title
stringlengths 0
199
| text
stringlengths 3
3.18k
| id
stringlengths 23
32
| url
stringlengths 56
65
|
---|---|---|---|
環境対応型潤滑油の天然海水混入条件下におけるトライボロジー特性 | 2013年12月19日に施行された米国環境保護庁(EPA)による船舶入港規制では,海水に接しているオイルを使用する全ての機器に環境に適合した潤滑油を使用しなければならないと明記されている.これにより船舶機器内のオイルに生分解性,非毒性,非生物濃縮性を有する環境対応型潤滑油(Environmentally Accepted lubricants:以下EALという)の使用が義務付けられた.このため,脂肪酸エステル系のEALが船尾管軸受の潤滑油として広く使用されるようになっている.一方,EALを使用するにあたっていくつかの問題が生じている.船尾管軸受などの機器内に海水が混入した場合,これらに使用されるEALが,加水分解を生じる可能性があるため,このような条件下におけるトライボロジー特性,特に摩擦・摩耗特性が,通常の使用条件下におけるそれと大きく異なる可能性がある.本研究では,船尾管軸受とプロペラ軸の間の潤滑部を対象に,それに使用されるEALに天然海水が混入した際のトライボロジー特性,特に摩擦特性を3ピンオンディスク摩擦試験機により解析し評価した.この試験装置では、試験部の上側に船尾管軸受材にて製作したディスク試験片を設置し,その下側に船舶用プロペラ軸材にて製作したピン試験片をしゅう動直径38mmの円周上に3つ配置する.試験部は潤滑油で満たされている.試験部の下側から油圧アクチュエータにより垂直力を負荷し,モーターにてディスク試験片を回転させることにより,両試験片の間にせん断力を負荷する.この際に生じる摩擦力をトルク検出部に設置されたひずみゲージにより得る.得られた結果を基に各種EALの摩擦特性を評価する.1)天然海水混入条件下での3ピンオンディスク摩擦試験結果での実験結果はばらつきが多く,ストライベック線図を用いて評価した場合,安定した実験結果を得ることが難しい状況であるが,この原因が突き止められていない.2)天然海水中でのEALが生分解性を起こすことが考えられるが,潤滑油の量が多いため(6リットルのEALに対して600cc),これらの確認が困難である.3)今後は、海水混入後,2週間,4週間,6週間経過後のEALおよび従来油のトライボロジー特性を解析することになっているが、これらの結果を十分にまとめられていない.以上を総合して,「やや遅れている」と評価した.次年度以降、主に以下を実施する.1)天然海水を本学練習船汐路丸にて、伊豆大島沖で採取予定する.2)天然海水混入条件下において、従来油と飽和エステル系EALの特性を解析評価する.3)得られた成果を、日本マリンエンジニアリング学会学術講演会等にて発表する.併せて日本機械学会に査読付き論文を投稿する.2013年12月19日に施行された米国環境保護庁(EPA)による船舶入港規制では,海水に接しているオイルを使用する全ての機器に環境に適合した潤滑油を使用しなければならないと明記されている.これにより船舶機器内のオイルに生分解性,非毒性,非生物濃縮性を有する環境対応型潤滑油(Environmentally Accepted lubricants:以下EALという)の使用が義務付けられた.このため,脂肪酸エステル系のEALが船尾管軸受の潤滑油として広く使用されるようになっている.一方,EALを使用するにあたっていくつかの問題が生じている.船尾管軸受などの機器内に海水が混入した場合,これらに使用されるEALが,加水分解を生じる可能性があるため,このような条件下におけるトライボロジー特性,特に摩擦・摩耗特性が,通常の使用条件下におけるそれと大きく異なる可能性がある.本研究では,船尾管軸受とプロペラ軸の間の潤滑部を対象に,それに使用されるEALに天然海水が混入した際のトライボロジー特性,特に摩擦特性を3ピンオンディスク摩擦試験機により解析し評価した.この試験装置では、試験部の上側に船尾管軸受材にて製作したディスク試験片を設置し,その下側に船舶用プロペラ軸材にて製作したピン試験片をしゅう動直径38mmの円周上に3つ配置する.試験部は潤滑油で満たされている.試験部の下側から油圧アクチュエータにより垂直力を負荷し,モーターにてディスク試験片を回転させることにより,両試験片の間にせん断力を負荷する.この際に生じる摩擦力をトルク検出部に設置されたひずみゲージにより得る.得られた結果を基に各種EALの摩擦特性を評価する.1)天然海水混入条件下での3ピンオンディスク摩擦試験結果での実験結果はばらつきが多く,ストライベック線図を用いて評価した場合,安定した実験結果を得ることが難しい状況であるが,この原因が突き止められていない.2)天然海水中でのEALが生分解性を起こすことが考えられるが,潤滑油の量が多いため(6リットルのEALに対して600cc),これらの確認が困難である.3)今後は、海水混入後,2週間,4週間,6週間経過後のEALおよび従来油のトライボロジー特性を解析することになっているが、これらの結果を十分にまとめられていない.以上を総合して,「やや遅れている」と評価した.次年度以降、主に以下を実施する.1)天然海水を本学練習船汐路丸にて、伊豆大島沖で採取予定する.2)天然海水混入条件下において、従来油と飽和エステル系EALの特性を解析評価する.3)得られた成果を、日本マリンエンジニアリング学会学術講演会等にて発表する.併せて日本機械学会に査読付き論文を投稿する.当初予定では,老朽化した油圧ユニットの交換経費を計上しているが,現在稼働している状況であるので,この交換作業を次年度以降に実施することとした.よって次年度使用経費が生じた.今後,装置の様子を見ながら交換作業を実施する予定である. | KAKENHI-PROJECT-18K04578 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K04578 |
機械的触覚刺激が皮質脊髄路の興奮性に及ぼす影響 | 運動療法と体性感覚入力を併用することで運動療法の介入効果を促進することが報告されている.そこで本研究の目的は,運動療法と併用するための最適な触覚刺激方法を確立するため,機械的触覚刺激による介入が皮質脊髄路の興奮性に及ぼす影響を明らかにすることとした.対象は健常成人14名であった.皮質脊髄路の興奮性指標は運動誘発電位(MEP)を用い,左大脳皮質一次運動野に対する経頭蓋磁気刺激により右第一背側骨間筋より導出した.体性感覚刺激には,疾患による使用制限が少ない機械的触覚刺激を用い,20分間の刺激を右示指先端に行った.刺激介入は5条件とし,1)単純刺激条件は,示指の指腹に設置した24本のピンを同時に突出させる条件,2)横複雑刺激条件は,示指に平行な縦6本の刺激ピン列が左右に1列ずつ移動する条件,3)擦刺激条件は,使用する縦6本のピンを固定し,機械制御により刺激プローブ自体が示指の指腹を左右に移動する条件,4)縦複雑刺激条件では,横6本の刺激ピン列が前後に1列ずつ移動する条件,5)ランダム刺激条件は,縦6本の刺激ピン列が横4列のうちいずれかの1列に突出する条件とした.MEP計測は,介入前,介入直後,介入5分後,介入10分後,介入15分後,介入20分後に各15波形を記録し,介入前後で振幅値の比較検討を行った.その結果,単純刺激条件では,MEPの有意な低下が認められた.一方,横複雑刺激,擦刺激,縦複雑刺激条件ではMEPの有意な増大が認められた.ランダム刺激条件では,MEPの有意な変化は認められなかった.これらの結果から,一定時間の機械的触覚刺激は皮質脊髄路の興奮性を変動させることが明らかとなり,その変動は機械的触覚刺激方法に依存して変動することが明らかとなった.翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。運動療法と体性感覚入力を併用することで運動療法の介入効果を促進することが報告されている.そこで本研究の目的は,運動療法と併用するための最適な触覚刺激方法を確立するため,機械的触覚刺激による介入が皮質脊髄路の興奮性に及ぼす影響を明らかにすることとした.対象は健常成人14名であった.皮質脊髄路の興奮性指標は運動誘発電位(MEP)を用い,左大脳皮質一次運動野に対する経頭蓋磁気刺激により右第一背側骨間筋より導出した.体性感覚刺激には,疾患による使用制限が少ない機械的触覚刺激を用い,20分間の刺激を右示指先端に行った.刺激介入は5条件とし,1)単純刺激条件は,示指の指腹に設置した24本のピンを同時に突出させる条件,2)横複雑刺激条件は,示指に平行な縦6本の刺激ピン列が左右に1列ずつ移動する条件,3)擦刺激条件は,使用する縦6本のピンを固定し,機械制御により刺激プローブ自体が示指の指腹を左右に移動する条件,4)縦複雑刺激条件では,横6本の刺激ピン列が前後に1列ずつ移動する条件,5)ランダム刺激条件は,縦6本の刺激ピン列が横4列のうちいずれかの1列に突出する条件とした.MEP計測は,介入前,介入直後,介入5分後,介入10分後,介入15分後,介入20分後に各15波形を記録し,介入前後で振幅値の比較検討を行った.その結果,単純刺激条件では,MEPの有意な低下が認められた.一方,横複雑刺激,擦刺激,縦複雑刺激条件ではMEPの有意な増大が認められた.ランダム刺激条件では,MEPの有意な変化は認められなかった.これらの結果から,一定時間の機械的触覚刺激は皮質脊髄路の興奮性を変動させることが明らかとなり,その変動は機械的触覚刺激方法に依存して変動することが明らかとなった.翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-16H07303 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H07303 |
脳細胞の生存・機能維持におけるフリーラジカルの関与 | 脳組織中のフリーラジカル反応を血液脳関門透過性ニトロキシドラジカルをプローブとした生体計測電子スピン共鳴(ESR)法により非侵襲的に直接評価することを目的として、次の研究を行った。1.血液脳関門を通過しやすく、脳内で還元作用を受けにくいプローブを開発する必要から、7種類の脂溶性プローブを合成した。マウスに尾静脈より投与したところ、ピロリジン骨格を持ち置換基にエステル構造を有するもの(PROXYLエステル)が、脳への集積性は若干低いものの、比較的脳内の還元作用を受けにくかった。2.ナイロン糸の挿入によりラット中大脳動脈の閉塞を4時間行ったのち再潅流した。その1分後にメチルエステル構造を持つPROXYLを尾静脈より投与し、頭部におけるシグナルを生体計測ESRで測定した。ESRシグナルは時間と共に減少したが、減少速度は偽手術群に比べ、虚血再潅流群で速くなる傾向にあった。また、これと平行して、プローブの頚動脈投与により脳局所の情報を得る方法を開発し、1時間中大脳動脈を閉塞後、再潅流してプローブの消失速度を調べたところ、消失速度が顕著に増加した。この消失速度の増加は、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)やカタラーゼの投与で抑えられ、活性酸素生成に関与した現象であることが示唆された。3.虚血再潅流時のプローブの消失速度増加に及ぼす内在性SODの影響を調べるため、SOD遺伝子導入マウスの使用を検討した。SOD遺伝子導入マウスに関する基礎データを収集するため、各臓器のSOD活性を測定したところ、脳のSOD活性は非導入マウスの2倍であった。今後、虚血再潅流時における消失速度変化の程度を調べ、脳におけるラジカル反応へのSODの影響を検討する予定である。脳組織中のフリーラジカル反応を血液脳関門透過性ニトロキシドラジカルをプローブとした生体計測電子スピン共鳴(ESR)法により非侵襲的に直接評価することを目的として、次の研究を行った。1.血液脳関門を通過しやすく、脳内で還元作用を受けにくいプローブを開発する必要から、7種類の脂溶性プローブを合成した。マウスに尾静脈より投与したところ、ピロリジン骨格を持ち置換基にエステル構造を有するもの(PROXYLエステル)が、脳への集積性は若干低いものの、比較的脳内の還元作用を受けにくかった。2.ナイロン糸の挿入によりラット中大脳動脈の閉塞を4時間行ったのち再潅流した。その1分後にメチルエステル構造を持つPROXYLを尾静脈より投与し、頭部におけるシグナルを生体計測ESRで測定した。ESRシグナルは時間と共に減少したが、減少速度は偽手術群に比べ、虚血再潅流群で速くなる傾向にあった。また、これと平行して、プローブの頚動脈投与により脳局所の情報を得る方法を開発し、1時間中大脳動脈を閉塞後、再潅流してプローブの消失速度を調べたところ、消失速度が顕著に増加した。この消失速度の増加は、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)やカタラーゼの投与で抑えられ、活性酸素生成に関与した現象であることが示唆された。3.虚血再潅流時のプローブの消失速度増加に及ぼす内在性SODの影響を調べるため、SOD遺伝子導入マウスの使用を検討した。SOD遺伝子導入マウスに関する基礎データを収集するため、各臓器のSOD活性を測定したところ、脳のSOD活性は非導入マウスの2倍であった。今後、虚血再潅流時における消失速度変化の程度を調べ、脳におけるラジカル反応へのSODの影響を検討する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-08256232 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08256232 |
scarlessな創傷治癒を目指した幹細胞治療 | 本研究で、ヒト臍帯血/臍帯組織(Wharton's jelly)由来間葉系幹細胞の分離・培養に成功した。2種類の間葉系幹細胞は、増殖能、形態、炎症・線維化に関わる遺伝子発現に差がみられ、臍帯血由来間葉系幹細胞がより抗炎症作用が高く瘢痕を抑制する作用を有する可能性が示唆された。しかしながら、ヌードマウス皮膚創傷治癒モデルを使用した間葉系幹細胞移植実験では最終的に形成される瘢痕の状態(大きさ・膠原線維の沈着の状態)の状態には差がみられず、投与細胞数や投与方法など更なる検討が必要と思われた。本研究で、ヒト臍帯血/臍帯組織(Wharton's jelly)由来間葉系幹細胞の分離・培養に成功した。2種類の間葉系幹細胞は、増殖能、形態、炎症・線維化に関わる遺伝子発現に差がみられ、臍帯血由来間葉系幹細胞がより抗炎症作用が高く瘢痕を抑制する作用を有する可能性が示唆された。しかしながら、ヌードマウス皮膚創傷治癒モデルを使用した間葉系幹細胞移植実験では最終的に形成される瘢痕の状態(大きさ・膠原線維の沈着の状態)の状態には差がみられず、投与細胞数や投与方法など更なる検討が必要と思われた。平成25年度実施概要;幹細胞採取・保存:帝王切開後の臍帯血・臍帯組織を採取(臍帯血13検体、臍帯組織9検体)した。それぞれより、間葉系幹細胞を培養するとともに臍帯血からはMACS社磁気細胞分離装置を用いCD34陽性細胞を採取し、凍結保存した。臍帯組織由来間葉系細胞について、フローサイトメトリーを実施しCD90、CD105陽性、CD34、CD45陰性を確認した。細胞解析:採取した2種類の間葉系幹細胞をQiagen社RT2Profiler PCR Arraysを用いて、比較を行い細胞間の遺伝子発現に変化を認めた。今後、検体数を増やし検討を行い、細胞間の遺伝子発現の状況を確認し、タンパク質の発現状況など追加で検討を行う予定である。動物実験:ヌードマウス背部皮膚に4か所作成した5mm大の皮膚全層欠損に、2回継代した臍帯血もしくは臍帯組織由来の間葉系幹細胞を1.0×10*5個をそれぞれに局所注射した。創傷作成後、3日目、7日目。14日目の肉芽を採取し、組織染色(HE染色、MASSON染色、F4/80・αSMA・CD31などの免疫染色)、組織からのRNA・タンパク質の抽出を行った。その際に、RNA抽出の際に収量が安定しない・分解される、組織染色でうまく目的とする抗体が検出できないなどの問題があったため、条件検討を行いRNA抽出・免疫組織染色の方法を確立してきた。今後、RNA、タンパク質の定量や組織染色を行い、組織幹細胞移植が創傷治癒に与える影響について検討を加える予定である。これまでに、臍帯組織8検体、臍帯血14検体より間葉系幹細胞の分離培養を実施し、細胞を得た。間葉系幹細胞が瘢痕形成に与える影響を評価するため線維化関連のRNA profiler arrayやFACSによる解析を行った。間葉系幹細胞マーカーの発現(CD44+, CD73+, CD90+, CD105+, CD34-, CD45-)を確認し2種類の間葉系幹細胞の細胞増殖能・形態、遺伝子発現に差異がみられることを確認した。実際の生体での皮膚創傷治癒・瘢痕形成に影響を調べるため、ヌードマウス創傷治癒(皮膚全層欠損)モデルに、臍帯血・臍帯組織由来間葉系幹細胞移植(皮下注射による直接注入)を行った。組織・生物分子学的に解析し、細胞移植を行わなかった群と比較して、臍帯血/臍帯組織間葉系幹細胞とも細胞移植をを行った群での瘢痕の抑制・促進、創閉鎖に関して有意な変化はみられなかった。創傷治癒の増殖期においては、臍帯血・臍帯組織由来幹細胞はコラーゲン合成は活性化し、創内の炎症関連遺伝子の発現を促進するが、同時にMMP2、PLAUなどの細胞外マトリックスのリモデリングに関わる遺伝子の発現も高くなる傾向であった。毛包など付属器の再生はみられなかった。以上より、本研究においては臍帯血・臍帯組織由来間葉系幹細胞の性質には差がみられるものの、ヌードマウスを用いた成体への細胞移植治療では瘢痕抑制効果は見られなかった。形成外科これまでに、臨床検体(臍帯血・臍帯組織)からの幹細胞の培養に成功している。計画書では、H25年度中に細胞特性の解析を行う予定であったが、細胞資源が限られているため、動物実験と平行して実験を行う必要があり解析が終了していない。ただし、H26年度に開始予定であった動物をH25年度に開始しており、進展状況としては概ね順調である。今後は、マウスへの幹細胞組織移植を行い、組織染色を中心に瘢痕の形態評価を行うとともに、炎症・線維化関連因子を免疫組織染色、遺伝子・タンパク質発現の定量を行い、幹細胞が創傷治癒に与える影響について、特に線維化という観点から評価を行っていく。また、同様に炎症・線維化 | KAKENHI-PROJECT-25861690 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25861690 |
scarlessな創傷治癒を目指した幹細胞治療 | 関連遺伝子の発現について各幹細胞の特性を評価し、総合的に瘢痕抑制に有利に働く幹細胞は存在するのか、存在するのであればどの細胞が最も優れているのか評価する。本年度中に、実験を全て終了し、遅くとも来年度には結果を論文にまとめる予定である。申請書作成時には、平成25年度中に、幹細胞の細胞特性を遺伝子発現の比較やフローサイトメトリーを用いて確認する予定であった。しかし、幹細胞数が限られており動物実験と並行して実験を行う必要があり、平成26年度に動物実験と同時に行うこととした。そのために平成25年度の購入を予定していた抗体などの物品を購入していないものがあり、次年度使用額が生じた。平成26年度は、動物実験と並行して細胞特性の評価を行う予定である。そのために、細胞表面マーカーの測定や細胞レベルでの遺伝子・タンパク質発現を評価するための、細胞培養のための消耗品、抗体、各種試薬が必要となる。また、動物実験でマウスの購入・飼育費、組織染色やRNA・タンパク質定量のための各種試薬購入費が必要となる。また、本年度は、成果を発表するための学会参加費、論文校正費がそれぞれ必要となる見込みである。 | KAKENHI-PROJECT-25861690 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25861690 |
胃癌細胞の非平衡形状ゆらぎのもたらす時空間秩序と転移の相関 | 本研究では、生命現象を動的な非平衡開放系として捉え、細胞を「自己制御する動的システム」として扱う、という非平衡統計力学からの普遍的アプローチ(アクティブマターの物理)の枠組みの中で、「疾患の物理学」という新分野を開拓する。申請者が確立した"Supported Membrane"という細胞表面の実空間モデルを駆使して、細胞およびその集団の時空間発展や自己秩序化現象を、非平衡物理学の視点から解明してきた。ここででは悪性上皮性腫瘍である胃腺がんに着目する。これまでの2年間で、経代培養が困難なヒト胃腺がん細胞などの実験系を確立し、進行度の浅い細胞株2種についてサロゲート細胞モデル表面との接着面積の形態ダイナミクスと遊走の計測・解析に成功した。究極の目標としては、接着面の形状ゆらぎの時空間パターンとがんの進行の相関を明らかにすることを目指す。初年度H26年度は経代培養の困難なヒト胃腺がん細胞や、細胞膜の実空間モデルの再構成Eカドヘリンによる機能化といった実験系の確立に集中した。2年目に当たるH27年度に入って進行度の浅い胃腺がん二株について細胞接着面の形状揺らぎと遊走の相関をタイムラプス顕微鏡で追跡することに成功した。タイムラプス機能を顕微鏡に追加することで接着面の形態ダイナミクスをいくつかの細胞で並行に追跡することが可能になり、実験のスループットが格段に向上した。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。2014年度は接着分子を担持した細胞膜モデルを構築し、技術的に困難であるヒト胃腺癌細胞株(3種)の継代培養の最適化を行った。並行して細胞接着力計測・解析装置を本研究の用途のために改善し、細胞の形状ゆらぎと遊走運動の解析をヒト赤血球(成人・新生児)を用いて行った。本研究で用いる、ヒスチジンでタグ付けされた接着分子カドヘリンの再構成タンパク質を、ガラス基板上に作製したSupported Membraneに結合させ、その均一性を蛍光顕微鏡やX線鏡面反射で確認し、マスターコピー細胞を用いて選択的な接着を確認した。ヒト胃腺癌細胞株(3種)は理研細胞バンクから購入し、これまでに数種類の異なる培地や培養条件を試した。当初計画していたよりも細胞を安定に継代培養する条件の絞込みに時間がかかったため、以下の項で詳述するように物理学的なリードアウトの確立は現在進行中のほかの細胞系を用いて行うこととなった。先述の胃腺癌系の細胞株の確立と技術面の最適化と並行して、細胞の形状ゆらぎの解析を行った。ハイデルベルク大学・大学病院新生児科のJ. Poeschl教授との協力のもと、ゆらぎの平均2乗振幅のフーリエ変換から新生児の赤血球の力学特性を初めて定量計測し、これを成人の赤血球の値と比較した。従来の人工膜の力学モデルと異なり、細胞骨格と膜のカップリング強度を入れて解析を行うことにより、これまで細胞の「変形率(アスペクト比)」などの現象論的記述にとどまっていた、血球細胞のシェア弾性の定量に成功した。微小流路(Diffusion Chamber)との組み合わせにより、赤血球の形状ゆらぎを毒素ストレスの前後で定量比較することに成功しただけでなく、臨床試験中の抗敗血症薬剤の機能の評価にも成功した。本研究では、生命現象を動的な非平衡開放系として捉え、細胞を「自己制御する動的システム」として扱う、という非平衡統計力学からの普遍的アプローチ(アクティブマターの物理)の枠組みの中で、「疾患の物理学」という新分野を開拓する。申請者が確立した"Supported Membrane"という細胞表面の実空間モデルを駆使して、細胞およびその集団の時空間発展や自己秩序化現象を、非平衡物理学の視点から解明してきた。ここででは悪性上皮性腫瘍である胃腺がんに着目する。これまでの2年間で、経代培養が困難なヒト胃腺がん細胞などの実験系を確立し、進行度の浅い細胞株2種についてサロゲート細胞モデル表面との接着面積の形態ダイナミクスと遊走の計測・解析に成功した。究極の目標としては、接着面の形状ゆらぎの時空間パターンとがんの進行の相関を明らかにすることを目指す。初年度H26年度は経代培養の困難なヒト胃腺がん細胞や、細胞膜の実空間モデルの再構成Eカドヘリンによる機能化といった実験系の確立に集中した。2年目に当たるH27年度に入って進行度の浅い胃腺がん二株について細胞接着面の形状揺らぎと遊走の相関をタイムラプス顕微鏡で追跡することに成功した。タイムラプス機能を顕微鏡に追加することで接着面の形態ダイナミクスをいくつかの細胞で並行に追跡することが可能になり、実験のスループットが格段に向上した。当初計画していたよりもがん細胞を安定に継代培養する条件の絞込みに時間がかかったため、物理学的なリードアウトの確立は現在進行中のほかの細胞系を用いて行うこととなった。一方で揺らぎ解析については、ハイデルベルク大学・大学病院新生児科のJ. Poeschl教授とのヒト赤血球(成人・新生児)を用いた敗血症モデルの研究を行った。細胞骨格と膜のカップリング強度を入れた解析を導入し、血球細胞のシェア弾性の定量評価に成功し、論文の形でまとめることが出来た(Ito, ...., Poeschl, Tanaka, J. Phys. Chem. B, accepted with minor revisions)。27年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PUBLICLY-26103521 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-26103521 |
胃癌細胞の非平衡形状ゆらぎのもたらす時空間秩序と転移の相関 | 細胞性粘菌などと異なり、葉状仮足を広げた細胞、なかでもがん細胞の形状ダイナミクスを追跡することは難しい。当研究室で開発した、表面近傍の高さプロファイルに高感度で非侵襲的な反射干渉顕微鏡を用いて解析する手法(Kaindl,.. Tanaka, PLoSONE (2012), Burk,.. Tanaka, Ho, Sci. Rep. (2015))を駆使して、細胞の形状ダイナミクスの時空間秩序を精密に解析する。昨年度に確立した、接着分子(カドヘリン)の表面密度を精密に制御したSupported Membraneを用いて、胃腺がんの平常ゆらぎのモード解析と運動の解析を行い、がんの進行に特徴的なパターンを抽出することを目指す。また、胃腺がんの転移に特有の化学誘導物質(ケモカイン)として、本研究では後腹膜、胃大網から放出され胃がん細胞の走化性、転移・生存・がん性を促進するとされる、CXCL12に焦点を当てる。申請者のグループでは、これまで溶解性のCXCL12が造血幹細胞のエネルギー散逸に与える影響を形状ゆらぎのパワースペクトル解析から明らかにした(Burk,.. Tanaka, Ho, Sci. Rep. (2015))ので、ここでは溶液中のCXCL12濃度が、進行度(転移度)の異なる癌細胞の接着と形状揺らぎ、そして遊走の時空間パターンに与える影響を、定量解析する。27年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PUBLICLY-26103521 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-26103521 |
機能性に優れたウレタン系軟性裏装材の開発と臨床応用に関する研究 | 超高齢社会の到来に伴い有床義歯を使用する患者の中には,咀嚼時の疼痛の緩和や顎堤の保護等の目的で各種の軟性裏装材を必要とする場合も多い.しかし,いずれの材料も長期間の耐久性に乏しく劣化が進んでいく.そこで研究代表者らは幅広い粘性を示すウレタンオリゴマーを原材料とする耐久性や機能性に優れた軟性裏装材の開発に着手した.各種試作ウレタン系軟性裏装材料の歯科理工学的物性試験を行い,市販の軟性裏装材と比較してもより優れた物性を示す材料も幾つか見受けられ,臨床応用の可能性が示唆された.また材料の開発に先立って,義歯使用者の口腔内感覚に関するアンケート調査を実施した.超高齢社会の到来に伴い有床義歯を使用する患者の中には,咀嚼時の疼痛の緩和や顎堤の保護等の目的で各種の軟性裏装材を必要とする場合も多い.しかし,いずれの材料も長期間の耐久性に乏しく劣化が進んでいく.そこで研究代表者らは幅広い粘性を示すウレタンオリゴマーを原材料とする耐久性や機能性に優れた軟性裏装材の開発に着手した.各種試作ウレタン系軟性裏装材料の歯科理工学的物性試験を行い,市販の軟性裏装材と比較してもより優れた物性を示す材料も幾つか見受けられ,臨床応用の可能性が示唆された.また材料の開発に先立って,義歯使用者の口腔内感覚に関するアンケート調査を実施した.ウレタン系オリゴマーを主原料として,耐久性や装着感に優れた軟性裏装材を開発するために市販されている軟質ウレタンオリゴマーの中から,軟性裏装材として使用可能な適度の粘性(成形性)と流動性を持つ材料を幾つか選択した.粘度測定はE型回転粘度型を使用した.また自転・公転式ミキサーを使用して,エチルメタクリレート(EMA)やブチルメタクリレート(BMA)を添加して意図的な粘度の調整が可能かどうかを検討した.粘度の高い原料に対してEMAやBMAを20wt%程度添加することで混合試料は大幅な粘度低下を示すものもあり,ウレタン系混合材料の粘度調整が可能であることが明らかになった.また光増感剤と還元剤を添加し,光重合させた円柱状試験片の圧縮弾性率を測定した.その結果,臨床応用可能な弾性率を有する材料が幾つか選択できることが示唆された.患者サイドの立場から判断した機能性に優れる軟性裏装材の開発に繋げる目的で,軟性裏装材の物性に関して臨床的なデータを求めるために臨床試験を実施した.現在市販されている各種軟性裏装材について実際に総義歯を使用する患者に被験者として協力を依頼し,咀嚼官能試験を行った.義歯のみの場合と各種軟性裏装材を裏装した場合とで各種の口腔内感覚に関して被験者にアンケート調査を行った.得られたデータより軟性裏装材のレオロジー的物性の相違が口腔内感覚に及ぼす影響に関して検討を行った.その結果,裏装材の硬度や弾性率は比較的小さい方が被験者の口腔内の違和感は小さく義歯の装着感も良好であるという可能性が示唆された.得られた知見は平成21年度第54回日本歯科理工学会学術講演会において発表を行った.昨年度に続き,ウレタン系オリゴマーを主原料とした耐久性や装着感に優れた軟性裏装材を開発するために,各種軟質ウレタンオリゴマーの基礎的な物性を測定し,軟性裏装材として使用可能と期待される材料を幾つか選択した.各ウレタンアクリレート材料に光増感剤(カンファキノン)と還元剤(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)をそれぞれ0.5wt%添加し光照射後,重合体の残留モノマー量を測定した.未重合モノマーが多量に残留すると,重合体の機械的強度が低下するだけでなく,歯科用材料として口腔内で使用することを想定した場合,口腔内に溶出する可能性もあり生体に対する安全性の観点からも望ましくない.測定の結果,多くの材料は残留モノマーが15%以下で中には2%以下となる有望な材料も見受けられた.反面,半分近く残留物が認められる材料もあり,この材料は重合方法を再検討する必要があると思われた患者サイドの立場から機能性に優れる軟性裏装材の開発に繋げる目的で,当科で総義歯を作製しアンケート調査に同意を得た患者を被験者として,今年度も継続して臨床研究を実施した.本臨床研究は,鹿児島大学病院臨床研究倫理委員会の承認を得ているものである.市販の各種軟性裏装材を応用して,裏装材のレオロジー的物性の相違および裏装材の厚さの相違が,被験者の口腔内感覚に及ぼす影響に関して検討を行った.その結果,裏装材の硬さや弾性率は小さい方が被験者の義歯の装着感は良好で,疼痛緩和の効果も期待される可能性が示唆された.一方,裏装材の厚さによる影響はほとんど認められなかった.得られた知見は平成22年度第119回日本補綴歯科学会学術大会(東京ビッグサイト)において発表を行った昨年度から継続して,各種多官能性ウレタンアクリレートオリゴマーを主原料とする各種試作試料の歯科理工学的物性の評価を行った.圧縮弾性率,表面硬さ等の物性試験を行った結果,現在市販されている軟性裏装材と近似した値を示す材料も幾つか見受けられ,新しいタイプの軟性裏装材として臨床応用できる可能性が示唆された.また硬化後の軟性裏装材表面に塗布する表面処理材に注目した. | KAKENHI-PROJECT-21592462 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21592462 |
機能性に優れたウレタン系軟性裏装材の開発と臨床応用に関する研究 | 実際に表面処理材を応用している市販の軟性裏装材に関して,各種表面処理材の有効性を検証するために軟性裏装材と表面処理材間の接着強さを測定した.多くの材料において,軟性裏装材と表面処理材間の接着強さは,軟性裏装材とアクリル義歯床間の接着強さおよび裏装材自体の強度より大きく,表面処理材を有効に応用すれば軟性裏装材の表面滑沢化や耐久性向上に大きく寄与することが示唆された.これらの研究成果は,第30回日本接着歯学会学術大会において発表を行った.今後,試作ウレタン系軟性裏装材を用いても同様の研究を行い,各種表面処理材と各種試作ウレタン系軟性裏装材間およびアクリル義歯床間での接着耐久性を評価し,臨床的に有効な組み合せを選定していく予定である.また患者サイドの立場から判断した機能性に優れる軟性裏装材の物性を決定するために,鹿児島大学病院臨床倫理委員会の承認を得たうえで継続して臨床試験も実施した.総義歯装着患者にアンケート調査を実施して,実際に患者が好む硬さや弾性率等に関しての臨床に即したデータを収集した.機能的で耐久性に優れた軟性裏装材の開発を目的として,昨年度から継続して各種多官能性ウレタンアクリレートオリゴマーを主原料とする各種試作試料の歯科理工学的物性の評価を行った.軟性裏装材を口腔内で長期間使用可能とするには,裏装材とアクリル床間での接着耐久性が求められる.円盤状に光重合した裏装材試料をアクリルレジンで挟み,引張圧縮試験機を用い引張試験を行い両者間の接着強さを測定した.現在市販されている裏装材とアクリルレジン間の接着強さと近似した値を示す材料も幾つか見受けられ,新しいタイプの軟性裏装材として臨床応用できる可能性が示唆された.また市販のアクリル系軟性裏装材の中には表面滑沢化や耐久性向上の名目で表面処理材を塗布するタイプが幾つかある.具体的に各種表面処理材の有効性を検証するために表面処理材の応用が軟性裏装材の機械的性質に及ぼす影響を検討した.市販の各種軟性裏装材に表面処理材塗布後,引張圧縮試験機を用い引張試験を行い各裏装材の引張強さを測定した.表面処理材を応用しない場合と比較して,試料が破断するまでの伸びが低下する材料も幾つか見受けられたが,ほとんどの材料で引張強さは有意に向上した.この結果から試作ウレタン系軟性裏装材に関しても,表面処理材を適切に応用することによって軟性裏装材の耐久性向上に寄与することが示唆された.これらの研究成果は,第31回日本接着歯学会学術大会(日本歯科大学生命歯学部・東京)においてポスター発表を行った.これまでの基礎的な理工学的物性を評価する研究で軟性裏装材として有望な試作ウレタン系材料を幾つか選定できた.今後長期的な耐久性の評価等も行い,実際に総義歯装着患者から得られたアンケート結果等も考慮に入れ最終的に臨床応用可能な機能的に優れたウレタン系軟性裏装材料を開発したい.これまでに各種多官能性ウレタンアクリレートオリゴマーを主原料とする各種試作試料の歯科理工学的物性の評価を行った結果,物性的に現在市販されている軟性裏装材と同等およびそれ以上の値を示す材料も幾つか見受けられた.ウレタン系の軟性裏装材が,新しいタイプの軟性裏装材として臨床応用できる可能性が示されている.24年度が最終年度であるため、記入しない。これまでに実施してきた総義歯装着患者に対するアンケート調査による臨床研究で,患者サイドの立場から判断した軟性裏装材の具備すべき理工学的物性に関する基礎的なデータは,ほぼ収集されたと思われる.今後,これらの得られたデータを参考に装着感に優れ機能的な新しいタイプの軟性裏装材の開発を目標に,試作ウレタン系軟性裏装材の実用化に向けての研究を推進していく予定である.24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-21592462 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21592462 |
レバノン共和国所在壁画地下墓の保存修復研究(Ⅱ) | 平成25・26年度も中東情勢は安定せず現地調査を中止した。それに換え25年度はレバノンとイタリアおよび国内の研究者で研究会を開催し研究の経過・成果・課題について報告と討論を行い、26年度は報告書の原稿を執筆した。ブルジュ・アル・シャマリT.01ーI地下墓は碑文から紀元196/197年にリューシスのために築造され、孔雀・魚・パン・ワイン壺などの壁画から死者の平安を祈る葬送観念、炭素14年代測定、出土遺物の材質分析などの人文科学と自然科学の学際研究によりレバノン古代史を明らかにした。また温度・湿度・微生物など地下墓環境・壁画の修復は文化財保存の論理と技術の移転も行い大きな国際貢献ができた。平成25・26年度も中東情勢は安定せず現地調査を中止した。それに換え25年度はレバノンとイタリアおよび国内の研究者で研究会を開催し研究の経過・成果・課題について報告と討論を行い、26年度は報告書の原稿を執筆した。ブルジュ・アル・シャマリT.01ーI地下墓は碑文から紀元196/197年にリューシスのために築造され、孔雀・魚・パン・ワイン壺などの壁画から死者の平安を祈る葬送観念、炭素14年代測定、出土遺物の材質分析などの人文科学と自然科学の学際研究によりレバノン古代史を明らかにした。また温度・湿度・微生物など地下墓環境・壁画の修復は文化財保存の論理と技術の移転も行い大きな国際貢献ができた。レバノン共和国ティール市郊外のブルジュ・アル。シャマリに所在する地下墓T.01の修復研究の2年目を実施した。T.01地下墓は幅約5m、奥行約3m、高さ約2mの墓室のし東西南北の四壁および天井に、孔雀、鳥、魚、肉、パン、壼、草花などの絵とともにギリシャ語の碑文が記されている。絵は赤・茶・緑・黄・黒などに鮮やかに彩色され、往時の地下墓の華やかな雰意気を髣髴とさせる。2009年度の調査によって、壼、ランプ、ガラスなどの遺物とともに、モザイク床に記されたギリシャ語碑文から、地下墓T.01はティール歴322年すなわち紀元196/197年に築造されたことが判明している。大きな発見があった反面、壁画の保存環境は、本研究の進める調査が原因となったと思われる温度・湿度の激変によって危ぶまれる状況となった。2010年度は、地下墓T.01の壁画の現状調査とクリーニング、応急的な剥落防止と強化処現を行うとともに、温度、湿度、照度、紫外線強度、大気汚染濃度などの継続観測とともに、カビの調査も実施し、壁画保存環境の改善を目指した研究を行った。さらに、地下墓T.01の周辺地表部の調査、前年度出土の土器、人骨などの実測調査なども合わせ行った。地下墓墓室内の壁画調査では、赤外線写真撮影とクリーニングによって、南壁の碑文"さらばリューシス誰だって死ぬのだから"の碑文の下にリューシスと思われる肖像が描かれていることが判明、また、西壁の孔雀は足で草の茎を踏みしめ、北壁の逆さずりの鳥の口からは血がしたたり落ち、東壁の尖底の壼は三脚台によって立てられて、階段両壁にも草木の絵が描かれていることが判明した。人骨の鑑定では、床の掘り込み石棺墓ごとに性別、年齢、体格などが推測され、被葬者を具体的にイメージすることが可能となってきた。壁画保存環境の改善は地下墓の地表上部を断熱性の高いジオテキスタイルで覆い、さらに小石のバラスを510cmの厚さで覆うことによって、墓室の温度の日変化を2°C以内に、湿度は90100%の調査開始以前の環境に戻すことができ、壁画保存の目途が立った。地表部の調査では、地下墓の東側に5基の掘り込み石棺墓を発見し、未盗掘の石棺から、牧羊神・PANの土製マスクや260個に及ぶガラス玉、コイン、貝殻などを発見し、被葬者の性格や年代を研究する手がかりを得ることができた。ローマ時代のティール都市遺跡に近按するブルジュ・アル・シャマリの集落の性格を考察するうえで大きな成果である。レバノン共和国ブルジュ・アル・シャマリT.01遺跡の壁画地下墓T.01-Iの保存修復は2年目を迎えた。四壁と天井に孔雀と食用の鳥・魚・肉塊・パン・ワイン壺・オリーブ壺、墓主リューシスの肖像と碑文、草花など壁画が描かれているが、壁画損傷状況の把握、岩盤の樹脂含浸補強、壁画損傷部のモルタル補強と剥落防止、壁画のクリーニングを実施し、保存・修復処置のおよそ30パーセントを終えた。クリーニングにより南壁のギリシャ語碑文"さらばリューシス誰だって死ぬのだから"の下方の壁画がリューシスの肖像である、赤外線写真によって孔雀が草の茎を踏みつけている、食用の逆さ吊りの鳥の口からは血が滴り落ちている、などを明らかにした。地下墓壁画の保存環境調査は、データロガによる墓室内外の温湿度、大気汚染のほか現地調査時の照度・紫外線強度・二酸化炭素濃度を測定し、壁画保存の適正環境策定のデータを収集した。また、調査地区を南に1m×8mの拡張し、既知の地下墓(T.01-I)に隣接して地下墓(T.01-II)を発見した。 | KAKENHI-PROJECT-22251001 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22251001 |
レバノン共和国所在壁画地下墓の保存修復研究(Ⅱ) | 本年のT.01-II地下墓調査は階段下部と墓室入口のみであり、その全容は詳らかではないが、階段や入口の造りや、T.01-I地下墓階段右壁がTD1」1の墓室奥壁の一部を破壊して造っていることからTO1-1(ティール暦322年=西暦196/197年の築造)に先行することがわかる。またT.01-IIの階段下部発見のアンフォラ底部破片は、T.01-Iの壁画のアンフォラより古形であることからも首肯できる。'T.01-IIの全容は次年度明らかにする。T.01-Iは美しい壁画が描かれ、墓室の横長プラン、床の掘込石棺など、近隣の地下墓形態とは異にするところが多く、古代ローマ都市ティールの中心とその周辺にあたるT.01遺跡の所在するブルジュ・アル・シャマリ、すなわちフェニキアの文化をより強く残す地区との比較によって古代レバノンの実相に迫りたい。2012年度はレバノン南部ティール市の本調査利用のホテル・レストランの爆破事件、調査地ブルジュ・アリ・シャマリ地区への沿道爆破事件等があり、やむを得ず現地調査・修復を延期した。これに代わって、イタリア、エジプトの壁画保存の現状と修復の調査を行い、2011年度までの調査と修復の成果研究会を開催するとともに、レバノン考古総局の承認を得て持ち帰ったガラス・壁画片・モザイク片等の資料の機器分析および写真・図の整理等奈良大学で実施可能な研究を行った。イタリアおよびエジプトにおける調査ではレバノン壁画地下墓と同時代の地下墓・壁画・出土遺物について遺跡・博物館を訪ね調査した。両国に於いて発掘調査後の壁画の適正な保存環境の保持は困難を極め、空調による完全環境管理を行うか、1800年間保持してきた自然環境下に戻すかの選択に迫られている。また、壁画の強化・修復についても従前のように全面的に合成樹脂で行うことはかえって壁画の損傷を招く恐れがあるために、最小限度の保存処理・修復に止めていることは、本研究の壁画保存の基本理念・判断と合致している。研究会は日本側調査参加メンバー10名とイタリア壁画修復家が参加し、ブルジュ・アル・シャマリT.01遺跡ならびにT.01-I壁画地下墓、H2堀込石棺の遺構・遺物について各メンバーの専門的立場から検討を加え議論を行った。その結果、T.01-I壁画地下墓は紀元196・197年にリューシスなる人物のために築造され、紀元4世紀まで墓地として使用され続けられたこと、近隣の地下墓墓室が正方形プランであるのとは違い横長プランであることにこの地の特異性が見られること、地上のH2堀込石棺墓のGod-Panマスクと260個におよぶ出土遺物からは地下墓被葬者に従属する牧羊を営む人物が埋葬され、ローマ時代におけるこの地の社会構造が推測されることなどを明らかにすることができた。本研究の最終年度である平成25年度も、レバノン共和国は中東の政変による難民流入などにより国内情勢が不安定になったために現地調査を断念し、レバノンおよび国内の研究協力者が奈良に集って研究会を開催し、研究経過の検証、研究の成果、今後の課題について発表と討論を行い、研究費を繰越した平成26年度にその成果を報告書に纏めた。本研究の対象であるレバノン国ティール市近郊のブルジュ・アル・シャマリT.01遺跡のローマ時代地下墓の修復研究では、保存科学・保存修復学・考古学・美学美術・歴史学などの人文科学と形質人類学・年代測定学・大気環境学・微生物学・測量学などの自然科学との学際研究を展開し稀有な成果を見た。すなわちT.01-Iの地下墓はモザイク床と壁面の碑文解読から西暦196/197年にリューシスのために築造されたこと、孔雀・魚・鳥・草花・肉・パン・オリーブ壺・ワイン壺・リューシスの肖像などの壁画の発見とそれらが1800年もの永い間ほぼ完全に守られてきた環境、壁画顔料や壁面漆喰の機器分析による材質と描写技法の解明、それぞれの絵画の示す亡き人への思い、漆喰モルタルや樹脂を使った壁画の保存修復の試行と技術の確立、人骨の炭素 | KAKENHI-PROJECT-22251001 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22251001 |
超新星爆発イベントにおけるγプロセス元素合成パターンの研究 | 鉄よりも重い元素の起源とされるrプロセス元素合成が宇宙のどこで起きるのかは大きな謎とされてきた。非常に古い星でrプロセスによる重元素が存在することが明らかになり、超新星爆発でのrプロセスの理論的研究が急務となっている。このためには超新星の爆発メカニズムを解明すると共に、rプロセス元素合成量を明らかにして、その特徴を最新の天体観測と照らし合わせていく必要がある。流体力学や核反応ネットワークの計算を組み合わせて、数値シミュレーションを行い、超新星爆発の各イベントにおいて作られるrプロセス元素合成量を定量的に求めて、その特徴を明らかにすることが研究の目的である。親星の質量の違いによる爆発メカニズムの違いに着目し、rプロセス元素合成パターンの特徴を明らかにするため、大質量星の中でも、比較的質量の小さい場合と大きい場合に分けて研究を進めてきた。昨年度の質量の小さい場合の研究成果に続き、今年度は質量の大きい場合について研究を行った。この場合にはニュートリノ駆動風と呼ばれる質量放出メカニズムの解明が鍵となる。一般相対論的流体力学の計算コードにニュートリノによる加熱・冷却や組成の変化を組み込み、超新星爆発で誕生した中性子星の表面物質の時間発展の数値シミュレーションを行った。この時、重要になるのは中性子星の質量・半径とニュートリノの強度であり、これまでの研究においては中性子星の質量が太陽質量の2倍という値が要求されていて、rプロセスが起こるのは難しいと考えられてきた。本研究ではシミュレーションにより、衝撃波後面のニュートリノ駆動風が行き着く先の圧力(温度)がrプロセスにおいて影響を及ぼすことを初めて発見した。現実的な圧力値の範囲において、通常知られている太陽質量の1.4倍の質量の中性子星でrプロセスが起こることを解明して、ニュートリノ駆動風におけるrプロセスの新しい可能性を開いた。2年間の研究により、大質量星の質量の違いに起因するrプロセスの違いについて、系統的に解明することができ、超新星爆発イベントとrプロセス元素合成パターンの関係を示すことに成功した。これにより、非常に古い星の重元素のスペクトル観測と連携した宇宙における重元素の進化の解明に大きく寄与した。鉄よりも重い元素の起源とされるrプロセス元素合成(大量の中性子を高速に吸収する過程)が宇宙のどこで起きるのかは大きな謎とされてきた。ハッブル宇宙望遠鏡による最新の天体観測では非常に古い星にもrプロセスによる重元素が存在することが発見され、寿命の短い大質量星の生の最期におこる、超新星爆発でのrプロセスの理論的研究が急務となっている。このためには超新星の爆発メカニズムを解明すると共に、rプロセス元素合成量を明らかにして、その特徴を将来の天体観測と照らし合わせていく必要がある。流体力学や核反応ネットワークの計算を組み合わせて、数値シミュレーションを行い、超新星爆発の各イベントにおいて作られるrプロセス元素合成量を定量的に求めて、その特徴を明らかにすることが研究の目的である。親星の質量の違いによる爆発メカニズムの違いに着目し、rプロセス元素合成パターンの特徴を明らかにするため、大質量星の中でも、比較的質量の小さい場合と大きい場合に分けて研究を進めてきた。今年度の研究では、一般相対論的流体力学の計算コードを用いて、比較的質量の軽い親星の重力崩壊・爆発の数値シミュレーションを行い、放出物質が膨脹して冷える間に起こるrプロセスを元素合成ネットワークにより計算して、1イベントの超新星爆発で生成されるrプロセス元素の量を求めることに成功した。この結果、質量の軽い親星において、プロンプト爆発が起きればrプロセス元素合成が起こり、元素合成のパターンは太陽系組成比を再現するパターンであることを発見し、合成量も銀河に存在する量を説明できることを示した。これにより、非常に古い星におけるrプロセス重元素発見を説明する道筋をつけることが可能になったことと、星の爆発メカニズムと元素合成パターンが関連していることを新たに提唱することが出来た点で、宇宙物理学における重元素の進化の解明に大きく貢献できた。鉄よりも重い元素の起源とされるrプロセス元素合成が宇宙のどこで起きるのかは大きな謎とされてきた。非常に古い星でrプロセスによる重元素が存在することが明らかになり、超新星爆発でのrプロセスの理論的研究が急務となっている。このためには超新星の爆発メカニズムを解明すると共に、rプロセス元素合成量を明らかにして、その特徴を最新の天体観測と照らし合わせていく必要がある。流体力学や核反応ネットワークの計算を組み合わせて、数値シミュレーションを行い、超新星爆発の各イベントにおいて作られるrプロセス元素合成量を定量的に求めて、その特徴を明らかにすることが研究の目的である。親星の質量の違いによる爆発メカニズムの違いに着目し、rプロセス元素合成パターンの特徴を明らかにするため、大質量星の中でも、比較的質量の小さい場合と大きい場合に分けて研究を進めてきた。昨年度の質量の小さい場合の研究成果に続き、今年度は質量の大きい場合について研究を行った。この場合にはニュートリノ駆動風と呼ばれる質量放出メカニズムの解明が鍵となる。一般相対論的流体力学の計算コードにニュートリノによる加熱・冷却や組成の変化を組み込み、超新星爆発で誕生した中性子星の表面物質の時間発展の数値シミュレーションを行った。この時、重要になるのは中性子星の質量・半径とニュートリノの強度であり、これまでの研究においては中性子星の質量が太陽質量の2倍という値が要求されていて、rプロセスが起こるのは難しいと考えられてきた。本研究ではシミュレーションにより、衝撃波後面のニュートリノ駆動風が行き着く先の圧力(温度)がrプロセスにおいて影響を及ぼすことを初めて発見した。現実的な圧力値の範囲において、通常知られている太陽質量の1.4倍の質量の中性子星でrプロセスが起こることを解明して、ニュートリノ駆動風におけるrプロセスの新しい可能性を開いた。 | KAKENHI-PROJECT-13740165 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13740165 |
超新星爆発イベントにおけるγプロセス元素合成パターンの研究 | 2年間の研究により、大質量星の質量の違いに起因するrプロセスの違いについて、系統的に解明することができ、超新星爆発イベントとrプロセス元素合成パターンの関係を示すことに成功した。これにより、非常に古い星の重元素のスペクトル観測と連携した宇宙における重元素の進化の解明に大きく寄与した。 | KAKENHI-PROJECT-13740165 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13740165 |
判断の基礎としての化学教育 | 本研究の目的は、人文・社会科学系の学生に、化学の講義や実験を通じて正しい自然科学的思考法を学ばせることにある。具体的には、ものごとを鵜呑みにせず、時には疑問を持ってみる態度を養うことであり、同時にその疑問から生じた幾つかの結果をもとに、自らが総合的に判断する能力を養成することである。化学反応には必ず反応条件が存在している。ある物質の合成に適した条件が全ての反応に適するわけではない。同じグループでも、周囲のグループや原子いかんによって反応性は異なる。また、同じ物質でも反応条件が異なると生成物が異なる場合がある。そこで反応温度、時間、溶媒、濃度等の変化が反応生成物に顕著な変化をおよぼす反応の研究を行なった。そのような化学合成を通じて、一つの結論を他の物に応用するには、充分な検討が必要であることを学生に学ばせることができると考えたからである。具体的にはα-テトラロンおよびβ-テトラロンとハロゲン化銅(II)との反応を研究した。その結果、両者の反応性の相違、ハロゲンの種類や反応温度の変化による生成物の相違等の結果を得ることができた。この反応の変化はTLCを用いて観察することが可能であり、したがって、展開溶媒や発色方法の違いによる分析結果への影響を学ぶことも出来る。講義では、なるべく学生と共に考えるようにした。表や図を表示し、それらからどのようなことが考えられるかを質問あるいは討論させた。この方法は、思考の訓練となると同時に、学生と教師の間に対話が生じ、一体感のある講義が展開できた。また、講義ではなるべく学生に身近な物質、現象を対象とした(繊維、洗う、染める等)。この内容は実験と講義を巧く組み合わせることが可能であり、研究の目的(考える癖の養成、総合的判断力の養成)にあった試みであると考えている。本研究の目的は、人文・社会科学系の学生に、化学の講義や実験を通じて正しい自然科学的思考法を学ばせることにある。具体的には、ものごとを鵜呑みにせず、時には疑問を持ってみる態度を養うことであり、同時にその疑問から生じた幾つかの結果をもとに、自らが総合的に判断する能力を養成することである。化学反応には必ず反応条件が存在している。ある物質の合成に適した条件が全ての反応に適するわけではない。同じグループでも、周囲のグループや原子いかんによって反応性は異なる。また、同じ物質でも反応条件が異なると生成物が異なる場合がある。そこで反応温度、時間、溶媒、濃度等の変化が反応生成物に顕著な変化をおよぼす反応の研究を行なった。そのような化学合成を通じて、一つの結論を他の物に応用するには、充分な検討が必要であることを学生に学ばせることができると考えたからである。具体的にはα-テトラロンおよびβ-テトラロンとハロゲン化銅(II)との反応を研究した。その結果、両者の反応性の相違、ハロゲンの種類や反応温度の変化による生成物の相違等の結果を得ることができた。この反応の変化はTLCを用いて観察することが可能であり、したがって、展開溶媒や発色方法の違いによる分析結果への影響を学ぶことも出来る。講義では、なるべく学生と共に考えるようにした。表や図を表示し、それらからどのようなことが考えられるかを質問あるいは討論させた。この方法は、思考の訓練となると同時に、学生と教師の間に対話が生じ、一体感のある講義が展開できた。また、講義ではなるべく学生に身近な物質、現象を対象とした(繊維、洗う、染める等)。この内容は実験と講義を巧く組み合わせることが可能であり、研究の目的(考える癖の養成、総合的判断力の養成)にあった試みであると考えている。平成4年度は一般講義と教養演習を通じて研究を行なった。一般講義は、文学部2コマと経営学部1コマであった。授業では、物質を理解する化学、日常現象を理解する化学を中心に講義をすすめた。前者では、繊維やゴム、プラスチックを中心に、各々の物質が、その物質として要求される性質がその分子構造とどのように関係するのかを中心に講義を展開した。繊維では、天然繊維を分析し、その繊維の特長や弱点を発現する原因がどこにあるのか、また、同様のことを合成繊維についても行ない、新繊維を開発するにはどんな点を考慮する必要があるか等について話をすすめた。日常現象を考える化学では、主に濡れるという現象を中心に、界面活性剤と分子構造との関係、流浄、接着等について、また染めるということに関連して、色と分子構造との関係、染色剤と繊維との関係等について講義を行なった。共に実験を数回行なった。また、小テストを随時行い、学生の理解度を不慮しながら講義を進めた。教養演習ではスダチの芳香成分の分析を行なった。GLC,LC,GC-MS,NMR等の機器を使用し、ある物質をある物質であると同定するための一連の過程を学ばせた。一般講義、教養演習ともに、一つの決定をするためにはどんな手順が必要であるかを中心に話をした。また、反応を通じて本研究の目的を理解させるために有効な反応の開発を試みた。α-テトウロンとβ-テトウロンのエチレンガリコール中での反応である。共に触媒量の塩化銅(II)を加えて加熱したところ、予想どうり、共役ケトンである前者はアセタール形成せず、後者はアセタールを形成した。本反応の講義への応用性についてはさらに検討中である。 | KAKENHI-PROJECT-04680292 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04680292 |
判断の基礎としての化学教育 | 平成5年度の講義では、「物質を理解するための化学」、「日常現象を理解するための化学」、「生命現象を理解するための化学」の三つのテーマを用意した。講義においては、表や図をしめし、そこからどんなことが考えられるかということを質問あるいは議論させる方法を多く取り入れた。学生にまず考えてみる癖を養うためである。一例として「日常現象を理解する化学」を上げる。5年度は「染める」という講義を中心に話を進めた。「染める」は、色と分子構造、色とスペクトル等を考えることから、電子やそのエネルギー状態の話に結びつけることができ、染色からは、染色浴における平衡、染料と被染色体との間の分子間力の話をすることも可能であり、かなり面白い講義が出来た。また、このテーマでは、染色実験、染料合成、染料のスペクトル測定等幾つかの実験の導入が行えた。それらの実験や講義を通じて、化学における結論の導き方を学ばせた。一方教養演習では金柑の芳香成分の分析実験を行なった。GLCを用いて分析する場合に、測定温度や使用するカラムの液層が分析結果にどの様な影響を与えるかを実験させた。また、芳香成分の分離方法の相違にそる分析結果への影響等についても検討させた。さらに、芳香成分の一つを合成させ、その変化をTLCでおわせた。展開溶媒や検出方法を変化させ、TLC分析におけるそれらの重要性を認識させた。一つの分析手段、あるいは一つの分析方法から得られたデータだけで結論を導き出す危険性を学ばせることが出来た。これらの実験による学習は、総合的判断力の養成にはかなり有効な方法である。しかし、この方法を取るためには、限られた人数の講義である必要がある。 | KAKENHI-PROJECT-04680292 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04680292 |
癌関連細胞周期調節遺伝子のソマティックノックアウト細胞の作成とその解析 | 細胞周期調節機構であるRB経路の構成因子の一つであるp27^<Kip1>は、予後不良の癌において分解が亢進しているのが確認されているが、その因果関係は未だ不明である。本研究ではRB経路の崩壊による細胞悪性化のメカニズムの解明を目標とする。本研究におけるヒト遺伝子の細胞レベルでの機能解析はノックアウトマウスや臨床検体を材料とするのでは困難であると考られたため、「ヒト細胞を用いたヒト遺伝子のコンディショナルソマティクノックアウト細胞」を作成して解析材料とすることにした。まずp27^<Kip>欠失細胞を得るためのターゲッティングベクターを構築した。ベクター中には相同組み換え体を効率よく選択するためにpositive/negative selectionが可能となる遺伝子を、またコンデショナルなノックアウトのために標的領域両端にloxP遺伝子を導入した。現在p27^<Kip1>の分解が亢進していない大腸癌細胞HT116にターゲッティングベクターを導入し、相同組み換え体をスクリーニングしている。またp27^<Kip1>存在量の低下モデルとして、p27^<Kip1>の分解実行因子であるSkp2の恒常発現HCT116細胞を樹立した。マイクロアレイによってSkp2高発現によって発現変動する遺伝子の同定を試みたところ、9種の候補遺伝子が同定された。今後はそれらの発現変動の有無をin vitroおよびin vivoレベルで再検証のうえ、臨床の癌検体における発現変動を調べるとともに、癌形質の変化への関与を分子レベルで検討する。また上記の組み換え体が得られ次第、これも対象にして同様に解析を進める。一連の研究成果からは新しい分子標的をターゲットとした癌の悪性度の診断法、予後不良の癌の治療法の開発、並びに癌の悪性化の予防薬の開発への発展が期待される。細胞周期調節機構であるRB経路の構成因子の一つであるp27^<Kip1>は、予後不良の癌において分解が亢進しているのが確認されているが、その因果関係は未だ不明である。本研究ではRB経路の崩壊による細胞悪性化のメカニズムの解明を目標とする。本研究におけるヒト遺伝子の細胞レベルでの機能解析はノックアウトマウスや臨床検体を材料とするのでは困難であると考られたため、「ヒト細胞を用いたヒト遺伝子のコンディショナルソマティクノックアウト細胞」を作成して解析材料とすることにした。まずp27^<Kip>欠失細胞を得るためのターゲッティングベクターを構築した。ベクター中には相同組み換え体を効率よく選択するためにpositive/negative selectionが可能となる遺伝子を、またコンデショナルなノックアウトのために標的領域両端にloxP遺伝子を導入した。現在p27^<Kip1>の分解が亢進していない大腸癌細胞HT116にターゲッティングベクターを導入し、相同組み換え体をスクリーニングしている。またp27^<Kip1>存在量の低下モデルとして、p27^<Kip1>の分解実行因子であるSkp2の恒常発現HCT116細胞を樹立した。マイクロアレイによってSkp2高発現によって発現変動する遺伝子の同定を試みたところ、9種の候補遺伝子が同定された。今後はそれらの発現変動の有無をin vitroおよびin vivoレベルで再検証のうえ、臨床の癌検体における発現変動を調べるとともに、癌形質の変化への関与を分子レベルで検討する。また上記の組み換え体が得られ次第、これも対象にして同様に解析を進める。一連の研究成果からは新しい分子標的をターゲットとした癌の悪性度の診断法、予後不良の癌の治療法の開発、並びに癌の悪性化の予防薬の開発への発展が期待される。 | KAKENHI-PROJECT-13216101 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13216101 |
ディボンディング後の残留レジンに関する研究 | ダイレクトボンディング材は、他の歯科領域の接着材料と異なり矯正治療終了時にはディボンディングを行いダイレクトボンディング材を歯質から取り除く必要がある。エナメル質中に残留したレジンタグについては、耐齲蝕性の向上に対して有効とした報告も認められるが、着色や変色等を含めた影響について詳細に検討した報告は認められない。そこで本研究では、残留レジンタグの消長およびその影響について検討した。MMA-PMMA系ダイレクトボンディング材、Bia-GMA系無機質フィラー配合ダイレクトボンディング材およびBis-GMA系有機質フィラー配合ダイレクトボンディング材の3種の光重合型ダイレクトボンディング材を試作した。この3種の試作ダイレクトボンディング材にハロゲン化メタクリレートモノマーを合成し、添加して、EPMA分析用ダイレクトボンディング材を試作した。試作ダイレクトボンディング材を用いて牛歯エナメル質に接着を行い、その後通法によりディボンディングを行い、次にこの歯面を食用色素溶液中に保存し、歯面の着色試験を行った結果、いずれのダイレクトボンディング材においても接着面に着色が認められた。着色試験と同様にディボンディングを行った後歯面に紫外線照射を行い、その変色状態について検討した結果、いずれのダイレクトボンディング材においても変色は認められなかった。残留レジンの経時的変化としてEPMA分析用ダイレクトボンディング材を用いて、ディボンディング後に歯ブラシ式磨耗試験機を用いて磨耗試験を行いその歯面のEPMA分析を行った。その結果、Bia-GMA系無機質フィラー配合ダイレクトボンディング材が最も長く残留する事が確認された。ダイレクトボンディング材は、他の歯科領域の接着材料と異なり矯正治療終了時にはディボンディングを行いダイレクトボンディング材を歯質から取り除く必要がある。エナメル質中に残留したレジンタグについては、耐齲蝕性の向上に対して有効とした報告も認められるが、着色や変色等を含めた影響について詳細に検討した報告は認められない。そこで本研究では、残留レジンタグの消長およびその影響について検討した。MMA-PMMA系ダイレクトボンディング材、Bia-GMA系無機質フィラー配合ダイレクトボンディング材およびBis-GMA系有機質フィラー配合ダイレクトボンディング材の3種の光重合型ダイレクトボンディング材を試作した。この3種の試作ダイレクトボンディング材にハロゲン化メタクリレートモノマーを合成し、添加して、EPMA分析用ダイレクトボンディング材を試作した。試作ダイレクトボンディング材を用いて牛歯エナメル質に接着を行い、その後通法によりディボンディングを行い、次にこの歯面を食用色素溶液中に保存し、歯面の着色試験を行った結果、いずれのダイレクトボンディング材においても接着面に着色が認められた。着色試験と同様にディボンディングを行った後歯面に紫外線照射を行い、その変色状態について検討した結果、いずれのダイレクトボンディング材においても変色は認められなかった。残留レジンの経時的変化としてEPMA分析用ダイレクトボンディング材を用いて、ディボンディング後に歯ブラシ式磨耗試験機を用いて磨耗試験を行いその歯面のEPMA分析を行った。その結果、Bia-GMA系無機質フィラー配合ダイレクトボンディング材が最も長く残留する事が確認された。 | KAKENHI-PROJECT-06772055 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06772055 |
ヒト破骨細胞形成系および骨吸収活性における関節リウマチ特異自己抗原の解析 | ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を用いた破骨細胞形成系の確立およびRA自己抗原の発現3)上記、ヒトPBMCからの成熟破骨細胞形成系において、RA自己抗原であるカルパイン・カルパスタチン,c-myc・FBPの発現をRT-PCRで確認した。ウサギ破骨細胞骨吸収におけるカルパイン阻害蛋白・抗ヒトカルパスタチン抗体の影響1)7日齢ウサギ長管骨をαMEM/5%FBSで細切した上清を、Unfractionated Bone Cells(UBC)とした。dentin slice上でUBCが骨吸収活性(pit formation)を有する系で、カルパイン阻害物質であるヒトCPSドメインI・カルパインインヒビターペプタイドが、骨吸収活性を抑制する可能性があることを確認した。2)ウサギUBCの系で、抗ヒトカルパスタチン抗体がコントロールIgGと比し、骨吸収活性を亢進する可能性があることを確認した。3)ウサギUBCの系で抗カルパスタチン抗体陽性RA患者血清は骨吸収活性に影響しないことを確認した。ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を用いた破骨細胞形成系の確立2)Ficoll-Paqueを用いて健常人協力者よりPBMCを回収し、マグネットビーズと抗ヒトCD14モノクローナル抗体を用いてCD14(+)細胞を分離し、10%FBS・M-CSF(25ng/ml)入りαMEMにて培養を行い、Trypsin-EDTA処理して、dish付着細胞を回収し、再度10%FBS・M-CSF(25ng/ml)入りαMEMに浮遊させ,ODFの濃度を変えて添加した。(5-100ng/mlの範囲)その結果、ODFの濃度依存性に多核巨細胞への分化が誘導された。ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を用いた破骨細胞形成系の確立およびRA自己抗原の発現3)上記、ヒトPBMCからの成熟破骨細胞形成系において、RA自己抗原であるカルパイン・カルパスタチン,c-myc・FBPの発現をRT-PCRで確認した。ウサギ破骨細胞骨吸収におけるカルパイン阻害蛋白・抗ヒトカルパスタチン抗体の影響1)7日齢ウサギ長管骨をαMEM/5%FBSで細切した上清を、Unfractionated Bone Cells(UBC)とした。dentin slice上でUBCが骨吸収活性(pit formation)を有する系で、カルパイン阻害物質であるヒトCPSドメインI・カルパインインヒビターペプタイドが、骨吸収活性を抑制する可能性があることを確認した。2)ウサギUBCの系で、抗ヒトカルパスタチン抗体がコントロールIgGと比し、骨吸収活性を亢進する可能性があることを確認した。3)ウサギUBCの系で抗カルパスタチン抗体陽性RA患者血清は骨吸収活性に影響しないことを確認した。 | KAKENHI-PROJECT-16790558 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16790558 |
変形性膝関節症患者の足部形態・機能と膝関節のメカニカルストレスの関係の解明 | 足部の形態や機能の変化は膝関節の動きの変化と関連するが、膝関節にどのようなストレスを与えるのかは明らかでない。また膝関節に加わるストレスは膝関節の動きだけでなく膝関節周囲の筋の作用による影響も考慮する必要がある。しかし、従来膝関節に加わるストレスを測定する際に用いられる指標では、筋の作用の影響を考慮して膝関節に加わるストレスを検討できない。そこで本研究では膝関節に加わる機械的なストレスを筋の作用を考慮し、かつ膝関節の内・外側の各関節面への分布を明らかにできる、筋骨格シミュレーション解析を用いて算出し、足部形態・機能との関係を定量的に解明する。足部の形態や機能の変化は膝関節の動きの変化と関連するが、膝関節にどのようなストレスを与えるのかは明らかでない。また膝関節に加わるストレスは膝関節の動きだけでなく膝関節周囲の筋の作用による影響も考慮する必要がある。しかし、従来膝関節に加わるストレスを測定する際に用いられる指標では、筋の作用の影響を考慮して膝関節に加わるストレスを検討できない。そこで本研究では膝関節に加わる機械的なストレスを筋の作用を考慮し、かつ膝関節の内・外側の各関節面への分布を明らかにできる、筋骨格シミュレーション解析を用いて算出し、足部形態・機能との関係を定量的に解明する。 | KAKENHI-PROJECT-19K11403 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K11403 |
血液細胞の増殖・分化におけるイオンフラックスの役割 | 〔目的〕血液細胞はすべて血液幹細胞から分化し、1個の幹細胞が赤血球、白血球、血小板等の多種類の細胞系列に増殖・分化していく。本研究では、血液細胞の増殖・分化に対する陽イオンの制御機構の有無を検索するため、未分化細胞にパッチクランプ法を適用してイオンチャンネルを調べ、また、各種増殖因子を作用させた際のイオンフラックスを解析することを目的とした。〔方法〕マウス白血病細胞株FDC-P_2、ヒト血液幹細胞の培養から増殖させた赤芽球系細胞及び顆粒球-マクロファージ系前駆細胞のコロニーをひろい集め、実験皿に再播布して、個々の単一細胞に於て、whole cell clamp法により細胞膜を介するイオン電流を記録した。〔結果〕上記の各細胞は、細胞膜の物理的性状が一つ一つ異なり、また、培養条件や日数によって変化するため、パッチクランプ法の適用は困難を極め、時間を費やしてしまった。これまでに得られた結果によると、これらの細胞にはKチャンネルは存在するが、興奮性は無く、NaチャンネルやCaチャンネルはとらえられなかった。イオン電流の膜電位依存性も無かった。pCD-P_2細胞にインターロイキンを投与した場合、及び赤芽球系細胞にエリスロポエチンを投与した場合、膜電位の有意な変化は未だ得られていない。これらの未分化細胞にはイオンチャンネルが発達しておらず、チャンネルを介するイオンフラックスが機能しない可能性があり、今後さらに検討を要す。他方、増殖因子が細胞膜を作用し、細胞内Caイオンが増加して第二又は第三メッセンジャーとなって増殖を誘発する可能性がある。赤芽球系細胞にCa結合性螢光試料Fura-IIをとりこませ、螢光顕微鏡下の個々の細胞を高感度テレビカメラでとらえた。エリスロポエチン投与により、細胞内Caイオン増加を示唆する細胞がとらえられている。細胞周期のステージにより反応性が異なることも考えられ、現在研究を進めているところである。〔目的〕血液細胞はすべて血液幹細胞から分化し、1個の幹細胞が赤血球、白血球、血小板等の多種類の細胞系列に増殖・分化していく。本研究では、血液細胞の増殖・分化に対する陽イオンの制御機構の有無を検索するため、未分化細胞にパッチクランプ法を適用してイオンチャンネルを調べ、また、各種増殖因子を作用させた際のイオンフラックスを解析することを目的とした。〔方法〕マウス白血病細胞株FDC-P_2、ヒト血液幹細胞の培養から増殖させた赤芽球系細胞及び顆粒球-マクロファージ系前駆細胞のコロニーをひろい集め、実験皿に再播布して、個々の単一細胞に於て、whole cell clamp法により細胞膜を介するイオン電流を記録した。〔結果〕上記の各細胞は、細胞膜の物理的性状が一つ一つ異なり、また、培養条件や日数によって変化するため、パッチクランプ法の適用は困難を極め、時間を費やしてしまった。これまでに得られた結果によると、これらの細胞にはKチャンネルは存在するが、興奮性は無く、NaチャンネルやCaチャンネルはとらえられなかった。イオン電流の膜電位依存性も無かった。pCD-P_2細胞にインターロイキンを投与した場合、及び赤芽球系細胞にエリスロポエチンを投与した場合、膜電位の有意な変化は未だ得られていない。これらの未分化細胞にはイオンチャンネルが発達しておらず、チャンネルを介するイオンフラックスが機能しない可能性があり、今後さらに検討を要す。他方、増殖因子が細胞膜を作用し、細胞内Caイオンが増加して第二又は第三メッセンジャーとなって増殖を誘発する可能性がある。赤芽球系細胞にCa結合性螢光試料Fura-IIをとりこませ、螢光顕微鏡下の個々の細胞を高感度テレビカメラでとらえた。エリスロポエチン投与により、細胞内Caイオン増加を示唆する細胞がとらえられている。細胞周期のステージにより反応性が異なることも考えられ、現在研究を進めているところである。 | KAKENHI-PROJECT-61570052 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61570052 |
素構造分子膜から発生する変位電流パルスとその機能 | 本研究は、申請者の開発した変位電流計測法を用いて、表面圧力刺激にともなう水面上分子膜(脂質分子および液晶分子)の変位電流パルスを検出すること、ついで、膜の圧縮と拡張の可逆的な圧力刺激による変位電流パルス列の発生を試みることを第1の目的とした。特に、光異性化にともなって発生する分子膜の膨張、収縮を前述の生体膜との混合単分子膜を形成して、変位電流パルスの発生が膜構造の観点からどのように変化するかを明らかとすることを目指した。これまでに得られた成果を要約すると以下のようになる。(1)水面上生体膜分子膜の誘電緩和現象の解析水面上に生体分子膜分子膜を形成させ、表面圧力が極めて低い領域での変位電流を計測し、この膜にみられる誘電緩和現象から単分子膜の緩和時間τを評価する手法を確立した。(2)アゾ系色素分子と生体分子混合膜の変位電流の発生アゾ系色素分子は、光異性化によりその構造を変えるので、その変化を可能とするためには適切な空間が必要となる。本研究では、脂質分子膜中にアゾ系色素分子を混入させ、脂質分子膜のわずかな構造の違が変位電流の発生にどのような影響を及ぼすかを調べた。脂質分子として直鎖DOLPCおよびDLPCの2種を選び、アゾ基を含む直鎖飽和脂肪酸(8A5H)を(9:1)に混合して水面上単分子膜として、可視光および紫外光の交互照射によって得られるる変位電流波形を計測し,脂質分子の側鎖の飽和・非飽和の違いにより、変位電流波形および水面上の表面圧力変化にに著しい違いが現れることが明らかとなった。本研究は、申請者の開発した変位電流計測法を用いて、表面圧力刺激にともなう水面上分子膜(脂質分子および液晶分子)の変位電流パルスを検出すること、ついで、膜の圧縮と拡張の可逆的な圧力刺激による変位電流パルス列の発生を試みることを第1の目的とした。特に、光異性化にともなって発生する分子膜の膨張、収縮を前述の生体膜との混合単分子膜を形成して、変位電流パルスの発生が膜構造の観点からどのように変化するかを明らかとすることを目指した。これまでに得られた成果を要約すると以下のようになる。(1)水面上生体膜分子膜の誘電緩和現象の解析水面上に生体分子膜分子膜を形成させ、表面圧力が極めて低い領域での変位電流を計測し、この膜にみられる誘電緩和現象から単分子膜の緩和時間τを評価する手法を確立した。(2)アゾ系色素分子と生体分子混合膜の変位電流の発生アゾ系色素分子は、光異性化によりその構造を変えるので、その変化を可能とするためには適切な空間が必要となる。本研究では、脂質分子膜中にアゾ系色素分子を混入させ、脂質分子膜のわずかな構造の違が変位電流の発生にどのような影響を及ぼすかを調べた。脂質分子として直鎖DOLPCおよびDLPCの2種を選び、アゾ基を含む直鎖飽和脂肪酸(8A5H)を(9:1)に混合して水面上単分子膜として、可視光および紫外光の交互照射によって得られるる変位電流波形を計測し,脂質分子の側鎖の飽和・非飽和の違いにより、変位電流波形および水面上の表面圧力変化にに著しい違いが現れることが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-09217219 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09217219 |
超伝導マグネットによる超高エネルギー宇宙線の組成とその相互作用の研究 | 本研究では、大立体角且つ大容積均一磁場の超伝導マグネットと荷電粒子の位置分解能の優れた測定器(エマルション・スペクトロメーター、プラスチック・ビームテレスコープ)とを連動させた装置によって、カット・オフエネルギーから100TeV/nまでの一次宇宙線の電荷と運動量を測定して従来にない質の良い宇宙線データを収集することを目指している.それによって銀河宇宙線の起源と伝播に関するモデルの検定に必要な十分な統計資料が提供できると考えている.また一方、強力な磁場内で高エネルギー重一次宇宙線が引き起こす核反応を直接観測することによって、生成される二次粒子の電荷及び運動量を知ることができる.それによって生成粒子の粒子相関、揺らぎ、荷電クラスター、運動量解析等の多角的な解析が可能になり、QCDから期待される高温・高密度核物質の解明に威力を発揮するものと期待している.平成3年より準備に取り掛かり、本年(平成6年)秋に本実験が行えるところまでにこぎ着けた.この実験で使用する装置のうちで最も重要でコストのかかる部分は粒子軌道分析用の超伝導マグネットである.気球に搭載して使用するために、いろいろと厳しい制限が課せられ設計、製作に予定以上の時間がかかった.超伝導マグネットは、超伝導コイルと断熱・冷却系のクライオスタットの二つの主要な部分から成っている.そのうちのコイルの部分はすでに完成していたので、平成4年度は主にクライオスタットの製作に主力を注いだ.気球搭載用超伝導マグネットは翌平成5年3月に組み立てを完了して東芝鶴見工場より納入された.そして高エネルギー物理学研究所において様々な性能テストが行われた.クエンチ試験の後、励磁テストを行ったところ、定格電流520アンペアで設計通りの安定した磁場1.2テスラが得られることが確認された.また液体ヘリウムの消費量(0.51/h)、クエンチ温度(7.0K)から、この超伝導マグネットの持続時間は約200時間であることも確認された.将来、南極周回の長時間バルーンに搭載して観測を行う場合には、200時間を越える持続時間が要求されるので液体ヘリウムの貯液量を増す必要があるだろうが、当面のアメリカ大陸内でのフライト実験にはそれで十分である.以上の地上での性能テストの結果には満足している.昨年の夏日米の関係者が集まって、超伝導マグネットの受け入れ態勢、バルーン基地の整備、実験のスケジュール等について打ち合わせを行った.その後のアメリカ側の準備の遅れで、平成5年度に行う予定であった超伝導マグネットを実際に気球に搭載しての成層圏での性能、耐久テスト及びそれに引き続いて予定されていた本実験は平成6年の秋以降に延期になった.現在、地上テストの済んだ超伝導マグネットを、アラバマ州ハンツビルのNASA/MSFCに送り出す準備をしているところである.本研究では、大立体角且つ大容積均一磁場の超伝導マグネットと荷電粒子の位置分解能の優れた測定器(エマルション・スペクトロメーター、プラスチック・ビームテレスコープ)とを連動させた装置によって、カット・オフエネルギーから100TeV/nまでの一次宇宙線の電荷と運動量を測定して従来にない質の良い宇宙線データを収集することを目指している.それによって銀河宇宙線の起源と伝播に関するモデルの検定に必要な十分な統計資料が提供できると考えている.また一方、強力な磁場内で高エネルギー重一次宇宙線が引き起こす核反応を直接観測することによって、生成される二次粒子の電荷及び運動量を知ることができる.それによって生成粒子の粒子相関、揺らぎ、荷電クラスター、運動量解析等の多角的な解析が可能になり、QCDから期待される高温・高密度核物質の解明に威力を発揮するものと期待している.平成3年より準備に取り掛かり、本年(平成6年)秋に本実験が行えるところまでにこぎ着けた.この実験で使用する装置のうちで最も重要でコストのかかる部分は粒子軌道分析用の超伝導マグネットである.気球に搭載して使用するために、いろいろと厳しい制限が課せられ設計、製作に予定以上の時間がかかった.超伝導マグネットは、超伝導コイルと断熱・冷却系のクライオスタットの二つの主要な部分から成っている.そのうちのコイルの部分はすでに完成していたので、平成4年度は主にクライオスタットの製作に主力を注いだ.気球搭載用超伝導マグネットは翌平成5年3月に組み立てを完了して東芝鶴見工場より納入された.そして高エネルギー物理学研究所において様々な性能テストが行われた.クエンチ試験の後、励磁テストを行ったところ、定格電流520アンペアで設計通りの安定した磁場1.2テスラが得られることが確認された.また液体ヘリウムの消費量(0.51/h)、クエンチ温度(7.0K)から、この超伝導マグネットの持続時間は約200時間であることも確認された.将来、南極周回の長時間バルーンに搭載して観測を行う場合には、200時間を越える持続時間が要求されるので液体ヘリウムの貯液量を増す必要があるだろうが、当面のアメリカ大陸内でのフライト実験にはそれで十分である.以上の地上での性能テストの結果には満足している.昨年の夏日米の関係者が集まって、超伝導マグネットの受け入れ態勢、バルーン基地の整備、実験のスケジュール等について打ち合わせを行った.その後のアメリカ側の準備の遅れで、平成5年度に行う予定であった超伝導マグネットを実際に気球に搭載しての成層圏での性能、耐久テスト及びそれに引き続いて予定されていた本実験は平成6年の秋以降に延期になった.現在、地上テストの済んだ超伝導マグネットを、アラバマ州ハンツビルのNASA/MSFCに送り出す準備をしているところである. | KAKENHI-PROJECT-04041031 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04041031 |
超伝導マグネットによる超高エネルギー宇宙線の組成とその相互作用の研究 | 平成3年度に観測装置の要となる気球搭載用軽量ソレノイド型超伝導マグネットを設計し、マグネット本体のうち超伝導コイルの巻線部、Kス電流スイッチ等を作製した。本年度の計画は残りの構成部分(クライオスタット、圧力容器、サポートシリンダー等)を準備し総合組み立てを行い超伝導マグネットを完成させることであった。製作は予定通りに進み、総合組み立ては東芝川崎工場で行われ平成4年末にはほぼ完了し調整を行った後マグネットは2月22日に納入された。このマグネットの諸元は内径1m、コイル長1.3m、定格電流520A、インダクタンス6.03H、中心磁場1.2テスラ、蓄積エネルギー815KJ、持続時間100時間である。製作されたマグネットが設計通りの性能をもっているかどうか、安定性はどうか、落下時の衡撃に十分耐えられるかどうか等の地上でのテストを行った後アメリカに送られこの秋には実際に気球に搭載して成層圏環境下での耐久性テスト、測定装置の性能テストを行う。超伝導マグネット内に組み込まれる測定器の較正実験を、CERN-SPSの重イオンビームを用いて行う予定であったがビームが出なかった為め取り止めざるを得なかった。この計画が予定通りに進めば、本格的な宇宙線観測は1994年より始まりアメリカでのフライト実験で、クォーフ・グルーオンプラズマ生成の目安と言われているエネルギー密度が2Gev/fm^3を超える宇宙線による重イオン反応事例を数例期待している。それに引き続いて南極での周回長時間(100時間以上)バルーンに搭載しての観測を予定している。それによりカットオフから10Tev/核子までの一次宇宙線の組成を測定して宇宙線の起源と伝播に関するモデルの検定に足る十分な統計資料を同一実験によって確定し、所期の目的を達成したいと考えている。 | KAKENHI-PROJECT-04041031 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04041031 |
自己抗体マーカーによる脳梗塞発症予測の精緻化に関する疫学研究 | 血清自己抗体は個人の病歴を反映しており、疾患が発症する前に存在する抗体が明らかになれば、疾患の発症予測マーカーとしての活用が期待される。既にがんや自己免疫疾患については特異的な自己抗体が出現することが報告されているが、動脈硬化性疾患については自己抗体が関与するという着想はこれまで乏しく、厳密な疫学手法を用いた脳梗塞の発症に関与する自己抗体マーカーの包括的な解明は皆無であった。そこで本研究では、日本人において最も多い動脈硬化性疾患である脳梗塞の症例と一般健康住民である対照について、過去の凍結保存血漿中の動脈硬化候補マーカーの抗体レベルを高感度ELISAであるAlphaLISA法によりハイスループットに測定する。そして、nested case-control studyの手法を用いて、従来の危険因子や生活習慣の影響を考慮して、脳梗塞の発症との関連を分析する。最終的には、脳梗塞の予測能を従来の危険因子に基づくモデルと比較し、抗体マーカーを含めた予測モデルの優位性を検証した上で、新たな脳梗塞発症予測モデルを開発することを目標とする。本研究課題の達成のため、血漿が保存されている脳梗塞の発症375例と、性、年齢、地域をマッチさせ、1対1の割合で無作為選定した対照375例について、AlphaLISA法により、血清と抗原の2種類のビーズを混合してから7日後、14日後、21日後の血清の抗体レベルを測定しており、平成30年度は次の成果が得られた。(1)動脈硬化候補マーカーと脳梗塞リスクとの関連分析:動脈硬化候補マーカーの抗体レベルと脳梗塞リスクとの関連について解析を進めている。特に顕著な関連が見られた一部のマーカーについては特許申請を行った。(2)古典的危険因子の影響を考慮した、動脈硬化候補マーカーの抗体レベルと脳梗塞リスクとの関連分析:生活習慣や健診成績の影響を統計学的に調整した分析を進めている。動脈硬化候補マーカーと脳梗塞リスクとの関連分析については、昨年度までの予備解析により有用なマーカー候補が一部発見されたことから、脳梗塞の発症予測マーカーとしての技術と信頼性の確立のため、特許申請を行っている。また、今年度実施予定であった古典的危険因子の影響を考慮した、動脈硬化候補マーカーの抗体レベルと脳梗塞リスクとの関連分析については、生活習慣(喫煙、飲酒)や健診成績(高血圧、糖尿病、高脂血症、Body Mass Index、CRP、ホモシステイン)の影響を統計学的に調整した分析を進めているところである。さらに例数を増やした測定と分析を検討している。分析の状況に応じて、検出力によっては症例・対照を増やす計画である。並行して、既に測定済みの症例375例・対照375例に対して、脳梗塞を穿通枝型(日本人に伝統的に多い細動脈硬化を主体とする病型)と皮質枝型(欧米に多い大血管の粥状硬化を主体とする病型)に分けた分析を行う。上記の分析を通して、脳梗塞発症予測マーカーを同定し、どのようなマーカーが存在することで脳梗塞発症のリスクが高くなっているのかを検証し、脳梗塞の発症確率予測モデルの開発を目指す。血清自己抗体は個人の病歴を反映しており、疾患が発症する前に存在する抗体が明らかになれば、疾患の発症予測マーカーとしての活用が期待される。既にがんや自己免疫疾患については特異的な自己抗体が出現することが報告されているが、動脈硬化性疾患については自己抗体が関与するという着想はこれまで乏しく、厳密な疫学手法を用いた脳梗塞の発症に関与する自己抗体マーカーの包括的な解明は皆無であった。そこで本研究では、日本人において最も多い動脈硬化性疾患である脳梗塞の症例と一般健康住民である対照について、過去の凍結保存血漿中の動脈硬化候補マーカーの抗体レベルをハイスループットELISAであるAlphaLISA法により網羅的に測定する。そして、nested case-control studyの手法を用いて、従来の危険因子や生活習慣の影響を考慮して、脳梗塞の発症との関連を分析する。最終的には、脳梗塞の予測能を従来の危険因子に基づくモデルと比較し、抗体マーカーを含めた予測モデルの優位性を検証した上で、新たな脳梗塞発症予測モデルを開発することを目標とする。本研究課題の達成のため、平成29年度は次の成果が得られた。(1)脳卒中の発症の把握:全脳梗塞の発症992例のうち、血漿が保存されている375例を同定し、対照を性、年齢、地域をマッチさせ、症例1に対し対照1の割合で無作為選定した。(2)動脈硬化候補マーカーの測定:上述の症例・対照の375例については、AlphaLISA法により、血清と抗原の2種類のビーズを混合してから7日後、14日後、21日後の血清の抗体レベルの測定が完了した。(3)動脈硬化候補マーカーと脳梗塞リスクとの関連分析:(1)(2)で得られた成果から、動脈硬化候補マーカーの抗体レベルと脳梗塞リスクとの関連について予備解析を進めている。特に顕著な関連が見られた一部のマーカーについては特許申請を行った。今年度実施予定であった脳梗塞の発症把握を計画通りに遂行した。また、把握された症例とその対照について、動脈硬化候補マーカーの測定を行った。動脈硬化候補マーカーと脳梗塞リスクとの関連については、予備解析により有用なマーカー候補が一部発見されたことから、脳梗塞の発症予測マーカーとしての技術と信頼性の確立のため、特許申請を行ったところである。さらに例数を増やした測定と分析を検討している。血清自己抗体は個人の病歴を反映しており、疾患が発症する前に存在する抗体が明らかになれば、疾患の発症予測マーカーとしての活用が期待される。 | KAKENHI-PROJECT-17K19810 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K19810 |
自己抗体マーカーによる脳梗塞発症予測の精緻化に関する疫学研究 | 既にがんや自己免疫疾患については特異的な自己抗体が出現することが報告されているが、動脈硬化性疾患については自己抗体が関与するという着想はこれまで乏しく、厳密な疫学手法を用いた脳梗塞の発症に関与する自己抗体マーカーの包括的な解明は皆無であった。そこで本研究では、日本人において最も多い動脈硬化性疾患である脳梗塞の症例と一般健康住民である対照について、過去の凍結保存血漿中の動脈硬化候補マーカーの抗体レベルを高感度ELISAであるAlphaLISA法によりハイスループットに測定する。そして、nested case-control studyの手法を用いて、従来の危険因子や生活習慣の影響を考慮して、脳梗塞の発症との関連を分析する。最終的には、脳梗塞の予測能を従来の危険因子に基づくモデルと比較し、抗体マーカーを含めた予測モデルの優位性を検証した上で、新たな脳梗塞発症予測モデルを開発することを目標とする。本研究課題の達成のため、血漿が保存されている脳梗塞の発症375例と、性、年齢、地域をマッチさせ、1対1の割合で無作為選定した対照375例について、AlphaLISA法により、血清と抗原の2種類のビーズを混合してから7日後、14日後、21日後の血清の抗体レベルを測定しており、平成30年度は次の成果が得られた。(1)動脈硬化候補マーカーと脳梗塞リスクとの関連分析:動脈硬化候補マーカーの抗体レベルと脳梗塞リスクとの関連について解析を進めている。特に顕著な関連が見られた一部のマーカーについては特許申請を行った。(2)古典的危険因子の影響を考慮した、動脈硬化候補マーカーの抗体レベルと脳梗塞リスクとの関連分析:生活習慣や健診成績の影響を統計学的に調整した分析を進めている。動脈硬化候補マーカーと脳梗塞リスクとの関連分析については、昨年度までの予備解析により有用なマーカー候補が一部発見されたことから、脳梗塞の発症予測マーカーとしての技術と信頼性の確立のため、特許申請を行っている。また、今年度実施予定であった古典的危険因子の影響を考慮した、動脈硬化候補マーカーの抗体レベルと脳梗塞リスクとの関連分析については、生活習慣(喫煙、飲酒)や健診成績(高血圧、糖尿病、高脂血症、Body Mass Index、CRP、ホモシステイン)の影響を統計学的に調整した分析を進めているところである。さらに例数を増やした測定と分析を検討している。分析の状況に応じて、検出力によっては症例・対照を増やす計画である。並行して、今年度までに測定された症例375例・対照375例に対して、動脈硬化候補マーカーの抗体レベルと脳梗塞リスクとの関連について、生活習慣(喫煙、飲酒)や健診成績(高血圧、糖尿病、高脂血症、Body Mass Index、CRP、ホモシステイン)の影響を統計学的に調整して分析する。さらに、脳梗塞を穿通枝型(日本人に伝統的に多い細動脈硬化を主体とする病型)と皮質枝型(欧米に多い大血管の粥状硬化を主体とする病型)に分けた分析を行う。分析の状況に応じて、検出力によっては症例・対照を増やす計画である。並行して、既に測定済みの症例375例・対照375例に対して、脳梗塞を穿通枝型(日本人に伝統的に多い細動脈硬化を主体とする病型)と皮質枝型(欧米に多い大血管の粥状硬化を主体とする病型)に分けた分析を行う。 | KAKENHI-PROJECT-17K19810 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K19810 |
神経栄養因子分泌細胞の蝸牛内導入による老人性難聴の治療・予防戦略 | 従来、積極的な治療法がなく、その聴覚障害に対しては補聴器などにたよらざるをえなかった老人性難聴に対する新たな治療戦略の可能性1つとして、加齢による聴覚系の変性の神経栄養因子遺伝子導入による軽減が考えられる。今回は、モルモットを用い、線維芽細胞に神経栄養因子を永久的に発現させることができるか、また、遺伝子導入された細胞の蝸牛内への移植により老化変性を防止するかができるか否かを検討する目的で、以下の研究を実施した。1モルモット線維芽細胞への遺伝子永久発現の試み臨床の老人性難聴の治療を考慮すると、遺伝子の永久発現が必須となる。今回は、ベクターとしてクロンテック社のpIREShrGFPをもちい、これにネオマイシン耐性遺伝子を選択マーカーとして導入し、個々のモルモットより採取した繊維芽細胞に永久的に遺伝子発現させるよう試みた。2レポータージーンを用いた細胞移植実験さらに、老人性難聴の退行変性に対し、遺伝子を長期に安定的に発現させるため、蝸牛内に移植した線維芽細胞を長期に生存させる方法、すなわち、外リンバ内移植、あるいは内リンパ内移植をGFPによる蛍光をレポーターとして検討した。現在までのところ、上記条件下の実験では、恒常的に永久的遺伝子発現を認めるには至らなかった。臨床応用を考えた治療戦略上、確実な遺伝子発現が必要となるであろう。従来、積極的な治療法がなく、その聴覚障害に対しては補聴器などにたよらざるをえなかった老人性難聴に対する新たな治療戦略の可能性1つとして、加齢による聴覚系の変性の神経栄養因子遺伝子導入による軽減が考えられる。今回は、モルモットを用い、線維芽細胞に神経栄養因子を永久的に発現させることができるか、また、遺伝子導入された細胞の蝸牛内への移植により老化変性を防止するかができるか否かを検討する目的で、以下の研究を実施した。1モルモット線維芽細胞への遺伝子永久発現の試み臨床の老人性難聴の治療を考慮すると、遺伝子の永久発現が必須となる。今回は、ベクターとしてクロンテック社のpIREShrGFPをもちい、これにネオマイシン耐性遺伝子を選択マーカーとして導入し、個々のモルモットより採取した繊維芽細胞に永久的に遺伝子発現させるよう試みた。2レポータージーンを用いた細胞移植実験さらに、老人性難聴の退行変性に対し、遺伝子を長期に安定的に発現させるため、蝸牛内に移植した線維芽細胞を長期に生存させる方法、すなわち、外リンバ内移植、あるいは内リンパ内移植をGFPによる蛍光をレポーターとして検討した。現在までのところ、上記条件下の実験では、恒常的に永久的遺伝子発現を認めるには至らなかった。臨床応用を考えた治療戦略上、確実な遺伝子発現が必要となるであろう。 | KAKENHI-PROJECT-14571604 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14571604 |
質量分析器を用いた匂いの記録再生システムの研究 | 本研究では、質量分析器を用いた匂いの記録再生システムの研究を行った。匂いの記録再生システムではセンサアレイの応答パターン(この場合はマススペクトル)が一致するように複数の要素臭の調合比を決定し、その調合比を用いて匂いの再生を行う。他の研究で多数の精油マススペクトルから基底ベクトルを抽出して要素臭を調合する実験を行った。本研究では、その研究で調合した要素臭の測定を行ったが、一部の試料に関して感度が十分に得られなかった。揮発性の低い精油に関しては十分な感度が得られなったために、精油を気化させる方法を検討した。面ヒータに液体を滴下して気化させる方法を当初検討したが、匂いが広がって実際に質量分析器に気化したすべての匂いがはいるわけではないので十分ではなかった。そこで、ステンレスのT型コネクタにヒータ線を巻いた気化器を製作して注入した液体を気化させて質量分析器に導入するようにした結果、匂いを質量分析器に注入する効率が増して低揮発性の精油に対する感度が向上した。また、開発した気化器と実時間質量分析器を用いて料理の香りの記録実験を行った。マーボー豆腐の香りを同じ7つの要素臭を用いて記録した。記録の際は、液体試料を小型気化器を用いて蒸発させて実時間質量分析器で測定した。匂いの調合にはオートサンプラを用いた。あらかじめ各要素臭のマススペクトルを測定し非負拘束最小二乗法を用いて対象臭の構成比を求めた。記録した構成比の誤差はすべて5%以下であった。本年度は実時間質量分析器及び質量分析器に匂いを供給する系統を準備して、匂いの供給と測定をできるようにした。あらかじめ決められたレシピの匂いを匂い調合装置で作り出し、実時間質量分析器に対象臭として供給する。また、各要素臭の匂いのマススペクトラムをあらかじめ測定しておく。そして、対象臭のレシピを非負拘束最小二乗法で決定する。実時間で匂いの測定、レシピ決定を行うプログラムを開発し、その動作を確認した。そして、7成分で構成されるりんご臭について実際のレシピ決定実験を行い、十分な精度でレシピ決定できることがわかった。しかし、匂い調合装置で実現できる匂いの濃度範囲(ダイナミックレンジ)が十分でないために、あらかじめ要素臭の液体サンプルを不揮発性の液体(ODO)で希釈しなければならず、その希釈比を決めるのに労力を費やしたので、次年度改善したい。また、沸点が200°C以上の低揮発性香気成分に関して十分な感度が得られるかを検討した。これらの成分は濃度は低いが香りの質に大きく影響を与えるので重要な成分である。通常の測定を行うだけでは不十分であるが、液滴を小型ヒータで加熱したり、導入部のキャピラリチューブをヒータ加熱し、その温度を最大350°Cにできるように装置改良を行った。導入部の加熱はそこに匂いが停留するのを防ぐためである。その結果、citralやeugenol等の低揮発性香気成分のマススペクトルを測定することに成功した。この場合も高濃度のサンプルを長時間導入すると装置内にcontaminationが発生するために、それを防ぐ方法が必要である。しかし、まだ始めて半年であるにもかかわらず、匂いの記録再生の実験が可能な実験系の基本部分を確立することができた。匂いの記録再生システムでは、匂いを再生させるために匂い調合装置を用いる。従来、この装置で実現できる濃度範囲(ダイナミックレンジ)が十分でなかったが、調合装置内で用いている電磁弁のスイッチング時間を短くすることによりダイナミックレンジ拡大が可能である。そこで、電磁弁のスイッチング時間をどこまで短くできるかを検討した。その結果、電磁弁のスイッチング時間を従来の1/5程度に低減できることがわかり濃度範囲を拡大することができた。それから、実時間質量分析器で測定して対象臭のレシピ決定を非負拘束付き最小二乗法を用いて行い、そのレシピに基づいてその場ですぐに匂いを調合するソフトウエアを作成した。その結果、測定後すぐに再生臭を発生することができるようになり、対象臭との比較を容易にできるようになった。改良した装置を用いてりんご臭のレシピ決定実験を行った。9成分で構成される匂いのレシピ決定を行い、対象臭のレシピを精度よく求められることがわかった。そして対象臭と調合臭の違いが区別できるか3点識別法により確認し、人が両者を区別できないほど類似した香りが再生できたことがわかった。また、質量分析器で得られるマススペクトルは、そのイオン化電圧を変えることにより変化し、情報量の増加が期待できる。そこで、イオン化電圧を3070eVの間で変化させて高次センシングができるかどうかを調べた。柑橘系の類似した匂いの測定を行い、イオン化電圧を可変にすることによりそれらのパターン分離が向上することを確かめた。本研究では、質量分析器を用いた匂いの記録再生システムの研究を行った。匂いの記録再生システムではセンサアレイの応答パターン(この場合はマススペクトル)が一致するように複数の要素臭の調合比を決定し、その調合比を用いて匂いの再生を行う。他の研究で多数の精油マススペクトルから基底ベクトルを抽出して要素臭を調合する実験を行った。本研究では、その研究で調合した要素臭の測定を行ったが、一部の試料に関して感度が十分に得られなかった。揮発性の低い精油に関しては十分な感度が得られなったために、精油を気化させる方法を検討した。 | KAKENHI-PROJECT-07F07391 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07F07391 |
質量分析器を用いた匂いの記録再生システムの研究 | 面ヒータに液体を滴下して気化させる方法を当初検討したが、匂いが広がって実際に質量分析器に気化したすべての匂いがはいるわけではないので十分ではなかった。そこで、ステンレスのT型コネクタにヒータ線を巻いた気化器を製作して注入した液体を気化させて質量分析器に導入するようにした結果、匂いを質量分析器に注入する効率が増して低揮発性の精油に対する感度が向上した。また、開発した気化器と実時間質量分析器を用いて料理の香りの記録実験を行った。マーボー豆腐の香りを同じ7つの要素臭を用いて記録した。記録の際は、液体試料を小型気化器を用いて蒸発させて実時間質量分析器で測定した。匂いの調合にはオートサンプラを用いた。あらかじめ各要素臭のマススペクトルを測定し非負拘束最小二乗法を用いて対象臭の構成比を求めた。記録した構成比の誤差はすべて5%以下であった。 | KAKENHI-PROJECT-07F07391 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07F07391 |
拡散法によるビスマス系酸化物高温超伝導体の導体化に関する研究 | ビスマス系2212酸化物高温超伝導体(Bi_2Sr_2CaCu_2O_x)を拡散法により作製し、その特性と導体化について研究を行った。拡散法は、高融点の酸化物基盤と低融点の酸化物塗布材との拡散反応により、所望の超伝導相を得る方法であるが、本研究では、中空円筒(外径/内径:20/16mm,長さ:55mm)の内外周部に、厚さ約150μmの超伝導層を合成した。このBi-2212超伝導拡散層の臨界電流密度(Jc)は、4.2K,自己磁場下で,20,000A/cm^2を越えるバルク体としては高い値を示したが、これは、緻密で均質かつ配向した組織が拡散法により得られたためと考えられる。試料の全拡散層面積で換算した臨界電流(Ic)は、約4,000Aに相当することから大電流用の導体として有望である。また、本科学研究費補助金により設置した雰囲気熱処理炉を用いてアルゴン等の不活性ガス中でアニーリングすることにより、臨界温度(Tc)は、約10K上昇した。Tcの向上は、比較的高温域特に40K以上の温度におけるJcの向上に寄与する。酸化物高温超伝導体を電流導体として応用する場合、超伝導バルク体と通電電極部との接触抵抗の低減が望まれるが、本研究では拡散対の塗布材側に添加した銀の試料表面への析出効果により、1-10nΩcm^2の極めて低い接触抵抗値が得られた。これは、1,000Aの通電に対してわずか1mW程度のジュール発熱に相当し、拡散法により作製するバルク導体のユニークな特長の一つである。さらに、本研究ではビスマス酸化物(Bi_2O_3)と銅酸化物(CuO)の共晶組成である、Bi:Cu=2:0.136の融体中に高融点基盤を直接浸漬・被覆後、拡散熱処理を行う新しい拡散プロセスを試みた。生成した超伝導拡散相のJcは25,000A/cm^2と、従来の方法とほぼ同様の高い値が得られた。この様な低融点酸化物の融体中に高融点拡散基盤を浸漬して塗布する方法は、形状の制約を受けにくく、塗布時間も短時間で済むのでより実用的な方法と言える。ビスマス系2212酸化物高温超伝導体(Bi_2Sr_2CaCu_2O_x)を拡散法により作製し、その特性と導体化について研究を行った。拡散法は、高融点の酸化物基盤と低融点の酸化物塗布材との拡散反応により、所望の超伝導相を得る方法であるが、本研究では、中空円筒(外径/内径:20/16mm,長さ:55mm)の内外周部に、厚さ約150μmの超伝導層を合成した。このBi-2212超伝導拡散層の臨界電流密度(Jc)は、4.2K,自己磁場下で,20,000A/cm^2を越えるバルク体としては高い値を示したが、これは、緻密で均質かつ配向した組織が拡散法により得られたためと考えられる。試料の全拡散層面積で換算した臨界電流(Ic)は、約4,000Aに相当することから大電流用の導体として有望である。また、本科学研究費補助金により設置した雰囲気熱処理炉を用いてアルゴン等の不活性ガス中でアニーリングすることにより、臨界温度(Tc)は、約10K上昇した。Tcの向上は、比較的高温域特に40K以上の温度におけるJcの向上に寄与する。酸化物高温超伝導体を電流導体として応用する場合、超伝導バルク体と通電電極部との接触抵抗の低減が望まれるが、本研究では拡散対の塗布材側に添加した銀の試料表面への析出効果により、1-10nΩcm^2の極めて低い接触抵抗値が得られた。これは、1,000Aの通電に対してわずか1mW程度のジュール発熱に相当し、拡散法により作製するバルク導体のユニークな特長の一つである。さらに、本研究ではビスマス酸化物(Bi_2O_3)と銅酸化物(CuO)の共晶組成である、Bi:Cu=2:0.136の融体中に高融点基盤を直接浸漬・被覆後、拡散熱処理を行う新しい拡散プロセスを試みた。生成した超伝導拡散相のJcは25,000A/cm^2と、従来の方法とほぼ同様の高い値が得られた。この様な低融点酸化物の融体中に高融点拡散基盤を浸漬して塗布する方法は、形状の制約を受けにくく、塗布時間も短時間で済むのでより実用的な方法と言える。Bi系2212酸化物高温超伝導体の拡散法を用いた作製方法とその導体化について研究を行った。拡散法は、高融点の酸化物基盤と低融点の酸化物塗布材との拡散反応により所望の超伝導相を得る方法であるが、平成9年度は、中空円筒基盤(外/内径:20/16mm)の内外周部に厚さ約150μmの超伝導拡散層を合成し、実用上重要な臨界電流特性と組織との関係を主として調べた。生成したBi系2212 | KAKENHI-PROJECT-09650770 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09650770 |
拡散法によるビスマス系酸化物高温超伝導体の導体化に関する研究 | 超伝導層の臨界電流密度(Jc)は、4.2K、自己磁場下で20,000A/cm^2以上のバルク体としては高い値を示したが、これは、さきの中実円筒試料における拡散層と同様に、均一で緻密かつ配向した組織が中空円筒試料にも生成できたためである。試料の全拡散層面積で換算した臨界電流(Ic)は、約3,000Aに相当することから大電流用の導体として有望であろう。また、本年度設置した雰囲気熱処理炉を用い、拡散反応後の試料をアルゴン等の不活性ガス雰囲気において500600°Cでアニールすると、臨界温度(Tc)が約10K向上した。Tcの向上は、温度マージンの増加となるため、特に、45K以上の高温域の磁場下におけるJcを向上した。酸化物高温超伝導体を大電流導体として応用する場合、超伝導バルク体と通電電極部との接触抵抗の低減が求められるが、本研究では拡散対の塗布材側に添加した銀の試料表面への析出効果により、110nΩcm^2の極めて低い接触抵抗値が得られた。これは、300Aの通電に対して、わずか1mW程度のジュール発熱に相当し、拡散法により作製するバルク試料のユニークな特長の一つである。今後は、拡散基盤や低融点塗布材の組成等最適な拡散対の組み合わせや、さらに実用的な塗布方法等のプロセス改善について研究するとともに、展開研究等において、本拡散法で作製したBi系2212超伝導体の大電流導体としての有用性を実証したいと思う。拡散法によりビスマス系2212酸化物高温超伝導体を作製し、電流リード等への導体化について研究を行った.拡散法は、高融点の酸化物基盤と低融点の酸化物塗布材との拡散反応により所望の超伝導相を得る方法であるが、本年度は、ビスマス酸化物(Bi_2O_3)と銅酸化物(CuO)の共晶組成である、Bi:Cu=2:0.136の融体中に高融点基盤を浸漬・被覆後、拡散熱処理を行う新しい拡散プロセスを試みた.生成した超伝導拡散相は、厚さ約120μmで、臨界温度:Tcは78K、臨界電流密度:Jcは、4.2K、自己磁場下で25,000A/cm^2を越えるバルク体としては高い値が得られた.さらに、実用上重要なJcについて、Jc-温度-磁場特性を評価した.この様な低融点酸化物の融体中に高融点拡散基盤を浸漬して塗布する方法は、低融点酸化物のスラリーを塗布する従来の方法に比べ、形状の制約を受けにくく、塗布に要する時間も30秒程度の短時間で済むことからより実用的な塗布方法と言える。一方、従来の塗布法により比較的大きい中空円筒バルク試料(外/内径:20/16mm,長さ=55mm)を作製し、臨界電流特性を主として調べた。本試料を16分割したバルク体において、4.2Kで255Aの臨界電流:Icが得られたが、これを試料の全拡散層面積で換算すると、約4,000Aに相当することから大電流用導体として有望である.酸化物超伝導体を導体として用いる場合、超伝導バルク体と通電電極部との接触抵抗の低減が求められるが、本試料では拡散対の塗布材側に添加した銀の試料表面への析出効果により、10^<-8>Ωcm^2オーダーの極めて低い接触抵抗値が得られた。これは、1,000Aの大電流通電に対して、わずか1mW程度のジュール発熱に相当し、拡散法により作製する本バルク試料のユニークな特長の一つである。また、室温一液体窒素温度(77K)間の熱サイクル試験では、300回の熱サイクルに対しても接触抵抗率の劣化はほとんど認められなかった。 | KAKENHI-PROJECT-09650770 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09650770 |
3DCGを活用した点字学習支援システムの開発と評価 | 視覚障害者の支援者が、彼らとのコミュニケーションの手段の一つとして点字の読み書きが出来る必要がある。そこで、点字の直観的理解を促すため、3DCGを用いた学習支援システム「点字といっしょ!」を開発した。学習者らに同システムでの自習を促した。テストの結果から、特に、凹面での点字の理解に関する問題点を明らかにした。本年度は、前年度に開発した晴眼者向け点字学習支援システム「点字といっしょ!」に、(1)「3DCGで表現した点字画像」と「点字の鏡像関係を表すGIFアニメーション」を搭載することにより「読み点字」に加えて「書き点字」の学習が可能な機能を追加し、(2)学習者からの評価と(3)改善点を得た。(1)2次元の表現では特定できない点字の表裏だが、3DCG(3次元コンピュータ・グラフィックス)で点字を表現することにより、学習者は一目で「読み点字」と「書き点字」を見分けることが出来る様になった。点字の鏡像関係(「読み点字」と「書き点字」が表裏一体である関係)を表現したGIFアニメーションを作成し、システムへ搭載した。これらは今までに無い点字や鏡像関係の表現方法である。(2)学習者からの評価として、点字の表現として3DCGの方が2Dよりも分かりやすいという回答が68%であったことが分かった。(3)改善点として、3DCGで表現した鏡像関係のGIFアニメーションを提供することは出来たが、一部学習者において不適切な理解があり、システムや授業内容の改善が望まれる。上記の結果について、国際会議1件・国内会議1件の学会発表を行った。本年度は、前年度に開発した晴眼者向け点字学習支援システム「点字といっしょ!3D」に、(1)「点字の鏡像関係を表すVRML(Virtual Reality Modeling Language)ファイル」と「しりとりを活用した学習機能」を搭載することにより、点字の凸面と凹面の間を学習者が自由に回転させ確認することが出来るようになり、(2)学習者からの評価と(3)改善点を得た。(1)3DCG(3次元コンピュータ・グラフィックス)で点字を表現することにより、学習者は一目で「読み点字(凸面)」と「書き点字(凹面)」を確認することが出来る様になった。点字の鏡像関係(「凸面」と「凹面」が表裏一体である関係)を学習者自身が自由に確認できる機能(VRMLファイルの参照)をシステムへ搭載した。これらは今までに無い点字や鏡像関係の表現方法である。(2)昨年度の結果得られた確認テストにおける誤答とは異なる種類の新しい誤答が発見された。(3)改善点として、3DCGで表現した鏡像関係のVRMLファイル参照機能としりとりを活用した学習機能を提供することは出来たが、新たな種類の誤答がみつかり、システムや授業内容の改善が望まれる。上記の結果について、国内会議1件の学会発表を行った。加えて、昨年度の結果に基づいた研究論文2本(査読有り1本、査読無し1本)が掲載された。本年度は、継続して開発している晴眼者向け点字学習支援システム「点字といっしょ!」に、(1)「点字問題の出題レベル制御機能」と「自由記述文を用いた点字3DCG変換機能」を搭載することにより、学習者が挑戦する点字のレベル(難易度)をシステムが制御すること、そして学習者が自由に墨字を入力し、それを点字3DCGに変換することが出来るようになった。(2)テスト結果やアクセスログの分析結果からの評価。(3)改善点がみつかった。(1)「システムによる点字問題の出題レベル制御機能」と「学習者が入力した自由記述文(墨字)を用いた点字3DCG変換機能」をシステムへ搭載した。(2)システムで学習後のテスト(確認テスト)と課題による点字変換マス長において中程度の負の相関(R=-0.56;p<.05)が認められ、学習者の学習機会を阻害した可能性が指摘された。(3)改善点として、課題と点字3DCGの連関を低くしつつ、システムでの点字学習を進めるべく、機能や授業内容の改善が望まれる。上記の結果について、国内会議3件の学会発表を行った。加えて、昨年度の結果に基づいた研究論文1本(査読有り1本)が掲載された。視覚障害者の支援者が、彼らとのコミュニケーションの手段の一つとして点字の読み書きが出来る必要がある。そこで、点字の直観的理解を促すため、3DCGを用いた学習支援システム「点字といっしょ!」を開発した。学習者らに同システムでの自習を促した。テストの結果から、特に、凹面での点字の理解に関する問題点を明らかにした。当初の予定通り、点字の鏡像関係を学習者が自由に確認できる機能(VRMLファイル参照)としりとりを活用した学習機能を作成し、点字学習支援システムを開発した。新機能を搭載したシステムを使って授業実践を行った。テストとアンケートを実施し、定性的・定量的評価を実施した。加えて、次年度以降の改善点を得た。上記の結果について、国内会議1件の学会発表を行った。加えて、昨年度の結果に基づいた研究論文2本(査読有り1本、査読無し1本)が掲載された。教育情報学本年度の研究実績を踏まえ、以下の3点に重点をおいて本研究を推進していく。 | KAKENHI-PROJECT-25590290 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25590290 |
3DCGを活用した点字学習支援システムの開発と評価 | 1.本年度で得た改善点を踏まえ、システムや授業内容の改善を行う2.自由記述文に基づく点字3DCGの作成機能の搭載3.正しいかつ学習者に合わせた点字学習推進の為、問題推薦機能の搭載当初の予定通り、(1)点字を表現する3DCGの作成と(2)点字の鏡像関係を表現するGIFアニメーションの作成を実施し、点字学習支援システムに当該データを搭載した。(1)及び(2)で作成したデータを搭載したシステムを使って授業実践を行った。テストとアンケートを実施し、定性的・定量的評価を実施した。加えて、次年度以降の改善点を得た。上記の結果について、国際会議1件・国内会議1件の学会発表を行った。システムの機能開発の進捗が予定より若干遅れ、そちらに注力するため、研究成果発表や情報収集のための出張を控えたため。本年度の研究実績を踏まえ、以下の3点に重点をおいて本研究を推進していく。1.本年度で得た改善点を踏まえ、システムや授業内容の改善を行う3.学習者の内発的・外発的動機付けを喚起するための機能の強化を実施するために、システムでの出題形式に「ことば遊び」の要素を加える・次年度での成果を元に、国内外での会議で発表を予定している。・次年度で開発するシステムに投入する3DCGやGIFアニメーション等データを追加作成する。海外での国際会議で発表を予定していたが、予定とは異なる国際会議が国内で開催され、そちらで発表をしたため。・次年度での成果を元に、国内外での会議で発表を予定している。・次年度で開発するシステムに投入する3DCGやGIFアニメーション等データを作成する。 | KAKENHI-PROJECT-25590290 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25590290 |
シェディング調節因子による血管収縮と透過性制御機構の解明 | 血管収縮・拡張には、カテコラミンやNOなどが関わる。我々は、HB-EGFの結合タンパクとして同定したナルディライジン(NRDc)が、ADAMの活性化を介して膜タンパクのシェディングを増強することを明らかにした。さらに最近、NRDc欠損マウスが、髄鞘低形成を呈することを報告した。同マウスは著明な低血圧を呈するが、交感神経活動は亢進していることから、低血圧の原因は末梢血管収縮不全であると考えられた(未発表)。その原因として、血管平滑筋におけるカテコラミン受容体のシグナル伝達不全が考えられた。そこで、カテコラミン受容体の下流にあるPKAやERKの活性化を生体内で可視化できる、FRETバイオセンサーを発現するトランスジェニックマウス(PKAchuやEKAREV)と、血管平滑筋特異的NRDc欠損マウスを交配し、抵抗血管におけるカテコラミンへの反応性をin vivo imagingで観察し、NRDcによる血管収縮・拡張や炎症時の血管透過性亢進の制御機構解明の一助とすることを目的とした。しかしながら、血管平滑筋特異的NRDc-CKO(sm22α-NRDc-CKO)の血圧は、対照群と比較して有意な変化を認めなかったため、交感神経特異的NRDc-CKO(DBH-NRDc-CKO)の解析を行ったところ、有意な血圧低下を認めた。以上より、NRDc欠損による血圧低下の原因は、血管平滑筋そのものよりも、交感神経に寄与する部分が大きいと考えられた。そこで、in vivo imagingについての方針を変更し、PKA-Sm22αNRDcCKOマウスに加えて、PKA-DBH-NRDcCKOマウスの解析を開始した。二光子励起顕微鏡を用いて、PKA-Sm22αNRDcCKOマウスとコントロールマウスにおける血管収縮の様子を観察したが、両群で血管収縮率に差を認めなかった。今後は、PKA-DBH-NRDcCKOマウスとコントロールマウス間でも同様の検討を行い、血管収縮率に差を認めるようであれば、FRETの解析を進めてつつ、分子メカニズムの解明に迫る。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。膜型増殖因子HB-EGFの結合蛋白質として同定したメタロプロテアーゼnardilysinが、血管平滑筋細胞、血管内皮細胞においてどのような生理的・病理的役割を持つかを明らかにすることを目的とした。血管収縮・拡張および透過性、炎症細胞の遊走・浸潤といった時間的・空間的にダイナミックに変化する現象におけるNRDcの役割を、リアルタイムイメージングを用いて明らかにし、「血管収縮調節機構」「血管透過性と炎症」という古典的テーマにおける新たな調節機構解明を目指している。今年度は血管平滑筋特異的NRDc欠損マウスを作製し、血圧測定、組織学的解析を行った。血管内皮特異的NRDc欠損マウスの作製も予定している。今後は、血管収縮・拡張及び炎症惹起時の血管透過性におけるNRDcの役割をin vivoで解析するために、FRETバイオセンサー発現マウスとの交配を行い、血管収縮の様子をリアルタイムin vivo imagingで解析する。また炎症惹起時における血管を介した炎症細胞浸潤の様子を解析する予定である。血管収縮・拡張には、カテコラミンやNOなどが関わる。我々は、HB-EGFの結合タンパクとして同定したナルディライジン(NRDc)が、ADAMの活性化を介して膜タンパクのシェディングを増強することを明らかにした。さらに最近、NRDc欠損マウスが、髄鞘低形成を呈することを報告した。同マウスは著明な低血圧を呈するが、交感神経活動は亢進していることから、低血圧の原因は末梢血管収縮不全であると考えられた(未発表)。その原因として、血管平滑筋におけるカテコラミン受容体のシグナル伝達不全が考えられた。そこで、カテコラミン受容体の下流にあるPKAやERKの活性化を生体内で可視化できる、FRETバイオセンサーを発現するトランスジェニックマウス(PKAchuやEKAREV)と、血管平滑筋特異的NRDc欠損マウスを交配し、抵抗血管におけるカテコラミンへの反応性をin vivo imagingで観察し、NRDcによる血管収縮・拡張や炎症時の血管透過性亢進の制御機構解明の一助とすることを目的とした。しかしながら、血管平滑筋特異的NRDc-CKO(sm22α-NRDc-CKO)の血圧は、対照群と比較して有意な変化を認めなかったため、交感神経特異的NRDc-CKO(DBH-NRDc-CKO)の解析を行ったところ、有意な血圧低下を認めた。以上より、NRDc欠損による血圧低下の原因は、血管平滑筋そのものよりも、交感神経に寄与する部分が大きいと考えられた。そこで、in vivo imagingについての方針を変更し、PKA-Sm22αNRDcCKOマウスに加えて、PKA-DBH-NRDcCKOマウスの解析を開始した。二光子励起顕微鏡を用いて、PKA-Sm22αNRDcCKOマウスとコントロールマウスにおける血管収縮の様子を観察したが、両群で血管収縮率に差を認めなかった。今後は、PKA-DBH-NRDcCKOマウスとコントロールマウス間でも同様の検討を行い、血管収縮率に差を認めるようであれば、FRETの解析を進めてつつ、分子メカニズムの解明に迫る。26年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PUBLICLY-25113710 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-25113710 |
シェディング調節因子による血管収縮と透過性制御機構の解明 | 26年度が最終年度であるため、記入しない。血管平滑筋特異的NRDc欠損マウス作製のため、NRDc-floxedマウスとSm22αプロモーターCre-transgenicマウスの交配及び繁殖を行った。血管平滑筋特異的NRDc欠損マウスの匹数は得られ、血圧測定や組織学的解析は行えたが、FRETバイオセンサーマウスとの交配はまだ行えていない。よって、当初の計画通りに進展していると考える。FRETバイオセンサーマウスとの交配を進め、in vivo real-time imagingを行う。血管収縮の様子を観察するため、カテコラミンや血管拡張薬の投与を行い、血管透過性亢進の様子を観察するため、腸炎モデルを作製し腸間膜動脈における炎症細胞の遊走・浸潤を観察する予定である。in vivo imagingの前に、各種薬剤に対する反応条件を決定するため、予備実験を行っておく。 | KAKENHI-PUBLICLY-25113710 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-25113710 |
超音波による磁気顕微計測技術の開拓と音響励起スピンダイナミクスの解明 | 本研究の目的は、超音波励起により局所的な磁気ヒステリシス曲線を取得し、その曲線から得られる保磁力や損失等の磁気パラメータを空間マッピングする磁気顕微計測技術を開拓し、ミクロなレベルで音響励起スピンダイナミクスを探求することである。超音波による磁気変調・検出技術は、新規の磁気計測手法を提供するとともに、鉄鋼評価などの工業分野への非破壊検査応用が期待される。(a)局所的な保磁力や磁気損失の空間マッピング周波数10MHzおよび20MHz帯の集束型超音波振動子を用いて、珪素鋼板における結晶粒界の可視化および磁区構造に起因した位相反転の観測に成功してきた。一方で、本研究過程において、結晶粒が比較的大きな一般鋼に関しては、保磁力や磁気損失が主に鋼材の残留応力に依存することが見出された。そこで、ASEM法で得られる局所磁気特性から残留応力を評価することを試みた。まず、引張試験により試験体に外部応力を印加し、各応力に対して、磁気ヒステリシス曲線を取得した。次に、磁気ヒステリシス曲線から得られる保磁力、残留磁化、磁気損失、透磁率に相当する物理量と外部応力との関係をプロットした。その結果、保磁力、残留磁化、磁気損失において明瞭な応力依存性が見出された。特に、保磁力に関しては、サンプル依存性も少なく、残留応力の定量評価にもっとも最適であることが見出された。本研究により、超音波を用いた局所磁気プローブ技術が鋼材の残留応力評価に応用できる可能性を見出した。(b)高速マイクロジェットによる局所音圧発生技術の開発レーザー光パルスを用いた方式を用いたマイクロジェットでは繰返しパルスにおける再現性が十分ではなく、局所音圧源として計測に用いるレベルではないことがわかった。そこで、機械方式のマイクロジェット発生器を開発し、以前よりも安定したパルス発生に成功している。高周波ASEMプローブの開発により、当初目的の一つである結晶粒や磁区構造の可視化に成功している。さらに、本研究過程において残留応力評価という重要な応用可能性が見出された。残留応力は、様々な鉄鋼製品やインフラ構造物において重要な検査項目となっているが、非破壊計測が十分確立していない。一般に、磁気特性は応力に敏感であることが知られているため、古くから磁気特性から残留応力を評価する試みはされてきた。しかしながら、通常の磁気測定では対象物に1次コイルと2次コイルを巻き付けてBーH曲線を取得するため、局所的な磁性を評価できず、各場所での応力が評価できない。一方、ASEM法では、超音波集束した領域における局所磁気ヒステリシス曲線が取得できる。2018年度において、引張試験により局所磁気ヒステリシス曲線の詳細な応力依存性を明らかにし、特に、保磁力が応力変換するよい指標であることが判明した。超音波を用いた局所磁気プローブ技術が基礎研究にとどまらず、実社会応用としての可能性が見出されたことは大きな成果であろう。基礎研究面として、音響誘起される磁気信号のより詳細なメカニズムを明らかにする。特に、磁区内・磁壁での音響誘起磁化発生のメカニズムや内部応力との関係を解明する。応用面としては、保磁力や磁気損失を空間マッピングするシステムを確立し、特に、残留応力イメージング技術へと展開したい。一方、マイクロジェットの開発に関しては、改良した機械方式により音源としての性能を確かめる。音圧波形を取得し、ピーク音圧、周波数および位相とそれらの再現性を確かめ、局所音源としての可能性を明確にしたい。本研究の目的は、音響誘起電磁法(ASEM法)により局所的な磁気ヒステリシス曲線を取得し、その曲線から得られる保磁力や損失等の磁気パラメータを空間マッピングする磁気顕微計測技術を開拓することである。(a)高周波ASEMプローブの開発音波遅延材として水を媒体とし、焦点距離12.7mmの20MHz帯凹型PVDF振動子を導入した。受信系はLCR回路と低雑音アンプで構成され、受信コイルは防水樹脂内に封じた。上記超音波振動子と受信系を一体化し、XYステージにより自動スキャンされるASEMプローブを作製した。励磁用の小型電磁石は試料裏側に設置した。この高周波ASEMシステムを用いて、まず半分の領域だけ酸化膜(黒皮)の付いた一般鋼で性能評価した。その結果、空間分解能は約200 μmと見積もられ、従来システムに比べて5倍程度改善された。次に、珪素鋼板に対してマグネットビューアとASEM画像を取得し、比較検証を行った。その結果、約200 μmサイズの磁区構造が信号の位相反転として明確に観測された。また、結晶粒界の可視化も確認された。これらのことから、当初目的の一つであった結晶粒や磁区構造の可視化に成功した。今後、信号位相を含めてより明確に可視化される条件を確定するに加えて、更なる空間分解能の向上のために周波数40MHz帯に挑戦する。(b)高速マイクロジェットによる局所音圧発生技術の開発レーザー光パルスを用いた方式を用いて、マイクロジェットによって発生する音波パルスの周波数特性を調べた。その結果、数kHz程度の音波パルスが100 μm程度の局所領域に照射されていることが確認され、音波の波長よりもはるかに小さな領域で音圧を発生できることが判明した。しかしながら、繰返しパルスにおける再現性が十分ではなく、今後、別方式により安定したマイクロジェット発生を目指す予定である。 | KAKENHI-PROJECT-17H02808 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H02808 |
超音波による磁気顕微計測技術の開拓と音響励起スピンダイナミクスの解明 | 高周波ASEMプローブの開発により、当初目的の一つである結晶粒や磁区構造の可視化に成功したから。超音波周波数を向上させると、超音波集束スポットサイズは小さくなるため、空間分解能が向上する見込みは十分にあった。ただし、スポットサイズを小さくすると信号強度は小さくなり、また、各結晶粒や磁区においてどのようはASEM信号波形の変化が現れるかは不明であった。今回、超音波遅延材を水溶液に変更し、焦点スポット近傍に防水した受信コイルを設置することにより、20 MHz帯のASEM信号観測が可能になった。鉄鋼表面に形成された酸化膜(黒皮)境界面近傍で空間分解能を確認し、また珪素鋼板において明確な磁区構造が可視化された。このことは、計画する磁気顕微観察が可能であることを意味し、今後、更に高周波化する意義を確認した。本研究の目的は、超音波励起により局所的な磁気ヒステリシス曲線を取得し、その曲線から得られる保磁力や損失等の磁気パラメータを空間マッピングする磁気顕微計測技術を開拓し、ミクロなレベルで音響励起スピンダイナミクスを探求することである。超音波による磁気変調・検出技術は、新規の磁気計測手法を提供するとともに、鉄鋼評価などの工業分野への非破壊検査応用が期待される。(a)局所的な保磁力や磁気損失の空間マッピング周波数10MHzおよび20MHz帯の集束型超音波振動子を用いて、珪素鋼板における結晶粒界の可視化および磁区構造に起因した位相反転の観測に成功してきた。一方で、本研究過程において、結晶粒が比較的大きな一般鋼に関しては、保磁力や磁気損失が主に鋼材の残留応力に依存することが見出された。そこで、ASEM法で得られる局所磁気特性から残留応力を評価することを試みた。まず、引張試験により試験体に外部応力を印加し、各応力に対して、磁気ヒステリシス曲線を取得した。次に、磁気ヒステリシス曲線から得られる保磁力、残留磁化、磁気損失、透磁率に相当する物理量と外部応力との関係をプロットした。その結果、保磁力、残留磁化、磁気損失において明瞭な応力依存性が見出された。特に、保磁力に関しては、サンプル依存性も少なく、残留応力の定量評価にもっとも最適であることが見出された。本研究により、超音波を用いた局所磁気プローブ技術が鋼材の残留応力評価に応用できる可能性を見出した。(b)高速マイクロジェットによる局所音圧発生技術の開発レーザー光パルスを用いた方式を用いたマイクロジェットでは繰返しパルスにおける再現性が十分ではなく、局所音圧源として計測に用いるレベルではないことがわかった。そこで、機械方式のマイクロジェット発生器を開発し、以前よりも安定したパルス発生に成功している。高周波ASEMプローブの開発により、当初目的の一つである結晶粒や磁区構造の可視化に成功している。さらに、本研究過程において残留応力評価という重要な応用可能性が見出された。残留応力は、様々な鉄鋼製品やインフラ構造物において重要な検査項目となっているが、非破壊計測が十分確立していない。一般に、磁気特性は応力に敏感であることが知られているため、古くから磁気特性から残留応力を評価する試みはされてきた。しかしながら、通常の磁気測定では対象物に1次コイルと2次コイルを巻き付けてBーH曲線を取得するため、局所的な磁性を評価できず、各場所での応力が評価できない。 | KAKENHI-PROJECT-17H02808 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H02808 |
ナノ空間コヒーレント熱・電子伝播計測システムの開発 | 「より微細化した構造の中でいかに熱(フォノン)を制御し高速で電子を操作するか」は、次世代ナノデバイス・熱電変換デバイスの開発にとって避けては通れない命題である。本研究課題では、位相制御テラヘルツ走査トンネル顕微鏡(THz-STM)・広帯域コヒーレントフォノン分光の基盤技術に波形整形技術や光ポンプ光学系を組み込み、極微かつ超高速でフォノン・電子のコヒーレントな伝播特性を可視化する「ナノ空間熱・電子伝播計測技術」を開発する。グラフェンフォノニック結晶(G-PnC)を試料とし、フォノンの波動的伝播をGHz帯から10 THzに及ぶ広帯域で制御し、付随するディラック電子の輸送特性をナノスケールで操作する技術を開拓する。「より微細化した構造の中でいかに熱(フォノン)を制御し高速で電子を操作するか」は、次世代ナノデバイス・熱電変換デバイスの開発にとって避けては通れない命題である。本研究課題では、位相制御テラヘルツ走査トンネル顕微鏡(THz-STM)・広帯域コヒーレントフォノン分光の基盤技術に波形整形技術や光ポンプ光学系を組み込み、極微かつ超高速でフォノン・電子のコヒーレントな伝播特性を可視化する「ナノ空間熱・電子伝播計測技術」を開発する。グラフェンフォノニック結晶(G-PnC)を試料とし、フォノンの波動的伝播をGHz帯から10 THzに及ぶ広帯域で制御し、付随するディラック電子の輸送特性をナノスケールで操作する技術を開拓する。 | KAKENHI-PROJECT-19K22100 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K22100 |
SCSの抗てんかん作用 | ラットの脊髄刺激(SCS:spinal cord stimulation)による抗てんかん作用の検討のため、上位脊髄の硬膜外に電極を留置し、留置翌日より1日1時間のSCSを1週間継続した。刺激強度は運動誘発閾値の80%に設定し、刺激周波数は2,10,15,25,50,100,200の7種類に設定した。SCSを行った群と対照群のラットの腹腔内にカイニン酸(12mg/kg)を投与して癲癇を誘発し、投与後6時間以内の癲癇発作の重症度を判定した。その結果、いずれの刺激条件でも重症度を抑える傾向にあったが、統計学的には200Hzで刺激した群のみが対照群と比較して有意差を持って抗てんかん作用を示した。下記内容でモデル動物を作成し、行動学的評価を行った。1. SCS(脊髄刺激療法)のための電極留置・電気刺激:全身麻酔下にC1の下半分とC2のlaminectomyを行い脊髄硬膜表面を露出し、直径2 mmの銀球電極を硬膜表面に留置する。SCS群に対しては引き続き、同日より1日1時間麻酔下に脊髄刺激。2.抗てんかんモデルの作成:全身麻酔下にげっ歯類に対して、てんかんモデルを作成。カイニン酸による薬物誘発のてんかんモデルは、カイニン酸を9-12mg/kg、ラットに腹腔内投与することで、投与数時間後からてんかん発作が出現する。てんかん発作が遷延する場合には動物愛護の観点からジアゼパムの投与により、鎮痙を図る。体重減少が認められる場合は、保液を行い体重維持に努めた。3.行動学的評価:てんかんモデル作成後に、てんかん発作の重症度判定の際には、汎用されているRacine classificationを用いた。下記内容でモデルラットを作成し、行動学的評価を行った。1.SCS(脊髄刺激療法)のための電極留置・電気刺激:直径約2mmの銀玉電極を作成。全身麻酔下にFischer F344ラットのC1の下半分とC2の椎弓切除を行い、脊髄硬膜表面を露出して、電極を硬膜表面に留置する。SCS群に対しては引き続き、翌日より1日1時間の脊髄刺激を1週間継続。刺激のパラメータについては2Hz、50Hz、200Hzでそれぞれ評価。2.てんかんモデルの作成:SCS群あるいはコントロール群の腹腔内にカイニン酸9-12mg/kgを投与することで投与数時間後からてんかん発作が出現する。てんかん発作が遷延する場合には動物愛護の観点からジアゼパムの投与により、鎮痙を図る。体重減少が認められる場合には、補液を行って体重維持に努める。3.行動学的評価:てんかんモデル作成後に、てんかん発作の重症度を判定。汎用されているRacine classificationをmodifyしたものを使用。4.現在のところ、コントロール群では平均のseizure stageは4.4であるが、2HzのSCS群では2と有意差を持って、てんかんの抑制効果が確認された。所属機関の異動に伴い、研究に必要な機器や薬剤、物品の新規購入に費用や時間を要しているため。1.SCS(脊髄刺激療法)のための電極留置・電気刺激:全身麻酔下にFischer344ラットの頚椎(C1)の下半分とC2の椎弓切除を行い、脊髄硬膜表面を露出して、銀玉電極を硬膜表面に留置。SCS群に対しては引き続き、留置翌日より1日1時間のSCSを1週間継続。刺激条件については、刺激強度を運動誘発閾値の80%に設定した。また刺激周波数を2、25、50、100、200Hzの5種類とし、それぞれ2Hz-SCS群、25Hz-SCS群、50Hz-SCS群、100Hz-SCS群、200Hz-SCS群、とした。2.てんかんモデルの作成:SCS群とコントロール群のラットの腹腔内にカイニン酸12mg/kgを投与することで投与数時間後から、てんかん発作が出現する。てんかん発作が遷延する場合には、動物愛護の観点からジアゼパムの投与により、鎮痙を図る。体重減少が認められる場合には、補液を行って体重維持に努める。3.行動学的評価:てんかんモデル作成後にてんかん発作の重症度を判定。汎用されているRacine classificationをmodifyしたものを使用。4.実験結果:コントロール群のseizure stageの平均は3.2であった。SCS群では2Hz-SCS群は1.6、25Hz-SCS群は3.0、25Hz-SCS群は3.4、100Hz-SCS群は2.2、200Hz-SCS群は1.9であった。統計学的解析を加えるとコントロール群と比較して2Hz-SCS群、100Hz-SCS群、200Hz-SCS群のそれぞれが有意差を持っててんかん重症度を抑える結果となった(p=0.0017, p=0.0496, p=0.0088)。一方で25Hz-SCS群、50 Hz-SCS群はコントロール群と比較して、てんかん重症度に有意差はなかった(p=0.6633, p=0.7649)。ラットの脊髄刺激(SCS:spinal cord stimulation)による抗てんかん作用の検討のため、上位脊髄の硬膜外に電極を留置し、留置翌日より1日1時間のSCSを1週間継続した。 | KAKENHI-PROJECT-26462209 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26462209 |
SCSの抗てんかん作用 | 刺激強度は運動誘発閾値の80%に設定し、刺激周波数は2,10,15,25,50,100,200の7種類に設定した。SCSを行った群と対照群のラットの腹腔内にカイニン酸(12mg/kg)を投与して癲癇を誘発し、投与後6時間以内の癲癇発作の重症度を判定した。その結果、いずれの刺激条件でも重症度を抑える傾向にあったが、統計学的には200Hzで刺激した群のみが対照群と比較して有意差を持って抗てんかん作用を示した。所属機関の異動に伴い、研究に必要な機器や薬剤の新規購入に費用や時間を要している為。現在検討できているのは刺激周波数2Hzのみで、この刺激群ではコントロール群に比べて有意差を持って、てんかん抑制効果があることが確認されているが、50Hz、200Hzではどのような効果があるかを確認することで、至適刺激頻度を模索する。またSCSの適切な刺激導入と継続時間を検討する必要がある。現在はSCSをてんかん誘発薬剤投与前に行っているが、投与後に導入した群についても検討する。また電気刺激誘発のてんかんモデルであるKindlingモデルにおいてもSCSの効果を検討する予定。SCSの抗てんかん作用については、行動学的には評価に加えて、組織学的評価も行う予定である。てんかんSCSについては、適切な刺激導入と継続時期を検討する必要がある。まずはSCSを急性期に施行した群でモデル作成の3日後から刺激を開始する急性期群と、4週間後から刺激を開始する慢性期群の2群での電気刺激の効果について検討する。また電気刺激誘発のてんかんモデルであるKindlingモデルにおいてもSCSの効果を検討する予定。実験に用いる脊髄刺激電極をメーカーに作成依頼すると非常に高額であるので、当該年度の後半は自作で電極を作成するようにした。その結果、予想よりもコストを抑えることに成功したため、その差額が次年度使用額として生じた。自作の電極の材料費として使用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-26462209 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26462209 |
ダイオキシン受容体によるmicroRNAの発現誘導を介した免疫制御機構の解析 | 我々はmiR-132/miR-212クラスターダブルノックアウトマウスが野生型に比べリポ多糖(LPS)に過敏であることを示した。LPS刺激では、M1およびM2マクロファージと異なり、腹腔マクロファージではmiR-132/miR-212は上方制御を受けるが、その上方制御は、野生型に比べるとアリル炭化水素受容体(Ahr)ノックアウト腹腔マクロファージでは抑制されていることを示した。また、IL-6がmiR-132/miR-212クラスターの直接的標的であることを示した。したがって、腹腔マクロファージでは、miR-132/miR-212クラスターは、Ahrに対してLPS刺激により産出されるIL-6に負の制御を行う我々はmiR-132/miR-212クラスターダブルノックアウトマウスが野生型に比べリポ多糖(LPS)に過敏であることを示した。LPS刺激では、M1およびM2マクロファージと異なり、腹腔マクロファージではmiR-132/miR-212は上方制御を受けるが、その上方制御は、野生型に比べるとアリル炭化水素受容体(Ahr)ノックアウト腹腔マクロファージでは抑制されていることを示した。また、IL-6がmiR-132/miR-212クラスターの直接的標的であることを示した。したがって、腹腔マクロファージでは、miR-132/miR-212クラスターは、Ahrに対してLPS刺激により産出されるIL-6に負の制御を行うマクロファージは、T細胞の分化・活性化だけでなく、トル様受容体(TLR)活性化を通じて炎症性サイトカインを産生している。我々は、転写因子であるアリル炭化水素受容体(Ahr)の欠損が、Stat1の関与およびNK- κB経路の阻害によりリポ多糖(LPS)刺激に対するマクロファージのIL-6産生を亢進させることを示した。Ahrは、マクロファージにおいてIL-6などの炎症性サイトカイン産生を負に制御するが、その正確な機構は十分に明らかではない。マイクロRNA(miR)は、様々な転写因子との相互作用による新しい免疫応答制御因子として近年注目されている。短い単鎖の非コードRNA分子であるmiRは、主に転写後の遺伝子発現抑制により免疫応答を制御する。本研究の目的は、AhrのmiRを通じたマクロファージ機能制御機構の解明である。我々は次のことを明らかにした。(1)miR-132/miR-212ダブルノックアウトマウスが野生型に比べLPSに対して過敏であること。(2)LPS刺激では、M1およびM2マクロファージと異なり、腹腔マクロファージではmiR-132/miR-212は上方制御を受けるが、その上方制御は野生型に比べるとAhrノックアウト腹腔マクロファージでは抑制されること。(3)miR-132/miR-212クラスターの欠損によって、LPS刺激による腹腔マクロファージでのIL-6産出は亢進するが、M1およびM2マクロファージでは亢進しないこと。(4)miR-132/miR-212クラスターはNF-kBの転写活性には影響せずIL-6がmiR-132/miR-212の直接的標的となりうること。以上により、miR-132/miR-212クラスターは、腹腔マクロファージではNF-kB経路でなく直接IL-6を標的とし、LPS刺激に対してAhrにより負の制御を行うことが解明された。樹状細胞とマクロファージは、T細胞の分化を促し活性化させるだけでなく、トル様受容体(TLR)の活性化に対する応答として炎症性サイトカインを産生していることが知られている。我々はこれまでに、転写因子であるアリル炭化水素受容体(aryl hydrocarbon receptor :Ahr)が欠損することによって、Stat1の関与およびNK- κB経路の阻害を通じて、リポ多糖(LPS)による刺激に対するマクロファージのIL-6産生を亢進させることを示した。Ahrは、樹状細胞内およびマクロファージ内でIL-6やIL-10などの炎症性サイトカインの産生を制御していることが知られている。しかしながら、樹状細胞およびマクロファージの機能を変化させるAhrの詳細な機構は十分に明らかになっていない。マイクロRNA(miR)は、様々な転写因子との相互作用を通じて免疫応答を制御する新しい制御因子として近年注目されている。MiRは短い単鎖の非コードRNA分子であり、主に転写後の遺伝子発現を抑制することで免疫応答の制御を行っていると考えられている。本研究計画の目的は、このAhrが、miRによる制御を通じて、どのように樹状細胞およびマクロファージの機能を変えているかを解明することである。本研究での研究成果によって、多くの炎症疾患に対してAhrを中心とした機能の制御による有効な治療方法の開発が可能となると考えられる。骨髄細胞からM1マクロファージに分化する際にmiR-132/212クラスターが特異的に上方制御されていることを見出した。LPSはM1マクロファージ内でのAhrの上方制御を引き起こすが、M2マクロファージでは上方制御を引き起こさない。また、Ahrリガンド(TCDDもしくはFICZ)はM1マクロファージでのmiR-132/212発現を促進し、Ahrが欠損されている場合はmiR-132/212発現は阻害される。 | KAKENHI-PROJECT-24790471 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24790471 |
ダイオキシン受容体によるmicroRNAの発現誘導を介した免疫制御機構の解析 | したがって、miR-132/212クラスターはM1マクロファージ分化に関わっており、AhrはM1マクロファージ内でのmiR-132/212発現に必要であると考えられる。我々はmiR-132/212の標的候補としてSmad4を同定したが、miR-312/212クラスター欠損によってはM1マクロファージの機能は変化しなかった。しかし、興味深いことに、miR-132/212欠損マウスは野生型マウスに比べてLPS刺激に敏感で、miR-312/212欠損マウスの腹膜マクロファージは野生型よりもIL-6を高発現する。さらに、LPS刺激によって野生型マウスの腹膜マクロファージではmiR-132/212クラスターを誘導できるが、Ahr欠損した細胞では誘導できないことを見出した。これはmiR-132/212がAhrに制御され、LPS刺激においてIL-6産出に対する負の制御をしていることを示している。miR-132/212クラスターによるSmad4等の制御を確認するために、ルシフェラーゼアッセイによる解析を行う。LPS刺激によるサイトカイン産生に関連した腹膜マクロファージにおけるmiR-132/212の機能を明らかにするために、腹膜マクロファージのmiR-132/212の標的候補を同定する。化学試薬等1,200,000円 | KAKENHI-PROJECT-24790471 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24790471 |
複雑系における平衡状態とその統計的性質 | 平成11年度非可道離散写像が非双曲型周期軌道を有している時、conformal measureが存在する為の条件を先ず性質の良い集合上で定義されたinduced mapに対するconformal measureを構成しそれを全体に広げるという方法により明らかにする事ができた。又観測量の時間発展に関する時間相関関数の漸近的挙動を明らかにするという問題について,平衡状態の密度関数の評価を取り入れLiveraniのPerron-Frobenius operatorの摂動をとおしたアプローチにより、多項式のオーダーで時間相関関数の減少のオーダーを評価する事ができた。特にこの方法は多次元のcountable to oneの写像にも適用可能である。平成12年度非可道離散写像が非双曲型周期軌道を有している時の力学的ゼータ関数のmeromorphic domainを明らかにするという問題に関し、Jump transformationに関するゼータ関数ともとの非双曲型写像のゼータ関数との関連性を捕える事により達成する事ができた。又,時間相関の減少のオーダーの評価に関し、非双曲型周期軌道を除いたcompact set上でのPerron-Frobenius operatorの一様収束のオーダーを評価する事により、多項式オーダーの評価を前年度の結果に比べより一般的な状況で得る事が可能となった。平成11年度非可道離散写像が非双曲型周期軌道を有している時、conformal measureが存在する為の条件を先ず性質の良い集合上で定義されたinduced mapに対するconformal measureを構成しそれを全体に広げるという方法により明らかにする事ができた。又観測量の時間発展に関する時間相関関数の漸近的挙動を明らかにするという問題について,平衡状態の密度関数の評価を取り入れLiveraniのPerron-Frobenius operatorの摂動をとおしたアプローチにより、多項式のオーダーで時間相関関数の減少のオーダーを評価する事ができた。特にこの方法は多次元のcountable to oneの写像にも適用可能である。平成12年度非可道離散写像が非双曲型周期軌道を有している時の力学的ゼータ関数のmeromorphic domainを明らかにするという問題に関し、Jump transformationに関するゼータ関数ともとの非双曲型写像のゼータ関数との関連性を捕える事により達成する事ができた。又,時間相関の減少のオーダーの評価に関し、非双曲型周期軌道を除いたcompact set上でのPerron-Frobenius operatorの一様収束のオーダーを評価する事により、多項式オーダーの評価を前年度の結果に比べより一般的な状況で得る事が可能となった。本研究の目的のひとつである、非可逆離散写像が非双曲型周期軌道を有している時意味のある基本測度を構成するという問題に関しては、平成11年11/2712/8、北海道大学の客員教授として札幌に滞在していたM.Denker氏から有効なアドバイスを受ける事ができ、nonsingularなcorformal measure存在の為の十分条件を確立する事ができた。方法論としては、先ず性質の良い集合上で定義されたinduced mapに対するconformal measureを構成しそれを全体に広げるというものである。また、もうひとつの目的、観測量の時間発展に関する時間相関関数の漸近的振舞いを明らかにするという問題に関しては、平成11年10/1010/20英国出張しMonchester大学教授M.Pallicott氏のレビューを受ける事により、Equilibrium stateの新しい密度関数の評価を取り入れ、LiveraniのPerron-Froberius operatorの摂動をとおしたアプローチを再び適用し、多項式のオーダーで時間相関関数の減少のオーダーを上から評価した。この結果は、平成10年度の研究課題「非線型・非双曲型力学系における統計的性質の研究」で達成された結果をより厳密化したものとなっている。本研究の目的のひとつである非可逆写像が非双曲型周期軌道を有している時、時間相関関数の漸近的挙動の解析に有効な道具と考えられている、"力学的ゼータ関数"のmeromorphic domainを明らかにする問題については、平成12年11/1511/25英国出張しManchester大学教授M.Pollicott氏のレビューを受ける事により新しい結果を出す事ができ共同論文を完成させた。方法論としては、先ず性質の良い集合上で定義されるJump transformationに関するゼータ関数ともとの非双曲型写像のゼータ関数の関連性を明らかとするというものである。又、平成12年12/412/7日本大学の客員教授として札幌に滞在していたC.Liverani博士(ローマ大学)から有効なアドバイスを受ける事ができ、ゼータ関数に関するアプローチとは全く違う極めてSimpleな方法で、時間相関関数の減少のオーダーを評価する事ができた。具体的には、非双曲型周期軌道を除いたCompact set上で,transfer operatorの収束のオーダーを評価しそれをもとに,時関相関関数の減少のオーダーを得る事ができた。又Pressureに関する変分原理を非双曲型力学系に対して達成させるという問題に関しては,Weak Bounded Variationと呼ばれる性質をもつポテンシャルを捕えるという事により,良い方向性を見い出す事ができた。 | KAKENHI-PROJECT-11640134 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11640134 |
スピングラスのメモリーのスピン流によるベクトル的読み出し | 磁性原子がランダムに配列した磁性体であるスピングラスでは、低温でスピンが凍結し、エイジング現象やメモリー効果などの特徴的な記憶現象を示す。しかし、その詳細については不明な点が多い。本研究では、スピン配列の詳細な情報を得るためにスピン流の利用に注目した。これは、スピン流がスピンの方向とスピンが流れる方向の二つの量を持つベクトル量であり、スピングラス中のスピンと直接相互作用してスピン配列の有用な情報をもたらし得るためである。スピン流を用いてスピングラスの低温相での挙動を解明することを目的に研究を進めた。強磁性FeNi層/中間Cu層/スピングラスAgMn層の3層構造をスパッタ法により作成し、強磁性層の強磁性共鳴を利用したスピンポンピングによるスピングラス層への非局所スピン流注入を試みた。比較のため、スピングラス層を含まない強磁性FeNi層/中間Cu層の2層構造も作成した。中間層は強磁性相とスピングラス層の間に交換結合が生じさせないために挿入した。マイクロ波を薄膜に対して垂直方向に、掃引磁場を薄膜に対して平行方向に印加し、低温での強磁性共鳴のスペクトルの半値幅の温度依存性を調べた。その結果、3層構造試料の半値幅はすべての温度領域で2層構造試料の半値幅より大きく、これはスピングラス層に注入されたスピン流が吸収されることにより生じるものと考えられる。また、2つの試料での半値幅の差はスピングラス転移温度近傍で極小を示した。この特徴は、スピングラス転移温度以下で、スピン拡散長が急激に低下するか、またはミキシングコンダクタンスが増大することで解釈される。現在のところ、この両者のどちらが支配的であるのかについては明らかではないが、スピングラス相と常磁性相ではスピン流の挙動が異なることがわかった。スピングラス(SG)のメモリーを読み出すための基礎として、まずメモリーの起源を解明するために、SG相関長がダイナミクスへ及ぼす影響を明らかにすることを目的として、メゾスコピックスケールでのSGの挙動を調べた。特に、本研究で用いるハイゼンベルグ型に属する金属SGの挙動が、イジングSGに対して広く受け入れられているドロップレット描像で解釈可能か否かについて検討した。微細加工により100200nm程度の石英ガラス柱の上に3次元的にサイズが制限されたSGAgMnを堆積した試料を作成し、その磁気特性を調べた。その結果、零磁場冷却磁化のピーク温度がバルクと比較して低下することを観測し、さらにSG領域での磁化緩和の測定より、SG相関長が時間的に成長し、その成長が微細構造のサイズで制限されるとの描像を得て、その成長に関する障壁指数を得た。さらに、磁場中での磁気挙動より、磁場クロスオーバー長の存在を示唆する結果を得た。これらの結果は、ハイゼンベルグSGにおいてもドロップレット描像が成り立つことを確度高く示しており、メモリー効果もこの描像を基盤に理解することが妥当であるものと考えられる。一方、スピンホール効果測定の準備として、メゾスコピックサイズのリエントラントスピングラス(温度の低下と共に、常磁性から強磁性を経てSGへ転移する系で、通常のSGよりも磁化が大きい)Ni(Pt)Mn試料を用いたホール素子を作成し、異常ホール効果の測定を行なった。さらに、上記のAgMn試料と同様の形状を持つNi(Pt)Mn試料の磁化測定を行ない、異常ホール効果との比較を行なった。その結果、1つのメゾスコピックサイズの領域からなるホール素子においてのみ、SG領域でSGドメインの反転に伴うと考えられる飛びが観測され、ドロップレット描像を支持する特徴を見出した。磁性原子がランダムに配列した磁性体であるスピングラスでは、低温でスピンが凍結し、エイジング現象やメモリー効果などの特徴的な記憶現象を示す。しかし、その詳細については不明な点が多い。本研究では、スピン配列の詳細な情報を得るためにスピン流の利用に注目した。これは、スピン流がスピンの方向とスピンが流れる方向の二つの量を持つベクトル量であり、スピングラス中のスピンと直接相互作用してスピン配列の有用な情報をもたらし得るためである。スピン流を用いてスピングラスの低温相での挙動を解明することを目的に研究を進めた。強磁性FeNi層/中間Cu層/スピングラスAgMn層の3層構造をスパッタ法により作成し、強磁性層の強磁性共鳴を利用したスピンポンピングによるスピングラス層への非局所スピン流注入を試みた。比較のため、スピングラス層を含まない強磁性FeNi層/中間Cu層の2層構造も作成した。中間層は強磁性相とスピングラス層の間に交換結合が生じさせないために挿入した。マイクロ波を薄膜に対して垂直方向に、掃引磁場を薄膜に対して平行方向に印加し、低温での強磁性共鳴のスペクトルの半値幅の温度依存性を調べた。その結果、3層構造試料の半値幅はすべての温度領域で2層構造試料の半値幅より大きく、これはスピングラス層に注入されたスピン流が吸収されることにより生じるものと考えられる。また、2つの試料での半値幅の差はスピングラス転移温度近傍で極小を示した。この特徴は、スピングラス転移温度以下で、スピン拡散長が急激に低下するか、またはミキシングコンダクタンスが増大することで解釈される。現在のところ、この両者のどちらが支配的であるのかについては明らかではないが、スピングラス相と常磁性相ではスピン流の挙動が異なることがわかった。 | KAKENHI-PROJECT-20654036 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20654036 |
粘性流体方程式系の解の拡散と波動現象の数学解析 | 本研究では,圧縮性Naver-Stokes方程式,圧縮性Navier-Stokes-Korteweg方程式,非圧縮性双曲型Navier-Stokes方程式の解の時間に関する漸近挙動を考察することで,これらの粘性流に現れる波動と拡散現象を数学的に明らかにすることが目的である.圧縮性Navier-Stokes方程式では,これまでの定数平衡状態の安定性の研究において,広い意味でのHuygensの原理が成り立つことが示唆されている.圧縮性Navier-Stokes-Korteweg方程式は, 2相流等で相転移境界が薄い遷移ゾーンとして見なされるモデル方程式として提唱され,その初期値問題が研究されている.非圧縮性双曲型Navier-Stokes方程式は,斉次非圧縮性Maxwell流体の運動の記述しており,初期値問題と半空間の初期値境界値問題の場合に,小さい初期値に対する時間大域解の一意存在が示されている.外部領域と摂動半空間における非圧縮性双曲型Navier-Stokes方程式の初期値境界値問題では,線形化方程式の解の局所エネルギー減衰評価を得ることに成功した.特に摂動半空間の場合は外部領域の場合より早く減衰することを証明した.全空間における圧縮性Navier-Stokes-Korteweg方程式では,定数平衡状態の安定性について,解の時間無限における漸近挙動の結果を得ることに成功した.特に,漸近挙動として拡散項と拡散波動項の抽出に成功した.全空間における圧縮性Navier-Stokes-Korteweg方程式では,相転移を記述するための圧力項は非単調増加関数でなければならない.したがって.音速が零の場合を考察し,Besov空間の枠組みで定数平衡状態の安定性と解の漸近挙動の詳細な結果を得ることに成功した.圧縮性Navier-Stokes方程式の定数平衡状態の安定性の研究では,広い意味でのHuygensの原理が成り立つことが示唆されている.圧縮性Navier-Stokes-Korteweg方程式は, 2相流等で相転移境界が薄い遷移ゾーンとして見なされるモデル方程式として提唱され近年研究されている.非圧縮性双曲型Navier-Stokes方程式は,斉次非圧縮性Maxwell流体の運動の記述として提唱されており,初期値問題の場合に,小さい初期値に対する時間大域解の一意存在が示されている.外部領域と摂動半空間における非圧縮性双曲型Navier-Stokes方程式では,線形化方程式の解の局所エネルギー減衰評価を得ることに成功した.全空間における圧縮性Navier-Stokes-Korteweg方程式では,定数平衡状態の安定性について,解の時間無限における漸近挙動の詳細な結果を得ることに成功した.特に,漸近挙動として拡散項と拡散波動項の抽出に成功した.また,全空間における圧縮性Navier-Stokes-Korteweg方程式では,音速がゼロの場合を考察し,Besov空間の枠組みで定数平衡状態の安定性と解の漸近挙動の詳細な結果を得ることに成功した.Sobolev空間の枠組みでの考察も順調に進んでいる.また,2次元外部領域における消散項付波動方程式では, Hardy空間とBMO空間のdualityとエネルギー法を用い,解の時空間のL2有界性を得る方法を, 2次元全空間の非圧縮性双曲型Navier-Stokes方程式,圧縮性Navier-Stokes方程式,圧縮性Navier-Stokes-Korteweg方程式の初期値問題に応用し,解の漸近形を抽出する研究も概ね順調に進んでいる.圧縮性Naver-Stokes方程式と双曲型Navier-Stokes方程式の解の構造において,前者の線形近似はStokes方程式と線形粘性弾性体方程式であり,後者はソレノイダルベクトル場における消散項付波動方程式である.拡散項と波動項の相互作用が異なるため,それぞれの方程式系の解の拡散と波動現象を知るために,解の時間無限における漸近挙動を解析する.(1)全空間における圧縮性Navier-Stokes-Korteweg方程式は,二相流体の拡散界面モデルであり,その相転移を記述するためには圧力項は非単調増加関数でなければならない.したがって.音速が零の場合を考察し,ソボレフ空間の枠組で考察を行う.方法としては解を低周波部分と高周波部分に分けて解析を行い,低周波部分では基本解を具体的に求め通常の圧縮性Navier-Stokes方程式のときよりオーダーが悪くなる項を明らかにする.また,保存則系で考えることにより,非線形評価でも正則性の仮定は有効になると考えている.高周波部分ではエネルギー計算と高周波の性質をうまく組み合わせることで線形評価を導出し,組み合わせることで結論を導く.(2)外部領域における圧縮性Navier-Stokes-Korteweg方程式では,線形化方程式の解の局所エネルギー評価を導き,全空間の解の評価と合わせcutoffテクニックを用いて線形化方程式の解の評価を導く.本研究では,圧縮性Naver-Stokes方程式,圧縮性Navier-Stokes-Korteweg方程式,非圧縮性双曲型Navier-Stokes方程式の解の時間に関する漸近挙動を考察することで,これらの粘性流に現れる波動と拡散現象を数学的に明らかにすることが目的である.圧縮性Navier-Stokes方程式では,これまでの定数平衡状態の安定性の研究において,広い意味でのHuygensの原理が成り立つことが示唆されている.圧縮性Navier-Stokes-Korteweg方程式は, 2相流等で相転移境界が薄い遷移ゾーンとして見なされるモデル方程式として提唱され,その初期値問題が研究されている.非圧縮性双曲型Navier-Stokes方程式は,斉次非圧縮性Maxwell | KAKENHI-PROJECT-18K03368 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K03368 |
粘性流体方程式系の解の拡散と波動現象の数学解析 | 流体の運動の記述しており,初期値問題と半空間の初期値境界値問題の場合に,小さい初期値に対する時間大域解の一意存在が示されている.外部領域と摂動半空間における非圧縮性双曲型Navier-Stokes方程式の初期値境界値問題では,線形化方程式の解の局所エネルギー減衰評価を得ることに成功した.特に摂動半空間の場合は外部領域の場合より早く減衰することを証明した.全空間における圧縮性Navier-Stokes-Korteweg方程式では,定数平衡状態の安定性について,解の時間無限における漸近挙動の結果を得ることに成功した.特に,漸近挙動として拡散項と拡散波動項の抽出に成功した.全空間における圧縮性Navier-Stokes-Korteweg方程式では,相転移を記述するための圧力項は非単調増加関数でなければならない.したがって.音速が零の場合を考察し,Besov空間の枠組みで定数平衡状態の安定性と解の漸近挙動の詳細な結果を得ることに成功した.圧縮性Navier-Stokes方程式の定数平衡状態の安定性の研究では,広い意味でのHuygensの原理が成り立つことが示唆されている.圧縮性Navier-Stokes-Korteweg方程式は, 2相流等で相転移境界が薄い遷移ゾーンとして見なされるモデル方程式として提唱され近年研究されている.非圧縮性双曲型Navier-Stokes方程式は,斉次非圧縮性Maxwell流体の運動の記述として提唱されており,初期値問題の場合に,小さい初期値に対する時間大域解の一意存在が示されている.外部領域と摂動半空間における非圧縮性双曲型Navier-Stokes方程式では,線形化方程式の解の局所エネルギー減衰評価を得ることに成功した.全空間における圧縮性Navier-Stokes-Korteweg方程式では,定数平衡状態の安定性について,解の時間無限における漸近挙動の詳細な結果を得ることに成功した.特に,漸近挙動として拡散項と拡散波動項の抽出に成功した.また,全空間における圧縮性Navier-Stokes-Korteweg方程式では,音速がゼロの場合を考察し,Besov空間の枠組みで定数平衡状態の安定性と解の漸近挙動の詳細な結果を得ることに成功した.Sobolev空間の枠組みでの考察も順調に進んでいる.また,2次元外部領域における消散項付波動方程式では, Hardy空間とBMO空間のdualityとエネルギー法を用い,解の時空間のL2有界性を得る方法を, 2次元全空間の非圧縮性双曲型Navier-Stokes方程式,圧縮性Navier-Stokes方程式,圧縮性Navier-Stokes-Korteweg方程式の初期値問題に応用し,解の漸近形を抽出する研究も概ね順調に進んでいる.圧縮性Naver-Stokes方程式と双曲型Navier-Stokes方程式の解の構造において,前者の線形近似はStokes方程式と線形粘性弾性体方程式であり,後者はソレノイダルベクトル場における消散項付波動方程式である.拡散項と波動項の相互作用が異なるため,それぞれの方程式系の解の拡散と波動現象を知るために,解の時間無限における漸近挙動を解析する. | KAKENHI-PROJECT-18K03368 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K03368 |
植物由来共生オルガネラの宿主隷属化機構 | 申請者らは、アピコンプレクサに属するトキソプラズマやマラリア原虫がいくつかの植物ホルモンを実際に産生していることを示した。また、その一連の解析の中で、特にマラリア原虫ではサリチル酸が高濃度に蓄積していることを見いだし、サリチル酸の宿主免疫を改変機能とマラリアの重症度決定に関与している可能性を示した。さらに申請者らはアブシジン酸生合成阻害剤がトキソプラズマのみならず近縁のネオスポーラに対しても抗原虫作用を持つことを示し、さらに今までに治療薬のないトキソプラズマ組織シストに対する阻害効果を持つ物質をスクリーニングした結果、in vitro、in vivo双方で効果を持つ物質を見出すことができた。マラリア原虫やトキソプラズマなどアピコンプレクス門原虫の大きな特徴の一つとしてアピコプラストと呼ばれるオルガネラの存在が挙げられる。アピコプラストは葉緑体が退化してできた4重膜構造の細胞内小器官であり、光合成細菌を取り込んだ紅藻類の祖先が原虫の祖先生物に取り込まれることによって成立したと考えられている。一方、申請者らは最近、トキソプラズマが植物ホルモンの一種であるアブシジン酸およびサイトカイニンを産生しており、トキソプラズマはこれらの植物ホルモンを自身の増殖の制御に用いていることを明らかにしてきた。そこで本研究では、これらの予備的解析を元に、トキソプラズマやマラリア原虫の持つ植物ホルモンやその阻害薬の作用を詳細に検討し、アピコンプレクス門原虫がどのような植物ホルモンをどのように用いているのかを明らかにすることで、原虫に存在する葉緑体起源のオルガネラ(最内層のマトリョーシカ)が、宿主である原虫(中層マリョーシカ)の「寄生」という行動をどのように支配しているか、また更に、支配された「寄生体」が「被寄生体」である哺乳類宿主細胞(外層マトリョーシカ)をどのように支配しているのかを理解することを目的とした。本年度、申請者らはアピコンプレクサの持つ植物ホルモンの網羅的な検出・定量を試みた。その結果、これまで存在が確認されているアブシジン酸・サイトカイニンのほか新規に数種の植物ホルモンが検出され、一部は非常に高濃度に蓄積していることが判明した。現在は新規検出されたホルモンの生理機能を分子生物学的手法を用いて解析している。申請者らは最近、トキソプラズマが植物ホルモンの一種であるアブシジン酸およびサイトカイニンを産生しており、トキソプラズマはこれらの植物ホルモンを自身の増殖の制御に用いていることを明らかにしてきた。そこで本研究では、これらの予備的解析を元に、トキソプラズマやマラリア原虫の持つ植物ホルモンやその阻害薬の作用を詳細に検討し、アピコンプレクス門原虫がどのような植物ホルモンをどのように用いているのかを明らかにすることを目的とした。昨年度、申請者らはトキソプラズマやマラリア原虫中に大量のサリチル酸の存在を見出した。そこで本年度申請者らは、マラリア原虫をモデルにサリチル酸の生理機能の解析を行った。熱帯熱マラリア原虫に細菌由来のサリチル酸分解酵素遺伝子を導入し、サリチル酸欠乏原虫を作出した。この変異原虫は野生株と比較して増殖速度などに大きな差は認められなかったが、マラリア原虫が産生することが知られている炎症物質PGE2の産生量が有意に減少していた。このことからサリチル酸とPGE2合成系の関係性、宿主免疫系を改変している可能性が示された。この可能性を検証するため、ネズミマラリア原虫を用い、同様に欠乏原虫を作出した。欠乏原虫は感染試験におけるマウス致死活性が有意に上昇しており、脳組織検査、色素漏出試験の結果、脳マラリアの重症度が亢進していることが確認された。PGE2は炎症性サイトカインを介した脳マラリア発症への関与が知られている。そこで感染マウス血中でのPGE2、および各種サイトカインの定量を行ったところ、サリチル酸欠乏原虫では血中PGE2濃度が減少し、また炎症性サイトカイン産生が亢進していた。以上から、サリチル酸は宿主のPGE2および炎症性サイトカイン濃度を変化させ、宿主免疫を改変する機能を持ち、マラリアの重症度決定に関与している可能性が示唆された。マラリア原虫やトキソプラズマなどアピコンプレクス門原虫の大きな特徴の一つとしてアピコプラストと呼ばれるオルガネラの存在が挙げられる。アピコプラストは葉緑体が退化してできた4重膜構造の細胞内小器官であり、光合成細菌を取り込んだ紅藻類の祖先が原虫の祖先生物に取り込まれることによって成立したと考えられている。一方、申請者らは最近、トキソプラズマが植物ホルモンの一種であるアブシジン酸およびサイトカイニンを産生しており、トキソプラズマはこれらの植物ホルモンを自身の増殖の制御に用いていることを明らかにしてきた。そこで本研究では、これらの予備的解析を元に、トキソプラズマやマラリア原虫の持つ植物ホルモンやその阻害薬の作用を詳細に検討し、アピコンプレクス門原虫がどのような植物ホルモンをどのように用いているのかを明らかにすることで、原虫に存在する葉緑体起源のオルガネラ(最内層のマトリョーシカ)が、宿主である原虫(中層マリョーシカ)の「寄生」という行動をどのように支配しているか、また更に、支配された「寄生体」が「被寄生体」である哺乳類宿主細胞(外層マトリョーシカ)をどのように支配しているのかを理解することを目的とした。本年度、申請者らはアピコンプレクサ、特にマラリア原虫の持つ植物ホルモンの網羅的な検出・定量を試みた。 | KAKENHI-PLANNED-23117007 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-23117007 |
植物由来共生オルガネラの宿主隷属化機構 | その結果、これまで存在が確認されているアブシジン酸・サイトカイニン以外にも数種のの植物ホルモンが検出され、またそのうちの一部は非常に高濃度に蓄積していることが判明した。現在は新規検出されたホルモンの生理機能を分子生物学的手法を用いて解析している。また、トキソプラズマのシストに対する阻害効果を持つ物質も見出した。申請者らは最近、トキソプラズマが植物ホルモンを産生しており、これらの植物ホルモンを自身の増殖の制御に用いていることを明らかにしてきた。そこで本研究では、これらの予備的解析を元に、トキソプラズマやマラリア原虫の持つ植物ホルモンやその阻害薬の作用を詳細に検討し、アピコンプレクス門原虫がどのような植物ホルモンをどのように用いているのかを明らかにすることを目的とした。本年度は昨年度に引き続き、申請者らがトキソプラズマやマラリア原虫中に大量に存在していることを見出したサリチル酸の生理機能の解析を行った。昨年度の熱帯熱マラリア原虫を用いた解析と同様に、本年度では新たにネズミマラリア原虫に細菌由来のサリチル酸分解酵素遺伝子を導入し、サリチル酸欠乏原虫を作出した。欠乏原虫は感染試験におけるマウス致死活性が有意に上昇しており、脳組織検査、色素漏出試験の結果、脳マラリアの重症度が亢進していることが確認された。熱帯熱マラリア原虫を用いた解析において欠乏原虫で産生が減少していたPGE2は、炎症性サイトカインを介した脳マラリア発症への関与が知られている。そこで感染マウス血中でのPGE2、および各種サイトカインの定量を行ったところ、サリチル酸欠乏原虫では血中PGE2濃度が減少し、また炎症性サイトカイン産生が亢進していた。以上から、サリチル酸は宿主のPGE2および炎症性サイトカイン濃度を変化させ、宿主免疫を改変する機能を持ち、マラリアの重症度決定に関与している可能性が示唆された。引き続き本年度は、これまでの成果を生かし、植物ホルモンやその阻害薬を抗原虫薬として応用できないかその可能性を探るための研究を開始した。まずは今までに治療薬のない、トキソプラズマ組織シストに対する阻害効果を探ったところ、有望な結果を示唆する予備的な解析結果が得られたので、来年度は引き続きスクリーニングを進めていきたい。申請者らは最近、トキソプラズマが植物ホルモンの一種であるアブシジン酸およびサイトカイニンを産生しており、トキソプラズマはこれらの植物ホルモンを自身の増殖の制御に用いていることを明らかにしてきた。そこで本研究では、これらの予備的解析を元に、トキソプラズマやマラリア原虫の持つ植物ホルモンやその阻害薬の作用を詳細に検討し、アピコンプレクス門原虫がどのような植物ホルモンをどのように用いているのかを明らかにすることを目的とした。本年度は昨年度に引き続き、これまでの成果を生かし、植物ホルモンやその阻害薬を抗原虫薬として応用できないかその可能性を探るための研究を行った。まず今までの研究で、トキソプラズマに対して抗原虫作用を有することを確認済みであるアブシジン酸生合成阻害剤であるフルリドンが、トキソプラズマに近縁なアピコンプレクサ生物であるネオスポーラに対して抗原虫作用を有するかを確認したところ、in vitroあるいはin vivoいずれにおいても有意な作用を持つことが確認できた。 | KAKENHI-PLANNED-23117007 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-23117007 |
チタン酸ストロンチウム薄膜を曲げて誘起される強誘電性の探求 | チタン酸ストロンチウム(以下、STO)は、全温度範囲にわたって安定な常誘電体である。近年、「STO板状結晶を曲げると強誘電性が現れる」という報告が高インパクト雑誌にも掲載されている。しかしながら、期待される電気分極は極めて小さいため、バルク単結晶での強誘電性の真偽は定かでない。申請者は、自発的に丸まって曲げ応力が加わっている「100 nm STO/20 μmホウケイ酸ガラス薄膜」のX線吸収分光測定を行ったところ、強誘電体の典型物質として最も一般的なチタン酸バリウムに匹敵する大きな分極発現を示すスペクトル変化を発見した。本研究では、成膜条件と曲がり具合をパラメーターにして、曲げ応力による強誘電性の発現機構を段階的に進めてきた。安定な基板材料であるSTOに、さらに強誘電性が付加されれば、物質設計の新展開が期待される。初年度に、1通の査読付き論文の投稿に続けて、次年度は2通目の論文発表も行った。これら2通の論文は、STO単結晶に対し、曲げ応力や一軸応力といった外部からの構造歪みを導入することで、先に薄膜で発見していた自発分極増大と類似の結果を期待して実験的な取り組みを行ったものである。その結果、酸素欠損によってもたらされる原子スケールでの局所的な対称性の低下が双極子モーメントを生じさせはするものの、それらが長距離秩序によって巨視的な自発分極の発現に繋がるものではないことが分かった。最終年度は、酸素欠損による対称性低下の直接的な証拠を明らかにするべく、蒸着基板の違いにより面内応力と面直応力の2種類のSTOエピタキシャル薄膜を用意し、これまでと同様のチタンK吸収スペクトル測定に加え、軟X線領域の酸素K吸収スペクトルの測定にも挑戦した。この結果を、多重散乱理論に基づく理論計算とともに解析中である。チタン酸ストロンチウム(以下、STO)は、全温度範囲にわたって安定な常誘電体である。近年、「STO板状結晶を曲げると強誘電性が現れる」という報告が相次いでいる。しかし、期待される電気分極は極めて小さいため、バルク単結晶を曲げて現れる強誘電性の真偽は定かでない。申請者らは、自発的に丸まって曲げ応力が加わっている「100 nm STO/20 μmホウケイ酸ガラス薄膜」のX線吸収分光測定を行った。その結果、分極発現を示す明確なスペクトル変化を発見した。本研究では、成膜条件(基板・膜厚など)と曲がり具合(曲率)を押さえながら、曲げ応力による強誘電性を明らかにする。安定な基板材料として広く用いられているSTOに、さらに強誘電性が付加されれば、新たな物質設計の展開が期待される。初年度は、単結晶試料の曲げ応力による強誘電性の真偽をX線吸収分光による調べた結果を論文報告した(インパクト・ファクター=2.2)。多重散乱理論に基づく理論計算を基に、実験を再現する格子変形のモデルを考察したところ、単結晶で報告されている「曲げて現れる強誘電性」は、曲げることによって生じる酸素欠損が主因であると結論した。さらに、一軸応力下でのスペクトル変化についても投稿済みである。現在、薄膜試料を用いた測定結果を投稿準備中である。全体を通して、STO内部の酸素八面体(TiO6)の回転が巨大な強誘電性の出現を妨げているとするモデルでどの結果も統一的に説明可能であると考えている。研究を継続して、この解釈を多角的に検証する予定でいる。初年度は、予定していた薄膜試料のX線吸収分光測定とそのデータ解析を行うことができた。また、この結果に後押しされて、これまでの研究も論文出版という形で成果に残すことができた。初年度としては極めて順調に推移している。チタン酸ストロンチウム(以下、STO)は、全温度範囲にわたって安定な常誘電体である。近年、「STO板状結晶を曲げると強誘電性が現れる」という報告が高インパクト雑誌にも掲載されている。しかしながら、期待される電気分極は極めて小さいため、バルク単結晶での強誘電性の真偽は定かでない。申請者は、自発的に丸まって曲げ応力が加わっている「100 nm STO/20 μmホウケイ酸ガラス薄膜」のX線吸収分光測定を行ったところ、強誘電体の典型物質として最も一般的なチタン酸バリウムに匹敵する大きな分極発現を示すスペクトル変化を発見した。本研究では、成膜条件と曲がり具合をパラメーターにして、曲げ応力による強誘電性の発現機構を明らかにする。安定な基板材料であるSTOに、さらに強誘電性が付加されれば、物質設計の新展開が期待される。初年度に、1通の査読付き論文の投稿に続けて、昨年度は2通目の論文発表も行った。これら2通の論文は、STO単結晶に対し、曲げ応力や一軸応力といった外部からの構造歪みを導入することで、先に薄膜で発見していた自発分極増大と類似の結果を期待して実験的な取り組みを行ったものである。その結果、酸素欠損によってもたらされる原子スケールでの局所的な対称性の低下が双極子モーメントを生じさせはするものの、それらが長距離秩序によって巨視的な自発分極の発現に繋がるものではないことが分かった。 | KAKENHI-PROJECT-16K13668 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K13668 |
チタン酸ストロンチウム薄膜を曲げて誘起される強誘電性の探求 | 曲げ応力によって強誘電性が発現するという既報の結論は、格子歪みに伴う酸素欠損が双極子モーメントを誘起していることによるものであり、残念ながら強誘電性の特徴である自発分極の発現につながる性質のものでないことが明らかになった。一方で、さまざまな基板上に蒸着したSTO薄膜は、どれも強誘電体の典型物質であるチタン酸バリウムに匹敵する大きな双極子モーメントを持つことが明らかになり、最終年度にこれらを詳細に調べるところである。チタン酸ストロンチウム(以下、STO)は、全温度範囲にわたって安定な常誘電体である。近年、「STO板状結晶を曲げると強誘電性が現れる」という報告が高インパクト雑誌にも掲載されている。しかしながら、期待される電気分極は極めて小さいため、バルク単結晶での強誘電性の真偽は定かでない。申請者は、自発的に丸まって曲げ応力が加わっている「100 nm STO/20 μmホウケイ酸ガラス薄膜」のX線吸収分光測定を行ったところ、強誘電体の典型物質として最も一般的なチタン酸バリウムに匹敵する大きな分極発現を示すスペクトル変化を発見した。本研究では、成膜条件と曲がり具合をパラメーターにして、曲げ応力による強誘電性の発現機構を段階的に進めてきた。安定な基板材料であるSTOに、さらに強誘電性が付加されれば、物質設計の新展開が期待される。初年度に、1通の査読付き論文の投稿に続けて、次年度は2通目の論文発表も行った。これら2通の論文は、STO単結晶に対し、曲げ応力や一軸応力といった外部からの構造歪みを導入することで、先に薄膜で発見していた自発分極増大と類似の結果を期待して実験的な取り組みを行ったものである。その結果、酸素欠損によってもたらされる原子スケールでの局所的な対称性の低下が双極子モーメントを生じさせはするものの、それらが長距離秩序によって巨視的な自発分極の発現に繋がるものではないことが分かった。最終年度は、酸素欠損による対称性低下の直接的な証拠を明らかにするべく、蒸着基板の違いにより面内応力と面直応力の2種類のSTOエピタキシャル薄膜を用意し、これまでと同様のチタンK吸収スペクトル測定に加え、軟X線領域の酸素K吸収スペクトルの測定にも挑戦した。この結果を、多重散乱理論に基づく理論計算とともに解析中である。初年度の研究で、STO内部の酸素八面体の回転歪みが、この物質の強誘電性の鍵を握っていることが明らかになった。今後は、薄膜や複合ペロブスカイト酸化物も研究対象に広げ、この八面体歪みの動的制御を目指す。さまざまな基板上に蒸着したSTO薄膜で見られたTi K吸収端のX線吸収スペクトルの結果には、わずかではあるが基板との格子整合性を反映した系統的な違いがみられている。これらをいくつかのモデル計算に基づいて考察し、双極子モーメントが長距離秩序を持って強誘電性を発現するようになるための物質設計に対する方針を決定する。物品費が予定より増え、その分旅費の見直しを行うなどしたため、若干計画との差が生じた。旅費などの経費削減努力により、1万円以下ではあるが、繰越金が生じた。次年度の旅費あるいは消耗品購入に充当する。次年度の旅費として活用する。 | KAKENHI-PROJECT-16K13668 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K13668 |
クラウドに基づいた動画像符号化手法の開発 | 提案した画面内符号化,画面間符号化の新規アルゴリズムは,符号化効率向上と高速化を実現した。研究成果は,符号化の前処理に必要な技術を解明したことである。前処理としての部分をクラウド上に置くことにより,将来のネットワーク環境においての実装の可能性を検討した。現状のネットワークの遅延が大きな問題ではあるが,将来性は十分ある。本研究は,人工知能技術を用いたシステムの開発もチャレンジした。クラウド上には,CNNによる特徴抽出手法を用い,効率的に参照ライブラリを作成し,符号化に用いることも検討した。その結果より,この研究を広げ,もっと幅広い可能性が見えたため,今後後続の研究を続けていく予定である。本研究では、既存技術の画面間符号化と画面内符号化技術に加え、クラウドに基づいた新たな高圧縮率動画像符号化システムを提案する。高解像度アプリケーションに対応し、更なる高圧縮率を実現した動画像符号化標準HEVCは、高い圧縮率を実現したものの、依然MCーDCTベースの符号化手法であり、これらの技術のみでは符号化効率の向上が限界に達し、これ以上の改善が見込めない。そこで本研究は、画面間予測でも画面内予測でも予測困難な画像の特性を抽出し、その特性に特化した新たな参照用画像データベースを構築し、クラウド上の予測画像を参照することにより符号化効率を大幅に向上するアルゴリズムを新規開発し、HEVCより全体で40%以上の圧縮率向上を目標とした。当初の計画では、H27年度に、従来の画面間予測・画面内予測を用いても予測困難なブロックの特性分析、具体的には、1.画面間予測・画面内予測で予測困難なブロックの抽出、2.抽出したブロックの特性分析、3.画像シーケンスの準備を行う予定であったが、本科研の採択が10/22、予算執行が12/10となってしまったこともあり、従来研究で使用しているHEVC参照ソフトウェアを用いて、画面間および画面内予測で生成したビットレートが急激的に増加しているブロックを特定し抽出し、抽出したブロックの各種特性をまとめる作業を鋭意行っているのが現状である。先の「研究実績の概要」にも記載したように、本科研の採択が10/22、予算執行が12/10となってしまったこともあり、やや研究計画より遅れている。理由は、例年、年度初めにその年の予算等を考慮し研究計画を立てるが、今回、本科研の採択・予算執行が年末となったため、当初計画に無理やり入れ込むより、現所有研究環境でできる範囲をカバーし、新年度に物品購入等も含め再計画したいと考えた。従って、現有研究環境のHEVC参照ソフトウェアを用いて、画面間および画面内予測で生成したビットレートが急激的に増加しているブロックを特定し抽出し、抽出したブロックの各種特性をまとめる作業を鋭意行っているのが現状であり、28年度に精力的に取り組み、遅れを挽回したいと考えている。本研究では、既存技術の画面間符号化と画面内符号化技術に加え、クラウドに基づいた新たな高圧縮率動画像符号化システムを提案する。高解像度アプリケーションに対応し、更なる高圧縮率を実現した動画像符号化標準HEVCは、高い圧縮率を実現したものの、依然MCーDCTベースの符号化手法であり、これらの技術のみでは符号化効率の向上が限界に達し、これ以上の改善が見込めない。そこで本研究は、画面間予測でも画面内予測でも予測困難な画像の特性を抽出し、その特性に特化した新たな参照用画像データベースを構築し、クラウド上の予測画像を参照することにより符号化効率を大幅に向上するアルゴリズムを新規開発し、HEVCより全体で40%以上の圧縮効率を目標とした。遅れていた進捗状況を取り戻すため、H27年度の計画であった、従来の画面間予測・画面内予測を用いても予測困難なブロックの特性分析、具体的には1.画面間予測・画面内予測で予測困難なブロックの抽出、2.抽出したブロックの特性分析、3.画像シーケンスの準備を検討し、さらにH28年度の計画であった、周波数分類に基づいたデータベース構築、具体的には1.データベースの規模を考慮せずに最大限の符号化効率を実現するデータベースを作成、2.既存のデータベースに重複した部分、不要な部分を削除しながら独自の周波数特性により構築したデータを加え、最適なデータベースを構成することを検討した。また、アクセス速度を考慮するため、データベースの最小限のセットを定義することにより、少ないデータをローカルに置き、高い符号化効率とリアルタイム性を両立することも検討した。前年度の実施状況報告にも記載したとおり、本科研の採択がH27/10/22、予算執行がH27/12/10であったため、全体としての進捗状況は、申請時の研究計画よりやや遅れている。本研究では、既存技術の画面間符号化と画面内符号化技術に加え、クラウドに基づいた新たな高圧縮率動画像符号化システムを提案する。高解像度アプリケーションに対応し、更なる高圧縮率を実現した動画像符号化標準HEVCは、高い圧縮率を実現したものの、依然MCーDCTベースの符号化手法であり、これらの技術のみでは符号化効率の向上が限界に達し、これ以上の改善が見込めない。そこで本研究は、画面間予測でも画面内予測でも予測困難な画像の特性を抽出し、その特性に特化した新たな参照用画像データベースを構築し、クラウド上の予測画像を参照することにより符号化効率を大幅に向上するアルゴリズムを新規開発し、HEVCより全体で40%以上の圧縮効率を目標とした。本年度は、H28年度までの研究計画の遅れを取り戻すとともに、H29年度の研究計画のデータベースに適した予測データ生成法を考案した。 | KAKENHI-PROJECT-15K00152 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K00152 |
クラウドに基づいた動画像符号化手法の開発 | 具体的には、検証した周波数分類法・構築したデータベースを用い、データベースを効率的に検索できるための高速検索手法、検索結果より選択された複数の候補から最適な候補を選択するための確率モデルの構築等を検討した。また、構築したデータベースに適した予測データの生成法の提案と検証も行った。さらに、このデータベースを模擬クラウド上に置き、実環境での性能評価を行った。ネットワーク遅延を克服するため、データベースの一部をローカルに置くことや、ヒット率の高いデータをローカルバッファに置くことも検討した。また、実用に向けて特に符号化器のハードウェア実装を考慮した改良も検討した。提案した画面内符号化,画面間符号化の新規アルゴリズムは,符号化効率向上と高速化を実現した。研究成果は,符号化の前処理に必要な技術を解明したことである。前処理としての部分をクラウド上に置くことにより,将来のネットワーク環境においての実装の可能性を検討した。現状のネットワークの遅延が大きな問題ではあるが,将来性は十分ある。本研究は,人工知能技術を用いたシステムの開発もチャレンジした。クラウド上には,CNNによる特徴抽出手法を用い,効率的に参照ライブラリを作成し,符号化に用いることも検討した。その結果より,この研究を広げ,もっと幅広い可能性が見えたため,今後後続の研究を続けていく予定である。まずは、遅れ気味であるH27年度計画、従来の画面間予測・画面内予測を用いても予測困難なブロックの特性分析、1画面間予測・画面内予測で予測困難なブロックの抽出、2抽出したブロックの特性分析、3画像シーケンスの準備を、年度初めにできるだけ早く進捗させ、本来のH28年度予定である、周波数特性により分類されたデータベースを構築したい。具体的には、まず、データベースの規模を考慮せず、最大限の符号化効率を実現するデータベースを作成する。データベースは、周波数特性毎、輝度毎、色差毎、ブロックサイズ毎で検索可能なデータベースにする。そのため、既存の画像分類法により構築されたデータベースを利用し、初期の作業量を削減する。さらに、既存のデータベースに重複した部分、不要な部分を削除しながら独自の周波数特性により構築したデータを加え、最適なデータベースを構成する。これにより、膨大なデータベースにより最適な参照画像を作成できるが、データベースのアクセスに遅延が伴うためにリアルタイム符号化には不向きである。そこで、データベースの最小限のセットを定義することにより、少ないデータをローカルに置き、高い符号化効率とリアルタイム性を両立することも検討する。本年度は、先に記述したH28年度までの研究計画の遅れを取り戻すとともに、本来のH29年度の研究計画のデータベースに適した予測データ生成法を考案したい。具体的には、検証した周波数分類法・構築したデータベースを用い、データベースを効率的に検索できるための高速検索手法、検索結果より選択された複数の候補から最適な候補を選択するための確率モデルの構築等を検討する。また、構築したデータベースに適した予測データの生成法の提案と検証も行う。さらに、このデータベースをクラウドに上げ、実環境での性能評価を行う。現実のネットワーク環境を考慮した実験を行うため、商用のクラウドサービスを利用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-15K00152 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K00152 |
微粒子触媒のポリマー中への包埋固定化とその触媒性能 | 液相懸濁触媒をその活性を損わずにポリマー等に包埋固定化して使用できれば,触媒の回収が容易になるのみならず,ポリマーの疎水性を利用した新しい触媒プロセスの開発など,いろいろな効用が期待できる.本研究では,シリコーンゴムなどのゴム状ポリマーが無孔質にもかかわらず高い物質透過能を有することに着目して,シリコーンゴム中に微粒子触媒を分散固定化する方法を検討すると共に,その触媒性能をアセトンの水素化および不飽和脂肪酸の水添をモデル反応として調べ,以下の成果を得た.1.触媒活性はシリコーンゴム包埋により約1桁低下するが,特に高活性な触媒の場合を除いて,触媒有効係数は1に近く,シリコーンゴム中の各反応成分の拡散過程は律速段階とはならないことがわかった.2.気・液および液・シリコーンゴムの各界面で反応成分の溶解平衡が成立する場合,気相固体触媒反応における触媒有効係数の理論が本触媒系にも適用できることがわかり,包埋触媒を設計する上で有用な知見が得られた.3.シリコーンゴム包埋による活性低下の原因として,硬化時に発生するオキシムなどの化合物およびポリマー自身が触媒毒として働くこと,および触媒細孔内にシリコーンゴムが浸入して反応成分の細孔内拡散を妨害することが示唆された.4.逐次反応における中間体の選択率は触媒をシリコーンゴムに包埋することにより著しく低下することを認め,その原因が担体ポリマーのカゴ効果によることが示唆された.異常, 2年間の研究においてシリコーンゴム包埋触媒の設計・製作・性能に関し有益な知見が得られた.今後は担体ポリマーの疎水性を利用した反応,たとえば水共存下での選択的有機合成反応などへ本法の拡張を試みる予定である.液相懸濁触媒をその活性を損わずにポリマー等に包埋固定化して使用できれば,触媒の回収が容易になるのみならず,ポリマーの疎水性を利用した新しい触媒プロセスの開発など,いろいろな効用が期待できる.本研究では,シリコーンゴムなどのゴム状ポリマーが無孔質にもかかわらず高い物質透過能を有することに着目して,シリコーンゴム中に微粒子触媒を分散固定化する方法を検討すると共に,その触媒性能をアセトンの水素化および不飽和脂肪酸の水添をモデル反応として調べ,以下の成果を得た.1.触媒活性はシリコーンゴム包埋により約1桁低下するが,特に高活性な触媒の場合を除いて,触媒有効係数は1に近く,シリコーンゴム中の各反応成分の拡散過程は律速段階とはならないことがわかった.2.気・液および液・シリコーンゴムの各界面で反応成分の溶解平衡が成立する場合,気相固体触媒反応における触媒有効係数の理論が本触媒系にも適用できることがわかり,包埋触媒を設計する上で有用な知見が得られた.3.シリコーンゴム包埋による活性低下の原因として,硬化時に発生するオキシムなどの化合物およびポリマー自身が触媒毒として働くこと,および触媒細孔内にシリコーンゴムが浸入して反応成分の細孔内拡散を妨害することが示唆された.4.逐次反応における中間体の選択率は触媒をシリコーンゴムに包埋することにより著しく低下することを認め,その原因が担体ポリマーのカゴ効果によることが示唆された.異常, 2年間の研究においてシリコーンゴム包埋触媒の設計・製作・性能に関し有益な知見が得られた.今後は担体ポリマーの疎水性を利用した反応,たとえば水共存下での選択的有機合成反応などへ本法の拡張を試みる予定である.水素化、脱水素などの液相反応では微粒子触媒が懸濁状態で用いられる。本プロセスでは、反応終了後、反応液と触媒との分離操作が必要であるが、もし触媒をその活性を損なうことなくポリマー等に固定化できれば、触媒の回収,再使用が容易になるのみならず、固定層型の連続式反応操作や高価な貴金属触媒の使用も可能となる。本研究では、シリコーンゴムなどのゴム状ポリマーが無孔質にもかかわらず高い物質透過能を有することに着目して、ゴム状ポリマー中に微粒子触媒を分散、固定化する方法を検討し、その触媒性能を明らかにすることを目的とする。まず本研究を遂行するに適したモデル反応系を探すことから始め、以下の知見を得た。(1)Pd炭素触媒による2-プロパノールの脱水素は50゚C以下では進行しない。(2)ラネ-Niによる2-プロパノールの脱水素は40゚Cで進行する。しかし触媒をシリコーンゴムあるいは天然ゴムに包埋すると反応は起らない。(3)アセトンの水素化は非包埋およびシリコーンゴム包埋のラネ-NiおよびRu炭素触媒で進行する。(4)ラネ-Niの触媒活性は【O_2】に極めて敏感で、再現性あるデータを得ることが困難であるが、酒石酸で修飾することにより再現性が向上する。以上の結果より酒石酸修飾ラネ-NiおよびRu炭素触媒によるアセトンの水素化をモデル反応に選び、以下の結果を得た。(1)触媒をシリコーンゴム(脱オキシム型)に包埋することにより、反応速度はラネ-Niの場合で約1/30に、Ru炭素の場合で約1/20に低下する。(2)いずれの場合も、包埋触媒のサイズを変えても反応速度はほとんど変わらない。(3)反応物成分(アセトン,水素,2-プロパノール)のシリコーンゴム中の溶解度および拡散係数より触媒有効係数を推算すると約1である。(4)これらの結果より拡散過程は律速段階ではないことが示唆された。今後、反応の選択性に対するシリコーンゴム包埋の影響を調べる予定である。 | KAKENHI-PROJECT-61550600 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61550600 |
尿酸は単なる廃棄物か?-昆虫の酸素ストレス防御系における役割の解明- | 1.虫体の脂質画分中に含まれる化学発光阻害物質を効率よく除く手法を検討した.その結果,Sep-pak NH_2による固相抽出法が前処理として最も優れていた.これにより,虫体の過酸化脂質の高速液体クロマトグラフ-化学発光検出システム(CL-HPLC)による微量定量法が確立した.検出限界は約1pmolと生体試料の分析に十分な感度を示した.2.タマネギハエ幼虫の飼料にエリスロシンBを添加し,可視光を照射して酸化ストレスを与えた.この幼虫から脂質を抽出し,上記の方法により阻害物質を除いたのち,CL-HPLCにて過酸化脂質の検出を試みた.酸化ストレスを与えた幼虫には,対照(エリスロシン無投与)の幼虫よりも有意に多量の過酸化脂質が含まれていることが明らかとなった.3.カイコを用いて尿酸が酸化ストレスに対する防御に必要であることを明らかにした.キサンチンデヒドロゲナーゼの阻害剤であるアロプリノールを飼料中に添加すると尿酸の含有量を著しく低下させることができた.このカイコを用いて2種類の酸化ストレスの含有量を著しく低下させることができた.このカイコを用いて2種類の酸化ストレスに対する耐性を調べた.まず,紫外線照射下における平均寿命を観察したところ,アロプリノールを与えたカイコは有意に寿命が短くなっていた.また,可視光照射下で活性酸素を生成する色素ローズベンガルを与えたところ,やはりアロプリノールを与えたカイコでは平均寿命が短縮された.このことにより,カイコにおいて尿酸は活性酸素ストレスから生体を保護する役割を担っていると推測された.1.虫体の脂質画分中に含まれる化学発光阻害物質を効率よく除く手法を検討した.その結果,Sep-pak NH_2による固相抽出法が前処理として最も優れていた.これにより,虫体の過酸化脂質の高速液体クロマトグラフ-化学発光検出システム(CL-HPLC)による微量定量法が確立した.検出限界は約1pmolと生体試料の分析に十分な感度を示した.2.タマネギハエ幼虫の飼料にエリスロシンBを添加し,可視光を照射して酸化ストレスを与えた.この幼虫から脂質を抽出し,上記の方法により阻害物質を除いたのち,CL-HPLCにて過酸化脂質の検出を試みた.酸化ストレスを与えた幼虫には,対照(エリスロシン無投与)の幼虫よりも有意に多量の過酸化脂質が含まれていることが明らかとなった.3.カイコを用いて尿酸が酸化ストレスに対する防御に必要であることを明らかにした.キサンチンデヒドロゲナーゼの阻害剤であるアロプリノールを飼料中に添加すると尿酸の含有量を著しく低下させることができた.このカイコを用いて2種類の酸化ストレスの含有量を著しく低下させることができた.このカイコを用いて2種類の酸化ストレスに対する耐性を調べた.まず,紫外線照射下における平均寿命を観察したところ,アロプリノールを与えたカイコは有意に寿命が短くなっていた.また,可視光照射下で活性酸素を生成する色素ローズベンガルを与えたところ,やはりアロプリノールを与えたカイコでは平均寿命が短縮された.このことにより,カイコにおいて尿酸は活性酸素ストレスから生体を保護する役割を担っていると推測された.1.虫体から脂質を抽出し、本研究により構築した高速液体クロマトグラフ一化学発光検出器(CL-HPLC)システムを用いて、過酸化脂質を定量分析する方法を開発した。脂質の標品として、トリグリセリド(トリオレイン)の過酸化物を用いた場合、検出限界は1pmo1であり、十分な感度を持つことが確認された。2.虫体より抽出した脂質画分に、化学発光の阻害物質が含まれていることが判明し、これを効率よく除く手法を検討した。その結果、Sep-pak NH_2による固相抽出法が前処理として最も優れていた。3.虫体内の尿酸をアロプリノール投与により欠損させた蚕、尿酸の生合成能を欠く突然変異体の油蚕と正常蚕とを用いて、尿酸含量と各種酸化ストレスが蚕の生存率に及ぼす影響との関係を調べた。酸素ストレス上昇要因としては、i)紫外線の照射、ii)Erythrocin B(光増感物質、Photosensitizer)の添食とそれに続く可視光照射、の2つの方法を用いた。油蚕およびアロプリノールにより尿酸の合成を阻害して表現型を油蚕としたカイコの両者とも、紫外線照射、光増感物質の添食の方法を問わず、正常蚕に比べて酸化ストレスに対する感受性が上昇しており、寿命が有意に短かくなった。1.カイコを用いて尿酸が酸化ストレスに対する防御に必要であることを明らかにした。キサンチンデヒドロゲナーゼの阻害剤であるアロプリノールを飼料中に添加すると尿酸の含有量を著しく低下させることができた。このカイコを用いて2種類の酸化ストレスに対する耐性を調べた。まず紫外線照射下における平均寿命を観察したところ、アロプリノールを与えたカイコは有意に寿命が短くなっていた。また、可視光線照射下で活性酸素を生成する色素ローズベンガルを与えたところ、やはりアロプリノールを与えたカイコでは平均寿命が有為に短縮された。このことにより、カイコにおいて尿酸は活性酸素ストレスから生体を守る役割を担っていると推測された。2.虫体より抽出した脂質画分に、化学発光の阻害物質が含まれていることが判明し、これを効率よく除く手法を検討した。その結果、Sep-pak NH_2による固相抽出法が前処理として最も優れていた。 | KAKENHI-PROJECT-07660052 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07660052 |
尿酸は単なる廃棄物か?-昆虫の酸素ストレス防御系における役割の解明- | これにより、虫体の過酸化脂質の高速液体クロマトグラフ-化学発光検出器(CL-HPLC)システムによる微量定量法が確立した。3.タマネギバエ幼虫の飼料にエリスロシンBを添加し、可視光を照射して酸化ストレスを与えた。この幼虫から脂質を抽出し、上記の方法により阻害物質を除いた後、CL-HPLCにて過酸化脂質の検出を試みた。酸化ストレスを与えた幼虫には、対照(エリスロシン無投与)の幼虫よりも有意に多量の過酸化脂質が含まれていることが明かとなった。 | KAKENHI-PROJECT-07660052 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07660052 |
心筋歩調取り電位調節に果たすエンドセリンA,B両受容体の機能分担の分子機序の解明 | 本研究では、筆者がこれまでの研究で見出した、エンドセリン-1(ET-1)によるET_A受容体を介した心搏抑制作用の機序解明を更に進めるため、研究対象を洞房結節に移し,電気生理学的手法を中心として心拍制御のイオン機序の解明を進めた。また、心拍制御におけるET_B受容体の役割についても、新たに解析を進めた。(1) ET_A、ET_B両受容体が、心拍制御に関してそれぞれ、心拍抑制・増強という相反する作用を仲介するという役割分担を行っていることが、選択的拮抗薬を用いた薬理学的実験により明らかとなった。(2)洞房結節細胞に対するET-1の作用;ウサギ洞房結節に対し、ET-1(l nM)は用量依存的にpacemaker電位の傾きの減少とtake-off potentialの脱分極方向へのシフトを起こさせ、結果として自発活動電位のcycle lengthを増大させた。この作用はET_A受容体選択的拮抗剤BQ123(1μM)により遮断された。単離ウサギ洞房結節細胞を用いた解析の結果、ET-1に対する反応には少なくとも異なる2種の反応を示す細胞群、すなわET-1により脱分極する細胞と過分極を起こす細胞とが認められた。ホールセル・クランプ法による膜電流解析の結果ET-1は前者の細胞に対しては、過分極誘発電流(I_f)を僅かに抑制し、isoproterenol存在下で強くこれを抑制、また、後者の細胞に対しては、アセチルコリン電流(I_K_<(ACh)>)を顕著に増大させることが判明した。さらに、両タイプの細胞とも、ET-1はL型カルシウム電流を顕著に抑制した。本研究では、筆者がこれまでの研究で見出した、エンドセリン-1(ET-1)によるET_A受容体を介した心搏抑制作用の機序解明を更に進めるため、研究対象を洞房結節に移し,電気生理学的手法を中心として心拍制御のイオン機序の解明を進めた。また、心拍制御におけるET_B受容体の役割についても、新たに解析を進めた。(1) ET_A、ET_B両受容体が、心拍制御に関してそれぞれ、心拍抑制・増強という相反する作用を仲介するという役割分担を行っていることが、選択的拮抗薬を用いた薬理学的実験により明らかとなった。(2)洞房結節細胞に対するET-1の作用;ウサギ洞房結節に対し、ET-1(l nM)は用量依存的にpacemaker電位の傾きの減少とtake-off potentialの脱分極方向へのシフトを起こさせ、結果として自発活動電位のcycle lengthを増大させた。この作用はET_A受容体選択的拮抗剤BQ123(1μM)により遮断された。単離ウサギ洞房結節細胞を用いた解析の結果、ET-1に対する反応には少なくとも異なる2種の反応を示す細胞群、すなわET-1により脱分極する細胞と過分極を起こす細胞とが認められた。ホールセル・クランプ法による膜電流解析の結果ET-1は前者の細胞に対しては、過分極誘発電流(I_f)を僅かに抑制し、isoproterenol存在下で強くこれを抑制、また、後者の細胞に対しては、アセチルコリン電流(I_K_<(ACh)>)を顕著に増大させることが判明した。さらに、両タイプの細胞とも、ET-1はL型カルシウム電流を顕著に抑制した。本研究では筆者が見出したエンドセリン-1(ET-1)の心搏抑制作用の機序解明を更に進め、対象を洞房結節細胞に移して電気生理学的解明を行った。また、ET_A受容体脱感作に種差を発見し、その分子機序を解析した。(1)洞房結節細胞に対する作用;単離ウサギ洞房結節細胞に対し、ET-1(1nM-)は用量依存的に最大弛緩電位を有意に過分極させ、pacemaker電位の傾きを著しく減少し、活動電位持続時間を有意に減少させ、結果として自発活動電位のcycle lengthを増大させた。この作用はET_A受容体選択的拮抗剤BQ123(1μM)により遮断された。ホールセル・クランプ法による膜電流解析の結果、ET-1は過分極誘発電流(If)には単独で影響せずisoproterenol存在下でこれを抑制、またL型カルシウム電流を顕著に抑制した。さらにアセチルコリン電流(IK(_<ACh>))を顕著に増大させることが判明した。(2)ET_A受容体脱感作と種差;ET-1の反復投与(50nM、5分投与、30分回復)によりラット右心房標本はET_A、ET_B両受容体反応共に急速に脱感作し、2度目以降の反応性を失ったが、モルモット心房筋ではET_A受容体選択的拮抗剤BQ123(1μM)に感受性の心拍抑制反応が繰返し惹起され、脱感作に抵抗性であることが判明した。ET-1(10nM)は単離ウサギSA node細胞の自発収縮頻度を単独で繰返し顕著に抑制した。モルモットとウサギの心房筋よりmRNAを得、ヒトET_A受容体の部分アミノ酸配列に選択的なプライマーを合成し、RT-PCR法を用いて相当するET_A受容体の部分アミノ酸配列を決定し既知の種(ヒト、ウシ及びラット)のものと比較した結果、モルモットとウサギのET_A受容体の第2細胞内ループからC末端までのリン酸化可能なアミノ酸残基(Ser,Thr)は、ヒト、ウシ、ラットとの間で完全に保存していた。 | KAKENHI-PROJECT-07670130 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07670130 |
インスレーターを用いたp53発現ウイルスベクターの開発 | 本研究ではエピジェネティックな遺伝子発現調節機構であるインスレーターをウイルスベクターに搭載することで、より効果的な遺伝子発現を示すベクターが得られる可能性がある。ヒトを含めた様々な種のインスレーターを搭載したp53アデノ随伴ウイルスベクターを作成し、より長期間かつ高い遺伝子発現が可能なベクターを開発することを目的とした。(本研究ではエピジェネティックな遺伝子発現調節機構であるインスレーターをウイルスベクターに搭載することで、より効果的な遺伝子発現を示すベクターが得られる可能性がある。ヒトを含めた様々な種のインスレーターを搭載したp53アデノ随伴ウイルスベクターを作成し、より長期間かつ高い遺伝子発現が可能なベクターを開発することを目的とした。(悪性腫瘍に対する治療は外科手術、化学療法、放射線療法、そして受容体に選択的な抗体などがあるが、その効果は腫瘍の種類や進展度により大きく異なり、またしばしば重篤な副作用をもたらす。これに対して今後の発展が期待される比較的新しい治療方法として遺伝子治療があり、活発に研究されている。遺伝子治療は様々な病気に対する有効な治療法となる可能性があり、そのひとつに腫瘍に対するp53遺伝子の導入がある。しかしその臨床研究は十分な成果をあげているとは言い難い。遺伝子の投与方法としてはウイルスベクターが比較的効率よく遺伝子を投与可能である。現在までに様々な腫瘍に対してp53搭載アデノウイルスベクターを用いた遺伝子治療の臨床試験が承認されており、一定の効果が認められたとされている。しかし実際の臨床応用に向けては過剰な免疫反応などの安全性の問題点がある。アデノ随伴ウイルスベクターは作成効率や導入遺伝子の発現率では劣るものの、非病原性から安全性が高いと考えられている。さらにベクターにはウイルス固有の蛋白質をコードする遺伝子が含まれないため、遺伝子導入細胞に対する免疫反応が惹起されにくいといった利点もある。本研究ではエピジェネティックな遺伝子発現調節機構であるインスレーターをウイルスベクターに搭載することで、より効果的な遺伝子発現を示すベクターが得られる可能性がある。ヒトを含めた様々な種のインスレーターを搭載したp53アデノ随伴ウイルスベクターを作成し、より長期間かつ高い遺伝子発現が可能なベクターを開発することを目的としている。本年度の研究実施結果は予備段階としてp53遺伝子の基礎的な研究をもとに、効率的な遺伝子発現をもったp53搭載アデノ随伴ウイルスベクターの開発研究を行った。これらの研究は継続しており、関連した一部の成果を学会にて発表した。本研究ではエピジェネティックな遺伝子発現調節機構であるインスレーターをウイルスベクターに搭載することで、より効果的な遺伝子発現を示すベクターが得られる可能性がある。ヒトを含めた様々な種のインスレーターを搭載したp53アデノ随伴ウイルスベクターを作成し、より長期間かつ高い遺伝子発現が可能なベクターを開発することを目的とした。p53搭載ベクターの作成と同時にレスベラトロールに関する基礎的な研究も行った。レスベラトロールは赤ワインやぶどうの皮に含まれるポリフェノールの一種として知られている。レスベラトロールは長寿遺伝子であるSIRT1を活性化することでNF-kBの脱アセチル化を促進し、NF-kBの働きを阻害することで生体の過剰な炎症を抑える働きがあることが知られている。しかし、産婦人科疾患において、抗炎症作用に着目した報告はまだ少ない。子宮内膜症は腹腔内マクロファージや内膜症間質細胞などによる炎症の増悪スパイラルに陥り、慢性的にNF-kBが活性化されている慢性炎症性疾患である。レスベラトロールはSIRT1を活性化し、NF-kBを阻害することにより抗炎症作用を持つ。レスベラトロールの抗炎症作用は関節リウマチなどの慢性炎症性疾患にも効果を持つことが報告されている。この抗炎症作用が内膜症でも認められるかを、SIRT1やNF-kB経路に注目し、内膜症間質細胞培養を用いて検討した。結果、レスベラトロールは内膜症間質細胞における炎症性サイトカインであるIL-8の発現を抑制した。また、SIRT1のinhibitorであるsirtinolはIL-8の発現を誘導した。これらのことより、内膜症間質細胞の炎症性反応においてSIRT1の活性化が重要な役割を担っていることが示唆された。今後はSIRT1をターゲットとしたベクターの研究開発を進める。ウイルスベクターの研究開発において効率的な遺伝子発現をきたすベクター作成に難渋している。24年度が最終年度であるため、記入しない。p53遺伝子を搭載したベクターの開発が困難な場合、p53以外にも抗腫瘍効果を持った因子を用いるベクターの研究も同時に研究を行うなど、他の有効な手段についても同時に検討していくことが必要と思われる。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-23890046 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23890046 |
公的部分における会計制度の改革過程に関する国際比較研究 | 中央政府や地方政府の会計に企業会計の考え方を導入する動きが世界的に進行しているが、その背景及び過程は各国及び政府レベルにおいて異なっている。交わが国を含む大陸法の影響を受ける国と慣習法の影響が強いアングロサクソン諸国では、法制度の改正を伴うか否か、会計専門職団体の影響力が強いか弱いか、地方債等の資本市場の形成環境が進展しているか否か、といった違いがある。そのことが形式的な導入という面では共通するものの、実態的な財務経営や意識行動の変化面でアングロサクソン諸国の方が大きい結果をもたらしていることが明らかにされた。中央政府や地方政府の会計に企業会計の考え方を導入する動きが世界的に進行しているが、その背景及び過程は各国及び政府レベルにおいて異なっている。交わが国を含む大陸法の影響を受ける国と慣習法の影響が強いアングロサクソン諸国では、法制度の改正を伴うか否か、会計専門職団体の影響力が強いか弱いか、地方債等の資本市場の形成環境が進展しているか否か、といった違いがある。そのことが形式的な導入という面では共通するものの、実態的な財務経営や意識行動の変化面でアングロサクソン諸国の方が大きい結果をもたらしていることが明らかにされた。公的部門の会計改革過程を政策科学的に把握するため、改革の背景になった社会・政治・経済環境及び主要なアクターの相互作用について既往文献及び実態調査を実施した。その際、会計改革は単独に行われるのでなく、ガバナンスの見直しや公的部門の改革推進の見地から一つの政策価値実現手段として実施されるとの仮説から、各国の公的部門の会計改革を他の改革との進捗や背後の理論との関係において整理した。その結果、最も理論的に整合的な体系で実施しているのはニュージーランドであり、公共選択やプリンシパル・エージェント理論に適合する体系となるように会計基準が設計されているといえる。他方、米国や英国及びわが国での公会計改革は、必ずしも予め理論が準備され、それと整合的な会計基準とはなっていない。この状況の差は、会計改革の行政改革での位置づけがアカウンタビリティの向上に力点を置くか効率性などの経営改善に力点をおくかによって規定されると考えられる。つまり、ニュージーランドは後者、米国や英国及びわが国などは前者となる。また、意思決定者である議員の公会計改革への認識や意識について、わが国の国会議員に関してアンケート調査を実施して分析した。その結果、多くの議員は公会計改革を広い意味での経営改善に期待していることが明らかになった。なお、各国の実態調査のうち既往研究が豊富であり実態把握が容易な米国と英国については学術文献やインタネットなどの公開情報の調査を先行させることとし、ニュージーランドにおける改革、特に会計基準に係る主要なアクターである基準設定機関、財務省、会計士協会及び学者からヒアリングを実施した。その結果、公会計に特有な現金主義から発生主義会計への移行への抵抗感や反対意見は理論及び実践面でほとんどなく、論点は公会計の特有な会計処理におかれ、改革への用具としての貢献に各アクターの関心がむかったことが判明した。初年度において実施した会計基準設定過程の理論的分析を踏まえ、平成18年度においてはニュージーランドと同じオセアニア地方のオーストラリアにおける公的部門の会計基準の設定過程についての検討を実施した。基本的には両国は密接な関係があり、会計専門職や会計関連学会も共催で大会を開くなどしており、公的部門及び民間部門の会計基準も共通の基準設定機関が認可している点も同じである。また、国際会計士連盟(IFAC)の下に設置されている国際公会計基準審議会(IPSASB)に積極的に参画している点も似ている。ただし、ニュージーランドと異なり学者や国会議員のなかには現金主義から発生主義に移行することにより議会統制が弱体化するのではないかという懐疑論がみられ、特にキャッシュフロー計算書における間接法の適用については現金主義下での科目別の総額支出が見えにくい形式になることへの批判がある。次いで、民主制度下で最も重要なアクターである議員に対して前年度に実施した国会議員に対する調査と比較する目的から、平成18年度から記帳段階から複式簿記による発生主義会計を導入した東京都の都議会議員に対して財務書類の利用状況や会計基準設定のあり方や課題について調査を行った。国会議員と共通する点は、発生主義会計及び発生主義予算を支持する意見が多く、先進国で発生主義導入時に問題にされた理解困難性を訴える意見が少ないのがわが国の特色であることが判明した。一方、国会議員と異なる点は財務書類の利用状況は都議会議員の方が高いことである。ただし、追加調査した意思決定に使用する情報源としては公式の財務書類や評価書よりも地元の支持者や一般国民を挙げる者が多く、直接的な対話による情報が影響力をもち、公会計制度改革に並び統合された集計データをいかに個別のデータに照合させるかが意思決定改善に際し課題になることが明らかになった。本年度は我が国と似た大陸法の影響を受けているオランダとフランス両国における政府会計の改革がどのように進展しているかについて調査分析を行った。まず、オランダについては全政府部門について当初導入予定であった発生主義は省庁内部のエージェンシーに限定され、また、予算への発生主義化は見送られたことが明らかにされた。これは、財務省及び議会における現金主義による予算続制を維持したいという意思が優先されたためである。一方、フランスでは発生主義を全攻府部門に導入するとともに予算書の体系を目的別・プログラム別に組み替えるとともにプログラム責任を巌格にする代わりに執の弾力性を与え、効率的かつ効果的な行政を目指している。 | KAKENHI-PROJECT-17530355 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17530355 |
公的部分における会計制度の改革過程に関する国際比較研究 | この改革は予算基本法の改定を要したが、行政経済財政省の管理目的以外に議会の統制改善という視点もある点が注目きれる。アングロサクソンの会計基凖調和化に一時は反対していたフランスは、いまや国際公会計基準審議会の主要メンバーとして積極的に参加するようになっているのは象徴的である。もっとも、発生主義化への抵抗が少なかったのはプランコンタブルという国民繕済計算と一体化した会計基準の存在が大きかったといえる。こうした大陸法の国での改革を踏まえわが国での取り組み、とりわけ議会側の意識について既に発生主義を適用した東京都の都議会議員に対するアンケート結果を分析し、意思決定への情報源として重要なものの地域住民からの直接的な要望・意向が最も影響力があることがわかり、両者を硲がに有効に活用するかが改革の鍵になることを明らかにした。この結果は、第11回CIGAR(ポルトガル)及び日本会計研究学会で報告した。本年度は研究の最終年度であることから、これまで国際比較研究を行ってきた各国の改革過程を統一的なモデルで分析し、何が改革を推進しているか、誰がその主導的役割を果たしているか、国際的な調和化の圧力の影響はどの程度か、会計制度以の改革とどのような関係があるか、とりわけ企業会計の動向とどのような関連を有するかに焦点をおい検討てした。その結果、Public Interestの価値を公的部門の会計で重視するアングロサクソン諸国とRechtsstaatの価値を重視する欧州大陸諸国で大きく改革のアクターび企業会計との関係性が異なることが明らかにされた。具体的にいえば、前者では会計専門職による企業会計との統一性び基準設定過程の中立性・独立性が重視される一方、後者では公法としての会計基準の設定が制度化において要求され基準設定においても議会・行政の関与が強いということである。もちろん、アングロサクソン諸国でも英国は米国よりも企業会計との共通化の色彩が強く、国際公会計基準(IPSAS)でなく国際財務報告基準(IFRS)を適用することに方向転換するなど各国で調和化の程度は異なる。同様に、欧州大陸諸国でも予算基本法等の公法の改正によって企業会計化を推進しようとする点では共通しているが、実際の運用では会計専門職の層の違いや伝統的な現金主義統制を保持したい意向から決算段階での追加情報的な会計情報としての役割にすぎず、日常の経営管理に一体化したものになっていない傾向がみられるところやフランスのようにシステム的に変更した国もみられる。我が国では、中央政府段階では特別会計に関する法律で初めて発生主義による財務報告が制度化されたが、あくまでも現金主義による予算決算制度の追加参考情報としての位置づけであり、公法としての取り組み及び運用面での限においてRechtsstaat型の改革過程にるといえる。この意味で会計専門職の機能も限定されたものになっていると考えられる。また、地方政府の自治体会計では現在3つの発生主義モデルが併存しているが、これも法的な位置づけがなされていないこと及び財政健全化法制とも関連性がないことから機能が十分発揮できない状熊にあるといえる。今後も継続して改革過程を監視していくとともに、法的な制度化が実質化する要因を明らかにすることが課題である。 | KAKENHI-PROJECT-17530355 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17530355 |
情動ストレス反応における可塑性の研究 | 離乳前の仔ラットを母ラットから毎日数分間離すと成熟した後に与えた新奇刺激に対する副腎皮質ホルモンの分泌反応が減弱する.この副腎皮質ホルモン分泌反応の低下を引き起す可能なメカニズムとして, 1)脳を含む視床下部・下垂体前葉が可塑的に変化したためにACTH分泌反応が減少している,2)ACTHに対する副腎皮質の反応性が低下している,ことが考えられる.初めの仮説をテストするために離乳前の仔ラットを毎日10分間,母親および他の仔ラットから隔離し,成熟した後に与えた新奇刺激に対するACTH分泌反応をRIA法を使って調べた.成熟後に与えた新奇刺激に対して未処置群より低い血漿ACTHレベルを示した.同腹の8匹の仔に同一の処置をした場合でも,同腹の仔の半数を隔離した場合でも,隔離操作群は未処置群に比べて有意に低い値を示した従って隔離操作が母ラットを介して間接的に仔ラットに働いたためではなく直接仔ラットに作用し成熟後における分泌反応を低下させたと考えられる.また幼若期に隔離する時間を10分/日にしても4時間/日にしても新奇刺激後のACTHレベルは未処置群より有意に低下した.一方,幼若期の侵害ストレスの成熟後におけるACTH分泌反応への効果を調べる目的で,離乳前の仔ラットにフットショック(FS:50Hz, 0.2mA, 3分間/日)を与えた.このFS操作群は成熟後に与えたFS(1.6mA, 1分間)に対するACTH分泌反応が隔離操作群より減弱していた.以上のデータは幼若期のストレス刺激(隔離操作,侵害刺激)が成熟後に与えたストレス刺激(新奇刺激,侵害刺激)に対するACTH分泌反応を減弱させることを示している.従って,すくなくとも幼若期ストレス刺激が脳を含む視床下部・下垂体系に可塑的変化を引き起こすと結論される.離乳前の仔ラットを母ラットから毎日数分間離すと成熟した後に与えた新奇刺激に対する副腎皮質ホルモンの分泌反応が減弱する.この副腎皮質ホルモン分泌反応の低下を引き起す可能なメカニズムとして, 1)脳を含む視床下部・下垂体前葉が可塑的に変化したためにACTH分泌反応が減少している,2)ACTHに対する副腎皮質の反応性が低下している,ことが考えられる.初めの仮説をテストするために離乳前の仔ラットを毎日10分間,母親および他の仔ラットから隔離し,成熟した後に与えた新奇刺激に対するACTH分泌反応をRIA法を使って調べた.成熟後に与えた新奇刺激に対して未処置群より低い血漿ACTHレベルを示した.同腹の8匹の仔に同一の処置をした場合でも,同腹の仔の半数を隔離した場合でも,隔離操作群は未処置群に比べて有意に低い値を示した従って隔離操作が母ラットを介して間接的に仔ラットに働いたためではなく直接仔ラットに作用し成熟後における分泌反応を低下させたと考えられる.また幼若期に隔離する時間を10分/日にしても4時間/日にしても新奇刺激後のACTHレベルは未処置群より有意に低下した.一方,幼若期の侵害ストレスの成熟後におけるACTH分泌反応への効果を調べる目的で,離乳前の仔ラットにフットショック(FS:50Hz, 0.2mA, 3分間/日)を与えた.このFS操作群は成熟後に与えたFS(1.6mA, 1分間)に対するACTH分泌反応が隔離操作群より減弱していた.以上のデータは幼若期のストレス刺激(隔離操作,侵害刺激)が成熟後に与えたストレス刺激(新奇刺激,侵害刺激)に対するACTH分泌反応を減弱させることを示している.従って,すくなくとも幼若期ストレス刺激が脳を含む視床下部・下垂体系に可塑的変化を引き起こすと結論される. | KAKENHI-PROJECT-62221029 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62221029 |
超音波による新しい多臓器包括的老化指標の開発と生活習慣病の総合的管理の効果解析 | 本研究では、新規に降圧剤治療を開始する患者およびこれまで降圧剤治療を続けてきた患者に対して、降圧剤内服治療前後で、血圧の変動、動脈硬化の検査指標、血液内分泌検査を比較し、降圧治療の効果判定に有用な指標を抽出した。降圧治療観察期間の前後で、Brain Natriuretic Peptide (BNP)、腎機能などの血液検査、動脈の硬さ指標、心臓超音波検査の心機能指標を計測した。観察期間の間の外来血圧の平均値および外来血圧変動性を計測した。以上の計測値から血圧コントロールとBNPやCAVIなどの検査指標を比較し、相関を検討し、血圧コントロールを良好に反映する検査指標を検討した。健常者の多臓器包括的老化指標の開発健常者(10歳代90歳代)を対象として、心臓年齢は心臓超音波法による左室肥大、左室拡張能障害を基に作成した(21ー23年度基盤Cの研究成果で得られた指標)指標で形態的・機能的に測定を行った。腎年齢は超音波法での腎臓サイズ、腎臓容積、腎ドプラ法での腎内血管抵抗(Resistive Index)計測による腎内血管抵抗で評価し、総合的評価を行った。脳年齢は頸動脈エコーでのintima-media thickness (IMT)、頚動脈プラークスコアを計測して評価した。さらに脳臓器障害については脳MRIを用いて大脳白質病変、脳萎縮、無症候性脳梗塞を加味し総合的に評価している。骨年齢は超音波骨密度測定装置(A-1000 InSight、GEヘルスケア社製)を用いて計測中である。超音波法以外から肺年齢は日本呼吸器学会が提唱する方法を用いて呼吸機能検査結果から計測し、他の臓器年齢指標と比較を行った。本研究では、生活習慣病患者を対象として超音波法で評価される心機能と動脈硬化進展度の関係を種々の臓器の間で検討を行った。メタボリック症候群では心臓臓器障害の特徴として、左室肥大よりも左室拡張障害として表現されやすいことを明らかにした。また、高血圧による腎機能障害は左室拡張能よりも左室肥大により良好な相関を示すことを明らかにした。さらに加齢自体が心機能障害に及ぼす影響が大であることを示し、生活習慣病の心機能評価には、年齢を加味する重要性を明らかにした。また生活習慣病患者の肺年齢と呼吸機能は動脈硬化指標や心機能障害と相関することを明らかにし、現在肺機能および肺年齢と炎症マーカーや酸化ストレスとの関連性について検討中である。外来血圧変動の大きさは脳卒中の危険因子であることが示されているが、1回の外来受診時内の外来血圧変動性に関係する因子の検討はまだ十分ではない。今年度の研究では内服治療中の高血圧患者の1回の外来受診時内の外来血圧変動性に影響を及ぼす因子について検討した。高血圧患者に対して1回の外来受診時に病院到着時と診察室内での2回、自動血圧計を用いて血圧測定を行った。2か月毎に1年間このような血圧測定を行い、最後の受診日にはフクダ電子VaSeraVS-1000を用いて動脈の硬さの指標Cardio-Ankle Vascular Index (CAVI)を計測した。血圧の指標は病院到着時と診察室内の2回の収縮期血圧の差と2回の収縮期血圧平均を算出し、1年間で6回の計測の平均値を求め、血液検査およびCAVIとの相関を検討した。病院到着時と診察室内の収縮期血圧平均は年齢(r=0.457, p<0.001)のみと相関した。一方、病院到着時と診察室内の収縮期血圧の差は、年齢(r=0.383, p=0.003)、CAVI (r=0.330, p=0.012)、HbA1C (r=0.345, p=0.009)、中性脂肪(r=0.299, p=0.024)と有意な相関を示した。病院到着時と診察室内の収縮期血圧の差は、2回の収縮期血圧平均よりもCAVIと良好な相関を示したことから、1回外来受診時内の外来血圧変動の大きさは動脈の硬さを反映する可能性が示唆された。今後は1回外来受診時内の血圧変動と患者の日常の心理的ストレスの関係について検討する。血圧変動と精神的ストレスの関係についての検討は現在の外来受診患者を対象にデータを蓄積しつつあるから。近年ストレスチェックが職場で行われ、精神面から生活習慣病や心血管疾患の発症予防に配慮がなされている。しかし、精神的ストレスの重症度の評価にはまだ確立されたグレーディング法はないのが現状である。今年度は高血圧薬物治療を目的に1年以上通院中の高血圧患者に1精神的ストレスの有無,2精神的ストレス重症度(最低1最高10までの10段階)についてアンケートを行った。血圧,心拍数はアンケート実施日以前1年間の外来受診日の診察室血圧をカルテ記載から平均値を計算し,アンケート実施日も含めて以前の1年以内の最低3回以上の血圧の平均値が得られた患者50例(男性24名,女性26名,年齢71±9歳,4392歳)を解析した。ストレス重症度は血圧,心拍数と相関しなかったが,年齢との間には有意な負の相関が認められた(r=-0.433, p=0.002)。ストレス無しと答えた患者の重症度は平均3.2±1.1,ストレス有りと答えた患者では平均5.4±1.1であった。 | KAKENHI-PROJECT-25350567 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25350567 |
超音波による新しい多臓器包括的老化指標の開発と生活習慣病の総合的管理の効果解析 | ストレス無しと答えた患者は重症度を3と自己評価し、ストレス有りと答えた患者は重症度を5と自己評価することが多かった。高血圧外来患者において精神的ストレスは血圧コントロールには影響しないと思われた。高齢高血圧患者は若年患者に比較して精神的ストレスは少ない状態であることが明らかにされた。本研究では、新規に降圧剤治療を開始する患者およびこれまで降圧剤治療を続けてきた患者に対して、降圧剤内服治療前後で、血圧の変動、動脈硬化の検査指標、血液内分泌検査を比較し、降圧治療の効果判定に有用な指標を抽出した。降圧治療観察期間の前後で、Brain Natriuretic Peptide (BNP)、腎機能などの血液検査、動脈の硬さ指標、心臓超音波検査の心機能指標を計測した。観察期間の間の外来血圧の平均値および外来血圧変動性を計測した。以上の計測値から血圧コントロールとBNPやCAVIなどの検査指標を比較し、相関を検討し、血圧コントロールを良好に反映する検査指標を検討した。健常者および生活習慣病患者(40歳代90歳代)を対象として、心臓年齢は心臓超音波法による左室肥大、左室拡張能障害を基に作成した(21ー23年度基盤Cの研究成果で得られた指標)指標で形態的・機能的に測定した。脳年齢は頸動脈エコーでの頚動脈プラークスコアを計測して評価する。さらに脳臓器障害については脳MRIを用いて大脳白質病変、脳萎縮、無症候性脳梗塞を加味し総合的に評価した。骨年齢は超音波骨密度測定装置(A-1000 InSight、GEヘルスケア社製)を用いて計測した。肺年齢は日本呼吸器学会が提唱する方法を用いて呼吸機能検査結果から計測した。(1)動脈の硬さとの関係:血圧・脈波計測装置(フクダ電子社製)を用いて上腕-足首間の動脈の硬さ指標(CAVI:Cardio-Ankle Vascular Index)を計測し動脈硬化度を計測した。またコーリン社製血圧脈波計測装置を用いて、脈波速度(baPWV: brachial-ankle pulse wave velocityも計測した。以上の動脈硬化の指標と多臓器包括的老化指標、臓器障害との関連性について検討を行った。(2)動脈硬化のバイオマーカーとの関係:血液サンプルから高感度CRP、BNPの測定を行い、動脈硬化と多臓器包括的老化指標、臓器障害との関係を明らかにする。(3)酸化ストレス度との比較:動脈硬化性臓器障害の原因となる酸化ストレス度を評価するため酸化ストレスマーカーとして尿中8-0HdGを測定し、多臓器包括的老化指標、臓器障害との関係を検討する。以上のデータ集積は順調に進んでいるため研究の進行はおおむね順調と思われる。今後は外来通院中の生活習慣病患者の精神的ストレスと動脈硬化、老化の関係を明らかにする。循環器内科今後は高血圧、糖尿病、高脂血症、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病患者900人(10歳代90歳代)を対象として、上記の多臓器包括的老化指標を計測する。高血圧、糖尿病、高脂血症、メタボリックシンドロームなどの患者が保有する心血管事故危険因子と多臓器包括的老化指標の関係を検討し、心血管危険因子が臓器間老化のバランスに及ぼす影響について検討する。超音波法を用いて計測された、左室肥大、左室拡張能障害を基に作成した心臓年齢指標、腎臓サイズ、腎ドプラ法での腎内血管抵抗(Resistive Index)計測による腎年齢、頸動脈エコーでのintima-media thickness (IMT)、頚動脈プラークスコアを計測による脳年齢、骨年齢、肺年齢の間には有意な相関が認められ、本研究目的の多臓器包括的老化指標作成への可能性が期待されるため順調に進行していると思われる。 | KAKENHI-PROJECT-25350567 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25350567 |
DNAメチル化がヌクレオソーム局在に与える影響の解析 | 1.生きている高等真核細胞の各遺伝子上において、DNAのどの領域をヌクレオソームが占めているか(並進上の位置)を詳細に決定する方法を開発した。細胞をソラレンで処理すると、ヌクレオソームのない領域にのみDNA鎖間クロスリンクが生成する。ここで開発した方法では、特定遺伝子上のクロスリンクの正確な位置と量を、最終的にシークェンスゲル上に強弱のバンドとして表示し、ヌクレオソームの位置をバンドのない領域として検出する。2.細胞内の各ヌクレオソームの表面で、DNA2重螺旋のどの部位がヒストンに面しており、どの部位が溶液側に露出しているか(回転上の位相)を決定する方法を開発した。細胞を放射線照射すると、DNAの螺旋が溶液側に露出している部位では切断されるが、ヒストンに面している部位では防護され乱ここで開発した方法では、特定遺伝子上のDNA切断の正確な位置と量を、最終的にシークエンスゲル上に強弱のバンドとして表示し、螺旋の周期に対応した約10塩基ごとの切断パターンを検出する。3.上記の新方法を用いて、DNAやヒストンの化学修飾の変化が、DNAとヌクレオソームの位置関係に与える影響の解析を試みた。ヒト細胞を血清などで刺激すると、c-FOS遺伝子の急速な誘導がみられるが、これにはヒストンのアセチル化などの急速な変化が伴っている。このとき、c-FOSプロモーター内に局在するヌクレオソームに関して、位置関係の変化が生じているかを検討したが、全く変化が認められなかった。このヌクレオソームは、誘導時に急速な化学修飾を受けるにもかかわらず、一切の位置変化を起こさないようである。1.生きている高等真核細胞の各遺伝子上において、DNAのどの領域をヌクレオソームが占めているか(並進上の位置)を詳細に決定する方法を開発した。細胞をソラレンで処理すると、ヌクレオソームのない領域にのみDNA鎖間クロスリンクが生成する。ここで開発した方法では、特定遺伝子上のクロスリンクの正確な位置と量を、最終的にシークェンスゲル上に強弱のバンドとして表示し、ヌクレオソームの位置をバンドのない領域として検出する。2.細胞内の各ヌクレオソームの表面で、DNA2重螺旋のどの部位がヒストンに面しており、どの部位が溶液側に露出しているか(回転上の位相)を決定する方法を開発した。細胞を放射線照射すると、DNAの螺旋が溶液側に露出している部位では切断されるが、ヒストンに面している部位では防護され乱ここで開発した方法では、特定遺伝子上のDNA切断の正確な位置と量を、最終的にシークエンスゲル上に強弱のバンドとして表示し、螺旋の周期に対応した約10塩基ごとの切断パターンを検出する。3.上記の新方法を用いて、DNAやヒストンの化学修飾の変化が、DNAとヌクレオソームの位置関係に与える影響の解析を試みた。ヒト細胞を血清などで刺激すると、c-FOS遺伝子の急速な誘導がみられるが、これにはヒストンのアセチル化などの急速な変化が伴っている。このとき、c-FOSプロモーター内に局在するヌクレオソームに関して、位置関係の変化が生じているかを検討したが、全く変化が認められなかった。このヌクレオソームは、誘導時に急速な化学修飾を受けるにもかかわらず、一切の位置変化を起こさないようである。高等真核細胞の単一コピー遺伝子上において、ヌクレオソームのin vivoでの存在位置を塩基配列レベルで決定するフットプリント法を確立した。この方法の概要は、次のようなものである。培養細胞をソラレンと長波長紫外線で処理すると、DNA上のヌクレオソームのない場所(リンカー)にのみ鎖間クロスリンクが生成する。ゲノム内の特定遺伝子上のクロスリンクを、最終的にシークエンスゲル上にバンドとして塩基配列レベルで表示するが、バンドのない場所がヌクレオソームの存在位置ということになる。クロスリンクを持つDNA2本鎖は、加熱しても完全には解離せず、温度を下げると急速に(プライマーがアニールする前に)もとの2本鎖に戻ってしまうため、PCRなどが適用できない。そこで、前処理でクロスリンクを取りはずして他の形に転換することが必要である。そのためアルカリ中で加熱を行うが、この処理により、非対称分子であるソラレンは、片側でDNA鎖よりはずれ、反対側でのみDNA鎖に結合した普通の付加体になる。この付加体の位置を、私たちが開発したterminal transferase-dependent PCR法で決定する。この方法は、一種のpolymerase stop assayである。遺伝子特異的プライマーからの伸長反応は付加体の場所で停止するが、このとき生ずる1本鎖DNA産物をシークエンスゲル上に表示する。鋳型がゲノムDNAのため、産物はきわめて微量であり、2段階の増幅が行う。この方法を用い、ヒトc-FOS遺伝子のプロモーターにおいて、クロスリンク生成が抑制される広い領域を検出したが、これは実際に、ヌクレオソーム存在部位と考えられているところに相当していた。平成12年度には、生きている高等真核細胞の各遺伝子上において、DNAのどの領域をヌクレオソームが占めているか(並進上の位置)を詳細に決定する方法を開発したが、13年度には、これに引き続いて以下のような研究を行った。1.細胞内の各ヌクレオソームの表面で、DNA2重螺旋のどの部位がヒストンに面しており、どの部位が溶液側に露出しているか(回転上の位相)を決定する方法を開発した。細胞を放射線照射すると、DNAの螺旋が溶液側に露出している部位では切断されるが、ヒストンに面している部位では防護される。 | KAKENHI-PROJECT-12680668 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12680668 |
DNAメチル化がヌクレオソーム局在に与える影響の解析 | ここで開発した方法では、特定遺伝子上のDNA切断の正確な位置と量を、ligation-mediated PCRを用いて、最終的にシークエンスゲル上に強弱のバンドとして表示する。もし、特定のDNA配列のヌクレオソーム表面における回転上の位相が細胞集団内で同調している場合、螺旋の周期に対応した約10塩基ごとの切断パターンがあらわれる。2.二つの新方法を用いて、DNAやヒストンの化学修飾の変化が、DNAとヌクレオソームの位置関係に与える影響の解析を試みた。ヒト細胞を血清などで刺激すると、c-FOS遺伝子の急速な誘導がみられるが、これにはヒストンのアセチル化などの急速な変化が伴っている。このとき、c-FOSプロモーター内に局在するヌクレオソームに関して、位置関係の変化が生じているかを検討したが、全く変化が認められなかった。このヌクレオソームは、誘導時に急速な化学修飾を受けるにもかかわらず、一切の位置変化を起こさないようである。 | KAKENHI-PROJECT-12680668 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12680668 |
低筋力/高ストローク方式の人工心臓駆動用リニアー型骨格筋アクチューエーターの開発 | 慢性電気刺激した広背筋をリニアー型として利用した人工心臓駆動において、広背筋の初期牽引力を小さく収縮長を長くとるlow power/high stroke方式(LP方式)骨格筋アクチュエーターの有用性を検討した。成犬5頭の広背筋を約8.8週間にわたりMedtronic社製Cardiomyoplasty用完全埋め込み型骨格筋電気刺激装置による胸背神経の慢性電気刺激を行なった。広背筋の耐疲労性を獲得したのち、模擬循環回路内に組み込まれた人工心臓を2種類のLP方式(LP5、LP10)とhigh power/low stroke方式(HP方式)を用いて後負荷30、100mmHgで駆動した。LP方式はフイゴ状ベローズで力点にかかる力を最小限にするように工夫し、HP方式はベローズを直線方向に圧縮するようにした。後負荷30mmHgにおける出力はLP5が0.25mW/g、LP10が0.27mW/g、HPが0.24mW/g、100mmHgにおける出力はLP5が0.81mW/g、LP10が0.92mW/g、HPが0.76mW/gであった。犬心臓の出力は左室330mW、右室60mWであったことからLP10は左室の50%、右室の82%であった。LP10はHPに比べて有意に高い出力を発生し、LP方式の有用性が証明された。完全埋め込み型リニアー骨格筋アクチュエーターの開発としてボールスクリュー内蔵のシステムを検討したが、骨格筋の直線的牽引力をボールスクリューの回転運動に変換する際のエネルギー交換効率が悪く、また埋め込み型を想定した場合、骨格筋の弛緩時に緊張が得られるような胸壁固定が難しかった。今後の課題はボールスクリューの応用に対して機械工学的検討を重ねる必要があった。慢性電気刺激した広背筋をリニアー型として利用した人工心臓駆動において、広背筋の初期牽引力を小さく収縮長を長くとるlow power/high stroke方式(LP方式)骨格筋アクチュエーターの有用性を検討した。成犬5頭の広背筋を約8.8週間にわたりMedtronic社製Cardiomyoplasty用完全埋め込み型骨格筋電気刺激装置による胸背神経の慢性電気刺激を行なった。広背筋の耐疲労性を獲得したのち、模擬循環回路内に組み込まれた人工心臓を2種類のLP方式(LP5、LP10)とhigh power/low stroke方式(HP方式)を用いて後負荷30、100mmHgで駆動した。LP方式はフイゴ状ベローズで力点にかかる力を最小限にするように工夫し、HP方式はベローズを直線方向に圧縮するようにした。後負荷30mmHgにおける出力はLP5が0.25mW/g、LP10が0.27mW/g、HPが0.24mW/g、100mmHgにおける出力はLP5が0.81mW/g、LP10が0.92mW/g、HPが0.76mW/gであった。犬心臓の出力は左室330mW、右室60mWであったことからLP10は左室の50%、右室の82%であった。LP10はHPに比べて有意に高い出力を発生し、LP方式の有用性が証明された。完全埋め込み型リニアー骨格筋アクチュエーターの開発としてボールスクリュー内蔵のシステムを検討したが、骨格筋の直線的牽引力をボールスクリューの回転運動に変換する際のエネルギー交換効率が悪く、また埋め込み型を想定した場合、骨格筋の弛緩時に緊張が得られるような胸壁固定が難しかった。今後の課題はボールスクリューの応用に対して機械工学的検討を重ねる必要があった。 | KAKENHI-PROJECT-07857086 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07857086 |
小胞体における異常タンパク質の蓄積機構-Russell body形成と細胞応答- | 我々は、分子内ジスルフィド結合異常をもつ変異型アンチトロンビン(AT)が小胞体に蓄積しRussellbody様構造体を形成することを発見した。さらに変異型ATの小胞体蓄積には、AT分子の多量体形成ならびに小胞体分子シャペロンGRP78との結合が重要であることを報告した。本年度は、Russell body様構造体の形成過程とその後の運命、Russell body様構造体形成と小胞体ストレスとの関連性を検討し、以下の新知見を得た。1.ドキシサイクリン添加により変異型ATの生合成を開始させ、AT分子の小胞体蓄積とRussell body様構造体形成との関連性を、免疫電顕、通常電顕ならびに蛍光抗体法により解析した。その結果、変異型AT分子は小胞体の一部に集積すること、Russell body様構造体は変異型AT分子が集積した部位の膨張により形成されること、Russell body様構造体は小胞体と連続していることを明らかにした。2.Russellbody様構造体形成後、ドキシサイクリンを除去し変異型ATの生合成を停止させた。その後、Russell body様構造体の運命を解析した。その結果、細胞内のAT量の減少に伴いRussellbody様構造体の大きさが縮小し、小胞体上に分散することを見出した。この過程にオートファージが関与する可能性を検証する予定である。3.Russellbody様構造体形成は、小胞体分子シャペロンやリン脂質の生合成を誘導しないことが明らかになった。変異型AT蓄積によるRussell body様構造体形成は、unfolding protein responseを伴わないユニークなものであった。4.AT欠乏症患者より、プロテアソームで分解される新規変異型AT(ΔMet103)を発見した。AT(ΔMet103)とAT(C95R)の分子特性を比較した結果、小胞体における多量体の形成の有無により、変異型ATが蓄積するか分解されるかの運命が決まる可能性が示唆された。1.AT分子内の2っのジスルフィド結合を担う各CysをArgに置換した変異型AT、ジスルフィド結合を担うペアーのCysをArgに置換した変異型ATを安定過剰発現するCHO細胞を作製し、各変異型ATの細胞内蓄積を解析した。その結果、AT(Cys8,128Arg)以外の変異型ATは、細胞外への分泌速度が低下し、かつ細胞内での分解を受けず、Russell body様構造体を形成した。さらに、Russell body様構造体を形成する変異型ATは、小胞体内で多量体を形成していた。多量体形成により変異型ATが小胞体に滞留し、Russell body様が形成されることが示唆された。2.Russellbody様構造体の形成過程を解析するため、ドキソサイクリン添加の有無(Tet-Onシステム)により変異AT(Cys95Arg)の生合成を厳密に制御できるCHO細胞を作製した。ドキソサイクリン添加後、経時的に変異型ATの蓄積を免疫電顕で観察すると、変異型ATの蓄積に伴い小胞体の局所的な膨潤が起こり、Russell body様構造体が形成されることが示唆された。3.Tet-Onシステムを用い、Russell body様構造体の形成に伴う小胞体ストレスを、小胞体シャペロン分子の誘導の観点から解析した。その結果、顕著なGRP78、PDIなどの誘導は観察されなかった。よって、Russell bodyの形成は、unfolding protein responseとは異なるユニークな分子機構が関与する可能性が示唆された。我々は、分子内ジスルフィド結合異常をもつ変異型アンチトロンビン(AT)が小胞体に蓄積しRussellbody様構造体を形成することを発見した。さらに変異型ATの小胞体蓄積には、AT分子の多量体形成ならびに小胞体分子シャペロンGRP78との結合が重要であることを報告した。本年度は、Russell body様構造体の形成過程とその後の運命、Russell body様構造体形成と小胞体ストレスとの関連性を検討し、以下の新知見を得た。1.ドキシサイクリン添加により変異型ATの生合成を開始させ、AT分子の小胞体蓄積とRussell body様構造体形成との関連性を、免疫電顕、通常電顕ならびに蛍光抗体法により解析した。その結果、変異型AT分子は小胞体の一部に集積すること、Russell body様構造体は変異型AT分子が集積した部位の膨張により形成されること、Russell body様構造体は小胞体と連続していることを明らかにした。2.Russellbody様構造体形成後、ドキシサイクリンを除去し変異型ATの生合成を停止させた。その後、Russell body様構造体の運命を解析した。その結果、細胞内のAT量の減少に伴いRussellbody様構造体の大きさが縮小し、小胞体上に分散することを見出した。この過程にオートファージが関与する可能性を検証する予定である。3.Russellbody様構造体形成は、小胞体分子シャペロンやリン脂質の生合成を誘導しないことが明らかになった。変異型AT蓄積によるRussell body様構造体形成は、unfolding protein responseを伴わないユニークなものであった。4.AT欠乏症患者より、プロテアソームで分解される新規変異型AT(ΔMet103)を発見した。 | KAKENHI-PROJECT-15659017 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15659017 |
小胞体における異常タンパク質の蓄積機構-Russell body形成と細胞応答- | AT(ΔMet103)とAT(C95R)の分子特性を比較した結果、小胞体における多量体の形成の有無により、変異型ATが蓄積するか分解されるかの運命が決まる可能性が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-15659017 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15659017 |
多連節型不整地走行車両の開発と操縦の自動化 | 本研究に供試された多連接型車両は、不整地・急傾斜地での走行を前提として分担研究者によって開発されたもので、2本の油圧シリンダ及びユニバーサル・ジョイントにより構成される、上下・左右に屈曲できる連接部を2か所に有する車両である。前後の連接部屈曲角を調節しつつ不整地を、また急傾斜地においては転倒を心配することなく走行できる。1.8輪の車輪荷重を測定することにより、種々の条件下における反転倒安定性を検討した。その結果、安定限界は、従来の車両に比べてはるかに大きいことが検証された。2.連接部屈曲角の操縦は、4本の油圧シリンダを同時に操縦せねばならないため大変複雑である。これが、コンピュータ・アシストを要する由縁である。屈曲角を入力すれば、各シリンダ変位の計算・位置決め制御をコンピュータで行い、かつ後部連接部屈曲各を前部のそれへのならい制御を、これもコンピュータで行った。ここでは、とくに基板型マイコンによる級数近似計算の誤差について検討した。3.実際作業の例として、林地における木材搬出作業について検討した。すなわち、木材のひきずり抵抗の測定ー実際林地のデータをもとにした作業能率の計算・作業のエネルギー経済的評価である。本研究に供試された多連接型車両は、不整地・急傾斜地での走行を前提として分担研究者によって開発されたもので、2本の油圧シリンダ及びユニバーサル・ジョイントにより構成される、上下・左右に屈曲できる連接部を2か所に有する車両である。前後の連接部屈曲角を調節しつつ不整地を、また急傾斜地においては転倒を心配することなく走行できる。1.8輪の車輪荷重を測定することにより、種々の条件下における反転倒安定性を検討した。その結果、安定限界は、従来の車両に比べてはるかに大きいことが検証された。2.連接部屈曲角の操縦は、4本の油圧シリンダを同時に操縦せねばならないため大変複雑である。これが、コンピュータ・アシストを要する由縁である。屈曲角を入力すれば、各シリンダ変位の計算・位置決め制御をコンピュータで行い、かつ後部連接部屈曲各を前部のそれへのならい制御を、これもコンピュータで行った。ここでは、とくに基板型マイコンによる級数近似計算の誤差について検討した。3.実際作業の例として、林地における木材搬出作業について検討した。すなわち、木材のひきずり抵抗の測定ー実際林地のデータをもとにした作業能率の計算・作業のエネルギー経済的評価である。1.不整地走行車両には多様な形態が考えられるが,新たな試みの一つとして,車両相互を左右・上下方向に屈曲できる2連節部を有する3両連結車を考案,試作した.連節部は2本の油圧シリンダと1個の自在継手によって構成し,シリンダの伸縮によって左右方向のかじ取り及び上下方向の車体屈折を行う.走行部も油圧駆動とし,各車輪はそれぞれ別個の油圧モーターによって独立駆動される.本年度はブレーキ系統を付加し,車輪の油圧駆動系回路,操縦制御用電装回路を改善,整備して本機の性能及び安定性の向上に努めた.2.本機の走行,けん引及び登坂性能を測定した.これらは,各車輪の駆動方式即ち直列駆動か並列駆動かによって異なり,前者の場合最高速度8.5km/hr,最大けん引力280kgf,登坂角約20°となる.後者に切換えると各車輪の駆動力が倍増し,最大けん引力及び登坂角はそれぞれ510kgf, 34°と増加するが,走行速度は1/2に低下する.3.複数の連節部を有するため,本機の運転は複雑となる.操縦の簡素化,自動化を図り,後方連節部屈曲角を前方のそれにならわせるコンピュータアシスト制御法を検討した.これには, (1)後方連節部屈曲角の制御, (2)連節部それぞれのシリンダ変位目標値の計算,の2つの機能を持たせ,これに関与する計算式及び計算プログラムを作成,誤差検討を行った.同時にマイクロコンピュータ入出力インタフェースを作製し,制御動作に関する基礎データを収集した.4.溝,障害物及び段差乗越え時又は斜面,等高線走行時の各車輪下における静的荷重分布を測定し,その走行性,作業性,安定性に関する本機の特性を連節部を持たない一体車両の場合と比較し,その長短所を明らかにした.また本機の転倒限界についても測定,考察し有利性を明らかにした.1.本研究に供試してきた試作機の改造を行った。本機は全油圧駆動となっているが、操縦性向上と試験利用への便のため、回路構成及び各部の改良を施した。すなわち、全8輪の駆動輪化(従来は4輪のみ)、方向制御弁の取替えによる制動装置の強化及び流量調節回路の新設による走行速度調節の簡易化である。また、各部の強度増大を施した。2.以下の試験を、前年度にひき続き実施した。1)旋回・登坂・けん引性性能について、実際作業への適用時における問題点を明らかにするため、種々の不整地・急傾斜地での旋回時の操作性、登坂限界の測定、木材けん引抵抗の測定を行った。2)耐転倒性の測定、傾斜地や不整地走行時における転倒限界について資料を整えるため、傾斜角及び傾斜方向を変えたとき、また連接部屈曲角を種々に変えた(不整地走行時において溝や段差を越える時に相当する)ときの各車輪荷重配分を測定し、転倒限界を算定した。 | KAKENHI-PROJECT-62560247 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62560247 |
多連節型不整地走行車両の開発と操縦の自動化 | 3.マイコンによる、連接部操縦のアシストのうち、後部連接部の前部へのならい制御のプログラムを完成した。これは、操縦者により操縦される前部連接部の2本の油圧シリンダ・ピストン変位を検出し上下・左右屈曲角を計算し、論理演算を経て、後部の油圧シリンダ2本が自動制御されるものである。4.最終取り纏めを行った。 | KAKENHI-PROJECT-62560247 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62560247 |
プラズマ重合凍結レプリカ法による生体試料の原子間力顕微鏡観察 | 平成9年度は、8年度に新たに開発したプラズマ重合急速凍結レプリカ法を用いて生体試料のレプリカを作製し、これを原子間力顕微鏡(AFM)で観察した。即ち、精製したT4バクテリオファージを雲母の細片と混合し、2枚の銅板にはさんで、シャーベット状液体窒素で急速凍結した。これをレプリカ装置(プラズマナノレプリカ、ウシオ電機)内で-100°Cで割断しメタンとエチレンの混合ガスで、プラズマ重合により被膜した。試料をフッ酸で溶解したあと、試料側の面を上にしてグリッドに回収した。このレプリカをAFM(日本電子JSTM-4200)を用いてコンタクトモードで観察した結果、ファージの頭部と尾部を観察することができた。また、頭部の長さは110mで、透過電子顕微鏡で得られた値と一致した。しかし、ファージの形態に変形が認められた。同一のレプリカのTEM観察では、ファージの形態は自然の状態に保たれていたので、この変形はレプリカ作製で生じたものではなく、AFM観察時に生じたものと考えられた。次に、真菌Cladosporiumの胞子を通常の金属蒸着凍結レプリカ法でレプリカを作製し、AFM(セイコ-電子工業SPI3700/SPA300)で観察した。胞子の全体像は自然の形態を示したが、TEMで観察された10nmの幅の縞模様構造はAFMでは観察できなかった。以上のことから、プラズマ重合急速凍結レプリカ法は、生体試料の天然の微細形態の保持、レプリカ膜がアモルファスであること、探針の圧力に十分耐える硬さを持つことなどからAFM観察に有用であると考えられる。しかし、さらに分解能の良い像を得るためには、凹凸の激しい生体試料に応用できる工夫など、AFMの装置の改良も必要であろう。平成8年度は.T4バクテリオファージと.B型肝炎ウイルスコア粒子を材料としてプラズマ重合急速凍結レプリカ作製の至適条件の検討を行った。その結果,精製した試料を細分化したマイカフレークと混合し.その少量を2枚の銅板にはさんでシャーベット状液体窒素に投入した。これをレプリカ装置にセットして、10^<-6>Torr以下に排気し、-100°Cで片方の銅板をはがすことにより割断した。2分間エッチングしたあと.メタンとステレンの混合ガスを導入して、1.7KV,7mAの条件で.プラズマ重合を行うことにより.試料を被膜した。試料をフッ酸で処理し、水洗したあと,レプリカ膜をグリッドに拾って電子顕微鏡観察を行った。T4ファージのレプリカ像は.大きさも形態も.ネガティブ染色法、氷包理法による像とよく一致した。コア粒子のレプリカ像に関しても同様な結果が得られた。以上のことから今回開発した方法が、微生物試料を生きている状態に最も近い状態で高分解観察するのに適していると言える。平成9年度は、これらのレプリカ膜を原子間力顕微鏡で観察する予定である。平成9年度は、8年度に新たに開発したプラズマ重合急速凍結レプリカ法を用いて生体試料のレプリカを作製し、これを原子間力顕微鏡(AFM)で観察した。即ち、精製したT4バクテリオファージを雲母の細片と混合し、2枚の銅板にはさんで、シャーベット状液体窒素で急速凍結した。これをレプリカ装置(プラズマナノレプリカ、ウシオ電機)内で-100°Cで割断しメタンとエチレンの混合ガスで、プラズマ重合により被膜した。試料をフッ酸で溶解したあと、試料側の面を上にしてグリッドに回収した。このレプリカをAFM(日本電子JSTM-4200)を用いてコンタクトモードで観察した結果、ファージの頭部と尾部を観察することができた。また、頭部の長さは110mで、透過電子顕微鏡で得られた値と一致した。しかし、ファージの形態に変形が認められた。同一のレプリカのTEM観察では、ファージの形態は自然の状態に保たれていたので、この変形はレプリカ作製で生じたものではなく、AFM観察時に生じたものと考えられた。次に、真菌Cladosporiumの胞子を通常の金属蒸着凍結レプリカ法でレプリカを作製し、AFM(セイコ-電子工業SPI3700/SPA300)で観察した。胞子の全体像は自然の形態を示したが、TEMで観察された10nmの幅の縞模様構造はAFMでは観察できなかった。以上のことから、プラズマ重合急速凍結レプリカ法は、生体試料の天然の微細形態の保持、レプリカ膜がアモルファスであること、探針の圧力に十分耐える硬さを持つことなどからAFM観察に有用であると考えられる。しかし、さらに分解能の良い像を得るためには、凹凸の激しい生体試料に応用できる工夫など、AFMの装置の改良も必要であろう。 | KAKENHI-PROJECT-08874116 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08874116 |
体育授業における質的研究法の方法論の検討 | 本研究は,体育科の授業研究における方法論の再構築に向けた基礎的作業を試みるものである.特に,量的研究法とは,その「客観性」「科学性」の上から二項対立的な図式で扱われてきた質的研究法の方法論について吟味しようと,以下のような検討を試みた.第一に,戦後の体育授業研究の展開動向に関し時期区分を試み,各期の特徴とその成果を明かにしようとした.さらに,1980年代以降の実証的・定量的研究法における研究成果の言及精度と言及範囲を検討する中で,今後の体育授業研究においてパラダイムの転換が求められる必然的な根拠を示すとともに,体育授業研究の方法論にとって中核をなしている「観察(者)システム」をめぐる問題を「観察者の位置と視点」からの検討を試みた.第二に,「観察者の位置」に注目し,以下のような実験を試みた.授業システムが作り出す位相空間に対する位置を異にする観察者=「実践者」「現地参加観察者」および「外部観察者」による授業観察を実施し,そこでの観察内容・解釈の比較・検討を行った.第三に,授業システムが作り出す位相空間の内部に入り込んで,当事者としての位置から観察するころを意図した質的研究法による授業研究を試みた.そこでは,アクション・リサーチによる共同的な授業研究,さらに,同僚性としての連携をもたらす教師(実践者-研究者)相互の関係性に注目した事例研究によって「実践者」および「参加観察者」の授業づくりに関わる省察内容の変容過程について検討した.以上の結果から,共同的な観察体制の必要性,内側⇔外側と視点を移動しながら授業システムの振る舞いを多面的に観察することの重要性が示唆された.本研究は,体育科の授業研究における方法論の再構築に向けた基礎的作業を試みるものである.特に,量的研究法とは,その「客観性」「科学性」の上から二項対立的な図式で扱われてきた質的研究法の方法論について吟味しようと,以下のような検討を試みた.第一に,戦後の体育授業研究の展開動向に関し時期区分を試み,各期の特徴とその成果を明かにしようとした.さらに,1980年代以降の実証的・定量的研究法における研究成果の言及精度と言及範囲を検討する中で,今後の体育授業研究においてパラダイムの転換が求められる必然的な根拠を示すとともに,体育授業研究の方法論にとって中核をなしている「観察(者)システム」をめぐる問題を「観察者の位置と視点」からの検討を試みた.第二に,「観察者の位置」に注目し,以下のような実験を試みた.授業システムが作り出す位相空間に対する位置を異にする観察者=「実践者」「現地参加観察者」および「外部観察者」による授業観察を実施し,そこでの観察内容・解釈の比較・検討を行った.第三に,授業システムが作り出す位相空間の内部に入り込んで,当事者としての位置から観察するころを意図した質的研究法による授業研究を試みた.そこでは,アクション・リサーチによる共同的な授業研究,さらに,同僚性としての連携をもたらす教師(実践者-研究者)相互の関係性に注目した事例研究によって「実践者」および「参加観察者」の授業づくりに関わる省察内容の変容過程について検討した.以上の結果から,共同的な観察体制の必要性,内側⇔外側と視点を移動しながら授業システムの振る舞いを多面的に観察することの重要性が示唆された.1980年代以降の体育授業研究における動向分析によって,そこでの研究方法論の中核となる「観察(者)システム」をめぐる問題に関わる予備的考察を行った上で,以下のような実験を試みた.小学校体育授業を対象に,授業システムが作り出す位相空間に対する位置を異にする観察者=「当事者(実践者)」「同僚教師(現地参加観察者)」および「外部観察者」による授業観察を実施し,そこでの観察内容・解釈の比較・検討を試みた.そこでは,観察者の位置に関わる以下の点が示唆された.(1)外部観察者は,同一単元の授業を対象として系統的に観察回数を重ねることで,出来事を状況の前後(特に,「それ以前の発言・行為」)の文脈や教師-子ども関係,子ども相互の関係性の中で意味づけるようになる.(2)また,外部観察者の観察内容には,実践者の働きかけや子どもの理解など各々の関心に伴う個性的特徴があることが確認され,実践者の観察視野外の実践的な課題までも指摘する可能性が示唆された.しかし,実践者の個々の子どもへの思い,実践者の働きかけの背後にある状況に対する省察内容について解釈することには,一定の限界があることが示唆された.(3)同僚は実践者と終始対話的スタンスを取りながら実践と関わったことで,積極的な推論を含む状況的,文脈的な解釈を可能にする観察が行われることが示唆された.上記の研究については,日本スポーツ教育学会第20回記念国際大会において口頭発表を行い,さらに,「授業研究における観察者の位置に関する事例的研究(1)-実践者・同僚・外部観察者による観察内容と観察可能性の比較-および(2)-個性記述法による外部観察者の観察内容の特質化-」の2本の論文として編集委員会により大会プロシーディングへの掲載を可と判定された.近年、授業過程認知の能力や意思決定とそれを行動化する能力との関連から「反省(的思考)」「リフレクション」「省察」などの教師の「授業づくり」に関わる思考過程に注目し,教師の力量形成と専門的成長を論ずることに関心が向けられている. | KAKENHI-PROJECT-12680067 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12680067 |
体育授業における質的研究法の方法論の検討 | そこでの研究方法論に注目すると,実践者(当事者)と研究者(観察者)の関係のあり方にも焦点が注がれ,従来の「外部観察者の視点」よりも「当事者の視点」を重視する研究デザインも提起され,「カンファレンス」「共同的な観察体制」の必要性が指摘されている.そこで,本研究では,集団による共同研究,とりわけ,同僚性としての連携をもたらす教師(実践者-研究者)相互の関係性に注目し,体育授業を対象とした参加観察による授業観察を実施し,授業検討会における参加者の発言の概要から「共同研究者」としての「参加観察者」の授業づくりについて検討した.(1)参加観察者の発言には,実践者の関心事に各々の関心(実践者の意図,子どもの実践者・友だち・教材に対する思い,子どものノリなど)から迫ろうとする個性的な観察視点に基づいていると解釈できるものがみられた.とりわけ,実践者の実践構想に関わった特定のグループ,個人の技能習熟やグループでの仲間関係についての観察内容を実践者に伝えようとする意図をもった発言が顕著であった.(2)しかし,その一方で,実践者が行うことの理解や課題の共有を深めようとすればするほど,特定の子どもやグループの活動に焦点化した観察に伴った印象をもとに実践課題に対する情報を取捨選択する傾向もみられた.上記の研究の一部については,日本スポーツ教育学会第21回大会(群馬大学)および九州体育・スポーツ学会第50回大会(鹿児島大学)において口頭発表を行った.今日,授業研究における方法論的課題を模索する中で実践者と研究者の関係のあり方に焦点が向けられ,「当事者の視点」を重視する研究デザインの提起や「カンファレンス」「共同的な観察体制」の必要性が指摘されている.本研究では,小学校1.2年生の体育授業を対象とした参加観察(participant observation)による授業観察を実施し,当日の授業に関わった反省と次の授業以降の展開に関わった課題についての検討を行った授業検討会における実践者と参加観察者の発言を分析した.単元進行における展開に関わった実践者の意思決定に注目した平成13年度の報告にくわえ,本年度の報告では,共同研究者(co-researcher)としての「参加観察者」の授業づくりの関わる省察内容の変容過程と検討会で話題となった課題との関係について検討を加えることとした.その結果,参加観察者の発言には,実践者の実践構想に関わった特定の個人の技能習熟やグループでの仲間関係についての観察内容を実践者に伝えようとする意図(具体的場面の提示,イメージの鮮明化)をもっと推察されるものが顕著であった.しかし,一方で,実践者が行うことに対する理解や課題の共有を深めようとすればするほど観察視野が制限され,特定の子どもやグループの活動に注目することによって得られた印象をもとに授業づくりに関わった情報を取捨選択する傾向もみられた.今後は,同僚性の構築に向けた教師(実践者-研究者)相互の関係性に注目し,教師相互が共有する信念や志向性,知識や思考様式,またそこでの教師同士のやりとりを媒介する物や出来事,言葉などの道具が,教師文化の中でどのように生まれ共有されてきているのかという観点についても考察していきたいと考える. | KAKENHI-PROJECT-12680067 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12680067 |
ソフトソニケーションを利用したセラミック製膜技術の開発 | 昨年度の結果から、シュウ酸エタノール法による沈殿製膜よりも、シリカ球合成を用いた製膜において、ソフトソニケーション効果が明確に現れることを見いだした。TEOS(tetraethoxyorthosilicate)および水、アンモニアを出発原料とし、エタノール溶液中で合成したシリカ球を種々の方法で製膜した。得られた成果は以下の通り要約される。1.出発溶液のエイジングによるシリカ球生成の誘導期間、最終粒径、単分散性の向上は機械的撹拌(MS)に比べてソフトソニケーション(SS)で著しいことを明らかにした。2.エイジングにおいて、微量の水分が及ぼす影響について検討した。室温程度であれば影響は少なく、シリカ球の最終粒径は4ヶ月のエイジングで2倍にも達することを明らかにした。他方、エイジング温度を、50°Cほどに高めると、微量水分による加水分解が進行するため、粒径は急激に低下した。3.自然乾燥法、オイル浸潤法、引き上げ法について、シリカ球をガラス基板上に製膜し、透過スペクトルによる評価を行った。SS処理で単分散性を高めたシリカ球膜はコロイド結晶に優れていることを明らかにした。4.エイジング効果の発現機構を検討するため、CSI(= Cold Spray Ionization)質量分析によって、水・エタノール混合物の溶液構造変化を調査した。エイジングにより高m/zのピークは消失し、全体的に低m/z側へのピークシフトが再現性よく観察され、エイジングによる水・エタノールクラスタの微細化が示された。シュウ酸エタノール沈殿法によるシュウ酸マグネシウムの製膜では、ソフトソニケーション(以下、SS)処理によるガラス基板上への効果的な製膜が可能であった。しかしながら得られたシュウ酸マグネシウムは結晶水およびシュウ酸根を含み、熱処理によって大きな体積減少を伴うため、得られた膜の熱処理によるセラミック化は困難であった。出発溶液のエイジング効果が顕著に現れたのはこれまでシュウ酸エタノール法のみであったが、Stober法による単分散シリカ球状粒子についても類似の効果が認められたので、これについてSS効果を検討したところ、以下の知見が得られた。1.通所のエイジング(7d)では沈殿生成期間(IP)が倍増し、最終球径が120%程度に向上したのに対し、SS処理によりそれぞれ3倍増、130%となった。このときの粒径の増大を核生成頻度に換算すると、概ね0.5であり、SSエイジングにより核生成が半分にまで低下することを明らかにした。2.D90/D10値より評価した単分散性は、0.92から0.96にまで向上し、コロイド結晶としての応用が期待された。3.得られた高単分散性球状粒子の単純な自然沈降による製膜によって人工オパールの作製が可能であった。SS効果発現のメカニズムについては、(1)40kHzの高振動数、(2)理論式より導かれるナノレベルの振動振幅、が効いているものと推察されるが、確固たる裏付けは得られていない。この問題と併せて、溶液構造の変化を直接検証できるような手法・理論の確立が今後の重要な課題である。また、SSエイジングについては温度も重要なファクタと考えられるが、今後検討の予定である。昨年度の結果から、シュウ酸エタノール法による沈殿製膜よりも、シリカ球合成を用いた製膜において、ソフトソニケーション効果が明確に現れることを見いだした。TEOS(tetraethoxyorthosilicate)および水、アンモニアを出発原料とし、エタノール溶液中で合成したシリカ球を種々の方法で製膜した。得られた成果は以下の通り要約される。1.出発溶液のエイジングによるシリカ球生成の誘導期間、最終粒径、単分散性の向上は機械的撹拌(MS)に比べてソフトソニケーション(SS)で著しいことを明らかにした。2.エイジングにおいて、微量の水分が及ぼす影響について検討した。室温程度であれば影響は少なく、シリカ球の最終粒径は4ヶ月のエイジングで2倍にも達することを明らかにした。他方、エイジング温度を、50°Cほどに高めると、微量水分による加水分解が進行するため、粒径は急激に低下した。3.自然乾燥法、オイル浸潤法、引き上げ法について、シリカ球をガラス基板上に製膜し、透過スペクトルによる評価を行った。SS処理で単分散性を高めたシリカ球膜はコロイド結晶に優れていることを明らかにした。4.エイジング効果の発現機構を検討するため、CSI(= Cold Spray Ionization)質量分析によって、水・エタノール混合物の溶液構造変化を調査した。エイジングにより高m/zのピークは消失し、全体的に低m/z側へのピークシフトが再現性よく観察され、エイジングによる水・エタノールクラスタの微細化が示された。 | KAKENHI-PROJECT-15655074 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15655074 |
組織シーラントを用いたガスタンポナーデ不要の網膜剥離手術の有効性,安全性の検討 | FocalSeal(FS)はポリエチレングリコールからなるハイドロゲルで、光照射によりポリマーに重合,硬化し組織への接着性を示す生体接着剤である。家兎眼において,FSの網膜毒性と実験的網膜裂孔の閉鎖に対する有用性と,小切開硝子体手術の強膜創閉鎖におけるFSの有効性を検討した。その結果,FS網膜への良好な接着性を示し、網膜毒性はなかった。また,強膜創上に注入したFSは光照射により速やかに固化し、強膜創を閉鎖した。FSは裂孔原性網膜剥離に対する網膜パッチ材料として有用であり,小切開硝子体手術における創閉鎖材料としても有用であった.実験1;全身,全身麻酔を行いながら,有色家兎の右眼の硝子体腔内に10mg/0.1mlのFocalSealを注入した.注入後1,7,14,28日後に細隙灯顕微鏡と倒像鏡にて眼内を観察した.その結果,FocalSealは,角膜,水晶体,硝子体に影響を与えないことが分かった.また,注入後28日で全身麻酔を行い,網膜電図を測定したが,その結果,網膜機能に影響はしていなかった.すべての検査を終えた後に,ペントバルビタール100mg/kgBWを腹腔内に追加投与して安楽死を得,その後眼球を摘出し,顕微鏡にて網膜組織を観察したところ,網膜の炎症所見や,萎縮所見は認めなかった.実験2;全身,全身麻酔を行いながら,有色家兎の右眼に硝子体手術を行い, FocalSealを網膜上に塗布した.術後1,3,7,14,28日に細隙灯顕微鏡と倒像鏡,網膜光干渉計にて眼内を観察した.その結果,FocalSealは,網膜に影響を与えないことが分かった.実験1に関しては平成25年度の日本眼科学会総会で発表した.また論文執筆中である.実験2に関しては平成25年度の日本網膜硝子体学会,平成26年度のARVOで発表予定である.FocalSealを用いた網膜剥離手術の有効性,安全性の検討を行った.有色家兎に全身麻酔をかけ,23ゲージ経結膜硝子体手術を行った.硝子体手術の手順は以下の通り; 1角膜輪部より1mm後方で3portを作成,2硝子体カッターにて水晶体切除,硝子体切除を行う.3視神経乳頭より下方2乳頭径の位置でバクフラッシュニードルを用いて網膜裂孔を作成.4網膜裂孔より網膜下に人工房水を注入し,実験的網膜剥離を作成.5液体-空気置換により網膜を復位させる.家兎を2群にわけ,1群の右眼にFocalSealを塗布し,60秒の光照射を行って網膜裂孔を閉鎖して空気-液体置換をして手術を終了した.もう1群の右眼は液体-空気置換により網膜復位させた後に手術を終了した.術前後で経時的に手持ち細隙灯顕微鏡での前眼部観察と単眼倒像鏡と網膜光干渉計による眼底観察を行った.FocalSealを用いない群では術後全ての眼が網膜剥離が再発し,増殖硝子体網膜症へと進展した.FocalSealを用いて裂孔閉鎖を確認した群では,一部の家兎眼では網膜光干渉計にて網膜剥離の再発が認めない所見を得られたが,全ての家兎眼で再発しなかったわけではないこと,そして一部の家兎では散瞳の不良,角膜混濁などの合併症により,眼底を観察することができず,実験は完全には成功していない.今後,手術手技の改良(手術中に虹彩を切除する,眼内灌流液を冷却する)を重ねて実験を成功させたいと考えている.FocalSeal(FS)はポリエチレングリコールからなるハイドロゲルで、光照射によりポリマーに重合,硬化し組織への接着性を示す生体接着剤である。家兎眼において,FSの網膜毒性と実験的網膜裂孔の閉鎖に対する有用性と,小切開硝子体手術の強膜創閉鎖におけるFSの有効性を検討した。その結果,FS網膜への良好な接着性を示し、網膜毒性はなかった。また,強膜創上に注入したFSは光照射により速やかに固化し、強膜創を閉鎖した。FSは裂孔原性網膜剥離に対する網膜パッチ材料として有用であり,小切開硝子体手術における創閉鎖材料としても有用であった.1.FocalSealの網膜に対する接着力の検討;豚眼を半球状にし,硝子体を十分に除去し,18ゲージ針で網膜に裂孔を作成し,そこにFocalSealを塗布した.その後60秒の光照射を行い,アイカップを人工房水で満たし,網膜裂孔が閉鎖しているかどうかを確認した.実験を静止画,動画に記録して解析した.その結果,FocalSealは網膜に対して充分な接着力を持つことが分かった.2.FocalSealの房水中でのpHの検討;ガラスチューブを12本準備し,以下の3群に分けた.A;人工房水5mlのみ.B;人工房水5m+光照射後のgel状FocalSeal0.2ml. C;人工房水5m+光照射後のgel状FocalSealを超音波破砕したもの0.2ml.それぞれの群の容器を37度に保たれた保温器により保存した.保存後,経時的に72時間後までpHを測定した.その結果,12時間後より徐々にpHが上がり始めた. | KAKENHI-PROJECT-23592551 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23592551 |
組織シーラントを用いたガスタンポナーデ不要の網膜剥離手術の有効性,安全性の検討 | 臨床的には問題のない上昇ではあるが,人工房水に添加されている溶媒などに問題がある可能性があり,再検討が必要と思われる.3.FocalSealの眼毒性の検討;有色家兎に全身麻酔をかけ,さらに0.4%塩酸オキシプロカインを点眼することで,眼表面麻酔を行った.FocalSeal0.2mlを光照射で固形化した後に超音波破砕機でパウダーととした.パウダー化したFocalSeal+人工房水を0.1ml硝子体腔内に注入.もう1群の右眼には人工房水のみ0.1mlを硝子体腔内注入する.注入前と注入後1,7,14,28日、1ヶ月において手持ち細隙灯顕微鏡での前眼部観察と単眼倒像鏡による眼底観察を行い、角膜,前房,水晶体,硝子体,網膜の状態を記録した.注入時,注入後,角膜,前房,水晶体,硝子体については検眼鏡的に変化なく,網膜電図でも異常を認めなかった.平成23年度に計画した研究はすべておこなった.平成24年度に計画した実験のうち,硝子体手術を行い網膜上にFocalSealを塗布した実験は行えたが,人工的網膜剥離を起こしてFocalSealでシーリングするまでに至っていない.そのため,やや実験は遅れていると考えられる.申請書に記載した研究計画の初年度の実験は全て行った.FocalSealの硝子体注入後の組織標本観察だけはまだ達成できていないので,研究はおおむね順調に進展していると考えられる.FocalSealを用いた網膜剥離手術の有効性,安全性の検討を行う.有色家兎に40mg/kgBWのペントバルビタールを腹腔内投与することにより全身麻酔をかける.さらに0.4%塩酸オキシプロカインを点眼することで,眼表面麻酔を行い,23ゲージ経結膜硝子体手術を行う.家兎を2群にわけ,1群の右眼にFocalSealを塗布し,60秒の光照射を行って網膜裂孔を閉鎖して空気-液体置換をして手術を終了する.もう1群の右眼は液体-空気置換により網膜復位させた後に手術を終了する.注入前と注入後1,7,14,28日、2,3,6ヶ月において手持ち細隙灯顕微鏡での前眼部観察と単眼倒像鏡による眼底観察を行い、角膜,前房,水晶体,硝子体,網膜の状態を記録する.また,注入前と注入後6ヶ月で網膜電図を測定.網膜の機能評価を行う.すべての検査を終えた後に,ペントバルビタール100mg/kgBWを腹腔内に追加投与して安楽死を得る.その後眼球を摘出し,顕微鏡にて網膜の微細形態を観察する.研究計画の初年度の研究で達成していない部分(FocalSealの硝子体注入後の組織標本観察)をまず達成させる.その後は申請書に記した研究計画通りに研究を進めて行く方針である.該当なし.FocalSealを用いた網膜剥離手術の有効性,安全性を検討するために,引き続き,家兎を用いた動物実験を行う.片眼に硝子体手術を施行,実験的網膜剥離を作成し,その後FocalSealにより網裂孔閉鎖を試み,眼内タンポナーデを行わずに手術を終了する.対照として家兎の片眼に実験的網膜剥離を作成し,そのまま手術を終了する.術後6ヶ月の間,経時的に眼検査を行う.網膜に対しては網膜裂孔の解剖学的閉鎖を評価するために眼底写真だけでなく,光干渉断層計(OCT)を用い,網膜の機能評価には網膜電図を用いる.術後6ヶ月でそれぞれ眼球を摘出し,透過型電子顕微鏡にて網膜の微細形態を観察する.これらの実験モデルは他の組織シーラント(セプラフィルム®)での動物実験と同じ方法で行う(Teruya et al, Eye 2009;23:2256-9) | KAKENHI-PROJECT-23592551 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23592551 |
水素結合によって形成される不斉な自己組織体の設計とその分子認識能の解明 | 研究計画に従い、自己組織体を形成するための単位素子の候補として(1)、(2)および(3)の化合物を設計した。化合物(1)(3)の真空中でのコンホ-メーションを分子動力学(分子設計支援プログラムSYBYL6.0を用いた)によりシミュレーションするといずれも自己組織化に必要なゴ-シュ型の水酸基およびアンチ型に配向したイミノ部位を持つコンホ-マ-が低エネルギーのコンホ-マ-として得られた。さらに各化合物について二本のN・・・HO分子間水素結合(185pm)を想定し得られた初期座標を力場計算(SYBYL6.0のMAXMIN2を用いた)にかけ構造最適化を行った。その結果、(3)についてはN-メチル基に基づく分子間の立体障害により二量体の形成には至らなかった。一方、(1)および(2)に関しては二量体の形成に収束し、また分子間水素結合に関与しない一組の水酸基およびイミノ基は共に三量体、さらには四量体の形成を可能にする配向をもつことが確認された。以上の計算結果から、(1)および(2)は目的とする自己組織体の有力な単位素子と考えることが出来る。(1)および(2)を調整するために以下の合成経路を考案した。現在、この経路に従い目的物質の合成を試みている。研究計画に従い、自己組織体を形成するための単位素子の候補として(1)、(2)および(3)の化合物を設計した。化合物(1)(3)の真空中でのコンホ-メーションを分子動力学(分子設計支援プログラムSYBYL6.0を用いた)によりシミュレーションするといずれも自己組織化に必要なゴ-シュ型の水酸基およびアンチ型に配向したイミノ部位を持つコンホ-マ-が低エネルギーのコンホ-マ-として得られた。さらに各化合物について二本のN・・・HO分子間水素結合(185pm)を想定し得られた初期座標を力場計算(SYBYL6.0のMAXMIN2を用いた)にかけ構造最適化を行った。その結果、(3)についてはN-メチル基に基づく分子間の立体障害により二量体の形成には至らなかった。一方、(1)および(2)に関しては二量体の形成に収束し、また分子間水素結合に関与しない一組の水酸基およびイミノ基は共に三量体、さらには四量体の形成を可能にする配向をもつことが確認された。以上の計算結果から、(1)および(2)は目的とする自己組織体の有力な単位素子と考えることが出来る。(1)および(2)を調整するために以下の合成経路を考案した。現在、この経路に従い目的物質の合成を試みている。 | KAKENHI-PROJECT-05771936 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05771936 |
感性に訴える音のデザインの包括的研究 | 製品音のデザイン,サイン音のデザイン,サウンドスケープ・デザイン,映像の音のデザインなど多方面に関わる音のデザイン分野に関して,多角的な調査研究,印象評価実験を実施し,どのようにデザインすれば音を効果的に利用できるのかのデザイン指針を示してきた。また,音のデザインの必要性,重要性を示すために,研究成果の出版,学会誌での特集号の編集,学会でのスペシャルセッションやシンポジウムの企画などを実施してきた。製品音のデザイン,サイン音のデザイン,サウンドスケープ・デザイン,映像の音のデザインなど多方面に関わる音のデザイン分野に関して,多角的な調査研究,印象評価実験を実施し,どのようにデザインすれば音を効果的に利用できるのかのデザイン指針を示してきた。また,音のデザインの必要性,重要性を示すために,研究成果の出版,学会誌での特集号の編集,学会でのスペシャルセッションやシンポジウムの企画などを実施してきた。本研究は,製品音のデザイン,サイン音のデザイン,サウンドスケープ・デザイン,映像の音のデザインなど多方面に関わる音のデザイン分野に関して,多角的な調査研究,印象評価実験を実施し,音のデザインの必要性を示し,どのようにデザインすれば音を効果的に利用できるのかのデザイン指針を示すとともに,「音のデザイン」の重要性を広報することを目的としています。研究代表者と分担者は,日本音響学会内に音のデザイン調査研究会を設立し,国内外の企業および大学の研究者とともに「音のデザイン」の必要性,可能性,将来性を広報するために,春季研究発表会において,スペシャルセッション「音のデザイン-感性に訴える音が付加価値を生み出す-」を開催いたしました。家庭内における家電製品の音質に対する意識調査を実施し,どのような家電の音が「気になる」存在なのかを明らかにするとともに,どのような音質が家電製品としてふさわしいものであるのかを探り,家電製品音のデザインの方向性について検討しました。公共空間において万人が利用しやすい各種のサイン音のデザインの研究の一環として,音楽を利用したサイン音デザインの研究,静かすぎで危険との指摘があるHV車や電気自動車にその存在を知らしめる近接報知音を付加することの有効性の研究に取り組みました。映像メディアにおける音のデザイン研究として,実際の映像作品における印象の連続測定を行い,音が映像作品の印象に及ぼす影響を,これまでにない視点で検討しました。また,音環境と人間の関わりを考察する研究の一環として,若者などに広く利用されている携帯型音楽プレイヤーの使用状況や利用意識に対するアンケート調査を実施し,今後の音環境デザインのあり方を考える上での有益な知見を得ました。さらに,音響デザイナーに必要な音の感性を得るための訓練方法についての研究にも取り組みました。本研究は,製品音のデザイン,サイン音のデザイン,サウンドスケープ・デザイン,映像の音のデザインなど多方面に関わる音のデザイン分野に関して,多角的な調査研究,印象評価実験を実施し,音のデザインの必要性を示し,どのようにデザインすれば音を効果的に利用できるのかのデザイン指針を示すとともに,「音のデザイン」の重要性を広報することを目的としています。研究代表者と分担者は,日本音響学会内に音のデザイン調査研究会を設立し,企業および大学の研究者とともに「音のデザイン」の必要性,可能性,将来性を広報するために,秋季研究発表会においてスペシャルセッション「製品音のデザイン」,春季研究発表会においてスペシャルセッション「サイン音のデザインーメッセージを伝える音を操る術-」を開催いたしました。公共空間において万人が利用しやすい各種のサイン音のデザインの研究の一環として,分散和音を利用したサイン音デザイシの研究,自動車の警笛の最適なデザインに関する研究に取り組みました。また,音環境と人間の関わりを考察する研究の一環として,若者などに広く利用されている携帯型音楽プレイヤーでの音楽聴取における音量を調査し,さらにその男女差について検討し,今後の音環境デザインのあり方を考える上での有益な知見を得ました。公共空間での音環境デザインに関する研究の一環として,静かすぎで危険との指摘があるHV車や電気自動車にその存在を知らしめる近接報知音を付加することに対する意識調査とそのデザイン方策の研究にも取り組み,現状を明らかにしました。映像メディアにおける音のデザイン研究として,実際の映像作品における音と映像の調和感ならびに印象の連続測定を行い,音が映像作品の印象に及ぼす影響を,これまでにない視点で検討しました。また,映像メディアにおいてユーモア感を演出するための音のデザインに関する研究にも取り組みました。本研究は,製品音のデザイン,サイン音のデザイン,サウンドスケープ・デザイン,映像の音のデザインなど多方面に関わる音のデザイン分野に関して,多角的な調査研究,印象評価実験を実施し,音のデザインの必要性を示し,どのようにデザインすれば音を効果的に利用できるのかのデザイン指針を示すとともに,「音のデザイン」の重要性を広報することを目的としています。「音のデザイン」の必要性,可能性,将来性を広報するために,日本音響学会において「自動車車室内の音環境の快適性をデザインする」「音のデザインと知覚,そして評価」のスペシャルセッションを企画致しました。日本人間工学会において,安全と安心と快適性を提供してくれる音環境のデザインのあり方を幅広く考察するために,「音環境の安全と安心と快適性をつくる」シンポジウムを企画し,「HV車や電気自動車の近接報知音のデザインに関する研究」「携帯型音楽プレーヤ使用者の音環境の実態」に関する研究成果を発表しました。映像作品の印象の連続測定を行い,音が映像作品のおもしろさに及ぼす影響,音と映像が調和する要因などについて,検討を行いました。さらに,映画監督黒澤明がときおり使った「音と画の対位法」と呼ばれる,わざと音と映像を調和させない手法の効果を明らかにしました。 | KAKENHI-PROJECT-22615027 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22615027 |
感性に訴える音のデザインの包括的研究 | 昨年度の研究を継続し,若者を中心に広く利用されている携帯型音楽プレイヤーの使用状況や利用意識に対するアンケート調査を実施し,音楽聴取時の聴衆レベルを測定し,音楽聴取時の環境音の認知に関する調査研究を実施してきたが,その中で明らかになってきた聴取レベルの男女差についてより詳細に検討し,男性の方が聴取レベルが高いこと,同じ音圧レベルの音に対して,女性の方が大きく感じていることを明らかにしました。音響デザイナーに必要とされる音に対する感性を獲得するための訓練方法についての研究継続して行いました。音のデザインに関する各分野の内,映像に組み合わされる音のデザインの研究,サイン音のデザインに関する研究に関しては,2011年度にそれぞれに関する著書を出版することができた。また,音のデザインに関連する,音質評価に関する著書も,2010年度に出版している。さらに,日本音響学会内に音のデザイン調査研究会を設立し,スペシャルセッションを3回企画し,音響学会誌で「音のデザイン」の小特集に,研究代表者を含む調査研究会のメンバーで寄稿した。24年度が最終年度であるため、記入しない。各種の音のデザイン分野に関する研究は,さらに推し進め,成果を学会等で発表して行く予定である。さらに,音のデザインに関しての広報活動も積極的に推進していく。研究代表者は,日本入間工学会第53回大会人間工学会において,「音環境の安全と安心と快適性をつくる」と題したシンポジウムを開催し,音のデザインの重要性を訴える予定である。研究代表者が委員長を,研究分担者が幹事を務める日本音響学会音のデザイン調査研究会のメンバーを中心として,共著で「製品音の快音デザイン」に関する著書を出版予定である。研究代表者,研究分担者は,本書の監修も担当している。日本音響学会音のデザイン調査研究会では,さらにスペシャルセッション等を企画し,音のデザインの重要性を広く広報して行く予定である。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22615027 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22615027 |
フレキシブル有機強誘電体メモリにおける低電圧・高集積回路の研究 | 本研究では、フレキシブル不揮発メモリの実現を目的として、有機強誘電体P(VDF/TrFE)をゲート絶縁膜に用いた有機半導体トランジスタに関する研究を行い、P(VDF/TrFE)薄膜形成プロセス、コンタクトホール形成プロセス、およびペンタセン薄膜上へのP(VDF/TrFE)形成プロセスを最適化することにより、ガラス基板上およびフレキシブル基板上に、メモリ動作を示すトップゲート型有機トランジスタを作製することに成功した。(1)本研究では低電圧、低消費電力で動作する高集積不揮発メモリを、有機強誘電体膜を用いてフレキシブル基板上に作製することを目的としており、まず有機強誘電体材料であるP(VDF-TrFE)のメモリ応用に向けた最適化を図る。(2)P(VDF-TrFE)の基本メモリ動作を確認するために、Si基板上にこの膜を堆積し、メモリトランジスタを作製する。(3)P(VDF-TrFE)と有機半導体であるペンタセンとの組み合わせにより、全有機メモリトランジスタを作製する。また基板をPETなどのフレキシブルなものに変えて、特性を評価する。(4)フレキシブル基板上に有機メモリ集積回路を作製ずる。本研究では、フレキシブル不揮発メモリの実現を目的として、有機強誘電体P(VDF/TrFE)をゲート絶縁膜に用いた有機半導体トランジスタに関する研究を行い、P(VDF/TrFE)薄膜形成プロセス、コンタクトホール形成プロセス、およびペンタセン薄膜上へのP(VDF/TrFE)形成プロセスを最適化することにより、ガラス基板上およびフレキシブル基板上に、メモリ動作を示すトップゲート型有機トランジスタを作製することに成功した。今年度は、有機強誘電体とSi基板との組み合わせ、ならびに酸化物強誘電体であるSrBi_2Ta_2O_9 (SBT)とn型の有機半導体であるC_<60>との組み合わせについて検討した。有機強誘電体であるPVDF/TrFE(ポリ弗化ビニリデンと三弗化エチレンの共重合体)に関しては、分極ヒステリシスの周波数依存性を測定することにより、書き込み時間の評価を行った。その結果、測定周波数を100kHzにしても、残留分極の顕著な低下は見られなかった。データの書き込みが主に高電界領域で行われることを考慮すると、データの書き込み時間は1μs以下と推定される。次に、トランジスタの作製を念頭に置いて、Si基板上へのPVDF/TrFE膜の堆積とエッチング特性について検討した。Si基板上に直接堆積した場合(MFS構造)には、リーク電流が大きく良好な容量-電圧特性が得られなかった。一方、SiO_2膜を形成したSi基板上にPVDF/TrFE膜を堆積した場合(MFIS構造)には、良好な特性が得られた。また、酸素プラズマ中でのエッチングでは、分極特性の劣化は大きくないものの、リーク電流が増加することが明らかになった。そこで、酸素にKrを混ぜてエッチングを行った結果、リーク電流に関しても良好な結果が得られた。Krを添加することにより酸素ラジカルのエネルギーが減少することが知られており、この効果により膜の損傷が軽減されたものと考えられる。有機半導体に関しては、大気中で特性が劣化するC_<60>を用いてトランジスタを作製するために、真空中で膜を堆積した後に、そのまま電流-電圧(I-V)特性を評価できる装置を作製した。Si基板をゲート電極、SiO_2膜をゲート絶縁膜としたMOS-FETを作製して特性を評価した結果、良好なFET特性が得られた。次に、Ptをゲート電極、SBTをゲート絶縁膜とするFETを作製した結果、ゲートリーク電流が大きく、トランジスタ特性が評価できなかった。そこで、SBT膜のリーク電流を抑えるために、SBT膜の上下にHfsiON層を挿入した結果、ドレイン電流-ゲート電圧特性にSBT膜の強誘電性に起因すると考えられるヒステリシスが観測された。今後は、特性をさらに改善することが必要である。本年度は、有機強誘電体とSi基板との組み合わせ、有機強誘電体とn型の有機半導体であるC_<60>との組み合わせ、有機強誘電体とp型の有機半導体であるペンタセンとの組み合わせについて、ダイオードならびにトランジスタを作製し、メモリ特性を検討した。有機強誘電体であるP(VDF/TrFE)(ポリ弗化ビニリデンと三弗化エチレンの共重合体)に関しては、分極疲労特性、ならびにデータ保持特性を改善する方法について検討した。具体的には、膜にPMMAを510重量%程度添加すると、膜のリーク電流が減少し、疲労特性やデータ保持特性が改善されることを明らかにした。疲労特性に関しては、強誘電体キャパシタに矩形波電圧パルスを印加することにより検討し、PMMAを添加することにより、キャパシタが破壊するまでのパルス印加回数が10^5回から10^6回へと増加することを明らかにした。さらに、この膜をSiO_2/Si構造上に堆積したMFIS(金属-強誘電体-絶縁体-半導体)構造において、C-V特性における分極回りのヒステリシスループと10日間以上のデータ保持を確認した。有機半導体に関しては、まずC_<60>とP(VDF/TrFE)との組み合わせを検討した。しかし、この構造ではゲート電圧を変化させてもドレイン電流は流れなかった。理由としては、両者の界面に高密度のトラップが発生することが考えられる。次に、ペンタセンとP(VDF/TrFE)との組み合わせを検討した。 | KAKENHI-PROJECT-19206039 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19206039 |
フレキシブル有機強誘電体メモリにおける低電圧・高集積回路の研究 | ボトムゲート型トランジスタを作製するために、パターニングしたゲートAu電極上にP(VDF/TrFE)をスピンコート法で形成し、その後、真空蒸着法によりペンタセン膜を堆積した。最後に、ソース、ドレイン用のAu電極を蒸着した。その結果、ゲート電圧によるドレイン電流の変化が観測され、かつゲート電圧の変化に対して分極周りのヒステリシスが観測された。このトランジスタは、まだリーク電流が大きいため、この改善が今後の課題である。本年度は、有機強誘電体とSi基板との組み合わせ、有機強誘電体とp型の有機半導体であるペンタセンとの組み合わせについて、ダイオードならびにトランジスタを作製し、メモリ特性を検討した。有機強誘電体であるP(VDF/TrFE)(ポリ弗化ビニリデンと三弗化エチレンの共重合体)に関しては、昨年度の研究によりPMMAを48重量%程度添加すると、分極疲労特性、ならびにデータ保持特性が改善されることが明らかになったので、今年度はPMMAを4重量%添加したP(VDF/TrFE)を用いて、Si基板上にトランジスタを作製した。トランジスタを作製する場合には、ソース、トレイン領域に電極を取るためにP(VDF/TrFE)膜にコンタクト穴をあける必要があるが、通常の酸素プラズマエッチングを用いるとSi基板が損傷を受けるので、O_2とKrとの混合ガスを用いて、エッチングを行った。作製したトランジスタは良好なメモリ特性を示し、トレイン電流-ゲート電圧特性におけるヒステリシス幅(メモリ幅)は、掃引電圧11Vにおいて5V、電流オンオフ比は10^7、ゲートリーグ電流は2×10^<-10>Aであった。また、書き込みパルス幅の最小値は100msであった。全有機メモリの作製に関しては、ペンタセンとP(VDF/TrFE)との組み合わせにおいて、トップゲート型トランジスタを作製するための基礎研究を行った。P(VDF/TrFE)の表面は凹凸が大きいことが知られているので、基板上にペンタセンを直接堆積できるトップゲート型の方が、移動度の高いデバイスが作製できると考えている。しかし、この方式には、P(VDF/TrFE)の堆積時にペンタセンが劣化するという問題があるため、今年度は各種溶媒によるペンタセン膜の劣化の程度を検討した。本年度は、有機強誘電体とp型の有機半導体であるペンタセンを用いて、トップゲート構造の強誘電体ゲートトランジスタを作製し、メモリ特性を検討した。有機強誘電体であるP(VDF/TrFE)(ポリ弗化ビニリデンと三弗化エチレンの共重合体)に関してはスピンコート法での形成が必要であるため、トップゲート構造の場合、ペンタセン上にP(VDF/TrFE)を堆積する際に有機溶媒の影響によりペンタセンが劣化するという問題がある。そこでまず、P(VDF/TrFe)の有機溶媒として、DEC(ジエチルケトン)、1-4D(1-4ジオキサン)、CYH(シクロヘキサン)等を用いてペンタセンに対する影響を検討した。しかし、いずれの有機溶媒においても、ペンタセンの電気特性の劣化を十分に抑制することが困難であった。一方、ペンタセンは純水に浸しても電気特性が劣化しないことが分かった。そこで、水を溶媒としてスピンコート法での堆積が可能なPVA(ポリビニルアルコール)をバッファー層として導入し、Au/P(VDF/TrFE)/PVA/ペンタセン構造をガラス基板上に形成し、トップゲート型強誘電体ゲートトランジスタを作製した。 | KAKENHI-PROJECT-19206039 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19206039 |
アルツハイマー病原因遺伝子による神経細胞死誘導機序の総合的解析 | 1)家族性アルツハイマー病(AD)遺伝子による細胞死機序アミロイド前駆体蛋白質(APP)の細胞外領域を認識する抗APP抗体を大脳皮質神経細胞に添加すると細胞死が誘導されることを発表した。細胞死機序の詳細な解析の結果、家族性ADのロンドン型APP変異体が惹起する細胞死機序と同一であることが分かった。すなわち、抗体や変異の刺激により、APPの細胞内領域に結合する三量体G蛋白質Goが活性化され、APPのC末端に介在性蛋白質JIPを介して結合しているJNKに伝達され、下流のNADPH酸化酵素やカスペースの活性化を促して細胞死が誘導される。JNKは、様々な細胞死誘導因子刺激で活性化されることが広く知られており、また、ベータアミロイド(Aβ)の刺激でも神経細胞内で活性化されることが複数のグループから報告されている。よって、APPがAβ非依存性にJNKの活性化を介した細胞死を誘導することは、APPがAβ産生以外にもADの病因となることを示している。2)細胞死拮抗因子ロンドン型APP変異体が誘導する神経細胞死を抑制する因子のうち、アミノ酸24残基からなる新規のペプチド因子をHumanin(HN)と命名し詳細に解析した。HNはADに関連する細胞死侵害刺激の全てに対して拮抗作用を示すこと、アミノ酸置換により細胞死抑制活性が喪失または増強すること、cDNAから産生されたペプチドは細胞外に分泌されて細胞表面の分子に結合して作用すること、HN刺激により細胞内のチロシンキナーゼが活性化されること、抗HN抗体陽性の神経細胞がAD脳後頭葉に存在し、一部のグリア細胞も抗体陽性となることなどを明らかにした。更に、HNに結合する分子としてtripartite motif(TRIM) proteinファミリーのひとつであるTRIM11を単離し、TRIM11がHNの分解を促進することを発表した。(1)家族性アルツハイマー病遺伝子変異体による細胞死機序アミロイド前駆体蛋白(APP)変異体では、London型(V642I-APP)は生体内と同程度の低発現量でも生体内の約5倍量の高発現でも、カスペース阻害剤(DEVD)および抗酸化剤(Glutathione ethyl ester:GEE)に感受性の細胞死を誘導し、これは百日咳毒素(PTX)感受性三量体G蛋白Goを介して起こることがわかった。また、GEEの標的となる酸化酵素はNADPH oxidaseであった。一方、Sweden型(NL-APP)においては、低発現ではDEVDおよびGEE感受性の細胞死、高発現では両薬剤に非感受性の細胞死を誘導した。Presenilin(PS)1変異体(M146L-PS1)による細胞死は、どの発現量でもDEVD非感受性、GEE感受性の細胞死であることがわかった。この細胞死は一酸化窒素(NO)合成酵素阻害剤でも抑制でき、主としてNOが関与すると考えられた。さらに、PTXでも抑制できたが、既知のPTX感受性三量体G蛋白GiおよびGoの関与は認められず、未知の因子が関与すると推測された。PS2変異体(N141I-PS2)では、低発現による細胞死はV642I-APPと同様にDEVDおよびGEE感受性でNADPHoxidaseが関与していた。高発現による細胞死はDEVD非感受性、GEE感受性であることはM146L-PS1と同様であったが、NO合成酵素阻害剤に非感受性でキサンチンオキシターゼ阻害剤に感受性であった。さらに、この変異体による細胞死は低発現だけでなく高発現時もG蛋白Goを介していた。現在、初代神経細胞において、これらの結果を検証している。(2)細胞死拮抗因子V642I-APPの細胞死を抑制する拮抗因子を複数単離した。現在それらについて詳しく解析している。1)家族性アルツハイマー病(AD)遺伝子による細胞死機序アミロイド前駆体蛋白質(APP)の細胞外領域を認識する抗APP抗体を大脳皮質神経細胞に添加すると細胞死が誘導されることを発表した。細胞死機序の詳細な解析の結果、家族性ADのロンドン型APP変異体が惹起する細胞死機序と同一であることが分かった。すなわち、抗体や変異の刺激により、APPの細胞内領域に結合する三量体G蛋白質Goが活性化され、APPのC末端に介在性蛋白質JIPを介して結合しているJNKに伝達され、下流のNADPH酸化酵素やカスペースの活性化を促して細胞死が誘導される。JNKは、様々な細胞死誘導因子刺激で活性化されることが広く知られており、また、ベータアミロイド(Aβ)の刺激でも神経細胞内で活性化されることが複数のグループから報告されている。よって、APPがAβ非依存性にJNKの活性化を介した細胞死を誘導することは、APPがAβ産生以外にもADの病因となることを示している。2)細胞死拮抗因子ロンドン型APP変異体が誘導する神経細胞死を抑制する因子のうち、アミノ酸24残基からなる新規のペプチド因子をHumanin(HN)と命名し詳細に解析した。HNはADに関連する細胞死侵害刺激の全てに対して拮抗作用を示すこと、アミノ酸置換により細胞死抑制活性が喪失または増強すること、cDNAから産生されたペプチドは細胞外に分泌されて細胞表面の分子に結合して作用すること、HN刺激により細胞内のチロシンキナーゼが活性化されること、抗HN抗体陽性の神経細胞がAD脳後頭葉に存在し、一部のグリア細胞も抗体陽性となることなどを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-13770328 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13770328 |
アルツハイマー病原因遺伝子による神経細胞死誘導機序の総合的解析 | 更に、HNに結合する分子としてtripartite motif(TRIM) proteinファミリーのひとつであるTRIM11を単離し、TRIM11がHNの分解を促進することを発表した。 | KAKENHI-PROJECT-13770328 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13770328 |
持続性心房細動の機序の解析及び至適治療法についての検討 | 持続性心房細動の維持には、左心房内で心房細動中に認められる分裂した電位(CFAE)領域が重要な役割を担っていることが明らかとなった。この分裂した電位は心筋の不均一な伝導特性により生じており、その発生には心房周囲脂肪組織が密接に関与していることも明らかとなった。持続性心房細動の治療では、肺静脈隔離後に左心房天蓋部の線状焼灼およびCFAE領域に対する通電によりランダムな興奮伝播が消失し心房細動の停止が得られることが示された。心房細動を維持していると考えられるRotational reentryが近年報告されているように、一定の部位に存在するのかNon-contact mappingを用い、検討した。Rotational reentryは一定の部位にとどまらず発作性心房細動、持続性心房細動いずれにおいても左心房内をmeanderingして存在することが明らかとなった。心房細動中に認められるHighest dominant frequencyを呈する部位が心房細動維持に関与しているかについて検討した結果、これらの部位は細動波の維持にはほとんど関与していないことが明らかとなった。持続性心房細動の維持には、左心房内で心房細動中に認められる分裂した電位(CFAE)領域が重要な役割を担っていることが明らかとなった。この分裂した電位は心筋の不均一な伝導特性により生じており、その発生には心房周囲脂肪組織が密接に関与していることも明らかとなった。持続性心房細動の治療では、肺静脈隔離後に左心房天蓋部の線状焼灼およびCFAE領域に対する通電によりランダムな興奮伝播が消失し心房細動の停止が得られることが示された。持続性心房細動が肺静脈隔離のみで停止しない機序を明らかにするため、持続性心房細動における肺静脈隔離前後の左心房内興奮伝播をEnSite3000Non-contact Mapping Systemを用いて解析した。また、発作性心房細動との差異についても検討した。肺静脈隔離前には、発作性心房細動、持続性心房細動共に、Complex fractionated atrial electrogram (CFAE)領域における、Meanderingする興奮波と局所からの巣状興奮により心房細動が維持されていた。肺静脈隔離後は、発作性心房細動、持続性心房細動共にCFAE領域は有意に減少したが、残存するCFAE領域は、発作性心房細動に比べ持続性心房細動で有意に広く、この残存するCFAE領域上での頻回なWave break、Wave fusion、Pivoting activationを繰り返し細動が維持されていた。発作性心房細動ではほとんどの症例が肺静脈隔離のみで停止したのに対し(83.7%)、持続性心房細動では肺静脈隔離のみでの停止は困難で、左心房天蓋部に対する線状焼灼およびCFAE領域に対する高周波通電の追加により70.8%で細動の停止が認められた。以上より持続性心房細動の肺静脈隔離後の細動興奮波の持続は、残存したCFAE領域での頻回に認めるWave break、Wave fusion、Pivoting activationにより維持されていることが示された。また肺静脈隔離後のCFAE領域に対する追加焼灼により高率に持続性心房細動の停止が得られることが明らかとなった。心房細動に対する肺静脈隔離術後に、心房細動が持続するメカニズムを検討するため、左心房内にNon-contact Arrayを挿入し左心房内の興奮伝播を解析した。発作性心房細動と持続性心房細動で比較を行ったところ、発作性心房細動では肺静脈隔離後、Complex fractionated electrogram (CFAE)領域はほぼ消失しており、左心房内の興奮は主に隔離された肺静脈周囲および僧坊弁輪部を旋回する興奮の組み合わせで維持されており、ほとんどがその後自然停止していた。一方、持続性心房細動においては肺静脈隔離後も左心房内にCFAE領域が残存しており、CFAE領域において、wave break、wave fusionを伴ったPivot伝導、機能的ブロックライン周囲をanchoringする興奮が認められ心房細動が維持されていることが明らかとなった。発作性心房細動では、肺静脈隔離のみで90%の症例で心房細動の停止が得られたのに対し、持続性心房細動では肺静脈隔離のみではほとんどが停止しなかった。しかし、持続性心房細動において、今回のマッピング所見に基づき、肺静脈隔離後にCFAE領域に対し高周波通電を行ったところ、CFAE領域でのdisorganized wave propagationは消失し、持続性心房細動の停止が79%で得られた。以上より心房細動の維持において、肺静脈隔離後もCFAE領域が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。また、肺静脈隔離後も心房細動が持続する持続性心房細動において、CFAE領域に対する高周波通電が心房細動の停止に有用であることが示された。循環器病学持続性心房細動における細動維持のメカニズムが主にcomplex fractionated atrialelectrogram(CFAE)領域におけるpivot興奮、興奮波の分裂と融合により構成されていることが明らかとなり、このCFAE領域に対する高周波通電が細動停止に有効であることが示された。また、Highest dominant frequencyを呈する部位は細動維持にはにはほとんど関与していないことが明らかとなった。持続性心房細動の維持に関与する肺静脈内での興奮伝播について詳しい解析を行う。 | KAKENHI-PROJECT-24591061 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24591061 |
持続性心房細動の機序の解析及び至適治療法についての検討 | また、Ganglionate Plexiの細動維持における役割を検討するために、細動中に肺静脈周囲のGanglionate Plexiに対する高頻度刺激を行い、刺激により肺静脈の興奮がどのように変化し、心房細動維持に影響するかについて検討を行う。効率的に経費の執行ができたため。 | KAKENHI-PROJECT-24591061 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24591061 |
空間的相関ノイズを除去する実画像フィルタの開発 | 本研究では,並進対称性な空間的相関を持つノイズで劣化した画像の修復を,確率的情報処理の枠組みで議論した.まず,原画像は近接相互作用のみを持つガウスモデルで生成されるとした.さらに,各画素に重畳されるノイズは空間的な相関を持つガウスモデルで生成されるとし,相関は並進対称性を持つとした.申請者は,前年度の研究の成果を踏まえ,パラメータを固定しなくても,全てのハイパーパラメータが目的の値に収束する,特異点を持たないノイズモデルのカーネルの考案に成功した.このカーネルを用いて,本研究では,自然画像を用いた場合の画像修復を行った.自然画像には輝度ヒストグラムがガウス分布に近い銀河画像を用いた.修復はうまく行き,空間的相関ノイズを排除することに成功した.しかし,輝度ヒストグラムがガウス分布でない場合の修復は,まだうまく行っておらず,この研究は今後の課題となる.さらに申請者は画像修復の解析技術を応用してガウシャンプロセスの統計力学的な解析を行った.この論文ではガウシャンプロセスを統計力学的な解析を行うことで,ガウシャンプロセスの最適化条件および最適化条件における修復誤差の解析解を求める.具体的には,ガウシャンプロセスの入力間隔を等間隔とし,周期境界条件を強いる.これにより,カーネルを対角化することが可能になり,フーリエ空間上における議論が可能になる.解析の結果,修復過程に用いた確率モデルのハイパーパラメータが,生成過程でのハイパーパラメータに一致するとき,修復誤差が最小値になることがわかった.最適化条件における数値解と解析解の修復誤差は一致した.本研究では,並進対称性な空間的相関を持つノイズで劣化した画像の修復を,確率的情報処理の枠組みで議論した.まず,原画像は近接相互作用のみを持つガウスモデルで生成されるとした.さらに,各画素に重畳されるノイズは空間的な相関を持つガヴスモデルで生成されるとし,相関は並進対称性を持つとした.本研究ではまず,モデルを構成するハイパーパラメータの推定を周辺事後確率最大化から求めることを試みた.周辺事後確率の最大化手法としては,良く用いらている極値方程式の反復法を用いて解いた.その結果,この極値方程式を反復法を用いて解く方法では,アルゴリズムが収束しない場合があることが分かった.この収束しない原因は,ノイズモデルのカーネルにおいて,ハイパーパラメータが特異点を持つためであると予想された.この予想を検証するため,ハイパーパラメータが特異点を持たないように,一つを除く,その他全てのハイパーパラメータを固定した.この場合,極値方程式を反復法を用いるアルゴリズムが収束することが分かった.申請者は,この検証からパラメータを固定しなくても,全てのハイパーパラメータが目的の値に収束する,特異点を持たないノイズモデルのカーネルの考案に成功した.このカーネルを用いて,本研究では,まず人工画像を用い,空間的相関を持つノイズで劣化した人工画像の修復について実験した.人工画像の修復はうまく行き,空間的相関ノイズを排除することができた.次に,自然画像を用いた場合の画像修復を行った.自然画像には輝度ヒストグラムがガウス分布に近い銀河画像を用いた.銀河画像を用いた場合も,修復はうま行き,空間的相関ノイズを排除することに成功した.しかし,輝度ヒストグラムがガウス分布でない場合の修復は,まだうまく行っておらず,この研究は今後の課題となる.本研究では,並進対称性な空間的相関を持つノイズで劣化した画像の修復を,確率的情報処理の枠組みで議論した.まず,原画像は近接相互作用のみを持つガウスモデルで生成されるとした.さらに,各画素に重畳されるノイズは空間的な相関を持つガウスモデルで生成されるとし,相関は並進対称性を持つとした.申請者は,前年度の研究の成果を踏まえ,パラメータを固定しなくても,全てのハイパーパラメータが目的の値に収束する,特異点を持たないノイズモデルのカーネルの考案に成功した.このカーネルを用いて,本研究では,自然画像を用いた場合の画像修復を行った.自然画像には輝度ヒストグラムがガウス分布に近い銀河画像を用いた.修復はうまく行き,空間的相関ノイズを排除することに成功した.しかし,輝度ヒストグラムがガウス分布でない場合の修復は,まだうまく行っておらず,この研究は今後の課題となる.さらに申請者は画像修復の解析技術を応用してガウシャンプロセスの統計力学的な解析を行った.この論文ではガウシャンプロセスを統計力学的な解析を行うことで,ガウシャンプロセスの最適化条件および最適化条件における修復誤差の解析解を求める.具体的には,ガウシャンプロセスの入力間隔を等間隔とし,周期境界条件を強いる.これにより,カーネルを対角化することが可能になり,フーリエ空間上における議論が可能になる.解析の結果,修復過程に用いた確率モデルのハイパーパラメータが,生成過程でのハイパーパラメータに一致するとき,修復誤差が最小値になることがわかった.最適化条件における数値解と解析解の修復誤差は一致した. | KAKENHI-PROJECT-16700197 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16700197 |
bFGF徐放性ゼラチンシートの臨床適用をめざして:創傷治癒効果をさらに高める試み | これまで、マウス1匹あたり100μgのbFGFを含有したゼラチンシートを使用し、その創傷治癒効果を確認ずみである。今回はマウス1匹あたり200μgのbFGFを含有したゼラチンシートを使用し、その組織を採取後創傷治癒効果を検討した結果、100μgに比較して明らかな上皮再生、肉芽増生効果を認めなかった。このことから、創治癒効果のためのゼラチンシートに含有するbFGFの量はdose dependentではないことが明らかになった。これまで、マウス1匹あたり100μgのbFGFを含有したゼラチンシートを使用し、その創傷治癒効果を確認ずみである。今回はマウス1匹あたり200μgのbFGFを含有したゼラチンシートを使用し、その組織を採取後創傷治癒効果を検討した結果、100μgに比較して明らかな上皮再生、肉芽増生効果を認めなかった。このことから、創治癒効果のためのゼラチンシートに含有するbFGFの量はdose dependentではないことが明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-18791322 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18791322 |
降水滴およびエアロゾル中の亜硫酸,亜硝酸の酸化機構 | 降水滴およびエアロゾル中又はその表面における亜硫酸および亜硝酸の酸化機構や酸化速度を室内実験で研究し、その結果の大気化学における重要性の評価を行った。全国各地で捕集した雨水中に亜硫酸塩を添加し、亜硫酸の酸化を追跡した。特に超高圧水銀灯の光を照射して酸化速度の増加を調べた。他方降水中の金属成分を中性子放射化法で定量し、酸化速度定数と比較検討した。反応は-d〔S($$IV$$)〕/dt=k〔S($$IV$$)〕の擬一次反応で表わしたが、各試料のKはO-211×$$10^(-5)$$($$S^(-1)$$)の範囲にあった。再蒸留水についての$$K_1$$は3.3×$$10^(-5)$$($$S^(-1)$$)であった。降水試料にEDTAを加えると反応が停止した。又K=(a〔M〕+b)で表わされる。K=C〔S($$IV$$)〕+d$$〔S(IV)〕^(0.5)$$で表わせる場合もあり、B$$a! ̈$$ckstr$$o! ̈$$m機構で説明可能であった。以上のことから、降水中の反応が金属の触媒作用で進行するとしても単純でないことが示唆される。同じく降水試料中にNaN$$O_2$$を加え、N($$III$$)の減少を追跡したが、そのKは(512)×$$10^(-8)$$($$S^(-1)$$)の範囲内にあり、野外での変換速度の観測値に比較して、水溶液中の亜硝酸の酸化の寄与は大きくないと考えられる。次いでN$$H_4$$N$$O_3$$溶液にS($$IV$$)溶液を加え、光照射し、S($$IV)の減少を追跡した。この場合のS($$IV$$)の減少はN$$O(^-_3)$$+hu→N$$O(^-_2)$$+O,O+S($$IV$$)→S$$O(^2-_4)$$によると予想される。NaCl,MgCl粒子上での硫酸生成には$$H_2$$$$O_2$$が必要で、相対湿度に強く依存した。大気エアロゾル上の硫酸生成能にはCaOの寄与が大きいことが分ったが、CaO4μg/$$m^3$$の時の変換速度は0.03%$$hr^(-1)$$,NaCl5μg/$$m^3$$$$H_2$$$$O_2$$1pphの時の変換速度は2×$$10^(-4)$$%$$hr^(-1)$$であって、エアロゾルを介したS$$O_2$$の酸化速度は小さい。最後に降水中の触媒による亜硫酸の酸化反応速度を$$H_2$$$$O_2$$,$$C_3$$による酸化と比較した。大気中の$$H_2$$$$O_2$$濃度はよく分っていないが、触媒による亜硫酸の酸化速度は他の酸化機構の場合に比較して小さいようである。しかしB$$a! ̈$$ckstr$$o! ̈$$m機構やN$$O(^-_3)$$の光解離に伴う酸化機構の重要性を評価する必要があろう。降水滴およびエアロゾル中又はその表面における亜硫酸および亜硝酸の酸化機構や酸化速度を室内実験で研究し、その結果の大気化学における重要性の評価を行った。全国各地で捕集した雨水中に亜硫酸塩を添加し、亜硫酸の酸化を追跡した。特に超高圧水銀灯の光を照射して酸化速度の増加を調べた。他方降水中の金属成分を中性子放射化法で定量し、酸化速度定数と比較検討した。反応は-d〔S($$IV$$)〕/dt=k〔S($$IV$$)〕の擬一次反応で表わしたが、各試料のKはO-211×$$10^(-5)$$($$S^(-1)$$)の範囲にあった。再蒸留水についての$$K_1$$は3.3×$$10^(-5)$$($$S^(-1)$$)であった。降水試料にEDTAを加えると反応が停止した。又K=(a〔M〕+b)で表わされる。K=C〔S($$IV$$)〕+d$$〔S(IV)〕^(0.5)$$で表わせる場合もあり、B$$a! ̈$$ckstr$$o! ̈$$m機構で説明可能であった。以上のことから、降水中の反応が金属の触媒作用で進行するとしても単純でないことが示唆される。同じく降水試料中にNaN$$O_2$$を加え、N($$III$$)の減少を追跡したが、そのKは(512)×$$10^(-8)$$($$S^(-1)$$)の範囲内にあり、野外での変換速度の観測値に比較して、水溶液中の亜硝酸の酸化の寄与は大きくないと考えられる。次いでN$ | KAKENHI-PROJECT-60030086 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-60030086 |
降水滴およびエアロゾル中の亜硫酸,亜硝酸の酸化機構 | $H_4$$N$$O_3$$溶液にS($$IV$$)溶液を加え、光照射し、S($$IV)の減少を追跡した。この場合のS($$IV$$)の減少はN$$O(^-_3)$$+hu→N$$O(^-_2)$$+O,O+S($$IV$$)→S$$O(^2-_4)$$によると予想される。NaCl,MgCl粒子上での硫酸生成には$$H_2$$$$O_2$$が必要で、相対湿度に強く依存した。大気エアロゾル上の硫酸生成能にはCaOの寄与が大きいことが分ったが、CaO4μg/$$m^3$$の時の変換速度は0.03%$$hr^(-1)$$,NaCl5μg/$$m^3$$$$H_2$$$$O_2$$1pphの時の変換速度は2×$$10^(-4)$$%$$hr^(-1)$$であって、エアロゾルを介したS$$O_2$$の酸化速度は小さい。最後に降水中の触媒による亜硫酸の酸化反応速度を$$H_2$$$$O_2$$,$$C_3$$による酸化と比較した。大気中の$$H_2$$$$O_2$$濃度はよく分っていないが、触媒による亜硫酸の酸化速度は他の酸化機構の場合に比較して小さいようである。しかしB$$a! ̈$$ckstr$$o! ̈$$m機構やN$$O(^-_3)$$の光解離に伴う酸化機構の重要性を評価する必要があろう。 | KAKENHI-PROJECT-60030086 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-60030086 |
金属を内包したキラルなシロキサンゲル反応場による不斉反応の実現 | 本研究の目的は、架橋シロキサンゲルを触媒的に構築すると同時に触媒を自己カプセル化し、生成した「金属内包シロキサンゲル」を触媒として用いることで高選択的反応を達成すると共に、生成物の分離と触媒の回収、ならびに再利用が容易でスケールアップ可能な実践的不斉触媒反応の実現を図ることである。まず、3核ルテニウムカルボニル錯体存在下、架橋剤にジオール、残存Si-Hのキャッピング剤にモノオールを用い、ポリメチルヒドロシロキサン(PMHS)の脱水素シリル化反応で新規Ru内包ゲル([Ru_3]@Si_cap)の合成と、アリルエーテル類の異性化反応を基盤とする簡便な脱保護反応を確立した。この([Ru_3]@Si_capの応用として、(1)光学活性エーテルの不斉中心を保持したままの脱保護の達成と、(2)アリルプレニルエーテルのアリル基選択的異性化によるクライゼン基質の選択的合成と、引き続くMe_3Alによるジアステレオ選択的Alkylative Claisen反応を達成した(論文投稿中)。さらに酸素架橋Ru内包ゲル([Ru_3]@Si-O)による2級アミドからの還元的N-アルキル化(2量化)による3級アミンの効率的合成を達成した(論文発表)。一方、Karstedt's触媒存在下、ジエンを架橋剤とするヒドロシリル化により白金内包ゲル(Pt@Si)の合成法を確立し、芳香族ニトロ化合物のニトロ基選択的還元反応を、穏和な条件下、生成物中への金属溶出なく、グラムスケールにも対応できる再利用可能なプロセスとして達成した。特に脱ハロゲン化が問題となるハロニトロ化合物のニトロ基選択的還元は、ゲルの特長である内部修飾を用い、ゲル内部にアミノ基を組込んだ新規Pt@Si-N触媒を用いることで、高ニトロ基選択的反応を達成した(論文作成中)。また、IrC1(CO)(PPh_3)錯体による3級アミドの還元/脱水反応において、新規で効率的なエナミン合成反応を開発すると共に、Ir内包酸素架橋ゲル(Ir@Si-0)が生成することを見出した(論文作成中)。本研究の目的は、架橋シロキサンゲルを触媒的に構築すると同時に触媒を自己カプセル化し、生成した「金属内包シロキサンゲル」を触媒として用いることで高選択的反応を達成すると共に、生成物の分離と触媒の回収、ならびに再利用が容易でスケールアップ可能な実践的不斉触媒反応の実現を図ることである。まず、3核ルテニウムカルボニル錯体存在下、架橋剤にジオール、残存Si-Hのキャッピング剤にモノオールを用い、ポリメチルヒドロシロキサン(PMHS)の脱水素シリル化反応で新規Ru内包ゲル([Ru_3]@Si_cap)の合成と、アリルエーテル類の異性化反応を基盤とする簡便な脱保護反応を確立した。この([Ru_3]@Si_capの応用として、(1)光学活性エーテルの不斉中心を保持したままの脱保護の達成と、(2)アリルプレニルエーテルのアリル基選択的異性化によるクライゼン基質の選択的合成と、引き続くMe_3Alによるジアステレオ選択的Alkylative Claisen反応を達成した(論文投稿中)。さらに酸素架橋Ru内包ゲル([Ru_3]@Si-O)による2級アミドからの還元的N-アルキル化(2量化)による3級アミンの効率的合成を達成した(論文発表)。一方、Karstedt's触媒存在下、ジエンを架橋剤とするヒドロシリル化により白金内包ゲル(Pt@Si)の合成法を確立し、芳香族ニトロ化合物のニトロ基選択的還元反応を、穏和な条件下、生成物中への金属溶出なく、グラムスケールにも対応できる再利用可能なプロセスとして達成した。特に脱ハロゲン化が問題となるハロニトロ化合物のニトロ基選択的還元は、ゲルの特長である内部修飾を用い、ゲル内部にアミノ基を組込んだ新規Pt@Si-N触媒を用いることで、高ニトロ基選択的反応を達成した(論文作成中)。また、IrC1(CO)(PPh_3)錯体による3級アミドの還元/脱水反応において、新規で効率的なエナミン合成反応を開発すると共に、Ir内包酸素架橋ゲル(Ir@Si-0)が生成することを見出した(論文作成中)。本研究の目的は、光学活性有機官能基が架橋したキラルシロキサンゲルを構築すると同時に触媒を自己カプセル化し、生成した「金属内包シロキサンゲル」を触媒として用いることで、ゲル内部の不斉環境を活用した高立体選択的不斉反応を達成すると共に、生成物の分離と触媒の回収、ならびに再利用が容易な実践的不斉触媒反応の実現を図ることである。本年度は、ヒドロシリル化能を有する3核ルテニウムカルボニル錯体、ポリメチルヒドロシロキサン(PMHS)、ならびに種々のジオールを架橋剤として用い、(1)架橋度の異なるゲル触媒、(2)ジオールの種類を変えたゲル触媒のライブラリー、さらに(3)ゲル触媒による反応探索、の3点を中心に行なった。(1)では、まずエチレングリコールを用い、架橋度ならびに残存Si-H量の異なる架橋ゲル触媒を種々合成し、その基礎的物性について検証した。その結果、PMHSのSi-H基に対し半分のジオールを用いると、再現良く膨潤-収縮を繰り返すこと、残存Si-H基があると次第にゲル触媒が変質すること、ゲル内外の物質移動は速く反応場として機能可能なことを見出した。(2)では、光学活性体を含む種々の芳香族・脂肪族アルコールからなるゲル触媒を合成し、ゲル内部の分子認識能を検証した。その結果、架橋剤の種類によらず、ゲル内は多少ではあるが極性基質を好むことを見出した。 | KAKENHI-PROJECT-18550095 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18550095 |
金属を内包したキラルなシロキサンゲル反応場による不斉反応の実現 | さらに(3)ではアルケン類の水素化ならびに異性化反応に活性を有することを見出した。特に異性化は穏和な条件下で定量的に進行し、粗生成物中への金属溶出もほとんどなく、再利用も可能であった。この結果をアリルエーテル類に適応することで、簡便なアリル保護基の脱保護プロセスを確立し、学会発表を行なった(論文作成中)。さらに白金触媒、PMHS、アミド化合物からも同様に白金を内包したシロキサンゲルが生成すること、さらにこの白金内包ゲルはアルケンの水素化活性を有することも見出した。本研究の目的は、架橋シロキサンゲルを触媒的に構築すると同時に触媒を自己カプセル化し、生成した「金属内包シロキサンゲル」を触媒として用いることで高選択的反応を達成すると共に、生成物の分離と触媒の回収、ならびに再利用が容易でスケールアップ可能な実践的不斉触媒反応の実現を図ることである。昨年度、3核ルテニウムカルボニル錯体存在下、架橋剤にジオール、残存Si-Hのキャッピング剤にモノオールを用い、ポリメチルヒドロシロキサン(PMHS)の脱水素シリル化反応で新規Ru内包ゲル([Ru_3]@Si_<cap>)の合成と、アリルエーテル類の異性化反応を基盤とする簡便な脱保護反応を確立した。本年度は、この([Ru_3]@Si_<cap>の応用として、(1)光学活性エーテルの不斉中心を保持したままの脱保護の達成と、(2)アリルプレニルエーテルのアリル基選択的異性化によるクライゼン基質の選択的合成と、引き続くMe_3A1によるAlkylative Claisen反応を達成した(論文投稿中)。さらに酸素架橋Ru内包ゲル([Ru_3]@Si-0)による2級アミドからの還元的N-アルキル化(2量化)による3級アミンの効率的合成を達成した(論文発表)。一方、Karstedt's触媒存在下、ジエンを架橋剤とするヒドロシリル化により白金内包ゲル(Pt@Si)の合成法を確立し、芳香族ニトロ化合物のニトロ基選択的還元反応を、穏和な条件下、生成物中への金属溶出なく、グラムスケールにも対応できる再利用可能なプロセスとして達成した。特に脱ハロゲン化が問題となるハロニトロ化合物のニトロ基選択的還元は、ゲルの特長である「内部修飾」を用い、ゲル内部にアミノ基を組込んだ新規Pt@Si-N触媒を用いることで、高ニトロ基選択的反応を達成した(論文作成中)。また、IrCl(CO)(PPh_3)錯体による3級アミドの還元/脱水反応において、新規で効率的なエナミン合成反応を開発すると共に、Ir内包酸素架橋ゲル(Ir@Si-0)が生成することを見出した(論文作成中)。 | KAKENHI-PROJECT-18550095 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18550095 |
網膜GABAc受容体活性の細胞内制御機構 | 網膜GABAc受容体活性は、細胞外亜鉛イオンや細胞内protein kinase AまたはCで調節されるが、細胞内調節機構に関係するprotein kinaseについては動物間の種差が大きく結論が出ていない。本研究ではアメリカナマズ網膜水平細胞にホールセルクランプ法を適用し、GABAc受容体活性が細胞外Caイオンにより調節されることを見いだしたので、その詳細な機構と本機構へのprotein kinase Cの関与の有無について報告する。今回の実験では長期培養に耐えうる錐体入力を受ける培養網膜水平細胞を用いた。急速潅流法を用いてGABAを投与したときにGABAc受容体を介して発生するイオン電流は細胞外Ca濃度を上昇させると増大し、細胞外Ca濃度を低下させると減少した。このGABA応答の濃度-反応曲線をHillの式で記述するのに必要なHill係数とEC_<50>は、細胞外Ca濃度が2.5mMのとき1.54と3.0μM、10mMのとき1.24と3.1μMとなりほぼ同じであった。しかしながら10mM Ca液中で得られる最大応答は2.5mMCa液中で得られる最大応答より大きかった。このことから細胞外Ca濃度の増大に伴うGABA応答の増大は、GABAc受容体のGABAに対する親和性の増大によるのではなく、GABAc受容体のチャネル活性を高めることによってGABA応答を増強しているものと考えられた。このGABA応答は、Caチャネルを介する細胞外からのCa流入を活性化して細胞内Ca濃度を上昇させても増強されなかった。このことからアメリカナマズにおける細胞外Ca濃度の増大に伴うGABA応答の増大は、細胞外に存在するCa結合部位における修飾機構によると結論した。また細胞外からのCa流入を活性化しても応答に変化が起こらないことからprotein kinase Cを介する細胞内機構は存在しないと考えられた。網膜GABAc受容体活性は、細胞外亜鉛イオンや細胞内protein kinase AまたはCで調節されるが、細胞内調節機構に関係するprotein kinaseについては動物間の種差が大きく結論が出ていない。本研究ではアメリカナマズ網膜水平細胞にホールセルクランプ法を適用し、GABAc受容体活性が細胞外Caイオンにより調節されることを見いだしたので、その詳細な機構と本機構へのprotein kinase Cの関与の有無について報告する。今回の実験では長期培養に耐えうる錐体入力を受ける培養網膜水平細胞を用いた。急速潅流法を用いてGABAを投与したときにGABAc受容体を介して発生するイオン電流は細胞外Ca濃度を上昇させると増大し、細胞外Ca濃度を低下させると減少した。このGABA応答の濃度-反応曲線をHillの式で記述するのに必要なHill係数とEC_<50>は、細胞外Ca濃度が2.5mMのとき1.54と3.0μM、10mMのとき1.24と3.1μMとなりほぼ同じであった。しかしながら10mM Ca液中で得られる最大応答は2.5mMCa液中で得られる最大応答より大きかった。このことから細胞外Ca濃度の増大に伴うGABA応答の増大は、GABAc受容体のGABAに対する親和性の増大によるのではなく、GABAc受容体のチャネル活性を高めることによってGABA応答を増強しているものと考えられた。このGABA応答は、Caチャネルを介する細胞外からのCa流入を活性化して細胞内Ca濃度を上昇させても増強されなかった。このことからアメリカナマズにおける細胞外Ca濃度の増大に伴うGABA応答の増大は、細胞外に存在するCa結合部位における修飾機構によると結論した。また細胞外からのCa流入を活性化しても応答に変化が起こらないことからprotein kinase Cを介する細胞内機構は存在しないと考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-08680893 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08680893 |
筋発達制御因子・ミオスタチンのデコリンによる調節機構 | 筋肉量や脂肪蓄積を制御する成長因子・ミオスタチンが細胞外マトリックス分子の一つであるデコリンによってどのように制御されているかを検討した結果、以下の成果を得た。1.デコリンが筋細胞に対するミオスタチンの抑制効果に及ぼす影響細胞外マトリックス(ECM)成分のデコリンによるミオスタチン調節機構を解明することを目的に、デコリン過剰発現筋細胞を作製し、これに対してミオスタチンを添加したところ、ミオスタチンによる増殖抑制効果は、コントロール筋細胞に比べて低く抑えられていた。また、同様にミオスタチンによる分化抑制効果について検討した結果、デコリン過剰発現筋細胞はコントロール筋細胞に比べて、ミオスタチンの分化抑制程度が低かった。以上の結果は、筋細胞自らが産生するデコリンがミオスタチンの増殖・抑制作用を減ずる働きをしていることを示唆している。2.脂肪細胞に対するミオスタチンの作用およびデコリンによるその調節作用ブタ脂肪前駆細胞株(PSPA)を用いて脂肪前駆細胞に対するミオスタチンの作用を検討した結果、ミオスタチンはPSAPの分化を抑制することが示された。PSPAに対するミオスタチンの分化抑制効果は、デコリンを含むコラーゲンゲル中でPSPAを培養した場合には減少する傾向がみられた。このことは、ミオスタチンの脂肪前駆細胞に対する作用が細胞外マトリックスのデコリンによって調節されている可能性を示唆するものである。3.線維芽細胞におけるデコリン産生能に及ぼすミオスタチンの影響線維芽細胞に対するミオスタチンの影響について検討した結果、ミオスタチンは線維芽細胞の増殖を抑制した。線維芽細胞の細胞表面にはミオスタチン受容体ActRIIBが発現しており、ミオスタインによる増殖抑制時にはp21の発現亢進がみられた。さらに、ミオスタインが線維芽細胞のECM産生能に及ぼす影響を検討した結果、ミオスタチンはデコリンを含むいくつかのECM分子の発現を亢進することが明らかになった。筋肉量や脂肪蓄積を制御する成長因子・ミオスタチンが細胞外マトリックス分子の一つであるデコリンによってどのように制御されているかを検討した結果、以下の成果を得た。1.デコリンが筋細胞に対するミオスタチンの抑制効果に及ぼす影響細胞外マトリックス(ECM)成分のデコリンによるミオスタチン調節機構を解明することを目的に、デコリン過剰発現筋細胞を作製し、これに対してミオスタチンを添加したところ、ミオスタチンによる増殖抑制効果は、コントロール筋細胞に比べて低く抑えられていた。また、同様にミオスタチンによる分化抑制効果について検討した結果、デコリン過剰発現筋細胞はコントロール筋細胞に比べて、ミオスタチンの分化抑制程度が低かった。以上の結果は、筋細胞自らが産生するデコリンがミオスタチンの増殖・抑制作用を減ずる働きをしていることを示唆している。2.脂肪細胞に対するミオスタチンの作用およびデコリンによるその調節作用ブタ脂肪前駆細胞株(PSPA)を用いて脂肪前駆細胞に対するミオスタチンの作用を検討した結果、ミオスタチンはPSAPの分化を抑制することが示された。PSPAに対するミオスタチンの分化抑制効果は、デコリンを含むコラーゲンゲル中でPSPAを培養した場合には減少する傾向がみられた。このことは、ミオスタチンの脂肪前駆細胞に対する作用が細胞外マトリックスのデコリンによって調節されている可能性を示唆するものである。3.線維芽細胞におけるデコリン産生能に及ぼすミオスタチンの影響線維芽細胞に対するミオスタチンの影響について検討した結果、ミオスタチンは線維芽細胞の増殖を抑制した。線維芽細胞の細胞表面にはミオスタチン受容体ActRIIBが発現しており、ミオスタインによる増殖抑制時にはp21の発現亢進がみられた。さらに、ミオスタインが線維芽細胞のECM産生能に及ぼす影響を検討した結果、ミオスタチンはデコリンを含むいくつかのECM分子の発現を亢進することが明らかになった。筋肉量や脂肪蓄積を制御する成長因子・ミオスタチンが細胞外マトリックス分子の一つであるデコリンによってどのように制御されているかを検討するために、デコリンノックダウン筋細胞、脂肪細胞および線維芽細胞を作製し、これらの細胞の増殖・分化能を比較検討した。また、筋細胞についてはデコリン過剰発現細胞を作製し、ミオスタチンに対する反応性を検討した。1.デコリンノックダウン筋細胞に対するミオスタチンの作用デコリンノックダウン筋細胞では、対照細胞に比べて、増殖フェーズからの逸脱は遅くなる傾向がみられたが、融合が促進され筋管形成が促進された。デコリンノックダウン筋細胞に外因性のミオスタチンを添加して培養すると、コントロール筋細胞に比べて、ミオスタチンによる増殖ならびに分化抑制効果が大きかった。デコリンノックダウン脂肪前駆細胞にミオスタチンを添加して培養すると、コントロール脂肪前駆細胞に比べて、ミオスタチンによる増殖ならびに分化(脂肪蓄積)抑制効果が大きかった。また、デコリンノックダウン線維芽細胞はミオスタチンに対する感受性が高く、対照細胞と比べてミオスタチン存在下での増殖が低かった。2.デコリン過剰発現筋細胞に対するミオスタチンの作用デコリン過剰発現筋細胞に外因性のミオスタチンを添加して培養すると、コントロール筋細胞に比べて、ミオスタチンによる増殖ならびに分化抑制効果が抑制された。以上の結果は、筋細胞、脂肪細胞および線維芽細胞が産生するデコリンが外因性のミオスタチンの作用に抑制的に働いていることを示すものである。筋肉量や脂肪蓄積を制御する成長因子・ミオスタチンが細胞外マトリックス分子の一つであるデコリンによってどのように制御されているかを検討した結果、本年度は、以下の成果を得た。1.筋細胞における「デコリンによるミオスタチン調節機構」の解明 | KAKENHI-PROJECT-21380176 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21380176 |
筋発達制御因子・ミオスタチンのデコリンによる調節機構 | 遊離型デコリンによるミオスタチン調節機構を解明することを目的に、遊離型デコリン存在下での受容体の活性化をデコリン不在下と比較検討した結果、EGFRのリン酸化程度は同じであったが、IGFIRのリン酸化程度は増加し、ActRIIBのリン酸化は低下した。以上の結果は、デコリンがミオスタチンの受容体への結合に影響するとともに、IGFIRを介したデコリンシグナルがミオスタチンシグナルにクロストークしている可能性を示唆している。2.脂肪細胞における「デコリンによるミオスタチン調節機構」の解明ミオスタチンの脂肪前駆細胞分化抑制効果に対するデコリンの影響を明らかにするために、ブタ脂肪前駆細胞株(PSPAおよびMSPA)を用いてデコリン存在下でのミオスタチンの作用を調べた。ミオスタチンはPSPAおよびMSPAの分化を抑制するものの、デコリン存在下ではその作用がやや低下する傾向がみられた。3.線維芽細胞における「デコリンによるミオスタチン調節機構」の解明線維芽細胞のECM産生能に及ぼすミオスタチンの作用を検討した結果、外因性ミオスタチンによってIII型コラーゲンの産生量が低下し、V型コラーゲンの産生量が増加した。このことはミオスタチンが線維芽細胞のECM産生能に影響することを示唆している。筋肉量や脂肪蓄積を制御する成長因子・ミオスタチンが細胞外マトリックス分子の一つであるデコリンによってどのように制御されているかを検討した結果、本年度は、以下の成果を得た。1.筋細胞における「デコリンによるミオスタチン調節機構」の解明デコリンによるミオスタチン調節機構を解明することを目的に、デコリン過剰発現筋細胞を作製し、これに対してミオスタチンを添加したところ、ミオスタチンによる増殖抑制効果は、コントロール筋細胞に比べて低く抑えられていた。また、同様にミオスタチンによる分化抑制効果について検討した結果、デコリン過剰発現筋細胞はコントロール筋細胞に比べて、ミオスタチンの分化抑制程度が低かった。以上の結果は、筋細胞自らが産生するデコリンがミオスタチンの増殖・抑制作用を減ずる働きをしていることを示唆している。2.脂肪細胞における「デコリンによるミオスタチン調節機構」の解明ミオスタチンの脂肪前駆細胞分化抑制効果に対するデコリンの影響を明らかにするために、ブタ脂肪前駆細胞株(PSPA)を用いてコラーゲンゲル中のデコリンがミオスタチンの作用に及ぼす影響を調べた。ミオスタチンのPSPAに対する分化抑制効果は、デコリンを含むコラーゲンゲル中では減少する傾向がみられた。このことは、ミオスタチンの脂肪前駆細胞に対する作用が細胞外マトリックスのデコリンによって調節されている可能性を示唆するものである。3.線維芽細胞における「デコリンによるミオスタチン調節機構」の解明線維芽細胞に対するミオスタチンの影響について検討した結果、ミオスタチンは線維芽細胞の増殖を抑制した。 | KAKENHI-PROJECT-21380176 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21380176 |
安定同位体トレーサー法によるヒスチジンの体内動態とヒスチジン血症の診断法開発研究 | Histidine ammonia-Iyase(ヒスチダーゼ)はL-ヒスチジン(His)からウロカニン酸(UA)への非酸化的脱アミノ化反応を触媒する。ヒスチジン血症は本酵素の欠損によりこの過程が障害されている先天性代謝異常症である。安定同位体トレーサー法によるヒスチジン血症の診断法確立過程でこの代謝過程に関する体内動態(invivo)の解明上必要となる投与用の候補として2種類の安定同位元素(SI)標識His([β、β、5-^2H_3、3-^<15>N]Hisと[β、β-^2H_2、1、3-^<15>N_2]His)を合成した(昭和61年度)。本研究では服用実験に先立ち、ヒスチダーゼ(Pseudomonas fluorescens)を用いて、アミノ基の脱離反応機構の解明を行うと共に、SI標識Hisの代謝過程における標識元素の安定性を考察し、標識および非標識Hisの生物学的同等性の評価を行った。イミダゾール環の5位を重水素標識した[β、β、5-^2H_3、3-^<15>N]Hisを基質としてヒスチダーゼ酵素反応を行った。代謝物UAについて^1H-NMRおよびGC-MS法で構造解析した結果、UAの5位重水素が4050%程度の割合で代謝過程において脱落したことから、Hisのアミノ基の脱離反応はβ位5位に非局在化したカルバニオン中間体を経るStepwise機構で進行することが明らかとなり、従来提唱されている協奏反応機構説は否定された。この5位における重水素が脱離する事実を考慮すれば、投与用として適用できる標識Hisとしては5位に重水素をもたない[β、β、-^2H_2、1、3-^<15>N_2]Hisの方が適していると考えられる。今後、in vitro実験の結果をもとに、in vivoにおけるβ位重水素同位体効果の速度論的解析あるいはイミダゾール環の5位の重水素脱落に関する評価を行うことは、生体内代謝における律速段階の決定ならびにHisとUA間の可逆反応性に関する知見が得られ、ヒスチジン血症患者におけるheterogeneityに関する問題をヒスチジンの速度論的体内動態のみならず、代謝反応機構の観点からアプローチでき、ヒスチジン血症の診断法確立に重要な手がかりが得られると確信する。一方、GC-MS分析法の開発上必要となる2種類の標識ウロカニン酸、すなわちuroc-【^(15)N】【^2H_2】およびuroc-【^15N_2】【^2H_3】はhis-【^(15)N】【^2H_3】およびhis-【^15N_2】、【^2H_4】を基質として、ヒスチダーゼ(Pseudomonas fluorescence)による酵素反応を【D_2】O系buffer中で行うことにより合成した。各SI標識ヒスチジンおよびウロカニン酸における【^1H-】あるいは【^2H-】NMRおよびMSの結果から合成過程における標識の脱落、scramblingはなく、目的とする位置に同位元素を選択的に、しかも高い標識率(9397atom%)で導入することができた。本合成法は、従来法に比較して合成段階も著しく少なく、3種のヒスチジンと2種のウロカニン酸の多重標識体を一連の経路から合成でき、極めて効率的な方法といえる。安定同位体(SI)トレーサー法によるヒスチジン血症の診断法開発を目指すなかで, GC-MS-SIMによる血中ヒスチジンと主代謝物ウロカニン酸の微量定量法の確立を行った.本研究では,ヒスチジンの体内動態を明らかにするため,ヒトへSI標識ヒスチジン(L=His=^2H_2,^<15>N_2)が投与される.ヒスチジン測定の検量線は,血中濃度52000ng/mL plasmaの範囲にわたり,良好な直線性(r=0.9999)を示した.測定には,もう1つのSI標識ヒスチジン(DL-His-^2H_4,^<15>N_2)を内部標準物質として用いられた.本法は, intra-assayとして, CV=2.53.9%, intra-assayとして, CV=1.11.4%,また予測値との相対誤差は5%以内という極めて高い分析精度を提供した.分析感度は, GC-MSへの絶対注入量として50pgが検出可能であった.これにより,投与由来のヒスチジン(L-His-^2H_2,^<15>N_2)と食餌・生合成由来の内因性ヒスチジン(L-His)をそれぞれ区別しながら,微量定量できることが明らかとなった.一方,投与されたSI標識ヒスチジン(L-His-^2H_2,^<15>N_2)の代謝物である標識ウロカニン酸(Uroc-^2H_1,^<15>N_2)と,内因性ウロカニン酸の生体内挙動を明らかにするため,もう1つのSI標識ウロカニン酸(Uroc-^2H_3,^<15>N_2)をGC-MS-SIM測定の内部標準物質として用い,血中ウロカニン酸の定量法について検討した.その結果, GC-MS分析の前処理段階として,生体試料中からの抽出・精製法およびGC誘導化法の一連の操作法には,ヒスチジンのそれと全く同一方法が適用できることが明らかとなった. | KAKENHI-PROJECT-61571100 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61571100 |
安定同位体トレーサー法によるヒスチジンの体内動態とヒスチジン血症の診断法開発研究 | この事は,ヒスチジンとその代謝物であるウロカニン酸の両者を,投与由来と内因性由来のものとをそれぞれ区別しながら,同時に定量できることを示している.なお,ウロカニン酸に関する分析精度については,現在検討中であるが, GC-MSへの注入絶対量として, 50pgが検出できることから,ヒスチジンと同様に,精度・感度ともに優れた測定法が確立できるものと考えられる.Histidine ammonia-Iyase(ヒスチダーゼ)はL-ヒスチジン(His)からウロカニン酸(UA)への非酸化的脱アミノ化反応を触媒する。ヒスチジン血症は本酵素の欠損によりこの過程が障害されている先天性代謝異常症である。安定同位体トレーサー法によるヒスチジン血症の診断法確立過程でこの代謝過程に関する体内動態(invivo)の解明上必要となる投与用の候補として2種類の安定同位元素(SI)標識His([β、β、5-^2H_3、3-^<15>N]Hisと[β、β-^2H_2、1、3-^<15>N_2]His)を合成した(昭和61年度)。本研究では服用実験に先立ち、ヒスチダーゼ(Pseudomonas fluorescens)を用いて、アミノ基の脱離反応機構の解明を行うと共に、SI標識Hisの代謝過程における標識元素の安定性を考察し、標識および非標識Hisの生物学的同等性の評価を行った。イミダゾール環の5位を重水素標識した[β、β、5-^2H_3、3-^<15>N]Hisを基質としてヒスチダーゼ酵素反応を行った。代謝物UAについて^1H-NMRおよびGC-MS法で構造解析した結果、UAの5位重水素が4050%程度の割合で代謝過程において脱落したことから、Hisのアミノ基の脱離反応はβ位5位に非局在化したカルバニオン中間体を経るStepwise機構で進行することが明らかとなり、従来提唱されている協奏反応機構説は否定された。この5位における重水素が脱離する事実を考慮すれば、投与用として適用できる標識Hisとしては5位に重水素をもたない[β、β、-^2H_2、1、3-^<15>N_2]Hisの方が適していると考えられる。今後、in vitro実験の結果をもとに、in vivoにおけるβ位重水素同位体効果の速度論的解析あるいはイミダゾール環の5位の重水素脱落に関する評価を行うことは、生体内代謝における律速段階の決定ならびにHisとUA間の可逆反応性に関する知見が得られ、ヒスチジン血症患者におけるheterogeneityに関する問題をヒスチジンの速度論的体内動態のみならず、代謝反応機構の観点からアプローチでき、ヒスチジン血症の診断法確立に重要な手がかりが得られると確信する。 | KAKENHI-PROJECT-61571100 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61571100 |
設備騒音の低周波音遮蔽のための空気壁の提案 | ヒートポンプ給湯機は,大気中の熱を集めることができる画期的な技術であり,省エネルギーの観点から今後の普及がますます期待されるものである。しかし,その原理から屋外のユニットには大きな開口部(直径およそ400 mm)が必要となり,そこから低周波数域の稼働音が放出される。本研究は,省スペースで実現できるアクティブ騒音制御技術を適用して大きな開口部から放出される低周波音の遮蔽手法を提案し,その効果を定量的に明らかにするものである。この新しい遮蔽技術で低周波音を抑えることができれば,ヒートポンプ給湯機のさらなる普及を後押しでき,省エネルギー社会の推進に貢献できるものと考えている。ヒートポンプ給湯機は,大気中の熱を集めることができる画期的な技術であり,省エネルギーの観点から今後の普及がますます期待されるものである。しかし,その原理から屋外のユニットには大きな開口部(直径およそ400 mm)が必要となり,そこから低周波数域の稼働音が放出される。本研究は,省スペースで実現できるアクティブ騒音制御技術を適用して大きな開口部から放出される低周波音の遮蔽手法を提案し,その効果を定量的に明らかにするものである。この新しい遮蔽技術で低周波音を抑えることができれば,ヒートポンプ給湯機のさらなる普及を後押しでき,省エネルギー社会の推進に貢献できるものと考えている。 | KAKENHI-PROJECT-19K04742 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K04742 |
日韓における政治の機会主義化と事業型NPOのマネジメント | 本研究は政治の「機会主義化」が定着するなか、日本と韓国の高齢者、障がい者、女性等の社会的弱者の就労を支援する事業型NPOの「経営」に焦点を当てる。政府によって社会的弱者の就労促進は総じて進められてきた。しかし、政策転換の影響もあってこれらNPOの経営基盤は確立したとは言い難い。本研究では、NPOの経営に関連する1.(福祉部局以外の)部署によって進められてきた一連の社会的企業及びソーシャルファーム支援策2.(障害者総合支援法、生活困窮者自立支援法といった)一連の福祉政策がNPOの経営・事業にどう影響を及ぼしているかを検証すると共に、(政治に翻弄されない)それに対応した経営戦略を検討する。制度・政策の機会主義化でも「先行」する韓国のNPOと比較しながら、実証的研究をすると共にそれを解明する理論的研究を行おうとした。当該年度に、主に日本で地域社会で障がい者就労支援を行うNPO、中間支援NPO、生活困窮者自立支援を積極的に行う社会福祉協議会への本調査(インタビュー、資料収集等)を行った。韓国に関しては社会的企業に関して、大学等の研究者への本調査(インタビュー、資料収集等)を実施した。本調査の研究成果の一部を論文として公表すると共に学会報告を行った。また本調査に関連して、NPOの経営と社会的インパクトに関する委託研究(CSR事業を行う日本の民間企業より)を獲得することができ、評価報告書を発行することができた。また主に社会福祉協議会の研究会で成果を公表することができた。日韓両国の研究に関して、当該年度は韓国の本調査に関してやや遅れている。理由は当該年度に韓国の研究協力者の転職、退職に伴い、訪問予定だった複数の社会的企業へのインタビューが難しくなったことが大きい。これに対応して、当該年度は韓国の調査研究の再設計をすることとなった。幸い新たな研究協力者も確保できたことから、2019年度に改めてインタビューを実施する予定である。日本については予定通り研究調査を進めると共に、韓国の本調査の遅れに関しては再設計にもとづいて、本調査を進めていきたいと考えている。本研究は政治の「機会主義化」が定着するなか、日本と韓国の女性、障害者、高齢者等の社会的弱者の就労を支援する事業型NPOの「経営」に焦点を当てる。政府によって社会的弱者の就労促進は総じて進められてきた。しかし、政策の二転三転の影響もあってこれらNPOの経営基盤は確立したとは程遠い。本研究では、NPOの経営に関連する1.(福祉部局以外の)部署によって進められてきた一連の社会的企業及びソーシャルファーム支援策2.(障害者総合支援法、生活困窮者自立支援法といった)一連の福祉政策がNPOの経営・事業にどう影響を及ぼしているかを検証すると共に、(政治に翻弄されない)それに対応した経営戦略を検討する。制度・政策の機会主義化でも「先行」する韓国のNPOと比較しながら、実証的研究をすると共にそれを解明する理論的研究を行おうとした。当該年度に、日韓のNPO及び関連アクターに対する予備調査及び本調査を行った。日本では事業型NPOを支援する中間支援NPOや運輸業分野で就労支援を実際に行う関係者への一次調査(インタビュー、資料収集等)を行った。韓国ではNPO関係者への一次調査を行うと共に、高齢者の就労支援に関連して、ソウル大学、韓国女性政策研究所等の研究者へのインタビューを実施した。これらを通して調査の基本設計を行うと共に、予備調査の研究成果の一部を公表した。学会報告では、研究代表者が韓国で11月に日本の社会的企業に関する招待講演(韓国国際交流財団主催:日韓市民100人未来対話)を行い、共同研究者は11月に日本社会福祉学会で日本の社会福祉政策と関連して研究報告を行った。論文では研究代表者が社会的弱者の就労支援の視点から運輸業分野の社会的企業について公表した。日韓両国の研究に関して、日本に関してやや遅れている。予備調査を進めている段階で、当該NPOの調査を進めるだけでなく、その有力なステークホルダーとなる中間支援NPOへの調査を重点的に行う必要性が生じた。それを丁寧に行ったため、当該NP0の本調査の進捗に遅れがみられている。韓国に関してやや遅れている。理由は当該年度に米朝関係の緊張に伴って、訪問予定だった複数の社会的企業へのインタビューが難しくなったことが大きい。韓国では社会的企業リーダーが韓国市民社会のリーダーである場合が少なくなく、様々な社会的、政治的な役割を果たしているからだ。これに対応して、韓国では当該NPOのステークホルダーとなる大学関係者へのインタビューを進めると共に、関連領域である日韓の社会福祉政策についての研究を進めた。本研究は政治の「機会主義化」が定着するなか、日本と韓国の高齢者、障がい者、女性等の社会的弱者の就労を支援する事業型NPOの「経営」に焦点を当てる。政府によって社会的弱者の就労促進は総じて進められてきた。しかし、政策転換の影響もあってこれらNPOの経営基盤は確立したとは言い難い。本研究では、NPOの経営に関連する1.(福祉部局以外の)部署によって進められてきた一連の社会的企業及びソーシャルファーム支援策2.(障害者総合支援法、生活困窮者自立支援法といった)一連の福祉政策がNPOの経営・事業にどう影響を及ぼしているかを検証すると共に、(政治に翻弄されない)それに対応した経営戦略を検討する。制度・政策の機会主義化でも「先行」する韓国のNPOと比較しながら、実証的研究をすると共にそれを解明する理論的研究を行おうとした。 | KAKENHI-PROJECT-17K04281 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K04281 |
日韓における政治の機会主義化と事業型NPOのマネジメント | 当該年度に、主に日本で地域社会で障がい者就労支援を行うNPO、中間支援NPO、生活困窮者自立支援を積極的に行う社会福祉協議会への本調査(インタビュー、資料収集等)を行った。韓国に関しては社会的企業に関して、大学等の研究者への本調査(インタビュー、資料収集等)を実施した。本調査の研究成果の一部を論文として公表すると共に学会報告を行った。また本調査に関連して、NPOの経営と社会的インパクトに関する委託研究(CSR事業を行う日本の民間企業より)を獲得することができ、評価報告書を発行することができた。また主に社会福祉協議会の研究会で成果を公表することができた。日韓両国の研究に関して、当該年度は韓国の本調査に関してやや遅れている。理由は当該年度に韓国の研究協力者の転職、退職に伴い、訪問予定だった複数の社会的企業へのインタビューが難しくなったことが大きい。これに対応して、当該年度は韓国の調査研究の再設計をすることとなった。幸い新たな研究協力者も確保できたことから、2019年度に改めてインタビューを実施する予定である。日韓両国の本調査でやや遅れが生じていることに対して、日本では当該NPOへの調査を粛々と行っていきたいと考えている。韓国の調査については米朝関係がその後、劇的に変わったこともあり、当該NPOへの調査を再開し、本調査を進めていきたいと考えている。日本については予定通り研究調査を進めると共に、韓国の本調査の遅れに関しては再設計にもとづいて、本調査を進めていきたいと考えている。当該年度に米朝関係の緊張に関連して、韓国の訪問がキャンセルとなり、韓国における本調査を進めることが難しくなった。それに伴い、旅費、通訳等の人件費に差異が生じた。次年度使用額を用いて、本年度に本調査を行う。韓国の本調査に関して当該年度に遅れが出たため、次年度使用額が生じることとなった。2019年度は次年度の研究計画にもとづいて、韓国のNPOに関する本調査を行うことに充当していきたい。 | KAKENHI-PROJECT-17K04281 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K04281 |
毛包形成に関与する未知の分化決定メカニズムと関連遺伝子の時系列的探索 | 本研究では毛包バルジ領域に存在するケラチン15上皮幹細胞の中に,ネスチン陽性神経幹細胞の娘細胞が存在するかを解析したとともに,上皮-神経幹細胞の分化運命を解析するための遺伝子改変プラスミドを作製した。その結果,マウス成長期毛包および休止期毛包のバルジ領域では,ネスチン陽性細胞またはその娘細胞の特性を示し,かつケラチン15を発現する細胞を蛍光抗体法により特定することはできなかった。一方で本研究では,ケラチン15とネスチンの共発現下でCre-loxP組換えが生じた結果,タモキシフェン存在下でFlp-ERT部位特異的を誘導するFlpERT2を発現させるための遺伝子改変プラスミドの作製に成功した。本年度はマウス毛包に分布するNestin陽性細胞の有無について解析を行ったと共に、Keratin 15+Nestin+細胞においてEGFPを発現するトランスジェニックマウスを作出するためのプラスミドコンストラクトの作成を試みた。マウス触毛において、Nestin陽性細胞は結合織鞘や毛乳頭のみならず、バルジ領域の外毛根鞘の最外層に小数ながら分布していた。この領域はKeratin 15陽性細胞が豊富に分布していることから、同細胞がKeratin 15とNestinの両方を発現した前駆細胞である可能性が期待された。この件をさらに詳細に解析するため、現在はKeratin 15promotorとNestinpromotorの両方が活性化した細胞においてのみ、EGFPを発現するトランスジェニックマウスの作出を試みた。Keratin 15promotorの3'末端にEGFPを挿入したプラスミド(K15p-EGFP)よりEGFP遺伝子を制限酵素で切断し、DsRed遺伝子の両端にloxP遺伝子が挿入され、かつその3'末端にEGFP遺伝子が挿入された遺伝子断片をPCRで増幅し、前述した制限酵素切断端に挿入して大腸菌に形質転換した。しかしながら複数の大腸菌株を用いて形質転換を試みたものの、これまでのところ組換えプラスミドが導入された大腸菌の単離には成功していない。今後は遺伝子配列のデザインを変更して新規プラスミド(K15p-DsRed(flox)-EGFP)を作成し、当研究室で保有するNes-Creマウスと交配して目的のマウスを作出する予定である。本来は新規トランスジェニックマウスの作出がこの時期に終了しているはずだったが、遺伝子組換え実験が技術的にうまくいかなかったため実験に遅れが生じた。本年度はKeratin 15 promoterとNestin promoterの両方が活性化した細胞において、Cre-loxP部位特異的組換えによりFlpERT2を発現するマウスの作出を試みた。まずKeratin 15 promoterの下流にDsRed(flox)-EGFPを挿入したプラスミド(K15-DsRed(flox)-EGFP)の作製を試み、遺伝子導入した大腸菌から組換えプラスミドを回収することに成功した。続いて前述したプラスミド配列中のEGFP遺伝子をFlpERT2遺伝子に置換したプラスミドの作製を試みたものの、遺伝子導入した大腸菌が死滅してしまったため組換えプラスミドの回収には至らなかった。そこでKeratin 15promotorの下流にCreERT2遺伝子を挿入したプラスミド(K15-CreERT2)と、Nestin promoterの下流にDsRed(flox)-FlpERT2を挿入したプラスミド(Nes-DsRed(flox)-FlpERT2)の作製をそれぞれ試みた。その結果、いずれのプラスミドともに大腸菌への遺伝子導入に成功し、組換えプラスミドを回収することができた。現在は各プラスミドを培養マウス角化細胞株または培養マウス神経芽細胞腫株に遺伝子導入し、挿入遺伝子の蛋白発現が認められるかを確認しているところである。本来は新規トランスジェニックを用いた解析がこの時期には終了している筈であったが、遺伝子組換え実験が成功しなかったため実験に遅れが生じた。本年度はケラチン15プロモーターの下流にCreERT2遺伝子を挿入したプラスミドコンストラクト(K15-CreERT2)ならびにネスチンプロモーターの下流にDsRed_flox-FlpERT2遺伝子を挿入したプラスミドコンストラクト(Nes-DsRed_flox-FlpERT2)を作成した。目的遺伝子の蛋白発現を確認するため、K15-CreERT2をpMSCV-DsRed_flox-EGFPとともにヒト培養角化細胞株であるA549細胞に、またNes-DsRed_flox-FlpERT2をpBS185-CMV-Creとともにマウス神経細胞株であるNeuro2a細胞にそれぞれ遺伝子導入した。前述の遺伝子が導入されたA549細胞では、4-hydroxytamoxifen存在下でEGFP陽性細胞が認められたのに対し、非存在下ではDsRed陽性細胞のみが認められた。一方で遺伝子導入されたNeuro2a細胞では、4-hydroxytamoxifenの非存在下ではDsRed陽性細胞が認められたのに対し、4-hydroxytamoxifen存在下では同細胞は認められなかった。以上の結果から、前述した2種類のプラスミドコンストラクトは、プロモーター活性の認められる哺乳動物細胞内において目的遺伝子を発現できることが確認された。また毛包バルジ領域にネスチン陽性細胞またはその娘細胞が認められるかを確認するため、Nes-Cre/CAG-CAT-EGFPの成長期毛包および休止期毛包におけるGFP陽性細胞の局在を確認した。 | KAKENHI-PROJECT-15K14866 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K14866 |
毛包形成に関与する未知の分化決定メカニズムと関連遺伝子の時系列的探索 | その結果、成長期毛包の外毛根鞘ではGFP陽性細胞が認められたのに対し、成長期毛包と休止期毛包のバルジ領域にはGFP陽性細胞が認められなかった。この事実から、同領域には外毛根鞘細胞の前駆細胞が存在しないか、あるいは被毛の再生過程で神経幹細胞-上皮幹細胞間の分化転換が認められる可能性を示した。本研究では毛包バルジ領域に存在するケラチン15上皮幹細胞の中に,ネスチン陽性神経幹細胞の娘細胞が存在するかを解析したとともに,上皮-神経幹細胞の分化運命を解析するための遺伝子改変プラスミドを作製した。その結果,マウス成長期毛包および休止期毛包のバルジ領域では,ネスチン陽性細胞またはその娘細胞の特性を示し,かつケラチン15を発現する細胞を蛍光抗体法により特定することはできなかった。一方で本研究では,ケラチン15とネスチンの共発現下でCre-loxP組換えが生じた結果,タモキシフェン存在下でFlp-ERT部位特異的を誘導するFlpERT2を発現させるための遺伝子改変プラスミドの作製に成功した。上述の発現実験に成功したら、2種類の組換え遺伝子をマウス胚細胞に遺伝子導入してトランスジェニックマウスの作出を試みる。マウスの作出に成功したら、Flp-FRT部位特異的組換えによりmTFPを発現するCAG-mTFPマウスと、本研究で作製する2種のトランスジェニックマウスとを交配させることにより、タモキシフェン誘導下でNestin陽性細胞がDsRedを、またNes/K15二重陽性細胞とその娘細胞がmTFPを発現するマウスの作出を試みる。このマウスの毛包におけるmTFP陽性細胞の分布を観察することにより、マウス成体毛包に分布するNes/K15二重陽性幹細胞の分化運命を解析するとともに、前述の分化に関わる遺伝子群をDNAマイクロアレイ解析により特定する。獣医学今年度は前倒し請求を行ったものの、予定していた研究の一部を次年度に先送りしたため。本年度は遺伝子改変マウスを作出して成体幹細胞の細胞系譜ならびに関連遺伝子群の探索を行う予定であったが、遺伝子改変マウスの作出に必要となる組換えプラスミドの作製に時間がかかり、いまだマウスの作出に至っていないため。次年度は2種類の新規Tgマウスを作出するとともに、2種類のTgマウスを購入して実験計画通りに遂行する予定である。また解析には凍結包埋剤や抗体などの試薬類を必要とするため、それらを購入する予定である。次年度は、本年度に作製した組換えプラスミドを元に、研究分担者の元で遺伝子改変マウスの作出を試みるための消耗品類に残額の一部を使用する。また目的となる成体幹細胞の細胞系譜を解析するために必要な、CAG-mTFP1を理研から有償で入手する。さらに前述の細胞系譜に関与する遺伝子群を特定するためのDNAマイクロアレイ解析を、外部機関に有償で委託する。 | KAKENHI-PROJECT-15K14866 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K14866 |
粗幾何学における次元概念と位相空間の研究 | 粗幾何学(または大尺度幾何学)とは,遠くで眺めて同じに見える(距離)空間を同じと考える幾何学である.粗幾何学における中心的な予想が微分トポロジー等に応用をもつ粗Baum-Connes予想であり,漸近次元や境界と呼ばれる位相空間が,この予想に重要な役割を果たしている.本研究では,漸近次元や境界に関する未解決問題に挑戦すると共に,漸近次元に関連する種々の概念や境界に関する性質の解明を目指す.粗幾何学(または大尺度幾何学)とは,遠くで眺めて同じに見える(距離)空間を同じと考える幾何学である.粗幾何学における中心的な予想が微分トポロジー等に応用をもつ粗Baum-Connes予想であり,漸近次元や境界と呼ばれる位相空間が,この予想に重要な役割を果たしている.本研究では,漸近次元や境界に関する未解決問題に挑戦すると共に,漸近次元に関連する種々の概念や境界に関する性質の解明を目指す. | KAKENHI-PROJECT-19K03467 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K03467 |
Subsets and Splits