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密封小線源治療におけるリアルタイムモニタリング技術の開発
密封小線源治療に対して治療照射中の線量情報を可視化したリアルタイムモニタリング機能の技術の開発を試みた.遠隔操作式密封小線源治療装置から輸送された水等価固体ファントム中の線源の時間系列情報の取得を試みたが,線源の停留位置などの情報を正確に取得するまでには至らなかった.原因の解析を行った結果,検出器の改良を行えば,上記情報を取得可能と考え,実現すれば密封小線源治療に対して安全に線量投与可能な治療支援システムが構築できると考える.本研究の目的は,密封小線源治療に対する治療照射中の線量情報を可視化したリアルタイムモニタリング機能の技術を開発し,高精度で安全な線量投与が担保された,次世代の治療技術を組み込んだ治療支援システムの研究開発を実施する事である.密封小線源治療に対する治療照射中の線量情報を可視化したリアルタイムモニタリング機能の技術の開発には,線源を輸送又は挿入するための患者を模したファントムが必要であった.そのため,当該年度は人体ファントムの設計,製作を中心に行った.既存のファントムを基に,薬事法に触れない範疇で,本研究に必要なパーツを随時設計,製作した.密封小線源治療で利用される放射線の光子エネルギー領域は,物質に対して光電効果が主反応となり,反応確率は原子番号の5乗に比例するため,元素組成の違いが光子の物質への反応確率に違いを生じ,結果として最終的に投与する線量にも大きく影響を与える.これらを考慮するため,原子番号及び密度が大きく異なる水等価,骨等価,肺等価の3種類の材質から成るパーツを設計,製作した.これらのパーツを組み合わせる事で,人体の仮想部位を想定した実測定が可能となった.製作したファントムの性能評価として,X線透視撮影装置及びコンピュータ断層撮影装置(CT)から取得される単純画像,透視画像により,高線量率密封小線源治療(HDR-BT)用装置から輸送される線源の情報(停留位置,停留時間,移動距離等)をリアルタイムで観測可能であった.当該年度では,CCD/CMOSカメラにより非侵襲で,リアルタイムモニタリング及びデータ収集するシステムの構築を予定していたが,線源の輸送又は挿入用のファントムの製作に時間が掛かってしまった.HDR-BT用装置を使用し,X線透視撮影装置及びCTを使用してファントムの性能を確認,リアルタイムによる線源情報の収集は成功したが,この段階では侵襲的な手法になる.以上のことから,これまでの研究達成度は当初の研究目的と比較して,やや遅れていると判断した.本研究の目的は,密封小線源治療に対する治療照射中の線量情報を可視化したリアルタイムモニタリング機能の技術を開発し,高精度で安全な線量投与が担保された,次世代の治療技術を組み込んだ治療支援システムの研究開発を実施する事である.当該年度では,線源から放出された光子と有機蛍光体との相互作用により生じた可視光の蛍光現象をを時間系列情報として集積する測定システムを構築した.密封小線源に高線量率のイリジウム192,記録装置として相補型金属酸化膜半導体センサを有する固体撮像素子のビデオカメラ,有機蛍光体には水等価物質であるプラスチックシンチレータを検出器とした測定システムである.遠隔操作式密封小線源治療装置と連結した線源の輸送ケーブルを直接的に検出器に固定し,線源から放出された光子とプラスチックシンチレータとの相互作用により生じた蛍光現象を,ビデオカメラにより時間系列情報として集積可能である事を確認した.次に,婦人科疾患に対する遠隔操作式密封小線源治療を想定するため,線源の輸送ケーブルを水等価型ファントムの内部に挿入,固定し,水等価型ファントムの内部で停留した線源の線量情報を,同様の測定システムで蛍光現象が集積可能であるか試みた.結果的には,水等価型ファントムの内部に線源が停留している状況下では,水等価型ファントムの外部に飛び出した線源からの光子による蛍光現象は確認できたが,線源の停留位置等の情報を取得するまでには至らなかった.原因として,検出器に入射する二次的な光子(散乱線)の影響などが要因であると推測した.今後,上記事項に対応した検出器に改良すれば,蛍光現象を集積可能と考え,実現すれば密封小線源治療に対して安全に線量投与可能な治療支援システムが構築でき,学術上及び臨床上の価値が高い成果になると考える.密封小線源治療に対して治療照射中の線量情報を可視化したリアルタイムモニタリング機能の技術の開発を試みた.遠隔操作式密封小線源治療装置から輸送された水等価固体ファントム中の線源の時間系列情報の取得を試みたが,線源の停留位置などの情報を正確に取得するまでには至らなかった.原因の解析を行った結果,検出器の改良を行えば,上記情報を取得可能と考え,実現すれば密封小線源治療に対して安全に線量投与可能な治療支援システムが構築できると考える.来年度の推進方策として,今年度達成できなかった非侵襲なリアルタイムモニタリング機能の技術を構築する.現段階の状況から,HDR-BT用装置に照準を絞り,非侵襲なリアルタイムモニタリング機能のシステムの構築を目指す.放射線治療学予定していた学会へ,都合により参加できなかったため.システム開発費用,国内旅費
KAKENHI-PROJECT-16K19849
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K19849
合成化学的アプローチによる植物ホルモンシグナルの精密制御
植物の成長や周囲の環境への応答の多くは、植物ホルモンと呼ばれる数種類の小分子によって制御されている。本研究では植物ホルモンシグナルの精密制御を目指し、天然と同様の植物ホルモンシグナルを誘起する人工植物ホルモンー人工受容体ペアの開発に取り組む。本技術は植物科学の基礎研究における重要な分子ツールとなるだけでなく、農業効率の劇的な向上をもたらす革新的な分子技術となることが期待される。植物の成長や周囲の環境への応答の多くは、植物ホルモンと呼ばれる数種類の小分子によって制御されている。本研究では植物ホルモンシグナルの精密制御を目指し、天然と同様の植物ホルモンシグナルを誘起する人工植物ホルモンー人工受容体ペアの開発に取り組む。本技術は植物科学の基礎研究における重要な分子ツールとなるだけでなく、農業効率の劇的な向上をもたらす革新的な分子技術となることが期待される。
KAKENHI-PROJECT-19J10097
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19J10097
教養教育への導入に向けた「巧みな動き」テストバッテリおよび評価法の開発
本研究では,個人の主観に基づいて身体をコントロールできる「巧みな動き」を評価可能なテスト・バッテリの開発を目指して検討を行った。その結果,独立した指標として,筋収縮による把握の調整力のテスト,身体移動を伴う跳躍動作の調整力のテスト,さらには状況判断能力と上肢および手指の調整力を評価しうる複合ペグボードテストが提案された。今回の結果から,これらのテストを適切に使用することによって巧みな動きを評価できる可能性が示された。平成26年度は,生涯にわたり自立した生活を営む上で重要となる適切な身体コントロール,つまり主観に基づいて適切に目的を達成できる「巧みな動き」を評価するテスト・バッテリの開発に向けた基礎段階として,手指および全身の動作を主体とする項目の測定を実施した。また,これらの測定と,質問紙を用いた「現在および過去の身体活動経験・状況」の調査を合わせて実施し,その関係を検討した。現在までに,手指の動作を用いた「グレーディング項目」として採用した握力発揮や閉眼での手指動作に関するテストにおいて分析を進めているが,これらの項目の成績においては,中学・高等学校での強度・頻度の高い運動経験よりも「小学校時代の運動経験の有無」が影響しうることが示唆された。他方,身体移動を伴う「総合項目」として測定した開眼・閉眼での跳躍動作に関しては,局所的な手指の動作を用いた測定項目における結果と比較して,過去に実施していた運動経験の影響が異なる可能性も示されている。これらの結果は,生涯にわたり健康な生活を営む上で必要なサイバネティクス系の体力・能力の習得において,動作を発揮する部位や種類に応じて習得に適切な時期が存在する可能性を示唆するものである。今年度においては,交付予算削減による測定機器購入の遅れや,研究代表者の勤務先における業務との関係で研究の遂行状況に遅れが生じているが,次年度以降は未検討である上肢,下肢における動作を対象に測定・分析を実施していく予定であるが,これらを踏まえた身体の総合的な分析を通じて,より詳細な知見が見いだせると推察している。平成27年度は,平成26年度に引き続き「巧みな動き」のテスト・バッテリの開発に向けて,項目の妥当生に関して検証を進めた。今年度は,昨年度までの基礎動作から,身体移動を伴う全身動作に対象動作の範囲を拡大して検討を進めた。全身動作の項目の一つとして垂直跳びを選択し,主観的努力感に基づいて複数の最大下レベルの跳躍(最大値の20,40,60,80%)を実施させた。さらに,「巧みな動き」の測定項目としての妥当生を考慮しつつ,将来的な授業等で使用する際の簡便性・容易性を念頭に,開眼および閉眼の視覚に関係する二条件での跳躍を行わせた。その結果,視覚情報の有無が主観的努力による跳躍高の調節に影響を及ぼすことが示唆された。また,昨年度の結果においては,基礎動作としての握力の調整力に対して小学校年代の運動歴が影響していたが,垂直跳びという身体移動が伴う測定項目の調整に対しては,該当年齢が高い中学校期における運動の量・強度が影響する可能性が示された。今年度も,研究代表者の勤務先における業務との兼ね合いから遂行状況に遅延が生じたが,テスト・バッテリの開発に向けた項目選択や方向性は確定できたと考えている。次年度の総合的な分析および検討により,最終的な目標達成が可能であると推察している。平成27年度は,研究代表者が所属先での大学院設置認可に向けた準備・作業等の学内業務に従事したこともあり,自身の研究活動に割く時間が制限された。特に,測定を実施した項目数が予定よりも少数に留まり,実験結果の発表・論文化においても遅れが生じている。しかし,収集済みのデータを用いた分析は順調に進行しており,最終年度の活動によって研究目的は達成できると考えている。最終年度の平成28年度は,主観的努力感に基づく最大下レベルの跳躍テストを対象に調整力の指標としての信頼性・妥当性の検証を進め,平行して選択課題を含んだ手指・上肢動作の調整力を測定するテストの開発を行った。前年度に実施した最大下レベルでの主観的努力感に基づく垂直跳びを対象動作とし,動作発揮時の主導筋の働きについて検討を進めた。具体的には,身体移動を伴う垂直跳びおよび局所的な筋収縮である膝伸展の両動作発揮時に主働筋となる大腿前・後面の筋を対象に筋電図を測定し,最大下(最大値の20,40,60,80%)での跳躍および筋力発揮時のパフォーマンスとの対応関係を検討した。その結果,垂直跳びの跳躍高を調整する能力と,大腿部の局所的な筋力発揮に依存する調整力とは,発揮される強度によって主働筋の活動が対応しなくなることが明らかになった。今回得られた結果を総合的に判断すれば,主働筋の局所的な筋収縮における調整力の高低は,かならずしも身体移動を伴うパフォーマンスにおける調整力の成績を説明するものではないことが示唆された。また,状況判断能力と上肢および手指の調整力とを複合して評価することのできるテストとして,「選択課題を含むペグボードテスト」を試作し,テストとしての妥当性を検討した。その結果,選択課題を含むペグボードテストの成績は単純なペグ移動スキルと選択反応にかかる時間の各成績だけでは十分に説明されなかった。つまり,両者を複合して測定することによって,様々な状況に応じて判断・行動が求められる場面において適切に身体活動を遂行できる能力の評価が可能になると推察された。
KAKENHI-PROJECT-26560131
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26560131
教養教育への導入に向けた「巧みな動き」テストバッテリおよび評価法の開発
これまでの検討により,「巧みな動き」を評価しうるテスト・バッテリの開発に向けた項目選択およびそれらの信頼性に関する検討は十分に遂行できたと考えている。本研究では,個人の主観に基づいて身体をコントロールできる「巧みな動き」を評価可能なテスト・バッテリの開発を目指して検討を行った。その結果,独立した指標として,筋収縮による把握の調整力のテスト,身体移動を伴う跳躍動作の調整力のテスト,さらには状況判断能力と上肢および手指の調整力を評価しうる複合ペグボードテストが提案された。今回の結果から,これらのテストを適切に使用することによって巧みな動きを評価できる可能性が示された。平成26年度は,研究代表者が所属する学部・学科の主任業務を担当した事が影響し,研究活動に割ける時間が大きく制限された。そのため,当初の予定では,手指,全身に加え,上肢,下肢の各部位における動作も対象とした測定を実施する予定であったが,昨年度は限定された部位におけるデータ収集に留まった。最終年度にあたる平成28年度は,本研究のテーマでもある「授業における教材」を念頭に,過去2年間の検討に加え,日常生活やスポーツ場面を考慮した上で測定する部位や動作・身体移動の方法などを選定し,最終的な検討を経てテスト・バッテリの開発を目指す予定である。現状では,測定項目数がやや不足していることから,研究分担者の所属する組織での検討・調査を拡大させ,テスト・バッテリ開発に向けて量的な面での充実を図る予定である。健康・スポーツ科学計画の段階で,平成27年度前半においても「基礎テストの選択・開発」におけるデータ収集を継続することになっていた事から,前年度の遅延分については,本年度優先的に研究課題の遂行を促進させる予定である。また,その際,「他機関における調査・検討」をより充実させることで,より効率的な作業達成を目指す計画である。研究課題達成に向けて測定を実施した項目数が予定よりも少数に留まったことや結果の発表が遅れたことで,謝金や発表に係る経費などが執行できなかった。研究計画初年度に購入予定であった測定機器の発売が遅れたため,平成26年度中に機器購入のための予算を執行することが出来なかった。終年度にあたる平成28年度は,すでに測定項目を増やしての実験計画が立案されており,また過去2年間の測定結果についても分析が進んでいることから,順調に執行手続きが進行する予定である。平成26年度に購入予定であった機器については,納品・支払い手続きが進んでおり,研究期間2年目である本年度初頭には稼働可能となる予定である。そのため,「次年度使用額」となってしまった予算の大部分については,早急に執行手続きがなされる予定である。
KAKENHI-PROJECT-26560131
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26560131
逆シミュレーション手法による協調熟練技能の抽出とその継承手法の研究
本研究では、熟練技能の伝承支援を目的に、その抽出手法と継承手法の両面に焦点を当てた研究を行った。時系列データからのプロセス応答モデルの構築を通して、相互相関分析、プロセス応答モデル、制御ルールの抽出、ワークフローの抽出、妥当性検証、といった改善サイクルを提案した。本研究の主な貢献は、MDL基準に基づく学習分類子システムとタブー検索手法に基づく意味のあるルールの抽出、および逆シミュレーション手法による知識抽出にある。これらの提案手法は、バイオケミカルプラントに適用され、妥当性と効果の検証が行われた。また、本手法を応用し、社会学・歴史学の分野で文化資本(知識・芸術・技能・規律など)と呼ばれる継承構造の解析を行った。これは、家系図などの歴史資料を用いるものであり、知能工学手法による文化・社会資本研究の基盤技術を確立することができた。本研究では、熟練技能の伝承支援を目的に、その抽出手法と継承手法の両面に焦点を当てた研究を行った。時系列データからのプロセス応答モデルの構築を通して、相互相関分析、プロセス応答モデル、制御ルールの抽出、ワークフローの抽出、妥当性検証、といった改善サイクルを提案した。本研究の主な貢献は、MDL基準に基づく学習分類子システムとタブー検索手法に基づく意味のあるルールの抽出、および逆シミュレーション手法による知識抽出にある。これらの提案手法は、バイオケミカルプラントに適用され、妥当性と効果の検証が行われた。また、本手法を応用し、社会学・歴史学の分野で文化資本(知識・芸術・技能・規律など)と呼ばれる継承構造の解析を行った。これは、家系図などの歴史資料を用いるものであり、知能工学手法による文化・社会資本研究の基盤技術を確立することができた。1、高速分散逆シミュレーションエンジンの開発グリッド計算機環境で実行可能な、実数値遺伝的アルゴリズムを用いた逆シミュレーションエンジンの開発を行い、その高速性を検証した。2、エージェントシミュレーションモデルの実装歴史学の事例を用いて、比較的大規模なエージェントシミュレーションモデルの実装を行った。歴史における実際の時系列データと、シミュレーションとの一致を1で開発した高速分散逆シミュレーションエンジンを用いて実験を行い、本手法の有効性を検証した。3、ワークフロー抽出手法の開発最新の研究成果であるXCSと呼ばれる学習分類子手法をベースに、扱えるデータを実数値化する開発を行った。また、データと結果が事前には決定できない問題への対応も行い、実数値アソシエーションルール発見手法の提案を行った。これらの研究の結果、従来は対処することが困難であった、プロセスデータにおける実数値を用いたワークフロー形式での知識発見手法の適用可能性を示した。4、プロセスデータにおける逆シミュレーション手法の検証バイオプラントにおける反応系プロセスデータに対して本手法を用い、熟練者の技能・知識発見を試みた。その結果、従来は発見ができなかったプロセス状態異常時の対処法をワークフロー形式で発見することができた。1、グリッドベースモデル選択エンジンの開発グリッド計算機環境で実行可能な、実数値遺伝的アルゴリズムを用いた逆シミュレーションエンジンの開発に加え、複数のモデル候補から社会指標に最も近いもの選択するモデル選択手法を組み込んだ。この結果、モデルパラメータの削減が可能となり、説明力の高いモデル設計を支援することができた。2、エージェントシミュレーションモデルの実装組織構造および歴史学の事例を用いて、モデルの景観を観測し、変数感度を可視化する手法と、モデル選択手法のエージェントシミュレーションモデルへの実装を行い、本手法の有効性を検証した。その結果、従来の手法では得られなかった、より精細なパラメータ変化に対するモデルの景観を観測することができるようになった。また、不要なパラメータの削減も可能となった。3、画像検索手法の開発プラント運転監視等で重要となる画像検索手法の研究開発を実施し、画像グループに基づく撮影画像の同定精度を格段に向上させることが可能となった。テスト画像として都市景観画像を用い、複数の参照画像群に対する検索画像の一致度を、高い確度で推計できることを検証した。4、地球温暖化ガス削減に向けたシミュレーション手法の検証社会的ジレンマと言われ、最適解が自律的には獲得できない温暖化ガス排出問題の発生分析を行い、ジレンマ状態を回避するための条件のひとつを発見することができた。このことにより、プラント操業において急速に重要視されてきた温暖化ガス排出削減に対応するため、どのような操業ルールを適用すればよいかをシミュレーションするモデルを研究開発し、その有効性を確認することができた。1.パターン指向モデリングシミュレーションと実世界を一致させることが、モデルの妥当性を示す上で重要である。従来のシミュレーションモデルは、現象に近似させるために、その現象に注目したモデルパラメータの最適化を行ってきた。しかし、ひとつの現象は他の現象に複雑に関連している。そこで、実社会を複数の視点からを観察するために、マルチパターンの選択を行った。例えば森であれば、上空から俯瞰した森の最上面の植物分布、側面から観察した分布、地面から観察した分布、といったように異なったパターンを持つ。これらのパターンを一括してモデリングパラメータとする手法をパターン指向モデリングと呼び、これに対してパラメータ最適を行う逆シミュレーション手法を提案した。提案手法の評価として、文化資本伝達モデルを構築し、対象となる親族をいくつかに分類した実験を行った。その結果、男性親族と、女性親族を分けた時系列パターンの場合が、もっとも実データに一致するパラメータ最適化が行えることがわかり、本手法の妥当性が示された。2.フリーライダー問題協調行動を伴う意思決定をする場合に、フリーライダーが発生してしまう問題がある。
KAKENHI-PROJECT-20500125
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20500125
逆シミュレーション手法による協調熟練技能の抽出とその継承手法の研究
特に、協調することにコストを伴ってしまうような社会的ジレンマ問題では、協調行動が阻害される可能性が指摘されており、フリーライダー問題を解決する必要がある。そこで、温暖化ガス排出削減を対象に、環境に対する配慮をするときにコストが発生する問題をモデル化し、フリーライダー発生要因と、それを緩和する対応策の評価を行った。その結果、従来のような罰金と補助金による対策には限界があり、当事者以外の第3者による監視と間接的なインセンティブ提示が有効であることがわかった。3.ネットワーク問題情報の伝わり方とそれによる意思決定の判断がネットワーク構造に依存してしまう問題に対し、スケールフリーとスモールワールド、ランダムグラフの組み合わせでの情報伝播について、研究を行った。
KAKENHI-PROJECT-20500125
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20500125
井筒俊彦の言語論における想像力の問題
本研究は、想像力(イメージ喚起機能)に関わる内包的意味を井筒俊彦『言語と呪術』や「言語学概論」の講義ノートを参照し、井筒の考察を明らかにしつつ、その議論を心理学・言語学・言語哲学の最新の知見によって批判的に検討し直すことで、言語と想像力の関係をめぐる考察に寄与しようとする。それによって井筒俊彦を特徴付ける独自の哲学的意味論がいかなるものであり、いかなる意義を有し、いかなる可能性を持つか示すとともに、想像力において言語的意味がどのように作用しているのか明らかにしようとする。本研究は、想像力(イメージ喚起機能)に関わる内包的意味を井筒俊彦『言語と呪術』や「言語学概論」の講義ノートを参照し、井筒の考察を明らかにしつつ、その議論を心理学・言語学・言語哲学の最新の知見によって批判的に検討し直すことで、言語と想像力の関係をめぐる考察に寄与しようとする。それによって井筒俊彦を特徴付ける独自の哲学的意味論がいかなるものであり、いかなる意義を有し、いかなる可能性を持つか示すとともに、想像力において言語的意味がどのように作用しているのか明らかにしようとする。
KAKENHI-PROJECT-19K23015
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K23015
中国語方言の言語地理学的研究-新システムによる『漢語方言地図集』の作成-
我々が1989年以来築いてきた基盤の上に、新システムによって本格的な漢語方言地図集を作成すること、また言語地理学の方法によって言語変化の諸相と変化の要因を明らかにすることを目的とした。(1)PHDシステムXMLベースのデータ集積・処理システム(PHDシステム)を開発、運用することで、基礎データ(地点データ、方言資料データ)、言語データ(漢字、IPA、調類等)、地図データ等を統合したデータベースを構築し、ネットワークを通じた情報・データの共有と共同作業を促進した。また言語データ入力、電子地図作成等のためのクライアントソフトウェアを開発した。(2)基礎作業従来蓄積した基礎データに増補訂正を加えながら、語彙を中心とした約100項目について言語データを漢字とIPA(国際音声字母)によって入力した。(3)地図作成と各地図の解釈:約80項目について、方言地図を作成した。各担当者は各地図に関する知見を整理し、解釈を加え、それらについて研究会で討議、検討した。またフォーラム上でも意見交換を行った。(4)研究成果の公表平成17年度、18年度報告書は研究成果の一部を示すものである。また本研究の2年目(平成17年度)以降は、PHDシステムを用いた研究を中国などで開催された国際会議で報告した。そのいくつかは国際的な学会誌に掲載予定、又は投稿準備中である。(5)その他民俗項目(婚姻と葬儀)に関するデータ収集と整理を進めた。また方言問の親縁関係を計量的に測定するための基礎資料を作成した。対外的には、漢語方言地図に関するプロジェクトを進めている北京語言大学のスタッフ等との実質的な研究交流を進めた。(6)今後の予定今後はPHDシステムを再構築した上で、地図のWEB化を進めながら、本格的な漢語方言地図集の正式出版(2年後を予定)に向けて諸作業を継続する。我々が1989年以来築いてきた基盤の上に、新システムによって本格的な漢語方言地図集を作成すること、また言語地理学の方法によって言語変化の諸相と変化の要因を明らかにすることを目的とした。(1)PHDシステムXMLベースのデータ集積・処理システム(PHDシステム)を開発、運用することで、基礎データ(地点データ、方言資料データ)、言語データ(漢字、IPA、調類等)、地図データ等を統合したデータベースを構築し、ネットワークを通じた情報・データの共有と共同作業を促進した。また言語データ入力、電子地図作成等のためのクライアントソフトウェアを開発した。(2)基礎作業従来蓄積した基礎データに増補訂正を加えながら、語彙を中心とした約100項目について言語データを漢字とIPA(国際音声字母)によって入力した。(3)地図作成と各地図の解釈:約80項目について、方言地図を作成した。各担当者は各地図に関する知見を整理し、解釈を加え、それらについて研究会で討議、検討した。またフォーラム上でも意見交換を行った。(4)研究成果の公表平成17年度、18年度報告書は研究成果の一部を示すものである。また本研究の2年目(平成17年度)以降は、PHDシステムを用いた研究を中国などで開催された国際会議で報告した。そのいくつかは国際的な学会誌に掲載予定、又は投稿準備中である。(5)その他民俗項目(婚姻と葬儀)に関するデータ収集と整理を進めた。また方言問の親縁関係を計量的に測定するための基礎資料を作成した。対外的には、漢語方言地図に関するプロジェクトを進めている北京語言大学のスタッフ等との実質的な研究交流を進めた。(6)今後の予定今後はPHDシステムを再構築した上で、地図のWEB化を進めながら、本格的な漢語方言地図集の正式出版(2年後を予定)に向けて諸作業を継続する。本年度(初年度)は、データ入力・地図作成システム、データベースの構築等、本研究の基盤を確立するための諸作業に全力を挙げた。1データベースの構築と入力作業まず基礎データを整理し、地点、資料の二つのデータベースを構築した。次に言語データベースの構築作業を進めた。既作成の地図を再検討しながら、約200の方言項目を選定し、うち約60%の項目について入力作業を行なった。方言データは、新しい方言資料を購入し、それらをPDF化、サーバー上で共有することで、分担者の作業の便を図った。また1名を中国に派遣し、方言調査を行なった。2地図の作成:いくつかの項目について、試作地図を作成した。3 PHDシステムの構築以上の作業を進めるために、金沢大学に専用サーバーを設置し、遠隔地の研究者間で最新のデータベースを共有することで、言語データ入力、地図作成等の作業効率を向上させた。各種データベース及び各種文書はXMLベースで作成している。システム構築は様々な要因によって当初の予定より遅れているが、4月末には3D化とWEBブラウザ部分を除き基本的に完成の予定である。4国際的な研究展開2回の研究会を開催したが、うち1回は現在、漢語方言地図に関するプロジェクトを進めている北京語言大学の中心スタッフ2名を招待し、地図作成の方法、目的について交流を行った。また国際研究集会に1名を派遣し、中国語方言研究における言語地理学的手法の有用性を説いた。本年度前半は、基幹データベース群(地点データベース、資料データベース、言語データベース)の追加・更新(入力作業)と研究支援基幹システム(PHDシステム)の改良、クライアントソフトの新規開発を行なった。後半はこれらのデバッグを行なうとともに、方言地図の作成作業を集中して進めた。I基幹データベース群の追加・更新と地図作成
KAKENHI-PROJECT-16320051
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16320051
中国語方言の言語地理学的研究-新システムによる『漢語方言地図集』の作成-
(1)データ補充のため、新しい方言資料を購入し、地点・資料データベースの充実を図った。また県志方言資料については順次PDF化し、サーバ上での利用が可能となった。(2)音韻、語彙、文法項目のほか、新規に加わった民俗項目について、言語データ入力を進めた。(3)入力が完了した語彙項目について、地図を作成し、二度の研究会でその解釈を検討した。(4)中間報告として、地図集とその解説を刊行した。基本データベース群の入力システム及び地図作成、表示のためのクライアントアプリケーションをデバッグ、アップデートした。また言語・民俗データの蓄積方法として、Infopathによる入力を試行した。さらにパブリケーション用地図生成ソフトの開発を進めた。但しOSの問題に起因して、通信インターフェースが十全に機能しておらず、いわばつぎはぎ状態で稼動させている。III国際的な研究展開代表者岩田は、北京語言大学を中心とする方言地図作成のための会議に参加し(9月)、方言地図の作成と解釈に関して報告と助言を行なった。また山西大学の方言研究者から助言を受けた(1月)。本年度は研究計画の最終年度にあたり、言語データベースの追加・更新(入力作業)と方言地図の作成作業を集中して進めるとともに、方言地図の解釈について研究会とフォーラム上で議論、検討を加えた。I言語データベースの追加・更新(1)データ補充のため、新しい方言資料を購入し、地点・資料データベースの充実を図った。(2)語彙、文法項目の未入力部分について、言語データ入力を進め、データチェックを行なった。(3)約80項目について方言地図を作成した。(4)当初の計画になかった課題として、方言間の系統関係測定のための基礎語彙データを作成した。II方言地図の解釈と成果の公表(1)各項目担当者は、各地図に関する知見を整理し、言語変化のメカニズムについて検討した。(2)各項目担当者の検討結果については、研究会及びフォーラム上で徹底的な議論を行った。(3)いくつかの地図とその解釈については、国際会議等で発表した。また年度末の研究成果報告書に代表的な地図を論文形式で掲載した。国際的な影響力を考慮してすべて中国語によって執筆した。IIIシステム整備引き続き研究支援基幹システム(PHDシステム)とクライアントソフトの改良とデバッグを進めた。この結果、Map描画等、地図関連部分が安定的に作動するようになった。IV今後の予定PHDシステムは本研究課題終了後も、OSを更新して稼動させる。今後は、地図のWEB化を進めながら、「漢語方言地図集」の正式出版(2年後を予定)に向けて諸作業を継続する。
KAKENHI-PROJECT-16320051
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16320051
都市史の諸段階(比較の手法によるイスラームの都市性の総合的研究)
本研究は、西アジア・イスラム圏の都市、他のアジア地域の都市、また非アジア地域の都市の史的発展を比較検討しつつ、都市の通事的発展を考察するものである。同時に、イスラムの都市性及びイスラム都市の概念を明確化することを目的とする。このような研究目的に即して、本年度、本班の研究者は、他班の研究会、総括班主催の全体会議や「イスラムの都市性」国際会議に出席し、それぞれの専門分野において基礎的かつ理論的研究を行ってきた。また、本班主催の4回の研究会を開き、都市史の理論的枠組、なかんずく「都市史の諸段階」を明らかにすることに努めた。以下、本班研究会で発表された個別的研究を紹介すると、第1回研究会では「イスラム都市の性格と都市史の諸段階」(私市正年)が報告され、中東のイスラム都市の性格を政治的、経済的、文化的レベルにおいて考察し、それにもとづいて(1)79世紀、(2)913世紀(3)1316世紀、(4)1619世紀とする都市史の時期区分を設定し、その史的発展を体系的に提示した。また第2回研究会では、「ヨーロッパ都市史の諸段階」(鵜川馨)が報告され、イギリス都市史を例に(1)古代都市、(2)中世都市、(3)近代都市の史的発展段階を設定した上で、各時代の都市の構造や特色が明らかにされた。第3回研究会では、「インドの都市の地域構造」(北川建次)が報告され、インドの都市の発展段階を(1)インダス文明時代、(2)古代ヒンドゥー文化時代、(3)中世ムガル時代、(4)植民地時代、(5)近代、(6)現代として提示された。さらに第4回研究会では「ダマスクス史再考」(三浦徹)が報告され、ラピダスの中東都市史理論が細部にわたり紹介された。これらの研究を通して、都市の通事的発展を考察する研究が進められた。その他にも多くの研究報告及び活発な論議が行われ、イスラムの都市性解明に迫まる基礎作業が進められた。本研究は、西アジア・イスラム圏の都市、他のアジア地域の都市、また非アジア地域の都市の史的発展を比較検討しつつ、都市の通事的発展を考察するものである。同時に、イスラムの都市性及びイスラム都市の概念を明確化することを目的とする。このような研究目的に即して、本年度、本班の研究者は、他班の研究会、総括班主催の全体会議や「イスラムの都市性」国際会議に出席し、それぞれの専門分野において基礎的かつ理論的研究を行ってきた。また、本班主催の4回の研究会を開き、都市史の理論的枠組、なかんずく「都市史の諸段階」を明らかにすることに努めた。以下、本班研究会で発表された個別的研究を紹介すると、第1回研究会では「イスラム都市の性格と都市史の諸段階」(私市正年)が報告され、中東のイスラム都市の性格を政治的、経済的、文化的レベルにおいて考察し、それにもとづいて(1)79世紀、(2)913世紀(3)1316世紀、(4)1619世紀とする都市史の時期区分を設定し、その史的発展を体系的に提示した。また第2回研究会では、「ヨーロッパ都市史の諸段階」(鵜川馨)が報告され、イギリス都市史を例に(1)古代都市、(2)中世都市、(3)近代都市の史的発展段階を設定した上で、各時代の都市の構造や特色が明らかにされた。第3回研究会では、「インドの都市の地域構造」(北川建次)が報告され、インドの都市の発展段階を(1)インダス文明時代、(2)古代ヒンドゥー文化時代、(3)中世ムガル時代、(4)植民地時代、(5)近代、(6)現代として提示された。さらに第4回研究会では「ダマスクス史再考」(三浦徹)が報告され、ラピダスの中東都市史理論が細部にわたり紹介された。これらの研究を通して、都市の通事的発展を考察する研究が進められた。その他にも多くの研究報告及び活発な論議が行われ、イスラムの都市性解明に迫まる基礎作業が進められた。
KAKENHI-PROJECT-01625015
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01625015
コンピュータを利用した図形カリキュラム開発のための基礎研究
本研究においては,まず作図ツール(Geometric Constructor)を使った数学的探究におよび,授業について分析し,教材研究と授業研究のための基礎的な方法論をまとめるとともに,12の授業例に関するケーススタディをまとめ,飯島(1997)として刊行した。一方,それらの成果とともに,これまでの研究成果を公開し,再編成すると同時に,よりインターラクティブな研究交流を可能にするために,インターネットのWWW上で各種の資料の公開を開始した。並行して,これらの事例に関連する授業事例,また新たな授業事例を共同研究者とともに開発し,また実践し,検証した。新たな授業事例に関する直接的な研究協力校は,愛知教育大学附属名古屋中,愛知県小牧市立桃陵中,豊田市立石野中,刈谷市立雁が音中,岡崎市立新香山中学校,神奈川県川崎市立白山中であるが,それ以外にも,特にインターネットのメーリングリスト(mathedu)の中で,さまざまな議論を実施できた。中学校のみでなく,小学校,高校,教育センター,大学などさまざまな機関の人々によって,違った観点からの検討が行えた。このことは,今後のカリキュラム研究を進めていく上で,新たなシステムの実現可能性が非常に高くなっていることを示唆した。そのため,複数の研究成果が交流可能であるために,テクノロジーを用いた数学的探究の研究において,注目すべき諸変数を明確化し,今後の議論を円滑に行うための基礎を形成した。また,特にWWWを用いて数学教育研究情報の公開・共有に関する現状を明らかにするとともに,今後の可能性と課題とを明確にした。これらの研究成果によって,次の研究課題としての,WWWを用いた広い意味での教材・授業データベースの形成とそれによるカリキュラム研究・開発の基礎的な準備が整った。本研究においては,まず作図ツール(Geometric Constructor)を使った数学的探究におよび,授業について分析し,教材研究と授業研究のための基礎的な方法論をまとめるとともに,12の授業例に関するケーススタディをまとめ,飯島(1997)として刊行した。一方,それらの成果とともに,これまでの研究成果を公開し,再編成すると同時に,よりインターラクティブな研究交流を可能にするために,インターネットのWWW上で各種の資料の公開を開始した。並行して,これらの事例に関連する授業事例,また新たな授業事例を共同研究者とともに開発し,また実践し,検証した。新たな授業事例に関する直接的な研究協力校は,愛知教育大学附属名古屋中,愛知県小牧市立桃陵中,豊田市立石野中,刈谷市立雁が音中,岡崎市立新香山中学校,神奈川県川崎市立白山中であるが,それ以外にも,特にインターネットのメーリングリスト(mathedu)の中で,さまざまな議論を実施できた。中学校のみでなく,小学校,高校,教育センター,大学などさまざまな機関の人々によって,違った観点からの検討が行えた。このことは,今後のカリキュラム研究を進めていく上で,新たなシステムの実現可能性が非常に高くなっていることを示唆した。そのため,複数の研究成果が交流可能であるために,テクノロジーを用いた数学的探究の研究において,注目すべき諸変数を明確化し,今後の議論を円滑に行うための基礎を形成した。また,特にWWWを用いて数学教育研究情報の公開・共有に関する現状を明らかにするとともに,今後の可能性と課題とを明確にした。これらの研究成果によって,次の研究課題としての,WWWを用いた広い意味での教材・授業データベースの形成とそれによるカリキュラム研究・開発の基礎的な準備が整った。
KAKENHI-PROJECT-08780148
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08780148
新しいシリコンーシリコン結合形成手段としての電極反応によるポリシランの合成
電解法による高率的なポリシランの合成ルートについて検討し、無隔膜セル中でジメトキシエタンを溶媒、銀または銅を陽極、過塩素酸テトラブチルアンモニウムまたはテトラフェニルボレートを支持塩とする系で各種クロロシラン類の電解還元を行えば、Si_2-Si_5のポリシランオリゴマーが選択的に高収率で得られることを見いだした。また、ジシラニレン系ポリマーの電解合成も行なった。1,2-ビス(クロロメチルフェニルシリル)エタンを銅を陽極、白金を陰極、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレートを支持塩として電解還元し、主鎖にシロキシ結合を全く含まない分子量120,000のポリジシラニレンエチレンを17%の収率で得ることができた。本電解系はジシラニレン系ポリマーの一般的な合成法として有用であり、1,2-ビス(クロロメチルトリルシリル)エタンからは分子量25,000のポリマーを、またp-ビス(クロロメチルフェニルシリル)ベンゼンからは分子量6,100のポリマーを各々45%および19%の収率で得ることができた。また、ジチエニルジシランの陽極酸化によりドーピング状態のポリマーを一段で得る可能性についても検討したが、得られたポリマー中のケイ素含量および電導度は低かった。今後の検討が必要である。またヒドロシラン類のクロロシランへの選択的変換についても検討した。フェニルシランをエーテル中室温で、触媒量のヨウ化銅(I)存在下に2等量の塩化銅(II)と反応させると、クロロフェニルシランが70%の単離収率で得られた。また4等量の銅試薬との反応ではジクロロフェニルシランが66%の収率で得られた。また本反応系はジヒドロジシラン類の選択的クロル化にも適用できた。このように、従来困難であったポリヒドロシラン類の選択的クロル化が、温和な条件下で選択的に達成できる反応系を開発できた。電解法による高率的なポリシランの合成ルートについて検討し、無隔膜セル中でジメトキシエタンを溶媒、銀または銅を陽極、過塩素酸テトラブチルアンモニウムまたはテトラフェニルボレートを支持塩とする系で各種クロロシラン類の電解還元を行えば、Si_2-Si_5のポリシランオリゴマーが選択的に高収率で得られることを見いだした。また、ジシラニレン系ポリマーの電解合成も行なった。1,2-ビス(クロロメチルフェニルシリル)エタンを銅を陽極、白金を陰極、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレートを支持塩として電解還元し、主鎖にシロキシ結合を全く含まない分子量120,000のポリジシラニレンエチレンを17%の収率で得ることができた。本電解系はジシラニレン系ポリマーの一般的な合成法として有用であり、1,2-ビス(クロロメチルトリルシリル)エタンからは分子量25,000のポリマーを、またp-ビス(クロロメチルフェニルシリル)ベンゼンからは分子量6,100のポリマーを各々45%および19%の収率で得ることができた。また、ジチエニルジシランの陽極酸化によりドーピング状態のポリマーを一段で得る可能性についても検討したが、得られたポリマー中のケイ素含量および電導度は低かった。今後の検討が必要である。またヒドロシラン類のクロロシランへの選択的変換についても検討した。フェニルシランをエーテル中室温で、触媒量のヨウ化銅(I)存在下に2等量の塩化銅(II)と反応させると、クロロフェニルシランが70%の単離収率で得られた。また4等量の銅試薬との反応ではジクロロフェニルシランが66%の収率で得られた。また本反応系はジヒドロジシラン類の選択的クロル化にも適用できた。このように、従来困難であったポリヒドロシラン類の選択的クロル化が、温和な条件下で選択的に達成できる反応系を開発できた。1.クロロシラン類の電解還元によるポリシランの合成ル-トを開発するため、電極、溶媒、支持塩などの諸条件について総合的に検討した。その結果、無隔膜セル中でジメトキシエタンを溶媒、銀または銅を陽極、過塩素酸テトラブチルアンモニウムまたはテトラフェニルボレ-トを支持塩として用いた系で高率的な合成が行えることを見いだした。さらに、電極として安価な銅ー銅電極を用いた大規模スケ-ルでの反応について検討した。例えば、クロロメチルジフェニルシランから1,2ージメチルテトラフェニルジシランを73%の収率で得ることができた。クロロメチルジフェニルシランとクロロトリメチルシランの交差カップリングでは1,1ージフェニルテトラメチルジシランを80%の収率で、またジクロロメチルフェニルシランとクロロトリメチルシランの交差カップリングでは2ーフェニルヘプタメチルトリシランを63%の収率で得ることができた。同様に1ークロロー1ーフェニルテトラメチルジシランからは2,3ージフェニルオクタメチルテトラシランを83%の収率で、またジクロロメチルフェニルシランとクロロペンタメチルジシランの交差がカップリングで3ーフェニルウンデカメチルペンタシランを73%の収率で得ることに成功した。また、本法の応用によるジシラニレンポリマ-の合成についても検討した。例えば、ビス(クロロメチルフェニルシリル)エタンをテトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレ-トを支持塩とし、銅ー銅電極系を用いて電解還元すると主鎖にシロキシ結合を全く含まない分子量12万のジシラニレンエチレンポリマ-を得ることができた。
KAKENHI-PROJECT-03453104
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03453104
新しいシリコンーシリコン結合形成手段としての電極反応によるポリシランの合成
前年度は各種クロロシラン類をジメトキシエタン中、銀または銅を陽極、過塩素酸テトラブチルアンモニウムを支持塩として用いて電解還元し、Si_2-Si_5のポリシランオリゴマーを選択的に高収率で得ることに成功している。本年度はポリシラン合成の一環として、ヒドロシラン類のクロロシランへの選択的変換についてまず検討した。クロル化反応は、エーテル中室温で、触媒量のヨウ化銅(I)存在下に2等量の塩化銅(II)と反応させることにより達成できた。例えば、フェニルシランを2等量の銅試薬と反応させると、水素1原子のみが選択的にクロル置換された生成物であるクロロフェニルシランを70%の単離収率で得ることができた。本条件下ではジクロル体の生成は2%以下である。一方、4等量の銅試薬との反応ではジクロロフェニルシランを66%の収率で得ることができた。また、本反応系はジヒドロジシラン類の選択的クロル化にも適用できた。このように、従来困難であったポリヒドロシラン類の選択的クロル化が、温和な条件下で選択的に行える反応系を開発できた。また、ジシラニレン系ポリマーの電解合成も行った。1,2-ビス(クロロメチルフェニルシリル)エタンを1,2-ジメトキシエタン中で銅を陽極、白金を陰極、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレートを支持塩として用いて電解還元し、主鎖にシロキシ結合を全く含まない分子量120,000のポリジシラニレンエチレンを17%の収率で得ることができた。得られたポリマーの全スペクトルはWurts反応で合成したポリマーのものと良く一致していた。本電解系はジシラニレン系ポリマーの一般的な合成法としても有用であり、例えば、1,2-ビス(クロロメチルトリルシリル)エタンからは分子量25,000のポリマーを、またp-ビス(クロロメチルフェニルシリル)ベンゼンからは分子量6,100のポリマーを各々45%および19%の収率で得ることができた。
KAKENHI-PROJECT-03453104
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03453104
超解像技術を用いた脳MRA高解像化
脳卒中診療で最も重要なことは予防である。脳卒中のうち、くも膜下出血は原因となる脳動脈瘤が脳magnetic resonance imaging(MRA)検査で発見可能で、発症を未然に防ぎうる。ところが、脳MRAは画像作成過程で元データに含まれる血管情報が欠落するため空間分解能に劣り、小型動脈瘤や微細血管病変の検出が困難である。そこで、本研究では、MRAの欠点を克服するため、超解像技術を用いてMRAを高解像化することを目的とする。脳MRAの高解像化で、脳動脈瘤のみならず、脳血管疾患の診断精度が向上することが期待される。脳卒中診療で最も重要なことは予防である。脳卒中のうち、くも膜下出血は原因となる脳動脈瘤が脳magnetic resonance imaging(MRA)検査で発見可能で、発症を未然に防ぎうる。ところが、脳MRAは画像作成過程で元データに含まれる血管情報が欠落するため空間分解能に劣り、小型動脈瘤や微細血管病変の検出が困難である。そこで、本研究では、MRAの欠点を克服するため、超解像技術を用いてMRAを高解像化することを目的とする。脳MRAの高解像化で、脳動脈瘤のみならず、脳血管疾患の診断精度が向上することが期待される。
KAKENHI-PROJECT-19K09463
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K09463
超加速進化型オルガネラゲノムを持つマラリア原虫の創成と予測進化学への応用
マラリア原虫は核の他にアピコプラストとミトコンドリアに独自のゲノムを持つ。本研究領域において創出に成功したアピコプラスト(Api)ミューテーター(アピコプラストゲノムに高頻度で変異が発生するネズミマラリア原虫)をマラリア生物学の革新的ツールとして利用することが本申請課題の目標である。また、ミトコンドリア(Mit)ミューテーターを作成することも目的とする。2つのミューテーターによりオルガネラゲノムを加速進化させた場合の核ゲノムへの影響を調べる事により、本領域の最大の目的である「核-オルガネラ間のクロストーク」を実験的に検証する。本年度は、P. bergheiゲノムデーターベースからアピコプラストで機能することが推定される3'→5'エキソヌクレアーゼ候補遺伝子をピックアップし、候補遺伝子のC末にGFPを付加したコンストラクトをP. bergheiに導入した。GFPのシグナルがApiへ移行することを確認した。組換え原虫をマウスを通して継代感染した後、アピコプラストゲノムをUltra-deep sequencingに供した。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。マラリア原虫は核の他にアピコプラストとミトコンドリアに独自のゲノムを持つ。本研究領域において創出に成功したアピコプラスト(Api)ミューテーター(アピコプラストゲノムに高頻度で変異が発生するネズミマラリア原虫)をマラリア生物学の革新的ツールとして利用することが本申請課題の目標である。また、ミトコンドリア(Mit)ミューテーターを作成することも目的とする。2つのミューテーターによりオルガネラゲノムを加速進化させた場合の核ゲノムへの影響を調べる事により、本領域の最大の目的である「核-オルガネラ間のクロストーク」を実験的に検証する。本年度は、P. bergheiゲノムデーターベースからアピコプラストで機能することが推定される3'→5'エキソヌクレアーゼ候補遺伝子をピックアップし、候補遺伝子のC末にGFPを付加したコンストラクトをP. bergheiに導入した。GFPのシグナルがApiへ移行することを確認した。組換え原虫をマウスを通して継代感染した後、アピコプラストゲノムをUltra-deep sequencingに供した。組換え原虫の作成に想定以上の時間を要したことから、研究の進捗は予定よりも遅延した。しかし、最終的には目的の原虫の作成に成功した。マラリア原虫は核の他にアピコプラストとミトコンドリアに独自のゲノムを持つ。本研究領域において創出に成功したアピコプラスト(Api)ミューテーター(アピコプラストゲノムに高頻度で変異が発生するネズミマラリア原虫)をマラリア生物学の革新的ツールとして利用することが本申請課題の目標である。また、ミトコンドリア(Mit)ミューテーターを作成することも目的とする。2つのミューテーターによりオルガネラゲノムを加速進化させた場合の核ゲノムへの影響を調べる事により、本領域の最大の目的である「核-オルガネラ間のクロストーク」を実験的に検証する。本年度は、P. bergheiゲノムデーターベースからアピコプラストで機能することが推定される3'→5'エキソヌクレアーゼ候補遺伝子をピックアップし、候補遺伝子のC末にGFPを付加したコンストラクトをP. bergheiに導入した。GFPのシグナルがApiへ移行することを確認した。組換え原虫をマウスを通して継代感染した後、アピコプラストゲノムをUltra-deep sequencingに供した。組み換え原虫をマウスを介して継代感染した後にアピコプラストゲノム内に蓄積した変異を解析し、さらに変異率等を算出する。これらの結果を論文投稿する。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-26117706
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-26117706
遅延整流性K^+チャネルの心臓自動能に果たす役割の検討
モルモット心臓から酵素処理により得られた単離洞房結節細胞に全細胞型パッチクランプ法(whole-cell patch-clamp)を適用して,急速活性型(I_<Kr>)ならびに緩徐活性型遅延整流性K^+チャネル(I_<Ks>)の記録,および自発性活動電位の記録を行った.I_<Kr>ならびにI_<Ks>は,それぞれ,E-4031感受性電流ならびに非感受性電流として単離した.(2)I_<Ks>はchromanol誘導体である293Bにより可逆的かつ濃度依存性(半最大抑制濃度=5.4μM)に抑制され,50μM以上の濃度でほぼ完全に抑制された.293BによるI_<Ks>の抑制効果は脱分極によるI_<Ks>の活性化時間の延長とともに強くなった(時間依存性ブロック).I_<Kr>のブロッカーとしてE-4031(0.5μM)を投与すると,自発性活動電位の再分極過程が約-30mVより過分極側で遅延し,続いて最大拡張期電位の脱分極,さらには自発性活動電位の停止が観察された.よって,自発性活動電位の再分極過程後半は主に,I_<Kr>に依存していることが明らかとなった.また,I_<Ks>のブロッカーとして293B(50μM)を作用させると,多くの場合,約10mV程度の最大拡張期電位の脱分極が誘発されたので,I_<Ks>もまた自発性活動電位の再分極過程に寄与していることが示唆された.ただし,293Bは開口したI_<Ks>を比較的ゆっくりブロックするので,293B投与による自発性活動電位発生中のI_<Ks>の抑制の程度に関して今後定量的評価を行い,I_<Ks>の自発性活動電位の発生における役割について詳細に解析する予定である.モルモット心臓から酵素処理により得られた単離洞房結節細胞に全細胞型パッチクランプ法(whole-cell patch-clamp)を適用して,急速活性型(I_<Kr>)ならびに緩徐活性型遅延整流性K^+チャネル(I_<Ks>)の記録,および自発性活動電位の記録を行った.I_<Kr>ならびにI_<Ks>は,それぞれ,E-4031感受性電流ならびに非感受性電流として単離した.(2)I_<Ks>はchromanol誘導体である293Bにより可逆的かつ濃度依存性(半最大抑制濃度=5.4μM)に抑制され,50μM以上の濃度でほぼ完全に抑制された.293BによるI_<Ks>の抑制効果は脱分極によるI_<Ks>の活性化時間の延長とともに強くなった(時間依存性ブロック).I_<Kr>のブロッカーとしてE-4031(0.5μM)を投与すると,自発性活動電位の再分極過程が約-30mVより過分極側で遅延し,続いて最大拡張期電位の脱分極,さらには自発性活動電位の停止が観察された.よって,自発性活動電位の再分極過程後半は主に,I_<Kr>に依存していることが明らかとなった.また,I_<Ks>のブロッカーとして293B(50μM)を作用させると,多くの場合,約10mV程度の最大拡張期電位の脱分極が誘発されたので,I_<Ks>もまた自発性活動電位の再分極過程に寄与していることが示唆された.ただし,293Bは開口したI_<Ks>を比較的ゆっくりブロックするので,293B投与による自発性活動電位発生中のI_<Ks>の抑制の程度に関して今後定量的評価を行い,I_<Ks>の自発性活動電位の発生における役割について詳細に解析する予定である.モルモット心臓から酵素処理により得られた単離洞房結節細胞に全細胞型パッチクランプ法(whole-cell recording)を適用して,遅延整流性K^+チャネル電流(I_K,voltage-clamp mode)の記録を行った.I_Kは保持電位-50mVから種々の膜電位に脱分極して活性化した.その結果,1.I_KはVaughan Williams分類クラスIII群抗不整脈剤であるE-4031(選択的I_<Kr>ブロッカー)感受性成分(I_<Kr>)と非感受性成分(I_<Ks>)の2つの成分から構成されていること,2.I_<Kr>,およびI_<Ks>の半最大活性化電位はそれぞれ-18.3mVおよび+27.9mVであり,I_<Kr>の方がより過分極電位で活性化されること,3.I_<Kr>は強い内向き整流性をもつが,I_<Ks>の電流-電圧関係はほぼ直線状であること,4.I_<Ks>はchromanol誘導体である293Bにより可逆的かつ濃度依存性(半最大抑制濃度=5.4μM)に抑制され,50μM以上の濃度でほぼ完全に抑制されること,5.293BによるI_<Ks>の抑制効果は脱分極によるI_<Ks>の活性化時間の延長とともに強くなること,が明らかとなった.次に,I_<Kr>の自発性活動電位に果たす役割を検討する目的で,current-clamp実験においてE-4031の自発性活動電位に及ばす効果を調べた.0.5μMのE-4031(I_<Kr>を約30%抑制)
KAKENHI-PROJECT-11670040
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11670040
遅延整流性K^+チャネルの心臓自動能に果たす役割の検討
投与により,自発性活動電位の再分極過程の遅延,最大拡張期電位の脱分極,さらには自発性活動電位の停止が惹起された.このように本研究課題により,モルモット洞房結節細胞のI_KはI_<Kr>とI_<Ks>の2つの電流成分から構成され,I_<Kr>は心臓自動能の発現に必須であることが明らかとなった.モルモット心臓から酵素処理により得られた単離洞房結節細胞に全細胞型パッチクランプ法(whole-cell patch-clamp)を適用して,急速活性型(I_<Kr>)ならびに緩徐活性型遅延整流性K^+チャネル(I_<Ks>)の特性について解析を行った.I_<Kr>およびI_<Ks>は,それぞれクラスIII群抗不整脈剤であるE-4031感受性電流ならびに非感受性電流として単離した.2.受容体ならびに細胞内情報伝達物質による調節機構について(1)細胞外ATPによるI_<Ks>の増大反応についてモルモット心房筋細胞および心室筋細胞の場合と同様に,細胞外ATPはP2Y代謝調節型受容体-百日咳毒素非感受性G蛋白を介してI_<Ks>を増大した.(2)サイクリックGMP(cGMP)によるI_<Ks>の増大反応についてcGMP(100μM)の細胞内投与ならびに膜透過型cGMPである8-bromo-cGMP(100μM)の細胞外投与はいずれもI_<Ks>に増大効果をおよぼした.その機序を検討した結果, i)phosphodiesterase(type III)の抑制を介するサイクリックAMP(cAMP)-蛋白キナーゼA系の活性化とii)cGMP依存性蛋白キナーゼ(蛋白キナーゼG)の活性化の両方を介するものであった.
KAKENHI-PROJECT-11670040
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11670040
運動部活動の存立構造に関する研究:ボランティアとしての教師の積極性に注目して
日本固有のスポーツのあり方である運動部活動は、いかなる構造の中で存立している/してきたのか。本研究では、運動部活動の存立構造を明らかにするために、ボランティアとしての教師の積極性に注目し、なぜ教師が運動部活動へ積極的にかかわるのかを、質的・歴史的アプローチから明らかにすることを目的とした。質的アプローチからは、中学校運動部活動へのフィールドワークで得られたデータを下に、顧問教師の運動部活動への意味づけ方を考察した。歴史的アプローチからは、戦後から現在までの運動部活動そのものと顧問教師のかかわり方の変遷を考察した。日本固有のスポーツのあり方である運動部活動は、いかなる構造の中で存立している/してきたのか。本研究では、運動部活動の存立構造を明らかにするために、ボランティアとしての教師の積極性に注目し、なぜ教師が運動部活動へ積極的にかかわるのかを、質的・歴史的アプローチから明らかにすることを目的とした。質的アプローチからは、中学校運動部活動へのフィールドワークで得られたデータを下に、顧問教師の運動部活動への意味づけ方を考察した。歴史的アプローチからは、戦後から現在までの運動部活動そのものと顧問教師のかかわり方の変遷を考察した。日本のスポーツ文化を支えてきた運動部活動は、地域社会ではなく学校の中で運営される点、プロのスポーツ専門家ではなくボランティアの一般教師が指導する点で、国際的にきわめて珍しいスポーツのあり方である。では、この運動部活動は、いかなる構造の中で存立している/してきたのか。本研究では、日本固有のスポーツのあり方である運動部活動の存立構造を明らかにするために、ボランティアとしての教師の積極性に注目した。本研究の目的は、なぜ教師が運動部活動へ積極的にかかわるのかを、質的・歴史的アプローチから明らかにすることである。平成21年度は、歴史的アプローチからの研究として、運動部活動への教師のかかわり方の変遷を通史的に考察した。考察の観点は、(1)実態:どれくらいの教師がどのように運動部活動へかかわってきたのか、(2)政策:教師をとりまく政策的背景はどのように変わってきたのか、(3)言説:教師の運動部活動へのかかわりは、どのように意味づけられてきたのか、の3つである。こうした運動部活動への教師のかかわりに関する通史的考察は、先行研究では十分に行われていない。これまでの体育・スポーツ史領域では、1970年代以降の現代史が十分に総括されておらず、また考察の観点に実態や言説が盛り込まれていない。それらを補い、現代にまで連なる戦後史を描こうとする点に、平成21年度に取り組んだ研究の意義と重要性がある。研究成果は、中澤篤史(2009)「身体活動を伴う社会交流:戦後の中学・高校運動部活動の政策的展開に焦点を当てて」『体育の科学』59(11)、pp.728-733、および、中澤篤史(2010)「運動部活動の戦後史:実態・政策・言説の変遷と関係に注目して」、日本スポーツ社会学会発表、岩手大学、にまとめた。本研究の目的は、なぜ教師が運動部活動へ積極的にかかわるのかを、質的・歴史的アプローチから明らかにすることである。平成22年度は、21年度から取り組んできた歴史的アプローチからの研究に、継続的に取り組んだ。すなわち、運動部活動への教師のかかわり方の戦後の変遷を、実態・政策・言説の3つの観点から考察した。結論として、教師が積極的に運動部活動にかかわってきた歴史的背景として、第一に、1945年から1950年代において戦後教育改革の文脈で、民主主義の象徴としてスポーツが高く価値づけられたこと、第二に、1960年代後半の東京オリンピック後の文脈で、一部の選手だけでなく全生徒へ平等にスポーツ機会を与えようとしたこと、第三に、1970年代後半から1980年代における生徒の非行問題の文脈で、その防止のためにスポーツが活用されようとしたことを指摘した。加えて、質的アプローチからの研究として、中学校運動部活動のフィールドワークで得られたデータをもとに、現在の顧問教師が運動部活動へ、いかに取り組んでいるかを考察した。具体的には、運動部活動に積極的な教師が、(1)多様性への対処、(2)活動機会の配分、(3)他の校務との兼ね合い、という指導上の困難にどう向き合っているかに注目した。結果の一例をあげると、(1)の困難の場合、観察した運動部活動では、多様な生徒がいることで競技力の高い生徒が低い生徒をイジメる事態が生じた。これは、一見すると、典型的な指導上の困難に見える。しかし、運動部活動に積極的な教師は、こうしたイジメの事態を、ネガティブな教育問題ではなく、「生活指導をするチャンス」としてポジティブな教育機会としてとらえ返していた。結論として、運動部活動に積極的な教師は、指導上の困難を教育的に意味づけ直して主観的に乗り越えていること、それゆえに積極的なかかわりを持続させることを指摘した。
KAKENHI-PROJECT-21800022
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摩擦の物理
内部に多くの自由度を持つ巨視的な系に外力を加えた場合、広義の摩擦を伴う複雑な運動を示すことがある。これに関した現象は固体界面の滑り摩擦から地震、電荷密度波、磁束格子など電子の巨視的凝縮相でのある種の秩序の運動など様々な分野の広いスケールに渡る。本研究では、研究代表者、分担者による周到な準備のもと、8月2022日に大阪大学豊中キャンパスにおいて、異なる分野、異なるスケールにわたる広義の摩擦現象に関する実験研究者と理論研究者が集まり、これらの現象を総合的に議論し分野間の交流を深める研究会"摩擦の物理"を開催した。80名ほどの参加者を得て、活発な議論が行われたた。これらの活動を通じて、"摩擦の物理"に関する研究グループが形成され、その後、数回の話しあいを経て、明確な将来の研究計画が立てられた。そして11月には科学研究費補助金特定領域研究"摩擦の物理"の申請へと結実した。この研究組織は総括班と7つの計画研究班からなり、以下のことを目的としている。本研究は、現代物性科学・技術の成果をもとに新しい視点から、工学を含めた様々な分野における多様な系・レベルの摩擦機構の研究を有機的に繋げ、ミクロスケールからマクロスケールにわたる現象の階層性を正しく取り込み、摩擦の基礎的機構を統一的に解明する。摩擦の普遍性と個別性を明かにし、物理科学の新しい概念を生み出すとともに、その成果を踏まえた新たな摩擦制御技術の創生を目指す。内部に多くの自由度を持つ巨視的な系に外力を加えた場合、広義の摩擦を伴う複雑な運動を示すことがある。これに関した現象は固体界面の滑り摩擦から地震、電荷密度波、磁束格子など電子の巨視的凝縮相でのある種の秩序の運動など様々な分野の広いスケールに渡る。本研究では、研究代表者、分担者による周到な準備のもと、8月2022日に大阪大学豊中キャンパスにおいて、異なる分野、異なるスケールにわたる広義の摩擦現象に関する実験研究者と理論研究者が集まり、これらの現象を総合的に議論し分野間の交流を深める研究会"摩擦の物理"を開催した。80名ほどの参加者を得て、活発な議論が行われたた。これらの活動を通じて、"摩擦の物理"に関する研究グループが形成され、その後、数回の話しあいを経て、明確な将来の研究計画が立てられた。そして11月には科学研究費補助金特定領域研究"摩擦の物理"の申請へと結実した。この研究組織は総括班と7つの計画研究班からなり、以下のことを目的としている。本研究は、現代物性科学・技術の成果をもとに新しい視点から、工学を含めた様々な分野における多様な系・レベルの摩擦機構の研究を有機的に繋げ、ミクロスケールからマクロスケールにわたる現象の階層性を正しく取り込み、摩擦の基礎的機構を統一的に解明する。摩擦の普遍性と個別性を明かにし、物理科学の新しい概念を生み出すとともに、その成果を踏まえた新たな摩擦制御技術の創生を目指す。
KAKENHI-PROJECT-13894010
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グラフの近傍複体に関する幾何学的研究
本年度ではグラフの近傍複体に関連する幾何学的研究として、主に二つの研究成果を出すことができた。グラフの彩色数に関するHedetniemi予想とは、二つのグラフGとHに対し定義される積G×Hの彩色数に関する予想であり1956年に提出されて以降、長年未解決のグラフ理論の予想である。私はこのHedetniemi予想から、Z/2ホモトピー論に関する命題を導出することができた。すなわち、得られたZ/2ホモトピー論の命題が成り立たない例を構成することによりHedetniemi予想を反証することになり、Hedetniemi予想解決に関する新たな道筋を開いたことになる。証明には近傍複体と密接に関係する箱複体というグラフから構成されるZ/2-CW複体を用いて行われる。箱複体にはZ/2-ホモトピー型を除いて、いくつかの構成方法が知られているが、従来の構成方法では、随伴関手を持たないなど、圏論的な性質が悪かったのである。一方で、私が本研究において与えた新たな定式化では、箱複体を考える関手がグラフの圏からZ/2-単体複体の圏への右随伴関手になり、さらにその左随伴関手が積を保つという極めて良い性質を持つものを示した。この圏論的によい性質を持つ関手を用いることで、グラフの命題からZ/2ホモトピー論の命題を導くことができた。一方で、de Bruijn-Erdosの定理というグラフ理論の定理から触発され、空間対に対する幽霊写像を定式化し、その性質を調べた。これは大阪府立大学教授の入江幸右衛門教授、および京都大学准教授の岸本大祐准教授との共同研究である。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。単純グラフとは二重線および端点が同じ頂点であるような辺が存在しないグラフのことをいい,グラフGに対しGのn-彩色とはGの頂点集合V(G)からn-点集合への写像cであって,二つの頂点vとwが辺で結ばれているならばc(v)とc(w)が異なるようなもののことをいう.グラフGに対しGの彩色数とはGのn-彩色が存在する様な最小のnのことをいい,彩色数を決定する問題をグラフの彩色問題という.グラフに対して近傍複体や箱複体,Hom複体などの単体複体を対応させ,単体複体の連結度(すなわちn-連結となるような最大のn)が,グラフの彩色数の非自明な下界を与えることが以前から研究されてきた.ここで箱複体はHom複体の特別な場合である.本年度の研究において,箱複体を用いてグラフの圏にモデル構造を導入し,そのモデル圏がZ_2-空間の圏にQuillen同値であることを証明した.その詳細を書く.グラフ準同型fが弱同値であることを,fが箱複体の間に誘導するZ_2-写像がZ_2-ホモトピー同値であることとして定義する.そのとき箱複体とZ_2-ホモトピー同値であるZ_2-単体的集合を対応させる関手を定義し,それが右随伴関手であることを証明した.この関手にさらにKanの拡張関手を3回合成することによって得られた関手によって,Z_2-空間の圏のモデル構造を誘導したものがグラフの圏のモデル構造である.証明の際にはグラフと単体複体と正の整数rに対してr-近傍変位レトラクトなる概念を導入する.これは十分に多くの重心細分を繰り返した包含写像が含まれるクラスであって,r-近傍変位レトラクトによる押し出しをHom複体により押し出すと,単体複体の幾何学的実現やHom複体のホモトピー押し出しの図式になり,Hom複体などのホモトピー型を計算する際に非常に有用である.研究計画通りに研究が進行しているのでおおむね順調に進展していると考えている.本年度ではグラフの近傍複体に関連する幾何学的研究として、主に二つの研究成果を出すことができた。グラフの彩色数に関するHedetniemi予想とは、二つのグラフGとHに対し定義される積G×Hの彩色数に関する予想であり1956年に提出されて以降、長年未解決のグラフ理論の予想である。私はこのHedetniemi予想から、Z/2ホモトピー論に関する命題を導出することができた。すなわち、得られたZ/2ホモトピー論の命題が成り立たない例を構成することによりHedetniemi予想を反証することになり、Hedetniemi予想解決に関する新たな道筋を開いたことになる。証明には近傍複体と密接に関係する箱複体というグラフから構成されるZ/2-CW複体を用いて行われる。箱複体にはZ/2-ホモトピー型を除いて、いくつかの構成方法が知られているが、従来の構成方法では、随伴関手を持たないなど、圏論的な性質が悪かったのである。一方で、私が本研究において与えた新たな定式化では、箱複体を考える関手がグラフの圏からZ/2-単体複体の圏への右随伴関手になり、さらにその左随伴関手が積を保つという極めて良い性質を持つものを示した。この圏論的によい性質を持つ関手を用いることで、グラフの命題からZ/2ホモトピー論の命題を導くことができた。一方で、de Bruijn-Erdosの定理というグラフ理論の定理から触発され、空間対に対する幽霊写像を定式化し、その性質を調べた。
KAKENHI-PROJECT-16J06304
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グラフの近傍複体に関する幾何学的研究
これは大阪府立大学教授の入江幸右衛門教授、および京都大学准教授の岸本大祐准教授との共同研究である。上記の研究に関連して,以下のようなホモトピー論の問題を考えた.幽霊写像とは位相空間の間の連続写像f:X→Yであって,任意の有限CW-複体Kと連続写像g:K→Xを考えたとき,fとgの合成が定値写像にホモトピックになることをいう.一方でde Brujin-Erdosの定理によれば,任意のグラフGに対し,Gの任意の部分グラフがn-彩色可能ならばGもn-彩色可能である.これはグラフGのn-彩色に対しては,上記のような幽霊写像のような現象は見られないことを示している.そこで箱複体を通して考えてみると,次のような問題になる.XをZ_2-CW-複体として,任意のXのZ_2-部分複体からn次元球面へのZ_2-写像が存在するならば,全体としてXからn次元球面へのZ_2-連続写像は存在するだろうか.現在進行中の研究により,Z_2-CW-複体Xにより存在することもあるし存在しないこともあることがわかっている.これをより一般化したものとして,空間対への幽霊写像を考える.すなわちCW-複体Xと空間対(Y,B)を考え,XからYへの連続写像fが空間対の幽霊写像であるとは,任意のXの有限部分複体Kに対し,fをKに制限するとBを経由する写像にホモトピックになることをいう.この空間対の幽霊写像の研究を行う.特にBからYへの包含写像がYからの別の写像のホモトピーファイバーになっているときは,普遍幽霊写像などの概念が自然に定式化されるなど,通常の幽霊写像の理論と同様に深い理論が展開されるものと期待される.翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-16J06304
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幕末における幕府の蒸気船・洋式帆船導入関係資料の所在調査と総合目録の作成
本年度は内閣文庫、『続通信全覧』(外交史料館蔵)、江川家文書(国立史料館架蔵写真帳)、武藤文庫(長崎大学付属図書館蔵)、狩野文庫(東北大学付属図書館蔵)、住田文庫(神戸大学付属図書館蔵)、神戸大学海洋学部海事資料館、長崎県立図書館、弘前市立弘前図書館、黒羽藩校作新館旧蔵図書(芭蕉の館蔵)の調査を行って目録を作成した。このうち安政4年(1857)から慶応2年(1866)までに長崎奉行が江戸に送った上書の銘書を編纂した『諸上書銘書帳』(長崎県立図書館蔵)は、長崎海軍伝習を行い、長崎製鉄所を管掌し、文久期の幕府海軍増強政策で重要な役割を果たした長崎奉行の動向を明らかにするうえで不可欠であり、また安政6年(1859)から元治元年(1864)までの軍艦奉行に関わる文書を収めた『御軍艦操練所伺等之留』(内閣文庫蔵)は、文久期の軍艦奉行の動向を知るうえで重要なので、両文書については細目を作成した。さらに文部省維新史料編纂事務局に貸出中、関東大震災で焼失した『長崎飽浦製鉄所・立神造船場一件』47(『続通信全覧』)については、『類輯之部総目録』に載る同書の細目を手掛かりにして出典を明らかにした。複写したのは外務省引継書類(東京大学史料編纂所蔵)、維新史料編纂局引継書類(同前)、近藤記念海事文庫(東京都立中央図書館蔵)、神戸大学海洋学部海事資料館所蔵文書である。本研究は、安政期から文久期まで(1854-1863)の幕府の蒸気船・洋式帆船導入関係資料の所在調査と総合目録作成を目的とするが、元治期から慶応期まで(1864-1868)の資料が所蔵されている場合には、それもあわせて調査し、目録を作成した。その結果、幕府の蒸気船・洋式帆船導入による近代海事産業の育成、海軍の創設、海運の近代化の過程の研究に必要な資料の所在はほぼ解明されたといってよい。本年度は東京大学史料編纂所蔵の外務省引継文書・維新史料編纂局引継文書、東京都立中央図書館蔵の近藤記念海事文庫、広島県立文書館蔵の小野友五郎文書、陽明文庫蔵の芦名重次郎文書の調査を行って目録を作成した。このうち複写したのは小野文書・芦名文書で、小野文書については日記(文久4.2.10慶応3.1.19、慶応3.8.1慶応4.47)など幕府勘定方(勘定組頭・勘定吟味役・勘定頭取・勘定奉行並を歴任)時代の文書を中心に履歴書及び和算・洋算関係などの文書を複写し、芦名文書については全点を複写した。芦名は幕府勘定方の有司であるから、文庫の性格からして芦名文書はきわめて異質といってよいが、文庫の有に帰した経緯は不明である。なお、芦名文書は東京大学史料編纂所蔵の外務省引継文書にも含まれているすでに藤井哲博『成臨丸航海長小野友五郎の生涯』などで用いられた小野文書と違って、陽明文庫蔵芦名文書は、従来、全く世に知られておらず(目録によれば一部の写本が京都大学文学部内田文庫に所蔵されているが、未整理のため未公開)、41点47冊のうち過半が幕府による蒸気船・洋式帆船導入関係の文書であるから、この文書の存在が明らかになった意義はきわめて大きい。文書の内容は多岐にわたるため、目下、文書ごとに納められた書付などの記録を一点ずつカードにとって整理中である。なお、外務省引継文書・維新史料編纂局引継文書及び近藤記念海事文庫の複写は来年度に行う予定である。本年度は内閣文庫、『続通信全覧』(外交史料館蔵)、江川家文書(国立史料館架蔵写真帳)、武藤文庫(長崎大学付属図書館蔵)、狩野文庫(東北大学付属図書館蔵)、住田文庫(神戸大学付属図書館蔵)、神戸大学海洋学部海事資料館、長崎県立図書館、弘前市立弘前図書館、黒羽藩校作新館旧蔵図書(芭蕉の館蔵)の調査を行って目録を作成した。このうち安政4年(1857)から慶応2年(1866)までに長崎奉行が江戸に送った上書の銘書を編纂した『諸上書銘書帳』(長崎県立図書館蔵)は、長崎海軍伝習を行い、長崎製鉄所を管掌し、文久期の幕府海軍増強政策で重要な役割を果たした長崎奉行の動向を明らかにするうえで不可欠であり、また安政6年(1859)から元治元年(1864)までの軍艦奉行に関わる文書を収めた『御軍艦操練所伺等之留』(内閣文庫蔵)は、文久期の軍艦奉行の動向を知るうえで重要なので、両文書については細目を作成した。さらに文部省維新史料編纂事務局に貸出中、関東大震災で焼失した『長崎飽浦製鉄所・立神造船場一件』47(『続通信全覧』)については、『類輯之部総目録』に載る同書の細目を手掛かりにして出典を明らかにした。複写したのは外務省引継書類(東京大学史料編纂所蔵)、維新史料編纂局引継書類(同前)、近藤記念海事文庫(東京都立中央図書館蔵)、神戸大学海洋学部海事資料館所蔵文書である。本研究は、安政期から文久期まで(1854-1863)の幕府の蒸気船・洋式帆船導入関係資料の所在調査と総合目録作成を目的とするが、元治期から慶応期まで(1864-1868)の資料が所蔵されている場合には、それもあわせて調査し、目録を作成した。
KAKENHI-PROJECT-14023204
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幕末における幕府の蒸気船・洋式帆船導入関係資料の所在調査と総合目録の作成
その結果、幕府の蒸気船・洋式帆船導入による近代海事産業の育成、海軍の創設、海運の近代化の過程の研究に必要な資料の所在はほぼ解明されたといってよい。
KAKENHI-PROJECT-14023204
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造血幹細胞遺伝子治療のための新規レトロウイルスベクターシステムの開発
研究者は原発性免疫不全症に対する造血幹細胞遺伝子治療の際に使用される臨床用レトロウイルスベクター産生のために、以下の研究を期間内に行った。1)慢性肉芽腫症原因遺伝子ヒトCYBB遺伝子のクローニング:対象疾患である慢性肉芽腫症は食細胞のNADPHオキシダーゼ酵素の構成タンパク質であるgp91Phoxをコードするcytochromeb558 heavy chain gene (CYBB)遺伝子に変異のある疾患である。健常人多核球よりmRNAを調整し、PCR法にてgp91Phoxのopen reading frameを増幅し、クローニング後のDNA sequence法に1603塩基対の配列を確認した。2) gene silencing抵抗性レトロウイルスベクターGCDNsapの構築:研究者がすでに臨床用ベクターとして構築しているGCsap(PCMV)内の2ヶ所の抑制性転写因子結合領域(YY1およびTrim28結合部位)に変異を入れたGCDNsapを構築した。このベクターは未熟細胞においても著しいgene silencing抵抗性を示し、造血幹細胞や胚性幹細胞においても長期にわたる導入遺伝子の発現維持を可能にしている。3)臨床用ウイルス産生細胞の樹立:上記GCDNsapにクローニングしたCYBB遺伝子を組込み、水庖性口内炎ウイルスのGタンパク質を発現する293gpgに導入することで、gp91^<phox>発現レトロウイルスベクター産生細胞を樹立した。このウイルス力価は、ヒトT細胞株であるJurkat細胞にて2.0x10^5m1/I.U.程度であった。4)遺伝子導入細胞におけるgp91^<phox>発現:上記、遺伝子導入Jurkat細胞において、細胞表面および細胞内にgp91^<phox>の発現をFACSにて確認した。現在、ヒト造血前駆細胞であるCD34陽性細胞への遺伝子導入実験を行っており、良好な結果が得られている。研究者は原発性免疫不全症に対する造血幹細胞遺伝子治療の際に使用される臨床用レトロウイルスベクター産生のために、以下の研究を期間内に行った。1)慢性肉芽腫症原因遺伝子ヒトCYBB遺伝子のクローニング:対象疾患である慢性肉芽腫症は食細胞のNADPHオキシダーゼ酵素の構成タンパク質であるgp91Phoxをコードするcytochromeb558 heavy chain gene (CYBB)遺伝子に変異のある疾患である。健常人多核球よりmRNAを調整し、PCR法にてgp91Phoxのopen reading frameを増幅し、クローニング後のDNA sequence法に1603塩基対の配列を確認した。2) gene silencing抵抗性レトロウイルスベクターGCDNsapの構築:研究者がすでに臨床用ベクターとして構築しているGCsap(PCMV)内の2ヶ所の抑制性転写因子結合領域(YY1およびTrim28結合部位)に変異を入れたGCDNsapを構築した。このベクターは未熟細胞においても著しいgene silencing抵抗性を示し、造血幹細胞や胚性幹細胞においても長期にわたる導入遺伝子の発現維持を可能にしている。3)臨床用ウイルス産生細胞の樹立:上記GCDNsapにクローニングしたCYBB遺伝子を組込み、水庖性口内炎ウイルスのGタンパク質を発現する293gpgに導入することで、gp91^<phox>発現レトロウイルスベクター産生細胞を樹立した。このウイルス力価は、ヒトT細胞株であるJurkat細胞にて2.0x10^5m1/I.U.程度であった。4)遺伝子導入細胞におけるgp91^<phox>発現:上記、遺伝子導入Jurkat細胞において、細胞表面および細胞内にgp91^<phox>の発現をFACSにて確認した。現在、ヒト造血前駆細胞であるCD34陽性細胞への遺伝子導入実験を行っており、良好な結果が得られている。申請者は原発性免疫不全症に対する造血幹細胞遺伝子治療の際に使用される臨床用レトロウイルスベクターの作製を行っている。申請者はすでにクリニカルベクターであるGCsap(MPSV)のLTRをPCMV LTRに変更したGCsap(PCMV)を作製している。今回、GCsap(PCMV)内に存在する2カ所の抑制性転写因子結合部位に変異を入れたGCDNsapを開発した。このベクターは未熟細胞におけるgene silencingに強い抵抗性を示し、造血幹細胞や胚性幹細胞においても長期にわたる導入遺伝子の発現維持を可能にしている。2)臨床用ウイルス産生細胞株の樹立上記GCDNsapに慢性肉芽腫症の原因遺伝子であるgp91phoxを挿入し、臨床用ベクターDN91phoxを作製した。このベクターを水庖性口内炎ウイルスのGタンパク質(VSV-G)を発現する293pgpに導入して、ウイルス産生細胞株を樹立した。これらウイルス産生細胞株より産生されたウイルスの力価は1x10^6を越え、また、感染細胞膜表面に導入したgp91phoxの発現を認めた。ただ、一般にVSV-Gはヒト造血幹細胞(CD34陽性細胞)に強い毒性を示すので、現在、これらウイルス上清を用いてgibbon ape leukemia virus(GaLV)由来のenvelopeを産生するパッケージング細胞株PG13に導入し、高力価のウイルス産生細胞株の樹立を試みている。3)CD34陽性細胞への遺伝子導入今後は、臍帯血あるいは患児由来のCD34陽性細胞に上記PG13/DNglphoxを用いてgp91phox遺伝子を導入する。
KAKENHI-PROJECT-18591180
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造血幹細胞遺伝子治療のための新規レトロウイルスベクターシステムの開発
これら遺伝子導入細胞をヒト造血細胞が長期間生存可能なNOD/SCIDマウスに移植し、in vivoにおける長期にわたるgp91phox遺伝子の発現を確認する。フランスX-SCID遺伝子治療において発症した白血病有害事象の報告を受け、より安全性を高めるために、同一ベクターよりgp91phoxと自殺遺伝子であHSV-TK遺伝子を共発現するベクターを構築している。申請者は、昨年来より原発性免疫不全症に対する造血幹細胞遺伝子治療の際に使用される臨床用レトロウイルスベクターの作製を行っているが、本年度は昨年に研究成果の基に慢性肉芽腫症に対するレトロウイルスベクターの作製を行った。1)慢性肉芽腫症原因遺伝子ヒトCYBB遺伝子のクローニング:慢性肉芽腫症は食細胞のNADPHオキシダーゼ酵素の構成タンパク質であるgp91^phoxをコードするcytochromeb558heavy chain gene(CYBB)遺伝子に変異にある疾患で、本研究では、gp91^phoxを発現するレトロウイルスベクターを作製するために、健常人多核球よりmRNAを調整し、gp91^phoxのopen reading frameを増幅できるように開始コドンを含むsense primer、終止コドンを含むanti-sense primerを設計し、PT-PCRにて1603塩基対のCYBB遺伝子をクローニングした。クローニングした配列のsequenceの結果、その配列は報告されている遺伝子配列と一致し、今回の研究に使用した。2)gp91phox発現レトロウイルスベクターの構築:上記クローニングしたCYBBcDNAを、申請者が開発したgenesilencing抵抗性レトロウイルスベクターGCDNsapのNcoI-NotI部位に組み込み、CYBB cDNA発現DNgp91を作製した。このベクターをGibbon ape leukemia virus(GaLV)由来envelopeを発現するパッケージング細胞株PG13にtransductionし、gp91^phox発現レトロウイルスベクター産生細胞を樹立した。ウイルスカ価は、ヒトT細胞株であるJurkatにて2.0x10^5ml/I.U.であった。3)遺伝子導入細胞におけるgp91^phox発現:上記、Jurkat細胞でのgp91^phox発現をFACSにて確認したところ、細胞外、細胞内染色においても、その発現を確認した。4)ヒトCD34陽性細胞への遺伝導入:現在、ヒト造血前駆細胞であるCD34陽性細胞に上記ウイルス産生細胞を用いて遺伝子導入操作を試みている。
KAKENHI-PROJECT-18591180
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18591180
デクスメデトミジンの心筋保護効果(心臓マイクロダイアリシス法によるアプローチ)
この研究では、全身麻酔時に使用する麻酔・鎮静薬が心筋梗塞を予防、軽減する作用を有するかについて、ウサギの心臓の冠動脈を閉塞した際の心筋梗塞のマーカー応答により確認した。吸入麻酔薬(イソフルラン・セボフルラン)と鎮静薬(デクスメデトミジン)を虚血前に投与することで、マーカーの上昇を抑制することがわかった。また、デクスメデトミジンの心保護効果は血流途絶期だけでなく、再開通期にもあることがわかった。この研究では、全身麻酔時に使用する麻酔・鎮静薬が心筋梗塞を予防、軽減する作用を有するかについて、ウサギの心臓の冠動脈を閉塞した際の心筋梗塞のマーカー応答により確認した。吸入麻酔薬(イソフルラン・セボフルラン)と鎮静薬(デクスメデトミジン)を虚血前に投与することで、マーカーの上昇を抑制することがわかった。また、デクスメデトミジンの心保護効果は血流途絶期だけでなく、再開通期にもあることがわかった。日本白ウサギに心臓マイクロダイアリシス法を適用し、我々は独自に虚血時および再灌流時それぞれの心筋傷害を鑑別できる方法を確立してきた。今回はその方法を用いて、デクスメデトミジンを中心に心筋保護効果の程度と、その機序の解明を進めている。はじめに、心臓マイクロダイアリシス法による虚血時の心筋間質逸脱タンパク(ミオグロビン・トロポニン)や逸脱酵素(AST・CK)濃度応答を測定し、コントロール群の濃度応答を調べた。また強い虚血に関連が深いとされるミトコンドリアASTや細胞膜構成要素であるグリセロールの逸脱、心臓自律神経系よりの神経伝達物質であるノルエピネフリン・アセチルコリン濃度を同様の系で測定し、その濃度応答をもって心筋傷害の程度が判別できるかを多分野にわたって検討した。最終的には虚血プレコンディショニングを用いた心筋傷害抑制効果がこの実験手法をもちいた各逸脱タンパクや生化学的マーカーで再現性をもって検証できるかどうかを検討し、ミオグロビン濃度応答がその標的物質として最適であることを見いだした。その指標を用いて、吸入麻酔薬であるイソフルランの心筋傷害抑制効果を検討する目的で、lMACのイソフルランを冠動脈閉塞前に投与し、その濃度応答を検討した。その結果イソフルラン前投与は虚血プレコンディショニング様効果を有し、15分の短時間投与では虚血傷害抑制効果は得られなかったが、再濯流傷害抑制効果は得られた。一方、30分では両者とも抑制効果が得られた。この結果をふまえ、デクスメデトミジンを冠動脈閉塞前に全身投与し、その濃度応答を虚血と再潅流を個々に検討し、吸入麻酔薬との差異を比較検討しているところである。さらに心拍数の影響をペーシングやbradycardiac agnetを前処置した場合を含めて比較検討中である。我々は日本白ウサギに心臓マイクロダイアリシス法を適用し,虚血期および再灌流期それぞれの心筋傷害をin vivoの状態で鑑別できる方法を確立してきた。初年度に心臓マイクロダイアリシス法による虚血による心筋間質逸脱蛋白質や逸脱酵素濃度応答を測定し,ミオグロビンが心筋細胞膜傷害の鋭敏な指標として最適であることを突き止めた。その結果に基づき吸入麻酔薬のイソフルランによる心筋傷害抑制効果を検討し論文に発表した。要約すると1MACのイソフルランを冠動脈閉塞時前に投与した場合,冠動脈閉塞による心筋傷害が抑制された。また,その効果はイソフルランの暴露様式により異なり,イソフルラン30分を1回暴露した場合は再灌流傷害のみの抑制,また30分2回暴露した場合は虚血および再灌流傷害ともに抑制することを証明した。また,吸入麻酔薬(セボフルラン)の暴露時期と心筋保護効果・麻薬(レミフェンタニル)投与と心筋保護効果の関係についての知見を国際麻酔学会議で発表した(平成20年3月)。2年目である本年度は,デクスメデトミジンによる心筋傷害抑制効果を検討し,冠動脈閉塞前に前処置することで虚血期・再灌流期の心筋傷害をともに抑制することが確認できた。現在はデクスメデトミジンの投与時期・投与量・併用薬による心保護効果に対する影響を確認中である(一部結果は平成20年6月の日本麻酔科学会総会で報告予定)。また,同時にデクスメデトミジンによる徐拍化作用が心筋保護効果の主メカニズムと仮定しβ-blockerやbradycardiac agent等による比較検証を行ったが,肯定的なデータは得られなかった。そのためα_2-blocker前処置による心保護効果の影響や心臓自律神経による修飾効果を検討し始めたところである。最終的には吸入麻酔薬や麻薬と組み合わせて心筋保護効果が期待できる麻酔方法を確立したい。本研究は、心臓マイクロダイアリシス法を用いて、麻酔・鎮静剤の心筋保護戦略を確立することにある。そのために、我々はウサギ心筋に対する心臓マイクロダイアリシス法による心筋の虚血・再灌流傷害を個々に鑑別できる方法を確立することを目指し、心筋間質ミオグロビン濃度が最も感度・特異度が高いことを見いだした。その濃度応答を用いて吸入麻酔薬(イソフルランやセボフルラン)が心筋傷害抑制効果を有すること、イソフルランを繰り返し投与することで心筋虚血傷害軽減が増強すること、セボフルランの投与時期を虚血直前に投与することが虚血再灌流中や再灌流直後に投与するよりも保護効果が増強することが確認できた。
KAKENHI-PROJECT-18591700
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18591700
デクスメデトミジンの心筋保護効果(心臓マイクロダイアリシス法によるアプローチ)
一方、デクスメデトミジンを虚血30分前に1回投与することにより、その後の30分間の虚血と再灌流時の両期の傷害を抑制することが観察できた。デクスメデトミジン投与時には心拍数が10%程度低下することから、bradycardiac effectによる効果の関与が推測され、βブロッカー(インデラル)による心拍数減少時の心筋保護効果をデクスメデトミジンによる効果と比較した。その結果、βブロッカーによる同程度の心拍数減少時にも心筋虚血再灌流傷害時の心筋間質ミオグロビン放出を抑制することが観察され、その影響を排除できないことがわかった。現在、心室ペーシングによる心拍数保持時の虚血再灌流傷害を検討し、bradycardiac effectと直接的薬理作用の割合を推定することでβブロッカーとの相違点があるかどうかを検証しているところである。
KAKENHI-PROJECT-18591700
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南極域における中間圏重力波の研究
大気の上下結合で重要な物理現象の一つとして、大気重力波(以下、重力波)が挙げられる。重力波は対流圏から中間圏へ運動量を輸送し、大気の流れを生み出すことで大気上下結合を担っている。この重力波をモデルに取り込む上で、観測に基づき重力波の運ぶ運動量をパラメータとしてモデルに取り込む手法が使われているが、このパラメータ化の違いがモデル同士の結果が異なる原因の一つになっており、観測による検証が必要である。大気光イメージング観測は、高度90km付近の大気の発光を撮像することで中間圏界面の重力波を観測し、重力波の水平伝搬特性を導出できる。平成28年度は、南極の昭和、Davis基地のAntarctic Gravity Wave Imaging/Instrument Network (ANGWIN)の大気光イメージャーの2013年4月7日から5月21日のデータについて、スペクトル解析を用いて、背景風フィルタリングの影響を調べた。本研究では、背景風フィルタリングを受ける重力波の水平位相速度分布を計算し、観測した水平位相速度分布と比較した。その結果、どちらの基地も東向きの重力波が成層圏の東向きの風によってフィルタリングされ、大気光イメージングでは観測されないことが予測された。しかし、Davis基地では予測と異なり東向きの重力波が観測された。これは、Davis基地上空の重力波が背景風フィルタリングを受ける高度よりも高い高度で励起された可能性を示唆している。本研究の成果は論文にまとめて国際学術誌J. Geophys. Res.Atmos.に投稿し、報告日現在、レビューアの審査を受けて改訂がおわり国際共著者の確認中もほぼ終了しまもなく改訂原稿を投稿するが、近々に受理されるものと思われる。最後に、上記の結果を含むこれまでの研究成果を博士論文にまとめ、学位(理学)を取得した。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。大気の上下結合で重要な物理現象の一つとして、大気重力波(以下、重力波)が挙げられる。重力波は対流圏から中間圏へ運動量を輸送し、大気の流れを生み出すことで大気上下結合を担っている。この重力波をモデルに取り込む上で、観測に基づき重力波の運ぶ運動量をパラメータとしてモデルに取り込む手法が使われているが、このパラメータ化の違いがモデル同士の結果が異なる原因の一つになっており、観測による検証が必要である。大気光イメージング観測は、高度90km付近の大気の発光を撮像することで中間圏界面の重力波を観測し、重力波の水平伝搬特性を導出できる。平成28年度は、南極の昭和、Davis基地のAntarctic Gravity Wave Imaging/Instrument Network (ANGWIN)の大気光イメージャーの2013年4月7日から5月21日のデータについて、スペクトル解析を用いて、背景風フィルタリングの影響を調べた。本研究では、背景風フィルタリングを受ける重力波の水平位相速度分布を計算し、観測した水平位相速度分布と比較した。その結果、どちらの基地も東向きの重力波が成層圏の東向きの風によってフィルタリングされ、大気光イメージングでは観測されないことが予測された。しかし、Davis基地では予測と異なり東向きの重力波が観測された。これは、Davis基地上空の重力波が背景風フィルタリングを受ける高度よりも高い高度で励起された可能性を示唆している。本研究の成果は論文にまとめて国際学術誌J. Geophys. Res.Atmos.に投稿し、報告日現在、レビューアの審査を受けて改訂がおわり国際共著者の確認中もほぼ終了しまもなく改訂原稿を投稿するが、近々に受理されるものと思われる。最後に、上記の結果を含むこれまでの研究成果を博士論文にまとめ、学位(理学)を取得した。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-16J10875
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ソフトウェア信頼度成長モデルに基づく統計的品質管理のための管理図法の研究
従来より,ハードウェア製品の製造工程における品質の安定性を評価する方法として,管理図(control chart)法が提案されてきた.管理図法とは,統計的品質管理(statistical quality control)のための一手法であり,製品の品質特性のばらつきの発生要因を,管理図を用いることによって,異常原因と偶然原因に区別し,異常原因が発生した場合には工程に対する適切な処置や改善案を施し,工程の状態を恒常的に良好な状態(管理状態)に維持しようとする方法である.また,管理図は,工程の状態を表す品質特性値の時系列変動を打点したグラフであり,1本の中心線と,その上下に1対の管理限界線が引かれている.品質特性値のばらつきが,管理限界線を越えたり,打点状態に特異なくせがあるようであれば異常原因が発生したと判断するのである.このような,品質の安定性を評価する管理図法の考え方を,ソフトウェアのテスト工程における出荷品質の達成度合の把握や,テスト工程の安定性およびテスト進捗状況の評価に応用することは,十分に意義があり実際問題としても必要とされている.本研究では,品質・信頼性評価のための代表的なソフトウェア信頼度成長モデルとして,ゴンペルツ(Gompertz)曲線モデルと,非同次ポアソン過程(nonhomogeneous Poisson process)に基づく指数形ソフトウェア信頼度成長モデル(exponential software reliability growth model)および遅延S字形ソフトウェア信頼度成長モデル(delayed S-shaped software reliabilitygrowthmodel)を用いて管理図を作成し,テスト工程で実際に観測されたデータを適用して,テスト進捗度の良好さやテスト工程の安全性を評価するための管理図法について議論した.すなわち,それぞれ各モデルから導出される平均瞬間フォールト発見率,瞬間フォールト発見率,および相対的瞬間フォールト発見率が,テスト時間との関係において対数線形性を有することに着目し,観測されたフォールト発見数データをこれらのモデルに適用して回帰分析を行い,これらの統計的信頼限界を管理限界とする管理図を作成した.さらに,実際データによる具体例も検討した.これにより,ソフトウェア製品についても,良く管理されているテスト工程に対して,本管理図の有用性が確認できた.従来より,ハードウェア製品の製造工程における品質の安定性を評価する方法として,管理図(control chart)法が提案されてきた.管理図法とは,統計的品質管理(statistical quality control)のための一手法であり,製品の品質特性のばらつきの発生要因を,管理図を用いることによって,異常原因と偶然原因に区別し,異常原因が発生した場合には工程に対する適切な処置や改善案を施し,工程の状態を恒常的に良好な状態(管理状態)に維持しようとする方法である.また,管理図は,工程の状態を表す品質特性値の時系列変動を打点したグラフであり,1本の中心線と,その上下に1対の管理限界線が引かれている.品質特性値のばらつきが,管理限界線を越えたり,打点状態に特異なくせがあるようであれば異常原因が発生したと判断するのである.このような,品質の安定性を評価する管理図法の考え方を,ソフトウェアのテスト工程における出荷品質の達成度合の把握や,テスト工程の安定性およびテスト進捗状況の評価に応用することは,十分に意義があり実際問題としても必要とされている.本研究では,品質・信頼性評価のための代表的なソフトウェア信頼度成長モデルとして,ゴンペルツ(Gompertz)曲線モデルと,非同次ポアソン過程(nonhomogeneous Poisson process)に基づく指数形ソフトウェア信頼度成長モデル(exponential software reliability growth model)および遅延S字形ソフトウェア信頼度成長モデル(delayed S-shaped software reliabilitygrowthmodel)を用いて管理図を作成し,テスト工程で実際に観測されたデータを適用して,テスト進捗度の良好さやテスト工程の安全性を評価するための管理図法について議論した.すなわち,それぞれ各モデルから導出される平均瞬間フォールト発見率,瞬間フォールト発見率,および相対的瞬間フォールト発見率が,テスト時間との関係において対数線形性を有することに着目し,観測されたフォールト発見数データをこれらのモデルに適用して回帰分析を行い,これらの統計的信頼限界を管理限界とする管理図を作成した.さらに,実際データによる具体例も検討した.これにより,ソフトウェア製品についても,良く管理されているテスト工程に対して,本管理図の有用性が確認できた.
KAKENHI-PROJECT-06680323
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06680323
がん化学療法の精密医療の実現化
現在の術後化学療法は臨床試験の結果と医師の長年の感により行われる非常に画一的なものであり、患者個々人で最適な化学療法を行われているとは言いがたい状況である。オぺにより摘出したがん細胞のシークエンスを実施し、そのデータを基に効果のある抗がん剤の組み合わせを決定することができれば、術後化学療法の効果は飛躍的に上昇し結果としてがんの予後改善につながると考えられる。しかし現状てではがん細胞から取得したシークエンスデータを人が解析し、効果のある抗癌剤を判断するのは相当な時間と労力を要し、患者個人にとって最適な抗がん剤の組み合わせを導き出すのは無理である。そこで本研究では約200種のがん細胞のシークエンスデータおよび各々の細胞の265種の抗がん剤への感受性データから人工知能(AI)を用いて深層学習を行いシークエンスデータから最適な抗がん剤の組み合わせを導き出す治療支援システムの構築を目指した。イキギリスサンガー研究所が保有する約200種類のがん細胞のRNAシークエンスデータ、およびDNAシークエンスデータを用いてデータの二次元バーコード化を行うためのシステム構築を行った。RNAシークエンスデータに含まれる情報は遺伝子内エキソン領域の位置情報、発現量データである。これらのデータからは各遺伝子のスプライシング情報も読み取ることができる。またDNAシークエンスデータからはそれぞれの遺伝子内に存在するミューテーション情報が含まれている。これらの情報を統合し深層学習にしようデータ形式に変換するために下記の方法により二次元バーコード化を行った。(1)DNA上に存在する遺伝子のエキソン領域を染色体ごとに横一列に並べた。(2)並べたエキソン領域の位置に遺伝子発現情報を量的情報に基づいて線の長さで表現した。(3)DNAシークエンス情報を基にエキソン内のミューテーションの位置をプロットした。これらの作業を自動化するソフトウエアを開発し、上記約200種類のがん細胞のシークエンス情報の二次元バーコード化を行った。作成した各がん細胞の二次元バーコードデータ(遺伝子情報)とそれに対応する265種類の既存の抗がん剤への感受性データを用いて深層学習を行う。畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network :CNN)を用いて学習を行う。CNNの学習には初期値(convolution層数、学習係数など)の設定が重要であり、初期値の改変により識別の精度を上昇させる。オペにより摘出したがん細胞(連携研究者森正樹教授の協力)を用いて実装したCNNの効果検討を行う。臨床検体のシークエンスを行い(大腸がん30例、膵がん30例を予定)、情報の二次元バーコード化を行う。実装したCNNを用いて最適な抗がん剤の組み合わせの決定を行う。同臨床検体を用いてマウス移植モデル(patient-derived xenograft:PDXモデル)を作成、人工知能により導き出された効果的抗がん剤の組み合わせで治療を行い、効果検討を行う。現在の術後化学療法は臨床試験の結果と医師の長年の感により行われる非常に画一的なものであり、患者個々人で最適な化学療法を行われているとは言いがたい状況である。オぺにより摘出したがん細胞のシークエンスを実施し、そのデータを基に効果のある抗がん剤の組み合わせを決定することができれば、術後化学療法の効果は飛躍的に上昇し結果としてがんの予後改善につながると考えられる。しかし現状てではがん細胞から取得したシークエンスデータを人が解析し、効果のある抗癌剤を判断するのは相当な時間と労力を要し、患者個人にとって最適な抗がん剤の組み合わせを導き出すのは無理である。そこで本研究では約200種のがん細胞のシークエンスデータおよび各々の細胞の265種の抗がん剤への感受性データから人工知能(AI)を用いて深層学習を行いシークエンスデータから最適な抗がん剤の組み合わせを導き出す治療支援システムの構築を目指した。イキギリスサンガー研究所が保有する約200種類のがん細胞のRNAシークエンスデータ、およびDNAシークエンスデータを用いてデータの二次元バーコード化を行うためのシステム構築を行った。RNAシークエンスデータに含まれる情報は遺伝子内エキソン領域の位置情報、発現量データである。これらのデータからは各遺伝子のスプライシング情報も読み取ることができる。またDNAシークエンスデータからはそれぞれの遺伝子内に存在するミューテーション情報が含まれている。これらの情報を統合し深層学習にしようデータ形式に変換するために下記の方法により二次元バーコード化を行った。(1)DNA上に存在する遺伝子のエキソン領域を染色体ごとに横一列に並べた。(2)並べたエキソン領域の位置に遺伝子発現情報を量的情報に基づいて線の長さで表現した。(3)DNAシークエンス情報を基にエキソン内のミューテーションの位置をプロットした。これらの作業を自動化するソフトウエアを開発し、上記約200種類のがん細胞のシークエンス情報の二次元バーコード化を行った。作成した各がん細胞の二次元バーコードデータ(遺伝子情報)とそれに対応する265種類の既存の抗がん剤への感受性データを用いて深層学習を行う。畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network :CNN)を用いて学習を行う。CNNの学習には初期値(convolution層数、学習係数など)の設定が重要であり、初期値の改変により識別の精度を上昇させる。オペにより摘出したがん細胞(連携研究者森正樹教授の協力)を用いて実装したCNNの効果検討を行う。臨床検体のシークエンスを行い(大腸がん30例、膵がん30例を予定)、情報の二次元バーコード化を行う。実装したCNNを用いて最適な抗がん剤の組み合わせの決定を行う。
KAKENHI-PROJECT-18K08617
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K08617
がん化学療法の精密医療の実現化
同臨床検体を用いてマウス移植モデル(patient-derived xenograft:PDXモデル)を作成、人工知能により導き出された効果的抗がん剤の組み合わせで治療を行い、効果検討を行う。
KAKENHI-PROJECT-18K08617
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K08617
哺乳類低容量ストレス応答の分子機構とその生物学的意義
生物が生存する環境は常に変動している。通常、その変化は僅かなものであるので、それを意識することはないが、そのような低いレベルでのストレスが生物機能の維持、生物の生存に重要な役割を果たす可能性を明らかにすることを目的として研究を行った。分裂酵母変異株ライブラリーをスクリーニングし、強い熱ストレスには野生型同様抵抗性を示すが、弱い熱ストレスには感受性を示す変異株を得て、その責任変異遺伝子を同定した。このことは、弱いストレスに特異的に反応するストレス応答経路の存在を示唆する。研究計画書では哺乳類細胞に種々の強さ、持続時間のストレスを与えたときのeIF2αのリン酸化の程度をストレス反応のリードアウトとして解析する予定であったが、eIF2αのリン酸化を促すようなERストレスなどのストレスを定量的に与えることが困難であることが分かったので、実験系を以下の通り変更することとした。分裂酵母にミトコンドリアターゲッティング配列(MTS, mitochondria targeting sequence, MTS)をN末端にもった制限酵素EcoRI(MTS-EcoRI)を発現させた。プロモーターに培地中のチアミンの有無で発現誘導可能なRep81を用いた。このプロモーターはチアミンが存在するときには発現が抑制され、チアミン非存在下では誘導される。培地中チアミン濃度を調節することで、MTS-EcoRIの発現量を調節可能であることを確認した。次に、分裂酵母が対数増殖期中にチアミン非存在下に移しMTS-EcoRIを発現させた。MTS-EcoRIはミトコンドリアに輸送され、ミトコンドリアDNA損傷をもたらすことを示した。予想外の表現型として、このような細胞は静止期以降の生存率(chronological aging、暦寿命)の低下が野生型酵母に比べて遅く、静止期寿命が延長することが分かった。今後は、MTS-EcoRIの発現量と発現時期を変化させて、ストレス・ストレス反応の関係を詳細に観察する予定である。当初計画にあったストレス反応後のeIF2αリン酸化レベルを観察する実験系は、定量的な観察が困難であることが明らかになったので、異なる方法で研究目的であるストレス・ストレス反応の反応曲線を解析する系を構築する必要があった。そのために、分裂酵母を用いたMTS-EcoRI発現誘導系によるミトコンドリア機能を誘導的に低下させる系の構築を新たに開始した。その結果、定量的なストレス誘導が可能なばかりか、強くMTS-EcoRIを誘導すると、ミトコンドリアDNAが消化され、それと同時に暦寿命が延長することが分かった。この知見はこれまでに報告がない全く新規な事実であり、本研究は当初計画以上の進捗を得ることができたと評価できる。生物が生存する環境は常に変動している。通常、その変化は僅かなものであるので、それを意識することはないが、そのような低いレベルでのストレスが生物機能の維持、生物の生存に重要な役割を果たす可能性を明らかにすることを目的として研究を行った。分裂酵母変異株ライブラリーをスクリーニングし、強い熱ストレスには野生型同様抵抗性を示すが、弱い熱ストレスには感受性を示す変異株を得て、その責任変異遺伝子を同定した。このことは、弱いストレスに特異的に反応するストレス応答経路の存在を示唆する。ホルミーシス効果は、個体もしくは細胞に与えるストレスの量が大きい場合には個体に非適応的に働く場合でも、それが小さい場合には適応的に作用する場合があることを意味している。これを検証しその分子機構を明らかにするためには、ストレスを定量化する必要があるが、その系統だった試みはなされていない。本研究において、まず制限酵素EcoRIをコードする遺伝子にmitochondria targeting sequence (MTS)を付加しチアミンの添加・非添加で発現量を制御できる分裂酵母発現ベクターを作成した。これを分裂酵母に形質転換して対数増殖期にMTS-EcoRIを発現誘導させると、そのような細胞の静止期における経時的生存率(暦寿命)が対照群に対して有意に延長し、種々のストレスに対する抵抗性も増加していることが明らかになった。これはホルミーシス効果と思われるが、さらに詳細なストレス・効果関係の定量化が必要である。そのために、現在、発現誘導をより厳密・定量的に行うことができる発現ベクターを構築中である。一方、特定の種類のストレス負荷量が強弱異なる場合において、負もしくは正の適応的結果をもたらすのであれば、それぞれ異なるストレス応答経路が機能している可能性がある。そこで、分裂酵母を変異原であるニトロソグアニジン処理によってランダムに変異させた変異体ライブラリーを作成し、それに短期間かつ強い熱ストレス(47度2時間)あるいは長期間かつ弱いストレス(37度3日間)を負荷し、短期間高ストレスには感受性を示さないが、長期間低ストレスには感受性を示す変異株を5クローン取得した。飯田哲史博士(東京大学)との共同研究によってこれらの変異株の全ゲノム配列を決定し、それぞれについて表現型をもたらす遺伝的変異を同定した。これらの遺伝子変異体は、長期間低ストレス特異的な感受性を示すことを確認した。培地中チアミン濃度を変化させることで、MTS-EcoRI量を再現性よく発現誘導することが可能かどうかを確認する必要がある。期待通りの定量的誘導を得ることができない場合には、MTS-EcoRI量を誘導発現させるRep81プロモーター以外の方法を考える必要がある。分子生物学、遺伝学、腫瘍学MTS-EcoRIが暦寿命延長をもたらす分子機構を解明し、明らかになった経路の活性化と暦寿命延長という表現型がMTS-EcoRI発現量を変化させることでどのようなdose-response関係を示すのかを明らかにする。
KAKENHI-PROJECT-15K14449
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K14449
Phaeodactylum tricornutumによる二酸化炭素の固定化
近年になり、主に二酸化炭素CO_2による地球の温暖化が問題になり、CO_2の排出基準を法で規制し、排出量の抑制と排出後のCO_2削減処理について世界的な動きになっている。そこで、本研究では工場等から排出される高濃度のCO_2を海洋性植物プランクトンで珪藻の一種のPhaeodactylum tricornutumにより固定化させ、CO_2濃度を低減することを目的にしている。このP.tricornutumの増殖速度は10日程度で千倍近くなり大変速く、その細胞内に多くの脂質を含んでいる。この脂質にはミリスチン酸やエイコサペンタエン酸等の医薬としても利用できる物質がある。まず、最適培養条件を調べ、照度は1万ルックス以上、培養液は天然海水に含めれる主要成分でよく、空気吹き込み量は21/1-培養液であること等が判った。この条件により、増殖速度を測定し、P.tricornutumが増殖するにつれ藻体数が増加するため光が遮られ、培養液の深くまで光が到達しなくり光合成が減速することを考慮して照度変化モデルを提出し、実測の増殖速度と良い一致を示した。更に、CO_2濃度を空気の0.03vol%から15vol%まで変化させて増殖速度、藻体の大きさの分布、乾燥質量、CO_2固定化量を測定した。その結果、増殖速度はCO_2濃度が増すとともに遅くなり、乾燥質量は10vol%までは増加するが、それ以上では減少する。CO_2の固定化量も同じく10vol%までは増加し、それ以上では減少する。これらのことから、CO_2濃度が10vol%程度にCO_2最大固定化量と藻体最大収率があり、操作条件が一番良く、高濃度CO_2で固定化した方が最適であることが判明した。近年になり、主に二酸化炭素CO_2による地球の温暖化が問題になり、CO_2の排出基準を法で規制し、排出量の抑制と排出後のCO_2削減処理について世界的な動きになっている。そこで、本研究では工場等から排出される高濃度のCO_2を海洋性植物プランクトンで珪藻の一種のPhaeodactylum tricornutumにより固定化させ、CO_2濃度を低減することを目的にしている。このP.tricornutumの増殖速度は10日程度で千倍近くなり大変速く、その細胞内に多くの脂質を含んでいる。この脂質にはミリスチン酸やエイコサペンタエン酸等の医薬としても利用できる物質がある。まず、最適培養条件を調べ、照度は1万ルックス以上、培養液は天然海水に含めれる主要成分でよく、空気吹き込み量は21/1-培養液であること等が判った。この条件により、増殖速度を測定し、P.tricornutumが増殖するにつれ藻体数が増加するため光が遮られ、培養液の深くまで光が到達しなくり光合成が減速することを考慮して照度変化モデルを提出し、実測の増殖速度と良い一致を示した。更に、CO_2濃度を空気の0.03vol%から15vol%まで変化させて増殖速度、藻体の大きさの分布、乾燥質量、CO_2固定化量を測定した。その結果、増殖速度はCO_2濃度が増すとともに遅くなり、乾燥質量は10vol%までは増加するが、それ以上では減少する。CO_2の固定化量も同じく10vol%までは増加し、それ以上では減少する。これらのことから、CO_2濃度が10vol%程度にCO_2最大固定化量と藻体最大収率があり、操作条件が一番良く、高濃度CO_2で固定化した方が最適であることが判明した。
KAKENHI-PROJECT-04555227
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04555227
カプセル型マイクロ燃料電池の創製と微小凝集体の自己分散制御
本研究では、直径が数10100ミクロンサイズのカプセル型燃料電池を作製し、アルコールやグルコースなど液体燃料環境下において自己発電させることで、工業用微粒子の新規凝集構造や生体内赤血球などの凝集性に効果的な作用を発現させる。電池セル構造を作製し、それを200チップに集積化させて電池としての出力機能性を発現させた。特に、貫通孔構造が高精度に機能できた。微粒子凝集の電池電位制御は、原子間力顕微の帯電電位像の測定により決定した。正負の表面電位が交互に配置することにより、クーロン相互作用を強く働かせた凝集構造を実現した。原著論文2報、国際学会発表2報、国内学会発表2回の成果を創出した。直径が数10100ミクロンサイズのカプセル型燃料電池(μ-FC:micro-fuel cell)を作製し、アルコールやグルコースなど液体燃料環境下において自己発電させることで、工業用微粒子の新規凝集構造や生体内赤血球などの凝集性に効果的な作用を発現させることを目的としている。この燃料電池素子は、液体内固体表面に生じるゼータ電位に匹敵する数10mV程度の電位を常時発生できる。微小固体間のクーロン相互作用により、凝集性、粘性、混合などの特製制御を行い、新規の素材およびシステム創出へと発展する。今年度は3次元マイクロ光造形装置を用いて、カプセル作製と最適化を行い、50ミクロン径のカプセル作製が可能となった。カプセル内へマイクロチューブネットワークを付与することを現在試みている。マイクロチューブ内を液体燃料がスムーズに流れることが必要となってくる。さらには、液体燃料に由来する毛管力による構造劣化や破壊が危惧される。これらは、有限要素法による応力分布解析により、構造的に不利な点を抽出しながら解決を目指している。今後、本研究では、カプセル型燃料電池素子を創出し、従来にない高精度に制御された微粒子凝集素材、センシングシステム、医療応用分野に挑戦するとともに、多くの電子デバイス、バイオ制御、ディスプレイ、光学素子制御等の新規産業分野に技術展開させていく。当初の予定通り、数々のプロセス最適化を実施したことで、カプセル作製が完了している。今後、電池としてのセル構造を作製していく。直径が数10100ミクロンサイズのカプセル型燃料電池(μ-FC:micro-fuel cell)を作製し、アルコールやグルコースなど液体燃料環境下において自己発電させることで、工業用微粒子の新規凝集構造や生体内赤血球などの凝集性に効果的な作用を発現させる。微小固体間のクーロン相互作用により、凝集性、粘性、混合などの特製制御を行い、新規の素材およびシステム創出へと発展する。本研究は、このような背景に基づき、数10100μmサイズのカプセル内包型の小型燃料電池を作製し、アルコールやグルコースなど液体燃料環境下において自己発電することで、工業用微粒子や生体内細胞などの凝集抑制に効果的な機能を発揮するシステムの開発に挑戦する。電池セル構造を作製し、それを200チップを集積化させて電池としての出力機能性を発現させる。これにより貫通孔構造が高精度に作成できる。作製した集積化燃料電池ユニットの動作試験を、既存の電源内部抵抗測定ユニットを用いて測定する。カプセル単位での正負の電圧制御を行うが、カプセル内の電極配置を変更することで実現する。また、微粒子凝集の電池電位制御は、原子間力顕微鏡(AFM)の帯電電位像の測定により決定する。凝集表面の正負の帯電電位分布が正確に測定することができる。正負の表面電位が交互に配置することにより、クーロン相互作用を強く働かせた凝集構造が実現できる。さらに、溶液中に生じるゼータ電位制御のため、純水中の水素イオンおよび炭酸ガス濃度を制御する。最終的に、作製した電池チップは、アクリル樹脂などを主成分とするカプセル内へ設置する。作製した200μm径のカプセルを完成させている。これらの内包作業は、既存のマイクロピンセットシステムによる高精度制御により実施する。本研究では、原著論文2報、国際学会発表2報、国内学会発表2回の成果を創出している。本研究では、直径が数10100ミクロンサイズのカプセル型燃料電池を作製し、アルコールやグルコースなど液体燃料環境下において自己発電させることで、工業用微粒子の新規凝集構造や生体内赤血球などの凝集性に効果的な作用を発現させる。電池セル構造を作製し、それを200チップに集積化させて電池としての出力機能性を発現させた。特に、貫通孔構造が高精度に機能できた。微粒子凝集の電池電位制御は、原子間力顕微の帯電電位像の測定により決定した。正負の表面電位が交互に配置することにより、クーロン相互作用を強く働かせた凝集構造を実現した。原著論文2報、国際学会発表2報、国内学会発表2回の成果を創出した。マイクロチューブとの結合を促進し、カプセル内へ燃料電池アレイ素子をマウントし、実効的な動作を確認する。マイクロマニピュレータを用いて、カプセル内のアセンブリを行っていく。電子デバイス・電子機器マイクロカプセルの加工に際し、現有の装置で実施可能であったため、次年度へ繰り越して、さらなる微細化への検討を進めるため。高解像のレジスト材料の導入を加速して、マイクロカプセルサイズをさらに縮小させる。
KAKENHI-PROJECT-16K14250
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精神分裂病の病因遺伝子領域の検索:分裂患者における22q11領域の欠失の解明
ドーパミンD2受容体遺伝子は精神分裂病と関係していることは示唆されてきたが、プロモーター領域の解明はまだなさていなかった。ドーパミンD2受容体遺伝子のプロモーター領域の解析を行い、-141CIns/Del多型を検出した。さらに、細胞培養系でこの多型はプロモーター活性と関係していることを明らかにし、ついで、死後脳サンプルでこの多型と線条体D2受容体量と相関していることを明らかにした。さらに、症例・対照研究でこの多型は精神分裂病と関連していることを明らかにし、印刷中の論文で発表した。第22染色体長腕q11領域の部分欠失症例では精神分裂病を合併しやすいことが知られている。本研究では、22q11領域の欠失の精神分裂患者の発見、および、病因遺伝子領域を特定することを目的とした。はじめにスクリーニングとして精神分裂病患者400人で第22染色体のq11の6cM内に存在するD22S941、D22S944、D22S264、D22S311、D22S941のマイクロサテライトマーカー解析を行った。その結果、D22S264座位において精神分裂病にホモまたはヘミ接合体の頻度が有意に高かった。これはD22S264を含む領域にヘミ接合体の存在する可能性を示している。その上、D22S264では症例・対照において遺伝子頻度に有意な差があり、この領域に精神分裂病の病因遺伝子が存在していることが示唆された。現在、ヘミ接合体検出のため遺伝子量検定サザンブロット解析を実施するとともに、付近の発現遺伝子であるCOMTの解析をあわせて行っている。その後、脳で発現しているこの領域の遺伝子をクローニングし、病因遺伝子の解明を行う予定である。ドーパミンD2受容体遺伝子は精神分裂病と関係していることは示唆されてきたが、プロモーター領域の解明はまだなさていなかった。ドーパミンD2受容体遺伝子のプロモーター領域の解析を行い、-141CIns/Del多型を検出した。さらに、細胞培養系でこの多型はプロモーター活性と関係していることを明らかにし、ついで、死後脳サンプルでこの多型と線条体D2受容体量と相関していることを明らかにした。さらに、症例・対照研究でこの多型は精神分裂病と関連していることを明らかにし、印刷中の論文で発表した。第22染色体長腕q11領域の部分欠失症例では精神分裂病を合併しやすいことが知られている。本研究では、22q11領域の欠失の精神分裂患者の発見、および、病因遺伝子領域を特定することを目的とした。はじめにスクリーニングとして精神分裂病患者400人で第22染色体のq11の6cM内に存在するD22S941、D22S944、D22S264、D22S311、D22S941のマイクロサテライトマーカー解析を行った。その結果、D22S264座位において精神分裂病にホモまたはヘミ接合体の頻度が有意に高かった。これはD22S264を含む領域にヘミ接合体の存在する可能性を示している。その上、D22S264では症例・対照において遺伝子頻度に有意な差があり、この領域に精神分裂病の病因遺伝子が存在していることが示唆された。現在、ヘミ接合体検出のため遺伝子量検定サザンブロット解析を実施するとともに、付近の発現遺伝子であるCOMTの解析をあわせて行っている。その後、脳で発現しているこの領域の遺伝子をクローニングし、病因遺伝子の解明を行う予定である。
KAKENHI-PROJECT-08672594
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研究施設におけるリスク管理システム・リスクコミュニケーション手法の比較法的研究
織は、昨年度の文献調査に引き続き、米国大学研究機関のEHS(環境健康安全)プログラムの2つの事例として、ハーバード大学とMIT(マサチューセッツ工科大学)のプログラム概要と運営について詳細・追跡調査を行なった上で両大学のEHSプログラムのアプローチの違いの分析を行った。MITの分権・分散型タイプに対して、ハーバード大学は中央集中・集権型タイプという大学の組織上の違いがあるものの、両大学ともに、厳しくなる環境政策執行に対応するために、一般安全管理・生物学的安全管理・化学物質管理・放射性物質管理・廃棄物管理のそれぞれの問題に対して、組織、訓練・教育体制、学内外のコミュニケーション手法の確立に時間とコストをかけている。プログラムを組織した歴史的・法的背景(EPAやOSHAとの関係)、意思決定方法と運営実態、広報や伝達を含むリスクコミュニケーション手法、(ウェブサイトなどを含む)トレーニングプログラム、地域NGOとの協力体制などは、我が国の大学研究機関がEHSプログラムを導入する際にも参考となるものである。早瀬は、米国の労働安全衛生法の概要及びその施行を担当する安全衛生庁(OSHA)の活動に着目した。特に、今後業態やリスクのシナリオ及び形態が多様化する中で従来の一律の規制及び監督による法制度の施行はますます困難となることが予想される。従って、事業者の自主的な労働安全衛生管理を推進するという視点からの事業者「支援」のための取り組みに重点を置き、その施策の要点を考察した。吉川は、リスク・コミュニケーションにおけるコミュニケーション技術の検討をさらに進めた。また、化学物質のリスク・コミュニケーションツールとして開発していたゲームの普及をワークショップで行うなど、成果の社会への還元に努めた。こうした手法の開発は、大学における安全教育の普及においても、寄与するものであると考えられるから、今後このようなツールのいっそうの開発および普及活動に努める予定である。織は、米国大学研究機関のEHS(環境健康安全)プログラムの2つの事例として、ハーバード大学とMIT(マサチューセッツ工科大学)のプログラム概要と運営について文献調査を行なった。両大学は、分権・分散型タイプ、中央集中・集権型タイプという大学の組織上の違いはあるものの、ともに、一般安全管理・生物学的安全管理・化学物質管理・放射性物質管理・廃棄物管理の各点について、充実した内容を見せている。早瀬は、連邦と州政府との関係について重点を置きつつ、米国労働安全衛生法(OSHAct)の概要と事業者の自主的プログラムを概観した。OSHAの地域事務局は、自主的保全プログラム(Voluntary Protection Programs)(VPP)を通じて、効果的な安全衛生プログラムを推進している。自主的保護プログラムはOSHA基準によって要求されている最低基準以上の労働者保護を拡大しようというものである。関連する戦略的パートナーシップはOSHAの一番新しいプログラムであり、重大な職場の危険を解消し、労働者の安全衛生を高水準に引き上げる努力を奨励、支援、評価するものである。吉川は、大学における化学物質管理について、そのリスク・コミュニケーション戦略策定の前提となる、文献調査を行った。本年度は特に、「リスク」の概念が、化学分野で定義されているほど狭い意味で使われているわけではなく、ハザードや曝露が知られていないものであっても広義にはリスクとして定義されることがあるという問題について検討を行った。織は、昨年度の文献調査に引き続き、米国大学研究機関のEHS(環境健康安全)プログラムの2つの事例として、ハーバード大学とMIT(マサチューセッツ工科大学)のプログラム概要と運営について詳細・追跡調査を行なった上で両大学のEHSプログラムのアプローチの違いの分析を行った。MITの分権・分散型タイプに対して、ハーバード大学は中央集中・集権型タイプという大学の組織上の違いがあるものの、両大学ともに、厳しくなる環境政策執行に対応するために、一般安全管理・生物学的安全管理・化学物質管理・放射性物質管理・廃棄物管理のそれぞれの問題に対して、組織、訓練・教育体制、学内外のコミュニケーション手法の確立に時間とコストをかけている。プログラムを組織した歴史的・法的背景(EPAやOSHAとの関係)、意思決定方法と運営実態、広報や伝達を含むリスクコミュニケーション手法、(ウェブサイトなどを含む)トレーニングプログラム、地域NGOとの協力体制などは、我が国の大学研究機関がEHSプログラムを導入する際にも参考となるものである。早瀬は、米国の労働安全衛生法の概要及びその施行を担当する安全衛生庁(OSHA)の活動に着目した。特に、今後業態やリスクのシナリオ及び形態が多様化する中で従来の一律の規制及び監督による法制度の施行はますます困難となることが予想される。従って、事業者の自主的な労働安全衛生管理を推進するという視点からの事業者「支援」のための取り組みに重点を置き、その施策の要点を考察した。吉川は、リスク・コミュニケーションにおけるコミュニケーション技術の検討をさらに進めた。また、化学物質のリスク・コミュニケーションツールとして開発していたゲームの普及をワークショップで行うなど、成果の社会への還元に努めた。こうした手法の開発は、大学における安全教育の普及においても、寄与するものであると考えられるから、今後このようなツールのいっそうの開発および普及活動に努める予定である。
KAKENHI-PROJECT-16034101
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HTLV-Iキャリア,及びATL患者の皮膚病変におけるアポトーシスの研究
我々は現在までHTLV-I tax proviral DNAが腫瘍細胞のみならず汗腺上皮、血管上皮細胞にも認められることを証明してきた。そしてHTLV-Iの感染を受けた汗腺上皮は光顕的にいわゆる異常角化即ちアポトーシスを起こしていることが考えられ、これを電顕的、免疫組織化学的に証明することができた。そこで症例をさらに重ねて検討した。その結果皮膚病変を持つATLL31例、HTLV-Iキャリア8例、健常人2例について、アポトーシスはATLL 14/31、HTLV-Iキャリア1/8、健常人0/2に認められ、アポトーシス部にはいずれもCD8陽性T細胞の浸潤がありTIA-1分子の発現が認められることが解った。これらの結果から汗腺上皮のアポトーシスはHTLV-Iを標的にしてCTLにより惹起され、その結果汗腺上皮のアポトーシスが起こると判明した。我々は現在までHTLV-I tax proviral DNAが腫瘍細胞のみならず汗腺上皮、血管上皮細胞にも認められることを証明してきた。そしてHTLV-Iの感染を受けた汗腺上皮は光顕的にいわゆる異常角化即ちアポトーシスを起こしていることが考えられ、これを電顕的、免疫組織化学的に証明することができた。そこで症例をさらに重ねて検討した。その結果皮膚病変を持つATLL31例、HTLV-Iキャリア8例、健常人2例について、アポトーシスはATLL 14/31、HTLV-Iキャリア1/8、健常人0/2に認められ、アポトーシス部にはいずれもCD8陽性T細胞の浸潤がありTIA-1分子の発現が認められることが解った。これらの結果から汗腺上皮のアポトーシスはHTLV-Iを標的にしてCTLにより惹起され、その結果汗腺上皮のアポトーシスが起こると判明した。われわれは現在までHTLV-I taxproviral DNAが腫瘍細胞のみならず汗腺上皮、血管内皮細胞にも認められることを証明した。そしてHTLV-Iの感染を受けた汗腺上皮は光顕的にいわゆる異常角化すなわちアポトーシスを起こしていることが考えられ、これを電顕的、免疫組織学的に証明することができた。以上のことについてさらにATLL8例、HTLV-Iキャリア4例、健常人3例と症例を増やして検討した結果、光顕的アポトーシスはATLL2/8、HTLV-Iキャリア1/4、健常人0/3に認められ、そこにはいずれもCD8陽性細胞の浸潤がありTIA-1分子の発現が認められる事が解った。一方、HTLV-1感染者には発汗異常をみることも観察され、このことについてはさらに多数例で検討中である。我々は現在までHTLV-I tax provaral DNAが腫瘍細胞のみならず汗腺上皮、血管上皮細胞にも認められることを証明してきた。そしてHTLV-Iの感染を受けた汗腺上皮は光顕的にいわゆる異常角化即ちアポトーシスを起こしていることが考えられ、これを電顕的、免疫組織化学的に証明することができた。以上のことについて症例をさらに集めて検討した。皮膚病変を持つATLL22例、HTLV-Iキャリア8例、ATLL以外の皮膚リンパ腫7例、健常人3例について収集、検討した結果、アポトーシスはATLL 4/22、HTLV-Iキャリア1/8,ATLL以外の皮膚リンパ腫0/7、健常人0/3に認められ,アポトーシスの部にはいずれもCD8陽性T細胞の浸潤がありTIA-1分子の発現が認められることが解った。これらの結果から汗腺上皮のアポトーシスはHTLV-1を標的にして惹起され、その結果汗腺上皮のアポトーシスが起こることが判明した。今後このアポトーシスの臨床的意義について検討する予定である。
KAKENHI-PROJECT-12670830
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音響光学効果を用いた波長選択集積スイッチ素子の基礎的研究
1.プレーナ型コリニア音響光学スイッチの検討LiNbO_3結晶基板上に2本のチャネル光導波路を横方向に並べたプレーナ構成で形成する、集積化に適したコリニア音響光学素子の基礎検討を行った。一方の導波路内での音響光学相互作用を大きくするために、2つの導波路の材料構成を異なるものとし、さらにストリップ型弾性表面波導波路を一方の光導波路上に形成する。光導波路として、一方に安息香酸を用いたプロトン交換導波路、他方はリチウム安息香酸を用いたプロトン交換導波路あるいはNb_2O_5埋め込み導波路を用いる。弾性表面波導波路はTa_2O_5ストリップにより構成する。光波長1.5mumにおいて素子設計を行い、実験的に導波路の試作を行った。2.2×2マトリックススイッチの実験的検討LiNbO_3結晶基板上に2本のチャネル光導波路を垂直方向に積層にした構成でマトリックススイッチの試作を行った。光導波路としてプロトン交換導波路とNb_2O_5リブ導波路、弾性表面波導波路としてプロトン交換導波路を用いた。光波長0.633-0.78mumにおけるスイッチングを確認した。230MHz、0.9Wの高周波により消光比10.4dBのスイッチング特性が得られた。このときの弾性表面波パワは約18mWである。またフィルタリングの半値全幅0.64MHzが得られた。テ-パ型弾性表面波導波路の解析フィルタリング特性におけるサイドローブによる波長間クロストーク低減、および弾性表面波の高効率結合を実現するため、テ-パ型導波路の有限要素法による理論的検討を行った。1.プレーナ型コリニア音響光学スイッチの検討LiNbO_3結晶基板上に2本のチャネル光導波路を横方向に並べたプレーナ構成で形成する、集積化に適したコリニア音響光学素子の基礎検討を行った。一方の導波路内での音響光学相互作用を大きくするために、2つの導波路の材料構成を異なるものとし、さらにストリップ型弾性表面波導波路を一方の光導波路上に形成する。光導波路として、一方に安息香酸を用いたプロトン交換導波路、他方はリチウム安息香酸を用いたプロトン交換導波路あるいはNb_2O_5埋め込み導波路を用いる。弾性表面波導波路はTa_2O_5ストリップにより構成する。光波長1.5mumにおいて素子設計を行い、実験的に導波路の試作を行った。2.2×2マトリックススイッチの実験的検討LiNbO_3結晶基板上に2本のチャネル光導波路を垂直方向に積層にした構成でマトリックススイッチの試作を行った。光導波路としてプロトン交換導波路とNb_2O_5リブ導波路、弾性表面波導波路としてプロトン交換導波路を用いた。光波長0.633-0.78mumにおけるスイッチングを確認した。230MHz、0.9Wの高周波により消光比10.4dBのスイッチング特性が得られた。このときの弾性表面波パワは約18mWである。またフィルタリングの半値全幅0.64MHzが得られた。テ-パ型弾性表面波導波路の解析フィルタリング特性におけるサイドローブによる波長間クロストーク低減、および弾性表面波の高効率結合を実現するため、テ-パ型導波路の有限要素法による理論的検討を行った。
KAKENHI-PROJECT-05750340
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05750340
キリスト教海外ミッションにおける女性の役割と近代的家族モデルの普及
本年度はミッションが海外で展開した事業のなかで女性宣教師の果たした役割が際立つ女子教育ならびに女性や乳幼児に対する医療活動について検証し、非ヨーロッパ世界およびイギリス本国に及ぼした影響について考察した。アメリカやヨーロッパ大陸などと比較して19世紀のイギリスでは女子に対する中等・高等教育過程の整備や専門職域への開放が遅れていた。このような状況は19世紀後半になると徐々に変化していくが、従来、このプロセスはもっぱらイギリス国内におけるフェミニズム運動の成果との関連で論じられてきた。しかし、女子宣教師の養成過程や、海外のミッション・スクールの教育内容の精査から、それらが本国の女子教育に与えたインパクトはきわめて大きいことがあきらかになった。つまり、19世紀後半に急増する女子宣教師たちが任地への派遣前に本国で受けた訓練は、教師としての専門職教育とほぼ重なるのである。また、海外で伝道教会が運営していた女子を対象としたミッション・スクールでも卒業生は教師として活動する例が多かった。海外のミッション現場からの強い要請が本国の女子教育の動向におおきな影響を与えたもうひとつの事例が女性医師の育成である。アジアやイスラム圏では女性たちが男性医師に診察されるのを嫌うことから、学校と医療をミッションの社会的な活動の柱としていた各伝道協会にとり、女性医師の養成は急務となっていた。これを背景にイギリス本国とインドなど帝国においてほぼ同時に女性医師養成が開始されたのである。非ヨーロッパ世界における教師や女性医師などに対する具体的かつ緊急度の高いニーズがイギリス本国の女子高等教育拡充のきっかけとなったこと、イギリスと帝国において女子に対する専門職教育開始の時期に大きな時期的な違いが見られないことなど非常に興味深い事実が浮かび上がった。また、ミッション現場が専門職女性を求めたのは女性たちがレディであるからこそ女性や子どもたちにたいする適切なケアを行えるとの判断からであり、男性と女性の職域が実際に重複することはもとより想定されていなかったことも重要である。女子宣教師はレディであると同時に専門性の高い知識を備えているという、本来矛盾する二つの要素を兼ねることが求められたが、これこそ、かのじょたちに課されたもっとも大きな任務がヨーロッパ近代に出現した特定の階級に固有のきわめて特殊な一夫一婦制に基づく「近代的家族モデル」を普遍的なものとして世界に普及させることであったこと、彼女たち自身がそのモデルとしていき方を具体的に提示する存在であったことを端的に示していることなどが明らかにできた。今年度は、イギリス系のプロテスタントミッションが海外において活動するさい、女性たちがどのような役割を果たしていたのか検証するため、主として伝道協会の年次報告書および宣教師名簿を使い、伝道協会が海外に派遣したスタッフたちにどのような役割を期待していたか、また具体的に女性たちにはどのようにミッション活動にかかわったのかを検証した。そこからは、19世紀前半、ミッション現場における女性たちは原則として宣教師の「妻」として家庭責任を負いつつ、夫妻で積極的に非ヨーロッパ世界における活動を展開していたこと、さらに19世紀後半になると女性たちはみずから経済的に独立した「宣教師」へと19世紀を通じてみずからの立場を変化させていくことが明らかになった。さらにかのじょたちはその間、一貫して非ヨーロッパ世界に一夫一婦制に基づくヨーロッパ型の家族モデルとジェンダー役割を浸透させることを期待されていたことが明らかになった。(詳細は、「ジェンダーの「帝国」」川北稔、藤川隆男編、『空間のイギリス史』山川出版社、2005年所収参照。)今年度は、前年度に引き続いてイギリス系のプロテスタントミッションが海外において活動するさい、女性たちがどのような役割を果たしていたのか検証するため、主として伝道協会の年次報告書および宣教師名簿を使い、伝道協会が海外に派遣したスタッフたちにどのような役割を期待していたか、また具体的に女性たちにはどのようにミッション活動にかかわったのかを検証した。年度末の海外調査においては具体的な宣教師像を把握するため、未整理ながら多数の宣教師史料を所蔵する大英図書館やロンドン大学などの所蔵史料を調査した。19世紀前半、ミッション現場における女性たちは原則として宣教師の「妻」として家庭責任を負いつつ、夫妻で積極的に非ヨーロッパ世界における活動を展開していたこと、さらに19世紀後半になると女性たちはみずから経済的に独立した「宣教師」へと19世紀を通じてみずからの立場を変化させていくことが明らかになった。さらにかのじょたちはその間、一貫して非ヨーロッパ世界に一夫一婦制に基づくヨーロッパ型の家族モデルとジェンダー役割を浸透させることを期待されていたことが明らかになった。さらに伝道協会という組織の変遷を検証したところ、19世紀を通じて「ジェンダー」だけでなく「人種」や「階級」などが差異として厳格に規定されていくプロセスも浮かび上がり、福音主義やミッション活動などが近代的な価値観とその限界を非常にクリアに表出する媒体であることが明らかになりつつある。来年度に向けて、女性の役割を明確に家庭や子どもの養育といった分野に固定する思想が伝道協会設立の背景となった福音主義思想とどのような関連を持つのかについて検証中である。本年度はミッションが海外で展開した事業のなかで女性宣教師の果たした役割が際立つ女子教育ならびに女性や乳幼児に対する医療活動について検証し、非ヨーロッパ世界およびイギリス本国に及ぼした影響について考察した。アメリカやヨーロッパ大陸などと比較して19世紀のイギリスでは女子に対する中等・高等教育過程の整備や専門職域への開放が遅れていた。このような状況は19世紀後半になると徐々に変化していくが、従来、このプロセスはもっぱらイギリス国内におけるフェミニズム運動の成果との関連で論じられてきた。
KAKENHI-PROJECT-16720177
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16720177
キリスト教海外ミッションにおける女性の役割と近代的家族モデルの普及
しかし、女子宣教師の養成過程や、海外のミッション・スクールの教育内容の精査から、それらが本国の女子教育に与えたインパクトはきわめて大きいことがあきらかになった。つまり、19世紀後半に急増する女子宣教師たちが任地への派遣前に本国で受けた訓練は、教師としての専門職教育とほぼ重なるのである。また、海外で伝道教会が運営していた女子を対象としたミッション・スクールでも卒業生は教師として活動する例が多かった。海外のミッション現場からの強い要請が本国の女子教育の動向におおきな影響を与えたもうひとつの事例が女性医師の育成である。アジアやイスラム圏では女性たちが男性医師に診察されるのを嫌うことから、学校と医療をミッションの社会的な活動の柱としていた各伝道協会にとり、女性医師の養成は急務となっていた。これを背景にイギリス本国とインドなど帝国においてほぼ同時に女性医師養成が開始されたのである。非ヨーロッパ世界における教師や女性医師などに対する具体的かつ緊急度の高いニーズがイギリス本国の女子高等教育拡充のきっかけとなったこと、イギリスと帝国において女子に対する専門職教育開始の時期に大きな時期的な違いが見られないことなど非常に興味深い事実が浮かび上がった。また、ミッション現場が専門職女性を求めたのは女性たちがレディであるからこそ女性や子どもたちにたいする適切なケアを行えるとの判断からであり、男性と女性の職域が実際に重複することはもとより想定されていなかったことも重要である。女子宣教師はレディであると同時に専門性の高い知識を備えているという、本来矛盾する二つの要素を兼ねることが求められたが、これこそ、かのじょたちに課されたもっとも大きな任務がヨーロッパ近代に出現した特定の階級に固有のきわめて特殊な一夫一婦制に基づく「近代的家族モデル」を普遍的なものとして世界に普及させることであったこと、彼女たち自身がそのモデルとしていき方を具体的に提示する存在であったことを端的に示していることなどが明らかにできた。
KAKENHI-PROJECT-16720177
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16720177
危険認識における知覚機能の役割と仮想現実感システムへの応用
津波時の避難行動に適用した谷口・今村(1998)のモデルを改良し,現地での行動調査結果のデータを基に,経路選択の際に人間の判断を導入した避難行動シミュレーションの開発を行った.まず,今回の現地調査は昼間10人・夜間7人の被験者についておこなった.結果については,調査表及びVTRの検証から各項目についての経路選択の要素とその頻度比率を求めた.次に,避難経路選択についての現地調査については,津波常襲地域の海水浴場において,観光客などの地理認知度の低い人々が津波に対する避難勧告に対して,どのような避難行動をとるのか調査を行った.ここでは,合計10名の披験者に,避難開始の合図とともに,各自に行動をとってもらった.まず,5名が指定された避難場所の高台に到達することができた.これは先頭の一人が事前に標識があることを知っていたため,直ちにそちらの方向へ移動し,その後4人がその後を追随した結果である.これにより,避難行動モデルは,単独行動ではなく群集行動の特性としての要素も取り入れなければならない.最終的には,従来の経路選択判断モデルである総合的判断基準を改良し,個人的な意志や認識を外生的に入力できるモデルへと改良を行った.この改良した避難シミュレーションを,対象地の仙台市若林区貞山堀より海側の全住民に適用した.まず,道路・交差点,避難場所,橋脚などを現するネットワークデータを作成した.ヒアリングが得られた世帯はその結果をそのまま入力することとし,それ以外の世帯はヒアリング調査結果の割合,および区役所からいただいた町名別世帯構成人員別統計のデータより仮定した.目指す避難場所を各世帯によって区別することにより,対象地域から離れた内陸の方への避難者も表現することが出来た.また,道路に住民が集中することにより,交通密度が大幅に増加し,予定していた経路とは異なる周辺の道路へ迂回する世帯が多く観察された.津波時の避難行動に適用した谷口・今村(1998)のモデルを改良し,現地での行動調査結果のデータを基に,経路選択の際に人間の判断を導入した避難行動シミュレーションの開発を行った.まず,今回の現地調査は昼間10人・夜間7人の被験者についておこなった.結果については,調査表及びVTRの検証から各項目についての経路選択の要素とその頻度比率を求めた.次に,避難経路選択についての現地調査については,津波常襲地域の海水浴場において,観光客などの地理認知度の低い人々が津波に対する避難勧告に対して,どのような避難行動をとるのか調査を行った.ここでは,合計10名の披験者に,避難開始の合図とともに,各自に行動をとってもらった.まず,5名が指定された避難場所の高台に到達することができた.これは先頭の一人が事前に標識があることを知っていたため,直ちにそちらの方向へ移動し,その後4人がその後を追随した結果である.これにより,避難行動モデルは,単独行動ではなく群集行動の特性としての要素も取り入れなければならない.最終的には,従来の経路選択判断モデルである総合的判断基準を改良し,個人的な意志や認識を外生的に入力できるモデルへと改良を行った.この改良した避難シミュレーションを,対象地の仙台市若林区貞山堀より海側の全住民に適用した.まず,道路・交差点,避難場所,橋脚などを現するネットワークデータを作成した.ヒアリングが得られた世帯はその結果をそのまま入力することとし,それ以外の世帯はヒアリング調査結果の割合,および区役所からいただいた町名別世帯構成人員別統計のデータより仮定した.目指す避難場所を各世帯によって区別することにより,対象地域から離れた内陸の方への避難者も表現することが出来た.また,道路に住民が集中することにより,交通密度が大幅に増加し,予定していた経路とは異なる周辺の道路へ迂回する世帯が多く観察された.津波時の避難行動に適用した谷口・今村(1998)のモデルを改良し、現地での行動調査結果のデータを基に、経路選択の際に人間の判断を導入した避難行動シミュレーションの開発を行った。このシミュレーション法は、今後の避難計画の策定や街づくりにおける各種公共事業の実施に際し、住民避難行動の観点から検討評価を行うための手法のひとつとして、活用できると期待される。今回の現地調査は、昼間10人・夜間7人の被験者についておこなった。結果については、調査表及びVTRの検証から各項目についての経路選択の要素とその頻度比率を求めた。昼間の調査で、認知度の高い被験者の行動は、標識や地形条件にあまり左右されること無く目的地に到着していたが、認知度の低い被験者は標識を頼りに行動し、標識が無い状況での経路選択はランダムに経路を選択しるために路に迷うことも見られた。全体的には標識及び認知度の選択比率が高い結果となった。一方、夜間の調査では、情報を得るため交通量が多くかつ明るい主要道路への方向を選択したところ、すでに知っている道だったというような状況(位置情報を入手)を反映し、認知度に続き主要道路の選択比率が高い結果となった。本研究により、時間帯(昼間であるか夜間か)や地理認知度の程度により様々な行動パターンが見られ、これをシミュレーションに取り入れる事が出来た。調査結果やシミュレーション結果を見ると、認知度の低い場合の経路選択行動は、標識に依存する傾向が強いことがわかる。このことから、避難場所についての啓蒙活動はもとより、避難場所へ誘導できるような標識の整備が重要であると思われる。本研究では、これまでに開発された津波時における避難行動モデルをより改良させることを目的とし、いくつかの地域において避難行動に関する現地調査を行い、その結果を避難行動モデルの改善に利用する。
KAKENHI-PROJECT-10680444
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10680444
危険認識における知覚機能の役割と仮想現実感システムへの応用
避難経路選択についての現地調査については、津波常襲地域の海水浴場(宮城県志津川町大森崎)において、観光客などの地理認知度の低い人々が津波に対する避難勧告に対して、どのような避難行動をとるのか調査を行った。ここでは、避難路及び避難場所表示が設置されているが、分かり辛い場所にある。海水浴場において、合計10名の被験者に、避難開始の合図とともに、各自に行動をとってもらった。まず、5名が指定された避難場所の高台に到達することができた。これは先頭の一人が事前に標識があることを知っていたため、直ちにそちらの方向へ移動し、その後4人がその後を追随した結果である。避難完了時間は約1分30秒である。このように多数いる場合には、先頭を切って行動する人に追随する効果が必ずあることを示している。これは、先頭者周りの近い場所にいる人であった。さらに、海水浴場などでは、避難時に不特定多数による混雑などが予想される。避難行動モデルは、単独行動ではなく群集行動の特性としての要素も取り入れなければならない。そこで、3日間で200万人以上が全国から集まる仙台七夕祭りを対象に、その群衆行動の様子を最も混雑する仙台駅内および周辺でビデオ撮影し、その行動パターン、停滞等の様子を観察して、そのモデル化のための問題点を抽出した。調査で以下の点4つの項目が挙げられた。(1)エスカレーター前での滞留、(2)滞留時の迂回行動、(3)グループ歩行、(4)情報案内板。最後に、津波ではないが、洪水時での危険認識と避難行動に関する調査も行った。津波のような大災害時において人的被害を最小限にくい止めるためには,迅速な住民の避難行動が重要であり,その行動特性に応じた地域計画・避難システムが必要である.そこで本研究では沿岸地域の住民に対して,避難訓練調査およびヒアリング調査を行うことにより津波避難に対する意向を把握し,その結果を導入した避難シミュレーションモデルを開発することを目的とした.従来の経路選択判断モデルである総合的判断基準を改良し,個人的な意志や認識を外生的に入力できるモデルへと改良を行った.この改良した避難シミュレーションを,対象地域の仙台市若林区貞山堀より海側の全住民に適用した.まず,道路・交差点,避難場所,橋脚などを表現するネットワークデータを作成した.これは,ノードとリンクで構成され,既存の都市計画図より求めた.ヒアリングが得られた世帯はその結果をそのまま入力することとし,それ以外の世帯はヒアリング調査結果の割合,および区役所からいただいた町名別世帯構成人員別統計のデータより仮定した.目指す避難場所を各世帯によって区別することにより,対象地域から離れた内陸の方への避難者も表現することが出来た.また,道路に住民が集中することにより,交通密度が大幅に増加し,予定していた経路とは異なる周辺の道路へ迂回する世帯が多く観察された.対象地域における交通渋滞の危険性を示すことができ,交通密度を減らす等の何らかの対策が必要であることが示された.
KAKENHI-PROJECT-10680444
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10680444
重症アレルギー性結膜疾患の角膜障害における肥満細胞キマーゼの関与とその制御
春季カタル患者を年余にわたり治療して行く上で最も大切なのは、その角膜合併症をいかに軽減するかである。キマーゼは肥満細胞特異的セリンプロテアーゼで、春季カタル患者涙液中に重症度と相関して高い活性が認められた。また、in vitroでキマーゼは培養角膜上皮細胞間のタイトジャンクション蛋白であるオクルーディン又はフイブロネクチンを分解することで角膜上皮細胞のバリアー機能の低下、移動の阻害を惹起した。また、キマーゼは角膜上皮細胞の産生する細胞外基質よりTGF-β_1を遊離し、活性化した。そのTGF-β_1は実質細胞を角膜筋原線維芽細胞へ分化させた。角膜筋原線維芽細胞は肥満細胞の増殖・分化・移動に重要な分子であるstem cell factor(SCF)を大量に産生した。TGF-β_1は結角膜上皮細胞よりの生理的キマーゼ阻害物質であるSLPI(Secretory Leukocyte Protease Inhibitor)の産生を抑制した。すなわち、キマーゼが角膜筋原線維芽細胞を介し、キマーゼ産生肥満細胞を増殖させるポジティブフィードバック機構が存在する。以上のことより、春季カタルの角膜合併症の病態にキマーゼが強く関与していることが明確になった。将来、キマーゼ阻害剤点眼が春季カタル治療に応用されていくと思われる。春季カタル患者を年余にわたり治療して行く上で最も大切なのは、その角膜合併症をいかに軽減するかである。キマーゼは肥満細胞特異的セリンプロテアーゼで、春季カタル患者涙液中に重症度と相関して高い活性が認められた。また、in vitroでキマーゼは培養角膜上皮細胞間のタイトジャンクション蛋白であるオクルーディン又はフイブロネクチンを分解することで角膜上皮細胞のバリアー機能の低下、移動の阻害を惹起した。また、キマーゼは角膜上皮細胞の産生する細胞外基質よりTGF-β_1を遊離し、活性化した。そのTGF-β_1は実質細胞を角膜筋原線維芽細胞へ分化させた。角膜筋原線維芽細胞は肥満細胞の増殖・分化・移動に重要な分子であるstem cell factor(SCF)を大量に産生した。TGF-β_1は結角膜上皮細胞よりの生理的キマーゼ阻害物質であるSLPI(Secretory Leukocyte Protease Inhibitor)の産生を抑制した。すなわち、キマーゼが角膜筋原線維芽細胞を介し、キマーゼ産生肥満細胞を増殖させるポジティブフィードバック機構が存在する。以上のことより、春季カタルの角膜合併症の病態にキマーゼが強く関与していることが明確になった。将来、キマーゼ阻害剤点眼が春季カタル治療に応用されていくと思われる。キマーゼは肥満細胞特異的なセリンプロテアーゼであり、多様な作用を有する。私たちはこのキマーゼが重症のアレルギー性結膜疾患である春季カタル患者涙液中に高活性で検出出来ること、また、活性値が重症度と相関することを報告している。(Tear chymase in vernal keratoconjunctivitis. Curr Eye Res 28: 417-421, 2004.)ゆえに春季カタルの角結膜障害にキマーゼが関与している可能性があり、以下のことをin vitroにて明らかにした。現在私たちはキマーゼの角膜実質細胞に対する作用を検討している。・キマーゼによる角膜上皮細胞よりのTGF-βの遊離・上皮細胞TGF-βによる実質細胞の筋原繊維芽細胞への形質転換・形質転換に伴う角膜混濁メカニズム重症アレルギー性結膜疾患である春季カタルにおける肥満細胞特異的プロテアーゼ・キマーゼ(chymase)の役割について検討した。春季カタル患者涙液中におけるキマーゼの活性値を測定した。涙液中のキマーゼ活性は春季カタルの重症度と相関した。次にヒト培養角膜上皮細胞に涙液中より検出出来る同活性のキマーゼを添加すると培養上清中のTGF-β濃度が上昇した。また、培養プレートより上皮細胞をスクレイブにて剥離し、残存細胞外基質にキマーゼを添加しても培養液上清中のTGF-α度が上昇した。すなわち、TGF-βは上皮細胞より産生され、細胞外基質に結合している。キマーゼはそのプロテアーゼ活性により細胞外基質を分解し、TGF-βを遊離したと思われる(上皮細胞をキマーゼで刺激してもTGF-β遺伝子レベルでの変化はなかった)。また、上記の培養上清をヒト培養角膜実質細胞に添加すると、細胞内のαSMA(α-smooth muscule actin.)の発現が上昇し、逆にCD34・keratocanの発現が減弱した。すなわちTGF-βにより実質細胞が筋原線維芽細胞へと形質転換したと考えられる。筋原線維芽細胞は種々のTH2サイトカイン刺激にて実質細胞に比較して肥満細胞増殖因子であるstemcell factorを多く産生する。以上よりキマーゼはTGF-βを介し、アレルギー炎症にpositive feed backをかけている。将来、キマーゼ特異的阻害剤の点眼が開発され春季カタルの治療に応用される可能性がある。
KAKENHI-PROJECT-18591934
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18591934
軟部肉腫治療の国際比較と再発を防ぐ治療戦略
軟部肉腫の術後再発は生命予後を悪化させるため再発の防止は予後を向上させるのに必須である。本研究により軟部肉腫において再発を予測する主要な影響因子が明らかとなり、軟部肉腫の適切なフォローアップ期間が提唱された。すなわち軟部肉腫の再発要因として切除縁断端陽性、高悪性度の肉腫があげられ、これらの症例は高い頻度で放射線照射を受けていた。軟部肉腫再発症例の95%は術後9年以内に見られたため、10年のフォローアップが必要であると考えられた。日本整形外科学会の全国骨・軟部腫瘍登録によると2006年から2009年の間に約4000件の悪性軟部腫瘍症例が登録されており、軟部肉腫は我が国の高齢化、福島の原発事故などにより今後増加が予想される。軟部肉腫の治療は手術による切除が第一選択であり状況に応じて化学療法、放射線照射が併用される。軟部肉腫の再発は生命予後を悪化させるため軟部肉腫患者の生命予後改善には再発率の低い手術治療、補助療法が必須である。放射線照射を術前、術後に多用する海外の治療法と違い、歴史的に我が国では手術のみで局所制御を試みることが多く手術手技、補助療法の適応が大きく異なる。本研究の目的は軟部肉腫の再発に影響すると考えられる要因(術前の状態、手術や腫瘍に関する要因、補助療法など)を多変量解析により分析し実際に再発に影響する因子を同定し軟部肉腫の再発率を低下させる治療法を開発することである。再発の原因と考えられる要因、再発を予防すると予測される治療、手術方法について検討する。その後東京医科歯科大学と癌研有明病院の軟部肉腫患者を対象にそれらの要因について調査を行う。それぞれの要因について研究協力員により調査票を作成し、回収された調査票をデータ化し集計結果を経時変化の影響を考慮した統計的手法で解析して学術雑誌や学会等へ報告する。現段階で我が国の軟部肉腫治療の特徴と妥当性、再発を予測するための因子について検討を行った。今後再発を防ぐための手術療法、補助療法について調査結果のまとめをおこなう予定である。軟部肉腫の術後再発は生命予後を悪化させるため再発の防止は予後を向上させるのに必須である。本研究により軟部肉腫において再発を予測する主要な影響因子が明らかとなり、軟部肉腫の適切なフォローアップ期間が提唱された。すなわち軟部肉腫の再発要因として切除縁断端陽性、高悪性度の肉腫があげられ、これらの症例は高い頻度で放射線照射を受けていた。軟部肉腫再発症例の95%は術後9年以内に見られたため、10年のフォローアップが必要であると考えられた。軟部肉腫の術後再発は生命予後を悪化させるため再発の防止は生命予後を向上させるため必須である。申請者は「深部にある高悪性軟部肉腫」において再発を予測する主要な影響因子について明らかにした。この研究対象を軟部肉腫一般に広げ発展させる上で放射線照射を多用する海外の治療と手術のみで局所制御を試みる本邦の治療の違いに着目した。日本と海外の軟部肉腫治療方法と成績を比較し、再発に影響すると考えられる要因を癌研有明病院と東京医科歯科大学の症例を用い多変量解析で分析し実際に再発に影響する因子を同定し、再発率のより低い軟部肉腫治療法を開発することを本研究の目的とした。本年度は東京医科歯科大学、癌研有明病院のデータを収集しそれぞれの要因について研究協力員により調査表に記録した。また調査表のデータ化、簡易集計を行う。質問紙の内容を統計解析に供するよう、アルバイトに依頼してエクセルデータ等へデータ化。その際、スキャナ等でバックアップをとり、得られた情報を適当な変数に変換し多変量解析により相互の関連を調べた。軟部肉腫の術後再発は生命予後を悪化させるため再発の防止は生命予後を向上させるため必須である。申請者は「深部にある高悪性軟部肉腫」において再発を予測する主要な影響因子について明らかにした。この研究対象を軟部肉腫一般に広げ発展させる上で放射線照射を多用する海外の治療と手術のみで局所制御を試みる本邦の治療の違いに着目した。再発に影響すると考えられる要因を癌研有明病院と東京医科歯科大学の症例を用い多変量解析で分析し実際に再発に影響する因子を同定し、再発率のより低い軟部肉腫治療法を開発することを本研究の目的とした。本研究により深部にある高悪性軟部肉腫において再発を予測する主要な影響因子について明らかとなり、軟部肉腫の適切なフォローアップ期間が提唱された。これらの研究により一般的な軟部肉腫再発に関する知見は得られたが局所制御が特に困難な症例に対する再発要因の分析、適切な治療法の提案には至らなかった。そのため今後は特に再発の可能性が高いと考えられる浸潤性の高い軟部肉腫、Unplanned excision後の症例、軟部肉腫再発後の症例に着目しがん研有明病院と東京医科歯科大学の症例を分析することで再発に影響する因子を同定し、再発率のより低い軟部肉腫治療法を開発することが必要と考えられた。また切除縁について肉眼的評価法と病理学的所見との関係を比較し術後の機能評価も行い、再発率の予想が可能でかつ国際的に汎用性のある切除縁評価法を策定も必要と考えられた。これらの結果は国内外の学会で発表し国際誌に掲載された。骨軟部腫瘍研究成果をまとめ国際学会に発表し論文として投稿を行ったため。
KAKENHI-PROJECT-24791527
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24791527
軟部肉腫治療の国際比較と再発を防ぐ治療戦略
本年度は本年度は東京医科歯科大学、癌研有明病院のデータを収集しそれぞれの要因について研究協力員により調査表に記録した。また調査表のデータ化、簡易集計を行う。質問紙の内容を統計解析に供するよう、アルバイトに依頼してエクセルデータ等へデータ化。その際、スキャナ等でバックアップをとり、得られた情報を適当な変数に変換し多変量解析により相互の関連を調べた。以上のように研究の目的は順調に達成されている。今後もデータの整理、発表、論文への投稿を継続する。投稿論文作成と並行して学術雑誌、国内外の学会等への報告を行う予定である。データ整理が早く進み人件費が不要となったため学会発表、論文投稿に使用する予定である。人件費、学会参加費などに使用予定である。
KAKENHI-PROJECT-24791527
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24791527
ヒト脳-腸機能相関における視床下部ペプチドの役割
研究結果これまで見出した知見を更に発展させ、正常人(生理)と過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome;IBS)患者(病態生理)を比較することによって、CRHが消化管運動と脳機能に及ぼす影響をヒトで確立した。広告と掲示で募集した健常成人10例と典型的なIBS患者10例を対象とし、検査日の朝9:00より全例にX線透視下でOlympus社製大腸videoscope CF-200Lを用いて経肛門的に半導体sensorのSynectics社製silicon pressure transducerを下行結腸-S状結腸接合部に留置した。ついで、X線透視下に別のsilicon pressure transducerをpH catheterとともに経鼻的に上部消化管に挿入し、十二指腸に留置した。これらの生体信号をMIC-9800システムポリグラフ、7T18型シグナルプロセッサ、XR-510型データレコーダ、PC-9801RA21型コンピュータに接続し、リアルタイムで導出かつ保存した。被験者を検査室のベッド上に静かに仰臥させ、上記生理信号をモニターしながら60分おきに12mlずつ採血した。次いで、ヒトcorticotropin-releasing hormone(CRH、大阪・蛋白研)2μg/Kgを静注し、上記生理信号をモニターしながら15、30、90、120分後に12mlずつ採血した。消化管運動、小腸pHはGastrosoft(Synectics社)を用い、15分ごとの運動係数、圧力波の頻度、pH7.0以下の面積を自動計算した。採血した静脈血はradioimmunoassayにてACTH、蛍光偏光免疫法にてcortisolを測定した。CRHの静注により、両群で静注3分以内に下行結腸とS状結腸で分節運動が惹起されたが、大腸運動係数は統計学的に有意IBS群>健常群であった(p <0.05)。十二指腸では20例中16例でphase III様運動が惹起されたが、CRH静注後の時間経過とともに十二指腸運動係数は抑制され、抑制の効果は健常群がより顕著であった。血清cortisolに両群の有意差はなかったが、血漿ACTH反応はIBS群>健常群であった(p<0.01)。以上の結果はこれまでに報告されているCRH負荷下あるいはストレス負荷下の動物実験の結果に酷似している。また、ヒトの消化管運動を測定しながらストレスを加え、大腸の分節運動の賦活と運動係数の増加を見出し、IBSではこれらの変化が増強されていることを発見したわれわれの以前の研究成果に類似している。CRHはストレス下のヒト消化管運動を支配する最も重要なペプタイドであり、IBSの病態に対しては脳(ACTH)においても腸(大腸運動)においても重要な関与をしていると考えられた。以上、わが平成6年度の課題研究は脳腸機能相関における視床下部ペプチドの役割を明らかにしつつあり、一定の成果をおさめることができた。研究結果これまで見出した知見を更に発展させ、正常人(生理)と過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome;IBS)患者(病態生理)を比較することによって、CRHが消化管運動と脳機能に及ぼす影響をヒトで確立した。広告と掲示で募集した健常成人10例と典型的なIBS患者10例を対象とし、検査日の朝9:00より全例にX線透視下でOlympus社製大腸videoscope CF-200Lを用いて経肛門的に半導体sensorのSynectics社製silicon pressure transducerを下行結腸-S状結腸接合部に留置した。ついで、X線透視下に別のsilicon pressure transducerをpH catheterとともに経鼻的に上部消化管に挿入し、十二指腸に留置した。これらの生体信号をMIC-9800システムポリグラフ、7T18型シグナルプロセッサ、XR-510型データレコーダ、PC-9801RA21型コンピュータに接続し、リアルタイムで導出かつ保存した。被験者を検査室のベッド上に静かに仰臥させ、上記生理信号をモニターしながら60分おきに12mlずつ採血した。次いで、ヒトcorticotropin-releasing hormone(CRH、大阪・蛋白研)2μg/Kgを静注し、上記生理信号をモニターしながら15、30、90、120分後に12mlずつ採血した。消化管運動、小腸pHはGastrosoft(Synectics社)を用い、15分ごとの運動係数、圧力波の頻度、pH7.0以下の面積を自動計算した。採血した静脈血はradioimmunoassayにてACTH、蛍光偏光免疫法にてcortisolを測定した。CRHの静注により、両群で静注3分以内に下行結腸とS状結腸で分節運動が惹起されたが、大腸運動係数は統計学的に有意IBS群>健常群であった(p <0.05)。十二指腸では20例中16例でphase III様運動が惹起されたが、CRH静注後の時間経過とともに十二指腸運動係数は抑制され、抑制の効果は健常群がより顕著であった。血清cortisolに両群の有意差はなかったが、血漿ACTH反応はIBS群>健常群であった(p<0.01)。以上の結果はこれまでに報告されているCRH負荷下あるいはストレス負荷下の動物実験の結果に酷似している。
KAKENHI-PROJECT-06770047
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06770047
ヒト脳-腸機能相関における視床下部ペプチドの役割
また、ヒトの消化管運動を測定しながらストレスを加え、大腸の分節運動の賦活と運動係数の増加を見出し、IBSではこれらの変化が増強されていることを発見したわれわれの以前の研究成果に類似している。CRHはストレス下のヒト消化管運動を支配する最も重要なペプタイドであり、IBSの病態に対しては脳(ACTH)においても腸(大腸運動)においても重要な関与をしていると考えられた。以上、わが平成6年度の課題研究は脳腸機能相関における視床下部ペプチドの役割を明らかにしつつあり、一定の成果をおさめることができた。
KAKENHI-PROJECT-06770047
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06770047
腫瘍抗原MUC1ムチンを標的にした樹状細胞ワクチン癌免疫療法の開発とその臨床応用
樹状細胞(DC)はその高い抗原提示能と共刺激分子の発現より、プロフェッショナル抗原提示細胞としてin vitroおよびin vivoにおいて細胞障害Tリンパ球(CTL)を効率的に活性化することが知られている。また、乳癌や肺癌をはじめ膵癌や大腸癌など多くの癌に高発現するMUC1ムチンの腫瘍抗原性に着目し、MUC1を標的としたDCワクチン癌免疫療法の開発を目的とした。MUC1コアペプチドあるいはMUC1陽性乳癌細胞抽出lysateでパルスした癌患者DCをstimulatorに用いて、in vitroにて自家末梢血リンパ球よりCTLを誘導した。誘導CTLのMUC1特異性を細胞障害試験あるいはサイトカイン産生試験にて検討した。同時に抗原パルス自家DCを患者に皮下接種して、DCのin vivoにおける抗腫瘍免疫誘導能を検討した。2例のMUC1陽性乳癌患者より誘導したCTLは、いずれもMUC1特異性を示した。その抗原認識に際するMHC拘束性は、標的細胞により様々であった。MUC1標的DCワクチン接種をうけた患者末梢血リンパ球は、in vitro誘導CTLと同様のMUC1特異性とMHC拘束性を示した。MUC1抗原パルスDCは、in vitroとin vivoいずれにおいても強い抗腫瘍細胞性免疫応答を誘導しうることが証明できた。MUC1を標的としたDCワクチン療法は癌免疫療法としてその効果が大いに期待できると考えられた。樹状細胞(DC)はその高い抗原提示能と共刺激分子の発現より、プロフェッショナル抗原提示細胞としてin vitroおよびin vivoにおいて細胞障害Tリンパ球(CTL)を効率的に活性化することが知られている。また、乳癌や肺癌をはじめ膵癌や大腸癌など多くの癌に高発現するMUC1ムチンの腫瘍抗原性に着目し、MUC1を標的としたDCワクチン癌免疫療法の開発を目的とした。MUC1コアペプチドあるいはMUC1陽性乳癌細胞抽出lysateでパルスした癌患者DCをstimulatorに用いて、in vitroにて自家末梢血リンパ球よりCTLを誘導した。誘導CTLのMUC1特異性を細胞障害試験あるいはサイトカイン産生試験にて検討した。同時に抗原パルス自家DCを患者に皮下接種して、DCのin vivoにおける抗腫瘍免疫誘導能を検討した。2例のMUC1陽性乳癌患者より誘導したCTLは、いずれもMUC1特異性を示した。その抗原認識に際するMHC拘束性は、標的細胞により様々であった。MUC1標的DCワクチン接種をうけた患者末梢血リンパ球は、in vitro誘導CTLと同様のMUC1特異性とMHC拘束性を示した。MUC1抗原パルスDCは、in vitroとin vivoいずれにおいても強い抗腫瘍細胞性免疫応答を誘導しうることが証明できた。MUC1を標的としたDCワクチン療法は癌免疫療法としてその効果が大いに期待できると考えられた。正常ヒト末梢血リンパ球より、MUC1特異的細胞障害Tリンパ球(CTL)誘導が可能かを検討した。末梢血リンパ球をMUC1ペプチドでパルスした自家樹状細胞とともにin vitroにおいて共培養を4週間継続した。得られたCTLの表面マーカーを調べるとCD4陽性Tリンパ球であった。このCTLは、MUC1ペプチド特異的に反応し濃度依存性にinterferon-gammaを産生した。この反応は抗MHCクラスI、II抗体いずれにも抑制されなかったので、MHC非拘束性反応であることがわかった。同様の方法で、MUC1発現陽性乳癌患者リンパ球よりMUC1特異的CTL誘導を試みた。3例の患者末梢血リンパ球より誘導されたCTLは、2つがMHC非拘束性、1つがMHC拘束性にMUC1を認識することがわかった。いずれもCD4陽性Tリンパ球であった。動物モデルを用いてMUC1を標的とした樹状細胞ワクチン療法の効果を検討するために、まずMUC1遺伝子導入同系腫瘍細胞を作成した。すなわち、Colon26細胞とEL4細胞にエレクトロポレーション法によりMUC1遺伝子を導入した。セレクションマーカーを用いてMUC1強制発現腫瘍株を得ることができた。現在、この腫瘍細胞株をマウスに皮下移植し、その増殖を樹状細胞ワクチンによって抑制する実験を計画中である。乳癌や肺癌をはじめ多くの癌に高発現するMUC1ムチンを標的とした免疫治癖の可能性を検討するとともに、同分子を標的とした樹状ワクチン免疫療法の有用性を評価した。まず、MUC1陽性癌患者の末梢血リンパ球より、MUC1ペプチドをパルスした樹状細胞を用いてin vitroにおいてMUC1特異的細胞障害Tリンパ球(CTL)を誘導した。誘導CTLのフェノタイプ、抗原特異性、MHC拘束性などキャラクター解析を行った。MUC1コアペプチドを特異的に認識し、かつインターフェロンガンマとTNFアルファを濃度依存性に産生するヘルパー1型CD4陽性Tリンパ球であることが明らかになった。同時に誘導CTLは、MUC1陽性肺癌・乳癌細胞株をMHCハプロタイプに無関係に認識しこれらをin vitroにおいて殺傷した。この反応は、抗MHCクラスIおよびII分子抗体を添加しても抑制されなかった.臨床面ではインフォームドコンセントの得られた転移再発乳癌患者4例に対し樹状細胞ワクチン療法を行った。2週間隔で計3回ワクチン治療後、患者の誘導免疫解析を遅延性過敏症反応および末梢血リンパ球のサイトカイン産生試験を用いて解析した。3例にMUC1特異的細胞性免疫応答を確認できた。
KAKENHI-PROJECT-13671380
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腫瘍抗原MUC1ムチンを標的にした樹状細胞ワクチン癌免疫療法の開発とその臨床応用
臨床効果は、血清腫瘍マーカー値の低下や癌性胸水の消失は認められたものの明らかな腫瘍縮小効果は得られなかった。現時点では、計画どおり臨床成績を評価するに十分のワクチン治療症例数を得ることができず、今後さらに症例を積み重ねて治療効果判定を行う予定である。
KAKENHI-PROJECT-13671380
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チェルノブイリ事故が子供の成長に及ぼした影響
チェルノブイリ事故による生活環境の破滅的変化が子供の成長に及ぼした影響を明らかにすることを研究目的として、プリピャチ市からキエフ市に避難してきた母親の子供で、1986年5月から12月までに生まれた者424人(男216人、女208人)(群I)、および、群Iとキエフ市の同一地区に事故以前から住んでいる母親の子供で、群Iと同じ期間に生まれた者415人(男217人、女198人)(群II)について、ウクライナ放射線医学研究所と地区病院の協力を得て、出生時および1、2、3、5、7、9、12、15、18歳時の体位(体重、身長、頭囲、胸囲)ならびに2005年、2006年に実施したGHQ-12のデータを収集し、群間比較を行った。なお、GHQ-12については、12個の質問それぞれに対する4肢選択の回答を0、1に2値化して集計した得点が4以上の場合を高得点とした。以下の結果を得た(p値はすべてWilcoxonの順位和検定に基づく)。(1)2歳時における女児の身長、体重にのみ群Iと群IIの間で有意差が認められたが、その差は僅かであった。(2)群Iと群IIを併合した場合の身長、体重の年齢別男女の比較では、1歳時と9歳時を除き、男女の身長差は有意であった(7歳時はp=0.04、その他はp<0.01)。また、体重の男女差は全年齢で有意であった(2歳時はp=0.02、その他はp<0.01)。(3)GHQ-12高得点者は、群Iで6人(1.4%)、群IIで10人(2.4%)に認められたが、2群間に有意な差はなかった。チェルノブイリ事故による生活環境の破滅的変化が子供の成長に及ぼした影響を明らかにすることを研究目的として、キエフ市内に住むプリピャチからの避難者の子供のうち、事故後19861988年に生まれた者について、新生児および1、2、3、5、7、9、12、15、18歳時の体位(体重、身長、頭囲、胸囲)のデータを収集し、以下の結果を得た(p値はすべてWilcoxonの順位和検定に基づく)。1.対象者の出生年・性別人数は、1986年は男537人、女495人、1987年は男472人、女465人、1988年は男519人、女551人であった。2.出生時の身長、体重は、男児が40-61cm(中央値=52cm)、1750-5300g(中央値=3500g)、女児は41-62cm(中央値=52cm)、1800-6000g(中央値=3400g)であり、男児の方が女児よりも身長、体重ともに有意に勝っていた(p<0.05)。3.身長は、1歳では、男女に大差はなく、12、15歳では女児の方が有意に高かった(p<0.05)が、その他の年齢では男児の方が女児よりも有意に高かった(p<0.05)。4.一方、体重は、1歳、18歳では男児の方が有意に重かったが(p<0.05)、その他の年齢では女児の方が有意に重かった(p<0.05)。チェルノブイリ事故による生活環境の破滅的変化が子供の成長に及ぼした影響を明らかにすることを研究目的として、プリピャチ市からキエフ市に避難してきた母親の子供で、1986年5月から12月までに生まれた者424人(男216人、女208人)(群I)、および、群Iとキエフ市の同一地区に事故以前から住んでいる母親の子供で、群Iと同じ期間に生まれた者415人(男217人、女198人)(群II)について、ウクライナ放射線医学研究所と地区病院の協力を得て、出生時および1、2、3、5、7、9、12、15、18歳時の体位(体重、身長、頭囲、胸囲)ならびに2005年、2006年に実施したGHQ-12のデータを収集し、群間比較を行った。なお、GHQ-12については、12個の質問それぞれに対する4肢選択の回答を0、1に2値化して集計した得点が4以上の場合を高得点とした。以下の結果を得た(p値はすべてWilcoxonの順位和検定に基づく)。(1)2歳時における女児の身長、体重にのみ群Iと群IIの間で有意差が認められたが、その差は僅かであった。(2)群Iと群IIを併合した場合の身長、体重の年齢別男女の比較では、1歳時と9歳時を除き、男女の身長差は有意であった(7歳時はp=0.04、その他はp<0.01)。また、体重の男女差は全年齢で有意であった(2歳時はp=0.02、その他はp<0.01)。(3)GHQ-12高得点者は、群Iで6人(1.4%)、群IIで10人(2.4%)に認められたが、2群間に有意な差はなかった。
KAKENHI-PROJECT-19659164
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絶滅の機構と過程について-南西諸島における陸産貝類をモデルケースとして
本研究では,奄美大島,喜界島,北大東島において化石陸貝および現生陸貝の採取を行い,その分類,形態解析,遺伝的解析をおこなった.化石は海岸や段丘上の砂丘や石灰岩の割れ目,鍾乳洞の堆積物から産出した.炭素同位体法によって,各サンプルごとに時代決定を行った結果,これらの化石は更新世末期(23万年前)から完新世(1万年以降)にかけてのものであることが明らかになった.島ごとに時代別の陸貝の種数,絶滅率,移入率をもとめたところ,特に喜界島で更新世終末期に著しい種の絶滅(63%)が認められた.また島から絶滅した種の現在の分布域を調べたところ.この絶滅種は多くが現在琉球列島よりも寒冷な地域(九州以北)に分布していることがわかった.従って完新世以降の温暖化がこの絶滅の要因のひとつと考えられた.また琉球列島の各島に分布する現生の陸貝の種数と島の面積に,べき乗の関係が認められ,かつ最終氷期の海面温度から推定された当時の面積と当時の種数が,この関係によく対応したことから,この絶滅には海面上昇に伴う島の面積の減少も大きくかかわっていたと考えられる.次に,殻の10形質の計測値と,主成分分析に基づく形態解析の結果,喜界島における3種,北大東島における1種の陸貝で,最終氷期以降の体サイズの減少および幼形進化が,共通して認められた.遺伝的な解析の結果から,これらの種は各島ごとに隔離されており,島の中でそれぞれ独自の進化を遂げたものと考えられた.このように本研究により最終氷期以降の気候変化が,群集組成や表現型の著しい変化をもたらしたことが推定された.本研究では,奄美大島,喜界島,北大東島において化石陸貝および現生陸貝の採取を行い,その分類,形態解析,遺伝的解析をおこなった.化石は海岸や段丘上の砂丘や石灰岩の割れ目,鍾乳洞の堆積物から産出した.炭素同位体法によって,各サンプルごとに時代決定を行った結果,これらの化石は更新世末期(23万年前)から完新世(1万年以降)にかけてのものであることが明らかになった.島ごとに時代別の陸貝の種数,絶滅率,移入率をもとめたところ,特に喜界島で更新世終末期に著しい種の絶滅(63%)が認められた.また島から絶滅した種の現在の分布域を調べたところ.この絶滅種は多くが現在琉球列島よりも寒冷な地域(九州以北)に分布していることがわかった.従って完新世以降の温暖化がこの絶滅の要因のひとつと考えられた.また琉球列島の各島に分布する現生の陸貝の種数と島の面積に,べき乗の関係が認められ,かつ最終氷期の海面温度から推定された当時の面積と当時の種数が,この関係によく対応したことから,この絶滅には海面上昇に伴う島の面積の減少も大きくかかわっていたと考えられる.次に,殻の10形質の計測値と,主成分分析に基づく形態解析の結果,喜界島における3種,北大東島における1種の陸貝で,最終氷期以降の体サイズの減少および幼形進化が,共通して認められた.遺伝的な解析の結果から,これらの種は各島ごとに隔離されており,島の中でそれぞれ独自の進化を遂げたものと考えられた.このように本研究により最終氷期以降の気候変化が,群集組成や表現型の著しい変化をもたらしたことが推定された.
KAKENHI-PROJECT-06740402
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高齢者の単身世帯化が貧困と幸福度に与える影響
研究実績の概要に関して、以下の3つを挙げることができる。第1に、単身高齢化の進展に関しては、人口論の著書の初稿を完成させた。初稿を修正しつつ、2019年10月刊行を目標に研究を進めている。この著書のなかで、高齢者の単身世帯化と高齢者の生活保護率の正の関係を示し、単身高齢化の進展が今後は貧困化を深刻化させることを示した。第2に、単身高齢化がもたらす貧困化に対する1つの対策として、高齢者就業が挙げられるが、高齢者就業は終身雇用制度や年功序列型賃金などの雇用慣行と両立可能性が問題になる。高齢者就業と雇用慣行の整合性に関しても、本書で議論を行った。日本的雇用慣行に関して、中小企業では日本的雇用慣行が存在するか、また労働組合や従業員組織の人的資源管理制度にどのような影響を与えるのかといった問題に関しても、実証分析を進めている。第3に、松浦(2007)や松浦・照山(2013)では、特に女性の場合、子ども数が増えると生活満足度が低下することが示された。ただし、それではなぜ、生活満足度が低下するにも関わらず、子どもを持つという選択を行うのかという疑問が残されたままであった。1つの可能性としては、短期的には子どもが負担になっても、長期的には子どもの存在がプラスになっているとも考えられる。そこで、本研究では、単身高齢化者の幸福度を分析するために、子ども数と生活満足度に代表される主観的厚生のパネルデータなどを持ちいた検証を行う。現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると判断したい。その理由は下記のとおりである。第1に、人口論に関する単著を2019年10月刊行に向けて、初稿を執筆済みであることが挙げられる。この本では、単身高齢化と高齢者の貧困に関して考察を行っている。また、高齢者の就業促進は高齢者の貧困問題を解決するうえで1つの方法と考えられる。一方、高齢者の就業促進が日本的雇用慣行と整合的でない。このため、本書では高齢者の就業促進が日本的雇用慣行を変容させる可能性を指摘した。第2に、子ども数が多いと生活満足度が低下するという先行研究に対して、なぜ子供を産むのかという問題がある。子どもが長期的にはプラスの影響を与える可能性を検証するために、子ども数の決定要因に関して主観的厚生に着目した研究を行った。具体的には、日韓のパネルデータを用いて、出産意欲と出産行動に関する論文を執筆して、海外を含めたいくつかの学会で報告した。今後の研究推進方策は以下の3つから成り立つ。第1に、人口論の著書の10月刊行を目指して執筆に取り組む。初稿は完成済みであるため、多くの研究者のコメントを反映して修正したうえで完成させる。第2に、子どもを持つことが主観的厚生に与える影響に関する長期的影響に関しては、出産意欲と出産行動に関する日韓比較を発展させて、台湾などのデータを加えて分析を行いたい。第3に、日本的雇用慣行に関しては、中小企業の日本的雇用慣行の現状を分析した論文を発展させることに加えて、高齢者就業との関連性を示す分析を行いたい。本科研のテーマは単身高齢世帯化における貧困と格差、幸福度の現状分析を行うことである。そこで、はじめに単身高齢者の貧困や幸福度を分析するために、子ども数や子どもとの同居が幸福度に与える影響を分析する。さらに、単身高齢者の貧困化を防ぐ1つの方法として、高齢者就業の促進が考えられる。そこで、高齢者就業の促進のために、何が制約でありいかなる政策が必要であるかを分析することにある。制約条件としての想定されるのは日本的雇用慣行である。一方、日本的雇用慣行はガバナンス構造と相互補完的であり、安定的な労使関係を構築してきたという長所もある。そこで、日本的雇用慣行の長所を生かしつつ、高齢者就業の促進との両立可能性を分析するために、日本的雇用慣行と企業ガバナンス構造の相互作用を分析し、さらに高齢者就業との関連を考察したい。本科研のテーマは単身高齢世帯化における貧困と格差、幸福度の現状分析を行うことである。そのうえで、単身高齢者の貧困化を防ぐ1つの方法として、高齢者就業の促進のためにいかなる政策が必要であるかを分析することにある。幸福度に関しては、2017年6月にマニラにて開催されたアジア学術会議、2017年10月に開催されたフィリピン大学ディリマン校のUPSE Seminarにて、"The Gender Difference in the Burden of Having Children"論文の報告を行った。研究実績の概要に関して、以下の3つを挙げることができる。第1に、単身高齢化の進展に関しては、人口論の著書の初稿を完成させた。初稿を修正しつつ、2019年10月刊行を目標に研究を進めている。この著書のなかで、高齢者の単身世帯化と高齢者の生活保護率の正の関係を示し、単身高齢化の進展が今後は貧困化を深刻化させることを示した。第2に、単身高齢化がもたらす貧困化に対する1つの対策として、高齢者就業が挙げられるが、高齢者就業は終身雇用制度や年功序列型賃金などの雇用慣行と両立可能性が問題になる。高齢者就業と雇用慣行の整合性に関しても、本書で議論を行った。
KAKENHI-PROJECT-17K13754
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K13754
高齢者の単身世帯化が貧困と幸福度に与える影響
日本的雇用慣行に関して、中小企業では日本的雇用慣行が存在するか、また労働組合や従業員組織の人的資源管理制度にどのような影響を与えるのかといった問題に関しても、実証分析を進めている。第3に、松浦(2007)や松浦・照山(2013)では、特に女性の場合、子ども数が増えると生活満足度が低下することが示された。ただし、それではなぜ、生活満足度が低下するにも関わらず、子どもを持つという選択を行うのかという疑問が残されたままであった。1つの可能性としては、短期的には子どもが負担になっても、長期的には子どもの存在がプラスになっているとも考えられる。そこで、本研究では、単身高齢化者の幸福度を分析するために、子ども数と生活満足度に代表される主観的厚生のパネルデータなどを持ちいた検証を行う。現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると判断したい。その理由は下記のとおりである。第1に、人口論に関する単著を2019年10月刊行に向けて、初稿を執筆済みであることが挙げられる。この本では、単身高齢化と高齢者の貧困に関して考察を行っている。また、高齢者の就業促進は高齢者の貧困問題を解決するうえで1つの方法と考えられる。一方、高齢者の就業促進が日本的雇用慣行と整合的でない。このため、本書では高齢者の就業促進が日本的雇用慣行を変容させる可能性を指摘した。第2に、子ども数が多いと生活満足度が低下するという先行研究に対して、なぜ子供を産むのかという問題がある。子どもが長期的にはプラスの影響を与える可能性を検証するために、子ども数の決定要因に関して主観的厚生に着目した研究を行った。具体的には、日韓のパネルデータを用いて、出産意欲と出産行動に関する論文を執筆して、海外を含めたいくつかの学会で報告した。高齢者就業と日本的雇用慣行、さらには企業ガバナンスとの制度的補完性の分析に関しては、日経Needsを使用して大企業データのパネル分析を行いたい。今後の研究推進方策は以下の3つから成り立つ。第1に、人口論の著書の10月刊行を目指して執筆に取り組む。初稿は完成済みであるため、多くの研究者のコメントを反映して修正したうえで完成させる。第2に、子どもを持つことが主観的厚生に与える影響に関する長期的影響に関しては、出産意欲と出産行動に関する日韓比較を発展させて、台湾などのデータを加えて分析を行いたい。第3に、日本的雇用慣行に関しては、中小企業の日本的雇用慣行の現状を分析した論文を発展させることに加えて、高齢者就業との関連性を示す分析を行いたい。海外の学会報告を2つ予定していたが、そのうち1つが採択されなかったため。次年度は、より海外での学会報告に積極的に取り組みたい。
KAKENHI-PROJECT-17K13754
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K13754
分化の調節性と形態を誘導する因子
生物の発生・分化は遺伝子にプリントされたプログラムの展開であることは近年の分子生物学的手法の進展に伴って増々明らかになりつつある。本研究班においては、このプログラムの展開に伴う分子レベルでの変化の実体を明らかにすることを目的に下等真刻生物から高等哺乳動物に至るいくつかの実験系を用いて解析を行った。その結果、まずマウス赤芽球性白血病細胞(フレンド細胞)及び胚性腫瘍細胞(下9細胞)において蛋白質のチロシンキナーゼの阻害剤である一連の物質が分化の誘導剤となりうることが判明した。このことは、既に細胞内分化誘導因子の相互作用及び活性化に蛋白質のチロシン残基の脱リン酸化反応が関係していることより示唆されたものである。又、従来まで全く相異ると考えられていた2つのin vitroでの分化系において共通の物質によって分化が誘導され、両者に共通の反応が存在していることを示している。一方、ショウジョウバエの生殖系列細胞の形成を誘発する細胞内因子(germ cell determinant)の分子的実体追求が進められ、ミトコンドリアのラージ・リボゾームRNAと相同性をもつpolyA^+RNAが同定された。他にホヤ胚の筋肉細胞の分化に関する細胞内因子の研究、ニワトリのデルタ・クリスタリン遺伝子の発現に関する研究、B細胞分化に関する蛋白質性因子の解析・粘菌の分化に関連する遺伝子のクローニング、マウスDNAメチル化パターンとインプリンティングとの関係などについても新しい知見が得られた。生物の発生・分化は遺伝子にプリントされたプログラムの展開であることは近年の分子生物学的手法の進展に伴って増々明らかになりつつある。本研究班においては、このプログラムの展開に伴う分子レベルでの変化の実体を明らかにすることを目的に下等真刻生物から高等哺乳動物に至るいくつかの実験系を用いて解析を行った。その結果、まずマウス赤芽球性白血病細胞(フレンド細胞)及び胚性腫瘍細胞(下9細胞)において蛋白質のチロシンキナーゼの阻害剤である一連の物質が分化の誘導剤となりうることが判明した。このことは、既に細胞内分化誘導因子の相互作用及び活性化に蛋白質のチロシン残基の脱リン酸化反応が関係していることより示唆されたものである。又、従来まで全く相異ると考えられていた2つのin vitroでの分化系において共通の物質によって分化が誘導され、両者に共通の反応が存在していることを示している。一方、ショウジョウバエの生殖系列細胞の形成を誘発する細胞内因子(germ cell determinant)の分子的実体追求が進められ、ミトコンドリアのラージ・リボゾームRNAと相同性をもつpolyA^+RNAが同定された。他にホヤ胚の筋肉細胞の分化に関する細胞内因子の研究、ニワトリのデルタ・クリスタリン遺伝子の発現に関する研究、B細胞分化に関する蛋白質性因子の解析・粘菌の分化に関連する遺伝子のクローニング、マウスDNAメチル化パターンとインプリンティングとの関係などについても新しい知見が得られた。
KAKENHI-PROJECT-01654001
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01654001
半側空間無視患者の眼球運動の分析とリハビリテーション
左半側無視は脳血管障害のリハビリテーション(リハ)における大きな阻害要因であるが、半側無視のメカニズムは未だ明かでない。注意障害あるいは眼球運動障害が基本的な原因であるとする考えが強いが、注意と眼球の運動き(注視)は関連があるため簡単には判別できない。今回の研究目的は、1)半側無視例の眼球運動障害を、前頭葉障害型(眼球運動準備障害)と頭頂葉障害型(注意障害)に分ける方法を確立する。2)眼球運動障害のタイプに合った眼球操作訓練を開発、実施する。3)眼球操作訓練による眼球運動自体の改善とリハビリテーションの効果(構成行為、歩行、日常生活動作)を検討する。ことである。方法は、眼球運動測定装置として、非接触眼球運動測定装置、フリービューを使用した。課題は、モニター上に表示された、散在する視標の走査で、5つの課題からなっている。画面に点在する点をカウントする課題、4種類と画面に表示されたかな文字を音読する課題を作製した。課題は各々10題とし、ランダム提示されるようにプログラムを作った。眼球運動測定にあたっては、頭部の固定、課題遂行中のビデオ撮影、回答の録音など工夫した。対象は左片麻痺患者、および注意障害例とした。結果:眼球運動は1)正常例:視標の位置に関わらず、もれなく視線走査可能。速いスピードの視標移動にも追従可能。2)軽度の左半側空間失認を伴うADL自立例:視線走査は良いが左下を見落とす傾向。速いスピードの視標の移動に追従不能。3)重度の左半側空間失認によるADL低下例:右側視野への刺激に視線が引かれる傾向(注意が右にシフトしている)。の3つに分けられた。半側無視に対する訓練で日常生活能力も向上し、眼球運動も改善した。リハビリテーションについては、今後もより効果的なものを考案していきたい左半側無視は脳血管障害のリハビリテーション(リハ)における大きな阻害要因であるが、半側無視のメカニズムは未だ明かでない。注意障害あるいは眼球運動障害が基本的な原因であるとする考えが強いが、注意と眼球の運動き(注視)は関連があるため簡単には判別できない。今回の研究目的は、1)半側無視例の眼球運動障害を、前頭葉障害型(眼球運動準備障害)と頭頂葉障害型(注意障害)に分ける方法を確立する。2)眼球運動障害のタイプに合った眼球操作訓練を開発、実施する。3)眼球操作訓練による眼球運動自体の改善とリハビリテーションの効果(構成行為、歩行、日常生活動作)を検討する。ことである。方法は、眼球運動測定装置として、非接触眼球運動測定装置、フリービューを使用した。課題は、モニター上に表示された、散在する視標の走査で、5つの課題からなっている。画面に点在する点をカウントする課題、4種類と画面に表示されたかな文字を音読する課題を作製した。課題は各々10題とし、ランダム提示されるようにプログラムを作った。眼球運動測定にあたっては、頭部の固定、課題遂行中のビデオ撮影、回答の録音など工夫した。対象は左片麻痺患者、および注意障害例とした。結果:眼球運動は1)正常例:視標の位置に関わらず、もれなく視線走査可能。速いスピードの視標移動にも追従可能。2)軽度の左半側空間失認を伴うADL自立例:視線走査は良いが左下を見落とす傾向。速いスピードの視標の移動に追従不能。3)重度の左半側空間失認によるADL低下例:右側視野への刺激に視線が引かれる傾向(注意が右にシフトしている)。の3つに分けられた。半側無視に対する訓練で日常生活能力も向上し、眼球運動も改善した。リハビリテーションについては、今後もより効果的なものを考案していきたい左半側無視は脳血管障害のリハビリテーション(リハ)における大きな阻害要因であるが、半側無視のメカニズムは未だ明かでない。注意障害あるいは眼球運動障害が基本的な原因であるとする考えが強いが、注意と眼球の運動き(注視)は関連があるため簡単には判別できない。今回の研究目的は、1)半側無視例の眼球運動障害を、前頭葉障害型(眼球運動準備障害)と頭頂葉障害型(注意障害)に分ける方法を確立する。2)眼球運動障害のタイプに合った眼球操作訓練を開発、実施する。3)眼球操作訓練による眼球運動自体の改善とリハビリテーションの効果(構成行為、歩行、日常生活動作)を検討する。ことである。現在、両眼眼球運動測定装置(眼球操作評価プログラム)を用いて、課題遂行中の眼球運動を測定し、データ収集中である。そのほか、視覚認知能力として横山式視空間認知テスト、構成行為として立方体模写、積み木、歩行は歩行スピード、日常生活動作としてFIM,Barthel indexを調べている。データ収集途中であり、今年度に結果をまとめたい。左半側無視は脳血管障害のリハビリテーション(リハ)における大きな阻害要因であるが、半側無視のメカニズムは未だ明かでない。注意障害あるいは眼球運動障害が基本的な原因であるとする考えが強いが、注意と眼球の運動き(注視)は関連があるため簡単には判別できない。今回の研究目的は、1)半側無視例の眼球運動障害を、前頭葉障害型(眼球運動準備障害)と頭頂葉障害型(注意障害)に分ける方法を確立する。
KAKENHI-PROJECT-11835023
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11835023
半側空間無視患者の眼球運動の分析とリハビリテーション
2)眼球運動障害のタイプに合った眼球操作訓練を開発、実施する。3)眼球操作訓練による眼球運動自体の改善とリハビリテーションの効果(構成行為、歩行、日常生活動作)を検討する。ことである。方法は、眼球運動測定装置として、非接触眼球運動測定装置、フリービューを使用した。課題は、モニター上に表示された、散在する視標の走査で、5つの課題からなっている。画面に点在する点をカウントする課題、4種類と画面に表示されたかな文字を音読する課題を作製した。課題は各々10題とし、ランダム提示されるようにプログラムを作った。眼球運動測定にあたっては、頭部の固定、課題遂行中のビデオ撮影、回答の録音など工夫した。対象は左片麻痺患者、および注意障害例とした。結果:眼球運動は1)正常例:視標の位置に関わらず、もれなく視線走査可能。速いスピードの視標移動にも追従可能。2)軽度の左半側空間失認を伴うADL自立例:視線走査は良いが左下を見落とす傾向。速いスピードの視標の移動に追従不能。3)重度の左半側空間失認によるADL低下例:右側視野への刺激に視線が引かれる傾向(注意が右にシフトしている)。の3つに分けられた。半側無視に対する訓練で日常生活能力も向上し、眼球運動も改善した。リハビリテーションについては、今後もより効果的なものを考案していきたい
KAKENHI-PROJECT-11835023
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平安時代後期における瓦生産体制の地域性に関する考古学的研究-丸瓦・平瓦を中心に-
本研究では平安時代後期、平安京(中央)へ瓦を供給した各地域(地方)の瓦生産体制を考古学的方法で解明することを目的とした。とりわけ、軒瓦にとどまらず、丸瓦・平瓦を積極的に分析することで、各地域の独自性を解明することが主目的である。丸瓦・平瓦は、軒瓦より形態や製作技術が単純であり、膨大な量が出土するため、戦略的に扱う必要がある。本研究では、工人が瓦を製作・焼成していた作業場である瓦窯跡から出土した丸瓦・平瓦を主な分析対象とする。具体的には丹波系瓦の生産地である京都府亀岡市篠窯跡群を始めとして、播磨系瓦の生産地である兵庫県の神戸市神出古窯跡・三木市久留美古窯跡・高砂市魚橋瓦窯跡、讃岐系瓦の生産地である香川県綾歌郡ますえ畑瓦窯跡の出土瓦を中心とする。そのために、まずこれまでに発掘調査の実施された遺跡について、報告書をもとに資料集成を行った。丸瓦・平瓦は実際に発掘調査報告書にはごく一部の資料のみ取り上げて概括的に説明されている場合が多い。そのため、現地へ資料調査に赴き、資料の詳細な観察を通して、各地域の製作技術的な特徴を分析した。また、各地域における研究史的な検討とともに各資料の整理・図化作業を行った。本年度は京都府亀岡市篠窯跡群の丹波系瓦や兵庫県の神戸市神出古窯跡・三木市久留美古窯跡の播磨系瓦を中心に行ったため、まだ未調査資料が多く残っている。そのため、さらに基礎的な資料調査を継続し、瓦生産体制の諸地域の特色を明確にしていく予定である。現在、京都府亀岡市篠窯跡群の丹波系瓦をケーススタディーとして論文にまとめている段階である。今後、この研究成果に播磨系瓦や讃岐系瓦の情報を加え、地域間の比較検討を行い、瓦生産体制の解明へ踏み込んで、その研究成果を発信し共有していこうと考えている。本研究では平安時代後期、平安京(中央)へ瓦を供給した各地域(地方)の瓦生産体制を考古学的方法で解明することを目的とした。とりわけ、軒瓦にとどまらず、丸瓦・平瓦を積極的に分析することで、各地域の独自性を解明することが主目的である。丸瓦・平瓦は、軒瓦より形態や製作技術が単純であり、膨大な量が出土するため、戦略的に扱う必要がある。本研究では、工人が瓦を製作・焼成していた作業場である瓦窯跡から出土した丸瓦・平瓦を主な分析対象とする。具体的には丹波系瓦の生産地である京都府亀岡市篠窯跡群を始めとして、播磨系瓦の生産地である兵庫県の神戸市神出古窯跡・三木市久留美古窯跡・高砂市魚橋瓦窯跡、讃岐系瓦の生産地である香川県綾歌郡ますえ畑瓦窯跡の出土瓦を中心とする。そのために、まずこれまでに発掘調査の実施された遺跡について、報告書をもとに資料集成を行った。丸瓦・平瓦は実際に発掘調査報告書にはごく一部の資料のみ取り上げて概括的に説明されている場合が多い。そのため、現地へ資料調査に赴き、資料の詳細な観察を通して、各地域の製作技術的な特徴を分析した。また、各地域における研究史的な検討とともに各資料の整理・図化作業を行った。本年度は京都府亀岡市篠窯跡群の丹波系瓦や兵庫県の神戸市神出古窯跡・三木市久留美古窯跡の播磨系瓦を中心に行ったため、まだ未調査資料が多く残っている。そのため、さらに基礎的な資料調査を継続し、瓦生産体制の諸地域の特色を明確にしていく予定である。現在、京都府亀岡市篠窯跡群の丹波系瓦をケーススタディーとして論文にまとめている段階である。今後、この研究成果に播磨系瓦や讃岐系瓦の情報を加え、地域間の比較検討を行い、瓦生産体制の解明へ踏み込んで、その研究成果を発信し共有していこうと考えている。
KAKENHI-PROJECT-17H00024
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キメラロドプシンを利用した高感度OFF経路視覚再生遺伝子治療の研究
指定難病でもある網膜色素変性症はわが国の大きな失明原因の一つであり、早急な治療法の開発が望まれる。近年、遺伝子治療技術の革新に伴って、本疾患に対しても、光駆動タンパク質であるロドプシンタンパク質類の遺伝子導入によって視覚再生が可能であることが報告されているが、臨床応用への課題は多い。申請者はこれまでに独自のキメラロドプシンを用いて、従来以上に高感度な視覚再生や予防効果を見出した。本研究ではより高度な視覚再生を実現すべく、新たなキメラロドプシンを使用して視覚のOFF経路の再生を目指す。指定難病でもある網膜色素変性症はわが国の大きな失明原因の一つであり、早急な治療法の開発が望まれる。近年、遺伝子治療技術の革新に伴って、本疾患に対しても、光駆動タンパク質であるロドプシンタンパク質類の遺伝子導入によって視覚再生が可能であることが報告されているが、臨床応用への課題は多い。申請者はこれまでに独自のキメラロドプシンを用いて、従来以上に高感度な視覚再生や予防効果を見出した。本研究ではより高度な視覚再生を実現すべく、新たなキメラロドプシンを使用して視覚のOFF経路の再生を目指す。
KAKENHI-PROJECT-19K24053
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システム同定理論に基づく地震動のやや長周期成分の分離と予測に関する研究
地震記録波形には実体波成分とやや長周期成分としての表面波成分が含まれており、実体波成分と表面波成分を識別する方法の性能が地震記録から表面波成分を分離する手法の有効性を決定すると言っても過言でない。現在までのところ確固とした識別方法がなく、分離問題が難問となっている原因として、地震動の波動伝播特性が明らかになっていないことが挙げられる。本研究では、入手したアレー地震動記録を用いて統計解析に基づき、地震波の波動伝播現象について検討した。その結果の概要を以下に示す。相互相関解析に基づき地震動の時間遅れ構造を調べた結果、地表面で反射した実体波の存在を明確に検出できた。1入出力系を仮定し、クロススペクトル法を用いて鉛直ならびに水平成分の地震波の波動伝播現象を周波数領域で解析し、1次元成層モデルの解と対比検討した結果、両者の定性的一致にも拘らず、上下動に関してコヒーレンスが地盤の固有振動数付近で低下し、推定伝達関数の固有周期が長周期側へずれる現象を捉えられた。3次元問題へと拡張し、回転スペクトル特性を併せ求め地盤の伝達特性を検討した結果、地層の傾斜や波動の地盤内における屈折・反射により発生する異種成分の影響のため上下と水平の3成分の地震波がそれぞれ連成して伝播していることが明らかになった。以上の地震記録より捉えられた結果は、実体波の波動伝播現象である。地震動に含まれる表面波成分を抽出することは、実体波成分を除去して残された波動成分を抽出することと同等である。よって本研究で得られた結果をもとに今後提案される分離手法は、相互相関解析により実体波成分を識別し、3成分の地震動の連成を考慮した多入力多出力システムを仮定しシステム同定を用いて実体波成分を除去する方法が考えられる。分離された波動成分の相関性をコヒーレンスで捉えて、この方法の精度を把握することが重要であると思われる。地震記録波形には実体波成分とやや長周期成分としての表面波成分が含まれており、実体波成分と表面波成分を識別する方法の性能が地震記録から表面波成分を分離する手法の有効性を決定すると言っても過言でない。現在までのところ確固とした識別方法がなく、分離問題が難問となっている原因として、地震動の波動伝播特性が明らかになっていないことが挙げられる。本研究では、入手したアレー地震動記録を用いて統計解析に基づき、地震波の波動伝播現象について検討した。その結果の概要を以下に示す。相互相関解析に基づき地震動の時間遅れ構造を調べた結果、地表面で反射した実体波の存在を明確に検出できた。1入出力系を仮定し、クロススペクトル法を用いて鉛直ならびに水平成分の地震波の波動伝播現象を周波数領域で解析し、1次元成層モデルの解と対比検討した結果、両者の定性的一致にも拘らず、上下動に関してコヒーレンスが地盤の固有振動数付近で低下し、推定伝達関数の固有周期が長周期側へずれる現象を捉えられた。3次元問題へと拡張し、回転スペクトル特性を併せ求め地盤の伝達特性を検討した結果、地層の傾斜や波動の地盤内における屈折・反射により発生する異種成分の影響のため上下と水平の3成分の地震波がそれぞれ連成して伝播していることが明らかになった。以上の地震記録より捉えられた結果は、実体波の波動伝播現象である。地震動に含まれる表面波成分を抽出することは、実体波成分を除去して残された波動成分を抽出することと同等である。よって本研究で得られた結果をもとに今後提案される分離手法は、相互相関解析により実体波成分を識別し、3成分の地震動の連成を考慮した多入力多出力システムを仮定しシステム同定を用いて実体波成分を除去する方法が考えられる。分離された波動成分の相関性をコヒーレンスで捉えて、この方法の精度を把握することが重要であると思われる。
KAKENHI-PROJECT-61550401
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岩石のクリープ特性に及ぼす温度・湿度の影響
本研究では、登別溶結凝灰岩を用いクリープ試験を実施し、クリープ変形を中心に岩石の変形挙動に及ぼす温度と湿度の影響について検討を行った。温度は20°C,50°C,80°C、相対湿度は60%,90%とし、載荷応力は圧縮強度の70,80,90%とした。試験は次の手順で行った。(1)まず、一定温度・湿度の環境チャンバー内にひずみゲージを貼付した供試体を放置する。(2)ひずみの変化が見られなくなったら、設定応力まで載荷する。(3)荷重を最大3日間一定に保つ。(4)供試体が破壊しない場合、荷重を抜く。(5)除荷後24時間放置する。なお、A/D変化ボードを装着したパーソナルコンピュータによりひずみの計測を行ったために1secという早いサンプリング周波数で5日間に亙るデータの取り込みが可能となった。以下に主な結果を述べる。(1)の無負荷状態におけるひずみの経時変化(24時間)を測定したところ、温度が高くなるほど供試体の体積は収縮し、逆に、湿度が高くなると体積膨張が観察された。次に、(2),(4)の過程でそれぞれ割線弾性係数を求めてみると、温度・湿度が大きくなるほどと両過程とも弾性係数は低下する傾向が認められた。しかし、(3)と(5)の段階におけるひずみの変化には温度・湿度の影響が明確には認められなかった。すなわち、単位時間当たりのひずみの増加(クリープひずみ速度)は時間の経過とともに減少し、両対数グラフ上で右下がりの直線となるが、温度・湿度が異なってもほぼ同一の直線となった。現段階では、試験を実施した範囲内でのクリープ変形は温度・湿度の影響を受けないと考えられるが、データ数が少ないため(各条件で2本)、今後も試験を継続し多数のデータを集積した後、結論づける必要がある。本研究では、登別溶結凝灰岩を用いクリープ試験を実施し、クリープ変形を中心に岩石の変形挙動に及ぼす温度と湿度の影響について検討を行った。温度は20°C,50°C,80°C、相対湿度は60%,90%とし、載荷応力は圧縮強度の70,80,90%とした。試験は次の手順で行った。(1)まず、一定温度・湿度の環境チャンバー内にひずみゲージを貼付した供試体を放置する。(2)ひずみの変化が見られなくなったら、設定応力まで載荷する。(3)荷重を最大3日間一定に保つ。(4)供試体が破壊しない場合、荷重を抜く。(5)除荷後24時間放置する。なお、A/D変化ボードを装着したパーソナルコンピュータによりひずみの計測を行ったために1secという早いサンプリング周波数で5日間に亙るデータの取り込みが可能となった。以下に主な結果を述べる。(1)の無負荷状態におけるひずみの経時変化(24時間)を測定したところ、温度が高くなるほど供試体の体積は収縮し、逆に、湿度が高くなると体積膨張が観察された。次に、(2),(4)の過程でそれぞれ割線弾性係数を求めてみると、温度・湿度が大きくなるほどと両過程とも弾性係数は低下する傾向が認められた。しかし、(3)と(5)の段階におけるひずみの変化には温度・湿度の影響が明確には認められなかった。すなわち、単位時間当たりのひずみの増加(クリープひずみ速度)は時間の経過とともに減少し、両対数グラフ上で右下がりの直線となるが、温度・湿度が異なってもほぼ同一の直線となった。現段階では、試験を実施した範囲内でのクリープ変形は温度・湿度の影響を受けないと考えられるが、データ数が少ないため(各条件で2本)、今後も試験を継続し多数のデータを集積した後、結論づける必要がある。
KAKENHI-PROJECT-05750829
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レニウムカリックスアレーン錯体におけるキャビティ動的制御法の開発
カリックスアレーンを配位子とするcis-ジオキソレニウム錯体とアリールヒドラジン類並びにヒドロキシルアミンとの反応を詳しく検討し、溶媒の選択によってキャビティの形状変化を伴う異性化反応が進行すること、ヒドラジンの場合には可逆的な異性化であることを見出した。また、カリックスアレーンやヒドラジン上の置換基の影響の解明や反応速度の検討を行い、これらの動的なキャビティの形状制御の機構について明らかにした。カリックスアレーンを配位子とするcis-ジオキソレニウム錯体とアリールヒドラジン類並びにヒドロキシルアミンとの反応を詳しく検討し、溶媒の選択によってキャビティの形状変化を伴う異性化反応が進行すること、ヒドラジンの場合には可逆的な異性化であることを見出した。また、カリックスアレーンやヒドラジン上の置換基の影響の解明や反応速度の検討を行い、これらの動的なキャビティの形状制御の機構について明らかにした。カリックスアレーンは芳香環に囲まれたキャビティを持つユニークな分子であるが、カリックスアレーンを配位子とする遷移金属錯体において、その配位構造とキャビティ形状の動的制御に成功した例はほとんどない。本年度の研究では、CiS-ジオキソレニウム錯体cis-(Ph_4P)[ReO_2{ρ-^tBU-calix[4]-(O)_4}](1)およびcis-(Ph_4P)[ReO_2{calix[4]-(O)_4}](2)とアリールヒドラジンとの反応でtrans-(ジアゼニド)(ヒドロキソ)錯体となる際の配位構造変化の反応機構を検討した。これまでの検討で、1とArNHNH_2の反応ではtrans-(ジアゼニド)(ヒドロキソ)錯体が直接選択的に生成することが見出されている。これに対して、2のエタノール溶液にEt_3NとArNHNH_2・HCIを加えて還流した場合にはcis-(ヒドラジド)(オキソ)錯体(Ph_4P)[ReO(mmAr){calix[4]一(O)_4}](3)が収率55-73%で得られることを見出した。同様にPhMeNNH_2を用いた場合にはCiS-(Ph_4P)[ReO(NNPhMe){calix[4]-(O)_4}]が得られ、X線結晶構造解析によってその分子構造を決定できた。3は塩化メチレンに溶解すると48時間後にtrans-(Ph_4P)-[Re(OH)(NNAr){calix[4]-(O)_4}](4)へとほぼ定量的に異性化した。一方、4(Ar=Ph,C_6H_4C1)は2-プロパノール中に溶解すると再び3へと異性化した。このことから、本異性化は可逆であることがわかった。塩化メチレン中では4が、一方2-プロパノール中では3が安定であることは、より分子が分極している3が極性溶媒中で安定化されることに対応していると考えられる。カリックスアレーンは芳香環に囲まれたキャビティを持つユニークな分子であるが、カリックスアレーンを配位子とする遷移金属錯体において、その配位構造とキャビティ形状の動的制御に成功した例はほとんどない。本年度の研究では、cis-ジオキソレニウム錯体cis-(Ph_4P)[ReO_2{R-calix[4]-(O)_4}](1, R=^tBu, H)とヒドロキシルアミンの反応を検討し、ヒドラジン類との反応とは異なった興味深い立体制御を見出した。すなわち、この反応ではヒドロキシルアミンの縮合とそれに続くプロトンの移動により、直線型ニトロシル配位子を持つcis-ヒドロキソ錯体(PPh_4)cis-[Re(OH)(NO){R-calix[4}(O)_4)}](2)が生成することが明らかとなった。2009年度に見出したフェニルヒドラジン類の反応においては、cis-(オキソ)(ヒドラジド)錯体を経由してより安定なtrans-(ヒドロキソ)(ジアゼニド)錯体へと異性化することが判明しており、それとは大きく異なっている。(ヒドロキソ)(ニトロシル)錯体2の同定は、この錯体が直線形ニトロシル配位子に帰属される赤外吸収を1706cm^<-1>に示すこと、およびR=^tBuの錯体のX線構造解析によって行った。また、^1H NMRでの飽和移動測定では、本錯体は立体的に安定な構造となっていることが確認された。さらに、この錯体の酸化還元について検討したところ、R=tBuの場合にCVにおいて2つの可逆な酸化波(-0.62,1.09V)、1つの可逆な還元波(-1.27V)を持つことが判明した。単核錯体でも多段階の酸化還元を示すことは、電子の授受を柔軟に行うニトロシル錯体の特徴が現れたものといえる。カリックスアレーンは芳香環に囲まれたキャビティを持つユニークな分子であるが、カリックスアレーンを配位子とする遷移金属錯体において、その配位構造とキャビティ形状の動的制御に成功した例はほとんどない。昨年度の研究で、ジオキソレニウム錯体cis-(Ph_4P)[ReO_2{R-calix[4]-(O)_4}]
KAKENHI-PROJECT-21550069
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21550069
レニウムカリックスアレーン錯体におけるキャビティ動的制御法の開発
(1,R=^Bu,H)とヒドロキシルアミンの反応で直線型ニトロシル配位子を持つヒドロキソ錯体(PPh_4)cis-[Re(OH)(NO){R-calix[4]-(O)_4}](2)が生成することを示したが、本年度に錯体2の性質を詳しく検討したところ、R=Hではcis体からtrans体への異性化が進行しないのに対し、R=^tBuの場合には、塩化メチレン溶液中では室温48hでtraps体への異性化がほぼ完全に進行することを見出した。この異性化反応の速度論解析では、反応は偽一次反応として解析できた。さらに、この異性化反応は酸(酢酸)または塩基(トリエチルアミン)の添加で遅くなり、水の添加によりほとんど進行しなくなることが判明した。既に平成21年度の検討で、1(R=H)とフェニルヒドラジン類の反応で生成するcis-(オキソ)(ヒドラジド)錯体が、trans-(ヒドロキソ)(ジアゼニド)錯体へ異性化する場合には塩基が反応を大きく加速することが判明しており、対照的である。このことは、これらの反応機構がプロトンの授受に関して異なった律速段階を持つことを意味しており、興味深い。一方、1から誘導されるニトリド錯体(PPh_4)[Re(N){R-calix[4]-(O)_4)}](3)を用いてCu(I)あるいはAg(I)との錯形成を検討したところ、3の酸化により新規反磁性錯体が生成した。条件により4回軸を持つものおよびCs対称をもつものが生成するが完全な同定はなお検討中である。
KAKENHI-PROJECT-21550069
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凝縮系プラズマにおける低エネルギー核融合反応
液体Li及び固体Liを標的にして^6Li+ D反応が入射エネルギー25 75 keVにわたり測定され、液体/固体中での遮蔽ポテンシャル(Us)が求められた。Usの値は、液体中、固体中で、各々、488+/-40、395+/-40 eVと求まった。液体Li中でのUsの温度依存性も測定され、Usは標的温度の上昇に伴い減少することが判明した。これらの結果は、液体Li中では、伝導電子に加え、Li+イオンが遮蔽効果に寄与するものと定性的には理解される。さらに、液体Li中での超音波キャビテーション生成に成功し、全く異なった環境下で核反応研究の道が切り開かれた。目的:低エネルギー領域においてD+D、Li+D反応等の核反応率が、凝縮系プラズマと見做せる金属内で異常に増大するメカニズムを解明し、利用応用の検討を可能にする。内容:(1)固体/液体金属中でのD,Liを標的にD+D,Li+D反応の反応率測定、(2)液体金属中での核反応率の温度依存性測定、(3)液体金属超音波キャビテーション内での核反応率増大の追及、(4)重水素透過Pd薄膜内でのD+D核反応の探索。液体Li及び固体Liを標的にして^6Li+ D反応が入射エネルギー25 75 keVにわたり測定され、液体/固体中での遮蔽ポテンシャル(Us)が求められた。Usの値は、液体中、固体中で、各々、488+/-40、395+/-40 eVと求まった。液体Li中でのUsの温度依存性も測定され、Usは標的温度の上昇に伴い減少することが判明した。これらの結果は、液体Li中では、伝導電子に加え、Li+イオンが遮蔽効果に寄与するものと定性的には理解される。さらに、液体Li中での超音波キャビテーション生成に成功し、全く異なった環境下で核反応研究の道が切り開かれた。大強度重陽子ビーム照射装置を用いて、液体と固体Li標的を対象に、^6Li(d,α)^4He及び^7Li(p,α)^4He反応実験を行い、入射エネルギー22.570keVの反応収量を得た。観測された励起曲線は、液体標的と固体標的とで明らかに異なり、次の特徴を示す。(1)収量は、常に液体Li標的の方が固体の収量よりも大きい。(2)入射エネルギー40keV以上では、入射粒子の速度が大きくなるほど液体標的の方が大きくなる。(3)入射エネルギー40keV以下でも収量は入射エネルギーの減少に伴い増加する。予備的な解析の結果、高いエネルギー側での液体/固体の変化は、水素イオンの阻止能の変化によるものと結論され、標準的に使用されている阻止能を現象論的に補正し、液体Li中での阻止能を求めた。エネルギーの低い側で観測された液体標的での収量の増加は、遮蔽ポテンシャルの違いによるものと理解され、固体/液体中での遮蔽ポテンシャルU_s/U_1が実験データを再現するように求められた。液体と固体標的に対して得られた遮蔽ポテンシャルの値は、各々、U_1=850+/-50eV,U_s=350+/-50eVとなり、液体中での遮蔽ポテンシャルが非常に大きいことが判明した。この違いは、Li^+イオンが液体中で自由に動き回れる状態となったことに起因すると考えられる。簡単なモデル計算との比較検討の結果、低温高密度プラズマ中では、正イオンによるデバイ遮蔽効果は、電子の遮蔽効果よりもはるかに大きい事が結論された。大強度重陽子ビーム照射装置を用いて、液体と固体Li標的を対象に、^6Li(d, α)^4He及び^7Li(p, α)^4He反応実験を行い、入射エネルギー22.570 keVの反応収量を得た。観測された励起曲線は、液体標的と固体標的とで明らに異なり、次の特徴を示す。(1)収量は、常に液体Li標的の方が固体の収量よりも大きい。(2)入射エネルギー40 keV以上では、入射粒子の速度が大きくなるほど液体標的の方が大きくなる。(3)入射エネルギー40 keV以下でも収量は入射エネルギーの減少に伴い増加する。精度を上げた再解析を行った結果、液体と固体状態では、液体状態の方が遮蔽エネルギーが大きく、その差ΔU_s=205±35 eVが得られた。これは、液体Li+が流動性のある正イオンとしてクーロン遮蔽に寄与していると考えられるものの、単純なデバイ模型による予想値よりは小さな値である。他の液体標的として、LiNO3を対象に^7Li(p, α)^4He反応実験、入射エネルギー22.570 keVにて実行し、遮蔽ポテンシャルを求めた。結果は、固体標的に対したは、330±110 eV、液体標的に対しては、190±82 eVとなり、液体標的の方が大きくなるという金属Liとは異なった結論となった。現在、その理由を検討中であるが、分子量の大きなNO3-イオンは、遮蔽ポテンシャルには寄与していないことが考えられる。液体金属Li標的に超音波を付加し、キャビテーション状態を作り出し、その上でLi+p, d反応の測定を行えるよう、真空槽の設計と設置を行った。テスト実験が開始されている。
KAKENHI-PROJECT-19340051
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凝縮系プラズマにおける低エネルギー核融合反応
大強度重陽子ビーム照射装置を用いて、液体Li標的を対象に^6Li(d,α)^4Re反応の、反応収量の入射エネルギー依存性を、標的温度490K,530K,570K及び600Kの4点で測定した。予備的な解析の結果から、各温度における遮蔽ポテンシャルの値が得られた。遮蔽ポテンシャルは、温度とともに単調に減少する傾向を示し、540eVから440eVと変化することが判った。この傾向は、単純なデバイ模型が予想する温度依存性とは定性的に一致する。液体金属を低温高密度プラズマとして扱えることの可能性を検討するため、より詳細な解析が進行中である。液体金属+超音波キャビテーションを標的とする核反応実験研究を可能とするため、専用の標的真空槽を製作・設置した。これまで液体金属標的として使用してきた液体Liを用いて、超音波キャビテーションを得ることに成功した。引き続き、重陽子ビームを照射し、^6Li(d,α)^4He反応とD(d,p)T反応が調べられた。超音波キャビテーション効果は、後者の反応において顕著であることが判明した。予備的な解析が進められ、その結果、超音波キャビテーション中の重陽子は、100万度Kもの高温ガス状態となっている可能性が指摘された。2.固体/液体In中でのD(d,p)T反応の予備的測定を行った。当初、液体In中ではD(d,p)T反応が異常に増強されている可能性が示された。しかしながら、その後のデータ蓄積とΔE-E2次元スペクトルの詳細な解析により、異常な収量増大は検出器前面のAl箔に蓄積されたDと、Inにより散乱されたDとの反応によることが判明した。その後、液体In+超音波キャビテーション中のD(d,p)T反応の予備的データを得た。キャビテーションのない場合と較べて反応率が数十倍大きい可能性が指摘される。3.液体Liを標的とした^6Li(d,α)^4He,^7Li(d,α)^4He反応の詳細な解析が進展し、反応のS-factorが求まった。LiF標的の場合のS-factorに較べて大きく増大しており、二つの異なった環境下での同じ核反応においてΔUs=235±63eV(^6Li+d)、及び、140±82eV(^7Li+p)もの違いを生じることが明白となった。この差は、伝導電子とLiイオンの遮蔽効果に起因するものである。解析結果は、論文として纏められ、現在J.Phys.Soc.Jpn誌に投稿中である。4.液体Li+超音波キャビテーション中の6Li(d,α)4He、及びD(d,p)T反応の詳細な解析が進められた。後者の反応においては、超音波キャビテーションの効果が非常に大きいことが判明した。キャビテーションにより、標的Dが高温ガス状態であると仮定すると、その温度は10^6Kにものぼることが示された。これらの結果は、近々論文として纏められ投稿される予定である。
KAKENHI-PROJECT-19340051
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19340051
確率的潜在構造モデリングシステムを用いた「次世代人工知能」による敗血症治療支援
1)敗血症患者の診断群分類情報の推移を「確率的潜在意味解析と確率的構造モデル」に基づく分析システムで解析し、敗血症治療に臨床応用可能な情報システムを構築するために治療法・治療薬の重みづけを検証。(2)上記(1)のシステムの質向上のため研究代表者が特許開示中(2016-45727)の検査データの推移による診療支援システムの基盤となっている検査データの推移や既存の敗血症スコアの推移との関連を検証し臨床応用力を強化。(3)上記(2)で明らかにした結果をもとに、敗血症患者治療支援において「確率的潜在意味解析と確率的構造モデル」の予測精度を向上する科学的証拠(エビデンス)を構築。1)敗血症患者の診断群分類情報の推移を「確率的潜在意味解析と確率的構造モデル」に基づく分析システムで解析し、敗血症治療に臨床応用可能な情報システムを構築するために治療法・治療薬の重みづけを検証。(2)上記(1)のシステムの質向上のため研究代表者が特許開示中(2016-45727)の検査データの推移による診療支援システムの基盤となっている検査データの推移や既存の敗血症スコアの推移との関連を検証し臨床応用力を強化。(3)上記(2)で明らかにした結果をもとに、敗血症患者治療支援において「確率的潜在意味解析と確率的構造モデル」の予測精度を向上する科学的証拠(エビデンス)を構築。
KAKENHI-PROJECT-19K09396
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K09396
光学活性の異なるアミノ酸を含む水溶液系の微視的構造解析
光学活性の異なるアミノ酸分子を含む水溶液中の分子間水素結合構造に関する知見を得る目的で、2.5mol%D,L-およびL-アラニン水溶液について中性子回折実験を行った。中性子回折実験は、日本原子力研究所3号炉に設置されている東京大学物性研究所4G回折計および高エネルギー加速器研究機構に設置されているHIT-IIを使用して25°Cで実施した。置換可能な水素原子のH/D分率が96.1%Dの試料について観測された散乱断面積の差を求めたところ、D,L-およびL-アラニン溶液の分子間構造に有意な構造の違いが存在する事を見出した。観測された分子間干渉項の差Δi(Q)=[D,L-アラニン重水溶液]-[L-アラニン重水溶液]、のフーリエ変換から求めた差の分布関数Δg(r)には、r=2および2.5Åの原子間距離に負のピークが観測された。H/D同位体分率の異なる3種類の2.5mol%D,L-アラニン水溶液について観測された分子間干渉項を組み合わせた解析より、H-H、H-XおよびX-X(X : O, C, N)部分構造因子および部分分布関数を導出した。Δg(r)のr=2および2.5Åに観測された負のピークは、各々最近接分子間水素結合O-HおよびH-H距離に対応することが明らかになった。Δi(Q)の最小二乗法解析の結果、L-アラニン水溶液に比較して、D,L-アラニン水溶液の方が約2%程分子間水素結合は弱い事が明らかになった。さらに、^<14>N/^<15>NおよびH/D同位体置換法中性子回折実験により、3mol%D,L-アラニン水溶液および4mol%グリシン水溶液中における、アミノ酸分子内アミノ基、メチル基およびメチレン基周囲の水和構造の詳細を明らかにした。光学活性の異なるアミノ酸分子を含む水溶液中の分子間水素結合構造に関する知見を得る目的で、2.5mol%D,L-およびL-アラニン水溶液について中性子回折実験を行った。中性子回折実験は、日本原子力研究所3号炉に設置されている東京大学物性研究所4G回折計および高エネルギー加速器研究機構に設置されているHIT-IIを使用して25°Cで実施した。置換可能な水素原子のH/D分率が96.1%Dの試料について観測された散乱断面積の差を求めたところ、D,L-およびL-アラニン溶液の分子間構造に有意な構造の違いが存在する事を見出した。観測された分子間干渉項の差Δi(Q)=[D,L-アラニン重水溶液]-[L-アラニン重水溶液]、のフーリエ変換から求めた差の分布関数Δg(r)には、r=2および2.5Åの原子間距離に負のピークが観測された。H/D同位体分率の異なる3種類の2.5mol%D,L-アラニン水溶液について観測された分子間干渉項を組み合わせた解析より、H-H、H-XおよびX-X(X : O, C, N)部分構造因子および部分分布関数を導出した。Δg(r)のr=2および2.5Åに観測された負のピークは、各々最近接分子間水素結合O-HおよびH-H距離に対応することが明らかになった。Δi(Q)の最小二乗法解析の結果、L-アラニン水溶液に比較して、D,L-アラニン水溶液の方が約2%程分子間水素結合は弱い事が明らかになった。さらに、^<14>N/^<15>NおよびH/D同位体置換法中性子回折実験により、3mol%D,L-アラニン水溶液および4mol%グリシン水溶液中における、アミノ酸分子内アミノ基、メチル基およびメチレン基周囲の水和構造の詳細を明らかにした。アミノ酸分子の光学活性の違いが水溶液の構造に及ぼす影響を調べる目的で、2.5mol%D, L-およびL-アラニン水溶液に対してH/D同位体置換法中性子回折実験を実施した。置換可能な水素のH/D分率が異なる各々3種の試料(96.1%D,66.0%D,35.9%D)について散乱強度の測定を行った。中性子回折実験は、日本原子力研究所JRR-3M炉に設置されている4G回折計を用いて、25°Cで行い、0.3<Q<9.6<Å^<-1>にわたる散乱ベクトルの範囲でデータを取得した。その結果、D, L-およびL-アラニン水溶液の散乱強度には、最も重水素含有率の高い(96.1%D)試料のみに統計誤差を超えた有意な差が見られた。D, L-およびL-アラニン水溶液の散乱強度の差について、詳しい解析を実施したところ、D, L-アラニン水溶液に比較してL-アラニン水溶液の方が溶媒である水分子間の水素結合が強いという結果が得られた。この実験結果を確認するために、平成15年度に高エネルギー加速器研究機構に設置されている飛行時間法中性子散乱装置HIT-IIを用いた実験を予定している。さらに、3mol%D, L-アラニン水溶液に対して実施した^<14>N/^<15>NおよびH/D同位体置換法中性子回折実験データに、新しく開発した非弾性散乱の補正法を適用し、アラニン分子の窒素原子およびメチル基の水素原子周囲の水和構造を明らかにした。非常に濃厚な15mo1%尿素水溶液に対する^<14>N/^<15>
KAKENHI-PROJECT-14540509
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光学活性の異なるアミノ酸を含む水溶液系の微視的構造解析
NおよびH/D同位体置換法中性子回折実験データについて詳細な解析を行い、アミノ基の窒素原子周囲の水分子の水和構造を、水分子の配向構造も含めて明らかにした。光学活性の異なるアミノ酸分子を含む水溶液中の分子間水素結合構造に関する知見を得る目的で、2.5mol%D, L-およびL-アラニン水溶液について中性子回折実験を行った。中性子回折実験は、日本原子力研究所3号炉に設置されている東京大学物性研究所4G回折計および高エネルギー加速器研究機構に設置されているHIT-IIを使用して25°Cで実施した。置換可能な水素原子のH/D分率が96.1%Dの試料について観測された散乱断面積の差を求めたところ、D,L-およびL-アラニン溶液の分子間構造に有意な構造の違いが存在する事を見出した。観測された分子間干渉項の差Δi(Q)=[D, L-アラニン重水溶液]-[L-アラニン重水溶液]、のフーリエ変換から求めた差の分布関数Δg(r)には、r=2および2.5Åの原子間距離に負のピークが観測された。H/D同位体分率の異なる3種類の2.5mol%D, L-アラニン水溶液について観測された分子間干渉項を組み合わせた解析より、H-H、H-XおよびX-X(X : O, C, N)部分構造因子および部分分布関数を導出した。Δg(r)のr=2および2.5Åに観測された負のピークは、各々最近接分子間水素結合O-HおよびH-H距離に対応することが明らかになった。Δi(Q)の最小二乗法解析の結果、L-アラニン水溶液に比較して、D, L-アラニン水溶液の方が約2%程分子間水素結合は弱い事が明らかになった。さらに、^<14>N/^<15>NおよびH/D同位体置換法中性子回折実験により、3mol%D, L-アラニン水溶液および4mol%グリシン水溶液中における、アミノ酸分子内アミノ基、メチル基およびメチレン基周囲の水和構造の詳細を明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-14540509
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調整班B01:消滅に直面した言語の調査方法に関する総合的研究
調整班B01は角田班と西光班の二つの班から成る。活動の大部分は二つの班が独自に行った。調整班全体の活動としては、角田班の研究協力者、佐々木冠(札幌学院大学)がメイリングリストを作成して、このリストを用いて、恒常的に意見の交換や情報の交換を行った。また、調整班B01のメンバーは、2002年6月に東京で行われた全体会議と2002年11月に京都で行われた全体会議に出席し、討論に参加し、更に、班の代表が研究成果を発表した。調整班B01の代表者(角田太作)は前年度に引き続き、以下の研究などを行った。(1)消滅に直面した言語の調査方法の検討、(2)オーストラリア、西オーストラリア州のワンジラ語の現地調査、(3)オーストラリア、クイーンズランド州北部のワルング語の復活運動への協力。角田班(研究分担者:千葉大学、田口善久;研究協力者は15名)では、ロシア、台湾、タイ、豪州、ペルーなどで、現地調査を行い、個々の言語に関する資料を収集すると同時に、よりよい調査方法の確立のための研究を行った。西光班(研究分担者:神戸大学、柴谷方良;岡山大学、栗林裕;岡山大学、片桐真澄;研究協力者は2名)は現地調査を行い、また、理論言語学、言語類型論の観点を導入して、よりよい記述の枠組みの構築のための研究を行った。調整班B01の研究成果の一部を項目11「研究発表」に挙げる。角田班と西光班の研究成果の詳細はそれぞれの班の実績報告書で挙げる。狭い意味の言語だけでなく、文化的・社会的背景、ノンバーバルな側面も含めて、ある危機言語の全体像を捉えるための、調査・記録・記述の方法と枠組みを確立することが本研究の目的である。以下の3つの班に分かれて研究を行った。(1)角田太作を研究代表者とする班では、言語調査票、語彙票、調査方法にかんする論文などの文献を収集した。(2)西光義弘を研究代表者とする班では、主に文法にかんする調査項目を検討した。(3)鈴木玲子を研究代表者とする班では、特に東南アジアの諸言語の文法と語彙の調査のための調査票の作成を開始した。また、各班の大部分のメンバーが現地調査を行い、調査項目の検討と調査票の作成のための資料を収集した。調整班BO1の代表者(角田太作)は1970年代の前半にオーストラリア、クイーンズランド州北部の原住民語Warrunguなどを現地調査した。1998年ころからこれらの言語の復活運動が始まった。現地からの依頼を受け、角田はWarrungu語などの資料を、復活運動に使える形に整理している。また、現地を訪問して、Warrungu語のレッスンを行うなどして、復活運動に協力した。この言語復活運動の背景と現状をB01班のホームページに掲載した。調整班B01は角田班と西光班の二つの班から成る。活動の大部分は二つの班が独自に行った。調整班全体の活動としては、角田班の研究協力者、佐々木冠(札幌学院大学)がメイリングリストを作成して、このリストを用いて、恒常的に意見の交換や情報の交換を行った。また、調整班B01のメンバーは、2002年6月に東京で行われた全体会議と2002年11月に京都で行われた全体会議に出席し、討論に参加し、更に、班の代表が研究成果を発表した。調整班B01の代表者(角田太作)は前年度に引き続き、以下の研究などを行った。(1)消滅に直面した言語の調査方法の検討、(2)オーストラリア、西オーストラリア州のワンジラ語の現地調査、(3)オーストラリア、クイーンズランド州北部のワルング語の復活運動への協力。角田班(研究分担者:千葉大学、田口善久;研究協力者は15名)では、ロシア、台湾、タイ、豪州、ペルーなどで、現地調査を行い、個々の言語に関する資料を収集すると同時に、よりよい調査方法の確立のための研究を行った。西光班(研究分担者:神戸大学、柴谷方良;岡山大学、栗林裕;岡山大学、片桐真澄;研究協力者は2名)は現地調査を行い、また、理論言語学、言語類型論の観点を導入して、よりよい記述の枠組みの構築のための研究を行った。調整班B01の研究成果の一部を項目11「研究発表」に挙げる。角田班と西光班の研究成果の詳細はそれぞれの班の実績報告書で挙げる。
KAKENHI-PROJECT-12039209
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報酬予測をつくるネットワークの解明
1997年のSchultzの報告から、ドーパミンが報酬の予測誤差を担っているという知見が積み重ねられてきた。しかしこのドーパミンニューロンを直接興奮もしくは抑制しうる因子に何があり得るのかは未だ完全には解明されていない。応募者らは2011年に線条体のストリオソーム(パッチ)領域の直接路ニューロンはドーパミンニューロンが存在する黒質緻密部に投射していることを報告した(Fujiyama et al., 2011)。しかし技術的な限界のために、この報告も黒質緻密部への投射軸索が直接ドーパミンニューロンにシナプスを作成していることの証明までは至らなかった。一方、応募者らはH2425年の公募研究で、「報酬予測をつくるネットワークの解明」のために大脳基底核の中継核である視床下核および淡蒼球外節に対し、ウイルスベクタを用いた単一神経トレース等を行った(視床下核:Koshimizu et al., 2013;淡蒼球外節: Fujiyama et al., Neurosci2013報告)。この研究の過程で、淡蒼球外節の単一ニューロンの軸索がドーパミンニューロンが存在する黒質緻密部に投射していることを偶然発見した(Fujiyama et al., Neurosci2013報告)。25年度が最終年度であるため、記入しない。25年度が最終年度であるため、記入しない。1997年のSchultzの報告から、ドーパミンが報酬の予測誤差を担っているという知見が積み重ねられてきた。しかしこのドーパミンニューロンを直接興奮もしくは抑制しうる因子に何があり得るのかは未だ完全には解明されていない。応募者らは2011年に線条体のストリオソーム(パッチ)領域の直接路ニューロンはドーパミンニューロンが存在する黒質緻密部に投射していることを報告した(Fujiyama et al., 2011)。しかし技術的な限界のために、この報告も黒質緻密部への投射軸索が直接ドーパミンニューロンにシナプスを作成していることの証明までは至らなかった。一方、応募者らはH2425年の公募研究で、「報酬予測をつくるネットワークの解明」のために大脳基底核の中継核である視床下核および淡蒼球外節に対し、ウイルスベクタを用いた単一神経トレース等を行った(視床下核:Koshimizu et al., 2013;淡蒼球外節: Fujiyama et al., Neurosci2013報告)。この研究の過程で、淡蒼球外節の単一ニューロンの軸索がドーパミンニューロンが存在する黒質緻密部に投射していることを偶然発見した(Fujiyama et al., Neurosci2013報告)。(1)線条体介在細胞への皮質・視床入力様式の比較解析線条体は層構造やカラム構造を持たず、それぞれの神経が大脳皮質や視床からどのような入力を受けているのかを解析することには困難があった。今回、介在神経の一つであるパルブアルブミン陽性ニューロンの細胞体と樹状突起膜に緑色蛍光タンパクを発現する遺伝子改変マウスを作成した(Kameda et al., 2012; Hioki et al., 2013)。このマウスを用い、小胞性グルタミン酸トランスポーターの免疫組織化学を行うことによって、大脳皮質および視床からパルブアルブミン陽性ニューロンへの入力様式を解析した。パルブアルブミン陽性ニューロンは大脳皮質のみならず視床からも強い入力を受けており、大脳皮質からの投射は遠位樹状突起を好んで投射していることがわかった。(2)大脳基底核の領域間結合解析昨年度遺伝子改変ウイルスベクタを用いた単一軸索染色を用いて視床下核および視床投射ニューロンの投射様式を調べるために用いた(Koshimizu et al., in press; Ohno et al., 2012)。これと同じ手法を用いて大脳基底核の中継核である淡蒼球外節ニューロン(Fujiyama et al.,学会発表)と視床下核ニューロンの投射様式を解析した。淡蒼球外節ニューロンは吻側から尾側にかけて投射様式の違う少なくとも3領域が存在することがわかった(Fujiyama et al.,学会発表)。また、視床線条体投射についても投稿準備中である(Unzai et al.,学会発表)。2012年4月に申請者の異動があり、研究室の立ち上げ等でやや実験が遅れている。しかし、電子顕微鏡、共焦点顕微鏡、パッチクランプのセット、無麻酔のin vivoパッチのセット、マルチニューロン記録の装置などを導入したことで、実験環境はほぼ整いつつある。また、異動した先のキャンパスで現在P2実験ができないため(来年度キャンパス移転に伴いこの状況は解消される)、滋賀医科大学医学研究科の客員教授に就任し、こちらでP2実験を共同研究として続行している。遺伝子組み換えウイルスを用いた神経投射様式の同定は、基底核のほぼ全ての領域で進んでおり、20122013年に報告した視床下核投射ニューロン(Koshimizu et al., in press)、視床後核投射ニューロン(Ohno et al., 2012)に加え、本研究期間中に淡蒼球外節投射ニューロン(Fujiyama et al.,学会発表)、視床線条体投射
KAKENHI-PUBLICLY-24120510
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報酬予測をつくるネットワークの解明
ニューロン(Unzai et al.,学会発表)、黒質網様部投射ニューロン(Matsuda et al.,学会発表)に関しては各々論文発表まで行うことを予定している。電気生理学実験のほうはパッチクランプと傍細胞記録の実験系が立ち上がっている。形態学的手法で見つけた淡蒼球外節ー線条体投射ニューロンの電気生理学的特性を傍細胞記録で、このニューロンが線条体のニューロンに実際にシナプスをしているのかをダブルパッチの手法で確認しているところである。(1)遺伝子工学を導入した神経形態学同志社大学でP2施設が整うまでは客員教授を務める滋賀医科大学医学研究科で、学内でP2施設が整ってからは同志社大学でウイルスベクターおよび遺伝子改変動物を用いた実験をおこなう。(2)シングルニューロンの電気生理特性と投射様式の解析今までの傍細胞記録では、電気生理所見をとった後のニューロンの細胞体の可視化はできても、その軸索を隅々まで可視化することは難しかった。申請者らは、biotinylated tyramine (BT)-glucose oxidase (GO) amplification method (BT-GO法:Furuta et al. 2009; Kuramoto et al., 2009)という方法で、軸索に注入したビオチン付きのトレーサー(Biocytin)を染色段階で増強することにより、これまでより格段に遠位までクリアに可視化する方法を開発している。この手法については、BT-GO法による軸索の可視化を論文発表済み(Kuramoto et al., 2009)で、これと傍細胞記録との組み合わせも麻酔下では成功している。本課題ではこれを無麻酔での報酬課題遂行中のラットに適応する予定である。25年度が最終年度であるため、記入しない。25年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-24120510
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新規タンパク質ラベル化手法を用いたリアルタイム細胞イメージング技術の開発
私は,有機化学の知識に基づく分子設計により,タンパク質の動的挙動の可視化手法を新たに開発し,Johns Hopkins大学の井上先生と共同研究の形をとり,これを細胞遊走時のタンパク質の挙動をリアルタイムイメージングにより解析する実験をおこなった。これにより,開発したタンパク質可視化手法の有用性を確かめると共に,細胞遊走を制御する新たな分子メカニズムの存在を示唆するデータを得た。得られた知見を他の分子生物学的手法,生化学手法と併せることにより,メカニズムに関するより深い理解を目指した結果,細胞遊走の制御において,細胞の癌化の過程において変異が起こることが知られている複数のタンパク質群が関与していることが新たに明らかとなった。細胞遊走は,発生,分化や免疫反応だけではなく,癌細胞の転移とも密接に関わる重要な生命現象であり,今回,細胞の癌化過程において細胞遊走の制御機構に違いが見られることが示唆される結果を得たことにより,癌の転移のメカニズムに関する理解が進み,その新たな治療法を見出すことができる可能性が示された。なお,本共同研究の成果に関しては,手法の開発までの過程を有機化学系の雑誌に,細胞遊走の実験の成果を生物系の雑誌に現在それぞれ投稿中である。私は,この一年間,新規のタンパク質ラベル化手法を開発し,これによって生細胞におけるタンパク質の挙動の変化を可視化解析する実験系を構築し,新たな生命現象の理解を目指す研究を進めてきた.昨年度初めに提出した研究計画書に従い,生細胞の特定のタンパク質を選択的にラベル化するとともに,蛍光強度の増大を実現する分子の創製をおこなった.これには,ラベル化反応の精査および複数の分子の合成による構造活性相開の知見を収集する必要性があったが,Ecole Polytechnique Federale de LausanneのKai Johnsson教授らと意見交換を進めながら実験をおこない,最終的にこれらの課題を克服し,目的を満たす分子を合成することに成功した.これを利用して,細胞内で新生されたEGF受容体が細胞膜上に新たに輸送される過程を選択的に可視化解析することができることが確かめられ,本実験系が細胞膜上の標的タンパク質の挙動を知るための非常に有用な手法として機能することが強く期待される.細胞膜上に発現する受容体の発現レベルは,細胞のリガンドに対する応答性を決定する重要な因子であることから,これに関する理解を深めることは,膜タンパク質の機能に関する「量的コントロール」の仕組みを理解することにつながる点で非常に意義深いと考えている.現在,様々な刺激や培養条件がこれに与える影響を精査すると共に,その調節機構に関する理解を進めるための研究をおこなっている.私は,有機化学の知識に基づく分子設計により,タンパク質の動的挙動の可視化手法を新たに開発し,Johns Hopkins大学の井上先生と共同研究の形をとり,これを細胞遊走時のタンパク質の挙動をリアルタイムイメージングにより解析する実験をおこなった。これにより,開発したタンパク質可視化手法の有用性を確かめると共に,細胞遊走を制御する新たな分子メカニズムの存在を示唆するデータを得た。得られた知見を他の分子生物学的手法,生化学手法と併せることにより,メカニズムに関するより深い理解を目指した結果,細胞遊走の制御において,細胞の癌化の過程において変異が起こることが知られている複数のタンパク質群が関与していることが新たに明らかとなった。細胞遊走は,発生,分化や免疫反応だけではなく,癌細胞の転移とも密接に関わる重要な生命現象であり,今回,細胞の癌化過程において細胞遊走の制御機構に違いが見られることが示唆される結果を得たことにより,癌の転移のメカニズムに関する理解が進み,その新たな治療法を見出すことができる可能性が示された。なお,本共同研究の成果に関しては,手法の開発までの過程を有機化学系の雑誌に,細胞遊走の実験の成果を生物系の雑誌に現在それぞれ投稿中である。
KAKENHI-PROJECT-08J10789
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SNS上のニュース「消費」がもたらすメディア・システムの変容に関する国際比較研究
2017年度はインタビュー調査を中心に研究を進めた。その傍ら、海外の共同研究者たちとの交流を通して本研究の理論的な議論を進め、その考察の成果を出してきた。とりわけ下記で挙げる国際学会International Communication Associationのサンディエゴ大会では、共同研究者たちと交流し、日本のケースとしてつぎのような発表をした。2つめの"Distribution Matters"のテーマ部会では、共同研究者Pablo Boczkowskiとともに参加し、SNSを情報の分配(distribution)装置と見なすことで、個人におけるニュース概念や公共性のイメージが変化していることについて非常に有意義な意見交換をし、今後のインタビュー分析の成果につなげられる理論的支柱を得ることとなった。2017年度にはインタビュー対象者の選定を行っていたところ、当初の想定以上に被験者の協力が得られず、特に女性の20、30代、男性の40、50代のインタビュイーの確保に時間を要することが判明した。本研究遂行上、さまざまな学歴、社会階層の老若男女をインタビュー対象者とすることが不可欠であることから、対象者の選定期間を延長する必要が生じ、対象者の選定・インタビュー調査に6か月の遅延が生じた。しかし、2017年度にその要因について精査し、2018年度には学生アシスタントを増やしてこの点について解決するメドをたて、遅れを取り戻すようにした。インタビュー調査をさらに進めると同時に、今後は、米国、イスラエル、フィンランド、アルゼンチンの各国の研究者とデータ分析に入る。インタビュー調査をもとにした論文を国際査読ジャーナルに投稿予定をしている。また、チームで国際査読ジャーナルに「SNS上のニュース消費」をテーマにした特集を提案することを企画しており、まずはそこに論文投稿することになっている。なお、今後もこれまでどおり、月1,2回、各国の研究者とのスカイプ会議をしていく。さらに、量的調査を実施し、質的な調査を補完する計画である。2017年度はインタビュー調査を中心に研究を進めた。その傍ら、海外の共同研究者たちとの交流を通して本研究の理論的な議論を進め、その考察の成果を出してきた。とりわけ下記で挙げる国際学会International Communication Associationのサンディエゴ大会では、共同研究者たちと交流し、日本のケースとしてつぎのような発表をした。2つめの"Distribution Matters"のテーマ部会では、共同研究者Pablo Boczkowskiとともに参加し、SNSを情報の分配(distribution)装置と見なすことで、個人におけるニュース概念や公共性のイメージが変化していることについて非常に有意義な意見交換をし、今後のインタビュー分析の成果につなげられる理論的支柱を得ることとなった。2017年度にはインタビュー対象者の選定を行っていたところ、当初の想定以上に被験者の協力が得られず、特に女性の20、30代、男性の40、50代のインタビュイーの確保に時間を要することが判明した。本研究遂行上、さまざまな学歴、社会階層の老若男女をインタビュー対象者とすることが不可欠であることから、対象者の選定期間を延長する必要が生じ、対象者の選定・インタビュー調査に6か月の遅延が生じた。しかし、2017年度にその要因について精査し、2018年度には学生アシスタントを増やしてこの点について解決するメドをたて、遅れを取り戻すようにした。インタビュー調査をさらに進めると同時に、今後は、米国、イスラエル、フィンランド、アルゼンチンの各国の研究者とデータ分析に入る。インタビュー調査をもとにした論文を国際査読ジャーナルに投稿予定をしている。また、チームで国際査読ジャーナルに「SNS上のニュース消費」をテーマにした特集を提案することを企画しており、まずはそこに論文投稿することになっている。なお、今後もこれまでどおり、月1,2回、各国の研究者とのスカイプ会議をしていく。さらに、量的調査を実施し、質的な調査を補完する計画である。
KAKENHI-PROJECT-17H01833
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“Precision Prosthodontics”に向けた骨機能チップの開発
歯を失った後の顎堤吸収や骨再生の「個人差」は補綴・インプラント治療に大きな影響を与える。本研究では,生体組織を疑似した骨オルガノイド培養系を用いることで,患者個人の骨代謝・骨再生を試験管内に再現し,術前診断に活用する技術基盤の構築を目的とする。そのために,患者の体質を反映するiPS細胞を用いた骨の生体機能チップ(Organ-on-a-chip)開発を試み,“Precision Prosthodontics(高精度補綴歯科治療)"への道筋を探索する。歯を失った後の顎堤吸収や骨再生の「個人差」は補綴・インプラント治療に大きな影響を与える。本研究では,生体組織を疑似した骨オルガノイド培養系を用いることで,患者個人の骨代謝・骨再生を試験管内に再現し,術前診断に活用する技術基盤の構築を目的とする。そのために,患者の体質を反映するiPS細胞を用いた骨の生体機能チップ(Organ-on-a-chip)開発を試み,“Precision Prosthodontics(高精度補綴歯科治療)"への道筋を探索する。
KAKENHI-PROJECT-19H03840
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H03840
サケ・マス卵のホスビチンおよびリン含有ペプチドの化学的性状に関する研究
ニジマス成熟卵にはリン含量の高いタンパク質のホスビチンのほかに、これより低分子のリン含有ペプチドが存在することをこれまでに報告してきたが、本研究ではこれらの化学的性状を明らかにしたいと考えた。ニジマス成熟卵にトリクロル酢酸溶液を加えホモジナイズし、エーテルでトリクロル酢酸を除去した後、エタノールを加えてリン含有ペプチドを析出させた。これを陰イオン交換樹脂Dowex1-×2カラム(1.6×55cm)にかけ、0.4Mピリジン-ギ酸緩衝液、pH5.5により分画したところ少なくも12の画分に分けられた。引き続いてこれらの中の主要な画分をゲルろ過Sephadex G-50カラム(1.6×95cm)に付し0.3M酢酸ナトリウム、pH4.5で溶出したところ、さらに2-3の画分に細分された。これらはおおむね分子量1.100-2.100および分子量4.200-5.500のペプチドから成り、それぞれセリンを主体とする特異的な構成アミノ酸パターンをもち、またセリン量にほぼ匹敵するリン酸を保有することを明らかにした。そこでこれらの分析結果を基にして15種のリン含有ペプチドについて推定アミノ酸構成を提示した。次ぎに、リン含有ペプチドを高速液体クロマトグラフのカラムAsahipak GS32OH(0.76×25cm)に添加し分離条件を検討したところ、溶出液として50mMリン酸ナトリウムpH7.0において最も分離が良く、アセトニトリル、n-プロパノールなどの有機溶剤の添加をしてもこれらの分離はあまり影響を受けないこと、またペプチドの検出法としてはo-フタルアルデヒドによる蛍光法よりも210nmによる紫外検出法のほうが良好であることを知った。このような高速液体クロマトグラフィによりリン含有ペプチドのクロマトグラムのパターンの特徴を明らかにすることができたので、この方法を用いて各種魚卵のリン含有ペプチドの特性および卵成熟中の変化を検討したいと考えている。ニジマス成熟卵にはリン含量の高いタンパク質のホスビチンのほかに、これより低分子のリン含有ペプチドが存在することをこれまでに報告してきたが、本研究ではこれらの化学的性状を明らかにしたいと考えた。ニジマス成熟卵にトリクロル酢酸溶液を加えホモジナイズし、エーテルでトリクロル酢酸を除去した後、エタノールを加えてリン含有ペプチドを析出させた。これを陰イオン交換樹脂Dowex1-×2カラム(1.6×55cm)にかけ、0.4Mピリジン-ギ酸緩衝液、pH5.5により分画したところ少なくも12の画分に分けられた。引き続いてこれらの中の主要な画分をゲルろ過Sephadex G-50カラム(1.6×95cm)に付し0.3M酢酸ナトリウム、pH4.5で溶出したところ、さらに2-3の画分に細分された。これらはおおむね分子量1.100-2.100および分子量4.200-5.500のペプチドから成り、それぞれセリンを主体とする特異的な構成アミノ酸パターンをもち、またセリン量にほぼ匹敵するリン酸を保有することを明らかにした。そこでこれらの分析結果を基にして15種のリン含有ペプチドについて推定アミノ酸構成を提示した。次ぎに、リン含有ペプチドを高速液体クロマトグラフのカラムAsahipak GS32OH(0.76×25cm)に添加し分離条件を検討したところ、溶出液として50mMリン酸ナトリウムpH7.0において最も分離が良く、アセトニトリル、n-プロパノールなどの有機溶剤の添加をしてもこれらの分離はあまり影響を受けないこと、またペプチドの検出法としてはo-フタルアルデヒドによる蛍光法よりも210nmによる紫外検出法のほうが良好であることを知った。このような高速液体クロマトグラフィによりリン含有ペプチドのクロマトグラムのパターンの特徴を明らかにすることができたので、この方法を用いて各種魚卵のリン含有ペプチドの特性および卵成熟中の変化を検討したいと考えている。
KAKENHI-PROJECT-61560231
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61560231
蛋白質立体構造データベースからのデータマイニングに関する研究
本研究では、蛋白質立体構造データベースから蛋白質機能解析に有用な知識の自動発見を実現する手法を開発した。3次元データ処理、構造データマイニング、テキストマイニング、情報フィルタリングなどの様々な情報処理技術について検討し、プロトタイプ実装を通した評価を実施した。1.立体構造データからの蛋白質相互作用知識のプロファイル化と類似作用蛋白質検索への応用蛋白質の多くは、表面上の局所的な部位で他の分子と相互作用することにより機能する。そこで、同一の相互作用性を有している相互作用部位の原子配置・特性をもとに、相互作用プロファイルを自動生成する方式について検討した。作成した相互作用プロファイルをデータベース内の蛋白質の分子構造と3次元空間上で照合することにより、類似作用蛋白質検索を実現した。2.蛋白質分子表面データからの表面モチーフの発見蛋白質分子表面から、頻出する局所的表面部位を計算機で自動抽出することにより、機能部位(表面モチーフ)を発見する方式を開発した。特に出現頻度、表面部位の大きさ、グループ特異度や、負例を活用した表面部位の選別方式について検討し、有意な表面モチーフの高精度な発見を実現した。3.立体構造データを利用した文献からの蛋白質機能情報抽出文献から蛋白質機能情報文を、計算機を用いて自動抽出する方式について検討した。提案手法では、蛋白質と化合物の原子間の距離をもとに相互作用候補部位を特定する。得られた部位情報とテキスト処理を併用するとともに、利用者からのフィードバック情報を利用した再学習機構の導入により、高精度な情報抽出を実現した。本研究では、蛋白質立体構造データベースから蛋白質機能解析に有用な知識の自動発見を実現する手法を開発した。3次元データ処理、構造データマイニング、テキストマイニング、情報フィルタリングなどの様々な情報処理技術について検討し、プロトタイプ実装を通した評価を実施した。1.立体構造データからの蛋白質相互作用知識のプロファイル化と類似作用蛋白質検索への応用蛋白質の多くは、表面上の局所的な部位で他の分子と相互作用することにより機能する。そこで、同一の相互作用性を有している相互作用部位の原子配置・特性をもとに、相互作用プロファイルを自動生成する方式について検討した。作成した相互作用プロファイルをデータベース内の蛋白質の分子構造と3次元空間上で照合することにより、類似作用蛋白質検索を実現した。2.蛋白質分子表面データからの表面モチーフの発見蛋白質分子表面から、頻出する局所的表面部位を計算機で自動抽出することにより、機能部位(表面モチーフ)を発見する方式を開発した。特に出現頻度、表面部位の大きさ、グループ特異度や、負例を活用した表面部位の選別方式について検討し、有意な表面モチーフの高精度な発見を実現した。3.立体構造データを利用した文献からの蛋白質機能情報抽出文献から蛋白質機能情報文を、計算機を用いて自動抽出する方式について検討した。提案手法では、蛋白質と化合物の原子間の距離をもとに相互作用候補部位を特定する。得られた部位情報とテキスト処理を併用するとともに、利用者からのフィードバック情報を利用した再学習機構の導入により、高精度な情報抽出を実現した。蛋白質の機能は局所的な表面部位(活性部位)の形状や物性などにより決定され、類似した機能を有する蛋白質には、しばしば、表面部位の類似性が認められる。そこで本研究では、活性部位が、複数の異なる蛋白質に共通して観察されることに着眼し、蛋白質立体構造データベースをもとに、頻出する類似局所表面部位を表面モチーフとして自動抽出するシステムSUMOMOの開発を進めている。本年度は、SUMOMOが抽出した表面モチーフをもとにデータマイニングにより、活性部位の候補となる有意性の高い表面モチーフを選別する方式に関する研究を実施した。活性部位をはじめとする蛋白質の局所的構造は保存性が強く、いくつかの蛋白質に共通して見られる。一方で活性部位の特異性のため、ある活性部位に類似した構造は、様々な蛋白質上に見られる普遍的なものではなく、特定の蛋白質グループに偏在する傾向がある。そこで、局所的構造の類似性に基づいて蛋白質のクラスタリングを行ない、グループ内の蛋白質に共通して存在し、かつ多数の蛋白質グループにまたがって見られることのない表面モチーフを活性部位候補と見なすことにより、表面モチーフのマイニングを実現する。4種類の機能グループに所属する蛋白質15個の立体構造データをもとに抽出された表面モチーフ3,183個に対して、提案手法を適用し、マイニングを実施した結果、4種類の各機能に対応する表面モチーフを一切消去することなく、表面モチーフの個数を14.1%に削減でき、提案手法の有効性が確認された。本研究では、蛋白質立体構造データベースをもとに、その系統的な計算機処理を通して、機能の解析に有用な様々な情報を発見する手法について検討している。本年度は、類似相互作用蛋白質検索のためのプロファイル抽出、ならびに、立体構造データベースを活用した文献からの情報抽出手法について検討した。(1)相互作用データのマイニングによるプロファイル抽出蛋白質と化合物の複合体に関する立体構造データをもとに、同一化合物に対する相互作用部位の特徴を、プロファイルとして抽出する方式について検討した。複数の相互作用部位において原子の個数や配置は同一ではないため、原子間の対応を求めることは困難である。そこで、原子頻度分布を求めることにより、相互作用に有意な原子配置を導出する方式を提案した。提案方式により自動生成されたプロファイルをもとに類似相互作用蛋白質検索実験を行った結果、人手で作成したプロファイルと同等の結果が得られ、有効性を確認した。(2)立体構造データベースに基づく機能情報抽出蛋白質構造解析に関する文献内には蛋白質の機能情報が内在しているが、これをテキスト処理のみで抽出することは困難である。
KAKENHI-PROJECT-15500197
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15500197
蛋白質立体構造データベースからのデータマイニングに関する研究
そこで本研究では、立体構造データの利用により、機能情報記述文を特定する方式を提案した。複合体蛋白質に対しては、テキストをもとに作用対象判定ルールにより識別された作用対象と残基との原子間距離を計算し、相互作用の有無を判定することで文の抽出を実現した。また、単体蛋白質に対しては、相同な配列を有する蛋白質の立体構造データから相互作用部位を推定することで、機能情報文を特定する方式を開発した。12編の文献に対する抽出実験の結果、複合体、単体のそれぞれに対して、0.71、0.72のF値が得られ、有効性を確認した。本研究では、近年の構造解析技術の進歩に伴い飛躍的に増大しつつある蛋白質立体構造データベースをもとに、構造からの機能予測、相互作用性解析、機能発現部位の発見など、蛋白質機能解析のために有用な様々な知識や情報を、計算機処理により自動発見・抽出する手法について検討している。本年度は、立体構造データからの蛋白質相互作用知識のプロファイル化と類似相互作用蛋白質検索への応用について重点的に研究した。蛋白質の多くは、その表面上の局所的な部位で他の分子と相互作用することにより機能する。そこで、蛋白質立体構造の中でも、特に他の化合物と複合体を形成しているものに着目し、同一の相互作用性を有している相互作用部位の原子配置・特性をもとに相互作用プロファイルを定義する。本年度は、相互作用原子(化合物原子と直接的に相互作用している蛋白質原子)のみから定義された従来のプロファイルを拡張し、相互作用原子の近接空間内に存在する他原子、ならびに化合物の占有空間を考慮した新たなプロファイルの定義を行った。また、このようにして定義された相互作用プロファイルを、貪欲探索により効率的に自動生成する方式について検討した。さらに、相互作用プロファイルとデータベース内の蛋白質分子構造の効率的な比較を実現するため、幾何的部分ハッシュ法と名づけた新しい三次元構造照合手法を開発した。検索のためのプロトタイプシステムを試作し、複合体の相互作用部位から生成したプロファイルをクエリとする検索実験を通して、提案した相互作用プロファイル構成法ならびに検索手法の有効性を確認した。
KAKENHI-PROJECT-15500197
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がん抑制因子Beclin 1の新規リン酸化サイトの役割の解明
真に有効な抗がん剤の開発は、ヒト医療、獣医療双方にとって重要な課題である。がんではリン酸化酵素キナーゼの異常な活性化とともに、脱リン酸化酵素ホスファターゼの活性抑制が観察され、「ホスファターゼ活性の回復」は新たな創薬標的として期待されるが、ホスファターゼ活性の低下によるがんの悪性化の分子機構は十分に明らかになっていない。オートファジーは異常タンパク質や不良ミトコンドリアなどを分解することで細胞の恒常性維持に働き、がんの抑制に重要な働きを果たしている。オートファジー誘導に必須の因子であるBeclin1は、ヒトの様々ながんにおいて高率に変異や欠損が認められること、ヘテロノックアウトマウスでがんの自然発生率が増加することから、がん抑制因子であることが知られている。したがって、Beclin1の機能がどのように制御されているかを理解することは、発がんメカニズムの解明およびこれを標的とした治療戦略の創出につながるが、その分子機構についてはほとんど明らかになっていない。前年度PP2AがBeclin 1 Ser90を脱リン酸化すること、反対にDAPK3がBeclin 1 Ser90をリン酸化し、オートファジーを調節していることを明らかにした。本年度はBecin1 Ser90のリン酸化が、がんの成長・転移に与える影響と前年度の検討を行っている過程で、見出したPP6によるBeclin1の制御機構の詳細な検討を行った。その結果、Beclin 1 Ser90のリン酸化が腫瘍の成長に影響を与えることをBeclin1 Ser90の変異体を用いた解析により明らかにした。また、PP6はBeclin1の複合体構成を変化させ、オートファジーを制御することをPP6の発現抑制実験により明らかにした。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。真に有効な抗がん剤の開発は、ヒト医療と獣医療の双方にとって重要な課題である。がんではリン酸化酵素キナーゼの異常な活性化とともに、脱リン酸化酵素ホスファターゼの活性抑制が観察され、「ホスファターゼ活性の回復」は新たな創薬標的として期待されるが、ホスファターゼ活性の低下によるがんの悪性化の詳細な分子機構は明らかになっていない。オートファジーは異常タンパク質や不良ミトコンドリアなどを分解することで細胞の恒常性維持に働き、がんの抑制に重要な働きを果たしている。オートファジー誘導に必須の因子であるBeclin1は、ヒトの様々ながんにおいて高率に変異や欠損が認められることや、ヘテロノックアウトマウスでがんの自然発生率が増加することなどから、がん抑制因子であると考えられている。したがって、Beclin1の機能がどのように制御されているかを理解することは、発がんメカニズムの解明およびこれを標的とした治療戦略の創出につながるが、その分子機構についてはほとんど明らかになっていない。本研究は、Beclin1の機能がどのように制御されているかを申請者が同定したBeclin1の新規リン酸化サイトSer90に着目し、Ser90リン酸化の生理的な機能やSer90をリン酸化するキナーゼを同定することを目的とした。本年度は、Beclin1 Ser90がマウス生体や培養細胞において飢餓時にリン酸化されることを見出し、Beclin1 Ser90をリン酸化するキナーゼをキナーゼの阻害剤やin vitroのキナーゼアッセイを行い同定した。さらにBeclin1の変異体を用いた検討からSer90のリン酸化がオートファジーを誘導することを明らかにした。本年度は、項目A「Beclin1 Ser90リン酸化の生理的な役割の解明」と項目B「がんの成長・転移におけるBeclin1 Ser90リン酸化の役割の解明」の2項目を研究項目として立てた。項目Aについてはすべて達成し、Beclin1 Ser90をリン酸化するメカニズムに関連する論文を1報投稿し採択された。また、次年度の研究計画に記載した事項についても研究を開始している。項目Bについては、項目Aを優先した結果、Beclin1の野生型及びSer90変異体発現がん細胞の作成を行ったところであり、当初の予定より若干遅れる結果となっているが、全体を通しておおむね順調に進んでいる。真に有効な抗がん剤の開発は、ヒト医療、獣医療双方にとって重要な課題である。がんではリン酸化酵素キナーゼの異常な活性化とともに、脱リン酸化酵素ホスファターゼの活性抑制が観察され、「ホスファターゼ活性の回復」は新たな創薬標的として期待されるが、ホスファターゼ活性の低下によるがんの悪性化の分子機構は十分に明らかになっていない。オートファジーは異常タンパク質や不良ミトコンドリアなどを分解することで細胞の恒常性維持に働き、がんの抑制に重要な働きを果たしている。オートファジー誘導に必須の因子であるBeclin1は、ヒトの様々ながんにおいて高率に変異や欠損が認められること、ヘテロノックアウトマウスでがんの自然発生率が増加することから、がん抑制因子であることが知られている。したがって、Beclin1の機能がどのように制御されているかを理解することは、発がんメカニズムの解明およびこれを標的とした治療戦略の創出につながるが、その分子機構についてはほとんど明らかになっていない。前年度PP2AがBeclin 1 Ser90を脱リン酸化すること、反対にDAPK3がBeclin 1 Ser90をリン酸化し、オートファジーを調節していることを明らかにした。本年度はBecin1 Ser90のリン酸化が、がんの成長・転移に与える影響と前年度の検討を行っている過程で、見出したPP6によるBeclin1の制御機構の詳細な検討を行った。
KAKENHI-PROJECT-15J07366
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がん抑制因子Beclin 1の新規リン酸化サイトの役割の解明
その結果、Beclin 1 Ser90のリン酸化が腫瘍の成長に影響を与えることをBeclin1 Ser90の変異体を用いた解析により明らかにした。また、PP6はBeclin1の複合体構成を変化させ、オートファジーを制御することをPP6の発現抑制実験により明らかにした。若干の遅れがみられるがんの成長・転移におけるBeclin1 Ser90リン酸化の役割の解明については、すでに変異体を発現させた細胞を作成済みであり、今後は各種の解析を進め当初研究計画に追い付きたい。また、項目Aを進めていく中で、Protein phosphatase 6 (PP6)がBeclin 1の複合体構成を制御し、オートファジーを調節しているという新しい知見が得られたので、今後は並行してPP6によるBeclin 1の制御機構の解明について検討を行っていきたい。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-15J07366
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線維芽細胞の慢性副鼻腔炎における炎症を誘導する細胞としての重要性の解明
上気道の線維目細胞の特性の一部が、下気道の線維目細胞と比較することにより明らかになった。特に、上気道においては、慢性副鼻腔炎という病原微生物の関与が病態形成に深く関わっている疾患がある。まず、グラム陰性菌由来のLPSに上気道線維芽細胞が反応し好酸球遊走因子であるRANTESを産生し、さらにIFN-γとLPSの同時刺激でRANTESの相乗的産生が確認された。またLPSとIL-4の同時刺激でeotaxinやTARCの相乗的産生がみられた。この反応は上気道では、健常な線維芽細胞でもみられたが、健常な下気道線維芽細胞ではみられなかった。現在、toll like receptor (TLR) ligands (TLR2 ligands, TLR3 ligands, TLR5 ligands, TLR7/8 ligands, TLR9 ligands)で上気道線維芽細胞を刺激し、上気道線維芽細胞の自然免疫における役割の解明、慢性副鼻腔炎病態形成への寄与について研究を続けている。上気道の線維目細胞の特性の一部が、下気道の線維目細胞と比較することにより明らかになった。特に、上気道においては、慢性副鼻腔炎という病原微生物の関与が病態形成に深く関わっている疾患がある。まず、グラム陰性菌由来のLPSに上気道線維芽細胞が反応し好酸球遊走因子であるRANTESを産生し、さらにIFN-γとLPSの同時刺激でRANTESの相乗的産生が確認された。またLPSとIL-4の同時刺激でeotaxinやTARCの相乗的産生がみられた。この反応は上気道では、健常な線維芽細胞でもみられたが、健常な下気道線維芽細胞ではみられなかった。現在、toll like receptor (TLR) ligands (TLR2 ligands, TLR3 ligands, TLR5 ligands, TLR7/8 ligands, TLR9 ligands)で上気道線維芽細胞を刺激し、上気道線維芽細胞の自然免疫における役割の解明、慢性副鼻腔炎病態形成への寄与について研究を続けている。健常な鼻の組織と肝の組織や慢性炎症を伴った鼻組織(鼻茸)や肺組織(線維化肺)より線維芽細胞を単離した。これら線維芽細胞が菌体成分(グラム陰性菌のLPS,グラム陽性菌のPeptidoglycan (PGN), Lipoteicoic acid (LTA))と直接反応するか検討した。鼻由来線維芽細胞は炎症の有無に関わらず、すべての菌体成分と反応しRANTESを産生・遊離した。一方、肺由来線維芽細胞は健常なものでは、菌体成分に反応しなかったが、線維化肺由来の線維芽細胞はLPS刺激に対してRANTESのmRNAを誘導した。RANTESの蛋白の遊離はみられなかった。肺由来線維芽細胞はGNやLTAに対して反応はいまのところ認められていない。次にLPSと種々のサイトカインを組み合わせて線維芽細胞を刺激した。LPSとIL-4の同時刺激で、eotaxinが相乗的に鼻由来線維芽細胞から産生された。産生量は炎症の有無に関わらず同程度認められた。この相乗的eotaxinの産生は健常な肝由来の線維芽細胞では認められなかった。健常は皮膚由来の線維芽細胞では認められた。鼻由来線維芽細胞と皮膚由来線維芽細胞を比較すると鼻由来線維芽細胞の方が強い相乗効果が認められた。線維化肺由来の線維芽細胞では今後検討する予定である。この結果から、細菌感染と密接な関係にある慢性副鼻腔炎において、IL-4の発現が鼻・副鼻腔粘膜で亢進する病態があると線維芽細胞からeotaxinが相乗的に産生され、鼻・副鼻腔粘膜に好酸球が浸潤するという機序が推察される。LPSに加えグラム陽性菌の菌体成分であるペプチドグリカン(PGN)やリポタイコ酸(LTA)や、細菌由来物質であるスーパー抗原(たとえばブドウ球菌由来のSEAやSEBなど)を用い鼻腔線維芽細胞を刺激し、好酸球遊走因子(RANTES、Eotaxin)を産生、遊離するかELISA法とRT-PCR法で検討した。PGN、LTAでは、LPSと同様にRANTESの産生がみられた。スーパー抗原刺激でのRANTES産生は少量であった。また、LPS、PGN、LTAとIL-4を組み合わせて刺激すると、鼻腔線維芽細胞や他の部位の線維芽細胞が好酸球遊走因子(Eotaxin)の産生がみられた。特にLPSとIL-4の組み合わせ刺激では、eotaxinの相乗的産生が強くみられた。したがって慢性副鼻腔炎などの鼻疾患において線維芽細胞が炎症を誘導する重要な細胞であることが強く示唆された。また鼻疾患において線維芽細胞は好酸球浸潤と深く関わっていることが示唆された。昨年までの研究で鼻副鼻腔線維芽細胞は、LPSなどの菌体成分と直接反応することがわかり炎症誘導細胞としての役割が解明されつつある。最近、種々のToll like receptor(TLR)とそのリガンドが明らかになっている。
KAKENHI-PROJECT-14571643
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14571643
線維芽細胞の慢性副鼻腔炎における炎症を誘導する細胞としての重要性の解明
TLR2 ligandsとしてLTA,Pam_3CSK4,PGN,Zymosan,TLR3 ligandとしてPoly(1:C),TLR4 ligandとしてLPS,TLR5 ligandとしてflagellin,TLR7/8 ligandとしてssPolyU,TLR9 ligandとしてDNAが入手可能になった。これらTLR ligandsに対する鼻副鼻腔線維芽細胞の反応性を検討している。これまでの鼻副鼻腔線維芽細胞のLPSに対する反応性に加え、TLR2,3,5に対しても反応性があり、外界とも門戸である鼻副鼻腔は線維芽細胞を通して自然免疫に深く関与していることが分かってきている。現在、好酸球や好塩基球などの遊走因子であるRANTESが、どのTLR ligands刺激で線維芽細胞から産生されるか、その産生がIFN-γとの同時刺激でどのように変化するか検討している。
KAKENHI-PROJECT-14571643
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ウズラ骨髄骨の骨形成細胞におけるエストロジェンレセプタ-の免疫組織学的研究
骨髄骨は産卵産の雌鳥の骨髄腔に発達し,卵殻形成のためのカルシゥムの貯臓所として機能している。この骨髄骨の形成はエストロジェン(E_2)によって誘発され,成熟した雄鳥にE_2を投与することによって人為的に形成させることが可能である。しかしながら,骨髄骨の形成を担う骨芽細胞をはじめとする骨形成細胞にE_2が直接的に作用しているかどうか明らかでない。したがって,本研究は産卵ウズラおよびE_2処理を施した雄ウズラを用いて、骨形成細胞のエストロジェンレセプタ-(ER)の検出を免疫組織化学的に試みた。産卵ウズラ骨髄骨の骨形成細胞におけるERを同定するために,産卵ウズラの大腿骨骨幹中央部から骨髄骨を採取してEDTA・2Naで脱灰した後,凍結切片を作製した。これらの凍結切片にERーICA monoclonal Kit(Abbott.Lab)を用いて,ER免疫反応を施して光学顕微鏡および透過型電子顕微鏡によって観察した。その結果,骨髄骨表面に存在する骨芽細胞の核にERの免疫反応産物が認められた。E_2処理雄ウズラの骨形成過程における骨形成細胞のERの同定のために,3ケ月齢の雄ウズラに吉草酸E_2を注射し,注射後24および48時間に大腿骨骨廻中央部を採取した。大腿骨は上記の方法に従って,ERの免疫反応を施して光学顕微鏡および電子顕鏡によって観察した。その結果、E_2の注射後24時間では,大腿骨の骨内膜表面にbone lining cellおよび前骨芽細胞が観察され,これらの骨形成細胞の核にERの免疫反応が認められた。また,E_2注射後48時間では,骨芽細胞による骨髄骨の形成が骨内膜にみられ,骨芽細胞の核にERが確認された。以上のことから,E_2は骨芽細胞による骨髄骨の形成を直接的に刺激するだけでなく,それらの前駆細胞にも直接的に作用し,骨芽細胞の分化を促すことが示唆された。骨髄骨は産卵産の雌鳥の骨髄腔に発達し,卵殻形成のためのカルシゥムの貯臓所として機能している。この骨髄骨の形成はエストロジェン(E_2)によって誘発され,成熟した雄鳥にE_2を投与することによって人為的に形成させることが可能である。しかしながら,骨髄骨の形成を担う骨芽細胞をはじめとする骨形成細胞にE_2が直接的に作用しているかどうか明らかでない。したがって,本研究は産卵ウズラおよびE_2処理を施した雄ウズラを用いて、骨形成細胞のエストロジェンレセプタ-(ER)の検出を免疫組織化学的に試みた。産卵ウズラ骨髄骨の骨形成細胞におけるERを同定するために,産卵ウズラの大腿骨骨幹中央部から骨髄骨を採取してEDTA・2Naで脱灰した後,凍結切片を作製した。これらの凍結切片にERーICA monoclonal Kit(Abbott.Lab)を用いて,ER免疫反応を施して光学顕微鏡および透過型電子顕微鏡によって観察した。その結果,骨髄骨表面に存在する骨芽細胞の核にERの免疫反応産物が認められた。E_2処理雄ウズラの骨形成過程における骨形成細胞のERの同定のために,3ケ月齢の雄ウズラに吉草酸E_2を注射し,注射後24および48時間に大腿骨骨廻中央部を採取した。大腿骨は上記の方法に従って,ERの免疫反応を施して光学顕微鏡および電子顕鏡によって観察した。その結果、E_2の注射後24時間では,大腿骨の骨内膜表面にbone lining cellおよび前骨芽細胞が観察され,これらの骨形成細胞の核にERの免疫反応が認められた。また,E_2注射後48時間では,骨芽細胞による骨髄骨の形成が骨内膜にみられ,骨芽細胞の核にERが確認された。以上のことから,E_2は骨芽細胞による骨髄骨の形成を直接的に刺激するだけでなく,それらの前駆細胞にも直接的に作用し,骨芽細胞の分化を促すことが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-03660275
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03660275
SALCを活用した自律学習推進の実践と検証
本校では自律学習の推進を図るため、平成28年よりSALC(Self-Access Learning Center)を設置し(1)アドバイジングの充実(学習カウンセリング)、(2)英会話、(3)図書室との連携、(4)デジタル教材の活用、の4つを柱とし、生徒の学習支援を行ってきている。そして本研究では(1)のアドバイジングを重点的に取り組んだ。SMARTゴールを活用しながら、生徒自らに短期目標を作成させ、振り返り活動をさせることで、生徒の学習習慣や学習意欲・学習方法にどのような変化をもたらすのかを検証した。その際に教師が問い掛けによるアドバイジングを行い、できるだけ学習者本人が発案したり、選択したりし、主体的に学べるよう留意した。これにより、教員主体となって計画がされている従来の授業とは異なり、学習者が自らの課題を設置し、主体的に学習が行われるようになった。また、漠然と「英語が話せるようになりたい」という目標から「1週間で船橋市の良いところを3つ言えるようにする。そのために毎日3分間帰宅後すぐにスピーチ練習をする。」というような具体的な目標設定ができるようになるなど目標設定の質の向上が顕著であった。同時に、学習習慣や学習に対する意欲の向上も見られた。だが一方で、事後アンケートによると、どのように学習をすれば良いのか分からないという生徒が依然として多く、自律学習者の育成においては目標設定の機会や学習教材の情報の提供だけでは不十分で、トレーニング方法等の情報提供の必要性があるということが本研究により明らかになった。近年、大学の英語教育においては、自律学習を推進する動きが世界中で広がってきている。今後、日本の高校においてもそういった大学や専門機関と連携を取りながら自律した学習者を育成する教育を推進する必要があると考える。本校では自律学習の推進を図るため、平成28年よりSALC(Self-Access Learning Center)を設置し(1)アドバイジングの充実(学習カウンセリング)、(2)英会話、(3)図書室との連携、(4)デジタル教材の活用、の4つを柱とし、生徒の学習支援を行ってきている。そして本研究では(1)のアドバイジングを重点的に取り組んだ。SMARTゴールを活用しながら、生徒自らに短期目標を作成させ、振り返り活動をさせることで、生徒の学習習慣や学習意欲・学習方法にどのような変化をもたらすのかを検証した。その際に教師が問い掛けによるアドバイジングを行い、できるだけ学習者本人が発案したり、選択したりし、主体的に学べるよう留意した。これにより、教員主体となって計画がされている従来の授業とは異なり、学習者が自らの課題を設置し、主体的に学習が行われるようになった。また、漠然と「英語が話せるようになりたい」という目標から「1週間で船橋市の良いところを3つ言えるようにする。そのために毎日3分間帰宅後すぐにスピーチ練習をする。」というような具体的な目標設定ができるようになるなど目標設定の質の向上が顕著であった。同時に、学習習慣や学習に対する意欲の向上も見られた。だが一方で、事後アンケートによると、どのように学習をすれば良いのか分からないという生徒が依然として多く、自律学習者の育成においては目標設定の機会や学習教材の情報の提供だけでは不十分で、トレーニング方法等の情報提供の必要性があるということが本研究により明らかになった。近年、大学の英語教育においては、自律学習を推進する動きが世界中で広がってきている。今後、日本の高校においてもそういった大学や専門機関と連携を取りながら自律した学習者を育成する教育を推進する必要があると考える。
KAKENHI-PROJECT-17H00101
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H00101
三相流動層燃料電池システムの開発
本研究は、スケ-ルアップが容易で大出力が期待できる3次元電極である流動層電極を用いた化学プラント型の燃料電池システムを開発することを目的として研究を行った。これまで三相流動層の気液間物質移動速度の測定し、設計に必要な流動および物質移動特性を調べるとともに、三相流動層アルカリ型燃料電池の水素極および酸素極を製作し、それぞれの電極特性に対するガス流速、電解質濃度、触媒電極粒子、集電体形状などの影響を実験的に明らかにした。その結果、以下の知見が得られた。1.三相流動層、三相気泡塔、通気スラリ-反応器の3つのタイプで、物質移動特性は傾向が異なる。2.水素極の場合、副反応などが起こらないのに対して、酸素極の場合は過酸化物イオンの触媒による分解が起こって混成電位が生成され、平衡電位は理論値からずれた。3.低過電圧の領域で活性化過電圧支配で、水素電極反応は水素の電極粒子表面への吸着が律速である。また、限界電流はOHAA-1BBイオン濃度の増加とともに大きくなり、この領域でOHAA-1BBイオンの溶液本体から電極粒子表面への拡散が律速である。4.酸素極の触媒としてラネ-銀と活性炭に銀を担持させたものを用いたが、銀を担持した活性炭のほうが粒子が大きく懸濁しないため、より大きな電流値が得られた。5.電極粒子と集電体の接触抵抗が水素極および酸素極の流動層電極のオ-ム損失の主な原因である。今後は酸素極および水素極を連結して電解液を循環して流動化し、燃料電源としての性能を評価し、本システムの工業化の可能性を追及する計画である。本研究は、スケ-ルアップが容易で大出力が期待できる3次元電極である流動層電極を用いた化学プラント型の燃料電池システムを開発することを目的として研究を行った。これまで三相流動層の気液間物質移動速度の測定し、設計に必要な流動および物質移動特性を調べるとともに、三相流動層アルカリ型燃料電池の水素極および酸素極を製作し、それぞれの電極特性に対するガス流速、電解質濃度、触媒電極粒子、集電体形状などの影響を実験的に明らかにした。その結果、以下の知見が得られた。1.三相流動層、三相気泡塔、通気スラリ-反応器の3つのタイプで、物質移動特性は傾向が異なる。2.水素極の場合、副反応などが起こらないのに対して、酸素極の場合は過酸化物イオンの触媒による分解が起こって混成電位が生成され、平衡電位は理論値からずれた。3.低過電圧の領域で活性化過電圧支配で、水素電極反応は水素の電極粒子表面への吸着が律速である。また、限界電流はOHAA-1BBイオン濃度の増加とともに大きくなり、この領域でOHAA-1BBイオンの溶液本体から電極粒子表面への拡散が律速である。4.酸素極の触媒としてラネ-銀と活性炭に銀を担持させたものを用いたが、銀を担持した活性炭のほうが粒子が大きく懸濁しないため、より大きな電流値が得られた。5.電極粒子と集電体の接触抵抗が水素極および酸素極の流動層電極のオ-ム損失の主な原因である。今後は酸素極および水素極を連結して電解液を循環して流動化し、燃料電源としての性能を評価し、本システムの工業化の可能性を追及する計画である。燃料電池は新しい高効率発電技術として注目され、いくつかの試作装置がつくられてきたが、液漏れなど装置構造上解決困難なトラブルが次々と発生して今日まで実用化に至っていない。そこで、電解液中に固相の触媒粒子を懸濁させる中に反応ガスを吹き込む三相流動層の燃料電池への応用を提案した。今年度はまず水素極の特性を明らかにする実験を行った。装置本体はアクリル製で、縦50mm、横6.5mm、高さ180mmの2次元流動層2個から成り、1つは水素極用、他方は対極用に用いる。触媒粒子としては銀粒子を、集電体として50mm×60mmのニッケル板を用いた。2つの部屋間は厚さ5mmのガラスフィルタを配置して、粒子の対極への移動を防いだ。電解液は25%水酸化カリウム水溶液である。参照電極はAg/AgCl電極を使用し、作用極との液絡に10%硝酸カリウム溶液を寒天中に保持したものを用いた。分離特性に及ぼす粒子量や粒径の影響を調べたところ、限界電流が小さく影響が殆どないことから気液間物質移動過程が大きな抵抗過程となっていることが考えられた。この知見から、気液間の液膜を乱すことで気液間物質移動を促進させることを試みた。極めて細かい粒子を導入して液膜中に侵入させることと、親水性銀粒子に揆水性を一部付与することの2つを試みたところ、前者は全く効果がないが、後者の方法で限界電流に大きな増加をもたらすことが見い出された。揆水剤としてはPTFEを使用している。律速過程として、気液間物質移動過程が存在することと、その改善方法を検討してきたが、流動状態との関係を明確にして最適の流動条件を求めること、酸素極側の特性を同様に明らかにすること、そして両極を結合して燃料電池を完成させることが今後の課題である。現在、石油・石炭などの化石エネルギ-の大量消費による二酸化炭素の放出によって、地球の温暖化が進行しているという地球環境が問題となっている。この問題は化石エネルギ-の消費を押えるか、あるいはエネルギ-有効利用を推進することによってしか解決できない。
KAKENHI-PROJECT-01850206
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三相流動層燃料電池システムの開発
焼料電池は、化学エネルギ-から電気エネルギ-への理論変換効率100%と高くエネルギ-有効利用発電システムとして期待されている。本研究は、三次元電極である三相流動層を用いた高効率・大容量燃料電池システムを開発しようとするものである。本年度は下記の実験を実施し、所定の成果を得た。1.三相流動層の気液間物質移動速度の測定内径19cm,高さ2.5mの三相流動層に酸素を吹き込み溶存酸素濃度を測定することによって、物質移動速度k_Laを求めた。粒径を88μmから数mmまでと大きく変化させて、粒径の影響を調べ、ガス流速、液物性などの影響も含めた相関式を得た。これによって燃料ガスである水素および酸素の吸収速度の推定が可能となった。2.三相流動層水素極の電極特性の解析内径10cm,高さ80cmのアクリル製三相流動層を製作し、ラニ-ニッケルをアルカリで展開した後、流動粒子として用いた。水酸化カリウム水溶液を電解質とするアルカリ型電池を構成して、水素を吹き込み、ポテンショオスタットを用いて電流一電圧曲線を測定した。この結果、10A以上の大電流が得られ、物質移動の抵抗は小さく、優れた電極が実現できたことを確認した。触媒粒子量、ガス流速などを変化させて、電気化学特性に対する影響を調べた。燃料電池は、エネルギ-効率が高い優れた発電システムとして期待されている。しかし、現在開発されている燃料電池は、二次元構造であるため構造が複雑となり大型化が困難でスケ-ルアップメリットが期待できない。そこで、流動層電極を用いて流動触媒粒子の表面で電気化学反応を行わせ電気を取り出すという、化学プラント型の燃料電池システムを開発することを目的として研究を行った。これまで三相流動層の気液間物質移動速度の測定、三相流動層水素極の電極特性の解析を行なってきたが、最終年度である本年度は新に水素極と同じ大きさ、構造を持つ流動層酸素電極を製作し、その電極特性を調べた。その結果、以下の知見が得られた。1.酸素極の電極反応の理論平衡電極電位は、銀-塩化銀電極に対して0.17Vであるが、測定された平衡電極電位は、ラネ-銀を用いたときは約-0.03V、銀を担持した活性炭の場合は-0.18V-0.35Vを示した。これは、過酸化物イオンの触媒による分解が起こって混成電位が生じためと考えられる。2.電流値が0.10.5Aの領域でTafelプロットは直線にのり、この領域では酸素電極反応の活性化過電圧が支配的であることがわかった。3.オ-ム抵抗のうち、触媒粒子と集電体の間の接触抵抗が大きい。4.触媒としてラネ-銀と活性炭に銀を担持させたものを用いたが、銀を担持した活性炭のほうが粒子が大きく懸濁しないため、より大きな電流値が得られた。5.KOH濃度が大きくなるほど大きな電流が流れた。これらの結果より、アルカリ型三相流動層燃料電池プロセス開発に必要な電極特性を明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-01850206
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企業組織における参加と経済システムの多様性
2年間にわたって、経済システムの多様性をどのように把握するか、すなわち経済システム概念をいかに再構築するかについて研究を行った。本研究では、市場経済システム内部における企業組織の多様性という観点から、主に生産協同組合組織を取り上げた。協同組合を分析するにあたって、従来の二元的経済システム把握に代わり、第3の経済秩序としての「社会的経済」あるいはその構成原理としての「協同の原理」を明示的に取り入れた点は、本研究の独創的な点である。協同組合組織の経済効率上の可能性として、人的資本投資にともなう諸問題を抑制する機能に注目し、そこから市場経済システムにおける協同の原理の役割を議論した。協同組合の経済的viability(存立可能性)とその構成原理としての協同の原理は、これまで別々に議論されてきた、あるいはその関連が十分に考察されてこなかったが、本研究での考察によって、その連関の一部を明らかにすることができた。ただし、ここで示されたいくつかの制度的諸施策が、組織の置かれた市場環境と技術的条件のもとで可能であるという条件は、協同組合という協同の原理にもとづく経済組織のviabilityを制約するものとして示されている。同時に、二元的秩序把握から多元的秩序把握への展開における理論的困難性、経済効率性以外の価値をも重視する組織に関する企業理論的分析および実証分析の困難性など、本研究から明らかになった課題も大きい。多様でありうる経済システムをどのように把握するか、すなわち経済システム概念の再構築は、近年経済システム論の領域において重要なテーマとなっている。本研究では、市場経済システム内部における企業組織の多様性という観点から、生産協同組合組織を取り上げた。協同組合を分析するにあたって、従来の二元的経済システム把握に代わり、第3の経済秩序としての「社会的経済」あるいはその構成原理としての「協同の原理」を明示的に取り入れた点は、本研究の独創的な点である。協同組合の可能性として、人的資本投資にともなう諸問題を抑制する機能に注目し、そこから市場経済システムにおける協同の原理の役割を議論した。協同組合の経済的viability(存立可能性)とその構成原理としての協同の原理は、これまで別々に議論されてきた、あるいはその関連が十分に考察されてこなかったが、本研究での考察によって、その連関の一部を明らかにすることができた。ただし同時に、ここで示されたいくつかの制度的諸施策が、組織の置かれた市場環境と技術的条件のもとで可能であるという条件は、協同組合という協同の原理にもとづく経済組織のviabilityを制約するものとして示されている。社会的経済という第3の秩序原理は、協同組合といった組織を分析する際には特に必要と思われるが、これを市場経済システムにおける諸企業組織の経済理論分析と接合することは大きな困難を伴う。経済秩序としての社会的経済そのものについての議論について、本研究では十分に触れることができなかったが、社会的経済の重要性を社会のあるべき全体像から議論するアプローチと並んで、それを担う経済組織の存立可能性について議論することは、分析的にも政策的にも重要である。人的資本に関する経済分析は、社会的経済というシステム原理とその経済的viabilityを連関させうるひとつのアプローチであるといえる。2年間にわたって、経済システムの多様性をどのように把握するか、すなわち経済システム概念をいかに再構築するかについて研究を行った。本研究では、市場経済システム内部における企業組織の多様性という観点から、主に生産協同組合組織を取り上げた。協同組合を分析するにあたって、従来の二元的経済システム把握に代わり、第3の経済秩序としての「社会的経済」あるいはその構成原理としての「協同の原理」を明示的に取り入れた点は、本研究の独創的な点である。協同組合組織の経済効率上の可能性として、人的資本投資にともなう諸問題を抑制する機能に注目し、そこから市場経済システムにおける協同の原理の役割を議論した。協同組合の経済的viability(存立可能性)とその構成原理としての協同の原理は、これまで別々に議論されてきた、あるいはその関連が十分に考察されてこなかったが、本研究での考察によって、その連関の一部を明らかにすることができた。ただし、ここで示されたいくつかの制度的諸施策が、組織の置かれた市場環境と技術的条件のもとで可能であるという条件は、協同組合という協同の原理にもとづく経済組織のviabilityを制約するものとして示されている。同時に、二元的秩序把握から多元的秩序把握への展開における理論的困難性、経済効率性以外の価値をも重視する組織に関する企業理論的分析および実証分析の困難性など、本研究から明らかになった課題も大きい。
KAKENHI-PROJECT-12730034
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12730034
殺虫剤抵抗性害虫の防除法開発に関する研究
1.ピレスロイド剤抵抗性イエバエの柏倉系についてピレスロイド剤のパーメスリン抵抗性遺伝子の連鎖群解折を行なった。抵抗性遺伝子は劣性であるため、柏倉系と可視突然変異系統aabysと交配し、22世代にわたって、パーメスリンと可視突然変異形質による選抜を重ね、柏倉(aabys)系を得た。この系統を用いて連鎖群解折を行なったところ、主たるパーメスリン抵抗性遺伝子は第3染色体上に存在することが明らかになった。また、第2染色体および第4染色体上の遺伝子もパーメスリン抵抗性に関与していることが示された。2.益子系ピレスロイド剤抵抗性イエバエにおける抵抗性の機構を電気生理学的に調べたところ、ピレスロイド剤に対する神経の感受性の低下が関与していることが明らかにされ、この機構が日本産イエバエにおいてもピレスロイド剤抵抗性の主な要因になっていることが示唆された。3.ペンタベンジルアルコールをアルコール部分に持つピレスロイド剤がkdr型ピレスロイド剤抵抗性イエバエに対して比較的低い抵抗性比を持つことをさらに2・3の化合物で確認した。しかし、電気生理学的実験によって、これらの化合物がkdr型抵抗性を克服するピレスロイド剤のリーディング化合物になる可能性は低いことが示された。4.ジエチル型リン剤抵抗性イエバエの抵抗性の機構をパラチオン,パラオクソンを用いて調べた。抵抗性の機構として、AChEの感受性の低下,グルタチオン転位酵素および薬物酸化酵素の活性の上昇が主要な役割を果たしていることが明らかにされた。5.不斎リンを持つ有機リン剤を合成し、有機リン剤抵抗性イエバエに対する殺虫力を調べた。O-methyl S-2-propynylmethylphophonothiolateが強い殺虫力を示した。1.ピレスロイド剤抵抗性イエバエの柏倉系についてピレスロイド剤のパーメスリン抵抗性遺伝子の連鎖群解折を行なった。抵抗性遺伝子は劣性であるため、柏倉系と可視突然変異系統aabysと交配し、22世代にわたって、パーメスリンと可視突然変異形質による選抜を重ね、柏倉(aabys)系を得た。この系統を用いて連鎖群解折を行なったところ、主たるパーメスリン抵抗性遺伝子は第3染色体上に存在することが明らかになった。また、第2染色体および第4染色体上の遺伝子もパーメスリン抵抗性に関与していることが示された。2.益子系ピレスロイド剤抵抗性イエバエにおける抵抗性の機構を電気生理学的に調べたところ、ピレスロイド剤に対する神経の感受性の低下が関与していることが明らかにされ、この機構が日本産イエバエにおいてもピレスロイド剤抵抗性の主な要因になっていることが示唆された。3.ペンタベンジルアルコールをアルコール部分に持つピレスロイド剤がkdr型ピレスロイド剤抵抗性イエバエに対して比較的低い抵抗性比を持つことをさらに2・3の化合物で確認した。しかし、電気生理学的実験によって、これらの化合物がkdr型抵抗性を克服するピレスロイド剤のリーディング化合物になる可能性は低いことが示された。4.ジエチル型リン剤抵抗性イエバエの抵抗性の機構をパラチオン,パラオクソンを用いて調べた。抵抗性の機構として、AChEの感受性の低下,グルタチオン転位酵素および薬物酸化酵素の活性の上昇が主要な役割を果たしていることが明らかにされた。5.不斎リンを持つ有機リン剤を合成し、有機リン剤抵抗性イエバエに対する殺虫力を調べた。O-methyl S-2-propynylmethylphophonothiolateが強い殺虫力を示した。
KAKENHI-PROJECT-60560058
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-60560058
パーソンズの「制度的個人主義」から現代の個人主義を問いなおす
パーソンズの「制度化された個人主義」概念は60年代以降の社会情勢や認識枠組みの変化と密接に関連している。そこで、本研究はフランソワ・ブリコーのパーソンズ解釈に着目してきた。ブリコーは、パーソンズ理論と法理論との接点に着目し、価値の多様化が一層すすんだ時代において有効な理論としてパーソンズ理論を位置づけている。ブリコーによればパーソンズは自らの理論を演繹的ではなくコモンロー的な性質をもつものとして設定した。これについて理解を深めるために、パーソンズが参加していた法社会学セミナーの講義録を読解した。また、ブリコーがパーソンズ理論の「性質」に解釈の力点を置いた意図については、ブリコーの著作Le bricolage ideologiqueを読むことで明らかにした。彼は、5月革命を経た70年代以降の社会におけるパーソンズ理論の有効性を論証しようとした。すなわち、演繹的に理論を構築した啓蒙哲学者たちの時代から、科学性とイデオロギー性のはざまで揺れ動いたマルクス主義と実存主義の時代をへて、いまや「コモンロー的」に構築される知的ブリコラージュが戦略的に有効である、と主張した。「教養やエスタブリッシュメント」が解体され、専門的知識の正統性がゆらぎ、個々人が多様な価値を抱く現代社会において、個々人がブリコルールになることが求められるようになってきたという。ブリコーは、そのような時代においてサルトルやアルチュセールとは対比的かつレヴィ=ストロースと親和的な立場として、パーソンズの「制度化された個人主義」論を位置づけた。本年度前半に、1960年代から70年代にかけてパーソンズが著した文献のなかから、特に宗教論を重点的に整理検討し、そこで得られた知見を論文「後期パーソンズの宗教社会学の視座」として『社会学研究』第77号に発表した。その内容は、以下のとおりである。-後期パーソンズは、同時代の宗教状況を、従来の教団・宗教組織という枠組みによっては把握困難な『宗教的次元』として表現する。彼にとって現代社会の宗教的次元は、血縁関係や既存の紐帯をこえる普遍主義的価値にもとづく連帯の構築・拡大というテーマの上に位置づけられ、多元的合意の基盤になりうるものであった。本年度後半には、後期パーソンズの宗教社会学と法社会学とに着目し、現代社会における価値と規範という原理的問題にたいする彼の思考の全体像を描き出すために、必要な文献を探索した。特に夏季休暇中にハーバード大学古文書館を訪れ、パーソンズの未公刊文献を収集した。パーソンズ=ブリコー往復書簡をはじめ、パーソンズが参加していたハーバード大学法学セミナーの報告原稿、デュルケム生誕100周年記念シンポジウムにおける演説原稿、宗教論に関する原稿などおよそ600枚をコピーし持ち帰った。その他、複数の学会・研究会に参加したが、報告を行ったのはデュルケーム・デュルケーム学派研究会(於早稲田大学)と日本社会学会(於法政大学)である。報告内容は、普遍主義的な社会的紐帯が果たして実際に諸個人を結びつけコミットさせることが可能であるか、という問題への取り組みとして、後期パーソンズのデュルケム解釈を位置づけるものであった。パーソンズの「個人主義」概念は、彼の理論、思想、アメリカ社会分析など多次元におよぶ問題を内包しているが、そのいずれにおいても「制度的個人主義」という概念がカギとなっている。本年度前半は、『制度的個人主義』という題でパーソンズ研究書を著したフランスの社会学者フランソワ・ブリコーに着目し、以下のことを明らかにした。『制度的個人主義』執筆中のブリコーは、パーソンズ理論のなかでもシンボリック・メディア論と、法学から影響を受けた部分に強い関心を抱いていた。パーソンズはそんなブリコーにたいし、自らが法学者フラーに影響を受けていることを認めている。このことは、その後ブリコーが、行為者を「拘束」すると同時に行為者によって作られもするというデュルケム以来の「行為-環境」概念について考察を深めていく土台となっていると考えられる。たとえば、彼はフランスにおける知識人層を、デュルケムによる職業組合への着目や、パーソンズの専門職分析におけるフィデュシャリー概念から分析した(cf. le bricolage ideologique)。ブリコーは、パーソンズがデュルケムを再評価するなかで見出した「行為-環境」概念を、近代フランス社会分析に接合させたと言うことができる。研究再開後に、ブリコーによるペルー研究を解析し、以上の考察とあわせて論考発表を行う。70年代パーソンズの未公刊草稿の読解、パーソンズ=F・ブリコー往復書簡のうち手書き部分の読解、ブリコーの著作Le bricolage ideogiqueの読解である。これらの作業を通じ、パーソンズの「制度化された個人主義」概念にたいするブリコー独自の解釈を明らかにした。パーソンズの「制度化された個人主義」概念は60年代以降の社会情勢や認識枠組みの変化と密接に関連している。ブリコーの『制度化された個人主義』は、パーソンズ自身やパーソンズ研究者らによって高い評価をうけつつも、これまでその内容がきちんと取り上げられてこなかった。本研究は、ブリコーがこの著書を執筆中にパーソンズとやり取りした書簡を併せ読むことにより、彼独自の視点を取り出すことを試みた。それは、パーソンズ理論と法理論との接点への着眼である。ブリローによればパーソンズ理論(準拠枠やパラダイム)は演繹的ではなくほモンロー的な性質をもっている。ブリコーがこのような解釈に力点を置いた意図については、ブリコーの他の著作Le bricolage ideogiqueを読むことで明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-05J04929
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05J04929
パーソンズの「制度的個人主義」から現代の個人主義を問いなおす
Le bricolage ideogique自体は、啓蒙期から70年代にいたるまでのフランス知識社会史がテーマである。しかし、あらためて『制度化された個人主義』とっきあわせて読んでみれば、5月革命を経た70年代以降の社会におけるパーソンズ理論の有効性を論証する内容となっている。すなわち、演繹的に理論を構築した啓蒙期「哲学者」たちの時代から、科学性とイデオロギー性のはざまで揺れ動いたマルクス主義と実存主義の時期をへて、いまや「コモンロー的」に構築される知的ブリコラージュが戦略的に有効である、という解釈が示されている。この知見の発表は次年度に行う。パーソンズの「制度化された個人主義」概念は60年代以降の社会情勢や認識枠組みの変化と密接に関連している。そこで、本研究はフランソワ・ブリコーのパーソンズ解釈に着目してきた。ブリコーは、パーソンズ理論と法理論との接点に着目し、価値の多様化が一層すすんだ時代において有効な理論としてパーソンズ理論を位置づけている。ブリコーによればパーソンズは自らの理論を演繹的ではなくコモンロー的な性質をもつものとして設定した。これについて理解を深めるために、パーソンズが参加していた法社会学セミナーの講義録を読解した。また、ブリコーがパーソンズ理論の「性質」に解釈の力点を置いた意図については、ブリコーの著作Le bricolage ideologiqueを読むことで明らかにした。彼は、5月革命を経た70年代以降の社会におけるパーソンズ理論の有効性を論証しようとした。すなわち、演繹的に理論を構築した啓蒙哲学者たちの時代から、科学性とイデオロギー性のはざまで揺れ動いたマルクス主義と実存主義の時代をへて、いまや「コモンロー的」に構築される知的ブリコラージュが戦略的に有効である、と主張した。「教養やエスタブリッシュメント」が解体され、専門的知識の正統性がゆらぎ、個々人が多様な価値を抱く現代社会において、個々人がブリコルールになることが求められるようになってきたという。ブリコーは、そのような時代においてサルトルやアルチュセールとは対比的かつレヴィ=ストロースと親和的な立場として、パーソンズの「制度化された個人主義」論を位置づけた。
KAKENHI-PROJECT-05J04929
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05J04929
敗戦直後における日本文学と地方雑誌の関わりについての総合的研究
本研究は、占領期に全国各地で数多く刊行されていた地方雑誌を対象とするものである。いくつかの特徴ある地方雑誌について詳しい調査を行い、これらの雑誌が各地に疎開していた作家を取り込み、講演会や懸賞小説のようなイベントを企画しながら、地方文化の確立に寄与していた実態を確認した。全国各地から多元的に情報を発信していたローカルメディアに注目することは、内容に関する批評に傾きがちだった戦後文学に関する旧来の研究に、メディア論的な観点を付け加えるものである。本研究は、占領期に全国各地で数多く刊行されていた地方雑誌を対象とするものである。いくつかの特徴ある地方雑誌について詳しい調査を行い、これらの雑誌が各地に疎開していた作家を取り込み、講演会や懸賞小説のようなイベントを企画しながら、地方文化の確立に寄与していた実態を確認した。全国各地から多元的に情報を発信していたローカルメディアに注目することは、内容に関する批評に傾きがちだった戦後文学に関する旧来の研究に、メディア論的な観点を付け加えるものである。本年度は、既に復刻が行われている地方雑誌を収集すると共に、国立国会図書館所蔵のプランゲ文庫資料を用いた調査を行い、敗戦直後における地方雑誌の多種多様な広がりの概況について把握した。また、新潟県立図書館および新潟市立中央図書館において「月刊にいがた」「北日本文化」「北日本文学」の各誌に関する調査を行った。以上の調査によって明らかとなったのは、地方雑誌が各地方に疎開していた文化人などを取り込み、講演会の企画、文学賞の制定といったイベントを実施すると共に、離れた地域の雑誌同士で相互に刊行物を寄贈し合うなどの交流を展開し、そうした活動の実績を誌面に記録していくという実態であった。また、こうした地方雑誌の刊行する母体は一様ではなく、地方新聞社、民間の文化運動団体、企業内の文芸団体、青年会など、規模の異なる多様な団体が、それぞれに特色ある雑誌を刊行していた。占領期における上述のようなメディア環境を明らかにすることは、従来、専ら東京から発信される、相対的に大きな雑誌・新聞といったメディアに掲載きれる言説を中心に展開されてきた「戦後文学」研究を相対化する意義があるだろう。地方雑誌に掲載される文学関係記事には、在京メディアの動向を後追いしながら私見を述べるものも少なからずあり、また在京の文学者から直接原稿を確保することを志向する場合も少なくないが、こうした記事の中にも自ずと地域的な偏差がある。このような偏差を分析することは、占領期の文学に「何が書かれていたのか」という問題のみならず、それが「どのように読まれていたのか」という問題をも考える視座を提供するはずである。昨年度に引き続き、プランゲ文庫所収のマイクロ資料の調査を進めるとともに、プランゲ文庫に収蔵されていない資料も含めて、原資料に直接触れるべく、地方の図書館に所蔵されている資料や古書として流通している資料についても調査・収集を試みた。敗戦直後の地方雑誌は多種多様にわたり、また刊行母体も地方新聞からごくローカルな文化団体にいたるまでその規模もまちまちであるため、その概要を把握することには大きな困難が伴う。そのため本年度はまず、地方の文化団体によって刊行されていたいくつかの雑誌を対象に、「編集後記」等に記されている寄贈雑誌一覧などの情報を調査することで地方雑誌相互の交流に関する情報を拾い上げ、個々の地方を越えて広く形成されていた、ローカルメディアのネットワークについて、その一端を明らかにした。具体的な事例としては次のようなことが挙げられる。(1)新潟県で刊行されていた雑誌「北日本文化」が、創刊に先立って北海道を含む各地の地方新聞の紙面において投稿を募っていた事例。(2)岐阜県で発行されていた雑誌「新樹」が、全国各地の地方雑誌に関する創刊情報やレビューなどを随時掲載した事例。一方、調査の過程で確認されたのは、戦後俄に出現したかに見える地方雑誌の刊行という現象が、実際には戦前から連続するものでもある、という位相である。例えば、岐阜県で雑誌「地方文化」を創刊した小木曾旭晃は、明治43年の段階で『地方文芸史』という書物を著しており、以後長らく全国各地の地方文壇の動向をつぶさに追いながら、自ら地方の文化運動に寄与し続けた人物であった。敗戦直後における地方雑誌の出現を一過性の現象として捉えるのではなく、戦前からの連続性において捉え返すことで、専ら東京の出版メディアから刊行された文学作品を中心に編まれてきた近代文学史の叙述を再考するとともに、東京中心で理解されてきた把握されてきた文化の受容と流通のシステムについて広く再考することが可能となるはずである。本年度は、全国各地の特色ある地方雑誌を収集し、敗戦直後における地方雑誌刊行の概況について調査を行った。「中部文学」(高須書房・愛知県豊橋市)他いくつかの雑誌を入手し、目次立てや編集後記などから、編集サイドと執筆者との間に形成されていた関係性を把握すると共に、巻末等に配置されている出版広告の情報から、各地方で展開されていた出版活動に関する研究の足がかりを得た。今後は、こうした情報を起点に、地方における出版社・編集者と執筆者とのネットワーク形成を把握することを目指したい。また、前年度より継続している新潟市周辺での地方出版に関する調査では、新潟市歴史博物館みなとぴあ所蔵資料に関する調査を行い「月刊にひがた」(新潟日報社・新潟県新潟市)全号を閲覧することができた。総目次作成にも着手し、今年度は第1巻第1号から同12号までの目録を完成させた。
KAKENHI-PROJECT-22720077
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22720077
敗戦直後における日本文学と地方雑誌の関わりについての総合的研究
編集部が東京の知識人のみならず、九州を拠点に活動する文学者との連携も試みながら誌面を構成しようとしていたことが窺われ、地域を跨いで活発な動きを見せていた当時の地方雑誌のありようの一端を確認できたことは収穫であった。調査の結果からは、敗戦直後の地方雑誌が、各地の疎開文化人などを巻き込みながら、講演会の企画や懸賞小説のようなイベントを展開して地域の読者層を取り込むと同時に、遠方の地方雑誌やその書き手とも積極的に交流を試みていたという事態が窺われた。こうした実態は、東京を中心にして語られることの多い文学史、思想史、メディア史といった領域における研究に再考を迫るものだと思われる。今後の研究においては、雑誌のみならず地方出版社の活動状況なども視野に入れつつ、敗戦直後の地方における出版活動についての考察が求められるだろう。こうした視点の確保によって、「戦後」という言葉のもと、単線的に語られてきた日本社会の複数性が浮かび上がると思われる。敗戦直後に刊行された地方雑誌の種類と規模はきわめて多様であり、占領期検閲資料であるプランゲ文庫にも収蔵されず散逸してしまったと思われる雑誌が少なくない。こうした資料を調査するには、各地の公立図書館や古書店等へと足を運ぶ必要があると思われるが、そのような機会はこれまでのところ必ずしも十分に確保できているとは言えない状況にある。24年度が最終年度であるため、記入しない。プランゲ文庫資料とその記事内容に関するデータベースを有効に活用することはもちろん、これらを漏れ出る資料の所在については、各地の図書館に直接足を運んで調査を行うことが必要である。直接、原資料に接する作業からは、雑誌の記事内容だけではない諸情報(判型・装偵・用紙など)に関する情報もあり、研究課題の推進のためにこうした調査は必須であると考えられる。また、学習院女子大学図書館の「高橋新太郎文庫」には、敗戦直後に刊行された雑誌の創刊号を揃えたコレクションがあるので、これを有効に活用したい。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22720077
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「いのちの教育」選択授業で、学校変容をめざすピアサポート
研究の目的「いのちを考える」授業の構築と、選択履修した生徒が、生徒自身のテーマを設定して、校内下級生へ向けて一緒に考えるピアサポートの授業展開の研究と、その展開意義及び有効性の検証である。研究の方法新たな授業展開を構築するために先行研究と授業教材を精選した。横浜市立大学との連携で学習支援の大学生ピアサポーターと、昨年度受講した3年生にもピアサポーターを要請した。授業は12月から生徒自身がテーマを深め1学年に出前授業を行うテーマを決定した。1月からは大学生・高校3年生のピアサポーターが2年選択生徒の授業に加わり、ファシリテーターの手法・実際のサポートをした。本番の出前授業は、3月10・11日の2日間、授業選択した2年生が、1年生のクラスに出向き、1クラス8グループに2名ずつファシリテーターとしてシェアリングを行った。「いのちの教育」の有効性の検証ために、授業第1回目と授業終了後3月23日に事前事後調査を行った。また、ピアサポーターの有効性として、授業支援した大学生と高校3年生に事前事後の質問紙により検証した。1年生には、授業を受けた感想や授業の有効性について調査紙によって回答を得た。研究成果1.いのちの授業の構築について:複眼的にいのちを考える教材を、グループワークと講義法・ジグソーやケース分析・プレゼンテーション・フィールドワーク・レポートライティングなど、多様な学び方を駆使して授業展開モデルを構築できた。2.ピアサポートの有効性について:授業選択生徒が、事前に出前授業の具体的イメージとシミュレーションが行えた。当日は、2年生がこれまでの学習成果を発揮して概ね円滑なシェアリングを行えた。1年生は重いテーマだが上級生と話ができた満足感と、教師よりも親近感が持てたとの感想が多く好評を得た。研究の目的「いのちを考える」授業の構築と、選択履修した生徒が、生徒自身のテーマを設定して、校内下級生へ向けて一緒に考えるピアサポートの授業展開の研究と、その展開意義及び有効性の検証である。研究の方法新たな授業展開を構築するために先行研究と授業教材を精選した。横浜市立大学との連携で学習支援の大学生ピアサポーターと、昨年度受講した3年生にもピアサポーターを要請した。授業は12月から生徒自身がテーマを深め1学年に出前授業を行うテーマを決定した。1月からは大学生・高校3年生のピアサポーターが2年選択生徒の授業に加わり、ファシリテーターの手法・実際のサポートをした。本番の出前授業は、3月10・11日の2日間、授業選択した2年生が、1年生のクラスに出向き、1クラス8グループに2名ずつファシリテーターとしてシェアリングを行った。「いのちの教育」の有効性の検証ために、授業第1回目と授業終了後3月23日に事前事後調査を行った。また、ピアサポーターの有効性として、授業支援した大学生と高校3年生に事前事後の質問紙により検証した。1年生には、授業を受けた感想や授業の有効性について調査紙によって回答を得た。研究成果1.いのちの授業の構築について:複眼的にいのちを考える教材を、グループワークと講義法・ジグソーやケース分析・プレゼンテーション・フィールドワーク・レポートライティングなど、多様な学び方を駆使して授業展開モデルを構築できた。2.ピアサポートの有効性について:授業選択生徒が、事前に出前授業の具体的イメージとシミュレーションが行えた。当日は、2年生がこれまでの学習成果を発揮して概ね円滑なシェアリングを行えた。1年生は重いテーマだが上級生と話ができた満足感と、教師よりも親近感が持てたとの感想が多く好評を得た。
KAKENHI-PROJECT-15H00062
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天然ゼオライトの電極への応用と動電現象を用いたレア・アースの回収法に関する研究
動電現象は水分を含む土壌などに電極を差し込み,電圧を印加すると起る現象である.この動電現象は主に水の電気分解,電気泳動現象,電気浸透現象からなり,水溶液中や土壌中の金属などのイオン化している物質を移動させることが可能である.本研究ではこの動電現象を利用して,工業および鉱業地域等におけるレア・アースなどの金属を含有する土壌から回収する方法を検討した.ここでは銅および亜鉛を含む土壌を対象として実験を行い,実験時間は120時間,電圧は0,20,40Vを印加した.また,水の電気分解により陰極側では水酸化物イオンが発生するため,それを打消すために陰極側に酸を添加し,pHを酸性に保って実験を行った.電圧の上昇により除去できる重金属量は増加し,その回収率は最大で30%台となった.また,実験終了後の土壌を5分割にした分析結果より電圧を印加した場合には銅および亜鉛が陰極側よりの土壌ほど高い濃度を示しており,動電現象で金属イオンが陰極側に移動していることがわかった.これらより土壌中の金属をより溶出しやすい環境を作り,実験期間の長期化,印加電圧の上昇を行うことでさらなる回収が見込まれると考えられる.本研究では動電現象を用いることによりレア・アースなどの金属を含む土壌から回収できる可能性があることが明らかになった.また,電極に関しては本来絶縁体である天然ゼオライトを電極材料として取り上げた.天然ゼオライトに導電性を持たせるために電気伝導体であるカーボン粉末を混合させて,固相反応法にて焼結を行った.そして,導電特性,イオン吸着特性を測定した結果,天然ゼオライトに30wt%のカーボン粉末を添加することにより導電性を持たせることができた.また,ゼオライトの特徴である吸着特性も消失していないことが明らかになった.天然ゼオライトに導電性を持たせる一つの手法として,当初はゼオライトへのITO薄膜の塗布を検討した.しかし,天然ゼオライトにより高い導電性とイオン吸着性を持たせるためには導電性粉末を混合する方法がより有効的であると考えられたため,今年度は天然ゼオライトに導電性粉末を混合した試料を作成しその特性を調べた.添加する粉末にはアルミ,銅,ニッケルなどの金属粉末とカーボン,グラファイトといった非金属粉末が考えられる.この中でカーボンは安価であり金属粉末のように熱での酸化による抵抗率の低下がない,化学的に比較的安定といった利点を持つ.そこで本研究では,カーボン粉末を選択し固相反応法により天然ゼオライトと混合させることで,導電性を持った天然ゼオライトを作製し,その抵抗率,イオン吸着性を測定した.その結果,天然ゼオライトに30wt%程度のカーボンを混合し焼成する事により,本来絶縁体である天然ゼオライトに導電性を持たせる事ができ,また,ゼオライトの特徴であるイオン吸着性も失われない事が明らかになった.動電現象は水分を含む土壌などに電極を差し込み,電圧を印加すると起る現象である.この動電現象は主に水の電気分解,電気泳動現象,電気浸透現象からなり,水溶液中や土壌中の金属などのイオン化している物質を移動させることが可能である.本研究ではこの動電現象を利用して,工業および鉱業地域等におけるレア・アースなどの金属を含有する土壌から回収する方法を検討した.ここでは銅および亜鉛を含む土壌を対象として実験を行い,実験時間は120時間,電圧は0,20,40Vを印加した.また,水の電気分解により陰極側では水酸化物イオンが発生するため,それを打消すために陰極側に酸を添加し,pHを酸性に保って実験を行った.電圧の上昇により除去できる重金属量は増加し,その回収率は最大で30%台となった.また,実験終了後の土壌を5分割にした分析結果より電圧を印加した場合には銅および亜鉛が陰極側よりの土壌ほど高い濃度を示しており,動電現象で金属イオンが陰極側に移動していることがわかった.これらより土壌中の金属をより溶出しやすい環境を作り,実験期間の長期化,印加電圧の上昇を行うことでさらなる回収が見込まれると考えられる.本研究では動電現象を用いることによりレア・アースなどの金属を含む土壌から回収できる可能性があることが明らかになった.また,電極に関しては本来絶縁体である天然ゼオライトを電極材料として取り上げた.天然ゼオライトに導電性を持たせるために電気伝導体であるカーボン粉末を混合させて,固相反応法にて焼結を行った.そして,導電特性,イオン吸着特性を測定した結果,天然ゼオライトに30wt%のカーボン粉末を添加することにより導電性を持たせることができた.また,ゼオライトの特徴である吸着特性も消失していないことが明らかになった.
KAKENHI-PROJECT-13875054
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13875054
ひまわり8号エアロゾルデータの国際地上リモートセンシング観測網による高確度検証
本研究の目的は、新時代に突入した我が国の高時間・高空間解像度の静止気象衛星ひまわり8号のエアロゾルデータを高確度で検証することである。これは、ひまわり8号が欧米の新世代の静止気象衛星に先駆けたものである上、高時間・高空間解像度データに基づくこれまでにない高度な応用研究を世界に先駆けて開拓するために不可欠である。アジアを中心に構築した独自の地上リモートセンシング観測網(SKYNET)だけでなく、他の国際観測網(AERONET, GAW-PFR)の観測機器を保有し、それらの国際観測網と連携して高確度に検証比較を本研究代表者のみが可能な研究である。H30年度は、これまでの検証研究を発展させる形で、地上観測網データを用いた高次の検証比較研究を実施した。2018年11月には千葉大学で実施した集中観測において、SKYNET/スカイラジオメーターのエアロゾル光学的厚さ(AOT)データ(新規開発した共通自動解析アルゴリズム(SR-CEReS)で高精度導出)を基準にして、ひまわり8号およびGCOM-C(しきさい)のAOTデータの評価を行った。両衛星データは0.05以内で一致したことが分かった。しかしながら、スカイラジオメーターの値よりも過大となる傾向があることも分かった。4方位角(東西南北)に向けた多軸差分吸収分光法(MAX-DOAS)装置による観測などから、この過大傾向はエアロゾル分布の空間不均一性で説明できなかった。GCOM-Cとひまわり8号の値はお互いに良く一致していることから、過大評価の要因は両方の導出アルゴリズムに共通している項目が原因であることが示唆された。ひまわり8号の値が過大となる傾向は、早朝や夕方の太陽高度が低いときに顕著となる傾向も認められた。これらのことは、今後のひまわり8号のデータ質改善、ひいては応用研究に役立つことが期待される。本研究の目的は、新時代に突入した我が国の高時間・高空間解像度の静止気象衛星ひまわり8号のエアロゾルデータを高確度で検証することである。これは、ひまわり8号が欧米の新世代の静止気象衛星に先駆けたものである上、高時間・高空間解像度データに基づくこれまでにない高度な応用研究を世界に先駆けて開拓するために不可欠である。アジアを中心に構築した独自の地上リモートセンシング観測網(SKYNET)だけでなく、他の国際観測網(AERONET, GAW-PFR)の観測機器を保有し、それらの国際観測網と連携して高確度に検証比較を行う応募者のみが可能な研究である。H28年度は、ひまわり8号のエアロゾルデータ等を千葉大学のSKYNETデータ解析サーバーに整備した。また、SKYNET千葉サイトに設置されている各観測網の観測測器を検定した。その上で、SKYNET千葉サイトにおいて、SKYNET, AERONET, WMO-PFRの3測器による同時観測を開始し、国際基準で相互比較を実施、エアロゾル光学的厚さ(AOD)が±0.01以内で一致したことが分かった。また、比較的大きな差は観測時刻や時間分解能の違いによって生じたことが分かった。評価結果を基に測器およびアルゴリズムの改善を細部まで検討し、新しいアルゴリズムを開発した。その上で、SKYNETデータとひまわり8号データの予備的な比較検証を実施した。SKYNET千葉サイトにおいて、ひまわり8号のAOD値が0.05-0.10程度、系統的に過大となっていることが分かった。しかしながら,現段階においても,日々のAODの変動だけでなく,日内変動も地上観測データと整合していることが分かった。特に日内変動においてはMODIS等の低軌道衛星からは決して得られない。このように,ひまわり8号によってエアロゾルの面的な情報だけでなく,日内変動の情報も得られることが分かった。計画通り、ひまわり8号のエアロゾルデータを千葉大学のSKYNETデータ解析サーバーに整備した。また、並行して、SKYNET千葉サイトに設置されている各観測網の観測測器を気象研究所やハワイ・マウナロアでの観測等を基に精密に検定した。その上で、SKYNET千葉サイトにおいて、SKYNET, AERONET, WMO-PFRの3測器による同時観測を開始し、国際基準で相互比較を実施、エアロゾル光学的厚さ(AOD)の相違を定量的に評価、その要因を明らかにした。評価結果をもとに測器およびアルゴリズムの改善を細部まで検討し、世界最高レベルのデータ確度・精度を担保するアルゴリズム開発を進めた。その上で、SKYNETデータとひまわり8号データの予備的な比較検証を実施し、ひまわり8号データの系統的な誤差を定量的に評価するとともに、有用性を明らかにした。以上より、おおむね順調に進展していると評価した。本研究の目的は、新時代に突入した我が国の高時間・高空間解像度の静止気象衛星ひまわり8号のエアロゾルデータを高確度で検証することである。これは、ひまわり8号が欧米の新世代の静止気象衛星に先駆けたものである上、高時間・高空間解像度データに基づくこれまでにない高度な応用研究を世界に先駆けて開拓するために不可欠である。アジアを中心に構築した独自の地上リモートセンシング観測網(SKYNET)だけでなく、他の国際観測網(AERONET, GAW-PFR)の観測機器を保有し、それらの国際観測網と連携して高確度に検証比較を行う応募者のみが可能な研究である。H29年度は、ひまわり8号のエアロゾル等のデータの整備や予備的な比較検証を継続した。前年度までの検証研究を発展させる形で、地上観測網データをひまわり8号の通年データと比較した。両者の相関関係を統計的に解析したところ、観測地点上空1ピクセルのひまわり8号のエアロゾル
KAKENHI-PROJECT-16K00512
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K00512
ひまわり8号エアロゾルデータの国際地上リモートセンシング観測網による高確度検証
光学的厚さ(AOD)データについては、地上観測地点と水平距離が最も近いにもかかわらず、相関係数は0.6程度であることが分かった。他方、地上観測地点に最も近い海上のAODデータについては、相関係数は0.9を越えたことが分かった。観測地点近傍の様々な陸上・海上のピクセルについても同様に相関係数を調べたところ、海上のAODデータのほうが相関係数が高いという明瞭な傾向を見い出すことができた。このことから、ひまわり8号のエアロゾルデータの誤差要因として地表面反射率の情報の不確かさが重要であることが分かった。計画通り、ひまわり8号のエアロゾル等のデータの整備や予備的な比較検証を継続した。また、並行して、SKYNET地上観測網について、世界最高レベルのデータ確度・精度を担保するアルゴリズム開発を進めた。その上で、地上観測網データとひまわり8号データの比較検証を実施し、ひまわり8号データの系統的な誤差を定量的に評価するとともに、誤差要因を明らかにした。以上より、おおむね順調に進展していると評価した。本研究の目的は、新時代に突入した我が国の高時間・高空間解像度の静止気象衛星ひまわり8号のエアロゾルデータを高確度で検証することである。これは、ひまわり8号が欧米の新世代の静止気象衛星に先駆けたものである上、高時間・高空間解像度データに基づくこれまでにない高度な応用研究を世界に先駆けて開拓するために不可欠である。アジアを中心に構築した独自の地上リモートセンシング観測網(SKYNET)だけでなく、他の国際観測網(AERONET, GAW-PFR)の観測機器を保有し、それらの国際観測網と連携して高確度に検証比較を本研究代表者のみが可能な研究である。H30年度は、これまでの検証研究を発展させる形で、地上観測網データを用いた高次の検証比較研究を実施した。2018年11月には千葉大学で実施した集中観測において、SKYNET/スカイラジオメーターのエアロゾル光学的厚さ(AOT)データ(新規開発した共通自動解析アルゴリズム(SR-CEReS)で高精度導出)を基準にして、ひまわり8号およびGCOM-C(しきさい)のAOTデータの評価を行った。両衛星データは0.05以内で一致したことが分かった。しかしながら、スカイラジオメーターの値よりも過大となる傾向があることも分かった。4方位角(東西南北)に向けた多軸差分吸収分光法(MAX-DOAS)装置による観測などから、この過大傾向はエアロゾル分布の空間不均一性で説明できなかった。GCOM-Cとひまわり8号の値はお互いに良く一致していることから、過大評価の要因は両方の導出アルゴリズムに共通している項目が原因であることが示唆された。ひまわり8号の値が過大となる傾向は、早朝や夕方の太陽高度が低いときに顕著となる傾向も認められた。これらのことは、今後のひまわり8号のデータ質改善、ひいては応用研究に役立つことが期待される。ひまわり8号のエアロゾル等のデータの整備、予備的な比較検証を継続する。
KAKENHI-PROJECT-16K00512
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K00512
牛のルーメン繊維分解能の増強と生産性向上のための繊維分解酵素とプロバイオテックスの利用に関する研究
牛の飼料の消化に対するプロバイオテックスと消化酵素ドリセラーゼ添加の影響を検討した。牛よりルーメン液をカテーテルにより採取し,24時間の試験管内培養実験を行った。ルーメン内容液を緩衝液で3倍に希釈したものを培地とした。これを120mlの血清ビンに60ml入れ,ドリセラーゼを0,10,20,または40mg添加,Saccharomyces cerevisiae 2菌株(YST)を0,10,20,または40mg添加,ドリセラーゼ+YSTを0,10+40,20+40,または40+40mg添加し,基質としては乾草+濃厚飼料(1.5:1)を用い,38°Cで嫌気的に培養した。培養終了後に,揮発性脂肪酸(VFA)の分析をガスクラマトグラフィーにより行った。消化率は乾物と中性デタージェント繊維について常法により行った。培養の結果,ルーメン液のpHはYST添加では変化しなかったが,ドリセラーゼ添加ではやや低下した。いずれの場合にも揮発性脂肪酸の生成量は増加し,VFAの中で酢酸の比率は低下し,プロピオン酸の比率は増加した。その他のVFAの比率の変化は認められなかった。プロトゾア数は増加した。メタン生成はYST添加では低下したが,ドリセラーゼ添加では増加した。いずれの添加の場合でも,乾物および繊維(NDF)の消化率は1020%増加し,添加量が高まるにつれて増加することが明らかとなった。さらに,この両者を併用すると,消化率の増加はさらに高まった。以上より,S.cerevisiae2菌株とドリセラーゼは,微生物の活性を高め,繊維の消化を促進する可能性があることが明らかとなった。牛の飼料の消化に対するプロバイオテックスとセロビオース添加の影響を検討した。牛よりルーメン液をカテーテルにより採取し,24時間の試験管内培養実験を行った。ルーメン内容液を緩衝液で3倍に希釈したものを培地とした。これを120mlの血清ビンに60ml入れ,これらの添加量は0.11%とした。基質としては乾草+濃厚飼料(1.5:1)を用い,プロバイオテックスとしてはSaccharomyces cerevisiae 2菌株を用いた。培養は38°Cで嫌気的に行った。培養終了後に,揮発性脂肪酸(VEA)の分析をガスクラマトグラフィーにより行った。消化率は乾物と中性デタージェント繊維について常法により行った。培養の結果,いずれの添加によっても,ルーメン液のpHは変化しなかった。揮発性脂肪酸の生成量は増加し,VFAの中で酢酸の比率は低下し,プロピオン酸の比率は増加した。その他のVFAの比率の変化は認められなかった。プロトゾア数は変化しなかった。いずれの添加の場合でも,乾物および繊維(NDF)の消化率は1015%増加し,添加量が高まるにつれて増加することが明らかとなった。さらに,この両者を併用すると,消化率の増加はさらに高まった。以上より,S.cerevisiae 2菌株とセロビオースは,微生物の活性を高め,繊維の消化を促進する可能性があることが明らかとなった。牛の飼料の消化に対するプロバイオテックスと消化酵素ドリセラーゼ添加の影響を検討した。牛よりルーメン液をカテーテルにより採取し,24時間の試験管内培養実験を行った。ルーメン内容液を緩衝液で3倍に希釈したものを培地とした。これを120mlの血清ビンに60ml入れ,ドリセラーゼを0,10,20,または40mg添加,Saccharomyces cerevisiae 2菌株(YST)を0,10,20,または40mg添加,ドリセラーゼ+YSTを0,10+40,20+40,または40+40mg添加し,基質としては乾草+濃厚飼料(1.5:1)を用い,38°Cで嫌気的に培養した。培養終了後に,揮発性脂肪酸(VFA)の分析をガスクラマトグラフィーにより行った。消化率は乾物と中性デタージェント繊維について常法により行った。培養の結果,ルーメン液のpHはYST添加では変化しなかったが,ドリセラーゼ添加ではやや低下した。いずれの場合にも揮発性脂肪酸の生成量は増加し,VFAの中で酢酸の比率は低下し,プロピオン酸の比率は増加した。その他のVFAの比率の変化は認められなかった。プロトゾア数は増加した。メタン生成はYST添加では低下したが,ドリセラーゼ添加では増加した。いずれの添加の場合でも,乾物および繊維(NDF)の消化率は1020%増加し,添加量が高まるにつれて増加することが明らかとなった。さらに,この両者を併用すると,消化率の増加はさらに高まった。以上より,S.cerevisiae2菌株とドリセラーゼは,微生物の活性を高め,繊維の消化を促進する可能性があることが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-04F04480
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04F04480
発達障害・視覚障害児支援の共通教材開発と検証-触ってわかる教材で頭を鍛える-
発達障害児の認知能力を高める教材の開発を試みた。視覚障害児は発達障害を合併している場合が多いことから、触覚教材を工夫し、発達障害児・視覚障害児・健常大学生などに実施した。算数の繰上り計算など覚えながら考える働きはワーキングメモリと呼ばれる。教材の1つはこのワーキングメモリの訓練を意図して、結果の一部は教材の訓練効果が明らかとなった。もう1つは行列課題で、視覚障害児の動機づけを高めることができた。本研究は、学習に困難を抱える発達障害児および同様の視覚障害児に対して認知訓練を行うための共通の触覚教材を開発・検証することを目的とする。初年度に引き続き、2×2から3×3のマス目に1つを残して図形を配置し、相互の関係から残った1つのマス目に入る適切な図形を推論・選択させるテストを多数考案した。立体コピー機で凹凸を持たせ、5名の視覚障害児に実施し、晴眼児と比較した。その結果、視覚障害児の方が目隠し晴眼児よりも組織的に課題解決に取り組んだこと、また、課題解決に必要な次元(大きさ・形・きめなど)を干渉させ、学習の構えと矛盾する課題を導入することで、難易度を操作できることが示された(連名2012「触覚マトリックス教材の可能性を探る(2)」日本特殊教育学会)。テスト図版を研究分担者のHPで公開し、立体コピー機を所有する支援学校等が自由に実施可能な体制にできたことは教材普及に大変重要であると考える。テスト図版を晴眼児に実施したときのビデオ記録から課題解決の特徴を分析できた(連名2013/3「発達障がい・視覚障がい支援に共通の触覚教材の開発(2)」日本発達心理学会)。マトリクス教材とは別に、ワーキングメモリ訓練を目的にした教材作りを開始した。まず視覚教材として単語カードにグー・チョキ・パーなどの三つ巴のシールを貼り、めくるたびに勝ち負け判断を行うもので、事前事後テストの比較により健常大学生に効果を試したところ、教材作成の諸問題が明らかになった(藤本浩一2013/3神戸松蔭大紀要)。次に立体コピー機で作った凹凸のある記号をトランプに貼り付けた触覚版教材を作成し、ゲーム形式の利用法を考案した。現在その効果を中学生等にモニター中であり、簡便に利用できる触覚教材として期待される。「実施目的」の通り、学習に困難を抱える子どもと視覚障害児に対する触覚的教材作成とその効果の検証を目的とした。「実施計画」に従い、3年間で教材の作成・マニュアルの作成・効果の検証・学会発表・Web公開を続けた。教材:1マトリクス課題と2ワーキングメモリ課題の2種を作成し、それぞれ凹凸面をつけた触覚版も開発した。1はWISC-IVの「行列推理」同様に、推論・類推能力を育成する目的で、2は先のカードを記憶しておいて現在のカードとの勝負判断(処理)を行うワーキングメモリ課題(ジャンケンメモリ)で、単語カードの他に○□Vの触覚図形をトランプに貼りつけた触覚版を作成した。他に類のない独創的な教材で、今後検証を重ねて広く用いられることが期待できる。検証実験:1触覚マトリクス課題を発達障害児と視覚障害児に実施し、反応過程の詳細な観察を行った。視覚障害児と晴眼児との触覚的探索の違いが見られた。国内で視覚障害児を数多く実験することが容易ではないので、認知過程変容について今後も検証実験を継続する予定である。2ワーキングメモリ課題を健常大学生に数週間実施し、事前事後テストで効果の検証を試みたところ、課題自体の練習効果は見られたが転移にまで至ったとは言い難かった。同教材を私塾で5名の健常小学生に数カ月試した結果、5名すべてについて事後テスト>事前テスト(5%で有意)で、算数の文章題や国語の読解が向上した(未発表)。小学校教育の補助教材として有望である。成果の発表:代表者および分担者連名で数度の学会発表を行った。日本特殊教育学会2011、2012年度、日本発達心理学会2012、2013年度。論文執筆は、研究代表者の藤本が2013、2014年度大学紀要、分担者の山本が2014年度(審査あり)に行った。また、分担者の山本は、マトリクス教材をWebに公開し、成果を社会的に広めた。発達障害児の認知能力を高める教材の開発を試みた。視覚障害児は発達障害を合併している場合が多いことから、触覚教材を工夫し、発達障害児・視覚障害児・健常大学生などに実施した。算数の繰上り計算など覚えながら考える働きはワーキングメモリと呼ばれる。教材の1つはこのワーキングメモリの訓練を意図して、結果の一部は教材の訓練効果が明らかとなった。もう1つは行列課題で、視覚障害児の動機づけを高めることができた。研究の目的は発達障害児・視覚障害児に共通利用できる認知訓練教材の開発とその効果の検証であった。教材作成にあたり、まずは既に我々が実践し知能テストにも新しく取り入れられた行列推理(図形マトリクス)に着目し、購入した立体コピー機にて試作した。それを視覚障害児および晴眼の発達障害児に個別に実施したところ、両者の課題解決方略の相違点・共通点が浮き彫りになり、成果を日本発達心理学会や日本特殊教育学会で数度の学会発表を行った。
KAKENHI-PROJECT-23531320
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23531320
発達障害・視覚障害児支援の共通教材開発と検証-触ってわかる教材で頭を鍛える-
相違点としては視覚障害児は触覚教材の探索がシステマティックに行えるのに対して、アイマスクによる閉目の晴眼児はたどたどしい手つきで教材独自の練習が必要であったこと、共通点として、触覚・視覚の教材の区別に関係なく知的に遅れのある子どもは類推が難しかったことである。また、閉目晴眼の発達障害児が集中して課題に取り組めたことは、この触覚教材が課題に集中させる効果があることがわかった。学会発表会場にて複数の視覚障害支援教員から教材の利用について相談があった。現在は比較的高価な特殊プリント紙および立体コピー機を使用することから普及に制約があるので、今後より一般的に利用してもらえるよう工夫が必要である。また、予備実験程度の段階なので、マニュアルおよび介入パラメータの作成は次年度に持ち越した。立体コピー機の凹凸に限界があるので、今後は真空成型機の有効利用を図る必要がある。触覚版の内容を踏まえて、その前段階あるいはそれと独立に使用できそうな視覚教材の媒体を試作した。PCで各自のペースで訓練できる簡単なソフトをパワーポイントで作成し、また、単語カード式にめくりながらワーキングメモリーを鍛える目的の教材も開発中であり、現在効果の検証実験を進めている。触覚マトリクス教材を多数作成し、視覚障害児および晴眼発達障害児に試行出来たこと、それらの図版をHPにて公開出来たことは、2年間の成果だと考える。従来からあったレーブンマトリクスや類似のテストを、立体コピー機とカプセルペーパーを用いて触覚図版にしたことは前例がない。それ自身が視覚障害児のための査定道具ないし教材になり得るばかりではなく、従来の視覚教材についても、次々と触覚版を作成する可能性を広げた。視覚障害児者が利用できる道具が飛躍的に増大するであろう。今後必要なことは、視覚障害児および晴眼発達障害児を対象に実験を重ねて、触覚マトリクステストの難易度を評定し、同時にテスト実施のマニュアルを確定することである。国内において多数の視覚障害児に実験協力を求めることはかなり困難であり、それが研究成果が完了しないことの原因となっている。対象を健常児者に広げて、このテスト図版の特徴をより明確にする作業が残っている。触覚課題による推論が当初の認知訓練のねらいであり、継続するものであるが、認知機能の根幹にワーキングメモリを位置づけることで、途中から新たな試みとしてワーキングメモリ訓練という目的が加わった。すでに多くの研究者がn-nack課題などの二重課題を用いて訓練を試みているが、触覚教材を使ったものは未だ存在しない。触覚版は単に視覚障害児にも適応できるだけにとどまらず、晴眼児者にとって触覚入力独自の利点を生かすことができる。その利点とは視覚にまどわされず注意を集中できることもあるが、カード型教材ではその裏面の凸凹を手指で探るばかりで表面からは見えないので、視覚イメージに頼らないワーキングメモリの訓練になり得ることである。このように未だ足りない部分は残すものの、当初計画になかった目的が新たに加わり、発展していることを考慮すると、研究が順調に進展していると考えてよいだろう。教材作成およびそれを用いた予備実験については、立体コピー機を駆使して触覚教材を多数作成し、視覚障害児および晴眼発達障害児数十名に実験を行うことが出来たので、ほぼ目標を達成した。効果の検証という意味ではそこまでは出来ていないので100%とは言い難いが、ある程度課題毎の難易度の設定も見通せたので、あと2年の研究期間の基礎固めが出来たといえる。
KAKENHI-PROJECT-23531320
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高温溶融塩スラリーによる炭酸ガス脱吸収に関する基礎研究および反応装置開発
高温で液化した炭酸リチウムーカリウム共晶溶融塩中に、リチウムシリケート微粒子(以下LS)を懸濁させた循環スラリー気泡塔による炭酸ガス吸収および放散挙動の基本設計データを取得することを目的として、平成18-19年度下記に示した研究を行った。1.CO_2気泡の溶融塩スラリー中での溶解・放散の解明高温反応容器内にLi-K-CO_3共晶塩とLS微粒子を仕込み昇温し、溶融塩スラリー中に20%CO_2を含んだ窒素ガスを供給した。このとき、LS量および溶融塩のKとLiの組成を変化させた場合に生じるCO_2吸収量を観測した。出口ガス中CO_2濃度をリアルタイムで観測した。排気ガス中のCO_2濃度の時間変化よりCO_2の最大吸収速度および最大吸収量の測定を行った。吹き込むガスの流量、溶融塩組成およびスラリー濃度をパラメータとして、各条件においてガス吸収挙動の変化を調べた。さらに、LS粒子懸濁スラリーを、CO_2放出温度域まで加熱した際に、析出されるCO_2の挙動を調べた。CO_2放出速度に及ぼすパラメータとしてスラリー中のLS量、設定温度および加熱速度などの影響について実験的に調べた。予め吸収したCO_2が放出され、逆反応によりLSが再生される際には、炭酸リチウムが必要である。炭酸リチウムは液化して溶融塩中に存在しているので、本反応では炭酸リチウム分子の溶融塩液相内での移動速度かあるいは熱移動速度のどちらが律速となるかを解析した。本結果より、物質移動律速であると確認された。2.循環スラリー気泡塔内の流動特性の解明本実験では塔内のLSスラリーおよび気液の流動状態を推定するためにコールドモデル実験を行った。LSのモデル粒子として約1ミクロンのPVC微粒子、溶融塩液相としては界面活性剤を添加した水溶液を用いた。循環系のスラリー気泡塔を製作し、ガスホールドアップや液循環速度などを測定し、実用化に必要な基礎的データを取得した。高温で液化した炭酸リチウムーカリウム共晶溶融塩中に、リチウムシリケート微粒子(以下LS)を懸濁させた循環スラリー気泡塔による炭酸ガス吸収および放散挙動の基本設計データを取得することを目的として、平成18-19年度下記に示した研究を行った。1.CO_2気泡の溶融塩スラリー中での溶解・放散の解明高温反応容器内にLi-K-CO_3共晶塩とLS微粒子を仕込み昇温し、溶融塩スラリー中に20%CO_2を含んだ窒素ガスを供給した。このとき、LS量および溶融塩のKとLiの組成を変化させた場合に生じるCO_2吸収量を観測した。出口ガス中CO_2濃度をリアルタイムで観測した。排気ガス中のCO_2濃度の時間変化よりCO_2の最大吸収速度および最大吸収量の測定を行った。吹き込むガスの流量、溶融塩組成およびスラリー濃度をパラメータとして、各条件においてガス吸収挙動の変化を調べた。さらに、LS粒子懸濁スラリーを、CO_2放出温度域まで加熱した際に、析出されるCO_2の挙動を調べた。CO_2放出速度に及ぼすパラメータとしてスラリー中のLS量、設定温度および加熱速度などの影響について実験的に調べた。予め吸収したCO_2が放出され、逆反応によりLSが再生される際には、炭酸リチウムが必要である。炭酸リチウムは液化して溶融塩中に存在しているので、本反応では炭酸リチウム分子の溶融塩液相内での移動速度かあるいは熱移動速度のどちらが律速となるかを解析した。本結果より、物質移動律速であると確認された。2.循環スラリー気泡塔内の流動特性の解明本実験では塔内のLSスラリーおよび気液の流動状態を推定するためにコールドモデル実験を行った。LSのモデル粒子として約1ミクロンのPVC微粒子、溶融塩液相としては界面活性剤を添加した水溶液を用いた。循環系のスラリー気泡塔を製作し、ガスホールドアップや液循環速度などを測定し、実用化に必要な基礎的データを取得した。高温で液化した炭酸リチウムーカリウム共晶溶融塩中に、リチウムシリケート微粒子(以下LS)を懸濁させた循環スラリー気泡塔による炭酸ガス吸収および放散挙動の基本設計データを取得することを目的として、本年度下記に示した研究を行った。1.CO_2気泡の溶融塩スラリーへの溶解現象の解明高温反応容器内にLi-K-CO_3共晶塩とLS微粒子を仕込み昇温し、溶融塩スラリー中に20%CO_2を含んだ窒素ガスを供給した。このとき、LS量および溶融塩のKとLiの組成を変化させた場合に生じるCO2吸収量を観測した。出口ガス中CO_2濃度をリアルタイムで観測した。排気ガス中のCO_2濃度の時間変化よりCO_2の最大吸収速度および最大吸収量の測定を行った。吹き込むガスの流量、溶融塩組成およびスラリー濃度をパラメータとして、各条件においてガス吸収挙動の変化を調べた。2.溶融炭酸塩中に懸濁したLSからのCO_2の放散挙動の解明LS粒子懸濁スラリーを、CO_2放出温度域まで加熱した際に、析出されるCO_2の挙動を調べた。CO_2放出速度に及ぼすパラメータとしてスラリー中のLS量、設定温度および加熱速度などの影響について実験的に調べた。予め吸収したCO_2が放出され、逆反応によりLSが再生される際には、炭酸リチウムが必要である。
KAKENHI-PROJECT-18560735
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18560735
高温溶融塩スラリーによる炭酸ガス脱吸収に関する基礎研究および反応装置開発
炭酸リチウムは液化して溶融塩中に存在しているので、本反応では炭酸リチウム分子の溶融塩液相内での移動速度かあるいは熱移動速度のどちらが律速となるかを解析した。現時点では物質移動律速である可能性が高いと推定された。3.循環スラリー気泡塔内の流動・吸収特性の解明本実験では塔内のLSスラリーおよび気液の流動状態を推定するためにコールドモデル実験を行った。LSのモデル粒子として約1ミクロンのPVC微粒子、溶融塩液相としては界面活性剤を添加した水溶液を用いた。循環系のスラリー気泡塔を製作し、ガスホールドアップや液循環速度などを測定した。CO_2の脱吸収を1つの気泡塔内で行う場合には、LSからのCO_2の脱離が重要なパラメータであることがわかった。高温で液化した溶融塩中でのCO_2含有燃焼ガス気泡の挙動および大きさの推定、コールドモデル反応装置での実験結果をCFDによりシミュレーションした。1.高温溶融塩内に挿入されたガス分散器上での気泡の挙動解明(1)硝酸ナトリウム溶融塩中での気泡生成リチウムシリケートスラリー中でのCO_2の脱吸収は物質移動律速であるため、気液接触面積が総括反応速度に大きく影響する。即ちガス分散器から溶融塩中に分散されるCO_2気泡サイズが反応速度を支配する。一方、リチウムシリケート溶融塩の物性の多くは不明なので、比較的低温で溶融し、物性が既知である硝酸ナトリウム溶融塩を、観察窓付き高温反応器内に仕込み、生成気泡を観察およびサイズ測定を行った。(2)高温溶融塩中での気泡生成モデル常温下で実績のある非球形気泡生成モデルを利用して、高温溶融塩中での生成気泡のサイズを予測した。上記の実測値と計算値との比較により、リチウムシリケートスラリーの未知の物性を解析的に明らかにした。2.循環スラリー気泡塔内の流動・吸収特性の解明スラリーの流動状態およびスラリーの平均循環速度を熱トレーサー法およびガスホールドアップにより測定し、操作因子との関係から設計式を得た。3.CFD数値シミュレーションコールドモデルで用いたエアリフト型スラリー気泡塔内の平均循環速度およびガスホールドアップを、CFDソフトウエア(Phoenics)によってシミュレーションし、実測値との比較を行った。条件によっては不十分な点もあるが、比較的安定した操作条件では気泡塔内の流動を比較的よく予測できた。以上の結果より、リチウムシリケートを吸収剤とした高温溶融塩スラリーによるCO_2ガス回収システムの基本的知見を得ることができた。
KAKENHI-PROJECT-18560735
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18560735
小胞体-ゴルジ装置移行部の細胞化学的研究
本研究課題は小腸上皮細胞におけるゴルジ装置-小胞体相互間の形態的移行の存在とその部の細胞化学的特徴を検討したものである。一般にゴルジ装置を標識するマーカー(ヨウ化亜鉛オスミウム[ZIO]染色、酵素細胞化学的ALPase活性、ALPase,α-mannosidaseIIの免疫細胞化学的反応性等は小腸絨毛基部より上部の吸収上皮細胞のゴルジ装置に染色性を示したが小腸陰窩の未熟な細胞のゴルジ装置には明瞭な染色性を示さず、細胞の分化の程度(成熟度)がこれらの蛋白の発現や機能の発現に関係していることが示された。Inosine diphosphatase(IDPase)活性については陰窩低部から絨毛上部に向かってゴルジ装置に全く反応が見られないもの→ゴルジ装置のtrans側(+)→小胞体(+)→ゴルジ装置の全層(+)の順に段階的に反応産物の拡がりが見られ、細胞の成熟度に伴なうゴルジ装置と小胞体の機能的変化が反映されていた。ゴルジ装置と小胞体相互の移行については未熟な細胞と成熟した細胞においてその形態をやや異にしていた。第一の様式は比較的未熟な細胞における小胞体のtrans Golgi cisternaeへの密着および移行であり、IDPase活性からこの構造を観察すると弱陽性の小胞体が陽性のtranse側ゴルジ装置のcisternaeと連続している部分が認められ、小胞体成分のゴルジ装置への直接的移行が認められた。成熟した細胞の場合は滑面小胞体様の小型の顆粒を含む小管状構造がゴルジ装置cis-mostのメッシュ状cisternaと結合する第2の様式が形態像やZIO染色で確認できた。しかし、この移行部においてはゴルジ装置の固有蛋白であるα-mannosidaseIIと小胞体の固有蛋白(ER proteinsやPDI)の抗原性が弱く、両者のマーカーが混在しているように観察された。以上の研究成果は小胞体とゴルジ装置の区分が大局的には明瞭となっているものの、局所的には非常に密接な関係を示す場合があることを示した点で意義深いと考える。この点は小胞体とゴルジ装置の間の蛋白輸送やゴルジ装置の発生、及び形成という問題に重要な示唆を与えるであろう。本研究課題は小腸上皮細胞におけるゴルジ装置-小胞体相互間の形態的移行の存在とその部の細胞化学的特徴を検討したものである。一般にゴルジ装置を標識するマーカー(ヨウ化亜鉛オスミウム[ZIO]染色、酵素細胞化学的ALPase活性、ALPase,α-mannosidaseIIの免疫細胞化学的反応性等は小腸絨毛基部より上部の吸収上皮細胞のゴルジ装置に染色性を示したが小腸陰窩の未熟な細胞のゴルジ装置には明瞭な染色性を示さず、細胞の分化の程度(成熟度)がこれらの蛋白の発現や機能の発現に関係していることが示された。Inosine diphosphatase(IDPase)活性については陰窩低部から絨毛上部に向かってゴルジ装置に全く反応が見られないもの→ゴルジ装置のtrans側(+)→小胞体(+)→ゴルジ装置の全層(+)の順に段階的に反応産物の拡がりが見られ、細胞の成熟度に伴なうゴルジ装置と小胞体の機能的変化が反映されていた。ゴルジ装置と小胞体相互の移行については未熟な細胞と成熟した細胞においてその形態をやや異にしていた。第一の様式は比較的未熟な細胞における小胞体のtrans Golgi cisternaeへの密着および移行であり、IDPase活性からこの構造を観察すると弱陽性の小胞体が陽性のtranse側ゴルジ装置のcisternaeと連続している部分が認められ、小胞体成分のゴルジ装置への直接的移行が認められた。成熟した細胞の場合は滑面小胞体様の小型の顆粒を含む小管状構造がゴルジ装置cis-mostのメッシュ状cisternaと結合する第2の様式が形態像やZIO染色で確認できた。しかし、この移行部においてはゴルジ装置の固有蛋白であるα-mannosidaseIIと小胞体の固有蛋白(ER proteinsやPDI)の抗原性が弱く、両者のマーカーが混在しているように観察された。以上の研究成果は小胞体とゴルジ装置の区分が大局的には明瞭となっているものの、局所的には非常に密接な関係を示す場合があることを示した点で意義深いと考える。この点は小胞体とゴルジ装置の間の蛋白輸送やゴルジ装置の発生、及び形成という問題に重要な示唆を与えるであろう。本研究課題は平成5年度に予定されていた小腸上皮細胞におけるオスミウム染色および酵素細胞化学と平成6年度に予定されている同細胞におけるゴルジ装置の免疫細胞化学から構成されている。平成5年度分の成果を以下にまとめる。ヨウ化亜鉛オスミウム(ZIO)染色によるゴルジ装置の染色については、小腸陰窩の未熟な細胞のゴルジ装置には明瞭な染色性を示さず、絨毛基部より上部の上皮のゴルジ装置に明瞭な染色性を示したことから、細胞の分化(成熟度)とZIO染色性との間に関連性が示唆された。特に成熟した細胞の小胞体とゴルジ装置の移行部には小型の顆粒を含む小管状構造の存在が確認された。同部位における小胞体の分布を検討するために行ったglucose-6-phosphatase(G6Pase)の酵素細胞化学的局在についてはマウスでは小胞体を標識したが、ラットにおいては小胞体に分布が見られなかった。しかし新たに試みたlnosine diphosphatase
KAKENHI-PROJECT-05670009
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