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非侵襲的神経伝達物質画像を用いたヒト大脳基底核障害における神経回路網の機能的解析
ヒト大脳基底核は運動調節や体性感覚統合および学習や記憶などに密接に関与しているが,回路網の詳細には不明な点が多く,大脳基底核疾患においては治療標的の特定に難渋している.大脳基底核障害患者に治療前後で経時的PET検査を施行し,大脳基底核部・大脳皮質部・視床部の神経伝達物質代謝の生化学情報を定量解析して既知の神経回路網と対比するとともに,神経症状の推移を考慮して大脳基底核部損傷における神経回路可塑性に関するメカニズムを考察した.パーキンソン病患者の^<11>C-diacylglycerol-PETでは単純な運動負荷でもrepeatableな反応が現われ,線状体でのphosphoinositide turnoverが亢進して同側視床の活性が抑制され,視床下核を介する間接路の優位性が示された.脳卒中患者の^<11>C-diacylglycerol-PETでは,亜急性期に前頭前野に取り込み増強がみられ,症状改善後に減弱することから可塑的機構を反映していると推定された.大脳基底核部腫瘍患者に^<18>F-fluorodopa-PETを施行し,治療前後でドパミン細胞シナプス前部機能を評価した.脳実質内発育を示す瀰漫性腫瘍ではドパミン細胞が腫瘍内に分散化し,実質外発育を示す腫瘍ではドパミン細胞の圧排性集積が確認され,腫瘍の質的診断に寄与することが判明し,治療後にドパミン細胞シナプス前部機能が回復することが確認された.PET検査で得られた大脳基底核部神経伝達物質代謝の生化学情報を定量解析して既知の神経回路網と対比しながら神経症状の推移を考慮することにより,大脳基底核部における神経回路可塑性のメカニズムが解明されると期待される.ヒト大脳基底核は運動調節や体性感覚統合および学習や記憶などに密接に関与しているが,回路網の詳細には不明な点が多く,大脳基底核疾患においては治療標的の特定に難渋している.大脳基底核障害患者に治療前後で経時的PET検査を施行し,大脳基底核部・大脳皮質部・視床部の神経伝達物質代謝の生化学情報を定量解析して既知の神経回路網と対比するとともに,神経症状の推移を考慮して大脳基底核部損傷における神経回路可塑性に関するメカニズムを考察した.パーキンソン病患者の^<11>C-diacylglycerol-PETでは単純な運動負荷でもrepeatableな反応が現われ,線状体でのphosphoinositide turnoverが亢進して同側視床の活性が抑制され,視床下核を介する間接路の優位性が示された.脳卒中患者の^<11>C-diacylglycerol-PETでは,亜急性期に前頭前野に取り込み増強がみられ,症状改善後に減弱することから可塑的機構を反映していると推定された.大脳基底核部腫瘍患者に^<18>F-fluorodopa-PETを施行し,治療前後でドパミン細胞シナプス前部機能を評価した.脳実質内発育を示す瀰漫性腫瘍ではドパミン細胞が腫瘍内に分散化し,実質外発育を示す腫瘍ではドパミン細胞の圧排性集積が確認され,腫瘍の質的診断に寄与することが判明し,治療後にドパミン細胞シナプス前部機能が回復することが確認された.PET検査で得られた大脳基底核部神経伝達物質代謝の生化学情報を定量解析して既知の神経回路網と対比しながら神経症状の推移を考慮することにより,大脳基底核部における神経回路可塑性のメカニズムが解明されると期待される.ヒト大脳基底核は運動調節や体性感覚統合および学習や記憶などに密接に関与しているが,回路網の詳細には不明な点が多く,大脳基底核疾患においては治療標的の特定に難渋している.大脳基底核障害患者に経時的PET検査を施行し,神経回路網の機能的変化を可視化して神経回路の可塑性を検討することとした.パーキンソン病患者において,^<11>C-diacylglycerol-PETを用いてphosphoinositide turnoverを測定することにより,pallidothalamic systemの神経回路活動を視覚化した.正常被験者では,運動野や基底核でのpostsynaptic responseとしての再現性に乏しく,単純な運動負荷ではpallidothalamic systemの活性化には変化がみられなかった.パーキンソン病患者では単純な運動負荷でもrepeatableな反応が現われ,線状体でのphosphoinositide turnoverが亢進し,また同側視床の活性が抑制されpallidothalamic systemのレスポンスが観察された.すなわち,パーキンソン病における視床下核を介する間接路の優位性が示された.また,大脳基底核部腫瘍患者に^<18>F-fluorodopa-PETを施行し,治療前後でドパミン細胞シナプス前部機能を評価した.脳実質内発育を示す瀰漫性腫瘍ではドパミン細胞が腫瘍内に分散化し,実質外発育を示す腫瘍ではドパミン細胞の圧排性集積が確認され,腫瘍の質的診断に寄与することが新たに判明し,治療後にドパミン細胞シナプス前部機能が回復することが確認された.PET検査で得られた大脳基底核部神経伝達物質代謝の生化学情報を定量解析して既知の神経回路網と対比しながら神経症状の推移を考慮することにより,大脳基底核部における神経回路可塑性のメカニズムが解明されると期待される。
KAKENHI-PROJECT-15591538
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15591538
非侵襲的神経伝達物質画像を用いたヒト大脳基底核障害における神経回路網の機能的解析
ヒト大脳基底核は運動調節や体性感覚統合および学習や記憶などに密接に関与しているが,回路網の詳細には不明な点が多く,大脳基底核疾患においては治療標的の特定に難渋している.大脳基底核障害患者に治療前後で経時的PET検査を施行し,大脳基底核部・大脳皮質部・視床部の神経伝達物質代謝の生化学情報を定量解析して既知の神経回路網と対比するとともに,神経症状の推移を考慮して大脳基底核部損傷における神経回路可塑性に関するメカニズムを考察した.パーキンソン病患者^<11>C-diacylglycerol-PETでは単純な運動負荷でもrepeatableな反応が現われ,線状体でのphosphoinositide turnoverが亢進して同側視床の活性が抑制され,視床下核を介する間接路の優位性が示された.脳卒中患者の^<11>C-diacylglycerol-PETでは,亜急性期に前頭前野に取り込み増強がみられ,症状改善後に減弱することから可塑的機構を反映していると推定された.大脳基底核部腫瘍患者に^<18>F-fluorodopa-PETを施行し,治療前後でドパミン細胞シナプス前部機能を評価した.脳実質内発育を示す瀰漫性腫瘍ではドパミン細胞が腫瘍内に分散化し,実質外発育を示す腫瘍ではドパミン細胞の圧排性集積が確認され,腫瘍の質的診断に寄与することが判明し,治療後にドパミン細胞シナプス前部機能が回復することが確認された.PET検査で得られた大脳基底核部神経伝達物質代謝の生化学情報を定量解析して既知の神経回路網と対比しながら神経症状の推移を考慮することにより,大脳基底核部における神経回路可塑性のメカニズムが解明されると期待される.
KAKENHI-PROJECT-15591538
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15591538
Flow assayでの好酸球、CLAリンパ球に及ぼすサイトカインの影響
近年、アトピー性皮膚炎(AD)や気管支喘息などのアレルギー性疾患において、好酸球は重要なエフェクター細胞として知られている。今回ADと健常人との好酸球の違いを調べるため、好酸球接着分子と好酸球遊走能の違いについて検討した。結果、健常人に比較しADでは、好酸球上のCD11b発現が亢進しており、抗アレルギー薬の一つである塩酸エピナスチン投与により、CD11b発現は減少した。また塩酸エピナスチン投与により、Eotaxinに対する好酸球遊走能抑制が認められた。つまりCD11b発現を抑制することによりこの好酸球遊走抑制が起こるものと考えられた。このことから、好酸球の遊走に関して文献的にはVLA-4が関与するとされているが、CD11bも重要な接着分子であり、またアレルギー治療の臨床の場で使用されている抗アレルギー薬の好酸球に対する効果も明らかとなった。また外来診察で、非常に稀な疾患である高IgE症候群(Job's syndrome)(HIE)が受診し、血液を得ることができたので、ADとHIEとの違いを明らかにするため、末梢血リンパ球のサイトカイン発現を比較検討した。結果、IL-4のmRNA発現についてはAD,Normal,HIEの順に低くなり、γ-IFNのmRNA発現についてはAD,Normal,HIEの順に高くなった。文献的に、HIEではγ-IFN産生不全がありγ一IFNは低値とされているが、今回我々が行った結果とは逆の結果になった。このことからHIEの病態が明らかとなり、本来Th1とTh2のシフティングがあり、普段HIEはTh1に傾いており、病態が悪化するとTh2にシフトすることが示唆された。しかしADとの違いは臨床的に皮疹の違いしかなく、今後HIEの定義、診断基準を明らかにしていく必要があると考えられる。今後好酸球に関して、いかなる機構により血管内でのrolling,tetheringが起こるのかをflow chamberを用いて解明し、ADの治療に役立てたい。近年、アトピー性皮膚炎(AD)や気管支喘息などのアレルギー性疾患において、好酸球は重要なエフェクター細胞として知られている。今回ADと健常人との好酸球の違いを調べるため、好酸球接着分子と好酸球遊走能の違いについて検討した。結果、健常人に比較しADでは、好酸球上のCD11b発現が亢進しており、抗アレルギー薬の一つである塩酸エピナスチン投与により、CD11b発現は減少した。また塩酸エピナスチン投与により、Eotaxinに対する好酸球遊走能抑制が認められた。つまりCD11b発現を抑制することによりこの好酸球遊走抑制が起こるものと考えられた。このことから、好酸球の遊走に関して文献的にはVLA-4が関与するとされているが、CD11bも重要な接着分子であり、またアレルギー治療の臨床の場で使用されている抗アレルギー薬の好酸球に対する効果も明らかとなった。また外来診察で、非常に稀な疾患である高IgE症候群(Job's syndrome)(HIE)が受診し、血液を得ることができたので、ADとHIEとの違いを明らかにするため、末梢血リンパ球のサイトカイン発現を比較検討した。結果、IL-4のmRNA発現についてはAD,Normal,HIEの順に低くなり、γ-IFNのmRNA発現についてはAD,Normal,HIEの順に高くなった。文献的に、HIEではγ-IFN産生不全がありγ一IFNは低値とされているが、今回我々が行った結果とは逆の結果になった。このことからHIEの病態が明らかとなり、本来Th1とTh2のシフティングがあり、普段HIEはTh1に傾いており、病態が悪化するとTh2にシフトすることが示唆された。しかしADとの違いは臨床的に皮疹の違いしかなく、今後HIEの定義、診断基準を明らかにしていく必要があると考えられる。今後好酸球に関して、いかなる機構により血管内でのrolling,tetheringが起こるのかをflow chamberを用いて解明し、ADの治療に役立てたい。
KAKENHI-PROJECT-12770469
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12770469
アメリカの保育職能団体が保育の専門職化に果した機能に関する史的研究
本研究では、次の保育職能団体による保育の専門職化に関する機能の分析を行った。(1)アメリカ・フレーベル協会(1877)(2)アメリカ・フレーベル連合(1877-1881)(3)北アメリカ・フレーベル協会(1882-884)(4)全米教育協会幼稚園教育部会(1884-)(5)国際幼稚園連盟(1892-)(6)全米乳幼児教育協会(1964-)(7)日本保育学会結果、保育の専門職化を目指す保育職能団体の機能には、時代的な特徴があったこと、また、(5)国際幼稚園連盟によって19/20世紀転換期に、現在の職能団体による保育の専門職化を目指す活動の原型がつくられたことが明らかになった。具体的には、保育職能団体は、(1)、(2)、(3)の段階では、既存のドイツフレーベル主義に忠実な基準の維持と監督を中心に、出版助成、保育者認定、推薦図書リスト、推薦養成校リストを提示していたが、(4)の段階から、徐々に団体自体が保育の専門性に関する基準や質を議論するようになった。(5)以降、職能団体は、自らがアンケート調査、研究活動を行い、専門性の確立を目指し、専門性の基準(養成カリキュラム、実践の指標等)を作成し、その普及を目指すようになった。(5)、(6)の委員会活動等の比較検討により、現在の(6)の活動は(5)の時代に確立されたものであることが分かった。(6)は、日本の『保育所保育指針』『幼稚園教育要領』にあたる、全米の保育実践基準を提示している。代表的な『発達にふさわしい実践』は全米で50万部以上の保育関係者に読まれている。また、(6)による認可システムが保育施設に普及しており、保育所の設置および実践の基準となっている。これが、広い信頼をえるものとなっている。アメリカの保育職能団体は、他の団体および行政との協力のもと、保育の専門職化に深く関与し、実際に強く影響を与えており、我が国とは大きな違いがあることが明らかになった。本研究の課題は次の保育職能団体の専門職化に関する機能の分析である。(1)アメリカフレーベル協会(1877)(2)アメリカフレーベル連盟(1877-1881)(3)北アメリカフレーベル協会(1882-1884)(4)全米教育協会:幼稚園教育部会(1884-)(5)国際幼稚園連盟(1892-)(現在は国際児童教育協会)(6)全米乳幼児教育協会(1964-)(7)日本保育学会当年は、一次資料を活用して、(1)(3)、(4)の1884年1910年、(5)の1892年1919年を分析し、また(6)と(7)における幼保一元化をめぐる近年の改革動向に関する日米比較を行った。結果以下が明らかになった。(1)(3)の保育の専門性の基準はフレーベル主義であった。組織の形態は小規模で個人的人間関係を反映していた。専門職化の活動として、出版助成、推薦図書のリスト作成、養成認定がなされた。読み書き算の否定、遊びを中心とする保育独自の専門性の認識、その確立と維持が目指された。1884年(3)と(4)が共同大会を開催し、以降保育職能団体は当時最大の教育職能団体に併合され一部会となった。他の教育領域との交流がなされ、保育関係者は当時の最新の学問知識を学び、教職の専門性の確立に関する議論と活動にふれ、保育独自の専門性の確立を目指す団体を必要とし、1892年(4)おいて(5)が設立された。(4)と(5)では、保育の専門性の基準が学校教育と関連付けて提案され、1890年以降は、児童研究が専門知識・技術とされた。(5)は当初、推薦図書等既成の基準を整備し提示したが、1900年以降は自らが調査研究を行い、1910年代には養成カリキュラム報告書や保育カリキュラムを作成した。(6)(7)を比較した結果、近年の保育の専門職化や質の向上を巡る改革が日本では行政主導だが、米国では職能団体主導であり、団体が提示した基準を行政が採用しており、この米国の今日的特徴が世紀転換期に形成されたことが明らかになった。本研究では、次の保育職能団体による保育の専門職化に関する機能の分析を行った。(1)アメリカ・フレーベル協会(1877)(2)アメリカ・フレーベル連合(1877-1881)(3)北アメリカ・フレーベル協会(1882-884)(4)全米教育協会幼稚園教育部会(1884-)(5)国際幼稚園連盟(1892-)(6)全米乳幼児教育協会(1964-)(7)日本保育学会結果、保育の専門職化を目指す保育職能団体の機能には、時代的な特徴があったこと、また、(5)国際幼稚園連盟によって19/20世紀転換期に、現在の職能団体による保育の専門職化を目指す活動の原型がつくられたことが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-12710156
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12710156
アメリカの保育職能団体が保育の専門職化に果した機能に関する史的研究
具体的には、保育職能団体は、(1)、(2)、(3)の段階では、既存のドイツフレーベル主義に忠実な基準の維持と監督を中心に、出版助成、保育者認定、推薦図書リスト、推薦養成校リストを提示していたが、(4)の段階から、徐々に団体自体が保育の専門性に関する基準や質を議論するようになった。(5)以降、職能団体は、自らがアンケート調査、研究活動を行い、専門性の確立を目指し、専門性の基準(養成カリキュラム、実践の指標等)を作成し、その普及を目指すようになった。(5)、(6)の委員会活動等の比較検討により、現在の(6)の活動は(5)の時代に確立されたものであることが分かった。(6)は、日本の『保育所保育指針』『幼稚園教育要領』にあたる、全米の保育実践基準を提示している。代表的な『発達にふさわしい実践』は全米で50万部以上の保育関係者に読まれている。また、(6)による認可システムが保育施設に普及しており、保育所の設置および実践の基準となっている。これが、広い信頼をえるものとなっている。アメリカの保育職能団体は、他の団体および行政との協力のもと、保育の専門職化に深く関与し、実際に強く影響を与えており、我が国とは大きな違いがあることが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-12710156
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12710156
果実熟成制御機能をもつ新規な1-MCP徐放性包装紙の開発
果実の成熟は,植物ホルモンの一つである植物成長調節剤エチレンに促進される.エチレンは,過熟後は老化を促進し果実の品質低下を招くことになる.エチレンの阻害効果をもつ1-メチルシクロプロペン(1-MCP)ガスは高いエチレン受容体結合阻害効果を持ち,果実の成熟遅延効果剤として注目されている.1-MCPは室温ガスとして存在し,低濃度で使用するためα-シクロデキストリン(CD)に包接させた粉末として利用されている.本研究では,1-MCP・・-CD包接複合体結晶粉末を包括したエレクトロスピニングファイバーを作製し,このファイバーからの1-MCP徐放速度に及ぼす環境湿度の影響について検討した.1-MCP・α-CD包接複合体結晶粉末は,微細な針状結晶が得られた.結晶粉末からの見掛け徐放フラックスF[1/Ms]は,湿度が30-40%以上で徐放を開始し,ある湿度で最大値を示した後,急激に見掛け徐放フラックスが減少し,湿度80%付近で最低値の値となるコラップス現象が観察された.ファイバーからの湿度応答に対する1-MCP徐放挙動は湿度上昇に伴うフラックス増加を示すが,高湿度になると,CD結晶粉末由来のコラップス挙動を示した.このスピニングファイバーの1-MCP徐放結果からアレニウスの式を用いて,活性化エネルギーを算出し,1-MCP・α-CD包接複合体結晶包括ファイバーの特性解析を行った.エレクトロスピニングファイバーの1-MCP徐放挙動を,徐放フラックスを徐放活性化エネルギ項に湿度の影響を考慮した徐放速度式と湿度履歴を考慮した項を加えた推算式を考案し,スピングファイバーからの1-MCP徐放挙動の推算をすることが出来た.1-メチルシクロプロペン(1-MCP)・α-シクロデキストリン(CD)包接複合体結晶粉末からの1-MCP徐放挙動に及ぼす水蒸気濃度の影響について、以下の検討を実施した。1-MCP・α-CD包接複合体結晶粉末を作製し、包接複合体結晶粉末に温度、湿度を調節した空気と接触させ、結晶粉末から1-MCP徐放速度に及ぼす粉末形態、湿度の影響について、過渡応答装置(鳥取大学工学部)及び動的雰囲気制御装置及びPTR-MS(ミネソタ大学)を用いて検討した。結晶粉末中の1-MCP含量はガスクロマトグラフを用いて測定し、粉末X線回折装置(現有設備)により粉末のCollapse現象と温度、湿度の関係を明らかにした。包接複合体粉末からの1-MCP徐放を、温度50°Cで湿度をステップ的に10%ずつ増加させて測定した結果、湿度が増加するごとに1-MCPの徐放量は増加したが、湿度70%になると1-MCPの徐放量は急激に減少した。CDの包接複合体は結晶構造であるが、湿度が高くなると結晶構造の一部が溶解し、結晶度が低下する。この粉末の構造変化による1-MCP徐放挙動の変化を、コラップス現象といい粉末からのヅレーバー徐放挙動には報告されていたが、CD複合体での現象について言及したのは始めてである。また、エレクトロスピニング法を用いた1-MCP.CD複合体繊維の作製に取組んでいる。近年、高品質な果実を世界各国へ輸出する機会が非常に増加してきた。そのため、果実をエチレンレセプター阻害剤1-メチルシクロプロペン(1-MCP)と接触させ、果実熟成を制御するための新規な1-MCP徐放性包装紙の開発が切望されている。1-MCPの徐放解析を、シクロデキストリンの結晶構造変化(結晶質から非晶質構造への変化とそれに伴う1-MCP徐放挙動)を、動的雰囲気制御システムを用いて検討した。1-MCPを包接したα-CD粉末を含んだポリスチレンファイバーを、エレクトロスピニング(EP)法を用いて作製した。このEP法の条件は、ターゲットとノズルの距離:10cm、電位:10kV、ポリスチレン濃度:10.0-22.5wt%により行った。α-CD添加の影響を検討するため20wt%ポリスチレン濃度に対して0-100%のα-CD添加ファイバーを作製した。作製ファイバーの直径、形状観察を実施した。その結果、12.5wt%ポリスチレン溶液(トルエン/クロロホルム:2/3)に対してポリスチレンに対して100wt%の1-MCP/α-CD包接複合体を入れた条件で、ファイバーを作製できた。EP法により作製したファイバーの直径は、溶液粘度に大きく依存し直径変化はCa数の0.2乗に比例して変化した。20wt%の溶液を用いた場合は、3.8-4.4μmのファイバーであった。α-CD濃度が増加すると殆ど変化せず、直径のばらつき(分散)が大きくなった。EP法により作製した場合の1-MCPの残留率は約80%であった。自作した動的雰囲気制御システムを用いて1-MCP/α-CD包接複合体粉末、及びポリスチレンファイバーからの1-MCP徐放速度を測定した結果、1-MCPの徐放は湿度60%以上で生じ粉末の場合ははっきりとしたコラップス現象が確認できた。ファイバーにすると、このコラップピークが小さくなった。果実の成熟は,植物ホルモンの一つである植物成長調節剤エチレンに促進される.エチレンは,過熟後は老化を促進し果実の品質低下を招くことになる.エチレンの阻害効果をもつ1-メチルシクロプロペン(1-MCP)
KAKENHI-PROJECT-09F09113
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09F09113
果実熟成制御機能をもつ新規な1-MCP徐放性包装紙の開発
ガスは高いエチレン受容体結合阻害効果を持ち,果実の成熟遅延効果剤として注目されている.1-MCPは室温ガスとして存在し,低濃度で使用するためα-シクロデキストリン(CD)に包接させた粉末として利用されている.本研究では,1-MCP・・-CD包接複合体結晶粉末を包括したエレクトロスピニングファイバーを作製し,このファイバーからの1-MCP徐放速度に及ぼす環境湿度の影響について検討した.1-MCP・α-CD包接複合体結晶粉末は,微細な針状結晶が得られた.結晶粉末からの見掛け徐放フラックスF[1/Ms]は,湿度が30-40%以上で徐放を開始し,ある湿度で最大値を示した後,急激に見掛け徐放フラックスが減少し,湿度80%付近で最低値の値となるコラップス現象が観察された.ファイバーからの湿度応答に対する1-MCP徐放挙動は湿度上昇に伴うフラックス増加を示すが,高湿度になると,CD結晶粉末由来のコラップス挙動を示した.このスピニングファイバーの1-MCP徐放結果からアレニウスの式を用いて,活性化エネルギーを算出し,1-MCP・α-CD包接複合体結晶包括ファイバーの特性解析を行った.エレクトロスピニングファイバーの1-MCP徐放挙動を,徐放フラックスを徐放活性化エネルギ項に湿度の影響を考慮した徐放速度式と湿度履歴を考慮した項を加えた推算式を考案し,スピングファイバーからの1-MCP徐放挙動の推算をすることが出来た.
KAKENHI-PROJECT-09F09113
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09F09113
歯内治療における電気化学的な細菌由来プロテアーゼ活性および遺伝子検出法の開発
歯内治療の成功率を向上させるためには,根管や根尖病変に存在する細菌を高精度に検出する必要がある.そのため,無菌化に関する迅速・簡便・確実なチェアサイド診断システムの開発が強く望まれている.本研究では,蛍光染色剤による細菌の検出および細菌の産生物の電気化学的手法による測定の両面にわたり検討を行った.その結果,簡易に細菌検査を行うことができる診断システム実現の可能性が明らかとなった.歯内治療の成功率を向上させるためには,根管や根尖病変に存在する細菌を高精度に検出する必要がある.そのため,無菌化に関する迅速・簡便・確実なチェアサイド診断システムの開発が強く望まれている.本研究では,蛍光染色剤による細菌の検出および細菌の産生物の電気化学的手法による測定の両面にわたり検討を行った.その結果,簡易に細菌検査を行うことができる診断システム実現の可能性が明らかとなった.[研究の目的]歯内治療における病態の把握や根管充填時期決定における重要な要素として,根管内および根尖病巣における細菌の存在があり,歯内治療成功率を向上させるには,複雑な根管系および根尖病巣に存在する細菌の高精度な検出と適確な除去の確認が必須要件となる.根管・根尖病巣に存在する細菌の検出法として,現時点では根管内からサンプルを採取し嫌気培養によって判断する手法がとられている.しかしながら嫌気培養法は操作が煩雑であり判定までに時間がかかることや経済的側面から臨床現場への普及度は低く,多くの歯科医師は,いまだに病態の変化を患者の自覚・他覚症状から歯科医師が主観的に判断している.本研究では,電気化学的手法を応用した細菌由来プロテアーゼ活性および特異的遺伝子検出による迅速・確実な細菌検出システムの開発を目的としている.(原因菌ライブラリーの構築)本研究の目的である歯内治療における電気化学的検出法の開発には,細菌由来プロテアーゼあるいは特異的遺伝子を単離・精製するための細菌のライブラリー構築が必要である.現在,不可逆性歯髄炎および根尖性歯周炎の原因菌の細菌ライブラリーを作成している.さらに効果的な診断ができるようにライブラリーの変更・追加はプロジェクト終了まで模索しシステム構築後の結果や新たに報告された知見を基に行う.同時に根管内からのサンプル採取法と量の検討,ターゲットとなるプロテアーゼおよび遺伝子の選定(例:Enterococcus faecalisにおいてはゼラチナーゼとセリンプロテアーゼ)等を行っている歯内治療における病態の把握や根管充填時期決定における重要な要素として,根管内および根尖病巣における細菌の存在があり,歯内治療成功率を向上させるには,複雑な根管系および根尖病巣に存在する細菌の高精度な検出と適確な除去の確認が必須要件となる.根管・根尖病巣に存在する細菌の検出法として,現時点では根管内からサンプルを採取し嫌気培養によって判断する手法がとられている.しかしながら嫌気培養法は操作が煩雑であり判定までに時間がかかることや経済的側面から臨床現場への普及度は低く,多くの歯科医師は,いまだに病態の変化を患者の自覚・他覚症状から歯科医師が主観的に判断している.本研究では,電気化学的手法を応用した細菌由来プロテアーゼ活性および特異的遺伝子検出による迅速・確実な細菌検出システムの開発を目的としており,今年度はreal-timePCR法を用いた根尖性歯周炎原因菌の定量化方法の確立のために,Enterococcus faecalis等の難治性根尖性歯周炎の原因菌群のプライマーを作成し,各菌に歯内療法に用いられる各種薬剤を作用後、PCR阻害作用があり、かつ細胞膜透過性のない蛍光染色剤Propidium monoazide(PMA)を用いて染色し生菌と死菌を染め分けた後、リアルタイムPCR法によって測定し、生菌のみの染色体DNA濃度との相関を解析し、CFU count法等の従来の等生菌と死菌を判別する方法と比較することにより,リアルタイムPCR法を用いた根管内細菌の定量化の方法を確立した.歯内治療における病態の把握や根管充填時期決定における重要な要素として,根管内および根尖病巣における細菌の存在があり,歯内治療成功率を向上させるには,複雑な根管系および根尖病巣に存在する細菌の高精度な検出と適確な除去の確認が必須要件となる.根管・根尖病巣に存在する細菌の検出法として,現時点では根管内からサンプルを採取し嫌気培養によって判断する手法がとられている.しかしながら嫌気培養法は操作が煩雑であり判定までに時間がかかることや経済的側面から臨床現場への普及度は低く,多くの歯科医師は,いまだに病態の変化を患者の自覚・他覚症状から歯科医師が主観的に判断している.本研究では,電気化学的手法を応用した細菌由来プロテアーゼ活性および特異的遺伝子検出による迅速・確実な細菌検出システムの開発を目的としている.今年度は口腔内に存在する細菌の関連酵素(Arg-gingipain (Rgp),Lys-gingipain (Kgp))の同時検出を目的として,電気化学的プロテアーゼアッセイ法を適用しRgp, Kgpの特異的な検出を試みた.すなわち,異なるRedox電位を有するフェロセンプロピオン酸またはフェロセンカルボン酸と金電極上に固定するためのシステインを認識部位の異なる基質ペプチド(FRG, FKG)に導入し、得られた基質ペプチドの金電極への同時固定化を試みた。その結果,検出された値は蛍光測定により算出された結果とほぼ一致しており,本手法が口腔内に存在する細菌の簡易検査手法へ発展できる可能性を示している。
KAKENHI-PROJECT-22592126
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22592126
歯内治療における電気化学的な細菌由来プロテアーゼ活性および遺伝子検出法の開発
本研究では,電気化学的手法を応用した細菌由来プロテアーゼ活性および特異的遺伝子検出による迅速・確実な細菌検出システムの開発を目的としており,今年度はPCRを用いた特異的遺伝子検出による細菌検出法の確立に関しては新たな知見が得られたが,歯内治療における電気化学的検出法の開発のための,細菌由来プロテアーゼあるいは特異的遺伝子を単離・精製するための細菌のライブラリー構築が今後の課題である.24年度が最終年度であるため、記入しない。本研究の目的である歯内治療における電気化学的検出法の開発には,細菌由来プロテアーゼあるいは特異的遺伝子を単離・精製するための細菌のライブラリー構築が必要である.現在,不可逆性歯髄炎および根尖性歯周炎の原因菌の細菌ライブラリーを作成している.さらに効果的な診断ができるようにライブラリーの変更・追加はプロジェクト終了まで模索しシステム構築後の結果や新たに報告された知見を基に行う.24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22592126
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22592126
細胞性免疫の誘導に基づく免疫療法
(1)マウスTL抗原遺伝子導入マウス由来の樹状細胞を用い、同系マウスを免疫することにより、TL抗原陽性腫瘍の増殖抑制を誘導しえることを示した。また、TL拘束性を示す細胞傷害性T細胞(CTL)はTAP非依存性に発現しているTL抗原エピトープを認識していることを示した。(2)フレンドウイルス誘発腫瘍、FBL・3特異的CTLの中からIL・2産生能が高いクローンを選択し、養子移入した。この様なクローンは効率よく腫瘍を拒絶すること、長期にわたり記憶細胞として抗腫瘍活性を発揮すること、が明らかとなった。(3)マウス腹腔に腫瘍細胞を移植すると、マクロファージがIL・12産生し、この内因性IL・12がNK細胞及びNKT細胞による抗腫瘍効果を誘することを明らかとした。(4)自家癌患者由来のエフェクターT細胞クローンを用い、次の3種の標的抗原エピトープの同定に成功した。ヒト滑膜肉腫のSYT・SSX融合遺伝子産物由来のHLA・A24拘束性ペプチド、傍腫瘍症候群にかかわるrecoverin蛋白質由来のHLA・A24拘束性ペプチド、及び扁平上皮癌のαエノラーゼ由来のHLA・DR8拘束性ペプチド。(5)CD80(B7)遺伝子を導入した自家肺癌細胞株を9例から樹立しており、このうち8例で肺癌特異的CTLの誘導を試み、クローニングの結果、4例でクローンの樹立に成功した。抗原解析を行ない、核内因子NF・YCの変異蛋白がHLA・B^*5202拘束性CTLの標的抗原であることを示した。(6)ヒトメラノーマに対するHLA・A1拘束性CTLを用いて自家腫瘍cDNA発現ライブラリーより、新規抗原(8B6)をコードするcDNAを単離した。エピトープは遺伝子の突然変異に由来する変異ペプチドにあることを示した。(1)マウスTL抗原に対する細胞傷害性T細胞(CTL)クローンを多数樹立し、これらクローンには傷害機構としてFasL系又はパ-フォリン系を使用する2群があり、両群の間には傷害標的細胞の特異性に差異があることを示した。(2)モロニ-ウイルス誘発腫瘍(MBL-2)のヘルパー(Th)エピトープ(im)、およびCTLエピトープ(S9)を同定し、各々に対応するペプチド及び両者から成るキメラペプチド(im-S9)の免疫により、抗MBL-2CTL誘導にはキメラペプチドが最も有効であることを示した。(3)マウス腹腔中には、NK1.1T細胞が常在するが、がん細胞の腹腔内移植により著しく増加することを示した。本細胞群はCD1や主要組織適合抗原(MHC)クラスIaの発現の無い腫瘍細胞に対しFasL系よりもパ-フォリン系を使用して、キラー活性を示すことを明らかにした。(4)HLA-A31拘束性のCTLで認識されるヒト胃印環細胞がん(HST-2株)の抗原ペプチドF4.2を同定した。この10ケのアミノ酸よりなるF4.2ペプチド上のエピトープは9番目のTrp,アグレトープは6番目のIleであることを示した。(5)ヒト肺がんに対するHLA-A24拘束性のCTLの誘導に成功している。また、HLA-A2陽性の肺がん患者のリンパ節リンパ球より、MAGE-3及びp53ペプチド特異的CTLを誘導した。(1)マウスTL抗原遺伝子導入マウス由来の皮膚と樹状細胞を用い、同系マウスを免疫することにより、TL抗原陽性腫瘍の増殖抑制を誘導しえることを示した。(2)フレンドウイルス誘発腫瘍、FBL-3の新しいCTLエピトープとして9残基からなるgag蛋白ベプチド(p75)を同定し、その活性は従来のエピトープに比し、千倍以上強いことを示した。(3) NK1.1^+T細胞は、IL-12レセプターを強く発現しており、腫瘍細胞により活性化されたマクロファージが産生する少量のIL-12に反応し、腫瘍細胞を傷害することを示した。(4)ヒト胃がん株(HST-2)に対するHLA-A31拘束性CTLが認識する抗原エビトープの親抗原蛋白の候補cDNAクローンC98を得た。しかし、N末6ヶのアミノ酸配列とは一致したが、7ヶ目からの4ヶは全く異なった配列を示した。(5) CD80(B7-1)遺伝子を導入した自家腫瘍株を免疫原として用いることにより、肺がん特異的CTLの誘導効率を上昇することに成功した。(6)メラノーマ特異的CTLを用いて、チロシナーゼ抗原のHLA-A1エビトープとgp100抗原のHLA-A2と-A3エピトープを新たに同定した。(1)マウスTL抗原遺伝子導入マウス由来の樹状細胞を用い、同系マウスを免疫することにより、TL抗原陽性腫瘍の増殖抑制を誘導しえることを示した。また、TL拘束性を示す細胞傷害性T細胞(CTL)はTAP非依存性に発現しているTL抗原エピトープを認識していることを示した。(2)フレンドウイルス誘発腫瘍、FBL・3特異的CTLの中からIL・2産生能が高いクローンを選択し、養子移入した。この様なクローンは効率よく腫瘍を拒絶すること、長期にわたり記憶細胞として抗腫瘍活性を発揮すること、が明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-09255106
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09255106
細胞性免疫の誘導に基づく免疫療法
(3)マウス腹腔に腫瘍細胞を移植すると、マクロファージがIL・12産生し、この内因性IL・12がNK細胞及びNKT細胞による抗腫瘍効果を誘することを明らかとした。(4)自家癌患者由来のエフェクターT細胞クローンを用い、次の3種の標的抗原エピトープの同定に成功した。ヒト滑膜肉腫のSYT・SSX融合遺伝子産物由来のHLA・A24拘束性ペプチド、傍腫瘍症候群にかかわるrecoverin蛋白質由来のHLA・A24拘束性ペプチド、及び扁平上皮癌のαエノラーゼ由来のHLA・DR8拘束性ペプチド。(5)CD80(B7)遺伝子を導入した自家肺癌細胞株を9例から樹立しており、このうち8例で肺癌特異的CTLの誘導を試み、クローニングの結果、4例でクローンの樹立に成功した。抗原解析を行ない、核内因子NF・YCの変異蛋白がHLA・B^*5202拘束性CTLの標的抗原であることを示した。(6)ヒトメラノーマに対するHLA・A1拘束性CTLを用いて自家腫瘍cDNA発現ライブラリーより、新規抗原(8B6)をコードするcDNAを単離した。エピトープは遺伝子の突然変異に由来する変異ペプチドにあることを示した。
KAKENHI-PROJECT-09255106
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ICT活用のもとで体験させ、持続可能な自分の思考を引きだす数学教育の授業
ID(インストラクショナル・デザイン)でみる数学の授業の提案である。(y=距離、t=時間)本校3年家庭科生を対象に、1クラスを4班(数名)に分けて実施。お互いに役割分担をさせ、協力作業を進めながら、ICT活用のもと、「歩く」という共通体験を通して、「一次関数(y=○t+△)のグラフとその意味するところを理解させる」ことが本授業の大きな目的の一つである。<初めに現象ありき>で、体験学習を通した実験から始めて、同じような理解(○=(y-△)÷t)をえる。グラフの傾き=○から、<速さ>が<距離>÷<時間>という比の関係で、与えられることの理解に到達させる。しかしその過程が、通常と異なるのは、生徒たちが、机上に置かれた距離センサーに向かって、「歩いたり/退いたりする」行為をくりかえすことから始まるからである。そしていろいろな歩き方を工夫する中で、グラフのプロットと歩き方の意味づけ等の考察を通して、まさに自発的な行動や思考が生まれ、連続または不連続なグラフの動き方もみつけだしたりしながら、一定の結果をだしてくれたのでこちらもわくわくしてくる。(生徒の実験の様子はVTRに記録)それから、「共通」体験とか「共通」理解という、言葉「共通」の意味を一寸考えてみたい。一般的には、「共通」=「最大公約数」である。だから<殆ど100%に近い>という意味をもたすには、生徒全員が同じような気持ち体験が必要。それにはICTハイテク技術が、授業の流れの下支えをしているからこそ可能で、教師は思い通りのIDが実践できることになる。一歩ずつの生徒の動きは、グラフ電卓の小さな画面で、ほぼ直線のプロットに変換され、PCを経て、リアルタイムで目の前の大画面に投影されここで目が釘付けになる。このビジュアルな共通感覚がとても大切。これこそが持続可能な思考を引きだす泉のような原点だと思う。最後に、この授業から、生徒に教えられたことがある。ガニェ先生が書かれなかった、学ぼうとする生徒の側からのIDの視点の発見である。幸いなことに、次の課題までえられたことになる。ID(インストラクショナル・デザイン)でみる数学の授業の提案である。(y=距離、t=時間)本校3年家庭科生を対象に、1クラスを4班(数名)に分けて実施。お互いに役割分担をさせ、協力作業を進めながら、ICT活用のもと、「歩く」という共通体験を通して、「一次関数(y=○t+△)のグラフとその意味するところを理解させる」ことが本授業の大きな目的の一つである。<初めに現象ありき>で、体験学習を通した実験から始めて、同じような理解(○=(y-△)÷t)をえる。グラフの傾き=○から、<速さ>が<距離>÷<時間>という比の関係で、与えられることの理解に到達させる。しかしその過程が、通常と異なるのは、生徒たちが、机上に置かれた距離センサーに向かって、「歩いたり/退いたりする」行為をくりかえすことから始まるからである。そしていろいろな歩き方を工夫する中で、グラフのプロットと歩き方の意味づけ等の考察を通して、まさに自発的な行動や思考が生まれ、連続または不連続なグラフの動き方もみつけだしたりしながら、一定の結果をだしてくれたのでこちらもわくわくしてくる。(生徒の実験の様子はVTRに記録)それから、「共通」体験とか「共通」理解という、言葉「共通」の意味を一寸考えてみたい。一般的には、「共通」=「最大公約数」である。だから<殆ど100%に近い>という意味をもたすには、生徒全員が同じような気持ち体験が必要。それにはICTハイテク技術が、授業の流れの下支えをしているからこそ可能で、教師は思い通りのIDが実践できることになる。一歩ずつの生徒の動きは、グラフ電卓の小さな画面で、ほぼ直線のプロットに変換され、PCを経て、リアルタイムで目の前の大画面に投影されここで目が釘付けになる。このビジュアルな共通感覚がとても大切。これこそが持続可能な思考を引きだす泉のような原点だと思う。最後に、この授業から、生徒に教えられたことがある。ガニェ先生が書かれなかった、学ぼうとする生徒の側からのIDの視点の発見である。幸いなことに、次の課題までえられたことになる。
KAKENHI-PROJECT-20913010
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炎症性皮膚疾患におけるTh1 Th2細胞へのdeviationを規定する因子の解析
代表的炎症性皮膚疾患である乾癬、アトピー性皮膚炎は近年、皮膚湿潤リンパ球の分泌するサイトカインの解析から、前者がいわゆるTh1型、後者がTh2型のhelper T細胞により炎症が惹起されていることが明らかとなった。そこで、本研究においては、まず、アトピー性皮膚炎患者末梢血リンパ球を用いて、近年開発された細胞内サイトカイン染色法により、患者ならびに健常者ヘルパーT細胞、細胞障害性リンパ球のうち何%の細胞がIFNg、IL-2、IL-4を産生するかを定量した。その結果、アトピー性皮膚炎患者リンパ球にいては、IFNg産生細胞の比率が有意に低下していることが明らかとなった。一方、IL-2、IL-4に関しては予想に反して、アトピー性皮膚炎患者と健常人との間で有意な差のないことも明らかとなった。この結果は、アトピー性皮膚炎発症に、IFNgの産生調節機構の異常が関与している可能性を示唆するもので、アトピー性皮膚炎研究に新たな側面を開いた。また、一方、アトピー性皮膚炎ならびに健常者リンパ球をダニ、カンジダなどの抗原で刺激し、その活性化に関与するco-stimulatory moleculeの同定をそれに対する抗体を用いて試みた。その結果、CD54、CD86などの分子は、アトピー性皮膚炎患者、健常人リンパ球が共通に利用していたが、CD80分子などは健常人とアトピー性皮膚炎患者との間に差が認められた。この結果により、従来提唱されていたアトピー性皮膚炎患者リンパ球のサイトカイン産生の特異性の他に、抗原提示段階での特異性が明らかとなった。代表的炎症性皮膚疾患である乾癬、アトピー性皮膚炎は近年、皮膚湿潤リンパ球の分泌するサイトカインの解析から、前者がいわゆるTh1型、後者がTh2型のhelper T細胞により炎症が惹起されていることが明らかとなった。そこで、本研究においては、まず、アトピー性皮膚炎患者末梢血リンパ球を用いて、近年開発された細胞内サイトカイン染色法により、患者ならびに健常者ヘルパーT細胞、細胞障害性リンパ球のうち何%の細胞がIFNg、IL-2、IL-4を産生するかを定量した。その結果、アトピー性皮膚炎患者リンパ球にいては、IFNg産生細胞の比率が有意に低下していることが明らかとなった。一方、IL-2、IL-4に関しては予想に反して、アトピー性皮膚炎患者と健常人との間で有意な差のないことも明らかとなった。この結果は、アトピー性皮膚炎発症に、IFNgの産生調節機構の異常が関与している可能性を示唆するもので、アトピー性皮膚炎研究に新たな側面を開いた。また、一方、アトピー性皮膚炎ならびに健常者リンパ球をダニ、カンジダなどの抗原で刺激し、その活性化に関与するco-stimulatory moleculeの同定をそれに対する抗体を用いて試みた。その結果、CD54、CD86などの分子は、アトピー性皮膚炎患者、健常人リンパ球が共通に利用していたが、CD80分子などは健常人とアトピー性皮膚炎患者との間に差が認められた。この結果により、従来提唱されていたアトピー性皮膚炎患者リンパ球のサイトカイン産生の特異性の他に、抗原提示段階での特異性が明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-08670943
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08670943
サイトカインによる造血細胞の増殖制御機構
サイトカイン依存性の造血細胞はその生存および増殖がサイトカインの存在に強く依存するため、サイトカインによる増殖シグナルの解析に適している。我々はすでにサイトカインによる造血細胞の増殖にはDNA複製に必要なシグナルと細胞死抑制のシグナルの両者が必要であること及びRASの活性化により細胞死が抑制されることを示した。活性化型Rasのeffector domainに変異を導入した部分活性化型Rasの発現によりRasはRaf/Mapキナーゼ系とPI3キナーゼ系を活性化し、それぞれが細胞死の抑制に作用することを明らかにした。さらに、サイトカイン除去に伴う細胞死の分子機構は不明であったので、Caspaseが関与する可能性を検討した。その結果、IL-3除去に伴いCaspase-3の活性が上昇すること及びCaspase-3阻害剤が細胞死を抑制することから、サイトカイン除去による細胞死にもFas刺激などと同様にCaspase活性化シシテムが働いていることが示された。しかし、興味深いことにCaspase-3阻害剤で細胞死を止めても、もはや細胞はIL-3に応答して増殖することができないことから、Caspase-3の活性化と細胞死へのコミットメントとは必ずしも同じではないことが明かとなり、細胞死へのコミットメントの実体は何かという新たな問題を提起した。IL-3依存性の造血細胞株BaF3はその生存および増殖がサイトカインの存在に強く依存するため、サイトカインによる増殖シグナルの解析に適している。我々はすでにサイトカインによる造血細胞の増殖にはDNA複製に必要なシグナルと細胞死抑制のシグナルの両者が必要であること、及びRASの活性化により細胞死が抑制されることをGM-CSF受容体の変異体を用いて示した。RASによる細胞死抑制のメカニズムを明かにするために、活性化型Rasを誘導的に発現させた。その結果、細胞死抑制分子であるBcl-2およびBcl-Xの発現が活性化型RASの発現に伴い誘導されることを見い出した。このことはRASの機能の少なくとも一部はBcl-2,Bcl-Xの発現を介している可能性を示唆するものである。一方、DNA複製にはc-Mycの発現が重要と考えられていたが、今回我々は優性抑制型STAT5変異体の発現により細胞増殖(DNA複製)が抑制されるという結果を得た。さらに、この変異STAT5の発現はc-Mycの発現には影響を与えないことから、サイトカインによるc-Myc発現誘導にはSTAT5は関与していないと考えられる。即ち、造血細胞においては、DNA複製にはc-Mycと共にSTAT5により制御される遺伝子の発現が重要であると考えられる。従って、STAT5の下流の遺伝子をさらに解析することで、サイトカインによるDNA複製の制御機構に迫ることができる。IL-3依存性の造血細胞株BaF3はその生存および増殖がサイトカインの存在に強く依存するため、サイトカインによる増殖シグナルの解析に適している。我々はすでにサイトカインによる造血細胞の増殖にはDNA複製に必要なシグナルと細胞死抑制のシグナルの両者が必要であること及びRASの活性化により細胞死が抑制されることをGM-CSF受容体の変異体を用いて示した。サイトカイン除去に伴う細胞死の分子機構は不明であったので、ICE様プロテアーゼの関与の可能性を検討した。その結果,IL-3除去によりICE様プロテアーゼ活性が上昇すること及びICE阻害剤が細胞死を抑制することから,サイトカイン除去による細胞死にもFasなどと類似の分子機構が働いていると考えられる。さらに,RASによる細胞死抑制のメカニズムを明かにするために、Rasのeffector domainに変異を導入した活性型Rasを誘導的に発現し,Ras下流のシグナル分子の活性化を選択的に誘導した。Raf/Mapキナーゼ系を全く活性化しない変異RasV45Eでもサイトカイン除去による細胞死がほぼ完全に抑制されたが、その作用はラパマイシンで阻害された。一方,活性化型Rafの発現でも細胞死の抑制が認められることから,RasはRaf/Mapキナーゼ系とラパマイシン感受性のシグナル系を介して細胞死を抑制していると考えられる。今後はBaF3などの株化培養細胞を用いて得られた結果を骨髄初代培養系などより生理的な実験系を用いて評価していく予定である。サイトカイン依存性の造血細胞はその生存および増殖がサイトカインの存在に強く依存するため、サイトカインによる増殖シグナルの解析に適している。我々はすでにサイトカインによる造血細胞の増殖にはDNA複製に必要なシグナルと細胞死抑制のシグナルの両者が必要であること及びRASの活性化により細胞死が抑制されることを示した。活性化型Rasのeffector domainに変異を導入した部分活性化型Rasの発現によりRasはRaf/Mapキナーゼ系とPI3キナーゼ系を活性化し、それぞれが細胞死の抑制に作用することを明らかにした。さらに、サイトカイン除去に伴う細胞死の分子機構は不明であったので、Caspaseが関与する可能性を検討した。その結果、IL-3除去に伴いCaspase-3の活性が上昇すること及びCaspase-3阻害剤が細胞死を抑制することから、サイトカイン除去による細胞死にもFas刺激などと同様にCaspase活性化シシテムが働いていることが示された。しかし、興味深いことにCaspase-3阻害剤で細胞死を止めても、もはや細胞はIL-3に応答して増殖することができないことから、Caspase-3の活性化と細胞死へのコミットメントとは必ずしも同じではないことが明かとなり、細胞死へのコミットメントの実体は何かという新たな問題を提起した。
KAKENHI-PROJECT-07273213
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07273213
後天的身体障害者のスポーツへの社会化に寄与する他者に関する社会学的研究
後天的身体障害者がスポーツへの社会化を遂げていくプロセスで寄与する他者について、車椅子バスケットボール男女競技者および車椅子バスケットボールと車椅子マラソンの男子競技者の差異に着目し、インタビューで得た語りに基づき具象的レベルで解明することを試みた。ここで導出された他者は主に、スポーツに参加できる状態になるまでは、気を許せる他者、かけがえのない他者、癒す他者であった。その後スポーツに励むようになるまでは、スポーツ活動へ誘う他者と導く他者、それにスポーツ活動のサポート役というべき仲間であった。このうち誘う他者は、車椅子バスケットボール女子と車椅子マラソンでは数少なく上記のような差異が認められた。本年度の計画では西日本と東日本に在住する車椅子バスケットボール(以下「車バス」)女子競技者4名ずつを対象に調査を行うこととしていたが、交付額が前年度より少なかったこともあり東日本では3名に留めるに至った。調査対象者は西日本では1名が京都府の「カクテル」、3名が愛知県の「Cats」、東日本では1名が神奈川県の「WING」、2名が東京都の「エルフィン」のメンバーであった。本研究の主な特色として、スポーツへの社会化を準備局面(スポーツに参加できる状態になるまで)と主要局面(スポーツに継続的に参加するに至るまで)とに分けて捉える点が挙げられる。対象者の語りを基に各局面に寄与した他者について前年度の男子の知見との比較を交え検討した結果、主に次のような知見が得られた。まず、準備局面に寄与した他者は、ほとんどが母親であった。「頼りになる」「当たれる」など「心の支え」になったという。他に「母は厳しいだけ」という1名の場合は「優しく」て「こんな母がいたらよかった」と思えるような看護師が、母親が病弱であった1名の場合は「父が支え」となった。ある人のふとした優しさが大きかったという者もいたが、いずれにせよ心身ともに回復へ向かうプロセスでは、いわば家族のごとく親身になってくれる他者の存在が欠かせないとみられ、そうした他者は男子の知見と同様に「気を許せる他者」と呼び得るだろう。次に主要局面に寄与した他者についてであるが、車バスを始めた契機は、男子の場合は1名以外は他者の誘いであったのに対し、女子の半数ほどは自らが取り組む活動を求める中で車バスに出会った。ユニークなのは、他の1名が、車バスはリハビリ施設の「コミュニティ」であったという点である。車バスに励むに至るプロセスでは、男子と同様に大なり小なり影響を受けた他者が認められたが、男子と明らかに異なるのはそうした他者が彼氏等の異性であった点である。本年度は個人種目の車椅子マラソン(以下「マラソン」)に取り組む男子選手7名(交付申請書の記載より1名多い)を対象に調査を行い、23年度の対象であった団体種目の車椅子バスケットボール(以下「バスケ」)男子選手の知見との比較を通じて種目特性差が認められるか否かについてと、3年度に亘る知見を基に後天的身体障害者のスポーツへの社会化プロセスにおける他者の意味について検討した。まず、上記7名のうち初めから当該種目に取り組んだのは3名であり、他4名は別の種目から当該種目に転向した。つまり、ほとんどが初めから当該種目に取り組んだバスケ選手とはキャリアの点で差異が認められた。スポーツへの社会化に寄与した他者については、準備局面(スポーツに参加できる状態になるまで)で寄与したのは家族、友人、看護師等の情緒的支援者ともいうべき他者であった。こうした他者はバスケ選手の知見と同様に気を許せる他者、あるいは親身な他者と呼び得る。この局面で貴重な存在となる他者に種目特性差はないのであろう。一方、主要局面(スポーツに継続的に参加するに至るまで)では差異が認められた。バスケ選手のほとんどは他者から誘われてバスケに参加したのに対し、マラソン選手においてそうした選手は上記3名のうち1名に過ぎず、他2名はたまたまメディアや直接にマラソンを見たことで関心を持ち自発的にマラソンに参加した。別の種目から転向した4名のうち2名も同様であった。比較的種目普及度の高いバスケでは、いわば勧誘ネットワークが機能しているのではないかと思われる。その後にマラソンへの社会化を遂げるのに寄与したのは、バスケ選手と同様に仲間(先輩を含む)や役割モデルのごとき他者であった。他者の意味は上記の点を含む3年度に亘る知見から導出されるが、紙幅の都合により成果報告書に示す。なお現在、本研究の成果の一部をまとめた論文を学会誌に投稿中である。後天的身体障害者がスポーツへの社会化を遂げていくプロセスで寄与する他者について、車椅子バスケットボール男女競技者および車椅子バスケットボールと車椅子マラソンの男子競技者の差異に着目し、インタビューで得た語りに基づき具象的レベルで解明することを試みた。ここで導出された他者は主に、スポーツに参加できる状態になるまでは、気を許せる他者、かけがえのない他者、癒す他者であった。その後スポーツに励むようになるまでは、スポーツ活動へ誘う他者と導く他者、それにスポーツ活動のサポート役というべき仲間であった。このうち誘う他者は、車椅子バスケットボール女子と車椅子マラソンでは数少なく上記のような差異が認められた。本年度の実施計画通り西日本と東日本に在住する車椅子バスケットボール(以下「車バス」)男子競技者各4名(前者は全て神戸の「清水M・S・T」所属、後者は3名が「埼玉ライオンズ」所属、1名は代替として元「千葉ホークス」所属)を対象に、受傷してからスポーツ(車バス)への社会化を遂げていくプロセスに寄与した他者をめぐるインタビュー調査およびデータ分析を行った。
KAKENHI-PROJECT-23500750
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23500750
後天的身体障害者のスポーツへの社会化に寄与する他者に関する社会学的研究
本研究の主な独創性(意義)として、スポーツへの社会化を準備局面(受傷してからスポーツに参加できる状態に回復するまで)と主要局面(実際にスポーツに継続的に参加するに至るまで)の2局面で捉えることと、彼らの語りを基にして他者について解明することが挙げられることから、これらに留意しながら主な成果を示す。まず、準備局面に寄与する他者として認められたのは「弱音をはける」「文句をいえる」「率直に励ましてくれる」などの他者である。寝たきりの状態や初期にリハビリに取り組む段階では、ショックを緩和したり少しでも前向きにしてくれる他者が貴重な存在であり、そうした他者は情緒的支援者との既存の概念で括ることも可能であろうが、ここでは語りとその文脈を踏まえ「気を許せる他者」と呼ぶ。次に主要局面についてだが、7名が車バスを始める契機となったのは、入院中に関係者から車バスに誘われたり勧められたりしたことである。こうした他者は「導く他者」と呼び得るが、他1名は自律的に車バスクラブを探し当て参加し始めた。彼らがその後、車バスへの社会化を遂げるには、参加したクラブ内での「親切に教えてくれる」「ほめてくれる」との他者や「あこがれ」(「親分」「兄貴」「師匠」)のごとき他者の存在が大きかった。また、2名の場合は車バスと関係のない旧友(「一心同体」「(昔からの)野球仲間」)も大きな支えとなった。これらの多様な他者をどう捉えるかは次年度も続けて慎重に検討する必要がある。24年度の実施状況はおおむね順調とみられるが、研究成果の発表・報告が遅れており今後速やかに行っていく予定である。24年度は調査対象者を計画より1名少なくせざるを得なかったが、調査データからみて本研究の目的を達成するにあたり特に支障はないと考えられる。分析もおおむね順調とみられる。今後更に分析を深めていくとともに論文作成に当たる。本研究の目的を達成するにあたり、23年度の実施状況はおおむね順調とみられる。調査と分析はおおむね計画通りに終えることができた。学会大会等での報告が残されているが、それは次年度以降に行う予定である。本研究を実施するにあたり、現状では特に問題となる要素は見当たらないことから、ほぼ当初の研究計画書の通りに研究を進めていく。ただし、25年度は交付額が前年度までより少なくなるため、調査対象者は23年度の交付申請書に記した通り当初の計画よりも若干減らすことになろう。とはいえ、24年度と同様に本研究の目的を達成するために大きな支障はないものとみられる。本研究を実施するにあたり、現状では特に問題となる要素は見当たらないことから、ほぼ当初の研究計画調書の通りに研究を進めていく。ただし、24年度、25年度と交付額が少なくなっていくため、調査対象者は23年度の交付申請書に記した通り当初の計画よりも若干減らさざるを得ない。とはいえ、本研究の目的を遂げるために大きな支障はないものとみられる。該当なし。該当しない。
KAKENHI-PROJECT-23500750
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23500750
資本主義下の貿易慣習と貿易金融システムとの相関的発展に関する体系的研究
現代の貿易金融は、貿易金融の現地金融化、貸付金融と出資金融の複合化(ハイブリッド化)、貿易債権保全手法の資本取引化など、革命的ともいえる変化を遂げてきている。この変化の意味と原因について分析するために、本研究では、まず第一に、貿易取引と金融・決済のシステムがどのように発展してきたか歴史的に検討した。特に、産業革命(機械制大工業による大量生産システム)が確立した後の19世紀中葉に、英国を中心に生成発展したCIF売買(船荷証券や保険証券の準流通証券化なども含む)と荷為替信用システムについて分析し、このような新しい商契約と貿易金融システムの誕生が機械生産が生みだした世界的産業構造の再編成と深く関係していることを確認した。またその中で、新しい貿易金融方式に則した国内金融システムならびに国際決済制度が創り上げられていったことを解明した。この歴史的分析のもとで、つぎに現在急激に変化している貿易取引と金融システムの特徴について分析した。そこでは、現地法人による貿易と金融の手法、コンテナ貿易の進展と統一信用状規則の改訂問題、複合金融の実態(カウンタートレード、国際リース、プロジェクトファイナンス、開発輸入、シンジケートローンの債権化など)、さらには通貨スワップ・ベッジ債の発行など資本取引と融合した新しい貿易債権リスク・ヘシジ手法について、専門家の協力を仰ぎながら、分析した。現代貿易取引と金融の特質を体系的に明らかにするなかで、戦後期の先進国相互、先進国と途上国(とりわけOPECとNICS)との間の相互依存関係の深化と発展が、貿易金融イノベーションの背後にあることを確認できた。以上の成果は、他の三名の専門研究者との共同研究として『貿易金融イノベーション-変貌する貿易取引と金融』(有斐閣、5月刊行予定)にまとめて発表される。現代の貿易金融は、貿易金融の現地金融化、貸付金融と出資金融の複合化(ハイブリッド化)、貿易債権保全手法の資本取引化など、革命的ともいえる変化を遂げてきている。この変化の意味と原因について分析するために、本研究では、まず第一に、貿易取引と金融・決済のシステムがどのように発展してきたか歴史的に検討した。特に、産業革命(機械制大工業による大量生産システム)が確立した後の19世紀中葉に、英国を中心に生成発展したCIF売買(船荷証券や保険証券の準流通証券化なども含む)と荷為替信用システムについて分析し、このような新しい商契約と貿易金融システムの誕生が機械生産が生みだした世界的産業構造の再編成と深く関係していることを確認した。またその中で、新しい貿易金融方式に則した国内金融システムならびに国際決済制度が創り上げられていったことを解明した。この歴史的分析のもとで、つぎに現在急激に変化している貿易取引と金融システムの特徴について分析した。そこでは、現地法人による貿易と金融の手法、コンテナ貿易の進展と統一信用状規則の改訂問題、複合金融の実態(カウンタートレード、国際リース、プロジェクトファイナンス、開発輸入、シンジケートローンの債権化など)、さらには通貨スワップ・ベッジ債の発行など資本取引と融合した新しい貿易債権リスク・ヘシジ手法について、専門家の協力を仰ぎながら、分析した。現代貿易取引と金融の特質を体系的に明らかにするなかで、戦後期の先進国相互、先進国と途上国(とりわけOPECとNICS)との間の相互依存関係の深化と発展が、貿易金融イノベーションの背後にあることを確認できた。以上の成果は、他の三名の専門研究者との共同研究として『貿易金融イノベーション-変貌する貿易取引と金融』(有斐閣、5月刊行予定)にまとめて発表される。
KAKENHI-PROJECT-61530073
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61530073
端末間通信を用いた自律分散パケット無線ネットワークに関する研究
本研究は,移動通信端末に中継機能を持たせ,端末のみによる自律的なネットワークを構築することによって端末間通信を実現することを目的としている.昨年度は,端末間通信の要素技術となるルーチング法について検討し,簡略化モデルにおいて定期的な情報交換なしに切れにくいルートを構築できる方式を提案し,その有効性を確認した.本年度はより具体的な指標を導入した.リンクコストとして通信可能時間を,ノードコストとしてビジーレートを用いたルーチングプロトコルを検討した.その結果,端末の移動によるリンク切断の少ないルートを探索できるため,通信可能時間によるルートは最小ホップ数によるルートよりもルートの寿命を長くできることが分かった.しかし,トラヒックが高い場合は寿命の短いリンクを避けようとホップ数が大きくなるため,パケット到達率が劣化することも分かった.ビジーレートを用いた場合は,空間的にトラヒックを分散し,衝突や遅延の少ないルートを構築できることが分かった.さらに,端末間通信の基盤技術であるフラッディング法の効率化についても検討した.フラッディングは,情報の配信やルーチングにおける制御パケットの交換などに使われており,フラッディングの効率化は結局のところネットワーク全体の効率化につながる.フラッディングは非常に簡易であるが,無駄なパケット中継によるトラヒックの増大,衝突,輻輳を招きやすい.そこで,パケットの中継に優先度も設け,中継中止制御,待機時間制御を施すことによって,パケット到達率や遅延特性を劣化させることなく,冗長な中継パケット数を大幅に削減できることを確認した.この制御法をメッセージのブロードキャストおよびソースルーチングにおけるルート探索に用いて,その有効性を確認した.本研究は,移動通信端末に中継機能を持たせ,端末のみによる自律的なネットワークを構築することによって端末間通信を実現することを目的としている.具体的には,1)災害時の安否確認ネットワーク,2)エリア拡大ネットワーク,3)小グループ自律分散ネットワークの実現を目指している.本年度は,1)安否確認ネットワークの実現に主眼を置いた.我々は既に,経路情報を用いて安否情報を一括収集する方式を提案し,その有効性を確認していたが,評価対象となるエリアが狭いものに限られていた.今回,より大きなエリアで検討した結果,エリアの中心付近では経路を構築できない穴ができてしまうことが確認された.これは,端末の密度が大きくなる程,またトラヒックが大きくなる程顕著であった.そこで,クラスタリングによるネットワークの階層化を行うことにより,端末の役割分担をし,密度とトラヒックの低減を図った.その結果,クラスタリングに要する時間を考慮しても,迅速に効率良く安否情報が収集できることが確認できた.今後,端末の役割分担による負荷の不均衡の是正とトポロジー変化が激しいときの再クラスタリングによるオーバーヘッドの増加の低減を検討する必要があろう.一方,端末間通信の要素技術となるルーチング法についても検討した.アドホックネットワークの典型的なルーチング法としてDSRがあるが,最短ルートを決定するため,移動などによりリンクが切断されるとオーバーヘッドが増加してしまう.これに対し,ABRやSSAでは,リンク間のコストを考慮しているが,そのためには端末間の定期的な情報交換が必須である.そこで,定期的な情報交換なしに切れにくいルートを構築できる方式を提案し,簡略化モデルでその有効性を確認した.今後,リンク間コストを具体的に定義し,環境に応じた指標を導入する必要がある.本研究は,移動通信端末に中継機能を持たせ,端末のみによる自律的なネットワークを構築することによって端末間通信を実現することを目的としている.昨年度は,端末間通信の要素技術となるルーチング法について検討し,簡略化モデルにおいて定期的な情報交換なしに切れにくいルートを構築できる方式を提案し,その有効性を確認した.本年度はより具体的な指標を導入した.リンクコストとして通信可能時間を,ノードコストとしてビジーレートを用いたルーチングプロトコルを検討した.その結果,端末の移動によるリンク切断の少ないルートを探索できるため,通信可能時間によるルートは最小ホップ数によるルートよりもルートの寿命を長くできることが分かった.しかし,トラヒックが高い場合は寿命の短いリンクを避けようとホップ数が大きくなるため,パケット到達率が劣化することも分かった.ビジーレートを用いた場合は,空間的にトラヒックを分散し,衝突や遅延の少ないルートを構築できることが分かった.さらに,端末間通信の基盤技術であるフラッディング法の効率化についても検討した.フラッディングは,情報の配信やルーチングにおける制御パケットの交換などに使われており,フラッディングの効率化は結局のところネットワーク全体の効率化につながる.フラッディングは非常に簡易であるが,無駄なパケット中継によるトラヒックの増大,衝突,輻輳を招きやすい.そこで,パケットの中継に優先度も設け,中継中止制御,待機時間制御を施すことによって,パケット到達率や遅延特性を劣化させることなく,冗長な中継パケット数を大幅に削減できることを確認した.この制御法をメッセージのブロードキャストおよびソースルーチングにおけるルート探索に用いて,その有効性を確認した.
KAKENHI-PROJECT-12750327
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12750327
同期電波源による惑星測地
月・惑星探査において重要な手段の一つである測地・力学的測定は、地球において最も高精度で行われて来たが、月・惑星においては著しくその精度は劣るため、地球に匹敵する惑星の研究は未だ不可能である。地球における自転運動や地殻変動の測定ではVLBIによりそれまでの数mから一気に数cmの精度が実現された。しかし、この手法をそのまま惑星に適用すると、測定誤差が天体までの距離に比例して大きくなるため、例えば火星においては100m程度になってしまう。そこで、VLBIの測定原理を全く逆にし、惑星上の2電波源が同期した電波を出し、地球の1点で受信する事により、電波源間の距離を数cm以下の誤差で測定できる同期電波源による測地法(逆VLBIと呼ぶ)を考案した。本研究では月・惑星において自転運動を地球と同等の精度で観測できるこのような観測装置の可能性と観測法を明らかにし、またこの装置を用いて月・惑星について観測可能な現象と測定精度を明らかにした。以下に具体的な主要成果を示す。システム検討では、1)惑星上の2電波源間の距離を3cm以下の誤差に押さえるには、衛星仲介法が同期誤差測定において唯一可能な方法である。2)各電波源に必要な周波数安定度は1×10[-12]であり、衛星搭載実績を周波数標準が既にある。3)送信電力は1W、重量は数キログラム程度でよい。これらの検討から本装置は探査機に搭載可能である。観測可能な現象については、1)自転周期・軸方向の精密測定。2)火星の衛生と他の惑星による才差、章動の観測と内部構造の研究。3)火星の大気、砂の移動による自転速度の変動の可能性もある。相対論効果については、1)火星の自転によるSagnac効果として周波数変動は最大10[-10]。2)火星の楕円軌道による太陽重力場の変化で10[-9]の周波数変化等を考慮する必要がある。今年度は既存の技術を用いて中枢部となる2つの発振器の位相比較システムを製作し、同期電波源の基礎実験を実施した。また月及び火星に2つの同期電波源を設置した場合にどのようなものが観測可能になるか検討した。位相比較システムは既存の2つの原子周波数標準からの10MHz信号を400MHzに別々に周波数変換し、この信号を400MHzから10kHzへの周波数変換器までケーブルで伝送し、2つの10kHz信号を位相比較するものである。このシステムは周波数400MHzでの周回衛星-惑星上の2つの電波源間の衛星通信をケーブルに置き換えたものであり、衛星を利用した2つの電波源の同期のための地上実験装置として、基礎的なデータ取得に適当である。この装置による実験で、簡易な装置で原子周波数標準とほとんど等しい周波数安定度が得られ、2つの電波源の同期のための基本的なシステムの見通しを得た。月および火星表面に2つの電波源を設置し、この間の距離を3cmの精度で測定できたとき、どのような量を求めることができるか検討した。月については、秤動を従来より2桁高精度で測定でき、その結果から、中心核の密度を求めることができる。中心核の密度は親鉄元素の量に依存するので月の起源に迫ることが出来る。また月の潮汐や自由振動の検出の可能性のあることも分かった。一方、火星に設置した場合、自転軸の変動および自転速度の変化を地球のそれと同程度の精度で測定できることから、火星の内部構造の研究が可能である。また砂嵐による自転速度の季節変化、極運動の検出についても現在検討中である。月あるいは惑星に複数の電波源を設置してその位相差を測定する場合、設置場所の異なる重力場、周回衛星を利用した同期などには一般相対論効果を考慮しなければならないが、これらの影響についての検討はほぼ終了した。月・惑星探査において重要な手段の一つである測地・力学的測定は、地球において最も高精度で行われて来たが、月・惑星においては著しくその精度は劣るため、地球に匹敵する惑星の研究は未だ不可能である。地球における自転運動や地殻変動の測定ではVLBIによりそれまでの数mから一気に数cmの精度が実現された。しかし、この手法をそのまま惑星に適用すると、測定誤差が天体までの距離に比例して大きくなるため、例えば火星においては100m程度になってしまう。そこで、VLBIの測定原理を全く逆にし、惑星上の2電波源が同期した電波を出し、地球の1点で受信する事により、電波源間の距離を数cm以下の誤差で測定できる同期電波源による測地法(逆VLBIと呼ぶ)を考案した。本研究では月・惑星において自転運動を地球と同等の精度で観測できるこのような観測装置の可能性と観測法を明らかにし、またこの装置を用いて月・惑星について観測可能な現象と測定精度を明らかにした。以下に具体的な主要成果を示す。システム検討では、1)惑星上の2電波源間の距離を3cm以下の誤差に押さえるには、衛星仲介法が同期誤差測定において唯一可能な方法である。2)各電波源に必要な周波数安定度は1×10[-12]であり、衛星搭載実績を周波数標準が既にある。3)送信電力は1W、重量は数キログラム程度でよい。これらの検討から本装置は探査機に搭載可能である。観測可能な現象については、1)自転周期・軸方向の精密測定。2)火星の衛生と他の惑星による才差、章動の観測と内部構造の研究。3)火星の大気、砂の移動による自転速度の変動の可能性もある。
KAKENHI-PROJECT-08874045
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08874045
同期電波源による惑星測地
相対論効果については、1)火星の自転によるSagnac効果として周波数変動は最大10[-10]。2)火星の楕円軌道による太陽重力場の変化で10[-9]の周波数変化等を考慮する必要がある。
KAKENHI-PROJECT-08874045
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08874045
波浪による氷板の変形及び破壊に関する研究
本年度の研究成果を以下に列記する。1)波浪による氷板の破壊連続氷板が波浪によっ破壊される場合の破壊幅は氷板下での波長の1/4から1/2の範囲に限定されることが明らかとなった。このような破壊幅の波長依存性が現地海域で観測される規則的な破壊パターンをもたらす。破壊の発生条件は、氷板下での波高及び波長と氷板の厚さ、弾性係数、曲げ強度に依存していることが明らかとなった。氷板の変形を正弦波で表現し、弾性曲げ変形の線形理論から誘導される氷板破壊条件を提案した。これと実験値と比較したところ、極めて良く一致しており、氷板破壊の解析に対する弾性理論の適用が実証された。2)不規則波の氷板の干渉不規則波が氷板下へ進入する際の波高変化及び氷板下でのエネルギー減衰をスペクトル解析によって検討した結果、不規則波の各周波数成分の変化特性は氷厚と周波数に依存することが明らかとなった。この変化特性は、同一の周波数を有する規則波の変化特性とほぼ同一であり、氷板による不規則波の変化をそこに含まれる周波数成分の変化の線形和として表現できることが明らかとなった。3)半閉鎖水域の結氷予測港湾あるいは湾などの半閉鎖水域での全面結氷を予測するモデルを提案した。このモデルは、氷板の発生及び発達と風による氷板破壊の可能性の検討が組み込まれた閉鎖水域での全面結氷予測モデルを改良したものであり、これに波浪による曲げ破壊の可能性の検討が加えられている。港湾などの小規模水域では湾口から進入する波浪の影響を、また湾などの大規模水域ではそこで発生する風波の影響が考慮されている。このモデルにより、気象及び海象水域の全面結氷が予測できる。本年度の研究成果を以下に列記する。1)波浪による氷板の破壊連続氷板が波浪によっ破壊される場合の破壊幅は氷板下での波長の1/4から1/2の範囲に限定されることが明らかとなった。このような破壊幅の波長依存性が現地海域で観測される規則的な破壊パターンをもたらす。破壊の発生条件は、氷板下での波高及び波長と氷板の厚さ、弾性係数、曲げ強度に依存していることが明らかとなった。氷板の変形を正弦波で表現し、弾性曲げ変形の線形理論から誘導される氷板破壊条件を提案した。これと実験値と比較したところ、極めて良く一致しており、氷板破壊の解析に対する弾性理論の適用が実証された。2)不規則波の氷板の干渉不規則波が氷板下へ進入する際の波高変化及び氷板下でのエネルギー減衰をスペクトル解析によって検討した結果、不規則波の各周波数成分の変化特性は氷厚と周波数に依存することが明らかとなった。この変化特性は、同一の周波数を有する規則波の変化特性とほぼ同一であり、氷板による不規則波の変化をそこに含まれる周波数成分の変化の線形和として表現できることが明らかとなった。3)半閉鎖水域の結氷予測港湾あるいは湾などの半閉鎖水域での全面結氷を予測するモデルを提案した。このモデルは、氷板の発生及び発達と風による氷板破壊の可能性の検討が組み込まれた閉鎖水域での全面結氷予測モデルを改良したものであり、これに波浪による曲げ破壊の可能性の検討が加えられている。港湾などの小規模水域では湾口から進入する波浪の影響を、また湾などの大規模水域ではそこで発生する風波の影響が考慮されている。このモデルにより、気象及び海象水域の全面結氷が予測できる。これまでの研究の進展状況あるいは得られた成果を以下に列記する。(1)波浪が氷板下へ進入する際に波高は大きく変化し、氷板下を進行する間は緩やかに減衰する。前者が波浪のエネルギーの一部が氷板の運動エネルギーに変換されたことに起因するのに対し、後者は摩擦等のエネルギー逸散が原因であり、異なったメカニズムによるものである。また、変化率及び減衰率はいずれも入射波の周期に依存する。(2)開水域での波速は周期が短くなるにつれて遅くなるのに対し、氷板下ではある周期以下で再び増加する。(3)氷板域の平均水位の変化は極めて小さく、実質的には無視し得る。(4)弾性平板下での波動の3次近似解が誘導された。非線形性は波高及び波速の理論計算では顕著な影響を及ぼさないが、変形の形状の局所的に曲率に依存する破壊に対しては極めて重要であることが明らかとなった。また、氷板が破壊する条件が定式化された。(5)上記の理論解析は波速の実験値とは良く一致しているが、波高変化に関しては定量的には不充分であり、今後の検討が必要である。本年度の研究成果を以下に列記する。1)波浪による氷板の破壊連続氷板が波浪によって破壊される場合の破壊幅は氷板下での波長の1/4から1/2の範囲に限定されることが明らかとなった。このような破壊幅の波長依存性が現地海域で観測される規則的な破壊パターンをもたらす。破壊の発生条件は、氷板下での波高及び波長と氷板の厚さ、弾性係数、曲げ強度に依存していることが明らかとなった。氷板の変形を正弦波で表現し、弾性曲げ変形の線形理論から誘導される氷板破壊条件を提案した。これと実験値と比較したところ、極めて良く一致しており、氷板破壊の解析に対する弾性理論の適用性が実証された。
KAKENHI-PROJECT-06650554
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06650554
波浪による氷板の変形及び破壊に関する研究
2)不規則波と氷板の干渉不規則波が氷板下へ進入する際の波高変化及び氷板下でのエネルギー減衰をスペクトル解析によって検討した結果、不規則波の各周波数成分の変化特性は氷厚と周波数に依存することが明らかとなった。この変化特性は,同一の周波数を有する規則波の変化特性とほぼ同一であり、氷板による不規則波の変化をそこに含まれる周波数成分の変化の線形和として表現できることが明らかとなった。3)半閉鎖水域の結氷予測港湾あるいは湾などの半閉鎖水域での全面結氷を予測するモデルを提案した。このモデルは、氷板の発生及び発達と風による氷板破壊の可能性の検討が組み込まれた閉鎖水域での全面結氷予測モデルを改良したものであり、これに波浪による曲げ破壊の可能性の検討が加えられている。港湾などの小規模水域では湾口から進入する波浪の影響を、また湾などの大規模水域ではそこで発生する風波の影響が考慮されている。このモデルにより、気象及び海象から対象水域の全面結氷が予測できる。
KAKENHI-PROJECT-06650554
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06650554
外性器形成過程の解析;細胞増殖因子群による陰茎、陰核形成制御
我々は本研究によって、哺乳類の外性器形成の特徴である陰茎および陰核形成メカニズムに迫った。哺乳類は脊権動物の中でも、良く発達した外性器を有している。高等哺乳類の外性器形成過程は、これまで分子発生学的に全く解明されておらず、そもそも如何なるメカニズムで胎生期に外性器原基(一種の突起構造)が伸長するのか、如何にそれが分化して外性器となるか殆ど理解されていない。陰茎および陰核はアダルトにおいてはその形態は大きく異なるものの、胎生期形態は後期に至るまで両性で類似した形を有している。ここでは体幹部から伸長、分化するメカニズムが雌雄で類似しており、さらに胎生末期から生後に到るホルモン影響下の分化の違いが出るという興味ある現象がある。我々は胎生期における陰核および陰茎形成プログラムとして間葉性のFGF遺伝子、および尿道上皮に発現するShh(ソニックヘッジホッグ)遺伝子が近接した状態で(尿道上皮のShhが中央に、両側にFGF10遺伝子が)発現し、それら相互作用が陰茎、陰核形成にとって、最も重要な尿道板/尿道形成に作用していることを世界で初めて見い出した。さらにこうしたShhおよびFGF遺伝子群が陰核、陰茎形態が顕著な哺乳類ばかりでなく、烏類胚(ヒダ状のものから突出した交接器を有するものまである)においてもこれら遺伝子発現が興味ある相関を示している事を見い出した。このようなメカニズムが今後さらに胎生後期から新生児期にホルモンの制御を受けるかに関して、これら細胞増殖因子群の遺伝子発現変化、及び形態変化を今後解析していく予定である。我々は本研究によって、哺乳類の外性器形成の特徴である陰茎および陰核形成メカニズムに迫った。哺乳類は脊権動物の中でも、良く発達した外性器を有している。高等哺乳類の外性器形成過程は、これまで分子発生学的に全く解明されておらず、そもそも如何なるメカニズムで胎生期に外性器原基(一種の突起構造)が伸長するのか、如何にそれが分化して外性器となるか殆ど理解されていない。陰茎および陰核はアダルトにおいてはその形態は大きく異なるものの、胎生期形態は後期に至るまで両性で類似した形を有している。ここでは体幹部から伸長、分化するメカニズムが雌雄で類似しており、さらに胎生末期から生後に到るホルモン影響下の分化の違いが出るという興味ある現象がある。我々は胎生期における陰核および陰茎形成プログラムとして間葉性のFGF遺伝子、および尿道上皮に発現するShh(ソニックヘッジホッグ)遺伝子が近接した状態で(尿道上皮のShhが中央に、両側にFGF10遺伝子が)発現し、それら相互作用が陰茎、陰核形成にとって、最も重要な尿道板/尿道形成に作用していることを世界で初めて見い出した。さらにこうしたShhおよびFGF遺伝子群が陰核、陰茎形態が顕著な哺乳類ばかりでなく、烏類胚(ヒダ状のものから突出した交接器を有するものまである)においてもこれら遺伝子発現が興味ある相関を示している事を見い出した。このようなメカニズムが今後さらに胎生後期から新生児期にホルモンの制御を受けるかに関して、これら細胞増殖因子群の遺伝子発現変化、及び形態変化を今後解析していく予定である。
KAKENHI-PROJECT-13877392
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13877392
細胞増殖シグナルによるグルコ-ストランスポ-タ-動的変化の分子機構
1.インスリンレセプタ-チロシンキナ-ゼの細胞内基質の1つはPIー3キナ-ゼである。従来までインスリンレセプタ-チロシンキナ-ゼの基質はいろいろ報告されているが、それらが本当の生理的役割をもつチロシンキナ-ゼの基質であるのかどうか明らかではなかった。昨年、PIタ-ンオ-バ-の中の新しい酵素であるPI3キナ-ゼがインスリンシグナル伝達のメディエ-タ-の1つである可能性が示唆された.そこで高度に精製したPI3キナ-ゼが精製したインスリンレセプタ-によりin vitroの系でインスリン反応性にリン酸化されるかどうかを検討した。その結果、PI3キナ-ゼの85Kサブユニットが、活性化されたインスリンレセプタ-チロシンキナ-ゼによりリン酸化されていることが明らかとなり、このチロシンリン酸化によりPI3キナ-ゼの活性化が起っている可能性が示唆された。in viroおよびin vitroの結果よりPI3キナ-ゼがインスリンレセプタ-チロシンキナ-ゼの生理的な基質の1つであることがほぼまちがいないと思われる.2.グルコ-ストランスポ-タ-タイプI(GLUT1)のエンハンサ-細胞増殖因子により転写促進が起こるマウスグルコ-ストランスポ-タ-(GLUT1)の遺伝子を単離し、その発現調節機構を解析した。その結果2つのエンハンサ-エレメントを見出した。1つは5'端上流3.5kb付近にAP1,SREを含むエンハンサ-エレメントが存在する。また第2イントロン中にもエンハンサ-エレメントが存在することを見出した。現在この2つのエンハンサ-エレメントが細胞増殖因子による転写促進にどのように関与しているか検討中である.1.インスリンレセプタ-チロシンキナ-ゼの細胞内基質の1つはPIー3キナ-ゼである。従来までインスリンレセプタ-チロシンキナ-ゼの基質はいろいろ報告されているが、それらが本当の生理的役割をもつチロシンキナ-ゼの基質であるのかどうか明らかではなかった。昨年、PIタ-ンオ-バ-の中の新しい酵素であるPI3キナ-ゼがインスリンシグナル伝達のメディエ-タ-の1つである可能性が示唆された.そこで高度に精製したPI3キナ-ゼが精製したインスリンレセプタ-によりin vitroの系でインスリン反応性にリン酸化されるかどうかを検討した。その結果、PI3キナ-ゼの85Kサブユニットが、活性化されたインスリンレセプタ-チロシンキナ-ゼによりリン酸化されていることが明らかとなり、このチロシンリン酸化によりPI3キナ-ゼの活性化が起っている可能性が示唆された。in viroおよびin vitroの結果よりPI3キナ-ゼがインスリンレセプタ-チロシンキナ-ゼの生理的な基質の1つであることがほぼまちがいないと思われる.2.グルコ-ストランスポ-タ-タイプI(GLUT1)のエンハンサ-細胞増殖因子により転写促進が起こるマウスグルコ-ストランスポ-タ-(GLUT1)の遺伝子を単離し、その発現調節機構を解析した。その結果2つのエンハンサ-エレメントを見出した。1つは5'端上流3.5kb付近にAP1,SREを含むエンハンサ-エレメントが存在する。また第2イントロン中にもエンハンサ-エレメントが存在することを見出した。現在この2つのエンハンサ-エレメントが細胞増殖因子による転写促進にどのように関与しているか検討中である.
KAKENHI-PROJECT-02152082
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02152082
「瓦礫の下」医療・救助における安心安楽の必要性に関する基礎研究
本研究では、Structural Collapse Disastersとよばれる構造物が倒壊し、「瓦礫」が生じるような災害において、その瓦礫の中に生じるわずかな空間(以降、瓦礫の下と表現する)に閉じ込められ、生存している要救助者に対して実施される救出活動の一連の過程において、要救助者の安全・安楽のためのケアをどのように提供すべきかを検討するための基礎研究として実施した。現在災害時の瓦礫の下の状況や、そこに捕捉される人間の生理・心理反応は明らかにされていない。そこで特に今回の研究では、Structural Collapse Disastersにおいて瓦礫の下に捕捉されるとう非常に特殊な状況下の人間の生理的・心理的反応を客観的に測定する方法開発を主眼に研究を進めた。実際の災害現場の救助場面において要救助者からこれらのデータを測定する事はほとんど不可能である。そのため本研究では、はじめにStructure Collapseで生じる瓦礫の下の空間を再現し実験を行うため、瓦礫の下の環境が人に影響を与える様々な因子を探した。またその影響の強さを、瓦礫の下の人の交感神経活動を指標にして測定することとした。その結果、瓦礫の下の環境が、特に人間の生理・心理状態に影響する要因は光、音、温度、空気、身体拘束、非日常的視覚情報、非日常的重力方向(視覚情報と重力方向の不一致)などがあることが分かった。今後、これらの因子をコントロールしながら研究を進めることで実際の要救助者に提供すべきケアのタイミングや必要とされている事が解明できる可能性があることが明らかになってきた。しかし、実験のための疑似空間は被験者の安全を十分保証されるものが要求された。そのため安全を保障した疑似瓦礫の下空間では、本物の瓦礫の下と違い生命の危機に関する重大なストレスが被験者より取り除かれる。そのためこれは本研究の限界として考慮すべき点であった。本年度は兵庫県の消防訓練施設に設置されている災害現場の「瓦礫」を再現した「瓦礫の下」訓練施設を利用し基礎的な実験を行った。この実験では、瓦礫の下という劣悪な環境下においていかにノイズの少ない心電図を記録し、それと同時に被験者がどのような状態であったかを記録することを主眼に置いて実施した。現実の災害救助現場を想定し、音響や救助環境を再現した救助訓練実施にあわせて、そこでの要救助者および救助者役の被験者それぞれの心電図を小型心電計用いて測定した。これらの方法で測定した心電図データより心電図RR間隔の周波数解析を行い、被験者の神経活動変化を観察することができた。これら心電図の解析とともに、一緒に記録した動画像を分析することで、瓦礫の下に閉じ込められた要救助者や救助者役の被験者がその時にどのような状況であったかを観察、心電図より測定された交感・副交感神経の活動変化がどのような状況で生じていたかを知ることができた。今回は、1名の要救助者役の被験者において、救助者が接触するまでは交感神経が緊張していた状態が続いていたが、救助者の声かけにより一時的に副交感神経が優位に変化する様子を観察した。本実験では被験者数が少ないため断定的な結果は得るには至らなかったが、これらの手法を用い症例を重ねることで、瓦礫の下という特殊な環境下での人間の精神活動変化を観察するための方法として利用可能であることが示唆された。これらは、瓦礫の下の人にとってどのようなアプローチをしたら「安心安楽」を提供できるかを知る手がかかりになるであろう。本研究では、Structural Collapse Disastersとよばれる構造物が倒壊し、「瓦礫」が生じるような災害において、その瓦礫の中に生じるわずかな空間(以降、瓦礫の下と表現する)に閉じ込められ、生存している要救助者に対して実施される救出活動の一連の過程において、要救助者の安全・安楽のためのケアをどのように提供すべきかを検討するための基礎研究として実施した。現在災害時の瓦礫の下の状況や、そこに捕捉される人間の生理・心理反応は明らかにされていない。そこで特に今回の研究では、Structural Collapse Disastersにおいて瓦礫の下に捕捉されるとう非常に特殊な状況下の人間の生理的・心理的反応を客観的に測定する方法開発を主眼に研究を進めた。実際の災害現場の救助場面において要救助者からこれらのデータを測定する事はほとんど不可能である。そのため本研究では、はじめにStructure Collapseで生じる瓦礫の下の空間を再現し実験を行うため、瓦礫の下の環境が人に影響を与える様々な因子を探した。またその影響の強さを、瓦礫の下の人の交感神経活動を指標にして測定することとした。その結果、瓦礫の下の環境が、特に人間の生理・心理状態に影響する要因は光、音、温度、空気、身体拘束、非日常的視覚情報、非日常的重力方向(視覚情報と重力方向の不一致)などがあることが分かった。今後、これらの因子をコントロールしながら研究を進めることで実際の要救助者に提供すべきケアのタイミングや必要とされている事が解明できる可能性があることが明らかになってきた。しかし、実験のための疑似空間は被験者の安全を十分保証されるものが要求された。そのため安全を保障した疑似瓦礫の下空間では、本物の瓦礫の下と違い生命の危機に関する重大なストレスが被験者より取り除かれる。そのためこれは本研究の限界として考慮すべき点であった。
KAKENHI-PROJECT-20659340
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20659340
行政組織上の契約及び委託契約の構造化――日独比較法研究を中心として
本研究は、公私協働における行政主体と受託者(私人)の間で締結される契約の内容統制の在り方を、行政主体、私人(受託者)、私人(エンドユーザー)の三面関係を視座におさめつつ、行政組織法の観点から分析するものである。そして分析を通じて、(1)エンドユーザーの損害をどのように救済するか、またそもそも損害を生じさせないためにどのような制度設計をする必要があるか、(2)、委託契約の「行政組織上の契約」としての側面、すなわち、行政に課された任務の委託・委譲に妥当する原理に何が属するか、(3)各行政契約に妥当する規範に共通する原理は存在するかという3点を明らかにする。2018年度は、委託行政契約におけるエンドユーザーの救済を考えるに当たって重要な「行政私法論」の検討を行った。検討をするに当たっての素材は、大阪高判平成29年7月12日判例地方自治429号57頁である。この裁判例を検討した結果、以下の3点を明らかにした。第1に、公害防止協定を締結するに当たり、行政主体に「行政上の権限」、すなわち一方的・高権的な処分をする権限が無い場合には、当該公害防止協定は私法上の契約と同視され得るということを明らかにした(ただし、私法上の契約と同視され得る場合でも、当該公害防止協定の法的拘束力の有無を判断するに当たっては、行政法上の一般原則に関する審査が行われるという特殊性を有している)。第2に、公害防止協定に対しては、比例原則が適用されると考える説が有力であるものの、その適用を主張する根拠は十分に検討されていない、ということを明らかにした。すなわち、ある論者は「行政主体が、政策目的を達成する手段として規制ではなく契約を選ぶことによって」行政法上の一般原則「の要請を免れることがあってはならない」ということを理由にするが、少なくとも行政主体が規制権限を有しないときはこの理由は当てはまらず、仮に比例原則を適用されるのであれば、その理由は、行政主体が一方当事者であることに求めるしかない、ということを明らかにした。第3に、判決の検討を通じて、行政契約の類型論の試論を明らかにすることが出来た。すなわち、行政契約を侵害又は給付によって切り分けるのではなく、行政主体の地位という視点から、従属・対等で大きく切り分け、前者の小区分として侵害、給付、組織(例えばPFI法第22条の公共施設等運営権実施契約)などを用い、後者の小区分として契約の対象(例えば民営化であれば再分配される任務・組織)や行政主体の相手方当事者の属性(行政主体か私人か)を用いる、という試論を提示した。本研究の重要課題である、行政主体が私法形式で活動する場合に如何なる法規範が適用され得るかという論点に関する研究成果を公表した。具体的には、(1)公害防止協定(行政契約)の法的性質を分析するに当たっては、一方当事者である行政主体に一方的な規制権限が存在するか否かが重要なメルクマールになりつつあること(このメルクマールは、行政契約の類型論にとってもメルクマールたりえる)、(2)契約の他方当事者である私人の権利救済にとって重要なのは平等原則・比例原則ではあること、(3)とはいえ比例原則が公害防止協定に適用されるか否かは依然として意見が分かれており、また比例原則が適用されるとしてもその根拠も種々有ること(その中でも契約の一方当事者が行政主体であるということを根拠にする学説が一定程度見て取れる)ことを明らかにした。これらから、まずは二面関係での行政契約における私人の救済に関する一定の手掛かりを得ることが出来た。また、本年度に研究成果を公表するための資料(ドイツにおける家庭系廃棄物の収集・運搬に関する委託に関する資料)の収集も順調に進んでいる。最終年度である本年度も研究実施計画に従い、順次研究成果を公表する。本研究は、公私協働における行政主体と受託者(私人)の間で締結される契約の内容統制の在り方を、行政主体、私人(受託者)、私人(エンドユーザー)の三面関係を視座におさめつつ、行政組織法の観点から分析するものである。そして分析を通じて、(1)エンドユーザーの損害をどのように救済するか、またそもそも損害を生じさせないためにどのような制度設計をする必要があるか、(2)、委託契約の「行政組織上の契約」としての側面、すなわち、行政に課された任務の委託・委譲に妥当する原理に何が属するか、(3)各行政契約に妥当する規範に共通する原理は存在するかという3点を明らかにする。2018年度は、委託行政契約におけるエンドユーザーの救済を考えるに当たって重要な「行政私法論」の検討を行った。検討をするに当たっての素材は、大阪高判平成29年7月12日判例地方自治429号57頁である。この裁判例を検討した結果、以下の3点を明らかにした。第1に、公害防止協定を締結するに当たり、行政主体に「行政上の権限」、すなわち一方的・高権的な処分をする権限が無い場合には、当該公害防止協定は私法上の契約と同視され得るということを明らかにした(ただし、私法上の契約と同視され得る場合でも、当該公害防止協定の法的拘束力の有無を判断するに当たっては、行政法上の一般原則に関する審査が行われるという特殊性を有している)。第2に、公害防止協定に対しては、比例原則が適用されると考える説が有力であるものの、その適用を主張する根拠は十分に検討されていない、ということを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-19K20852
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K20852
行政組織上の契約及び委託契約の構造化――日独比較法研究を中心として
すなわち、ある論者は「行政主体が、政策目的を達成する手段として規制ではなく契約を選ぶことによって」行政法上の一般原則「の要請を免れることがあってはならない」ということを理由にするが、少なくとも行政主体が規制権限を有しないときはこの理由は当てはまらず、仮に比例原則を適用されるのであれば、その理由は、行政主体が一方当事者であることに求めるしかない、ということを明らかにした。第3に、判決の検討を通じて、行政契約の類型論の試論を明らかにすることが出来た。すなわち、行政契約を侵害又は給付によって切り分けるのではなく、行政主体の地位という視点から、従属・対等で大きく切り分け、前者の小区分として侵害、給付、組織(例えばPFI法第22条の公共施設等運営権実施契約)などを用い、後者の小区分として契約の対象(例えば民営化であれば再分配される任務・組織)や行政主体の相手方当事者の属性(行政主体か私人か)を用いる、という試論を提示した。本研究の重要課題である、行政主体が私法形式で活動する場合に如何なる法規範が適用され得るかという論点に関する研究成果を公表した。具体的には、(1)公害防止協定(行政契約)の法的性質を分析するに当たっては、一方当事者である行政主体に一方的な規制権限が存在するか否かが重要なメルクマールになりつつあること(このメルクマールは、行政契約の類型論にとってもメルクマールたりえる)、(2)契約の他方当事者である私人の権利救済にとって重要なのは平等原則・比例原則ではあること、(3)とはいえ比例原則が公害防止協定に適用されるか否かは依然として意見が分かれており、また比例原則が適用されるとしてもその根拠も種々有ること(その中でも契約の一方当事者が行政主体であるということを根拠にする学説が一定程度見て取れる)ことを明らかにした。これらから、まずは二面関係での行政契約における私人の救済に関する一定の手掛かりを得ることが出来た。また、本年度に研究成果を公表するための資料(ドイツにおける家庭系廃棄物の収集・運搬に関する委託に関する資料)の収集も順調に進んでいる。最終年度である本年度も研究実施計画に従い、順次研究成果を公表する。
KAKENHI-PROJECT-19K20852
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グレリンの抗炎症-抗凝固作用の細胞内シグナリング解明と静脈血栓塞栓症治療への応用
THP-1細胞、及びマウス単球-マクロファージを用いて、グレリン受容体(GHS-R),レプチン受容体(Leptin-R)の遺伝子ノックダウンにてグレリン、レプチン各々の作用が抑制され、また細胞内シグナリングにおいて、ERK1のノックダウンで炎症-凝固に関するシグナリングが抑制され、AKTのノックダウンで炎症-凝固系のシグナリング(具体的にはトロンビン刺激に対して組織因子の発現)の活性化が抑制された。また、薬剤及び抗体によりマウス血中の単球と好中球数を抑制後、Vitroで遺伝子ノックダウンした単球及び好中球をマウスに静注後の実験的肺梗塞の生存率、塞栓率の変化を観察したところTissue Factorの発現が抑制されることで、生存率、塞栓率の改善を見た。詳細に関しては、更なる検討を予定している。THP-1細胞、及びマウス単球-マクロファージを用いて、グレリン受容体(GHS-R),レプチン受容体(Leptin-R)の遺伝子ノックダウンにてグレリン、レプチン各々の作用が抑制され、また細胞内シグナリングにおいて、ERK1のノックダウンで炎症-凝固に関するシグナリングが抑制され、AKTのノックダウンで炎症-凝固系のシグナリング(具体的にはトロンビン刺激に対して組織因子の発現)の活性化が抑制された。また、薬剤及び抗体によりマウス血中の単球と好中球数を抑制後、Vitroで遺伝子ノックダウンした単球及び好中球をマウスに静注後の実験的肺梗塞の生存率、塞栓率の変化を観察したところTissue Factorの発現が抑制されることで、生存率、塞栓率の改善を見た。詳細に関しては、更なる検討を予定している。単球系培養細胞(THP-1細胞)、初代細胞(ヒト又はマウス単球及び好中球)を用いてグレリン及びレプチンの相反する炎症-凝固系に及ぼす作用を、細胞内シグナリング及びサイトカイン産生の変化を定量する事で評価し、更にRNA干渉法による遺伝子ノックダウン法を用いて分子生物学的に検討した。(In Vitro)細胞培養液中にレプチン(10^<-6>-10^<-9>M)、及びグレリン(10^<-6>-10^<-9>M,アシル型及びデスアシル型)を添加し、トロンビン刺激及び無刺激による反応(以下の測定項目)を観察した。1.サイトカイン発現の定量(Flow Cytometery法、又はELISA法)2. Tissue Factor Procoagulant Activityの定量(吸光度測定)プロトコール(American Diagnositca社)通り、サンプルにFVII, FXを添加後、FXaを加え405nmの吸光度測定。3.細胞内シグナリングの解析(ELISA法、又はFlow Cytometry法)細胞の核抽出物を用いて行う。以上のトロンビン刺激により亢進した反応が、グレリン添加により減弱した。これらの結果はグレリンの抗血栓性を示唆するものである。当研究室にて確立した肺梗塞動物モデルを用い、グレリン(アシル型及びデスアシル型)及びレプチンを投与したときの実験的肺梗塞の生存率および肺組織における塞栓率の変化を、末梢血の単球、好中球の活性、凝固反応等のパラメーターと共に観察する。また薬剤及び抗体によりマウス血中の単球と好中球数を抑制後、Vitro実験で遺伝子ノックダウンした(及びNegative ControlのsiRNAを遺伝子導入した)単球、好中球を尾静脈より静注後、肺梗塞の生存率、塞栓率の変化を観察した。(In Vivo系)(肺梗塞動物モデルの作成)Ketamine/Xylazine (150/15mg, ip)麻酔下の雄CD-1マウス(20-25g)に尾静脈より1250U/kgのヒトトロンビン(80%のマウスが30分以内に死に至る量)及びコントロールとして生理食塩水を投与する事を基にして実験を行った。(生存率)血小板凝集薬剤を投与してからの時間軸で見た生存率に関して、レプチン又はグレリン投与時の生存率の変化を検討した。(肺梗塞重症度の定量化)肺組織は、気管より10%ホルマリン投与により固定し24時間後に5-6μmスライスのパラフィン切片を作りphosphotungstic acidにて血管内フィブリンを染色する。最低10視野程度の鏡検で視野中に存在する血管でフィブリンが栓塞している割合を確認する事で肺梗塞の重症度を定量化したところ、グレリン投与により肺梗塞所見が抑制された。
KAKENHI-PROJECT-21791773
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21791773
チベット・ポタラ宮所蔵梵本『維摩経』に基づく総合的研究
研究成果の概要:チベット・ポタラ宮の完本『維摩経』サンスクリット語写本からチベット語訳・漢訳三本を対照しながら、仏教学者の注目の的であるサンスクリット語「校訂テキスト」を出版した。また、日本印度学仏教学会第57回学術大会において「『維摩経』の思想と文化」と題してパネルディスカッションを開催し、インド・中国・日本における維摩経の思想と文化に関して、活発な意見交換を行った。研究成果の概要:チベット・ポタラ宮の完本『維摩経』サンスクリット語写本からチベット語訳・漢訳三本を対照しながら、仏教学者の注目の的であるサンスクリット語「校訂テキスト」を出版した。また、日本印度学仏教学会第57回学術大会において「『維摩経』の思想と文化」と題してパネルディスカッションを開催し、インド・中国・日本における維摩経の思想と文化に関して、活発な意見交換を行った。『維摩経』は中国や日本において研究が続けられ,種々の註釈書や研究書が存在し、佛教美術にも多大な影響を与えてきた文献である。2004年に大正大学綜合佛教研究所より「梵蔵漢対照『維摩経』」が出版されるまでは、『維摩経』は主に漢訳及びチベット訳によって知られているだけで梵文原文については現存していないと考えられ,一部の文献に貧用されるものによって知られるのみであった。「梵蔵漢対照『維摩経』」の出版以降、新しい『維摩経』研究の基礎資料となる『維摩経』梵文原典校訂テキストの作成をすすめてきた。本研究では中国・日本・佛教美術等に広がる『維摩経』の思想や文化を理解するためには,梵文原典校訂テキストの出版が急務となり,本年中に完成させた。校訂テキスト出版をもって、新たに梵文『維摩経』を含めた総合的な研究が可能となった。本研究の第一の成果としての梵文『維摩経』校訂テキストの作成については梵文写本の明らかな誤りについては訂正し,チベット訳や漢訳諸本との比較によって補うべき箇所は補ったが,梵文写本の特徴的な読みをできる限り尊重しながら校訂テキストを作成した。平成17年7月に第1回共同研究者会議を行い、その際、共同研究者による総合的研究を行うための研究方針についての検討が行われた。平成18年3月には第2回共同研究者会議で梵本研究を中心とした発表が行われた。梵文校訂テキストの出版にあたり,研究協力者によって校訂テキストの作成過程にあらわれた『維摩経』梵文写本の筆写等に関わる問題点と校訂に際しての問題点,梵文原文と蔵漢諸訳との関係について研究発表が行われた。次年度は中国系研究者による研究発表を予定している。『維摩経』は中国や日本において研究が続けられ,種々の註釈書や研究書が存在し、佛教美術にも多大な影響を与えてきた文献である。2004年に「梵蔵漢対照『維摩経』」が出版されるまでは、『維摩経』は主に漢訳及びチベット訳によって知られているだけで梵文原文については現存していないと考えられ、一部の文献に引用されるものによって知られるのみであった。「梵蔵漢対照『維摩経』」の出版以降、新しい『維摩経』研究の基礎資料となる『維摩経』梵文原典校訂テキストの作成をすすめてきた。本研究では中国・日本・佛教美術等に広がる『維摩経』の思想や文化を理解にするにあたり、梵文原典校訂テキストの出版とともに,新たに梵文『維摩経』を含めた総合的な研究を行う。本研究の第一の成果としての梵文『維摩経』校訂テキストの作成については,梵文写本の明らかな誤りについては訂正し、チベット訳や漢訳諸本との比較によって補うべき箇所は補い、梵文写本の特徴的な読みをできる限り尊重し、ついに平成18年3月に刊行した。平成18年7月に平成18年度第1回共同研究者会議を行い、同年9月13日に開催された第57回日本印度学仏教学会公開パネルディスカッションについて打ち合わせが行われた。公開パネルディスカッションでは、研究代表者である多田孝文及び、研究分担者の高橋尚夫・平井宥慶・佐久間秀範・吉津宜英・渡辺章吾の6先生と木村清孝日本印度学仏教学会理事長・斎藤明東京大学教授の2先生がパネリストとして参加された。研究分担者多田孝正先生の司会より、2時間半に渡り行われ、250人以上の方が参加された。平成19年3月には第2回共同研究者会議を行い,パネルディスカッション講演録出版に向けての話し合い,また来年度の研究方針について話し合いが行われた。講演録の出版は平成19年度夏頃を予定し、作業を進めている。『維摩経』は中国や日本において研究が続けられ,種々の註釈書や研究書が存在し、佛教美術にも多大な影響を与えてきた文献である。2004年に「梵蔵漢対照『維摩経』」が出版されるまでは、『維摩経』は主に漢訳及びチベット訳によって知られているだけで梵文原文については現存していないと考えられ、一部の文献に引用されるものによって知られるのみであった。本研究では中国・日本・佛教美術等に広がる『維摩経』の思想や文化を理解にするにあたり、新しい『維摩経』研究の基礎資料となる『維摩経』梵文原典校訂テキストの作成・出版とともに、『維摩経』の総合的な研究を行う。
KAKENHI-PROJECT-17320016
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17320016
チベット・ポタラ宮所蔵梵本『維摩経』に基づく総合的研究
本年度は平成18年9月に開催された、日本印度学仏教学界公開パネルディスカッション講演録の出版作業を進めることを柱として、全体的にはその校正作業に重点を置いた。また全体会議において、当研究会インド部門の米澤嘉康・長島潤道の両氏が梵文校訂に関する研究発表を行った。目的は、当研究会に関連して出版された『梵本維摩経』(2006)出版後の研究動向の調査のためである。米澤氏は大正大学『維摩経』テキストにおける文献学的特徴とそれに準拠して進められた諸研究の比較調査を行い、パワーポイントによって写本画像を鮮明に示しつつ、当写本が読みを尊重するテキストであることが再確認された。長島氏は、最近発表された岩松浅夫氏の三論文に関する語義解釈および訳文の再検討を行い、1・7章の偈頌の申1-6、1-7、7-2の三偈について詳細な考究を進め、テキストの進展が見られたわけである。また、本年度の研究成果の一部として、当研究会中国部門の坂本廣博氏が雑誌論文へ寄稿(下記参照)している。本研究も最終年度となった。2004年に「梵蔵漢対照『維摩経』」が出版され、その後2006年に出版された「『梵本維摩經』-ポタラ宮所蔵写本に基づく校訂-」によって写本校訂作業は終了した。本年度は前年度に引き続き、シンポジウム録の校正を行うと同時に『維摩經』訳に注目して研究を進めた。研究分担者である坂本廣博氏が支謙訳の『維摩経』を試訳した。広く読まれている鳩摩羅什訳『維摩詰所説経』との比較研究が期待される。その試訳が「支謙訳『維摩経』試訳(一)」として『叡山學院研究紀要第31号』に所収されている。また、ベルギーの大仏教学者であるラモット博士による物“L' Enseignement de VimalakIrti"(Louvain,1962)は「維摩経」のフランス語訳として非常に高い評価を受けたばかりでなく、「維摩経」の研究書としても多岐にわたる詳細な研究に基づく正確無比な内容で知られ、今なお「維摩経」研究書の頂点に立つ。とりわけ、その序論は「維摩経」の歴史、教理など一切を網羅すると言って過言ではない。このラモット博士のフランス語訳「維摩経」の「序論」(“INTRODUCTION")を、Sara Boinによる英語訳をベースに、研究協力者である西野翠氏が翻訳したものを基に研究を進めた。この訳に関しては郭忠生氏による中国語訳も出版されており、中国語訳本には郭氏の追跡研究の結果が加えられているばかりでなく、仏訳・英訳の要約が示され、箇所のみが挙げられている漢訳経文については、その全文を提示し、あるいは引用経典を大正蔵経で検索しやすいように、経典番号だけでなく、巻数と頁数を明記するといった工夫が随所に見られた。この中国訳本を参考に研究を進め、幅広い知見を得ることができた。以上のように上記2つの訳を中心に研究を行い、現在までの『維摩経』研究の成果を踏まえつつ新しい視点から翻訳研究に取り組んだ。
KAKENHI-PROJECT-17320016
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17320016
肝移植における栄養・肝ミトコンドリア機能・免疫機能の相関に関する基礎的臨床研究
1)これまでの生体肝移植後の免疫機能の研究から、肝移植後の成績を大きく左右する感染症の進展にはCD8(+)T細胞の中のeffector T細胞(Te)の機能が重要であり、Teの分布から患者の術前リスクを評価できること、Teの有効な機能回復にはcentral memory T細胞(Tcm)のIL-12受容体の発現が重要であることを見いだした。本研究においては、術前high riskグループであるGroup III症例においてTcmのIL-12受容体の変動を検討したが、通常の免疫抑制療法であるタクロリムスとステロイドの併用療法では術後には著しくTeが長期間低下し,またIL-12受容体の発現亢進もなく、種々の合併症を伴い,死亡率も高く,その生存率は6年後では50%に低下した。一方、タクロリムスとMMFの併用療法では,IL-12受容体の発現亢進を認め、Teが維持され、合併症も少なく6年生存率は100%であった。2)栄養療法に関しては、術前のアミノレバン投与、移植後の特殊な抗炎症経腸栄養剤投与が、統計学的に有意に肝移植後の敗血症の発症を抑制し、肝移植後の成績向上に寄与することを確認した。同時に、これらの栄養介入を行った患者群ではTeが維持され、TcmのIL-12受容体の発現も亢進している傾向が見られている。一方、AKBRに関しては安定したデータを得ることができない結果であり、今後の研究課題として残った。1)これまでの生体肝移植後の免疫機能の研究から、肝移植後の成績を大きく左右する感染症の進展にはCD8(+)T細胞の中のeffector T細胞(Te)の機能が重要であり、Teの分布から患者の術前リスクを評価できること、Teの有効な機能回復にはcentral memory T細胞(Tcm)のIL-12受容体の発現が重要であることを見いだした。本研究においては、術前high riskグループであるGroup III症例においてTcmのIL-12受容体の変動を検討したが、通常の免疫抑制療法であるタクロリムスとステロイドの併用療法では術後には著しくTeが長期間低下し,またIL-12受容体の発現亢進もなく、種々の合併症を伴い,死亡率も高く,その生存率は6年後では50%に低下した。一方、タクロリムスとMMFの併用療法では,IL-12受容体の発現亢進を認め、Teが維持され、合併症も少なく6年生存率は100%であった。2)栄養療法に関しては、術前のアミノレバン投与、移植後の特殊な抗炎症経腸栄養剤投与が、統計学的に有意に肝移植後の敗血症の発症を抑制し、肝移植後の成績向上に寄与することを確認した。同時に、これらの栄養介入を行った患者群ではTeが維持され、TcmのIL-12受容体の発現も亢進している傾向が見られている。一方、AKBRに関しては安定したデータを得ることができない結果であり、今後の研究課題として残った。
KAKENHI-PROJECT-21659300
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21659300
ホヤから発見した新規ペプチド、Ci-YFV/Lの生物学的役割の解明
本年度は、まず、昨年度までに構築した機械学習装置、Peptide descriptor (PD)-incorporated support vector machineを用いて、カタユウレイボヤ特異的遺伝子19種類と、リガンドが未同定のGタンパク共役型受容体160種類を入力し、全ての組み合わせについて相互作用予測を行った。その結果、特異的な相互作用を70%以上の確率で行うと予測された組み合わせを7種類検出した。次に、この予測結果に基づき、各受容体をG16タンパクと融合した組換えタンパクを構築し、Sf9細胞で発現させて、特異的リガンドと予測させたペプチドを反応させた。その結果、Ci-GALP, Ci-NTLP2, Ci-LF2,および、Ci-YFV-1とそれぞれの受容体の相互作用が実験的に証明された。さらに、これらの実証結果をPD-incorporated SVMにフィードバックして、再度、相互作用予測を行ったところ、新たに、12種類のペプチド-受容体ペアが70%以上の確率で相互作用するという予測結果を得た。一度目と同様に、各受容体のG16タンパク融合体をSf9細胞に発現させて、特異的リガンドと予測させたペプチドを反応させたところ、Ci-LF1, 5, 6, 7, 8, Ci-YFV3といった各ペプチドと特異的に反応する受容体を決定することができた。これは、機械学習法で新規ペプチド-受容体ペアの予測、および、それらを実験的に証明した初めての研究である。また、Ci-YFV1と3の受容体の発現分布をリアルタイムPCRで調べた結果、両者とも中枢神経と出水口で共通して発現が認められたが、後者は内柱や入水口でも高い発現が認められた。今後は、これらの実験成果に基づき、ホヤ特異的ペプチドの生物学的役割を解明する。これまでに、我々は、カタユウレイボヤの中枢神経から、どの生物でも発見されていない新規ペプチドをpeptidomicisで多数発見し、さらに、そのcDNA配列、ゲノム構造、および、中枢神経における遺伝子発現分布を明らかにしてきた。本研究では、その中でも、ホヤ新規ペプチドのCi-YFL1, 2, 3, Ci-YFV,および、Ci-LF1-8の生理機能を解明することに焦点を当てている。これらの生理機能を解明するには、各ペプチドの受容体の同定とその発現分布の解明が不可欠である。しかし、このような新規ペプチドの受容体を、既知需要た配列との相同性から判断することは不可能であり、また、従来のreverse pharmacologyの手法では、多大な時間、労力、および、実験コストを要することが予測された。そこで、我々は、機械学習法を用いて、Ci-YFL1, 2, 3, Ci-YFV,および、Ci-LF1-8の受容体候補を3種類ずつ予測した。次に、それらをHEK293細胞やSF9細胞用発現ベクターに挿入し、発現体を構築した。また、これらの受容体は、シグナル伝達の検出を簡略化するために、すべてG15タンパクとin-flameで融合してある。さらに、この融合体が細胞膜上に局在していることを確認した。現在、上記予測結果に基づき、各受容体の発現体にペプチドを投与し、細胞内カルシウム動員を指標としたアッセイを行っている。全て、研究計画通りに進行できている。29年度は、ペプチドの記述子をオリジナルに作製し、脊椎動物や昆虫のペプチドとGPCRを数値化して、独自に作製した機械学習モデル、PD-incorporated SVMを構築した。これに、当研究室で同定したホヤ特異的ペプチド25種とリガンドが不明なGPCR140種類を入力し、ペプチド-受容体ペアの予測を行った。その結果、29種類のペプチド-受容体ペアの候補が導き出された。次に、この予測結果を実験的に実証するために、各GPCRをSf9細胞に導入し、細胞内カルシウム動員を指標としたレセプター結合実験を行ったところ、Ci-YFV1とCi-YFV-3にそれぞれ特異的に結合するGPCR、Ci-YFV-1-RとCi-YFV-3-Rを同定できた。これらの受容体は、Ci-YFV1とCi-YFV-3とnMベースのEC50で反応するのに対し、他のペプチドとは全く反応しなかった。また、ペプチドとCi-YFV-1-RとCi-YFV-3-Rの分子進化を分子系統樹で解析したところ、これらの受容体はホヤで独自に進化したGPCR群であること、および、他の生物のペプチドのGPCRとは全く相関性を持っていないこと、強いて言えば、ヒトやショウジョウバエの機能不明のオーファンGPCRと緩い相関性を有していることが明らかになった。Ci-YFV-1-RとCi-YFV-3-Rのホヤ体内における発現分布をRT-PCRで調べたところ、これらの受容体は中枢神経、消化管、入水口、および、卵巣で発現していることが明らかになった。現在、これらの受容体の卵巣における発現部位をin situ hybridizationで特定しつつある。発現部位を特定後、卵巣や卵胞にペプチドを投与し、トランスクリプトームを行い、変動する遺伝子群を同定し、これらのペプチドの生物学的役割を解明していく予定である。これまで不明だったCi-YFV-1とCi-YFV-3の受容体を決定し、発現組織を計画通りに特定できたことで、Ci-YFV-1とCi-YFV-3の生物学的役割の解明に大きく前進した。
KAKENHI-PROJECT-16K07430
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K07430
ホヤから発見した新規ペプチド、Ci-YFV/Lの生物学的役割の解明
本年度は、まず、昨年度までに構築した機械学習装置、Peptide descriptor (PD)-incorporated support vector machineを用いて、カタユウレイボヤ特異的遺伝子19種類と、リガンドが未同定のGタンパク共役型受容体160種類を入力し、全ての組み合わせについて相互作用予測を行った。その結果、特異的な相互作用を70%以上の確率で行うと予測された組み合わせを7種類検出した。次に、この予測結果に基づき、各受容体をG16タンパクと融合した組換えタンパクを構築し、Sf9細胞で発現させて、特異的リガンドと予測させたペプチドを反応させた。その結果、Ci-GALP, Ci-NTLP2, Ci-LF2,および、Ci-YFV-1とそれぞれの受容体の相互作用が実験的に証明された。さらに、これらの実証結果をPD-incorporated SVMにフィードバックして、再度、相互作用予測を行ったところ、新たに、12種類のペプチド-受容体ペアが70%以上の確率で相互作用するという予測結果を得た。一度目と同様に、各受容体のG16タンパク融合体をSf9細胞に発現させて、特異的リガンドと予測させたペプチドを反応させたところ、Ci-LF1, 5, 6, 7, 8, Ci-YFV3といった各ペプチドと特異的に反応する受容体を決定することができた。これは、機械学習法で新規ペプチド-受容体ペアの予測、および、それらを実験的に証明した初めての研究である。また、Ci-YFV1と3の受容体の発現分布をリアルタイムPCRで調べた結果、両者とも中枢神経と出水口で共通して発現が認められたが、後者は内柱や入水口でも高い発現が認められた。今後は、これらの実験成果に基づき、ホヤ特異的ペプチドの生物学的役割を解明する。本年度は、予測結果に基づいたペプチド-受容体ペアを実証し、各新規ホヤ神経ペプチドの受容体を決定する。その後、それらの卵巣における発現分布研究に移行する。卵巣のCi-YFV-1-RとCi-YFV-3-Rの発現部位を特定後、そこにCi-YFV-1とCi-YFV-3を投与して、変動する遺伝子群をRNA-seqで特定する。また、卵胞や卵巣の形態学的・発生生物学的変化を検出する。
KAKENHI-PROJECT-16K07430
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ソノポレーション法を用いた骨誘導における新たな治療法の開発とそのメカニズムの解明
骨延長術は骨の造成のみならず周囲の骨膜、筋、神経脈管などの軟組織も同時に延長されることから,従来の骨欠損部位に対する自家骨移植術にはない利点を有する.しかしながら骨移植法に比べ治療期間の長期化が大きな欠点とされている.近年,骨延長術の治療期間の短期化を目的とした骨硬化促進の研究がなされている.そこで本研究では顎骨に骨延長術を行い,延長部に対しbFGFを超音波遺伝子法にて骨芽細胞に導入し,創傷治癒促進,骨硬化促進度合を解析したところ,新規骨誘導療法の実現に向け多くの知見を得ることができた.骨延長術は骨の造成のみならず周囲の骨膜、筋、神経脈管などの軟組織も同時に延長されることから,従来の骨欠損部位に対する自家骨移植術にはない利点を有する.しかしながら骨移植法に比べ治療期間の長期化が大きな欠点とされている.近年,骨延長術の治療期間の短期化を目的とした骨硬化促進の研究がなされている.そこで本研究では顎骨に骨延長術を行い,延長部に対しbFGFを超音波遺伝子法にて骨芽細胞に導入し,創傷治癒促進,骨硬化促進度合を解析したところ,新規骨誘導療法の実現に向け多くの知見を得ることができた.骨延長術は骨の造成のみならず周囲の骨膜、筋、神経脈管などの軟組織も同時に延長されることから、従来の骨欠損部位に対する自家骨移植術にはない利点を有する.しかしながら骨移植法に比べ治療期間の長期化が大きな欠点とされている.近年、骨延長術の治療期間の短期化を目的とした骨硬化促進の研究がなされている.骨硬化期間に骨延長部へ刺激を与え、創傷治癒促進、骨硬化促進を獲得する方法である.この刺激としては、骨形成因子(BMP、bFGFなど)の局所注入、低出力超音波刺激(LIPUS)などがある.LIPUSでは安定した骨硬化促進作用を確認できたが、bFGFの注入に関しては、局所に安定して作用する担体を必要とし、結果が不安定であった.これらの結果から、bFGFを安定して延長部に作用させる方法が必須となっていた.申請者は顎骨に骨延長術を行い、延長部骨芽細胞にbFGF発現プラスミドを安全で効果の高い超音波遺伝子導入法(ソノポレーション法)で導入し、創傷治癒および骨硬化を促進することにより、骨延長期間を短縮できると考えた.平成19年度は、In vitroの実験系における骨芽細胞への導入効率の検討を行った.超音波遺伝子導入装置を用いマウス正常骨芽細胞MT3T3 cellおよびヒト由来骨芽細胞様細胞Saos2にβ-galactosidase発現遺伝子を導入し、導入効果が高い条件を検討した.β-gal発現遺伝子とマイクロバブル溶液(Sonovue)を混合し、遺伝子/マイクロバブル複合体溶液を調製する.この溶液を細胞懸濁液に加え、さまざまな条件で超音波照射した.24時間培養後、β-gal染色したところ、超音波強度2.0W/cm2、照射時間20秒、DUTY比50%で最も高い導入効果が得られた.また近年、細胞レベルの精度で遺伝子導入を"狙い撃ち"できるナノバブルも出現し、その研究開発が盛んになっている.そこで、次世代マイクロバブルとして帝京大学薬学部からバブルリポソームを供与した.上記実験をバブルリポソームを用いて検討を行い、導入効率が向上するかどうかを現在調べている.骨延長術は骨の造成のみならず周囲の骨膜、筋、神経脈管などの軟組織も同時に延長されることから,従来の骨欠損部位に対する自家骨移植術にはない利点を有する.しかしながら骨移植法に比べ治療期間の長期化が大きな欠点とされている.近年,骨延長術の治療期間の短期化を目的とした骨硬化促進の研究がなされている.骨硬化期間に骨延長部へ刺激を与え,創傷治癒促進,骨硬化促進を獲得する方法である.この刺激としては,骨形成因子(BMP, bFGFなど)の局所注入,低出力超音波刺激(LIPUS)などがある.LIPUSでは安定した骨硬化促進作用を確認できたが,bFGFの注入に関しては,局所に安定して作用する担体を必要とし,結果が不安定であった.申請者は顎骨に骨延長術を行い,延長部骨芽細胞にbFGF発現プラスミドを超音波遺伝子導入法で導入し,創傷治癒および骨硬化を促進することにより,骨延長期間を短縮できると考えた平成20年度は,臨床への応用を目指し,動物実験での成績評価を行った.まず,Wister系ラットを用い,全身麻酔下に下顎骨皮質骨骨切り後,自作の延長装置を装着し,ラット下顎骨延長モデルを作成した.実験動物を対照群(単純骨延長群),超音波単独照射群,bFGF発現プラスミド単独投与群,bFGF発現プラスミド投与+超音波遺伝子導入群の四群に分けた.術後7日間の待機期間の後,0.5mm/日の割合で骨延長を行った.総延長距離は3.5mmとし,7日間の延長を行う.延長終了後,延長部に対して以下の刺激を加える.実験群:延長終了時,延長部にナノバブル/bFGF遺伝子混合溶液をインジェクションし,ソニトロン2000の超音波プローブを当て超音波照射した.以上の経過で延長終了後1週,2週,4週で安楽死させ,試料を採取した.RT-PCR法にて仮骨周囲組織にbFGF遺伝子の発現が観察され,bFGFタンパクも検出された.組織学的には,HE染色およびToluidine Blue染色にて導入群仮骨に軟骨の消失と骨架橋が見られ,治癒の促進が観察された.
KAKENHI-PROJECT-19890195
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19890195
光合成酸素発生系Mnクラスターの構造と機能の研究
酸素発生系Mnクラスターの磁気構造解析:第1段階として、EPRマルチライン信号の磁気的性質とXAFS実験から報告されているMnクラスターの性質を考慮して、一般的なMn4核錯体の可能な磁気相互作用の全ての組み合わせについて数値計算を行い、クラスターが示す磁気的性質(S_2状態)を満足する磁気構造を抽出した。第2段階として、4核錯体の各Mnの酸化状態と有効的超微細結合テンサー(Ehfc)をより正確に決定するため、薄膜上に配向した光化学系II膜断片についてチラコイド膜法線方向にたいする角度依存性S_2マルチラインスペクトルを精密に測定し、得られた角度依存性スペクトルについてMn(III)イオンの異方性を考慮にいれた非線形最小2乗法によるシュミレーション解析を行った。酸化状態はMn(III-IV,IV,IV)、EhfcはMn(III)が8.56×10^<-3>cm^<-1>、Mn(IV)が3.70×10^<-3>cm^<-1>、8.07×10^<-3>cm^<-1>、9.93×10^<-3>cm^<-1>と決定された。第3段階として、Mnの持つ実効的超微細結合テンサーの範囲(6.5×10^<-3>cm^<-1>8.5×10^<-3>cm^<-1>)でクラスターの各MnのEhfcを再現するプロジェクションファクターを示す磁気構造を酸素発生系Mnクラスターの構造として選択した。Mn原子間のEhfcの値より、クラスターを構成するMn間の化学結合の有無、種類についての議論が可能となった。酸素発生系Mnクラスターの磁気構造解析:第1段階として、EPRマルチライン信号の磁気的性質とXAFS実験から報告されているMnクラスターの性質を考慮して、一般的なMn4核錯体の可能な磁気相互作用の全ての組み合わせについて数値計算を行い、クラスターが示す磁気的性質(S_2状態)を満足する磁気構造を抽出した。第2段階として、4核錯体の各Mnの酸化状態と有効的超微細結合テンサー(Ehfc)をより正確に決定するため、薄膜上に配向した光化学系II膜断片についてチラコイド膜法線方向にたいする角度依存性S_2マルチラインスペクトルを精密に測定し、得られた角度依存性スペクトルについてMn(III)イオンの異方性を考慮にいれた非線形最小2乗法によるシュミレーション解析を行った。酸化状態はMn(III-IV,IV,IV)、EhfcはMn(III)が8.56×10^<-3>cm^<-1>、Mn(IV)が3.70×10^<-3>cm^<-1>、8.07×10^<-3>cm^<-1>、9.93×10^<-3>cm^<-1>と決定された。第3段階として、Mnの持つ実効的超微細結合テンサーの範囲(6.5×10^<-3>cm^<-1>8.5×10^<-3>cm^<-1>)でクラスターの各MnのEhfcを再現するプロジェクションファクターを示す磁気構造を酸素発生系Mnクラスターの構造として選択した。Mn原子間のEhfcの値より、クラスターを構成するMn間の化学結合の有無、種類についての議論が可能となった。
KAKENHI-PROJECT-10129233
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10129233
染色体構築に関与する蛋白質複合体の制御機構の解明
すべての生物では、SMC(structural maintenance of chromosomes)とよばれる一群の蛋白質が、染色体の維持や分裂に深く関わっている。本申請では、バクテリアのコンデンシンと呼ばれるSMC蛋白質複合体の制御サブユニットが、どのようなシグナルを介して、SMC蛋白質のATP加水分解反応を制御しているか、構造生物学的及び分子生物学的アプローチによって理解することを目的とした。この申請研究で、SMC制御サブユニットScpA-ScpB複合体を調製し、その結晶構造を決定し、ScpAの可変構造を制御するための特異的なScpBのシャペロン様構造を明らかにした。ScpAはScpBと巻き付くように複合体を形成しており、どのようなステップを経てこの複雑な構造が形成されているのかを明らかにすることができた。ScpBは安定な二量体をそのN末端ドメインで形成していた。この二量体ドメインと結合するScpAペプチドの複合体の結晶構造を決定することによって、ScpA-ScpB複合体の形成過程で、一時的に取り得ると考えられる安定構造も明らかにした。これらの立体構造を基にして制御サブユニットの変異体を作製し、SMCのATPase活性に与える影響を調べた結果、複合体中では隠されているScpAの中央領域の一部がSMCのATPase活性の促進化に重要な役割をもつことが判明した。すなわち、SMC複合体には、制御サブユニットの内部構造変化と同期して、SMCのATPaseドメインの会合が誘起される機構が備わっていると推測された。上記の結果をまとめて論文化し、Structureに投稿した。24年度が最終年度であるため、記入しない。24年度が最終年度であるため、記入しない。原核生物は、核膜をもたず、その染色体DNAは核様体と呼ばれる構造体を形成している。枯草菌を初めとする多くのバクテリアでは、SMC(Structural Maintenance of Chromosomes)複合体が存在し、核様体の構築と分離に関与している。本申請の大きな研究目的は、まず、このバクテリア型のコンデンシン複合体の制御サブユニット(ScpAとScpB)のどのようなシグナルが、SMC蛋白質の加水分解反応過程を制御しているかを理解することにある。そのため、立体構造解析を行い、生化学的実験による検証を行う。さらに、このバクテリア型での複合体調製のノウハウを生かし、真核生物のコンデンシンの機能ドメインを同定することを目指す。本年度は、SMC蛋白質のATPase活性ドメイン及び、ScpA-ScpB複合体を調製し、様々な条件下で結晶化を試みた。結晶化が成功したものについては、高輝度X線源を用いて回折実験を行い、三次元構造を決定した。ScpA-ScpB複合体の構造解析から、ScpAの可変構造を維持するための特異的なScpBのシャペロン様構造を明らかにすることができた。この構造情報から、SMC蛋白質の加水分解活性を制御すると考えられる部位に、特異的に変異を導入することができた。このScpA、ScpB変異体を用いた生化学的実験の結果から、いくつかの部位が機能的に重要であることが検証できた。また、このバクテリアの共発現系と調製のノウハウを生かし、真核生物型のコンデンシン複合体の解析へと発展させるため、その制御サブユニットとSMC蛋白質のATPase活性を担うドメインをクローニングし、バキュロウイルスを用いた昆虫細胞による発現系を構築することができた。すべての生物では、SMC(structural maintenance of chromosomes)とよばれる一群の蛋白質が、染色体の維持や分裂に深く関わっている。本申請では、バクテリアのコンデンシンと呼ばれるSMC蛋白質複合体の制御サブユニットが、どのようなシグナルを介して、SMC蛋白質のATP加水分解反応を制御しているか、構造生物学的及び分子生物学的アプローチによって理解することを目的とした。この申請研究で、SMC制御サブユニットScpA-ScpB複合体を調製し、その結晶構造を決定し、ScpAの可変構造を制御するための特異的なScpBのシャペロン様構造を明らかにした。ScpAはScpBと巻き付くように複合体を形成しており、どのようなステップを経てこの複雑な構造が形成されているのかを明らかにすることができた。ScpBは安定な二量体をそのN末端ドメインで形成していた。この二量体ドメインと結合するScpAペプチドの複合体の結晶構造を決定することによって、ScpA-ScpB複合体の形成過程で、一時的に取り得ると考えられる安定構造も明らかにした。これらの立体構造を基にして制御サブユニットの変異体を作製し、SMCのATPase活性に与える影響を調べた結果、複合体中では隠されているScpAの中央領域の一部がSMCのATPase活性の促進化に重要な役割をもつことが判明した。すなわち、SMC複合体には、制御サブユニットの内部構造変化と同期して、SMCのATPaseドメインの会合が誘起される機構が備わっていると推測された。上記の結果をまとめて論文化し、Structureに投稿した。24年度が最終年度であるため、記入しない。分光器等の不調で蛋白質濃度調製がうまく行かなかったトラブルはあったが、当初の目的の半分は計画的通りに進行させることができた。24年度が最終年度であるため、記入しない。ここまでの構造解析の結果については、来年度の早い段階で論文化を進める。
KAKENHI-PUBLICLY-23121534
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-23121534
染色体構築に関与する蛋白質複合体の制御機構の解明
また、真核生物のコンデンシンについては、昆虫細胞のスケールアップを計り、1Lスケールで大量発現可能なシステムを構築し、コンデンシン制御サブユニットの構造的安定性を生化学的に調査する。
KAKENHI-PUBLICLY-23121534
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-23121534
ヒト心筋Kチャネルの薬理および分子生物学的研究
現在までに様々な動物種を用いて,心筋細胞の膜イオン電流の解析が行われてきたが,実際にヒト心筋細胞においても他動物種と同様なイオン電流によって活動電位が構成されているか否かの検討は十分に行われていない。これらの電流系が解明された場合には,不整脈の発生機序や抗不整脈薬の効果を予測することが可能になると考えられる。そこで。我々は単一ヒト心筋細胞にパッチクランプ法を応用して,whole-cell電流を記録した状態で,心筋細胞の膜イオン電流として重要と考えられるK電流およびCa電流を解析した。この結果,K電流に関してはヒト心筋細胞に特異的なultra rapid型のK電流(IKur)および一過性K電流(Ito)が確認され,ヒト心筋細胞の再分極相に重要な役割を果たしている事が確認された。また,これらのK電流の抗不整脈薬による抑制機序も解明されつつあり,各種抗不整脈薬の中でも,Itoのみに有効な薬物や,ItoおよびIKur双方に有効な薬物なども解明されるようになった。今後はK電流のみを特異的に抑制する抗不整脈薬を検討する予定である。また,ヒト心筋Ca電流に関してはphosphodiesterase(PDE)の中でも,特にPDEIIIおよびIV型が,Ca電流の調節により重要な役割を果たしていることが確認されたため,心不全の治療薬を考慮する上でも重要な所見と考えられたため,今後は臨床応用が可能なPDE抑制薬のヒト心筋膜電流に対する効果を検討する予定である。現在までに様々な動物種を用いて,心筋細胞の膜イオン電流の解析が行われてきたが,実際にヒト心筋細胞においても他動物種と同様なイオン電流によって活動電位が構成されているか否かの検討は十分に行われていない。これらの電流系が解明された場合には,不整脈の発生機序や抗不整脈薬の効果を予測することが可能になると考えられる。そこで。我々は単一ヒト心筋細胞にパッチクランプ法を応用して,whole-cell電流を記録した状態で,心筋細胞の膜イオン電流として重要と考えられるK電流およびCa電流を解析した。この結果,K電流に関してはヒト心筋細胞に特異的なultra rapid型のK電流(IKur)および一過性K電流(Ito)が確認され,ヒト心筋細胞の再分極相に重要な役割を果たしている事が確認された。また,これらのK電流の抗不整脈薬による抑制機序も解明されつつあり,各種抗不整脈薬の中でも,Itoのみに有効な薬物や,ItoおよびIKur双方に有効な薬物なども解明されるようになった。今後はK電流のみを特異的に抑制する抗不整脈薬を検討する予定である。また,ヒト心筋Ca電流に関してはphosphodiesterase(PDE)の中でも,特にPDEIIIおよびIV型が,Ca電流の調節により重要な役割を果たしていることが確認されたため,心不全の治療薬を考慮する上でも重要な所見と考えられたため,今後は臨床応用が可能なPDE抑制薬のヒト心筋膜電流に対する効果を検討する予定である。現在までに様々な動物種を用いて,心筋細胞の膜イオン電流の解析が行われてきたが,実際にヒト心筋細胞においても他動物種と同様なイオン電流によって活動電位が構成されているか否かの検討は十分に行われていない。これらの電流系が解明された場合には,不整脈の発生機序や抗不整脈薬の効果を予測することが可能になると考えられる。そこで。本年度は単一ヒト心筋細胞にパッチクランプ法を応用して,whole-cell電流を記録した状態で,心筋細胞の膜イオン電流として重要と考えられるK電流およびCa電流を解析した。この結果,K電流に関してはヒト心筋細胞に特異的なultra rapid型のK電流(IKur)および一過性K電流(Ito)が確認され,ヒト心筋細胞の再分極相に重要な役割を果たしている事が示唆された。また,これらのK電流の抗不整脈薬による抑制機序も解明されつつあり,今後は種々の抗不整脈薬によるK電流の修飾機序を検討する予定である。また,ヒト心筋Ca電流に関してはphosphodiesterase(PDE)の中でも,特にPDE IIIおよびIV型が,Ca電流の調節により重要な役割を果たしていることが確認されたため,心不全の治療薬を考慮する上でも重要な所見と考えられた。現在までに様々な動物種を用いて,心筋細胞の膜イオン電流の解析が行われてきたが,実際にヒト心筋細胞においても他動物種と同様なイオン電流によって活動電位が構成されているか否かの検討は十分に行われていない。これらの電流系が解明された場合には,不整脈の発生機序や抗不整脈薬の効果を予測することが可能になると考えられる。そこで。本年度は単一ヒト心筋細胞にパッチクランプ法を応用して,whole-cell電流を記録した状態で,心筋細胞の膜イオン電流として重要と考えられるK電流を解析した。昨年度の本研究費による研究で,ヒト心筋細胞に特異的なultra rapid型のK電流(IKur)および一過性K電流(Ito)が確認されたが,これらのK電流に対してI群の抗不整脈薬であるpropafenoneが双方のK電流を有効血中濃度の範囲で特異的に抑制することが確認された。この作用は他の抗不整脈薬であるflecainideやquinidineとも異なっており,心房性の不整脈を抑制する機序として重要な所見と考えられた。
KAKENHI-PROJECT-09670761
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09670761
ヒト心筋Kチャネルの薬理および分子生物学的研究
また,ヒト心筋細胞のK電流として重要と考えられるrapid型遅延整流性K電流(IKr)の構造および変異株の構造,機能も解明されつつあり,今後はこれらのK電流の臨床不整脈症例における役割を検討する予定である。
KAKENHI-PROJECT-09670761
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09670761
表情筋活動・下顎運動に着目した調音教示法の構築と発音訓練における効果の検証
発音訓練では、所望の音韻を生成するための調音器官(舌・口唇)の形状を的確に制御できるようにする調音教示を、訓練者に与えることが必要である。本研究では、言語によって発話に使われる調音器官周りの筋肉の使い方が異なることに着目し、調音動作の口唇・下顎運動を司る筋肉に意識を向ける発音教示法を構築することを目的とする。顔の筋肉は直接見て触ることができるため理解しやすく、筋肉の動きの連動を利用して適切な筋肉を意識させることが可能である。口唇・下顎運動に関わる筋活動と、調音器官の形状を介して発音音声の音響学的特徴変化との関係について定量的な数理関係を見いだし、発音訓練促進という観点から体系化する。発音訓練では、所望の音韻を生成するための調音器官(舌・口唇)の形状を的確に制御できるようにする調音教示を、訓練者に与えることが必要である。本研究では、言語によって発話に使われる調音器官周りの筋肉の使い方が異なることに着目し、調音動作の口唇・下顎運動を司る筋肉に意識を向ける発音教示法を構築することを目的とする。顔の筋肉は直接見て触ることができるため理解しやすく、筋肉の動きの連動を利用して適切な筋肉を意識させることが可能である。口唇・下顎運動に関わる筋活動と、調音器官の形状を介して発音音声の音響学的特徴変化との関係について定量的な数理関係を見いだし、発音訓練促進という観点から体系化する。
KAKENHI-PROJECT-19K00922
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K00922
幹細胞発生・分化におけるオートファジーチェックポイント機構
本研究では、オートファジーが、どのように成体型造血幹細胞の成立に寄与するのか、また、関連した研究として、腫瘍幹細胞におけるオートファジーの意義を明らかにすることを目標とした。本年度は、オートファジーと深く関与するmTOR複合体1 (mTORC1)の生体内での造血幹細胞の自己複製能の役割を明らかにするため、Rheb変異マウス(Rheb f/f CreER)の骨髄細胞を放射線照射マウスに移植し、骨髄再構築が完了した後に、タモキシフェンを投与し、野生型造血細胞との競合状態を評価した。その結果、Rheb欠損による明確な造血幹細胞異常は認められないことが判明した。さらに、マウスに低線量のX線を照射しても、その結果には影響をしていなかった。したがって、定常状態および傷害ストレス下においてもRheb依存的な幹細胞の異常は認められなかった。一方、Raptor欠損に関しては顕著な造血幹細胞の現象が認められることから、mTORC1自体は造血幹細胞の自己複製に必須であるが、PI3K-AKT以外の上流の重要性が示唆された。また、オートファジーの活性化による造血幹細胞保護作用の可能性が示された。以上のように、本研究成果は、オートファジーの役割を明確にするための意義ある情報となった。また、脳腫瘍幹細胞において、ATG5遺伝子を破壊し、未分化性に関する指標を解析した結果、オートファジー不全状態は、通常状態では何ら影響を及ぼさないものの、ミトコンドリア傷害性の抗がん剤に対する感受性の亢進に寄与することが判明した。本成果により、将来、臨床的に有用な治療法の開発に寄与する可能性が示唆された。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。本研究では、発生・発達期に生じるようなオートファジーが、どのように成体型造血幹細胞の成立に寄与するのか、生理的意義を明らかにすることを目標とした。まず、薬剤誘導的Atg5欠損マウスの造血組織を解析したところ、8-12週齢では、顕著な幹細胞集団への影響は認められないこと、一方、胎児期より血液細胞においてAtg5を欠損(Atg5flox/flox;vav-Creマウス)させることにより、その後の成体では、顕著な幹細胞の機能低下と数の減少を伴う造血不全が生じることを確認した。このことから、造血幹細胞の維持におけるオートファジーの役割は、これまで考えられてきた成体型造血幹細胞というより、それまでの発生・発達時期での重要性が大きいのではないかと考えられた。そこで、Atg5flox/flox;Vav1-Creマウスの造血幹細胞を用いて、E13.5, 18.5,P0, P7, P21での移植実験を行い、どの段階でオートファジーが重要であるか検討した。その結果、出生1週間以降に明確な移植能の低下が認められるものの、それ以前では顕著な低下は認められないこと、一方で、生後3週齢以降では極めて重篤な幹細胞機能障害が認められたことから、発生・発達段階でオートファジーの機能不全が、その後の成体型幹細胞の成立(発生)に大きく影響すると考えられた。今後、造血幹細胞の発生におけるオートファジーの新たな分子制御機構の解明に大いに寄与するものと期待される。予備的実験で得られた成果や材料を十分に活用し、解析を進めることができたため、順調に研究が進展していると考えられる。本研究では、オートファジーが、どのように成体型造血幹細胞の成立に寄与するのか、また、関連した研究として、腫瘍幹細胞におけるオートファジーの意義を明らかにすることを目標とした。本年度は、オートファジーと深く関与するmTOR複合体1 (mTORC1)の生体内での造血幹細胞の自己複製能の役割を明らかにするため、Rheb変異マウス(Rheb f/f CreER)の骨髄細胞を放射線照射マウスに移植し、骨髄再構築が完了した後に、タモキシフェンを投与し、野生型造血細胞との競合状態を評価した。その結果、Rheb欠損による明確な造血幹細胞異常は認められないことが判明した。さらに、マウスに低線量のX線を照射しても、その結果には影響をしていなかった。したがって、定常状態および傷害ストレス下においてもRheb依存的な幹細胞の異常は認められなかった。一方、Raptor欠損に関しては顕著な造血幹細胞の現象が認められることから、mTORC1自体は造血幹細胞の自己複製に必須であるが、PI3K-AKT以外の上流の重要性が示唆された。また、オートファジーの活性化による造血幹細胞保護作用の可能性が示された。以上のように、本研究成果は、オートファジーの役割を明確にするための意義ある情報となった。また、脳腫瘍幹細胞において、ATG5遺伝子を破壊し、未分化性に関する指標を解析した結果、オートファジー不全状態は、通常状態では何ら影響を及ぼさないものの、ミトコンドリア傷害性の抗がん剤に対する感受性の亢進に寄与することが判明した。本成果により、将来、臨床的に有用な治療法の開発に寄与する可能性が示唆された。発達期造血幹細胞におけるオートファジーを誘導する上流因子および下流因子の特定を進め、幹細胞制御におけるオートファジーの生理的意義を明らかにする29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-16H01199
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-16H01199
放射線治療を受ける頭頸部癌患者への口腔ケアの介入効果
背景:癌で放射線治療を受けると口腔粘膜炎が発症し、重症化すると放射線治療完遂に影響を及ぼすことがある。それにも関わらず、口腔粘膜炎の予防と治療方法は確立されてなかった。目的:癌で頭頸部に放射線治療を受ける場合の口腔管理の方法を確立し、重度の口腔粘膜炎をどの程度抑制できるかを明らかにすることであった。方法:耳鼻咽喉科、放射線科と口腔外科の癌で頭頸部に放射線治療を受ける患者に対して独自のプロトコール「頭頚部がん放射線治療時の有害事象予防バンドル」を作成し、口腔管理を行った。成果:口腔または中咽頭癌の患者30名うち5名(17%)が重度の口腔粘膜炎を発症し、過去の報告と比較して低い割合を示した。本研究の目的は、頭頸部がんで放射線治療を受ける患者に対して放射線治療開始前から口腔管理を行い、予定通りの放射線治療を完遂させ放射線治療による有害事象の口腔粘膜炎を予防あるいは重症化を抑制するかを検討することである。本研究における放射線治療中の口腔管理の方法は、1口腔ケア2スペーサー作成3ピロカルピン塩酸塩の投与4口腔粘膜炎へのステロイド軟膏塗布である。放射線科や耳鼻科からほぼ全例頭頸部がんで放射線治療を受ける患者の紹介を受け、平成23年10月から平成25年3月まで78名の患者への口腔管理を行ってきた。その中でも特に30名の口腔・中咽頭がんの患者に注目し、口腔ケアの効果を評価した。その結果、重度の口腔粘膜炎を発症した割合は17%(30名中5名)であった。Nicolaou-Galitisら(The open cancer Journal,2011,4,7-17)の報告では、放射線治療中に口腔ケアみを行ったところ135名の頭頸部がんで放射線治療を受け重度の口腔粘膜炎を発症した割合は57%であった。本研究の結果から放射線治療中に口腔管理を行うことで重度の口腔粘膜炎の発症を抑制できることが示唆され、論文発表した(KawashitaらJournal of Cancer Research & Therapy, 2(1): 9-13, 2014)。背景:癌で放射線治療を受けると口腔粘膜炎が発症し、重症化すると放射線治療完遂に影響を及ぼすことがある。それにも関わらず、口腔粘膜炎の予防と治療方法は確立されてなかった。目的:癌で頭頸部に放射線治療を受ける場合の口腔管理の方法を確立し、重度の口腔粘膜炎をどの程度抑制できるかを明らかにすることであった。方法:耳鼻咽喉科、放射線科と口腔外科の癌で頭頸部に放射線治療を受ける患者に対して独自のプロトコール「頭頚部がん放射線治療時の有害事象予防バンドル」を作成し、口腔管理を行った。成果:口腔または中咽頭癌の患者30名うち5名(17%)が重度の口腔粘膜炎を発症し、過去の報告と比較して低い割合を示した。本研究の目的は、頭頸部がんで放射線治療を受ける患者に対して放射線治療開始前から口腔ケアを行い、予定通りの放射線治療を完遂させ放射線治療による口内炎などの有害事象を予防あるいは緩和し、感染症の発症を抑制する効果があるのかどうかを評価することである。放射線科や耳鼻科からほぼ全例頭頸部がんで放射線治療を受ける患者の紹介を受け、平成23年10月から平成25年3月まで78名の患者への口腔ケアを行ってきた。その中でも特に30名の口腔・中咽頭がんの患者に注目し、口腔ケアの効果を評価した。その結果、重度の口腔粘膜炎を発症した割合は17%(30名中5名)であった。コントロール群を平成23年9月から1年間さかのぼり頭頸部がんで放射線治療を受けかつ歯科受診を受けていない者で、重度の口腔粘膜炎の発症率は37%(27名中10名)であった。また、Nicolaou-Galitisら(The open cancer Journal,2011,4,7-17)の報告では135名の頭頸部がんで放射線治療を受け重度の口腔粘膜炎を発症した割合は57%であり、口腔ケアを行うことで重度の口腔粘膜炎を抑制することができることが示唆された。また、放射線治療中の口腔ケアの方法は現在のところ十分に確立されておらず、さらに、施設間での口腔ケアの内容に違いがあることが2012年8月に歯科を併設するすべての106大学病院に対するアンケート調査で分かった。我々は、放射線治療中の口腔ケアは保清と保湿を原則としスペーサーの作成、サラジェンの投与やステロイド軟膏による口腔粘膜炎の治療を含めた「口腔粘膜炎の予防バンドル」として行う必要があると認識し、書籍分担担当「頭頸部がん放射線治療と口腔管理」において口腔ケア方法を執筆した。頭頸部への放射線治療による有害事象には、口腔粘膜炎、口腔乾燥、味覚異常、放射線骨壊死がある。特に口腔粘膜炎は、疼痛とそれによる食事摂取量の減少を生じ、QOLの急激な低下を招き患者の闘病意欲を減退させ、やむなく放射線治療中止に至ることがある。そのため、医科との連携を図り、放射線治療前から口腔管理を行うことで、放射線治療による口腔内の有害事象を予防あるいは緩和し、効果的な医科歯科連携システムを構築することを本研究の目的であった。本研究の方法は、耳鼻咽喉科、放射線科と口腔外科において癌で頭頚部に放射線治療を受ける患者に対して独自のプロトコール「頭頚部がん放射線治療時の有害事象予防バンドル」を用いて放射線治療前から口腔管理を行った。口腔管理の内容は1スペーサー作成2ピロカルピン塩酸塩の投与
KAKENHI-PROJECT-24593159
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放射線治療を受ける頭頸部癌患者への口腔ケアの介入効果
3保清と保湿に重点をおいた口腔清掃4口腔粘膜炎へオリブ油で溶いたデキサルチン軟膏塗布であった。その結果、当院にて頭頚部に放射線治療を受ける患者のほぼすべてを登録することができ、年間60名程度の新患を管理することができた。また、放射線治療中の口腔管理の介入効果については、口腔・中咽頭がん患者30名のうち重度の口腔粘膜炎の発症を17%(5名)に抑えられ過去の報告と比較して低い割合を示した(Kawashita et.al., Journal of Cancer Research & Therapy, 2014)。現在この口腔管理の方法が口腔粘膜炎の重症化抑制効果があるか「多施設共同前向きランダム化比較試験(UMIN登録番号:000011254)にて検証している段階である。予防歯科学30名の口腔・中咽頭のがん患者に放射線治療中の口腔管理を行うことで重度の口腔粘膜炎の発症率抑制することが示唆され、この結果を2013年の頭頸部癌学会で報告し、さらには論文報告(KawashitaらJournal of Cancer Research & Therapy, 2(1): 9-13, 2014)した。また、本研究分担者である梅田正博が編著となり、「周術期口腔機能管理の基本がわかる本」(2013年12月、クインテッセンス出版株式会社)を執筆した。その一部である「頭頸部がん放射線治療と口腔管理」を分担執筆した。平成23年10月から開始され平成25年3月まで78名の患者に関わった。そのうち、30名の口腔・中咽頭のがん患者に注目し、重度の口腔粘膜炎の発症率を評価し、コントロール群として平成23年9月から1年間さかのぼり口腔・中咽頭のがん患者で放射線治療を受けかつ歯科受診を受けていない者27名と比較検討した。今後は、症例数を増やして口腔ケアによる重度の口腔粘膜炎の抑制効果を検討する必要がある。頭頸部に放射線治療を受ける患者への口腔管理の効果を論文報告(KawashitaらJournal of Cancer Research & Therapy, 2(1): 9-13, 2014)した。当初、本研究のコントロールを放射線治療中の口腔管理の介入前の平成23年9月から1年前にさかのぼり口腔・中咽頭のがん患者で放射線治療を受けかつ歯科受診を受けていない者27名とした。ところが、コントロールに選んだ患者の口腔粘膜炎の評価は複数の担当医によって行われており評価基準が整っていなかったためにコントロール群としての口腔粘膜炎の重症度を評価することができなかった。そこで今度は、口腔外科で口腔癌の診断を受け、放射線治療を受ける患者を対象にして口腔管理群と口腔ケアのみのコントロール群にランダムに割り付け、長崎大学病院のみの症例では限られているので多施設共同研究ランダム化比較試験を開始するに至った。本研究における口腔粘膜炎の評価はNCI-CTCAE v4.0とv3.0の評価方法に基づいている。v4.0は患者の自覚所見による機能評価(疼痛と摂食状況)をもとにしているため、十分な疼痛コントロールがなされていれば実際の重症度よりも軽症に判断される。さらに口腔癌では術後に経管栄養が行われていることもあり、さらに判定が困難になることもある。そこで他覚所見に基づく判定であるv3.0も用いているが、v3.0でも診査者によって評価にばらつきが出ていることが分かった。
KAKENHI-PROJECT-24593159
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500kV電子ビームによる金属溶射微細皮膜の改質に関する研究
アーク,レーザが表面熱源であるのに対して,電子ビームはビーム加速電圧に応じた浸透深さを有する所謂,浸透熱源と考え,鉄の場合で最大0.2mmの浸透深さとなる500kV電子ビームによる溶射用80%Ni-20%Cr合金粉末を用いた溶融表面改質の実施結果を以下に示す。1.10mm厚さのSUS304ステンレス鋼,SS400鋼及び、SK4工具鋼に厚さ0.10.2mmのNi-Cr合金粉末のガスフレーム溶射を行い,500kV電子ビーム照射による溶融ビ-ドを形成した場合,溶融膜厚が0.100.15mmの範囲で溶射のみに比べて気孔,未溶融などの欠陥が皆無で、粉末成分の均質固溶の新しい合金層が得られている。合金粉末を0.20.4mmの溝を刻んだSK4鋼母材上に置いた試料に対し,ビーム成形スリットを用いて均一密度分布の電子ビームを造出し,照射を行い,スパッタリングの極めて少ない溶込み深さの均一な溶融ビ-ドが形成されている。ビーム捜査速度1mm/s,ビーム出力600Wの場合,最大0.5mm厚さの合金皮膜が得られ,その成分分析でNiは3544%、Crは810%、Feは4455%と粉末成分が多量に固溶している。耐食試験ではSUS310sステンレス鋼とほぼ同等の結果となっており,さらに大気中及び減圧中で施工された各種溶射の結果と比べ,電子ビーム照射は高真空中のため真空精錬の効果が十分発揮され,特に酸化,窒化の影響を受けない皮膜組織が観察されている。以上,浸透熱源作用を有する超高電圧電子ビームを溶融表面改質適用すれば,良好な結果が得られる可能性を明らかにした.これらの成果は平成8年度秋期高温学会等で講演発表の予定である。アーク,レーザが表面熱源であるのに対して,電子ビームはビーム加速電圧に応じた浸透深さを有する所謂,浸透熱源と考え,鉄の場合で最大0.2mmの浸透深さとなる500kV電子ビームによる溶射用80%Ni-20%Cr合金粉末を用いた溶融表面改質の実施結果を以下に示す。1.10mm厚さのSUS304ステンレス鋼,SS400鋼及び、SK4工具鋼に厚さ0.10.2mmのNi-Cr合金粉末のガスフレーム溶射を行い,500kV電子ビーム照射による溶融ビ-ドを形成した場合,溶融膜厚が0.100.15mmの範囲で溶射のみに比べて気孔,未溶融などの欠陥が皆無で、粉末成分の均質固溶の新しい合金層が得られている。合金粉末を0.20.4mmの溝を刻んだSK4鋼母材上に置いた試料に対し,ビーム成形スリットを用いて均一密度分布の電子ビームを造出し,照射を行い,スパッタリングの極めて少ない溶込み深さの均一な溶融ビ-ドが形成されている。ビーム捜査速度1mm/s,ビーム出力600Wの場合,最大0.5mm厚さの合金皮膜が得られ,その成分分析でNiは3544%、Crは810%、Feは4455%と粉末成分が多量に固溶している。耐食試験ではSUS310sステンレス鋼とほぼ同等の結果となっており,さらに大気中及び減圧中で施工された各種溶射の結果と比べ,電子ビーム照射は高真空中のため真空精錬の効果が十分発揮され,特に酸化,窒化の影響を受けない皮膜組織が観察されている。以上,浸透熱源作用を有する超高電圧電子ビームを溶融表面改質適用すれば,良好な結果が得られる可能性を明らかにした.これらの成果は平成8年度秋期高温学会等で講演発表の予定である。
KAKENHI-PROJECT-07650858
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07650858
誘電泳動を応用した筋組織および神経筋接合部の組織再生医工学
ネガティブ誘電泳動を利用して様々な細胞のラインパターニングを行った.マウス繊維芽細胞(3T3swiss albino),マウス筋芽細胞(C2C12),ヒト白血病Tリンパ腫細胞(Jurkat),ヒト単球性白血病細胞(THP-1)および神経モデル細胞であるラット褐色細胞腫(PC-12)のパターニングが可能であった.この中で, 3T3およびC2C12細胞について詳細に誘電泳動特性を評価した.印加する交流電圧を変化させ交差周波数の溶媒導電率依存性を調査した.溶媒の導電率を増加させると交差周波数が増加することがわかった.これらの細胞の培地の導電率(2 S/m)の場合には計測に要する全ての周波数領域にてネガティブ誘電泳動が作用することがわかった.溶媒導電率の増加に伴い,パターニングに要する時間も増加した.しかし,パターニングに要する時間は最大で1-2分程度で,十分迅速性を保てた.また,印加電圧に対するパターン形成率および細胞の生存率を調べた.印加電圧の増加に伴い,パターン形成率も増加した.しかし,生存率は,12 Vp-pが最大でそれ以上の電圧を印加すると強い電場ストレスにより細胞が増殖できず死滅することがわかった.最適電圧(12 vp-p)を3-5分間程度印加し続けると細胞は,基板上に付着して配列パターンを保持したまま固定化された.この配列化微粒子上で細胞を培養すると細胞は配列化微粒子上に選択的に付着し成長した.また,直接固体基板上に配列化された細胞のほとんどが,増殖,伸展し,約1日後にはランダムな状態の戻った.このことから,誘電泳動による電場の印加が細胞のバイアビリティーにほとんど影響を及ぼさないことがわかった.4極独立型マイクロバンドアレイ電極を用いると,迅速で簡便な異種細胞の交互ラインパターンの構築が可能であった.ポジティブ誘電泳動を利用し,微粒子や細胞の海島状構造を作製することができた.透明電極(ITO)基板を用いて交互くし型マイクロバンドアレイ電極を作製し,細胞培養基板と組み合わせることにより細胞配列用デバイスを作製した.デバイスに種々の濃度の微粒子および細胞を導入し,くし型電極に逆位相の交流電圧を印加することにより,細胞の誘電泳動特性の評価について詳細に検討した.電極の溶液への露出面積を規定することにより高導電率(数S/m)の培地中において誘電泳動を作用させることが可能になった.細胞には数十kHzからMHz領域の周波数においてネガティブ誘電泳動が作用し,溶媒導電率の増加に伴って高周波数側にシフトした.ネガティブ誘電泳動を利用すると細胞は電場強度の弱い方向に移動するため,電場強度の強い電極表面へ接触することなく配列させることが可能であった.細胞配列における印加電圧、印加周波数、印加時間などの条件の最適化を行った.その結果,12Vpp,1MHz,5minでネガティブ誘電泳動による細胞の大量一括で迅速なライン配列を達成した.電極に交流電圧を印加して1分程度での細胞ラインの形成が可能であった.また,3-5分間電圧印加状態を保持すると細胞は基板表面に付着した.さらに,デバイスを電極基板と細胞配列基板に分離し,配列化細胞を培養することができた.配列した細胞は増殖するため,誘電泳動によるダメージは極めて少ないと予測された.細胞配列に要する印加電圧,周波数および印加時間と細胞のバイアビリティーの関連について詳細に評価できた.電極のデザインを工夫することにより,細胞のドット上配列,グリッド配列を達成した.さらに,これらの細胞の3次元包埋培養を目指して,光硬化性ゲル中への捕捉を行った.ネガティブ誘電泳動を利用して様々な細胞のラインパターニングを行った.マウス繊維芽細胞(3T3swiss albino),マウス筋芽細胞(C2C12),ヒト白血病Tリンパ腫細胞(Jurkat),ヒト単球性白血病細胞(THP-1)および神経モデル細胞であるラット褐色細胞腫(PC-12)のパターニングが可能であった.この中で, 3T3およびC2C12細胞について詳細に誘電泳動特性を評価した.印加する交流電圧を変化させ交差周波数の溶媒導電率依存性を調査した.溶媒の導電率を増加させると交差周波数が増加することがわかった.これらの細胞の培地の導電率(2 S/m)の場合には計測に要する全ての周波数領域にてネガティブ誘電泳動が作用することがわかった.溶媒導電率の増加に伴い,パターニングに要する時間も増加した.しかし,パターニングに要する時間は最大で1-2分程度で,十分迅速性を保てた.また,印加電圧に対するパターン形成率および細胞の生存率を調べた.印加電圧の増加に伴い,パターン形成率も増加した.しかし,生存率は,12 Vp-pが最大でそれ以上の電圧を印加すると強い電場ストレスにより細胞が増殖できず死滅することがわかった.最適電圧(12 vp-p)を3-5分間程度印加し続けると細胞は,基板上に付着して配列パターンを保持したまま固定化された.この配列化微粒子上で細胞を培養すると細胞は配列化微粒子上に選択的に付着し成長した.また,直接固体基板上に配列化された細胞のほとんどが,増殖,伸展し,約1日後にはランダムな状態の戻った.このことから,誘電泳動による電場の印加が細胞のバイアビリティーにほとんど影響を及ぼさないことがわかった.
KAKENHI-PROJECT-18048001
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18048001
誘電泳動を応用した筋組織および神経筋接合部の組織再生医工学
4極独立型マイクロバンドアレイ電極を用いると,迅速で簡便な異種細胞の交互ラインパターンの構築が可能であった.ポジティブ誘電泳動を利用し,微粒子や細胞の海島状構造を作製することができた.
KAKENHI-PROJECT-18048001
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18048001
流動化社会における都市青年文化の経時的実証研究-世代間/世代内比較分析を通じて-
本研究では都市を生きる10代後半、20代の若者たちの行動と意識の実態把握ならびに30代・40代との比較を目的に、1992年・2002年につづく3回目の調査を東京都杉並区、神戸市灘区・東灘区で実施した。1若者たちの現状把握、2過去3回の調査による若者たちの変化の把握、3若者世代と中年世代の比較、4同一世代の加齢による変化の観点から分析をおこなった。現在の若者たちが安定志向の堅実な意識をもつことが相対的にうかびあがり、90年代、00年代の若者たちの特徴とされたことが、ある世代が時代からの影響を受けた事象として理解できることなどが明らかとなった。本研究では都市を生きる10代後半、20代の若者たちの行動と意識の実態把握ならびに30代・40代との比較を目的に、1992年・2002年につづく3回目の調査を東京都杉並区、神戸市灘区・東灘区で実施した。1若者たちの現状把握、2過去3回の調査による若者たちの変化の把握、3若者世代と中年世代の比較、4同一世代の加齢による変化の観点から分析をおこなった。現在の若者たちが安定志向の堅実な意識をもつことが相対的にうかびあがり、90年代、00年代の若者たちの特徴とされたことが、ある世代が時代からの影響を受けた事象として理解できることなどが明らかとなった。本年度は、以下の3つの作業を行った。(1)平成24年度に実施する質問紙調査の項目検討作業、(2)質問紙作成の検討に資するための大学生を対象とするインタビュー調査、(3)本調査の問題設定や調査結果の公表を国際的文脈の中で行えるよう海外の研究者と意見交換をするための国際ワークショップの開催。これらの作業をテーマに基づく各班の随時会合ならびに年4回開催した全体研究会において実施した。(1)質問紙調査に向けた検討作業調査票の設計は経年比較を可能にするため、当研究会で過去に実施した「1992年調査」と「2002年調査」をベースに検討を進めた。加えて、各班で国内外の先行研究・先行調査について再検討を行い、その成果を全体研究会にて報告し、メンバーでの共有をはかった。また、その際、予備調査として2010年に全国約30大学で調査メンバーが実施した大学生を対象とした調査の分析結果も参考とした。この予備調査では、新規の調査項目の検討のために試行的な質問を行っており、分析結果に基づき新規項目としての採用可能性を検討した。(2)大学生を対象とするインタビュー調査変化の激しいメディア利用、社会状況の影響などに関して新たに追加すべき項目を洗い出す必要があるため、各班で、研究メンバーが所属する大学の学生を対象にインタビュー調査などを実施した(18例収集)。インタビュー結果については質問項目設定の参考とし、データについてはメンバー間で共有をはかった。(3)国際ワークショップの開催研究分担者の多くが参加する国際社会学会・若者社会学部会(ISA・RC34)の海外の研究者(香港中文大学P. Ngai教授とS. Ngai教授、フィンランド・タンペレ大学H. Helve教授、オランダ・ピュフーラ研究所のH. Vinken教授の4名)を12月に東京に招き、ワークショップYouth Cuture, Identity and Public Sphereを開催して、ディスカッションを通じて問題意識のさらなる深化をはかった。3年計画の最終年度となる平成25年度は、24年度に実施した東京都杉並区、神戸市灘区・東灘区での質問紙による若者調査・中年調査の本格的なデータ分析に取り組み、各班の検討や全体研究会、学会報告準備会、出版打合せ会、国際シンポジウムを実施し、分析の深化を図って、学会発表、海外研究者との意見交換、論文・図書の公刊などの研究活動を進めてきた。(1)4月9月:調査データの分析と発表準備・・・前年度にデータセットの完成と基礎集計結果の整理まで終了したが、今年度は本格的なデータ分析をおこなった。分析の焦点としては、11992年、2002年、2012年の3回のデータ比較、22012年調査での若者と中年のデータ比較、31992年、2002年、2012年のデータでのコーホート分析などである。各班で検討し、その成果を全体研究会で報告し、さらなる検討を加えていった。(2)10月11月:学会発表ならびに国際シンポジウムの開催・・・10月の日本社会学会大会で各班のテーマ別の代表による研究成果を報告し、国内の若者研究者・ライフコース研究者などと意見交換をおこなった。また、2014年開催のISA世界社会学会議・横浜大会のプレ企画などとの連携も図りながら、フィンランドや台湾の海外研究者を招聘し、国際ワークショップを開催して、グローバル化の進む国際的潮流の中で現代日本の若者研究がどのように位置づけられるのか議論を深めた。(3)12月3月:研究成果のとりまとめと公表・・・最終年度であることから研究成果の取りまとめを行い、各種論文発表や学術図書の出版準備を行った。過去3回のデータ比較により、自分を貫くことや自分らしさへの意識が多少薄れてきている傾向や将来より現在を大切にする志向の継続など、世代比較により若年層の方が周囲の反応に敏感であるなど、今回の調査設計により明らかになった特徴もある。3年計画の2年目となる平成24年度は、質問紙調査の実施年度とし、各班の検討や全体研究会において調査票を完成させ、調査実施準備ならびに調査の実査、その後データ整理と基礎的な分析を行った。
KAKENHI-PROJECT-23243065
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23243065
流動化社会における都市青年文化の経時的実証研究-世代間/世代内比較分析を通じて-
(1)調査票完成とプリテスト実施、調査実査の準備(4月8月):各班での検討、全体研究会において、若者調査と中年調査の調査票作成を行い完成させた。プリテストを実施しつつ、「1992年調査」と「2002年調査」の調査票との継続性も意識し、調査項目の最終選定とワーディングを行った。実査準備として、複数社による競争入札にて調査専門機関を選定し、(社)新情報センターと委託契約を結び、行政との交渉などの作業に入っていった。(2)調査実査(9月12月):若者調査と中年調査の2つの質問紙調査を11月12月に実施した。調査については、3回目の継続調査であることに鑑み、東京都杉並区ならびに神戸市灘区・東灘区を調査対象地とし、若者調査で2地区2400サンプル、中年調査で2地区1800サンプルを層化2段抽出によりサンプリングした。調査員による訪問留置き回収法によっておこない、回収数と回収率は若者調査で1054票(43.9%)、中年調査で721票(40.1%)であった。(3)調査データの整理と基礎的分析(1月3月):データ入力等は調査専門機関に依頼し、その後の調査データのコーディングやクリーニングは各班メンバーにて行った。データ分析については基礎的分析を各班で行い、3月の全体研究会に持ち寄って、基礎的な調査結果と傾向についてメンバー全体で共有した初年度の重要な作業として、2年目に実施する質問紙調査の設計と項目検討があるが、予定をしている若者調査票・中年調査票共にほぼ完成をしており、文言の推敲と事前のパイロット調査を経て実施に移れる段階にある。また、国際ワークショップにて海外の研究者より重要な知見を得、問題関心の醸成や調査項目の検討の参考とすることができた。25年度が最終年度であるため、記入しない。2年目の重要な作業は、東京都杉並区、神戸市灘区・東灘区における実査であったが、行政ならびに調査対象の方々の協力も得られ、ほぼ想定していた範囲での回収数を確保することができた。近年、都市部ではさまざまな事情によって調査実施の困難さが増してきているが、調査専門機関の尽力により、過去2回との比較が可能な形でデータ収集を終えることができた。その後のデータ・クリーニングなどの整理作業、基礎集計結果の全体での共有など、ほぼスケジュール通りに展開し、3年目の本格的なデータ分析に向けた準備を完了することができた。2年目は質問紙調査の実施年となる。若者調査票・中年調査票共にほぼ完成していることから、調査の実施委託をする専門機関を選定し、秋段階での本格実施に向けた準備体制を確立することが研究推進上の重要な作業課題となる。25年度が最終年度であるため、記入しない。最終年度である3年目は、昨年度の調査データに基づき、本格的なデータ分析を行うことが中心となり、11992年、2002年、2012年の3回のデータ比較、22012年調査での若者と中年のデータ比較、31992年、2002年、2012年のデータでのコーホート分析などを予定している。また、各種の学会報告、海外の研究者との意見交換、論文や図書の形態での出版などを具体的な活動としては計画しており、全体研究会をその準備にあてるなどして、1年間の研究活動のスケジュールを管理していく予定である。
KAKENHI-PROJECT-23243065
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室町・戦国期の符案に関する基礎的研究
符案とは、中近世を通じて、主として朝廷において職事を務める家の者が書留めた文書案文集のことで、応仁・文明の乱以後のものが多数現存する。その内容は、筆録者が発給に関与した朝廷発給文書とその宣下にかかわる内部文書、あるいは発給の過程で授受された文書などを書き留めたものである。これを利用することで、朝廷政治の具体相だけでなく、多数の現存しない文書の内容を知ることができる。さらに、発給担当者の手控えなので、一定度の網羅性を有し、史料残存の偶然性による偏差を補正する手がかりともなる。本研究は、以上のように重要な意味を有するにもかかわらず、従来必ずしも十分に利用されてこなかった符案について、基礎的な研究を行い、研究基盤の整備をはかり、室町・戦国期の朝廷のあり方を検討することを目的とした。そのため、(1)符案の所在確認および所在情報の整理、(2)符案の内容の分析、以上二点の課題を設定した。(1)については、東京大学史料編纂所架蔵の複製本および原本の調査と、符案を所蔵する諸機関に出張しての調査を実施した。さらに紙焼き写真による蒐集をはかった。(2)について最も精力を注いだのは、15世紀末期の符案『宣秀卿御教書案』の分析である。本文の翻刻、人名索引・紙背文書目録の作成等を通じ、詳細な検討を行うとともに、同書を素材に武家の官位任叙について考察した。さらに、符案は当初予想していた以上の多様性があり、基礎的なデータを蓄積する必要性を痛感し、複数の室町時代の符案の翻刻を作成した。以上の作業と成果とを通じ、符案の史料としての有用性を明確にし、今後のさらなる研究のための基礎的なデータを提示し得た。また、武家官位の問題は、応仁の乱後における天皇と幕府との関係の変化を考えるために重要な手がかりとなることを確認した。符案とは、中近世を通じて、主として朝廷において職事を務める家の者が書留めた文書案文集のことで、応仁・文明の乱以後のものが多数現存する。その内容は、筆録者が発給に関与した朝廷発給文書とその宣下にかかわる内部文書、あるいは発給の過程で授受された文書などを書き留めたものである。これを利用することで、朝廷政治の具体相だけでなく、多数の現存しない文書の内容を知ることができる。さらに、発給担当者の手控えなので、一定度の網羅性を有し、史料残存の偶然性による偏差を補正する手がかりともなる。本研究は、以上のように重要な意味を有するにもかかわらず、従来必ずしも十分に利用されてこなかった符案について、基礎的な研究を行い、研究基盤の整備をはかり、室町・戦国期の朝廷のあり方を検討することを目的とした。そのため、(1)符案の所在確認および所在情報の整理、(2)符案の内容の分析、以上二点の課題を設定した。(1)については、東京大学史料編纂所架蔵の複製本および原本の調査と、符案を所蔵する諸機関に出張しての調査を実施した。さらに紙焼き写真による蒐集をはかった。(2)について最も精力を注いだのは、15世紀末期の符案『宣秀卿御教書案』の分析である。本文の翻刻、人名索引・紙背文書目録の作成等を通じ、詳細な検討を行うとともに、同書を素材に武家の官位任叙について考察した。さらに、符案は当初予想していた以上の多様性があり、基礎的なデータを蓄積する必要性を痛感し、複数の室町時代の符案の翻刻を作成した。以上の作業と成果とを通じ、符案の史料としての有用性を明確にし、今後のさらなる研究のための基礎的なデータを提示し得た。また、武家官位の問題は、応仁の乱後における天皇と幕府との関係の変化を考えるために重要な手がかりとなることを確認した。本年度の最も重要な課題は、符案の調査・収集であった。まず、東京大学史料編纂所架蔵の原本・副本類にもとづき、符案の所在情報の整理をすすめた。特記すべきは、近年新たに写真帳が架蔵されるに至った広橋家現蔵史料のなかに、室町前期から江戸初期に至る多数の良質な符案を見出すことができたことであろう。この作業をすすめるなかで、符案によって発給されたことが知られるにもかかわらず、原本の残存していない文書の比率がきわめて高いことが知られ、符案という史料に特有の利点を再認識するに至った。つぎに、多数の符案を所蔵する京都大学・岩瀬文庫(西尾市立図書館)について、それぞれ複数回の出張を行い、符案および関連史料について原本調査を実施した。また、宮内庁書陵部所蔵の符案および関連史料についても、紙焼き写真の入手をはかった。符案の分析については、広橋兼秀・柳原資定・中山孝親・松本宗綱など室町期の複数の廷臣が作成した符案の釈文を作成することで、それぞれの特性と共通点とを解明することにつとめた。その結果、例えば、口宣案のような文言の単純な文書であっても、家ごとに独自性の存在する事例を見出すことができた。また、最も豊富な情報量を有する符案だと考えられる宮内庁書陵部所蔵『宣秀卿御教書案』のうち、口宣案の控えである第三冊について、人名・官職名の索引化をすすめた。
KAKENHI-PROJECT-16520383
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室町・戦国期の符案に関する基礎的研究
あわせて、二次利用面と連関の深い紙背文書の釈文を判読し、口宣案の具体的な発給過程を追求した。このほか、符案と関わりの深い綸旨・口宣案などの関連史料を多く架蔵する陽明文庫・龍門文庫および門跡寺院(勧修寺・毘沙門堂)などの各所について史料調査を行った。そのなかで、符案の料紙に用いられることの多い宿紙についても考察を深めることができた。本年度は、前年度に引き続いて、(1)符案の調査・収集、(2)符案の内容的な分析、という二つの方途によって研究をすすめるとともに、その成果をまとめて研究成果報告書(以下、報告書)を作成した。上記(1)については、国立公文書館(内閣文庫)・京都大学(附属図書館)・京都御所東山御文庫・西尾市岩瀬文庫などの符案を所蔵する機関に赴いて調査を実施するとともに、宮内庁書陵部所蔵史料について紙焼き写真の購入による蒐集をはかった。また、東京大学史料編纂所架蔵の複本類による調査も継続して行った。そして、二年間の調査の結果をもとに、符案の所在情報を整理した目録を報告書に掲載した。上記(2)については、前年度に作業対象とした『宣秀卿御教書案』についてさらなる検討をすすめた。特筆したいのは、今後のさらなる研究の基盤を確立するために、宮内庁書陵部所蔵の自筆本(宣秀宣胤筆録本)三冊のうち第一冊・第二冊について、原本闕失部分を近世写本で補いながら翻刻を行ったことである。この翻刻も報告書に収載したが、宣胤の筆録した他の文書案文集についての翻刻、さらには詳細な分析を行ったうえで『宣秀卿御教書案』と比較対照することは今後の課題となった。昨年度に索引化をすすめた同書第三冊については、点検を行うとともに内容分析上の所見を加え、これも報告書に収載した。昨年度に一部の判読をすすめた同書の紙背文書についても、詳細文書目録を作成して報告書に収載した。さらに、同書を主たる素材として応仁・文明の乱後における武家の官位任叙に関する検討を行った。また、『宣秀卿御教書案』以外にも複数の符案について翻刻を作成し、これも報告書に収載した。そのほかにも、符案収載文書を利用することで伝来文書の理解を深化させる試みとして、『大徳寺文書』を対象に研究をすすめ、論文にまとめた。
KAKENHI-PROJECT-16520383
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歯周組織における弾性系線維の形成ならびに消化・分解機構の解明
本研究は、ヒト同一歯に由来する歯根膜線維芽細胞と歯肉線維芽細胞の培養形系を用いて、トロポエラスチン、微細線維(fibrillin-1,fibrillin-2,MAGP-1)、エラスチン結合タンパク(fibulin-5)の発現とその遺伝子発現、ならびにエラスチン沈着量を経時的に分子生物学的、免疫細胞組織化学的に解析した。さらに組織におけるエラスチン消化・分解制御機構を解明を試み、以下の結果を得た。弾性系線維形成においては,トロポエラスチンの微細線維への沈着機構が必要とされている。微細線維構成成分であるfibrillin-1,-2とトロポエラスチンの発現とそれらの遺伝子発現は歯肉線維芽細胞では認められた。また,歯肉ではエラスチン沈着したエラウニン線維と弾性線維が観察された。しかし,歯根膜線維芽細胞では,fibrillin-1,-2の発現とそれらの遺伝子発現も低く,トロポエラスチン発現は認められなかった。さらに,歯根膜組織では,エラスチン非沈着の微細線維からなるオキシタラン線維のみが観察された。MAGP-1とfiburillin-2の遺伝子をRNA干渉法(RNAi)でノックダウンすると、トロポエラスチンの沈着が対照群の30%以下に抑制された。免疫組織化学的にも同様な抑制が観察された。少なくとも、MAGP-1とfibrillin-2はトロポエラスチン沈着を直接あるいは間接的に制御していることを明らかにした。次に,fibulin-5の発現とその遺伝子発現を解析した。歯肉線維芽細胞では,fibulin-5とトロポエラスチンの遺伝子発現は経時的に上昇する類似した発現パターンを示した。さらに,歯肉線維芽細胞では,RNAiを用いてトロポエラスチン発現を抑制すると,fibulin-5の発現も抑制された。fibulin-5遺伝子発現はトロポエラスチン遺伝子発現で調節されていることが示唆された。しかし,歯根膜線維芽細胞では,fibulin-5の弱い発現は認められたが,発現パターンの変化は認められなかった。歯根膜線維芽細胞では活性型MMP-2が存在し、fibrillin-2の分解・蓄積量を調節していることも明らかになった。これらの結果より,歯周組織の部位による弾性系線維形成機構の差異とエラスチン消化・分解制御機構が明らかとなってきた。そこで,これらの形成機構を基礎とした歯周組織の修復および再生・新生への応用を進めている。本研究は、ヒト同一歯に由来する歯根膜線維芽細胞と歯肉線維芽細胞の培養形系を用いて、トロポエラスチン、微細線維(fibrillin-1,fibrillin-2,MAGP-1)、エラスチン結合タンパク(fibulin-5)の発現とその遺伝子発現、ならびにエラスチン沈着量を経時的に分子生物学的、免疫細胞組織化学的に解析した。さらに組織におけるエラスチン消化・分解制御機構を解明を試み、以下の結果を得た。弾性系線維形成においては,トロポエラスチンの微細線維への沈着機構が必要とされている。微細線維構成成分であるfibrillin-1,-2とトロポエラスチンの発現とそれらの遺伝子発現は歯肉線維芽細胞では認められた。また,歯肉ではエラスチン沈着したエラウニン線維と弾性線維が観察された。しかし,歯根膜線維芽細胞では,fibrillin-1,-2の発現とそれらの遺伝子発現も低く,トロポエラスチン発現は認められなかった。さらに,歯根膜組織では,エラスチン非沈着の微細線維からなるオキシタラン線維のみが観察された。MAGP-1とfiburillin-2の遺伝子をRNA干渉法(RNAi)でノックダウンすると、トロポエラスチンの沈着が対照群の30%以下に抑制された。免疫組織化学的にも同様な抑制が観察された。少なくとも、MAGP-1とfibrillin-2はトロポエラスチン沈着を直接あるいは間接的に制御していることを明らかにした。次に,fibulin-5の発現とその遺伝子発現を解析した。歯肉線維芽細胞では,fibulin-5とトロポエラスチンの遺伝子発現は経時的に上昇する類似した発現パターンを示した。さらに,歯肉線維芽細胞では,RNAiを用いてトロポエラスチン発現を抑制すると,fibulin-5の発現も抑制された。fibulin-5遺伝子発現はトロポエラスチン遺伝子発現で調節されていることが示唆された。しかし,歯根膜線維芽細胞では,fibulin-5の弱い発現は認められたが,発現パターンの変化は認められなかった。歯根膜線維芽細胞では活性型MMP-2が存在し、fibrillin-2の分解・蓄積量を調節していることも明らかになった。これらの結果より,歯周組織の部位による弾性系線維形成機構の差異とエラスチン消化・分解制御機構が明らかとなってきた。そこで,これらの形成機構を基礎とした歯周組織の修復および再生・新生への応用を進めている。本研究は、同一歯に由来する歯根膜線維芽細胞と歯肉線維芽細胞の培養形系を用いて、トロポエラスチン(tropelastin)、微細線維(fibrillin-1,fibrillin-2,MAGP-1,MAGP-2),エラスチン結合タンパク(fibulin-5)の発現とその遺伝子発現、エラスチン沈着量を経時的に分子生物学的、免疫細胞組織化学的に解析することを目的としている。
KAKENHI-PROJECT-15591942
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15591942
歯周組織における弾性系線維の形成ならびに消化・分解機構の解明
弾性系線維形成においては,トロポエラスチンの微細線維への沈着機構が必要とされている。微細線維構成成分であるフィブリリン-1,-2とトロポエラスチンの発現とそれらの遺伝子発現は歯肉線維芽細胞では認められた。また,歯肉ではエラスチン沈着したエラウニン線維と弾性線維が観察された。しかし,歯根膜線維芽細胞では,フィブリリン-1,-2の発現とそれらの遺伝子発現も低く,トロポエラシチン発現は認めらなかった。さらに,歯根膜組織では,エラスチン非沈着線維であるオキシタラン線維のみが観察された。次に,エラスチン結合グリコタンパクであるフィブリン-5(微細線維構成成分ではない)の発現とその遺伝子発現を解析した。歯肉線維芽細胞では,フィブリン-5とトロポエラスチンの遺伝子発現は経時的に上昇する同様な発現パターンを示した。さらに,歯肉線維芽細胞では,siRNAを用いてトロポエラスチン発現を抑制すると,フィブリン-5の発現も抑制された。フィブリン-5遺伝子発現はトロポエラスチン遺伝子発現で調節されていることが示唆された。しかし,歯根膜線維芽細胞では,フィブリン-5の弱い発現は認められたが,発現パターンの変化は認められなかった。これらの結果より,歯周組織の部位による弾性系線維形成機構の差異が明らかとなってきた。そこで,これらの形成機構を基礎とした歯周組織の修復および再生・新生への応用を検討している。本研究は、同一歯に由来する歯根膜線維芽細胞と歯肉線維芽細胞の培養形系を用いて、トロポエラスチン、微細線維(fibrillin-1,fibrillin-2,MAGP-1,MAGP-2)の発現とその遺伝子発現、エラスチン沈着量を経時的に分子生物学的、免疫細胞組織化学的に解析すること。さらに組織におけるエラスチン消化・分解制御機構の解明を目的としている。弾性系線維形成においては,トロポエラスチンの微細線維への沈着機構が必要とされている。微細線維構成成分であるフィブリリン-1,-2とトロポエラスチンの発現とそれらの遺伝子発現は歯肉線維芽細胞では認められた。また,歯肉ではエラスチン沈着したエラウニン線維と弾性線維が観察された。しかし,歯根膜線維芽細胞では,フィブリリン-1,-2の発現とそれらの遺伝子発現も低く,トロポエラスチン発現は認められなかった。さらに,歯根膜組織では,エラスチン非沈着の微細線維のみからなるオキシタラン線維が観察された。次に,MAGP-1(微細線維結合性糖タンパク-1)とフィブリリン-2の遺伝子をRNA干渉法(siRNA)でノックダウンすると、トロポエラスチンの沈着が対照群の30%以下に抑制された。免疫組織化学的にも同様な抑制が観察された。少なくとも、MAGP-1とフィブリリン-2はトロポエラスチン沈着を直接あるいは間接的に制御していることを明らかにした。さらに、組織中に存在するエラスチン消化能を有するMMP-2の機能を検討した。歯根膜線維芽細胞培養系にはプロMMP-2が存在しており、TIMP-2添加でMMP-2活性が抑制された。その結果、フィブリリン-
KAKENHI-PROJECT-15591942
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神経軸索再生を制御するシグナル伝達機構
神経の軸索再生は、促進・抑制シグナル経路により決定される。線虫では、JNK MAPキナーゼ経路が軸索再生を促進する。我々は、増殖因子SVH-1とその受容体SVH-2が、JNK経路を介して軸索再生を制御することを示した。また、エンドカンナビノイドのアナンダミド(AEA)が、JNK経路に拮抗するGoα; GOA-1を介して軸索再生を抑制することを見出した。これらの結果から、複数の経路から構成されるシグナルネットワークが、JNK経路を介して軸索再生を制御することを明らかにした。平成25年度は、神経軸索再生機構を制御する因子のうち、主にSVH-4とSVH-5について解析を行った。SVH-4はSVH-2とは異なるサブグループに属する、保存された受容体型チロシンキナーゼである。分子遺伝学的な解析から、SVH-4は細胞自律的かつそのキナーゼ活性依存的に軸索再生を制御しており、しかもSVH-2と同様にJNK型MAPキナーゼ経路の上流で機能することが示唆された。また、SVH-4のリガンドも同定し、その変異体ではsvh-4変異体と同様に軸索再生率が低下すること、そしてこの低下はSVH-4の過剰発現により抑圧されることを見出した。さらに、SVH-4はJNK経路で機能するアダプター因子SHC-1と結合すること、そしてSHC-1の多量発現によりsvh-4変異体の軸索再生低下の表現型が抑圧されることも見出した。以上の結果から、軸索再生においてSVH-4のリガンドがSVH-4を活性化し、それがSHC-1を介してJNK経路の活性化に寄与することにより、軸索再生を制御することが示唆された。一方、昨年度に引き続いて転写因子であるSVH-5についても解析を行った。SVH-5は軸索切断によるsvh-2遺伝子の発現誘導に必要であることが昨年度までに判明していたが、今年度はsvh-2のプロモーター配列上でSVH-5の結合部位を予想し、その部位に変異を導入することでSVH-5によるsvh-2遺伝子の発現誘導に必要なcis領域の探索を行った。また、SVH-5とは別の転写因子がsvh-2の発現誘導に必要であることを新たに見出した。平成24年度は、神経軸索再生機構を制御する因子のうち、SVH-3が代謝する神経伝達物質アナンダミド(AEA)が、三量体Gタンパク質であるGOA-1を介してどのようにJNKカスケードを抑制するか、その分子メカニズムについて解析した。解析の結果、AEAはGOA-1を介して、EGL-30(Gqα)-EGL-8(PLCβ)-TPA-1(PKC)からなるPKC経路を阻害することにより軸索再生を負に制御することを見出した。また、遺伝学的解析から、このカスケードがJNKカスケードのMAPKKKであるMLK-1の上流で機能することも示唆された。さらに、TPA-1はJNK経路のMAPKKKであるMLK-1のactivation loopのセリン355をリン酸化することにより、これを活性化することも生化学的および遺伝学的手法により示された。以上のことから、アナンダミドによるJNK MAPK経路および神経軸索再生の抑制機構の詳細が明らかになった。また、今年度はSVH-4遺伝子についても解析を行った。SVH-4は転写因子をコードしており、その欠損変異体では他のJNKカスケードの因子と同様に軸索再生率が低下する。そこでsvh-4と他の既知のJNKカスケード上の因子との遺伝学的な関係について調べたところ、SVH-4は増殖因子であるSVH-1と増殖因子受容体であるSVH-2の間で機能することが示唆された。svh-2は神経軸索切断により発現が誘導されることから、その発現誘導への関与について調べたところ、svh-4欠損変異体では軸索切断によるsvh-2の発現誘導が起きなくなっていた。このことから、SVH-4はSVH-2の神経軸索切断による発現誘導に必須な因子として機能すると考えられる。平成26年度は、神経軸索再生におけるsvh-2発現誘導を行うシグナル経路を新たに見出し、その解析を主に行った。まず、昨年度まで解析を進めていたsvh-6遺伝子の解析を行い、SVH-6がSH2ドメインを介してSVH-2と結合して機能することにより、神経軸索再生を制御することを明らかにした。また、新たなsvh遺伝子についても解析を行い、その結果Etsドメインを持つ転写因子ets-4が神経軸索再生に必要であることを見出した。ets-4は切断神経において細胞自律的に機能しており、その変異体では神経切断によるsvh-2遺伝子の発現誘導が起こらない。ets-4変異体の神経軸索再生率の低下は、svh-2遺伝子を別のプロモーターにより恒常的に発現させることで抑圧される。よって、ets-4が神経軸索再生において切断依存的なsvh-2の発現誘導に必要であることが示唆された。さらなる解析から、ETS-4がPKAによってリン酸化されること、PKAの上流因子であるアデニル酸シクラーゼの変異体において神経切断によるsvh-2の発現誘導が起きないこと、そしてその表現型はリン酸化模倣型のETS-4の発現により抑圧されることを見出した。
KAKENHI-PROJECT-24247025
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神経軸索再生を制御するシグナル伝達機構
さらに、リン酸化模倣型のETS-4を発現させただけではsvh-2の発現誘導は起こらず、その発現がなおも神経切断依存的であったことから、cAMP-ETS-4経路に加えてもう一つ別の経路が神経切断によるsvh-2の発現誘導に必要であると想定された。そこで、その経路を探索したところ、Ca2+ーDLK-1ーCEBP-1経路がそのもう一つの経路であることが判明した。以上の結果から、cAMP-ETS-4経路とCa2+-DLK-1ーCEBP-1経路の両方が、神経軸索切断によるsvh-2発現誘導に必要であることが明らかになった。神経の軸索再生は、促進・抑制シグナル経路により決定される。線虫では、JNK MAPキナーゼ経路が軸索再生を促進する。我々は、増殖因子SVH-1とその受容体SVH-2が、JNK経路を介して軸索再生を制御することを示した。また、エンドカンナビノイドのアナンダミド(AEA)が、JNK経路に拮抗するGoα; GOA-1を介して軸索再生を抑制することを見出した。これらの結果から、複数の経路から構成されるシグナルネットワークが、JNK経路を介して軸索再生を制御することを明らかにした。27年度が最終年度であるため、記入しない。分子遺伝学当初計画では、平成25年度は、(1)神経軸索再生を正に制御するSVH-1/2経路で機能する因子の解析;(2)神経軸索再生を負に制御する因子の解析;(3)線虫の神経軸索再生を制御するシグナル因子の機能解析;(4) EGF受容体/LRRK輸送システムによる神経軸索再生制御機構の解析;を行う予定であった。そのうち、(1)は神経軸索切断によるsvh-2遺伝子の発現誘導に必要な転写因子SVH-5について解析し、これについて新たな知見をえることができた。(2)についてはRhoGAPの関与をみいだしており、(3)についてはSVH-4の解析を進めた。これらの進捗状況を見る限り、全体的にはほぼ当初の予想どおりに進展していると思われる。当初計画では、平成24年度は、(1)神経軸索再生を正に制御するSVH-1/2経路で機能する因子の解析(2)神経軸索再生を負に制御する因子の解析(3)線虫の神経軸索再生を制御するシグナル因子の機能解析を行う予定であった。そのうち、(1)と(3)は転写因子をコードするsvh-4遺伝子が、実はsvh-2遺伝子の上流で機能する因子であったことで、2つのサブテーマが結果的に一つに繋がるような発展的成果を得ることができた。さらに、SVH-4が神経軸索切断によるsvh-2遺伝子の発現誘導に必要な転写因子であることを明らかにした。(2)については、神経軸索を負に制御するSVH-3およびGOA-1経路が、どのようにJNK MAPK経路を抑制するのか探索し、この経路がPKC経路によるJNK MAPK経路の活性化を抑制していることを明らかにできた。これらの進捗状況を見る限り、当初の予想以上に進展していると思われる。27年度が最終年度であるため、記入しない。3年目にあたる来年度は、時間的制約を考慮して進展が著しいテーマを優先して研究を推進する。(1)線虫の神経軸索再生を正に制御する因子SVH-5の解析:転写因子SVH-5に加えて、svh遺伝子のひとつとして同定された別の転写因子も、SVH-5と同様にsvh-2遺伝子の神経軸索切断による発現誘導に必要であることを見出した。
KAKENHI-PROJECT-24247025
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24247025
インライン式小型ハイドロタービンの最高効率の実現
再生可能エネルギーの中で小水力は,新エネルギー分野として位置づけられており,ピコ水力などの小型ハイドロタービンが注目されているが,低効率であることが大きな課題である.一方,数インチの管路式農業用水路や簡易水道などに直接設置できるインライン式小型ハイドロタービンの実用化への要望も強い.本研究では,インライン式小型ハイドロタービンに二重反転形羽根車を採用し,その最高効率を実現する上で重要な軸方向圧力勾配に関係するソリディティ,寸法効果,Re数に関する研究成果を得ると同時に高性能モデルを考案し,数値流れ解析において最高効率68%を実現した.小水力発電は新エネルギーとして位置付けられており,その賦存エネルギー量は極めて大きい.農業用水や小規模な河川などではピコ水力と呼ばれる100W-1kW程度の発電が可能な箇所が多数存在する.小型ハイドロタービンの共通した大きな課題として効率が低いことが挙げられる.一方,数インチの管路式農業用水路や簡易水道などに直接設置できるインライン式小型ハイドロタービンへの要望も強いが,この分野に関する研究は十分進んでおらず,高効率なインライン式小型ハイドロタービンの確立が強く求められている.本研究では,インライン式小型ハイドロタービンとして二重反転形羽根車を採用し,その最高効率を実現する上で,重要な軸方向圧力勾配,寸法効果に関する以下の研究成果を得た.1.小型ハイドロタービンの軸方向圧力勾配の最適化二重反転形小型ハイドロタービンの軸方向圧力勾配を調査するために,多点壁面圧力計測を実現する実験装置の設計,製作を実施し,ケーシング内面における軸方向の圧力勾配を高精度に計測できる計測環境を構築した.また,インペラ周りの詳細な流れ場を解明するために非定常数値解析を実施し,各羽根車における軸方向の圧力勾配と羽根間流れを明らかにすることができた.2.小型化に伴う寸法効果が効率に及ぼす影響の解明寸法効果がハイドロタービンの効率に及ぼす影響を明らかにすることは,小型ハイドロタービンに適したロータ設計を検討する上で重要である.そこで、非定常数値解析を実施し,チップクリアランス(5種類)および翼厚み(3種類)が小型ハイドロタービンの性能に及ぼす影響を調査した.その結果,本供試小型ハイドロタービンでは,強度上可能な限り翼厚みを薄くし,チップクリアランスc/R=0.017を選定することが妥当であることが分かった.本研究では小型ハイドロタービンの最高効率の実現を目的に,初年度においては以下の重要研究課題に取り組んだ.1.小型ハイドロタービンの軸方向圧力勾配の最適化インライン式小型ハイドロタービンの軸方向圧力勾配を明らかにすることはその高性能化を実現する上で非常に重要である.そこで,試験部ケーシングを新規設計・製作し,多点壁面圧力計測を実現する実験装置と計測環境を構築し,軸方向の圧力勾配を計測した.供試ハイドロタービンの圧力勾配を実験的に明らかにすることができたが,軸方向圧力勾配の最適値については,実験装置および高精度な計測環境の構築に想定以上の時間を費やしたため,来年度調査を実施する.また,詳細な流れ場を解明するために非定常数値解析を実施し,羽根間の圧力分布や速度分布を明らかにした.2.小型化に伴う寸法効果が効率に及ぼす影響の解明インライン式小型ハイドロタービンは,通常の水車と比較し,羽根車に対するチップクリアランスや翼厚みの比率が相対的に大きくなる.これらの寸法効果がハイドロタービンの効率に及ぼす影響を明らかにすることは,その設計を検討する上で重要である.そこで,非定常数値解析を実施し,チップクリアランスおよび翼厚みが小型ハイドロタービンの性能に及ぼす影響を調査した.チップクリアランスが大きい場合,水車性能は急激に低下することが確認でき,工作精度やコストなどを考慮すると,チップクリアランスc/R=0.017を選定することが妥当であることが明らかになった.また,翼厚みを減少させた場合は,翼面での摩擦損失の低減効果により,高流量側では効率が1%程度向上することがわかった.以上より,小型ハイドロタービンの軸方向圧力勾配や寸法効果が効率に及ぼす影響が明らかになったが,軸方向圧力勾配の最適値については,調査が実施できなかったため,研究の進捗状況についてはやや遅れていると判断した.数インチの管路式農業用水路や簡易水道などに直接設置できるインライン式小型ハイドロタービンに関する研究は十分進んでおらず,その高効率化が強く求められている.本研究では,インライン式小型ハイドロタービンに二重反転形羽根車を採用し,その最高効率を実現する上で重要な軸方向圧力勾配,寸法効果,Re数に関する以下の研究成果を得ると同時に高性能モデルを考案し,数値解析において最高効率68%を実現した.1.小型ハイドロタービンの軸方向圧力勾配の最適化二重反転形小型ハイドロタービンの軸方向圧力勾配を実験的に調査し,数値解析により羽根間流れを明らかにした.これらの結果をもとに,羽根車のソリディティに着目し,高性能モデルを検討した.2.小型化に伴う寸法効果が効率に及ぼす影響の解明数値解析により,寸法効果に関連するチップクリアランスおよび翼厚みが性能に及ぼす影響を調査した.その結果,強度上可能な限り翼厚みを薄くし,チップクリアランスc/R=0.017を選定することが妥当であることが分かった.3.ピコ水力発電におけるRe数と効率の関係の解明Re数を1000001000000まで変化させた場合の二重反転形小型ハイドロタービンの効率の変化についてCFDを活用し調査を行った結果,最高効率は63.7%67.2%まで変化することが明らかとなった.4.小型ハイドロタービンの最高効率の実現
KAKENHI-PROJECT-16K18017
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K18017
インライン式小型ハイドロタービンの最高効率の実現
軸方向圧力勾配に直結する羽根車のソリディティに着目し,性能改善を試みた結果,CFD解析において,最高効率68%を実現することができた.さらに,チップクリアランス,翼厚み,Re数に関する研究成果を活用し,新しいロータの設計・外注を実施したが,性能試験設備の構築に想定以上に時間を要したため,研究期間内に検証実験を実施することはできなかった.今後,実験設備の構築を行った上で,検証実験を実施していく予定である.再生可能エネルギーの中で小水力は,新エネルギー分野として位置づけられており,ピコ水力などの小型ハイドロタービンが注目されているが,低効率であることが大きな課題である.一方,数インチの管路式農業用水路や簡易水道などに直接設置できるインライン式小型ハイドロタービンの実用化への要望も強い.本研究では,インライン式小型ハイドロタービンに二重反転形羽根車を採用し,その最高効率を実現する上で重要な軸方向圧力勾配に関係するソリディティ,寸法効果,Re数に関する研究成果を得ると同時に高性能モデルを考案し,数値流れ解析において最高効率68%を実現した.これまでの研究により,小型ハイドロタービンの軸方向圧力勾配と寸法効果が効率に及ぼす影響が明らかとなった.今後は軸方向圧力勾配の最適値に関する追加調査を実施すると共にRe数と効率の関係を明らかにする.その上で,最高効率を実現するロータの考案を行い,検証実験を行う.1.ピコ水力発電におけるRe数と効率の関係現地予備調査において明らかとなったインライン式小型ハイドロタービンの運転Re数250000を基準として,性能試験設備を利用し,Re数を増減させた際の効率の変化を調査する.ここでは,ピコ水力発電が運転されるRe数領域100000(超小型ピコ水力発電)1000000(大型のピコ水力発電)でのRe数と効率の関係を調査対象とするが,調査すべきRe数の範囲が想定以上に広く,実験的評価が困難な場合は,CFDを活用し実験結果の補完を行う.さらに,各Re数領域における詳細な内部流れ調査および損失評価を実施し,効率改善余地を示した上で,各Re数領域での限界性能を明らかにする.また,初年度に実施できなかった軸方向の圧力勾配の最適値に関する調査を実施する.2.小型ハイドロタービンの最高効率の実現インライン式二重反転形小型ハイドロタービンの軸方向圧力勾配の最適値,寸法効果を考慮した幾何学的制約の再検討結果,低Re数条件下におけるRe数と効率との関係をもとに新しいロータを設計・製作する.性能試験設備を使用し,目標値である最高効率70%を実現できるか検証実験を実施する.工学
KAKENHI-PROJECT-16K18017
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ポストAFTAのASEAN域内経済協力
アジア経済危機後の現在のASEAN域内経済協力を、様々な面から総合的に明らかにする研究を進めてきた。具体的には、第1に、アジア経済危機以降のASEAN域内経済協力、とりわけ2002年のAFTA(ASEAN自由貿易地域)確立以降のASEANの域内経済協力を分析すること、第2に、自動車産業とASEAN域内経済協力の研究、第3に、ASEANの通貨金融面での研究、第4に、ASEANよりも広い、東アジアあるいはアジア太平洋地域における地域経済協力の研究である。3年間で、「ASEAN域内経済協力の課題」、「ASEAN・日本・中国・韓国における地域経済協力へ向けて」等の日本語論文を6本公刊し、英語論文も4本公刊した。また、1998年に出版した『ASEAN域内経済協力の政治経済学』の増補改訂版を出版する準備を進めるとともに、これまで蓄積した英語論文を単著として公刊する準備を進めた。またこれまで進めてきた「東アジア地域協力の政治経済的研究」の共同研究を一層進め公刊準備を進めた(ミネルヴァ書房から近刊)。また学会報告では、特筆すべき事に2003年11月に、アジア政経学会の50周年記念全国大会における共通論題「『地域協力』の政治経済学」で報告をさせて頂いた(「ASEANの域内経済協力:その過程と課題」)。また今年度4回目となる「福岡アジア国際会議(Asian International Forum in Fukuoka)-アジアシンクタンク会合-:グローバリゼーションの進展と東アジアの地域協力」(ポスト・サミット蔵相会議。東アジア11カ国とEUの最有力シンクタンクの代表による会合)の第2部東南アジアの座長を第1回より連続して勤めてきた。同時にこの会議の成果を編者として報告書(英語並びに日本語)として計6冊、まとめてきた。更に国際貿易投資研究所(ITI)の研究委員にも就任し、17年度からは東京大学社会科学研究所の地域主義研究プロジェクトの研究委員にも就任し研究を進めた。以上のように、「ポストAFTAの域内経済協力」の研究は、多くの実績を積み重ねてきた。アジア経済危機後の現在のASEAN域内経済協力を、様々な面から総合的に明らかにする研究を進めてきた。具体的には、第1に、アジア経済危機以降のASEAN域内経済協力、とりわけ2002年のAFTA(ASEAN自由貿易地域)確立以降のASEANの域内経済協力を分析すること、第2に、自動車産業とASEAN域内経済協力の研究、第3に、ASEANの通貨金融面での研究、第4に、ASEANよりも広い、東アジアあるいはアジア太平洋地域における地域経済協力の研究である。3年間で、「ASEAN域内経済協力の課題」、「ASEAN・日本・中国・韓国における地域経済協力へ向けて」等の日本語論文を6本公刊し、英語論文も4本公刊した。また、1998年に出版した『ASEAN域内経済協力の政治経済学』の増補改訂版を出版する準備を進めるとともに、これまで蓄積した英語論文を単著として公刊する準備を進めた。またこれまで進めてきた「東アジア地域協力の政治経済的研究」の共同研究を一層進め公刊準備を進めた(ミネルヴァ書房から近刊)。また学会報告では、特筆すべき事に2003年11月に、アジア政経学会の50周年記念全国大会における共通論題「『地域協力』の政治経済学」で報告をさせて頂いた(「ASEANの域内経済協力:その過程と課題」)。また今年度4回目となる「福岡アジア国際会議(Asian International Forum in Fukuoka)-アジアシンクタンク会合-:グローバリゼーションの進展と東アジアの地域協力」(ポスト・サミット蔵相会議。東アジア11カ国とEUの最有力シンクタンクの代表による会合)の第2部東南アジアの座長を第1回より連続して勤めてきた。同時にこの会議の成果を編者として報告書(英語並びに日本語)として計6冊、まとめてきた。更に国際貿易投資研究所(ITI)の研究委員にも就任し、17年度からは東京大学社会科学研究所の地域主義研究プロジェクトの研究委員にも就任し研究を進めた。以上のように、「ポストAFTAの域内経済協力」の研究は、多くの実績を積み重ねてきた。アジア経済危機後の現在のASEAN域内経済協力を、様々な面から総合的に明らかにする研究を進めている。具体的には、第1に、アジア経済危機以降のASEAN域内経済協力、とりわけ2002年のAFTA(ASEAN自由貿易地域)確立以降のASEANの域内経済協力を分析すること、第2に、自動車産業とASEAN域内経済協力の研究、第3に、ASEANの通貨金融面での研究、第4に、ASEANよりも広い、東アジアあるいはアジア太平洋地域における地域経済協力の研究である。一年目の2002年度は、今後3年間にまとめる研究の基礎を作った。毎年公刊を続けているASEAN域内経済協力に関する英語論文を、今年度も公刊した。また、1998年に出版した「ASEAN域内経済協力の政治経済学』の増補改訂版を出版する準備を進めた。更に、これまで進めてきた「東アジアの地域協力の政治経済的研究」の共同研究を一層進め、ミネルヴァ書房から出版する交渉をまとめ、出版準備を進めている。また特筆すべきことには、2003年1月、第2回「福岡アジア国際会議(Asian International Forum in Fukuoka)-アジアシンクタンク会合-:グローバリゼーションの進展と東アジアの地域協力」(ポスト・サミット蔵相会議。東アジア11力国とEUの最有力シンクタンクの代表による会合)の第2部東南アジアの座長、並びに第3部総合討論の座長を務め、ASEANと東アジア地域協力に関する研究を進め、同時に今後の研究のためのネットワークを構築してきた。
KAKENHI-PROJECT-14530059
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14530059
ポストAFTAのASEAN域内経済協力
また、この会議の成果を本(英語並びに日本語)としてまとめるため、編者となり編集中である。以上のように、「ポストAFTAの域内経済協力」の研究は、着実に実績を積み重ねている。アジア経済危機後の現在のASEAN域内経済協力を、様々な面から総合的に明らかにする研究を進めている。具体的には、第1に、アジア経済危機以降のASEAN域内経済協力、とりわけ2002年のAFTA(ASEAN自由貿易地域)確立以降のASEANの域内経済協力を分析することである。2年目の2003年度は、3年間にまとめる研究の重要な基礎を作った。これまでの研究を更に積み重ね、同時に大きな成果を出してきた。まずは2003年11月には、アジア政経学会の50周年記念全国大会における共通論題「『地域協力』の政治経済学」で報告をさせて頂いた(「ASEANの域内経済協力:その過程と課題」)。更に、毎年公刊を続けているASEAN域内経済協力に関する英語論文を、今年度も公刊した。また、1998年に出版した『ASEAN域内経済協力の政治経済学』の増補改訂版を出版する予定である。更に、これまで進めてきた「東アジアの地域協力の政治経済的研究」の共同研究を一層進め、『東アジア共同体の政治経済学』として編集し、ミネルヴァ書房から出版することとなった。これは現在、刊行準備が完了しつつある。また特筆すべきことには、2003年9月、第3回「福岡アジア国際会議(Asian International Forum in Fukuoka):グローバリゼーションの進展と東アジアの産業」(ポスト・サミット蔵相会議。東アジア11カ国とEUの最有力シンクタンクの代表による会合)の第2部東南アジアの座長を務め、ASEAN・東アジアの産業と地域協力に関する研究を進め、同時に今後の研究のためのネットワークを構築してきた。この会議では第1回より座長を務めているが、第2回会議の成果を編者となり報告書(英語並びに日本語)として刊行した。更に第3回の成果を編者として報告書並びに本(英語並びに日本語)として編集中である。以上のように、「ポストAFTAの域内経済協力」の研究は、着実に実績を積み重ねてきている。アジア経済危機後の現在のASEAN域内経済協力を、様々な面から総合的に明らかにする研究を進めている。具体的には、第1に、アジア経済危機以降のASEAN域内経済協力、とりわけ2002年のAFTA(ASEAN自由貿易地域)確立以降のASEANの域内経済協力を分析すること、第2に、自動車産業とASEAN域内経済協力の研究、第3に、ASEANの通貨金融面での研究、第4に、ASEANよりも広い、東アジアあるいはアジア太平洋地域における地域経済協力の研究である。3年目の2004年度は、これまで蓄積した研究をまとめる年となった。毎年公刊を続けているASEAN域内経済協力に関する英語論文を、今年度は2本公刊した。「ASEAN域内経済協力の課題」、「ASEAN・日本・中国・韓国における地域経済協力へ向けて」等の日本語論文も公刊した。
KAKENHI-PROJECT-14530059
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14530059
ヒト造血系維持モデルとしてのヒトSCF遺伝子導入-SCIDマウスの検討
1.ヒトSCF遺伝子導入-SCID(hSCF Tg-SCID)マウスのヒト造血系細胞の維持能力の解析および白血病モデルとしての可能性を調べるため、ヒト白血病細胞株の移入実験を実施した。(1 )3GyのX線前処理後のhSCF Tg-SCIDマウスにヒト白血病細胞株の皮下および腹腔内投与による移入実験を試みた。ヒト白血病細胞株としては、UF-1,TF-1,MO7eの3株を用いた。解析は組織染色、フローサイトメトリー、RT-PCR等で行った。(2) TF-1,MO7eの2株については、60日間の観察期間終了後まで白血病細胞の生着は確認できなかった。これは、両細胞株ともにhuman GM-CSFに対する依存株であったため、human SCF単独では維持できなかったことが考えられる。(3) UF-1の移入実験では、数例で細胞の生着が確認できた。しかしながら、littermateのC57BL/6J-SCID(B6J-SCID)マウスへの同細胞の生着性・増殖性との間に有意差はなかった。現在、他のヒト造血系細胞の移入を試みている。また、移入経路についての検討も行っている。2.ヒト多造血因子同時発現マウスの作製の前実験として、3GyのX線前処理後のhSCF Tg-SCIDマウスに対して、まずヒトGM-CSFおよびヒトIL-3を発現するトランスフェクタントを皮下移入し、その5日後にヒト凍結骨髄細胞の移入実験を試みた。しかしながら、30日間の観察期間終了後までヒト由来の細胞は検出できなかった。現在、NOD/SCID化も含め、さらなる検討を試みている。1.ヒトSCF遺伝子導入-SCID(hSCF Tg-SCID)マウスのさらなる解析として、Western blotおよびProgenitor assayを実施した。1) Western blotを行った結果、hSCF Tg-SCIDマウス腎臓および脳で膜結合型hSCFの発現を確認した。本Tg-SCIDマウスは可溶型hSCFの発現を基準に確立したマウスであり、今回の結果から、生体内でのhSCFの存在形態2種類をいずれも発現していることが明らかになった。現在、この解析系を用いて、他の臓器における発現を調べている。2. hSCFのin vitro解析用に新たにhSCFトランスフェクタントを作製し、解析した。その結果、培養上清中に0.5-1ng/mlの可溶性hSCFを発現する5lineを得、いずれのlineもフローサイトメトリーの結果、膜結合型hSCFを発現していた。現在、ヒト造血系細胞の支持能を検討している。3. 3GyのX線前処理後のhSCF Tg-SCIDマウスに対してヒト培養肥満細胞の腹腔内移入実験を試みた。60日間の観察期間終了後、human ALU配列の存在をPCRによって調べたがヒト由来の細胞は検出できなかった。現在、他のヒト造血系細胞の移入を試みている。1.ヒトSCF遺伝子導入-SCID(hSCF Tg-SCID)マウスのヒト造血系細胞の維持能力の解析および白血病モデルとしての可能性を調べるため、ヒト白血病細胞株の移入実験を実施した。(1 )3GyのX線前処理後のhSCF Tg-SCIDマウスにヒト白血病細胞株の皮下および腹腔内投与による移入実験を試みた。ヒト白血病細胞株としては、UF-1,TF-1,MO7eの3株を用いた。解析は組織染色、フローサイトメトリー、RT-PCR等で行った。(2) TF-1,MO7eの2株については、60日間の観察期間終了後まで白血病細胞の生着は確認できなかった。これは、両細胞株ともにhuman GM-CSFに対する依存株であったため、human SCF単独では維持できなかったことが考えられる。(3) UF-1の移入実験では、数例で細胞の生着が確認できた。しかしながら、littermateのC57BL/6J-SCID(B6J-SCID)マウスへの同細胞の生着性・増殖性との間に有意差はなかった。現在、他のヒト造血系細胞の移入を試みている。また、移入経路についての検討も行っている。2.ヒト多造血因子同時発現マウスの作製の前実験として、3GyのX線前処理後のhSCF Tg-SCIDマウスに対して、まずヒトGM-CSFおよびヒトIL-3を発現するトランスフェクタントを皮下移入し、その5日後にヒト凍結骨髄細胞の移入実験を試みた。しかしながら、30日間の観察期間終了後までヒト由来の細胞は検出できなかった。現在、NOD/SCID化も含め、さらなる検討を試みている。
KAKENHI-PROJECT-09780782
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金融・資産市場の相互依存関係と、その資産運用・リスク管理への影響
複数の金融・資産市場間の連動性・関連性を通じた資産価格や収益率の分析を行った。具体的には、原油、暖房油、電力、天然ガス、排出権等の商品、複数の新興国通貨のリターンと金利差、大域的最小分散ポートフォリオ、SRI市場と株式市場、多国間の短期及び長期国債、石油価格とクリーンエネルギー株式指数等について、相互依存性を明示的に考慮した理論モデルの開発や実証分析を行った。複数の金融・資産市場間の連動性・関連性を通じた資産価格や収益率の分析を行った。具体的には、原油、暖房油、電力、天然ガス、排出権等の商品、複数の新興国通貨のリターンと金利差、大域的最小分散ポートフォリオ、SRI市場と株式市場、多国間の短期及び長期国債、石油価格とクリーンエネルギー株式指数等について、相互依存性を明示的に考慮した理論モデルの開発や実証分析を行った。平成22年度は、商品、通貨、株式、債券価格の相互依存性について以下の結果を得た。まず、大橋は、燃料の選択という生産活動に基づく関係を利用して、CO_2排出権価格を石炭及び天然ガスの価格差へのオプションとして表現するモデルを開発・分析し、成果を海外の学会で報告した。林は、共著論文("Emerging Market Currency Excess Returns"、2008)を改訂し、リーマンショックとその後の期間を含む分析を、通貨の取引費用の日時データを用いて新たに行った。また、文献サーベイの結果、Balassa-Samuelson効果は通貨先物投資からのリターンを説明できないことが判明した。多国間ファクターモデルについて、それを含むより広範な文献のサーベイを開始した。本多は、株式市場とその他の資産やマクロ変数との相互関係の検証に関して、株式市場のボラティリティが非常に大きいことが分析を難しくする問題を回避し、株式市場の特徴をより正確に把握するために、パラメータの推定誤差の影響が比較的小さい大域的最少分散ポートフォリオの特徴を分析した。今後は、最少分散ポートフォリオに注目しながら、他資産との関係について分析を進める計画である。沖本は、資産間の相互依存関係の変遷を記述できる時系列モデルの開発を行った。具体的には、Berben(2005)のモデルをコピュラという概念を用いて、拡張することを試みた。その結果、各資産の周辺的な動きをより適切な形でモデル化することに成功した。さらに、提案したモデルを国際債券市場に当てはめ、日本を除くG7国において、長期債の依存関係が強くなる半面、短期債の依存関係は強くなっていないこと、短期債と長期債の依存関係が弱まっていることなどを発見した。以上の成果は、国際的な学術雑誌であるJournal of Banking and Financeに掲載された。平成23年度得た結果は以下の通り。まず、大橋は、全体を監督しながら研究分担者の情報共有に努めると共に、共和分関係を導入した商品デリバティブ価格モデルを完成させ、原油と暖房油のデータに応用した。その論文は、Journal of Futures Marketsに掲載されることになった。また、生産活動による関係を利用したCO2排出権価格モデルを発展させ、成果を海外の学会で報告した。林は、新興国通貨の先物投資について、リーマンショック後をもサンプル期間に含めた場合のパッシブとアクティブ戦略から得られる超過リターンを分析した。また、商品先物について、すでに構築していた理論モデルを精緻化し、そのモデルから示唆される投資戦略から得られる超過リターンの計算を行った。本多は、株式市場のボラティリティと、過去データからの推定値を利用した平均分散ポートフォリオの事後的なパフォーマンスを分析し、大域的最少分散ポートフォリオなど、代表的なポートフォリオ戦略の特徴を分析した。また、公的年金積立金運用の観点から、株式投資などのリスクに対する加入者間でのリスク負担について分析を行った。沖本は、平成22年度に引き続き、資産間の相互依存関係の変遷の分析を行った。具体的には、マルコフスイッチングモデルを用いて株式市場とSRI(Socailly Responsible Index)市場の依存関係の分析を行い、SRI市場には株式市場と同様にベア市場とブル市場と解釈できる2つの状態が存在すること、SRI市場と株式市場におけるベア市場とブル市場の間の状態推移はほぼ一致していること、SRI市場と株式市場の依存関係は状態にかかわらず非常に強いこと、などを発見した。これらの結果をまとめた論文は、Applied Financial Economicsに掲載された。また、そこで用いたマルコフスイッチングモデルと同様のモデルを応用し、日本の財政の持続可能性の分析も行った。その結果は、Journal of the Japanese and International Economiesに掲載された。平成24年度に得た結果は以下の通り。まず、大橋は、全体の監督と研究分担者の情報共有に努めると共に、価格の相互関係に注目して、発電事業によって電力、燃料(天然ガス)、CO2排出権価格間に成立する関係を利用した排出権価格モデルを完成させた。その論文はAsia-Pacific Financial Marketsに掲載されることとなった。林は、第一に、商品先物について平成23年度に行った研究成果の理論モデルの大幅な改訂を行い、完成させた論文をReview of Financeに掲載させた。第二に、商品先物インデックスからのリターンと株のインデックスからのリターンの相関構造について、沖本と共同で実証研究を進めた。本多は、パラメータの推定誤差が最適ポートフォリオに与える影響を分析し、期待リターンの推定誤差を考慮した動的ポートフォリオの理論的特徴付けと、パラメータの推定誤差が事後的なパフォーマンスに与える影響の実証研究を行った。また、これらを踏まえ、市場予測やリスク回避度が加入者の間で異なる場合に、年金基金が構築すべきポートフォリオを、加入者間のリスク負担に注目しつつ検討した。
KAKENHI-PROJECT-22330094
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22330094
金融・資産市場の相互依存関係と、その資産運用・リスク管理への影響
沖本は、資産間の相互依存関係の変遷の分析を続け、第一にVARモデルにマルコフスイッチング(MS)モデルを応用したMSVARモデルを用いて、原油価格リターン、短期金利、ハイテク産業の株式リターン、クリーンエネルギー産業の株式リターンの間の依存関係の分析を行い、結果をまとめた論文はJapan and World Economyに掲載された。また、大橋と商品の超過共変動を分析し、開発した平滑推移動的条件付き相関(STDCC)モデルを用いて、商品の超過共変動が2000年以降有意に上昇したことを確認した。この結果は、経済産業研究所(RIETI)のDPとして刊行されることが決まった。全ての対象分野にわたり、当初の計画どおり分析は進んでおり、2年経過時点で既に合計6本の論文が査読付国際学術雑誌に掲載もしくは掲載が決定している。24年度が最終年度であるため、記入しない。過去2年間に達成した研究成果の発展と関連分野への拡張しつつ、金融・資産市場における相互依存関係について分析を継続する。平成24年度は最終年度となるので、結果の全体としての総括をしつつ、その後に取り組むべき研究課題の発掘にも力を注ぎたい。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22330094
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22330094
HPV関連癌細胞におけるp53癌細胞抑制遺伝子の発現と機能におよぼすCdtの効果
Actinobacillus actinomycetemcomitans(Aa)由来cytolethal distension toxin(Cdt)は,哺乳類細胞に対して細胞死とともに細胞周期G2期停止を誘導するが,その分子機構はまだ明らかにされていない。ヒトパピローマウイルス16型(HPV-16)および18型(HPV-18)は,肛門生殖器癌と一部の口腔咽頭癌の発症に深く関与する。これらのウイルスのE7は,網膜芽細胞腫関連遺伝子産物(Rb)に直接結合してRbの増殖抑制機能を阻害し,E6は,p53癌抑制蛋白質の分解・不活化を引き起こす。このようにHPV-16および18は,Rbおよびp53の不活化により,宿主細胞を癌化させる。我々は,HPV-18関連癌細胞株であるHeLa細胞においてCdtが,p53発現増加とG2期停止および細胞死を誘導することを明かにした。また,野生型p53を有するマウスHS-72細胞にHPV-16E6/E7を発現させたクローンを樹立し,これらの細胞においてもCdtは,G2期停止と細胞死を引き起こすことを報告した。さらにHPV関連癌細胞におけるCdtによるp53集積機構解析のために,HPV関連癌細胞株(HeLa, SiHa)でRNAiを確立した。先ずRNAi活性が報告されているLamin A/C siRNAを用いてsiRNAの細胞内導入効率を最適化した。これによりHeLa細胞とSiHa細胞において90%以上の細胞にsiRNAが導入されるようになった。さらに,SiHa細胞では,HPV16E6およびE7に対するsiRNAを作成してこれらが,E6およびE7の発現を70%から80%抑制できることが判明した。以上から,これらの細胞で,極めて高いsiRNA細胞内導入効率とRNAiの達成が可能であることが明らかとなった。今後,RNAiを利用して,ATM, ATR, Chk1, Chk2,DNA-PKおよびARF等の発現を抑制することによりどの分子がp53の細胞内集積に重要であるかを明らかにする予定である。Actinobacillusactinomycetemcomitans(Aa)由来cytolethal distension toxin(Cdt)は,哺乳類細胞に対して細胞死とともに細胞周期G2期停止を誘導するが,その分子機構はまだ明らかにされていない。ヒトパピローマウイルス16型(HPV-16)および18型(HPV-18)は,肛門生殖器癌と一部の口腔咽頭癌の発症に深く関与する。これらのウイルスのE7は,網膜芽細胞腫関連遺伝子産物(Rb)に直接結合してRbの増殖抑制機能を阻害し,E6は,p53癌抑制蛋白質の分解・不活化を引き起こす。このようにHPV-16および18は,Rbおよびp53の不活化により,宿主細胞を癌化させる。我々は,HPV-18関連癌細胞株であるHeLa細胞においてCdtが,p53発現増加とG2期停止および細胞死を誘導することを明かにした。また,野生型p53を有するマウスHS-72細胞にHPV-16E6/E7を発現させたクローンを樹立し,これらの細胞においてもCdtは,G2期停止と細胞死を引き起こすことを報告した。さらにHPV関連癌細胞におけるCdtによるp53集積機構解析のために,HPV関連癌細胞株(HeLa, SiHa)でRNAiを確立した。先ずRNAi活性が報告されているLamin A/C siRNAを用いてsiRNAの細胞内導入効率を最適化した。これによりHeLa細胞とSiHa細胞において90%以上の細胞にsiRNAが導入されるようになった。さらに,SiHa細胞では,HPV16E6およびE7に対するsiRNAを作成してこれらが,E6およびE7の発現を70%から80%抑制できることが判明した。以上から,これらの細胞で,極めて高いsiRNA細胞内導入効率とRNAiの達成が可能であることが明らかとなった。今後,RNAiを利用して,ATM, ATR, Chk1, Chk2,DNA-PKおよびARF等の発現を抑制することによりどの分子がp53の細胞内集積に重要であるかを明らかにする予定である。Cdt(cytolethal distenslon toxin)は,赤痢菌やカンピロパクターなどの腸炎原因菌や歯周病菌であるActinobacillus actinomycetemcornitans(Aa)によって産生される毒素であるが,様々な哺乳類細胞に対して細胞死とともに細胞周期G2期停止を誘導することが知られているが,その分子メカニズムはまだ明らかにされていない。ヒトパピローマウイルス16型(HPV-16)および18型(HPV-18)は,肛門生殖器癌と一部の口腔咽頭癌の発症に深く関与する癌原性ウイルスである。これらのウイルスの有するE7癌遺伝子産物は,網膜芽細胞腫関連遺伝子産物(Rb)に直接結合して,Rbの増殖抑制機能を阻害するとともに,もう一つの癌遺伝子産物であるE6を介して,p53遺伝子産物を分解・不活化を引き起こす。これらの癌抑制遺伝子産物の不活化は,宿主細胞を異常増殖能する癌細胞に変えてしまう。我々は,HPV-18関連癌細胞株であるHeLa胎細胞においてAa由来のCdtが,G2期停止と共に,p53とp21^<CIP1/WAF1>(p21)発現レベルを著しく上昇させることを国内外で初めて見い出した。本年度の研究で、野生型p53遺伝子を有するマウスHS-72細胞にHPV-16のE6/E7
KAKENHI-PROJECT-13671962
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HPV関連癌細胞におけるp53癌細胞抑制遺伝子の発現と機能におよぼすCdtの効果
遺伝子を発現させ、recombinant Aa CdtによるG2期停止とp21発現誘導においてp53がどのような役割を果たしているかを解析した。E6/E7発現HS-72細胞において、Cdtは、p53レベルの増加を伴うことなくG2期停止とp21発現誘導を引き起こした。さらに、ドミナントネガティブp53変異体を発現させたHS-72においても、G2期停止とp21レベルの増加が見られた。以上から、HS-72細胞におけるCdtによるp21発現誘導とG2期停止は、p53非依存性であると考えられた。現在、HeLa細胞とE6/E7発現HS-72におけるCdtに対するp53反応性の違いについて解析中である。Actinobacillusactinomycetemcomitans(Aa)由来cytolethal distension toxin(Cdt)は,哺乳類細胞に対して細胞死とともに細胞周期G2期停止を誘導するが,その分子機構はまだ明らかにされていない。ヒトパピローマウイルス16型(HPV-16)および18型(HPV-18)は,肛門生殖器癌と一部の口腔咽頭癌の発症に深く関与する。これらのウイルスのE7癌遺伝子産物は,網膜芽細胞腫関違遺伝子産物(Rb)に直接結合してRbの増殖抑制機能を阻害し,E6癌遺伝子産物は,P53遺伝子産物の分解・不活化を引き起こす。このようにHPV-16および18は,Rbおよびp53の不活化によって,宿主細胞を癌細胞に変化させる。我々は,HPV-18関連癌細胞株であるHeLa細胞においてAaCdtが,P53発現レベルの増加とともにG2期停止と細胞死を誘導することをあきらかにした。平成14年度の研究では,HPV関連癌細胞におけるCdtによるP53集積機構を解析するために,HPV陽性細胞(HeLa, SiHa)でのRNAiを確立した。先ず,すでにRNAi活性が報告されているLamin A/Cに相補的な19塩基の配列の2本鎖RNA(siRNA)を合成し,これをリポソーム試薬によって細胞内に導入後,その発現におよぼす効果をウエスタンブロット法により解析した。HeLa細胞とSiHa細胞のいずれにおいても90%以上のLamin A/Cの発現抑制効果が見られた。さらに,SiHa細胞では,HPV16 E6およびE7に対するsiRNAが,E6およびE7の発現をそれぞれ70%から80%抑制することが判明し,これらの細胞は,高いsiRNA導入効率と感受性を有することが明らかとなった。今後,siRNAをもちいて,ATM, ATR, Chk1, Chk2, DNA-PKおよびARF等の発現を抑制することにより,どの分子がp53の細胞内集積に重要であるかを明らかにする予定である。
KAKENHI-PROJECT-13671962
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コンピュータを用いた歯科診療シミュレーション教材の開発と,その教育効果の解析
1.さまざまな歯科疾患を患って歯学部附属病院に来院する患者の中から、予め想定した典型的な、または稀な症状を有する患者を抽出し、患者の了解を得た上で、診断に必要な口腔内所見(写真)、エックス線写真、検査結果等をデジタル資料として収集した。2.歯学部学生、歯科臨床研修医にとって、経験して欲しい想定患者を設定し、上記資料を元に、コンピュータ上で診査、検査、診断のシミュレーションを実施するための、診療のシナリオを約70症例分、検討・作成した。3.学生・研修医が適切な問診、診査、検査を行って、正しい診断、治療計画に至る過程を、また手術の手順等を、コンピュータとの対話によってシミュレートできる教材を作成することを目的として、その作成支援ツールのプロトタイプを開発した。4.シナリオ作者である歯学臨床教育教員(研究分担者ら)は、検討した70症例分のシナリオを元に、擬似患者に対して学生が行う診療行為と、その行為に対する患者の反応等を、本ツールから入力し、コンピュータの専門家を介することなしに、コンピュータシミュレーション教材を作成した。5.作成した教材を歯学部歯学科第5学年、第6学年の学生に試用し、学生から評価を得ると共に、その実施可能性を確認した。6.研究分担者以外の歯学臨床教育教員に、教材制作支援ツールのプロトタイプを試用させ、コンピュータプログラミングに関する知識なしでもシミュレーション教材の作成ができることを確認した。さまざまな歯科疾患を患って歯学部附属病院に来院する患者の中から、予め想定した典型的な、または稀な症状を有する患者を抽出し、患者の了解を得た上で、診断に必要な口腔内所見(写真)、エックス線写真、検査結果等をデジタル資料として収集した。現在も継続的に収集中である。歯学部学生、臨床研修医にとって、経験して欲しい想定患者を設定し、上記資料を元に、コンピュータ上で診査、検査、診断のシミュレーションを実施するための、診療のシナリオを10症例分作成した。学生・研修医が適切な問診、診査、検査を行って、正しい診断、治療計画に至る過程を、また手術の手順等を、コンピユータとの対話によってシミュレートできる教材を制作することを目的として、その制作支援ツールのプロトタイプを開発した。シナリオ作者である歯学臨床教育教員(研究分担者ら)は、擬似患者に対して学生が行う診療行為と、その行為に対する患者の反応等を、簡単なルールに従って記述されたテキストファイル、画像ファイルとして用意するのみとし、コンピュータプログラミングに関する知識を必要としないでシナリオを作成できるように工夫した。今回開発したシミュレーション教材制作支援ツールのプロトタイプを用いて、10症例分の歯科疾患診断シミュレーション教材を試作した。また、試作した教材を歯学部学生の一部に試用し、その実施可能性を確認した。研究分担者以外の歯学臨床教育教員の一部に、教材制作支援ツールのプロトタイプを試用させ、コンピュータプログラミングに関する知識なしでもシミュレーション教材の作成ができることを確認した。さまざまな歯科疾患を患って歯学部附属病院に来院する患者の中から、予め想定した典型的な、または稀な症状を有する患者を抽出し、患者の了解を得た上で、診断に必要な口腔内所見(写真)、エックス線写真、検査結果等をデジタル資料として収集した。現在も継続的に収集中である。歯学部学生、臨床研修医にとって、経験して欲しい想定患者を設定し、上記資料を元に、コンピュータ上で診査、検査、診断のシミュレーションを実施するための、診療のシナリオを約40症例分、検討・作成した。学生・研修医が適切な問診、診査、検査を行って、正しい診断、治療計画に至る過程を、また手術の手順等を、コンピュータとの対話によってシミュレートできる教材を作成することを目的として、その作成支援ツールのプロトタイプを開発した。シナリオ作者である歯学臨床教育教員(研究分担者ら)は、検討した40症例分のシナリオを元に、擬似患者に対して学生が行う診療行為と、その行為に対する患者の反応等を、本ツールから入力し、コンピュータの専門家を介することなしに、コンピュータシミュレーション教材を作成した。作成した教材を歯学部歯学科最終学年(6年生)の学生に試用し、その実施可能性を確認した。研究分担者以外の歯学臨床教育教員に、教材制作支援ツールのプロトタイプを試用させ、コンピュータプログラミングに関する知識なしでもシミュレーション教材の作成ができることを再確認した。1.さまざまな歯科疾患を患って歯学部附属病院に来院する患者の中から、予め想定した典型的な、または稀な症状を有する患者を抽出し、患者の了解を得た上で、診断に必要な口腔内所見(写真)、エックス線写真、検査結果等をデジタル資料として収集した。2.歯学部学生、歯科臨床研修医にとって、経験して欲しい想定患者を設定し、上記資料を元に、コンピュータ上で診査、検査、診断のシミュレーションを実施するための、診療のシナリオを約70症例分、検討・作成した。3.学生・研修医が適切な問診、診査、検査を行って、正しい診断、治療計画に至る過程を、また手術の手順等を、コンピュータとの対話によってシミュレートできる教材を作成することを目的として、その作成支援ツールのプロトタイプを開発した。4.シナリオ作者である歯学臨床教育教員(研究分担者ら)は、検討した70症例分のシナリオを元に、擬似患者に対して学生が行う診療行為と、その行為に対する患者の反応等を、本ツールから入力し、コンピュータの専門家を介することなしに、コンピュータシミュレーション教材を作成した。5.作成した教材を歯学部歯学科第5学年、第6学年の学生に試用し、学生から評価を得ると共に、その実施可能性を確認した。6.研究分担者以外の歯学臨床教育教員に、教材制作支援ツールのプロトタイプを試用させ、コンピュータプログラミングに関する知識なしでもシミュレーション教材の作成ができることを確認した。
KAKENHI-PROJECT-15650173
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15650173
ヒトの筋協調に着目した筋骨格5指ロボットハンドのシナジー制御
近年、医療・介護の分野でヒトと同じ環境で活動するロボットの駆動源として、高い安全性と柔軟性を兼ね備えた「空気圧アクチュエータ」が注目されている。本研究では、「ヒトの筋協調の仕方や生物の環境適応メカニズムをヒントに、ヒトの筋骨格構造を模倣した空気圧駆動5指ロボットハンドを制御する新しい手法(シナジー制御法)を確立すること」を目指し、4つの要素研究を実施した。(1)ヒトの筋骨格系の解剖学的構造に示唆を得た関節モデルの開発、(2)ヒトの物体把持における手指の姿勢と把持力の解析、(3)空気圧駆動ロボットハンド指先の角度・力センサレス化、(4)ゆらぎを用いたロボットハンド指先位置制御アルゴリズムの構築。本研究では、ヒトと同様に拮抗筋群を協調させて運動する筋骨格ロボットの制御の基本問題として、運動学データと筋協調パターンが1対1に対応しないケース(ベルンシュタイン問題として知られる冗長自由度問題)を陽に考える。ヒトの筋骨格構造(特に関節構造やアクチュエータ配置)を模倣したロボットハンドやロボットフィンガーを具体的な制御対象とし、ヒトの筋シナジーの生成の仕方(筋シナジー仮説)をヒントに筋骨格ロボットを制御する新しい手法(シナジー制御法)を確立することが本研究の最大の目的である。平成24年度は以下の3点の研究を並行実施した。(1)ハードウェア基盤の挙動の理論解析(筋協調の力学モデリング):ヒトの中手指節関節の構造を模倣して初年度に構築した2本の空気圧アクチュエータで拮抗駆動する「転動関節モデル」の理論解析(筋協調の力学モデリング)を行い、実機の挙動との比較・評価を行った。ただし、現時点では、理論と実機が一部合致しない点があり、更なる詳細なモデル化が必要である。(2)ハードウェア基盤の整備・改良(転動関節改良型モデル):関節部に「滑り」「転がり」の両方の要素を取り入れ、前年度までの屈曲・伸展の1自由度に加え「外転・内転」が可能な計2自由度を有する示指MP関節モデル(転動関節改良型モデル)の提案・構築を行った。新規設計・製作した転動関節モデルを用いて、筋協調と関節角度の関係を導く基礎実験を行った結果、屈曲・伸展運動のパフォーマンスは低下せずに、ヒトと同程度の可動範囲で外転・内転運動も実現することに成功した。(3)ヒトの手指の物体把持の姿勢と把持力の解析:簡単な形状の物体を対象とした複数の被験者の手指の物体把持時の「把持姿勢」と「把持力」をそれぞれデータグローブならびに面圧シートセンサを用いて計測し、測定結果を主成分分析することによって、把持姿勢と把持力の構成要素を見出した。ヒトの筋骨格構造(特に関節構造やアクチュエータ配置)を模倣したロボットハンドやロボットフィンガーを具体的な制御対象とし、ヒトの筋シナジーの生成の仕方をヒントに筋骨格ロボットを制御する新しい手法(シナジー制御法)を確立することが、本研究の最大の目的である。最終年度となる平成25年度は以下の3点の研究を並行実施した。(1)ハードウェア基盤の挙動の理論解析(筋協調の力学モデリング):ヒトの中手指節関節の構造を模倣して初年度に構築した2本の空気圧アクチュエータで拮抗駆動する「転動関節モデル」の理論解析(筋協調の力学モデリング)を昨年度から継続実施し、実機の挙動との比較・評価を行った。本年度のより詳細なモデル化により、実機の本質的な挙動を説明することに成功した(2014年3月に第19回ロボティクスシンポジアで発表)。(2)ハードウェア基盤の整備・改良(筋骨格ロボットハンド指先の角度・力センサレス化):本システムの駆動源である空気圧アクチュエータが磁性を持たないことに着目し、ハンドの不動点(掌・手の甲)に取り付けた磁気センサと指先に配置した永久磁石を用いてロボットハンド「指先」の姿勢、触覚のセンサレス化を実現し、関節角度・指先接触力をセンサレスで推定することに成功した(2014年3月に日本機械学会北陸信越支部第51期総会・講演会で発表)。(3)ソフトウェア基盤の開発・評価(筋骨格ロボットハンドの指先位置制御):ヒトの筋骨格構造を模倣して拮抗配置した4本の空気圧アクチュエータを備える3自由度ロボットフィンガーを制御対象とし、生体ゆらぎを模倣した新しいシナジー制御系を構築した。提案手法を用いて実際にロボットハンドの指先位置制御実験を行い、制御特性を確認した(2014年3月に電子情報通信学会総合大会で発表、2014年5月に日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会2014で発表予定)。近年、医療・介護の分野でヒトと同じ環境で活動するロボットの駆動源として、高い安全性と柔軟性を兼ね備えた「空気圧アクチュエータ」が注目されている。本研究では、「ヒトの筋協調の仕方や生物の環境適応メカニズムをヒントに、ヒトの筋骨格構造を模倣した空気圧駆動5指ロボットハンドを制御する新しい手法(シナジー制御法)を確立すること」を目指し、4つの要素研究を実施した。(1)ヒトの筋骨格系の解剖学的構造に示唆を得た関節モデルの開発、(2)ヒトの物体把持における手指の姿勢と把持力の解析、(3)空気圧駆動ロボットハンド指先の角度・力センサレス化、(4)ゆらぎを用いたロボットハンド指先位置制御アルゴリズムの構築。
KAKENHI-PROJECT-23560524
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23560524
ヒトの筋協調に着目した筋骨格5指ロボットハンドのシナジー制御
本研究では、ヒトと同様に拮抗筋群を協調させて運動する筋骨格ロボットの制御の基本問題として、運動学データと筋協調パターンが1対1に対応しないケース(ベルンシュタイン問題として知られる冗長自由度問題)を陽に考える。筋骨格5指ロボットハンドを具体的な制御対象とし、ヒトの筋シナジーの生成の仕方(筋シナジー仮説)をヒントに、タスクに応じて「運動学データと筋協調パターン(筋拮抗比)の関係」を記述すること、ならびにその関係を用いて筋骨格ロボットを制御する新しい方法(シナジー制御法)を確立することが本研究の最大の目的である。平成23年度は、上記基本問題を考察するハードウェア基盤となる新たな筋骨格ロボットフィンガー(転動関節モデル)の構築を中心的に進めた。「転動関節モデル」は、ヒトの中手指節関節の構造を模倣して考案した関節モデルであり、主として、ヒトと同様、骨(中手骨リンクと基節骨リンク)、筋(屈筋アクチュエータと伸筋アクチュエータ)、腱(ワイヤ)から構成され、中手骨リンク頭が掌側に長軸をとる4分の1楕円形であり、半径一定の円である基節骨リンク底が中手骨リンク頭上を「滑らずに転がる」ように設計した関節モデルである。この新規設計・製作した転動関節モデルを用いて、筋協調と関節角度の関係を導く基礎実験を行った。その結果、転動関節モデルは、構造上、伸展側・屈曲側ともにヒトの中手指節関節の可動範囲に極めて近い挙動を示すこと、筋拮抗比と関節角度が上記可動範囲内でほぼ線形関係にあり、従来の回転対偶を有する回転関節モデルに比べ、アクチュエータの疲労や制御特性の点で優位性があることがわかった。本研究の最終目的は「筋骨格ロボットハンドのシナジー制御法の確立」であり、本研究費申請時の研究計画調書ならびに昨年度(平成23年度)研究実施状況報告書の今後の推進方策においては、(1)初年度に構築したハードウェア基盤(転動関節モデル)の理論解析・従来モデルとの比較実験、(2)ヒトの把持・物体操作タスクをデータグローブ等を用いて計測・解析し、ロボットハンドに移植する研究の準備、(3)ハードウェア基盤の更なるブラッシュアップ(よりヒトの関節構造や筋肉配置に近い筋骨格ロボットフィンガーの開発)の3点を平成24年度の実施項目として掲げていた。これに対して、「研究実績の概要」に記載したとおり、(1)(3)のすべてについて当初の予定通り概ね達成することができた。ただし、(1)については、更なる詳細な理論解析が必要であり、次年度も引き続き検討を進める。本研究の最終目的は「筋骨格ロボットハンドのシナジー制御法の確立」であり、本研究費申請時の研究計画調書においては、そのハードウェア基盤として最も頻繁に使用する基本モデル:「示指モデル」の強化と再構築(現有モデルからの部分的な設計変更を含む)を、初年度(平成23年度)の必須実施項目として掲げていた。これに対して、本年度の研究により、上記現有モデル(回転対偶を基本構造とする関節モデル)に比べ制御特性や可動範囲の観点で優位性がある新規モデル(転動関節モデル)を考案し、同モデルの設計・製作ならびにその新規モデルを用いたシナジー制御の基礎実験まで完了することができた。新規モデルの挙動の理論的解析や従来モデルとの比較実験については次年度の研究に持ち越したものの、新規モデル自体は当初の想定を大きく上回るパフォーマンスを達成しており、トータルでは、おおむね順調に進展していると考えている。
KAKENHI-PROJECT-23560524
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23560524
プラズマ濃縮複合浄化法による超高・低濃度NOx・SOx・微粒子同時処理技術
これまでに行った大気圧非平衡低温プラズマとケミカルプロセスを併用したNOx, SOx同時処理実験から得られた基礎データに基づいて,火力発電所やボイラーからの低濃度排ガス(30200ppm)に対するプラズマケミカル複合プロセスによる2段式湿式プロセスによる微粒子・NOx・SOx同時完全除去装置の開発を行った.また,空気活性ガスを高温ガスに注入する方式により、NOを効率よく酸化させ、ケミカルプロセスと結合させプラズマ処理ガス量を1/5以下とするリモートプラズマ法を確立した.さらに,このコンセプトを拡張させ,リモートプラズマとケミカルスクラバを用いたパイロットスケール規模(1,000Nm^3/hr)によるボイラー排ガス中のNOx処理の確証実験を行った.その結果,90%以上の高効率NOx処理が可能なことを示した.また,低濃度排ガスを高濃度化させることで効率よく排ガス処理を行うことを目的として,プラズマ脱着による低濃度排ガスの濃縮・高濃度化実験を行った.実験はまず,モレキュラ-シーブ13Xペレットやハニカム構造疎水性ゼオライトを用いて長時間吸着処理を行い,これらの吸着材を充填したバリアタイプパルスコロナリアクタ等を用いて高効率プラズマ脱着・濃縮小風量化を行い,濃縮されたNOx・SOxの同時除去効率,反応生成物同定,消費エネルギー,経済性を評価し,最適化を検討した.また,プラズマ脱着・濃縮化されたNOx排ガスに対して,ディーゼル排ガス処理に応用可能な乾式一段プロセスの窒素プラズマを用いることで,2500ppmのNOを直接N_2に還元できる新技術も開発した.これまでに行った大気圧非平衡低温プラズマとケミカルプロセスを併用したNOx, SOx同時処理実験から得られた基礎データに基づいて,火力発電所やボイラーからの低濃度排ガス(30200ppm)に対するプラズマケミカル複合プロセスによる2段式湿式プロセスによる微粒子・NOx・SOx同時完全除去装置の開発を行った.また,空気活性ガスを高温ガスに注入する方式により、NOを効率よく酸化させ、ケミカルプロセスと結合させプラズマ処理ガス量を1/5以下とするリモートプラズマ法を確立した.さらに,このコンセプトを拡張させ,リモートプラズマとケミカルスクラバを用いたパイロットスケール規模(1,000Nm^3/hr)によるボイラー排ガス中のNOx処理の確証実験を行った.その結果,90%以上の高効率NOx処理が可能なことを示した.また,低濃度排ガスを高濃度化させることで効率よく排ガス処理を行うことを目的として,プラズマ脱着による低濃度排ガスの濃縮・高濃度化実験を行った.実験はまず,モレキュラ-シーブ13Xペレットやハニカム構造疎水性ゼオライトを用いて長時間吸着処理を行い,これらの吸着材を充填したバリアタイプパルスコロナリアクタ等を用いて高効率プラズマ脱着・濃縮小風量化を行い,濃縮されたNOx・SOxの同時除去効率,反応生成物同定,消費エネルギー,経済性を評価し,最適化を検討した.また,プラズマ脱着・濃縮化されたNOx排ガスに対して,ディーゼル排ガス処理に応用可能な乾式一段プロセスの窒素プラズマを用いることで,2500ppmのNOを直接N_2に還元できる新技術も開発した.高濃度(1,0002,000ppm)NOx・SOx・微粒子同時処理可能システムを構築するため,次の4項目を評価した.(1)プラズマ発生装置としては電気集じんの可能なバリアタイプの同軸円筒リアクタを用い,Na_2SO_3とNaOH混合液をリアクタ上部より注入し,パルスコロナやストリーマ放電によるプラズマにより酸化されたNO_2をイオン風により効率よく気液接触還元反応させる,つまり,電気集じんによる微粒子捕集とNa_2SO_3によるNO_2の還元とNaOHによるSO_3の吸収中和を同時に行う方法をとり,滞留時間1.2秒でディーゼル排ガス微粒子を88%,NOxを75%,SOxを93%以上の除去を達成できた.(2)放電電極部に還元ガス/液体を注入し,リアクタ内部にラジカルを噴霧させ,プラズマ化学反応によりNOx・SOx・微粒子同時処理を行うリモートプラズマ法を用い処理ガス量を1/10とすることができた.(3)プラズマリアクタによる乾式微粒子捕集とNO酸化,その後ケミカルリアクタによる二段湿式NOx・SOx・微粒子同時除去システムの開発,(4)デイーゼル排ガス処理として,プラズマ酸化によるNO_2と捕集されたススとの低温・無触媒燃焼と,上記のプラズマ・ケミカルプロセスによるNO_2・SOx乾式同時除去.ここで,ススとNOx発生はトレードオフの関係にあるのでディーゼル車としてC(スス)/NO_2の最適比を迫求した.結果の一例として高濃度NOx処理結果を示すと,2000ppmのNOを窒素プラズマ処理を行うことで,NOを100%N_2へ還元することに成功した,また,排ガス中のO_2の量を抑制することによりNO最大処理濃度が決まってくることが判明した.これまでに行った大気圧非平衡低温プラズマとケミカルプロセスを併用したNOx,SOx同時処理実験から得られた基礎データに基づいて,火力発電所やボイラーからの低濃度排ガス(30200ppm)に対するプラズマケミカル複合プロセスによる2段式湿式プロセスによる微粒子・NOx・SOx同時完全除去装置の開発を行った.さらに,このコンセプトを拡張させ,リモートプラズマとケミカルスクラバを用いたパイロットスケール規模(1,000Nm^3/hr)によるボイラー排ガス中のNOx処理の確証実験を行った.
KAKENHI-PROJECT-15310061
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15310061
プラズマ濃縮複合浄化法による超高・低濃度NOx・SOx・微粒子同時処理技術
その結果,90%以上の高効率NOx処理が可能なことを示した.また,低濃度排ガスを高濃度化させることで効率よく排ガス処理を行うことを目的として,プラズマ脱着による低濃度排ガスの濃縮・高濃度化実験を行った.実験はまず,モレキュラーシーブ13Xペレットやハニカム構造疎水性ゼオライトを用いて長時間吸着処理を行い,これらの吸着材を充填したバリアタイプパルスコロナリアクタ等を用いて高効率プラズマ脱着・濃縮小風量化を行い,濃縮されたNOx・SOxの同時除去効率,反応生成物同定,消費エネルギー,経済性を評価し,最適化を検討した.また,プラズマ脱着・濃縮化されたNOx排ガスに対して,ディーゼル排ガス処理に応用可能な乾式一段プロセスの窒素プラズマを用いることで,2500ppmのNOを直接N_2に還元できる新技術も開発した.同時にスケールアップに必要なリアクタや電源の設計指針やエンジニアリング評価,処理システムのトータルシステムとする最適化,設計指針の決定,経済性の評価を行った.
KAKENHI-PROJECT-15310061
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15310061
二酸化炭素ハイドレートを用いた消火に関する基礎研究
下記の研究項目について研究を実施した.1.二酸化ハイドレート結晶粒子サイズが消火効率に及ぼす影響3MPa,274Kの条件にて生成させた二酸化炭素ハイドレート結晶を大気圧,-70°Cの条件にて取り出し,その後,液体窒素温度条件にてふるいを用いてこ二酸化炭素ハイドレート結晶粒子サイズを1mm-8mmの範囲の6段階の大きさに分類した,こうして得られた各粒子サイズの結晶を直径75mmのメタノールプール火炎に供給して消火する実験を行った.この結果から,粒子サイズが小さいほど消火に要する最小のハイドレート質量(消火限界質量)が少なくて済むことがわかった.この結果から消火の効率がハイドレートの表面積および分解速度と対応していることがわかる.同一質量のハイドレートを用いる場合,粒子サイズが小さいほど表面積が大きくなる.表面積が大きいとハイドレートの分解速度は大きくなり,より多くの二酸化炭素ガスが放出され,ハイドレートの分解熱による吸熱の効果も大きくなり,消火効率が向上するものと考えることができる.2.固体燃焼(木材)の消火に関する実験木材チップを燃料として用いた消火実験も行った.この実験では二酸化炭素ハイドレート以外に氷とドライアイスを用いた実験も実施して,これらの三つの物質の消火剤として能力を比較した,実験結果から,消火の効果は二酸化炭素ハイドレート,ドライアイス,氷の順となった.二酸化炭素ハイドレートの分解によって生じる二酸化炭素ガスと水が固体燃料の消火に相乗的な効果を発揮したものと解釈することができる.本研究は二酸化炭素ハイドレートの消火剤としての機能・有効性について検証することを目的とし、消火実証試験等の実施から、その消火特性について検討を行った。試験用の二酸化炭素ハイドレートは、設定温度に対応する二酸化炭素ハイドレートの平衡圧以上且つ二酸化炭素の蒸気圧以下の適切な圧力に調整可能な高圧密閉反応容器中において、水と二酸化炭素を反応させることで合成した。消火試験は、直径50100mmのシャーレ上にメタノールのプール火炎を形成させ、火炎上方よりハイドレート粉末を落下散布することで実施し、消火時の火炎挙動をビデオカメラにて記録・観察した。結果として、二酸化炭素ハイドレートは十分な消火能力を有し、消火剤として機能することが示された。また、消火時の火炎挙動においては、二酸化炭素ハイドレート散布位置から外部に向かって徐々に火炎が消失していく様子が観察された。この挙動は、二酸化炭素ハイドレートの分解・吸熱による低温領域の拡大、燃焼場への二酸化炭素の拡散による燃料濃度の低下及び酸素供給の遮断が消火に大きく寄与していることを示唆している。さらに、消火に必要な二酸化炭素ハイドレートの最低散布量は火炎の大きさ(プール面積)に比例することが明らかとなった。尚、本成果の一部は、既に第45回日本燃焼シンポジウムにおいて発表し、第6回ガスハイドレート国際会議において発表することが決定している。さらに現在においては、二酸化炭素ハイドレートの消火能力に対して、既存の消火剤であるドライアイス(固体二酸化炭素)、水、氷等との比較試験を開始している。今後は、ハイドレート消火剤の優位性や欠点を明らかにする等、実用化を念頭に置いた現象の物理的解釈や基礎的特性の把握に努め、ハイドレート消火剤の基盤技術を構築していく予定である。下記の研究項目について研究を実施した.1.二酸化ハイドレート結晶粒子サイズが消火効率に及ぼす影響3MPa,274Kの条件にて生成させた二酸化炭素ハイドレート結晶を大気圧,-70°Cの条件にて取り出し,その後,液体窒素温度条件にてふるいを用いてこ二酸化炭素ハイドレート結晶粒子サイズを1mm-8mmの範囲の6段階の大きさに分類した,こうして得られた各粒子サイズの結晶を直径75mmのメタノールプール火炎に供給して消火する実験を行った.この結果から,粒子サイズが小さいほど消火に要する最小のハイドレート質量(消火限界質量)が少なくて済むことがわかった.この結果から消火の効率がハイドレートの表面積および分解速度と対応していることがわかる.同一質量のハイドレートを用いる場合,粒子サイズが小さいほど表面積が大きくなる.表面積が大きいとハイドレートの分解速度は大きくなり,より多くの二酸化炭素ガスが放出され,ハイドレートの分解熱による吸熱の効果も大きくなり,消火効率が向上するものと考えることができる.2.固体燃焼(木材)の消火に関する実験木材チップを燃料として用いた消火実験も行った.この実験では二酸化炭素ハイドレート以外に氷とドライアイスを用いた実験も実施して,これらの三つの物質の消火剤として能力を比較した,実験結果から,消火の効果は二酸化炭素ハイドレート,ドライアイス,氷の順となった.二酸化炭素ハイドレートの分解によって生じる二酸化炭素ガスと水が固体燃料の消火に相乗的な効果を発揮したものと解釈することができる.
KAKENHI-PROJECT-19656059
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19656059
ヒストンメチル化による転写制御メカニズムの構造の基盤
本課題の研究成果を、本年度の研究実施計画のサブテーマごとに記載する。(1)ヒストンメチル化酵素の他の因子による転写調節機構の解明:18年度は、ヒストンメチル化酵素MLLのリガンド配列認識ドメインであるCpG結合ドメインと基質であるCpG-DNAとの一種類の複合体の結晶化、構造決定に成功していたが、本年度はさらに基質DNAの塩基配列を変えた複合体二種類の結晶化、構造解析に成功した。CpG結合ドメインの三種類の基質との相互作用様式を比較することで、ドメインが非特異的な塩基認識機構をうまく用いてメチル化の有無という小さな変化を見分けるメカニズムを解明した。さらに得られた構造を基にヌクレオソームとの複合体モデルを構築することで、MLL蛋白質がターゲットであるプロモーター領域に局在するメカニズムを説明する事ができた。また、MLL蛋白質とポリコーム蛋白質であるPC2が結合して転写調節を行っている事が2007年に報告され、両者の相互作用解析を進め、ていたが、興味深いことにMLLとPC2は直接結合せず、ある因子を介して相互作用を行っていることがNMRを用いた相互作用解析より判明した。変異体を用いた解析よりPC2上で因子と相互作用しているアミノ酸残基の同定に成功した。それらの残基はPC2の本来の機能であるメチル化されたヒストンテイルの結合面とは反対側に位置し、ポリコームタンパク質間で保存されていることから新たな転写調節機構、メチル化修飾因子間のクロストークを示せているのではないかと考えている。(2),(3)JmiCドメインのピストン脱メチル化反応機構の解明:ヒトPSRのJmjCドメインの大腸菌での発現、精製に成功した。PSRはGST融合蛋白質として発現した場合は不安定で、6-His融合蛋白質として調製した。この融合蛋白質を用いて結晶化を行ったが結晶を得ることは出来なかった.。本課題の研究成果を、本年度の研究実施計画のサブテーマごとに記載する。(1).ヒストンメチル化酵素の他の因子による活性調節機構の解明ヒストンメチル化酵素MLLのリガンド配列認識ドメインであるCpG結合ドメインの大腸菌での大量調製、精製に成功した。基質との相互作用に必要なアミノ酸配列をNMR法を用いて同定した。その後、NMR法で同定したドメイン領域と基質との複合体の結晶化を行い、構造決定に成功した。これまでに、2.0オングストロームまでのX線反射データを用いて精密化を完了している(R/Rfreeは21.7%/25.4%)。これにより、MLLのリガンド配列認識機構の詳細が判明した。また、2007年3月にCpG結合ドメインとPolycomb蛋白質であるHPC2のクロモドメインが結合することが報告された。これは、二種類のヒストンメチル化活性-ピストンH3K4メチル化とH3K27メチル化一の新たなクロストークを示すものであり、現在、CpG結合ドメインとの相互作用解析のためのHPC2の調製を進めている。(2),(3)Jmjcドメインのピストン脱メチル化反応機構、調節機構の解明ヒトPSRを中心に研究を進めている。これまで、PSRのJmjcドメインの大腸菌での発現、精製に成功している。PSRはGST融合蛋白質として発現した場合は不安定で、6-ヒスチジン融合蛋白質としての調製する事が必要であった。これはGST蛋白質がPSRの2量体化を阻害しているためと考えられた。また、大腸菌より蛋白質を調整してくる際に、超音波破砕器ではなく高圧ホモジナイザーの使用が蛋白質の安定化に重要であった。この6-ヒスチジン融合蛋白質を用いて結晶化を行っているが、まだ結晶は得られていない。本課題の研究成果を、本年度の研究実施計画のサブテーマごとに記載する。(1)ヒストンメチル化酵素の他の因子による転写調節機構の解明:18年度は、ヒストンメチル化酵素MLLのリガンド配列認識ドメインであるCpG結合ドメインと基質であるCpG-DNAとの一種類の複合体の結晶化、構造決定に成功していたが、本年度はさらに基質DNAの塩基配列を変えた複合体二種類の結晶化、構造解析に成功した。CpG結合ドメインの三種類の基質との相互作用様式を比較することで、ドメインが非特異的な塩基認識機構をうまく用いてメチル化の有無という小さな変化を見分けるメカニズムを解明した。さらに得られた構造を基にヌクレオソームとの複合体モデルを構築することで、MLL蛋白質がターゲットであるプロモーター領域に局在するメカニズムを説明する事ができた。また、MLL蛋白質とポリコーム蛋白質であるPC2が結合して転写調節を行っている事が2007年に報告され、両者の相互作用解析を進め、ていたが、興味深いことにMLLとPC2は直接結合せず、ある因子を介して相互作用を行っていることがNMRを用いた相互作用解析より判明した。変異体を用いた解析よりPC2上で因子と相互作用しているアミノ酸残基の同定に成功した。それらの残基はPC2の本来の機能であるメチル化されたヒストンテイルの結合面とは反対側に位置し、ポリコームタンパク質間で保存されていることから新たな転写調節機構、メチル化修飾因子間のクロストークを示せているのではないかと考えている。(2),(3)JmiCドメインのピストン脱メチル化反応機構の解明:ヒトPSRのJmjCドメインの大腸菌での発現、精製に成功した。
KAKENHI-PROJECT-18779006
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ヒストンメチル化による転写制御メカニズムの構造の基盤
PSRはGST融合蛋白質として発現した場合は不安定で、6-His融合蛋白質として調製した。この融合蛋白質を用いて結晶化を行ったが結晶を得ることは出来なかった.。
KAKENHI-PROJECT-18779006
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パーキンソン病患者の歩行リズムに影響を及ぼす内的リズム形成の重要性
本研究は、パーキンソン病患者の「歩行中のすくみ足」に、上肢のタッピングによる自発的リズム運動(内的リズム運動)訓練がもたらす効果について実験的に調べ、脳内のリズム形成障害とすくみ足の重症度の関係を運動学的分析と脳科学的分析手法を用いて解明することが目的である。3年次(30年度)は、タッピング運動と歩行リズムの定量化が可能となっているため、多くの実験を実施することができた。まずは以前の結果から、パーキンソン病患者のデータを測定したが、加齢影響の可能性を排除できないことや、内的リズム運動の学習課題の種類について検討する必要が出てきた。そのため、30年度は、高齢者13名と若年者15名に対して、内的リズム課題の学習効果を検討した。結果は高齢者であっても内的リズム課題をある程度の精度で実施できることが示された。また学習課題は上肢を利用した場合でも、下肢を利用した場合でも大きな差がないことが示された。この結果は4年次の5月に行われる国際学会(World Confederation for Physical Therapy)で発表する予定である。さらにパーキンソン病患者7名のデータを取得することができ大幅に研究が進展した。現在は、さらなるPD患者データ取得と、研究成果を国際誌に投稿するために論文執筆中である。また脳科学的分析手法を用いて、脳と外的・内的リズム運動の関係を検討する予定であったが、実験環境の確保が難しいため研究の方向性を運動学的分析を中心とするように修正した。患者データの取得が難しかったこと、加齢影響など他に検討すべき事項があったために、本研究の進行状況は予定よりも遅れている状態にある。脳科学的分析については川崎医科大学附属病院で研究協力者を確保し実験環境が整備しつつあるが、被験者の数など実施がかなり難しい状況にある。その後、高齢者と若年者を比較し加齢影響について、高齢者とパーキンソン患者を比較し、パーキンソン病患者における内的リズム形成障害と歩行の関係性を整理し、論文を投稿していく予定である。本研究の目的は、パーキンソン病患者の「歩行中のすくみ足」に、上肢のタッピングによる自発的リズム運動(内的リズム運動)訓練がもたらす効果について実験的に調べ、脳内のリズム形成障害とすくみ足の関係を運動学的分析と脳科学的分析手法を用いて解明することである。27年度(一年目)は、実験環境の点において、タッピング運動のパフォーマンスの定量化するためのタッピング機器を作成した。さらに歩行のリズムを定量化するために加速度計データ分析用プログラムを作成した。また倫理的配慮の点において、倫理審査書類を作成し、川崎医療福祉大学での倫理審査委員会にて研究の許可が下りている。さらに協力病院の倫理審査を経て研究許可を得ることができた。現在では、PD患者3名のタッピングと歩行、高次機能障害などの基本情報を得て、解析を終了している。交付申請書類にあるようにメトロノーム音あり、なしで、定常歩行リズムの20%増、20%減の2条件でタッピングを被験者に実施させた。その後、歩行リズムを計測した。内的リズムタッピング、外的リズムタッピング、どちらも上手くできる被験者がいる一方で、歩行が自立していても内的・外的タッピングができない患者も存在し、予想外の結果となった。このプレ実験では、タッピング運動が歩行に及ぼす影響について良好な結果を得られず、研究者協力者とともに改善点を洗い出し、被験者への指示などを含めた実験デザインと、測定方法などの再検討を行っている。データ数がまだ十分ではなく、本研究の進行状況は予定よりも遅れている状態である。理由は2つ挙げられ、1つ目は想定したよりも被験者協力を得られるパーキンソン病患者の数が少なかったことである。2つ目は実験時にすくみ足をとらえることが難しく、デザインを検討する必要があった点である。30年度の予定は介入研究であり、それは現在模索している実験手法の延長線上にあるため、遅れは取り戻せると考えている。本研究は、パーキンソン病患者の「歩行中のすくみ足」に、上肢のタッピングによる自発的リズム運動(内的リズム運動)訓練がもたらす効果について実験的に調べ、脳内のリズム形成障害とすくみ足の関係を運動学的分析と脳科学的分析手法を用いて解明することが目的である。1年次(28年度)ではタッピング運動と歩行リズムの定量化ができるようになったが、思うような結果を得ることができなかった。2年次(29年度)には研究者協力者とともに改善点を洗い出し、被験者への指示などを含めた実験デザインと、測定方法などの再検討した。その後、改めて上肢タッピング課題がパーキンソン病患者の歩行リズムに与える影響について実験を行った。これにより新たな運動学的データを取得し、解析を行った。結果は内的リズム課題がパーキンソン病患者の歩行リズムに影響を与える可能性を示した。この結果を学会発表し、現在は研究成果を国際誌に投稿するために論文執筆中である。しかしながら、加齢影響の可能性を排除できないことや症例数の少なさが問題となっている。これらの結果を受けて、今年度は実験デザインを洗練させ4-6月に高齢者と若年者、7-8月にPD患者の運動学的データを再び計測する予定である。また本研究のもう一本の柱である脳科学的分析に関しては未だ実行するには至っていない。
KAKENHI-PROJECT-16K16474
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K16474
パーキンソン病患者の歩行リズムに影響を及ぼす内的リズム形成の重要性
しかし、前年度は実施が難しい環境にあったが、川崎医科大学附属病院での実験環境のセットアップに尽力し、実験準備が整いつつある。データ数がまだ十分ではなく、本研究の進行状況は予定よりも遅れている状態である。内的リズム運動が歩行速度や歩数には影響を与えないが、リズムに影響を与えることが明らかとなってきた。しかしがなら、先行研究では聴覚的なリズム刺激がパーキンソン病患者の歩行を改善するといわれているが、実際にどの程度リズム情報が利用されているかは明らかではなく、不明な点も多い。より詳細に検討していくべき事項が存在する。本研究は、パーキンソン病患者の「歩行中のすくみ足」に、上肢のタッピングによる自発的リズム運動(内的リズム運動)訓練がもたらす効果について実験的に調べ、脳内のリズム形成障害とすくみ足の重症度の関係を運動学的分析と脳科学的分析手法を用いて解明することが目的である。3年次(30年度)は、タッピング運動と歩行リズムの定量化が可能となっているため、多くの実験を実施することができた。まずは以前の結果から、パーキンソン病患者のデータを測定したが、加齢影響の可能性を排除できないことや、内的リズム運動の学習課題の種類について検討する必要が出てきた。そのため、30年度は、高齢者13名と若年者15名に対して、内的リズム課題の学習効果を検討した。結果は高齢者であっても内的リズム課題をある程度の精度で実施できることが示された。また学習課題は上肢を利用した場合でも、下肢を利用した場合でも大きな差がないことが示された。この結果は4年次の5月に行われる国際学会(World Confederation for Physical Therapy)で発表する予定である。さらにパーキンソン病患者7名のデータを取得することができ大幅に研究が進展した。現在は、さらなるPD患者データ取得と、研究成果を国際誌に投稿するために論文執筆中である。また脳科学的分析手法を用いて、脳と外的・内的リズム運動の関係を検討する予定であったが、実験環境の確保が難しいため研究の方向性を運動学的分析を中心とするように修正した。患者データの取得が難しかったこと、加齢影響など他に検討すべき事項があったために、本研究の進行状況は予定よりも遅れている状態にある。脳科学的分析については川崎医科大学附属病院で研究協力者を確保し実験環境が整備しつつあるが、被験者の数など実施がかなり難しい状況にある。研究デザインを改善し、今後は被験者数を増やしていく。具体的な改善点として、1つ目は患者への指示の与え方が、示唆的であり、もっと具体的に指示を与えることとする。2つ目はデータより上肢のリズム運動が下肢に転移するかどうかも、再検討する必要があった。リズム形成障害なのか、筋力の低下なのか、障害の左右差の問題なのか分からず、課題の難易度設定を考慮し、座位での下肢でのリズム運動も測定する。3つ目にパーキンソン病患者の特徴を検出するために、対応させた高齢者のデータも測定する。脳科学的分析手法を用いて、脳と外的・内的リズム運動の関係を検討する予定であったが、実験環境の確保が難しいため研究の方向性を修正して実施する予定である。運動学的分析を行うための環境は整っているので、データ数を確保するともに、リズム情報の利用程度について詳細に検討していく。このことでより神経メカニズムに基づいたリハビリテーション方略を考案できると考えている。
KAKENHI-PROJECT-16K16474
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RTM法によるFRP成形の超音波を用いたスマート化
RTM法により高品質な繊維強化プラスチック(FRP)を短い成形サイクルで得る手法の確立を目的とし,超音波を用いたスマート化について検討した。樹脂流動については,金型の外側表面に貼り付ける圧電フィルムを加工し,較正区間と測定区間を設けることにより樹脂流動先端位置のリアルタイムモニタリングが可能であることが明らかになった.樹脂の硬化度については,電磁超音波センサ,圧電フィルムを用いて評価可能であり,特に圧電フィルムは樹脂中の縦波音速変化を検出していることを確認した.RTM法により高品質な繊維強化プラスチック(FRP)を短い成形サイクルで得る手法の確立を目的とし,超音波を用いたスマート化について検討した。樹脂流動については,金型の外側表面に貼り付ける圧電フィルムを加工し,較正区間と測定区間を設けることにより樹脂流動先端位置のリアルタイムモニタリングが可能であることが明らかになった.樹脂の硬化度については,電磁超音波センサ,圧電フィルムを用いて評価可能であり,特に圧電フィルムは樹脂中の縦波音速変化を検出していることを確認した.複雑な3次元形状を有するFRPの製作に適しているRTM法において,金型内部の樹脂流動状態を評価できれば高品質な製品を効率よく成形することが可能になる.従来用いられてきた誘電率センサは,金型内部に埋め込まれるため製品の表面性状や強度に影響を及ぼす可能性がある.本研究は,金型内側表面での超音波の反射率が樹脂の接触や硬化により変化することを利用し,金型外側表面に設置したセンサを用いて樹脂流動および硬化のモニタリングを行う技術の確立を目的としている.これまでの研究で,平板の成形においては電磁超音波センサにより金型中に発生させたせん断波定在波の振幅から測定部における樹脂先端の通過を検出できることが確認された.今年度は圧電フィルムを用いて半円筒形金型における樹脂流動モニタリングを試みた.圧電フィルムは金型との接触状態を一定にするため金型外側表面に貼付した.そのため測定位置の走査は行えないが,変換効率の低さを補うため定在波を用いる電磁超音波センサが温度変化に伴う共振周波数変化の影響を受けるのに対し,パルス波による駆動が可能であるため温度変化に伴う音速変化の影響を受けない.ここでは金型内側表面での第1反射波と第2反射波の振幅比を求めた.樹脂流動先端位置の連続測定を行うためには短冊状の圧電フィルムの利用が望ましい.樹脂だけの成形を行った結果,短冊状の圧電フィルムの測定領域はほぼフィルム寸法と同じであり,振幅比は樹脂流動とともに線形的に低下した.リアルタイムでのモニタリングをめざし,一部分を無効にすることにより単位長さあたりの振幅比低下量を求められる形状のフィルムを用いて流動モニタリングを行った結果,樹脂だけの場合はリアルタイムでの流動モニタリングの可能性が示された.ただし,強化繊維を積層すると繊維体積含有率が低い状態では繊維と金型との接触状態が一様ではないため誤差が大きくなった.0複雑な三次元形状の製品の成形に適しているRTM法では,あらかじめ強化繊維を設置した金型内に樹脂を注入して硬化させるため金型内部の状態が確認できず,高品質な成形品を短い成形サイクルで得るために樹脂の流動や硬化度をモニタリングするスマート化が望まれている.本研究は金型外側表面に設置した超音波センサを用いて金型内側表面での反射率変化を検出することにより樹脂流動先端位置および樹脂の硬化度を評価する手法の確立を目的としている.平成22年度は曲面にも接着できるという圧電フィルムの特長を活かすため,半円筒形金型を用いて樹脂流動モニタリングを行った.短冊状の圧電フィルムの一部を無効化することにより較正部と測定部を設け,樹脂流動先端の較正部通過に伴う振幅低下量を基準として測定部通過中の振幅低下量を規格化する方法を提案した.まず,金型内側表面における樹脂先端位置を目視で確認できるよう強化繊維を設置せず樹脂だけを注型し,樹脂先端位置と振幅低下量との関係を求めた.次に強化繊維を設置した金型に樹脂を注入し,同様の測定を行った.強化繊維がある場合のほうが振幅低下量は大きいが,較正部での低下量で規格化することにより両者の結果がほぼ一致することが確認された.振幅の低下量と樹脂先端位置の関係は完全に線形ではなく,圧電フィルムの接着状態に起因するわずかな非線形性が見られた.このような場合であってもあらかじめ樹脂だけの注型により求めた較正曲線を用いることにより,実際の成形時に樹脂流動先端位置を数mmの精度で評価できることが明らかになった.本研究は,RTM法によるFRP成形のスマート化を目的とし,金型外側表面に設置した超音波センサを用いて樹脂の流動先端位置および硬化度を実時間モニタリングする技術の確立を目指したものである.平成23年度は樹脂の硬化モニタリングに焦点を当て,基礎的な研究として金型内側表面での反射率変化が樹脂特性の変化を理論どおり反映しているかを調べた.硬化初期の樹脂が粘性流体であることから,圧電フィルムを用いた測定では縦波に対する音響インピーダンス,せん断波用電磁超音波センサを用いた測定では樹脂の粘度に依存した反射率変化が起こると考えられる.圧電フィルムを用いた樹脂中の縦波音速測定および粘度計を用いた樹脂粘度の測定を行うため,強化繊維を用いずに樹脂だけの注型実験を行い,反射率の測定結果と比較した.反射率は縦波については金型中の多重エコーの振幅比,せん断波については金型内に発生させた定在波の減衰として求めた.
KAKENHI-PROJECT-21560099
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21560099
RTM法によるFRP成形の超音波を用いたスマート化
圧電フィルムを用いた測定では,樹脂中を伝播して反対側の金型表面で反射したエコーが金型中の第1エコーと第2エコーの間に観測されるように厚い金型を用いた.硬化に伴い樹脂中の音速が増加し,金型内側表面での反射率が低下する傾向は見られたが,音響インピーダンスから理論的に求められる反射率変化とは一致しなかった.電磁超音波センサおよび粘度計を用いた測定では,硬化に伴い増加するせん断波定在波の減衰が一旦低下するBステージと思われる時期に粘度上昇の割合が低下することが確認できた.ただし,粘度低下までは起こっておらず,減衰が低下する原因の特定には至っていない.本研究は,高品質なFRPを効率よく成形する技術の確立を目的とし,RTM法によるFRPの成形時に樹脂の流動および硬化をリアルタイムでモニタリングするスマート化の手法について検討したものである.従来用いられてきた誘電率センサが金型内に設置する必要があるのとは異なり、金型の外側表面に設置した超音波センサにより金型内側表面における反射率変化を検出し,樹脂の流動および硬化のモニタリングを試みる.平成24年度は前年度に引き続き樹脂だけを注型成形し,硬化モニタリングにおいて樹脂の特性と反射率との関係が理論と一致するかどうかを確認した.電磁超音波センサを用いた測定では,せん断波の反射率と樹脂粘度との関係を調べた.粘度計ローターの浸液深さを変化させ,得られた結果を補正することにより測定限界を超えた粘度の測定も可能にする手法を提案したが,硬化に伴い減少する反射率が一旦増加するBステージと思われる時間帯であっても粘度低下は検出されなかった.圧電フィルムを用いた測定では,樹脂中の縦波音速と金型内側表面での反射率との関係を調べた.圧電フィルムを貼付していないほうの金型の内側表面を加工し,金型から樹脂に透過した縦波の反射波が検出されない領域で反射率を測定するように改良し,温度変化による金型中の縦波音速変化も考慮した結果,縦波音速から理論的に得られる反射率と測定された反射率とが一致することが明らかになった.また,樹脂中の縦波音速は反射率と比較して測定精度が高く硬化モニタリングに適したパラメータであることが明らかになったが,樹脂の硬化過程で減衰が大きく音速測定が不可能な時間帯が現れるため,常時測定可能な反射率の有効性が確認された.本研究は,RTM法によるFRP成形時の樹脂流動先端位置と樹脂の硬化度を金型外部に設置した超音波センサにより評価する技術の確立を目指したものである.樹脂流動に関しては多点型電磁超音波センサによる離散測定および圧電フィルムによる連続測定が可能であることが平成22年度までの研究で確認されており,平成23年度は樹脂硬化に関して理論と定性的に一致する傾向が確認できた.最終年度では,理論との定量的な差の原因を明らかにし,実際にFRP成形を行い硬化モニタリングの可能性を検証することで実用化の可能性を示すことができる.24年度が最終年度であるため、記入しない。最終年度である平成24年度は,樹脂硬化時に金型内側表面における反射率変化が起こるメカニズムを明らかにするとともに,実際にRTM法によるFRPの成形を行い,電磁超音波センサおよび圧電フィルムによる硬化モニタリングの可能性について検討する.実用化を視野に入れ,2種類のエポキシ樹脂に対していくつかの異なる温度下での成形を行い,汎用性のある硬化モニタリング手法の確立を目指す.
KAKENHI-PROJECT-21560099
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21560099
生体活性骨修復材料の設計
本研究代表者らは先に,アパタイトとウオラストナイトを含む結晶化ガラスが,生体内で骨と自然に強く化学的に結合し,しかも長期に亘って高い機械的強度を示すことを明らかにした.この種の生体活性は骨修復材料の特性として重要であるが,それを支配する因子は未だ明らかでない.本研究代表者らはこれ迄に,生体内でその表面に骨の無機質と同様のアパタイト層を形成することが,生体活性を示す材料の条件であると推定した.本研究は,その種のアパタイト層を形成する材料の条件を研究することによって,生体活性骨修復材料を設計する指針を明らかにすることを目的とする.そのために本研究では,生体活性の異なる5種類のガラス及び結晶化ガラスの顆粒状試料を擬似体液に浸漬し,種々の時間経過擬似体液のイオン濃度変化を高周波誘導結合プラズマ発光分光法により調べた.擬似体液としては,細胞を含まず,無機イオン濃度だけをヒトの血漿のそれにほぼ等しくしたものを用いた.その結果,次の事が明らかになった.1)生体内で表面にアパタイト層を形成し,骨を結合するガラス及び結晶化ガラスはいずれもCa, Si及びMgをCa>Si>Mgの順に多く擬似体液中に溶出するが,表面にアパタイト層を生成せず,骨と結合しない結晶化ガラスはこれらの元素をほとんど溶出しない.2)これらの元素はいずれも,結晶化ガラス中のアパタイト以外の相,すなわちガラス相やウオラストナイト相から溶出するが,その溶出は,少量のAl_2O_3成分の添加によって著しく抑制される.3)上記成分は,体液のアパタイトに対する過飽和度を高めると共に,材料表面にアパタイトの核形成に有利な位置を生成する役割りを果す.従って,生体活性材料の設計には,上記元素の溶出を適当に制御することが重要であると結論される.本研究代表者らは先に,アパタイトとウオラストナイトを含む結晶化ガラスが,生体内で骨と自然に強く化学的に結合し,しかも長期に亘って高い機械的強度を示すことを明らかにした.この種の生体活性は骨修復材料の特性として重要であるが,それを支配する因子は未だ明らかでない.本研究代表者らはこれ迄に,生体内でその表面に骨の無機質と同様のアパタイト層を形成することが,生体活性を示す材料の条件であると推定した.本研究は,その種のアパタイト層を形成する材料の条件を研究することによって,生体活性骨修復材料を設計する指針を明らかにすることを目的とする.そのために本研究では,生体活性の異なる5種類のガラス及び結晶化ガラスの顆粒状試料を擬似体液に浸漬し,種々の時間経過擬似体液のイオン濃度変化を高周波誘導結合プラズマ発光分光法により調べた.擬似体液としては,細胞を含まず,無機イオン濃度だけをヒトの血漿のそれにほぼ等しくしたものを用いた.その結果,次の事が明らかになった.1)生体内で表面にアパタイト層を形成し,骨を結合するガラス及び結晶化ガラスはいずれもCa, Si及びMgをCa>Si>Mgの順に多く擬似体液中に溶出するが,表面にアパタイト層を生成せず,骨と結合しない結晶化ガラスはこれらの元素をほとんど溶出しない.2)これらの元素はいずれも,結晶化ガラス中のアパタイト以外の相,すなわちガラス相やウオラストナイト相から溶出するが,その溶出は,少量のAl_2O_3成分の添加によって著しく抑制される.3)上記成分は,体液のアパタイトに対する過飽和度を高めると共に,材料表面にアパタイトの核形成に有利な位置を生成する役割りを果す.従って,生体活性材料の設計には,上記元素の溶出を適当に制御することが重要であると結論される.
KAKENHI-PROJECT-62604575
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62604575
イネの転流を制御する分子機構の解明
本研究では、イネにおける転流の制御機構を分子レベルで明らかにすることを目的とした。葉身のSPS活性が異なる準同質遺伝子イネ系統を用いて、葉身SPS活性が炭素・窒素の分配に及ぼす影響を調べた。その結果、SPS活性が高い系統では転流が促進されることが明らかとなった。よって、ソース組織におけるSPS活性は同化産物の転流を制御する一因子であることが分かった。また、シンク組織とソース組織、およびシンク維管束とソース維管束との間での遺伝子発現パターンにおける違いを、マイクロアレイを用いて網羅的に解析した。その結果、シンクまたはソースで特異的に遺伝子のリストを得た。これらの遺伝子リストは、イネの同化産物転流の分子機構の解明する上で重要な知見になるだろう。本研究では、イネにおける転流の制御機構を分子レベルで明らかにすることを目的とした。葉身のSPS活性が異なる準同質遺伝子イネ系統を用いて、葉身SPS活性が炭素・窒素の分配に及ぼす影響を調べた。その結果、SPS活性が高い系統では転流が促進されることが明らかとなった。よって、ソース組織におけるSPS活性は同化産物の転流を制御する一因子であることが分かった。また、シンク組織とソース組織、およびシンク維管束とソース維管束との間での遺伝子発現パターンにおける違いを、マイクロアレイを用いて網羅的に解析した。その結果、シンクまたはソースで特異的に遺伝子のリストを得た。これらの遺伝子リストは、イネの同化産物転流の分子機構の解明する上で重要な知見になるだろう。本研究では、イネの生産性に関わるシンクとソースの関係、および両者の相互作用を考慮に入れた上で、ソース器官からのシンク器官への代謝物のフローを13C-、15N-トレーサー実験とキャピラリー電気泳動・質量分析計(CE-MSIMS)を組み合わせて定量的に解析すると同時に、両器官それぞれの篩部で特異的に発現する遺伝子をレーザーマイクロダイセクション(LMD)/マイクロアレイ法を用いた網羅的解析により特定することによって、イネの生産性を考える上で重要な転流機能を代謝レベルおよび分子レベルで明らかにする。初年度である平成20年度は、次年度以降に行う本格的なメタボローム解析および遺伝子発現解析のための基礎データの収集を中心に行った。1.炭素・窒素分配の解析(担当:大杉)コシヒカリ/カサラスSPS1-NIL系統(SPS活性がコシヒカリより高い)および日本晴SPS1-Tos17系統(SPS活性が日本晴より低い)を東京大学農学生命科学研究科附属農場の圃場にて栽培し、以下のような結果を得た。(1)コシヒカリ/カサラスSPS1-NIL系統と対照品種(コシヒカリ)を比較したところ、最終的な収量には差がなかったものの、穂数、登熟歩合、千粒重はコシヒカリが大きく、1穂あたりの籾数についてはSPS1-NILの方が多かった(2)日本晴SPS1-Tos17系統と対照品種(日本晴)を比較したところ、生育および収量に明確な差は見られなかったが、SPS1-Tos17系統で茎数がやや少なくなる傾向が見られた。次年度は、栽植密度を変えて両者の比較を行う予定である。2.メタボローム解析(担当:青木)水耕栽培した栄養成長期のイネ(日本晴)を用いて、15Nを用いたトレーサー実験を行い、メタボローム解析への応用を試みた。その結果、ソース(葉身)とシンク(根)における代謝フローの特徴が明らかになり、21年度に行う(1で供試した系統を用いた)本格的な実験のための基礎データが得られた。3.イネの篩部における遺伝子発現解析(担当:廣瀬)栄養成長期の成熟葉(ソース)と未熟葉(シンク)、また登熟初期(開花後7日目)の止葉葉身(ソース)と頴果(シンク)を用いて、LMD法による篩部の単離法および笛部サンプルからのRNAの抽出法について条件検討を行い、マイクロアレイ実験を行うのに十分な質と量のRNAを得るためのプロトコルを作成した。21年度前半には44k-イネ・マイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析を行う予定である。1.炭素・窒素分配の解析(担当:大杉)コシヒカリ/カサラスSPS1 NIL系統(SPS活性がコシヒカリより高い)および対照系統(コシヒカリ)を東京大学農学生命科学研究科附属農場の圃場にて栽培し、両者を比較したところ、最上位完全展開葉または止葉におけるSPS活性は、水田への移植時および幼穂形成期ではSPS1-NILがコシヒカリより有意に高かったが、出穂期および成熟期では有意差は見られなかった。収量に関してはSPS1-NILがコシヒカリより高い傾向を示した。収量構成要素については、1穂あたりの籾数についてはSPS1-NILで有意に多かったが、1m^2あたりの穂数、登熟歩合、千粒重に関してはコシヒカリのほうが優れていた。これらのことから、SPS1-NILは日本晴に比べて、栄養成長期から幼穂形成期にかけての乾物生産(ソース能)が高くなっている可能性が示唆された。2.メタボローム解析(担当:青木)水耕栽培したイネ幼苗(日本晴)を用いて、15Nを用いたトレーサー実験を行い、メタボローム解析への応用を試みた。その結果、15N添加後のソース(葉身)とシンク(根)における窒素化合物の代謝フローの特徴が明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-20380010
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イネの転流を制御する分子機構の解明
次年度は、この手法を用いて上記のSPS1-NIL系統と対照系統の窒素代謝をする予定である。3.イネの篩部における遺伝子発現解析(担当:廣瀬)シンク組織およびソース組織で発現する遺伝子を探索するために、栄養成長期の未熟葉身(シンク)と成熟葉身(ソース)、また出穂9日前の葉鞘(シンク)と出穂後9日後の葉鞘(ソース)からRNAを抽出し、44k-イネ・マイクロアレイを用いて両組織間の遺伝子発現の違いを網羅的に解析した。その結果、シンク葉身/葉鞘での発現量がソース葉身/葉鞘の3倍以上すなわちシンク組織で発現の高い遺伝子(633個)、また逆に1/3以下すなわちソース組織で発現の高い遺伝子(369個)がリストアップされた。このような「葉身と葉鞘で共通する遺伝子リスト」には、組織の発達段階や代謝生理に関係なく、ソース組織およびシンク組織で特異的に発現している遺伝子が多く含まれると考えられる。特に、物質の輸送に関わると考えられる膜タンパク質の遺伝子は、ソース組織においてはローディング経路に、シンク組織においてはアンローディング経路に関与することが予想される。1.炭素・窒素分配の解析(担当:大杉)コシヒカリ/カサラスSPS1-NIL系統(SPS活性がコシヒカリより高い)および対照系統(コシヒカリ)を東京大学農学生命科学研究科附属生態調和農学機構の圃場にて栽培し、生育、乾物生産および収量厚生要素について両者を比較したところ、20年度および21年度の栽培試験と同様の結果が得られた。すなわち、SPS1-NILではコシヒカリに比べて、栄養成長期から幼穂形成期にかけての葉身SPS活性が高く、また、一穂籾数が多くなることが明らかとなった。このような複数年に渡る栽培試験の結果から、SPS1-NILの生産生理的特性が明らかになった。2.メタボローム解析(担当:青木)上記のSPS1-NIL系統と対照系統(コシヒカリ)をポット栽培し、穂孕み期に^<13>CO_2付与実験を行い、葉身から穂への^<13>Cの転流速度や分配率を両系統間で比較した。^<13>CO_2の付与は午前9時から3時間行い、付与終了直後、午後6時(6時間後)、および次の口の午前6時(18時間後)に各系統4個体ずつを穂、葉身および茎部に分けてサンプリングした。各サンプルは80°Cで乾燥後、粉砕し、含有^<13>C量を質量分析計によって測定した。その結果、SPS1-NILはコシヒカリに比べて、^<13>Cの穂への分配率が高く葉身から穂への同化産物の転流速度が高くなっている可能性が示唆された。以上の結果は、上記1の栽培試験の結果と合わせて原著論文として発表する予定である(投稿準備中)。3.イネの篩部における遺伝子発現解析(担当:廣瀬)標準品種(日本晴)を通常の栽培条件で生育させ、栄養成長期の成熟葉(ソース)と未熟葉(シンク)をサンプリングし、それぞれの組織サンプルについて、LMD法による維管束の切り出しおよびRNA抽出を行った。得られたRNAサンプルを用いてソース維管朿とシンク維管束の間の遺伝子発現における違いを、44k-イネ・マイクロアレイによって網羅的に解析した。その結果、シンク維管束での発現量がソース維管束の2倍以上すなわちシンクで発現の高い遺伝子(52個)、また逆に1/2以下すなわちソースで発現の高い遺伝子(89個)がリストアップされた。これらの遺伝子は、ソース組織においては同化産物のローディング経路に、シンク組織においてはアンローディング経路に関与することが予想される。
KAKENHI-PROJECT-20380010
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甲状腺ホルモンによるアフリカツメガエル肝細胞の分化機構
これまでに、アフリカツメカエル肝細胞のエストロゲン依存性ヴィテロジェニン合成能力は変能期に獲得され、甲状腺ホルモンが直接関与することを初代培養肝細胞を用いて明らかにした(Dev.Biol.1989)。さらに、甲状腺ホルモンはエストロゲンレセプタ-の核内濃度を高める働きを持つことも明らかにした(動物学会支部会報1989年)。一方、ヴィテロジェニン合成能力のある肝細胞は変能肝細胞の一部にすぎず、合成能力の増大は合成能のある細胞の増加と関係していると考えられた。そこで、in situハイブリダイゼ-ション法により、ヴィテロジェニン遺伝子の時間的、空間的発現パタ-ンについて調べた。その結果、変態最盛期の初期には極めて少数の肝細胞にのみヴィテロジェニンmRNAが認められるが、後期には急激にその数が増加することが明らかになった。その分布は肝臓中に散乱した状態であり、特に位置特異性は認められなかった。(日本動物学会第60回大会1989年)。一連の結果は、甲状腺ホルモンが直接的に肝細胞の成熟分化の最終段階に働き、成体型肝細胞に分化させていることを示唆している。そこで肝細胞分化の分子機構をさらに明らかにするため、成体期、変能期、幼生期のそれぞれの肝臓よりポリA^+RNAを調整し、それらのcDNAライブラリ-をλファ-ジベクタ-を用いて作製した。さらに、発生段階特異的cDNAクロ-ンを得るためライブラリ-相互の差cDNAライブラリ-を単鎖ファ-ジミドDNAライブラリ-間のハイブリダイゼ-ション法により作製した。このライブラリ-から、元のcDNAとのコロニ-ハイブリダイゼ-ションにより、幾つかの発生段階特異的クロ-ンを得ることが出来た。現在、これらのクロ-ンについて、対応するmRNAの時間的、空間的発現パタ-ンを解析中である。これまでに、アフリカツメカエル肝細胞のエストロゲン依存性ヴィテロジェニン合成能力は変能期に獲得され、甲状腺ホルモンが直接関与することを初代培養肝細胞を用いて明らかにした(Dev.Biol.1989)。さらに、甲状腺ホルモンはエストロゲンレセプタ-の核内濃度を高める働きを持つことも明らかにした(動物学会支部会報1989年)。一方、ヴィテロジェニン合成能力のある肝細胞は変能肝細胞の一部にすぎず、合成能力の増大は合成能のある細胞の増加と関係していると考えられた。そこで、in situハイブリダイゼ-ション法により、ヴィテロジェニン遺伝子の時間的、空間的発現パタ-ンについて調べた。その結果、変態最盛期の初期には極めて少数の肝細胞にのみヴィテロジェニンmRNAが認められるが、後期には急激にその数が増加することが明らかになった。その分布は肝臓中に散乱した状態であり、特に位置特異性は認められなかった。(日本動物学会第60回大会1989年)。一連の結果は、甲状腺ホルモンが直接的に肝細胞の成熟分化の最終段階に働き、成体型肝細胞に分化させていることを示唆している。そこで肝細胞分化の分子機構をさらに明らかにするため、成体期、変能期、幼生期のそれぞれの肝臓よりポリA^+RNAを調整し、それらのcDNAライブラリ-をλファ-ジベクタ-を用いて作製した。さらに、発生段階特異的cDNAクロ-ンを得るためライブラリ-相互の差cDNAライブラリ-を単鎖ファ-ジミドDNAライブラリ-間のハイブリダイゼ-ション法により作製した。このライブラリ-から、元のcDNAとのコロニ-ハイブリダイゼ-ションにより、幾つかの発生段階特異的クロ-ンを得ることが出来た。現在、これらのクロ-ンについて、対応するmRNAの時間的、空間的発現パタ-ンを解析中である。
KAKENHI-PROJECT-01540599
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アクチンを介したHIV-1RevによるウイルスmRNA核外輸送の分子機作の解析
イントロン陽性のHIV-1構造遺伝子mRNAの核外輸送に、Revの核外輸送シグナル依存的なRan-CRM1との複合体形成及び核内Fアクチンが関与する事を報告した。このgag mRNA-Rev-CRM1/Ran輸送複合体のアクチンを介した核外輸送分子機作の検討を目的とし、培養細胞核へのHIV-1レポーターDNAの顕微注入により、転写されたgag mRNAのRev依存性核外輸送が観察可能な系を確立した。本実験系を用いアクチンを介するgag mRNA核外輸送におけるエネルギー必要性の有無を検討する目的で、非加水分解性GTP analogueのGTPγSを注入したところ、gag mRNAの核外輸送抑制が観察された。FISH法を用い輸送抑制されたgag mRNAの核内局在を観察したところ、大部分は核膜孔(NPC)に到らず核質にび漫性に分布した。これらの結果は、GTPγSに対し感受性を示すのはNPC通過の過程ではなく、輸送複合体形成或いは輸送複合体がNPCに到る核質内輸送過程である事を強く示唆する。そこで両者を鑑別する目的で、レポーター発現プラスミドを導入した細胞核抽出液を用い、GTP或いはGTPγS存在下にRevを免疫沈降したところ、GTPの投与量依存性にCRM1と構造遺伝子mRNAの共沈が認められると共に、これらの共沈はGTPγS処理核抽出液において投与量依存性に阻害される事が観察された。以上の結果から、gag mRNAの核外輸送に際し輸送複合体の形成過程にGTPの加水分解を必要とするか或いはGTPγSが阻害する反応過程が存在し、この過程の阻害によりgag mRNA核外輸送抑制が生じる事が考えられた。Revによる細胞輸送因子の認識にRanを介してGTPが必要となる事はこれ迄報告されているが、上記の結果はmRNAとの複合体形成にあたってもGTPが肝要である事を示しており、RevによるmRNA核外輸送にあたってその認識過程にRanの新しい機能或いは他の核内G蛋白の関与の可能性が考えられた。その他、アクチンを介するウイルスmRNA核外輸送機構が、他のRNA分子の輸送に用いられる可能性を検討した。その結果、Revの共発現によりイントロンレスのFire fly luciferase mRNAの核外輸送が阻害される事を見い出し、Rev-gag mRNA複合体輸送の場合と同様、luciferase mRNAの核外輸送にあたってCRM1,GTP結合型Ran及び核内アクチンの関与を示した。これまで、mRNAの輸送にCRM1は機能しないと考えられており、この報告がその関与を認めた初めての例となる。イントロン陽性のHIV-1構造遺伝子mRNAの核外輸送に、Revの核外輸送シグナル依存的なRan-CRM1との複合体形成及び核内Fアクチンが関与する事を報告した。このgag mRNA-Rev-CRM1/Ran輸送複合体のアクチンを介した核外輸送分子機作の検討を目的とし、培養細胞核へのHIV-1レポーターDNAの顕微注入により、転写されたgag mRNAのRev依存性核外輸送が観察可能な系を確立した。本実験系を用いアクチンを介するgag mRNA核外輸送におけるエネルギー必要性の有無を検討する目的で、非加水分解性GTP analogueのGTPγSを注入したところ、gag mRNAの核外輸送抑制が観察された。FISH法を用い輸送抑制されたgag mRNAの核内局在を観察したところ、大部分は核膜孔(NPC)に到らず核質にび漫性に分布した。これらの結果は、GTPγSに対し感受性を示すのはNPC通過の過程ではなく、輸送複合体形成或いは輸送複合体がNPCに到る核質内輸送過程である事を強く示唆する。そこで両者を鑑別する目的で、レポーター発現プラスミドを導入した細胞核抽出液を用い、GTP或いはGTPγS存在下にRevを免疫沈降したところ、GTPの投与量依存性にCRM1と構造遺伝子mRNAの共沈が認められると共に、これらの共沈はGTPγS処理核抽出液において投与量依存性に阻害される事が観察された。以上の結果から、gag mRNAの核外輸送に際し輸送複合体の形成過程にGTPの加水分解を必要とするか或いはGTPγSが阻害する反応過程が存在し、この過程の阻害によりgag mRNA核外輸送抑制が生じる事が考えられた。Revによる細胞輸送因子の認識にRanを介してGTPが必要となる事はこれ迄報告されているが、上記の結果はmRNAとの複合体形成にあたってもGTPが肝要である事を示しており、RevによるmRNA核外輸送にあたってその認識過程にRanの新しい機能或いは他の核内G蛋白の関与の可能性が考えられた。その他、アクチンを介するウイルスmRNA核外輸送機構が、他のRNA分子の輸送に用いられる可能性を検討した。その結果、Revの共発現によりイントロンレスのFire fly luciferase mRNAの核外輸送が阻害される事を見い出し、Rev-gag mRNA複合体輸送の場合と同様、luciferase mRNAの核外輸送にあたってCRM1,GTP結合型Ran及び核内アクチンの関与を示した。これまで、mRNAの輸送にCRM1は機能しないと考えられており、この報告がその関与を認めた初めての例となる。
KAKENHI-PROJECT-12035226
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12035226
極低温環境での高分子材料の靭性とphysical agingとの相関に関する研究
1.ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチルメタクリレート(PEMA)、p-ニトロアニリン、あるいはN-メチル-4-ニトロアニリンをPMMAの側鎖の一部にラベルしたPMMAのphysicalagingによる特性変化を示差走査熱量計と誘電測定から調べた。それぞれの試料のガラス転移温度より5から20度低い温度でphysical agingを1から168時間行った。何れの試料も熱処理時間の増加に伴って、吸熱ピーク面積の増加およびピーク位置の高温シフトが起こった。誘電測定では、physical agingにより緻密化していたポリマーが昇温過程で平衡状態に回復する時の変化を明瞭に捉えた。すなわち、周波数に依存しない変化が、誘電率の実部と虚部のいずれにも現れることを世界で初めて観測した。この変化は一次転移的でありphysical agingの過程で起こる現象について極めて示唆的である。2.ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリエチレンナフタレート(PEN)共重合体(PET/PEN=90/10)を溶融圧縮後、氷水中に急冷してできたフィルム(試料1)を5倍に自由幅一軸延伸した(試料3)。試料1および3を347Kで24時間physicalagingを行った。これらをそれぞれ試料2および3とする。なお、延伸試料は緊張下で行った。誘電測定では、試料3が極低温γ緩和が顕著に観測されたが試料4では大きく減少した。このγ緩和はdefectの運動と考えられているのでagingによりdefectの減少かその運動が抑制されたためである。動的粘弾性測定では試料1に比べて試料2は弾性率において若干の上昇が見られた。77Kでの引っ張り試験では、試料2は試料1より弾性率と破断強度は増加したが、破断伸びの若干の低下が見られた。しかしながら延伸試料でのagingは何れの特性値も低下させた。1.ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチルメタクリレート(PEMA)、p-ニトロアニリン、あるいはN-メチル-4-ニトロアニリンをPMMAの側鎖の一部にラベルしたPMMAのphysicalagingによる特性変化を示差走査熱量計と誘電測定から調べた。それぞれの試料のガラス転移温度より5から20度低い温度でphysical agingを1から168時間行った。何れの試料も熱処理時間の増加に伴って、吸熱ピーク面積の増加およびピーク位置の高温シフトが起こった。誘電測定では、physical agingにより緻密化していたポリマーが昇温過程で平衡状態に回復する時の変化を明瞭に捉えた。すなわち、周波数に依存しない変化が、誘電率の実部と虚部のいずれにも現れることを世界で初めて観測した。この変化は一次転移的でありphysical agingの過程で起こる現象について極めて示唆的である。2.ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリエチレンナフタレート(PEN)共重合体(PET/PEN=90/10)を溶融圧縮後、氷水中に急冷してできたフィルム(試料1)を5倍に自由幅一軸延伸した(試料3)。試料1および3を347Kで24時間physicalagingを行った。これらをそれぞれ試料2および3とする。なお、延伸試料は緊張下で行った。誘電測定では、試料3が極低温γ緩和が顕著に観測されたが試料4では大きく減少した。このγ緩和はdefectの運動と考えられているのでagingによりdefectの減少かその運動が抑制されたためである。動的粘弾性測定では試料1に比べて試料2は弾性率において若干の上昇が見られた。77Kでの引っ張り試験では、試料2は試料1より弾性率と破断強度は増加したが、破断伸びの若干の低下が見られた。しかしながら延伸試料でのagingは何れの特性値も低下させた。1)ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチルメタクリレート(PEMA)、p-ニトロアニリン、あるいはN-メチル-4-ニトロアニリンをPMMAの側鎖の一部にラベルしたPMMAのphysicalagingによる特性変化を示差走査熱量計と誘電測定から調べた。それぞれの試料のガラス転移温度より5から20度低い温度でphysical agingを1から168時間行った。何れの試料も熱処理時間の増加に伴って、吸熱ピーク面積の増加およびピーク位置の高温シフトが起こった。また、熱処理温度がガラス転移温度に近い程早い緩和が観測されたが、平衡エンタルピーが最大となったのは、ガラス転移温度より10度低い温度で行った時であった。PEMAは50K付近にエチル基の内部回転による損失ピークが存在するが、これがphysical agingの影響を受け、緩和強度の減少することが示された。主鎖のトランスからゴ-シュへの変化で、エチル基の回転ポテンシャルエネルギーに大きな変化が生ずることも計算の結果から分かった。何れの試料にも共通して、側鎖緩和(β緩和)の緩和時間の長いところがphysical agingによって変化が現れた他、agingにより緻密化していた試料が、測定の昇温過程で平衡状態に至る間に起こる構造変化を誘電測定で初めてとらえた。2)ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリエチレンナフタレート(PEN)共重合体(PET/PEN=90/10)を溶融圧縮後、氷水中に急冷してできたフィルムを5倍に自由幅一軸延伸した。緊張下でphysical agingすると、分子鎖の平行配向化が進むが、無緊張下では未延伸試料をphysical agingした状態に近づくことが分かった。低温での力学的性質との関連は次年度の課題である。
KAKENHI-PROJECT-09650760
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09650760
極低温環境での高分子材料の靭性とphysical agingとの相関に関する研究
1. p-ニトロアニリン、あるいはN-メチル-4-ニトロアニリンをポリメチルメタクリレート(PMMA)の側鎖の一部にラベルしたPMMAのphysicalagingによる特性変化を示差走査熱量計と誘電測定から調べた。それぞれの試料のガラス転移温度より5から20度低い温度でphysical agingを1から168時問行った。何れの試料も熱処理時間の増加に伴って、吸熱ピーク面積の増加およびピーク位置の高温シフトが起こった。誘電測定では、physical agingにより緻密化していたポリマーが昇温過程で平衡状態に回復する時の変化を明瞭に捉えた。すなわち、周波数に依存しない変化が、誘電率の実部と虚部のいずれにも現れることを世界で初めて観測した。この変化は一次転移的でありphysical agingの過程で起こる現象について極めて示唆的である。2.ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリエチレンナフタレート(PEN)共重合体(PET/PEN=90/10)を溶融圧縮後、氷水中に急冷してできたフィルム(試料1)を5倍に自由幅一軸延伸した(試料3)。試料1および3を347Kで24時間physicalagingを行った。これらをそれぞれ試料2および3とする。なお、延伸試料は緊張下で行った。誘電測定では、試料3が極低温γ緩和が顕著に観測されたが試料4では大きく減少した。このγ緩和はdefectの運動と考えられているのでagingによりdefectの減少かその運動が抑制されたためである。動的粘弾性測定では試料1に比べて試料2は弾性率において若干の上昇が見られた。77Kでの引っ張り試験では、試料2は試料1より弾性率と破断強度は増加したが、破断伸びの若干の低下が見られた。しかしながら延伸試料でのagingは何れの特性値も低下させた。
KAKENHI-PROJECT-09650760
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09650760
膜における分子の動的挙動解析を行うための装置開発
細胞膜は内部の細胞小器官が外界への散逸を防ぎ、外界とエネルギー・情報の交換を行う重要な役割を果たす場である。細胞膜における分子の動的挙動解析は、膜付近でおこる分子の反応機構を解明するのに大変重要であるが、膜における分子を直接経時変化で計測する装置がない。そこで本研究の目的である、膜における分子の動的挙動を経時変化で計測する装置として、これまで我々が独自に開発し、液液界面の分子挙動で興味深い知見を得てきた準弾性レーザー散乱(QELS)法の細胞膜表面への応用に期待している。これまで、QELS法は代表的なリン脂質で構成された生体膜モデルにおいてリポフェクションと呼ばれる外界から細胞膜を通過し核内に組み込ませる分子(染色体DNA-リポソーム複合体)の動的挙動を追跡できた。またDNA複合体の動的挙動は異なるリン脂質組成比の膜モデルにおいて顕著な違いが得られた。このことは、QELS法が液液界面に形成したリン脂質膜モデルに適用可能であることを示す。現在、この結果を論文にまとめている。これをさらに発展させ、QELS法を生きた細胞表面へ応用しようとしている。以前アメリカでは生きた神経細胞のリン脂質組成を変えて、神経細胞1個に電極を当て神経伝達物質を測定し、リン脂質の組成がエキソ・エンドサイトーシス時の小胞体の膜融合にどのような影響を与えるか研究を行った。これをレーザーで行いたい。また神経細胞は環境ホルモンとの関わりがあることが近年わかってきているので、環境ホルモンと疑われている物質が神経細胞に与える影響も調べていきたい。細胞膜は内部の小器官を保護し、必要不可欠な物質が選択的に膜を通じて移動し、生命維持をする大変重要な場である。細胞膜における分子の動的挙動解析は、膜の役割を理解する上で大変重要であるが、膜における分子を直接経時変化で計測する装置がない。そこで本研究の目的である、膜における分子の動的挙動を経時変化で計測する装置として、これまで我々が独自に開発し、液液界面の分子挙動で興味深い知見を得てきた準弾性レーザー散乱(QELS)法の生体膜への応用に期待している。本年度の研究では、QELS法が実際に生きた細胞に入るDNA複合体の動的挙動を擬似的な生体膜において追跡可能か確認することを目的とする。また、生体膜の内側と外側の組成比の違いが外来物質に与える影響を調べるため、内側と外側の主要脂質の単分子膜モデルにおけるDNA複合体の動的挙動を調べることも目的とする。QELS法により液液界面に自然発生する界面張力波の周波数をin-situ計測し、界面張力を評価した。光源にはYAGレーザーを使用し、波長66μmの界面張力波の周波数を測定した。液液界面に生体膜の内側と外側を構成する主要脂質の単分子膜モデルをつくり、そこへDNA、DNA-リポソーム複合体を注入し経時変化で各々の分子挙動を追跡した。細胞に入りやすいDNA-リポソーム複合体の内側と外側の膜における吸着速度と吸着度がともに大きく違いが見られなかったが、細胞に入りにくいDNAでは違いが見られた。外側の膜におけるDNAの吸着速度と吸着度がともに内側よりも4倍小さかった。これは、外からDNAが入りにくくさせていることに関係すると今のところ考えている。QELS法により生きた細胞に取り込まれるDNA-リポソーム複合体の内側、外側モデル単分子膜における動的挙動を追跡できた。QELS法は生体膜への応用に期待がもたれる。細胞膜は内部の細胞小器官が外界への散逸を防ぎ、外界とエネルギー・情報の交換を行う重要な役割を果たす場である。細胞膜における分子の動的挙動解析は、膜付近でおこる分子の反応機構を解明するのに大変重要であるが、膜における分子を直接経時変化で計測する装置がない。そこで本研究の目的である、膜における分子の動的挙動を経時変化で計測する装置として、これまで我々が独自に開発し、液液界面の分子挙動で興味深い知見を得てきた準弾性レーザー散乱(QELS)法の細胞膜表面への応用に期待している。これまで、QELS法は代表的なリン脂質で構成された生体膜モデルにおいてリポフェクションと呼ばれる外界から細胞膜を通過し核内に組み込ませる分子(染色体DNA-リポソーム複合体)の動的挙動を追跡できた。またDNA複合体の動的挙動は異なるリン脂質組成比の膜モデルにおいて顕著な違いが得られた。このことは、QELS法が液液界面に形成したリン脂質膜モデルに適用可能であることを示す。現在、この結果を論文にまとめている。これをさらに発展させ、QELS法を生きた細胞表面へ応用しようとしている。以前アメリカでは生きた神経細胞のリン脂質組成を変えて、神経細胞1個に電極を当て神経伝達物質を測定し、リン脂質の組成がエキソ・エンドサイトーシス時の小胞体の膜融合にどのような影響を与えるか研究を行った。これをレーザーで行いたい。また神経細胞は環境ホルモンとの関わりがあることが近年わかってきているので、環境ホルモンと疑われている物質が神経細胞に与える影響も調べていきたい。
KAKENHI-PROJECT-02J02991
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02J02991
非核酸誘導体の抗HIV作用の検索とコンピュ-タ-による多剤併用効果の解析
我々はこれまで、色素法を用いた迅速かつ定量的な抗ウイルス剤のスクリ-ニングアッセイ法を開発し、それを用いて多くの薬剤の抗HIV効果の検討を行ってきた。今年度はその中で、特に将来の臨床応用が有望と考えられる薬剤を発見することが出来た。そのきっかけとなったのは、本研究の研究分担者である馬場が1987年にその抗HIVー1活性を発見したHEPTと呼ばれる核酸誘導体である。HEPTはアジドチミジン(AZT)を代表とする従来の核酸誘導体とは異なり、HIVの1型にのみ抗ウイルス効果を示し、HIVの2型を含む他のレトロウイルスには全く効果を示さないという、ユニックな薬剤である。我々はこの点に特に着目し、更に選択的抗ウイルス効果の高い物質を得るため、約200種類にのぼる種々のHEPT誘導体についてスクリ-ニングをおこなった。その結果、EーEPUとBーBPUと呼ばれる2種類の薬剤にきわめて高い抗HIVー1活性を認めた。EーEPUとEーBPUは従来のHEPTと比較して、抗ウイルス活性がそれぞれ約300倍、及び約1300倍増強しており、毒性に対する活性の比を示す選択的治療係数は両者ともに6000を越えた。また我々はこれらの薬剤の作用機序の検討を行い、これらはHIVー1の逆転写酵素に作用しその活性を阻害する事が判明した。しかし同時に、AZT等とは明らかに異なる様式で逆転写酵素を阻害し、従って現在臨床的に問題となっているAZTに耐性のウイルスにも有効である事がわかった。以上の事より、これらの薬剤は現在までに知られている抗AIDS剤とは異なった。新しいカテゴリ-に属するものとして、その内容を「米国立科学アカデミ-誌」に報告するとともに、現在さらに臨床応用が可能かどうか等、更にその詳細を検討中である。我々はこれまで、色素法を用いた迅速かつ定量的な抗ウイルス剤のスクリ-ニングアッセイ法を開発し、それを用いて多くの薬剤の抗HIV効果の検討を行ってきた。今年度はその中で、特に将来の臨床応用が有望と考えられる薬剤を発見することが出来た。そのきっかけとなったのは、本研究の研究分担者である馬場が1987年にその抗HIVー1活性を発見したHEPTと呼ばれる核酸誘導体である。HEPTはアジドチミジン(AZT)を代表とする従来の核酸誘導体とは異なり、HIVの1型にのみ抗ウイルス効果を示し、HIVの2型を含む他のレトロウイルスには全く効果を示さないという、ユニックな薬剤である。我々はこの点に特に着目し、更に選択的抗ウイルス効果の高い物質を得るため、約200種類にのぼる種々のHEPT誘導体についてスクリ-ニングをおこなった。その結果、EーEPUとBーBPUと呼ばれる2種類の薬剤にきわめて高い抗HIVー1活性を認めた。EーEPUとEーBPUは従来のHEPTと比較して、抗ウイルス活性がそれぞれ約300倍、及び約1300倍増強しており、毒性に対する活性の比を示す選択的治療係数は両者ともに6000を越えた。また我々はこれらの薬剤の作用機序の検討を行い、これらはHIVー1の逆転写酵素に作用しその活性を阻害する事が判明した。しかし同時に、AZT等とは明らかに異なる様式で逆転写酵素を阻害し、従って現在臨床的に問題となっているAZTに耐性のウイルスにも有効である事がわかった。以上の事より、これらの薬剤は現在までに知られている抗AIDS剤とは異なった。新しいカテゴリ-に属するものとして、その内容を「米国立科学アカデミ-誌」に報告するとともに、現在さらに臨床応用が可能かどうか等、更にその詳細を検討中である。
KAKENHI-PROJECT-02235212
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Sinc数値計算法を超える高精度数値計算法の研究
Sinc数値計算法は,Sinc関数近似を用いた数値計算法の総称であり,解析関数に対して極めて有効であり,関数が特異性を持つ場合にも頑健であることが知られている.そして,このSinc関数近似は理論的には准最適であることが示されている.本研究では,このSinc関数近似を超える精度をもつ関数近似公式,より正確には,最適関数近似公式を開発し,さらには,そこで得られた知見をもとに,最適数値積分公式に関する理論を構築し,それに基づき,最適に近いと期待される数値積分公式を数値計算によって求めた.これらを統一的に扱うポテンシャル論に基づく方法論も開発した.Sinc関数近似が有効となる関数空間(Eye-shaped領域上のHardy空間)における最適近似公式に関して以下の基礎的研究を行った:(1)公式の最適性の証明は,一般化されたGaneliusの不等式に基づくもので,複雑で見通しの悪いものであった.そこで,一般化されたGaneliusの不等式を有限区間を無限区間に変換する変数変換によって見やすい形にし,その証明を比較的見通しの良いものとした.(2)一般化されたGaneliusの不等式の評価式は,標本点数が非常に大きい場合に対する評価であり,原点付近の標本点の配置に関しては自由度がある.この自由度の影響を比較的標本点が少ない場合に数値的に調べた.様々な配置を調べたが誤差に大きな影響はないという結果を得た.ただ,実際の関数に最適近似公式を適用した場合の誤差の振る舞いは,原点付近の標本点の取り方に大きく依存するという数値実験結果も,(かなり)以前に報告されており,この不整合を理解する必要がある.(3)最適近似公式においては,近似式(基底)が複雑な式であり,基底を計算する上での丸め誤差の影響が問題となる.(Sinc関数近似の場合,基底が単純な形であるため一重指数関数型変数変換を用いる前提では基底の計算に含まれる丸め誤差の影響は問題にはならなたった).そこで,様々な計算精度で,近似式を計算し,丸め誤差の影響を数値的に調べた.被近似関数による差があるものの,標本点数に関して指数関数的に精度が失われることが観測された.複素平面上の実軸に対称な帯状領域を考え,その領域上の,減衰度が指定されたHardy空間---この空間は,減衰度=1重指数関数型減衰の場合,SE-Sinc近似が有効となる関数空間であり,減衰度=2重指数関数型減衰の場合,DE-Sinc近似が有効となる関数空間である----における最適関数近似について,田中健一郎氏(2014年度まで公立はこだて未来大学,2015年度より武蔵野大学),岡山友昭氏(広島市立大学)とともに,つぎの基礎的研究を行った.基礎となる事実は,杉原(代表者)によって,Math. Comp. 72 (2003), 767-786において証明されたものであるが,考えているHardy空間における最適近似式の誤差は,近似式の標本点のある関数の最小値を探索すればよいこと,さらに,この最小値を与える標本点が求まれば,最適近似公式を具体的に構成できること,である.[1]減衰度=1重指数関数型減衰の場合,Haber-Jangによって不定積分の計算のために導入された近似式に基づいて,鵜島-杉原はこのHardy空間における最適近似公式を与えていた.今回の研究で,この最適近似公式が,先の基礎となる事実から構成される最適近似公式とは異なることが判明した.(現在,両者の数値的観点からの比較を実行中である)[2]先の基礎となる事実から,近似式の標本点のある関数の最小値の探索が問題となるが,標本点分布を連続化した分布を考えることによって,最小値探索問題が,近似的にではあるが,ある条件を満たすポテンシャルを求める問題として定式化されることが明らかとなった.後者の問題を数値的に解いた結果によれば,かなりよい標本点が得られることが分かっている.複素平面上の実軸に対称な帯状領域を考え,その領域上の,減衰度が指定されたHardy空間---この空間は,減衰度が1重指数関数型減衰の場合,SE-Sinc近似が有効となる関数空間であり,減衰度が2重指数関数型減衰の場合,DE-Sinc近似が有効となる関数空間である---における最適関数近似について,田中健一郎氏(武蔵野大学),岡山友昭氏(広島市立大学)とともに,つぎの研究を行った.[1]減衰度が1重指数関数型減衰の場合,GaneliusおよびHaber-Jangによって与えられた標本点を用いて,鵜島-杉原はこのHardy空間における最適近似公式を与えていた.今回の研究で,そこで用いられた議論に不十分な点が見つかったが,それを改訂し,さらに強い結果を与えた.[2]考えているHardy空間における最適近似式の誤差は,近似式の標本点のある関数の最小値を探索すればよいこと,さらに,この最小値を与える標本点が求まれば,最適近似公式を具体的に構成できることが知られている(Sugihara: Math. Comp. 72 (2003), 767-786).昨年,この,ある関数の最小値の探索問題は,標本点分布を連続化した分布を考えることによって,近似的にではあるが,ある条件を満たすポテンシャルを求める問題として定式化されることが明らかとなった.本年は,その議論の数学的基礎付けを行うと同時に,この議論の最適数値積分公式への応用を模索した(数値実験によれば,DE積分公式より良い積分公式が得られている)
KAKENHI-PROJECT-25390146
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25390146
Sinc数値計算法を超える高精度数値計算法の研究
.鵜島-杉原は1重指数関数型減衰の場合に最適近似公式を与えていたが,今回の研究でそこで用いられた議論に不十分な点が見つかった.その修復に時間を要した複素平面上の実軸に関して対称な帯状領域上で正則で,減衰度が指定された関数族---とくに,この関数族は,減衰度が1重指数関数型減衰の場合,SE-Sinc近似が有効となる関数族であり,減衰度が2重指数関数型減衰の場合,DE-Sinc近似が有効となる関数族である----に対する最適関数近似式,および最適数値積分公式について,田中健一郎氏(武蔵野大学,現東京大学),岡山友昭氏(広島市立大学),杉田幸亮氏(青山学院大学)とともに,つぎの研究を行った.[1]減衰度が1重指数関数型減衰の場合,Ganeliusによって与えられた標本点を用いた最適近似公式として,以前指摘したように2種類の公式(2003年に杉原が与えたもの,本研究で得られた鵜島-杉原によるものの拡張版)がある.本年度は,2つの公式を数値的に比較し,前者が一般に高精度であることを明らかにした.ただし,その理由に関しては,丸め誤差の影響等,様々な角度から調べたが,よく分からない状況である.[2]本研究で考えている関数族に対する最適関数近似公式の特徴づけはすでに論文(Sugihara: Math. Comp. 72 (2003), 767-786)で与えられているが,我々は,最適数値積分公式に対してその特徴づけを与え,最適数値積分公式を求めることは,近似的にではあるが,最適関数近似のときと同様に,ある種のポテンシャルを求める問題として定式化されることを明らかにした.そして,数値計算によって,減衰度が1重指数関数型減衰の場合,2重指数関数型減衰の場合に,最適数値積分公式に近い公式を得た.その結果,2重指数関数型減衰の場合,DE積分公式より精度の良い積分公式を得た.Sinc数値計算法は,Sinc関数近似を用いた数値計算法の総称であり,解析関数に対して極めて有効であり,関数が特異性を持つ場合にも頑健であることが知られている.そして,このSinc関数近似は理論的には准最適であることが示されている.本研究では,このSinc関数近似を超える精度をもつ関数近似公式,より正確には,最適関数近似公式を開発し,さらには,そこで得られた知見をもとに,最適数値積分公式に関する理論を構築し,それに基づき,最適に近いと期待される数値積分公式を数値計算によって求めた.これらを統一的に扱うポテンシャル論に基づく方法論も開発した.当初,丸め誤差の影響も調べる予定であったが,それを実行できなかった.研究実績の概要に書いた関数近似をポテンシャル問題に帰着させた方法は,数値積分にもかなり有効と思われるので,関数近似,数値積分に関してこの研究を,共同研究者の田中健一郎氏,岡山友昭氏とともに,推進する.数値解析学研究実績の概要に書いた関数近似をポテンシャル問題に帰着させた方法はかなり有効と思われるので,この研究を,共同研究者の田中健一郎氏,岡山友昭氏とともに,推進する.「研究実績の概要」の(1)一般化されたGaneliusの不等式を有限区間を無限区間に変換する変数変換によって見やすい形にし,その証明を比較的見通しの良いものとした,に思いのほか時間をとられ,その他の研究へ時間を割くことができなかった.多忙のため海外学会に出席できなかったため参加予定の海外で行われる予定の学会が2つも開催されず,そのため大幅な未使用額を生じた.
KAKENHI-PROJECT-25390146
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家系内SN P解析による斜視遺伝子座の絞込みと候補遺伝子の特定
55家系の斜視家系を対象として、今までに斜視関連遺伝子座位として絞り込んだ2箇所の染色体座位である4q28. 3と7q31. 2をさらに狭めるため、それらの座位のSNP計400個を使って、55家系を対象としてタイピングを行った。SNPの解析には、岡山大学医学部共同実験室に新規に導入された質量分析計を使った。家系内の斜視患者の群と正常者の群の2群に分けて、2群の間で関連解析を行い、両群の間で有意な偏りがみられるSNPを検出した。55家系の斜視家系を対象として、今までに斜視関連遺伝子座位として絞り込んだ2箇所の染色体座位である4q28. 3と7q31. 2をさらに狭めるため、それらの座位のSNP計400個を使って、55家系を対象としてタイピングを行った。SNPの解析には、岡山大学医学部共同実験室に新規に導入された質量分析計を使った。家系内の斜視患者の群と正常者の群の2群に分けて、2群の間で関連解析を行い、両群の間で有意な偏りがみられるSNPを検出した。55家系の斜視家系を対象として、今までに斜視関連遺伝子座位として絞り込んだ2箇所の染色体座位である4q28.3と7q31.2をさらに狭めるため、それらの座位のSNP計300個を使って、55家系を対象としてタイピングを行った。SNPの解析には、岡山大学医学部共同実験室に新規に導入された質量分析計を使った。家系内の斜視患者の群と正常者の群の2群に分けて、2群の間で関連解析を行い、両群の間で有意な偏りがみられるSNPを特定することを目的とした。SNP解析の具体的方法1)試料となるゲノムDNA2000年2月、岡山大学医学部倫理委員会で承認された「斜視の遺伝子座を解明する基礎研究」の方法、手順にしたがって、斜視家系の正常者および斜視患者、あるいは、対照としての正常者、斜視患者から収集したゲノムDNAを試料として用いた。具体的には、文書による説明と同意取得の後、末梢血10mlを採血し、密度勾配遠心法によって白血球を分離し、SDSを含むトリス緩衝液で白血球を溶解し、Proteinase K処理で蛋白を分解し、クロロホルム/フェノール分配法によってDNAを抽出し、エタノールによりDNAを析出させた。抽出DNAは、その濃度を測り、連続番号によって匿名化して、-30度冷凍庫に保存している。2)SNP全ゲノム解析55家系の斜視家系の斜視患者と正常者を対象として、染色体座位4q28.3と7q31.2の2箇所について、それぞれ100箇所および200箇所のtagSNPを選定して、SNPタイピングを行った。SNPタイピングは、岡山大学医学部共同実験室に新規に導入された質量分析法に基づくSNP解析装置(Sequenom社)を使った。3)遺伝統計解析ゲノム関連解析では、家系内で斜視の表現型を示す群と、斜視の表現型を示さない群に分けて遺伝子多型の頻度を比較する統計解析を行い、疾患感受性遺伝子座(斜視関連遺伝子座)を特定した。
KAKENHI-PROJECT-23659811
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23659811
流体の性質を利用した単一細胞を操作・解析するための新しいマイクロシステムの構築
本研究では,マイクロチップ上で単一の細胞を分離し,孤立させたまま効率よく捕獲・培養を可能とするデバイスと一連のシステムの開発を行った.システムの主要部にマイクロ流体デバイスを用いることにより,微小な流れの中での種々の細胞種について非侵襲的に単一細胞の分離・捕獲を可能とし,捕獲部位における微小培養を実現した.さらに,微小培養した細胞のオルガネラなど関連対象物のイメージングが可能となった.本研究では,マイクロチップ上で単一の細胞を分離し,孤立させたまま効率よく捕獲・培養を可能とするデバイスと一連のシステムの開発を行った.システムの主要部にマイクロ流体デバイスを用いることにより,微小な流れの中での種々の細胞種について非侵襲的に単一細胞の分離・捕獲を可能とし,捕獲部位における微小培養を実現した.さらに,微小培養した細胞のオルガネラなど関連対象物のイメージングが可能となった.本年度は、マイクロチップ上で単一の細胞を分離し、孤立させたまま効率よく捕獲・培養を可能とするデバイスと一連のシステムの開発を行った。システムの主要部にはマイクロ流体デバイスを用い、CCDカメラによる経時観察を行いながら操作可能なシステムを構築した。また、倒立顕微鏡上には簡易型インキュベーターを配し、検鏡下にて細胞培養を可能とした。デバイスのデザインは、単一細胞操作に適したものを考案した。具体的には、マイクロ流体デバイスに汎用されるpolydimethylsiloxaneにより作製したレプリカをガラスディッシュ(直径35mm)にマウントしたものを用い、デバイス内部の主要な部位には、二つの平行するメインチャネル(幅100um)とそれらを繋ぐドレインチャネル、直接細胞を取り扱う半円筒状のマイクロチャンバー(直径100um)を配した。単一細胞の分誰・捕獲は、細胞分散液および細胞培養液をメインチャネルに導入することで行った。メインチャネルを流れる溶液の流量を調節し、2液間のバランスを最適にすることによりマイクロチャンバーにおける単一細胞の孤立捕獲が可能となった。実際に使用したのは、PC12細胞、NIH3T3細胞など種々の株化細胞とアストロサイトの初代培養細胞であったが、その全てにおいて、単一細胞の孤立捕獲に成功した。また、捕獲チャンバー内での微小培養を試みたところ、細胞培養液を適宜交換することにより、比較的長期間の培養が可能であった。さらに、微小培養した細胞のイメージングを行った。生細胞の核染色にはHoechst33342を、ミトコンドリア染色にはMitotorackerを用い、また細胞骨格であるアクチンの染色には、固定化後にPhalloidin染色を行ったところ、これら細胞関連対象物のイメージングが可能となった。本年度は、単一細胞を分離・培養を可能とするデバイスと一連のシステムの最適化、それを用いた細胞生物学的・薬理学的展開を行った。システムの主要構成は変化させずに、マイクロ流体デバイスに汎用されるpolydimethylsiloxaneにより作製したレプリカをガラスディッシュにマウントしたものを用い、デバイス内部のデザインが直線状のメインチャネルと細胞を取り扱う半円筒状のマイクロチャンバーを配した構造のものとした。さらに、顕微鏡観察下の細胞培養と組み合わせることにより、捕獲後の培養細胞の挙動を経時観察した。デバイスのデザインと条件設定の最適化を行った結果、105個オーダーの細胞を含む細胞懸濁液から複数の単一細胞を効率よく分離・捕獲し、捕獲場所における少なくとも1週間の比較的長期の培養が実現するに至った。さらに、増殖性の細胞では、微小空間における細胞増殖により多世代の細胞コミュニティー形成も可能となった。さらに培養細胞のオルガネライメージングとして、生細胞の核染色にはHoechst33342、ミトコンドリア染色にはMitotorackerを用い、アクチン染色には固定化後にPhalloidin染色を行った。PC12細胞を用いた検討では、神経成長因子の刺激に伴って細胞突起を伸長することが可能であった。また、本システムは流体を用いての細胞操作を行うので細胞培養液の流れ方向に沿った物理的なストレスが突起伸長方向を規定することが予想されたが、デバイス内における培養細胞においても必ずしもストレス因子のみが伸長方向を規定する訳ではないことが示唆された。さらに、マイクロ流体デバイス内での層流を利用して、細胞もしくは形成させた細胞コミュニティーへの局所的な薬液投与システムの開発を試みた。
KAKENHI-PROJECT-19790076
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19790076
母胎を介した薬剤曝露による社会性行動障害メカニズムの解明
自閉スペクトラム症(自閉症)は神経発達障害の一つである。自閉症の中核症状は、社会性相互交流の障害であり、コミュニケーションや対人相互関係に困難を有するが病態や根本的な治療法は明らかではない。自閉症の発症メカニズムとして、遺伝的要因が中心に調べられているが、薬剤曝露などの後天的な要因も示されてきた。そこで本研究は、後天的要因によって生じる社会性行動障害の病態解明のために、妊娠12.5日のマウスにバルプロ酸あるいはエタノールを投与し、仔マウスの行動への影響を調べると共に、GABA阻害剤を同時投与した際の影響を検討し、2つのモデルの興奮性及び抑制性ニューロンを組織化学的、分子生物学的に解析することを目的とする。当該年度は、行動解析の検討を引き続き実施した。昨年度までに、バルプロ酸及びエタノール投与マウスは社会性行動の障害を示すことを示した。各薬剤胎生期投与マウスに対するピクロトキシン投与による社会性行動障害への影響は見られなかったので、再度、投与タイミングを検討し直したところ、両マウスとも社会性行動障害の改善が示された。このため、現在これらのマウスの脳を回収し、組織化学、分子生物学な解析に向けて準備を行っている。一方で、ピクロトキシン投与そのものによりマウスの社会性行動障害が示されることを新たに見出した。これらの結果は、薬剤曝露による胎生期の興奮/抑制のバランスの破綻が社会性行動障害の要因となることを示唆している。前年度に比べて、マウスの出産状況が安定し、行動解析の収束の目処がついてきた点は計画通りに進んでいるが、引き続き匹数の追加を行うことと、組織や分子解析のパイロット実験を開始する時期としては当初計画より遅れているので、やや遅れていると判断した。今後は、ピクロトキシン投与によるマウスの行動解析の再現性を確認するために個体の追加を行う。バルプロ酸及びエタノール投与マウスに関しては、組織や分子解析の実験を進めていく予定である。現在、抗体やプライマーの探索、検討などを順次進めている。自閉スペクトラム症(自閉症)は「社会性」に困難を抱える神経発達障害の一つである。自閉症の発症は遺伝的要因が強く示唆されているが母胎を介した薬剤曝露などの後天的要因も関与する。しかしながら、胎生期の薬剤曝露によって子の社会性行動障害が生じるメカニズムは明らかでない。本研究は、胎生期の曝露によって子の社会性行動障害を生じ、なおかつγ-アミノ酪酸(GABA)作用に影響するバルプロ酸とエタノールに着目し、胎生期の薬剤曝露動物を用いて、後天的要因によって生じる社会性行動障害の病態解明を目指す。当該年度は、主に胎生期におけるバルプロ酸及びエタノール曝露の行動への影響を比較・解析した。妊娠12.5日の母マウスにバルプロ酸あるいはエタノールを投与し、コントロールマウスには生理食塩水を投与した。胎生期バルプロ酸曝露マウス(バルプロ酸マウス)はコントロールマウスと比較して、幼若期における身体成熟の遅延(体重減少、開眼の遅延)や運動機能の障害(姿勢反射の遅延)が見られた。社会性行動においては、5-6週齢(若齢期)と10-11週齢(成熟期)の双方において、コントロールマウスと比較してバルプロ酸マウスは社会性行動時間の減少を示した。胎生期エタノール曝露マウス(エタノールマウス)はコントロールマウスと比較して、身体成熟の遅延や運動機能の障害は見られなかった。社会性行動においては、5-6週齢(若齢期)においては社会性行動時間が減少する傾向が見られ、10-11週齢(成熟期)においては社会性行動時間が減少していた。以上から、両マウスモデルにおいて社会性行動の障害は共通して見られるが、幼若期における身体成熟や運動機能の表現系が異なることを見いだした。本年度の成果より、エタノール曝露による新しい発達障害モデルマウスを作製することで薬剤曝露による社会性行動障害の解明に貢献できる可能性を示した。妊娠マウスの出産匹数や雌雄の比にばらつきがあり、当初の計画より匹数が揃うのに、時間を要した。現在の解析対象条件は、7-8匹生まれ、かつ雌雄の比がなるべく均等になっている家系(7匹生まれの場合は、3匹ー4匹(各匹数は雌雄いずれでも可),8匹生まれの場合は4匹ー4匹)に絞っている。行動解析に関しては、ピクロトキシン投与による行動への影響が見られなかったため、現在薬剤をビククリンに変更し解析中である。上記より、当初の予定よりやや遅れていると判断した。自閉スペクトラム症(自閉症)は神経発達障害の一つである。自閉症の中核症状は、社会性相互交流の障害であり、コミュニケーションや対人相互関係に困難を有するが病態や根本的な治療法は明らかではない。自閉症の発症メカニズムとして、遺伝的要因が中心に調べられているが、薬剤曝露などの後天的な要因も示されてきた。そこで本研究は、後天的要因によって生じる社会性行動障害の病態解明のために、妊娠12.5日のマウスにバルプロ酸あるいはエタノールを投与し、仔マウスの行動への影響を調べると共に、GABA阻害剤を同時投与した際の影響を検討し、2つのモデルの興奮性及び抑制性ニューロンを組織化学的、分子生物学的に解析することを目的とする。当該年度は、行動解析の検討を引き続き実施した。昨年度までに、バルプロ酸及びエタノール投与マウスは社会性行動の障害を示すことを示した。
KAKENHI-PROJECT-17K15765
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K15765
母胎を介した薬剤曝露による社会性行動障害メカニズムの解明
各薬剤胎生期投与マウスに対するピクロトキシン投与による社会性行動障害への影響は見られなかったので、再度、投与タイミングを検討し直したところ、両マウスとも社会性行動障害の改善が示された。このため、現在これらのマウスの脳を回収し、組織化学、分子生物学な解析に向けて準備を行っている。一方で、ピクロトキシン投与そのものによりマウスの社会性行動障害が示されることを新たに見出した。これらの結果は、薬剤曝露による胎生期の興奮/抑制のバランスの破綻が社会性行動障害の要因となることを示唆している。前年度に比べて、マウスの出産状況が安定し、行動解析の収束の目処がついてきた点は計画通りに進んでいるが、引き続き匹数の追加を行うことと、組織や分子解析のパイロット実験を開始する時期としては当初計画より遅れているので、やや遅れていると判断した。今後は、両モデルマウスにおけるGABAA受容体阻害剤の行動解析における検討を行い、薬剤曝露による社会性行動への影響を解析する。さらに、バルプロ酸やエタノール曝露とGABAA受容体阻害剤による仔の興奮性、抑制性ニューロンへの影響を組織化学的に解析し、各ニューロンの関連遺伝子発現への影響を検討する。組織化学、及び分子解析においては、社会性行動の障害が明確に観察された10週齢のサンプルを主に使用する予定である。今後は、ピクロトキシン投与によるマウスの行動解析の再現性を確認するために個体の追加を行う。バルプロ酸及びエタノール投与マウスに関しては、組織や分子解析の実験を進めていく予定である。現在、抗体やプライマーの探索、検討などを順次進めている。得られた研究成果の一部を2018年度のCINP2018(国際神経精神薬理学会,ウィーンにて開催)にて発表するので、発表準備費、参加登録費、旅費、宿泊費、などが必要となったため。当初計画より計画がやや遅延したことにより、妊娠マウスの購入、抗体やプライマーの購入が必要なため、再計上した。また、得られた研究成果の一部を発表するための旅費、学会参加費として再計上した。
KAKENHI-PROJECT-17K15765
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学校にカリキュラムマネジメントを定着・促進させる教員研修の開発
カリキュラムマネジメントを学校に定着・促進させることが求められている。その方法論のひとつとして、カリキュラムマネジメントを主題とする教員研修の内容・方法を開発した。開発・実施した教員研修については、受講者を対象として、研修直後の質問紙調査や一定期間後の追跡調査を行い、その効果を検討し、改善を加えた。その結果、理論と実践事例を往還する解説や、理論枠組みであるリキュラムマネジメント・モデルを用いた受講者の勤務校の実態分析および改善策の検討の有効性が確認された。カリキュラムマネジメントを学校に定着・促進させることが求められている。その方法論のひとつとして、カリキュラムマネジメントを主題とする教員研修の内容・方法を開発した。開発・実施した教員研修については、受講者を対象として、研修直後の質問紙調査や一定期間後の追跡調査を行い、その効果を検討し、改善を加えた。その結果、理論と実践事例を往還する解説や、理論枠組みであるリキュラムマネジメント・モデルを用いた受講者の勤務校の実態分析および改善策の検討の有効性が確認された。本研究の目的は、カリキュラムマネジメント(以下、CM)を学校に定着・促進させる方法論のひとつとして、教員研修(行政主催の集合研修および校内研修)の内容・方法を開発し、その導入推進方法および条件について解明することである。最終的には、CM研修の手引きおよび研修パックを作成する予定である。まず、2つの県において、研修を主催する立場の指導主事を対象として、CM研修へのニーズ調査を実施した。その結果、研修の内容として、(1)概念および意義の理解の促進、(2)実践例の紹介、(3)スキルの提示の必要性が明らかになった。そこで(2)(3)に対応して、CMが活性化している学校の事例調査を、スクールリーダーのCM行動にも着目して、実施した(小学校、中学校、高等学校)。また、教育行政主催のCM研修の開発および実施を行った。研修での講義の内容、ワークショップ型による演習の内容・方法、演習で使用するワークシートを開発した。研修の対象は、教務主任対象、研究主任対象、主幹教諭対象、校長対象、CM指導者(指導主事、学校管理職等)といったスクールリーダーである。これらの研修では、研修効果測定の試みとして、(1)研修直後の評価票の作成と実施、結果の分析だけでなく、(2)研修後の追跡調査(質問紙調査、インタビュー調査)も実施した。それらの結果、(1)研修以前に研修内容を具体的に周知する必要性、(2)コンピテンシー・モデルの構築の必要性、(3)概念理解の促進とマネジメント・マインドの醸成が急がれること、(4)具体的な実践事例紹介の有効性、(5)カリキュラムマネジメント・モデル(田村2005)を援用した分析用ワークシートの有効性、(6)同一学校から複数名が研修に参加すると効果的であることなどが明らかになってきている。本研究の目的は、カリキュラムマネジメントを学校に定着・促進させる方法論のひとつとして、教員研修(行政主催の集合研修および校内研修)の内容・方法を開発し、その導入推進方法および条件について解明することである。最終的には、カリキュラムマネジメント研修の手引きおよび研修パックを作成する予定である。(1)集合研修や校内研修の実施機会を活用して、カリキュラムマネジメント研修の手引きおよび研修パックのためのワークシートやチェックリストを開発し、また研修内容・方法の有効性を検証している。特に学校での実践を分析するためのツールとしての「カリキュラムマネジメント・モデル(田村2009)」は、「実践の成果と課題が明らかになる」「今後必要名取り組みの方向性が明らかになる」「実践の要素間の関係性が明らかになる」「これまでの自己の実践の整理と価値付けができる」等の効果が、質問紙調査及び追跡調査によって確認された。(独)教員研修センター「カリキュラムマネジメント指導者養成研修」において、全国の指導主事、管理職、教諭を対象にした質問紙調査を実施し、対象別に必要な研修内容・方法および条件、集合研修が勤務校でのカリキュラムマネジメント実践に結びつくための条件について調査した。さらに、昨年度に実施した同研修の受講者の追跡調査も実施した。これらから明らかになった知見は研修受講者にフィードバックしている。(3)カリキュラムマネジメント実践の収集と分析を進めた。その成果として東村山市立大岱小学校の実践をカリキュラムマネジメント観点から分析・記述した書籍を出版した。また、15の特色ある実践事例を収集し、出版にむけ執筆・編集中である。これらの実践事例は、カリキュラムマネジメント・モデルに基づいて分析されており、取組の各要素についての関連的かつ総体的な把握、複数の事例の客観的な比較検討が可能である。従って、各学校の実態に応じた行われる個別的で、複雑で多様な要素からなる実践について、理解の促進や再現可能性の向上に資するものである。本研究の目的は、カリキュラムマネジメント(以下、CMと略)を学校に定着・促進させる方法論のひとつとして、教員研修(行政主催の集合型研修および校内研修)の内容・方法を開発し、その導入推進方法および条件について解明することである。1.平成20年改訂学習指導要領に基づいた15校のCM実践事例を収集・分析し、CMの具体的な方法論を明らかにし、これに理論的な解説を加え、編著書として出版した。研究1年目の調査において、CMの理解と実践化のためには、意義や方法についての理論的な解説とともに、具体的な実践事例の提供が求められることが明らかになっていたためである。しかし、CMは各学校の実態や重点課題に応じて多様に展開されるため、他校の実践をそのまま適応することは不可能である。そこで、本事例集においては、各事例を理論モデルによる分析という媒介を用いて、一般化や他校への適用についての可能性を開いた。
KAKENHI-PROJECT-21530861
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学校にカリキュラムマネジメントを定着・促進させる教員研修の開発
2.前年度に引き続き、集合研修や校内研修の実施機会を活用して、CM研修の内容・方法について、その有効性を検証しながら開発・改善した。CMの意義や概論、方法の提示、他校の実践事例の検討、勤務校の分析と改善策策定といった内容・方法が有効であることが明らかになった。特に学校での実践を分析するためのツールとしての「カリキュラムマネジメント・モデル(田村2009)」による分析については、他の学校の実践分析手法(学校評価アンケート、自由記述、SWOT分析等)との比較において、その特徴を析出した。また、研修場面におけるワークショップ型の活用の意義と方法、留意点、マネジメントの方法なども整理し、出版物やWebサイトで公開した。
KAKENHI-PROJECT-21530861
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顎関節CT撮影時の赤色骨髄線量のモンテカルロ法による推定
CTの被曝線量について最も良い表示方法は,患者への総付与エネルギーと特定の臓器の線量である(ICRP).この報告では,特定の臓器線量として研究課題のように放射線誘発白血病の原因となる平均赤色骨髄線量を,そして総付与エネルギーとしての積分線量を選んだ.第3世代のCTには当施設のYMS-9000を対象とし,その回転中心での強度分布半値幅をフィルム法で測定した.その結果,公称10mmが10.38mm, 5mmが5.64mm, 2mmが2.58mmであり,いずれも実測半値幅は公称スライス幅より大きくなっていた.スライス幅は成人ではMIRD,小児ではHwangの数学ファントムの頭部楕円の平均直径を乗じたものを照射野とした.モンテカルロ法に用いた50万個の光子スペクトルは,実測によるX線出力と総濾過,陽極角度, Bow-Tieフィルタの実データを基礎にコンピュータシミュレーションによって発生させた.モンテカルロ法によるシミュレーションの結果は, 1撮影あたり(120kV, 532.8mAs以下積分線量でも同じ)の赤色骨髄の平均骨髄線量は1cmスライス幅では成人の場合日本人(総赤色骨髄量765g)では110-208μGy,西欧人(総赤色骨髄量1500g)では173-376μGy,小児の場合日本人(総赤色骨髄量328.4g)で64.0-120μGy,西欧人(総赤色骨髄量401.3g)では67.0-136μGyとなった.数値に幅があるのは顎関節付近の位置による.スライス幅による影響は,同じ部位の10mm幅を10, 5, 2mm幅のスライスでそれぞれ1, 2, 5枚撮影すれば,それに応じて日本人成人の平均骨髄線量の合計は208.1, 226.7, 259.4μGyとなり,薄層マルチスライスの方が大きい値となった.総付与エネルギーは1cmスライス幅で,顎関節部付近の位置により成人が16.0-18.3mJ,小児が5.5-6.5mJであった.それぞれ同じファントム故日本人,西欧人の区別は無い.CTの被曝線量について最も良い表示方法は,患者への総付与エネルギーと特定の臓器の線量である(ICRP).この報告では,特定の臓器線量として研究課題のように放射線誘発白血病の原因となる平均赤色骨髄線量を,そして総付与エネルギーとしての積分線量を選んだ.第3世代のCTには当施設のYMS-9000を対象とし,その回転中心での強度分布半値幅をフィルム法で測定した.その結果,公称10mmが10.38mm, 5mmが5.64mm, 2mmが2.58mmであり,いずれも実測半値幅は公称スライス幅より大きくなっていた.スライス幅は成人ではMIRD,小児ではHwangの数学ファントムの頭部楕円の平均直径を乗じたものを照射野とした.モンテカルロ法に用いた50万個の光子スペクトルは,実測によるX線出力と総濾過,陽極角度, Bow-Tieフィルタの実データを基礎にコンピュータシミュレーションによって発生させた.モンテカルロ法によるシミュレーションの結果は, 1撮影あたり(120kV, 532.8mAs以下積分線量でも同じ)の赤色骨髄の平均骨髄線量は1cmスライス幅では成人の場合日本人(総赤色骨髄量765g)では110-208μGy,西欧人(総赤色骨髄量1500g)では173-376μGy,小児の場合日本人(総赤色骨髄量328.4g)で64.0-120μGy,西欧人(総赤色骨髄量401.3g)では67.0-136μGyとなった.数値に幅があるのは顎関節付近の位置による.スライス幅による影響は,同じ部位の10mm幅を10, 5, 2mm幅のスライスでそれぞれ1, 2, 5枚撮影すれば,それに応じて日本人成人の平均骨髄線量の合計は208.1, 226.7, 259.4μGyとなり,薄層マルチスライスの方が大きい値となった.総付与エネルギーは1cmスライス幅で,顎関節部付近の位置により成人が16.0-18.3mJ,小児が5.5-6.5mJであった.それぞれ同じファントム故日本人,西欧人の区別は無い.
KAKENHI-PROJECT-62570899
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シロアリのリゾチーム窒素代謝において果たす役割
土壌食シロアリのみから成るCubitermes属のシロアリを材料に用いて窒素の無機化に関する実験を行った。食物である土壌とシロアリの排泄物中で炭素と窒素の量を比較したところ、シロアリの摂食によりフルボ酸中の炭素がシロアリに消化されること、フミン酸中の窒素が減少し、低分子のフルボ酸中の窒素が増加することが分かった。土壌食のシロアリの消化管はたくさんの部屋に分かれており、それぞれの部分に含まれるアンモニアの量を測定した。その結果、食物が消化管のより後の部分に移動するにつれて、アンモニアの量が増加することが分かった。また、土壌食のシロアリの消化管の一部が強アルカリ性であると報告されているが、土壌やシロアリの排泄物中にはアルカリ条件で可溶となるタンパク質が多く含まれていることを示すデータが得られた。また、中腸でタンパク質分解酵素の活性が最大となることが分かった。さらに、液体クロマトグラフィーによる、消化管中のアミノ酸分析を行い、消化管の各部分に存在する遊離アミノ酸の種類と量を決定した。これらの結果から、土壌食のシロアリにとって窒素を含む化合物が栄養源として重要であることが示された。消化管に共生するバクテリアの機能を調べるために、アガロースに埋めた消化管に微量の放射性同位体標識した糖やアミノ酸を注射し、その物質が何に代謝されるかを調べるマイクロインジェクションという実験を行った。P1,P3、P4と呼ばれる後腸の各部分に400pmol前後の放射性グルコースを注射すると、約200pmol/hの速度で消費され、その多くは酢酸に転換されることが分かった。P3,およびP4部分ではグルコースの消費速度は700pmol/h前後で酢酸のほかにエタノールの生成が見られた。放射性のグルタミン酸およびアラニンを用いた同様の実験の結果からは、主にP3部分でアミノ酸が吸収されること、吸収速度はアミノ酸によって異なることを示す結果が得られた。本年度はまず、^<15>Nを利用したトレーサー実験を開始した。安定同位元素で標識した空中窒素のもとでシロアリを飼育し、一定時間経過後にシロアリの体を組織ごとに分け、体内のどこに標識された窒素が蓄積されるか追跡している。現在までのところ、消化管内の微生物が固定した空中窒素が、シロアリの巣仲間間で観察される栄養交換を介して交換され、シロアリの組織に同化されることを示す結果が得られている。また、消化管内の微生物による窒素固定の速度がコロニーごとに大きく異なっていることが判明した。この研究結果を以前の研究結果と合わせて国際社会性昆虫学会(札幌)で発表した。トレーサー実験に関しては、単独で飼育したシロアリが空中窒素を利用できないことを示す飼育実験の準備をしている他、窒素固定速度に影響する要因が複数あることより、安定した結果が得られるよう、実験条件の調整も進めている。シロアリのリゾチーム遺伝子に関する研究も進行中である。その成果の一部は今年度Insect Biochemistry and Molecular Biologyにおいて発表した。ヤマトシロアリのリゾチーム遺伝子のシークエンスを決定した結果、過去に報告のないユニークな特徴が発見された。また、これらのリゾチーム遺伝子が唾液腺で特異的に発現していることを示した。これらの結果を日本動物学会大会で報告した。現在は配列決定したシロアリリゾチームのcDNAをin vitroの系で発現させたタンパク質を用いて、リゾチーム活性の有無や分子量を調べる実験を進めている。リゾチーム遣伝子の研究は現在ヤマトシロアリ一種でのみしか行われていないが、土壌食のシロアリやキノコを栽培するシロアリのリゾチーム遺伝子の解析を行うためのサンプルを採集した。今後これらの遣伝子の解析を進める予定である。このほか、昆虫等の無脊椎動物がリゾチームを利用してバクテリアを節食することに関してのレビューを執筆し、現在国際誌に投稿中である。土壌食シロアリのみから成るCubitermes属のシロアリを材料に用いて窒素の無機化に関する実験を行った。食物である土壌とシロアリの排泄物中で炭素と窒素の量を比較したところ、シロアリの摂食によりフルボ酸中の炭素がシロアリに消化されること、フミン酸中の窒素が減少し、低分子のフルボ酸中の窒素が増加することが分かった。土壌食のシロアリの消化管はたくさんの部屋に分かれており、それぞれの部分に含まれるアンモニアの量を測定した。その結果、食物が消化管のより後の部分に移動するにつれて、アンモニアの量が増加することが分かった。また、土壌食のシロアリの消化管の一部が強アルカリ性であると報告されているが、土壌やシロアリの排泄物中にはアルカリ条件で可溶となるタンパク質が多く含まれていることを示すデータが得られた。また、中腸でタンパク質分解酵素の活性が最大となることが分かった。さらに、液体クロマトグラフィーによる、消化管中のアミノ酸分析を行い、消化管の各部分に存在する遊離アミノ酸の種類と量を決定した。これらの結果から、土壌食のシロアリにとって窒素を含む化合物が栄養源として重要であることが示された。消化管に共生するバクテリアの機能を調べるために、アガロースに埋めた消化管に微量の放射性同位体標識した糖やアミノ酸を注射し、その物質が何に代謝されるかを調べるマイクロインジェクションという実験を行った。P1,P3、P4と呼ばれる後腸の各部分に400pmol前後の放射性グルコースを注射すると、約200pmol/hの速度で消費され、その多くは酢酸に転換されることが分かった。P3,およびP4部分ではグルコースの消費速度は700pmol/h前後で酢酸のほかにエタノールの生成が見られた。
KAKENHI-PROJECT-02J01706
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02J01706
シロアリのリゾチーム窒素代謝において果たす役割
放射性のグルタミン酸およびアラニンを用いた同様の実験の結果からは、主にP3部分でアミノ酸が吸収されること、吸収速度はアミノ酸によって異なることを示す結果が得られた。
KAKENHI-PROJECT-02J01706
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化合物ライブラリーを利用した新規肺高血圧症治療薬の開発
我々は既に、東北大学化合物ライブラリー5562種類の化合物の中から、肺動脈性肺高血圧症(PAH)に有効な新しい化合物celsatramycin (CEL)を発見した。肺動脈平滑筋細胞(PASMC)の増殖を抑制するという全く新しい機序による治療薬として治療困難な肺動脈性肺高血圧症患者に有効であることが期待できる。細胞、肺高血圧モデル動物でのCEL実験を行い、より詳細な作用機序、血行動態を明らかにし、臨床応用を目指す。我々は既に、東北大学化合物ライブラリー5562種類の化合物の中から、肺動脈性肺高血圧症(PAH)に有効な新しい化合物celsatramycin (CEL)を発見した。肺動脈平滑筋細胞(PASMC)の増殖を抑制するという全く新しい機序による治療薬として治療困難な肺動脈性肺高血圧症患者に有効であることが期待できる。細胞、肺高血圧モデル動物でのCEL実験を行い、より詳細な作用機序、血行動態を明らかにし、臨床応用を目指す。
KAKENHI-PROJECT-19K17549
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エナメル基質中の生理的活性物質の同定と,その歯周組織再生への応用
本研究の目的は、エナメル基質中の生理的活性物質の分離、同定をおこなうことと、その生理的活性物質の歯周組織再生への応用を検討することの二点である。ブタのエナメル基質由来のEMDOGAIN(商品名、以下EMD)はマウス骨髄由来のKUSA細胞の細胞増殖を促進し、骨芽細胞表現型の発現を促進し、骨欠損部の再生を促進した。BMP2やTGF-βに対する抗体を用いた実験から、EMDの有効成分としてBMP2あるいはTGF-βを含む可能性が考えられるが、EMDを皮下に埋入しても異所性の骨形成を誘導しなかったためEMDのBMP様活性は弱いと考えられた。またEMD中の有効成分がアメロジェニンである可能性も考えられたが、アメロジェニンのリコンビナントタンパクを骨欠損部に埋入しても治癒を促進しなかった。したがって、EMDは多数の有効成分を含み、それらの複合的な作用によって歯周組織の再生を促進する可能性が高い。ブタのエナメル基質から生化学的に生理的活性物質を分離する試みは、エナメルタンパクの不溶性が障害となり進展しなかった。そこで、プラスミド発現ベクターを用いた新規の遺伝子導入法を考案した。また、マウス切歯歯胚部と皮下からRNAを抽出し、DNAチップを用いて遺伝子発現を網羅的に検討した。歯周組織の再生を検討する上で、セメント芽細胞に特異的に発現している遺伝子は、セメント芽細胞のマーカーとなる。セメント芽細胞に特異的に発現している遺伝子を同定するために、マウスの臼歯の凍結切片よりレーザーキャプチャー顕微鏡を用いるマイクロダイセクションによってセメント芽細胞と歯根膜細胞を切り出し、RNAを抽出した。回収可能なRNA量は極めて微量であるが、増幅することによって充分にDNAチップでの解析が可能であることを確認した。これらの研究を進展させることは、歯周組織の効果的な再生法へ繋がると考えられる。本研究の目的は、エナメル基質中の生理的活性物質の分離、同定をおこなうことと、その生理的活性物質の歯周組織再生への応用を検討することの二点である。ブタのエナメル基質由来のEMDOGAIN(商品名、以下EMD)はマウス骨髄由来のKUSA細胞の細胞増殖を促進し、骨芽細胞表現型の発現を促進し、骨欠損部の再生を促進した。BMP2やTGF-βに対する抗体を用いた実験から、EMDの有効成分としてBMP2あるいはTGF-βを含む可能性が考えられるが、EMDを皮下に埋入しても異所性の骨形成を誘導しなかったためEMDのBMP様活性は弱いと考えられた。またEMD中の有効成分がアメロジェニンである可能性も考えられたが、アメロジェニンのリコンビナントタンパクを骨欠損部に埋入しても治癒を促進しなかった。したがって、EMDは多数の有効成分を含み、それらの複合的な作用によって歯周組織の再生を促進する可能性が高い。ブタのエナメル基質から生化学的に生理的活性物質を分離する試みは、エナメルタンパクの不溶性が障害となり進展しなかった。そこで、プラスミド発現ベクターを用いた新規の遺伝子導入法を考案した。また、マウス切歯歯胚部と皮下からRNAを抽出し、DNAチップを用いて遺伝子発現を網羅的に検討した。歯周組織の再生を検討する上で、セメント芽細胞に特異的に発現している遺伝子は、セメント芽細胞のマーカーとなる。セメント芽細胞に特異的に発現している遺伝子を同定するために、マウスの臼歯の凍結切片よりレーザーキャプチャー顕微鏡を用いるマイクロダイセクションによってセメント芽細胞と歯根膜細胞を切り出し、RNAを抽出した。回収可能なRNA量は極めて微量であるが、増幅することによって充分にDNAチップでの解析が可能であることを確認した。これらの研究を進展させることは、歯周組織の効果的な再生法へ繋がると考えられる。軽度の脱灰したエナメルを筋肉内に移植すると骨様の石灰化組織が誘導される(Urist, 1971)。またHertvig上皮鞘の細胞により、歯根象牙質表面に分泌されるエナメル気質が,セメント芽細胞の分化を誘導する可能性が提唱された(Slavkin, 1976)。さらに、ブタエナメル基質の酢酸による粗抽出物は、歯根膜細胞の増殖と分化を促進し、歯周組織の再生を促進することが報告されてた(Hammerstrom, 1997)。そして、ブタエナメル基質粗抽出物であるEMDOGAIN(商品名)の歯周組織再生への臨床応用が、現在おこなわれている。したがって、「エナメル基質中に何らかの硬組織誘導能を示す生理的活性物質があること」は明かである。しかし、その生理的活性物質の正体は明らかにされていない。本研究の目的は、「エナメル基質中の生理的活性物質の分離、同定をおこなうこと」、「その生理的活性物質の歯周組織再生への応用を検討すること」の2点である。EMDOGAINは、マウス骨髄由来のKUSA細胞の細胞増殖を促進し、アルカリフォスファタ活性を上昇させ、オステオカルシンやオステオポンチンの遺伝子発現を促進し、石灰化結節の形成を促進させた。この細胞はエナメル質中に存在する活性物質を同定するために有用な細胞であると考えられる。エナメルタンパクの一つであるアメロジェニンのリコンビナントタンパクを作製し、KUSA細胞に作用させたところ、石灰化結節の形成を促進した。したがって、EMDOGAIN中の有効成分がアメロジェニンである可能性が考えられるが、この点についてはさらに検討をおこなう必要がある。
KAKENHI-PROJECT-13470460
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エナメル基質中の生理的活性物質の同定と,その歯周組織再生への応用
EMDOGAINをウシのアテロコラーゲンをキャリアーとしてラットの皮下および、ラット頭蓋骨の骨欠損部に埋入した。皮下に埋入した場合は、異所性の骨形成を誘導しなかったことから、EMDOGAINにはBMP様の活性はないと考えられる。頭蓋部の骨欠損部に埋入したEMDOGAINは、欠損部の修復を促進したことから、EMDOGAINには骨組織再生を促進する作用があることが推測される。ブタエナメル基質粗抽出物であるEMDOGAIN(商品名)の歯周組織再生への臨床応用が、現在おこなわれている。「エナメル基質中に何らかの硬組織誘導能を示す生理的活性物質があること」は明らかであるが、その生理的活性物質の正体は明らかにされていない。本研究の目的は、「エナメル基質中の生理的活性物質の分離、同定をおこなうこと」、「その生理的活性物質の歯周組織再生への応用を検討すること」の2点である。EMDOGAINはマウス骨髄由来のKUSA細胞の細胞増殖を促進し、骨芽細胞表現型の発現を促進し、石灰化結節の形成を促進させた。同じマウス骨髄由来のST2細胞に対しては作用を示すものの、KUSA細胞に比較してあまり顕著な作用を示さなかった。またEMDOGAINは、マウス骨髄細胞培養系での破骨細胞形成をも促進した。KUSA細胞はエナメル質中に存在する活性物質を同定するために有用な細胞であると考えられる。EMDOGAINのKUSA細胞に対する作用は、培地にBMP2やTGF-βに対する抗体を添加すると抑制されたことから、EMDOGAINの有効成分としてBMP2あるいはTGF-βを含む可能性が考えられる。しかし、EMDOGAINを皮下に埋入した場合には異所性の骨形成が誘導されなかったことから、EMDOGAINのBMP様活性は弱いと考えられる。アメロジェニンのリコンビナントタンパクを作製しKUSA細胞に作用させたところ、石灰化結節の形成を促進したことから、EMDOGAIN中の有効成分がアメロジェニンである可能性が考えられた。EMDOGAINはラット頭蓋骨の欠損部の修復を促進したが、アメロジェニンのリコンビナントタンパクを骨欠損部に埋入しても治癒を促進しなかった。これらの結果を総合すると、EMDOGAINは多数の有効成分を含み、それらの複合的な作用によって歯周組織の再生を促進する可能性が高い。ブタエナメル基質抽出物であるEMDOGAIN(商品名)の歯周組織再生への臨床応用が、現在おこなわれている。エナメル基質中に何らかの硬組織誘導能を示す生理的活性物質が存在することは明らかであるが、その生理的活性物質の正体は明らかにされていない。本研究の目的は、エナメル基質中の生理的活性物質の分離、同定をおこなうこと、その生理的活性物質を歯周組織再生への応用を検討することの2点である。前年度までの培養細胞を用いた実験結果より、EMDOGAINは多数の有効成分を含み、それらの複合的な作用によって歯周組織の再生を促進する可能性が示唆された。しかし、エナメル基質からのタンパクの分離精製と、それを用いた細胞培養系での活性評価は容易ではない。また、セメント芽細胞が発現している特異的なマーカーが同定されていないことは、本研究の大きな障害となっている。そこで、以下の実験をおこなった。
KAKENHI-PROJECT-13470460
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13470460
進行性骨化性線維異形成症のモデルメダカの作製と発症機構の解明
FOPは筋肉や腱、靭帯、関節等が骨化する遺伝病である。本研究では患者と同じ変異を導入したトランスジェニック(Tg)メダカの作製を試みた。筋特異的プロモーター下流にIRES-GFPを含むバイシストロニックな発現コンストラクトを構築したが蛍光を示す胚は得られなかった。プロモーター直下にGFPを連結した場合には骨格筋において明瞭な蛍光を示したので、GFP融合タンパク質としてTgメダカを作製した結果、筋組織に顕著な表現型を示すTgメダカを得ることができた。FOPは筋肉や腱、靭帯、関節等が骨化する遺伝病である。本研究では患者と同じ変異を導入したトランスジェニック(Tg)メダカの作製を試みた。筋特異的プロモーター下流にIRES-GFPを含むバイシストロニックな発現コンストラクトを構築したが蛍光を示す胚は得られなかった。プロモーター直下にGFPを連結した場合には骨格筋において明瞭な蛍光を示したので、GFP融合タンパク質としてTgメダカを作製した結果、筋組織に顕著な表現型を示すTgメダカを得ることができた。FOPは200万人に1人の割合で見つかる稀な疾患であり、筋肉や腱、靭帯、関節等が骨化する常染色体優性の遺伝病である。非根治治療ですら極めて困難であるため、FOP発症の分子生物学的機構を詳細に調べることが治療につながる唯一の方法である。本年度は比較ゲノム解析の手法により、ヒト、メダカを含む10種類の生物で原因遺伝子であるACVR1/ALK2についてゲノム解析を行い、エキソン・イントロン構造の解析、およびプロモーター領域の推定を行った。さらに、同定したメダカACVR1オルソログ(01Acvr1)のノックダウン解析では発生初期に致死となることが確認できた。さらに、ヒトACVR1(HsACR1)およびひ01Acvr1のトランスジェニックメダカ(Tgメダカ)の作製を試みた。プロモーターとしてCMVまたはベーダアクチン(ActB)を選択し、HsACVR1、01Acvr1がGFPとの融合タンパク質として発現するベクター計4種類を構築した。CMVプロモーターを用いた場合ではHsACrR1,ひ01Acrrlともに嚢胚期で致死となった。一方、ActBプロモーターを用いてHsACVR1を発現させたTgメダカは孵化まで至ったが、成魚を得ることができなかった。そこで、CMV-01acvr1-GFP発現ベクターを直接稚魚の筋肉にインジェクションすることで限局的に融合タンパク質を発現する個体を得た。RT-PCRにより01Acvr1の発現が確認できたので、現在Tgメダカ表現型を検討している。FOPは200万人に1人の割合で見つかる稀な疾患であり、筋肉や腱、靭帯、関節等が骨化する常染色体優性の遺伝病である。非根治治療ですら極めて困難であるため、FOP発症の分子生物学的機構を詳細に調べることが治療につながる唯一の方法である。本研究では原因遺伝子であるACVR1に患者型の変異を導入した変異型ACVR1を恒常的に発現するトランスジェニックメダカを作製することでFOPの発症機序についての検討を行った。本年度は昨年クローニングを行ったヒトACVR1(HsACVR1)およびメダカAcvr1(01Acvr1)にFOP患者と同じ変異を導入した変異型ACVR1トランスジェニックメダカ(Tgメダカ)と新たにクローニングしたメダカBmp4(01Bmp4)のTgメダカの作製を試みた。FOP患者で症状が現れる骨格筋に特異的なプロモーターとしてメダカミオシンプロモーターをクローニングした。まず、プロモーター下流にた変異型HsACVR1、01Acvr1または01Bmp4を連結し、さらにスクリーニング用マーカーとしてIRES-GFPを含むバイシストロニックな発現コンストラクトを構築した。プロモーター直下にGFPを連結したコントロール用発現コンストラクトの場合では骨格筋において明瞭な蛍光を示すTgメダカが得られたが、3種のIRESコンストラクトでは蛍光を示す胚は得られなかった。そこで、細胞外ドメインにGFPを融合させた変異型HsACVR1のTgメダカを作製した所、骨格筋の細胞膜上に蛍光を示し、かつ筋組織に顕著な表現型を示す個体を得ることができた。
KAKENHI-PROJECT-19791046
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19791046
多段階発がんの各段階に対するDNA修復の関与
発がんの各段階は遺伝子の突然変異あるいは発現の変化と考えられているが、その原因となるDNAの変化はDNA損傷あるいはDNA複製のミスによって生じる。DNA修復は、DNA損傷あるいは複製ミスを低減させる効果を有するが、時には修復のエラーも生じ得る。本研究は(1)DNA修復によって突然変異の型が変わるか、(2)複製エラーは自然突然変異に限られるか、(3)放射線によるアポトーシスに関与している遺伝子の働きとDNA修復、の3点の解明を主な目的とした。放射線および化学物質によって生じたDNA損傷のうち、アルキル化剤損傷以外では、DNA修復が存在すると、p53遺伝子、p21遺伝子などの突然変異は量的に減少するが、塩基変化の型などの質的な面では大きな違いはないことが明らかになった。p21遺伝子は突然変異が生じると、ヒトがん細胞のアポトーシスを阻止する能力が低下した。紫外線によって生じた皮膚がんと自然に生じたとみられる悪性黒色腫で複製エラーの有無を比較したが両者に差はなく(昨年度からの継続実験)、複製エラーの意義は解明できなかった。本研究は同一課題で3年間研究したが、紫外線による皮膚がんの発生を中心に、各段階の突然変異の中でp53遺伝子の突然変異が中心的役割を果たしていることが、p53遺伝子に紫外線特有のDNA変化がみられ、それが発がんの原因となっていることが高発がん性の色素性乾皮症患者の皮膚がんで明確に示された。発がんの各段階は遺伝子の突然変異あるいは発現の変化と考えられているが、その原因となるDNAの変化はDNA損傷あるいはDNA複製のミスによって生じる。DNA修復は、DNA損傷あるいは複製ミスを低減させる効果を有するが、時には修復のエラーも生じ得る。本研究は(1)DNA修復によって突然変異の型が変わるか、(2)複製エラーは自然突然変異に限られるか、(3)放射線によるアポトーシスに関与している遺伝子の働きとDNA修復、の3点の解明を主な目的とした。放射線および化学物質によって生じたDNA損傷のうち、アルキル化剤損傷以外では、DNA修復が存在すると、p53遺伝子、p21遺伝子などの突然変異は量的に減少するが、塩基変化の型などの質的な面では大きな違いはないことが明らかになった。p21遺伝子は突然変異が生じると、ヒトがん細胞のアポトーシスを阻止する能力が低下した。紫外線によって生じた皮膚がんと自然に生じたとみられる悪性黒色腫で複製エラーの有無を比較したが両者に差はなく(昨年度からの継続実験)、複製エラーの意義は解明できなかった。本研究は同一課題で3年間研究したが、紫外線による皮膚がんの発生を中心に、各段階の突然変異の中でp53遺伝子の突然変異が中心的役割を果たしていることが、p53遺伝子に紫外線特有のDNA変化がみられ、それが発がんの原因となっていることが高発がん性の色素性乾皮症患者の皮膚がんで明確に示された。
KAKENHI-PROJECT-09254232
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09254232