られなかったが、相関係数を求めたところ、「賭けておけばよかった」と賭けずに後悔することを考えた程度が高いほど、賭けた箇所や試合数が多いという相関が見られた。第二の実験は予想を立てて、実際に賭けないことが予期後悔を生じやすいのではないかという仮説の元に、実際のサッカーJリーグの試合を予想してもらった。1回目の予想において、予想のみ立てる群(予想のみ条件)、1つの組み合わせのみ賭けることができる群(限定賭け条件)、賭け金の範囲内で好きなだけ組み合わせを賭ける群(自由賭け条件)を設けて、2試合目(約1週間後)には好きなだけ組み合わせを賭けてもらった。2試合目を比較したところ有意な差は見られなかったが、仮説とは逆に予想のみ条件が、2試合目で賭けた金額が一番小さく、限定賭け条件、自由賭け条件の順に賭け金は増えていた。また賭けた組み合わせの数も自由賭け条件が最も多かった。条件間の予期後悔の程度に違いは見られなかったが、「賭けておけばよかった」と予期後悔が生じた程度が高いほど、賭けた組み合わせの数が多いという弱い相関が見られた。またギャンブル依存の程度により、これらの結果に差は見られなかった。本年度はまず「フラグを立てる」現象の調査に関する準備段階として、予測を口に出して発言したり、何らかのメディアに記述したりする、言霊と呼ばれる言語にまつわる行為について、学生を対象とした予備調査を行った。次にこの予備調査や雑誌や新聞、インターネット上で流布している言説を収集し、一般的な言霊的行為に関する項目を作成し、2回のweb調査を行った。1回目の調査は、予測の際に「フラグを立てる」行為に関する認識の実情把握と尺度構成である(対象者は20代から60代の男女600名)。また2回目の調査は、一般的言霊的行為に関する尺度と他の俗信との関連性、「フラグを立てる」現象に関する認識の有無、予測を立てることに対する好ましさとコミットメント、予期後悔の程度、対人ネットワークを調べる目的である(対象者は20代から60代の男女600名)。調査項目の選定に時間を要したため。本調査は5月中に終える見込みである。本年度は「フラグを立てる」現象に関して、予測を口に出して発言したり、何らかのメディアに記述したりする、言霊と呼ばれる言語にまつわる行為について、2度のweb調査を行った。1つ目の調査では、昨年度作成した一般的言霊的行為に関する尺度を用いて、「フラグを立てる」現象に関する認識の有無、予測を立てることに対する好ましさとコミットメント、予期後悔の程度について検討を行った。その結果、肯定的な結果に関する言霊的行為は心理的な側面が高いのに対して、否定的な結果に関する言霊的行為は予期後悔のしやすさと関連しており、潜在的に否定的な結果が生起する可能性を高く見積もっていることが明らかになった。発言や書き込みに関するコミットメントとの関連性は両方ともに中程度であった。2つ目の調査では、他の俗信との関連性を調べること、及び以下に挙げるギャンブル予想に関する「フラグを立てる」現象に関する予備調査を目的として、対人ネットワークとの関連性を調査した。その結果、運に関する俗信と「フラグを立てる」現象との関連性は見られなかったが、運に関する俗信は対人ネットワークと関連しているという傾向が見られた。言語的行為は対人ネットワークやネット利用とも関連している可能性が示唆されたため、次年度ではこの調査も行うことを検討している。また、この「フラグを立てる」現象に関して、レースを予想するタイプのギャンブルとの関連を調べるために、インタビューや記事収集などから42項目の質問項目を作成した。この項目と、予測を立てることに対する好ましさとコミットメント、予期後悔の程度、ギャンブル依存度合いとの関連性を調べることを目的とした調査も行う予定である(対象者は、ギャンブル依存度が高い500名程度を予定している)。一部の調査と実験に関して未施行である。レースを予想するタイプのギャンブルに関する調査については質問項目の作成は完了しているが、調査会社で内容から断りを受けるなど、現在、調査可能な会社を当たっている。また予想に関する実験については学生を対象にした予備実験は行ったが、本実験はギャンブルを日常的に行っている者を対象としているため、対象者を選定中である。本年度は「フラグを立てる」現象に関して、予測を口に出して発言したり、何らかのメディアに記述したりする、言霊と呼ばれる言語にまつわる行為について、ギャンブルとの関連性を調べるために2度のweb調査を行った。1つ目の調査は日常的にギャンブルを行う頻度や、その割合の把握のためのものである。分析に用いた506名分の回答者のデータ分析から、ギャンブルの頻度を元にして、ほぼ全てのギャンブルの頻度が低い群、宝くじ・ロトくじの頻度は最も高く、この他に競馬とtotoくじの頻度が高いライト群、パチンコ及びスロットの頻度が高く、他のギャンブルも全般的に頻度が高いヘビー群に分類され、回答者の12.5%がpathological gamblingの傾向が強いことが分かった。
KAKENHI-PROJECT-15K04049
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不確実事象の予測に関する研究:「フラグを立てる」現象から
また対人間の運の争奪、「ツキの流れ」、運を意識した行動との関連性も示された。2つ目の調査ではレースを予想するタイプのギャンブルに限定して、昨年度の予備調査を元にしてweb調査を行ったところ、ギャンブルに関する言霊的行為は買い目に関する行為、予想に関する行為、広義の言霊的行為に分類された。これらの得点は予期後悔の程度や発言や書き込みへのコミットメントの項目との相関がかなり高かった。予測への関心や的中を喜ぶ感情とも関連が見られることが分かった。またpathological gamblingの傾向が高いほど、ギャンブルに関する言霊的行為を信じている傾向が高かった。予定の調査は終了しているが、実験の方が参加者の確保の点から積み残しとなっているため本年度は、予測の際に喚起されると考えられる思考と感情に着目し、2つの実験を行った。第一の実験は予測の際の情報量の差異が与える影響に関する実験である。この実験では、実際のFIFAワールドカップの試合に賭けを行ってもらった。その際、賭ける前に試合に関する情報量を冊子を読む時間によりコントロールした。分析の結果、冊子を読む時間が長いほど、またSOGS得点が高いほど賭けた枚数が多く、試合数に関しては情報量高群の方が賭けた試合が多いという影響が見られた。予期後悔の程度については条件間の差は見られなかったが、相関係数を求めたところ、「賭けておけばよかった」と賭けずに後悔することを考えた程度が高いほど、賭けた箇所や試合数が多いという相関が見られた。第二の実験は予想を立てて、実際に賭けないことが予期後悔を生じやすいのではないかという仮説の元に、実際のサッカーJリーグの試合を予想してもらった。1回目の予想において、予想のみ立てる群(予想のみ条件)、1つの組み合わせのみ賭けることができる群(限定賭け条件)、賭け金の範囲内で好きなだけ組み合わせを賭ける群(自由賭け条件)を設けて、2試合目(約1週間後)には好きなだけ組み合わせを賭けてもらった。2試合目を比較したところ有意な差は見られなかったが、仮説とは逆に予想のみ条件が、2試合目で賭けた金額が一番小さく、限定賭け条件、自由賭け条件の順に賭け金は増えていた。また賭けた組み合わせの数も自由賭け条件が最も多かった。条件間の予期後悔の程度に違いは見られなかったが、「賭けておけばよかった」と予期後悔が生じた程度が高いほど、賭けた組み合わせの数が多いという弱い相関が見られた。またギャンブル依存の程度により、これらの結果に差は見られなかった。調査結果を元に、本年度遂行予定のギャンブルに限定した言霊的行為に関する尺度を作成して、調査を行う予定をしている。レースを予想するタイプのギャンブルに関する調査については、すみやかに実行予定である。また、また予想に関する実験については、ギャンブルを日常的に行っている者を対象とするのが難しい場合には、一般的なギャンブルではなく、架空のギャンブルを設定して実験を行う予定である。本年度、学内及び業者委託で参加者を確保することで6月以降に実験を計画している。遂行予定のweb調査が未実行のためである予定していた調査と実験の施行を2017年度に延期したため。
KAKENHI-PROJECT-15K04049
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遺伝アルゴリズムによる配電損失最小化に関する研究
本研究の目的は、近年注目をあびてきている遺伝アルゴリズムに関し、(1)配電損失最小化問題等、電力系統における離散的最適化問題へ遺伝アルゴリズムを適用するための遺伝子構成・適合関数形を開発し、遺伝アルゴリズムによる配電損失最小化問題の解法を確立する、(2)大規模問題の解の精度を向上するため、単純遺伝アルゴリズムに改良を加え、大規模配電損失最小化問題へも適用可能とすることであった。上記目的に対し、本研究の成果は以下の(1)(5)のようにまとめられる。「(1)配電損失最小化問題の単純遺伝アルゴリズムによる解法を確立した。」その結果をシミュレーテッドアニーリング(SA)法によるものと比較した結果、「(2)ストリング長が短ければ、少ない(SA法の1/6)演算時間でほぼ最適な解が得られる」ことが判明した。さらに、ストリング長が長い大規模問題においてもSA法と同等の解を得るために、ストリング構成、適合関数形、交叉率、突然変異率、交叉点数、交叉方法、初期ストリングパターン、適合関数値の分布等の人工的操作に関し、これらが結果に与える影響について調査した。その結果、「(3)交叉率、突然変異率は問題によって最適値がある。一般に、交叉率0.608、突然変異率は12ストリングに1ビット程度が良い。」「(4)大規模問題では、初期ストリングにあらかじめ良いスキーマが組み込まれていれば良い結果が得られる。」「(5)他の人工的操作は、それら単独でもまたは組み合わせによっても結果にほとんど影響を与えない。」などが判明した。以上のように、配電損失最小化問題への遺伝アルゴリズムの適用方法を確立し、さらに、大規模問題に対しても精度良い解を得るための条件を導き出すことができて初期の目的を達成した。以上の研究成果は、裏面に示すような論文として公表されている。本研究の目的は、近年注目をあびてきている遺伝アルゴリズムに関し、(1)配電損失最小化問題等、電力系統における離散的最適化問題へ遺伝アルゴリズムを適用するための遺伝子構成・適合関数形を開発し、遺伝アルゴリズムによる配電損失最小化問題の解法を確立する、(2)大規模問題の解の精度を向上するため、単純遺伝アルゴリズムに改良を加え、大規模配電損失最小化問題へも適用可能とすることであった。上記目的に対し、本研究の成果は以下の(1)(5)のようにまとめられる。「(1)配電損失最小化問題の単純遺伝アルゴリズムによる解法を確立した。」その結果をシミュレーテッドアニーリング(SA)法によるものと比較した結果、「(2)ストリング長が短ければ、少ない(SA法の1/6)演算時間でほぼ最適な解が得られる」ことが判明した。さらに、ストリング長が長い大規模問題においてもSA法と同等の解を得るために、ストリング構成、適合関数形、交叉率、突然変異率、交叉点数、交叉方法、初期ストリングパターン、適合関数値の分布等の人工的操作に関し、これらが結果に与える影響について調査した。その結果、「(3)交叉率、突然変異率は問題によって最適値がある。一般に、交叉率0.608、突然変異率は12ストリングに1ビット程度が良い。」「(4)大規模問題では、初期ストリングにあらかじめ良いスキーマが組み込まれていれば良い結果が得られる。」「(5)他の人工的操作は、それら単独でもまたは組み合わせによっても結果にほとんど影響を与えない。」などが判明した。以上のように、配電損失最小化問題への遺伝アルゴリズムの適用方法を確立し、さらに、大規模問題に対しても精度良い解を得るための条件を導き出すことができて初期の目的を達成した。以上の研究成果は、裏面に示すような論文として公表されている。本年度は次の(1)(5)に関する研究を行い,(1)(6)の結果を得た。まず、(1)配電損失最小化問題を“単純遺伝アルゴリズム"を用いて解く手法を開発し、小規模の例題、実規模系統並びに中国電力の実系統に適用して結果を得た。次に、(2)シミュレ-テッドアニ-リング法により同一問題を解く手法を開発し、両者の結果を比較した。その結果、(1)小規模問題に対しては、シミュレ-テッドアニ-リング法と同程度の精度の解を約1/6の演算時間で得られること、(2)実規模系統に対しては演算時間は短いものの、精度はシミュレ-テッドアニ-リング法には及ばず、改良が必要であること等がわかった。そこで、(3)引続き次のような改良を行い、結果を検討した。すなわち、(i)遺伝子構成(ストリング構成)、(ii)適合関数形、(iii)交叉率、(iv)突然変異率、(v)突然変異発生ビット数、(vi)交叉点数、(vii)初期ストリングの各遺伝子座の値、(viii)異なった初期ストリング数などを変えて以下のような結果を得た。すなわち、(3)ストリング長は短い程良い結果が得られる、(4)交叉率および突然変異率は問題によって最適な値がある。ただし、交叉率は0.60.8程度、突然変異率は12ストリング長に1ビット程度がよい。(5)適合関数形はあまり結果に影響しない。(6)初期ストリング群には異なったものが多く含まている程良い結果が得られるが、良い結果を与えるスキ-マを多く含む程良い結果が得られる。また、さらに、現在、
KAKENHI-PROJECT-03650230
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遺伝アルゴリズムによる配電損失最小化に関する研究
(4)人工交配(良いストリング同志の交配)や、(5)適合関数値の悪いストリングが早い世代で淘汰されないような生殖操作などの改良を継続しているが、結果の整理は次年度までかかる予定である。以上の研究成果は裏面に示すような論文として公表されている。昨年度に引き続き、配電損失最小化問題に適するように遺伝アルゴリズムの改良を試み、その結果の整理を行った。昨年度までに、(1)問題の大きさや種類によって良い結果を与える交叉率や突然変異率は異なる、(2)ストリング構造や適合関数形、初期ストリングの適合関数値の平均値などの相違による結果への効果を小さいことなどがわかっている。そこで、本年度は、(1)適合関数値の良いもの同志の交叉、(2)交叉点数の複数化、(3)バースト的な突然変異、(4)実行不能なストリングの発生を減らす、(5)入力開放スイッチパターンの複数化、(6)適合関数値の分布の均等化について、これらの改良が結果へどのように影響するかについて、理論的に結果を推測したうえで、計算実験を行い、その結果を整理した。これらの計算実験は、(1)(6)の改良単独で、または幾つかの改良の組み合わせについて行われた。その結果、シミュレーテッドアニーリング法と同等の良い結果が得られたのは、初期ストリング中に良い(損失が小さい系統構成の)遺伝子を持っている場合に限られた。すなわち、上記(5)以外の改良では顕著な効果がみられないことがわかった。言葉を変えれば、大規模配電損失最小化問題に対しては、あらかじめストリング中に良いスキーマを組み込むことが最も効果的であるという結論が得られた。以上から、本年度の研究までで、配電損失最小化問題への遺伝アルゴリズムの適用方法を確立し、さらに、大規模問題に対しても精度良い解を得るための条件を導き出すことができ、初期の目的を達成した。なお、本研究で開発された手法を実用に供するためには、エキスパートシステムなどを用いて組み込むベきスキーマを選択するための追加的なアルゴリズムを付加しなければならない。以上の研究成果は、裏面に示すような論文として公表されている。
KAKENHI-PROJECT-03650230
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プロテインダイナミクスのプロテオーム解析に関する基礎的研究
細胞のシグナル応答によって誘導されるタンパク質のダイナミックな挙動を個々のタンパク質に的を絞らず、プロテオーム解析により網羅的に解析できる分析方法の確立を目的とし、そのための細胞分画条件、二次元電気泳動による分離条件の検討を行う。哺乳動物の細胞膜には、コレステロールやスフィンゴ脂質に富んだ膜ドメイン(ラフツ)が存在する。近年、これらは細胞間情報伝達の場として重要な機能を持つことが明らかとなりつつある。細胞がシグナルを受け取ったときに多くのシグナル分子がこのラフツ画分に集積してくることが報告されている。そこでシグナル伝達系の網羅的解析を目的としてラフツ画分へ移行するタンパク質のダイナミックな挙動を解析した。ラフツを反映していると考えられているDIG(Detergent Insoluble Glycolipid enriched membrane)のIPGストリップを用いた二次元電気泳動によるプロテオーム解析では約50のスポットが見られた、しかしながらMALDI-TOF/MSにより疎水性の強い膜タンパク質やシグナル分子は同定されなかった。16-BAC/SDS-PAGEによるプロテオーム解析の結果、DIG画分には約30のタンパク質のスポットが確認された。解析の結果、lckや三量体Gプロテインサブユニットなどが同定された。T細胞受容体を刺激し、その前後でDIG画分に移行するシグナル分子をウエスタンブロッティングにより解析した。その結果、SHP-1やZap-70が刺激後にラフツに移行してくることが判明した。T細胞受容体を刺激し、その前後でラフツに移行するシグナル分子を網羅的に解析することでT細胞受容体のシグナル伝達系の全体像を明らかにできる可能性が示された。しかし、これらは発現量の少ないタンパク質が多く、今後の課題として、ラフツの大量調製法の開発、感度の高い分析法の必要性が考えられた。細胞のシグナル応答によって誘導されるタンパク質のダイナミックな挙動を個々のタンパク質に的を絞らず、プロテオーム解析により網羅的に解析できる分析方法の確立を目的とし、そのための細胞分画条件、二次元電気泳動による分離条件の検討を行う。哺乳動物の細胞膜には、コレステロールやスフィンゴ脂質に富んだ膜ドメイン(ラフツ)が存在する。近年、これらは細胞間情報伝達の場として重要な機能を持つことが明らかとなりつつある。細胞がシグナルを受け取ったときに多くのシグナル分子がこのラフツ画分に集積してくることが報告されている。そこでシグナル伝達系の網羅的解析を目的としてラフツ画分へ移行するタンパク質のダイナミックな挙動を解析した。ラフツを反映していると考えられているDIG(Detergent Insoluble Glycolipid enriched membrane)のIPGストリップを用いた二次元電気泳動によるプロテオーム解析では約50のスポットが見られた、しかしながらMALDI-TOF/MSにより疎水性の強い膜タンパク質やシグナル分子は同定されなかった。16-BAC/SDS-PAGEによるプロテオーム解析の結果、DIG画分には約30のタンパク質のスポットが確認された。解析の結果、lckや三量体Gプロテインサブユニットなどが同定された。T細胞受容体を刺激し、その前後でDIG画分に移行するシグナル分子をウエスタンブロッティングにより解析した。その結果、SHP-1やZap-70が刺激後にラフツに移行してくることが判明した。T細胞受容体を刺激し、その前後でラフツに移行するシグナル分子を網羅的に解析することでT細胞受容体のシグナル伝達系の全体像を明らかにできる可能性が示された。しかし、これらは発現量の少ないタンパク質が多く、今後の課題として、ラフツの大量調製法の開発、感度の高い分析法の必要性が考えられた。
KAKENHI-PROJECT-12206073
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イオンチャネル機能探索分子の開発と情報伝達機構解明への応用
トライアジンは筋小胞体の膜貫通蛋白質で、筋小胞体リアノジン受容体/カルシウム遊離チャネル(RyR)に付随し、カルシウム結合蛋白質であるカルセクェストリンを、筋小胞体膜に係留する役割を持つと考えられてきた。しかし最近の研究からトライアジンは、より積極的にRyRの活性制御に関わっていることが推定された。しかしながらその詳細は依然として不明である。一方、天然から見出した強力なカルシウム遊離作用を有する蛇毒由来のマイオトキシンαがトライアジンに結合することを我々は明らかにした。そこで今回、トライアジンのカルシウム遊離調節機能を明らかにするため、RyRのチャネル活性に対する影響を検討した。特異的抗体によるアフィニティーカラムで精製したトライアジンを筋小胞体の重い画分(HSR)に加えても、RyRのチャネル活性の指標である[^3H]リアノジン結合には影響が見られなかったが、可溶化HSRでは有意な抑制が見られた。更に、アフィニティーカラムによって可溶化HSRからトライアジンを除くと、加えた精製トライアジンによる抑制の程度は著しく増大した。一方、カルセクェストリンは可溶化HSRの[^3H]リアノジン結合を活性化するが^<1)>、トライアジンはその活性化作用を消失させた。また、カルセクェストリンは、可溶化HSRにおける[^3H]リアノジン結合のカルシウム濃度依存性のカーブを低濃度側に移動させ、トライアジンは逆に高濃度側に移動させた。更にトライアジンのオリゴマー形成をカルセクェストリンは抑制した。以上の結果より、トライアジンとカルセクェストリンとは互いに作用し、RyRの機能を調節していることが示唆された。今後は、マイオトキシンaがトライアジンに結合して起こるCa^<2+>遊離の機構にカルセクエストリンとの相互作用がどのように関わっているのかを明らかにしたいと考えている。トライアジンは筋小胞体の膜貫通蛋白質で、筋小胞体リアノジン受容体/カルシウム遊離チャネル(RyR)に付随し、カルシウム結合蛋白質であるカルセクェストリンを、筋小胞体膜に係留する役割を持つと考えられてきた。しかし最近の研究からトライアジンは、より積極的にRyRの活性制御に関わっていることが推定された。しかしながらその詳細は依然として不明である。一方、天然から見出した強力なカルシウム遊離作用を有する蛇毒由来のマイオトキシンαがトライアジンに結合することを我々は明らかにした。そこで今回、トライアジンのカルシウム遊離調節機能を明らかにするため、RyRのチャネル活性に対する影響を検討した。特異的抗体によるアフィニティーカラムで精製したトライアジンを筋小胞体の重い画分(HSR)に加えても、RyRのチャネル活性の指標である[^3H]リアノジン結合には影響が見られなかったが、可溶化HSRでは有意な抑制が見られた。更に、アフィニティーカラムによって可溶化HSRからトライアジンを除くと、加えた精製トライアジンによる抑制の程度は著しく増大した。一方、カルセクェストリンは可溶化HSRの[^3H]リアノジン結合を活性化するが^<1)>、トライアジンはその活性化作用を消失させた。また、カルセクェストリンは、可溶化HSRにおける[^3H]リアノジン結合のカルシウム濃度依存性のカーブを低濃度側に移動させ、トライアジンは逆に高濃度側に移動させた。更にトライアジンのオリゴマー形成をカルセクェストリンは抑制した。以上の結果より、トライアジンとカルセクェストリンとは互いに作用し、RyRの機能を調節していることが示唆された。今後は、マイオトキシンaがトライアジンに結合して起こるCa^<2+>遊離の機構にカルセクエストリンとの相互作用がどのように関わっているのかを明らかにしたいと考えている。
KAKENHI-PROJECT-09273204
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ドイツの人口減少地域における商業プロジェクトと計画の動向に関する研究
人々に適切な小売店の環境を提供するには、小売店進出に関する基本的な制度の枠組みと、市町村がそれを尊重してまちづくりを進めることが重要である。広域調整については、まだドイツにも確立した方策はない。現在、わが国では、小売りに関して中心市街地の活性化が重視されているが、人口減少社会では近隣供給の確保が重要になる。今後は、高齢者の買物を確保する視点を重視して商業まちづくりを構成することが必要である。人々に適切な小売店の環境を提供するには、小売店進出に関する基本的な制度の枠組みと、市町村がそれを尊重してまちづくりを進めることが重要である。広域調整については、まだドイツにも確立した方策はない。現在、わが国では、小売りに関して中心市街地の活性化が重視されているが、人口減少社会では近隣供給の確保が重要になる。今後は、高齢者の買物を確保する視点を重視して商業まちづくりを構成することが必要である。計画に沿い、ルール地方を主たる対象として研究を進めている。具体的には、以下のとおりである。・研究対象とするドイツの大規模な商業プロジェクトとして、エッセンのリンベッカー広場、デュイスブルクのフォーラム、およびドルトムントのティア跡地開発の3つを選定し、これらに関して資料収集を進めると同時に、現地を訪問して状況を視察してきた。リンベッカー広場は2008年3月に南半分がオープンし、フォーラムは2008年中にも完成し、ティア跡地は議会で議論されているところと、進行段階は異なるが、本研究の期間内にはいずれも一定の評価が可能であると思われる。新聞記事の日本語への翻訳も、これら3プロジェクトに関する情報を中心として進めている。・今後の高齢化社会において重要になるのが、近隣供給の扱いである。そこで、上記3都市を中心に新聞情報の収集に努めた結果、デュイスブルクの情報が多いことがわかったので、ここを重点に資料収集を進めている。・商業プロジェクトをとりまく環境として重要なのが、人口の動向である。そこで、土地利用計画(Fプラン)で人口減少がどのように扱われているかに関し、新規住宅用地算定と小規模集落の扱いをまとめ、わが国と比較して柔軟に対処されていることを都市計画報告集に発表した。・わが国においても、改正された中心市街地活性化法の下での取り組みが開始されている。そこで、第1号の認定都市であり、コンパクト都市としても注目されている青森市を訪問し、中心市街地活性化の状況と、郊外の浜田地区における店舗の集積状況を視察した。計画に沿い、ルール地方を主たる対象に研究を進めている。具体的には、以下のとおりである。・主たる研究対象と選定したエッセンのリンベッカー広場、デュイスブルクのフォーラム、およびドルトムントのティア跡地開発に関して資料収集を継続すると同時に、現地を訪問して状況を視察してきた。これら3プロジェクトに関する重要な新聞記事は、日本語への翻訳を優先的に進めている。・今後の高齢化社会において重要になる近隣供給については、ドルトムントとデュイスブルクを中心として新聞記事の収集を継続している。とくにドルトムントでは、Hombruch区のLucklembergで食料品スーパーの進出では、賛成と反対の住民団体が署名活動を行っているので、くわしく観察している。この他に、Huckarde区でも、中心地近くへのスーパー進出が決定され、Lutgendortmund区では、2箇所でスーパー進出が議論されている。・今年度は、視野を旧東ドイツにも拡大し、フランクフルト(オーダー)とライプチヒにつき、視察を行った。とくにライプチヒでは、人口減少によって減築が進む郊外団地に建設された大型ショッピングセンターを見学することができた。・商業をとりまく環境として重要な人口の動向に関し、日本における人口フレームに相当する部分がドイツでどのように扱われているのかをまとめ、地域開発誌に発表した。・わが国では、都市計画法と建築基準法の改正が2007年末に施行され、都市計画で商業施設を扱う枠組みができたが、ドイツに比較するとまだ弱体である。そこで、大型店の進出が非常に進んでいると同時に、活性化対策として土地区画整理が完成した都城市を視察した。本年度は研究の最終年であり、次の2点を重点として研究を進めた。1.ルール地方では、近年、大型店のプロジェクトが郊外でなく都心で進められる傾向が生じており、とくにデュイスブルクのフォーラム、エッセンのリンベッカープラッツと、ドルトムントのティア跡地開発は、いずれも売場面積が数万平方メートルと大きく、多数の店舗が入るショッピングセンターである。すでに完成したものと、まだ工事中のものがあるが、これら3プロジェクトに関し、現地を視察してすると共に、建設に至るまでの議論の経過を把握し、完成したものについてはオープン後の営業状況と都心商店街への影響に関する情報を入手することに努めた。2.小売店の問題に関するドイツとわが国との大きな違いは、近隣供給の扱いである。わが国は中心市街地の活性化だけが取りあげられているのに対して、ドイツでは各地で近隣供給の確保が関心を集めているが、その背景には高齢化の進展があると考えられる。この近隣供給の問題でも、都市による違いが認められる。そこで、同じくルール地方で人口が減少しているなかで、商業構想に沿って努力しているドルトムントと、構想はあるが商業者の反対を押し切って郊外店を誘致したミュルハイムを、比較検討した。以上に加え、広域調整に関する制度の変遷を調べ、それに対する裁判について経過を調査した。また、都心への重要な交通手段であるLRTの地下化が決定し、工事の準備が進められている南ドイツのカールスルーエについても、現地を視察して状況を確認した。
KAKENHI-PROJECT-19560606
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好熱菌由来のカタラーゼIの高活性型から低活性型への転移現象
野生型のカタラーゼ1について幾つかの測定を行った。活性型の変化に伴った構造の変化を捕らえようとしたが、その差が小さく、構造の直接測定は困難を極めた。そこで、活性型転移による構造変化の大きい変異体作成のために、ランダム伸長変異法を用いた。ランダム伸長変異法は進化工学的方法である。工学的に酵素を改良するといずれ頭打ちとなる。また、自然界で良く最適化が進んだ酵素はそれ以上改良することが難しい。これらは対象となる酵素が配列空間上の山の頂上付近に位置するからである。この一般的な問題点をランダム伸長変異で解決できることを示した。カタラーゼのC末に付加したランダム伸長変異ではランダム点変異に比べて、高い熱安定性の変異体は10倍の頻度で得られた。伸長変異を加えると、配列空間の次元が増え、新たな改良の余地が与えられる。このようにして得られたカタラーゼの集団は活性でも多様性に富んだものであった。また、問題となる活性型の転移現象の程度にもかなりの幅が存在した。このことは前に示された二つの活性型の存在がアミノ酸配列に依存する現象であることが分かった。野生型のカタラーゼ1について幾つかの測定を行った。活性型の変化に伴った構造の変化を捕らえようとしたが、その差が小さく、構造の直接測定は困難を極めた。そこで、活性型転移による構造変化の大きい変異体作成のために、ランダム伸長変異法を用いた。ランダム伸長変異法は進化工学的方法である。工学的に酵素を改良するといずれ頭打ちとなる。また、自然界で良く最適化が進んだ酵素はそれ以上改良することが難しい。これらは対象となる酵素が配列空間上の山の頂上付近に位置するからである。この一般的な問題点をランダム伸長変異で解決できることを示した。カタラーゼのC末に付加したランダム伸長変異ではランダム点変異に比べて、高い熱安定性の変異体は10倍の頻度で得られた。伸長変異を加えると、配列空間の次元が増え、新たな改良の余地が与えられる。このようにして得られたカタラーゼの集団は活性でも多様性に富んだものであった。また、問題となる活性型の転移現象の程度にもかなりの幅が存在した。このことは前に示された二つの活性型の存在がアミノ酸配列に依存する現象であることが分かった。
KAKENHI-PROJECT-10878112
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10878112
大型計算機を用いた核燃料熱物性の第一原理計算による評価手法の開発
本研究課題では、第一原理計算手法を用いて核燃料の主要成分である二酸化アクチニドの熱物性値の評価を行った。本年度の成果は以下の2つである。1.二酸化ウランにおけるスモールポーラロンを第一原理計算で再現することに成功した。スモールポーラロンは格子の歪みを伴った局在電子またはホールであり、二酸化ウランの高温での熱伝導率に大きな影響を与えることが予想されている。しかしながら、第一原理計算でその影響を定量的に評価した例は今までにない。それは、第一原理計算で二酸化ウラン中のスモールポーラロン状態を再現することが困難であったためである。そこで、本研究ではまず第一原理計算によるスモールポーラロン状態を再現することを目標とし、電荷分布や原子配置の初期配置を調整することによってその再現に成功した。本成果は二酸化ウランの熱伝導率の精密評価へ向けた重要な一歩であり、今後、熱伝導率評価に応用していく予定である。この成果は原子力学会(2019年春の年会)で発表した。2.二酸化トリウムと二酸化プルトニウムに対して、格子振動による熱伝導率評価を、第一原理計算を基により詳細な評価を行ない、論文として発表した。第一原理計算による熱伝導率評価は、2016年度より継続して行ってきたが、計算におけるパラメータの妥当性確認や、実際の燃料物質では重要となる粒界散乱の影響調査など、より詳細な評価を行ない、その信頼性を確認した。本研究で開発した手法は実験結果を非常によく再現するものであり、格子熱伝導率の精密予測技術を確立できたと言える。本成果はJounal of Nuclear Materialsに論文として掲載された。本研究課題では、第一原理計算手法を用いて核燃料の主要成分である二酸化アクチニドの熱物性値の評価を行った。本年度の成果は以下の2つである。1.二酸化トリウムに対して、第一原理分子動力学法を用いてエンタルピーなどの熱力学量の評価を行った。二酸化アクチニドでは融点より少し低い温度で超イオン伝導体に転移することが予測されていたが、分子動力学法のシミュレーション結果ではその温度がモデルに依存し、はっきりしていなかった。今回、経験的なパラメータを必要としない第一原理計算を用いて、シミュレーションした結果でも、超イオン伝導体転移を観測し、転移温度についても精密に評価することができた。この成果はJournal of Nuclear Materials誌に論文として発表した。2.二酸化プルトニウム等に対して、第一原理計算を用いて格子振動による熱伝導率を評価した。第一原理計算による熱伝導率の評価手法は近年、大きな発展を遂げており、今回、その手法を二酸化アクチニドに応用した。この手法では、格子振動の性質を第一原理計算によって定量的に計算することで、熱伝導率を評価する。計算で得られた結果は二酸化プルトニウム、トリウムに対しては実験結果をよく再現し、この手法が有効であることが確認された。一方、二酸化ウランのような磁気秩序を持つ物質に対しては、実験値とのずれが見られ、さらに改良の必要があることが分かった。この成果は国際会議NuMat2016で発表した。第一原理分子動力学に関しては、二酸化トリウムに対して、熱物性の評価に成功し、論文として発表している。一方、熱伝導率に関しても、二酸化プルトニウム、二酸化トリウムに関しては成果が出ている。二酸化ウランの熱伝導率や第一原理分子動力学による高温領域での熱伝導率の評価などの課題は残るが、初年度の成果としては全体としてはおおむね順調に進展しているといえる。本研究課題では、第一原理計算手法を用いて核燃料の主要成分である二酸化アクチニドの熱物性値の評価を行った。本年度の成果は以下の2つである。1.二酸化トリウムと二酸化プルトニウムの混合酸化物(MOX)に対して、Special Quasirandom Structure法(SQS)を用いて、第一原理計算による物性値評価を行った。このMOXのようにトリウムとプルトニウムがランダムに配置されている物質に対して原子シミュレーションを行なう場合、通常は原子数が数千個から数万個の大きな系を用意して、実際にランダムな配置を作成して計算するが、第一原理計算では計算コストが大きすぎて困難である。そこでSQSを用いて数百個程度の系に対して第一原理計算を行い、格子定数や弾性率などを求めた結果、測定値をよく再現した。この方法を応用することによって、MOX燃料の熱伝導率や比熱の精密評価を行なうことが可能となる。この成果は原子力学会(2018年春の年会)で発表した。2.二酸化プルトニウムに対して、第一原理計算を用いて欠陥の生成エネルギー及び移動エネルギーの計算を行った。高温においては酸素欠陥の拡散が大きく熱物性に影響を与えるため、欠陥の生成エネルギーや移動エネルギーの精度の高い評価が必要とされる。これに対して、欠陥の電荷を考慮に入れて、系統的に欠陥エネルギーの詳細な評価を行なった。これによって得られたフレンケル欠陥の生成エネルギーや酸素の拡散係数は実験結果を十分な精度で再現するものであった。今後、欠陥による熱物性値への影響について評価を進めていく予定である。この成果は国際会議ACTINIDES2017や原子力学会(2017年秋の大会)で発表した。燃料物質の物性評価には欠かせない酸素欠陥やMOX燃料の評価に対して、その基礎的な手法を確立した。これらの成果は計画通りであり、順調に研究が進捗しているといえる。一方、第一原理分子動力学を用いた熱物性評価に関しては、継続して続けており、全体としてはおおむね順調に進展しているといえる。
KAKENHI-PROJECT-16K06964
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K06964
大型計算機を用いた核燃料熱物性の第一原理計算による評価手法の開発
本研究課題では、第一原理計算手法を用いて核燃料の主要成分である二酸化アクチニドの熱物性値の評価を行った。本年度の成果は以下の2つである。1.二酸化ウランにおけるスモールポーラロンを第一原理計算で再現することに成功した。スモールポーラロンは格子の歪みを伴った局在電子またはホールであり、二酸化ウランの高温での熱伝導率に大きな影響を与えることが予想されている。しかしながら、第一原理計算でその影響を定量的に評価した例は今までにない。それは、第一原理計算で二酸化ウラン中のスモールポーラロン状態を再現することが困難であったためである。そこで、本研究ではまず第一原理計算によるスモールポーラロン状態を再現することを目標とし、電荷分布や原子配置の初期配置を調整することによってその再現に成功した。本成果は二酸化ウランの熱伝導率の精密評価へ向けた重要な一歩であり、今後、熱伝導率評価に応用していく予定である。この成果は原子力学会(2019年春の年会)で発表した。2.二酸化トリウムと二酸化プルトニウムに対して、格子振動による熱伝導率評価を、第一原理計算を基により詳細な評価を行ない、論文として発表した。第一原理計算による熱伝導率評価は、2016年度より継続して行ってきたが、計算におけるパラメータの妥当性確認や、実際の燃料物質では重要となる粒界散乱の影響調査など、より詳細な評価を行ない、その信頼性を確認した。本研究で開発した手法は実験結果を非常によく再現するものであり、格子熱伝導率の精密予測技術を確立できたと言える。本成果はJounal of Nuclear Materialsに論文として掲載された。第一原理分子動力学については、これまでは二酸化トリウムの熱平衡状態での物性値の評価に留まっていたが、今後は熱伝導率などの動的な物性値の評価に取り組んでいく予定である。一方、熱伝導率計算については、磁気秩序と熱伝導率の相関を明らかにするとともに、ポーラロンなどの格子振動以外の熱伝導率の評価も行っていくつもりである。第一原理分子動力学については、今後は熱伝導率などの動的な物性値の評価に取り組んでいく。特にこの計算は計算コストが大きいため、より効率的な方法を開発する予定である。一方、熱伝導率計算については、磁気秩序と熱伝導率の相関を明らかにしていき、より精密な熱伝導率評価を目指す。購入したワークステーションの価格と国際会議のための海外出張費が想定よりも安かったことが原因で次年度使用額が生じた。予定していた国際会議が日本国内での開催となり、旅費が予想より安くなった。また、当該助成金は研究発表用のノートPCの購入とデータバックアップ用のディスク購入にあてる予定である。購入したワークステーションにおける計算環境改善のために使用する。具体的には、ハードディスク、GPU等の追加、コンパイラー等のソフトウェア購入に用いる予定である。
KAKENHI-PROJECT-16K06964
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網羅的遺伝子解析による精子成熟停止の新規機序解明と新規治療法の探索
妊娠希望夫婦の1割が不妊に悩み、男性不妊症は原因の半分を占めるにもかかわらず大部分が未だ原因不明であり少子高齢化が進む本邦において原因の解明が強く望まれている。近年DNA解読技術の飛躍的な進歩に従い様々な疾患のゲノム変異を包括的に解析することが可能になり種々の分野で応用されているが男性不妊症の分野ではたち遅れている。これまで我々は独自にクローニングを行った精巣細胞特異的遺伝子を中心に男性不妊の原因遺伝子とその機能について世界に先駆けて数多く報告してきた。本研究ではさらに次世代シーケンサーを用いた全エクソン解析により男性不妊症患者に存在するゲノム異常を網羅的に解析し、既知の原因遺伝子だけでなく新規の男性不妊原因遺伝子や点突然変異を見出す。さらに新規原因遺伝子のノックアウトマウスを作成し、その機能について明らかにし最終的には新たな男性不妊症診断および新たな治療法の開発に資する結果を得ることを目的としている。現時点で、すでに男性不妊症、その中でも最も重症な無精子症患者のうち、精巣内精子採取術を施行し、精巣組織病理検査にて成熟停止の診断であった50症例の血液からゲノムを抽出し、次世代シーケンサーにて全エクソンシークエンスを行った。現在解析を東京大学大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻クリニカルシークエンス分野にて行っている。成熟停止症例における遺伝子変異が見つかってきており、現在解析を進めているところである。無精子症のうち成熟停止症例50症例の全エクソンシークエンスを施行した。現在データの解析作業を行っている。引き続き全エクソンシークエンスデータの解析を行い、男性不妊の原因となる新規遺伝子の同定、機能解析を行っていく。妊娠希望夫婦の1割が不妊に悩み、男性不妊症は原因の半分を占めるにもかかわらず大部分が未だ原因不明であり少子高齢化が進む本邦において原因の解明が強く望まれている。近年DNA解読技術の飛躍的な進歩に従い様々な疾患のゲノム変異を包括的に解析することが可能になり種々の分野で応用されているが男性不妊症の分野ではたち遅れている。これまで我々は独自にクローニングを行った精巣細胞特異的遺伝子を中心に男性不妊の原因遺伝子とその機能について世界に先駆けて数多く報告してきた。本研究ではさらに次世代シーケンサーを用いた全エクソン解析により男性不妊症患者に存在するゲノム異常を網羅的に解析し、既知の原因遺伝子だけでなく新規の男性不妊原因遺伝子や点突然変異を見出す。さらに新規原因遺伝子のノックアウトマウスを作成し、その機能について明らかにし最終的には新たな男性不妊症診断および新たな治療法の開発に資する結果を得ることを目的としている。現時点で、すでに男性不妊症、その中でも最も重症な無精子症患者のうち、精巣内精子採取術を施行し、精巣組織病理検査にて成熟停止の診断であった50症例の血液からゲノムを抽出し、次世代シーケンサーにて全エクソンシークエンスを行った。現在解析を東京大学大学院新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻クリニカルシークエンス分野にて行っている。成熟停止症例における遺伝子変異が見つかってきており、現在解析を進めているところである。無精子症のうち成熟停止症例50症例の全エクソンシークエンスを施行した。現在データの解析作業を行っている。引き続き全エクソンシークエンスデータの解析を行い、男性不妊の原因となる新規遺伝子の同定、機能解析を行っていく。研究を進めていくうえで必要に応じて研究費を執行した為、当初の見込み額と執行金額が異なった。
KAKENHI-PROJECT-18K09166
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K09166
Helicobacter Pylori感染の病態の多様性と宿主側免疫遺伝子学的解析
我々はH.pylori感染に対する病態の違いを宿主側に求め、宿主の免疫遺伝学的違いがH.pylori感染に対する病態の違いに関与すると考えた。今回の研究では宿主側の免疫応答に重要な役割を担うクラスII HLAであるHLA-DQAとDQBのタイピングとH.pylori感染との関係をH.pylori感染陰性健常者46例、H.pylori感染陽性表層性胃炎36例、H.pylori感染陽性萎縮性胃炎85例、H.pylori感染陰性胃癌23例、H.pylori感染陽性胃癌59例で検討した。HLA-DQAの対立遺伝子頻度においてH.pylori感染の疾患多様性と関連が認められた。すなわち、対立遺伝子DQA1^*0102の頻度が、H.pylori感染陰性健常者(0.228)及び萎縮性胃炎を伴わないH.pylori感染陽性表層性胃炎(0.306)において、H.pylori感染陽性者萎縮性胃炎(0.090)及びH.pylori感染陽性分化型胃癌例(0.057)に比べ、有意に高いことが認められた(p<0.005)。このことは、慢性胃炎が惹起され、それが持続することで萎縮性胃炎へと移行し、分化型胃癌の発生母地に向かうH.pylori感染における病態に、宿主側免疫遺伝学的背景因子が関与していると考えられ、HLA-DQA1遺伝子がこの背景因子に関与する遺伝子の一つであり、対立遺伝子DQA1^*0102は萎縮性胃炎への病態に抵抗性に作用し、対立遺伝子DQA1^*0102を持たない者はH.pylori感染による胃粘膜萎縮への危険因子と考えられ、その相対危険率は3.45であった。我々はH.pylori感染に対する病態の違いを宿主側に求め、宿主の免疫遺伝学的違いがH.pylori感染に対する病態の違いに関与すると考えた。今回の研究では宿主側の免疫応答に重要な役割を担うクラスII HLAであるHLA-DQAとDQBのタイピングとH.pylori感染との関係をH.pylori感染陰性健常者46例、H.pylori感染陽性表層性胃炎36例、H.pylori感染陽性萎縮性胃炎85例、H.pylori感染陰性胃癌23例、H.pylori感染陽性胃癌59例で検討した。HLA-DQAの対立遺伝子頻度においてH.pylori感染の疾患多様性と関連が認められた。すなわち、対立遺伝子DQA1^*0102の頻度が、H.pylori感染陰性健常者(0.228)及び萎縮性胃炎を伴わないH.pylori感染陽性表層性胃炎(0.306)において、H.pylori感染陽性者萎縮性胃炎(0.090)及びH.pylori感染陽性分化型胃癌例(0.057)に比べ、有意に高いことが認められた(p<0.005)。このことは、慢性胃炎が惹起され、それが持続することで萎縮性胃炎へと移行し、分化型胃癌の発生母地に向かうH.pylori感染における病態に、宿主側免疫遺伝学的背景因子が関与していると考えられ、HLA-DQA1遺伝子がこの背景因子に関与する遺伝子の一つであり、対立遺伝子DQA1^*0102は萎縮性胃炎への病態に抵抗性に作用し、対立遺伝子DQA1^*0102を持たない者はH.pylori感染による胃粘膜萎縮への危険因子と考えられ、その相対危険率は3.45であった。
KAKENHI-PROJECT-08670638
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08670638
リグノセルロースからの新規な生分解性高分子材料の開発と分解過程での安全性確認
価格的、量的に最も実際的なセルロース誘導体であるセルロースジアセテート(置換度2.12.2)(CDA)のプラスチック材料化を環状エステルの開環グラフト重合と無水マレイン酸とモノエポキシドあるいは多価アルコールの混練反応により行い、最終的に汎用高分子並の熱可塑成形加工性と成形物物性を備えたプラスチック材料の開発を試み成果を得た。また、同様な可塑化を脂肪族ポリエステルカーボネートとのブレンドによっても行いうることを見出し得ている。一方、リグノセルロースを含むバイオマスの液化について、水存在下、硫酸触媒120°Cという条件で、フェノール液化が容易に進行すること、リグニン低分子化物の再縮合反応が抑制され、好都合なものとなること、その液化機構はヘテロリティックなものであることといった結果が得られた。一方、液化が困難なコーンフィードのフェノールあるいは多価アルコール存在下での硫酸触媒液化を試み、それを容易にする条件を見出すと共に、液化物の特性化と、フェノール液化の場合の共縮合樹脂化、及び多価アルコール液化の場合のポリウレタン発泡体化が検討された。他方、上記の様に得られた各種の成形物及び発泡体の安全性について検討された。すなわち、それらの加熱溶出液について、内分泌攪乱作用についてはウサギ子宮を用いたエストロゲン結合阻害活性によって、また、変異原性試験として細菌のSOS調節機構を用いたumuテストにより検討を行ったが、いずれについてもこれらのアッセイ系からは問題が見出されなかった。また、それらリグノセルロース及びセルロースから調製した高分子材料の生分解性及び一般毒性についての検討も行われ有意な結果が得られた。価格的、量的に最も実際的なセルロース誘導体であるセルロースジアセテート(置換度2.12.2)(CDA)のプラスチック材料化を環状エステルの開環グラフト重合と無水マレイン酸とモノエポキシドあるいは多価アルコールの混練反応により行い、最終的に汎用高分子並の熱可塑成形加工性と成形物物性を備えたプラスチック材料の開発を試み成果を得た。また、同様な可塑化を脂肪族ポリエステルカーボネートとのブレンドによっても行いうることを見出し得ている。一方、リグノセルロースを含むバイオマスの液化について、水存在下、硫酸触媒120°Cという条件で、フェノール液化が容易に進行すること、リグニン低分子化物の再縮合反応が抑制され、好都合なものとなること、その液化機構はヘテロリティックなものであることといった結果が得られた。一方、液化が困難なコーンフィードのフェノールあるいは多価アルコール存在下での硫酸触媒液化を試み、それを容易にする条件を見出すと共に、液化物の特性化と、フェノール液化の場合の共縮合樹脂化、及び多価アルコール液化の場合のポリウレタン発泡体化が検討された。他方、上記の様に得られた各種の成形物及び発泡体の安全性について検討された。すなわち、それらの加熱溶出液について、内分泌攪乱作用についてはウサギ子宮を用いたエストロゲン結合阻害活性によって、また、変異原性試験として細菌のSOS調節機構を用いたumuテストにより検討を行ったが、いずれについてもこれらのアッセイ系からは問題が見出されなかった。また、それらリグノセルロース及びセルロースから調製した高分子材料の生分解性及び一般毒性についての検討も行われ有意な結果が得られた。幹ポリマーとしてセルロースジアセテート(置換度2.12.2) (CDA)、グラフト試薬としてε-カプロラクトン(CL)、触媒としてオクチル酸スズ(II)を、それぞれ所定の割合で二軸エクストルーダーに投入できるようフィーダー速度、ポンプ速度をセットし、滞留時間30分、反応温度160°Cの条件下、リアクティブプロセッシングによるCDAのグラフトを検討した。得られた試料の精製前後における熱流動特性や、剪断応力及び粘度の剪断速度依存性を測定し比較した。また、生成物を熱圧することによりシートを作製しその引張特性を評価した。その結果、グラフトCDAの熱流動温度は未処理CDAに比べては最高150°Cも低下し成形加工性が大きく向上したこと、また、その剪断応力、粘度の剪断速度依存性及び熱圧成形シートの引張特性は、ポリプロピレンなど汎用合成高分子と同等の特徴を示し、しかもそれらの特性がコスト的に有利な未精製試料により実現できたことは興味深い。一方、デンプンについて分子量低下を伴わないアセチル化法を検討し、得られた試料のグラフト重合による熱可塑性プラスチック材料化を行った。さらに、木材、デンプンのフェノール類、あるいは多価アルコール類存在下での液化について実用的な反応条件を追求し、得られた液化物から三次元硬化成形物、発泡体を調製した。生分解性試験においては、土壌、活性汚泥、コンポストなどから微生物をスクリーニングし、上述の各実験で得られた試料を栄養源とする培地に接種して集積培養を行った。培養の結果、土壌などからスクリーニングした微生物の中に試料を栄養源としうるものが存在することが知られ、SEM観察等によりその同定を試みつつある。試料の力学的強度は、生分解試験後に明らかに低下し、主鎖の切断等による分解の進行が認められた。価格的、量的にも最も実際的なセルロース誘導体であるセルロースジアセテート(置換度2.12.2)(CDA)のプラスチック材料化を環状エステルの開環グラフト重合と無水マレイン酸とモノエポキシドあるいは多価アルコールの混練反応により行い、最終的に汎用高分子並の熱可塑成形加工性と成形物物性を備えたプラスチック材料の開発を試み成果を得た。また、同様な可塑化を脂肪族ポリエステルカーボネートとのブレンドによっても行いうることを見出し得ている。
KAKENHI-PROJECT-10356005
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10356005
リグノセルロースからの新規な生分解性高分子材料の開発と分解過程での安全性確認
一方、リグノセルロースを含むバイオマスの液化について、水存在下、硫酸触媒120°Cという条件で、フェノール液化が容易に進行すること、リグニン低分子化物の再縮合反応が抑制され、好都合なものとなること、その液化機構はヘテロリティックなものであることといった結果が得られた。一方、液化が困難なコーンフィードのフェノールあるいは多価アルコール存在下での硫酸触媒液化を試み、それを容易にする条件を見出すと共に、液化物の特性化と、フェノール液化の場合の共縮合樹脂化、及び多価アルコール液化の場合のポリウレタン発泡体化が検討された。他方、上記の様に得られた各種の成形物及び発泡体の安全性について検討された。すなわち、それらの加熱溶出液について、内分泌攪乱作用についてはウサギ子宮を用いたエストロゲン結合阻害活性によって、また、変異原性試験としてSOS調節機能を用いたumuテストにより検討を行ったが、いずれについてもこれらのアッセイ系からは問題が見出されなかった。また、それらリグノセルロース及びセルロースから調製した高分子材料の生分解性及び一般毒性についての検討も行われ有意な結果が得られた。
KAKENHI-PROJECT-10356005
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10356005
スイッチバック溶接による溶融池形状の遥動メカニズムの解析とその応用に関する研究
本研究では、安定した裏ビードと溶込み形状を得ることが可能なスイッチバック溶接法について、中厚および薄厚板の片面突合溶接においても有用であること示すため、スイッチバック動作時の溶融池形状の遥動現象のメカニズムを解析すると共に、開先変化に対するスイッチバック条件の最適化や、溶接速度の高速化について検討した。また、チタンなど軟鋼材料以外の接合におけるスイッチバック溶接の有用性を示した。本研究では、安定した裏ビードと溶込み形状を得ることが可能なスイッチバック溶接法について、中厚および薄厚板の片面突合溶接においても有用であること示すため、スイッチバック動作時の溶融池形状の遥動現象のメカニズムを解析すると共に、開先変化に対するスイッチバック条件の最適化や、溶接速度の高速化について検討した。また、チタンなど軟鋼材料以外の接合におけるスイッチバック溶接の有用性を示した。本研究では、安定した裏ビードと溶込み形状を得ることが可能なスイッチバック溶接法について、中厚および薄厚板の片面突合溶接においても有用であること示すため、(1)スイッチバック動作時の溶融池形状の遥動現象のメカニズム、(2)開先幅や板厚などの変化に対する最適なスイッチバック条件、(3)スイッチバック溶接の高速化方法等について検討する。平成20年度は、スイッチバック溶接のシミュレーターおよび実験システムを開発し、これを用いて溶融池形状の遥動(動的変化)とスイッチバック動作のメカニズムを検証し定量的な関係を解明した。トーチを溶接進行方向の前後に揺動し入熱と放熱を制御するスイッチバック溶接法において、動作パラメータ(前進距離、後退距離、前進速度、後退速度、平均速度)と裏溶融池形状(長さ、幅、隣接溶融池との重なり)の関係を数値シミュレーションにより解析し、有効使用可能範囲を示した。また、従来溶接との熱変形量比較や突合せ開先のギャップ変動特性についても検討し、スイッチバック溶接法の有効性を確認した。溶接平均速度の高速化のためのスイッチバック動作および入熱制御方法について検討し、その可能性について示した。このとき使用するアーク長検出・制御方式についても検討し、ニューラルネットワークを用いた高精度なセンサシステムを構築した。平成21年度は溶接実験により高速化手法の検証を行うとともに、下向き溶接以外の溶接姿勢への適用について検討する。本研究では、安定した裏ビードと溶込み形状を得ることが可能なスイッチバック溶接法について、中厚および薄厚板の片面突合溶接においても有用であること示すため、(1)スイッチバック動作時の溶融池形状の遥動現象のメカニズム、(2)開先幅や板厚などの変化に対する最適なスイッチバック条件、(3)スイッチバック溶接の高速化方法等について検討する。平成21年度は、スイッチバック溶接のシミュレーターおよび実験システムを用いて、スイッチバック動作により裏ビードが安定化する要因を検討した。また開先幅が変化する場合や立向き溶接へ有効性を検証するとともに、高速溶接時の溶接速度と溶接電流およびスイッチバック条件の関係を検討した。トーチを溶接進行方向の前後に揺動し入熱と放熱を制御するスイッチバック溶接法では、溶接進行方向が一方向の従来溶接と比べて、(1)裏溶融池が溶接進行方向に短いため開先幅が変化しても溶落ちにくい、(2)裏溶融池最大時にアーク熱源は前方た遠ざかっているためアーク長変動などの外乱に強い、(3)溶融池形状が周期的に変化するため溶融池内の対流による深さ方向の溶融が制限できることを示した。この結果、スイッチバック溶接法が開先幅変動時や立向き溶接時に溶け落ちのない溶接結果を得るのに有効であることを示した。また、トーチ動作と一緒に溶接電流を変化することにより、スイッチバック溶接法の有効性を保ったまま溶接速度を上げることが可能であることを示した。平成22年度は溶接実験により上記の現象を検証するとともに、スイッチバック溶接法を用いて板厚や開先幅変動に対して溶込み深さをオンライン制御するシステムを開発する。本研究では、安定した裏ビードと溶込み形状を得ることが可能なスイッチバック溶接法について、中厚および薄厚板の片面突合溶接においても有用であること示すため、(1)スイッチバック動作時の溶融池形状の遥動現象のメカニズム、(2)開先幅や板厚などの変化に対する最適なスイッチバック条件、(3)スイッチバック溶接の高速化方法等について検討する。平成22年度は、前年度シミュレーションから得られたスイッチバック溶接の3つの有用性((1)裏溶融池が溶接進行方向に短いため開先幅が変化しても溶落ちにくい、(2)裏溶融池最大時にアーク熱源は前方に遠ざかっているためアーク長変動などの外乱に強い、(3)溶融池形状が周期的に変化するため溶融池内の対流による深さ方向の溶融が制限できる)をCO_2溶接実験によって確認した。この結果、3.2mm板厚のワークに対し03mmの開先幅に対し溶落ちのない完全溶け込みの溶接ビードをスイッチバック溶接により得られることを実証した。これは溶接中のワーク変形などによる開先幅変動時にも従来溶接よりスイッチバック溶接が有用であることを示している。また、本年度はスイッチバンク溶接を薄板のチタンやマグネシウム合金など軟鋼以外の突合せ溶接にも適用する開発を行った。チタンやマグネシウム合金溶接においても、軟鋼板と同様にスイッチバック溶接よりアーク長の外乱などの影響に関わらず安定した裏ビードを得ることができている。チタン溶接では溶接作業の高能率化のためにMIG溶接を適応したときに発生する表ビードの曲がりに対し、スイッチバック溶接が有効な解決策となることも示した。
KAKENHI-PROJECT-20560667
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20560667
新有機薄膜の合成
電気情報変換機能、光情報変換機能および分子情報変換機能などの情報変換機構を有する有機薄膜の開発に際し、高度に組織化された有機薄膜の合成法の確立は重要である。本研究では、これらの有機薄膜の設計と合成に関する基礎的知見を得ることを目的とする。今年度に得られた主要な知見は次の通りである。1)金属フタロシアニン,テトラメチルスズ,銅アセチルアセトナートなどをプラズマ重合することにより光電変換機能、導電機能、メモリー機能などを有する薄膜を合成し、これらの諸機能がモノマー構造とプラズマ条件により制御できることを明らかにした。2)温和な条件におけるプラズマ重合によりモノマー構造が十分に反映した有機薄膜を合成し、整流特性を発現させた。また、反応性プラズマ蒸着法を考案し、これを用いて硬度の大きい結晶性薄膜を合成した。3)ポリスチレンと塩化銅アルミニウムとから均質な高分子錯体薄膜を合成する方法を確立し、薄膜の電気伝導度が雰囲気中の水蒸気、一酸化炭素およびエチレンの濃度に比例して可逆的に変化することを明らかにした。4)電子授受機能を有する金属フタロシアニンの単結晶を電解合成し、その導電性を分子配向に基づいて評価して、金属錯体を包埋した有機薄膜中の電子移動に関する基礎的知見を確立した。5)3級アルキル基を置換基とする置換アセチレンの重合に成功し、これらの有機薄膜を合成した。また、置換ポリアセチレンの力学的諸性質が、置換基の種類に顕著に依存することを明らかにした。6)高分子マトリックスに相溶性のあるアンカー部分と機能性成分とよりなるグラフトポリマーを合成し、ポリメタクリル酸メチルとともにキャストすることにより、機能性成分の薄膜で被覆された高分子膜を合成した。以上のように、各種の新機能性有機薄膜の合成に成功し、それらの構造と機能を評価した。電気情報変換機能、光情報変換機能および分子情報変換機能などの情報変換機構を有する有機薄膜の開発に際し、高度に組織化された有機薄膜の合成法の確立は重要である。本研究では、これらの有機薄膜の設計と合成に関する基礎的知見を得ることを目的とする。今年度に得られた主要な知見は次の通りである。1)金属フタロシアニン,テトラメチルスズ,銅アセチルアセトナートなどをプラズマ重合することにより光電変換機能、導電機能、メモリー機能などを有する薄膜を合成し、これらの諸機能がモノマー構造とプラズマ条件により制御できることを明らかにした。2)温和な条件におけるプラズマ重合によりモノマー構造が十分に反映した有機薄膜を合成し、整流特性を発現させた。また、反応性プラズマ蒸着法を考案し、これを用いて硬度の大きい結晶性薄膜を合成した。3)ポリスチレンと塩化銅アルミニウムとから均質な高分子錯体薄膜を合成する方法を確立し、薄膜の電気伝導度が雰囲気中の水蒸気、一酸化炭素およびエチレンの濃度に比例して可逆的に変化することを明らかにした。4)電子授受機能を有する金属フタロシアニンの単結晶を電解合成し、その導電性を分子配向に基づいて評価して、金属錯体を包埋した有機薄膜中の電子移動に関する基礎的知見を確立した。5)3級アルキル基を置換基とする置換アセチレンの重合に成功し、これらの有機薄膜を合成した。また、置換ポリアセチレンの力学的諸性質が、置換基の種類に顕著に依存することを明らかにした。6)高分子マトリックスに相溶性のあるアンカー部分と機能性成分とよりなるグラフトポリマーを合成し、ポリメタクリル酸メチルとともにキャストすることにより、機能性成分の薄膜で被覆された高分子膜を合成した。以上のように、各種の新機能性有機薄膜の合成に成功し、それらの構造と機能を評価した。
KAKENHI-PROJECT-60111002
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情報理論的に安全性が保障される暗号技術の研究
本年度は情報理論的に安全性が保証される認証・署名技術およびステガノグラフィの研究を行った。まず、認証・署名技術に関しては、情報理論的に安全な認証方式の古典モデルおよび情報理論的に安全な署名方式を利用して、情報理論的に安全なブラインド認証方式およびブラインド署名方式の概念をそれぞれ定式化し、具体的構成法を提案した。ここで、ブラインド署名とは、署名依頼者が署名対象となるメッセージの内容を署名者に秘密にしたまま、署名を付加してもらうことのできる署名方式である。これまで、ブラインド署名は計算理論的に安全な枠組みでは既にその構築方法は知られていたが、情報理論的立場の枠組みでは世界ではまだ構築されていなかった。従って、本成果により、世界で初めて情報理論的に安全なブラインド署名の概念が定式化され、また構成方法も提案されたことになる。次に、情報理論的に安全性が保証されるステガノグラフィについては、その一般的構成法を提案した。その成果の内容は、ある条件をみたす情報理論的に安全な認証子つき暗号化方式が存在すれば、それを用いて情報理論的に安全なステガノグラフィが構成できるという構成理論である。ここで、ステガノグラフィとは、メッセージの内容は勿論のこと、その存在をも秘密裏に送信するための情報ハイディング技術である。以上より、上記の情報理論的に安全なブラインド署名およびステガノグラフィに関する成果は、いずれも、情報理論的安全性を有する暗号技術における構築理論において、大きな進歩であると考えられる。情報理論的に安全性が保証される認証技術、認証子つき暗号化技術およびステガノグラフィの研究を行った。まず、情報理論的に安全性が保証される認証技術に関しては、従来の古典的モデルに沿った認証方式において複数の送信者がいる場合、送信者の匿名性を有する認証方式についての強い安全性の概念を提案した。また、この概念の定式化を行うと共に具体的な構成法をも提案した。更に、情報理論的に安全性が保証されるグループ署名についても、安全性の概念の提案、その概念の定式化及び具体的構成法の提案を初めて行った。次に、情報理論的に安全性が保証される認証子つき暗号化技術に関しては、認証子つき暗号化方式として強い安全性の概念を情報理論の立場から初めて解析した。実際、通常の暗号システムでは、暗号化方式、認証方式をそれぞれ単独で利用するのではなく、共に用いることも多く、これまで計算理論の立場からの研究成果は報告されているが情報理論の立場からの研究成果は我々の成果が初めてのものである。本研究では、情報理論的に安全性が保証される認証子つき暗号化方式としての強い安全性の概念を明らかにすると共に、暗号化方式と認証方式を組み合わせて認証子つき暗号化方式を構築する場合、どのような組み合わせ方であれば安全であるかを明らかにしている。最後に、情報理論的に安全性が保証されるステガノグラフィに関しては、新たに強い安全性の概念を提案した上で、その定式化を行った。また、既存の暗号化方式から高い安全性を有するステガノグラフィの一般的なプロトコル構成法を提案した。これは、情報理論的に安全性が保証されるステガノグラフィの構築理論として大きな一歩であると考えられる。本年度は情報理論的に安全性が保証される認証・署名技術およびステガノグラフィの研究を行った。まず、認証・署名技術に関しては、情報理論的に安全な認証方式の古典モデルおよび情報理論的に安全な署名方式を利用して、情報理論的に安全なブラインド認証方式およびブラインド署名方式の概念をそれぞれ定式化し、具体的構成法を提案した。ここで、ブラインド署名とは、署名依頼者が署名対象となるメッセージの内容を署名者に秘密にしたまま、署名を付加してもらうことのできる署名方式である。これまで、ブラインド署名は計算理論的に安全な枠組みでは既にその構築方法は知られていたが、情報理論的立場の枠組みでは世界ではまだ構築されていなかった。従って、本成果により、世界で初めて情報理論的に安全なブラインド署名の概念が定式化され、また構成方法も提案されたことになる。次に、情報理論的に安全性が保証されるステガノグラフィについては、その一般的構成法を提案した。その成果の内容は、ある条件をみたす情報理論的に安全な認証子つき暗号化方式が存在すれば、それを用いて情報理論的に安全なステガノグラフィが構成できるという構成理論である。ここで、ステガノグラフィとは、メッセージの内容は勿論のこと、その存在をも秘密裏に送信するための情報ハイディング技術である。以上より、上記の情報理論的に安全なブラインド署名およびステガノグラフィに関する成果は、いずれも、情報理論的安全性を有する暗号技術における構築理論において、大きな進歩であると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-16700009
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河口開口部制御のための地形平衡理論の展開
河口砂州の管理の指針として使えるよう、Manoら(2001)が導出した、河口砂州の地形平衡条件を汎用化・高度化させたものである。河口砂州内の浸透の影響や,構造物に沿岸漂砂遮断の影響を実測および理論的に検討して定量化し,地形平衡条件を高度化した.さらに,洪水による砂州のフラッシュの過程,平水時における岸向き土砂輸送を測定し,地形平衡条件における岸沖漂砂の影響を評価した.河口砂州の管理の指針として使えるよう、Manoら(2001)が導出した、河口砂州の地形平衡条件を汎用化・高度化させたものである。河口砂州内の浸透の影響や,構造物に沿岸漂砂遮断の影響を実測および理論的に検討して定量化し,地形平衡条件を高度化した.さらに,洪水による砂州のフラッシュの過程,平水時における岸向き土砂輸送を測定し,地形平衡条件における岸沖漂砂の影響を評価した.2005年8月22日、インドネシアのジャカルタで日本-インドネシアの河口に関するワークショップを開催し、そこで本研究グループから真野、田中、佐々木、南の各研究分担者が研究発表を行った。真野は、河口と潟湖入口の地形平衡を統一的に扱う平衡条件の一般化ついて基調講演を行った。また、河口砂州の中を河川流が浸透する場合の地形平衡条件を新たに求め、この適用性について議論した。砂州が長い場合、砂州を構成する土砂の粒径が大きくて浸透しやすい場合などに浸透の効果が現れてくる。田中は、河口の科学と管理に関する基調講演を行い、この問題が日本・インドネシア両国にとって学術的、行政的に益々重要な課題となることを示した。また、入射波形が浅海域で非線形性が強くなって非対称になった時の、底面せん断応力とそれによる土砂輸送特性につい研究成果を発表した。佐々木は、岩木川河口の開口部位置や開口幅に関する歴史的な資料を発掘解析した。この河口は十三湖と呼ばれる広大な潟湖を有し、潮汐と風浪が河口の地形を決めている、貴重な現場である。現在は導流堤により、河口が固定されているが、それ以前には位置が大きく変わり、度々閉塞してきた河口である。閉塞にいたる過程が詳しく分析され、気象擾乱との関係が議論された。南は、海岸侵食防止構造物である、人口リーフ開口部の流速と局所洗掘の関係を詳しく調べた。水理実験を実施し、底面流速場と海底地形変化分布を測定した。次に、水理実験と同じ条件で、ブシネスク方程式を基礎式とする数値解析を実施し、底面流速や地形変化の再現性を調べた。本年度は,エスチュアリーワークショップ(河口研究集会)を8月22日-24日ベトナムのハノイで開催し,そこで本課題による研究成果の発表と研究打ち合わせを行なった.真野は,河口に波浪,河川流,潮汐が作用する場合の地形平衡開口幅を陽形式で表現する理論解を求めた.また,河口に堆砂する沿岸漂砂を制御する人工構造物の効果について,ヘッドランドを取り上げ検討した.田中は七北田川において,画像記録装置を河口部に設置し河口砂州の変化を定点観測することで河口幅の変動を高頻度で捉えた.また,河口幅の実測値と各種外力からモデルの係数を決定した.河口砂州の形状が,モデルで仮定した矩形のものと近い場合には観測値と近い値を再現できた.しかし,冬季に河口砂州の先端部が上流側に押し込まれる形状の場合は再現精度が低い.佐々木は,過去の岩木川河口の地形変動特性を明らかにした.1918年から7年の間に当時の内務省岩木川改修事務所が観測・作成した河口地形図を入手し、この地形図を整理、解析し、当時の河口地形変動の特徴を明らかにし、河口地形変動の予測を試み、河口地形変形、特に、河口の移動距離・位置を精度良く予測できることを明らかにした。伊福はラジコンボート,ADPおよびRTK-GPS等で構成される流れと海底・河床地形を同時計測する高効率で高精度なシステムを開発し,愛媛県肱川河口に形成されている砂州周辺の流れと地形の計測を行い,上げ潮時・下げ潮時とも砂州前面に存在する時計回りの循環流と冬期季節風時の波浪による流れが砂州の形成要因であることを明らかにした.南は河口付近の海岸に設置された離岸群の撤去に伴う汀線測量結果を用いて汀線変化量を算出し、またエネルギー平衡方程式による構造物周辺の波高と移動限界水深を考慮して波浪場の変化量との相関を求めた。その結果、波高変化率との汀線変化には相関があった。また、構造物撤去にともなう堤長さと開口比によって2種類に分類される事が示された。今後は、波向変化を取り入れる事で、さらに相関が高くなる。真野は,ヘッドランドの土砂輸送制御効果を調べた.仙台南部海岸に建設が進められているヘッドランド群の周辺での深浅測量を解析し,入射波との応答を調べた.この結果,南部海岸では輸送能を示す,沿岸漂砂量係数が周辺の海岸の10%程度に落ちており,海岸線近くの砂浜が消失していること,構造物が短く土砂のバイパスがあることなどが主要因であることを明らかにした.田中は,wave set-upの発現特性には河川規模に応じた依存性を調べた.2006年10月に太平洋沿岸域に来襲した低気圧の際に,規模の異なる8河川で見られたwave set-upを定量的に評価した.
KAKENHI-PROJECT-17360230
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17360230
河口開口部制御のための地形平衡理論の展開
その結果,河川の規模に応じてその発現に相違が見られた.wave set-up高さと沖波波高との間の比例定数がほぼ河口水深に反比例することを示すことが出来た.佐々木は,岩木川河口の古地形図を基に河口の地形変動量と河口閉塞の関係を調べ、(1)冬季に多く発生している河口閉塞は北北西からの季節風による高波浪によることを明らかにした。また、河口における順流および逆流の流速計算値は実測値と良い一致を示し、河口の流動を支配する河川流量は岩木川の流量であることを明らかにした。伊福は,昨年度に開発した海底・河床地形を同時計測する高効率で高精度なシステムを用い,数多くの島嶼が存在し,海峡部に塩釜を有する極めて複雑な地形である備讃瀬戸航路において広域移動潮流観測を実施し,潮汐の残差流と三つ子砂嘴への土砂移動,サンドウェーブの収斂および土砂の移動方向との間には強い関連があることが明らかにした.南は,河口付近に設置される人工リーフまたは離岸堤の設置に伴う汀線変化を予測するための波浪場の計算を山形県、宮城県,石川県の海岸に適用した。波浪場にはエネルギー平衡方程式と強非線形の拡張型Boussinesq方程式を用い大まかな堆積と侵食域を再現した。河口や潮汐入り江は,船舶の航行や洪水の通り道としての役割があり,その水路の維持管理が必要である.しかし,これらの水路は沿岸漂砂が堆積しやすいため狭隘化しやすく,しかも現象には波,河川流,潮汐流と3つの外力が関与するため複雑で,未解明な部分も多く,管理が難しい問題のひとつである.本研究は,この3つの外力の作用下で生じる,河口開口部や,潮汐入り江の地形平衡条件を高度化し,水路管理に資することを目的としている.砂州の中を浸透する流れを現地観測し,その流量を定量化した.次に,この浸透の影響を考慮した地形平衡条件を解析的に導き,実用化に一歩前進させた.河口砂州の制御には,従来導流堤や離岸堤など沿岸漂砂を抑制する海岸構造物が多く使われてきている.しかし,これらの効果は未解明な部分が多く,抑制しすぎると周辺の海域に悪影響をおよぼす副作用が報告されてきている.本研究では,海岸構造物周辺の掃流砂・浮遊砂の挙動を精度良く予測する数値モデルを開発し,構造物による沿岸漂砂の抑制効果を格段に良く評価できるようにした.これにより,河口部に流入する土砂量の評価が可能になった.これと地形平衡条件を併用すると,所期の水路幅に維持するために必要な,海岸構造物の規模や配置が計算でき,最適な海岸構造物の設計を可能にするものである.さらに,高波浪時に顕著になるウェーブセットアップを評価し,これに伴う水路流入量を定量化した.これも,地形平衡に影響を与える重要な外力の定量化である.
KAKENHI-PROJECT-17360230
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生体・人工レセブタ-のシグナル増幅機能に基づく高感度センシング膜の基本設計
イオンチャンネル及び能動輸送機能を有するセンシング膜の開発を人工及びバイオ両面からのアプロ-チにより行った。得られた研究成果の概要は以下の様である。1.ポリイミド製支持薄膜を用い単分子膜貼り合わせ法により単一のグルタミ酸レセプタ- (GluR)イオンチャンネル及び10分子以上のGLuRを含むシングル及びマルチチャンネルセンサ-を作製した。両センサ-について,検出下限がそれぞれ〈10^<-8> Mおよび〈10^<-7> Mという高い感度が得られた。さらに,シグナル増幅能として1.9×10^7(per second)という極めて大きな値が得られた。2.モルモット小腸刷子縁膜から単離,精製したNa^+/〓ーグルコ-ス共輸送体を用いて,〓ーグルコ-ス能動輸送脂質二分子膜センサ-を作製し,10^<-9>Mの検出感度を得た。また,Na^+,K^+ーATPase包埋脂質二分子膜の膜電位について検討し,この膜はATP濃度に依存した膜電位を生起することを見出した。3.長鎖アルキル型βーシクロデキストリンの圧縮単分子膜を用いて,βーシクロデキストリンの内孔(チャンネルの入口)を通過できる大きさのρーキノンと,通過できない大きさの〔Mo(CN)_8〕^<4->及び〔Co(phen)_3〕^<2+>について,ゲスト(シクロヘキサノ-ル等)の添加によるマ-カ-透過性の変化を,inーtrough cyclic voltammetryにより測定した。その結果,ゲスト分子によるチャンネル入口の直接的ブロックに基づく分子内チャンネルの透過性制御が可能であることが明らかとなった。4.バリノマイシン包埋単分子膜において,表面圧ー面積(πーA)曲線を測定することにより,ゲストにより誘起されるマ-カ-イオン透過性の変化の機構を明らかにした。イオンチャンネル及び能動輸送機能を有するセンシング膜の開発を人工及びバイオ両面からのアプロ-チにより行った。得られた研究成果の概要は以下の様である。1.ポリイミド製支持薄膜を用い単分子膜貼り合わせ法により単一のグルタミ酸レセプタ- (GluR)イオンチャンネル及び10分子以上のGLuRを含むシングル及びマルチチャンネルセンサ-を作製した。両センサ-について,検出下限がそれぞれ〈10^<-8> Mおよび〈10^<-7> Mという高い感度が得られた。さらに,シグナル増幅能として1.9×10^7(per second)という極めて大きな値が得られた。2.モルモット小腸刷子縁膜から単離,精製したNa^+/〓ーグルコ-ス共輸送体を用いて,〓ーグルコ-ス能動輸送脂質二分子膜センサ-を作製し,10^<-9>Mの検出感度を得た。また,Na^+,K^+ーATPase包埋脂質二分子膜の膜電位について検討し,この膜はATP濃度に依存した膜電位を生起することを見出した。3.長鎖アルキル型βーシクロデキストリンの圧縮単分子膜を用いて,βーシクロデキストリンの内孔(チャンネルの入口)を通過できる大きさのρーキノンと,通過できない大きさの〔Mo(CN)_8〕^<4->及び〔Co(phen)_3〕^<2+>について,ゲスト(シクロヘキサノ-ル等)の添加によるマ-カ-透過性の変化を,inーtrough cyclic voltammetryにより測定した。その結果,ゲスト分子によるチャンネル入口の直接的ブロックに基づく分子内チャンネルの透過性制御が可能であることが明らかとなった。4.バリノマイシン包埋単分子膜において,表面圧ー面積(πーA)曲線を測定することにより,ゲストにより誘起されるマ-カ-イオン透過性の変化の機構を明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-03205001
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03205001
政府間財政移転の計量財政史研究:明治維新以降の長期パネルデータの構築と分析
研究計画における当初の「研究目的」は以下の通りであった。(1)明治維新以後の都道府県長期パネルデータの収集・整理・公開(ベース作業)、(2)都道府県・市町村財政の歴史的動態およびその都道府県格差の記述統計分析(サブテーマ)、(3)都道府県・市町村財政の都道府県格差の長期的要因分解(サブテーマ)、(4)政府間財政移転の制度導入が財政的・社会的アウトカムに与えた影響の推定(メインテーマ)。このうち、(1)については、1年目から引き続き、2年目においては戦前および戦後の都道府県・市町村地方財政の都道府県レベルのパネルデータの構築を進めた。後述するように、大正・昭和期(1910-1930年代)の地方財政データにおいて計画よりも収集が遅れ、費用も想定以上となっているものの、計画した地方財政パネルデータの収集のメドは立ちつつある。具体的には、上述した大正・昭和期以外では、明治期地方財政パネルデータはほぼ完成した。また戦後についても、戦後初期(1950年代から60年代初頭)にかけては予算執行の関係上、PDFデータの収集で待機中であるものの、それ以降の歳出データについては1970年代までの電子化が終了しており、それ以降のe-Statとの接続も完了している。(2)(3)については、データ収集がほぼ終了した明治期の地方財政データについては論文化を進めており、学会・研究会で計2回のフルペーパーの報告を行った。また、大正期・戦前昭和期の分析の論文化を進めた。(4)については地方財政パネルデータの完成後に分析を開始する予定である。1年目から引き続き、2年目においては戦前および戦後の都道府県・市町村地方財政の都道府県レベルのパネルデータの構築を進めるとともに、データの構築が終了した明治期については論文執筆および学会・研究会報告を行った。パネルデータ構築においては、戦前・戦後を同時進行でデータ整理を進めている。本来の予定では、2年目時点ではデータ構築は終了して各種分析に着手している計画であったが、とりわけ戦前の大正・昭和期(1910-1930年代)の地方財政データにおいては、原票における統計の細分化・複雑化が生じており、当初の見込みよりも作業に時間がかかっており、かつ予算も当初よりもかなり多く必要となる見込みである。具体的には、この時期は「内務省統計報告」の地方財政の決算統計を用いる予定だが、それ以前・以後と接続性のあるパネルデータを作成するためには、細分化された項目を再集計する必要があることが判明した。従って、入力項目が当初予定の倍以上の分量に上っているため、やや遅れている。また戦後地方財政データについては大部分のデータ収集はpdfレベルで終了しているが、戦後初期の一部のデータについては、予算上の関係で、戦前地方財政データの終了のメドがついてから着手する予定である。一方で、明治期の地方財政データについては一通りのデータ構築が終了しており、現在は論文作成を進めており、フルペーパーに基づく学会報告も行っている。また、大正期・戦前昭和期についての論文作成にも着手を始めている。本研究の最終的な目的である財政調整制度導入効果の分析については、戦前・戦後を通じたパネルデータが一通りそろわないと実施できないため、研究が遅れている。しかし、データがそろい次第すみやかに分析実施・論文執筆ができる体制はできている。第一に、現在ほぼ完成している明治期地方財政の研究については、2019年度前半中に日本語論文としてワーキングペーパーとして公表し、投稿予定である。第二に、同様の内容を大正期・戦前昭和期についても2019年度中に論文を完成させ、公開・投稿する予定である。第三に、計画よりも遅れているものの、2019年度前半には地方財政データが全体として完成する予定であるため、これを利用した通史的な地方財政の動態的分析や、政府間財政移転の制度導入の財政的インパクトを分析した論文の執筆を、2019年度後半から開始する。全体として、本科研の予算のみで当初計画した研究論文のうち、「政府間財政移転の制度導入が社会的(非財政的)アウトカムに与えた影響の推定」の研究を実現することは費用的に困難であるが、それ以外は論文化が可能な見通しである。具体的には、1.明治期地方財政の日本語論文、2.大正期・戦前期地方財政の日本語論文、3.戦前・戦後を合わせた通史的な地方財政の動態分析の英語論文、4.「政府間財政移転の制度導入が財政的アウトカムに与えた影響の推定」の英語論文の計4本の論文を執筆する予定である。また予算的に困難となった、社会的(非財政的)アウトカムのパネルデータ構築・分析については、他の関連科研費プロジェクトとのリンケージや今後の新しい外部資金獲得を利用して、予定通り実現する予定である。最後に、データのインターネット公開についても、これらの論文をワーキングペーパーとして公開する時点ですみやかに実施し、多くの研究者に利用してもらうべく、周知や広報に努める予定である。一年目は、戦前財政の都道府県パネルデータ構築を中心的に行った。具体的には、『内務省報告』、『大日本帝国年鑑』、『地方財政概要』といった戦前の主要地方財政統計を精査し、都道府県パネルデータの構築のために使うべき統計を選択した。具体的には、とりわけ明治初期については『内務省報告』の地方財政決算データを用いるのが適当と判断し、その電子化を進めた。一方で、1900年代からは『内務省報告』はより詳細な統計データと変化し、データ入力のコストが大幅に増えることから、『大日本帝国年鑑』を用いるのが妥当と判断し、データ収集・整理を行った。さらに1920年代からは『大日本帝国年鑑』に加えて『地方財政概要』の都道府県データが充実していくため、どちらを用いるかを検討した。
KAKENHI-PROJECT-17K03795
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政府間財政移転の計量財政史研究:明治維新以降の長期パネルデータの構築と分析
これらの作業の結果、1883年(明治16年)から1900年代までの道府県・市町村の財政歳出・歳入のパネルデータの整理および電子化をある程度進めることができた。その上で、二年目にさらに電子化すべき統計の収集と選定についても一定程度終了しており、データ入力の外注を行う段階である。さらに戦前財政関連の研究蓄積を整理し、多くの研究書や研究論文を収集した。その結果、明治期の地方財政について都道府県パネルデータを部分的にでも活用して検証した研究はほぼ存在しないことが明らかとなった。本プロジェクトのメインテーマは戦前から戦後へと連なる財政調整制度の歴史的検証であり、現在整理・分析している明治期・大正期の地方財政は財政調整制度の前史的な位置づけとなる。しかし、明治期・大正期の地方財政の記述統計的あるいは計量的検証を行うことも貴重な学術的な貢献となると判断し、そのための論文の執筆準備を始めた。データ入力の経費に関しては予想よりも高コストとなっているものの、データ整理・データ分析の進捗状況についてはおおむね順調に進んでいる。財政データについては、戦前期のある時点までのパネルデータ化が進んでおり、この期間に絞った研究論文を執筆し、学会報告も行う予定である。戦前・戦後の全期間に渡るパネルデータ構築・分析についてはもう少し時間はかかる予定ではあるが、一方で、現在まで収集した戦前期データを活用して当初の計画にはなかった研究論文の構想も進んでおり、全体としては順調に進展している。研究計画における当初の「研究目的」は以下の通りであった。(1)明治維新以後の都道府県長期パネルデータの収集・整理・公開(ベース作業)、(2)都道府県・市町村財政の歴史的動態およびその都道府県格差の記述統計分析(サブテーマ)、(3)都道府県・市町村財政の都道府県格差の長期的要因分解(サブテーマ)、(4)政府間財政移転の制度導入が財政的・社会的アウトカムに与えた影響の推定(メインテーマ)。このうち、(1)については、1年目から引き続き、2年目においては戦前および戦後の都道府県・市町村地方財政の都道府県レベルのパネルデータの構築を進めた。後述するように、大正・昭和期(1910-1930年代)の地方財政データにおいて計画よりも収集が遅れ、費用も想定以上となっているものの、計画した地方財政パネルデータの収集のメドは立ちつつある。具体的には、上述した大正・昭和期以外では、明治期地方財政パネルデータはほぼ完成した。また戦後についても、戦後初期(1950年代から60年代初頭)にかけては予算執行の関係上、PDFデータの収集で待機中であるものの、それ以降の歳出データについては1970年代までの電子化が終了しており、それ以降のe-Statとの接続も完了している。(2)(3)については、データ収集がほぼ終了した明治期の地方財政データについては論文化を進めており、学会・研究会で計2回のフルペーパーの報告を行った。また、大正期・戦前昭和期の分析の論文化を進めた。(4)については地方財政パネルデータの完成後に分析を開始する予定である。
KAKENHI-PROJECT-17K03795
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K03795
住民主体による団地リソース循環活用型ストック再生に資する意思決定支援システム
再生期を迎えた住宅団地を対象に、長年で養われてきた様々な地域リソースの循環活用型再生が可能となる意思決定支援システムの構築を目的として、住民要求の反映と再生目標の共有化に資するような「ストック再生効果診断システム」を開発した上で、社会実験として団地住民と協働したワークショップの開催やセルフリノベーションによる空き家改修を実践し、その効果を検証した。そして、国内外の先進的な住民主体による住環境マネジメント活動の分析をふまえた上で、地域資源の保全と共助コミュニティの醸成に向けたロードマップを策定し、多様な人々のニーズや文化を包含するハウジング手法を明らかにした。再生期を迎えた住宅団地において、団地リソース循環活用型再生への誘導が可能となる意思決定支援システムを構築することを目的に、本年度は次の成果を得た。1.向ヶ丘第一団地でのストック再生実証試験で得られた施工性、コスト、法対応、生活検証などの様々な検証成果を、再生手法ごとに整理・分析し、1社会、2経済、3資源、4環境の4つの評価領域ごとに持続可能型社会としての達成度の総合評価を行うことができる「ストック再生効果診断システム」を住民の合意形成に寄与するツールとして開発した。2.実在する住宅団地において、団地住民と協働して団地再生に向けての課題を発見することを目的としたワークショップを継続的に実施した。また、住民意向を把握するために実施したインタビュー調査やアンケート調査の傾向を分析した。その結果、多様な住民意向を反映させるためには棟別再生が有効であることが明らかになった。3.ストック改修実験の参考事例として住戸改修の先行事例を調査し、ゼロエミッション化に向けたストック再生の可能性を検証した。4.団地再生マネジメントの仕組みとして英国での先進事例を明らかにし、団地リソース循環活用に向けたマネジメントシステムの基本フレームを見出した。5.棟別再生に向けた意思決定支援には住民参加型のコーポラティブ住宅における意思決定の仕組みが重要であるとの認識に至ったことから、コーポラティブ住宅での再生の取り組みについて調査し、合意形成の特徴について明らかにした。6.多様な住民要求を踏まえた合意形成の支援システムを検討する上での関連研究として、ルールづくりで持続可能な住環境保全に取り組む建築協定地区での取り組みや、多文化共生の視点から外国人の居住適応実態についても特徴を明らかにした。また、古民家の保存活用に対する所有者や一般市民の意識の特徴も明らかにした。再生期を迎えた住宅団地におけるリソース循環活用型再生への誘導に資する意思決定支援システムの構築に向けて、本年度は次の成果を得た。1.団地リソースの循環活用型再生の意義と魅力を具体的に提示するために、実在する住宅団地(大阪府営瓜破東住宅)の空き家を活用して住戸改修実験を実施した。改修後には居住実験を行うと共に来場者アンケートを実施し、空き室をセルフリノベーションにより活用することの有効性を検証した。2.団地リソースとしての多種多様な地域コミュニティに着目し、京都御蔵山学区の「御蔵山ゆう輪蔵ぶ」の活動内容を調査し、郊外住宅地のコミュニティにおける「互助」の有用性について検証した。そして、住民を交えたワークショップやアンケート調査の結果から、シェアリング・エコノミーのような個人間の互助を根付かせることを最終目的とした地域住民主体の互助システムの有効性を明らかにした。3.建築資源としてのストック活用の取り組みについてアジア諸国(台湾、マカオ、タイ)の先進的事例を調査し、ストックの持続的活用を前提とした設計手法とサポートシステムについて検証した。また、仏のプレシ・ロバンソン団地の再生に関する調査研究を行い、建築内容の決定を関係者の協議に委ねる手段を採用してコミュニティ再生に成功した実態を把握した。4.住民主体による住環境マネジメントを持続的に展開している建築協定地区の活動実態を調査し、団地リソースの循環活用に資する意思決定の特徴を明らかにした。5.多文化共生を前提とした意思決定プロセスの可能性を検証するために、住宅団地における外国人居住の実態を知る管理者、住民参加を前提とした改修事業者、外国人のための住宅を斡旋する民間業者の経営者らに聞き取り調査を行い、高経年の団地が外国人居住を含む多文化共生社会の器として機能している実態、今後のさらなる活用の可能性を示唆する事例が知見された。最終年度となる本年は、様々な地域資源の活用による持続可能な社会デザインに資するような意思決定支援システムの構築に向けて、次の成果を得た。1.地域リソースの循環活用型再生の意義と魅力を具体化する社会実験として、空き家となった古民家(兵庫県洲本市)の改修工事を行い、セルフリノベーションの可能性とコミュニティ再生への効果について検証を行った。2.建築資源としてのストック活用の取り組みについてアジア諸国(タイ、台湾、マカオ、香港)の先進的事例を調査し、創造都市としてのコミュニティ活性化に向けた持続可能な施策とデザインの検討を行った。3.欧米諸国の住宅団地のストック再生の背景を分析し、当初の都市骨格や建築計画に変化に対応できる柔軟な建築上・管理運営上の仕組みが必要であることを明らかにした。4.住民主体による住環境マネジメントを持続的に展開している建築協定地区の活動成果を診断する評価システムを構築し、地域リソースの循環活用に資する地域マネジメントの指針について明らかにした。5.住宅団地や伝統的民家の保存と継続活用に関する所有者・管理者の意思決定プロセスについて事例調査を行い、意思決定におけるコミュニケーションの重要性を明らかにした。6.住宅団地におけるリソース循環活用型再生の課題について多角的に分析した上で、共助コミュニティの醸成に資するためのロードマップを作成し、団地リソース循環活用型の展開手法について考察した。
KAKENHI-PROJECT-25512003
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25512003
住民主体による団地リソース循環活用型ストック再生に資する意思決定支援システム
7.まとめとして、団地リソース循環活用型ストック再生システムの汎用化に向けた検討を行い、住民要求に裏付けされた個性あるストック再生には「インクルーシブ・ハウジング」というアプローチが有効であることを検証した。再生期を迎えた住宅団地を対象に、長年で養われてきた様々な地域リソースの循環活用型再生が可能となる意思決定支援システムの構築を目的として、住民要求の反映と再生目標の共有化に資するような「ストック再生効果診断システム」を開発した上で、社会実験として団地住民と協働したワークショップの開催やセルフリノベーションによる空き家改修を実践し、その効果を検証した。そして、国内外の先進的な住民主体による住環境マネジメント活動の分析をふまえた上で、地域資源の保全と共助コミュニティの醸成に向けたロードマップを策定し、多様な人々のニーズや文化を包含するハウジング手法を明らかにした。実在する住宅団地の空き家を活用して団地の将来像を見据えた住戸改修実験を実施したことは、団地リソースの循環活用型再生の意義と魅力を具体的に提示し、団地住民の意思決定に有効に機能することが検証できた。また、団地住民の「互助」による地域コミュニティの活性化の実例調査や建築協定地区での持続的な住環境マネジメント、多文化共生を前提としたコミュニティ・マネジメントの実態を検証することにより、多様な住民要求を反映した意思決定支援システムの構築のためには、年齢、能力、性別、経済、居住環境、人種等の様々な社会的排除に対処するソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)という考えを前提としたデザイン手法の必要性が明らかになった。海外の先進的な事例調査については、限られた事例ではあるがストックの持続的活用を前提とした設計手法やサポートシステム、フレキシブルなコミュニティ・マネジメントの仕組みが重要であることが解明された。住環境計画最終年度となる次年度は、これまでの研究成果を活用し、社会実験の実践をつうじて意思決定支援システムの検証を行い、その有効性を検討する。さらに、ストック改修を前提とした公的団地を対象に入居者募集の際の改修内容の意思決定を支援するシステムを検討すると共に、多文化共生を前提とした住民による意思決定プロセスにおいての団地リソースの活用可能性についても検証する。そして、持続型共助コミュニティの醸成と団地リソース循環活用型再生に向けて、団地の現状課題と住民意向に連動したストック再生に向けてのロードマップ(時系列の実行計画)の作成に取り組む。また、設計実務家や法律家などの協力を得て、都市計画法や建築基準法上の建築計画的課題、区分所有法や不動産登記上の課題などを明確化し、団地リソース循環活用型ストック再生の汎用化に向けた意思決定支援システムの検討を行う。持続可能型社会としての達成度の総合評価を行うことができる「ストック再生効果診断システム」が、団地再生に向けた目標像の具体化と合意形成に寄与するツールとして機能する可能性が見いだせた。また、リソース循環活用型ストック再生に資する意思決定支援システムの構築に資する先進事例の分析を行い、マネジメント手法の基本フレームが見出せた。
KAKENHI-PROJECT-25512003
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細胞死(アポトーシス)誘導分子をターゲットとしたAIDS発症抑制
細胞死を誘導する細胞表面レセプターであるFasとそのリガンドであるFasリガンド(FasL)によりAIDS発症時におけるリンパ球減少が生じる可能性が示唆されている。また、昨年度までに我々はII型細胞表面膜蛋白質であるFasLがマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)によって切断され,可溶型FasLとして遊離されることを見いだした。その後,切断された可溶型FasLが活性化リンパ球細胞にアポトーシスを引き起こす能力を有するとが判明したが,病態との関連については不明のままであった。本研究において,我々はクローニングしたサルFasLの遺伝子配列を元にrcombinat FasLを作成し、可溶型サルFasLの定量システムを樹立した。また、このシステムを用いてSIV感染後のサルにおける末梢血中の可溶型FasL量をモニターした結果,ウイルス量(p40)のピーク前後で可溶型FasL量も増加することが判明した。さらに,SIV感染カニクイサルにヒドロキサム酸型MMP阻害剤(KBR8301)を投与したところ末梢血中の可溶型FasL量が低下することが確認された。SIV感染に伴うCD4^+リンパ球の減少はMMP阻害剤の投与により回復されることが判明したがその効果は一過性であった。また,この時,p27量は逆にMMP阻害剤の投与により上昇することが明らかとなった。以上の結果はMMP阻害剤の投与により可溶型FasLの遊離が抑制された結果,CD4^+リンパ球のアポトーシスが抑制された可能性を示唆する。細胞死を誘導する細胞表面レセプターであるFasとそのリガンドであるFasリガンド(FasL)によりAIDS発症時におけるリンパ球減少が生じる可能性が示唆されている。また、昨年度までに我々はII型細胞表面膜蛋白質であるFasLがマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)によって切断され,可溶型FasLとして遊離されることを見いだした。その後,切断された可溶型FasLが活性化リンパ球細胞にアポトーシスを引き起こす能力を有するとが判明したが,病態との関連については不明のままであった。本研究において,我々はクローニングしたサルFasLの遺伝子配列を元にrcombinat FasLを作成し、可溶型サルFasLの定量システムを樹立した。また、このシステムを用いてSIV感染後のサルにおける末梢血中の可溶型FasL量をモニターした結果,ウイルス量(p40)のピーク前後で可溶型FasL量も増加することが判明した。さらに,SIV感染カニクイサルにヒドロキサム酸型MMP阻害剤(KBR8301)を投与したところ末梢血中の可溶型FasL量が低下することが確認された。SIV感染に伴うCD4^+リンパ球の減少はMMP阻害剤の投与により回復されることが判明したがその効果は一過性であった。また,この時,p27量は逆にMMP阻害剤の投与により上昇することが明らかとなった。以上の結果はMMP阻害剤の投与により可溶型FasLの遊離が抑制された結果,CD4^+リンパ球のアポトーシスが抑制された可能性を示唆する。
KAKENHI-PROJECT-10180228
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DNA損傷応答因子Rassf1cの機能解析
本研究ではDNA損傷応答因子Rassf1cノックアウトマウスおよびRasssf1a,Rassf1cダブルノックアウトマウスの作出に成功した。Rassf1cノックアウトマウスは正常に出生するものの、離乳後から成長遅延を示すことが明らかとなった。以上の結果から、Rassf1cはDNA損傷応答のみならず、正常な個体の成長に必須の役割を担っていることが明らかとなった。本研究ではDNA損傷応答因子Rassf1cノックアウトマウスおよびRasssf1a,Rassf1cダブルノックアウトマウスの作出に成功した。Rassf1cノックアウトマウスは正常に出生するものの、離乳後から成長遅延を示すことが明らかとなった。以上の結果から、Rassf1cはDNA損傷応答のみならず、正常な個体の成長に必須の役割を担っていることが明らかとなった。ゲノムDNAは様々な内的・外的要因によって常に損傷の危機に曝されている。軽度のDNA損傷に対しては一連のDNA修復酵素群のはたらきにより細胞の恒常性が維持される。一方、過度のDNA損傷を受けた細胞はアポトーシスをおこし、速やかに排除されることが知られている。ストレス応答性MAPキナーゼであるJNKは紫外線やDNA損傷薬剤を始めとする様々なストレスにより活性化され、その活性化状態の違いにより細胞の生死を規定する分子スイッチである。しかしながらこれら応答因子の生体レベルにおける機能に対する理解は少ない。そこで本研究ではDNA損傷応答因子のRassflc遺伝子破壊マウスを新たに作出し、その生体レベルにおける機能解析を試みた。Rassflc遺伝子特異的なターゲティングベクターを構築、E14K ES細胞ヘエレクトロポレーション方にて遺伝子導入を行い、相同組換え体クローンを得た。得られたクローンをC57BL/6Jマウスのブラストシストへ注入し、仮親子宮へ移植、キメラマウスを得た。得られたキメラマウスと野生型マウスを交配したところ、相同組換え体クローン由来のES細胞の生殖細胞系列移行が確認出来た為、F1個体同士の交配によりRassflc遺伝子ノックアウト(KO)マウス系統を樹立した。生まれてきたRassflc KOマウスは正常に出産し、生殖能にも異常は見られなかった。しかしながら、8週齢以降において徐々に成長遅延を呈し、高齢マウスにおいては体長・体重の明確な低下が観察された。そこで各臓器を摘出し、湿重量を計測したところ、ほぼ全ての臓器が野生型と比較して小さくなっている事が明らかとなった。本マウスの更なる解析により、Rassflc遺伝子の生体レベルにおける機能が解明できるものと期待される。ゲノムDNAは様々な内的・外的要因によって常に損傷の危機に曝されている。軽度のDNA損傷に対Lては一連のDNA修復酵素群のはたらきにより細胞の恒常性が維持される。一方、過度のDNA損傷を受けた細胞はアポトーシスをおこし、速やかに排除されることが知られている。ストレス応答性MAPキナーゼであるJNKは紫外線やDNA損傷薬剤を始めとする様々なストレスにより活性化されこその活性化状態の違いにより細胞の生死を規定する分子スイッチである。しかしながらこれら応答因子の生体レベルにおける機能に対する理解は少ない。そこで本研究ではDNA損傷応答因子のRassf1cの機能解析を目的とし、Rassf1遺伝子破壊マウスの作出を通じてRassf1c遺伝子の機能解析を行なう事目的とした。今年度はRassf1のメジャーアイソフォームであるRassf1a, Rassf1cのダブルノックアウトマウスを新たに作出し、その生体レベルにおける機能解析を試みた。Rassf1a/cの両アイソフォームを破壊可能なターゲティングベクターを構築、E14K ES細胞ヘエレクトロポレーション方にて遺伝子導入を行い、相同組換え体クローンを得た。得られたクローンをC57BL/6Jマウスのブラストシストへ注入し、仮親子宮へ移植、キメラマウスを得た。得られたキメラマウスと野生型マウスを交配したところ、相同組換え体クローン由来のES細胞の生殖細胞系列移行が確認出来た為、F1個体同士の交配によりRassfla/c遺伝子ダブルノックアウト(KO)マウス系統を樹立した。生まれてきたRassf1a/cダブルKOマウスは正常に出産し、生殖能には異常は見られなかった。今後、既に樹立済みのRassf1cノックアウトマウスとの詳細な比較解析を行なっていく予定である。
KAKENHI-PROJECT-21790065
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21790065
糖尿病発症の環境因子-ウイルス誘発糖尿病の研究
糖尿病の環境因子としてのウイルス誘発非肥満糖尿病の防御機構の解明2型糖尿病の成因を遺伝因子と環境因子にわけた場合、遺伝因子が関与するモデル動物には、db/dbマウス、ob/obマウスがあり、その原因はそれぞれレプチン、レプチン受容体の遺伝子変異である。一方、環境因子による糖尿病のモデル動物には、ストレプトゾトシンやアロキサンという化学物質によるものしかなかった。また従来のウイルス誘発糖尿病モデルの全てがインスリン依存糖尿病(1型糖尿病)のモデルであった。本モデルは、環境因子としてウイルス感染がインスリン抵抗性を伴わないインスリン非依存糖尿病を誘発することを示した世界で最初の糖尿病モデルである。本モデルの糖尿病発症に関し、どの免疫担当細胞が防御に関与するか検討した。RAG2遺伝子、CD4+T細胞、CD8+T細胞、B細胞のノックアウトマウスにEMCウイルスNDK25株を接種した。接種後にRAG2ノックアウトマウスにのみ糖尿病(インスリン非依存性)が発症することより、成熟リンパ球が防御に必要であることが明らかになった。CD4+T細胞、CD8+T細胞、B細胞の単独ノックアウトマウスには、防御機構が残り、糖尿病を発症しない事により、成熟リンパ球が全て欠乏した状態でウイルスが膵ラ氏島に直接感染し、糖尿病を発症することが判明した。またウイルスが直接、β細胞に感染した場合の破壊の程度はウイルス株によって異なった。以上の研究の結果、環境因子として、ウイルスが非肥満糖尿病を発症させる場合、1)宿主の防御能がウイルスに対し破たんしていること、2)ウイルスによる膵β細胞障害の程度により残存インスリン含量が異なり、臨床像が異なる(インスリン依存性または非依存性)。ことが示された。すなわち同じ環境要因によっても発症の有無と症状の程度に個体差が生じることがモデル動物で示唆された。糖尿病の環境因子としてのウイルス誘発非肥満糖尿病の防御機構の解明2型糖尿病の成因を遺伝因子と環境因子にわけた場合、遺伝因子が関与するモデル動物には、db/dbマウス、ob/obマウスがあり、その原因はそれぞれレプチン、レプチン受容体の遺伝子変異である。一方、環境因子による糖尿病のモデル動物には、ストレプトゾトシンやアロキサンという化学物質によるものしかなかった。また従来のウイルス誘発糖尿病モデルの全てがインスリン依存糖尿病(1型糖尿病)のモデルであった。本モデルは、環境因子としてウイルス感染がインスリン抵抗性を伴わないインスリン非依存糖尿病を誘発することを示した世界で最初の糖尿病モデルである。本モデルの糖尿病発症に関し、どの免疫担当細胞が防御に関与するか検討した。RAG2遺伝子、CD4+T細胞、CD8+T細胞、B細胞のノックアウトマウスにEMCウイルスNDK25株を接種した。接種後にRAG2ノックアウトマウスにのみ糖尿病(インスリン非依存性)が発症することより、成熟リンパ球が防御に必要であることが明らかになった。CD4+T細胞、CD8+T細胞、B細胞の単独ノックアウトマウスには、防御機構が残り、糖尿病を発症しない事により、成熟リンパ球が全て欠乏した状態でウイルスが膵ラ氏島に直接感染し、糖尿病を発症することが判明した。またウイルスが直接、β細胞に感染した場合の破壊の程度はウイルス株によって異なった。以上の研究の結果、環境因子として、ウイルスが非肥満糖尿病を発症させる場合、1)宿主の防御能がウイルスに対し破たんしていること、2)ウイルスによる膵β細胞障害の程度により残存インスリン含量が異なり、臨床像が異なる(インスリン依存性または非依存性)。ことが示された。すなわち同じ環境要因によっても発症の有無と症状の程度に個体差が生じることがモデル動物で示唆された。ウイルス誘発非肥満糖尿病の防御機構の解明(1)ウイルス誘発非肥満糖尿病の発症に関し、本研究では、どの免疫担当細胞が防御に関与するかCD4+T細胞、CD8+T細胞、B細胞のノックアウトマウスにEMCウイルスNDK25株を接種した。接種前後に経口ブドウ糖負荷試験を施行した。膵のインスリン含量をRIA法で測定した。ウイルスが膵ラ氏島に直接感染しているか否かEMCウイルスに特異的なプローブを用い、in situ hybridization法にて確認した。以上の研究の結果、ウイルス誘発非肥満糖尿病の発症に関し、成熟リンパ球が防御に必要であることが明らかになった。またその防御機構には、CD4+T細胞やCD8+T細胞がそれぞれ単独で働いているのではないことが、示唆された。(2)本モデルの膵島β細胞障害がウイルス感染によるネクローシスによるのかアポトーシスによるか明らかにするために組織学的検討をした。アポトーシスシグナルを見るためにTUNEL法を行ったが、アポトーシスシグナルは認めなかった。(3)本モデルの膵ラ氏島細胞障害機序の一つにパーフォリンの関与が示唆された。その役割を調べるためにパーフォリンノックアウトマウスにEMCウイルスを摂取した。RAG2ノックアウトマウスで糖尿病が発症し、パーフォリンノックアウトマウスとパーフォリンとRAG2のノックアウトマウスでは糖尿病は発症しないことから、宿主の防御機構が低下している場合に、パーフォリンの存在が膵ラ氏島細胞障害に必要であることが示された。以上の研究成果の一部は、日本糖尿病学会、米国糖尿病学会等で発表し、現在論文を投稿中である。ウイルス誘発非肥満糖尿病の防御機構の解明肥満2型糖尿病のモデル動物には、db/dbマウス、ob/obマウスがあり、その原因はそれぞれレプチン、レプチン受容体の遺伝子変異である。
KAKENHI-PROJECT-13671174
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13671174
糖尿病発症の環境因子-ウイルス誘発糖尿病の研究
一方、環境因子による糖尿病のモデル動物には、ストレプトゾトシンやアロキサンという化学物質によるものしかなかった。また従来のウイルス誘発糖尿病モデルの全てがインスリン依存糖尿病(1型糖尿病)のモデルであった。本モデルは、環境因子としてウイルス感染がインスリン抵抗性を伴わないインスリン非依存糖尿病を誘発することを示した世界で最初の糖尿病モデルである。本モデルの糖尿病発症に関し、どの免疫担当細胞が防御に関与するかRAG2遺伝子、CD4+T細胞、CD8+T細胞、B細胞のノックアウトマウスにEMCウイルスNDK25株を接種した。接種前後に経口ブドウ糖負荷試験を施行することにより、成熟リンパ球が防御に必要であることが明らかになった。CD4+T細胞、CD8+T細胞、B細胞の単独ノックアウトマウスには、防御機構が残り、糖尿病を発症しない事により、成熟リンパ球が全て欠乏した状態でウイルスが膵ラ氏島に直接感染し、糖尿病を発症することが判明した。さらにパーフォリンの役割を見るためパーフォリンノックアウトマウスにEMCウイルスを摂取した。成熟リンパ球が全て欠乏したマウスでパーフォリンの存在しないマウスでは糖尿病は発症しないことから、宿主の防御機構が低下している場合でも宿主のパーフォリンの存在が膵ラ氏島細胞障害に必要であることが示された。以上の研究の結果、ウイルス誘発非肥満糖尿病の発症に関し、宿主の防御能の違いにより膵β細胞障害の程度が異なることが示された。すなわち同じ環境要因によっても発症に個体差が生じることがモデル動物で示唆された。
KAKENHI-PROJECT-13671174
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13671174
口腔扁平上皮癌細胞におけるグリコーゲン代謝の解明
口腔癌細胞内のグリコーゲンは癌細胞増殖に必要なエネルギーおよび核酸、脂質などの供給源であると考えられる。本研究の目的は、グリコーゲンの代謝を究明し、さらにその後に控える癌細胞の代謝異常を解明することである。今回の研究結果では、口腔扁平上皮癌細胞は解糖系にてエネルギーを得ていると考えられていたが、グリコーゲン→グルコース→解糖系という単純な経路ではなく、アミノ酸代謝等によりエネルギーを得ている可能性が示された。今後、アミノ酸やグルクロン酸、また、核酸等の代謝をさらに検討し癌細胞の代謝を検討する必要がある。過去の研究で口腔扁平上皮癌細胞ではグリコーゲン代謝酵素の活性が上昇していることが明らかとなった。そこで本研究課題では(1)残された代謝経路であるグルコースー6ーリン酸の代謝の解明(解糖系との関連)、(2)グリコーゲン代謝バランスの解明(活性調:異化、同化のバランス、各種酵素の発現量の違いを明らかにする)、(3)口腔扁平上皮癌の分化度および増殖能とグリコーゲン/糖代謝の関連性(活性調、代謝バランス)の解明を行う。上記目的において研究期間1年目(平成26年度)には下記の研究成果が得られた。1,グルコースー6ーリン酸の代謝の解明(解糖系との関連):ホスホグルコムターゼ、グルコキナーゼおよびグルコースー6ーホスファターゼの免疫組織染色は現在3症例(3患者)終了。まだ有意差には至らないものの、異型細胞でグルコースー6ーホスファターゼが強く染色されている。一方、ホスホグルコムターゼ、グルコキナーゼは異型細胞、正常細胞での差があまりない印象である。2,グリコーゲン代謝バランスの解明:口腔粘膜異型性上皮の細胞株(SAS,Ca9-22, HSC2, HSC3,SquuA, SquuB)と正常粘膜上皮を対象に、グルコース代謝酵素の発現を検討したところ、ウエスタンブロット法ではグリコーゲン代謝酵素であるGlycogen Phosphorylase BBが正常細胞と比べて癌細胞株でより強いバンドを検出した。またreal-time PCR法でもGlycogen Phosphorylase BBが癌細胞株でmRNAの発現が強いことが明らかとなった。3,口腔扁平上皮癌の分化度および増殖能とグリコーゲン/糖代謝の関連性の解明:口腔扁平上皮癌の切除標本(5名分:それぞれ癌組織、正常組織10検体)を収集しメタボローム解析(ヒューマンメタボロミクス社に依頼)を開始した。結果はH27年5月中旬に届く予定である。癌の研究において、がんと代謝は重要なテーマであり、口腔扁平上皮癌においてグリコーゲンは糖代謝の起点/キー物質である。これまでの研究で、口腔扁平上皮癌細胞ではグルコースの取り込みが(Glut-1の発現)が亢進していること、グリコーゲンの分解(分解酵素であるglycogen phosphorylase isoenzyme BBの発現)が亢進していることを見いだした。本研究年度には、残された代謝経路である、(1)グルコースー6ーリン酸の代謝の解明、(2)グリコーゲン代謝バランスの解明、(3)癌細胞の代謝経路の解明を行った。(1)グルコースー6ーリン酸の代謝の解明:口腔扁平上皮癌組織を用いて、グルコースー6ーリン酸の代謝酵素であるGlucokinase、Phosphoglucomtase3、Glucose-6-phosphataseの発現を免疫組織学的に検討した。その結果、グリコーゲンとグルコースー6ーリン酸間の代謝に関与する酵素であるGlucokinaseとGlucose-6-phosphataseの発現が更新していることが明らかとなった。(2)グリコーゲン代謝バランスの解明、および、(3)癌細胞の代謝経路の解明:口腔扁平上皮癌組織(10検体)および正常口腔上皮組織(10検体)についてメタボローム解析を行った。現在結果の分析中である。本研究期間内には、(1)グルコースー6ーリン酸の代謝の解明、(2)グリコーゲン代謝バランスの解明、(3)口腔扁平上皮癌の分化度および増殖能とグリコーゲン/糖代謝の関連性の解明を計画している。現在までに(1)は終了し、現在(2)および(3)を行っている。(2)に関しては当初、ウェスタンブロットおよびPCRを用いて解析する予定であったが、(2)および(3)をまとめてメタボローム解析にて解明する。メタボローム解析には予定した20検体(癌組織10、コントロール正常組織10)を提出しており、最近結果が届いた。研究の最終年度を迎えて、メタボローム結果の解析を行い、結果をまとめる予定である。上記のごとく進捗状況はほぼ順調に推移している。癌の研究において、がんと代謝は重要なテーマであり、口腔扁平上皮癌においてグリコーゲンは糖代謝の起点/キー物質である。これまでの研究で、口腔扁平上皮癌細胞では、グルコースの取り込みが(Glut-1の発現)が亢進していること、グリコーゲンの分解(分解酵素であるglycogen phosphorylase isoenzyme BBの発現)が亢進していることを見いだした。また、グルコースおよびグリコーゲン代謝で残された経路である、グルコースー6ーリン酸の代謝を解明するためグルコースー6ーリン酸の代謝酵素であるGlucokinase、Phosphoglucomtase3、Glucose-6-phosphataseの発現を免疫組織学的に検討した結果、GlucokinaseとGlucose-6-phosphataseの発現が亢進していることが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-26463040
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26463040
口腔扁平上皮癌細胞におけるグリコーゲン代謝の解明
またメタボローム解析(癌組織10検体、コントロール正常組織10検体)の結果では、酵素活性を裏付ける代謝産物の亢進が確認された。また一方では、グリコーゲン→グルコース→解糖系への移行で観察される物質が癌では観察されず、グルコースは解糖系に移行していない可能性が示唆された。その代わりにグルタミン酸やアミノ酸が癌組織で多く検出されており、グルタミン代謝やアミノ酸を利用したエネルギー産生が行われている可能性がある。また、グリコーゲン→グルコース→G6Pは、ペントースリン酸経路に取り込まれ核酸の合成に関わっている可能性がある。口腔癌細胞内のグリコーゲンは癌細胞増殖に必要なエネルギーおよび核酸、脂質などの供給源であると考えられる。本研究の目的は、グリコーゲンの代謝を究明し、さらにその後に控える癌細胞の代謝異常を解明することである。今回の研究結果では、口腔扁平上皮癌細胞は解糖系にてエネルギーを得ていると考えられていたが、グリコーゲン→グルコース→解糖系という単純な経路ではなく、アミノ酸代謝等によりエネルギーを得ている可能性が示された。今後、アミノ酸やグルクロン酸、また、核酸等の代謝をさらに検討し癌細胞の代謝を検討する必要がある。本研究課題では(1)残された代謝経路であるグルコースー6ーリン酸の代謝の解明(解糖系との関連):予定例数30例(2)グリコーゲン代謝バランスの解明(活性調:異化、同化のバランス、各種酵素の発現量の違いを明らかにする):予定例数10例(3)口腔扁平上皮癌の分化度および増殖能とグリコーゲン/糖代謝の関連性(活性調、代謝バランス)の解明:予定例数12例、を行う。上記3つのテーマのうち、(1)および(2)に関しては、平成26-27年度に終了する計画をたてており、平成26年度には解析の準備を行い、期待した結果が得られることを確認した。ほぼ予定した症例数の解析が行われている。のこりのテーマ(3)については、平成26年度はパイロット研究を予定していたが、すでに全解析予定数12例中5例のサンプルの収集が終了し、平成26年度の終わりから平成27年度の初めに解析を開始することができた。現在までの進捗状況に記したように、研究計画は当初の計画通りほぼ順調に進んでいる。H28年度は、研究結果のまとめ、研究成果の発表(6月に国際学会での発表、論文作成を予定している)を行う。また得られた研究結果を基に、新たな課題の抽出、研究計画の策定などを行う。口腔外科学研究計画(1)および(2)に関しては、現在研究および解析方法の確立が終了しており、平成27年度1年を通して予定症例数の収集を行っていく。研究計画(3)のメタボローム解析に関しては、予定通り平成27年度より解析を開始する。また、残りの症例サンプル(7例分)の収集を行う。当初計画していた論文発表を次年度に延期したため、次年度使用額が生じた。当初計画していたメタボローム解析に関して、検査依頼が平成26年度末から平成27年度初めにずれ込んだためその予定額が未使用となった。H28年度に論文作成を行い、翻訳、校閲費用をH28年度請求分とあわせて使用する。平成27年度4月に平成26年度に検査予定のメタボローム解析の依頼を行った。
KAKENHI-PROJECT-26463040
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独立期以降におけるインド農業発展の制度的要因:西ベンガル州の事例
インドの農業生産は持続的に成長を続けている。本研究では、制度的要因、つまり土地改革を中心とする一連の農業立法が、農業成長の重要な背景をなしたであろうとの立場から、西ベンガル州を事例にして立法の歴史をほぼ網羅的に調査した。その結果、土地改革が終わる1955年までの約20年間に、実に130件以上の農業関連法案が審議され、しかもその大半が議員提案だったことが明らかになった。この事実は、農業政策の形成過程が従来考えられてきたよりはるかに幅広く深い背景をもつものだったことを示唆している。インドの土地改革は否定的に評価されることが多かったが、本研究によって、より広い文脈の中に置き直して再評価するための資料的な基礎を据えることができたのではないかと考えている。インドの農業生産は持続的に成長を続けている。本研究では、制度的要因、つまり土地改革を中心とする一連の農業立法が、農業成長の重要な背景をなしたであろうとの立場から、西ベンガル州を事例にして立法の歴史をほぼ網羅的に調査した。その結果、土地改革が終わる1955年までの約20年間に、実に130件以上の農業関連法案が審議され、しかもその大半が議員提案だったことが明らかになった。この事実は、農業政策の形成過程が従来考えられてきたよりはるかに幅広く深い背景をもつものだったことを示唆している。インドの土地改革は否定的に評価されることが多かったが、本研究によって、より広い文脈の中に置き直して再評価するための資料的な基礎を据えることができたのではないかと考えている。インドの食糧穀物の生産量は、1960年度から2000年度までの40年間に2.4倍増加した。本研究計画は、インド農業の持続的成長を可能にした制度的要因を、米作地帯の西ベンガル州を事例として、社会経済史の観点から実証的に究明することを目的とする。また国際的要因を重視し、米国がインドの農業政策の形成に及ぼした影響の程度を検証することも、もう一つの目的である。初年度に当たる今年度は、次のような基礎的な調査を行い、ある程度の成果を挙げることができた。(1)東洋文化研究所の図書室が耐震補強工事のために閉鎖されるので、インド農業関連の文献やマイクロフィルムを調査し、別の場所に避難させ、研究計画の遂行に支障が起こらないようにした。また2次文献のサーベイを行った。(2)ニューヨークのフォード財団の研究センターで文献調査を行った。1952年から69年までニューデリー事務所長を務めたD・エンスミンガーの文書の調査をほぼ終えた。またニューヨーク市立図書館で、北インドの農村開発計画を進めたA・メイヤーの文書を閲覧した。これらの調査を通じて、ネルー首相や計画委員会が、農村開発計画に関しては、アメリカの専門家の助言を積極的に受け入れ、政策決定に利用していたことを明らかにしえたと思う。(3)コルカタの西ベンガル州公文書館と州知事公邸記録室、デリーのインド国立公文書館とネルー記念図書館で、農業問題関係の公文書と私文書の基礎的な調査を行った。インド政府の公文書公開は遅れているが、西ベンガル州知事公邸記録室が有望であることが判明した。来年度以降この記録室で公文書の系統的な調査を行うことに決め、今年度は40年代の文書の調査を行った。(4)今年度発表した雑誌論文「日本軍の南方作戦とインド」は、独立後の農業政策の形成に大きな影響を与えたベンガル大飢饉(1943年)の背景を明らかにしたものである。インドの食糧穀物の生産量は、1960年度から2000年度までの40年間に2.4倍増加した。本研究計画は、インド農業の持続的成長を可能にした制度的要因を、米作地帯の西ベンガル州を事例として、社会経済史の観点から実証的に究明することを目的とする。また国際的要因を重視し、米国がインドの農業政策の形成に及ぼした影響の程度を検証することも、もう一つの目的である。第2年度の今年度はコルカタで3回文献調査を行った。調査したのは、西ベンガル州知事公邸記録室、州政府土地・地租省図書室、インド国立図書館、西ベンガル州文書館の4ヵ所である。この調査の結果、1940年代の農業問題に関する資料のかなりの部分を収集することができた。同時に、40年代から土地改革が実施された1953-55年までの間の論議を通観する史料をほぼ揃えることができた。また、1980年前後に実施された「オペレーション・バルガ」と呼ばれる刈分小作人保護政策の基本資料を入手した。これらの史料の本格的な分析はこれからの課題であるが、さしあたり注目されるのは、間接選挙で選ばれた州政府が成立した1937年から、分離独立の1947年までの10年間に、驚くべき数の農業関連法案が、主に東ベンガルのムスリム農民の利害を代表する議員によって提案されていることである。これらの議員は分離独立で東パキスタンに行ってしまう。そのことが西ベンガル州における土地改革をめぐる論議にどのような影響を与えたのか、興味深い問題である。分離独立は土地改革へ向けた圧力を和らげ、それを変質させたのではなかろうか。社会主義的なレトリックにも拘らず、インドの土地改革は漸進的にしか進まなかった。すくなくとも西ベンガルに関しては、その原因の一つに分離独立の影響を挙げることができそうである。
KAKENHI-PROJECT-18510214
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独立期以降におけるインド農業発展の制度的要因:西ベンガル州の事例
インドの食糧穀物の生産量は、1960年度から2000年度までの40年間に2.4倍増加した。本研究は、インド農業の持続的成長を可能にした制度的要因を、西ベンガル州を事例として、社会経済史の観点から実証的に究明することを目的とする。また国際的要因を重視し、米国が農業政策の形成に及ぼした影響を検証することも、重要な目的である。第3年度の今年度は、インドと米国で最終的な史料調査を行った。インドでは、西ベンガル州政府図書室、西ベンガル州政府土地・地租省図書室、西ベンガル州公文書館、インド国立公文書館、ネルー記念図書館を、米国では米国公文書館、世界銀行グループ文書館を訪れた。これらの史料調査の結果、初年度と第2年度の調査で入手できなかった史料を概ね補充することができた。インドでの調査では、ベンガルにナショナリストの州政府が成立した1937年から、土地改革が実施された53-55年までの間に、州議会に提案された農業関係の法案(小作法、金貸規制法、土地改革法等々)をほぼ網羅的に集めることができた。土地改革以後の時期(主に60年代)の調査が残っているが、補充するのは難しくない。前年度に入手した「オペレーション・バルガ」と呼ばれる刈分小作人保護政策(70年代末以降に実施)の基本史料と合わせ、ほぼ半世紀にわたる農業関連立法の歴史を通観する準備をほぼ整えることができたと考えている。これらの史料は膨大な量があり、いかに活発に農業問題が論議されたかを雄弁に物語っている。不十分な点が多々あったにせよ、国民各階層を巻き込んだ長年にわたる総合的な努力が、農業発展の制度的な枠組みを準備したと言えそうである。米国での調査では、インドを反共の砦と位置づける米国政府が、農村の安定を重視し、経済援助によって農村開発プログラムを展開するにとどまらず、土地改革をも推進した経緯を実証的に明らかにすることができた。
KAKENHI-PROJECT-18510214
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形質転換技術を利用した長期記憶促進に関する研究
<研究計画>転写因子CREBおよび時計遺伝子period(per)の過剰発現はショウジョウバエの長期記憶を促進させることが知られている。記憶の促進とは通常必要とされる訓練の時間よりも短い時間で長期記憶を獲得することを意味する。物覚えの早いハエを作ることのできるこの技術は将来人の記憶障害などの治療に応用できる可能性を秘めている。本研究においてはショウジョウバエの長期記憶獲得にかかわる脳内部位でper遺伝子を過剰発現させることにより長期記憶の促進が起こるかどうかについて研究した。長期記憶獲得に関与する脳内部位はperのみが発現し、他の時計遺伝子が発現していない部位である可能性が高い。ショウジョウバエ脳内のfan shaped body(fb)と呼ばれる領域にはperのみが発現し他の時計遺伝子の発現は無い。従って、fbは長期記憶促進に関わる可能性がある。<研究経過>酵母由来の転写因子GAL4はUAS配列の下流にある遺伝子を発現させる。fbでGAL4が発現するOK348系統とUAS-per系統のF1個体ではfbでperが過剰発現する。この時、長期記憶の促進が見られた。しかし、短期記憶の中枢であるキノコ体(Mushroom body)でperを過剰発現させても長期記憶促進は見られなかった。このことはショウジョウバエの短期記憶の中枢と長期記憶の中枢は異なっていることを示唆する。更に、概日リズム形成の中枢であるLateral neuronsでperを過剰発現させても長期記憶促進は見られなかった。従って、概日リズム、長期記憶、共にper遺伝子が関与するものの、脳内の機能的部位は異なっていることが明らかとなった。<研究計画>転写因子CREBおよび時計遺伝子period(per)の過剰発現はショウジョウバエの長期記憶を促進させることが知られている。記憶の促進とは通常必要とされる訓練の時間よりも短い時間で長期記憶を獲得することを意味する。物覚えの早いハエを作ることのできるこの技術は将来人の記憶障害などの治療に応用できる可能性を秘めている。本研究においてはショウジョウバエの長期記憶獲得にかかわる脳内部位でper遺伝子を過剰発現させることにより長期記憶の促進が起こるかどうかについて研究した。長期記憶獲得に関与する脳内部位はperのみが発現し、他の時計遺伝子が発現していない部位である可能性が高い。ショウジョウバエ脳内のfan shaped body(fb)と呼ばれる領域にはperのみが発現し他の時計遺伝子の発現は無い。従って、fbは長期記憶促進に関わる可能性がある。<研究経過>酵母由来の転写因子GAL4はUAS配列の下流にある遺伝子を発現させる。fbでGAL4が発現するOK348系統とUAS-per系統のF1個体ではfbでperが過剰発現する。この時、長期記憶の促進が見られた。しかし、短期記憶の中枢であるキノコ体(Mushroom body)でperを過剰発現させても長期記憶促進は見られなかった。このことはショウジョウバエの短期記憶の中枢と長期記憶の中枢は異なっていることを示唆する。更に、概日リズム形成の中枢であるLateral neuronsでperを過剰発現させても長期記憶促進は見られなかった。従って、概日リズム、長期記憶、共にper遺伝子が関与するものの、脳内の機能的部位は異なっていることが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-15016020
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朝鮮古代都市の研究
朝鮮における古代都市の形勢・展開・変質過程の究明を目的に、新羅・伽耶・百済地域を対象とした現地調査を、1994年11月25日12月11日及び1995年12月6日18日の二回にわたって実施した。主な踏査地域は、初年度はソウル、春川、平昌、江陵、蔚珍、迎日、慶州、釜山、月城、大邱、善山、安東、栄豊、丹陽、忠州、中原であり、第二年度は昌原、咸安、晋州、昇州、楽安、光州、咸平、羅州、木浦、莞島、康津、長興、長城、高敝、井邑、扶安、金堤、全州、益山、扶余、論山、天安、ソウルである。各地の遺蹟・遺物の調査、発掘現場の見学を実施するとともに、研究所・博物館を訪問して現地の研究者との交流をはかった。調査の成果は医科の通りである。(1)古代王都の構造を新羅・百済・伽耶の史的展開に即して理解するために、ソウル、慶州、扶余、光州、咸安を踏査した。まず、新羅王都の発掘調査として注目される皇龍寺東南隅道遺構発掘現場(慶州)を見学し、新羅王都のこうおう復元作業の現状を把握した。また、ソウル夢村土城と扶余陵山里において、百済の漢山城・泗城時代の王都の状況を観察し、両王都の構造的特徴および前者から後者への発展の様相を確認した。さらに、咸安に遺存する王宮址・土城・山城・古墳を、その相互関連に留意しながら踏査し、伽耶地域における古代都市萌芽期の具体的様相を確認した。(2)本研究では王都以外の地方都市の研究も重視し、可能なかぎり現地調査を実施した。具体的には、光州の都市遺構(官衙址、街路、山城)を実見し、統一新羅期の都市である武珍州治の構造の一端を理解した。また百済の中方城(金寺洞山城)、古沙夫里城(隠仙里土城)、周留城(位金岩山城)を踏査し、百済地方都市研究の重要な手がかりを得ることができた。(3)古代都市に随伴する施設である陵墓・古墳・寺院を各地で見学し、古代都市の景観や立地条件を考察した。かなでも全羅南道の前方後円墳とソウル石村洞の積石塚を実地に観察し、当該地域における文化的複合性・重層性を確認したことは、古代都市における文化的諸側面を理解する上で示唆するところが大きかった。(4)朝鮮の古代都市はかならずその背後または周囲に防御施設として山城を備えていたが、本調査でも鳳儀山城(春川)、北兄山城(慶州)、屏風山城(尚州)、赤城山城(丹陽)、忠州山城(忠州)、蓬山城(咸安)、武珍古城(光州)、金寺洞山城(古阜)、位金岩山城(扶安)等、多くの山城を踏査し、その構造的特性および山麓の都市との関連を理解することに努めた。(5)古来交通の要衝として著名な大関嶺(太白山脈、江陵)と竹嶺(小白山脈、丹陽)を踏査し、都市と地方を結ぶ内陸交通ネットワークの重要性と歴史的意味を確認した。また、清海鎮址(莞島)、国立海洋博物館の諸相を具体的に認識した。これら交通・交易ルートの確認は都市生活を支えた物資流通の究明に資しては必須の課題であり、今後の都市研究の展望を切り開くものとして期待できる。(6)古代都市が持つ歴史物資を朝鮮史全体の流れの中で明らかにするため、本研究では朝鮮王朝時代の邑白を踏査対象に加え、近世都市をも視野に入れた調査を実施した。具体的には咸安・楽安・高敞の邑白を踏査し、立地・構造等さまざまな面において、古代から近世に至る都市的発展の様相を確認することができた。また、城壁石刻を判読し、都市構築のめの力役動員の具体相を認識したことは、貴重な成果である。(7)新羅の冷水碑(迎日)、鳳坪里碑(蔚珍)、南山新白碑(慶州)、中原高句麗碑(中原)をはじめとする石碑、水簡、有銘土器を各地で実見し、文字資料研究のうえでも貴重な成果を上げることができた。朝鮮における古代都市の形勢・展開・変質過程の究明を目的に、新羅・伽耶・百済地域を対象とした現地調査を、1994年11月25日12月11日及び1995年12月6日18日の二回にわたって実施した。主な踏査地域は、初年度はソウル、春川、平昌、江陵、蔚珍、迎日、慶州、釜山、月城、大邱、善山、安東、栄豊、丹陽、忠州、中原であり、第二年度は昌原、咸安、晋州、昇州、楽安、光州、咸平、羅州、木浦、莞島、康津、長興、長城、高敝、井邑、扶安、金堤、全州、益山、扶余、論山、天安、ソウルである。各地の遺蹟・遺物の調査、発掘現場の見学を実施するとともに、研究所・博物館を訪問して現地の研究者との交流をはかった。調査の成果は医科の通りである。(1)古代王都の構造を新羅・百済・伽耶の史的展開に即して理解するために、ソウル、慶州、扶余、光州、咸安を踏査した。
KAKENHI-PROJECT-06044038
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朝鮮古代都市の研究
まず、新羅王都の発掘調査として注目される皇龍寺東南隅道遺構発掘現場(慶州)を見学し、新羅王都のこうおう復元作業の現状を把握した。また、ソウル夢村土城と扶余陵山里において、百済の漢山城・泗城時代の王都の状況を観察し、両王都の構造的特徴および前者から後者への発展の様相を確認した。さらに、咸安に遺存する王宮址・土城・山城・古墳を、その相互関連に留意しながら踏査し、伽耶地域における古代都市萌芽期の具体的様相を確認した。(2)本研究では王都以外の地方都市の研究も重視し、可能なかぎり現地調査を実施した。具体的には、光州の都市遺構(官衙址、街路、山城)を実見し、統一新羅期の都市である武珍州治の構造の一端を理解した。また百済の中方城(金寺洞山城)、古沙夫里城(隠仙里土城)、周留城(位金岩山城)を踏査し、百済地方都市研究の重要な手がかりを得ることができた。(3)古代都市に随伴する施設である陵墓・古墳・寺院を各地で見学し、古代都市の景観や立地条件を考察した。かなでも全羅南道の前方後円墳とソウル石村洞の積石塚を実地に観察し、当該地域における文化的複合性・重層性を確認したことは、古代都市における文化的諸側面を理解する上で示唆するところが大きかった。(4)朝鮮の古代都市はかならずその背後または周囲に防御施設として山城を備えていたが、本調査でも鳳儀山城(春川)、北兄山城(慶州)、屏風山城(尚州)、赤城山城(丹陽)、忠州山城(忠州)、蓬山城(咸安)、武珍古城(光州)、金寺洞山城(古阜)、位金岩山城(扶安)等、多くの山城を踏査し、その構造的特性および山麓の都市との関連を理解することに努めた。(5)古来交通の要衝として著名な大関嶺(太白山脈、江陵)と竹嶺(小白山脈、丹陽)を踏査し、都市と地方を結ぶ内陸交通ネットワークの重要性と歴史的意味を確認した。また、清海鎮址(莞島)、国立海洋博物館の諸相を具体的に認識した。これら交通・交易ルートの確認は都市生活を支えた物資流通の究明に資しては必須の課題であり、今後の都市研究の展望を切り開くものとして期待できる。(6)古代都市が持つ歴史物資を朝鮮史全体の流れの中で明らかにするため、本研究では朝鮮王朝時代の邑白を踏査対象に加え、近世都市をも視野に入れた調査を実施した。具体的には咸安・楽安・高敞の邑白を踏査し、立地・構造等さまざまな面において、古代から近世に至る都市的発展の様相を確認することができた。また、城壁石刻を判読し、都市構築のめの力役動員の具体相を認識したことは、貴重な成果である。(7)新羅の冷水碑(迎日)、鳳坪里碑(蔚珍)、南山新白碑(慶州)、中原高句麗碑(中原)をはじめとする石碑、水簡、有銘土器を各地で実見し、文字資料研究のうえでも貴重な成果を上げることができた。朝鮮における古代都市の形成・展開・変質過程の究明を目的に、新羅・伽耶地域を対象とした現地調査を1994年11月25日から12月11日にかけて実施した。調査は韓国側研究者と合同で行い、主な踏査地は、ソウル、春川、洪川、平昌江陵、蔚珍、迎日、慶州、釜山、月城、大邱、善山、安東、栄豊、丹陽、忠州中原などであった。調査の成果は以下の通りである。(1)古代都市遺構の発掘調査として近年注目されている皇龍寺東南隅発掘現場(慶州)を見学し、新羅王京復元作業の現状を把握するとともに、各地に遺存する寺院の殿門・楼閣・幢干支柱等を観察して都市景観復元の可能性を検討した。(2)古来交通の要衝として著名な大関嶺(太白山脈、江陵)と竹嶺(小白山脈、丹陽)を踏査し、都市と地方を結ぶ通交ネットワークの重要性とその歴史的意味を確認した。(3)新羅の興徳王陵(月城)や伽耶の福泉洞古墳群(釜山)などを見学し、古代都市に随伴する遺跡である陵墓・古墳の歴史的意義を確認した。(4)北兄山城(慶州)、鵲城(慶州)など都市に密接に関連する山城を踏査し、各山城の構造的特性および山麓都市との関係を把握した。(5)新羅の迎日・冷水里碑(503年)、蔚珍・鳳坪里碑(524年)をはじめとする石碑、木簡、有銘土器を各地で実見し、文字資料研究のうえでも貴重な成果をあげることができた。
KAKENHI-PROJECT-06044038
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施設看護における患者・看護師双方の動作ログ解析に基づくラウンドリエンジニアリング
病院や高齢者介護施設などでは,24時間のケアが提供できるようナースステーションをベースに複数の看護師が交替で働いている.患者の多様なニーズにこたえ,できるだけ一人一人に丁寧に適切な看護ケアを提供しコミュニケーションがとれると良いが,ある程度定型的なプロセスにしたがってベッドを巡回する姿が現実である.インフラ設置型の計測システムでさりげなく自然に患者や看護師あるいは相互インタラクションの行動・動作を定量的に把握し,それらの24時間常時蓄積データから適切なタイミングや時間・ベーシックケア内容をエビデンスベースで求め看護師の部屋巡回ラウンドを支援するシステムの開発を進めた.本研究は,高齢者介護施設,養護施設,病院などで,患者の施設内での行動やベッドや車椅子上でのふるまい,看護師の院内のラウンドでの行動や看護動作,ナースステーションでの動作,患者と看護師とのインタラクションを蓄積・解析することで,看護師が患者に対して必要で本質的なケアを提供する時間をより多く作れるようにすることを支援し,患者の施設内QOLの向上さらには退院後の生活の質を高めることを目指した計測・記録・分析システム,施設内の看護師ラウンドのプランニング・誘導システムを開発することを目的としている.いつどのタイミングで,どの患者に何についてどれくらい時間をかけてどういう観察・ケア対応をするのが良いかを補助支援するシステムを想定している.初年度の平成25年度は,患者・看護師の病室近辺での行動,特にベッド上,ベッド周囲,病室入り口近辺での動作を,ベッドマットレスに設置した分布圧力センサ,病室に複数設置したカメラ群,入口付近に設置する圧力センサ・人感センサ,病室内と近隣廊下をカバーするよう設置したレーザレンジセンサ群によりモニタリングし,常時記録するシステムを実験室環境にて構築を進めた.病院,高齢者介護施設,養護施設などで,患者の施設内での行動やふるまい,看護師のラウンド等での行動・動作,インタラクションを蓄積・解析することで,看護師が患者に対して必要で本質的なケアを提供する時間をより多く作れるようにすることを支援し,患者の施設内QOLの向上さらには退院後の生活の質を高めることを目指した計測・記録・分析システム,施設内の看護師のラウンドのプランニング・誘導システムを開発することを目的としている.初年度より開発を進めてきたモニタリングシステムを統合連携して誰がどこにいるか,特定の部屋においては位置姿勢が把握できるシステムとして構成する開発を進めた.施設内行動動作記録管理システムを導入し安定冗長データ蓄積を実現した.一つの病室とその前廊下のような限定的な模擬環境で構築していた初年度からより広い施設に適用できるよう安全設計法と範囲拡大手法の開発を進めた.位置や入退室・動線情報から行動やそのパターンを推定するアルゴリズムを開発し,また,病院内で患者および看護師の動作を記録し,歩行者空間モジュールなど工学的な手法を利用して行動解析した.外来を受診する患者は,車いす,杖などの歩行自助具の使用,同伴者,歩行速度が遅いケースなどが増加し,外来での患者の滞留や移動による混雑が予測されたが,ビデオモニタリングにより外来待合の混雑状況の計測解析を行ったところ,これらからシステム化で設置物を含め通路幅等の改善必要性が定められることを確認した.また,独居高齢者の人感じセンサデータの自動解析により各人の生活パターンを把握し健康状況悪化や認知症予兆などの中期的異変検知を行う研究を室内移動行動に適用しパターン把握を行う手法の開発を進めた.病院,高齢者介護施設,養護施設などで,患者の施設内での行動やベッドや車いす上でのふるまい,看護師のラウンドでの行動や看護動作,ナースステーションでの動作,患者と看護師とのインタラクションを蓄積・解析することで,看護師が患者に対して必要で本質的なケアを提供する時間をより多く作れるようにすることを支援し,患者の施設内QOLの向上さらには退院後の生活の質を高めることを目指した計測・記録・文責システム,施設内の看護師のラウンドのプランニング・誘導システムを開発する研究である.いつどのタイミングで,どの患者に何についてどれくらい時間をかけてどういう観察・ケア対応をするのが良いかを補助支援するシステムである.平成27年度は室内での動作や室内や通路での移動行動に着目し,並行して検討してきた医療者の行動モデルを統合して予め計画された行動・予定を考慮した上での予測アルゴリズムを持つシステムの作製を進めた.また,温度センサ,照度センサ,臭気センサ,気圧センサ,二酸化炭素センサ,粉じんセンサ,騒音センサ,色温度センサについて,センサのバラつきや誤差など,異なる病室や施設内での環境測定が一定条件での可能性を評価した.評価の結果,臭気センサについては,測定限界での正確さが確認できないため,評価項目から外すこととした.また,色温度については,換算式を定義することができていないため,今回のシステム試作においては使用しないこととした.人位置モニタリングシステム,複数機器の協調による人位置記録システム,移動などの行動モデリング・パターン把握法を展開し,平成27年度は施設設置されたナースコールシステムのデータ記録を収集し,種別ごとの差異の解析を行った.
KAKENHI-PROJECT-25282174
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25282174
施設看護における患者・看護師双方の動作ログ解析に基づくラウンドリエンジニアリング
さらに行動記録に基づき要望の頻度などについて整理し関連解析を行った.人位置モニタリングシステムや複数機器の協調による人位置記録システムのようなハードウェア・ソフトウェア総合システム,移動などの行動モデリング・パターン把握法といったソフトウェアアルゴリズムの研究が進み,さらに施設設置されたナースコールシステムのデータ記録を収集しての種別ごとの差異の解析や,要望頻度の関連解析を行うに至っていることから.病院,高齢者介護施設,養護施設などで患者の施設内での行動やベッド・車椅子上のふるまい,看護師のラウンドでの行動や看護動作,ナースステーションでの動作,患者と看護師のインタラクションを蓄積・解析し,看護師の看護活動や患者の施設内QOLの向上,退院後の生活の質を高めることを目指した,計測・記録・分析システムの開発を進めた.観察・ケアの補助支援のシステムである.平成28年度は最終年度にあたり,室内での動作や行動,部屋や廊下での移動行動に着目し,人の行動モデルを統合した上であらかじめ計画された行動や予定を考慮した上での行動予測アルゴリズムを持つシステムの構成を進めた.それをもとに,動画像として記録したインタラクションから抽出したデータで,行動予定の追加把握や変更把握を行い,システムによる行動パターン自動モデリングの機能強化を行った.初年度に人位置計測モニタリングシステムを開発して一つの部屋とその付近をもぎする環境で記録できるようにした上で,2年度にはこれをより広い範囲において複数の機器間の協調による位置把握記録システムとして再構成してきたが,これを踏まえて,離床や排尿にともなう病室外移動行動などのモデリング,パターン把握の手法を開発した.初年度や二年度の取り組みに加え,三年度目には,施設に設置されたナースコールシステムのデータ記録を収集し診療科に基づくフロアごとの際の解析を進めたが,最終年度の四年度目は数日分の行動記録の追加からフロア全体でのラウンドのプランについて問題の指摘によるアドバイス提示を行う機能として構成した.病院や高齢者介護施設などでは,24時間のケアが提供できるようナースステーションをベースに複数の看護師が交替で働いている.患者の多様なニーズにこたえ,できるだけ一人一人に丁寧に適切な看護ケアを提供しコミュニケーションがとれると良いが,ある程度定型的なプロセスにしたがってベッドを巡回する姿が現実である.インフラ設置型の計測システムでさりげなく自然に患者や看護師あるいは相互インタラクションの行動・動作を定量的に把握し,それらの24時間常時蓄積データから適切なタイミングや時間・ベーシックケア内容をエビデンスベースで求め看護師の部屋巡回ラウンドを支援するシステムの開発を進めた.病院内で患者および看護師の動作を記録し工学的客観的な手法を利用して行動解析するに至っている.今後は,室内での動作や行動,部屋や廊下での移動行動に着目し,人の行動モデルを統合した上で予め計画された行動や予定を考慮した上での行動予測アルゴリズムを持つシステムをもとに,インタラクションから抽出するデータから,行動予定の追加把握や変更把握を行うシステムの行動パターン自動モデリングの機能強化を行う.今後,さらに数日分の行動記録の追加から,フロア全体でのラウンドのプランについて自動アドバイス提示を行うシステムを構築することを目指す.28年度が最終年度であるため、記入しない。看護工学患者の病室内での動作や行動,病室や廊下での移動行動に着目し,並行して準備してきた看護師の行動モデルを統合し,予め病棟で計画された看護師の行動や患者のその日の予定を考慮した上での行動予測アルゴリズムを持つシステムをかたち作る.ナースコールシステムの記録蓄積データを検討する.システム全体設計と模擬システムの構成,人移動モニタリングシステムの開発,ベッド上動作計測を含むビジョンベース院内行動計測システムの基礎開発,屋内人物動作解析法,相互動作の定量分析の計測システムデザインが進んだ.
KAKENHI-PROJECT-25282174
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2光束成長その場観察技法を用いた縦型深紫外発光素子の高出力化に関する研究
平成22年度は深紫外発光素子に必要となるAlN/サファイアテンプレート構造の高品質化・厚膜化をはかるために、2光束成長その場観察技法を駆使し結晶成長技法を見直し、最終的に265nm帯で1mWを越える発光強度のLED作製に至った。1.極性混在結晶成長法の開発:通常、高品質AlN成長には少なくとも1250°C以上の成長温度が必要と認識されているが、当手法では、11001150°C程度の成長温度で高品質化が可能となる。具体的には、サファイア基板上にAlN初期膜を形成する際、Al極性とN極性を混在させて成長させる。この極性混在面を成長中断で熱処理し、熱分解速度がAl極性部に比べて速いN極性部位を優先的に熱分解させる。その結果、Al極性部からなる3次元微細構造が表面に形成される。この構造を下地として、表面マイグレーション促進、気相反応抑制効果をもたらす流量変調法でAlN成長を継続すると2インチ基板上にクラックフリーで高品質AlN層を形成することが可能となった。このAlN層上SiドープAlGaN(Al組成45%程度)層を形成すると、以前はクラック発生のために1×10^<18>cm^<-3>程度でドーピング限界となっていたが、3次元成長→平坦化といった結晶高品質化を導入したことによりクラック発生限界に余裕ができ45×10^<18>cm^<-3>程度の高濃度化が可能となった。こうした技術をもとに試作した265nm帯LEDは1mWを越える発光強度を示すようになってきて、今後さらなる改良により世界トップグレードのウェハに肩を並べることができるようになると考える。2.短波長レーザーによるレーザーリフトオフ:これまではレーザーリフトオフ用光源には266nmのレーザーを用い、AlNAlGaN層界面でレーザーリフトオフを行ってきた。しかし、こうしたエピ膜内でのレーザーリフトオフ剥離面形成は非常に困難であった。n-AlGaN層の高濃度ドーピング=低抵抗化が可能となってきたことから、レーザーリフトオフ法の意義は電極対向面配置の縦型素子構造より、むしろ熱抵抗の大きなサファイア基板を除去することとなるとの判断から、193nmのレーザーを用いたリフトオフ法を試行した。その結果、リフトオフ法での歩留まりの低さはかなり改善できる手応えを得た。3. 280nm帯LEDによるオゾンセンシング:既存のオゾン測定装置は水銀ランプを用いることからサイズが大きく、信号の安定度の問題などもあった。実際、280nm帯LEDを用いて光路設計も新たに行いオゾンが検知できることを実証した。現在、装置の小型化を進めているところである。研究初年度であった平成21年度は深紫外発光素子に必要となるAIN/サファイアテンプレート構造の高品質化・厚膜化をはかるために、2光東成長その場観察技法を駆使して、以下のような知見を得た。1.サファイア基板サーマルクリーニング温度、初期成長温度の検討(1)一般的にサーマルクリーニングは成長温度(AINだと1150°C以上、のぞましくは1250°C以上)より高いものとするという認識であったが、1100°C以上のサーマルクリーニングはサファイア基板に熱ダメージを与えることが見いだされた。また、それ以下の温度、もしくはサーマルクリーニング無しの場合でも結晶品質には変化が無いこともわかった。(2)初期成長温度が1100°C近傍で結晶性の最も良くなることが見いだされた。この温度以上では、初期成長膜形成中にやはりサファイア基板に熱ダメージが加わってしまうことを意味する。2.AIN/サファイアテンプレート構造の反り(1)当構造は成長中に凹面状の反りを示すことがわかっている。格子定数差から見た場合、凸状態として反ることが予測されていたのだが、実際は反対であった。これは格子定数の温度依存性まで加味しても説明が付かなかった。(2)初期成長温度を上昇させた場合、成長初期のわずかな間、一旦凸状態で反る挙動が初めて観測された。この辺りの詳細をさらに検討することで、凹状態反りのメカニズム解明につながるのではないかと考えている。3.AIGaN層へのIII族元素ポストアニール効果AIGaN表面にAl、Ga,InなどのIII族金属を圧着し熱アニールをかけると、とある条件下でフォトルミネセンス強度が増強される効果が見いだされた。点欠陥を補償するなんらかのメカニズムがあるのではと考え、検討を続けている。4.深紫外LEDによる菌、ウイルスの不活化作製した深紫外LEDを用いて大腸菌ファージの不活化実験を行い、明瞭な不活性能が得られることを見いだした。平成22年度は深紫外発光素子に必要となるAlN/サファイアテンプレート構造の高品質化・厚膜化をはかるために、2光束成長その場観察技法を駆使し結晶成長技法を見直し、最終的に265nm帯で1mWを越える発光強度のLED作製に至った。1.極性混在結晶成長法の開発:通常、高品質AlN成長には少なくとも1250°C以上の成長温度が必要と認識されているが、当手法では、11001150°C程度の成長温度で高品質化が可能となる。具体的には、サファイア基板上にAlN初期膜を形成する際、Al極性とN極性を混在させて成長させる。この極性混在面を成長中断で熱処理し、熱分解速度がAl極性部に比べて速いN極性部位を優先的に熱分解させる。その結果、Al極性部からなる
KAKENHI-PUBLICLY-21016007
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2光束成長その場観察技法を用いた縦型深紫外発光素子の高出力化に関する研究
3次元微細構造が表面に形成される。この構造を下地として、表面マイグレーション促進、気相反応抑制効果をもたらす流量変調法でAlN成長を継続すると2インチ基板上にクラックフリーで高品質AlN層を形成することが可能となった。このAlN層上SiドープAlGaN(Al組成45%程度)層を形成すると、以前はクラック発生のために1×10^<18>cm^<-3>程度でドーピング限界となっていたが、3次元成長→平坦化といった結晶高品質化を導入したことによりクラック発生限界に余裕ができ45×10^<18>cm^<-3>程度の高濃度化が可能となった。こうした技術をもとに試作した265nm帯LEDは1mWを越える発光強度を示すようになってきて、今後さらなる改良により世界トップグレードのウェハに肩を並べることができるようになると考える。2.短波長レーザーによるレーザーリフトオフ:これまではレーザーリフトオフ用光源には266nmのレーザーを用い、AlNAlGaN層界面でレーザーリフトオフを行ってきた。しかし、こうしたエピ膜内でのレーザーリフトオフ剥離面形成は非常に困難であった。n-AlGaN層の高濃度ドーピング=低抵抗化が可能となってきたことから、レーザーリフトオフ法の意義は電極対向面配置の縦型素子構造より、むしろ熱抵抗の大きなサファイア基板を除去することとなるとの判断から、193nmのレーザーを用いたリフトオフ法を試行した。その結果、リフトオフ法での歩留まりの低さはかなり改善できる手応えを得た。3. 280nm帯LEDによるオゾンセンシング:既存のオゾン測定装置は水銀ランプを用いることからサイズが大きく、信号の安定度の問題などもあった。実際、280nm帯LEDを用いて光路設計も新たに行いオゾンが検知できることを実証した。現在、装置の小型化を進めているところである。
KAKENHI-PUBLICLY-21016007
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束で分割された土塗り小壁付木造軸組の復元力特性の実大実験による検証
伝統的構法木造建物の耐震性能では、土塗り壁が重要な役割を果たす。無開口の全面壁に限らず、「土塗り小壁付木造軸組」と呼ばれる垂れ壁または腰壁が付いた開口のある木造軸組架構の復元力特性の貢献も重要である。阪神・淡路大震災以後に木造建物の構造特性に関する研究が見直され、伝統的構法や土塗り壁の復元力特性と破壊性状に関する実大実験に基づく研究も進んでおり一定の成果が出て、壁量計算に加えて許容応力度等計算や限界耐力計算での構造設計も可能になってきている。土塗り小壁付木造軸組の設計用復元力特性の算定手法について、実大実験による検証は続いており、理論的な検討と合わせて検証実験を継続していく意義は大きい。伝統的構法木造建物の耐震性能では、土塗り壁が重要な役割を果たす。無開口の全面壁に限らず、「土塗り小壁付木造軸組」と呼ばれる垂れ壁または腰壁が付いた開口のある木造軸組架構の復元力特性の貢献も重要である。阪神・淡路大震災以後に木造建物の構造特性に関する研究が見直され、伝統的構法や土塗り壁の復元力特性と破壊性状に関する実大実験に基づく研究も進んでおり一定の成果が出て、壁量計算に加えて許容応力度等計算や限界耐力計算での構造設計も可能になってきている。土塗り小壁付木造軸組の設計用復元力特性の算定手法について、実大実験による検証は続いており、理論的な検討と合わせて検証実験を継続していく意義は大きい。
KAKENHI-PROJECT-19K04692
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ヒト軟骨細胞の機械的ストレスに対する分子生物応答性に関する研究
細胞外マトリックス(ECM)の受容体であるインテグリンが軟骨細胞において発現していることは報告されていたが、その機能については現在までまったく研究されていない分野であった。そこで,FNの軟骨細胞に及ぼす影響を明らかにするため接着分子の発現およびフィプロネクチン受容体を介したヒト軟骨細胞からのサイトカイン産生能に及ぼす影響について検討した。ヒト大腿骨頭から分離培養した軟骨細胞においてフローサイトメトリーを用いた解析により、α1,α2,α3,α5,β1インテグリンの発現を認めた。また細胞外マトリックスに対する接着実験では、ビトロネクチン,ラミニン,typeI,IIコラーゲン、フィプロネクチンに結合し、フィプロネクチンに対する結合は抗α5,β1抗体により阻害されることが明らかとなった。さらに軟骨細胞を各種細胞外マトリックス存在下で培養するとフィプロネクチンにおいて、IL-6およびGM-CSFの産生上昇が認められた。この産生上昇は抗α5,β1抗体により阻害された。この結果は,インテグリン分子VLA-5(α5β1)を介するFNとの結合によってサイトカイン(IL-6,GM-CSF)産生能が上昇し、さらにFN依存的な接着およびサイトカインの産生増強は抗インテグリンα5およびβ1抗体で阻害されることを示している。また培養皿上で円盤を回転させることにより剪断力を加える実験では、剪断力が加えられた軟骨細飽でIL-6,ICAM-1の発現上昇、VCAM-1の発現低下が認められた。これらの研究結果は軟骨代謝において接着分子が極めて重要な働きをしていることを示唆していると考えられる。今後さらに各種インテグリンおよびECMの機能解析を行い、抗体やペプチドを用いて軟骨変性を制御出来ないか検討を加える予定である。細胞外マトリックス(ECM)の受容体であるインテグリンが軟骨細胞において発現していることは報告されていたが、その機能については現在までまったく研究されていない分野であった。そこで,FNの軟骨細胞に及ぼす影響を明らかにするため接着分子の発現およびフィプロネクチン受容体を介したヒト軟骨細胞からのサイトカイン産生能に及ぼす影響について検討した。ヒト大腿骨頭から分離培養した軟骨細胞においてフローサイトメトリーを用いた解析により、α1,α2,α3,α5,β1インテグリンの発現を認めた。また細胞外マトリックスに対する接着実験では、ビトロネクチン,ラミニン,typeI,IIコラーゲン、フィプロネクチンに結合し、フィプロネクチンに対する結合は抗α5,β1抗体により阻害されることが明らかとなった。さらに軟骨細胞を各種細胞外マトリックス存在下で培養するとフィプロネクチンにおいて、IL-6およびGM-CSFの産生上昇が認められた。この産生上昇は抗α5,β1抗体により阻害された。この結果は,インテグリン分子VLA-5(α5β1)を介するFNとの結合によってサイトカイン(IL-6,GM-CSF)産生能が上昇し、さらにFN依存的な接着およびサイトカインの産生増強は抗インテグリンα5およびβ1抗体で阻害されることを示している。また培養皿上で円盤を回転させることにより剪断力を加える実験では、剪断力が加えられた軟骨細飽でIL-6,ICAM-1の発現上昇、VCAM-1の発現低下が認められた。これらの研究結果は軟骨代謝において接着分子が極めて重要な働きをしていることを示唆していると考えられる。今後さらに各種インテグリンおよびECMの機能解析を行い、抗体やペプチドを用いて軟骨変性を制御出来ないか検討を加える予定である。1.われわれは変形性関節症(以下OA)及び大腿骨頚部骨折の骨頭より採取した軟骨細胞における各種MMP及びcytokineの発現をRT-PCR法を用いて検討し、昨年行われた第41回マトリックス研究会で報告した。すなわちOA軟骨細胞において炎症性サイトカイン(IL-1β,IL-6,IL-8)の発現を認めるとともに、OA例、正常例ともに軟骨細胞が自身の細胞外マトリックスを分解する各種MMP(MMP-1,3,9)を産生していることが明らかとなった。MMPの発現についてはcompetitive PCR法により比較定量を行ったが、症例によってややばらつきがあり、OAと正常例の間に明らかな差は認められなかった。またTissue Inhibitor of Metalloproteinase(TIMP)についても解析を行い、OA、正常例ともその発現が確認された。2.大腿骨頸部内側骨折で手術時に摘出された大腿骨頭からコラゲナーゼ、アクチナーゼ処理により軟骨細胞を分離し、その培養皿上で円盤を回転させることにより細胞にせん断力を加えた。preliminary dataながら正常軟骨細胞にせん断力を加えると、IL-6 mRNAの発現の上昇、並びにvascular cell adhesion molecule-1(VCAM-1)の発現が減少する現象が認められた。問題点として、手術材料の得られる機会が限られていること、大腿骨頭より得られる軟骨細胞の数が少ないことが挙げられるが、今後症例数を増やしていく必要がある。3.各種接着因子に対する坑体、細胞マトリックス(ファイブロネクチン、ラミニン)をコートしたプレート上で軟骨細胞を培養し、各種サイトカイン、MMP-1,3,9の発現を検討中である。軟骨細胞は細胞外マトリックス(ECM)に囲まれて存在するため、それらが接着分子を介して、軟骨細胞の機能維持、あるいは変性において重要な働きを担っていると考えられている。また変形性関節症(OA)や慢性関節リウマチ(RA)において関節液中および軟骨組織中のフィブロネクチン(FN)量の上昇が明らかとなっており、軟骨破壊と修復の調節に対する関与が示唆されている。
KAKENHI-PROJECT-06671482
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06671482
ヒト軟骨細胞の機械的ストレスに対する分子生物応答性に関する研究
そこで、FNの軟骨細胞に及ぼす影響を明らかにするため接着分子の発現およびフィブロネクチン受容体を介したヒト軟骨細胞からのサイトカイン産生能に及ぼす影響について検討した。また軟骨細胞に対して力学的ストレスが及ぼす影響に関しても合わせて検討を行った。軟骨細胞においてFACSを用いた解析により、VLA-1,2,3,5の発現を認めた。またECMに対する接着実験では、ビトロネクチン、ラミニン、typeI,IIコラーゲン、FNに結合し、FNに対する結合は抗α5,β1抗体により阻害されることが明らかとなった。軟骨細胞を各種細胞外マトリックス存在下で培養するとFNにおいて、IL-6およびGM-CSFの産生上昇が認められ,この産生上昇は抗α5,β1抗体により阻害された。培養皿上で円盤を回転させることによりせん断力加える実験では、せん断力を加えた群でIL-6,ICAM-1の発現上昇、VCAM-1の発現減少を認めた。これらの結果から、軟骨細胞においてVLA-5を介したFNへの接着によりIL-6,GM-CSFの産生能の上昇が認められることが明らかとなった。IL-6,GM-CSFは軟骨細胞の増殖能および軟骨基質産生に関与することが報告されており、FNが軟骨破壊と修復の調節において、重要な役割を果たしていることが示唆された。また液性因子だけではなく力学的ストレスによってもサイトカイン、接着分子の発現が変化することがわかった。今後、さらに接着分子の機能解析を行い、抗体あるいはアンチセンスを用いることにより軟骨細胞の変性が制御可能かどうか検討を加える予定である。
KAKENHI-PROJECT-06671482
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衝撃波統計加速過程の効率と非線方効果
彗星・太陽風相互作用、星間起源中性粒子・太陽風相互作用の場合によく知られた中性粒子のピックアップ過程を相対論的プラズマ流の場合に拡張し、粒子の加速過程について論じた。以下、プラズマ流の流速をV、対応するローレンツ因子をΓとする。非相対論的な場合、ピックアップ後の質量mの粒子の最大エネルギーはたかだか2mV^<★★>であるが、パルサー風、AGNジェットなどの相対論的プラズマ流におけるピックアップ過程では最大(2Γ^<★★>2-1)と非常に高エネルギーまでの加速が原理的には可能であることが注目される。極めて初等的な考察で得られたこの結果は、著者の知る限り、これまでexplicitに指摘されておらず、その天体物理学的重要性も未知であったが、以下に述べるように極めて効率のよい粒子の加速過程を与える可能性があることが明らかとなった。特に、パルサー風の場合を例にとり、その空間構造を考慮してエネルギーの上限を求め、次の結果を得た:(1)パルサー磁場の極性により電場のポテンシャル分布は反転する。しかしこの反転は加速限界の議論には影響を与えないことを見いだした。(2)ピックアップ過程において電子の獲得するエネルギーは、非相対論的な場合にはプロトンに比べ質量比だけ小さく、通常無視されている。しかし、相対論的には、質量比の1/3乗に比例するので、8%とかなりのエネルギーが渡ることを示した。彗星・太陽風相互作用、星間起源中性粒子・太陽風相互作用の場合によく知られた中性粒子のピックアップ過程を相対論的プラズマ流の場合に拡張し、粒子の加速過程について論じた。以下、プラズマ流の流速をV、対応するローレンツ因子をΓとする。非相対論的な場合、ピックアップ後の質量mの粒子の最大エネルギーはたかだか2mV^<★★>であるが、パルサー風、AGNジェットなどの相対論的プラズマ流におけるピックアップ過程では最大(2Γ^<★★>2-1)と非常に高エネルギーまでの加速が原理的には可能であることが注目される。極めて初等的な考察で得られたこの結果は、著者の知る限り、これまでexplicitに指摘されておらず、その天体物理学的重要性も未知であったが、以下に述べるように極めて効率のよい粒子の加速過程を与える可能性があることが明らかとなった。特に、パルサー風の場合を例にとり、その空間構造を考慮してエネルギーの上限を求め、次の結果を得た:(1)パルサー磁場の極性により電場のポテンシャル分布は反転する。しかしこの反転は加速限界の議論には影響を与えないことを見いだした。(2)ピックアップ過程において電子の獲得するエネルギーは、非相対論的な場合にはプロトンに比べ質量比だけ小さく、通常無視されている。しかし、相対論的には、質量比の1/3乗に比例するので、8%とかなりのエネルギーが渡ることを示した。
KAKENHI-PROJECT-09223207
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09223207
パウル・ティリッヒの建築理念とプロテスタント教会建築論に関する研究
プロテスタント教会建築論研究の中核的主題として、文化の神学者といわれるパウル・ティリッヒ(1886-1965)の建築論・造形芸術論の全貌を、彼の論文・講演を綿密に精査することによって明らかにすることに努めた。まずティリッヒの文化の神学における基礎概念をきっちりと把握することからはじめて、「宗教と文化の本質的相互帰属の原理」を詳細に跡づけ、「宗教とは、究極的にかかわっていること、究極的にかかわっているという関心をいだくことである」とするティリッヒの実存的態度を詳論した。ついで、自律、他律に対する神律の優位、内容、形式に対する内実の優位を示し、その際、内実Gehaltという用語の英語訳、日本語訳の多様性を整理した。内実は形式を媒介として内容において捉えられ、そして表現される、ということである。そこで、建築を含む造形芸術における主題、形式、様式の三幅対における様式の意味を論じて、様式は内実を個別的形式において表現するのであり、芸術作品においては究極的意味と究極的存在の経験がその様式において表現される、というのである。したがって、通常俗的とよばれている種類の芸術も宗教的でありうるのであって、彼は〈表現主義的〉ないしは〈表現的〉な芸術に宗教芸術の本道をみている。ここで表現主義的・表現的芸術において表現されるのは芸術家の主観性ではない。そこでは事物の表層を突破してリアリティーの深層があらわにされるのである。私は教会堂の空間については詳論するには至っていないが、彼の建築論において最も重要な概念は〈聖なる空虚〉である。プロテスタントの教会堂空間は聖なる空虚でなければならないのである。〈聖化〉と〈誠実〉という宗教芸術の統合すべき二つの原理について、近代建築の特質である誠実をなによりも重んじつつ、宗教的空間の本質である聖化の空間を実現しなければならないのである。私は以上のようなティリッヒの建築論・芸術論を明らかにしつつ、牧師や建築家と議論して建てられた教会堂をも考察しているが、その成果は発表に至っていない。プロテスタント教会建築論研究の中核的主題として、文化の神学者といわれるパウル・ティリッヒ(1886-1965)の建築論・造形芸術論の全貌を、彼の論文・講演を綿密に精査することによって明らかにすることに努めた。まずティリッヒの文化の神学における基礎概念をきっちりと把握することからはじめて、「宗教と文化の本質的相互帰属の原理」を詳細に跡づけ、「宗教とは、究極的にかかわっていること、究極的にかかわっているという関心をいだくことである」とするティリッヒの実存的態度を詳論した。ついで、自律、他律に対する神律の優位、内容、形式に対する内実の優位を示し、その際、内実Gehaltという用語の英語訳、日本語訳の多様性を整理した。内実は形式を媒介として内容において捉えられ、そして表現される、ということである。そこで、建築を含む造形芸術における主題、形式、様式の三幅対における様式の意味を論じて、様式は内実を個別的形式において表現するのであり、芸術作品においては究極的意味と究極的存在の経験がその様式において表現される、というのである。したがって、通常俗的とよばれている種類の芸術も宗教的でありうるのであって、彼は〈表現主義的〉ないしは〈表現的〉な芸術に宗教芸術の本道をみている。ここで表現主義的・表現的芸術において表現されるのは芸術家の主観性ではない。そこでは事物の表層を突破してリアリティーの深層があらわにされるのである。私は教会堂の空間については詳論するには至っていないが、彼の建築論において最も重要な概念は〈聖なる空虚〉である。プロテスタントの教会堂空間は聖なる空虚でなければならないのである。〈聖化〉と〈誠実〉という宗教芸術の統合すべき二つの原理について、近代建築の特質である誠実をなによりも重んじつつ、宗教的空間の本質である聖化の空間を実現しなければならないのである。私は以上のようなティリッヒの建築論・芸術論を明らかにしつつ、牧師や建築家と議論して建てられた教会堂をも考察しているが、その成果は発表に至っていない。本研究は本年度新たに着手した新しい研究であるが、パウル・ティリッヒによる建築論ならびに芸術論に関する文献はおおむね入手し、精読し、おおかたの邦訳を完成した。彼の「文化の神学」に関する諸著作もかなり収集し、読解中である。その結果二編の研究報告を執筆したが、それらにおいては、「聞く」ことを重視するプロテスタントにおける「見る」ことの意義を明らかにしたあと、まず、ティリッヒの実存的生涯を建築論的に素描した。そしてティリッヒの建築論の根底をなす「文化と宗教」についての概念の詳細な検討をつづけているが、とりわけ、「宗教は文化の内実(実質)であり、文化は宗教の形式である」というように要約されうる「宗教と文化の本質的相互帰属の原理」を諸著述や諸文献によって詳細にあとづけた。そして「宗教とは、究極的にかかわっていること、すなわち究極的にかかわっている関心を抱くことである」とするティリッヒの実存的態度について詳細に追跡した。さらにまた、ティリッヒの建築論の全容を概観して「パウル・ティリッヒと建築論」と題する九州大学最終講義を行った。それはつまるところ、聖化の原理と誠実の原理の終局的な統合としての「聖なる空虚」ということであろう。ティリッヒの建築論そのものと神学的根底との総合的な解釈は今後の課題である。
KAKENHI-PROJECT-06650710
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06650710
パウル・ティリッヒの建築理念とプロテスタント教会建築論に関する研究
一方、近代教会建築家ピエトロ・ベルスキ論やノルベルグ=シュルツの教会建築論もおおむね入手し、精読を進めている。また、比較的近年に注目すべき教会堂を建設した複数のプロテスタント牧師と面談し、教会堂観を拝聴した。教会堂のもつ意味を重視したプロテスタント神学者パウル・ティリッヒは多数の論文を発表し、講演を行っているが、彼の建築論・芸術論の全体を明らかにするために、本年度は三つの研究報告を発表した。そのうち二報告は、昨年度の二報告とともに、ティリッヒの文化の神学における基礎概念を綿密に調べて整理したものであり、そこでは、自律、他律に対する神律の優位、内容-形式-内実の三幅対における内実の優位を明らかにした。その際、誤読の生じないように、ドイツ語のInhalt-From-Gehaltに相当する英語と日本語の多様な訳語を、多数の文献を詳細に調べて整理した。要するに、内実Gehalt、実質substance、趣意import、あるいは深層内容depth contentとは、精神的実質性であり、形式にその意味を与えるという本質的な意味、無制約的な意味である。内実は形式を媒体として内容において捉えられ、そして表現される、というのである。第三の報告では、建築を含む視覚芸術・造形芸術における主題(内容)-形式-様式の三幅対における様式の意味についてのティリッヒの解釈を整理した。つまるところ、用式は内実を個性的な形式において表現する、ということである。そして、宗教芸術についていえば、芸術作品においては、究極的意味と究極的存在の経験がその様式において表現される、のである。本研究はここにおいてしだいに核心に近づいてきた。ティリッヒの建築論そのものの研究と平行して、プロテスタント神学者や、また、比較的近年に注目すべきプロテスタント教会堂を建設した牧師や建築家と面談して、プロテスタント教会堂像を探りつつある。近代教会建築家ピエトロ・ベルスキ論やノルベルグ=シュルツの教会建築論の研究もすこしづつ進めている。教会堂のもつ意味を重視したプロテスタント神学者パウル・ティリッヒは多数の論文を発表し、講演を行っているが、彼の建築論・芸術論の全体を明らかにするために、本年度も三つの研究報告を発表した。まず、ティリッヒの多様な芸術類型論を大別して四つに分けられることを示したが、そこには様式類型に関するものと、レベルあるいは次元に関するもののほかに芸術の様式要素にかかわる分類も含まれている。これらを通観して注目されるのは、(1)芸術が宗教的であるためには、それが宗教的内容を扱う必要はない。通常宗教的とよばれている種類の芸術であろうと通常俗的とよばれている種類の芸術であろうと芸術は宗教的でありうる。究極的な意味と存在の経験がそれにおいて表現されているかぎりは、それは宗教的である。(2)彼は、その主題(内容)が宗教的であるか否かにかかわらずとりわけ〈表現主義的〉ないしは〈表現的〉な芸術に、真の宗教芸術の本道を見いだしている。ここで〈表現主義〉とは通常それが狭義に意味しているような、20世紀初期のドイツ表現主義をはるかに超えたきわめて広義の概念として〈表現的〉芸術を意味している。彼にとっては表現主義芸術において表現されるのは芸術家の感情的な主観性ではなく、そこでは事物の表層を突破してリアリティーの深層があらわにされるのである。また、ティリッヒにおけるシンボルの意味と宗教芸術におけるその働きを論じた。
KAKENHI-PROJECT-06650710
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ゼロパワーで位置制御可能な反磁性グラファイト板を用いた非接触マイクロ駆動の研究
2007年から、我々は二次元(2D)にHalbach配列された永久磁石列上でパッシブ磁気浮上する反磁性グラファイト(PG)板を用いた、二次元非接触マイクロ駆動モデルの開発に取り組み、上方より接近させる永久磁石小片により、PG板試料の非接触なマイクロ駆動制御を実現した。2008年からの本課題研究では、より高精密な変位特性を作り出すために、二種の改良モデルにおける二次元Halbach配列永久磁石列上の八角形PG板試料の磁気支持剛性の改良に注目した。そして、これらの基本的な特性データをもとに、リニア・アクチュエータを用いたシステムにより上方より接近させる永久磁石小片を駆動させ、現行モデルに対する変位応答特性を観測し、現行モデルに依存した過渡応答特性の違いを明らかにした。2007年から、我々は二次元(2D)にHalbach配列された永久磁石列上でパッシブ磁気浮上する反磁性グラファイト(PG)板を用いた、二次元非接触マイクロ駆動モデルの開発に取り組み、上方より接近させる永久磁石小片により、PG板試料の非接触なマイクロ駆動制御を実現した。2008年からの本課題研究では、より高精密な変位特性を作り出すために、二種の改良モデルにおける二次元Halbach配列永久磁石列上の八角形PG板試料の磁気支持剛性の改良に注目した。そして、これらの基本的な特性データをもとに、リニア・アクチュエータを用いたシステムにより上方より接近させる永久磁石小片を駆動させ、現行モデルに対する変位応答特性を観測し、現行モデルに依存した過渡応答特性の違いを明らかにした。MEMSなどの分野では、ナノスケールの駆動精度を有する「マイクロXYステージ」が必要とされている。本申請研究では、二次元にHalbach配列した永久磁石上で非接触磁気浮上する反磁性グラファイト板を用いて、ゼロパワーで位置決めが可能な省エネルギー非接触二次元アクチュエータのマイクロ駆動に関する実験研究を行っている。本申請研究期間において永久磁石構成と反磁性グラファイト板形状の最適化を進め、「磁気支持剛性力の改良」、「ゼロパワー・ポジショニングの実証実験」、「マイクロ駆動とダイナミック変位の実験観測」を行う。平成20年度は、二次元Halbach配列永久磁石列と反磁性グラファイト板の最適設計を進めながら、以下の実験を実施した。A.「反磁性グラファイト板形状に依存したの磁気支持剛性力の精密観測」:基本となる二次元Halbach配列永久磁石に関する設計は、単に反磁性グラファイト板の浮上力を得るためのものでなく、反磁性グラファイト板の磁気支持剛性力にも関わる。よって、反磁性グラファイト板形状との相互関係により最適化を進める必要がある。これらを明らかにするため、磁場と反磁性グラファイト板形状のパラメータを変えて、磁気支持剛性力の精密観測を実施した。B.「Halbach配列永久磁石の磁場設計による反磁性グラファイト板の磁気支持剛性力の改良」:上記Aにより二次元Halbach配列永久磁石と反磁性グラファイト板の磁気支持剛性力が精密観測が可能となり、磁気支持剛性力改良の評価ができるようになった。二次元Halbach配列永久磁石上の磁場分布を、別な永久磁石小片を用いることによって磁気支持剛性力の改良を行い評価した。近年、MEMSなどに代表される超精密加工やAFMなどの超精密計測において、ナノスケールの精度を有する「マイクロXYステージ」が必要とされている。本申請研究では、二次元にHalbach配列した永久磁石上で、複雑な制御を必要としないパッシブな状態で非接触磁気浮上する反磁性グラファイト板(PG板)を用いて、外部からの電力供給をしない(ゼロパワー)で位置決め(位置保持)が可能な、省エネルギー非接触二次元アクチュエータのマイクロ駆動に関する実験研究を行っている。平成21年度では、Halbach配列永久磁石上の磁場の改良とPG板形状の最適化により「磁気支持剛性力の向上」を図り、またアプリケーションへの適用を目的として、電磁石を用いた「マイクロ駆動の実験観測」に着手した。1.新たな磁場を形成する二次元Halbach配列永久磁石列の製作とPG板の形状加工、および磁気支持剛性の定量観測と磁場観測二次元Halbach配列永久磁石列上に新たな永久磁石小片を配置することにより、磁場を局所的に増大させ、PG板試料に作用する反磁性磁気力の増大を図った。これにより、改良を施す前の初期モデルに対し、最大で約200%の磁気支持剛性の向上が実現した。また、PG板試料の中央に穴を設けることで、穴の端部に作用する反磁性磁気力により磁気支持力の増大を図った。この方法でも、初期のモデルに対し約200%の磁気支持剛性の増大が実現した。2.電磁石を用いたPG板試料の非接触変位の観測初期モデルでは永久磁石小片を上空から近づけ、PG板試料の非接触変位を実現しているが、電磁石による磁場制御によりPG板の非接触変位を確認し、その特性計測をおこなった。近年、MEMSなどに代表される超精密加工やAFMなどの超精密計測において、ナノスケールの精度を有する「マイクロXYステージ」が必要とされている。本申請研究では、二次元にHalbach配列した永久磁石上で、複雑な制御を必要としないパッシブな状態で非接触磁気浮上する反磁性グラファイト板(PG板)を用いて、外部からの電力供給をしない(ゼロパワー)で位置決め(位置保持)が可能な、省エネルギー非接触二次元アクチュエータのマイクロ駆動に関する実験研究を行っている。平成22年度は、以下の2点を主に実施した。1.PG板の非接触
KAKENHI-PROJECT-20560250
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ゼロパワーで位置制御可能な反磁性グラファイト板を用いた非接触マイクロ駆動の研究
磁気支持剛性に関わる、PG板の形状に依存した反磁性磁気反発力の準静的方法による詳細観測PG板試料の周囲の磁場勾配を増加させる方法と、中央に穴を設ける方法により、PG板の非接触磁気支持剛性向上を検討している。穴の端部に作用する反磁性磁気力により磁気支持力の増大が図れるが、その穴の形状に依存した反磁性磁気反発力の比較検討を、我々独自の準静的な観測方法により明らかにした。この形状検討の結果、初期のモデルに対し約220270%の磁気支持剛性の増大が実現した。2.PG板試料のダイナミック変位に伴う過渡応答の観測リニア・アクチュエータを用いて、PG板上部から永久磁石小片を接近させ、PG板試料の非接触変位の過渡応答特性を観測した。上記1で検討した形状の異なるPG板試料で過渡応答を観測したところ、形状に依存した周期振動を伴って安定点へ変位していくことが詳細に確認され、また形状改良により、外乱に対する抑制が向上していることも確認できた。
KAKENHI-PROJECT-20560250
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神経能発現とNaポンプアイソフォームの共役制御機構
神経興奮によるNaポンプアイソフォームの共役制御機構には細胞内情報伝達にカルモジュリン系の関与が示されたが、out putとしての活性の増大がポンプ機能(分子活性)の増大なのかポンプ数の増大によるのかが不明のため、H^3-ウアバイン結合実験を行いNaポンプ数の測定を試みた。実験方法はK^+取込みによるNaポンプ活性測定の標準反応液に^3H標識ウアバインを1μM加えて細胞をインキュベーションし、得られた結合量から0.5mM非標識ウアバインで希釈して得た値を非特異的結合として差し引いたものを特異的ウアバイン結合量とした。1)ウアバイン結合の濃度依存性では、高感受性結合分は13μMで飽和し、脳型ポンプ活性の阻害曲線と一致し、Kdはほぼ5×10 ^<-8>Mと計算された。なを、普遍型ポンプへの結合は親和性が2桁以上低いので非特異的結合部位を区別することが困難で特異的結合の測定が出来なかった。2)結合の時間経過を見ること、0.1μMでも1μMでも飽和結合量に達するのに約40分を要した。これは膜断片ヘの結合と異って、培養器壁に接着してコンフルエントな状態の細胞のポンプ部位に、ウアバインが拡散接近するために時間を要するものと思われた。3)高感受性ウアバイン結合量は20pmol/mg proteinで、この細胞の膜分画のNa^+,K^+-ATPase活性に見合う量であった。4)グルタミン酸刺激を行ってもウアバイン結合量に変化が認められなかった。5) ^<42>Kと^3H-ウアバインを使った2重標識実験を行い、ポンプの分子活性を計算した。分子活性は3.5/秒からグルタミン酸刺激で8.6/秒と約3倍に上昇した。至適条件下のNa^+,K^+-ATPaseの分子活性約140/秒と比較するとポンプの活性は2.5%及び6.2%と低値であり、神経細胞におけるNaポンプ活性には充分ゆとりがあり、ポンプ活性の調節にはポンプ数の増加は関与しない事が示された。神経興奮によるNaポンプアイソフォームの共役制御機構には細胞内情報伝達にカルモジュリン系の関与が示されたが、out putとしての活性の増大がポンプ機能(分子活性)の増大なのかポンプ数の増大によるのかが不明のため、H^3-ウアバイン結合実験を行いNaポンプ数の測定を試みた。実験方法はK^+取込みによるNaポンプ活性測定の標準反応液に^3H標識ウアバインを1μM加えて細胞をインキュベーションし、得られた結合量から0.5mM非標識ウアバインで希釈して得た値を非特異的結合として差し引いたものを特異的ウアバイン結合量とした。1)ウアバイン結合の濃度依存性では、高感受性結合分は13μMで飽和し、脳型ポンプ活性の阻害曲線と一致し、Kdはほぼ5×10 ^<-8>Mと計算された。なを、普遍型ポンプへの結合は親和性が2桁以上低いので非特異的結合部位を区別することが困難で特異的結合の測定が出来なかった。2)結合の時間経過を見ること、0.1μMでも1μMでも飽和結合量に達するのに約40分を要した。これは膜断片ヘの結合と異って、培養器壁に接着してコンフルエントな状態の細胞のポンプ部位に、ウアバインが拡散接近するために時間を要するものと思われた。3)高感受性ウアバイン結合量は20pmol/mg proteinで、この細胞の膜分画のNa^+,K^+-ATPase活性に見合う量であった。4)グルタミン酸刺激を行ってもウアバイン結合量に変化が認められなかった。5) ^<42>Kと^3H-ウアバインを使った2重標識実験を行い、ポンプの分子活性を計算した。分子活性は3.5/秒からグルタミン酸刺激で8.6/秒と約3倍に上昇した。至適条件下のNa^+,K^+-ATPaseの分子活性約140/秒と比較するとポンプの活性は2.5%及び6.2%と低値であり、神経細胞におけるNaポンプ活性には充分ゆとりがあり、ポンプ活性の調節にはポンプ数の増加は関与しない事が示された。
KAKENHI-PROJECT-04266220
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有機化合物の新規骨格創製アルゴリズムの開発
グラフは構造をもつデータを表現するために最も自然はデータ構造の1つである.近年,構造をもつデータからの知識発見手法が様々な実データに適用できるようになってきたことで,グラフマイニング技術に関する研究は大変注目を浴びている.本研究では,化合物をラベル付きグラフで表現し,以下の3つの手法を提案した.(1)グラフを効率良く列挙するアルゴリズム.提案手法は,13マイクロ秒で各グラフを列挙できる.(2)グラフの集合Gとクエリqが与えられたとき,qに含まれるGの要素を効率良く検索するアルゴリズム.(3)グラフとその特性との関係を学習し,特性が未知のグラフの特性を予測するアルゴリズム.化合物は原子を頂点,結合を辺とするグラフで表現することができる.本研究では,数学的に可能な化合物を表現するグラフを網羅的に列挙するアルゴリズムの研究・開発を行う.その際,明らかに自然界において存在し得ない,あるいは,存在はするものの構造的に不安定な化合物は出力には含まれない.本研究は,10の60乗とも言われる膨大な化合物空間(可能な化合物構造の集合)に関するものである.この問題に対し,グラフの高速列挙アルゴリズムの開発という形で解決を試みるのが本研究の特徴である.本年度は,グラフ構造列挙アルゴリズムを構築した.ここでの列挙アルゴリズムは,頂点数がk個の全てのグラフ構造を列挙する.列挙された頂点数kのグラフに対して,1つの頂点とそれに繋がる複数の辺を追加し,頂点数k+1個のグラフを全て列挙する.これをk=1からはじめ,深さ優先に探索することで,取りこぼすことなく,可能な化合物構造を列挙していく.列挙のアルゴリズム開発が順調に進んだ結果,「数学的には可能だが化学構造らしくない部分構造」を除去するためのフィルタの効率化が重要であり,また,この部分で更なる高速化が見込めることが判明した.これまでは複数のフィルタを順次適用することで結果に不必要な構造を除去していたが,Supergraph Component Search (SCS)技術を使うことで,複数のフィルタの計算を共有化できることが判明した.今後は,既存のSCS技術と本研究で新たに開発したSCS技術の比較評価を行い,我々のSCS技術を列挙アルゴリズムに組み込む予定である.実際の医薬品開発においては,リード化合物が有効性,選択性,薬物動態学上の指標などを改良するための出発点として用いられ,そのリード化合物の一部の構造を改良することで医薬品が開発される.そこで,リード化合物に構造が類似する化合物を列挙するアルゴリズムを2年目から開発した.現時点での技術では,10の60乗個の化合物を列挙することは不可能であるが,リード化合物に類似する化合物を網羅的に探索することで,標的蛋白質に結合可能な医薬品の開発を加速できる.既存のグラフの列挙アルゴリズムでは,サイズ(グラフの場合,辺数)の小さなグラフから探索を始め,辺を1つずつ増やしながら存在可能な全てのグラフを探索していく.一方,類似する化合物を探索するには,辺を増やすだけでなく,減らしたり,頂点のラベルを付け替えたりする必要があり,既存研究とは異なるアルゴリズムが必要である.解こうとする問題を簡単化するために,本研究では,離散構造の中で最も単純な集合の問題から始め,指定された集合に類似する集合を列挙するアルゴリズムを開発する.そこから得られた知見を,初年度開発した平面グラフ列挙アルゴリズムに統合することで,リード化合物に類似する化合物の列挙問題を解く計画である.本年度は,大量のグラフを含むデータベースから,クエリとなるグラフに部分グラフとして含まれるグラフを検索する問題であるSupergraph Component Search問題に取り組み,そのアルゴリズムを構築した.4万化合物を含むデータベースに対して評価実験を行い,この分野で最速の手法LW-Indexよりも数十倍から100倍近い高速に検索できることを示した.LW-Indexをはじめ既存の手法では,データベースに頻繁に出現する頻出部分グラフを全て列挙した後に,その一部をデータベースの索引に利用するのに対して,提案した手法は頻出部分グラフを必要としないために,頻出部分グラフを列挙するのに必要な膨大な計算時間を削減することができる.また,LW-Indexは,索引を構築するためにデータベース以外に想定されるクエリの集合を必要とするために,クエリの分布が大きく変化したときに索引を再構築する必要があるのに対して,提案手法は想定クエリを必要としないために,クエリの分布が変化しても索引の再構築の必要がないという利点を持つ.Supergraph ComponentSearch技術は,本研究を遂行する上で必要な要素技術であることが1年目に判明し,その技術が2年目に構築できたことで,3年目の研究を遂行できる見通しを得た.研究期間の1年目でグラフ列挙アルゴリズム,2年目で列挙された化合物を蓄積・管理するグラフデータベースを作成した,様々なラベル付きグラフを列挙することは,様々な種類の原子が化学結合によって結合するグラフを列挙することに相当する.これにより.当初の目的である有機化合物の新規骨格創製が可能であると考えている.これまでに作成した手法の活用法を,本年度の初期に検討した結果,人工的に作成した化合物のデータは,深層学習法における事前学習法に活用できる可能性がある.そこで,化合物のデータを深層学習法に適用するために,各化合物をシンボルの集合に変換する方法を検討した.具体的には,化合物グラフの各頂点を,その頂点ラベルに応じて,ベクトルで表す.このとき,あるグラフはベクトル(シンボル)の集合で表すことができる.このベクトルの集合では,グラフの構造情報が失われているので,ある頂点vのベクトルとvに隣接する頂点のベクトルの和を,新たにvに対するベクトルとする.
KAKENHI-PROJECT-26330265
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有機化合物の新規骨格創製アルゴリズムの開発
これにより,vの周辺構造をあるベクトルで表すことができる.上記を繰り返すことで,あるグラフをベクトルの集合で表すことができる.この表現形式の妥当性を評価するために,この表現形式に基づくグラフカーネルを定義し,化合物の変異原性の予測などの評価実験を行った.実験結果によると従来のグラフカーネルよりも予測精度が10%も向上する場合があり,提案した表現形式の妥当性を示せた.グラフは構造をもつデータを表現するために最も自然はデータ構造の1つである.近年,構造をもつデータからの知識発見手法が様々な実データに適用できるようになってきたことで,グラフマイニング技術に関する研究は大変注目を浴びている.本研究では,化合物をラベル付きグラフで表現し,以下の3つの手法を提案した.(1)グラフを効率良く列挙するアルゴリズム.提案手法は,13マイクロ秒で各グラフを列挙できる.(2)グラフの集合Gとクエリqが与えられたとき,qに含まれるGの要素を効率良く検索するアルゴリズム.(3)グラフとその特性との関係を学習し,特性が未知のグラフの特性を予測するアルゴリズム.本年度は,グラフ理論に基づいて化合物の可能な構造を列挙するアルゴリズムを構築した.このアルゴリズムは,1化合物あたり十数マイクロ秒を要し,1664億化合物を10万CUP時間で列挙する従来の研究より約1500倍高速になる見込みである.提案手法は,化合物をグラフで表現する.ここで化合物の原子,結合,原子の種類,結合の種類が,それぞれグラフの頂点,辺,頂点ラベル,辺ラベルに相当する.また,列挙アルゴリズムは頂点数がk個の全てのグラフ構造を列挙する.列挙された頂点数kのグラフに対して,1つの頂点とそれに繋がる複数の辺を追加し,頂点数k+1個のグラフを全て列挙する.これをk=1からはじめ,深さ優先に探索することで,取りこぼすことなく,可能な化合物構造を列挙していくことができる.提案手法は,グラフ理論上可能な全てのグラフを列挙するが,それら全てが化合物として自然界において存在したり,安定していることはない.このため,自然界において存在し得ない化合物を削除するフィルタが必要となる.そこで,フィルタを組み込み可能なインターフェースを構築した.しかし,フィルタの数が増えると1化合物あたりの計算時間が増えるため,この点において改善が必要となった.これまでは複数のフィルタを順次適用することで結果に不必要な構造を除去していたが,Supergraph Component Search技術を使うことで,複数のフィルタの計算を共有化できることが判明した.本研究の目的は,グラフ理論に基づいて化合物として可能な構造を列挙するアルゴリズムを構築することである.これを解くために,提案手法では化合物をグラフで表現する.ここで,化合物の原子,結合,原子の種類,結合の種類が,それぞれグラフの頂点,辺,頂点ラベル,辺ラベルに相当する.また,列挙アルゴリズムは頂点数がk個以下の全てのグラフ構造を列挙する.
KAKENHI-PROJECT-26330265
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局所代謝を反映した微小管修飾による化学治療抵抗性獲得機構の解明
微小環境における代謝制御が、転写因子等の修飾変化を介したエピゲノム編集など細胞機能に与える影響の重要性が認識され始めている。しかしながら、現状では細胞内局所における代謝物分布や代謝経路の活性化動態を捕えることは難しく、どのように制御されているかという包括的な研究は為されてこなかった。本研究では翻訳後修飾を介した微小管と解糖系酵素との相互作用機構に着目し、局所エネルギー代謝制御に起因する細胞骨格の再編成(ダイナミクス)の機序を解明し、がん細胞の化学治療抵抗性獲得のメカニズムを明らかにすることを目指す。昨年度は、乳がん細胞株MDA-MB-231細胞を用いて有糸分裂阻害剤であるパクリタキセル(Ptx)に対する耐性株を樹立するなど本研究におけるツールの作出を当初の予定通り達成できた。2年目である今年度は、安定同位体標識グルコースを用いた追跡実験により、耐性株と対照株の間でのエネルギー代謝動態を比較し代謝特性の違いを明らかにした。すなわち、Ptx耐性株では解糖系が亢進していると共に解糖系から分岐するセリンの生合成系が活性化され、グルコース由来の炭素骨格が含硫アミノ酸代謝に利用されるという極めてユニークな特徴を持つことが明らかになった。また、この際、セリン生合成に関与する3酵素(PHGDH、PSAT1、PSPH)の発現レベルも亢進しており、このような代謝リモデリングは上記代謝酵素遺伝子の発現上昇によってもたらされることが明らかとなった。最終年度はこのような代謝リモデリングに人為的な介入(具体的には修飾部位に対する変異体や過剰発現株を想定)を試みることでPtxに対する化学治療抵抗性を解除もしくは緩和できるかを検討する。今年度はパクリタキセル(Ptx)耐性獲得時における代謝リモデリングを捕えるために代謝解析を中心に進めてきた。その結果、乳がんPtx耐性株では対照群に比べ、セリン生合成経路が活性化しているという代謝特性を見出した。初年度の研究から、耐性株では解糖系の活性化が示唆されていたが、上記の特性は当初の想定外である。セリン生合成系代謝は核酸の合成材料の供給、ROSの軽減、含硫化合物代謝に重要な代謝系であり、この代謝系を人為的に介入することで薬剤感受性を亢進させ得る可能性があるものと考えられる。これらの理由から当初の研究通りに進んでいると共に、予想外の進展を見せているものと考えている。この2年間で明らかにした、Ptx耐性株における微小管や代謝酵素群の修飾レベルや代謝特性の差異を元に、次年度は1セリン生合成系を亢進または阻害した場合、2微小管修飾を人為的に操作した場合、3微小管と解糖系酵素との相互作用を攪乱した場合、各々におけるPtx感受性を調べ、化学治療性獲得における分子メカニズムを明らかにする。微小環境における代謝制御がエピゲノム編集など細胞機能に与える影響の重要性が認識され始めているが、現状では細胞内の代謝物分布を捉える事は難しくどのように制御されるかという包括的な研究はなされてこなかった。本研究では翻訳後修飾を介した微小管と解糖系酵素との相互作用機構に着目し、局所エネルギー代謝制御に起因する細胞骨格の再編成(ダイナミクス)の機序の解明を解明しがん細胞の化学治療抵抗性獲得のメカニズムを明らかにすることを目指す。1年目である本年度は主に解析ルーツの作製に時間を割いた。まず、微小管重合阻害剤であるパクリタキセル耐性株をin vivoにて作成するため以下の系を構築した。乳がん細胞株MDA-MB231細胞をヌードマウスに接種し、腫瘍の成長後にパクリタキセルを複数回投与、一定期間後に腫瘍を摘出、細胞を単離した。この操作を3回繰り返し、その都度投与するパクリタキセル濃度を上げることで、耐性株を複数種樹立した。得られた耐性株と非耐性株を比較したところ、耐性株では微小管の修飾動態が大きく異なる上に、以前我々が報告した解糖系酵素のメチル化修飾(Yamamoto T. et al., 2014)が亢進していることが明らかになった。次に解糖系酵素と微小管との相互作用をモニタリング可能にした発現ベクターの構築を行なった。担体や蛍光プローブとの共有結合が可能なツールであるHaloタグをチューブリンのアミノ末端に連結することで、微小管と解糖系酵素のアフィニティの変化およびその可視化を可能にした発現ベクターを作成した。次年度以降これらのツールを活用し、修飾操作による細胞骨格ダイナミクス制御の検証実験を行ない、人為的に局所でのエネルギー代謝を操作することを予定している。今年度は2年目、3年目の研究で鍵となる解析ツール(パクリタキセル耐性細胞およびチューブリンヘテロダイマーの協調発現ベクター)の作成に時間を割いた。ヌードマウスに乳がん細胞株MDA-MB-231を接種することで作製したパクリタキセル耐性株では、対照群と比較して、研究代表者が以前報告した解糖系酵素のメチル化修飾部位の修飾が亢進している事を見出した。加えて、微小管自体の修飾動態が耐性株では亢進しており、両者の相互作用に翻訳後修飾レベルの違いが関係している可能性が考えられる。また、両者の相互作用をモニタリングする発現ベクターツールの作出も完了した。これらの理由から、概ね当初の予定通りに進行しているものと考える。微小環境における代謝制御が、転写因子等の修飾変化を介したエピゲノム編集など細胞機能に与える影響の重要性が認識され始めている。
KAKENHI-PROJECT-17K19614
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K19614
局所代謝を反映した微小管修飾による化学治療抵抗性獲得機構の解明
しかしながら、現状では細胞内局所における代謝物分布や代謝経路の活性化動態を捕えることは難しく、どのように制御されているかという包括的な研究は為されてこなかった。本研究では翻訳後修飾を介した微小管と解糖系酵素との相互作用機構に着目し、局所エネルギー代謝制御に起因する細胞骨格の再編成(ダイナミクス)の機序を解明し、がん細胞の化学治療抵抗性獲得のメカニズムを明らかにすることを目指す。昨年度は、乳がん細胞株MDA-MB-231細胞を用いて有糸分裂阻害剤であるパクリタキセル(Ptx)に対する耐性株を樹立するなど本研究におけるツールの作出を当初の予定通り達成できた。2年目である今年度は、安定同位体標識グルコースを用いた追跡実験により、耐性株と対照株の間でのエネルギー代謝動態を比較し代謝特性の違いを明らかにした。すなわち、Ptx耐性株では解糖系が亢進していると共に解糖系から分岐するセリンの生合成系が活性化され、グルコース由来の炭素骨格が含硫アミノ酸代謝に利用されるという極めてユニークな特徴を持つことが明らかになった。また、この際、セリン生合成に関与する3酵素(PHGDH、PSAT1、PSPH)の発現レベルも亢進しており、このような代謝リモデリングは上記代謝酵素遺伝子の発現上昇によってもたらされることが明らかとなった。最終年度はこのような代謝リモデリングに人為的な介入(具体的には修飾部位に対する変異体や過剰発現株を想定)を試みることでPtxに対する化学治療抵抗性を解除もしくは緩和できるかを検討する。今年度はパクリタキセル(Ptx)耐性獲得時における代謝リモデリングを捕えるために代謝解析を中心に進めてきた。その結果、乳がんPtx耐性株では対照群に比べ、セリン生合成経路が活性化しているという代謝特性を見出した。初年度の研究から、耐性株では解糖系の活性化が示唆されていたが、上記の特性は当初の想定外である。セリン生合成系代謝は核酸の合成材料の供給、ROSの軽減、含硫化合物代謝に重要な代謝系であり、この代謝系を人為的に介入することで薬剤感受性を亢進させ得る可能性があるものと考えられる。これらの理由から当初の研究通りに進んでいると共に、予想外の進展を見せているものと考えている。チューブリンはリン酸化、アセチル化、ポリグルタミン酸化など多彩な翻訳後修飾を受ける微小管構成タンパク質であるが、修飾パターンの違いによるアウトプットの差(チューブリンコード)、解糖系酵素との会合能に違いを生ずる可能性が考えられる。そこで、今後の推進方策として、チューブリンの修飾コードの違いにより異なる、相互作用因子の同定を試みる。この実験には本年度構築したチューブリンサブユニットのdual発現系の利用が必須であり、その際、チューブリンアセチル化酵素ATAT1や脱アセチル化酵素SIRT2/6、解糖系酵素のアルギニンメチル化酵素PRMT1などを培養細胞に強制発現もしくはゲノム編集にてノックアウト細胞を作出することで、人為的にチューブリンおよび解糖系酵素の修飾レベルを制御することで、異なる結合タンパク分子群を同定可能であると考える。この2年間で明らかにした、Ptx耐性株における微小管や代謝酵素群の修飾レベルや代謝特性の差異を元に、次年度は1セリン生合成系を亢進または阻害した場合、2微小管修飾を人為的に操作した場合、3微小管と解糖系酵素との相互作用を攪乱した場合、各々におけるPtx感受性を調べ、化学治療性獲得における分子メカニズムを明らかにする。
KAKENHI-PROJECT-17K19614
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フェムト秒電子ビーム時間構造に関するビーム力学的研究
UVSORにすでに導入されていたフェムト秒パルスレーザーを用いてバンチ内にフェムト秒の縦方向(進行方向)にディップ構造を作り、その構造の時間的推移を計測した。従来の方法では測定できないため、ダイオードテラヘルツ検出器を用いてコヒーレントテラヘルツ放射光を観測し、そのディップ形状の測定を試みた。その結果、横方向のビームの振動が縦方向に回り込んで、ディップ構造が加速器の運転モードに依存して振動することを観測した。UVSORにすでに導入されていたフェムト秒パルスレーザーを用いてバンチ内にフェムト秒の縦方向(進行方向)にディップ構造を作り、その構造の時間的推移を計測した。従来の方法では測定できないため、ダイオードテラヘルツ検出器を用いてコヒーレントテラヘルツ放射光を観測し、そのディップ形状の測定を試みた。その結果、横方向のビームの振動が縦方向に回り込んで、ディップ構造が加速器の運転モードに依存して振動することを観測した。次世代放射光源で期待されている極短電子パルスのダイナミクスに関する実験的研究のため、フェムト秒レーザーバンチスライス法を利用した計画について提案した。UVSOR-II電子蓄積リングでは国内で初めてバンチスライスに成功しており、電子バンチの中にディップが構成されていることをテラヘルツ域のコヒーレントシンクロ放射光(CSR)で確認している。これを疑似フェムト秒電子バンチとみなした実験を行った。通常の加速器運転モードではフェムト秒のディップ構造は短時間で埋もれてしまうが、モーメンタムコンパクションファクターを抑えた運転モード(低αモード)では、比較的長い時間構造が保持される。つまり、レーザー照射後、蓄積リングを周回した後もCSRを出し続けることを意味する(マルチターン効果)。そこで、複数の異なる波数帯域を持つ超高速ダイオード式テラヘルツ検出器を用いて、電子蓄積リングの周回毎のCSRを計測した。通常の運転モードでは、2周目以降はほとんど観測できなかったが、低αモードでは7周目までCSRが発生していることがわかった。それは、ある特定の波数に限定されていた。このマルチターン効果は別のCSR実験においても確認されている。申請者らはレーザーパルスの振幅に正弦波変調を加え電子パルスと相互作用させる実験を行った。その正弦波変調のビート周波数によってCSRの強度が異なり、2か所でピークがあった。レーザー照射直後と電子バンチ周回後(2周目)で、CSRの強度が最大となるビート周波数が異なるためである以上の実験結果は計算機シミュレーションの結果と一致しており、観測されたCSRは疑似フェムト秒電子パルスの推移を反映しているものと考えられる。本手法がフェムト秒電子パルスの実験検証につながることを確認するとともに、電子ビーム診断技術としても有望であることを証明した。X線自由電子レーザーやエネルギー回収線形加速器など、次世代の加速器施設ではサブピコ秒の電子バンチの生成が重要な課題である。申請者は極端紫外光研究施設UVSORにおいて、既設のサブピコ秒の極短パルスレーザーを用いたレーザーバンチスライスと呼ばれる方法で電子バンチに数ピコからサブピコ秒のディップ構造を形成し、擬似短バンチとみなしてその振る舞いを追跡した。その擬似短バンチの測定にはテラヘルツ領域のコヒーレントシンクロトロン放射光を用いた。テラヘルツの測定には、赤外・テラヘルツ光で国内最大の取り込み角を有するビームラインBL6Bで測定を行った。ボロメータを使ったテラヘルツのスペクトル測定にはすでに成功しており、昨年度には国内初のバンチスライスの実測として、論文に発表を行った。本年度は、擬似短バンチの時間的推移を観測するために、低αオプティクスを使ったと呼ばれる特別なモードで加速器の運転を行った。通常の運転では擬似短バンチは短い時間で伸びてしまい周回後には観測できなくなるが、このモードでは比較的長い時間、周回させることができる。測定器は5.6MHzの周回周波数より速い時間応答のショットキー・ダイオード型検出器でテラヘルツ放射光の測定を行った。その結果、テラヘルツ光は数周の間観測され続け、擬似短バンチが保持されていることがわかった。さらに、バンチ断面方向の振動が進行方向に現れる現象が現れていることがわかっか。この実験例は、初めての観測例であると思われ、現在論文に投稿中である。
KAKENHI-PROJECT-19740150
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ウシ副腎におけるアルドステロン生合成調節機構に関する研究
電解質代謝をつかさどる重要な役割を担っているアルドステロンは,副腎皮質ミトコンドリアにおいて11-デオキシコルチコステロンからコルチコステロン,18-ヒドロキシコルチコステロンを経由して生合成されている。ウシ副腎におけるこれらの反応はすべて単一CYP分子により触媒されているが,特に最終ステップのみがアスコルビン酸塩添加により飛躍的に促進されることが明かとなった。これらの結果から,既知の電子伝達系とは別に,bタイプチトクロム(Cyt.b)およびSemidehydroascorbate reductase(SDAR)がこの反応に特異な電子伝達成分として関与している可能性が示唆されるに至っている。ラット肝臓ミトコンドリア外膜由来OMM-CytbはAkio Itoによって精製され,その抗体がSDAR活性を特異的に阻害することから,両者は同一分子であることが予想されている。本研究ではウシ副腎におけるステロイド調節機構の解明を目的として,副腎ミトコンドリア画分を原料とし,吸収スペクトルを指標としてCyt.bの精製を試みた。はじめにウシ副腎100個から髄質部分を取り除き,ミトコンドリア画分を常法により調製した。低張液中でミトコンドリアを破壊した後,Itoの方法に基づきTrypsinによる可溶化処理を行った。その後Sephadex G-100,DEAE-Celluloseカラムにより極めて効率よくチトクロームの吸収を示す画分が得られ,さらにハイドロキシアパタイトの溶出条件を注意深く検討したところ,最終的にSDS-PAGEゲル上単一バンドが得られ,この標品は分子量約12700,赤色で明らかにbタイプチトクロムの吸収スペクトルを示すことが確認された。最終的には,約7.6gのミトコンドリア画分より0.31mgタンパク質標品が得られ,チトクローム含量を指標としてTrypsin可溶化後の画分から313倍に精製された。今後さらにミクロゾーム由来のCyt.b5との差について,またSDAR活性を指標として精製を試み,再構成実験によるアルドステロン調節機構に迫りたいと願っている。電解質代謝をつかさどる重要な役割を担っているアルドステロンは,副腎皮質ミトコンドリアにおいて11-デオキシコルチコステロンからコルチコステロン,18-ヒドロキシコルチコステロンを経由して生合成されている。ウシ副腎におけるこれらの反応はすべて単一CYP分子により触媒されているが,特に最終ステップのみがアスコルビン酸塩添加により飛躍的に促進されることが明かとなった。これらの結果から,既知の電子伝達系とは別に,bタイプチトクロム(Cyt.b)およびSemidehydroascorbate reductase(SDAR)がこの反応に特異な電子伝達成分として関与している可能性が示唆されるに至っている。ラット肝臓ミトコンドリア外膜由来OMM-CytbはAkio Itoによって精製され,その抗体がSDAR活性を特異的に阻害することから,両者は同一分子であることが予想されている。本研究ではウシ副腎におけるステロイド調節機構の解明を目的として,副腎ミトコンドリア画分を原料とし,吸収スペクトルを指標としてCyt.bの精製を試みた。はじめにウシ副腎100個から髄質部分を取り除き,ミトコンドリア画分を常法により調製した。低張液中でミトコンドリアを破壊した後,Itoの方法に基づきTrypsinによる可溶化処理を行った。その後Sephadex G-100,DEAE-Celluloseカラムにより極めて効率よくチトクロームの吸収を示す画分が得られ,さらにハイドロキシアパタイトの溶出条件を注意深く検討したところ,最終的にSDS-PAGEゲル上単一バンドが得られ,この標品は分子量約12700,赤色で明らかにbタイプチトクロムの吸収スペクトルを示すことが確認された。最終的には,約7.6gのミトコンドリア画分より0.31mgタンパク質標品が得られ,チトクローム含量を指標としてTrypsin可溶化後の画分から313倍に精製された。今後さらにミクロゾーム由来のCyt.b5との差について,またSDAR活性を指標として精製を試み,再構成実験によるアルドステロン調節機構に迫りたいと願っている。
KAKENHI-PROJECT-06772156
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転倒モーメント制御による鉄骨造制振構造システムの耐震設計法の構築
柱脚浮き上がりを許容することで転倒モーメントを制御する鉄骨造制振構造システムは,一般に耐震性能を損なう要因となる鉛直荷重を逆に活用して地震応答低減を図ろうとするものである。柱脚部に用いる浮き上がり降伏するベースプレートの塑性変形能力の評価,本システムを多スパン骨組・筋違付骨組に適用する場合の地震応答特性の解明,柱脚部浮き上がり時の地震時立体挙動の把握,エネルギー応答評価などを行い,本システムの耐震設計の基本を構築した。柱脚浮き上がりを許容することで転倒モーメントを制御する鉄骨造制振構造システムは,一般に耐震性能を損なう要因となる鉛直荷重を逆に活用して地震応答低減を図ろうとするものである。柱脚部に用いる浮き上がり降伏するベースプレートの塑性変形能力の評価,本システムを多スパン骨組・筋違付骨組に適用する場合の地震応答特性の解明,柱脚部浮き上がり時の地震時立体挙動の把握,エネルギー応答評価などを行い,本システムの耐震設計の基本を構築した。1.降伏型ベースプレートの静加力実験に基づく変形性能評価柱浮き上がりに伴い降伏するベースプレート(BPY)を柱脚部分に取り付けた大型試験体に柱軸方向力を作用させる静的加力実験を行い,その塑性変形性能を評価した。2.多スパン筋違付平面骨組の地震応答特性評価BPYを多スパンの連層筋違付6層鉄骨造骨組に適用し,筋違構面の最下層柱脚部を部分的に浮き上がり許容した場合の地震応答特性を平面骨組解析により評価した。その結果,浮き上がるスパンに隣接する梁の塑性変形が増加することを確認するとともに,梁に必要とされる塑性変形の程度を定量的に示した。また,柱脚部が浮き上がった状態では高次モードの振動が発生することが既往の研究で指摘されているが,高次モードの影響はそれ程大きくないことを確認した。3.柱脚部浮き上がりを伴う立体骨組の地震応答特性の評価BPYを組み込んだ多スパンの10層ラーメン立体鉄骨造骨組を対象として3次元地震応答解析を行い,その地震応答特性を評価した。上下動の影響を定量的に評価した結果,地震応答時の浮き上がりに上下動が及ぼす影響は殆ど無いということが既往の研究で指摘されているものの,浮き上がり変位が10-20%程度増加することを明らかにした。また,浮き上がりに伴って捩れ応答が増加すること,地震動入力レベルが大きくなるほど振れ応答が増加することを示した。4.転倒モーメント制御による制振骨組の耐震設計法耐震設計法の構築に向けた予備段階として,簡易解析モデルを用いてBPYの履歴吸収エネルギーによる等価粘性減衰定数の評価を行った。その結果,BPYの寄与による等価減衰定数は約10%程度であることを明らかにした。また,最終の総入力エネルギーは変わらないものの,浮き上がり変位が大きくなる時刻付近では,位置エネルギーの寄与により総入力エネルギー入力の増加が抑制されることを明らかにした。1.降伏型ベースプレートの変形性能評価及び設計法-降伏型ベースプレート大型試験体の静加力実験(緑川・小豆畑)降伏型ベースプレートを適用する建物の耐震設計法の構築するためには,破壊を含む終局限界変形を解明する必要がある。そのため,降伏型ベースプレートを柱脚に取り付けた大型試験体に柱軸方向力を作用させる静的加力実験を行った。実験変数は,降伏型ベースプレートの寸法,形状(ハンチの有無),鋼種とした。その結果,降伏型ベースプレートの終局限界変形性能とハンチの効果を明らかにした。2.多スパン骨組・筋違付骨組の地震応答特性評価-平面骨組解析による地震応答解析(緑川・麻里)本構造システムを多スパンラーメン骨組や連層筋違付骨組に適用する場合の応答低減効果を平面骨組解析により評価した。特に,最下層柱脚部が浮き上がるスパンと浮き上がらないスパンが混在する多スパン骨組のスパン間相互の変形適合度を検討し,浮き上がるスパンが他の架構に及ぼす影響の程度を明らかにした。3.柱脚部浮き上がり時の立体挙動の把握-立体骨組の振動台地震応答実験(緑川・石原・麻里)本構造システムの縮小模型振動台実験を実施した。試験体は,高さ3.0m, 2×1スパン,スパン長2×2.0m及び2.0mの縮尺1/3の3層鉄骨造立体骨組(剛性偏心有りと無しの2種類)とした。この実験結果を詳細に分析し,本構造システムを適用した立体骨組の地震応答に及ぼす(1)入力方向次数, (2)上下動, (3)剛性偏心の有無の影響を詳細に検討し,それらの影響の程度を定量的に明らかにした。4.転倒モーメント制御による制振骨組の耐震設計法-各種骨組のエネルギー応答の評価(緑川・小豆畑・石原)2.で行った多スパンラーメン骨組と連層筋違付骨組の解析からエネルギー応答の評価を行い,本構造システムにおいて上部構造の累積塑性歪エネルギーがどの程度低減されるのかを検討した。本研究は,転倒モーメント制御による鉄骨造制振構造システムを対象とし,本システムに用いる浮き上がり降伏ベースプレートの終局限界変形の評価と具体的な設計法,本システムを多スパン骨組・筋違付骨組に適用する場合の地震応答特性の解明,柱脚部浮き上がり時の立体挙動の把握,骨組のエネルギー応答の評価などを行い,本システムの耐震設計法を構築するととを目的とする。1.柱脚部浮き上がり時の立体挙動の把握前年度までに行った多スパンラーメン
KAKENHI-PROJECT-19360244
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転倒モーメント制御による鉄骨造制振構造システムの耐震設計法の構築
立体骨組に続いて,多スパン連層筋違付立体骨組の柱脚部浮き上がり時の立体挙動を検討した。特に,上下動の影響の程度,捩れ応答特性を把握した。2.転倒モーメント制御による制振骨組の簡易応答予測前年度までに得られた結果に基づいて,本システムの地震応答簡易予測法を検討した。また,エネルギーの釣り合いに基づく骨組の耐震設計法の基礎資料を得るための事例解析を行った。3.転倒モーメント制御制振システムの縮小模型振動台実験前年度に転倒モーメント制御による制振構造システム(縮尺1/3の3層鉄骨造立体架構)の振動台実験を実施した。この実験結果を詳細に分析し,これまでに得られた結果を検証した。4.転倒モーメント制御による制振構造システムの耐震設計法の構築本研究の総括として,エネルギーの釣り合いに基づく本構造システムの耐震設計法を構築した。5.海外共同研究者との研究協力
KAKENHI-PROJECT-19360244
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Intact lungにおける肺毛細血管圧の測定
肺毛細血管圧(Pc)は、肺における水分移動の重要因子であるが、これまで臨床での測定は困難であった。我々は、1)肺動脈閉塞法を用いて、Pcをintact lungで測定する方法を動物実験で確立すること、2)臨床応用できる測定系と、その方法を考案することを研究目的とした。1)心電図同期式肺動脈瞬時閉塞装置を考案して、実験動物で肺動脈の瞬時閉塞を行い、Millar先端圧トランスジュ-サ-で閉塞後圧波形を求めた。肺循環を、毛細血管に主たるコンデンサ-を置き、その前後の血管抵抗と、動、静脈に小さなコンデンサ-を置いた。電気回路モデルとして解析し、閉塞後実波形をモデル解析から得られた数式にcurve fittingを行って当てはめ、その係数から閉塞時点のPcを計算して心周期内変動を明らかにした。次に、肺動、静脈を主として収縮させる、セロトニン、ヒスタミンを投与し、Pcの変化、動、静脈抵抗の増加が検出できるかを確認し、有用性を検討した。また代表的な肺水腫モデルとして、オレイン酸肺水腫を作成し、Pcおよび血管抵抗、コンプライアンスを求め、肺水腫成因のメカニズムの検討を行った。また、ARDSに関与が考えられる、TXA2を投与して、肺循環系に及ぼす影響を調べた。2)動物実験で、非開胸下にバル-ン付きカ-テルを挿入し、そのバル-ン閉塞によるPcの測定を行って、非開胸下でもPc測定が可能なことを明らかにした。しかし臨床的には、バル-ンを急速に膨らませることは、肺動脈破裂の可能性があることを考慮して、肺動脈ダブルポ-トカテ-テルを考案した。このfluidーfilledカテ-テルの欠点を補う計算法を考案し、我々がいままで行ってきた方法でのPcとの誤差の問題、臨床的有用性に付いて検討を加えた。次に上記のカテ-テルを用いて、健常肺の麻酔下の患者で、Pcの測定が可能であることを示し、またARDSの患者に付いても、Pcを測定して、検討を加えた。肺毛細血管圧(Pc)は、肺における水分移動の重要因子であるが、これまで臨床での測定は困難であった。我々は、1)肺動脈閉塞法を用いて、Pcをintact lungで測定する方法を動物実験で確立すること、2)臨床応用できる測定系と、その方法を考案することを研究目的とした。1)心電図同期式肺動脈瞬時閉塞装置を考案して、実験動物で肺動脈の瞬時閉塞を行い、Millar先端圧トランスジュ-サ-で閉塞後圧波形を求めた。肺循環を、毛細血管に主たるコンデンサ-を置き、その前後の血管抵抗と、動、静脈に小さなコンデンサ-を置いた。電気回路モデルとして解析し、閉塞後実波形をモデル解析から得られた数式にcurve fittingを行って当てはめ、その係数から閉塞時点のPcを計算して心周期内変動を明らかにした。次に、肺動、静脈を主として収縮させる、セロトニン、ヒスタミンを投与し、Pcの変化、動、静脈抵抗の増加が検出できるかを確認し、有用性を検討した。また代表的な肺水腫モデルとして、オレイン酸肺水腫を作成し、Pcおよび血管抵抗、コンプライアンスを求め、肺水腫成因のメカニズムの検討を行った。また、ARDSに関与が考えられる、TXA2を投与して、肺循環系に及ぼす影響を調べた。2)動物実験で、非開胸下にバル-ン付きカ-テルを挿入し、そのバル-ン閉塞によるPcの測定を行って、非開胸下でもPc測定が可能なことを明らかにした。しかし臨床的には、バル-ンを急速に膨らませることは、肺動脈破裂の可能性があることを考慮して、肺動脈ダブルポ-トカテ-テルを考案した。このfluidーfilledカテ-テルの欠点を補う計算法を考案し、我々がいままで行ってきた方法でのPcとの誤差の問題、臨床的有用性に付いて検討を加えた。次に上記のカテ-テルを用いて、健常肺の麻酔下の患者で、Pcの測定が可能であることを示し、またARDSの患者に付いても、Pcを測定して、検討を加えた。1.動物実験動物を用いた、肺動脈閉塞法による肺毛細血管圧の測定は、閉塞器械の改善も進み、我々の主張してきた、瞬時閉塞の重要性、閉塞時点を正確に求めることの重要性がさらに明らかになった。我々の方法で閉塞を行なうと、心周期の任意の時点での閉塞が可能であり、閉塞波形が心周期内タイミングにより異なることが明らかになった。これにより心周期内任意の時点の肺毛細血管圧を求めると、心周期による変動が認められ閉塞時点によっては、代表的な肺毛細血管圧(例えば平均圧)が得られない可能性のあることが示唆された。ヒスタミン、セロトニンを投与してそれぞれ肺動、静脈を収縮させて測定したところ、薬理作用どおりの肺血管抵抗の上昇が我々の方法で検出でき、我々の方法の有効性が確認できた。回路モデルによる解析方法にも、さらに検討を加えた。今までのtwo-resistanceモデルから、さらに実際に近いthree-resistanceモデルを考えて、肺毛細管自体の抵抗も計算できるようにし、その解析に成功した。肺血管の状態を解析する方法として、我々の方法は非常に有用であることが確認でき、さらに解析を進める予定である。2.臨床応用臨床応用に必要なカテーテルを製作中である。
KAKENHI-PROJECT-63480345
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Intact lungにおける肺毛細血管圧の測定
動物実験で明らかになったように、閉塞時点を明らかにでき、かつできるだけ、く閉塞するカテーテルのモデルを考案し、まもなく特注カテーテルができ上る予定である。でき上りしだい、臨床応用の可能性を動物実験で確認して、臨床応用に入る予定である。1.動物実験(1).外部閉塞による肺動脈閉塞実験動物(イヌ)の肺動脈を外部から閉塞することによって、肺毛細血管圧を測定する方法は、ほぼ確立できたと考えている。我々の方法では、心周期に伴う肺毛細血管圧の変動も認められた。ヒスタミン・セロトニンによる肺動・静脈収縮による変化も理論通り促えることができ、またオレイン酸による肺水腫のメカニズムについても新たな知見を加えることができた。回路モデルも変更を加えて、解析を再検討してみたが、どこまでモデルが正確かという問題と、どこまで正確にする意味があるかという点が現在議論の対象となっている。また新しく、神経原性肺水腫のメカニズムを考えるために我々の方法で肺毛細血管圧を測定している。(2).バル-ン閉塞による肺動脈閉塞(1)により、瞬時閉塞、閉塞タイミングの重要性が明らかになったため、それと同じ精度でバル-ン閉塞を行って、開胸せずに(本来の意味のintact lungで)肺毛細血管圧を測定する方法を研究した。ミラ-カテ-テルにバル-ンをつけ、バル-ンを瞬時閉塞できる装置の開発とともに実験動物(ヤギ、イヌ)で測定を行なった。カテ-テルが手作りなため、測定が難しいが、来年度には(1)と同じ精度で測定できる予定で、これがまとまると、スワンガンツカテ-テルによる肺毛細血管圧の測定が正確かという疑問に結論をつけることができる。2.臨床応用バル-ンによる測定ができてから、臨床応用の方法を考える。我々は、これまでに肺動脈閉塞法を用いて、肺毛細血管圧(Pc)をintact lungで測定する方法を動物実験で確立してきたが、今年度は、主として臨床応用できる測定系と、その方法を考案することを目的として、研究を行った。まず動物実験で、バル-ンカテ-テルのシリンジを高速に押して、高速でバル-ンを膨らませる装置を考案し、心電図のR波で同期できるようにした。これを用いて、バル-ンカテ-テルを雑種成犬の肺動脈末梢に経皮的に挿入し、バル-ンをR波から80msecずつずらして膨らませ、外部閉塞と同様な波形が得られること、バル-ンによる閉塞はPcを求めるための手段として有効であることを確認したが、閉塞時点が決定しにくいと言う問題点が明らかになった。この際測定系には、2FのMillarカテ-テルを肺動脈カテ-テルの遠位端まで挿入して使用した。臨床的には、バル-ンを急速に膨らませることは、肺動脈破裂の可能性があること、またMillarカテ-テルは高価なため、一般的ではないことを考慮して、肺動脈ダブルポ-トカテ-テルを考案した。これは、肺動脈バル-ンカテ-テルのバル-ンの遠位端およびすぐ近位に、圧測定用のル-メンが開口しているもので、これで同時に肺動脈圧を計りながら、バル-ン閉塞を行うと、閉塞時点が正確に求められると言うものである。Fluidーfilledの欠点を補うために、速い時定数の部分をわざと無視して、curve fittingを行ってPcとして計算し、我々がいままで行ってきた方法のPcとの誤差の問題、臨床的有用性に付いて検討を加えた。次に、上記のカテ-テルを用いて、健常肺の麻酔下の患者で、Pcを測定した。またARDSの患者に付いても、Pcを測定して、検討を加えた。
KAKENHI-PROJECT-63480345
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63480345
女性「労働」の文学表象に見る一九一〇年代の雑誌文化交流の研究
本研究では、日露戦争後(1905)から大正初期(1913)に発刊された明治期を代表する女性投稿雑誌「女子文壇」を中心として、「青鞜」や「女学世界」、「婦人界」など同時代の女性雑誌や「スバル」や「歌舞伎」などの文芸雑誌とどのように関係していたか、特に「労働」という視座を設定して比較調査を行った。第1の目的は、「女子文壇」や同時代の諸雑誌の言説を「労働」の視点から調査研究することで、明治末期から大正期の職業・女性問題の一端を明らかにすることであった。第2の目的は、とりわけ明治の終期から大正にかけての雑誌相互の影響関係が雑誌文化の形成にいかなる関与をしていたかを解明することであった。平成24年度(1)基礎的な資料の収集(継続)ー平成23年度の(2)を引き続き行った。女性雑誌に関する研究会等にもアクセスし、情報収集に努めるとともに、補充すべき女性雑誌関連の資料や入手可能な対象がでてきた場合は柔軟に対応することとした。(2)文献資料、調査研究資料の整理、分析(継続)ー平成23年度の(3)を引き続き行い、女性雑誌の交流・連関のデータベースを完成、精査し、さらに「歌舞伎」などを同時代の文芸雑誌を購入し、明治終期から大正期にかけての女性作家が「労働」をいかに扱っていたか解析していった。(3)中間成果の発表ー中間成果について関連する富山文学の会で発表を行い、批判的検討を加え、研究の方向性、妥当性についてチェックしていくことにした。なお同時代の女性「労働」に関する文学表象の研究の一環として明治期を代表する文豪森鴎外に7ついての研究を進め、招待講演としてドイツ・ベルリンのフンボルト大学で「鴎外とドイツ近代劇」について行った。今年度は論文五本のほか、共著『鴎外近代小説集第三巻』(岩波書店)をはじめ、『世界文学翻訳総合目録』(大空社)など五冊刊行した。平成24年度科学研究費報告書として『女子文壇研究』をまとめることができた。(1)基礎的な資料の収集(継続)ー日露戦後から明治終焉期にかけての女性の位置づけについて女性労働史および出版史関連の資料も補足的に調査した。(2)資料の解析作業ー平成20年度21年度の研究成果を踏まえ、「労働」と「交流・連関」の視点から雑誌文化の特性を検証した。全体の仕上げの作業である。(3)成果発表ー研究のまとめを行うために、第二次資料収集を可能なかぎり行った。成果について関連する学会・研究会での発表を行い、批判的検討を加え、得られた成果を論文として発表し、研究のまとめを行った。上述の研究方法と方針にそった研究成果報告書を作成し、関連の研究者、研究機関に配布した。本研究では、日露戦争後(1905)から大正初期(1913)に発刊された明治期を代表する女性投稿雑誌「女子文壇」を中心として、「青鞜」や「女学世界」、「婦人界」など同時代の女性雑誌や「スバル」や「歌舞伎」などの文芸雑誌とどのように関係していたか、特に「労働」という視座を設定して比較調査を行った。第1の目的は、「女子文壇」や同時代の諸雑誌の言説を「労働」の視点から調査研究することで、明治末期から大正期の職業・女性問題の一端を明らかにすることであった。第2の目的は、とりわけ明治の終期から大正にかけての雑誌相互の影響関係が雑誌文化の形成にいかなる関与をしていたかを解明することであった。2011年度の研究実績としては、研究代表者の金子幸代が以下のことを推進した。成果公開講演---(1)2011年9月、ふるさと文学県民講座、題「富山の女性作家・小寺菊子の生き方を読む」、(2)国際シンポジウム・日本社会文学会秋季大会口頭発表2011年9月、(於中国社会科学院日本研究所)、題「イプセン『人形の家』をめぐる森鴎外と魯迅」(3)富山文学の会「第三回ふるさと文学を語るシンポジウムー『場』としての富山ー」、2012年2月(富山大学人文学部)、題「小寺菊子と富山」があり、論文発表---(1)金子幸代「書評:『青鞜』と世界の『新しい女』たち」(「週刊読書人」2011年7月発行)、(2)金子幸代「富山の女性文学の先駆者・小寺(尾島)菊子研究4ー徳田秋声・三島霜川・近松秋江と『あらくれ』のことー」、(「富山大学人文学部紀要」55号2011年9月発行)、(3)金子幸代「『女子文壇』解説」(解説ブックレット不二出版2011年11月発行)、(4)金子幸代「鴎外と戯曲」(「別冊太陽(生誕150年森鴎外記念号)」2012年1月発行)、(5)金子幸代「イプセン『人形の家』をめぐる森鴎外と魯迅ー魯迅生誕一三〇年に寄せて」(「富山大学人文学部紀要」56号2012年2月発行)、(6)金子幸代「『青鞜』と『女子文壇』ー発禁問題と『新しい女』ー」(「社会文学」36号、2012年2月発行)がある。
KAKENHI-PROJECT-23520217
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女性「労働」の文学表象に見る一九一〇年代の雑誌文化交流の研究
著書として(1)金子幸代監修・解説「『女子文壇』執筆者名・記事名・データベース」(不二出版2011年10月)を刊行することができたのは大きな成果であった。(2)金子幸代共著日本比較文学会学会創立六〇周年記念集『越境する言の葉ー世界につなぐ日本文学ー』では、鴎外のドイツでの受容と反響について執筆した。加えて、研究分担者の有元伸子は、広島の作家、永代美千代についての作品の発掘を行うなど研究を推進することができた。平成24年度科学研究費報告書としてこれまでの研究成果を『女子文壇研究』にまとめることができた。さらに同時代の女性「労働」に関する文学表象の研究の一環として明治期を代表する文豪森鴎外についての研究を進め、招待されドイツ・ベルリンのフンボルト大学で「鴎外とドイツ近代劇」の講演を行うことができた。成果として今年度は論文五本、共著『鴎外近代小説集第三巻』(岩波書店)をはじめ、『世界文学翻訳総合目録』(大空社)など五冊刊行できたため。(1)女性雑誌・文芸雑誌関連文献資料を収集することができた。特に基礎的な資料の収集ー文献資料を、一橋大学図書館、国立国会図書館、横浜開港資料館、東京都近代文学館や、研究者代表金子は石川近代文学館、富山県立図書館で収集することができた。(2)文献資料の収集・整理・内容の分析ー購入、複写した資料を整理、分析し、著書や論文にまとめ、さらに国際シンポジウムで成果の発表を行うことができた。とりわけ、「女子文壇」の項目別索引データベースを完成させ、刊行することができたのは大きな成果であった。加えて、専門研究者や必要に応じて投稿者についての資料提供やインタビューを行うなど、2011年度は以上の事を推進できたため。平成25年度は、(1)基礎的な資料の収集(継続)ー日露戦後から第一次大戦前夜にかけての女性の位置づけについて女性労働史および出版史関連の資料も補足的に調査する予定である。(2)資料の解析作業ー平成20年度21年度の研究成果を踏まえ、「労働」と「交流・連関」の視点から雑誌文化の特性を検証していく。全体の仕上げの作業である。(3)成果発表ー研究のまとめを行うために、第二次資料収集を可能なかぎり行う。成果について関連する学会・研究会での発表を行い、批判的検討を加え、得られた成果を論文として発表し、研究のまとめを行う。上述の研究方法と方針にそった研究成果報告書を作成し、関連の研究者、研究機関に配布する。(1)資料目録作成ー女性雑誌・文芸雑誌関連文献資料収集の情報を入手するため、国会図書館、国文学研究資料館、東京大学法学部資料編纂所、一橋大学図書館明治文庫、横浜開港資料館、東京都近代文学館を調査する。前の二者については、インターネットを活用することも重視し、作業の効率化を図る。この他金子は、石川近代文学館、富山県立図書館、福井県立図書館を調査し、有元は、大阪国際児童文学館、広島県立図書館で調査する。関連文献により広く当たり、資料目録を作成するとともに必要なものは複写する。(2)基礎的な資料の収集ー文献資料を東京大学法学部資料編纂所の明治新聞雑誌文庫、法政大学図書館、早稲田大学図書館、一橋大学図書館明治文庫、国立国会図書館、国文学資料館、横浜開港資料館、東京都近代文学館や、金子は石川近代文学館、富山県立図書館、福井県立図書館で、有元は大阪国際児童文学館、広島県立図書館で以下のように収集する。加えて、女性雑誌・文芸雑誌における日露戦後から明治終焉期までの言説の変化を明らかにするために、特に小説・戯曲作品については創作と翻訳小説・翻訳戯曲にわけて収集し、必要なものは購入する。該当なし(1)基礎的な資料の収集(継続)ー平成23年度の(2)を引き続き行う。
KAKENHI-PROJECT-23520217
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感染細菌のリポ多糖リモデリングが宿主適応で果たす役割に関する研究
リピドA修飾酵素LpxRによる脱アシル化修飾をされたリピドAを精製してその活性を非修飾型リピドAおよびLPS合成酵素LpxM欠損株から得られる生合成中間体リピドAと比較したところ、非修飾型リピドAよりも活性は低いが、生合成中間体よりも活性が高いことがわかった。外膜小胞(Outer membrane vesicle, OMV)生成の分子機構を探るために大腸菌からOMVを精製してその構成タンパク質を分析した。W3110株の場合、鞭毛成分が含まれることが特徴であった。鞭毛タンパク質欠損株ではOMV形成が減少することから鞭毛形成がOMV形成に関連していると考えられた。本研究では感染細菌の宿主適応のメカニズムの解析を目的としている。そのうち特に外膜構成成分であるリポポリサッカライドに着目し、LPSリモデリングの感染応答での役割を解明すると同時に、宿主のLPS認識の機構を明らかにすることを計画している。本年度は昨年度の研究で確立したLPSのリピドA修飾酵素であるLpxRによって起こる脱アシル化の修飾をされたリピドAの精製法を利用してその活性を非修飾型リピドAおよびLPS合成酵素LpxM欠損株から得られる生合成中間体リピドAと比較した。脱アシル化リピドAは修飾型リピドAよりも活性は低いが、生合成中間体よりも活性が高ことがわかった。構造活性相関について次年度さらに解析を進める予定である。宿主のリピドA認識応答機構を解明するために、LPS認識と並行して起こる貪食に着目して貪食がLPS刺激伝達に与える影響を解析している。LPS刺激によってマクロファージ様培養細胞株からTNFαが分泌されるが、その際にラッテックスビーズを貪食させるとTNFαの分泌が増強することがわかった。貪食シグナルがLPSシグナルを増強する可能性がある。機構の詳細について次年度さらに解析を進める予定である。グラム陰性菌は外膜を起源とする外膜小胞(Outer membrane vesicle, OMV)が分泌される。OMVはLPSなどの脂質、様々な病原性タンパク質、薬剤耐性などの遺伝物質としての核酸、などが含まれることが知られており、最近の病原性に関わると考えられている。このOMV生成の分子機構を探るために大腸菌からOMVを精製してその構成タンパク質を分析した。W3110株の場合鞭毛成分が含まれることが特徴であった。特徴的構成タンパクの生理機能について次年度以降解析する予定である。本研究では感染細菌の宿主適応のメカニズムの解析を目的としている。そのために特に外膜構成成分であるリポポリサッカライドに着目し、LPSリモデリングの感染応答での役割を解明すると同時に、宿主のLPS認識機構を明らかにすること目的としている。まず、LPSのリピドA修飾酵素LpxRによる脱アシル化修飾をされたリピドAを精製してその活性を非修飾型リピドAおよびLPS合成酵素LpxM欠損株から得られる生合成中間体リピドAと比較したところ脱アシル化リピドAは非修飾型リピドAよりも活性は低いが、生合成中間体よりも活性が高いことがわかった。宿主のリピドA認識応答機構を解明するために、LPS認識と並行して起こる貪食に着目して貪食がLPS刺激伝達に与える影響を解析した。LPS刺激によってマクロファージ様培養細胞株からサイトカインが分泌されるが、その際にラッテックスビーズを貪食させるとTNFα、IL-1βの分泌が増強するがIL-6の分泌増強は認められなかった。貪食シグナルがLPSシグナルを選択的に増強する可能性がある。グラム陰性菌は外膜を起源とする外膜小胞(Outer membrane vesicle, OMV)を分泌する。OMVはLPSなどの脂質、様々な病原性タンパク質、薬剤耐性などの遺伝物質としての核酸、などを含むことが知られており、細菌の病原性に関わる。このOMV生成の分子機構を探るために大腸菌からOMVを精製してその構成タンパク質を分析した。W3110株の場合、鞭毛成分が含まれることが特徴であった。鞭毛タンパク質欠損株ではOMV形成が減少することから鞭毛形成がOMV形成に関連していると考えられた。リピドA修飾酵素LpxRによる脱アシル化修飾をされたリピドAを精製してその活性を非修飾型リピドAおよびLPS合成酵素LpxM欠損株から得られる生合成中間体リピドAと比較したところ、非修飾型リピドAよりも活性は低いが、生合成中間体よりも活性が高いことがわかった。外膜小胞(Outer membrane vesicle, OMV)生成の分子機構を探るために大腸菌からOMVを精製してその構成タンパク質を分析した。W3110株の場合、鞭毛成分が含まれることが特徴であった。鞭毛タンパク質欠損株ではOMV形成が減少することから鞭毛形成がOMV形成に関連していると考えられた。本研究では感染細菌の宿主適応のメカニズムの解析を目的としている。そのうち特に外膜構成成分であるリポポリサッカライドに着目し、LPSリモデリングの感染応答での役割を解明すると同時に、宿主のLPS認識の機構を明らかにすることを計画している。本年度はLPSのリピドA修飾酵素であるLpxRによって起こる脱アシル化の修飾をされたリピドAの精製をすすめ、マススペクトロメトリーで単一ピークを示す精製標品を得る精製法が確立できた。
KAKENHI-PROJECT-23590095
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感染細菌のリポ多糖リモデリングが宿主適応で果たす役割に関する研究
未修飾型やそのほかの修飾型リピドAの精製標品との生物活性の比較を次年度以降行う予定である。宿主のリピドA認識応答機構を解明するために、LPS認識と並行して起こる貪食に着目して貪食がLPS刺激伝達に与える影響を解析するために、まずLPS刺激によってマクロファージから分泌される種々のサイトカインの測定系の確立を行った。また、マクロファージによるビーズの貪食系も確立した。次年度以降、ビーズの貪食がLPSによるマクロファージからのサイトカイン分泌に与える影響を検討する。グラム陰性菌は外膜を起源とする外膜小胞(Outer membrane vesicle, OMV)が分泌される。OMVはLPSなどの脂質、様々な病原性タンパク質、薬剤耐性などの遺伝物質としての核酸、などが含まれることが知られており、最近の病原性に関わると考えられている。このOMV生成の分子機構を探るために大腸菌からOMVを精製してその構成タンパク質を分析した。その結果、おなじ菌種であっても株の違いによりOMVの構成タンパク質は大きく異なることがわかった。構成タンパクOMV形成における役割を次年度以降解析する予定である。LPSリモデリングの解析を推進するために、LpxRによって起こる脱アシル化の修飾をされたリピドA精製標品を得てその活性測定を行った。また宿主によるLPS認識の機構を解明するために、LPS刺激およびLPS刺激と貪食を同時に行わせたマクロファージから分泌される種々のサイトカインの測定を行った。さらにリモデリングと捉えることができるOMV形成に関してOMV構成成分を同定した。LPSリモデリングの解析を推進するために、LpxRによって起こる脱アシル化の修飾をされたリピドAの精製をすすめ、マススペクトロメトリーで単一ピークを示す精製標品を得る精製法が確立できた。また宿主によるLPS認識の機構を解明するために、LPS刺激によってマクロファージから分泌される種々のサイトカインの測定系の確立を行った。また、マクロファージによるビーズの貪食系も確立した。さらにリモデリングと捉えることができるOMV形成に関して解析の手がかりをつかんだ。リピドA合成の変異株を利用してさらに様々な構造のリピドAを作出・精製する。それらの活性を測定比較することによりリピドAの構造活性相関の解析を行う。また、宿主LPS刺激伝達に対する貪食シグナルの増強効果を分子レベルで明らかにする。また、OMV形成における鞭毛タンパク質の役割を明らかにする。LpxRで修飾を受けたリピドAと未修飾型やそのほかの修飾型リピドAの精製標品を調製して、それらの生物活性の比較を次年度以降行う予定である。また、宿主LPS認識における貪食の役割を解析する。また、OMV形成における構成タンパク質の役割を明らかにする。上記の研究を遂行するために薬品をはじめとする物品の購入に研究費を使用する。さらに、研究成果の発表や研究情報の交換のための旅費などに研究費を使用する。上記の研究を遂行するために薬品をはじめとする物品の購入に研究費を使用する。さらに、研究成果の発表や研究情報の交換のための旅費などに研究費を使用する。
KAKENHI-PROJECT-23590095
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ノロウイルスVLPワクチンに関する基礎研究と異種抗原キャリアとしての応用
ノロウイルスのワクチン開発に有用な情報を得るために、いくつかの遺伝子型に属する株に由来するウイルス様中空粒子(VLP)を調製し、ラットを免疫した。得られた血清は免疫に用いたVLPに対して反応したが、それ以外のVLPにはほとんど反応しなかった。多様な遺伝子型が存在するノロウイルスを効率よくワクチンで制御することが今後の課題である。また、ノロウイルスVLPを異種抗原キャリアとして利用できるか、単鎖ペプチドの挿入を試みたが、組換えVLPの発現がほとんど見られず、目的を遂げることができなかった。タンパク質内の相互作用がVLP形成に重要と考えられた。ノロウイルス遺伝子群(Genogroup)Iに属する9つの遺伝子型(Genotype)について、VP1タンパク質(キャプシドタンパク質)をコードするORF2遺伝子をバキュロウイルストランスファーベクターにクローニングした。次いで、Sf9昆虫細胞を用いて、それぞれの遺伝子型のVP1タンパク質を発現する組換えバキュロウイルスを作成した。Genogroup IIについては22種のGenotypeのうち3つの遺伝子型について同様に組換えバキュロウイルスを作成した。通常、ウイルス様中空粒子(VLP)は以下のように調整する。作成した組換えバキュロウイルスをT.ni昆虫細胞(HighFive細胞と由来は同一であるが、別メーカーより購入した)に感染させ、1週間後培地を回収する。VP1タンパク質が集合して形成するVLPは回収した培地から超遠心で沈殿させ、適当な緩衝液に再懸濁の後、塩化セシウム等密度勾配遠心で分離する。現時点で、GI.2(Genogroup I, Genotype 2を意味する)のフナバシ株、GI.3のカシワ株、GI.4のチバ株、GI.6のWUG1株のみVLP調製を行ったが、GII.6のウエノ株に比して著しくVLP生産量が少なく、およそ100分の1程度と見積もられた。GI.4チバ株、GI.6 WUG1株のVLPについては、ラットの免疫を開始したところであり、今後追加接種を経て、血清の調製を行う。Genogroup Iの種々の株に特に着目してVLP調製を行っているが、培養バッチ毎にばらつきがあり、且つ、Genogroup IIのノロウイルス株や他のウイルス由来のVLPに比べ、生産量が著しく少ないという問題点が見いだされた。現在の培養スケール(全量約300400 mL)を更に上げることも可能であるが、操作を考慮すると23倍程度が限度である。また、昆虫細胞のコドン使用頻度に至適化した遺伝子の合成を行いVLP発現を試みたが、劇的な効果は認められず、むしろ、悪くなるような印象があった。ノロウイルス遺伝子群(Genogroup)Iに属する9つの遺伝子型(Genotype)について、VP1タンパク質(キャプシドタンパク質)をコードするORF2遺伝子を含む組換えバキュロウイルスを昨年度作成した。これらをT. ni昆虫細胞に感染させて、ウイルス様中空粒子(VLP)の発現を試みたところ、GI.9(Genogroup I, Genotype 9を意味する)株およびGI.4株で比較的良好な発現を見、VLPを調製することができたが、そのほかの7つの遺伝子型の株についてはVLP発現がほとんど見られず、充分量のVLPを調製することができなかった。GI.9株、GI.4株のVLPは、それぞれ単独抗原として、あるいは、混合抗原としてラットの免疫に用いた。現時点で引き続き免疫を行っており、今後血清中の抗体の性質について明らかにしていく。最近、単独の遺伝子型のVLPをヒトに接種することにより、他の遺伝子型に対する抗体がある程度産生されることが、ワクチンメーカーが関与する論文により明らかになった。このような交叉反応性を実験動物を用いて検証することを本研究の課題のひとつとして当初掲げていたが、ヒトに関して交叉反応性の可能性が示されたので、ノロウイルスVLPを異種抗原キャリアとして利用する可能性を探るもうひとつの大きな研究課題に移行することにした。そこで、VLP発現が良好なGI.9株のVP1タンパク質に、HAタグ、c-Mycタグ、Strepタグ、B型肝炎ウイルスS抗原ペプチドを挿入することを試みることにした。VP1タンパク質の立体構造モデルを作成し、挿入部位を決定した。昨年度に引き続き、Genogroup Iの株に着目している。一部の株についてはVLP調製が良好で、実験動物の免疫に漸く至ったが、他の株については良好なVLP発現が見られず、条件検討を行ったが改善が認められなかった。そのため、残りの株については実験動物免疫に至っていない。また、本来は、Genogroup IIの株についても順次VLP調製を行っていく予定であったが、平成28年度中に行えなかった。ノロウイルス遺伝子群(Genogroup)Iに属する9つの遺伝子型(Genotype)について、VP1タンパク質(キャプシドタンパク質)をコードするORF2遺伝子を含む組換えバキュロウイルスを作成し、T.ni昆虫細胞を用いてウイルス様中空粒子(VLP)の発現を試みたところ、GI.9(Genogroup I, Genotype 9を意味する)株及びGI.4株で比較的良好なVLPの発現が見られた。特に発現が良好なGI.9株のVP1タンパク質を異種抗原キャリアとして利用できるか検討するために、VP1タンパク質の立体構造モデルを作成し、異種抗原挿入部位を決定した。
KAKENHI-PROJECT-15K15228
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K15228
ノロウイルスVLPワクチンに関する基礎研究と異種抗原キャリアとしての応用
HAタグ、c-Mycタグ、Strepタグのような単鎖ペプチド、ならびに、比較的長いB型肝炎ウイルスS抗原ペプチドを挿入した組換えVP1タンパク質を発現するバキュロウイルスを作成した。これを定法通り、T.ni昆虫細胞に感染させて、異種抗原挿入型VLP発現を試みたが、目的のVLPを得ることはできなかった。また、GI.4株の抗原性領域(Pドメイン)をGI.9株のものと入れ替えたキメラVLPの作成を試みたところ、VLP発現は認められるものの、著しく産生量が減少した。さらに、異なる遺伝子群(Genogroup II)の抗原性領域でGIのVP1タンパク質を置換した場合には、VLP生産が認められなかった。一方で、GI.9株のSドメイン(殻ドメイン)のみで粒子を形成することが認められた。本実験により当初想定した目的は遂げられなかったが、VLP形成にはSドメイン同士の相互作用が重要であること、それぞれの遺伝子型に特有のSドメインとPドメインの相互作用が粒子形成に影響することが示唆された。ノロウイルスのワクチン開発に有用な情報を得るために、いくつかの遺伝子型に属する株に由来するウイルス様中空粒子(VLP)を調製し、ラットを免疫した。得られた血清は免疫に用いたVLPに対して反応したが、それ以外のVLPにはほとんど反応しなかった。多様な遺伝子型が存在するノロウイルスを効率よくワクチンで制御することが今後の課題である。また、ノロウイルスVLPを異種抗原キャリアとして利用できるか、単鎖ペプチドの挿入を試みたが、組換えVLPの発現がほとんど見られず、目的を遂げることができなかった。タンパク質内の相互作用がVLP形成に重要と考えられた。Genogroup I株VLPの安定的な大量発現は、個人のみならず、所属部署にとっても有益であるので、Genogroup I株に集中してVLP発現を継続する。培養のスケールアップのほか、昆虫細胞での発現を促進させるような配列をVP1タンパク質遺伝子のN末に付加するなど、遺伝子の改変を行う。平成27年度にVLP調製を行ったGI.2株、GI.3株、GI.4株、GI.6株は国内で頻繁に分離される遺伝子型であるので、特に集中的に行いたい。「研究実績の概要」に記したとおり、単独の遺伝子型のVLPをヒトに接種することにより、他の遺伝子型に対する抗体がある程度産生されることが、ワクチンメーカーが関与する論文により明らかになったことから、ノロウイルスVLPを異種抗原キャリアとして利用できるか、その可能性を探る研究課題に移行することにした。このためには、VLP発現が良好であったGI.9株を用い、短鎖ペプチドタグ、B型肝炎ウイルスS抗原ペプチド、GFPなど、大小様々なペプチドを挿入したVLPを調製する。ウイルス生化学VLP調製が計画通りに進行せず、実験動物の免疫、免疫後血清中の抗VLP抗体の検出の実施が遅れたことによる。目標とした全ての株についてVLP調製をすることができず、実験動物の免疫に至っていないものもある。また、免疫開始の遅れから、血清中の抗体の性質を調べるに至っていないことによる。
KAKENHI-PROJECT-15K15228
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抗血清を用いた腎発生および腎腫瘍における腎芽腫抑制遺伝子(WT)の機能解析
腎芽腫抑制遺伝子候補WT-1の産物(WT-1蛋白)に対する抗血清を作製し、同蛋白の腎発生時ならびに腎芽腫及び類縁腫瘍における発現の状況を検討することを目的とした。抗原としてWT-1蛋白アミノ酸配列のうち親水性アミノ酸が集中している2ヶ所、すなわち1)258-276;KWTEGQSNHGTGYESENHTおよび2)286-302;RIHTHGVFRGIQDVRRVをKeyhole limpet hemocyanine(KLH)をキャリアーとしてハプテン化し、家兎に感作免疫、ELISA陽性を示す抗血清を4種類得た。各種組織標本につき免疫組織化学染色を行ってスクリーニングを行ったが、通常のホルマリン固定パラフィン標本では良好な反応性は得られず、凍結標本にても同様であった。現在、マイクロウェーブ処理、抗原アンマスキングなどにより抗原性の復活を試みている。ウェスタンブロッテイングではWT-1に一致したバンドがMOLT-4などの造血系細胞株、SW41-#1(マウスSertoli細胞腫株)において検出された。今後は、腎発生期、腎芽腫ならびに後腎性腎腺腫でのWT-1の発現の検討を行っていく予定である。また、本研究を行っている間、無虹彩症の患児に発生した腎芽腫をヌードマウスに移植、生着させることに成功した。同腫瘍は継代移植が可能で、現在、17代を数えているが、組織型に変化はみられない。組織学的には、腎芽細胞成分の他、横紋筋への分化を伴う間質成分、類器官様成分が見られる。同腫瘍は11p13の欠損がみられ、WT-1遺伝子のコピー数が正常対照の約1/2に減少していることから、WT-1遺伝子のgerm line変異に加え、残りのalleleに点突然変異が生じたことから腎芽種が発生したものと考えられた(投稿準備中)。本腫瘍株はWT-1遺伝子の、移入実験などを用いた機能解析に有用であると考える。腎芽腫抑制遺伝子候補WT-1の産物(WT-1蛋白)に対する抗血清を作製し、同蛋白の腎発生時ならびに腎芽腫及び類縁腫瘍における発現の状況を検討することを目的とした。抗原としてWT-1蛋白アミノ酸配列のうち親水性アミノ酸が集中している2ヶ所、すなわち1)258-276;KWTEGQSNHGTGYESENHTおよび2)286-302;RIHTHGVFRGIQDVRRVをKeyhole limpet hemocyanine(KLH)をキャリアーとしてハプテン化し、家兎に感作免疫、ELISA陽性を示す抗血清を4種類得た。各種組織標本につき免疫組織化学染色を行ってスクリーニングを行ったが、通常のホルマリン固定パラフィン標本では良好な反応性は得られず、凍結標本にても同様であった。現在、マイクロウェーブ処理、抗原アンマスキングなどにより抗原性の復活を試みている。ウェスタンブロッテイングではWT-1に一致したバンドがMOLT-4などの造血系細胞株、SW41-#1(マウスSertoli細胞腫株)において検出された。今後は、腎発生期、腎芽腫ならびに後腎性腎腺腫でのWT-1の発現の検討を行っていく予定である。また、本研究を行っている間、無虹彩症の患児に発生した腎芽腫をヌードマウスに移植、生着させることに成功した。同腫瘍は継代移植が可能で、現在、17代を数えているが、組織型に変化はみられない。組織学的には、腎芽細胞成分の他、横紋筋への分化を伴う間質成分、類器官様成分が見られる。同腫瘍は11p13の欠損がみられ、WT-1遺伝子のコピー数が正常対照の約1/2に減少していることから、WT-1遺伝子のgerm line変異に加え、残りのalleleに点突然変異が生じたことから腎芽種が発生したものと考えられた(投稿準備中)。本腫瘍株はWT-1遺伝子の、移入実験などを用いた機能解析に有用であると考える。
KAKENHI-PROJECT-05857028
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05857028
旅行者の写真撮影位置情報を利用した観光ポテンシャルマップの構築と観光案内への応用
Web上の写真共有サイトの膨大な投稿写真データを活用し,観光地内で興味を持たれやすい箇所を地図上に可視化した「観光ポテンシャルマップ」を開発した.さらにこのマップを利用して携帯端末向けの観光案内ツールを作成し,モニター実験によりその有用性を確認した.また,投稿写真データが旅行に関するものか否か判別するフィルタを開発し,マップの精度向上に努めた.このマップは,観光地側にとっても空間整備や情報提供を考えていく上で有用な資料となることが期待される.本研究では,観光地内各所に対する旅行者の関心強度を可視化した「観光ポテンシャルマップ」を開発した.このマップは,旅行者にとっては見所の分布が示された明快な観光情報となり,観光地側にとっては観光地空間の整備や観光客の誘導を検討するうえで有用な資料となるものである.初年度は,旅行客の関心強度の測定法として考えられる5手法を比較検討し,彼らの写真撮影頻度分布を利用する手法が最も優れることを示した,さらに,オンライン写真共有サイト上に蓄積された位置情報付き写真を活用することで,きわめて低コストに観光ポテンシャルマップを作成できることを示した.また,観光ポテンシャルマップを利用した簡易なスマートフォン向け観光案内ツールを作成し,モニター実験によりその有用性を確認した.最終年度においては,まず観光ポテンシャルマップの精度評価を行った.この結果,データ源として用いたオンライン写真群は,現地居住者による写真を取り除くフィルタを適用していたにも関わらず,自宅らしき場所で撮影されたプライベート写真やテレビ画面を映した写真など,観光ポテンシャルを評価するうえで不適切な写真が1割程度含まれることが判明した.そこで,写真に付加された様々な属性データ(Exifデータ及び写真共有サイト上のメタデータ)を利用し,不適切な写真を自動除外するための手法を開発した.そしてこれを適用することで,観光ポテンシャルマップの信頼性が向上することを確認した.本研究では任意の旅行写真をベースに観光ポテンシャルマップを作成したが,今後は写真に付加されたタグを利用し,適切なフィルタリングを施すことで,テーマ別の観光ポテンシャルマップを作成することも可能になるだろう.本研究の主たる成果は,既にネット上に膨大に蓄積された写真データを活用することで,従来にない有用な観光情報を生み出せる可能性を示せたことである.Web上の写真共有サイトの膨大な投稿写真データを活用し,観光地内で興味を持たれやすい箇所を地図上に可視化した「観光ポテンシャルマップ」を開発した.さらにこのマップを利用して携帯端末向けの観光案内ツールを作成し,モニター実験によりその有用性を確認した.また,投稿写真データが旅行に関するものか否か判別するフィルタを開発し,マップの精度向上に努めた.このマップは,観光地側にとっても空間整備や情報提供を考えていく上で有用な資料となることが期待される.本研究の目的は,観光地各所における観光ポテンシャル(みどころ度合い)を推定・可視化する手法を開発し,さらにそれをもとにした旅行者ナビゲーションツールを開発するというものであった.まず,観光ポテンシャルを推定するためのいくつかの手法を提案し,それらについて比較検討した結果,旅行者による写真撮影箇所の位置データを利用する手法の優位性が明らかになった.そこで,実際に写真撮影位置データを利用し,カーネル密度推定法を用いて旅行者の写真撮影密度を計算することで,実質的に見所度合いを可視化した「観光ポテンシャル地図」を作成する手法を提案した.さらには,そのような写真撮影位置データをインターネット上の写真共有サイトFlickrから大量に収集することで,半自動的に観光ポテンシャル地図を作成するツールの開発を行った.実際にこの手法によって横浜,東京,鎌倉,ソウル,コペンハーゲンなど各都市の観光ポテンシャル地図を作成し,学会等で公開し大きな反響を得た.また,作成した横浜の観光ポテンシャル地図を活用して,スマートフォンやタブレットPCで利用可能なモバイル向け観光情報ツールを実装した.このツールについてモニターユーザによる利用実験を行った結果,旅行者に対し「あえてテキストを表示せずポテンシャルの塗り分けのみを示し興味を引かせる」という情報提示法について,地図を好む層から一定の支持が得られることが確認できた.当初の計画通り,観光ポテンシャルを推定し,可視化するという手法と,それを応用したモバイル向け観光情報ツールの実装を達成した.ただ,研究計画では複数の観光ポテンシャル推定法の優劣を実験的に比較するとしていたが,実際には実験を行わず,議論によって旅行者による写真撮影箇所位置データを利用する手法の優位性を明らかにするに留まった.初年度に開発したツールをベースに,利用者参加を取り入れて,観光ポテンシャル図が動的に更新される仕組みを導入し,利用者が観光地に起きている観光価値のある事象(イベントなど)を察知できるような情報提供を実現する.そしてそのような情報提供の可能性と課題点についてモニター実験を通し分析する.新規開発したツールのモニター実験にかかる謝金,ならびにプログラム作成アルバイトに対する賃金支払いが主になる.また,モニター実験を行うにあたって,サーバーをレンタルする費用を要する.
KAKENHI-PROJECT-23701030
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23701030
核融合プラズマにおける速度分布関数制御を用いた中性子発生量の低減化
著者等は、D-^3He核融合プラズマ中には燃料イオン速度分布関数をMaxwell分布から変形させるメカニズムが潜在しており、これにより14MeV中性子の発生量が従来の評価値(Maxwell分布を仮定した場合)から減少することを指摘してきた。本研究では、これらの自然現象としての分布関数変形に、さらに外部からの分布関数制御を重ね合せることによる14MeV中性子発生量の低減化を検討した。外部制御の方法としては中性粒子ビーム及び高周波を想定した。D-^3プラズマの立ち上げ時に、中性粒子ビーム入射加熱の使用が考えられる。一般に、入射ビームエネルギーは主(^3He(d,p)^4He)反応の反応率係数を上昇させる様に選ばれるが、この場合並行してD(d,p)T反応率係数の上昇、及びT(d,n)^4He反応率係数の減少が生じる。14MeV中性子発生の発生量は、これらの競合の結果として定まる。入射粒子に^3Heを選んだ場合、主反応の増大に伴う加熱パワーの軽減と同時に14MeV中性子率を約20%減少させることが可能であることがわかった。高周波を用いた分布関数制御に関しては、イオンサイクロトロン共鳴を利用してトリトン速度分布関数の制御を行い、14MeV中性子発生量を計算するためのコードを開発した。現在の所,高周波入射により数の105の中性子発生量の現象が得られているが、さらに入射パワーに対する吸収効率の詳細な検討が必要である。以上の計算は、簡単のため、ひとまず核弾性散乱の影響を無視して行った。今後核弾性散乱の影響を考慮した計算が要求される。著者等は、D-^3He核融合プラズマ中には燃料イオン速度分布関数をMaxwell分布から変形させるメカニズムが潜在しており、これにより14MeV中性子の発生量が従来の評価値(Maxwell分布を仮定した場合)から減少することを指摘してきた。本研究では、これらの自然現象としての分布関数変形に、さらに外部からの分布関数制御を重ね合せることによる14MeV中性子発生量の低減化を検討した。外部制御の方法としては中性粒子ビーム及び高周波を想定した。D-^3プラズマの立ち上げ時に、中性粒子ビーム入射加熱の使用が考えられる。一般に、入射ビームエネルギーは主(^3He(d,p)^4He)反応の反応率係数を上昇させる様に選ばれるが、この場合並行してD(d,p)T反応率係数の上昇、及びT(d,n)^4He反応率係数の減少が生じる。14MeV中性子発生の発生量は、これらの競合の結果として定まる。入射粒子に^3Heを選んだ場合、主反応の増大に伴う加熱パワーの軽減と同時に14MeV中性子率を約20%減少させることが可能であることがわかった。高周波を用いた分布関数制御に関しては、イオンサイクロトロン共鳴を利用してトリトン速度分布関数の制御を行い、14MeV中性子発生量を計算するためのコードを開発した。現在の所,高周波入射により数の105の中性子発生量の現象が得られているが、さらに入射パワーに対する吸収効率の詳細な検討が必要である。以上の計算は、簡単のため、ひとまず核弾性散乱の影響を無視して行った。今後核弾性散乱の影響を考慮した計算が要求される。
KAKENHI-PROJECT-06780420
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06780420
探索と対話の融合による半自動リファクタリング環境の確立
本研究は,より現実的な自動リファクタリングの実現に向けて,探索処理の向上,対話的な制御,および対話的制御のためのリファクタリング結果の効率的なレビュー方法の確立を目指すものである.平成30年度では,主に以下の成果を得た.(1)自動リファクタリングに用いる探索手法の検討を行った.その際には,申請者らがこれまでに行ってきたヒューリステック探索に基づくものを試し,求解の性能を分析しながら,他の探索手法も検討した.(2)探索手法を組み込んだ自動ツールの設計およびプロトタイプの実装を行った.(3)ソースコード変更からのリファクタリング検出を題材に探索手法のプロトタイプを実装し,その性能の予備評価を行った.(4)複数のリファクタリングが混在した場合の差分を効率よく理解するために,変更間の依存関係を考慮しながら変更の粒度を調整するための環境の設計を行った.(5)GitHubウェブサイトから得たソースコード変更からリファクタリングの実例を効率よく収集・管理するための,変更の注釈付け環境の設計およびプロトタイプの実装を行った.本研究は,リファクタリング等のプログラム変換を探索的に組み合わせて自動的にソフトウェア品質を改善する,自動ソフトウェア進化方式のより現実的な実現を目指している.平成30年度では,そのうちの中心的な機構である,リファクタリング操作列の探索手法の検討を進め,またその自動ツールを試作している.また,リファクタリング結果のレビューに向けて,変更の粒度を変更しながらその全体像を俯瞰するためのツールの作成も進めている.平成31年度では,平成30年度に設計・試作した自動リファクタリングツールの挙動を洗練させ,手法として確立させる.その際には,保守性メトリクスを用いたリファクタリング適用結果の評価に基づくリファクタリング候補の推薦と,変更の説明性の高さをメトリクスとして用いたリファクタリング実例の分解の2つのアプリケーションを想定して進める.また,開発した実例収集環境を用いて,GitHub上のソフトウェア開発リポジトリ中の変更履歴からリファクタリング例を収集する.本研究は,より現実的な自動リファクタリングの実現に向けて,探索処理の向上,対話的な制御,および対話的制御のためのリファクタリング結果の効率的なレビュー方法の確立を目指すものである.平成30年度では,主に以下の成果を得た.(1)自動リファクタリングに用いる探索手法の検討を行った.その際には,申請者らがこれまでに行ってきたヒューリステック探索に基づくものを試し,求解の性能を分析しながら,他の探索手法も検討した.(2)探索手法を組み込んだ自動ツールの設計およびプロトタイプの実装を行った.(3)ソースコード変更からのリファクタリング検出を題材に探索手法のプロトタイプを実装し,その性能の予備評価を行った.(4)複数のリファクタリングが混在した場合の差分を効率よく理解するために,変更間の依存関係を考慮しながら変更の粒度を調整するための環境の設計を行った.(5)GitHubウェブサイトから得たソースコード変更からリファクタリングの実例を効率よく収集・管理するための,変更の注釈付け環境の設計およびプロトタイプの実装を行った.本研究は,リファクタリング等のプログラム変換を探索的に組み合わせて自動的にソフトウェア品質を改善する,自動ソフトウェア進化方式のより現実的な実現を目指している.平成30年度では,そのうちの中心的な機構である,リファクタリング操作列の探索手法の検討を進め,またその自動ツールを試作している.また,リファクタリング結果のレビューに向けて,変更の粒度を変更しながらその全体像を俯瞰するためのツールの作成も進めている.平成31年度では,平成30年度に設計・試作した自動リファクタリングツールの挙動を洗練させ,手法として確立させる.その際には,保守性メトリクスを用いたリファクタリング適用結果の評価に基づくリファクタリング候補の推薦と,変更の説明性の高さをメトリクスとして用いたリファクタリング実例の分解の2つのアプリケーションを想定して進める.また,開発した実例収集環境を用いて,GitHub上のソフトウェア開発リポジトリ中の変更履歴からリファクタリング例を収集する.
KAKENHI-PROJECT-18K11238
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K11238
水稲における高温による受精・稔実障害の発生条件の解明
本研究は,オーストラリアと中国華中の水田地帯の現地調査を通じて水稲の高温不稔の発生条件を解明する目的で実施された.オーストラリアニューサウスウェールズ州ヘイの民間農場の水田で調査を行い,現地品種の受粉の安定性・稔実と気象条件との関係を検討した.1.ヘイの水田では,開花期の気温が40度を超えることも珍しくないが,空気は著しく乾燥しており,群落内の穂の温度はそれほど高くない.2.しかし,群落の周辺,特に風上側では,穂温が37度を超える場合も観察された.このため,周辺部の花粉の発芽率は著しく低かった.3.群落周辺部では20%30%程度の不稔が認められた,しかし,現地の一筆の水田面積は100ha規模であり,経営に及ぼす不稔の影響は小さく,不稔の発生自体が見逃されていた.中国荊州市にある長江大学において,水田に実験区を作成し,自然高温条件下で,中国の主要ハイブリッド水稲品の受粉,稔実,穂温と気象条件との関係を検討した.その結果以下のことが明らかとなった.1.荊州市付近では,夏期日中の気温はせいぜい36度程度であるが,無風あるいは弱風状態と高湿度があいまって,開花時の穂の温度は,一時的に38に達することがあった.2.中国のハイブリッドライス品種では,開花時の気温が33度程度でも,受粉が不安定になり,不稔が認められた.3.中国のハイブリッドライスの葯は,高温条件下での受粉に不利な形であった.以上の結果,中国華中では,湿潤・弱風という気象条件が高温不稔の発生に関与していることがわかった.また,ハイブリッドライスの高温不稔耐性が弱いことも関与している可能性がある.ある程度の気温・日射,高い湿度,弱い風という条件が揃うと,穂の温度が一時的に上昇し不稔を引き起こすと考えられた.この結論は,高温ストレスの指標として気温ではなくイネの体温・穂温を用いることの必要性を強く示唆している.本研究は,オーストラリアと中国華中の水田地帯の現地調査を通じて水稲の高温不稔の発生条件を解明する目的で実施された.オーストラリアニューサウスウェールズ州ヘイの民間農場の水田で調査を行い,現地品種の受粉の安定性・稔実と気象条件との関係を検討した.1.ヘイの水田では,開花期の気温が40度を超えることも珍しくないが,空気は著しく乾燥しており,群落内の穂の温度はそれほど高くない.2.しかし,群落の周辺,特に風上側では,穂温が37度を超える場合も観察された.このため,周辺部の花粉の発芽率は著しく低かった.3.群落周辺部では20%30%程度の不稔が認められた,しかし,現地の一筆の水田面積は100ha規模であり,経営に及ぼす不稔の影響は小さく,不稔の発生自体が見逃されていた.中国荊州市にある長江大学において,水田に実験区を作成し,自然高温条件下で,中国の主要ハイブリッド水稲品の受粉,稔実,穂温と気象条件との関係を検討した.その結果以下のことが明らかとなった.1.荊州市付近では,夏期日中の気温はせいぜい36度程度であるが,無風あるいは弱風状態と高湿度があいまって,開花時の穂の温度は,一時的に38に達することがあった.2.中国のハイブリッドライス品種では,開花時の気温が33度程度でも,受粉が不安定になり,不稔が認められた.3.中国のハイブリッドライスの葯は,高温条件下での受粉に不利な形であった.以上の結果,中国華中では,湿潤・弱風という気象条件が高温不稔の発生に関与していることがわかった.また,ハイブリッドライスの高温不稔耐性が弱いことも関与している可能性がある.ある程度の気温・日射,高い湿度,弱い風という条件が揃うと,穂の温度が一時的に上昇し不稔を引き起こすと考えられた.この結論は,高温ストレスの指標として気温ではなくイネの体温・穂温を用いることの必要性を強く示唆している.本研究は,水稲の高温不稔が発生している中国華中と,極端な高温条件であるにもかかわらず高温不稔の発生していないオーストラリアの稲作地帯の気象条件と水稲の受粉動態を調査し,高温不稔の発生条件を明らかにしようとするものである.中国南京市にある江蘇省農業科学院において,枠水田に擬似水稲群落を作成し,自然高温条件下で,中国の主要品種,旧品種,および日本品種の受粉および受精と気象条件との関係を検討した.その結果以下のことが明らかとなった.1.江蘇省南京付近では,夏期日中の気温はしばしば35度を超える.無風あるいは弱風状態と高湿度があいまって,開花時の穂の温度は,気温に近い高さとなる.2.中国のハイブリッドライス品種や旧品種では,35度を超える高温により,受粉が不安定になる傾向が認められた.これに対し,日本品種では受粉が安定していた.3.早朝開花する旧品種では,受粉が著しく不安定であった.オーストラリアニューサウスウェールズ州ヘイの民間農場の水田を利用して現地品種の受粉の安定性と気象条件との関係を検討した.その結果以下のことが明らかとなった.1.ヘイの水田では,開花期の気温が37度を超えることも珍しくないが,空気は著しく乾燥しており,群落内の穂の温度はそれほど高くない.2.しかし,群落の周辺,特に風上側では,穂温が35度を超える場合も観察された.
KAKENHI-PROJECT-17580016
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17580016
水稲における高温による受精・稔実障害の発生条件の解明
3.受粉は,群落の風上側周辺部ではやや不安定になるものの,直接不受精の原因となるほどではなかった.しかし,周辺部の花粉の発芽率は著しく低かった.以上の結果,気温だけでなく,湿度条件が高温条件下での水稲の受精,受粉,花粉の発芽に強く関与していることが示唆された.本研究は,オーストラリアと中国華中の水田地帯の現地調査を通じて水稲の高温不稔の発生条件を解明する目的で実施された。オーストラリアニューサウスウェールズ州ヘイの民間農揚の水田で調査を行い,現地品種の受粉の安定性・稔実と気象条件との関係を検討した.1.ヘイの水田では,開花期の気温が40度を超えることも珍しくないが,空気は著しく乾燥しており,群落内の穂の温度はそれほど高くない.2.しかし,群落の周辺,特に風上側では,穂温が37度を超える場合も観察された.このため,周辺部の花粉の発芽率は著しく低かった.3.群落周辺部では20%30%程度の不稔が認められた.しかし;現地の一筆の水田面積は100ha規模であり,経営に及ぼす不稔の影響は小さく,不稔の発生自体が見逃されていた.中国荊州市にある長江大学において,水田に実験区を作成し,自然高温条件下で,中国の主要ハイブリッド水稲品の受粉,稔実,穂温と気象条件との関係を検討した.その結果以下のことが明らかとなった.1.荊州市付近では,夏期日中の気温はせいぜい36度程度であるが,無風あるいは弱風状態と高湿度があいまって,開花時の穂の温度は,一時的に38に達することがあった.2.中国のハイブリッドライス品種では,開花時の気温が33度程度でも,受粉が不安定になり,不稔が認められた.3.中国のハイブリッドライスの葯は,高温条件下での受粉に不利な形であった.以上の結果,中国華中では,湿潤・弱風という気象条件が高温不稔の発生に関与していることがわかった.また,ハイブリッドライスの高温不稔耐性が弱いことも関与している可能性がある.ある程度の気温・日射,高い湿度,弱い風という条件が揃うと,穂の温度が一時的に上昇し不稔を引き起こすと考えられた.この結論は,高温ストレスの指票として気温ではなくイネの体温・穂温を用いることの必要性を強く示唆している.
KAKENHI-PROJECT-17580016
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17580016
MEMS技術を用いた磁歪・比透磁率のハイスループット評価
磁歪材料は非接触駆動,大出力といった特徴から多くのアクチュエータやセンサに応用されている.本研究では,磁歪材料の重要な物性値である磁歪量と比透磁率(磁化曲線)をハイスループット評価する方法として,カンチレバー構造を有するMEMS構造体を用いた新しいハイスループット評価方法の考案,及び原理確認を行うことを目的とした.平成29年度は,1)SOIウエハを用いたMEMS構造体の製作,2)製作したMEMS構造体を用いた磁歪量,比透磁率のハイスループット評価を実施し,以下の成果を得た.1) SOIウエハを用いたMEMS構造体の製作カンチレバー形状のMEMS構造体に成膜した磁歪材料をアニールした際には内部応力が発生する.内部応力によりカンチレバーにはたわみが発生してしまうため剛性の高い厚膜のSiデバイス層を有するSOIウエハを用いてMEMS構造体の製作を行った.発生するたわみは磁歪材料の磁歪量,比透磁率を評価できる程度に抑制することができ,SOIウエハを使用したMEMS構造体の製作プロセスを確立した.2)製作したMEMS構造体を用いた磁歪量,比透磁率のハイスループット評価SOIウエハを用いて製作したMEMS構造体を使用して,磁歪量,比透磁率の評価を行った.磁歪量は,カンチレバー形状のMEMS構造体に外部磁場を印加した際に発生するたわみを,カンチレバー近傍に設置した電極との間の静電容量変化を測定することで評価した.測定結果は従来から磁歪量の測定に利用されている光てこ法を用いた測定結果と比較し,妥当性を確認した.比透磁率の測定は,カンチレバー形状のMEMS構造体を加振した際に,近傍に設置したピックアップコイルに発生する,磁歪材料の磁化に比例した誘導起電力を測定することで評価した.測定結果は従来から比透磁率測定に利用されている試料振動型磁力計の測定結果と比較し,妥当性を確認した.29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。磁歪材料は非接触駆動,大出力といった特徴から多くのアクチュエータやセンサに応用されている.本研究では,磁歪材料の重要な物性値である磁歪量と比透磁率(磁化曲線)をハイスループット評価する方法として,カンチレバー構造を有するMEMS構造体を用いた新しいハイスループット評価方法の考案,及び原理確認を行うことを目的とした.平成28年度は,1)薄膜金属ガラスを用いたMEMS構造体製作,2)SOIウエハを用いたMEMS構造体製作を実施し,以下の成果を得た.1)薄膜金属ガラスを用いたMEMS構造体製作ガラス転移を示す薄膜金属ガラスを用いることで,磁歪材料をアニールした際に発生する内部応力を緩和し,カンチレバーに発生するたわみを抑制することを検討した.カンチレバー形状のサンプル基板と評価機構が製作された評価基板の接合温度付近にガラス転移温度を有する薄膜金属ガラスPd-Cu-Siを用いて検討を行った結果,ヤング率の低い薄膜金属ガラスでは,発生するたわみを十分に抑制することが出来ず,カンチレバー先端と評価基板が接触するため,磁歪,及び比透磁率の測定が困難となることが明らかとなった.2) SOIウエハを用いたMEMS構造体製作カンチレバーに発生するたわみを抑制するために,薄膜金属ガラスと比較し,ヤング率および剛性の高い厚膜のSiデバイス層を有するSOIウエハを用いたMEMS構造体製作の検討を行った.厚膜のSiを用いたことにより,発生するたわみは,磁歪,比透磁率の測定を実施できる程度に抑制することができ,MEMS構造体の製作プロセスを確立した.研究計画と比較し,磁歪,比透磁率の測定に用いるMEMS構造体の製作手法を(1)から(2)へと変更した.(1)薄膜金属ガラスを用いたMEMS構造体製作ガラス転移を示す薄膜金属ガラスを用いることで,磁歪材料をアニールした際に発生する内部応力を緩和し,カンチレバーに発生するたわみの抑制を検討した.薄膜金属ガラスを用いたMEMS構造体により磁歪,比透磁率の測定方法の原理確認を行うことを予定していたが,ヤング率の低い薄膜金属ガラス(Pd-Cu-Si)では,発生するたわみを十分に緩和できず,カンチレバー先端と測定機構を有する評価基板が接触し測定が困難となった.(2)SOIウエハを用いたMEMS構造体製作カンチレバーに発生するたわみを抑制するために,薄膜金属ガラスと比較し,ヤング率及び剛性の高い厚膜Siデバイス層を有するSOIウエハを用いた.厚膜のSiとすることで発生するたわみを磁歪,比透磁率の測定を実施できる程度に抑制することができ,MEMS構造体の製作プロセスを確立した.磁歪材料は非接触駆動,大出力といった特徴から多くのアクチュエータやセンサに応用されている.本研究では,磁歪材料の重要な物性値である磁歪量と比透磁率(磁化曲線)をハイスループット評価する方法として,カンチレバー構造を有するMEMS構造体を用いた新しいハイスループット評価方法の考案,及び原理確認を行うことを目的とした.平成29年度は,1)SOIウエハを用いたMEMS構造体の製作,2)製作したMEMS構造体を用いた磁歪量,比透磁率のハイスループット評価を実施し,以下の成果を得た.1) SOIウエハを用いたMEMS構造体の製作カンチレバー
KAKENHI-PROJECT-16J11594
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J11594
MEMS技術を用いた磁歪・比透磁率のハイスループット評価
形状のMEMS構造体に成膜した磁歪材料をアニールした際には内部応力が発生する.内部応力によりカンチレバーにはたわみが発生してしまうため剛性の高い厚膜のSiデバイス層を有するSOIウエハを用いてMEMS構造体の製作を行った.発生するたわみは磁歪材料の磁歪量,比透磁率を評価できる程度に抑制することができ,SOIウエハを使用したMEMS構造体の製作プロセスを確立した.2)製作したMEMS構造体を用いた磁歪量,比透磁率のハイスループット評価SOIウエハを用いて製作したMEMS構造体を使用して,磁歪量,比透磁率の評価を行った.磁歪量は,カンチレバー形状のMEMS構造体に外部磁場を印加した際に発生するたわみを,カンチレバー近傍に設置した電極との間の静電容量変化を測定することで評価した.測定結果は従来から磁歪量の測定に利用されている光てこ法を用いた測定結果と比較し,妥当性を確認した.比透磁率の測定は,カンチレバー形状のMEMS構造体を加振した際に,近傍に設置したピックアップコイルに発生する,磁歪材料の磁化に比例した誘導起電力を測定することで評価した.測定結果は従来から比透磁率測定に利用されている試料振動型磁力計の測定結果と比較し,妥当性を確認した.平成29年度は以下の項目について研究を推進する.(1)製作プロセスの検討:平成28年度の検討において,SOI基板を用いたMEMSデバイス製作プロセスは確立されたが,評価機構を有する評価基板とカンチレバー形状のサンプル基板の接合プロセスにおける歩留りが悪い.歩留りを向上させるため,接合プロセスにおける印加応力,接合温度などの検討を行う.(2)磁歪,比透磁率の測定原理確認:ロックインアンプやスイッチトキャパシタなどの微小信号の測定技術を用いて磁歪,比透磁率の測定を行う.原理確認には,磁歪,比透磁率が既知である磁歪材料を標準試料として用いる.29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-16J11594
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J11594
各種根管充填材のマイクロファージ走化性への影響
【研究目的】生体防御の基本であり、炎症、免疫反応において重要な役割を果していると考えられるマイクロファージの走化性に着目し、各種根管充填材によるマイクロファージの走化活性を比較することを目的とした。【材料および方法】Mphiの採取はウィスター系雄性ラット(78週齢)腹腔内に10%プロテオースペプトンを注入し、4日後にHBSSにて腹腔滲出細胞を回収することにより行なった。被検材料はCanals(昭和薬品社製),Canals-N(昭和薬品社製),Sealapex(Kerr社製),Finapec APC(京セラ社製)を用いた。それぞれの根充材が硬化した後、微粒粉砕器にて粒子を作製した。各根充材粒子0.01、0.05、0.1gを10mlの10%FCS加RPMI1640に懸濁し37°C恒温振盪槽にて3時間浸漬して遠心分離後上清を被検試料とした。コントロールとしてザイモサン処理血清(ZAS)を培養液で25%に希釈したものを用いた。走化試験はmulti-well chamotaxis chamber(Neuro Probe社製)を用いたmembrane filter法で行なった。membraneは8mumpore sizeのpoly-carbonate filterを用い上室に細胞浮遊液、下室に各被検試料を満たし、37°C5%CO_2で120分間インキュベートした。DiffQuick(国際試薬)にて固定染色した後フィルター下面に遊走した細胞を倍率400倍で無作為に5視野カウントし1視野あたりの平均走化細胞を算出した。これらは別にchemokinesisとchemotaxisを区別するためチェッカーボード分析を行なった。【結果】走化細胞数はCanals浸漬液が他の3種の根充材より多く濃度上昇に伴い増加した。Finapec浸漬液は各濃度でネガティブコントロールに近い値を示した。Canals-N,Sealapex浸漬液については濃度上昇に伴いわずかな増加が見られた。ポジティブコントロールとして用いたZASは他と比較し多量の走化細胞が確認された。【研究目的】生体防御の基本であり、炎症、免疫反応において重要な役割を果していると考えられるマイクロファージの走化性に着目し、各種根管充填材によるマイクロファージの走化活性を比較することを目的とした。【材料および方法】Mphiの採取はウィスター系雄性ラット(78週齢)腹腔内に10%プロテオースペプトンを注入し、4日後にHBSSにて腹腔滲出細胞を回収することにより行なった。被検材料はCanals(昭和薬品社製),Canals-N(昭和薬品社製),Sealapex(Kerr社製),Finapec APC(京セラ社製)を用いた。それぞれの根充材が硬化した後、微粒粉砕器にて粒子を作製した。各根充材粒子0.01、0.05、0.1gを10mlの10%FCS加RPMI1640に懸濁し37°C恒温振盪槽にて3時間浸漬して遠心分離後上清を被検試料とした。コントロールとしてザイモサン処理血清(ZAS)を培養液で25%に希釈したものを用いた。走化試験はmulti-well chamotaxis chamber(Neuro Probe社製)を用いたmembrane filter法で行なった。membraneは8mumpore sizeのpoly-carbonate filterを用い上室に細胞浮遊液、下室に各被検試料を満たし、37°C5%CO_2で120分間インキュベートした。DiffQuick(国際試薬)にて固定染色した後フィルター下面に遊走した細胞を倍率400倍で無作為に5視野カウントし1視野あたりの平均走化細胞を算出した。これらは別にchemokinesisとchemotaxisを区別するためチェッカーボード分析を行なった。【結果】走化細胞数はCanals浸漬液が他の3種の根充材より多く濃度上昇に伴い増加した。Finapec浸漬液は各濃度でネガティブコントロールに近い値を示した。Canals-N,Sealapex浸漬液については濃度上昇に伴いわずかな増加が見られた。ポジティブコントロールとして用いたZASは他と比較し多量の走化細胞が確認された。
KAKENHI-PROJECT-05771657
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05771657
ハイブリッド構造を有する超低摩擦摺動システムの創製
本申請研究では,表面修飾(有機)・マイクロおよびナノスケールのテクスチャリング材料(無機)を複合したハイブリッド表面を用いた摺動システムの創製を目指す。そのために,各スケールでのテクスチャ効果を明らかにし,最終的にはマイクロ・ナノスケール効果と表面修飾との組み合わせによる最適条件の統合によって,低摩擦特性の制御と摩擦係数0.0001オーダーの超低摩擦摺動システムの開発を目指す。本申請研究では,表面修飾(有機)・マイクロおよびナノスケールのテクスチャリング材料(無機)を複合したハイブリッド表面を用いた摺動システムの創製を目指す。そのために,各スケールでのテクスチャ効果を明らかにし,最終的にはマイクロ・ナノスケール効果と表面修飾との組み合わせによる最適条件の統合によって,低摩擦特性の制御と摩擦係数0.0001オーダーの超低摩擦摺動システムの開発を目指す。
KAKENHI-PROJECT-19K04159
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K04159
リアルオプション・アプローチによる資源・環境政策の評価モデルの開発とその応用
リアルオプション・アプローチを用い,不確実性下における資源・環境政策について,以下の分析を行った.1)汚染物質のストック量にも依存した資源・環境政策, 2)技術進歩を考慮した資源・環境政策, 3)複数回実施される資源・環境政策.これらの分析の結果,政策の意思決定モデルを開発し,不確実性,政策費用,技術進歩などが政策の意思決定に与える影響について明らかとした.リアルオプション・アプローチを用い,不確実性下における資源・環境政策の評価モデルを開発する。特に,代替的な政策が存在する場合について,主に次の内容について研究を進める。(1)汚染物質のストック量にも依存した資源・環境政策の分析(2)汚染物質の削減量を内製化させた資源・環境政策の分析(3)エネルギー政策の分析(4)技術進歩を考慮した資源・環境政策の分析(5)複数回実施される資源・環境政策の分析国内外の学会・国際会議・セミナーにおいて随時研究成果を発表し,他の研究者との意見交換を通じて,研究を深めると共に研究の発展を促す。リアルオプション・アプローチを用い,不確実性下における資源・環境政策について,以下の分析を行った.1)汚染物質のストック量にも依存した資源・環境政策, 2)技術進歩を考慮した資源・環境政策, 3)複数回実施される資源・環境政策.これらの分析の結果,政策の意思決定モデルを開発し,不確実性,政策費用,技術進歩などが政策の意思決定に与える影響について明らかとした.本年度は,研究計画に基づき以下のように研究を実施した.基本モデルである後藤・高嶋・辻村(2007)(これ以降,GTT)では,経済活動に伴って排出される汚染物質から損害を被っている経済主体が,汚染物質を削減するために,削減費用は安いが削減量が少ない政策と,削減費用は高いが削減量は多い政策の2種類の環境政策を実施可能だと想定し分析を行った.このGTTでは,環境政策の実施が,汚染物質のストック量とは独立に定まっていたが,それを汚染物質のストック量にも依存した環境政策を分析した.更に,定数として与えられている政策実施費用を,汚染物質の削減量に比例した費用(比例費用)と,それとは独立にかかる費用(固定費用)を考慮し分析を行った.現実の汚染物質から被る損害は,現在排出されている汚染物質と,既に排出され自然界に蓄積されている汚染物質のストックの両方からなると考えられる.したがって,本年度実施した研究は,より現実を反映させた研究であるといえる.また,これまでの,リアルオプション・アプローチを用いた資源・環境政策の分析は,単一の政策についての研究がほとんどであり,本研究のように代替的な政策も考慮した研究は,これまでほとんどなされてこなかった.しかし,現実には,政策の意思決定主体は,いくつもの政策選択肢を所有しており,その中から最適な政策を選択することが可能である.このような現実に対応した政策に対する研究成果が求められている.その社会的な要求に応えようとする本研究は,実際のデータを用い,実際の資源・環境政策への示唆を明らかとすることで,我々が直面している多くの資源・環境問題への提言が可能となり,学術的な貢献ばかりではなく社会的な貢献も,大いに期待されるといえよう.本年度は,研究計画に基づき以下のように研究を実施した.経済活動に伴って排出される汚染物質から損害を被っている経済主体は,汚染物質を削減するために,削減費用は安いが削減量が少ない政策と,削減費用は高いが削減量は多い政策の2種類の環境政策を実施可能であるとする.経済主体が汚染物質から被る損害は,汚染物質のストック量に対して2次形式でかかるとする.この汚染物質を削減するためには,削減量とは独立に与えられている政策実施費用,汚染物質の削減量に比例した費用と,削減量に対して2次形式でかかる調整費用を考慮し分析を行った.このように,汚染物質から被る損害がストック量に対して逓増することや,汚染物質削減費用が削減量に対して逓増すること,さらに調整費用を考慮することは,より現実を反映させた研究であるといえる.リアルオプション・アプローチを用いた資源・環境政策の分析は,単一の政策についての研究がほとんどであり,本研究のように代替的な政策も考慮した研究は,これまでほとんどなされてこなかった.しかし,現実には,政策の意思決定主体は,いくつもの政策選択肢を所有しており,その中から最適な政策を選択することが可能である.このような現実に対応した政策に対する研究成果が求められている.その社会的な要求に応えようとする本研究は,実際のデータを用い,実際の資源・環境政策への示唆を明らかとすることで,我々が直面している多くの資源・環境問題への提言が可能となり,学術的な貢献ばかりではなく社会的な貢献も,大いに期待されるといえよう.本年度は,研究計画に基づき以下のように企業の研究開発に関する研究を実施した企業は,次の2つの研究開発(R&D)プロジェクトを投資対像として検討している.一方は,生産性は高いが,その開発費が高額となるR&Dプロジェクト(プロジェクトH)であり,他方は,生産性はプロジェクトHに比べると劣るが,開発費はプロジェクトHよりも低く抑えられるR&Dプロジェクト(プロジェクトL)である.プロジェクトへの投資額が増えるにつれて,R&Dの成功確率も高まる場合について考察する.また,プロジェクトの成功によって生まれるキャッシュフローは不確実である.したがって,企業の問題は,2つのR&Dプロジェクトのうち,いつどちらのプロジェクトに投資すべきか,という問題となる.本研究では,この企業の問題を最適停止問題として定式化し,分析を行った.その結果,いつどちらのプロジェクトへ投資するのが最適かを明らかとした.
KAKENHI-PROJECT-20510149
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20510149
リアルオプション・アプローチによる資源・環境政策の評価モデルの開発とその応用
さらに,これまでの多くのR&Dプロジェクトへの投資問題については,その投資額を外生的に与えていたが,本研究では,それを内生的に最適な投資額として示した.加えて,不確実性の大きさや,技術水準の程度などを表わすパラメーターなど,いくつかの経済学的に意味のあるパラメーターに対する比較静学も実施し,それらの影響を明らかとした.例えば,不確実性が大きくなると,プロジェクトLへの投資が徐々に実施されにくくなり,ある値を超えるとそのプロジェクトHのみが実施されることを明らかとした資源・環境問題についても技術の果たす役割は極めて大きく,この分析結果を,資源・環境政策の分析に応用することで,例えば,エネルギー効率の高い新たな設備への研究開発の意思決定に対する示唆を与えることなどが期待される本年度は,研究計画に基づき以下のように企業の投資プロジェクトに関する研究を実施した。企業の投資プロジェクトとして,資本への投資について考察した。企業はリスク中立であり,資本を使い財を生産し,完全競争市場で当該財を販売している。当該財への需要は不確実であり,したがって,資本への投資から得られる将来のキャッシュフローに不確実性が存在する。このような不確実な事業環境に対応するため,企業は資本を拡張あるいは縮小することが出来る。拡張・縮小が機動的になされるような資本としては,大規模な資本ではなく比較的小規模な資本が考えられる。そのため,資本の拡張あるいは縮小の際に要する費用としては,その規模に依存した費用のみがかかる場合を想定している。拡張時は資本の購入費用がかかり,売却時には売却額が得られる。ただし,売却額は購入額よりも少ないとする。このような企業の問題は,利潤の期待現在価値を最大とするように,資本への投資戦略を決めることである。本研究では,この企業の問題を,特異確率制御問題として定式化し,変分不等式を用いて最適な投資戦略を求めた。分析の結果,資本ストックと需要の水準によって特徴付けられる最適な投資戦略が求まった。資本ストックと需要がそれぞれある水準に到達すると資本を拡張・縮小する。さらに,いくつかの重要なパラメータに関して比較静学を実施し,企業の意思決定への示唆を明らかにした。代表的な結果として,不確実性が大きくなると,資本への投資が遅れることを示した。この分析結果を,汚染物質を吸収する装置への投資問題などの資源・環境政策の分析に応用することが期待される。
KAKENHI-PROJECT-20510149
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20510149
非鉛化可能な定在波屈曲振動板による新しい非接触駆動方式の超音波モータの検討
○研究目的:定在波屈曲振動円板を用いた,新しい非接触駆動方式の超音波モータを試作し,その動作検証を行うことによって,非鉛化可能な圧電単結晶を用いた非接触超音波モータの実現の可能性を得る。○研究方法:1.圧電振動円板とロータおよび周囲の空気の相互作用を考慮した有限要素法解析を用いて,2枚の定在波屈曲振動円板で挟まれたギャップ空間内の音場の周波数特性や時間変化を解析した。2.上記の解析結果に基づいて,ロータの上下に2枚の定在波屈曲振動円板ステータを配置した構造の非接触型超音波モータを作製した。3.ステータの電気端子からギャップ空間の音響インピーダンスを実測し,その特性から最適構造の確認を実験的に行った。4.試作した非接触超音波モータにおける,2つのステータの位置角度差や駆動電圧の位相差,ギャップ長に対するモータ特性を測定し,本研究で提案するロータの非接触駆動方式の原理検証を実験的に行うとともに,従来の同型縮退モードを利用した駆動方式との特性比較を行った。○研究成果:1.定在波屈曲振動円板を用いてロータの非接触回転に成功し,非鉛化可能な圧電単結晶を用いた非接触超音波モータの実現の可能性を得た。2.2つの定在波屈曲振動円板ステータの位置角度差を振動モードの円周方向周期の1/4にし,かつ,駆動電圧の位相差を90°にしたときに,ロータ上下のギャップ内の音場が円周方向の進行波になるという有限要素法解析結果を得た。また,そのとき,実験的に最も高いモータ特性が得られ,約3Vという低い駆動電圧で,約2200rpmの高速回転を実現した。3.従来の同型縮退モードを利用した駆動方式の非接触型超音波モータと比較して,最大回転速度で約1.3倍,最大起動トルクで約1.8倍,最大効率で約2.6倍の特性の向上を実現した。また,従来よりも約2.56.0倍の比較的広いギャップ長範囲で動作し,駆動電圧は約1/4倍に低電圧化できた。○研究目的:定在波屈曲振動円板を用いた,新しい非接触駆動方式の超音波モータを試作し,その動作検証を行うことによって,非鉛化可能な圧電単結晶を用いた非接触超音波モータの実現の可能性を得る。○研究方法:1.圧電振動円板とロータおよび周囲の空気の相互作用を考慮した有限要素法解析を用いて,2枚の定在波屈曲振動円板で挟まれたギャップ空間内の音場の周波数特性や時間変化を解析した。2.上記の解析結果に基づいて,ロータの上下に2枚の定在波屈曲振動円板ステータを配置した構造の非接触型超音波モータを作製した。3.ステータの電気端子からギャップ空間の音響インピーダンスを実測し,その特性から最適構造の確認を実験的に行った。4.試作した非接触超音波モータにおける,2つのステータの位置角度差や駆動電圧の位相差,ギャップ長に対するモータ特性を測定し,本研究で提案するロータの非接触駆動方式の原理検証を実験的に行うとともに,従来の同型縮退モードを利用した駆動方式との特性比較を行った。○研究成果:1.定在波屈曲振動円板を用いてロータの非接触回転に成功し,非鉛化可能な圧電単結晶を用いた非接触超音波モータの実現の可能性を得た。2.2つの定在波屈曲振動円板ステータの位置角度差を振動モードの円周方向周期の1/4にし,かつ,駆動電圧の位相差を90°にしたときに,ロータ上下のギャップ内の音場が円周方向の進行波になるという有限要素法解析結果を得た。また,そのとき,実験的に最も高いモータ特性が得られ,約3Vという低い駆動電圧で,約2200rpmの高速回転を実現した。3.従来の同型縮退モードを利用した駆動方式の非接触型超音波モータと比較して,最大回転速度で約1.3倍,最大起動トルクで約1.8倍,最大効率で約2.6倍の特性の向上を実現した。また,従来よりも約2.56.0倍の比較的広いギャップ長範囲で動作し,駆動電圧は約1/4倍に低電圧化できた。
KAKENHI-PROJECT-21920022
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21920022
遺伝子工学的手法によるヒト肝癌腫瘍抗原の解析
HLA-A24を持たないヒト肝細胞癌細胞株Hep.3B2.1-7に内因性の抗原ペブチドを細胞膜表面へと運搬させることを目的に、哺乳類細胞株発現ベクターであるpcDNA3.1を用いてHLA-A24cDNAを導入した。クローニングされたHLA-A24発現Hep.3B2.1-7(Hep.3B.A24)の酸溶出分画は、Hep.3B2.1-7野生株ならびに対照pcDNA3.1導入株とは異なった7つの有意に異なったピークをFPLC分画で示した。この7分画のうちの1つは、2位(L)と10位(K)にHLA-A24結合モチーフを有していた。他方、残る6分画にはヒストンH2Aが2つ、マクロファージ遊走阻止因子のうちのHLA-A68結合ペプチド、HLA-B35結合ペブチド、ならびに2つの未知の配列を示すペプチドが含まれていた。本研究で得られたHLA-A24結合モチーフを有するペプチドのホモロジー検索では、データーベース中に相同性を示す蛋白を見い出すことができなかった。結論として、本研究は新たなHLA-A24結合ペプチドを明らかにした可能性があり、遺伝子工学的手法で強制発現させたHLA分子が腫瘍抗原ペプチドの研究に新たな解析方法を示したものと期待される。HLA-A24を持たないヒト肝細胞癌細胞株Hep.3B2.1-7に内因性の抗原ペブチドを細胞膜表面へと運搬させることを目的に、哺乳類細胞株発現ベクターであるpcDNA3.1を用いてHLA-A24cDNAを導入した。クローニングされたHLA-A24発現Hep.3B2.1-7(Hep.3B.A24)の酸溶出分画は、Hep.3B2.1-7野生株ならびに対照pcDNA3.1導入株とは異なった7つの有意に異なったピークをFPLC分画で示した。この7分画のうちの1つは、2位(L)と10位(K)にHLA-A24結合モチーフを有していた。他方、残る6分画にはヒストンH2Aが2つ、マクロファージ遊走阻止因子のうちのHLA-A68結合ペプチド、HLA-B35結合ペブチド、ならびに2つの未知の配列を示すペプチドが含まれていた。本研究で得られたHLA-A24結合モチーフを有するペプチドのホモロジー検索では、データーベース中に相同性を示す蛋白を見い出すことができなかった。結論として、本研究は新たなHLA-A24結合ペプチドを明らかにした可能性があり、遺伝子工学的手法で強制発現させたHLA分子が腫瘍抗原ペプチドの研究に新たな解析方法を示したものと期待される。1.HLA-A24(以下A24)の単離:A24保有健常人の末血単核球より全RNAを抽出し、特異的プライマーを用いたRT-PCR法でA24のcDNAを合成。このA24cDNAを組み込んだpGEM-Tベクター導入大腸菌をカラーセレクションで選択し、シークエンスで確認してA24cDNAをクローニングした。2.A24発現肝癌細胞株の樹立:A24cDNAを哺乳類細胞発現ベクターpcDNA3.1に組み換え、サザンブロット法でA24cDNA導入大腸菌株を単離。これより調製したA24組み換えpcDNA3.1をリポゾーム法でA24陰性肝癌細胞株Hep3Bに導入し、G418選択法と限界稀釈法で選別して膜蛍光抗体法で確認してA24発現Hep3B肝癌細胞株を樹立した。3.A24分子結合ペプチドの回収:A24に結合した肝癌腫瘍抗原を解析するため、現在、A24発現Hep3B細胞株を大量培養し、その酸溶出分画あるいは可溶化膜分画を大量に調整しているところである。4.抗A24単クローン抗体の作製:A24結合ペプチドを解析するには他のHLA分子から切り離してA24を精製するほうが効率が良い。そこで、抗A24抗体結合アフィニティーカラムを、次の2通りで作製した。第一は市販の抗HLA-A11/A24単クローン抗体産生株を購入し、マウス腹腔に移植して得た抗体を用いてアフィニティーカラムを作製した。第二はHLA-A24に特異的なα_2ドメイン249-381塩基をpGEX-4T1に組み込み、産生されたGST融合蛋白を免疫原としてB細胞融合法で確立した抗A24単クローン抗体のアフィニティーカラムを作製した。これまでの研究でウイルスベクターを使わなくてもA24安定発現株の作製が可能であることがわかり、今後はA24結合ペプチドの解析を進める。本年度は、既に確立したHLA-A24発現Hep-3Bヒト肝細胞癌変異株(Hep-3B-A24)よりHLA結合ペプチドを回収し、ヒト肝細胞癌関連腫瘍抗原ペプチドを解析することを試みた。第一にNP-40可溶化膜分画を自家製抗HLA-A24抗体を結合したアフィニティーカラムを用い、ペプチド結合A24分子の特異的分離を試みたが、解析可能な試料は得られなかった。そこで市販抗A24/A11抗体結合カラムを作製して再度試みたが、、やはり必要量の試料は回収できなかった。
KAKENHI-PROJECT-09670181
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09670181
遺伝子工学的手法によるヒト肝癌腫瘍抗原の解析
原因として可溶化に用いたHep-3B-A24の細胞数が不充分であった(1×10^8を使用)可能性と、両抗体の抗原親和性の低さが考えられた。第二の試みとしてHep-3B-A24細胞5×10^8個から、酸溶出法にて全HLA分子結合ペプチドを回収して解析した。酸溶出掖は逆相カラムで濃縮、溶出し、分子量3000以下の粗分画を高速液体クロマトグラフィーで分画した。同様に調整した対照Hep-3B細胞の分画には認められない5本のピークを回収し、ペプチド・シークエンスを行った。しかしながら、解析されたペプチド・シークエンス中にNCBIペプチド・バンクに登録されたものと合致するものは認められず、また、A24結合ペプチド・モチーフを有する分画も得られなかった。HLA分子結合ペプチド解析の研究では10^<10>オーダーの細胞数を用いた報告が多く、本研究では1回の解析量が5×10^8個であることから、試料が不充分であった可能性が考えられた。今後は回転培養など培養方法を改善してより大量の細胞数を用いること、ならびに、インターフェロンなどを培養に加えてHLA分子の発現量を増やすことなどにより、溶出A24分子結合ペプチドの増量を図る必要があるものと考えている。
KAKENHI-PROJECT-09670181
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09670181
口腔白板症の悪性化における遺伝子不安定性の関与についての解析
口腔白板症のmalignancyの診断は病理学的検査の後決定される。しかしながら、その診断には病理医によるばらつきがあり、客観性に乏しいという問題点が以前より指摘されてきた。本研究の目的は、口腔白板症の病理診断に客観性をもたせるために、その背景因子として遺伝子不安定性が関与しているかどうかを検討し、境界病変の診断補助マーカーとして遺伝子不安定性の検索が有用であるかどうかを明らかにすることにある。口腔白板症の異形度が上昇するとp53、MSH1、MSH2領域における遺伝子不安定性を示す症例が増えた。また、一部の症例では、異形がみられない症例にも遺伝子不安定性が確認された。一方、テロア長と口腔白板症の異形度の間には相関関係はなかった。また、遺伝子不安定性とテロア長との関連は認められなかった。しかし、症例数は少ないが、異形成を示さない口腔扁平上皮癌断端粘膜上皮に著しいテロア長の短縮が見られた症例が存在しており、形態的変化以前にテロア長の短縮が認められ癌化との関連が極めて興味深い。これらの解析はレーザーキャブチャ-マイクロダイセクションを用い、形態変化と遺伝子検索の詳細な関連に基づいて実施された。また、hTERTの解析から一部の症例で異形度の低い口腔白板症でも陽性率が高くなる傾向が認められた。一部の症例の口腔白板症において、形態変化以前に遺伝子レベルでの変化が確認できた。形態変化以前に癌化へのポテンシャルを予測するパラメーターとして、これら遺伝子の検討は有用である可能性が示唆された。本年度は、口腔白板症における悪性化にマイクロサテライト領域の遺伝子異常およびテロメア長の短縮化が関与するか主として検討した。今回解析した領域は、p53、HGF、CA19-9、DUPAN-II、MSH1、MSH2等を検討した。その結果、口腔白板症のステージと今回検索した領域の異常との間に有意な相関関係は見出せたのはp53のみであった。特に、悪性度の高い症例を個別に検討するとp53の異常の蓄積が極めて重要である可能性が考えられた。また、口腔白板症のうち上皮内癌を示す症例ではテロメア長の短縮化を示す症例が認められた。さらに一部の症例ではあるが、mile dysplasiaを示す症例で、隣接正常口腔粘膜上皮組織よりテロメア長の短縮が認められた。以上はパラフィン切片をwholeで用いたとき得られた結果であり、細胞一個単位で採取し解析するレーザーキャプチャ-マイクロダイセクション法を用いてより詳細な解析を継続した。レーザーキャプチャ-マイクロダイセクション法において、上皮細胞の形態的所見に基づき口腔白板症のステージ別に解析した結果、細胞500-1000レベルでは解析不能であった。2500個以上採取すると良好な結果が得られ始めた。そこで、2500個を1解析に採取する細胞数と決定し検討した。ファンニー貧血に合併した口腔白板症およびそこから発生した舌扁平上皮癌においけるp53の解析において、組織学的グレーデイングと極めて良好な相関が得られた。今後、引き続き研究を継続し、次年度以降は特にhTARTとの関連にも注目していきたい。口腔白板症のmalignancyの診断は病理学的検査の後決定される。しかしながら、その診断には病理医によるばらつきがあり、客観性に乏しいという問題点が以前より指摘されてきた。本研究の目的は、口腔白板症の病理診断に客観性をもたせるために、その背景因子として遺伝子不安定性が関与しているかどうかを検討し、境界病変の診断補助マーカーとして遺伝子不安定性の検索が有用であるかどうかを明らかにすることにある。口腔白板症の異形度が上昇するとp53、MSH1、MSH2領域における遺伝子不安定性を示す症例が増えた。また、一部の症例では、異形がみられない症例にも遺伝子不安定性が確認された。一方、テロア長と口腔白板症の異形度の間には相関関係はなかった。また、遺伝子不安定性とテロア長との関連は認められなかった。しかし、症例数は少ないが、異形成を示さない口腔扁平上皮癌断端粘膜上皮に著しいテロア長の短縮が見られた症例が存在しており、形態的変化以前にテロア長の短縮が認められ癌化との関連が極めて興味深い。これらの解析はレーザーキャブチャ-マイクロダイセクションを用い、形態変化と遺伝子検索の詳細な関連に基づいて実施された。また、hTERTの解析から一部の症例で異形度の低い口腔白板症でも陽性率が高くなる傾向が認められた。一部の症例の口腔白板症において、形態変化以前に遺伝子レベルでの変化が確認できた。形態変化以前に癌化へのポテンシャルを予測するパラメーターとして、これら遺伝子の検討は有用である可能性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-13771087
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13771087
高圧下におけるFeO,NiOおよびCoO液体の部分モル体積測定
本研究は元素分配の圧力変化が目的元素の各相における部分モル体積に依存する点に着目し,核とマントル間の親鉄元素分配の圧力依存性を明らかにするためにマントル側の主要なホストである珪酸塩メルト中の親鉄元素酸化物の部分モル体積を高温高圧下において決定することを目的としている。この目的のために高温高圧X線吸収法密度測定法を珪酸塩に適用するための技術開発を行った。高温高圧X線吸収法は任意の温度圧力でメルトの密度測定が可能な唯一の実験法である。しかし,これまで高温高圧X線吸収法で測定された物質はX線吸収の大きい金属などの重い元素に限られていた。一方,本研究でターゲットとなる珪酸塩は軽元素からなり,X線の吸収が比較的小さい物質である。特に高温高圧では圧力媒体,ヒーター,試料カプセルなどに試料は取り囲まれるため,試料のみのX線吸収を測定することは極めて難しい。また,高温高圧実験では試料サイズが常に変化するため,試料厚みの見積もり無しにX線の吸収から密度を正確な求めることはできない。本研究では入射X線に高輝度の放射光を用い,また,試料カプセルに単結晶ダイヤモンドリングを用いることにより,これらの問題点を解決し,珪酸塩メルトの密度測定に成功した。X線吸収実験はSPring-8のBL22XUにおいてキュービック型高圧装置SMAP1を用いて行った。BL22XUの立ち上げのために実験開始は平成15年からとなり,当初の目的である親鉄元素酸化物の部分モル体積の決定には至っていない。しかし,現在までにNa_2Si_2O_5-FeO系と中央海嶺玄武岩(MORB)組成メルトについて約3GP・1900Kの条件での密度測定に成功しており,X線吸収法により珪酸塩メルトについて部分モル体積が決定可能な精度での密度測定のレベルに到達した。珪酸塩メルトー金属鉄メルト間における親鉄元素の分配に対する圧力効果を明らかにするためには,メルト中の親鉄元素の部分モル体積を評価することが本質的である。圧力下における液体の部分モル体積は密度の組成変化から求めることが可能である。圧力下のメルトの密度測定法としてX線吸収法を適用することにより,珪酸塩メルト中のFeO等の部分モル体積を求めることが本研究の主題である。本年度はダイヤモンド試料カプセルの試作とその評価を行ってX線吸収法の実験装置をデザインした。また,測定試料の準備を行った。ダイヤモンド試料カプセルは人工の単結晶ダイヤモンドを用いて試作した。ダイヤモンドのリング一個と落とし蓋となるディスク二枚から構成されている。このカプセルは圧力下でも形状変形が小さく,X線吸収実験に最適であることを確認した。密度測定実験の出発試料には珪酸塩ガラスを用いる。雰囲気コントロールした高温炉で酸化物試薬を融解し急冷法でNa_2SiO_3にFeOをドープしたガラス試料を作成した。これらの試料を用いて次年度は大型放射光施設Spring-8を利用して高温高圧X線吸収実験を行い,実際に圧力下で珪酸塩メルトの密度測定実験を試みる予定である。本研究は元素分配の圧力変化が目的元素の各相における部分モル体積に依存する点に着目し,核とマントル間の親鉄元素分配の圧力依存性を明らかにするためにマントル側の主要なホストである珪酸塩メルト中の親鉄元素酸化物の部分モル体積を高温高圧下において決定することを目的としている。この目的のために高温高圧X線吸収法密度測定法を珪酸塩に適用するための技術開発を行った。高温高圧X線吸収法は任意の温度圧力でメルトの密度測定が可能な唯一の実験法である。しかし,これまで高温高圧X線吸収法で測定された物質はX線吸収の大きい金属などの重い元素に限られていた。一方,本研究でターゲットとなる珪酸塩は軽元素からなり,X線の吸収が比較的小さい物質である。特に高温高圧では圧力媒体,ヒーター,試料カプセルなどに試料は取り囲まれるため,試料のみのX線吸収を測定することは極めて難しい。また,高温高圧実験では試料サイズが常に変化するため,試料厚みの見積もり無しにX線の吸収から密度を正確な求めることはできない。本研究では入射X線に高輝度の放射光を用い,また,試料カプセルに単結晶ダイヤモンドリングを用いることにより,これらの問題点を解決し,珪酸塩メルトの密度測定に成功した。X線吸収実験はSPring-8のBL22XUにおいてキュービック型高圧装置SMAP1を用いて行った。BL22XUの立ち上げのために実験開始は平成15年からとなり,当初の目的である親鉄元素酸化物の部分モル体積の決定には至っていない。しかし,現在までにNa_2Si_2O_5-FeO系と中央海嶺玄武岩(MORB)組成メルトについて約3GP・1900Kの条件での密度測定に成功しており,X線吸収法により珪酸塩メルトについて部分モル体積が決定可能な精度での密度測定のレベルに到達した。地球の珪酸塩マントルと金属核珪間における親鉄元素の分配は,地球の大規模成層構造の成因に関する情報を持っている。マントルの親鉄元素存在度から核-マントル分離過程を解明するためには,温度圧力空間における珪酸塩メルトと鉄合金メルト間の元素分配を明らかにする必要がある。とくに,珪酸塩メルト-金属鉄メルト間における親鉄元素の分配に対する圧力効果を明らかにするためには,メルト中の親鉄元素の部分モル体積を評価することが本質的である。
KAKENHI-PROJECT-13440163
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高圧下におけるFeO,NiOおよびCoO液体の部分モル体積測定
本研究ではX線吸収法により圧力下における液体の密度測定を行い,密度の組成変化から部分モル体積を求めることを目標としている。本年度は昨年度作成した単結晶ダイヤモンド試料カプセルの評価および,珪酸塩試料の圧力下におけるX線吸収法による密度測定のテスト実験を行った。実験は日本原子力研究所の協力の下にSPring-8のBL22においてキュービック型高圧装置SMAP180を用いて行った。試料はNa2Si05に25wt%のFeOをドープしたガラス試料とMORB組成のガラス試料を用いた。実験の0.1MPa,300Kから5GPa,900Kの圧力温度範囲で行った。圧力下におけるガラス試料の密度は現在解析中である。X線吸収法は吸収係数の小さい珪酸塩試料に適用することは困難であると考えられていたが,ダイヤモンドカプセルを使用することにより上記組成の珪酸塩に対しては密度測定が十分可能であることが証明された。珪酸塩メルト中の遷移金属成分の部分モル体積は,惑星形成初期に起こった核マントル分離過程を親鉄元素分配から読みとる上で鍵となる物理量である。特に部分モル体積の圧力による変化を知ることは極めて意義深い。本研究ではX線吸収法を珪酸塩メルトに適用し,その高圧力下における密度測定法を確立し,珪酸塩メルトの体積(密度)の組成変化からメルト中のFeOやNiOなどの遷移金属成分の部分モル体積を見積もることを目標にしている。現在,大型放射光施設SPring-8のBL22においてキュービック型高圧装置を用いたX線吸収実験を進めている。これまでに,単結晶ダイヤモンドから成る珪酸塩メルト用の全く新しい試料容器を考案して実用化に成功した。ダイヤモンドは炭素から成るためX線に対する吸収が十分に小さいため,珪酸塩メルトによるX線吸収率の測定を可能にするだけではなく,非常に浸食されにくい為,珪酸塩メルトとの反応も抑えることができる理想的な試料容器である。我々はこれを用いて,Na珪酸塩(Na2Si2O5)にFeOをドープしたガラスおよびメルトに対して圧力5GPa温度1550Kまでの条件でX線吸収実験を行い,その密度測定に成功した。これで,本研究の第1段階はクリヤーしたこととなる。部分モル体積の導出のためには,更に引き続き珪酸塩メルトの組成を変えてX線吸収実験を行う必要がある。しかしながら,これまでの成果でも非常に大きなものであることをここに強調しておきたい。これまで,高温高圧下における珪酸塩メルトの密度測定は結晶浮沈法や衝撃圧縮実験により行われてきたが,測定の温度圧力条件が限られていた。これらの方法に対し我々の行った高温高圧X線吸収法の利点は任意の温度圧力で密度を測定することが可能な点である。我々の研究がマグマ物性の研究のひとつのブレークスルーとなることを期待する。
KAKENHI-PROJECT-13440163
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情報基盤定量プロテオミクス法を用いたブドウ球菌薬剤耐性因子のプロテオーム定量解析
医学的に重要な病原性細菌であるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)がどのような機構で抗菌薬耐性を示すのかを、細菌のタンパク発現の変動に注目して詳細に解析する新しい方法の構築を試みた。従来法である2次元電気泳動での解析によって高濃度の抗菌薬(オキサシリン)存在下で46のタンパクが有意に変動することがわかった。抗菌薬存在下を含む様々な環境におけるMRSAのタンパク発現を高精度に定量可能な新規手法に必要な組換えタンパクのライブラリーを作成中である。高濃度の抗菌薬が存在する環境下でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のプロテオームがどのように変化するかをターゲット・プロテオミクスの手法で短時間、高精度に解析することを目指している。MRSAには約2600のOpen reading frameが存在するが、そのすべてを解析の対象とするのは、本研究の限られたリソースの中では現実的ではない。対象とすべき遺伝子の目安を付けるために、培養時に抗菌薬が存在することでどのタンパクが大きく動いているかを菌体から抽出したタンパクの2次元電気泳動像の比較によって調べた。メチシリン耐性株であるStaphylococcus aureus JCM8702をそれぞれオキサシリン(β-ラクタム系抗菌薬)ありとなしのセットを独立に3回培養し、それぞれから抽出した菌体タンパクを2次元電気泳動にかけた。5%有意で濃度に差がある泳動スポットが48個あった。そのうち、オキサシリン存在下で1.5倍以上増加するものが34、減少するものが12、変動が1.3倍以内だったものが2あった。変動の大きいスポットを質量分析にかけた結果、7つのタンパクが同定された。既に発表されている黄色ブドウ球菌の遺伝子配列を元に、同定されたタンパクとそのホモログの遺伝子をクローニングしている。無作為にターゲット・プロテオミクスの対象とする遺伝子を決めるのではなく、対象とすべき遺伝子の目安を付けるため、まずは、抗菌薬の存在または非存在下でのタンパク発現の変化を菌体タンパクの2次元電気泳動による解析を行った。これにより、対象とすべき遺伝子の目安を付けることができた。それらの遺伝子のクローニングを開始している。本研究は高濃度の抗菌薬が存在する環境下でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のプロテオームがどのように変化するかをターゲット・プロテオミクスの手法で短時間、高精度に解析することを目指している。この解析手法では事前に解析対象のタンパクの質量分析情報を取得しておく必要がある。そのためにMRSAが発現する可能性のあるタンパクのライブラリーを作成する必要がある。MRSAには約2600のOpen reading frameが存在するが、そのすべてを解析の対象とするのは、本研究の限られたリソースの中では現実的ではない。前年度にMRSAであるStaphylococcus aureus JCM8702において、βラクタム系抗菌薬であるオキサシリンによって2次元電気泳動像上で1.5倍以上大きく変動するタンパクスポット46個のうち7個を質量分析によって同定した。そこでその結果を踏まえて今年度は、既に全遺伝子配列が公表されているS. aureus N315株の遺伝子配列を元に、同定された7個のタンパクをコードしている遺伝子とそのホモログ、さらに抗菌活性や基礎的な代謝に関与していると考えられる約200の遺伝子を対象と定め、遺伝子クローニングを行ってきた。これまでにMRSAの4個の遺伝子をクローニングし、大腸菌の系でタンパクを発現させて精製した。この組換えタンパクをターゲット・プロテオミクスの際の内部標準として用いるために質量分析器による解析を行って当該タンパクの同定の際に必要なMassプロファイルの事前情報を得た。クローニングの対象とした遺伝子周辺の塩基配列の特殊性も影響して、想定以上にクローニングが難航している。また、H29年4月から研究代表者が所属機関を異動することがH28年12月に決定し、研究室移動のため多忙となったこともあって、現時点でタンパク精製まで終了したのは4個しかない。本研究は高濃度の抗菌薬が存在する環境下でメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のプロテオームがどのように変化するかをターゲット・プロテオミクスの手法で短時間、高精度に解析することを目指している。この解析手法では事前に解析対象のタンパクの質量分析情報を取得しておく必要がある。そのためにMRSAが置かれた様々な環境下で発現する可能性のあるタンパクのライブラリーを作成する必要がある。MRSAには約2600のOpen reading frameが存在するが、そのすべてを解析の対象とするのは、本研究の限られたリソースの中では現実的ではない。初年度にMRSAであるStaphylococcus aureus JCM8702において、β-ラクタム系抗菌薬であるオキサシリンによって2次元電気泳動像上で1.5倍以上大きく変動するタンパクスポット46個のうち7個をMALDI/TOF MS質量分析によって同定した。全遺伝子配列が公表されているS. aureus N315株の遺伝子配列を元に、同定された7個のタンパクをコードしている遺伝子とそのホモログ、さらに抗菌活性や基礎的な代謝に関与していると考えられる約400の遺伝子を対象と定め、遺伝子クローニングを行ってきた。これまでにS. aureus JCM8702の77個の遺伝子をクローニングし、大腸菌の系でタンパクを発現させた。今後、このMRSA由来の組換えタンパクをターゲット・プロテオミクスの際の内部標準として用いるために質量分析器による解析を行う。
KAKENHI-PROJECT-15K09586
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情報基盤定量プロテオミクス法を用いたブドウ球菌薬剤耐性因子のプロテオーム定量解析
そして、様々な環境下での培養時に菌が発現する当該タンパクの定量の際に必要なMassプロファイルの事前情報を得ていく。医学的に重要な病原性細菌であるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)がどのような機構で抗菌薬耐性を示すのかを、細菌のタンパク発現の変動に注目して詳細に解析する新しい方法の構築を試みた。従来法である2次元電気泳動での解析によって高濃度の抗菌薬(オキサシリン)存在下で46のタンパクが有意に変動することがわかった。抗菌薬存在下を含む様々な環境におけるMRSAのタンパク発現を高精度に定量可能な新規手法に必要な組換えタンパクのライブラリーを作成中である。継続して黄色ブドウ球菌の遺伝子ライブラリーと組換えタンパクライブラリーの作成を行う。ある程度の数の組換えタンパクが作成できたら、試験的に質量分析計で解析を行って対象のタンパクを高感度に検出可能なプローブ配列を選定する。継続して可及的に網羅的にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の遺伝子ライブラリーと組換えタンパクライブラリーの作成を行う。ある程度の数の組換えタンパクが作成できたら、その都度、質量分析計で解析を行って対象のタンパクを高感度に検出可能なプローブ配列を選定する。微生物学年度末に発注した物品の書類処理が遅れたために次年度使用額が15,004円として計上されているが、14,234円は既に発注済み。実際は770円である。計画に従ってほぼ予定通り研究費を使用した。研究の進捗が計画より遅れているために消耗品の消費が少なかった。15,004円のうち、14,234円は既に発注済。残りの770円は物品費として使用する。H29年度に物品費として使用する。
KAKENHI-PROJECT-15K09586
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黄砂の触媒機能により生成する多環芳香族炭化水素誘導体の環境動態と健康影響
本研究は,黄砂表面における多環芳香族炭化水素(PAH)誘導体の二次生成反応について模擬大気実験系を用いた実験を行い,黄砂表面が関与する大気内PAH誘導体生成反応過程を明らかにするとともに,実大気観測によって,長距離輸送中の黄砂表面における有害PAH誘導体生成を検証し,更にそれらによる生体影響の実態解明を試みた。本研究は,黄砂表面における多環芳香族炭化水素(PAH)誘導体の二次生成反応について模擬大気実験系を用いた実験を行い,黄砂表面が関与する大気内PAH誘導体生成反応過程を明らかにするとともに,実大気観測によって,長距離輸送中の黄砂表面における有害PAH誘導体生成を検証し,更にそれらによる生体影響の実態解明を試みた。本研究は,黄砂表面における多環芳香族炭化水素(PAH)誘導体の二次生成反応,とりわけ発がん性を有するニトロ化PAHや,呼吸器・循環器疾患やアレルギー疾患増悪作用を有するPAHキノン,内分泌かく乱作用を有する水酸化PAH等の非意図的生成に関わる反応について模擬大気実験系を用いた実験を行い,黄砂表面が関与する大気内PAH誘導体生成反応過程を明らかにするとともに,実大気観測によって,長距離輸送中の黄砂表面における有害PAH誘導体生成を検証し,更に,発がんや呼吸器系・循環器系・アレルギー性疾患,内分泌かく乱作用に関わる生体影響の実態を解明することを目的としている。平成21年度は,上記PAH誘導体のうちニトロ化PAHおよびPAHキノンをとりあげ,黄砂表面における二次生成の可能性について実験的に検討するとともに,実大気観測による検証も行った。その結果,PAHのニトロ化反応,光酸化反応およびオゾン酸化反応は,対照としたシリカやグラファイト粒子上に比べ黄砂粒子上で速く進行すること,黄砂イベント時には大気中のPAHキノン濃度が上昇する傾向が見られることなどを見出した。また,上記反応生成物に起因する生体影響を評価するためそれらのエストロゲン様およびアンドロゲン様作用を調べたところ,強い活性は観察されなかった。一方,ニトロ化反応による生成物の変異原活性は反応時間とともに上昇し,この活性の変化は生成物中のジニトロピレン濃度変化と対応することが明らかとなった。本研究は,黄砂表面における多環芳香族炭化水素(PAH)誘導体の二次生成反応,とりわけ発がん性を有するニトロ化PAHや,呼吸器・循環器疾患やアレルギー疾患増悪作用を有するPAHキノン,内分泌かく乱作用を有する水酸化PAH等の非意図的生成に関わる反応について模擬大気実験系を用いた実験を行い,黄砂表面が関与する大気内PAH誘導体生成反応過程を明らかにするとともに,実大気観測によって,長距離輸送中の黄砂表面における有害PAH誘導体生成を検証し,更に,発がんや呼吸器系・循環器系・アレルギー性疾患,内分泌かく乱作用に関わる生体影響の実態を解明することを目的としている。平成22年度は,上記PAH誘導体のうちニトロ化PAHに焦点をあて,21年度に引き続き黄砂表面における二次生成の可能性について実験的に検討するとともに,実大気観測による検証も行った。その結果,PAHのニトロ化反応は,対照とした長石やドロマイトなどの鉱物粒子上に比べ黄砂粒子上で速く進行することが明らかとなった。また,黄砂イベント時には,観測を行った北京・能登半島の両地点において大気中のニトロ化PAH濃度が上昇する傾向が見られた。そこで,ニトロ化PAH/PAH濃度比と飛来黄砂濃度の時系列データを比較すると,黄砂飛来時には粗大粒子中で顕著な濃度比の上昇が観測され,これより実大気中でも黄砂表面でニトロ化PAHが二次生成している可能性を指摘することができた。本研究は,黄砂表面における多環芳香族炭化水素(PAH)誘導体の二次生成反応,とりわけ発がん性を有するニトロ化PAHや,呼吸器・循環器疾患やアレルギー疾患増悪作用を有するPAHキノン,内分泌かく乱作用を有する水酸化PAH等の非意図的生成に関わる反応について模擬大気実験系を用いた実験を行い,黄砂表面が関与する大気内PAH誘導体生成反応過程を明らかにするとともに,実大気観測によって,長距離輸送中の黄砂表面における有害PAH誘導体生成を検証し,更に,発がんや呼吸器系・循環器系・アレルギー性疾患,内分泌かく乱作用に関わる生体影響の実態を解明することを目的としている。平成23年度は,上記PAH誘導体のうち酸化PAHにも焦点をあて,22年度に引き続き黄砂表面における二次生成の可能性について実験的に検討するとともに,実大気観測による検証も行った。その結果,PAHの酸化反応は,ニトロ化反応と同様に対照としたシリカなどの鉱物粒子上に比べ黄砂粒子上で速く進行することが明らかとなった。また,黄砂イベント時には,観測を行った北京・能登半島の両地点において大気中のニトロ化PAH濃度とともに,酸化PAHの濃度が上昇する傾向が見られた。そこで,酸化PAH/PAH濃度比と飛来黄砂濃度の時系列データを比較すると,黄砂飛来時には黄砂を多く含む粗大粒子中で顕著な濃度比の上昇が観測され,これより実大気中でも黄砂表面で酸化PAHが二次生成している可能性を指摘することができた。また,実大気粗大粒子からの抽出物に対する変異原性試験により,黄砂飛来時の活性は非黄砂時と比較して有意に上昇することが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-21200031
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21200031
ストローマ細胞との接着による急性白血病細胞の抗癌剤耐性誘導機序の解明
急性骨髄性白血病(AML)の再発が骨髄から起こる事実をもとにして、癌細胞は正常細胞と同様に、組織ではアポトーシス(アノイキス)を起こし難くなるという仮説を立てて研究を行った。その結果、(1)患者AML細胞は、その細胞表面に発現しているβ1-インテグリンを介して、骨髄ストローマ細胞の細胞外マトリックス(ECM)であるフィブロネクチンと接着する事により、アノイキスを起こし難くなり、更に抗癌剤(DNR,AraC)によるアポトーシスから回避しやすくなった。(2)アノイキス回避の機序について検討したところ、β1-インテグリンであるVLA4を介したフィブロネクチンとの接着により、AML細胞内のBcl-2の発現が亢進し、caspase9とcaspase3の活性化が抑制された。(3)VLA4を発現しているAML患者群の化学療法後の予後が、VLA4陰性AML患者群のそれに比べて有意に不良であることも見い出した。即ち、24人のde novo AML患者の内、15人のVLA4陽性患者の完全寛解率は60%であり、9人のVLA4陰性患者のそれ(100%)に比べて有意に不良であった(P=0.028)。Kaplan-Meier法を用いた予測5年生存率も、VLA4陽性患者群では25%であり、VLA4陰性患者群のそれ(100%)に比べて有意に低値を示した(P=0.02)。以上の結果から、VLA4の発現が化学療法施行後のinitial drug resistanceと骨髄の微少残存病変の原因となり、再発に寄与する事が示唆された。急性骨髄性白血病(AML)の再発が骨髄から起こる事実をもとにして、癌細胞は正常細胞と同様に、組織ではアポトーシス(アノイキス)を起こし難くなるという仮説を立てて研究を行った。その結果、(1)患者AML細胞は、その細胞表面に発現しているβ1-インテグリンを介して、骨髄ストローマ細胞の細胞外マトリックス(ECM)であるフィブロネクチンと接着する事により、アノイキスを起こし難くなり、更に抗癌剤(DNR,AraC)によるアポトーシスから回避しやすくなった。(2)アノイキス回避の機序について検討したところ、β1-インテグリンであるVLA4を介したフィブロネクチンとの接着により、AML細胞内のBcl-2の発現が亢進し、caspase9とcaspase3の活性化が抑制された。(3)VLA4を発現しているAML患者群の化学療法後の予後が、VLA4陰性AML患者群のそれに比べて有意に不良であることも見い出した。即ち、24人のde novo AML患者の内、15人のVLA4陽性患者の完全寛解率は60%であり、9人のVLA4陰性患者のそれ(100%)に比べて有意に不良であった(P=0.028)。Kaplan-Meier法を用いた予測5年生存率も、VLA4陽性患者群では25%であり、VLA4陰性患者群のそれ(100%)に比べて有意に低値を示した(P=0.02)。以上の結果から、VLA4の発現が化学療法施行後のinitial drug resistanceと骨髄の微少残存病変の原因となり、再発に寄与する事が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-13218112
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スプリンクラーが作動した場合の可燃物の発熱速度予測手法に関する研究
本研究では、実大規模の立体的な可燃物の発熱速度の推定手法を構築するため、実大規模の立体的な可燃物の特徴が発熱速度に与える影響を把握することを目的とし、以下に示す実験を実施する計画としていた。実験1)火炎を通過する間に蒸発する散水量の測定実験実験2)立体的な燃焼可燃物への散水実験上記2つの実験を計画通り実施し、実大規模の立体的な可燃物の特徴が発熱速度に与える影響に関する定量的な知見を収集した。それぞれの実験の概要を以下に示す。実験1)については、散水設備から放出された水滴群のうち火炎を通過した量を確認するため、n-ヘプタン火源の上方から散水を行い、n-ヘプタンが鎮火した時点における燃料パンに供給された散水密度(実散水密度)を測定した。また、この実散水密度とn-ヘプタン火源を燃焼させない場合の散水密度の比(本研究では、到達率と呼んでいる)と散水ヘッドの種類や散水高さ、火源の配置条件等の相関性について確認した。その結果、本実験条件の範囲では、火源の位置が中心(スプリンクラーヘッドの直下)から離れるほど到達率が減少する傾向にあることを確認した。実験2)については、火源として木材クリブを用い、散水が全て木材クリブの直上から表面に当たるよう調整した散水ノズルを用い、可燃物の水平投影面積Ahに対する可燃物の露出表面積Afの割合(表面積率φ)、散水密度w、散水開始時間および散水停止時間を変化させた燃焼実験を実施し、木材クリブの発熱速度を測定した。その結果、散水密度が同じであれば、可燃物の表面積率φが大きいほど、散水による単位面積あたりの発熱速度低減効果は得られにくくなることを確認した。なお、この研究成果の一部を用いてまとめた研究論文が、2015年6月に日本建築学会環境系論文集第80巻第712号に掲載されることが決定した。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。本研究では、実大規模の立体的な可燃物の発熱速度の推定手法を構築するため、実大規模の立体的な可燃物の特徴が発熱速度に与える影響を把握することを目的とし、以下に示す実験を実施する計画としていた。実験1)火炎を通過する間に蒸発する散水量の測定実験実験2)立体的な燃焼可燃物への散水実験上記2つの実験を計画通り実施し、実大規模の立体的な可燃物の特徴が発熱速度に与える影響に関する定量的な知見を収集した。それぞれの実験の概要を以下に示す。実験1)については、散水設備から放出された水滴群のうち火炎を通過した量を確認するため、n-ヘプタン火源の上方から散水を行い、n-ヘプタンが鎮火した時点における燃料パンに供給された散水密度(実散水密度)を測定した。また、この実散水密度とn-ヘプタン火源を燃焼させない場合の散水密度の比(本研究では、到達率と呼んでいる)と散水ヘッドの種類や散水高さ、火源の配置条件等の相関性について確認した。その結果、本実験条件の範囲では、火源の位置が中心(スプリンクラーヘッドの直下)から離れるほど到達率が減少する傾向にあることを確認した。実験2)については、火源として木材クリブを用い、散水が全て木材クリブの直上から表面に当たるよう調整した散水ノズルを用い、可燃物の水平投影面積Ahに対する可燃物の露出表面積Afの割合(表面積率φ)、散水密度w、散水開始時間および散水停止時間を変化させた燃焼実験を実施し、木材クリブの発熱速度を測定した。その結果、散水密度が同じであれば、可燃物の表面積率φが大きいほど、散水による単位面積あたりの発熱速度低減効果は得られにくくなることを確認した。なお、この研究成果の一部を用いてまとめた研究論文が、2015年6月に日本建築学会環境系論文集第80巻第712号に掲載されることが決定した。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-14J08275
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