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免疫アジュバントの経口、経鼻投与による幼若個体の非特異的ウイルス感染防御能の増強 | 免疫機能の未成熟な幼若個体への免疫アジュバントの投与によって、免疫力の賦活化を試み、そのウイルス感染症からの回復に及ぼす効果の解析を目的とし以下の成績を得た。1.呼吸器急性感染症、消化器急性感染症および全身感染症モデルとしてそれぞれセンダイウイルス、ロタウイルス、ハンタンウイルスおよびヘルペスウイルスと主に幼若マウスの組み合わせで実験感染系を確立した。2.免疫アジュバントとしてMDP-Lys(L18)を選択し、経口、経鼻、経直腸、皮下ルートでの投与法を確立した。3.センダイウイルスと成熟BALB/cマウス8(5週齢)の組み合わせでは、MDP-Lys(L18)をウイルス接種の-1から-3日に皮下、経鼻、経口、経直腸のいずれのルートで投与しても肺組織中でのウイルス増殖が抑制され有意な生残率の上昇が認められた。特に、経直腸ルートの投与でも呼吸器感染に対する防御効果の増強が注目される。4.消化器急性感染症のモデル:ロタウイルスと哺乳マウス(BALB/c、生後10日齢)の組み合わせではMDP-Lys(L18)をウイルス接種の-1から-2日に皮下、経口、経直腸のいずれのルートで投与しても下痢の発症数の有意な低下、下痢症状の軽減およびウイルス増殖の抑制が観察された。5.ハンタンウイルス(腎症候性出血熱、Hantaan76-118株)と哺乳マウス(BALB/c、生後1日齢)の組み合わせではウイルス接種-1から+7日にMDP-Lys(L18)の皮下接種でのみにより有意の生残率上昇が観察された。6.以上の成績は、免疫アジュバントによって粘膜共通免疫系全体の賦活化の可能性を示唆するものである。今後さらに免疫機能増強の定量的評価必要であると考えられる。さらに、粘膜共通免疫系を利用してワクチン抗原に対する特異免疫増強をも同時に免疫アジュバントによってさらに増強する試みも必要となろう。免疫機能の未成熟な幼若個体への免疫アジュバントの投与によって、免疫力の賦活化を試み、そのウイルス感染症からの回復に及ぼす効果の解析を目的とし以下の成績を得た。1.呼吸器急性感染症、消化器急性感染症および全身感染症モデルとしてそれぞれセンダイウイルス、ロタウイルス、ハンタンウイルスおよびヘルペスウイルスと主に幼若マウスの組み合わせで実験感染系を確立した。2.免疫アジュバントとしてMDP-Lys(L18)を選択し、経口、経鼻、経直腸、皮下ルートでの投与法を確立した。3.センダイウイルスと成熟BALB/cマウス8(5週齢)の組み合わせでは、MDP-Lys(L18)をウイルス接種の-1から-3日に皮下、経鼻、経口、経直腸のいずれのルートで投与しても肺組織中でのウイルス増殖が抑制され有意な生残率の上昇が認められた。特に、経直腸ルートの投与でも呼吸器感染に対する防御効果の増強が注目される。4.消化器急性感染症のモデル:ロタウイルスと哺乳マウス(BALB/c、生後10日齢)の組み合わせではMDP-Lys(L18)をウイルス接種の-1から-2日に皮下、経口、経直腸のいずれのルートで投与しても下痢の発症数の有意な低下、下痢症状の軽減およびウイルス増殖の抑制が観察された。5.ハンタンウイルス(腎症候性出血熱、Hantaan76-118株)と哺乳マウス(BALB/c、生後1日齢)の組み合わせではウイルス接種-1から+7日にMDP-Lys(L18)の皮下接種でのみにより有意の生残率上昇が観察された。6.以上の成績は、免疫アジュバントによって粘膜共通免疫系全体の賦活化の可能性を示唆するものである。今後さらに免疫機能増強の定量的評価必要であると考えられる。さらに、粘膜共通免疫系を利用してワクチン抗原に対する特異免疫増強をも同時に免疫アジュバントによってさらに増強する試みも必要となろう。1.正常ほ乳マウスから生後、1、4、8、12週目に採血し、その末梢血中のT,B細胞数ならびにCD4またはCD8陽性細胞数の推移をファックスを用いて解析し、週齢ごとの標準値を明らかにした。2.実験感染系の確立(1)インフルエンザウイルスとして近縁のセンダイウイルスと5週齢BALB/cマウスの組み合わせでウイルスを軽鼻投与し、その接種量と生残率の間に容量依存性が確認され、実験感染系が確立された。(2)ロタウイルスとしてサル由来のSA-11株を選択し、各日齢のBALB/cマウスに定量的に経口投与する技術を確立した。その後の下痢の発症が10日齢まで観察されるがそれ以上加齢が進むと発症しないことが明らかになった。すなわち、10日齢BALB/cマウスに対する経口投与後の下痢の発症を指標として実験感染系が確立されたと判断された。(3)腎症候性出血熱ウイルスとしてハンタンウイルスを選択し、生後1日以内のほ乳マウスに皮下接種することにより、致死的な全身感染系を確立した。3.免疫アジュバントとしてMDP-Lys(L18)を選択し、そのPBS溶液を用いることとし、マイクロピペット用プラスチック製チップを用い、定量的に経鼻、経口ならびに経直腸投与する方法を確立した。4.全身感染モデルとしてのハンタンウイルス感染症の場合、MDP-Lys(L18)を皮下投与した場合、その後の攻撃接種に対して生残率が有意に上昇し、幼若個体の免疫機能亢進によって防御力の増強が観察された。 | KAKENHI-PROJECT-06454716 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06454716 |
免疫アジュバントの経口、経鼻投与による幼若個体の非特異的ウイルス感染防御能の増強 | 免疫アジュバントとしてMDP-Lys(L18)を用い、マウスに対する防御活性増強の有無を以下の3種類のウイルスについて解析し、以下のような知見を得た。1.全身感染ウイルスの代表としての、腎症候性出血熱(Hantaan76-118株)と哺乳マウス(BALB/c、生後1日齢)の組合わせではウイルス接種-1から+7日にMDP-Lys(L18)の皮下接種により有意の生存率上昇が観察された。2.呼吸器急性感染症のモデルとして、センダイウイルスと成熟BALB/cマウス8(5週齢)の組み合わせでは、MDP-Lys(L18)をウイルス接種の-1から-3日に皮下、経鼻、経口、経直腸のいずれのルートで投与しても有意な生残率の上昇が認められた。3.消化器急性感染症のモデルとして、ロタウイルスと哺乳マウス(BALB/c、生後10日齢)の組み合わせではMDP-Lys(L18)をウイルス接種の-1から-2日に皮下、経口、経直腸のいずれのルートで投与しても下痢の発症数の有意な低下や下痢症状の軽減が観察された。4.以上の成績は、免疫アジュバントによって粘膜共通免疫系全体の賦活化の可能性を示唆するものである。しかし、いずれも現象面からのみとらえたもので、免疫機能増強の定量的評価、ウイルス感染病態の解析、特にウイルス増殖抑制の定量的測定が今後必要であると考えられる。さらに、ワクチンへの将来的な貢献からは、粘膜共通免疫系を利用してワクチン抗原に対する特異免疫増強をも同時に免疫アジュバントによってさらに増強する試みも必要となろう。免疫アジュバントの経口、経鼻または経直腸投与単独での消化器と呼吸器の双方の粘膜免疫の同時賦活化(粘膜共通免疫系)について幼若マウスを中心に検討し、以下の成績を得た。1.呼吸器急性感染症のモデル:センダイウイルスと成熟BALB/cマウス8(5週齢)の組み合わせでは、MDP-Lys(L18)をウイルス接種の-1から-3日に皮下、経鼻、経口、経直腸のいずれのルートで投与しても有意な生残率の上昇が認められた。特に、経直腸ルートの投与でも呼吸器感染に対する防御効果の増強が注目される。2.消化器急性感染症のモデル:ロタウイルスと哺乳マウス(BALB/c、生後10日齢)の組み合わせではMDP-Lys(L18)をウイルス接種の-1から-2日に皮下、経口、経直腸のいずれのルートで投与しても下痢の発症数の有意な低下や下痢症状の軽減が観察された。3.全身感染症モデル:ハンタンウイルス(腎症候性出血熱原因ウイルス、Hantaan76-118株)と哺乳マウス(BALB/c、生後1日齢)の組合わせではウイルス接種-1から+7日にMDP-Lys (L18)の皮下接種により有意の生残率上昇が観察された。経鼻投与では明らかな効果は認められなかった。4.センダイウイルスとロタウイルスの感染系においてアジュバント投与によって効果の認められたグループではそれぞれ肺組織および腸管中のウイルス量がコントロールに比べ有意に低下しており、これが感染防御や症状軽減の原因であると考えられた。5.以上の成績は、免疫アジュバントによって粘膜共通免疫系全体の賦活性の可能性を示唆するものである。今後さらに免疫機能増強の定量的評価必要であると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-06454716 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06454716 |
膜受容体の流動性とシグナル伝達の関係性から見た揮発性麻酔薬作用機序の解明 | 揮発性麻酔薬は手術における全身麻酔で日常的に用いられているが、その作用機序については諸説あり、現在においても確定していない。本研究は、揮発性麻酔薬の作用機序の解明を目的とするものである。この研究では、揮発性麻酔薬が受容体タンパク質の流動性を高めることで細胞内へのシグナル伝達を修飾すると仮説を立てて実証を行う。方法論的には生きた細胞膜を用いたライブセルイメージング技術を用いて麻酔作用の可視化を計画している点が、他の研究には見られないユニークな点である。揮発性麻酔薬は手術における全身麻酔で日常的に用いられているが、その作用機序については諸説あり、現在においても確定していない。本研究は、揮発性麻酔薬の作用機序の解明を目的とするものである。この研究では、揮発性麻酔薬が受容体タンパク質の流動性を高めることで細胞内へのシグナル伝達を修飾すると仮説を立てて実証を行う。方法論的には生きた細胞膜を用いたライブセルイメージング技術を用いて麻酔作用の可視化を計画している点が、他の研究には見られないユニークな点である。 | KAKENHI-PROJECT-19K09373 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K09373 |
外来ザリガニの二次侵入に伴うパーソナリティー特性の変遷とその変動要因の解明 | 北米原産のシグナルザリガニPacifastacus leniusculusは、捕食や競合、病気の媒介などを通じて侵入先の生態系に甚大な被害を与える侵入種である。これまでに、日本に導入されたシグナルザリガニは3つの創始集団(北海道、長野、滋賀)から構成され、うち北海道由来の集団が近年分布域を拡大するとともに、侵入年の新しい集団ほど鉗脚(ハサミ)が大型化している(Usio et al 2016)。大型の鉗脚を持つ個体は攻撃性が強いことが想定される。また北米での研究から、シグナルザリガニ侵入集団に複数の行動が相関する行動シンドロームの存在が確認されている。本研究では、室内実験を通じて、「侵入年の新しい集団ほど攻撃的で活発である」という仮説を検証した。創始集団の一つである北海道摩周湖(1930年導入)と、二次侵入集団である北海道然別湖(1993年定着)、北海道洞爺湖(2005年定着)、長野県片桐ダム湖(2010年定着)の4つのシグナルザリガニ集団を対象として行動実験を行った。最初に、各集団の攻撃性を明らかにするため、侵入集団ごとに体サイズがほぼ等しい2個体を水槽に入れ、一定期間の順化後、5秒ごと10分間の対戦行動と接近数(両者の距離が1個体長以下になった回数)を記録した(実験1)。次に各集団の活発さを明らかにするため、各個体の初めて見る餌(ニンジン)の消費量を測定した(実験2)。結果、対戦行動や、接近数、活発さといった行動形質は、4集団間の比較では差が不明瞭であったが、創始集団と二次侵入集団の比較ではいずれの行動形質も二次侵入集団で高い傾向が認められた。また、二次侵入集団では攻撃性と活発さが正の相関を示し、特にこれらの行動相関は然別湖集団で顕著であった。以上より、日本に導入されたシグナルザリガニは、二次侵入に伴い攻撃性や活発さといった行動形質が変化したと考えられる。北米原産のシグナルザリガニ(ウチダザリガニ;Pacifastacus leniusculus)は、捕食や競合、病気の媒介などを通じて侵入先の生態系に甚大な被害を与える侵入種である。これまでの研究から、日本に導入されたシグナルザリガニは3つの創始集団(北海道、長野、滋賀)から構成され、うち北海道由来の集団が近年分布域を拡大するとともに、侵入年の新しい集団ほどハサミ(鉗脚)が大型化していることが示されている。本研究では、室内実験を通じて、シグナルザリガニの侵入歴の違いに伴う攻撃性や活発さといった行動特性の変化を検証した。一般にザリガニ類のハサミの大きさは攻撃性と密接な関係があることから、「侵入年の新しいシグナルザリガニ集団は攻撃性が高く、活発に採餌する」ことを仮説とした。実験には、北海道摩周湖(1930年導入)と長野県片桐ダム湖(2010年定着確認)のシグナルザリガニのオスを用いた。シグナルザリガニのハサミ(相対鉗脚面積)は、摩周湖集団と比べ片桐ダム湖集団で有意に大きかった。各集団の攻撃性を明らかにするため、同一集団のサイズがほぼ同じ2個体を水槽に入れ、5秒ごと10分間の攻撃行動と接近数(両者の距離が1個体長以下になった回数)を記録した(実験1)。次に、各集団の活発さを明らかにするため、ザリガニ個体ごとに初めて見る餌(ジャガイモ)の消費量を測定した。実験1の結果から、摩周湖のシグナルザリガニ集団は、片桐ダム湖集団と比べ、攻撃性が高く接近数が多いことが明らかとなった。実験2の結果からは、両シグナルザリガニ集団間で活発さに明確な差は認められなかった。また、シグナルザリガニの攻撃性と活発さとの間には正の相関は認められなかった。以上より、侵入年の新しいシグナルザリガニ集団は、古い集団と比べ攻撃性が高いことが示された。しかし攻撃性の高い個体は活発であるという仮説は支持されなかった。平成28年度は北海道摩周湖と長野県片桐ダム湖のシグナルザリガニ集団を対象に室内実験を行い、侵入年の異なる二集団間で攻撃行動の強さに差異が認められた。一方で、今後活発さの実験に用いる餌は再検討の余地がある。北米原産のシグナルザリガニ(ウチダザリガニ;Pacifastacus leniusculus)は、捕食や競合、病気の媒介などを通じて侵入先の生態系に甚大な被害を与える侵入種である。これまでの研究から、日本に導入されたシグナルザリガニは3つの創始集団(北海道、長野、滋賀)から構成され、うち北海道由来の集団が近年分布域を拡大するとともに、侵入年の新しい集団ほどハサミ(鉗脚)が大型化していることが示されている(Usio et al 2016)。本研究では室内実験を通じてシグナルザリガニの侵入歴の違いに伴う攻撃性や活発さといった行動特性の変化を検証した。一般にザリガニ類の鉗脚の大きさは攻撃性と密接に関係していることから、「侵入年の新しいシグナルザリガニ集団は攻撃性が高く、活発に採餌を行う」ことを仮説とした。 | KAKENHI-PROJECT-16K07512 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K07512 |
外来ザリガニの二次侵入に伴うパーソナリティー特性の変遷とその変動要因の解明 | 実験は、初期に導入された摩周湖集団(1930年導入)と、近年定着が確認された長野県片桐ダム湖集団(2010年定着)に加え、両集団の中間年に定着が確認された然別湖集団(1993年定着)、洞爺湖集団(2005年定着)を対象とした。最初に各集団の攻撃特性を明らかにするため、侵入集団ごとに体サイズがほぼ等しい2個体を水槽に入れ、5秒ごと10分間の攻撃行動と接近数(両者の距離が1個体長以下になった回数)を記録した(実験1)。次に各集団の活発さを明らかにするため、各個体の初めて見る餌(ニンジン)の消費量を測定した(実験2)。結果、シグナルザリガニの侵入集団間で攻撃性が異なる傾向が認められ、特に摩周湖集団と比べ、然別湖集団間でより攻撃的であった。また然別湖集団では、体サイズや鉗脚サイズと攻撃性に正の相関が認められ、さらに個体の攻撃性と活発さが正の相関を示す行動シンドロームの存在が確認された。以上より、国内のシグナルザリガニは、侵入暦に伴い行動特性が変化していることが示された。サンプリングや行動実験は概ね当初計画通りに進んでいる。北米原産のシグナルザリガニPacifastacus leniusculusは、捕食や競合、病気の媒介などを通じて侵入先の生態系に甚大な被害を与える侵入種である。これまでに、日本に導入されたシグナルザリガニは3つの創始集団(北海道、長野、滋賀)から構成され、うち北海道由来の集団が近年分布域を拡大するとともに、侵入年の新しい集団ほど鉗脚(ハサミ)が大型化している(Usio et al 2016)。大型の鉗脚を持つ個体は攻撃性が強いことが想定される。また北米での研究から、シグナルザリガニ侵入集団に複数の行動が相関する行動シンドロームの存在が確認されている。本研究では、室内実験を通じて、「侵入年の新しい集団ほど攻撃的で活発である」という仮説を検証した。創始集団の一つである北海道摩周湖(1930年導入)と、二次侵入集団である北海道然別湖(1993年定着)、北海道洞爺湖(2005年定着)、長野県片桐ダム湖(2010年定着)の4つのシグナルザリガニ集団を対象として行動実験を行った。最初に、各集団の攻撃性を明らかにするため、侵入集団ごとに体サイズがほぼ等しい2個体を水槽に入れ、一定期間の順化後、5秒ごと10分間の対戦行動と接近数(両者の距離が1個体長以下になった回数)を記録した(実験1)。次に各集団の活発さを明らかにするため、各個体の初めて見る餌(ニンジン)の消費量を測定した(実験2)。結果、対戦行動や、接近数、活発さといった行動形質は、4集団間の比較では差が不明瞭であったが、創始集団と二次侵入集団の比較ではいずれの行動形質も二次侵入集団で高い傾向が認められた。また、二次侵入集団では攻撃性と活発さが正の相関を示し、特にこれらの行動相関は然別湖集団で顕著であった。以上より、日本に導入されたシグナルザリガニは、二次侵入に伴い攻撃性や活発さといった行動形質が変化したと考えられる。今後、実験に用いるシグナルザリガニの集団数を増やすとともに、室内実験を精緻化する。また、最終年度までには、侵入集団のパーソナリティー特性に影響すると考えられる各水域の餌資源量の推定や、外来ザリガニのパーソナリティーが当該集団の栄養ニッチまたは栄養段階に及ぼす影響を明らかにしたいと考えている。平成29年度は、4つのシグナルザリガニ集団で行動実験を行った。しかし、シグナルザリガニ集団によって捕獲されやすい体サイズが異なったため、結果的に集団間で実験に用いたシグナルザリガニの体サイズ分布が完全一致しなかった。今後、対象集団を増やすとともに、これまでに実験を行った集団で不足している体サイズの個体を採集し、集団間でサイズ分布が一致することを確認する。また、侵入集団のパーソナリティー特性に影響すると考えられる各水域の餌資源量の推定も進める予定である。台風被害による増水で野外調査は危険性が高かったため、旅行日程を短縮した。 | KAKENHI-PROJECT-16K07512 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K07512 |
自己熱再生に基づく省エネルギーな海水淡水化プロセス実現のための基礎研究 | エネルギー消費量が少なく、濃縮海水が生じない革新的な海水淡水化プロセスを実現するために、自己熱再生に基づく流動層蒸発器を利用した新たなプロセスを提案した。本プロセスでは海水は顕熱交換器で予熱されたのち、スケールが析出しない回収率(供給する海水のうち淡水として取り出す割合)まで濃縮プロセスで処理される。残渣であるブラインは流動層蒸発器を用いた乾燥プロセスで処理される。先行研究から、流動層蒸発器に海水を供給すると層内の流動状態が変化して層底部に凝集体が堆積し、非流動化が生じる可能性が高くなることが報告されている。非流動化が生じると伝熱速度、スケール抑制効果が低下し、流動層を蒸発器として利用することが困難になる。そこで、省エネルギーで濃縮海水が生じない革新的な海水淡水化プロセスを実現するために、流動層蒸発器で実験を行い、層内温度、海水供給速度が流動状態に与える影響について検討を行った。同時にこれらが流動状態に与える影響を明らかにするために流動状態のモデル化を行った。本モデルは実験結果とよく一致し、層内の流動挙動を説明できることを確認した。さらに、構築したモデルとエクセルギー解析を用いて、提案したプロセスの省エネルギー化について検討を行うとともに、プロセスシミュレーターを用いて提案したプロセス全体のエネルギー消費量を試算した。その結果、提案したプロセスのエネルギー消費量は既存の蒸発法と比べて7080%程度削減できることを明らかにした。海水淡水化プロセスでは、蒸発法だけでなく逆浸透膜法など様々な方法が提案されており、プロセスごとに製造した淡水の塩分濃度や、回収率、前処理の負荷、エネルギー消費量などが異なる。そこで、エネルギー消費量だけでなくそれ以外の特徴についても検討を行い提案したプロセスとの比較を行った。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。エネルギー消費量が少なく、濃縮排水が生じない蒸発型海水淡水化プロセスを実現するために、蒸発器に流動層を利用した新たなプロセスを提案した。濃縮排水を削減するためには伝熱管表面への塩(スケール)の析出を抑制する必要がある。そこで流動層内でのスケール析出挙動について検討をおこなった。流動層型蒸発器に模擬海水を注入し、海水蒸発実験をおこなったところ、提案したプロセスは非常に大きなスケール抑制効果を有することを確認した。同時に海水中の塩類は固体架橋として流動化粒子を凝集させ、形成された凝集体が層底部に堆積することを明らかにした。凝集体が堆積すると、伝熱が阻害され流動層が機能不全(非流動化)を引き起こす可能性がある。そこで、安定した運転が可能なプロセスを設計するために、流動層内における凝集体の振舞いについて検討を行った。流動化ガス速度、層内温度、流動化粒子の直径を変化させ海水蒸発実験をおこなったところ、流動化ガスの気泡により生じる力、液架橋力、固体架橋力により、凝集挙動を説明できることを明らかにした。この結果から、層内での凝集挙動を説明できる簡易モデルを提案した。さらに、凝集体の堆積を抑制しながら蒸発器を運転するためには、固体架橋により生じた凝集体を破砕する必要があり、非常に大きな流動化ガス速度が必要となることを明らかにした。したがって、省エネルギーなプロセスを実現するためには、連続的、またはバッチ的に凝集体を回収するプロセスがエネルギー的に適していることを明らかにした。これらの結果から、プロセス全体のエネルギー消費量について検討した。プロセスシミュレーションを利用し、提案するプロセス全体でのエネルギー消費量を見積もると、従来型の蒸発型海水淡水化プロセスと比べ、大きな省エネルギー性能を有することを明らかにした。エネルギー消費量が少なく、濃縮海水が生じない革新的な海水淡水化プロセスを実現するために、自己熱再生に基づく流動層蒸発器を利用した新たなプロセスを提案した。本プロセスでは海水は顕熱交換器で予熱されたのち、スケールが析出しない回収率(供給する海水のうち淡水として取り出す割合)まで濃縮プロセスで処理される。残渣であるブラインは流動層蒸発器を用いた乾燥プロセスで処理される。先行研究から、流動層蒸発器に海水を供給すると層内の流動状態が変化して層底部に凝集体が堆積し、非流動化が生じる可能性が高くなることが報告されている。非流動化が生じると伝熱速度、スケール抑制効果が低下し、流動層を蒸発器として利用することが困難になる。そこで、省エネルギーで濃縮海水が生じない革新的な海水淡水化プロセスを実現するために、流動層蒸発器で実験を行い、層内温度、海水供給速度が流動状態に与える影響について検討を行った。同時にこれらが流動状態に与える影響を明らかにするために流動状態のモデル化を行った。本モデルは実験結果とよく一致し、層内の流動挙動を説明できることを確認した。さらに、構築したモデルとエクセルギー解析を用いて、提案したプロセスの省エネルギー化について検討を行うとともに、プロセスシミュレーターを用いて提案したプロセス全体のエネルギー消費量を試算した。その結果、提案したプロセスのエネルギー消費量は既存の蒸発法と比べて7080%程度削減できることを明らかにした。海水淡水化プロセスでは、蒸発法だけでなく逆浸透膜法など様々な方法が提案されており、プロセスごとに製造した淡水の塩分濃度や、回収率、前処理の負荷、エネルギー消費量などが異なる。そこで、エネルギー消費量だけでなくそれ以外の特徴についても検討を行い提案したプロセスとの比較を行った。流動層内を外部から観察できるガラス製流動層で海水蒸発実験をおこない、海水を供給しても粒子の流動化、海水の蒸発が持続する条件を明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-14J08306 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J08306 |
自己熱再生に基づく省エネルギーな海水淡水化プロセス実現のための基礎研究 | 海水と同じ成分を有する模擬海水を作製し供給液として使用した。模擬海水をオイルバスで予熱したのち流動層型蒸発器に流入し、加熱された流動化粒子と接触させることによって模擬海水を蒸発させた。流動化粒子は層内に挿入したヒーターを利用して加熱した。流動化の判断は、層内の圧力損失、温度分布の計測、さらに流動層外部からの視覚的な観察を併用し行った。流動層内の温度、流動化ガス速度、粒子の直径等を変化させ、粒子の凝集、流動化に与える影響を実験的に明らかにした。同時に、粒子間での力のバランスについて理論的な考察を行い、実験結果を説明することが可能なモデルの構築を行った。流動層型蒸発器で、ある量の模擬海水を蒸発させ、蒸発前後のヒーターの表面写真、質量変化を比較し、伝熱管表面へのスケール析出について検討した。同様に、海水にヒーターを浸し蒸発させた際の、ヒーター表面の変化、質量変化を確認した。これら二つの実験から、流動層型蒸発器が有するスケール抑制効果について検討した。さらに析出した塩類のセグリゲーション特性を解明し、塩類の回収方法を決定した。流動層内での粒子の振舞いは非常に複雑である。国内だけでなく海外の研究者とも意見交換を行い、流動現象の理論的な解明を行った。提案した、流動層を利用した自己熱再生型海水淡水化プロセスでは、ブロアー動力、コンプレッサー動力が必要である。これらのエネルギー消費量は熱交換温度差、流動化ガス速度、層内圧力損失に影響を受ける。上記の計測で得られた結果をプロセスシミュレーターに反映し、提案するプロセス全体でのエネルギー消費量を試算した。以上より、当初の予定通り研究は進んでいるので、おおむね順調に進展していると評価した。27年度が最終年度であるため、記入しない。26年度の検討では、ブロアー動力、コンプレッサー動力を考慮に入れた、エネルギー消費量の試算を行った。しかしながら運転条件が最適化されておらず、依然エネルギー消費量削減の余地がある。したがって、提案した、海水淡水化プロセスの更なるエネルギー消費量削減方法について検討する。省エネルギーの観点から考えると、ブロアー動力、圧縮機動力は小さいほどよい。しかしながら、ブロアー動力が小さいと粒子の流動は穏やかになり、凝集体の堆積が生じやすくなり、流動層が非流動化を生じる可能性が高くなる。また、圧縮機動力を小さくした場合も同様に、層内の温度が低くなるので、伝熱速度が低下し、凝集が生じやすくなると予想される。そこでエクセルギー解析を利用して、提案するプロセスでの理論的な最小エネルギー消費量を計算するとともに、提案した条件で、実際に運転を行うことが可能か実験的に検討する。そして、提案するプロセスが、安定して運転を行うことが可能であり、かつもっともエネルギー消費量が小さくなる条件の解明を行う。海水淡水化プロセスでは様々な方式が提案されており、プロセスにより製造した淡水の塩分濃度や、回収率(濃縮排水の量)、単位製品あたりのエネルギー消費量が異なる。 | KAKENHI-PROJECT-14J08306 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J08306 |
次世代シークエンサーによるDNA脱メチル化誘導法の検討:エピゲノム制御をめざして | メチル化DNAを部位特異的に改変する為の基礎的技術および知見を得る為に、まずメチル化DNA認識蛋白質キャプチャー法と次世代シーケンサーを用いたMBD-seq法を確立した。さらに、DNA脱メチル化作用をモニター出来るMoCEVシステムを開発した。このシステムを用いることで、DNAメチル化阻害剤によるプロモーター領域のメチル化の変化を確認することに成功した。本研究で得られた知見は、DNAの修飾を部位特異的に改変する技術の確立に有用である。メチル化DNAを部位特異的に改変する為の基礎的技術および知見を得る為に、まずメチル化DNA認識蛋白質キャプチャー法と次世代シーケンサーを用いたMBD-seq法を確立した。さらに、DNA脱メチル化作用をモニター出来るMoCEVシステムを開発した。このシステムを用いることで、DNAメチル化阻害剤によるプロモーター領域のメチル化の変化を確認することに成功した。本研究で得られた知見は、DNAの修飾を部位特異的に改変する技術の確立に有用である。本研究は、転写制御因子の結合認識やクロマチン構造などに大きな影響を与えるDNAのメチル化修飾に着目し、メチル化DNAを部位特異的に改変する為の基礎技術を確立することを目的にしている。まず、DNAのメチル化修飾が全ゲノム上のどこで起きているかを明らかにする技術の開発を試みた。その結果、本期間において、メチル化DNA認識蛋白質キャプチャー法(Methylated DNA binding domain capture, MBD)で濃縮したDNA断片を、次世代シーケンサーであるイルミナ社のSolexa GIIxで解析する方法であるMBD-seq法の確立に成功した。現在までに、ヒト繊維芽細胞やヒト単球細胞などを用いて解析を行い、多くの新規組織特異的DNAメチル化差異領域を見いだし、それらの領域の中に組織特異的な発現を制御していると考えられる領域を見つけ出すことに成功した。今後、MBD-seq法を用いることで、DNA脱メチル化誘導処理後のDNAメチル化状態の変化を全ゲノム領域で解析出来ることが期待出来る。一方、DNA脱メチル化誘導処理として、既知のエピゲノム改変剤である7種類の阻害剤(トリコスタチンA、バルプロ酸、デキサメタゾン、ヒドロキサミン酸サブエロイルアニリド、ゼブラリン、RG108、5-アザシチジン(5-aza))に着目し、繊維芽細胞でのDNA脱メチル化作用について検討した。MBD-seqで得られたヒト繊維芽細胞とヒト単球細胞のメチル化DNA領域の解析結果から、単球細胞で特異的にDNA脱メチル化している領域30カ所を選び、阻害剤で処理をした繊維芽細胞でそれらの領域にDNA脱メチル化変化が起きているかを検討した。その結果、5-azaが最も多くの領域においてDNA脱メチル化を誘導出来ることが明らかになった。本研究の目的は、転写制御因子の結合認識やクロマチン構造などに大きな影響を与えるDNAのメチル化修飾に着目し、メチル化DNAを部位特異的に改変する為の基礎技術を確立することであった。研究代表者ば、昨年度、メチル化DNA認識蛋白質キャプチャー法(Methylated DNA binding domain capture,MBD)で濃縮したDNA断片を、次世代シーケンサーであるイルミナ社のSolexa GIIxで解析する方法であるMBD-seq法の確立に成功した。本年度において、MBD-seq法で得られた結果を詳細に解析したところ、ヒト繊維芽細胞やヒト単球細胞などで、多くの新規組織特異的DNAメチル化差異領域を見いだし、それらの領域の中に組織特異的な発現を制御していると考えられる領域を見つけ出すことに成功した。また、蛋白質コード遺伝子のプロモーター領域だけではなく、ノンコーディングRNAの発現調節を行っている可能性を示す結果が得られ、メチル化DNAを部位特異的に改変する為に重要な知見を得た。一方、研究代表者は、これらの解析の結果得られた任意の領域が、近傍の遺伝子発現に対する影響を検証する新規の実験手法が必要であると考え、哺乳動物細胞発現ベクターを改変した解析手法を開発した。この方法が有効であることを示す為に、研究代表者は、レポーター遺伝子としてのVENUSと強い発現を誘導するCAGプロモーターを用い、293T細胞で実験を行った。CAGプロモーターに酵素的にメチル化修飾を加え、哺乳動物細胞発現ベクターをin vitroで再構築し、293T細胞への導入実験を行ったところ、下流のVENUS遺伝子の発現が抑制されることが観察された。さらに、この状態は細胞の培養を続けても持続することが示された。さらに、DNAメチル化阻害剤である5-アザシチジンで処理をするとVENUSの発現が観察されたことから、任意の領域のDNAメチル化領域に対する脱メチル化誘導を観察する為の新規技術の作製に成功した。 | KAKENHI-PROJECT-22710200 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22710200 |
バイオ燃料利用に関するNOxとメタンスリップの同時低減技術の研究 | NOx、SOx規制への対応方法でもあるLNG燃料の利用は、高い温暖化係数を持つメタンが未燃のまま排出されるメタンスリップという問題がある。GHG排出規制への対応方法であるバイオ燃料の懸念は、含酸素燃料であるためNOx排出が増加することである。そこで、本研究ではLNG燃料を一部の気筒で使用し、その排ガスを、バイオ燃料を使用する気筒にEGR(排気再循環)用ガスとして導入するシステムを提案する。この方式によりNOxが低減されると共に、メタンスリップも削減される。ただし、このシステムでは気筒間の発熱パターンが異なるという問題が残る。そこで、本研究では実験的に本システムの有効性を検証する。NOx、SOx規制への対応方法でもあるLNG燃料の利用は、高い温暖化係数を持つメタンが未燃のまま排出されるメタンスリップという問題がある。GHG排出規制への対応方法であるバイオ燃料の懸念は、含酸素燃料であるためNOx排出が増加することである。そこで、本研究ではLNG燃料を一部の気筒で使用し、その排ガスを、バイオ燃料を使用する気筒にEGR(排気再循環)用ガスとして導入するシステムを提案する。この方式によりNOxが低減されると共に、メタンスリップも削減される。ただし、このシステムでは気筒間の発熱パターンが異なるという問題が残る。そこで、本研究では実験的に本システムの有効性を検証する。 | KAKENHI-PROJECT-19K04868 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K04868 |
グローバリゼーションと商業構造の変容に関する比較研究(東アジアと日本の比較) | 東アジア市場において現地小売企業、日系小売企業、研究機関を対象とした聞き取り調査を実施した。日系小売企業の東アジア市場への出店では、日本市場で確立した業態コンセプトを貫いており、それが現地小売企業との差別化として機能していることが確認された。小売外資の市場参入は、中国および台湾の現地小売企業に対して大きなインパクトを与え、小売市場競争を激化させ、旧来型の小売商業構造を変革させる駆動力として作用しているのである。東アジア市場において現地小売企業、日系小売企業、研究機関を対象とした聞き取り調査を実施した。日系小売企業の東アジア市場への出店では、日本市場で確立した業態コンセプトを貫いており、それが現地小売企業との差別化として機能していることが確認された。小売外資の市場参入は、中国および台湾の現地小売企業に対して大きなインパクトを与え、小売市場競争を激化させ、旧来型の小売商業構造を変革させる駆動力として作用しているのである。研究代表者および研究分担者は、研究課題に即した研究会を定期的に開催した。この研究会では、(1)研究代表者と研究分担者による研究視角の統一・検討、(2)既存文献の収集と分析課題の整理・分析、(3)海外現地調査の事前準備などを主たる内容とした。東アジア各都市・地域への現地調査は2回実施した。1回目は、2007年7月に中国大連市において現地研究者(東北財経大学)との共同研究および大連市内の商業集積調査を行った。2回目は、2007年11月に中国上海市と南京市において現地小売企業(上海市3社)と日系企業(南京市1社)に対する聞き取り調査および現地研究者(上海財経大学)との共同研究を実施した。これらの聞き取り調査の内容は、西島博樹・岩永忠康「中国小売環境と企業戦略-現地企業調査より-」(日本商業学会九州部会、2007年12月15日、長崎県立大学)として学会報告した。今年度の研究の成果物としては、次ページに記載されているように、雑誌論文1件、学会発表2件、図書(共著)3件がある。これらの研究成果の共通テーマは、東アジア市場におけるグローバル化プロセスおよび小売外資および国内小売企業に対する影響である。例えば次の点を明らかにした。東アジア市場のグローバリゼーションの進化によって小売商業構造の変容を導くのは、小売部門に対する直接的な市場開放(資本自由化)だけではない。小売商業構造の変容は、生産部門を対象とした市場開放が持続的経済成長を実現し、それが内的圧力として導かれるという側面がある。また、参入脅威に直面した国内小売企業がインフォーマルな形で海外の先進的な小売経営技術を導入することで、商業構造が変化するというケースもある。研究代表者および研究分担者は、研究課題に即した研究会を定期的に開催した。この研究会では、(1)研究代表者と研究分担者による研究視角の統一・検討、(2)既存文献の収集と分析課題の整理・分析、(3)海外現地調査の事前準備などを主たる内容とした。東アジア各都市・地域への現地調査は2回実施した。1回目は、2008年7月に中国の牡丹江市、藩陽市、大連市において小売企業聞き取り調査、現地消費者を対象としたアンケート調査、商業集積調査を実施した。また、同時に、牡丹江大学(牡丹江市)、遼寧大学(藩陽市)、東北財経大学(大連市)において現地研究者との意見交換、共同研究会を実施した。2回目は、2008年11月に台湾において小売企業聞き取り調査及び商業集積調査を実施した。今年度の研究の成果物としては、次ページに記載されているように、雑誌論文1件、学会発表5件、図書(共著)3件がある。これらの研究成果の共通テーマは、東アジア市場におけるグローバル化プロセスおよび小売外資および国内小売企業に対する影響である。例えば次の点を明らかにした。東アジア市場(中国、台湾)に出店している日系小売企業(特に百貨店)は、経営の基幹部分に関しては日本で確立させた標準化戦略を徹底させると同時に、周辺部分については柔軟に現地適応化戦略を取り入れている。このことが、現地市場での競争優位性の源泉として機能している。研究代表者および研究分担者は、研究課題に即した研究会を定期的に開催した。東アジア各都市・地域への現地調査は2回実施した。1回目は、2009年10月11月に中国義烏市、杭州市、アモイ市において卸売企業と小売企業の聞き取り調査、商業集積調査を実施した。2回目は、2010年1月に台湾高雄市、台東市において小売企業聞き取り調査及び商業集積調査を実施した。今年度の研究の成果物としては、次ページに記載されているように、雑誌論文4件、学会発表1件、図書(共著)1件がある。また、最終年度になるため研究成果報告書(全124ページ)を刊行した。今年度の主たる研究成果は標準化-適応化問題に対する考察である。まず、小売企業が海外へ出店する際の標準モデルを、背後のシステム(商品供給システムと物流システム)から切り離して考察し、移転対象とのギャップの問題に取り組んだ。次に、小売業態コンセプトが変更されたか否かを、標準化と適応化との分岐点に設定した。国際化過程の中に基本業態コンセプトが貫かれているかぎり、適応化ではなく標準化として捉えるべきであると考えるのである。この見解は、次の2つの問題を解決する。(1)総合型小売企業の世界戦略では、基本業態コンセプトという唯一の標準モデルが駆使されるため、従来の見解のように標準モデルが複数存在するということはない。 | KAKENHI-PROJECT-19530389 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19530389 |
グローバリゼーションと商業構造の変容に関する比較研究(東アジアと日本の比較) | (2)標準モデルは、国・地域を限定することはなく、グローバルに適用される(少なくともその可能性がある)ものである。 | KAKENHI-PROJECT-19530389 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19530389 |
深海生物の生化学的研究 | 深海生物チュ-ブワ-ム(TW)は、1977年ガラパゴス島沖の深海2600mの海底で発見され、口、消化器、こう門がなく特異的な形状をしているため、新しい門、Vestimentifera,を作って分類された。栄養物は、熱噴出孔から出る硫化水素を共棲している硫黄酸化細菌へ渡し、細菌が硫化水素を酸化し炭酸ガスを還元する事により炭素固定したのを得ている。今回著者はTWのヘモグロビン(Hb)の構造を通して、新しく発見されたTWとは一体どの様な生物なのか、新しい生物なら、これ迄記載されているどの生物に類縁関係があるのか、また酸素呼吸をしている生物にとっては猛毒である硫化水素を、如何にして運搬するのかを明らかにしようとした。我々は1987年しんかい2000により、相模沖の深海底で日本近海で初めて発見されたTWを用いた。ガラパゴス島沖で発見されたのと種は異なり、一応、Lamellibrachia sp.とされているが未だ種の同定はされていない。TWのHbは環形動物のそれと同じく細胞外Hbであった。Hbは4種類のヘムを持ったサブユニットと2種類のヘムを持たないリンカ-鎖から構成されていた。これらをHPLCで分離し、リンカ-鎖の一つは溶出されなかったので、計5個の構造を決定した。その結果、TWのHbの構造は、環形動物の貧毛類(ミミズ)と多毛類(ゴカイ)のHbの類似性と区別できなかった。言換えるとTWは環形動物の貧毛類と多毛類が分化するのと同じ時期(およそ5億年前)に、それらの共通の祖先から分化したと言える。また硫化水素は、Hbの蛋白質部分にある、環形動物にはなくTWのみにあるフリ-のシステインに結合して運ばれるものと考えられる。リンカ-鎖については、環形動物で存在するかどうか論争の的であったが、TWでその存在が確かめられ、やり直してみると環形動物でも存在する事が明かとなりその構造も決定した。深海生物チュ-ブワ-ム(TW)は、1977年ガラパゴス島沖の深海2600mの海底で発見され、口、消化器、こう門がなく特異的な形状をしているため、新しい門、Vestimentifera,を作って分類された。栄養物は、熱噴出孔から出る硫化水素を共棲している硫黄酸化細菌へ渡し、細菌が硫化水素を酸化し炭酸ガスを還元する事により炭素固定したのを得ている。今回著者はTWのヘモグロビン(Hb)の構造を通して、新しく発見されたTWとは一体どの様な生物なのか、新しい生物なら、これ迄記載されているどの生物に類縁関係があるのか、また酸素呼吸をしている生物にとっては猛毒である硫化水素を、如何にして運搬するのかを明らかにしようとした。我々は1987年しんかい2000により、相模沖の深海底で日本近海で初めて発見されたTWを用いた。ガラパゴス島沖で発見されたのと種は異なり、一応、Lamellibrachia sp.とされているが未だ種の同定はされていない。TWのHbは環形動物のそれと同じく細胞外Hbであった。Hbは4種類のヘムを持ったサブユニットと2種類のヘムを持たないリンカ-鎖から構成されていた。これらをHPLCで分離し、リンカ-鎖の一つは溶出されなかったので、計5個の構造を決定した。その結果、TWのHbの構造は、環形動物の貧毛類(ミミズ)と多毛類(ゴカイ)のHbの類似性と区別できなかった。言換えるとTWは環形動物の貧毛類と多毛類が分化するのと同じ時期(およそ5億年前)に、それらの共通の祖先から分化したと言える。また硫化水素は、Hbの蛋白質部分にある、環形動物にはなくTWのみにあるフリ-のシステインに結合して運ばれるものと考えられる。リンカ-鎖については、環形動物で存在するかどうか論争の的であったが、TWでその存在が確かめられ、やり直してみると環形動物でも存在する事が明かとなりその構造も決定した。 | KAKENHI-PROJECT-02640545 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02640545 |
軌道縮退系の電子構造 | 本研究班では軌道自由度が重要な働きを示すと思われる物質について、純良試料の育成を行ない、電子構造を解明するとともに、試料を他の班にも供給し、多角的な測定を推進した。1.高温超伝導体MgB_2および関連物質AlB_2の電子構造を光電子分光およびX線吸収発光分析により、電子状態を明らかにした。2.高温弱強磁性を示す物質CaB_6について、磁化測定、ESR、光電子分光、SdH効果など多様な手段により、その特異な磁性状態と電子構造を明らかにした。それまで、欧米で報告されてきた実験事実はかなり誤りがあり、発現機構については再検討する必要があることを明らかにした。また、詳細な組成分析を行ったが、観測された磁性が鉄不純物によるものかどうかは明らかにすることができなかった。3.軌道縮退系CeB_6、PrPb_3、Ce_3Pd_<20>Ge_6などについて、静水圧および軸性圧力の印加による磁気相図の特異な変化や電子構造の変化を明らかにした。4.Yb_4As_3など電荷秩序を示す物質及びその混晶系について、SdH効果やNMRを用いて伝導電子状態および磁気的な相互作用を明かにした。5.局在的なf電子を有するU化合物、UPd_3、U_3Pd_<20>Si_6などの特異な磁性および電子構造を明らかにした。6.その他RB_2C_2,RB_6,TmTe,希土類カルコゲナイド、希土類プニクタイト、ウラン化合物などについての研究を推進した。本研究班では軌道自由度が重要な働きを示すと思われる物質について、純良試料の育成を行ない、電子構造を解明するとともに、試料を他の班にも供給し、多角的な測定を推進した。1.高温超伝導体MgB_2および関連物質AlB_2の電子構造を光電子分光およびX線吸収発光分析により、電子状態を明らかにした。2.高温弱強磁性を示す物質CaB_6について、磁化測定、ESR、光電子分光、SdH効果など多様な手段により、その特異な磁性状態と電子構造を明らかにした。それまで、欧米で報告されてきた実験事実はかなり誤りがあり、発現機構については再検討する必要があることを明らかにした。また、詳細な組成分析を行ったが、観測された磁性が鉄不純物によるものかどうかは明らかにすることができなかった。3.軌道縮退系CeB_6、PrPb_3、Ce_3Pd_<20>Ge_6などについて、静水圧および軸性圧力の印加による磁気相図の特異な変化や電子構造の変化を明らかにした。4.Yb_4As_3など電荷秩序を示す物質及びその混晶系について、SdH効果やNMRを用いて伝導電子状態および磁気的な相互作用を明かにした。5.局在的なf電子を有するU化合物、UPd_3、U_3Pd_<20>Si_6などの特異な磁性および電子構造を明らかにした。6.その他RB_2C_2,RB_6,TmTe,希土類カルコゲナイド、希土類プニクタイト、ウラン化合物などについての研究を推進した。今年度購入した装置は順調に立ち上がりつつある。主要な成果は以下の通りである。1.我々はAlフラックス法により高温で強磁性を示す低キャリアー密度物質CaB_6およびLaをドープした単結晶を作製し、基礎物性測定、電子スピン共鳴によりこの物質の強磁性の特異性を明らかした。さらに、Alフラックスを用いないフローティングゾーン法により単結晶の作製に初めて成功した。2.軌道秩序を示す典型物質CeB_6のフェルミ面、有効質量、反強四重極転移温度、反強磁性転移温度の異常な圧力依存性と相互の関係を明らかにした。また、Laとの混晶のIV相で熱物性、磁気抵抗の測定から近藤効果の役割を明らかにした。新しい軌道秩序を示す物質DyB_2C_2で光電子分光法およびドハースファンアルフェン(dHvA)効果により電子構造を明らかにした。3.軸性圧力下のdHvA効果の開発を行い、軌道秩序を示す物質Ce_3Pd_<20>Ge_6およびその参照物質で初めてフェルミ面の軸性圧力変化による変化を明らかにした。4.TmTeの四重極秩序相でTeのNMR観測に成功した。TeをSeで10%置き換えることによって0.6K以上で四重極秩序相からの信号が観測できなくなることを明らかにした。CeTeでは初めてドハースファンアルフェン効果が観測できる純良単結晶作製に成功した。5.軌道自由度が重要となる局在f電子系化合物の純良単結晶育成に着手するとともに、UN,UCで光電子分光法によりバンド構造を明らかにした。6.電荷秩序を起こす物質Yb_4As_3のシングルドメイン試料を作製し、低温での磁気的な振る舞いが概略は一次元鎖の交替磁場の理論で説明できるが、それでも説明できない異常があることを明らかにした。また、ホール面からのシュブニコフドハースの観測に成功した。1.高温強磁性:電子スピン共鳴により、比較的大きな磁気モーメントがミクロンオーダーの表面層に局在し、非常に強い磁気異方性のためにその面内に束縛されていることを示した。また、強磁性の出現はCa、B、Laの組成のある領域において起こりやすいが、組成と磁気的な性質とは直接対応がつかなことを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-11220203 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11220203 |
軌道縮退系の電子構造 | 単結晶試料では磁化に異方性が存在し、温度サイクルまたは実験の繰り返しによって異方性の消失とともに、磁化の減少が起こることを見い出した。2.CeB_6および四重極秩序を示す物質:(i)新たにDyB_6のフォノン分散関係を求め、LaB_6及びCeB_6の分散関係等を総合した解析からRB_6のフォノンの統一的な構造が明らかとなった。また、PrB_6に加え、TbB_6でも3次の帯磁率が観測され、四重極子秩序をするCeB_6やDyB_6以外のRB_6においても物性を支配している可能性の大きいことを明らかにした。(ii)HoB_2C_2における共鳴X線散乱の実験により,四重極子秩序および磁気秩序にともなう秩序変数の温度変化を明らかにした。(iii)一軸性圧力下のdHvA効果測定装置の開発を行い、CeB_6の軸性圧力に伴う磁気相図の変化を調べるとともに,dHvA効果によりフェルミ面の変化、有効質量の変化の測定に成功した。3.ウラン化合物:高分解能角度分解光電子分光によりUPd_3において、U5f電子はフェルミ面にはほとんど寄与していない事、また、UX_c(X_c=S,Se,Te)において、交換分裂による電子構造の変化を観測し、UX_cの磁性が遍歴強磁性として理解されることを明らかにした。また、USb_2では幅の狭いU5fバンドが「重い」フェルミ面を形成していることを見出した。Yb_4As_3において共鳴X線散乱の実験により、電荷秩序の直接証拠である禁制反射を見いだした。Sm_4Bi_3でのSdH効果の測定に初めて成功した。1.高温弱強磁性高輝度X線による磁性不純物の蛍光分析を行い、CaB_6の強磁性がFe不純物によるものではないことを確認した。また、CaB_6のBを一部Cにより置き換えることによっても強磁性が発現することを見出した。高分解能角度分解光電子分光を行い、バンド分散を決定し、excitonic-nsulator modelが予言しているような「ホールバンドと電子バンドの重なり」は存在しないことを見出した。2.CeB_6および四重極秩序を示す物質極低温下のCe_xLa_<1-x>B_6の弾性定数C_<44>と熱膨張の測定を行い、C_<44>は低温で弱い温度変化しか示さないこと、また、熱膨張の測定により、I相-IV相転位に伴って、cubicからtrigonalへ自発的に変型していることを明らかにした。これらの実験結果はCe_xLa_<1-x>B_6のIV相の秩序変数がΓ_5の対称性を持った電気四重極子であることを示唆する。HoB_2C_2で中性子散乱を行い,いわゆるIV相と呼ばれていた相が,極めて特異な短距離反強磁性相関の強い相であることを明らかにした。PrPb_3において圧力効果の実験を行い、四重極相互作用は圧力によってほとんど変化しないが、共存する反強磁性相互作用は大きく変化することを明らかにした。3.その他Ce及びLaモノカルコゲナイドで純良単結晶を育成し、フェルミ面の詳細と有効質量を決定した(CeSを除く)。また、高分解能角度分解光電子分光により、全てのCe及びLaモノカルコゲナイドでの4fレベル及び他のエネルギーバンドの波数分散を明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-11220203 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11220203 |
マイクロ触媒反応工学展開のための顕微分光法による解析 | シリコン基板上に作成したマイクロチャンネル壁面に白金触媒を担持し、気相触媒反応進行中の表面の状況を顕微分光法を用いて総合的に観察した。オレフィン類の脱水素反応につてい顕微赤外分光及び顕微紫外分光に加え顕微ラマン分光の応用に成功した。ラマン分光により副反応である炭素質析出についての情報を得ることができた。液多相系反応系においては顕微鏡観察下で相関移動触媒からなる第三相の形成と役割について明らかにした。マイクロリアクタのための反応工学の体系化が喫緊の課題とされている。本研究はマイクロ触媒反応器についての反応工学の新展開のため、顕微分光法による総合的な反応の解析を目的として実施している。27年度は、研究計画に従い、フォトリソグラフィーの手法によりシリコン基板上に作成したマイクロチャンネルの壁面にアルミナ担体と白金を担持した気相反応用の壁面担持触媒反応器兼in situ分光セルを試作し、顕微赤外分光、および顕微紫外分光を駆使した検討を行い、メチルシクロヘキサンの脱水素反応をモデルとした反応条件下での反応中間体の観察を行い、赤外分光によりπアリル中間体を、紫外分光により共役ジエン中間体を観察するとともに、重合物の蓄積も確認した。反応成績との関連を総合的に考察し、反応のメカニズムと触媒活性劣化の原因について考察した。また、新たに顕微ラマン分光器を導入し、反応系を試作し、試運転を行っている。さらに、タイ国チュラロンコン大学との国際共同研究にも取り組み、マイクロチャンネルの幾何学的配置が反応成績に及ぼす影響についてのシミュレーションを行った。一方、28年度実施予定の液多相系触媒反応器についての検討を先行して開始した。相間移動触媒を中間相とする塩化ベンゾイルとフェノールの反応による安息香酸フェニルの合成に取り組み、有機-触媒-水の三相平行流を実現するとともに、反応解析を行いマイクロチャンネル内での流動状態が反応成績に与える影響を考察した。モデル反応を利用した顕微分光分析による解析について、赤外分光と紫外分光の活用により吸着中間体の補足とメカニズムの提案に成功したが、10月下旬に導入した顕微ラマン分光器が十全に動作するまでに至っていない。一方、液多相系の反応解析は計画に先んじて進展した。総合的に判断して、おおむね順調な進展と自己評価した。マイクロリアクタのための反応工学の体系化が喫緊の課題とされている。本研究はマイクロ触媒反応器についての反応工学の新展開のため、顕微分光法による総合的な反応の解析を目標として実施している。28年度は27年度に引き続きシリコン基板上にフォトリソグラフィーで作成したマイクロチャンネル壁面に担体と白金を担持した気相反応用壁面担持触媒反応器をベースとした顕微分光用反応セルを試作し、メチルシクロヘキサジエンの脱水素反応をモデル反応として、検討をおこなった。顕微赤外、顕微紫外、顕微ラマンの各分光操作を総合して、主反応のメカニズム、副反応の起源等について考察した。反応のメカニズムとしては、従来からの作業仮説である、πーアリル中間体から共役ジエンを経由して芳香族化される経路を確認するとともに、酸塩基プローブ分子を吸着させた触媒の赤外分光からその酸塩基特性を評価した。また、液相系相間移動触媒反応の応用として、触媒を第3の液相として用いる3相平行流マイクロリアクタの反応解析も実施した。安息香酸フェニル合成に際して、触媒を主として含む第3層の生成とその挙動の詳細について検討し、副反応として生起する加水分解反応の抑制について考察を行った。昨年度、十分に動作しなかった顕微ラマン分校装置が稼働し、反応機構の解析がスタートしたことにより計画が順調に進展を開始したこと、液相系反応解析も論文の投稿まで至ったことからおおむね順調な進展と自己評価している。マイクロリアクタのための反応工学の体系化が喫緊の課題とされている。本研究はマイクロ触媒反応器についての反応工学の新展開のため、顕微分校法による総合的な反応の解析を目標として研究を継続している。本研究では、壁面にPt触媒を担持したマイクロリアクターの触媒反応の解析手段として顕微ラマン分光を提案している。反応が進行中の触媒表面をin-situ解析し、中間吸着種の観察をすることで顕微ラマン分光の有効性を検討した。シクロヘキサン脱水素反応が進行中に1600cm-1、1350cm-1に炭素質由来のピークが徐々に現れ始め、2窒素パージに切り替えるとこれらピークも確認できなくなった。また、シクロヘキサンの脱水素反応はπアリル種の構造を持った中間体を経由して起きることが知られている。1450cm-1付近にπアリル種に由来するピークが確認できることから、この反応機構を裏付けることが出来、顕微ラマン分光法が反応メカニズムの解析に適用できることが分かった。また、プロパンの脱水素反応においても中間体のπアリル種に由来するピークが観察された。反応率が大きくなる高い反応温度で実験を行うと、炭素質由来のピークが大きくなり、中間種由来のピークが覆われてしまう。そこで炭素質析出抑制に効果的とされる助触媒としてスズを加え、Pt-Sn/Al2O3/SiO2/Siリアクターを作製し実験を行った。Pt-Sn/Al2O3/SiO2/Siリアクターを用いた時のスペクトルはPt/Al2O3/SiO2/Siリアクターを用いた時のスペクトルと比較して炭素質に由来するピークが小さいことが分かる。 | KAKENHI-PROJECT-15H04178 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H04178 |
マイクロ触媒反応工学展開のための顕微分光法による解析 | 炭素質のピークが無ければ、スペクトル上の炭素質により隠れていたπアリル種などのピークが観察できることが分かった。シリコン基板上に作成したマイクロチャンネル壁面に白金触媒を担持し、気相触媒反応進行中の表面の状況を顕微分光法を用いて総合的に観察した。オレフィン類の脱水素反応につてい顕微赤外分光及び顕微紫外分光に加え顕微ラマン分光の応用に成功した。ラマン分光により副反応である炭素質析出についての情報を得ることができた。液多相系反応系においては顕微鏡観察下で相関移動触媒からなる第三相の形成と役割について明らかにした。今後はラマン分光器の安定な動作を確保することに注力し、赤外分光、紫外分光との組み合わせによる総合的な評価に向けて検討を継続する。また、チュラロンコン大学との共同研究ならびに液多相系触媒反応器の解析についても継続し、29年度実施予定の反応器の構造が反応成績に与ええる影響についても先行研究を開始する。顕微赤外分光による、担体の評価に進展があったことから、従来の研究計画に加え、担体の酸塩基特性が反応機構に及ぼす影響についても検討を拡張する。29年度が最終年度であるため、記入しない。反応工学29年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-15H04178 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H04178 |
細胞周期におけるサイクリン分解制御因子の機能解析 | 細胞周期を制御するCDK(サイクリン依存性キナーゼ)は調節サブユニットであるサイクリンの結合と分解によってそのキナーゼ活性が調節されている。M期終了時のCDK不活性化にはユビキチンに依存したサイクリン分解が必要である。本研究では、サイクリンの結合因子として同定されたユビキチン関連蛋白質XDRP1/Dsk2ファミリーの機能解析をとおして、ユビキチン-プロテアソーム蛋白分解経路の分子機構の解析を行なった。アフリカツメガエルのXDRP1は、出芽酵母のDsk2蛋白質のN末端UbLドメインと、C末端UBAドメインを共有するユビキチン関連蛋白質である。解析の結果、XDRP1蛋白質はサイクリンに結合して、サイクリンAの蛋白分解を選択的に阻害した。XDRP1/Dsk2はC末端のUBAドメインを介してポリユビキチン鎖と結合した。また、C末端のUbLドメインを介してプロテアソームと結合した。Dsk2の生育阻止を抑圧するサプレッサーを分離したところ、プロテアソームの調節ユニツトrpn1とコアユニットpre2の変異であった。さらに、dsk2欠損変異によりユビキチン-プロテアソーム経路に依存した蛋白質分解が抑制された。これらの解析結果により、ユビキチン関連蛋白質XDRP1/Dsk2はポリユビキチン化したサイクリンを含む分解蛋白質をユビキチン経路からプロテアソーム経路へリクルートするアダプターとしての調節的役割を持つことが示唆された。細胞周期を制御するCDK(サイクリン依存性キナーゼ)は調節サブユニットであるサイクリンの結合と分解によってそのキナーゼ活性が調節されている。M期終了時のCDK不活性化にはユビキチンに依存したサイクリン分解が必要である。本研究では、サイクリンの結合因子として同定されたユビキチン関連蛋白質XDRP1/Dsk2ファミリーの機能解析をとおして、ユビキチン-プロテアソーム蛋白分解経路の分子機構の解析を行なった。アフリカツメガエルのXDRP1は、出芽酵母のDsk2蛋白質のN末端UbLドメインと、C末端UBAドメインを共有するユビキチン関連蛋白質である。解析の結果、XDRP1蛋白質はサイクリンに結合して、サイクリンAの蛋白分解を選択的に阻害した。XDRP1/Dsk2はC末端のUBAドメインを介してポリユビキチン鎖と結合した。また、C末端のUbLドメインを介してプロテアソームと結合した。Dsk2の生育阻止を抑圧するサプレッサーを分離したところ、プロテアソームの調節ユニツトrpn1とコアユニットpre2の変異であった。さらに、dsk2欠損変異によりユビキチン-プロテアソーム経路に依存した蛋白質分解が抑制された。これらの解析結果により、ユビキチン関連蛋白質XDRP1/Dsk2はポリユビキチン化したサイクリンを含む分解蛋白質をユビキチン経路からプロテアソーム経路へリクルートするアダプターとしての調節的役割を持つことが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-13043041 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13043041 |
思春期世代における向社会性の発達的変化と社会的要因の影響 | これまで成人を対象にした研究において社会的価値志向性尺度でpro-socialに分類された人は素早い直感的な向社会的行動を行い、pro-selfに分類された人は時間をかけた熟慮的な向社会的行動を行うことが示された。しかし、何故このような向社会性の個人差が存在するのかについては明らかにされていない。本研究の目的は、社会的価値志向性、および向社会的行動の個人差がどのように創出されるかという問題に対して、思春期世代を対象にした横断・縦断研究を行うことによりそのメカニズムを明らかにすることである。これまで成人を対象にした研究において社会的価値志向性尺度でpro-socialに分類された人は素早い直感的な向社会的行動を行い、pro-selfに分類された人は時間をかけた熟慮的な向社会的行動を行うことが示された。しかし、何故このような向社会性の個人差が存在するのかについては明らかにされていない。本研究の目的は、社会的価値志向性、および向社会的行動の個人差がどのように創出されるかという問題に対して、思春期世代を対象にした横断・縦断研究を行うことによりそのメカニズムを明らかにすることである。 | KAKENHI-PROJECT-19K03197 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K03197 |
超高集積化システムのための高性能デバイスの研究 | 1.四端子デバイスを用いた高機能LSI・ギガスケールシステムの研究四端子デバイスであるニューロンMOSトランジスタ(vMOS)を用いて,やわらかい論理回路,連想回路等を構成し,高度な判断を実行する知能電子システムのハードウェアを実験試作により検証した。vMOS論理回路に関しては,新しいクロック制御ニューロンMOS回路形式を開発した。ニューロンMOSのフローティングゲートにクロック制御のスイッチを付加することにより,デバイス動作中のホットキャリア注入等によるしきい値変動をリセットすると共に,デバイスが元々持っているしきい値ばらつきをもキャンセルできるため,信頼性と演算精度が飛躍的に向上した。連想回路に関しては,ニューロンMOSウィナーテ-クオール回路を応用し,動画の動きベクトルを高速に検出する回路を開発した。3μmルールで設計・試作し,動作を確認した。また,シミュレーションにより,300nsという高速で動きベクトル検出が可能であることが分かった。また,画像上の物体の重心を求める回路も,ニューロンMOSを用いて開発し,試作により動作を確認した。さらに,人間の知能に限りなく漸近する知的電子システム実現の基礎となる“認識・推論エンジン"の要素回路を,四端子デバイスであるニューロンMOSトランジスタを用いて開発した。大量の参照データを効率よく記憶するアナログ不揮発性メモリ,入力データと記憶されている参照データとの一致度を高速に演算する差分絶対値回路,一致度が一番高いデータを探すウィナー・テ-クオール回路を設計し実験試作によりその動作を検証した。これらを集積化した認識・推論エンジンチップを設計すると共に,アーキテクチャレベルの性能を評価するため,デジタル技術を用いて画像圧縮用のベクトル量子化チップを設計・試作し,その動作を確認した。0.6μmデザインルールで設計されたチップは,80万トランジスタを集積し,チップ面積は8mm×9mmとなった。1ベクトルは8ビット分解能の16次元で,1チップ当たり256個のコードブックベクトルと入力ベクトルの並列比較を540nsで実行する。マイクロプロセッサ(Pentium 166MHz)を用いてソフト上で実行する場合に比べて約1000倍の高速化が実現できた。2.高機能デバイス・回路の機能最適化ギガスケールの集積化のためには,各要素回路が極低消費電力で動作することが必須である。したがって,低消費電力回路技術に関して研究を行った。ニューロンMOS回路に関しては,しきい演算時に全く直流消費電力を消費しない新しい回路形式を開発した。これは,DRAM等で用いられているセンスアンプ技術を応用したもので,ニューロンMOS論理回路の低消費電力化が実現できた。この技術を応用して低消費電力のA/D変換器を実現した。また,全く別のアプローチから,ニューロンMOSを用いた論理回路において,深いしきい電圧のトランジスタとバッファ回路を用い,消費電力を低減する新しい回路形式を開発した。IV電源電圧でも高性能を発揮するTaゲートSOIMOSFET技術を開発した。さらに,従来のスタティック論理回路とは動作が全く異なる,極低消費電力Adiavatic論理回路をギガスケール集積回路用に開発した。3.ギガスケール集積化の限界解析ギガスケール集積化に向けた問題点として,0.1μm以下のデバイス寸法になると,チャネル領域の不純物イオンの確率的分布でデバイス特性が揺らぎ,信頼性の面で問題となることを明らかにした。4.システム構成の最適化集積回路における配線幅・長さの統計的分布に注目し,チップ面積およびチップ全体の消費電力を最小にするための最適配線設計指針を提示した。最適設計では,従来設計に比べチップ面積で1/2.8,消費電力で1/1.7に減少できることを明らかにした。1.四端子デバイスを用いた高機能LSI・ギガスケールシステムの研究四端子デバイスであるニューロンMOSトランジスタ(vMOS)を用いて,やわらかい論理回路,連想回路等を構成し,高度な判断を実行する知能電子システムのハードウェアを実験試作により検証した。vMOS論理回路に関しては,新しいクロック制御ニューロンMOS回路形式を開発した。ニューロンMOSのフローティングゲートにクロック制御のスイッチを付加することにより,デバイス動作中のホットキャリア注入等によるしきい値変動をリセットすると共に,デバイスが元々持っているしきい値ばらつきをもキャンセルできるため,信頼性と演算精度が飛躍的に向上した。連想回路に関しては,ニューロンMOSウィナーテ-クオール回路を応用し,動画の動きベクトルを高速に検出する回路を開発した。3μmルールで設計・試作し,動作を確認した。また,シミュレーションにより,300nsという高速で動きベクトル検出が可能であることが分かった。また,画像上の物体の重心を求める回路も,ニューロンMOSを用いて開発し,試作により動作を確認した。さらに,人間の知能に限りなく漸近する知的電子システム実現の基礎となる“認識・推論エンジン"の要素回路を,四端子デバイスであるニューロンMOSトランジスタを用いて開発した。大量の参照データを効率よく記憶するアナログ不揮発性メモリ,入力データと記憶されている参照データとの一致度を高速に演算する差分絶対値回路,一致度が一番高いデータを探すウィナー・テ-クオール回路を設計し実験試作によりその動作を検証した。これらを集積化した認識・推論エンジンチップを設計すると共に,アーキテクチャレベルの性能を評価するため,デジタル技術を用いて画像圧縮用のベクトル量子化チップを設計・試作し,その動作を確認した。0.6μmデザインルールで設計されたチップは,80万トランジスタを集積し,チップ面積は8mm×9mmとなった。1ベクトルは8ビット分解能の16次元で,1チップ当たり256個のコードブックベクトルと入力ベクトルの並列比較を540nsで実行する。 | KAKENHI-PROJECT-07044111 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07044111 |
超高集積化システムのための高性能デバイスの研究 | マイクロプロセッサ(Pentium 166MHz)を用いてソフト上で実行する場合に比べて約1000倍の高速化が実現できた。2.高機能デバイス・回路の機能最適化ギガスケールの集積化のためには,各要素回路が極低消費電力で動作することが必須である。したがって,低消費電力回路技術に関して研究を行った。ニューロンMOS回路に関しては,しきい演算時に全く直流消費電力を消費しない新しい回路形式を開発した。これは,DRAM等で用いられているセンスアンプ技術を応用したもので,ニューロンMOS論理回路の低消費電力化が実現できた。この技術を応用して低消費電力のA/D変換器を実現した。また,全く別のアプローチから,ニューロンMOSを用いた論理回路において,深いしきい電圧のトランジスタとバッファ回路を用い,消費電力を低減する新しい回路形式を開発した。IV電源電圧でも高性能を発揮するTaゲートSOIMOSFET技術を開発した。さらに,従来のスタティック論理回路とは動作が全く異なる,極低消費電力Adiavatic論理回路をギガスケール集積回路用に開発した。3.ギガスケール集積化の限界解析ギガスケール集積化に向けた問題点として,0.1μm以下のデバイス寸法になると,チャネル領域の不純物イオンの確率的分布でデバイス特性が揺らぎ,信頼性の面で問題となることを明らかにした。4.システム構成の最適化集積回路における配線幅・長さの統計的分布に注目し,チップ面積およびチップ全体の消費電力を最小にするための最適配線設計指針を提示した。最適設計では,従来設計に比べチップ面積で1/2.8,消費電力で1/1.7に減少できることを明らかにした。1.四端子デバイスを用いた高機能LSIの研究四端子デバイスであるニューロンMOSトランジスタ(vMOS)を用いて,やわらかい論理回路,連想回路等を構成し,高度な判断を実行する知能電子システムのハードウェアを実験試作により検証した。vMOS論理回路に関しては,新しいクロック制御vMOS回路形式を開発した。vMOSのフローティングゲートにクロック制御のスイッチを付加することにより、デバイス動作中のホットキャリア注入等によるしきい値変動をリセットすると共に,デバイスが元々持っているしきい値のばらつきをもキャンセルできるため,信頼性と演算精度が飛躍的に向上した。連想回路に関しては,vMOSウィナーテ-クオール回路を応用し,動画の動きベクトルを高速に検出する回路を開発した,3μmルールで設計・試作し,動作を確認した。また,シミュレーションにより,300nsという高速で動きベクトル検出が可能であることが分かった。また,画像上の物体の重心を求める回路も,vMOSを用いて開発し,試作により動作を確認した。 | KAKENHI-PROJECT-07044111 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07044111 |
ビッグデータ向け環境センサの基盤を支える有機アナログ集積回路 | 本研究の目的は、埋込み型のセンサ、分散情報処理ユニット、そして制御ユニットとしてソフトロボットの分野ですぐに使用できるような、スマートなe-skinを実現することである。初年度は、個々のニューロンの実装に取り組んだ。この課題では、神経ネットワークを極薄のフィルム上に実装することが必要である。また、それらのネットワークをフレキシブル有機センサと統合し、効率的にロボットを動作させるようにニューロンが正しく動作しているかの確認作業が必要となる。研究員は、有機エレクトロニクスを利用して神経模倣回路を世界で初めて実装している。この研究を発展させ、センサ・アクチュエータとして機能するフレキシブルで大面積なe-skinを作製するためには、解決しなければならない2つの課題がある。(1)有機フレキシブルセンサを用いて有機神経回路を刺激すること、(2)神経模倣的なe-skinを用いて制御システムを実装することである。初年度は、1つ目の課題を解決するために、前段の入力(センサ)と後段の出力(アクチュエータ)に合わせて神経模倣回路を最適化した。その成果は、以下の雑誌や学会で報告された:Advanced Electronic Materials(平成28年2月)、Materials Research Society(平成28年3月)、International Conference on Thin-Film Transistors(平成28年2月)現在、より複雑な回路の製造に焦点を当てている。現段階では、神経形態学的回路の製造に必要な有機擬似CMOSとCMOSインバータの製造の最終段階である。有機フレキシブルセンサを用いて有機神経回路を刺激することに成功しており、当初の予定通り、研究は順調に進んでいる。今後は、2つ目の課題に取り組む。ソフトロボットの制御においては、同時にいかなる種類の「スマートアクチュエーション」にも適合しなければならない。ロボットの制御は複雑な問題であり、大抵の場合、現在のロボットの手足の位置と、目標とする未来の位置に関する複雑な数学が必要である。大抵、そのような問題はプロセッサに対する一連の外的な教育が必要となる。そしてその教育が手足の関節の形状にも影響をおよぼす。神経模倣的なロボット制御はすでに実証されているが、それは非常に複雑な(数十トランジスタを用いた)神経模倣回路を用いて硬いシリコン基板上に設計されたものである。そこで、e-skinの実現にむけて、有機エレクトロニクスとシンプルな(数トランジスタを用いた)神経模倣回路を実現していく。具体的には、擬似CMOSとCMOSインバータを接続して神経形態を模倣した回路を製造し、生体適合性の電気信号に温度や圧力などの感覚情報を関連付ける機能を付加する。その際、センサの出入力をする神経形態の模倣回路を最適化するのことが不可欠である。また、e-skinを3D義肢やソフトロボットの表面(皮膚)に貼った場合の、伸縮性や電気的性能などの物理的特徴を検証していく。これらを組み合わせ、ソフトロボットや人工器官の触覚フィードバックを実現していく。 | KAKENHI-PROJECT-15F15062 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15F15062 |
金属酸化物薄膜を用いたオゾンセンサーの開発 | 金属酸化物薄膜がオゾンと接触するとそのコンダクタンスが変化することを見出した。そこでこの現象を利用した環境大気モニタリング用オゾンセンサーの開発を試みた。低濃度のオゾン(オキシダント環境基準値6pphm)の検出を可能にする高感度センサーを目標として1.金属酸化物の評価(金属の種類)、2.酸化物薄膜の作製法(焼成温度)、3.薄膜とオゾンの接触条件(接触温度)、4.他物質の干渉、について検討した。1.金属酸化物の評価:センサーは金属酸化物薄膜に電極、リード線をつけて作製した。種々の金属硝酸塩溶液(Fe,Co,Ni,Cu,Mn)をセラミクス表面に塗布し、酸素気流中250°Cで熱分解し、酸化物薄膜を作製した。生じた酸化物の半導体の性質とオゾン接触によるコンダクタンスの増減からオゾンは電子受容体として働くと理解された。コンダクタンスは一定濃度のオゾンとの接触の間、変化し続け一定値に到達しなかった。そこでコンダクタンスの変化速度を用い感度を評価した。種々の金属の中、Co塩とNi塩を用いたものが感度が高かった。2.金属薄膜焼成温度:CoとNiについて250°C1000°Cの範囲で検討し、250°C焼成が初期コンダクタンスも大きく、感度も高かった。3.オゾン接触温度:0°C160°Cの範囲で検討し、Co,Ni共、110°C130°Cにかけて高い感度であった。この条件でコンダクタンスの変化速度はCoセンサーでオゾン濃度の0.8次(Niで1次)であった。コンダクタンスの変化速度からオゾン濃度を測定することができる。オゾン6pphm濃度、15分間の接触に対し、試作したCoセンサーは100%(Niは20%)のコンダクタンス変化率を示した。大気モニターとして充分感度を有する。4.他物質の干渉:水蒸気は微量だがCoセンサーに影響し無視できない。本センサーは大気オゾン測定可能な高感度を有することが示された。実用化には、選択性、速応答性、寿命等、更に検討する必要がある。金属酸化物薄膜がオゾンと接触するとそのコンダクタンスが変化することを見出した。そこでこの現象を利用した環境大気モニタリング用オゾンセンサーの開発を試みた。低濃度のオゾン(オキシダント環境基準値6pphm)の検出を可能にする高感度センサーを目標として1.金属酸化物の評価(金属の種類)、2.酸化物薄膜の作製法(焼成温度)、3.薄膜とオゾンの接触条件(接触温度)、4.他物質の干渉、について検討した。1.金属酸化物の評価:センサーは金属酸化物薄膜に電極、リード線をつけて作製した。種々の金属硝酸塩溶液(Fe,Co,Ni,Cu,Mn)をセラミクス表面に塗布し、酸素気流中250°Cで熱分解し、酸化物薄膜を作製した。生じた酸化物の半導体の性質とオゾン接触によるコンダクタンスの増減からオゾンは電子受容体として働くと理解された。コンダクタンスは一定濃度のオゾンとの接触の間、変化し続け一定値に到達しなかった。そこでコンダクタンスの変化速度を用い感度を評価した。種々の金属の中、Co塩とNi塩を用いたものが感度が高かった。2.金属薄膜焼成温度:CoとNiについて250°C1000°Cの範囲で検討し、250°C焼成が初期コンダクタンスも大きく、感度も高かった。3.オゾン接触温度:0°C160°Cの範囲で検討し、Co,Ni共、110°C130°Cにかけて高い感度であった。この条件でコンダクタンスの変化速度はCoセンサーでオゾン濃度の0.8次(Niで1次)であった。コンダクタンスの変化速度からオゾン濃度を測定することができる。オゾン6pphm濃度、15分間の接触に対し、試作したCoセンサーは100%(Niは20%)のコンダクタンス変化率を示した。大気モニターとして充分感度を有する。4.他物質の干渉:水蒸気は微量だがCoセンサーに影響し無視できない。本センサーは大気オゾン測定可能な高感度を有することが示された。実用化には、選択性、速応答性、寿命等、更に検討する必要がある。 | KAKENHI-PROJECT-63550556 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63550556 |
低酸素環境における腫瘍血管内皮細胞の異常性獲得機序に関する研究 | 低酸素、がん細胞と間葉系幹細胞の培養上清、間葉系幹細胞用の無血清培地(STK)を組み合わせた条件で正常血管内皮細胞が異常増殖する細胞培養モデルを構築し腫瘍血管内皮細胞の異常性獲得を理解しようと試みたが安定した培養系が確立できなかった。一方、血管内皮細胞用培地(EGM2)とSTK培地中の共通因子が、間葉系幹細胞や線維芽細胞では表面糖脂質糖鎖発現を責任糖転移酵素遺伝子発現レベルで変化させるが血管内皮細胞では影響しないことを発見した。この結果より無血清培養条件(STK)で血管内皮細胞の接着性が不安定な理由の一つに糖脂質糖鎖発現の違いがあると示唆された。腫瘍組織の悪性化、がん細胞の転移や未分化能の獲得には、周辺の間質組織を構成する細胞の変化をともなう。低酸素にさらされた腫瘍間質に存在する血管内皮細胞の悪性化プロセスにおける分子機序を理解するために、腫瘍血管内皮細胞悪性化を擬似化した培養システム確立する事を目的として実験を行った。1)腫瘍組織を構成する細胞群が分泌する因子を測定できるようにするための手段として、血管内皮細胞の無血清培地培養を試みた。申請者は骨髄由来間葉系幹細胞の無血清培地培養コンディション培地(BMMSC-CM)を組み合わせて血管内皮細胞培養をおこなった。HUVEC, HMVECを無血清培地STK1またはSTK2をベースにBMMSC-CMと栄養因子を組み合わせて培養した結果、限られた期間においてのみ、マトリゲルコートしたプレートでHUVECが培養できた。BMMSC-CMをくわえると若干細胞増殖が亢進されたが、細胞の接着力が弱く培養系としては十分でない。2)血管内皮細胞を悪性化させる条件を探すため、低血清培地培養したHUVECを転移巣から樹立されたがん細胞株のCMと低酸素擬似条件としてCoCl2存在下で培養した。ヒト口腔扁平上皮癌細胞株(KON)のCMでCoCl2存在においてHUVECの細胞増殖が亢進する可能性がある事を見出した。腫瘍組織の悪性化にはがん細胞の周辺を構成する間質組織の変化がおこる。間質組織を構成する線維芽細胞や血管内皮細胞の変異の分子機序を説明できるような培養モデルを作製に取り組んだ。1)培養細胞が分泌する因子を解析するために培地の組成があきらかな無血清培地を使えることが望ましい。そのために間葉系幹細胞(MSC)や線維芽細胞(FB)培養に適応したSTK培地が血管内皮細胞(EC)培養に適用できるか試した。STK培養したMSCのコンディション培地(MSC-CM)と組み合わせて培養すると培地に血清成分が残っているときは接着培養でき、CMの影響で増殖も亢進したが、再現性が不安定でモデルとしては不完全であった。2)血管内皮細胞を悪性化させる条件検討のために血管内皮細胞培地(EGM2)培養したHUVECにヒト口腔扁平上皮がん細胞株(KON)のCM、CoCl2を加えることで低酸素、がん組織環境を擬似化したモデル培養をおこなった。KON-CM, CoCl2存在下でHUVECの増殖は亢進する傾向が見られたが、これも再現性が不安定であった。おそらく組成が完全に開示されていないEGM2培地中の細胞増殖因子が強い影響を与えるため、一定の条件を保持するのが難しい。申請者は別の研究プロジェクトで検討しているSTK培地培養と血清培養したMSC、FBの遺伝子プロファイリングの解析、遺伝子発現検証実験系で、STK2培地中に含まれる因子がラクトシルやグロボ系の糖脂質合成系を決定づける責任糖転移酵素の発現を誘導する可能性を見出した。血管内皮培地EGM2でもMSCやFBでこれらの責任糖転移酵素の発現を変化させたため、STK2、EGM2中に共通に含まれる因子が糖脂質合成経路の決定に関わる可能性を示唆した。低酸素、がん細胞と間葉系幹細胞の培養上清、間葉系幹細胞用の無血清培地(STK)を組み合わせた条件で正常血管内皮細胞が異常増殖する細胞培養モデルを構築し腫瘍血管内皮細胞の異常性獲得を理解しようと試みたが安定した培養系が確立できなかった。一方、血管内皮細胞用培地(EGM2)とSTK培地中の共通因子が、間葉系幹細胞や線維芽細胞では表面糖脂質糖鎖発現を責任糖転移酵素遺伝子発現レベルで変化させるが血管内皮細胞では影響しないことを発見した。この結果より無血清培養条件(STK)で血管内皮細胞の接着性が不安定な理由の一つに糖脂質糖鎖発現の違いがあると示唆された。血管内皮細胞(EC)は腫瘍組織を構成する間質細胞としてがんの悪性化へ関与する。その際、腫瘍血管内皮細胞(TEC)自身が異常性を獲得する事が示唆されている。腫瘍由来の細胞や間質組織を構成する線維芽細胞などと比較してEC/TECは繊細であるため、その培養は一般に2%20%血清とVEGFなどの栄養因子存在下で行われる。一方、腫瘍微小環境におけるがんの悪性因子を決定するための技術基盤として、コンディション培地(CM)のサイトカインアレイやLC-MSによる網羅的な解析が可能になった。しかし、EC培養培地は血清を含むうえ販売されている種々のEC培地組成情報も完全には提供されていないため、腫瘍微小環境におけるEC異常性獲得に関わる因子同定が困難になっている。 | KAKENHI-PROJECT-23792096 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23792096 |
低酸素環境における腫瘍血管内皮細胞の異常性獲得機序に関する研究 | 申請者は平成23年度より広島大学歯学部加藤幸夫研究室に移籍したため間葉系幹細胞(MSC)及びこれらが培養できる組成の明確な無血清培地(STK)を利用して研究できる機会を得た。損傷を受けた非腫瘍組織の修復にはMSCとECの相互作用が重要で、組織再生にはMSCとECの両方が必要である報告が多々ある。しかし、腫瘍組織においてはおそらくECの性質が変容しているため、MSCとの相互作用がもたらす効果は非腫瘍組織の場合と異なる。細胞の接着性や微小血管内皮細胞の培養への条件設定など克服すべき点は多々あるが、STK培地は腫瘍微小環境を構成する線維芽細胞や腫瘍細胞そのものの培養にも適応できるため、STK培地組成を微調整してEC培養を可能にする事によって腫瘍微小環境におけるがんの悪性化をもたらす因子同定を可能にする技術基盤を提供できる意義がある。低酸素環境における腫瘍血管内皮細胞の異常性獲得機序に関する研究本研究は腫瘍組織より樹立された血管内皮細胞(EC)を用いて行なうことを前提に計画していたが、研究者が失職・所属異動による研究環境の変化により目的の細胞が利用できなくなったことから研究計画を大きく変更するに至った。当初想定していた腫瘍組織環境を擬似した正常血管内皮細胞培養条件の設定は想像以上に困難であったため研究計画の変更を繰り返すことになった。腫瘍組織はがん細胞とそこに連絡する腫瘍血管、間質を形成する線維芽細胞などの間葉系細胞から構成される。がん細胞が間葉系細胞の影響をうけて性質を変化させるように腫瘍組織血管内皮細胞も間葉系細胞から影響をうけ異常性を獲得すると考えた。そこで間葉系細胞(間葉系幹細胞や線維芽細胞)をディッシュにプレコートなしに接着・増殖できる無血清培地(STK)を用いた培養系を利用して異常に増殖するEC作製を試みた。STK培養間葉系細胞や口腔上皮がん細胞の培養上清、CoCl2の添加でEC増殖が亢進するときもあったが、ECの接着は不安定であり結果が安定しなかった。無血清間葉系細胞培養条件に低酸素にて誘導されるHIF1誘導因子、がん細胞の放出する因子をふくんだ環境下での血管内皮細胞の細胞接着性は試験した条件では容易に変化しなかった。一方、無血清培養した間葉系細胞が血清培養時と比較して糖脂質糖鎖発現を責任糖転移酵素遺伝子発現レベルで変化させる因子を偶然発見した。この因子は血管内皮細胞においては標的となる糖転移酵素遺伝子発現に影響しなかったことから糖脂質糖鎖の発現傾向が血管内皮細胞と間葉系細胞では異なっていると予想された。これらの結果から間葉系細胞の無血清培養下では血管内皮細胞と間葉系細胞で細胞接着性に違いがあり、糖脂質糖鎖発現の違いはその要因の一つであることが示唆された。細胞生物学、分子生物学申請時に所属研究室が異動したため、以前の未発表データやマテリアルの利用が不可能になったため、異動後の教室で行える研究へ方向転換することになった。そこで現所属研究室で用いられている間葉系幹細胞培養に開発された無血清培地組成をアレンジして、血管内皮細胞の無血清培地培養系の立ち上げに目標をかえて研究を進めてきた。しかし腫瘍間質組織に存在しうる間葉系幹細胞や線維芽細胞と比べて血管内皮細胞の無血清培地培養はSTK培地のアレンジだけでは難しかったうえ、メーカーの都合で使用予定していたSTK培地の供給が半年近くストップしたこともあり完全無血清培地培養系はまだ確立されていない。2013年度に教室の移動に伴い数ヶ月にわたって培養室をふくめ実験室の利用が困難になったため立て直しを強いられた。 | KAKENHI-PROJECT-23792096 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23792096 |
自動車・電機・鉄鋼業における企業内教育の展開と人材育成に関する実証的研究 | 本研究では、転換期における人材育成システムの現段階的特質について、企業内教育の展開過程と外部教育機関である公共職業訓練施設の能力開発の実態をトータルに調査分析することによって、日本的人材育成の特質を論じた。具体的には日本の基幹である自動車産業、電機産業、鉄鋼業を対象に教育訓練の実態を分析・考察するとともに、公共職業訓練の今日的展開とその役割・機能を分析・考察することによって、わが国の人材育成システムの特質を明らかにした。本研究では、転換期における人材育成システムの現段階的特質について、企業内教育の展開過程と外部教育機関である公共職業訓練施設の能力開発の実態をトータルに調査分析することによって、日本的人材育成の特質を論じた。具体的には日本の基幹である自動車産業、電機産業、鉄鋼業を対象に教育訓練の実態を分析・考察するとともに、公共職業訓練の今日的展開とその役割・機能を分析・考察することによって、わが国の人材育成システムの特質を明らかにした。電機産業の労働力構成は、高卒採用が見送られている一方で、高専・大卒採用が主流を占めており、、ある大手電機メーカーの場合、85%はマスター、8%はドクター、7%はバチェラーというように高学歴化が進み、技術者比率が極めて高いことが特徴的である。そのことはものづくりが行われる生産現場における組織編成の再編がグローバリズム化の進展のなかで大胆に行われていることとも関係している。調査によれば、ものづくりの基本構造は商品化軸とSCM軸から成り、前者は研究、商品開発、試作、そして後者は購買、検収、量産(生産)、営業、物流、顧客(店)の各部門が担っている。中核的な位置を占めるのは量産(生産)部門であり、製造ラインである。しかし、その製造、量産ラインを担っているのは高卒技能者ではない。労働過程の技術的変革が進むとともに、派遣労働者へのシフトが進んでいるからである。従って、製造ラインが所期の稼働をするためには、工場技術、生産技術、品質管理、購買、設備管理等の部署のスタッフが関与する度合いに左右されることになる。そうした背景のもとで、(1)電機産業では社内において入社後2・3年経過した高専卒者や大卒者を対象とした技術教育を行うための「ものづくり大学校」を設置したり、生産技術や工程管理を学ぶ「若手基盤教育」を実施している。(2)同時に「人数の削減」「製品寿命の短期化」等により、高専卒者や大卒者の技術者の揚合、これまでの企業内の人材育成の主流であったOJTがやりづらくなって、OJTのOffJT化が進んでいる実態を明らかにした。わが国最大規模を誇るS社のK製鉄所を事例として鉄鋼業の教育訓練についてインセンティブな調査研究を実施した。鉄鋼業とは異なり、今なお高度な熟練を必要とするために用意周到且つ手厚い技術、技能教育が用意されている。階層別教育、職能別教育いずれにおいても技術、技能教育との強固な結びつきが見られる。昇進・昇格と通信教育や国家資格とのリンクが重視されていることも見逃せない。こうした結合度の高まりと拡がりは教育訓練への強烈なインセンティブを惹起している。さらに、職場レベルのインフォーマルな教育が拡大していることである。例えば、トラブルやクレーム処理に対処するために行われる教育、トラブル防止のために当事者による報告書の作成義務や再発防止検討会等々、いわゆるインフォーマルなoffJTが行われていることである。一方、自動車産業のライン・オペレータに求められる熟練は、鉄鋼労働のそれに比べて低いことが実証されているが、A社の社立学校であるA学園を事例として調査研究を実施した。学園の基本理念は生産活動の中核となる技能者を養成することである。A学園は中卒3ヶ年の教育機関であり、A社の工場がある地域から毎年40名程度を募集している。学科は機械科、板金科、自動車製造科、電気制御回路組立科の4科からなる。学園教育の狙いは将来の職長、工長層の育成にあり、教育内容の特徴は一般の工業高校よりも実習時間の割合が高いことである。学園生には手当が支給される。間接部門に配置された学園生は、いずれの職場でも学園で修得した技能が活かせる仕事・職務に従事している。高卒の技能員に比べて、職場の中核層になる比率は高い。わが国の人材育成は企業内教育が主流を占めており、新規学卒者に対する長期間にわたる育成システムであったが、90年以降長期雇用体制の崩壊が進み、企業内教育は著しく困難になってきた。一方、若年失業者や非正規労働者が増加している事態の進行は公共職業訓練の必要性を示唆している。こうした中で、国や自治体の公共職業訓練の具体的展開過程とその特徴について明らかにして、わが国人材育成システムに占める公共職業訓練の役割,機能を検討した。以下、調査研究の成果を記しておく。(1)公共職業訓練校の入校状況に関して、新規高卒者の重要な進学先として位置づいていることである。新規高卒者の占める比率は北海道では8割、福岡県でも5割前後を占めていた。(2)就職(出口)に関しては、「ものづくり」関連企業、産業に多くの人材を輩出していると同時に、地域の中小零細企業に技能者を供給していることである。自治体の訓練校では、機械・メカトロニクス系、電気・電子系、金属加工・木材加工系、自動車整備系などの中小企業におけるものづくり系が多くを占めていた。国の訓練校の場合、一部大企業を含む中小企業では研究開発の補助、生産技術、品質管理、試作などいわゆるテクニシャンの業務に従事していた。 | KAKENHI-PROJECT-20530737 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20530737 |
自動車・電機・鉄鋼業における企業内教育の展開と人材育成に関する実証的研究 | (3)民間との役割分担が争点となり、公共職業訓練の統合・再編が進む中で、必ずしも経済的に恵まれない若年求職者に対して労働能力を修得するための貴重な教育機関として位置づいていることである。とはいえ、最近、「受益者負担」を理由として授業料を徴収する自治体が増加している。(4)学卒訓練を行う普通課程においては、雇用保険期間の延長を目的とするケースも多く、公共職業訓練はいわゆる雇用のセーフティネットの役割・機能を果たしている。 | KAKENHI-PROJECT-20530737 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20530737 |
骨格形成における軟骨系シグナル分子群の機能解析 | 本年度においては軟骨のシグナル系としてCbfa1の制御に関わるヘッジホック遺伝子の機能を検討した。この結果ヘッジホッグの存在により、初代培養軟骨細胞においてCbfa1の発現レベルの上昇が観察され、更にCbfa1のプロモーターの解析によりヘッジホッグによるシグナルが転写を制御する経路にあることを明らかにした。更に軟骨分化系シグナルであるSox9の発現とその制御について検討を行った。この結果、Sox9分子が初代軟骨培養細胞において高いレベルにおいて発現すると共に、レチノイン酸によってその発現が急激に抑制されることが明らかとなり、その抑制様式は用量依存性で0.5μMから観察され、1:0μMでピークで達した。更にレチノイン酸によるSox9の遺伝子発現は、時間依存性で12時間以内に最大の抑制が観察された。レチノイン酸の軟骨分化制御転写因子Sox9の遺伝子発現に対する作用が遺伝子発現のどのレベルにあるかを検討した結果、ヌクレアーランオンアッセイによって単離された核の中における転写がSox9により抑制される一方で、形成されたメッセンジャーRNAの安定性を検討した結果からは、レチノイン酸の存在によってもメッセンジャーRNAの半減期は殆ど変化がない。これらの結果から軟骨分化シグナルの転写因子であるSox9の発現はレチノイン酸によって転写を中心とした制御を介することが明らかとなった。またウエスタンブロッド法によってレチノイン酸によるSox9遺伝子の発現調節が69kDのSox9の蛋白そのものの発現を抑制することであることを示した。次にSox9の強制発現によってレチノイン酸によるII型コラーゲンプロモーターの活性への影響を調べたところ、Sox9は軟骨分化促進シグナルとしてII型コラーゲンプロモーターのエンハンサーの活性を促進したが、レチノイン酸の存在によってSox9による促進活性が阻止されることが明らかとなった。以上より、軟骨系シグナル分子であるSox9、ヘッジホッグの細胞の分化に対する機能が明らかとなった。本年度においては軟骨のシグナル系としてCbfa1の制御に関わるヘッジホック遺伝子の機能を検討した。この結果ヘッジホッグの存在により、初代培養軟骨細胞においてCbfa1の発現レベルの上昇が観察され、更にCbfa1のプロモーターの解析によりヘッジホッグによるシグナルが転写を制御する経路にあることを明らかにした。更に軟骨分化系シグナルであるSox9の発現とその制御について検討を行った。この結果、Sox9分子が初代軟骨培養細胞において高いレベルにおいて発現すると共に、レチノイン酸によってその発現が急激に抑制されることが明らかとなり、その抑制様式は用量依存性で0.5μMから観察され、1:0μMでピークで達した。更にレチノイン酸によるSox9の遺伝子発現は、時間依存性で12時間以内に最大の抑制が観察された。レチノイン酸の軟骨分化制御転写因子Sox9の遺伝子発現に対する作用が遺伝子発現のどのレベルにあるかを検討した結果、ヌクレアーランオンアッセイによって単離された核の中における転写がSox9により抑制される一方で、形成されたメッセンジャーRNAの安定性を検討した結果からは、レチノイン酸の存在によってもメッセンジャーRNAの半減期は殆ど変化がない。これらの結果から軟骨分化シグナルの転写因子であるSox9の発現はレチノイン酸によって転写を中心とした制御を介することが明らかとなった。またウエスタンブロッド法によってレチノイン酸によるSox9遺伝子の発現調節が69kDのSox9の蛋白そのものの発現を抑制することであることを示した。次にSox9の強制発現によってレチノイン酸によるII型コラーゲンプロモーターの活性への影響を調べたところ、Sox9は軟骨分化促進シグナルとしてII型コラーゲンプロモーターのエンハンサーの活性を促進したが、レチノイン酸の存在によってSox9による促進活性が阻止されることが明らかとなった。以上より、軟骨系シグナル分子であるSox9、ヘッジホッグの細胞の分化に対する機能が明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-13045011 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13045011 |
大腸癌細胞の転移能形質獲得過程におけるRac1遺伝子の機能解析 | プラスミドベクターpcDNA3.1を用いてRac1 costituve active form V12をCOS細胞に強制発現させた外因性Rac1タンパク質が、内因性のRac1タンパク質に比して有意に増加していることを確認した後、12種類の大腸癌細胞株(Caco-2、Colo201、Colo205、Colo320DM、HCT15、SW1116、HT29、DLD-1、NCI-H716、LoVo、HT29N2、T84)とHuman Glioblastoma HTB26、Mouse swiss 3T3の計14種の細胞株においてRac1タンパク質の発現量を検討した。Western blotにおいて総Rac1の発現量は14種すべての細胞株でほぼ同等であった。次にPBD pull down assayとimmunoblot法を用いて活性型Rac1の発現量を検討し、LoVo、DLD1、HTB26で非常に高く、T84、HT29N2、HCT-15では極めて低いことを確認した。さらにBoyden chamberを用いた基底膜浸潤の評価系を用いて各種細胞株の運動能の検討を進め、活性型Rac1高発現群では運動能も高く、低発現群では運動能も低いことを確認した。さらにRhoファミリーGTP結合タンパク質の中でRac1同様、細胞の運動、接着、増殖に関与するCdc42、RhoAについても活性型の発現量を検討した。活性型Cdc42の発現量はRac1と異なりすべての細胞株においてほぼ同程度であった。活性型RhoAの発現に関しては活性型Rac1低発現群(T84、HT29N2、HCT-15)では高発現を示し、活性型Rac1高発現群(LoVo、DLD1、HTB26)では低発現を示し、活性型Rac1とRhoAの発現は逆相関を示した。さらにRhoA低発現群(Rac1高発現群、高運動能)細胞株のRhoA発現をLPA刺激によって増加させると運動能は逆に低下し、RhoA高発現群(Rac1低発現、低運動能)細胞株のRhoA発現をLPA刺激によって更に増加させると運動能の増加が認められた。Rac1とRhoAは別個の経路でそれぞれが細胞の運動性を制御していることが予想され、今後細胞の運動性を検討する上では両者のバランスを常に念頭に置きながら研究を進める必要があるが、活性型Rac1発現が細胞の運動能に関与する主因子であることは確実で、今後はヌードマウス盲腸漿膜下同所移植による大腸癌肝転移モデルを用いてin vivoにおける転移能の検討を行い、遺伝子治療の標的としての妥当性の検討を更に進めていく予定である。プラスミドベクターpcDNA3.1を用いてRac1 costituve active form V12をCOS細胞に強制発現させた外因性Rac1タンパク質が、内因性のRac1タンパク質に比して有意に増加していることを確認した後、12種類の大腸癌細胞株(Caco-2、Colo201、Colo205、Colo320DM、HCT15、SW1116、HT29、DLD-1、NCI-H716、LoVo、HT29N2、T84)とHuman Glioblastoma HTB26、Mouse swiss 3T3の計14種の細胞株においてRac1タンパク質の発現量を検討した。Western blotにおいて総Rac1の発現量は14種すべての細胞株でほぼ同等であった。次にPBD pull down assayとimmunoblot法を用いて活性型Rac1の発現量を検討し、LoVo、DLD1、HTB26で非常に高く、T84、HT29N2、HCT-15では極めて低いことを確認した。さらにBoyden chamberを用いた基底膜浸潤の評価系を用いて各種細胞株の運動能の検討を進め、活性型Rac1高発現群では運動能も高く、低発現群では運動能も低いことを確認した。さらにRhoファミリーGTP結合タンパク質の中でRac1同様、細胞の運動、接着、増殖に関与するCdc42、RhoAについても活性型の発現量を検討した。活性型Cdc42の発現量はRac1と異なりすべての細胞株においてほぼ同程度であった。活性型RhoAの発現に関しては活性型Rac1低発現群(T84、HT29N2、HCT-15)では高発現を示し、活性型Rac1高発現群(LoVo、DLD1、HTB26)では低発現を示し、活性型Rac1とRhoAの発現は逆相関を示した。さらにRhoA低発現群(Rac1高発現群、高運動能)細胞株のRhoA発現をLPA刺激によって増加させると運動能は逆に低下し、RhoA高発現群(Rac1低発現、低運動能)細胞株のRhoA発現をLPA刺激によって更に増加させると運動能の増加が認められた。Rac1とRhoAは別個の経路でそれぞれが細胞の運動性を制御していることが予想され、今後細胞の運動性を検討する上では両者のバランスを常に念頭に置きながら研究を進める必要があるが、活性型Rac1発現が細胞の運動能に関与する主因子であることは確実で、今後はヌードマウス盲腸漿膜下同所移植による大腸癌肝転移モデルを用いてin vivoにおける転移能の検討を行い、遺伝子治療の標的としての妥当性の検討を更に進めていく予定である。 | KAKENHI-PROJECT-13670563 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13670563 |
大腸癌細胞の転移能形質獲得過程におけるRac1遺伝子の機能解析 | 昨年度までに14種類の細胞株においてPBD pull down assayとimmunoblot法を用いて活性型Rac1の発現量を検討し、活性型Rac1の発現はLoVo、DLD1、HTB26で非常に高く、T84、HT29N2、HCT-15では極めて低いことを確認した。今年度はBoyden chamberを用いた基底膜浸潤の評価系を用いて各種細胞株の運動能の検討を進めた。活性型Rac1高発現群では運動能も高く、低発現群では運動能も低いことを確認した。さらにRhoファミリーGTP結合タンパク質の中でRac1同様、細胞の運動、接着、増殖に関与するCdc42、RhoAについても活性型の発現量を検討した。活性型Cdc42の発現量はRac1と異なりすべての細胞株においてほぼ同程度であった。活性型RhoAの発現に関しては活性型Rac1低発現群(T84、HT29N2、HCT-15)では高発現を示し、活性型Rac1高発現群(LoVo、DLD1、HTB26)では低発現を示し、活性型Rac1とRhoAの発現は逆相関を示した。さらにRhoA低発現群(Rac1高発現群、高運動能)細胞株のRhoA発現をLPA刺激によって増加させると運動能は逆に低下し、RhoA高発現群(Rac1低発現、低運動能)細胞株のRhoA発現をLPA刺激によって更に増加させると運動能の増加が認められた。Rac1とRhoAは別個の経路でそれぞれが細胞の運動性を制御していることが予想され、今後細胞の運動性を検討する上では両者のバランスを常に念頭に置きなら研究を進める必要があるが、活性型Rac1発現が細胞の運動能に関与する主因子であることは確実で、今後はヌードマウス盲腸漿膜同所移植による大腸癌肝転移モデルを用いてin vivoにおける転移能の検討を行い、遺伝子治療の標的としての妥当性の検討を更に進めていく予定である。 | KAKENHI-PROJECT-13670563 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13670563 |
フェーズフィールドモデルに基づく二相流体問題の数値解析 | 本研究では,非圧縮性粘性流体の二相問題に対するフェーズフィールドモデルを対象に,有限要素法による数値計算手法の開発と妥当性・正当性の解析を行った.特に,数学的枠組み(数値解析向けの定式化)の研究,および数値実験による発見的考察と結果の検証に最も力を入れた.結果的に,多相流体現象とその数学理論およびその数値計算手法に,今までになかった視点からの新しい寄与をなした.本研究では,非圧縮性粘性流体の二相問題に対するフェーズフィールドモデルを対象に,有限要素法による数値計算手法の開発と妥当性・正当性の解析を行った.特に,数学的枠組み(数値解析向けの定式化)の研究,および数値実験による発見的考察と結果の検証に最も力を入れた.結果的に,多相流体現象とその数学理論およびその数値計算手法に,今までになかった視点からの新しい寄与をなした.本研究では,非圧縮性粘性流体の二相問題に対するフェーズフィールドモデルを対象に,有限要素法による数値計算手法の開発と妥当性・正当性の解析を行う.そのために,数学的枠組み(数値解析向けの定式化)の研究,および数値実験による発見的考察と結果の検証に相当に力を入れる.さらに,構築した数学的枠組みに基づいて,二相流体問題の近似モデルとしてのフェーズフィールドモデルの正当性を解析するのも,一つの主要な目的である.究極には,フェーズフィールドモデルを中心に,二相流体問題,その数理モデル,数値計算手法を研究することで,多相流体現象とその数学理論およびその数値計算手法に,今までになかった視点からの新しい寄与をなすことを目標にしている、研究初年度である今年度は,研究協力者の先生方との討論行いながら,あるいは実際の計算現場の研究者との連絡を持ちながら,(I)二相流体問題の数理モデル,(II)二相流体問題のフェーズフィールドモデルによる近似・表現,(III)フェーズフィールドモデルに対する離散化,の三つを数学的に整理した.これにより,従来,有限要素法による離散化問題の研究では,流速・圧力・フェーズフィールド関数を求める有限要素空間の関係は明らかではなかったが,適切な関数空間設定について,目処が立ち,次年度への展開に向けて,大きな進展が得られた.本研究では,非圧縮性粘性流体の二相問題に対するフェーズフィールドモデルを対象に,有限要素法による数値計算手法の開発と妥当性・正当性の解析を行う.そのために,数学的枠組み(数値解析向けの定式化)の研究,および数値実験による発見的考察と結果の検証に相当に力を入れる.さらに,構築した数学的枠組みに基づいて,二相流体問題の近似モデルとしてのフェーズフィールドモデルの正当性を解析するのも,一つの主要な目的である.フェーズフィールドモデルを中心に,二相流体問題,その数理モデル,数値計算手法を研究することで,多相流体現象とその数学理論およびその数値計算手法に,今までになかった視点からの新しい寄与をなすことを目標にしている.今年度は,前年度の成果を踏まえて,いくつかの関数空間の組について,数値実験を行った.問題としては,完全な非圧縮性粘性流体の二相問題に対するフェーズフィールドモデルではなく,Stokes方程式にフェーズフィールド方程式を連立させたモデル問題を扱い,問題の数学的本質を顕著にした.さらに,解析的な考察をするための基盤固めとして,仮想領域法による移動境界問題研究をし,収束性等の議論をするための議論を構成した. | KAKENHI-PROJECT-21740064 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21740064 |
核磁気共鳴と電気抵抗同時測定によるマッシブディラック状態の検出 | ディラック電子系は線形分散を持つバンドのため電子の質量はゼロである。しかし条件が整った時に質量を獲得するということが理論的に示唆された。そこで本課題では有機ディラック電子系物質a,q-(BEDT-TTF)2I3に対して輸送現象と核磁気共鳴測定を用いて、電荷自由度、スピン自由度の観点からマッシブ相の可能性を探った。その結果、ディラック電子相では圧力によって電子相関の程度を変えていくと両測定において、温度依存性に違いが見られることを見出した。これが理論的に示唆されているマッシブ相かどうかはさらなる検証が必要となるが従来、同一と考えられてきたディラック電子相に違いがあるというあたらな見識を得た。研究2年目にあたり、前年度の圧力下におけるa-(BEDT-TTF)2I3塩の電気抵抗のデータをもとに、圧力下におけるNMR測定を開始した。この結果、5kbarという低温では電荷秩序相(非磁性相)が出現する圧力において、電荷秩序転移温度は低下するのに対して、NMR測定による電荷秩序相のスピンギャップの大きさは常圧よりも大きくなっている可能性を見出した。加えてディラック状態(a-(BEDT-TTF)2I3塩の20kbar加圧下)での高磁場におけるNMR測定も開始した。ディラック電子状態ではスピン-格子緩和率,1/T1,が数千秒以上となり測定が長時間に渡たる。これによって、測定上、強磁場の時間安定性という問題が生じることを見出した。これに対しては超伝導磁石の駆動電源の環境温度の管理を行うことにより従来よりも安定した磁場を発生することができた。高磁場下でのNMRスペクトルの温度依存性および一定温度でのスペクトルの磁場依存性が変化していることから、そこでなんらかの電子状態が変化している可能性を見出した。これらの測定では温度依存性が重要となるため、温度コンローラ(Lake Shore社350型)を導入した。これらの研究結果を国内外の学会、研究会で発表した。本研究科課題では有機導体というバルク物質で実現されたディラック電子状態に関して、近年理論的に指摘されたマッシブディラック状態とよばれる状態を磁気的、電気的側面から探索することを目指している。研究初年度はこのような目的を念頭に以下のようなことを行った。有機導体alpha-(BEDT-TTF)2I3の圧力下電気抵抗測定:この物質は低温において、常圧では電荷秩序状態絶縁体であり、高圧ではディラック電子状態となる。圧力印加によって絶縁状態からディラック電子状態への移行過程となる中間圧力における電気抵抗の振る舞いを4端子法を用いて測定した。すでに報告されている電荷秩序転移温度の低下を再現するとと共に試料の均一性の問題が浮き彫りとなった。さらに、この絶縁状態においてより高い精度での電気抵抗測定を目指した。これは核磁気共鳴法と電気抵抗測定法の同時測定を目指した第一歩でもあり、電気抵抗測定をより高確度で行うために高精度のソースメジャーユニット(SMU)を導入した。有機導体theta-(BEDT-TTF)2I3の圧力下構造:この物質は常圧では金属であり、圧力下ではalpha型よりも低圧でディラック状態が実現される。常圧では2次元的なフェルミ面の存在が確認されていることから、ディラック電子状態が出現するには結晶構造の変化が必要であると考えられている。この物質のNMRを常圧および圧力下で行った。磁場印加方向を変化させながらスペクトルの磁場方位依存性を測定した。その結果、常圧での金属状態がディラック電子状態が出現する直前の圧力まで存在すること、およびディラック電子状態でのNMRスペクトルの解析から結晶構造が変化していることが分かった。電子相関によって絶縁化する電荷秩序絶縁相と高圧下で出現するディラック電子相の境界領域を主に13C核磁気共鳴(NMR)測定によって調べた。高圧のディラック電子相ではスピン-格子緩和時間は低温で温度の三乗に従う依存性を示すのに対して、この境界領域でのディラック電子相ではそれよりも急激な温度依存性(ただし指数関数型ではない)を示すことを見出した。線形のバンド分散下でスピン格子緩和率(1/(T1T))が状態密度の温度平均の二乗に従うという単純なモデルでは1/T1は温度の三乗に従うことが期待される。この領域においても緩和曲線は単一指数関数であり、NMRスペクトルから電荷秩序相とディラック電子相の混在は観測されなかった。加えて前年度までの測定によって電気抵抗測定でもこの領域付近では温度依存性の変化が観測されている。これらのことから、境界領域で観測された1/T1の温度依存性は理論的に指摘されているディラック液体の可能性を示唆している。a-(BEDT-TTF)2I3塩の加圧下ディラック電子相の磁気抵抗測定、核磁気共鳴(NMR)測定を行った。この物質は常圧下では電子相関による電荷秩序絶縁相が出現する。加圧により電子相関の効果を弱めることにより電荷秩序の発現を抑え低温までディラック電子相が安定化する。圧力の効果はディラック電子相でも同様と考えれば、圧力によって電子相関の効果をディラック電子相においても制御可能である。測定の結果、圧力が比較的低く(ただし低温までディラック電子相が安定)、電荷秩序相に近い場合と、より高圧の領域では磁気抵抗の振舞いに違いが見られた。 | KAKENHI-PROJECT-24654101 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24654101 |
核磁気共鳴と電気抵抗同時測定によるマッシブディラック状態の検出 | 加えて、13C NMRのスピン格子緩和率,1/T1,の温度依存性もT^4とT^3のように異なる温度依存性を観測した。これらの事象は電荷秩序相に近づくにつれて、ディラック電子が質量を獲得していく過程、マッシブ相の可能性だけではなく、磁場中におけるバレーとスピン自由度の融解が電子相関の程度によって異なるというような観点からの議論が必要であることを示している。研究最終年度にあたるため、これまでの実験の取りまとめと成果の公表を学会などで行った。ディラック電子系は線形分散を持つバンドのため電子の質量はゼロである。しかし条件が整った時に質量を獲得するということが理論的に示唆された。そこで本課題では有機ディラック電子系物質a,q-(BEDT-TTF)2I3に対して輸送現象と核磁気共鳴測定を用いて、電荷自由度、スピン自由度の観点からマッシブ相の可能性を探った。その結果、ディラック電子相では圧力によって電子相関の程度を変えていくと両測定において、温度依存性に違いが見られることを見出した。これが理論的に示唆されているマッシブ相かどうかはさらなる検証が必要となるが従来、同一と考えられてきたディラック電子相に違いがあるというあたらな見識を得た。本研究課題では輸送現象と磁気共鳴測定の両方を駆使してディラック電子系物理の解明を目指しているが、観測されたスピン-格子緩和時間の温度依存性はこれまでの単純なモデルでは説明できない特異なものであり、ディラック液体の可能性を指摘できた。物性物理NMR測定をより高圧の領域まで拡張し、スピン-格子緩和時間の温度依存性が急峻なものから、どのように温度の三乗へと移り変わっていくのかを調べ、明らかにする。さらにこれらの結果を学会などで発表し成果のとりまとめを行う。初年度の電気抵抗測定に加え、本年度からはもう一つの測定量となるNMR測定を開始した。これにより、圧力下での電気抵抗によってディラック状態およびその周辺物性における電荷自由度の振る舞いを、NMRよってスピン自由度の議論が可能となった。NMRおける印加圧はまだ低温でディラック電子状態は出現せず、電荷秩序形成が起こるという低い領域であるものの、高圧領域まで目処が立っていることから、実験はほぼ計画どおりに進んでいると考えられる。本研究では有機導体というバルク系で実現しているディラック電子状態を研究対象としている。電気抵抗測定によって電気的側面から、核磁気共鳴測定によって磁気的な側面および電荷の不均化の評価を行う。初年度では電気抵抗測定によりalhpa-(BEDT-TTF)2I3の圧力依存性の測定を行った。その際必要となるソースメジャーユニットも問題なく導入された。測定も先行研究を再現するだけでなく、転移に伴う試料の均一性に関する問題など実験上の問題も明らかになってきた。加えて磁気共鳴に関してもtheta-(BEDT-TTF)2I3において以前に報告した実験データよりも精度の高いデータを得ることができ、これによって新たに圧力印加時における結晶構造の変化についての議論も可能となった。このように当初の計画に関しておおむね順調に進展しているとともにディラック電子系に関する新しい重要な課題を見出した。 | KAKENHI-PROJECT-24654101 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24654101 |
社会不安に対する役割固定法の効果とその要因 | 本研究は、構成主義的な心理的介入技法である役割固定法(fixed role therapy:FRT;日常生活のなかで数週間、別の人物の「役割」を演じることを通して、自己の構成を現実に役立つものに再構成する方法を学ぶ技法)の効果の要因を明らかにし、それに基づいた改良を行うこと、および、改良したFRTの社会不安に対する効果を検討することを目的とする。平成23年度においては、研究6、研究7、を実施した。【研究6】演技中の自己を客観的に把握しながら演技を実行できるように、手続きにメタ認知的視点を促進するトレーニングを加えたFRTを開発し、その社会不安に対する介入効果を検討した。社会不安高群を対象に、「標準型FRT群」「メタ認知トレーニング+標準型FRT群」「統制群」の3群を編成し、「標準型FRT群」および「統制群」では2週間、「メタ認知トレーニング+標準型FRT群」では4週間にわたる介入実験を行った。測定指標について統計的検定を行った結果、「メタ認知トレーニング+標準型FRT群」が最も高い介入効果を示し、メタ認知的視点を促進することが、FRTの効果を高めるために有用であることが示唆された。【研究7】研究3、研究5、研究6において示された、FRTの効果に関わると考えられる要因を考慮した手続きを含むFRT(refined FRT:RFRT)を開発し、その社会不安に対する介入効果について検討した,社会不安高群を対象に、「標準型FRT群」「RFRT群」「統制群」の3群を編成し、「標準型FRT群」および「統制群」では2週間、「RFRT群」では4週間にわたる介入実験を行った。測定指標について統計的検定を行った結果、RFRT群において、他の群よりも優れた介入効果が認められた。さらに、研究4において開発された社会不安用レパートリー・テストの反応からも、構成概念の変化における介入効果が確認された。実験参加者の募集に関して、所属機関における研究倫理委員会の規定が厳しくなったこと等により、必要な人数を集めることが難しい面もあったが、実験自体の進行状況については順調であり、期間内に統計的検定に必要なデータを確保することができたため、おおむね順調に進展していると考えられる。本研究で開発されたレパートリー・テストおよび役割固定法の社会不安に対する有用性は、調査あるいは実験によって、概ね確認されたと考えられる。したがって、今後は、これらを実際のカウンセリング場面や臨床場面において実践していくことが必要である。それにより、レパートリー・テストや役割固定法の手続きがさらに洗練されることが期待される。また、今後も実験を継続することによって、介入効果に関するデータをさらに蓄積し、エビデンスを頑健なものにしていくことが求められる。本研究は、構成主義的な心理的介入技法である役割固定法(fixed role therapy : FRT;日常生活のなかで数週間、別の人物の「役割」を演じることを通して、自己の構成を現実に役立つものに再構成する方法を学ぶ技法)の効果の要因を明らかにし、それに基づいた改良を行うこと、および、改良したFRTの社会不安に対する効果を検討することを目的とする。平成22年度においては、研究4、研究5、研究6を実施した。【研究4】すでに作成されている社会不安版レパートリー・グリッド法の項目を選定し直し、アセスメントツールとしての精度を高めた。さらに、Repの分析結果を実験参加者自身が容易に把握できるように、Repの解釈マニュアルを作成した。【研究5】FRTを実施するにあたり、自分が演じる役割について把握していること、および役割を演じるという課題を行う意味を理解していることが、FRTの効果に影響を及ぼすのかどうか検討した。その結果、自分が演じた役割の意味および役割を演じるという課題の意味を理解していることが、FRTの効果をより促進することが示された。さらに、実験参加者の言語報告から、日常生活におけるFRTの実行を阻害する要因及び促進する要因が明らかとなった。【研究6】演技中の自己を客観的に把握しながら演技を実行できるように、手続きにメタ認知的視点を促進するトレーニングを加えたFRTを開発し、その社会不安に対する介入効果を検討した。社会不安高群を対象に、「標準型FRT群」「メタ認知トレーニング+標準型FRT群」「統制群」の3群を編成し、2週間にわたる介入実験を行った。その結果、「メタ認知トレーニング+標準型FRT群」が最も高い介入効果を示し、メタ認知的視点を促進することが、FRTの効果に影響を及ぼすことが示唆された。本研究は、構成主義的な心理的介入技法である役割固定法(fixed role therapy:FRT;日常生活のなかで数週間、別の人物の「役割」を演じることを通して、自己の構成を現実に役立つものに再構成する方法を学ぶ技法)の効果の要因を明らかにし、それに基づいた改良を行うこと、および、改良したFRTの社会不安に対する効果を検討することを目的とする。平成23年度においては、研究6、研究7、を実施した。【研究6】演技中の自己を客観的に把握しながら演技を実行できるように、手続きにメタ認知的視点を促進するトレーニングを加えたFRTを開発し、その社会不安に対する介入効果を検討した。社会不安高群を対象に、「標準型FRT群」「メタ認知トレーニング+標準型FRT群」「統制群」の3群を編成し、「標準型FRT群」および「統制群」では2週間、「メタ認知トレーニング+標準型FRT群」では4週間にわたる介入実験を行った。 | KAKENHI-PROJECT-10J03458 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J03458 |
社会不安に対する役割固定法の効果とその要因 | 測定指標について統計的検定を行った結果、「メタ認知トレーニング+標準型FRT群」が最も高い介入効果を示し、メタ認知的視点を促進することが、FRTの効果を高めるために有用であることが示唆された。【研究7】研究3、研究5、研究6において示された、FRTの効果に関わると考えられる要因を考慮した手続きを含むFRT(refined FRT:RFRT)を開発し、その社会不安に対する介入効果について検討した,社会不安高群を対象に、「標準型FRT群」「RFRT群」「統制群」の3群を編成し、「標準型FRT群」および「統制群」では2週間、「RFRT群」では4週間にわたる介入実験を行った。測定指標について統計的検定を行った結果、RFRT群において、他の群よりも優れた介入効果が認められた。さらに、研究4において開発された社会不安用レパートリー・テストの反応からも、構成概念の変化における介入効果が確認された。実験参加者の募集に関して、所属機関における研究倫理委員会の規定が厳しくなったこと等により、必要な人数を集めることが難しい面もあったが、実験自体の進行状況については順調であり、期間内に統計的検定に必要なデータを確保することができたため、おおむね順調に進展していると考えられる。本研究で開発されたレパートリー・テストおよび役割固定法の社会不安に対する有用性は、調査あるいは実験によって、概ね確認されたと考えられる。したがって、今後は、これらを実際のカウンセリング場面や臨床場面において実践していくことが必要である。それにより、レパートリー・テストや役割固定法の手続きがさらに洗練されることが期待される。また、今後も実験を継続することによって、介入効果に関するデータをさらに蓄積し、エビデンスを頑健なものにしていくことが求められる。 | KAKENHI-PROJECT-10J03458 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J03458 |
二重光電離過程の円二色性観測による電子相関の研究 | 現在までに,電子相関の効果を解明するため二重光電離過程で生じる電子間の角度相関を以下の条件で測定した。実験は高エネルギー加速器研究機構・物質科学研究所・放射光施設内の円偏光ビームラインBL-28Aでおこなった。(1) Heを標的とし光のエネルギーから電子の結合エネルギーを差し引いた余剰エネルギーが(I) 10eVで放出電子が余剰エネルギーを1:1,1:2,1:8に分け合う場合。(II)40eVで放出電子が余剰エネルギーを1:1,1:7,1:19に分け合う場合。(2) Neを標的とし終状態がHeの場合と同じ^1Poについて余剰エネルギーが40eVで放出電子が余剰エネルギーを1:1,1:2,1:8に分け合う場合。(1),(2)のいずれの場合も,右回り円偏光と左回り円偏光による測定結果の差,円二色性が観測された(余剰エネルギー等配分の場合は除く)。(1)-(I)については観測データの解析も終了し,これまで報告されていないアンバランスに余剰エネルギーが分配される場合の双極子遷移モーメントの導出に成功した。この双極子遷移モーメントを使って円および直線偏光成分が電子の角度相関に与える寄与を見積もったところ,放射光に含まれる割合が円偏光に比べて低い直線偏光成分の寄与が予想よりはるかに大きいことがわかった。そこで測定データからこの直線偏光成分の影響を取り去り,真の円二色性を引き出すことを試み,それに成功した。(1)-(II)および(2)については現在解析をおこなっている最中である。本研究で得られた結果は世界的に注目され,オーストラリアのオーストラリア国際大学Dr.Kheifetsから彼がおこなった理論計算と本結果を比較するためデータの提供を求められた,また,イギリスのニューカッスル大学Dr.Reddishとの共同研究が開始される予定である。本年度の目標は、Heの直接二重光電離過程における円二色性観測であった。Heの直接二重光電離過程は電子相関の研究対象として絶好のものである。それは、光子一つで電子を二つたたき出す現象は電子相関なしでは決しておこらない(コンプトン散乱の無視できるエネルギー領域では)からであり、この反応過程での放出電子の角度相関は電子相関の効果を直接観測できる唯一の方法である。また、He原子は簡単な構造(α+2e)であるため電子相関を考慮した理論計算ができ、実験結果と理論計算の比較が可能となる。しかし、Heの2重光電離断面積は非常に小さいため、その実行は他の希ガス原子と比べて困難であった。今回、Heランプを使った予備実験を繰り返し、慎重に準備をおこなった結果、長年目標にしてきたHeの二重光電離過程における円二色性の観測に世界に先駆け成功した。以下、具体的にその成果を報告する。本研究は高エネルギー加速器研究機構・物質構造研究所の放射光施設内のBL-28A(円偏光ビームライン)でおこなった。円偏光使用の利点は、右回り、左回り円偏光を使うことにより完全に同一の実験条件で2通りの実験ができることである。これにより、電子相関関数や双極子遷移行列要素を決定する、いわゆる完全実験の実行が可能になる。今回の実験では、Heの2重電離しきいエネルギー(79eV)より10eV高いエネルギーの光を使用した。二重光電離過程で生じる2つの電子はこの余剰エネルギー(10eV)を互いに分け合いそれぞれの運動エネルギーとする。今回は1:1、1:2、1:8の割合で余剰エネルギーを分け合った場合についてそれぞれ実験をおこなった。その結果、余剰エネルギー分配のアンバランスさが増していくと円二色性は強くでることがわかった、これは理論予想を支持するものである。ただ、円二色性がでない等配分の場合にも電子の角度相関に右、左円偏光で違いが出てしまった。これは光のなかに予想以上に直線偏光成分が入っているためと結論づけられ、現在直線偏光成分の寄与を取り去る解析法を開発中である。この解析法を使えば、同時に電子相関関数、双極子遷移行列要素を決定できる。実験解析法を確立することが現在の急務であるが、これもほぼ完成している。電子相関関数おほび双極子遷移行列要素の決定という完全実験は今まで報告されていないので、早急に成果をまとめ発表する予定である。現在までに,電子相関の効果を解明するため二重光電離過程で生じる電子間の角度相関を以下の条件で測定した。実験は高エネルギー加速器研究機構・物質科学研究所・放射光施設内の円偏光ビームラインBL-28Aでおこなった。(1) Heを標的とし光のエネルギーから電子の結合エネルギーを差し引いた余剰エネルギーが(I) 10eVで放出電子が余剰エネルギーを1:1,1:2,1:8に分け合う場合。(II)40eVで放出電子が余剰エネルギーを1:1,1:7,1:19に分け合う場合。(2) Neを標的とし終状態がHeの場合と同じ^1Poについて余剰エネルギーが40eVで放出電子が余剰エネルギーを1:1,1:2,1:8に分け合う場合。(1),(2)のいずれの場合も,右回り円偏光と左回り円偏光による測定結果の差,円二色性が観測された(余剰エネルギー等配分の場合は除く)。(1)-(I)については観測データの解析も終了し,これまで報告されていないアンバランスに余剰エネルギーが分配される場合の双極子 | KAKENHI-PROJECT-09740330 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09740330 |
二重光電離過程の円二色性観測による電子相関の研究 | 遷移モーメントの導出に成功した。この双極子遷移モーメントを使って円および直線偏光成分が電子の角度相関に与える寄与を見積もったところ,放射光に含まれる割合が円偏光に比べて低い直線偏光成分の寄与が予想よりはるかに大きいことがわかった。そこで測定データからこの直線偏光成分の影響を取り去り,真の円二色性を引き出すことを試み,それに成功した。(1)-(II)および(2)については現在解析をおこなっている最中である。本研究で得られた結果は世界的に注目され,オーストラリアのオーストラリア国際大学Dr.Kheifetsから彼がおこなった理論計算と本結果を比較するためデータの提供を求められた,また,イギリスのニューカッスル大学Dr.Reddishとの共同研究が開始される予定である。 | KAKENHI-PROJECT-09740330 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09740330 |
大腸慢性炎症部における大腸上皮を抗原提示細胞とする粘膜内T細胞活性化機構の追究 | これまで、大腸上皮細胞はnon-professional APCとして機能しているといわれてきたが、costimulatory signalを欠く正常腸管粘膜内のT細胞はクローン麻痺(clonal ancrgy)の状態にあり腸管腔における外来および自己抗原に対しては不活化状態にある。一方、潰瘍性大腸炎などの炎症粘膜ではcostimulatory signalを発現する活性化T細胞が多数出現し、その病態に関与していると推測される。我々は、潰瘍性大腸炎患者生検検体を用い、潰瘍性大腸炎の炎症性大腸上皮におけるCD86の発現を証明し、病態形成における関与を明らかにしてきた。また、大腸上皮由来の細胞株HT29-18-N2においてもCD86分子の発現を認め、さらにIFN-γで刺激してCD86分子を発現したHT29-18-N2をeffectorとしてCD4陽性細胞と共培養を行い、その細胞増殖活性の上昇を認めた。今回、CD86分子を発現した潰瘍性大腸炎大腸上皮をeffectorとして用いて同様に検討し、CD4陽性細胞の細胞増殖活性の上昇を認めた。さらに共培養開始時にブロッキング抗体を添加し検討を加え、抗CD86抗体の添加により細胞増殖活性は著明に抑制され、以上よりこの増殖反応がCD86を介した反応であることが確認された。今回の結果より、潰瘍性大腸炎炎症部の大腸上皮にCD86が発現し、costimulatory moleculeとして粘膜内T細胞の活性化および炎症の慢性化に働くことが示唆された。消瘍性大腸炎の病因は未だ不明の点が多いが、今回、新たに病態形成、慢性化の一つとしてcostimulatory molecule CD86の関与が明らかになり、本症の病因解明の一助になると考えられる。今後さらに大腸炎モデルにおいてCD86のanalogueであるCTLA-41g投与による腸炎発症の抑制効果の検討を行い、潰瘍性大腸炎に対する新しい免疫統御療法の開発へつなげたいと考えている。Costimulatory signalを欠く正常腸管粘膜内のT細胞はクローン麻酔(clonal anergy)の状態にあたるため腸管腔における外来および自己抗原に対して不活性状態にあるが、逆に炎症粘膜ではcostimulatory signalを発現する活性化T細胞が多数出現していると推測される。我々は、潰瘍性大腸炎(UC)患者生検検体を行い、大腸上皮細胞におけるCD86の発現を証明し、病態形成における関与を明らかにしてきた。今回、潰瘍性大腸炎の炎症性大腸上皮においてMHCclassII発現に加えてCD86発現が認められたことにより、大腸上皮がAPCとして機能していることが推定された。次に、大腸上皮由来のcell lineを用いて検討したが、HT29-18-N2においてCD86分子の発現が認められた。さらにCD86発現の機能的解析のために大腸上皮細胞株によるallogeneicCD4陽性細胞の増殖実験を施行し、CD4陽性細胞は有意にcell proliferationの上昇を認めた。さらにCD4陽性細胞とHT29-18-N2のcoculture開始時に各種のブロッキング抗体を加え検討したが、抗CD86抗体の投与でcell proliferationは著明に抑制され、この増殖反応がcostimulatory moleculeCD86を介した反応であることが確認された。今回の結果より、潰瘍性大腸炎炎症部の大腸上皮にCD86が発現し、costimulatory moleculeとして粘膜内T細胞の活性化および炎症の慢性化に働くことが示唆された。潰瘍性大腸炎の病因は未だ不明の点が多いが、今回、新たに病態形成、慢性化の一つとしてcostimulatory molecule CD86の関与が明らかになり、本症の病因解明の一助になると考えられる。今後さらに大腸炎モデルにおいてCD86のanalogueであるCTLA-4Ig投与による腸炎発症の抑制効果の検討を行い、潰瘍性大腸炎に対する新しい免疫統御療法の開発へつなげたいと考えている。これまで、大腸上皮細胞はnon-professional APCとして機能しているといわれてきたが、costimulatory signalを欠く正常腸管粘膜内のT細胞はクローン麻痺(clonal ancrgy)の状態にあり腸管腔における外来および自己抗原に対しては不活化状態にある。一方、潰瘍性大腸炎などの炎症粘膜ではcostimulatory signalを発現する活性化T細胞が多数出現し、その病態に関与していると推測される。我々は、潰瘍性大腸炎患者生検検体を用い、潰瘍性大腸炎の炎症性大腸上皮におけるCD86の発現を証明し、病態形成における関与を明らかにしてきた。また、大腸上皮由来の細胞株HT29-18-N2においてもCD86分子の発現を認め、さらにIFN-γで刺激してCD86分子を発現したHT29-18-N2をeffectorとしてCD4陽性細胞と共培養を行い、その細胞増殖活性の上昇を認めた。今回、CD86分子を発現した潰瘍性大腸炎大腸上皮をeffectorとして用いて同様に検討し、CD4陽性細胞の細胞増殖活性の上昇を認めた。さらに共培養開始時にブロッキング抗体を添加し検討を加え、抗CD86抗体の添加により細胞増殖活性は著明に抑制され、以上よりこの増殖反応がCD86を介した反応であることが確認された。今回の結果より、潰瘍性大腸炎炎症部の大腸上皮にCD86が発現し、costimulatory moleculeとして粘膜内T細胞の活性化および炎症の慢性化に働くことが示唆された。消瘍性大腸炎の病因は未だ不明の点が多いが、今回、新たに病態形成、慢性化の一つとしてcostimulatory molecule CD86の関与が明らかになり、本症の病因解明の一助になると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-09770381 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09770381 |
大腸慢性炎症部における大腸上皮を抗原提示細胞とする粘膜内T細胞活性化機構の追究 | 今後さらに大腸炎モデルにおいてCD86のanalogueであるCTLA-41g投与による腸炎発症の抑制効果の検討を行い、潰瘍性大腸炎に対する新しい免疫統御療法の開発へつなげたいと考えている。 | KAKENHI-PROJECT-09770381 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09770381 |
既設鋼構造物の疲労損傷度の定量的評価を目的とした超音波探傷システムの開発 | 本研究では,以下のような検討を実施した.(1)既設鋼構造物中の疲労亀裂検出のためのデータベースとそれに基づくコンサルテーションシステムの構築疲労損傷の発生位置・要因,補修対策を含めたデータベースを構築し,欠陥からの疲労き裂発生の検知が維持管理上重要であることを示した.(2)超音波エコー特性に対する数値シミュレーションリニアアレイ探傷システムの構築に向けて探触子の圧電素子配列の最適化を目的に波動シミュレーションを実施し,周波数2MHz,5MHzに対して効率的な圧電素子配列を提案した.(3)疲労き裂からの超音波エコー特性の実験による確認超音波探傷により,き裂先端の開閉口挙動を超音波エコーの高さの変化として非破壊的に検知できることを示すとともに,開口合成法による画像化により疲労き裂識別の可能性を示した.(4)アレー超音波探傷システムの構築タンデムアレー,2次元的配列を有する探触子により3次元的に鋼材内の欠陥情報を取得できるシステムを開発した.(5)波形信号処理による超音波探傷の高精度化3次元欠陥情報の客観的評価かつ高精度な画像化手法を開発した.また,疲労き裂先端の位置検知においての開口合成法等の画像化手法の精度についても考察した.(6)鋼構造物モデルを用いた実証試験近年疲労問題が顕在化した鋼製橋脚のモデルにより溶接欠陥検出性能の検証を行い,3次元形状を有する欠陥であっても精度よく検出可能であることを確認した.以上から,疲労損傷度の定量的評価が可能な超音波探傷システムを構築可能となる.本研究では,以下のような検討を実施した.(1)既設鋼構造物中の疲労亀裂検出のためのデータベースとそれに基づくコンサルテーションシステムの構築疲労損傷の発生位置・要因,補修対策を含めたデータベースを構築し,欠陥からの疲労き裂発生の検知が維持管理上重要であることを示した.(2)超音波エコー特性に対する数値シミュレーションリニアアレイ探傷システムの構築に向けて探触子の圧電素子配列の最適化を目的に波動シミュレーションを実施し,周波数2MHz,5MHzに対して効率的な圧電素子配列を提案した.(3)疲労き裂からの超音波エコー特性の実験による確認超音波探傷により,き裂先端の開閉口挙動を超音波エコーの高さの変化として非破壊的に検知できることを示すとともに,開口合成法による画像化により疲労き裂識別の可能性を示した.(4)アレー超音波探傷システムの構築タンデムアレー,2次元的配列を有する探触子により3次元的に鋼材内の欠陥情報を取得できるシステムを開発した.(5)波形信号処理による超音波探傷の高精度化3次元欠陥情報の客観的評価かつ高精度な画像化手法を開発した.また,疲労き裂先端の位置検知においての開口合成法等の画像化手法の精度についても考察した.(6)鋼構造物モデルを用いた実証試験近年疲労問題が顕在化した鋼製橋脚のモデルにより溶接欠陥検出性能の検証を行い,3次元形状を有する欠陥であっても精度よく検出可能であることを確認した.以上から,疲労損傷度の定量的評価が可能な超音波探傷システムを構築可能となる.本年度は,本研究の初年度として,以下のような検討を行った.(1)鋼橋の疲労亀裂に関するデータベース化と検査コンサルテーションシステムの構築:本年度は,鋼橋に起こりえる疲労損傷について,その発生位置,発生要因,補修対策を含めたデータベースを構築し,特に,近年問題となっている鋼製ラーメン橋脚隅角部での疲労損傷を中心に,検討した.そこでは,疲労損傷の起点となっている内在溶接欠陥の存在を指摘し,それが隅角部の複雑な板組みに起因した固有欠陥であり,殆どの既設隅角部に存在することから,その位置や大きさなどを非破壊的に把握することが極めて重要であることを示した.特に,固有欠陥から疲労き裂が発生しているかどうかを非破壊的に診断することが維持管理上重要であることを指摘した.(2)各種欠陥からの超音波エコー特性の検討:本年度は,超音波探傷により欠陥種別の識別、特に疲労亀裂の特定を目的として、荷重に対するき裂開閉口特性に着目して検討した.本研究では,走査せずに多くの情報を取得できる独自の10連探触子を用い検討を行った.その結果,荷重繰り返し下で,疲労き裂の先端は開閉口挙動を超音波エコー高さの変化として非破壊的に検知でき,さらに,開口合成法に基づく欠陥の画像化を行うことにより,疲労き裂先端のエコー変化から疲労き裂が発生しているかを認識できる可能性を示した.さらに,マトリックス(3列×5探触子,4列×4探触子)上に並んだ独自の面上探触子を開発し,3次元欠陥の散乱エコーを取得し,3次元画像化を行うことを試みた.その結果,従来の1探触子法などでは困難であった曲面の再現を行えることなどを示した.(3)超音波エコー特性に関する数値シミュレーション:リニアアレイ超音波探傷システムの構築にむけて、不可欠となるアレイ探触子内での圧電素子配列の最適化を目的として,様々な配列条件おより周波数条件下で波動シミュレーションを実施した.なお,そこでは,本年度導入した高速演算が可能なクラスターシステムを用いた.その結果をもとに,本研究では,周波数2MHzおよび5MHzに対してそれぞれサイドローブを抑制できるような効率的な圧電素子配列を提案した.本年度の研究成果を以下にまとめる.(1)鋼橋の疲労亀裂に関するデータベース化と検査コンサルテーションシステムの構築:点検を行う際に必要な基礎的な知識,検査の途中において必要な知識を,過去の記録などをベースとしたデータベースを構築した. | KAKENHI-PROJECT-15206055 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15206055 |
既設鋼構造物の疲労損傷度の定量的評価を目的とした超音波探傷システムの開発 | 鋼橋のどの位置にどのような疲労損傷が生じる可能性があるか容易に参照できるシステムとなっており,今後継続的に,適切な非破壊試験とその検査方法について情報を加えていく予定である.(2)各種欠陥からの超音波エコー特性の検討:超音波探傷により欠陥種別の識別,特に疲労亀裂の特定を目的として,き裂先端の開閉口挙動に着目し,それが超音波探傷でエコー高さの差として検出できる可能性があることを確認し,画像化により欠陥とき裂部との識別できる可能性を示した.(3)超音波エコー特性に関する数値シミュレーション:超音波探傷システムを構築するには超音波エコーの詳細な伝播挙動を知る必要がある.本年度は,有限要素法を用いて数値シミュレーションを行い,アレー超音波探触手の適切な制御方法などについて検討した.その結果,アレー探触子の制御形式のうち,フォーカス制御を用いることによって,超音波探傷の困難な板厚表面近傍の近距離場でも的確に高い指向性を持って超音波を導入できることなどが明らかとなった.(4)マルティアレータンデム超音波探傷システムの開発:タンデムアレー探傷システムおよび8×8の2次元的な配列を有するアレー探触子を新たに開発し,ステアリング制御の場合と,フォーカス制御の場合,それぞれに対して3次元的な欠陥画像構成法を提案した.これらを組み合わせて用いることにより,立方体上の角を有する欠陥でも角の細部に至るまで検出できることを実験的に確認した.本年度は,本研究の最終年度として,昨年までの(1)既設鋼構造物中の疲労亀裂検出のためのデータベースとそれに基づくコンサルテーションシステムの構築,(2)各種の欠陥からの超音波エコー特性に対する数値シミュレーションによる検討,(3)各種欠陥からの超音波エコー特性の実験による確認に関する検討に引き続き,以下のような検討を行った.(4)アレー超音波探傷システムの構築昨年まで開発した2次元配列アレイ探触子の受信子としての性能に着目して検証を行うとともに,新たに,放射状に配列したアレー探触子を開発し,それをタンデムに使用して探傷することにより3次元的な鋼材内の欠陥情報を取得できるシステムを開発した.(5)疲労亀裂モニタリングシステムの構築アレー探触子を利用し,疲労き裂先端位置の検知のため,荷重変動に伴う疲労き裂先端の開閉口に着目する手法を提案し,その適用可能性を実験的に確認した.(6)波形信号処理による超音波探傷の高精度化3次元欠陥情報の客観的評価精度向上のため,開発した各種アレー探触子,また,それぞれのアレー探触子については,フォーカッシング,ステアリングのような制御方法に対応して,画像化手法を開発した.また,疲労き裂先端の位置検知においての開口合成法等の画像化手法の精度についても考察した.(7)鋼構造物モデルを用いた実証試験本研究で開発したアレー探触子,探傷システム,高精度画像処理法に対して,鋼構造物,特に,近年疲労問題が顕在化した鋼製橋脚のモデルを作成し,そこに含まれる不溶着部等の溶接欠陥の検出に適用し,検証を行った.その結果,本システムにより鋼構造溶接継手内部にある3次元形状を有する欠陥を精度よく検出することが可能であることを確認した. | KAKENHI-PROJECT-15206055 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15206055 |
硬X線軟ガンマ線での偏光観測によるX線連星からのジェット放射の探査 | (1)PoGO+気球実験におけるフライト運用・フライトデータ解析PoGO+気球実験は、日本とスウェーデンのチームが中心に進めているものであり、これまでに観測された事が殆ど無い硬X線帯域での偏光観測を狙ったミッションである。私は、2016年夏に実施されたPoGO+のフライトの運用と、フライト後に回収されたデータを解析し、フライト中の検出器の振る舞いを調べ、偏光解析を行うために必要な情報を得た。更に、Swift/BAT, MAXIがこれまでに観測してきた10年以上のデータを用いて、PoGO+が観測したスペクトルに近いと考えられる時期を調べ、その時期のSuzakuのデータ解析を行い、観測天体であるCyg X-1の応答関数を作成するために必要な、PoGO+の観測中のCyg X-1のスペクトルのパラメータを推定した。その結果をチームに報告し、私の解析結果をもとに、チームのメンバーがシミュレーションを行い、検出器の応答関数を作成している。(2)X線のスペクトル/タイミング解析によるCyg X-1のブラックホールスピンの研究ブラックホールスピンを測定することは、降着流から起こる相対論的ジェットへの効果を理解するために重要である。Cyg X-1はとても高いブラックホールスピン(a>0.9)が推定されているが、これはテイルをどの様にモデル化するかに依存する。私は、Suzakuが観測したコンプトンテイルが観測至上最も小さな新しいデータを用いて、降着円盤と高エネルギーコンプトン成分の間に追加成分がある新しいモデルでフィットすると、有意に良くスペクトルを再現し、低いブラックホールスピンの値を与えることを突き止めた。本研究の結果、追加の熱的成分を持つモデルの方が有意に良くスペクトルを再現できることを示し、タイミング解析によって無矛盾性を確認した。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。今年度の研究実施内容は5つに大別され、文字数制限の関係からその内2件を記す。PoGOLite気球実験は、日本とスウェーデンのチームが中心に進めているものであり、これまでに観測された事が無い硬X線帯域での偏光観測を狙ったミッションである。今年度は、2014年1月中旬にロシアから回収されたPoGOLiteのフライトデータの解析を行い、PoGOLiteで最もはっきりと観測された``かに星雲"がバックグラウンドに対してどの程度優位に検出されているかを見積もった。更に、S/Nが最も良くなるようなイベントセレクションを模索し、偏光検出を目指した。現在はPoGOLiteチームとして、検出器論文は投稿済みであり、サイエンス論文は執筆中である。また、チームを代表してFifth International Fermi Symposiumに参加し、PoGOLiteのフライト結果について報告し、Proceedingを投稿した。2015年度打ち上げ予定のASTRO-H衛星搭載SGDの実際の軌道上での運用を模擬した試験に約2ヶ月間参加した。私はその試験を当番の一人として担うだけではなく、シールド部の試験においてリーダーシップを発揮した。この試験で取得されたシールド部の全データを解析する事で、SGDを運用する上で必要不可欠な応答関数を構築する為に重要なデータを得た。SGDの主検出部であるコンプトンカメラはコンプトン散乱の異方性を利用した偏光測定が可能である。そこで、ガンマ線バーストのコンプトンカメラを用いた観測の可能性を推定した。コンプトンカメラで1年間に1つ程度のガンマ線バーストを検出できると見積もり、明るいガンマ線バーストなら偏光観測が可能である事も求めた。これらの内容とSGDシールドの状況をまとめ、5th ASTRO-H Summer Schoolで報告し、5th ASTRO-H Summer SchoolPosterawardを得た。1)PoGOLite気球実験における硬X線偏光解析、次期フライトに向けた実験現在は、PoGOLiteは2016年夏に予定している再フライトへ向けて検出器を改良中である。PoGOLiteは光電子増倍管と呼ばれる光読み出し器を用いて読み出しを行い、フライトに用いる可能性がある光電子増倍管は120本以上ある。そこから実際にフライトに使う91本を選定する作業を、実際にスウェーデンに訪問し、現地の研究者を主導して行った。更に、光電子増倍管の振る舞いをより良く理解し、次回のフライトに活かすために、計200時間に及ぶ1光電子の振る舞いを調べる実験を行った。その結果、これまでに知られていなかった光電子増倍管の挙動を発見し、それを詳細に調べて、次のフライトに有益な情報を得た。2)TeVガンマ線連星HESS J0632+057の多波長解析コンパクト天体が未知ある系に対して、SGDを用いた周期毎の偏光観測を行えば、放射機構に非常に大きな制限を与える事が出来るので、コンパクト天体同定に非常に強力な手段となると考えられている。そこで、今後SGDで観測する前に、より理解を深めておく為に、Be星と正体不明のコンパクト天体からなる大質量連星系であり、電波からTeVガンマ線までの幅広い領域で検出されているHESS J0632+057の多波長観測を行っている。約6年間のSwift/XRTのデータを詳細に解析した結果、位相に依存してスペクトルのべき、もしくは吸収体の柱密度(NH)が変化していることが分かった。更に、primary peak付近は全平均に比べ、NHが有意に大きいことを明らかした。また、約6年分のFermi/LATのデータ解析から、これまではGeVガンマ線帯域で未検出であったHESS J0632+057検出の兆候を初めて得た。 | KAKENHI-PROJECT-14J00579 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J00579 |
硬X線軟ガンマ線での偏光観測によるX線連星からのジェット放射の探査 | PoGOLite実験での硬X線偏光観測は、来年度の放球に向けて、準備実験に参加しながら順調に準備を進めており、来年度の観測が大いに期待される。X線連星のジェットの観測では、その候補と考えられているガンマ線連星について、アーカイブの全X線データと可視光による観測を組み合わせ、さらに理論家とも議論しながら、X線連星の様子を探る研究を進めており、順調に研究が進んでいると考えられる。(1)PoGO+気球実験におけるフライト運用・フライトデータ解析PoGO+気球実験は、日本とスウェーデンのチームが中心に進めているものであり、これまでに観測された事が殆ど無い硬X線帯域での偏光観測を狙ったミッションである。私は、2016年夏に実施されたPoGO+のフライトの運用と、フライト後に回収されたデータを解析し、フライト中の検出器の振る舞いを調べ、偏光解析を行うために必要な情報を得た。更に、Swift/BAT, MAXIがこれまでに観測してきた10年以上のデータを用いて、PoGO+が観測したスペクトルに近いと考えられる時期を調べ、その時期のSuzakuのデータ解析を行い、観測天体であるCyg X-1の応答関数を作成するために必要な、PoGO+の観測中のCyg X-1のスペクトルのパラメータを推定した。その結果をチームに報告し、私の解析結果をもとに、チームのメンバーがシミュレーションを行い、検出器の応答関数を作成している。(2)X線のスペクトル/タイミング解析によるCyg X-1のブラックホールスピンの研究ブラックホールスピンを測定することは、降着流から起こる相対論的ジェットへの効果を理解するために重要である。Cyg X-1はとても高いブラックホールスピン(a>0.9)が推定されているが、これはテイルをどの様にモデル化するかに依存する。私は、Suzakuが観測したコンプトンテイルが観測至上最も小さな新しいデータを用いて、降着円盤と高エネルギーコンプトン成分の間に追加成分がある新しいモデルでフィットすると、有意に良くスペクトルを再現し、低いブラックホールスピンの値を与えることを突き止めた。本研究の結果、追加の熱的成分を持つモデルの方が有意に良くスペクトルを再現できることを示し、タイミング解析によって無矛盾性を確認した。PoGOLiteのフライトデータの解析及び実験結果の発表、ASTRO-H搭載ガンマ線偏光器SGDの開発への貢献を行った。また、高エネルギー偏光天体のSuzaku/WAMによるモニター観測、フェルミ衛星や可視光による観測など、X線ガンマ線偏光観測を行ったため、期待通りの研究の進展と考える。1)PoGOLiteの再フライトPoGOLiteは2016年7月に再フライトが予定されており、現在は、2013年のフライトの経験を生かし、検出器の改良を行っている。そこで私は、実際に現地に赴いて、検出器の較正試験を行い、検出器の性能を精度良く見積もると伴に調整を行う。そして、フライトの運用をコアメンバーとして行い、偏光観測を主導的に行う。 | KAKENHI-PROJECT-14J00579 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J00579 |
同性結婚法制化を巡る議論を規定し、かつそこに投影される「政治的なるもの」の分析 | 申請者は、本研究最終年度である本年度において、これまで調査してきたカナダの同性愛者の権利をめぐる運動の歴史・議論状況をまとめ、合衆国における同性愛者をめぐる議論との比較を試み、論文として発表した。そこで明らかにしたのは、たしかに合衆国に比べ同性婚が全国レヴェルで認められるようになったカナダでは、社会保障上の異性愛カップルとの平等の実現や一般的なレヴェルでの同性愛者たちへの配慮、といった点で、同性愛者たちの社会的地位を向上させたといえる。しかしながら、同性愛者の運動が、「同性婚」として婚姻関係から派生する諸権利を求める権利獲得運動へと収斂することによって、広く一般社会における異性愛中心主義を変革する力が削がれている、という問題を明らかにした[成果として、「「承認の政治」に賭けられているもの--解放か権利の平等か」『法社会学』六四号]。以上をふまえ、本年度はさらに、(1)「自己」の存在確認にとって重要な「他者」との関係性をつむぐ場に関して、同性愛者当事者たちはどのように考えてきたのかについての調査、(2)思想史において「家族」がいかなる場として規範的に規定されてきたかについての考察、(3)フェミニズム理論における「ケアの倫理」に注目しながら、家族構成員の関係性、彼女たち/かれらの様々な活動に関して研究をした。[成果として、「女から生まれる--「家族」からの解放/「ファミリー」の解放--」『F-GENSジャーナル』7号】。本年度は、研究一年目にあたるため、合衆国とカナダにおける同性愛者権利運動の概略と、運動内部における「解放」か「異性愛者との同等の権利」を巡る論争史に関する文献資料を収集した。さらに、2004年の一年を通じてさまざまに変容しつつある両国の同性結婚をめぐる議論を、おもに新聞資料にもとづき通観することを試みた。また、2004年合衆国大統領選挙において同時に争われた州憲法に同性婚禁止の修正条項を含めるかいなかの住民投票にかかわる新聞報道と、本投票結果(住民投票があった11州すべてにおいて修正条項可決)をうけて、同性愛者権利運動の運動方針にどのような変化が見られたかを、主にインターネット上のホームページを通じて明らかにすることを試みた。また、カナダの場合では、約半数の州ですでに同性結婚が認められることを受け、連邦レヴェルで「婚姻」の定義が同性同士の結婚を含むものへと改変されようとしている(2005年度中にも決定される予定)。両国のこうした現在進行形中の変化を見るにつけ、来年度の研究は、両国における宗教と政治との関係について焦点を当てなければならないことが、いっそう明らかとなった。理論部分の研究に関しては、「家族」の問題が政治的に焦点化されることで、逆に明らかにされる理想的な政治的「主体」に関する批判を加え、また、「依存的な相互関係」を中心とした家庭構成員のあいだの「倫理」と公的空間がいかなる関係にあるのか・あるべきなのかを模索しようと試みた。その結果、精神分析理論をも取り入れながら、「依存的な相互関係」と「承認の政治」との関係、解放と同等の権利獲得の理論的相違点などの問題に取り組まなければならないことが明らかになった。本年度は、(1)カナダの同性愛者運動の歴史をつまびらかにすること。(2)同性愛者運動における、同性結婚賛成派・反対派の議論から、何が争われているのかを明らかにすること、(3)家族の政治的意義、以上の三点に焦点を当てた。昨年度において、申請者は、合衆国・カナダ両国の同性結婚に関する資料収集に努めてきた。そこで、本年度は、そうした資料を使い、(1)カナダ政治の大きな転換点となった1982年憲法(「権利および自由に関するカナダ憲章」)が、同性愛者運動に与えた影響と、憲法制定後の政治文化の違いを明らかにした。とくに、合衆国との対比において、憲法制定後、カナダの政治文化が「アメリカナイズ」されたと否定的に論じられることが多いが、それは、同性愛者運動にも当てはまることなのか、あるいは、「アメリカナイゼーション」を象徴する決定的な要因である、社会運動における司法中心主義(「権利の語りrights talk」)への移行は、同性愛者運動にどのような影響を与えたのかが、本年度の研究において明らかにした。同時に、(2)カナダにおいて「権利の語り」や政治文化の「アメリカナイゼーション」を批判してきた理論家(チャールズ・テイラー)に注目し、かれの提唱する「承認の政治」と、同性結婚法制化の賛成派・反対派の議論との接点を見いだした。さらに、理論的な基礎研究として(3)家族の政治的意義を考察した。申請者は、本研究最終年度である本年度において、これまで調査してきたカナダの同性愛者の権利をめぐる運動の歴史・議論状況をまとめ、合衆国における同性愛者をめぐる議論との比較を試み、論文として発表した。そこで明らかにしたのは、たしかに合衆国に比べ同性婚が全国レヴェルで認められるようになったカナダでは、社会保障上の異性愛カップルとの平等の実現や一般的なレヴェルでの同性愛者たちへの配慮、といった点で、同性愛者たちの社会的地位を向上させたといえる。しかしながら、同性愛者の運動が、「同性婚」として婚姻関係から派生する諸権利を求める権利獲得運動へと収斂することによって、広く一般社会における異性愛中心主義を変革する力が削がれている、という問題を明らかにした[成果として、「「承認の政治」に賭けられているもの--解放か権利の平等か」『法社会学』六四号]。以上をふまえ、本年度はさらに、(1)「自己」の存在確認にとって重要な「他者」との関係性をつむぐ場に関して、同性愛者当事者たちはどのように考えてきたのかについての調査、 | KAKENHI-PROJECT-16710185 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16710185 |
同性結婚法制化を巡る議論を規定し、かつそこに投影される「政治的なるもの」の分析 | (2)思想史において「家族」がいかなる場として規範的に規定されてきたかについての考察、(3)フェミニズム理論における「ケアの倫理」に注目しながら、家族構成員の関係性、彼女たち/かれらの様々な活動に関して研究をした。[成果として、「女から生まれる--「家族」からの解放/「ファミリー」の解放--」『F-GENSジャーナル』7号】。 | KAKENHI-PROJECT-16710185 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16710185 |
世紀転換期の日本人ロシア研究者の国際的系譜とその対露認識の包括的実証研究 | 4月、ロシア国立人文大学東洋文化・古代文化研究所紀要にロシア語論文を投稿した(同年10月掲載済)。『大阪朝日新聞』掲載の二葉亭四迷の翻訳紹介記事と、『オスヴォボジヂェーニエ』誌掲載原文記事の比較分析を試みた。二葉亭は原文のニュアンスの伝達のために大胆な意訳を施したのみならず、読者に有益な戦況の情報を積極的に提供しようとした。ロシアから帰国した後、以下、アウの3本の学会口頭発表を行った。ア.第9回中欧・東欧研究国際協議会世界大会(神田外語大学(千葉市美浜区)、2016年8月5日)にて、ロシア人作家、V.ネミローヴィチ=ダンチェンコ(1848-1933)の日本滞在(1907-08)を、日本滞在記の分析から考察した。その日本に対する多様な印象は、彼を支援した日本人とロシア人の働きかけによりもたらされ、彼は日露戦争後のロシア人の日本観光を促進する役割を担った可能性がある。イ.2015年度日本ロシア文学会第65回大会研究発表会(埼玉大学(さいたま市桜区)、2016年11月8日)にて、1914年の大庭柯公のロシア軍従軍の実態について、同行した五名のロシア人記者たちの従軍記と比較考察し、大庭の従軍記が本格的なロシア研究の萌芽であったことを提示した。この成果に、大庭と共に従軍したイギリス人ロシア研究者、B.ペアズ(1867-1949)のテクストの分析を加えて改稿した論文を、所属大学院の『超域文化科学紀要』に投稿した(2016年4月現在、査読中)。ウ.来日ロシア人研究会第97回例会(青山学院大学(東京都渋谷区)、2016年2月6日)にて、ロシア人教授、A.ブラント(1855-1933)と大庭の交流の様相をテクストの分析から検討した。その結果、ブラントの回想記は大庭の対露認識を探る上で重要な一次資料であり、ブラントがアマチュアの日本研究家として活躍していた可能性が高いことが解明された。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。当該年度の4月から9月にかけて、国立国会図書館や東京大学附属図書館などにて、二葉亭四迷や大庭柯公と日本の初期社会主義思想、ロシアの社会主義思想・革命思想との関係について先行研究を調査し、二葉亭、大庭の執筆したテクストの分析を試みた。彼らの社会主義思想が他の同時代人たちの初期社会主義思想と異なる位相にあり、そこにロシアの社会主義思想が関係していたことを確認した。さらに19世紀末から20世紀初頭のイギリスにおけるロシア研究の関連文献を調査し、それが日本を含むその他の国のロシア研究にも少なからぬ影響を与えていたと考察するに至った。2014年10月より、モスクワのロシア国立人文大学東洋文化・古代文化研究所にて研究指導委託を受けている(2015年7月)。その結果、2015年2月に開催されたロシア国立人文大学主催第17回「日本の歴史と文化」研究発表大会にて、ロシア語で口頭発表を行い、その内容に基づくロシア語論文を執筆し、同研究所紀要に投稿予定である。二葉亭四迷によるロシア語新聞雑誌翻訳紹介とロシア研究者としての活動を考察するため、『大阪朝日新聞』に掲載された彼の翻訳紹介記事と、『オスヴォボジヂェーニエ』誌掲載原文記事のテクスト比較分析を試みた。その結果、二葉亭が原文のニュアンスを伝えるために大胆な意訳を施したのみならず、読者にとって有益な戦況の知識や情報を積極的に提供しようとしていたことが明らかになった。その他、ロシア・モスクワの国立図書館及び同図書館学位論文・新聞部、国立公文書館、国立社会政治公文書館、ならびにサンクトペテルブルグの国立図書館にて、二葉亭や大庭ら日本人ロシア研究者たちに関するロシア滞在の記録や新聞雑誌記事、彼らが関わったロシアの知識人たちの著作・先行研究を入手し、考察した。その結果、これまで先行研究で言及されてこなかった数多くの史料やテクストの存在が判明した。4月、ロシア国立人文大学東洋文化・古代文化研究所紀要にロシア語論文を投稿した(同年10月掲載済)。『大阪朝日新聞』掲載の二葉亭四迷の翻訳紹介記事と、『オスヴォボジヂェーニエ』誌掲載原文記事の比較分析を試みた。二葉亭は原文のニュアンスの伝達のために大胆な意訳を施したのみならず、読者に有益な戦況の情報を積極的に提供しようとした。ロシアから帰国した後、以下、アウの3本の学会口頭発表を行った。ア.第9回中欧・東欧研究国際協議会世界大会(神田外語大学(千葉市美浜区)、2016年8月5日)にて、ロシア人作家、V.ネミローヴィチ=ダンチェンコ(1848-1933)の日本滞在(1907-08)を、日本滞在記の分析から考察した。その日本に対する多様な印象は、彼を支援した日本人とロシア人の働きかけによりもたらされ、彼は日露戦争後のロシア人の日本観光を促進する役割を担った可能性がある。イ.2015年度日本ロシア文学会第65回大会研究発表会(埼玉大学(さいたま市桜区)、 | KAKENHI-PROJECT-14J00269 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J00269 |
世紀転換期の日本人ロシア研究者の国際的系譜とその対露認識の包括的実証研究 | 2016年11月8日)にて、1914年の大庭柯公のロシア軍従軍の実態について、同行した五名のロシア人記者たちの従軍記と比較考察し、大庭の従軍記が本格的なロシア研究の萌芽であったことを提示した。この成果に、大庭と共に従軍したイギリス人ロシア研究者、B.ペアズ(1867-1949)のテクストの分析を加えて改稿した論文を、所属大学院の『超域文化科学紀要』に投稿した(2016年4月現在、査読中)。ウ.来日ロシア人研究会第97回例会(青山学院大学(東京都渋谷区)、2016年2月6日)にて、ロシア人教授、A.ブラント(1855-1933)と大庭の交流の様相をテクストの分析から検討した。その結果、ブラントの回想記は大庭の対露認識を探る上で重要な一次資料であり、ブラントがアマチュアの日本研究家として活躍していた可能性が高いことが解明された。研究指導委託先のロシア・モスクワにてロシア語による口頭発表ならびに論文投稿を行ったほか、日本国内で最も重要な学会誌における査読付き論文が掲載されるなど、目に見える研究成果が多く得られた上、国内外での文献資料調査も当初の計画以上に進展している。27年度が最終年度であるため、記入しない。当該年度に国内外で行った文献資料調査の結果とそれによって得られた考察を、次年度に国際学会・国内学会・研究会の計3回の口頭発表、ならびに所属研究科の発行する紀要への査読付き論文の投稿により、具体的な研究成果として公表していく所存である。27年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-14J00269 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J00269 |
金属ーGaAsショットキ界面の欠陥と雑音に関する研究 | 金属ーGaAs界面近傍の欠陥を測定するために、試料温度を変化させながら雑音の測定を行なった。その結果、リアクティブイオンエッチング(RIE)により損傷欠陥が導入された試料の雑音には、100MHz付近に顕著な雑音の温度依存性があり、欠陥準位が熱励起されることに起因するものが含まれていることが分かった。この雑音スペクトラムが再結合雑音と同じスペクトラムを持つと見なして、欠陥の活性化エネルギ-等を求めることが出来ると考えられる。現在までの結果では、欠陥準位が伝導帯中に存在しているかのようなデ-タ-となっている。この原因については、界面に極めて近いところの欠陥による雑音の影響が大きく、比較的深い部分の欠陥の効果を隠しているためと考えられる。そのため、デ-タ-の処理方法の検討を、現在行なっている。次に、欠陥と雑音の関係について理論的検討を行なった。モデルとして、トンネリングによるトラップの電子捕獲/放出速度を計算する方法を用いた。これらの結果によれば、界面近傍に欠陥が存在する場合には試料の温度を下げるに従い、雑音が増加することや雑音のスペクトラムの傾向等が実験結果と一致することが分かった。また、測定した雑音の絶対値と計算値を比較して欠陥密度を見積もると、10^<20>cm^<ー3>eV^<ー1>オ-ダ-となり、nーGaAs表面に不活性化膜を堆積した場合の界面準位密度の報告例(10^<11>10^<14>cm^<ー2>eV^<ー1>)と一致することが分かった。金属ーGaAs界面近傍の欠陥を測定するために、試料温度を変化させながら雑音の測定を行なった。その結果、リアクティブイオンエッチング(RIE)により損傷欠陥が導入された試料の雑音には、100MHz付近に顕著な雑音の温度依存性があり、欠陥準位が熱励起されることに起因するものが含まれていることが分かった。この雑音スペクトラムが再結合雑音と同じスペクトラムを持つと見なして、欠陥の活性化エネルギ-等を求めることが出来ると考えられる。現在までの結果では、欠陥準位が伝導帯中に存在しているかのようなデ-タ-となっている。この原因については、界面に極めて近いところの欠陥による雑音の影響が大きく、比較的深い部分の欠陥の効果を隠しているためと考えられる。そのため、デ-タ-の処理方法の検討を、現在行なっている。次に、欠陥と雑音の関係について理論的検討を行なった。モデルとして、トンネリングによるトラップの電子捕獲/放出速度を計算する方法を用いた。これらの結果によれば、界面近傍に欠陥が存在する場合には試料の温度を下げるに従い、雑音が増加することや雑音のスペクトラムの傾向等が実験結果と一致することが分かった。また、測定した雑音の絶対値と計算値を比較して欠陥密度を見積もると、10^<20>cm^<ー3>eV^<ー1>オ-ダ-となり、nーGaAs表面に不活性化膜を堆積した場合の界面準位密度の報告例(10^<11>10^<14>cm^<ー2>eV^<ー1>)と一致することが分かった。 | KAKENHI-PROJECT-02232204 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02232204 |
多結晶試料中の特定粒界に沿った拡散係数の新規決定法の構築 | 近年、火力発電所や原子力発電所において材料の破損に伴う事故が頻発している。応力腐食割れが主な原因であり、これは高温においてステンレス鋼中のクロムが粒界に沿って拡散してクロム欠乏層が形成するために起きる。このようにステンレス鋼中のクロムの粒界拡散係数は材料の信頼性評価に重要なパラメータである。粒界拡散係数は粒界性格によって10倍以上異なることが純銀、純金および純銅などのバイクリスタルを用いた粒界拡散実験から知られているが、構造材料として実用上重要な鉄やステンレスにおいては粒界拡散係数の粒界性格依存性は全く得られていない。この情報を得るにはバイクリスタル試料が不可欠であるが、多結晶中に存在するすべての粒界傾角に対応したバイクリスタルを作製することは困難である。多結晶試料における粒界拡散係数の粒界傾角依存性などの詳細な情報が発電プラント材料の信頼性向上のために必要不可欠であり、新たな手法が求められている。本研究の目的は、半導体分野で用いられているマスキング技術を拡散試料に適用し、多結晶試料中の特定の粒界に沿う拡散係数の決定法を新たに構築することである。用いた多結晶試料は純Agおよび純Cuである。試料はあらかじめ結晶粒粗大化熱処理を行い、拡散熱処理中に粒界が移動しないようにした。多結晶試料において着目する特定粒界は光学顕微鏡観察およびEBSPによる局所方位解析を用いて決定した。放射性同位元素^<57>Coを多結晶試料にめっき後、拡散熱処理を施した。多結晶試料の特定粒界以外をマスキングし、イオンビームスパッタマイクロセクショニングを行った。自動測定装置を試作することによって測定時間を大幅に増加させることが可能になった。マスキングによって単位時間あたりの^<57>Coの放射能強度は減少したが、自動測定装置を用いて長時間測定を行うことによってマスキングによる放射能強度の減少分を補うことができた。この結果、多結晶Cu試料中の特定粒界に沿った拡散係数を決定することが可能になった。近年、火力発電所や原子力発電所において材料の破損に伴う事故が頻発している。応力腐食割れが主な原因であり、これは高温においてステンレス鋼中のクロムが粒界に沿って拡散してクロム欠乏層が形成するために起きる。このようにステンレス鋼中のクロムの粒界拡散係数は材料の信頼性評価に重要なパラメータである。粒界拡散係数は粒界性格によって10倍以上異なることが純銀、純金および純銅などのバイクリスタルを用いた粒界拡散実験から知られているが、構造材料として実用上重要な鉄やステンレスにおいては粒界拡散係数の粒界性格依存性は全く得られていない。この情報を得るにはバイクリスタル試料が不可欠であるが、多結晶中に存在するすべての粒界傾角に対応したバイクリスタルを作製することは困難である。多結晶試料における粒界拡散係数の粒界傾角依存性などの詳細な情報が発電プラント材料の信頼性向上のために必要不可欠であり、新たな手法が求められている。本研究の目的は、半導体分野で用いられているマスキング技術を拡散試料に適用し、多結晶試料中の特定の粒界に沿う拡散係数の決定法を新たに構築することである。用いた多結晶試料は純Agおよび純Cuである。試料はあらかじめ結晶粒粗大化熱処理を行い、拡散熱処理中に粒界が移動しないようにした。多結晶試料において着目する特定粒界は光学顕微鏡観察およびEBSPによる局所方位解析を用いて決定した。放射性同位元素^<57>Coを多結晶試料にめっき後、拡散熱処理を施した。多結晶試料の特定粒界以外をマスキングし、イオンビームスパッタマイクロセクショニングを行った。自動測定装置を試作することによって測定時間を大幅に増加させることが可能になった。マスキングによって単位時間あたりの^<57>Coの放射能強度は減少したが、自動測定装置を用いて長時間測定を行うことによってマスキングによる放射能強度の減少分を補うことができた。この結果、多結晶Cu試料中の特定粒界に沿った拡散係数を決定することが可能になった。 | KAKENHI-PROJECT-17656202 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17656202 |
大自由度系のダイナミクスと分岐の研究のための位相的および厳密な計算的方法 | 偏微分方程式の平衡解に対する厳密な計算的方法を2次元と3次元の領域におけるSwift-Hohenberg方程式やCahn-Hillard方程式に適用した.より具体的に,論文[1]では,Marcio GameiroとJean-Philippe Lessard(Rutgers University,USA)はこの方法を高次元の偏微分方程式に適用して,2次元と3次元のSwift-Hohenberg方程式,およびCahn-Hillard方程式の平衡解の存在を示した.また,この方法を用いて高次元領域での偏微分方程式の平衡解のなめらかな分枝を計算する方法を提示し,それを2次元と3次元のCahn-Hilliard方程式に応用し,さらに,2次元のSwift-Hohenberg方程式の孤立分枝の2次分岐の検証に用いた.その過程で,論文[1]の方法の改良も与え,2次元のSwift-Hohenberg方程式については,精密な計算結果も与えた.今年度の研究成果は大別して以下の3項目にまとめられる.まず第1に,高次元長方形領域に置ける偏微分方程式の平衡解の厳密な数値計算法の開発を行ったことが挙げられる.これを2次元および3次元領域で定義されたSwift-Hohenberg方程式とCahn-Hillard方程式の定常問題に対して適用して結果を得た.これはJean-Philippe Lessardとの共同研究で,以前に行った1次元の場合の結果を拡張したものである.第2の研究成果は,多次元パラメータを持つ写像族に対するConley指数の計算を行ったことである.これは多次元パラメータ族の問題を,多価写像を介してある種の組合せ多価写像に対する問題に還元することによって計算がなされる.すなわち,この組み合わせ多価写像からMorse集合の外近似を求めて,それのホモロジーConley指数を計算するのである.本研究では,これまでの計算アルゴリズムを改良して,より高次元の空間上で定義される写像や,円筒のようなこれまでのアルゴリズムでは扱えなかったトポロジーを持つ空間に対しても適用できるようにした.また,この新しいアルゴリズムを用いて,bouncing ballの結合系,logistic写像の大域結合系,さらに3次元空間上で定義されるある種の生物モデルに対する計算を開始した.第3の研究成果は,3次元燃料電池の位相的構造の解析である.我々はホモロジーなどの位相計算的方法を用いて,燃料電池の連結性などの位相的性質を解析した.このような位相的性質についての情報は,燃料電池の性能を決定するために本質的に重要である.我々はまたここで開発した方法を,固体酸化物形燃料電池のカソードとアノードでの反応の3次元再構成に応用して,いくつかの結果を得た.偏微分方程式の平衡解に対する厳密な計算的方法を2次元と3次元の領域におけるSwift-Hohenberg方程式やCahn-Hillard方程式に適用した.より具体的に,論文[1]では,Marcio GameiroとJean-Philippe Lessard(Rutgers University,USA)はこの方法を高次元の偏微分方程式に適用して,2次元と3次元のSwift-Hohenberg方程式,およびCahn-Hillard方程式の平衡解の存在を示した.また,この方法を用いて高次元領域での偏微分方程式の平衡解のなめらかな分枝を計算する方法を提示し,それを2次元と3次元のCahn-Hilliard方程式に応用し,さらに,2次元のSwift-Hohenberg方程式の孤立分枝の2次分岐の検証に用いた.その過程で,論文[1]の方法の改良も与え,2次元のSwift-Hohenberg方程式については,精密な計算結果も与えた. | KAKENHI-PROJECT-08F08016 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08F08016 |
鉄筋腐食によるひび割れ発生機構の解明 | コンクリート構造物の設計は、これまでは新設に重みを置いてきたが、いかにして今まで構築されてきた構造物を永く共用して行くかに重点が移行してきている。コンクリート構造物は、耐久性が高いといわれてきたが、それらの寿命が土木技術者が考えてきたよりもかなり短いことが最近の研究でわかってきた。港湾、鉄道、道路構造物などでの寿命の短さが顕著となっている。そのため、現在使用している構造物があと何年利用できるかなどの補修時期を遅らせるための診断技術等が数多く研究されている。本研究では、劣化を受けた既設コンクリート構造物のひび割れモードを考えることで、第三者障害を考慮した使用限界状態の予測モデルを開発した。コンクリート構造物の劣化には、鉄筋腐食までの潜伏期、鉄筋腐食膨張によりひび割れが発生するまでの進展期、その後、腐食進展が加速する加速期がある。使用限界状態で問題となる時期は、ひび割れが発生する進展期であり、それもひび割れモードにより大きく異なる。ひびわれモードは、鉄筋径、間隔、かぶり、コンクリート強度により変化することが自明であり、たとえば、鉄筋間隔が狭い場合、鉄筋同士を結んだ水平ひび割れのはく離となるのに対し、間隔が大きい場合、鉄筋に沿ったひび割れとなる。鉄筋同士の間隔が大きい場合、かぶりによりひび割れモードは異なる。かぶりが小さい場合ははく離ひび割れとなり、大きい場合は鉄筋に沿ったひび割れとなる。ひび割れが発生する限界腐食量を鉄筋に沿ったひび割れおよび水平剥離ひび割れについて乾湿繰返実験により求めた。はく離と鉄筋に沿ったひび割れモードの境界となる無次元量D/φは2.03.0となり,これより小さい場合は表面はく離ひび割れ,大きい場合は鉄筋に沿ったひび割れとなる。水平剥離ひび割れと鉄筋に沿ったひび割れモードの境界となる無次元量1/φは5.57.0となり,これより小さい場合は水平はく離ひび割れ,大きい場合は鉄筋に沿ったひび割れとなる。ひび割れ発生限界腐食量の特性値は、15%危険確率を容認するならば、はく離ひび割れモードでは39mg/cm2、水平はく離ひび割れモードでは30mg/cm2が特性値として得られた。コンクリート構造物の設計は、これまでは新設に重みを置いてきたが、いかにして今まで構築されてきた構造物を永く共用して行くかに重点が移行してきている。コンクリート構造物は、耐久性が高いといわれてきたが、それらの寿命が土木技術者が考えてきたよりもかなり短いことが最近の研究でわかってきた。港湾、鉄道、道路構造物などでの寿命の短さが顕著となっている。そのため、現在使用している構造物があと何年利用できるかなどの補修時期を遅らせるための診断技術等が数多く研究されている。本研究では、劣化を受けた既設コンクリート構造物のひび割れモードを考えることで、第三者障害を考慮した使用限界状態の予測モデルを開発した。コンクリート構造物の劣化には、鉄筋腐食までの潜伏期、鉄筋腐食膨張によりひび割れが発生するまでの進展期、その後、腐食進展が加速する加速期がある。使用限界状態で問題となる時期は、ひび割れが発生する進展期であり、それもひび割れモードにより大きく異なる。ひびわれモードは、鉄筋径、間隔、かぶり、コンクリート強度により変化することが自明であり、たとえば、鉄筋間隔が狭い場合、鉄筋同士を結んだ水平ひび割れのはく離となるのに対し、間隔が大きい場合、鉄筋に沿ったひび割れとなる。鉄筋同士の間隔が大きい場合、かぶりによりひび割れモードは異なる。かぶりが小さい場合ははく離ひび割れとなり、大きい場合は鉄筋に沿ったひび割れとなる。ひび割れが発生する限界腐食量を鉄筋に沿ったひび割れおよび水平剥離ひび割れについて乾湿繰返実験により求めた。はく離と鉄筋に沿ったひび割れモードの境界となる無次元量D/φは2.03.0となり,これより小さい場合は表面はく離ひび割れ,大きい場合は鉄筋に沿ったひび割れとなる。水平剥離ひび割れと鉄筋に沿ったひび割れモードの境界となる無次元量1/φは5.57.0となり,これより小さい場合は水平はく離ひび割れ,大きい場合は鉄筋に沿ったひび割れとなる。ひび割れ発生限界腐食量の特性値は、15%危険確率を容認するならば、はく離ひび割れモードでは39mg/cm2、水平はく離ひび割れモードでは30mg/cm2が特性値として得られた。本研究の目的は、劣化を受けた既設コンクリート構造物のひび割れモードを考えることで、第三者障害を考慮した使用限界状態の予測モデルを開発することである。コンクリート構造物の劣化には、鉄筋腐食までの潜伏期、鉄筋腐食膨張によりひび割れが発生するまでの進展期、その後、腐食進展が加速する加速期がある。使用限界状態で問題となる時期は、ひび割れが発生する進展期であり、それもひび割れモードにより大きく異なる。ひびわれモードは、鉄筋径、間隔、かぶり、コンクリート強度により変化することが自明であり、たとえば、鉄筋間隔が狭い場合、鉄筋同士を結んだ水平ひび割れのはく離となるのに対し、間隔が大きい場合、鉄筋に沿ったひび割れとなる。鉄筋同士が間隔が大きい場合、かぶりによりひび割れモードは異なる。かぶりが小さい場合ははく離ひび割れとなり、大きい場合は鉄筋に沿ったひび割れとなる。平成15年度は、ひび割れモードを調べるために試験体を作成し、乾湿繰返試験により腐食によるひび割れモードを調べた。試験体は、鉄筋間隔、かぶり、鉄筋径、コンクリート強度、鉄筋の位置を因子にひび割れモードを(1)鉄筋に沿ったひび割れ、(2)水平はく離ひび割れ(鉄筋同士を結んだひび割れ)、(3)はく離ひび割れの3種類を発生することを念頭に作成した。乾湿繰返試験は現在3ヶ月を経過しており、剥離ひび割れや鉄筋に沿ったひび割れが発生している。しかし、水平ひび割れはまだ発生していない。 | KAKENHI-PROJECT-15560406 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15560406 |
鉄筋腐食によるひび割れ発生機構の解明 | 乾湿繰返試験と平行して理論モデルを構築した。理論モデルの計算からD/φ(D=2C+φ、C:かぶり、φ:鉄筋径)が1.5を超えると、鉄筋に沿ったひび割れが卓越し、それ以下では、剥離ひび割れが卓越することが明らかになった。さらに、乾湿繰返試験でもD/φ=1.5程度のときにどちらともいえないひび割れが発生し、理論モデルを裏づけできた。水平ひび割れでは、鉄筋間隔1_pに対するかぶりCの比1_p/Cが、5.0以下では水平ひび割れが卓越する計算結果となった。乾湿繰返試験では、まだ裏づけできる結果は得られていない。本研究の目的は、劣化を受けた既設コンクリート構造物のひび割れモードを考えることで、第三者障害を考慮した使用限界状態の予測モデルを開発することである。コンクリート構造物の劣化には、鉄筋腐食までの潜伏期、鉄筋腐食膨張によりひび割れが発生するまでの進展期、その後、腐食進展が加速する加速期がある。使用限界状態で問題となる時期は、ひび割れが発生する進展期であり、それもひび割れモードにより大きく異なる。ひびわれモードは、鉄筋径、間隔、かぶり、コンクリート強度により変化することが自明であり、たとえば、鉄筋間隔が狭い場合、鉄筋同士を結んだ水平ひび割れのはく離となるのに対し、間隔が大きい場合、鉄筋に沿ったひび割れとなる。鉄筋同士が間隔が大きい場合、かぶりによりひび割れモードは異なる。かぶりが小さい場合ははく離ひび割れとなり、大きい場合は鉄筋に沿ったひび割れとなる。平成16年度は、ひび割れモードを調べるために試験体を作成し、乾湿繰返試験により腐食によるひび割れモードを調べた。試験体は、鉄筋間隔、かぶり、鉄筋径、コンクリート強度、鉄筋の位置を因子にひび割れモードを(1)鉄筋に沿ったひび割れ、(2)水平はく離ひび割れ(鉄筋同士を結んだひび割れ)、(3)はく離ひび割れの3種類を発生することを念頭に作成した。乾湿繰返試験は現在3ヶ月を経過しており、剥離ひび割れや鉄筋に沿ったひび割れが発生している。しかし、水平ひび割れはまだ発生していない。乾湿繰返試験と平行して理論モデルを構築した。理論モデルの計算からD/φ(D=2C+φ、C:かぶり、φ:鉄筋径)が1.5を超えると、鉄筋に沿ったひび割れが卓越し、それ以下では、剥離ひび割れが卓越することが明らかになった。さらに、乾湿繰返試験でもD/φ=1.5程度のときにどちらともいえないひび割れが発生し、理論モデルを裏づけできた。水平ひび割れでは、鉄筋間隔l_pに対するかぶりCの比l_p/Cが、5.0以下では水平ひび割れが卓越する計算結果となった。乾湿繰返試験では、その結果を裏付けることができた。さらに、限界となるひび割れ発生の腐食量を求めた。限界腐食量は、鉄筋に沿ったひび割れでは93mg/cm^3、はく離水平ひび割れでは68mg/cm^3となり、はく離水平ひび割れの限界腐食量の方が小さい。 | KAKENHI-PROJECT-15560406 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15560406 |
原腸形成期の内胚葉は分泌性因子によって内臓中胚葉を誘引する | ショウジョウバエ胚の原腸陥入では内胚葉と中胚葉がそれぞれ別経路で陥入し、その後両者が合体する。本研究計画は、内胚葉と中胚葉が合体する過程で内胚葉から何らかの因子が放出されているという仮定に基づいている。その目的のため、ショウジョウバエ胚の原腸陥入期に、内胚葉で発現する遺伝子を、in situ画像データベースで網羅的に探索し、候補遺伝子のスクリーニングを行ってきた。その結果、アンジオテンシン転換酵素であるAnceが陥入中の内胚葉で特異的に発現することを見出し、内胚葉性の分泌因子の有力候補と考えて、変異体の表現型や他の遺伝子との制御関係等について発生遺伝学的解析を行った。Ance突然変異胚では、内臓中胚葉の分化が阻害され、内胚葉との合体が起こらないことを見出した。しかしながら、その後の詳細な遺伝子学的検討の結果、Ance突然変異系統としてストックセンターで維持されている系統には、Ance以外の変異が入っており、その変異は相補性検定の結果、内臓中胚葉の決定過程で働くjeb変異である、という予想外の事実が判明した。この発見を受けて、本年度は内胚葉そのものが形成されない突然変異系統について、内臓中胚葉形成の異常を詳細に観察することに注力した。内胚葉の決定過程の遺伝子制御の最上流に位置する接合子性遺伝子hkbとその下で活性化するsrpの両者について内臓中胚葉の発生を観察したところ、そのいずれも、内臓中胚葉の分化そのものは起きていたが、中胚葉の本体からの分離が起こらず、また、部分的な分離が起きてもその分布に著しい偏りが生じるなどの異常が生じていることがわかった。これらの研究成果の一部は、動物学会中国四国支部大会においてポスター発表を行っている。当初、内胚葉が分泌し、内臓中胚葉の発生に作用する因子としてアンジオテンシン転換酵素Anceに着目して研究を行っていた。Ance突然変異胚では内臓中胚葉の分化が全く見られないことを見出したからである。使用した変異系統は、ストックセンターから入手した研究者間で流通している系統であるが、詳細な遺伝学的解析を進める過程で、この系統の表現型は、Anceによるものではなく、別の座位の変異である可能性が高いことに気付き、その後の解析で、内臓中胚葉そのものの初期発生に不可欠なjebと同一である、という予想外の問題が相補性検定の結果明らかとなった。それを受けて、内胚葉で発現する遺伝子のスクリーニングに立ち戻って研究計画を修正したことにより、当初期待したよりも研究の進行がやや遅れた。現時点で研究計画の変更は必要なく、計画に沿って研究を進めていく。具体的には、内胚葉で発現する遺伝子で、内臓中胚葉の発生、および内胚葉そのものの発生に関係する遺伝子のスクリーニングを引き続き行うとともに、内胚葉欠失変異胚における内臓中胚葉発生の詳細な解析を継続して行う方針である。また、内胚葉性の遺伝子をスクリーニングする過程で、内胚葉の後半部でのみ発現する遺伝子が見つかり、この遺伝子が原腸形成や中腸の発生にどのような役割を果たしているか、検討を始めている。当初の研究計画からはやや副産物的な発見と言えるが、内胚葉と中胚葉の相互作用による原腸形成、という観点から同じ学術的意義があると考えており、研究計画に沿った実験と並行して進めていく方針である。ショウジョウバエ胚の原腸陥入では内胚葉と中胚葉がそれぞれ別経路で陥入し、その後両者が合体する。本研究計画は、内胚葉と中胚葉が合体する過程で内胚葉から何らかの因子が放出されているという仮定に基づいている。その目的のため、ショウジョウバエ胚の原腸陥入期に、内胚葉で発現する遺伝子を、in situ画像データベースで網羅的に探索し、候補遺伝子のスクリーニングを行ってきた。その結果、アンジオテンシン転換酵素であるAnceが陥入中の内胚葉で特異的に発現することを見出し、内胚葉性の分泌因子の有力候補と考えて、変異体の表現型や他の遺伝子との制御関係等について発生遺伝学的解析を行った。Ance突然変異胚では、内臓中胚葉の分化が阻害され、内胚葉との合体が起こらないことを見出した。しかしながら、その後の詳細な遺伝子学的検討の結果、Ance突然変異系統としてストックセンターで維持されている系統には、Ance以外の変異が入っており、その変異は相補性検定の結果、内臓中胚葉の決定過程で働くjeb変異である、という予想外の事実が判明した。この発見を受けて、本年度は内胚葉そのものが形成されない突然変異系統について、内臓中胚葉形成の異常を詳細に観察することに注力した。内胚葉の決定過程の遺伝子制御の最上流に位置する接合子性遺伝子hkbとその下で活性化するsrpの両者について内臓中胚葉の発生を観察したところ、そのいずれも、内臓中胚葉の分化そのものは起きていたが、中胚葉の本体からの分離が起こらず、また、部分的な分離が起きてもその分布に著しい偏りが生じるなどの異常が生じていることがわかった。これらの研究成果の一部は、動物学会中国四国支部大会においてポスター発表を行っている。当初、内胚葉が分泌し、内臓中胚葉の発生に作用する因子としてアンジオテンシン転換酵素Anceに着目して研究を行っていた。Ance突然変異胚では内臓中胚葉の分化が全く見られないことを見出したからである。 | KAKENHI-PROJECT-18K06258 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K06258 |
原腸形成期の内胚葉は分泌性因子によって内臓中胚葉を誘引する | 使用した変異系統は、ストックセンターから入手した研究者間で流通している系統であるが、詳細な遺伝学的解析を進める過程で、この系統の表現型は、Anceによるものではなく、別の座位の変異である可能性が高いことに気付き、その後の解析で、内臓中胚葉そのものの初期発生に不可欠なjebと同一である、という予想外の問題が相補性検定の結果明らかとなった。それを受けて、内胚葉で発現する遺伝子のスクリーニングに立ち戻って研究計画を修正したことにより、当初期待したよりも研究の進行がやや遅れた。現時点で研究計画の変更は必要なく、計画に沿って研究を進めていく。具体的には、内胚葉で発現する遺伝子で、内臓中胚葉の発生、および内胚葉そのものの発生に関係する遺伝子のスクリーニングを引き続き行うとともに、内胚葉欠失変異胚における内臓中胚葉発生の詳細な解析を継続して行う方針である。また、内胚葉性の遺伝子をスクリーニングする過程で、内胚葉の後半部でのみ発現する遺伝子が見つかり、この遺伝子が原腸形成や中腸の発生にどのような役割を果たしているか、検討を始めている。当初の研究計画からはやや副産物的な発見と言えるが、内胚葉と中胚葉の相互作用による原腸形成、という観点から同じ学術的意義があると考えており、研究計画に沿った実験と並行して進めていく方針である。実験計画では内胚葉が産生する分泌性因子について、計画段階で期待の持てる候補遺伝子Anceを突き止めており、その分子遺伝学的解析に経費を使う予定であったが、当該遺伝子の突然変異系統として流通している系統が、別の座位に変異を持っていること、および、内臓中胚葉の欠損が、Ance座位ではなく別の座位の変異によることがわかり、実験計画の一部見直しを行ったことによる。繰越し額については、当初の使用計画を踏襲し、核酸用試薬、及び、飼育培地の経費に充てる。 | KAKENHI-PROJECT-18K06258 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K06258 |
副腎アルドステロン合成酵素の発現制御を基盤とした糖尿病性腎症の新規治療法の開発 | 本研究で我々は、ヒト副腎H295R細胞においてD-glucoseによる高血糖刺激が、転写因子Nurr-1を介してアルドステロン合成酵素(CYP11B2)遺伝子のプロモーター活性・mRNA発現を増強し、その結果としてアルドステロン分泌を亢進させることを初めて明らかにした。本研究結果から、糖尿病患者における高血糖状態が、アルドステロンの分泌増加を介して高血圧・動脈硬化や糖尿病性腎症の進展に関与している可能性が強く示唆された。1)高血糖刺激によるCYP11B2発現・アルドステロン分泌亢進メカニズムの解明:i)DNAマイクロアレイ:我々は、高血糖刺激+/-後のヒト副腎H295R細胞からRNAを抽出した後に、DNAマイクロアレイを施行した。その結果、アルドステロン合成酵素CYP11B2の発現亢進が確認されたことに加え、カルシウムシグナル伝達に関与する多くの遺伝子の変動が認められた。ii)定量PCR:高血糖刺激+/-後のヒト副腎H295R細胞から抽出したRNAを用いて定量PCRを行ったところ、CYP11B2の発現亢進の他、T型カルシウムチャネルや転写因子Nurr1やNGFIBの発現亢進が認められた。iii)細胞内Ca2+測定:高血糖刺激下のH295R細胞にアンジオテンシンIIや塩化カリウムを投与したところ、非刺激下の場合に比して細胞内Ca2+の上昇が認められた。iv)阻害剤実験:Ca2+/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼ(CaMK)阻害薬であるKN-93の添加により、高血糖誘導性のCYP11B2発現亢進の抑制が認められた。また、カルシウムチャネルブロッカー(特にL/T型)によっても高血糖誘導性のCYP11B2発現亢進の抑制が認められた。2)iNOS TGマウス・iNOS/RAGEダブルTGマウス腎病変とcyp11b2発現・アルドステロン分泌の連関の検討:我々は、生後8週間の野生型マウス、iNOS TGマウス、iNOS/RAGEダブルTGマウスから腎臓を摘出した後にRNAを抽出し、現在cyp11b2の定量PCRを施行中である。尿中アルドステロン測定に関しては、ELISA前に尿中アルドステロンを抽出する必要があり、現在、その条件検討が終了したところである。また、同RNAを用いて、DNAマイクロアレイも施行し、現在得られた結果の解析中である。1)高血糖刺激によるCYP11B2発現・アルドステロン分泌亢進メカニズムの解明:CYP11B2プロモーター領域のdeletion mutants/pointmutantを用いた検討から、副腎H295R細胞における高血糖刺激によるCYP11B2発現誘導が、同領域内-766/-759のNBRE-1を介して招来されることが明らかとなった。各種転写因子の発現変動を検討したところ、NBRE-1に結合する転写因子であるNURR1のmRNA発現が、高血糖刺激により著明に誘導されることが示された。NURR1のsiRNAをH295R細胞に添加したところ、高血糖刺激によるCYP11B2発現誘導が有意に抑制されることが認められた。以上の結果から、高血糖刺激により発現が誘導されたNURR1がNBRE-1を介してCYP11B2の発現を誘導することが明らかとなった。2)iNOS TGマウス・iNOS/RAGEダブルTGマウス腎病変とcyp11b2発現・アルドステロン分泌の連関の検討:我々は、野生型マウス、iNOS TGマウス、ならびにiNOS/RAGEダブルTGマウスのそれぞれに、離乳後から高タンパク・高カロリー食を投与し、定期的に尿中アルブミン・血糖値を測定した後に16週齢でsacrificeを行った。その際にDynabeads®を灌流することにより腎臓から糸球体を単離し、RNAの抽出を行った。それらのRNAを用いてDNAマイクロアレイを施行し、パスウェイ解析を行った。3)高血糖刺激によるCYP11B2発現亢進を抑制する新規薬剤のスクリーニング:昨年度に作成したCYP11B2プロモーター安定発現株(Mol Cell Endocrinol. 2014; 383: 60-68)を用いて、アンジオテンシンIIおよび塩化カリウム刺激を指標としたハイスループットスクリーニング(HTS)系を確立した。糖尿病患者は高頻度に高血圧を合併しているが、高血圧と高血糖の間の連関は未だ不明の点が多い。本連関を解明する一環として、我々は高血糖刺激がアルドステロン合成酵素遺伝子(CYP11B2)発現に及ぼす影響を検討した。興味深いことに、高血糖刺激(D-glucose)が刺激時間・濃度依存的にヒト副腎H295R細胞においてCYP11B2プロモーター活性・mRNA発現を増強することが見出された。CYP11B2プロモーターdeletion mutantsを用いた解析から、本作用はCYP11B2プロモーター上のNBRE-1領域を介する可能性が示唆された。このNBRE-1に結合する転写因子であるNurr-1とNGFIBも、D-glucose刺激によりmRNA量の増加を示した。更に、D-glucose刺激によるアルドステロン分泌量の増加や細胞内Ca濃度の増加も認められた。 | KAKENHI-PROJECT-25461381 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25461381 |
副腎アルドステロン合成酵素の発現制御を基盤とした糖尿病性腎症の新規治療法の開発 | D-glucoseによるCYP11B2増強作用はARBやPKC-β阻害薬(LY333531)の添加によって抑制されなかった一方で、CaMK阻害薬(KN93)により抑制された。また、Ca拮抗薬はいずれも同作用を抑制したが、T/L型Ca拮抗薬(塩酸ベニジピン)の作用が最も強力であった。さらにD-glucoseによるT型CaチャネルmRNA量の発現増加も認められた。以上の結果から、高濃度D-glucose刺激はT型Caチャネルの発現増加を介してCaMKの活性化、Nurr-1・NGFIBの発現増強、ならびにNBRE-1領域の転写活性亢進を介して、CYP11B2発現を誘導すると考えられた。本作用はアルドステロンの分泌増加を介して高血圧・動脈硬化の進展に関与する可能性が示唆された。本研究で我々は、ヒト副腎H295R細胞においてD-glucoseによる高血糖刺激が、転写因子Nurr-1を介してアルドステロン合成酵素(CYP11B2)遺伝子のプロモーター活性・mRNA発現を増強し、その結果としてアルドステロン分泌を亢進させることを初めて明らかにした。本研究結果から、糖尿病患者における高血糖状態が、アルドステロンの分泌増加を介して高血圧・動脈硬化や糖尿病性腎症の進展に関与している可能性が強く示唆された。研究実績の概要で示した様に、まず「1)高血糖刺激によるCYP11B2発現・アルドステロン分泌亢進メカニズムの解明」に関しては、当初の予定より更に詳細な検討を行うことが可能となり、高血糖刺激によるCYP11B2発現亢進におけるNURR1の関与を明らかにすることが出来た。「2)iNOS TGマウス・iNOS/RAGEダブルTGマウス腎病変とcyp11b2発現・アルドステロン分泌の連関の検討」に関しては、当初の予定には記載されていなかったDNAマイクロアレイ・パスウェイ解析を、これらマウスの単離糸球体から抽出したRNAを用いて施行することが技術的に可能となり、今後、各ステージの糖尿病性腎症における特異的な遺伝子発現変動が明らかとなることが期待される。「3)高血糖刺激によるCYP11B2発現亢進を抑制する新規薬剤のスクリーニング」に関しては、CYP11B2プロモーター安定発現株を用いたHTS系が確立し、東京大学創薬オープンイノベーションセンターからご譲渡頂いた化合物ライブラリーを用いてのスクリーニングが順調に進んでいる。以上の結果から、本プロジェクトはおおむね順調に進んでいると判断した。内分泌・代謝学平成27年度は、これまでの年度に引き続いて、iNOS TGマウス・iNOS/RAGEダブルTGマウスを用いた糖尿病性腎症の病態解明を進めるとともに、CYP11B2プロモーター安定発現株を用いたHTS系にて化合物ライブラリーのスクリーニングを進め、得られたヒット化合物の合成展開を行う。さらに、それら新規薬剤のiNOS TGマウス・iNOS/RAGEダブルTGマウスへの早期の投与実験を目指す。研究実績の概要で示した様に、1)高血糖刺激によるCYP11B2発現・アルドステロン分泌亢進メカニズムの解明の、i)DNAマイクロアレイ、ii)定量PCR、iii)細胞内Ca2+測定、iv)阻害剤実験に関しては、予定していた研究を全て遂行する事が出来た。2)iNOS TGマウス・iNOS/RAGEダブルTGマウス腎病変とcyp | KAKENHI-PROJECT-25461381 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25461381 |
結晶性高分子による自己組織化ダイナミクス | 本研究では、典型的なソフトマテリアルである結晶性高分子の高次構造に見られる自己組織化ダイナミクスを明らかにすることを目的とした。高分子の結晶化では単純液体では出現し得ない非常に複雑で多彩な高次構造が自己組織化される。その典型的な例として、融液からの高分子球晶の成長において、数μm数+μm程度の幅を持つ同心円状の周期構造(いわゆる標的パターンと類似のもの)が自発的に出現することが知られている。本研究では、まず電子顕微鏡による観察と電子線回折により、周期構造の原因となるラメラ状微結晶間のねじれについて明らかにすることを目的とした。具体的には、分子構造にカイラリティーのないポリフッ化ビニリデン(PVDF)において、どのようにしてラメラ状微結晶間のねじれが生じるのかを、単結晶の3次元的形態の電子顕微鏡による観察で明らかにした。実験は、非晶性高分子であるポリエチルアクリレートとのブレンド物からの結晶化を行い、電子顕微鏡による明視野、暗視野、電子線回折像を観察した。電子顕微鏡内で傾斜された単結晶からの暗視野、電子線回折像から、PVDF単結晶における分子鎖の傾斜が確認され、この分野で論争になっていた傾斜の有無について最終結論を得た。また、同心円状のパターンが見られる結晶化条件では、単結晶の3次元形態が椅子型になることが初めて見いだされた。電子顕微鏡法によって得られるこれらの知見に加え、原子間力顕微鏡による球晶表面の観察を行った結果、以下のことが明らかになった。まず、球晶表面でのラメラ状微結晶のねじれが実際に確認された。さらに、捻れ方に関して、球晶の中心から成長する上記の椅子型結晶で期待される捻れ方の整合構造が確認された。以上の結果を総合し、分子構造にカイラリティーのないポリフッ化ビニリデンのバンド球晶では椅子型結晶における歪みが周期的パターンの構成要素を作り出す要因であることが明らかになり、この分野における長年の課題であった周期構造の由来を明らかにすることができた。高分子の結晶化では単純液体では出現し得ない非常に複雑で多彩な高次構造が自己組織化される。その典型的な例として、融液からの高分子球晶の成長において、数μm数十μm程度の幅を持つ同心円状の周期構造(いわゆる標的パターンと類似のもの)が自発的に出現することが知られている。本年度の研究では、光学顕微鏡・電子顕微鏡による観察と電子線回折により、周期構造の原因となるラメラ状微結晶間のねじれについて明らかにすることを目的とした。具体的には、分子構造にカイラリティーのないポリフッ化ビニリデン(PVDF)において、どのようにしてラメラ状微結晶間のねじれが生じるのかを、単結晶の3次元的形態の電子顕微鏡による観察で明らかにした。実験は、非晶性高分子であるポリエチルアクリレートとのブレンド物からの結晶化を行い、電子顕微鏡による明視野、暗視野、電子線回折像を観察した。電子顕微鏡内で傾斜された単結晶からの暗視野、電子線回折像から、PVDF単結晶における分子鎖の傾斜が確認され、この分野で論争になっていた傾斜の有無について最終結論を得た。また、同心円状のパターンが見られる結晶化条件では、単結晶の3次元形態が椅子型になることが初めて見いだされ、椅子型結晶における歪みが周期的パターンの構成要素を作り出す要因であることを明らかにできた。これらの知見を元にして、ソフトマテリアルの特徴であるflexibilityが顕著に現れていると考えられる結晶内部における応力場の影響により、巨視的な同心円状のパターンの生々機構を明らかにするという立場で来年度の研究を進めていく。本研究では、典型的なソフトマテリアルである結晶性高分子の高次構造に見られる自己組織化ダイナミクスを明らかにすることを目的とした。高分子の結晶化では単純液体では出現し得ない非常に複雑で多彩な高次構造が自己組織化される。その典型的な例として、融液からの高分子球晶の成長において、数μm数+μm程度の幅を持つ同心円状の周期構造(いわゆる標的パターンと類似のもの)が自発的に出現することが知られている。本研究では、まず電子顕微鏡による観察と電子線回折により、周期構造の原因となるラメラ状微結晶間のねじれについて明らかにすることを目的とした。具体的には、分子構造にカイラリティーのないポリフッ化ビニリデン(PVDF)において、どのようにしてラメラ状微結晶間のねじれが生じるのかを、単結晶の3次元的形態の電子顕微鏡による観察で明らかにした。実験は、非晶性高分子であるポリエチルアクリレートとのブレンド物からの結晶化を行い、電子顕微鏡による明視野、暗視野、電子線回折像を観察した。電子顕微鏡内で傾斜された単結晶からの暗視野、電子線回折像から、PVDF単結晶における分子鎖の傾斜が確認され、この分野で論争になっていた傾斜の有無について最終結論を得た。また、同心円状のパターンが見られる結晶化条件では、単結晶の3次元形態が椅子型になることが初めて見いだされた。電子顕微鏡法によって得られるこれらの知見に加え、原子間力顕微鏡による球晶表面の観察を行った結果、以下のことが明らかになった。まず、球晶表面でのラメラ状微結晶のねじれが実際に確認された。さらに、捻れ方に関して、球晶の中心から成長する上記の椅子型結晶で期待される捻れ方の整合構造が確認された。 | KAKENHI-PROJECT-11640378 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11640378 |
結晶性高分子による自己組織化ダイナミクス | 以上の結果を総合し、分子構造にカイラリティーのないポリフッ化ビニリデンのバンド球晶では椅子型結晶における歪みが周期的パターンの構成要素を作り出す要因であることが明らかになり、この分野における長年の課題であった周期構造の由来を明らかにすることができた。本研究では、典型的なソフトマテリアルである結晶性高分子の高次構造に見られる自己組織化ダイナミクスを明らかにすることを目的とした。高分子の結晶化では単純液体では出現し得ない非常に複雑で多彩な高次構造が自己組織化される。その典型的な例として、融液からの高分子球晶の成長において、数μm数十μm程度の幅を持つ同心円状の周期構造(いわゆる標的パターンと類似のもの)が自発的に出現することが知られている。本研究では、まず電子顕微鏡による観察と電子線回折により、周期構造の原因となるラメラ状微結晶間のねじれについて明らかにすることを目的とした。具体的には、分子構造にカイラリティーのないポリフッ化ビニリデン(PVDF)において、どのようにしてラメラ状微結晶間のねじれが生じるのかを、単結晶の3次元的形態の電子顕微鏡による観察で明らかにした。実験は、非晶性高分子であるポリエチルアクリレートとのブレンド物からの結晶化を行い、電子顕微鏡による明視野、暗視野、電子線回折像を観察した。電子顕微鏡内で傾斜された単結晶からの暗視野、電子線回折像から、PVDF単結晶における分子鎖の傾斜が確認され、この分野で論争になっていた傾斜の有無について最終結論を得た。また、同心円状のパターンが見られる結晶化条件では、単結晶の3次元形態が椅子型になることが初めて見いだされた。電子顕微鏡法によって得られるこれらの知見に加え、原子間力顕微鏡による球晶表面の観察を行った結果、以下のことが明らかになった。まず、球晶表面でのラメラ状微結晶のねじれが実際に確認された。さらに、捻れ方に関して、球晶の中心から成長する上記の椅子型結晶で期待される捻れ方の整合構造が確認された。以上の結果を総合し、分子構造にカイラリティーのないポリフッ化ビニリデンのバンド球晶では椅子型結晶における歪みが周期的パターンの構成要素を作り出す要因であることが明らかになり、この分野における長年の課題であった周期構造の由来を明らかにすることができた。 | KAKENHI-PROJECT-11640378 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11640378 |
ADF/human Thiredoxinの犬肺移植における再灌流障害抑制効果 | 肺移植後のgraft failure,肺水腫は再灌流時に発生する活性酸素が主な原因と原因と考えられている。この様な再灌流障害を抑制することは移植医療における少ないドナー臓器のvibilityを保つうえで非常に重要である。ADF(Adult T-Cell Leukemia derived Factor)は生体内における酸化還元反応を調節するhuman thiredoxinであることが明らかにされた。本研究では犬左肺移植モデルを用いて、温阻血後の再灌流障害に対するADF,既知noスカンベンジャーであるn-acetylcyteine(NAC)の効果について検討した。19頭の雑種成犬に対し100分の温阻血後、左肺同種移植を行った。再灌流後130分間移植肺の機能を測定した。ADF群(n=6)では30mg/kgのADFが再灌流中に経静脈的に投与された。NAC群(n=5)では150mg/kgのNACが同様に投与された。コントロール群(n=8)ではPBSのみが投与された。ADF,NAC群ではコントロール群と比較して有意に良好な酸素化能を示した。組織学的にも、ADF,NAC群の肺は正常構造を保っていたが、コントロール群では著名な肺水腫の所見が見られた。また、Ex-vivoラット肺灌流モルにおけるADFの効果を検討した。90分、37°Cの虚血においたラット肺をKrebs-Heneleit液で灌流し、肺の機能を評価した。ADFとL-cysteinを併用した場合、肺の虚血再灌流障害は有意に軽減されたが、ADF,L-cystein単独の投与ではその効果は認められなかった。これらの実験から、肺の虚血再灌流障害に対しADFの効果が期待された。ADFそのものに重篤な副作用がないことより、臨床肺移植においても、再灌流障害予防のために使用できる可能性がある。肺移植における術後肺水腫は再灌流時に発生する活性酸素がその主な原因と考えられている。このような再灌流障害を抑制することは移植治療における少ないドナー臓器のvibilityを保つ上で非常に重要である。ADF(adult T-cell leukemia derived factor)は生体内の酸化還元反応を調節するhuman thioredoxinであることが明らかにされた。我々はすでにラットの虚血再灌流モデルにおいてこのADFがラジカルスカベンジャー効果を持つことを明らかにしている。本研究の目的は、雑種成犬を用いた同種左肺移植モデルにおいて、このADFの虚血再灌流障害抑制効果を検討することである。我々はすでに雑種成犬を用いた自家左肺移植において温阻血の許容時間は120分間であることを確認している。雑種成犬に左肺移植を行なうモデルで温阻血後の再灌流障害に対するADFの効果を検討した。100分の温阻血の後に左肺移植を行ない、ADF(30mg/kg)を再灌流直前から30分かけて投与した。移植後10,40,70,130分後の移植肺の酸素可能はコントロール群では125±30、125±21、145±22、96±10mmHg(Fi02=0.5)と低下したが、ADF群では256±29、263±36、261±35、260±33mmHgと保たれており、ADFの効果が明らかになった。ADFの肺移植後再灌流障害に対する効果は明らかになり、平成6年度の目標はおおかた達成された。以後は予定通り、長期保存後の再灌流障害に対するADFの効果を検討する予定である。肺移植後のgraft failure,肺水腫は再灌流時に発生する活性酸素が主な原因と原因と考えられている。この様な再灌流障害を抑制することは移植医療における少ないドナー臓器のvibilityを保つうえで非常に重要である。ADF(Adult T-Cell Leukemia derived Factor)は生体内における酸化還元反応を調節するhuman thiredoxinであることが明らかにされた。本研究では犬左肺移植モデルを用いて、温阻血後の再灌流障害に対するADF,既知noスカンベンジャーであるn-acetylcyteine(NAC)の効果について検討した。19頭の雑種成犬に対し100分の温阻血後、左肺同種移植を行った。再灌流後130分間移植肺の機能を測定した。ADF群(n=6)では30mg/kgのADFが再灌流中に経静脈的に投与された。NAC群(n=5)では150mg/kgのNACが同様に投与された。コントロール群(n=8)ではPBSのみが投与された。ADF,NAC群ではコントロール群と比較して有意に良好な酸素化能を示した。組織学的にも、ADF,NAC群の肺は正常構造を保っていたが、コントロール群では著名な肺水腫の所見が見られた。また、Ex-vivoラット肺灌流モルにおけるADFの効果を検討した。90分、37°Cの虚血においたラット肺をKrebs-Heneleit液で灌流し、肺の機能を評価した。ADFとL-cysteinを併用した場合、肺の虚血再灌流障害は有意に軽減されたが、ADF,L-cystein単独の投与ではその効果は認められなかった。これらの実験から、肺の虚血再灌流障害に対しADFの効果が期待された。 | KAKENHI-PROJECT-06671340 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06671340 |
ADF/human Thiredoxinの犬肺移植における再灌流障害抑制効果 | ADFそのものに重篤な副作用がないことより、臨床肺移植においても、再灌流障害予防のために使用できる可能性がある。肺移植後のgraft failure,肺水腫は再潅流時に発生する活性酸素が主な原因と原因と考えられている。この様な再潅流障害を抑制することは移植医療における少ないドナー臓器のvibilityを保つうえで非常に重要である。ADF(Adult T-cell Leukemia derived Factor)は生体内における酸化還元反応を調節するhuman thioredoxinであることが明らかにされた。本研究では犬左肺移植モデルを用いて、温阻血後の再潅流障害に対するADF、既知のスカベンジャーであるN-acetylcyteine(NAC)の効果について検討した。19頭の雑種成犬に対し100分の温阻血後、左肺同種移植を行った。再潅流後130分間移植肺の機能を測定した。ADF群(n=6)では30mg/kgのADFが再潅流中に経静脈的に投与された。NAC群(n=5)では150mg/kgのNACが同様に投与された。コントロール群(n=8)ではPBSのみが投与された。ADF,NAC群ではコントロール群と比較して有意に良好な酸素化能を示した。組織学的にも、ADF,NAC群の肺は正常構造を保っていたが、コントロール群では著明な肺水腫の所見が見られた。また、Ex-vivoラット肺潅流モデルにおけるADFの効果を検討した。90分、37°Cの虚血においたラット肺をKrebs-Heneleit液で潅流し、肺の機能を評価した。ADFとL-cysteinを併用した場合、肺の虚血再潅流障害は有意に軽減されたが、ADF,L-cystein単独の投与ではその効果は認められなかった。これらの実験から、肺の虚血再潅流障害に対しADFの効果が期待された。ADFそのものに重篤な副作用がないことより、臨床肺移植においても、再潅流障害予防のために使用できる可能性がある。 | KAKENHI-PROJECT-06671340 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06671340 |
光環境に応答する抗菌性バイオアクティブTi金属の創製 | NaOH-NH4OH-加熱処理チタンはSBF中でその表面にアパタイトを形成したが、NaOH-HNO3-加熱処理チタンはアパタイトを形成しなかった。NaOH-NH4OH-加熱処理チタン表面に形成されたアナターゼ型TiO2にはごく少量のNが含まれ、NaOH-NH4OH-加熱処理チタンは、可視光下において、未処理チタンあるいはNaOH-HNO3-加熱処理チタンよりもやや多量のメチレンブルーを分解した。以上より、チタンをNaOH処理後、NH4OHで処理し、さらに加熱処理すれば、同金属に生体活性と可視光下での光触媒活性を付与させ得ることが分かった。人工関節置換術や脊椎固定術における術後感染は、最悪の場合インプラントの再置換が必要になり、患者の大きな負担となる。そこで、インプラント表面に抗菌性を付与し、感染症を予防すること目的とした研究が広く行われている。我々は体内蓄積の不安がない光触媒系の物質に注目した。光触媒系の物質の中でも、窒素ドープ型酸化チタンが可視光に応答して抗菌性を示すことが既にわかっているため、人工関節などに多く用いられているチタン金属表面に窒素ドープ型酸化チタンを導入することを試みた。また、その金属のアパタイト形成能を評価した。10×10×1 mm3のチタン金属を#400のダイヤモンドシートで研磨した後、アセトンおよび超純水で10分間超音波洗浄した。これを5M NaOH水溶液5 mlに60°Cで24時間浸漬した後、0.11.0M硝酸あるいは尿素7 mlに40°Cで24時間浸漬した。その後試料を600°Cで1時間加熱した。チタン金属にNaOH処理を施すと表面にチタン酸ナトリウムが形成した。この試料に硝酸(0.11.0M)処理および加熱処理を施すと、試料表面にルチル型酸化チタンが形成した。また、0.1Mで硝酸処理を施した試料のみアナターゼ型酸化チタンも形成した。また、硝酸処理によって窒素原子がわずかに導入されていた。SBF中でのアパタイト形成能評価を行った結果、0.1Mで硝酸処理を行った試料のみアパタイトが形成した。また、同試料は、可視光下において少量のメチレンブルー(MB)を分解した。一方、チタン金属にNaOH、尿素(0.11.0M)および加熱処理を施すと、尿素の濃度にかかわらず全ての試料表面にルチル型およびアナターゼ型酸化チタンが形成したが、可視光照射によるMB分解反応は確認できなかった。以上より、NaOH処理後に硝酸処理を施すことでチタン表面に窒素原子が導入された酸化チタン層を形成させることができ、同処理チタンは可視光下での光触媒特性を示すことがわかった。NaOH-NH4OH-加熱処理チタンはSBF中でその表面にアパタイトを形成したが、NaOH-HNO3-加熱処理チタンはアパタイトを形成しなかった。NaOH-NH4OH-加熱処理チタン表面に形成されたアナターゼ型TiO2にはごく少量のNが含まれ、NaOH-NH4OH-加熱処理チタンは、可視光下において、未処理チタンあるいはNaOH-HNO3-加熱処理チタンよりもやや多量のメチレンブルーを分解した。以上より、チタンをNaOH処理後、NH4OHで処理し、さらに加熱処理すれば、同金属に生体活性と可視光下での光触媒活性を付与させ得ることが分かった。本研究では、チタン(Ti)金属をNaOH処理後、アンモニア水(NH4OH)あるいは硝酸(HNO3)処理し、さらに加熱処理することにより、同金属表面に窒素ドープTiO2層を形成させることを試み、得られた試料の表面構造、擬似体液(SBF)中でのアパタイト形成能および可視光下での光触媒特性(メチレンブルー(MB)分解特性)を調べた。これら処理を施した試料をSBFに浸漬したところ、NaOH-NH4OH-加熱処理試料はアパタイトを形成したが、NaOH-HNO3-加熱処理試料はアパタイトを形成しなかった。NaOH-HNO3-加熱処理試料がアパタイトを形成しなかったのは、NaOH処理によって形成された表面層が高濃度のHNO3処理によって溶解したためと考えられる。また、NaOH-NH4OH-加熱処理試料は、未処理あるいはNaOH-加熱処理試料に比べ、やや多量のMBを分解した。以上より、Ti金属をNaOH処理後、NH4OHで処理し、さらに加熱処理すれば、同金属にアパタイト形成能と可視光下での光触媒活性を付与させ得ることが明らかとなった。平成24年度の研究により、Ti金属をNaOH処理後、NH4OHで処理し、さらに加熱処理すれば、同金属にアパタイト形成能と可視光下での光触媒活性を付与させ得ることが明らかとなった。また、この成果を学会にて発表し、特許を出願した。さらに、NaOH-H2SO4-加熱処理Ti金属に関しても、基礎的な知見が得られた。従って、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。今後、NaOH-NH4OH-加熱処理Ti金属については、その最適条件を明らかにし、NaOH-H2SO4-加熱処理したTi金属については、そのアパタイト形成能および可視光下でのメチレンブルー分解特性を調べる。また、良好なメチレンブルー分解特性を示したTi金属について、抗菌性試験および細胞適合性評価を行う。次年度の研究費は、主にTi基板、薬品類、実験器具類として使用する。これは、Ti基板の最適な処理条件を追究し、抗菌性試験および細胞適合性試験を円滑に遂行するために必要である。 | KAKENHI-PROJECT-24650271 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24650271 |
光環境に応答する抗菌性バイオアクティブTi金属の創製 | また、実験補助員の人件費としても使用する。さらに、本研究の成果を国内外の学会にて発表するための旅費や、論文の英文校正費としても使用する。 | KAKENHI-PROJECT-24650271 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24650271 |
菊池病(組織球性壊死性リンパ節炎)の病因、増殖細胞の特異性と進展機構の解明 | 400例を越える症例についての臨床像については、これまでに得られている成績と同様に若年成人女性の頚部に主に見られ、白血球減少を伴い、一部に皮疹を認めるという臨床像は同様であった.組織学的には、芽球化細胞が増加し、壊死の傾向に乏しい基本的な組織像を示す症例が増加している.病変部に多数みられるアポトーシスを示す細胞は主に増殖しているCD8陽性細胞であり、アポトーシスの形式はgranzime B,perforinが関与する系とfas,fas ligandが関与する2つの系ともに見られることが明らかとなった.このことは本疾患の発生機転にウイルスの関与を示唆する成績であった.ヒトヘルペスウイルス6型については、特にこれまでの成績と差異は見られないが、同ウイルス急性感染で皮疹とリンパ節腫大を示した若年成人の症例のリンパ節病変は、傍皮質拡大を示し、免疫芽球反応を示すウイルス感染像を示したが、本疾患と同様な病変を認め得なかった.最近幾つかの報告のみられるパルボウイルスB19との関連に関しては、本疾患症例のリンパ節では、免疫反応陽性細胞の存在を認めるが、陽性反応を示す細胞は病変部よりむしろ非病変部に多く、さらに本疾患以外のリンパ節にも同様な反応を示す細胞を多く認め、その出現率に差異を認めないことから、非特異的な不顕性感染と考えられ、本疾患との関連は明らかでなかった.HLAとの関係については80例のリンパ節より抽出したDNAについて検索中である.A11ならびにDR12が高率に見られ、A24の頻度が低いとの成績はあるがDRB,DQA,DBならびにDR-DQ,DQA-DQBの連鎖平衡に関しての検討では日本人の平均的頻度分布との間に有意差は見られなかった.DQA-1-0103,0302,DQB1-0601は比較的高率に、そしてDQA-1-DQB1の連鎖平衡では0103-0601が高率に見られた.検索症例はすでに400例を越えたが、その臨床像については、これまでに得られている成績との違いはなかった.ただ最近の症例では男性の比率が増加している.組織学的には、芽球化細胞が増加し、壊死の傾向に乏しい基本的な組織像を示す症例の比率が増加し、広範な壊死を示す症例や、泡沫細胞の多い症例は減少している.また病変部に多数みられるアポトーシスを示す細胞は主に増殖しているCD8陽性細胞であることを明らかにし得た.ヒトヘルペスウイルス6型については、特にこれまでの成績と差異は見られないが、同ウイルス急性感染で皮疹とリンパ節腫大を示した若年成人の症例のリンパ節病変は、傍皮質拡大を示し、免疫芽球反応を示すウイルス感染像を示したが、本疾患と同様な病変を認め得なかった.最近幾つかの報告のみられるパルボウイルスB19との関連に関しては、本疾患症例のリンパ節では、免疫反応陽性細胞の存在を認めるが、陽性反応を示す細胞は病変部よりむしろ非病変部に多く、さらに本疾患以外のリンパ節にも同様な反応を示す細胞を多く認めその出現率に差異を認めないことから、非特異的な不顕性感染と考えられ、本疾患との関連は明らかでなかった.SLEとの関連に関しても従来注目されているが、自験例では好中球反応に差異が見られること、SLEの診断基準に一致する症例では壊死が強いことから多くの症例で組織学的に鑑別可能であった.ただその発生機転に何らかの類似性を有する可能性は否定できず、この点については検討の必要がある.HLAとの関係については80例のリンパ節より抽出したDNAについて検索中であるが、A11ならびにDR12が高率に見られ、A24の頻度が低いとの成績はあるが他の抗原に関しても検討中であるがまだ明らかな成績は得られていない.400例を越える症例についての臨床像については、これまでに得られている成績と同様に若年成人女性の頚部に主に見られ、白血球減少を伴い、一部に皮疹を認めるという臨床像は同様であった.組織学的には、芽球化細胞が増加し、壊死の傾向に乏しい基本的な組織像を示す症例が増加している.病変部に多数みられるアポトーシスを示す細胞は主に増殖しているCD8陽性細胞であり、アポトーシスの形式はgranzime B,perforinが関与する系とfas,fas ligandが関与する2つの系ともに見られることが明らかとなった.このことは本疾患の発生機転にウイルスの関与を示唆する成績であった.ヒトヘルペスウイルス6型については、特にこれまでの成績と差異は見られないが、同ウイルス急性感染で皮疹とリンパ節腫大を示した若年成人の症例のリンパ節病変は、傍皮質拡大を示し、免疫芽球反応を示すウイルス感染像を示したが、本疾患と同様な病変を認め得なかった.最近幾つかの報告のみられるパルボウイルスB19との関連に関しては、本疾患症例のリンパ節では、免疫反応陽性細胞の存在を認めるが、陽性反応を示す細胞は病変部よりむしろ非病変部に多く、さらに本疾患以外のリンパ節にも同様な反応を示す細胞を多く認め、その出現率に差異を認めないことから、非特異的な不顕性感染と考えられ、本疾患との関連は明らかでなかった.HLAとの関係については80例のリンパ節より抽出したDNAについて検索中である. | KAKENHI-PROJECT-07457053 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07457053 |
菊池病(組織球性壊死性リンパ節炎)の病因、増殖細胞の特異性と進展機構の解明 | A11ならびにDR12が高率に見られ、A24の頻度が低いとの成績はあるがDRB,DQA,DBならびにDR-DQ,DQA-DQBの連鎖平衡に関しての検討では日本人の平均的頻度分布との間に有意差は見られなかった.DQA-1-0103,0302,DQB1-0601は比較的高率に、そしてDQA-1-DQB1の連鎖平衡では0103-0601が高率に見られた.400例を越える症例についての臨床像については、これまでに得られている成績と同様に若年成人女性の頚部に主に見られ、白血球減少を伴い、一部に皮疹を認めるという臨床像は同様であった.組織学的には、芽球化細胞が増加し、壊死の傾向に乏しい基本的な組織像を示す症例が増加している.病変部に多数みられるアポトーシスを示す細胞は主に増殖しているCD8陽性細胞であり、アポトーシスの形式はgranzime B,perforinが関与する系とfas,fas ligandが関与する2つの系ともに見られることが明らかとなった.このことは本疾患に見られるアポトーシスの発生機転は単一の経路でないことを示すものであり、このことはさらにアポトーシスにウイルスの関与を否定できない成績であった.ヒトヘルペスウイルス6型については、特にこれまでの成績と差異は見られないが、同ウイルス急性感染で皮疹とリンパ節腫大を示した若年成人の症例のリンパ節病変は、傍皮質拡大を示し、免疫芽球反応を示すウイルス感染像を示したが、本疾患と同様な病変を認め得なかった.HLAとの関係については80例のリンパ節より抽出したDNAについて検索した.A11ならびにDR12が高率に見られ、A24の頻度が低いとの従来の成績の確認がなされたが、DRB,DQA,DBならびにDR-DQ,DQA-DQBの連鎖平衡に関しての検討では日本人の平均的頻度分布との間に有意差は見られなかった.またDQA-1-0103,0302,DQB1-0601は比較的高率に、そしてDQA-1-DQB1の連鎖平衡では0103-0601が高率に見られた.今後はさらにAについても連鎖平衡の解析を行うとともに、本疾患の発生が希である白人に於けるHLAとの差異についての解析を行い、本疾患と関連の深いHLA型の存在ならびにその意義について明らかにする予定である. | KAKENHI-PROJECT-07457053 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07457053 |
液胞へのたんぱく質輪送経路の分子メカニズムの解明〜SNARE分子を中心にして〜 | シロイヌナズナゲノム中に存在する全SNARE分子の細胞内局在の決定シロイヌナズナゲノムデータベースよりSNARE分子をコードする遺伝子を54種類同定した。これらを配列の類似性を元にして5種類(Qa,Qb,Qc,R,SNAP)に分類し、それぞれの遺伝子が実際発現しているかを、RT-PCR法を用いて確認した。その結果、R-SNAREの一種であるYKT61を除く、全てのSNAREをコードする遺伝子が何らかの組織で発現していた。これらのSNAREの細胞内での局在を調べるために、mRNAより逆転写酵素によってcDNA合成し、それらを鋳型としてPCR法によりDNAを合成した後、GFP融合タンパク質を発現するためのベクターp35S-GFP/pUCβにGFPの読み枠とイン・フレームになるように結合した。このようにして作成した融合タンパク質発現用ベクターをシロイヌナズナの培養細胞に一過的に発現させ、共焦点レーザー顕微鏡によって、細胞内局在の観察を行った。その結果、小胞体に存在するSNAREが6種類、ゴルジ体に局在するSNAREが9種類、トランスゴルジ網に局在するSNAREが8種類、エンドソームには2種類、細胞膜には20種類、液胞膜には9種類のSNAREが、それぞれ存在することが明らかとなった。この研究により、細胞内小器官全てのSNARE分子の同定に成功した。細胞内小器官の中で、特に細胞膜には多くのSNAREが存在するととが明らかとなったが、これは細胞膜への極性輸送、細胞周期的な発現の違いなどを考えると、それぞれの条件、あるいは輸送経路に特有のSNARE分子があることが予想され、非常に興味深い結果である。今後、これら細胞膜上のSNAREを発現する遺伝子組み換えシロイヌナズナを用いて、極性輸送と,SNAREの関係について調べていく予定である。高等植物細胞は、高度に発達した細胞内小器官(オルガネラ)を持ち、それらのオルガネラにタンパク質を輸送するための複雑な細胞内小胞輸送システムを持つ。一方、輸送小胞が標的オルガネラが融合するためには、それぞれの輸送経路に特異的なSNARE分子が必要であることが判っているが、高等植物のモデルであるシロイヌナズナのゲノム中には全部で54種類のSNARE分子をコードする遺伝子が存在するが、それらの局在の大部分は不明である。私は、これらSNARE分子の局在を調べる目的で、それぞれのSNAREタンパク質とGFPとの融合タンパク質を発現するプラスミドを構築し、それらをシロイヌナズナ培養細胞に導入後、共焦点レーザー顕微鏡により観察することにより、各SNARE分子の細胞内局在を決定した。それと同時に、他の生物種のSNARE分子との系統解析を行うことにより、細胞内局在とSNARE分子の進化の関係についても解析を行った。その結果、Qa,Qb,Qcに属するSNARE分子はそれぞれ他の生物種との間に配列の類似性と細胞内局在の相関が認められたが、R/VAMPファミリーに属するSNAREは、配列の類似性と細胞内局在の明確な相関は認められなかった。Qa,Qb,Qc-SNAREはオルガネラに局在するSNARE,R/VAMPは輸送小胞に存在するSNAREであることを考えると、真核生物では、それぞれの門が分化する前にオルガネラの進化が完了し、種分化が起こった後に、細胞内輸送経路がそれぞれの種において進化したことを示唆している。シロイヌナズナゲノム中に存在する全SNARE分子の細胞内局在の決定シロイヌナズナゲノムデータベースよりSNARE分子をコードする遺伝子を54種類同定した。これらを配列の類似性を元にして5種類(Qa,Qb,Qc,R,SNAP)に分類し、それぞれの遺伝子が実際発現しているかを、RT-PCR法を用いて確認した。その結果、R-SNAREの一種であるYKT61を除く、全てのSNAREをコードする遺伝子が何らかの組織で発現していた。これらのSNAREの細胞内での局在を調べるために、mRNAより逆転写酵素によってcDNA合成し、それらを鋳型としてPCR法によりDNAを合成した後、GFP融合タンパク質を発現するためのベクターp35S-GFP/pUCβにGFPの読み枠とイン・フレームになるように結合した。このようにして作成した融合タンパク質発現用ベクターをシロイヌナズナの培養細胞に一過的に発現させ、共焦点レーザー顕微鏡によって、細胞内局在の観察を行った。その結果、小胞体に存在するSNAREが6種類、ゴルジ体に局在するSNAREが9種類、トランスゴルジ網に局在するSNAREが8種類、エンドソームには2種類、細胞膜には20種類、液胞膜には9種類のSNAREが、それぞれ存在することが明らかとなった。この研究により、細胞内小器官全てのSNARE分子の同定に成功した。細胞内小器官の中で、特に細胞膜には多くのSNAREが存在するととが明らかとなったが、これは細胞膜への極性輸送、細胞周期的な発現の違いなどを考えると、それぞれの条件、あるいは輸送経路に特有のSNARE分子があることが予想され、非常に興味深い結果である。今後、これら細胞膜上のSNAREを発現する遺伝子組み換えシロイヌナズナを用いて、極性輸送と,SNAREの関係について調べていく予定である。 | KAKENHI-PROJECT-14740439 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14740439 |
Bリンパ球の増殖分化と細胞内シグナル伝達の分子論的解析 | TRF/IL-5(以下IL-5と略す)はBリンパ球増殖分化因子として単離されたが、骨髄細胞に作用し好酸球を成熟させたり未熱Tリンパ球CTLへの分化を促進するコファクタ-としても作用する。本研究により、IL-5がIgA産生の増強することを明らかにした。抗原感作マウスの脾臓よりB細胞を調製し抗原とIL-5を添加しIgA産生を調べたところ、IL-5は表面IgA陽性B細胞に抗原と共に作用し、抗原に特異的なIgA産生を誘導することがわかった。他のサイトカインにこのような作用はなかった。精製B多細胞をリポ多糖体で刺激する系においてはIL-5のみならず、TGF-βもIgA産生を促進し、IL-5とTGF-βは相加的にIgA産生を増強した。この場合TGF-βは表面IgA陰性に作用しIgA産生を増強し、IL-5はこの過程にも相加的に作用した。このようにIL-5はTGF-βとは異なる機構によりIgA産生を増強させることが判明した。次にIL-5レセプタ-(IL-5)の物性を調べた。IL-5応答性株化B細胞(T88-M)は2種類のIL-5Rを発現していた。この細胞の膜画分でラットを免役しその脾細胞とマウス骨髄腫細胞を細胞融合し、抗IL-5R抗体(H7、T21)を作製した。H7抗体は分子量約60kdの蛋白を認識し、その蛋白はIL-5結合性を有することが明らかとなった。H7はIL-5の生物活性を完全に阻害する。H7を用いた膜蛍光抗体法により正常細胞亜集団を検索したところ、Ly-1陽性の膜腔内B細胞がH7陽性であり、IL-5に応答しIgM産生細胞に分化することが明らかとなった。このような特異性を示す抗体の作製は世界で初めてであり、現在この抗体を用いてIL-5R遺伝子のクロ-ニングをしている。2年間に目的の研究課題を順調に達成した。TRF/IL-5(以下IL-5と略す)はBリンパ球増殖分化因子として単離されたが、骨髄細胞に作用し好酸球を成熟させたり未熱Tリンパ球CTLへの分化を促進するコファクタ-としても作用する。本研究により、IL-5がIgA産生の増強することを明らかにした。抗原感作マウスの脾臓よりB細胞を調製し抗原とIL-5を添加しIgA産生を調べたところ、IL-5は表面IgA陽性B細胞に抗原と共に作用し、抗原に特異的なIgA産生を誘導することがわかった。他のサイトカインにこのような作用はなかった。精製B多細胞をリポ多糖体で刺激する系においてはIL-5のみならず、TGF-βもIgA産生を促進し、IL-5とTGF-βは相加的にIgA産生を増強した。この場合TGF-βは表面IgA陰性に作用しIgA産生を増強し、IL-5はこの過程にも相加的に作用した。このようにIL-5はTGF-βとは異なる機構によりIgA産生を増強させることが判明した。次にIL-5レセプタ-(IL-5)の物性を調べた。IL-5応答性株化B細胞(T88-M)は2種類のIL-5Rを発現していた。この細胞の膜画分でラットを免役しその脾細胞とマウス骨髄腫細胞を細胞融合し、抗IL-5R抗体(H7、T21)を作製した。H7抗体は分子量約60kdの蛋白を認識し、その蛋白はIL-5結合性を有することが明らかとなった。H7はIL-5の生物活性を完全に阻害する。H7を用いた膜蛍光抗体法により正常細胞亜集団を検索したところ、Ly-1陽性の膜腔内B細胞がH7陽性であり、IL-5に応答しIgM産生細胞に分化することが明らかとなった。このような特異性を示す抗体の作製は世界で初めてであり、現在この抗体を用いてIL-5R遺伝子のクロ-ニングをしている。2年間に目的の研究課題を順調に達成した。TRF/IL-5(以下IL-5と略す)はBリンパに球増殖分化因子として単離された。しかしながらIL-5はBリンパ球のみならず未熟Tリンパ球や骨髄の好酸球前駆細胞に作用しそれらの増殖、分化を促進することも判明した。本研究においては、Bリンパ球の増殖分化に関し、IL-5とそのレセプター系を中心に解折した。IL-5遺伝)を導入した細胞を培養し、その上清よりIL-5抗体カラムおよびHPLCシステムを用いIL-5を精製し実験に供した。本年度は(i)Tリンパ球-Bリンパ球の直接接触型抗体産生系においてもIL-5が重要な役割を果していることをIgA産生を中心に明らかにした。(ii)骨髄細胞を試験管内で培養する系にIL-5を添加し、骨髄細胞からのBリンパ球、好酸球、マクロファージなどへの増殖分化に対しIL-5に感受性のstageがあること、IL-5に依存性に増殖する初期株化B細胞の樹立をした。(iii)放射標識精製IL-5を用い、IL-5応答性細胞の膜表面上にはIL-5を特異的に反応するレセプターが存在すること、IL-5のレセプターへの結合は37°C | KAKENHI-PROJECT-63480171 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63480171 |
Bリンパ球の増殖分化と細胞内シグナル伝達の分子論的解析 | 10分間で飽和に達し、細胞内へのレセプターのとり込みはあまりないこと、高親和性及び低親和性の二種類のIL-5レセプターが存在しIL-5シグナルは高親和性レセプターを介し伝達されること、IL-5と結合性を示す蛋白質(分子量約46,00050,000)が架橋剤を用いた実験により確認できた。(iv)IL-5によるBリンパ球の増殖はインターフェロン-γや形質変換細胞増殖因子(TGF-β)による阻害を選択的にうけ、Ig産生細胞への分化は免疫抑制剤であるサイクロスポリンAによる選択的阻害をうけることを明らかにした。IL-5レセプターの単離に関しては準備が整ったのみである。今後は抗IL-5レセプター抗体の作製およびCONA単離が必須であり、その方向に研究を進めている。TRF/ILー5(以下ILー5と略す)はBリンパ球増殖分化因子として単離されたが、骨髄細胞に作用し好酸球を成熟させたり未熟Tリンパ球のCTLへの分化を促進するコファクタ-としても作用する。本年度はILー5によるIgA産生の増強、ILー5レセプタ-の物性を明らかにすることを主眼に研究した。抗原感作マウスの脾臓よりB細胞を調製し抗原とILー5を添加しIgA産生を調べた。ILー5は表面IgA陽性B細胞に抗原と共に作用し、抗原に特異的なIgA産生を誘導すること、他のサイトカインにこのような作用のないことを示した。一方精製B細胞をリポ多糖体で刺激する系においてはILー5のみならず、TGFーβもIgA産生を促進し、ILー5とTGFーβは相加的にIgA産生を増強することを明らかにした。この場合TGFーβは表面IgA陰性B細胞に作用することから、TGFーβはILー5とは異なる機構によりIgA産生を増強させることが判明した。ILー5レセプタ-の物性を調べるべく、ILー5応答性株化B細胞(T88ーM)の膜画分をラットに免疫し、その脾細胞とマウス骨髄腫細胞を用いて細胞融合し、抗ILー5レセプタ-抗体(H7、T21)を作製した。H7抗体は分子量約60kdの蛋白を認識し、その蛋白はILー5結合性を有することが明らかとなった。H7はILー5の生物活性を完全に阻害する。H7を用いて膜螢光抗体法により正常細胞亜集を検索したところ、Lyー1陽性の膜腔内B細胞がH7陽性であり、ILー5に応答しIgM産生細胞に分化することが明らかとなった。このような特異性を示す抗体の作製は世界で初めてであり、現在この抗体を用いてILー5レセプタ-遺伝子のクロ-ニングをしている。 | KAKENHI-PROJECT-63480171 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63480171 |
朝鮮三韓時代の墳墓と中国漢墓との比較研究 | 1.三韓時代の墳墓と密接な関係のある楽浪郡の墳墓について、詳細なデータベースを作成した。データベースは総数540基の古墳について、外表施設の形態、埋葬主体部の形態、副葬遺物の配置・種類・量、銘文資料などの文字データと画像データを入力し作成した。また、東洋文庫所蔵梅原考古資料を用いて、発掘調査報告書が刊行されていない未報告資料もデータに含めることができた。2. 1のデータベースを時期別・地域別に類型化し、分析した結果、楽浪郡の漢式遺物は紀元前1世紀後半に平壌地域を中心に増加し、紀元後1世紀にピークに達するが、2世紀になると減少し、3世紀になると再び増加するという変化が認められ、漢の郡県である楽浪郡においても漢式遺物の導入には変異のあることを明らかにした。また、埋葬方式についても漢とは異なる独自性が見られ、とくに夫婦合葬の形態を分析することによって、楽浪郡の家族制にアプローチできる見通しを得ることができた。3.三韓時代の墳墓における漢式要素導入のプロセスを検討した結果、やはり紀元前1世紀代と紀元後3世紀代にピークがみられ、2の分析結果と一致することが明らかになった。このうち、とくに3世紀代は三韓時代から三国時代へと移行する画期に該当し、中国系要素の導入は朝鮮半島南部地域における国家形成と密接な関係があったことを明らかにした。4.上記の内容のうち、2と3の成果についてはすでにその一部を国際シンポジウムや雑誌論文で発表しており、1の成果についても今後、公表していきたいと考えている。1.中国系要素をもつ朝鮮三韓時代の墳墓について、埋葬主体部の形態、出土遺物の概要、およびそれらの画像データを含めた詳細なデータベースを作成した。2.1のデータベースを時期別・地域別に類型化し、分析した結果、三韓の上位階層が当時の先進文化である中国の漢文化を積極的に導入し、それらを様々な形に変容させながら活用していたという状況を明らかにすることができた。また、この変容過程が朝鮮の国家形成に大きく影響していたという見通しを得ることができた。3.このような朝鮮半島における漢文化導入の窓口的役割を果たしていた楽浪郡の古墳についても、現在、同様なデータベースを作成中である。4.3のデータベースを作成する過程で、楽浪古墳の埋葬プロセスについて、その特異性を抽出できた。とくに、楽浪の3世紀代の横口式木槨墓である南井里116号墳の場合は、初葬時に内槨なしで埋葬を行っていたものが、第2次埋葬の際に新たに内槨が設置されるとともに、墳丘が築造され、さらに第3次埋葬の際にはその内槨と外槨の一部を改造して埋葬を行っていたという新事実を明らかにできた。このような埋葬主体部の改造行為は中国の漢墓にはみられないことから、漢の郡県でありながらも、漢文化とは異なる楽浪郡文化の独自性を示す重要な要素であると考えられる。今後は関連資料との比較を通して、このような埋葬行為が生じた背景について検討を進めていく予定である。5.2と4の内容については、先行研究を整理した上で、早い時期に論文として発表する予定である。1.三韓時代の墳墓と密接な関係のある楽浪郡の墳墓について、詳細なデータベースを作成した。データベースは総数540基の古墳について、外表施設の形態、埋葬主体部の形態、副葬遺物の配置・種類・量、銘文資料などの文字データと画像データを入力し作成した。また、東洋文庫所蔵梅原考古資料を用いて、発掘調査報告書が刊行されていない未報告資料もデータに含めることができた。2. 1のデータベースを時期別・地域別に類型化し、分析した結果、楽浪郡の漢式遺物は紀元前1世紀後半に平壌地域を中心に増加し、紀元後1世紀にピークに達するが、2世紀になると減少し、3世紀になると再び増加するという変化が認められ、漢の郡県である楽浪郡においても漢式遺物の導入には変異のあることを明らかにした。また、埋葬方式についても漢とは異なる独自性が見られ、とくに夫婦合葬の形態を分析することによって、楽浪郡の家族制にアプローチできる見通しを得ることができた。3.三韓時代の墳墓における漢式要素導入のプロセスを検討した結果、やはり紀元前1世紀代と紀元後3世紀代にピークがみられ、2の分析結果と一致することが明らかになった。このうち、とくに3世紀代は三韓時代から三国時代へと移行する画期に該当し、中国系要素の導入は朝鮮半島南部地域における国家形成と密接な関係があったことを明らかにした。4.上記の内容のうち、2と3の成果についてはすでにその一部を国際シンポジウムや雑誌論文で発表しており、1の成果についても今後、公表していきたいと考えている。 | KAKENHI-PROJECT-09710277 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09710277 |
転写因子の遺伝子欠質マウスを利用した神経分化機構の解析 | 哺乳動物の神経分化機構を転写因子のレベルで明らかにするために、中枢神経発生の良いモデルである網膜に注目し、HLH型因子HES1やMash1のノックアウトマウスを解析した。HES1は、網膜では神経前駆細胞に発現しているが、分化したニューロンには発現していない。レトロウイルスによりHES1を持続発現させると前駆細胞からニューロンへの分化が抑制される。すなわち、HES1は神経分化抑制因子として機能する。HES1ノックアウトマウスの眼を調べたところ、小眼症やレンズの欠損などがみられた。網膜ではニューロンへの分化が正常よりも早く進行しており、層構造が乱れ、異常なロゼット構造を形成していた。したがって、HES1は分化のタイミングを決定して眼の形態形成を制御することが明らかとなった。このとき、HES1欠損で網膜におけるMash1の発現が増加していたことから、Mash1の活性増強によって神経分化が正常よりも早く進行したのではないかと考えられた。HES1ノックアウトマウスの解析結果から網膜ニューロンの分化にMash1の関与が示唆されたので、Mash1のノックアウトマウスの網膜をしらべた、その結果、Mash1欠損で神経分化が遅れたり、ニューロンの減少がみられた。したがって、Mash1は網膜での神経分化を促進することが示された。また、HES1はMash1の発現を抑制することによって神経分化を一定の速度に制御していると考えられた。以上の結果から、神経分化を誘導あるいは抑制するHLH型因子があり、これらの因子がバランス良く機能することによって神経系の形態形成が進められると結論づけられた。哺乳動物の神経分化機構を転写因子のレベルで明らかにするために、中枢神経発生の良いモデルである網膜に注目し、HLH型因子HES1やMash1のノックアウトマウスを解析した。HES1は、網膜では神経前駆細胞に発現しているが、分化したニューロンには発現していない。レトロウイルスによりHES1を持続発現させると前駆細胞からニューロンへの分化が抑制される。すなわち、HES1は神経分化抑制因子として機能する。HES1ノックアウトマウスの眼を調べたところ、小眼症やレンズの欠損などがみられた。網膜ではニューロンへの分化が正常よりも早く進行しており、層構造が乱れ、異常なロゼット構造を形成していた。したがって、HES1は分化のタイミングを決定して眼の形態形成を制御することが明らかとなった。このとき、HES1欠損で網膜におけるMash1の発現が増加していたことから、Mash1の活性増強によって神経分化が正常よりも早く進行したのではないかと考えられた。HES1ノックアウトマウスの解析結果から網膜ニューロンの分化にMash1の関与が示唆されたので、Mash1のノックアウトマウスの網膜をしらべた、その結果、Mash1欠損で神経分化が遅れたり、ニューロンの減少がみられた。したがって、Mash1は網膜での神経分化を促進することが示された。また、HES1はMash1の発現を抑制することによって神経分化を一定の速度に制御していると考えられた。以上の結果から、神経分化を誘導あるいは抑制するHLH型因子があり、これらの因子がバランス良く機能することによって神経系の形態形成が進められると結論づけられた。 | KAKENHI-PROJECT-08254206 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08254206 |
鉄系超伝導体におけるc軸電荷ダイナミクスの研究 | 多岐に渡る結晶構造を持つ鉄系超伝導体の統一的理解に迫るべく、122系のBa(Fe,Co)2As2と42622系のSr4V2O6Fe2As2を対象に、三次元的な電子状態を調べることを目指して研究を行った。Ba(Fe,Co)2As2は、作製した大型単結晶育成を用いてc軸光学スペクトル測定行い、過剰ドープ領域のc軸方向にのみ現れる半導体的な振る舞いが電荷ギャップによるものではないことを明らかにした。また、Sr4V2O6Fe2As2については、1mmに迫る大きさの単結晶育成に初めて成功し、物性が酸素欠損に対して敏感に変化することを突き止めた。本研究の目的は、鉄系超伝導体の大型単結晶育成技術を開発し、鉄砒素面に垂直なc軸方向の光学スペクトルを測定することである。これにより、これまで集中的に調べられてきた面内のスペクトルと合わせることにより、鉄系超伝導体の電荷ダイナミクスを総合的に理解するが可能となる。本研究では、Ba(Fe,Co)2As2とSr4V2O6Fe2As2の二つの系を対象としており、当該年度は試料作製と測定系の整備を行った。1.試料作製(1)Ba(Fe,Co)2As2は大型単結晶を育成することができた。この結晶はc軸方向に十分な厚みを有しており、c軸光学スペクトルの測定が可能な大きさである。(2)Sr4V2O6Fe2As2はドーピング手法の開発と単結晶育成技術の開発を並行して進めてきた。ドーピング手法の開発に関しては、まずは多結晶体を用いてVサイトの元素置換効果を調べた。TiやCr置換を試したところ、置換はうまくいくもののホール係数に変化が見られなかった。この結果は、フェルミ面の形成にVの寄与はほとんどないこと、そして、V 3d軌道とFe 3d軌道の混成は弱いことを示唆しており、Vサイトの元素置換では鉄砒素面のキャリア制御は難しいことが分かった。単結晶育成に関しては、光学スペクトルが測定可能な大きさの単結晶試料は得られていないため、引き続き育成条件の最適化を行う。2.測定システムc軸の光学スペクトル測定を行うにあたっては、小さい試料に対しても精度良く測定できるシステムが必要となる。当該年度は顕微分光システムの整備を進め、特に中赤外領域以降に対して精度の良い測定を行うことが可能となった。本研究の目的は、鉄系超伝導体の大型単結晶育成技術を開発し、鉄砒素面に垂直なc軸方向の光学スペクトル測定からc軸電荷ダイナミクスを明らかにすることである。本研究では、Ba(Fe,Co)2As2とSr4V2O6Fe2As2の二つの系を対象としている。それぞれの系における本年度の成果は、以下のとおりである。1.Ba(Fe,Co)2As2 c軸光学スペクトル測定に耐え得る大型単結晶をフラックス法を用いて育成し、測定を行った。作製した試料のCo濃度は15%であり、c軸電気抵抗率に半導体的な振る舞いが観測されていることから、c軸方向に電荷ギャップが開いている可能性が指摘されていた組成である。光学測定の結果、光学スペクトルの温度変化は滑らかであり、電荷ギャップの兆候は観測されなかった。c軸輸送現象の温度依存性を理解するには、ホール係数測定等、より多角的な研究を行う必要がある。2.Sr4V2O6Fe2As2様々な育成条件を試し、フラックス法による単結晶育成に成功した。しかしながら、得られた単結晶試料は光学測定を行うには小さいため、引き続き育成条件の最適化を進めていく必要がある。多結晶試料による先行研究では、この物質は化学量論組成で30Kを超える超伝導転移温度(Tc)を示すとされていたが、作製した単結晶試料のTcは20K以下であり、さらに、大気中で扱っているうちに超伝導が消えてしまうことが判明した。現在のところ、作製直後には存在していた酸素欠損が時間とともに埋まっていくことが、超伝導消失の有力な原因と考えている。このことは、従来の考えとは異なり、この物質が化学量論組成では非超伝導体である可能性を示唆している。酸素欠損量を制御し、欠損量に対する物性の変化を明らかにすることが今後の課題である。多岐に渡る結晶構造を持つ鉄系超伝導体の統一的理解に迫るべく、122系のBa(Fe,Co)2As2と42622系のSr4V2O6Fe2As2を対象に、三次元的な電子状態を調べることを目指して研究を行った。Ba(Fe,Co)2As2は、作製した大型単結晶育成を用いてc軸光学スペクトル測定行い、過剰ドープ領域のc軸方向にのみ現れる半導体的な振る舞いが電荷ギャップによるものではないことを明らかにした。また、Sr4V2O6Fe2As2については、1mmに迫る大きさの単結晶育成に初めて成功し、物性が酸素欠損に対して敏感に変化することを突き止めた。当該年度で得られたBa(Fe,Co)2As2はc軸方向に十分な厚みを有しており、c軸光学スペクトル測定が可能である。Sr4V2O6Fe2As2は単結晶育成は次年度の課題であるものの、元素置換には成功しており、今後さらに別のサイトの置換を試みることで鉄砒素面のキャリアを制御できる可能性がある。測定系に関しても、顕微分光システムの整備により、小さい試料であっても精度の良い光学スペクトル測定が可能となっており、実際の測定を行うための土台はできあがっている。以上のことから、当初の目的は十分に達成していると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-26800187 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26800187 |
鉄系超伝導体におけるc軸電荷ダイナミクスの研究 | 高温超伝導Ba(Fe,Co)2As2は単結晶育成に成功しているため、実際にc軸光学スペクトルの測定を行う。Sr4V2O6Fe2As2は引き続きドーピング手法の開発と単結晶育成技術の開発を進めていく。Vサイトへの元素置換では鉄砒素面のキャリア制御が難しいことが明らかになったため、OサイトやSrサイトへの元素置換を試みる。単結晶育成については、出発原料やフラックスの選択に改善の余地があるため、引き続き最適条件を探していく。 | KAKENHI-PROJECT-26800187 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26800187 |
光機能化二酸化チタンとオゾン水の併用による安全で効果的な漂白方法の開発 | 本研究では、「二酸化チタンにあらかじめ紫外線を照射したあと、オゾン水と混和することで従来よりも光触媒反応が進行し、漂白効果が増強されるかどうか」という仮説のもとに検討を行った。着色濾紙とウシエナメル質を用いて漂白前後の色彩変化の測定を行い、比較検討を行った結果、あらかじめ二酸化チタンに短時間紫外線を照射すると、二酸化チタンと純水の混和物よりも二酸化チタンとオゾン水の混和物のほうが、漂白効果が増強されることが示唆された。本研究は、二酸化チタンに複合波長の紫外線を照射してから、有機物質を酸化分解することが可能であるとされているオゾン水と反応させた場合、過酸化水素水を用いた従来の漂白法と同程度の漂白効果と安全性を得られるという仮説のもとに研究を企画し、基礎的研究を行うものである。初年度は、0.1 g濃度のヘマトポルフィリンエタノール水溶液を作成してろ紙に染みこませ、乾燥させたものを変色モデルとし、測色による漂白効果の評価を行った。アナターゼ型二酸化チタン粉末(ST-01,石原産業)を1 g採取し、漂白前処理としてトランスイルミネーター(UV Hand Lamps, USA)を用い365 nm光源を照射した。照射時間は(5, 10, 15, 20)分とした。前処理後オゾン水と混和し、トランスイルミネーターを用いて365 nm光源、またはG-LightPrimaIIPlusを用いて400±10 nm光源で、光照射を2分間行った。また、前処理としての紫外線照射を行わないものを対照群とした。さらに、前処理後に水と混和したもので、同様の実験を行い、比較検討を行うこととした。漂白前後の色調の測定は、分光色差計(NF-333,日本電飾工業)を用いてL*a*b*値を求め、色差ΔE*abを算出し、色の変化および漂白効果を判定した。前処理後にオゾン水と混和した場合、色差ΔE*ab値は前処理時間が5・10分間と長くなるにつれ、対照群と比較して増加する傾向が認められた。15分間以上になると減少する傾向が認められた。前処理後に水と混和した場合、色差ΔE*ab値は前処理時間が5・10・15分間と長くなるにつれ、対照群と比較して増加する傾向が認められた。20分間以上になると減少する傾向が認められた。また、光照射器の比較検討では、365 nm光源を照射したほうが両者において色差ΔE*ab値が高い傾向が認められた。漂白効果の評価として、ヒト抜去歯の着色モデルを用いて評価を行う予定であったが、研究期間中に測色可能な大きさの抜去歯を一定量集めることが困難であり、漂白効果を測定することができなかった。また、ヘマトポルフィリン紙を用いた変色モデルに関する研究結果の数値にはバラツキが認められた。研究期間中の室内の温度変化や、期間中に研究室の工事が行われ、光源の変更も含めた環境の変化も若干関与していると思われる。本研究は、二酸化チタンに複合波長の紫外線を照射してから、有機物を酸化分解することが可能であるとされているオゾン水と反応させた場合、過酸化水素水を用いた従来の漂白法と同程度の漂白効果と安全性を得られるという仮説のもとに研究を企画し、基礎的研究を行うものである。本年度は、まずヒト抜去歯を用いて測色による漂白効果の評価を行った。アナターゼ型二酸化チタン粉末(ST-01,石原産業)を1 g採取し、漂白前処理としてトランスイルミネーター(UV Hand Lamps, USA)を用い365 nm光源を照射した。照射時間は(5, 10, 15, 20)分とした。前処理後オゾン水と混和し、トランスイルミネーターを用いて365 nm光源を2分間照射した。また、前処理としての紫外線照射を行わないものを対照群とした。さらに、前処理後に水と混和したもので、同様の実験を行い、比較検討を行うこととした。漂白前後の色調の測定は、分光色差計(NF-333,日本電飾工業)を用いてL*a*b*値を求め。色差ΔE*abを算出し、色の変化および漂白効果を判定した。前処理後にオゾン水と混和した場合、色差ΔE*ab値は前処理時間が長くなるにつれて対照群と比較して増加する傾向が認められた。前処理後に水と混和した場合、色差ΔE*ab値は前処理時間が長くなるにつれ、対象群と比較して増加する傾向が認められた。20分間以上になると漂白効果は減少する傾向が認められた。また、前処理後にオゾン水と混和したものと水を比較検討では、オゾン水と混和した方が色差ΔE*ab値が高い傾向が認められた。また、測色に用いた抜去歯の漂白処理前後のエナメル質表面を走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した結果、いずれにおいても形態変化は認められなかった。漂白効果を比較検討するためにヒト抜去歯を用いて評価を行ったが、結果の数値にバラツキが認められ、実験数をさらに増やす必要があると思われる。また、ヒト抜去歯の着色モデルの製作およびエナメル質表面の抗菌性を確認するには至っていない。 | KAKENHI-PROJECT-15K11123 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K11123 |
光機能化二酸化チタンとオゾン水の併用による安全で効果的な漂白方法の開発 | 本研究は、二酸化チタンに複合波長の紫外線を照射してから、有機物を酸化分解することが可能であるとされているオゾン水と反応させた場合、過酸化水素水を用いた従来法の漂白法と同程度の漂白効果と安全性を得られる仮説のもとに研究を企画し、基礎的研究を行うものである。本年度は、変色モデルを用いて測色による漂白効果の評価を行った。変色モデルの作製にはウシ抜去下顎切歯を使用した。最初に、ウシ下顎切歯の唇側面を耐水研磨紙で研削し、エナメル質を平坦面に調整した。次いで、5×5 mmに切り出した試片のエナメル質面が露出するよう、歯科用常温重合レジンで包埋後、さらにエナメル質面の研磨を行った。研磨後の試料を紅茶の抽出液で10日間染色したものを変色歯モデルとした。漂白効果を確認するため、アナターゼ型二酸化チタン粉末をガラスシャーレに1 g採取し、漂白前処理としてトランスイルミネーターを用いて365 nm光源を照射した。照射時間は(5,10,15,20)分とした。前処理後オゾン水と混和し、変色歯モデルに塗布後、トランスイルミネーターを用いて365 nm光源を2分間照射した。また、前処理としての紫外線照射を行わないものを対照群とした。さらに、前処理後に純水と混和したもので同様の実験を行い、比較検討を行うこととした。漂白前後の色調の測定は、分光色差計(NF-333,日本電飾工業)を用いてL*a*b*値を求め、色差ΔE*abを算出し、色の変化および漂白効果を判定した。前処理後にオゾン水と混和した場合、前処理時間が15分までは色差ΔE*abの増加傾向が認められ、前処理時間が20分間以上になると漂白効果は減少する傾向が認められた。純水と混和した場合と比較すると、オゾン水のほうがやや上回る漂白効果がみられ、前年度における外因性着色モデル(0.1%ヘマトポルフィリンエタノール溶液を濾紙にしみこませたもの)を用いた漂白効果と同様の結果が得られた。本研究では、「二酸化チタンにあらかじめ紫外線を照射したあと、オゾン水と混和することで従来よりも光触媒反応が進行し、漂白効果が増強されるかどうか」という仮説のもとに検討を行った。着色濾紙とウシエナメル質を用いて漂白前後の色彩変化の測定を行い、比較検討を行った結果、あらかじめ二酸化チタンに短時間紫外線を照射すると、二酸化チタンと純水の混和物よりも二酸化チタンとオゾン水の混和物のほうが、漂白効果が増強されることが示唆された。本年度までの実験結果より、前処理として5分から10分間紫外線照射を行った後にオゾン水と混和させると、対照群と比較して漂白効果が得られることが示唆された。さらに、水と混和させた場合と比較すると、漂白効果が得られるのに前処理時間が短縮されることが示唆された。しかし、ヘマトポルフィリン紙を用いた変色モデルに関する研究結果の数値にはバラツキが認められることから、今後全体数を増やし、研究を進める必要があると思われる。また、ヒト抜去歯牙を収集し漂白前後の色調変化を比較検討するとともに、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて漂白前後のエナメル質表面の形態変化を観察する予定である。本年度までの実験結果により、前処理として5分から10分間紫外線照射を行った後にオゾン水と混和させると、対照群と比較して漂白効果が得られることが示唆された。さらに水と混和させた場合と比較すると、漂白効果が得られるのに前処理時間が短縮されることが示唆された。ヘマトポルフィリン紙を用いた変色モデルに関する研究結果と同様の結果が得られたものの、数値としては小さく、漂白効果そのものが得られているかどうか今後検討する必要があると思われる。そのためには抜去歯を用いて着色モデルを製作し、同様の実験を行う必要があると思われる。 | KAKENHI-PROJECT-15K11123 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K11123 |
大気中における水溶性フミン状有機エアロゾルの高速自動測定法の開発 | 粒子液化捕集装置と有機炭素分析装置、樹脂吸着分離法を用いて、フミン状高分子有機成分を中心とする高時間分解能での有機エアロゾル自動分画連続測定システムの開発を行った。自動連続捕集・検出システムによる測定の不確定性を7%以内に抑えることに成功し、検出下限値は0.05μgCm-3を達成した。都市域郊外にて実大気測定を行い、測定システムの精度検証を行った。さらに全水溶性有機エアロゾルに占めるフミン状物質の寄与を定量化し、都市域における二次有機エアロゾル生成機構に関する検討を行った。粒子液化捕集装置と有機炭素分析装置、樹脂吸着分離法を用いて、フミン状高分子有機成分を中心とする高時間分解能での有機エアロゾル自動分画連続測定システムの開発を行った。自動連続捕集・検出システムによる測定の不確定性を7%以内に抑えることに成功し、検出下限値は0.05μgCm-3を達成した。都市域郊外にて実大気測定を行い、測定システムの精度検証を行った。さらに全水溶性有機エアロゾルに占めるフミン状物質の寄与を定量化し、都市域における二次有機エアロゾル生成機構に関する検討を行った。粒子液化捕集装置によるエアロゾルの捕集と濃縮、及びDAX-8カラムを介した検出器への連続抽出に関する基礎実験と最適化を行った。本研究では湿式酸化法による全有機炭素計について3秒の瞬時値を検出するように検出回路の改造を行い、濃度が5ppm以下では時間応答を3秒で検出しても従来(6分)と比較して測定精度に変わりがないことを確認した。この検出器を用いた測定条件下で、室内実験として親水性有機成分、及びフルボ酸などの疎水性有機成分の標準物質水溶液をDAX-8樹脂カラムに通水し、DAX-8樹脂カラムによる透過・吸着効率を詳細に調べた。その結果、本研究の使用条件下では炭素数4以下の低分子カルボン酸、アミン、糖類などの有機成分はほぼ100%の透過効率で検出され(親水性有機成分)、炭素数5以上のカルボン酸、芳香族炭素、フルボ酸、フミン酸などの相対的に高分子成分は透過効率が0%で本装置では疎水性有機成分に分類されることを確認した。またこれらの実験から本研究の対象成分についてDAX-8は従来型のXAD-8とほぼ同等の吸着特性をもつことが確認できた。対流圏大気エアロゾルの大きな発生源であるインドの都市部(ニューデリー)で2006年秋季から採取を開始した大気エアロゾルサンプルの水溶性有機成分について、上記で構築した測定装置を用いた化学分析をオフラインで行った。その結果、この地域での秋/冬季における水溶性有機エアロゾルの大部分(70-80%)は疎水性であること、絶対値は冬季の夜間に高くなることなど、インド都市部での水溶性有機エアロゾルの挙動や質量濃度に占める疎水性成分の重要性を明らかにした。平成19年度に製作したオンライン測定システムを用いて時間分解能、測定感度、実大気の連続測定に対する安定性向上等、測定条件最適化のための実験を行った。捕集溶液のDAX樹脂カラムへの通水は装置通水ラインの自動切替えにより行い、フミン状有機エアロゾルの質量濃度は1分でデータを取得するようシステム設定を行った。特に各部位の送液流量と測定感度との関係を系統的に調べ、サンプル溶存水の体積とDAX樹脂の体積との違いによる樹脂吸着率の変化を調べるなど、本装置による測定条件の最適化を行った。本測定システムを用いて、北海道大学・低温科学研究所構内にて精度評価のための実大気有機エアロゾルの質量濃度測定を試験的に行った。その結果、本測定システムによる測定値の不確定性を7%以内に抑えることに成功し、検出下限値は0.1μgCm^<-3>であった。この測定実験では標準溶液を通水するキャリブレーションを2-3日に1度の頻度で行い、有機成分ごとの透過率の再現性を確認したところ、フミン状有機エアロゾルのカラムへの吸着効率は現状の設定測定時間内(3.5時間)では有意に変化しないことがわかった。本研究で行った有機組成分画・検出部の自動化により、従来法と比べ測定の再現誤差や干渉を低減することができ、測定精度を飛躍的に高めることができた。さらに本測定装置により、これまで明らかになっていないフミン状有機エアロゾルの日変動等の短時間変動を明らかにすることが可能となり、二次有機エアロゾルの生成プロセスの解明につながることが期待される。 | KAKENHI-PROJECT-19710004 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19710004 |
マスフローコントローラを用いた計算機制御による人工心肺管理システムの開発 | 手術の複雑化・長時間化・患者の低年齢化のため、より生理的で、より長時間の体外循環を可能とする人工心肺管理システムの開発を目的として、ガス濃度制御方式が従来の人工肺ガス混合器とは本質的に異なる装置開発に関する研究をおこなった。すなわち、これまでのニードルバルブを用いたロタ・メータのような機械的回転調節機構を有せず、サーマル・マスフロー・コントローラ(TMFC)を使用し、ガス流量を電圧信号で制御する方式である。本法により人工心肺の計算機制御がより容易となる。本研究では次の項目の研究を行った。1.動物実験用人工肺ガス供給量に適した高速マスフローコントローラ(エステック:SEC-4500)を設備備品費の一部で購入し、現有のTMFCと組み合わせてガス生成部を製作した。2.ガス流量制御部および循環血流量制御部を製作するため、パーソナルコンピュータ(日本電気:PC-9801VX41/WN)を設備備品費の一部で購入し、制御用プログラムを開発した。3.本年度消耗品費の一部で、小動物用ホローファイバ型人工肺(テルモ:キャピオックスII16)および生食水を購入し、人工心肺実験装置を開発した。4.開発装置を用いて雑種成犬による動物実験を行い、装置の動作を確認した。5.人工心肺の管理はTMFCを用いた計算機制御により容易に行えることを確認した。本研究の成果を用いて、今後は高圧型人工肺ガス交換システムの自動化も行いたい。手術の複雑化・長時間化・患者の低年齢化のため、より生理的で、より長時間の体外循環を可能とする人工心肺管理システムの開発を目的として、ガス濃度制御方式が従来の人工肺ガス混合器とは本質的に異なる装置開発に関する研究をおこなった。すなわち、これまでのニードルバルブを用いたロタ・メータのような機械的回転調節機構を有せず、サーマル・マスフロー・コントローラ(TMFC)を使用し、ガス流量を電圧信号で制御する方式である。本法により人工心肺の計算機制御がより容易となる。本研究では次の項目の研究を行った。1.動物実験用人工肺ガス供給量に適した高速マスフローコントローラ(エステック:SEC-4500)を設備備品費の一部で購入し、現有のTMFCと組み合わせてガス生成部を製作した。2.ガス流量制御部および循環血流量制御部を製作するため、パーソナルコンピュータ(日本電気:PC-9801VX41/WN)を設備備品費の一部で購入し、制御用プログラムを開発した。3.本年度消耗品費の一部で、小動物用ホローファイバ型人工肺(テルモ:キャピオックスII16)および生食水を購入し、人工心肺実験装置を開発した。4.開発装置を用いて雑種成犬による動物実験を行い、装置の動作を確認した。5.人工心肺の管理はTMFCを用いた計算機制御により容易に行えることを確認した。本研究の成果を用いて、今後は高圧型人工肺ガス交換システムの自動化も行いたい。我々は,ガス濃度制御方式が従来の人工肺ガス混合器とは本質的に異なる装置開発に関する基礎研究を行ってきた.すなわち,これまでのニードルバルブを用いたロタ・メータのような機械的回転調節機構を有せず,サーマル,マスフロー・コントローラ(TMFC)を使用し,ガス流量を電圧信号で制御する方式である.本研究の初年度においては,新方式の人工心肺管理システムの具備すべき機能を調べ,それに基づき装置の設計および試作を行うことを目標とした.本年度に行ったおもなことを以下に列記する.1.動物実験用人工心肺ガス供給量に適した高速TMFC(エステック:SEC-4500)を本年度設備備品費の一部で購入し,現有のTMFCと組み合わせてガス生成部を製作した.2.ガス流量制御部および循環血流量制御部を製作するため,パーソナルコンピュータ(日本電気:PC-9801VX41/WN)を本年度設備費品費の一部で購入し,制御用プログラムの開発を始めた.3.本年度消耗品費の一部で,小動物用ホローファイバ型人工肺(テルモ:キャピオックスII16)および生食水を購入し,人工心肺実験装置の開発を始めた.今後の研究の展開として,センサ部を組み込み制御プログラム完成後,装置の動作を確認するため,イヌを用いた動物実験を行う予定である.さらに人工肺に麻酔ガス(笑気)を供給することも考えている.今年度の研究は次の項目に従って行った。1.ガス流量制御用プログラムの2つのモード(固定流量および血液ガスモード)のアルゴリズムを開発した。2.本年度消耗品費の一部で、小動物用ホローファイバ型人工肺(テルモ:キャピオックスII16)を購入し、質量分析計の血液酸素・炭素ガス分圧出力および温度センサ出力を常時モニタする人工心肺管理システムを開発した。3.開発装置を用いて雑種成犬による動物実験を行い、種々の条件のもとでの装置の動作を調べた。4.サーマルマスフローコントローラを用いた計算機制御により、人工心肺の管理が容易に行えることを確認し、本研究の総括を行った。 | KAKENHI-PROJECT-62571010 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62571010 |
ヒト末梢血リンパ球の放射線誘発アポトーシスのメカニズムの解明とその制御 | ヒト末梢血リンパ球は、放射線照射に対して高い感受性を示し、人類はもちろん哺乳類が放射線に弱いことの大きな原因となっている。末梢血リンパ球は、通常は分裂・増殖を行わず、また、未分化でもないことから、その放射線高感受性の原因については、これまで放射線生物学の概念にあてはまらないものとして、その解明が期待されてきた。我々は、末梢血Tリンパ球は、5Gy照射13時間後には初期アポトーシス{Annexin V陽性)となり、24時間後には後期アポトーシス(Propidium Iodide)陽性となることを示してきた。また、ミトコンドリア膜電位変化は、5Gy照射10時間後には約半数のリンパ球で起こり、これに続いてcytochrome cの放出を認めた。今回ミトコンドリア膜電位変化を来す原因を追求するため、酸化的DNA損傷の起こる線量・時期・程度について検討した。方法としては、正常人の末梢血Tリンパ球を分離し、10MVエックス線を0Gy,2Gy,5Gy,20Gy照射した。照射1,3,6,10時間後にDNAの酸化損傷についてBiotrin OxyDNA Assayを用いて8-ヒドロキシ-dGの生成について検討した。結果として、8-ヒドロキシ-dGの生成は、2Gy照射では10時間後、5Gy照射では6時間後、20Gy照射では3時間後に多く認められ、ミトコンドリア膜電位変化に先行して起こることが示され、放射線感受性のメカニズムの解明には、酸化的DNA損傷を惹起する活性酸素の産生およびその消去機構の検討が必要である。ヒト末梢血リンパ球は、放射線照射に対して高い感受性を示し、人類はもちろん哺乳類が放射線に弱いことの大きな原因となっている。末梢血リンパ球は、通常は分裂・増殖を行わず、また、未分化でもないことから、その放射線高感受性の原因については、これまで放射線生物学の概念にあてはまらないものとして、その解明が期待されてきた。我々は、末梢血Tリンパ球は、5Gy照射13時間後には初期アポトーシス{Annexin V陽性)となり、24時間後には後期アポトーシス(Propidium Iodide)陽性となることを示してきた。また、ミトコンドリア膜電位変化は、5Gy照射10時間後には約半数のリンパ球で起こり、これに続いてcytochrome cの放出を認めた。今回ミトコンドリア膜電位変化を来す原因を追求するため、酸化的DNA損傷の起こる線量・時期・程度について検討した。方法としては、正常人の末梢血Tリンパ球を分離し、10MVエックス線を0Gy,2Gy,5Gy,20Gy照射した。照射1,3,6,10時間後にDNAの酸化損傷についてBiotrin OxyDNA Assayを用いて8-ヒドロキシ-dGの生成について検討した。結果として、8-ヒドロキシ-dGの生成は、2Gy照射では10時間後、5Gy照射では6時間後、20Gy照射では3時間後に多く認められ、ミトコンドリア膜電位変化に先行して起こることが示され、放射線感受性のメカニズムの解明には、酸化的DNA損傷を惹起する活性酸素の産生およびその消去機構の検討が必要である。ヒト末梢血リンパ球は、放射線照射に対して高い感受性を示し、人類はもちろんほ乳類が放射線に弱いことの大きな原因となっている。末梢血リンパ球は、通常は分裂・増殖を行わなず、また、未分化でもないことから、その放射線高感受性の原因については、これまでの放射線生物学の概念にあてはまらないものとして、その解明が期待されてきた。今年度の研究では、フローサイトメトリおよび蛍光顕微鏡、顕微鏡ビデオシステムならびに種々のモノクローナル抗体を用いて、ヒト末梢血リンパ球もしくはTリンパ球の、各線量の放射線照射後の形態学的変化アポトーシスについて経時的に観察し、ミトコンドリア膜電位変化、ミトコンドリアからのチトクロームCの放出時期について検討した。その結果、Tリンパ球は、5Gy照射後6時間後ではミトコンドリア膜電位変化を認めなかったが、10時間後には、約半数のTリンパ球は変化を来し、初期アポトーシスを示した。その一方、チトクロームCのミトコンドリアから細胞質への遊離は、5Gy照射10時間ではほとんど認めず、20時間後では細胞質へほぼ移行した。したがって、放射線によるTリンパ球のアポトーシスは、チトクロームCの遊離開始以前から始まっていることが判明し、Tリンパ球の放射線誘発アポトーシスにはチトクロームCApaf-1caspase-9caspase-3を介したメカニズムの他に、新たなアポトーシスメカニズムの存在が示唆された。ヒト末梢血リンパ球は、放射線照射に対して高い感受性を示し、人類はもちろん哺乳類が放射線に弱いことの大きな原因となっている。末梢血リンパ球は、通常は分裂・増殖を行わず、また、未分化でもないことから、その放射線高感受性の原因については、これまで放射線生物学の概念にあてはまらないものとして、その解明が期待されてきた。我々は、末梢血Tリンパ球は、5Gy照射13時間後には初期アポトーシス(Annexin V陽性)となり、24時間後には後期アポトーシス(Propidium Iodide)陽性となることを示してきた。また、ミトコンドリア膜電位変化は、5Gy照射10時間後には約半数のリンパ球で起こり、これに続いてcytochrome cの放出を認めた。今回、ミトコンドリア膜電位変化を来す原因を追求するため、酸化的DNA損傷の起こる線量・時期・程度について検討した。 | KAKENHI-PROJECT-13670948 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13670948 |
ヒト末梢血リンパ球の放射線誘発アポトーシスのメカニズムの解明とその制御 | 方法としては、正常人の末梢血Tリンパ球を分離し、10MVエックス線を0Gy,2Gy,5Gy,20Gy照射した。照射1,3,6,10時間後にDNAの酸化損傷についてBiotrin OxyDNA Assayを用いて8-ヒドロキシ-dGの生成について検討した。結果として、8-ヒドロキシ-dGの生成は、2Gy照射では10時間後、5Gy照射では6時間後、20Gy照射では3時間後に多く認められ、ミトコンドリア膜電位変化に先行して起こることが示され、放射線感受性のメカニズムの解明には、酸化的DNA損傷を惹起する活性酸素の産生およびその消去機構の検討が必要である。 | KAKENHI-PROJECT-13670948 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13670948 |
腎虚血再灌流後における好中球の機能についての基礎的、臨床的研究 | 虚血再灌流障害において好中球から放出される特殊顆粒であるcathepsin Gの役割、また阻血時間と好中球機能の関係について、基礎的動物実験と腎移植臨床における臨床研究を行うこと。虚血再灌流障害において好中球から放出される特殊顆粒であるcathepsin Gの役割、また阻血時間と好中球機能の関係について、基礎的動物実験と腎移植臨床における臨床研究を行うこと。Cathepsin G阻害剤の虚血再灌流障害に対する効果につてマウス使用モデルで検討した。B6wild-typeマウスに両側腎血管をクランプしての45分32°Cの温阻血により虚血再灌流障害を与えるモデルを使用した。以下の2群に分け、基礎的研究を遂行した。1.阻害剤投与群:cathepsin G阻害剤20μgを虚血前と再灌流直前に尾静脈から静脈内に投与。2.対照群:viecleとして生理食塩水を同スケジュールで投与。上記2つの実験に対して、まず虚血再灌流障害後のマウスの生存率を比較、灌流前、再灌流24時間後にマウスから、採血と腎臓を採取する。各時間ポイントの血清クレアチニン値、BUN値を測定し、また腎の組織学的検討を行った。対照群では40%のマウスが4日目までに死亡したが、阻害剤投与群では全例が生存していた。24時間後の血清クレアチニン値は対照群では3.03mg/dLに上昇したが、阻害剤投与群では2.11mg/dLと上昇は抑制された。組織学的には対照群では急性尿細管壊死像が皮髄境界を中心に高度にみられ、尿細管周囲の好中球浸潤が認められた。一方で、阻害剤投与群では急性尿細管壊死像の軽減が認められ、尿細管周囲への浸潤好中球数の減少が認められた。Cathepsin G阻害剤投与により好中球機能が抑制され腎虚血再灌流障害が軽減できることが予想され、今後、臓器移植や血管遮断を要する手術における虚血再灌流障害を軽減するためのストラテジーの1つへ発展することが期待される。Cathepsin G阻害剤の虚血再灌流障害に対する効果につてマウス使用モデルで検討した。B6 wild-typeマウスに両側腎血管をクランプしての45分32°Cの温阻血により虚血再灌流障害を与えるモデルを使用した。以下の2群に分け、基礎的研究を遂行した。1.阻害剤投与群: cathepsin G阻害剤20μgを虚血前と再灌流直前に尾静脈から静脈内に投与。2.対照群: viecleとして生理食塩水を同スケジュールで投与。対照群では40%のマウスが4日目までに死亡したが、阻害剤投与群では全例が生存していた。24時間後の血清クレアチニン値は対照群では3.03mg/dLに上昇したが、阻害剤投与群では2.11mg/dLと上昇は抑制された。対照群では急性尿細管壊死像が高度にみられ、好中球浸潤が認めたが、阻害剤投与群では急性尿細管壊死像は軽減、尿細管周囲への浸潤好中球数は減少した。Cathepsin G阻害剤投与により好中球機能が抑制され腎虚血再灌流障害が軽減できることが予想された。移植後の血液サンプルを用いて特殊顆粒蛋白濃度(cathepsin G, neutrophil elastase、NGAL :などの特殊顆粒)をELISA法で測定した。移植腎機能の発現遅延が見られた症例で移植12時間後の血中のcathepsin G, neutrophil elastase濃度が高値であった。今後、臓器移植や血管遮断を要する手術における虚血再灌流障害を軽減するためのストラテジー開発へ発展することが期待される。 | KAKENHI-PROJECT-19890007 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19890007 |
ABC星型モデルグラフト共重合体の精密合成とハニカム超構造の構築 | まったく新しい多相系高分子素構造であるABC星型モデルグラフト共重合体を精密合成し、3成分鎖1点拘束の原理と異種分子間斥力相互作用を利用してハニカム超構造を構築することを目的に研究を進めた。主な研究成果は次の通りである。1.研究代表者らが独自に開発した、自己重合性のないジフェニルエチレン型二重結合を有するマクロモノマーAと、リビングポリマーBとの反応により結合点反応性ジブロック共重合体を得、官能基変換後、リビングポリマーCをカップリングさせる合成法を考案した。本合成法は様々なモノマー種の組合せに適用可能である。2.A、B、C成分にそれぞれポリスチレン、ポリイソプレン、およびポリ(2-ビニルピリジン)を選択し、本合成法を適用することにより、目的とするABC星型モデルグラフト共重合体が得られることを明らかにした。3.2で得られた試料膜のモルフォロジーを透過型電子顕微鏡により観察した結果、3つの異なるドメインからなる3相交互棒状構造の存在が認められた。これはハニカム超構造の形成を示すものと考えられる。これらの成果をもとに、今後さまざまな組成比のABC星型グラフト共重合体を調製し、そのモルフォロジーを精密に観察することにより、ハニカム超構造形成条件が明らかになるとともに、非対称組成での強制相溶超構造など新しい高分子系超構造構築が可能になると期待できる。まったく新しい多相系高分子素構造であるABC星型モデルグラフト共重合体を精密合成し、3成分鎖1点拘束の原理と異種分子間斥力相互作用を利用してハニカム超構造を構築することを目的に研究を進めた。主な研究成果は次の通りである。1.研究代表者らが独自に開発した、自己重合性のないジフェニルエチレン型二重結合を有するマクロモノマーAと、リビングポリマーBとの反応により結合点反応性ジブロック共重合体を得、官能基変換後、リビングポリマーCをカップリングさせる合成法を考案した。本合成法は様々なモノマー種の組合せに適用可能である。2.A、B、C成分にそれぞれポリスチレン、ポリイソプレン、およびポリ(2-ビニルピリジン)を選択し、本合成法を適用することにより、目的とするABC星型モデルグラフト共重合体が得られることを明らかにした。3.2で得られた試料膜のモルフォロジーを透過型電子顕微鏡により観察した結果、3つの異なるドメインからなる3相交互棒状構造の存在が認められた。これはハニカム超構造の形成を示すものと考えられる。これらの成果をもとに、今後さまざまな組成比のABC星型グラフト共重合体を調製し、そのモルフォロジーを精密に観察することにより、ハニカム超構造形成条件が明らかになるとともに、非対称組成での強制相溶超構造など新しい高分子系超構造構築が可能になると期待できる。 | KAKENHI-PROJECT-07241230 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07241230 |
途上国の社会的企業における宗教性と組織文化:質的調査に基づく国際比較研究 | 本研究は、社会的貢献とビジネス収益性という競合的な使命を包含する「ハイブリッドな組織」の学術的研究の領域に位置づけられる。そこに、キリスト教に基づく社会的企業の宗教性という新たな側面を加え、更に複雑化したハイブリッド性を、認識論的には批判的実在論の立場に立った質的研究を通じて、類型化する試みを行った。カンボジアに関しては、2017年3月に行ったインタビュー調査のデータの分析を完了した。その分析を基に、カンボジアのサンプル社会的企業のハイブリッド性の類型の結果を、国際学会13th International Conference ofISTR (International Society for Third Sector Research)にて発表した。またそのような類型化において、批判的実在論に依拠した制度ロジック論を援用する可能性に関して、国際学会ICSEA (International Conference on Social Enterprise Asia) 5th Conferenceにて発表した。2019年3月にカンボジアにおいて、不足していたデータ収集及びサンプル社会的企業の現状把握のためフォローアップ・インタビューを行った。エチオピアに関しては、2017年7月と11月に実施したインタビューデータの分析結果を、国際学会13th International Conference of ISTRで発表した。類型分析を更に進め、下記の学術雑誌投稿を準備する上で必要なデータ収集を目的として、2019年3月にはフォローアップ・インタビューを実施した。学術雑誌投稿に向けては、カンボジア及びエチオピアの事例を使い、社会的企業研究において批判的実在論に依拠した制度ロジック論を援用する可能性に関する論文を執筆中である。2015年度に行ったカンボジアとエチオピア両国の予備調査の分析結果を、14th AP Conference(立命館アジア太平洋大学)にて発表した。2016年度は、ビジネス収益性と社会的使命の追求におけるジレンマに焦点を当てた社会的企業研究の学術雑誌等を読み込んだ。その結果、収益性と社会的使命という二つの競合する組織使命や戦略が併存する事態の学術的研究においては、「制度ロジック」(Institutional Logics)の概念を援用し分析するのが最新の潮流であることが判明した。制度ロジックとは、人の行動や認知に影響を与え得る社会的前提や価値観を意味する。本研究が対象とする発展途上国における社会的企業は、上記の二つの使命に加えて宗教的使命をも含み、その制度的多元性(Institutional pluralism)は複雑化する。そこで本研究は、多元的ロジックが競合・共存する環境下での社会的企業の実践を理論的に分析するために、制度ロジックを更に深化させた形の理論的フレームワークを形成した。このフレームワークを用いてリサーチ・クエスチョンを作り、2017年3月に行ったカンボジアでの現地調査に生かした。リサーチ・クエスチョンは、以下の三つである。すなわち、(a)社会的企業関係者(特に、社会的起業家)の生い立ちや過去の経験(特に教会や信仰の経験)がどのように彼らの社会的企業の形成に影響を与えたか、(b)その社会的企業はどのような文脈で営業及び活動しているか(例えばどのような産業を通してどのような社会的課題を解決しようとしているのか、説明責任する必要がある投資家や理事は誰か、など)、(c)ビジネス収益性、社会的使命、及び宗教的使命のどれを重視しているか。カンボジアの現地調査には約3週間費やし、15のキリスト教系の社会的企業にインタビューを行った。最新の学術雑誌等の読み込みは進展した。第一フェーズ(宗教的使命、社会的貢献、ビジネス収益性の間の緊張関係の類型の構築)のカンボジアの現地調査を1回行った。2016年3月に事前調査をしていたので、サンプル社会的企業へのインタビューの予約は比較的順調に進んだ。なおカンボジアの現地調査は2017年3月に実施したので、インタビューデータの分析はまだ行っていない。2017年3月に予定していたエチオピアにおける第一フェーズの現地調査は、現地での研究協力者との調整がつかず、2017年7月に延期した。本研究は、社会的貢献とビジネス収益性という競合的な使命を包含する「ハイブリッドな組織」の学術的研究の領域に位置づけられる。そこに、社会的企業の宗教性という新たな側面を加え、更に複雑化したハイブリッド性に内在する課題を、認識論的には批判的実在論の立場に立った質的研究を通じて浮かび上がらせる試みを行った。2017年度の研究で明らかにされた点は以下の通りである。1)ハイブリッド組織研究の理論的枠組みとして援用されてきた「制度ロジック」は、実践者の行為主体性(Agency)の置かれた文脈(Context)がその研究の認識論の中で位置付けられておらず、宗教性という個々人の生き様や、個人や集団の間にある目に見えない関係性及び構造を読み取るのには不十分であること。2)社会的企業を取り巻く流動的な制度や複雑な文化的背景を持つカンボジアやエチオピアのような途上国においては、宗教性、社会性、ビジネス収益性という三つのロジック間における個々人の意思決定行為の背後にある意図やジレンマを丁寧に読み取ることが求められる。3)個々人の生い立ちが社会構造と行為主体との関係性に影響を与えるとするArcher (2003)の概念的枠組みを援用し、信仰を基盤とした企業家達の生まれ育ちや、起業に至るまでの宗教的体験が、彼らの社会的企業活動の中で宗教性に重点を置くかどうかの意思決定要素に影響しうる可能性がある。カンボジア及びエチオピアの両方において、第一フェーズ調査(宗教的使命、社会的貢献、ビジネス収益性の間の緊張関係の類型の構築)の進展があった。エチオピアにおいて2回現地調査を行った。カンボジア及びエチオピアで集めたインタビュー調査データの解析を行い、上記の理論的気づき・発展があった。 | KAKENHI-PROJECT-16K04243 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K04243 |
途上国の社会的企業における宗教性と組織文化:質的調査に基づく国際比較研究 | カンボジア及びエチオピアの両方において、第一フェーズ調査(宗教的使命、社会的貢献、ビジネス収益性の間の緊張関係の類型の構築)の進展があった。まずカンボジアに関しては、2017年3月に行ったインタビュー調査のデータの文字起こしを行い、分析を行った。その分析結果の一部を、ARNOVA's 46th Annual Conference(アメリカ、2017年11月)で発表した。しかし、まだ分析が三分の一ほど残っている。2017年3月にインタビューできなかった社会的企業にインタビューを試みたが、予約が取れず実行できなかった。エチオピアに関しては、エチオピアの社会企業家を対象にした予備調査の分析結果と、文献調査から導き出された理論的枠組みに関するペーパーを、社会的企業研究ネットワークであるInternational Research Conference on Social Enterprise(ベルギー、2017年7月)にて発表した。発表内容は学会公式ウェブサイトでも掲載されている。また、2017年7月にエチオピアにおいて1回目の現地調査(約3週間)を実施し、26団体28名を対象にインタビューを実施した。その後、新たなサンプル収集と、1回目の調査対象者のフォローアップ・インタビューを目的として、15団体18名を対象として、同年11月に約3週間の現地調査を実施した。そして文字起こしされたデータの解析を行った。その成果を2018年度に行われる学会発表へ向けて論文執筆中である。本研究は、社会的貢献とビジネス収益性という競合的な使命を包含する「ハイブリッドな組織」の学術的研究の領域に位置づけられる。そこに、キリスト教に基づく社会的企業の宗教性という新たな側面を加え、更に複雑化したハイブリッド性を、認識論的には批判的実在論の立場に立った質的研究を通じて、類型化する試みを行った。カンボジアに関しては、2017年3月に行ったインタビュー調査のデータの分析を完了した。その分析を基に、カンボジアのサンプル社会的企業のハイブリッド性の類型の結果を、国際学会13th International Conference ofISTR (International Society for Third Sector Research)にて発表した。またそのような類型化において、批判的実在論に依拠した制度ロジック論を援用する可能性に関して、国際学会ICSEA (International Conference on Social Enterprise Asia) 5th Conferenceにて発表した。2019年3月にカンボジアにおいて、不足していたデータ収集及びサンプル社会的企業の現状把握のためフォローアップ・インタビューを行った。 | KAKENHI-PROJECT-16K04243 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K04243 |
MutS蛋白を用いた消化器癌スクリーニング法の開発 | 最近、大腸菌のDNA修復機構を制御するMutS蛋白(不適正塩基対修正酵素)の生物学的特性を利用した遺伝子変異の検出報告が散見されるようになり、その検出感度の高さに注目が集まっている。MutS蛋白はDNA2本鎖の塩基対不適合(ミスマッチ)部分に特異的に結合するので、結合量を指標にして点突然変異やインサーション、デリーションといった変異を、電気泳動を用いずに高感度に検出しうる。申請者らは以前より、末梢血の血清成分に遊離した組織由来の微量DNAを解析することにより消化器癌を非侵襲的に診断する方法を模索しており、MutS蛋白を用いた検出方法が既存の方法に比して極めて感度が高いことを見い出した。そこで、健康診断による検出が困難である膵癌・胆管癌に対して、血漿に遊離した腫瘍DNAを利用して癌抑制遺伝子の解析を試み、血液サンプルによる診断方法を検討した。癌患者の末梢血から、白血球画分DNAと血漿画分DNAを別々に抽出して、p16 exon 1-2, p53 exon 5-8のPCRを各々行った。(1)同一患者の白血球PCR産物と血漿PCR産物を互いにアニールさせてMutS蛋白と反応して、血漿DNAの遺伝子変異によって生じるミスマッチheteroduplexの検出を試みた。(2)血漿DNAにmethylation-specific PCRを行い、腫瘍由来のメチル化p16を検索した。その結果、膵癌25例中18例(72%)(p16変異6例、p16メチル化10例、p53変異9例)、胆管癌33例中24例(73%)(p16変異10例、p16メチル化11例、p53変異6例)と高率に血液サンプルから遺伝子異常の存在を検出できた。以上より、血漿DNAを用いた解析法は、固形癌の遺伝子学的スクリーニングとして有用である可能性が示唆された。最近、大腸菌のDNA修復機構を制御するMutS蛋白(不適正塩基対修正酵素)の生物学的特性を利用した遺伝子変異の検出報告が散見されるようになり、その検出感度の高さに注目が集まっている。MutS蛋白はDNA2本鎖の塩基対不適合(ミスマッチ)部分に特異的に結合するので、結合量を指標にして点突然変異やインサーション、デリーションといった変異を、電気泳動を用いずに高感度に検出しうる。申請者らは以前より、末梢血の血清成分に遊離した組織由来の微量DNAを解析することにより消化器癌を非侵襲的に診断する方法を模索しており、MutS蛋白を用いた検出方法が既存の方法に比して極めて感度が高いことを見い出した。そこで、健康診断による検出が困難である膵癌・胆管癌に対して、血漿に遊離した腫瘍DNAを利用して癌抑制遺伝子の解析を試み、血液サンプルによる診断方法を検討した。癌患者の末梢血から、白血球画分DNAと血漿画分DNAを別々に抽出して、p16 exon 1-2, p53 exon 5-8のPCRを各々行った。(1)同一患者の白血球PCR産物と血漿PCR産物を互いにアニールさせてMutS蛋白と反応して、血漿DNAの遺伝子変異によって生じるミスマッチheteroduplexの検出を試みた。(2)血漿DNAにmethylation-specific PCRを行い、腫瘍由来のメチル化p16を検索した。その結果、膵癌25例中18例(72%)(p16変異6例、p16メチル化10例、p53変異9例)、胆管癌33例中24例(73%)(p16変異10例、p16メチル化11例、p53変異6例)と高率に血液サンプルから遺伝子異常の存在を検出できた。以上より、血漿DNAを用いた解析法は、固形癌の遺伝子学的スクリーニングとして有用である可能性が示唆された。ヒトの癌の発生は数個以上の遺伝子突然変異の蓄積によって引き起こされることが知られており、特に点突然変異は頻度が高いために癌診断の有力なツールとしてみなされてきた。最近、大腸菌のDNA修復機構を制御するMutS蛋白(不適正塩基対修正酵素)の生物学的特性を利用した遺伝子変異の検出報告が散見されるようになり、その検出感度の高さに注目が集まっている。MutS蛋白はDNA2本鎖の塩基対不適合(ミスマッチ)部分に特異的に結合するので、結合量を指標にして点突然変異やインサーション、デリーションといった変異を、電気泳動を用いずに高感度に検出しうる。申請者らは以前より、末梢血の血清成分に遊離した組織由来の微量DNAを解析することにより消化器癌を非侵襲的に診断する方法を模索しており、MutS蛋白を用いた検出方法が既存の方法に比して極めて感度が高く、点突然変異検出の偽陰性率は1%以下であることを見い出している。さらに詳細な予備的検討から、1)血清のDNA量は3-100ng/mLと少なく、症例毎に大きな差があり、通常のPCR解析が困難な症例が存在すること、2)血清中のDNA末端はリン酸化されているために、非リン酸化アダプターによるligation-mediated PCR(LM-PCR)によって非特異的な全体の増幅が可能であることを確認した。この得られた知見を基に申請者が構築したアッセイに応用したところ、少量の血液から広範囲にわたる遺伝子の変異解析が可能であった。本研究の目的は、実際に多くの消化器癌患者の血液サンプルの解析を行い、簡便で精度の高い癌スクリーニング法の確立を検討することにある。 | KAKENHI-PROJECT-11670483 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11670483 |
MutS蛋白を用いた消化器癌スクリーニング法の開発 | 遺伝子配列の点突然変異は、癌診断の有力なツールとしてみなされてきた。遺伝子点突然変異の検出方法はSSCP法(single strand-conformation polymorphism)を初めとして様々あるが、幅広い範囲にわたり遺伝子変異を一度に検出しうる、精度の高い方法の開発が今なお待たれている。最近、大腸菌のDNA修復機構を制御するMutS蛋白(不適正塩基対修正酵素)の生物学的特性を利用した遺伝子変異の検出報告が散見されるようになり、その検出感度の高さに注目が集まっている。MutS蛋白はDNA2本鎖の塩基対不適合(ミスマッチ)部分に特異的に結合するので、結合量を指標にして点突然変異やインサーション、デリーションといった変異を、電気泳動を用いずに高感度に検出しうる。申請者らは以前より、末梢血の血清成分に遊離した組織由来の微量DNAを解析することにより消化器癌を非侵襲的に診断する方法を模索しており、MutS蛋白を用いた検出方法が既存の方法に比して極めて感度が高く、点突然変異検出の偽陰性率は1%以下であることを見い出している。さらに詳細な予備的検討から、1)血清のDNA量は3-100ng/mLと少なく、症例毎に大きな差があり、通常のPCR解析が困難な症例が存在すること、2)しかしながら血清中のDNA末端はリン酸化されているために、非リン酸化アダプターによるligation-mediated PCR(LM-PCR)によって非特異的な全体の増幅が可能であること、を確認した。本研究の目的は、実際に多くの消化器癌患者の血液サンプルの解析を行い、簡便で精度の高い癌スクリーニング法の確立を検討することにある。 | KAKENHI-PROJECT-11670483 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11670483 |
高分子固体へ固定化したフラーレンの細胞に及ぼす影響 | 本研究の目的は、高分子化合物により化学修飾されたフラーレンの細胞に及ぼす影響を調べることである。これまで、光照射により活性酸素が効率よくフラーレンから生成され、その活性酸素がフラーレンの細胞毒性の原因になっていることが報告されている。しかしながら、フラーレンは水に不溶性であるため、フラーレンと細胞との相互作用は起こりにくいと考えられる。そこで、アミノ基をもつポリエチレングリコール(PEG)にて化学修飾することにより、フラーレンの水溶性を変化させ、分子レベルでフラーレンを細胞と接触させることを試みた。PEGのフラーレンへの付加反応はベンゼン中で行い、その反応の進行は可視吸収スペクトルの変化より確認した。PEG修飾率の増加とともにフラーレンの水溶性は増加し、PEG修飾がフラーレンの水可溶化に有効であることがわかった。得られたPEG修飾フラーレンをマウス樹立(L929)細胞とともに、48時間培養した後、細胞生存率を調べ、フラーレンの細胞毒性を評価した。その結果、PEG修飾することにより、フラーレンの細胞毒性は有意に増加し、毒性と修飾フラーレンの水溶性との間には良好な相関性が見られた。さらに、その毒性の程度は光照射により増強された。これらの結果から、フラーレンによる毒性発現にはフラーレン自身の水可溶化と光照射による活性酸素の生成が必要であると考えられる。本研究の目的は、高分子化合物により化学修飾されたフラーレンの細胞に及ぼす影響を調べることである。これまで、光照射により活性酸素が効率よくフラーレンから生成され、その活性酸素がフラーレンの細胞毒性の原因になっていることが報告されている。しかしながら、フラーレンは水に不溶性であるため、フラーレンと細胞との相互作用は起こりにくいと考えられる。そこで、アミノ基をもつポリエチレングリコール(PEG)にて化学修飾することにより、フラーレンの水溶性を変化させ、分子レベルでフラーレンを細胞と接触させることを試みた。PEGのフラーレンへの付加反応はベンゼン中で行い、その反応の進行は可視吸収スペクトルの変化より確認した。PEG修飾率の増加とともにフラーレンの水溶性は増加し、PEG修飾がフラーレンの水可溶化に有効であることがわかった。得られたPEG修飾フラーレンをマウス樹立(L929)細胞とともに、48時間培養した後、細胞生存率を調べ、フラーレンの細胞毒性を評価した。その結果、PEG修飾することにより、フラーレンの細胞毒性は有意に増加し、毒性と修飾フラーレンの水溶性との間には良好な相関性が見られた。さらに、その毒性の程度は光照射により増強された。これらの結果から、フラーレンによる毒性発現にはフラーレン自身の水可溶化と光照射による活性酸素の生成が必要であると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-06224218 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06224218 |
社会問題の戦後史におけるオーラルヒストリーの意義と可能性 | 本研究は、戦後史の記述や継承において体験者の語りやオーラル資料が、有効な資源やデータとして活用されているのか、その現状を把握するとともに、その活用にあたってどのような特質があるのか、を検討することにあった。そのため戦後史のなかで複数の大きな出来事をとりあげ、それぞれのオーラル資料の収集、記録、保存の実践について施設、団体、個人を調査し、オーラルヒストリーの意義を、歴史的事実の証言というより、むしろ地域のまちづくりや現在や未来へつながる死活や人びとの生き方につながるものとして活用されていることを確認した。研究2年目の本年度は、戦後史の重要な出来事をピックアップし、それらについてオーラルデータなどの質的資料を収集しアーカイブ化している事例について、それぞれの資料収集とプロジェクト担当者へのインタビューをおこない、オーラルデータを中心とする質的データの歴史的意義を調査した。本年度の調査は、研究協力者の岸衞(龍谷大学非常勤講師)の協力の下で、以下についておこなわれた。1.満蒙開拓平和記念館は、満州移民を多数輩出した長野県飯田市に設立された民間施設で、語り部による語り継ぐ活動がおこなわれている。2.富山県立イタイイタイ病資料館および清流会館では、当該問題についてアーカイブ化がおこなわれており、被害者の近親者による語り部活動がおこなわれている。3.第5福竜丸展示館では、船の展示とともに学芸員の市田氏が精力的に語り継ぐ活動を受け継いでいる。4.浦安市郷土博物館では、東京ディズニーランドができる前、漁師町のころに起きた「黒い水事件」と呼ばれる公害反対運動について聞き取りのオーラル資料を市民の協力で収集した実績をもつ。5.「ゴザ暴動」の経験を語る会が、2010年から沖縄市で行政と市民が協力して開かれている。現在も語る会が継続中である。ほかに初年度から始めた長野県の「三六災害」のアーカイブについては、継続して資料、インタビュー調査をおこない、中間報告をまとめた。また東北被災地の語り継ぎや水俣病に関する活動についても継続して資料収集をおこなった。東京新聞(2013年8月18日版)に掲載された「語り部」特集で、全国の語り部活動が紹介されたが、この記事については、編集者と協力して語り部活動の全国図を描き、語り部活動の意義を紹介した。研究初年度の本年度は、戦後史の重要な出来事について質的調査、とくにオーラルヒストリーなどの聞き取りが行われたと思われる事例について調査し、必要な事例についてはインタビューをおこなった。戦後史の出来事といってもたいへん広いので、本年度はとくに環境問題や自然災害に焦点を合わせ、主に、以下の三つの出来事に焦点をあてた。一つは、東日本大震災に関連して被災地においてチリ地震津波などの過去の被災事例についての資料調査とともに東日本大震災の被災経験のライフストーリーの収集も兼ねた。後者は、戦後史というより現代史であるが、今後のオーラルヒストリー資料の意義を問うことにつながっている。二つ目としては、1970年代にはじまった水俣病調査「不知火海総合調査団」(団長:色川大吉)の資料の整理をおこない、一部の音声資料についてはデジタル化を推進した。この調査は、もっとも早い時期に環境問題について社会人文科学から行われた学際的調査として有名で、今後さらにその意義を問うことにしたい。三つ目としては、きわめてローカルな活動だが、伊那谷における集中豪雨によって村が失われ、集団移転を余儀なくされた出来事を語りついでいる「三六災害50周年編集委員会」の活動に注目し、当時の状況を記憶して人たちにインタビューをおこない、こうして記録をのこす意義について調査をおこなった。こうした過去の出来事についての当時の質的調査は、おもに文書資料が中心でオーラル・データについての収集は少なく、またあっても十分に保存管理されていないものが多い。そのため、当初のねらいよりも広く質的調査とそのアーカイヴ化について調べ、当時の関係者にオーラルヒストリー・インタビューをおこない、その資料をもとに戦後史(とくに環境問題や災害関連)の出来事に関連する質的調査(とくにオーラル・データに注目して)の方法と意義を問うことにしたい。本年度は、昨年度に引き続き戦後史の重要な出来事についてオーラルデータなどの質的資料を収集しアーカイブ化して後世に伝えようとしている事例について、それぞれの担当者へインタビューし、資料収集の現状と考え方をもとにその歴史的意義を調査した。昨年度に引き続き、研究協力者の岸衞(龍谷大学非常勤講師)と共同で、以下の調査を行った。なお、もともと本年度が研究の最終年度であったが、数多くの資料を得た結果、整理してまとめるにはさらに1年の猶予が望ましく、申請したところ「補助事業期間延長」が認められたものである。1.長野県の伊那谷「三六災害」の継続調査を行い、アーカイブの状況と経験者の語りを収集した。2.水俣病関連では、水俣病資料館や熊本大学、また熊本学園大学などでアーカイブ化が行われている。資料館では改装を控え、改めていかに水俣病を後世に伝えるかが課題となっている。水俣病を語り継ぐ会が成立したように、現在地元住民によるあらたな動きが見られる。3.三里塚闘争については、歴史的記憶をもつ住民のなかではなお反対の声があるが、3年余り前に成田空港会社が「空と大地の歴史館」を開設し、空港反対運動の歴史を保存し成田空港の問題解決に向けた歩を続けている。かつての反対運動の当事者へのインタビューなどから語り継ぐ問題の課題が明らかになった。4.「コザ暴動」における語り継ぐ活動の関係者にもインタビューを行った。5.東日本大震災の東北の被災地でも、震災経験のライフストーリーを聞き取るとともに語り部活動の現状を調査した。 | KAKENHI-PROJECT-24530605 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24530605 |
社会問題の戦後史におけるオーラルヒストリーの意義と可能性 | 成果は、「三六災害」については、災害経験者にインタビューを行い中間報告としてまとめた。歴史における個人史研究の意義について論文にまとめた。また、現在、インタビュー・トランスクリプトを作成し、語り手に送って研究のまとめに使用する許諾をとっているところである。本年度は、当該研究課題の最終年度にあたり、これまでの研究調査をまとめるにあたって追加的調査や資料収集にあたるとともに、オーラルヒストリーの語り継ぐ機能に注目して理論的な検討を行った。追加調査としては、水俣病を語り継ぐ会の聞き取りを継続するとともに、公害や災害を伝える機関のひとつ「四日市公害と環境の未来館」などを訪ねた。さらに戦地からの引き揚げ者の記録を保存している「舞鶴引揚記念館」を訪問して記録の保存について、また沖縄市ではコザ暴動の記憶の掘り起こしをしている活動の聞き取りを行った。研究協力者の岸衞は、一貫して長野県の駒ヶ根市の三六災害被害地の元住民の記憶を聞き取るとともにその語り継ぐ保存活動を記録してきたが、それらを報告書『災害の記憶を「語り継ぐ」ー伊那谷三六災害の経験を聞く』(2016年1月)にまとめ、関係者に配布した。また代表者の桜井厚は、これまでの調査研究を継続し、まとめの作業を行いつつ、さまざまな歴史的な出来事を人びとがどのように語り継ごうとしているのかを口頭報告、その一部を論文にまとめた。第13回日本オーラルヒストリー学会大会で「戦後史の経験を語り継ぐーライフストーリーから見えてくること」(2015年9月12日、大東文化大学)で口頭報告、戦争体験を語り継ぐ活動をもとに「語り継ぐ物語の社会的文脈」(『歴史と向きあう社会学』2015年)を著し、語り継ぐ様式や非体験者の語り継ぐ特質を検討した。研究期間全体をとおして、主に公害や災害、および戦争遺産に関わる歴史的な出来事の継承について調べてきたが、今後、語りをとおして継承する活動の特質を明確にし、オーラルヒストリーの意義を確証するまとめを用意したい。本研究は、戦後史の記述や継承において体験者の語りやオーラル資料が、有効な資源やデータとして活用されているのか、その現状を把握するとともに、その活用にあたってどのような特質があるのか、を検討することにあった。そのため戦後史のなかで複数の大きな出来事をとりあげ、それぞれのオーラル資料の収集、記録、保存の実践について施設、団体、個人を調査し、オーラルヒストリーの意義を、歴史的事実の証言というより、むしろ地域のまちづくりや現在や未来へつながる死活や人びとの生き方につながるものとして活用されていることを確認した。「研究実績の概要」でもふれたが、今年度の調査によって、戦後史の出来事を災害、公害などの環境問題の出来事(「三六災害」「イタイイタイ病」「水俣病」「黒い水事件(浦安)」と、社会問題として「コザ暴動」「三里塚闘争」におおよそ絞ることができた。それぞれのインタビュー・トランスクリプトの作成もほぼ終わり、今後はまとめの作業に入る。これらはいずれも戦後史の象徴的な出来事であり、膨大な資料の中から必要な資料を整理、まとめる作業は予想以上に多くの時間が必要である。 | KAKENHI-PROJECT-24530605 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24530605 |
多死時代の「生き方・生き場所」を支える家族調整スキル開発とICTを用いた普及 | 初年次の目的は、家族調整スキル開発として(1)家族リジリエンス概念の論文化と(2)解決志向型家族調整モデル(「渡辺式」家族アセスメント/支援モデル)の「事例分析シート」を完成させICTで公開すること、そして普及活動で(3)専門職の調整能力の育成をはかることの第一段階として家族看護の研修システムを作ることであった。(1)死をめぐる家族リジリエンス研究では、家族(システム)はメンバーの「死」をどう看取り、家族内外を調性して危機を乗り越えて調整していくのか、という家族の危機と対処の様相を整理し考察することとなる。学術論文および学会での公表と並行して、一般の看護師にリアリティを持って家族の対処過程を解説することを目的に、「家族の肖像」と題して、総説として看護専門雑誌に計8回の連載を行った。これは臨床/在宅の看護師の盲点となっている家族看護の実践の知を提示するためであった。(2)先行して開発してきた「渡辺式」家族アセスメント/支援モデルでの、「事例分析シート」をリニューアルした。これは、システム(俯瞰的)思考と解決志向を基盤にクリティカルシンキング(系統だって吟味する)を強化するための分析シートであり、<「渡辺式」家族看護見える化シート>と命名した。(3)ICTの活用として新たにホームページを立ち上げ、看護師の家族看護に関する事例分析力を高める目的で、<「渡辺式」家族看護見える化シート>を公表し、誰でも自由に使える形とした。さらに家族看護研究会(集団コンサルテーション形式での事例検討会)を定期的に行う組織を立ち上げた。また事例検討会と並行して、家族調整スキルを身に着けて実践と普及をしていく『家族看護マスター』養成のためのシステムを作成した。この『家族看護マスター』養成プログラムは、より高度な人材育成の研修計画である。初年次は、目標とした3つの計画すなわち1家族調整スキル開発、2ICTを使った広報活動のためのホームページの立ち上げ、3人材育成のための組織の立ち上げと研修プログラミングができた。具体的には、1において「事例分析シート」をリニューアルし、2ではホームページを立ち上げて、そこで「事例分析シート」およびスキルの開発意図とプロセスを公開した。3の組織化は、アクションリサーチの第一段階の、研究プロセスに研究者と家族支援専門看護師(上級実践者)および一般の看護実践者(保健福祉援助職含む)が参加する「参加型研究チーム」を作った。その研究チーム名は<「渡辺式」家族看護研究会>とした。この研究会は以前より仲間内の研究会として存在していたが、今回全国展開するものに組織化/刷新化を図った。2019年4月段階で、研究会支部は、東京、関西、姫路、広島の4ケ所あり、交流会支部を神戸と金沢の2ケ所である。また、「渡辺式家族アセスメント/支援モデル」を用いた事例検討会を職場に導入し定着させるリーダーを育成することを目的に「事例検討マスター」プログラムを開始した。以上により、初年次の計画は概ね達成できている。アクションリサーチの第二段階の「調査」に着手する。研究タイトルに示した「多死時代の「生き方・生き場所」を支える」には2つの調査研究がある。それは1地域の高齢者福祉政策に役立つ高齢者データの整理からのまちづくり展開戦略と、2複雑化する高度医療の中での「がん患者・家族支援の看護実践知の可視化(概念化)」である。1に関しては、高齢者が終末期に願う場で住みつづけられるか、課題のフィールド調査を行い、要介護高齢者および家族の終末期に対する認識、地域のソーシャルキャピタルを調査する。2では、看護師の事例研究(山本らの『「日本の現場発看護学」の構築をめざした事例検討方法』)を用いる。また、専門職の家族調整スキルの向上をはかる研修では、その都度フィードバック調査票を配布し、家族調整スキルがどのように向上していくか、また教材や研修プログラムの妥当性を検討し、研修プログラムの改善を図っていく予定である。初年次の目的は、家族調整スキル開発として(1)家族リジリエンス概念の論文化と(2)解決志向型家族調整モデル(「渡辺式」家族アセスメント/支援モデル)の「事例分析シート」を完成させICTで公開すること、そして普及活動で(3)専門職の調整能力の育成をはかることの第一段階として家族看護の研修システムを作ることであった。(1)死をめぐる家族リジリエンス研究では、家族(システム)はメンバーの「死」をどう看取り、家族内外を調性して危機を乗り越えて調整していくのか、という家族の危機と対処の様相を整理し考察することとなる。学術論文および学会での公表と並行して、一般の看護師にリアリティを持って家族の対処過程を解説することを目的に、「家族の肖像」と題して、総説として看護専門雑誌に計8回の連載を行った。これは臨床/在宅の看護師の盲点となっている家族看護の実践の知を提示するためであった。(2)先行して開発してきた「渡辺式」家族アセスメント/支援モデルでの、「事例分析シート」をリニューアルした。これは、システム(俯瞰的)思考と解決志向を基盤にクリティカルシンキング(系統だって吟味する)を強化するための分析シートであり、<「渡辺式」家族看護見える化シート>と命名した。(3)ICTの活用として新たにホームページを立ち上げ、看護師の家族看護に関する事例分析力を高める目的で、<「渡辺式」家族看護見える化シート>を公表し、誰でも自由に使える形とした。 | KAKENHI-PROJECT-18K10186 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K10186 |
多死時代の「生き方・生き場所」を支える家族調整スキル開発とICTを用いた普及 | さらに家族看護研究会(集団コンサルテーション形式での事例検討会)を定期的に行う組織を立ち上げた。また事例検討会と並行して、家族調整スキルを身に着けて実践と普及をしていく『家族看護マスター』養成のためのシステムを作成した。この『家族看護マスター』養成プログラムは、より高度な人材育成の研修計画である。初年次は、目標とした3つの計画すなわち1家族調整スキル開発、2ICTを使った広報活動のためのホームページの立ち上げ、3人材育成のための組織の立ち上げと研修プログラミングができた。具体的には、1において「事例分析シート」をリニューアルし、2ではホームページを立ち上げて、そこで「事例分析シート」およびスキルの開発意図とプロセスを公開した。3の組織化は、アクションリサーチの第一段階の、研究プロセスに研究者と家族支援専門看護師(上級実践者)および一般の看護実践者(保健福祉援助職含む)が参加する「参加型研究チーム」を作った。その研究チーム名は<「渡辺式」家族看護研究会>とした。この研究会は以前より仲間内の研究会として存在していたが、今回全国展開するものに組織化/刷新化を図った。2019年4月段階で、研究会支部は、東京、関西、姫路、広島の4ケ所あり、交流会支部を神戸と金沢の2ケ所である。また、「渡辺式家族アセスメント/支援モデル」を用いた事例検討会を職場に導入し定着させるリーダーを育成することを目的に「事例検討マスター」プログラムを開始した。以上により、初年次の計画は概ね達成できている。アクションリサーチの第二段階の「調査」に着手する。研究タイトルに示した「多死時代の「生き方・生き場所」を支える」には2つの調査研究がある。それは1地域の高齢者福祉政策に役立つ高齢者データの整理からのまちづくり展開戦略と、2複雑化する高度医療の中での「がん患者・家族支援の看護実践知の可視化(概念化)」である。1に関しては、高齢者が終末期に願う場で住みつづけられるか、課題のフィールド調査を行い、要介護高齢者および家族の終末期に対する認識、地域のソーシャルキャピタルを調査する。2では、看護師の事例研究(山本らの『「日本の現場発看護学」の構築をめざした事例検討方法』)を用いる。また、専門職の家族調整スキルの向上をはかる研修では、その都度フィードバック調査票を配布し、家族調整スキルがどのように向上していくか、また教材や研修プログラムの妥当性を検討し、研修プログラムの改善を図っていく予定である。ICT関連の仕様書作成等の作業が遅れたことにより、年度末の支払いが出来なかったため、次年度使用となった。また研究補助者を確保できなかったため、人件費がゼロとなった。さらに計画していた国際学会(国際家族看護学会)は、抄録が間に合わず見送ったが、2019年度7月には、国際学会で発表予定である。 | KAKENHI-PROJECT-18K10186 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K10186 |
間質系細胞による消化器癌細胞のstemness制御機構の解析 | 本研究課題では、癌細胞を取り巻く微小環境に着目し、間接的に癌幹細胞を標的とする治療法を視野に入れた検討を進めてきた。計画書では本年度に研究成果をまとめることを当初の予定としていたが、その計画をはるかに上回り、昨年度論文にまとめることができたため、本年度は更に具体的な内容について検討を進めることが可能となった。CD44は様々な生理学的機能を有する表面マーカーであり、癌組織においてその発現が亢進することが示されている。特に、癌幹細胞を認識することのできるマーカーであるとの報告が乳癌、大腸癌、胃癌、膵癌などでなされており、治療標的細胞として有用である。CD44はその構造の違いによりCD44 standard formとCD44 variant isoformが認識されているが、2011年、Ishimotoらは、CD44 variant8-10が細胞表面に存在するcystine transporterであるxCTを安定化することにより、細胞を酸化ストレスから保護していることを示した。更に、xCTの阻害剤であるsulfasarazine投与によりマウスにおける腫瘍形成能を著しく低下させたことから、CD44 variantの発現が、癌幹細胞としての性質に寄与していることの重要性がうかがえる。本年度はこれまで用いてきた、幹細胞を濃縮した分画であるSide Populationより更に具体的な細胞マーカーとしてCD44 variantの発現に着目し、癌間質細胞との関連について明らかにすることを目的とし検討を進めてきた。初めに我々の研究室で保持されている膵臓癌細胞株7種類に対してCD44 variantの発現を確認したところ、細胞間で発現量の差が顕著であることが明らかになった。今後、膵臓癌におけるCD44 variant発現とその腫瘍進展への影響などについて詳細に解析を進める必要性があると思われた。(抄録なし)癌組織では間質量やその増殖性の高さがその悪性度や患者の予後と強く相関があることが示唆されている。癌幹細胞を標的とした治療戦略の重要性は、これまで多くの癌幹細胞研究により強く示されているが、それら多くの研究の標的は癌幹細胞自体であり、間質細胞との微小環境における相互作用に焦点を当てたものは少ない。本研究は腫瘍間質細胞と癌幹細胞との相互作用による癌進展制御機構を明らかにすることを目的としている。本年度は癌細胞と間質細胞の共培養系の確立を行い、更に癌細胞側にGFPを発現させ、共培養後の再分離を可能にした。本研究では癌間質細胞になり得る細胞としてTGF-betaにより処理をした骨髄由来の間葉系幹細胞(MSCs)を用いたが、その意義について臨床検体由来の癌部間質細胞を用い比較検討を行った。癌間質細胞に特異的とされるいくつかのタンパクの発現動態や腫瘍形成能の比較の結果からTGF-beta処理後のMSCsと癌部間質細胞の特徴が一致することから、今後の検討においてMSCsを用いることが有用であるということを示した。これまでの報告において、癌間質細胞が積極的に癌細胞側に上皮間葉転換(EMT)を誘導し得るということが指摘されている。したがって、次に癌幹細胞はMSCsが誘導するEMTを引き起こしやすいという仮説を立てて検討を行った。Trans wellを用いた共培養系において癌細胞側でEMTが誘導されていることが確認された。驚くべきことに、それらのEMT誘導は癌幹細胞がenrichされた集団であるSP細胞において優位に起こっており、SP細胞以外の集団であるMP細胞(non-SP細胞)においてはほとんど変化を示さなかった。EMTを起こした癌細胞は、浸潤・転移を引き起こし腫瘍進展に関わるのみならず老化や薬剤抵抗性など癌幹細胞としての特徴と共通する性格を持つことから、次にMSCsによる癌細胞側のstemnessに関わる検討を進めた。MSCsと共培養することによりSP細胞においてsphere形成能や免疫不全マウスにおける腫瘍形成能の増強、抗癌剤に対する抵抗性が認められ、MSCsが癌幹細胞としての性格を維持または増強している可能性が示唆される結果となった。癌細胞を取り巻く間質細胞は特有の微小環境を構成し、浸潤・転移をはじめとする癌の進展に促進的に関与していることが示されている。癌幹細胞を標的とした治療戦略の重要性はこれまで多くの癌幹細胞研究により強く示されているが、それら多くの研究の標的は癌幹細胞自体であり、間質細胞との微小環境における相互作用に焦点を当てたものは少ない。本研究の目的は腫瘍間質細胞と癌幹細胞との相互作用による癌進展制御機構を明らかにすることである。前年度までの検討において、i)TGFβ処理後のMSCs(Tb-MSCs)は癌幹細胞がenrichされた集団であるSide Population(SP)細胞に対して優位に上皮間葉転換(EMT)を引き起こしやすいということ、ii)Tb-MSCsは癌細胞のstemness regulationに促進的に作用するということ、iii)これらの現象には膵癌細胞とTb-MSCs間に存在するNotchシグナルが主となり作用していることを示した。本年度は主に論文作成に向けたデータの肉付けや臨床データとの相関性の解析に取り組んだ。膵癌病理組織検体を用い、癌間質細胞マーカーの発現と病理組織学形態の関連性について検討を行った結果、αSMA高発現エリアにおいては浸潤細胞が多数観察され、αSMA発現間質細胞が癌細胞のEMT、浸潤・転移と深く関与している可能性が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-11J05599 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J05599 |
間質系細胞による消化器癌細胞のstemness制御機構の解析 | また、癌幹細胞における重要なstemnessの特徴の一つにアポトーシス耐生能が挙げられるが、TNF-related apoptosis-inducing ligand(TRAIL)を用いAnnexin染色によるviabilityの解析を行った結果、Tb-MSCsとの共培養によりTRAILに対する抵抗性が増強されていることが明らかになった。更にTb-MSCsと癌細胞の共培養系におけるNotchシグナルの関与を明確にするために、Notchシグナルレポーター細胞を用い共培養前後で陽性細胞の割合を比較したところ、SP細胞において特に陽性細胞の増加が認められ、Tb-MSCsによるNotchシグナルの促進が示された。以上のことより膵癌の癌幹細胞分画におけるEMT誘導やstemness regulationはNotchシグナルを介した癌間質細胞と癌細胞の相互作用により制御されていることが示唆された。これらの結果はCancer Science誌に投稿、受理された。本研究課題では、癌細胞を取り巻く微小環境に着目し、間接的に癌幹細胞を標的とする治療法を視野に入れた検討を進めてきた。計画書では本年度に研究成果をまとめることを当初の予定としていたが、その計画をはるかに上回り、昨年度論文にまとめることができたため、本年度は更に具体的な内容について検討を進めることが可能となった。CD44は様々な生理学的機能を有する表面マーカーであり、癌組織においてその発現が亢進することが示されている。特に、癌幹細胞を認識することのできるマーカーであるとの報告が乳癌、大腸癌、胃癌、膵癌などでなされており、治療標的細胞として有用である。CD44はその構造の違いによりCD44 standard formとCD44 variant isoformが認識されているが、2011年、Ishimotoらは、CD44 variant8-10が細胞表面に存在するcystine transporterであるxCTを安定化することにより、細胞を酸化ストレスから保護していることを示した。更に、xCTの阻害剤であるsulfasarazine投与によりマウスにおける腫瘍形成能を著しく低下させたことから、CD44 variantの発現が、癌幹細胞としての性質に寄与していることの重要性がうかがえる。本年度はこれまで用いてきた、幹細胞を濃縮した分画であるSide Populationより更に具体的な細胞マーカーとしてCD44 variantの発現に着目し、癌間質細胞との関連について明らかにすることを目的とし検討を進めてきた。初めに我々の研究室で保持されている膵臓癌細胞株7種類に対してCD44 variantの発現を確認したところ、細胞間で発現量の差が顕著であることが明らかになった。今後、膵臓癌におけるCD44 variant発現とその腫瘍進展への影響などについて詳細に解析を進める必要性があると思われた。当初の計画としては、本年度における研究内容は共培養条件の決定やその後の検討をスムーズにするための基礎的準備を主としたものであったが、現段階までの成果として、間質細胞側の解析や間質細胞による癌細胞側の受ける変化についての検討など、先んじた検討を進めるまでに進行しているため。本年度はデータの肉付けをはじめ論文作成、投稿までを終えることができ、当初の実験計画よりも大幅に進展できたため。 | KAKENHI-PROJECT-11J05599 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J05599 |
ソリトン上の有効場理論とその物理的応用 | 余剰次元模型でのゲージ場の局在問題を解決し,大統一群がドメーンウォールで破れて,低エネルギーで標準模型が生じる模型を構成した.ドメーンウォール上にはカイラルなフェルミ粒子が局在し,望ましい対称性が選ばれて,不要なモジュライ場に質量が与えられる機構を与えた.場の量子論では摂動級数は一般に発散するが,ボレル和によって数学的に意味づけられ,非摂動効果と密接な関係を持つ(リサージェンス).これを実現するソリトンがバイオンで,2次元の非線形シグマ模型でバイオンを数え上げることに成功した.これを次元簡約した量子力学系では,バイオンに基づく非摂動効果を任意の高次まで評価することに成功した.第一の研究目標は標準模型を超える統一理論へソリトンを応用することである。この観点で特に力を入れたのは、余剰次元模型でドメーン・ウォール上に標準模型を局在させる試みである。こうした模型での最大の困難である、ゲージ場を局在させる模型を作ることに成功した。特に非アーベルゲージ場の局在を可能にする一般的な機構を考案した。また、非アーベルゲージ場だけでなく、ゲージ群の非自明な表現となる物質場も同時に局在させることに成功した。その際生じる可能性のある不安定性を取り除くことにも成功し、ソリトン解のパラメターの全空間で、ゲージ場の運動エネルギー項が安定性を持つことを示した。さらに、その模型で有効理論を精密に求めることに成功し、その結果、物質場の非線形な相互作用の構造を明らかにした。一方、ソリトンの数理的構造への理解を深めるために、位相的場の理論を応用して、ソリトンの解空間の体積を計算する方法を与えた。手法としては、「局所化の方法」と呼ばれる、経路積分の寄与を変換の固定点に局在させる方法を用いた。本年の目的のひとつは、ドメーン・ウォール上に局在したゲージ場の模型を構成し,さらにその有効相互作用を表す有効場の理論を求めることであった.この点で,ゲージ場の局在機構を昨年度までに提案でき,本年はその模型での低エネルギー場の非線形な有効作用を求めることに成功した.カイラルラグランジアンに現れる相互作用の形とよく似た結果が得られた.一方,摂動級数の発散は場の量子論が定式化されてから数十年来の問題である.特に,QCDのような漸近的自由な場の理論では,リノマロンという問題が未解決のまま残っていた.近年,空間の一部をコンパクトにすることによって,分数量子数を持つ分数インスタントンの複合系として,バイオンという新しいソリトンが見つかった.このバイオンがリノマロンの問題を解決する可能性がある事が分かった.我々は,2次元のグラスマン模型と呼ばれる非線形シグマ模型で,バイオンを構成し,完全に分類することに成功した.グラスマン模型は一般にU(NC)ゲージ理論の強結合極限として得られる.一方,U(1)ゲージ理論(NC=1)の場合にはCPN模型となる.我々はCPN模型で荷電バイオンが存在しないことを初めて明らかにし,グラスマン模型では荷電バイオンが存在することを示し,具体的に構成することに成功した.これらのバイオンの内,中性のバイオンは,摂動論の発散級数に厳密な意味づけを与えるために重要な役割を果たし,摂動級数の発散の問題を解決する.一方,荷電バイオンは閉じ込めの問題にも知見を与える可能性がある.ソリトンは種々の物理現象に出現するが,場の量子論の非摂動効果において,きわめて重要である.繰り込み可能な場の量子論では,摂動論の各次数で厳密な処方箋が得られている.しかし,摂動論の級数は発散することが知られており,発散級数から意味のある情報を引き出す数学的手法がボレル和の方法である.このボレル和が解析接続が必要な場合があり,その不貞性として虚数部分が生じる.この経路による虚数部分をバイオンというソリトンの非摂動効果によって相殺することができる.この手続きを量子力学の場合に,精密に実現するために多重ソリトンの効果を求める方法を確立することができた.また,場の量子論で初めて生じる新しいモジュライの自由度を発見し,これによって生じる補正項を求めた.量子力学だけでなく,場の量子論への応用も視野に入ってきた.摂動論と非摂動効果が関係しているというリサージェンス理論を具体するための第一歩である.超弦理論から示唆されて,強結合の場の量子論では,1次元高い空間の重力の古典理論を用いて計算できる,というAdS/CFT対応の方法が提案され注目されている.低次元の解ける模型について,このAdS/CFT対応を吟味することで,新たな知見を得ることができると期待される.具体的には,2次元格子上のイジング模型について,トーラスのトポロジーでトーラスの形状を表す複素構造を取り入れて厳密解を構成できることを示した.さらに,連続極限を取ることによって2次元の質量を持つフェルミ場の理論に帰着することを示し,さらに3次元重力理論にスカラー場を加えた理論で繰り込み群によって正しく記述されることを示した.量子力学の場合には,ソリトンの寄与を精密に求める方法を確立できた.また,2次元非線形シグマ模型の場の量子論では,新しいモジュライがあり,これによって今までわからなかった効果が生じることが分かった. | KAKENHI-PROJECT-25400271 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25400271 |
ソリトン上の有効場理論とその物理的応用 | これによって,場の量子論でのソリトンの寄与を精密に求めることができる見通しがついた.摂動効果と非摂動効果をつなぐリサージェンスの理論を場の量子論の場合に具体化できると見通しが得られた.場の量子論における経路積分の定式化を基礎づけるために,リサージェンスの理論を適用した.具体的には,漸近自由性を持つ2次元場の量子論であるCPN非線形シグマ模型に対して次元簡約を行い,その結果得られるCPN量子力学を考察した.この理論の経路積分で生じるすべての鞍点を見つけるために,理論を複素化してバイオンと呼ばれる無限個の新たな厳密解を発見した.この解を得るためには,超対称性が成り立つ場合を参考にしてフェルミ場を導入する必要がある.特に超対称性を実現する場合には,摂動的真空周りの寄与と,非摂動的真空の寄与とが相殺して,基底状態エネルギーは厳密に消え,超対称性の予想を正しく再現する.一方,超対称からずれた場合には,さらに豊かなリサージェンス構造を示す.すなわち,摂動的真空上に生じる発散摂動級数と非摂動効果との間に緊密な関係があり,両者を合わせることで初めて厳密な定義が可能となる.一方,非摂動効果を最低次で求めることは今まで行われてきたが,高次の効果を系統的に評価することは難しかった.この評価を行い,リサージェンス構造が非摂動効果の任意の高次で成り立つことを世界で初めて実証した.さらに,2次元のCPN場の量子論では,複素化する以前に分数インスタントン解と共に,不安定な厳密解が知られていたが,これらの解について,リサージェンスで活躍するバイオンという配位との関係を詳しく解析した.一方,標準模型を超える統一理論の候補として,ドメーンウォールを用いる模型を開発し,その上に非アーベルゲージ場を局在させ,具体的に対称性の破れを幾何学的に実現する模型を構築した.余剰次元模型でのゲージ場の局在問題を解決し,大統一群がドメーンウォールで破れて,低エネルギーで標準模型が生じる模型を構成した.ドメーンウォール上にはカイラルなフェルミ粒子が局在し,望ましい対称性が選ばれて,不要なモジュライ場に質量が与えられる機構を与えた.場の量子論では摂動級数は一般に発散するが,ボレル和によって数学的に意味づけられ,非摂動効果と密接な関係を持つ(リサージェンス).これを実現するソリトンがバイオンで,2次元の非線形シグマ模型でバイオンを数え上げることに成功した.これを次元簡約した量子力学系では,バイオンに基づく非摂動効果を任意の高次まで評価することに成功した.局在したゲージ場の模型で,物質場も含めた模型を構成し,その有効相互作用を求めることができた.これによって,ソリトン上の有効場理論の有用性を確立できた.また,ヒッグス相での磁気単極子の力学を定量的二階席できた.一方,摂動級数の発散は数十年来の問題であるが,空間の一部をコンパクトにすることによって,バイオンという新しいソリトンが見つかり,これが発散級数を厳密に意味づけることに役立つことが分かった.このバイオンを非線形シグマ模型の場合に,精密に定式化出来た.量子力学で確立した多重ソリトン効果の計算方法を発展させ,場の量子論に適用する.特に2次元の非線形シグマ模型をとりあげ,新しいモジュライの効果を具体的に評価する.また,繰り込み理論との関係を理解することが次の目標となる.一方,理論を複素化することによって,非摂動効果の評価が簡単になることが量子力学で提案されている.この方法を場の量子論にも適用する事が次の目標である.素粒子物理学今年度進展したバイオンの研究をさらに発展させ,高次の効果まで正しく得られることを示した. | KAKENHI-PROJECT-25400271 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25400271 |
コミュニティ・エンパワメントと新しい地域再生に関する国際比較研究 | 2004年インド洋地震に伴う津波被害を受けたインドのタミルナドゥ州、インドネシアのアチェ市、および2009年の東日本大震災に伴う津波被害を受けた東北地方(南三陸町)の3地域に関して、訪問調査およびアンケート調査により、地域再生におけるコミュニティ組織やソーシャル・キャピタルの役割について国際的な比較研究を行った。その結果、住居移転、生活再生の両面において、伝統的な地域組織や新しいセルフヘルプグループの役割が大きく、それらの組織やソーシャルキャピタルが復興や地域再生にとって重要であることが確認された。2004年インド洋地震に伴う津波被害を受けたインドのタミルナドゥ州、インドネシアのアチェ市、および2009年の東日本大震災に伴う津波被害を受けた東北地方(南三陸町)の3地域に関して、訪問調査およびアンケート調査により、地域再生におけるコミュニティ組織やソーシャル・キャピタルの役割について国際的な比較研究を行った。その結果、住居移転、生活再生の両面において、伝統的な地域組織や新しいセルフヘルプグループの役割が大きく、それらの組織やソーシャルキャピタルが復興や地域再生にとって重要であることが確認された。現地調査に関しては、研究参加者のほぼ全員で、南三陸地域およびインドネシア被災地を訪問することができた。これにより、現地のコミュニティの特徴による差異とともに、復興過程およびそこにおけるコミュニティの構造、文化、各種団体などに役割に関する共通性を確認することができた。これは、コミュニティ・エンパワメントという枠組みに基づいて3地域の国際比較研究を行うという本プロジェクトの実現可能性を確認させるものであり、初年度の成果としては十分であると考える。なお、研究参加者の一人は、イギリスに長期滞在して、イギリスにおける地域再生の動向と理論について最新の情報に基づく研究を進めており、研究全体に対しても示唆の多い成果があげられつつある。こうした現地予備調査を踏まえて予定している対面アンケート調査についての準備も、インドネシアおよびインドの研究協力者との協議を通じて順調に進んでいる。アンケートの設問については素案が作成されており、次年度においてより詳細に検討して仕上げる土台ができている。研究会も着実に積み重ねており、アンケート調査に向けた各自および全体の問題関心も明確化しつつある。特に、政治学、行政学、政治思想史、経営学など多様な研究者による学際的アプローチの導入が本プロジェクトの特徴であるが、その効果が十分確認できた。また、そのなかで、インド、インドネシアのコミュニティに関する専門家や、日本における漁業協同組合の専門家をゲストに招いたことで、研究参加者だけに限られない幅広い知見を得ることができた。研究成果の一部については、下記のように、雑誌論文、学会報告などの形で公表した。東北、インドネシア、インドの専門家を招いて、それぞれの復興過程とそこにおけるコミュニティ組織の役割について議論を重ね、研究グループとしての共通認識を形成することに努めた。平成25年度は、特にインドの現地調査に重点を置き、インドのAIDMIとの連携を基礎に、定型アンケート票による聞き取り調査と、研究グループの全メンバーが参加した約一週間の現地調査(タミルナドゥ州の津波被災地域)を行い、多くの有益な知見を得ることができた。インドにおいては、村落パンチャーヤトと呼ばれる公的自治組織と、カースト・パンチャーヤトと呼ばれるカースト=職業別の自治組織の存在感が非常に大きいことを、現地調査によって実感としても確認できたことは有益であった。ディストリクト、ブロック、州という各級政府の幹部とも面談することができ、災害復興に関する全体的な制度を概観することもできた。以上に加えて、今回の現地調査で新たに発見できたことは、セルフ・ヘルプ・グループと呼ばれる新たな組織(特に女性が中心)が、多くの地域において形成されており、日常生活における生活維持、女性のエンパワメントに寄与しているだけでなく、災害からの復興過程においても、家計を支え、村を再建していくうえで、女性の発言力強化を通じて大きな役割を果たしていることである。そうした組織の設立、運営支援をしている中間支援団体にインタビューすることを通じて、それらの活動実態を把握することができた。以上を通じて、インドにおけるコミュニティの実態把握を大きく進めることができたと考えている。今年度の研究においては、東北地方(特に南三陸町)、インド・タミル・ナドゥ州と並んで比較対象としてきたインドネシア・アチェ市の津波被災地の現地調査が優先課題であった。2015年1月初旬に、インドネシア大学および現地シャクアラ大学の協力を得て現地調査を実施し、住宅移転、生活再建の二つの視点からの成功例、失敗例と想定される数地域について実地調査しヒアリングを行った。その結果、アチェ地域(大部分は漁師村)においては、desaと呼ばれる基礎自治体政府およびpkk(婦人会)、青年団などの伝統的な地域組織が復興においても圧倒的な重要性を持ったこと、それゆえ、インドで見られたセルフヘルプ・グループなどの新しい組織はほとんど見られないことが確認できた。また、国際NGOの役割が極めて大きく、インドネシア国内NGOと比べても、住民参加を相対的に重視しており、成果においても住民満足度が高いことが一つの発見であった。この調査と合わせて、インドのAIDMIの協力を得て、インドネシア、インド、東北の比較研究を進め、研究全体についてのまとめを行った。南三陸町については、継続して訪問調査を行ったが、災害から3年を経過し、外部団体が引き上げる中で、地元の人たちによる新しい団体(一般社団が多い)が設立される事例が注目された。ただ、復興過程全体のなかでは、自治体行政や契約講、町内会などの伝統的な組織が依然として大きな役割を果たしていることが確認できる。日本で選択した事例が南三陸町という漁業を中心とした地域であったこともあり、当初予想した以上に3か国の比較は意味を持ち、伝統的地域組織の重要性が再確認される結果となった。 | KAKENHI-PROJECT-24402009 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24402009 |
コミュニティ・エンパワメントと新しい地域再生に関する国際比較研究 | 26年度が最終年度であるため、記入しない。政治学26年度が最終年度であるため、記入しない。現地調査に関しては、研究参加者のほぼ全員で、南三陸地域およびインドネシア被災地を訪問することができた。また、インドネシアおよびインドの研究協力者との協議も順調に進んでいる。研究会も着実に積み重ねており、アンケート調査に向けた各自および全体の問題関心も明確化しつつある。研究会の開催は定期的に行っており、インドネシアの平成24年度予備調査、東北調査に続き、インドの本格的な現地調査を行うことができたので、概ね予定通りの進展と考えられる。インドネシアの本格的現地調査が平成26年度において行なわれれば全体として計画通りとなる予定である。26年度が最終年度であるため、記入しない。今後は、早急にインドとインドネシアの予備調査を行ったうえで、3地域共通に行う対面型アンケート調査の設問を研究の問題関心に基づいて具体化することが最大の課題である。昨年度作成した素案をもとに、今年度中には実施の準備を完了させる予定である。それと並行して、研究会を重ねることで研究の焦点を明確化していく。今年度の重点は、インドネシアの本格的な現地調査を行うことである。それに加え、東北の補足調査も行う。以上で得られたデータや知見をもとに、研究会において討議すると同時に、それぞれの分担に従って研究成果の執筆を行い、全体としての研究成果の取りまとめを行うことが最終年度としての本年度の予定である。26年度が最終年度であるため、記入しない。研究分担者である吉田忠彦への配分資金の一部は、イギリスでの在外研究中であるため翌年度に持ち越し、翌年度の配分資金と合わせて、翌年度の夏に帰国後、インド、インドネシアへの調査費用として使用する計画である。インド現地調査の費用が、事前の予定よりも抑えることができたので、その分が未使用となった。平成26年度においては、インドネシア調査や東北の追加調査を予定しており、そのための経費として使用する計画である。 | KAKENHI-PROJECT-24402009 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24402009 |
マイクロアレイによる病原糸状菌に対するシロイヌナズナ応答遺伝子群の網羅的解析 | 若手研究(B)によって構築したマイクロアレイデータベースを基に選抜した病害ストレス応答遺伝子について、遺伝子過剰発現体の作製およびマイクロアレイによる病害ストレスシグナル伝達経路のモデリングを行った。病害ストレスに応答して発現する転写因子、キナーゼを中心に約50遺伝子の過剰発現体を作製した。これらについて数種の病原菌を用いて病原性試験を行い、遺伝子の機能解析を行った。その結果、ほとんどの形質転換体において、病原菌に対する感受性の変化が認められなかったが、zincfinger proteinをコードする遺伝子を導入した植物について、病原菌に対する感受性に若干の変化が認められた。現在、この形質転換体について詳細な解析を行っている。また、病原糸状菌であるアブラナ科野菜類炭そ病菌Colletotrichum higginsianumがシロイヌナズナに感染することを明らかにし、モデル植物-病原糸状菌相互作用における新たなpathosystemを構築した。次いで、この病原糸状菌を接種したシロイヌナズナから得られたmRNAを用いてマイクロアレイを行い、その発現プロファイルを申請者が構築したマイクロアレイデータベースを用いて解析した。その結果、この菌に対する植物の防御シグナル伝達機構はジャスモン酸/エチレン経路であることを明らかにした。さらにその他いくつかの病原菌を用いてマイクロアレイおよびノーザンブロッティング解析を行い、このマイクロアレイデータベースを用いた検定システムの有効性が示された。若手研究(B)によって構築したマイクロアレイデータベースを基に選抜した病害ストレス応答遺伝子について、遺伝子過剰発現体の作製およびマイクロアレイによる病害ストレスシグナル伝達経路のモデリングを行った。病害ストレスに応答して発現する転写因子、キナーゼを中心に約50遺伝子の過剰発現体を作製した。これらについて数種の病原菌を用いて病原性試験を行い、遺伝子の機能解析を行った。その結果、ほとんどの形質転換体において、病原菌に対する感受性の変化が認められなかったが、zincfinger proteinをコードする遺伝子を導入した植物について、病原菌に対する感受性に若干の変化が認められた。現在、この形質転換体について詳細な解析を行っている。また、病原糸状菌であるアブラナ科野菜類炭そ病菌Colletotrichum higginsianumがシロイヌナズナに感染することを明らかにし、モデル植物-病原糸状菌相互作用における新たなpathosystemを構築した。次いで、この病原糸状菌を接種したシロイヌナズナから得られたmRNAを用いてマイクロアレイを行い、その発現プロファイルを申請者が構築したマイクロアレイデータベースを用いて解析した。その結果、この菌に対する植物の防御シグナル伝達機構はジャスモン酸/エチレン経路であることを明らかにした。さらにその他いくつかの病原菌を用いてマイクロアレイおよびノーザンブロッティング解析を行い、このマイクロアレイデータベースを用いた検定システムの有効性が示された。 | KAKENHI-PROJECT-15028211 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15028211 |
自発運動と食品因子によるメタボリックシンドローム改善の相加・相乗効果に関する研究 | 従来、食品由来成分の機能性評価を行う場合、混餌あるいは経口投与による動物実験が広く行われている。近年、動物愛護の観点から、動物実験をできるだけ排除する、減少させるという風潮が世界的に高まっており、培養細胞などによるin vitro試験の確立が代替法として求められ、また、in vivo試験においても、できるだけ実験動物数低下につながる再現性の高いスキームの構築が重要と考えられている。植物ステロールは比較的酸化安定性が高い化合物であるが、動物性のコレステロールと同様に小腸内腔で腸内細菌によって3位の水酸基がケト基へと変換されて、それぞれ植物ステノン、コレステノンとなり、二重結合の位置が異なるいくつかの異性体になる。化学合成されたコレステノンや植物ステノンといったさまざまな酸化誘導体が、マウスおよびラットにおいてエネルギー消費を高め、血清トリアシルグリセリロール濃度、血清コレステロール濃度を低下させ、内臓脂肪蓄積を低減させることが報告されている。これらの内臓脂肪低減作用は植物ステロールでは観察されない作用である。植物ステノンの一種である5-カンペステノンの内臓脂肪低減作用がこれまでにいくつか報告されている。しかしながらその詳細なメカニズムや消化、吸収、分布、代謝といった体内動態に関しては未だ明らかになっていない。そこで、本研究ではその詳細を明らかにすること、さらにはよりよい動物実験系の構築を目的に、5-カンペステノンおよび植物ステノン混合物を用いて塗布試験を行った。その結果、2週間の塗布により、皮下脂肪低減作用の可能性が認められたが、その効果は塗布以前および塗布中の栄養状態によって異なることが示唆された。本研究では、ホイールケージを用いた自発運動評価系と、各器官由来細胞を用いた食品由来機能性成分の探索系を併用し、メタボリックシンドローム、特に肥満、脂質代謝異常に対する「運動療法」と「食事療法」の相互作用について検討することを目的としている。従来、食品由来成分の機能性評価を行う場合、混餌あるいは経口投与による動物実験が広く行われている。しかしながら、昨今、動物実験をできるだけ排除するという動きが世界的にあり、培養細胞などによるin vitro試験の確立が代替法として求められている。しかしながら、身体によい食品であっても、混合物として考えた場合、細胞毒性を示す成分がわずかに含まれているために、その成分の影響によって、正しい評価が難しいことがある。そのため、正しい評価を行うためには細胞毒性を示さない添加濃度を決定する必要がある。そこで、まず、本研究では、ヒト肝由来細胞HepG2を用いて、食品成分A、B(低用量の場合、人体への影響なし。高用量の場合、生活習慣病への影響が示唆されている。培地中への添加濃度0.55%。)およびそれらを含む食品として10種(食品成分Aは全てに含有。高用量を食すことはあまりないが、その場合の生活習慣病への影響が懸念され始めている。)を選抜し、細胞毒性評価を行い、添加濃度の決定およびスクリーニング系の構築を目指した。A(水溶性)、B(脂溶性)単体での添加の場合、5%添加では細胞密度の低下および細胞形態の増悪化が認められ、顕著な細胞毒性を示した。これを受け、食品10種の添加は0.5%あるいは1%で実験に供した。その結果、A、Bのみで添加した場合に比べて、10種いずれも差は無かったが、10種間で比較した場合、Aの含有濃度の差異は細胞毒性には影響せず、Bの有無が細胞毒性に影響していることが示された。今後、分画によるさらなる探索と動物実験での評価を行う予定である。計画中途での異動に伴い、初年度に予定していた動物実験を次年度に、次年度に予定していた細胞実験を初年度に、変更せざるを得なくなったため、動物実験の基礎データの取得が遅れているため。本研究では、ホイールケージを用いた自発運動評価系と、各器官由来細胞を用いた食費入来機能性成分の探索系を併用し、メタボリックシンドローム、特に、肥満、脂質代謝異常に対する「運動療法」と「食事療法」の相互作用について検討することを目的としている。従来、食品由来成分の機能性評価を行う場合、混餌あるいは経口投与による動物実験が広く行われている。しかしながら、昨今、動物実験をできるだけ少なくする、あるいは排除するという気運が世界的に高まっていることもあり、培養細胞などによるin vitro試験の確立が代替法として求められている。昨年度の研究で、培養細胞を用いた食品成分のスクリーニング系を構築した。そのスクリーニング系をもとに、食品AとBを選抜し、さらに、それらの水溶性画分にメタボリックシンドローム(肥満および高血圧)改善に有効な成分が含まれることが示唆された。そこで、今年度は、AとBから熱水抽出物を大量に調製し、飲水による試験を行った。C57BL/6Jマウスに脂肪を60%(カロリーベース)で含む食餌を与え、食事誘発性肥満を発症させ、週に1度血圧測定を行って、肥満および高血圧に対する影響について検討した。対照群には水を与え、さらに、AとBに共通して含まれる成分としてある種のアミノ酸を特定できたことから、「対照群(水)」「Aの熱水抽出物」「Bの熱水抽出物」「アミノ酸」の計4群で飲水試験を行った。その結果、対照群と比較して、3つの実験群はいずれも飼育4週目での血圧低下作用が認められた。しかしながら、肥満に対する影響はいずれも認められなかった。 | KAKENHI-PROJECT-16K07729 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K07729 |
自発運動と食品因子によるメタボリックシンドローム改善の相加・相乗効果に関する研究 | 血圧低下作用が発揮された一因として生体の酸化ストレスの抑制が考えられたが、細胞試験で認められた要因とは明らかに異なっていたため、今後、より精度の高いスクリーニング系の構築を目指していく予定である。昨年度の細胞実験のスクリーニング系で選抜した成分が、動物実験でもメタボリックシンドローム改善に有用であることが再現できた。従来、食品由来成分の機能性評価を行う場合、混餌あるいは経口投与による動物実験が広く行われている。近年、動物愛護の観点から、動物実験をできるだけ排除する、減少させるという風潮が世界的に高まっており、培養細胞などによるin vitro試験の確立が代替法として求められ、また、in vivo試験においても、できるだけ実験動物数低下につながる再現性の高いスキームの構築が重要と考えられている。植物ステロールは比較的酸化安定性が高い化合物であるが、動物性のコレステロールと同様に小腸内腔で腸内細菌によって3位の水酸基がケト基へと変換されて、それぞれ植物ステノン、コレステノンとなり、二重結合の位置が異なるいくつかの異性体になる。化学合成されたコレステノンや植物ステノンといったさまざまな酸化誘導体が、マウスおよびラットにおいてエネルギー消費を高め、血清トリアシルグリセリロール濃度、血清コレステロール濃度を低下させ、内臓脂肪蓄積を低減させることが報告されている。これらの内臓脂肪低減作用は植物ステロールでは観察されない作用である。植物ステノンの一種である5-カンペステノンの内臓脂肪低減作用がこれまでにいくつか報告されている。しかしながらその詳細なメカニズムや消化、吸収、分布、代謝といった体内動態に関しては未だ明らかになっていない。そこで、本研究ではその詳細を明らかにすること、さらにはよりよい動物実験系の構築を目的に、5-カンペステノンおよび植物ステノン混合物を用いて塗布試験を行った。その結果、2週間の塗布により、皮下脂肪低減作用の可能性が認められたが、その効果は塗布以前および塗布中の栄養状態によって異なることが示唆された。今年度は細胞実験と動物実験を同時進行で行い、基礎データの取得および分画法の確立によるスクリーニング系の構築を目指す。昨年度の細胞実験のスクリーニング系で選抜した成分が、動物実験でもメタボリックシンドローム改善に有用であることが再現できたが、動物実験で得られた作用機序は全く別の機序であったため、更に精度の高いスクリーニング系の構築を目指す。28年度に行う予定であった動物実験を次年度に繰り越したため。(理由)29年度に行った動物実験で、一回で実験する群数を増やし、回数を一回分減らしたため。(使用計画)30年度により精度の高いスクリーニング系の構築を目指し、またその確認のための動物実験の回数を増やして使用する。動物実験を29年度に行うために使用する。 | KAKENHI-PROJECT-16K07729 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K07729 |
虚血負荷応答としての神経細胞内在性SOD変動の検討 | 脳虚血病態における活性酸素消去機構の関与解明の目的で、砂ネズミの一過性前脳虚血モデルを用い、血流再開後の海馬におけるsuperoxide dismutase(SOD)産生能の変動をmRNAおよび蛋白レベルで検討した。2.虚血負荷応答としてのSOD変動の検討:(1)遅発性神経壊死をきたす5分間虚血負荷後の変動;一過性脳虚血に伴い、CuZnSODmRNAは一過性の発現増強を認め、CA1領域では発現亢進の遷延化が観察された。これは脆弱神経細胞へのSODmRNA発現亢進刺激の遷延化をも示唆する。一方、MnSODmRNAも同様に5分虚血に伴い発現亢進がみられたが神経細胞壊死とともに出現するグリア様小細胞での発現が観察された。免疫組織化学的検討により、脆弱神経細胞での内在性SOD蛋白はそのmRNA亢進時期にはむしろ染色性が低下することが明かとなった。このことは脆弱細胞での蛋白合成系の一時的破綻を示唆する。(2)虚血耐性を誘導する2分間虚血負荷後の変動;2分の虚血負荷はCuZnSODmRNA発現には大きな影響を与えなかったが、MnSODmRNA発現亢進をもたらした。免疫組織化学的には脆弱細胞でのCuZnSOD染色性の有意な変化は認められないものの、MnSOD染色性の増強が観察された。このことは、虚血耐性獲得細胞でのMnSODの選択的発現誘導を意味し、虚血耐性現象におけるMnSODの活性酸素消去酵素としての防御的役割が示唆された。結論として、虚血負荷はSOD産生亢進刺激となり得るが、SOD蛋白発現は細胞内蛋白合成能により左右されると考えられた。また、虚血耐性獲得にはMnSOD蛋白発現がより関与していることが示唆された。脳虚血病態における活性酸素消去機構の関与解明の目的で、砂ネズミの一過性前脳虚血モデルを用い、血流再開後の海馬におけるsuperoxide dismutase(SOD)産生能の変動をmRNAおよび蛋白レベルで検討した。2.虚血負荷応答としてのSOD変動の検討:(1)遅発性神経壊死をきたす5分間虚血負荷後の変動;一過性脳虚血に伴い、CuZnSODmRNAは一過性の発現増強を認め、CA1領域では発現亢進の遷延化が観察された。これは脆弱神経細胞へのSODmRNA発現亢進刺激の遷延化をも示唆する。一方、MnSODmRNAも同様に5分虚血に伴い発現亢進がみられたが神経細胞壊死とともに出現するグリア様小細胞での発現が観察された。免疫組織化学的検討により、脆弱神経細胞での内在性SOD蛋白はそのmRNA亢進時期にはむしろ染色性が低下することが明かとなった。このことは脆弱細胞での蛋白合成系の一時的破綻を示唆する。(2)虚血耐性を誘導する2分間虚血負荷後の変動;2分の虚血負荷はCuZnSODmRNA発現には大きな影響を与えなかったが、MnSODmRNA発現亢進をもたらした。免疫組織化学的には脆弱細胞でのCuZnSOD染色性の有意な変化は認められないものの、MnSOD染色性の増強が観察された。このことは、虚血耐性獲得細胞でのMnSODの選択的発現誘導を意味し、虚血耐性現象におけるMnSODの活性酸素消去酵素としての防御的役割が示唆された。結論として、虚血負荷はSOD産生亢進刺激となり得るが、SOD蛋白発現は細胞内蛋白合成能により左右されると考えられた。また、虚血耐性獲得にはMnSOD蛋白発現がより関与していることが示唆された。CuZnSOD mRNA及びMnSOD mRNAに対するプロ-ブの特異性はNorthern blottingやsenseプロ-ブ、blocking test等により確認され、本研究施行に際し両プロ-ブを使用することの妥当性が証明された。In situ hybridization histochemistryではCuZnSOD mRNAが海馬CAlー3領域に均等に発現していたが、MnSOD mRNA発現は虚血負荷に対し脆弱性を示すCAlで選択的に乏しく、両SODの細胞内酸化防御機構における機能的役割分担が示唆された。5分間の虚血負荷に伴い、CuZnSOD mRNA、MnSOD mRNAとも一過性の発現亢進が認められた。特に、CAl錐体細胞層ではSuZnSOD mRNA発現亢進の遷延化が観察され、発現刺激因子(活性酸素等)の作用遷延化と選択的脆弱性との関連性が示唆された。一方、CuZnSOD蛋白の海馬神経での免疫染色性は虚血負荷後一過性に低下し、CAl錐体細胞ではmRNA発現亢進にもかかわらず、染色性の一層の低下をきたし、虚血負荷早期(24時間まで)での蛋白合成系の破綻を示す所見が得られた。またこの蛋白レベルとmRNAとの解離程度は細胞の脆弱性の程度とよく相関し、長期遷延化する刺激と蛋白合成能破綻のメカニズムの細胞死における関与が示唆された。MnSOD mRNAもCuZnSOD mRNAと同様、CAl錐体細胞層でのその発現亢進が認められ、MnSOD蛋白合成との解離も示唆された。しかし虚血負荷3日目以降、CuZnSODは、mRNA、蛋白ともCAl錐体細胞層より減少傾向にあったのに対し、MnSODはCAl錐体細胞層に新たに発現が認められた。 | KAKENHI-PROJECT-03670470 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03670470 |
虚血負荷応答としての神経細胞内在性SOD変動の検討 | これは錐体細胞が脱落壊死に陥った虚血後7日目にも観察され、MnSODがグリア細胞に新たに発現することを示すものである。以上の結果より神経細胞内在性SODは虚血負荷によりその産生能としてのmRNAレベルは亢進するものの、虚血後の細胞内蛋白合成障害の結果その産生は抑制されることが明かとなった。このことは虚血障害における神経細胞内酸素消去系機能低下の重要性を示す。また神経細胞脱落以前よりグリアにSOD発現を認めたことは、グリア細胞での活性酸素発生が示唆され、遅発性神経細胞障害における細胞間相互応答の重要性を示す結果であると考えられる。脳虚血病態における活性酸素消去機構の関与解明の目的で、砂ネズミの一過性前脳虚血モデルを用い、血流再開後の海馬におけるsuperoxide dismutase(SOD)産生能の変動をmRNAおよび蛋白レベルで検討した。2.虚血負荷応答としてのSOD変動の検討:(1)遅発性神経壊死をきたす5分間虚血負荷後の変動;一過性脳虚血に伴い、CuZnSODmRNAは一過性の発現増強を認め、CA1領域では発現亢進の遷延化が観察された。これは脆弱神経細胞へのSODmRNA発現亢進刺激の遷延化をも示唆する。一方、MnSODmRNAも同様に5分虚血に伴い発現亢進がみられたが神経細胞壊死とともに出現するグリア様小細胞での発現が観察された。免疫組織化学的検討により、脆弱神経細胞での内在性SOD蛋白はそのmRNA亢進時期にはむしろ染色性が低下することが明かとなった。このことは脆弱細胞での蛋白合成系の一時的破綻を示唆する。(2)虚血耐性を誘導する2分間虚血負荷後の変動;2分の虚血負荷はCuZnSODmRNA発現には大きな影響を与えなかったが、MnSODmRNA発現亢進をもたらした。免疫組織化学的には脆弱細胞でのCuZnSOD染色性の有意な変化は認められないものの、MnSOD染色性の増強が観察された。このことは、虚血耐性獲得細胞でのMnSODの選択的発現誘導を意味し、虚血耐性現象におけるMnSODの活性酸素消去酵素としての防御的役割が示唆された。結論として、虚血負荷はSOD産生亢進刺激となり得るが、SOD蛋白発現は細胞内蛋白合成能により左右されると考えられた。また、虚血耐性獲得にはMnSOD蛋白発現がより関与していることが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-03670470 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03670470 |
核酸トランスポーターSLC29A1の発現解析によるリバビリンの副作用発症予測 | 慢性C型肝炎の薬物療法において、リバビリン(RBV)はインターフェロンと併用で用いられる薬物である。RBVの副作用として溶血性貧血が多発するため、投与量の減量もしくは投与が中止される症例が少なくない。この様な症例では、RBVの効果が十分でなく、疾患の再燃が問題となっている。貧血の発症機序として、RBVの赤血球内への過剰な蓄積が指摘されている。すなわち、ヌクレオシドトランスポーター(SLC29A1)を介して赤血球内に取り込まれたRBVが1000μM以上の濃度に蓄積すると、ヘモグロビン(Hb)値の低下が顕著になり、貧血が発症することが報告されている。赤血球中RBV濃度には個人差があり、Hb低下と関連することも確認されている。申請者は、この個人差の一因として、RBVの輸送に関わるSLC29A1の発現量の個人差を考えている。SLC29A1をコードするSLC29A1遺伝子には、いくつかの一塩基多型(SNP)が報告されているが、これらのSNPとSLC29A1の機能への関与は未だ明らかにされていない。したがって、SNPの解析とmRNAの発現量を把握することで、SLC29A1の活性を評価でき、RBVの副作用発症を予測できると考えられる。SLC29A1 mRNAには5種類のtranscript variantが存在することが報告されている。申請者は5種類全てのvariantを検出するプライマーを開発して、リアルタイムPCR法でSLC29A1 mRNAの発現量を測定した。その結果、多型の1つである-706G>Cに注目したところ、-706G/CはG/Gに比べて末梢血リンパ球上のSLC29A1 mRNA発現が有意に低いことを明らかにした。今後は、-706G>Cの多型がSLC29A1タンパクの発現や赤血球内RBV濃度に及ぼす影響を調べ、RBV誘導性貧血への寄与率を検証する必要があると考える。慢性C型肝炎の薬物療法において、リバビリン(RBV)はインターフェロンと併用で用いられる薬物である。RBVの副作用として溶血性貧血が多発するため、投与量の減量もしくは投与が中止される症例が少なくない。この様な症例では、RBVの効果が十分でなく、疾患の再燃が問題となっている。貧血の発症機序として、RBVの赤血球内への過剰な蓄積が指摘されている。すなわち、ヌクレオシドトランスポーター(SLC29A1)を介して赤血球内に取り込まれたRBVが1000μM以上の濃度に蓄積すると、ヘモグロビン(Hb)値の低下が顕著になり、貧血が発症することが報告されている。赤血球中RBV濃度には個人差があり、Hb低下と関連することも確認されている。申請者は、この個人差の一因として、RBVの輸送に関わるSLC29A1の発現量の個人差を考えている。SLC29A1をコードするSLC29A1遺伝子には、いくつかの一塩基多型(SNP)が報告されているが、これらのSNPとSLC29A1の機能への関与は未だ明らかにされていない。したがって、SNPの解析とmRNAの発現量を把握することで、SLC29A1の活性を評価でき、RBVの副作用発症を予測できると考えられる。SLC29A1 mRNAには5種類のtranscript variantが存在することが報告されている。申請者は5種類全てのvariantを検出するプライマーを開発して、リアルタイムPCR法でSLC29A1 mRNAの発現量を測定した。その結果、多型の1つである-706G>Cに注目したところ、-706G/CはG/Gに比べて末梢血リンパ球上のSLC29A1 mRNA発現が有意に低いことを明らかにした。今後は、-706G>Cの多型がSLC29A1タンパクの発現や赤血球内RBV濃度に及ぼす影響を調べ、RBV誘導性貧血への寄与率を検証する必要があると考える。 | KAKENHI-PROJECT-21927006 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21927006 |
病的賭博者家族の自助グループ参加による内面的成長過程 | 本研究は、病的賭博に付随する諸問題に直面した家族が、自助グループへの参加により、どのような変化と成長の過程をたどるのかを明らかにすることを目的とした。病的賭博者家族の自助グループに参加している家族への半構成的インタビューガイドに基づく面接調査と、フォーカスグループインタビューを実施した。面接内容から個人の状況の捉えおよび取り組みに関するデータを取り出し、その本質的な内容を共通性に従って分類しカテゴリーを作り、成長過程という観点でカテゴリーの関係を検討した。本研究は、病的賭博に付随する諸問題に直面した家族が、自助グループへの参加により、どのような変化と成長の過程をたどるのかを明らかにすることを目的とした。病的賭博者家族の自助グループに参加している家族への半構成的インタビューガイドに基づく面接調査と、フォーカスグループインタビューを実施した。面接内容から個人の状況の捉えおよび取り組みに関するデータを取り出し、その本質的な内容を共通性に従って分類しカテゴリーを作り、成長過程という観点でカテゴリーの関係を検討した。【研究目的】病的賭博者家族の自助グループへの参加による内面的成長過程を明らかにする。【研究方法】1.対象者:自助グループまたは公共機関主催の家族会に参加している病的賭博者家族。2.データ収集:2009年9月10月、半構成的インタビューガイドを用いた個別面接を1人1回実施した。3.分析方法:面接内容を録音、逐語録を作成し内容及び意味に忠実に逐次的に分析した。個人の体験を内容により分類した後、9名分のデータを内容の類似性に基づきカテゴリー化した。4.倫理的配慮:自助グループの代表者、病的賭博者家族への支援を行っている公共機関長と担当者に研究の趣旨を説明し対象者の紹介を受けた。本研究は研究機関の倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】1.対象者の概要:3県にてデータ収集を実施した。女性9名、平均年齢49.1歳、病的賭博者本人との続柄は、妻2名、元妻2名、母2名、姉1名、娘2名であった。面接時間合計は10時間32分であった。2.分析結果:病的賭博者家族が自助グループ参加に至るまでの過程には、《病的賭博に付随する問題に集中している段階》《病的賭博への関心移行の段階》《無力を知る段階》《新たな居場所をみつける段階》の段階があった。病的賭博に付随する問題には、借金と返済の繰り返し、家事をしない、仕事を辞める、部屋に閉じこもる、失踪、自傷行為、自殺をほのめかす等があり、9事例が何らかの家庭生活、社会生活の破綻と不安を体験していた。9事例とも外部への相談を最初に実施したのは、病的賭博者本人ではなく家族であった。【考察】病的賭博者家族は、借金返済の肩代わりや本人の説得、家族間での意見調整、外部機関への相談等の試行錯誤や葛藤を体験していた。病的賭博者家族の生活と心身の状況は、続柄にかかわらず病的賭博者本人の言動の影響を受けており、家族が問題に巻き込まれていることが明らかになった。今後は早期介入支援体制の構築が必要である。本研究の目的は、病的賭博者家族の自助グループへの参加による内面的成長過程を明らかにすることである。平成22年度は、日本地域看護学会13回学術集会(7月11日)一般口演(O-7-04)にて「病的賭博者家族の自助グループ参加に至る過程」、第36回日本看護研究学会学術集会(8月21日)第5群地域・家族看護にて「病的賭博者家族の病的賭博に付随する問題への対応の実態」を口演発表した(演題番号23)。そして日本アディクション看護学会第9回学術大会(11月7日)では、一般演題II群-6にて「病的賭博者の家族が外部への相談に至るまでの体験」を口演発表した。関連学会への参加及び発表によって、病的賭博に関する課題や対応の示唆を得ることができた。10月12日には、川崎医療福祉大学3603講義室にて、ギャンブル依存ファミリーセンター代表町田政明氏を講師に迎え、援助者情報交換会「ギャンブル依存症とその支援について」を企画実施した。ギャンブル依存症に関心のある援助職者を対象とし、精神保健福祉関係職員等がギャンブル依存症についての知識と対応方法について情報を共有し、家族や本人への支援の際に活用することを目的とした。当日は28名の参加があり、ギャンブル依存症とはどのような病気か、ギャンブル依存症の回復と家族、援助機関の対応、家族へのインタビュー結果について、講演および意見交換を行った。本行事の岡山県内での開催は初めてであり、精神保健福祉関係の援助職が知識を深めることにより、岡山県内での情報共有、支援体制の構築が促進されることが期待できる。【研究目的】病的賭博者家族の自助グループへの参加による内面的成長過程を明らかにする。【研究方法】1.対象者:自助グループまたは公共機関主催の家族会に参加している病的賭博者家族。2.データ収集:2009年9月10月、半構成的インタビューガイドを用いた個別面接を1人1回実施した。3.分析方法:面接内容を録音、逐語録を作成し内容及び意味に忠実に逐次的に分析した。個人の体験を内容により分類した後、9名分のデータを内容の類似性に基づきカテゴリー化した。 | KAKENHI-PROJECT-21792348 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21792348 |
Subsets and Splits