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火山災害に対する防災意識の社会構造的要因に関する研究-誰と誰に何を伝えるか- | そのことが地元勉強会の効果を制約する働きをしていた。第2に、駒ヶ岳と同様に有珠山の隣接火山である樽前山周辺住民に対する意識調査を行った。住民意識は、地域構造というよりも危険度に応じて大きな差が見られ、ハザードマップを元にした地元の苫小牧市による防災広報が成果をあげていることが確認された。ただし、意識の低い層が自地域の危険性の評価自体を知ってはいないことや、不安や噴火可能性も含めて噴火自体への関心も低いといった問題が見出された。また、駒ヶ岳小噴火は、住民間で話題となっていなかった。このことから、本研究が目指す「何を伝えるか」という問題から見て、地元市ならびにマスメディアは防災普及面でもっと活用すべきだったことが分かった。北海道駒ケ岳ならびに樽前山は、日本の活火山の中でも最も活動的な火山であるが、噴火の規模や推移は多様であり、迅速な避難が必要であることから、防災意識の涵養が求められる。そこで、住民意識調査と地域リーダーへの面接調査を実施した。駒ヶ岳調査は、駒ヶ岳周辺4町の住民から郵送法で439票(回収率=43%)の回答を、樽前山調査は、苫小牧市内危険の高い地区と低い地区2地区の住民から211票(回収率=42%)の回答を得た。地域リーダーへの面接調査は、12人を対象とした。主な知見を示すと以下の通りである。(1)この15年間で防災意識も防災情報行動も向上している。(2)駒ヶ岳小噴火ならびに2000年有珠山噴火への関心は高く、大半の人が周囲の人と話題にしているが、職場や同業者で話題になる率が高い。(3)防災教育上の課題として、避難の判断を行政に依存していると思われる点、前回の噴火パターンへの拘泥や誤った周期説が流布してしまっている点等が見いだされた。(5)防災情報行動にとって重要なのは、単に危険性を認知させたり、不安を高めるだけではなく、関心を高めることが必要である。(6)防災情報行動は、噴火への関心の程度といった個人変数だけではなく、地域要因も関係していることを示している。(7)地域凝集性の高い地区では、資源動員論でいうフレーム増幅戦略が、未形成な地域では、フレーム拡張戦略が採用されている。 | KAKENHI-PROJECT-14580509 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14580509 |
メルコックス・ロ-ダミン法によるメタルインレーの辺縁漏洩について | メタルインレーの合着は、昔から使用されてきたリン酸亜鉛セメントの他に、近年、歯牙や金属に接着するという接着性合着用セメントが各種開発され、臨床に使用されている。そこで、実験1として臼歯咬合面単純窩洞のメタルインレーを各種セメントで合着し,2000回のサーマルサイクリング後に,メルコックス・ロ-ダミン法による辺縁漏洩試験をした。その結果つぎの結果をえた。(1)辺縁漏洩が少ないと思われていたメタルインレーに,窩底までの漏洩が見られた。(2)リン酸亜鉛セメントの合着では全試料に,漏洩が無いとされる接着性レジンセメントでも半数の試料に,窩底に及ぶ漏洩が見られた。(3)アウトラインも辺縁漏洩に影響する重要な要素である。実験2では、ベースを施さないで印象をとってから軟化象牙質をとり、凹陥のままインレーを合着する事が臨床で時にある。これを想定して、MO2級窩洞、ベースを施した窩洞、ベースすべき凹陥をそのままの窩洞に、グラスアイオノマーレジンセメント2種と接着性レジンセメント1種の合計3種のセメントを使用し、セメント合着した。2000回のサーマルサイクリング後に,メルコックス・ロ-ダミン法による辺縁漏洩試験をした。その結果つぎの結果をえた。(1)髄壁にBase裏層や、そのままの凹陥でセメント合着しても、髄壁や側壁に及ぶ漏洩に影響は無いが、凹陥が側壁に含まれるときは、漏洩に影響するので注意する必要がある。(2)軸壁にBase裏層や、そのままの凹陥でセメント合着すると、漏洩が増大し、凹陥が歯頸壁に含まれる場合には、漏洩に特に影響しているので注意する必要がある。(3)歯頚壁に及ぶ漏洩が最も多かった。メタルインレーの合着は、昔から使用されてきたリン酸亜鉛セメントの他に、近年、歯牙や金属に接着するという接着性合着用セメントが各種開発され、臨床に使用されている。そこで、実験1として臼歯咬合面単純窩洞のメタルインレーを各種セメントで合着し,2000回のサーマルサイクリング後に,メルコックス・ロ-ダミン法による辺縁漏洩試験をした。その結果つぎの結果をえた。(1)辺縁漏洩が少ないと思われていたメタルインレーに,窩底までの漏洩が見られた。(2)リン酸亜鉛セメントの合着では全試料に,漏洩が無いとされる接着性レジンセメントでも半数の試料に,窩底に及ぶ漏洩が見られた。(3)アウトラインも辺縁漏洩に影響する重要な要素である。実験2では、ベースを施さないで印象をとってから軟化象牙質をとり、凹陥のままインレーを合着する事が臨床で時にある。これを想定して、MO2級窩洞、ベースを施した窩洞、ベースすべき凹陥をそのままの窩洞に、グラスアイオノマーレジンセメント2種と接着性レジンセメント1種の合計3種のセメントを使用し、セメント合着した。2000回のサーマルサイクリング後に,メルコックス・ロ-ダミン法による辺縁漏洩試験をした。その結果つぎの結果をえた。(1)髄壁にBase裏層や、そのままの凹陥でセメント合着しても、髄壁や側壁に及ぶ漏洩に影響は無いが、凹陥が側壁に含まれるときは、漏洩に影響するので注意する必要がある。(2)軸壁にBase裏層や、そのままの凹陥でセメント合着すると、漏洩が増大し、凹陥が歯頸壁に含まれる場合には、漏洩に特に影響しているので注意する必要がある。(3)歯頚壁に及ぶ漏洩が最も多かった。新鮮抜去ヒト大臼歯をエポキシレジン樹脂で包埋したのち,咬合面単純窩洞を#171カ-バイトバ-で形成した。ベベルは付与せず,バットジョイントにした。シリコーン印象後,模型作成,圧接法によりワックスアップ,咬合面は概形成し,窩洞中央に直径1.2mmのスプル-を植立,通法により12%金パラジウムで鋳造,酸浴を行った。スプル-を窩洞底面と平行にジスクで切断し,荷重の際の荷重点とした。(1)リン酸亜鉛セメント(エリートセメント),(2)グラスアイオノマーセメント((2)a.ハイボンドグラスアイオノマーCX, (2)b. Fuji 1),(3)接着性レジンセメント(スーパーボンドC&BセメンティングキットプラスVプライマー)の計4種のセメントをメーカー指示通りに練和,合着した。指圧30秒,荷重器10Kg 5分にて合着,余剰部を除去,湿気箱にて36度1日保管後,余剰部を再度除去後,5-60度の2000回のサーマルサイクルを加えた後,当教室で開発したメルコックス・ロ-ダミン法による辺縁漏洩試験を行い,60度24時間で重合を確実とした後,約8%塩酸で脱灰した。インレー体を実体顕微鏡下で観察した。インレーを合着した(1)(2)のセメントは塩酸で溶解され,(3)は全てインレーに付着していた。インレー底部(髄壁,窩底)に漏洩した割合は順に100,100,67,60%であった。側壁の観察では,裂溝の追及が不十分なアウトラインの場合,側壁への漏洩が裂溝より起こっているのが観察された。 | KAKENHI-PROJECT-07672101 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07672101 |
メルコックス・ロ-ダミン法によるメタルインレーの辺縁漏洩について | 結果1.辺縁漏洩を起こさないと思われていた、メタルインレーに窩底までの漏洩が見られた。2.リン酸亜鉛セメントの合着ではすべてのメタルインレーに窩底までの漏洩が見られた。3.アウトラインも辺縁漏洩に影響する重要な要素である。インレーの脱落の原因には,窩洞形成不良が多いが,脱離後の窩洞を観察すると,窩洞形成不良が原因と考えられないものが少なからず観られる.また,臨床でよく行う事であるが,ベースを施さないで印象をとってから軟化象牙質をとり,インレーを合着する場合があり,この場合も脱離例が多い様に思われる.そこで,メタルインレーの各種合着セメント及び合着法の方法による辺縁漏洩をメルコックスローダミン法による辺縁漏洩試験法で調べた.新鮮抜去ヒト大臼歯をエポキシレジン樹脂で包埋したのち,#171カ-バイトバ-でMO2級窩洞形成を行い,コントロールとしてそのままのMO窩洞と,ベースを施したMO窩洞,ベースすべき凹陥をそのままにセメント合着するMO窩洞,の3種類の窩洞に対して,ポリエーテル印象材で印象,超硬石膏で模型を作成し,臨床的に適合性が得られた,Type II金合金で作成したインレー体をグラスアイオノマーレジンセメント2品目(Lute,Vitremer)とスーパーボンドC&Bの計3種類のセメントで合着し,サーマルサイクル2000回行ったのち,メルコックス・ロ-ダミン法の辺縁漏洩試験を行った.約8%塩酸で脱灰,インレー体窩底部を観察し次の結論をえた.1.1級インレーでは漏洩が少ないセメントでも漏洩がみられた.2.歯頚部の漏洩が著明であった.3.ベースすべき凹陥をそのままにセメント合着した部に気泡が多く見られた. | KAKENHI-PROJECT-07672101 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07672101 |
陽子線CT搭載型ヘリウム・陽子線混合治療装置と免疫賦活照射法の研究開発 | 難治性の局所進行性肺がん等の治癒率を向上させるため、新小型超電導加速器によりヘリウムと陽子を同一治療装置で加速可能とし、治療計画精度を飛躍的に向上できる次世代型粒子線治療装置「陽子線CT搭載型ヘリウム・陽子線混合治療装置」を開発するための医学物理研究を行う。また、放射線のLETと細胞内活性酸素発現・ミトコンドリア分布・免疫チェックポイント阻害に関連する分子等の関係を明確にし、ヘリウム線が'免疫賦活照射法'として適しているかに関して小動物in vivoイメージングシステム等を用いて探求する。これらにより安全な局所制御のみならず、免疫賦活による生存率向上に最適な、次世代放射線治療法を追及する。難治性の局所進行性肺がん等の治癒率を向上させるため、新小型超電導加速器によりヘリウムと陽子を同一治療装置で加速可能とし、治療計画精度を飛躍的に向上できる次世代型粒子線治療装置「陽子線CT搭載型ヘリウム・陽子線混合治療装置」を開発するための医学物理研究を行う。また、放射線のLETと細胞内活性酸素発現・ミトコンドリア分布・免疫チェックポイント阻害に関連する分子等の関係を明確にし、ヘリウム線が'免疫賦活照射法'として適しているかに関して小動物in vivoイメージングシステム等を用いて探求する。これらにより安全な局所制御のみならず、免疫賦活による生存率向上に最適な、次世代放射線治療法を追及する。 | KAKENHI-PROJECT-19H03591 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H03591 |
構造的音色を持つ音合成方式 | コンピュータ音楽の中で音色合成技術は新たな表現と直結するため、重要な技術分野である。これまでサウンドモーフィングやサウンドハイブリッドは個別技術として検討されてきたが、これに「音の音」と呼ぶ新たな概念を加え、全体を構造的音色と呼ぶ概念を提唱した。音の音は、一つの音色の合成に別の音色を使う方法だが、サウンドハイブリッドと異なる点は、階層的な構成をとり、下位の音色を明確に識別できる音色として定義している。この考えに基づき、2つの合成例を製作した。一つは朗読音声を、ストリングスの合成音で達成すること。もう一つは、NMF(非負値行列因子分解)を応用して、音声をヴァイオリンや尺八の音で合成した。今期は、26年度の研究計画通りの研究の遂行はできなかった。3年計画の最終年度でレクチャーコンサートの実施があり、そこに本研究の考え方の啓蒙を行うことが謳ってあるが、昨年度12月1日に東京藝術劇場大ホールにおいて、大井剛史指揮、東京交響楽団演奏によりオーケストラ公演を行い、その中で「音の音」というタイトルで作品を制作した。聴衆の数は901人であった。本来は研究の成果を盛り込む形でのコンサートが最も望ましいが、大きな編成の作品発表は必ずしも研究代表者の望む年度での発表ができず、研究初年度で、その番が回ってきた。そこで、26年度は、研究のデータ収集の側面と、「音の音」という概念を用いてのオーケストラ作品の制作とその公演に研究実施内容を集約させた。具体的には、1)本研究の基本的考え方である、「音の音」という概念の説明による広報(啓蒙)活動の他、「音の音」の具体化として、オーケストラ音で音声を発声する、という構想の楽曲制作を行った。これを器楽だけで実施するのは、本来何度も練習が必要であるが、リハーサル回数が2回と少なく、現実的ではないため、2)本作品の一部を二次利用し、別作品で「音の音」の構想を実現するため、本作品はその素材取り(データ主集)とした。一方3)本作品では、いろは歌を研究代表者が朗読し、これを音響分析(ピッチ分析)し、これに基づき旋律を確定した。次にこれにダイアトニックであり、かつ、新たな和声付けを行い主題とした。この主題に基づき変奏を行うことにより、楽曲として創作し、オーケストラ作品として発表した。このときは、知覚的に「音の音」という階層構造になっていないが、プログラムに上記の解説を載せたところ、「いろは歌」が聞こえてくるようだ、との感想も得られた。今年度以降は本作品の収録音を元に実施的に「音の音」、すなわち、知覚的に階層的な音響仕様、となるよう研究を進める。今期は、「音の音」という名称で定義している構造的な音色に関して、1)この概念を導入した合成音を用いての音楽楽曲の制作、2)同合成音色の精緻な工学的合成手法の検討についての2検討を個別に進めた。1)について、26年度に発表したオーケストラ作品「音の音」の弦楽部の主題を基として、これに筆者の「いろはうた」の朗読音をクロス合成(混声音:Sound Hybridization)を行い、弦楽器が喋る合成音を作成した。この混声音は、ひとつの音が別の音の側面を持つ、という意味で、構造的音色のひとつである。この合成音の実現に際しては、LPC(線形予測符号化)により、朗読音声を音源部と音韻フィルタに分解し、音源部を捨てて、弦楽器と入れ替え、これに得られた音韻フィルタを畳み込んで合成した。この手法は技術的には湯浅譲二の「世阿弥による九位」により89年に達成されたが、そのときの音質に対する要求条件は明確にされていたわけではない。つまりクロス合成はどういう音であるべきか、との議論はない。今回の合成では、明瞭性を上げるほど、全体の印象が弦楽器から遠くなり、喋る弦楽器、というよりしわがれた音声、という印象に近づいていく。そこで、上記の混声音に基の弦楽器音を混合(ミックス)して目的の合成音とした。この音声を含む楽曲「ハイブリッド・コラージューピアノとコンピュータのための)を制作し、10月16日すみだトリフォニー小ホールにてMedia Projectという企画で作品発表を行った。2)については、NMF(Non Negative Matrix Factorization)に基づいた音源分離手法を応用し、ひとつの音を数多くの楽音の融合した合成音をみなし、ひとつの音であってもこれを数多くの楽音に分離する検討を行った。これは、ひずみ音が混入してしまい、。現在音質面で音楽応用を行えるレベルに達していない。通常は、応用する技術を達成してデモとしての作品発表を行うが、本課題では、構造的音色、という概念の啓蒙もあわせて行いたいため、技術の達成レベルが低いところでも作品発表を初年度から行ってきた。その意味では、2年目にあたる平成27年度は、作品発表と、本来使われるべき開発された技術とが、やや位相がずれており、作品発表時に用いた技術自体は今回新たに狙う技術より1世代古いものとなっている。2年目に開発技術を作品に応用できなかった意味ではやや進展が遅れている。最終年度は、NMFを用いた上での構造的楽音の合成手法について検討を進め、これを楽曲に応用できるよう進めるつもりである。本研究は、まず構造的音色の合成方式の提案と、これを応用した新たな音楽により、この概念を啓蒙する2面を持っている。 | KAKENHI-PROJECT-26370111 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26370111 |
構造的音色を持つ音合成方式 | これまでに知られている音のモーフィングやサウンド・ハイブリッドに「音の音」と新たな概念を加えて、全体を構造的音色と名づけて、新たな音色の概念とした。音の音は、一つの音色の合成に、別の音色を使う方法だが、サウンド・ハイブリッドと異なる点は、階層的な構成をとり、下位の音色を明確に識別できる音色と定義している。例えば音声をフルート音で構成するのに、下位のフルート音が明確に認識できるものである。この考えを実現するため、音源分離で用いられているNMF(Non Negative Matrix Factorization)を応用して音声をViolin、尺八などの音で再合成する方法を提案した。ただし、音声の音韻の明瞭性と、構成要素としての下位の楽音の高い明瞭性を同時に満たすことは困難であった。音の音に対する技術的発表は2017年3月に情処全国大会に発表した。また、音楽美学的意義について、EMS(Electro Music Studies Network) 2017に採択され発表する予定である。今後は、音韻性のみならず、ある楽器の奏法を別の楽器の短時間奏法の集合物として表現する方法を検討していく。併せて、構造的音色の音楽作品への応用とその発表、啓蒙を行った。2014年12月にはオーケストラ作品「音の音」で、弦楽器の音色で話す合成音を意図し「いろはうた」の朗読音のピッチ系列からなる弦楽の主題を作成した。次の2015年、この弦楽部の音を音源とし、これに先の「いろはうた」の音声から音韻性を付与した「音の音」をコンピュータ合成音として、これにピアノ演奏をかぶせた作品として、同年10月すみだトリフォニーホールと翌2016年6月にNYCEMFで発表した。コンピュータ音楽の中で音色合成技術は新たな表現と直結するため、重要な技術分野である。これまでサウンドモーフィングやサウンドハイブリッドは個別技術として検討されてきたが、これに「音の音」と呼ぶ新たな概念を加え、全体を構造的音色と呼ぶ概念を提唱した。音の音は、一つの音色の合成に別の音色を使う方法だが、サウンドハイブリッドと異なる点は、階層的な構成をとり、下位の音色を明確に識別できる音色として定義している。この考えに基づき、2つの合成例を製作した。一つは朗読音声を、ストリングスの合成音で達成すること。もう一つは、NMF(非負値行列因子分解)を応用して、音声をヴァイオリンや尺八の音で合成した。研究実績の概要で記載したとおり、オーケストラ公演の決定がなされ、本研究との関係では3年計画の中でその実施順序を入れ替え、またデータ収録内容をフルートや自然音からまずオーケストラサウンドと入れ替えた。この変更により、制作部分における重みが増し、結果として研究の進行がやや遅れた、しかし、大局的には、実施の順序を入れ替えたことと、データ収集はできたため、本年度にその遅れを取り戻すべく、合成音方式を考案する。最終年度はNMFを用いた構造的音色の合成手法についてより深い検討を行う。通常のNMFは混合音に関するスペクトログラムを周波数×時間軸上の対数強度の3次元データを、規定となる楽器毎のスペクトルと、その時間軸上のアクティベーションの積として分解するが、この問題は、その中で楽器音については、すでに知られている楽音のスペクトルを利用する、というより簡単化された問題設定とする。しかし、いつどのように組み入れるか、という問題は必ずしも簡単ではない。 | KAKENHI-PROJECT-26370111 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26370111 |
肝膵同時切除後の肝膵臓器相関における耐術能の指標と膵ホルモンの役割に関する研究 | 本研究では、肝膵同時切除における病態の特徴と膵ホルモンと肝再生の肝膵臓器相関について検討した。実験的に25頭のイヌを用い、肝切除単独群(第1群)とそれに膵切除を加えた群の耐術率や術中血行動態、肝機能の推移などついて比較検討した。膵切除例ではこれまで膵切除量に応じて2つの実験群(第2,3群:膵の切除量33%,75%)を作成してきた。本年度は昨年度から引き続いて第4群として大量膵切除群を作成した。肝左4葉切除(70%肝切除)と95%膵切除を行った。第4群の計7例のうち6例が術後8日以内に死亡し、1例が28日耐術した。死因は腹腔内出血2例、十二指腸穿孔1例、創感染1例、肝不全2例であり、全三者の4例は手術手技、過大侵襲に起因した。死亡剖検時の肝重量をみると術後早期は肝再生は不十分であったが、28日生存例では約3倍に増加していた。臨床検査所見は病態が多様なため症例間のばらつきが大きかった。第4群については手術侵襲が大きいためか耐術できない例が他の群より多く、比較するに足るデータの集積ができなかった。肝不全の発生と肝再生について計4群間にある程度の傾向があったものの、未だ大きな有意差を見いだせていない。今後の更なる実験例の追加が必要である。本研究では、肝膵同時切除における病態の特徴と膵ホルモンと肝再生の肝膵臓器相関について検討した。実験的に25頭のイヌを用い、肝切除単独群(第1群)とそれに膵切除を加えた群の耐術率や術中血行動態、肝機能の推移などついて比較検討した。膵切除例ではこれまで膵切除量に応じて2つの実験群(第2,3群:膵の切除量33%,75%)を作成してきた。本年度は昨年度から引き続いて第4群として大量膵切除群を作成した。肝左4葉切除(70%肝切除)と95%膵切除を行った。第4群の計7例のうち6例が術後8日以内に死亡し、1例が28日耐術した。死因は腹腔内出血2例、十二指腸穿孔1例、創感染1例、肝不全2例であり、全三者の4例は手術手技、過大侵襲に起因した。死亡剖検時の肝重量をみると術後早期は肝再生は不十分であったが、28日生存例では約3倍に増加していた。臨床検査所見は病態が多様なため症例間のばらつきが大きかった。第4群については手術侵襲が大きいためか耐術できない例が他の群より多く、比較するに足るデータの集積ができなかった。肝不全の発生と肝再生について計4群間にある程度の傾向があったものの、未だ大きな有意差を見いだせていない。今後の更なる実験例の追加が必要である。これまでの研究で、肝切除に膵を合併切除すると術後肝不全の率が増すことが分かった。これには膵ホルモンの肝再生への関与が考えられており、術後の肝再生の機序と肝機能の維持を検討する必要がある。本研究の最終的目的は、臨床例における肝膵同時切除の切除限界を事前に予測し得る指標の確立、術後の肝不全の予防と管理法の確立である。そこで本年度は、並行して臨床的に肝切除後の肝機能の維持と管理について、術後代謝栄養とサイトカインのコントロールの観点から検討した。まず、肝切除の11例について、術後の血漿アミノ酸、AKBR、血中アンモニアなどの推移と分枝鎖アミノ酸(BCAA)による栄養管理を検討した。その結果、肝切除後はFischer比の低下とアンモニア高値が特徴的で、これはBCAAの投与で改善したが、蛋白合成能には影響がなかった。また、NPC/Nを160200kcal/Nにすると窒素出納が術後早期に改善された。AKBRが0.4以下のCriticalな例では投与によってかえって血中BCAAの逸脱が見られた。次に別の肝切除患者16例の周術期の炎症性サイトカインの変動を観察し、5日間のUlinastatin投与の効果をSIRS観点から検討した。術後3日目の顆粒球エラスターゼはUlinastatinを投与した群(410.0±30.5g/L)の方がコントロール群(860.4±155g/L)より有意に低かった。IL-6も投与群が低い傾向にあったが、IL-8と尿中trypsin inhibitor(UTI)には両者に差がなかった。以上より、肝切除後の肝機能の管理と臓器保護に、BCAAによる栄養管理やUlinastatinが有意義であると思われた。この結果を実験群のデータでも比較検討する方針である。肝、膵の単独臓器の大量切除では多くの場合耐術できるが、肝膵同時切除では、時に耐術不能となることがある。耐術の条件には手術そのものによる過大侵襲のみならず、肝膵同時切除に伴う肝機能の変動や、膵ホルモンの肝再生への関与による肝膵相関など、特有の病態が存在するものと考えられる。本研究の最終的目的は、臨床例における肝膵同時切除の切除限界を事前に予測し得る指標の確立、術後の肝不全の予防と管理法の確立である。我々は前年度までに18頭のイヌを用い肝切除に膵切除量を加え、膵切除量に応じて3つの実験群を作成してきた。 | KAKENHI-PROJECT-13671334 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13671334 |
肝膵同時切除後の肝膵臓器相関における耐術能の指標と膵ホルモンの役割に関する研究 | 耐術率や術中血行動態、肝機能の推移などついて、これらの群間にある程度の傾向があったものの大きな有意差は見いだせなかった。そこで本年度は、各群の例数を追加するとともに、第4群として更なる大量膵切除群を設定し肝70%切除+膵95%切除を行った。第4群として本年度は体重1020kgの雑種成犬を用い3頭に肝左4葉切除(70%肝切除)と遊離膵から両側から2cmずつ十二指腸付着膵の切除(95%膵切除)を行った。全例が術後3日以内に死亡し耐術できなかった。死因は腹腔内出血、十二指腸穿孔、肝不全であり、前二者は手術手技に起因した。死亡剖検時の肝重量はChildらの肝再生率の数式ではいずれも70%以下で、第4群においては少なくとも術後3日以内には肝再生は行われていないことが分かった。臨床検査所見については血算・血液凝固系、肝機能検査、膵内分泌機能とも病態が多様なため症例間のばらつきが大きかった。第4群については来年度はさらに5頭を行う予定で、このデータを今までの3群と比較検討する方針である。本研究では、肝膵同時切除における病態の特徴と膵ホルモンと肝再生の肝膵臓器相関について検討した。実験的にイヌを用い、肝切除単独群(第1群)とそれに膵切除を加えた群の耐術率や術中血行動態、肝機能の推移などついて比較検討した。膵切除例ではこれまで膵切除量に応じて2つの実験群(第2,3群:膵の切除量33%,75%)を作成してきた。本年度は昨年度から引き続いて第4群として大量膵切除群を作成した。肝左4葉切除(70%肝切除)と95%膵切除を行った。第4群の計7例のうち6例が術後8日以内に死亡し、1例が28日耐術した。死因は腹腔内出血2例、十二指腸穿孔1例、創感染1例、肝不全2例であり、全三者の4例は手術手技、過大侵襲に起因した。死亡剖検時の肝重量をみると術後早期は肝再生は不十分であったが、28日生存例では約3倍に増加していた。臨床検査所見は病態が多様なため症例間のばらつきが大きかった。第4群については手術侵襲が大きいためか耐術できない例が他の群より多く、比較するに足るデータの集積ができなかった。計4群間に肝不全の発生と肝再生について、ある程度の傾向があったものの、未だ大きな有意差を見いだせていない。今後の更なる実験例の追加が必要と考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-13671334 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13671334 |
ガラス形成物質における非平衡緩和機構の解明 | ソフトマターの非平衡構造とダイナミクスの解明を目標として、高分子ガラスでのエイジング現象の解明が本研究の主題である。薄膜におけるガラス転移温度の低下には、α過程のダイナミクスが薄膜で速くなることに関係すると考えられ、エイジングダイナミクスもまた、膜厚に依存すると期待されている。今年度はこのエイジングダイナミクスの詳細を明らかにするため、ポリ2-クロロスチレン(P2CS)超薄膜におけるエイジングダイナミクスの誘電緩和測定を昨年度に引き続き行った。測定はガラス転移温度以上で熱履歴を消去したのち、エイジング温度T_aまで降温し、等温エイジングを行う、その後、室温まで降温させる。その結果、通常の等温エイジングでは、誘電率虚数部ε"は単調減少するが、膜厚3.7nmの超薄膜でε"の増加というアノマリーが観測された。さらに、T_a=348K、d=3.7nmの薄膜ではエイジング時間に対して、ε"は極大を持つことが明らかとなった。これはε"のエイジング時間依存性が膜厚とエイジング温度に依存し、また、競合する2つのタイムスケールがあることを示す。誘電緩和測定によるセグメント運動のダイナミクスの観測によると、α過程に対応するピーク強度は膜厚が減少すると小さくなる。さらに、d=3.7nmでは320K付近に表面,界面に近い液体的な層でのセグメント運動の寄与によるもう1つのピークα_1過程が見られる。詳細な比較により、超薄膜の等温エイジングにおけるε"の増加は、α_1過程と関係していることが明らかとなった。ガラス状態ではα過程は凍結されており、液体状態に特徴的な分子の移動度は観測されない。しかし、興味深いエイジング現象がガラス状態では観測される。ガラス状態にあるいくつかの高分子に対する電気容量測定により、特徴的なエイジング時間依存性が得られている。つまり、電気容量実部C'はエイジング時間とともに増大し、虚部C"は逆に減少する。これまでの研究により、電気容量の減少は、誘電感受率の減少に起因し、電気容量の増加は体積の収縮あるいは密度の増大に起因していることが示唆された。本研究では、この考察をさらに進め、等温エイジング過程での誘電感受率と体積の時間発展を定量的に分離することを試みた。以下、得られた結果を列挙する。1)ポリ2-クロロスチレンの複素電気容量虚部の等温エイジング過程において、誘電感受率と体積変化を完全に分離することができた。2)1)での知見をもとに、高分子ガラスのエイジング過程での誘電率と体積の時間変化、周波数依存性が簡単な理論的モデルにより再現された。3)高周波数での電気容量実部C'が体積変化のみを捉えていることの実験的な証拠であるKovacs効果が実験的に再現された。T vs.1/C'グラフとで、液体状態から、液体状態のラインの延長線上でガラス状態のある温度T fまで、異なる熱履歴を通って到達する場合を考える。T fは液体状態のラインの延長線上にあるので、そこでの1/C'の値はすでに熱平衡値に達しており、これ以上の変化は起こらないことが期待される。しかし、実際はT fでの等温エイジング過程の時間経過とともに、1/C'が極大値を示した後、はじめの値に近づく現象が観測された。これはKovacsの体膨張測定での結果と一致しており、体積がエイジング過程で示す記憶効果の一種であると考えられる。以上の実験結果は高周波数での1/C'値の変化が体積の変化のみに起因していることの重要な根拠といえる。ソフトマターの非平衡構造とダイナミクスの解明を目標として、高分子ガラスでのエイジング現象の解明が本研究の主題である。薄膜におけるガラス転移温度の低下には、α過程のダイナミクスが薄膜で速くなることに関係すると考えられ、エイジングダイナミクスもまた、膜厚に依存すると期待されている。今年度はこのエイジングダイナミクスの詳細を明らかにするため、ポリ2-クロロスチレン(P2CS)超薄膜におけるエイジングダイナミクスの誘電緩和測定を昨年度に引き続き行った。測定はガラス転移温度以上で熱履歴を消去したのち、エイジング温度T_aまで降温し、等温エイジングを行う、その後、室温まで降温させる。その結果、通常の等温エイジングでは、誘電率虚数部ε"は単調減少するが、膜厚3.7nmの超薄膜でε"の増加というアノマリーが観測された。さらに、T_a=348K、d=3.7nmの薄膜ではエイジング時間に対して、ε"は極大を持つことが明らかとなった。これはε"のエイジング時間依存性が膜厚とエイジング温度に依存し、また、競合する2つのタイムスケールがあることを示す。誘電緩和測定によるセグメント運動のダイナミクスの観測によると、α過程に対応するピーク強度は膜厚が減少すると小さくなる。さらに、d=3.7nmでは320K付近に表面,界面に近い液体的な層でのセグメント運動の寄与によるもう1つのピークα_1過程が見られる。詳細な比較により、超薄膜の等温エイジングにおけるε"の増加は、α_1過程と関係していることが明らかとなった。 | KAKENHI-PUBLICLY-21015026 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-21015026 |
イチジク果実内の生物群の共進化 | イチジク属樹木とイチジクコバチは種特異的共生関係にあり、イチジクはイチジクコバチに増殖場所を提供し、イチジクコバチはイチジクの花粉を運ぶという送粉共生システムが知られている。オオバイヌビワ(イチジク属樹木)の果実内部は、外部との接触が限られているにも関わらず、近年、イチジクコバチ以外の生物(線虫、糸状菌、細菌)が生息していることが明らかとなってきた。本研究は、植物、昆虫、線虫、微生物の共進化の過程を明らかにするため、「イチジク」、およびイチジクの果実内に生息する、「イチジクコバチ」、「線虫」、「微生物」の遺伝的多様性および生態的特性の解明を行うものである。本研究の最終年度となる2018年度は、与那国島から与論島までの沖縄県全土から採集・作成された60株の線虫からDNAを抽出しSNPs解析を行い、線虫の地理的な系統関係を明らかにした。加えて、これまでにゲノムを読んだ石垣島の由来の1株に加え、沖縄本島の1株の全ゲノムを読みリファレンスゲノムを完成させた。その結果、線虫は、石垣島と宮古島の境界線で遺伝的に大きく異なることが明らかとなった。これは、地理学的にも理にかなったものである。さらに、イチジク果実内の細菌叢を詳しく調べたところ、複数種の細菌がイチジクコバチによって果実から果実に運ばれていることがわかり、そのうちの一部は線虫の増殖に負の影響を与えることが示唆された。この細菌はイチジク内での線虫の増殖を抑えてイチジクコバチの生育にいい影響を与え、イチジク-イチジクコバチ-線虫の関係の中で重要な役割を担っている可能性がある。これらのことから、イチジクに関連する生物学群の共進化には、地理的要因に加え生物種間の影響が寄与していることが考えられる。イチジク属樹木とイチジクコバチは種特異的共生関係にあり、イチジクはイチジクコバチに増殖場所を提供し、イチジクコバチはイチジクの花粉を運ぶという送粉共生システムが知られている。オオバイヌビワ(イチジク属樹木)の果実内部は、外部との接触が限られているにも関わらず、近年、イチジクコバチ以外の生物(線虫、糸状菌、細菌)が生息していることが明らかとなってきた。本研究は、植物、昆虫、線虫、微生物の共進化の過程を明らかにするため、「イチジク」、およびイチジクの果実内に生息する、「イチジクコバチ」、「線虫」、「微生物」の遺伝的多様性および生態的特性の解明を行うものである。沖縄本島、宮古島、石垣島、西表島、与那国島、台湾島、からオオバイヌビワ果実を採集し、Caenorhabditis sp. 34(線虫)の有無を調べたところ、全ての島からC. sp. 34が検出された。さらにこのC. sp. 34の遺伝的変異について調べたところ、(沖縄本島、宮古島)と(石垣島、西表島、与那国島、台湾島)の二つに大きく分かれることが明らかとなった。また、同様に糸状菌の検出を試みたところ、全ての島からFusarium sp.が高い頻度で検出された。また、沖縄本島と石垣島のオオバイヌビワ果実中の細菌叢をメタゲノム解析で調べたところ、オオバイヌビワ果実内からは90科以上の細菌が検出された。このうち、DNA量においては、7科の細菌が大部分を占めており、沖縄本島と石垣島で共通であった。これらのことから、オオバイヌビワ果実内には、C. sp. 34(線虫)、糸状菌(Fusarium sp.)、7科の細菌、が共通で広く存在し、果実内の環境はどの場所においても非常に近いことが示唆された。また、イチジク果実内から検出された線虫においては、遺伝的に異なる2グループに分かれたことから、個体群が地理的に分離されていると考えられる。本研究では、イチジク、イチジクコバチ、線虫、微生物の遺伝的多様性および生態的特性を調べるために、主に以下の3つのことを3カ年で行う計画である。1)各地から採集したイチジクと、そこから検出される生物について、ゲノムレベルの地域差異を基に、系統樹を作成し、種間で比較する。2)イチジク果実内の生物のうち、顕微観察で検出できない生物について、メタゲノム手法で全生物種および地域ごとの種構成を調べる。3)生物間相互作用のキーとなる、「イチジク、イチジクコバチ、線虫を相互にコントロールする化学物質」について、質量分析により同定し、相同性検索、添加試験によりイチジク、イチジクコバチ、線虫での「化学物質」の働きを調べる。この計画の中で、本年度(1年目)は、先島諸島(宮古島、石垣島、西表島、与那国島)、沖縄本島および台湾から線虫C. sp. 34を採集することができ、それぞれ株を作成し、複数遺伝子座による系統解析まで行った。また、イチジク果実内の微生物においては、培養により糸状菌(Fusarium sp.)、メタゲノム的手法により細菌の検出を行った。「イチジク、イチジクコバチ、線虫を相互にコントロールする化学物質」においては、C. sp. 34のゲノムを調べ、近縁種の線虫と比較し、数は少ないものの多数の化学物質受容体の存在を確認した。これらのことから、本研究は概ね当初の計画通り進行していると考えている。 | KAKENHI-PROJECT-16K18608 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K18608 |
イチジク果実内の生物群の共進化 | イチジク属樹木とイチジクコバチは種特異的共生関係にあり、イチジクはイチジクコバチに増殖場所を提供し、イチジクコバチはイチジクの花粉を運ぶという送粉共生システムが知られている。オオバイヌビワ(イチジク属樹木)の果実内部は、外部との接触が限られているにも関わらず、近年、イチジクコバチ以外の生物(線虫、糸状菌、細菌)が生息していることが明らかとなってきた。本研究は、植物、昆虫、線虫、微生物の共進化の過程を明らかにするため、「イチジク」、およびイチジクの果実内に生息する、「イチジクコバチ」、「線虫」、「微生物」の遺伝的多様性および生態的特性の解明を行うものである。本研究および共同研究において、オオバイヌビワ内に生息する線虫Caenorhabditis sp. 34の全ゲノムが解読された(論文投稿中)。これにより、各地から採集されたCaenorhabditis sp. 34の詳細な多様性解析が可能となった。現在各地から採集した線虫の株を作成し、多様性解析用のDNAを抽出している。また、オオバイヌビワおよび内部の糸状菌とイチジクコバチも同時に採集しており、順次解析予定である。また、オオバイヌビワ果実内において、線虫および細菌叢の経時的変化についてメタゲノム的手法で調べた結果、線虫はオオバイヌビワ雄果実のイチジクコバチ脱出前の時期に最も個体数が多くなり、細菌叢はオオバイヌビワ果実のステージにより変化することが明らかとなった。今後は、採集したオオバイヌビワ、イチジクコバチ、線虫、糸状菌の遺伝的多様性を明らかにし、比較解析を行う。またオオバイヌビワ内の細菌叢の変化が線虫にどのように作用するか実験室内で培養実験を行う予定である。本研究では、イチジク、イチジクコバチ、線虫、微生物の遺伝的多様性および生態的特性を調べるために、主に以下の3つのことを3カ年で行う計画である。1)各地から採集したイチジクと、そこから検出される生物について、ゲノムレベルの地域差異を基に、系統樹を作成し、種間で比較する。2)イチジク果実内の生物のうち、顕微観察で検出できない生物について、メタゲノム手法で全生物種および地域ごとの種構成を調べる。3)生物間相互作用のキーとなる、「イチジク、イチジクコバチ、線虫を相互にコントロールする化学物質」について、質量分析により同定し、相同性検索、添加試験によりイチジク、イチジクコバチ、線虫での「化学物質」の働きを調べる。この計画の中で、本年度(2年目)は、先島諸島(宮古島、石垣島、西表島、与那国島)、沖縄本島および台湾から得た線虫の株を確立することができ、複数株のゲノムを読んだ。しかし、いくつかの株についてはまだゲノムが読まれておらず、全株を使ったSNPs解析のために今後早急に読む必要がある。また、イチジク果実内の微生物においては、メタゲノム的手法により細菌叢が果実のステージにより変化していくことを明らかにした。「イチジク、イチジクコバチ、線虫を相互にコントロールする化学物質」においては、イチジク雄果実において特定の時期に線虫の便乗ステージが大量に現れることを明らかにし、この時期に果実内に線虫の便乗ステージを誘導する化学物質が存在することが示唆された。これらのことから、線虫のSNPs解析に若干の遅れが見られるものの、本研究は概ね当初の計画通り進行していると考えている。イチジク属樹木とイチジクコバチは種特異的共生関係にあり、イチジクはイチジクコバチに増殖場所を提供し、イチジクコバチはイチジクの花粉を運ぶという送粉共生システムが知られている。オオバイヌビワ(イチジク属樹木)の果実内部は、外部との接触が限られているにも関わらず、近年、イチジクコバチ以外の生物(線虫、糸状菌、細菌)が生息していることが明らかとなってきた。 | KAKENHI-PROJECT-16K18608 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K18608 |
無形文化遺産をめぐる知識人、政府、担い手の諸実践-広東省の水上居民を事例として | 昨年度までも行ってきた香港と広東省における調査を継続して行い、無形民俗文化の活用状況に関するデータを得た。これまで調査を行ってきたデータと合わせ、分析をすすめている。また、シンセン大学や広州大学、高州博物館の研究者らと情報交換を行い、無形民俗文化に対する現地政府の政策と、コミュニティの現状に関する情報を得た。各地の無形民俗文化は観光資源として期待されている部分と、それがうまく観光客をひきつけるに至っていない現状などについて情報収集をさらに進めている。今後は、汕尾と高州の元水上居民コミニュティにターゲットを絞り、情報収集と分析を行う。高州の水上居民については、現地において収集した文献資料により、陸上がりの経緯やその間の伝統行事の推移などについて、基本的な情報が収集できた。次年度以降は、廟を中心とするコミュニティや各家族の儀礼への参与観察を行いつつ、当地では無形民俗文化がどのように活用されているのか、いないのかを集中的に調べ分析していく。汕尾では、すでに元水上居民の漁歌を資源として観光客を呼ぼうとしたり、省都広州や首都北京でのコンサートも行われている。その一方で、そうしたイベントは汕尾の知名度を上げることはあっても、それを目的として観光客がやってくるような商品にはなっていない。そのため、こうしたコンサートなどの活動に連動して、漁民コミュニティやその周辺において、何が起こっているのかを丹念に記述すべく、漁歌隊、廟関係者および地元政府関係者からの情報収集を行う。広東各地の無形民俗文化の利用について、現地調査や文献収集により、一定の成果をあげている。ただし、それが地域社会でどういった影響を与えているのかについての情報収集と分析が遅れている。現地の研究機関とも十分に連携をとりながら、現地調査を進める。まずは中国、なかでも広東省の無形文化遺産に関連する先行研究のさらなる収集と分析を行った。6月には広東省広州市を訪問し、広東省中山図書館や中山大学図書館等で資料収集をするとともに、広東省民族研究所元所長の馬建ショウ氏と無形文化遺産に関して情報交換を行った。また、静岡大学において、長沼さやか氏や藤川美代子氏など水上居民研究を行ってきた日本の研究者に加え、広州大学の呉水田氏を交えて意見交換を行い、今後の研究での協力体制を構築した。近年、無形文化遺産の「漁歌」を歌う汕尾の漁歌隊は、定期的に歌を披露する各地のイベントに参加している。汕尾における聞き取りや彼らのイベント参加時に撮影されたDVD分析により参加状況の整理をすすめつつ、今後行うイベント参加時の参与観察の準備を行ってきた。一方で、地元の廟の行事などでもこうした歌謡を披露することが行われており、無形文化遺産に指定されるなかで整備されてきた漁歌隊が、ローカルな儀礼やイベントにどのような影響をあたえるのかについて、今後詳細に調査分析をする必要性を感じたので、次年度以降順次調査を行っていく。また、汕尾以外の「漁民」の歌謡や民俗と無形文化遺産化についても資料収集をすすめるとともに、ヤオ族や客家などの「民俗」の無形文化遺産化についても文献による比較検討を行っている。これについても、現地機関関係者と話し合って調査対象を再度検討し、次年度に調査を実施する。広東省の無形文化遺産に関連する資料の収集・分析はほぼ予定通り行った。ただし、具体的な調査地選定に関しては、汕尾以外の場所を絞り込むにいたらず、さらに情報収集を進めた上で調査地選定と調査をで行う。昨年度までも行ってきた香港と広東省における調査を継続して行い、無形民俗文化の活用状況に関するデータを得た。これまで調査を行ってきたデータと合わせ、分析をすすめている。また、シンセン大学や広州大学、高州博物館の研究者らと情報交換を行い、無形民俗文化に対する現地政府の政策と、コミュニティの現状に関する情報を得た。各地の無形民俗文化は観光資源として期待されている部分と、それがうまく観光客をひきつけるに至っていない現状などについて情報収集をさらに進めている。今後は、汕尾と高州の元水上居民コミニュティにターゲットを絞り、情報収集と分析を行う。高州の水上居民については、現地において収集した文献資料により、陸上がりの経緯やその間の伝統行事の推移などについて、基本的な情報が収集できた。次年度以降は、廟を中心とするコミュニティや各家族の儀礼への参与観察を行いつつ、当地では無形民俗文化がどのように活用されているのか、いないのかを集中的に調べ分析していく。汕尾では、すでに元水上居民の漁歌を資源として観光客を呼ぼうとしたり、省都広州や首都北京でのコンサートも行われている。その一方で、そうしたイベントは汕尾の知名度を上げることはあっても、それを目的として観光客がやってくるような商品にはなっていない。そのため、こうしたコンサートなどの活動に連動して、漁民コミュニティやその周辺において、何が起こっているのかを丹念に記述すべく、漁歌隊、廟関係者および地元政府関係者からの情報収集を行う。広東各地の無形民俗文化の利用について、現地調査や文献収集により、一定の成果をあげている。ただし、それが地域社会でどういった影響を与えているのかについての情報収集と分析が遅れている。文献資料の収集を進めるとともに、一定期間現地で調査を行う時間をできるだけ確保するように努める。現地の研究機関とも十分に連携をとりながら、現地調査を進める。ほぼ予定通りの金額を使用したが、航空券価格等の関係で25935円残ったので、次年度の調査費用とする。 | KAKENHI-PROJECT-17K13589 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K13589 |
無形文化遺産をめぐる知識人、政府、担い手の諸実践-広東省の水上居民を事例として | ほぼ計画通り支出してきたが、一部他研究費での調査と目的地が近接した場合に、重複分が発生した。これは次年度の調査の拡充に充てる。 | KAKENHI-PROJECT-17K13589 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K13589 |
イオンチャンネルを介した気管支喘息発症機序の解明と創薬の開発 | 気管支喘息の病態形成においてIL-13により誘導される陰イオンチャンネル「ペンドリン」が重要であることが示唆されていた。本研究においてペンドリンが喘息の病態形成に関与していることを明らかにすると共にペンドリンにより気道管腔に輸送されたチオシアネートイオンがヘムペルオキシダーゼの酵素反応によりヒポチオシアン酸へと変換され、これが気道上皮細胞に作用し、NF-kbやERKを活性化することで炎症反応が増幅し喘息の病態が増悪するという喘息病態形成機序の新たな仮説を提示することが出来た。気管支喘息の病態形成においてIL-13により誘導される陰イオンチャンネル「ペンドリン」が重要であることが示唆されていた。本研究においてペンドリンが喘息の病態形成に関与していることを明らかにすると共にペンドリンにより気道管腔に輸送されたチオシアネートイオンがヘムペルオキシダーゼの酵素反応によりヒポチオシアン酸へと変換され、これが気道上皮細胞に作用し、NF-kbやERKを活性化することで炎症反応が増幅し喘息の病態が増悪するという喘息病態形成機序の新たな仮説を提示することが出来た。気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患の病態形成におけるペンドリンの役割を明らかにするために、イオンチャンネルであるペンドリンによって気道管腔側に輸送されるチオシアネートイオン及びこのイオンから管腔に存在するラクトペルオキシダーゼによって生じるヒポチオシアン酸に着目して研究を行った。先ずチオシアネートイオン及びヒポチオシアン酸が気道上皮細胞株に及ぼす影響を炎症性サイトカイン(IL-8、IL-1b、IL-6)の発現量を指標にして解析した。チオシアネートイオンはこれらの遺伝子の発現に影響を及ぼさなかったが、ヒポチオシアン酸はこれらの発現を顕著に増加させることがわかった。次ぎにこれらの炎症性サイトカインの遺伝子のマスター制御転写因子であるNF-kbに対するヒポチオシアン酸の作用を調べたところ、この転写因子はヒポチオシアン酸により顕著に活性化されることがわかった。さらにヒポチオシアン酸によって影響が及ぼされるシグナル伝達分子を探した結果、ERKが活性化されることが明らかになった。またヒポチオシアン酸をマウスの気管内に投与すると、投与24時間後に好中球浸潤が観察され、In vitroの結果を支持する結果が得られた。以上の結果からペンドリンによって気道管腔側に排出されたチオシアネートイオンがラクトペルオキシダーゼによってヒポチオシアン酸に変換され、これにより炎症反応が増幅されることが気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患の病態をさらに増悪している可能性が考えられる。現在、ヒポチオシアン酸が気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患の増悪因子である可能性をペンドリントランスジェニックマウスを用いて検証している。気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患の病態形成における陰イオンチャンネル「ペンドリン」の役割を明らかにするために、今年度も引き続きペンドリンによって気道管腔側に輸送されるチオシアネートイオンに着目して研究を行った。このチオシアネートイオンは気道上皮細胞表面上にあるDUOXによって産生される過酸化水素と気道管腔に存在するラクトペルオキシダーゼの作用によりヒポチオシアン酸に変換される。ヒポチオシアン酸は血管内皮細胞に対しては炎症反応を惹起することが報告されているものの、気道上皮細胞に対する作用は知られていないので、気道上皮細胞に対する作用を調べている。ヒト気道上皮細胞株であるNCI-H292とS9、並びにマウス気道上皮細胞株であるTGMBEにヒポチオシアン酸を添加すると、ヒト気道上皮細胞株では、ヒポチオシアン酸により炎症性サイトカイン(IL-8、IL-Ib、IL-6、GM-CSF)の発現が誘導され、マウス細胞株では、ヒポチオシアン酸が低濃度でも細胞死が誘導されることがわかった。次にオボアルブミン誘導喘息マウスを用いた系において、ペルオキシダーゼの自殺阻害剤であるメチマゾールを曝露直前に飲水に加え、ヒポチオシアン酸の産生を抑制させると、メチマゾールを飲ませなかった場合より喘息病態が軽減しており、気道過敏性の亢進が抑制され、また、肺胞洗浄液の好酸球や好中球などの炎症細胞の浸潤数が半減する事がわかった。これらの結果よりヒポチオシアン酸は喘息の病態形成に増悪因子として作用している可能性が示されたので、ラクトペルオキシダーゼ欠損マウスを用いてさらに解析を進めることにした。現在この遺伝子を欠損したマウスを作製している。気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患の病態形成における陰イオンチャンネル「ペンドリン」の役割を明らかにするために、今年度も引き続きペンドリンによって気道管腔側に輸送されるチオシアネートイオン、並びにこのイオンと過酸化水素から、気道管腔に存在するラクトペルオキシダーゼの酵素反応によりに産生される「ヒポチオシアン酸」に着目した。既に、気道上皮細胞に対して、ヒポチオシアン酸はNF-kBを活性しIL-8等の炎症性サイトカインの遺伝子発現を誘導することを見いだしたが、今年度はヒポチオシアン酸によるNF-kBの活性機構を中心に解析した。ヒト気道上皮細胞株(NCI-H292細胞)の核抽出液を用いたgel shift assayによりヒポチオシアン酸により活性化されるNF-kBの構成因子を調べたところ、p52、p65-c-Rel及びRel-Bは検出されず、p50のみ検出され、ヒポチオシアン酸により活性化されるNF-kBはp50のホモダイマーから構成されていることがわかった。 | KAKENHI-PROJECT-21591284 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21591284 |
イオンチャンネルを介した気管支喘息発症機序の解明と創薬の開発 | p50は転写活性化ドメインを保有していないので、ヒポチオシアン酸は転写活性化ドメインを有する他の因子をも同時に活性化しこれがp50と複合体を形成して炎症性サイトカインの遺伝子が誘導されると考えられた。またH292細胞をヒポチオシアン酸処理し、細胞内レドックスの状態を調べたところ、還元型グルタチオンの量が顕著に減少し、酸化型グルタチオンの量が増加していたので、ヒポチオシアン酸によるレドックス変化がNF-kBの活性化に関わると考えられた。しかし過酸化水素によりH292細胞の細胞内レドックスをヒポチオシアン酸刺激時と同様な状態へ変化させてもNF-kBは活性化されなかった。この結果からヒポチオシアン酸は単に細胞内レドックスを変化させるだけではなく、この酸に特有の作用機構が存在し、これによりNF-kBが活性化される可能性が考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-21591284 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21591284 |
ランダム物質中における励起子系の非線形光学現象に関する研究 | 本研究は,ランダム的質中に光によって生成された励起子の緩和現象を,非線形光学現象,特に2連光パルス励起による過渡的パラメトック効果を通して理論的に明らかにしたものである。従来励起子の位想緩和は,励起子格子相互作用,あるいは励起子間相互作用によるとされ,それらの場合は,十分に相互作用が弱けりば緩和はマルコフ的なコヒ-レンスの指数関数的減衰をもたらすとされていた。しかし,2体のグリ-ン関数を拡張されたコヒ-レント・ポテンシャル近似(CPA)により解析した本研究によると,励起子散乱の原因となるポテンシャルの空間的ゆらぎが十分に小さい極限であっても,過渡的光パラメトリック効果の信号光強度の時間特性は非指数関数的である。これは位相緩和が,一般に着目する系(今の場合は励起子)と十分に広いスペクトルを持つ熱浴との相互作用によるとする統計力学のモデルによるよく知られた結果とは異なる特異な現象である。特に,不規則性が弱い系では,非常に遅い信号光の立ち上りを示し,また不規則性が十分に強い系ではフォトン・エコ-的な振舞を示す。一般には,ランダム系の励起子スペクトルの広がりは均一的なものと不均一的なものとが不可分に共存する興味深い様相を呈し,最近,北海道大学の南グル-プの実験でそれと思われるデ-タが得られている。また,ウィスコンシン大学のヒュ-バ-らによる数値シミュレ-ションで,本研究結果をサポ-トする研究発表が行なわれている。また本研究を行なうに当って,パ-ソナルコンピュ-タ-・マッキントッシュIIに増設したアクセラレ-タ・ボ-ドにより約3倍のパフォ-マンスを上げる事が出来た。本研究は,ランダム的質中に光によって生成された励起子の緩和現象を,非線形光学現象,特に2連光パルス励起による過渡的パラメトック効果を通して理論的に明らかにしたものである。従来励起子の位想緩和は,励起子格子相互作用,あるいは励起子間相互作用によるとされ,それらの場合は,十分に相互作用が弱けりば緩和はマルコフ的なコヒ-レンスの指数関数的減衰をもたらすとされていた。しかし,2体のグリ-ン関数を拡張されたコヒ-レント・ポテンシャル近似(CPA)により解析した本研究によると,励起子散乱の原因となるポテンシャルの空間的ゆらぎが十分に小さい極限であっても,過渡的光パラメトリック効果の信号光強度の時間特性は非指数関数的である。これは位相緩和が,一般に着目する系(今の場合は励起子)と十分に広いスペクトルを持つ熱浴との相互作用によるとする統計力学のモデルによるよく知られた結果とは異なる特異な現象である。特に,不規則性が弱い系では,非常に遅い信号光の立ち上りを示し,また不規則性が十分に強い系ではフォトン・エコ-的な振舞を示す。一般には,ランダム系の励起子スペクトルの広がりは均一的なものと不均一的なものとが不可分に共存する興味深い様相を呈し,最近,北海道大学の南グル-プの実験でそれと思われるデ-タが得られている。また,ウィスコンシン大学のヒュ-バ-らによる数値シミュレ-ションで,本研究結果をサポ-トする研究発表が行なわれている。また本研究を行なうに当って,パ-ソナルコンピュ-タ-・マッキントッシュIIに増設したアクセラレ-タ・ボ-ドにより約3倍のパフォ-マンスを上げる事が出来た。 | KAKENHI-PROJECT-03640318 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03640318 |
哺乳動物の初期胚におけるニュートリエピジェネティクス | 初期胚を取り巻く栄養素の利用可能性はエピジェネティクスを変化させ得る環境要因の一つである。本研究では、メチオニンをS-アデノシルメチオニンに変換する酵素、メチオニンアデノシルトランスフェラーゼ(MAT)の哺乳動物の着床前発生、特に胚盤胞発生における必須性を明らかにするとともに、ウシ初期胚においてMATが相互作用するゲノム領域の探索、メチオニン代謝およびそれと関連する栄養素であるビタミンB群の初期胚の発生と特定の遺伝子のエピジェネテッィク修飾における役割の解析から、栄養素によるエピジェネティクスの制御・変化すなわちニュートリエピジェネティクスの基盤の一部を解明した。哺乳動物の着床前胚(受精卵)を取り巻く環境は、母体の健康・疾病状態およびストレスあるいは生殖補助技術の適用により多様化している。環境要因の中でも特に栄養環境は、エピジェネティクスを介して、発生やその後の個体の形質に影響を与える可能性が指摘されている。本研究では、エピジェネティクスの代表的な分子機構であるDNAやヒストンのメチル化において利用されるメチル基源の前駆体であることから、エピジェネティック機構への密接な関与が考えられる栄養素、メチオニンに着目し、その代謝酵素であるメチオニンアデノシルトランスフェラーゼII(MATII)が発現を制御する遺伝子を切り口にして、哺乳動物の着床前胚における「栄養素によるエピジェネティクスを介した遺伝子発現への影響(ニュートリエピジェネティクス)」の基盤を明らかにすることを目的としている。今年度は、1体外受精によって得られたウシ胚盤胞について、MATIIの触媒サブユニットであるMAT2Aに対する抗体を用いたChIP-seqを行い、MATIIが結合するDNA領域の候補を同定した。2メチオニン代謝の阻害剤を添加した条件で培養したマウス胚盤胞において、細胞系列分化関連遺伝子の発現の変化が、プロモータ領域のDNAのメチル化ではなく、転写抑制性のヒストンのメチル化の変化とともに起こることを見出した。3MAT2Aの阻害剤を添加した条件で培養したウシ胚盤胞において、成長・代謝関連遺伝子の発現の変化が、転写抑制性のヒストンのメチル化の変化とともに起こることを見出した。網羅的な解析と特定の遺伝子に特化した解析を併用することによって、特に着目している家畜の生産形質に関与する遺伝子についての知見を得ることができた。本年度は、1前年度のChIP-seq解析で同定したメチオニンアデノシルトランスフェラーゼII(MATII)の触媒サブユニットMAT2Aが結合するDNA領域の候補のいくつかについて、ChIP-qPCRを用いてMAT2Aとの相互作用を確認するとともに、上記候補近傍の遺伝子についてジーンオントロジー(GO)解析を行った。その結果、着床前胚発生のみならず成長・代謝・免疫機能・ストレス応答に関連するGOタームが有意となった。2ウシ着床前胚の体外培養系におけるMAT2Aの機能阻害方法として、前年度は低分子阻害剤を用いた方法を使用したが、より特異性の高いRNAiを用いた阻害条件を確立した。この条件でも前年度と同様に胚盤胞発生の著しい阻害が起こった。3MAT2Aの触媒反応を含むOne-carbon metabolismを活性化する目的でビタミンB群ミックスを添加する方法を試行した。この条件では胚盤胞発生の促進が起こるとともに、着床前胚のストレス応答とその後の発生を通じた成長・代謝形質のプログラミングに関わる遺伝子の発現の変化が、当該遺伝子近傍のヒストンのメチル化の変化とともに起こった。2と3の結果は、前年度のMAT2Aの機能阻害試験の結果も合わせ、MATIIによるメチオニンの代謝が胚盤胞発生という短期の影響(short-term effects)のみならず、エピジェネティック機構を介してその後の成長・代謝という長期の影響(long-term effects)にも関与していることを示唆している。さらにこの機構には、1で解析した遺伝子がMATIIとの直接の相互作用を介して関与していることも想定された。家畜初期胚のニュートリエピジェネティクス(栄養環境によるエピジェネティクスを介した遺伝子発現への影響)の基盤解明の一つとして、メチオニン代謝を切り口した解析を実行できた。網羅的解析でピックアップした遺伝子についての発現およびエピジェネティック修飾の解析が課題である。哺乳動物の着床前胚(受精卵)を取り巻く環境は、母体の健康・疾病状態およびストレスあるいは生殖補助技術の適用により多様化している。環境要因の中でも特に栄養環境は、受精卵の発生という短期的な影響(short-term effects)のみならず、エピジェネティック機構を介してその後の成長・代謝に長期の影響(long-term effects)を及ぼし、個体の形質に影響を与える可能性が指摘されているものの一つである。本研究では、エピジェネティクスの代表的な分子機構であるDNAやヒストンのメチル化において利用されるメチル基源の前駆体であることから、エピジェネティック機構への密接な関与が考えられる栄養素、メチオニンに着目し、その代謝酵素であるメチオニンアデノシルトランスフェラーゼII(MATII)が発現を制御する遺伝子を切り口にして、哺乳動物の着床前胚における「栄養素によるエピジェネティクスを介した遺伝子発現への影響(ニュートリエピジェネティクス)」の基盤を明らかにすることを目的としている。本年度は、前年度までに明らかにしたウシ受精卵の発生におけるMATIIの機能とMATIIが相互作用するゲノムDNA領域に関する知見を論文として発表した。また、前年度の結果から、葉酸を含むビタミンB群のウシ受精卵の発生とlong-termeffects関連遺伝子のエピジェネティクスにおける重要性が示されたため、これも論文として発表するとともに、葉酸代謝(他のビタミンB群による補酵素機能も関与する)は本研究の標的であるMATIIの反応と共役しているため、栄養環境の調節によるMATIIの機能制御を図る上で葉酸代謝に着目し、葉酸代謝関連酵素のウシ受精卵の発生における役割を解析した。 | KAKENHI-PROJECT-15K07779 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K07779 |
哺乳動物の初期胚におけるニュートリエピジェネティクス | 前年度に開発し本年度論文として公開したRNAi法を用いてMTRおよびMTHFRの機能阻害を行い、特にMTHFRの胚盤胞発生における重要性を明らかにした。初期胚を取り巻く栄養素の利用可能性はエピジェネティクスを変化させ得る環境要因の一つである。本研究では、メチオニンをS-アデノシルメチオニンに変換する酵素、メチオニンアデノシルトランスフェラーゼ(MAT)の哺乳動物の着床前発生、特に胚盤胞発生における必須性を明らかにするとともに、ウシ初期胚においてMATが相互作用するゲノム領域の探索、メチオニン代謝およびそれと関連する栄養素であるビタミンB群の初期胚の発生と特定の遺伝子のエピジェネテッィク修飾における役割の解析から、栄養素によるエピジェネティクスの制御・変化すなわちニュートリエピジェネティクスの基盤の一部を解明した。初期胚におけるメチオニン代謝を含むOne-carbon metabolismの制御が、今年度同定あるいは解析した遺伝子のエピジェネティック修飾に及ぼす影響を精査する。動物生殖生理学遺伝子の機能阻害方法として未実施の方法を次年度に行うこととしたため。遺伝子の機能阻害に使用するRNAの購入費用として、翌年度分として請求した助成金の一部と合わせて使用する。 | KAKENHI-PROJECT-15K07779 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K07779 |
歯周炎で誘導されるRNA結合蛋白HuRを介した関節リウマチ悪化メカニズムの解明 | 本研究の目的は、歯周炎が関節リウマチ(RA)増悪に与える因子を明らかにするために、1歯周病原細菌P. gingivalisによって誘導されたmRNA結合タンパクHuRによるIL-6 mRNAの安定化がIL-6分泌量を増加させ、歯周炎、RA両方の疾患の病態形成に関与していることを明らかにする2HuR増加によって誘導されたIL-6が分泌促進させる破骨細胞活性化因子sRANKLが引き起こす、関節組織や、歯周組織の破骨細胞活性化にも着目する。特にRA患者で上昇するシトルリン化タンパクとこれに結合する抗CCP抗体から生成される免疫複合体が骨破壊に影響することを明らかにすることである。本年度は1については、IL-6 mRNA活性化をluciferase assayで評価する系を用いて不死化歯肉上皮細胞株OBA-9でP. gingivalis刺激、サイトカイン刺激でHuRがmRNAレベル、タンパクレベルで誘導されることを確認した。また、細胞にHuRを強制発現させることで、HuRがmRNA末端に結合し、IL-6 mRNA分解を抑制していることをmRNA、タンパクレベル突き止めた。さらに歯周炎患者の組織を免疫染色することで、HuRが炎症部位に特異的に発言していることも突き止めた。次年度以降は、2についてはRAモデルマウスを確立し、患者由来B細胞より単離したmRNAからin vitroで合成した抗CCPモノクローナル抗体(確立済)を用いた実験系で検討する。研究予定期間のうち1年めが終了し、実験計画として計画1HuRを介したIL-6 mRNA安定化メカニズムをin vitro実験系で明らかにする、計画2HuRを介したIL-6 mRNA安定化のRA発症への影響をin vivoで明らかにする、計画3歯周組織でPgCPと抗CCP抗体で構成される免疫複合体が増加することを明らかにする、計画4CP、抗CCP抗体で構成されるICの破骨細胞分化への関与をin vitroで明らかにする、計画5ICのRA臨床症状悪化メカニズムをマウスモデルで明らかにする。以上のことを予定していたが、当初の予定通り平成30年度は計画1、3、が終了した。実験計画として計画1HuRを介したIL-6 mRNA安定化メカニズムをin vitro実験系で明らかにする、計画2HuRを介したIL-6 mRNA安定化のRA発症への影響をin vivoで明らかにする、計画3歯周組織でPgCPと抗CCP抗体で構成される免疫複合体が増加することを明らかにする、計画4CP、抗CCP抗体で構成されるICの破骨細胞分化への関与をin vitroで明らかにする、計画5ICのRA臨床症状悪化メカニズムをマウスモデルで明らかにする。以上のことを予定していたが、今後は計画2、4、5を実施予定である。本研究の目的は、歯周炎が関節リウマチ(RA)増悪に与える因子を明らかにするために、1歯周病原細菌P. gingivalisによって誘導されたmRNA結合タンパクHuRによるIL-6 mRNAの安定化がIL-6分泌量を増加させ、歯周炎、RA両方の疾患の病態形成に関与していることを明らかにする2HuR増加によって誘導されたIL-6が分泌促進させる破骨細胞活性化因子sRANKLが引き起こす、関節組織や、歯周組織の破骨細胞活性化にも着目する。特にRA患者で上昇するシトルリン化タンパクとこれに結合する抗CCP抗体から生成される免疫複合体が骨破壊に影響することを明らかにすることである。本年度は1については、IL-6 mRNA活性化をluciferase assayで評価する系を用いて不死化歯肉上皮細胞株OBA-9でP. gingivalis刺激、サイトカイン刺激でHuRがmRNAレベル、タンパクレベルで誘導されることを確認した。また、細胞にHuRを強制発現させることで、HuRがmRNA末端に結合し、IL-6 mRNA分解を抑制していることをmRNA、タンパクレベル突き止めた。さらに歯周炎患者の組織を免疫染色することで、HuRが炎症部位に特異的に発言していることも突き止めた。次年度以降は、2についてはRAモデルマウスを確立し、患者由来B細胞より単離したmRNAからin vitroで合成した抗CCPモノクローナル抗体(確立済)を用いた実験系で検討する。研究予定期間のうち1年めが終了し、実験計画として計画1HuRを介したIL-6 mRNA安定化メカニズムをin vitro実験系で明らかにする、計画2HuRを介したIL-6 mRNA安定化のRA発症への影響をin vivoで明らかにする、計画3歯周組織でPgCPと抗CCP抗体で構成される免疫複合体が増加することを明らかにする、計画4CP、抗CCP抗体で構成されるICの破骨細胞分化への関与をin vitroで明らかにする、計画5ICのRA臨床症状悪化メカニズムをマウスモデルで明らかにする。以上のことを予定していたが、当初の予定通り平成30年度は計画1、3、が終了した。実験計画として計画1HuRを介したIL-6 mRNA安定化メカニズムをin vitro実験系で明らかにする、計画2HuRを介したIL-6 mRNA安定化のRA発症への影響をin vivoで明らかにする、計画3歯周組織でPgCPと抗CCP抗体で構成される免疫複合体が増加することを明らかにする、計画4CP、抗CCP抗体で構成されるICの破骨細胞分化への関与をin vitroで明らかにする、計画5ICのRA臨床症状悪化メカニズムをマウスモデルで明らかにする。以上のことを予定していたが、今後は計画2、4、5を実施予定である。動物実験を予定していたが、当初予定していた結果が長期飼育ではなく、短期間で得られたために、追加の動物実験が必要なくなったため。 | KAKENHI-PROJECT-18K09599 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K09599 |
歯周炎で誘導されるRNA結合蛋白HuRを介した関節リウマチ悪化メカニズムの解明 | 次年度以降にRA治療で使用されている薬剤の効果を歯周炎発症RA治療でモデルマウスで検討する実験で使用予定である。 | KAKENHI-PROJECT-18K09599 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K09599 |
不確実性下の企業経営とパフォーマンス | 本研究は、不確実性と企業に焦点を当て、最新の方法で企業の主観的不確実性指標を構築し、企業レベルのデータを用いた実証分析から、事業環境を巡る先行き不確実性が、どのように企業行動に影響を与えるか明らかにすることを目的とする。また、企業の景気判断、国内売上高見通し、海外現地法人の売上高見込み等を調査している政府統計も利用し、不確実性と貿易投資との関係、不確実性と景気循環との関係について補完的な分析を行う。昨年度主な研究成果は下記の通りである。第一に、2018年4月18日に当科研課題と経済産業所(RIETI)共催の国際ワークショップ「Uncertainty,Trade and Firms」で「企業の事業計画と予測に関する調査」(2017年1011月に実施)の分析結果を報告した。研究連携者のNicholasBloomスタンフォード大学教授をはじめ海外有力な研究者を招へいし、不確実性と企業に関する最先端の研究成果を報告し、活発な議論を行った。さらに、5月に中国北京で開かれた国際コンファレンスでも分析結果を発表した。第二に、経済産業省「企業活動基本調査」及び「海外事業活動基本調査」を用いた海外市場の不確実性と企業の輸出・直接投資のダイナミクスに関する研究論文は、2018年度中NBERSummer Institute、Econometric Society China Meeting、AsiaPacific Trade Seminars、Barcelona GSE summer forum、東京、Yale、Cambridge大学等での学会やワークショップで報告した。第三に、不確実性と景気循環に関する研究では、財務省・内閣府「法人企業景気予測調査」を用いて分析を行った。一部の分析結果は2018年9月にRIETIディスカッション・ペーパーとして公表している。2017年は予定通りに独自の企業サーベイを実施した。その結果の一部を2018年に日本経済新聞や国際ワークショップで発表した。現在分析結果をまとめて論文を作成している。今後の計画としては、(1)すでに実施した独自企業サーベイを用いて不確実性と事業計画に関するワーキング・ペーパーを完成させる。また、現在第二弾の企業サーベイを実施してパネルデータを構築する可能性も検討している。(2)海外市場の不確実性と企業の輸出・直接投資のダイナミクスに関する研究は、現在最終版もほぼ完成して今年度の早い段階で海外の学術誌へ投稿する。また、本研究をさらに発展させ、海外市場ごとの不確実性を示す新しい指標を構築し、今年度論文を発表する予定である。(3)不確実性と景気循環に関する研究は、現在財務省・内閣府「法人企業景気予測調査」「法人企業統計調査」の申請利用手続きが順調に進んでいる。データ入手後、これまでの分析を精緻化させ、新しい分析結果をまとめて今年度論文を作成する予定である。本研究は、不確実性と企業に焦点を当て、最新の方法で企業の主観的不確実性指標を構築し、企業レベルのデータを用いた実証分析から、事業環境を巡る先行き不確実性が、どのように企業行動に影響を与えるか明らかにすることを目的とする。特に、新たな企業サーベイを通じて、企業による将来予測(自社売上やGDP成長率等)の主観的確率分布を調査。分布情報を用いて不確実性指標を構築し、それと企業行動およびパフォーマンスとの関係を実証的に明らかにする。昨年度主な研究成果は下記の通りである。第一に、2017年10月11月に経済産業研究所(RIETI)では「企業の事業計画と予測に関する調査」を実施した。製造業およびサービス業に属する約15,000社を対象とする。回収率は14.8%である。企業サーベイの結果を利用して次の記事を執筆した。1「企業行動は変えられるか先行き懸念強く慎重姿勢」、2018年3月8日日本経済新聞「経済教室」に掲載。2「TPPへの期待と政策課題」RIETIコラム2018年3月8日に掲載。昨年度予定通りに独自の企業サーベイを実施した。その結果の一部をすでに日本経済新聞で発表した。いま分析結果をまとめて論文を作成しているところである。本研究は、不確実性と企業に焦点を当て、最新の方法で企業の主観的不確実性指標を構築し、企業レベルのデータを用いた実証分析から、事業環境を巡る先行き不確実性が、どのように企業行動に影響を与えるか明らかにすることを目的とする。また、企業の景気判断、国内売上高見通し、海外現地法人の売上高見込み等を調査している政府統計も利用し、不確実性と貿易投資との関係、不確実性と景気循環との関係について補完的な分析を行う。昨年度主な研究成果は下記の通りである。第一に、2018年4月18日に当科研課題と経済産業所(RIETI)共催の国際ワークショップ「Uncertainty,Trade and Firms」で「企業の事業計画と予測に関する調査」(2017年1011月に実施)の分析結果を報告した。研究連携者のNicholasBloomスタンフォード大学教授をはじめ海外有力な研究者を招へいし、不確実性と企業に関する最先端の研究成果を報告し、活発な議論を行った。さらに、5月に中国北京で開かれた国際コンファレンスでも分析結果を発表した。第二に、経済産業省「企業活動基本調査」及び「海外事業活動基本調査」を用いた海外市場の不確実性と企業の輸出・直接投資のダイナミクスに関する研究論文は、2018年度中NBERSummer Institute、Econometric Society China Meeting、AsiaPacific Trade Seminars、Barcelona GSE summer forum、東京、Yale、Cambridge大学等での学会やワークショップで報告した。 | KAKENHI-PROJECT-17H02531 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H02531 |
不確実性下の企業経営とパフォーマンス | 第三に、不確実性と景気循環に関する研究では、財務省・内閣府「法人企業景気予測調査」を用いて分析を行った。一部の分析結果は2018年9月にRIETIディスカッション・ペーパーとして公表している。2017年は予定通りに独自の企業サーベイを実施した。その結果の一部を2018年に日本経済新聞や国際ワークショップで発表した。現在分析結果をまとめて論文を作成している。また、関連研究として各種の政府統計を利用して不確実性、期待形成と企業行動に関する研究を進めていく。今後の計画としては、(1)すでに実施した独自企業サーベイを用いて不確実性と事業計画に関するワーキング・ペーパーを完成させる。また、現在第二弾の企業サーベイを実施してパネルデータを構築する可能性も検討している。(2)海外市場の不確実性と企業の輸出・直接投資のダイナミクスに関する研究は、現在最終版もほぼ完成して今年度の早い段階で海外の学術誌へ投稿する。また、本研究をさらに発展させ、海外市場ごとの不確実性を示す新しい指標を構築し、今年度論文を発表する予定である。(3)不確実性と景気循環に関する研究は、現在財務省・内閣府「法人企業景気予測調査」「法人企業統計調査」の申請利用手続きが順調に進んでいる。データ入手後、これまでの分析を精緻化させ、新しい分析結果をまとめて今年度論文を作成する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-17H02531 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H02531 |
準安定なZrO_2-CeO_2-CeO_<1.5>固溶体の固体イオニクス特性 | 金属-酸素系セラミックスにおいては、還元酸化を繰り返すと前駆体である還元相の陽イオンの配置を保ったままで酸素が進入する際に準安定相が出現する。この原理をZrO_2-CeO_2系に適用して種々の準安定固溶体の作製を試み、さらに得られた相の局所原子配列の特徴、光学的性質、およびイオン伝導などの固体イオニクス特性について検討した。1600°C以上の高温で得られた立方晶相を冷却して得られる正方晶t'相を出発試料とした。T(deox)=1300°Cでt'相を還元してパイロクロア相(Ce_2Zr_2O_7,pyro)を作製し、その後873Kで酸化することにより陽イオンが規則配置した新規な準安定なκ相(CeZrO_4,κ)が得られた。温度T(deox)を下げて還元で得られたCaF_2関連構造を、その後873Kで酸化すると、t'相と同様の陽イオンの不規則配置は有するが、ラマン散乱により明らかに別相として区別される新規な準安定t'_<meta>相(CeZrO_4,t'_<meta>)が出現した。純粋なκ相およびt'_<meta>相は本研究で初めて見出された相であり、Ce-O-Ce間の距離はt'⇒t'_<meta>⇒κ相の順に小さくなった。同じCeZrO_4組成でありながら、準安定相t'_<meta>およびκ相の電気伝導度はt'相より数倍大きくなった。準安定相の作製により陽イオン-酸素イオン間の距離、および局所偏倚を変えてやることにより電気伝導度を制御できることが分かった。電荷担体はほとんど電子であったがイオン伝導も観測された。従来、電気伝導度の制御には異なる価数の異種イオンをドープするのが一般的であったが、本研究結果は準安定相の作製により陽イオンの分布と陽イオンと酸素イオンの局所構造を変化させることにより制御可能であることを示唆している。金属-酸素系セラミックスにおいては、還元酸化を繰り返すと前駆体である還元相の陽イオンの配置を保ったままで酸素が進入する際に準安定相が出現する。この原理をZrO_2-CeO_2系に適用して種々の準安定固溶体の作製を試み、さらに得られた相の局所原子配列の特徴、光学的性質、およびイオン伝導などの固体イオニクス特性について検討した。1600°C以上の高温で得られた立方晶相を冷却して得られる正方晶t'相を出発試料とした。T(deox)=1300°Cでt'相を還元してパイロクロア相(Ce_2Zr_2O_7,pyro)を作製し、その後873Kで酸化することにより陽イオンが規則配置した新規な準安定なκ相(CeZrO_4,κ)が得られた。温度T(deox)を下げて還元で得られたCaF_2関連構造を、その後873Kで酸化すると、t'相と同様の陽イオンの不規則配置は有するが、ラマン散乱により明らかに別相として区別される新規な準安定t'_<meta>相(CeZrO_4,t'_<meta>)が出現した。純粋なκ相およびt'_<meta>相は本研究で初めて見出された相であり、Ce-O-Ce間の距離はt'⇒t'_<meta>⇒κ相の順に小さくなった。同じCeZrO_4組成でありながら、準安定相t'_<meta>およびκ相の電気伝導度はt'相より数倍大きくなった。準安定相の作製により陽イオン-酸素イオン間の距離、および局所偏倚を変えてやることにより電気伝導度を制御できることが分かった。電荷担体はほとんど電子であったがイオン伝導も観測された。従来、電気伝導度の制御には異なる価数の異種イオンをドープするのが一般的であったが、本研究結果は準安定相の作製により陽イオンの分布と陽イオンと酸素イオンの局所構造を変化させることにより制御可能であることを示唆している。金属-酸素系セラミックスにおいては、Cyclic Redox Processにより種々の準安定相の作製が可能である。これら準安定相と安定相の間で均一な準安定固溶体を形成させると、酸素空孔と陽イオン空孔の局所配列が制御された種々の固溶体を創成することができる。多量の酸素空孔および陽イオン空孔が導入された、これら固溶体は固体イオニクス材料として大いに有望である。本研究では、ZrO_2-CeO_2-CeO_<1.5>系にこの原理を適用して、種々の準安定固溶体を作製し,局所原紙配列の特徴、光学的性質、およびイオン伝導などの固体イオニクス特性を明らかにすることを目的とする。1600°C以上の高温で得られた立方晶相を冷却し、良く知られた準安定な相である正方晶t′相を作製した。固体電解質酸素ポンプを用いて酸素分圧を一定に制御した雰囲気の中でt′相を還元してバイロクロア相(Ce_2ZrO_2O_7,pyro)を作製した。その後873Kで酸化することにより新規な準安定な相であるk相(CeZrO_4,k)を得た。1373K、O_2ガス中で焼鈍することにより別の新規な準安定相である正方晶CCeZrO_4,t^*相)を得た。このt^* | KAKENHI-PROJECT-09555225 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09555225 |
準安定なZrO_2-CeO_2-CeO_<1.5>固溶体の固体イオニクス特性 | 相を還元すると、Ce/Zrの幅広い比を有する新しい準安定相Ce_<(8-4y)>ZrO_<4y>O_<(14-δ)>が出現することを発見した。t′相からパイロクロア相までの還元の度合いが低い場合、その後の酸化で、新しい準安定相Ce_<(8-4y)>Zr_<4y>O_<(14-δ)>相、t^*相、t^<**>相のX線回折、ラマン分光分析、熱力学的測定、電気伝導度測定によるキャラクラリゼーションを行った。これら準安定相の電気伝導度は特異であり、例えば、t^*相、t^<**>相のX線パターンは同一であるにも関わらず、より不安定なt^<**>相の電気伝導度は数倍大きかった。これら準安定相および安定相との間で特異なイオニクス特性を有する固溶体が発見される可能性は大であることが示唆された。金属-酸素系セラミックスにおいては、還元酸化を繰り返すCyclic Redox Processにより種々の準安定相の作製が可能である。前駆体である還元相の陽イオンの配置を保ったままで酸素が進入する際に準安定相が出現する。この原理をZrO_2-CeO_2系に適用して種々の準安定固溶体の作製を試み、さらに得られた相の局所原子配列の特徴、光学的性質、およびイオン伝導などの固体イオニクス特性について検討した。ZrO_2-CeO_2系においては1600°C以上の高温で得られた立方晶相を冷却して得られる正方晶t'相を出発試料とした。T(deox)=1300°Cでt'相を還元してパイロクロア相(Ce_2Zr_2O_7,pyro)を作製し、その後873Kで酸化することにより陽イオンが規則配置した新規な準安定なκ相(CeZrO_4,κ)が得られた。温度T(deox)を下げて還元で得られたCaF_2関連構造を、その後873Kで酸化すると、t'相と同様の陽イオンの不規則配置は有するが、ラマン散乱により明らかに別相として区別される新規な準安定t'_<meta>相(CeZrO_4,t'_<meta>)が出現した。純粋なκ相およびt'_<meta>相は本研究で初めて見出された相であり、Ce-O-Ce間の距離はt'⇒t'_<meta> ⇒κ相の順に小さくなった。同じCeZrO_4組成でありながらこれらの相の電気伝導度は大きく異なり、準安定相の作製により電気伝導度を制御できることが分かった。電荷担体はほとんど電子であったがイオン伝導も観測された。さらに原理の一般性をNbO_2-SnO_2系で準安定なNbSnO_4化合物の作製することにより示した。本研究で得られた準安定相のイオン輸率は小さくセンサーの組立まではいかなかったが、種々の電気伝導度を有する種々の新規な準安定相の作製が可能であることが実験的に証明された。陽イオンの局所構造の制御、異種イオンのドープなどを行い固体イオニクス特性を改良することは可能である。 | KAKENHI-PROJECT-09555225 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09555225 |
界面化学反応に関連した数理モデルの研究 | 溶媒抽出法を利用した湿式製錬プロセスは、従来、乾式製錬プロセスでは経済上製錬の対象にならなかった低品位鉱等の未利用資源、深海底のマンガン団塊等の新資源および産業廃棄物等の二次資源から各種有価金属を分離精製するための省エネルギ-型プロセスとして、資源の有効利用の観点から近年注目されるようになってきた。また、溶媒抽出法と原理的に同じである液膜による金属の分離法の出現は、溶媒抽出法にさらに新しい発展の可能性を与えつつある。化学実験と数理モデルの数値実験により、詳細に反応機構の解明が行なわれている。その数理モデルは界面で非線型境界条件で関連しあっている非線型連立放物型方程式系である。偏微分方程式に対しては多くの一般論が知られているが、残念ながら、このモデルは従来の枠からはみだしている。しかしながら、既に、四ッ谷はこれらの偏微分方程式の解の存在と一意性の証明に成功している.本年度、四ッ谷は最も基本的な数理モデルの解の漸近挙動の解析に成功し、さらに新しい知見を与えた。無限個のリヤプ-ノフ関数を組織的に構成する方法を開発した点が新しいアイデアである。同時にこの解析に用いられた考え方を数値計算に応用し、簡単で高速な実用的差分スキ-ムを発見した。森田、岡は力学系の観点から、非線型拡散系の解の構造に新しい知見を与えた。この観点と四ッ点の解析の方法を組み合わせることにより、さらに詳しい漸近挙動の様子がわかることが判明したので、共同研究を押し進めているところである。溶媒抽出法を利用した湿式製錬プロセスは、従来、乾式製錬プロセスでは経済上製錬の対象にならなかった低品位鉱等の未利用資源、深海底のマンガン団塊等の新資源および産業廃棄物等の二次資源から各種有価金属を分離精製するための省エネルギ-型プロセスとして、資源の有効利用の観点から近年注目されるようになってきた。また、溶媒抽出法と原理的に同じである液膜による金属の分離法の出現は、溶媒抽出法にさらに新しい発展の可能性を与えつつある。化学実験と数理モデルの数値実験により、詳細に反応機構の解明が行なわれている。その数理モデルは界面で非線型境界条件で関連しあっている非線型連立放物型方程式系である。偏微分方程式に対しては多くの一般論が知られているが、残念ながら、このモデルは従来の枠からはみだしている。しかしながら、既に、四ッ谷はこれらの偏微分方程式の解の存在と一意性の証明に成功している.本年度、四ッ谷は最も基本的な数理モデルの解の漸近挙動の解析に成功し、さらに新しい知見を与えた。無限個のリヤプ-ノフ関数を組織的に構成する方法を開発した点が新しいアイデアである。同時にこの解析に用いられた考え方を数値計算に応用し、簡単で高速な実用的差分スキ-ムを発見した。森田、岡は力学系の観点から、非線型拡散系の解の構造に新しい知見を与えた。この観点と四ッ点の解析の方法を組み合わせることにより、さらに詳しい漸近挙動の様子がわかることが判明したので、共同研究を押し進めているところである。 | KAKENHI-PROJECT-03640191 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03640191 |
各種神経ペプチドの胃粘膜内の詳細な局在と粘膜防御機構の制御に果たす役割との関連性 | 胃の部位により異なった調節機構の存在が考慮される粘液代謝において神経ペプチドが果たす役割の有無を明らかにするため、免疫組織化学的検討で胃粘膜内における特徴的局在が明らかにされたCalcitonin gene-related peptide(CGRP)のムチン生合成に対する作用を胃粘膜器官培養系を用いて、胃の部位別に比較検討し以下の結果を得た。1. CGRPを培地内に添加し、7週齢ラットより作成した胃粘膜組織小片への^3H-glucosamineおよび^<14>C-threonineの取り込みをみたところ、胃体部における典型的ムチン型糖蛋白質への^3Hの取り込みは濃度依存的に有意な増加を認めたが、^<14>Cの取り込みの増加は認めなかった。また、胃前庭部ムチンへの標識化合物の取り込みは、CGRPの濃度に関係なく対照と同程度の値を示し一定であった。2.最近我々の研究室で開発した表層粘液細胞剥離法を用いて、胃体部粘膜から、粘液細胞として副細胞のみを含有する組織を作成し、同様の検討を行なったところ、CGRPのムチン生合成亢進作用は認められなかった。3.前年度の検討において、胃体部組織の表層粘液細胞層には一酸化窒素合成酵素(NOS)の局在が確認されているので、次に、CGRPの胃体部ムチン生合成活性亢進作用がNOS阻害薬であるN^G-nitro-L-arginine(L-NNA)の前処置によりどのように変化するか検討したところ、10^<-5>Mの濃度のL-NNAで完全抑制された。4.さらにNoのみを消去できる新しいタイプのNo消去薬Carboxy-PTIOを用いて同様の検討を行なったところ、CGRPのムチン生合成亢進作用は、10^<-5>MのCarboxy-PTIOで完全抑制された。5.以上の結果より、CGRPは胃体部表層粘液細胞に作用しムチン生合成を亢進させること、及びその機序の一部にNOそのものが関与している可能性が強く示された。胃の部位により異なった調節機構の存在が考慮される粘液代謝において一酸化窒素(NO)及び神経ペプチドが果たす役割の有無を明らかにするため、免疫組織化学的手法を用いて、胃粘膜におけるNO合成酵素(NOS)の局在及びNOとの関連で注目されているCalcitonin gene-related peptide(CGRP)含有ニューロンの分布を胃の部位別に比較検討し以下のような結果を得た。1.灌流固定後の胃組織から胃体部と前庭部の薄切標本を作製しNOSに対する抗体で免疫組織染色をおこなったところ、筋層間神経以外に胃体部粘膜細胞にも発現が認められた。2.最近我々が独自に開発した表層粘膜細胞のムチンに対する特異的なモノクローナル抗体RGM21と副細胞ムチンに対する抗体HIK1083を用いて、NOSの結果を得た隣接切片で同様の検討を行ったところ、NOSの局在は表層粘液細胞と一致していることが明らかとなった。副細胞にはNOSの分布は全く認められなかった。3.胃体部組織から表層粘液細胞層を剥離すると、粘膜細胞に認められたNOSの発現も消失した。4.CGRPに対する抗体を用いた検討では、胃粘膜組織内のニューロンに染色性が認められ、これらのニューロンは表層粘液細胞層まで到達していることが確認された。5.以上のNOS及びCGRP含有ニューロンの局在の結果より、ある種の粘液細胞の調節機構にNOやCGRPが重要な役割を果たしている可能性が強く示された。胃の部位により異なった調節機構の存在が考慮される粘液代謝において神経ペプチドが果たす役割の有無を明らかにするため、免疫組織化学的検討で胃粘膜内における特徴的局在が明らかにされたCalcitonin gene-related peptide(CGRP)のムチン生合成に対する作用を胃粘膜器官培養系を用いて、胃の部位別に比較検討し以下の結果を得た。1. CGRPを培地内に添加し、7週齢ラットより作成した胃粘膜組織小片への^3H-glucosamineおよび^<14>C-threonineの取り込みをみたところ、胃体部における典型的ムチン型糖蛋白質への^3Hの取り込みは濃度依存的に有意な増加を認めたが、^<14>Cの取り込みの増加は認めなかった。また、胃前庭部ムチンへの標識化合物の取り込みは、CGRPの濃度に関係なく対照と同程度の値を示し一定であった。2.最近我々の研究室で開発した表層粘液細胞剥離法を用いて、胃体部粘膜から、粘液細胞として副細胞のみを含有する組織を作成し、同様の検討を行なったところ、CGRPのムチン生合成亢進作用は認められなかった。3.前年度の検討において、胃体部組織の表層粘液細胞層には一酸化窒素合成酵素(NOS)の局在が確認されているので、次に、CGRPの胃体部ムチン生合成活性亢進作用がNOS阻害薬であるN^G-nitro-L-arginine(L-NNA)の前処置によりどのように変化するか検討したところ、10^<-5>Mの濃度のL-NNAで完全抑制された。4.さらにNoのみを消去できる新しいタイプのNo消去薬Carboxy-PTIOを用いて同様の検討を行なったところ、CGRPのムチン生合成亢進作用は、10^<-5>MのCarboxy-PTIOで完全抑制された。5.以上の結果より、CGRPは胃体部表層 | KAKENHI-PROJECT-09770375 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09770375 |
各種神経ペプチドの胃粘膜内の詳細な局在と粘膜防御機構の制御に果たす役割との関連性 | 粘液細胞に作用しムチン生合成を亢進させること、及びその機序の一部にNOそのものが関与している可能性が強く示された。 | KAKENHI-PROJECT-09770375 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09770375 |
上丘吻側領域における輻湊―調節の機能総合機構と斜視の病態解明 | これまで、我々は上丘吻側の限局した部位の微小電気刺激により調節反応が誘発されることをネコを対象に明らかにしてきた。(Sawa and Ohtsuka,1994)。また、大脳皮質の輻湊・調節関連領域(the lateral supra-Sylvian area)からの下行性出力が上丘吻側の同部位に特異的に投射することを証明し、この領域を上丘調節関連領域と名づけた(Ohtsuka and Sato,1996)。今回我々は、この上丘吻側領域における輻湊-調節の機能統合機構を明らかにすることで斜視の病態解明に到達することを目的に3匹の覚醒ネコを用い研究を行った。両眼の水平・垂直眼球運動をサーチコイルによって記録した。タングステン電極をマニピュレーターによって上丘内に刺入し、先端部が上丘内に入っているか、視覚刺激と自発的衝動性眼球運動に対するニューロン応答によって確認した。上丘吻側の調節関連領域の電気刺激は、パルス幅300μ秒の陰性矩形波(電流強度,頻度,時間は各々10-40μA,125-500Hz,125-500ミリ秒の範囲)を用いた。上丘吻側部のほぼ限局した領域で、非共同性眼球運動(convergence)が約10μAの刺激閾値をもって誘発された。この非共同性眼球運動の平均振幅は、3.9°+/-0.9°、平均潜時は83±47ミリ秒であった。誘発された非共同性眼球運動の大きさは刺激強度と正相関し、刺激開始時の輻湊角とは負の相関を示した。また、この領域の電気刺激は自発サッケードを抑制した。ついで、1頭のネコに輻湊訓練を行い、非共同性眼球運動が誘発された領域の化学的抑制(0.5%Muscimol,0.5μlの微小注入)が輻湊運動に与える影響を検討した。片側の抑制によって、輻湊は一過性に抑制された。これらの結果から、ネコの上丘吻側部が調節のみならず、輻湊運動にも関与していることが示唆された。これまで、我々は上丘吻側の限局した部位の微小電気刺激により調節反応が誘発されることをネコを対象に明らかにしてきた。(Sawa and Ohtsuka,1994)。また、大脳皮質の輻湊・調節関連領域(the lateral supra-Sylvian area)からの下行性出力が上丘吻側の同部位に特異的に投射することを証明し、この領域を上丘調節関連領域と名づけた(Ohtsuka and Sato,1996)。今回我々は、この上丘吻側領域における輻湊-調節の機能統合機構を明らかにすることで斜視の病態解明に到達することを目的に3匹の覚醒ネコを用い研究を行った。両眼の水平・垂直眼球運動をサーチコイルによって記録した。タングステン電極をマニピュレーターによって上丘内に刺入し、先端部が上丘内に入っているか、視覚刺激と自発的衝動性眼球運動に対するニューロン応答によって確認した。上丘吻側の調節関連領域の電気刺激は、パルス幅300μ秒の陰性矩形波(電流強度,頻度,時間は各々10-40μA,125-500Hz,125-500ミリ秒の範囲)を用いた。上丘吻側部のほぼ限局した領域で、非共同性眼球運動(convergence)が約10μAの刺激閾値をもって誘発された。この非共同性眼球運動の平均振幅は、3.9°+/-0.9°、平均潜時は83±47ミリ秒であった。誘発された非共同性眼球運動の大きさは刺激強度と正相関し、刺激開始時の輻湊角とは負の相関を示した。また、この領域の電気刺激は自発サッケードを抑制した。ついで、1頭のネコに輻湊訓練を行い、非共同性眼球運動が誘発された領域の化学的抑制(0.5%Muscimol,0.5μlの微小注入)が輻湊運動に与える影響を検討した。片側の抑制によって、輻湊は一過性に抑制された。これらの結果から、ネコの上丘吻側部が調節のみならず、輻湊運動にも関与していることが示唆された。これまで、我々は上丘吻側の限局した部位の微小電気刺激により調節反応が誘発されることをネコを対象に明らかにしてきた。(Sawa and Ohtsuka,1994)。また、大脳皮質の輻湊・調節関連領域(the lateral supra-sylvian area)からの下行性出力が上丘吻側の同部位に特異的に投射することを証明し、この領域を上丘調節関連領域と名づけた(Ohtsuka and Sato,1996)。今回我々は、この上丘吻側領域における輻湊-調節の機能統合機構を明らかにすることで斜視の病態解明に到達することを目的に、上丘調節関連領域を微小電気刺激し、誘発される非共同性眼球運動の特性を調べ、この領域が輻湊運動に関与しているか検討した。実験には2匹の覚醒ネコを用いた。両眼の水平・垂直眼球運動をサーチコイルによって記録した。タングステン電極をマニピュレーターによって上丘内に刺入し、先端部が上丘内に入っているか、視覚刺激と自発的衝動性眼球運動に対するニューロン応答によって確認した。 | KAKENHI-PROJECT-13470370 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13470370 |
上丘吻側領域における輻湊―調節の機能総合機構と斜視の病態解明 | 電気刺激は、パルス幅300マイクロ秒の陰性矩形波(電流強度,頻度,時間は各々10-40μA,125-500Hz,125-500ミリ秒の範囲)を用いた。上丘吻側部のほぼ限局した領域で、非共同性眼球運動(convergence)が約10μAの刺激閾値をもって誘発された。この非共同性眼球運動の平均潜時は83±47ミリ秒,大きさは1.3±0.4度であった。誘発された非共同性眼球運動の大きさは、刺激強度(電流の強さ)とは正の相関関係を,刺激開始時の輻湊角(水平眼位の左右差)とは負の相関関係を示した。これらの結果から、ネコの上丘吻側部が調節のみならず、輻湊運動にも関与していることが示唆された。これまで、我々は上丘吻側の限局した部位の微小電気刺激により調節反応が誘発されることをネコを対象に明らかにしてきた。(Sawa and Ohtsuka,1994)。また、大脳皮質の輻湊・調節関連領域(the lateral supra-sylvian area)からの下行性出力が上丘吻側の同部位に特異的に投射することを証明し、この領域を上丘調節関連領域と名づけた(Ohtsuka and Sato,1996)。今回我々は、この上丘吻側領域における輻湊-調節の機能統合機構を明らかにすることで斜視の病態解明に到達することを目的に3匹の覚醒ネコを用い研究を行った。両眼の水平・垂直眼球運動をサーチコイルによって記録した。タングステン電極をマニピュレーターによって上丘内に刺入し、先端部が上丘内に入っているか、視覚刺激と自発的衝動性眼球運動に対するニューロン応答によって確認した。上丘吻側の調節関連領域の電気刺激は、パルス幅300μ秒の陰性矩形波(電流強度,頻度,時間は各々10-40μA,125-500Hz,125-500ミリ秒の範囲)を用いた。上丘吻側部のほぼ限局した領域で、非共同性眼球運動(convergence)が約10μAの刺激閾値をもって誘発された。この非共同性眼球運動の平均振幅は、3.9°+/-0.9°、平均潜時は83±47ミリ秒であった。誘発された非共同性眼球運動の大きさは刺激強度と正相関し、刺激開始時の輻湊角とは負の相関を示した。また、この領域の電気刺激は自発サッケードを抑制した。ついで、1頭のネコに輻湊訓練を行い、非共同性眼球運動が誘発された領域の化学的抑制(0.5%Muscimol,0.5μlの微小注入)が輻湊運動に与える影響を検討した。片側の抑制によって、輻湊は一過性に抑制された。これらの結果から、ネコの上丘吻側部が調節のみならず、輻湊運動にも関与していることが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-13470370 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13470370 |
無ガンマグロブリン血症にみられる異常免疫グロブリンの蛋白及び遺伝子レベルでの解析 | 1)XーLA(伴性無ガンマグロブリン血症)患児骨髄血にEBウイルスを感染させて樹立した未熟B細胞株は、長期維代培養が出来ずに死滅する。しかしK4ー6ー22は試験管内で旺盛な増殖を示し、無血清培地にも容易に適応した。軟寒天でのコロニ-形成率も1.9%と高い。K46ー22培養上清中にはB細胞株の増殖を促進する活性が認められ、K4ー6ー22の増殖能には液性因子によるオ-トクリン機構が関与している可能性が示唆された。2)K4細胞株はμ重鎖にκとλの2つの軽鎖が同時に発現している細胞株である。K4のサブクロ-ンであるK4ー6ー22も同様に2つの軽鎖を発現している。K4ー6ー22を細胞レベルで何度クロ-ニングしても、κ産生株とλ産生株を分離する事が出来なかった。従って1つの細胞が同時にκとλの軽鎖を産生している可能性が強い。しかし培養長期にわたってκとλを高い陽性率で発現し続けるK4株を得る事は出来なかった。3)IgD(δーλ)産生K5細胞株についても、フロ-サイトメ-タ-によるソ-ティングおよび軟寒天上でのクロ-ニングを経て単一細胞由来のK5S株を得たが、これらの操査過程でIgD産生能がK5S細胞から失われていた。樹立直後に凍結したK5細胞株を解凍し、δおよびλ鎖に対する単クロ-ン抗体を用いた免疫沈降法により、K5が産生している免疫グロブリンがIgDである事を蛋白レベルで証明した。この方法で62KDaのδ鎖蛋白と82KDaのλ鎖蛋白を確認する事が出来た。4)免疫グロブリン遺伝子JHに対するプロ-ブを用い、サザン・ブロットハイブリダイゼ-ションを行う事により、同一XーLA患者から得た4つの細胞株とその2つのクロ-ンについて遺伝子レベルでのクロ-ナリティ-について調べた。いずれも対立遺伝子の片方あるいは双方に免疫グロブリン遺伝子JHの再構成バンドが認められ、XーLA患者骨髄からクロ-ナルにトランスフォ-ムした細胞株である事が確認された。1)XーLA(伴性無ガンマグロブリン血症)患児骨髄血にEBウイルスを感染させて樹立した未熟B細胞株は、長期維代培養が出来ずに死滅する。しかしK4ー6ー22は試験管内で旺盛な増殖を示し、無血清培地にも容易に適応した。軟寒天でのコロニ-形成率も1.9%と高い。K46ー22培養上清中にはB細胞株の増殖を促進する活性が認められ、K4ー6ー22の増殖能には液性因子によるオ-トクリン機構が関与している可能性が示唆された。2)K4細胞株はμ重鎖にκとλの2つの軽鎖が同時に発現している細胞株である。K4のサブクロ-ンであるK4ー6ー22も同様に2つの軽鎖を発現している。K4ー6ー22を細胞レベルで何度クロ-ニングしても、κ産生株とλ産生株を分離する事が出来なかった。従って1つの細胞が同時にκとλの軽鎖を産生している可能性が強い。しかし培養長期にわたってκとλを高い陽性率で発現し続けるK4株を得る事は出来なかった。3)IgD(δーλ)産生K5細胞株についても、フロ-サイトメ-タ-によるソ-ティングおよび軟寒天上でのクロ-ニングを経て単一細胞由来のK5S株を得たが、これらの操査過程でIgD産生能がK5S細胞から失われていた。樹立直後に凍結したK5細胞株を解凍し、δおよびλ鎖に対する単クロ-ン抗体を用いた免疫沈降法により、K5が産生している免疫グロブリンがIgDである事を蛋白レベルで証明した。この方法で62KDaのδ鎖蛋白と82KDaのλ鎖蛋白を確認する事が出来た。4)免疫グロブリン遺伝子JHに対するプロ-ブを用い、サザン・ブロットハイブリダイゼ-ションを行う事により、同一XーLA患者から得た4つの細胞株とその2つのクロ-ンについて遺伝子レベルでのクロ-ナリティ-について調べた。いずれも対立遺伝子の片方あるいは双方に免疫グロブリン遺伝子JHの再構成バンドが認められ、XーLA患者骨髄からクロ-ナルにトランスフォ-ムした細胞株である事が確認された。新たに見い出された先天性無ガンマグロブリン血症(CAG)患児骨髄血にEBVを感染させ、細胞株を作成した。免疫グロブリンの表現型からみて種々の分化段階にあるB細胞株が得られた。共通して認められた現象は、どの細胞株も極めて増殖が悪く数代の継代後に死滅してしまうと言う事である。このような性状はCAG由来B細胞株の共通した性状であり、CAGの病因と密接な関係があるものと思われた。一方CAG由来のB細胞株としては珍しく軟寒天上でコロニ-形成能を獲得したK4細胞株の解析を行った。K4株は細胞質内にκとλの2つの軽鎖を持つμ重鎖を発現している。1つの免疫グロブリン重鎖が2つの免疫グロブリン軽鎖を伴っているのは異常である。K4株の中にμ-Kとμ-λ産生細胞株が混在している可能性を否定するために、軟寒天上でのK5細胞のクロ-ニングを3度繰り返し行った。 | KAKENHI-PROJECT-01480255 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01480255 |
無ガンマグロブリン血症にみられる異常免疫グロブリンの蛋白及び遺伝子レベルでの解析 | その都度50個から100個のクロ-ンの免疫グロブリン発現パタ-ンを検索したが、いずれのクロ-ンにおいてもμ重鎖はκとλの2つの軽鎖を伴っている事が明らかになった。今後蛋白及び遺伝子レベルでこの現象を証明し、さらにκ鎖とλ鎖が同時に発現する機序の遺伝学的解析を進めて行きたい。なおK4細胞を軟寒天に播いた時のplating efficiencyは1.9%であった。K4細胞は不死化能を獲得した上に軟寒天でのコロニ-形成能も獲得しており、通常のCAG由来のB細胞株の増殖特性とは大きく異なっている。両者に認められる増殖能の相違の原因を明らかにすることができれば、この方向からもCAGの病因に迫る事ができる材料が得られるものと期待される。1)XーLA(伴性無ガンマグロブリン血症)患児骨髄血にEBウイルスを感染させて樹立した未熟B細胞株は、長期継代培養が出来ずに死滅する。しかしK4ー6ー22は試験管内で旺盛な増殖を示し、無血清培地にも容易に適応した。軟寒天でのコロニ-形成率も1.9%と高い。K4ー6ー22培養上清中にはB細胞株の増殖を促進する活性が認められ、K4ー6ー22の増殖能には液性因子によるオ-トクリン機構が関与している可能性が示唆された。2)K4細胞株はμ重鎖にκとλの2つの軽鎖が同時に発現している細胞株である。K4のサブクロ-ンであるK4ー6ー22も同様に2つの軽鎖を発現している。K4ー6ー22を細胞レベルで何度クロ-ニングしても、κ産生株とλ産生株を分離する事が出来なかった。従って1つの細胞が同時にκとλの軽鎖を産生している可能性が強い。しかし培養長期にわたってκとλを高い陽性率で発現し続けるK4株を得る事は出来なかった。3)IgD(ζーλ)産生K5細胞株についても、フロ-サイトメ-タ-によるソ-ティングおよび軟寒天上でのクロ-ニングを経て単一細胞由来のK5S株を得たが、これらの操査過程でIgD産生能がK5S細胞から失われていた。樹立直後に凍結したK5細胞株を解凍し、ζおよびλ鎖に対する単クロ-ン抗体を用いた免疫沈降法により、K5が産生している免疫グロブリンがIgDである事を蛋白レベルで証明した。この方法で62kDaのζ鎖蛋白と32kDaのλ鎖蛋白を確認する事が出来た。4)免疫グロブリン遺伝子J_Hに対するプロ-ブを用い、サザン・ブロットハイブリダイゼ-ションを行う事により、同一XーLA患者から得た4つの細胞株とその2クロ-ンについて遺伝子レベルでのクロ-ナリティ-について調べた。いずれにも対立遺伝子の片方あるいは双方に免疫グロブリン遺伝子J_Hの再構成バンドが認められ、XーLA患者骨髄からクロ-ナルにトランスフォ-ムした細胞株である事が確認された。 | KAKENHI-PROJECT-01480255 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01480255 |
都市の温暖化が招く渡りの消失と集団多様化 | ツバメの渡り行動と関係する形態的な特徴および渡りとその喪失がもたらす集団全体への影響について、越冬と渡りの両方が混在する個体群で調査する予定であったが、実際に調査地を訪ねてみると充分な個体数が確保できない状態であったため、研究方法を大幅に修正せざるを得なかった。それら新しい方法で行われた調査のうち1つはツバメと同属で、渡りを行わない種であるリュウキュウツバメについての調査であり、本種においての形態的な特徴と飛翔行動との関係について研究を進めている。本種を用いた研究の1つはすでに共同研究者が筆頭著者として論文にまとめ、発表済みとなっており、リュウキュウツバメの越冬期に働く自然選択の重要性を明かしている。本種を用いた他のいくつかの研究結果について現在準備中である。さらに、渡りを行うツバメを用いて、飛翔行動にもたらす形態の影響もこれらとは別に実験的に検証しており、現在投稿中となっている(なお、この研究の副産物的に得られた行動データについても現在投稿中である)。種間データについても収集しており、こちらも準備が済み次第発表する。なお、過去すでに取得済みのデータについては原稿としてまとめており、発表間近の状態になっている。安定同位体分析については引き続き分析手法と分析場所の選定を進めており、整い次第室内実験を行なって論文化を目指す。当初の計画を急に変更したために、大幅な見直しを迫られた本課題であるが、すでに発表済みの論文や今後発表予定の論文によって本研究分野の発展に多少なりとも貢献することができるだろう。まずは新たに宮崎に出向き野外調査を試みたが、予備調査の結果十分な数の繁殖が確認できず、サンプルの採集を行うことができなかった。本研究を遂行するためには十分な数の繁殖が不可欠であり、予定していた個体群を使った調査は難しいことがわかった。そのため、新たな調査地選考に先駆け、ひとまず宮崎で過去にとっていたデータを解析している。宮崎個体群のデータが増える見込みが少ないことから、これまでに得られたデータのみを使って論文を執筆することを検討している。コントロールとして設定していた上越個体群では十分なサンプルが取れているので、上越個体群と宮崎個体群の違いに焦点を当てた研究をまとめるかたちで進めている。さらに、上越個体群では思っていたよりもサンプルが取れているので、購入済みのスペクトロメータを活用してこの個体群内で見られるパターンに注目して研究を進めている。また、採取してある羽毛を用いた安定同位体分析については、分析に向けて試料分析先との協議を重ねている。こちらについては、方法の妥当性を検討した上で、本分析に向けて話をまとめている。研究実績の概要に記したように、調査地の繁殖状況が芳しくなく、データの取得が困難になっている。当初予定していた調査地とは異なる別の場所を調査地に選ぶことを検討しているが、適当な調査地がまだ見つかっておらず、研究全体に遅延が生じてしまっている。その代わりとして、すでに得られているデータを使った分析を進めている。スペクトロメータを用いた羽色測定については既存のサンプルを使って有効性を確かめたところであり、今後はこの方法を洗練して研究を進めていくことができる。新規分析手法については分析先との協議を重ねているが、実験設備や具体的な手法の選択に手間取っている。ツバメの渡り行動と関係する形態的な特徴および渡りとその喪失がもたらす集団全体への影響について、越冬と渡りの両方が混在する個体群で調査する予定であったが、実際に調査地を訪ねてみると充分な個体数が確保できない状態であったため、研究方法を大幅に修正せざるを得なかった。それら新しい方法で行われた調査のうち1つはツバメと同属で、渡りを行わない種であるリュウキュウツバメについての調査であり、本種においての形態的な特徴と飛翔行動との関係について研究を進めている。本種を用いた研究の1つはすでに共同研究者が筆頭著者として論文にまとめ、発表済みとなっており、リュウキュウツバメの越冬期に働く自然選択の重要性を明かしている。本種を用いた他のいくつかの研究結果について現在準備中である。さらに、渡りを行うツバメを用いて、飛翔行動にもたらす形態の影響もこれらとは別に実験的に検証しており、現在投稿中となっている(なお、この研究の副産物的に得られた行動データについても現在投稿中である)。種間データについても収集しており、こちらも準備が済み次第発表する。なお、過去すでに取得済みのデータについては原稿としてまとめており、発表間近の状態になっている。安定同位体分析については引き続き分析手法と分析場所の選定を進めており、整い次第室内実験を行なって論文化を目指す。当初の計画を急に変更したために、大幅な見直しを迫られた本課題であるが、すでに発表済みの論文や今後発表予定の論文によって本研究分野の発展に多少なりとも貢献することができるだろう。宮崎でのデータ取得が難しいことから、今後は新しい調査地を探しつつも、既存の生息地を用いた研究体制にシフトしていくことを予定している。宮崎で過去に採取したデータやコントロールとして設定している上越個体群のデータを活用して研究を進めていくことを予定している。このまま新しい調査地が見つからない可能性も考え、既存のデータや調査地を用いて越冬場所の効果自体を調べるなど、研究計画を大幅に見直して新たな目的設定を行うことも視野に入れて研究を推進していく。試薬の見積り額や旅費の予想金額に少しズレが生じ、次年度使用額が生じた。 | KAKENHI-PROJECT-17K15193 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K15193 |
環太平洋へき地における遠隔教育システムに関する研究 | 本研究は、北海道教育大学僻地教育研究施設研究員を中心に、アラスカ大学、マガダン国際教育大学、ジェームズクック大学との間で行なってきた共同研究であるが、国際ワークショップ等の開催や現地調査等によって、米、露、豪、日本の北部地城であるアラスカ、マガダン、クウィンズランド州、北海道のへき地における遠隔教育システムへの取り組みの現状や課題がかなり明らかになった。同時的な双方向のテレビ会議システム等を利用した他地城の学校との合同授業や民間遠隔教育プログラム利用等の試みは、へき地の子どもの視野や人間関係の拡大、小規模校での選択教科の拡充等の役割を果たしているが、現時点では多額の経費が必要で行政等から特別な補助を受けた場合にほぼ限られている。経費では、ケアンズ遠隔教育学校でのオーディオカンファランスによる双方向授業が、音声だけとはいえ実用的であろうか。アラスカ大学のANKNやジェームズクック大学のRATEP等における、先住少数民族の地域生活に根ざした教材作成の努力、マルチメディア活用授業における構成主義的視点の重視は、双方向時代に相応しい遠隔教育のあり方や大学の役剖を問うていると思われる。大学が発進する情報の質や双方向のあり方が重要となる。長い間、遠隔教育という場合の情報の発進基地は都市にあり、都市から離れた遠隔地に、都市教育の一部を、あるいは都市並の教育を送り届けるという考え方が強かった。へき地教育それ自体も、中央から離れた辺鄙な地域の教育を、都市の教育に近付けるという中央中心の発想で、その振興策が講じられがちであったと思われる。へき地との対等な立場で、へき地から学び続ける視点で、遠隔教育発進基地としての大学の役割を考えるべきであろう。環太平洋へき地には、そのような視点からの大学の実践的努力も始まっている。なお、へき地教育としての遠隔教育が、各国とも不登校生徒を含む多様な役剤を果たしつつある。本研究は、北海道教育大学僻地教育研究施設研究員を中心に、アラスカ大学、マガダン国際教育大学、ジェームズクック大学との間で行なってきた共同研究であるが、国際ワークショップ等の開催や現地調査等によって、米、露、豪、日本の北部地城であるアラスカ、マガダン、クウィンズランド州、北海道のへき地における遠隔教育システムへの取り組みの現状や課題がかなり明らかになった。同時的な双方向のテレビ会議システム等を利用した他地城の学校との合同授業や民間遠隔教育プログラム利用等の試みは、へき地の子どもの視野や人間関係の拡大、小規模校での選択教科の拡充等の役割を果たしているが、現時点では多額の経費が必要で行政等から特別な補助を受けた場合にほぼ限られている。経費では、ケアンズ遠隔教育学校でのオーディオカンファランスによる双方向授業が、音声だけとはいえ実用的であろうか。アラスカ大学のANKNやジェームズクック大学のRATEP等における、先住少数民族の地域生活に根ざした教材作成の努力、マルチメディア活用授業における構成主義的視点の重視は、双方向時代に相応しい遠隔教育のあり方や大学の役剖を問うていると思われる。大学が発進する情報の質や双方向のあり方が重要となる。長い間、遠隔教育という場合の情報の発進基地は都市にあり、都市から離れた遠隔地に、都市教育の一部を、あるいは都市並の教育を送り届けるという考え方が強かった。へき地教育それ自体も、中央から離れた辺鄙な地域の教育を、都市の教育に近付けるという中央中心の発想で、その振興策が講じられがちであったと思われる。へき地との対等な立場で、へき地から学び続ける視点で、遠隔教育発進基地としての大学の役割を考えるべきであろう。環太平洋へき地には、そのような視点からの大学の実践的努力も始まっている。なお、へき地教育としての遠隔教育が、各国とも不登校生徒を含む多様な役剤を果たしつつある。マガダン教育大学、アラスカ大学、ジェームズクック大学から、各1名の研究者を招へいし、本道のへき地教育や遠隔教育の現状について調査研究の機会を提供すると同時に、招へい研究者の報告を中心としたワークショップを、上記3大学地域別(9月、1月、2月)に、本学僻地教育研究施設主催で開催し、研究分担者と学内外の参加者とともに質疑討論を行った。また、ジェームズクック大学に2人、マガダンに1人、アラスカに1名の本学研究分担者を派遣し、3地域の現地調査を行ない資料収集するとともに、現地関係者と研究交流を行なった。出張期間が短く、今年度は、大学とその近郊での資料収集と研究交流が中心となったが、初年度の研究として収穫の多い1年であった。オーストラリアでは、離島や内陸部に点在する先住民集落の学校教師の研修・資格向上プログラムとしてのRATEPに関する資料収集と研究交流を行なった。アラスカでは、IDEANETという教育情報通信システムについて調査し、小規模な小中高併置校の多いアラスカ州での活用の意義と課題について研究を進めた。マガダンでは、通信教育によるへき地小規模校教師の研修資格向上システムを中心に資料収集と研究交流を行った。ジェームズクック大学から1名、アラスカ大学から1名の研究分担者を招聘し、本道のへき地教育や遠隔教育の現状について調査研究の機会を提供すると同時に、招聘外国研究者の報告を中心とした国際ワークショップ「環太平洋へき地の教育と遠隔教育」を、11月と2月に本学僻地教育研究施設主催で開催し、研究分担者や学内外の参加者とともに質疑討論を行った(マガダン招聘予定者は経済航空事情等により切符を入手できず欠席)。 | KAKENHI-PROJECT-09045002 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09045002 |
環太平洋へき地における遠隔教育システムに関する研究 | また,アラスカ大学に2人(9月と3月)、マガダンに1人(9月)、計3名の本学研究分担者を派遣し、マガダンとアラスカの現地調査を行い資料収集するとともに、現地関係者と研究交流をはかった。それらの現地調査の成果については、11月の国際ワークショップの際に詳しい報告と討議を行った。なお、研究成果の一部を平成11年3月の北海道教育学会で報告し、また、平成11年6月の日本比較教育学会でも報告予定である。オーストラリアに関しては、「構成主義に視点をおいた遠隔教育の実施」と題した報告を中心に、ジエームズクック大学での遠隔教育理論をめぐる研究状況を把握した。マガダン州では、人口流出と経済危機に悩むへき地小規模校を実地調査した。なお、極北ロシアでは、寄宿舎教育から居住地教育へのへき地教育政策の変更が進められつつあり、その一環として、マガダン教育大学スタッフを中心に、生徒数が極少のトナカイ放牧地,小規模校採掘地、観測ステーション等を対象とした遠隔教育構想も作成されているが、厳しい経済事情の中でメディア機器整備の困難からまだ実旋には至っていない。当初の計画では、ロシアからの招聘1名、アラスカとオーストラリアヘの派遣各1名を予定していたが、極北東ロシア・マガダン国際教育大学招聘予定者の都合(博士論文作成審査の遅れ)により、結局、来日が困難となり(代わりにレポート送付)、2名派遣の希望の強かったアラスカ調査を2名派遣とした。アラスカでは、ヘき地学校教師を主対象としたアラスカ大学大学院遠隔教育の実態と設立間もなく急速に生徒数が増加しつつあるアラスカ遠隔家庭内学校の現状を調査した。オーストラリア・クウィンズランド州では、遠隔地に点在する在宅農家子弟等を対象とするケアンズ遠隔教育学校やジェームズクック大学での教師教育カリキュラム等について調査した。ヘき地教育としての遠隔教育が、不登校者を含む多様な役割も果たしつつある。また、国内の国立メディア教育開発センターや今春新設予定のバーチャルユニバーシティ(人間総合科学大学)、文部省へき地学校マルチメディア活用方法研究開発校の幌延町問寒別小中学校等を視察調査し、研究の参考とした。本年度は3年計画の最終年度であり、6月の日本比較教育学会研究大会(東北大学)で、それまでの研究成果を「環太平洋へき地の教育と遠隔教育」と題して報告し、また、平成12年3月の北海道教育学会研究大会(北海道大学)で「環太平洋へき地の学校と大学を結ぶ教育改革-マルチメディア、遠隔教育システムの意義と課題を考える-」と題したシンポジウムを、本プロジェクトメンバーを中心に企画・運営し、本年度の調査研究の成果を報告したが、シンポジウム内容は北海道教育学会紀要に収録される予定である。3年間の研究成果を別記報告書にまとめたが、2冊を予定していた報告書が費用等の関係で1冊となった。本研究を通じて、日米露豪4国の北部に位置する4大学のへき地教育研究の協力の重要性を痛感すると同時に、それらの大学でのへき地を見据えた諸活動に敬服している。 | KAKENHI-PROJECT-09045002 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09045002 |
麻酔薬のオピオイド受容体に対する作用の遺伝子工学的手法による解析 | クローン化したラットμ、δ、κオピオイド受容体のcDNAをCHO細胞に導入することによりそれぞれの受容体を発現する細胞株を作成した。これらの細胞株を用いて、オピオイド受容体を介する細胞内情報伝達機構を検討し、従来報告されているアデニル酸シクラーゼ抑制作用の他に、オピオイド受容体の活性化によりMAP(Mitogen-activated protein)キナーゼが活性化されることがわかった。オピオイド受容体によるMAPキナーゼの活性化にはチロシンキナーゼ及びプロテインキナーゼCが関与していることが示された。さらにオピオイド受容体をアゴニストで刺激するとMAPキナーゼの活性化を介してホスホリパーゼA2の活性化が起こり、アラキドン酸が放出されることが明らかになった。これらの知見はオピオイド受容体の新しい細胞内情報伝達機構を解明したものである。今後、このオピオイド受容体を介する細胞内情報伝達機構に対する各種麻酔薬の作用を検討する計画である。μ、δ、κオピオイド受容体を大量に発現する細胞株を用いて、オピオイドアンタゴニスト(ナロキソン、ナルトリンドール、ナルトレキソン、ナロキソナジン)の薬理作用を検討した。その結果、アゴニスト非存在下ではこれらのオピオイドアンタゴニストは弱いアゴニスト作用を持ち、アデニル酸シクラーゼを抑制いて細胞内サイクリックAMP量を減少させることが明らかになった。このアデニル酸シクラーゼ抑制にはGTPase活性の上昇すなわちG蛋白の活性化を伴っていた。これらの結果は、臨床的に報告されている少量のナロキソンによる鎮痛作用の基礎となると考えられる。クローン化したラットμ、δ、κオピオイド受容体のcDNAをCHO細胞に導入することによりそれぞれの受容体を発現する細胞株を作成した。これらの細胞株を用いて、オピオイド受容体を介する細胞内情報伝達機構を検討し、従来報告されているアデニル酸シクラーゼ抑制作用の他に、オピオイド受容体の活性化によりMAP(Mitogen-activated protein)キナーゼが活性化されることがわかった。オピオイド受容体によるMAPキナーゼの活性化にはチロシンキナーゼ及びプロテインキナーゼCが関与していることが示された。さらにオピオイド受容体をアゴニストで刺激するとMAPキナーゼの活性化を介してホスホリパーゼA2の活性化が起こり、アラキドン酸が放出されることが明らかになった。これらの知見はオピオイド受容体の新しい細胞内情報伝達機構を解明したものである。今後、このオピオイド受容体を介する細胞内情報伝達機構に対する各種麻酔薬の作用を検討する計画である。μ、δ、κオピオイド受容体を大量に発現する細胞株を用いて、オピオイドアンタゴニスト(ナロキソン、ナルトリンドール、ナルトレキソン、ナロキソナジン)の薬理作用を検討した。その結果、アゴニスト非存在下ではこれらのオピオイドアンタゴニストは弱いアゴニスト作用を持ち、アデニル酸シクラーゼを抑制いて細胞内サイクリックAMP量を減少させることが明らかになった。このアデニル酸シクラーゼ抑制にはGTPase活性の上昇すなわちG蛋白の活性化を伴っていた。これらの結果は、臨床的に報告されている少量のナロキソンによる鎮痛作用の基礎となると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-08671732 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08671732 |
電磁流体系複雑乱流における輸送抑制機構の研究 | 当該研究期間、電磁流体複雑系においては、電場、回転運動、圧縮性が輸送抑制機構と密接することを確認した。本研究課題で得られた成果は以下のようにまとめられる。(1)トカマクプラズマの高モード閉じ込めにおいては、プラズマ外辺の電場、特にその曲率が輸送抑制と深く関係することを統計理論的方法で示し、観測結果と一致することを確認した。電場曲率の重要性は、電場勾配を最重要とする従来の研究と大きく異なる点である。(2)圧縮性による乱流抑制に関連して、平均密度で規格された密度分散と乱流マッハ数の重要なパラメーターとなることを統計理論的に示し、これを異なる速度で流体が混合する、いわゆる乱流混合層で定量的に示した。また、音波に関連した密度揺動とエントロピー変動より生じるそれとを分離することによって、圧縮性効果をさらに精密に議論できることを統計理論的手法をで示した。(3)プラズマの回転運動と磁場を結び付ける量として、乱流クロスヘリシティの概念を導入し、帯域的回転運動ないし系の回転効果から帯域的磁場構造が発生することを示し、この機構が電磁流体での乱流輸送抑制と密接することを確認した。特に、トカマクプラズマでの回転による乱れ抑制、高密度星を取り囲む降着円盤における磁場および双極ジェット生成等において、これを定量的に確認した。以上に見るように、本研究課題ではいくつかの重要な概念を提案し、実験ないし観測結果と照らし、その重要性を示した。当該研究期間、電磁流体複雑系においては、電場、回転運動、圧縮性が輸送抑制機構と密接することを確認した。本研究課題で得られた成果は以下のようにまとめられる。(1)トカマクプラズマの高モード閉じ込めにおいては、プラズマ外辺の電場、特にその曲率が輸送抑制と深く関係することを統計理論的方法で示し、観測結果と一致することを確認した。電場曲率の重要性は、電場勾配を最重要とする従来の研究と大きく異なる点である。(2)圧縮性による乱流抑制に関連して、平均密度で規格された密度分散と乱流マッハ数の重要なパラメーターとなることを統計理論的に示し、これを異なる速度で流体が混合する、いわゆる乱流混合層で定量的に示した。また、音波に関連した密度揺動とエントロピー変動より生じるそれとを分離することによって、圧縮性効果をさらに精密に議論できることを統計理論的手法をで示した。(3)プラズマの回転運動と磁場を結び付ける量として、乱流クロスヘリシティの概念を導入し、帯域的回転運動ないし系の回転効果から帯域的磁場構造が発生することを示し、この機構が電磁流体での乱流輸送抑制と密接することを確認した。特に、トカマクプラズマでの回転による乱れ抑制、高密度星を取り囲む降着円盤における磁場および双極ジェット生成等において、これを定量的に確認した。以上に見るように、本研究課題ではいくつかの重要な概念を提案し、実験ないし観測結果と照らし、その重要性を示した。2か年研究計画の初年度として、以下の研究を行なった。課題1:クロスヘリシティ効果によるトロイダル磁場の生成の研究(主に、吉澤担当)天体等の回転する球形領域においては、差動回転により乱流が発生する。乱流の発生は運動量、エネルギー等の輸送を促進する作用をもつが、他方回転効果によって乱れの反転対称性が破られる。この結果、速度、磁場相関で定義される乱流クロスヘリシティが発生し、回転運動から大規模トロイダル磁場が生じ、乱れを抑制する。課題2:圧縮性乱流の統計理論的研究(主に、半場担当)乱流中の圧縮性効果の代表的として、流体混合の抑制作用がある。その原因として、運動量輸送に対する圧縮性効果、圧縮に起因する乱流エネルギー散逸の促進等が上げられる。これらの事項を、乱流統計理論の観点から明らかにするために、2スケーる繰り込み理論を用いて、解析を行なった。特に、運動量輸送、熱輸送等に対する抑制効果を明らかにした。課題3:円筒領域におけるプラズマ回転による乱流抑制の研究(主に、横井担当)核融合プラズマのトカマク閉じ込めにおいては、強いトロイダル磁場に加えて、ポロイダルプラズマ回転が乱れの抑制に強く関連していることがHモードの研究から知られている。本研究では、この事実をクロスヘリシティによる磁場と流体運動の相互作用の視点から説明するために、乱流モデルを構成し、数値解析によりこれを確認した。平成8年度の研究を継続発展させ、電磁流体複雑系においては、電場、回転運動、圧縮性が輸送抑制機構と密着することを確認した。本研究課題で得られた成果は以下のようにまとめられる:(1)トカマクプラズマの高モード閉じ込めにおいては、プラズマ外辺の電場、特にその曲率が輸送抑制と深く関係することを統計理論的方法で示し、観測結果と一致することを確認した。電場曲率の重要性は、電場勾配を最重要とする従来の研究と大きく異なる点である。(2)圧縮性による乱流抑制に関連して、平均密度で規格された密度分散と乱流マッハ数の比が重要なパラメーターとなることを統計理論的に示し、これを異なる速度で流体が混合する、いわゆる乱流混合層で定量的に示した。また、音波に関連した密度動揺とエントロピー変動より生じるそれとを分離することによって、圧縮性効果をさらに精密に議論できることを統計理論的手法で示した。(3)プラズマの回転運動と磁場を結び付ける量として、乱流クロスヘリシティの概念を導入し、帯域的回転運動ないし系の回転効果から帯域的磁場構造が発生すること示し、この機構が電磁流体系での乱流輸送抑制と密接することを確認した。 | KAKENHI-PROJECT-08454110 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08454110 |
電磁流体系複雑乱流における輸送抑制機構の研究 | 特に、トカマクプラズマでの回転による乱れ抑制、高密度星を取り囲む降着円盤における磁場および双極ジェットの生成等において、これを定量的に確認した。以上に見るように、本研究課題ではいくつかの重要な概念を提案し、実験ないし観測結果と照らし、その重要性を示した。 | KAKENHI-PROJECT-08454110 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08454110 |
高分子電解質材料におけるナノアーキテクチャーの開発 | 新規なモノマーの分子設計と触媒移動型重縮合法により、分子量制御したジブロック共重合体の合成に成功した。これら高分子電解質において、低分子量分散を維持しつつ親水性、疎水性ブロックの鎖長と組成を制御することが可能であった。組成や鎖長により、ラメラ状、ジャイロイド状などのミクロ相分離構造が形成され、電解質材料のナノ構造制御が可能になった。これら材料は、そのナノ構造に対応したプロトン伝導性やガス透過性を示し、燃料電池の電解質膜または触媒層のアイオノマーとして機能することが分かった。特に高い燃料ガスを示すジブロック共重合体は、既存のナフィオン溶液より優れたアイオノマー特性を示した。新規なモノマーの分子設計と触媒移動型重縮合法により、分子量制御したジブロック共重合体の合成に成功した。これら高分子電解質において、低分子量分散を維持しつつ親水性、疎水性ブロックの鎖長と組成を制御することが可能であった。組成や鎖長により、ラメラ状、ジャイロイド状などのミクロ相分離構造が形成され、電解質材料のナノ構造制御が可能になった。これら材料は、そのナノ構造に対応したプロトン伝導性やガス透過性を示し、燃料電池の電解質膜または触媒層のアイオノマーとして機能することが分かった。特に高い燃料ガスを示すジブロック共重合体は、既存のナフィオン溶液より優れたアイオノマー特性を示した。(1)精密なブロックユニットの合成Ni(0)カップリング重合反応の反応条件(配位子、反応温度、触媒など)を検討することによって、分散度を2以下に抑えた精密なブロックユニットの合成を試みたが、モル質量分散度が2.0以下のブロックユニットを合成することはできなかった。一方、触媒移動型重縮法と原子移動ラジカル重合法を用いることで、モル質量分散度が1.20以下の親水ブロックおよび疎水ブロックの合成が可能になった。Ni(0)カップリング重合反応と芳香族求核置換反応によってブロック共重合体を合成し、その疎水部が力学的特性に与える影響を検討した。疎水部を嵩高く、かつ非対称構造にすることで柔軟性を付与することに成功した。(2)系統的マルチブロック体の合成触媒移動型重縮合法を用いて、親水ブロック組成の異なるジブロック共重合体を系統的に合成した。精密なブロック体の導入により、ミクロ相分離構造が明瞭化した。さらに親水ブロックの組成を変化することでミクロ相分離構造をジャイロイド、球、ラメラ、シリンダー状に制御できることが明らかになった。これらの構造体を用いて、構造と膨潤性、導電率の異方性の関係を明らかにした。(3)ブロック構造のシーケンス制御上述の系統合成を発展させ、トリブロック体の合成を試みた。親水、疎水の両ブロックからのマルチ化を可能にする条件を見出した。その結果、総分子量が8万程度の親水-疎水-親水、または疎水-親水-疎水トリブロック体の合成に成功した。(1)バインダー電解質(アイオノマー)の構築高分子電解質形燃料電池の触媒層に用いられる電解質材料(アイオノマー)への応用を目的に、親水性と疎水性ブロックユニットからなるA-BまたはA-B-A、B-A-Bブロック構造体を系統系に合成した。親水性、疎水性ブロックユニットともに柔軟なアルキル基を導入したこと、また比較的長い側鎖を導入したことにより、燃料電池の燃料ガスである水素と酸素の透過性が著しく向上し、アイオノマーとして多く用いられているNafionに代表されるフルオロ系電解質材料より高い燃料ガス透過性を示した。さらに、昨年度見出したように、水などの極性溶媒中で本ブロック共重合体は約100nmサイズのミセル状微粒子を形成し、成膜プロセスではそれが堆積することにより膜が形成されることから、比較的多孔質な膜が形成することが分かった。さらに、親水性と疎水性ブロックユニットの長さや組成比を系統的に変化させ、化学構造と電解質材料特性の関係を明らかにした。(2)高次構造制御とPEFC発電特性の相関関係の解析開発したジブロックとトリブロック共重合体は、その親水性と疎水性ブロックユニットの組成比と鎖長により、様々なミクロ相分離構造を形成することを明らかにした。シンクロトロン小角X線散乱測定や中性子小角X線散乱測定の結果、球状、ラメラ、ジャイロイド、柱状のミクロ相分離の形成が確認され、透過電子顕微鏡観察でも膜表面、膜内部で構造が維持されていることを確認した。プロトン伝導性においては、膜の膨潤を抑えつつ、親水性ブロックユニットの連結性が高いジャイロイド構造が最も高い値を示すことが明らかになった。また、燃料電池中のアイオノマー特性においては、フラディングを抑えるために、比較的低いIEC(1.5-2.0)の試料が高い発電特性を示すことを明らかにした。(1)ブロック形体と高次構造の関係系統的にブロック鎖長、ブロック組成、さらにはブロックシーケンスを調整したブロック共重合体を合成した。触媒移動型重縮合法を用いることで、分子量(鎖長)と分散度を制御したジブロック共重合体が得られた。キャスト膜の構造をAFMとSーTEMにより観察した結果、球状、ラメラ状、ジャイロイド状、シリンダー状のミクロ相分離構造が確認された。親水部ブロック鎖長とイオン交換容量(IEC)が連動して変化するため、親水部ブロック鎖長が長い(IECが高い)共重合体が高いプロトン伝導性を示した。 | KAKENHI-PROJECT-23350116 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23350116 |
高分子電解質材料におけるナノアーキテクチャーの開発 | しかも、構造に由来する現象も見られ、共重合組成のみならずそのミクロ相分離構造の状態もプロトン伝導性に寄与することが明らかになった。さらに、ジブロックから親水性ブロックを外側にしたABAまたはBABトリブロック体の合成を行い、シーケンスと高次構造の関係を調査した。(2)物理的または機械的手法による高次構造の配向制御分子量制御したジブロック共重合体は、マルチブロック共重合体より明瞭なミクロ相分離構造を示した。各種溶媒に可溶であることから、キャスト溶媒、乾燥条件によって、高次構造の配向性が異なることが明らかになった。特に、膜表面近傍に大きな影響を与えることが分かった。一方、電場、磁場印可などの物理的な配向制御技術ではあまり変化がないことが分かった。水溶液中または希薄溶液からのキャスティングを行い、ジブロック共重合体の凝集状態を調査した。水溶液中では、ミセル状の凝集体が観察され、100nm程度の直径を有する球状凝集体であることが分かった。さらに、希薄溶液からのキャストでは、水中ミセルが基板表面に高密度に堆積していることが観察された。これらの挙動は、基板の種類にも大きく影響され、球状微粒子、板状結晶が観察された。板状結晶では盤面状に親水部が直線上に配向した構造が観察された。一般的な重縮合反応では、マルチブロック共重合体の分子量とその分布の制御を精度良く行うことができなかった。モノマー、特に親水性ブロック用のモノマーの化学構造を検討し、触媒移動型重縮合反応で重合可能なモノマーを見出し、数万程度の分子量を持つジブロック体とトリブロック体の合成に成功した。また、見出されたブロック共重合体が、予想以上のアイオノマー特性を示し、特許出願につながった。25年度が最終年度であるため、記入しない。触媒移動型重縮合反応で重合可能な親水性、疎水性モノマーを見出し、数万程度の分子量を持つジブロック共重合体とトリブロック共重合体の合成に成功した。ジブロック共重合体は、親水性と疎水性ブロックからなることから、マルチブロック共重合体と同様のミクロ相分離構造を形成した。しかも、触媒移動型重縮合法による分子量と分散度の精密な制御は、今までの芳香族系ブロック共重合体では得られなかった明瞭なミクロ相分離構造の形成とその制御を可能にした。ミクロ相分離構造は親水部ブロックと疎水部ブロックの非相溶性から発現するため、親水部ブロックの凝集部位はプロトン輸送の経路として働く。ジブロック共重合体はプロトン輸送部位と構造形成を担う疎水部ブロックの凝集部位からなるので、含水した水を最大限に活用して高いプロトン輸送と膜形成を示している。本研究で開発したジブロック共重合体は、明瞭なミクロ相分離構造を実現したため、これらの効果が強く影響し、現状では炭化水素系電解質材料として世界最高水準のプロトン伝導性を実現している。また、本材料を触媒層中のアイオノマーとして利用した場合においても、世界最高の発電特性を示している。しかも、広く燃料電池用電解質材料として用いられているナフィオンと比較しても、高温低加湿域では高い発電性能を示すに到った。一方、これらジブロック共重合体の一部は水に可溶であり、水中でミセルを形成するなど構造に由来した特殊な界面特性を有することが明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-23350116 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23350116 |
液中低濃度微粒子に対するメンブレンフィルター性能試験法の開発 | メンブレンフィルターは,種々の素材からなり,その構造も繊維状のものから多孔板状のものまで多様であり,フィルター孔径にも大きな分布があるため,たとえば,孔径1μmのフィルターで1μm以上の粒子は完全に除去できても,1μm以下の粒子の捕集効率は全く予測できないのが現状である。本研究では,フィルター孔径よりも小さな粒子の除去機構を明らかにするとともに,種々の液体に対してフィルターを使用した場合の捕集効率を保証できる試験法および試験装置を提案することを目的とした。試作したフィルター試験装置は,2台のパーティクルカウンター(最小可測粒径0.1μm,サンプリング流量10ml/min),試験用粒子(単分散PSL粒子)供給装置からなり,フィルター出入口での粒子濃度を同時に測定して捕集効率を測定するものである。本年度は,フィルターの内部構造が捕集効率に及ぼす影響について調べた結果,以下のようなことが明らかになった。(1)フィルター孔径より小さい粒子の濾過についても,さえぎり効果によって粒子は捕集される,(2)超純水中では,フィルターの空隙率の違いが捕集体周りの電気二重層の形状に影響を与えることにより,捕集効率の濾過速度の依存性が異なる,(3)繊維状フィルターについて,濾液のイオン濃度が高くなって捕集体周りの電気二重層が圧縮されると,粒子はフィルター表面に接近しやすくなり捕集されやすくなる。以上の結果より,メンブレンフィルター,特に繊維状フィルターについては,フィルター孔径よりも充分小さい粒子の捕集効率を予測するために,バブルポイント法により決められたフィルター孔径ではなく,繊維径,充填率,フィルター厚さ等の物性値を考慮した指標の導入が必要であることが明らかになった。メンブレンフィルターは,種々の素材からなり,その構造も繊維状のものから多孔板状のものまで多様であり,フィルター孔径にも大きな分布があるため,たとえば,孔径1μmのフィルターで1μm以上の粒子は完全に除去できても,1μm以下の粒子の捕集効率は全く予測できないのが現状である。本研究では,フィルター孔径よりも小さな粒子の除去機構を明らかにするとともに,種々の液体に対してフィルターを使用した場合の捕集効率を保証できる試験法および試験装置を提案することを目的とした。試作したフィルター試験装置は,2台のパーティクルカウンター(最小可測粒径0.1μm,サンプリング流量10ml/min),試験用粒子(単分散PSL粒子)供給装置からなり,フィルター出入口での粒子濃度を同時に測定して捕集効率を測定するものである。本年度は,フィルターの内部構造が捕集効率に及ぼす影響について調べた結果,以下のようなことが明らかになった。(1)フィルター孔径より小さい粒子の濾過についても,さえぎり効果によって粒子は捕集される,(2)超純水中では,フィルターの空隙率の違いが捕集体周りの電気二重層の形状に影響を与えることにより,捕集効率の濾過速度の依存性が異なる,(3)繊維状フィルターについて,濾液のイオン濃度が高くなって捕集体周りの電気二重層が圧縮されると,粒子はフィルター表面に接近しやすくなり捕集されやすくなる。以上の結果より,メンブレンフィルター,特に繊維状フィルターについては,フィルター孔径よりも充分小さい粒子の捕集効率を予測するために,バブルポイント法により決められたフィルター孔径ではなく,繊維径,充填率,フィルター厚さ等の物性値を考慮した指標の導入が必要であることが明らかになった。メンブレンフィルターは種々の素材からなり,その構造も繊維状のものから多孔板状のものまで多様であり,フィルター孔径にも大きな分布があるため,たとえば,孔径1μmのフィルターで1μm以上の粒子は完全に除去できても,1μm以下の粒子の除去率は全く予測できないのが現状である.本研究では,フィルター孔径よりも小さな粒子の除去機構を明らかにするとともに,種々の液体に対してフィルターを使用した場合の捕集効率を保証できる試験法および試験装置を提案することを目的とした.試作したフィルター試験装置は,2台のパーティクルカウンター(可測最小粒径0.1μm,サンプリング流量10ml/min),試験用粒子(単分散PSL粒子)供給装置からなり,フィルター出入口での粒子濃度を同時に測定して捕集効率を測定するものである.本研究で得られた成果を要約すると以下のようである.(1)フィルター孔径よりも小さな粒子の捕集効率は,ろ過速度,電界質濃度(液の電気伝導度),フィルター素材によって大きく変化する,(2)多孔板状のフィルターの場合,孔径より十分小さな粒子はブラウン拡散によってフィルター表面へ輸送され,フィルター表面と粒子の正電気反発力(電気二重層による力)によって捕集されるか否かが決定される,(3)液に界面活性剤を添加することにより,フィルター表面への粒子の付着はなくすことができ,孔径よりも小さな粒子はすべて透過する,したがって,界面活性剤の添加により最低限のフィルター捕集効率を保証できる,(4)繊維状フィルターの場合,ろ過速度が大きくなるほどフィルターの表面電位が小さくなり,捕集効率は大きくなる.以上の結果より,メンブレンフィルターの捕集効率は,電気二重層による反発力とvan der Waals力による引力を考慮したDLVO理論では予測できず,これらの力の作用下で粒子の運動を求めなければならないことがわかった. | KAKENHI-PROJECT-08455366 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08455366 |
液中低濃度微粒子に対するメンブレンフィルター性能試験法の開発 | メンブレンフィルターは,種々の素材からなり,その構造も繊維状のものから多孔板状のものまで多様であり,フィルター孔径にも大きな分布があるため,たとえば,孔径1mumのフィルターで1mum以上の粒子は完全に除去できても,1mum以下の粒子の捕集効率は全く予測できないのが現状である。本研究では,フィルター孔径よりも小さな粒子の除去機構を明らかにするとともに,種々の液体に対してフィルターを使用した場合の捕集効率を保証できる試験法および試験装置を提案することを目的とした。試作したフィルター試験装置は,2台のパーティクルカウンター(最小可測粒径0.1mum,サンプリング流量10ml/min),試験用粒子(単分散PSL粒子)供給装置からなり,フィルター出入口での粒子濃度を同時に測定して捕集効率を測定するものである。本年度は,フィルターの内部構造が捕集効率に及ぼす影響について調べた結果,以下のようなことが明らかになった。(1)フィルター孔径より小さい粒子の濾過についても,さえぎり効果によって粒子は捕集される,(2)超純水中では,フィルターの空隙率の違いが捕集体周りの電気二重層の形状に影響を与えることにより,捕集効率の濾過速度の依存性が異なる,(3)組織状フィルターについて,濾液のイオン濃度が高くなって捕集体周りの電気二重層が圧縮されると,粒子はフィルター表面に接近しやすくなり捕集されやすくなる。以上の結果より,メンブレンフィルター,特に繊維状フィルターについては,フィルター孔径よりも充分小さい粒子の捕集効率を予測するために,バブルポイント法により決められたフィルター孔径ではなく,繊維径,充填率,フィルター厚さ等の物性値を考慮した指標の導入が必要であることが明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-08455366 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08455366 |
貯水池系における潜在的渇水被害度とその生起確率の評価法の研究 | 本研究は,同じ異常渇水流況に対する被害の程度が河川水の利用率の高低により異なり,社会的に不公平となっている点を問題とし,利水用貯水池をもつ河川水系(貯水池系)における潜在的渇水被害度を河川水利用率をパラメータとして把握・表現する方法と共にその共通の尺度で表される被害度の生起確率の評価法を確立し,渇水対策ダムの合理的計画等に資することを目的とするものである。今年度は,昨年度の検討により,渇水被害度指標として確率評価上,簡明さ及び非金銭的指標の点から不足%・日を第一候補とした前提のもとに,実際のダム流域における流量資料に基づいて次のような解析・検討を行った。なお,流量資料は豊川水系宇連ダムへの自流域(A=26.26km^2)からの日流入流量時系列で,1970-1992年の23年分である。(1)日流量の統計解析(日流量の統計的特性および長期(30360日)移動平均流量の極値分布解析)(2)河川水利用率(平均流量に対する取水流量の%,年間一定)α=2050%に対する年最大必要貯水池容量(残差マスカーブ法により算定)の分布特性解析(3)交差レベルをα=2070%に相当する流量とした日流量時系列の連解析(正および負の連長,連和の分布特性・極値分布解析,負の連和は不足%・日と一義的に対応)(4)渇水被害度指標の貯水池容量,河川水利用率,節水ルール(無節水または貯水量率に基づく節水率変化方式)による変化特性の検討主要な成果は次のようである。(1)年最小長期移動平均流量,年最大必要貯水池容量はGumbel分布にほぼ従うようであるが適合度はあまり良くない。(2)年最大連長,連和は正負ともGumbel分布によく適合する。(3)渇水被害度指標を不足%・日とすると,無節水操作の場合が常に最小となる。(4)渇水被害度指標を(不足%)^n・日とすると,河川水利用率に対して貯水池容量が過大または過小の場合を除いて節水操作の方が被害度が小さくなることがある(節水ルールにも,指数nにも依存し,今回設定したルールではn(〕SY.gtoreq.〔)3のとき)。本研究は、河川水の利用率の高低により同規模の異常渇水に対する被害の程度が異なり、社会的に不公平となっている点に注目し、貯水池系による流況操作や取水制限を受けた状態に対する渇水被害度を河川水利用率をパラメータとして把握・表現する一般的方法を究明し、同時にその共通の尺度で表される被害度の生起確率の評価法を確立することを目的とするものであり、これまでの研究経過は以下のようである。(1)従来から提案されている渇水被害度の評価指標の特性、妥当性の比較・検討に関する資料解析的研究では、各種の指標を、渇水の(1)長さ、(2)大きさ、(3)厳しさ、及び(4)経済的被害額という4つのカテゴリーに、分類し、それぞれから代表的なもの、即ち、(1)では水不足発生日数、(2)では不足%・日、(3)では(不足%)^2・日、(4)では渇水被害額(=最大給水制限率で決まる被害額+給水制限率別日数に比例する被害額)、を選び、過去(昭和39年昭和62年)の著名な渇水(23件)についてこれらの指標を評価(ただし、資料不足のため評価不能の場合もあった)し、比較・検討したところ、各カテゴリーの指標間にかなり高い相関があることが判明した。このことは生起確率の評価が容易な指標を1つ選択すればよいという可能性を示すものである。(2)渇水時のダムからの給水方式や節水方式のパターン分類化については上記の著名な渇水時の他に、重大な渇水に至らない前に降雨に恵まれたケースも重要と考え、そうした資料の調査・収集と整理中の段階であるが、本来無限に有り得る状態を有限個に分類するには、大胆な単純化となんらかの規格化が必要であり、その方法論を模索中である。(3)モデル水系によるシミュレーション研究については、近畿、四国、中国の各地方からそれぞれ、1水系を選び、現在水文資料、地形・地理条件等の整理・解析中である。本研究は,同じ異常渇水流況に対する被害の程度が河川水の利用率の高低により異なり,社会的に不公平となっている点を問題とし,利水用貯水池をもつ河川水系(貯水池系)における潜在的渇水被害度を河川水利用率をパラメータとして把握・表現する方法と共にその共通の尺度で表される被害度の生起確率の評価法を確立し,渇水対策ダムの合理的計画等に資することを目的とするものである。今年度は,昨年度の検討により,渇水被害度指標として確率評価上,簡明さ及び非金銭的指標の点から不足%・日を第一候補とした前提のもとに,実際のダム流域における流量資料に基づいて次のような解析・検討を行った。なお,流量資料は豊川水系宇連ダムへの自流域(A=26.26km^2)からの日流入流量時系列で,1970-1992年の23年分である。(1)日流量の統計解析(日流量の統計的特性および長期(30360日)移動平均流量の極値分布解析)(2)河川水利用率(平均流量に対する取水流量の%,年間一定) | KAKENHI-PROJECT-04650459 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04650459 |
貯水池系における潜在的渇水被害度とその生起確率の評価法の研究 | α=2050%に対する年最大必要貯水池容量(残差マスカーブ法により算定)の分布特性解析(3)交差レベルをα=2070%に相当する流量とした日流量時系列の連解析(正および負の連長,連和の分布特性・極値分布解析,負の連和は不足%・日と一義的に対応)(4)渇水被害度指標の貯水池容量,河川水利用率,節水ルール(無節水または貯水量率に基づく節水率変化方式)による変化特性の検討主要な成果は次のようである。(1)年最小長期移動平均流量,年最大必要貯水池容量はGumbel分布にほぼ従うようであるが適合度はあまり良くない。(2)年最大連長,連和は正負ともGumbel分布によく適合する。(3)渇水被害度指標を不足%・日とすると,無節水操作の場合が常に最小となる。(4)渇水被害度指標を(不足%)^n・日とすると,河川水利用率に対して貯水池容量が過大または過小の場合を除いて節水操作の方が被害度が小さくなることがある(節水ルールにも,指数nにも依存し,今回設定したルールではn(〕SY.gtoreq.〔)3のとき)。 | KAKENHI-PROJECT-04650459 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04650459 |
肺組織傷害に関わるサイトカインを介した肺胞II型上皮細胞の役割 | [目的]肺組織傷害に関わる肺胞II型上皮細胞(以下II型細胞)の役割を炎症性サイトカイン、各種メヂエーターとの関係で明らかにする。[結果]1)II型細胞の増殖と炎症性サイトカイン:IL-1βはラット肺分離II型細胞のDNAえの[^3H]Thymidineの取り込みを促進し、他の炎症性サイトカインIL-1α,IL-2,IL-6,TNF-αおよびGM-CSFはその取り込みを抑制した。抗IL-1β抗体、IL-1受容体の処理はIL-1βによる[^3H]Thymidineの取り込みを有意に抑制し,両者の同時処理はIL-1β非投与のコントロールより更に[^3H]Thymidineの取り込みを抑制した。このことは炎症に際して、多量に産生されるIL-1βがII型細胞の増殖活性を刺激して、肺胞傷害からの防御機構を担い、かつII型細胞が自らIL-1βを産生し、増殖を自己調節していることを示唆している。2)肺サーファクタントと肺傷害:人工サーファクタント(以下S-TA)は好中球の遊走、接着、O^-_2の産生および好中球エラスターゼ活性を抑制する。S-TAの経気管投与はラットによるブレオマイシン急性肺傷害を抑制した。3)肺胞における水分調節肺胞の水分調節にはII型細胞の表面に存在するNaチャネルによる肺胞腔からNaの汲み上げと基底膜側のNa,Kチャネルによる汲み出しによって調節されている。ATP-sensitive potassium channel opner(K_<ATP> channel opener)により、水分クリアランスは増強するが、K_<ATP>channel blockerおよびapical sodium uptakeinhibitor(Amiloride)によって抑制された。[結論]II型細胞は、肺組織傷害時の防御、リモデリングおよび肺胞腔内水分調節に際し、炎症性サイトカインとの相互作用、自ら産生分泌するサーファクタントおよびNa,K ion channelを介し、中心的役割を演じている。[目的]肺組織傷害に関わる肺胞II型上皮細胞(以下II型細胞)の役割を炎症性サイトカイン、各種メヂエーターとの関係で明らかにする。[結果]1)II型細胞の増殖と炎症性サイトカイン:IL-1βはラット肺分離II型細胞のDNAえの[^3H]Thymidineの取り込みを促進し、他の炎症性サイトカインIL-1α,IL-2,IL-6,TNF-αおよびGM-CSFはその取り込みを抑制した。抗IL-1β抗体、IL-1受容体の処理はIL-1βによる[^3H]Thymidineの取り込みを有意に抑制し,両者の同時処理はIL-1β非投与のコントロールより更に[^3H]Thymidineの取り込みを抑制した。このことは炎症に際して、多量に産生されるIL-1βがII型細胞の増殖活性を刺激して、肺胞傷害からの防御機構を担い、かつII型細胞が自らIL-1βを産生し、増殖を自己調節していることを示唆している。2)肺サーファクタントと肺傷害:人工サーファクタント(以下S-TA)は好中球の遊走、接着、O^-_2の産生および好中球エラスターゼ活性を抑制する。S-TAの経気管投与はラットによるブレオマイシン急性肺傷害を抑制した。3)肺胞における水分調節肺胞の水分調節にはII型細胞の表面に存在するNaチャネルによる肺胞腔からNaの汲み上げと基底膜側のNa,Kチャネルによる汲み出しによって調節されている。ATP-sensitive potassium channel opner(K_<ATP> channel opener)により、水分クリアランスは増強するが、K_<ATP>channel blockerおよびapical sodium uptakeinhibitor(Amiloride)によって抑制された。[結論]II型細胞は、肺組織傷害時の防御、リモデリングおよび肺胞腔内水分調節に際し、炎症性サイトカインとの相互作用、自ら産生分泌するサーファクタントおよびNa,K ion channelを介し、中心的役割を演じている。【目的】:肺胞を場とする呼吸器疾患、肺気腫、肺線維症の発生機序の詳細は不明である。本研究は万人が暴露されうる環境汚染物質、喫煙が肺の線維化、気腫化の発症機構を病変の場である肺胞壁に特異的に存在する肺胞II型上皮細胞に焦点をあて、その組織障害のい機序を解明することを目的とした。【実験結果】:1)対象実験動物の変更:Sprague-Dowley(SD)ラットは大型で現在の喫煙装置での喫煙実験が不可能であった。より小型のWister系とSDラットのII型肺胞上皮細胞の機能に差異があるかを、サーファクタント分泌能の立場から比較検討した。その結果両系の分離II型肺胞上皮細胞に対するPMA、ATP、Terubutarinの刺激に対しWister系ラットはSDラットと同様の分泌能を示し、この系の実験は以後Wister系ラットを用いて行った。2)各種サイトカインによるII型肺胞上皮細胞の増殖能に対する検討:分離した培養II型肺胞上皮に対する各種サイトカインの増殖能を、3Hthymidine(3H Thd)の取り込みにより検討した。HGF,KGF,1L-1βは明かにII型肺胞上皮による3H thymidineの取り込みを増強し、その増殖能はHGFが最も大であった。1L-2,1L-6,1L-8,GM-CSFはいずれもコントロールに比しII型上皮細胞の増殖を抑制したが、これらはHGFの増殖活性にはなんら影響を与えなかった。 | KAKENHI-PROJECT-07457151 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07457151 |
肺組織傷害に関わるサイトカインを介した肺胞II型上皮細胞の役割 | むしろ、1L-2,1L-6はHGF単独よりもその増殖活性を増強する傾向が示された。また、EGF,TNF-αは培養II型肺胞上皮の増殖活性になんら影響を与えなかった。3)肺組織障害モデルにおける活性酸素産生に関する検討:われわれが既に発表したビタミンE欠乏プレオマイシン投与肺気腫モデル(Lung. 166:161-176,1988)において肺組織障害の急性期では活性酸素産生能が約2.5倍に増大するが、SOD活性は1.3倍増加するに過ぎず、過剰産生された活性酸素が肺組織の脂質過酸化を増強することが知られた。【今後の方針】:肺組織障害発生初期の産生活性酸素種と産生するサイトカイン、II型肺胞上皮に発現するサイトカイン受容体の関係を明かにする。【目的】肺胞を発症の場とする肺気腫、肺線維症では、組織特異的な肺胞II型上皮細胞(II型細胞)が発症に深く関わると推察され、II型細胞と各種サイトカインの観点から検討した.【実験成績】1)II型細胞の増殖活性とサイトカイン;細胞増殖活性を3HThymidine(3HThd)の取り込みにより評価した.ラット肺から単離したII型細胞はHGF,KGF,II-1Bにより3HThdの取り込みを増強した.IL-1Bは20ng/mlになるまで3Hthdの取り込みを濃度依存性に増強した.一方IL-1a,IL-2,IL-6,IL-8,TNFaおよびGM-CSF単独では3HThdの取り込みを抑制し、IL-1Bの前処理はその取り込みを回復させた.IL-1Bによる取り込みは抗IL-1B抗体、IL-1受容体拮抗薬により抑制された.コントロールmediumで培養中のII型細胞は抗IL-1B抗体、IL-1受容体拮抗薬の添加により取り込みが抑制された.免疫組織染色によりII型細胞中にIL-1Bが証明され、II型細胞は自からIL-1Bを産生、分泌しautocrinc的に増殖を自己制御しうることが示された.肺胞II型上皮中にIL-1BのDNAが、またIL-1BのmRNAの発現も証明された.また線維化と関連するbFGF,vEGFのDNAもII型細胞で観察された.2)ビタミンE欠乏BLM投与による肺気腫実験モデルの肺組織ではBLM単独投与による肺線維症モデルに比し免疫組織染色によるbFGFの発現が少なく、気腫化が進行する処理後30日の肺組織のMMP-7(Matrix metallo protease7)が線維化モデルに比し明かに強く、MMP7はclastolytic activityが強い酵素であり、ビタミンE欠乏肺気腫モデルにおける気腫化の発症につよく関与すると考えられた.【今後の方針】喫煙とBLM投与による気腫化モデルの病態発現における各種サイトカインの関連を明かにする.[目的]肺胞を場とする肺組織傷害の終末像である肺気腫、肺線維症の発症に関わる肺胞II型上皮細胞(II型細胞)と各種サイトカインおよびメヂエーターとの関係を明らかにすることである。[研究結果]1)II型細胞の増殖活性に及ぼすサイトカインの役割:IL-1βは20ng/ | KAKENHI-PROJECT-07457151 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07457151 |
スラム地区住民の適応に関する比較研究 | 山本勇次は、平成10、11年度の89月に、ネパール王国ポカラ市で、ネパール人調査助手の助けを借りて、41カ所のスラム集落総計二千世帯余りの聞き取り調査を実施した。村瀬智は、平成10年89月、平成10年12月、平成11年89月の三度、インド西ベンガル州ボルプール市周辺のスラム地区においてフィールド調査を実施した。江口信清は、平成10年4月から6月と平成11年12月にカリブ海ドミニカ国のロゾー市周辺のスラム地区でフィールド調査をした。藤巻正己は、平成10年と翌年の8月にマレーシアの首都クアラルンプールのスラム地区で聞き取り調査を実施し、また長期間のスラム地区住民に関する新聞記事を収集した。北森絵里は、平成10年と翌年8月に、ブラジル、リオデジャネイロ市周辺のスラム地区においてフィールドワークを実施した。以上の調査から、いずれの調査者も、その担当する発展途上諸国のスラム地区住民の多様な生活実態を聞き取りおよび観察したが、その共通部分を略記すれば、以下のとおりとなる。第一に、スラム地区住民は周辺の中産・富裕階層の蔑視を受けながらも、健気に、ある種の明るさを保ちながら貧困な社会環境に適応して生活している。第二に、彼らの多くはトイレも満足にない劣悪な生活環境に暮らしてはいるが、「自主的リーダー」とも呼べる指導者を中心にある種の社会的統制を保っており、決して無秩序集団ではない。第三に、スラム集落は農村社会と都市社会との経済格差が続く限り永遠に発生し続けることが予想される。山本勇次は、平成10、11年度の89月に、ネパール王国ポカラ市で、ネパール人調査助手の助けを借りて、41カ所のスラム集落総計二千世帯余りの聞き取り調査を実施した。村瀬智は、平成10年89月、平成10年12月、平成11年89月の三度、インド西ベンガル州ボルプール市周辺のスラム地区においてフィールド調査を実施した。江口信清は、平成10年4月から6月と平成11年12月にカリブ海ドミニカ国のロゾー市周辺のスラム地区でフィールド調査をした。藤巻正己は、平成10年と翌年の8月にマレーシアの首都クアラルンプールのスラム地区で聞き取り調査を実施し、また長期間のスラム地区住民に関する新聞記事を収集した。北森絵里は、平成10年と翌年8月に、ブラジル、リオデジャネイロ市周辺のスラム地区においてフィールドワークを実施した。以上の調査から、いずれの調査者も、その担当する発展途上諸国のスラム地区住民の多様な生活実態を聞き取りおよび観察したが、その共通部分を略記すれば、以下のとおりとなる。第一に、スラム地区住民は周辺の中産・富裕階層の蔑視を受けながらも、健気に、ある種の明るさを保ちながら貧困な社会環境に適応して生活している。第二に、彼らの多くはトイレも満足にない劣悪な生活環境に暮らしてはいるが、「自主的リーダー」とも呼べる指導者を中心にある種の社会的統制を保っており、決して無秩序集団ではない。第三に、スラム集落は農村社会と都市社会との経済格差が続く限り永遠に発生し続けることが予想される。本研究の目的は、発展途上国の貧困層からなるスラム地区住民の貧困への適応の仕方、すなわち貧困に立ち向かうための文化的装置の存在を文化人類学的調査により明らかにし、それを通文化的に比較分析することである。今年度は、ネパール、インド、マレーシア、ドミニカ国およびブラジルの5カ国の貧困層が生活するスラム地区の実態調査を実施した。それにより、スラム地区の人々の社会・文化的な貧困への適応の仕方、貧困に対処する人々の人間関係、文化の様式および価値観などについて、貧困者自身の実際の「声」がインタビューにより多数得られた。これは、貧困現象を当事者である貧困者の視点から考察するためには重要なデータである。また同時に、各社会の非貧困層による貧困層の捉え方が反映されると考えられる、当該の国々の政府機関による貧困問題政策のあり方についても、それぞれ文献収集を行いデータが得られた。これらの現地で収集されたデータは、今年度に得られた新たな知見である。それに基づき、現在、各国の実態調査によって得られたデータを比較分析し、各社会における「貧困の文化」の特殊性とその全体像を通文化的に比較分析している。来年度は、日本民族学会全国大会の分科会において、本研究の中間発表を行いレビューを受ける予定である。さらに同5カ国のスラム地区における追加実態調査を実施し、「貧困の文化」概念の再検討に向けて本研究の総括を行い、最終的に「貧困の文化」の普遍的な特徴と各社会に固有の特殊な意味を解明し、成果とする。本研究の目的は、発展途上国の貧困層からなるスラム地区住民の貧困への適応の仕方、すなわち貧困を生き抜くための文化的装置の存在を文化人類学的調査により明らかにし、それを通文化的に比較分析することである。今年度は、まず、ネパール、インド、ドミニカ国、マレーシアおよびブラジルの5カ国の貧困層が生活するスラム地区において昨年度に実施した実態調査を通して得られた知見を中間報告的にまとめ、日本民族学会(平成11年5月)の分科会で中間発表を行いレビューを受けた。続く平成11年89月に実施した同5カ国のスラム地区における現地調査においては、それぞれの当該社会の「経済的社会的弱者」であるスラム地区住民がしたたかに現状を生き抜くやり方を、現場から得られる生(なま)の「声」から収集することに重点を置いた。 | KAKENHI-PROJECT-10041041 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10041041 |
スラム地区住民の適応に関する比較研究 | 調査地によって若干の差異はあるが、共通している「貧困への適応」の仕方として、スラム地区住民は、主要な中産階級層からスティグマを宣告されながらも、決してそれを甘受するだけではなく、特有のしたたかな戦略をもって対抗していることである。それは、スラム地区住民という集団のレベル、コミュニティのレベル、あるいは個人のレベルといった様々なレベルでの実践である。本研究では、このような貧困への適応の仕方を、机上の理論ではなく現地調査から得られるデータに基づいて比較・検討することを重視した。その成果は、本研究の研究成果報告書(冊子体)にまとめられている。本研究のようなスラム地区住民を対象とした研究には、数年間にわたる中長期的な現地調査が不可欠である。本共同研究のメンバーは今後もこの調査・研究を継続するつもりである。 | KAKENHI-PROJECT-10041041 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10041041 |
高齢者施設・地域施設における機能拡張性・機能代替可能性に関する研究 | 本研究では、自律した高齢者の暮らしを支えるために、地域施設の福祉的利用に向けた、日帰り温泉施設、図書館、公民館・コミュニティ施設の3地域施設の機能の検証を行った。日帰り温泉施設では、日常的に利用できる場として、地域住民との繋がりを保つ拠点的機能を有し、図書館では、生涯学習を深める場として、また生活リズムを保つ場として機能し、公民館・コミュニティセンターでは、高齢者が社会的集団に加わり、他者と強い繋がりを保ちながら暮らせる機能を有していることが明らかとなった。H26年度においては、新潟県内、及び熊本県内における「日帰り温泉施設」・「図書館」・「公民館・コミュニティセンター」の地域施設、「小規模多機能施設」・「認知症高齢者向けグループホーム」・「地域密着型特別養護老人ホーム」の高齢者福祉施設の確認調査を実施した。結果は、日帰り温泉施設260件(新潟県132件・熊本県128件)、図書館(新潟県89件・熊本県48件)、公民館・コミュニティーセンター(新潟県154件・熊本県64件)、小規模多機能施設(新潟県142件、熊本県132件)、認知症高齢者向けグループホーム(新潟県205件、熊本県221件)、地域密着型特別養護老人ホーム(新潟県60件、熊本県37件)の通りである。これらの施設に対して、地域施設に関しては、施設規模や利用者数などの施設概要、及び年齢別の利用の実態に関するアンケート項目、高齢者施設に関しては、施設規模・スタッフ体制・入居者数などの施設概要、および地域に開かれた諸空間の存在の有無、および地域利用の実態に関するアンケート内容の設計(6タイプ)を行い、合計1412施設に対するアンケートを作成した。なお、このアンケートに関しては、H27年5月に全ての施設に対して郵送を終えており、アンケートとともに平面図の回収依頼も同時に行っている。回収はH27年度5月末日までとしており、回収結果から多機能性・機能拡張性を潜在的・顕在的に有している施設の抽出、及び各施設別に、多機能性・機能拡張性の傾向と特性に関する分析を6月中に終了し、抽出した施設に対するヒアリング調査、及び観察調査を実施予定である。H27年度では、熊本県内、新潟県内における地域施設、高齢者施設を対象としたアンケート調査を実施した。実施内容は、地域施設では、「日帰り温泉施設」(熊本県:128施設、新潟県:132施設、合計260施設、回収数:97、回収率37%)、「図書館施設」(熊本県:48施設、新潟県:89施設、合計137施設、回収数:86、回収率63%)、「公民館・コミュニティセンター」(熊本県:64施設、新潟県:155施設、合計219施設、回収数:120、回収率55%)、高齢者施設では、「小規模多機能施設」(熊本県132施設、新潟県:142施設、合計274施設、回収数:82、回収率30%)、「認知症高齢者向けGH」(熊本県:221施設、新潟県205施設、合計426施設、回収数:120、回収率28%)、「地域密着型特養」(熊本県37施設、新潟県60施設、合計97施設、回収数:97、回収率38%)であった。このアンケート調査を元に、機能拡張、代替可能性に繋がる利用内容、サービス等を実施している事例に対して、H27年度は特に熊本県の事例を中心にヒアリング調査を実施した。対象施設は、各施設タイプにつき2事例程度、15事例に対して実施した。また、新潟県については、機能拡張、代替可能性に関連した調査として、「市立体育館」を中心とした高齢者の利用実態の調査も同時に実施を行った。対象施設としては、高齢者個人の日常的な利用が期待できる「トレーニング室」を有した市立体育館、合計9施設に対しての調査を実施した。熊本県、新潟県における地域施設、高齢者施設のアンケート調査が完了し、アンケート調査の分析は、地域施設に関して完了している。この調査結果は、H28年度の日本建築学会大会にて報告を予定している。また、熊本県内における対象施設のヒアリング調査も完了しているが、予定としてはH27年度中に新潟県内の事例へのヒアリング調査が完了する予定であった。進捗の遅れとしては、研究内容に関連した対象施設として「市立体育館」に関する調査を追加で実施したことが挙げられるが、本研究の成果を発展させる上で、非常に有意義な成果が期待できたため、また、施設利用者に対するアンケート調査のフレーム・内容を検討する上でも、検証する意義が高かっため、調査研究の実施に至った。H28年度の研究調査計画として、H27年度実施した熊本県内・新潟県内における地域施設・高齢者施設に関するアンケート調査から、多機能性を有する事例、及び機能拡張性・機能代替可能性の検証可能な事例を抽出し、利用者に対する利用実態や利用による暮らしへの影響、具体的には高齢者福祉サービスに依存せずに自立した暮らしを組み立てられる構造の解明を行うためのアンケート調査実施予定であった。2016年4月14日に発生した熊本地震により、調査を検討していた事例の所在地も大きな被災を受けたため、H28年度の調査計画について、次年度(H29年度)に延期することが余儀なくされ、H28年度は、アンケート調査で得られたデータの分析・研究成果の公表に専念することとした。分析の中心として、多機能性・機能拡張性・機能代替可能性が高い「地域施設」に絞り、2016年度日本建築学会大会にて3題の発表、及び、ニューサイエンス社・地域ケアリングへの論文投稿を行った。 | KAKENHI-PROJECT-26820266 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26820266 |
高齢者施設・地域施設における機能拡張性・機能代替可能性に関する研究 | 分析結果として、「日帰り温泉施設」では、日常的な通い・サロンの機能、多世代との関わりの機能、「図書館」では、日常の暮らしの日課の場・高齢期を豊かにする生涯学習の機能、「公民館・コミセン」では、高齢者同士のサークル活動の場・互いに学び合う場としての機能といった、高齢者福祉サービスを代替・補完できる有意義な機能が確認された。また、追加の対象施設としての「体育館」の施設に関しては、利用高齢者の暮らしの「充実」をもたらす諸要素・構造が明らかとなり、体育館のトレーニング室を利用することによる身体機能・健康状態の向上や、さらなるやる気の高まりなど、暮らしの積極性を高める優位なプラスのサイクルの構造を有することが解明された。2016年4月14日に発生した熊本地震により、調査予定であった施設の地域も被災を受け、施設利用者へのアンケート調査の実施が困難となり、H28年度に計画していた調査計画を大きく変更(延期)せざるを得なかったため。H28年度までに実施した、熊本県内・新潟県内における地域施設・高齢者施設に関するアンケート調査から、多機能性、機能拡張性、機能代替可能性の有する施設が、高齢者施設における現状では、その可能性が低く、地域施設(日帰り温泉、図書館、公民館・コミセン)が優位であることが明らかとなった。H29年度では、H28年度、熊本地震により実施を断念していた地域施設の利用者アンケートを実施し、施設利用者の属性や、利用状況、多機能性を把握するための利用目的、利用者にとっての多義的な場所性を把握するための質問項目を用意した。アンケートの実施状況は、熊本県内の日帰り温泉施設3事例、図書館施設3事例、公民館・コミセン3事例、新潟県内の日帰り温泉施設3事例、図書館施設3事例、公民館・コミセン施設4事例について配布を行った。配布数は熊本県・新潟県を合わせ、日帰り温泉施設240件、図書館265件、公民館・コミセン230件、回収数は日帰り温泉施設83件(回収率35%)、図書館151件(回収率56%)、公民館・コミセン133件(回収率58%)であった。この調査によって、施設運営側のアンケートで明らかになった多機能性、機能拡張性、機能代替可能性に関する、利用者アンケートによる具体的な利用実態からみる検証を行い、タイプ毎での多機能性や機能代替可能性を有しやすいか否かの特性の違いや、暮らしの自立度や多様性といった観点からの、高齢者の暮らしへの影響を明らかにし、今後の地域施設の計画に生かすべき諸要素を分析・整理している。これまでの分析結果としては、日帰り温泉施設や公民館・コミセンの地域施設の特性として、利用者の属性や趣向を問わず、日常的利用や長時間滞在、他者との関わりの拠点となり得ているのに対し、図書館施設では、図書に興味をもつ利用者に限定され、日常的な利用や地域の拠点性を有しにくく、関わる他者も広がりを持ちにくいといった傾向が見て取れる。本研究では、自律した高齢者の暮らしを支えるために、地域施設の福祉的利用に向けた、日帰り温泉施設、図書館、公民館・コミュニティ施設の3地域施設の機能の検証を行った。日帰り温泉施設では、日常的に利用できる場として、地域住民との繋がりを保つ拠点的機能を有し、図書館では、生涯学習を深める場として、また生活リズムを保つ場として機能し、公民館・コミュニティセンターでは、高齢者が社会的集団に加わり、他者と強い繋がりを保ちながら暮らせる機能を有していることが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-26820266 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26820266 |
大脳皮質構築過程における神経幹細胞特異的なRNA輸送・局在化機構の解明 | 哺乳類の放射状グリア(radial glia; RG)細胞と呼ばれる神経幹細胞は、脳表面まで非常に長い放射状の突起を伸ばしており、基底膜側突起を受け継いだ娘細胞は、未分化を維持した神経幹細胞となる。当研究室より、このRG細胞では細胞周期因子Cyclin D2のmRNAおよびタンパク質が、基底膜側突起の先端部に集積することを報告し、輸送に必要な3 ́UTR領域に存在する約50 bpの認識配列を同定した(Tusnekawa et al., 2012)。さらに予備的知見から、ゲノム編集技術CRISPR/Cas9法によりCyclin D2 mRNA輸送配列を欠失させたマウスのRG細胞では、Cyclin D2 mRNA輸送が阻害されることを見出していた。本研究では、Cyclin D2 mRNA輸送阻害による大脳皮質構築へ与える影響を検討するために、Cyclin D2 mRNA輸送配列欠失マウスを解析したところ、本マウスの大脳皮質の厚さが減少していることを見出した。したがって、胎生期大脳皮質のRG細胞の基底膜突起内におけるCyclin D2 mRNA輸送が細胞分化の運命決定を行い、大脳皮質構築に影響を与えた可能性が考えられる。さらに、Cyclin D2 mRNAに結合する候補RNA結合タンパク質(RBP)をRBPデータベースで探索したところ、Cyclin D2 mRNA輸送配列に結合し得る数個の候補RBPを同定できた。Cyclin D2 mRNA輸送がRG細胞の細胞周期、未分化性の維持およびニューロンへの分化のどのステップに必要かについて、実験発生学的手法によって調べる予定である。また、RBPが標的mRNAを特定の場所まで運搬する際に重要なモータータンパク質のノックダウン実験を行い、これらがCyclin D2 mRNAの細胞内局在を担うかどうかを検討する。哺乳類の放射状グリア(radial glia; RG)細胞と呼ばれる神経幹細胞は、脳表面まで非常に長い放射状の突起を伸ばしており、基底膜側突起を受け継いだ娘細胞は、未分化を維持した神経幹細胞となる。当研究室より、このRG細胞では細胞周期因子Cyclin D2のmRNAおよびタンパク質が、基底膜側突起の先端部に集積することを報告し、輸送に必要な3 ́UTR領域に存在する約50 bpの認識配列を同定した(Tusnekawa et al., 2012)。さらに予備的知見から、ゲノム編集技術CRISPR/Cas9法によりCyclin D2 mRNA輸送配列を欠失させたマウスのRG細胞では、Cyclin D2 mRNA輸送が阻害されることを見出していた。本研究では、Cyclin D2 mRNA輸送阻害による大脳皮質構築へ与える影響を検討するために、Cyclin D2 mRNA輸送配列欠失マウスを解析したところ、本マウスの大脳皮質の厚さが減少していることを見出した。したがって、胎生期大脳皮質のRG細胞の基底膜突起内におけるCyclin D2 mRNA輸送が細胞分化の運命決定を行い、大脳皮質構築に影響を与えた可能性が考えられる。さらに、Cyclin D2 mRNAに結合する候補RNA結合タンパク質(RBP)をRBPデータベースで探索したところ、Cyclin D2 mRNA輸送配列に結合し得る数個の候補RBPを同定できた。Cyclin D2 mRNA輸送がRG細胞の細胞周期、未分化性の維持およびニューロンへの分化のどのステップに必要かについて、実験発生学的手法によって調べる予定である。また、RBPが標的mRNAを特定の場所まで運搬する際に重要なモータータンパク質のノックダウン実験を行い、これらがCyclin D2 mRNAの細胞内局在を担うかどうかを検討する。 | KAKENHI-PROJECT-18K14999 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K14999 |
プロテアゾーム阻害下におけるユビキチン化蛋白質の除去機構の解明 | 我々は、新規神経細胞保護剤として、VCPと言う細胞内の主要なATPaseを標的とした薬剤KUS(Kyoto University Substance)を開発してきた。その中の1つ、KUS-Xをプロテアゾーム阻害剤と同時に処理した細胞では、ユビキチン化蛋白質の蓄積がほとんど観察されないことを見いだした。多くの神経変性疾患では、ユビキチン陽性の異常蛋白質の蓄積(凝集)が主要な原因であり、これらの異常蛋白質の抑制する薬剤を開発すれば、多くの神経変性疾患の発症・進行を遅延させることができると考えられる。以上のような背景から、本研究では、KUS-Xが示したユビキチン化蛋白質の蓄積を抑制する分子メカニズムの解析と同様な活性を持つ新規化合物の同定を目的として実験を行い、以下の結果を得た。1)我々が持つ化合物ライブラリーをスクリーニングし、KUS-Xと同等かそれ以上にユビキチン化蛋白質の蓄積を抑制する化合物を7種同定した。2)細胞内のATPを減少させることで、ユビキチン化蛋白質の蓄積が阻害されることが判明した。しかしながら、同定した化合物の処理とATPの減少度に相関は認められなかった。3)ユビキチン化蛋白質の蓄積の抑制が、リソソーム機能阻害剤であるクロロキン処理で解除されるかを健闘した結果、オートファジー・リソソーム系を抑制してもユビキチン化蛋白質の蓄積抑制が解消することは無かった。4)ユビキチン化蛋白質の蓄積の抑制が、蛋白質の合成阻害による可能性を検討したが、同定した化合物の処理と蛋白質の合成阻害に相関は認められなかった。5)上記のメカニズム解析とは別に、本現象における標的蛋白質を同定することを目的として、化合物を結合させた磁性ナノビーズに特異的に結合す蛋白質の検索を行ったが、特異的に結合するタンパクを見つけることは出来なかった。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。細胞内で不必要もしくは異常になった蛋白質を除去するシステムとしてプロテアゾーム-ユビキチンシステムとオートファジーがある。当初、独立していると考えられた両システムであるが、現在では、両者ともユビキチン化蛋白質を選択的に除去することに貢献していることが判明してきた。一方、多くの神経変性疾患では、ユビキチン陽性の異常蛋白質の蓄積(凝集)が観察され、これらの異常蛋白質の蓄積は、両システムを「くぐり抜けた」結果であると推測される。即ち、この「くぐり抜け」を抑制する薬剤を開発できれば、多くの神経変性疾患の発症・進行を予防・遅延させることができると考えられる。本研究では、まず、プロテアゾーム阻害剤と同時に処理した時に、ユビキチン化蛋白質の蓄積を消失させる活性を持つ低分子化合物の検索を行う。次に、同定した化合物の標的蛋白質の検索を行い、ユビキチン化蛋白質がプロテアゾーム阻害下に於いて選択的に除去される分子機構の解明を目指す。即ち、本研究は、ユビキチン化された蛋白質のプロテアゾームに依存しない選択除去というこれまでにあまり解明が進んでいない不要蛋白質の除去システムの分子メカニズムの実態に迫ることを目的とする。本研究では、まず、プロテアゾーム阻害剤と同時に処理した時に、ユビキチン化蛋白質の蓄積を消失させる活性を持つ低分子化合物のスクリーニングを行った。結果、目的とする活性を持つ数種類の新規化合物を見いだした。この時、オートファジーの活性化を示すLC3IIのバンドの増強が認められたことより、これらの薬剤処理により、ユビキチン化を受けた蛋白質がオートファジーで消去されたことが示唆された。次に、野生型ユビキチン(Ub)、K29-Ub、K48-Ub、K63-Ub等を強制発現させた時のユビキチン化蛋白質の消失を検討した。結果、これらの化合物によるユビキチン化蛋白質の消失には、ユビキチン鎖による違いは観察されなかった。続いて、これらの化合物の標的蛋白質を同定するために、化合物と磁気ビーズを融合させ、化合物を結合させた磁気ビーズと共沈する蛋白質の同定を試みた。しかしながら、現在までに特異的に共沈してくる蛋白質の同定には成功していない。我々は、新規神経細胞保護剤として、VCPと言う細胞内の主要なATPaseを標的とした薬剤KUS(Kyoto University Substance)を開発してきた。その中の1つ、KUS-Xをプロテアゾーム阻害剤と同時に処理した細胞では、ユビキチン化蛋白質の蓄積がほとんど観察されないことを見いだした。多くの神経変性疾患では、ユビキチン陽性の異常蛋白質の蓄積(凝集)が主要な原因であり、これらの異常蛋白質の抑制する薬剤を開発すれば、多くの神経変性疾患の発症・進行を遅延させることができると考えられる。以上のような背景から、本研究では、KUS-Xが示したユビキチン化蛋白質の蓄積を抑制する分子メカニズムの解析と同様な活性を持つ新規化合物の同定を目的として実験を行い、以下の結果を得た。1)我々が持つ化合物ライブラリーをスクリーニングし、KUS-Xと同等かそれ以上にユビキチン化蛋白質の蓄積を抑制する化合物を7種同定した。2)細胞内のATPを減少させることで、ユビキチン化蛋白質の蓄積が阻害されることが判明した。しかしながら、同定した化合物の処理とATPの減少度に相関は認められなかった。 | KAKENHI-PUBLICLY-15H01181 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-15H01181 |
プロテアゾーム阻害下におけるユビキチン化蛋白質の除去機構の解明 | 3)ユビキチン化蛋白質の蓄積の抑制が、リソソーム機能阻害剤であるクロロキン処理で解除されるかを健闘した結果、オートファジー・リソソーム系を抑制してもユビキチン化蛋白質の蓄積抑制が解消することは無かった。4)ユビキチン化蛋白質の蓄積の抑制が、蛋白質の合成阻害による可能性を検討したが、同定した化合物の処理と蛋白質の合成阻害に相関は認められなかった。5)上記のメカニズム解析とは別に、本現象における標的蛋白質を同定することを目的として、化合物を結合させた磁性ナノビーズに特異的に結合す蛋白質の検索を行ったが、特異的に結合するタンパクを見つけることは出来なかった。プロテアゾーム阻害剤との併用によってユビキチン化蛋白質の除去作用を示した化合物を幾つかの種類の磁気ビーズに化学結合させ、プロテアゾーム阻害剤で処理した細胞(もしくは非処理の細胞)の抽出液と混合し、この化合物を結合した磁気ビーズに特異的に共沈してくる蛋白質をLC/MS/MSで分子同定する。続いて、同定した蛋白質に対する抗体、GFP融合蛋白質、siRNAを作製する。次に、細胞をプロテアゾーム阻害剤とこの化合物で処理した時の同定蛋白質の細胞内局在・動きを、アグレゾームとオートファゴゾームとの関係から抗体染色およびGFP蛋白質の動きから解析する。さらに、この蛋白質をノックダウンした時のアグレゾームの形成、オートファゴゾームの形成がどのように変化するのかを解析することで、同定蛋白質がユビキチン化蛋白質の消去にどのように関与するのかを明らかにする。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PUBLICLY-15H01181 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-15H01181 |
エネルギー資源利用を前提とした低炭素で持続可能な都市緑地管理のシナリオ評価 | 持続可能な都市緑地管理の実現には、人口減少・高齢化の進展、行政投資能力の減退、市街地の空洞化と緑地の減少、多様な主体の参画などの検討課題がある。解決の一手法として委託管理や機械化が考えられるが、費用負担増や環境負荷増大が懸念される。管理に伴う伐採枝は貴重なエネルギー資源として利用が期待されるが、その利用方法を作業量やCO2排出量の観点で評価した例は見られない。本研究は、名古屋大都市圏を対象とし、都市緑地管理に際する作業量、CO2排出量、エネルギー資源量を推計し、将来管理人口を考慮した伐採枝のエネルギー利用シナリオを評価することを目的とする。持続可能な都市緑地管理の実現には、人口減少・高齢化の進展、行政投資能力の減退、市街地の空洞化と緑地の減少、多様な主体の参画などの検討課題がある。解決の一手法として委託管理や機械化が考えられるが、費用負担増や環境負荷増大が懸念される。管理に伴う伐採枝は貴重なエネルギー資源として利用が期待されるが、その利用方法を作業量やCO2排出量の観点で評価した例は見られない。本研究は、名古屋大都市圏を対象とし、都市緑地管理に際する作業量、CO2排出量、エネルギー資源量を推計し、将来管理人口を考慮した伐採枝のエネルギー利用シナリオを評価することを目的とする。 | KAKENHI-PROJECT-19K15864 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K15864 |
概均質ベクトル空間のゼータ関数と多重ゼータ値の研究 | 主に多重ゼータ値と等号付き多重ゼータ値、多重ベルヌーイ数と多重オイラー数、2元3次形式の類数についての研究を行った。特に、超幾何関数を用いてある種の多重ゼータ値の列の母関数を書く公式を得た。多重ベルヌーイ数のp進的性質の解明のため多重ベルヌーイ数の満たす合同関係式の系列を構成し2重ベルヌーイ数の場合には2進的なクンマー型の合同式も得た。多重オイラー数については明示公式や合同関係式、逐次的アルゴリズム、および多重ベルヌーイ数との混合関係式などの多数の結果を得た。2元3次形式については合同部分群作用下での類数について算出を行い新たな類数表と付随する概均質ゼータ関数に関するある予測も得た。多重ゼータ値の和を正整数点での値にもつ1変数ゼータ関数として、Arakawa-Kanekoのゼータ関数が知られているが、このゼータ関数はリーマンゼータ関数のポリログよる一般化と見做すことができ、負整数点での値は、多重ベルヌーイ数を用いて記述される。多重ベルヌーイ数は負インデックスの場合にはロンサム行列の個数やある種の置換の数え上げと完全に一致するなど、物理的数値や組合せ論的数量と深く関係している。正インデックスの場合にもクラウゼン・フォンシュタウト型の定理がKanekoによって導かれ、より具体的なp進的解釈が待望されている対象である。今回の研究では、Kanekoによるクラウゼン・フォンシュタウト型定理の2重ベルヌーイ数に関する精密な分母評価を踏まえ、2重ベルヌーイ数そのものの2-orderと3-orderの評価の精密化を行った。とりわけ2-orderについては、簡素な明示公式の証明に成功した。3-orderについては今後解決すべき一般的予想式も特定できており今後の発展が期待できる状況にある。これらは、待望されるp進的解釈の解明に向け極めて前向きな情報となっている。この成果は、日本数学会年会代数学分科会および早稲田大学整数論研究集会において口頭発表した。このほか、多重ゼータ値のある種の和を係数とする母関数は、ガウスの超幾何関数と非常に深く関係しており、これに関する斬新な研究手法と今後解明されるべき課題について、東北大学代数セミナーおよびNCTS台湾国家理論科学センターにおける日台数論研究集会において講演を行った。また、双対関係にある空間の類数の対応を解明する上で有効となる可能性のある簡約2元3次形式の取る内積の値の範囲について、判別式を規準として考察を行い、対応する2元2次形式の型による類別について研究を行った。類対応の具体的記述に向け理論と数値双方の情報を多数入手できた。多重ゼータ値(MZV)の和の満たす線形関係式の族について、系統的に把握されるいくつかのケースは、ガウス超幾何関数や楕円種数に現れる母関数と関係するほか、結び目の母関数型不変量の係数がMZVであるなど、幾何学的な対象との詳しい関係解明が待ち望まれている。この中で4月にはニュートン研究所にて、MZVの関係式族と、基底に関するBrown-Zagierの研究成果との兼ね合いから垣間見える、等号付きMZVに関する展望と予想について招待講演を行った。また、Zagier, Broadhurst, Hoffman, Brown, Furusho, Gangl各氏と有限MZVとMotivicMZVについて議論を行い、問題意識の共有と理解を深めた。その中で、有限MZVの等号付き版についての組合せ論的性質とそれらから把握されるOhno-Zudilinによる2-1公式の構造的解釈について研究進展が得られたほか、Yamamoto氏によって定式化された補完関数についても研究を行い一定の新事実が把握できた。この間、2元3次形式の間の類対応の研究では、類の間を系統的に繋ぐ螺旋構造をモデル化することによって詳細に理解できるようになった。9月にはマックスプランク研究所にて、Zagier氏, Gangl氏らとMZVの環構造や2元3次形式の類対応について議論を行い、指標付きMZVに関するBroadhurst氏らの研究成果について研究を行った。愛媛大学代数セミナーや大阪大学整数論保型形式セミナーで、MZV和の母関数の満たす微分方程式とガウスの超幾何関数に関するZagier氏との共同の結果や、多重ベルヌーイ数の満たすKummer型合同式の部分的解明について講演した。また、主催する関西多重ゼータ研究会は本年度内に第15回第20回を開催し、特に若手研究者の育成、研究発表と勉強の場の提供を継続的に行っている。主に多重ゼータ値と等号付き多重ゼータ値、多重ベルヌーイ数と多重オイラー数、2元3次形式の類数についての研究を行った。特に、超幾何関数を用いてある種の多重ゼータ値の列の母関数を書く公式を得た。多重ベルヌーイ数のp進的性質の解明のため多重ベルヌーイ数の満たす合同関係式の系列を構成し2重ベルヌーイ数の場合には2進的なクンマー型の合同式も得た。多重オイラー数については明示公式や合同関係式、逐次的アルゴリズム、および多重ベルヌーイ数との混合関係式などの多数の結果を得た。2元3次形式については合同部分群作用下での類数について算出を行い新たな類数表と付随する概均質ゼータ関数に関するある予測も得た。2元3次形式の空間については、作用する群を合同部分群にする場合などいくつかの条件下での類数の計算や類対応の推察を行い、数値データを多数蓄えた。 | KAKENHI-PROJECT-23540036 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23540036 |
概均質ベクトル空間のゼータ関数と多重ゼータ値の研究 | また秋の日本数学会や北陸数論研究集会において、2元3次形式の代数的関数等式の理論や簡約理論との関わりについて講演を行った。一方、多重ゼータ値の生成するベクトル空間の構造解明に向けて、ZagierとBrownの成果によりHoffman予想基底の十分性が判明している。また、Ihara-Kajikawa-Ohno-Okudaにより提案された、Hoffman基底のzeta-star版と言える{2,3}予想基底と従来のHoffman基底との関係についてのZagierによる著しい結果により、{2,3}予想基底についても同様のことが期待されている。この状況下で具体的に複数の多重ゼータ値およびそれらの和の族に対して、{2,3}予想基底による記述が可能であることを新たに示した。また等号付き多重ゼータ値のある種の和に対して,Ohno-Zudilinの証明した2-1公式を援用することで、リーマンゼータ値の多項式として記述することが可能であることを導いた。このほか、多重ゼータ値を正整数点での特殊値にもつArakawa-Kanekoのゼータ関数の、負整数点での特殊値は多重ベルヌーイ数で記述されるが、ロンサム行列の個数に関する母関数と多重ベルヌーイ数の母関数は一致する。この母関数のより精密な性質を解明するために、ロンサム行列を重さインデックスにより細分化した場合の母関数の記述を、鎌野健氏・山本修司氏とともに研究し、非可換変数を導入することにより十分満足できる形で新たな母関数の表記を得ることに成功した。また、多重L関数に付随する多重オイラー数の数論的また組合せ論的性質を佐々木義卓氏と究明し多数の公式を得た。これらの成果を秋の学会と解析数論シンポジウムで講演した。多重ゼータ値の和の母関数と超幾何関数の関係の更なる究明に力点を置いて研究を進めた。そもそも重さと深さと高さを固定した多重ゼータ値の自然な和の母関数がガウスの超幾何関数であることをOhno-Zagierの研究の中で導いたが、その後その細分化として、ある種の収束インデックスを持つ多重ゼータ値の和の系列について、その母関数は一般超幾何関数で書けることが知られるようになった。また、Eulerに起源をもつ等号付き多重ゼータ値についても類似の和の母関数が一般超幾何関数で記述できることも解明できた。この流れの中で今回は、多重ゼータ値のうちで特殊な対称性を持つ単独インデックスの多重ゼータ値の系列について、古典的超幾何関数で母関数が書けることを導出した。これは、今回焦点を当てた多重ゼータ値の系列がリーマンゼータ関数の特殊値とある意味において近しい関係にあることを示しており、副産物として一般超幾何関数や古典的超幾何関数の特殊値の間の離散的な関係式の系列が得られた。この関係が関数関係式として補間されうるか、あるいはより広い離散的関係式として系統的に把握されうるかが今後の課題のひとつである。このほか、2元3次形式の類数およびこれに付随するゼータ関数に関する研究では類対応の螺旋構造としての解明のための数値実験を多数行った。このほか、多重ベルヌーイ数の$p$進的性質の研究、およびグラフの自己同型群とゼータ関数に関する組合せ論的研究も継続した。また、4年前から継続的に主催している関西多重ゼータ研究会を年度内に4回開催したほか、第二回日台整数論研究集会をRIMS合宿セミナーとして共同主催し、最先端の研究交流を図るとともに若手研究者の育成、研究発表と勉強の場の提供を行った。口頭発表は年度内に10講演を行った。 | KAKENHI-PROJECT-23540036 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23540036 |
都市大衆社会形成期初期における文化政治と複合的アイデンティティ | 西欧各地からの移民を大規模に受け入れて都市大衆社会が形成されつつあったアルゼンチンの大都市では,1880年代以降,初期グローバル化状況の衝撃にともなう重大なパラダイムシフトが生じた。当該研究が着目したのは,従来の人種主義的なイデオロギーの代替として,<文化>を問題化しかつ<文化>をツールとするといった,それ以前とはまったく異なる文化政治の領域が出現した点である。この文化主義的イデオロギーが最も顕著なかたちで現れたのが,国民言語と国民史の正統性をめぐる領野においてである。従来の研究では,カリブ地域を除くラテンアメリカ地域における国民言語の正統性に関する諸議論は,独立期の一時期を除けばあまり注目されてこなかった。だが19世紀初頭において植民地的言語状況との言語的連続性を切断するという意味で言語体系内部の論争であったものは,20世紀初頭においては,真正なる文化という文化主義的イデオロギーへと完全にシフトしている点で注目されねばならぬ。この時期,移民言語による出版物の流通や,小規模の移民出版社による海賊版の流布等の物理的流通,都市を舞台とする演劇・文学作品等における移民言語とアルゼンチン方言のクレオール言語化現象が,以前とは比較にならないほどのポピュラリティを獲得するに至った。そのなかであらたな複合的な言語行為主体が登場してきた。しかしそういった都市言語流通空間の出現は,文化的エリート層からは国民的文化の解体現象として問題化され,土着的な形象のうちに国民的なるものの再構築をめざす文化の制度化へと展開していく。国家的プロジェクトとして進行した国民史編纂の過程での<移民問題>の排除や,民俗学研究における言語至上主義はそのひとつである。それらの制度化の動きのなかで文献学的に正統とみなされた<土着的なもの>の記号のみが,後の諸々の文化生産活動への引用可能性を有しはじめるのである。本研究の目的は,初期グローバル化状況の衝撃を受けて激変したラテンアメリカ社会のうち,とりわけアルゼンチンを中心に,グローバル化状況のもとでの文化政治の出現ならびに変容と,都市空間での文化運動における複合的アイデンティティ形成の諸相を明らかにすることにある。本年は主に以下の2点を中心に行った。(1)人種主義的イデオロギーと結びついていた『精神医学・犯罪学・関係諸学紀要』を,当該研究者が従来行ってきた社会管理の側面からではなく,文化主義的イデオロギーの側面から再分析すること。(2)文化主義的イデオロギーの受容形態を把握するにあたって,「国民文学」の制度化とその普及の範囲を明らかにすること。(1)について:日本では残念ながら当該雑誌のコピーを新たに入手しえず,収集済みのものを手がかりに分析。限られた資料の読解ではあったが,20世紀初頭以降の文化主義的イデオロギーが,当時の社会管理システムのなかで〈規範外的存在〉と定義されたセクシュアリティのありかたと,極めて密接な関連性があることがわかってきた。おそらくそれは20世紀のポピュリズム政治の言説と深くかかわっていると思われる。(2)について:当初は「国民文学」の出版部数や叢書プロジェクトの統計的データの量的分析からアプローチを目指したが,それ以前にまず出版活動を推進し支えた文化主義的イデオロギーの分析が必要と判明。そこでアルゼンチン民俗学の出現に深くかかわった「国民文学論争」を検討し,論争のなかで何が「正統性」として位置づけられ何が排除されてきたかを分析。正統と非正統の弁別は,都市空間における日常言語の急激な変容と関係していることが明らかになってきた。今後は「国民文学」の制度化と都市日常言語の関係性を明らかにしていく。西欧各地からの移民を大規模に受け入れて都市大衆社会が形成されつつあったアルゼンチンの大都市では,1880年代以降,初期グローバル化状況の衝撃にともなう重大なパラダイムシフトが生じた。当該研究が着目したのは,従来の人種主義的なイデオロギーの代替として,<文化>を問題化しかつ<文化>をツールとするといった,それ以前とはまったく異なる文化政治の領域が出現した点である。この文化主義的イデオロギーが最も顕著なかたちで現れたのが,国民言語と国民史の正統性をめぐる領野においてである。従来の研究では,カリブ地域を除くラテンアメリカ地域における国民言語の正統性に関する諸議論は,独立期の一時期を除けばあまり注目されてこなかった。だが19世紀初頭において植民地的言語状況との言語的連続性を切断するという意味で言語体系内部の論争であったものは,20世紀初頭においては,真正なる文化という文化主義的イデオロギーへと完全にシフトしている点で注目されねばならぬ。この時期,移民言語による出版物の流通や,小規模の移民出版社による海賊版の流布等の物理的流通,都市を舞台とする演劇・文学作品等における移民言語とアルゼンチン方言のクレオール言語化現象が,以前とは比較にならないほどのポピュラリティを獲得するに至った。そのなかであらたな複合的な言語行為主体が登場してきた。しかしそういった都市言語流通空間の出現は,文化的エリート層からは国民的文化の解体現象として問題化され,土着的な形象のうちに国民的なるものの再構築をめざす文化の制度化へと展開していく。国家的プロジェクトとして進行した国民史編纂の過程での<移民問題>の排除や,民俗学研究における言語至上主義はそのひとつである。それらの制度化の動きのなかで文献学的に正統とみなされた<土着的なもの>の記号のみが,後の諸々の文化生産活動への引用可能性を有しはじめるのである。 | KAKENHI-PROJECT-12710018 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12710018 |
放射性物質の回収とリン酸塩ガラス異常現象を利用した長期安定的固定化 | ヨウ素、セシウム、ストロンチウムのマグネシウム化合物による効率的な回収について検討し、安定な固化ガラスとして最終処理を行う一連のプロセスの開発を目的とした。ヨウ素については、酸化マグネシウムの小粒径試料で最大2.23 g/gのヨウ素吸着性能を示すことがわかった。セシウム、ストロンチウムに関しては、酸化マグネシウムを用い、リン酸によりpH調整を行うことで、十分な回収性能を示した。P-O-Pよりも水に強いP-O-M結合を生成するカチオン種を添加することで、固化ガラスの耐水性の向上が見込まれると考えられ、Al2O3、B2O3、Nb2O5のような3成分目の酸化物の添加によってこれを確かめた。本研究では、ヨウ素、セシウム、ストロンチウムのマグネシウム化合物による効率的な回収について安定同位体を用い検討し、その後安定な固化ガラスとして最終処理を行う一連のプロセスの開発を目的とした。ヨウ素の回収及びガラス固化処理に関し、JIS活性炭試験法(JIS K 1474)の吸着性能評価法(液相)を用いて、マグネシウム化合物のヨウ素吸着性能評価を行った。その結果、酸化マグネシウムの小粒径試料で最大2.23 g/gのヨウ素吸着性能を示すことがわかった。また、水酸化マグネシウム試料については、吸着量が少ない為、JIS規格に準ずる範囲の吸着等温線を得ることが出来なかった。これは、吸着性能が表面積に依存することや、酸化マグネシウムが水に対して溶解度が高いのに対し、水酸化マグネシウムは難溶性なため、化学吸着と物理吸着の割合が異なるためと考えられる。セシウム、ストロンチウムの回収及び最終処理として、酸化マグネシウムを用いた液相におけるセシウム、ストロンチウムの回収実験、ガラス固化処理を行った。リン酸によりpH調整を行った酸化マグネシウムを用いた吸着実験において、振とう開始後20分程度で、セシウム、ストロンチウムイオンの残留濃度は共に大幅に減少した。さらに、セシウム、ストロンチウムのガラス固化範囲及び耐水性を確認するため、MgO-Cs2O-P2O5系及びMgO-SrO-P2O5系ガラスをMgO+Cs2O or SrO:P2O5の組成比40:6060:40の間で作製した。回収後の固化ガラスに関し、セシウム、ストロンチウム固化ガラスでは、仕込み量に応じた割合でガラス中に保持されていることから長期安定的に効率良く、最終処理が行えることが示唆された。本研究では、ヨウ素、セシウム、ストロンチウムのマグネシウム化合物による効率的な回収について安定同位体を用いて検討し、その後安定な固化ガラスとして最終処理を行う一連のプロセスの開発を目的とした。JIS活性炭試験法(JIS K 1474)の吸着性能評価法(液相)を用いて、マグネシウム化合物のヨウ素吸着性能を評価した。その結果、酸化マグネシウムの小粒径試料で最大2.23 g/gのヨウ素吸着性能を示すことがわかった。水酸化マグネシウム試料については、吸着量が少ないため、JIS規格に準ずる範囲の吸着等温線を得ることができなかった。セシウム、ストロンチウムに関しては、酸化マグネシウムと合わせて、リン酸によるpH調整を行うことで、十分な回収性能を示すことが示唆された。さらに、セシウム、ストロンチウムのガラス固化範囲及び耐水性を調査するため、MgO-Cs2O-P2O5系及びMgO-SrO-P2O5系ガラスを、MgO+Cs2O or SrO:P2O5の組成比40:6060:40の間で作製した。回収後の固化ガラスに関し、セシウム、ストロンチウム固化ガラスでは、仕込み量に応じた割合でガラス中に保持されていることから、長期安定的に効率良く最終処理が行えることが示唆された。耐水性に関しては、P-O-P結合よりも水に強いP-O-M結合を生成するカチオン種を添加することで向上が見込まれると考えられ、Al2O3、B2O3、Nb2O5のような3成分目の酸化物の添加によってこれを確かめることができた。酸化マグネシウムを用いて、ヨウ素の効率的な回収、リン酸存在下においてセシウム・ストロンチウムの効率的な回収ができ、さらにセシウム・ストロンチウムはガラス固化により長期安定的に効率良く最終処理が行えることが示唆された。また、耐水性に関しては、P-O-P結合よりも水に強いP-O-M結合を生成するカチオン種を添加することで向上が見込まれることが明らかになったため。本研究では、ヨウ素、セシウム、ストロンチウムのマグネシウム化合物による効率的な回収について安定同位体を用いて検討し、その後安定な固化ガラスとして最終処理を行う一連のプロセスの開発を目的とした。ヨウ素については、酸化マグネシウムの小粒径試料で最大2.23 g/gのヨウ素吸着性能を示すことがわかった。固化ガラスの紫外可視拡散反射スペクトルからは、ヨウ化物イオンに相当するピークは見られなかったため、化合物の形でガラス中に保持されていると考えられる。セシウム、ストロンチウムに関しては、酸化マグネシウムを用い、リン酸によりpH調整を行うことで、十分な回収性能を示した。セシウム固化ガラスでは、リン酸異常現象は見られず、金属元素の添加量に応じて密度が上昇した。ストロンチウム固化ガラスでは、MgO+SrO:P2O5=47:53(モル比)の試料で、密度の低下が見られた。 | KAKENHI-PROJECT-26420844 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26420844 |
放射性物質の回収とリン酸塩ガラス異常現象を利用した長期安定的固定化 | また、仕込み量と同等の組成が維持されていることから、長期安定的に効率良く最終処理が行えることが示唆された。耐水性試験の結果、セシウム固化ガラスでは、セシウムおよびマグネシウムの添加量によらず、一定の浸出量、浸出率となり、ストロンチウム固化ガラスでは、ストロンチウムの添加に伴い耐水性が上昇した。MgO-P2O5系固化ガラスに比べて、MgO-Al2O3-P2O5系、MgO-B2O3-P2O5系固化ガラスの溶出が少なくなり、MgO-Nb2O5-P2O5系固化ガラスではほとんど溶出が見られなかった。3成分系にすることで耐水性を向上させることができることがわかった。P-O-Pよりも水に強いP-O-M結合を生成するカチオン種を添加することで、固化ガラスの耐水性の向上が見込まれると考えられ、Al2O3、B2O3、Nb2O5のような3成分目の酸化物の添加によってこれを確かめることができた。ヨウ素、セシウム、ストロンチウムのマグネシウム化合物による効率的な回収について検討し、安定な固化ガラスとして最終処理を行う一連のプロセスの開発を目的とした。ヨウ素については、酸化マグネシウムの小粒径試料で最大2.23 g/gのヨウ素吸着性能を示すことがわかった。セシウム、ストロンチウムに関しては、酸化マグネシウムを用い、リン酸によりpH調整を行うことで、十分な回収性能を示した。P-O-Pよりも水に強いP-O-M結合を生成するカチオン種を添加することで、固化ガラスの耐水性の向上が見込まれると考えられ、Al2O3、B2O3、Nb2O5のような3成分目の酸化物の添加によってこれを確かめた。酸化マグネシウムを用いて、ヨウ素の効率的な回収、リン酸存在下においてセシウム・ストロンチウムの効率的な回収ができ、さらにセシウム・ストロンチウムはガラス固化により長期安定的に効率良く最終処理が行えることが明らかになったため。本研究では、まず初めに「JIS活性炭試験法の吸着性能(液相)評価」を応用し、各種マグネシウム化合物のヨウ素吸着性能評価を行った。続いて気相に対する評価を行い、適切なマグネシウム化合物を選択し、anomalousタイプリン酸塩ガラスであるリン酸マグネシウムガラスを用いてガラス固化体を作製する。セシウム、ストロンチウムについては、リン酸カルシウムガラスを用いてイオン交換により回収し、マグネシウムとの混合系ガラス固化体を作製する。さらに模擬廃棄物を混合し、溶融後、急冷して固化ガラスを作製する。得られた固化ガラスについて、密度測定をはじめ、DTA・XRD・FT-IR・Laser Ramanなどによる評価を行う。浸出実験はMCC法を用いて行う。さらにγ線(Co-60)照射試料に対しても同様の評価を行う。無機材料化学本研究では、まず初めに「JIS活性炭試験法の吸着性能(液相)評価」を応用し、各種マグネシウム化合物のヨウ素吸着性能評価を行った。続いて気相に対する評価を行い、適切なマグネシウム化合物を選択し、anomalousタイプリン酸塩ガラスであるリン酸マグネシウムガラスを用いてガラス固化体を作製する。セシウム、ストロンチウムについては、リン酸カルシウムガラスを用いてイオン交換により回収し、マグネシウムとの混合系ガラス固化体を作製する。さらに模擬廃棄物を混合し、溶融後、急冷して固化ガラスを作製する。得られた固化ガラスについて、密度測定をはじめ、DTA・XRD・FT-IR・Laser Ramanなどによる評価を行う。浸出実験はMCC法を用いて行う。さらにγ線(Co-60) | KAKENHI-PROJECT-26420844 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26420844 |
聴覚障害者の講義における遠隔地パソコン筆記でのカメラ制御に関する研究 | 本研究では,講師音声からの指示語発話抽出手法として,音声認識を利用した手法を提案し,さらに,指示語抽出結果と指示動作抽出結果の統合手法も提案する.この統合手法は,指示語発話と示動作の時間の関連性を利用しているそして,実際に収録した講義データに対して,指示語・指示動作抽出処理行い,さらに,統合処理を行った結果,再現率約91%,適合率約71%を得ることができた.本研究では,講師音声からの指示語発話抽出手法として,音声認識を利用した手法を提案し,さらに,指示語抽出結果と指示動作抽出結果の統合手法も提案する.この統合手法は,指示語発話と示動作の時間の関連性を利用しているそして,実際に収録した講義データに対して,指示語・指示動作抽出処理行い,さらに,統合処理を行った結果,再現率約91%,適合率約71%を得ることができた.聴覚障害者が健常者の中に混じって講義などを受講する場合、支援者が講義者の話したことをパソコンで入力してスクリーンに提示することで情報保障を行うPC要約筆記が行われている。現在、遠隔PC要約筆記を行う際は、通信環境の問題などから文字を読み取る程度の拡大率で映像を送る場合、黒板が一画面に収まらない。そのため、板書を読み取るときは、要約筆記者が、カメラを自分で制御している。これは、要約筆記者に大きな負担がかかり、また、要約筆記が行われるまでの遅延が増大する。そこで、本研究では、教師の行動を推定し、要約筆記者に必要となる映像を映すようにカメラを制御するシステムを研究した。本システムでは、取得した画像に対して、背景差分を利用して教師・板書領域を抽出し、教師領域内について肌色・髪抽出を行い、頭・手領域を袖出する。また、仮想的な黒板を作成し、そこに書き消しを行うことで、過去に書かれた板書を検出する。これらの特徴をもとに、板書動作・手振り動作を検出して、教師の動作を推定する。推定した動作を利用して、最終的にカメラの撮影範囲を決定する。実際の講義風景において評価を行ってみたところ、説明動作検出では、教師が説明している時間の73%が、本システムによって検出された。また板書領域の誤検出をしたもののうち、仮想黒板への書き消しにおいて、誤って書き込みを行ったのは全体の4%であり、遠隔PC要約筆記を行うにおいて有効な撮影が行えると考えられる。本研究は,実際に大学で行われている聴覚障害者集団での講義における情報保障を対象とする.一部の講義では,講師が手話で話せないためにパソコン筆記による情報保障が行われている.この講義では,黒板,パワーポイントなど講師が作成したファイルを投影するスクリーン,講師と学生が筆談を行うためのホワイトボード,入力された文字を表示するための大型ディスプレイが使われている.このような状況のもとで,講師が,指示動作を伴って指示語を発話したときの指示対象の検出について研究を行った.例えば「これとこれを合わせると, ...」のように,指示語をそのまま入力した文字だけでは全く理解できないので,指示語の内容を補って入力する必要がある.このとき,講師が指し示しているスライドの箇所が遠隔地から読めなければならない.講師の動作を収録した映像と講師の発話を収録した音声を処理することによって,指示動作を伴う指示発話を検出した,映像から講師領域と指示棒の領域を検出し,その指示棒の先端や講師の指先と講師の体の位置関係から指示動作を検出した,音声から音声認識を利用した手法により指示発話を検出した.音声認識では,指示語発話時の音声の分析により)指示後の発話の前に,フィラーを含むポーズがあることが分かったため,それを利用して音声認識の抽出率を向上した.指示語発話時の音声発話と指示動作の発生時刻について分析を行い,その結果に基づいて音声,映像の2つを統合する手法を提案し,指示動作を伴う指示発話を検出した一実際に収録した講義データに対して,指示語・指示動作抽出処理行い,さらに,統合処理を行った結果,再現率約91%,適合率約71%を得た. | KAKENHI-PROJECT-19700470 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19700470 |
新型電子分析器による半導体表面超格子構造からの光電子放出パタ-ンの研究 | 本研究の目的は、我々が新しく発明した「あるエネルギ-の粒子の角度分布を2次元像として表示する分析器」(特許出願中)を用いて、半導体表面超格子構造からの光電子の角度分布を測定することである。この分析器には「像が全く歪まない」、「従来の8000倍も明るい」など、数々の利点があり、多くの新しい発見が期待できるものである。平成元年度は、Siなどの半導体表面にGaなどの金属を蒸着して加熱したときに現れる超格構造に、X線源やシンクロトロン放射(SR)などのX線を当てて、吸着している金属原子や下地のSi原子から出て来る光電子の放出角度分布の2次元パタ-ンを測定した。原子の内殻から出て来る光電子は、周りの原子によって散乱されながら出て来るのでそのパタ-ンには直接出てきた電子波と散乱された電子波との干渉パタ-ンが現れており、そのパタ-ンを解析することにより、吸着原子の周りの構造を調べることができる。特に、SRを用いた測定に於て成果があがり、世界で初めて2次元パタ-ンが数多く得られ、その解析にも成功し、国際学会での発表や論文発表(文献5,6)を行った。平成2年度は、試料結晶に、HeIやIIの真空紫外線を照射して、価電子帯からの光電子の角度分布パタ-ンを観察した。このエネルギ-領域で光電子の角度分布を測定すると、価電子のエネルギ-バンドの断面図が2次元的に測定できることになり、ブリルワン領域内の全構造が短時間で測定できるようになる。試料としては、単結晶のKishグラファイトを用いて、理論や他の人の角度分解型の実験結果と比較した。結果は非常によく合っており、満足できるものであった。日本では初めての電子エネルギ-バンドの2次元測定に成功したことになり、学会発表を行った。この研究は世界的にもほどんど行われておらず、これから大いに研究を進めていきたい。本研究の目的は、我々が新しく発明した「あるエネルギ-の粒子の角度分布を2次元像として表示する分析器」(特許出願中)を用いて、半導体表面超格子構造からの光電子の角度分布を測定することである。この分析器には「像が全く歪まない」、「従来の8000倍も明るい」など、数々の利点があり、多くの新しい発見が期待できるものである。平成元年度は、Siなどの半導体表面にGaなどの金属を蒸着して加熱したときに現れる超格構造に、X線源やシンクロトロン放射(SR)などのX線を当てて、吸着している金属原子や下地のSi原子から出て来る光電子の放出角度分布の2次元パタ-ンを測定した。原子の内殻から出て来る光電子は、周りの原子によって散乱されながら出て来るのでそのパタ-ンには直接出てきた電子波と散乱された電子波との干渉パタ-ンが現れており、そのパタ-ンを解析することにより、吸着原子の周りの構造を調べることができる。特に、SRを用いた測定に於て成果があがり、世界で初めて2次元パタ-ンが数多く得られ、その解析にも成功し、国際学会での発表や論文発表(文献5,6)を行った。平成2年度は、試料結晶に、HeIやIIの真空紫外線を照射して、価電子帯からの光電子の角度分布パタ-ンを観察した。このエネルギ-領域で光電子の角度分布を測定すると、価電子のエネルギ-バンドの断面図が2次元的に測定できることになり、ブリルワン領域内の全構造が短時間で測定できるようになる。試料としては、単結晶のKishグラファイトを用いて、理論や他の人の角度分解型の実験結果と比較した。結果は非常によく合っており、満足できるものであった。日本では初めての電子エネルギ-バンドの2次元測定に成功したことになり、学会発表を行った。この研究は世界的にもほどんど行われておらず、これから大いに研究を進めていきたい。本研究の目的は、我々が新しく発明した「あるエネルギ-の粒子の角度分布を2次元像として表示する分析器」(特許出願中)を用いて、半導体表面超格子構造からの光電子の角度分布を測定することである。この分析器には「像が全く歪まない」、「従来の8000倍も明るい」など、数々の利点があり、多くの新しい発見が期待できるものである。平成元年度は、Si清浄面に金などを吸着させた超格子構造にX線を照射して出て来る内殻からの光電子の放出角度分布パタ-ンを観測する予定であった。そのために、X線源を購入し、それを用いて2次元検出のX線光電子回析の実験を行うことになっていた。Siなどの半導体表面に吸着している金や銀などの金属原子から出て来る光電子の放出角度分布の2次元パタ-ンを測定すると、吸着原子の内殻から出て来る光電子は、周りの原子によって散乱されながら出て来るので、そのパタ-ンには直接出てきた電子波と散乱された電子波との干渉パタ-ンが現れており、そのパタ-ンを解析することにより、吸着原子の周りの構造を調べることができる。購入するX線源はそのための励起X線を発生させるためのものである。しかしながら、現有の装置に取り付けて実験を行うためには、通常のX線源では距離が離れているため強度が足りないので新しい方式を考案して(特許申請中)改造を行った。 | KAKENHI-PROJECT-01460257 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01460257 |
新型電子分析器による半導体表面超格子構造からの光電子放出パタ-ンの研究 | 改造は成功したがこの改造に時間がかかり、平成2年1月にやっと立会い検査ができ、つい最近納入されたばかりである。改造の結果は満足すべき物であり、強いX線が得られた。その間、平成元年度はX線の替わりにシンクロトロン放射を用いて予備実験を行った。その結果、世界で初めて光電子の2次元角度分布パタ-ンを測定することができた。シンクロトロンでは、時間が限られていて質の良い測定にはならないが、今回納入されたX線源により、これから速やかに良質のデ-タが得られるのは確実である。本研究の目的は、我々が新しく発明した「あるエネルギ-の粒子の角度分布を2次元像として表示する分析器」(特許出願中)を用いて、半導体表面超格子構造からの光電子の角度分布を測定することである。この分析器には「像が全く歪まない」、「従来の8000倍も明るい」など、数々の利点があり、多くの新しい発見が期待できるものである。平成元年度は、Siなどの半導体表面にGaなどの金属を蒸着して加熱したときに現れる超格子構造に、X線源やシンクロトロン放射(SR)などのX線を当てて、吸着している金属原子や下地のSi原子から出て来る光電子の放出角度分布の2次元パタ-ンを測定した。原子の内殻から出て来る光電子は、周りの原子によって散乱されながら出て来るので、そのパタ-ンには直接出てきた電子波と散乱された電子波との干渉パタ-ンが現れており、そのパタ-ンを解析することにより、吸着原子の周りの構造を調べることができる。特に、SRを用いた測定に於て成果があがり、世界で初めての2次元パタ-ンが数多く得られ、その解析にも成功し、国際学会での発表や論文発表(文献5,6)を行った。平成2年度は、試料結晶に、HeIやIIの真空紫外線を照射して、価電子帯からの光電子の角度分布パタ-ンを観察した。このエネルギ-領域で光電子の角度分布を測定すると、価電子のエネルギ-バンドの断面図が2次元的に測圧できることになり、ブリルワン領域内の全構造が短時間で測定できるようになる。試料としては、単結晶のKishグラファイトを用いて、理論や他の人の角度分解型の実験結果と比較した。結果は非常によく合っており、満足できるものであった。日本では初めての電子エネルギ-バンドの2次元測定に成功したことになり、学会発表を行った。この研究は世界的にもほとんど行われておらず、これから大いに研究を進めていきたい。 | KAKENHI-PROJECT-01460257 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01460257 |
神経膠腫の術前画像診断のためのT1rho MRIの撮像法と評価法の確立 | T1rhoはT2に類似しているがT1rhoは動きの遅い水を反映したことなったコントラストであることが知られている.このT2とT1rhoの差が遅い水分子の動きを反映したコントラストの違いを反映していると考えられるが,T1rhoとT2を共に計測するにはそれぞれ4分(計8分)必要であり臨床的には現実的ではない.そこで,T1rhoとT2の差の意味を有しているdeltaR1rho(1/T2-1/T1rho)を測定することとした.緩和時間を0,10,20,40,60,80ms変化させて画像を撮像した.80ms間緩和して得られるT1rho強調像とT2強調像からdeltaR1rhoを算出すると,撮像時間は8分から2分へと大幅に短縮することができる.今回,健康被験者を募り正常脳のT1rhoとT2をそれぞれ計測した.それよりdeltaR1rhoの正常値を得た.一方,緩和時間を変えて撮像したT1rho強調像とT2強調像から計5種のdeltaR1rhoを正常値と比較し手法比較で検討したところ,統計学的に同等であることが証明できた.よって,deltaR1rho(80)はdeltaR1rhoと代替可能であり,臨床的に利用しても問題ないことが確認できた.また,deltaR1rhoは脳の組織間で値にそれぞれ有意差があり,T1rhoやT2,T1rhoとT2の差に比べても組織間の差が明確であった.このことからdR1rhoには組織を分別する特異性が高いと言える.今後,神経膠腫でのdR1rhoの評価を行うことで,組織の微細な違いをより反映したコントラストを得ることが現時点で期待できると予測できる.計画にそって研究は進行している.また、T1rhoはT2と類似しているが異なる緩和であることから、この微細な差異を評価することはT1rhoそのものよりも意義があると推測している。T2との逆数の差(delta R1rho)を得る方法を確立しつつあり、これらを利用することによって術前画像診断の精度をあげるために引き続き検討を行っている。初年度ではT1rhoの測定、脳腫瘍でのデータ収集を行うことができた。さらに、病理診断での免疫化学組織染色(IDH-1とATRX)に関して、T1rhoとの有意な相関を見出した。delta R1rho測定法の確立を目的として、現在、撮像プロトコールを作成中であり、すでに予測通りの計測値を得ることができている。これらはほぼ計画通りの進捗状況といえる。T1rhoはT2に類似しているがT1rhoは動きの遅い水を反映したことなったコントラストであることが知られている.このT2とT1rhoの差が遅い水分子の動きを反映したコントラストの違いを反映していると考えられるが,T1rhoとT2を共に計測するにはそれぞれ4分(計8分)必要であり臨床的には現実的ではない.そこで,T1rhoとT2の差の意味を有しているdeltaR1rho(1/T2-1/T1rho)を測定することとした.緩和時間を0,10,20,40,60,80ms変化させて画像を撮像した.80ms間緩和して得られるT1rho強調像とT2強調像からdeltaR1rhoを算出すると,撮像時間は8分から2分へと大幅に短縮することができる.今回,健康被験者を募り正常脳のT1rhoとT2をそれぞれ計測した.それよりdeltaR1rhoの正常値を得た.一方,緩和時間を変えて撮像したT1rho強調像とT2強調像から計5種のdeltaR1rhoを正常値と比較し手法比較で検討したところ,統計学的に同等であることが証明できた.よって,deltaR1rho(80)はdeltaR1rhoと代替可能であり,臨床的に利用しても問題ないことが確認できた.また,deltaR1rhoは脳の組織間で値にそれぞれ有意差があり,T1rhoやT2,T1rhoとT2の差に比べても組織間の差が明確であった.このことからdR1rhoには組織を分別する特異性が高いと言える.今後,神経膠腫でのdR1rhoの評価を行うことで,組織の微細な違いをより反映したコントラストを得ることが現時点で期待できると予測できる.計画にそって研究は進行している.神経膠腫瘍でのT1rho値の測定を続け、症例を蓄積してgradeIIの腫瘍を増やすと、さらに有意なデータが得られる可能性がある。また、現在開発中であるdelta R1rhoの測定を早々に開始する予定であるので、本年度はT1rhoに加えてdelta R1rhoの症例を蓄積し、初年度に収集したデータをまとめて発表することを予定している。購入を計画していたコンピューターとソフトをまだ購入していないため、差額が生じた。本年度中に必要に応じて、適切な時期に購入し、使用する計画である。また、本年度は初年度で得られたデータを発表する機会があるので研究会や学会参加のための旅費や論文作成に使用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-17K16415 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K16415 |
大卒女性専門職の「納得のいくキャリア」とその形成支援:戦力化に向けた雇用管理 | 本研究では、インタビュー調査、ウェブ調査、学歴別経済統計の分析を通じて、大卒で子供がある女性有業者の特徴を明らかにし、ワークライフ・バランスとキャリアの発達に何が重要なのかを検討した。結果として、1転機への対処への柔軟な姿勢がキャリアの継続と満足に影響する、2自らの行動を通じたワークライフバランス調整が職務満足度を向上させる3家庭状況の有業率に及ぼす影響が小さくなるという特徴を指摘した。これらの結果から、高学歴女性の就業継続には自らの意識や決定が大きくかかわっているため、キャリアにおける自律、自発性がキャリアの満足や継続に関連すると思われ、今後の自律性を支援する試みが重要であると結論した。本年度はインタビューの結果に基づき、大卒の専門職を中心とするワーキングマザーのキャリアの継続の要因について、本人の意識、職場、家庭の状況およびその他支援サービスの利用との関連から検討した。検討の結果は、2回の学会発表、1本の投稿論文(査読中)として公表した。さらに、次年度の報告申込みが国内で1件、海外で1件認められている。大卒ワーキングマザーのキャリアの継続については、本人の意識とともに職場、家庭の状況が能力形成や職場での信頼される地位構築のために深く影響する。この部分については、多くの先行研究が示すものを追確認する結果である。特に一つの企業から移動せずにキャリアを構築する場合には、職場での労働のペースに合わせた勤務形態について周囲から信頼を獲得することが不可欠と考えられる。一方で転職経験者に注目してみると、自らのやりたい仕事を中心に就業形態を必要に応じて変化させながら、関連する周辺領域を含めての職務能力形成が計画的あるいは非計画的に形成されている。キャリアの進展は厳密な計画によるのみならず、希望する方針に従って、キャリアの転機に遭遇した機会を選択すること、その選択が完全に希望を満たすものでなくても、経験の一部として受け入れて次の機会に生かすなど柔軟な姿勢によって維持されている。母親としての育児負担は、必ずしもキャリアの方向性を変化させる要因としては認識されず、子供の教育問題を中心に、積極的に関与する方針が見られる。具体的な勤務状況との関連では、育児期に就業形態を変えるという対応、同居・近居の母親、夫の柔軟な対応などによって本人の時間と体力を確保する対応、公的な支援機関以上に高額のサービスを利用する対応がみられた。これらの対応のいずれを用いるかは、子育てに対する価値意識の問題であると同時に、サービスの利用のしやすさ、必要なケアの計画可能性などによって異なると考えられる。インタビュー調査の部分はおおむね順調に進展し、成果も上がっている。現在は量的な分析のためのデータ整形に取り組んでいる。本年度は前年度に引き続き、女性個人側の研究を推進した。特に昨年度の結果から、女性の生涯にわたる就業継続については、子育ての影響と同時に、転職経験の影響も強いことがインタビュー調査からも明確になった。したがって、今後の研究の焦点を転職経験が女性のキャリア形成に及ぼす影響および子育て支援と転職を含めたキャリア形成の関係に置くという方針が得られた。これらの問題について、転職経験とキャリアの節目ともいわれる転機の関係について学会報告を行った。さらに子育て支援との関連については、国際学会報告を行った。これらの結果を通じて、最終年度に向けての研究焦点、すなわち転職経験とそれをサポートする支援体制の構造解明という論点が明らかになった。量的データについては、前年度購入した大規模データのクリーニングが終了し、実証研究の結果、都道府県別データの推計結果が明らかになった。都道府県の経済状況が既婚女性有業率に影響を与えるか、最終学歴が大学卒と大学院卒となる2つのグループについて、他の最終学歴のグループと異なるか比較をした推定結果から、都道府県の経済状況を含む地域の特性が有業率に影響を与えていることが示されたが、学歴ごとの差異は確認されなかった。個人に関する変数のうち子供の数については、大学院卒以外では、先行研究と同様に子供の数が増えると有業率が増加するが、大学院卒の場合子供の数が増えると有業率が下落するということが確認された。そのため、本研究の結果の精度を高めるためにも納得いくキャリアの追求の具体的方策に関連する部分での地域と子育て、本人のキャリア像に影響するものとして学歴や子育てが関連するという図式が確認された。個人側の要因に関する量的データの分析は第一段階が終了し、第二段階の個別データに移った。今後データの追加を適宜しながら、パネルデータの分析に移る予定である。女性就業者個人に関するインタビュー調査は、子育て支援と転職経験という2つの論点が析出され、報告がすでに出始めている。企業調査については購入予定のデータが高騰しまた無回答のデータが多く使いにくいことが判明したため、ウェブ調査を含めてほかの方法を考えている。そのため最終年度に繰り延べて実施する。本年度は以下の3つの研究テーマを実行した。1高学歴女性の就業構造の特徴に関する大規模データを用いての実証、2女性の行動特性が就業継続に及ぼす影響の検討、3高学歴女性の自律的キャリア形成のパターンとしての海外就業行動に関する探索的解明である。1については前年の結果を受けてパネル・データを用いた分析を行い、年度ごとの特殊効果(以下、時間効果)、個人による有の効果(以下、個別効果)を取り除いた、説明変数との関連性を見た。結果として既婚女性の就業率にたいして家庭状況が与える影響が、大学・大学院卒とそれ以外で異なるかを、就業構造基本調査の匿名データを用いて分析た。 | KAKENHI-PROJECT-15K03677 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K03677 |
大卒女性専門職の「納得のいくキャリア」とその形成支援:戦力化に向けた雇用管理 | 分析の結果、就業率へ与える影響の学歴による正負の違いは、「仕事を主とする場合」は観測されず、「仕事以外を主として仕事をしている場合」に観測され先行研究と整合的な結果が得られた。ただし、家庭状況が就業要因に与える限界効果の大きさは、大学・大学院卒の場合は小さくなることが確認された。2は、ウェブサーベイを利用し、ワークライフバランスの対処行動を制御焦点という概念を用いて検討した。結果として利得を志向する促進焦点の場合には、自らの行動の変化を通じた対処が行われること、家庭と仕事のコンフリクトの対処行動の違いを通じて仕事満足にも影響することが明らかになった。3については、香港、台湾において聞き取り調査を行い、高学歴女性のキャリア自律行動の一つの形態として海外就業が企画されうることを確認した。以上の3つの研究を通じて、高学歴女性の場合、キャリアにおける自律、自発性といった自己実現や自己決定に関する要因とキャリアの満足や展開が大きく関連することが観察された。今後は自律、自己決定という概念を中心に高学歴女性のキャリア形成を論じていくこととした。本研究では、インタビュー調査、ウェブ調査、学歴別経済統計の分析を通じて、大卒で子供がある女性有業者の特徴を明らかにし、ワークライフ・バランスとキャリアの発達に何が重要なのかを検討した。結果として、1転機への対処への柔軟な姿勢がキャリアの継続と満足に影響する、2自らの行動を通じたワークライフバランス調整が職務満足度を向上させる3家庭状況の有業率に及ぼす影響が小さくなるという特徴を指摘した。これらの結果から、高学歴女性の就業継続には自らの意識や決定が大きくかかわっているため、キャリアにおける自律、自発性がキャリアの満足や継続に関連すると思われ、今後の自律性を支援する試みが重要であると結論した。2016年度は当初計画にしたがって企業における女性支援策導入の実態と成果(以下B1)および企業における女性支援策の戦略的効果の測定と制度ロジックの解明(B2)について検討する。B1、B2のいずれについても、先行研究も多い領域であり、前半は先行研究の整理とB1に関する調査対象選別枠組みの設計と対象との交渉、およびB2に利用するデータの購入から始める。後半はB1に関するインタビューの実施及び分析、さらにB2に関する仮説の構築からスタートする。11月までにインタビューデータの分析を終了させ、報告準備に入る。並行して量的データの解析を行い報告の準備をする。1量的調査研究の充実平成29年度は、前年の結果を受けてパネル・データを用いた分析を行い、年度ごとの特殊効果(以下、時間効果)、個人による固有の効果(以下、個別効果)を取り除いた、説明変数との関連性を見る。代表的なモデルは非線形関数の違いによって2種類あり、ロジット分布を用いるロジット・モデルと正規分布を用いるプロビット・モデルがあるが、本研究では両方のモデルを用いて分析する。これら時間効果と個別効果をモデルに取り入れることで、クロスセクションデータの推定結果と変化したか検討する。さらに、パネル・データを用いた分析を詳細にみることによって時間効果と個別効果を扱いモデル化し、検証する。 | KAKENHI-PROJECT-15K03677 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K03677 |
植物ビリンによる葉緑体アンカーの制御機構 | 本研究は、植物細胞の中で、葉緑体が、特定の環境条件の下で特定の分布パターンを保つことにより、受光量やCO2吸収量を調節し、光合成反応を最適な状態に維持する現象に注目している。葉緑体の分布パターンの維持に、アクチン細胞骨格が関与することを明らかにしており、アクチン細胞骨格の構築変化に働くCa2+感受性のアクチン結合蛋白質であるビリン(VLN)について解析した。モデル植物シロイヌナズナが持つ5つのビリンのうち、AtVLN2が、葉緑体上に局在し、Ca2+濃度の変化に応じてアクチン細胞骨格の構築を変化させ、柵状組織葉肉細胞の表層細胞質における葉緑体のアンカー状態を制御していることが強く示唆された。葉緑体は、特定の環境条件下で特徴的な分布パターンを保つことを介して光合成の最適化に寄与する。環境変化に応じた葉緑体の分布変化の過程で葉緑体のアンカー・脱アンカーが起こるが、それに関わる実体や制御機構は未解明である。我々は、葉緑体アンカーがアクチンに依存することを示し、多様なアクチン修飾能を持つCa2+感受性のアクチン結合蛋白質であるビリンがその制御に関与する可能性を検証している。シロイヌナズナの5つのビリン分子種のうち、AtVLN2遺伝子をクローニングし、蛍光蛋白質との融合による可視化株を作製した。葉肉細胞から調製した細胞膜ゴーストを用いたアッセイにおいて、野生株では、アクチン脱重合剤処理、Ca2+処理によって葉緑体の脱落が誘導されるが、AtVLN2欠損株ではCa2+処理による葉緑体の脱落が起こりにくいことを見出していた。上記可視化株では、この表現型が回復していた。また、蛍光蛋白質のシグナルは葉緑体周縁部に検出された。ロゼット葉から単離した葉緑体を用いたアクチン重合アッセイにおいて、重合反応は野生株とAtVLN2欠損株との間で違いは無いが、いったん重合させたアクチン繊維のCa2+処理による脱重合反応は、AtVLN2欠損株では起こらなかった。以上の結果より、AtVLN2が葉緑体上に局在し、Ca2+濃度上昇に依存してアクチン繊維の脱重合をひき起こし、それを介して葉緑体の脱アンカーを誘導する可能性が示唆された。葉緑体は、特定の環境条件下で特徴的な細胞内分布パターンを保つことを介して光合成の最適化に寄与する。環境変化に応じた葉緑体の分布変化の過程で葉緑体の脱アンカー・再アンカーが起こるが、それらに関わる装置の実体や制御機構は未解明である。我々は、葉緑体アンカーがアクチンに依存すること、多様なアクチン修飾能を持つCa2+感受性のアクチン結合蛋白質であるビリンがその制御に関与することを提唱し、分子機構を解析している。シロイヌナズナの5つのビリン分子種のうち、AtVLN2遺伝子をクローニングし、蛍光蛋白質との融合遺伝子をAtVLN2欠損株に発現させたAtVLN2可視化株を作製した。蛍光蛋白質のシグナルが葉緑体周縁部に検出されたことから、葉緑体外包膜におけるアクチン構築について調べた。ロゼット葉から単離した無傷葉緑体と骨格筋G-アクチンとを用いたアクチン重合アッセイにおいて、野生株とAtVLN2可視化株はCa2+感受性を示したが、AtVLN2欠損株では感受性が失われていた。いったん重合させたアクチン繊維のCa2+処理による脱重合アッセイにおいても、AtVLN2欠損株はCa2+感受性を示さなかった。以上の結果より、AtVLN2が葉緑体外包膜に局在し、低Ca2+濃度では束化を介してアクチン繊維を安定化、高Ca2+濃度ではアクチン繊維の切断・脱重合をひき起こすことにより、葉緑体アンカーの制御に関与している可能性が強く示唆された。AtVLN2の細胞内局在と機能様式について、興味深い知見を得ることができた。ゼニゴケでもビリン遺伝子の解析に着手し、予備的な知見を得ている。本研究は、植物細胞の中で、葉緑体が、特定の環境条件の下で特定の分布パターンを保つことにより、受光量やCO2吸収量を調節し、光合成反応を最適な状態に維持する現象に注目している。葉緑体の分布パターンの維持に、アクチン細胞骨格が関与することを明らかにしており、アクチン細胞骨格の構築変化に働くCa2+感受性のアクチン結合蛋白質であるビリン(VLN)について解析した。モデル植物シロイヌナズナが持つ5つのビリンのうち、AtVLN2が、葉緑体上に局在し、Ca2+濃度の変化に応じてアクチン細胞骨格の構築を変化させ、柵状組織葉肉細胞の表層細胞質における葉緑体のアンカー状態を制御していることが強く示唆された。AtVLN2については可視化株の作製に成功し、解析を進めることが出来たが、AtVLN4可視化株の作製が予定よりも遅れている。進行が遅れているAtVLN4も含め、シロイヌナズナ、ゼニゴケのビリン可視化株を用いて、細胞内局在、質量分析による相互作用因子の解析を進め、ビリンの機能様式に対する理解を深める。植物細胞生物学AtVLN2可視化株ではポジティブな成果が得られつつあり、これらの確定を進め、論文として出来るだけ早期に発表する。AtVLN4可視化株の作製および解析に精力的に取り組む。光合成蒸散測定装置、人工気象器の故障のため、実験計画の一部、形質転換植物作製作業に遅れが生じた。これに伴い、主に謝金の使用が無かった。 | KAKENHI-PROJECT-26440143 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26440143 |
植物ビリンによる葉緑体アンカーの制御機構 | 11月に人工気象室内でのカビの発生によって形質転換植物が死滅し、実験材料の調達が不充分となったことから、計画の進行が遅れた。光合成蒸散測定装置、人工気象器の修理は完了したため、新しい計画に基いて解析を進め、物品費、謝金として使用する予定。植物の栽培、細胞膜ゴーストアッセイのための消耗品費、植物の栽培のためのアルバイト謝金として使用する。 | KAKENHI-PROJECT-26440143 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26440143 |
界面制御によるシリコン基板上への強誘電体薄膜のヘテロエピタキシャル成長 | (1) YSZ薄膜をSi基板上に800°Cで形成し、冷却速度を0.11000K/sと変えて室温まで冷却後、その試料のC-V特性を測定したところ、C-V特性には殆ど変化が見られなかった。しかし、経時絶縁破壊特性において、冷却速度が110K/sである試料が最も良い特性を示した。(2)高密度プラズマが試料に直接当たるようにした試料と、できるだけそれを抑制した試料のC-V特性を比較したところ、プラズマに直接当たった方が、可動イオンによる大きいヒステリシス幅を観測した。(3)基板温度460,470°Cの低温で作製したPZT薄膜は、従来と異なる単斜晶系の(110)PZTとして(100)YSZ薄膜上にヘテロエピタキシャル成長した。この薄膜は、300,325,350゚Cと段階的にアニールしたところ、リーク電流密度が3Vで1x10^<-7>A/cm^2以下に低減し、C-V特性が分極に起因したヒステリシス特性を示した。(4) Ir薄膜は基板温度600°CでYSZ層上にエピタキシャル成長するが、堆積速度が0.42nm/minと遅いと(100)主配向膜となり、1.2nm/minと速いと(111)主配向膜となることがわかった。この(100)主配向膜は、YSZ層の結晶性を是正するのに有効であった。(5)エピタキシャル(001)PZT薄膜は(100)主配向あるいは混合配向Ir膜上に基板温度600°Cで、エピタキシャル(111)PZT薄膜は(111)主配向Ir膜上に基板温度650°C以上で得られた。(6) PZT薄膜の配向が(001)に強くなればなるほど、またその結晶性が良くなればなるほど、その残留分極が大きくなり、リーク電流が減少する傾向にあった。(7) YSZ層の誘電率の低下の原因が、YSZ層とSi基板との間に存在する約2.5nmの酸化Si層であることがわかった。この酸化Si層は、YSZ層形成温度の低減と、Zr_+Y金属膜の堆積制御により1.3nmに低減出来ることがわかった。(1) YSZ薄膜をSi基板上に800°Cで形成し、冷却速度を0.11000K/sと変えて室温まで冷却後、その試料のC-V特性を測定したところ、C-V特性には殆ど変化が見られなかった。しかし、経時絶縁破壊特性において、冷却速度が110K/sである試料が最も良い特性を示した。(2)高密度プラズマが試料に直接当たるようにした試料と、できるだけそれを抑制した試料のC-V特性を比較したところ、プラズマに直接当たった方が、可動イオンによる大きいヒステリシス幅を観測した。(3)基板温度460,470°Cの低温で作製したPZT薄膜は、従来と異なる単斜晶系の(110)PZTとして(100)YSZ薄膜上にヘテロエピタキシャル成長した。この薄膜は、300,325,350゚Cと段階的にアニールしたところ、リーク電流密度が3Vで1x10^<-7>A/cm^2以下に低減し、C-V特性が分極に起因したヒステリシス特性を示した。(4) Ir薄膜は基板温度600°CでYSZ層上にエピタキシャル成長するが、堆積速度が0.42nm/minと遅いと(100)主配向膜となり、1.2nm/minと速いと(111)主配向膜となることがわかった。この(100)主配向膜は、YSZ層の結晶性を是正するのに有効であった。(5)エピタキシャル(001)PZT薄膜は(100)主配向あるいは混合配向Ir膜上に基板温度600°Cで、エピタキシャル(111)PZT薄膜は(111)主配向Ir膜上に基板温度650°C以上で得られた。(6) PZT薄膜の配向が(001)に強くなればなるほど、またその結晶性が良くなればなるほど、その残留分極が大きくなり、リーク電流が減少する傾向にあった。(7) YSZ層の誘電率の低下の原因が、YSZ層とSi基板との間に存在する約2.5nmの酸化Si層であることがわかった。この酸化Si層は、YSZ層形成温度の低減と、Zr_+Y金属膜の堆積制御により1.3nmに低減出来ることがわかった。1.YSZ膜中の可動イオンについて(1)800°Cの高温で作製したYSZ膜中には、模作製時に発生した欠陥が室温まで冷却する過程で消滅せずに存在するため、イオンがその欠焔を介して動くことが考えられる。そこで試料作製後の室温までの冷却速度を0.11000K/sと変えて、C-V特性におけるその影響を検討した。その結果、C-V特性には殆ど変化が見られなかった。しかし、経時絶縁破壊特性において、冷却速度が110k/sである試料が最も良い特性を示した。このことから、冷却速度の変化は、イオンが移動できる程のマクロな欠陥に対してよりは、絶縁特性に影響するミクロな欠陥に対して大きく影響するものと考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-09450125 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09450125 |
界面制御によるシリコン基板上への強誘電体薄膜のヘテロエピタキシャル成長 | (2)高密度プラズマが試料に直接当たるようにした試料と、できるだけそれを抑制した試料の電気的特性を比較したところ、プラズマに直接当たった方が、C-V特性において可動イオンによる大きいヒステリシス幅を観測した。これより、荷電粒子の試料への衝突が膜中の可動イオンを活性化しているものと考えられる。2.PZT薄膜の低温形成について(1)基板温度460,470°Cの低温で作製したPZT薄膜は、従来と異なる単斜晶系の(110)PZTとして(100)YSZ薄膜上にヘテロエピタキシャル成長した。(2)この薄膜は、as-grownの状態ではリ-ク電流が大きいため、300,325,350°Cと段階的にアニールしたところ、リ-ク電流密度が3Vでlx10-^7A/cm^2以下に低減した。また、このアニールにより、C-V特性が分極に起因したヒステリシス特性を示した。PZTの格子定数に近いものを持つIr金属薄膜をYSZ層とPZT薄膜との間に挿入することによって、界面欠陥の低減を図った。その結果、(1) Ir薄膜は基板温度600°CでYSZ層上にエピタキシャル成長するが、堆積速度が0.42nm/minと遅いと(100)主配向膜となり、1.2nm/minと速いと(111)主配向膜となることがわかった。この(100)主配向膜では、膜厚が17nm程度と薄いにもかかわらず、RBS測定のχminが19%とよく、YSZ層の結晶性を是正するのに有効であった。(2)エピタキシャル(001)PZT薄膜は(100)主配向あるいは混合配向Ir膜上に基板温度600°Cで、エピタキシャル(111)PZT薄膜は(111)主配向Ir膜上に基板温度650°C以上でIr薄膜の結晶情報に従って得られたが、いずれの場合も650°C以上の温度ではIrとPZT薄膜の界面で両者の相互拡散や反応が生じた。(3) PZT薄膜の配向が(001)に強くなればなるほど、またその結晶性が良くなればなるほど、その残留分極が大きくなり、リーク電流が減少する傾向にあった。特に、(100)主配向Ir薄膜に形成した厚さ200nmのエピタキシャル(001)PZT薄膜は、2Pr=80μC/cm^2の残留分極を持ち、3Vの振幅で十分に飽和した角形の良好なP-E特性を示した。2. YSZ層の誘電率の向上についてYSZ層の誘電率の低下の原因が、YSZ層とSi基板との間に存在する約2.5nmの酸化Si層であることがわかった。この酸化Si層は、厚さ2.3nmのYSZ層が形成されるまでに、堆積中のYSZ層を透過した酸素によりほとんど形成されていた。このことから今後は、YSZ層堆積中のその酸素の量を低減することによって、YSZ層の誘電率を向上させる予定である。 | KAKENHI-PROJECT-09450125 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09450125 |
MgO結晶中の原子クラスターの構造と拘性の研究 | 本研究では、超高真空中で蒸着によって作動される酸化マグネシウム膜中又は膜上に担持された金属原子クラスター、構造を高分解能電子顕微鏡やナノメーター電子回打法を駆使して解析すると同時に、担持されに原子クラスターの集合体の拘性(磁性、光吸収、ラコン散乱、触媒活性)を高感度分析機器で測定し原子レベルの試料構造とそれが作り出す物性との相互関係を詳しく研究することを目的としている。本年度は研究の(1)として、金、タニクスランなどの金属クラスターのサイズ減少に伴なう特異構造の発現や、外部からの電子線励起による動射変化を研究した。まず、直径2nmのMgOロッド上に作製された金クラスターを高分解配電子顕微鏡を用いて1/60秒の時間分解機で動的観察した。金のクラスターは以前の飯島らの観察と同様単結晶〓多量双晶粒子と精造変化をおこした。本研究では個々の構造の安定性をその持続時間により評価しMgOと全クラスターの界面構造がその安定性にどのように影響するか研究した。研究の第(2)として、CdSe半導体クラスターをCuF_2膜,MgO膜上に担持し、その構造を電子顕微鏡で解析するとともに光吸収スペクトルを測定した。その結果、光吸収スペクトルはCdSeのボーア半径(エキシトンによる)の4.5nmを境に、異なった量子サイズ動員を反映したものになることを確認した。またMgO膜上にWo_3微結晶を作製し、その構造を解析するとともに、赤外吸収スペクトル及び電子エネルギー損失スペクトルを測定した。特に電子エネルギー損失スペクトルの微細構造は、作製された微結晶か、非晶質、立方晶、単針晶、不定比化合物WO_<2-8>、WO_<2-7>と変化するにつれて変化し、そのスペクトルのみからの各種の結晶相の局所構造の差が識論できることが判明した。本研究では、超高真空中で蒸着によって作動される酸化マグネシウム膜中又は膜上に担持された金属原子クラスター、構造を高分解能電子顕微鏡やナノメーター電子回打法を駆使して解析すると同時に、担持されに原子クラスターの集合体の拘性(磁性、光吸収、ラコン散乱、触媒活性)を高感度分析機器で測定し原子レベルの試料構造とそれが作り出す物性との相互関係を詳しく研究することを目的としている。本年度は研究の(1)として、金、タニクスランなどの金属クラスターのサイズ減少に伴なう特異構造の発現や、外部からの電子線励起による動射変化を研究した。まず、直径2nmのMgOロッド上に作製された金クラスターを高分解配電子顕微鏡を用いて1/60秒の時間分解機で動的観察した。金のクラスターは以前の飯島らの観察と同様単結晶〓多量双晶粒子と精造変化をおこした。本研究では個々の構造の安定性をその持続時間により評価しMgOと全クラスターの界面構造がその安定性にどのように影響するか研究した。研究の第(2)として、CdSe半導体クラスターをCuF_2膜,MgO膜上に担持し、その構造を電子顕微鏡で解析するとともに光吸収スペクトルを測定した。その結果、光吸収スペクトルはCdSeのボーア半径(エキシトンによる)の4.5nmを境に、異なった量子サイズ動員を反映したものになることを確認した。またMgO膜上にWo_3微結晶を作製し、その構造を解析するとともに、赤外吸収スペクトル及び電子エネルギー損失スペクトルを測定した。特に電子エネルギー損失スペクトルの微細構造は、作製された微結晶か、非晶質、立方晶、単針晶、不定比化合物WO_<2-8>、WO_<2-7>と変化するにつれて変化し、そのスペクトルのみからの各種の結晶相の局所構造の差が識論できることが判明した。 | KAKENHI-PROJECT-04230210 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04230210 |
老年期乳がん体験者のソーシャル・サポートと精神的・身体的状況 | 本研究は、日本人老年期乳がん体験者のソーシャル・サポート、ソーシャル・サポート・ネットワーク、精神的・身体的状況の実態と関連を明らかにすることを目的に行われた。精神的状況はソーシャル・サポート・ネットワーク及びコンフリクトに有意相関を示した。重回帰分析により、精神的状況に最も影響する要因としてソーシャル・サポート・ネットワーク、次にコンフリクトという結果を示し、日本人老年期乳がん体験者の精神的状況に影響する重要な要因であることが明らかとなった。本研究は、日本人老年期乳がん体験者のソーシャル・サポート、ソーシャル・サポート・ネットワーク、精神的・身体的状況の実態と関連を明らかにすることを目的に行われた。精神的状況はソーシャル・サポート・ネットワーク及びコンフリクトに有意相関を示した。重回帰分析により、精神的状況に最も影響する要因としてソーシャル・サポート・ネットワーク、次にコンフリクトという結果を示し、日本人老年期乳がん体験者の精神的状況に影響する重要な要因であることが明らかとなった。平成19年度の研究実施計画は、(1)文献検討、(2)研究情報・資料収集、(3)データ収集、(4)初期データ分析であった。(3)データ収集は、面接による質的なデータ収集を終了している。質問紙を使用したデータ収集は、今現在も進行中である。(4)初期データ分析は、面接による質的なデータに関し分析を行った。65歳以上の乳がん体験者のソーシャル・サポートのタイプとソーシャル・サポートの提供者であるソーシャル・サポート・ネットワークの特性が明らかとなった。平成20年度の計画は、(1)データ収集、(2)初期データ分析、(3)文献検討および初期データ分析結果との比較、(4)学会発表・研究情報・資料収集であった。(1)データ収集面接による質的なデータ収集は、昨年度に終了しており、今年度は量的データ収集を2つの医療施設において遂行し、現在も継続中である。(2)初期データ分析量的データの初期データ分析として開始し、この分析結果をまとめて関連する学会に抄録を提出した。来年度は、最終年度である。データ収集を終了し、データ分析、研究成果報告書を作成の予定である。実施計画は、(1)データ分析,(2)分析結果の検討、(3)研究成果の発表、(4)研究成果のまとめの4点であった。(1)データ分析:収集したデータ分析を行い、その結果を要約し検討した。(2)分析結果の検討国内外において発表された関連する研究論文の追加検索を行い、得られた文献の内容を検討し、データ分析結果との比較考察を行った。また、文献研究を学会で発表した内容に考察を加え、論文投稿し掲載に至った。論文の標題は、「老年期乳がん体験者のソーシャル・サポートに関する研究の動向と今後の課題:英文献からの検討」である。(4)研究成果のまとめ上記をふまえて、研究の最終まとめを行い、研究成果報告書を平成23年5月に提出し、評価する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-19592503 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19592503 |
有明海奥部における貧酸素水塊の発生機構と防止法に関する研究 | 夏季に貧酸素水塊が広域かつ長期間に発生している奥部西岸域の2観測地点でDoPa型多項目計測装置を用いて海底上30cmの流速,DO,塩分,水温などを2005年2007年夏季に1時間ごとに自動計測し,これらの詳細なデータを基に貧酸素水塊の発生状況を明らかにした.貧酸素水塊の発生に合わせて,この海域に設定した縦断及び横断方向の測線に沿い流速,DO,塩分,水温の鉛直プロフィルを多項目水質計で測定し,貧酸素水塊発生と密度分布構造との関連性を把握した.また,貧酸素水塊発生時に2観測地点で海底から海面まで採水(0.51.0m毎)した試料の懸濁態有機物,栄養塩類の定量分析と底泥,底層水の酸素消費量の測定を行い,底層の酸素消費速度が懸濁態有機物量によって大きく左右されることを明らかにした.さらに,現地観測結果に基づき奥部西岸域に設定した塩分,淡水及びDO収支に関する2層ボックスモデルを34年間の佐賀県浅海定線調査データに適用し,この海域における水平及び鉛直方向の移流速度,表層と底層間の鉛直拡散係数及び密度成層強度,底層のDO消費速度の平年値の月変動を求め,密度成層強度の高くなる夏季において鉛直拡散係数が低下し,逆に底層のDO消費速度が増加することを示した.奥部西岸域における貧酸素水塊発生は,密度躍層の形成に伴う表層から底層へのDOの鉛直拡散フラックスの低下と水温上昇や懸濁態有機物量の増加による底層でのDO消費量の増大に起因することを明らかにした.一方,潮汐発生水路を用いて密度成層場における貧酸素水塊の発生防止ブロック周辺の流れ構造を3次元超音波流速計及び可視化法により計測し,乱れ強度,渦スケール及び渦動拡散係数を算出した.その結果に基づき,貧酸素水塊の発生防止策の1つとして湧昇流を効率的に発生させるブッロクの設置が有効であることを示した.貧酸素水塊の発生時には底泥からのNH_4^+の溶出量が増大することや貧酸素水塊の頻発する海域では生態系が貧困であることを明らかにした.夏季に貧酸素水塊が広域かつ長期間に発生している奥部西岸域の2観測地点でDoPa型多項目計測装置を用いて海底上30cmの流速,DO,塩分,水温などを2005年2007年夏季に1時間ごとに自動計測し,これらの詳細なデータを基に貧酸素水塊の発生状況を明らかにした.貧酸素水塊の発生に合わせて,この海域に設定した縦断及び横断方向の測線に沿い流速,DO,塩分,水温の鉛直プロフィルを多項目水質計で測定し,貧酸素水塊発生と密度分布構造との関連性を把握した.また,貧酸素水塊発生時に2観測地点で海底から海面まで採水(0.51.0m毎)した試料の懸濁態有機物,栄養塩類の定量分析と底泥,底層水の酸素消費量の測定を行い,底層の酸素消費速度が懸濁態有機物量によって大きく左右されることを明らかにした.さらに,現地観測結果に基づき奥部西岸域に設定した塩分,淡水及びDO収支に関する2層ボックスモデルを34年間の佐賀県浅海定線調査データに適用し,この海域における水平及び鉛直方向の移流速度,表層と底層間の鉛直拡散係数及び密度成層強度,底層のDO消費速度の平年値の月変動を求め,密度成層強度の高くなる夏季において鉛直拡散係数が低下し,逆に底層のDO消費速度が増加することを示した.奥部西岸域における貧酸素水塊発生は,密度躍層の形成に伴う表層から底層へのDOの鉛直拡散フラックスの低下と水温上昇や懸濁態有機物量の増加による底層でのDO消費量の増大に起因することを明らかにした.一方,潮汐発生水路を用いて密度成層場における貧酸素水塊の発生防止ブロック周辺の流れ構造を3次元超音波流速計及び可視化法により計測し,乱れ強度,渦スケール及び渦動拡散係数を算出した.その結果に基づき,貧酸素水塊の発生防止策の1つとして湧昇流を効率的に発生させるブッロクの設置が有効であることを示した.貧酸素水塊の発生時には底泥からのNH_4^+の溶出量が増大することや貧酸素水塊の頻発する海域では生態系が貧困であることを明らかにした.初年度である平成17年度においては、まず有明海奥部の2地点でDoPa型多項目計測装置を用いて、7月9月の夏季に海底付近の流速、DO、塩分、海水温などの経時変化について現地観測を行った。また、その間、4回にわたって船上から流速計や多項目水質計を用いて、DO、塩分、海水温、クロロフィルの鉛直プロフィルを奥部の縦断方向に計測した。さらに、1972年2004年までの奥部の水質及び底質に関する既存の観測データを収集、整理した。一方、現地観測地点の底質を採取し、底質のDO消費実験を行うと同時に、潮汐発生水路を用いて、有明海の潮汐と同様な共動潮の水理的特性に関する実験を行った。そして、これらのデータに基づいて、有明海奥部での貧酸素水塊の発生状況や発生機構などについて検討、考察した。その結果、明らかとなった主な点を要約すると、次のようになる。1.過去30年間の夏季における貧酸素水塊の発生頻度は、MdΦ≧6、COD≧14mg/g-dryの奥部西岸域で最も高かった。 | KAKENHI-PROJECT-17380146 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17380146 |
有明海奥部における貧酸素水塊の発生機構と防止法に関する研究 | 2.奥部西岸域における夏季のDOの経時変化は、潮汐の経時変化と密接な関係にあり、基本的にはDOは小潮時に低下し、大潮時に上昇した。しかし、風波が高い場合や河川水が流入した場合には、このような関係は見られなかった。3.貧酸素発生時においては、奥部西岸域の縦断方向に強い密度成層が形成された。そして、躍層上部の表層にはDOの過飽和が、また躍層下部の底層には飽和度30%以下の貧酸素水塊の発生が観測された。4.海水温の鉛直プロフィルを2層鉛直拡散モデルに適用して算出した密度成層形成時の鉛直拡散係数と成層強度との間には、密接な関連性が見られた。そして、鉛直拡散係数は成層強度の増加に伴って、指数関数的に減少した。5.奥部西岸域の夏季における貧酸素水塊の形成機構が推察された。すわなち、基本的には鉛直方向の撹拌力の低下する小潮時に河川水、沖合海水、海面加熱の影響を受けて密度成層が形成される。その結果、底層のDO消費量が表層からのDO供給量を上回るために貧酸素水塊が形成、発達すると考えられた。有明海奥部西岸域の2地点でDoPa型多項目計測装置を用いて、7月9月の夏季に海底付近の流速、DO、塩分等の現地観測を行った。また、その間、2回にわたり船上から電磁流速計や多項目水質計を用いて、DO、塩分等を横断及び縦断方向に測定し、貧酸素水塊の発生時における海洋構造を観測した。さらに、DoPa型多項目計測装置を設置した2地点で、約1周期にわたり流速、塩分、クロロフィル-aの鉛直プロフィルの経時変化を測定すると同時に、2地点で底泥と深さ50cm毎の海水を採取し、酸素消費実験を行った。一方、過去29年間の奥部西岸域の浅海定線データに2層ボックスモデルを適用し、各月の密度成層強度、鉛直拡散係数及び定層の酸素消費速度を算定した。最後に、これらの観測、分析及び解析の結果に基づいて、奥部西岸域における貧酸素水塊の発生機構について検討、考察した。その結果、明らかとなった主な点を要約すると、次のようになる。1.2地点での鉛直流成分から密度成層期における鉛直拡散係数の分布性が明らかにされた。すなわち、鉛直拡散係数は表層及び底層で高く、密度成層下端付近で大きく低下した。したがって、密度躍層の形成は表層から下層への酸素供給量を大きく抑制するものと考えられた。2.2地点における底層の酸素消費速度は底層・底質の酸素消費速度の約6080%を占めた。また、両地点における底層の酸素消費速度は底層中の縣濁態有機炭素の増加に伴って増大した。したがって、表層の植物プランクトンの死骸や底質から巻き上げられた有機物は底層の酸素消費速度を大きく左右するものと推察された。3.密度成層強度は夏季に増加し、冬季に減少した。また、逆に鉛直拡散係数は夏季に減少し、冬季に増加した。一方、底層の酸素消費速度は、夏季に正の値すなわち消費を、また冬季に負すなわち生産を示した。したがって、夏季の貧酸素水塊の発生は、底層の酸素消費量と表層から底層への酸素供給量のアンバランスに因るものと考えられた。夏季に激しい貧酸素水塊が広域かつ長期間に発生している奥部西岸域の2観測地点でDoPa型多項目計測装置を用いて海底上20cmの流速、DO、塩分、水温、濁度などを2007年7月9月にわたって1時間ごとに自動計測し、これらの詳細な時系列データを収集した。貧酸素水塊の発生に合わせて、この海域に設定した縦断及び横断方向の測線に沿い流速、DO、塩分、水温、クロロフィル-aの鉛直プロフィルを多項目水質計などにより数回測定し、貧酸素水塊発生時の密度分布構造を明らかにした。また、貧酸素水塊発生時に2観測地点で海底から海面までの採水(0.51.0m毎)と採泥を行い、これらの採取した試料の無機態窒素やリン酸などの定量分析、酸素消費量及び底泥中のマクロベントスの種類と個体数を測定した。 | KAKENHI-PROJECT-17380146 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17380146 |
郵政民営化の国際比較研究 | 郵政民営化を取引費用という観点から分析した。この成果として「取引費用の数理モデル」と題する学術論文を『法学論叢』に第168巻第1号から第5号にかけて、5回にわたって掲載した。また、チリ・ボリビア・ペルー・コロンビア・フィリピンの比較分析を行い、『法学論叢』に第172巻第4から第6号にかけて、3回にわたって掲載した。郵政民営化を取引費用という観点から分析した。この成果として「取引費用の数理モデル」と題する学術論文を『法学論叢』に第168巻第1号から第5号にかけて、5回にわたって掲載した。また、チリ・ボリビア・ペルー・コロンビア・フィリピンの比較分析を行い、『法学論叢』に第172巻第4から第6号にかけて、3回にわたって掲載した。本年度は「取引費用の数理モデル」と題する学術論文を『法学論叢』に第168巻第1号から第5号にかけて、5回にわたって掲載した。その内容は以下の通りである。まず、取引費用理論の成立と発展に大きく貢献したコース・ウィリアムソン・ノースの理論について概説を行った。その後、取引費用経済学における実証研究を垂直統合・事業部制組織・垂直的な組織間の相互関係・水平的な組織間の相互関係・経済史研究の5つに分け、各研究の独立変数と従属変数およびキー・ファインディングを整理するとともに、その成果について検討を加えた。続いて、公共政策・議会・行政組織などの政治学の各分野に取引費用理論を応用した実証研究について考察した。その際、取引費用経済学の整理と同様に、各研究の独立変数と従属変数およびキー・ファインディングを要約し、その成果を分析した。最後に、拙稿『民営化の取引費用政治学』における企業組織の制度設計(第5章)やエージェンシー選択の制度設計(第4章)を、数理モデルを用いて分析した。これによって、交付申請書に記載した「研究目的」の1つである「取引費用モデル」の適用性を検証することができた。また、「取引費用モデル」の数理モデル化にもあわせて取り組むことにより、民営化にともなう費用や効用を定量的に測定・予測するための手掛かりが得られた。昨年度には、「取引費用の数理モデル」と題する学術論文を『法学論叢』に第168巻第1号から第5号にかけて、5回にわたって掲載した。そこでは「取引費用モデル」の数理モデル化に取り組んでおり、民営化にともなう費用や効用を定量的に測定・予測するための手掛かりが得られた。本年度はその成果を踏まえて、いかなる分割・民営化の形態がより効率的なのか、という問いを解くことを研究の目的とした。そのために、英国とニュージーランドにおける郵政民営化に関する文献及び資料を収集・精読することを研究の計画として立てていた。計画した通り、両国に関する資料を集めるとともに、日本とドイツの郵政事業と比較しながら分析を進めた。取引費用モデルに基づいて日本・ドイツの郵政事業と英国・ニュージーランドの郵政事業の効率性を比較・分析した結果、英国とニュージーランドの方が日独に比べて非効率的であることが判明された。現在は、その効率性の違いを生み出した要因に関する政治過程を調査している。政治過程を丹念に追跡することによって、日本・ドイツと英国・ニュージーランドにおける郵政事業の効率性の差が明らかになったくると考える。来年度にはその具体的な研究成果を各学会に発信し、雑誌に掲載する予定である。民営化(Privatization)という概念は、民間委託や分権といった用語と類似した意味で使われる場合が多い。今年度は民営化と非常に密接に結び付いている分権政策を取り上げ、国際比較研究を行った。その成果を次のように発信した。「地方分権の国際比較ーチリ・ボリビア・ペルー・コロンビア・フィリピンの比較分析ー」、『法学論叢』、第172、第4・5・6号、385ー462頁。ここでは、なぜ中央政府は自らの権限と財源を地方政府に移譲するのか。どのような条件下で地方分権を推進するのか。分権化のタイミングとスピードは何によって決まるのか。また、ペルーの再集権化はいかに説明できるのかといった問いを発し、単一集権国家・大統領制・人口をコントロールした上、韓国との対比を前提に、チリ・ボリビア・ペルー・コロンビア・フィリピンの5ヶ国を比較分析の対象国と選択した。5ヶ国の各政権を実証分析した結果、ペルーのトレド政権・コロンビアのベタンクール政権・韓国の盧武鉉政権を除き、仮説は当てはまった。仮説から外れた3つの政権の場合、既存の集権化政策をひっくり返すための手段として分権化を進めた事例もあれば(ペルーのトレド政権)、政権交代の可能性(コロンビアのベタンクール政権)や大統領の信念(韓国の盧武鉉政権)で説明できる事例もある。5ヶ国のうち、コロンビアを除き、チリ・ボリビア・ペルー・フィリピンの4ヶ国は権威主義体制を経験している。これらの国における政治的分権は民主化のための手段として使われると同時に、政権党の党派的利益を強化する手段としても利用された。これに対し、行財政的分権は民主化の過程と重ならず、政権党が同一党派の地方政府を手助けするための手段であった。全体的に、中央政府の場合は大統領選挙の過程で、地方政府は地方選挙で両方が業績誇示の手段として分権政策をアピールしたのである。研究の目的はおおむね順調に進んでいる。24年度が最終年度であるため、記入しない。本年度は各学会にて研究成果を発信するとともに、論文を専門雑誌に掲載する。今後、研究書として論文をまとめたいと考えている。 | KAKENHI-PROJECT-22730114 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22730114 |
郵政民営化の国際比較研究 | 24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22730114 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22730114 |
タウオパチーにおけるエンドサイト―シス障害とビトロネクチン蓄積機構の解明 | PS19タウオパチーモデルマウスでは、海馬貫通線維領域において過剰リン酸化したタウ病変を形成する。タウ病変の進行に伴い、海馬萎縮することが知られている。当研究において、同領域に病初期よりビトロネクチン(Vn)が蓄積していることを確認した。当マウスは海馬萎縮が強まるほどVn蓄積量が低下すること、Vnを欠損させたタウマウスでは萎縮が加速することを明らかにした。従って当マウスにおいてVnは、神経保護作用を担っているものと考える。認知症タウオパチーモデルマウスでは海馬領域タウ病変出現だけでなく同領域の有髄神経軸索にビトロネクチン(Vn)が蓄積する。そこでVn蓄積メカニズムを遺伝子的に確認する為に、Vnとその受容体の一つであるインテグリンbeta5受容体(ITGB5)をIn-situ hybridization法によって野生型マウスと比較検討した。Vn mRNAは主に血管周囲細胞と軟膜細胞に発現しており、野生型マウスと比較して分布や量に明らかな違いを認めなかった。一方、ITGB5 mRNAは病変部位に集族したミクログリアに発現していることを確認した。以上より同モデルの海馬領域に蓄積したVnは疾患に伴って局所で過剰産生されたものでないこと、同領域の主なITGB5発現細胞はミクログリアであることが明らかとなった。Vn遺伝子欠損したタウマウスを作製し、小動物MRIにて海馬容積をVn野生型マウスと比較した。Vn野生型マウス群は海馬容積にバラツキを認めるものの、Vn欠損群は一様に強度の萎縮を呈していた。撮影終了後、Vn野生型マウスを解剖して組織切片を作製し免疫組織学的に評価した。病変部のVnやミエリン塩基性タンパクシグナル値は海馬容積に関連していること、またITGB3タンパクシグナルが同領域に陽性化していることを確認した。更にタウ封入体を形成している領域ではITGB3だけでなく、ITGB5タンパクシグナルが陽性化していることを確認した。これらの一連の結果は、病変部におけるVnの蓄積とその受容体であるインテグリン発現による脱ミエリンに対する防御並びに、再ミエリン化に向けた神経修復過程を観察している可能性が考えられた。当メカニズムが様々な精神神経疾患の神経修復機構に該当するのか否かを明らかにすると共に、病態に影響すると見込まれる分子を標的とした診断治療薬開発を目指したいと考えている。タウオパチーモデルマウスにおけるビトロネクチン(Vn)蓄積領域を明らかにするために組織スライスを作成して免疫組織学的に検討した。Vn蓄積は特に嗅内野第2神経細胞層から投射している歯状回分子層領域に分布していることを明らかにした。当分子層は神経軸索、樹状突起から構成される線維層として知られている。Vn蓄積意義を確認するためにVn欠損掛け合わせタウマウスを作成した。Vn野生型タウマウスと比較するために生後14月齢でMRI撮影を行い、歯状回分子層の容積評価を行った。撮影終了後に解剖・脳摘出を行い、組織切片作成を行った。画像解析を行った結果、Vn欠損掛け合わせタウマウス群は一様に強度の萎縮による容積減少を認め、一方Vn野生型群は容積にばらつきを認めた。またVn野生型群内においては容積と、免疫組織学的染色によって得られた対応する脳領域のVn染色シグナル量間に正の相関関係を認めた。これらの結果より鑑みて、Vn蓄積はタウ病変形成に起因した神経脱落に伴う脳萎縮過程において抑制・保護的に働いているものと見込んでいる。Vnの蓄積はタウ封入体形成よりも早期に起こることを組織学的検討にて確認している。当マウスにおける分子層の萎縮機構とVn蓄積の意義を解明するために、各個体の軸索や樹状突起からなる神経線維やVn蓄積量とMRI脳容積データと比較する作業を14月齢だけでなく、更に若齢に遡り検証を試みようと考えている。PS19タウオパチーモデルマウスでは、海馬貫通線維領域において過剰リン酸化したタウ病変を形成する。タウ病変の進行に伴い、海馬萎縮することが知られている。当研究において、同領域に病初期よりビトロネクチン(Vn)が蓄積していることを確認した。当マウスは海馬萎縮が強まるほどVn蓄積量が低下すること、Vnを欠損させたタウマウスでは萎縮が加速することを明らかにした。従って当マウスにおいてVnは、神経保護作用を担っているものと考える。ビトロネクチン(Vn)欠損マウスの組織を用いて、市販されている様々な抗マウスVn抗体特性を免疫組織学的並びに生化学的に評価し、その中で最も特性の優れた抗体を選定した。同抗体を用いてVn野生型タウモデルマウスの脳組織染色を行なったところ、嗅内皮質、海馬支脚、特に歯状回分子層に明瞭な染色像を確認した。同マウスを4、9、14月齢に区切って染色を試みると9月齢に強い蓄積像が観察され、14月齢にもその蓄積像は維持されていた。この所見は嗅内皮質の病変形成に一致して出現するものと考えられ、投射先である歯状回領域に蓄積して神経保護、修復や新生機構に寄与しているものと思われる。そこでVnの病態への影響を明らかにするために、Vn欠損タウ掛け合わせマウスとVn野生型タウモデルマウスの縦断的形態イメージング並びに横断的病理学的、生化学的比較解析実験を開始している。 | KAKENHI-PROJECT-23591735 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23591735 |
タウオパチーにおけるエンドサイト―シス障害とビトロネクチン蓄積機構の解明 | このVn蓄積機構は局所で発現するのではなく、血流に存在していたVnが脳関門を通過して炎症局所に集積したものと予想している。今後ヒトタウオパチーにもマウスと同様の現象が引き起こされているか否かを確認する事を予定している。当該現象が虚血や低酸素脳症、更には統合失調症を始めとする現在病態不明とされる中枢性疾患にも確認されれば、Vnを新規中枢疾患分子マーカーとして位置付ける事により同タンパクを介した病態機構の解明を通じて関連する分子を標的としたイメージング剤や治療薬の開発を目指せる可能性が見込まれる。タウ病変に伴い蓄積したVnが神経保護や修復機構に寄与していることを示唆する数々の結果を得ることが出来ており、現在のところ研究の方向性を大きく修正する必要が無いように思われる。Vn蓄積を確認するうえで申請当初に使用していたA社抗体は異なるタンパクを認識する事が明らかとなり実験を遂行する事自体が危ぶまれたが、B社抗体ではVn欠損マウスで認識しない事を生化学的にも確認し、同抗体による組織染色においても病変領域に染色像が確認され、実験遂行上支障ないと判断した。1.神経修復過程における病変局所でのVn受容体発現機構の解析2.免疫学的組織染色法によるヒト精神神経疾患病態との比較検討1.モデルマウスでのVn蓄積所見とヒトタウオパチーでの病理学的整合性の検討2.局所に蓄積するVnの発現機構の解明2.ヒト精神神経疾患病理組織切片を用いたVn並びにVn受容体タンパク発現評価1.ヒトVn抗体を用いてタウオパチーや他の精神神経疾患脳病理学的染色実験2.In situ hybridisation法による局所での遺伝子発現の有無の検討 | KAKENHI-PROJECT-23591735 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23591735 |
脳老化因子の同定とアルツハイマー病発症機序の解明 | 昨年までの検討によりヒト脳由来のヘパラン硫酸プロテオグリカンであるグリピカン-1が凝集化Aβ40とヘパラン硫酸鎖依存的に結合すること、そしてこのグリピカン-1が細胞膜上のラフトあるいはカベオラと呼ばれる特異的な微小ドメインにAβとともに集積していることが明らかとなった。以上の結果から、細胞膜上の限局された場において効率的にAβとグリピカン-1が結合することで、Aβの安定性や凝集体形成が促進されている可能性が示唆された。さらにグリピカン-1の生理的な役割を調べるため、ヒトneuroblastoma細胞であるSH-SY5Y細胞にグリピカン-1を強制発現させた細胞を作成し解析した。まず、MTT法により細胞の生存率を検討した結果、APPとグリピカン-1を共発現させた細胞では経時的に生存率が減少していったが、グリピカン-1単独では生存率に変化は見られなかった。また、Thapsigargin処理により小胞体ストレスを誘導した場合、APPとグリピカン-1の共発現細胞においてAPP単独発現細胞よりもストレスに対して脆弱性を示した。この他、SH-SY5Y細胞の培養液中にAβを加えて培養後、内因性のグリピカン-1の発現を調べた結果、無処理の細胞に比べてグリピカン-1の発現に増加が見られた。これらの結果から、脳内においてAβ産生が亢進するとグリピカン-1の発現が増加し、それに伴い神経細胞死が起きやすくなると考えられる。昨年までの検討によりヒト脳由来のヘパラン硫酸プロテオグリカンであるグリピカン-1が凝集化Aβ40とヘパラン硫酸鎖依存的に結合すること、そしてこのグリピカン-1が細胞膜上のラフトあるいはカベオラと呼ばれる特異的な微小ドメインにAβとともに集積していることが明らかとなった。以上の結果から、細胞膜上の限局された場において効率的にAβとグリピカン-1が結合することで、Aβの安定性や凝集体形成が促進されている可能性が示唆された。さらにグリピカン-1の生理的な役割を調べるため、ヒトneuroblastoma細胞であるSH-SY5Y細胞にグリピカン-1を強制発現させた細胞を作成し解析した。まず、MTT法により細胞の生存率を検討した結果、APPとグリピカン-1を共発現させた細胞では経時的に生存率が減少していったが、グリピカン-1単独では生存率に変化は見られなかった。また、Thapsigargin処理により小胞体ストレスを誘導した場合、APPとグリピカン-1の共発現細胞においてAPP単独発現細胞よりもストレスに対して脆弱性を示した。この他、SH-SY5Y細胞の培養液中にAβを加えて培養後、内因性のグリピカン-1の発現を調べた結果、無処理の細胞に比べてグリピカン-1の発現に増加が見られた。これらの結果から、脳内においてAβ産生が亢進するとグリピカン-1の発現が増加し、それに伴い神経細胞死が起きやすくなると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-00J60504 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-00J60504 |
PAI-1測定による常位胎盤早期剥離の予知、予防法の開発 | PAI-1欠損症が流産、常位胎盤早期剥離を起こすことを我々は報告してきた。正常胎盤ではPAI-1が脱落膜細胞に強く染色されたが、不全流産例では脱落膜細胞の染色性がほとんどなく認めなかった。不全流産の中に脱落膜細胞のPAI-1発現低下が関与している症例があることを示唆するものである。妊娠初期の血漿PAI-1の測定と切迫流産の関係では子宮収縮と伴った切迫流産はPAI-1が10ng/mL以下の低値取る傾向にあった。常位胎盤早期剥離は3例あったが、そのうち1例はPAI-1が低値であった。常位胎盤早期剥離の発症原因の中にPAI-1低値が含まれることが示唆された。PAI-1欠損症が流産、常位胎盤早期剥離を起こすことを我々は報告してきた。正常胎盤ではPAI-1が脱落膜細胞に強く染色されたが、不全流産例では脱落膜細胞の染色性がほとんどなく認めなかった。不全流産の中に脱落膜細胞のPAI-1発現低下が関与している症例があることを示唆するものである。妊娠初期の血漿PAI-1の測定と切迫流産の関係では子宮収縮と伴った切迫流産はPAI-1が10ng/mL以下の低値取る傾向にあった。常位胎盤早期剥離は3例あったが、そのうち1例はPAI-1が低値であった。常位胎盤早期剥離の発症原因の中にPAI-1低値が含まれることが示唆された。産科補償制度の年次報告では脳性麻痺の原因として常位胎盤早期剥離(早剥)がもっとも頻度の高い疾患となっている。世界中の種々の報告でも早剥は周産期死亡の主たる疾患となっている。従来早剥の原因として妊娠高血圧症候群が注目されていたが、現在では妊娠高血圧症候群による早剥は少なく70%以上は原因不明と言われている。この原因不明の早剥が非常に多いにも係わらず、その原因は全く解明されていない。また絨毛膜下血腫は早剥の近縁疾患であるが、早産の大きな原因である。我々は妊娠の維持には胎盤と脱落膜の間に存在するフィブリノイド層が重要であることを見出している。またプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1(PAI-1)の欠損症妊婦ではこのフィブリノイド層が十分形成されず、早剥あるいは絨毛膜下血腫が発生することが明らかになっている。PAI-1低下症が早剥・絨毛膜下血腫に関与するとの仮説のもと平成25年度は次の研究を行った。1)市販のトータルPAI-1測定キットで多数例の妊婦を対象に前方視野的研究を行った。具体的には初期妊婦健診の血液を用いてPAI-1を測定し、早剥・絨毛膜下血腫の発生と妊娠初期のPAI-1濃度との関連を検討した。平成26年度3月までに約1100例の妊婦の採血を行い、約400例が分娩を終了した。中間解析を行ったところ、PAI-1値はBMIが低い群に有意に多かった。PAI-1低下例(10ng/mL以下)は約1割存在した。PAI-1低下例では切迫流産の発生が高い傾向にあった。またPAI-1低下例では子宮収縮のない頸管長短縮型の切迫早産に多いことが示された。切迫流産にどの程度の絨毛膜下血腫が含まれているか、また子宮収縮のない頸管長短縮型の切迫早産が早剥のリスクか否かについて現在検討中である。1100例すべての分娩が終了するのは平成26年秋なので今年度中には最終解析が可能である。産科補償制度の年次報告では脳性麻痺の原因として常位胎盤早期剥離(早剥)がもっとも頻度の高い疾患となっている。早剥の原因は70%以上は原因不明と言われている。この原因不明の早剥が非常に多いにも係わらず、その原因は全く解明されていない。また絨毛膜下血腫は早剥の近縁疾患であるが、早産の大きな原因である。我々は妊娠の維持には胎盤と脱落膜の間に存在するフィブリノイド層が重要であることを見出している。またプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1(PAI-1)の欠損症妊婦ではこのフィブリノイド層が十分形成されず、早剥あるいは絨毛膜下血腫が発生することを報告した。PAI-1低下症が早剥・絨毛膜下血腫に関与するとの仮説のもと平成26年度は次の研究を行った。1)市販のトータルPAI-1測定キットで多数例の妊婦を対象に前方視野的研究を行った。平成27年度3月までに約1600例の妊婦の採血を行い、平成27年3月末には1032例が分娩を終了した。切迫流産は174例に見られた。切迫流産群(18.6±12.7ng/mL)と非切迫流産群(18.2±12.2ng/mL)の間のPAI-1値に有意差を認めなかった。しかし切迫流産で子宮収縮と伴った群(84例)と伴わない群(90例)で見てみると、子宮収縮と伴った群ではPAI-1が10ng/mL以下の低値群では20例あり、子宮収縮を伴わない群では3例のみであった。 | KAKENHI-PROJECT-25670700 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25670700 |
PAI-1測定による常位胎盤早期剥離の予知、予防法の開発 | 絨毛膜下血腫を伴った切迫流産と絨毛膜下血腫を伴わない切迫流産群の間でPAI-1値は有意な差を認めなかった。切迫早産の有無とPAI-1については切迫早産あり群はPAI-1値が17.8±11.4ng/mL、切迫早産無し群は18.4±12.6ng/mLであり有意差を認めなかった。全症例中に常位胎盤早期剥離が3例あったが、そのうち1例がPAI-1値10ng/mL以下であった。産婦人科学前方視的研究は平成26年3月に1100例の血液を採取した。当初の1000例の目標は達成された。(今後の推進方策)1,当初目標の1000例の血液採取は終了したので、トータルPAI-1を全例で測定し臨床経過との関連を検討する。2.トータルPAI-1はPAI-1活性を見るものではないのでPAI-1活性測定系を確立する。採取した血液でPAI-1活性を測定しトータルPAI-1との比較(臨床転帰との比較も含む)を行う。 | KAKENHI-PROJECT-25670700 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25670700 |
数論的変換とエルゴード理論 | 1.複素n進展開とフラクタル図形との関連については、i-nを底とする複素数小数展開の領域の境界がフラクタル曲線となること、さらにそのハウスドルフ次元が対応する三次方程式の根を用いて具体的に求まることが、デッキングの方法を精密化することにより得られた。(田中,丹羽)この考えはさらに一般化され、ランク2の自由群上のエンドモルフィズムから導出されるフラクタル図形としてとらえられることが示され、現在、論文にまとめている。(伊藤,大槻)2.多次元の数論的変換、とくに非有界な不変測度をもつクラスの弱ベルヌイ性については、それをもつための十分条件が満足できる条件で得られた。(由利)これにより、由利氏は学位を取得した。3.デイオファンタス近似、とりわけその同時近似について、最近新しいアルゴリズムが考え出され、そのナチュラルエクステンションなどが求められている。現在、そのアルゴリズムの数論としての位置づけや、他のアルゴリズム(たとえばヤコビーペロンのアルゴリズム)との関連がしらべられている。(伊藤,笠原)1.複素n進展開とフラクタル図形との関連については、i-nを底とする複素数小数展開の領域の境界がフラクタル曲線となること、さらにそのハウスドルフ次元が対応する三次方程式の根を用いて具体的に求まることが、デッキングの方法を精密化することにより得られた。(田中,丹羽)この考えはさらに一般化され、ランク2の自由群上のエンドモルフィズムから導出されるフラクタル図形としてとらえられることが示され、現在、論文にまとめている。(伊藤,大槻)2.多次元の数論的変換、とくに非有界な不変測度をもつクラスの弱ベルヌイ性については、それをもつための十分条件が満足できる条件で得られた。(由利)これにより、由利氏は学位を取得した。3.デイオファンタス近似、とりわけその同時近似について、最近新しいアルゴリズムが考え出され、そのナチュラルエクステンションなどが求められている。現在、そのアルゴリズムの数論としての位置づけや、他のアルゴリズム(たとえばヤコビーペロンのアルゴリズム)との関連がしらべられている。(伊藤,笠原) | KAKENHI-PROJECT-61540165 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61540165 |
安定14族金属配位不飽和化合物の合成と光化学 | 安定な14族金属配位不飽和化合物の合成、構造、および反応挙動を明らかにし、炭素を含めた14族元素の配位不飽和科学種の構造論と反応論の深化・革新に貢献することを目的として研究を行い、以下の成果を得た。(1)安定なジアルキルシリレンとジクロロメタンやクロロメチルシクロプロパンとの異常反応を発見した。これらの反応挙動から、シリレンのアンビフィリックな反応性を初めて明確に示した。(2)安定シリレンの光励起状態の反応性を初めて見いだした。(3)ジアミノシリレンの二量体構造に関する論争に決着をつけた。(4)安定なジシレンのE, Z-異性化の機構と異性化の容易さに対する顕著な置換基効果を発見した。(5)ジシレンに対するアルコールおよびハロアルカンの付加反応の特異な機構を実験的理論的に明らかにした。(6)新しいシリルリチウム試薬として、1,2-ジリチオジシランを対応する安定ジシレンから合成した。(7)上記1,2-ジリチオジシランを用いて、1,3-ジシラビシクロ[1.1.0]ブタン系を初めて合成し、このものが、反転した架橋ケイ素-ケイ素結合を持つ事を明らかにした。(8)ジシレン白金錯体のX線構造解析に初めて成功し、このものがメタラシクロプロパン型構造であることを明らかにした。(9)ケイ素-ケイ素二重結合2個がスピロ共役した蝶ネクタイ型分子(スピロペンタシラジエン)を初めて合成した。X線構造解析、理論計算などに基づき、炭素類緑体でも知られていない、そのスピロ共役の様式と大きさを明らかにした。(10)極性の反転したケイ素-炭素二重結合を持つシラトリアフルベンの安定な誘導体の合成に成功し、その構造を明らかにした。これらの科学を展開することによって、より包括的な新しい科学構造論と反応論を構築することに寄与し、次世代の創造的な科学技術を生み出す基礎を提供できたと考えている。安定な14族金属配位不飽和化合物の合成、構造、および反応挙動を明らかにし、炭素を含めた14族元素の配位不飽和科学種の構造論と反応論の深化・革新に貢献することを目的として研究を行い、以下の成果を得た。(1)安定なジアルキルシリレンとジクロロメタンやクロロメチルシクロプロパンとの異常反応を発見した。これらの反応挙動から、シリレンのアンビフィリックな反応性を初めて明確に示した。(2)安定シリレンの光励起状態の反応性を初めて見いだした。(3)ジアミノシリレンの二量体構造に関する論争に決着をつけた。(4)安定なジシレンのE, Z-異性化の機構と異性化の容易さに対する顕著な置換基効果を発見した。(5)ジシレンに対するアルコールおよびハロアルカンの付加反応の特異な機構を実験的理論的に明らかにした。(6)新しいシリルリチウム試薬として、1,2-ジリチオジシランを対応する安定ジシレンから合成した。(7)上記1,2-ジリチオジシランを用いて、1,3-ジシラビシクロ[1.1.0]ブタン系を初めて合成し、このものが、反転した架橋ケイ素-ケイ素結合を持つ事を明らかにした。(8)ジシレン白金錯体のX線構造解析に初めて成功し、このものがメタラシクロプロパン型構造であることを明らかにした。(9)ケイ素-ケイ素二重結合2個がスピロ共役した蝶ネクタイ型分子(スピロペンタシラジエン)を初めて合成した。X線構造解析、理論計算などに基づき、炭素類緑体でも知られていない、そのスピロ共役の様式と大きさを明らかにした。(10)極性の反転したケイ素-炭素二重結合を持つシラトリアフルベンの安定な誘導体の合成に成功し、その構造を明らかにした。これらの科学を展開することによって、より包括的な新しい科学構造論と反応論を構築することに寄与し、次世代の創造的な科学技術を生み出す基礎を提供できたと考えている。炭素化合物のカルベンやオレフィンに相当する、ケイ素やゲルマニウムの2価化学種(シリレンおよびゲルミレン)や2重結合化合物(ジシレンおよびジゲルメン)は、一般に不安定である。我々以前に、環状立体保護基である1,1,4,4-テトラキス(トリメチルシリル)-1,4-ブタンジイル基を用いて、安定なゲルミレンやスタンニレンを単離した。ごく最近、同じ置換基を用いて初めて安定なジアルキルシリレン(1)を単離することに成功した。本課題ではシリレン1とアルコール、オレフィン、アセチレン、ブタジエンなどの誘導体との反応を詳細に検討し、対応する付加体を定量的に生成することを見いだした。シリレン1はハロアルカンとも速やかに反応し、対応するジハロシランもしくは炭素ハロゲン結合への挿入生成物を生成した。これらの反応機構について詳しく研究中である。また、シリレン1はカリウム還元によって対応するラジカルアニオンを溶液中室温で安定な化学種として生成した。このもののESRスペクトルから、期待通りに不対電子はシリレンの空のp軌道に収容されることが明らかになった。さらに、シリレン1はベンゼン共存下の光照射により、対応するシラシクロヘプタトリエンを生成した。シリレンの光反応はこれまで全く知られておらず、これはシリレンの励起状態を明らかにする上で重要な発見である。 | KAKENHI-PROJECT-11440185 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11440185 |
安定14族金属配位不飽和化合物の合成と光化学 | ジシレンの化学においては、先に単離に成功した3員環状ジシレン(シクロトリシレン)のアルコール付加が立体特異的にトランス付加で進行することを明らかにした。また、新規なケイ素π電子系としてスピロペンタシラジエンを単離同定することに初めて成功した。前年度に引き続き、安定シリレンおよび安定環状シリレンの合成ならびに反応の研究を継続して行った。今年度、特に環内に2つのケイ素-ケイ素2重結合を含むスピロ環状化合物(スピロペンタシラジエン)を低収率ながら合成単離することに成功し、その構造上の特徴を明らかにした。スピロペンタシラジエン1は暗赤色固体として得られ、その構造は各種スペクトルおよびX線構造解析によって決定された。1の2つの3員環平面は完全には直交しておらず、また、2重結合周りで環外シリル置換基は上下に折れ曲がっている。同じ骨格を有する炭素類縁体が熱的に極めて不安定で、-100°C以下で速やかに分解するのとは対照的に、1は融点(216-218°C)まで加熱しても分解しない。1の紫外吸収極大は単環のシクロトリシレンのものに比べて著しく長波長(λ_<max>/nm=560)に現れた。また、不飽和ケイ素の^<29>Si NMR化学シフトは154 ppmであり、対応する2の化学シフトに比べて約60ppmも低磁場である。非経験的分子軌道計算の結果と併せて、これらの分光学的特徴はスピロペンタシラジエンの2つのケイ素-ケイ素2重結合間の大きな空間的相互作用(スピロ共役)によるものと結論された。また、理論計算によってその熱安定性の主な原因の一つとして、炭素類縁体と比べてスピロペンタシラジエンの歪みの小さいことによることが明らかにされた。安定なジアルキルシリレンや非環状ジシレンジアニオンの反応を用いて、種々の新しいケイ素骨格分子を創製することにも成功した。前年度に引き続き、安定シリレン(カルベンのケイ素類縁体)および安定ジシレン(ケイ素-ケイ素二重結合化合物)の合成ならびに反応の研究を継続して行い、今年度は以下のような研究成果を得た。1)安定なジアルキルシリレン(1)の光および熱反応について:シリレン1はベンゼン中光照射により、対応するシレピン誘導体をほぼ定量的に生成した。シリレン励起状態の分子間反応性の初めての例である。また、シリレン1は種々のハロアルカンと反応し、対応するジハロシランやアルキルハロシランを与えることを見いだした。興味深いことに、ジクロロシランやクロロメチルシクロプロパンとの反応では、ハロシラン1分子に1が2分子取り込まれた生成物が主として得られた。1がアンビフィリックな性質を持つことを明確に示す結果である。2)ジシレンジアニオンの合成と新規ケイ素化合物の合成:先に合成した安定なテトラキス(トリアルキルシリル)ジシレンをリチウム金属と反応させることにより、対応する1, 2-ジリチオジシラン(2)を定量的に生成できた。さらにこのものをアダマンタノンと反応させることにより、初めての1, 3-ジシラビシクロ[1.1.0]ブタン(3)を合成することに成功した。ビシクロブタンの可能な2つの構造異性体(長結合異性体と短結合異性体)のうち、3は反転した架橋ケイ素-ケイ素σ結合をもつ長結合異性体であることがX線構造解析の結果明らかになった。3のケイ素-ケイ素結合はビラジカル的であり、420nmに吸収極大を持ち、室温で容易に四塩化炭素などと反応した。また、2を用いて、初めて、ジシレン白金錯体(4)の単結晶を得ることに成功した。X線構造解析の結果、4はジシレンπ | KAKENHI-PROJECT-11440185 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11440185 |
グローバル化社会における国際行政法と国家-国際法学、行政法学、抵触法学の協働 | 本科研は、主に国際行政法についてのドイツ語の原典を講読しながら、国際法以外の学問、特に国内法学者をお招きして「対話」を続けることを主要な営みとして、前回の科研費と合わせて延べ5年間粛々と続けてきた。その過程で、今の時代にあまり類を見ないユニークな外書講読が6年近く継続されるとともに、国際公法・国際私法研究者からなるメンバーと、国内行政法学者・国際私法学者、外国のグローバル行政法学者など様々な「対話」が成立した。今回の科研費を締めくくる2018年度は次の2つのことを予定していた。一つが、「研究総まとめシンポジウム」を12月中旬ごろ東京で開催することである。すなわち、国際法・国際行政法・国際私法・関連分野の専門家を複数招いて「グローバル化社会における国際行政法と国家ー国際法学、行政法学、抵触法学の協働」というタイトルのシンポジウムを開催することである。もう一つが、3年間の総括と成果物の刊行である。そして、その目標に向けて、メンバーたちと相談しながら進めてきたが、中堅の中核メンバー一人が在外研究に行き、メンバーではないが研究協力者として実質的に加わっていた中堅の一人も在外研究に出かけるなど、研究会運営に支障が出るなか、締めのシンポジウム開催の準備が思うように進まない事態になり、それに伴い総括作業も思うように進まない事態になり、ペースダウンをよぎなくされ、科研費執行の延長願を提出し承認をいただいている。2名の中堅・中核メンバーが在外研究に出かけるなどの状況の中、10月6日に研究会を開き、外書講読を行ってから、今後の対応について相談し合い今後の対応を研究代表者に一任してもらった。その後研究代表者が延長申請を行い、1年間の延長が承認されている。科研費執行の延長承認の後、メンバーたちと相談し、一定の時間を得たので、じっくり準備して秋ごろ「研究総まとめシンポジウム」を開催することにしている。在外研究から1名が今月末に復帰するので、せっかく頂いた猶予期間を存分に活用し有終の美を飾るべく鋭意努力するつもりである。現在メンバーのほぼ全員が参加する報告会と、外部の研究者を招いての「対話」の2本立てのシンポを企画していくことを考えている。上記の準備をやりながら、シンポジウムの成果をまとめることと合わせて、3年間の総括及び成果物の刊行についても併せて考えていきたい。1.2016年度には新たに一橋大学竹下啓介教授(国際私法)と国際基督教大学寺田麻佑准教授(行政法)が研究会に加わり、一層メンバーの学際的構成に厚みができた。2.日程調整が手間取り、年度のスタートがやや遅れて8月25日に初めの研究講読会を行う傍ら、第1期からやってきた国内法学者との学際的な交流の一環として、浅野有紀阪大教授を招いて「法多元主義の現在」というタイトルの報告をいただき議論を交わした。3.10月14日には早稲田大学の須網隆教授が主催し早稲田大学で開催された、マックスプランク研究所(ハイデルベルク)のAnne Peters教授のGlobal Constitutionalismに関する研究会に伊藤、小林准教授ら数名のメンバーが参加し、研究会参加者と国際的な学術交流を行った。4.12月23日に定例講読会、そして、3月28日定例講読会をこなしながら、日本国際法学会の2017年9月開催される定期大会の公募パネルに、柳研究責任者が座長となり、3人の若手研究メンバー(北里大学・猪瀬貴道、中央大学・雨野統、防衛大学校・石井由梨佳)が報告を、小林友彦(小樽商科大学)メンバーが討論者(そのほか、興津征雄・神戸大教授)として参加する企画で応募し、めでたく採用され、9月6日午前中に行われることが決まり、各自準備に取り掛かりながら、7月15日定例講読会の際に事前リハーサルを予定している。5.その間にメンバーたちはそれぞれの分野でかなりの研究実績を積み上げてきている。1.国際私法、行政法の専門家が加わったことにより、講読会や研究会に厚みのある学問的な議論がより進んでいることを実感している。2.講読の方もおおむね順調に進んでおり、来年度までには目標量を達成できると期待している。3.今年からは米国の「グローバル行政法学者」やヨーロッパの「国際行政法学者」を招いて議論する企画を進めて積極的に世界との交信を試みる予定である。科研費2年目の去年度は、通常の文献講読会以外に、国際法学会の公募パネルの実施、国際行政法と関係のあるGlobal Administrative Law Projectの創始者であるKingsbury教授招聘研究会、そして、去年11月末日に逝去した研究分担者の間宮勇教授の偲ぶ会を国際経済法研究会と合同で2018年2月23日に明治大学駿河台キャンパスで行った。これらの企画のために通常の研究会は3月28日と、公募セッション準備研究会とかねて開いた7月15日の研究会の2回になった。9月6日の国際法学会の公募セッションは、「グローバル時代の国際法における国際行政法アプローチの今日的意義」のタイトルの下で、研究代表者の柳が企画責任及び座長を務め「企画趣旨」を述べてから、研究分担者の石井由梨佳、雨野統、猪瀬貴道がそれぞれ国際刑事、国連安保理及び投資関連の報告を、研究分担者の小林友彦と神戸大学教授興津征雄がコメンテーターを務めた。本研究会の応募が採択され多くの国際法学会の会員の前でセッションを披露し認知を勝ち取ったことは大きな収穫であったといえよう。 | KAKENHI-PROJECT-16K03318 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K03318 |
グローバル化社会における国際行政法と国家-国際法学、行政法学、抵触法学の協働 | 11月24日には「キングズベリー教授とGlobal Administrative Lawについて論ずる」というタイトルでニューヨーク大学のベネディクト・キングズベリー教授を東京に招いて、Global Administrative Lawの概要と課題について講演していただき、研究分担者の宮野洋一、神戸大学の興津征雄教授及び大阪大学の内記香子准教授が討論者の役を務めた。研究分担者の間宮勇教授の急な逝去を受けて国際経済法研究会と合同で研究会を行い、終了後ささやかな偲ぶ会を行った。1.現在まで順調に予定したドイツ語の教材を講読してきた。2.それから国内法から国際行政法を研究する方々の招待は順調に進んでいる。3.特に国際法学会の公募セッションは、本科研グループの存在や活動内容を世に知らしめる契機となった。4.各研究メンバーが、それぞれの専門分野において国際共同体が領域性を克服した度合い、あるいは、共通の利害関係の凝集した度合いという問題を中心に検討することになっているが、思っている以上に進んでいる。最後の年である2018年度はその意味で過去と明日をつなげる学術的に重要な年となろう。本科研は、主に国際行政法についてのドイツ語の原典を講読しながら、国際法以外の学問、特に国内法学者をお招きして「対話」を続けることを主要な営みとして、前回の科研費と合わせて延べ5年間粛々と続けてきた。その過程で、今の時代にあまり類を見ないユニークな外書講読が6年近く継続されるとともに、国際公法・国際私法研究者からなるメンバーと、国内行政法学者・国際私法学者、外国のグローバル行政法学者など様々な「対話」が成立した。今回の科研費を締めくくる2018年度は次の2つのことを予定していた。一つが、「研究総まとめシンポジウム」を12月中旬ごろ東京で開催することである。すなわち、国際法・国際行政法・国際私法・関連分野の専門家を複数招いて「グローバル化社会における国際行政法と国家ー国際法学、行政法学、抵触法学の協働」というタイトルのシンポジウムを開催することである。もう一つが、3年間の総括と成果物の刊行である。そして、その目標に向けて、メンバーたちと相談しながら進めてきたが、中堅の中核メンバー一人が在外研究に行き、メンバーではないが研究協力者として実質的に加わっていた中堅の一人も在外研究に出かけるなど、研究会運営に支障が出るなか、締めのシンポジウム開催の準備が思うように進まない事態になり、それに伴い総括作業も思うように進まない事態になり、ペースダウンをよぎなくされ、科研費執行の延長願を提出し承認をいただいている。2名の中堅・中核メンバーが在外研究に出かけるなどの状況の中、10月6日に研究会を開き、外書講読を行ってから、今後の対応について相談し合い今後の対応を研究代表者に一任してもらった。その後研究代表者が延長申請を行い、1年間の延長が承認されている。1.今年度も、粛々と定例講読会を続ける。2.9月6日の日本国際法学会の公募パネルセッションを成功裏に終えてから、研究成果を冊子の形でまとめ、広く配布し、研究成果を世に問うていく予定である。4.今年の後半からは最終年度である来年に向けての研究の総括作業に取り掛かることを考えている。1.科研費最後の年の今年度は、現在若干残っている講読分量を2回の研究会で読み終える。 | KAKENHI-PROJECT-16K03318 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K03318 |
プロトコル分析による描画表現意欲の低下児童に関する基礎的研究 | 本研究は,“10歳前後に発現する描画表現に対する意欲の低下傾向"いわゆる「10歳レベルの節」に着目し,プロトコル分析という認知科学的手法によって,その内的過程の分析を行うことを目的とした。これによって、指導方法や学習材の適正化による対応策を見いだそうとするものである。具体的には,描画表現意欲低下の対象は,視覚的写実成果を課題とする描画表現に対するものではないかと考え、その検討方法として、内的制作過程に着目し,そこで用いられる各自の制作方略strategyや対象の認知過程を外在化する方法を考案した。まず描画表現意欲に関する質問紙調査・面接調査を実施し、次に被験者に対し,描画課題の解決事態中に考えていること一切を声に出す思考口述thinking aloudの同時報告法を用いた個別描画実験を実施し,プロトコル・データを収集した。課題は、想像画自画像、観察画自画像、想像画チョキ手、観察画チョキ手の四種類である。この口述データとともにビデオに記録された画像データによって表現過程をモデル化した。その結果次の点が明らかとなった。(1)プロトコル・データ中の指示語と目、鼻等の部位の名詞の頻度を比較した結果、意欲度の高い被験者の場合、想像画は名詞が優位、観察画は指示語が優位であったが、意欲度の低い被験者は、想像画も観察画も名詞が優位であった。(2)人物画の描画ストラテジーに関して、意欲度の低い被験者には、顔の内部を後回しにするという傾向がみられた。また、意欲度の低い被験者は、想像画も観察画も同じ順番で描くという傾向が認められた。(3)意欲度の低い被験者には、観察画と想像画の類似、頭髪を克明に描く事例、横顔ばかりを描く事例、人物を小さく描く事例などが認められた。本研究は,“10歳前後に発現する描画表現に対する意欲の低下傾向"いわゆる「10歳レベルの節」に着目し,プロトコル分析という認知科学的手法によって,その内的過程の分析を行うことを目的とした。これによって、指導方法や学習材の適正化による対応策を見いだそうとするものである。具体的には,描画表現意欲低下の対象は,視覚的写実成果を課題とする描画表現に対するものではないかと考え、その検討方法として、内的制作過程に着目し,そこで用いられる各自の制作方略strategyや対象の認知過程を外在化する方法を考案した。まず描画表現意欲に関する質問紙調査・面接調査を実施し、次に被験者に対し,描画課題の解決事態中に考えていること一切を声に出す思考口述thinking aloudの同時報告法を用いた個別描画実験を実施し,プロトコル・データを収集した。課題は、想像画自画像、観察画自画像、想像画チョキ手、観察画チョキ手の四種類である。この口述データとともにビデオに記録された画像データによって表現過程をモデル化した。その結果次の点が明らかとなった。(1)プロトコル・データ中の指示語と目、鼻等の部位の名詞の頻度を比較した結果、意欲度の高い被験者の場合、想像画は名詞が優位、観察画は指示語が優位であったが、意欲度の低い被験者は、想像画も観察画も名詞が優位であった。(2)人物画の描画ストラテジーに関して、意欲度の低い被験者には、顔の内部を後回しにするという傾向がみられた。また、意欲度の低い被験者は、想像画も観察画も同じ順番で描くという傾向が認められた。(3)意欲度の低い被験者には、観察画と想像画の類似、頭髪を克明に描く事例、横顔ばかりを描く事例、人物を小さく描く事例などが認められた。 | KAKENHI-PROJECT-06780189 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06780189 |
日本の温暖化率の算定に関わる都市バイアスの評価と微気候的影響の解明 | 気象観測所周辺の都市化やミクロな環境変化が長期間の温暖化率の算定に及ぼす影響を,データ解析,野外観測および数値シミュレーションによって評価した。日本では中小都市でも過去1世紀の気温上昇率に都市化による正偏差が存在すること,林や遮蔽物による気温偏差も無視できない大きさを持つことが見出された。また,都市やミクロな環境条件による気温への影響を表現するための数値モデルを開発し,それらを首都圏の気候変化やアスファルト道路周辺の気温分布に適用した。気象観測所周辺の都市化やミクロな環境変化が長期間の温暖化率の算定に及ぼす影響を,データ解析,野外観測および数値シミュレーションによって評価した。日本では中小都市でも過去1世紀の気温上昇率に都市化による正偏差が存在すること,林や遮蔽物による気温偏差も無視できない大きさを持つことが見出された。また,都市やミクロな環境条件による気温への影響を表現するための数値モデルを開発し,それらを首都圏の気候変化やアスファルト道路周辺の気温分布に適用した。1.バックグラウンドの温暖化率の算定と都市バイアスの評価(1)19161960年の区内観測による月別気温データをディジタル化した。品質や欠測状況をチェックし,利用可能な地点・期間を選定した。(2)都市キャノピースキームを導入した非静力学モデルを用いた気象場再現実験を実施した。1976年度版と2006年度版の国土数値情報に基づき、関東甲信越地方を対象として夏季と冬季それぞれ2か月間のシミュレーションを行った結果、都市域の広がりや人工排熱の増大、建築物の高層化に伴って、夏季・冬季ともに平均気温が上昇する可能性が示された。2.気候値に対する微気候的影響の解明(1)平均気温の微細分布を把握するため、東京(大手町)の気象庁構内2か所(露場内および本庁舎屋上観測塔)に、地上気象観測業務で使われている温湿度計と同等の機器を設置し、気温・湿度の継続観測を開始した。また、設置に先立ち、気象測器検定試験センターにおいて機器の器差試験と比較観測を行った。(2)つくば市において地上2.5mの気温観測を1年間実施した。土地利用を含む観測環境の違いによる都市中心部の気温の非一様性は、中心部と郊外の気温差から推定された都市規模のヒートアイランド強度(0.78°C)の半分程度と見積もられた。都市規模のヒートアイランド強度と中心部の気温の非一様性の間には、明瞭な日変化の違いも認められた。(3)名古屋大学グループがこれまでに開発してきた、一般曲線座標系ベースの複雑地形上大気境界層解析用のLES (Large-Eddy Simulation)モデルを建物解像LESモデルへと改良を行った。建物解像のために、0-1マスキング方式(流体部:0、建物部:1)を導入した。さらに、建物解像LESモデルへの放射過程の組み込みに着手した。1.バックグラウンドの温暖化率の算定と都市バイアスの評価1)前年度にディジタル化された区内観測の気温データをアメダスと接続し,気温変化率を評価した。19162010年のバックグラウンドの気温上昇率は0.88°C/(100年)と算定された。一方,都市化の程度が比較的小さい地点でも若干の都市バイアスが認められた。2)首都圏の市街化に伴う過去30年間の気温と風速の変化について,土地利用,人工排熱およびビル群の形状分布の変化を与えた数値実験を行った。都市域では気温の上昇に加えて風速の減少傾向があるが,局地風の変化や人工排熱の増加などは風速の増加要因にもなり得ることが示唆された。2.気候値に対する微気候的影響の解明1)気象庁の露場内と庁舎屋上に設置した温湿度計による観測を継続し,データの統計処理に着手した。季節によらず露場内の気温が庁舎屋上よりも高い傾向があり,特に日最高気温の差が大きかった。2)観測所周辺の樹木等が気温観測に及ぼす影響を連続的な野外観測により調査した。林の影響は樹高の2倍程度の距離まで現れ,日最高気温のほうが日最低気温よりも影響が大きかった。また,日射がある場合,防風ネットなど遮蔽物の風下側ではその高さの12倍の範囲で気温が高くなるのが認められた。3)アスファルト道路が周辺の気温に対して及ぼす影響をLESを用いて評価した。盛夏期の快晴日13時の条件において,道路の風下側10mにおける高さ1.5mの気温は風上側よりも平均0.150.25°C程度高く,弱風時ほど気温差の変動が大きかった。4)22年度に着手した建物解像LESモデルへの放射過程の組み込みを完了し,対流・放射連成LESモデルを開発した。代表的な気象条件・建物配置条件のもとで,開発した対流・放射連成LESモデルを用いて風通しの違いによる日だまり効果と,日射の影響の違いによる日だまり効果を試算した。1.バックグラウンドの温暖化率の算定と都市バイアスの評価.1区内観測データを利用したバックグラウンドの気温変化と都市バイアスの評価結果を取りまとめた。人口密度3001000人/km2の地点でも周辺の非都市地点に比べて有意に昇温が大きく,中小都市でも都市バイアスが存在することが認められた。2東京首都圏における1976年と2006年の土地利用、人工排熱及び都市ビル群の形状を与えた数値実験を実施した。 | KAKENHI-PROJECT-22340141 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22340141 |
日本の温暖化率の算定に関わる都市バイアスの評価と微気候的影響の解明 | 都市化による粗度の増大は、平均風速を減少させるが平均気温への影響は小さいこと、人工排熱の増大は大気安定度を弱化させ地上風速を強める影響を持つことが明らかとなった。2.気候値に対する微気候的影響の解明.1気象庁露場の端(植栽に囲まれた場所)と屋上の気温観測を継続し,露場の中央にある現業用の温湿度計による観測値と比較した。露場の端の観測値は暖候期の午後を中心として露場中央よりも高く,その差は8月の15時には月平均で約0.6°Cであった。屋上と露場を比較すると,最高・最低気温時にそれぞれ不安定・安定な成層になる傾向が認められたが,その気温差は概ね1°C以内だった.2アスファルト道路が周辺の気温に及ぼす影響を評価するため,LESを用いた数値実験を行った。入力風速0.55m/sの6ケースのシミュレーションを行い,風速と風下側の気温との関係を試算した。また,道路面では小規模な高温プルームが間欠的に発生しており,その高温域が風下方向へ組織的な筋状構造をなして流される様子が見られた。3前年度までに開発した対流・放射連成LESモデルを用いて,露場における日だまり効果の感度解析を行った。気象条件は夏季快晴日,露場条件は芝被覆の同一条件として,露場周辺の建物状況や地表面被覆状況を変化させ(建物数や建物高さの変化,芝生→アスファルトへの変化),それに伴う露場内の気温変化を定量的に算定した。過去資料のディジタル化は22年度にほぼ完了し,23年度にはこれを利用したバックグラウンド気温変動の評価がなされた.微気候的影響の観測は予定通り行われ,予備的な解析結果が得られた.モデル研究もほぼ計画通り進捗し,アスファルト道路が気温観測に及ぼす影響の計算が行われた。以上のように,当課題はほぼ計画通り進捗している。24年度が最終年度であるため、記入しない。24年度は本計画の最終年度となる。当初計画に従って研究を進め,成果を取りまとめることとする。具体的には,気温長期変動における都市バイアスを定量評価を進めるとともに,気象庁構内に設置した温湿度計による微気候観測の継続・解析を行い,これをメソモデルのシミュレーション結果と比較してモデルの都市キャノピー表現の妥当性を考察する。また,前年度までに開発した対流・放射連成LESモデルを用いて,様々な気象条件、建物配置条件,地表面被覆条件を変更したケーススタディを行い,「陽だまり効果」のメカニズムの定量的評価を目指す。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22340141 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22340141 |
重症閉塞性末梢動脈疾患に対するミッドカイン(MK)補充血管新生治療法の開発 | 閉塞性動脈硬化症の動物モデルである、腸骨動脈の結紮・除去マウスに対し、MK蛋白を持続投与したところ虚血下肢の血流量が増加し、切断率が減少した。組織切片ではMK投与による新生血管の増加が認められた。さらに培養内皮細胞において、MK蛋白添加による管腔形成の促進が認められた。ウエスタンブロットではin vivo、in vitroともにMKによるERK、Aktの活性亢進が認められた。これらの事よりMKは下肢虚血において血管新生を促進し病態悪化の予防に有効である事が示された。閉塞性動脈硬化症の動物モデルである、腸骨動脈の結紮・除去マウスに対し、MK蛋白を持続投与したところ虚血下肢の血流量が増加し、切断率が減少した。組織切片ではMK投与による新生血管の増加が認められた。さらに培養内皮細胞において、MK蛋白添加による管腔形成の促進が認められた。ウエスタンブロットではin vivo、in vitroともにMKによるERK、Aktの活性亢進が認められた。これらの事よりMKは下肢虚血において血管新生を促進し病態悪化の予防に有効である事が示された。MKの血管新生に与える影響の評価細胞外基質をマウス皮下に注入し、MK混入の有無で血管新生の程度を評価した。7日後にMK蛋白(500ng/ml)混入群はbFGF蛋白(500ng/ml)混入群と外観上、同等の血腫形成を示した。ヒト臍帯血静脈内皮細胞(HUVEC)をマトリゲルに撒布したところ、6時間後に管腔形成が認められた。この管腔形成は10ng/mlのMK蛋白添加により著しく亢進することが確認された。下肢虚血モデルの作成と血流評価腹腔麻酔後左大腿部内側を切開し、腸骨動・静脈を露出させソケイ部から膝関節直上にかけて結紮し、並行する神経とともに除去することで下肢虚血モデルを作成した。MKKOマウスに対する下肢虚血モデルの14日後での血流回復は、野生型マウスに比べて著しく低下している事が認められた。この事からMKが虚血下肢において血管新生に重要な役割を果たしている事が強く示唆された。さらにラットで同様なモデルを作成し、虚血肢にMK蛋白を含有した徐放剤を注射したところ、1カ月後に有意な血流改善が認められた。血管機態の評価マウス耳介の微細血管周囲にMK蛋白を数日間連続投与し、新生血管の走行を蛍光染色にて評価した。MK投与群ではVEGF投与群と比較して新生血管の走行の極端な蛇行や微小血管瘤形成が有意に抑制されていた。このことからMKがより生理的条件に近い新生血管が形成される事が示唆された。MKによる血管新生能の確認:マウス皮下にマトリゲル等細胞基質とともにMK蛋白を投与し、その基質内への血管浸潤の程度をbFGF、VEGFなど他の血管新生因子との間で比較検討した。さらに血管内皮系の細胞培養実験において細胞による管腔形成の程度についても同様にMKと他の血管新生因子との比較解析を行った。その結果MK蛋白はマトリゲル内血管形成、細胞の管腔形成ともbFGF、VEGFと同等の効果を示した。マウス下肢虚血モデルの作成とMK投与による血流改善の評価:マウス腸骨動脈の結紮、除去により下肢虚血モデルを作成する。虚血下肢の内転筋に対してMK蛋白を含有した蛋白徐放剤およびMK発現アデノウイルスを筋肉内注射し、レーザードップラー計にて経時的に血流量を測定することでMKの治療効果を判定した。また新生血管の機能評価については組織酸素分圧の測定を行うとともに、形態学的にも詳細に解析し、病的血管発生の有無について確認した。その結果MKによって増殖を示した新生血管はVEGFと比較して有意に奇形が少なく、b FGFによる新生血管と同等であった。これらの事から、MKは虚血下肢での血管新生能を有し、その際の病的血管形成も少ないことが明らかとなった。血管新生に与えるMKの分子生物学的メカニズム解明:上記の培養細胞および虚血下肢組織を採取し血管新生関連因子とMKとの関係をPCR法、Western blotting法、免疫組織染色法を用いて解析したところ、MK投与により、ERKおよびAktが活性化されることが判明した。 | KAKENHI-PROJECT-19590860 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19590860 |
犬のリンパ腫における薬剤耐性関連miRNAの探索と耐性克服の基礎的研究 | 本研究では薬剤耐性機構の解明と新規治療法開発の基礎として、薬剤耐性関連microRNAに着目し研究を開始した。まず、犬リンパ腫細胞株(CL-1,GL-1)を用い、アドリアマイシン添加による薬剤耐性株とビンクリスチン添加による薬剤耐性株の作成を試みた。また、自然発症のB細胞型リンパ腫2例、対照としてリンパ節炎の症例1例、および犬リンパ腫細胞株(CLC)からRNAを抽出し網羅的な遺伝子発現の解析を行った。結果、各検体につき2 x 107リードの塩基配列情報を取得することができた。これらの配列を、既知のイヌゲノム配列(Canis_familiaris_CanFam3.1)に対してマッピングを行い、1腫瘍に関連した融合遺伝子の検出、腫瘍に関連する既知および未知遺伝子の検出、2遺伝子の発現発現以上の検出、3腫瘍に関連した遺伝子変異について検討した。14検体中3検体から各1種類ずつ、合計3種類の融合蛋白が検出された。2つは同一染色体内の遺伝子に起因する融合遺伝子であり、残り一つは、異なる染色体上にある遺伝子の融合遺伝子であったため、3つの融合遺伝子はヒトにおいて報告されているものではなく、腫瘍化に関与している可能性は低いと推測された。2およそ24000の遺伝子について発現を網羅的に解析し、一定量以上の遺伝子発現量があり、遺伝子発現が検体により大きく異なる遺伝子を複数見出した。今後、これらの遺伝子に対して、発現解析を行うことで犬のリンパ腫発症に関与する新しい遺伝子を特定できる可能性がある。3遺伝子変異については4検体で50万以上の変位箇所を同定した。今回検出された変位の90%程度は既知のSNPsではない。今後は、これまで報告されている薬剤耐性関連遺伝子や癌遺伝子での変異を中心に解析を進め、薬剤耐性に関連する遺伝子異常を特定していく。本年度は、犬リンパ腫由来細胞株からの薬剤耐性株の樹立を主に実施した。犬リンパ腫由来細胞株はT細胞性リンパ腫由来細胞株であるCL-1およびB細胞性リンパ腫由来細胞株GL-1を用い、使用薬剤はドキソルビシン(DOX)およびビンクリスチン(VCR)を使用した。各細胞株の状態が安定し、増殖率およびcell viabilityが90%以上であることを確認後、薬剤を培養液に添加し、薬剤耐性株の作成を開始した。低用量(DOX 1ng/ml, VCR 0.05ng/ml)から開始すると、添加直後より各細胞株のcell viabilityは15%程度まで低下し、死滅細胞が増えたが、60%を越える状態まで回復し、細胞増加が認められた時点で、薬剤濃度を上げていった。薬剤濃度がDOX 10 ng/ml, VCRが1ng/mlまで上昇し、薬剤耐性の獲得が考えられた時点でMTTアッセイを行い、IC50値を親株と比較したところ、IC50値がDOXは2倍、VCRは1.5倍であった。各薬剤のIC50が4倍まで上昇した時点でのmiRNA発現について比較予定であったため、その後も薬剤濃度を上昇させていったが、薬剤濃度の上昇に従い細胞は薬剤耐性を獲得できずに死滅した。これらの過程を2回繰り返したが、同様の結果であったため、薬剤耐性を獲得しにくい細胞株である可能性を考慮し、耐性株の作成を別の細胞株に変更した。現在、UL-1およびCLC細胞株から薬剤耐性株の作成を行っている段階であり、作成できしだいmiRNA発現解析を行う予定である。本研究では薬剤耐性機構の解明と新規治療法開発の基礎として、薬剤耐性関連microRNAに着目し研究を開始した。まず、犬リンパ腫細胞株(CL-1,GL-1)を用い、アドリアマイシン添加による薬剤耐性株とビンクリスチン添加による薬剤耐性株の作成を試みた。また、自然発症のB細胞型リンパ腫2例、対照としてリンパ節炎の症例1例、および犬リンパ腫細胞株(CLC)からRNAを抽出し網羅的な遺伝子発現の解析を行った。結果、各検体につき2 x 107リードの塩基配列情報を取得することができた。これらの配列を、既知のイヌゲノム配列(Canis_familiaris_CanFam3.1)に対してマッピングを行い、1腫瘍に関連した融合遺伝子の検出、腫瘍に関連する既知および未知遺伝子の検出、2遺伝子の発現発現以上の検出、3腫瘍に関連した遺伝子変異について検討した。14検体中3検体から各1種類ずつ、合計3種類の融合蛋白が検出された。2つは同一染色体内の遺伝子に起因する融合遺伝子であり、残り一つは、異なる染色体上にある遺伝子の融合遺伝子であったため、3つの融合遺伝子はヒトにおいて報告されているものではなく、腫瘍化に関与している可能性は低いと推測された。2およそ24000の遺伝子について発現を網羅的に解析し、一定量以上の遺伝子発現量があり、遺伝子発現が検体により大きく異なる遺伝子を複数見出した。今後、これらの遺伝子に対して、発現解析を行うことで犬のリンパ腫発症に関与する新しい遺伝子を特定できる可能性がある。3遺伝子変異については4検体で50万以上の変位箇所を同定した。今回検出された変位の90%程度は既知のSNPsではない。今後は、これまで報告されている薬剤耐性関連遺伝子や癌遺伝子での変異を中心に解析を進め、薬剤耐性に関連する遺伝子異常を特定していく。薬剤耐性株の作出が予定よりも遅れている。 | KAKENHI-PROJECT-25450445 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25450445 |
犬のリンパ腫における薬剤耐性関連miRNAの探索と耐性克服の基礎的研究 | 以前、本研究室で作成し保存した薬剤耐性株も存在したが、長期の保存により親株と同レベルの耐性度であったため、再度耐性株を作成する必要があったことが一番の問題である。また、2種の細胞株に関して2薬剤での耐性作出を2度試みたが、薬剤濃度の上昇に伴い、細胞が死滅したため、急遽別の細胞株で耐性株作出を試みている。本年度3ヶ月程度で薬剤耐性株の作出を終了し、早々にmiRNAの発現解析を実施したい。また、miRNAのみならず薬剤耐性株と親株が作出できた時点で研究方法を変更し、次世代シークエンサーによるmRNA発現解析も平行して実施することも検討している。本年度、耐性株の作成完了しだい、miRNAアレイによる発現解析を行う予定であったが、耐性株の作成に遅れが生じたため、そちらに使用する予算が次年度に繰り越しとなった。本年度、早期に耐性株の作成を行い、miRNAアレイ解析を実施する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-25450445 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25450445 |
アネロバイオテクノロジーの開拓-嫌気下での特異な微生物反応による有用物質生産- | Clostridium bifermentans JCM 1386株のCFEによる不飽和脂肪酸変換反応について検討した。アラキドン酸を基質として嫌気的に反応を行った結果、飽和化産物とともに二つの未知脂肪酸の生成を確認した。このうちの一つは、cis-5,cis-8,cis-11,trans-13-エイコサテトラエン酸と同定され、アラキドン酸を飽和化する際の中間体として、共役脂肪酸が生成していることが示唆された。パン酵母による嫌気条件下でのグルコースからのフルクトース1,6-2リン酸(FDP)の誘導、デオキシリボアルドラーゼ発現大腸菌によるFDP、アセトアルデヒドからの2-デオキシリボース5-リン酸(DR5P)合成、さらにホスホペントムターゼおよびヌクレオシドホスホリラーゼ発現大腸菌によるDR5Pと核酸塩基からの2'-デオキシリボヌクレオシド合成から成るマルチステップ酵素反応を1ポットで行うプロセスについて、最適反応条件を確立し、対塩基収率83%にて75mM(18.7g/L)のデオキシリボヌクレオシド生産を達成した。通性嫌気性菌であるLactobacillus属乳酸菌を用いる機能性脂肪酸・共役リノール酸の生産プロセスを確立した。本プロセスでは見かけ上、リノール酸分子内の二重結合が異性化をうけ共役二重結合が生成するが、この過程には水和反応、脱水反応、異性化反応などの複数の反応が関与していることを明らかにした。その酵素系の解明を試みた結果、酵素系を構成する蛋白質群が可溶性画分と膜画分にまたがって存在していること、モリブデン酸、バナジン酸、タングステン酸などの金属酸化物により活性化を受けること、NADPHもしくはNADHとFADといった酸化還元補酵素を必要とすることなどが明らかとなった。また、偏性嫌気性菌の脂肪酸代謝に関する基礎的検討を行い、Megasphaera、Clostridium、Propionibacterium、Bifidobacterium属などの偏性嫌気性細菌が、リノール酸を添加した栄養培地での嫌気的培養において、高い変換率でリノール酸をtrans-11-octadecaenoic acidへと変換することを見いだした。これらの菌株を対象に、高度不飽和脂肪酸であるアラキドン酸、エイコサペンタエン酸の変換反応を検討した結果、Clostridium bifermentansがアラキドン酸及びエイコサペンタエン酸を新規脂肪酸へと変換することを見いだした。これら新規脂肪酸の構造解析を試みたところ、ともに分子内の複数の二重結合のうち、いずれか1つが飽和化された脂肪酸であることが判明した。また、パン酵母の嫌気的糖代謝の応用開発を行い、高濃度の無機リン酸存在下にて蓄積するフルクトース1,6-2リン酸を、大腸菌の解糖系ならびに大腸菌に高発現させたデオキシリボアルドラーゼにより、有用糖リン酸であるデオキシリボース5-リン酸へと変換するプロセスを開発した。Clostridium bifermentans JCM 1386株が、嫌気培養中において、炭素数18及び20のn-3およびn-6系の不飽和脂肪酸を飽和化し、二重結合の一つ少ない新規な脂肪酸を生成することを見いだした。リノール酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸の飽和化生成物の構造解析により、本菌の嫌気培養中における不飽和脂肪酸変換反応は、cis体のω6、ω9位の二重結合をtrans体のω7位へと飽和化するものであると推定した。パン酵母による嫌気条件下でのグルコースからのフルクトース1,6-2リン酸(FDP)の誘導、デオキシリボアルドラーゼ発現大腸菌によるFDP、アセトアルデヒドからの2-デオキシリボース5-リン酸(DR5P)合成、さらにボスホペントムターゼおよびヌクレオシドボスホリラーゼ発現大腸菌によるDR5Pと核酸塩基からの2'-デオキシリボヌクレオシド合成から成るマルチステップ酵素反応を1ポットで行うプロセスについて、反応条件の検討および触媒の改良を試みた結果、グルコース、アセトアルデヒド、アデニンを原料に約30mMの2'-デオキシイノシンの生産を達成した。Clostridium bifermentans JCM 1386株のCFEによる不飽和脂肪酸変換反応について検討した。アラキドン酸を基質として嫌気的に反応を行った結果、飽和化産物とともに二つの未知脂肪酸の生成を確認した。このうちの一つは、cis-5,cis-8,cis-11,trans-13-エイコサテトラエン酸と同定され、アラキドン酸を飽和化する際の中間体として、共役脂肪酸が生成していることが示唆された。パン酵母による嫌気条件下でのグルコースからのフルクトース1,6-2リン酸(FDP)の誘導、デオキシリボアルドラーゼ発現大腸菌によるFDP、アセトアルデヒドからの2-デオキシリボース5-リン酸(DR5P)合成、さらにホスホペントムターゼおよびヌクレオシドホスホリラーゼ発現大腸菌によるDR5Pと核酸塩基からの2'-デオキシリボヌクレオシド合成から成るマルチステップ酵素反応を1ポットで行うプロセスについて、最適反応条件を確立し、対塩基収率83%にて75mM(18.7g/L)のデオキシリボヌクレオシド生産を達成した。 | KAKENHI-PROJECT-16688004 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16688004 |
新生児期の気質的特徴とアタッチメント形成との関連性に関する研究 | 平成69年の3年間で316名の母親(満期産,経膣分娩)にブラゼルトン尺度(NBAS)を依頼し,105名の協力者を得た。この中の48名から家庭訪問の許可が得られ,1,3,6,9,12ヶ月まで家庭訪問を行ったところ,A群5名,B群35名,C群6名,啼泣強く実験中止した児1名であった。A群児はNBASの自律性においてB,C群児と顕著な差を示した。B,C群児の自律性は生後1ヶ月で上昇するが,A群児は生後8日目に一度低下し,その後1ヶ月目に上昇する。自律性は驚愕反射,振戦等から構成されており,A群児は生後1ヶ月間の成熟過程における何らかの一時的停滞を示唆した。アタッチメント形成には母親の敏感性が重要だといわれている(Ainsworth)。本研究では母親の敏感性の一側面であるの啼泣に対する応答性(随伴性)を測定した。その結果,A群児の母親は1年間を通じて他群よりも一貫して応答性が高く,そして児の啼泣時間も短い。Sroufe(1985)は安全性(B群・非B群)は母親の応答性に左右され,A・C群の違いは気質に影響を受ける,と述べた。そしてEgeland and Sroufe(1981)によれば,安全性に影響を与える要因として,肉体的虐待・敵意,無視・養育不足よりも心理的利用不能性(psycological unavailability)の方が大きな影響があったという。しかし我々のA群の母親は他群と比較して明らかに応答的であり,心理的利用性は高い。本研究の被験者は316名中の46名であり,かなり等質な集団,しかも「開放的,肯定的で受容的な母親」にぞくする。従って,アタッチメントパターンは,母親よりも児自身の気質に大きな影響を受けている可能性大である。そうであれば,彼らが見せたアタッチメントパターンは,ある狭い幅の,すなわち児にとって良好な環境において成長した児が見せる気質的特徴を反映したものだと考えられる。平成7年2月末現在,ブラゼルトン検査(NBAS)の協力者数は32名である。その中で11名の典型例を抽出し,追跡調査を実施中である.NBASの協力者数が少ないことや,典型例に該当する児の母親全員からの強力が得られなかったことに起因して,予定よりも症例数が少数である.32名のNBAS結果を7クラスター化(Lester,1984)して、以下の2点について分析を行ったところ次の結果が得られた.1)分娩促進剤がNBAS結果に与える影響について分娩促進剤の投与を受けた「促進群」の各クラスター値と,受けなかった「非促進群」の各クラスター値を比較したところ,有意差は見られなかった.分娩促進剤単独ではNBAS結果に影響を与えないといえよう.2)生後3,8,28日間におけるNBAS結果の変化についてまた,ステイトの幅クラスター値は生後3日目よりも8日目の測定値の方が有意に低下し(P<.05),生後8日目よりも28日目の測定値の方が有意に低下した((P<.05).Muret-Wagstaff and Mooreの乳児は生後1カ月間でステイトの幅クラスターにおいて有意な変化を見せず,日本人乳児独特な特徴であるといえよう。Lesterのクラスタリング・システムは,児のぐずり,泣き,そしてステイト変動の回数がある程度あると,ステイトの幅クラスターに高い得点を与える。日本人乳児は加齢に伴ってぐずりと泣きの回数が減少するので,その結果としてステイトの幅クラスター値が低下したのである.平成69年の3年間で316名の母親(満期産,経膣分娩)にブラゼルトン尺度(NBAS)を依頼し,105名の協力者を得た。この中の48名から家庭訪問の許可が得られ,1,3,6,9,12ヶ月まで家庭訪問を行ったところ,A群5名,B群35名,C群6名,啼泣強く実験中止した児1名であった。A群児はNBASの自律性においてB,C群児と顕著な差を示した。B,C群児の自律性は生後1ヶ月で上昇するが,A群児は生後8日目に一度低下し,その後1ヶ月目に上昇する。自律性は驚愕反射,振戦等から構成されており,A群児は生後1ヶ月間の成熟過程における何らかの一時的停滞を示唆した。アタッチメント形成には母親の敏感性が重要だといわれている(Ainsworth)。本研究では母親の敏感性の一側面であるの啼泣に対する応答性(随伴性)を測定した。その結果,A群児の母親は1年間を通じて他群よりも一貫して応答性が高く,そして児の啼泣時間も短い。Sroufe(1985)は安全性(B群・非B群)は母親の応答性に左右され,A・C群の違いは気質に影響を受ける,と述べた。そしてEgeland and Sroufe(1981)によれば,安全性に影響を与える要因として,肉体的虐待・敵意,無視・養育不足よりも心理的利用不能性(psycological unavailability)の方が大きな影響があったという。しかし我々のA群の母親は他群と比較して明らかに応答的であり,心理的利用性は高い。本研究の被験者は316名中の46名であり,かなり等質な集団,しかも「開放的,肯定的で受容的な母親」にぞくする。 | KAKENHI-PROJECT-06801019 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06801019 |
新生児期の気質的特徴とアタッチメント形成との関連性に関する研究 | 従って,アタッチメントパターンは,母親よりも児自身の気質に大きな影響を受けている可能性大である。そうであれば,彼らが見せたアタッチメントパターンは,ある狭い幅の,すなわち児にとって良好な環境において成長した児が見せる気質的特徴を反映したものだと考えられる。平成6年4月8年2月末迄の研究期間中,ブラゼルトン検査(以下,NBAS)について104名の被験児を得た.これはNBASを適用できる該当者297名中,約35%の協力率を得た結果である.この104名中さらに追跡調査に応じたのが72名で,協力率69%である.72名中,この104名中さらに追跡調査に応じたのが72名中で,協力率69%である.72名中,家庭訪問と社会的参照・母子分離再会実験の両方に応じたのが43名で,実験のみに応じたのが29名である.そして2月末現在,社会的参照と母子分離再会の実験を終了したのが31名である.1.NBAS:NBASにおける自己鎮静性・易刺激性と家庭における啼泣性・自己鎮静性・易刺激性との間の関係性は必ずしも高くはない.これは母親を代表とする環境との相互交渉の過程の中で,環境からの影響を受けやすい「脆弱な」児と,受けにくい「頑健な」児が存在することを示唆している.前者は母親の応答性に受容性に影響を受けやすいことが想定されるので,さらに症例が集った時点で詳細に分析する予定である.また,後者は環境刺激に対する閾値が高いことが考えられ,この視点からNBASのデータを再吟味する予定である.2.母子分離再会の実験:母子分離再会の実験を終了した被験児数はまだ31名と少ないが,NBASの結果とアタッチメントパターンとの間には必ずしも明瞭な関係性は見られず,さらに症例が集まった時点で再度詳細に分析する予定である。本研究に協力している母親は社会階層的には中流に属するが,精神的に健康で知的好奇心が旺盛である.現時点で分析は終了していないが,児の成長に与える母親の影響があるとするならば,本研究に協力している母親は成長に肯定的な影響を与えていると推測される.従って,生後1歳の時点でのアタッチメントパターンには必然的にB群の占める割合が多くなるだろうと予測される。平成6年4月からの2年間でブラゼルトン検査(以下,NBAS)への協力者108名を得た。その内,生後12ヵ月までの家庭訪問と母子分離再会実験の両者に応じたのが48名,実験のみに応じたのが33名である。平成9年2月末現在,家庭訪問と実験の両者を終了したのが44名である。1.NBAS:NBASとEITQ(母親が評定した新生児の気質)との関連性を重回帰分析にて分析した。その結果,状態の調整がEITQの適応性,自立系がEITQの接近性と強度,誘発反応がEITQの規則性との間において有意な標準偏回帰係数を得た。状態の調整はなだめやすさと自己鎮静性等の項目から構成されており,外部刺激や変化に対する「適応性」を予測させる。自立系は振戦,驚愕,皮膚の色から構成されており,自律神経系の働きを表し,新規刺激への「接近性」を予測させる。誘発反応は異常反射の出現総数であり,中枢神経系の働きを表す。これが少ない程,生活リズムが規則的であることを予測させる。これらの結果により,児の行動特徴が母親の「認知」に影響を与えていることが示され,従ってその後の母子相互交渉に児が影響を与えることが示唆された。2.母子相互交渉:生後1,3ヵ月の母子相互交渉の分析を終了し,現在,生後6,9,12ヵ月を分析中である。NBASにおいてぐずりやすい児の母親は相互交渉において高い応答性を示している。 | KAKENHI-PROJECT-06801019 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06801019 |
断層破砕帯内物質のフラクタル電磁気的特性と地殻応力に関する研究 | 1.断層破砕帯内物質のフラクタル電磁気的特性の解析:現有の岩石帯磁率・岩石誘電率測定器(申請のサンプルホルダーと測定制御用ソフトウェアを購入使用)を用いてコアラーにて採取した破砕帯内物質試料のフラクタル電磁気的特性(岩石比抵抗・岩石帯磁率・岩石誘電率)の測定をおこなった。平成10年度研究実績と連動して測定されたフラクタル電磁気的特性値と各種幾何学的フラクタル特性値とを比較し各種パラメータ間の相関や、フラクタル電磁気的特性値と断層破砕度や歪との相関を求めた。2.岩石脆性破壊実験のデータとの比較解析と断層破砕帯内物質(断層面も含む)に関する地質応力・歪計の提出:物質の変形特性を扱うトライボロジーの知識を用いて、断層破砕帯内物質(断層面も含む)に関する天然のフラクタル特性データと実験データを整理し解析した。この際、現有のコンピュータを用いてデータを解析し、断層破砕帯内物質形成に関する破壊の非線形構成則(岩石の破壊特性の時間的変化)を決定し、断層破砕帯内物質形状に関する地質応力・歪計の解明を試みた。3.地殻の応力レベルの見積もりと現実的な脆性断層モデルの提出:断層破砕帯内物質のフラクタル特性から断層の形成条件や形成場(地殻の強度・不均一度・断層の成熟度・深さに伴う断層破砕帯の広がりなど)について言及し、平成11年度研究計画2で得られた地質応力・歪計を用いて脆性領域における地殻の応力(強度)・歪レベルの算出をおこなった。また、平成10年度研究実績の結果をふまえて現実的な脆性的断層モデルを提出した。さらに、平成11年度研究計画1の結果から破砕帯内物質のフラクタル電磁気的特性値と岩石破壊(摩耗)実験によるデータを用いて、地殻の応力問題や地殻応力場内で形成される断層破砕帯の電磁気的構造の解明を試みた。これまでおこなってきた断層内物質・断層面形状・断層系形状や断層破砕帯内の割れ目系形状に関する幾何学的フラクタル特性についての予備的研究成果をふまえて、本研究では活断層や構造線に沿って分布する断層破砕帯内物質のフラクタル電磁気的特性(岩石比抵抗・帯磁率・帯磁率異方性・誘電率)の解析を行うとともに地殻の応力問題や応力場内での断層破砕帯の電磁的構造を解明します。平成10年度の本研究の実績は以下の通りです。1.主要活断層・構造線の広域調査:近畿・中部日本の主要活断層・構造線沿いの断層破砕帯内物質のフラクタル特性の測定と断層の空間分布広域調査(重点調査地点20ヶ所、40日間)を行う。この調査の際、次年度に行う断層内物質の解析地点を選定精査した。2.断層パラメータ(破砕物の厚さ・断層の長さ・移動量・断層内物質(断層面形状も含む)のフラクタル特性・起震時マグニチュード)の調査見積り:各サイズの断層系を詳細に調査し断層パラメータ間の相関から起震時の応力降下値や活動の再来周期を見積る。また、断層内物質中の最大破砕物と各断層パラメータとの相関をもとめた。3.断層破砕帯内物質のフラクタル電磁気的特性の現地予備的解析:現有の携帯用岩石帯磁率測定器を用いて現地にて(平成10年度研究計画1と連動して)フラクタル電磁気的特性(岩石帯磁率・岩石誘電率)の予備的測定を行った。また、コアラーにて採取した破砕帯内物質試料の帯磁率異方性の予備的測定を室内にて行った。岩石誘電率の測定には申請の日本ヒューレット・パッカード社(PRECISION LCR METER4285A)を使用し、予備的な測定をおこなった。1.断層破砕帯内物質のフラクタル電磁気的特性の解析:現有の岩石帯磁率・岩石誘電率測定器(申請のサンプルホルダーと測定制御用ソフトウェアを購入使用)を用いてコアラーにて採取した破砕帯内物質試料のフラクタル電磁気的特性(岩石比抵抗・岩石帯磁率・岩石誘電率)の測定をおこなった。平成10年度研究実績と連動して測定されたフラクタル電磁気的特性値と各種幾何学的フラクタル特性値とを比較し各種パラメータ間の相関や、フラクタル電磁気的特性値と断層破砕度や歪との相関を求めた。2.岩石脆性破壊実験のデータとの比較解析と断層破砕帯内物質(断層面も含む)に関する地質応力・歪計の提出:物質の変形特性を扱うトライボロジーの知識を用いて、断層破砕帯内物質(断層面も含む)に関する天然のフラクタル特性データと実験データを整理し解析した。この際、現有のコンピュータを用いてデータを解析し、断層破砕帯内物質形成に関する破壊の非線形構成則(岩石の破壊特性の時間的変化)を決定し、断層破砕帯内物質形状に関する地質応力・歪計の解明を試みた。3.地殻の応力レベルの見積もりと現実的な脆性断層モデルの提出:断層破砕帯内物質のフラクタル特性から断層の形成条件や形成場(地殻の強度・不均一度・断層の成熟度・深さに伴う断層破砕帯の広がりなど)について言及し、平成11年度研究計画2で得られた地質応力・歪計を用いて脆性領域における地殻の応力(強度)・歪レベルの算出をおこなった。また、平成10年度研究実績の結果をふまえて現実的な脆性的断層モデルを提出した。 | KAKENHI-PROJECT-10740235 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10740235 |
断層破砕帯内物質のフラクタル電磁気的特性と地殻応力に関する研究 | さらに、平成11年度研究計画1の結果から破砕帯内物質のフラクタル電磁気的特性値と岩石破壊(摩耗)実験によるデータを用いて、地殻の応力問題や地殻応力場内で形成される断層破砕帯の電磁気的構造の解明を試みた。 | KAKENHI-PROJECT-10740235 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10740235 |
アナログ並列型画像圧縮回路を集積化した超高速ディジタル伝送イメージセンサの研究 | 本研究では、イメージセンサからの画像情報の超高速伝送を目的とし、画像情報の圧縮符号化とディジタル並列伝送機能を集積化したイメージセンサの実現を最終的な目的としている。これは、知能ロボットにおけるビジュアルフィードバック用の画像入力装置として、また超高速現象の観察のための超高速撮像デバイスとして極めて有用である。また、このような撮像デバイスにおける画像符号化機能の集積化は、画像のディジタル化が進展する中、当然進むべき方向である。本研究で提案する手法は、イメージセンサがアナログ情報を出力することに着目したアナログ2次元離散コサイン変換(DCT)プロセッサと量子化機能を一体化した適応量子化AD変換器に基づくものである。これにより、アナログ並列動作による高速処理と、小面積・低消費電力の2次元DCT回路が可能であるとともに、高速撮像において問題となるAD変換処理を適応的に極めて効率よく行える。本年度においては、まず0.8μmCMOS技術に基づき、電流モード方式の8×8点2次元DCTプロセッサLSIの設計を行った。その性能は、対応するディジタル方式の2次元DCTプロセッサと比較して、処理時間が同程度であり、約1/8の面積、約1/25の消費電力で実現可能であることが見積もられた。このLSIは、現在試作中である。また、撮像部、2次元DCT部、適応量子化AD変換部を含む画像符号化イメージセンサを、半導体メーカの協力を得て、0.35μmCMOS技術に基づき、設計・試作を進めている。これらのデバイスは、今後試作、評価、最良設計と、最終目標に向けて研究を進めていく予定である。本研究では、イメージセンサからの画像情報の超高速伝送を目的とし、画像情報の圧縮符号化とディジタル並列伝送機能を集積化したイメージセンサの実現を最終的な目的としている。これは、知能ロボットにおけるビジュアルフィードバック用の画像入力装置として、また超高速現象の観察のための超高速撮像デバイスとして極めて有用である。また、このような撮像デバイスにおける画像符号化機能の集積化は、画像のディジタル化が進展する中、当然進むべき方向である。本研究で提案する手法は、イメージセンサがアナログ情報を出力することに着目したアナログ2次元離散コサイン変換(DCT)プロセッサと量子化機能を一体化した適応量子化AD変換器に基づくものである。これにより、アナログ並列動作による高速処理と、小面積・低消費電力の2次元DCT回路が可能であるとともに、高速撮像において問題となるAD変換処理を適応的に極めて効率よく行える。本年度においては、まず0.8μmCMOS技術に基づき、電流モード方式の8×8点2次元DCTプロセッサLSIの設計を行った。その性能は、対応するディジタル方式の2次元DCTプロセッサと比較して、処理時間が同程度であり、約1/8の面積、約1/25の消費電力で実現可能であることが見積もられた。このLSIは、現在試作中である。また、撮像部、2次元DCT部、適応量子化AD変換部を含む画像符号化イメージセンサを、半導体メーカの協力を得て、0.35μmCMOS技術に基づき、設計・試作を進めている。これらのデバイスは、今後試作、評価、最良設計と、最終目標に向けて研究を進めていく予定である。 | KAKENHI-PROJECT-07248207 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07248207 |
湖沼生態系におけるかび臭物質産生ラン藻類の異常発生における鉄の役割 | 湖沼生態系におけるかび臭物質産生ラン藻の異常発生における鉄の役割の解明を目的に,ラン藻の増殖能力,即ち鉄吸収能に及ぼす鉄の役割を検討するために,各種の形態の鉄化合物,すなわちコロイド鉄(III),酸化鉄,リン酸鉄のよう難溶性の鉄並びに鉄とのキレートの安定度定数が異なる7種のキレート剤EDTA,CyDTA,DTPA,EDDHA,HBED,DESF(デスフェリオキサミンB,微生物シデロフォア),BPDSの鉄錯体を用いて5種のかび臭物質産生ラン藻Oscillatoria tenuis,Phormidium tenue(以上2種はMIBを産生),Anabaena macrospora,Anabaena spiroides,Oscillatoria brevis(以上3種はジオスミンを産生)を植えつけて,それらの増殖やかび臭物質産生等に及ぼす影響について検討した。上記5種のラン藻の中でO.brevisのみはコロイド鉄,酸化鉄やリン酸鉄のようなきわて安定な形態の鉄化合物や微生物シデロフォアDESFの鉄(III)キレートを鉄源として利用できることが明らかになった。こうしてかび臭物質産生ラン藻は水中の鉄の存在形態により鉄利用能力が異なること,O.brevisは他の4種のラン藻に比べ,鉄の吸収能力が格段に優れていることが判明した。さらに鉄吸収が十分に行えない場合には,ラン藻の細胞は黄化現象を起こし,光合成色素のクロロフィルや補助色素のフィコシアニン(上記5種のラン藻に含まれる),O.brevisのみに含まれるフィコエリトリンの生合成量やかび臭物質の産生量も低くなることが認められた。O.brevisは細胞表層に強力なキレート形成基を持っており,様々な形態の鉄を鉄源として利用し増殖できることが明らかになった。さらにFe(III)キレートを形成するキレート剤が過剰に存在する場合でもO.brevisは増殖が阻害されない強力な鉄吸収能を有し,鉄吸収の機能面において優れた環境適応能力を有することが明らかになった。一方,O.tenuis,A.macrospora,A.spiroidesは鉄吸収能力が弱いので,鉄の存在形態を制御することによりその異常発生を抑制できる可能性が判明した。湖沼生態系におけるかび臭物質産生ラン藻の異常発生における鉄の役割の解明を目的に,ラン藻の増殖能力,即ち鉄吸収能に及ぼす鉄の役割を検討するために,各種の形態の鉄化合物,すなわちコロイド鉄(III),酸化鉄,リン酸鉄のよう難溶性の鉄並びに鉄とのキレートの安定度定数が異なる7種のキレート剤EDTA,CyDTA,DTPA,EDDHA,HBED,DESF(デスフェリオキサミンB,微生物シデロフォア),BPDSの鉄錯体を用いて5種のかび臭物質産生ラン藻Oscillatoria tenuis,Phormidium tenue(以上2種はMIBを産生),Anabaena macrospora,Anabaena spiroides,Oscillatoria brevis(以上3種はジオスミンを産生)を植えつけて,それらの増殖やかび臭物質産生等に及ぼす影響について検討した。上記5種のラン藻の中でO.brevisのみはコロイド鉄,酸化鉄やリン酸鉄のようなきわて安定な形態の鉄化合物や微生物シデロフォアDESFの鉄(III)キレートを鉄源として利用できることが明らかになった。こうしてかび臭物質産生ラン藻は水中の鉄の存在形態により鉄利用能力が異なること,O.brevisは他の4種のラン藻に比べ,鉄の吸収能力が格段に優れていることが判明した。さらに鉄吸収が十分に行えない場合には,ラン藻の細胞は黄化現象を起こし,光合成色素のクロロフィルや補助色素のフィコシアニン(上記5種のラン藻に含まれる),O.brevisのみに含まれるフィコエリトリンの生合成量やかび臭物質の産生量も低くなることが認められた。O.brevisは細胞表層に強力なキレート形成基を持っており,様々な形態の鉄を鉄源として利用し増殖できることが明らかになった。さらにFe(III)キレートを形成するキレート剤が過剰に存在する場合でもO.brevisは増殖が阻害されない強力な鉄吸収能を有し,鉄吸収の機能面において優れた環境適応能力を有することが明らかになった。一方,O.tenuis,A.macrospora,A.spiroidesは鉄吸収能力が弱いので,鉄の存在形態を制御することによりその異常発生を抑制できる可能性が判明した。各種の形態の鉄化合物,すなわちEDTA-Fe(III)、Bathophenanthroline(BPDS)-Fe(II)キレート、コロイド鉄(III)を用いて、調製したCT培地に、かび臭物質産生ラン藻Oscillatoria tenuis、Phormidium tenue(以上2種はMIBを産生)及びAnabaena macrospora、Anabaena spiroides、Oscillatoria brevis(以上3種はジオスミンを産生)を植えつけて、それらの増殖やかび臭物質産生などに及ぼす影響について検討した。その結果、EDTA-Fe(III)キレートの場合には、上記5種のラン藻はいずれも良好な増殖を示し、かび臭物質ジオスミンまたはMIBを産生した。しかしBPDS-Fe(II)キレートの場合にはA.macrospora、O.tenuis、A.spiroidesは増殖阻害を起こし、一方P.tenueとO.brevisはFe^<II>(BPDS)_3^<4->キレート中の鉄を利用して増殖し、かび臭物質を産生した。 | KAKENHI-PROJECT-07680607 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07680607 |
湖沼生態系におけるかび臭物質産生ラン藻類の異常発生における鉄の役割 | さらにキレート剤EDTAを含まない場合、すなわち鉄がコロイド状で存在する場合にはO.brevisのみが増殖することができ、他の4種のラン藻はその鉄を利用できず、増殖阻害を起こした。またO.brevisは酸化鉄やリン酸鉄にようなきわめて安定な形態の鉄化合物をも鉄源として利用できることが見出された。さらに本種は微生物シデロフォアのデスフェリオキサミンBの鉄(III)キレートを鉄源として利用できることが明らかになった。以上のように、かび臭物質産生ラン藻は水中の鉄の存在形態により鉄利用能力が異なること、O.brevisは他の4種のラン藻に比べ、鉄の吸収能力が優れていることが判明した。さらに鉄吸収が十分に行えない場合には、ラン藻の細胞は黄化現象を起こし、光合成色素のクロロフィルや補助色素のフィコシアニン(上記5種のラン藻に含まれる)またはフィコエリトリン(O.brevisのみに含まれる)の生合成量やかび臭物質の産生量も低くなることが判明した。湖沼生態系におけるかび臭物質産生ラン藻の異常発生における鉄の役割の解明を目的に,ラン藻の増殖能力,即ち鉄吸収能に及ぼす鉄キレートの影響を検討するために,鉄とのキレートの安定度が異なる6種のキレート剤EDTA,DTPA,EDDHA,HBED,DESF(微生物シデロフォア),BPDSの鉄錯体を用いて5種のラン藻の培養実験を行った。ジオスミンを産生するOscillatoria brevisはDTPAを鉄濃度に対して15倍モルまで過剰に添加しても良好な増殖が認められた。さらにEDDHA及びHBEDでは鉄濃度に対して16倍モル及び5.6倍モルまで過剰に添加してもO.brevisの増殖が認められた。従って高い安定度を持つFe(III)錯体を形成するキレート剤の過剰を加えても,O.brevisは鉄を吸収できた。またO.brevisは安定な2価鉄キレートFe(BPDS)_3が生成した状態でEDTA,DTPA,EDDHA又はHBEDを添加した場合でも増殖は阻害されなかった。Fe(III)-DESFを鉄源として,EDDHAあるいはHBEDを過剰に添加してもO.brevisの増殖は阻害されなかった。こうしてO.brevisは細胞表層に強力なキレート形成基を持っており,Fe(III9-EDTA,Fe^<II>(BPDS)_3,コロイド鉄,酸化鉄(Fe_2O_3,Fe_3O_4),Fe(III)-DESF,スポンジ鉄,鉄粉,クエン酸鉄(III),リン酸鉄(III)のような様々な形態の鉄を鉄源として利用し,吸収できることが明らかになり,更に安定なFe(III)キレートを形成するキレート剤が過剰に存在する場合でもO.brevisの増殖が阻害されない強力な鉄吸収能を有することが判明した。O.vrevisは鉄吸収の機能面において幅広い環境変化に適応しており,かび臭物質産生ラン藻Oscollatoria tenuis,Phormidium tenue(2-メチルイソボルネオール,MIBを産生)Anabaenamacrospora,Anabaena spiroides,O.brevis,(ジオスミンを産生)の中で最も優れた鉄の吸収能を有しており,高いMIB産生能を有するO.tenuisは最も弱い鉄吸収能を有することが明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-07680607 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07680607 |
対人関係療育プログラムPDIの日本への導入とその効果評価研究のための基礎研究 | 平成20年度、RDI(Relationship Development lntervention)を参考にして開発された、広汎性発達障害(PDD)をもつ人の対人関係能力を発達させる新しい療育的関わりを、公立中学校特別支援学級1学級と、発達障害をもつ小学生から大学生年齢の人たちを受け入れているフリースクール(生徒数約100名)1校において、実施した。関わりは、非言語的コミュニケーション能力を高めること、「人」や「場」に対する興味や関心を高めること、周囲の人々の動きを「参照」する力を養うこと、「参照」されたものに自分の行動を合わせる「調整」能力を高めること、「変化」や「新奇」への対応能力を高め、それらを楽しみ、逆にそれらを望むようになること、共感能力を高めること、仲間と連帯感を高め、達成感や喜びを仲間と共有できるようにしなることを「狙い」として行われた。そうした関わりを通じて、生徒たちがどのように変化・成長したかを事例研究的に追うとともに、「関わりの狙い」として上記した項目にいて、生徒たちの発達段階を測定する尺度の開発に取り組んだ。事例研究においては、特別支援学級から3事例、フリースクールから7事例が報告され、そのすべての事例において、上記「狙い」に関連する何らかの発達・変化が認められた。尺度開発はフリースクールを対象に行われ、教員による評価、保護者による評価、ビデオ記録に基づいた専門家評価の3尺度の予備試行が行われた。しかし、教員評価と保護者評価との相関が低い、記録された映像場面の問題、さらに臨床診断の妥当性の問題が存在した。事例研究レベルであるが、ここで開発された療育方法の手応えはきわめて良い。本関わりは、PDDの中核的障害に対して直接的な効果をもつ可能性を有するという意味で、画期的である。今後.さらに尺度開発を進め、その効果性が客観的に測定されるよう研究を進める。自閉性障害やアスペルガー障害を中心とする広汎性発達障害(自閉性スペクトラル障害)に対する療育プログラムどして、彼らの対人的相互作用の発達を直接の療育ターゲットとする新しいプログラム(RDI:Relationship Development Intervention)が、アメリカ・ヒューストンにあるThe connections centerで開発されつつある。この研究の目的はこのRDIを日本に導入し、ケースに試行しながら、日本語版実施マニュアルを作成することである。さらにRDIの効果を検証するための基礎研究として、自閉性障害やアスペルガー障害の中核障害とも言える対人的相互作用の質的な障害の程度を鋭敏に測定できる日本語版アセスメント・ツールを開発し、その信頼性と妥当性を検討することである。平成18年度は国内において文献収集を行い、それを元にして国内でめ準備状況を整えThe connections centerにマニュアルの日本語版作成の申請を行い許可を得た。12月と3月にそれぞれ1名の研究協力者をThe connections centerに派遣し、RDIの研修と研究打ち合わせを行い、米国での文献や資料を収集し、RDIで用いる遊具の調達を行った。また、この二人による研究会を開催し、RDIの実務の紹介やマニュアルの翻訳、検討を行った。それに並行して二人のケースに保護者の協力を得て、RDIを試行し、その経緯をビデオ撮影を行い分析した。このビデオと分析結果をThe connections centerに検証してもらうために送付した。自閉性障害やアスペルガー障害を中心とする広範性発達障害(PDD;自閉性スペクトラム障害とも呼ばれる)は、現在わが国において、特別支援教育とのからみもあり、きわめて高い注目を浴びている。これまでのPDD療育プログラムは、PDDから派生する様々な二次的障害(言語発達障害、行動障害、感情障害など)への対応や、環境調整が主眼となっていたが、2000年頃から、PDDの中核的障害ともいえる「対人的相互作用の質的障害」を直接の療育ターゲットとするものが現れ始めた。そのひとつがRDI(Relationship Development Intervention)である。本研究の目的は、新しいPDD療育プログラムの方法論を日本に導入することと、その効果評価を行うための基礎研究として、PDDをもつ人々の対人関係の発達度合いを定量的に測定できるアセスメント・ツールを開発することである。その目的に即し、平成19年度において、平成18年度に引き続き、RDIを開発しているThe Connevtions Centerに研究協力者を派遣し、情報収集に努め、ほぼその情報収集作業は完了した。また、今までのすべてのPDD療育プログラムのreviewを行った(学術雑誌に発表)。そこで集められた情報をもとに、わが国の文化に即した対人関係発達プログラムを随時開発し、学校および家庭における、いくつかのケースで試行的実践を行ったまた、対人関係発達アセスメント・ツールに関しては、アイテム・プール作業が行われ、既存の発達尺度の中から、対人関係の発達に関連するものが抽出され、そこに独自の項目案が追加された。アイテム・プール作業は、平成19年度内に完了し、平成20年度の研究活動(アセスメント・ツール作成)につなげられている。平成20年度、RDI(Relationship Development lntervention)を参考にして開発された、広汎性発達障害(PDD)をもつ人の対人関係能力を発達させる新しい療育的関わりを、公立中学校特別支援学級1学級と、発達障害をもつ小学生から大学生年齢の人たちを受け入れているフリースクール(生徒数約100名)1校において、実施した。 | KAKENHI-PROJECT-18659181 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18659181 |
対人関係療育プログラムPDIの日本への導入とその効果評価研究のための基礎研究 | 関わりは、非言語的コミュニケーション能力を高めること、「人」や「場」に対する興味や関心を高めること、周囲の人々の動きを「参照」する力を養うこと、「参照」されたものに自分の行動を合わせる「調整」能力を高めること、「変化」や「新奇」への対応能力を高め、それらを楽しみ、逆にそれらを望むようになること、共感能力を高めること、仲間と連帯感を高め、達成感や喜びを仲間と共有できるようにしなることを「狙い」として行われた。そうした関わりを通じて、生徒たちがどのように変化・成長したかを事例研究的に追うとともに、「関わりの狙い」として上記した項目にいて、生徒たちの発達段階を測定する尺度の開発に取り組んだ。事例研究においては、特別支援学級から3事例、フリースクールから7事例が報告され、そのすべての事例において、上記「狙い」に関連する何らかの発達・変化が認められた。尺度開発はフリースクールを対象に行われ、教員による評価、保護者による評価、ビデオ記録に基づいた専門家評価の3尺度の予備試行が行われた。しかし、教員評価と保護者評価との相関が低い、記録された映像場面の問題、さらに臨床診断の妥当性の問題が存在した。事例研究レベルであるが、ここで開発された療育方法の手応えはきわめて良い。本関わりは、PDDの中核的障害に対して直接的な効果をもつ可能性を有するという意味で、画期的である。今後.さらに尺度開発を進め、その効果性が客観的に測定されるよう研究を進める。 | KAKENHI-PROJECT-18659181 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18659181 |
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