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病的賭博者家族の自助グループ参加による内面的成長過程
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4.倫理的配慮:自助グループの代表者、病的賭博者家族への支援を行っている公共機関長と担当者に研究の趣旨を説明し対象者の紹介を受けた。本研究は研究機関の倫理委員会の承認を得て実施した。【平成23年度実績】平成23年度は、第1回日本保健師学術集会成人保健2にて「病的賭博者家族の自助グループ参加による病気の認識の変化」をポスター発表した。病的賭博者家族の病気への認識は【個人の趣味・遊び】【病気ではないか】【病気の確信】【病気の理解】へと変化していたこと、各認識の特徴を事例に基づいて説明した。本会は日本保健師連絡協議会の開催であり、全国各地の保健師が参加していた。会場からは「本人が回復に向かうにはどうすればいいか」「専門職や病院、行政機関は家族の支援に役立っていたのか」「本人に病気の自覚のない統合失調症にも応用できるのか」等、発表内容に対して個別の相談や問い合わせがあり、地域で働く保健師が病的賭博に関心をもっていることが分かった。今後も病的賭博の実態に関する情報提供及び問題提起を継続する必要があることが確認できた。
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KAKENHI-PROJECT-21792348
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21792348
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アシネトバクター属の菌種レベルにおける耐性機序解析および病原性解析
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Acinetobacter属菌はその菌種間において生化学的性状が酷似していることから、一般検査室レベルでは菌種レベルにおける正確な同定が困難であることが知られている。一方で菌種ごとにその病原性が異なっている可能性が指摘されている。本菌種が敗血症などの重症感染症の原因菌となった場合、適切な治療を行うためには正確な菌種同定を行う事が重要になるが、一方で初期の段階ではその疫学的情報が重要になる。本研究では従来、分離頻度が高いと報告されていたA. baumanniiよりも、血液培養においては、A. soliが高頻度に分離されることを明らかにした。Acinetobacter属は病院内における代表的な日和見感染症の原因菌である事が知られている。また、薬剤耐性を獲得した場合し、感染症の原因菌となった場合には治療に難渋することが知られている。一方でAcinetobacter属はその生化学的性状が酷似していることから、一般的な検査室レベルの解析では詳細な菌種レベルでの同定は困難である。近年、Acinetobacter属の菌種の違いにより、生命予後が異なるなどの報告がなされるようになってきた。しかしながら、本邦におけるAcinetobacter属の詳細は不明な点が多く、正確な菌種レベルでのAcinetobacter属に関する解析は行なわれていなかった。H25年度は遺伝子解析技術を用いて、Acinetobacter属の各菌種におけるそれぞれの薬剤感受性試験および耐性機序に関する解析を行なった。結果としてはメロペネムに耐性を示すAcinetobacter属が16.7%認められた。菌種ごとに解析を行なった。臨床的に切り札的に使用されるメロペネムへの耐性率はAcinetobacter soliにおいて最も高い(46.2%)結果を得た。次いでAcinetobacter ursingii(12.5%)がメロペネムへ対し、高い耐性率を示していた。これらの主な耐性機序は、解析の結果、メタロβラクタマーゼであるIMP-1による影響が大きいと考えられた。本研究結果は、分離された菌種により、その耐性機序が異なる可能性を示しており、治療上または感染対策上においても重要な知見となる可能性が示唆された。Acinetobacter属菌はその菌種間において生化学的性状が酷似していることから、一般検査室レベルでは菌種レベルにおける正確な同定が困難であることが知られている。一方で菌種ごとにその病原性が異なっている可能性が指摘されている。本菌種が敗血症などの重症感染症の原因菌となった場合、適切な治療を行うためには正確な菌種同定を行う事が重要になるが、一方で初期の段階ではその疫学的情報が重要になる。本研究では従来、分離頻度が高いと報告されていたA. baumanniiよりも、血液培養においては、A. soliが高頻度に分離されることを明らかにした。Acinetobacter属に関する詳細は不明な点が多く、特に正確な菌種レベルでのAcinetobacter属の同定は、その菌種間での生化学的性状が非常に類似していることから困難であり一般的には行なわれていなかった。H24年度は遺伝子解析技術を用いて、Acinetobacter属の菌種レベルにおける同定を行なった。対象とした菌株は東北大学病院で血液培養から分離されたAcinetobacter属50株とした。正確な菌種レベルでの同定にはrpo B遺伝子の特定領域(zone1, zone2, rplL-rpoB, rpoB-rpoC)をシークエンス解析することにより行なった。一般的にはA. baumanniiの分離頻度が多いと報告されているが、本研究結果ではA. baumannii以外のAcinetobacter属が最も多く分離された。Acinetobacter属は菌種によってその生命予後が異なる可能性が指摘されている。本研究結果により、菌種レベルでの正確な同定は疫学上も重要であることが示唆された。平成24度は東北大学病院において血液培養から分離されたAcinetobacterを対象に菌種レベルにおける正確な同定をrpoB遺伝子のシークエンス解析により行った。その結果、血液培養由来株においてはA. soliが最も分離頻度が高い事が新たな知見として得られた。Acinetobacter属菌は菌種によりその生命予後が異なる可能性が指摘されており、正確な同定は疫学上においても重要であることが示唆された。H25年度は、臨床上切り札的抗菌薬と考えられているカルバペネム系薬に関する薬剤感受性・耐性機序に関して検討を行った。既存の知見では抗菌薬に高度の耐性を示すAcinetobacter属菌はA. baumanniiであり、特にST92に属する菌株がその傾向が強いと報告されてきた。しかしながら、本研究ではカルバペネム系薬であるメロペネムに最も多く耐性を示した菌種はA. soliであり、次いでA. ursingiiであり、新たな知見をもたらした。これらカルバペネム系薬に耐性を示したA. soli、A. ursingiiの耐性機序は解析の結果メタロβラクタマーゼであるIMP-1が主要因であることが判明した。IMP-1はプラスミド上に存在することが推測されることから本知見は感染対策上の重要な知見にもなり得る。H26年度は上記知見を踏まえ、市中における血液培養分離株で検討を行った。結果としてはA. baumanniiの分離頻度が高く、イミペネムに耐性を示した株はOXA-51-
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KAKENHI-PROJECT-24590675
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24590675
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アシネトバクター属の菌種レベルにおける耐性機序解析および病原性解析
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likeによる機序が推測され、大学病院と市中では異なる結果となった。本研究はAcinetobacterの菌種レベルでの耐性機序を明らかにするきっかけとなった研究であり、耐性機序別に治療を考える場合の重要な知見となった。臨床微生物学菌株の収集が遅れているため。Acinetobacter属は日和見感染症の原因菌となるが、一般市中病院における血液培養からの分離頻度が本年度は予想より少なく、菌株の収集状況が当初の予測より遅れているため当実験全体の予定としてはやや遅れている状況である。市中における菌株収集は継続して行なっている。今年度までに明らかにした大学病院の菌株の解析における相違点も比較解析可能である。市中病院と大学病院における菌種レベルでの耐性率・耐性機序の相違を解明していく予定である。。さらにはmodified Hodge testによるカルバペネマーゼ確認試験も併せて行なう予定である。カルバペネムのMICが4μg/ml以上の株に対してはPCR法を用いたカルバペネム耐性遺伝子の解析を行なう。カルバペネム耐性株について、OXA型カルバペネマーゼおよびメタロ-β-ラクタマーゼ産生遺伝子を検索する。OXA型カルバペネマーゼに関してはInsertion Sequenceの有無の検討も行う。OXAタイプ-β-ラクタマーゼ遺伝子を保有していた株に対しては、シークエンス用プライマーを用いて、PCRを行い、得られたPCR産物をABI3730xl Analyzer(アプライドバイオシステム)にてDNAシークエンス解析を行う。DNAシークエンス解析結果に対し、BLAST:version2.2.24(http://blast.ddbj.nig.ac.jp/top-j.html)を用いてOXAタイプ-β-ラクタマーゼ遺伝子の型を判定する。25年度に効率的に研究を推進したことに伴い発生した未使用額である26年度は25年度の未使用額を合わせて26年度の研究遂行に使用する予定である次年度使用額は、当初計画していた菌株が収集を次年度に継続延期することによって生じたものであり、継続延期した菌株収集に伴い、菌種レベルでのシークエンス解析、薬剤感受性試験、メタロ-β-ラクタマーゼの確認試験、カルバペネマーゼ確認試験、薬剤耐性遺伝子の解析、Insertion Sequenceの有無の検討、OXAタイプ-β-ラクタマーゼ遺伝子の型の解析に必要な経費として平成25年度請求額と合わせて使用する予定である。
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KAKENHI-PROJECT-24590675
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24590675
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高校・大学間の接続をめざす経済学教育の再構築と学生の経済リテラシーの国際比較
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日本の高等学校の経済教育内容と大学のそれとの不連続の現状を明らかにし、大学生の経済学習を効果的かつ効率的に行わせるための課題を、日本の大学のカリキュラムに見られる特徴から指摘した。また高校生と大学生のパーソナル・ファイナンスに関する知識の程度を調査するためのテストを実施して結果を分析した。さらに大学生の経済リテラシーついて、日本・米国・韓国・フィリピン・ニュージーランドで共通問題を使ってテストを実施し、その結果の国際比較から日本の大学生の経済理解の実態を明らかにした。日本の高等学校の経済教育内容と大学のそれとの不連続の現状を明らかにし、大学生の経済学習を効果的かつ効率的に行わせるための課題を、日本の大学のカリキュラムに見られる特徴から指摘した。また高校生と大学生のパーソナル・ファイナンスに関する知識の程度を調査するためのテストを実施して結果を分析した。さらに大学生の経済リテラシーついて、日本・米国・韓国・フィリピン・ニュージーランドで共通問題を使ってテストを実施し、その結果の国際比較から日本の大学生の経済理解の実態を明らかにした。本年度は第1年目であったので、中学生版のパーソナル・ファイナンスに関するテスト問題を翻訳・作成し、1996年以来続けている「生活経済テスト」シリーズの第8回テストとして、日本の高校生と大学生へ実施した。そのテスト結果は、日米の3つの学会で報告をした。また、この問題解説を分担して作成し、現在、冊子としてまとめるために校正中である。また、第9回目のテストとして、小学生版のパーソナル・ファイナンスに関するテスト問題を翻訳・作成中であるので、2008年度に冊子として作成し、パーソナル・ファイナンス入門テスメとして、日本の高校生と大学生へ実施する予定である。研究成果は、論文が1本執筆されているだけで、学会報告が中心となった。まず、ニュージーランドのワイカト大学のスティーブン・リム教授と共に、2007年8月31日に、オークランド大学で、ニュージーランドで収集したデータを用いて、ニュージーランドと日本の大学生の経済学リテラシーの比較に関して、山岡が報告した。中学生版のパーソナル・7アイナンスに関しては、日本の高校生と大学生の比較を、浅野・猪瀬・樋口・山岡が、10月5日に米国のデンバーで開催されたNCEEの年次総会で、また、10月7日に埼玉大学での日本社会科教育学会で、阿部・浅野・山岡他が報告し、日米の国際比較に関しては、12月9日に、阿部・浅野.山岡他が福岡教育大学で開催された経済教育学会の全国大会で報告した。高校生のパーソナル・ファイナンス・リテラシーに関する日本の高校生と大学生の比較については、2008年3月17日にオークランド大学で、阿部と山岡が報告した。2008年2月16日には、州レベルでの経済教育の実情を知るために、米国のハワイ州から3名の経済教育の研究者・高校教師を招聘して、国際セミナーを開催した。2008年度は、2009年度の8月17日と18日に、早稲田大学の国際会議場で開催される大学レベルの経済学教育の国際比較に関する国際シンポに向けて、大学生の経済学理解カテストを実施し、そのデータの収集を行った。また、この1年間をかけて、この国際シンポに参加し、論文の執筆と報告をお願い出来る研究者の人選を行った結果、米国、韓国、台湾、英国、フィリピン、ニュージーランドから招聴者を選別出来た。研究成果の報告としては、まず、韓国経済学教育学会の夏季会議(晋州)に、山岡、浅野、樋口が参加し、日本の経済教育の歴史と現状に関して8月28日に慶尚大学で報告し、両国間で情報交換を行った。ニュージーランド学会が早稲田大学で8月15日に開催した国際会議では、海外研究協力者のワイカト大学のスティーブン・リム教授と共に、日本とニュージーランドの大学生の経済理解力テスト(TUCE)の国際結果について、山岡と共同報告を行った。さらに、米国のミシシッピー州バイロクシで開催された米国経済教育協議会の年次総会では、TUCEの分科会を開設し、浅野と海外研究協力者のケン・レベック教授が、日米のTUCEの結果に関して、また山岡とリム教授が、日本とニュージーランドの結果に関して、韓国からの研究者と共に報告をした。2009年1月6日に米国のサンフランシスコで開催されたアメリカ経済学会経済教育委員会主催の国際シンポでは、浅野、阿部、山岡が日本から参加し、日本の高校生と大学生の経済教育の現状と問題点に関して、様々なデータを用いて分析し、その結果を報告した。この論文の要約版は、会議に参加した英国、韓国、オーストラリアの研究者による論文と共に、米国の学会誌であるJournal of Economic Educationに掲載される予定である。本年度は、公民科担当の高校教員の経済に関する意識を調査するために、全国全ての高等学校(約5400校)に対してアンケート用紙を送付し、約1500通の回答をえた。その結果の一部に関しては、「経済を教える高等学校教員の属性と意識:アンケート予備調査の結果から」というテーマで、香川大学で11月23日に開催された日本社会科教育学会第59回全国大会において、浅野と山岡が報告をした。詳細な分析は今後行い、最終的には、報告書を作成する予定である。また研究成果の報告として、(1)2009年5月24日に長崎大学で開催された日本高等教育学会
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KAKENHI-PROJECT-19330205
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19330205
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高校・大学間の接続をめざす経済学教育の再構築と学生の経済リテラシーの国際比較
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第12回大会で、「日本の学部レベルの経済教育:現状と課題」というテーマで、浅野と山岡が、(2)10月10日に米国のワシントンDCで開催された全米経済教育協議会(CEE)の年次総会で、「Present State of Economic Education in Japan」というテーマで、浅野と山岡が、(3)11月15日に早稲田大学で開催されたパーソナル・ファイナンス学会第1回全国大会で、「アメリカにおけるパーソナル・ファイナンス教育:米国CEE(全米経済教育協議会)の活動を中心として」というテーマで、浅野、阿部、山岡が報告をした。
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KAKENHI-PROJECT-19330205
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19330205
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MRIの医療技術評価分析モデルとガイドラインの作成
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前年度までの研究課題にて行った、国内におけるMRIの設置及び利用状況のアンケート調査の集計により、国内のMRI保有施設が抱える問題点を統計処理により客観的に抽出し、結果概要について放射線技術学会秋季学術大会で発表を行った。結果概要に関する注目すべき点として、多くの施設において、十分な検査体制の整っていない環境(具体的には常勤の診療放射線技師や放射線科医がいない施設)で設置されている可能性が示唆され、また検査体制が十分でない施設においては造影検査や読影件数の割合が少ない(病院や画像診断センターに比べ、有床・無床診療所では読影されていない検査が78割も有る)ことがわかった。これらの結果を踏まえ、現在はMRI保有施設においてMRI導入、スタッフィング、オーダー決定等の際どの要因を比較・検討すべきかのシナリオを想定し、実用的な分析モデルに反映できるよう検討している。検討途中ではあるが、具体的なモデル例としては、MRIの導入に関するモデル(「MRI導入の要否」「機種選定」「スペック比較」等)、MRIの利用に関するモデル(「検査枠の設定」「検査部位」「検査オーダー」「読影方法」等)を構築していく予定である。尚、2018年度は、6月より研究代表者の妊娠中の体調不良により当初の計画から遅れをとったため、一旦中断申請を行っている。今後は研究期間の延長申請を行った後、8.今後の研究推進方策に記すとおり、研究課題を進めていく予定である。研究の再開は2020年1月を予定している。2018年度は、6月より研究代表者の妊娠中の体調不良により当初の計画から遅れをとったため、一旦中断申請を行っている。今後は研究期間の延長申請を行った後、今後の研究推進に記すとおり、研究課題を進めていく予定である。尚、研究の再開は2020年1月を予定している。研究再開後は、現在検討しているMRI保有施設においてMRI導入、スタッフィング、オーダー決定時に想定されるシナリオに関して、モデルの構築を行う。2020年度は、前研究課題で得られたデータ、および文献データによりモデルの検証を行った上で、2021年度には分析方法に関するガイドラインを作成し、エクセル等の一般的なソフトウェアを用いて利用ができるように書き換えたモデルと合わせて無料配布を行う予定である。具体的な計画は以下のとおりである。1.モデル構築TreeAge Pro等のモデル作成専用のソフトウェアを使用して、MRIの導入に関するモデル(例として「MRI導入の要否」「機種選定」「スペック比較」等)、MRIの利用に関するモデル(「検査枠の設定」「検査部位」「検査オーダー」「読影方法」等)、の構築を行う。臨床上の技術や要望を反映したモデルとなるように、撮影や読影の実務者(放射線技師や放射線科医)を招き、複数回の検討会を持った上でモデルの精査を行う。2.テスト分析精査したモデルの検証を行うため、入力値のリストアップと、感度分析において変動させるべきパラメータおよび変動値を決定する。3.分析結果の考察、研究の成果の公表2.のシミュレーション結果を関係する研究会や学会で公表しモデルのブラッシュアップをおこなう。4.ガイドライン素案の作成ガイドラインの素案をまとめる。医療従事者を対象とすることに留意し、実務者に適宜相談の上最終化を目指す。また、モデルが最終化したところで、Microsoft Excel等の一般的なソフトウェアにモデルを書き出す。5.ガイドラインの提案と啓発ガイドラインの公表を行い、学会や業界団体等を通して成果物の利用啓発活動を行う。前年度までの研究課題にて行った、国内におけるMRIの設置及び利用状況のアンケート調査の集計により、国内のMRI保有施設が抱える問題点を統計処理により客観的に抽出し、結果概要について放射線技術学会秋季学術大会で発表を行った。結果概要に関する注目すべき点として、多くの施設において、十分な検査体制の整っていない環境(具体的には常勤の診療放射線技師や放射線科医がいない施設)で設置されている可能性が示唆され、また検査体制が十分でない施設においては造影検査や読影件数の割合が少ない(病院や画像診断センターに比べ、有床・無床診療所では読影されていない検査が78割も有る)ことがわかった。これらの結果を踏まえ、現在はMRI保有施設においてMRI導入、スタッフィング、オーダー決定等の際どの要因を比較・検討すべきかのシナリオを想定し、実用的な分析モデルに反映できるよう検討している。検討途中ではあるが、具体的なモデル例としては、MRIの導入に関するモデル(「MRI導入の要否」「機種選定」「スペック比較」等)、MRIの利用に関するモデル(「検査枠の設定」「検査部位」「検査オーダー」「読影方法」等)を構築していく予定である。尚、2018年度は、6月より研究代表者の妊娠中の体調不良により当初の計画から遅れをとったため、一旦中断申請を行っている。今後は研究期間の延長申請を行った後、8.今後の研究推進方策に記すとおり、研究課題を進めていく予定である。研究の再開は2020年1月を予定している。2018年度は、6月より研究代表者の妊娠中の体調不良により当初の計画から遅れをとったため、一旦中断申請を行っている。今後は研究期間の延長申請を行った後、今後の研究推進に記すとおり、研究課題を進めていく予定である。尚、研究の再開は2020年1月を予定している。研究再開後は、現在検討しているMRI保有施設においてMRI導入、スタッフィング、オーダー決定時に想定されるシナリオに関して、モデルの構築を行う。
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KAKENHI-PROJECT-18K01642
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K01642
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MRIの医療技術評価分析モデルとガイドラインの作成
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2020年度は、前研究課題で得られたデータ、および文献データによりモデルの検証を行った上で、2021年度には分析方法に関するガイドラインを作成し、エクセル等の一般的なソフトウェアを用いて利用ができるように書き換えたモデルと合わせて無料配布を行う予定である。具体的な計画は以下のとおりである。1.モデル構築TreeAge Pro等のモデル作成専用のソフトウェアを使用して、MRIの導入に関するモデル(例として「MRI導入の要否」「機種選定」「スペック比較」等)、MRIの利用に関するモデル(「検査枠の設定」「検査部位」「検査オーダー」「読影方法」等)、の構築を行う。臨床上の技術や要望を反映したモデルとなるように、撮影や読影の実務者(放射線技師や放射線科医)を招き、複数回の検討会を持った上でモデルの精査を行う。2.テスト分析精査したモデルの検証を行うため、入力値のリストアップと、感度分析において変動させるべきパラメータおよび変動値を決定する。3.分析結果の考察、研究の成果の公表2.のシミュレーション結果を関係する研究会や学会で公表しモデルのブラッシュアップをおこなう。4.ガイドライン素案の作成ガイドラインの素案をまとめる。医療従事者を対象とすることに留意し、実務者に適宜相談の上最終化を目指す。また、モデルが最終化したところで、Microsoft Excel等の一般的なソフトウェアにモデルを書き出す。5.ガイドラインの提案と啓発ガイドラインの公表を行い、学会や業界団体等を通して成果物の利用啓発活動を行う。2018年度は、6月より研究代表者の妊娠中の体調不良により当初の計画から遅れをとったため、一旦中断申請を行った。よって予定していた予算の使用に至っていない。今後は研究期間の延長申請を行った後、今後の研究推進に記すとおり、研究課題を進めていく予定である。尚、研究の再開は2020年1月を予定している。
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KAKENHI-PROJECT-18K01642
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K01642
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「ルネッサンス期のプロヴァンス語-フランス語辞典」編纂
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近世とくに16世紀ルネッサンス期のフランス文化を見ると、南北両フランスがほとんど対等の立場から、相互に影響し合っている。しかも近世フランスの形成にあたって。南仏が北仏に劣らず重要な役割を演じたことは周知のとおりである。筆者は今日まで、言語および文学を中心に、当時の政治・社会・文化を研究し、その成果を長年発表してきた。ところが、ルネッサンス期の南仏語および南仏文学を研究するには、唯単に、語学史や文学史的知識に依存せず、広く当時の文献の繙続することが必須である。筆者は、ルネッサンス期の南仏文学および南仏語を正しく理解するために、当時代の文献を資料として、『ルネッサンス期プロヴァンス語-フランス語辞典』の作成を意図し、岡山大学総合情報処理センターの助教授川端親雄を研究分担者として。文献に使用されているすべての語彙の収集・整理を、コンピューター処理したのち、裏面に見るような形式で公表した。なお、本研究のコンピューター処理は、岡山大学総合情報処理センターの超大型汎用コンピューターACOSシステム1000でなされたが、小型のパソコン〔FM-11〕に同じ機能や、また追加機能を持たせる目標で、ソフトウェアを開発している。今後は、本研究をさらに発展させ、フランスにも存在しない、『ルネッサンス期プロヴァンス語-フランス語辞典』の刊行を予定している。近世とくに16世紀ルネッサンス期のフランス文化を見ると、南北両フランスがほとんど対等の立場から、相互に影響し合っている。しかも近世フランスの形成にあたって。南仏が北仏に劣らず重要な役割を演じたことは周知のとおりである。筆者は今日まで、言語および文学を中心に、当時の政治・社会・文化を研究し、その成果を長年発表してきた。ところが、ルネッサンス期の南仏語および南仏文学を研究するには、唯単に、語学史や文学史的知識に依存せず、広く当時の文献の繙続することが必須である。筆者は、ルネッサンス期の南仏文学および南仏語を正しく理解するために、当時代の文献を資料として、『ルネッサンス期プロヴァンス語-フランス語辞典』の作成を意図し、岡山大学総合情報処理センターの助教授川端親雄を研究分担者として。文献に使用されているすべての語彙の収集・整理を、コンピューター処理したのち、裏面に見るような形式で公表した。なお、本研究のコンピューター処理は、岡山大学総合情報処理センターの超大型汎用コンピューターACOSシステム1000でなされたが、小型のパソコン〔FM-11〕に同じ機能や、また追加機能を持たせる目標で、ソフトウェアを開発している。今後は、本研究をさらに発展させ、フランスにも存在しない、『ルネッサンス期プロヴァンス語-フランス語辞典』の刊行を予定している。
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KAKENHI-PROJECT-59510231
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-59510231
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腫瘍幹細胞に立脚した腫瘍の性格付けに関する研究
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腫瘍は単一クローンだが、構成する細胞の性格は異なる。化学療法など治療抵抗性の腫瘍幹細胞と呼ばれる一群の細胞は再発の原因となり、診断時にその存在量などを明らかにできれば適切な治療計画の一助となると考えられる。ところが、腫瘍幹細胞を病理診断時に評価する方法はこれまでなかった。そこで、本研究では腫瘍幹細胞マーカーを免疫組織化学的に検索することで、腫瘍幹細胞に立脚した腫瘍の性格付けが可能か検討した。その結果、種々の腫瘍で腫瘍幹細胞の多寡が予後に影響を与えることがわかった。腫瘍は単一クローンだが、構成する細胞の性格は異なる。化学療法など治療抵抗性の腫瘍幹細胞と呼ばれる一群の細胞は再発の原因となり、診断時にその存在量などを明らかにできれば適切な治療計画の一助となると考えられる。ところが、腫瘍幹細胞を病理診断時に評価する方法はこれまでなかった。そこで、本研究では腫瘍幹細胞マーカーを免疫組織化学的に検索することで、腫瘍幹細胞に立脚した腫瘍の性格付けが可能か検討した。その結果、種々の腫瘍で腫瘍幹細胞の多寡が予後に影響を与えることがわかった。腫瘍幹細胞に立脚した腫瘍の性格付けを行うために腫瘍幹細胞のマーカーを同定する必要がある。本年度は、腫瘍幹細胞が多く含まれていると考えられるside-populationをソートし、その画分に高発現する遺伝子を調べることで腫瘍幹細胞マーカーを検討した。まず乳癌細胞株よりside-populationで高発現する遺伝子として同定したCD55を用いて、その発現と予後との関係を乳癌臨床検体を用いて検討したところ、CD55を高発現する細胞を多く含む症例では予後不良であった。また,造血系や間葉系幹細胞に発現がみられるCDCP1について,肺腺癌臨床検体を用いてその発現と予後との関係について検討したところ、CDCP1の発現が高い症例の方が低い症例に比較し有意に予後不良であった。以上より腫瘍幹細胞の存在の多寡が予後を決定することが示唆された。また、現在肺腺癌細胞株のside-populationで高発現するオーファンレセプターについても同様の検討を行っている最中である。この他に、side-populationを形成する上で必須であるとされる膜トランスポーターであるABCG2がIL-6過剰状態にあるリンパ節炎で形質細胞に強く発現することを見出し、ABCG2が小胞体ストレスにより発現調節されることも示した。また、肺腺癌でストレス蛋白質であるHsp105が強く発現することも見出し、この発現の多寡が予後と相関することも明らかにした。腫瘍幹細胞に立脚した腫瘍の性格付けを行うために腫瘍幹細胞のマーカーを同定する必要がある。前年度に引き続き、腫瘍幹細胞が多く含まれていると考えられるside-populationをソートし、その画分に高発現する遺伝子を調べることで腫瘍幹細胞マーカーを検討した。前年度まで、肺癌や乳癌で検討したCDCP1について子宮体癌で調べたところ、これまで得られた傾向と異なり、発現の高い症例ほど予後がいいことがわかった。腫瘍の種類により同じ遺伝子でも動態が異なることが明らかとなった。また、肺腺癌のside populationで高発現する核内レセプター蛋白であるNROB1の発現意義を検討した。NROB1の発現を低下させることで腫瘍形成能、間質への浸潤能、抗癌剤に対する耐性が低下することがわかった。NROB1を高発現する症例は低発現の症例に比較して予後が悪く、統計学的にNROB1高発現は独立した予後因子となっていた。一方、食道癌で腫瘍細胞と間質細胞が接する部分でpodoplaninが高発現することを見出した。食道癌細胞株においてpodoplaninをノックダウンすると腫瘍形成能が低下し、podoplanin高発現群は低発現症例よりも予後不良であることがわかった。現在のところ、腫瘍幹細胞マーカーの候補として検討した遺伝子はCDCP1,NROB1,podoplanin,前年度に検討したCD55,Hsp105の5種類で、腫瘍としては肺癌、乳癌、子宮体癌を検討材料としている。Side populationで高発現する遺伝子を他にも単離しており、これらを多角的に組み合わせることで腫瘍幹細胞の存在意義、予後に及ぼす影響を次年度解析する計画をしている。腫瘍幹細胞に立脚した腫瘍の性格付けを行うためには腫瘍幹細胞のマーカーを同定する必要がある。前年度までは、腫瘍幹細胞が多く含まれていると考えられるside-populationについて主に解析した。今年度は、それに加えて、新たに毒物としてよく知られているアルデヒドの代謝において、重要な役割を果たすことがわかっているアルデヒド脱水素酵素(ALDH1)陽性画分、さらに細胞にとって毒性をもつ活性酸素除去能力の高い画分についての解析を行った。これらのマーカーを高発現する画分をソートし、腫瘍幹細胞マーカーの意義を検討したところ、in vitro,in vivoにおける腫瘍形成能が高く、抗がん剤に対する抵抗性や間質に対する浸潤能も高かった。また、実際に臨床検体を用いて検討したところ、ALDH1陽性細胞が多い症例ほど再発しやすく、リンパ節への転移も高頻度にみられ、予後不良であることが婦人科検体においてわかった。さらに、リンパ腫検体においても、活性酸素を除去する能力が高いほど予後不良であることがわかった。前年度まで蓄積したside-populationをマーカーとした腫瘍幹細胞の解析データに、さらに新たなマーカーとしてALDH1,活性酸素という切り口によるデータを追加し、腫瘍幹細胞の動態を多角的に解析した。また、ALDH1を高発現する画分を特徴づける
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KAKENHI-PROJECT-20590364
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20590364
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腫瘍幹細胞に立脚した腫瘍の性格付けに関する研究
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マーカーについても検索し、蛋白分解酵素の一種やサイトカインの一種などを単離した。
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KAKENHI-PROJECT-20590364
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20590364
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対話によるコミュニケーション能力向上支援システム
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聞き手が聞きやすく理解しやすい発話とはどのようなものかを調査検討した.その結果,音響的には明瞭性が最も重要な要因であることが分かった.明瞭性に関係する音響的な特徴について調べたところ,基本周波数(声の高さ)や周波数スペクトルの高域成分(音色)が関係していることが分かった.さらに検討の結果,音声の明瞭性と機械による音声認識精度の間には強い関係があることが分かったので,機械で認識しやすい発声を目指す訓練システムを考案した.聞き手が聞きやすく理解しやすい発話とはどのようなものかを調査検討した.その結果,音響的には明瞭性が最も重要な要因であることが分かった.明瞭性に関係する音響的な特徴について調べたところ,基本周波数(声の高さ)や周波数スペクトルの高域成分(音色)が関係していることが分かった.さらに検討の結果,音声の明瞭性と機械による音声認識精度の間には強い関係があることが分かったので,機械で認識しやすい発声を目指す訓練システムを考案した.平成18年度の研究成果は以下の通りである。1.実験用の音声データは、市販の対話コーペスや講演コーパスなどから音声データを収集できるが、実環境での音声も必要なため、山梨大学で行われている講義音声と就職試験のための模擬面接を録音し、実験用音声のデータベースを構築した。本研究では、音声データが大量に必要なので、次年度もデータの収集を継続する予定である。2.予備的な実験で、音声を評価するための項目を検討した。そして、各評価項目について、講義の受講者などに音声の評価をしてもらった。この評価内容も音声データベースに含まれている。3.評価に使う音声の書き起こしを行い、そのデータを音声データベースに付加した。4.音声の評価と音響情報の関係を調べるために、音響情報分析ツールを作成した。5.音声を評価するための予備的な実験として、講義音声、講演音声を使用して、その評価と音響的な特徴の関係について調べた。その結果、音声の音響的な評価は、大きく分けると、音声の音質と発話のテンポに分類できることがわかった。音質の中でも重要なのは明瞭性であり、その明瞭性は基本周波数の高さや周波数スペクトルの広域成分の有無に関係していると考えられる。但し、例外のデータも存在し、現在も検討を続けている。発話のテンポに関しては、発話速度と間合いが関係している。発話速度は視覚情報とも関連があり、パソコンなどのプレゼンテーション機器を使用した場合の方が、黒板などを使用した場合より、発話速度が速めになる傾向がある。黒板を使用した授業の方が理解し易いという傾向もあり、発話速度と発話の理解度についての検討を続けている。6.発話中の言語情報の例として、フィラーの効果を調査した。その結果、適当なタイミングで、適当な数のフィラーを使用すると聞き易い発話になることがわかった。平成19年度の研究成果は以下の通りである。1. 18年度に引き続き、山梨大学で行われている講義音声を収集し、その書き起こしを行った。また、学生による評価を付加し、実験用音声データベースへ追加した。また、模擬面接の音声とゲーム中に行われる対話も録音し、講義音声と同様に実験用音声データベースへ追加した。2.講義音声の評価には講師の音声の音質と話し方のテンポが関係していることが分かった。音質の評価には周波数スペクトルの外形や基本周波数の変化が関係し、テンポには発話速度と間合いが関係しているが、若干の例外もあり、現在検討中である。またフィラーの存在も重要な要素であることがわかった。3.対話音声では、相手の声の大きさや、発話の速度に合わせることにより評価が上がることが定性的にはわかった。現在定量的な検討を続けている。4.コミュニケーション能力向上支援システム作成のための基本的なデータはほぼそろったので、現在システムの構築をすすめている。5.話者分類や対話システムの構築の研究に本研究の成果を応用している。平成20年度の研究成果は以下の通りである。1.前年度に引き続き、大学の講義音声、面接などの対話音声を収集し、その書き起しを行って実験用音声データベースへ追加した。その結果実験用音声データベースはかなり充実してきた。2.音声の聞きやすさに最も関係している特徴は明瞭さであることが分かった。明瞭さをもった音声を発話するための要因を色々調査した。基本周波数、周波数スペクトルの高域成分など様々な要因が関係していることは分かったが、複数の要因が相補的に関連していると思われ、単純な処理では音声の明瞭性の改善は難しいことがわかった。3.調査の結果、明瞭性が高い音声は機械による音声認識率が高いことが判明した。そこで、機械による認識率が高くなるような発話訓練で明瞭性の高い音声を発声できるといえる。4.適度なフィラーを入れることで、聞き手が理解しやすい発話になることもわかった。検討の結果フィラーの適切さを評価できる機能も開発できた。5.本研究の成果を対話システムの応答機能等に応用した。また複数話者の分類に応用した研究では、研究協力者の学生が情報処理学会の奨励賞を受賞した。
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KAKENHI-PROJECT-18500128
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18500128
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シングルセルRNAアレイの開発と医薬応用
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マイクロアレイ解析は、薬剤の薬効や毒性の評価に強力なツールであるが、マイクログラム単位のRNAを必要とするために、臓器や組織といったヘテロな細胞集団を用いて行われている。ある臓器である遺伝子の発現変化が見られた場合、実際にこの変化がどの細胞で起きたのか、構成細胞の変化によるのかを調べるためには、有効な解析手段が存在しなかった。そこで本研究では、臓器を構成する細胞の種類毎にRNAを増幅してスポットしたアレイを作製し、特定の遺伝子がシングルセルレベルでどのように発現変化するかを高感度で検出する解析系を確立することを目的とする。本研究を達成する上で最も問題となるのは、臓器内に疎らに散在する細胞のRNAをいかに単離してこれを増幅するかである。そこで研究代表者は、胃体部に存在するマスト細胞に焦点を当て、マウス胃切片からのマスト細胞RNA単離と増幅を試みた。マスト細胞の剥離は、パッチクランプ用キャピラリ電極を用い、レーザーマイクロダイセクション(LCM)用のキャップを使用して回収した。また15細胞(約40-50pg)を元にしてoligo(dT)-T7法(Eberwine法)による増幅を3回繰り返すことで、10^610^7倍の増幅が可能であり、この増幅により約100μg以上のRNAが得られた。これはアレイ作成に十分な量であると判断された。またこの増幅産物の質を調べるためにマイクロアレイ解析を3回独立して行ったところ、発現シグナルの相関係数は0.9以上の値を示し、同様の遺伝子が増幅されていることが判った。胃の粘膜層や筋層については、LCMによる単離と通常のRNA増幅が可能であった。以上の結果から、本シングルセルRNA増幅法を使用すれば、シングルセルRNAアレイの実現は十分に可能であると判断された。マイクロアレイ解析は、薬剤の薬効や毒性の評価に強力なツールであるが、マイクログラム単位のRNAを必要とするために、臓器や組織といったヘテロな細胞集団を用いて行われている。ある臓器である遺伝子の発現変化が見られた場合、実際にこの変化がどの細胞で起きたのか、構成細胞の変化によるのかを調べるためには、有効な解析手段が存在しなかった。そこで本研究では、臓器を構成する細胞の種類毎にRNAを増幅してスポットしたアレイを作製し、特定の遺伝子がシングルセルレベルでどのように発現変化するかを高感度で検出する解析系を確立することを目的とする。本研究を達成する上で最も問題となるのは、臓器内に疎らに散在する細胞のRNAをいかに単離してこれを増幅するかである。そこで研究代表者は、胃体部に存在するマスト細胞に焦点を当て、マウス胃切片からのマスト細胞RNA単離と増幅を試みた。マスト細胞の剥離は、パッチクランプ用キャピラリ電極を用い、レーザーマイクロダイセクション(LCM)用のキャップを使用して回収した。また15細胞(約40-50pg)を元にしてoligo(dT)-T7法(Eberwine法)による増幅を3回繰り返すことで、10^610^7倍の増幅が可能であり、この増幅により約100μg以上のRNAが得られた。これはアレイ作成に十分な量であると判断された。またこの増幅産物の質を調べるためにマイクロアレイ解析を3回独立して行ったところ、発現シグナルの相関係数は0.9以上の値を示し、同様の遺伝子が増幅されていることが判った。胃の粘膜層や筋層については、LCMによる単離と通常のRNA増幅が可能であった。以上の結果から、本シングルセルRNA増幅法を使用すれば、シングルセルRNAアレイの実現は十分に可能であると判断された。
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KAKENHI-PROJECT-16659022
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16659022
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差分MEMによるプロトン導伝体中のプロトン移動経路の解明
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差分MEM法を固体イオニクスに適用し、固体内でのイオンの高速移動経路を解明する為に、2種類の組成の異なる試料、即ち、高温においてプロトン導電性を顕著に示すSrCe_<0.95>Yb_<0.05>O_<3-α>およびプロトン導電性をほとんど示さないSrCeO_3の微小構造変化を差分MEMにより明らかにした。放射光粉末回折実験は、高エネルギー加速器機構放射光施設BL3Aに設置されたX線回折装置により行い、精密なX線粉末回折データ収集した。実験により得られたX線回折データはマキシマムエントロピー法とリ-トヴェルト法を組み合わせた方法により解析した。MEM電子密度より、Ce(Yb)-O間に共有結合が存在することが分かった。この様な化学結合状態は、代表的なペロブスカイト型酸化物SrTiO_3と基本的に同じである。結合状態とは別に、Ce(Yb)が非常に特徴的な電子密度分布を示すことが興味深い。Ybの置換により、ある種のDisorder状態が実現し、この様な特徴的な電子密度分布を示すのかも知れない。立方晶の理想的ペロブスカイトでは対称性の要求により必ず対称的であるCe(Yb)-O結合に対して、非対称な電子密度分布をすることも分かった。TetragonalityあるいはOrthrhombicityを電子密度レベルで判断できることを意味し大変興味深い。基準状態として選んだSrCeO_3との差分MEM電子密度からは、Ce(Yb)サイトの構造変だけでなく、純粋な原子の置換では影響を受けないはずの、酸素の差分電子密度分布に非常に興味のある変形が存在することがわかった。即ち、Ybの置換により直接的影響を受けないはづの酸素が、非常に大きなSkewnessが生じている。この様なSkewnessによる静電効果によりプロトンが引きけられ、ホッピングが起こるという可能性もあり、プロトン伝導との関連が非常に興味深い。差分MEM法を固体イオニクスに適用し、固体内でのイオンの高速移動経路を解明する為に、2種類の組成の異なる試料、即ち、高温においてプロトン導電性を顕著に示すSrCe_<0.95>Yb_<0.05>O_<3-α>およびプロトン導電性をほとんど示さないSrCeO_3の微小構造変化を差分MEMにより明らかにした。放射光粉末回折実験は、高エネルギー加速器機構放射光施設BL3Aに設置されたX線回折装置により行い、精密なX線粉末回折データ収集した。実験により得られたX線回折データはマキシマムエントロピー法とリ-トヴェルト法を組み合わせた方法により解析した。MEM電子密度より、Ce(Yb)-O間に共有結合が存在することが分かった。この様な化学結合状態は、代表的なペロブスカイト型酸化物SrTiO_3と基本的に同じである。結合状態とは別に、Ce(Yb)が非常に特徴的な電子密度分布を示すことが興味深い。Ybの置換により、ある種のDisorder状態が実現し、この様な特徴的な電子密度分布を示すのかも知れない。立方晶の理想的ペロブスカイトでは対称性の要求により必ず対称的であるCe(Yb)-O結合に対して、非対称な電子密度分布をすることも分かった。TetragonalityあるいはOrthrhombicityを電子密度レベルで判断できることを意味し大変興味深い。基準状態として選んだSrCeO_3との差分MEM電子密度からは、Ce(Yb)サイトの構造変だけでなく、純粋な原子の置換では影響を受けないはずの、酸素の差分電子密度分布に非常に興味のある変形が存在することがわかった。即ち、Ybの置換により直接的影響を受けないはづの酸素が、非常に大きなSkewnessが生じている。この様なSkewnessによる静電効果によりプロトンが引きけられ、ホッピングが起こるという可能性もあり、プロトン伝導との関連が非常に興味深い。
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KAKENHI-PROJECT-09215216
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09215216
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修学旅行のための教材開発の基礎研究
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修学旅行の学習では、コンピュータを利用した教材が利用されることは、少ないことが明らかになった。また「伝統産業」「民族芸能」「世界遺産」の分野の学習の定着が足りないことがわかった。そこで、二次元コードによる印刷物とデジタルアーカイブの連携を実施することにより、高校生が印刷メディアとタブレットPCやスマートフォンなどの各種端末の両方で利用できるように構成し、事前学習や事後学習、修学旅行中も多様な資料の利用が可能になった。平成24年度に高校を対象に行った調査の、修学旅行の学習状況、メディアの利用について、教育情報学会第29年回において発表を行った。また、その結果より、特に携帯情報端末を利用した教材の充実を図ることにし、携帯端末用のアプリの開発を行った。また、WEB用教材への動画配信の充実、特にの首里城、斎場御嶽を対象としたWEB用教材開発中である。沖縄の修学旅行の教材としての不足資料の整備では、戦争体験者オーラルヒストリー撮影・識名園国際通り撮影・糸満市大綱引き撮影沖縄の自然撮影などの資料収集を行った。印刷メディアと通信メディアを連携させたテキスト「沖縄修学旅行おぅらいテキスト」を今年度も引き続き、57高校、11424名の高校生、教員に提供した。修学旅行の学習では、コンピュータを利用した教材が利用されることは、少ないことが明らかになった。また「伝統産業」「民族芸能」「世界遺産」の分野の学習の定着が足りないことがわかった。そこで、二次元コードによる印刷物とデジタルアーカイブの連携を実施することにより、高校生が印刷メディアとタブレットPCやスマートフォンなどの各種端末の両方で利用できるように構成し、事前学習や事後学習、修学旅行中も多様な資料の利用が可能になった。修学旅行によって、高校生の沖縄について理解がどのように変化しているのか、修学旅行の事前学習を始める前の1年生、修学旅行後の2年生に対する沖縄理解度の調査を実施した。また、プログラムの異なる修学旅行を経験している学生の理解度を調査するため、いろいろな高校から入学してきている大学生への理解度調査も実施した。調査の結果、修学旅行の学習により生徒は沖縄に関する理解を深めてはいるが、平和学習、観光の分野については理解の向上が著しいが、伝統産業、民俗芸能、世界遺産にの分野については、それほど理解していないという結果になった。この結果については、教育情報学会第28年会において発表を行った。「沖縄修学旅行おぅらい」の利用の状況、修学旅行の学習の状況、メディアの利用について、アンケート調査を行い、テキストを配布した42校に依頼し37校から回答を得た。調査の結果、修学旅行の教材には、旅行会社や観光協会等の提供資料、旅行ガイドブック、テレビ番組、市販のDVD、映画が主に使用されてた。メディアの利用について、携帯電話、スマートフォン、タブレット型端末などの携帯情報端末を利用した学習に対して、すでに学校で機器を整備して授業を行っている高校はなかったが、環境が整えば行いたい、生徒が所持している携帯情報端末を利用して授業を行っている、環境を整え開始する予定であると回答した高校が75%を占め、通信メディアの利用に対して前向きな傾向であることがわかった。沖縄の修学旅行の教材としての不足資料の整備を実施については、首里城を中心とした世界遺産についての動画解説の撮影、不足している離島(石垣島、竹富島)についての資料収集を行った。印刷メディアと通信メディアへとの連携させる手法としてQRコードを取り入れたテキスト「沖縄修学旅行おぅらいテキスト」を高校数58校、高校生・教員数11,839名に提供した。最終年度は、沖縄おぅらいを提供させていただいた高校の修学旅行担当の教員を対象に行った活用状況の調査を行った。資料の整備活動では、壺屋焼物博物館、やちむんの里、読谷村の取材と撮影を行った。印刷メディアと通信メディアを連携させたテキスト「沖縄修学旅行おぅらいテキスト」を今年度も引き続き、57高校、12270名の高校生、教員に提供した。沖縄の文化の紹介とテキストの活用方法についての講座を、高校にて行った。修学旅行の事後学習の評価を行うコンクールを開催した。研究をとおして、デジタルアーカイブを利用した教材の形態として印刷物やWEBサイトの開発を行ってきたが、スマートフォンを媒体としたことで新しい教材構成の可能性がでてきた。修学旅行は、移動先での刺激によって、学修機会が与えれる。スマートデバイスを用いた、モバイルスタディが、新しい学修の形態として有効になっていくのではないかと考える。また、修学旅行の学習を、事前学習、修学旅行(活動)、事後学習と3段階にわけて教材研究を行ってきたが、事前学習で使われる教材、修学旅行(活動)でのモバイルスタディ、事後学習の評価の機会としてコンクールを開催することにより、修学旅行の学修の全体的な流れを形成することができた。今後の展開として、同様の形態のテキストによる観光における生涯学習等への活用を研究するため岐阜県の有数な観光地区である飛騨高山地域を対象にした「飛騨おぅらい」の開発に着手した。。教育工学研究の目的達成にむかい、今年度は次のような研究活動を計画していた。(a)通信メディア側の教材の充実(b)沖縄の修学旅行の教材としての不足資料の整備(a)通信メディア側の教材の充実について、当初WEBサイトの充実を予定していたが、より高校生の通信メディア利用を促進できる教材として携帯端末用のアプリ提供を計画に追加した。そのことにより、通信メディア用教材の動画配信コンテンツ制作作業が若干おくれている。研究の目的の達成にむかい、今年度は次のような研究を計画していた。(a)高校の利用状況の調査を行う。(b)沖縄の修学旅行の教材としての不足資料の整備
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KAKENHI-PROJECT-24531217
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24531217
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修学旅行のための教材開発の基礎研究
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(c)実物・体験・印刷メディア・通信メディア、デジタルメディア(デジタル・アーカイブ)で構成した教材の試案の作成。これらの計画に基づき、研究の実施を行うことができた。したがって、研究はおおむね順調に進展しているといえる。現在おくれている、動画配信を中心に通信メディア用教材の充実をはかる。通信メディアを中心とした教材利用の促進を行い、その利用の状況を調査する。最終年として、これまで行ってきた教材提供の効果をアンケート調査し、修学旅行の教材の方向性を明らかにしていく。実物・体験・印刷メディア・通信メディア、デジタルメディア(デジタル・アーカイブ)で構成した教材の提供を行う。すでに印刷メディア側は、ほぼ準備が整っているので、特に通信メディア側の研究を重点的に進めていく。通信メディア側の教材はWEBサイトを採用して試案を進めているが、動画などWEBサイトならではの情報を追加し、WEBサイトの充実をはかる。また、テキストにQRコードを付け、テキストとWEBサイトの連携をはかっているが、利用についての認知されていない状況にあるようなので、高校側に認知をすすめ、実践につながるようにしていく。修学旅行の学習を、事前・活動(旅行中)・事後の3段階にわけ、実践を観察し、各メディアの利用状況のデータを収集し、印刷メディア、デジタルメディアを中心にそれぞれの学習利用の問題点を分析する。分析から、メディアの資料活用を主にした学習の教材構成の方向性を明らかにしていく。通信メディア用教材の動画配信コンテンツ制作作業が若干おくれているため、その作業に対する人件費の支払が今年度にはいらなかったため。遅れている通信メディア用教材の動画配信コンテンツ制作作業を迅速にすすめ、その作業人件費として使用する。該当なし
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KAKENHI-PROJECT-24531217
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24531217
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サイトメガロウイルスの潜状感染と再活性化に対する診断法の開発
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我々は、CMVの潜伏感染部位がマクロファージ・顆粒球前駆細胞であることを見い出しCMVの潜伏感染時に発現する遺伝子産物を同定したこれらの知見を基に、CMVの再活性化に対する新しい検査法の開発に着手した。DNA診断法では潜伏感染による偽陽性が生じ、抗原血症等のウイルス蛋白測定法は感度が低いことが判明していた。そこで我々は、潜伏感染時には発現せず、再活性化が生じたときに大量に発現するウイルスmRNAを検出するシステムを開発することとした。この様な条件を満たすものとしてb2.7と呼ばれるCMVのmRNAを選択した。このmRNAは、潜伏感染時には全く発現せず、再活性化等による感染細胞中では全ウイルスmRNAの30%を占めるほど高発現する。しかし、b2.7にはスプライシング部位が無いため、通常のReverse transcription PCR(RT-RCR)法では、潜伏感染化しているDNAと再活性化によるmRNAとの区別がつけ難かった。さらに、骨髄移植患者と腎移植患者において、このb2.7NASBA法によるCMV再活性化の検出を行い、DNA・PCR法、抗原血症測定法(C7-HRP法)、ウイルス分離と比較した。その結果、b2.7NASBA法は、他の方法に比して、12週間早く、しかも症状の出現する前に、CMV再活性化を検出でき、潜伏感染しているCMVを陽性として検出する事はなかった。我々は、CMVの潜伏感染部位がマクロファージ・顆粒球前駆細胞であることを見い出しCMVの潜伏感染時に発現する遺伝子産物を同定したこれらの知見を基に、CMVの再活性化に対する新しい検査法の開発に着手した。DNA診断法では潜伏感染による偽陽性が生じ、抗原血症等のウイルス蛋白測定法は感度が低いことが判明していた。そこで我々は、潜伏感染時には発現せず、再活性化が生じたときに大量に発現するウイルスmRNAを検出するシステムを開発することとした。この様な条件を満たすものとしてb2.7と呼ばれるCMVのmRNAを選択した。このmRNAは、潜伏感染時には全く発現せず、再活性化等による感染細胞中では全ウイルスmRNAの30%を占めるほど高発現する。しかし、b2.7にはスプライシング部位が無いため、通常のReverse transcription PCR(RT-RCR)法では、潜伏感染化しているDNAと再活性化によるmRNAとの区別がつけ難かった。さらに、骨髄移植患者と腎移植患者において、このb2.7NASBA法によるCMV再活性化の検出を行い、DNA・PCR法、抗原血症測定法(C7-HRP法)、ウイルス分離と比較した。その結果、b2.7NASBA法は、他の方法に比して、12週間早く、しかも症状の出現する前に、CMV再活性化を検出でき、潜伏感染しているCMVを陽性として検出する事はなかった。医療の高度化、AIDS患者の増加に伴い、免疫抑制状態下でのサイトメガロウイルス(CMV)の潜伏感染からの再活性化がウイルス感染症における最大の問題の一つとなっている。現在、CMVの再活性化を診断する方法として、i)CMV・DNA血症の診断、ii)CMV抗原の検出が行われている。しかし、i)は潜伏感染しているウイルスによる偽陽性率が高く、ii)は、診断に熟練を要す事とやや低感度であることが欠点であった。我々は、潜伏感染時には発現せず、再活性化が生じたときに大量に発現するウイルスmRNAを検出するシステムを作製した。対象としたmRNAは、潜伏感染時には全く発現せず、感染細胞中で高発現するβ2.7と呼ばれるmRNAである。他のmRNA(前初期遺伝子IE1,後期遺伝子pp65)の検出も試みたが、患者末梢血から充分な頻度で検出できたのはβ2.7のみであった。β2.7にはスプライシング部位が無い為、特異性を上げるために、我々はNucleic Acid Sequence Based Amplification(NASBA)法によるRNA特異的な核酸増幅法を採用した。結果として、この方法では、RNAはDNAに比べ、千倍以上増幅され易いことが判明した。これまでのところ、このシステムはCMV・DNA血症診断より高感度で、潜伏感染化CMV・DNAによる偽陽性が無い点が確認されている。この方法により、CMV再活性化の症状が出現する3日から7日前には、CMV再活性化を予見することがほぼ可能であった。また、この診断法は、治験薬として認可され、現在、臨床試験の準備が進行中である。我々は、CMVの潜伏感染部位がマクロファージ・顆粒球前駆細胞であることを見出しCMVの潜伏感染時に発現する遺伝子産物を同定したこれらの知見を基に、CMVの再活性化に対する新しい検査法の開発に着手した。DNA診断法では潜伏感染による偽陽性が生じ、抗原血症等のウイルス蛋白測定法は感度が低いことが判明していた。そこで我々は、潜伏感染時には発現せず、再活性化が生じたときに大量に発現するウイルスmRNAを検出するシステムを開発することとした。この様な条件を満たすものとしてb2.7と呼ばれるCMVのmRNAを選択した。このmRNAは、潜伏感染時には全く発現せず、再活性化等による感染細胞中では全ウイルスmRNAの30%を占めるほど高発現する。しかし、b2.7にはスプライシング部位が無いため、通常のReverse transcription PCR(RT-RCR)法では潜伏感染化しているDNAと再活性化によるmRNAとの区別がつけ難かった。
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KAKENHI-PROJECT-09557028
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09557028
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サイトメガロウイルスの潜状感染と再活性化に対する診断法の開発
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さらに、骨髄移植患者と腎移植患者において、このb2.7NASBA法によるCMV再活性化の検出を行い、DNA・PCR法、抗原血症測定法(C7-HRP法)、ウイルス分離と比較した。その結果、b2.7NASBA法は、他の方法に比して、12週間早く、しかも症状の出現する前に、CMV再活性化を検出でき、潜伏感染しているCMVを陽性として検出する事はなかった。
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KAKENHI-PROJECT-09557028
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09557028
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造血系ステム細胞は肝線維化に関連するか -人体材料および培養系を用いた検討-
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慢性肝疾患では、門脈域内、線維性隔壁部に線維化がみられ、この部での線維化の機序として肝小葉内で活性化した肝星細胞(筋線維芽細胞)の遊走が重要と考えられている。本年度は、胆道系疾患である先天性肝線維症(CHF)での線維形成細胞と検討した。対照は慢性ウイルス性肝炎,アルコール性肝線維症/肝硬変の計74例。CHFは、門脈域を中心とした進行性の肝線維化および大小の肝内胆管の増殖と拡張を特徴とする。以下の成績と結論が得られた。1.対照肝では、線維性に拡大した門脈域や隔壁に多数の筋線維芽細胞がみられ、肝実質内でも活性化星細胞が多数みられ、これらは相互に移行していた。CHFでは、肝実質内で活性化星細胞は殆どみられなかったが、拡大した門脈域には多数の筋線維芽細胞がみられた。対照肝では、活性化した肝星細胞が門脈域へ遊走し、線維形成に参画すると考えられた。CHFでは、門脈域内の小血管周囲の未熟な間葉細胞(造血系ステム細胞に由来する可能性が高い)が筋線維芽細胞に分化すると考えられた。3.今回の検討で、特殊な疾患では、造血系ステム細胞が肝線維化に関連する筋線維芽細胞へと分化することが示唆された。一般的な慢性肝疾患では、肝星細胞の活性化と遊走が重要と考えられた。慢性進行性肝疾患を特徴付ける肝線維化に、門脈域や隔壁部での肝線維芽細胞が深く関連する。この肝線維芽細胞の多くは、肝実質内に生理的に存在する肝星細胞に由来すると考えられている。しかし、骨髄の造血性ステム細胞が病的肝に移動し、これがこの肝線維芽細胞の一部を構成している可能性がある。今年度の研究により、1)造血性ステム細胞を特徴付けるCD34とc-kitの両方を発現するダブルボジティブ間葉系細胞が、慢性進行性肝疾患の細胆管周囲に少数、観察され、肝線維化の程度と関連していた。正常肝にはみられなかった。これらの間葉系細胞が造血系ステム細胞に由来する可能性が示唆された。なお、肝実質内の肝星細胞にはこれらのマーカーの発現はなかった。2)これらのダブルボジティブ間葉系細胞の一部に、線維芽細胞を特徴付けるα平滑筋アクチンやビメンチンの発現が免疫組織科学的に確認され、線維芽細胞への分化が観察された。今後、異性間で施行された同種骨髄移植例や肝移植例の正常肝と慢性進行性肝疾患例の肝を用い、CD34とc-kitの両方を発現する肝門脈域内の間葉系細胞、それに肝線維化巣にみられる線維芽細胞が、ドナーの造血細胞に由来の可能性を性染色体のクロモゾームマーカーのin situ hybridization法で検討する。さらに、造血系ステム細胞が、肝線維芽細胞へと分化するのに重要な分子の特定とその発現を肝組織およびヒト病的肝由来の線維芽細胞の培養系を用い、検討する。慢性肝疾患では、肝小葉内、門脈域内、線維性隔壁部に線維化がみられ、肝小葉内では、活性化〓肝星細胞(筋線維芽細胞)が線維化に関連する。この肝線維化は、線維形成細胞が産生する細胞外基質成〓の過剰な沈着を特徴とするダイナミックな病態と考えられている。門脈域や線維性隔壁部での線維化〓、造血系ステム肝細胞は正常肝にも存在し、あるいは必要に応じて骨髄より肝へ動員され、肝病態の〓に関連することが最近の研究から、指摘されている。本研究では、門脈域や線維性隔壁にみられる線〓細胞が造血性ステム細胞に由来する可能性を検証する。線維形成が活発に行われているヒト病的肝(慢性肝炎、肝硬変、アルコール性肝線維症、原発性〓性肝硬変、先天性肝線維症等)を用い検討した結果、原発性胆汁性肝硬変や先天性肝線維症では、〓成マーカーであるα-平滑筋アクチンの発現する紡錘形細胞が胆管周囲に主に浸潤していた。特に、先〓性肝線維症では、肝類洞内の星細胞との移行像が認められなかった。増生細胆管あるいは胆管が、こ〓線維形成細胞の増生に関連していた。一方、慢性肝炎、肝硬変、アルコール性肝線維症では、線維形成マーカーであるα-平滑筋アクチン〓性の線維形成細胞が、門脈域全体にみられ、その一部は造血系ステム細胞マーカー(CD34,c-kit)〓った。これらの繊維形成細胞の一部は、類洞内の星細胞との移行が、門脈域周辺部でみられた。これ〓疾患では、肝類洞の星細胞が門脈域内に遊走し、線維形成細胞となることが推定された。なお、ヒト肝疾患より線維芽細胞を分離し、その生物学的特性を検討しているが、研究は進行中であり、今年度は有意な結果を出すことが出来なかった。引き続き、検討を行う予定である慢性肝疾患では、門脈域内、線維性隔壁部に線維化がみられ、この部での線維化の機序として肝小葉内で活性化した肝星細胞(筋線維芽細胞)の遊走が重要と考えられている。本年度は、胆道系疾患である先天性肝線維症(CHF)での線維形成細胞と検討した。対照は慢性ウイルス性肝炎,アルコール性肝線維症/肝硬変の計74例。
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KAKENHI-PROJECT-14657045
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14657045
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造血系ステム細胞は肝線維化に関連するか -人体材料および培養系を用いた検討-
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CHFは、門脈域を中心とした進行性の肝線維化および大小の肝内胆管の増殖と拡張を特徴とする。以下の成績と結論が得られた。1.対照肝では、線維性に拡大した門脈域や隔壁に多数の筋線維芽細胞がみられ、肝実質内でも活性化星細胞が多数みられ、これらは相互に移行していた。CHFでは、肝実質内で活性化星細胞は殆どみられなかったが、拡大した門脈域には多数の筋線維芽細胞がみられた。対照肝では、活性化した肝星細胞が門脈域へ遊走し、線維形成に参画すると考えられた。CHFでは、門脈域内の小血管周囲の未熟な間葉細胞(造血系ステム細胞に由来する可能性が高い)が筋線維芽細胞に分化すると考えられた。3.今回の検討で、特殊な疾患では、造血系ステム細胞が肝線維化に関連する筋線維芽細胞へと分化することが示唆された。一般的な慢性肝疾患では、肝星細胞の活性化と遊走が重要と考えられた。
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KAKENHI-PROJECT-14657045
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14657045
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3次元現地計測に基づく植生図作成システムの開発
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本研究では,3次元計測システムに基づく植生図の自動作成システムの開発を目的として,2次元距離センサに基づく3次元計測用ハードウェアシステムを構築した.更に,距離データから3次元の点群情報への変換,距離センサと電動雲台による距離の協調計測,植生由来の点群情報に基づく3次元マップの生成,3次元マップに基づく樹木の形状特徴量の自動推定手法の開発とシステムの実装に取り組んだ.評価実験の結果から,植生図の自動作成に必要な植生情報の自動計測システムとしての一定の有効性を確認した.今後は,計測精度を実用精度へ向上させることが課題である.本研究は,森林の適切な維持・管理のため,本来3次元構造を持つ植生を精確に把握することを目的として,3次元計測システムに基づく植生図の自動作成システムの開発を行うものであり,平成26年度の当初計画13に対して以下の成果を得た.【1.植生用3次元計測システムの構築】3次元計測に必要なハードウェアの核となる距離センサを購入し,測定される距離データから3次元の点群情報へ変換するソフトウェアモジュールの開発に成功した.更に,大学構内の樹木を対象として計測性能の評価実験を行った結果,想定していた精度と規模の点群情報を得るには垂直方向の計測範囲が不十分であるとの知見が得られた.そこで,距離センサの垂直方向への旋回を可能にする電動雲台を採用するよう計画を修正し,要求仕様を満たす装置を購入し,制御用のソフトウェアモジュールの開発に着手した.【2.植生の3次元マッピングモジュールの開発】目的とする植生用の3次元マップに適した点群の位置合わせを実現するため,パターンマッチングの一種である既存のアルゴリズムを基本として,測位情報や姿勢情報による初期値推定アルゴリズムを組み合わせた独自の位置合わせアルゴリズムを考案した.【3.植生の3次元モデル化モジュールの開発】本モジュールでは,2.のモジュールで得られる複数の樹木を含む植生の3次元マップに基づいて3次元モデルを構築する.この前段階として,単一の樹木のみを含む点群情報から樹木3次元モデルを構築するため,点群情報から樹木の軸(幹,枝)の抽出と軸周りの直径を計測するアルゴリズムを考案し,試作システムを開発した.更に,簡易な人工樹木モデルを対象とした評価実験を行ったところ,幹の抽出と直径の計測には実用十分な性能を保有していることが分かった.本研究は,3次元計測システムに基づく植生図の自動作成システムの開発を目的として2年間の計画に基づいて研究を遂行した.初年度は,12次元レーザ距離センサ(距離センサ)で測定される距離データから3次元の点群情報へ変換するソフトウェアモジュールの開発,2植生用の3次元マップ生成のための位置合わせアルゴリズムの開発,3点群情報から樹木の幹を抽出し,幹周りの直径を推定することによって樹木をモデル化するアルゴリズムを考案し,試作システムを開発した.更に,簡易な人工樹木を対象とした評価実験を行ったところ,幹の抽出と直径の計測には実用十分な性能を保有しているとの知見を得た.しかし,2次元の距離センサで空間的な計測を実現するため,手動での距離センサの移動と複数回の計測を行った上,後処理による点群情報の統合を行っていたため,計測効率や精度の面で大きな問題があることは明らかであった.最終年度では,上記の問題を解決するため,既存の距離センサを用いながら一度で空間的な計測を実現することを目指し,水平・垂直方向に高分解能で角度制御が可能な電動雲台を新たに導入し,1のモジュールの修正,および距離センサによる計測と雲台の動作制御を協調処理するためのソフトウェアモジュールを開発した.これにより,取得できる点群の規模・空間範囲が拡大し,計測精度も格段に向上したため,植生図作成の元となる樹木モデルの形状表現精度が大幅に向上した.また,3の試作システムについて,材木としての樹木の性質を表す形状特徴量(形状比,曲がり具合など)の自動推定アルゴリズムを開発し,試作システムに実装した.以上の成果は,森林資源としての材木管理用の植生図作成の元となる樹木モデルの自動生成システムが実現したことを意味しており,従来,定性間伐の際に人手で行っていた現地調査の多大なコストの削減に大きく貢献できる可能性を示していると考える.本研究では,3次元計測システムに基づく植生図の自動作成システムの開発を目的として,2次元距離センサに基づく3次元計測用ハードウェアシステムを構築した.更に,距離データから3次元の点群情報への変換,距離センサと電動雲台による距離の協調計測,植生由来の点群情報に基づく3次元マップの生成,3次元マップに基づく樹木の形状特徴量の自動推定手法の開発とシステムの実装に取り組んだ.評価実験の結果から,植生図の自動作成に必要な植生情報の自動計測システムとしての一定の有効性を確認した.今後は,計測精度を実用精度へ向上させることが課題である.本研究で目的とする精確な植生図を作成するためには,高精度な植生の3次元モデルが必要であり,これには精細かつ大規模な点群情報を要する.しかしながら,計測性能の評価実験の結果から,本研究で採用した距離センサの計測範囲が不十分であることが分かったため,これを補うべく電動雲台を導入するよう当初計画の変更を余儀なくされた.これにより,要求仕様を満たす電動雲台の選定や,距離センサと組み合わせた計測システムの構築作業が必要となったため,当初計画の各段階に遅延を生じている.設計工学、メディア情報学、ロボティクス先ずは,平成26年度分の当初計画で未達成の計画を遂行し,その後,平成27年度当初計画に変更を加えた以下の計画に従って研究を遂行する.【1.植生図作成システムの開発】
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KAKENHI-PROJECT-26750107
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26750107
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3次元現地計測に基づく植生図作成システムの開発
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植生の3次元モデルに基づいて,1植生情報(樹種,胸高直径,被度など)の自動解析,および2解析情報に基づく植生図の自動作成を実現するアルゴリズムを考案し,これらを実装した試作システムを開発する.【2.実地での本計測と植生図の作成】多様な植生環境における試作システムの有効性を検証するため,当初計画の東濃ヒノキ産地のGIS区分(単一樹種の実地)に加え,複数の樹種を含む実地において試作システムよる本計測と実地調査を行う.また,其々の結果に基づいて植生図を作成する.【3.実行結果の解析と試作システムの改良】試作システムで作成した植生図と実地調査による植生図を定量的に比較評価する.この後,この結果に基づく試作システムの改良を本研究期間終了まで繰り返し行う.距離センサや電動雲台など,計画上の物品費の見積額と実際の購入額に差が生じたことが理由である.3次元マッピングモジュールの完成に必要な測位・姿勢センサ等の物品費,植生図作成システムを用いた実地調査に掛かる人件費に使用する.
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KAKENHI-PROJECT-26750107
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26750107
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昆虫の寄主選択に基づく害虫の行動制御に関する研究
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昆虫の幼虫に対し摂食阻害活性を示すジテルペン化合物の立体配座と活性に関する問題及びニガウリ果実中のウリミバエ誘引物質に関する研究結果について.1)生物活性の発現に生物の受容器の構造との関係から化合物の立体配座も一つの因子として関与するとの考えのもとにテウクリンP1の2つの安定な立体配座異性体について研究した.このものはB, E環共にボート型立体配座を有しているがLDA/THF-HMPA処理でE環が椅子型立体配座に変異したものであることがNOE実験から推測された.この事実はX線解析によって確証された.この立体配座異性体の安定さはCHCl_3中での経時的CDスペクトルの測定によって示された. 14日間の測定で2/3がテウクリンP1に変化した.この両異性体の摂食阻害活性はほぼ同程度であった.当初期待したB環の立体配座の変異に伴う活性については問題が残された.2)ニガウリからの雌ウリミバエに対し誘引活性を持つジリノレノイルグリセロールは野外試験では期待された結果を与えなかった.この問題の解決及び新たな活性物質の単離を試みた.極性の高い分画からCue-Lue同様雄を誘引する物質としてメチルヒドロキシベンゾエートを単離した.さらに極性の高い分画より雌雄を誘引する化合物を単離した.このものは構造が複雑なため500MHzNMR, 2DNMRで確認した.その結果,本物質は6-リノレノイルーβ-D-グルコピラノシナレー(1, 3′)-β-クレロステロールと決定した.更に同分画からやはり雌雄を誘引する配糖体の1-O-(β-ガラクトピラノシル)-2, 3-ジーO-リノレノイルーX-グリセロールであった.現在これらの配糖体化合物を大量合成しており,完成次第先に明らかにした雌誘引物質のリノレイングリセロール化合物との共同作用を試験し,実用化を目指すものである.昆虫の幼虫に対し摂食阻害活性を示すジテルペン化合物の立体配座と活性に関する問題及びニガウリ果実中のウリミバエ誘引物質に関する研究結果について.1)生物活性の発現に生物の受容器の構造との関係から化合物の立体配座も一つの因子として関与するとの考えのもとにテウクリンP1の2つの安定な立体配座異性体について研究した.このものはB, E環共にボート型立体配座を有しているがLDA/THF-HMPA処理でE環が椅子型立体配座に変異したものであることがNOE実験から推測された.この事実はX線解析によって確証された.この立体配座異性体の安定さはCHCl_3中での経時的CDスペクトルの測定によって示された. 14日間の測定で2/3がテウクリンP1に変化した.この両異性体の摂食阻害活性はほぼ同程度であった.当初期待したB環の立体配座の変異に伴う活性については問題が残された.2)ニガウリからの雌ウリミバエに対し誘引活性を持つジリノレノイルグリセロールは野外試験では期待された結果を与えなかった.この問題の解決及び新たな活性物質の単離を試みた.極性の高い分画からCue-Lue同様雄を誘引する物質としてメチルヒドロキシベンゾエートを単離した.さらに極性の高い分画より雌雄を誘引する化合物を単離した.このものは構造が複雑なため500MHzNMR, 2DNMRで確認した.その結果,本物質は6-リノレノイルーβ-D-グルコピラノシナレー(1, 3′)-β-クレロステロールと決定した.更に同分画からやはり雌雄を誘引する配糖体の1-O-(β-ガラクトピラノシル)-2, 3-ジーO-リノレノイルーX-グリセロールであった.現在これらの配糖体化合物を大量合成しており,完成次第先に明らかにした雌誘引物質のリノレイングリセロール化合物との共同作用を試験し,実用化を目指すものである.これまで生理活性を検索したクレロダン化合物の母核についた官能基はアルコールまたはエステル類でありカルボニル基を有するものについては構造活性相関の観点からは未検索であった。先にPiozziらにより単離構造決定されたteucrin【P_1】は6位がカルボニル基であると共にアセタール環を有する特異な5環性クレロダン化合物である。この物質の100%摂食阻害活性は80ppmとクレロジンの50ppmと比べても高いものであった。Teucrin【P_1】は補助金にて購入したHPLCによって精製した。この知見を元に現在進めている合成モデル化合物にカルボニル化合物を加えることとした。Teucrin【P_1】はPopaら,Mollovら,さらにPiozziらのX線解析によって構造確認されている。しかし、それらの【〔α〕_D】値は正負が逆転していることから両絶対配置の存在の可能性も示唆された。またB,E環がボート型立体配座をとることについても安定性の上から問題が提起された。Teucrin【P_1】の溶媒,無溶媒状態での熱平衡では何ら変化を示さなかった。アルコキシド等による処理でもB環の変位を与えなかった。しかし、LDA/HMPAではteucrin【P_1】の立体配座異性体を与えた。この異性体は補助金によるHPLCによって効率的に精製された。
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KAKENHI-PROJECT-61560051
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61560051
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昆虫の寄主選択に基づく害虫の行動制御に関する研究
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この異性体はNMR(360M【H_Z】)上もとの化合物と比べ極く僅かな差異を示すにすぎなかった。一方COスペクトルは両者で大きく異なり、異性体のそれは経時変化を示した。クロロホルム中14日間の経時測定でteucrin【P_1】に移行することを見い出した。この異性体はB環でなく、アセタール結合を有するE環が椅子型に変位したものであり、アセタール酸素と【Li^(0.4)】とのate complexを形成したことに原因が求められた。しかし、通常の条件下ではteucrin【P_1】から異性体への平衡は全くない。この立体配座異性体の構造はX線解析で明らかにされたが、結晶はteucrin【P_1】とのdisorderとして存在することが示された(J.Chem.Soc.Chem.Comm.;Bull.Chem.Soc.Japan)。
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KAKENHI-PROJECT-61560051
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61560051
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酵母のプロリン代謝中間体アセチル化酵素 Mpr1 による抗酸化機構の解明とその応用
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酵母のアセチル酵素Mpr1はプロリン代謝中間体をアセチル化することで、活性酸素種の生成を制御するとともに、酸化ストレスで誘導され、プロリンからのアルギニン合成を介して、NO生成に関与することが判明した。また、酵母で初めて見出したTah18タンパク質依存的なNO合成機構とNOによる抗酸化機構に関する知見を得た。さらに、X線結晶構造解析と変異型酵素の解析から、Mpr1は既知アセチル化酵素とは異なる触媒反応機構を有し、活性に重要な残基が酵母の酸化ストレス耐性に寄与していることを明らかにした。酵母のアセチル酵素Mpr1はプロリン代謝中間体をアセチル化することで、活性酸素種の生成を制御するとともに、酸化ストレスで誘導され、プロリンからのアルギニン合成を介して、NO生成に関与することが判明した。また、酵母で初めて見出したTah18タンパク質依存的なNO合成機構とNOによる抗酸化機構に関する知見を得た。さらに、X線結晶構造解析と変異型酵素の解析から、Mpr1は既知アセチル化酵素とは異なる触媒反応機構を有し、活性に重要な残基が酵母の酸化ストレス耐性に寄与していることを明らかにした。Mpr1は高温や過酸化水素処理などの酸化ストレスで誘導され、プロリン代謝中間体(P5C/GSA)をアセチル化し、アルギニン(Arg)および一酸化窒素(NO)の合成を促進することで、酵母に酸化ストレス耐性を付与すると考えられている。今年度は、Mpr1を介した抗酸化機構、特にNOの生成機構の解明を目的に研究を実施した。高温処理後の野生株ではNOが検出されたが、Mpr1破壊株では観察されなかった。一方、Argの添加ではMpr1破壊株も細胞内にNOが生成した。また、哺乳類NO合成酵素(NOS)の阻害剤(NAME)で野生株を前処理すると、Arg添加や高温処理後もNOは検出されなかった。一方、Mpr1破壊株をNAMEで前処理すると、Argを添加しても高温処理後の生存率は回復しなかったが、非酵素的NOドナー(SNAP)を添加することで生存率は上昇した。これらの結果は、ArgからNOS活性依存的に発生するNOがストレス耐性に寄与することを示している。そこで、酵母のNOS様タンパク質を哺乳類NOSに存在するoxidoreductaseドメインを指標に生化学的手法で探索し、NOS様タンパク質をコードする遺伝子の候補としてTAH18を同定した。さらに、細胞内でのTah18依存的なNOS活性と高温処理下におけるNO生成の関連性を検討した。酸化ストレス下でのTAH18の転写レベルを調べたところ、高温および過酸化水素によってTAH18は誘導された。また、TAH18の発現を止めると、高温処理下でもNO含量が増加せず、NO生成能が消失した。生存率も野生株に比べて著しく低下したが、SNAP処理により生存率は野生株並みに回復した。以上の結果から、酵母において高温処理で誘導されるNO生成がTah18のNOS活性に依存し、細胞の酸化ストレス耐性に関与することが示された。Mpr1は高温や過酸化水素処理などの酸化ストレスで誘導され、プロリン代謝中間体(P5C/GSA)をN-アセチル化し、アルギニンおよび一酸化窒素の合成を促進することで、酵母に酸化ストレス耐性を付与すると考えられている。今年度は、Mpr1を介した抗酸化機構特にP5C/GSAの毒性機序とMpr1による解毒機構の解明を目的に研究を実施した。まず、P5C/GSA代謝に関与している遺伝子の各破壊株(PUT1,PUT2,PRO3,CAR2)を作製し、P5C/GSAの毒性を検討した。また、細胞内のROSの主たる発生源である呼吸鎖が関与している可能性を考慮し、呼吸欠損株(ρ^0株)も作製した。その結果、PUT1,PUT2,PRO3,CAR2を破壊してもP5C/GSAに対する感受性は変わらなかったが、ρ^0株はP5C/GSAに耐性を示すことが判明した。また、ROSレベルもρ^0株では上昇していないことが判明し、P5C/GSAが呼吸鎖の機能に依存して毒性を発揮することが示された。次に、ミトコンドリアからのROS発生と呼吸鎖阻害に対するP5C/GSAの直接的な影響を検討した。野生株から精製したミトコンドリアにP5Cを添加すると、無添加に比べてsuperoxide anionが著しく増加した。一方、反応液から呼吸基質(コハク酸)やミトコンドリアを除くと、superoxide anionは発生しなかった。さらに、コハク酸で呼吸鎖を活性化した後の酸素消費量がP5Cの濃度依存的に阻害された。以上の結果から、P5C/GSAは直接的にミトコンドリア呼吸鎖を阻害し、ROSを発生させることが明らかになった。また、Mpr1はP5C/GSAをN-アセチル化し、アルギニン合成経路を亢進ることで、一酸化窒素の生成に寄与するだけでなく、有毒なP5C/GSAが細胞内に蓄積しないようにして抗酸化能を発揮していると考えられた。Mpr1は高温や過酸化水素処理などの酸化ストレスで誘導され、プロリン代謝中間体(P5C/GSA)をN-アセチル化し、アルギニンおよび一酸化窒素の合成を促進することで、酵母に酸化ストレス耐性を付与すると考えられている。今年度は、Mpr1の結晶構造解析を行い、Mpr1の触媒反応機構の解明を目的に研究を実施した。まず、セレノメチオニン多波長異常分散を用いたX線結晶構造解析によりMpr1の立体構造を2.1Å分解能で決定した。
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KAKENHI-PROJECT-22380061
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22380061
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酵母のプロリン代謝中間体アセチル化酵素 Mpr1 による抗酸化機構の解明とその応用
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Mpr1の立体構造はGcn5-related N-acetyltransferase(GNAT)と類似しており、GNATスーパーファミリーに属することが判明した。また、速度論的解析からMpr1による触媒反応は逐次機構により進行し、Mpr1-アセチルCoA-AZCの三者複合体を経て進行することが示された。次に、立体構造上、類似性の高いタンパク質との比較から、Phe138の主鎖アミドのNH基、Asn178の側鎖、Trp185の側鎖がアセチルCoAや水分子との結合を介して触媒反応に関与していることが示唆された。また、立体構造および変異体酵素を用いた解析から、Asn135の側鎖がAZCをはじめとする基質との結合に関わることが示唆された。さらに、活性が消失した変異体を酵母で発現させると、野生型Mpr1に比べてストレス処理後のP5C含量が有意に増加したことから、Mpr1の生理機能においてもAsn135やAsn178が重要な残基であると考えられた。多くのGNATではTyrが保存されており、正四面体中間体の分解後に生じるCoAチオレートアニオンをプロトン化によってCoAに変換し、触媒として機能する。しかし、Mpr1のように分極によって反応を触媒するN-acetyltransferaseは報告されておらず、Mpr1が新規の触媒反応機構を有していることが示唆された。本研究では、Mpr1について生理機能の解明とその応用を目的に、1)Mprlを介した抗酸化機構の解明、2)高機能型Mpr1の創製と酵母のストレス耐性への応用、3)高等生物におけるMpr1の機能解析とその応用、に取り組んでいる。1)については、当初の計画をほぼ達成しており、科学的に価値の高い知見が数多く得られた。2)3)については、Mpr1の立体構造解析に必要な結晶が生成し始めているため、今後の進展が期待できる。24年度が最終年度であるため、記入しない。本研究では、Mpr1について生理機能の解明とその応用を目的に、1)Mpr1を介した抗酸化機構の解明(ROS制御の分子機構NOによる抗酸化機構など)、2)高機能型Mpr1の創製と酵母のストレス耐性への応用、3)高等生物におけるMpr1の機能解析とその応用、に取り組んでいる。1)については、概ね当初の計画を達成しており、今後、原著論文として成果の公表を行う。今後は、2)および3)の研究に特化する、特にMpr1の結晶構造解析を急ぎ、Mpr1の触媒反応機構の解明、および分子設計に基づく高機能型Mpr1の創製と抗酸化能向上に取り組む。24年度が最終年度であるため、記入しない。
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KAKENHI-PROJECT-22380061
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22380061
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余剰分泌顆粒のゆくえ:GnRH誘導体を活用した新規クリノファジー解析実験系の構築
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陳旧化した内分泌細胞の分泌顆粒は細胞内でクリノファジーという過程により分解処理されると考えられているが、これまで適切な解析実験系がなく詳細については不明の点が多い。そこで本研究では、下垂体前葉の性腺刺激ホルモン(LH/FSH)産生細胞に対するGnRHアゴニストとアンタゴニストの作用の差に着目して、細胞内で陳旧化した余剰の分泌顆粒の特徴や運命を明らかにしようとしている。2017年度までに、GnRHアゴニストあるいはアンタゴニストの徐放性製剤を投与した雄ラットから生化学的解析と形態学的解析のための下垂体組織標本を様々な時間経過で系統的に作成した。また、LHとFSHの標的臓器である精巣組織の変化を形態学的に解析することで、この実験系の妥当性を評価した。その結果、血漿LH濃度については、GnRHアゴニスト投与群とアンタゴニスト投与群の両者とも予測どおりの経時的推移を示し、動物実験モデルの妥当性が実証された。一方、精巣重量はLH濃度の推移と呼応して減少するものの、曲精細管上皮の組織像はGnRHアゴニスト投与群とアンタゴニスト投与群で大きく異なる変化を示した。そこで2018年度には、KOH消化で膠原線維を除去した精巣標本を走査型電子顕微鏡で観察し、GnRH誘導体持続投与時の曲精細管上皮の立体微細構造の経時的変化を解析した。その結果、GnRHアゴニスト投与群では、投与開始直後にセルトリ細胞間の接着が緩み未熟精子細胞が曲精細管上皮から大量に剥落することを見出した。一方、GnRHアンタゴニスト投与群では時間経過とともにセルトリ細胞の丈が低くなり、徐々に精子細胞が上皮から脱落することを明らかにした。以上の曲精細管上皮に対するGnRH誘導体持続投与の影響の差異に関しては、各実験群の血漿LH濃度の経時的変化のデータと併せて、研究成果欄に記載した原著論文(2)として発表・報告した。当初の研究計画で2018年度までに予定していたGnRH誘導体を持続投与した雄ラットからの形態学的解析および生化学的解析用の標本(下垂体及び精巣)の作製・採取は完了した。また、この実験モデルの妥当性の検証を目的として行った血漿LH濃度の測定と精巣組織の解析についても完了した。一方、本研究の当初の目標である下垂体性腺刺激ホルモン産生細胞における余剰分泌顆粒の処理過程の解明については、現在、性腺刺激ホルモン(LH、FSH)や分泌顆粒基質蛋白(クロモグラニンA、セクレトグラニンII)に対する特異抗体を用いて、免疫組織化学染色でその経時的変化の検討を進めているところである。精巣に対するGnRH誘導体持続投与の影響に関する解析で予期せぬ興味深い所見を得たため、本来予定していた下垂体前葉性腺刺激ホルモン産生細胞の解析は若干遅れているが、精巣の所見については平成30年度に成果を原著論文としてまとめることができた。このような状況を踏まえて、本研究は全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。当初の研究計画で予定していた、下垂体前葉の性腺刺激ホルモン産生細胞の分泌顆粒形成に対するGnRHアゴニストとアンタゴニストの影響の差異については、計画通り2019年度に免疫組織化学法と電子顕微鏡観察を組み合わせた相関顕微観察法で解析を進めていく予定である。またこのような観察で得られた所見を補強するために、適宜、形態計測法による定量的な形態解析、および下垂体組織抽出液のイムノブロット解析や定量的PCR法などの生化学的解析法を加味していく計画である。内分泌細胞の分泌顆粒が細胞内で陳旧化するとクリノファジーという過程で分解処理されると考えられているが、これまで適切な解析実験系がなかったため、その詳細については不明の点が多い。そこで本研究では、下垂体前葉のLH/FSH産生細胞に対するGnRHアゴニストとアンタゴニストの作用の差に着目して余剰の分泌顆粒が生じる動物実験系を確立し、細胞内で陳旧化した分泌顆粒の特徴や運命を明らかにしようとしている。平成29年度には、まず、雄ラットの背部皮下にGnRHアゴニストあるいはアンタゴニストの徐放性製剤を投与したのち、様々な時間経過で下垂体組織を採取し、生化学的解析と形態学的解析のための標本を系統的に作成した。同時に、この実験系の妥当性を検証するために、血漿と性腺刺激ホルモンの標的臓器である精巣組織も採取した。得られた血漿中のLH濃度の経時的推移をELISA法で解析したところ、GnRHアゴニスト持続投与群では投与直後に一過性の血中LH濃度上昇が見られ、その後は28日目まで低値に維持された。一方、GnRHアンタゴニスト持続投与群では投与直後から28日目まで持続的に測定限界以下の低値に維持され、投与直後のホルモン大量分泌は認められなかった。このLH濃度の推移と呼応して精巣重量も減少したが、両実験群で変化のパターンが異なったため、精巣組織の経時的変化を比較した。その結果、GnRHアゴニスト投与群では投与開始直後の一過性のホルモン大量分泌の時期に一致して、曲精細管上皮から大量の精子細胞が管腔内に剥落し、曲精細管が急速に萎縮していた。一方、GnRHアゴニスト持続投与群では投与直後は明らかな変化は認められず、投与開始後7日目以降から徐々に萎縮性の変化が生じることが明らかになった。この曲精細管に対するGnRH誘導体の影響の差異については、研究発表欄に記載した2つの学術集会で報告した。
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KAKENHI-PROJECT-17K08505
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K08505
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余剰分泌顆粒のゆくえ:GnRH誘導体を活用した新規クリノファジー解析実験系の構築
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当初の研究計画で初年度(平成29年度)に予定していたGnRH誘導体持続投与による動物実験モデルの確立は完了し、系統的な血漿サンプルや組織標本採取(下垂体及び精巣)も順調に行われた。このサンプル・標本を用いて、平成29年度にはまず、今回確立したGnRH誘導体持続投与実験系の有効性・妥当性を評価するために、性腺刺激ホルモン血中濃度測定および精巣における精子形成過程の変化を解析した。この結果、曲精細管上皮組織に対するGnRHアゴニストとアンタゴニストの影響の差異に関して予期せぬ新知見を得たため、その知見を学会発表や論文で報告するために追加・補足の実験を行った。この成果は、既に日本解剖学会の学術集会で発表し、現在論文としてまとめているところである。このような状況を踏まえて、本研究は計画通り順調に進展していると判断した。陳旧化した内分泌細胞の分泌顆粒は細胞内でクリノファジーという過程により分解処理されると考えられているが、これまで適切な解析実験系がなく詳細については不明の点が多い。そこで本研究では、下垂体前葉の性腺刺激ホルモン(LH/FSH)産生細胞に対するGnRHアゴニストとアンタゴニストの作用の差に着目して、細胞内で陳旧化した余剰の分泌顆粒の特徴や運命を明らかにしようとしている。2017年度までに、GnRHアゴニストあるいはアンタゴニストの徐放性製剤を投与した雄ラットから生化学的解析と形態学的解析のための下垂体組織標本を様々な時間経過で系統的に作成した。また、LHとFSHの標的臓器である精巣組織の変化を形態学的に解析することで、この実験系の妥当性を評価した。その結果、血漿LH濃度については、GnRHアゴニスト投与群とアンタゴニスト投与群の両者とも予測どおりの経時的推移を示し、動物実験モデルの妥当性が実証された。一方、精巣重量はLH濃度の推移と呼応して減少するものの、曲精細管上皮の組織像はGnRHアゴニスト投与群とアンタゴニスト投与群で大きく異なる変化を示した。そこで2018年度には、KOH消化で膠原線維を除去した精巣標本を走査型電子顕微鏡で観察し、GnRH誘導体持続投与時の曲精細管上皮の立体微細構造の経時的変化を解析した。その結果、GnRHアゴニスト投与群では、投与開始直後にセルトリ細胞間の接着が緩み未熟精子細胞が曲精細管上皮から大量に剥落することを見出した。一方、GnRHアンタゴニスト投与群では時間経過とともにセルトリ細胞の丈が低くなり、徐々に精子細胞が上皮から脱落することを明らかにした。以上の曲精細管上皮に対するGnRH誘導体持続投与の影響の差異に関しては、各実験群の血漿LH濃度の経時的変化のデータと併せて、研究成果欄に記載した原著論文(2)として発表・報告した。当初の研究計画で2018年度までに予定していたGnRH誘導体を持続投与した雄ラットからの形態学的解析および生化学的解析用の標本(下垂体及び精巣)の作製・採取は完了した。また、この実験モデルの妥当性の検証を目的として行った血漿LH濃度の測定と精巣組織の解析についても完了した。一方、本研究の当初の目標である下垂体性腺刺激ホルモン産生細胞における余剰分泌顆粒の処理過程の解明については、現在、性腺刺激ホルモン(LH、FSH)や分泌顆粒基質蛋白(クロモグラニンA、セクレトグラニンII)に対する特異抗体を用いて、免疫組織化学染色でその経時的変化の検討を進めているところである。
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KAKENHI-PROJECT-17K08505
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K08505
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複数の可変速1軸ジンバルCMGによる宇宙機の姿勢制御
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本研究の目的は,宇宙機の姿勢制御アクチュエータが複数台の可変速1軸ジンバルCMG(Control Moment Gyro)である場合に,宇宙機を高速かつ確実に姿勢変更させるための姿勢制御系を確立することである.可変速1軸ジンバルCMGを用いることで,アクチュエータの台数を減らせる可能性があり,また特異点の通過が容易になると考えられる.H28年度はこの可変速1軸ジンバルCMGのハードウェア設計を行い,4台のCMGを試作した.また,CMGを駆動するための制御回路の製作を行い,PC,電源,CMGを空気浮上テーブルに搭載して,CMGによる宇宙機の3軸姿勢制御実験が行える実験装置を製作した.また,これと並行して可変速1軸ジンバルCMGを2台用いる姿勢制御計画を立案し,その確認実験を行った.H29年度は可変速1軸ジンバルCMGを2台用いる姿勢制御において,フィードフォワードとフィードバックを組み合わせる2自由度制御系を設計し,その確認実験を行って成果を国際学会で発表した.この内容は英文投稿して電子ジャーナルに掲載されている.また,可変速1軸ジンバルCMGを3台用いる宇宙機の姿勢制御の基本アルゴリズムを構築し,シミュレーションで効果を確認して結果を国内学会で発表した.この確認実験を行うために,姿勢制御実験装置の重心ずれや取付誤差について精密な計測を実施した.さらに,CMGのジンバル駆動部に用いているスリップリングの信頼性が問題となっているのでその改修を行った.H30年度は可変速1軸ジンバルCMGを4台用いる宇宙機の姿勢制御の基本アルゴリズムを構築し,その成果を国内学会で発表した.さらに,このアルゴリズムをシミュレーション及び姿勢制御実験装置で確認した.本研究のまとめの成果については国際的な論文誌に投稿するよう準備を行っている.本研究の目的は,宇宙機の姿勢制御アクチュエータが複数台の可変速1軸ジンバルCMG(Control Moment Gyro)である場合に,宇宙機を高速かつ確実に姿勢変更させるための姿勢制御系を確立することである.可変速1軸ジンバルCMGを用いることで,アクチュエータの台数を減らせる可能性があり,また特異点の通過が容易になると考えられる.H28年度はこの可変速1軸ジンバルCMGのハードウェア設計を行い,ホイールモータにDCモータ,ジンバルモータにステップモータを用いて,ホイールのトルク制御と低速時の滑らかなジンバル角駆動を可能とした可変速1軸ジンバルCMGを4台試作した.また,この可変速1軸ジンバルCMGの制御回路の設計を行い,全体の制御を統括するファンレスPCと各CMGの制御を行うボードPCの二段構成の電気制御回路と,それに対する電源系を製作した.さらに,この可変速1軸ジンバルCMGを4台搭載した宇宙機の姿勢制御実験を行う空気浮上実験装置の製作を行った.また,これらのハードウェア製作と並行して,可変速1軸ジンバルCMGを2台用いる宇宙機の姿勢制御系について検討を行い,宇宙機の姿勢変更時間を最短にする姿勢制御計画を求め,シミュレーションでその性能を確認するとともに,その姿勢制御計画を実験装置に実装して確認実験を行った.この確認実験では基本制御機能を確認できたが,さらに性能向上をめざして改修中である.可変速1軸ジンバルCMGとその制御回路および地上実験装置のハードウェア製作を行い,ほぼ想定通りの性能が得られたことで,ハードウェア面においては順調に推移していると考えられる.ただし,CMGを可変速とする回転モータについて,寸法や重量面での制約から最大トルクがやや不足気味となった.この場合,地上制御実験装置に作用する重力トルクが大きくなると,CMGの出力トルクが不足する恐れがある.そのため,地上制御実験装置の重力トルクを最小限に抑える必要があり,重力トルクの原因となる重心ずれを精度よく同定し補償する補償方法の検討をあわせて実施した.この結果から,重心ずれを予定通りに解消できれば出力トルク不足は解消できる見込みである.また,ソフトウェア面においては,可変速1軸ジンバルCMGが2台の場合の,制御性能解析および最短時間経路設計を行い,2台構成の場合の性能限界に関する知見を得るとともに,姿勢制御系の実験装置への実装を行い,地上実験を実施した.2台構成の場合の実験まで実施できたことで,ソフトウェア面においてもほぼ順調に推移していると考えられる.本研究の目的は,宇宙機の姿勢制御アクチュエータが複数台の可変速1軸ジンバルCMG(Control Moment Gyro)である場合に,宇宙機を高速かつ確実に姿勢変更させるための姿勢制御系を確立することである.可変速1軸ジンバルCMGを用いることで,アクチュエータの台数を減らせる可能性があり,また特異点の通過が容易になると考えられる.H28年度はこの可変速1軸ジンバルCMGのハードウェア設計を行い,4台のCMGを試作した.また,CMGを駆動するための制御回路の製作を行い,PC,電源,CMGを空気浮上テーブルに搭載して,CMGによる宇宙機の3軸姿勢制御実験が行える実験装置を製作した.また,これと並行して可変速1軸ジンバルCMGを2台用いる姿勢制御計画を立案し,その確認実験を行った.H29年度は可変速1軸ジンバルCMGを2台用いる姿勢制御において,フィードフォワードとフィードバックを組み合わせる2自由度制御系を設計し,その確認実験を行って成果を国際学会で発表した.この内容は英文投稿して掲載が決定している.また,可変速1軸ジンバルCMGを3台用いる宇宙機の姿勢制御の基本アルゴリズムを構築し,シミュレーションで効果を確認して結果を国内学会で発表した.この確認実験を行うために,姿勢制御実験装置の重心ずれや取付誤差について精密な計測を実施中である.
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KAKENHI-PROJECT-16K06886
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K06886
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複数の可変速1軸ジンバルCMGによる宇宙機の姿勢制御
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さらに,CMGのジンバル駆動部に用いているスリップリングの信頼性が問題となっているのでその改修を実施中である.ハードウェア面においてはH28年度にほぼ完成しており,H29年度は実験装置の重心ずれ,取付誤差の精密な計測やスリップリングの改修などを実施した.改修後のスリップリングはやや回転抵抗が大きいので実験に支障が生じるかどうかを確認して要すればさらに改修を試みる.ハードウェア面においては,H30年度も細かな改修を行う必要はあるものの,全体的には予定通りに進捗していると考えられる.ソフトウェア面においては,可変速1軸ジンバルCMGを2台用いる場合の姿勢制御則やその検証実験はH29年度までにほぼ終了し,成果を国際学会で発表するとともに論文化したので,2台については完了したものと考えられる.現在は可変速1軸ジンバルCMGを3台用いる場合の姿勢制御則をシミュレーション検証している段階であり,この姿勢制御則を完成させ,確認実験が行えた段階で学会発表や論文投稿を予定している.最終的には可変速1軸ジンバルCMGを4台用いる場合の姿勢制御則を構築し,ソフトウェアとハードウェアの両面から検証を行うことであるが,現段階ではその前の3台の場合に注力している.したがってソフトウェア面では全体計画の60%程度の進捗と考えている.本研究の目的は,宇宙機の姿勢制御アクチュエータが複数台の可変速1軸ジンバルCMG(Control Moment Gyro)である場合に,宇宙機を高速かつ確実に姿勢変更させるための姿勢制御系を確立することである.可変速1軸ジンバルCMGを用いることで,アクチュエータの台数を減らせる可能性があり,また特異点の通過が容易になると考えられる.H28年度はこの可変速1軸ジンバルCMGのハードウェア設計を行い,4台のCMGを試作した.また,CMGを駆動するための制御回路の製作を行い,PC,電源,CMGを空気浮上テーブルに搭載して,CMGによる宇宙機の3軸姿勢制御実験が行える実験装置を製作した.また,これと並行して可変速1軸ジンバルCMGを2台用いる姿勢制御計画を立案し,その確認実験を行った.H29年度は可変速1軸ジンバルCMGを2台用いる姿勢制御において,フィードフォワードとフィードバックを組み合わせる2自由度制御系を設計し,その確認実験を行って成果を国際学会で発表した.この内容は英文投稿して電子ジャーナルに掲載されている.また,可変速1軸ジンバルCMGを3台用いる宇宙機の姿勢制御の基本アルゴリズムを構築し,シミュレーションで効果を確認して結果を国内学会で発表した.この確認実験を行うために,姿勢制御実験装置の重心ずれや取付誤差について精密な計測を実施した.さらに,CMGのジンバル駆動部に用いているスリップリングの信頼性が問題となっているのでその改修を行った.
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KAKENHI-PROJECT-16K06886
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K06886
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リソソーム環境が管理するアレルギー炎症応答の分子基盤
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本研究では、アミノ酸トランスポーターSLC15A4がマスト細胞の機能と個体免疫応答に果たす役割を分子レベルで解析し、マスト細胞が媒介する炎症性疾患の新規制御機構を明らかにすることを目標とした。SLC15A4欠損マスト細胞ではリソソームの形態異常、およびヒスタミン合成亢進、またそれに伴ったIgE-抗原刺激によるマスト細胞の脱顆粒時のヒスタミン放出量の増加が認められた。その分子メカニズムとして、SLC15A4がmTORC経路および転写因子TFEBの活性化制御を介してマスト細胞のリソソーム生合成とヒスタミン等の炎症メディエーターの合成/細胞内貯蔵に重要な役割を果たしていることを明らかにした。免疫細胞の中でも、マスト細胞やNK細胞といった細胞種は、それぞれヒスタミン顆粒や細胞傷害性顆粒として知られる分泌リソソームを機能分化させているが、これら細胞のエフェクター機能の発揮において、リソソーム環境に依存した制御機構に着眼した研究はほとんど行われていない。本研究では、マスト細胞の機能制御におけるリソソーム環境管理の重要性とそのメカニズムを理解するために、リソソームに発現するアミノ酸トランスポーターのSLC15A4を解析モデルとし、SLC15A4遺伝子欠損マウスを用いてマスト細胞のリソソーム性状と炎症応答の解析およびアレルギー炎症モデルの病態解析を行った。その結果、SLC15A4欠損マスト細胞におけるリソソームの形態異常、およびヒスタミン合成亢進、またそれに伴ったIgE-抗原刺激によるマスト細胞の脱顆粒時のヒスタミン放出量の増加を見出し、SLC15A4がマスト細胞のリソソーム生合成とヒスタミン等の炎症メディエーターの合成/細胞内貯蔵に重要な役割を果たしていることを明らかとした。また、リソソーム環境管理におけるSLC15A3とSLC15A4との機能の差異および類似点を明らかにすることを目的として、SLC15A4と性質の類似するSLC15A3の欠損マウスを作出した。さらにこのマウスをSLC15A4欠損マウスとかけ合わせることでSLC15A3/SLC15A4二重欠損マウスを作出し、これらのマウスの表現型について解析を進めている。本研究では、マスト細胞の機能制御におけるリソソーム環境管理の重要性とそのメカニズムを理解するために、リソソームに発現するアミノ酸トランスポーターSLC15A4の遺伝子欠損マウスを用いてマスト細胞のリソソーム性状と炎症応答の解析およびアレルギー炎症モデルの病態解析を行った。その結果、SLC15A4がマスト細胞の正常なリソソーム生合成とヒスタミンをはじめとする炎症メディエーターの合成/細胞内貯蔵を制御することで、IgEを介した脱顆粒反応に伴うメディエーター放出を調節していることを明らかにした。これらの成果をまとめ、海外学会において発表済、また現在論文を投稿中である。一方、SLC15A4と性質の類似するSLC15A3の欠損マウスをCRISPR/Cas9システムを用いて作出し、その表現型解析を進めるなど、当初の2年度に計画していた研究内容を一部前倒しして行っている。本研究では、マスト細胞に特徴的な分泌リソソーム内のアミノ酸およびプロトン環境がマスト細胞の機能と個体免疫応答にどのような影響を及ぼすかを理解し、マスト細胞が媒介する炎症性疾患の新規制御機構を明らかにすることによって、アレルギー性疾患をはじめとする炎症性疾患の新規治療法の開発の礎となる分子基盤を構築することを目標とした。具体的には、1マスト細胞においてSLC15A4を介したリソソームに依存したシグナル伝達の重要性、2アミノ酸トランスポーターSLC15A4によるリソソーム環境管理がマスト細胞の機能に果たす役割、について明らかにした。すなわち、SLC15A4欠損マスト細胞におけるリソソームの形態異常、およびヒスタミン合成亢進、またそれに伴ったIgE-抗原刺激によるマスト細胞の脱顆粒時のヒスタミン放出量の増加を見出した。その分子メカニズムとして、SLC15A4がmTORC経路および転写因子TFEBの活性化制御を介してマスト細胞のリソソーム生合成とヒスタミン等の炎症メディエーターの合成/細胞内貯蔵に重要な役割を果たしていることを明らかとした。これらの成果を論文にまとめて、International Immunology誌(Int Immunol. Vol. 29, No.12, p551-566)に発表した。また、リソソーム環境管理におけるSLC15A3とSLC15A4との機能の差異および類似点を明らかにすることを目的として、SLC15A3の欠損マウスを作出し、SLC15A3欠損細胞の機能解析を行なった。SLC15A3欠損マスト細胞では、SLC15A4同様の表現型が得られなかったことから、これら分子の役割機能が異なることが示唆された。本研究では、アミノ酸トランスポーターSLC15A4がマスト細胞の機能と個体免疫応答に果たす役割を分子レベルで解析し、マスト細胞が媒介する炎症性疾患の新規制御機構を明らかにすることを目標とした。SLC15A4欠損マスト細胞ではリソソームの形態異常、およびヒスタミン合成亢進、またそれに伴ったIgE-抗原刺激によるマスト細胞の脱顆粒時のヒスタミン放出量の増加が認められた。その分子メカニズムとして、SLC15A4がmTORC経路および転写因子TFEBの活性化制御を介してマスト細胞のリソソーム生合成とヒスタミン等の炎症メディエーターの合成/細胞内貯蔵に重要な役割を果たしていることを明らかにした。
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KAKENHI-PROJECT-16K21654
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K21654
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リソソーム環境が管理するアレルギー炎症応答の分子基盤
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当初の2年度の計画にある通り、作出したSLC15A3 KOおよびSLC15A3/SLC15A4ダブルKOマウスの解析を行い、リソソームおよび関連オルガネラの形態、アレルギー炎症応答について検討を加える。これらの解析により、炎症シグナルの場であるリソソームの空間的制御にSLC15A3/SLC15A4が果たす役割を明確にする。分子免疫学世の中の流れで漸次値上げされている消耗品(試薬、抗体、マウス)などの物品費の費用増加分のほか、SLC15A3に関する論文の投稿費用に充てる。
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KAKENHI-PROJECT-16K21654
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K21654
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高温度域におけるコークスの燃焼・ガス化挙動および灰粒子特性の解明
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コークスの燃焼およびガス化反応挙動を基礎的に検討するために、コークスの燃焼およびガス化実験を実施した。粒径1020mmのコークスを白金製の試料ホルダーに入れて、1400°Cに昇温したN2ガス雰囲気の縦型管状電気炉の反応管内に降下させた。反応を開始させるために雰囲気ガスを、燃焼実験の場合は空気、ガス化実験の場合は組成の異なるCO-CO2混合ガスに切り替え、反応率80%の反応中断試料を作製した。実験後、反応中断試料および実験前のコークス試料をエポキシ樹脂により樹脂埋めし、真空引きを行い、樹脂の固化後、切断・研磨した。SEMおよびデジタルマイクロスコープにより得られた観察画像から画像処理ソフトにより個々の灰粒子の粒子径および各試料の気孔率を測定した。その結果、原コークスと比較し、燃焼後のコークスでは粒径の大きな灰粒子の割合が大幅に増加した。CO:CO2=75:25でのガス化後のコークスは原コークスと同じ傾向を示したが、CO-CO2混合ガス中のCO2割合が増加するとともに、原コークスと比較して粒径の大きな灰粒子の割合が増加した。また、原コークスおよび燃焼後コークス試料の気孔率は約30%で変化しなかったが、ガス化後のコークス試料の気孔率は約40%と原コークスと比較して若干ではあるが増加した。さらに、実験前後の試料径を測定することで収縮率を算出したところ、燃焼では約46%であったが、CO:CO2=50:50でのガス化では約18%に止まった。同じ反応率、つまり、固定炭素の消費量が同じにもかかわらず、試料の収縮率が異なることから、燃焼ではコークス表面で炭素質が消費され、ガス化ではコークス表面のみならずコークス内部の炭素質も消費されることで、燃焼の収縮率がガス化よりも大きくなる。このような燃焼反応およびガス化反応における炭素質の消費のされ方の相違が灰粒子挙動の差異に起因することを見出した。コークスの燃焼およびガス化反応挙動を基礎的に検討するために、コークスの燃焼およびガス化実験を実施した。本研究では、実験試料として実機のコークス炉で製造された粒径1020mmのコークスを用いた。実験試料を白金製の試料ホルダーに入れて、1400°Cに昇温した縦型管状電気炉の反応管内に降下させた。この際の雰囲気ガスはN2ガスである。反応を開始させるために雰囲気ガスを、燃焼実験の場合は空気、ガス化実験の場合は50%CO-50%CO2混合ガスに切り替えた。反応による重量減少を電気炉上部に備え付けた電子天秤により連続的に測定し、各反応率の実験を行った。その結果、1400°Cにおける燃焼は約1500秒、ガス化は約3200秒にて完了しており、燃焼反応の方がガス化反応よりも2倍程度速いことが分かった。次に、コークスの燃焼およびガス化過程における灰粒子特性(粒径)について検討した。反応中断試料および実験前のコークス試料をエポキシ樹脂により樹脂埋めし、真空含浸装置にて気泡を取り除くために真空引きを行い、樹脂の固化後、切断・研磨した。SEMによりこれらの断面組織を観察・撮影した。その結果、燃焼反応においては、溶融・凝集した灰粒子がコークス表面に存在しており、一方、ガス化反応においては、燃焼反応のような灰粒子の凝集は観察されなかった。さらに、得られた観察面の反射電子画像(BSE画像)から画像処理ソフトにより個々の灰粒子の粒子径を測定した。その結果、原コークスと比較し、燃焼後のコークス(反応率80%)では粒径の大きな灰粒子の割合が大幅に増加しており、一方、ガス化後のコークス(反応率80%)は原コークスとほぼ同じ傾向を示した。これらのことから、燃焼およびガス化反応過程におけるコークスの灰粒子挙動が大きく異なり、燃焼反応の方がガス化反応と比較して反応過程における灰粒子の凝集が顕著であることが示唆された。当初、平成28年度の研究計画として、コークスの燃焼・ガス化反応過程における灰粒子挙動を解明する前に、反応過程におけるコークス炭素質の消費挙動および構造変化について基礎的に検討する予定であった。しかし、実験後試料断面のコークス組織の観察・撮影に使用する予定であった既存設備のデジタルマイクロスコープ本体の調子が悪く、実験後試料断面のコークス組織を観察・撮影することが出来なかった。そこで、平成29年度以降の研究計画としていたコークスの燃焼およびガス化過程における灰粒子特性の検討について平成28年度に実施した。灰粒子特性として主に灰粒子径の定量的な評価を行った。以上のことから、現在までの進捗状況としては、おおむね順調に進捗しているものと考える。コークスの燃焼およびガス化反応挙動を基礎的に検討するために、コークスの燃焼およびガス化実験を実施した。粒径1020mmのコークスを白金製の試料ホルダーに入れて、1400°Cに昇温した縦型管状電気炉の反応管内に降下させた。この際の雰囲気ガスはN2ガスである。反応を開始させるために雰囲気ガスを、燃焼実験の場合は空気、ガス化実験の場合は50%CO-50%CO2混合ガスに切り替え、反応率80%の反応中断試料を作製した。実験後、反応中断試料および実験前のコークス試料をエポキシ樹脂により樹脂埋めし、真空引きを行い、樹脂の固化後、切断・研磨した。SEMおよびデジタルマイクロスコープにより得られた観察画像から画像処理ソフトにより個々の灰粒子の粒子径および各試料の気孔率を測定した。
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KAKENHI-PROJECT-16K21089
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K21089
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高温度域におけるコークスの燃焼・ガス化挙動および灰粒子特性の解明
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その結果、原コークスと比較し、燃焼後のコークスでは粒径の大きな灰粒子の割合が大幅に増加しており、一方、ガス化後のコークスは原コークスとほぼ同じ傾向を示した。また、原コークスおよび燃焼後コークス試料の気孔率はそれぞれ約31%および約32%であり、燃焼反応によって気孔率は変化しなかった。一方、ガス化後のコークス試料の気孔率は約40%と原コークスと比較して増加した。さらに、実験前後の試料径を測定することで収縮率を算出したところ、燃焼では約46%であったが、ガス下では約18%に止まった。同じ反応率、つまり、固定炭素の消費量が同じにもかかわらず、試料の収縮率が異なることから、燃焼ではコークス表面で炭素質が消費され、ガス化ではコークス表面のみならずコークス内部の炭素質も消費されることで、燃焼の収縮率がガス化よりも大きくなるものと考える。これは燃焼とガス化における気孔率の差異からも示唆される。このような燃焼反応およびガス化反応における炭素質の消費のされ方の相違が灰粒子挙動の差異に起因するものと推察する。当初の計画とは順序が逆になったが、コークスの燃焼およびガス化過程における灰粒子特性、反応過程におけるコークス炭素質の消費挙動および構造変化について基礎的に検討した。灰粒子特性として灰粒子径、構造変化として気孔率の定量的な評価を行った。以上のことから、現在までの進捗状況としては、おおむね順調に進捗しているものと考える。コークスの燃焼およびガス化反応挙動を基礎的に検討するために、コークスの燃焼およびガス化実験を実施した。粒径1020mmのコークスを白金製の試料ホルダーに入れて、1400°Cに昇温したN2ガス雰囲気の縦型管状電気炉の反応管内に降下させた。反応を開始させるために雰囲気ガスを、燃焼実験の場合は空気、ガス化実験の場合は組成の異なるCO-CO2混合ガスに切り替え、反応率80%の反応中断試料を作製した。実験後、反応中断試料および実験前のコークス試料をエポキシ樹脂により樹脂埋めし、真空引きを行い、樹脂の固化後、切断・研磨した。SEMおよびデジタルマイクロスコープにより得られた観察画像から画像処理ソフトにより個々の灰粒子の粒子径および各試料の気孔率を測定した。その結果、原コークスと比較し、燃焼後のコークスでは粒径の大きな灰粒子の割合が大幅に増加した。CO:CO2=75:25でのガス化後のコークスは原コークスと同じ傾向を示したが、CO-CO2混合ガス中のCO2割合が増加するとともに、原コークスと比較して粒径の大きな灰粒子の割合が増加した。また、原コークスおよび燃焼後コークス試料の気孔率は約30%で変化しなかったが、ガス化後のコークス試料の気孔率は約40%と原コークスと比較して若干ではあるが増加した。さらに、実験前後の試料径を測定することで収縮率を算出したところ、燃焼では約46%であったが、CO:CO2=50:50でのガス化では約18%に止まった。同じ反応率、つまり、固定炭素の消費量が同じにもかかわらず、試料の収縮率が異なることから、燃焼ではコークス表面で炭素質が消費され、ガス化ではコークス表面のみならずコークス内部の炭素質も消費されることで、燃焼の収縮率がガス化よりも大きくなる。このような燃焼反応およびガス化反応における炭素質の消費のされ方の相違が灰粒子挙動の差異に起因することを見出した。
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KAKENHI-PROJECT-16K21089
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K21089
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特別支援学校における超重症児への指導とその成果に関する教師の意識調査
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本研究では、特別支援学校における超重症児への指導とその成果に関する担任教師の意識を調査し、以下の3点が明らかとなった。1)評価を客観性のあるものにしなければならないと感じている一方、記録方法について困難や限界を感じていることがうかがわれた。2)脳機能障害の程度が重いほど、子どもの変容に関する評価は肯定的になりづらく、より適切なかかわり方の発見に至りにくい一方、教師自身における子どもへの理解の深まりや周囲の人々の変容には大きく作用しなかった。3)通常授業においてのみならず、校内研修などの様々な機会を活用して、子どもへの理解を深めたり、実際のかかわり方を工夫・改善したりしていることがうかがわれた。わが国の重症心身障害児(者)療育の場では、濃厚な医療的ケアが継続的に必要な人たちが増加し、その中でも医療的ケアの必要度が特に高い群は「超重症児(者)」と呼ばれている。そして、特別支援教育の場においても、このような子どもたちが顕在化している現状にあるが、特別支援学校等の教育機関を対象とした調査報告は少なく、超重症児への教育上の対応に関する情報はほとんど得られていない。そこで平成27年度は、全国の特別支援学校のうち、知的障害(訪問教育実施校に限る)・肢体不自由・病弱のいずれかを対象としている530校に対してアンケート調査を実施した。各学校へは、2種類のアンケートに対する回答を依頼した。ひとつは学校全体での超重症児の在籍状況と基本的な指導場所について尋ねたもの(以下、アンケートI)である。もうひとつは、超重症児該当児童生徒を1名挙げてもらい、その子ども(以下、対象児)への各指導過程の実際と指導の成果について尋ねたもの(以下、アンケートII)である。アンケートIは各学校に1部送付し、重複障害学級担当者に回答を依頼した。一方、アンケートIIは各学校に4部送付し、回答は選択した対象児の担任教師に依頼した。調査期間は平成28年13月である。平成28年5月現在、回答の集計・分析作業を進めているところであり、結果の一部を日本特殊教育学会第54回大会の自主シンポジウム(※)にて報告する予定である(学会大会参加の申し込みと発表論文集の原稿提出は完了)。(※)このシンポジウムは、科学研究費補助金(基盤研究(C)、課題番号16K04808、代表者:川住隆一)による研究の一環として実施される。本研究の目的は、特別支援学校における超重症児への指導とその成果に関する担任教師の意識を明らかにし、今後の実践的研究課題を示すことである。平成27年度は、全国規模のアンケート調査を計画していた。平成28年5月現在、回答の集計・分析作業が当初の予定よりわずかに遅れているものの、計画通り平成27年度内にアンケート調査を実施できたことや、日本特殊教育学会第54回大会にて研究成果の一部を公表する予定であることから、全体的にみれば本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。わが国の重症心身障害児(者)療育の場では、濃厚な医療的ケアが継続的に必要な人たちが増加し、その中でも医療的ケアの必要度が特に高い群は、「超重症児(者)」と呼ばれている。そして、特別支援教育の場においても、このような子どもたちが顕在化している現状にあるが、特別支援学校等の教育機関を対象とした調査報告は少なく、超重症児への教育上の対応に関する情報はほとんど得られていない。そこで、全国の特別支援学校のうち知的障害(訪問教育実施校に限る)・肢体不自由・病弱のいずれかを対象としている530校に対して、超重症児への指導とその成果に関するアンケート調査を実施した。調査期間は平成28年13月である。269校より回答が得られ(回収率50.8%)、このうち174校において超重症児が1名以上在籍していた。そして、計365件の指導事例に関する情報が得られた。アンケート調査の回答の入力作業は完了し、結果の一部は学会大会や論文を通して紹介した。また、日本特殊教育学会第55回大会(平成29年9月開催)においても報告する予定である。また、平成29年12月には、特別支援学校4校の協力のもと、超重症児の担任教師11名に対して半構造化形式の面接調査を実施した(7名は個別、4名は集団での実施)。面接調査では、1導開始当初と最近における子ども・教師・周囲の人々の状況・様子について、2指導を通して認められた子ども・教師・周囲の人々の意識・行動の変容に関するエピソード、3指導を通して得られた教師自身の学び、の3点について聴取した。聴取した内容については現在分析中である。本研究の目的は、特別支援学校における超重症児への指導とその成果に関する担任教師の意識を明らかにし、今後の実践的研究課題を示すことである。平成27年度は全国規模のアンケート調査を、平成28年度は担任教師数名への面接調査をそれぞれ計画しており、いずれについても滞りなく実施することができた。また、調査結果の公表についても、現時点では不十分であるものの、学会大会や論文を通して順次進めている。したがって、全体的にみれば本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。平成27年度は、全国の特別支援学校のうち知的障害(訪問教育実施校に限る)・肢体不自由・病弱のいずれかを対象とする530校に対し、超重症児への指導とその成果に関するアンケート調査を実施した。268校より回答が得られ(回収率50.6%)、このうち173校において超重症児が1名以上在籍していた。
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KAKENHI-PROJECT-15K17419
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特別支援学校における超重症児への指導とその成果に関する教師の意識調査
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また、計364件の指導事例に関する情報が得られた。なお、前年度報告と回収率等の数値が異なるのは、結果の分析過程において無効となった回答があったためである。そして、平成28年度は、超重症児の担任教師11名に対して半構造化形式の面接調査を実施した。平成29年度は、上記の調査で得られたデータを分析し、主に以下の点を明らかにした。1超重症児への指導の評価を客観性のあるものにしなければならないと担任教師が感じている一方で、なかなかそのようにはいかないという葛藤を抱いたり、記録を取るにしても厳密には行えない、動きが微弱微小で動画撮影等では捉えきれないといった限界を感じたりしていることがうかがわれた。2脳機能障害の程度が重いほど、指導を通しての超重症児の変容に関する担任教師の評価は肯定的になりづらく、また、より適切なかかわり方の発見に至りにくい一方で、担任教師自身における超重症児への理解の深まりや周囲の人々の変容には大きく作用しなかった。3脳機能障害の程度が重い超重症児の担任教師においては、担任の継続が指導の成果に関する認識に肯定的に作用している傾向が示された一方で、長期的にかかわっているからこそ超重症児の身体機能の低下を切実に感じる場合もあり、そのことが成果に関する認識に否定的に作用する可能性があることもうかがわれた。本研究では、特別支援学校における超重症児への指導とその成果に関する担任教師の意識を調査し、以下の3点が明らかとなった。1)評価を客観性のあるものにしなければならないと感じている一方、記録方法について困難や限界を感じていることがうかがわれた。2)脳機能障害の程度が重いほど、子どもの変容に関する評価は肯定的になりづらく、より適切なかかわり方の発見に至りにくい一方、教師自身における子どもへの理解の深まりや周囲の人々の変容には大きく作用しなかった。3)通常授業においてのみならず、校内研修などの様々な機会を活用して、子どもへの理解を深めたり、実際のかかわり方を工夫・改善したりしていることがうかがわれた。まず、平成27年度に実施したアンケート調査の結果について詳細な分析を行う。そして、超重症児の担任教師数名に対し、超重症児の状態像をどのように捉えながら指導してきたかについて、半構造化面接を通して聴取する予定である。この面接調査によって、担任教師の超重症児への理解・対応のプロセスに関する示唆を得たいと考える。アンケート調査および面接調査のデータ分析を継続する。また、学会大会での発表や論文執筆に向けての準備を進める。そして、研究成果報告書を作成する。平成27年度に実施した全国調査の結果を下記報告書にまとめ、希望する特別支援学校等への送付や国立国会図書館への納入を行った。野崎義和「特別支援学校における超重症児該当児童生徒への指導とその成果に関する調査報告書」(2018年3月発行)特別支援教育諸事情により面接調査を実施することができなかった特別支援学校が数校あり、その学校への交通費・宿泊費が余った。学会大会参加または発表に係る旅費と研究成果報告書の作成費用に充当する計画である。
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KAKENHI-PROJECT-15K17419
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内皮細胞の機能保持における血管周皮細胞の役割
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[I]ヒト臍静脈内皮細胞をウシ網膜血管周皮細胞のフィーダー層上でco-cultureすると、(1)内皮細胞の増殖が抑制され、(2)内皮細胞のプロスタサイクリン産生も有意に促進された。(3)周皮細胞は過酸化脂質による内皮細胞傷害をも密度依存性に防止した。[II]逆に、(1)周皮細胞の増殖は内皮細胞のフィーダー層上で促進された。(2)この増殖促進効果はエンドセリン1で代替され抗エンドセリン1抗体で中和されたことから、内皮細胞に由来する周皮細胞増殖因子の実体はエンドセリン1であると結論された。(3)周皮細胞はエンドセリン1に高親和性のA型レセプターmRNAを発現していることも見い出された。以上本研究により、周皮細胞は内皮細胞の増殖を制御するのみならず内皮細胞の特異機能を保持し、内皮細胞障害に対しても保護的に作用しうること、また、内皮細胞はエンドセリン1の分泌を介して周皮細胞の増殖をコントロールしうることがはじめて明らかにされた。これらの知見から、内皮細胞と周皮細胞の相互作用は細小血管の恒常性維持に重要な役割をはたしており、その破綻は血管新生、血栓形成、内皮障害といった血管病変の発生や増悪につながることが推定された。[III]なお、本研究の経過中、ヒト肺動脈内皮細胞・平滑筋細胞がアルドステロン合成酵素遺伝子を、平滑筋細胞がミネラルコルチコイドレセプター遺伝子を発現しており、アルドステロン拮抗剤がアンジオテンシンIIによる平滑筋細胞の肥厚を抑制しうることが発見された。これは、血管細胞自体がステロイドの生合成系と反応系とを合わせもつことをはじめて明らかにしたものであり、局所で産生されるアルドステロンがレニン-アンジオテンシン系と共役して血管のtonus調節や高血圧症の発症に関わっている可能性を示している。[I]ヒト臍静脈内皮細胞をウシ網膜血管周皮細胞のフィーダー層上でco-cultureすると、(1)内皮細胞の増殖が抑制され、(2)内皮細胞のプロスタサイクリン産生も有意に促進された。(3)周皮細胞は過酸化脂質による内皮細胞傷害をも密度依存性に防止した。[II]逆に、(1)周皮細胞の増殖は内皮細胞のフィーダー層上で促進された。(2)この増殖促進効果はエンドセリン1で代替され抗エンドセリン1抗体で中和されたことから、内皮細胞に由来する周皮細胞増殖因子の実体はエンドセリン1であると結論された。(3)周皮細胞はエンドセリン1に高親和性のA型レセプターmRNAを発現していることも見い出された。以上本研究により、周皮細胞は内皮細胞の増殖を制御するのみならず内皮細胞の特異機能を保持し、内皮細胞障害に対しても保護的に作用しうること、また、内皮細胞はエンドセリン1の分泌を介して周皮細胞の増殖をコントロールしうることがはじめて明らかにされた。これらの知見から、内皮細胞と周皮細胞の相互作用は細小血管の恒常性維持に重要な役割をはたしており、その破綻は血管新生、血栓形成、内皮障害といった血管病変の発生や増悪につながることが推定された。[III]なお、本研究の経過中、ヒト肺動脈内皮細胞・平滑筋細胞がアルドステロン合成酵素遺伝子を、平滑筋細胞がミネラルコルチコイドレセプター遺伝子を発現しており、アルドステロン拮抗剤がアンジオテンシンIIによる平滑筋細胞の肥厚を抑制しうることが発見された。これは、血管細胞自体がステロイドの生合成系と反応系とを合わせもつことをはじめて明らかにしたものであり、局所で産生されるアルドステロンがレニン-アンジオテンシン系と共役して血管のtonus調節や高血圧症の発症に関わっている可能性を示している。
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KAKENHI-PROJECT-05256220
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1950-1960年代のソ連における国家と社会の「協働」 その理念と実態
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1950ー1960年代のソ連は治安が悪く、犯罪との闘いが重要な課題だった。このため犯罪との闘いは、国家と社会の「協働」が求められた主要な分野の一つでもあった。犯罪との闘いにおける国家と社会の「協働」の主な活動形態の一つだった人民自警団に注目して、その理念と実態を明らかにした。また、ソヴェト政権が国家と社会の「協働」を必要とした事情を描くことを目指して、1956年の第20回党大会当時のソ連の状況や人々の生活水準に関するソヴェト政権の厳しい認識を明らかにした。研究活動平成25年9月および平成26年23月に各4週間モスクワへ出張し、本研究課題全体に関する史料・資料を収集した。具体的には、ロシア連邦国立文書館においてロシア共和国最高会議幹部会フォンドの史料を集中的に読んでノートを取った一方で、ロシア国立図書館において本研究課題の関連文献に幅広く目を通し、ノートを取った。こうして収集した史料・資料を精読して当時の政策や社会状況に関する考察を進めるとともに、犯罪との闘いにおける国家と社会の「協働」の方策として重視された「社会団体による犯罪者の身柄引き受け」の理念と実態について描く論文などに取り組んだ。研究実績上記の「社会団体による犯罪者の身柄引き受け」に関する論文として「『共産主義建設期』のソ連における犯罪との闘いと身柄引き受け国家と社会の『協働』の観点から」を完成させ、『ロシア史研究』第93号(2013年11月、47ー70頁)に発表した。第20回ソ連共産党大会(1956年2月)前後のソ連の実情と政治指導部の認識を描こうとする論文に取り組んだ。年度内に完成させることはできなかったが、平成26年度には発表することができると考えている。研究活動:平成24年9月に約3週間モスクワへ出張し、本研究課題全体に関する史料・資料を収集した。具体的には、ロシア連邦国立文書館においてロシア共和国最高会議幹部会フォンドの史料を集中的に読んでノートを取った一方で、ロシア国立図書館において本研究課題の関連文献に幅広く目を通し、ノートを取った。こうして収集した史料・資料を精読して当時の政策や社会状況に関する考察を進めると同時に、今年度の研究課題として設定した、犯罪との闘いにおける国家と社会の「協働」の方策として重視された「社会による犯罪者の身柄引き受け」の理念と実態について実証的に描く論文に取り組んだ。研究実績:上記の出張の際にロシア連邦国立文書館で読んだロシア共和国最高会議幹部会フォンドの史料も活用して、「一九五〇六〇年代のソ連ある自警団員殺害犯の特赦申請をめぐる議論からみえてくるもの」(中嶋毅編『新史料で読むロシア史』山川出版社、2013年3月、242259頁)を執筆した。この論文では、「身柄引き受け」は扱わなかったものの、犯罪(者)への対処に注目して国家と社会の「協働」の実情を描くことができたと考えている。本研究課題の当初の計画では予定していなかったこの原稿の執筆にモスクワ出張前後の数か月を費やすことになったため、今年度の研究課題として設定した「社会による犯罪者の身柄引き受け」の理念と実態を実証的に描く論文については、年度内に発表することはできなかった。しかし、草稿は書き上げており、次年度前半には完成稿を仕上げて学会誌に投稿する予定である。研究活動:平成26年9月に約4週間モスクワへ出張し、本研究課題全体に関する史料を収集した。具体的には、ロシア連邦国立文書館においてロシア共和国最高会議幹部会フォンドの史料を集中的に読んでノートを取った一方で、ロシア国立図書館において本研究課題の関連文献に幅広く目を通し、ノートを取った。こうして収集した史料・資料を精読して当時の政策や社会状況に関する考察を進めると同時に、今年度の研究課題として設定した、生活水準向上のための国家と社会の「協働」の方策についての論文に取り組んだ。研究実績:上記のモスクワ出張を含め本研究課題のためにこの3年間におこなったモスクワでの史料収集で得た史料を中心的に用いて、1956年の第20回ソ連共産党大会前後の時期の政権にとっての課題とその課題への取り組みについて再検討する論文を執筆した。この大会についてはフルシチョフのいわゆる秘密報告によるスターリン批判が注目されるが、スターリン批判とスターリン主義の克服は当時政権にとってもちろん重大な政治課題だったけれども、それに劣らず国力と国民の生活水準の向上が急務であり、そのために政権は人々の幅広い協力を求めていた様子について論じた。ただし同論文を収録予定の論文集の編集作業が遅れており、まだ刊行されていない。本研究課題の申請時には、研究成果は年度ごとに設定した研究課題について個別に論文として発表することを予定していたが、本研究課題を中心的なテーマに含む著書を執筆する機会を与えられたため、その原稿の執筆に取り組んだ。ただし大きなテーマであるため執筆作業は難航し、今年度中に書き上げることはできなかった。これと並行して、ソヴェト政権が国家と社会の「協働」を実現しようとした背景を描くことを意識して、1956年の第20回ソ連共産党大会当時の政権の現状認識に注目した「ソ連共産党第二〇回党大会再考一九五六年七月一六日付中央委員会非公開書簡に注目して」(池田嘉郎・草野佳矢子編『国制史は躍動するヨーロッパとロシアの対話』刀水書房、2015年10月)も発表した。1950ー1960年代のソ連は治安が悪く、犯罪との闘いが重要な課題だった。
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KAKENHI-PROJECT-24520837
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24520837
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1950-1960年代のソ連における国家と社会の「協働」 その理念と実態
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このため犯罪との闘いは、国家と社会の「協働」が求められた主要な分野の一つでもあった。犯罪との闘いにおける国家と社会の「協働」の主な活動形態の一つだった人民自警団に注目して、その理念と実態を明らかにした。また、ソヴェト政権が国家と社会の「協働」を必要とした事情を描くことを目指して、1956年の第20回党大会当時のソ連の状況や人々の生活水準に関するソヴェト政権の厳しい認識を明らかにした。研究実績の欄に記したように、今年度は論文と著書の執筆に取り組み、論文については書き上げたものの、いずれも出版には至らなかった。この点で今年度の研究課題を達成することはできなかったと認めざるを得ない。しかし、研究がまったく進んでいないわけではない。上述のように今年度に設定した研究課題に関わる論文は執筆を終えており、今後論文集の編集作業の過程で修正を要するとしても平成27年度中には刊行されると期待している。また、本研究課題の当初の計画では予定していなかった(しかし本研究課題を中心的なテーマに含む)上記の著書についても平成27年秋の脱稿を目指すことで編集者と合意しており、難航が予想されるとはいえ早ければ平成27年度中に刊行することもできるのではないかと期待している。このため、研究進捗状況の遅れはわずかであり、平成27年度には挽回できると予想している。ソ連史基金化によって前倒しで助成金を使用することができるようになった利点を生かして、平成26年度までの3年間に可能な機会をすべて利用してモスクワでの資料調査に取り組むことができた。本年度はこうして蓄積した史料に基づいて上述の著書の執筆に取り組む予定である。本研究課題全体が同書の中心的なテーマとなっているので、同書の刊行は本研究課題の遂行そのものであり、本研究課題の最終年度である今年度中に刊行することを目指す。上記のように「社会団体による犯罪者の身柄引き受け」に関する論文として「『共産主義建設期』のソ連における犯罪との闘いと身柄引き受け」を完成させ、『ロシア史研究』第93号に発表することができたが、これは本来平成24年度中に完成させることを目指していた論文であり、平成25年度の研究実績は不十分と言わざるを得ず、達成度の区分としては「やや遅れている」と厳しく評価すべきであると考えている。ただ、その主な理由は、平成25年度が、研究分担者を務めていた基盤研究(B)「近現代ロシアにおける公衆/公論概念の系譜と市民の「主体性(agency)」」の最終年度に当たったため、アメリカ合衆国で活動し世界的に注目されているロシア人研究者を招いたカンファレンスで報告したり、この研究課題の論文を執筆したりすることに多くの時間と労力を割いたことである。本研究課題の研究計画にも記した通り、上記基盤研究(B)での研究成果もまた本研究課題の考察に大いに役立つものであって、平成26年度以降は遅れを挽回することができると確信している。上記のように、今年度の研究課題として設定した「社会による犯罪者の身柄引き受け」の理念と実態を実証的に描く論文を年度内に発表することができなかった以上、この点では今年度の研究課題を達成することはできなかったと認めざるを得ない。しかし、研究がまったく進んでいないわけではもちろんなく、本研究課題の当初の計画では予定していなかった上記の論考
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KAKENHI-PROJECT-24520837
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感覚経験がげっ歯類視覚誘導性の恐怖反応に与える影響の神経基盤
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本研究は、「感覚経験に応じた神経回路の変化が行動出力に及ぼす影響を解明する」ことを目的とする。そのため、視覚刺激に対する恐怖反応と、その出力元である大脳皮質ー上丘パルブアルブミン(PV)陽性グルタミン酸作動性ニューロン(以下PVニューロン)をモデル系に、(1)感覚経験の外乱による神経回路の退縮、および(2)Spatial light modulator (SLM)光刺激による人為的神経回路強化が恐怖反応パターンにおよぼす影響を解析する。本研究は、「感覚経験に応じた神経回路の変化が行動出力に及ぼす影響を解明する」ことを目的とする。そのため、視覚刺激に対する恐怖反応と、その出力元である大脳皮質ー上丘パルブアルブミン(PV)陽性グルタミン酸作動性ニューロン(以下PVニューロン)をモデル系に、(1)感覚経験の外乱による神経回路の退縮、および(2)Spatial light modulator (SLM)光刺激による人為的神経回路強化が恐怖反応パターンにおよぼす影響を解析する。
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KAKENHI-PROJECT-19K07293
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魚種による塩分耐性(狭塩性と広塩性)の違いは何に起因するのか
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生物が生存するために体内の環境を一定の範囲内に保つことは必須である。これまでに広塩性淡水魚で詳しい浸透圧調節機構が調べられているが、狭塩性淡水魚では未だ不明な点が多い。そこで狭塩性淡水魚のモデルとしてキンギョを用い、その浸透圧調節機構について調べた。まず、脱イオン水、淡水、様々な希釈海水にキンギョを淡水から直接移行して3日後の生存率を調べるとともに、生残個体の体液浸透圧を測定した。その結果、脱イオン水から35%希釈海水付近までが生存できる塩分濃度の範囲であった。また淡水から徐々に環境浸透圧を高めた場合でも45%希釈海水付近が限界であった。このことからキンギョには50%希釈海水以上の高浸透圧環境に適応できないことが示された。体液浸透圧は、いずれの環境水中でも環境水浸透圧よりも高かったが、環境水が高張になるほど体液と環境水との浸透圧差は縮まった。このことはキンギョの塩類細胞は外界の塩分濃度が高まってもイオンの排出を行えないことを示唆している。次に、脱イオン水、淡水、30%希釈海水で飼育したキンギョの鰓を蛍光免疫染色および走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。蛍光免疫染色によると、塩類細胞の密度は30%希釈海水で他の群に比べ低かった。これは、塩類細胞の密度を低くすることで、イオン取込を抑制するためと考えられる。一方、淡水群と脱イオン水群間では塩類細胞の密度に大きな違いは見られなかった。また、SEMによる観察から、細胞が外界に接する頂端膜の面積は、脱イオン水で特に大きかった。これは、環境水と接する部分を広くすることでイオン取込み効率を上げているものと考えられる。以上の結果より、キンギョはイオン排出型塩類細胞を欠くため高浸透圧環境には適応できず、淡水に特化した浸透圧調節機構を有すると考えられる。しかし、塩類細胞の密度と個々の細胞のイオン取込み強度を変えることで、ある程度の塩分濃度までは対応できることが示された。コイ科魚類に代表される淡水魚は、海水環境に適応することができない。また、サケ科類やウナギなどの回遊性魚類は、その生活史の中で海と川を往来し、広範囲の塩分環境に適応するメカニズムを備えている。このような塩分耐性の許容範囲に応じて魚は狭塩性と広塩性に大別されるが、両者の区別は必ずしも明確ではなく、その中間的な性質を示す魚類も多い。本研究では、「魚種による塩分耐性の違いが何に起因するのか」という根元的な命題に取り組んた。ウナギは広塩性の体表的な魚として浸透圧調節に関する研究が盛んに行われているが、ウナギの仔魚レプトケファルスの浸透圧に関してはあまり知られてない。そこで、まずレプトの浸透圧調節の検討を行った。レプトの場合、採血が困難で普通の方法では浸透圧を測れない。そこで、まずレプトの浸透圧測定方法を確立した。腸液が入らないように腸の部分を避けて体の一部をパラフィルムに乗せ、ろ紙に体液をしみこませて浸透圧を測定した。その結果、レプトの浸透圧は約440mOsm/kg、天然しらすは約407mOsm/kgの値を示した。レプトの体液浸透圧は成魚の海水ウナギ(324mOsm/kg)より高い値を示したが、レプトも浸透圧を調節し生理的な範囲内に維持することが確認された。また、Na^+,K^+-ATPaseのイオン輸送タンパク質に特異的な抗体を用いた免疫組織化学的手法により、塩類細胞の局在を調べた。その結果、レプトの体表には多数の塩類細胞が存在することが明らかになった。レプトで鰐は未発達だが、体表の塩類細胞からイオン排出することで、レプトは浸透圧を調節すると考えられる。さらに、海産魚は海水を飲んで脱水される水を補うことからレプトの水飲みを検討した。蛍光マーカーでラベルしたデキストランを溶かした海水にレプトを入れた。6時間後に共焦点レーザースキャン顕微鏡づで腸を観察した結果、腸で蛍光が観察され、直腸では濃縮された強い蛍光が見られた。レプトの腸は消化・吸収ばかりでなく、浸透圧調節器官として水を直腸から吸収することが明らかになった。生物が生存するために体内の環境を一定の範囲内に保つことは必須である。これまでに広塩性淡水魚で詳しい浸透圧調節機構が調べられているが、狭塩性淡水魚では未だ不明な点が多い。そこで狭塩性淡水魚のモデルとしてキンギョを用い、その浸透圧調節機構について調べた。まず、脱イオン水、淡水、様々な希釈海水にキンギョを淡水から直接移行して3日後の生存率を調べるとともに、生残個体の体液浸透圧を測定した。その結果、脱イオン水から35%希釈海水付近までが生存できる塩分濃度の範囲であった。また淡水から徐々に環境浸透圧を高めた場合でも45%希釈海水付近が限界であった。このことからキンギョには50%希釈海水以上の高浸透圧環境に適応できないことが示された。体液浸透圧は、いずれの環境水中でも環境水浸透圧よりも高かったが、環境水が高張になるほど体液と環境水との浸透圧差は縮まった。このことはキンギョの塩類細胞は外界の塩分濃度が高まってもイオンの排出を行えないことを示唆している。
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KAKENHI-PROJECT-06F06213
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06F06213
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魚種による塩分耐性(狭塩性と広塩性)の違いは何に起因するのか
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次に、脱イオン水、淡水、30%希釈海水で飼育したキンギョの鰓を蛍光免疫染色および走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。蛍光免疫染色によると、塩類細胞の密度は30%希釈海水で他の群に比べ低かった。これは、塩類細胞の密度を低くすることで、イオン取込を抑制するためと考えられる。一方、淡水群と脱イオン水群間では塩類細胞の密度に大きな違いは見られなかった。また、SEMによる観察から、細胞が外界に接する頂端膜の面積は、脱イオン水で特に大きかった。これは、環境水と接する部分を広くすることでイオン取込み効率を上げているものと考えられる。以上の結果より、キンギョはイオン排出型塩類細胞を欠くため高浸透圧環境には適応できず、淡水に特化した浸透圧調節機構を有すると考えられる。しかし、塩類細胞の密度と個々の細胞のイオン取込み強度を変えることで、ある程度の塩分濃度までは対応できることが示された。
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KAKENHI-PROJECT-06F06213
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3次元モデルの形状を対象とする類似検索と電子透かしの技術
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3次元モデルの形状類似検索および3次元モデルの電子透かしについて,以下のような研究成果があった。形状類似検索:●形状比較手法(複数)(1)向き合わせ後のモデルの回転モーメント等の包絡線を比較する手法.(査読つき国際学会PG2003で発表.),(2)距離と角度の2次元ヒストグラムによる形状類似比較手法.(査読つき国際学会TPCG2003で発表,および映像情報メディア学会誌論文.),(3)多視点からの見かけに基づく3次元形状類似比較手法.(査読つき国際学会ACM MIR2003で発表.)●3次元形状モデルの多重解像度表現を生成し,これに上記のような形状比較手法を適用することで形状比較性能を向上させる手法.(査読つき国際学会PG2003で発表.)●有意度フィードバックにより検索者の意図を取り入れる3次元形状類似検索インタフェース.(査読つき国内学会VCシンポジウム2002,および映像情報メディア学会誌論文.)●3次元モデルを形状特徴に基づいて自動分類する検索インタフェース(口頭発表,査読つき国内学会投稿中.)●多重解像度特徴,異種特徴から得た相違度を組み合わせることにより検索性能を向上させる手法.(査読つき国内学会投稿中.)●3次元形状特徴量の次元をKernel PCAなどで圧縮して検索処理を効率化する手法.(口頭発表)電子透かし:●3次元メッシュで定義された3次元形状モデルに対し,形状の周波数領域で付加する電子透かし手法(査読つき国内学会VCシンポジウムを2件,査読つき国際学会EG2002を1件,画像電子学会論文誌を1件,英文論文誌Computer Graphics Forumを1件.)●ベクトル型電子地図に対し,その形状の周波数領域で透かしを埋め込む手法(情報処理学会論文誌1件)●点群で定義された3次元形状モデルに対する電子透かし手法.(査読つき国際学会CW2004で発表.)3次元モデルの形状類似検索および3次元モデルの電子透かしについて,以下のような研究成果があった。形状類似検索:●形状比較手法(複数)(1)向き合わせ後のモデルの回転モーメント等の包絡線を比較する手法.(査読つき国際学会PG2003で発表.),(2)距離と角度の2次元ヒストグラムによる形状類似比較手法.(査読つき国際学会TPCG2003で発表,および映像情報メディア学会誌論文.),(3)多視点からの見かけに基づく3次元形状類似比較手法.(査読つき国際学会ACM MIR2003で発表.)●3次元形状モデルの多重解像度表現を生成し,これに上記のような形状比較手法を適用することで形状比較性能を向上させる手法.(査読つき国際学会PG2003で発表.)●有意度フィードバックにより検索者の意図を取り入れる3次元形状類似検索インタフェース.(査読つき国内学会VCシンポジウム2002,および映像情報メディア学会誌論文.)●3次元モデルを形状特徴に基づいて自動分類する検索インタフェース(口頭発表,査読つき国内学会投稿中.)●多重解像度特徴,異種特徴から得た相違度を組み合わせることにより検索性能を向上させる手法.(査読つき国内学会投稿中.)●3次元形状特徴量の次元をKernel PCAなどで圧縮して検索処理を効率化する手法.(口頭発表)電子透かし:●3次元メッシュで定義された3次元形状モデルに対し,形状の周波数領域で付加する電子透かし手法(査読つき国内学会VCシンポジウムを2件,査読つき国際学会EG2002を1件,画像電子学会論文誌を1件,英文論文誌Computer Graphics Forumを1件.)●ベクトル型電子地図に対し,その形状の周波数領域で透かしを埋め込む手法(情報処理学会論文誌1件)●点群で定義された3次元形状モデルに対する電子透かし手法.(査読つき国際学会CW2004で発表.)本年度は3次元モデルの形状類似検索と,2次元ベクトル型電子地図に対する透かし,および3次元メッシュモデルおよび点群モデルに対する透かし,について以下の成果が得られた.1.3次元モデルの電子透かし:3次元ポリゴンメッシュの形状をスペクトル分解した領域で透かしを埋め込む電子透かし手法を改良し,(1)相似変換,メッシュ簡単化などを組み合わせた攻撃に耐え,また,(2)数万頂点を越える大きなメッシュにも埋め込めるようになった.(2002年9月に査読付き国際学会EUROGRAPHICS 2002で発表.同時に論文誌Computer Graphics Forumに掲載.)2.ベクトル型2次元電子地図の電子透かし:ベクトル型2次元電子地図の周波数領域における表現を変更してすかしを埋め込む電子透かし手法を開発した.評価実験の結果,我々が2001年度に開発した手法(2002年8月に査読付き国際会議IEEEICME 2002で発表)に比べ,より攻撃に対する耐性が高いことがわかった.本手法は,3次元メッシュを対象として我々が開発してきた手法を,カーナビなどで普及しているベクトル型2次元電子地図の透かしに応用したものである.(2003年5月に開かれる査読付き国際会議Shape Modeling International 2003に採録.)3.3次元形状の形状特徴ベクトル:3次元形状をコンパクトに表現する形状特徴ベクトルを複数提案し,評価した.我々が目指すのは,いずれも,ポリゴンスープを含め広い範囲のモデルが扱え,幾何的縮退などの影響を受けにくい,ロバスト性の高い手法である.(1)慣性主軸周りの包絡線による特徴ベクトル(2002年10月に行われた査読付き国際会議Pacific Graphic 2003で発表.映像情報メディア学会誌2002年10月号に掲載)
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KAKENHI-PROJECT-14580369
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14580369
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3次元モデルの形状を対象とする類似検索と電子透かしの技術
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(2)面上の点対の法線の成す角と点間の距離の2次元ヒストグラムによる特徴ベクトル(2003年6月に開かれる査読付き国際会議TPCG 2003に採録.)(3)多方向からのZ値画像の見かけに基づく特徴ベクトル(国際会議に投稿中.)4.3次元形状データベースの作成:Internet上に存在する著作権フリーな(主にVRML形式)3次元形状モデルを1000個以上集め,形状特徴ベクトルの性能評価用のデータベースを作成し,形状特徴ベクトルの評価に用いた.(米国Princeton大学のFunkhouser教授らのグループの協力を得た.)本年度は,3次元形状モデルをその形状の類似性に基づいて検索する手法についての研究を集中的に行った.本年度の研究成果は,以下の2つにまとめることができる.1)多視点からの見かけに基づく3次元形状類似比較:3次元形状は相似変換を加えても元の形状と「おなじ」とみなされることが多い.この不変性を実現するため,本手法では,立体角をほぼ等分する位置におかれた多数のカメラで生成した2次元画像群を比較して3次元形状の類似比較を行う.本手法の特徴は,視点から見た深さ値(z値)画像を生成可能であれば,どのような3次元形状モデルでも比較が可能なことで,3次元ポリゴンスープモデルのほか,向きを持つ点群モデルや幾何イメージなどの形状表現で定義された3次元モデルの比較も可能である.本研究は,査読つき国内学会や査読つき国際学会[Ohbuchi03c]で発表された.2)3次元多重解像度表現を用いた3次元形状類似比較:形の類似性は,大局的な概形に基づく場合もあるが,反面,細かい形状の特徴に注目して決まる場合もある.これら2つの特徴をポリゴンスープから取り出す手法として,我々は,Edelsbrunnerらのαシェイプを用いた3次元多重解像度表現を用いた多重解像度形状類似比較手法を提案した.本手法の特徴は,3次元ポリゴンスーブモデルを多重解像度表現に変換し,そのそれぞれの解像度レペルで既存の手法(例えば[Ohbuchi03a])を使って特徴量を計算する.実験的評価の結果,単一解像度の特徴量と多重解像度特徴量を形状類似検索で比較すると,後者の方が性能が高いことが示された.本研究は査読つき国際会議[Ohbuchi03b]や査読つき国内学会などで発表された.類似検索:本年度の研究内容は以下の3つにまとめることができる.1)特徴量の組み合わせによる検索性能の向上:現在の3次元形状特徴量はいずれも,その単体での検索性能が十分でない.そこで,複数の形状比較手法で得られた相違度(距離)を組み合わせることにより検索性能を向上させる手法を提案し,その実験的評価を行った.1つの3次元モデルから複数の相違度を得る方法としては,(1)昨年度に我々提案した多重解像度表現を用いて複数の形状相違度を得る手法,および,(2)異種の複数の特徴量と用いて複数の形状相違度を得る手法,の2種類を用いた.2)
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KAKENHI-PROJECT-14580369
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14580369
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1次元量子スピン系における量子基底及び励起状態の理論的研究
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本科学研究費の補助のもとで,我々は1次元量子スピン系における新しい量子基底及び低エネルギー励起状態を,主として次の2つの場合について,数値的方法を用いて調べた。1.最近接相互作用と第2近接相互作用とが競合するS=1/2反強磁性系の場合。2.ボンド交代のある最近接相互作用と1イオン型異方性エネルギーをもつS=1反強磁性系の場合。1.の場合については,最近接相互作用定数J_1と第2近接相互作用定数J_2との比j≡J_2/J_1が1より大きい場合の基底状態を,密度行列くりこみ群法を用いて研究した。現在のところ,スピン数が80100個迄の有限系に対するエネルギーギャップの計算結果から,j=1の時の基底状態であるダイマー状態が,j→∞の極限まで生き残るというtentativeな結論を得ている。今後,更に大きな系を取り扱うことを目指して密度行列くりこみ群法のプログラムの改良を行い,また,ダイマー相関関数の計算も行って,この問題に対する明確な結論を得る計画である。2.の場合については,先ず,α対D(αはボンド交代パラメータ,Dは1イオン型異方性エネルギー定数)平面上での基底状態相図を研究した。スピン数が16個迄の有限系におけるNeel order及びstring orderに関するビンダーパラメータを,我々が開発した汎用プログラムパッケージKOBEPACK/Sを用いて計算し,その結果を解析することにより,基底状態として出現する4つの相,即ち,Neel相,Haldane相,Large-D相,Dimer相,の間の相境界線を決定した。更に,坂井・高橋によって提案された方法を用いて,種々のα,Dの値に対して,基底状態磁化曲線を求めた。その結果,α,Dがある条件(D=0,α>0の領域を含む)を満たすとき,磁化曲線にいわゆる1/2-plateauが出現することが明かになった。なお,この研究でも,KOBEPACK/Sを用いた。本科学研究費の補助のもとで,我々は1次元量子スピン系における新しい量子基底及び低エネルギー励起状態を,主として次の2つの場合について,数値的方法を用いて調べた。1.最近接相互作用と第2近接相互作用とが競合するS=1/2反強磁性系の場合。2.ボンド交代のある最近接相互作用と1イオン型異方性エネルギーをもつS=1反強磁性系の場合。1.の場合については,最近接相互作用定数J_1と第2近接相互作用定数J_2との比j≡J_2/J_1が1より大きい場合の基底状態を,密度行列くりこみ群法を用いて研究した。現在のところ,スピン数が80100個迄の有限系に対するエネルギーギャップの計算結果から,j=1の時の基底状態であるダイマー状態が,j→∞の極限まで生き残るというtentativeな結論を得ている。今後,更に大きな系を取り扱うことを目指して密度行列くりこみ群法のプログラムの改良を行い,また,ダイマー相関関数の計算も行って,この問題に対する明確な結論を得る計画である。2.の場合については,先ず,α対D(αはボンド交代パラメータ,Dは1イオン型異方性エネルギー定数)平面上での基底状態相図を研究した。スピン数が16個迄の有限系におけるNeel order及びstring orderに関するビンダーパラメータを,我々が開発した汎用プログラムパッケージKOBEPACK/Sを用いて計算し,その結果を解析することにより,基底状態として出現する4つの相,即ち,Neel相,Haldane相,Large-D相,Dimer相,の間の相境界線を決定した。更に,坂井・高橋によって提案された方法を用いて,種々のα,Dの値に対して,基底状態磁化曲線を求めた。その結果,α,Dがある条件(D=0,α>0の領域を含む)を満たすとき,磁化曲線にいわゆる1/2-plateauが出現することが明かになった。なお,この研究でも,KOBEPACK/Sを用いた。
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KAKENHI-PROJECT-07640515
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07640515
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非営利組織(NPO)化による創業・第二創業支援に関する研究
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本研究の研究方法は、主として、アンケート調査・ヒアリング調査・文献研究を中心に行っており、関西地域を拠点として研究を進めてきた。しかし、日本における非営利組織(NPO)先進地域である関東地域や、それに加えて海外における非営利組織(NPO)先進地域である欧州についてもできうるかぎり調査対象として包含し、可能な限り調査を実施してきた。たとえば、アメリカが合衆国における非営利組織(NPO)の実態調査はその例にあたる。調査の内容は、企業システムとの関係のなかでも、特に中小企業の創業・既存中小企業の経営革新行動たる第二創業の観点から、中小企業の存立維持戦略と非営利組織(NPO)との関連で実施してきた。兵庫県経済に関する分析では兵庫県が阪神淡路大震災から10年を経た今日においても震災の影響が色濃く残り、中小企業・ベンチャーの存立に悪影響を及ぼしており、その存立維持に向けた戦略においては非営利組織(NPO)が大きな役割を果たしていることを分析検討しており、さらにその動向を日本の他地域の事例及びアメリカ合衆国の事例と比較検討している。また、非営利組織(NPO)と産業集積・産業クラスターとの関係分析、産業集積形成における産業政策の役割、産業集積形成による地域経済活性化に関する分析を理論的・実証的・政策的な各側面から行い、現在整理・検討し、次年度の研究につなげることを考えている。次年度はコミュニティ・ビジネスが注目され、非営利組織(NPO)が多くの地域で設立されていく中で地域経済活性化の柱ともなる産業クラスターとの関係についてより詳細に検討していく予定である詳細は、ミネルヴァ書房刊『地域中小企業の経営革新』で発表する予定である。本研究の研究方法は、主として、アンケート調査・ヒアリング調査・文献研究を中心に行っており、関西地域を拠点として研究を進めてきた。しかし、日本における非営利組織(NPO)先進地域である関東地域や、それに加えて海外における非営利組織(NPO)先進地域である欧州についてもできうるかぎり調査対象として包含し、可能な限り調査を実施してきた。たとえば、アメリカが合衆国における非営利組織(NPO)の実態調査はその例にあたる。調査の内容は、企業システムとの関係のなかでも、特に中小企業の創業・既存中小企業の経営革新行動たる第二創業の観点から、中小企業の存立維持戦略と非営利組織(NPO)との関連で実施してきた。兵庫県経済に関する分析では兵庫県が阪神淡路大震災から10年を経た今日においても震災の影響が色濃く残り、中小企業・ベンチャーの存立に悪影響を及ぼしており、その存立維持に向けた戦略においては非営利組織(NPO)が大きな役割を果たしていることを分析検討しており、さらにその動向を日本の他地域の事例及びアメリカ合衆国の事例と比較検討している。また、非営利組織(NPO)と産業集積・産業クラスターとの関係分析、産業集積形成における産業政策の役割、産業集積形成による地域経済活性化に関する分析を理論的・実証的・政策的な各側面から行い、現在整理・検討し、次年度の研究につなげることを考えている。次年度はコミュニティ・ビジネスが注目され、非営利組織(NPO)が多くの地域で設立されていく中で地域経済活性化の柱ともなる産業クラスターとの関係についてより詳細に検討していく予定である詳細は、ミネルヴァ書房刊『地域中小企業の経営革新』で発表する予定である。本研究の研究方法は、主として、アンケート調査・ヒアリング調査・文献研究を中心に行っており、関西地域を拠点として研究を進めてきた。しかし、日本における非営利組織(NPO)先進地域である関東地域や、それに加えて海外における非営利組織(NPO)先進地域である欧州についてもできうるかぎり調査対象として包含し、可能な限り調査を実施してきた。たとえば、アメリカが合衆国における非営利組織(NPO)の実態調査はその例にあたる。調査の内容は、企業システムとの関係のなかでも、特に中小企業の創業・既存中小企業の経営革新行動たる第二創業の観点から、中小企業の存立維持戦略と非営利組織(NPO)との関連で実施してきた。兵庫県経済に関する分析では兵庫県が阪神淡路大震災から10年を経た今日においても震災の影響が色濃く残り、中小企業・ベンチャーの存立に悪影響を及ぼしており、その存立維持に向けた戦略においては非営利組織(NPO)が大きな役割を果たしていることを分析検討しており、さらにその動向を日本の他地域の事例及びアメリカ合衆国の事例と比較検討している。また、非営利組織(NPO)と産業集積・産業クラスターとの関係分析、産業集積形成における産業政策の役割、産業集積形成による地域経済活性化に関する分析を理論的・実証的・政策的な各側面から行い、現在整理・検討し、次年度の研究につなげることを考えている。次年度はコミュニティ・ビジネスが注目され、非営利組織(NPO)が多くの地域で設立されていく中で地域経済活性化の柱ともなる産業クラスターとの関係についてより詳細に検討していく予定である詳細は、ミネルヴァ書房刊『地域中小企業の経営革新』で発表する予定である。本研究の研究方法は、主として、アンケート調査・ヒアリング調査・文献研究を中心に行い、関西地域を拠点として研究を進めた。しかし、日本における非営利組織(NPO)先進地域である関東地域や、それに加えて海外における非営利組織(NPO)先進地域である欧州についてもできうるかぎり調査対象として包含し、可能な限り調査を実施してきた。たとえば、アメリカが合衆国における非営利組織(NPO)の実態調査はその例にあたる。調査の内容は、企業システムとの関係のなかでも、特に中小企業の創業・既存中小企業の経営革新行動たる第二創業の観点から、中小企業の存立維持戦略と非営利組織(NPO)との関連で実施してきた。
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KAKENHI-PROJECT-16600004
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16600004
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非営利組織(NPO)化による創業・第二創業支援に関する研究
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兵庫県経済に関する分析では兵庫県が阪神淡路大震災から10年を経た今日においても震災の影響が色濃く残り、中小企業・ベンチャーの存立に悪影響を及ぼしており、その存立維持に向けた戦略においては非営利組織(NPO)が大きな役割を果たしていることを分析検討し、さらにその動向を日本の他地域の事例及びアメリカ合衆国の事例と比較検討してきた。また、非営利組織(NPO)と産業集積・産業クラスターとの関係分析、産業集積形成における産業政策の役割、産業集積形成による地域経済活性化に関する分析を行い、整理・検討してきた。本研究において、中小企業存立の視点、すなわち中小企業問題、適正規模、寡占体制、企業間関係、地域振興、日本的経営の各視点からの理論的・実証的・政策的な分析を行い、一定の結論を得、新たな論点を示唆できたものと考えている。今後の課題としてはコミュニティ・ビジネスが注目され、非営利組織(NPO)が多くの地域で設立されていく中で地域経済活性化の柱ともなる産業クラスターとの関係についてより詳細に検討していく予定である。詳細は、ミネルヴァ書房刊『地域中小企業の経営革新』で発表する予定である。
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KAKENHI-PROJECT-16600004
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消化器疾患におけるPPARγの機能解明
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大腸に多量に存在するPPARγ(Peroxisome proliferator activator gamma)はその生理的役割は依然不明である。また、多くのがん細胞にも多量に発現しておりその機能解明は重要であると考えられる。今回の研究では大腸上皮における細胞増殖と形態形成に焦点を当てて大腸上皮・大腸癌におけるPPARγの役割解明を目指した。PPARγのノックアウトマウス(PPARγ^<+/->)を用いてノックアウトで大腸前癌病変であるACF(aberrant crypt foci)の形成が多く、かつ大腸上皮のβ-cateninが減少していることを見出した。β-cateninは大腸癌においては重要な役割を果たしていることがこれまで知られており、特に細胞内で核へ移行して転写因子として働くことが知られている。今回の我々の結果ではPPARγの活性化は大腸上皮のβ-cateninの蛋白量を増加せしめるが、核内への移行はしないようである。以上の結果から我々はPPARγは大腸上皮細胞内でβ-cateninと会合してβ-cateninのリザーバーとしての役割を果たしていると考えられた。一方、大腸癌細胞HT-29において、PPARγの活性化と阻害はいずれもMTTアッセイで細胞増殖を抑制することを見出した(釣鐘型増殖曲線)。この結果は癌細胞はPPARγ活性に関しては最も細胞増殖能が高いように調節されている可能性を示唆するものである。また、siRNAによるPPARγのサイレンシングは細胞の接着阻害を起こし、細胞が剥離・浮遊し、最後はアポトーシスにいたることを見出した(アノイキス現象)。
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KAKENHI-PROJECT-15590669
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15590669
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世代間交流による協働学習に関する研究-学生・児童・親世代をつなぐ学習デザイン-
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本研究は、同質性の高い学習者間では得られにくいメタ学習の誘発を目指し、「異なる世代間の協働学習」に着目し、その学習効果を検証し学習デザイン上の要諦と今後の可能性を示すことを目的として実施した。(1)「大学生×児童×働く親」の協働学習プログラム(2016年度2017年度)ICTを活用した「大学生×児童×働く親」の三者間での協働学習プログラム(児童が大学生のサポートを得ながらタブレット端末を用いて、親や大学を取材し、記事づくりやプレゼンテーションを行う)を協力企業と企画・実施した。このプログラムには、キャリア教育、表現教育、ICT活用の側面があり、本取り組みの中では、異年齢間での協働学習における大型タブレット端末の有効性が確認できたとともに、多重知能理論(Multiple Intelligence:MI)にもとづく「MIテスト」の結果からワークショップ前後での学生の「言語的知能(linguistic)」の上昇傾向等が確認できた。(1)の取り組みについては、最終年度(2018年度)に、ICT活用の観点、学生側の学習効果の観点で再整理し、学会・研究会で発表した。(2)越境型の協働学習に関する研究(2016年度2018年度)初等教育、中等教育、国際交流、異業種交流等での協働学習の取り組み事例を取材し、大学での教育実践と(1)の内容を含めて、、単著『多文化共生社会における協働学習』(学文社、2018)にまとめた。また、最終年度(2018年度)では、越境型の協働学習の対象を広げ、所属先の異なる教員間の協働学習、児童出版界が国際間で行っている協働学習について取材を進めた。引き続き、メタ学習を誘発する越境型の協働学習について研究を継続し、大学教育や社会人教育につなげていくことを構想している。本研究は、異なる世代が交流して行われる協働学習に着目し、その学習効果を検証して学習デザイン上の要諦と今後の可能性を示すことを目的とする。具体的には、「大学生×児童×働く親」の世代間交流とICT活用を取り入れた学習プログラムとして企画・実施し、3カ年で汎用化を目指す。なお、この学習プログラムにはキャリア教育と表現教育の側面があり、後者には表現学科の有する専門性を活かせることから、学生の学修とも連携させていく。平成28年度は、当初の計画通り、以下の(1)(2)を進め、ICT活用の知見およびMIテスト結果からの仮説が得られた。(1)初年度の協働学習プログラムの企画・実施→児童1名ずつにタブレット端末を配布し、取材および新聞制作の工程に活用したところ、児童(5歳児小6)の参加意欲向上、大学生と児童間の発話促進、成果物の完成度の高さなどが顕著だった。(2)学習効果の測定・評価→参加大学生のワークショップ前後での意識変化を確認する目的で、ハーワード・ガードナーの多重知能理論(Multiple Intelligence:MI )にもとづく多重知能分析を試みた。参加した大学生のワークショップ前後でのMIテストの結果から、わずかながら「言語的知能(linguistic)」の向上傾向が見られた。世代の異なる児童と密なコミュニケーションをはかることや、新聞制作の過程で言葉を見つけていく作業などが影響している可能性も考えられる。平成28年度は、当初の計画通り、初年度の学習プログラムの実施と学習効果の測定を行い、ICT活用の知見およびMIテスト結果からの仮説が得られた。本研究は、異なる世代が交流して行われる協働学習に着目し、その学習効果を検証して学習デザイン上の要諦と今後の可能性を示すことを目的とする。具体的には、「大学生×児童×働く親」の世代間交流とICT活用を取り入れた学習プログラムとして企画・実施した。児童にはタブレット端末を配布し、親へ仕事についての取材とその内容をもとにしたプレゼンテーション資料制作を行う。学生はこの児童の活動を支援し、協働的に関わる。この学習プログラムには、キャリア教育と表現教育の側面があり、後者には表現学科の有する専門性を活かせることから、学生の学修とも連携させていくことを目指した。平成29年度は、当初の計画通り(1)を夏休み期間中に実施し、この実施内容も総括しながら年度内に(2)を進めることができた。(1)「大学生×児童×働く親」の協働学習プログラムの企画・実施→平成28年度の実施内容をもとに改編して実施した。参加学生を所属大学の学生に限定し、学生にはプロジェクトとして準備段階から関わるプログラムに変更したところ、参加学生へのアンケートからは意識変容(コミュニケーション、チームワーク、キャリア等)を確認することができた。(2)協働学習に関する研究のまとめ→(1)での取り組みのほか、これまでに取材してきた初等教育、中等教育、国際交流などでの事例をまじえて、単著『多文化共生社会における協働学習』学文社:2018年2月発行)にまとめた。平成29年度は、当初の計画通り「大学生×児童×働く親」の学習プログラム(「働く」の教室)を夏休みに実施した。初年度(平成28年度)とは以下の点を変更し、所属大学の学生の多面的な気づきを誘発し、キャリア教育、表現教育としての拡充を目指した。・実施場所(IT企業→民間学童保育所)・学生の関わり方(当日が中心→前後の工程を重視し、Web会議システムzoomも使用)・学生の役割(児童1名への担当制→複数の役割をローテーション、動画制作も実施)
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KAKENHI-PROJECT-16K00719
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K00719
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世代間交流による協働学習に関する研究-学生・児童・親世代をつなぐ学習デザイン-
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また、平成2829年度で実施した上記の学習デザインの詳細と、協働学習の事例として民間学童保育(キンダリーインターナショナル)、東京インターナショナルスクール(国際バカロレアPYP)、中学校での哲学対話の授業、NPO法人パンゲア、サイボウズのチームワーク総研などの取材内容、および大学の授業での協働学習の実践等を単著『多文化共生社会における協働学習』(学文社:2018年2月発行)にまとめた。この本の前半では、協働学習の時代的背景(21世紀型教育、教育のICT化等)や有効性について触れ、今後、教育機関や社会での実践例の広がりが期待される協働学習についての入門的な解説を含めた。本研究は、同質性の高い学習者間では得られにくいメタ学習の誘発を目指し、「異なる世代間の協働学習」に着目し、その学習効果を検証し学習デザイン上の要諦と今後の可能性を示すことを目的として実施した。(1)「大学生×児童×働く親」の協働学習プログラム(2016年度2017年度)ICTを活用した「大学生×児童×働く親」の三者間での協働学習プログラム(児童が大学生のサポートを得ながらタブレット端末を用いて、親や大学を取材し、記事づくりやプレゼンテーションを行う)を協力企業と企画・実施した。このプログラムには、キャリア教育、表現教育、ICT活用の側面があり、本取り組みの中では、異年齢間での協働学習における大型タブレット端末の有効性が確認できたとともに、多重知能理論(Multiple Intelligence:MI)にもとづく「MIテスト」の結果からワークショップ前後での学生の「言語的知能(linguistic)」の上昇傾向等が確認できた。(1)の取り組みについては、最終年度(2018年度)に、ICT活用の観点、学生側の学習効果の観点で再整理し、学会・研究会で発表した。(2)越境型の協働学習に関する研究(2016年度2018年度)初等教育、中等教育、国際交流、異業種交流等での協働学習の取り組み事例を取材し、大学での教育実践と(1)の内容を含めて、、単著『多文化共生社会における協働学習』(学文社、2018)にまとめた。また、最終年度(2018年度)では、越境型の協働学習の対象を広げ、所属先の異なる教員間の協働学習、児童出版界が国際間で行っている協働学習について取材を進めた。引き続き、メタ学習を誘発する越境型の協働学習について研究を継続し、大学教育や社会人教育につなげていくことを構想している。基本的に申請段階の計画に沿って研究を進めるが、平成28年度の取組でICT活用の有効性と方向性が見えてきたため、平成29年度の計画に入れていたアプリケーションの開発は取り止め、キャリア教育、表現教育としてのプログラム拡充を進めるための汎用ツールの開発とファシリテーションの知見整理に力点を置く。また、ワークショップの実施対象を民間学童に広げるなどして、実施拠点からの意見収集とデータ収集を進め、「主体的・対話的で深い学び」を生む学習プログラムとして教育機関で実践的に活用できるプログラムの開発を目指す。本研究が目指した「大学生×児童×働く親」の学習プログラムは、平成28年度、平成29年度の2年間で一定の形を示すことができたため、これらをICTの観点、学生側の学習観点で整理したうえで、引き続き学会や研究会で発表を行う。そして、世代間・職種間・地域間などの交流によって深まる協働学習の内外の事例を引き続き取材しながら研究を進める。
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KAKENHI-PROJECT-16K00719
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K00719
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神経因性疼痛モデルにおける感覚神経膜電位変化とそれに及ぼすリドカインの影響
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難治性として知られる神経因性痺痛の発症メカニズムは不明であるが、我々は、ラットの神経因性痺痛モデルと健康ラットの膜電位の間にいくつかの相違点を見つけた。その中で、神経因性疼痛モデルの神経細胞内カルシウムは低下していることが分かった。神経因性痙痛に対して鎮痛効果の高いリドカインの作用機序は神経細胞内へカルシウムを流入させることで達成される可能性が高いことを培養細胞の軸索輸送を介して解明した。リドカインの鎮痛作用機序を、より生理的かつ具体的である神経因性痺痛モデルの感覚神経膜電位を介して、詳細に分析しようと試みたが、神経因性痺痛の発症メカニズムは複雑で多種の系が関与しているようであった。本年度、リドカインの鎮痛作用は生理食塩水により拮抗されることを論文報告した。この中で、ナトリウムイオン濃度やクロールイオン濃度がリドカインの鎮痛作用に大きく影響を与えることを明らかにした。また、神経因性痺痛の代表疾患である帯状庖疹後神経痛患者を対象として、末梢皮膚の一部にリドカインを暴露させるだけで即座に鎮痛作用が惹起されることを証明し、論文報告した。さらに、特発性三叉神経痛患者を対象として、興奮性脳神経においても同様に、リドカインの即効性鎮痛作用が発揮されることを確かめ、論文発表した。これらの結果は神経因性疼痛の発症メカニズムを解明する上で重要と考えられる。また、リドカインの作用機序を考える上でも役立つと思われる。研究の目的本研究の目的は、痛覚過敏やアロディニア(触刺激で痛みが誘発されること)により特徴付けられる神経因性疼痛をラットに発現させ、その摘出坐骨神経の感覚神経細胞膜電位を健康ラットと比較分析することで、神経因性疼痛の病態を電気生理学的角度から明確にすることと、抗不整脈薬リドカインの未だ不明である鎮痛機序を、感覚神経細胞膜電位の分析から検討することである。本年度の研究実施計画難治性として知られる神経因性疼痛の発症メカニズムはいまだ不明である。最近、感覚神経細胞内カルシウムの低下が神経の過敏性を亢進させ、神経因性疼痛の発症と維持に関与していることが示唆されている。我々は、ラットの神経因性疼痛モデルと健康ラットの膜電位の間にいくつかの相違点を見つけた。ラットの神経因性疼痛モデルにおいて、細胞内カルシウムの低下により誘発される膜電位変化を発見し、神経因性疼痛に特徴的な神経の過敏性亢進は、これにより引き起こされることを付き止めた。また、最近の米国では新しい抗けいれん薬であるギャバペンチンが神経因性疼痛に有効であることが実験的かつ臨床的に示されており、その作用機序は不明であったが、我々は、これがカルシウムの神経細胞内流入により生ずることを導いた。さらに、神経因性疼痛に対して広く使用されるリドカインの鎮痛作用も同様に達成される可能性が高いことを明らかにした。本年度に於いては、神経因性疼痛モデルに於ける感覚神経膜電位の変化をより詳細に分析するとともに、リドカインの鎮痛機序を感覚神経膜電位の変化から解明することである。難治性として知られる神経因性痺痛の発症メカニズムは不明であるが、我々は、ラットの神経因性痺痛モデルと健康ラットの膜電位の間にいくつかの相違点を見つけた。その中で、神経因性疼痛モデルの神経細胞内カルシウムは低下していることが分かった。神経因性痙痛に対して鎮痛効果の高いリドカインの作用機序は神経細胞内へカルシウムを流入させることで達成される可能性が高いことを培養細胞の軸索輸送を介して解明した。リドカインの鎮痛作用機序を、より生理的かつ具体的である神経因性痺痛モデルの感覚神経膜電位を介して、詳細に分析しようと試みたが、神経因性痺痛の発症メカニズムは複雑で多種の系が関与しているようであった。本年度、リドカインの鎮痛作用は生理食塩水により拮抗されることを論文報告した。この中で、ナトリウムイオン濃度やクロールイオン濃度がリドカインの鎮痛作用に大きく影響を与えることを明らかにした。また、神経因性痺痛の代表疾患である帯状庖疹後神経痛患者を対象として、末梢皮膚の一部にリドカインを暴露させるだけで即座に鎮痛作用が惹起されることを証明し、論文報告した。さらに、特発性三叉神経痛患者を対象として、興奮性脳神経においても同様に、リドカインの即効性鎮痛作用が発揮されることを確かめ、論文発表した。これらの結果は神経因性疼痛の発症メカニズムを解明する上で重要と考えられる。また、リドカインの作用機序を考える上でも役立つと思われる。
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KAKENHI-PROJECT-17791054
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17791054
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スペックルパターン位相差顕微鏡を用いた3次元光誘起電子顕微測定法
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本研究課題では、近年注目されている次世代の太陽電池である、増感型太陽電池において、その性能を向上させるために、性能低下の原因とされる光励起キャリヤ(電子やホール)の再結合過程が、どのような時間でどのような場所で起きているかを明らかにするための時間分解・顕微分光法を開発することを目指した。性能向上よりも性能低下の要因を明らかにするところに特徴がある。具体的には、よく使われるルテニウム色素に対して、コバルトレドックスの相性がなぜ悪くなるか、TEMPOレドックスにより、なぜ性能が向上しないのかを明らかにした。さらに、新しい位相差顕微鏡を作成し、光励起キャリヤの屈折率変化の時間分解計測に成功した。増感型太陽電池は、3次元ネットワーク構造を有する電極と溶液との界面を通した電荷移動によって制御されている。光誘起された電子を効率よく取り出すためには、電子のロス(増感剤や電解質との再結合)を抑える必要がある。我々は、再結合ダイナミクス(電子寿命)を、光誘起電子による屈折率変化を通して明らかにしてきた。しかし、電子寿命は平均値であるため、このような不均一な電極では、どのような箇所で再結合が起きているかを明らかにする必要がある。そこで、屈折率変化を通して3次元構造を測定することのできるスペックルパターン位相差顕微鏡を改良して、光誘起電子の画像を測定できる顕微鏡を開発し、さらに寿命の情報も得られるようにして、どのような構造で・どの再結合が支配的になっているかを調べることのできる3次元解析法を開発し、電極構造を最適化することを目的とする。今年度は、まず、位相差顕微鏡に強度変調したLED光を導入して、その光による屈折率画像変化の測定を行った。LED光の変調周波数が高いと短寿命の画像を、逆に低いと長寿命成分を示す画像を得られることが期待できる。通常の色素増感太陽電池を用いて、測定したところ、10000Hz程度と、100Hz程度において特有の画像が得られた。しかし、現段階ではこの画像は何によるものかは同定できていない。原因は、屈折率変化が小さいために、明確な変化としてとらえられていない。そこで、光誘起変化をしやすい光化学相転移を誘起できる液晶材料により、顕微鏡性能を検証することを行っています。また、2年目以降に予定していた、周期構造を有する太陽電池の作成にもすでに取り組んでおり、1cm角に及ぶコロイド結晶の作成、レーザートラップによる任意のパターンの作成にも成功した。今後、これらを電池デバイスとして機能するように仕上げた上で、上記顕微測定を行う予定である。光誘起顕微鏡の開発については、ほぼ装置系は完成に近づいている。今後、様々な試料での測定検証が必要な段階である。次年度に予定していた周期構造を有する基板作成については、すでに取り組んでおり、予定以上に進展している。増感型太陽電池は、3次元ネットワーク構造を有する電極と溶液との界面を通した電荷移動によって、制御されている。光励起された電子を効率よく取り出すためには、電子のロス(増感剤や電解質との再結合)を抑える必要がある。我々は、再掲都合ダイナミクス(電子寿命)を、光励起電子による屈折率変化を通して明らかにしてきた。しかし、電子寿命は平均値であるため、このような不均一な電極では、どのような箇所で再結合が起きているか明らかにする必要がある。そこで屈折率変化を通して3次元構造を測定することのできるスペックルパターン位相差顕微鏡を改良して、光励起電子の画像を測定できる顕微鏡を開発し、さらに寿命の情報も得られるようにして、どのような構造で、どの再結合が支配的になっているかを調べることのできる3次元解析法を開発し、電極構造の最適化をすることを目的としている。昨年度につづき、まず2次元の情報取得をすることを目的に、位相差顕微鏡を改良した。強度変調したLED光を導入して、その光励起によって生成したキャリヤによる屈折率画像の測定を行えるようにした。LED光の変調周波数を変えながら測定することで、寿命の異なるキャリヤの画像を得ることができるようにした。10-100000Hzの範囲の測定を可能にした。光応答性液晶では、100-1000Hzにかけて特徴的な画像を得られることを確認した。今後、光電極に応用するためにはさらに1桁の感度向上が必要であり、LED光の照射パターンを利用することで、感度向上を目指す。光誘起顕微鏡の開発については、ほぼ完成した。今後3次元測定可能な装置に改良していく必要がある。石油燃料をベースとした火力発電や核エネルギーを利用した原子力発電に代わるクリーンエネルギーの第一候補として太陽電池開発への期待はさらに高まっている。現在実用化されているシリコン系太陽電池は、生産のためにエネルギーコストがかかり、トータルのエネルギー効率を考えると問題がある。そこで、次世代の太陽電池として期待されているのが増感型太陽電池(SSC)と有機薄膜太陽電池であり、これらの開発が急務である。光を増感剤に吸収させて電気エネルギーに変換する増感型太陽電池において、効率を決定づける電子移動のプロセスは、多孔質半導体/増感剤/電解質のナノ構造界面で起こる。近年、我々が開発した過渡格子法により、電池内での電子の失活過程の一つである、電解質イオンによる電子の再結合過程を選択的にとらえることに成功した。本研究では、この方法と過渡吸収分光法を組み合わせて、太陽電池効率を下げる主要因である電子の再結合過程を特定できる分光分析方法を提案した。励起パルス光を液晶変調器により複数の回折次数に分割する。
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KAKENHI-PROJECT-15K05549
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K05549
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スペックルパターン位相差顕微鏡を用いた3次元光誘起電子顕微測定法
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レンズを通して、対物レンズの後側焦点に集光した後、対物レンズに導入して、進行方向の異なる平行光として干渉させることでXY方向の干渉パターンを試料上に形成する。太陽電池や光触媒などの光デバイスに照射することで、光励起キャリヤを生成して、そのキャリヤの伝搬や失活過程を、Shchlieren法によりイメージングできる装置を開発した。時間分解能5ns、空間分解能1umの顕微分光測定法の開発に成功し、現在、様々な光デバイス中での光励起電子の寿命や運動性について、デバイス構造との相関を調べる段階に達している。今後、様々な光デバイスに適用することで、光電流変換・光反応変換効率の高い光デバイス作成につながるものと期待される。本研究課題では、近年注目されている次世代の太陽電池である、増感型太陽電池において、その性能を向上させるために、性能低下の原因とされる光励起キャリヤ(電子やホール)の再結合過程が、どのような時間でどのような場所で起きているかを明らかにするための時間分解・顕微分光法を開発することを目指した。性能向上よりも性能低下の要因を明らかにするところに特徴がある。具体的には、よく使われるルテニウム色素に対して、コバルトレドックスの相性がなぜ悪くなるか、TEMPOレドックスにより、なぜ性能が向上しないのかを明らかにした。さらに、新しい位相差顕微鏡を作成し、光励起キャリヤの屈折率変化の時間分解計測に成功した。当初の予定通り、光誘起顕微鏡を完成させるとともに、周期構造を有する基板を使った太陽電池をデバイスとして機能するようにした後、この顕微鏡を用いて測定して、再結合箇所のマッピングを行い、電池性能向上の指針を与える研究を進める。モデル系の測定が終了したら、今後、様々な実デバイスにおいて再結合マッピングを行っていく。光電極の測定のためにはさらに、1桁の感度向上が必要であることが判明した。そのために、光の照射パターンを利用して、感度向上を目指す。それに成功したら、実際の電極デバイスの測定を行い、局所でのキャリヤの振る舞いを明らかにする。分光分析化学装置購入金額を抑え、来年度必要な消耗品の購入に充てる。装置購入金額を抑え、来年度必要な消耗品の購入に充てる。新年度、必要な消耗品に用いる。新年度、必要な消耗品に用いる。
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KAKENHI-PROJECT-15K05549
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K05549
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法線応力測定による高分子溶液のずり誘起相転移の検討
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本研究ではずり流動誘起相分離を起こす高分子溶液について、法線応力測定を中心に均一及び相分離状態で粘弾性測定を行い、それを基に流動誘起相転移が起こる場合の粘弾性の変化を調べるとともに、流動光散乱測定も行い、高分子溶液のずり流動誘起相転移について考察することを目的とした。用いた試料は、ポリスチレン(PS)(分子量約130万)とポリα-メチルスチレン(PAS)(分子量約180万)である。溶媒はPSにはジオクチルフタレート(θ温度約22°C)を、PASにはn-ウンデシルアニシテート(θ温度約33°C)を用いた。各溶液の相分離温度は曇点測定により決定した。均一及び相分離状態の粘弾性、特に第一法線応力差N_1のずり速度依存性は、それぞれ単一高分子系(線形領域ではずり速度の2乗)及び二相の粘度が等しい非相溶液体混合系(ずり速度の1乗)と同様であった。相分離点近傍の相溶状態で、非線形領域に入りずり速度を増加させていくと流動誘起相分離が起きた。この場合のN_1のずり速度依存性は、始めは線形挙動であったのが非線形領域に入ってしだいに小さくなり、均一系には見られない殆ど変化しなくなる領域が現われた後、ずり速度の1乗に比例する領域が現れた。対応する流動光散乱は現状では定量的な議論ができるだけの精度が得られていない。定性的にはN_1が殆ど変化しなくなる領域が始まるあたりで散乱が強くなり(わずかに濁り始め)、1乗に比例する領域では完全に白濁することが観察された。即ち、ずり速度を上げてずり流動誘起相分離が起き、系全体に渡って濃厚相が分散してくると非相溶液体混合系と同様にN_1がずり速度の1剰に比例するようになったと考えられる。本研究ではずり流動誘起相分離を起こす高分子溶液について、法線応力測定を中心に均一及び相分離状態で粘弾性測定を行い、それを基に流動誘起相転移が起こる場合の粘弾性の変化を調べるとともに、流動光散乱測定も行い、高分子溶液のずり流動誘起相転移について考察することを目的とした。用いた試料は、ポリスチレン(PS)(分子量約130万)とポリα-メチルスチレン(PAS)(分子量約180万)である。溶媒はPSにはジオクチルフタレート(θ温度約22°C)を、PASにはn-ウンデシルアニシテート(θ温度約33°C)を用いた。各溶液の相分離温度は曇点測定により決定した。均一及び相分離状態の粘弾性、特に第一法線応力差N_1のずり速度依存性は、それぞれ単一高分子系(線形領域ではずり速度の2乗)及び二相の粘度が等しい非相溶液体混合系(ずり速度の1乗)と同様であった。相分離点近傍の相溶状態で、非線形領域に入りずり速度を増加させていくと流動誘起相分離が起きた。この場合のN_1のずり速度依存性は、始めは線形挙動であったのが非線形領域に入ってしだいに小さくなり、均一系には見られない殆ど変化しなくなる領域が現われた後、ずり速度の1乗に比例する領域が現れた。対応する流動光散乱は現状では定量的な議論ができるだけの精度が得られていない。定性的にはN_1が殆ど変化しなくなる領域が始まるあたりで散乱が強くなり(わずかに濁り始め)、1乗に比例する領域では完全に白濁することが観察された。即ち、ずり速度を上げてずり流動誘起相分離が起き、系全体に渡って濃厚相が分散してくると非相溶液体混合系と同様にN_1がずり速度の1剰に比例するようになったと考えられる。
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KAKENHI-PROJECT-07651102
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07651102
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質量分析機器を用いた肝炎から肝硬変への進展予測因子の開発
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コリン欠乏食投与前のマウスのコントロール肝組織と比較して、コリン欠乏食投与後4週間目において、肝炎が誘起されていることを確認した。血清中での比較も行ったところ、タウリンの低下が認められた。また、コリン欠乏食投与後8週間目のマウスの肝組織において、肝硬変へ進展していることを確認した。血清中での比較も行ったところ、著明なタウリンの低下が認められた。以上より、マウスの正常肝から肝炎、肝硬変への進展は、タウリン低下と関連していることが示唆された。さらに、タウリンはヒトでも正常肝から肝炎、肝硬変へ進展する過程において血中濃度が低下していく傾向性を認めた。タウリン濃度が肝線維化進展のマーカーになりうる。コリン欠乏食投与前のマウスのコントロール肝組織と比較して、コリン欠乏食投与後4週間目において、肝炎が誘起されていることを確認した。血清中での比較も行ったところ、タウリンの低下が認められた。また、コリン欠乏食投与後8週間目のマウスの肝組織において、肝硬変へ進展していることを確認した。血清中での比較も行ったところ、著明なタウリンの低下が認められた。以上より、マウスの正常肝から肝炎、肝硬変への進展は、タウリン低下と関連していることが示唆された。さらに、タウリンはヒトでも正常肝から肝炎、肝硬変へ進展する過程において血中濃度が低下していく傾向性を認めた。タウリン濃度が肝線維化進展のマーカーになりうる。コントロールマウスおよびコリン欠乏肝炎・肝硬変マウスを用いて、血清中代謝産物を網羅的に解析した。コリン欠乏食投与後4週間目のマウスの肝組織の病理組織学的検索にて、肝炎であることを確認した後、マウス血清からそれぞれ代謝産物を抽出し、得られた抽出液をGC/MSに供した。得られたクロマトグラムを主成分分析によりアミノ酸、有機酸の比較解析を行った。この結果、コリン欠乏食投与前のコントロール肝組織と比較して、コリン欠乏食投与後4週間目において、肝炎が誘起されていることを確認した。血清中での比較も行ったところ、タウリンの低下が認められた。また、コリン欠乏食投与後8週間目のマウスの肝組織において、肝硬変へ進展していることを確認した。血清中での比較も行ったところ、著明なタウリンの低下が認められた。以上より、正常肝から肝炎、肝硬変への進展は、タウリンの低下と関連していることが示唆された。平成24年度に、コリン欠乏肝炎・肝硬変マウスでは正常肝から肝炎、肝硬変への進展には、タウリンの低下と関連していることが示唆された。これらがヒトでも当てはまるのかどうかについて掘り下げて検討した。肝炎から肝硬変への進展予測式を作成するために、GC/MS分析において肝炎患者と肝硬変患者との間で有意な差がある血清中代謝産物を選択した。この結果、やはりタウリンはヒトでも正常肝から肝炎、肝硬変へ進展する過程において血中濃度が低下していく傾向性を認めた。さらに、この分析を通じて安定性、日内・日間変動がないかの確認を行った。この結果、早朝空腹時でのタウリン濃度がより安定性を保っていることが明らかになった。肝炎、肝硬変への進展の予測式は、タウリン濃度に逆相関するパターンを示した。別グループでValidationを行うも、やはり、同様の傾向性を示すことができた。平成24年度の計画は、網羅的代謝物解析による肝硬変への進展予測のための血清メタボロームの同定を行うことであった。平成24年度では、正常肝から肝炎、肝硬変への進展には、タウリンの低下が関わっていることを明らかにした。従って、当初の計画通り、本研究は順調に進展していると考える。25年度が最終年度であるため、記入しない。I:肝炎から肝硬変への進展予測式の作成肝炎から肝硬変への進展予測式を作成するために、GC/MS分析において、以下の項目をファーストスクリーニングとして検討する。I-1:血清由来成分でない化合物の確認、I-2:肝炎患者と肝硬変患者との間で有意な差がある化合物を選択、I-3:分析を通じて化合物の安定性の確認、I-4:同じ化合物が違う保持時間に検出される化合物の確認、I-5:日内・日間変動の確認の5項目である。セカンドスクリーニングとして、ステップワイズ法による説明変数を選択し、ロジスティック回帰分析による予測式を作成する。II:肝炎から肝硬変への進展予測式の確認確認試験として、予測式を作成したものとは別の検体の分析結果を作成した予測式に挿入し、同様に感度、特異度を評価することで、作成した予測式の信頼性を確認する。平成24年度と平成25年度の研究成果をまとめることで、質量分析装置を用いた肝炎から肝硬変への進展予測システム開発への足がかりとする。そのため、他機関からも肝炎や肝硬変の臨床血清検体を収集し、上記と同様にメタボローム解析を実施する。そして、得られた結果を肝炎、肝硬変に分け、神戸大学医学部附属病院由来の臨床検体の結果と照合する。25年度が最終年度であるため、記入しない。
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KAKENHI-PROJECT-24890126
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24890126
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奄美諸島の社会構造研究再考-徳之島の調査研究を通して-
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本研究では、従来殆んど社会構造に関する調査研究が実施されてこなかった奄美諸島徳之島をその対象として、調査研究をおこなった。先学の奄美研究においては、個人をベースにした「双系親族体系」の重要性が指摘されており、それが南西諸島全体の基層を成すと考えられてきた。しかし、徳之島の現地調査で得られた一次資料を基に考察すると<ハロウジ>を中心とする双系親族体系を背景としながらも、<家>(ヤー)の意識、観念が強く、独自の文化的イデオロギーを形成しているといえる。例えば、数世代前に系譜を遡及し、薩摩の武士に<家>のルーツを求める動きや特定の<家>間の通婚関係がある固定化した<家>のランクを生成している点等である。今後は、従来一律に論じられてきた奄美諸島の社会構造については、島ごとあるいは島内における差異に十分着目して調査研究を展開することが肝要と思われる。本研究では、従来殆んど社会構造に関する調査研究が実施されてこなかった奄美諸島徳之島をその対象として、調査研究をおこなった。先学の奄美研究においては、個人をベースにした「双系親族体系」の重要性が指摘されており、それが南西諸島全体の基層を成すと考えられてきた。しかし、徳之島の現地調査で得られた一次資料を基に考察すると<ハロウジ>を中心とする双系親族体系を背景としながらも、<家>(ヤー)の意識、観念が強く、独自の文化的イデオロギーを形成しているといえる。例えば、数世代前に系譜を遡及し、薩摩の武士に<家>のルーツを求める動きや特定の<家>間の通婚関係がある固定化した<家>のランクを生成している点等である。今後は、従来一律に論じられてきた奄美諸島の社会構造については、島ごとあるいは島内における差異に十分着目して調査研究を展開することが肝要と思われる。
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KAKENHI-PROJECT-05610257
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05610257
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防水・撥水材の水分移動特性と屋外文化財への適用可能性
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建築物の劣化に大きな影響を与える水分の浸透を制御する手法として、防水・撥水材による表面処理に着目した。ガンマ線含水率測定装を用いた吸水実験と透湿実験により処理層の水分特性を把握した上で、材料内の空気圧変化を考慮した水分移動モデルを提案し、実験時の水分移動の様子を数値解析により明らかにした。また、屋外に設置した木材・石・焼成材に数種の撥水材を塗布した試験体を約2年半にわたって観察し、変色やカビ発生の抑制効果を確認した。屋外文化財への撥水剤の適用を検討するため、脆弱な凝灰岩で構成されたトルコ・カッパドキアの岩窟教会と同質の小岩体に撥水剤を塗布し、定期的な観察を行ったが顕著な効果は認められなかった。建築材料の耐久性に水分が与える影響は非常に大きく、建造物の長寿命化には材料への水分の浸透経路に応じた対策が重要である。屋外文化財では材料自体に文化的価値があるものが多く、外界気象下で風化が進む中、外観への影響を極力抑えた有効な保存対策が求められており、表面保護が選択肢の一つとなる。水分浸透を制御する方法の一つである防水・撥水材による表面処理について、実使用環境下における材料内水分の温度変化に伴う相変化についての検討例は少ない。本研究では防水・撥水材の水分特性を把握した上で、周囲の環境条件と材料物性を考慮した数値解析により、材料内水分移動の様子を明らかにすることを目的とする。平成27年度は、まず実環境下での防水・撥水材の挙動を調べるため、撥水材を施工した建築材料の屋外暴露を開始し、初期的な外観変化の観察を行った。撥水剤には劣化抑制と美観維持の目的で開発されたフッ素ポリマー・シリコーン系被覆材や無機系(アルコキシシラン系)の含浸封孔剤、市販の含浸剤を用いた。基材としては、木材・石材・素焼き板を対象とした。撥水剤の種類によって、濡れ色がつくものや紫外線による変色があるもの、降雨時の給水量に差があることが確認された。また、ガンマ線含水率測定装置を用いてレンガへの水分浸透実験を行い、撥水剤有無による水分浸透の違いを定量的に把握した。さらに、含浸系撥水剤の透水抵抗を表現する数値解析モデルを作成し、実験結果を比較的よい精度で再現できた。屋外文化財への適用を検討するケーススタディとしては、脆弱な凝灰岩で構成されたトルコ・カッパドキアのレッドバレー内の岩窟教会で現地での気象データや地盤水分データを取得するとともに、同質の小岩体に撥水剤を塗布して、現地の研究協力者を通じて経過観察を行っている。建築施工者や防水・撥水剤のメーカーへのヒアリングを行い、防水・撥水剤の基本特性の情報は得られてきており、継続して情報収集を進める。透湿抵抗と透水抵抗、水分浸透については実験方法とその結果の処理方法について検討を行い、1種類についての結果が得られた。これらの実験結果を用いた熱水分移動の数値解析モデルも作成し、定常実験の結果の再現ができている。屋外暴露試験については、予定通り初期的な外観変化の観察を行うことができたため、今後も試験を継続する。屋外文化財への適用では、次年度行う予定であった現地での施工実験を前倒しして行うことができたため、研究期間内により多くのデータが得られる見込みである。建築材料の耐久性に水分が与える影響は非常に大きく、建造物の長寿命化には材料への水分の浸透経路に応じた対策が重要である。水分浸透を制御する方法の一つに、防水・撥水材による表面処理がある。本研究では防水・撥水材の水分特性を把握した上で、周囲の環境条件と材料物性を考慮した数値解析により、材料内水分移動の様子を明らかにすることを目的とする。さらに、屋外文化財への適用を検討するケーススタディにより、適用時のリスク判断や効果的な施工部位の検討等、実建物への適用プロセスを明確にする。平成28年度は、撥水剤を塗布した試料を用いて、外部からの降雨水浸透や地下水の吸上げなどを想定した異なる水分の供給条件で水分浸透実験を行い、ガンマ線含水率測定装置により試料内部の含水率分布の経時変化を測定した。その過程で、撥水剤塗布後の養生期間の違いにより水分浸透の速度が異なることがわかり、その原因として試料内部の空気圧の上昇であると推定した。試料5面を断湿・気密処理して同様の水分浸透実験を行うとともに、空気と水分の移動を考慮した数値解析モデルを作成し、実験結果と比較することで空気圧が水分浸透を遅らせることを明らかにした。屋外での暴露実験としては、京都市内のモデル住宅の庭の土壁において種類の異なる撥水剤を塗布し、施工直後の色の変化や降雨時の吸水状態、半年間での汚れの付き具合について検証を行った。屋外文化財への撥水剤の適用を検討するケーススタディとしては、脆弱な凝灰岩で構成されたトルコ・カッパドキアのレッドバレー内の岩窟教会と同質の凝灰岩を用いて、吸水崩壊実験や乾湿繰り返し試験を行い、撥水剤による一定の保護効果を確認した。しかし、現地での同質の小岩体における撥水剤塗布実験においては顕著な保護効果が認められていないため、施工・養生時の温湿度環境を含め、今後も検討を行う予定である。撥水処理を行った試料について、種々の測定条件でガンマ線測定装置を用いた含水率分布の経時変化の測定を行うことができた。
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KAKENHI-PROJECT-15K21092
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K21092
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防水・撥水材の水分移動特性と屋外文化財への適用可能性
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また、撥水剤塗布後の試料の水の接触角測定を行い、その結果を用いて撥水層における水分移動の考え方を整理し、撥水剤を塗布した材料内の水分移動解析モデルを確立できた。建築材料の耐久性に水分が与える影響は非常に大きく、建造物の長寿命化には材料への水分の浸透経路に応じた対策が重要である。本研究では、水分浸透を制御する手法の一つである防水・撥水材による表面処理に着目し、処理層の水分特性を把握した上で、様々な環境下における材料内水分移動の様子を明らかにすることを目的とした。まず、含浸系撥水剤を塗布した試料を用いて、外部からの降雨水浸透や地下水の吸上げなどを想定した異なる水分の供給条件で水分浸透実験を行い、ガンマ線含水率測定装置により試料内部の含水率分布の経時変化を測定した。実験結果と撥水材含浸部分の接触角測定結果とをあわせて、撥水層の液水移動のモデル化を行った。さらに、材料内の液水・空気の同時移動解析モデルを作成し、空気圧の上昇が水分浸透を遅らせることを明らかにした。最終年度には、実験時に空気圧の影響を小さくする手法として側面にピンホールを開ける手法を提案した。屋外暴露実験としては、大学校舎屋上に設置した木材・石・セラミックに種類の異なる撥水材を塗布した試験体を約2年半にわたって観察し、木材については変色やカビの発生を抑制する効果を確認した。その他、京都市内のモデル住宅の庭の土壁において4種の撥水剤を塗布し、施工直後の色の変化や降雨時の吸水状態、汚れの付き具合を確認した。屋外文化財への撥水剤の適用を検討するケーススタディとしては、脆弱な凝灰岩で構成されたトルコ・カッパドキアのレッドバレー内の岩窟教会と同質の凝灰岩を用いて、吸水崩壊実験や乾湿繰り返し試験を行い、撥水剤による一定の保護効果を確認した。現地の環境条件を入力した数値解析においても、撥水材が材料表面の凍結融解回数を軽減することを示した。しかし、現地での同質の小岩体における撥水剤塗布実験においては顕著な保護効果が認められなかったため、今後は施工時の環境条件の影響等を検討する必要がある。建築物の劣化に大きな影響を与える水分の浸透を制御する手法として、防水・撥水材による表面処理に着目した。ガンマ線含水率測定装を用いた吸水実験と透湿実験により処理層の水分特性を把握した上で、材料内の空気圧変化を考慮した水分移動モデルを提案し、実験時の水分移動の様子を数値解析により明らかにした。また、屋外に設置した木材・石・焼成材に数種の撥水材を塗布した試験体を約2年半にわたって観察し、変色やカビ発生の抑制効果を確認した。屋外文化財への撥水剤の適用を検討するため、脆弱な凝灰岩で構成されたトルコ・カッパドキアの岩窟教会と同質の小岩体に撥水剤を塗布し、定期的な観察を行ったが顕著な効果は認められなかった。屋外暴露試験は継続して観察を行うとともに、現在見られている外観変化について、撥水剤の成分からその原因を検討する。水分浸透実験については、1種類の撥水剤の定常実験結果が得られているので、撥水剤の種類を増やすとともに、非定常条件での実験を行い、解析に用いる基礎データをさらに蓄積する。また、撥水剤の有無による凍害性状への影響を調べるため、材料の凍結融解実験方法と条件の検討を行う。数値解析では、凍結融解を考慮した既存の解析モデルを改良し、計算精度の向上を図る。屋外文化財については、現地での試験施工ができたため、外観写真等から風化の度合いを定量化し、風化の速さと現地の気象・水分データとの関係を検討する。最終的には、数値解析により外壁岩石の温度と含水率分布の予測を行い、効果的な施工部位についても検討する。
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KAKENHI-PROJECT-15K21092
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K21092
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酸化的DNA損傷サイクロプリンによる色素性乾皮症の神経症状・UVA発癌とその予防
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ヌクレオチド除去修復(NER)を欠損する色素性乾皮症(XP)では進行性の神経症状を発症するが、その発症機序については未だ解明されていない。NERで修復される酸化的DNA損傷がXP神経症状を引き起こすと考えられ、その最有力候補はサイクロプリンである。本研究課題では、我々が新規に樹立したサイクロプリン特異抗体を用いたELISA法により、サイクロプリンがXPの神経症状を引き起こすことの証明を試みた。野生型およびXP-Aノックアウトマウスを用いて、高月齢のXP-Aマウス臓器中にサイクロプリンが蓄積されているかについて検討した。月齢5、6の低月齢マウスと月齢2429の高月齢マウスの肝、脳(嗅球+大脳)、腎の計15検体からDNAを抽出し、DNA中のサイクロプリン(5'S-cyclo-dA)数をサイクロプリン特異抗体(CdA-1)を用いたELISA法により定量的に検討した。その結果、野生型およびXP-Aマウス、低月齢および高月齢、臓器の違いにかかわらず、各検体臓器中のサイクロプリン数に有意な差はみられなかった。その原因として、XP-Aマウスは寿命が2年と短く、神経症状発症に必要な量のサイクロプリンが蓄積されないためと推測される。実際にXP-Aマウスでは、XP-A患者と同様に紫外線発癌がみられるが神経症状は自然発症しない。そこで、フェントン反応やグルタチオン合成阻害薬、電子伝達系阻害薬などのサイクロプリン誘発促進処理を用いてXP-Aマウスの脳神経細胞にサイクロプリンを効率的に誘発して神経症状を発症させて、XP-A神経症状モデルマウスとして使用することが考えられる。今後は共同研究者の奈良県立医科大学研究教授・森俊雄先生が本研究を継続・発展して下さる予定である。ヌクレオチド除去修復(NER)を欠損する色素性乾皮症(XP)では進行性の神経症状を発症するが、その発症機序については未だ解明されていない。NERで修復される酸化的DNA損傷がXP神経症状を引き起こすと考えられ、その最有力候補はサイクロプリンである。本研究課題では、我々が新規に樹立したサイクロプリン特異抗体を用いたELISA法により、サイクロプリンがXPの神経症状を引き起こすことの証明を試みた。野生型およびXP-Aノックアウトマウスを用いて、高月齢のXP-Aマウス臓器中にサイクロプリンが蓄積されているかについて検討した。月齢5、6の低月齢マウスと月齢2429の高月齢マウスの肝、脳(嗅球+大脳)、腎の計15検体からDNAを抽出し、DNA中のサイクロプリン(5'S-cyclo-dA)数をサイクロプリン特異抗体(CdA-1)を用いたELISA法により定量的に検討した。その結果、野生型およびXP-Aマウス、低月齢および高月齢、臓器の違いにかかわらず、各検体臓器中のサイクロプリン数に有意な差はみられなかった。その原因として、XP-Aマウスは寿命が2年と短く、神経症状発症に必要な量のサイクロプリンが蓄積されないためと推測される。実際にXP-Aマウスでは、XP-A患者と同様に紫外線発癌がみられるが神経症状は自然発症しない。そこで、フェントン反応やグルタチオン合成阻害薬、電子伝達系阻害薬などのサイクロプリン誘発促進処理を用いてXP-Aマウスの脳神経細胞にサイクロプリンを効率的に誘発して神経症状を発症させて、XP-A神経症状モデルマウスとして使用することが考えられる。今後は共同研究者の奈良県立医科大学研究教授・森俊雄先生が本研究を継続・発展して下さる予定である。
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KAKENHI-PROJECT-26461665
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26461665
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ジャイロ効果を考慮した高速オーバーハング回転軸系のロバスト振動制御
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高速オーバーハング回転体は非常に強いジャイロ効果を有するので、ジャイロ作用の影響で振動のx、y成分は互いに連成し、振動を制御するための制御ゲインは回転速度に依存する。実際のオーバーハング回転機械ではその機構からオーバーハング部を直接制御できないことが多い。本研究では、軸受部に制御用のセンサとアクチュエータを取り付けた能動弾性軸受により間接的にオーバーハング回転体を制振する場合について、ロバスト制御則を適用するための手法を提案し、考察してきた。オーバーハング回転軸系のロバスト振動制御系の設計を簡単化して計算時間を短縮化するために、ジャイロ効果を省略したオーバーハング回転軸系モデルにH_∞制御則を適用した。このままではジャイロ効果の影響が含まれないので、ジャイロ項を含んだオーバーハング回転体の状態量を回転速度をパラメータとしたカルマンフィルタで推定して制御系に組み入れることにより、ジャイロ効果の影響をロバスト制御則の制御ゲインの導出に反映した。このようにして構築した制御則をオーバーハング回転軸系モデルに適用して理論解析とシミュレーションを行い、最適レギュレータを制御則とした場合のシミュレーション結果と比較した。その結果、制振効果はどちらの場合もほぼ同等だが、ロバスト性は最適レギュレータの場合よりも高くなることが分かった。提案した手法を実機に適用するときの問題点を調べるために、解析モデルに対応する装置を用いて実験を行った。その結果、回転速度が比較的低い一次危険速度付近ではシミュレーション結果と同様の制振効果の得られることが確かめられたが、回転速度が高くなる二次危険速度付近ではセンサのノイズの影響で理論通りの制御を行うことができず、制振効果はシミュレーション結果に較べて多少低くなった。さらに、制御系のロバスト性についても実験的に確認した。高速オーバーハング回転体は非常に強いジャイロ効果を有するので、ジャイロ作用の影響で振動のx、y成分は互いに連成し、振動を制御するための制御ゲインは回転速度に依存する。実際のオーバーハング回転機械ではその機構からオーバーハング部を直接制御できないことが多い。本研究では、軸受部に制御用のセンサとアクチュエータを取り付けた能動弾性軸受により間接的にオーバーハング回転体を制振する場合について、ロバスト制御則を適用するための手法を提案し、考察してきた。オーバーハング回転軸系のロバスト振動制御系の設計を簡単化して計算時間を短縮化するために、ジャイロ効果を省略したオーバーハング回転軸系モデルにH_∞制御則を適用した。このままではジャイロ効果の影響が含まれないので、ジャイロ項を含んだオーバーハング回転体の状態量を回転速度をパラメータとしたカルマンフィルタで推定して制御系に組み入れることにより、ジャイロ効果の影響をロバスト制御則の制御ゲインの導出に反映した。このようにして構築した制御則をオーバーハング回転軸系モデルに適用して理論解析とシミュレーションを行い、最適レギュレータを制御則とした場合のシミュレーション結果と比較した。その結果、制振効果はどちらの場合もほぼ同等だが、ロバスト性は最適レギュレータの場合よりも高くなることが分かった。提案した手法を実機に適用するときの問題点を調べるために、解析モデルに対応する装置を用いて実験を行った。その結果、回転速度が比較的低い一次危険速度付近ではシミュレーション結果と同様の制振効果の得られることが確かめられたが、回転速度が高くなる二次危険速度付近ではセンサのノイズの影響で理論通りの制御を行うことができず、制振効果はシミュレーション結果に較べて多少低くなった。さらに、制御系のロバスト性についても実験的に確認した。オーバーハング回転体は回転角速度と回転体の傾き角速度に依存する強いジャイロ効果を有するために、制振力を計算するための制御ゲインはこれら2種類の角速度の関数になるので、固定ロバスト補償器を用いた制御では高い制振性を得ることはできない。実際のオーバーハング回転機械では制振したいオーバーハング部を直接制御することができないために、軸受部に制御用のセンサとアクチュエータを取り付けて間接的にオーバーハング回転体を制振することになる。このようなオーバーハング回転軸系の動特性の理論解析と制御系の設計を行うために、制御装置を含めたオーバーハング回転軸系の解析モデルを求め、運動方程式及び状態方程式を導いた。この解析モデルの妥当性は、従来からの研究により回転軸系の振動制御についての適応範囲と特性が詳細に分かっている最適レギュレータ理論を用いた予備的な解析により確認できた。研究の手始めとして、ジャィロ効果を含んだオーバーハング回転体の状態量を非定常カルマンフィルタによって推定し、ジャイロ項を無視したオーバーハング軸系のモデルにH★制御則を適用した制御系に組み入れることにより、ジャイロ効果の影響をロバスト制御則の制御ゲインの導出に反映することを考えた。この手法を解析モデルに適用してシミュレーションを試みたところ、カルマンフィルタのゲインが発散してしまったので、次年度はその原因解明から始める。解析モデルに対応する実験装置を作成し、予備実験として最適レギュレータ理論を用いたオーバーハング回転軸系の制振特性を実験的に調べた。これらの実験により回転軸系の一次危険速度付近においても制振効果が得られることが確かめられたが、センサ信号に不規則な電気ノイズが乗っていることがわかった。さらに制振性能を上げるためにノイズを減らす必要があり、現在ノイズの低減対策について検討している。高速オーバーハング回転体は強いジャイロ効果を有し、制振力を計算するための制御ゲインが回転角速度と回転体の傾き角速度の関数になるので、固定ロバスト補償器を用いた制御では高い制振性を得ることはできない。
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KAKENHI-PROJECT-14550216
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14550216
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ジャイロ効果を考慮した高速オーバーハング回転軸系のロバスト振動制御
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実際のオーバーハング回転機械では、機構上オーバーハング部を直接制振できないことが多く、軸受部に制御用のセンサとアクチュエータを取り付けて間接的にオーバーハング回転体を制振することになる。理論解析上述のようなオーバーハング回転軸系の振動制御系の設計を行うために、ジャイロ効果を含んだオーバーハング回転体の状態量を推定(算定)し、ジャイロ項を無視したオーバーハング軸系のモデルにH_∞制御則を適用した制御系に組み入れることにより、ジャイロ効果の影響をロバスト制御則の制御ゲインの導出に反映することを考えた。オーバーハング回転体の状態量の推定法として、(1)非定常カルマンフィルタ、(2)回転速度をパラメータとした定常カルマンフィルタ、(3)ゲインスケジュール制御の3種類について検討した。この内、手法(1)ではカルマンフィルタのゲインが安定せず、発散してしまったが、手法(2)、(3)は本モデルに対して適用可能なことが分かった。回転軸系の二次の危険速度まで制振するには手法(2)の方が簡単に扱えるので、実用性も考えて、現時点では手法(2)とH_∞制御則を併合したときの制振特性について解析を進めると共に手法(3)の適用についても検討をしている。実験解析モデルに対応する実験装置を作成して、オーバーハング回転体の制振特性を調べる実験を行っている。理論解析の結果を受けてH_∞制御則と前記の状態量の推定手法(2)とを併合した実験を行い、ジャイロ効果がオーバーハング回転軸系の振動制御に及ぼす影響を実験的に調べた。これらの実験により回転軸系の一次危険速度付近においては十分な制振効果の得られることが確かめられたが、電気ノイズを含む種々のノイズのために二次危険速度付近の制振はできなかった。本研究では、二次危険速度までの制振を目的としているので、現在ノイズの原因の解明とその低減方法について検討している。高速オーバーハング回転体は非常に強いジャイロ効果を有するので、ジャイロ作用の影響で振動のx、y成分は互いに連成し、振動を制御するための制御ゲインは回転速度に依存する。実際のオーバーハング回転機械ではその機構からオーバーハング部を直接制御できないことが多い。本研究では、軸受部に制御用のセンサとアクチュエータを取り付けた能動弾性軸受により間接的にオーバーハング回転体を制振する場合に、ロバスト制御則を適用するための手法について考察してきた。上述のようなオーバーハング回転軸系のロバスト振動制御系の設計を行うために、ジャイロ項を含んだオーバーハング回転体の状態量を回転速度をパラメータとしたカルマンフィルタで推定し、ジャイロ効果を無視したオーバーハング回転軸系のモデルにH_∞制御側を適用した制御系に組み入れることにより、ジャイロ効果の影響をロバスト制御則の制御ゲインの導出に反映した。本年度は、このようにして構築した制御則をオーバーハング回転軸系モデルに適用して理論解析とシミュレーションを行い、最適レギュレータを制御則とした場合のシミュレーション結果と比較検討した。
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KAKENHI-PROJECT-14550216
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14550216
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出芽酵母プロテインホスファターゼの機能ゲノム科学
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ワクシニアウイルスのプロテインホスファターゼVH1のホモログである出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)のdual-specificityプロテインホスファターゼYvh1は、細胞増殖や胞子形成に関与することが知られている。YVH1遺伝子の破壊株は、30°Cで増殖遅延、13°で増殖欠損の表現型を示す。Δyvh1破壊株が示す増殖欠損・増殖遅延表現型がどのようなメカニズムによって引き起こされているかを明らかにするために、Δyvh1破壊株から、30°Cでの増殖遅延表現型が抑圧された抑圧変異株を33株分離した。遺伝解析の結果、それらは、全て同じ遺伝子に起こった変異であり、しかも優性変異であった。この抑圧変異をSVH1(Suppressor of YVH1)と命名した。SVH1の実体を明らかにするため、SVH1抑圧変異株のゲノムDNAからライブラリーを作製し、yvh1破壊株の増殖遅延を回復させるDNA断片をクローン化した。サブクローニングと塩基配列決定によって、SVH1はMRT4遺伝子であることがわかった。また、68番目のグリシンが、アスパラギンへ置換されることによって、yvh1破壊株の増殖遅延表現型が抑圧されていることがわかった。MRT4遺伝子は、mRNAturnoverから名付けられた遺伝子であり、遺伝子破壊によって、いくつかの遺伝子のmRNAの安定性が低下することが知られている。以前に、我々は、Yvh1と相互作用する因子として、Yph1と命名したタンパクを見い出していたが、本研究の途上、Mrt4がNop7(=Yph1)と共沈降することが報告された。そこで、two hybrid法によって、Yvh1とMrt4とに相互作用があるか否かを調べたところ、弱い相互作用が検出された。この結果より、Mrt4は、Yvh1の基質である可能性が考えられたので、次に、リン酸化タンパクであるか否かを解析したが、リン酸化タンパクであるとの証拠は得られなかった。これらの結果より、Mrt4はYvh1の基質ではなく、調節因子であることが示唆された。ワクシニアウイルスのプロテインホスファターゼVH1のホモログである出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)のdual-specificityプロテインホスファターゼYvh1は、細胞増殖や胞子形成に関与することが知られている。YVH1遺伝子の破壊株は、30°Cで増殖遅延、13°で増殖欠損の表現型を示す。Δyvh1破壊株が示す増殖欠損・増殖遅延表現型がどのようなメカニズムによって引き起こされているかを明らかにするために、Δyvh1破壊株から、30°Cでの増殖遅延表現型が抑圧された抑圧変異株を33株分離した。遺伝解析の結果、それらは、全て同じ遺伝子に起こった変異であり、しかも優性変異であった。この抑圧変異をSVH1(Suppressor of YVH1)と命名した。SVH1の実体を明らかにするため、SVH1抑圧変異株のゲノムDNAからライブラリーを作製し、yvh1破壊株の増殖遅延を回復させるDNA断片をクローン化した。サブクローニングと塩基配列決定によって、SVH1はMRT4遺伝子であることがわかった。また、68番目のグリシンが、アスパラギンへ置換されることによって、yvh1破壊株の増殖遅延表現型が抑圧されていることがわかった。MRT4遺伝子は、mRNAturnoverから名付けられた遺伝子であり、遺伝子破壊によって、いくつかの遺伝子のmRNAの安定性が低下することが知られている。以前に、我々は、Yvh1と相互作用する因子として、Yph1と命名したタンパクを見い出していたが、本研究の途上、Mrt4がNop7(=Yph1)と共沈降することが報告された。そこで、two hybrid法によって、Yvh1とMrt4とに相互作用があるか否かを調べたところ、弱い相互作用が検出された。この結果より、Mrt4は、Yvh1の基質である可能性が考えられたので、次に、リン酸化タンパクであるか否かを解析したが、リン酸化タンパクであるとの証拠は得られなかった。これらの結果より、Mrt4はYvh1の基質ではなく、調節因子であることが示唆された。
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KAKENHI-PROJECT-02F00523
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02F00523
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言語生成のゲーム理論的再解釈
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言語生成についての、これまでの立場は生成装置あるいは制約の相互にランク付けを行うことで説明されてきた。ミニマリストプログラムにおいては言語普遍的制約と個別言語的制約との間にランク付けが想定されている。最適性理論は、制約間のランク付けが中心的な理論装置である。この研究課題は、科学の基礎理論であるゲーム理論の枠組みを言語理論につきあわせ再構成することを目的として掲げている。この再解釈が成功を収めるとすれば、それは最適性理論に対する重大なアンチテーゼとなる可能性がある。言語生成についての、これまでの立場は生成装置あるいは制約の相互にランク付けを行うことで説明されてきた。ミニマリストプログラムにおいては言語普遍的制約と個別言語的制約との間にランク付けが想定されている。最適性理論は、制約間のランク付けが中心的な理論装置である。この研究課題は、科学の基礎理論であるゲーム理論の枠組みを言語理論につきあわせ再構成することを目的として掲げている。この再解釈が成功を収めるとすれば、それは最適性理論に対する重大なアンチテーゼとなる可能性がある。文法からの文法的な装置(gadget)が繰り出す戦略の間のゲーム理論的計算の最適解と見なすことで、(1)統語論と意味論とのミスマッチについての新たな説明を与え、(1)日本語における高段母音の無声化の現象が方言毎に異なる可能性を指摘し、その差異が音韻計算装置間の最適解の違いに還元されると云うこと、(3)言語の変容、あるいは進化が、文化を背景としたものであり、その文化的構造と言語構造との間のゲーム理論的な交渉の最適解として説明されると云うことを明らかにした。とくに(2)については最適性理論に対するアンチテーゼの論拠となる可能性がある。さらに、(1)意識は、ミーム(文化遺伝子)間の相互作用として捉えられるという主旨の発表をストックホルム大学における国際学会において提示し、(2)言語の進化の漸進性は、言語が空間と時間とを記述対象とする領域において常時、発生しうるものであることをソウルのYonsei Universityでの国際学会において提示することが決定されている。いずれも2008年度内に投稿し審査を経たものである。一般に科学的方法論の改編は、記述対象となるものの内実を推測する(reverse-engineer)方法を根底から変更するものであり、言及してある研究はそのような方法論的変更を可能とするものである。さらに最適性理論に対する問題の一つ、言語の自由変異、について、本研究のアプローチは全くあらたな説明を与える可能性がある。それは、自由変異は複数の最適解の存在として説明される、とするものである。この可能性は論文として纏め、現在、審査を受けている。言語生成が、複数の生成装置によって構造的に生成され、それらの間の相対的な関係、とりわけ、ゲーム理論的な関係によって相対的に評価され、最適な出力が得られるというのが本研究の主要な仮説である。そのような関係を数理的な利得表を介して捉えようと試みてきたところである。このような観点から言語の変化、あるいは言語の進化というものを形式的に捉えようと試みたのが当該年度の前半での試みである。とくに日本語の「ら」抜き言葉、文体に依存する調音上の多様性について分析を行った。前者については、「ら」を抜く事がむしろ意味解釈上の効率化と調音上の簡潔化をもたらしており、これが当該現象の伝播を促す動員となった。1月のソウルでの国際学会では、そのような言語変化が、話者・聴者間にとって相互に互恵的関係(win-win situation)にあるという事を述べた。研究の前段において、最適な言語形式、言語変化というものを規定し、それらに対して利得表を設定していく事で、「最適な出力は如何にして得られるのか」という問題を逆推論する(reverse-engineer)形で研究を展開してきた。新年の発表はこの研究方針を大きく変える事になった。言語行為に関わっている意志主体(agent)間の関係が相互互恵的な場合が最適な出力を生むという方向に研究は展開される事となった。これによって、これまでの考察対象についての説明が得られるだけではなく、逆推論の蓄積による仮説形成がやや反証可能性に欠けるという部分をも克服する事を可能にした。「言語は、意志主体間の相互互恵的な関係の上に成り立っている」という仮説はより反証火の異性の高い理論体系を与える事となった。言語生成が、言語生成装置間のゲーム理論的相互作用の最適な出力として説明されるという可能性を理論的に明らかにするということが本研究課題の目的である。この課題の執行によって次の点が明らかになった。(1)言語進化という現象は、文化という環境との相対的な関係において幾つかの指定可能な言語変化の可能性(候補)の中から選択されるという現象であるということ(これを「文化選択による言語進化」と称する)、(2)言語生成装置からの候補群の中から最適な出力を得る際に候補群間の相互互恵的な関係(win-win situation)が高く評価され決定されるということ、(3)言語生成装置からの候補群からの選択が行われ何らかの言語的操作が加えられる際、その選択を補完する言語生成のための操作が為されることがある、ということ、(4)命題内容の真理判定が節同士の接続に際して機能し、文全体の意味解釈の決定に関与していく、ということを明らかにした。
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KAKENHI-PROJECT-20520445
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20520445
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言語生成のゲーム理論的再解釈
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(1)については日本語の「ら抜き言葉」の広がりの事例、(2)については、英語の「低次元レベルの音声交替」(帯気音化、弾音化、声門音化)からの事例、(3)については日本語の高段母音に見られる無声化あるいは削除の事例、(4)については英語のso that構文とwhen節の事例から論拠を提示し、全体の構想の論証を試みた。本研究から得られる理論的な帰結は言語生成の中心的な装置の構成に関わるものであり、その理論的な波及ば広範囲に及ぶものである。言語的操作自体が手続き的知識の深奥に位置づけられている可能性があるが、その内部構造を科学的な論理によって解明していくことを可能にするものである。今後は言語コミュニケーションを総体として捉えることで、このようなゲーム理論的再構成が如何に可能かを見極めるという課題を取り上げ、形成可能な研究者集団によって解明が進められることが期待される。
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KAKENHI-PROJECT-20520445
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20520445
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内側側頭葉てんかんにおける海馬硬化症の病態生理学的意義
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内側側頭葉てんかんの主な病態である海馬硬化症について、形態と機能の両面から病態形成機序の解明に迫ることを目的として遂行した。そのために、まず、手術で摘出されたヒトの脳組織から生鮮脳スライス標本を作製して、フラビン蛍光イメージング法により神経活動の解析を行った。その後、同一標本を固定・染色して苔状線維の走行や病理組織学的変化などと対比して検討した。その結果、病理組織学的な海馬硬化の進展にあわせて、異なったてんかん原性機序が存在している可能性が示唆された。本研究で得られた成果は、将来内側側頭葉てんかんの新たな治療法の開発につながりうるものであると考えられた。内側側頭葉てんかんの主な病態である海馬硬化症について、形態と機能の両面から病態形成機序の解明に迫ることを目的として遂行した。そのために、まず、手術で摘出されたヒトの脳組織から生鮮脳スライス標本を作製して、フラビン蛍光イメージング法により神経活動の解析を行った。その後、同一標本を固定・染色して苔状線維の走行や病理組織学的変化などと対比して検討した。その結果、病理組織学的な海馬硬化の進展にあわせて、異なったてんかん原性機序が存在している可能性が示唆された。本研究で得られた成果は、将来内側側頭葉てんかんの新たな治療法の開発につながりうるものであると考えられた。内側側頭葉てんかん患者においてはしばしば海馬硬化症が認められ、臨床的に同部位がてんかん原性に寄与していることが示唆されている。しかしながら、病理組織学的には、硬化性海馬には神経細胞脱落やGliosisが認められ、それがどのようにてんかん原性と結びつくのかは明らかになっていない。長年このパラドックスに対する解が示されてこなかった理由のひとつは、同病態における形態と機能を融合させることが技術的に困難であったためであろう。この命題に対するアプローチとして、我々は、手術で摘出されたヒトのてんかん焦点脳組織から急性スライス標本を作製し、光学的・電気生理学的な解析を行うという試みを続けている。フラビン蛍光イメージング法は、ミトコンドリア内の活動依存性の自家蛍光変化をリアルタイムで画像化する手法である。神経活動によく相関し、空間解像度に優れている。摘出された海馬組織より直ちに脳スライス標本を作製して、電気刺激により惹起された神経活動を同法により解析した。また、スライスを作製した鏡面の組織標本を作製し、病理組織学的解析を行った。これにより、てんかん病巣における機能異常、すなわち神経回路レベルでの異常活動を解析するとともに、これに形態変化を対比して、病態形成機序を検討することが可能となった。その結果、我々は、海馬硬化症ではその進行度によって異なる2つのてんかん原性機序が存在することを見出した。すなわち、Watson Grade IV相当以上の重度の海馬硬化症では、歯状回顆粒細胞における異常な反響回路の形成が、一方、Watson Grade 0-III相当の比較的軽度(早期)の海馬硬化症では、海馬支脚における神経細胞の興奮性増強がてんかん原性機序の主体となっていると思われた。本研究の目的は、内側側頭葉てんかんの主要な病態である海馬硬化症について、形態と機能の両面から病態形成機序の解明に迫ることである。そのために、まず、手術で摘出されたヒトの脳組織から生鮮脳スライス標本を作製して、光学的イメージング法により神経活動の解析を行った。その後、同一標本を固定・染色して苔状線維の走行や病理組織学的変化などの検討を行った。最終年度においては26例、研究機関全体を通して48例のてんかん手術検体を用いた脳スライスイメージング実験を行った。その結果、内側側頭葉てんかんにおいて海馬硬化が明瞭でない症例においても、すでに海馬支脚においてHyperactivityが生じていることが明らかとなった。このHyperactivityはevoked response, spontaneous firingともにおいて認められ、海馬硬化が明らかでない群、軽度群(CA1のみ)、重度群(CA1,3,4)いずれにおいてもほぼ全例で認められた。一方で、歯状回顆粒細胞におけるrecurrent activityが重度群に限って生じている可能性が示唆された。この結果はTIMM染色による所見とも一致し、両者を総合して考察すると、苔状繊維発芽が重度海馬硬化群においては生じている可能性が示唆された。これらの結果は、内側側頭葉てんかんにおける海馬硬化症はhomogenousな疾患ではなく、病理組織学的なgradingに関連した、病態メカニズムが存在することが推察された。更なる研究を推進することで、内側側頭葉てんかんにおける海馬硬化症の意義が明らかになれば、てんかん原性のメカニズム解明につながり、新たなてんかんの診断・治療法の開発に寄与できると期待される。神経科学当初計画においては、海馬硬化症における歯状回のてんかん原性を検討することを想定していた。それはこれまでの動物実験の結果を踏まえてのものである。その点については、機能的裏付けとともに形態学的変化をも捉えることに成功した。本研究においてはさらに、海馬支脚にも歯状回とは独立して、アデノシン受容体の変調が関与するてんかん原性が存在しうることが明らかとなり、予想外の進展を得ることができた。本研究課題においては海馬硬化症のてんかん原性に二重の機序が、硬化の進展度合いに応じて関与しているという結果を得た。このことは病理学的に提唱されていた海馬硬化症の病期分類を機能的に裏付ける結果でもある。今後はさらに、病理学的分類と実験結果との相関を検討していく必要がある。
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KAKENHI-PROJECT-25870252
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25870252
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内側側頭葉てんかんにおける海馬硬化症の病態生理学的意義
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また、アデノシン受容体を介したてんかん原性が示唆されたため、てんかんの制御に寄与しうるよう、薬理学的検討を進めて行く必要がある。当初想定していたよりも順調に研究が進行したため、うまくいかなかったときの選択肢として組んでいた実験が不要となったため。想定外の結果も得られたことから、それに対する新たな実験を組む必要があり、使用する予定である。
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KAKENHI-PROJECT-25870252
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液晶/高分子界面のおける液晶配向と濡れ効果の研究
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1.光重合性高分子膜上の液晶配向特性偏光UV照射されたポリビニルシンナメート(PVCi)上において、液晶分子が均一な平行配向を示す。この液晶(5CB)/PVCi界面では液晶分子に対する方位角方向配向規制力が非常に弱く、室温において10^<-7>J/m^2程度であり、極角方向配向規制力の大きさは10^<-3>J/m^2程度と比較的強いことがわかった。この系では、温度の上昇につれて液晶分子と高分子膜表面とのなすティルト角がゼロから90度へと連続的に変化することがわかった。ティルト角及び極角方向配向規制力の温度変化は、それぞれ臨界指数0.5及び1でゼロになり、この実験結果は理論的予想と一致することを確認した。この現象の出現は、ネマティック相側の相転移点極く近くで液晶表面層の等方相化が起こることとの関連性が考えられる。2.ポリイミド膜上での液晶分子の表面メモリー効果高分子膜上での液晶分子の吸着の強さは、その高分子膜への液晶相の濡れ性によって著しく変化し、液晶相が濡れやすい高分子膜では、液晶分子の吸着力が強いことがわかった。この吸着力の値を定量化するため、等方性のポリイミド膜表面に磁場配向法を用いて液晶分子を均一な方位で配向させ、熱アニーリングによる液晶相の配向の乱れを評価した。その実験結果と、理論的な拡散方程式から導かれる配向分布関数の温度変化との比較により、回転拡散過程における活性化エネルギーの値を算出することができた。1.光重合性高分子膜上の液晶配向特性偏光UV照射されたポリビニルシンナメート(PVCi)上において、液晶分子が均一な平行配向を示す。この液晶(5CB)/PVCi界面では液晶分子に対する方位角方向配向規制力が非常に弱く、室温において10^<-7>J/m^2程度であり、極角方向配向規制力の大きさは10^<-3>J/m^2程度と比較的強いことがわかった。この系では、温度の上昇につれて液晶分子と高分子膜表面とのなすティルト角がゼロから90度へと連続的に変化することがわかった。ティルト角及び極角方向配向規制力の温度変化は、それぞれ臨界指数0.5及び1でゼロになり、この実験結果は理論的予想と一致することを確認した。この現象の出現は、ネマティック相側の相転移点極く近くで液晶表面層の等方相化が起こることとの関連性が考えられる。2.ポリイミド膜上での液晶分子の表面メモリー効果高分子膜上での液晶分子の吸着の強さは、その高分子膜への液晶相の濡れ性によって著しく変化し、液晶相が濡れやすい高分子膜では、液晶分子の吸着力が強いことがわかった。この吸着力の値を定量化するため、等方性のポリイミド膜表面に磁場配向法を用いて液晶分子を均一な方位で配向させ、熱アニーリングによる液晶相の配向の乱れを評価した。その実験結果と、理論的な拡散方程式から導かれる配向分布関数の温度変化との比較により、回転拡散過程における活性化エネルギーの値を算出することができた。
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KAKENHI-PROJECT-07236213
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07236213
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真核生物DNA複製の分子メカニズム-DNA二重鎖開裂と合成反応の連携機構の解明-
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遺伝情報を担う染色体DNAの複製は生命の継承において最も重要な反応の一つである。DNA複製フォークではDNA二重鎖の開裂とリーディング・ラギング両鎖の合成反応が協調的に進行する必要がある。真核生物の複製フォークでは、DNA二重鎖開裂はCMG(Cdc45/MCM/GINS)複合体が中心的な役割を担っており、DNA合成は3種類のDNAポリメラーゼPolα, Polδ, Polεが行うと考えられている。CMG複合体とDNAポリメラーゼがどのように協調的に複製フォークを進行させているのかはよく分かっていないが、複製装置(レプリソーム)は複製開始点上で形成されるため、その協調も開始点上で確立されると考えられる。私はリーディング鎖合成を担うとされるPolεの必須機能を明らかにするために、分裂酵母をモデル生物とし、条件特異的タンパクデグロン系およびPolεの温度感受性変異株を用いて解析を行ってきた。タンパクデグロン系での解析から、PolεはCMG複合体の複製開始点上での集合に必要であることが分かった。一方、温度感受性変異株を用いた解析から、Polεはレプリソームの形成以降、複製フォークの進行にも必須であることが分かった。この変異株ではPolεサブユニットが開始点に安定に結合できない状態で、CMG複合体およびPolα, Polδは開始点に結合しており、さらに一本鎖DNA結合タンパクRPAの結合が検出された。このことからCMG複合体の形成・活性化は起こっていると考えられる。しかし、DNA合成基質の取り込みやCdc45の局在は開始点に限定されており、PolεがないとDNA複製は開始点から数kbも進行しなかった。このことはPolεがDNA二重鎖開裂に続く継続的なDNA合成を伴った複製フォークの進行に必須であることを示唆している。遺伝情報を安定に次世代に伝えるために染色体DNAの複製は必須の反応である。複製開始点で形成された複製装置が複製フォークとして進行するためには、DNA二重鎖の開裂とリーディング・ラギング両鎖の合成反応が協調的に働くことが必要である。DNA二重鎖開裂はCMG(Cdc45/MCM/GINS)複合体が中心的な役割を担っており、DNA合成は3種類のDNAポリメラーゼPolα,Polδ,Polεが行うと考えられている。リーディング鎖合成を担うとされるPolεは、酵母において触媒サブユニットN末端ポリメラーゼドメインは欠失させることができ生存に必須ではない。それに対してC末端領域は必須である。先行研究より、このPolεの非触媒的な必須機能として複製開始反応への関与が示唆されている。私はPolεの必須機能を明らかにするために、条件特異的にPolεタンパクを欠失させる系、およびPolεの温度感受性変異株を用いて解析を行ってきた。タンパクを欠失させた解析から、PolεはMCM,Sld3の開始点結合以降にCDKに依存して結合するCut5,Drc1,GINS,Cdc45の結合に必要であることが分かった。一方で、温度感受性変異株を用いた解析から、Polεはレプリソームの形成以降、複製フォークの進行に必須であることが分かった。この変異株ではPolεサブユニットが開始点に安定に結合できない状態で、CMG複合体構成因子は開始点に結合しており、さらに一本鎖DNA結合タンパクRPAの結合が検出された。このことからCMG複合体の形成・活性化は起こっていると考えられる。しかし、Cdc45の局在は開始点近傍に限定されており、Polεがないと複製フォークは開始点から数kbも進行しなかった。このことはPolεがDNA二重鎖開裂に続く継続的なDNA合成を伴った複製フォークの進行に必須であることを示唆している。遺伝情報を担う染色体DNAの複製は生命の継承において最も重要な反応の一つである。DNA複製フォークではDNA二重鎖の開裂とリーディング・ラギング両鎖の合成反応が協調的に進行する必要がある。真核生物の複製フォークでは、DNA二重鎖開裂はCMG(Cdc45/MCM/GINS)複合体が中心的な役割を担っており、DNA合成は3種類のDNAポリメラーゼPolα, Polδ, Polεが行うと考えられている。CMG複合体とDNAポリメラーゼがどのように協調的に複製フォークを進行させているのかはよく分かっていないが、複製装置(レプリソーム)は複製開始点上で形成されるため、その協調も開始点上で確立されると考えられる。私はリーディング鎖合成を担うとされるPolεの必須機能を明らかにするために、分裂酵母をモデル生物とし、条件特異的タンパクデグロン系およびPolεの温度感受性変異株を用いて解析を行ってきた。タンパクデグロン系での解析から、PolεはCMG複合体の複製開始点上での集合に必要であることが分かった。一方、温度感受性変異株を用いた解析から、Polεはレプリソームの形成以降、複製フォークの進行にも必須であることが分かった。この変異株ではPolεサブユニットが開始点に安定に結合できない状態で、CMG複合体およびPolα, Polδは開始点に結合しており、さらに一本鎖DNA結合タンパクRPAの結合が検出された。このことからCMG複合体の形成・活性化は起こっていると考えられる。しかし、DNA合成基質の取り込みやCdc45の局在は開始点に限定されており、PolεがないとDNA複製は開始点から数kbも進行しなかった。
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KAKENHI-PROJECT-09J01755
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09J01755
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真核生物DNA複製の分子メカニズム-DNA二重鎖開裂と合成反応の連携機構の解明-
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このことはPolεがDNA二重鎖開裂に続く継続的なDNA合成を伴った複製フォークの進行に必須であることを示唆している。
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KAKENHI-PROJECT-09J01755
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顔表情の計算機による表現.学習と認識
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顔表情の認識は感性情報処理の一例として、非常に注目されている。我々は処理を以下のように分ける。まず、最初の入力画像において顔の特徴を自動的に決定する。次は、その後の画像系列において顔の特徴を追跡し、動き情報を抽出する。最後に、表情の動的モデルと照合することで、認識を行う。本年度には、我々はまず顔特徴の抽出と追跡について研究を行った。表情と関係が深いものとして、口の両端、眼の両端、眉毛の内側の端、共8点を顔の特徴として選んだ。画像は顔の正面から、画像いっぱいに写るように撮ったものとする。我々は各特徴のローカルなテンプレートと顔の器官間の位置関係というグローバルモデルとを両方用いて、総合的に判断して、ロバストな顔特徴が自動的に抽出できると考える。具体的には、まず、各特徴のテンプレートを用意し、画像全体で相関値を計算し、最も似ている5点を特徴の候補として抽出する。次に、特徴の相互関係を記述したグローバルモデルに照らして、特徴の候補から真のものを選ぶ。以上の方法で、かなりの確率で特徴の抽出ができた。顔特徴の追跡は、抽出された特徴の領域をテンプレートとして、連続画像において、相関法により近傍で探索することで実現した。今後は、以上で得られた動き情報を用いて、表情の表現と認識を行う予定である。顔表情の認識は感性情報処理の一例として、非常に注目されている。我々は処理を以下のように分ける。まず、最初の入力画像において顔の特徴を自動的に決定する。次は、その後の画像系列において顔の特徴を追跡し、動き情報を抽出する。最後に、表情の動的モデルと照合することで、認識を行う。本年度には、我々はまず顔特徴の抽出と追跡について研究を行った。表情と関係が深いものとして、口の両端、眼の両端、眉毛の内側の端、共8点を顔の特徴として選んだ。画像は顔の正面から、画像いっぱいに写るように撮ったものとする。我々は各特徴のローカルなテンプレートと顔の器官間の位置関係というグローバルモデルとを両方用いて、総合的に判断して、ロバストな顔特徴が自動的に抽出できると考える。具体的には、まず、各特徴のテンプレートを用意し、画像全体で相関値を計算し、最も似ている5点を特徴の候補として抽出する。次に、特徴の相互関係を記述したグローバルモデルに照らして、特徴の候補から真のものを選ぶ。以上の方法で、かなりの確率で特徴の抽出ができた。顔特徴の追跡は、抽出された特徴の領域をテンプレートとして、連続画像において、相関法により近傍で探索することで実現した。今後は、以上で得られた動き情報を用いて、表情の表現と認識を行う予定である。
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KAKENHI-PROJECT-04236210
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04236210
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高等教育における現代音楽史の教育モデルの構築――米・仏の実践例の比較検討から
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本研究の目的は、日本の高等教育における西洋音楽史の教育において、前衛主義とアメリカ文化帝国主義のいずれをも相対化した現代音楽史の教育モデルを構築することである。近年アメリカでは、最も一般的に読まれている音楽史書において、20世紀以降の記述が、モダニズムの前衛主義を相対化し、大衆文化に重要な位置を与えるものへと書き換えられている。本研究ではまず、アメリカの音楽史記述と教育実践例を調査し、扱う事象やレパートリーがどのように拡大されてきているのかを明らかにする。次に、アメリカ文化帝国主義を相対化する視点を得るために、近年のフランスの公教育における〈芸術史〉教育の事例を比較検討する。本研究の目的は、日本の高等教育における西洋音楽史の教育において、前衛主義とアメリカ文化帝国主義のいずれをも相対化した現代音楽史の教育モデルを構築することである。近年アメリカでは、最も一般的に読まれている音楽史書において、20世紀以降の記述が、モダニズムの前衛主義を相対化し、大衆文化に重要な位置を与えるものへと書き換えられている。本研究ではまず、アメリカの音楽史記述と教育実践例を調査し、扱う事象やレパートリーがどのように拡大されてきているのかを明らかにする。次に、アメリカ文化帝国主義を相対化する視点を得るために、近年のフランスの公教育における〈芸術史〉教育の事例を比較検討する。
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KAKENHI-PROJECT-19K13025
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K13025
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腫瘍細胞破壊のキラ-メカニズム
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宿主キラ-細胞による標的がん細胞破壊機構の解析が行われ、以下の点が明かにされた。1.マクロファ-ジによるキラ-因子としてはTNFの他にNO分子が見いだされ、活性酸素による標的細胞障害機構が示唆された。2.キラ-T細胞クロ-ンLAK細胞クロ-ンのT細胞受容体についてそのイデオタイプを支配する遺伝子構造が明かにされた。3.パ-フォリンの関与(1)バイスペシフィック抗体を用いてのADCCで、T細胞ではIL2刺激によるキラ-活性増強とのパ-フォリンの発現度の増大が相関すが、NK細胞では活性増強に伴ったパ-フォリン増大はない。(2)In vivo誘導したCTLに強いパ-フォリン発現がみられる。(3)可溶性タンパク抗原を認識するCD4^+CD8^ーのキラ-T細胞クロ-ンはパ-フォリン及びそのmRNAは発現していない。4.マウス系で、細胞接着分子の一つであるICAMー1を認識し、ICAMー1機能を抑制しうる単クロ-ン抗体が作成された。5.キラ-細胞は標的細胞への接着により細胞内のカルシュウム濃度が早期に上昇することを単細胞レベルで観察した。本年度の研究によりキラ-T細胞やLAK細胞の表現するT細胞受容体構造について支配遺伝子解析が進み、一連のV遺伝子レパ-トリが明かにされた。このことはこれらキラ-細胞の抗原認識の多様性を理解する上で重要な知見である。また、マクロファ-ジ、T細胞、NK細胞、LAK細胞などの一連のキラ-細胞の標的細胞破壊に関して、それぞれのキラ-因子が解明された。特にマクロファ-ジにおけるNO分子の関与やキラ-T細胞及びLAK細胞のキラ-活性と細胞内パ-フォリン発現との関係が抗パ-フォリン抗体を用いて明かにされたことは注目される。さらにLAK細胞などにおいての主たる接着因子、LFAー1に対応する標的細胞表面分子であるICAMー1に関して、マウス系でその機能を抑制する単クロ-ン抗体が始めて作成され、実験動物での同分子の役割の解明が可能になった。宿主キラ-細胞による標的がん細胞破壊機構の解析が行われ、以下の点が明かにされた。1.マクロファ-ジによるキラ-因子としてはTNFの他にNO分子が見いだされ、活性酸素による標的細胞障害機構が示唆された。2.キラ-T細胞クロ-ンLAK細胞クロ-ンのT細胞受容体についてそのイデオタイプを支配する遺伝子構造が明かにされた。3.パ-フォリンの関与(1)バイスペシフィック抗体を用いてのADCCで、T細胞ではIL2刺激によるキラ-活性増強とのパ-フォリンの発現度の増大が相関すが、NK細胞では活性増強に伴ったパ-フォリン増大はない。(2)In vivo誘導したCTLに強いパ-フォリン発現がみられる。(3)可溶性タンパク抗原を認識するCD4^+CD8^ーのキラ-T細胞クロ-ンはパ-フォリン及びそのmRNAは発現していない。4.マウス系で、細胞接着分子の一つであるICAMー1を認識し、ICAMー1機能を抑制しうる単クロ-ン抗体が作成された。5.キラ-細胞は標的細胞への接着により細胞内のカルシュウム濃度が早期に上昇することを単細胞レベルで観察した。本年度の研究によりキラ-T細胞やLAK細胞の表現するT細胞受容体構造について支配遺伝子解析が進み、一連のV遺伝子レパ-トリが明かにされた。このことはこれらキラ-細胞の抗原認識の多様性を理解する上で重要な知見である。また、マクロファ-ジ、T細胞、NK細胞、LAK細胞などの一連のキラ-細胞の標的細胞破壊に関して、それぞれのキラ-因子が解明された。特にマクロファ-ジにおけるNO分子の関与やキラ-T細胞及びLAK細胞のキラ-活性と細胞内パ-フォリン発現との関係が抗パ-フォリン抗体を用いて明かにされたことは注目される。さらにLAK細胞などにおいての主たる接着因子、LFAー1に対応する標的細胞表面分子であるICAMー1に関して、マウス系でその機能を抑制する単クロ-ン抗体が始めて作成され、実験動物での同分子の役割の解明が可能になった。
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KAKENHI-PROJECT-02151009
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02151009
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モノクローナル抗体によるイムノシンチグラフィーの肺小細胞癌への応用
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1.標識方法の検討:(1)抗体50μg、I-125 0.4mci、クロラミンT2.5μg30分の反応で、6082%の標識率が得られ、比活性は、4.86.6mci/mgであった。標識後の抗体活性は、90%以上保たれた。I-131による標識では、I-125と同一の条件下で、標識率は、50%に低下した。(2)抗体とDTPAの結合は、cydic DTPA anhydrateによる方法で行ったが、抗体:DTPA=1:1の条件下で、80%の結合率であった。In-lll、DTPA結合抗体への結合は、98%以上であった。標識抗体の比活性は1.0mci/mgであり、抗体活性は、87%に低下した。(3)Ga-67標識の試みは、標識率が悪く、結果も安定しなかった。2.正常マウスへの標識抗体の投与(1)I-125標識抗体は、1μci/匹投与において、1日後の%ID/gは、血液34.5、心臓10.4、肺15.6と高値であったが4日後には、8.86、3.5、6.7、となった。肝、脾、骨への取込は、3.8、3.2、1.7であった。(2)In-111標識抗体100μci/匹投与後の%ID/gは、1日後、血液18.2、心臓5.7、肺11.0、肝13.0、脾9.5、腎13.0 3日後それぞれ、7.5、3.2、4.1、13.0、6.0、11.5と、I-125に比べて、血液、心臓、肺よりの活性の低下はすみやかであるが、肝、腎への高い取込みをみとめた。肝、腎の活性高値は、7日目にも認められた。3.担癌マウスへの標識抗体の投与:抗原を表現する肺小細胞癌株ADHをヌードマウス左大腿部皮下に移植し、腫瘍径0.7cm前後になったところで、標識抗体を2.と同様に投与うた。3日目の体内分布は、I-125標識抗体では、%ID/gは、血液4.3、肺、脾、骨では0.91.4、腫瘍は14.2で腫瘍/血液比3.3であった。In-111標識抗体では、3日後の腫瘍血液比は4.3であったが、肝/血液比も2.7と高かった。4.今後の課題:TFS-4による肺小細癌のイメージングは有望と思われるが、In-111標識の際の肝への取込みを抑える工夫が必要である。1.標識方法の検討:(1)抗体50μg、I-125 0.4mci、クロラミンT2.5μg30分の反応で、6082%の標識率が得られ、比活性は、4.86.6mci/mgであった。標識後の抗体活性は、90%以上保たれた。I-131による標識では、I-125と同一の条件下で、標識率は、50%に低下した。(2)抗体とDTPAの結合は、cydic DTPA anhydrateによる方法で行ったが、抗体:DTPA=1:1の条件下で、80%の結合率であった。In-lll、DTPA結合抗体への結合は、98%以上であった。標識抗体の比活性は1.0mci/mgであり、抗体活性は、87%に低下した。(3)Ga-67標識の試みは、標識率が悪く、結果も安定しなかった。2.正常マウスへの標識抗体の投与(1)I-125標識抗体は、1μci/匹投与において、1日後の%ID/gは、血液34.5、心臓10.4、肺15.6と高値であったが4日後には、8.86、3.5、6.7、となった。肝、脾、骨への取込は、3.8、3.2、1.7であった。(2)In-111標識抗体100μci/匹投与後の%ID/gは、1日後、血液18.2、心臓5.7、肺11.0、肝13.0、脾9.5、腎13.0 3日後それぞれ、7.5、3.2、4.1、13.0、6.0、11.5と、I-125に比べて、血液、心臓、肺よりの活性の低下はすみやかであるが、肝、腎への高い取込みをみとめた。肝、腎の活性高値は、7日目にも認められた。3.担癌マウスへの標識抗体の投与:抗原を表現する肺小細胞癌株ADHをヌードマウス左大腿部皮下に移植し、腫瘍径0.7cm前後になったところで、標識抗体を2.と同様に投与うた。3日目の体内分布は、I-125標識抗体では、%ID/gは、血液4.3、肺、脾、骨では0.91.4、腫瘍は14.2で腫瘍/血液比3.3であった。In-111標識抗体では、3日後の腫瘍血液比は4.3であったが、肝/血液比も2.7と高かった。
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KAKENHI-PROJECT-63570492
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63570492
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モノクローナル抗体によるイムノシンチグラフィーの肺小細胞癌への応用
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4.今後の課題:TFS-4による肺小細癌のイメージングは有望と思われるが、In-111標識の際の肝への取込みを抑える工夫が必要である。
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KAKENHI-PROJECT-63570492
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63570492
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変形ビラソロ代数によるバクスターの8頂点模型の解析
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楕円関数で与えられる面型の相互作用を持つクラスの模型については、代数解析的な計算技術が一応の成熟を見たと考えられる。一方、楕円関数で与えられる頂点型相互作用を持つ模型に関しては、最も基本的な模型であるバクスターの8頂点模型に対してさえ、かなり長い間代数解析的な取り扱い方が見つからないでいた。完全な解答はまだ得られていないが、本研究において、バクスターの8頂点模型、即ち楕円量子群A_<q,p>(<sl>^^^^_2)に対する代数解析的手法をある程度まで進めることができた。まず、平成13年度には、変型ビラソロ代数の特別なパラメーターにおける表現論を用いて、パラメータがある特殊な関係をみたす場合(p=q^3)に、8頂点模型の一角を切り崩すことが出来た。平成14年度には、これがp=q^4及びp=q^6の場合に拡張された。p=q^4の場合には、二つの変型ビラソロ代数を張り合わせて構成出来ることが示された。p=q^6については、変型ビラソロ代数の対称性は見出せないが、自由ボゾンと自由フェルミオンを用いた表現が得られた。それらに基づいて相関関数の多重積分表示を導いた。最も簡単な1点関数の場合には、Baxter-Kellandの結果と合うことが確認された。このように、バクスターの8頂点模型に対する代数解析的手法が、変型ビラソロ代数の表現論と密接に関係する(p=q^3,q^4)、一方、それを超えた理解が必要となる(p=q^4,q^6)ことが示された。8頂点模型持つの代数構造の全貌を解明することは今後の課題である。平成13年度の実績を要約すれば、パラメータがある関係(P=q^3)を満たす場合にバクスターの8頂点模型の相関関数の多重積分表示(の予想式)を求めることに成功したということである。この結果は、パラメータの取りうる価に制限があるものの、8頂点模型独特の楕円関数に附随する代数を表現する繊細かつ精密な表現論からの帰結であり、まったく非自明なものである。私は少なくとも過去10年間この方面の表現論の可能性を追求してきたわけだが、平成12年度(平成13年2月初旬)8頂点模型に対して正確に機能する表現論の例にようやく到達、それに従い相関関数の明示的表式を研究した13年度はまことに収穫の大きい年であった。この表現論に関して若干の詳細を示す。変型ピラソロ代数は言うまでも無くピラソロ代数のミニマル模型の変型理論として機能するわけだが、実はレポウスキーウィルソンの導入したz代数の変型理論としてみなすこともできる。つまり、変型ビラソロ代数は二つの異なる理論の折衷理論とも解釈できる、レベル4のz代数には対するピラソロ代数の中心電荷は1である。これは8頂点模型に対して期待される中心電荷の価と同じである。さて、レベル4のz代数に変型パラメータxを加えて変型ピラソロ代数に持ち上げるとする。ただし、x=1の極限でz代数が回復するものとする。実は、これにおいて、x=-1の近傍が8頂点模型の表現空間を与える。この考えに従えば、様々な表現論上の作用素は変型ビラソロ代数に対して知られている自由場表現の言葉で明示的に表示可能である。例えば、タイプ1と呼ばれる非常に重要な頂点作用素は1重の留数積分で与えられることがわかる。相関関数の明示式についてもう少し述べる。n点相関関数の表示は上に述べたタイプ1頂点作用素2n個の積の規約表現上でのトレースで与えられる。従って、2n重の多重積分で与えられる。バクスター・ケランドによる1点相関関数の美しい式を再現することが最も簡単な場合におけるチェックである。現在の所、解析的に積分を実行する方法(どこまで実行できるかも含めて)は明らかになっていないが、1点相関関数に関しては、x展開によりかなりの高次の係数まで正しいことが確認できる。楕円関数で与えられる面型の相互作用を持つクラスの模型については、代数解析的な計算技術が一応の成熟を見たと考えられる。一方、楕円関数で与えられる頂点型相互作用を持つ模型に関しては、最も基本的な模型であるバクスターの8頂点模型に対してさえ、かなり長い間代数解析的な取り扱い方が見つからないでいた。完全な解答はまだ得られていないが、本研究において、バクスターの8頂点模型、即ち楕円量子群A_<q,p>(<sl>^^^^_2)に対する代数解析的手法をある程度まで進めることができた。まず、平成13年度には、変型ビラソロ代数の特別なパラメーターにおける表現論を用いて、パラメータがある特殊な関係をみたす場合(p=q^3)に、8頂点模型の一角を切り崩すことが出来た。平成14年度には、これがp=q^4及びp=q^6の場合に拡張された。p=q^4の場合には、二つの変型ビラソロ代数を張り合わせて構成出来ることが示された。p=q^6については、変型ビラソロ代数の対称性は見出せないが、自由ボゾンと自由フェルミオンを用いた表現が得られた。それらに基づいて相関関数の多重積分表示を導いた。最も簡単な1点関数の場合には、Baxter-Kellandの結果と合うことが確認された。このように、バクスターの8頂点模型に対する代数解析的手法が、変型ビラソロ代数の表現論と密接に関係する(p=q^3,q^4)、一方、それを超えた理解が必要となる(p=q^4,q^6)ことが示された。
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KAKENHI-PROJECT-13740091
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13740091
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変形ビラソロ代数によるバクスターの8頂点模型の解析
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8頂点模型持つの代数構造の全貌を解明することは今後の課題である。
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KAKENHI-PROJECT-13740091
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唾液腺における糖輸送体の動態と病態
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本研究は唾液腺に存在する糖輸送体の種類を同定し、各種刺激に伴う糖輸送体の動態とその機能発現機序及び病態を解明することを目的に行い、下記の成果を得た。1)糖輸送体の耳下腺における局在と加齢変化4,8,52,104週齢のラット耳下腺より分画した管腔膜(APM)、基底膜(BLM)、細胞内顆粒膜(ICM)をSDS-PAGEに供し、ニトロセルロース膜に転写後、抗GLUT15抗体、抗SGLT1抗体を用いてウエスタンブロッティングにて糖輸送体の局在を検索したところ、いずれの週齢においてもGLUT1はAPM、ICM及びBLMに、GLUT5はBLMに、SGLUT1はAPMとICMに発現していることが認められた。しかし、AMPとBLMにおいて、糖輸送体量に加齢変化が認められ、ICMでは加齢変化は認められなかった。2)刺激に伴う糖輸送体の細胞内移動と加齢変化耳下腺切片をアセチルコリン(ACh)又はエピネフリン(Epi)と加湿振盪し、上述の方法で、糖輸送体の動態を検索すると、これらの神経伝達物質で促進輸送型糖輸送体はICMよりAPMやBLMへ移動しAPMにおける促進輸送型糖輸送体の量が対象群より上昇した。ところが、能動型糖輸送体は神経伝達物質によりICMやAPMへの移動が認められた。加齢に伴って刺激によるその移動は低下した。3)刺激に伴う糖輸送体の細胞内移動の阻害上述の移動はサイトカラシンDやツブロゾールCで前処理した切片では認められず、ツニカマイシンで処理してもこの移動は阻害された。以上のことから唾液腺において糖の輸送は神経系及び内分泌系によって調節されており、糖の輸送が亢進している時にはAPMとBLMで糖輸送体の増量が認められた。本研究は唾液腺に存在する糖輸送体の種類を同定し、各種刺激に伴う糖輸送体(GLUT-15、SGLT-1)の動態とその機能発現機序及び病態を解明することを目的に行うもので、本年度は下記の成果を得た。1)糖輸送体の耳下腺における局在ラット耳下線より分画した管腔膜(APM)、基底膜(BLM)、細胞内顆粒膜(ICM)をSDS-PAGEに供し、ニトロセルロース膜に転写後、特異的抗体である抗GLUT-15抗体、抗SGLT-1抗体を用いてウエスタンブロッティングにて糖輸送体の局在を検索したところ、GLUT-1はAPM、ICM及びBLMに、GLUT-5はBLMに、SGLUT-1はAPMとICMに発現していることが認められた。2)刺激に伴う糖輸送体の細胞内移動耳下腺切片をアセチルコリン(ACh)又はエピネフリン(Epi)と加温振盪し、上述の方法で糖輸送体の動態を検索するとAChやEpiでは反応開始後1分でGLUT-1はICMよりAPMやBLMへ移動しAPMにおけるGLIUT-1の量が対象群より23倍上昇した。ところが、GLUT-5には移動は認められず、SGLT-1はEpiでは反応開始後5分でICMよりAPMへの移動が認められた。3) BLMにおける糖輸送体量の測定耳下腺切片をAChと加温振盪後BLMを調製し、サイトカラシンBとの結合実験に供した。AChと反応させたBLMにおいてはKd値は対照群と有意の差が認められなかったが、Bmax値は増量が認められた。4)刺激に伴う糖輸送体の細胞内移動の阻害GLUT-1のAChによる移動はサイトカラシンDで前処理した切片では認められずこの移動へのアクチンフィラメントの関与が示唆された。また、スタウロスポリンやH-7で前処理した切片でもこの移動は認められず、細胞内移動過程でりん酸化が関与していることを示唆した。本研究は唾液腺に存在する糖輸送体の種類を同定し、各種刺激に伴う糖輸送体の動態とその機能発現機序及び病態を解明することを目的に行い、下記の成果を得た。1)糖輸送体の耳下腺における局在と加齢変化4,8,52,104週齢のラット耳下腺より分画した管腔膜(APM)、基底膜(BLM)、細胞内顆粒膜(ICM)をSDS-PAGEに供し、ニトロセルロース膜に転写後、抗GLUT15抗体、抗SGLT1抗体を用いてウエスタンブロッティングにて糖輸送体の局在を検索したところ、いずれの週齢においてもGLUT1はAPM、ICM及びBLMに、GLUT5はBLMに、SGLUT1はAPMとICMに発現していることが認められた。しかし、AMPとBLMにおいて、糖輸送体量に加齢変化が認められ、ICMでは加齢変化は認められなかった。2)刺激に伴う糖輸送体の細胞内移動と加齢変化耳下腺切片をアセチルコリン(ACh)又はエピネフリン(Epi)と加湿振盪し、上述の方法で、糖輸送体の動態を検索すると、これらの神経伝達物質で促進輸送型糖輸送体はICMよりAPMやBLMへ移動しAPMにおける促進輸送型糖輸送体の量が対象群より上昇した。ところが、能動型糖輸送体は神経伝達物質によりICMやAPMへの移動が認められた。加齢に伴って刺激によるその移動は低下した。
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KAKENHI-PROJECT-10771014
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10771014
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唾液腺における糖輸送体の動態と病態
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3)刺激に伴う糖輸送体の細胞内移動の阻害上述の移動はサイトカラシンDやツブロゾールCで前処理した切片では認められず、ツニカマイシンで処理してもこの移動は阻害された。以上のことから唾液腺において糖の輸送は神経系及び内分泌系によって調節されており、糖の輸送が亢進している時にはAPMとBLMで糖輸送体の増量が認められた。
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KAKENHI-PROJECT-10771014
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10771014
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非構造性帯水層への炭酸ガス地中貯留のメカニズム解明のための研究
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本研究では,我が国における炭酸ガスの貯留・固定化技術に寄与することを目的とし,特に非構造性帯水層への炭酸ガスの貯留技術を確立するために,岩石内での炭酸ガスの流動,貯留,間隙水中への溶解について室内実験からそのメカニズムを明らかにした。その結果,炭酸ガスは岩石中を選択的に浸透しながら浸透するとともに岩石内に貯留し,岩石の空隙の約3割程度を飽和させることを明らかにした。我が国におけるCO2の貯留・固定化技術に寄与することを目的とし,特に非構造性帯水層へのCO2の貯留技術を確立するために,岩石内でのCO2の流動,貯留,間隙水中への溶解について室内実験からそのメカニズムを明らかにし,必要となる各種特性値を求め,そのメカニズムを考慮した新しいモデルを構築する。さらに,数値解析によるシミュレーションを行い,原位置におけるCO2の貯留シミュレーション技術を確立し,非構造性帯水層へのCO2の貯留・固定化技術に資することを目的として研究を行った。本年度は,開発した汎用透水試験装置のシリンジポンプ容量の増加とCO2を回収するための装置を増設するとともに,これまで行ってきた試験体のシーリング方法をより耐久性のあり,効果的なものへと改良を行った。これを用いて,本年度は,水で飽和された試験体に対して,CO2を気体,液体,超臨界流体の単一相の条件下で注入し,飽和岩石に対するCO2の透過・貯留特性を明らかにした。その結果,超臨界CO2注入下での試験体両端の差圧は段階的に変化し,最終的に定常状態となることが確認された。また,実験結果に対し,二層流に対応したフローポンプ法の厳密解を用いて,水,CO2それぞれの相対浸透率,試験体の比貯留率を算出した。その結果,これらの特性値の変化から,試験体内に流入した超臨界CO2は,岩石内の微小な空隙内に浸透し,貯留されながら透過していく現象を定量的に明らかにすることができた。我が国におけるCO2の貯留・固定化技術に寄与することを目的とし,特に非構造性帯水層へのCO2の貯留技術を確立するために,岩石内でのCO2の流動,貯留,間隙水中への溶解について室内実験からそのメカニズムを明らかにし,必要となる各種特性値を求め,そのメカニズムを考慮した新しいモデルを構築する。さらに,数値解析によるシミュレーションを行い,原位置におけるCO2の貯留シミュレーション技術を確立し,非構造性帯水層へのCO2の貯留・固定化技術に資することを目的とする。本年度は,昨年度改良した実験装置を用いて,CO2注入実験を行い,その実験結果から,岩石内へどの程度のCO2が貯留されるか定量的に計測できることを確認し,CO2飽和度の時間変化をとらえることができた。また,この実験結果を数値シミュレーションにより再現した。我が国における炭酸ガスの貯留・固定化技術に寄与することを目的とし,特に非構造性帯水層への炭酸ガスの貯留技術を確立するために,岩石内での炭酸ガスの流動,貯留,間隙水中への溶解について室内実験からそのメカニズムを明らかにし,必要となる各種特性値を求め,そのメカニズムを考慮した新しいモデルを構築する。さらに,数値解析によるシミュレーションを行い,原位置における炭酸ガスの貯留シミュレーション技術を確立し,非構造性帯水層への炭酸ガスの貯留・固定化技術に資することを目的とする。本年度は,昨年度までと同様に炭酸ガス注入実験を行い,岩石内の炭酸ガスの貯留現象を明らかにし,炭酸ガスの岩石内への貯留挙動を明らかにした。その結果として岩石内の炭酸ガスの貯留量を定量的に空きあらかにすることができた。そして,透過実験中において炭酸ガスが岩石中にどのようなメカニズムで浸透,貯留されているかを明らかにするために,炭酸ガス注入時の弾性波速度の変化,電気インピーダンスの測定を行い,その時間変化を明らかにした。また,注入流量の違いが炭酸ガスの飽和にどのような影響を与えるかについても実験を行った。その結果と各種提案されている数値モデルを用いて岩石中の炭酸ガスの混合形態を評価した結果,Reuss modelに近い混合形態をとることを明らかにした。このことは,炭酸ガスの岩石内における貯留挙動が,一様な透過・貯留形態をとるのではなく選択的な経路をとりながら岩石中に炭酸ガスが貯留していくことを明らかにした。本研究では,我が国における炭酸ガスの貯留・固定化技術に寄与することを目的とし,特に非構造性帯水層への炭酸ガスの貯留技術を確立するために,岩石内での炭酸ガスの流動,貯留,間隙水中への溶解について室内実験からそのメカニズムを明らかにした。その結果,炭酸ガスは岩石中を選択的に浸透しながら浸透するとともに岩石内に貯留し,岩石の空隙の約3割程度を飽和させることを明らかにした。今まで計測することができなかった,岩石中のCO2量を計測することができ,どのような現象が岩石内で発生しているかを定量的に把握することができた。また,その結果を国際会議2件,国内会議1件に成果報告を行うことができた。27年度が最終年度であるため、記入しない。土木工学実験で得られた諸特性値をもとに,透過・貯留・溶解モデルの開発を行う。これには岩石中への透過,貯留,溶解モデルを組み合わせたモデルを想定しており,超臨界流体が一部間隙中に貯留され,部分的に地層水に溶解しながらも透過していく過程を再現できるモデルを検討する。
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KAKENHI-PROJECT-25289331
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25289331
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非構造性帯水層への炭酸ガス地中貯留のメカニズム解明のための研究
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実験装置の改良はほぼ予定通り行ったが,CO2の回収については,まだ不十分な点があり,今後の改良余地が残されている。また,長期間の実験となるため,確認試験も含めて2回の実験しか出来なかった。そのため,来年度再度確認試験を行う必要がある。しかしながら,基本的なCO2の透過・貯留特性については,把握することができ,その基本的な特性をとらえることができた。27年度が最終年度であるため、記入しない。年度をまたいだ長期間の実験となるため,実験終了後に必要となる実験用消耗品用の予算を残した。27年度が最終年度であるため、記入しない。確認試験を行う中で,圧入実験時の注入圧力,注入速度,注入方向を変化させた実験の必要性が確認された。さらに,試験体のシール方法を変えたことで,これまでに得られていた実験結果と異なる傾向がみられ,以前の実験では,側面流(試験体側面を流動する流れ)が生じていた可能性があることがわかった。そのため,実験の再現性を確認する実験が必要となる。また,挙動の定式化による解析解を用いたシミュレーションでは,十分な解が得られない可能性があるので,数値シュミレーションによる検討が必要であることから,今後は,数値シミュレーション手法も視野に入れた特性把握が必要となる。さらに,CO2の溶解度特性との関係を検討する必要があるため,塩水環境下での検討も考える。実験装置の消耗品として使用する予定である27年度が最終年度であるため、記入しない。本年度使用した実験装置を取り扱い業者へメインテナンスに出すための費用として必要となるため確保した。余剰金については,シリンジポンプおよびバルブのメインテナンス費用として使用する予定である。
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KAKENHI-PROJECT-25289331
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25289331
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核融合研究に関する総合総括的推進
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本年度は核融合特別研究10年計画の最終年度として、総合的とりまとめの年に当り、6分野の研究項目を中心にその積極的推進を計るべく、総合総括班会議を3回開催し、我が国の核融合研究の総合的推進に努めた。本特別研究で得られた成果を確実に把握し、適切な展開方向を明示するために、評価委員による現場視察を含む評価活動を充実させ、評価委員のみによる評価委員会議を3回、各班長をも含む評価委員会を1回、開催した。さらに、総合総括班事業として下記の課題を取り上げ、研究会及び作業を行った。(事業番号と事業内容及び実績を示す)。元ー1「RTNS-IIによる核融合炉関連研究成果の総括」RTNS-II協力研究の成果の評価・検討を総括する場を提供し、研究成果の総合的な検討・評価を行った。元ー2「核融合実験における放射線計測・ワーク・・ショップ」炉心工学と放射線計測との相互協力のための課題を整理し、まとめた。元ー3「核融合開発のためのコード開発」昭和57年度から7年にわたって実施した述べ28の整備済コードの点検を行い、全コードの概要及び使用手引きの修正版を作成した。元ー4「電場・磁場の生体影響」非電離放射線や磁場の安全基準の核融合研究環境での適合性の現状把握に努めた。元ー5「トリチウムの測定と安全取扱いの指針」トリチウムの生成から環境動態、生物影響、トリチウム施設での取扱いの注意について解説書を出版した。また、常温核融合研究の推進をはかるため、全国の常温核融合研究者を組織化し、常温核融合の機構解明及び追試実験を進めた。本年度は核融合特別研究10年計画の最終年度として、総合的とりまとめの年に当り、6分野の研究項目を中心にその積極的推進を計るべく、総合総括班会議を3回開催し、我が国の核融合研究の総合的推進に努めた。本特別研究で得られた成果を確実に把握し、適切な展開方向を明示するために、評価委員による現場視察を含む評価活動を充実させ、評価委員のみによる評価委員会議を3回、各班長をも含む評価委員会を1回、開催した。さらに、総合総括班事業として下記の課題を取り上げ、研究会及び作業を行った。(事業番号と事業内容及び実績を示す)。元ー1「RTNS-IIによる核融合炉関連研究成果の総括」RTNS-II協力研究の成果の評価・検討を総括する場を提供し、研究成果の総合的な検討・評価を行った。元ー2「核融合実験における放射線計測・ワーク・・ショップ」炉心工学と放射線計測との相互協力のための課題を整理し、まとめた。元ー3「核融合開発のためのコード開発」昭和57年度から7年にわたって実施した述べ28の整備済コードの点検を行い、全コードの概要及び使用手引きの修正版を作成した。元ー4「電場・磁場の生体影響」非電離放射線や磁場の安全基準の核融合研究環境での適合性の現状把握に努めた。元ー5「トリチウムの測定と安全取扱いの指針」トリチウムの生成から環境動態、生物影響、トリチウム施設での取扱いの注意について解説書を出版した。また、常温核融合研究の推進をはかるため、全国の常温核融合研究者を組織化し、常温核融合の機構解明及び追試実験を進めた。
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KAKENHI-PROJECT-01050013
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01050013
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カルシウム結合蛋白質の金属配位構造の安定性とその動的構造方化ー遺伝子操作法によるカルモデュリンの酵素活性化機構の研究
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カルモデユリンは、細胞内情報伝達にかかわるカルシウム結合蛋白質の代表的なものである。細胞外からの刺激で細胞内のカルシウムイオン濃度が上昇すると、カルモデユリンは4モルのカルシウムイオンと結合してその高次構造を変え、多くの種類の標的酵素を活性化する。この研究の目的は、カルモデユリンの酵素活性化機構を明きらかにすることである。この目的のために、遺伝子工学的な手法でカルモデユリンの変異体蛋白質をつくり、カルモデ優リンがカルシウムイオンを結合してから酵素の活性化に至る過程と、そのときの動的な構造方化を追跡するという手段をとった。平成3年度は、パン酵母カルモデユリンの第4番目のカルシウム結合サイトの構造を中心とした変異体を多数つくった。酵母カルモデユリンのこのサイトにはカルシウムが結合せず、脊椎動物由来の標的酵素を活性化する能率はきわめて悪いので、これを改善する方向で変異を加えていった。できあがった。変異体のうちで、この第4サイト部分を脊椎動物(鶏)カルモデユリンの第1第3サイト部分につないだ形の組換体(C4Y)とその誘導体が興味深い性質をもっていた。C4Yは、酵母カルモデユリンと同様にカルシウムを3モルしか結合せず、酵素を活性化する能率もきわめて悪い。しかし、このC4Yの第4カルシウム結合サイト内のアミノ酸残基を1残基とり換えてえられた変異体C4Y140Eは、脊椎動物カルモデユリンと同様に4モルのカルシウムイオンを結合し、高い酵素活性化能を示すことがわかった。アミノ酸残基1つのちがいで、このような性質のはっきり異なる2種類の蛋白質がえられたので、これらを試料にしてNMR法により、カルシウム結合による構造変化と、標的酵素およびモデル物質との相互作用に関する知見をもとめる作業を継続している。カルモデユリンは、細胞内情報伝達にかかわるカルシウム結合蛋白質の代表的なものである。細胞外からの刺激で細胞内のカルシウムイオン濃度が上昇すると、カルモデユリンは4モルのカルシウムイオンと結合してその高次構造を変え、多くの種類の標的酵素を活性化する。この研究の目的は、カルモデユリンの酵素活性化機構を明きらかにすることである。この目的のために、遺伝子工学的な手法でカルモデユリンの変異体蛋白質をつくり、カルモデ優リンがカルシウムイオンを結合してから酵素の活性化に至る過程と、そのときの動的な構造方化を追跡するという手段をとった。平成3年度は、パン酵母カルモデユリンの第4番目のカルシウム結合サイトの構造を中心とした変異体を多数つくった。酵母カルモデユリンのこのサイトにはカルシウムが結合せず、脊椎動物由来の標的酵素を活性化する能率はきわめて悪いので、これを改善する方向で変異を加えていった。できあがった。変異体のうちで、この第4サイト部分を脊椎動物(鶏)カルモデユリンの第1第3サイト部分につないだ形の組換体(C4Y)とその誘導体が興味深い性質をもっていた。C4Yは、酵母カルモデユリンと同様にカルシウムを3モルしか結合せず、酵素を活性化する能率もきわめて悪い。しかし、このC4Yの第4カルシウム結合サイト内のアミノ酸残基を1残基とり換えてえられた変異体C4Y140Eは、脊椎動物カルモデユリンと同様に4モルのカルシウムイオンを結合し、高い酵素活性化能を示すことがわかった。アミノ酸残基1つのちがいで、このような性質のはっきり異なる2種類の蛋白質がえられたので、これらを試料にしてNMR法により、カルシウム結合による構造変化と、標的酵素およびモデル物質との相互作用に関する知見をもとめる作業を継続している。
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KAKENHI-PROJECT-03241201
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03241201
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ウニ・アリールスルファターゼ遺伝子の反口側外胚葉特異的発現を司る分子機構
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我々が以前に行ったゲルシフト分析から、ウニ・アリールスルファターゼ(HpArs)遺伝子のエンハンサーに結合する転写活性化因子Otxは初期型と後期型があることが示されていたが、今年度の研究では初期型OtxEと後期型OtxLの2種類のcDNAをクローニングすることに成功した。これら2種類のOtxタンパク質のアミノ酸配列は、ホメオドメインを含めてホメオドメインからC末端まではまったく同じで、ホメオドメインよりN末端が異なっていた。次に、Otxタンパク質の機能を探るために強制発現の実験を行った。初期型OtxEのmRNAを受精卵に顕微注入し、OtxEを過剰発現させた胚では、HpArs遺伝子の転写活性化は起こらなかったが、すべての細胞が反口側外胚葉になった。OtxLを過剰発現させた胚では、HpArs遺伝子の転写が活性化した。この結果から、OtxEは細胞運命を決定する機能をもち、OtxLは転写活性化因子であることが明らかになった。OtxE、OtxLの空間的発現パターンをin situハイブリダイゼイションにより解析したところ、OtxEは卵割期には胚全体で、胞胚期には植物極盤で発現しており、以降消失した。OtxLは胞胚期から間充織細胞を除く胚のすべての細胞で発現が見られた。OtxLの時間的、空間的発現パターンはHpArs遺伝子の発現領域をすべて包含していることから、転写活性化因子である可能性が示唆された。しかし、完全には一致していないので、反口側外胚葉特異的に転写を活性化する機構には、他の因子が必要であることが明らかになった。遺伝子発現調節のカスケードを遡るために遺伝子をクローリングしたところ、初期型、後期型のOtxはともに一種類のOtx遺伝子の転写産物で、転写開始点とスプライシングサイトを変えることで2種類のOtxが合成されることが明らかになった。我々が以前に行ったゲルシフト分析から、ウニ・アリールスルファターゼ(HpArs)遺伝子のエンハンサーに結合する転写活性化因子Otxは初期型と後期型があることが示されていたが、今年度の研究では初期型OtxEと後期型OtxLの2種類のcDNAをクローニングすることに成功した。これら2種類のOtxタンパク質のアミノ酸配列は、ホメオドメインを含めてホメオドメインからC末端まではまったく同じで、ホメオドメインよりN末端が異なっていた。次に、Otxタンパク質の機能を探るために強制発現の実験を行った。初期型OtxEのmRNAを受精卵に顕微注入し、OtxEを過剰発現させた胚では、HpArs遺伝子の転写活性化は起こらなかったが、すべての細胞が反口側外胚葉になった。OtxLを過剰発現させた胚では、HpArs遺伝子の転写が活性化した。この結果から、OtxEは細胞運命を決定する機能をもち、OtxLは転写活性化因子であることが明らかになった。OtxE、OtxLの空間的発現パターンをin situハイブリダイゼイションにより解析したところ、OtxEは卵割期には胚全体で、胞胚期には植物極盤で発現しており、以降消失した。OtxLは胞胚期から間充織細胞を除く胚のすべての細胞で発現が見られた。OtxLの時間的、空間的発現パターンはHpArs遺伝子の発現領域をすべて包含していることから、転写活性化因子である可能性が示唆された。しかし、完全には一致していないので、反口側外胚葉特異的に転写を活性化する機構には、他の因子が必要であることが明らかになった。遺伝子発現調節のカスケードを遡るために遺伝子をクローリングしたところ、初期型、後期型のOtxはともに一種類のOtx遺伝子の転写産物で、転写開始点とスプライシングサイトを変えることで2種類のOtxが合成されることが明らかになった。
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KAKENHI-PROJECT-08680795
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08680795
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核統計的平衡の概念を用いた原子力システムと宇宙元素合成過程との比較分類研究
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原子力システムにおける核反応現象と宇宙における核反応現象である元素合成過程との比較を、核統計的平衡等の概念を用いて引き続き行った。平成12年度では、核統計的平衡の概念を用いて、宇宙における元素合成過程と同様に原子力システム内での核反応現象の理解を試みた。しかし、厳密に核統計的平衡が成立するためには、原子核内の核子が全てバラバラに分解出来るほど高温である必要がある。そのためには最低6億度、即ち600keV必要である。一方、原子力システムの中でも高エネルギーである高速炉においても、エネルギーは高々200keVであり、高速炉内での平衡分布を再現するのに核統計的平衡を用いるべきでなかった。そこで、今年度は、核統計的平衡より低温でも成立する準核統計的平衡の概念を用いて、高速炉内の核反応現象との比較を行った。準核統計的平衡では、原子核内の核子が全てバラバラに分解出来るほど高温である必要はなく、原子核の外周部の核子が分離出来る程度で成立する。しかし、準核統計的平衡も400keV以上でないと成立せず、高速炉内でこの平衡が成立するとは言い難い。本研究では、準核統計的平衡を計算するプログラムを作成し、計算された平衡分布と高速炉内の核分裂生成物の平衡分布との比較を行った。その結果、高速炉内平衡分布に存在する中性子魔法数N=50に起因するピークは、準核統計的平衡分布でも再現できたが、高速炉平衡分布内の中性子魔法数N=82に起因するピークは再現できないことが分かった。高速炉内平衡分布等、原子力システム内での核反応現象を再現するためには、恐らく、より低い温度で成立する統計平衡状態あるいは非平衡状態を必要とし、核統計的平衡とは離れたものである。従って、核統計的平衡が比較的成り立つ宇宙での元素合成過程は、原子力システム内の核反応過程とはあまり類似しているとは言い難いと考えられる。原子力システムにおける核反応現象と宇宙における核反応現象である元素合成過程との比較を、核統計的平衡の概念を用いて行なう研究の第1段階を行った。ここで核統計的平衡状態とは、光子が豊富に存在するある一定の温度の環境下で、Z個の陽子とN個の中性子がバラバラに存在している状態と、それらが結合して質量数(A=Z十N)の原子核として存在する状態がバランスしている状態のことである。この核的統計平衡の概念を用いると宇宙元素合成過程が分類できることが知られている。この概念を原子力システムにも適用することが本研究の新しい試みである。そのためにまず、核統計的平衡状態における核種分布の計算を行った。計算には水素からウランまでの1839核種を対象とし、この平衡状態における3つのパラメーターである核子数と光子数比(φ=Nn/Nγ)、温度(T)、初期の陽子数と中性子数比(Yp/Yn)を変化させた。ここで、この平衡状態では核反応断面積には依存しないことが特徴である。その結果、φ=10^3、T=5×10^<6^O>K、Yp/Yn=0.5の平衡状態での核種分布が、高速増殖炉内での核分裂生成物の生成/変換平衡状態での分布と比較的近いことが分かった。この核分裂生成物の平衡分布は、関連する以前の研究で1群近似により求めたものである。特に核分裂生成物分布に存在するN=50の中性子魔法数おける強いピークと、Z=50の陽子魔法数における弱いピークを核統計的平衡分布でも再現できた。しかし、核分裂生成物のN=82の中性子魔法数の強いピークは、再現できなかった。またこの核分裂生成物の分布は、宇宙元素合成過程の1つであるs-過程生成物の分布とも近いものであることが我々の以前の研究で分かっており、核統計的平衡分布は原子力システムと宇宙元素合成の両方にとって有用な概念であることが分かった。原子力システムにおける核反応現象と宇宙における核反応現象である元素合成過程との比較を、核統計的平衡等の概念を用いて引き続き行った。平成12年度では、核統計的平衡の概念を用いて、宇宙における元素合成過程と同様に原子力システム内での核反応現象の理解を試みた。しかし、厳密に核統計的平衡が成立するためには、原子核内の核子が全てバラバラに分解出来るほど高温である必要がある。そのためには最低6億度、即ち600keV必要である。一方、原子力システムの中でも高エネルギーである高速炉においても、エネルギーは高々200keVであり、高速炉内での平衡分布を再現するのに核統計的平衡を用いるべきでなかった。そこで、今年度は、核統計的平衡より低温でも成立する準核統計的平衡の概念を用いて、高速炉内の核反応現象との比較を行った。準核統計的平衡では、原子核内の核子が全てバラバラに分解出来るほど高温である必要はなく、原子核の外周部の核子が分離出来る程度で成立する。しかし、準核統計的平衡も400keV以上でないと成立せず、高速炉内でこの平衡が成立するとは言い難い。本研究では、準核統計的平衡を計算するプログラムを作成し、計算された平衡分布と高速炉内の核分裂生成物の平衡分布との比較を行った。その結果、高速炉内平衡分布に存在する中性子魔法数N=50に起因するピークは、準核統計的平衡分布でも再現できたが、高速炉平衡分布内の中性子魔法数N=82に起因するピークは再現できないことが分かった。
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KAKENHI-PROJECT-12878082
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12878082
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核統計的平衡の概念を用いた原子力システムと宇宙元素合成過程との比較分類研究
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高速炉内平衡分布等、原子力システム内での核反応現象を再現するためには、恐らく、より低い温度で成立する統計平衡状態あるいは非平衡状態を必要とし、核統計的平衡とは離れたものである。従って、核統計的平衡が比較的成り立つ宇宙での元素合成過程は、原子力システム内の核反応過程とはあまり類似しているとは言い難いと考えられる。
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KAKENHI-PROJECT-12878082
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12878082
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立体構造予測からのタンパク質立体構造構築原理の探求
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本研究課題の目的は、タンパク質の立体構造予測を物理化学的観点から行うことによって、タンパク質の立体構造構築原理を理解しようとするものであった。この目的のために本課題では、現時点で最も有効な第一原理的立体構造予測の手法として知られているフラグメントアセンブリ法の基礎的な側面からと応用的な側面からの両方の研究を行った。基礎的な側面からの研究は、現状のフラグメントアセンブリ法では局所構造予測を配列情報を用いて行っているが、新規フォールドでは局所構造予測に失敗する場合が多いので、この問題を解決するために新しい全原子モデルを用いた非経験的局所構造予測の方法論を開発することによって、局所構造の物理化学的法則を明らかにしようした。未だ実用的な観点からは改良の余地は多々あるが、天然構造における局所構造の物理化学的特長として水素結合の満足度が重要であり、その際に今までは一般的に軽視されてきた弱い水素結合も無視できないことが明らかとなった。応用的な側面からのアプローチとしては、具体的なターゲットをカルモジュリンのアロステリック反応に選んだ。アロステリック反応をミクロな立場から明らかにするために、我々はフラグメントアセンブリ法を用いてこの系のシミュレーションを行い、自由エネルギーランドスケープなどの解析を行った。その結果、小さな局所的構造変化が徐々に伝播し、大きな構造変化を引き起こすメカニズムが示唆された。一般的にアロステリック変化においては、何が伝播して遠く離れた位置の構造変化が引き起こるのか不明であったが、今回示したような局所構造伝播は他のタンパク質でも考えられるメカニズムであるので、本研究によってアロステリック変化の一般論の理解への足がかりができたと考えられる。タンパク質の第一原理的立体構造予測の方法の開発を通してタンパク質の立体構造構築原理を探る研究を行ってきた。特に現在最も有力とされている第一原理的立体構造予測法であるフラグメントアセンブリ法を深く理解し、この方法の問題点を明らかにし、改良しようとすることによって、立体構造予測の精度を上げると共にタンパク質の立体構造構築のメカニズムを明らかにしようとしてきた。フラグメントアセンブリ法の方法の問題点のひとつとして、フラグメント構造の選択に配列検索などの経験的方法を使っているという点が挙げられる。この方法論では、特に新規フォールドを予測する際、正解構造に近いフラグメント構造を用意することが困難な場合が多く、それが原因で結果的に全体構造の予測に失敗する、ということが知られている。このことをモチベーションに、本年度は配列検索ではなく、物理化学的にフラグメント構造を予測する新しい方法の開発に取り組んできた。具体的にはまずPDBに登録されているタンパク質から10残基のフラグメントを抽出し、タンパク質の局所構造のとりうるであろう主鎖構造のデータベースを作成した。次に予測したいタンパク質の局所配列をそれらのフラグメント構造に対して全原子モデルでエネルギー計算を行い、天然構造とはどのようなエネルギー的な特徴をそなえているのかを調べた。その結果、天然構造は他の非天然構造と比べると、局所構造でみてもパッキングがよくされており、ファンデアワールス力によって天然構造のフラグメントを予測できる可能性を示唆する結果が得られた。また、フラグメントアセンブリ法の応用研究として、アロステリック転移をフラグメントアセンブリ法を用いて記述することを試みた。具体的な系としてカルモジュリンをターゲットにアロステリックな構造転移が見られるかを自由エネルギーランドスケープを解析することによって調べた。その結果、この方法論でアロステリック転移をよく記述できることがわかり、局所構造の変化の伝達がアロステリック転移において重要な役割を果たしているという示唆を得た。本研究課題の目的は、タンパク質の立体構造予測を物理化学的観点から行うことによって、タンパク質の立体構造構築原理を理解しようとするものであった。この目的のために本課題では、現時点で最も有効な第一原理的立体構造予測の手法として知られているフラグメントアセンブリ法の基礎的な側面からと応用的な側面からの両方の研究を行った。基礎的な側面からの研究は、現状のフラグメントアセンブリ法では局所構造予測を配列情報を用いて行っているが、新規フォールドでは局所構造予測に失敗する場合が多いので、この問題を解決するために新しい全原子モデルを用いた非経験的局所構造予測の方法論を開発することによって、局所構造の物理化学的法則を明らかにしようした。未だ実用的な観点からは改良の余地は多々あるが、天然構造における局所構造の物理化学的特長として水素結合の満足度が重要であり、その際に今までは一般的に軽視されてきた弱い水素結合も無視できないことが明らかとなった。応用的な側面からのアプローチとしては、具体的なターゲットをカルモジュリンのアロステリック反応に選んだ。アロステリック反応をミクロな立場から明らかにするために、我々はフラグメントアセンブリ法を用いてこの系のシミュレーションを行い、自由エネルギーランドスケープなどの解析を行った。その結果、小さな局所的構造変化が徐々に伝播し、大きな構造変化を引き起こすメカニズムが示唆された。一般的にアロステリック変化においては、何が伝播して遠く離れた位置の構造変化が引き起こるのか不明であったが、今回示したような局所構造伝播は他のタンパク質でも考えられるメカニズムであるので、本研究によってアロステリック変化の一般論の理解への足がかりができたと考えられる。
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KAKENHI-PROJECT-18870011
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18870011
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炭素イオン線治療で悪性脳腫瘍を完治させるための基礎的研究
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1)炭素イオン線の、未熟な脳神経細胞に対する殺細胞効果は、アポトーシスを指標とした場合、X線の約10倍大きかった。2)グリア細胞は、細胞の成熟度によるX線に対する感受性の差はほとんどなく、神経細胞と比べると、ややX線感受性は低かった。3)ヌードマウス皮下移植腫瘍においては、テモダール(TMZ)併用時の、炭素イオン線のX線に対する生物学的効果比(RBE)は約3であり、TMZ非併用時とほぼ同等であった。また、TMZの併用効果は、相加効果であった。マウス脳内移植モデルにおいて、X線照射時では、TMZ併用により1.6倍の腫瘍縮小効果が認められた。また、TMZにさらにGYKI52466を併用することで、約10%の腫瘍縮小効果増強が認められた。腫瘍細胞の遊走については、X線単独で増強したが、TMZもしくはGYKI52466を併用することで完全に抑制された。4)ヒトでの通常の使用量(体重あたり)のTMZ併用時には、非併用時に比べ、明らかな炭素イオン線の効果増強作用は認められなかった。5) X線照射によりAkt, PDK1の発現増強が認められ、また、PDK1の発現増強は脳腫瘍細胞の遊走能増加と関連し、臨床検体における活性型Akt・PDK1発現の増強は、神経膠芽腫患者における予後不良因子であった。1)炭素イオン線の、未熟な脳神経細胞に対する殺細胞効果は、アポトーシスを指標とした場合、X線の約10倍大きかった。2)グリア細胞は、細胞の成熟度によるX線に対する感受性の差はほとんどなく、神経細胞と比べると、ややX線感受性は低かった。3)ヌードマウス皮下移植腫瘍においては、テモダール(TMZ)併用時の、炭素イオン線のX線に対する生物学的効果比(RBE)は約3であり、TMZ非併用時とほぼ同等であった。また、TMZの併用効果は、相加効果であった。マウス脳内移植モデルにおいて、X線照射時では、TMZ併用により1.6倍の腫瘍縮小効果が認められた。また、TMZにさらにGYKI52466を併用することで、約10%の腫瘍縮小効果増強が認められた。腫瘍細胞の遊走については、X線単独で増強したが、TMZもしくはGYKI52466を併用することで完全に抑制された。4)ヒトでの通常の使用量(体重あたり)のTMZ併用時には、非併用時に比べ、明らかな炭素イオン線の効果増強作用は認められなかった。5) X線照射によりAkt, PDK1の発現増強が認められ、また、PDK1の発現増強は脳腫瘍細胞の遊走能増加と関連し、臨床検体における活性型Akt・PDK1発現の増強は、神経膠芽腫患者における予後不良因子であった。炭素イオン線による悪性脳腫瘍の治療戦略を作成する上で、(1)脳組織の炭素イオン線耐容線量(今後併用されるであろう新規抗がん剤併用時の)(2)(新規抗がん剤併用時の)悪性脳腫瘍細胞の遊走能抑制を目的に、20年度は、1)正常脳神経細胞における、炭素イオン線のX線に対する生物学的効果比(RBE)アポトーシスを指標とし、放射線感受性を検討したところ、未熟(生後7日目)な脳神経細胞では炭素イオン線の脳神経細胞殺傷効果は、X線の約56倍であった。2)正常グリア細胞のX線感受性(正常神経細胞との比較も含む)グリア細胞は細胞の成熟度によるX線に対する感受性の差はほとんどなく、神経細胞と比べると、ややX線線感受性は低かった。炭素イオン線での検討は、次年度に持ち越した。3)ヒト悪性脳腫瘍細胞における、テモダール併用時の炭素イオン線の生物学的効果比(RBE)ヌードマウス皮下移植腫瘍においては、テモダール併用時のRBEは約3であり、テモダール非併用時とほぼ同等であった。また、テモダールの併用効果は、相加効果であった。4)正常ラット脳組織における、テモダール併用時の炭素イオン線の効果ヒトでの通常の使用量(体重あたり)のテモダール併用時には、非併用時に比べ、明らかな炭素イオン線の効果増強作用は認められなかった。5)ヒト悪性脳腫瘍細胞における、X線によるAkt, PDK1の発現X線によりAkt, PDK1の発現増強が認められた。炭素イオン線での検討は、次年度に持ち越した。炭素イオン線による悪性脳腫瘍の治療戦略を作成するうえでため、(1)脳組織の炭素イオン線耐容線量に関する検討(追加解析)、(2)(新規抗がん剤併用時の)悪性脳腫瘍細胞の遊走能抑制・照射効果増強に関する検討、などについて研究を行った。1)正常脳神経細胞における、炭素イオン線のX線に対する生物学的効果比(RBE)前年度の結果に追加解析を行った。アポトーシスを指標とした場合、炭素イオン線の、未熟(生後7日目)な脳神経細胞に対する殺細胞効果は、X線の約10倍と著名に高く、脳腫瘍に対する重粒子線治療を行う際には、未熟な神経細胞が存在する海馬付近への照射線量を減らす必要があることが判明した。(論文投稿中)2)ヒト悪性脳腫瘍細胞・マウス脳内移植モデルにおける、テモダール(TMZ)およびAMPAR拮抗薬(GYKI52466)併用放射線治療マウス脳内移植モデルにおいて、TMZ併用により1.6倍の腫瘍縮小効果が認められた。
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KAKENHI-PROJECT-20790877
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20790877
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炭素イオン線治療で悪性脳腫瘍を完治させるための基礎的研究
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また、TMZにさらにGYKI52466を併用することで、約10%の腫瘍縮小効果増強が認められた。腫瘍細胞の遊走については、X線単独で増強したが、TMZもしくはGYKI52466を併用することで完全に抑制された。X線単独では、抗腫瘍が小さいだけでなく腫瘍細胞の遊走能増強をもたらすことが、再発の一因であることが示唆され、TMZ等の併用が必要であることが示唆された。炭素イオン線による実験については、現在施行中である。3)ヒト悪性脳腫瘍細胞における、X線によるAkt,PDK1の発現X線によりAkt,PDK1の発現増強が認められ、また、PDK1の発現増強は脳腫瘍細胞の遊走能増加と関連し、臨床検体における活性型Akt・PDK1発現の増強は予後不良因子であった。(論文投稿中)
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KAKENHI-PROJECT-20790877
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20790877
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教員養成と21世紀型スキルを考慮したICT活用指導力向上プログラムの開発と評価
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本研究では,21世紀型スキルを考慮したICT活用指導力向上プログラムを開発した.結果,次の成果が得られた.1)大学生のデジタルネイティブの特徴分析を行ったところ,教員養成系の大学生のリテラシーの課題が明確になり,最先端のICT活用などを直接体験する授業が効果的であることが分かった.2)「授業リフレクションシステム」を活用して自分や他者の模擬授業を評価したところ,これまで気付かなかった自分の模擬授業の改善点に気づくことなどが分かった.3)児童にICTを活用させる模擬授業を実践することで,教師のICT活用のみならず,児童のICT活用に対する指導力についても意識が向上することが明らかになった.本研究では,ICT活用指導力のある教員の育成を目指したプログラムの開発と評価を行うことを目的としている.具体的には,1)学生のICTスキル習得状況に関する特性分析,2)21世紀型スキル獲得を目指したICTの役割と学習指導要領におけるICT活用に関する内容理解,ICT活用の意義の認識,3)最先端のICT機器の理解と授業見学,4)ICT機器を活用した模擬授業の反復や教育実習での実践を行う.上記4)については,遠隔地から同期・非同期で授業評価を行える授業リフレクションシステムを導入し,学生の相互評価や専門家の介入を行う.プログラムの評価として,ICT活用による効果の理解度や自己効力感の調査・分析,着任後のICT活用状況の分析などの追跡調査を行い,デザイン実験アプローチの手法を用いて,年度毎に修正を加える.平成26年度は,国内外で実施されている21世紀型スキルを背景としたICT活用指導力向上を目指す教員養成プログラムの先行研究の調査を行った.また,都内3大学を対象に,大学生のデジタルネイティブの特徴分析を行い,ICT活用の授業に対する動機づけなどとの関連を分析した.また,教員養成段階において,ICT活用の授業の意義を認識させることを目的に,東京学芸大学の「情報科教育法I」「情報科教育法II」「教育実習事前事後指導」「教職実践演習」,および,目白大学の「初等教科教育法(理科)」の授業を対象に,最先端のICT活用などを直接体験する授業を実践し,評価した.「授業リフレクションシステム」を活用しながら授業時間外に自分や他者の模擬授業を評価する実践では,これまで気付かなかった自分の模擬授業の改善点に気付いたり,他者の模擬授業後の相互評価では指摘しなかった新たなコメントを投稿したりすることが分かり,対面による模擬授業の相互評価の補完となる可能性が示唆された.本研究では,ICT活用指導力のある教員の育成を目指したプログラムの開発と評価を行うことを目的としている.具体的には,1)学生のICTスキル習得状況に関する特性分析,2)21世紀型スキル獲得を目指したICTの役割と学習指導要領におけるICT活用に関する内容理解,ICT活用の意義の認識,3)最先端のICT機器の理解と授業見学,4)ICT機器を活用した模擬授業の反復や教育実習での実践を行う.そして,プログラムの実践前後で,大学生のICT活用指導力の変容を分析することで,プログラムの評価を行う.平成26年度は,都内3大学を対象に,大学生のデジタルネイティブの特性分析を行い,ICT活用の授業に対する動機づけなどとの関連を分析した.さらに,21世紀型スキルを背景としたICT活用指導力向上を目指す教員養成プログラムを実践,評価した.平成27年度は,平成26年度に実施したプログラムの評価を受け,プログラムの修正を行った.具体的には,東京学芸大学の「情報教育概論」の授業において,最先端のICT活用などを直接体験する授業をプログラムの前半に実践した.また,目白大学の「初等教科教育法(理科)」では,児童にICTを活用させるような模擬授業を大学生に実践させるような授業デザインに修正した.以上の結果,前者の授業では,大学生はICTを活用する授業の意味を理解したり,多様な教科でのICT活用の応用例を考えたりしながら,大学の授業に臨むようになることが分かった.また,後者の授業では,大学生のICT活用指導力について,教師のICT活用指導力のみだけでなく,児童のICT活用についての指導力についても意識が向上することが明らかになった.応募に記した研究計画どおりに研究が進められているため,概ね順調に進展していると判断した.また,本年度の調査結果について,学会等で報告し,計画どおり研究成果を残すことができたため,上記のように判断した.本研究では,ICT活用指導力のある教員の育成を目指したプログラムの開発と評価を行うことを目的とした.具体的には,1)学生のICTスキル習得状況に関する特性分析,2)21世紀型スキル獲得を目指したICTの役割と学習指導要領におけるICT活用に関する内容理解,ICT活用の意義の認識,3)最先端のICT機器の理解と授業見学,4)ICT機器を活用した模擬授業の反復や教育実習での実践を行った.上記4)については,遠隔地から同期・非同期で授業評価を行える授業リフレクションシステムを導入し,学生の相互評価や専門家の介入を行った.平成26年度は,国内外で実施されている21世紀型スキルを背景としたICT活用指導力向上を目指す教員養成プログラムの先行研究の調査を行った.また,都内3大学を対象に,大学生のデジタルネイティブの特徴分析を行い,ICT活用の授業に対する動機づけなどとの関連を分析した.一方,教員養成段階において,ICT活用の授業の意義を認識させることを目的に,最先端のICT活用などを直接体験する授業を実践し,評価した.平成27年度は,平成26年度のプログラムの修正を行った.「授業リフレクションシステム」を活用しながら授業時間外に自分や他者の模擬授業を評価する実践では,これまで気付かなかった自分の模擬授業の改善点に気付いたり,他者の模擬授業後の相互評価では指摘しなかった新たなコメントを投稿したりすることが分かり,対面による模擬授業の相互評価の補完となる可能性が示唆された.
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KAKENHI-PROJECT-26350310
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26350310
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教員養成と21世紀型スキルを考慮したICT活用指導力向上プログラムの開発と評価
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さらに,児童にICTを活用させる模擬授業を実践することで,教師のICT活用のみならず,児童のICT活用に対する指導力についても意識が向上することが明らかになった.平成28年度は,平成26年度と平成27年度で行った調査を総合的に分析した.結果,教員養成のICTの実体験の有効性が明らかになり,この時間の確保が課題となった.本研究では,21世紀型スキルを考慮したICT活用指導力向上プログラムを開発した.結果,次の成果が得られた.1)大学生のデジタルネイティブの特徴分析を行ったところ,教員養成系の大学生のリテラシーの課題が明確になり,最先端のICT活用などを直接体験する授業が効果的であることが分かった.2)「授業リフレクションシステム」を活用して自分や他者の模擬授業を評価したところ,これまで気付かなかった自分の模擬授業の改善点に気づくことなどが分かった.3)児童にICTを活用させる模擬授業を実践することで,教師のICT活用のみならず,児童のICT活用に対する指導力についても意識が向上することが明らかになった.応募に記した研究計画どおりに研究が進められているため,概ね順調に進展していると判断した.また,本年度の調査結果について,学会等で報告し,計画どおり研究成果を残すことができたため,上記のように判断した.今後の研究の推進方策として,平成26年度と平成27年度に再検討したプログラムを本研究で対象とした授業において実施することが求められている.実施した授業を対象に,平成26年度と平成27年度の実践との比較分析を行い,プログラム改善の効果について追究したい.また,平成26年度と平成27年度の実践研究で得られた知見について,国内外の学会等で報告することを予定している.教育工学今後の研究の推進方策として,平成26年度に再検討したプログラムを本研究で対象とした授業において実施することが求められている.実施した授業を対象に,平成26年度の実践との比較分析を行い,プログラム改善の効果について追究したい.また,平成26年度に得られた知見について,国内外の学会等で報告することを予定している.平成27年度で得られた成果について,現在,投稿中の論文が2編あるが,査読結果が次年度に報告される予定であることから,これが採録された時に生じる別刷り代が次年度使用とせざるを得なくなった.そのため,次年度使用額が生じた.本年度で得られた成果について,現在,投稿中であるが,査読結果が次年度に報告される予定であることから,これが採録された時に生じる別刷り代が次年度使用とせざるを得なくなった.そのため,次年度使用額が生じた.平成27年度で得られた成果について,現在,2編の論文が査読中である.これらの論文が採択された際,別刷り代の支払いが生じる予定である.この金額は平成27年度の予算内で支払うことが難しいと判断されるため,平成28年度の使用額とあわせて使用する予定である.本年度で得られた成果について,現在,2本の論文としてまとめ,査読中である.これらの論文が採択された際,別刷り代の支払いが生じる予定である.
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KAKENHI-PROJECT-26350310
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26350310
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口腔ケアに関する地域福祉学的研究
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2006年に施行された介護予防特定高齢者施策「口腔機能向上サービス」は、既存の歯科医療を社会資源として地域福祉に位置づける可能性を持つ。そこで、本サービスの効果を検証し、地域福祉的課題を調査した。口腔機能向上サービスを利用した特定高齢者は、症状の改善(固いものの食べにくさ(80%)、むせ(50%)、口の渇き(30%))がみられた(n=29)。地域包括支援センターの調査からは、特定高齢者のサービス利用率が15.8%と当初の見込みよりも低く、歯科医療機関との連携における課題が明確になった。2006年に施行された介護予防特定高齢者施策「口腔機能向上サービス」は、既存の歯科医療を社会資源として地域福祉に位置づける可能性を持つ。そこで、本サービスの効果を検証し、地域福祉的課題を調査した。口腔機能向上サービスを利用した特定高齢者は、症状の改善(固いものの食べにくさ(80%)、むせ(50%)、口の渇き(30%))がみられた(n=29)。地域包括支援センターの調査からは、特定高齢者のサービス利用率が15.8%と当初の見込みよりも低く、歯科医療機関との連携における課題が明確になった。口腔に衛生的・機能的問題を有する要介護高齢者が多い。平成18年度から施行された介護予防制度の中に位置づけられた「口腔機能向上」施策は、それが適切に運用されることで、機能低下の予防や、食をはじめとする生活の質の向上に大きく寄与する。しかしながら、その実施体制やリソースには問題が依然として多い。本年度は、1サービス事業所において、口腔機能向上プログラムに参加した29名を対象に、事前事後での口腔機能の変化を調査する一方で、これらの参加者がどのようなプロセスでプログラムの参加に至ったかを調査した。その結果、口腔機能向上プログラムの参加に該当する特定高齢者の要件となる基本チェックリストの項目(13<かたいものが食べられるか>、14<むせの有無>、15<口の渇きの有無>)の該当者数は、サービス提供後においては減少し、おおむね改善することが明らかとなった(項目13:25名→5名、項目14:22名→11名、項目15:20名→14名)。また、参加者は、近隣の6つの地域包括支援センターから紹介されており、各地域包括支援センターには、その地域にある病院・診療所において住民基本健診を受けた際に記入した基本チェックリストのデータが判断材料として有効に活用されていた。その一方で、1地域包括支援センターに聞き取り調査を行ったところ、特定高齢者に該当する人であっても、プログラム参加に至らない人が半数以上を占め、その理由としては、・歯科にかかっているから必要なし・あまり困っていない・年寄り扱いしないでほしい・外出したくない・体調がおもわしくない、等であった。今年度は、歯科医療と介護福祉領域の接点の問題を明らかにすることを目的に、S市内の地域包括支援センターと介護予防サービス事業所を対象に、特定高齢者施策介護予防「口腔機能向上サービス」に関するアンケート調査を実施し、23か所の地域包括支援センターと、8か所のサービス事業所から回答を得た(回収率56%、66%)。地域包括支援センターでは、平成19年度に口腔機能向上サービスの利用に該当する特定高齢者は平均18.7人(最多55人)、実際にプランを作成して口腔機能向上サービスを利用した人は平均3.0人(最多11人)であった。サービス事業所では、平均10.4人(最多29人)が利用していた。サービス提供者として歯科関連職種が関わる事業所は4か所であった。また、近隣の歯科医療機関との連携状況については、「良くない」・「全くない」との回答が地域包括支援センターで48%、サービス事業所で75%であった。地域において「口腔機能向上サービス」のしくみが機能することで、その潜在的問題(疾患)が発掘され、歯科医療の既存のリソースを活かした幅広い医療福祉サービスが実現される6例えば、フィンランドにおいては、地域の歯科医療システムが、拠点となる自治体の保健センターを中心として提供されており、その公的サービスを補う形で、開業歯科医が存在している。そして公的サービスは、歯科医療も含めて医療福祉の分野において一元的である。日本では、保健所や市町村保健センターの機能が乳幼児の歯科保健指導や歯科検診事業に偏っており、新たに創設された「地域包括支援センター」の機能において、口腔機能向上サービスと歯科医療が円滑に結ばれることが理想と考えられる。
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KAKENHI-PROJECT-19791639
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19791639
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アセンブリー・ルールによる植物群集の予測:ニホンジカによる被食下の極相植生
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ニホンジカの増加により,北海道から九州までの奥山から里山に至るさまざまな地域で植生が変化しつつある.シカが少ない状態でも好まれて食害される植物と,被食圧が高まった場合のみ被食される種が存在する.このような選択的な被食は植物の種どうしの競争関係に影響を与え植生が変化する.この研究ではシカの嗜好性も植物種の種特性のひとつとして取り入れることにより,極相の植物群集をアセンブリールールで予測した.ニホンジカの増加により,北海道から九州までの奥山から里山に至るさまざまな地域で植生が変化しつつある.シカが少ない状態でも好まれて食害される植物と,被食圧が高まった場合のみ被食される種が存在する.このような選択的な被食は植物の種どうしの競争関係に影響を与え植生が変化する.この研究ではシカの嗜好性も植物種の種特性のひとつとして取り入れることにより,極相の植物群集をアセンブリールールで予測した.H21年度は,屋久島の,極相照葉樹林から路傍草地までの様々な管理下にある植生での食痕調査により,植物の生態特性として木本と草本を合わせて58種の植物の,シカによる摂食での嗜好性を定量化し,これをもとに35地点の被食圧を定量化した.これらの種の中ではルリミノキ類やツルラン類,キノボリシダ,シロヤマシダなどで嗜好性が高く,今回観察された最も低レベルの被食圧ではこれらの種が地域絶滅する.これより被食圧が高い地域では森林の骨格を構成するヤブニッケイやスダジイ,イヌガシなどのブナ科やクスノキ科の樹木種やアオノクマタケラン,ウラジロなどの下層植生優占種が食害を受けるが,ツバキやサザンカ,ハイノキ科,ヤマモモなどによる森林が成立する可能性がある.今回の調査で最も嗜好性が低い植物はハスノハカズラやイシカグマ,クワズイモ,樹木ではアブラギリやヤマモモ,クロキなどであった.被食圧の高い地域では,ヤマモモが優占すれば森林が維持される可能性もあるが,草地化する可能性もある.地点の被食圧は,隣接地域であっても下刈りしたスギ植林地や草地で高く,次は落葉樹混交二次林であり,下層植生が密生したスギ植林地や照葉樹林では被食圧が低かった.この結果から植生管理によってシカ食害を制御できる可能性が明らかになった.スギ植林地では下層植生の刈り取りを行わず,可能であれば常緑広葉樹林に誘導し伐採を避けるほか,林道を減らし路傍の草本植生をなくす,などの対策が有効であり,草地を森林に回復させるには段階的に被食圧の低い植生に誘導すればよい.ただし非常に被食圧が高い西部林道地域では捕獲やフェンス設置などが必要である可能性がある.平成23年度は屋久島で被食圧の調査を行い北海道でも食害調査を開始した.屋久島の調査では全島において山際における被食圧の定量化を行った.2011年2月に集落のいちばん奥の畑や車道脇の林でシカ柵がないところを選び,島内に14地点を設定した.2009年に嗜好性値を決定した種群(2010年度学会口頭発表)を指標種として,食痕の有無を15分間探索した.シカが食べるとこができる地上20-100cmにある植物のみを調査し,急斜面などは避けた,解析では指標植物の被食の有無を目的変数とし,指標植物の嗜好性値を説明変数とした.ロジスティック関数の傾きは2010年の解析での値に固定し,切片だけを最尤推定して調査地点の値を得た.屋久島全体は被食圧によって4地域に分けることができた.南部の安房から栗生までは,シカの被食圧がとても低い地域であり,全く被食が見られない地点もあった.このレベルの被食圧であれば,一部にツルラン類などの欠落種がでるが健全な森林が保たれると考えられた.永田から一湊にかけての北西部は次に被食圧が弱く,将来的に森林は維持されるがシイ・カシ・イスが欠落しはじめると考えられた.宮ノ浦から小瀬田にかけての北東部はかなりの被食圧があり,森林の再生はかろうじて可能だが,ヤブコウジ科,ツバキ科も欠落しはじめると考えられた.大川から永田岬までの西部林道では極めて被食圧が高く,将来は森林が消失しクワズイモ,ハスノハカズラなどの草地となる可能性がある.この方法は指定した指標種の食痕を調べるだけであるので調査が簡単で,異なった年の状態も定量的に比較できる.平成23年度は,屋久島において被食圧,および極相植生での優占度を決める種特性についての野外調査を完了した.解析方法の開発においては,これまで植物種の一対比較をもとに固有ベクトルを使用して嗜好性値を求めていたが,2種間の差を標準ロジスティック関数の横軸の平行移動として考え,当該種の植物の被食状況(被食個体数,調査個体数)の尤度曲線を構成し,これを使って種間の差の尤度関数を求めた.従来の計算方法と比較して,(1)データ数が少ない種での「1個体調べて被食無し」などのデータも有効利用できる,(2)嗜好性値の誤差の大きさ(信頼性)を評価できる,嗜好性値の尺度を固定できる(嗜好性値が1.0違うときの意味を統一),などのメリットがある.
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KAKENHI-PROJECT-21570017
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21570017
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アセンブリー・ルールによる植物群集の予測:ニホンジカによる被食下の極相植生
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従来の方法と比較した信頼性を調べるため,新しい手法での最尤地としての嗜好性値と,従来の手法との相関係数は極めて高かった.新しい手法により屋久島の植物94種についてシカによる嗜好性を定量化したところ,被食されやすい上位20種は,ガンセキラン,ゼンマイ,オオムラサキシキブ,ハドノキ,エゴノキ,イヌビワ,シロダモ,ツルラン類,キノボリシダ,ヘゴ,シロヤマシダ類,ルリミノキ,リュウキュウルリミノキ,ホングウシダ,ダンチク,アオノクマタケラン,ヤブニッケイ,マルバルリミノキ,チガヤ,ブドウ類である.逆に被食されにくい下位20種は,イシカグマ,クワズイモ,ワラビ,ハスノハカズラ,アブラギリ,ウドカズラ,テンナンショウ類,ユノミネシダ,センリョウ,アリドオシ,ベニバナボロギク,スギ,マンリョウ,クロキ,ミミズバイ,コシダ,ホソバカナワラビ,カツモウイノデ,カンコノキ,ホウロクイチゴであった.ニホンジカの増加により,北海道から九州までの奥山から里山に至るさまざまな地域で植生が変化しつつある.シカが食べる植物には明らかな嗜好性の差があり,シカが少なく被食圧が低い状態でも頻繁に食害される植物種と,被食圧が高まった状態でのみ被食される植物種が存在する.このような選択的な被食は植物の種どうしの競争関係に影響を与え,植生が変化する.この研究ではシカの嗜好性も植物種の種特性のひとつとして取り入れることにより,極相の植物群集をアセンブリールールで予測した.屋久島(亜熱帯林照葉樹林)と北海道(夏緑林上部北方林下部)の2つの地域を対象にし,植物の種特性としてシカの嗜好性のほかに最大高と耐陰性を測定した.群集予測の結果から,あるひとつの植物種の優占度は,競合する他種が消失することにより被食圧とともに上昇するが,当該の種が食害を受けるレベルになると優占度が低下するのが一般的なパターンであった.被食圧の変化に対応した植物群集の変化は,優占種に対するシカの嗜好性によって成りゆきが大きく異なった.優占種が高嗜好性で食害を受けやすいケースでは,被食圧の上昇とともに林相が交代した.その中では,より高い高度にみられるような群集が成立することもあり,また嗜好性が低く食害されにくい外来種による陽樹林が成立することもあった.他方で極相林の優占種の嗜好性が低くシカの食害を受けにくい場合は林相の変化が少なく,被食圧の上昇と共に構成種が順次欠落して行った.ただし,競合種の消失により不嗜好性の陽性植物の優占度がいったん上昇する現象がみられた.中程度の被食圧下で山奥の高標高地にみられる植生と類似した群集が成立するケースもあるため,現存する植生の中には,過去のシカ食害を重要な要因として成立したものが存在する可能性がある.解析手法の開発が終了し,屋久島においては野外データの収集が終了した.24年度が最終年度であるため、記入しない。一部のデータを収集した北海道の調査地において,野外データの収集を完了する予定である.まさらに,屋久島および北海道において,シカによる被食圧の傾度にそって,どのような極相植生が成立するのか,各植物種の予測優占度を計算し,結果を取りまとめて論文を作成する.24年度が最終年度であるため、記入しない。
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KAKENHI-PROJECT-21570017
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ラット胎生期における活性酸素関連遺伝子の制御・・・whole-mount in situ ハイブリダイゼーション法による観察
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活性酸素関連分子種の遺伝子発現をwhole-mount in situハイブリダイゼーション法を用いて観察することにより、胎生期のラット及びマウスにおける活性酸素関連分子の細胞内代謝における役割を検索するための実験を行った。まず、in situハイブリダイゼーション法に必要な合成オリゴヌクレオチドプローブを作製するにあたり、放射性(^<35>S)、非放射性(ジゴキシゲニン)のマーカー分子を多標識するプローブ合成法を初年度から次年度にかけて確立した。すなわち、論文に報告されたcDNAから、93-merのセンスおよびアンチセンスの配列を選び、その両端に5'リン酸化したEcoRI/HindIIIのcohesive ends(付着末端)をもたせた合計99-mer長の合成DNAの凍結乾燥品を得て、これをもとにセンスまたはアンチセンスプローブの合成用鋳型DNAを作成する方法である。この方法により、多くの標識が挿入され、高感度での検出が可能となった。活性酸素関連酵素の1種であるグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)は過酸化水素および過酸化脂質を消去する酵素であり、このうち、phospholipid hydorperoxide GPx(PHGPx)は生体膜を構成するリン脂質の過酸化物を還元消去することが出来る。今回、上述の方法でラットPHGPxのプローブを作製し、生殖器における発現を観察したところ、卵巣における発現はほとんど観察されなかったが、精巣で強い発現が観察された。この発現は、生後精巣の精細管内で、精子が形成される過程で観察され、ステップ7の精子細胞で強陽性となりステップ12-13の精子細胞で最も強い発現を示した。摘出した精巣を用いてwhole-mount in situハイブリダイゼーション法を行い、精細管全体での発現を観察した。胎生期での発現は現在のところ観察されていない。この発現は、PHGPxが活性酸素分子種の消去のみならず、精子形成に役割を持つことが示唆された。活性酸素関連分子種の遺伝子発現をwhole-mount in situハイブリダイゼーション法を用いて観察することにより、胎生期のラット及びマウスにおける活性酸素関連分子の細胞内代謝における役割を検索するための実験を行った。まず、in situハイブリダイゼーション法に必要な合成オリゴヌクレオチドプローブを作製するにあたり、放射性(^<35>S)、非放射性(ジゴキシゲニン)のマーカー分子を多標識するプローブ合成法を初年度から次年度にかけて確立した。すなわち、論文に報告されたcDNAから、93-merのセンスおよびアンチセンスの配列を選び、その両端に5'リン酸化したEcoRI/HindIIIのcohesive ends(付着末端)をもたせた合計99-mer長の合成DNAの凍結乾燥品を得て、これをもとにセンスまたはアンチセンスプローブの合成用鋳型DNAを作成する方法である。この方法により、多くの標識が挿入され、高感度での検出が可能となった。活性酸素関連酵素の1種であるグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)は過酸化水素および過酸化脂質を消去する酵素であり、このうち、phospholipid hydorperoxide GPx(PHGPx)は生体膜を構成するリン脂質の過酸化物を還元消去することが出来る。今回、上述の方法でラットPHGPxのプローブを作製し、生殖器における発現を観察したところ、卵巣における発現はほとんど観察されなかったが、精巣で強い発現が観察された。この発現は、生後精巣の精細管内で、精子が形成される過程で観察され、ステップ7の精子細胞で強陽性となりステップ12-13の精子細胞で最も強い発現を示した。摘出した精巣を用いてwhole-mount in situハイブリダイゼーション法を行い、精細管全体での発現を観察した。胎生期での発現は現在のところ観察されていない。この発現は、PHGPxが活性酸素分子種の消去のみならず、精子形成に役割を持つことが示唆された。胎生期のラット及びマウスにおける活性酸素関連分子の細胞内代謝における役割を検索する目的で、活性酸素関連遺伝子の発現をwhole-mount in situハイブリダイゼーション法により観察した。妊娠ラットおよびマウスを4%パラフォルムアルデヒド溶液で灌流固定した後、胎仔を取り出し24時間以上浸潤固定し、メタノール(-20°C)中に保管した。pGEM4Zベクターに組み込まれたラットのスーパーオキシドディスムターゼ(Mn-SOD)cDNAよりジゴキシゲニン-UTPラベルしたプローブを作成し、whole-mount in situハイブリダイゼーション法を行ったが、良好な結果が得られなかった。これはプローブ長を短くするためのアルカリ処理が感度を落とす原因の一つであると考えられた。また、必要なcDNAが入手できないケースもあるため、合成プローブの新しい作成法を試みた。論文から得たセンスおよびアンチセンスの配列の両端にEcoR IおよびHind IIIを認識する配列をもつ、合計99-merの長さの合成DNAを得て、これをもとにセンスまたはアンチセンスプローブの合成用鋳型DNAを作成する方法である。最近ではEcoRl/HindIIIカットされた状態の配列で、5'リン酸化した2本の相補的な配列を持つ合成DNA(5'-AATTC----------------A-3'と3'-G----------------TTCGA-5)の凍結乾燥品を得て、同様の方法でプローブを作成している。多くの標識が挿入され、高感度での検出が可能となった。
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KAKENHI-PROJECT-09670013
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09670013
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ラット胎生期における活性酸素関連遺伝子の制御・・・whole-mount in situ ハイブリダイゼーション法による観察
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ラットおよびマウスのMn-SODについては既にプローブを合成し、グルタチオンペルオキシダーゼ、カタラーゼについては合成の途中にあり、whole-mount in situハイブリダイゼーション法への応用を予定している。活性酸素関連分子種の遺伝子発現をwhole-mount in situハイブリダイゼーション法を用いて観察することにより、胎生期のラット及びマウスにおける活性酸素関連分子の細胞内代謝における役割を検索するための実験を行った。まず、in situハイブリダイゼーション法に必要な合成オリゴヌクレオチドプローブを作製するにあたり、放射性(^<35>S)、非放射性(ジゴキシゲニン)のマーカー分子を多標識するプローブ合成法を確立した。すなわち、論文に報告されたcDNAから、93-merのセンスおよびアンチセンスの配列を選び、その両端に5'リン酸化したEcoRI/HindIIIのcohesive ends(付着末端)をもたせた合計99-mer長の合成DNAの凍結乾燥品を得て、これをもとにセンスまたはアンチセンスプローブの合成用鋳型DNAを作成する方法である。この方法により、多くの標識が挿入され、高感度での検出が可能となった。活性酸素関連酵素の1種であるグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)は過酸化水素および過酸化脂質を消去する酵素であり、このうち、phospholipid hydorperoxide GPx(PHGPx)は生体膜を構成するリン脂質の過酸化物を還元消去することが出来る。今回、上述の方法でラットPHGPxのプローブを作製し、生殖器における発現を観察したところ、卵巣における発現はほとんど観察されなかったが、精巣で強い発現が観察された。この発現は、生後精巣の精細管内で、精子が形成される過程(ステップ7-11の精子細胞を中心に)で観察された。摘出した精巣を用いてwhole-mount in situハイブリダイゼーション法を行い、精細管全体での発現を観察した。胎生期での発現は現在のところ観察されていない。この発現は、活性酸素分子種の消去のみならず、精子形成に役割を持つことが示唆された。
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KAKENHI-PROJECT-09670013
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09670013
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ルネサンス期フィレンツェの政治思想--共和国理論とキリスト教の緊張関係
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本研究では、イタリア・ルネサンス期の二大思想家であるマキァヴェッリとグィッチァルディーニの政治思想を検討する。本研究で特に着目するのは、前者が開拓した新しい政治学的視座に対するグィッチァルディーニの知的対応である。両者はいずれも、祖国フィレンツェの自由を共和政の枠組みで確保しようとしていた。しかし、そのために彼らが構想した実践的方策は異なっており、その相違は、彼らに異なる理論を構築させた。本研究は、彼らの政治理論の特徴を比較する作業である。この作業からは共和国理論とキリスト教の緊張関係が明らかとなろう。本研究では、イタリア・ルネサンス期の二大思想家であるマキァヴェッリとグィッチァルディーニの政治思想を検討する。本研究で特に着目するのは、前者が開拓した新しい政治学的視座に対するグィッチァルディーニの知的対応である。両者はいずれも、祖国フィレンツェの自由を共和政の枠組みで確保しようとしていた。しかし、そのために彼らが構想した実践的方策は異なっており、その相違は、彼らに異なる理論を構築させた。本研究は、彼らの政治理論の特徴を比較する作業である。この作業からは共和国理論とキリスト教の緊張関係が明らかとなろう。
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KAKENHI-PROJECT-19K00099
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K00099
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抗炎症作用を併せ持つビスホスホネートの作用機序について
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骨芽細胞様細胞MC3T3-E1細胞にLPSを添加して培養し、PGE2産生に関与するCOX-2mRNAの発現へのTRK-530の効果を検討したがほとんど変化が認められなかった。しかしながら、培養液中のPGE2の産生は減少傾向を認めることから作用機序は不明だが骨芽細胞を介した抗炎症作用が考えられる。MC3T3-E1細胞をTRK-530添加で培養するとALP活性の増加、コラーゲン、ALP、オステオカルシン、BSP mRNAの発現を増加した。TRK-530は骨芽細胞に対し炎症を軽減する効果と骨形成を促進する薬理作用を有する可能性がある。TRK-530は側鎖に窒素原子を含まないグループに属しこれまでにLPS添加でのマウス器官培養でPGE2やIL-1βの産生を抑制することを確認してきた。側鎖に窒素原子を持つゾレドロネートはマウス頭蓋冠器官培養で高濃度で使用するとIL-1βやPGE2の産生を増加した。また、歯周病の原因因子の一つであるLPSを添加したマウス頭蓋冠器官培養でのゾレドロネートの効果を検討したところ、濃度依存的にIL-1βやPGE2の産生を増加した。これらの結果は窒素原子を持つタイプのゾレドロネートは炎症を増悪し、窒素原子を含まないTRK-530には炎症を増悪する可能性は少なく、歯周病を含む炎症性疾患に安全に使用できることが考えられる。組織学的にもリガーチャーを巻き作成した実験的歯周炎モデルラットの組織切片でTRK-530を局所的に投与した歯槽骨での破骨細胞数の減少と炎症性細胞の浸潤の減少を認め、炎症部の破壊の程度が少なかった。これらの結果からTRK-530にはLPSによって増加するPGE2、IL-1βの炎症性サイトカインを減少させる作用があり、歯周疾患治療薬としての応用できる可能性が高いと考えられた。TRK-530は側鎖にチオメチルフェニルチオ基をもつビスホスホネートで、この側鎖には抗炎症作用を持つ可能性が示唆されている。今年度、TRK-530の抗炎症作用をマクロファージ系株化細胞RAW267.4細胞と骨芽細胞様細胞MC3T3-E1細胞を用いてLPS刺激によるプロスタグランジンE2産生で検討した。11000μMの濃度のTRK-530で2日間RAW267.4細胞を培養した結果、100μMまでは細胞増殖に全く影響を及ぼすことは無かった。250μM以上からは濃度依存的にRAW267.4細胞の増殖を抑制した。このことからTRK-530を最大100μMまでで実験を行なうことに決定した。TRK-530の効果を検討するために歯周病の重要は因子であるLPSで2日間RAW267.4細胞を刺激し、プロスタグランジンE2の産生量を測定したところ、100μMで若干の減少を認めたが、有為な差を認めなかった。しかしながらこれまでにマウス頭蓋冠器官培養でTRK-530はLPS刺激によるプロスタグランジンE2産生を抑制していることから、TRK-530のプロスタグランジンE2産生抑制は骨芽細胞と破骨細胞の共存環境のときに起こる、または骨芽細胞に作用し産生抑制している可能性が考えられる。そこで、MC3T3-E1細胞とRAW267.4細胞を共存させ、同様の実験を行なったが、プロスタグランジンE2産生には影響が認められなかった。しかし、MC3T3-E1細胞に100μMTRK-530とLPSを加えてところ、プロスタグランジンE2の産生を抑制する傾向が認められた。これらの結果から、TRK-530の抗炎症作用はマクロファージ系細胞に影響をせず、骨芽細胞に作用しプロスタグランジンE2産生抑制する可能性が示唆された。骨芽細胞様細胞MC3T3-E1細胞にLPSを添加して培養し、PGE2産生に関与するCOX-2mRNAの発現へのTRK-530の効果を検討したがほとんど変化が認められなかった。しかしながら、培養液中のPGE2の産生は減少傾向を認めることから作用機序は不明だが骨芽細胞を介した抗炎症作用が考えられる。MC3T3-E1細胞をTRK-530添加で培養するとALP活性の増加、コラーゲン、ALP、オステオカルシン、BSP mRNAの発現を増加した。TRK-530は骨芽細胞に対し炎症を軽減する効果と骨形成を促進する薬理作用を有する可能性がある。TRK-530は側鎖に窒素原子を含まないグループに属しこれまでにLPS添加でのマウス器官培養でPGE2やIL-1βの産生を抑制することを確認してきた。側鎖に窒素原子を持つゾレドロネートはマウス頭蓋冠器官培養で高濃度で使用するとIL-1βやPGE2の産生を増加した。また、歯周病の原因因子の一つであるLPSを添加したマウス頭蓋冠器官培養でのゾレドロネートの効果を検討したところ、濃度依存的にIL-1βやPGE2の産生を増加した。これらの結果は窒素原子を持つタイプのゾレドロネートは炎症を増悪し、窒素原子を含まないTRK-530には炎症を増悪する可能性は少なく、歯周病を含む炎症性疾患に安全に使用できることが考えられる。
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KAKENHI-PROJECT-18791364
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18791364
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抗炎症作用を併せ持つビスホスホネートの作用機序について
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組織学的にもリガーチャーを巻き作成した実験的歯周炎モデルラットの組織切片でTRK-530を局所的に投与した歯槽骨での破骨細胞数の減少と炎症性細胞の浸潤の減少を認め、炎症部の破壊の程度が少なかった。これらの結果からTRK-530にはLPSによって増加するPGE2、IL-1βの炎症性サイトカインを減少させる作用があり、歯周疾患治療薬としての応用できる可能性が高いと考えられた。
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KAKENHI-PROJECT-18791364
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18791364
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『小右記』註釈と平安時代データベースの作成
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平安時代の代表的な漢文日記である藤原実資(9571046)の『小右記』を同時代資料と比較しながら特に長和年間(10121017)を精読し、長和元年から同二年七月までの校本・書下し文・注釈を作成した。政務・儀式の執行に役立てるという摂関期以来の日記の役立て方を再現するため、記事に記号番号を付して部類的に読む方法を提唱し、その一例を「摂関期の立后関係記事」に示した。また、平安時代研究に必要な人名・官職・場所(地図)・年中行事の考証のデータベース化を進め、小右記講読会のホームページを作成して成果を公表した。平安時代の代表的な漢文日記である藤原実資(9571046)の『小右記』を同時代資料と比較しながら特に長和年間(10121017)を精読し、長和元年から同二年七月までの校本・書下し文・注釈を作成した。政務・儀式の執行に役立てるという摂関期以来の日記の役立て方を再現するため、記事に記号番号を付して部類的に読む方法を提唱し、その一例を「摂関期の立后関係記事」に示した。また、平安時代研究に必要な人名・官職・場所(地図)・年中行事の考証のデータベース化を進め、小右記講読会のホームページを作成して成果を公表した。本研究は、平安時代の代表的な漢文日記である『小右記』の正確な解読と、他の同時代資料との関連付け、及び平安時代研究の基礎となるデータベースの作成を目指す。『小右記』については、記主藤原実資の身分変化などから四つの時期に区分し、各時期の最も特徴ある年の記事の校本・書下し文・註釈を作成する作業を並行して進めている。特に、第二期の長和年間の記事は、『御堂関白記』との比較しながら考証しているが、従来の註釈を訂正すべき部分も散見されたことから、陽明文庫への調査を実施し、藤原道長の自筆本と写本の比較照合をした。第三期については、道長が法成寺の供養を行なった治安二年(1022)に注目し、その記事を『左経記』と比較しながら読解し、宮内庁・神宮文庫などの調査をもとに、その成果の一部を公開した。データベースの作成のために、ホームページを解説し、研究協力者との情報交換の場として、更には仮想研究室として使用できるようにし、上記の註釈作成作業と連携させている。仮想研究室へのアクセスは限定されたメンバーに限られているが、そこには註釈作業の進捗状況だけでなく、2008年に刊行した『小右記註釈長元四年』の付録として作成した人名・官職・場所・年中行事に関する考証が閲覧できるようにしてある。これを使用しながら註釈作業を進めていくことで、内容を精緻かつ充実したものにし、外部研究者との連携、将来の公開を目指している。本研究は、平安時代の代表的な漢文日記である『小右記』の正確な解読と、他の同時代資料との関連付け、及び平安時代研究の基礎となるデータベースの作成を目指している。昨年度から引き続き、『小右記』長和年間の記事を『御堂関白記』と比較しながら精読、校本・書下し文・注釈を作成している。すでに作業を終えた同元年条については再度検討会を催して、註釈書の出版に向けた準備を進めた。データベースの作成については、ホームページ上に開設した仮想研究室において、研究協力者と共同しながら、人名・官職・場所・年中行事に関する考証をわかりやすく伝えられるように、検討を重ねた。新たに『小右記』『左経記』の解説や内裏図などを公開し、理想的な註釈のあり方を体験できるようにした。将来的には、『小記目録』を補完する形で『小右記』全条文を他史料と関連づけられるようにするだけでなく、人物考証については官職考証や補任史料と、場所考証については地図と瞬時に比較できるようにする。また、外部研究者とも連携できる、より高度なシステムを構築すべく、検討を重ねている。本年度は、研究代表者が所属大学の特別研究期間制度の適用を受けてロンドン大学アジアアフリカ研究学院(SOAS)に在籍していたが、その教員たちの要請により、平成22年6月2日に『小右記』註釈について講演し、また5月5日から翌年2月16日まで計22回の漢文セミナーを開催し、『小右記』を使った古記録の読解方法を指導した。海外における日本研究者を育成するため、今後もこのような活動が継続されることが望まれる。本研究では、平安時代の代表的な漢文日記である『小右記』を『御堂関白記』などの同時代資料と比較しながら精読し、長和元年から同二年七月条までの校本・書下し文・注釈を作成した。特に同元年条については註釈書の出版に向けて詳細な再検討をしている。また、平安時代の古記録読解に欠かせないデータベースを作成し、ホームページ上に仮想研究室を開設した。ここで人名・官職・場所・年中行事の考証を関連させ、さらに内裏・大内裏・平安京の復元図を用いた儀礼復元を提示できるよう検討を重ねたが、コンピュータ技術の問題もあり、まだ一般公開できる段階には至っていない。
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KAKENHI-PROJECT-21520689
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21520689
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『小右記』註釈と平安時代データベースの作成
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本年度は摂関期の古記録資料全体を視野に入れた儀式研究に力点を置き、『小右記』『権記』『御堂関白記』『左経記』などの記事に記号番号を付し、それらを『小記目録』『日本紀略』『公卿補任』などと対比できる方式を完成させ、その上で同一の儀式・事項について、異なる年次の日記記事を平行して読めるようにした。これは政務・儀式の執行に役立てるという摂関期以来の「古記録文化」の精神に則った「部類」的な読み方で、これによって、次第など儀式書との共通点と年次ごとの相違点(問題点)が明確になり、より当時の関心に即した正確な読み方ができ、書写の誤りや本文・目録の欠落部分なども検証できた。「摂関期の立后関係記事」はこの方法による成果の一部で、さらに続編の公開を計画している。
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KAKENHI-PROJECT-21520689
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https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21520689
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ファレノプシスの生理学的特性と栽培管理法について
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ファレノプシス栽培の光あるいは温度などの環境条件については、不明名部分が多く定まった管理法は確立していない。本研究では生理的特性を明らかにし、生育を促進させるための栽培方法について検討した。1.制御された一定の環境条件下でのファレノプシスの葉温は、受光量に依存し気温よりも明期は上昇し暗期は低下する。昼夜の周期的な温度変化のほかに、明期後半の葉温が前半よりも低く、明期後半には気孔が開き水の蒸散によって葉温が低下するためと考えられた。また明条件下で灌水直後(高湿度条件)に葉温が高まること、灌水後時間の経過した低湿度条件では葉温はあまり上昇しないことから、ファレノプシス葉では低湿度下では気孔の開閉とは無関係に、葉からの水の蒸散(クチクラ蒸散)が起こっていることが示唆された。2.O_2の放出によって昼間の光合成を測定した結果では、適温は30°Cであり、CO_2吸収量で測定した結果よりも高い温度であった。光飽和点も750μmol/m^2/sで、CO_2吸収で得られた値よりも高い値であった。3.蛍光燈照射による低照度条件(4000lux)でのファレノプシスの栽培実験では、通常の栽培条件よりも生育は格段に優れていた。これらの結果から、光強度、温度、湿度など環境条件を改善すれば、大幅に生育が促進される可能性が示されたが、具体的な設定値についてはさらに検討する必要がある。ファレノプシス栽培の光あるいは温度などの環境条件については、不明名部分が多く定まった管理法は確立していない。本研究では生理的特性を明らかにし、生育を促進させるための栽培方法について検討した。1.制御された一定の環境条件下でのファレノプシスの葉温は、受光量に依存し気温よりも明期は上昇し暗期は低下する。昼夜の周期的な温度変化のほかに、明期後半の葉温が前半よりも低く、明期後半には気孔が開き水の蒸散によって葉温が低下するためと考えられた。また明条件下で灌水直後(高湿度条件)に葉温が高まること、灌水後時間の経過した低湿度条件では葉温はあまり上昇しないことから、ファレノプシス葉では低湿度下では気孔の開閉とは無関係に、葉からの水の蒸散(クチクラ蒸散)が起こっていることが示唆された。2.O_2の放出によって昼間の光合成を測定した結果では、適温は30°Cであり、CO_2吸収量で測定した結果よりも高い温度であった。光飽和点も750μmol/m^2/sで、CO_2吸収で得られた値よりも高い値であった。3.蛍光燈照射による低照度条件(4000lux)でのファレノプシスの栽培実験では、通常の栽培条件よりも生育は格段に優れていた。これらの結果から、光強度、温度、湿度など環境条件を改善すれば、大幅に生育が促進される可能性が示されたが、具体的な設定値についてはさらに検討する必要がある。制御された一定の環境条件下でのファレノプシスの葉温は、気温に比較し明期は上昇し暗期は低下する。しかしその温度変化は微小で、昼夜温の変化は1°C以内である場合が多い。この温度変化は照明光源からの輻射熱と、気孔からの気化熱の出入りを反映したものと考えられる。昼夜の周期的な温度変化のほかに、明期後半の葉温が前半よりも低いことが観察された。これは、明期後半には気孔が開き水の蒸散によって葉温が低下するためと考えられ、本研究の目的の一つであった、葉温変化から光合成の様相を推定することが可能なことを示す現象である。また明条件下で潅水直後(高湿度条件)に葉温が高まること、潅水後時間の経過した低温度条件では葉温はあまり上昇しないことから、ファレノプシス葉では低温度下では気孔の開閉とは無関係に、葉からの水の蒸散(クチクラ蒸散)が起こっていることが示唆される。光合成酸素測定装置によるファレノプシスの光合成特性の測定(切断葉)では、高炭酸ガス濃度下では常に高い水準の酸素放出が観察され、ファレノプシス葉はC3型光合成が活発に行ない得る状態にあると考えられる。しかし通常昼間には炭酸ガスの吸収は見られないが、これは気孔にょる制御が働いているためと考えられる。C3光合成の好適温度範囲は20-25°Cであったが、夜間に蓄積した有機酸を利用した光合成(CAM)の場合は35°Cまでは温度上昇とともに酸素放出速度は上昇した。ファレノプシスはCAM植物であり、その光合成は昼間気孔を閉じた状態で細胞内でCO_2発生と固定が行われ、従来行われてきたCO_2吸収を確認する方法で光合成を測定するのは不可能である。しかしO_2の放出は昼間に行はれ、その測定によって昼間の光合成を20°Cから40°Cまでの範囲で検討した結果、適温は30°Cであり、20°Cでは30°Cの10分の1程度であった。CO_2吸収量で測定した場合の適温は、昼間25°Cという結果が得られているが、それよりも高い温度に適温があった。光強度については、光飽和点は750μmol/m^2/sで、一般のC3植物などの光飽和点とはほぼ同程度であった。
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KAKENHI-PROJECT-06660031
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