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アルカリシリカ反応の膨張を活用した長期微膨張型高靱性コンクリートの開発と構造利用 | 本研究においては,長期微膨張型のセメント系材料を開発することを目的としている。膨張材と粒子状静的破砕剤と反応性骨材とを組み合わせた長期微膨張型の高靱性コンクリート(HPFRCC)を開発した。膨張型HPFRCCの膨張性能を評価するための試験方法を提案した。膨張型HPFRCCで作製した模擬骨材をコンクリートに混入することにより,アルカリシリカ反応(ASR)によるひび割れに似たひび割れを生じさせることができた。ひび割れが生じたコンクリート供試体を,ひび割れへ注入するエポキシ樹脂の注入性能の評価試験に利用した。本研究においては,高靱性繊維補強コンクリート(HPFRCC)と反応性骨材などの膨張性材料とを組み合わせることにより,長期にわたって微膨張性能を有するHPFRCC(長期微膨張型HPFRCC)を開発し構造利用するとともに,長期微膨張型HPFRCCの膨張性能を簡便に評価するための試験方法を提案することを目的としている。場所打ちRC杭の杭頭処理用の粒子状静的破砕剤は,粒度と添加量を適切に定めてHPFRCCに混入することにより,セメントが硬化した後に損傷を与えずに膨張挙動を示す膨張材料として利用できることを明らかにした。コンクリート円柱供試体(直径150mm,高さ150mm)に内径60mm程度の孔を,円柱供試体側面から所定の位置(例えば5mm刻みに1545mm)に設け,長期微膨張型HPFRCCを孔に充填して肉厚部分にひび割れが発生する時間を計測することにより,材齢と膨張エネルギーの関係を計測する試験方法を提案した。常温(20°C)であっても,湿潤状態にあれば長期微膨張挙動を示すHPFRCCを,膨張剤(主に材齢2週程度まで),粒子状静的破砕剤(主に材齢数ヶ月まで),反応性骨材(さらに長期)を組み合わせて使用することにより作製できることを明らかにした。粒子状静的破砕剤を混入(本研究では100kg/m3)した膨張型HPRFCCにより作製した模擬膨張骨材(寸法15mm程度)を粗骨材として混入したコンクリートを作製することで,ASRひび割れの様な立体亀甲状のひび割れを有するコンクリート供試体を23週間で造ることができた。ひび割れを生じさせたコンクリート供試体を,ひび割れへ注入するエポキシ樹脂の注入性能の評価試験に利用し,その有用性を明らかにした。本研究においては,長期微膨張型のセメント系材料を開発することを目的としている。膨張材と粒子状静的破砕剤と反応性骨材とを組み合わせた長期微膨張型の高靱性コンクリート(HPFRCC)を開発した。膨張型HPFRCCの膨張性能を評価するための試験方法を提案した。膨張型HPFRCCで作製した模擬骨材をコンクリートに混入することにより,アルカリシリカ反応(ASR)によるひび割れに似たひび割れを生じさせることができた。ひび割れが生じたコンクリート供試体を,ひび割れへ注入するエポキシ樹脂の注入性能の評価試験に利用した。コンクリート工学 | KAKENHI-PROJECT-15K14014 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K14014 |
日本人は睡眠呼吸障害になりやすいか?-危険因子解明への歯科的アプローチ | 日本人患者における閉塞型睡眠時無呼吸症候群に対する骨格性要因の影響について検討した。300人の男性患者を対象として、体格要因と頭部側面規格エックス線写真の分析をおこなったところ、重回帰分析でBMIのほか舌骨の垂直的高さおよび顔面の水平長が重症度の指標として用いるAHIに影響を与える因子として抽出された。以上より日本人男性では、肥満の進行のほか顔面の前後が短く、舌骨が低位をとるような顎顔面骨格形態がリスク因子である可能性が示唆された。日本人患者における閉塞型睡眠時無呼吸症候群に対する骨格性要因の影響について検討した。300人の男性患者を対象として、体格要因と頭部側面規格エックス線写真の分析をおこなったところ、重回帰分析でBMIのほか舌骨の垂直的高さおよび顔面の水平長が重症度の指標として用いるAHIに影響を与える因子として抽出された。以上より日本人男性では、肥満の進行のほか顔面の前後が短く、舌骨が低位をとるような顎顔面骨格形態がリスク因子である可能性が示唆された。1、閉塞型睡眠呼吸障害の重症度に関与する要因の解明当院いびき外来を受診した外来患者データ(終夜睡眠ポリソムノグラフィーおよびエックス線写真所見)を解析し、睡眠呼吸障害の重症度と身体的特徴との関連を検索中である。頭部エックス線規格写真のデータ取り込みには安永コンピュータシステム社製のセファロ取り込みソフトウェア、Cefalo Oneを導入し活用中であるが、データを保存して随時呼び出せること、他データとの比較が容易であることなどの利点を有しており、本研究以外の用途としても今後臨床データの蓄積に非常に有効な手法であることが確認できた。2、加齢に伴う顎顔面ならびに気道形態変化が睡眠時の呼吸に及ぼす影響の解明本学所属の職員が学生時の頭部エックス線写真を比較に用い、現在のエックス線写真データ、睡眠時酸素飽和度モニタ、アンケート調査を行い、加齢による顎顔面形態および気道形態の加齢変化ならびにそれらが睡眠呼吸障害に及ぼす影響について検討中である。本研究は睡眠呼吸障害の発症に関与する身体的特徴の傾向を明らかにし、さらに加齢に伴う変化が与える影響についても加味して検討することにより、当疾患の発症予防も含めた歯科的アプローチを模索することを目的としており、上記のようなデータ解析の例数を重ね分析することによって、今後睡眠時無呼吸症候群のハイリスクグループをある程度の精度で比較的早期に予測することが可能になる可能性があり、現在も継続してデータの解析を続けている。【目的】日本人における閉塞型睡眠呼吸障害のリスクファクターを解明するために、側面頭部X線規格写真を用いて閉塞型睡眠呼吸障害の重症度と顎顔面形態との関連性を明確にするとともに、加齢に伴う顎顔面形態や気道形態の変化が睡眠時の呼吸状態にどのような影響を及ぼすかを調査することにより顎顔面形態のリスクファクターを明らかにすること。【21年度の研究内容】日本人の閉塞型睡眠呼吸障害患者の重症度に関与する要因について解明するために、当院いびき外来を受診した閉塞型睡眠呼吸障害患者の終夜睡眠ポリソムノグラフィーの分析および側面頭部X線規格写真の分析(硬組織および軟組織上の計測点26点の二次元座標値をコンピュータに入力して算出した距離的計測12項目と角度的計測および患者の身体的特徴データ4項目(年齢、身長、体重、Body Mass Index)から得られる変数を用いて主成分分析をおこなっている。加えて、顎変形症患者術前の側方頭部規格X線写真を同様の手法で分析し、CTから得られる舌・咽頭周囲の3次元データを再構成し算出した咽頭気道容積との関連を検索した。この容積は体格に応じて変化する傾向がみられたが、顔面形態とも関連する可能性があり、今後も検討を重ねていく予定である。また、学生実習の一環として撮影した頭部規格X線写真を用い、学生時と現在の顎顔面および気道形態・体格等の比較をおこない、さらに睡眠時の呼吸状態を酸素飽和度モニタでスクリーニング検査することにより、加齢による睡眠時呼吸状態への関与を明らかにすることができるよう、検討をおこなっていく予定である。日本における閉塞型睡眠時無呼吸症候群の有病率は欧米と同程度であるが、欧米の報告と比較して超肥満症例の占める割合が低いことから、日本人は骨格的に閉塞型睡眠時無呼吸症候群になりやすい人種ではないかともいわれている。本研究の目的は、日本人における閉塞型時無呼吸症候群のリスクファクターを明らかにすることである。対象は日本人男性睡眠呼吸障害患者300名で、閉塞型睡眠呼吸障害の重症度、年齢、肥満度、側方頭部X線規格写真を用いた顎顔面形態分析結果との関連性を検討した。終夜睡眠ポリソムノグラフィ検査結果から閉塞型睡眠呼吸障害の重症度を分類したところ、Apnea Hypopnea Index(AHI)が5未満のいびき症12名、AHI5以上15未満の軽症77名、AHI15以上30未満の中等症122名、AHI30以上の重症89名で、平均AHI(SD)は25.5(18.1)あった。年齢は20歳から78歳、平均(SD)は49(14)歳で、肥満度を表すBMIは17.0から39.4、平均(SD)は24.7(32)であり、BMIが30以上で肥満2度以上の患者は18名6%であった。 | KAKENHI-PROJECT-20592322 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20592322 |
日本人は睡眠呼吸障害になりやすいか?-危険因子解明への歯科的アプローチ | 側方頭部X線規格写真分析では、SNA、SNB、PPH、MPH、PAS、軟口蓋長などの顎顔面形態や気道形態を反映する項目を計測し、それぞれの平均値(SD)は、82.4(4.1)、78.0(6.8)、56.8(16.4)、23.8(6.5)、16.5(6.0)、64.8(19.2)であった。AHIと各項目間についてSpearmanの順位相関係数を算出し検討したところ、AHIは加齢に伴い上昇する傾向があり、BMIとも高い相関を示した。また、AHIと相関を認めた側方頭部X線規格写真分析項目は舌骨から口蓋平面までの距離PPHであった。以上の結果から、日本人男性閉塞型睡眠時無呼吸症候群患者では、加齢や肥満の進行ならびに舌骨が低位をとるような顎顔面形態がリスク因子であるが、肥満2度以上の患者の占める割合は低かった。 | KAKENHI-PROJECT-20592322 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20592322 |
イオン散乱照射を利用した超高効率エネルギー機能材料の創生 | 超伝導材料の高機能化に向けて、イオン照射によって形成される照射欠陥と超伝導特性の変化を明らかにし、結晶欠陥などのナノ構造を制御することで超伝導特性を飛躍的に向上させることを目的に研究を行った。平成30年度は、低エネルギーでの軽イオン照射が鉄系超伝導体FeSe0.5Te0.5(FST)薄膜に及ぼす影響を調べた。具体的には、H+イオンを190 keVという低いエネルギーで照射したFST薄膜の臨界電流特性Jcと不可逆磁場Hirr及び上部臨界磁場Hc2の異方性について調べた。照射したFST薄膜のJcの異方性は、未照射薄膜と比較して、4.2 K、15 Tで約1/2になることがわかった。また、照射したFST薄膜のHc2の異方性はTc近傍では約3.5であったが、温度の低下に伴い、異方性は低下することがわかった。低エネルギー軽イオン照射による超伝導特性の異方性を明らかにできたため、達成度としてはおおむね順調に進展していると判断した。平成31年度は、銅酸化物超伝導薄膜におけるJcの更なる向上を目指して、Arイオンの照射密度や照射エネルギーがTcとJcに及ぼす影響を系統的に調べ、透過型電子顕微鏡(TEM)等による微細構造観察を行うことでイオン照射条件と超伝導特性および形成される結晶欠陥・格子歪みの関係を明らかにする。また、トポロジカル超伝導薄膜へのイオン照射効果も調べる。高効率エネルギー機能材料である超伝導材料は超伝導転移温度Tc以下で電気抵抗がゼロになる。また、臨界電流密度Jcまで電気抵抗ゼロで電流を流すことができる。そのため、超伝導材料技術は、低炭素社会実現のための中核技術になり得る。超伝導材料技術を用いたエネルギーシステムの多くは、磁場中で多くの電流を流す必要がある。そのためには、超伝導体内に侵入した量子化磁束線を“ピン止め"し、磁束の運動を抑える必要がある。しかしながら、欠陥を導入すると結晶格子が壊れるためTcが低下してしまう。そのため、Tcの低下を抑えつつJcを上昇させる欠陥をデザインすることは学術的な中心課題の一つであり、産業応用に向けて世界中で取り組まれている急務の課題である。これまで申請者らは、鉄系超伝導薄膜に軽い水素イオン(H+)を極めて低いエネルギー(190 keV)で、しかもアルミニウム箔を介して散乱させながら照射することで超伝導特性を大幅に向上することを見出した。本研究では、超伝導材料の高機能化に向けて、イオン照射前後の結晶格子や電子構造と超伝導特性の変化を明らかにすることにより低エネルギーイオン散乱照射技術を確立し、結晶欠陥などのナノ構造を制御することで超伝導特性を飛躍的に向上させる、超高効率エネルギー機能材料を創生することを目的としている。平成29年度は、低エネルギーでの重イオン照射が鉄系超伝導体FeSe0.5Te0.5(FST)薄膜に及ぼす影響を調べた。具体的には、Auイオンを6 MeVで照射することで、低エネルギー重イオン照射と超伝導特性および形成される欠陥の関係を明らかにした。重いAuイオンを6 MeVという比較的低いエネルギーでFeSe0.5Te0.5(FST)薄膜に照射することで、低エネルギー重イオン照射と超伝導特性および形成される欠陥の関係を調べた。照射されたFST薄膜は照射前よりも0.5 KだけTcが低下したが、Jcは自己磁場下(0 T)で低下せず、10 K、9 T(B//c)でJcが70 %上昇した。また、Jc(4.2 K)の磁場角度依存性を調べると全角度領域で照射前よりもJcが向上していることがわかった。照射後のFST薄膜の断面TEM像からAuイオン照射によって10-15 nmサイズのクラスター状の欠陥が観察された。これらの結果から、低エネルギーの重イオン照射は等方的なピン止め点導入に有効であることがわかった。低エネルギー重イオン照射と超伝導特性および形成される欠陥の関係を明らかにできたため、達成度としてはおおむね順調に進展していると判断した。超伝導材料の高機能化に向けて、イオン照射によって形成される照射欠陥と超伝導特性の変化を明らかにし、結晶欠陥などのナノ構造を制御することで超伝導特性を飛躍的に向上させることを目的に研究を行った。平成30年度は、低エネルギーでの軽イオン照射が鉄系超伝導体FeSe0.5Te0.5(FST)薄膜に及ぼす影響を調べた。具体的には、H+イオンを190 keVという低いエネルギーで照射したFST薄膜の臨界電流特性Jcと不可逆磁場Hirr及び上部臨界磁場Hc2の異方性について調べた。照射したFST薄膜のJcの異方性は、未照射薄膜と比較して、4.2 K、15 Tで約1/2になることがわかった。また、照射したFST薄膜のHc2の異方性はTc近傍では約3.5であったが、温度の低下に伴い、異方性は低下することがわかった。低エネルギー軽イオン照射による超伝導特性の異方性を明らかにできたため、達成度としてはおおむね順調に進展していると判断した。 | KAKENHI-PROJECT-17H04980 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H04980 |
イオン散乱照射を利用した超高効率エネルギー機能材料の創生 | 平成30年度は、軽イオン乱照射による鉄系超伝導薄膜のTcとJcの更なる向上を目指して、軽イオンの照射密度や照射エネルギーがTcとJcに及ぼす影響を系統的に調べ、透過型電子顕微鏡(TEM)等による微細構造観察を行うことでイオン照射条件と超伝導特性および形成される結晶欠陥・格子歪みの関係を明らかにする。また、軽イオン照射技術の確立と産業応用を目指して、銅酸化物高温超伝導体であるYBa2Cu3Oy薄膜に軽イオン照射を行い、軽イオン照射技術が他の超伝導材料に与える影響を調べる。平成31年度は、銅酸化物超伝導薄膜におけるJcの更なる向上を目指して、Arイオンの照射密度や照射エネルギーがTcとJcに及ぼす影響を系統的に調べ、透過型電子顕微鏡(TEM)等による微細構造観察を行うことでイオン照射条件と超伝導特性および形成される結晶欠陥・格子歪みの関係を明らかにする。また、トポロジカル超伝導薄膜へのイオン照射効果も調べる。 | KAKENHI-PROJECT-17H04980 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H04980 |
中枢神経系の神経伝達に対するアデノシン、ATPの生理作用とその分子機構の解明 | 中枢神経系の神経伝達に対するアデノシンおよびアデノシン三燐酸(以下ATPと略)の生理作用およびその分子機構を解明するために、平成10年度は、既に我々が確立している初代培養神経細胞等の培養細胞において、アデノシンおよびATPを細胞より投与し、パッチクランプ法にて記録した全細胞電流に対する効果を検討し、まず、細胞膜の興奮性の調節に関与するのか否かを明らかにした後、更に、二次メッセンジャーに対する特異的阻害剤、保進剤を用いて、その調節作用において、アデノシンおよびATP受容体に関与する細胞内情報伝達機構を明らかにすることを試みた。その結果、培養神経細胞に発現している、GTP結合蛋白質と共役したP2Y受容体を介した、ATPとアデノシンによるカリウムチャネルの活性化作用、細胞内カルシウム濃度増加作用、さらに、その細胞内情報伝達に関わるGTP結合蛋白質、イノシトール燐脂質代謝、蛋白燐酸化酵素Cの調節機序を明らかにし、ATPおよびアデノシンによる神経活動の抑制機序を明らかにし得た(Journal of Neurophysiology,1998&Neuroscience Letters.1998)。これらの成果を平成10年、第75回日本生理学会大会(金沢)でのシンポジウム「ATP受容体の生理機能と分子機構」で(Japanese Journal of Physiolog,発表予定)、また、平成10年、第6回アデノシンとアデニンヌクレオチドに関する国際シンポジウム(イタリア)で発表した。中枢神経系の神経伝達に対するアデノシンおよびアデノシン三燐酸(以下ATPと略)の生理作用およびその分子機構を解明するために、平成10年度は、既に我々が確立している初代培養神経細胞等の培養細胞において、アデノシンおよびATPを細胞より投与し、パッチクランプ法にて記録した全細胞電流に対する効果を検討し、まず、細胞膜の興奮性の調節に関与するのか否かを明らかにした後、更に、二次メッセンジャーに対する特異的阻害剤、保進剤を用いて、その調節作用において、アデノシンおよびATP受容体に関与する細胞内情報伝達機構を明らかにすることを試みた。その結果、培養神経細胞に発現している、GTP結合蛋白質と共役したP2Y受容体を介した、ATPとアデノシンによるカリウムチャネルの活性化作用、細胞内カルシウム濃度増加作用、さらに、その細胞内情報伝達に関わるGTP結合蛋白質、イノシトール燐脂質代謝、蛋白燐酸化酵素Cの調節機序を明らかにし、ATPおよびアデノシンによる神経活動の抑制機序を明らかにし得た(Journal of Neurophysiology,1998&Neuroscience Letters.1998)。これらの成果を平成10年、第75回日本生理学会大会(金沢)でのシンポジウム「ATP受容体の生理機能と分子機構」で(Japanese Journal of Physiolog,発表予定)、また、平成10年、第6回アデノシンとアデニンヌクレオチドに関する国際シンポジウム(イタリア)で発表した。 | KAKENHI-PROJECT-10780510 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10780510 |
ブレーンワールドモデルにおける事象の地平線とその特異点の研究 | 反ド・ジッター時空やミンコフスキー時空内における空間的部分多様体の幾何学的不変量の局所的性質と大域的性質の研究を推進した。その結果、ミンコフスキー時空内の空間的部分多様体の性質として、光的タイト部分多様体という概念を導入した。また、ミンコフスキー時空の限界捕捉面がグラフ型の場合に満たす偏微分方程式の記述に成功した。反ド・ジッター時空やミンコフスキー時空内における空間的部分多様体の幾何学的不変量の局所的性質と大域的性質の研究を推進した。その結果、ミンコフスキー時空内の空間的部分多様体の性質として、光的タイト部分多様体という概念を導入した。また、ミンコフスキー時空の限界捕捉面がグラフ型の場合に満たす偏微分方程式の記述に成功した。本研究は、宇宙論や素粒子物理学に現れる、反ド・シッター空間と呼ばれるローレンツ多様体の部分多様体の微分幾何学的性質を、特異点論を応用することによって研究することを主要な目的としている。初年度は、理論物理学における、基本的文献である、ランドール等による、5次元反ドジッター空間内における2種類のブレーン宇宙モデルを数学的にいかに解釈するかについて考察した。その結果、ランドール・サンドラムモデルにおけるブレーンは、双曲空間におけるホロ超球面に対応することが理解でき、カーチ・ランドールモデルにおけるブレーンは等距離超曲面に対応することが理解された。これらの超曲面は数学的(微分幾何学的)には、全臍的な超曲面の一種で、特異点論の応用としての微分幾何学では、全臍的超曲面は幾何学的モデルと考えることができるので、理論物理におけるモデルが数学的にもモデルと考えられる空間であることが興味深い。この事実から、一般のブレーンに対する、特異点論の応用としての微分幾何学は幾何学的モデルとの近さや違いを表わす不変量(曲率)が何らかの対応する物理的意味を持つころがわかる。次に、これらの不変量を求めるために一般の時間的超曲面で余次元1の空間的部分多様体から定まる様相構造をもつものを考えた。この葉となる空間的部分多様体は全体空間内では余次元が2なので、以前にミンコフスキー空間の場合に開発した手法がこの場合にも適用される。実際の計算等を進めて、さらには、波面の伝播理論を応用することは次年度以降の課題である。本研究は、宇宙論や素粒子物理学に現れる、反ド・シッター空間と呼ばれるローレンツ多様体の部分多様体の微分幾何学的性質を、特異点論を応用することによって研究することを主要な目的としている。平成22年度には、より単純な場合で、特殊相対性理論の舞台である一般次元のミンコフスキー時空内の空間的部分多様体の不変量の構成とその幾何学的意味付けの研究を推進した。反ド・シッター空間を考えるかわりにミンコフスキー時空を考えると、因果律が単純なために、より詳しい構造が理解可能となる。以前からの代表者の研究で、ミンコフスキー時空内の空間的部分多様体で余次元2の場合がユークリッド空間内の超曲面の理論に対応することが理解され、その場合の微分幾何学的不変量の構成と幾何学的意味付けが得られている。ブレーンワールドモデルにおけるブレーンの最も単純な場合である、世界超ブレーンとよばれる時間的超曲面が重要であるが、より詳しい構造として、その中の空間的な余次元1の葉層構造が付随する。この場合、各葉は全体空間の中で、余次元2となるので、現在までに得られた成果が応用可能となる。このような観点から、余次元2の空間的部分多様体の理論を精査した結果思いがけず、限界捕捉面と言う概念に到達した。この概念は、ペンローズが一般的な時空内における時空の特異点の存在定理において主要な役割を担うものである。今回、この限界捕捉面の新たな解釈を与えた。その結果、この概念が、極小曲面、極大曲面、双曲空間内の平均曲率一定曲面等を統一的に扱えることの理由付けを与える事ができた。本研究は、宇宙論や素粒子物理学に現れる、反ド・ジッター空間と呼ばれるローレンツ多様体の部分多様体の微分幾何学的性質を、特異点論を応用することによって研究することを主要な目的としている。平成23年度は前年度の続きとして、より単純な場合であり、特殊相対性理論の舞台である一般的次元のミンコフスキー空間内の空間的部分多様体のローレンツ不変量の構成やその微分幾何学的性質についての研究を推進した。以前からの代表者の研究で、ミンコフスキー空間内の余次元が2の場合がユークリッド空間内の超曲面の場合に対応していて、幾何学的性質もよりよくわかることが認識されてきた。しかし、宇宙論や素粒子物理学に現れるブレーンは一般に余次元が高いものも現れるため、一般余次元の空間的部分多様体の研究が必要となる。ブレーン宇宙論では、世界膜と呼ばれる時間的部分多様体を考えるが、より詳しい構造として、数学的にはその中の空間的な次元が1だけ下がる(世界膜内の余次元1)空間的部分多様体を葉として持つ葉層構造を考える必要がある。ここでは、その前段階として,一般余次元の空間的部分多様体の局所不変量とその大域的性質の研究を推進した。その結果、ローレンツ多様体独特の性質として、光的タイト部分多様体という概念を導入した。光的タイト部分多様体はユークリッド空間の場合の古典的なタイト部分多様体や双曲空間内のホロタイト部分多様体を特別な場合としてもつもので、これらの概念を統一的に扱う概念である。 | KAKENHI-PROJECT-21654007 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21654007 |
ブレーンワールドモデルにおける事象の地平線とその特異点の研究 | また前年度から継続して研究している、4次元ミンコフスキー空間内の限界捕捉面がグラフ型の場合に満たす偏微分方程式の記述に成功した。 | KAKENHI-PROJECT-21654007 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21654007 |
水溶性NF-κB阻害剤のデザイン・合成と卵巣癌の抑制 | 私たちの見出したDHMEQは特異性が高く、in vivoで有効なNF-κB阻害剤であるが、溶解性が低い。そこで、活性コア以外の部分をかえて、溶解性を向上させた。また、酵素を用いて、医薬開発に必要な光学活性体を効率的に合成できるようにした。一方、DHMEQは培養卵巣癌細胞の浸潤を抑制し、その新しい機構としてCXCL12/CXCR4系および下流のタンパク質分解酵素の発現抑制が関与することを見出した。さらにDHMEQは卵巣癌細胞の抗癌剤感受性を向上させ、卵巣癌担癌マウスへのDHMEQの投与で悪液質が抑えられることがわかった。私たちの見出したDHMEQは特異性が高く、in vivoで有効なNF-κB阻害剤であるが、溶解性が低い。そこで、活性コア以外の部分をかえて、溶解性を向上させた。また、酵素を用いて、医薬開発に必要な光学活性体を効率的に合成できるようにした。一方、DHMEQは培養卵巣癌細胞の浸潤を抑制し、その新しい機構としてCXCL12/CXCR4系および下流のタンパク質分解酵素の発現抑制が関与することを見出した。さらにDHMEQは卵巣癌細胞の抗癌剤感受性を向上させ、卵巣癌担癌マウスへのDHMEQの投与で悪液質が抑えられることがわかった。卵巣癌細胞の培養細胞でのNF-κBおよび浸潤能と浸潤機構を調べた。卵巣癌細胞としてヒト卵巣低分化明細胞腺癌ES-2細胞およびヒト卵巣明細胞腺癌RMG1細胞を用い、ES-2細胞はTNF-αによりNF-κBの活性化が誘導され、RMG1細胞では恒常的に活性化されていた。(-)-DHMEQはそれを抑制し、さらにいずれの細胞の浸潤も抑制した。RMG1細胞においてIL-6およびIL-8産生は(-)-DHMEQにより抑制されなかった。浸潤に関与するMMP-9とuPAの発現は(-)-DHMEQにより抑制された。特に、ケモカインレセプターCXCR4の発現を抑制し、中和抗体を用いた実験でCXCR4が浸潤に重要であることもわかった。このように卵巣癌の浸潤にNF-κBが関与すること、特に下流のCXCR4が重要なことがわかった。(梅澤)一方、水溶性誘導体合成の前段階で、光学活性(-)-DHMEQの新しい、より効果的な合成法として本年度はまず不斉合成を基盤とする新ルート確立に取り組んだ。Taylorの方法でDHMEQ中間体の不斉エポキシ化をする反応を行い部分的に光学活性な化合物があられた。(須貝)さらにin vivo抗癌活性評価系に関してRMG1およびES-2をBALB/C nu/nuマウスに腹腔内投与及び皮下注射により移植し、腫瘍形成時期・部位などについて検討を行った。どちらの細胞株も、マウス腹腔内に播種を来し腹水を産生した。肉眼的に明らかな腫瘍形成は、RMG1では移植の約3週間後、ES-2では約1週間後から認められた。皮下移植においてもどちらの細胞株も約1週間後に注射部位に一致して触知可能な腫瘍を形成した。このように卵巣癌を用いた動物実験系が確率された。DHMEQの抗癌活性はまだ得られていない。(阪埜)以上のように(-)-DHMEQの臨床応用に向けて、腹腔内薬物投与が比較的一般的な卵巣癌は重要な標的であり、細胞、合成、動物を用いた実験で目的に近づく成果が得られた。卵巣癌細胞RMG1を用いて、21年度に続き、浸潤の機構を調べた。CXCR4のリガンドであるCXCL12がRMG1細胞により産生され、CXCR4と同様にNF-κBに依存していることがわかった。さらにCXCR4のノックダウンにより、in vitro浸潤が抑制されること、および浸潤活性化タンパク質MMP-9およびuPA-1の発現が抑制された。また、MMP-9の阻害剤は浸潤を抑制した。これらのことからNF-κBCXCL12/CXCR4軸MMP-9細胞浸潤のシグナル伝たち経路が存在することが示唆された。一方、共同研究により、DHMEQのエポキシキノールアミンにサリチル酸でなくallyloxycarbonyl構造をつけた化合物を分子デザイン・合成した。この化合物はNF-κB阻害活性を示し、メタノールに溶けるようになった。また興味深いことに、epoxyとOHのsynとantiに関して、DHMEQの持つsynよりもantiのほうが強い阻害活性を示し、それでもanti機構としてのpanepoxydoneと異なってIKKは阻害しなかった。(梅澤)水溶性DHMEQ誘導体合成に不可欠な前駆物質を大量かつ再現性よく合成する検討を行った。重要な中間体をグラムスケーでも良い収率が得られるようになった。(須貝)一方、RMG1のマウス移植モデルを確立し、DHMEQ(12mg/mlまたは15mg/ml)の単剤投与を行なった。DHMEQ投与により、腫瘍サイズおよび重量の減少傾向が見られた。またCD-DST法による抗癌剤感受性試験の結果から、卵巣癌治療において重要な複数の抗癌剤に対しRMG1が抵抗性を持つこと、それらの抗癌剤とDHMEQの併用によりRMG1の薬剤感受性が高まることが確認された。(阪埜).21年度までに卵巣癌細胞RMG1においてケモカインと受容体のCXCL12/CXCR4系が浸潤促進に関与し、CXCL | KAKENHI-PROJECT-20611015 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20611015 |
水溶性NF-κB阻害剤のデザイン・合成と卵巣癌の抑制 | 12とCXCR4のいずれもNF-κBに依存している産生されることがわかった。22年度はCXCR4のノックダウンを行い、発現が低下する因子の網羅的解析をしたところ、MMP-9およびuPAのほか、VEGFやEGFの発現も強く抑制されることがわかった。これまでの結果をまとめ、NF-κBCXCL12/CXCR4軸/MMP-9/細胞浸潤のシグナル伝達経路が存在することを阪埜と共著でBBRCに論文発表した。一方、共同研究により、DHMEQのエポキシキノールアミンにサリチル酸でなくmethylcarbonyl構造をつけた化合物を分子デザイン・合成した。この化合物はallyloxycarbonylをつけた場合と同様にメタノールに溶けるようになった。(梅澤)水溶性DHMEQ誘導体の合成に利用する光学活性DHMEQをリパーゼ酵素反応と化学合成を組み合わせて作ることに成功し、梅澤と共著で論文発表した。(須貝)一方、RMG1のマウス皮下移植モデルにおいて、パクリタクセルは腫瘍増殖を抑制したが、DHMEQ(15mg/kg,週3回,4weeks)は腫瘍の増殖を抑制しなかった。しかしDHMEQ投与により、担癌による体重減少が有意に抑制された。抗癌剤を用いた治療では副作用の一つとして体重の減少や筋減少が知られており、DHMEQは抗癌剤との併用により癌性悪液質や副作用を軽減する可能性が示された。(阪埜) | KAKENHI-PROJECT-20611015 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20611015 |
正の分布から生成されるRadial分布の性質と位置推定における精度評価 | 室内における人の位置推定を精度高く行う統計モデルの構築とそのパラメータを推定することによって,位置の情報を信頼水準を指定したときの信頼領域を求めるためのアルゴリズムの開発を行った.正の分布である,ワイブル分布と対数正規分布をからの回転分布によって,位置パラメータを精度高く推定することが可能となった.陰関数定理を利用することによって,条件付きの最尤推定量の漸近分布を計算することができるようになった.点観測により,観測デバイスの測定するデータの誤差の性質を調査し,分布モデルを作成した.正の分布としてWeibull分布をベースとして,2つのタイプのRadial分布を構成した1つは極座標変換を行うもの,他方はデカルト座標において回転を行うタイプのものである.極座標変換では条件付分布と周辺分布の違いが形状パラメータの小さいところで大きく影響があることがわかった.また,見通し外環境でのノイズがどのように変化するか様々な環境で調査し,環境地図作成を検討する.環境地図は各種分布との混合分布として与えられるのでダイナミックに変化する,混合率の推定の問題である.この混合率を精度高く推定する統計的方法についても研究を行った.本年度は室内型の位置推定の問題を2種類のデータを用いてアルゴリズム開発を行った.1つはToA (Time of Arrival),他方はRSS (Received Signal Strength )である.これまでは,ステーションからタグまでの距離データの分布として,正の分布を仮定しこれを極座標変換することによって,x-y平面の2次元分布を導出した.この2次元分布同時分布から尤度関数を導出し,最適化を図ることによって,位置パラメータを推定するアルゴリズムを提案してきた.2次元の同時分布はステーションからの距離の情報しかなく,密度の大きさがステーションを中心として同心円状の分布として得られる.位置推定における問題は,分布パラメータにおける位置パラメータの推定の問題と同様な難しさがあり,これを補うために,2段階の推定法によって高速にパラメータ推定を行う方法を開発した.そのため,信頼水準の構成が煩雑となるが,陰関数定理を用いることによりこの問題を克服している.また,販社電波を検出するために,正のバイアスが入ってしまうことが知られており,この問題に対しても,ガンマ回帰を利用してバイアス修正を行うことで,推定精度のよいアルゴリズムとしている.また,RSSのデータに対しては,対数正規分布を仮定した解析も行い.論文として公表している.ToAデータ,RSSデータという2種類のデータに対して,位置推定のアルゴリズも開発を行い,予備的な実験では十分な精度を得ている.今年度は,ナノトロンを用いて位置観測を行い,その位置推定を行う問題と,スマートフォンに適応可能な受信信号強度(RSSI)を用いて簡便に推定を行うという2種類の方法で統計的推測を行う方法について研究を行った.ナノトロンの実験では,電波反射の性質によってバイアスが生じてしまうため,単純な正の分布を回転しただけでは,推定精度が落ちてしまうため,位置パラメータの推定を組み込むことと,ガンマ回帰によるバイアス補正が有効であることがわかった.この成果は現在,日本計算機統計学会の英文論文誌に投稿中である.RSSI方式は装置が簡易であるが,ノイズが多く,環境の変化への適応が難しため,環境ごとの減衰モデルの作成の必要がある.また,事前に実測しておく必要があるが,スマートフォンなどの高機能なモーバイル端末の普及により,GPSによる現在位置がサービルできる状況下で,室内環境における位置推定技術を携帯端末上で実現する受容はますます増えている.本研究では,この点を踏まえて,ノイズの大きいデータでも統計モデルの有効活用により精度を上げる研究を行った.これまでの成果で正の分布を回転して得られる2次元分布の直積のモデルを考慮し,制止状態,移動状態と2つの状態に対応した分析を行った.基本分布として対数正規分布を回転した分布により精度高く,位置推定が可能となることが分かった.距離減衰がデシベル値で表現されているので,距離の大数変換を考えた,大数正規分布が基本分布となりやすいと考えられる.NLOS環境においても精度を上げることが今後の課題である.室内における人の位置推定を精度高く行う統計モデルの構築とそのパラメータを推定することによって,位置の情報を信頼水準を指定したときの信頼領域を求めるためのアルゴリズムの開発を行った.正の分布である,ワイブル分布と対数正規分布をからの回転分布によって,位置パラメータを精度高く推定することが可能となった.陰関数定理を利用することによって,条件付きの最尤推定量の漸近分布を計算することができるようになった.位置推定技術は,計測デバイスの精度だけでなく,統計的側論が不十分なために未だ実用化に至っていない.本年度は精度推定に欠かせない確率分布に対しての新たなる提案を行い,その性質について考察することを目標とした。正の分布をベースとしてRadial分布を生成することにより,様々な統計学的な問題が派生することが近年の研究でわかっており.距離計測装置から得られるデータは,観測者を中心とする,誤差の入った距離の情報のみでRadial分布をあてはめるためには,条件付き分布あるいは周辺分布を利用する必要がある.正の分布としてWeibullを仮定すると形状母数の推定に大きな偏りが生ずる.これに対応するために,極座標変換をおこなわずに,デカルト座標において正の分布を回転する,新しい分布を導出を行った.最終年度として,これまでの研究成果を総合的に検討し,正の分布をベースとした. | KAKENHI-PROJECT-26540014 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26540014 |
正の分布から生成されるRadial分布の性質と位置推定における精度評価 | 回転分布の分布特性を検討する.また,バイアス修正にはガンマ回帰を用いたアルゴリズムを提案してきたが,システムを導入する部屋ごとに予備実験を必要とし,工数がかかってしまうので,実用的には,真のバイアスは観測しないで,ベイズ的な意味でヒストリカルなデータ蓄積により,バイアス修正を行うアルゴリズムの開発を行う必要がある.これまでの2次元分布では方向性を持たない回転分布に基づいて推定論を組み立ててきたが,実際には部屋の形状や,タグから壁までの距離に大きく依存することがわかっているので,位置を同定する際に,リカーシブに壁からの距離を考慮に入れて,非対称な分布に変更するというセミパラメトリックなモデルも考えて,より有効な統計的アルゴリズムを開発する必要がある.最終年度にどもまで新しいことができるか,わからないが,これまでのアルゴリズムを精緻化させ,国際会議等で公表していくとともに,新しい問題に対しても,その問題点を整理し,実用レベルとして精度を高める研究を行う計画である.特にToAデータについては,,2段階かつ真のバイアス計測を伴っているので,全データの活用のアルゴリズムについても検討していくことを考えている.統計科学本研究で考えている問題は,室内環境における位置推定および精度評価である.その精度評価には新しい2次元確率分布の提案が必要である,Radial分布を生成する正の分布について,種々の分布を考慮し,実際のデータにどの分布が適合しやすいかを考察する近年のGPSの性能は屋外においては極めて精度が高くなっているが,室内では衛星からの電波が届きにくく精度にも問題がある.これまでの研究は最小2乗法をベースにし,推定の統計的精度に関しての議論が行われていないままのアルゴリズムの開発であった.位置推定の精度評価には,適切な統計モデルの提案とその推定プロセスにおける統計的諸問題の解決がなされなければならない.これらの問題が解決されれば,アルゴリズムの性能の向上手法間の比較,観測機器の評価等,室内型GPSの実用化に向けての大いなる前進となる.研究は予定通り進んだが,設備品等の更新の必要がなかったので,既存の者で研究が進んだこと,人権時についても,データの取得実験が昨年のものを利用,アルゴリズム開発を行ったことが主な理由である.研究分担者の大草氏(九州大学)との研究連絡で九州大学を訪問予定であったが,12月に開催されたイタリアの国際会議で会うことができ,十分な研究打ち合わせができたことにより,出張する必要がなくなったことによるものである.今年度は,昨年度の使用分を含めて,昨年度開発したアルゴリズの検証を目的としたデータ取りのための人件費,また,最終年における国際会議における発表のための旅費として使用を計画している.次年度,九州大学にて,実験の状況の確認と研究連絡の旅費として使用予定である. | KAKENHI-PROJECT-26540014 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26540014 |
災害とスポーツ・メガイベントに関する社会学的研究 | 2018年度の主な計画は、岩手県釜石市の市民1,000人を対象に量的調査を実施することであった。そのため、1調査実施のために質問紙の検討・作成を行う、2サンプリングを含めた調査実施のための準備を進める、3調査を実際に行い、統計的な分析を行うための基礎データ作成を完了する、という3点の目標を設定した。当初計画・目標の通りに岩手県釜石市の市民1,000件を対象にした量的調査を実施した(2018年10月、選挙人名簿閲覧によるサンプリング=系統抽出法、配布方法:郵送)。377件の回答(有効回収率37.7%)があり、郵送による調査としては十分な回収を得ることができた。2018年11月以降、回答を電子データ化し、2019年3月までに単純集計および主要項目のクロス集計分析を終えて、調査対象者に対して結果報告書を送付するところまで完了した。今回の調査結果については、年度をまたいで2019年4月にニュージーランドで開催予定の国際スポーツ社会学会にて、研究分担者が中心となって報告する予定である(エントリーおよび報告許可受諾済み)。また、質的調査の結果もふまえた一定程度の詳細な分析を実施したうえで、2019年度に複数の国内学会(日本社会学会、日本都市社会学会、日本スポーツ社会学会等)における報告を計画している。また、本研究の対象であるラグビーワールドカップが2019年911月に開催されるため、サンプリングのさい等も含めて、特に研究分担者を中心に釜石市にて質的調査も随時、実施した(たとえば「釜石鵜住居復興スタジアム」完成時=2018年8月等)。そのさいには量的調査のプレ調査も兼ねて、作成中の質問紙を市民の方々に検討してもらい、調査実施のために必要な準備態勢を整えた。「研究実績の概要」にも記した通り、2018年度の主要計画である量的調査の実施について、回答結果の電子データ化および統計的な分析実施のための基礎データの作成まで進めることができた。その過程においては、量的調査のプレ調査も兼ねて複数回、現地での質的調査も実施できた。また2018年6月には震災に関する研究を行っている研究者2名を研究会に招いて報告を行ってもらい、被災地における調査の実態等の助言を得られた他、作成段階の質問紙を検討してもらって、より精度の高い質問紙を作成することができた。なお、計画作成段階では釜石市役所の協力を得て、釜石市内の全戸を対象とした量的調査の実施も想定していたが、諸々の事情により本研究グループが主体(単独)となって実施することになり、結果的に選挙人名簿閲覧に基づくサンプリングにより1,000件のサンプル抽出を行った。ただし、調査票の配布後に釜石市役所の協力を得て、地元紙である「釜石新聞」にて調査実施の告知および回答への協力を呼び掛ける記事を掲載することができた。回収率37.7%という数字は、こうした協力もあって達成できたものと考えられ、その点では研究者グループが単独となって調査を実施したさいに発生しがちである「調査公害」を、極力避けることができたと考えている。量的調査の結果のデータ化まで完了しているので、2019年度に複数の国内学会で報告するための素材を整えることができた。以上のことから、今年度に計画していたものはほぼ完了することが出来たと考えている。2019年度は、1量的調査の基礎データに基づく多変量を含めた詳細な分析の実施、2ワールドカップ開催時(2019年911月)を中心とした質的調査の実施、3前記2項目の結果として得られる諸データの総体的な分析・考察、の3点を予定している。これらの結果は、2019年度中に随時、諸学会で報告を行う。また、学会報告の内容をふまえて、学術雑誌への投稿も予定している。2020年度は、1質的調査の継続、22020年10月をめどに釜石市にて再度、1,000人の市民を対象とした量的調査の実施、の2点を予定している。特に2については、本研究の主たる柱であるスポーツ・メガイベントに対する評価の測定、および「スポーツの力」の実態の分析・考察として、開催前(本年度に実施済み)、開催後の量的調査結果の比較の根幹をなすものであるので、2019年度より実施のための準備態勢を整えていく。2021年度は、前年度までに集積した諸データを総体的に分析・考察し、国内外の諸学会にて報告するとともに、学術雑誌への投稿、およびこれまでの研究成果をまとめた書籍の刊行を計画・実行することを想定している。また、可能であれば海外の研究者を招聘してシンポジウムを開催できればと考えている。2018年度の主な計画は、岩手県釜石市の市民1,000人を対象に量的調査を実施することであった。そのため、1調査実施のために質問紙の検討・作成を行う、2サンプリングを含めた調査実施のための準備を進める、3調査を実際に行い、統計的な分析を行うための基礎データ作成を完了する、という3点の目標を設定した。当初計画・目標の通りに岩手県釜石市の市民1,000件を対象にした量的調査を実施した(2018年10月、選挙人名簿閲覧によるサンプリング=系統抽出法、配布方法:郵送)。377件の回答(有効回収率37.7%)があり、郵送による調査としては十分な回収を得ることができた。 | KAKENHI-PROJECT-18K02037 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K02037 |
災害とスポーツ・メガイベントに関する社会学的研究 | 2018年11月以降、回答を電子データ化し、2019年3月までに単純集計および主要項目のクロス集計分析を終えて、調査対象者に対して結果報告書を送付するところまで完了した。今回の調査結果については、年度をまたいで2019年4月にニュージーランドで開催予定の国際スポーツ社会学会にて、研究分担者が中心となって報告する予定である(エントリーおよび報告許可受諾済み)。また、質的調査の結果もふまえた一定程度の詳細な分析を実施したうえで、2019年度に複数の国内学会(日本社会学会、日本都市社会学会、日本スポーツ社会学会等)における報告を計画している。また、本研究の対象であるラグビーワールドカップが2019年911月に開催されるため、サンプリングのさい等も含めて、特に研究分担者を中心に釜石市にて質的調査も随時、実施した(たとえば「釜石鵜住居復興スタジアム」完成時=2018年8月等)。そのさいには量的調査のプレ調査も兼ねて、作成中の質問紙を市民の方々に検討してもらい、調査実施のために必要な準備態勢を整えた。「研究実績の概要」にも記した通り、2018年度の主要計画である量的調査の実施について、回答結果の電子データ化および統計的な分析実施のための基礎データの作成まで進めることができた。その過程においては、量的調査のプレ調査も兼ねて複数回、現地での質的調査も実施できた。また2018年6月には震災に関する研究を行っている研究者2名を研究会に招いて報告を行ってもらい、被災地における調査の実態等の助言を得られた他、作成段階の質問紙を検討してもらって、より精度の高い質問紙を作成することができた。なお、計画作成段階では釜石市役所の協力を得て、釜石市内の全戸を対象とした量的調査の実施も想定していたが、諸々の事情により本研究グループが主体(単独)となって実施することになり、結果的に選挙人名簿閲覧に基づくサンプリングにより1,000件のサンプル抽出を行った。ただし、調査票の配布後に釜石市役所の協力を得て、地元紙である「釜石新聞」にて調査実施の告知および回答への協力を呼び掛ける記事を掲載することができた。回収率37.7%という数字は、こうした協力もあって達成できたものと考えられ、その点では研究者グループが単独となって調査を実施したさいに発生しがちである「調査公害」を、極力避けることができたと考えている。量的調査の結果のデータ化まで完了しているので、2019年度に複数の国内学会で報告するための素材を整えることができた。以上のことから、今年度に計画していたものはほぼ完了することが出来たと考えている。2019年度は、1量的調査の基礎データに基づく多変量を含めた詳細な分析の実施、2ワールドカップ開催時(2019年911月)を中心とした質的調査の実施、3前記2項目の結果として得られる諸データの総体的な分析・考察、の3点を予定している。これらの結果は、2019年度中に随時、諸学会で報告を行う。また、学会報告の内容をふまえて、学術雑誌への投稿も予定している。2020年度は、1質的調査の継続、22020年10月をめどに釜石市にて再度、1,000人の市民を対象とした量的調査の実施、の2点を予定している。特に2については、本研究の主たる柱であるスポーツ・メガイベントに対する評価の測定、および「スポーツの力」の実態の分析・考察として、開催前(本年度に実施済み)、開催後の量的調査結果の比較の根幹をなすものであるので、2019年度より実施のための準備態勢を整えていく。2021年度は、前年度までに集積した諸データを総体的に分析・考察し、国内外の諸学会にて報告するとともに、学術雑誌への投稿、およびこれまでの研究成果をまとめた書籍の刊行を計画・実行することを想定している。 | KAKENHI-PROJECT-18K02037 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K02037 |
呼吸性移動臓器への放射線治療に於ける臓器運動の統計解析と動体予測に関する研究 | 肺、腎、肝を始めとした呼吸運動に沿って体内で可動する臓器に関して注目すべき必要が有るが、まずこの研究行程として、"(1)臓器移動のデータ収集。(2)運動のパターン化。(3)動態予測のシミュレーション機能。(4)3次元治療計画機にリンク。(5)3次元照射技法を選考。(6)制御回路の付加。"を考案、今年度は(3)項目までに重きを置くことを考えてきた。呼吸運動のデータの収集に於いては、呼気、吸気のおのおの呼吸停止状態で超高速CTのスパイラル・スキャンを利用。患者を基本対象に収集した為、年令層が40台以降に偏った。若年層の収集は今後も継続する。肺機能に障害を持たない通常の生理機能を有する対象の肺内の肺臓任意点の平均可動距離はZ方向で15mm。最大でも20mmを越えることは、現在の集計では無いことが解っている。しかしながら、肺の変形や容量変化で生じる他臓器の移動では30mm以上の移動の頻度が高い。この場合、臓器の変形は伴わないので単にZ方向の直線移動を考えればよい事になり、それほど、今後の動態予測で支障になる事は無い。収集したデータを、3次元画像処理計画機に転送し3次元座標を有する立体モデルとして再構成する。Z方向の移動に伴い、X-Y方向の移動が、Z移動の30%の範囲で負荷するだろうことが解った。しかし、この系列の場合、左右肺臓では心臓の拍出振動が加わり、肺臓の解剖構造だけをシミュレートするだけでは標準化は不可能であった。心拍振動の生理運動の情報付加の今後検討が必要だ。臓器の輪郭のモデリングはすでに可能とした、空間データをスーパーインポーズする事によって経時的4D動態表示も可能である。パターン化した動態モデルはに、体系、生理機能などのパラメータ指定によって、パーソナルな動態モデルを適合させる予測機能を付加する作業が現時点で残っている。前述研究行程の(1)(2)を完了した。肺、腎、肝を始めとした呼吸運動に沿って体内で可動する臓器に関して注目すべき必要が有るが、まずこの研究行程として、"(1)臓器移動のデータ収集。(2)運動のパターン化。(3)動態予測のシミュレーション機能。(4)3次元治療計画機にリンク。(5)3次元照射技法を選考。(6)制御回路の付加。"を考案、今年度は(3)項目までに重きを置くことを考えてきた。呼吸運動のデータの収集に於いては、呼気、吸気のおのおの呼吸停止状態で超高速CTのスパイラル・スキャンを利用。患者を基本対象に収集した為、年令層が40台以降に偏った。若年層の収集は今後も継続する。肺機能に障害を持たない通常の生理機能を有する対象の肺内の肺臓任意点の平均可動距離はZ方向で15mm。最大でも20mmを越えることは、現在の集計では無いことが解っている。しかしながら、肺の変形や容量変化で生じる他臓器の移動では30mm以上の移動の頻度が高い。この場合、臓器の変形は伴わないので単にZ方向の直線移動を考えればよい事になり、それほど、今後の動態予測で支障になる事は無い。収集したデータを、3次元画像処理計画機に転送し3次元座標を有する立体モデルとして再構成する。Z方向の移動に伴い、X-Y方向の移動が、Z移動の30%の範囲で負荷するだろうことが解った。しかし、この系列の場合、左右肺臓では心臓の拍出振動が加わり、肺臓の解剖構造だけをシミュレートするだけでは標準化は不可能であった。心拍振動の生理運動の情報付加の今後検討が必要だ。臓器の輪郭のモデリングはすでに可能とした、空間データをスーパーインポーズする事によって経時的4D動態表示も可能である。パターン化した動態モデルはに、体系、生理機能などのパラメータ指定によって、パーソナルな動態モデルを適合させる予測機能を付加する作業が現時点で残っている。前述研究行程の(1)(2)を完了した。 | KAKENHI-PROJECT-06770696 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06770696 |
乳児期の親子におけるマルチモーダルな身体接触遊びの発達 | 本研究の目的は,乳児期になされる父親・母親との身体接触遊び(特にくすぐり遊び)の発達の様相を,視線・音声・三次元動作解析及び行動観察から包括的に明らかにすることである。データ収集には,ビデオカメラ,メガネ型アイトラッカーと小型モーションキャプチャを用いる。本年度は,1データ収集と2分析・発表を行う年度と位置づけていた。1については,原則生後1.5ヶ月,3ヶ月,5ヶ月,7ヶ月の4時点で縦断的に母親ー乳児,父親ー乳児の2ペアの身体接触遊び(最低1回はくすぐり遊びを含む)のデータを収集し,検討を行うこととしていた。しかしながら,生後1.5ケ月時という早い時期からの縦断的観察が必要であること,父母双方の参加が求められること等の影響で,研究協力者のリクルートが当初の想定よりも難航した。そのため,研究目的を達成しうる範囲内で,必要に応じて対象者の枠を緩めて対応している(例えば生後3ケ月からの参加や母親のみの参加でも対象者に含める等)。現時点で7組の親子の観察を終えており,今後3組の観察を予定している。各回の観察では,行動データの収集に加え,どの程度うまく遊べたか(身体接触遊びの成立の成否)の主観的判断やくすぐり遊びについてのイメージを測る質問紙(独自に作成)と,産後うつに関する質問紙(Edinburghうつ尺度)への回答を求めた。引き続き同様のスタイルで,さらなるデータ収集を行う予定である。2については,現在収集できているデータを元に,中間的に分析の方向性を検討しているが,成果のまとめ・発表には至っていない状況である。主な理由は次の二点である。1研究協力者のリクルートが当初の予定よりも難航しているため。2研究代表者の異動が重なったため。リクルートの場を増やすなどして,さらに積極的に協力者のリクルートを行っていく予定である。分析では,視線・音声・三次元動作データおよび質問紙調査により得られたデータをふまえ,(1)母親・父親の関わりかけの行動的性差,乳児の反応及びそれらの発達(2)身体接触遊びの成立の成否関わるファクターとは何か(3)乳児による予期や意図の読み取り,及び親によるその足場作りはいつ,いかになされるのかの三点に着目して分析を行う。本研究は乳児期になされる父親・母親との身体接触遊び(特にくすぐり遊び)の発達の様相を,視線・音声・三次元動作解析及び行動観察から包括的に明らかにしようとする試みである。メガネ型アイトラッカーと小型モーションキャプチャを用いて生後1.5ケ月時からデータを収集し,1身体接触遊びにおいていかなる相互作用がなされ,発達するのか2父親・母親の関わりの性差・共通性3遊びの成立の成否にはどのようなファクターが関わるのかをマルチモダリティの観点から明らかにする。また親子の情動性を帯びた身体接触遊びの中で,4乳児による予期や意図の読み取りと親によるその足場作りがどの時点からなされ始めるのかに着目し,他者の意図理解に至るまでの発達プロセスについて検討する。一年目である本年度は,1観察場面の構造の吟味・確定を行い,2研究協力者のリクルートを開始する予定であった。1については,一組の親子を対象として予備観察を縦断的に行い,予定通り,場面の構造の吟味・確定を行った。さらに,遊びの成立の成否にはどのようなファクターが関わるのかについて検討するため,父母双方を対象とした,どの程度うまく遊べたか(身体接触遊びの成立の成否)の主観的判断を測る質問紙を作成・吟味した。2の研究協力者のリクルートは,生後1.5ケ月時点からと観察開始時期が早く,また1.5, 3, 5, 7ケ月時点と4回の継続的な協力が必要と負担が比較的大きいためか,当初の想定よりもやや難航している。そのため,研究目的を達成しうる範囲内で,必要に応じて対象者の枠を緩めて(例えば生後3ケ月からの参加でも対象者に含めるなどして),対応しつつある。現在のところ,3組の親子を対象として6回の観察を終えている状況である。研究協力者のリクルートがやや難航しているが,それ以外は順調に進んでいるため。本研究の目的は,乳児期になされる父親・母親との身体接触遊び(特にくすぐり遊び)の発達の様相を,視線・音声・三次元動作解析及び行動観察から包括的に明らかにすることである。データ収集には,ビデオカメラ,メガネ型アイトラッカーと小型モーションキャプチャを用いる。本年度は,1データ収集と2分析・発表を行う年度と位置づけていた。1については,原則生後1.5ヶ月,3ヶ月,5ヶ月,7ヶ月の4時点で縦断的に母親ー乳児,父親ー乳児の2ペアの身体接触遊び(最低1回はくすぐり遊びを含む)のデータを収集し,検討を行うこととしていた。しかしながら,生後1.5ケ月時という早い時期からの縦断的観察が必要であること,父母双方の参加が求められること等の影響で,研究協力者のリクルートが当初の想定よりも難航した。そのため,研究目的を達成しうる範囲内で,必要に応じて対象者の枠を緩めて対応している(例えば生後3ケ月からの参加や母親のみの参加でも対象者に含める等)。現時点で7組の親子の観察を終えており,今後3組の観察を予定している。各回の観察では,行動データの収集に加え,どの程度うまく遊べたか(身体接触遊びの成立の成否)の主観的判断やくすぐり遊びについてのイメージを測る質問紙(独自に作成)と,産後うつに関する質問紙(Edinburghうつ尺度)への回答を求めた。引き続き同様のスタイルで,さらなるデータ収集を行う予定である。 | KAKENHI-PROJECT-17K13252 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K13252 |
乳児期の親子におけるマルチモーダルな身体接触遊びの発達 | 2については,現在収集できているデータを元に,中間的に分析の方向性を検討しているが,成果のまとめ・発表には至っていない状況である。主な理由は次の二点である。1研究協力者のリクルートが当初の予定よりも難航しているため。2研究代表者の異動が重なったため。メガネ型アイトラッカーと小型モーションキャプチャを家庭に持ち込む本研究は,機材のセッティングや,機材のトラブル時の対処にある程度の時間を要し,さらに乳児の状態(覚醒状態や機嫌など)をみながら観察を実施する必要がある。そのため,当初の想定よりも観察のためのセッティングが長時間にわたることが多く,今後対処すべき課題であると考えられた。これについては,研究補助者等の協力が得られるときには二人体制で観察を実施するなどの対応策を考えている。また,生後1.5ケ月時という早い時期からの縦断的観察が必要であるためか,研究協力者のリクルートが当初の想定よりもやや難航しているため,研究目的を達成しうる範囲内で,必要に応じて対象者の枠を緩めるなどして対応していく予定である。リクルートの場を増やすなどして,さらに積極的に協力者のリクルートを行っていく予定である。分析では,視線・音声・三次元動作データおよび質問紙調査により得られたデータをふまえ,(1)母親・父親の関わりかけの行動的性差,乳児の反応及びそれらの発達(2)身体接触遊びの成立の成否関わるファクターとは何か(3)乳児による予期や意図の読み取り,及び親によるその足場作りはいつ,いかになされるのかの三点に着目して分析を行う。途中使用を控えたことで,若干の残額が出た。次年度は消耗品費として使用する予定である。研究協力者のリクルートが難航しており,分析にもやや遅れが生じているため,計画とのずれが生じ,残額が出た。未使用分は主に人件費・謝金費として使用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-17K13252 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K13252 |
宮城県における伝統的方言体系の記述とその変容についての研究 | 現代の方言は、急激な社会の変動によって共通語化が進行し、伝統的方言の衰退が著しい状況にある。しかし、宮城県の方言については研究が十分に進んでおらず、大きく分けて次の3種類の調査を行い、中新田町方言の体系とその変容の実態を多角的に解明した。(1)宮城県中新田町における記述調査(2)宮城県中新田町における年代別調査(3)仙台市・中新田町間のグロットグラム調査(1)(2)については、第II章で「音韻」「アクセント・イントネーション」「文法」「語彙」の各分野にわたり、方言体系上特色が見られ、かつ研究が手薄だった部分を中心に詳細な記述を行っている。語彙は30語について、文献・調査資料との対比から史的変容を跡付けている。一方、近年は、社会言語学の発達にともない、伝統的方言がどのように変容しつつあるかといった研究が多くなっている。(3)の調査はそのような方向性を視野に入れたもので、第III章では、語彙・文法項目を中心に中核都市仙台の影響を明らかにしている。現代の方言は、急激な社会の変動によって共通語化が進行し、伝統的方言の衰退が著しい状況にある。しかし、宮城県の方言については研究が十分に進んでおらず、大きく分けて次の3種類の調査を行い、中新田町方言の体系とその変容の実態を多角的に解明した。(1)宮城県中新田町における記述調査(2)宮城県中新田町における年代別調査(3)仙台市・中新田町間のグロットグラム調査(1)(2)については、第II章で「音韻」「アクセント・イントネーション」「文法」「語彙」の各分野にわたり、方言体系上特色が見られ、かつ研究が手薄だった部分を中心に詳細な記述を行っている。語彙は30語について、文献・調査資料との対比から史的変容を跡付けている。一方、近年は、社会言語学の発達にともない、伝統的方言がどのように変容しつつあるかといった研究が多くなっている。(3)の調査はそのような方向性を視野に入れたもので、第III章では、語彙・文法項目を中心に中核都市仙台の影響を明らかにしている。伝統方言の崩壊が激しい今日、方言研究において記述的調査は重要な課題のひとつである。宮城県は仙台市以外の地域の方言が十分明らかになっておらず、適当な地点を選定しての緊急な調査が求められている。そこで、宮城県の平均的な集落規模をもち、伝統的方言を比較的保存していると思われる加美郡中新田町を調査地点として選定した。そして、この地域の方言の体系的な記述調査を実施した。調査項目は音韻・アクセント・文法・語彙の全般にわたり、各分野ごとに詳細な調査票を作成した。調査者は、研究代表者と分担者のほか、東北大学の方言関係者によって組織した。話者は、生え抜きの高年層を中心に、比較のために若年層を加えた40名を選定した。また、徹底した調査が行なえるよう、3回にわたって現地に赴いた。結果として、(1)音韻は、広いエを加えた6母体系であり、子音の有声化と鼻音化に特色をもつこと、(2)アクセントは無型化に複雑な変化がからみあっている状態にあること、(3)文法は、格助詞「サ」を広範な用法で使用し、可能表現では「ニイ-(肯定)」「レル・ラレル(否定)」を用いるところに特徴があること、等の点が明らかになった。これらの成果については、「宮城県中新田町方言の記述的調査報告」『東北文化研究室紀要』38 (1997年3月刊行予定)に報告した。来年度は最終年度にあたるため、補充調査によりデータを捕捉し、語彙も含めた全体的な報告書を取りまとめる予定である。中新田町方言の記述調査は、(a)全体調査と、(b)個別調査との2つに分けているが、本年度は方言体系上特色が見られ、かつ研究が手薄だった部分について個別調査を中心に実施した。特に、「格表示体系」「活用体系」「テンス・アスペクト」「条件表現」「意思・推量表現」「可能・自発表現」「待遇表現」などの文法分野、また「曖昧アクセント」について、昨年度の調査結果も踏まえ、詳細な記述を行っている。語彙については、東北大学に所蔵されている小林好日博士の通信調査資料や近世方言書との比較、中央語史との関りなどを中心に、史的変容を跡付けた。さらに、以上の伝統的方言の記述的研究を踏まえ、今年度は新たに変容の実態を解明すべく年代別調査とグロットグラム調査を実施した。年代別調査は、高年層・中年層・若年層の3世代を対象とし、当該地方の伝統的方言に変容の加わった現代方言体系の記述を意図している。また、中核都市仙台の影響を明らかにするために、仙台市から中新田町までの8地点について、20代から70代の6名を対象とし、グロットグラム調査を行った。以上から、中年層、とりわけ40代以上の話者は理解語も含めて伝統的方言をよく保存していること、また共通語化の著しい昨今にあっては、高年層とて例外ではなく、語彙においては伝統的方言と共通語との間に意味分担が生じている例なども観察されている。また、グロットグラム調査からは、中核都市仙台の影響が漸移的に周辺地域に及んでいるさまを読み取ることができ、ともに変容の実態の諸相を明らかにしている。 | KAKENHI-PROJECT-08451091 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08451091 |
氷海環境リアルタイムモニタリングブイシステムの開発 | 本研究では、近年発展した海洋中層ブイの浮力制御技術と衛星通信技術を応用して、氷海域でも運用可能な海洋鉛直観測を行う係留型ブイ観測システムの開発を目的とし、オホーツク海知床沖で通算七ヶ月にわたる実海域試験を行った。センサーブイについては、浮上下降動作、待機深度の制御、衛星通信によるデータ通信、長期連続耐久運転、海氷下の浮上・停止動作といったプログラムした動作のすべてに成功した。また流速の実測により、ブイ浮上の限界となる流速を求めた。これにより実運用に耐えうるシステムの基盤技術を確立し、今後さらに高度な海洋条件下での運用に対応するための基盤を得た。本年度は初年度としてプロトタイプブイの製作を行い、ブイの動作確認から輸送・保管までを含むシステム全体の運用にかかわる基礎的な整備を実施した。ブイのプロトタイプ機材を製作し、それに対して水槽による400m耐圧試験で確認した後、駿河湾の300m深海域における2日間の実海域試験を行った。実海域試験期間中、300m深潜航静止時に深度を一定に保つ制御ロジックが正しく作動すること、および浮上時に取得データをイリジウム通信により正しく伝送することを確認した。この際、ブイの浮上に要する時間も一時間程度であることを確認し、おおむね予想された範囲内にあることが分かった。海面浮上時にセンサーにより取得した圧力、水温、塩分のデータ伝送・受信にも成功し、それぞれ正常な値を示すことを確認した。ブイ本体の輸送・保管についても実地の対応から知見を得た。現時点で想定している耐深、観測回数要求に対する制約から、プロトタイプブイの重量と容積が一般的なアルゴフロートのそれを大きく上回っているため、ブイの台座としてステンレスフレームを準備し、木箱にいれて輸送する形式とし、実際に東京-札幌間を輸送した。こうした梱包、輸送手段については、幾つかの改良し省力化する余地があることが確かめられた。来年度に想定しているオホーツク海におけるより低温な環境においての長期の試験的な運用に向けて、観測を実施する漁船チャーターに関する情報収集、ブイを保持する中間ブイを含む係留系プラットフォームの全体設計など、具体的な準備を実施した。前年度に整備したプロトタイプブイを用い、海洋において実際に試験運用を実施した。オホーツク海ウトロ沖の水深約400mの海域において、7月から8月にかけての約一カ月、ブイシステムによる係留観測を実施した。観測に先立ち、本体ブイを係留するプラットフォームとなる中間ブイと切り離し装置、ロープ、アンカーを含めた系全体を整備した。中間ブイには、挙動確認用の基礎環境データを取得するための水温、水圧センサを設置した。知床ウトロの漁業組合の協力により、漁船をチャーターして係留系の設置・回収を行った。一ヶ月間、3回のブイの浮上動作が確認できた。浮上時には、取得データの通信にも成功した。このことにより、ブイに求められる基本的な動作性能を確認することができた。ただし、浮上回数は設定による最大値よりもかなり少なく、この原因としては現場の流速がブイの浮上可能な流速レンジを超えているためと考えられる。この観測の実施状況を踏まえ、再度オホーツク海ウトロ沖で、結氷を伴う低温海域における試験を11月から実施した。今回の運用では、前回までの試験項目に加え、海氷の存在を考慮した氷直下停止ロジック(氷への衝突を避けるために、海面への浮上はせず降下する)への対応、低温状況下における長期耐久性をチェックすることを目的とする。今回のプラットフォームには、水温、圧力に加えて、流速が取得できるような測器を配置した。また、浮上頻度を高めるため、係留深度や中間ブイから本体ブイまでのケーブル長などを変更した。係留開始から1月の初旬までに2回の浮上・通信を確認した後、1月20日に、ブイは氷直下停止モードへ移行した。これ以降、異常動作のシグナルは確認されておらず、通常動作を継続しているものと期待できる。地球規模の気候変動の解明と予測において、海洋が持つ膨大な熱容量や水循環における役割の重要性から、海洋、特に南極海をはじめとする観測の困難な極域海洋でのモニタリング体制の構築が急務となっている。本研究では、近年急速に発展した漂流型中層ブイの浮力制御技術と衛星通信技術を応用して、氷海域でも運用可能な海洋鉛直プロファイル観測機能と観測結果のリアルタイム送信機能を有する係留型ブイ観測システムの開発を目的とした。本研究では、沿岸大陸棚域を想定し、極域海洋で400m程度までのプロファイルを取得可能なリアルタイムブイシステムの設計・実海域試験を行った。同時に、実際のブイの動作条件を明確化するために、ブイの設置海域における流速をはじめとする海洋環境の計測も実施した。オホーツク海知床ウトロ沖において、夏期および冬期の通算7ヶ月にわたって実海域試験を行った。センサーブイについては、浮上下降動作、待機深度の制御、衛星通信によるデータ通信、海氷期間を含む半年間の長期連続耐久運転、海氷下浮上・停止動作といったプログラムした動作のすべてに成功した。通信成功率つまり海面浮上頻度は全浮上回数の二割以下に留まったが、実測流速により、これは現行のブイの浮上限界流速が約25cm/s程度であることに起因することも確認した。同時に強流速に対する中間係留ブイシステムの姿勢傾斜についても知見が得られた。これらにより、極域沿岸海洋での実運用に耐えうるリアルタイムモニタリングシステムの基盤技術はほぼ確立したといえ、今後さらに高度な海洋条件での運用に対応するための基盤を得ることができた。 | KAKENHI-PROJECT-25550002 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25550002 |
氷海環境リアルタイムモニタリングブイシステムの開発 | 本研究では、近年発展した海洋中層ブイの浮力制御技術と衛星通信技術を応用して、氷海域でも運用可能な海洋鉛直観測を行う係留型ブイ観測システムの開発を目的とし、オホーツク海知床沖で通算七ヶ月にわたる実海域試験を行った。センサーブイについては、浮上下降動作、待機深度の制御、衛星通信によるデータ通信、長期連続耐久運転、海氷下の浮上・停止動作といったプログラムした動作のすべてに成功した。また流速の実測により、ブイ浮上の限界となる流速を求めた。これにより実運用に耐えうるシステムの基盤技術を確立し、今後さらに高度な海洋条件下での運用に対応するための基盤を得た。現在までのところで、ブイが通常海域で規定の動作をすることがほぼ確認できている。また、データの衛星経由の取得も問題なく行った。これまでにない長期間係留での機器の耐性についても実績を得た。中間ブイ系の挙動も、圧力センサーの状況から、ほぼ直立の姿勢を保っていることが確認され、基本的な設計には問題がないことが分かった。こうしたことから、ブイの利用可能性を確認する基本的な要件については、実地に証明することでほとんど達成できた。試験海域における流速がおしなべて非常に速く、ブイがこの条件をクリアできるように設計されていない点では試験海域としての条件は悪いが、適正な海況にある場合で挙動が確認できることと、厳しい条件下でも機器そのものには耐性があること、およびこの海域における海流が速いことが海洋学的には新たな知見であることもあり、順調に成果を蓄積しつつあるといえる。海洋物理学現在係留運用中のブイの挙動を引き続きモニタリングするとともに、春季にブイシステム全体の回収を実施する。春季にブイが再浮上した場合、回収時までに、各種のコマンドのテストやデータの回収通信をできる限り実施する。取得したデータの解析により、氷直下停止モードの正常動作を確認やバッテリーの寿命についての検討を行う。ほぼバッテリーの安全使用限界とみなされる5月中に、ウトロ漁協の協力により、ブイシステム全体の回収を行う。回収が成功すれば、冬期試験の詳細にわたる全データの解析が可能になる。特に、中間ブイに搭載したADCPによる流速データとの比較から、強流速に対するブイの姿勢制御についての解析を行う。また、取得された海洋データから、本海域における海水特性、流動特性の時間変動について解析する。ブイメーカーとの共同の解析により、ブイの応答に改善に向けた調整を行う。流速とブイの姿勢の対応関係から、強流速下における本体への抵抗の働きを調べる。ブイの姿勢を制御するために、本体中の錘の位置による調整を検討する。また、深度制御範囲の選択が電力消費に与える影響を調べ、電力節減の可能性を追求する。こうした解析から、今後の南極域での展開に向けて、現有のブイシステムを改良・展開できる海域の条件についての細部の検討を行う。特に、海氷に対する通信用アンテナの保護についての対策を検討する。現在までに確認した範囲では、開発したブイは当初想定した性能を発揮しており、計画は順調に進展していると言える。また、今後の運用に関する準備も、概ね順調に推移している。 | KAKENHI-PROJECT-25550002 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25550002 |
イネ3量体Gタンパク質が制御する遺伝子群の解明 | イネ3量体Gタンパク質αサブユニット遺伝子欠失変異体d1が示す矮性の原因は、細胞数の減少であることを明らかにした。マイクロアレイ解析を行った結果、Gα欠失変異体において、11個の細胞数の制御に関わる可能性のある候補遺伝子を同定した。これらの候補遺伝子の特徴から、(i)細胞分裂速度が遅延する可能性と(ii)細胞分裂方向に異常が生じ、正しい方向への分裂ができないために細胞数が減少する可能性が考えられた。イネ3量体Gタンパク質αサブユニット遺伝子欠失変異体d1が示す矮性の原因は、細胞数の減少であることを明らかにした。マイクロアレイ解析を行った結果、Gα欠失変異体において、11個の細胞数の制御に関わる可能性のある候補遺伝子を同定した。これらの候補遺伝子の特徴から、(i)細胞分裂速度が遅延する可能性と(ii)細胞分裂方向に異常が生じ、正しい方向への分裂ができないために細胞数が減少する可能性が考えられた。イネ3量体Gタンパク質は,それぞれ1種類のα(Gα)、β(Gβ)、γ(Gγ)サブユニットから構成される。現在までに、イネGα遺伝子欠損変異体d1の綾化の原因は細胞数の減少であることを明らかにした。幼苗期のWTとd1に、7つの植物ホルモンを投与したところ、d1はブラシノライド(24-epi BL)に対する応答が低下していた。本年度は、d1-1とd61-2(BR受容体変異体)との2重変異体を用いて、両シグナリングが、細胞数の制御に共通したパスウエイを利用しているか否かを検討した。葉鞘において、d1-1d61-2の組織長は相乗的に減少したが、d1-1d61-2の細胞数はd1-1と同じであった。この結果は、葉鞘の細胞数の制御に関しては、d1-1はd61-2の下流に位置することを示した。Gβ遺伝子(RGB1)とGγ遺伝子(RGG1)の欠失変異体は未だ単離されていない。そこで、Gβの機能を推定するため、WTとd1のおのおのに、RNAi法を用いてGβ遺伝子発現抑制個体を作出し、rgb1RNAi/WT、rgb1RNAi/d1-5と名付けた。rgb1RNAi/WT、rgb1RNAi/d1-5は蟻性、ラミナジョイント部位と節の壊死、種子の小粒化、稔性低下などの異常を示した。細胞数の制御に関しては、RGB1はRGA1とは独立して、細胞数を正に制御することが示唆された。rgb1RNAi/WT and rgb1RNAi/d1-5におけるラミナジョイント部位と節の壊死は、d1-5では見られなかった新規な特性であった。野生型においてRGB1が強く発現している器官と、rgb1RNAi/WT and rgb1RNAi/d1-5において異常が認められた器官は一致した。これらの結果は、イネにおいてGβは、Gαとは独立した機能を有することを示唆した。1)Gタンパク質αサブユニット(Gα)とBRシグナリングの相関関係BR受容体変異体d61-2とd1-1の2重変異体(d61-2 d1-1)を組織学的に解析した。BR変異体の矮性は、主に細胞長の減少が原因であり、d1-1の簸性は細胞数の減少が原因である。4葉鞘の縦方向の細胞数は、2重変異体において、d1-1がd61-2に対してエピスタテイックであった。第1節間の縦方向の細胞数は、両シグナリングが欠失すると顕著に減少し、複雑な相互作用の可能性を示唆した。外頴の縦方向の細胞数は、D1の働きで説明がつき、BRシグナリングの関与は少ないと判断した。以上を総合的に考察すると、Gタンパク質シグナリングとBRシグナリングは、器官ごとに相互作用の様式を異にする可能性があることが示された。2)Gタンパク質βサブユニット(Gβ)の機能推定Gタンパク質βサブユニット(Gβ)遺伝子(RGB1)の発現抑制個体を作出し、表現型解析を行った。平成23年度は、この発現抑制により異常を示す器官を詳細に調べ、論文として発表した(Plant J.67,907-916)。本研究により、(1)Gβは、Gαとは独立に細胞数を正に制御すること、(2)Gαの完全な消失は背丈が半分になる綾性を示すことに対比して、Gβの完全な消失は致死に至る可能性のあること、(3)Gβの発現抑制は、ラミナジョイント部位や節の枯死を誘発すること、などを明らかにした。イネ3量体Gタンパク質Gα遺伝子欠失変異体d1と野生型の転写産物の量比を、マイクロアレイ法(44kオリゴマイクロアレイ、一色法)にて解析した。幼苗期のイネの生育は、グロースチャンバー(30°C)で、3種類の生育条件、Yoshida培地(12時間明所、12時間暗所)、Yoshida培地(連続光)、1/2 MS培地(12時間明所、12時間暗所)の結果を比較した。幼苗期は、第4葉展開期に着目し、野生型で、伸長が終結した第3葉(L3)と伸長中の第4葉(L4)を比較し、L4で転写量が多い遺伝子(L4/ L3比が共に1.5以上)を選択した。 | KAKENHI-PROJECT-22570048 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22570048 |
イネ3量体Gタンパク質が制御する遺伝子群の解明 | 上記の3種類の生育条件全てにおいて同様の解析をした後、共通して、野生型でL4/ L3比が共に1.5以上の遺伝子を選択した。圃場で生育させたイネより花芽を採取した。今回は、46cmの花芽(野生型)、23cmの花芽(d1)用い、野生型(WT)とd1の転写産物量を比較した。上記、全てに共通して、野生型よりd1で変動する転写産物を探索した。その結果、Gα遺伝子が欠失すると、同調して減少する31個の転写産物を同定した。細胞数を制御する候補として、4種類の転写因子、1種類の細胞周期関連遺伝子、2種類の細胞骨格関連遺伝子、1種類のオーキシン応答遺伝子、3種類の情報伝達関連遺伝子、合計11個を同定した。これらの遺伝子の機能から、これらの遺伝子の発現抑制で、(i)細胞分裂速度が遅延する可能性と(ii)細胞分裂方向に異常が生じ、正しい方向への分裂ができないために、縦方向の伸長が抑制され、矮性を示す可能性が考えられた。本研究の重要性・意義:この候補遺伝子の中から、真にGα遺伝子に依存する転写産物が同定できれば、植物Gタンパク質シグナリングの初めての転写マーカーになり、Gαから標的遺伝子の転写スイッチの開始に関わる因子の解析が可能になる。(ア)3量体Gタンパク質シグナリンとブラシノステロイド(BR)シグナリングの相関関係を、2重変異体を用いて検証した結果、器官ごとに、両シグナリングの相互作用の仕方が異なることを見出した。これにより、Gαに支配される遺伝子発現制御機構は、全器官の共通性を見出す方向の試みより、器官ごとの特徴をまずは調べる必要があるとの結論に至った。この着眼点により、次年度の研究計画を合理的に進められることになった。(イ)GαサブユニットとGβサブユニットは、独立した機能を有すること示せた。この結果により、Gβの機能発現を必要とする器官の同定ができ、次年度の研究計画を合理的に進めることが可能になった。24年度が最終年度であるため、記入しない。(ア)Gαが制御する遺伝子群の解明は、葉鞘、節、外頴などの諸器官で、ブラシノステロイドをはじめとする植物ホルモンの影響を、器官ごとに、異なった様式で受けることが示唆された。この知見に立ち、最終年度は、葉鞘に着目したマイクロアレイ解析を行い、葉鞘でのGαが制御する遺伝子群を同定する。(イ)GαサブユニットとGβサブユニットは、独立した機能を有すること示せた。この成果を受け、次年度は、Gβが関与する最適な組織として、葉期別の葉鞘に着目しマイクロアレイ解析を行い、Gβが制御する遺伝子群を同定する。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22570048 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22570048 |
多端子量子通信ネットワークの理論的解析 | 量子系での多端子のネットワークにおいて,量子的な効果を用いた通信を行うには,それらの端子間での量子もつれ状態の活用が不可欠である.本研究では,多端子間での量子もつれ状態の識別,定量化,分類,変換可能性を扱った.さらに一入力多出力の量子通信路でも有効に働く量子通信路のユニバーサル符号を与えた.(1)量子系での情報処理が古典系と異なる点は量子もつれがある点である.従来研究では,2端子の場合の量子もつれの定量化は進んでいたが,多端子の量子もつれの解析は十分に進んでいない.本研究では,多端子量子通信ネットワークの性能を明らかにするために,多端子系での量子もつれを解析する.(2)また,多端子系での通信では送信者・受信者が複数存在するため,受信者・受信者の複数の組み合わせに対して同時に高いレートを実現する符号化・復号化の組み合わせが求められる.本研究ではそのような符号化・復号化の構成を行う.量子系での多端子のネットワークにおいて,量子的な効果を用いた通信を行うには,それらの端子間での量子もつれ状態の活用が不可欠である.本研究では,多端子間での量子もつれ状態の識別,定量化,分類,変換可能性を扱った.さらに一入力多出力の量子通信路でも有効に働く量子通信路のユニバーサル符号を与えた.本年度の研究では,多端子の量子情報通信ネットワークを解析するために,量子状態のユニバーサルな近似理論を構築した.この成果を利用して,ベイズ符号の量子版として,ユニバーサルな量子情報源圧縮の理論を構築した.さらに,量子通信路の形に依存しない符号化を与えるユニバーサル量子通信路符号化定理を与えた.さらに.量子系において多端子のネットワークの性能を解析するには,エンタングルメントの解析が鍵となる.最初に,エンタングル状態の検定を群共変的な枠組みの中で論じた.この議論においては,第1種誤り確率と第2種誤り確率を厳密に定義し,これらのトレードオフを扱った.特に,この設定では遠隔地の問での量子相関を許さず,2つの端子間の古典通信のみ許す設定を考えた.この設定では,同じ状熊(コピー)を複数準備する.そのため,各端子にて,コピー間の量子相関を用いて測定することが可能となる.この研究では,端子間の量子相関を用いない場合に,コピー間の量子相関の利用の有無でどのように検定性能に差が生じるか調べた.その結果,1次漸近論の枠組みでは,端子間の相関を許さない設定でも,コピー間の量子相関を利用すると,端子間の量子相関を許す場合とほぼ同等の性能の検定が可能であることが分かった.一方,同じ端子間の量子相関を用いない場合でもコピー間の量子相関の有無で1次漸近論の枠組みで差が生じることがわかった.さらに,多体系でのエンタングルメントを定量的に評価する指標であるgeometric measureの計算を著しく単純化する公式を導出した.多端子の場合での量子情報処理について調べるために,多端子系の量子もつれ状態の度合いを表す量である幾何学的測度の注目した.多端子の情報処理の場合,異なる端子に跨る量子処理を行うことができないことが考えられる.このような場合,端子間のエンタングルメントは量子効果を生かした処理を行うための資源として考えることができる.従って,エンタングルメントの度合いを表す幾何学的測度は量子情報処理を行うことのうまみを表わしていると考えることができる.はじめに,対称性を満たす状態の場合に簡便な公式を与えた.さらに,この量について加法性について調べた.その結果,係数が正値となる場合について,加法性が成り立つことを示した.この成果を用いて,Dicke状態,最大相関ベル基底状態,Smolin状態,Dur状態の場合に加法性が成り立つことを示した.この結果を用いて,Dicke状態について漸近的エンタングルメント相対エントロピーについても計算した.一方,係数が正値とならない場合についても考察し,そのような場合には,加法性が成り立たないことの方が一般的であることを確率的手法を用いて示した.特にその典型例として,反対称状態に注目した.この場合に,2コピー状態の幾何学的測度と1コピー状態の幾何学的測度について計算し,両者を比較することで,加法性が成り立たないことを具体的に示した.この事実は,ほとんどの場合2コピー状態は幾何学的測度の意味で,エンタングルメントが小さいことを示している.一方,先行研究により,ほとんどの量子状態はエンタングルが強すぎて1方向量子計算と呼ばれる多端子量子情報処理には向かないということが指摘されている.しかしながら,本結果そのため,2コピー状態を用いると,エンタングルメントの度合いが抑制でき,1方向量子計算に適していることが期待できる.多端子糸の量子もつれ状態を純粋状態の場合に変換可能性の観点から特徴つけることに成功した.本研究では3種類の変換可能性に注目し,これらの変換可能性の間の関係を明らかにした.具体的には,多コピー変換可能性,確率的LOCC変換可能性,確定的LOCC変換可能性の3つの変換可能性について扱った.これらの変換可能性には強弱があり,多コピー変換可能性が弱く,その次に確率LOCC変換可能性が弱い.すなわち,多コピー変換可能である場合は,確率的LOCC変換及び,確定的LOCC変換が可能である.特に最も弱い変換可能性である多コピー変換可能性については,端子間の量子もつれを表すグラフを用いて分類可能であることを示した.また,確率LOCC変換可能性とテンソルラングとの関係を明らかにした. | KAKENHI-PROJECT-20686026 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20686026 |
多端子量子通信ネットワークの理論的解析 | 具体的には,テンソルランクと局所ランクから確率LOCC変換可能性が完全に決まる場合と,テンソルランクと局所ランクだけから確率LOCC変換可能性が完全に決まらない例があることを明らかにした.例えば,テンソルランクと全ての局所ランクが等しい場合,すべての状態は互いに,確率LOCC変換可能である.しかし,1つの系の除くすべての系で局所ランクがテンソルランクに等しく,その1つの系での局所ランクがテンソルランクよりも1つ小さい場合は異なる.この場合,その系の局所ランクの数の確率LOCC変換可能で移りあわない部分集合に分かれる.また,3体系の場合には,これ以外の場合にも,与えられたテンソルランクと局所ランクの下で,複数の確率LOCC変換可能な軌道に分かれることを示した.さらに,テンソルランクと全ての局所ランクが等しい場合であっても,全ての状態は確定的LOCC変換可能とは限らないことも示した. | KAKENHI-PROJECT-20686026 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20686026 |
北部九州弥生人のミトコンドリアDNAの変異パターンとその系統 | 北部九州弥生人のミトコンドリアDNA(mtDNA)のシークエンスの変異を解析し、その系統について考察した。試料として用いたのは、福岡県筑紫野市の隈・西小田遺跡から出土した甕棺人骨薬200体である。表面を削り、粉末状にした大腿骨の緻密質1グラムからDNAを抽出し、PCR法を用いてmtDNAのD-ループの一部、252ないし213塩基対を増幅した。増幅したDNAはプラスミドベクターにライゲートした後、大腸菌にトランスフェクションし、定法に従ってシークエンスを行った。シークエンスはそれぞれの固体で4個以上のクローンを取って比較検討したのちに決定した。その結果、最終的に塩基配列が決定できたのは97個体であり、このなかに見いだされた塩基配列のタイプは23種類であった。今回配列を決定した部分は、すでに報告されている現代日本人の塩基配列部位に完全に含まれているので、このデータと併せて、近隣結合法を用いてそれぞれの系統関係を考察した。その結果、隈・西小田弥生人のタイプは特定の系統に収斂することなく、広く現代日本人の変異の中に散在する結果となった。mtDNAの変異を用いた研究から、現代日本人は異なる2つの系統の集団から構成されていることが知られている。これが渡来系弥生人と縄文人を反映するという仮説が示されているが、今回の結果はそれを単純に支持してはいない。むしろ北部九州の渡来系弥生人はmtDNAの変異からみる限り、現代日本人の原型とでも言うべき形で成立していたと考えられる。ただし、隈・西小田遺跡から出土する人骨は弥生時代前期末以降のものなので、すべてが純粋な渡来人とは断定できず、ネイティブな集団との混血が進んでいたと考えればそれらの結論を否定するものではない。今後はより広範な地域の人骨を用いた解析と、特に弥生時代初期の人骨の解析が必要であろう。北部九州弥生人のミトコンドリアDNA(mtDNA)のシークエンスの変異を解析し、その系統について考察した。試料として用いたのは、福岡県筑紫野市の隈・西小田遺跡から出土した甕棺人骨薬200体である。表面を削り、粉末状にした大腿骨の緻密質1グラムからDNAを抽出し、PCR法を用いてmtDNAのD-ループの一部、252ないし213塩基対を増幅した。増幅したDNAはプラスミドベクターにライゲートした後、大腸菌にトランスフェクションし、定法に従ってシークエンスを行った。シークエンスはそれぞれの固体で4個以上のクローンを取って比較検討したのちに決定した。その結果、最終的に塩基配列が決定できたのは97個体であり、このなかに見いだされた塩基配列のタイプは23種類であった。今回配列を決定した部分は、すでに報告されている現代日本人の塩基配列部位に完全に含まれているので、このデータと併せて、近隣結合法を用いてそれぞれの系統関係を考察した。その結果、隈・西小田弥生人のタイプは特定の系統に収斂することなく、広く現代日本人の変異の中に散在する結果となった。mtDNAの変異を用いた研究から、現代日本人は異なる2つの系統の集団から構成されていることが知られている。これが渡来系弥生人と縄文人を反映するという仮説が示されているが、今回の結果はそれを単純に支持してはいない。むしろ北部九州の渡来系弥生人はmtDNAの変異からみる限り、現代日本人の原型とでも言うべき形で成立していたと考えられる。ただし、隈・西小田遺跡から出土する人骨は弥生時代前期末以降のものなので、すべてが純粋な渡来人とは断定できず、ネイティブな集団との混血が進んでいたと考えればそれらの結論を否定するものではない。今後はより広範な地域の人骨を用いた解析と、特に弥生時代初期の人骨の解析が必要であろう。 | KAKENHI-PROJECT-06640919 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06640919 |
結合型肺炎球菌ワクチン低応答例の免疫学および細菌学的要因の検討と早期同定法の確立 | フローサイトメトリーを用いて、造血幹細胞移植後の児および早産児および健常乳児から採取した血液中のT細胞およびB細胞サブセットの詳細な解析を行い、結合型肺炎球菌ワクチン(PCV)接種後の免疫低応答例(肺炎球菌特異的IgG・IgM抗体価低値)で割合が低下しているT細胞およびB細胞サブセットを特定することで、宿主側の低応答の要因を探る。また、免疫低応答の要因としての肺炎球菌の上気道での常在や気道細菌叢の変化などの細菌の関与を探るために、16S ribosomal RNA遺伝子を利用した上気道細菌叢の網羅的解析を行い、正常応答例と低応答例では異なる細菌叢パターンが得られるかを検討する。フローサイトメトリーを用いて、造血幹細胞移植後の児および早産児および健常乳児から採取した血液中のT細胞およびB細胞サブセットの詳細な解析を行い、結合型肺炎球菌ワクチン(PCV)接種後の免疫低応答例(肺炎球菌特異的IgG・IgM抗体価低値)で割合が低下しているT細胞およびB細胞サブセットを特定することで、宿主側の低応答の要因を探る。また、免疫低応答の要因としての肺炎球菌の上気道での常在や気道細菌叢の変化などの細菌の関与を探るために、16S ribosomal RNA遺伝子を利用した上気道細菌叢の網羅的解析を行い、正常応答例と低応答例では異なる細菌叢パターンが得られるかを検討する。 | KAKENHI-PROJECT-19K08333 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K08333 |
植物にATG5/ATG7非依存性のオートファジー経路は存在するか? | 酵母で同定されたオートファジーに必須のコアATG遺伝子群は植物を含めた真核生物全般で保存されている。しかし、コアATGを欠損するシロイヌナズナ変異体は生活環を完結することから、従来型とは異なる新奇オートファジー経路の存在が示唆される。本研究では、シロイヌナズナにおけるATG非依存性の新奇オートファジー経路の存在について検証した。そしてATG5あるいはATG7を欠損する変異体においても葉の老化時にオートファジーで分解されることが知られる葉緑体の細胞あたりの数やサイズが減少することが確認された。また植物におけるATG非依存性のオートファジーの新奇の可視化方法について検討した。独立栄養生物である植物にとって、必須栄養素やエネルギーの体内リサイクルは過酷な環境下での生存戦略の一つとして極めて重要な意味を持つ。これらのリサイクル機構には、細胞自己分解システム「オートファジー」が、重要な役割を担っていることが明らかになりつつある。酵母で同定されたオートファジーに必須の遺伝子群ATGsは植物を含めた真核生物全般で保存されており、オートファジーの中核的なメカニズムは共通とされる。しかし、ATGを欠損するシロイヌナズナ変異体は基本的な生活環を完結することから、動物で報告されたように従来型とは異なる新奇オートファジー経路の存在が示唆される。本研究では、植物におけるATG非依存性の新奇オートファジー経路の存在について明らかにするとともに、その従来型オートファジーとの関係について検証することを目的として、今年度は新奇オートファジー経路の可視化系の構築について進めた。3種類のコンストラクト(35S:mKeima、35S:TP-mKeima、SAG12:SAG12-mRFP)を作成した。これらのコンストラクトを用いてシロイヌナズナ野生体の形質転換を行った。得られた複数の形質転換体候補種子の選抜を行い、目的の蛍光タンパク質が正しくより多く発現する個体の同定を進めた。それぞれのラインについて複数の形質転換体が得られたが、35S:TP-mKeimaとSAG12:SAG12-mRFPについては蛍光タンパク質の発現量が想定よりも低かった。独立栄養生物である植物にとって、必須栄養素やエネルギーの体内リサイクルは過酷な環境下での生存戦略の一つとして極めて重要な意味を持つ。これらのリサイクル機構には、細胞自己分解システム「オートファジー」が、重要な役割を担っていることが明らかになりつつある。酵母で同定されたオートファジーに必須の遺伝子群ATGsは植物を含めた真核生物全般で保存されており、オートファジーの中核的なメカニズムは共通とされる。しかし、ATGを欠損するシロイヌナズナ変異体は基本的な生活環を完結することから、動物で報告されたように従来型とは異なる新奇オートファジー経路の存在が示唆される。本研究では、植物におけるATG非依存性の新奇オートファジー経路の存在について明らかにするとともに、その従来型オートファジーとの関係について検証することを目的として、今年度は昨年度に引き続き新奇オートファジー経路の可視化系の構築について進めた。3種類のコンストラクト(35S:mKeima、35S:TP-mKeima、SAG12:SAG12-mRFP)を作成した。これらのコンストラクトを用いてシロイヌナズナ野生体の形質転換を行った。得られた複数の形質転換体候補種子の選抜を行い、目的の蛍光タンパク質が正しくより多く発現する個体の同定を進めた。さらにこれらのコンストラクトの導入が確認された形質転換体とオートファジー欠損変異体(atg5-1およびatg7-2)の交配を進め、F1種子を獲得した。また並行してオートファジー欠損変異体における葉緑体の消長(オルガネラのサイズや細胞当たりの数)について顕微鏡による定量解析を進めた。初年度に完了する予定であったコンストラクトの野生体における有効性の確認の遅れを引きずる形で、今年度も当初の計画からは遅れている状況にある。35S:mKeimaまたは35S:TP-mKeimaを発現するatg5-1およびatg7-2の準備が、交配に一定時間を要するために完了しなかった。独立栄養生物である植物にとって、必須栄養素やエネルギーの体内リサイクルは過酷な環境下での生存戦略の一つとして極めて重要な意味を持つ。これらのリサイクル機構には、細胞自己分解システム「オートファジー」が、重要な役割を担っていることが明らかになりつつある。酵母で同定されたオートファジーに必須の遺伝子群ATGsは植物を含めた真核生物全般で保存されており、オートファジーの中核的なメカニズムは共通とされる。しかし、ATGを欠損するシロイヌナズナ変異体は基本的な生活環を完結することから、動物で報告されたように従来型とは異なる新奇オートファジー経路の存在が示唆される。本研究では、植物におけるATG非依存性の新奇オートファジー経路の存在について明らかにするとともに、その従来型オートファジーとの関係について検証する。今年度は新奇オートファジー経路の可視化系の構築について昨年度から引き続いて進めた。3種類のコンストラクト(35S:mKeima、35S:TP-mKeima、SAG12:SAG12-mRFP)を作成し、これらの蛍光マーカーを発現するシロイヌナズナ野生体の形質転換体を作成した。得られた複数の形質転換体候補種子の選抜を行い、目的の蛍光タンパク質が正しくより多く発現する個体の同定を進めた。 | KAKENHI-PROJECT-26660286 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26660286 |
植物にATG5/ATG7非依存性のオートファジー経路は存在するか? | さらに形質転換体とオートファジー欠損変異体(atg7, atg5)との交配を進め、F2種子を獲得した。並行してatg7およびatg5変異体の葉の老化過程における葉緑体の消長について、解析した。酵母で同定されたオートファジーに必須のコアATG遺伝子群は植物を含めた真核生物全般で保存されている。しかし、コアATGを欠損するシロイヌナズナ変異体は生活環を完結することから、従来型とは異なる新奇オートファジー経路の存在が示唆される。本研究では、シロイヌナズナにおけるATG非依存性の新奇オートファジー経路の存在について検証した。そしてATG5あるいはATG7を欠損する変異体においても葉の老化時にオートファジーで分解されることが知られる葉緑体の細胞あたりの数やサイズが減少することが確認された。また植物におけるATG非依存性のオートファジーの新奇の可視化方法について検討した。今年度は、3種類のコンストラクト(35S:mKeima、35S:TP-mKeima、SAG12:SAG12-mRFP)をオートファジー欠損変異体(atg5, atg7)にも導入して、ATG非依存性のオートファジー経路の有無について検証する予定であったが、コンストラクトの作成ならびに野生体におけるコンストラクト自体の有効性の検証にやや手間取り、そこまで到達することができなかった。35S:mKeimaまたは35S:TP-mKeimaを発現する形質転換体とatg5-1またはatg7-2を交配して得たF1種子を播種し自殖F2種子を早急に獲得する予定である。また今年度から着手したオートファジー欠損変異体における葉緑体の消長の顕微鏡による定量解析をさらに推進していく。植物栄養生理学今年度作成した形質転換体の選抜をさらに進めると共に、Keima以外の蛍光タンパク質の使用についても検討する。またオートファジー欠損変異体(atg5, atg7)へのコンストラクト導入については、アグロバクテリウムを用いた形質転換のみならず、現在選抜中の野生型バックグラウンドの形質転換体とオートファジー欠損変異体の交配により達成することも検討していく。今年度はATG非依存性のオートファジー経路の存在について検証する中心材料である35S:mKeima、35S:TP-mKeimaを発現するオートファジー欠損変異体(atg5-1およびatg7-2)の作成まで至らなかった。そのため、その検証に要する物品費や人件費、その成果発表に係る旅費やその他の経費が未使用となった。作成したコンストラクトをオートファジー欠損変異体(atg5, atg7)にも導入して、ATG非依存性のオートファジー経路の有無について検証する予定であったが、変異体を形質転換するまでに至らず、それにかかる物品費や人件費、その成果発表に係る旅費やその他の経費が不要となったため。ATG非依存性のオートファジー経路の存在について検証するため、物品費は植物栽培用品20個として計20万円、薬品20個として計20万円、旅費は国内学会発表用に2人、1回づつで20万円、人件費は植物栽培の補助に1人、2か月で20万円程度を使用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-26660286 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26660286 |
高性能線形擬似乱数の開発と非線形化、暗号耐性化の研究 | 本年度の概要は次のとおりである。発表ずみの成果1.連携研究者・原本博史氏ならびにモントリオール大学レキエ教授との共同研究により、高速多項式掛け算に基づく擬似乱数の高速ジャンプ技法を確立し、国際会議SETA2008にて発表し、共著論文として査読付き会議録に収録された。従来の方法より少ないメモリでより高速なジャンプを、Karatsuba乗算の利用により実現した。2.連携研究者・萩田真理子氏らとの共同研究により、部分系列が符号をなすような循環数列であるerror-correcting sequenceの概念を提唱した。M系列として、Hamming符号を生成するものを実現した。2報の論文を発表した。3.連携研究者・斎藤睦夫氏との共同研究により、「IEEE754」実数表現を直接生成する擬似乱数発生法を開発実装した。従来の、整数乱数から実数乱数に変換する方法にくらべると格段に高速である。本研究成果は、MCQMC2008研究集会にて口頭発表した。未発表の成果MCQMC2008にて、ドイツマックスプランク研究所Heiko Bauke氏とマールブルグ大学Mertens氏を招聘し、非線形フィルターによる高次元均等分布乱数の非線形化に関する討論を行い、高速なジャンプ・並列化法を備えた擬似乱数発生法の着想を得た。SFMTは、現在世界標準となっているメルセンヌツイスター(MT)擬似乱数発生法の2倍程度高速であるのみならず、高次元均等分布性もかなり向上し、さらにビット中に0が多い偏った初期化に対する耐性も格段に良くなっている。この研究成果は、2006年8月にドイツUlm大学で開かれたモンテカルロ法国際研究集会MCQMC2006にて口頭発表し、現在論文を投稿中である。SFMTの出力を、整数乗算を利用しだメモリつきフィルターにより変換することで非線形化し、高速なストリーム暗号を実現するアルゴリズムCryptMT Version 3を設計し、欧州eSTREAM乱数コンペティションに提示した。eSTREAMが主催した、査読つき国際会議SASC2007(2007年2月、ドイツ)で口頭発表した。擬似乱数の状態を高速にジャンプさせる研究を行い、上記MCQMC2006にて口頭発表した。論文は共著で執筆し、投稿中である。擬似乱数の世界的権威であるモントリオール大学Pierre L'Ecuyer教授を2007年3月に10日間招聘し、並列擬似乱数の評価方法等について研究打ち合わせをしたほか、広島大学ならびに熊本大学で同教授を含めた講演者によるミニワークショップを開催した。1.最近のCPUの特長である単命令複数データ命令(SIMD)を用いた高速擬似乱数発生法SFMTを発表した(斎藤-松本。国際会議発表し、査読論文掲載済み、インターネット上公開しダウンロード多数)。2.SFMTを整数乗算によるフィルターを用いて暗号耐性化したCryptMTを開発した。(松本-斎藤-西村-萩田。国際会議発表し、査読論文掲載済み)。3.擬似乱数の初期化法の多くが欠陥を持っていることを発見し、その理由を精査した(松本-和田-芦原-蔵本、査読論文掲載済み)。4.乱数の品質の評価法として、符号理論における分離型MacWilliams恒等式を用いた非実験的評価法を開発した(原本-西村-松本、査読論文掲載済み)。6.擬似乱数発生に用いられる線形回帰数列に対して、そのセグメントがq-aryハミング符号となるための必要十分条件を与え、具体例を構成した(萩田-松本-大塚-夏、査読論文受理済み)現在進行中の研究として、1.実数乱数の高速生成、2.乱数検定の自動化(人工知能化)、3.形式冪級数格子による低齟齬列生成法、4.物理乱数と擬似乱数の融合の4つが進んでいる。本年度の概要は次のとおりである。発表ずみの成果1.連携研究者・原本博史氏ならびにモントリオール大学レキエ教授との共同研究により、高速多項式掛け算に基づく擬似乱数の高速ジャンプ技法を確立し、国際会議SETA2008にて発表し、共著論文として査読付き会議録に収録された。従来の方法より少ないメモリでより高速なジャンプを、Karatsuba乗算の利用により実現した。2.連携研究者・萩田真理子氏らとの共同研究により、部分系列が符号をなすような循環数列であるerror-correcting sequenceの概念を提唱した。M系列として、Hamming符号を生成するものを実現した。2報の論文を発表した。3.連携研究者・斎藤睦夫氏との共同研究により、「IEEE754」実数表現を直接生成する擬似乱数発生法を開発実装した。従来の、整数乱数から実数乱数に変換する方法にくらべると格段に高速である。本研究成果は、MCQMC2008研究集会にて口頭発表した。未発表の成果MCQMC2008にて、ドイツマックスプランク研究所Heiko Bauke氏とマールブルグ大学Mertens氏を招聘し、非線形フィルターによる高次元均等分布乱数の非線形化に関する討論を行い、高速なジャンプ・並列化法を備えた擬似乱数発生法の着想を得た。 | KAKENHI-PROJECT-18654021 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18654021 |
重力波天体の多様な観測による宇宙物理学の新展開の総括的研究 | 人類初の重力波の直接観測が2015.9.14に米国の検出器によってなされた。重力波源は質量が太陽質量の30倍程度の2つのブラックホール連星の合体であった。これは多くの研究者には予想外であったが、本領域は2014年に宇宙で最初に生まれた重元素のない星ではこのようなブラックホール連星が形成され2015年にも検出されると予言していて、発見を報じた論文中でも、本領域の予言が観測と驚くべきレベルで一致すると引用された。又2017.1.4にも同様の重力波源が発見された。今後の観測で本領域の起源説がさらに有力になるだろう。本領域では、重力波とX線、光学観測、ニュートリノ観測並びにデータ解析も同時に実施した。総括班は領域代表者を研究代表者とし計画研究代表者を分担者として構成している。また評価担当の連携研究者も構成員である。総括班の中で連携研究者以外の会議を代表者会議と称して毎月1回第1金曜日の9時から行い、領域の各計画研究の進行状況のcheck,総括班の予算使用方法についての検討、2ヶ月に1回、各計画研究が回り持ちで行う1日から2日間のface to faceでのworkshopの日程、内容の検討を行った。本年度は2012年8月27日に京都大学で新学術領域のkickoff会議を開催した。10月21日には富山大学でニュートリノ観測と超新星爆発に関するwork shopを開催した。前日の20日には神岡鉱山中の100m重力波干渉計CLIO並びにLCGT(KAGRA)の建設現場の見学を行った。12月27ー28日には、光赤外の計画研究担当で広島大学のかなた望遠鏡の見学を含むworkshopを実行した。2013年2月20日と22日には、国立天文台にて、データ解析グループがKAGRAデータ解析スクールを開催しデータ解析の仕方を他分野の大学院生を含む60名程度の参加者に教えた。2013年3月1日から2日には領域シンポジウムを大阪市立大学で開催した。領域の2つの計画研究への理解が深まった。2013年度には残り3つの計画研究担当のwork shopを開催する予定である。総括班は領域代表者を研究代表者とし計画研究代表者を分担者として構成している。また評価担当の連携研究者も構成員である。総括班の中で連携研究者以外の会議を代表者会議と称して毎月1回第1金曜日の9時から行い、領域の各計画研究の進行状況のcheck,総括班の予算使用方法についての検討、2ヶ月に1回、各計画研究が回り持ちで行う1日から2日間のTV会議またはface to faceでのworkshopの日程、内容の検討を行った。本年度は2013年5月24日に東京工業大学でx線観測に関するworkshopを開催した(67名参加)。また、7月26日には理論担当で京大を主な開催地にし東京、広島等はTV会議システムで中継して重力波の理論に関するworkshopを開催した(59名参加)。さらに、10月19日には大阪市立大学を中心にデータ解析のworkshopを開催した(42名参加)。2014年1月13日から15日には3日間の領域シンポジウムを東京工業大学で開催し(98名参加)、16の公募研究の発表もしてもらうと同時に総括班会議を行い、評価担当の連携研究者から有益なsuggestionを貰った。9月27日から28日には「データ解析スクール」を東大で開催し60名程度の参加があった。さらには、YKIS2013とMMCOCOSという関連国際会議も共催した。重力波天体の観測を確立するために、重力波そのものの観測と、補い合う関係にある天体観測が必要であるこれらに、重力波天体の理論的な研究をあわせたものが本領域を成している。計画研究A01ではガンマ線・X線、A02は可視・赤外線・電波、A03はニュートリノについて、重力波天体探索に対応する装置の開発や観測(網)の整備をおこなう。一方、A04は重力波観測データを解析し、イベント検出の速報を目指す。またA05は重力波の源・波形の理論で、候補天体の研究や、新しい波源も考える。これらの計画研究は、相互の追観測や同時観測で連携し、重力波天体についての多様な情報を得、理論研究とつきあわせて、重力波天体の正体やその仔細なメカニズムの解明を目指すというのが、主な目的であった。総括班は各計画研究が相互に関連しながら進行するようにするとともに、若手の育成、社会・国民に研究成果を発信する。中間評価では全体としては「(A-)研究領域の設定目的に照らして、概ね期待通りの進展が認められるが、一部に遅れが認められる。」と言う評価であった。総括班に関しては「研究領域内の情報共有や進行状況の確認のための各種会議の開催、研究会の企画など、総括班としての役割を十分に果たしている。若手育成のための貢献も見られる。今後の具体的な成果のために、領域代表者の実験面に関するさらなるリーダーシップを期待する。計画研究と公募研究の調和や、若手研究者の育成に関して、現在の取り組みが実効的なものとなるよう注視されながら領域を運営していただきたい。KAGRAによる重力波観測開始に向けて、研究成果の積極的な公表・普及に一層力を入れるべきである。このため、本計画研究については、計画変更及び研究経費について継続に係る3年目の審査が必要である。」であった。このような中間評価に対する対応を総括班で議論し実行した。 | KAKENHI-ORGANIZER-24103001 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-ORGANIZER-24103001 |
重力波天体の多様な観測による宇宙物理学の新展開の総括的研究 | 総括班の運営に関しては中間評価では概ね高く評価されているので、従来通り、1運営委員会(月例開催)、2総括班会議開催(毎年度に最低でも1回)、評価担当者による点検評価、3定例(隔月)領域研究会の開催,4領域シンポジウム(年に1回、3日間開催)公募研究の研究発表も含む。5若手育成(研究員雇用による若手研究者のこの分野への定着を応援。若手勉強会、領域シンポジウムでの「若手セッション」など)6一般への情報公開:一般向け講演会、一般科学雑誌、新聞記事等で研究成果を国民に還元する。という方針で進める。一方、一部に計画変更の必要が生じた点があるため、代表者会議を開き対策を協議した。その結果、1「A01のWF-MAXIのISS搭載提案不採択と言う事態に対しては、小規模の観測装置へと開発方針を変更し、主検出器である軟X線カメラはISSの小型ペイロードとして搭載機会の確保、硬X線モニターは超小型衛星や海外ミッションへの搭載を目指すこととした。また現行のMAXIとadvanced-LIGO/Virgoとの観測協定が成立したため、計画を前倒ししてLIGOが運転を開始する平成27年度からMAXIによる重力波対応現象の全天監視を実施する。」とする。2「A02の50 cm望遠鏡については、既に本体は購入しており、日本で調整を行っている。中国チベットに搬入することについては、中国国家天文台と引き続き協議を行っており、現地のインフラ整備や、日本の研究者がチベット入境するための手続きについては国家天文台主導で調整することで合意を得ている。うまく行けば平成27年度中には中国に望遠鏡設置が実現し平成28年度から観測投入できる。以上のように概ね順調に本領域の研究が進んでいると言える。今年度の最も大きな事件は米国の4Kmx4kmの2台のレーザー干渉計からなるaLIGOによる初の重力波観測が2016年の2月11日に公表された世界初の重力波の直接検出である。この領域が主体となって重力波発生源天体からの電磁波信号検出のためのJapanese vollaboration for Gravitational-Wave Electro-Magnetic Follow-up Observation (J-GEM)を組織した。このJ-GEMと国際宇宙ステーション搭載の全天X線監視装置MAXIはaLIGO-Virgoと追観測パートナーとしての協定(MOU)を結んで追観測の準備を進めてきた.J-GEMに参加している南天にある名古屋大学のB&C 61cm望遠鏡において9月20日から26日に追観測が行われ,東京大学木曽観測所のシュミット望遠鏡の広視野カメラKWFCでも9月18日に限界等級が約18等級で24平方度の観測が行われた。いずれの観測でも有意なイベントは検出されていない。MAXIは全天を約90分で観測可能であるが,今回の到来方向の誤差領域の90\\%はイベント発生後30分で観測された。そして、1x 10の{-9}乗erg/s/平方cmという3σの上限値を得た。この重力波源はGW150914と呼ばれるが、質量が太陽質量の36倍と29倍の連星ブラックホールからのもので、我々の銀河中のCgn X-1等ののブラックホール候補の質量の2ー3倍大きなもので、多くの研究者には予想外の重さであった。 | KAKENHI-ORGANIZER-24103001 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-ORGANIZER-24103001 |
熟帯のサンゴ礁域におけるフエフキダイ類仔稚魚の資源生態学的研究 | 本研究は,インド・太平洋域のサンゴ礁域の中で最も水揚げが多い魚類の一つであるフエフキダイ属を対象に,年々の新規加入量水準決定の鍵を握るとされる生活史初期に着目して,本属魚類の海草藻場への着底機構,日齢,成長,生残,成長に伴うサンゴ域への生息場移動機構を明らかにすることで,本属魚類の資源変動機構を解明することを目的とした。1.フエフキダイ類の浮遊仔稚魚が,海草藻場が存在する沿岸を識別して接岸しているのかどうかを明らかにするために,沖縄県石垣島沿岸で,海草藻場が存在する沿岸と存在しない沿岸に接岸した仔稚魚の量を比較した。その結果,両沿岸に接岸した仔稚魚の数に有意な違いが認められなかったことから,仔稚魚は海草藻場がある沿岸を識別しないで接岸していると考えられた。2.仔稚魚の着底時の体長と日齢を,DNAによる種判別と耳石による日齢査定を用いて調べた。多くの種で全長と日齢はそれぞれ20-30mmと20-30日であった。幾つかの種間で着底時の日齢と体長に有意な違いが認められた。さらに,5月と7月の個体を比較すると,後者の方が日齢が少なく肥満度が高かったことより,水温の高い夏期の方が浮遊期の成長が良いことがわかった。3.フエフキダイ類の成長に伴う海草藻場からサンゴ域への生息場移行メカニズムを明らかにするために,両生息場における稚魚の摂餌率と生残率の違いを,体サイズの異なる稚魚に対してそれぞれ野外実験で調べた。その結果,体長の小さな個体ほど,海草藻場での生残率や摂餌率が高いことが明らかになった。本研究は,インド・太平洋域のサンゴ礁域の中で最も水揚げが多い魚類の一つであるフエフキダイ属を対象に,年々の新規加入量水準決定の鍵を握るとされる変態期から稚魚期初期に着目して,本属魚類の着底場選択機構,日齢,成長,生残,移動,生息場所を明らかにすることで,これら魚種の資源変動機構を解明することを目的とする。(1)フエフキダイ属浮遊仔魚の接岸から着底までの過程を明らかにするために,沖縄県石垣島沿岸で,浮遊仔魚と着底稚魚の水平分布を集魚灯採集と目視観察によって調べた。その結果,フエフキダイ属仔魚は全長2-3cmに達すると接岸することが明らかになり,さらに,接岸後,すべての個体が海草藻場に着底したことから,本属仔魚は海草藻場に対して着底場選択性があるものと考えられた。(2)フエフキダイ属仔魚の海草に対する基質選択性の有無を,室内実験によって検討した。実験では,サンゴと海草を設置した水槽内に仔魚を放して,仔魚の移動した位置を記録した。移動が確認された個体のうち8割の個体が海草の方へ移動したことから,フエフキダイ属仔魚は海草に対して基質選択性があることが示唆された。(3)海草藻場におけるフエフキダイ属稚魚の個体数変動を明らかにするために,石垣島の沿岸で計6つの海草藻場を選定し,6月から12月まで毎月1回,目視で各海草藻場に出現する稚魚の個体数と体長を記録した。合計6種1204個体のフエフキダイ属魚類が確認され,そのうち,イソフエフキが全体の68%と最も優占していた。月毎の個体数をみると,どの海草藻場でも新規加入稚魚が出現する6月から8月にかけて最も多く,9月以降は個々の成長とともに個体数は徐々に減少し,12月にはほとんどいなくなった。また,イソフエフキは全長約12cmに達するとサンゴ域に生息場所を移行させていたことから,本種は海草藻場を稚魚の成育場として利用していると考えられた。本研究は,インド・太平洋域のサンゴ礁域の中で最も水揚げが多い魚類の一つであるフエフキダイ属を対象に,年々の新規加入量水準決定の鍵を握るとされる生活史初期に着目して,本属魚類の着底機構,日齢,成長,生残,生息場移動を明らかにすることで,これら魚種の資源変動機構を解明することを目的とする。1.フエフキダイ属浮遊仔魚の接岸時の体長と日齢を明らかにするために,沖縄県石垣島沿岸で,5月から9月にかけて毎週1回,仔魚を集魚灯によって採集した。調査期間中118個体が採集され,5月中旬と7月上旬に加入盛期が認められた。全長範囲は1630mmで,季節による体長や肥満度の違いは認められなかった。2.海草藻場に加入してからサンゴ礁に生息場を移行するサイズまでに成長する間の生残率を明らかにするために,石垣島の沿岸2ケ所で4月から12月まで毎週1回,目視で各海草藻場に出現するイソフエフキ稚魚の個体数と体長を記録した。調査期間中,それぞれの調査地で合計293個体と267個体の稚魚(全長212cm)が確認された。加入後の成長に伴う総個体数の減少曲線を求めることで,上述の生残率を求めたところ,どちらの調査地でも5%未満と低いことが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-06J10371 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06J10371 |
熟帯のサンゴ礁域におけるフエフキダイ類仔稚魚の資源生態学的研究 | 3,成長に伴うフエフキダイ属の海草藻場からサンゴ礁への生息場移行メカニズムを明らかにするために,両生息場におけるイソフエフキ稚魚の摂餌率と生残率の違いを,体サイズの異なる稚魚に対してそれぞれ調べた。その結果,体長の小さな個体ほど,海草藻場での生残率や摂餌率が高いことがわかった。本研究は,インド・太平洋域のサンゴ礁域の中で最も水揚げが多い魚類の一つであるフエフキダイ属を対象に,年々の新規加入量水準決定の鍵を握るとされる生活史初期に着目して,本属魚類の海草藻場への着底機構,日齢,成長,生残,成長に伴うサンゴ域への生息場移動機構を明らかにすることで,本属魚類の資源変動機構を解明することを目的とした。1.フエフキダイ類の浮遊仔稚魚が,海草藻場が存在する沿岸を識別して接岸しているのかどうかを明らかにするために,沖縄県石垣島沿岸で,海草藻場が存在する沿岸と存在しない沿岸に接岸した仔稚魚の量を比較した。その結果,両沿岸に接岸した仔稚魚の数に有意な違いが認められなかったことから,仔稚魚は海草藻場がある沿岸を識別しないで接岸していると考えられた。2.仔稚魚の着底時の体長と日齢を,DNAによる種判別と耳石による日齢査定を用いて調べた。多くの種で全長と日齢はそれぞれ20-30mmと20-30日であった。幾つかの種間で着底時の日齢と体長に有意な違いが認められた。さらに,5月と7月の個体を比較すると,後者の方が日齢が少なく肥満度が高かったことより,水温の高い夏期の方が浮遊期の成長が良いことがわかった。3.フエフキダイ類の成長に伴う海草藻場からサンゴ域への生息場移行メカニズムを明らかにするために,両生息場における稚魚の摂餌率と生残率の違いを,体サイズの異なる稚魚に対してそれぞれ野外実験で調べた。その結果,体長の小さな個体ほど,海草藻場での生残率や摂餌率が高いことが明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-06J10371 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06J10371 |
不均一場の日常現象から導入する物理現象の新しい表現方法の研究 | 身の回りの物理現象としての電場や磁場は、場を作り出す帯電体や磁石の形に突起がある場合は特に、突起の周りで場が強いことから気づきが始まる。これらを物理の数理的扱いにつなげる資料を作成した。指先からドアノブへの放電直前の電場分布から仮想的に帯電体を変形する有限要素法シミュレーションや、それと同様の不均一電場分布の実験およびそれをシミュレーションにより説明する資料を作成した。磁石が作る磁場分布や磁石にかぶせた鉄キャップが磁場を強める効果についても、位置分解能の高い測定システムを構築して実験を行い、シミュレーションと比較した。身の回りの物理現象としての電場や磁場は、場を作り出す帯電体や磁石の形に突起がある場合は特に、突起の周りで場が強いことから気づきが始まる。これらを物理の数理的扱いにつなげる資料を作成した。指先からドアノブへの放電直前の電場分布から仮想的に帯電体を変形する有限要素法シミュレーションや、それと同様の不均一電場分布の実験およびそれをシミュレーションにより説明する資料を作成した。磁石が作る磁場分布や磁石にかぶせた鉄キャップが磁場を強める効果についても、位置分解能の高い測定システムを構築して実験を行い、シミュレーションと比較した。身近でありながら定式化が困難なために,物理の内容として教育上は意識的に回避されている現象のひとつとして,静電気をため込んだ体から指先を通しての,ドア、ノブへの放電がある。腕と指,ドアとノブなどの形状を2次元でモデル化し,ドア側を接地,腕側を一定電圧とする条件の下で,腕とドアの距離を変えながら,そのあいだの空間における電気エネルギーをカラーコード化して描画し,この距離の変化だけで電気エネルギーの分布が劇的に変わるようすをシミュレーションにより描き出した。一般の物理教科書では電場(ベクトル量)をまず定式化するが,電場により誘起される効果(電気変位)と電場との積に比例する電気エネルギーは,スカラー量であり分布の表示には適切といえる。初等的な教育段階では,腕とドアの距離が変化するだけで空間の電気エネルギーが変化するイメージを与えることが大切で,放電という極端な状況はその変化の末に生じることを背景知識として,電場についての理解につなぐことができる。さらに,腕や指の周りの等電位線を袋に見立て,適切な電圧をその袋に設定すれば,周りの空間の電気エネルギー分布は腕、指の形状のときと変わらない。この例示を通して,表面電荷が外形の湾曲度の大きな(曲率半径の小さな)部分に集中することを説明することができ,身近な電気力や磁気力を感じとりやすい,電気力線や磁力線が集中したときの状況へと言及することが,学習内容への理解度を増すと考えられる。以上の内容を資料として,千葉県下の高校において,物理全体あるいは電磁気分野が未履修の生徒26名に対して「電場や磁場の感じ方不均一場の利用」と題した講義を行う機会があり,たとえ話を多用しながら,一定の理解を与えることができた。身近でありながら定式化が困難な、不均一場に関わる現象は、目には見えない「場」やそれにより伝わる「力」の概念を考えさせるのに都合良い。強い効果が局所に集中することで、問題にする現象を対象化しやすくし、また、その概念を扱う意義も理解しやすいからである。しかし、その説明を、高校や大学初等で扱う物理学につなげるためには、基礎的な式や単純な図との関連を理解させなければならない。本研究では電場・磁場・応力場を対象として、シミュレーションと測定を行うことによってデータ化し、理解を与える資料を制作することを目指した。電場の測定については、比較的知られた基礎実験の中に2次元電流場の測定実験があり、それに放電現象を起こしやすい「突起」のある形状を導入し、放電の起こる部位やその理由を考察させることのできる教材資料を作成することができた。磁場測定はホール素子、応力場測定は光弾性効果を用いる測定システムを作成した。これらの測定の中では唯一、磁場測定が3次元に分布する3成分の場が実測可能であり、不均一な場を使った遊具が力学的に興味深い運動を示すことで知られている。そのような遊具について個々の原理を説明するには精密な分布測定が必要と考え、磁場測定は高い位置分解能をもつ測定システムとした。不均一場に由来する興味深い現象の説明を定量的に行いそれを理解してもらうことは、必ずしもすべての場合に容易ではないが、経験に基づいて日常的に行っている行為が物理学の概念と結びつき、理由付けられることは学習上大きな効果があり、多くの例を通して納得してもらうことができるよう、測定とシミュレーションによる教材資料の研究開発を行った。 | KAKENHI-PROJECT-19500725 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19500725 |
異種ゲノム由来配列の遺伝子機能獲得機構の解明 | (1)異なるオルガネラ由来遣伝子による遣伝子置換ポプラとマメ科植物であるタルウマゴヤシにおいて葉緑体ゲノムから消失していることが報告されているrps16について解析を行ったところ、ミトコンドリア由来のrps16がミトコンドリアと葉緑体へのDual targetingシグナルを獲得することで、葉緑体ゲノムにコードしてあったrps16を置換したことが明らかとなった。この現象は葉緑体ゲノムにrps16をコードしているイネやシロイヌナズナなどの他の顕花植物についても広く確認できることから、ミトコンドリアに由来するrps16による葉緑体ゲノム上のrps16遺伝子の置換は、顕花植物が誕生したごく初期の段階から現在まで行われていることが示唆された。本研究により、Dual targetingシグナル獲得による遺伝子置換の例を世界で初めて明らかにした。(2)ミトコンドリアゲノム上の遺伝子が有する潜在的移行シグナルこれまでにミトコンドリアから核へ転移しか遺伝子の中には明確な移行シグナルを有していない遺伝子の存在が知られていた。申請者はこの点から、現在ミトコンドリアゲノム上にコードされている遺伝子の幾つかは、遺伝子転移が起こる以前に潜在的な移行シグナルを有していたのではないかと考え検証を試みた。その結果、実際に移行シグナルとして機能する配列を有するミトコンドリア遺伝子の存在が示唆された。本研究によって得られた知見を以下に記す(1)葉緑体から核へ転移した遺伝子の同定と転移機構の解明ポプラの葉緑体ゲノムから消失したことが明らかとなっているリボソームタンパク質遺伝子であるrps16とrpl32について解析を行った。解析の結果、核ゲノムで機能するrps16とrpl32ともに単離することができた。rpl32については、葉緑体から核へ転移した後に核ゲノム内に存在する葉緑体Cu-Znスーパーオキシドジスムターゼ遺伝子から葉緑体移行シグナルを獲得することで、遺伝子転移を成立させていたことが判明した。rps16についてばマメ科植物であるタルウマゴヤシにおいても同様に葉緑体ゲノムから消失していることが報告されていたので、ポプラとタルウマゴヤシにおいて解析を行ったところ、ミトコンドリア由来のrps16がミトコンドリアと葉緑体へのDual targetingシグナルを獲得することで、葉緑体ゲノムにコードしてあったrps16と置換されたことが明らかとなった。この現象はイネやシロイヌナズナなどの他の高等植物についても広く確認でき、葉緑体ゲノムにコードしてあるrps16は、高等植物が誕生したごく初期の段階で、ミトコンドリアに由来するrps16による置換が進行していることが示唆された。本研究により、Dual targetingシグナル獲得による遺伝子置換の例を世界で初めて明らかにした。(1)異なるオルガネラ由来遣伝子による遣伝子置換ポプラとマメ科植物であるタルウマゴヤシにおいて葉緑体ゲノムから消失していることが報告されているrps16について解析を行ったところ、ミトコンドリア由来のrps16がミトコンドリアと葉緑体へのDual targetingシグナルを獲得することで、葉緑体ゲノムにコードしてあったrps16を置換したことが明らかとなった。この現象は葉緑体ゲノムにrps16をコードしているイネやシロイヌナズナなどの他の顕花植物についても広く確認できることから、ミトコンドリアに由来するrps16による葉緑体ゲノム上のrps16遺伝子の置換は、顕花植物が誕生したごく初期の段階から現在まで行われていることが示唆された。本研究により、Dual targetingシグナル獲得による遺伝子置換の例を世界で初めて明らかにした。(2)ミトコンドリアゲノム上の遺伝子が有する潜在的移行シグナルこれまでにミトコンドリアから核へ転移しか遺伝子の中には明確な移行シグナルを有していない遺伝子の存在が知られていた。申請者はこの点から、現在ミトコンドリアゲノム上にコードされている遺伝子の幾つかは、遺伝子転移が起こる以前に潜在的な移行シグナルを有していたのではないかと考え検証を試みた。その結果、実際に移行シグナルとして機能する配列を有するミトコンドリア遺伝子の存在が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-07J00158 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07J00158 |
新しい免疫抑制剤CAM点眼による実験的ぶどう膜網膜炎の抑制効果の解析の研究 | 新しい免疫抑制薬CAM(EtylO-N-(p-calboxyphenyl-calbampyl)-mycophenolate)はMycophenolic acid(MPA)の誘導体であり、プリン合成系のGMP合成を阻止する事により細胞増殖を抑制する。今回、CAMが不溶性のためCAMの活性体であるMPA点眼薬を作製し、Interphotorecepter retinoid-binding protein(光受容体間レチノイド蛋白;IRBP)により惹起される実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(以下EAU)の抑制効果を検討した。MPAの点眼濃度を0.1%、1%、5%、10%とし、IRBP免疫後翌日より19日まで1日3回の投与を行った。濃度に依存したEAU抑制効果がみられ、10%では完全な抑制を示したが局所における副作用を呈した事を考慮し、5%を至適濃度に設定した。家兎を用いた5%MPA点眼液の眼内移行動態の検索の結果、前房水では最終点眼後1時間後まで、虹彩毛様体、脈絡膜では30分後まではMPAの有効血中濃度である5mg以上を検出した。IRBP30μgを接種したラットEAUモデルに免疫後1日目から5%MPAを点眼した群ではEAU発症が完全に抑制された。IRBP接種量を50μgに増量した強いEAUモデルでも、発症の遅延、炎症の軽症化がみられたが、このモデルのリンパ節細胞を用いたリンパ球増殖試験ではMPA投与による増殖抑制は認められなかった。従って、MPA点眼は全身の免疫応答に影響を与えず局所で作用してEAUの発症を抑制すると考えられた。新しい免疫抑制薬CAM(EtylO-N-(p-calboxyphenyl-calbampyl)-mycophenolate)はMycophenolic acid(MPA)の誘導体であり、プリン合成系のGMP合成を阻止する事により細胞増殖を抑制する。今回、CAMが不溶性のためCAMの活性体であるMPA点眼薬を作製し、Interphotorecepter retinoid-binding protein(光受容体間レチノイド蛋白;IRBP)により惹起される実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(以下EAU)の抑制効果を検討した。MPAの点眼濃度を0.1%、1%、5%、10%とし、IRBP免疫後翌日より19日まで1日3回の投与を行った。濃度に依存したEAU抑制効果がみられ、10%では完全な抑制を示したが局所における副作用を呈した事を考慮し、5%を至適濃度に設定した。家兎を用いた5%MPA点眼液の眼内移行動態の検索の結果、前房水では最終点眼後1時間後まで、虹彩毛様体、脈絡膜では30分後まではMPAの有効血中濃度である5mg以上を検出した。IRBP30μgを接種したラットEAUモデルに免疫後1日目から5%MPAを点眼した群ではEAU発症が完全に抑制された。IRBP接種量を50μgに増量した強いEAUモデルでも、発症の遅延、炎症の軽症化がみられたが、このモデルのリンパ節細胞を用いたリンパ球増殖試験ではMPA投与による増殖抑制は認められなかった。従って、MPA点眼は全身の免疫応答に影響を与えず局所で作用してEAUの発症を抑制すると考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-08672034 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08672034 |
レーザを用いた高温溶融金属液柱の制御システム | 純Arシールドガスを用いた消耗電極式溶接(Ar-GMA溶接)、ワイヤ先端には長く伸びた溶融金属液柱が生じるので安定なAr-GMA溶接は困難である。そこで、不安定の原因である溶融金属液柱をレーザにより切断・除去できる方法を開発する。溶融金属液柱を最適な条件で切断・除去するためのレーザ照射技術を開発した。これを用いることでワイヤ先端部の溶融挙動を制御することができ、溶接安定性がさらに向上したAr-GMA溶接を開発した。純Arシールドガスを使用したMIGアーク中ではワイヤ先端に溶融した金属が連なり長く伸びた液柱を形成する。この液柱はアーク内で不安定に動き回り不規則な短絡が発生して溶接を不安定にする。このため、純Arシールドガスを使用したMIG溶接では溶融金属の液柱を短くすることが安定な溶接を行う上で必須である。本研究ではMIGアーク中でレーザ光を溶融金属液柱に照射し、非接触で溶融金属の液柱を切断するためのレーザ照射条件を実験により求める。市販の鋼用溶接用ワイヤ(直径1.2mm)を使用し、アーク溶接中にワイヤ先端に生じた液柱を安定に切断するためのレーザパワー、レーザのパルス条件、レーザの照射位置を求めた。液柱下部(先端に近い部分)にレーザを照射するとレーザの反兆力により液柱が曲がり安定な切断ができない。液柱の上部(コンタクトチップ側)にレーザを照射することで安定な切断が可能となった。MIGアーク内で溶融金属の液柱を切断できる条件を求めることができた。アーク内で切断状況の観察を行うことができるように高速ビデオカメラを使用した実験装置を構成した。その結果、10000コマ/sで撮影することが可能になりレーザ照射時の溶融金属液柱の切断時の挙動を明らかにできた。さらに、レーザのパルス照射条件についても高速度撮影により適正な条件を求めることができた。溶接ワイヤと溶融金属液柱の粘性を調べて最適な切断位置を調べるために、ワイヤの温度分布の数値解析を行うための準備を完了した。純Arシールドガスを使用したMIGアーク中ではワイヤ先端に溶融した金属が連なり長く伸びた液柱を形成する。この液柱はアーク内で不安定に動き回り不規則な短絡が発生して溶接を不安定にする。このため、純Arシールドガスを使用したMIG溶接では溶融金属の液柱を短くしなければ、安定な溶接を行うことができない。本研究ではMIGアーク中でレーザ光を溶融金属液柱に照射し、非接触で溶融金属の液柱を切断するためのレーザ照射条件を実験により求める。本年はレーザ切断に対するワイヤ材質の影響とレーザ照射位置を調査した。市販の鋼ワイヤ、ステンレスワイヤ、Ni合金ワイヤの3種類の直径1.2mmワイヤを使用した。アーク溶接中にワイヤ先端に生じた液柱を安定に切断するため、レーザパワー、レーザのパルス条件を固定し、各種材料に対するレーザの照射位置を求めた。鋼ワイヤ、ステンレスワイヤ、Ni合金ワイヤでは長く伸びた液柱が生じ、液柱下部(径0.5ー0.6mm)にレーザを照射するとレーザの反兆力により液柱が曲がり安定に切断することができなかった。これより細い部分(板に近い下端部)では液中が不安定に動き回り、液中にレーザを命中させることが困難であった。ワイヤ先端に生じる液柱は直径が1.2mmより狭くなった部分であり、固体部分はワイヤ径が1.2mmの部分であると予想される。そこで、径が0.8ー1.0mm付近では中心部に固体部が存在し液柱の動きがほとんど無いことがわかった。この部分を照射したところ、レーザの命中率もあがり、レーザの反兆力に影響されることなく安定に切断できるようになった。MIGアーク内で溶融金属の液柱を切断できる条件を求めることができた。アーク内で切断状況の観察を行うことができように高速ビデオカメラを使用した実験装置を構成し、10000コマ/sで撮影することが可能になった。さらに、レーザ照明装置と、高速度カメラの撮影速度に同期して溶接電流、電圧、レーザ信号の計測が可能となる装置とインターフェイスを導入した。レーザ照射と同期して照明しながら撮影できるシステムにより、レーザの照射位置を明瞭に観察でき、レーザ照射位置の最適化のための検討が可能となった。さらに、高速度カメラと同期した溶接条件・レーザパルス条件の計測システムにより、レーザ照射時の溶融金属液柱の切断時の挙動と溶接条件の関係を求めることができた。これらの方法を鋼ワイヤ、ステンレスワイヤ、Ni合金ワイヤに適用し、各ワイヤについて適正な切断位置と用湯金属の切断挙動の解析が可能になった。レーザの反兆力により溶融金属の液柱が曲がることを抑えるために、レーザの照射方向を2系統にして、互いに反対方向からレーザを照射するためのシステムの設計(レーザ分岐システム、レーザヘッドシステム、2つのレーザヘットを保持し、溶接トーチに取り付けるための装置)を行った。溶接ワイヤと溶融金属液柱の粘性を調べて最適な切断位置を調べるためには、ワイヤと溶融金属液中の温度分布を求めることが必要である。そこで温度分布をもとめるためのた数値解析を行う準備をおこなった。純Arシールドガスを使用したMIGアーク中ではワイヤ先端に溶融した金属が連なり長く伸びた液柱を形成する。この溶融金属柱は純Arシールドガスを使用したMIG溶接を不安定にする主原因である。 | KAKENHI-PROJECT-15K06473 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K06473 |
レーザを用いた高温溶融金属液柱の制御システム | そこで、この液中を短くする手法を開発することで、純Arシールドガス中での安定なMIG溶接を実現する。本研究ではMIGアーク中でレーザを溶融金属液柱に照射し、液柱を切断する条件を実験で求めた。市販の鋼ワイヤ、ステンレスワイヤ、アルミニウムワイヤ(ワイヤ直径はすべて1.2 mm)に対して、安定な切断を行うためのレーザ照射条件を調査した。レーザパワーとレーザのパルス条件を固定し、レーザの照射位置を溶融金属液柱部、アーク発生点、アーク発生点の上部へと変えて切断特性を調べた。鋼ワイヤ、ステンレスワイヤではワイヤ先端に長く伸びた液柱が生じる。液柱部にレーザを照射するとレーザの反兆力により液柱が曲がり安定に切断することができなかった。アークが発生している位置にレーザを照射すると、安定に切断することができた。アーク発生点より上部に照射すると、切断に失敗する頻度が多くなり、安定な切断ができなかった。アルミニウムワイヤでは長く連なった溶融金属液柱は生じないが、レーザをアーク発生位置付近に照射するとアークが安定し突き出し長さの変動が小さくなることが観察でき、同時に安定なワイヤの切断特性が良好であることがわかった。大電流(400 A付近)ではローテーティング移行となり溶接が不安定となるが、レーザを位置が大きく変動しない液柱部に照射すると、周期的にワイヤが切断されローテーティング移行を防ぐことができた。GMA溶接では電流の最大値に制限があるが、本手法により大電流条件下でのローテーティング移行の防止についても目処を得ることができた。本システムによりワイヤの安定な切断が可能で、溶接の安定化に効果があることが検証できた。純Arシールドガスを用いた消耗電極式溶接(Ar-GMA溶接)、ワイヤ先端には長く伸びた溶融金属液柱が生じるので安定なAr-GMA溶接は困難である。そこで、不安定の原因である溶融金属液柱をレーザにより切断・除去できる方法を開発する。溶融金属液柱を最適な条件で切断・除去するためのレーザ照射技術を開発した。これを用いることでワイヤ先端部の溶融挙動を制御することができ、溶接安定性がさらに向上したAr-GMA溶接を開発した。溶融金属の液柱を精度良く安定に切断除去するために、パルス電流による溶滴移行とレーザ照射による切断を同期させた安定な切断方法を検討する。そのために、レーザ発信器から出るレーザ照射信号と溶接電源特性を同期させるインターフェイスを試作する。レーザ照射とパルス電流を同期させた溶融金属液柱の切断システムを構築し、より安定な切断条件を求める。レーザの反兆力により溶融金属の液柱が曲がることを抑えるために、レーザの照射方向を2系統にして、互いに反対方向からレーザを照射するためのシステムを検討する。溶融金属の液柱を精度良く安定に切断除去するために、パルス電流とレーザ照射を同期させた安定な切断方法を検討する。そのために、レーザ発信器から出るレーザ照射信号と溶接電源特性を同期させるインターフェスを試作し、その有効性を確認する。これにより安定な切断条件を求める。ワイヤと液柱の温度分布を数値解析で求め、固相部の比率を推定する。この比率とワイヤ照射位置の関係を解析して、安定に切断できる位置を求める。これを、鋼ワイヤ、ステンレスワイヤ、Ni合金ワイヤについて求め、材料(融点)の影響を検討する。 | KAKENHI-PROJECT-15K06473 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K06473 |
ヘリコバクター・ハイルマニ関連胃粘膜病変の病態解析と菌体の病原性解析 | (1)H.heilmannii感染BALB/Cマウスに慢性胃炎および胃MALTリンパ腫が惹起された。これらの病変の発症におけるGlcNAc6ST-1により硫酸化を受けたL-セレクチンリガンド糖鎖とMAdCAM-1を発現するHEV様血管の関与が示された。(2)H.heilmannii培養条件の基礎的検討として、H.felis培養の至適ガス環境を検討し、(1)コロニーの大きさの観点、(2)螺旋型の比率の観点から至適ガス条件を見出した。(3)ヒト由来H.heilmannii菌株の16Sribosomal RNAおよびurease遺伝子の解析から、新規H.heilmannii(SH6)を見出した。(1)H.heilmannii感染BALB/Cマウスに慢性胃炎および胃MALTリンパ腫が惹起された。これらの病変の発症におけるGlcNAc6ST-1により硫酸化を受けたL-セレクチンリガンド糖鎖とMAdCAM-1を発現するHEV様血管の関与が示された。(2)H.heilmannii培養条件の基礎的検討として、H.felis培養の至適ガス環境を検討し、(1)コロニーの大きさの観点、(2)螺旋型の比率の観点から至適ガス条件を見出した。(3)ヒト由来H.heilmannii菌株の16Sribosomal RNAおよびurease遺伝子の解析から、新規H.heilmannii(SH6)を見出した。H. heilmannii感染マウスの胃粘膜のホモジネートをBALB/cマウスに経口摂取させることにより感染モデルを作成した。感染後8週、26週の時点で屠殺して、胃粘膜の組織標本を作製した。ホルマリン固定パラフィン包埋されたH. heilmannii感染BALB/cマウスの胃粘膜の病理組織学的解析、H. heilmannii、T細胞、B細胞およびMECA-79抗体を用いたHEV血管の存在の有無についての免疫染色学的解析を行った。またリンパ球ホーミングに関わる接着因子(G6ST1、LSSTおよびMAdCAM1)のmRNAの発現を検討した。H. heilmanniiは感染期間を通じて観察された。感染26週より、体部粘膜にリンパ濾胞形成及びHEVを認めた。また、リンパ球ホーミングに関わる接着因子関連のmRNAの発現も観察された。H. heilmanniiがマウス胃粘膜に感染すると,粘膜固有層にHEV様血管が誘導され、胃粘膜へのリンパ球ホーミングが起こることが証明された。16S rRNA遺伝子とurease遺伝子の塩基配列に基づく'Candidatus H. heilmannii'の系統解析により、現在マウスで継代維持している菌株からヒトでは従来報告されていない型のH. heilmanniiを見出した。H. heilmannii培養条件の基礎的検討として、H.felis培養の至適ガス環境を検討し、1)コロニーの大きさの観点からは、O_2 12%, CO_2 10%のガス環境が、また、2)螺旋型の比率の観点からはO_2 18%, CO_2 5%のガス環境が至適条件であることを見出した。H.heilmannii感染マウスの胃粘膜のホモジネートをBALB/cマウスに経口摂取させることにより感染モデルを作成した。感染後8週、26週、54週、83週の時点で屠殺して、胃粘膜の組織標本を作製した。ホルマリン固定パラフィン包埋されたH.heilmannii感染BALB/cマウスの胃粘膜の病理組織学的解析、H.heilmannii、T細胞、B細胞およびMECA-79抗体を用いたHEV血管の存在の有無についての免疫染色学的解析を行った。またリンパ球ホーミングに関わる接着因子(G6ST1、LSSTおよびMAdCAM1)のmRNAの発現を検討した。H.heilmanniiは感染期間を通じて観察された。感染26週より、体部粘膜にリンパ濾胞形成及びHEVを認め、54週ではMALTリンパ腫を認めた。また、リンパ球ホーミングに関わる接着因子関連のmRNAの発現は経時的に亢進していた。H.heilmanniiがマウス胃粘膜に感染すると,粘膜固有層にHEV様血管が誘導され、胃粘膜へのリンパ球ホーミングが起こり、慢性胃炎やMALTリンパ腫が惹起されることが証明された。H.heilmannii培養条件の基礎的検討として、H.felis培養の至適ガス環境を検討し、1)コロニーの大きさの観点からは、O_2 12%,CO_2 10%のガス環境が、また、2)螺旋型の比率の観点からはO_2 18%,CO_2 5%のガス環境が至適条件であることを見出した。 | KAKENHI-PROJECT-20590564 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20590564 |
日英労務管理比較史 | 労務管理制度の研究は経済合理性の観点のみならず、時代性や社会的・文化的観点からもなされてきた。とりわけ、雇用関係に見られる日本的経営の特徴は後者の観点から強調されてきた。労務管理制度を導入する際の動機がその後の制度運用に影響を及ぼすと考えられるからである。しかも、その動機は構成メンバーに受容されなければ制度として成立しない。この点において、経営家族主義(paternalist firm)と呼ばれるイギリス企業に共通している点は、創業家が行ってきた労務施策を伝統として俸給経営者が受け継ぐことで、自らの権限行使の正当性を獲得する点にある。これに対し、日本企業に見られる経営家族主義の特徴はイエという概念に根差すものであった。したがって、paternalist firmにおける労務施策の動機の違いがその後の運用における相違をもたらした。イギリスでは伝統のもつ形式合理性に基づいて福利厚生は労働者の権利として要求され運用されて行った。これに対して、日本における制度の運用では対内的な上長への帰属意識に基づいて行われた。他方、日英における労務管理制度の共通点は、流動性の高い労働市場および不安定な労使関係という時代状況において、企業内労使関係の安定化を図る意図があったという点で経済合理性に基づくものであった。すなわち、これらの日英企業は制度運用上の相違はあるが、内部化したヒトという資源の活用による競争優位の獲得という点では共通していたのである。また、労働市場の比較のために行ったエンジニアのネットワーク研究では、日本のエンジニアの流動性が極端に低いというわけではないが、イギリスのエンジニアの高い流動性が際立っていた。したがって、労働市場の日英比較では市場志向的なイギリスと組織志向的な日本という通説を支持する結果となった。しかし、paternalist firmとされる個別企業の労務管理制度の日英比較では、制度導入時の動機の相違によるその後の運営上の差異と、資源蓄積による競争優位の獲得という共通点を導出した。労務管理制度の研究は経済合理性の観点のみならず、時代性や社会的・文化的観点からもなされてきた。とりわけ、雇用関係に見られる日本的経営の特徴は後者の観点から強調されてきた。労務管理制度を導入する際の動機がその後の制度運用に影響を及ぼすと考えられるからである。しかも、その動機は構成メンバーに受容されなければ制度として成立しない。この点において、経営家族主義(paternalist firm)と呼ばれるイギリス企業に共通している点は、創業家が行ってきた労務施策を伝統として俸給経営者が受け継ぐことで、自らの権限行使の正当性を獲得する点にある。これに対し、日本企業に見られる経営家族主義の特徴はイエという概念に根差すものであった。したがって、paternalist firmにおける労務施策の動機の違いがその後の運用における相違をもたらした。イギリスでは伝統のもつ形式合理性に基づいて福利厚生は労働者の権利として要求され運用されて行った。これに対して、日本における制度の運用では対内的な上長への帰属意識に基づいて行われた。他方、日英における労務管理制度の共通点は、流動性の高い労働市場および不安定な労使関係という時代状況において、企業内労使関係の安定化を図る意図があったという点で経済合理性に基づくものであった。すなわち、これらの日英企業は制度運用上の相違はあるが、内部化したヒトという資源の活用による競争優位の獲得という点では共通していたのである。また、労働市場の比較のために行ったエンジニアのネットワーク研究では、日本のエンジニアの流動性が極端に低いというわけではないが、イギリスのエンジニアの高い流動性が際立っていた。したがって、労働市場の日英比較では市場志向的なイギリスと組織志向的な日本という通説を支持する結果となった。しかし、paternalist firmとされる個別企業の労務管理制度の日英比較では、制度導入時の動機の相違によるその後の運営上の差異と、資源蓄積による競争優位の獲得という共通点を導出した。本研究の目的は、高度成長期の松下電器において導入された仕事別賃金の特徴を明らかにするとともに、それが同社の人事労務管理制度にどのような影響を与えたのかを明らかにすることである。「仕事別賃金」とは松下電器における呼称であり、その導入は松下労組の提案により実現したものであった。その賃金制度の目指すところは「同一労働同一賃金」の原則の基づく職務給であったが、導入過程において年功と能力差を加味する本給幅が導入された。したがって、その運用方法は、日本の人事労務管理制度の特徴とされる能力主義管理と理解されるものであった。しかし、仕事別賃金の導入過程において明確化された仕事の格付けは、人事管理の構成要素である教育訓練、昇進および配置転換を結びつけ、人事労務管理制度の体系化の途を拓くものであった。すなわち、仕事の格付けがその仕事に必要とされる技能や経験などの基準を提供することで、教育訓練の内容や職場におけるフィードバックの明確化、さらには自己申告による異動事由の明確化も促進された。これは高度成長期における松下電器の事例から、情報的資源としてのヒトを活用する仕組みがどのようにして作られたかを考察する上で意義があるといえよう。本研究は、組織志向的な日本と市場志向的なイギリスという二項対立を解くことを目的に、エンジニアの流動性とネットワークに注目して、半導体レーザーにおける科学的ブレークスルー現出の過程を考察した。とりわけ、アメリカ、日本、イギリス、ドイツの主要4カ国の半導体レーザーにおける基礎研究に携わったエンジニアの流動性とネットワークに焦点を当て、4カ国の比較から、それぞれの国でのブレークスルー現出のプロセスを明らかにすることを試みる。 | KAKENHI-PROJECT-19730240 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19730240 |
日英労務管理比較史 | アメリカのエンジニアは、ブレークスルー後に移動した後も移動元との関係を維持しつつ、移動先で新たな組織と共同研究を行う傾向が見られたのに対して、日本のエンジニアは、組織内の同一メンバーで共同研究を進め、その成果としてブレークスルーを起こした後は、組織に残ったまま新たな組織との共同研究に着手していると考えられる。また、イギリスのエンジニアは、ブレークスルー前では共著相手を変えずに様々な組織から論文を執筆するが、ブレークスルー後は新たな共著相手と共同研究を行っているものと推測され、ドイツのエンジニアは、ブレークスルー前に様々な相手と共同研究を行い、ネットワークを築き、ブレークヌルー後もその関係を維持することで、広範なネットワークを維持していると考えられる。本研究は、組織志向的な日本と市場志向的なイギリス(アングロサクソン)という二項対立を解くことを目的に、エンジニアの流動性とネットワークに注目して、アメリカ、日本、イギリス、ドイツにおける半導体レーザーにおける科学的ブレークスルー現出の過程を考察した。その結果、エンジニアの労働市場における流動性の国際比較を見る限りでは、従来の二項対立を解くには至らなかった。また、英国産業においてpaternalist firmとして有名なキャドベリー社の事例研究を行った。その結果、キャドベリー社におけるパターナリズムは株式会社化に伴う労働者の不安を解消し、新たな経営権限の下で安定した労使関係を構築するために、パートナーシップ時代の労使関係に言及しつつ創られた概念であったことが明らかになった。すなわち、パターナリズムという概念は失われ行く伝統でなく、むしろ近代化の過程において過去への言説を伴いながら創られた伝統であったことを明らかにした。しかしそのことが、その後のキャドベリー社における人間的要素に基づく労務管理の発展と労働の内部化に寄与した。また、キャドベリー社の事例は、当時のイギリス労働市場から見ても、例外的な事例であったと言える。 | KAKENHI-PROJECT-19730240 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19730240 |
デンタルX線写真の骨梁の構造の3次元フラクタル次元解析による骨粗鬆症スクリーニング法 | 2次元のフラクタル次元を測定する方法として提唱された、Pixel Dilation法を改善することにより、さらに精度を高めたmodified pixeldilation法を筆者らは開発した。それを3次元に拡大することにより、X線写真における濃度情報をおとすことなく、解析をすることができた。この3次元のためのBoxel Dilation法はX線写真の3次元フラクタル次元を測定可能とし、その精度は十分であることも確かめられた。この方法を用い、骨梁パターンを解析することで、同部の骨塩量を推定でき、X線写真のノイズを除去することにより非常に検出感度も上げることができる。本研究では、骨粗鬆症が疑われた患者の下顎骨骨密度が、全体の骨密度(腰椎骨塩量)を反映していなかったために、本方法において、鑑別診断ができなかったが、骨密度を反映している部位の骨梁パターンのフラクタル次元を本方法により測定すれば、必ずその骨塩量を推定できると考えられ、これからの骨粗鬆症早期診断の簡便で検出感度の高い方法として期待される。2次元のフラクタル次元を測定する方法として提唱された、Pixel Dilation法を改善することにより、さらに精度を高めたmodified pixeldilation法を筆者らは開発した。それを3次元に拡大することにより、X線写真における濃度情報をおとすことなく、解析をすることができた。この3次元のためのBoxel Dilation法はX線写真の3次元フラクタル次元を測定可能とし、その精度は十分であることも確かめられた。この方法を用い、骨梁パターンを解析することで、同部の骨塩量を推定でき、X線写真のノイズを除去することにより非常に検出感度も上げることができる。本研究では、骨粗鬆症が疑われた患者の下顎骨骨密度が、全体の骨密度(腰椎骨塩量)を反映していなかったために、本方法において、鑑別診断ができなかったが、骨密度を反映している部位の骨梁パターンのフラクタル次元を本方法により測定すれば、必ずその骨塩量を推定できると考えられ、これからの骨粗鬆症早期診断の簡便で検出感度の高い方法として期待される。骨粗鬆症の診断の上で、全身の骨ミネラル量が重要である。全身の骨ミネラル量を測定するためには、腰椎の骨ミネラル量を測定することにより推測できる。腰椎の骨ミネラル量を測定するために、歯科放射線科に現有するCT装置を用いて、かなりの再現性を保ちつつ測定できることがわかった。この測定には、腰椎の3、4、5番の3つの腰椎の皮質骨および海綿骨に分離し測定し、ばらつきをなくした。次に、下顎骨の骨ミネラル量と腰椎の骨ミネラル量との相関関係を検討するために、下顎骨の骨ミネラル量を、まずCTによって測定した。腰椎の骨ミネラル量測定では、2種類の濃度を有するファントムを同時に撮影することにより、内挿法により、測定を行っている。これを利用して、下顎骨の骨ミネラル量を測定することを試みた。下顎骨の下縁に平行なスライス面を想定し、ファントムと同時に撮影を行った。得られた像において、下顎骨臼歯部にROIを設定し、その平均CT値を測定する。同じようにファントム上にROIを設定し、CT値を測定する。ファントム上の2種類の濃度のCT値から、CT値と骨ミネラル量との関係が得られ、それにより、下顎骨の骨ミネラル量が測定できた。問題点として、撮影条件の違いにより骨ミネラル量の値が異なることがわかった。これから、管電流、管電圧、スライス厚さに関して、また、ファントムの位置、異なるファントムを使用した時(2種類以上のものを用いたときの精度)について検討を行い、腰椎骨ミネラルと最も相関のある、最適な条件を見つける。方法正常者5名を対象として、CT撮影とデンタルX線撮影を行った。1.CT撮影は腰椎と下顎骨を対象とした。腰椎はQuantitative CTにより撮影を行い、海綿骨および皮質骨の骨塩量を求めた。下顎骨は、既知の骨塩量を有する2種類のreferenceと同時にCT撮影を行った。2.デンタルX線撮影は下顎骨の小臼歯部根尖部付近を対象とした。撮影はインディケータを用い、平行法撮影を行った。撮影時に濃度補正のためのアルミステップを同時に撮影した。結果1.正常者5名は年齢が20代から50代と幅広く、同年代ではほとんど海綿骨の値は変わらなかった。2.下顎骨の骨塩量は腰椎に比較して非常に高かった。また、歯科疾患の存在により、ばらつきが生じた。デンタルX線写真に関しては、まだフラクタル次元を測定していないので、統計学的な検討まで進まなかった。方法1.デンタル撮影とCT撮影により以下のパラメータの測定を行った。(1)正常者7名を対象として、下顎小臼歯部のデンタルX線撮影を行った。得られたデンタルX線写真から、3次元フラクタル次元と、平均骨濃度の測定を行った。(2)同被験者においてQuantitative CTにより腰椎の撮影を行い、腰椎海綿骨骨塩量、腰椎皮質骨骨塩量の測定を行った。(3)同被験者において、骨密度測定用ファントムを用いて下顎骨のCT撮影を行い、下顎骨海綿骨骨塩量、下顎骨皮質骨骨塩量の測定を行った。2.得られた6つのパラメータの相関を検討した。結果各パラメータの間に明らかな相関は認められなかったが、完全には相関がないとはいえなかった。今後の方針できる限り | KAKENHI-PROJECT-07672039 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07672039 |
デンタルX線写真の骨梁の構造の3次元フラクタル次元解析による骨粗鬆症スクリーニング法 | 症例数の増加を行うとともに、乾燥頭蓋骨を用い、下顎骨部位に限っては、統計学的に明らかとなるように追加実験を行う。 | KAKENHI-PROJECT-07672039 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07672039 |
急性呼吸促迫症候群におけるインターロイキン17の動態解析と新規治療薬の開発 | IL-17ノックアウトマウスを用い化学性肺炎モデルを作成した。経気道的に(1)、生理食塩水(SHAM)、(2)、生理食塩水と塩酸(ACID)、(3)、胃内容物と生理食塩水(SNAP)、(4)、胃内容物と塩酸(CASP)を散布し、経時的に生存数を確認した。生存数に関しては4群共に統計学的な優位差を認めなかったものの、SHAM,ACID間は差を認めておりIL-17がメディエーター変動に関係する可能性が示唆された。IL-17ノックアウトマウスを用い化学性肺炎モデルを作成した。経気道的に(1)、生理食塩水(SHAM)、(2)、生理食塩水と塩酸(ACID)、(3)、胃内容物と生理食塩水(SNAP)、(4)、胃内容物と塩酸(CASP)を散布し、経時的に生存数を確認した。生存数に関しては4群共に統計学的な優位差を認めなかったものの、SHAM,ACID間は差を認めておりIL-17がメディエーター変動に関係する可能性が示唆された。リンパ球のSIRS、MODS病態との関連は未解明の部分が多くあまり注目されていなかった。しかし、我々はこれまで、ヒトALI/ARDS患者の肺局所サイトカインを測定し、IL-17が高値をとるとの知見を得ている。本研究では、塩酸誘発ARDSモデルを使用してIL-17、ケモカインの動態、並びに随伴する生体反応性の変化、ALI/ARDS病態を明らかとすることを目的とした。木研究は(1)IL-17は自己免疫系分野の研究は行われているものの、呼吸器系、特にALI/ARDSとの関連は研究されていないこと、(2)発症直後、すなわち治療の開始されていない状態での各種メディエイター動態・相互関係を明らかにすることが可能であること、(3)塩酸誘発ARDSモデルを作成することにより、メディエイター変動、経過中に発症した合併症などの相互関係を知ることが出来る、などの特色がある。本年度は250-300gのC57BL/6 wild typeマウス並びにIL-17ノックアウトマウスを用い化学性肺炎モデルを作成し実験データを収集した,、ペントバルビタール40mg/Kg腹腔内投与麻酔下にアクリル製の固定具を用いてマウスの体幹、四肢を固定する。その後専用器具にて気道確保を行い、マイクロスプレイヤーを用いて経気道的に散布する。散布内容物は1、0.15Mol生理食塩水、pH5.3(以下、SHAM)、2、生理食塩水と塩酸pH1.25(以下、ACID)とし、wild typeマウス、並びにIL-17ノックアウトマウスに同量の散布を行い、散布直後、24時間後、72時間後、120時間後、168時間後の生存数を確認した。生存数に関してはSHAM,ACID共にwild typeマウス、IL-17ノックアウトマウス間に統計学的な差を認めなかったものの、SHAM,ACID間は差を認めており、IL-17がメディエーター変動に関係する可能性が示唆された。リンパ球のSIRS、MODS病態との関連は未解明の部分が多くあまり注目されていなかった。しかし、我々はこれまで、ヒトALI/ARDS患者の肺局所サイトカインを測定し、IL-17が高値をとるとの知見を得ている。本研究では、塩酸誘発ARDSモデルを使用してIL-17、ケモカインの動態、並びに随伴する生体反応性の変化、ALI/ARDS病態を明らかとすることを目的とした。本年度は250-300gのC57BL/6 wild typeマウス並びにIL-17ノックアウトマウスを用い化学性肺炎モデルを作成し実験データを収集した。ペントバルビタール40mg/Kg腹腔内投与麻酔下にアクリル製の固定具を用いてマウスの体幹、四肢を固定する。その後専用器具にて気道確保を行い、マイクロスプレイヤーを用いて経気道的に散布する。散布内容物は1、0.15Mol生理食塩水、pH5.3(以下、SHAM)、2、生理食塩水と塩酸pH1.25(以下、ACID)、3、マウス胃内容物と0.15Mol生理食塩水、pH5.3(以下、SNAP)、4、マウス胃内容物と0.15mol生理食塩水、pH5.3(以下、CASP)とし、wild typeマウス、並びにIL-17ノックアウトマウスに同量の散布を行い、散布直後、24時間後、72時間後、120時間後、168時間後の生存数を確認した。胃内容物とはC57BL/6 wild typeマウスより胃を採取し、内容物を生理食塩水で3回洗浄し、オートクレープにて殺菌後に遠心分離(2000回転/分、2分間)したものである。生存数に関してはSHAM、ACID、SNAP、CASP共にwild typeマウス、IL-17ノックアウトマウス間に統計学的な差を認めなかったものの、SHAM,ACID間は差を認めており塩酸誘発ARDSモデルに関して、IL-17がメディエーター変動に関係する可能性が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-21791779 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21791779 |
微小重力環境が内耳末梢前庭器に及ぼす影響に関する研究 | 本研究は、内耳末梢前庭における微小重力応答遺伝子の同定を目的に、STS-129, 131, 135において、スペースシャトル帰還後数時間でマウスより側頭骨サンプルを摘出し、顕微鏡下に前庭(平衡斑・半規管・前庭神経節)と蝸牛に分けて摘出し、RNAを抽出してマイクロアレイによる発現解析を行った。その結果、GABA関連遺伝子、骨代謝関連遺伝子、DNAダメージ修復遺伝子などの424遺伝子について2倍以上の発現増加を認める一方で、カルシウム結合蛋白などの306遺伝子について1/2以下の発現減少を認めた。これら遺伝子の発現変化は、微小重力環境滞在によって耳石代謝に及ぼす変化を表していると思われた。STS-129(90日間滞在, n=3),STS-131(15日間滞在, n=16)のマウス、およびそれぞれに対する地上コントロールマウスから摘出された前庭(平衡斑・半規管・前庭神経節)および蝸牛サンプルよりRNAを抽出後、クオリティチェックを行い、マイクロアレイ(Agilent社Gene sprint 3G, 62976遺伝子)による網羅的発現解析を行った。まず全体的な発現プロファイリングを90日間滞在群と15日間滞在群で比較してみたところ、前庭および蝸牛とも15日間滞在群に対して90日間滞在群では発現のバラツキが小さく、長期に微小重力環境下に滞在することによって新しい重力環境に適応してきている様子がうかがえた。続いて地上コントロール群と90日間滞在群の前庭における遺伝子発現を比較検討したところ、GABA関連遺伝子、骨代謝関連遺伝子、DNAダメージ修復遺伝子などの424遺伝子について2倍以上の発現増加を認める一方で、カルシウム結合蛋白などの306遺伝子について1/2以下の発現減少を認めた。また興味深いことに、これら遺伝子群について15日間滞在群の発現を検討したところ、90日間滞在群で発現増加していたものは発現が減少し、90日間滞在群で発現減少していたものは発現が増加している事が明らかとなった。また、熱ストレス応答蛋白遺伝子の発現は15日間滞在群で地上群の約3倍にまで達していたが、90日間滞在群ではその半分程度まで発現が減少していた。ここからも、長期滞在による微小重力環境への適応の様子がうかがえる。過重力(2G)環境滞在マウス内耳サンプルとの発現比較による重力変化応答遺伝子の解析以前から異なる重力環境下における遺伝子発現変化に関する共同実験を行っている大阪大学にて、STS-129と同系統のマウスを2G環境に同日間(90日および15日)滞在させる実験を行い、微小重力環境に90日間および15日間滞在したマウスとの発現増加・減少遺伝子を比較することで、重力変化に共通して応答する遺伝子の同定を試みた。2G環境滞在(90日間および15日間,各n=8)のマウス、および1Gコントロールマウスから摘出された前庭(平衡斑・半規管・前庭神経節)および蝸牛サンプルを用い、RNAを抽出後、クオリティチェックを行い、マイクロアレイ(Agilent社, 62976遺伝子)による網羅的発現解析を行った。(1)全体的な発現プロファイリングを微小重力長期滞在と2G環境長期滞在で比較し、前庭全体での発現傾向の変化をとらえることができた。(2)蝸牛との発現変化比較や個体間の発現差の検討を行い、重力環境変化(微小重力←→2G)に対して前庭で特異的に発現変化している遺伝子を同定することができた。当初計画の通り、cDNAマイクロアレイ解析および遺伝子発現プロファイルの解析をおこなうことができた。STS-129(90日間滞在, n=3),STS-131(15日間滞在, n=16)の微小重力環境滞在マウス、およびそれぞれに対する地上コントロールマウスの前庭および蝸牛サンプルによる網羅的発現解析の比較実験として、同日間2G環境に滞在させたSTS-129と同系統のマウスの発現解析を行った。以前から異なる重力環境下における遺伝子発現変化に関する共同実験を行っている大阪大学(大平、河野)にて、人工過重力(2G)環境下(90日間滞在, n=8)のマウス、および1Gコントロールマウスから摘出された前庭(平衡斑・半規管・前庭神経節)および蝸牛サンプルを用い、RNAを抽出後、マイクロアレイ(Agilent社, 62976遺伝子)による網羅的発現解析およびreal-time PCRによる定量的発現比較解析を行い、重力変化に共通して応答する遺伝子の同定を試みた。STS-129(90日間宇宙滞在群)で大幅に発現減少していたS100a8, S100a9, Oc90, Hspb7の遺伝子は、おもしろいことに2G環境下に90日間暴露しても同様の遺伝子発現変化を示していた。カルシウム結合タンパクであるS100a8,9や耳石タンパクであるOc90は、微小重力でも過重力でも長期に渡る異重力環境滞在によって発現抑制を受けることが明らかとなり、重力変化が耳石代謝に及ぼす変化を表していると思われた。一方、90日間宇宙滞在群で増加していたGabra2は、長期の微小重力環境滞在によって慢性化した前庭系へのシグナル入力減少を補うため発現を増加させることで神経活動を増強している可能性があると思われたが、2G環境下では発現抑制を受けていた。これは慢性的に増加した前庭系へのシグナル入力を減少させるために発現を抑制させ、神経活動を調整している可能性があると思われた。 | KAKENHI-PROJECT-26506007 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26506007 |
微小重力環境が内耳末梢前庭器に及ぼす影響に関する研究 | 本研究は、内耳末梢前庭における微小重力応答遺伝子の同定を目的に、STS-129, 131, 135において、スペースシャトル帰還後数時間でマウスより側頭骨サンプルを摘出し、顕微鏡下に前庭(平衡斑・半規管・前庭神経節)と蝸牛に分けて摘出し、RNAを抽出してマイクロアレイによる発現解析を行った。その結果、GABA関連遺伝子、骨代謝関連遺伝子、DNAダメージ修復遺伝子などの424遺伝子について2倍以上の発現増加を認める一方で、カルシウム結合蛋白などの306遺伝子について1/2以下の発現減少を認めた。これら遺伝子の発現変化は、微小重力環境滞在によって耳石代謝に及ぼす変化を表していると思われた。当初の計画どおり、異なる期間、微小重力環境下に滞在したマウス蝸牛、前庭の遺伝子発現プロファイルを明らかにすることができた。平成28年度は、平成27年度まで得られた微小重力応答遺伝子や重力変化に共通して応答する遺伝子からコードされるタンパク質に対する抗体を用い、その局在を免疫組織学的に検討し、重力変化に対する遺伝子発現が前庭のどの細胞を中心に起こっているのかを明らかにする。同マウスの反対側について研究協力を行っているRichard Boyle(NASA AMES RSEARCH CENTER)らのグループの電子顕微鏡による解析では、平衡斑にある耳石形態の破綻を疑わせる所見が得られており、これら所見と合わせて耳石形成に関わる遺伝子やタンパクを中心に検討を進める。耳鼻咽喉科学次年度以降は、上記のcDNAマイクロアレイ解析により発現増加・減少している遺伝子群について、Taq-Man probeを用いたreal-time PCRにて定量的発現比較解析を行い、マイクロアレイで認められた発現量変化を確認する。また、同じ期間2Gの状態で飼育を行ったマウスからも同様の手法を用いて解析を行い遺伝子発現について明らかにする計画である。 | KAKENHI-PROJECT-26506007 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26506007 |
難治性慢性疼痛における神経回路再編成の分子基盤解析 | 研究代表者らは、これまでの研究から慢性の神経因性疼痛原因分子がリゾボスファチジン酸(LPA)であることを見いだした。神経因性疼痛では、急性痛とは異なり神経回路再編成の原因となる脱髄、神経異常発芽、過敏応答の原因となるイオンチャネル発現上昇などがLPA1受容体を介して発現することを突き止め2004年Nature Medicine(7月号)に報告している。しかしながら慢性の神経因性疼痛モデルにおける分子基盤の一端を解明して来たものの、脊髄から上位脳における慢性疼痛時に見られる神経回路再編成及びミクログリア-アストロサイト間の相互作用についてはまだ明らかにはなっていない。第一に脊髄での神経回路再編成を後根神経が付いている脊髄スライスにおけるカルシウムイメージングを用いて解析することを試みた。C, Aδ, Aβ神経をそれぞれ刺激することが可能なNeurometerをカルシウムイメージング装置と組み合わせ、各種刺激をすることで入力領域でのCa2+変動を見出すことに試みた。この結果より本システムが確立すれば、今後、慢性の神経因性疼痛モデルの検討を行っている。一方、神経因性疼痛のメカニズムにミクログリアの活性化が重要な役割を果たすことが注目されている。その主要なリガンドとしてATPとLPAがミクログリアの活性化に影響を及ぼすことが報告されていることから、カルシウムイメージング方法を用いてこの両者の作用をミクログリアcell lineであるEOC2によって解析したところ、両物質による刺激においてCa2+ oscillationが観察された。特にLPAによるCa2+ oscillationの効果は、放出されたATPによる二次的効果であることが明らかになった。この効果は2分間以上も持続することから、神経傷害時に一時的に放出されるLPAがミクログリアを持続的に活性化させ、おそらく様々なサイトカインや神経栄養因子産生を介し、神経回路の可塑性に貢献しているものと予想される。本結果は投稿準備中である。研究代表者らは、これまでの研究から慢性の神経因性疼痛原因分子がリゾホスファチジン酸(LPA)であることを見いだした。神経因性疼痛では、急性痛とは異なり神経回路再編成の原因となる脱髄、神経異常発芽、過敏応答の原因となるイオンチャネル発現上昇などがLPA1受容体を介して発現することを突き止め2004年Nature Medicine(7月号)に報告している。しかしながら慢性の神経因性疼痛モデルにおける分子基盤の一端を解明して来たものの、脊髄から上位脳における慢性疼痛時に見られる神経回路再編成及びミクログリア-アストロサイト間の相互作用についてはまだ明らかにはなっていない。そこで第一に脊髄での神経回路再編成を後根神経が付いている脊髄スライスにおけるカルシウムイメージングを用いて解析することを試みた。C, Aδ,Aβ神経をそれぞれ刺激することが可能なNeurometerをカルシウムイメージング装置と組み合わせ、各種刺激をすることで入力領域でのCa2+変動を見出すことに試みた。この結果より本システムが確立すれば、今後、慢性の神経因性疼痛モデルの検討を行っている。一方、神経因性疼痛のメカニズムにミクログリアの活性化が重要な役割を果たすことが注目されている。その主要なリガンドとしてATPとLPAがミクログリアの活性化に影響を及ぼすことが報告されていることから、この両者の作用をミクログリアcell lineであるEOC2によって解析したところ、両物質による刺激においてCa2+ oscillationが観察された。特にLPAによるCa2+ oscillationの効果は、放出されたATPによる二次的効果であることが明らかになった。この効果は10分間以上も持続することから、神経傷害時に一時的に放出されるLPAがミクログリアを持続的に活性化させ、おそらく様々なサイトカインや神経栄養因子産生を介し、神経回路の可塑性に貢献しているものと予想される。本結果は投稿準備中である。研究代表者らは、これまでの研究から慢性の神経因性疼痛原因分子がリゾボスファチジン酸(LPA)であることを見いだした。神経因性疼痛では、急性痛とは異なり神経回路再編成の原因となる脱髄、神経異常発芽、過敏応答の原因となるイオンチャネル発現上昇などがLPA1受容体を介して発現することを突き止め2004年Nature Medicine(7月号)に報告している。しかしながら慢性の神経因性疼痛モデルにおける分子基盤の一端を解明して来たものの、脊髄から上位脳における慢性疼痛時に見られる神経回路再編成及びミクログリア-アストロサイト間の相互作用についてはまだ明らかにはなっていない。第一に脊髄での神経回路再編成を後根神経が付いている脊髄スライスにおけるカルシウムイメージングを用いて解析することを試みた。C, Aδ, Aβ神経をそれぞれ刺激することが可能なNeurometerをカルシウムイメージング装置と組み合わせ、各種刺激をすることで入力領域でのCa2+変動を見出すことに試みた。この結果より本システムが確立すれば、今後、慢性の神経因性疼痛モデルの検討を行っている。一方、神経因性疼痛のメカニズムにミクログリアの活性化が重要な役割を果たすことが注目されている。その主要なリガンドとしてATPとLPAがミクログリアの活性化に影響を及ぼすことが報告されていることから、カルシウムイメージング方法を用いてこの両者の作用をミクログリアcell lineであるEOC2によって解析したところ、両物質による刺激においてCa2+ oscillationが観察された。特にLPAによるCa2+ oscillationの効果は、放出されたATPによる二次的効果であることが明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-05F05441 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05F05441 |
難治性慢性疼痛における神経回路再編成の分子基盤解析 | この効果は2分間以上も持続することから、神経傷害時に一時的に放出されるLPAがミクログリアを持続的に活性化させ、おそらく様々なサイトカインや神経栄養因子産生を介し、神経回路の可塑性に貢献しているものと予想される。本結果は投稿準備中である。 | KAKENHI-PROJECT-05F05441 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05F05441 |
SCYL1メチル化を介したゴルジ体形態・機能制御機構の解明 | 細胞内において分泌タンパク質・膜タンパク質の成熟化機構に関わる小胞体(以下ER)・ゴルジ体が正常に働くということは、細胞・生体機能の恒常性という観点からも非常に重要である。われわれはそれら研究を進める中、タンパク質アルギニンメチル基転移酵素protein arginine methyltransferase 1(以下PRMT1)のPRMT1発現低下細胞がゴルジ体形態異常を示すことを見出した。本結果に基づき、ER-ゴルジ体タンパク質分画に対して質量分析を行い、COPI小胞輸送にかかわるSCYL1がPRMT1の基質としてメチル化を受け、ER-ゴルジ体形態および機能の維持に作用している可能性を見出した。そこで、SCYL1のメチル化制御によるER-ゴルジ体形態・機能制御についての検討に着手した。初年度は、複数のPRMT1阻害薬を用いて検討を行い、メチル化レベルの低下に伴いCOPI小胞複合体からSCYL1が解離すること、SCYL1C末端領域のアルギニンに対して変異加えた場合に、COPI小胞との結合解離が促進することを明らかとした。昨年度は、1ERストレスによるPRMT1誘導の一般性についての検証を継続し、ERストレス誘導試薬による感受性の違いを見出した。すなわち、ストレス種によっても作用テインの違いによりPRMT1誘導性をほとんど示さないことが判明した。また、2PRMT1がどの領域でSCYL1に対してメチル化修飾を行うのかという観点から検討を進め、細胞質タンパク質サンプルをIdioxianol濃度勾配を用いて分離し、PRMT1の局在を確認した。その結果、PRMT1がcis-ゴルジ領域に集積していることを明らかとした。さらに、3PRMT1発現抑制細胞においてシャペロンタンパク質であるGRP78の誘導が促進していること、小胞体ストレス下での細胞死が促進していることを確認した。初年度に実施したERストレス応答とPRMT1に対する一般性に対する検証を継続したところ、ERストレス誘導試薬による感受性の違い(種によってはPRMT1誘導性の弱いもの)が存在することが明らかとなった。そのため、初年度の結果に対しての疑義が生じたが、種々の検討によりゴルジ体への影響が大きいもの程、作用が大きい傾向を得ることができた。序盤のつまずきにより、やや検討が遅れた。しかし、その後はPRMT1の局在が明らかとなったこと、ERストレス応答やERストレス下での細胞死誘導にPRMT1が関与することを明らかにするなどの結果を得た。これらの結果を得られたことで、今後の研究の発展性・現在の内容の論文化の観点からも前進となる結果を得ており、おおむね順調に進んでいると考えられる。昨年度の当初予定で記載していたPRMT1 isoformに対する検討が、昨年度初期のつまずきで遅れていたが、逆にその際に得られたPRMT1誘導性が悪いERストレス誘導試薬が存在することなどから、発現制御のみならず発現パターンに対する検討が重要であるとの考えが再認識された。そこで、昨年度までの検討結果を固め、必要となるデータを追加することで論文化を行うとともに、isofrom研究を推進することで、さらなるER-ゴルジ体バランス制御機構の解明を行う。細胞内において分泌タンパク質・膜タンパク質の成熟化機構に関わる小胞体(以下ER)・ゴルジ体が正常に働くということは、細胞・生体機能の恒常性という観点からも非常に重要である。これらの機能異常が、糖尿病・神経変性疾患などの発症経路へ関与するとの報告がなされており、ER-ゴルジ体機能制御の確立は、生物学的および病態医学的に重要な喫緊の課題である。そこで我々は、ERストレスの下流で変動する因子の探索を行い、蛋白質アルギニンメチル基転移酵素protein arginine methyltransferase 1(以下PRMT1)を見出し、RNA干渉法を用いて作成したPRMT1発現低下細胞がゴルジ体形態異常を示すことを明らかとした。本結果に基づき、ERストレスの下流でPRMT1によるメチル化制御を受ける蛋白質群を網羅的に探索するため、ERストレス負荷細胞と対照群から回収したER-ゴルジ体蛋白質分画に対して質量分析を行い、COPI小胞輸送にかかわるSCYL1がPRMT1の基質としてメチル化を受け、ER-ゴルジ体形態および機能の維持に作用している可能性を見出した。そこで、SCYL1のメチル化制御によるER-ゴルジ体形態・機能制御についての検討に着手した。はじめに、実験系の正確性及び一般性を確認するため、複数種類の細胞を用いてERストレス下でのPRMT1発現変化を確認した結果、ERストレス後に上昇を示し、一定時間以降低下を示すとの結果を得た。また、PRMT1阻害剤として市販されている複数の試薬を用いてメチル化阻害を行った場合、メチル化レベルの低下に伴いCOPI小胞複合体からSCYL1が解離することを見出した。さらには、メチル化領域と予想されるC末端領域のアルギニンに対して変異加えた場合に、COPI小胞との結合解離が促進することを明らかとした。平成28年度は研究代表者の異動に伴い、当初の実験立ち上げが遅延することが予想さらた。しかし、スムーズに研究環境が整ったこと、研究分担者・協力者の協力のもと、おおむね順調に進捗した。詳細は以下に示す。当該年度に実施した研究結果により、小胞体ストレスの下流で認められるPRMT1発現変化が、当初用いていた神経系の細胞のみならず、多組織由来の細胞からも確認されたことから、その一般性を構築することができた。 | KAKENHI-PROJECT-16K08465 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K08465 |
SCYL1メチル化を介したゴルジ体形態・機能制御機構の解明 | SCYL1のC端領域に存在するアルギニンに対する点変異体を作成し、COPI小胞との複合体形成を確認したところ、両者の結合が阻害されることから、ERストレス下でのSCYL1(機能的)メチル化領域の有力な候補配列が同定された。現在、SCYL1点変異体のER・ゴルジ体形態・機能への影響を確認すべく、CRISPR/Cas9をもちいたゲノム編集法によるSCYL1欠損細胞の作製を進めている。これらの成果は、研究計画に記載されていた当該年度の実施項目をおおむね実施した結果として得られた成果であり、おおむね順調に進展していると考える。細胞内において分泌タンパク質・膜タンパク質の成熟化機構に関わる小胞体(以下ER)・ゴルジ体が正常に働くということは、細胞・生体機能の恒常性という観点からも非常に重要である。われわれはそれら研究を進める中、タンパク質アルギニンメチル基転移酵素protein arginine methyltransferase 1(以下PRMT1)のPRMT1発現低下細胞がゴルジ体形態異常を示すことを見出した。本結果に基づき、ER-ゴルジ体タンパク質分画に対して質量分析を行い、COPI小胞輸送にかかわるSCYL1がPRMT1の基質としてメチル化を受け、ER-ゴルジ体形態および機能の維持に作用している可能性を見出した。そこで、SCYL1のメチル化制御によるER-ゴルジ体形態・機能制御についての検討に着手した。初年度は、複数のPRMT1阻害薬を用いて検討を行い、メチル化レベルの低下に伴いCOPI小胞複合体からSCYL1が解離すること、SCYL1C末端領域のアルギニンに対して変異加えた場合に、COPI小胞との結合解離が促進することを明らかとした。昨年度は、1ERストレスによるPRMT1誘導の一般性についての検証を継続し、ERストレス誘導試薬による感受性の違いを見出した。すなわち、ストレス種によっても作用テインの違いによりPRMT1誘導性をほとんど示さないことが判明した。また、2PRMT1がどの領域でSCYL1に対してメチル化修飾を行うのかという観点から検討を進め、細胞質タンパク質サンプルをIdioxianol濃度勾配を用いて分離し、PRMT1の局在を確認した。その結果、PRMT1がcis-ゴルジ領域に集積していることを明らかとした。さらに、3PRMT1発現抑制細胞においてシャペロンタンパク質であるGRP78の誘導が促進していること、小胞体ストレス下での細胞死が促進していることを確認した。初年度に実施したERストレス応答とPRMT1に対する一般性に対する検証を継続したところ、ERストレス誘導試薬による感受性の違い(種によってはPRMT1誘導性の弱いもの)が存在することが明らかとなった。そのため、初年度の結果に対しての疑義が生じたが、種々の検討によりゴルジ体への影響が大きいもの程、作用が大きい傾向を得ることができた。序盤のつまずきにより、やや検討が遅れた。しかし、その後はPRMT1の局在が明らかとなったこと、ERストレス応答やERストレス下での細胞死誘導にPRMT1が関与することを明らかにするなどの結果を得た。これらの結果を得られたことで、今後の研究の発展性・現在の内容の論 | KAKENHI-PROJECT-16K08465 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K08465 |
リーマンゼータ関数およびその導関数の零点と離散的な値の分布 | 私の主な課題の一つである、リーマン予想の下での、リーマンゼータ関数の高階導関数の零点の個数評価の改善は得られた。現在得られた改良により、導関数に対して長い間示せなかった評価であり、95年前にリーマンゼータ関数自身に対して得られて以来一度改善できていない評価である。次に、Junghun Lee氏、Athanasios Sourmelidis氏とJoern Steuding教授と共に、リーマンゼータ関数の(重要な)非自明な零点の居場所である「臨界帯領域」内のリーマンゼータ関数の離散的な値分布を調べた。この研究において、我々は確率的な手法を用いたが、最も大事である、その領域の真ん中の線である「臨界線」上の情報が得られなかった。昨年までできた研究を一度まとめて投稿した。その論文は現在、出版準備中である。今年度はリーマンゼータ関数自身ではなく、それに関わる拡張的な課題を中心に研究を行ってきた。一つ目は、「離散的な半群の値の差」からなる和を用いて、リーマンゼータ関数の一般化でもあるフルヴィッツゼータ関数と、リーマンゼータ関数自身の値を結ぶようなよく知られている公式に対して別証明を与えた。このような和は、加算的整数論に興味を持たれているものであり、加算的整数論専門家のLeonid G. Fel教授と小松尚夫教授と共同で研究を行った。この論文は1月に投稿済みである。二つ目は、昨年度、Sumaia Saad Eddin氏との研究打ち合わせをきっかけに始まった研究であり、「リーマン予想が成り立つと予想されている最も大きなゼータ関数とL関数の関数族」のゼータ関数とL関数の1の周りにおけるローラン展開の係数の上限を示した。この論文は投稿準備中である。最後に、私とSteuding先生は、オイラーファイ関数を一般化するSchemmelのファイ関数の平均値も調べた。この論文は4月に投稿した。計画した通りに研究が進まなかったが、提案した4つの課題のうち、二つの課題に対して、一部の結果がまとまり、論文も投稿できた。残りの部分は、まだ研究実行中である。一方、提案した課題に含まれていない新しい課題に取り組むことができ、分野が広がった。これらの研究は、ゼータ関数とL関数たちのセルバーグクラスのローラン展開における係数の評価というリーマンゼータ関数の値および零点の分布に近い話題から、ゼータ関数の値の分布に直接は関係しない、オイラーファイ関数の一般化された関数の平均値という数論的関数の平均値問題や、離散的半群という加算的整数論の問題まで取り組むことができた。今後は、これらの新たな研究課題を生かし、リーマンゼータ関数とディリクレL関数の零点および値の分布をより広い視野で見ながら調べたい。また、これらの新しい結果は、ゼータ関数とL関数の値分布とより広い分野の枠組みにおける意味合いと応用を見つけ出す新しい手段となった。これらの研究を行いながらも、3月末にゼータ関数の値分布に関する大きな研究集会を無事に開催できた。以上のことにより、2018年度の研究が企画以上に進展したと考えている。今年は研究打ち合わせも順調に行うことができたおかげで、複数の論文の完成に至ったと考える。また、今年は特に参加した勉強会(サマースクール)が多く、沢山の新しい知識を得られたため、これをこれからの研究にも活かしていきたい。まずは、現在まとめであるL関数のローラン展開の係数(スティルチェス定数)の振る舞いに関する論文を完成し、投稿する。研究計画調書に書いたいくつかの課題に対して、一部は現在実行であり、一部完成し論文にまとめることを目指す。それらは、主にリーマンゼータ関数の導関数の零点分布に関する研究であり、それに限らず、同時にディリクレL関数の場合も考えている。いくつかの新しい課題の打ち合わせも行い始めつつあり、また新たな課題の論文を書き上げられることを目指す。研究集会、セミナーも今までのように積極的に参加し、研究成果報告と同時に、情報収集と交換を行い新たなアイデアをまた研究に活かして、課題性の高い論文を目指す。私の主な課題の一つである、リーマン予想の下での、リーマンゼータ関数の高階導関数の零点の個数評価の改善は得られた。現在得られた改良により、導関数に対して長い間示せなかった評価であり、95年前にリーマンゼータ関数自身に対して得られて以来一度改善できていない評価である。次に、Junghun Lee氏、Athanasios Sourmelidis氏とJoern Steuding教授と共に、リーマンゼータ関数の(重要な)非自明な零点の居場所である「臨界帯領域」内のリーマンゼータ関数の離散的な値分布を調べた。この研究において、我々は確率的な手法を用いたが、最も大事である、その領域の真ん中の線である「臨界線」上の情報が得られなかった。昨年までできた研究を一度まとめて投稿した。その論文は現在、出版準備中である。今年度はリーマンゼータ関数自身ではなく、それに関わる拡張的な課題を中心に研究を行ってきた。一つ目は、「離散的な半群の値の差」からなる和を用いて、リーマンゼータ関数の一般化でもあるフルヴィッツゼータ関数と、リーマンゼータ関数自身の値を結ぶようなよく知られている公式に対して別証明を与えた。このような和は、加算的整数論に興味を持たれているものであり、加算的整数論専門家のLeonid G. Fel教授と小松尚夫教授と共同で研究を行った。この論文は1月に投稿済みである。 | KAKENHI-PROJECT-18K13400 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K13400 |
リーマンゼータ関数およびその導関数の零点と離散的な値の分布 | 二つ目は、昨年度、Sumaia Saad Eddin氏との研究打ち合わせをきっかけに始まった研究であり、「リーマン予想が成り立つと予想されている最も大きなゼータ関数とL関数の関数族」のゼータ関数とL関数の1の周りにおけるローラン展開の係数の上限を示した。この論文は投稿準備中である。最後に、私とSteuding先生は、オイラーファイ関数を一般化するSchemmelのファイ関数の平均値も調べた。この論文は4月に投稿した。計画した通りに研究が進まなかったが、提案した4つの課題のうち、二つの課題に対して、一部の結果がまとまり、論文も投稿できた。残りの部分は、まだ研究実行中である。一方、提案した課題に含まれていない新しい課題に取り組むことができ、分野が広がった。これらの研究は、ゼータ関数とL関数たちのセルバーグクラスのローラン展開における係数の評価というリーマンゼータ関数の値および零点の分布に近い話題から、ゼータ関数の値の分布に直接は関係しない、オイラーファイ関数の一般化された関数の平均値という数論的関数の平均値問題や、離散的半群という加算的整数論の問題まで取り組むことができた。今後は、これらの新たな研究課題を生かし、リーマンゼータ関数とディリクレL関数の零点および値の分布をより広い視野で見ながら調べたい。また、これらの新しい結果は、ゼータ関数とL関数の値分布とより広い分野の枠組みにおける意味合いと応用を見つけ出す新しい手段となった。これらの研究を行いながらも、3月末にゼータ関数の値分布に関する大きな研究集会を無事に開催できた。以上のことにより、2018年度の研究が企画以上に進展したと考えている。今年は研究打ち合わせも順調に行うことができたおかげで、複数の論文の完成に至ったと考える。また、今年は特に参加した勉強会(サマースクール)が多く、沢山の新しい知識を得られたため、これをこれからの研究にも活かしていきたい。まずは、現在まとめであるL関数のローラン展開の係数(スティルチェス定数)の振る舞いに関する論文を完成し、投稿する。研究計画調書に書いたいくつかの課題に対して、一部は現在実行であり、一部完成し論文にまとめることを目指す。それらは、主にリーマンゼータ関数の導関数の零点分布に関する研究であり、それに限らず、同時にディリクレL関数の場合も考えている。いくつかの新しい課題の打ち合わせも行い始めつつあり、また新たな課題の論文を書き上げられることを目指す。研究集会、セミナーも今までのように積極的に参加し、研究成果報告と同時に、情報収集と交換を行い新たなアイデアをまた研究に活かして、課題性の高い論文を目指す。2018年度分の予算を使い切り予定だったが、千円も未満の金額が余ったため、当該年度に使用が困難だった。これを次年度の予算分と合わせて消耗品購入に使う予定。 | KAKENHI-PROJECT-18K13400 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K13400 |
一般健康職域集団におけるうつ状態と自殺に関する前向き疫学研究 | [対象と方法]某事業所で1989年に実施した健康と生活習慣に関する自記式問診票請査に回答し、追跡可能な職員のうち40-54歳の13,294名を対象としたコホート調査を実施した。生活習慣として主にとりあげたのは、喫煙・飲酒習慣、仕事内容、生活態度、うつ状態などである。生活態度としては生きがいや生活のはり、立腹の程度などを、うつ状態としてはZungのSDS20項目より特に職場で働くものに関連すると考えられる12項目が利用可能であった。在職中の死亡年月日、死因は提出される死亡診断書より把握、退職は退職者名簿を用い、退職年月日を調査した。死亡・退職とも当該事業所の健康管理責任者の了解と指導のもとに個人名を伏した形で入手し、職員番号により1989年問診票データとリンケージした。観察は1995年3月31日まで実施し、退職者は退職時点で打ち切り例として扱った。解析は名古屋大学大型計算機の汎用統計パッケージSAS中のCoxの比例ハザードモデルを用い、性・年齢調整後の各種要因の自殺危険度を推定した。[結果と考察]95年3月31日までの約5年間に観察対象者から847例の退職、92例の死亡(うち自殺11例)が発生した。各種要因を補正した後でも、ZungのSDS12項目中10項目で有意な自殺リスクの上昇が観察され、12項目の合計点によるうつ総合点が上位20パーセンタイル値のものはそれ以下のものに比較し、6.67倍自殺しやすかった。1日の睡眠時間が9時間以上のものは、それ以下のものにくらべ、自殺発生率が16.6倍と有意に高かった。コーヒーの摂取は、有意ではないものの予防的に働いている可能性が示唆された。自殺者の数が少ないため、統計学的なパワーに問題はあるものの、うつ状態は単にその直後の自殺に関連しているだけでなく5年後まで影響を与えていることが考えられ、職場においても注意深い観察とカウンセリングなどの介入が必要と考えられる。[対象と方法]某事業所で1989年に実施した健康と生活習慣に関する自記式問診票調査に回答し、追跡可能な職員のうち40-54歳の13,294名を対象としたコホート調査を実施した。生活習慣として主にとりあげたのは、喫煙・飲酒習慣、仕事内容、生活態度、うつ状態などである。生活態度としては生きがいや生活のはり、立腹の程度などを、うつ状態としてはZungのSDS20項目より特に職場で働くものに関連すると考えられる12項目が利用可能であった。在職中の死亡年月日、死因は提出される死亡診断書より把握、退職は退職者名簿を用い、退職年月日を調査した。死亡・退職とも当該事業所の健康管理責任者の了解と指導のもとに個人名を伏した形で入手し、職員番号により1989年問診票データとリンケージした。観察は1995年3月31日まで実施し、退職者は退職時点で打ち切り例として扱った。解析は名古屋大学大型計算機の汎用統計パッケージSAS中のCoxの比例ハザードモデルを用い、性・年齢調整後の各種要因の自殺危険度を推定した。[結果]95年3月31日までの約5年間に観察対象者から847例の退職、92例の死亡(うち自殺11例)が発生した。うつ状態:ZungのSDS12項目中10項目で有意な自殺リスクの上昇が観察された。12項目の合計点によるうつ総合点が上位20パーセンタイル値のものはそれ以下のものに比較し、約5倍自殺しやすかった。睡眠時間:1日の睡眠時間が9時間以上のものは、それ以下のものにくらべ、自殺発生率が有意に高かった。[来年度の予定]本年度はデータの入力作業を完了し、単要因(性・年齢のみ調整)の自殺危険度の推定を行った。今度、さらに詳細な検討を行い、一般に健康な社会生活を営んでいる集団における自殺者の発生要因に関する検討を進める予定である。[対象と方法]某事業所で1989年に実施した健康と生活習慣に関する自記式問診票請査に回答し、追跡可能な職員のうち40-54歳の13,294名を対象としたコホート調査を実施した。生活習慣として主にとりあげたのは、喫煙・飲酒習慣、仕事内容、生活態度、うつ状態などである。生活態度としては生きがいや生活のはり、立腹の程度などを、うつ状態としてはZungのSDS20項目より特に職場で働くものに関連すると考えられる12項目が利用可能であった。在職中の死亡年月日、死因は提出される死亡診断書より把握、退職は退職者名簿を用い、退職年月日を調査した。死亡・退職とも当該事業所の健康管理責任者の了解と指導のもとに個人名を伏した形で入手し、職員番号により1989年問診票データとリンケージした。観察は1995年3月31日まで実施し、退職者は退職時点で打ち切り例として扱った。解析は名古屋大学大型計算機の汎用統計パッケージSAS中のCoxの比例ハザードモデルを用い、性・年齢調整後の各種要因の自殺危険度を推定した。[結果と考察]95年3月31日までの約5年間に観察対象者から847例の退職、92例の死亡(うち自殺11例)が発生した。 | KAKENHI-PROJECT-09770256 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09770256 |
一般健康職域集団におけるうつ状態と自殺に関する前向き疫学研究 | 各種要因を補正した後でも、ZungのSDS12項目中10項目で有意な自殺リスクの上昇が観察され、12項目の合計点によるうつ総合点が上位20パーセンタイル値のものはそれ以下のものに比較し、6.67倍自殺しやすかった。1日の睡眠時間が9時間以上のものは、それ以下のものにくらべ、自殺発生率が16.6倍と有意に高かった。コーヒーの摂取は、有意ではないものの予防的に働いている可能性が示唆された。自殺者の数が少ないため、統計学的なパワーに問題はあるものの、うつ状態は単にその直後の自殺に関連しているだけでなく5年後まで影響を与えていることが考えられ、職場においても注意深い観察とカウンセリングなどの介入が必要と考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-09770256 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09770256 |
金属錯体クラスター分子を活物質とする新しい電池材料 | 近年、地球規模での環境問題などから新しいエネルギー材料の開発が求められている。本研究では、次世代の2次電池を開発する目的で、多核金属錯体分子(分子クラスター)を正極活物質とする新しい2次電池『分子クラスター電池』を作成するとともに、その電池反応機構をX線吸収スペクトル(XAFS)によって解明することを試みた。その結果、分子クラスターの多電子の酸化還元が従来のリチウムイオン電池よりも大きな電池容量につながっていることを明らかにした。また、分子クラスターとカーボンナノチューブのナノ複合化によって、分子クラスター電池の電池特性を大幅に改善できることを示した。近年、地球規模での環境問題などから新しいエネルギー材料の開発が求められている。本研究では、次世代の2次電池を開発する目的で、多核金属錯体分子(分子クラスター)を正極活物質とする新しい2次電池『分子クラスター電池』を作成するとともに、その電池反応機構をX線吸収スペクトル(XAFS)によって解明することを試みた。その結果、分子クラスターの多電子の酸化還元が従来のリチウムイオン電池よりも大きな電池容量につながっていることを明らかにした。また、分子クラスターとカーボンナノチューブのナノ複合化によって、分子クラスター電池の電池特性を大幅に改善できることを示した。本研究では、多段階の酸化還元能を有する金属錯体クラスター分子であるポリオキソメタレート(POM)[PMo_<12>O_<40>]^<3->を正極活物質としたポリオキソメタレートクラスター電池について、正極中のPOM濃度や対カチオンの種類に依存した電池特性を調べた。正極活物質である[(C_4H_9)_4N]_3[PMo_<12>O_<40>]と導電性付与剤である炭素材料を混合することで正極材料を作製した。活物質濃度が10,15,20,25,30wt%の場合について、負極を金属リチウムとするコインセル電池を作製し、電圧範囲4.2-1.5V、電流1mAで定電流充放電試験を行った。各活物質含有率における放電容量のサイクル特性から、含有率が10wt%の場合、1サイクル目の放電容量が約260Ah/kgと非常に大きい値を示すことが分かった。含有率を増やすほど放電容量は減少し、30wt%では約80Ah/kgとなった。また、サイクル特性も活物質の含有率が高いほど悪くなった。インピーダンス等の電気化学的測定をおこなうことで、この含有率と電池特性の関係を解明した。また、正極材料のMo-K吸収端XAFS測定によってPOMの価数や構造変化を追跡し、充放電中の電池反応の違いからも上記の関係を明らかにした。さらに、対カチオンの種類に依存した電池特性についても検討をおこなった。本研究では、次世代の2次電池を開発する目的で、多核金属錯体分子(分子クラスター)を正極活物質とする新しい2次電池『分子クラスター電池』を作成するとともに、その電池反応機構をX線吸収スペクトル(XAFS)によって明らかにした。まず、Mo^<6+>を12個含むポリオキソメタレートクラスター(POM、[PMo_<12>O_<40>]^<3->)を正極活物質としたリチウム2次電池を作成し、その充放電特性を測定した結果、1サイクル目の放電容量は従来のリチウムイオン電池の容量(148Ah/kg)を大幅に上回る260Ah/kgとなった。また、10サイクル目の放電容量は1サイクル目の8割程度を維持しており、良いサイクル特性を観測することができた。次に、このPOMクラスター電池の電池反応機構を解明する目的で、充放電中のin situ Mo K-edge XAFSを測定した。高エネルギー加速器研究機構を利用し、in situ XAFS測定専用の特殊な電池セルを自作して測定をおこなった。XAFSスペクトルの解析より、放電過程においてPOM分子が24電子の還元を経ることが明らかとなり、この電子の出し入れは充放電で構造を保ちながら可逆であると分かった。この結果は、分子クラスターの多電子の酸化還元によって大きな電池容量を得ることが可能であり、分子クラスターが高エネルギー型次世代電池の活物質として大変有望であることを示す。なお、分子クラスターの高還元状態([POM]_<3->⇔[POM]^<27->)は電池という固体電気化学でのみ得ることができる化学種(溶液中では3電子の還元までが可能)であり、高還元状態における新奇物性の発現(新しい現象の発見)が基礎科学的に期待されるであろう。 | KAKENHI-PROJECT-21750141 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21750141 |
原爆被爆者集団における骨髄異形成症候群発生リスクに関する横断的・縦断的研究 | 【背景】骨髄異形成症候群(Myelodysplastic syndromes, MDS)は高齢者に多く高率に白血病に移行する造血幹細胞異常で近年注目されている。これまで放射線曝露とMDS発生の関連について調査した疫学研究は少なく、原爆被爆者においても明確な結論が得られていない。【目的】原爆被爆者におけるMDSの発生状況を調査し、放射線被爆との関連を明らかにする。【方法】血液内科医が常勤する長崎市内5病院間でMDS疫学調査研究プロジェクトを構築後、2004年までに発症した症例を後方的に集積し、被爆者データベースと照合して被爆者MDSを特定後、2つの疫学解析を行った。【結果】これまでに集積したMDSは647例である。コホート解析:被爆者データベース上1980年1月1日時点で生存していた被爆者87496人を母集団とし、1980年以前のMDS既知診断例を除き、1980-2004年に診断された被爆者MDS162例を特定した(粗発生率:10万人年あたり10.7人)。単変量解析による発生率の相対リスクは、男性が女性の1.7倍、1.5km以内の近距離被爆者が3km以遠被爆者より4.3倍と高く、高率に白血病に移行する病型(RAEB, RAEBt)ほど近距離被爆での発生率が顕著であった。年齢調整集団解析:診断時住所が長崎市であったMDS325例のうち被爆者MDSは165例であった。被爆者母集団数は長崎県公表の地域別被爆者健康手帳所持者数をもとに1980年より5年毎の人数求め、非被爆者母集団総数は長崎県より5年ごとに公表される年齢別人口を被爆者と年齢をマッチさせ、その後被爆者数を減じて求めた。10万人年あたりの粗発生率は被爆者で10.0人、非被爆者で6.49人と計算され、被爆者集団における発生率は非被爆者集団より1.5倍高いという結果が得られた。【考察】今後は被曝線量との関連を明らかにする必要がある。【背景】骨髄異形成症候群(Myelodysplastic syndromes, MDS)は高齢者に多く高率に白血病に移行する造血幹細胞異常で近年注目されている。これまで放射線曝露とMDS発生の関連について調査した疫学研究は少なく、原爆被爆者においても明確な結論が得られていない。【目的】原爆被爆者におけるMDSの発生状況を調査し、放射線被爆との関連を明らかにする。【方法】血液内科医が常勤する長崎市内5病院間でMDS疫学調査研究プロジェクトを構築後、2004年までに発症した症例を後方的に集積し、被爆者データベースと照合して被爆者MDSを特定後、2つの疫学解析を行った。【結果】これまでに集積したMDSは647例である。コホート解析:被爆者データベース上1980年1月1日時点で生存していた被爆者87496人を母集団とし、1980年以前のMDS既知診断例を除き、1980-2004年に診断された被爆者MDS162例を特定した(粗発生率:10万人年あたり10.7人)。単変量解析による発生率の相対リスクは、男性が女性の1.7倍、1.5km以内の近距離被爆者が3km以遠被爆者より4.3倍と高く、高率に白血病に移行する病型(RAEB, RAEBt)ほど近距離被爆での発生率が顕著であった。年齢調整集団解析:診断時住所が長崎市であったMDS325例のうち被爆者MDSは165例であった。被爆者母集団数は長崎県公表の地域別被爆者健康手帳所持者数をもとに1980年より5年毎の人数求め、非被爆者母集団総数は長崎県より5年ごとに公表される年齢別人口を被爆者と年齢をマッチさせ、その後被爆者数を減じて求めた。10万人年あたりの粗発生率は被爆者で10.0人、非被爆者で6.49人と計算され、被爆者集団における発生率は非被爆者集団より1.5倍高いという結果が得られた。【考察】今後は被曝線量との関連を明らかにする必要がある。放射線被爆による白血病の発生リスクについては多くの疫学研究があるが、「前白血病病態」である骨髄異形成症候群(Myelodysplastic syndromes : MDS)については、これまで放射線被爆との関連を包括的に調査した疫学研究はなかった。本研究は原爆被爆者に発生したMDSの大規模症例集積を行い、放射線被爆のMDS発生に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。1980.1.1-2004.12.31までに長崎市で診断されたMDS症例647例を集積し、これを被爆者データベースと照合し、これまでに162例の解析可能な被爆者MDSを確定した。診断時年齢の中央値は71歳(42歳-94歳)、性別では男性83例、女性79例であった。被爆時年齢別では10歳以下17例、20歳以下58例、30歳以下47例、30歳以上40例、被爆距離別では1.5km以内24例、2.5km以内17例、3.0km以内16例、3.0km以上62例、入市被爆者など43例であった。 | KAKENHI-PROJECT-17590545 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17590545 |
原爆被爆者集団における骨髄異形成症候群発生リスクに関する横断的・縦断的研究 | FAB分類によるMDSの病型分類が確定した症例は135例(83%)で、RA 84例、RARS 8例、CMMoL 6例、RAEB 22例、RAEB-T 14例であった。1980.1.1時点で生存していた長崎原爆被爆者総数87,496人を母集団とした予備的解析の結果、粗発生率は10万人年あたり10.7人、単変量解析による相対リスク(RR)は、男性被爆者が女性より1.7倍高く、被爆距離に反比例して高くなり、特に1.5km以内の近距離被爆者は3.0km以上で被爆した者の4.3倍であった。病型別では、高率に白血病に移行する病型(RAEB,RAEB-T)の方が白血病移行の低い病型(RA,ARS)に比べ近距離被爆者のRRが高い傾向にあった(5.5 vs. 3.8)。来年度は長崎県がん登録や放射線影響研究所との連携を推進し、本格的な解析を行う予定である。骨髄異形成症候群(Myelodysplastic syndromes, MDS)は前白血病病態として知られ、白血病同様、放射線曝露が病因の一つとして考えられているが、これまで放射線曝露とMDS発生の関連について包括的に調査した疫学研究は少なく、原爆被爆者集団においてさえも明確な結論が得られていない。本研究は放射線被爆のMDS発生に及ぼす影響を疫学手法により明らかにすることを目的とする。平成17年度は、19802004年までに診断された解析可能な被爆者のMDS症例162例を特定し、男女別・被曝時年齢別・被曝距離別・EAB亜分類別に発生数と発生率を求めた。母集団としては被爆者データベースより1980年1月1日時点で生存していた被爆者87496人を用いた。その結果、10万人年あたりの粗発生率は10.7人で、1.5km以内の近距離被爆者で約4倍発生率が高く、高率に白血病に移行する病型ほど近距離被爆における発生率が高い、ということが明らかとなった。平成18年度は、非被爆者集団と被爆者集団における発生率の比較を行った。被爆者母集団は長崎県より公表される地域別被爆者健康手帳所持者数をもとに1980年より5年ごとの総数を求め、非被爆者母集団は長崎県より5年ごとに公表される地域別・性別・年齢別人口をもとに被爆者と年齢をマッチさせた数を求めた後に被爆者数を減じて総数を求め、それぞれ粗人年を計算した。対象地域は長崎市のみと長崎市医療圏(長崎市と近郊2町)の2つで検討した。長崎市のみの地域で診断された被爆者のMDS症例は165例、非被爆者のMDSは160例であった。10万人年あたりの粗発生率は被爆者で10.0人、非被爆者で649人と計算され、被爆者集団における発生率は非被爆者集団より1.5倍高いという結果が得られた。長崎市医療圏でもほぼ同様であった。今後は被曝線量との関連を明らかにする必要がある。 | KAKENHI-PROJECT-17590545 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17590545 |
全身運動における疲労要因の関係性に関する研究 | ある一定強度以上で筋収縮を繰り返すと、筋は疲労し運動継続が困難になる。この状態を筋疲労と呼ぶ。運動に起因する疲労に関する研究は1900年代初頭から始まり、現在に至るまで盛んに行われてきた。先行研究によって運動中に起こる疲労は末梢における神経学的・生化学的変化からのみでなく、中枢における抑制・不活性によっても引き起こされることが明らかになってきた。疲労は運動中に突然に発生するものではなく、末梢や中枢に生じる複数の要因が相互に作用し徐々に起こる現象である。そのため、疲労現象を正しく理解するためには疲労に関与していると考えられる複数の要因の変化を時系列的に同時に捉え検証する必要がある。そこで、本研究は運動中に生じる複数の疲労要因の変化を時系列的に観察し、主となる疲労要因について検討した。その結果、運動中に筋組織や呼吸循環系組織の生理学的変化が疲労に関与していることも確認したが、疲労は中枢神経活動の低下が直接的な要因として引き起こされる可能性が考えられた。ある一定強度以上で筋収縮を繰り返すと、筋は疲労し運動継続が困難になる。この状態を筋疲労と呼ぶ。運動に起因する疲労に関する研究は1900年代初頭から始まり、現在に至るまで盛んに行われてきた。先行研究によって運動中に起こる疲労は末梢における神経学的・生化学的変化からのみでなく、中枢における抑制・不活性によっても引き起こされることが明らかになってきた。疲労は運動中に突然に発生するものではなく、末梢や中枢に生じる複数の要因が相互に作用し徐々に起こる現象である。そのため、疲労現象を正しく理解するためには疲労に関与していると考えられる複数の要因の変化を時系列的に同時に捉え検証する必要がある。そこで、本研究は運動中に生じる複数の疲労要因の変化を時系列的に観察し、主となる疲労要因について検討した。その結果、運動中に筋組織や呼吸循環系組織の生理学的変化が疲労に関与していることも確認したが、疲労は中枢神経活動の低下が直接的な要因として引き起こされる可能性が考えられた。本研究の目的は、(1)呼吸循環器系応答の大脳皮質への影響、(2)脳内の各運動関連領域の血行調節、(3)運動強度と脊髄やそれ以上のレベルでの伝達調整との関係、(4)運動強度と筋機能の変更との関係を検討し、安静時から疲労困憊までにそれらの要因がどのように変化し、どのような関係性が認められるのかを明らかにすることである。本年度は、(1)呼吸循環器系の大脳皮質への影響を知るため、被験者(成人男性)8名に対して漸増負荷運動による疲労困憊時の酸素摂取量と大脳皮質の血行(酸素化ヘモグロビン量、脱酸素ヘモグロビン量および総ヘモグロビン量)動態を同時測定した。酸素摂取量は呼気ガス分析器、大脳皮質の血行動態は近赤外線分光法装置(Near Infrared Spectroscopy; NIRS)で前頭葉の血行を時系列的に測定した。その結果、安静時から疲労困憊まで酸素摂取量および大脳皮質の血液量の2つ指標はともに増大した。疲労困憊に達すると、両指標ともに低下した。この2つの指標は、安静時から疲労困憊までの間、よく似た変化を示した。運動中は動脈中の二酸化炭素濃度(Paco_2)が上昇することが知られている。Paco_2は血管収縮に関与する-要因である。運動中のPaco_2の上昇は大脳皮質の血液調節にも関与している可能性が示唆されが、疲労困憊時に大脳皮質の血行量が増加している。つまり、血管収縮によって血行が変更されることは考えにくい。また運動中の動脈中の酸素濃度Pao_2には著しい低下はないことが明らかになっている。この事から疲労困憊時の大脳皮質の血行の低下要因は呼吸循環器応答以外に他の要因が大きく関与している可能性が高まった。本研究の目的は、(1)呼吸循環器系応答の大脳皮質への影響、(2)運動強度と筋機能の変更との関係、(3)脳内の各運動関連領域の血行調節、(4)運動強度と脊髄やそれ以上のレベルでの伝達調整との関係を検討し、安静時から疲労困憊までにそれらの要因がどのように変化し、どのような関係性が認められるのかを明らかにすることである。本年度は、疲労困憊時の脳血液動態、筋疲労及び呼吸循環器応答の関係を検討するため、被験者(成人男性)8名に対して自転車エルゴメーターでの一定負荷運動による疲労困憊時の大脳皮質の血行(酸素化ヘモグロビン量、脱酸素ヘモグロビン量および総ヘモグロビン量)動態、筋放電量及び呼吸循環応答(呼気中のCO_2)を同時測定した。呼気中のCO_2は呼気ガス分析器、大脳皮質の血行動態は近赤外線分光法装置(Near Infrared Spectroscopy ; NIRS)で前頭葉の血行を、筋電図で大腿直筋の筋放電量を疲労困憊まで時系列的に測定した。ある一定強度以上で筋収縮を繰り返すと、筋は疲労し運動継続が困難になる。この状態を筋疲労(※筋の機能が発揮できない状態、疲労困憊)と呼ぶ。筋疲労の原因としては、末梢(筋組織、肺や血管などの呼吸循環器系の組織)もしくは中枢(脳神経組織)のどちらかにあると考えられている。 | KAKENHI-PROJECT-21700641 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21700641 |
全身運動における疲労要因の関係性に関する研究 | 本年度の実験データは処理中であるが、末梢及び中枢の生理学的指標を同時測定し観察しているため筋疲労の原因についてそれら指標の関係性の解明が進むと考えている。本研究の目的は、(1)呼吸循環器系応答の大脳皮質への影響、(2)運動強度と筋機能の変更との関係、(3)脳内の各運動関連領域の血行調節、(4)運動強度と脊髄やそれ以上のレベルでの伝達調整との関係を検討し、安静時から疲労困憊までにそれらの要因がどのように変化し、どのような関係性が認められるのかを明らかにすることである。本年度は、最大動的運動における疲労困憊時の脳血液動態を検討するため、成人男性16名の被験者に対して最大握力発揮運動を課し運動中の大脳皮質の血行(酸素化ヘモグロビン量、脱酸素ヘモグロビン量および総ヘモグロビン量)動態と筋電図による筋放電量を測定した。大脳皮質の血行動態はNIRS(Near infrared spectroscopy;近赤外線分光法)により前頭葉で、また筋放電量は利き手前腕部で測定した。被験者は、座位で180秒間の安静状態を保ち、その後に利き手による3秒間の最大握力を発揮と3秒間の安静を5分間繰り返した。ある一定強度以上で筋収縮を繰り返すと、筋は疲労し運動継続が困難になる。この状態を筋疲労(※筋の機能が発揮できない状態、疲労困憊)と呼ぶ。筋疲労の原因としては、末梢(筋組織など)もしくは中枢(脳神経組織)のどちらかに存在すると考えられている。本年度の実験では、時系列的に安静時から疲労困憊に至るまで連続して末梢及び中枢の生理学的指標を同時測定し観察しているため筋疲労の原因についてそれら指標の関係性の解明が進むと考えている。 | KAKENHI-PROJECT-21700641 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21700641 |
暗黙知伝達のための高臨場ライフログの記録・再生 | 産業構造の変化や少子高齢化が進む中で多くの伝統技能が存亡の危機に瀕しており、伝統技能の保存伝承が急務となっている。このような状況を踏まえて、本研究では保存対象の伝統技能として截金と紙漉を取り上げて、ハイビジョンカメラを用いた映像情報・加速度等の道具情報・筋電データ等の作業者情報を統合的に取り扱う伝統技能の保存・伝承を試みた。その上で,既存の方法では直接伝達することが不可能であった、身体感覚としての熟練者のコツを伝えるための技能教示システムを開発し、その効果を確認した。産業構造の変化や少子高齢化が進む中で多くの伝統技能が存亡の危機に瀕しており、伝統技能の保存伝承が急務となっている。このような状況を踏まえて、本研究では保存対象の伝統技能として截金と紙漉を取り上げて、ハイビジョンカメラを用いた映像情報・加速度等の道具情報・筋電データ等の作業者情報を統合的に取り扱う伝統技能の保存・伝承を試みた。その上で,既存の方法では直接伝達することが不可能であった、身体感覚としての熟練者のコツを伝えるための技能教示システムを開発し、その効果を確認した。截金を伝達すべき技能として選択し、本年度は特に截金の初めの困難な部分、金箔を切る部分に着目して、熟練者と非熟練者の生体信号を比較した所、熟練者の信号は規則正しく特徴的であることが判明した。動作の見たい箇所を自由に見られるように障害物除去も試みた。また取得したデータを統合して表示して発見、学習促進を試みた。(1)金箔を切る動作中に筋電変化の大きい筋肉、肩、短母子外転筋、腕橈骨筋等の筋電を計測し比較した結果、腕榛骨筋で熟練者と非熟練者の力の係り具合が異なることが明らかになった。脈波から金箔を切る間の集中度の変化の計測をして、熟練者にも集中の乱れが生じることが判明した。金箔を切る間の集中力は個人の調子に関係し、実験初期、道具の不調、長時間の作業後に、集中力が落ちる傾向がある。この情報は熟練者の集中力の保ちかた、道具を見る力を解明する場面にも使える。また、呼吸センサの情報より熟練者の呼吸と切るリズムが合うことが判明した。熟練者は規則正しい呼吸で切る直前に息を吸い吐き出しながら切る。今後さらに計測を進め切った金箔のでき具合の評価も含めたデータを取得し"正確に金箔を切る時"の生体信号を抽出する。(2)2台のカメラを用いて戟金作業をする非熟練者を撮影し、ステレオ計測を行った。カメラからの距離を輝度値で表したデブスマップを作成し映像の各ピクセル情報をデブスマップの情報に与えて点描画を試みた結果、作業がやや視認できる程度の精度で、分解能は4.5mmであった。mm単位の動きが必要とされる截金の動きには不適であった。今後はカメラの台数を増やして自由視点動画あるいは3次元ビデオを作成し、作業時の姿勢や形から熟練者と非熟練者の相違点を計測する。(3)簡易的に生体信号と作業全体を撮影した動画を表示し、人型モデルが生体信号に合わせて同期して反応するものを作成。見やすさ、精度、(2)と合わせた動画部分の改善が今後必要である。平成21年度は、下記の4課題に取り祖んだ。◎ウェアラブルコンピュータによる人間の主観的情報を含んだ体験の記録を行った。前年度までの、システムを用いて熟練者の作業データを蓄積していくに当たって、必要となるセンサ群の取捨選択および、新たなセンサの追加に対応可能なスケーラブルなシステムを構築した。ウェアラブルコンピュータによる、筋電、呼吸、注視点情報に関するセンサ情報統合システムを開発した。◎多視点映像データを含む客観的記録システムを実装し、自然特徴点によるマッチングにより、マルチカメラの計測状況に合わせた柔軟な配置への対応を可能にし、常に動いているウェアラブルカメラの情報との多視点データとの対応も可能になり、注視点情報を20mmの精度で客観的映像に重畳提示することができるシステムを構築した。◎主観的記録と客観的記録の統合による熟練者の技能データベースの構築を行った。構築した主観情報、客観情報を統一的に記録するシステムにおいて、伝統技能である「截金」を対象として複数のの熟練者および、初学者の作業データの蓄積を行った。複数人の構造化したデータを蓄積し特徴を抽出することで、外からの観察では知り得ない熟練度に応じた筋肉の活動状況、視点の運び方、道具の扱い方等の技能の違いを可視化することが可能となった。◎得られた熟練者の技能の特徴を、自然な形で初学者に伝達するため、力感覚に対して聴覚刺激により更生を行ラクロスモーダルな提示手法を構築した。実験により本手法が、初学者の力みすぎる傾向を抑えることに効果があることが示された。本研究の目的は、技能の伝達において、熟練者本人さえも意識していない知識を、最新のメディア技術を用いて疑似追体験可能な形でデータベース化し、学習者に効率的に伝達するための方法論を明らかにすることである。具体的には、本研究は以下の4つのサブテーマから構成される。(1)ウェアラブルコンピュータによる人間の主観的情報を含んだ体験の記録(2)ユビキタスカメラによる自由視点映像データを含む客観的記録(3)主観的記録と客観的記録の統合によるライフログデータの構築(4)追体験者へのライフログデータの提示手法、およびフィードバック手法の構築 | KAKENHI-PROJECT-20240021 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20240021 |
暗黙知伝達のための高臨場ライフログの記録・再生 | 最終年度では、(4)追体験者へのライフログデータの提示手法、およびフィードバック手法の構築、に取り組み、以下に挙げるバーチャルリアリティ、ミックストリアリティ技術によって、学習者の学習段階に応じて熟練者のデータを体感するインタフェースを構築した。・熟練者の作業を客観的・主観的に追体験させるバーチャルリアリティ環境として、計測・分析した熟練者の技能情報を客観的記録映像、もしくは作業環境に可視化・重畳することで学習支援を行うシステムを構築し、明文化されていない観察困難な技能情報の教示を可能にした。・学習者の作業時に熟練者の内部情報を体感させるミックストリアリティ環境として、一人称視点から熟練者の視覚・聴覚・力覚情報を体感するウェアラブルコンピュータを構築し、従来習熟に長期の鍛錬を要した基礎技能の学習を効率化することができた。・学習者の習熟効果およびデータベースの利用効率をもとにデータの抽象化レベル検討した。ミックストリアリティ技術を用いた技能教示法において、習熟効果に応じて段階的に提示情報の粒度を細かくしていくことで、効率的な学習に寄与する傾向が得られた。 | KAKENHI-PROJECT-20240021 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20240021 |
バンカビリティ評価に使用可能な信頼できる洋上風況精査手法の確立 | 本研究では,洋上風力発電の開発候補海域においてバンカビリティ評価に使用可能な質の高い風況データを取得するために,その具体的手法の確立することを目的としている.当グループではこれまで低コストでデータ取得率の高い洋上風況調査手法として,ブイによる低高度の風況観測値をメソ気象モデルWRFによる計算値で高度補正してハブ高度風速を推定する手法「ブイ観測-WRF計算併用手法」の開発を行ってきた.その手法の検証のため,2018年度においては,2018年7月から2019年3月にかけて,茨城県神栖市の鹿島港港湾区域内の海岸線から2.5kmの海域にゼニライトブイ社/ソニック社製のブイを設置し,風況観測を実施した.海面高度5mのブイ頂部に設置した超音波風向風速計により風速3成分を10Hzで計測し,この風速を慣性運動計測センサーから得られるブイの運動データを用いて動揺補正を行った.ブイ観測と同期して,陸上からは2台のスキャニングライダーによるデュアル観測を行い,ブイ観測値との比較,及び,ブイ観測値をWRFから得られる風速鉛直プロファイル計算値によりハブ高度風速へと高度補正した推定値と比較した.その結果,5.2km離れた波崎桟橋上での観測値との比較において,風向・風速とも良い一致が見られ,動揺補正されたブイ観測風速値は妥当な値であることが確認できた.また,ハブ高度(100m)での風速推定値とデュアルライダー観測値との比較においては,WRF単体による推定精度を上回ることがわかった.これらはいずれも「ブイ観測-WRF計算併用手法」の有用性を示唆する結果である.一方で,デュアルライダー観測値とブイ観測値との直接比較においては,両者の間に10%程度の差異が見られることが明らかになり,当初真値として扱う予定であったデュアルライダー観測値の精度そのものを再検証する必要があることも明らかになった.2017年度中に予定していた茨城県神栖市の鹿島港港湾区域内でのブイ観測は,海上保安庁,茨城県庁,鹿島灘漁協,ブイ製作会社,海上工事会社との間での協議により,工事用台船の運用やダイバーの安全性,複数の漁協の漁期の条件等により,全関係者と合意できる観測期間が2018年6月以降となったため,結果的に観測開始が2018年7月にずれ込んだ.7月8日にブイ観測を開始したが,その直後から同期して観測していたスキャニングライダーの不調が重なり,8月初旬までデュアルライダー観測がうまくいかなかった.8月6日にようやく全ての観測機器が揃い,本格的な同期観測が始まったが,その直後に襲った台風13号によるブイの破損により,2018年8月12日からブイ観測が続行不可能になってしまった.その後の対応については産業技術総合研究所と度重なる協議を行い,何とかブイの修繕費及び再観測費用を調達し,11月1日にブイ観測を再開した.12月末までにはブイを撤収する予定であったが,悪天候による作業延期が重なり,最終的に年を跨いだ2019年3月15日の撤収となった.本研究で主要な要素を占めるブイ観測において上記のような作業遅れが出たため,研究全体の進捗状況としてはやや遅れている状況にある.ただし,観測とは独立している数値計算の部分に関しては,他の海域で得られた観測データを入手し,計算手法の高精度化や手法間の比較検討を実施できており,こちらは順調に進んでいると言える.本研究では,茨城県神栖市沖合海域を観測フィールドとして,海岸線から数km沖合の風車ハブ高度における風況を推定する手法の検討を行う.ライダーやブイによる実海域の観測データを解析すると共に,それらに同期したメソ気象モデル及び工学モデルによる数値シミュレーションを実施する.これらの観測値と計算値を用いて以下4つの手法の検討を行う:(a)スキャニングライダーによる直接観測手法,(b)ブイ観測値を数値計算によって高度補正する手法,(c)沿岸の鉛直ライダー観測値を数値計算によって沖合に外挿する手法,(d)衛星搭載合成開口レーダーによる観測値を数値計算によって高度補正する手法.本年度前半は,昨年度に実施された風況観測ブイによる観測データの解析と,それに同期して行われた2台のスキャニングライダー観測,鉛直ライダー観測,及び桟橋上での気象海象観測から得られたデータの整理と解析を行う.また新規に合成開口レーダーデータの収集と解析を行う.(a)及び(b)に関しては,昨年度までの解析において両者に大きな差異が見られたことから,11月から1月にかけて取得された新しいデータを追加し,更に,メソ気象モデルWRFによる鉛直プロファイルの改善を目指すことにより差異の減少を図り,両手法の妥当性について検討する.(c)と(d)については今年度新規に手法の検討を行う.(c)については,桟橋での鉛直ライダーの観測値を入力として,ブイ位置での風速の推定を行う.(d)については,欧州宇宙機関の衛星Sentinelに搭載されたCバンド合成開口レーダーの画像から海上風速を推定し,現場観測値により精度検証を行う.上記の検討と並行して,メソ気象モデルWRFと数値流体力学モデルによる数値シミュレーションを行い,両者の特性及び精度を比較すると共に,観測値補正手法の導入により同海域における高精度な局所風況マップを作成する.本研究では,洋上風力発電の開発候補海域においてバンカビリティ評価に使用可能な質の高い風況データを取得するために,その具体的手法の確立することを目的としている.当グループではこれまで低コストでデータ取得率の高い洋上風況調査手法として,ブイによる低高度の風況観測値をメソ気象モデルWRFによる計算値で高度補正してハブ高度風速を推定する手法「ブイ観測-WRF計算併用手法」の開発を行ってきた. | KAKENHI-PROJECT-17H03492 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H03492 |
バンカビリティ評価に使用可能な信頼できる洋上風況精査手法の確立 | その手法の検証のため,2018年度においては,2018年7月から2019年3月にかけて,茨城県神栖市の鹿島港港湾区域内の海岸線から2.5kmの海域にゼニライトブイ社/ソニック社製のブイを設置し,風況観測を実施した.海面高度5mのブイ頂部に設置した超音波風向風速計により風速3成分を10Hzで計測し,この風速を慣性運動計測センサーから得られるブイの運動データを用いて動揺補正を行った.ブイ観測と同期して,陸上からは2台のスキャニングライダーによるデュアル観測を行い,ブイ観測値との比較,及び,ブイ観測値をWRFから得られる風速鉛直プロファイル計算値によりハブ高度風速へと高度補正した推定値と比較した.その結果,5.2km離れた波崎桟橋上での観測値との比較において,風向・風速とも良い一致が見られ,動揺補正されたブイ観測風速値は妥当な値であることが確認できた.また,ハブ高度(100m)での風速推定値とデュアルライダー観測値との比較においては,WRF単体による推定精度を上回ることがわかった.これらはいずれも「ブイ観測-WRF計算併用手法」の有用性を示唆する結果である.一方で,デュアルライダー観測値とブイ観測値との直接比較においては,両者の間に10%程度の差異が見られることが明らかになり,当初真値として扱う予定であったデュアルライダー観測値の精度そのものを再検証する必要があることも明らかになった.2017年度中に予定していた茨城県神栖市の鹿島港港湾区域内でのブイ観測は,海上保安庁,茨城県庁,鹿島灘漁協,ブイ製作会社,海上工事会社との間での協議により,工事用台船の運用やダイバーの安全性,複数の漁協の漁期の条件等により,全関係者と合意できる観測期間が2018年6月以降となったため,結果的に観測開始が2018年7月にずれ込んだ.7月8日にブイ観測を開始したが,その直後から同期して観測していたスキャニングライダーの不調が重なり,8月初旬までデュアルライダー観測がうまくいかなかった.8月6日にようやく全ての観測機器が揃い,本格的な同期観測が始まったが,その直後に襲った台風13号によるブイの破損により,2018年8月12日からブイ観測が続行不可能になってしまった.その後の対応については産業技術総合研究所と度重なる協議を行い,何とかブイの修繕費及び再観測費用を調達し,11月1日にブイ観測を再開した.12月末までにはブイを撤収する予定であったが,悪天候による作業延期が重なり,最終的に年を跨いだ2019年3月15日の撤収となった.本研究で主要な要素を占めるブイ観測において上記のような作業遅れが出たため,研究全体の進捗状況としてはやや遅れている状況にある.ただし,観測とは独立している数値計算の部分に関しては,他の海域で得られた観測データを入手し,計算手法の高精度化や手法間の比較検討を実施できており,こちらは順調に進んでいると言える.本研究では,洋上風力発電の開発候補海域においてバンカビリティ評価に使用可能な質の高い風況データを取得するために,その具体的手法の確立することを目的としている.当グループではこれまで低コストでデータ取得率の高い洋上風況調査手法として,ブイによる低高度の風況観測値をメソ気象モデルWRFによる計算値で高度補正してハブ高度風速を推定する「ブイ観測-WRF計算併用手法」の開発を行ってきた. | KAKENHI-PROJECT-17H03492 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H03492 |
EWS-Fli1融合遺伝子を指標としたEwing肉腫、PNETの診断、治療の研究 | Ewing肉腫(ES)およびPNETは骨軟部悪性腫瘍の中で最も予後不良な腫瘍であり、90%以上の症例で特異的染色体転座t(11:22)がみられる。この転座の結果、異常な融合遺伝子EWS-Fli1が生じ、ES/PNETのがん化の原因そのものと考えられている。我々は、ES/PNET細胞株を用いEWS-Fli1融合遺伝子発現と増殖能との間に正の相関があり、EWS-Fli1融合遺伝子はES/PNETの癌化のみならず、その生物学的性質をも規定している可能性があることを示してきた。これらの結果をふまえ、本研究の目的は、EWS-Fli1融合遺伝子によって誘導される標的遺伝子を調べること、臨床検体におけるEWS-Fli1とその標的遺伝子の発現が臨床的パラメータと相関があるかを検証すること、である。ES/PNET細胞をEWS-Fli1に対するアンチセンスオリゴで処理すると増殖が阻害され、細胞周期のG1期に停止する。そこで、アンチセンスオリゴ処理前後の細胞からmRNAを抽出し、subtraction cloningやcDNA array sysytemによって、発現の変化する遺伝子群をクローニングした。この結果、EWS-Fli1の標的と考えられる遺伝子として、G1/S期移行に重要な働きをするサイクリンD1およびサイクリンE、S期に必要な遺伝子群を発現させる転写因子E2F1、細胞周期進行のinhibitorであるp21およびp27を同定した。EWS-Fli1によってサイクリンD1およびE、E2F1の発現が増強される一方、p21およびp27の発現は抑制され、細胞周期が常に高回転していることがES/PNETの発がん機構の一つであると考えられた。これらの遺伝子のプロモーター領域を解析した結果、p21については、そのプロモーターにEWS-Fli1が直接結合し、遺伝子発現を抑制することが明らかとなった。また、p27に関しては、転写レベルではなく、蛋白レベルでプロテオソームを介して分解が促進されていることも判明した。さらに、臨床サンプルを用いて、p27発現の有無と予後との相関を調べた。その結果、p27発現が低レベルである群は、高発現群に比して有意に予後が不良であることが判明した。Ewing肉腫(ES)およびPNETは骨軟部悪性腫瘍の中で最も予後不良な腫瘍であり、90%以上の症例で特異的染色体転座t(11:22)がみられる。この転座の結果、異常な融合遺伝子EWS-Fli1が生じ、ES/PNETのがん化の原因そのものと考えられている。我々は、ES/PNET細胞株を用いEWS-Fli1融合遺伝子発現と増殖能との間に正の相関があり、EWS-Fli1融合遺伝子はES/PNETの癌化のみならず、その生物学的性質をも規定している可能性があることを示してきた。これらの結果をふまえ、本研究の目的は、EWS-Fli1融合遺伝子によって誘導される標的遺伝子を調べること、臨床検体におけるEWS-Fli1とその標的遺伝子の発現が臨床的パラメータと相関があるかを検証すること、である。ES/PNET細胞をEWS-Fli1に対するアンチセンスオリゴで処理すると増殖が阻害され、細胞周期のG1期に停止する。そこで、アンチセンスオリゴ処理前後の細胞からmRNAを抽出し、subtraction cloningやcDNA array sysytemによって、発現の変化する遺伝子群をクローニングした。この結果、EWS-Fli1の標的と考えられる遺伝子として、G1/S期移行に重要な働きをするサイクリンD1およびサイクリンE、S期に必要な遺伝子群を発現させる転写因子E2F1、細胞周期進行のinhibitorであるp21およびp27を同定した。EWS-Fli1によってサイクリンD1およびE、E2F1の発現が増強される一方、p21およびp27の発現は抑制され、細胞周期が常に高回転していることがES/PNETの発がん機構の一つであると考えられた。これらの遺伝子のプロモーター領域を解析した結果、p21については、そのプロモーターにEWS-Fli1が直接結合し、遺伝子発現を抑制することが明らかとなった。また、p27に関しては、転写レベルではなく、蛋白レベルでプロテオソームを介して分解が促進されていることも判明した。さらに、臨床サンプルを用いて、p27発現の有無と予後との相関を調べた。その結果、p27発現が低レベルである群は、高発現群に比して有意に予後が不良であることが判明した。Ewing肉腫(ES)およびPrimitive Neuroectodermal Tumor(PNET)は、骨軟部悪性腫瘍の中で最も生命予後不良な腫瘍であり、診断、治療法の改善が切望されている。ESおよひPNET(ES/PNET)の85%以上の症例で染色体転座t(11:22)(q24;q12)がみられ、その結果、第11染色体上の遺伝子Fli1と第22染色体上の遺伝子EWSの間で、異常な融合遺伝子EWS-Fli1が生じる。この融合遺伝子産物は強力な転写因子として働き、正常線維芽細胞をtransformする活性を有することが知られており、異常な転写因子EWS-Fli1はES/PNETの癌化の原因そのものと考えられている。我々は、ES/PNET細胞株を用いEWS-Fli1融合遺伝子発現と増殖能との間に正の相関があり、EWS-Fli1融合遺伝子はES/PNETの癌化のみならず、その生物学的性質をも規定している可能性があることを示した。 | KAKENHI-PROJECT-10307034 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10307034 |
EWS-Fli1融合遺伝子を指標としたEwing肉腫、PNETの診断、治療の研究 | 本研究の目的は、(1)EWS-Fli1融合遺伝子発現と、増殖以外の悪性形質、即ち腫瘍血管新生能および浸潤転移能との関係を明らかにすること、(2)EWS-Fli1融合遺伝子によって誘導される標的遺伝子を調べること、(3)臨床検体におけるEWS-Fli1融合遺伝子発現が生存期間、転移再発の有無といった臨床的パラメータと相関があるかを検証すること、である。平成10年度は、主として、最も難易度が高い(2)の目的に向けて、subtraction cloning systemの構築に取り組んだ。その結果、コントロール実験において、細胞特異的遺伝子の単離とDNA配列の決定に成功し、システムが有効に作動することが確認できた。また、微量の臨床検体からのRNA精製と、nested RT-PCRによるEWS-Fli1融合遺伝子発現の検出系を構築した。さらに、本年度は新たに4例のES/PNET症例を治療し、臨床検体の収集と臨床的データの蓄積を行った。Ewing肉腫(ES)およびPrimitive Neuroectodermal Tumor(PNET)は、骨軟部悪性腫瘍の中で最も生命予後不良な腫瘍である。ESおよびPNET(ES/PNET)の85%以上の症例で染色体転座t(11:22)(q24;q12)がみられ、その結果、異常な融合遺伝子EWS-Fli1が生じる。この融合遺伝子産物は強力な転写因子として働き、正常線維芽細胞をtransformする活性を有することが知られており、異常な転写因子EWS-Fli1はES/PNETの癌化の原因そのものと考えられている。我々は、ES/PNET細胞株を用いEWS-Fli1融合遺伝子発現と増殖能との間に正の相関があり、EWS/Fli1融合遺伝子はES/PNETの癌化のみならず、その生物学的性質をも規定している可能性があることを示した。本研究の目的は、(1)EWS-Fli1融合遺伝子発現と、増殖以外の悪性形質、即ち腫瘍血管新生能および浸潤転移能との関係を明らかにすること、(2)EWS-Fli1融合遺伝子によって誘導される標的遺伝子を調べること、(3)臨床検体におけるEWS-Fli1融合遺伝子発現が生存期間、転移再発の有無といった臨床的パラメータと相関があるかを検証すること、である。平成10年度は、最も難易度が高い(2)の目的に向けて、subtraction cloning systemの構築に取り組んだ。その結果、コントロール実験において、細胞特異的遺伝子の単離とDNA配列の決定に成功し、システムが有効に作動することが確認できた。また、微量の臨床検体からのRNA精製と、nested RT-PCRによるEWS-Fli1融合遺伝子発現の検出系を構築した。平成11年度は、実際にsubtraction cloning systemを用いて、EWS-Fli1に対するアンチセンスオリゴ投与前後で、発現の変化する遺伝子のクローニングを行った。その結果、いくつかの遺伝子が、EWS-Fli1の標的遺伝子の候補として得られた。現在、これらの遺伝子発現の変化をRT-PCRによって確認すると共に、cDNA全長のクローニングを試みている。また、cDNA microarray systemを用いた、EWS-Fli1の標的遺伝子の検索も平行して行っている。 | KAKENHI-PROJECT-10307034 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10307034 |
果樹繁殖源explantの維持・増殖に関する研究 | 果樹茎頂の増殖と長期保存法を確立するため、本研究ではクリ、セイヨウナシの増殖、発根を検討し、その後、数種の果樹を材料として茎頂、組織の低温及び凍結保存方法を検討した。クリ実生の初代培養には1/2-1/4MS培地(BA0.1mg/l添加)が最も優れた。explantとしては側芽が枯死率が低く、シュ-ト伸長が優った。母樹への暗黒処理は枯死褐変の防止や伸長の促進に効果がみられた。シュ-トの伸長は1/4MS培地またはWPM培地(BA0.1mg/l添加)で優れた。Multiple shootの発生はWPM培地(BA1.0mg/l添加)で優れた。IBA500mg/lに瞬間浸積後、ホルモンフリ-の低濃度MS培地に植え付けると50%程度の発根率が得られた。セイヨウナシのシュ-ト増殖は1/2MS培地(BA1mg/l添加)で優れた。品種によってはWPM培地でシュ-ト数が増加した。リンゴ茎頂を培地に置床した場合、低温での長期保存は不可能であった。茎頂を寒天培地に埋め込むと、シュ-トの伸長は抑えられたが枯死やシュ-トの水浸化が増加した。リンゴまたはナシ茎頂はアルギン酸Caで包埋後、寒天培地上に置床すると茎頂の生長がみられたがリンゴではシュ-トの多くが水浸化した。数種の果樹の新梢カルスの凍結耐性は、培地の糖の種類や濃度を変化させても増大せず、長期の低温処理はかえって悪影響を及ぼした。リンゴシュ-トの茎頂を低温処理しても凍結後の生存率は高まらなかった。培地へのABAの添加は凍結後の生存を低下させた。リンゴシュ-トから茎頂を採取し、ガラス化させてから凍結したところ凍結後の生存率が高まり-30°C程度の凍結耐性をもった。リンゴプロトプラストの凍結後の生存は、カルス培養液の糖の濃度を上げたりABAを添加すると高まり-30°Cでも高い生存率を示した。果樹茎頂の増殖と長期保存法を確立するため、本研究ではクリ、セイヨウナシの増殖、発根を検討し、その後、数種の果樹を材料として茎頂、組織の低温及び凍結保存方法を検討した。クリ実生の初代培養には1/2-1/4MS培地(BA0.1mg/l添加)が最も優れた。explantとしては側芽が枯死率が低く、シュ-ト伸長が優った。母樹への暗黒処理は枯死褐変の防止や伸長の促進に効果がみられた。シュ-トの伸長は1/4MS培地またはWPM培地(BA0.1mg/l添加)で優れた。Multiple shootの発生はWPM培地(BA1.0mg/l添加)で優れた。IBA500mg/lに瞬間浸積後、ホルモンフリ-の低濃度MS培地に植え付けると50%程度の発根率が得られた。セイヨウナシのシュ-ト増殖は1/2MS培地(BA1mg/l添加)で優れた。品種によってはWPM培地でシュ-ト数が増加した。リンゴ茎頂を培地に置床した場合、低温での長期保存は不可能であった。茎頂を寒天培地に埋め込むと、シュ-トの伸長は抑えられたが枯死やシュ-トの水浸化が増加した。リンゴまたはナシ茎頂はアルギン酸Caで包埋後、寒天培地上に置床すると茎頂の生長がみられたがリンゴではシュ-トの多くが水浸化した。数種の果樹の新梢カルスの凍結耐性は、培地の糖の種類や濃度を変化させても増大せず、長期の低温処理はかえって悪影響を及ぼした。リンゴシュ-トの茎頂を低温処理しても凍結後の生存率は高まらなかった。培地へのABAの添加は凍結後の生存を低下させた。リンゴシュ-トから茎頂を採取し、ガラス化させてから凍結したところ凍結後の生存率が高まり-30°C程度の凍結耐性をもった。リンゴプロトプラストの凍結後の生存は、カルス培養液の糖の濃度を上げたりABAを添加すると高まり-30°Cでも高い生存率を示した。1.果樹茎頂よりのshootの増殖と発根.リンゴ及び西洋ナシ数品種を供試して茎頂からのshoot増殖と伸長について実験を行った.その結果,リンゴではMS培地にBA1ppmを添加した場合,最もshoot増殖が優れ,西洋ナシでは, 1/2MS培地にBA1ppmを添加すると増殖が優れた.西洋ナシでは品種により増殖条件が異なり,ラ・フランスでは1/2MS培地でもshoot先端部の枯死などがみられた.クリ実生では, 1/2MSや1/4MS培地に比較して, WPM培地で培養した場合,最もshootの伸長が優れた.培地に添加するBA濃度を高めるにしたがってshoot増殖も増加したが,同時に茎切断部のカルス形成やshoot先端部の枯化も増加した.クリ成木では培養日数が増すにしたがって枯死する個体が増加し,適切な培養条件を見出すことが出来なかった. | KAKENHI-PROJECT-62480039 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62480039 |
果樹繁殖源explantの維持・増殖に関する研究 | 培養したshootからの発根は,リンゴ,クリとも1/2MS培地に1BAを添加した培地で培養するよりも, 1BAの高濃度液にShoot基部を2,3秒浸漬後,1/2MS基本培地に置床するほうが発根が優れた.発根した個体は比較的容易に駆化させることが出来た.また, Shoot培養回数が増すにつれて,発根が容易になる傾向がみられた.2,茎頂,カルスの凍結保存.In vitroで培養した数種の果樹茎頂及び茎より誘導したカルス組織について,その凍結限界温度や凍結方法について検討した.温度降下速度を制御できる低温器を用いて実験を行ったところ,温度降下速度は1分間に0.5°Cで生存率が最も高くなった.培養したshoot茎頂やカルス組織の凍結耐性はどの果樹でもあまり差はなく, -10°C程度の凍結で多くが枯死した.凍結前の低温処理や培地へのABAの添加は,1,2の例を除いて,凍結耐性を低下させる傾向がみられた.凍結媒液グルコースの添加は凍結耐性を増大させたが, DMSOには凍防御剤としての傾果な認めれなかった.1.In vitroにおけるクリshootの増殖と発根、クリ実生3年生樹に黄化処理を行ったものと無処理樹を供試し、母樹への黄化処理及び培地の種類、培地に添加するサイトカイニンの種類がshootの増殖に及ぼす影響について検討した。WPM培地と1/4濃度のMS培地を比較すると、WPM培地でshootの枯死率が低く、全般的にWPM培地が基本培地として優れる傾向がみられた。母樹に対する黄化処理により、in vitroでのshootの伸長が促進された。サイトカイニンの種類の影響は、黄化処理区においてBA及び2iPの添加でshootの伸長が優れる傾向がみられたが、無処理区ではサイトカイニンの効果に大きな差異は認められなかった。つぎにin vitroで得られたshootの発根について検討した結果、発根処理としてIBA500ppmに5秒間浸漬後、ホルモンフリーのWPM培地に移植することにより比較的高い発根率が得られた。また発根処理後、再びIBA溶液をshoot基部に滴下する処理にも発根率を高める効果が認められた。2.セイヨウナシのshootの増殖、セイヨウナシのshootの増殖と伸長に及ぼす培地のサイトカイニンの種類の影響について検討した。ウィンターネリスではゼアチンでshootの増殖が優れたが、シルバーベル、ラフランスでは4ーPUでshoot数の増加がみられた。shootの伸長はラフランスではゼアチンで優れた。4ーPUでは全ての品種において、shootの伸長が抑えられた培地の寒天濃度はウィンターネリスのshootの増殖、伸長にあまり大きな影響を与えなかったが、shootの増殖は寒天濃度が低いほど優れ、伸長は寒天1%程度で優れる傾向がみられた。3.リンゴのプロトプラストの凍結耐性、凍結媒液へのグルコース、グリセリンの添加は凍結耐性を著しく向上させた。カルス細胞を糖濃度を高めた培養液またはABAを添加した培養液で前培養することによって、分離したプロトプラストの凍結後の生存率が高まった。(1)クリの茎頂や節からMultiple shootを発生させるための条件について検討した。継代培養したクリのシュ-トからのMultiple shootの発生はシュ-トまたは節をBAを1mg/l添加したWPM培地に植え付けると最も促進された。培地のBA濃度を上げたり、BAのかわりにサイトカイニンとして4PUを添加してもシュ-トの増殖は促進されなかった。クリはアルカリ性土壌では生育が劣るため、培地のpHを4と6にしてシュ-トの増殖と生長に及ぼす培地pHの影響を比較したが、培地pHの影響は認められなかった。シュ-トを培地に植え付けた後、培地上に培地と同組成の培養液を加える2相法の効果を検討したが、植え付け後すぐに培養液を加えると、シュ-トの増殖や伸長が阻害された。シュ-トの植え付ける方向を横や逆向きにすると多くのシュ-トが枯死した。 | KAKENHI-PROJECT-62480039 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62480039 |
語彙拡散理論と生物変化理論-英語の史的発達に基づいて | 語彙拡散理論と生物理論の類似性を,英語の史的発達からのデータに基づき,脳の進化と言語変化の共進化の観点から,(1)語義変化,(2)続語変化,(3)音韻変化について考察した。(1)Thesauras of Old English(1995),Roget's International Thesaurus(1995)に基づき,語義変化はある意味領域において,多数の同義語間の競合と選択の結果起こることを実証した。更に人間の認知能力と記憶の限界から,学習する語彙数が限られたものであることが原因であることを明らかにした。また神経ネットワークを用いて,語の出現,追加,削除される動的なシステムの構築を試みた。(2)後期古英語の動詞,目的語,目的語に後続する関係節の語順に基づき,語順変化は,関係節の生成と,認知の困難をひき起こす中央埋め込み文との関連において起こることを実証した。更に人間の脳の前頭葉前部が司る連続的関係が,語順に顕現し,知覚上,記憶上の制約が原因で,ある種の語順が避けられることを明かにした。また神経ネットワークを用いて,中央埋め込み文により生ずる回帰的非整合性が言語の習得に影響を及ぼすことを示した。(3)進化計量法を用いて,知覚的制約と生成的制約に適合しながら,ランダムな状態から母音体系がどのように進化したかを明らかにした。更に語彙共同体での発音の変異,未解決の古英語,中英語の低母音の音価についても予測可能なことを示した。語彙拡散理論と生物理論の類似性を,英語の史的発達からのデータに基づき,脳の進化と言語変化の共進化の観点から,(1)語義変化,(2)続語変化,(3)音韻変化について考察した。(1)Thesauras of Old English(1995),Roget's International Thesaurus(1995)に基づき,語義変化はある意味領域において,多数の同義語間の競合と選択の結果起こることを実証した。更に人間の認知能力と記憶の限界から,学習する語彙数が限られたものであることが原因であることを明らかにした。また神経ネットワークを用いて,語の出現,追加,削除される動的なシステムの構築を試みた。(2)後期古英語の動詞,目的語,目的語に後続する関係節の語順に基づき,語順変化は,関係節の生成と,認知の困難をひき起こす中央埋め込み文との関連において起こることを実証した。更に人間の脳の前頭葉前部が司る連続的関係が,語順に顕現し,知覚上,記憶上の制約が原因で,ある種の語順が避けられることを明かにした。また神経ネットワークを用いて,中央埋め込み文により生ずる回帰的非整合性が言語の習得に影響を及ぼすことを示した。(3)進化計量法を用いて,知覚的制約と生成的制約に適合しながら,ランダムな状態から母音体系がどのように進化したかを明らかにした。更に語彙共同体での発音の変異,未解決の古英語,中英語の低母音の音価についても予測可能なことを示した。語彙拡散理論と生物変化理論の類似性を、脳の進化と言語変化の共合的進化の観点から、1.語義変化、2.統語変化、3.音韻変化を考察した。1.語義変化はある意味領域において、多数の同義語間の競合と選択の結果起こることを実証した。更に人間の認知能力と記憶力の限界から、学習する語彙数が限られたものであることが原因であることを明らかにした。2.語順変化は、関係節の生成と、認知の困難をひき起こす中央埋め込み文との関連においておこることを実証した。更に人間の脳の前頭葉前部が司る連続的関係が、語順に顕現し、知覚上、記憶上の制約が、ある種の語順を避けることに対して、起因することを示唆した。3.進化計量法を用いて、知覚的制約と生成的制約に適合しながら、母音体系がどのように進化したかを明らかにした。更に言語共同体での発音の変異、未解決のOE,MEの低音の音価についても予測可能なことを示した。語彙拡散理論と生物変化理論の類似性を,英語の史的発達からのデータに基づき,脳の進化と言語変化の共進化(brain-language coevolution)の観点から,1.語義変化,2.統語変化,3.音韻変化について考察した。1に関しては,神経ネットワーク(neural network)を用いて,語義表象と概念の単なる関係から,概念と概念の関係を表わす統語法への出現の経路を明らかにした。その過程の中で,全体論的な意味から,語が出現し,語が追加されたり,削除されたりする動的なシステムを構築した。2に関しては,神経ネットワークを用いて,中央埋め込み文により生ずる回帰的非整合性が,言語の習得に直接的に影響を及ぼすことを示した。中央埋め込み文は,記憶という観点からは,理解することが困難なため,必然的に避けられ,これにより語順の出現,発達は決定されることを明らかにした。3に関しては,進化計量法(genetic algorithm)を用いて,音と音の間の知覚的距離を出来るだけ遠くする制約と,発音のし易さという生成的制約に適合しながら,ランダムな状態から,母音体系がどのように出現したかを明らかにした。更にDE,MEの低母音の音価も予測出来ることを示し,体系内に於る低母音の競合という興味深い結果もシミュレーションにより得られた。 | KAKENHI-PROJECT-11610512 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11610512 |
術中脊髄モニタリングにおける新規アラームポイントの策定 | 【目的】2007-2011年に当脊椎脊髄病学会モニタリング委員会により全国多施設調査を施行し、胸椎OPLL手術において麻痺を呈するBr-MEPの臨界点(麻痺を来すポイント)はコントロール波形の85%低下時と報告したが、麻痺を未然に防ぐアラームポイントは未だ議論の余地がある。本研究の目的は、胸椎OPLLの術後麻痺を未然に防ぐアラームポイントを検討することである。【方法】2012-2015年に前向き全国多施設調査を再施行し集積しえた胸椎OPLL86例を対象とした。アンケートの内容は、麻痺を呈した症例の詳細(導出部位・筋数、術前・術後のMMT、モニタリング波形が低下した操作、術後麻痺の期間、術中・術後波形のコピー添付)とした。波形変化はコントロール波形の70%以上低下した時を波形変化ありとし、そのうち術後麻痺なく終えられたものをレスキュー症例、麻痺を呈したものを麻痺症例とした。検討項目は、1:麻痺を呈した症例の波形低下度、2:レスキューしえた症例の波形低下度、3:波形低下とMMT低下の関係を検討した。【結果】全86例中、波形が70%以上低下したのは16例(19%)であり、そのうち12例(14%)で麻痺を認め、4例(5%)でレスキューしえた。残り70例は麻痺を認めなかった。1:麻痺を認めた症例の波形低下度は82-100%の間で低下していた。2:レスキューしえた症例の波形低下度は4例中3例で73-77%の間で低下しており、1例のみ90%低下した。3:波形低下度とMMT低下の関係は弱い相関を示した。(r=0.56)【結語】胸椎後縦靭帯骨化症(OPLL)手術におけるBr-MEPのアラームポイントは80%低下が妥当である。【目的】2007-2011年に当脊椎脊髄病学会モニタリング委員会により全国多施設調査を施行し、胸椎OPLL手術において麻痺を呈するBr-MEPの臨界点(麻痺を来すポイント)はコントロール波形の85%低下時と報告したが、麻痺を未然に防ぐアラームポイントは未だ議論の余地がある。本研究の目的は、胸椎OPLLの術後麻痺を未然に防ぐアラームポイントを検討することである。【方法】2012-2015年に前向き全国多施設調査を再施行し集積しえた胸椎OPLL86例を対象とした。アンケートの内容は、麻痺を呈した症例の詳細(導出部位・筋数、術前・術後のMMT、モニタリング波形が低下した操作、術後麻痺の期間、術中・術後波形のコピー添付)とした。波形変化はコントロール波形の70%以上低下した時を波形変化ありとし、そのうち術後麻痺なく終えられたものをレスキュー症例、麻痺を呈したものを麻痺症例とした。検討項目は、1:麻痺を呈した症例の波形低下度、2:レスキューしえた症例の波形低下度、3:波形低下とMMT低下の関係を検討した。【結果】全86例中、波形が70%以上低下したのは16例(19%)であり、そのうち12例(14%)で麻痺を認め、4例(5%)でレスキューしえた。残り70例は麻痺を認めなかった。1:麻痺を認めた症例の波形低下度は82-100%の間で低下していた。2:レスキューしえた症例の波形低下度は4例中3例で73-77%の間で低下しており、1例のみ90%低下した。3:波形低下度とMMT低下の関係は弱い相関を示した。(r=0.56)【結語】胸椎後縦靭帯骨化症(OPLL)手術におけるBr-MEPのアラームポイントは80%低下が妥当である。 | KAKENHI-PROJECT-15K10399 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K10399 |
カルベンの選択的挿入反応を利用した炭素骨格の新しい合成法 | 昭和63年度、平成元年度の二年間にわたる研究成果は次のとおりである。昭和63年度:(1)ジハロカルベン、フェニルチオカルベン、アルキリデンカルベン等のアルコキシドαC-H結合への位置選択的挿入反応の最適化条件を検討し解明した。(2)カルベン挿入反応において高い位置選択性を示す新たな基質を探索し,エノラ-トアニオン、ニトリルカルバニオン、アルキルリチウム等を見いだした。これらはβ位のC-H結合が活性化され、位置選択的に挿入反応を行うことが明らかとなった。平成元年度:C-H挿入反応の研究を引続き発展させて新たな研究課題を開拓し、次の3つの成果を得た。(3)三員環カルベンの前駆体としてジブロモノルカランとn-ブチルリチウムとか得られるブロモリチウムカルベノイド(1)の反応において、1のみでは反応を起こさない-80°Cの低温においても、t-BuOKを系中に添加すると容易に反応が起こり、溶媒THFのα位にC-H挿入反応が高効率で進行することを見いだした。この反応促進効果は、いわゆるLICKOR試剤と類似の有機金属・t-BuOKとの錯化により1のα脱離促進効果となって現れたものであることを明らかにした。(4)シクロプロパノ-ル誘導体であるヘミアセタ-ルやシアノヒドリンをフリ-カルベンと反応させると、O-H挿入反応は起こらずに、1:1開環付加物であるプロピオン酸誘導体が生成することを見いだした。この新規反応は見かけはOH基の水素がカルベンで引き抜かれて始まる反応のように見えたが、基低一重項、三重項いずれを用いても起こることから、スピン多重度に無関係に起こる機構として、カルベンへの一電子移動に始まる開環付加反応であることを提唱した。(5)2の研究に関連して、酸素原子を含む化合物とフリ-カルベンとの反応におけるオキソニウムイリド中間体の形成とその合成への利用を検討し、環状エ-テルのオキソニウムイリドへの求核剤付加と組み合わせたone-pot反応による三成分連結型合成反応を開発した。昭和63年度、平成元年度の二年間にわたる研究成果は次のとおりである。昭和63年度:(1)ジハロカルベン、フェニルチオカルベン、アルキリデンカルベン等のアルコキシドαC-H結合への位置選択的挿入反応の最適化条件を検討し解明した。(2)カルベン挿入反応において高い位置選択性を示す新たな基質を探索し,エノラ-トアニオン、ニトリルカルバニオン、アルキルリチウム等を見いだした。これらはβ位のC-H結合が活性化され、位置選択的に挿入反応を行うことが明らかとなった。平成元年度:C-H挿入反応の研究を引続き発展させて新たな研究課題を開拓し、次の3つの成果を得た。(3)三員環カルベンの前駆体としてジブロモノルカランとn-ブチルリチウムとか得られるブロモリチウムカルベノイド(1)の反応において、1のみでは反応を起こさない-80°Cの低温においても、t-BuOKを系中に添加すると容易に反応が起こり、溶媒THFのα位にC-H挿入反応が高効率で進行することを見いだした。この反応促進効果は、いわゆるLICKOR試剤と類似の有機金属・t-BuOKとの錯化により1のα脱離促進効果となって現れたものであることを明らかにした。(4)シクロプロパノ-ル誘導体であるヘミアセタ-ルやシアノヒドリンをフリ-カルベンと反応させると、O-H挿入反応は起こらずに、1:1開環付加物であるプロピオン酸誘導体が生成することを見いだした。この新規反応は見かけはOH基の水素がカルベンで引き抜かれて始まる反応のように見えたが、基低一重項、三重項いずれを用いても起こることから、スピン多重度に無関係に起こる機構として、カルベンへの一電子移動に始まる開環付加反応であることを提唱した。(5)2の研究に関連して、酸素原子を含む化合物とフリ-カルベンとの反応におけるオキソニウムイリド中間体の形成とその合成への利用を検討し、環状エ-テルのオキソニウムイリドへの求核剤付加と組み合わせたone-pot反応による三成分連結型合成反応を開発した。(1)ジクロローカルベン、フェニルチオーカルベン、やアルキリデカルベンのアルコキシドαCーH結合への位置選択的挿入反応に関して、反応条件の最適化を図るため、(a)カルベンの発生方法の改良と(b)アルコキシドにおける各種金属イオンの影響、(c)溶媒効果を検討した。(2)プロパルジルメタンスルホン酸とカリウムtertーブトキシドの反応を用いる簡便なビニリデンカルベンの発生法を開発した。プロパルジルメタンスルホン酸は各種のアルデヒドとリチウムアセチリドの反応で得られるプロパルジルアルコールを経由して容易に合成できることから今回開発したビニリデンカルベンの発生法をアルコキシドへの挿入反応と組み合わせることにより、汎用性の高い炭素骨格合成法へと展開することができた。(3)カルベン挿入反応において高い位置選択性を示す新たな基質を探索する目的でエノラートアニオン、ニトリルアニオン、アルキルリチウム等との反応を検討した。この結果、ニトリルアニオンやアルキルリチウムではβ位のCーH結合に位置選択的挿入反応が進行することが明かとなった。 | KAKENHI-PROJECT-63470080 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63470080 |
カルベンの選択的挿入反応を利用した炭素骨格の新しい合成法 | 1.三員環カルベンの前駆体としてジブロモノルカランとnーブチルリチウムとから得られるブロモリチウムカルベノイド(1)の反応において、1のみでは反応を起こさない-80°Cの低温においても、tーBuOKを系中に添加すると容易に反応が起こり、溶媒THFのα位にCーH挿入反応が高効率で進行することを見いだした。この反応促進効果は、いわゆるLICKOR試剤と類似の有機金属・tーBuOKとの錯化により1のα脱離促進効果となって現れたものであることを明らかにした。2.シクロプロパノ-ル誘導体であるヘミアセタ-ルやシアノヒドリンをフリ-カルベンと反応させると、OーH挿入反応は起こらずに、1:1開環付加物であるプロピオン酸誘導体が生成することを見いだした。この新規反応は見かけはOH基の水素がカルベンで引き抜かれて始まる反応のように見えたが、基底一重項、三重項いずれを用いても起こることから、スピン多重度に無関係に起こる機構として、カルベンへの一電子移動に始まる開環付加反応であることを提唱した。3.2の研究に関連して、酸素原子を含む化合物とフリ-カルベンとの反応におけるオキソニウムイリド中間体の形成とその合成への利用を検討し、環状エ-テルのオキソニウムイリドへの求核剤付加と組み合わせたone-pot反応による三成分連結型合成反応を開発した。 | KAKENHI-PROJECT-63470080 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63470080 |
ATP合成酵素の分子構築における遺伝子制御の分子シンクロナイゼイション機構 | 申請者らは,ATP合成酵素のサブユニットの転写レベルにおける制御システムを明らかにするため,Fo,stalkに属するサブユニット7種とF1のβsubunit,そして活性制御因子であるIF1(ATPase inhibitor protein)の全9種について転写物量の解析を行った.その結果,これら9種のサブユニットのmRNAは大部分心臓において最も多く発現しているが,これらmRNAの分子モル比は,脳・肝臓・心臓・腎臓の4種の臓器において全く同一の割合で発現されていることが初めて明かとなった.また,この発現パターンは,290週齢ラットにおいても一定に保持されていることが明らかとなった.これらの結果から,ATP合成酵素サブユニットを一定の割合で発現するための,転写レベルでの分子シンクロナイゼイションシステム"ジーンシンクロナイザー"の存在が強く示唆された.さらに,本研究では,心筋細胞においてミトコンドリアが異常に増殖しているJVS(juvenile visceral steatosis)マウスを用いて,蛍光Differential Display(DD)法によりJVSマウスと正常マウスで発現しているmRNAの差を解析した.その結果,現段階でミトコンドリアの増殖に関与する可能性のある新規遺伝子を6種得ることに成功した.これらの因子がミトコンドリアにどのような影響を及ぼすかを調べるために,ミトコンドリア輸送ペプチドを融合させた蛍光タンパク発現ベクターを培養細胞中にトランスフェクトして,生細胞中におけるミトコンドリアの動態変化をタイムラプスデコンボリューションCCD蛍光顕微鏡下で直接観察する実験系を確立させた.現在,この実験系を用いてDD法によって得られた遺伝子の機能の解析を行なっている.申請者らは、ATP合成酵素のサブユニットの各mRNA量の絶対量を測定する方法を開発し、FischerラットF344/DuCrjの種々の組織におけるATP合成酵素のサブユニット9種(サブユニットb,c(P1),c(P2),d,e,F6,IF1,OSCP,beta-subunit)のmRNA量の絶対量を定量した。その結果、大部分のサブユニットは、心臓で最も多く発現し、ついで、腎臓で多く、脳と肝臓では少ないという組織特異性を示した。このように、各サブユニットのmRNA量は組織で大きく異なるにもかかわらず、驚いたことに、それらの発現量をモル%で表すと、いずれの組織でも各サブユニットのmRNAは一定の化学量論比からなる発現パターンを示すことが明らかとなった。また、この発現パターンは、週齢差によっても変動しないことを明らかにした。この事実は、各サブユニットの遺伝子発現が、シンクロナイズして起こっていることを示しており、これらを制御するシンクロナイザーの存在が強く示唆された。また、この分子シンクロナイゼイション機構(装置)は、調べた全ての組織にあること、そして週齢差によっても変動しないことをはじめて明らかにした。さらに、本研究では、心筋細胞においてミトコンドリアが異常に増殖しているJVS(juvenile visceral steatosis)マウスを用いて、転写レベルにおけるATP合成酵素サブユニットの発現量の解析を行うと共に、蛍光Differential Display法により、ミトコンドリアの増殖を制御している因子の解析を行った。その結果、ミトコンドリア増殖の制御機構への関与が期待される15種のcDNAを得ることに成功しており、現在、それらの遺伝子の全構造の決定と機能の解析を行なっている。申請者らは,ATP合成酵素のサブユニットの転写レベルにおける制御システムを明らかにするため,Fo,stalkに属するサブユニット7種とF1のβsubunit,そして活性制御因子であるIF1(ATPase inhibitor protein)の全9種について転写物量の解析を行った.その結果,これら9種のサブユニットのmRNAは大部分心臓において最も多く発現しているが,これらmRNAの分子モル比は,脳・肝臓・心臓・腎臓の4種の臓器において全く同一の割合で発現されていることが初めて明かとなった.また,この発現パターンは,290週齢ラットにおいても一定に保持されていることが明らかとなった.これらの結果から,ATP合成酵素サブユニットを一定の割合で発現するための,転写レベルでの分子シンクロナイゼイションシステム"ジーンシンクロナイザー"の存在が強く示唆された.さらに,本研究では,心筋細胞においてミトコンドリアが異常に増殖しているJVS(juvenile visceral steatosis)マウスを用いて,蛍光Differential Display(DD)法によりJVSマウスと正常マウスで発現しているmRNAの差を解析した.その結果,現段階でミトコンドリアの増殖に関与する可能性のある新規遺伝子を6種得ることに成功した.これらの因子がミトコンドリアにどのような影響を及ぼすかを調べるために,ミトコンドリア輸送ペプチドを融合させた蛍光タンパク発現ベクターを培養細胞中にトランスフェクトして,生細胞中におけるミトコンドリアの動態変化をタイムラプスデコンボリューションCCD蛍光顕微鏡下で直接観察する実験系を確立させた.現在,この実験系を用いてDD法によって得られた遺伝子の機能の解析を行なっている. | KAKENHI-PROJECT-11167259 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11167259 |
個室型高齢者住居施設の空間構成に関する環境行動的研究 | 前年度に引き続き、個室型特別養護老人ホームを対象として、以下のような調査・分析を行った。1.個室内部の使われ方調査......各個室の図面採取調査や居住者への面接インタビュー調査などから、個室の使われ方や個室での生活行為、個室内での他者との交流および居住者の開口部に対する意識を分析し、各居住者にとっての個室の機能・意味を捉える。2.共用空間の行動調査......共用空間の観察調査や地図上へのプロット調査から、共用空間で展開されるさまざまな行動・行為や交流・集まりの様子を分析することによって、居住者にとっての各共用空間の意味とその空間構成との対応関係を捉える。3.個人の生活場面展開......居住者個人の生活を経時的に追跡調査し、施設空間に展開される生活場面を捉え、時間軸上でその様態の変化を探っていくことで、居住者が環境に馴染んでいく際の空間の意味・役割を分析する。以上の調査を行い、入居者の環境との関わり方を時間軸上の変化として捉え、入居者の生活に影響を与える環境要素について分析を行った。共用空間に多様な場所があることによって、入居者は自分なりに場所を選択し、そこにさまざまな意味付けを行っており、その結果、入居者が一人一人が独自の生活を展開し多様な生活類型が見出された。近年開設した個室型特別養護老人ホームを対象として、以下のような調査・分析を行った。1.個室内部の使われ方調査......各個室の図面採取調査や居住者への面接インタビュー調査などから、個室の使われ方や個室での生活行為、個室内での他者との交流および居住者の開口部に対する意識を分析し、各居住者にとっての個室の機能・意味を捉える。2.共用空間の行動調査......共用空間の観察調査や地図上へのプロット調査から、共用空間で展開されるさまざまな行動・行為や交流・集まりの様子を分析することによって、居住者にとっての各共用空間の意味とその空間構成との対応関係を捉える。3.個人の生活場面展開の作成......居住者個人の一日の生活を追跡調査し、時間軸上で生活場面の展開の仕方を追っていくことで、個人の生活を支える(あるいは規制する)施設の環境要素を抽出する。以上の調査を継続的に行うことにより、入居者の環境との関わり方を時間軸上の変化として捉え、入居者の生活に影響を与える環境要素について分析を行った。前年度に引き続き、個室型特別養護老人ホームを対象として、以下のような調査・分析を行った。1.個室内部の使われ方調査......各個室の図面採取調査や居住者への面接インタビュー調査などから、個室の使われ方や個室での生活行為、個室内での他者との交流および居住者の開口部に対する意識を分析し、各居住者にとっての個室の機能・意味を捉える。2.共用空間の行動調査......共用空間の観察調査や地図上へのプロット調査から、共用空間で展開されるさまざまな行動・行為や交流・集まりの様子を分析することによって、居住者にとっての各共用空間の意味とその空間構成との対応関係を捉える。3.個人の生活場面展開......居住者個人の生活を経時的に追跡調査し、施設空間に展開される生活場面を捉え、時間軸上でその様態の変化を探っていくことで、居住者が環境に馴染んでいく際の空間の意味・役割を分析する。以上の調査を行い、入居者の環境との関わり方を時間軸上の変化として捉え、入居者の生活に影響を与える環境要素について分析を行った。共用空間に多様な場所があることによって、入居者は自分なりに場所を選択し、そこにさまざまな意味付けを行っており、その結果、入居者が一人一人が独自の生活を展開し多様な生活類型が見出された。 | KAKENHI-PROJECT-08650728 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08650728 |
光触媒を反応場とする生理活性フェノール類の高感度計測システムの開発 | 微量成分を効率的に誘導体化するための光触媒酸化反応装置の開発と,本装置を利用した生理活性フェノール類の高感度・高選択的誘導体化分析システムの開発を目的に,本年度は以下の検討を行った。1.生体試料中インドールアミン類分析システムの開発前年度に作製した誘導体化分析用光触媒酸化反応装置を用いて,生理活性インドールアミン類(セロトニン及びその関連化合物)の分析システムを開発した。本システムにおいて,逆相HPLCにより分離されたインドールアミン類は,ベンジルアミンと混合後,アルカリ性条件下,光触媒反応カラム中で酸化反応することで460480nm付近に蛍光極大を持つ誘導体へと変換され高感度検出された。また,本システムを血清試料及び尿試料分析に適用することで,選択性と感度に優れるという本システムの有用性を実証することができた。2.生体試料中カテコールアミン類分析システムの開発前項にて開発した分析システムを用い,カテコールアミン類の分析システムを開発した。試薬にベンジルアミンを用いた場合,ノルエピネフリンなど一部のカテコールアミン類のみ誘導体化された。これに対し,DPEを用いた場合,検討した全てのカテコールアミン類が蛍光誘導体化され,60分以内に分離・検出された。また,光照謝を行わない場合は誘導体化反応が進行せず,カテコールアミン類のピークは検出されなかった。本研究によりカテコールアミン類に対して選択性の高い分析法を構築することができた。微量成分を効率的に誘導体化するための光触媒酸化反応装置の開発と,本装置を利用した生理活性フェノール類の高感度・高選択的誘導体化分析システムの開発を目的に,研究初年度は以下の検討を行った。1.誘導体化分析用光触媒酸化反応装置の開発光触媒酸化反応用の装置として,直径0.1mmのガラスビーズの表面を酸化チタンで被覆し,透明なテフロンチューブ内に充填した光触媒反応カラムを作製した。本カラムは安価かつ再現性良く作製でき,容易に交換が可能であった。この反応カラムに紫外光を照射することでHPLCからの溶出液を連続的に光触媒酸化反応させることが可能となった。2.食品,サプリメント,機能性食品中ポリフェノール類分析システムの開発前項にて開発した光触媒酸化反応装置をHPLCに組み込んだポリフェノール分析システムを開発した。本システムにおいて,逆相HPLCにより分離されたポリフェノール類は,4-アミノアンチピリンと混合後,アルカリ性条件下,光触媒反応カラム中で酸化的カップリング反応することで約460nmに吸収極大を持つ誘導体へと変換された。本システムを用い,カテキン類の分析を行ったところ,検討した5種のカテキン類はいずれも35分以内に分離・検出された。本システムにおいて,光照射を行わない場合は誘導体化反応が進行せず,カテキン類のピークは検出されなかった。また,カフェインなどの爽雑物を多量に含んだ試料を分析した際にもカテキン類のみが選択的に検出された。飲料(茶,ワイン)や血清試料などの実試料分析についても適用することで本システムの有用性を実証することができた。微量成分を効率的に誘導体化するための光触媒酸化反応装置の開発と,本装置を利用した生理活性フェノール類の高感度・高選択的誘導体化分析システムの開発を目的に,本年度は以下の検討を行った。1.生体試料中インドールアミン類分析システムの開発前年度に作製した誘導体化分析用光触媒酸化反応装置を用いて,生理活性インドールアミン類(セロトニン及びその関連化合物)の分析システムを開発した。本システムにおいて,逆相HPLCにより分離されたインドールアミン類は,ベンジルアミンと混合後,アルカリ性条件下,光触媒反応カラム中で酸化反応することで460480nm付近に蛍光極大を持つ誘導体へと変換され高感度検出された。また,本システムを血清試料及び尿試料分析に適用することで,選択性と感度に優れるという本システムの有用性を実証することができた。2.生体試料中カテコールアミン類分析システムの開発前項にて開発した分析システムを用い,カテコールアミン類の分析システムを開発した。試薬にベンジルアミンを用いた場合,ノルエピネフリンなど一部のカテコールアミン類のみ誘導体化された。これに対し,DPEを用いた場合,検討した全てのカテコールアミン類が蛍光誘導体化され,60分以内に分離・検出された。また,光照謝を行わない場合は誘導体化反応が進行せず,カテコールアミン類のピークは検出されなかった。本研究によりカテコールアミン類に対して選択性の高い分析法を構築することができた。 | KAKENHI-PROJECT-18750068 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18750068 |
ライシテ(非宗教性)と宗教の公共性-ーフランス、ケベック、日本を事例として | 本研究では、フランスの歴史のなかで宗教が果たしてきた公共的役割を再検討した。また、日本の政教関係史をライシテの観点から読み直すとともに、ケベックの間文化主義の生成をその歴史のなかに位置づける課題に取り組んだ。その結果、特に明らかにすることができたのは、ライシテにしばしば分離と管理の両義的な側面があるということである。また、ライシテと宗教の関係は記憶というテーマとも深いかかわりをもつことについての見通しを得ることができた。本研究は、近代の政教関係を再検討し、「ライシテ」(非宗教性、政教分離、世俗主義)を、共生社会の原理として再構成することを目指すものである。そのために、フランス、ケベック、日本をフィールドとしながら、ライシテという政教構造における宗教の公共性の諸相を具体的にとらえる課題に取り組んできた。なお、その際には、フランスやケベックの事象は日本語で、日本の事象は外国語で発信することを心がけている。本年度は、ライシテと宗教の公共性をとらえるための理論的アプローチとして、19世紀フランスにおける思想家(コント、トクヴィル、デュルケム)の宗教論をルソーの「市民宗教」の系譜に位置づけた。また、シャルル・モーラスの宗教的ナショナリズムの思想構造を明らかにした。一方、パリで行なわれた国際シンポジウム「単数のライシテ、複数のライシテー変貌と新たな課題」において、近年の日本の宗教の公共性について「ライシテ」の観点から論じる発表を行なった。また、国際日本文化研究センターでのシンポジウム「宗教と公共性ー神道と宗教復興から」や、神道宗教学会シンポジウム「国際比較の中の「神道」と「国家」」での発表を通し、ライシテに基づく公共空間にいかなる排除の論理がはたらいているのか、またライシテにおける自由主義的な分離の原則が対イスラームとの関係においてはしばしば管理の論理として発現する様子が見えてきた。これらについては論文にまとめる作業を進めている。本研究は、近代の政教関係を再検討し、ライシテ(非宗教性、政教分離、世俗主義)を共生社会の原理として再構成することを目指すもので、ライシテという政教構造における宗教の公共性について検討するものである。平成26年度は、ケベックでの調査を通して記憶の再構成のあり方を探り、フランスの宗教の変化を公共空間の変貌と絡めて把握し、日本の政教分離と多文化共生をライシテの観点から検討することを目指していた。ケベックでは、フェルナン・デュモンの『記憶の未来』をナショナリズムと間文化主義の観点から検討する調査を行ない、その成果を韓国ケベック学会で発表した。また、ケベックの文化的アイデンティティの変化について論じたものが、共著として刊行された。フランスの宗教の変化と公共空間の変貌に関しては、19世紀文学に関する共著で思想と宗教に関する論考を発表する一方で、イスラームの制度化とその諸問題を扱う論文を発表した。また、訳書として、ナタリ・リュカ『セクトの宗教社会学』を刊行した。とりわけ、厳格な政教分離と呼ばれるフランスのライシテに、宗教を管理統制する面があることがはっきりしてきた。この点についての論文および書籍を現在準備中である。日本の政教分離と多文化共生をライシテの観点から検討することに関しては、東京およびパリで行なわれた渋沢・クローデル賞30周年記念シンポジウム、ストラスブール日仏大学会館でそれぞれ発表を行なったほか、2本の仏語論文を執筆した。うち1本はフランス語での共著として刊行された。本研究は、近代の政教関係を再検討し、ライシテ(非宗教性、政教分離、世俗主義)を共生社会の原理として再構成することを目指すもので、ライシテという政教構造における宗教の公共性について検討するものである。最終年度である平成27年度は、前年までの研究成果を踏まえてアウトプットに力点を置き、国内外の学会や研究会で積極的に発表しつつ論文を執筆することを目指していた。フランスのライシテに関しては、(1)共編著『共和国か宗教か、それとも』を刊行し、ジャン・ジョレスのライシテ理解の特徴を明らかにした。(2)19世紀のライシテと現在のライシテを比較する英語論文を執筆した。(3)フランスにおける「承認のライシテ」とその両義性についての論考を共著『他者論的転回』に寄稿した。(4)「イスラームはいつ、いかにひてフランスの宗教になったのか」を論じた。ケベックのライシテに関しては、フェルナン・デュモンの『記憶の未来』が後続世代にどのように読まれているのかについて、フランス語論文を執筆した。日本については、国際宗教学宗教史会議(IAHR)にて、戦後日本の政治と宗教の関係に関する発表を行なった。研究期間全体を通じては、次の3つの課題に取り組んだ。(1)フランスの歴史のなかで宗教が果たしてきた公共的役割を見直し、社会空間における「宗教」の位置づけを理論的観点からも考察する。(2)ケベックのライシテを特徴づける間文化主義(インターカルチュラリズム)という社会統合理念の理解を深める。(3)日本のライシテの特徴をフランスやケベックと比較する。それぞれの課題につき、一定の成果を挙げることができたと考えているが、昨今の世界情勢を踏まえながら、上記の3つをどのように関連させて全体像を描き直すのかという新たな課題も見えてきている。本研究では、フランスの歴史のなかで宗教が果たしてきた公共的役割を再検討した。また、日本の政教関係史をライシテの観点から読み直すとともに、ケベックの間文化主義の生成をその歴史のなかに位置づける課題に取り組んだ。 | KAKENHI-PROJECT-25770022 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25770022 |
ライシテ(非宗教性)と宗教の公共性-ーフランス、ケベック、日本を事例として | その結果、特に明らかにすることができたのは、ライシテにしばしば分離と管理の両義的な側面があるということである。また、ライシテと宗教の関係は記憶というテーマとも深いかかわりをもつことについての見通しを得ることができた。特にフランスの社会空間のなかでの「宗教」の位置づけが見えてきたこと、日本の政教関係についての研究成果でフランス語で発表できたことが大きいと考えている。人文学(宗教学、フランス語圏地域研究)本研究では、公教育における「宗教」の位置づけにも注目しているが、むしろ政教関係が当該社会の記憶と大きく関わる問題であることが見えてきた。フランス、ケベック、日本の事例についての研究をそれぞれ進めているが、それらを比較の観点から適切に位置づけることができるような方途を探っていきたい。特に研究の妨げとなるようなことはなく、おおむね順調に進展していると考えている。本年度の研究課題の遂行を通して、ライシテが提起する問題は、当該社会(フランス、ケベック、日本)の集合的記憶やアイデンティティの関連においてとらえていくことが必要であるという視座が開けてきた。今後の研究においては、この点を今まで以上に意識しながら、フランス、ケベック、日本のライシテ研究をさらに深めていく予定である。 | KAKENHI-PROJECT-25770022 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25770022 |
微小脳における色知覚機構とその進化 | 色覚の基盤にある神経機構について、チョウ類の色覚系を対象にして実験的研究を行った。種をこえた比較研究から、(1)視細胞分光感度には往々にして顕著な性差があること、(2)個眼の階層構造の程度は多様であることが分った。アゲハ類での解析からは、(3)蜜源に着地する際にはターゲットと背景のつくるエッジが重要で、そのエッジは明度コントラストで知覚していること、(4)単一個眼に由来する視細胞同士が視葉板で抑制的に結合しているらしいことが分った。色覚の基盤にある神経機構について、チョウ類の色覚系を対象にして実験的研究を行った。種をこえた比較研究から、(1)視細胞分光感度には往々にして顕著な性差があること、(2)個眼の階層構造の程度は多様であることが分った。アゲハ類での解析からは、(3)蜜源に着地する際にはターゲットと背景のつくるエッジが重要で、そのエッジは明度コントラストで知覚していること、(4)単一個眼に由来する視細胞同士が視葉板で抑制的に結合しているらしいことが分った。21年度は、以下の諸点について実験的研究を行った。チョウ類色覚系の進化学的解析:原始的なアゲハチョウとされるウスバシロチョウ(Parnassius glacialis)複眼から4種の視物質オプシンmRNAを(PgUY,PgB,PgL2,PgL3)を同定した。個眼構造を組織学的に解明すると同時に、4種のオプシンmRNAを発現する視細胞を確定した。PgL3は腹側にのみ発現していた。ウスバシロチョウ複眼では背側部分が他目の昆虫種とも共通する"祖先的な"オプシン分布を示すのに対し、腹側部分ではPgUVとPgBの重複発現やPgL2とPgL3の相補的発現など、他には見られない極めて複雑な分布パターンが認められた。この多様化はウスバシロチョウ亜科の分岐後に起きたものと考えられる。さらにこれまでに視物質の発現パターンの解析を終えていたシロチョウ科モンキチョウ(Colias erate)について、視細胞分光感度を電気生理学的に調べた。結果、少なくとも6種類の感度が得られた視葉ニューロン群の解剖学的解析:視葉から脳への出力を、視葉各所への色素注入によって検索した。また、視葉板における視覚二次ニューロン(LMC)の多様性を解析するため、各種神経伝達物質候補物質に対する抗体を用いた免疫組織化学を行なった。抗チラミン標識で、LMCが染め分けられる可能性のあることが分かった。視葉板におけるパッチ電極法の確立:視葉板からの記録は得られるが、記録の安定性には未だ問題が残されている。さらに改良の余地がある。22年度は、以下の諸点について実験的研究を行った。チョウ類色覚系の進化学的解析:アゲハチョウ科から、キアゲハ、アオスジアゲハ、アサギタイマイ、ジャコウアゲハ、ベニモンアゲハ、ホシボシアゲハ、ギフチョウ、ヒメギフチョウ、ホソオチョウ、カバシタアゲハ、シロチョウ科から、キチョウ、ヒメシロチョウ、ツマキチョウについてオプシンmRNAを同定した。アゲハチョウ科では長波長受容型オプシンが24種類に重複していること、ヒメシロチョウLeptidea amurensis(マルバネシロチョウ亜科)を除くシロチョウ類では青受容型オプシンが重複していることがわかった。ヒメシロチョウ複眼はいくつかの点で他種との違いが著しい。そのひとつが個眼面サイズのバラツキで、この傾向は雄で特に顕著である。今年度は複眼の内部構造を詳細に調べ、サイズ分布が二峰性であること、感桿構造によって個眼は3タイプに分けられること、タイプ1個眼のレンズが大きいことなどが分かった。視葉ニュ-ロン群の解剖学的解析:昨年度に引き続き、視葉から脳への出力を、視葉各所への色素注入によって検索した。また、視葉板における視覚二次ニューロン(LMC)の多様性を解析するため、ガラス微小電極あるいはパッチ電極を用いてLMCの過分極性応答を記録、その後色素を注入してLMCの形態を調べる実験を行った。いくつかの染色像を得ることができたが、軸索の細さゆえに成功率は概して低い。そこで、より確実な方法として、顕微鏡に微分干渉用のコンデンサーを導入、視認下でLMC細胞体の記録・色素注入を行う試みを始めた。チョウ類色覚系の進化学的解析:これまでに4種のオプシン(CeUV, CeV1, CeV2, CeL)が同定されていたモンキチョウの複眼に、新たに青受容型オプシンCeBを発見した。CeBはCeV1とCeV2と共に、タイプ2個眼の視細胞2個に共発現していた。発現パターンに性差はなかった。一方、モンキチョウ複眼からは4種の青受容細胞の感度が記録されており、内2種が♂、2種は♀特異的で、この生理機構は不明だった。CeBの発見と合わせ、蛍光フィルター色素の分布に性差があることも発見、これらの情報を総合することで、青受容細胞の生成機構が完全に理解できた。モンキチョウでは赤受容細胞にも著しい多様性がある。全部で6種のうち3種が♂、3種が♀特異的である。♂♀とも、赤受容細胞には緑受容型のCeLが発現しており、赤感受性は感桿周囲の赤色素のフィルター効果による。 | KAKENHI-PROJECT-21247009 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21247009 |
微小脳における色知覚機構とその進化 | 性差は、♀のタイプ2個眼の赤色素の吸収が他よりも50 nm程短波長にシフトしたものであることで説明できた。CeBの発見、蛍光色素と赤色素の性差の発見は当初の予想を大きく覆すもので、モンキチョウ複眼の細胞構成を明確に記述する成果に繋がった。予想以上の成果が得られた。行動学的解析:ある色の円板で蜜を得ることを学習したアゲハは、円板を探索して発見し、着地しようとする。円板と背景の明度コントラストが十分であるときは着地して蜜を吸おうとするが、明度コントラストが十分でないと円板に接近はするものの実際に着地することはできないことが分かった。明度コントラストの受容には、色覚と同じく、紫外・青・緑・赤の受容細胞が関与しているらしい。また、アゲハは求蜜に際し、偏光の振動面を識別することも分った。振動面の異なる偏光をどのように識別しているかを行動実験で詳細に調べたところ、明るさの違いとして認識していることが分った。チョウ類色覚系の進化学的解析:ウスバシロチョウと個眼構造とオプシン分布を精査した結果、個眼の重層構造(遠位層と近位層に分かれた構造)が他のアゲハチョウ科やシロチョウ科のチョウ類とは異なっていることが分った。すなわち、重層構造自体は存在するが、他種では遠位層に動きや形の知覚に特化していると見られる緑受容細胞システムがあるのに対し、ウスバシロチョウではこのシステムが無い。対応する視細胞には緑感受性と赤感受性のものがまざっており、しかも遠位層ではなくて近位層にある。他種では近位層は色覚に特化していると見られることから、ウスバシロチョウは動きや形の知覚よりも色覚により重きをおいた視覚系を持っていることが推察された。個眼の重層構造をショウジョウバエ、ミツバチなどとも比較検討し、その進化過程を推測した。視葉ニューロン群の解剖学的解析:視覚第一次中枢(視葉板)を中心に、神経伝達物質の同定を目指して免疫組織学的研究を継続して行った。昨年は、視覚2次ニューロンの大単極細胞(Large Monopolar Cell, LMC)にチラミン陽性のものが見つかり、今年は更にGABA陽性のLMCが見つかった。染色されたLMCの分布と数から推測すると、視葉板の各カートリッジにはチラミン陽性とGABA陽性のLMCがそれぞれ1つずつ含まれているらしい。LMCの生理的機能を解明する上で、重要な発見である。この研究は、脳機能の構築原理を解明する試みの一環として位置づけている。具体的にはチョウ類の色覚系を対象とし、チョウ類における色覚系の進化過程を探ることと、アゲハ色覚の神経メカニズムを神経行動学的に詳細に調べることに焦点を当てている。進化過程の研究では、アゲハ以外のチョウ類複眼を対象に、オプシンmRNA及び発現視細胞の同定、複眼構造の生理光学的解析、分光感度生成機構の種間比較を行なうこととしており、これまでにアゲハチョウ科10種、シロチョウ科5種のオプシンを同定し、とくにモンキチョウについては複眼細胞構成の詳細を明らかにした。上述の新発見もあって、複眼進化過程の解明に大きく一歩近づいたと言える。アゲハにおける神経メカニズムの研究では、色覚機能の行動学的解析、視葉板における波長情報処理機構の解析、色覚情報処理経路の解剖学的解析を行うこととしており、これまでに中枢の解剖学的解析と視葉板での細胞内記録法の確立をほぼ終え、今年は行動学的研究としてターゲットへの着地に4種の視細胞がつくる明度コントラストが重要であることを示すことができた。 | KAKENHI-PROJECT-21247009 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21247009 |
腫瘍神経細胞が無秩序に動き始める転移能獲得のメカニズム | 発生期に産み出された網膜神経細胞は、正しい場所へと配置され、秩序だった奇麗な層構造を形成する。網膜の小児がんである網膜芽細胞腫では、網膜細胞が増殖を繰り返した後に、特定の細胞層(一般的には内顆粒層)から脱して転移するが、無秩序に移動する能力の獲得メカニズム、すなわち、悪性化メカニズムはほとんど明らかにされていない。最近の研究によって、1)マウスRb-/-; p107+/-; p130-/-網膜では、分化した網膜水平細胞(抑制性神経細胞の1つ)が脱分化せずに増殖を繰り返し、その後、水平細胞に特徴的な性質を失って転移すること、2)発症初期に異なるタイプの網膜細胞が増殖しても、悪性化した網膜芽細胞腫は、未分化前駆細胞や特定の網膜神経細胞タイプの遺伝子発現様式を合わせ持つ「ハイブリッド型網膜細胞」になること、3)悪性化したヒト網膜芽細胞腫では、RB以外のゲノム変異はほとんど起きていないことが明らかになってきた。すなわち、網膜芽細胞腫の悪性化には、ゲノムレベルではなく、エピジェネティックな作用による「ハイブリッド型網膜細胞」への形質変化が重要だと考えられる。昨年度までの研究で、Wntシグナルの異常と形質変化との関連が示唆されたことから、本年度は、Rbファミリー欠損でプロモーター領域のヒストン修飾様式が変化する、Wntシグナル関連因子をスクリーニングした。その結果、Rbファミリーを欠損すると、癌転移と遺伝子発現上昇が相関することが知られているWntシグナル関連転写因子の遺伝子発現量が増加し、そのプロモーター領域のヒストンH3の4番目のリジン残基(H3K4)のトリメチル化が促進されていることが明らかとなった。H3K4のトリメチル化と遺伝子発現促進が相関していることが知られており、今後は、形質変化におけるその転写因子の役割と、Rbファミリーによる遺伝子発現調節機構の解明を進めて行く。24年度が最終年度であるため、記入しない。24年度が最終年度であるため、記入しない。発生期に産み出された網膜神経細胞は、正しい場所へと配置され、秩序だった奇麗な層構造を形成する。網膜の小児がんである網膜芽細胞腫では、網膜細胞が増殖を繰り返した後に、特定の細胞層(一般的には内顆粒層)から脱して転移するが、無秩序に移動する能力の獲得メカニズム、すなわち、悪性化メカニズムはほとんど明らかにされていない。最近の研究によって、1)マウスRb-/-;p107+/-:p130-/-網膜では、分化した網膜水平細胞(抑制性神経細胞の1つ)が脱分化せずに増殖を繰り返し、その後、水平細胞に特徴的な性質を失って転移すること、2)発症初期に異なるタイプの網膜細胞が増殖しても、悪性化した網膜芽細胞腫は、未分化前駆細胞や特定の網膜神経細胞タイプの遺伝子発現様式を合わせ持つ「ハイブリッド型網膜細胞」になること、3)悪性化したヒト網膜芽細胞腫では、RB以外のゲノム変異はほとんど起きていないことが明らかになってきた。すなわち、網膜芽細胞腫の悪性化には、ゲノムレベルではなく、エピジェネティックな作用による「ハイブリッド型網膜細胞」への形質変化が重要だと考えられる。本年度は、エピジェネティックにRB依存的転写調節を担うクロマチンリモデリング因子BRG1に着目し、網膜特異的Brg1欠損マウスを解析した。Brg1欠損網膜では顕著な細胞増殖異常はなく、層構造の破綻が認められた。また、その層構造破綻を引き起こす候補遺伝子として、Wntシグナルを阻害するWif1が同定された。一部のヒト網膜芽細胞腫ではWIF1を過剰発現し、その細胞群ではWIF1を高発現しているにも関わらず、Wnt及びN-cadherinシグナルも同時に活性化する表現型を示した。今後、1)WIF1の過剰発現が細胞極性および接着の異常へと導く、2)WIF1の過剰発現が悪性化の引き金になるという仮説を立て、検証する予定である。発生期に産み出された網膜神経細胞は、正しい場所へと配置され、秩序だった奇麗な層構造を形成する。網膜の小児がんである網膜芽細胞腫では、網膜細胞が増殖を繰り返した後に、特定の細胞層(一般的には内顆粒層)から脱して転移するが、無秩序に移動する能力の獲得メカニズム、すなわち、悪性化メカニズムはほとんど明らかにされていない。最近の研究によって、1)マウスRb-/-; p107+/-; p130-/-網膜では、分化した網膜水平細胞(抑制性神経細胞の1つ)が脱分化せずに増殖を繰り返し、その後、水平細胞に特徴的な性質を失って転移すること、2)発症初期に異なるタイプの網膜細胞が増殖しても、悪性化した網膜芽細胞腫は、未分化前駆細胞や特定の網膜神経細胞タイプの遺伝子発現様式を合わせ持つ「ハイブリッド型網膜細胞」になること、3)悪性化したヒト網膜芽細胞腫では、RB以外のゲノム変異はほとんど起きていないことが明らかになってきた。すなわち、網膜芽細胞腫の悪性化には、ゲノムレベルではなく、エピジェネティックな作用による「ハイブリッド型網膜細胞」への形質変化が重要だと考えられる。昨年度までの研究で、Wntシグナルの異常と形質変化との関連が示唆されたことから、本年度は、Rbファミリー欠損でプロモーター領域のヒストン修飾様式が変化する、Wntシグナル関連因子をスクリーニングした。 | KAKENHI-PUBLICLY-23111507 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-23111507 |
腫瘍神経細胞が無秩序に動き始める転移能獲得のメカニズム | その結果、Rbファミリーを欠損すると、癌転移と遺伝子発現上昇が相関することが知られているWntシグナル関連転写因子の遺伝子発現量が増加し、そのプロモーター領域のヒストンH3の4番目のリジン残基(H3K4)のトリメチル化が促進されていることが明らかとなった。H3K4のトリメチル化と遺伝子発現促進が相関していることが知られており、今後は、形質変化におけるその転写因子の役割と、Rbファミリーによる遺伝子発現調節機構の解明を進めて行く。24年度が最終年度であるため、記入しない。網膜芽細胞腫の転移に重要な候補遺伝子を同定したため24年度が最終年度であるため、記入しない。本年度は、予定通り、転移過程における水平細胞自身の性質変化を明らかにする。 | KAKENHI-PUBLICLY-23111507 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-23111507 |
非凸性に基づく統計モデリングと収束保証付き推定アルゴリズム | 本研究の目的は,実データの諸問題に対応しようとすると自然と現れる非凸性に基づく統計モデリングを対象とし,そのパラメータ推定のための非凸最適化アルゴリズムに対して,収束保証を与えることである.既存の非凸最適化アルゴリズムの,理論的な適用範囲を拡張を行うだけでなく,統計モデリングの段階でアルゴリズムと親和性の高いモデリングを考えることで,統計モデリングと最適化両者の良さを打ち消すことなくデータ解析を行う統計モデリングを可能にしたい.本研究の目的は,実データの諸問題に対応しようとすると自然と現れる非凸性に基づく統計モデリングを対象とし,そのパラメータ推定のための非凸最適化アルゴリズムに対して,収束保証を与えることである.既存の非凸最適化アルゴリズムの,理論的な適用範囲を拡張を行うだけでなく,統計モデリングの段階でアルゴリズムと親和性の高いモデリングを考えることで,統計モデリングと最適化両者の良さを打ち消すことなくデータ解析を行う統計モデリングを可能にしたい. | KAKENHI-PROJECT-19K24340 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K24340 |
セルフ・アクセスおよびポートフォリオを用いた自律学習支援とその効果 | 本年度は、前年度に完成させた「セルフ・アクセス学習プログラム」(以下SALPと呼ぶ)をさらに改良して実施すると同時に、メタ認知力の変化を量的に分析することで過去2年間の実施結果を検証した。まず、メタ認知的方略に関する文献調査と学習者が提出した学習記録書をもとに分析コード表を作成し、それに基づいて2003年度と2004年度学習者群の学習記録を分析した。その結果、記録から判断される限りにおいて、両実験群のメタ認知的方略の使用には同様の傾向がみられた;いずれの実験群も学習上の問題認識はきわめて頻繁に行うものの、その解決策の模索はそれほど頻繁ではなかった。問題の原因分析や教材選択に関して考えることは少なく、学習の目標設定や学習効果の評価はほとんど行われていなかった。しかし、SALPの後半に進むに従って両実験群とも教材選択に関して頻繁に考えるようになり、2003年度実験群に関しては問題解決策の模索も頻繁になっていたことが分かった。このことは、SALPによるトレーニングが学習者に学習上の問題を強く認識させ、教材選択や問題解決策の模索を叙々に促進する効果はあるものの、問題の原因分析や目標設定に関する思考を促進するには十分でないことを示していると考えられる。また、2004年度実験群を対象にSALP終了時の学習意欲について質問紙調査を行ったところ、28名の有効回答中23名が学習意欲の上昇を報告し、その平均値は5段階評価で3.9、特に今後上達する自信に関する項目では平均が4.3ときわめて高い結果となった。被験者数が少なく統制群を設定できない研究環境にあるため一般化は困難であるものの、この分析結果はSALPによるトレーニングが学習者の学習意欲に望ましい影響を与える可能性が高いことを示唆している。以上の検証結果をもとに、本年度はSALPのメタ認知力養成指導の部分の改良も行った。本年度の研究目標は、(1)英語における自律学習のための学習支援形態のプロトタイプを設計し、学習の外的環境を整備してプログラムを実施すること、および(2)学習者のメタ認知力の実態把握とその育成を試みることの2点であった。まず「セルフ・アクセス学習プログラム(プロトタイプ)」を設計し、リーディングとリスニングの2種類4クラスの授業で実施した。このプログラムは2つの主要素:「自律学習の指導」と「学習体験」で構成されている。「自律学習の指導」は、学習者のメタ認知力(計画力・観察力・評価力)の養成を目的とするもので、この指導に従い学習者は既設のラーニングセンターで「学習体験」を行う。そのため「自律学習の指導」に必要なワークシートを作成し、ラーニングセンターで使用する教材を作成・維持・管理するなど、プログラム実施のための環境づくりを行った。次に、リスニングの学習記録を分析することで学習者のメタ認知力の実態把握も試みた。そして、メタ認知的方略の使用度と学習動機との関係を検証し、その結果を2003年度大学英語教育学会全国大会で発表した。今回の分析によると、学習者のほとんどが頻繁に自分の英語力の問題点を認識しながら学習を行っている反面、認識した問題点の原因分析や対策についてはあまり考えていない様子が明らかになった。また、学習を計画する方略を頻繁に使う学習者ほど、学習意欲や目標意識が高く、間違うことへの不安度が低いことが分かり、メタ認知的方略の使用が学習意欲と密接な関わりを持っていることが示唆された。最後に、本年度のプログラムで使用した教材の見直しを行い、来年度に向けて手薄だったレベルの教材補強と、新たな分野の教材準備も行った。本年度の研究目標は、「セルフ・アクセス学習プログラム」を完成させ、授業の一環として実施し、その結果を検証することであった。まず、プログラムの効果と汎用性を高めるために、昨年度の研究結果をもとにプログラムにいくつかの改良を行った。その1つが学生用手引き書「Self-Accessガイド」の作成である。このガイドの最初の部分でセルフ・アクセス学習の流れを明解に図解し、人数の多いクラスでも短時間でプログラムを理解させることが可能になった。また、昨年度の自律学習指導の結果を基に、自律度の低い学習者に対して特に有益と思われるメタ認知力(計画力・観察力・評価力)養成のための指導内容をまとめ、「Self-Accessガイド」の中心に据えた。これにより、授業で一斉に行う指導の内容が統一され強化された。「Self-Accessガイド」の最後には、教材一覧と昨年度末に拡大整理した教材のレベル別コード表示を含めた。第2の改良点として、個々の学習者に「Self-Access File」の作成を指示した。これは「Self-Accessガイド」に個々の学生が各自の学習記録と学習報告を加えたもので、これにより、学生がより長い期間の学習をより正確に振り返ることが可能となった。プログラムの前半が終了した時点で、その成果を学習者のメタ認知力や学習意欲などの観点から検証した。いずれも有効回答数が少ないために結果の一般化は困難であるものの、リスニングについては、このプログラムが学習意欲の上昇に肯定的な影響を与えていることが示された。リーディングの学習記録分析からは学習者が慣れない学習方法に戸惑いを感じている様子が確認され、個別の自律学習指導の方法としての「対話による介入」のあり方に示唆を与える結果となった。以上の研究結果を2004年度大学英語教育学会全国大会で口頭発表するとともに、学術雑誌などにも発表した。 | KAKENHI-PROJECT-15652037 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15652037 |
セルフ・アクセスおよびポートフォリオを用いた自律学習支援とその効果 | 本年度は、前年度に完成させた「セルフ・アクセス学習プログラム」(以下SALPと呼ぶ)をさらに改良して実施すると同時に、メタ認知力の変化を量的に分析することで過去2年間の実施結果を検証した。まず、メタ認知的方略に関する文献調査と学習者が提出した学習記録書をもとに分析コード表を作成し、それに基づいて2003年度と2004年度学習者群の学習記録を分析した。その結果、記録から判断される限りにおいて、両実験群のメタ認知的方略の使用には同様の傾向がみられた;いずれの実験群も学習上の問題認識はきわめて頻繁に行うものの、その解決策の模索はそれほど頻繁ではなかった。問題の原因分析や教材選択に関して考えることは少なく、学習の目標設定や学習効果の評価はほとんど行われていなかった。しかし、SALPの後半に進むに従って両実験群とも教材選択に関して頻繁に考えるようになり、2003年度実験群に関しては問題解決策の模索も頻繁になっていたことが分かった。このことは、SALPによるトレーニングが学習者に学習上の問題を強く認識させ、教材選択や問題解決策の模索を叙々に促進する効果はあるものの、問題の原因分析や目標設定に関する思考を促進するには十分でないことを示していると考えられる。また、2004年度実験群を対象にSALP終了時の学習意欲について質問紙調査を行ったところ、28名の有効回答中23名が学習意欲の上昇を報告し、その平均値は5段階評価で3.9、特に今後上達する自信に関する項目では平均が4.3ときわめて高い結果となった。被験者数が少なく統制群を設定できない研究環境にあるため一般化は困難であるものの、この分析結果はSALPによるトレーニングが学習者の学習意欲に望ましい影響を与える可能性が高いことを示唆している。以上の検証結果をもとに、本年度はSALPのメタ認知力養成指導の部分の改良も行った。 | KAKENHI-PROJECT-15652037 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15652037 |
ナノ構造制御有機薄膜の多重表面プラズモン複合励起と高効率デバイスへの応用 | グレーティング構造を持つ金属薄膜および有機薄膜の表面プラズモン(SP)励起について種々検討した。また,金属グレーティング薄膜界面を伝搬する伝搬型SPと金属微粒子界面に束縛された局在SPとの多重SP複合励起についても検討した。さらに,透過型SP励起や長距離伝搬SP励起などについても検討した。そして,ナノ構造制御した有機薄膜における多重SP複合励起は,有機デバイスの高効率化に有効であることを示した。平成24年度の研究成果などを基に,多重SP複合励起についてさらに詳しく検討した。すなわち,BD-Rグレーティング基板を用いてAu担持酸化チタン薄膜を使用した色素増感太陽電池を作製し,金属グレーティングによる伝搬型SP励起と金属微粒子による局在SP励起の光電変換に寄与する効果の検討を行った。同一セルにおいて,SP励起している場合(p偏光照射時)の短絡光電流をSP励起していない場合(s偏光照射時)に対する比で表した短絡光電流の増強度の光入射角依存性を測定した。伝搬型SP励起の効果や金微粒子による局在SP励起の効果も無い場合の短絡光電流の値を1とすると,SP励起により2倍以上の増強度となることがわかった。また,グレーティングカップリングSP励起のないAu担持酸化チタン薄膜においては3倍の増強度が得られており,Au担持することだけでも短絡光電流がかなり増大することが確認された。グレーティングカップリングSP励起のあるAu担持酸化チタン薄膜においては,7倍もの増強度が得られた。これらの結果より,グレーティング構造による伝搬型SP励起とAuナノ粒子による局在SP励起の両方の効果により,光電変換効率の増大が得られていると考えられた。よって,多重SP複合励起は太陽電池の高効率化に有効であることが明らかとなった。また,SP共鳴分光法を光導波路分光法や水晶振動子微量天秤法と組合せることなどによる有機センサの高性能化についても検討を行った。すなわち,SP共鳴と光導波路分光法を組合せた複合センサにより,フタロシアニン交互吸着膜の堆積過程のその場評価を行い,水溶液中でも薄膜堆積過程を高精度に評価することが可能であることを示した。さらに,長距離伝搬SP励起や透過型SP励起についても詳しく検討し,バイオセンサへの応用も試みた。そして,これらのSP励起が高感度なセンサの開発に有効であることを示した。グレーティング構造を持つ金属薄膜および有機薄膜の表面プラズモン(SP)励起について種々検討した。また,金属グレーティング薄膜界面を伝搬する伝搬型SPと金属微粒子界面に束縛された局在SPとの多重SP複合励起についても検討した。さらに,透過型SP励起や長距離伝搬SP励起などについても検討した。そして,ナノ構造制御した有機薄膜における多重SP複合励起は,有機デバイスの高効率化に有効であることを示した。CD-RやBD-Rの凹凸構造を利用したインプリントにより,グレーティング構造を持つ金属薄膜および有機薄膜を作製し,表面プラズモン(SP)励起特性について種々検討した。また,金属グレーティング薄膜上に金属微粒子を配置し,金属グレーティング薄膜界面を伝搬するSPと金属微粒子界面に束縛された局在SPとの多重SP複合励起についても詳しく検討した。その結果,金微粒子坦持酸化チタン薄膜を金属グレーティング薄膜上に堆積することにより,金属グレーティングによる伝搬型SPと金属微粒子の局在SPの多重SP複合励起により,色素/電解質界面での光電流の増大が観測された。そして,この多重SP複合励起は,太陽電池の高効率化に有効であることが明らかとなった。また,透過型SP励起特性についても検討した。すなわち,導電性高分子薄膜を金属グレーティング薄膜上に堆積し,ドーピング・脱ドーピングによる透過型SP励起特性を測定し検討した。その結果,電気化学的にドーピングレベルを制御することにより,SP励起異常透過光の波長や強度の制御が可能なことを示した。さらに,透過型SP励起を用いたバイオセンサについて検討した。その結果,電気化学的に制御した透過型SPR測定法を用いることで良好にヒト免疫グロブリンGの検出が可能であることを明らかとした。さらに,多チャンネルSP共鳴光導波路センサについても検討した。すなわち,同一光導波路上に湿度とガスに反応する2種類の有機薄膜を用いてSP励起可能な2チャンネルのセンサを構築し,種々の湿度下で高精度なガスの検出が可能であることを示した。また,SP共鳴分光法と光導波路分光法を併せ持つ複合センサや,SP共鳴分光法と水晶振動子微量天秤法を併せ持つ複合センサなどについても検討した。そして,これらのSP共鳴分光法を利用した複合センサは,高機能・高感度センサとして有望であることを示した。CD-RやBD-Rの凹凸構造を利用したインプリントにより,グレーティング構造を持つ金属薄膜および有機薄膜を作製し,表面プラズモン(SP)励起について種々検討した。また,金属グレーティング薄膜上に金属微粒子を配置し,金属グレーティング薄膜界面を伝搬する伝搬型SPと金属微粒子界面に束縛された局在SPとの多重SP複合励起についても検討した。すなわち,金微粒子や銀微粒子を坦持した酸化チタン薄膜を金属グレーティング上に堆積した色素増感太陽電池を作製し,色素/電解質界面での光電流の増大を観測し,この多重SP複合励起は太陽電池の高効率化に有効であることを示した。 | KAKENHI-PROJECT-24560367 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24560367 |
ナノ構造制御有機薄膜の多重表面プラズモン複合励起と高効率デバイスへの応用 | また,金属グレーティング上に金属微粒子を配置した場合の透過型SP励起についても検討した。金属微粒子は電解質交互吸着法により堆積し,金属グレーティング表面からの距離を制御し,金属グレーティング薄膜界面での伝搬型SPによる電界内での金属微粒子の表面からの距離変化によるSP増強透過光特性について検討を行った。さらに,長距離伝搬SP励起についても詳しく検討した。そして,これらの透過型SP励起や長距離伝搬SP励起が高感度なセンサの開発に有効であることも示した。さらに,SP共鳴を光導波路(OWG)分光法や水晶振動子微量天秤(QCM)法と組合せることによる有機センサの高性能化についても検討を行った。すなわち,SP共鳴とOWG分光法を組合せた複合センサにより,交互吸着膜の堆積過程のその場評価を行い,溶液中でも薄膜堆積過程を高精度に評価することが可能であることを示した。また,SP共鳴とQCM法を組合せた複合センサにより,薄膜構造の詳細な評価が可能であることも示した。以上により,ナノ構造制御した有機薄膜における多重SP複合励起は,有機デバイスの高効率化に有効であることが明らかとなり,今後の高機能・高性能デバイスの開発にも有望であると考えられる。有機エレクトロニクス本研究の目的は,ナノ構造制御した有機薄膜における多重表面プラズモン(SP)複合励起について検討を行い,有機デバイスの高効率化に向けた基礎的な研究を行うことであった。グレーティング構造を持つ金属薄膜上に金属微粒子を含む有機薄膜を形成し,色素増感太陽電池を作製し,金属薄膜界面を伝搬するSPと金属微粒子界面に束縛された局在SPとの多重SP複合励起の効果について検討するための短絡光電流測定などの詳細な実験が行われ,検討がなされた。そして,多重SP複合励起により短絡光電流が増大し,多重SP複合励起が有機太陽電池の高効率化に有効であることも明らかとなった。また,SP共鳴とOWG分光法を組合せた複合センサにより,水溶液中でも薄膜の堆積過程を高精度にその場評価することが可能であることを示した。さらに,長距離伝搬SP励起や透過型SP励起についても詳しく検討し,バイオセンサへの応用も試み,高性能センサの開発に結び付くある程度の成果が得られた。以上のことより,おおむね順調に進展していると考える。本研究の目的は,ナノ構造制御した有機薄膜における多重表面プラズモン(SP)複合励起について検討を行い,有機デバイスの高効率化に向けた基礎的な研究を行うことであった。グレーティング構造を持つ金属薄膜上に金属微粒子を含む有機薄膜などを作製し,金属薄膜界面を伝搬するSPと金属微粒子界面に束縛された局在SPとの多重SP複合励起については,ある程度十分に実験が行われ検討がなされた。そして,この多重SP複合励起は,太陽電池の高効率化に有効であることも明らかとなった。しかし,発光性色素分子を含む有機薄膜における分子発光による多重SP励起については,実験が進まず,あまり検討がなされなかった。また,SP励起のデバイスやセンサなどのデバイス応用に関しては,バイオセンサやガスセンサなどの有機デバイスについても種々検討がなされ,高感度化に結び付く基礎的な研究がなされ,ある程度の成果が得られた。以上のことより,おおむね順調に進展していると考える。 | KAKENHI-PROJECT-24560367 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24560367 |
酵母のビタミンB∪依存性酵素に関する系統的研究 | 本研究課題の実施計画に沿って研究を遂行し、次の結果を得た。1.パン酵母(Saccharonyces cerevisiae)の粗抽出液中に存在する各種【B_6】酵素の活性を測定した。α-トランスアミナーゼとしてアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AAT)、ω-トランスアミナーゼとしてリジントランスアミナーゼ、ラセマーゼとしてアスパラギン酸ラセマーゼ、デカルボキシラーゼとしてシスティンスルフィン酸(CSA)デカルボキシラーゼの各々の活性を測定し、比較したところ、AAT活性が最も強く、その他は非常にわずかな活性しか認められなかった。2.各種酵母中に存在するAAT活性をスクリーニングした。(1)リンゴ酸脱水素酵素共役法によるアッセイで、各種酵母中のAAT含量は、属により大きな差のあることがわかった。Candida属の活性が最も高く、湿菌体1g当り30単位の活性を示すものがあった。次いでTorulopsis属、Saccharomyces属の活性が高かった。一方、Hansenula属の活性は低く、最も低いものでは1.4(単位1g菌体)であった。(2)CSA-テトラゾリウム法による活性染色により、AAT活性の電気泳動パターンを明らかにした。各種酵母は13本のAATバンドを示し、これらのうちの主バンドの移動度は同属の酵母でほぼ共通していたが、バンドの本数は同属の酵母であっても同一ではなかった。3.Torulopsis属のAATを精製し、その性質を明らかにした。Torulopsis candidaの粗抽出液から各種クロマトグラフィーと等速電気泳動により、均一なAAT標品が得られた。分子量や吸収スペクトル等の性質は動物の細胞質の酵素と良く一致した。ウサギ抗血清も調製中である。4.T.candidaにおけるAATの局在性を調べた。局在性については更に詳細な検討が必要である。本研究課題の実施計画に沿って研究を遂行し、次の結果を得た。1.パン酵母(Saccharonyces cerevisiae)の粗抽出液中に存在する各種【B_6】酵素の活性を測定した。α-トランスアミナーゼとしてアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AAT)、ω-トランスアミナーゼとしてリジントランスアミナーゼ、ラセマーゼとしてアスパラギン酸ラセマーゼ、デカルボキシラーゼとしてシスティンスルフィン酸(CSA)デカルボキシラーゼの各々の活性を測定し、比較したところ、AAT活性が最も強く、その他は非常にわずかな活性しか認められなかった。2.各種酵母中に存在するAAT活性をスクリーニングした。(1)リンゴ酸脱水素酵素共役法によるアッセイで、各種酵母中のAAT含量は、属により大きな差のあることがわかった。Candida属の活性が最も高く、湿菌体1g当り30単位の活性を示すものがあった。次いでTorulopsis属、Saccharomyces属の活性が高かった。一方、Hansenula属の活性は低く、最も低いものでは1.4(単位1g菌体)であった。(2)CSA-テトラゾリウム法による活性染色により、AAT活性の電気泳動パターンを明らかにした。各種酵母は13本のAATバンドを示し、これらのうちの主バンドの移動度は同属の酵母でほぼ共通していたが、バンドの本数は同属の酵母であっても同一ではなかった。3.Torulopsis属のAATを精製し、その性質を明らかにした。Torulopsis candidaの粗抽出液から各種クロマトグラフィーと等速電気泳動により、均一なAAT標品が得られた。分子量や吸収スペクトル等の性質は動物の細胞質の酵素と良く一致した。ウサギ抗血清も調製中である。4.T.candidaにおけるAATの局在性を調べた。局在性については更に詳細な検討が必要である。 | KAKENHI-PROJECT-61560125 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61560125 |
新規プロテインキナーゼSIKのcAMP依存性核外移行の分子機構 | 申請者が最近クローニングした塩誘導性キナーゼ(SIK)はN末端側にキナーゼドメインを有する新規のセリン/トレオニン・プロテインキナーゼである。これまでの実験の結果、非刺激時の副腎皮質細胞ではSIKは核内に存在するが、ACTHで刺激した細胞ではSIKが細胞質に存在すること、そしてSIKの細胞内移動がステロイドジェネシスの開始に重要であることが分かった。GFPを融合したSIKを作成してSIKの細胞内局在を詳細に検索した。その結果、静止状態のY1細胞ではSIKは核内に存在するが、Y1をACTHで刺激するとSIKは核から細胞質に出る。この移動は5分以内に完了する。核外への移動はレプトマイシンで阻害される。SIKの核外移行にはPKAが関与する。PKA活性を欠いたY1変異株(Kin-7)では観察されないが、PKA発現ベクターを共導入すると核外移行が起こる。PKAによってSIKのSer577がリン酸化されることがSIKの核外移行に重要である。そしてACTH刺激後のSIKの細胞内移動の時間経過は、SIKによるステロイド産生酵素遺伝子の発現抑制作用の時間経過を良く反映する。細胞質で生合成されたSIKタンパク質が細胞質から核に移行するのにはC末端側に位置する塩基性アミノ酸を比較的多く含む50アミノ酸残基が必要である。これらの結果は、ステロイドジェネシスのシグナル伝達機構の調節にSIKが細胞内移動を介してエッセンシャルな役割を演ずることを示唆している。申請者は最近,高塩食で飼育したラットの副腎皮質に特異的に発現する遺伝子をクローニングした。この遺伝子はN末端1Aなどステロイド産生酵素遺伝子の発現を抑制している,2)ACTH刺激によりPKA系が活性化されると核内のSIKは細胞質に移行しCYP11A遺伝子の転写抑制が解除される,3)同時にSIK遺伝子自身はPKA系で転写・翻訳される。これらの事実はSIKが細胞内で移動することがその生理機能にエッセンシャルであること,またACTHに対する副腎皮質の応答現象が早期応答と遅延応答の2段階に分かれる現象にSIKの細胞内移動が深く関わることを示唆している。SIKタンパク質の種々の断片を作成しそのそれぞれと蛍光タンパク質(GFP)を融合させたキメラSIKを作りそれをY1細胞で発現させた。そしてACTH刺激に伴って起こるSIKの細胞内移動を検討した。その結果SIKタンパク質の核への移行にはC末端に位置する塩基性アミノ酸を比較的多く含む50アミノ酸残基が必要である,一方SIKの核外への移行にはSer577のPKAによるリン酸化とSIKのリン酸化活性,およびC-末端の50アミノ酸残基が必要であることが明らかとなった。SIKの細胞内移動を解析しその意義をさらに詳細に明らかにするためには,細胞内でSIKと相互作用するタンパク質を同定し,そのタンパク質の発現部位を明らかにすること,そしてそのタンパク質がACTH刺激時に細胞内でどのような挙動をとるかを明らかにする必要がある。酵母2-ハイブリッド法を用いてSIKのオトリ断片と相互作用する20個のクローンを分離した。現在これらのクローンの本体を明らかにする研究に全力を集中している。申請者が最近クローニングした塩誘導性キナーゼ(SIK)はN末端側にキナーゼドメインを有する新規のセリン/トレオニン・プロテインキナーゼである。これまでの実験の結果、非刺激時の副腎皮質細胞ではSIKは核内に存在するが、ACTHで刺激した細胞ではSIKが細胞質に存在すること、そしてSIKの細胞内移動がステロイドジェネシスの開始に重要であることが分かった。GFPを融合したSIKを作成してSIKの細胞内局在を詳細に検索した。その結果、静止状態のY1細胞ではSIKは核内に存在するが、Y1をACTHで刺激するとSIKは核から細胞質に出る。この移動は5分以内に完了する。核外への移動はレプトマイシンで阻害される。SIKの核外移行にはPKAが関与する。PKA活性を欠いたY1変異株(Kin-7)では観察されないが、PKA発現ベクターを共導入すると核外移行が起こる。PKAによってSIKのSer577がリン酸化されることがSIKの核外移行に重要である。そしてACTH刺激後のSIKの細胞内移動の時間経過は、SIKによるステロイド産生酵素遺伝子の発現抑制作用の時間経過を良く反映する。細胞質で生合成されたSIKタンパク質が細胞質から核に移行するのにはC末端側に位置する塩基性アミノ酸を比較的多く含む50アミノ酸残基が必要である。これらの結果は、ステロイドジェネシスのシグナル伝達機構の調節にSIKが細胞内移動を介してエッセンシャルな役割を演ずることを示唆している。 | KAKENHI-PROJECT-12878116 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12878116 |
先史時代・古代土器の野焼き技術の復元 | 以下の点で「野焼き方法は土器の形、大きさ、作りに応じた工夫が施されている」ことが明らかにされた。(1)弥生時代の甕棺の野焼き方法:縄文・弥生時代において最も大型であり、高度な製作技術が要求される甕棺について、福岡県小郡市の津古空前遺跡(弥生中期前半)と横隈狐塚遺跡(中期中葉後半)の黒斑を詳細に観察し、2回の野焼き実験を行った結果、前者では丸太を芯にした粘土円柱の支え棒を用いて野焼き時に土器を斜めに立ち上げて設置していたのに対し、後者では横倒しに設置するように変化したことが明らかにされた。この変化の理由として、「円筒形に近い形の前者では内面下部まで燃焼ガスがゆき渡るように角度を付けて土器を設置したのに対し、寸胴形に変化した後者ではその必要がなくなったため、簡便な横倒しの設置になった」という仮説が提示された。(2)弥生時代の赤塗土器の野焼き方法:赤塗土器が最も盛行する北部九州の弥生中期土器と長野地方の弥生後期土器(松原遺跡)の黒斑を観察した結果、1)弥生時代の赤塗土器は黒斑が少ない、2)松原遺跡では、赤塗土器の盛行に伴い土器を横倒しにし、薪燃料を多用する(側面と上部に薪を立てかける、その上を草燃料で覆う)号焼き宣法に変化する、3)縄文時代の赤塗は全て焼成後なのに対し、弥生時代の赤塗は全て焼成前に施されるようになる、などの点が明らかにされた。そして、電気窯による赤塗粘土板の焼成実験により、1)薪を多用するのは赤塗の定着度を高めるためである、2)赤塗土器に黒斑が少ないのは、ベンガラのために炭素が酸化しやすいためである、3)弥生時代の焼式前赤塗は、野焼き時に黒斑を付けないで焼くことが可能な「覆い形野焼き」に対応したものである、の3点が示された。(3)縄文土器の野焼き方法: 4回の野焼き実験と東北地方の縄文土器(前・中期の三内丸山・板留(2)・滝の沢遺跡、および縄文晩期の九年橋遺跡)の黒斑を観察し、「内面に薪を入れて直立した状態で野焼きし、底部を加熱するため後半段階で横倒しにする」という野焼き方法を明らかにした。外面黒色化(褐色化)手法が縄文時代に盛行するが弥生時代にはほぼ消失する理由として、「一度全体を明色に焼き上げた後に、有機物を掛けて炭素を吸着させる黒色土器は、上述の開放型野焼きには適するが、弥生時代の覆い型野焼きには適さない」ことを明らかにした。(1)資料調査小郡市埋蔵文化財センターで大板井、中尾、横隈狐塚、津古空前の弥生土器と甕棺を観察した(10月)。その結果、弥生前期から中期へと弥生土器の野焼き時の設置方法が急激に変化することが明らかになった。また、平成10年度に予定している甕棺の分析の予備調査も行い、弥生土器とほぼ共通する変化が明らかになった。石川の弥生土器の黒斑観察を鹿首モリガフチ遺跡(弥生後期、石川県立埋蔵文化財センター)と八日市地方遺跡(弥生中期、小松市教育委員会)で行い、これまで分析したと同様の黒斑の特徴を再確認し、資料を蓄積した。平成10年度に予定している東北地方の縄文土器の分析の予備調査として、12月に二屋敷遺跡(宮城県東北歴史資料館)と滝の沢遺跡(北上市埋蔵文化財センター)の縄文中期土器の黒斑観察をおこなった。(2)野焼き実験弥生土器の覆い型野焼きの実験(5月)、長胴甕の覆い型野焼き(泥を被覆剤とする)の実験(7月)、弥生土器の覆い型野焼き(泥および灰を被覆剤とする)の実験(11月)を行った。土器の設置角度、土器の下側の燃料、被覆剤と黒斑の特徴の関連を現在検討中である。なお、平成9年度に予定していた内黒土師器の野焼き実験は、平成10年度に行うこととした。(3)電気窯による実験電気窯による内黒土師器の形成過程の実験を行い、入れ子にした2個の杯の中に多様な材料を入れても黒色化がなされることが明らかになった。以下の点で「野焼き方法は土器の形、大きさ、作りに応じた工夫が施されている」ことが明らかにされた。(1)弥生時代の甕棺の野焼き方法:縄文・弥生時代において最も大型であり、高度な製作技術が要求される甕棺について、福岡県小郡市の津古空前遺跡(弥生中期前半)と横隈狐塚遺跡(中期中葉後半)の黒斑を詳細に観察し、2回の野焼き実験を行った結果、前者では丸太を芯にした粘土円柱の支え棒を用いて野焼き時に土器を斜めに立ち上げて設置していたのに対し、後者では横倒しに設置するように変化したことが明らかにされた。この変化の理由として、「円筒形に近い形の前者では内面下部まで燃焼ガスがゆき渡るように角度を付けて土器を設置したのに対し、寸胴形に変化した後者ではその必要がなくなったため、簡便な横倒しの設置になった」という仮説が提示された。(2)弥生時代の赤塗土器の野焼き | KAKENHI-PROJECT-09610408 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09610408 |
先史時代・古代土器の野焼き技術の復元 | 方法:赤塗土器が最も盛行する北部九州の弥生中期土器と長野地方の弥生後期土器(松原遺跡)の黒斑を観察した結果、1)弥生時代の赤塗土器は黒斑が少ない、2)松原遺跡では、赤塗土器の盛行に伴い土器を横倒しにし、薪燃料を多用する(側面と上部に薪を立てかける、その上を草燃料で覆う)号焼き宣法に変化する、3)縄文時代の赤塗は全て焼成後なのに対し、弥生時代の赤塗は全て焼成前に施されるようになる、などの点が明らかにされた。そして、電気窯による赤塗粘土板の焼成実験により、1)薪を多用するのは赤塗の定着度を高めるためである、2)赤塗土器に黒斑が少ないのは、ベンガラのために炭素が酸化しやすいためである、3)弥生時代の焼式前赤塗は、野焼き時に黒斑を付けないで焼くことが可能な「覆い形野焼き」に対応したものである、の3点が示された。(3)縄文土器の野焼き方法: 4回の野焼き実験と東北地方の縄文土器(前・中期の三内丸山・板留(2)・滝の沢遺跡、および縄文晩期の九年橋遺跡)の黒斑を観察し、「内面に薪を入れて直立した状態で野焼きし、底部を加熱するため後半段階で横倒しにする」という野焼き方法を明らかにした。外面黒色化(褐色化)手法が縄文時代に盛行するが弥生時代にはほぼ消失する理由として、「一度全体を明色に焼き上げた後に、有機物を掛けて炭素を吸着させる黒色土器は、上述の開放型野焼きには適するが、弥生時代の覆い型野焼きには適さない」ことを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-09610408 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09610408 |
D-アミノ酸発現機序と機能的役割の解明および慢性炎症病態との関連 | D-アミノ酸、特に加齢・自然放射線や活性酸素などのストレスの影響により生じると考えられているD-Aspの耳鼻咽喉科領域の組織における発現、疾病との関連の報告は皆無である。昨年度までの研究では、難治性易再発性炎症疾患である好酸球性副鼻腔炎の鼻ポリープに着目し、好酸球性副鼻腔炎および非好酸球性副鼻腔炎患者の鼻ポリープ組織を用い、D-アミノ酸免疫組織化学染色を施行した。好酸球性副鼻腔炎群と非好酸球性副鼻腔炎群でD-アミノ酸の発現パターンに大きな差異は認められなかったが、間質内への好酸球浸潤が多い症例では、D-アミノ酸が多く発現している傾向を確認した。本年度は炎症の程度や好酸球浸潤の程度なども検討項目に加える必要があると考えられたため、D-アミノ酸染色とともに、好酸球マーカーであるECPやMBPなどの染色や解析も加え、現在検討中である。また、声帯ポリープなどの喉頭疾患について、D-アミノ酸発現機序との関連を明らかにするために、炎症性ポリープと声帯結節、声帯嚢胞、喉頭腫瘍(乳頭腫、癌腫)などにおけるD-Asp発現様式を比較検討した。D-Aspは細胞増殖や分化と関連している可能性があるという方向もあり、分化増殖能以上をきたしている癌腫との比較は非常に興味深いと考えられた。声帯組織における正常呼吸上皮、重層扁平上皮、癌腫(扁平上皮癌)、乳頭腫、声帯結節、声帯嚢胞、声帯ポリープなどの様々な病変におけるD-アミノ酸発現を免疫組織化学にて評価を行うため、免疫染色を現在施行中である。勤務地の人員異動が重なったため、研究者のその他の業務が多忙となり当初の計画より遅延が生じた。また、現在行っているD-アミノ酸局在解析および機能解析に用いる耳鼻咽喉科領域疾患、特に様々な種類の喉頭疾患の検体数が十分に揃わず、想定以上に免疫染色に時間を要した。耳鼻咽喉科領域の喉頭疾患についてのD-アミノ酸発現の染色パターンの解析を行う。また、比較対照として肉芽腫や乳頭腫、癌腫や正常呼吸上皮、扁平上皮に対してもD-アミノ酸免疫組織化学染色を行う。また、IgA腎症における口蓋扁桃組織や、好酸球性および非好酸球性副鼻腔炎症例における鼻ポリープ組織、真珠腫性中耳炎症例における中耳真珠腫組織の蛋白抽出を行い、D-アミノ酸蛋白の定量解析を行う。本年度の研究ではIgA腎症患者における口蓋扁桃組織について、臨床的重症度分類および組織学的重症度分類によりD-アミノ酸発現様式を比較し、炎症の程度とD-アミノ酸発現機序との関連を検討した。IgA腎症患者22症例の摘出口蓋扁桃における臨床的重症度分類(C-Grade I-III)とD-アミノ酸発現面積との関連を検討したが有意な相関関係は認められなかった。また、組織学的重症度分類(H-GradeI-IV)とD-アミノ酸発現面積との関連を検討したが、こちらも有意な相関関係は認められなかった。よってD-アミノ酸はIgA腎症の腎組織においては、尿蛋白の有無やeGFRなどの腎機能には直接関連はなく、また糸球体病変の形成にも直接関連がないことが示唆された。真珠腫性中耳炎患者における真珠腫組織についてもD-アミノ酸発現様式を比較検討した。真珠腫組織においては年齢によって発現パターンが異なり、若年者では主に角質層、高齢者では肝室内に多くの発現が認められることを明らかにした。同一患者における先天性・後天性真珠腫同時存在症例についても同様にD-アミノ酸染色を施行したが、やはり先生性真珠腫においては後天性真珠腫に比べ角質(debris)に強い発現を認めた。好酸球性副鼻腔炎症例と非好酸球性副鼻腔炎症例においても鼻ポリープにおけるD-アミノ酸発現様式を比較検討した。好酸球性、非好酸球性ともに粘膜上皮においてはD-アミノ酸発現は認められたが、非好酸球性症例のほうが発現が強い傾向があった。また、間質組織では好酸球性症例は浮腫状変化が強く、D-アミノ酸発現もほとんど認められない症例が多いのに対し、非好酸球性症例では間質や周囲腺組織にD-アミノ酸発現が多い傾向を認めた。IgA腎症患者の口蓋扁桃組織におけるD-Asp発現様式の比較、重症度分類との関連について検討を行った。また鼻ポリープにおけるD-Asp発現様式の検討および好酸球性炎症の程度とD-Asp発現様式の関連の検討、先天性真珠腫と後天性真珠腫の発症メカニズムの差異につきD-Asp発現様式の観点から検討を行った。声帯ポリープについてはまだ症例数が少なく、免疫組織化学による検討まで行えていない。本年度の研究では、難治性易再発性炎症疾患である好酸球性副鼻腔炎の鼻ポリープに着目し、手術加療で摘出した好酸球性副鼻腔炎症例の鼻ポリープ13症例と非好酸球性副鼻腔炎症例の鼻ポリープ13例に対しD-Asp特異抗体を用いた免疫組織化学染色にてを施行し、D-アミノ酸発現の有無、発現様式の違いを検討した。その結果、好酸球性副鼻腔炎群、非好酸球性副鼻腔炎群ともに、症例ごとに程度の差はあるが繊毛上皮、間質内の炎症細胞、腺組織にD-アミノ酸発現を認めた。 | KAKENHI-PROJECT-16K20225 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K20225 |
D-アミノ酸発現機序と機能的役割の解明および慢性炎症病態との関連 | また、好酸球性副鼻腔炎群と非好酸球性副鼻腔炎群でD-アミノ酸の発現パターンに大きな差異は認められなかったが、間質内への好酸球浸潤が多い症例では、アミノ酸が多く発現している傾向が認められた。加齢変化や慢性炎症が起きている種々の組織でD-アミノ酸が生成されていることが報告されており、非好酸球性副鼻腔炎や難治性易再発性炎症疾患である好酸球性副鼻腔炎の成因や難治性にD-アミノ酸寄与している可能性が考えられた。また、アレルギー性炎症や好酸球性炎症におけるD-アミノ酸の関与は本年度の検討では明らかにはならなかったが、好酸球浸潤のメカニズムにはD-アミノ酸発現が何らかの関連を有する可能性が考えられた。D-アミノ酸は加齢や慢性炎症との関連が報告されているため、好酸球性副鼻腔炎群および被好酸球性副鼻腔炎群ともに罹病期間とD-アミノ酸発現の有無を免疫組織化学染色にて検討した。罹病期間は各群とも数ヶ月から5年以上と幅広く存在していたが、罹病期間によらず、D-アミノ酸発現の染色パターンに変化は認めなかった。単純な時間的炎症暴露時間にはD-アミノ酸の関与は認めなかったが、炎症の程度や好酸球浸潤の程度なども検討項目に加える必要があると考えられた。昨年度にIgA腎症患者における口蓋扁桃組織のD-アミノ酸発現解析、および先天性真珠腫と後天性真珠腫とのD-アミノ酸発現の差異についての比較検討を行った。本年度は主に好酸球性副鼻腔炎症例と非好酸球性副鼻腔炎症例におけるD-アミノ酸発現の際についての詳細な検討、および罹病期間別における比較検討を行った。声帯ポリープ症例についても順次症例数も集まり、現在免疫組織化学染色によるD-アミノ酸発現解析を行っている途中である。D-アミノ酸、特に加齢・自然放射線や活性酸素などのストレスの影響により生じると考えられているD-Aspの耳鼻咽喉科領域の組織における発現、疾病との関連の報告は皆無である。昨年度までの研究では、難治性易再発性炎症疾患である好酸球性副鼻腔炎の鼻ポリープに着目し、好酸球性副鼻腔炎および非好酸球性副鼻腔炎患者の鼻ポリープ組織を用い、D-アミノ酸免疫組織化学染色を施行した。好酸球性副鼻腔炎群と非好酸球性副鼻腔炎群でD-アミノ酸の発現パターンに大きな差異は認められなかったが、間質内への好酸球浸潤が多い症例では、D-アミノ酸が多く発現している傾向を確認した。本年度は炎症の程度や好酸球浸潤の程度なども検討項目に加える必要があると考えられたため、D-アミノ酸染色とともに、好酸球マーカーであるECPやMBPなどの染色や解析も加え、現在検討中である。また、声帯ポリープなどの喉頭疾患について、D-アミノ酸発現機序との関連を明らかにするために、炎症性ポリープと声帯結節、声帯嚢胞、喉頭腫瘍(乳頭腫、癌腫)などにおけるD-Asp発現様式を比較検討した。D-Aspは細胞増殖や分化と関連している可能性があるという方向もあり、分化増殖能以上をきたしている癌腫との比較は非常に興味深いと考えられた。声帯組織における正常呼吸上皮、重層扁平上皮、癌腫(扁平上皮癌)、乳頭腫、声帯結節、声帯嚢胞、声帯ポリープなどの様々な病変におけるD-アミノ酸発現を免疫組織化学にて評価を行うため、免疫染色を現在施行中である。勤務地の人員異動が重なったため、研究者のその他の業務が多忙となり当初の計画より遅延が生じた。また、現在行っているD-アミノ酸局在解析および機能解析に用いる耳鼻咽喉科領域疾患、特に様々な種類の喉頭疾患の検体数が十分に揃わず、想定以上に免疫染色に時間を要した。声帯ポリープ症例のポリープ組織、肉芽組織を集め、D-Asp免疫組織化学にてその発現様式の検討を行う。 | KAKENHI-PROJECT-16K20225 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K20225 |
赤外半導体レーザーを用いた安定同位体のリアルタイム計測装置の開発 | 連続光キャビティリングダウン法を一酸化二窒素(N_2O)のアイソトポマー(同位体分子種)計測に初めて応用した。開発した装置を用いて、N_2Oアイソトポマーの吸収スペクトルを様々な条件下で測定し、1.5μm領域における振動回転線の圧力広がり係数、分光パラメータ、および積分吸収断面積を決定した。また、得られた分光データを用いることにより、アイソトポマーの存在比を20分程度の時間分解能でリアルタイム計測することに成功した。連続光キャビティリングダウン法を一酸化二窒素(N_2O)のアイソトポマー(同位体分子種)計測に初めて応用した。開発した装置を用いて、N_2Oアイソトポマーの吸収スペクトルを様々な条件下で測定し、1.5μm領域における振動回転線の圧力広がり係数、分光パラメータ、および積分吸収断面積を決定した。また、得られた分光データを用いることにより、アイソトポマーの存在比を20分程度の時間分解能でリアルタイム計測することに成功した。地球大気において、一酸化二窒素(N_2O)は、重要な温室効果気体であり地球温暖化に寄与している。各発生源の寄与を見積もるために大気中N_2Oの同位体分子種(アイソトポマー)比の計測が有効である。従来、安定同位体の分析は主に質量分析法を用いて行われてきた。しかし、装置が大きく、ガスクロマトグラフィーによる分離、CO_2やH_2Oの除去など、煩雑な前処理が必要であるため、装置を持ち運び発生源でリアルタイムに計測することは困難であった。本研究では、連続光キャビティリングダウン分光法をN_2Oの安定同位体の計測に初めて応用した。N_2Oアイソトポマーの検出には、1.5μm付近の3v_3バンドを用いた。検出光光源には、近赤外半導体レーザーを採用した。開発した装置を用いて、N_2Oの振動回転スペクトルの空気分子(N_2およびO_2)による圧力広がり定数の測定を行った。個々の振動回転線をVoigt関数でフィットし、圧力幅を測定した。様々な圧力および温度条件において、圧力幅を測定することにより、圧力広がり係数および温度係数を決定した。また、N_2O同位体分子種の高純度ガスを用いて、各アイソポマーの吸収スペクトルを測定し、分光定数および線強度の測定を行った。^<15>N^<14>N^<16>Oの3v_3バンドの分光定数および線強度の測定は、本研究が初めてである。これらのデータを用いて、アイソトポマー計測に適切な振動回転線、^<15>N^<14>N^<16>O:P(19)遷移(6497.17 cm^<-1>)および^<14>N^<15>N^<16>O:R(19)遷移(6459.49 cm^<-1>)を決定した。本研究では、分光法を用いたN_2O同位体のリアルタイム計測装置の開発に不可欠な基礎データを取得することができた。一酸化二窒素(N_2O)は、重要な温室効果気体であり地球温暖化に寄与している。N_2Oの各発生源の寄与を見積もるために大気中N_2Oの同位体分子種(アイソトポマー)比の計測が有効である。従来、安定同位体の分析は主に質量分析法を用いて行われてきた。しかし、装置が大きく、ガスクロマトグラフィーによる分離、CO_2やH_2Oの除去など、煩雑な前処理が必要であるため、装置を持ち運び発生源でリアルタイムに計測することは困難であった。本研究では、半導体レーザーを用いた吸収分光法による温室効果気体の安定同位体のリアルタイム計測装置の開発を行うことを目的とした。平成19年度に連続光キャビティリングダウン分光法を用いたN_2Oアイソトポマーの検出に成功したことから、平成20年度は、N_2O標準ガスを用いた同位体比の計測を行った。アイソトポマー計測には振動回転線、^<15>N^<14>N^<16>O:P(19)遷移(6497.17cm^<-1>)および^<14>N^<15>N^<16>O:R(19)遷移(6459.49cm^<-1>)を用いた。各振動回転線を交互に測定し、アイソトポマー比を測定した。その結果、標準ガス中の^<15>N^<14>N^<16>O/^<14>N^<15>N^<16>O比は、1.0041±0.0051と決定された。また、繰り返し測定を行った結果、アイソトポマー比の測定精度5.1‰が得られた。本研究では、採用した振動回転線の積分吸収断面積を、室内実験により独自に決定することにより、参照ガスを用いない、アイソトポマー比の絶対測定に初めて成功した。N_2Oのアイソトポマー計測については、今後、中赤外領域のレーザー光源や、より反射率の高いミラーを適用することにより、更なる高感度か見込まれ、実大気中のN_2O同位体の計測が可能となると期待される。 | KAKENHI-PROJECT-19710011 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19710011 |
放射線性難治性潰瘍に対する脂肪組織由来幹細胞の効果 | 放射線は検査や治療などで現在の医療において必要不可欠な物であるが、同時に難治性潰瘍や創傷治癒遅延を引き起こすことがある。放射線照射による創傷治癒遅延の根底には、未分化な細胞ほど放射線感受性が高いことから、創傷治癒に深く関わる細胞である幹細胞が局所で放射線によって障害を受けていることがあると考えられる。よって放射線照射後の創部へ、脂肪組織由来幹細胞移植を行い創傷治癒が改善されるかを調査した。放射線は検査や治療などで現在の医療において必要不可欠な物であるが、同時に難治性潰瘍や創傷治癒遅延を引き起こすことがある。放射線照射による創傷治癒遅延の根底には、未分化な細胞ほど放射線感受性が高いことから、創傷治癒に深く関わる細胞である幹細胞が局所で放射線によって障害を受けていることがあると考えられる。よって放射線照射後の創部へ、脂肪組織由来幹細胞移植を行い創傷治癒が改善されるかを調査した。現在までに、放射線照射の創傷治癒への影響を観察するため、ラット及びマウスに放射線照射を行い、放射線性難治性潰瘍モデルの作製及び脂肪組織由来間質細胞移植の効果について検討を行っている。始めラットを用いて、鉛の遮蔽板から皮膚をつまみあげて15Gy,30Gy,50Gyと照射し、潰瘍の作製を試みたが、いずれの照射量でも皮膚潰瘍は作製されるものの、潰瘍の大きさ、深さなどについて定量性にとぼしく、その後の脂肪組織由来間質細胞移植による創傷治癒効果の解析を行うことができなかった。このため、マウス背部皮膚を弁上に挙上し、皮弁以外は鉛板で遮蔽し、皮弁のみに照射し、同時にデルマパンチで穴をあけ同じ大きさの潰瘍を作製、ここに細胞を移植するという方法を試みた。しかしながらこの方法では皮弁自体が壊死することや、皮弁下にHematomaが生じるなどして、個体間での条件をそろえることが難しく、やはり解析を行うことができなかった。ただし、放射線照射のマウス皮膚への影響の基礎データを得ることができ、照射量や細胞移植時期の検討を行うことができた。また、DiIラベルした間質細胞の移植についても基礎検討を行い、組織標本で移植細胞を観察でき、また免疫組織染色にて周囲組織におけるbFGFやVEGFなどの種々のGrowth Factorの観察ができた。現在は上記モデルの欠点を補うべく、マウス大腿に20Gyの放射線照射を行い、照射後3週間で1×10^6/100μlPBSの細胞移植を行い、創収縮の観察や、免疫組織学的検討を行っている。放射線照射の創傷治癒への影響を観察するため、ラット及びマウスに放射線照射を行い、放射線性難治性潰瘍モデルの作製及び脂肪組織由来間質細胞移植の効果について検討を行った。はじめ背部皮膚を弁上に挙上し、皮弁以外は鉛板で遮蔽し、皮弁のみに照射を行い、放射線照射と同時にデルマパンチで穴をあけ同じ大きさの潰瘍を作製、ここにDilラベルした細胞を移植するという方法を試みた。しかしながらこの方法では皮弁自体が壊死することや、皮弁下にHematomaが生じるなどして、個体間での条件をそろえることが難しかった。このため、マウス両側大腿に放射線を照射し、急性期の炎症が落ち着いた後、同じ大きさの潰瘍を作成、片側のみに細胞移植を行って同一個体の左右で比較するという方法で解析を行うこととした。条件検討の結果、線量は!6Gy,移植時期は照射後1ヶ月、潰瘍の大きさは直径5mm、移植細胞数は1×10^6個とすることとした。その結果、肉眼的観察で細胞移植した側において創収縮が早く、移植後9-13日で上皮化が終了した。組織学的にも、細胞移植側において創治癒傾向が顕著であり、また創部において細胞ラベルのDiLを確認し、移植細胞の生着を確認した。また、免疫組織染色を行ったところ、細胞移植側ではコントロール側と比べ、TGFβ、VEGF、FGF2、IL-6の発現のピークが早期にあった。また、細胞移植側では、コントロール側と比べ瘢痕形成が少なかった。安全性などのさらなる検討が必要であるが、本研究により放射線照射により引き起こされる創傷治癒障害に対し、脂肪組織由来間質細胞移植の有用性が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-19890251 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19890251 |
非破壊検査理論に基づく宇宙航空機用セラミックスのスクリーニング・システムの構築 | 本研究の目的は、熱衝撃損傷、材料物性温度依存性、表面および内部損傷などの現象を考慮した非破壊検査理論を開発し、それに基づいて、新たに宇宙航空機用高温セラミック材料のスクリーニング・システムを構築することである。はじめに、ロケットノズル用黒鉛材およびアルミナ/黒鉛質耐熱材料を用いて、その強度、破壊力学特性を材料試験機により、損傷の程度を弾性率内耗測定装置により調べた。モデル材料にアルミナ・黒鉛質耐熱材料を用いて、1500°Cの温度差での熱衝撃試験を行い、亀裂発生状況を観察した。過渡熱応力解析を実施し、その結果から過渡熱応力解析および破壊統計解析を行い、実験結果を説明することに成功した。また、熱衝撃前後での試料の弾性波速度の変化を、超音波弾性率内耗測定装置を用いて測定した結果、(1)引張り応力が高いほど、弾性波速度が低下する、(2)圧縮応力支配領域においても弾性波速度が低下する、という注目すべき結果を得た。これは、過渡応力により、材料が損傷したことを意味している。つぎに、これらのデータを用いて、新しい非破壊検査理論を構築した。新理論を用いて、スクリーニング領域および欠陥サイズの閥値を決定し、非破壊試験のシミュレーションを実施した。非破壊試験によりリジェクトされた試験片と、生き残った試験片の比率一残存効率の比較を行い、提案した非破壊検査システムの有効性を確認した。以上述べたように、本研究では宇宙航空機用セラミックスのスクリーニングシステムを構築するための基本となる非破壊検査理論の開発・拡張を行い、初期の目的の大半を達成することができた。本理論体系は、独り非破壊検査理論のみに限定されたものではなく、広く表面および内部を強化したセラミックス-例えば宇宙往還機の耐熱タイル-の強度設計理論に拡張することができる。本研究の目的は、熱衝撃損傷、材料物性温度依存性、表面および内部損傷などの現象を考慮した非破壊検査理論を開発し、それに基づいて、新たに宇宙航空機用高温セラミック材料のスクリーニング・システムを構築することである。はじめに、ロケットノズル用黒鉛材およびアルミナ/黒鉛質耐熱材料を用いて、その強度、破壊力学特性を材料試験機により、損傷の程度を弾性率内耗測定装置により調べた。モデル材料にアルミナ・黒鉛質耐熱材料を用いて、1500°Cの温度差での熱衝撃試験を行い、亀裂発生状況を観察した。過渡熱応力解析を実施し、その結果から過渡熱応力解析および破壊統計解析を行い、実験結果を説明することに成功した。また、熱衝撃前後での試料の弾性波速度の変化を、超音波弾性率内耗測定装置を用いて測定した結果、(1)引張り応力が高いほど、弾性波速度が低下する、(2)圧縮応力支配領域においても弾性波速度が低下する、という注目すべき結果を得た。これは、過渡応力により、材料が損傷したことを意味している。つぎに、これらのデータを用いて、新しい非破壊検査理論を構築した。新理論を用いて、スクリーニング領域および欠陥サイズの閥値を決定し、非破壊試験のシミュレーションを実施した。非破壊試験によりリジェクトされた試験片と、生き残った試験片の比率一残存効率の比較を行い、提案した非破壊検査システムの有効性を確認した。以上述べたように、本研究では宇宙航空機用セラミックスのスクリーニングシステムを構築するための基本となる非破壊検査理論の開発・拡張を行い、初期の目的の大半を達成することができた。本理論体系は、独り非破壊検査理論のみに限定されたものではなく、広く表面および内部を強化したセラミックス-例えば宇宙往還機の耐熱タイル-の強度設計理論に拡張することができる。本年度の研究実施計画に基づいて、以下の研究を実施した.(1)弾性率内耗測定装置の購入と整備主要設備である弾性率内耗測定装置を購入し、整備・運転を行った。その結果、購入した装置は十分な性能を発揮することを確認した.(2)等方性黒鉛試験片の作製ロケットノズル用等方性黒鉛IG12から、二軸破壊試験用薄肉円筒試験片、圧縮強度試験片、高温弾性率内耗試験片を作製した。(3)等方性黒鉛を用いた二軸破壊試験の実施作製した等方性黒鉛IG12の円筒試験片約150本を用いて内圧と軸圧縮の組み合わせにより二軸破壊試験を実施し、実用上最も重要な第4像限の破壊曲線を実験的に正確に求めることに成功した.また主要設備である弾性率内耗測定装置を用いて等方性黒鉛IG12の弾性率および内耗の常温1500°Cにおける変化をin-situに測定することに成功した.平成14年度研究実施報告書本年度の研究実施計画に基づいて、以下の研究を実施した。(1)材料表面音診システムの購入と整備主要設備である材料表面音診システムを購入し,前年度購入した弾性率内耗測定装置に組み込んで整備・運転を行った。その結果,購入した装置は十分な性能を発揮することを確認した.(2)等方性黒鉛の圧縮荷重下におけるリアルタイム損傷評価の実施購入した装置を用いて,等方性黒鉛の圧縮荷重下におけるリアルタイム損傷評価を実施した。その結果,圧縮荷重が破壊荷重の70%を超えたあたりから縦波音速が顕著に減少し、内部摩擦が増大することを見出した。また、連続鋳造用耐火物を用いた同様の実験において、底面エコーだけでなく、第一後方散乱エコー波が損傷評価に極めて敏感であることを見出した。 | KAKENHI-PROJECT-13355025 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13355025 |
非破壊検査理論に基づく宇宙航空機用セラミックスのスクリーニング・システムの構築 | (3)前年度の主要研究実績である「非破壊検査理論」および「等方性黒鉛の2軸破壊曲線の実験及び直・並列リンクモデルに基づく理論解析」を、それぞれHawaiiおよび上海で開かれた国際会議において発表した。本年度は、前年度までの成果を受けて、ロケット発射時の熱衝撃によりノズル表面近傍に誘起される圧縮応力による損傷を模擬するため、材料表面音診システムおよび弾性率内耗試験機を用いて、等方性黒鉛および耐熱セラミックスの圧縮荷重下における損傷評価を詳細に実施した結果、以下のような成果を得た。1.等方性黒鉛の縦波弾性波伝播速度(音速)は、負荷過程では圧縮応力の増加と共に単調に減少し、減少率が負荷とともに増加した。除荷過程では、音速は単調に回復したが、負荷を取り除いても完全には回復しなかった。この現象は減衰率の変化とよく対応した。これらの現象は黒鉛層間亀裂モデルにより説明できた。2.耐熱複合セラミックスについて同様の実験を行なったところ,黒鉛とは対称的な結果を得た。すなわち、負荷過程においては高荷重域においてのみ音速が低下した。一方、除荷過程においては、負荷過程以上に顕著な音速低下が見られ、この傾向は荷重を完全に除荷するまで単調に続いた。この現象は、除荷過程において異相粒子界面での剥離破壊が生じ、損傷がさらに進行したためと考察した。3.熱衝撃損傷を受けた耐熱複合セラミックスについて熱衝撃前後の音速の測定結果を、発生する熱応力から計算した相当応力により整理したところ、引張り応力域と圧縮応力域とで全く異なる傾向にあることが見出された。以上の成果を踏まえ,損傷の時間発展を考慮した新たな非破壊検査理論を構築し、宇宙航空機用セラミックス材料のスクリーニング・システムの概念設計を行い、本研究を総括した。 | KAKENHI-PROJECT-13355025 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13355025 |
ICP質量分析における共存元素等による干渉機構の解明と干渉除去 | 誘導結合プラズマ質量分析法(ICPーMS)における共存元素の影響には、スペクトル的な干渉と非スペクトル的な干渉とがある。非スペクトル的な干渉の程度には装置間による差もあり、現在その機構は必ずしも明らかではない。ICPーMSにおける非スペクトル的な干渉機構の解明や干渉除去のため、種々の共存元素による干渉ならびに操作条件などを変えた場合の干渉の変化について検討を行った。共存元素による信号抑制効果の原子量依存性が、本研究においても認められた。これはサンプラ-以降の超音速領域において、原子量の大きな共存元素との衝突により目的元素が散乱されるためであると考えられた。レンズ系の電圧設定による抑制効果の変化は、レンズ系内の空間電荷の影響によるものであると思われた。またより低いイオン化電圧の共存元素の場合により大きな抑制効果があることから、プラズマにおけるイオン化平衡のずれも無視できないことが分かった。抑制効果は、単一のメカニズムだけでなくいくつかが組合わさって起きると考えられ、抑制効果全体に対してこれらの原因の各々がどの程度関与するかは、使用している装置や操作条件に依存するものと思われる。また目的元素の感度が十分あれば、操作条件等により共存元素の影響を軽減できることが分かった。イオン化平衡のずれによる干渉は、内標準による補正も可能である。共存元素の影響は、一般に干渉元素の濃度の絶対量が問題となるため、干渉の軽減には試料溶液の希釈も有効であると考えられる。スペクトル的な干渉では、共存元素から生ずる2価や酸化物イオンの重なりも問題となる。これらのイオンはプラズマの電位と関係するため、プロ-ブにより電位を測定したところ、2価イオンが生成しやすい条件下では電位が高くなった。ト-チを静電的にシ-ルドした結果、電位が下がり2価イオンを減少させることができた。誘導結合プラズマ質量分析法(ICPーMS)における共存元素の影響には、スペクトル的な干渉と非スペクトル的な干渉とがある。非スペクトル的な干渉の程度には装置間による差もあり、現在その機構は必ずしも明らかではない。ICPーMSにおける非スペクトル的な干渉機構の解明や干渉除去のため、種々の共存元素による干渉ならびに操作条件などを変えた場合の干渉の変化について検討を行った。共存元素による信号抑制効果の原子量依存性が、本研究においても認められた。これはサンプラ-以降の超音速領域において、原子量の大きな共存元素との衝突により目的元素が散乱されるためであると考えられた。レンズ系の電圧設定による抑制効果の変化は、レンズ系内の空間電荷の影響によるものであると思われた。またより低いイオン化電圧の共存元素の場合により大きな抑制効果があることから、プラズマにおけるイオン化平衡のずれも無視できないことが分かった。抑制効果は、単一のメカニズムだけでなくいくつかが組合わさって起きると考えられ、抑制効果全体に対してこれらの原因の各々がどの程度関与するかは、使用している装置や操作条件に依存するものと思われる。また目的元素の感度が十分あれば、操作条件等により共存元素の影響を軽減できることが分かった。イオン化平衡のずれによる干渉は、内標準による補正も可能である。共存元素の影響は、一般に干渉元素の濃度の絶対量が問題となるため、干渉の軽減には試料溶液の希釈も有効であると考えられる。スペクトル的な干渉では、共存元素から生ずる2価や酸化物イオンの重なりも問題となる。これらのイオンはプラズマの電位と関係するため、プロ-ブにより電位を測定したところ、2価イオンが生成しやすい条件下では電位が高くなった。ト-チを静電的にシ-ルドした結果、電位が下がり2価イオンを減少させることができた。1.ICPをイオン源とする質量分析は、水溶液試料を導入することにより多くの元素についてpg/mlの桁まで測定できるという高感度さのために近年大いに注目されている。しかし、試料溶液中に多量の共存元素があると大きな干渉を示すことが知られており、その干渉のメカニズムを探り、できるだけ干渉の少なくなるような試料調整および導入方法の確立が重要な問題となっている。本年度は先ず種々の共存元素により目的元素の信号にどのような影響があるか、まらそれらの影響はイオン源であるICPの操作条件や、質量分析計のイオンレンズの電圧設定によりどのような変化があるかを調べた。2.目的元素として、Co、y、In、LaおよびAlを選び、LiからPdまでの14の共存元素それぞれについての影響を調べた。目的元素の濃度は10^<-6>M、共存元素の濃度は10^<-2>Mとした。その結果、目的元素の信号はどの元素についても共存元素の原子量が増加するにつれて信号が減少することが分かり、従来から他の装置で報告されたのと同様な結果が得られた。ただ、信号の減少のしかたは単調ではなく、原子量以外にも共存元素のイオン化電圧の効果があることも明確となった。原子量の影響はサンプリングオリフィスの後の超音速ジェットにおける干渉であり、イオン化電圧の影響はプラズマにおけるイオン化平衡の移動によるものである。さらに、原子量の影響の程度はイオンレンズ設定電圧によっても変化し、これはこの部分における空間電荷の効果が無視できないことを示すものであった。3.以上のように、共存元素効果の原因には少なくとも3種類の要因があることが明らかとなった。1.ICP質量分析法ではスペクトルが比較的単純であることから、ICP発光分光分析法に比べてスペクトル干渉の少ないことが特徴の一つとなっている。 | KAKENHI-PROJECT-01550573 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01550573 |
ICP質量分析における共存元素等による干渉機構の解明と干渉除去 | しかしながらマトリックス元素が共存する場合には、目的元素イオンのスペクトルに、共存元素そのもの、もしくは共存元素から生ずる酸化物イオンや2価イオンなど同重体イオンのスペクトルが干渉することにより、目的元素の測定に重大な影響を及ぼすことがある。酸化物イオンや2価イオンの生成はプラズマの電位と深く関わっているため、銅製の水冷式のプロ-ブを試作し、これを試料導入インタ-フェ-スの前に置いてプラズマの電位を測定した。試作したプロ-ブは水冷しているため、長時間プラズマ中に挿入しても融けたり酸化皮膜を生成することなく、安定に電位を測定することが可能だった。測定の結果、2価イオンが生成しやすいような操作条件下では、プラズマの電位が高くなることが本実験でも確認された。2.プラズマにおける高周波電位は、プラズマと誘導コイルとの容量的な結合により生じるため、この容量的な結合を少なくするような静電的なシ-ルドを施したト-チ(シ-ルド水冷ト-チ)を試作した。このト-チを用いてプラズマの電位を測定したところ、電位が大幅に下がり、操作条件を変えても電位があまり変化しないことを確認した。このト-チにより測定した質量スペクトルでは、2価イオンはほとんど生成しなくなった。またアルゴンガスなどに起因する種々の分子イオンを含めたバックグラウンドイオンの強度も減少した。しかしながら酸化物イオンについては、その生成割合が若干上昇した。シ-ルドト-チの場合の共存元素による非スペクトル的な干渉についての検討はまだ十分には行っていないため、今後も引続き検討していく予定である。 | KAKENHI-PROJECT-01550573 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01550573 |
登熟期間中のイネ葉鞘におけるデンプン分解関連酵素遺伝子の機能解析 | イネ葉鞘における出穂後のデンプン分解制御機構の解明のため,α-およびβ-アミラーゼ遺伝子ファミリーを構成する各遺伝子の機能解析を進めた.多収品種タカナリでは,α-アミラーゼ遺伝子のRAmy2Aの発現が出穂後の葉鞘において急激に上昇し,それが急激なデンプン分解をもたらす要因のひとつと示唆された.β-アミラーゼ遺伝子のOsBAM2もしくはOsBAM3の過剰発現は葉鞘のデンプン含量を著しく低下させるが,それらの発現抑制は葉鞘におけるデンプン含量を有意に増加させることはなかった.また,OsBAM5の発現は夜間の葉身において著しく高く,その発現抑制は葉身にデンプンを過剰に蓄積させることがわかった.イネ穎果の登熟には,出穂期までに稈や葉鞘に蓄積されたデンプンなどの非構造性炭水化物が一部利用されるため,本研究課題では出穂期以降の葉鞘におけるデンプン分解に関わる遺伝子の機能解析を進めている.昨年度までに,β-アミラーゼをコードする遺伝子であるOsBAM2とOsBAM3のノックダウン系統を作出し,その表現型を解析してきた.その結果,OsBAM2とOsBAM3それぞれの単独のノックダウン系統では,出穂期以降の葉鞘におけるデンプン蓄積量に関して野生型と大きな差がないことが明らかになった.そこで今年度はOsBAM2とOsBAM3のダブルノックダウン系統を作出するためのベクターを構築し,それを用いてOsBAM2&3ノックダウン系統の作出を進め,両遺伝子が効果的に発現抑制された系統を得ることができた.現在はその系統を閉鎖系グロースチャンバーで栽培し,表現型の解析を進めている.また,OsBAM2とOsBAM3のプロモーター:GUS発現ベクターを導入した形質転換イネにおいて,OsBAM2とOsBAM3遺伝子発現の組織特異性を調査した,OsBAM2プロモーターの発現は葉鞘や葉身などの柔組織などで確認されたが,一方OsBAM3プロモーターは維管束鞘細胞で特に強く発現していた.インド型多収イネ品種のタカナリと日本型品種の日本晴の葉鞘において,デンプン分解関連酵素遺伝子の転写レベルを出穂期前から登熟期にかけて経時的に解析した結果,α-アミラーゼをコードするRAmy2A遺伝子の発現がタカナリの葉鞘において出穂後のデンプン含量が低下する時期に急激に増加することがわかった.そこで,RAmy2Aのノックダウン系統の作出を,日本型品種の日本晴とササニシキに加えて,タカナリなどのインド型品種においても進めている.イネ葉鞘における出穂後のデンプン分解制御機構の解明のため,α-およびβ-アミラーゼ遺伝子ファミリーを構成する各遺伝子の機能解析を進めた.多収品種タカナリでは,α-アミラーゼ遺伝子のRAmy2Aの発現が出穂後の葉鞘において急激に上昇し,それが急激なデンプン分解をもたらす要因のひとつと示唆された.β-アミラーゼ遺伝子のOsBAM2もしくはOsBAM3の過剰発現は葉鞘のデンプン含量を著しく低下させるが,それらの発現抑制は葉鞘におけるデンプン含量を有意に増加させることはなかった.また,OsBAM5の発現は夜間の葉身において著しく高く,その発現抑制は葉身にデンプンを過剰に蓄積させることがわかった.イネ茎葉部、特に出穂期以降の葉鞘におけるデンプン分解において、β-アミラーゼをコードする遺伝子であるOsBAM2とOsBAM3がどのような役割を果たしているのかを解明するため、RNAi法により作出したノックダウン系統を用いて解析を進めた。その結果、OsBAM2のノックダウン系統の葉鞘におけるデンプン含量には野生型とほとんど違いがないこと、またOsBAM3のノックダウン系統では野生型よりも出穂期のデンプン含量が多くなる傾向にあるものの有意な差は認められないことが明らかになった。一方、OsBAM2の過剰発現系統では、出穂期までに葉鞘に蓄積されるデンプン含量が著しく低下した。以上のことから、OsBAM2は葉鞘におけるデンプン分解において機能していることが強く示唆されるが、その単独の発現抑制では、おそらくOsBAM3の作用によってデンプン分解が進むために、デンプン過剰の表現型が現れないと考えられた。現在はOsBAM3の過剰発現系統の育成が完了し、さらにOsBAM2とOsBAM3の両方がノックダウンされた系統の選抜を進めている。プラスチド局在型β-アミラーゼであることがわかっているOsBAM2とOsBAM3と同様に、プラスチド移行シグナル配列を有すると予想されるOsBAM4とOsBAM5の細胞内局在性の解明を進める計画であった。しかし、これら2つの遺伝子の発現レベルは出穂期前後の葉鞘において、OsBAM2およびOsBAM3を比較して著しく低いことが明らかになった。そこで、計画を変更し、出穂後に発現レベルが上昇するα-アミラーゼ遺伝子であるRAmy2Aについての解析を先に進めることとした。RAmy2Aのノックダウン系統を作出するためのRNAiベクターを構築し、そのT1世代の種子採取までが完了した。イネ葉鞘に出穂期までに蓄積されるデンプンはイネの登熟に利用される重要な炭水化物源である。そこで本課題では、イネ葉鞘におけるデンプン分解に関わる酵素遺伝子の機能を解明するため、プラスチド局在型のβ-アミラーゼアイソフォームをコードするOsBAM2とOsBAM3の2つの遺伝子について解析を進めてきた。 | KAKENHI-PROJECT-24580027 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24580027 |
登熟期間中のイネ葉鞘におけるデンプン分解関連酵素遺伝子の機能解析 | 昨年度までに作出したOsBAM2とOsBAM3遺伝子の2つが同時に発現抑制された(ダブルノックダウン)系統の表現型を解析した結果、ダブルノックダウン系統では、出穂後の葉鞘におけるデンプン含量が野生型系統よりも著しく増加していた。しかし、この実験では、野生型系統の葉鞘におけるデンプン蓄積量が通常よりも少なかったため、再度の評価を行う必要がある。また、葉鞘において発現が認められるOsBAM4とOsBAM5遺伝子の翻訳産物の細胞内局在性を、緑色蛍光タンパク質とのキメラタンパク質を用いて解析したところ、両遺伝子がコードするアイソフォームもまたプラスチド局在型であることが明らかになった。さらに、OsBAM5遺伝子の発現は、葉身において夜間に急激に上昇することが明らかとなり、その発現抑制系統を用いた解析から、OsBAM5遺伝子は葉身における夜間のデンプン分解に関与することが強く示唆された。インド型多収イネ品種のタカナリは、日本晴などの通常の日本型品種と比較して、出穂後の葉鞘におけるデンプン含量の低下が急激に生じ、その現象にはα-アミラーゼをコードするRAmy2A遺伝子が関係している可能性を本課題の中で示してきた。そこで、その機能解析に必要なタカナリでのRAmy2A遺伝子発現抑制系統の作出のため、アグロバクテリウム法による効率的なタカナリの形質転換手法を検討し、その確立に成功した。その手法を用いてタカナリのRAmy2A発現抑制系統を作出し、現在はその表現型解析を進めている。作物学当初の研究計画では,平成25年度までに,OsBAM2とOsBAM3のダブルノックダウン系統を用いて,両遺伝子の発現抑制がイネ葉鞘の出穂期以降のデンプン代謝に及ぼす影響を明らかにすることを目標としていた.現在までにOsBAM2とOsBAM3ダブルノックダウン系統の作出は終了しているが,まだ表現型の解析を進めているところである.よって,この点では当初の計画よりも若干遅れていることとなる.しかし,平成26年度に進める予定であったRAmy2A遺伝子のノックダウン系統の作出と,それを用いた解析を先んじて進めていることから,研究計画全体としてはおおむね順調に進んでいるといえる.また,日本型品種とインド型品種間でのデンプン分解関連酵素遺伝子の作用の違いについては当初の計画通りに進めており,本年度はインド型品種におけるノックダウン系統も利用して,解析を進めることができると考えている.OsBAM2とOsBAM3の両方が発現抑制されたノックダウン系統の選抜と育成が遅れている。その理由は、OsBAM3のノックダウンのためにOsBAM3の5'側非翻訳領域を含む配列をRNAiトリガーに用いたが、その領域では効果的なノックダウン系統が得られる確率が低いことが研究を進めて行く中でわかってきたため、RNAiトリガーに用いる配列を3'側非翻訳領域に変更したベクターを再度構築し直したからである。それらのベクターによる形質転換を進めているので、次年度には研究進捗の遅れを取り戻すことができると考えている。本研究課題最終年度の平成26年度では,OsBAM2とOsBAM3のダブルノックダウン系統を用いた解析を進めることにより,出穂期以降のイネ葉鞘におけるβ-アミラーゼ遺伝子,OsBAM2とOsBAM3の機能について明らかにする.また,OsBAM2とOsBAM3のプロモーター:GUS発現ベクターを用いた植物体において,OsBAM2とOsBAM3発現の組織特異性についてさらに詳細に解析する.また,OsBAM5ならびにOsBAM9の2つのβ- | KAKENHI-PROJECT-24580027 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24580027 |
大規模量子計算に基づく電子消滅法シミュレータの開発とナノ細孔構造解析への応用 | 本年度は、研究目的である陽電子消滅法シミュレータの開発について以下の成果を得た。平成21年度に開発した陽電子消滅法シミュレータについて、(1)電子密度分布の高速量子計算モジュール、(2)電子密度分布から細孔分布を可視化して容積を計算するモジュール、(3)陽電子ダイナミクスの計算モジュール、(4)陽電子寿命曲線計算および細孔径分布計算モジュール、を改良し精度の向上と操作性の向上を図った。また平成22年度の目的の一つであった実証試験として高分子分離膜系を対象としてを選択し、開発したシミュレータの適用を行った。実証試験では、膜モデルとして芳香族系ポリアミドの3量体3鎖からなる構造を、分子動力学法を用いて所定の密度になるようにアモルファス化することで作成した。この構造にシミュレータを適用し、ポジトロニウム(Ps)の寿命を算出した。シミュレータから得られた計算値は、実測値とほぼ同じオーダーであり、細孔径分布の実測値を良好に再現出来ることを確認した。また、膜密度を変化させた高分子膜も作成し、同様の寿命予測シミュレーションれを行った。その結果、膜密度の変化に伴い細孔径分布が変化し、その結果がPs寿命に反映されることを確認した。ここで開発した陽電子消滅法シミュレータを活用することで,陽電子消滅法の測定結果を詳細な構造モデルと対比させて議論することが可能となるとともに、分離膜のような微細孔をもつ材料のミクロ構造の妥当性を検証するためのモデリング技術としての利用が期待される。本年度は、研究目的である陽電子消滅法シミュレータの開発について以下の成果を得た。(1)新規な電子密度分布の高速量子計算モジュール:申請者はこれまで開発してきた高速化量子計算手法シミュレータをベースに、電子密度分布を高速に計算するモジュールを開発した。プログラムではまず、与えられた原子配置から分子軌道を計算し、その軌道情報から、三次元空間の電子密度の三次元マップを計算する。三次元マップは、0.2Å程度メッシュごとの電子密度情報を考慮し、その値を外部ファイルに出力する。(2)電子密度分布から細孔分布を可視化して容積を計算するモジュール:上記から算出される電子密度マップデータから、不定形な細孔を抽出し、細孔容積を算出できるプログラムを作成した。さらに、細孔容積を計算し、また、細孔形状を可視化できる、グラフィックツールも開発した。(3)陽電子ダイナミクスの計算モジュール:陽電子のような量子粒子の挙動を解くための経路積分モンテカルロ法プログラムを開発した。計算には陽電子と相互作用する電子密度分布が必要であるが、本シミュレータでは(1)によって"原子配置から正確に計算された"電子密度分布を利用することで、汎用性のあるシミュレータを構築した。(4)陽電子寿命曲線計算および細孔径分布計算モジュール:陽電子のpick-off減衰速度を、経路積分モンテカルロ法から求められた陽電子密度の空間分布から見積もるプログラムを作成した。さらに球形近似モデルを適用して細孔径分布を求めることができる。これにより陽電子消滅法寿命曲線が算出できるようになった。平成22年度は上記シミュレータの改良と実証試験を行う予定である。本年度は、研究目的である陽電子消滅法シミュレータの開発について以下の成果を得た。平成21年度に開発した陽電子消滅法シミュレータについて、(1)電子密度分布の高速量子計算モジュール、(2)電子密度分布から細孔分布を可視化して容積を計算するモジュール、(3)陽電子ダイナミクスの計算モジュール、(4)陽電子寿命曲線計算および細孔径分布計算モジュール、を改良し精度の向上と操作性の向上を図った。また平成22年度の目的の一つであった実証試験として高分子分離膜系を対象としてを選択し、開発したシミュレータの適用を行った。実証試験では、膜モデルとして芳香族系ポリアミドの3量体3鎖からなる構造を、分子動力学法を用いて所定の密度になるようにアモルファス化することで作成した。この構造にシミュレータを適用し、ポジトロニウム(Ps)の寿命を算出した。シミュレータから得られた計算値は、実測値とほぼ同じオーダーであり、細孔径分布の実測値を良好に再現出来ることを確認した。また、膜密度を変化させた高分子膜も作成し、同様の寿命予測シミュレーションれを行った。その結果、膜密度の変化に伴い細孔径分布が変化し、その結果がPs寿命に反映されることを確認した。ここで開発した陽電子消滅法シミュレータを活用することで,陽電子消滅法の測定結果を詳細な構造モデルと対比させて議論することが可能となるとともに、分離膜のような微細孔をもつ材料のミクロ構造の妥当性を検証するためのモデリング技術としての利用が期待される。 | KAKENHI-PROJECT-21656197 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21656197 |
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