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コールドスプレー質量分析(CSI-MS)法による生体分子の組織的溶液動態の観測 | これら一連の実験の結果,ターゲット分子であるグアニジンと安息香酸が正確に化学量論比に対応した会合体を形成することを溶液中で観測し,これより溶液動態の精密な解析を行うことができるようになった.NMRによる分子拡散の測定法を用いた会合状態の解析およびX線解析の結果とCSI-MS結果を比較した.本年度は特に,昨年度より継続している複成分系での分子間相互作用について精査すべく有機酸一塩基による水素結合を利用した複合体の結晶構造および溶液構造について考察することを目的として実験を行なった.対象化合物として強い塩基性を示すグアニジンおよび代表的有機芳香族カルボン酸である安息香酸を選択し複合体形成を行った.まず強い塩基性を示すグアニジン(BG)の合成を行い,代表的有機芳香族カルボン酸である安息香酸(BA)との複合体の形成および単結晶X線回折測定を行った.この際,複合体は3Aのモル比をコントロールすることで定量的かつ選択的にBG+BA=1:1,1:2,1:3,1:4と作り分けられることが明らかになり,このことはCrystal Controlの観点から非常に有用な知見である.次に,各BG+B complexesについてCSI-MSを測定した.[BA-H]^-の付加体としてネガティブモードで1:1からは1:1,1:2からは1:2およびイオン化により開裂した1:1,1=3からは1:3およびイオン化により開裂した1:2と1:1そして1:4からは1:4およびイオン化により開裂した,1:3,1:2,1:1がそれぞれ観測された.このことからCSI-MSは酸塩基による水素結合化合物の質量分析の検出に非常に有用であり,また,各complexが結晶状態を反映して溶液中でもそのcomplexを保持したまま存在していることが示唆された.最後にNMR解析を行った.この結果,1:1,1:2,1:3,1:4のBGの^1Hの化学シフトが異なっていることが分かり,ある構造的変化を反映した変動を捉えることができた.これについては,一つ目のBAが共存するとBGは劇的に変化するが,2つ以上のBAではそれほど大きな構造的変化はないと考えることができる.さらに,化学シフトの変化のグラフと自己拡散係数の変化のグラフは一致しており,溶液中でも複合体を保持していることが示唆された.溶液中の分子会合状態の変化を直接観測することは一般に困難とされている。本年度はCSIを中心としたスプレーイオン化法を用いて,新規反応解析手法を開発した。この開発研究では溶液中の不安定性分を継続的に検出する目的から,反応溶液の直接観測を試みた。進行している反応溶液を連続的に観測するために,ON-LINE質量分析装置(Reaction Tracking System:RTS)を開発し,実際の反応溶液を観測した。本手法の有機反応における評価としてメシチレンスルポニルクロリドとメチルアニリンからスルホンアミドを生成する反応について検討した。この反応は,触媒であるピリジンを加えることによりほぼ定量的に生成物を与えるものである。 | KAKENHI-PROJECT-17390008 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17390008 |
高負荷燃焼における乱流および個体壁の効果に関する化学動力学的研究 | 燃焼過程あるいは伝熱過程の効率を上げるための有効な燃焼方法や伝熱方法を化学動力学的な立場から検討することを目的に研究を行い、以下のような成果を得た。1.火災中の3点で同時にシュリ-レン像の光強度の時間変化を測定することによって、火災乱れの移動速度と方向を実験的に評価する方法を用いて、メタン-空気予混合火災中に生じた火災乱れを測定した。得られた結果は、(1)火災面付近で乱れは非常に激しくなるが、ほぼ一様乱れと見なすことができる。火災面付近では高い周波数成分をもつ乱れが増える。(2)火災乱れはこの領域内で成長し、その後既燃領域にはいると減衰する。2.火災の支配方程式を直接数値的に解くことによって、メタン-空気乱流予混合火災のシミュレ-ションを行った。これらの方程式中の化学反応の項には15種類の化学種とそれらの間に生じる37組の素反応を組み込んだ。その結果、バ-ナ直上のフレ-ムホ-ルダ-に保炎された火災について次のような結果を得た。(1)流速分布と燃焼反応の生じている領域の間には相関がある。得られた流速分布は、火災内に大きな乱れが存在していることを示しており、特に保災器の後流側にはその傾向が強い。(2)十分発達した火災部分では、温度や各化学種濃度の分布に乱れがあるものの、層流火災の場合と同様に非常に薄い火災面が存在していると考えることができる。また冷却個体壁面に衝突する火災について得られた結果は、(1)混合気はその一部分は中心軸に沿って個体面まで上がり、ここから個体壁面に沿って外側に流れる流れと、もっと低い位置から外側に流れ始めて、主反応帯で膨張したガスによって下側に押されながら、この主反応帯を取り巻くように流れる流れとに分かれる。(2)火災温度はホ-ルダ-に保持された火災に比べてやや低めである。燃焼過程あるいは伝熱過程の効率を上げるための有効な燃焼方法や伝熱方法を化学動力学的な立場から検討することを目的に研究を行い、以下のような成果を得た。1.火災中の3点で同時にシュリ-レン像の光強度の時間変化を測定することによって、火災乱れの移動速度と方向を実験的に評価する方法を用いて、メタン-空気予混合火災中に生じた火災乱れを測定した。得られた結果は、(1)火災面付近で乱れは非常に激しくなるが、ほぼ一様乱れと見なすことができる。火災面付近では高い周波数成分をもつ乱れが増える。(2)火災乱れはこの領域内で成長し、その後既燃領域にはいると減衰する。2.火災の支配方程式を直接数値的に解くことによって、メタン-空気乱流予混合火災のシミュレ-ションを行った。これらの方程式中の化学反応の項には15種類の化学種とそれらの間に生じる37組の素反応を組み込んだ。その結果、バ-ナ直上のフレ-ムホ-ルダ-に保炎された火災について次のような結果を得た。(1)流速分布と燃焼反応の生じている領域の間には相関がある。得られた流速分布は、火災内に大きな乱れが存在していることを示しており、特に保災器の後流側にはその傾向が強い。(2)十分発達した火災部分では、温度や各化学種濃度の分布に乱れがあるものの、層流火災の場合と同様に非常に薄い火災面が存在していると考えることができる。また冷却個体壁面に衝突する火災について得られた結果は、(1)混合気はその一部分は中心軸に沿って個体面まで上がり、ここから個体壁面に沿って外側に流れる流れと、もっと低い位置から外側に流れ始めて、主反応帯で膨張したガスによって下側に押されながら、この主反応帯を取り巻くように流れる流れとに分かれる。(2)火災温度はホ-ルダ-に保持された火災に比べてやや低めである。 | KAKENHI-PROJECT-01603525 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01603525 |
屍体足・人工筋骨格ハイブリッドロボットによる二足歩行の適応機能解明 | 本研究課題では,脳やせき髄からの投射がない場合の,歩行状態における人間の足部の機械的特性を計測するために,歩行状態を再現するための歩行シミュレータを作成し,これに屍体の足部を取り付け,二方向エックス線透視撮影装置の中で歩行させることによって,足部内部の骨の動きを観察するためのプラットフォームを開発した.これに関連して,歩行状態を再現するための歩行シミュレータの制御や,透過画像から各骨の三次元運動を精密に再構成するための画像処理技術などを開発した.足部に存在する機械的特性のうち,中足骨関節に着目し,同等の機能の足部をもつ二足歩行ロボットを開発,実験によって中足骨関節の歩行安定性への寄与を調べた.平成23年度には,屍体足部を駆動するための筋骨格構造を持つ下肢ロボットの試作,観察のためのレントゲン施設の整備,足部データに基づく動的シミュレータの作成を行った.○筋骨格構造を持つ下肢ロボットの試作:屍体足を駆動するための,空気圧人工筋によって駆動される二足下肢ロボットを試作した.下肢ロボットは,下記のレントゲンシステム内で歩行可能であり,かつヒト歩行の動的な振る舞いをある程度再現するように設計されている.またヒト足部のCTデータから,足部の骨の詳細なデータを作成し,これを基にシリコン製人工皮膚を持つ人工足部を試作,下肢ロボットに取り付け,歩行時の様子を観察した.その結果,構造として骨だけを再現しても足部の振る舞いがヒトのそれに似ないことを確認し,内部の腱と筋を付加する重要性を認めた.○観察のためのレントゲン施設の整備:本研究で使用するための,ステレオレントゲンシステムの性能を詳細に検討し,島津製作所に依頼して,二枚のフラットパネルを有する特注の3次元計測用ステレオシステムを構築し,慶應義塾大学医学部に導入した.○足部の動的シミュレータの作成:ヒトの足部CTデータより,足部の骨構造のモデル化を行った.これらの骨構造の詳細な動きを模擬するためのダイナミックシミュレータについて検討し,コンピュータシステムおよびソフトウエアを導入,運用を開始した.またヒトの筋電位をオンラインで測定するための測定システムを構築した.平成25年度は,歩行中の足部の骨の動きを詳細に観察するために,2方向エックス線透過撮影装置内で動作する歩行ロボットを試作,慶応大学医学部において,屍体足を用いた実験を始めた.その内容は以下のとおりである.○ロボットに屍体足を装着,駆動する技術を開発した.エックス線透過撮影装置は,エックス線の漏えい防止のために,サイズの限られた空間内でしか実験できない.このサイズに収まり,かつ歩行が可能なロボットを開発する必要がある.また,そのロボットに屍体足を固定し,いくつかの外来筋を,外部から駆動する必要がある.これらを実現するために,歩行ロボット(歩行シミュレータと呼ぶ),屍体足を固定するための脛骨と腓骨のCTデータに基づくクランプ,腱を駆動するための空気圧人工筋の固定方法などを開発した○歩行ロボットに,数例の足部標本を取り付け,歩行実験を行った.屍体足を装着したロボットが歩行する実験は,本件が世界初であり,この観測データを解析することによって,足部の機能解明が進むことが期待される.その過程の中で,実験結果の安定性の確保,実験より得られる歩行パターンがヒトのそれと近くなるような実験設定などについて,詳しく検討を行った.また,ロボットを2方向エックス線装置の中に入れ,足部の観察実験の試行をした.○得られた2方向エックス線装置の画像に,あらかじめCTによって得た骨の3次元データを自動的にレジストレーションすることにより,骨の動きを推定する方法を開発した.平成24年度には,前年度に導入したレントゲン施設の運用開始,屍体足部を駆動するための筋骨格構造を持つ下肢ロボットの製作,人工足部を持ったロボットの実験,生体のCTデータを基にした足部の動的モデルの構築と有限要素法を用いた動的シミュレータの作成などを行った.○レントゲン施設の運用開始:前年度に,これまで日本で見ることができなかった3Dステレオレントゲンシステムを構築した.本年はこのシステム内に,筋骨格ロボットを入れ,歩行を実現するためのシステムの調整を行った.また屍体足部をロボットに装着せず,単体としてレントゲンシステムに挿入し,2枚のレントゲン画像から骨の3次元的な位置,姿勢を再構築するシステムの開発を行った.○筋骨格構造を持つ下肢ロボットの試作:レントゲンシステム内で屍体足を駆動するための,空気圧人工筋によって駆動される二足下肢ロボットを試作した.一方で,ヒトの足部の骨の動きをシミュレートする現実モデルとして,前年度より引き続き,ヒトのCTデータを基にした人工足部を開発し,これを二足下肢ロボットに取り付けることにより,足部の骨がどのように動くかを観察した.○有限要素法を用いた動的シミュレータの開発:ヒトのCTデータを基に,ヒトの足部の詳細な骨構造をモデル化した.これに,皮膚と腱のダイナミクスを付加した,ヒト足部の有限要素モデルを構築し,ヒトの歩行データを基にした床への押し付けをシミュレートして,その反力と,変形について,実際のヒトの歩行中のデータとの比較を行った.1.2方向エックス線透過装置による屍体足の観察実験:昨年度に引き続き,2方向エックス線透過装置による屍体足の観察実験を,9回,慶応大学医学部解剖学教室で行った.得られた知見を以下に示す. | KAKENHI-PROJECT-23220004 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23220004 |
屍体足・人工筋骨格ハイブリッドロボットによる二足歩行の適応機能解明 | (1)歩行中に足部にかかる力や幾何学的拘束を再現するための歩行シミュレータ(ロボット)については,研究初年度から開発を進めているが,人間の歩行で生じるような床反力パターンを創り出すために,ロボットをどのように駆動すればよいか,駆動様式とその制御方法について検討を加えた.その結果,ほぼ人間と同等の床反力を再現することができる歩行シミュレータの開発に成功した.(2)歩行シミュレータを用いた屍体足への負荷実験を行い,その際の2方向エックス線透過装置の出力データを得た.そして,その出力データから自動的に骨の位置・姿勢を推定するためのアルゴリズムを開発した.また,実験結果より,足部内の骨の動きを定量的に評価した.2.足部有限要素モデルによるシミュレーション:有限要素法に基づく足部のモデルを作成し,動的シミュレーションを実施した.その結果,足首に実際の歩行中の変位を与え,アキレス腱などの外来筋に適当な力を発生させることによって,人間の自然な歩行のような床反力パターンを生成できることを示した.3.ヒト様の足部を持つヒューマノイドロボットの試作と実験:ヒトに見られるような横足根関節の構造を真似たロボット足部を試作し,二足ロボットの装着,歩行を実現することによって,このような関節が歩行の安定性に関与しているという実験データを得た.1.2方向エックス線透過装置による屍体足の観察実験を,慶応大学医学部解剖学教室にて,7回実施した.得られた知見を以下に示す.(1)歩行中に足部にかかる力や幾何学的拘束を再現するための歩行シミュレータ(ロボット)については,研究初年度から開発を進めているが,人間の歩行で生じるような床反力パターンを創り出すために,ロボットをどのように駆動すればよいか,駆動様式とその制御方法についてさらなる検討を加えた.本年度は,実験の再現性を担保するために,シミュレータ全体の剛性を上げ,人間様の床反力を発生するための駆動方法を開発した.(2)歩行シミュレータを用いた屍体足への負荷実験を行い,その際の2方向エックス線透過装置の出力データを得た.前年までに開発した,自動的に骨の位置・姿勢を推定するためのアルゴリズムを適用し,骨の観測を行い,足部内の骨の動きを定量的に評価した.2.有限要素法に基づく足部のモデルを作成し,動的シミュレーションを実施した.その結果,足首に実際の歩行中の変位を与え,アキレス腱などの外来筋に適当な力を発生させることによって,人間の自然な歩行のような床反力パターンを生成できることを示した.3.ヒトに見られるような横足根関節の構造を真似たロボット足部を試作し,二足ロボットの装着,歩行を実現することによって,このような関節が歩行の安定性に関与しているという実験データを得た.4.一連の研究で得られた成果を,学会誌解説や著書で社会的に公開した.本研究課題では,脳やせき髄からの投射がない場合の,歩行状態における人間の足部の機械的特性を計測するために,歩行状態を再現するための歩行シミュレータを作成し,これに屍体の足部を取り付け,二方向エックス線透視撮影装置の中で歩行させることによって,足部内部の骨の動きを観察するためのプラットフォームを開発した.これに関連して,歩行状態を再現するための歩行シミュレータの制御や,透過画像から各骨の三次元運動を精密に再構成するための画像処理技術などを開発した. | KAKENHI-PROJECT-23220004 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23220004 |
“放射線痴呆ラット"モデルを用いた大脳白質障害性痴呆の基礎的研究 | ラットに放射線照射を施行、“痴呆モデル"を作製して照射方法及び照射量と白質障害との関係を解析・検討を行ってきた。生後6ケ月のFischer344雄ラットの全脳に、1回照射30Gy(A群)、25Gy(B群)、分割照射40Gy(5Gy×8/4週、C群)及びControl(D群)の照射を施行し、A、C群はその6ケ月、9ケ月及び12ケ月後に、B群はその12ケ月後にD群と共に脳高次機能障害の有無をMorrisの水迷路、受動的回避学習の2つの課題を用いて検討、組織学的検索を行った。結果、照射6ケ月後では脳高次機能障害も白質の壊死も認められず、A群でGFAP陽性のastrocyteの増加を認めた。9ケ月後ではA群で有意にB群でも少数に脳高次機能障害を認め、A群では海馬采、内包、脳梁に壊死を認め始め、白質でのGFAP陽性のastrocyteの増加を認めた。12ケ月後では、A、B、C群共有意に脳高次機能障害を認め、A>B>Cの順に障害の程度に差を認めた。また、A群では全例の脳梁、海馬采、内包のいずれか又は、全てに壊死を認めたが、B群では約60%の脳梁及びその周囲白質にのみ壊死を認め、C群では、壊死の出現は認めなかった。A、B、C群の脳の白質では壊死の有無にかかわらずGFAP陽性のastrocyteの著明な増加を認めた。この変化はいわゆる白質障害型の痴呆の組織学的変化に類似すると思われた。また、白質障害と壊死やアポトーシスの関連を検討する目的で、生後7日目のFischer344ラットの右大脳半球に5、10Gy及び15Gyの照射を施行し、Apop.Tagを用いてアポトーシスの有無を経時的に観察した。照射後6時間から照射側白質において、陽性細胞が多数認められ、15Gyでは、12時間後に、5Gy、10Gyでは24時間後に陽性細胞を最も多く認めたが、5日後にはいずれの群も認められなくなった。これは照射による、急性期のoligodendrocyteの直接の障害を観察していると考えた。ラットに放射線照射を施行、“痴呆モデル"を作製して照射方法及び照射量と白質障害との関係を解析・検討を行ってきた。生後6ケ月のFischer344雄ラットの全脳に、1回照射30Gy(A群)、25Gy(B群)、分割照射40Gy(5Gy×8/4週、C群)及びControl(D群)の照射を施行し、A、C群はその6ケ月、9ケ月及び12ケ月後に、B群はその12ケ月後にD群と共に脳高次機能障害の有無をMorrisの水迷路、受動的回避学習の2つの課題を用いて検討、組織学的検索を行った。結果、照射6ケ月後では脳高次機能障害も白質の壊死も認められず、A群でGFAP陽性のastrocyteの増加を認めた。9ケ月後ではA群で有意にB群でも少数に脳高次機能障害を認め、A群では海馬采、内包、脳梁に壊死を認め始め、白質でのGFAP陽性のastrocyteの増加を認めた。12ケ月後では、A、B、C群共有意に脳高次機能障害を認め、A>B>Cの順に障害の程度に差を認めた。また、A群では全例の脳梁、海馬采、内包のいずれか又は、全てに壊死を認めたが、B群では約60%の脳梁及びその周囲白質にのみ壊死を認め、C群では、壊死の出現は認めなかった。A、B、C群の脳の白質では壊死の有無にかかわらずGFAP陽性のastrocyteの著明な増加を認めた。この変化はいわゆる白質障害型の痴呆の組織学的変化に類似すると思われた。また、白質障害と壊死やアポトーシスの関連を検討する目的で、生後7日目のFischer344ラットの右大脳半球に5、10Gy及び15Gyの照射を施行し、Apop.Tagを用いてアポトーシスの有無を経時的に観察した。照射後6時間から照射側白質において、陽性細胞が多数認められ、15Gyでは、12時間後に、5Gy、10Gyでは24時間後に陽性細胞を最も多く認めたが、5日後にはいずれの群も認められなくなった。これは照射による、急性期のoligodendrocyteの直接の障害を観察していると考えた。ラットに放射線照射を施行することによって“痴呆モデル"を作製し、以下のような解析を行った。1.生後6カ月のFischer344ラットを、全脳に25Gy照射した群とコントロール群に分け、体重や行動の変化を観察した。さらに処置後12カ月の時期に、Morrisの水迷路と受動的回避学習の二つの課題を用いて高次機能障害の出現の有無を検討した。照射群で明らかに障害を認めた。組織学的検索では、照射群の白質に壊死巣とGFAP陽性のastrocyteの増加を認めた。2.同様の方法で、生後6カ月のFischer344ラットの全脳に1回5Gyで計40Gyの分割照射を施行した場合は、高次機能障害が出現しても白質に壊死は認めなかったが、GFAP陽性のastrocyteの増加を認めた。 | KAKENHI-PROJECT-07457307 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07457307 |
“放射線痴呆ラット"モデルを用いた大脳白質障害性痴呆の基礎的研究 | 3.照射方法および照射量と白質障害の関係を検討するため、生後6カ月のFischer344ラットの全脳に30Gy照射した群、全脳に1回5Gyで計40Gyの分割照射を施行した群、コントロール群で、処置後6カ月の時期に、高次機能障害の出現の有無を検討した。どの群間でも有意差はなく、その組織学的検索では、白質に壊死は認めず、30Gyの1回照射群で、GFAP陽性のastrocyteの増加を認めた。今後、9カ月目に同様の検索を行い、高次機能障害の出現時期と、白質でのastrocyteの増加や、壊死の出現との関連を検討する予定である。ラットに放射線照射を施行することによって"痴呆モデル"を作製し、解析を行ってきた。平成7年度は照射方法および照射量と白質障害の関係を検討するため、生後6カ月のFischer344ラットの全脳に30Gy照射した群(A群)、全脳に1回5Gyで計40Gyの分割照射を施行した群(B群)、コントロール群(C群)で、処置後6カ月の時期に、高次機能障害の出現の有無を、Morrisの水迷路と受動的回避学習の二つの課題を用いて検討したが、どの群間でも有意差はなかった。その組織学的検索では、いずれの群でも白質に壊死は認めず、A群で、GFAP陽性のastrocyteの増加を認めた。平成8年度は9カ月目に同様の検討を行ったが、A群で明らかに高次機能障害の出現したラットが多数認められ、B群にも少数認められたが、C群では認められなかった。組織学的検索では、A群では白質でのastrocyteの増加や、壊死の出現を認めたが、B群では白質の壊死は認めなかった。今後、12カ月目に同様の検索を行い、高次機能障害の出現時期と、白質でのastrocyteの増加や壊死の出現との関連を検討する予定である。また、白質障害と、壊死やアポトーシスの関連を検討する目的で、生後7日目のFischer344ラットの右半球に、15Gyの照射を施行し、Apop Tagを用いてアポトーシスの有無を経時的に観察した。照射後6時間から、照射側の白質において陽性細胞が明らかに多く認められ、照射1日後が最も著明で、4日後には認められなくなった。これは照射による、急性期のoligodendrogliaの直接の障害を観察していると考えた。次にA、B、C群のラットで照射後9カ月目にApop Tagを用いて検討すると、A群の場合に壊死の周辺部の白質と壊死のない部分の血管に陽性細胞を少数ながら認めた。これは照射後長期間を経過しても何らかの機序でアポトーシスが起こり、それが高次機能障害の原因になりうる可能性を示唆した。ラットに放射線照射を施行することによって、“痴呆モデル"を作製し、解析を行ってきた。平成7,8年度は、照射方法及び照射量の関係を検討、生後6カ月のFischer344ラットの全脳に、A群:30Gy/1回照射、B群:5Gy×8回=40Gy分割照射/4週間、C群:Control、の照射を行い、その6カ月及び9カ月後に脳高次機能障害の有無をMorrisの水迷路、受動的回避学習の2つの課題を用いて検討し、組織学的検索を行った。結果、ABC各群共、照射後6カ月では脳高次機能障害が認められず、9カ月後ではA群で有意にB群でも少数ながら、脳高次機能障害が認められた。組織学的検索では。AB分共、6カ月後では壊死を認めず、9カ月後ではA群に壊死を認めた。平成9年度は、ABC群の他に、D群:25Gy/1回照射を加え12カ月後の検討を同様に行った。脳高次機能障害ではABD群共有無に障害が認められA〉D〉Bの順に障害の程度に差を認めた。組織学的には、壊死はA群で大多数に認め、海馬采、内包、脳梁が主体であった。B群でも約60%に壊死を認め、主に脳梁及びそれに近接する白質が殆どであった。C群では、壊死の出現は殆どなかった。しかしABCいずれの群も、壊死の認められた白質部は、壊死の有無にかかわらず、GFAP陽性のastrocyteの増加が認められた。 | KAKENHI-PROJECT-07457307 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07457307 |
擬アノソフ写像類のエントロピーと三次元双曲ファイバー多様体の多面的研究 | 曲面の写像類から写像トーラスとよばれる3次元ファイバー多様体が定まる.写像類が擬アノソフであることと,写像トーラスが双曲的であることは同値である.1次元ベッチ数が1より大きな3次元ファイバー双曲多様体Mを固定するとき,写像トーラスとしてのMの表し方は無限個ある.すなわち(位相型が同じと限らない)曲面の写像類の無限列があり,そこから得られる写像トーラスの無限列がMと同相になる.本研究ではマジック多様体Nについて,写像トーラスがNと同相になるような擬アノソフ写像類の全てを具体的に構成した.この結果を用いて, 3次元ファイバー双曲多様体の基本群の両側不変順序の性質を調べた.曲面の写像類群を考える.曲面Sを固定すると, S上の擬アノソフ写像類のエントロピーの集合には最小値Lが存在する. Lを実現する写像類や,エントロピーが小さい(つまりLに近いエントロピーを持つ)擬アノソフ写像類の構成について取り組んでいる.このような研究には,マジック多様体(これをNとおく)という1つの3次元ファイバー双曲多様体が重要な役割を果たすことが本研究によって既にわかっている.昨年度の成果は, Nの各fibrationのモノドロミーを具体的に構成したことであった.本年度の成果は以下の2つ.(1)昨年度の上の構成法を単純化し,幾何的にした.具体的には以下の通り. Oertelは, 3次元双曲ファイバー多様体のfibrationのファイバーやそのモノドロミーを考察するため,分岐曲面を導入した.この分岐曲面を, Nの場合に具体的に構成した.構成にはOertelによるアイデアと,マジック多様体の性質(本研究で示された性質)を使った.これは高沢光彦氏(東京工業大)との共同研究である.(2)一般に穴あき円板上の擬アノソフ写像類は組紐によって表される.漸近的にエントロピーが小さい擬アノソフ組紐の無限族の単純な構成法を与えた.以下はこの構成法の応用である;種数gの閉曲面上の写像類であって,超楕円的対合と可換なものの成す部分群は,球面2g-組紐群の部分群と同型である.このような球面組紐群の部分群の中で,擬アノソフ組紐全体の最小のエントロピーのgに関する漸近挙動について考察した.その結果,考えている部分群の最小エントロピーの漸近挙動は,球面組紐群のそれと同じであることが証明できた.これは廣瀬進氏(東京理科大)との共同研究である.曲面の写像類群の元のなかで一般的なものは,擬アノソフ写像類である.擬アノソフ写像類の写像トーラスは完備双曲構造を許容する.従って写像トーラスの双曲体積は擬アノソフ写像類の不変量となる.擬アノソフ写像類はエントロピーというもう1つの不変量を持つ.曲面Sを固定すると, S上の擬アノソフ写像類のエントロピーの集合には最小値L(S)が存在する.一方, 3次元双曲ファイバー多様体Mのfibrationのモノドロミーは擬アノソフである.従ってMのfibrationごとに擬アノソフの(位相的)エントロピーが定まる.さらにMの第2ベッチ数が2以上であるとき, Mは(ファイバーのトポロジーが異なるような)無限個のfibrationを許容する.よって多様体Mから擬アノソフ写像類の無限族が得られる.これまでに本研究では,マジック多様体(これをNとおく)とよばれる1つのファイバー双曲多様体に対して, fibrationのエントロピーを組織的に調べた.最小エントロピーを実現することが既に決定されている写像類や,あるいは知られている例の中で最小のエントロピーを持つ写像類は, NをDehn fillingして得られる円周上の曲面束のfibrationのモノドロミーになることが,本研究で示されている.エントロピーが小さいという意味で重要な写像類を生み出すマジック多様体のファイバーのモノドロミーであるが,写像類としてがどのような``形"をしているのか,これまでに知られていなかった.本年度の実績は以下である:1. Nの各のfibrationの擬アノソフモノドロミーを具体的に記述した.2.さらに,擬アノソフに付随するtrain track mapを具体的に記述した.(1)曲面の写像類群を考える.曲面Sを固定すると, S上の擬アノソフ写像のエントロピーの集合には最小値が存在する.このような研究には,マジック多様体(これをNとおく)という1つの3次元ファイバー双曲多様体が重要な役割を果たすことが本研究で明らかになっている.曲面を固定したとき,エントロピーが最小,あるいは知られている例の中で最小である擬アノソフは,これまでのところマジック多様体のモノドロミーとして現れている. 26年度は,論文``Dynamics of the monodromies of the fibrations on the magic 3-manifold"を執筆した. (現在投稿中.)この中で, Nの各fibrationのモノドロミーとそのファイバー,さらにtrain track mapを具体的に構成した.fibrationを無限個許容するような3次元ファイバー双曲多様体において,全ての擬アノソフモノドロミーを記述するという研究はこれまでになく,マジック多様体が最初の例である.(2)曲面の基本群の両側不変順序を保つ写像類,特に擬アノソフ写像類とそのエントロピーについて研究を行った(Dale Rolfsen氏との共同研究) | KAKENHI-PROJECT-24740039 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24740039 |
擬アノソフ写像類のエントロピーと三次元双曲ファイバー多様体の多面的研究 | その結果として, n点穴あき球面(あるいはn点穴あきトーラス)の上の擬アノソフ写像類の列で,曲面の基本群(この場合は自由群)の,ある両側不変順序を保つようなものが大量に構成出来ることがわかった.列をうまく選ぶと,エントロピーが0に収束するようなものが存在することもわかった.上の(1)の結果を使うと,ホワイトヘッド絡み目の補空間の基本群は両側不変順序を許容することがわかった.[曲面の基本群の両側不変順序を保つ写像類の研究.]穴あき曲面Sの写像類fを考える.写像類fは穴あき曲面Sの基本群,すなわち自由群の外部自己同型写像を誘導する.自由群は両側不変順序群である(つまり自由群は,両側不変なある順序を許容する)ことが知られてる.本年度は, (問題1)どのような写像類fが,自由群の両側不変順序を保つ(以下,たんに自由群の順序を保つ,という)か?(問題2)擬アノソフ写像類の中で,自由群の順序を保たないものが存在するか?についてDale Rolfsen氏と共同研究を行った.なお問題1は, (問題1')写像類fの写像トーラスの基本群が両側不変順序群になるのはどのようなfか?という問題と言い換えられることに注意する.曲面Sがn個の穴あき球面のとき,写像類が周期的(写像類群の元として位数が有限)の場合に問題1について完全な解答を得た.さらに周期的な写像類が自由群の順序を保つ場合には,保たれる不変順序の具体的を与えた.問題2については,自由群の順序を決して保たない擬アノソフ写像類の無限列を具体的に与えた.この結果を用いることによって(-2,3,8)-プレッツェルリンク補空間や,エントロピー最小の擬アノソフ3-組紐の写像トーラスの基本群が,両側不変順序群でないことを示した.[写像類群の部分群の最小エントロピーに関する研究.]種数gの閉曲面の写像類群の超楕円的ハンドル体群や超楕円的ゲーリッツ群といった2つの部分群の擬アノソフ写像類の最小エントロピーについて,種数gに関する漸近的挙動を決定した.一般に,超楕円的写像類は球面組ひもで記述できるという利点を持つ.本研究では,これら2つの部分群に属す,エントロピーが小さい擬アノソフを球面組ひもを経由して具体的に構成した.これは廣瀬進氏との共同研究である.曲面の写像類から写像トーラスとよばれる3次元ファイバー多様体が定まる.写像類が擬アノソフであることと,写像トーラスが双曲的であることは同値である.1次元ベッチ数が1より大きな3次元ファイバー双曲多様体Mを固定するとき,写像トーラスとしてのMの表し方は無限個ある.すなわち(位相型が同じと限らない)曲面の写像類の無限列があり,そこから得られる写像トーラスの無限列がMと同相になる.本研究ではマジック多様体Nについて,写像トーラスがNと同相になるような擬アノソフ写像類の全てを具体的に構成した.この結果を用いて, 3次元ファイバー双曲多様体の基本群の両側不変順序の性質を調べた.研究実績の概要で述べた論文を完成させた.平成25年度の本研究の結果として,超楕円的ハンドル体群の最小エントロピーの漸近挙動の決定(廣瀬進氏との共同研究)があるが,この内容を含む論文はほぼ完成している. 27年度の夏までには完成させる.研究実績の概要の(2)で述べたが,曲面の両側不変順序を保つ擬アノソフ写像類の研究をスタートできた.また研究の比較的早い段階で, (2)で述べた結果を得られた. | KAKENHI-PROJECT-24740039 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24740039 |
アルカリハイライド結晶の一重項自己束縛励起子による過渡的光吸収スペクトルの検出 | 本研究は、電子-格子強結合系の典型であるアルカリハライド結晶における自己束縛励起子(STE)の緩和形態の研究に関連し,従来未解決であった一重項STEの緩和形態およびその電子状態を明らかにすることを目的とするものである。本研究では、一重項STEの寿命(数ns)内における過渡的光吸収スペクトルを赤外域から紫外域までの広い波長領域で測定することにより,一重項STEの緩和形態を実験的に検証することを意図し,そのための分光光学系の設計・制作を行った.特に,赤外部に現れることが期待される電子遷移による吸収帯を検出するために,高速かつ高感度のHgCdTe赤外線検出器を新規に導入する等の分光系の改良をすすめ,0.12eV以上の領域で3nsの検出時間分解能(ただし,励起光源であるエキシマレーザのパルス幅により,系全体の時間分解能は20nsに制限されている)をもつ赤外過渡吸収スペクトル測定系を制作した。次に,典型となる対象物質としてKBr,KIおよびKC1:Iを用い,一重項STEによる過渡的光吸収スペクトルの検出を試みた.その結果,一重項STEによる光吸収は装置の測定限界(光学密度0.01)以下であることがわかり,現時点では所期の目的を達するには至らなかった.その原因として,励起光源による時間分解能の不足が危惧されるため,更に短パルスのレーザによる励起を検討することを今後の課題としたい.本研究は、電子-格子強結合系の典型であるアルカリハライド結晶における自己束縛励起子(STE)の緩和形態の研究に関連し,従来未解決であった一重項STEの緩和形態およびその電子状態を明らかにすることを目的とするものである。本研究では、一重項STEの寿命(数ns)内における過渡的光吸収スペクトルを赤外域から紫外域までの広い波長領域で測定することにより,一重項STEの緩和形態を実験的に検証することを意図し,そのための分光光学系の設計・制作を行った.特に,赤外部に現れることが期待される電子遷移による吸収帯を検出するために,高速かつ高感度のHgCdTe赤外線検出器を新規に導入する等の分光系の改良をすすめ,0.12eV以上の領域で3nsの検出時間分解能(ただし,励起光源であるエキシマレーザのパルス幅により,系全体の時間分解能は20nsに制限されている)をもつ赤外過渡吸収スペクトル測定系を制作した。次に,典型となる対象物質としてKBr,KIおよびKC1:Iを用い,一重項STEによる過渡的光吸収スペクトルの検出を試みた.その結果,一重項STEによる光吸収は装置の測定限界(光学密度0.01)以下であることがわかり,現時点では所期の目的を達するには至らなかった.その原因として,励起光源による時間分解能の不足が危惧されるため,更に短パルスのレーザによる励起を検討することを今後の課題としたい. | KAKENHI-PROJECT-05740192 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05740192 |
非線形発展方程式の複雑な爆発解に対する数値解析的研究 | 非線形発展方程式の解は必ずしも時間大域的には存在せず,しばしば有限時間で特異性を生じる.このような現象を解の爆発,特異性の生じる時刻を爆発時刻と呼んでいる.また,特異性の発生に伴って解のなんらかのノルムが無限大に発散するが,その発散のオーダーは爆発レートと呼ばれている.様々な方程式に現れる爆発解に対して多様な解析が行われているが,それらの中に複雑な爆発レートを持つ解の存在が指摘されているものがしばしば見受けられる.このような複雑な爆発レートを持つ爆発解を,統一的に数値計算によって捕まえることはかなりの困難を伴った問題である.我々は,2017年にスケール変換不変性をもつ非線形発展方程式に対して,リスケーリング・アルゴリズムを利用して,爆発解の爆発レートを見積もる方法を提案した.本研究の第一の目的は,この提案手法の精密化と適用範囲の拡大であり,第二の目的は,解析的にはその爆発レートが知られていない未知の問題への提案手法の適用とそれに基づいた数学解析である.提案手法では,リスケーリング・アルゴリズムの数値的な実現から得られるある数列の挙動の情報を引き出す必要があり,そのための方法の確立が本研究の第一の課題であった.2018年度には,このための一方法を提案し,幾つかの方程式に対する数値計算を通じてその有効性を確かめた.この手法では,リスケーリング・アルゴリズムに含まれるパラメータを有効に利用することができることも付記する.また,平面曲線の曲率流の解の爆発に伴う爆発集合の境界での挙動の数値的観測も本研究課題の一つであったが,その点についての検討も行った.これらの成果について国内外の研究集会で発表するとともに,その内容を数理解析研究所講究録に投稿した.また,解析的に爆発レートの知られていない面積保存の曲率流・周長保存の曲率流に対する提案手法による数値実験を行った.本研究課題申請時の計画では,上記爆発レートに対する提案手法について,以下のことを行うことになっていた.1.提案方法の改良・精密化(数値計算から上記数列の挙動の情報を引き出す方法の研究.精度保証付き数値計算の利用の検討.リスケーリング・アルゴリズムに含まれるパラメータの利用方法の確立.)2.提案方法の適用範囲の拡大(藤田タイプの半線形放物型偏微分方程式,Keller-Segel方程式等への適用の検討.爆発集合の境界上では解の最大値の爆発レートとは異なるレートで解が爆発する状況の検討.完全にはスケール変換不変性を持たないような方程式に対する提案手法の有効性の検討.)3.未知の問題に対する適用と数学解析(面積保存の曲率流などへの適用と数学解析の検討.)上記の計画の内,2018年度には以下のことを行った.数値計算から上記数列の挙動の情報を引き出す方法の研究.リスケーリング・アルゴリズムに含まれるパラメータの利用方法の確立.爆発集合の境界上では解の最大値の爆発レートとは異なるレートで解が爆発する状況の検討.面積保存の曲率流などへの適用の検討.上記のように研究計画の内の多くの課題に着手し着実に研究成果をあげるとともに,国内外の研究集会でその成果を発表していることから,本課題の進捗状況はおおむね順調に進展していると考えている.本研究のテーマとなっている爆発問題については,以前より,早稲田高等学院の穴田浩一氏・芝浦工業大学の石渡哲哉氏と定期的に議論を行いながら研究を推進してきた.今年度も引き続き一ヶ月に一度程度の頻度で両氏との研究打ち合わせを行いながら研究を進める.また申請時の計画通り,7月にスペイン・バレンシアで行われる国際会議ICIMA2019に参加し,本課題に関する研究成果を発表するとともに,本研究課題に関連する情報収集を行う予定である.また,やはり申請時の計画通り,高速のノートパソコンを導入し,数値計算環境を充実させる.これによって,本課題の遂行に必須の数値計算プログラム開発が今まで以上に機動的に行えるようになることが期待される.具体的な研究課題としては,上記申請時の計画の内,上記数列の挙動の情報を引き出す方法の研究の継続,精度保証付き数値計算の利用の検討,藤田タイプやKeller-Segel方程式等への適用の検討,爆発集合の境界での爆発解の挙動に関する研究の継続,面積保存の曲率流・周長保存の曲率流に対する適用に関する研究の継続とそれらに対する数学解析,等を行う.当面の数値計算上の目標は上述したいくつかの問題に対する数値実験例の蓄積である.また,昨年度行った数値実験から,偏微分方程式に対して提案手法を適用する際に生じる困難がいくつか明らかになっている.一つは,問題によっては,上記数列の計算時間が膨大になるという問題である.また,別の問題は,上記数列の項数を増やして正確に求めるためには,偏微分方程式の近似の精度をあげなければならないという問題である.本年度はこれらの困難点について,理論的な解決を試みる.非線形発展方程式の解は必ずしも時間大域的には存在せず,しばしば有限時間で特異性を生じる.このような現象を解の爆発,特異性の生じる時刻を爆発時刻と呼んでいる.また,特異性の発生に伴って解のなんらかのノルムが無限大に発散するが,その発散のオーダーは爆発レートと呼ばれている.様々な方程式に現れる爆発解に対して多様な解析が行われているが,それらの中に複雑な爆発レートを持つ解の存在が指摘されているものがしばしば見受けられる.このような複雑な爆発レートを持つ爆発解を,統一的に数値計算によって捕まえることはかなりの困難を伴った問題である. | KAKENHI-PROJECT-18K03427 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K03427 |
非線形発展方程式の複雑な爆発解に対する数値解析的研究 | 我々は,2017年にスケール変換不変性をもつ非線形発展方程式に対して,リスケーリング・アルゴリズムを利用して,爆発解の爆発レートを見積もる方法を提案した.本研究の第一の目的は,この提案手法の精密化と適用範囲の拡大であり,第二の目的は,解析的にはその爆発レートが知られていない未知の問題への提案手法の適用とそれに基づいた数学解析である.提案手法では,リスケーリング・アルゴリズムの数値的な実現から得られるある数列の挙動の情報を引き出す必要があり,そのための方法の確立が本研究の第一の課題であった.2018年度には,このための一方法を提案し,幾つかの方程式に対する数値計算を通じてその有効性を確かめた.この手法では,リスケーリング・アルゴリズムに含まれるパラメータを有効に利用することができることも付記する.また,平面曲線の曲率流の解の爆発に伴う爆発集合の境界での挙動の数値的観測も本研究課題の一つであったが,その点についての検討も行った.これらの成果について国内外の研究集会で発表するとともに,その内容を数理解析研究所講究録に投稿した.また,解析的に爆発レートの知られていない面積保存の曲率流・周長保存の曲率流に対する提案手法による数値実験を行った.本研究課題申請時の計画では,上記爆発レートに対する提案手法について,以下のことを行うことになっていた.1.提案方法の改良・精密化(数値計算から上記数列の挙動の情報を引き出す方法の研究.精度保証付き数値計算の利用の検討.リスケーリング・アルゴリズムに含まれるパラメータの利用方法の確立.)2.提案方法の適用範囲の拡大(藤田タイプの半線形放物型偏微分方程式,Keller-Segel方程式等への適用の検討.爆発集合の境界上では解の最大値の爆発レートとは異なるレートで解が爆発する状況の検討.完全にはスケール変換不変性を持たないような方程式に対する提案手法の有効性の検討.)3.未知の問題に対する適用と数学解析(面積保存の曲率流などへの適用と数学解析の検討.)上記の計画の内,2018年度には以下のことを行った.数値計算から上記数列の挙動の情報を引き出す方法の研究.リスケーリング・アルゴリズムに含まれるパラメータの利用方法の確立.爆発集合の境界上では解の最大値の爆発レートとは異なるレートで解が爆発する状況の検討.面積保存の曲率流などへの適用の検討.上記のように研究計画の内の多くの課題に着手し着実に研究成果をあげるとともに,国内外の研究集会でその成果を発表していることから,本課題の進捗状況はおおむね順調に進展していると考えている.本研究のテーマとなっている爆発問題については,以前より,早稲田高等学院の穴田浩一氏・芝浦工業大学の石渡哲哉氏と定期的に議論を行いながら研究を推進してきた.今年度も引き続き一ヶ月に一度程度の頻度で両氏との研究打ち合わせを行いながら研究を進める.また申請時の計画通り,7月にスペイン・バレンシアで行われる国際会議ICIMA2019に参加し,本課題に関する研究成果を発表するとともに,本研究課題に関連する情報収集を行う予定である. | KAKENHI-PROJECT-18K03427 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K03427 |
グリオ-マ由来変異原性蛋白に関する基礎的・臨床的研究 | 膠芽腫は多形性に富み、浸潤性、時には多巣性に発育し、浸潤先端部では血管内皮細胞増殖が著明で、また硬膜に接する部では線維芽細胞の腫瘍性増殖がみとめられる。すなわち、膠芽腫細胞は近接する他の正常細胞に対して変異原性作用を有しているものと思われる。本研究は、膠芽腫細胞が産生する変異原性蛋白を明らかにする目的で行なわれた。まずはじめに、培養グリオ-マ細胞の培養液を分画し、分子量2万以下の分画に増殖促進因子に含まれていることを見いだした。分子量2万以下の粗分画を家兎に免疫して得られた抗体でスクリ-ニングしたところ、この抗体と反応する分子量2万以下の蛋白は、培養液中には検出されなかったが、細胞抽出液中に存在し、分子量が17kdの蛋白が主体であった。そこで、細胞抽出液から電気泳動的に17kd蛋白を精製し、家兎に免疫して抗血清をつくり、アフィニィティクロマトグラフィ-で抗体および抗原の精製を行なった。その結果、この抗体の認識する抗原は血小板由来増殖因子(platelet derived growthfactor:PDGF)と関連する蛋白群であることが判明した。グリオ-マにおけるPDGF関連蛋白群は以下のような特徴を示した。1)17kdモノマ-は重合し高分子となるが、高分子の中でも56kd蛋白がもっとも安定した形である。2)17kdモノマ-は燐酸化されないが、高分子になる段階で燐酸化を受け、しかも56kd蛋白がより長時間燐酸化された状態で存続する。3)細胞外においても、燐酸化された56kd蛋白のみが安定して存在する。4)56kd蛋白を培養細胞に投与するとラッフル膜形成を促進し、アクチン線維の配列を変える。5)脳腫瘍は良性、悪性を問わず、また腫瘍の種類を問わず、すべての腫瘍がPDGF関連蛋白を産生しており、腫瘍細胞として存続しつづけるための必須蛋白である。6)BrdU標識法による増殖(S)期細胞率と、PDGF関連蛋白量を比較すると、腫瘍群間では相関性はないが、各腫瘍群内においては正の相関を示す傾向がみられる。膠芽腫は多形性に富み、浸潤性、時には多巣性に発育し、浸潤先端部では血管内皮細胞増殖が著明で、また硬膜に接する部では線維芽細胞の腫瘍性増殖がみとめられる。すなわち、膠芽腫細胞は近接する他の正常細胞に対して変異原性作用を有しているものと思われる。本研究は、膠芽腫細胞が産生する変異原性蛋白を明らかにする目的で行なわれた。まずはじめに、培養グリオ-マ細胞の培養液を分画し、分子量2万以下の分画に増殖促進因子に含まれていることを見いだした。分子量2万以下の粗分画を家兎に免疫して得られた抗体でスクリ-ニングしたところ、この抗体と反応する分子量2万以下の蛋白は、培養液中には検出されなかったが、細胞抽出液中に存在し、分子量が17kdの蛋白が主体であった。そこで、細胞抽出液から電気泳動的に17kd蛋白を精製し、家兎に免疫して抗血清をつくり、アフィニィティクロマトグラフィ-で抗体および抗原の精製を行なった。その結果、この抗体の認識する抗原は血小板由来増殖因子(platelet derived growthfactor:PDGF)と関連する蛋白群であることが判明した。グリオ-マにおけるPDGF関連蛋白群は以下のような特徴を示した。1)17kdモノマ-は重合し高分子となるが、高分子の中でも56kd蛋白がもっとも安定した形である。2)17kdモノマ-は燐酸化されないが、高分子になる段階で燐酸化を受け、しかも56kd蛋白がより長時間燐酸化された状態で存続する。3)細胞外においても、燐酸化された56kd蛋白のみが安定して存在する。4)56kd蛋白を培養細胞に投与するとラッフル膜形成を促進し、アクチン線維の配列を変える。5)脳腫瘍は良性、悪性を問わず、また腫瘍の種類を問わず、すべての腫瘍がPDGF関連蛋白を産生しており、腫瘍細胞として存続しつづけるための必須蛋白である。6)BrdU標識法による増殖(S)期細胞率と、PDGF関連蛋白量を比較すると、腫瘍群間では相関性はないが、各腫瘍群内においては正の相関を示す傾向がみられる。グリオ-マ細胞培養液中の変異原性蛋白の検索1)ヒトグリオ-マ細胞株KNSー42を無血清培養液で培養したCdーDEMには、線維芽細胞,血管内皮細胞,およびグリオ-マ細胞の分裂増殖を促進する物質が含まれていることを確認した。2)CdーDEMを分子量2万でカットし、2万以下の分画を家兎に免疫し抗体を作製した。この抗体が認識する抗原は、いろいろあるが、56Kd抗原に着目した。なぜなら、抗56Kd抗体は、細胞内の17Kdと反応し、この17Kdは、また抗PDGFーBモノクロナ-ル抗体でも認識されたからである。3)抗GdーPDGF抗体無血清培養液から56Kd蛋白の精製は困難だったため、細胞内17Kd蛋白を抽出し、家兎に免疫した。この抗体は細胞外の56Kd蛋白とも反応することを確認した。 | KAKENHI-PROJECT-02670632 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02670632 |
グリオ-マ由来変異原性蛋白に関する基礎的・臨床的研究 | この抗体の認識する抗原は、抗PDGF抗体とも反応することから、グリオ-マ由来PDGF(GdーPDGF)に対する抗体である。4)GdーPDGFの生物活性抗GdーPDGFの認識する抗原は、無血清培養液中には56Kdのみであった。また細胞内から抽出した17Kdは、ただちに56Kd蛋白に転換した。56Kd蛋白を培養液に加えることにより、グリオ-マ細胞や線維芽細胞のruffling membrane形成を促進し、かつアクチン線維の再分布を惹起した。PDGFも同様の作用があり、56KdGdーPDGFは、グリオ-マ細胞が産生する変異原性物質のなかのひとつと思われる。膠芽腫は多形性に富み、浸潤性、時には多巣性に発育し、浸潤先端部では血管内皮細胞増殖が著明で、また硬膜に接する部では線維芽細胞の腫瘍性増殖がみとめられる。すなわち、膠芽腫細胞は近接する他の正常細胞に対して変異原性作用を有しているものと思われる。本研究は、膠芽腫細胞が産生する変異原性蛋白を明らかにする目的で行なわれた。まずはじめに、培養グリオ-マ細胞の培養液を分画し、分子量2万以下の分画に増殖促進因子が含まれていることを見いだした。分子量2万以下の粗分画を家兎に免疫して得られた抗体でスクリ-ニングしたところ、この抗体と反応する分子量2万以下の蛋白は、培養液中には検出されなかったが、細胞抽出液中に存在し、分子量が17kdの蛋白が主体であった。そこで、細胞抽出液から電気泳動的に17kd蛋白を精製し、家兎に免疫して抗血清をつくり、アフィニティクロマトグラフィ-で抗体および抗原の精製を行なった。その結果、この抗体の認識する抗原は血小板由来増殖因子(platelet derived growthfactor:PDGF)と関連する蛋白群であることが判明した。グリオ-マにおけるPDGF関連蛋白群は以下のような特徴を示した。1)17kdモノマ-は重合し高分子となるが、高分子の中でも56kd蛋白がもっとも安定した形である。2)17kdモノマ-は燐酸化されないが、高分子になる段階で燐酸化を受け、しかも56kd蛋白がより長時間燐酸化された状態で存続する。3)細胞外においても、燐酸化された56kd蛋白のみが安定して存在する。4)56kd蛋白を培養細胞に投与するとラッフル膜形成を促進し、アクチン線維の配列を変える。5)脳腫瘍は良性、悪性を問わず、また腫瘍の種類を問わず、すべての腫瘍がPDGF関連蛋白を産生しており、腫瘍細胞として存続しつづけるための必須蛋白である。6)BrdU標識法による増殖(S)期細胞率と、PDGF関連蛋白量を比較すると、腫瘍群間では相関性はないが、各腫瘍群内においては正の相関を示す傾向がみられる。 | KAKENHI-PROJECT-02670632 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02670632 |
有機金属錯体からの還元的脱離とβ-脱離における選択性 | これまで,一連の有機金(III)化合物や有機ニッケル(II)化合物を単離し,その熱分解反応を詳細に検討し,炭素-炭素結合生成を伴う還元的脱離反応における支配因子について検討してきた.ここでは有機遷移金属錯対の熱分解反応におけるもう一つの低エネルギー経路としてのβ-脱離反応について検討した.従来β-水素脱離反応については比較的よく検討されてきたが,水素以外のβ-位の置換基の脱離反応についてはあまり検討されきいない.ベンゼン中,デトラキス(トリフェニルホスフィン)白金(II)とβ-ブロモフェネトールの反応を行ったところ,酸化的付加反応が起き, β-行にフェノキシ基を持つ新しい有機白金錯体, (β-フェノキシエチル)(ブロモ)ビス(トリフェニルホスフィン)白金(II)を単離することができた.この錯体は赤外およびNMRスペクトル,元素分析,単結晶X線-構造解析および化学反応性から同定した.この錯体の熱分解反応を行うと,エチレンおよびビニルフェニルエーテルが生成し, β-位の水素のみならず,フェノキシ基も競争的に脱離することが分かった.このフェノキシ基の脱離反応によるエチレンの生成を動力学的に検討した結果,三級ホスフィン,無水マレイン酸等のπ酸, BF3・Et20等のルイス酸等を系に添加するこによりフェノキシ基の脱離反応は著しく加速されることが分り, 5配位中間体を通り反応が進むのではないかと推定した.このようなβ-位の置換基の脱離反応の立体化学を明らかにするため, β-位に置換基を持つ,スレオおよびエリスロのsec-ブチル白金(II)錯体からのβ-脱離生成物を検討したところ,アセトキシ基やヒドロキシ基の脱離反応は本来シス脱離であると考えられた.しかしブロモ基の場合には逆にトランス脱離であった.また,ニッケルやパラジウム錯体でも同様であった.これまで,一連の有機金(III)化合物や有機ニッケル(II)化合物を単離し,その熱分解反応を詳細に検討し,炭素-炭素結合生成を伴う還元的脱離反応における支配因子について検討してきた.ここでは有機遷移金属錯対の熱分解反応におけるもう一つの低エネルギー経路としてのβ-脱離反応について検討した.従来β-水素脱離反応については比較的よく検討されてきたが,水素以外のβ-位の置換基の脱離反応についてはあまり検討されきいない.ベンゼン中,デトラキス(トリフェニルホスフィン)白金(II)とβ-ブロモフェネトールの反応を行ったところ,酸化的付加反応が起き, β-行にフェノキシ基を持つ新しい有機白金錯体, (β-フェノキシエチル)(ブロモ)ビス(トリフェニルホスフィン)白金(II)を単離することができた.この錯体は赤外およびNMRスペクトル,元素分析,単結晶X線-構造解析および化学反応性から同定した.この錯体の熱分解反応を行うと,エチレンおよびビニルフェニルエーテルが生成し, β-位の水素のみならず,フェノキシ基も競争的に脱離することが分かった.このフェノキシ基の脱離反応によるエチレンの生成を動力学的に検討した結果,三級ホスフィン,無水マレイン酸等のπ酸, BF3・Et20等のルイス酸等を系に添加するこによりフェノキシ基の脱離反応は著しく加速されることが分り, 5配位中間体を通り反応が進むのではないかと推定した.このようなβ-位の置換基の脱離反応の立体化学を明らかにするため, β-位に置換基を持つ,スレオおよびエリスロのsec-ブチル白金(II)錯体からのβ-脱離生成物を検討したところ,アセトキシ基やヒドロキシ基の脱離反応は本来シス脱離であると考えられた.しかしブロモ基の場合には逆にトランス脱離であった.また,ニッケルやパラジウム錯体でも同様であった. | KAKENHI-PROJECT-62215006 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62215006 |
エンドサイトーシスからのエスケープ機能を装備した新規治療用人工ウイルスの開発 | 我々は膵癌におけるエンドサイトーシス経路を解明し、抗癌剤内包人工ウイルスを作成した。インテグリンβ3がインテグリンβ5と比較し著しく高発現した膵癌ではアデノウイルス導入遺伝子の発現が低下していることが分かり、インテグリンβ3発現をsiRNAを用いて抑制した膵癌細胞では、アデノウイルス導入遺伝子の発現が高くなっているという結果が得られた。人工ウイルス作成では、プロテアーゼシグナルによりインテグリンβ3のsiRNAが放出されるように人工ウイルスを改変した本研究の目的は、アデノウイルスの細胞内侵入に関わる因子を同定し、アデノウイルスの細胞内侵入を模倣した薬剤内包型新規機能化人工ウイルスを作成し、その効率的癌細胞内導入方法を新規に開発することである。昨年度、我々は膵癌におけるエンドサイトーシス経路を解明し、抗癌剤内包人工ウイルスを作成した。インテグリンβ3がインテグリンβ5と比較し著しく高発現した膵癌ではアデノウイルス導入遺伝子の発現が低下していることが分かり、インテグリンβ3発現をsiRNAを用いて抑制した膵癌細胞では、アデノウイルス導入遺伝子の発現が高くなっているという結果が得られた。人工ウイルス作成では、このインテグリンに注目し、プロテアーゼシグナルによりインテグリンβ3のsiRNAが放出されるように人工ウイルスを改変した。本年度は、まず人工ウイルスの細胞毒性試験をMTTアッセイ等で評価し、毒性がない事を確認した。また蛍光ラベルした人工ウイルスをマウスに静注し、超高感度CCDカメラ装着イメージングシステムで主要臓器への集積性や滞留性を評価した。次に、アデノウイルス治療が膵癌細胞株に対してどのように作用するか検討するためin vitroの実験を行ったところ、HGF/MET経路を介した癌間質相互作用が膵癌細胞へのウイルス取り込みを抑制する事が分かり、ウイルス治療と並行して間質を制御する必要性が確認された。さらには、膵癌治療薬として代表的なゲムシタビン治療とアデノウイルス治療との関連を検討したところ、ゲムシタビン治療抵抗性を示す膵癌細胞株において、より効率よくウイルスが取り込まれ、治療効率も高い事が示された。我々は膵癌におけるエンドサイトーシス経路を解明し、抗癌剤内包人工ウイルスを作成した。インテグリンβ3がインテグリンβ5と比較し著しく高発現した膵癌ではアデノウイルス導入遺伝子の発現が低下していることが分かり、インテグリンβ3発現をsiRNAを用いて抑制した膵癌細胞では、アデノウイルス導入遺伝子の発現が高くなっているという結果が得られた。人工ウイルス作成では、プロテアーゼシグナルによりインテグリンβ3のsiRNAが放出されるように人工ウイルスを改変した本研究の目的は、アデノウイルスの細胞内侵入に関わる因子を同定し、アデノウイルスの細胞内侵入を模倣した薬剤内包型新規機能化人工ウイルスを作成し、その効率的癌細胞内導入方法を新規に開発することである。本年度我々は以下1.- 2.について研究した。1.膵癌におけるendocytosis経路の解明:アデノウイルスの細胞表面への接着に関わるCoxackie virus and adenovirus receptor (CAR)、アデノウイルスのエンドソームへの移行とそこからの脱出に関わるintegrin αv, integrin β3, integrin β5, dynamin 2の膵癌における発現状況とアデノウイルス導入遺伝子の発現との関係を検討した。その結果、integrin β3がintegrin β5と比較し著しく高発現した膵癌ではアデノウイルス導入遺伝子の発現が低下していることが分かった。さらに、integrin β3をsiRNAを用いて抑制しその効果を評価した結果、siRNAによりintegrin β3の発現を抑制した膵癌細胞では、アデノウイルス導入遺伝子の発現が高くなっているという結果が得られた。2.抗癌剤内包人工ウイルスの作成:integrinに注目し、プロテアーゼシグナルによりintegrinβ3のsiRNAが放出されるように人工ウイルスを改変した。具体的には、独自に開発した古細菌Methanococcusjannaschiiが作るsmall heat shock proteinに由来するタンパク質ナノカプセルMj285(人工ウイルス)に、ゲムシタビン(GEM)及びintegrinβ3のsiRNAを内包させ、さらにアミド結合によるbioconjugationによりMUC1抗体を付加することに成功した。交付申請書作成時に記載した本年度の研究実施計画と比較して、おおむね順調に進展しているため。本年度作成した新規人工ウイルスの膵癌細胞への集積率、治療効果をin vitro、in vivoにおいて検証する。新規人工ウイルスによる膵癌細胞内への導入効率の改善が不十分であれば、エンドサイトーシスエスケープに大きな影響を与える他の分子候補をターゲットとしたsiRNAを内包した新規人工ウイルスを作成し膵癌細胞内への導入効率を検証する。本年度作成した新規人工ウイルスの膵癌細胞への集積率、治療効果をin vitro、in vivoにおいて検証する。新規人工ウイルスによる膵癌細胞内への導入効率の改善が不十分であれば、エンドサイトーシスエスケープに大きな影響を与える他の分子候補をターゲットとしたsiRNAを内包した新規人工ウイルスを作成し膵癌細胞内への導入効率を検証する。in vitro実験に伴うsiRNA試薬などの費用がかかる。得られた知見は欧米雑誌に投稿もしくは国際学会にて発表予定であり、それに伴う経費も計上する。 | KAKENHI-PROJECT-23791543 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23791543 |
運動神経細胞の選択的脆弱性に関する分子細胞機構の解明 | 運動神経細胞において,代謝ストレスによりグリシン放出が促進され,本来は抑制性作用を示すこの神経伝達物質がシナプス間隙においてspilloverし,NMDA受容体に対しては共作動物質として機能し,最終的には興奮性作用のあるNMDA受容体活性が増強され,選択的に細胞死が誘導されることを,世界で初めて電気生理学的に証明した.運動神経細胞において,代謝ストレスによりグリシン放出が促進され,本来は抑制性作用を示すこの神経伝達物質がシナプス間隙においてspilloverし,NMDA受容体に対しては共作動物質として機能し,最終的には興奮性作用のあるNMDA受容体活性が増強され,選択的に細胞死が誘導されることを,世界で初めて電気生理学的に証明した.運動神経細胞(MNs)は代謝ストレスに対して選択的な脆弱性を示すが,その「選択的脆弱性」の分子機構は未解明である.私は,その分子機構を解明することが,MNsが選択的に障害される神経変性疾患の一つである筋萎縮性硬化症(ALS)の発症機序を解明する一助に成ると考え,低酸素状態における舌下神経MNsと迷走神経背側核(dmX)のシナプス入力を比較検討した.左記神経核を選択した理由として,両神経核が下部延髄において互いに隣接し,いずれもコリン作動性大型神経細胞から構成されているにもかかわらず,舌下神経はMNsの集合であるのに対し,dmXはnon-MNsの集合であることがあげられた.若年ラットの急性脳幹スライスを作成し,パッチクランプ法により,局所神経回路の構造を維持した状態で,舌下神経MNsとdmXを実験的な低酸素状態に置き,テトロドトキシン存在下に膜電位,膜電流,シナプス後電流を測定した.その結果,(1)舌下神経MNsでは,低酸素負荷に伴い,内向き電流,グリシン放出の増加,NMDA受容体電流の増強が認められた.(2)一方,dmXでは外向き電流が生じ,神経伝達物質放出の変化は認められなかった,という電気生理学的特長を証明した。以上の結果は,MNsにおいては,代謝ストレスによりグリシン放出が促進され,本来は抑制性作用を示すこの神経伝達物質がシナプス間隙においてspilloverし,NMDA受容体に対しては共作動物質として機能し,最終的には興奮性作用のあるNMDA受容体活性が増強され,選択的に細胞死が誘導されることを,世界で初めて電気生理学的に証明したものであり、この結果はALSの病態解明には重要な役割を果たす現象であると考えております.なおこの結果は次ページにも述べる雑誌にて報告した。(Eur J Neurosci 25;1748-1757,2007)運動神経細胞(MNs)は代謝ストレスに対して「選択的脆弱性」を示すが,その分子機構は未解明である.選択的脆弱性の分子機構を解明することは,MNsが選択的に障害される神経変性疾患の一つである筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療開発には必要不可欠と考えられる.私は,この分子機構の解明を目的とした研究を行っており,平成18年度は,ラットの舌下神経MNsでは,代謝ストレスにより,グリシン放出が誘導され,その結果NMDA受容体活性が高まることを証明し報告した(EurJNeurosci 25;1748-1757,2007).平成19年度は,この結果をもとに各種MNsにおけるグリシン放出率とグリシン結合阻害による細胞死抑制に関して研究を進めた.対象としたMNsとして,ALS罹患時に舌下神経MNsと同様に障害をうけるが,障害の程度が軽い,顔面神経MNsを対象とした.具体的には,若年ラットの急性脳幹スライスを作成し,パッチクランプ法により,局所神経回路の構造を維持した状態で,顔面神経MNsを実験的な低酸素状態に置き,抗酸化作用のあるascorbic acidやNa channel抑制効果のあるriluzoleなどの薬剤投与を行いながら,膜電位,膜電流,シナプス後電流を測定した.その結果,(1)舌下神経MNsと同様に顔面神経MNsでも,低酸素負荷に伴い,内向き電流,グリシン放出の増加が認められた.(2)一方,内向き電流,グリシン放出の増加の程度としては舌下神経MNsと比較すると軽度であった,という電気生理学的特長を証明した.以上の結果により,MNsにおいては,代謝ストレスによりグリシン放出が促進されるが,その脆弱性には細胞間により差があることが証明された.今後は,この結果をもとに,実際のALSモデルマウスを使用し,各MNsにおける代謝ストレスに対する分子機構解明を予定している.運動神経細胞(MNs)が選択的に障害される神経変性疾患の筋萎縮性側策硬化症(ALS)において、MNsは代謝ストレスに対して「選択的脆弱性」を示すが,その分子機構は未解明である.私は,この分子機構の解明を目的とした研究を行っており,平成18年度は,ラットの舌下神経MNsでは,代謝ストレスにより,グリシン放出が誘導され,その結果NMDA受容体活性が高まることを証明し,報告した(Eur J Neurosci25 ; 1748-1757, 2007).この結果をもとに各種MNsにおけるグリシン放出率とグリシン結合阻害による細胞死抑制に関して研究を進めた.具体的には,平成19年度には、顔面神経MNsでの検討を、平成20年度には、ALSでは障害されにくい動眼神経MNsでの検討を行った。 | KAKENHI-PROJECT-18790604 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18790604 |
運動神経細胞の選択的脆弱性に関する分子細胞機構の解明 | 具体的には,若年ラットの急性脳幹スライスを作成し,パッチクランプ法により,局所神経回路の構造を維持した状態で,顔面神経MNsと動眼神経MNsを実験的な低酸素状態に置き, TTX存在下に,抗酸化作用のあるascorbicacidやNachamel抑制効果のあるriluzoleなどの薬剤投与を行い,膜電位,膜電流,シナプス後電流を測定した.その結果, (1)舌下神経MNsと同様に顔面神経MNsでも,低酸素負荷に伴い,内向き電流,グリシン放出の増加が認められた.(2)顔面神経MNsでは、内向き電流,グリシン放出の増加の程度としては舌下神経MNsと比較すると軽度であった,(3)動眼神経MNsでは、舌下・顔面MNsとは異なり、内向き電流は発生せず、グリシン放出がほとんど認められない、という電気生理学的特長を証明した.以上の結果により, MNsにおいては,代謝ストレスによりグリシン放出が促進されるが,その脆弱性には細胞間により差があることが明確に証明された.今回の結果は、2009年11月に開催される北米神経科学学会にて発表予定である。 | KAKENHI-PROJECT-18790604 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18790604 |
振動的な解を持つ超離散系の研究 | 振動的な解を持つ超離散系としては、番号付箱玉の系とバーガースセルオートマトンが挙げられる。本年度はバーガースセルオートマトンに着目し、その解の構造を詳細に調べることにした。バーガースセルオートマトンは交通流モデルとしてよく使われるRule184セルオートマトンを含むことが知られている。またバーガースセルオートマトンは流体力学の流れの場に相当する量に注目したEuler表現の方程式である。ところが最近、Rule184には粒子的動きに着目したLagrange表現が存在することがわかった。この表現もまたMax-Plus代数を用いて表現され、超離散方程式と深い関連が示唆される。そこで、Euler表現とLagrange表現の対応を考慮しつつ、様々な初期値に関する計算機シミュレーション、数式処理計算を行った。その結果、超離散拡散方程式を通して、Euler表現とLagrange表現を結ぶEuler-Lagrange変換の式を具体的に求めることに成功した。この変換式はMax-Plus代数とStep関数の間に成り立っ新たな代数的公式を発見することによって導くことができたものである。変換式は特定の方程式に体存しないものなので、保存系のセルオートマトンに応用できる可能性があり、今後他の交通流モデルへの応用が期待できる画期的なものである。他の系への適用に関する研究を継続して行っていく予定である。振動的な解を持つ超離散系としては、番号付箱玉の系とバーガースセルオートマトンが挙げられるが、本年度はバーガースセルオートマトンに着目し、その解の構造を詳細に調べることにした。バーガースセルオートマトンは交通流モデルとしてよく使われるRule184セルオートマトンを含むことが知られている。またバーガースセルオートマトンは流体力学の流れの場に相当する量に注目したEuler表現の方程式である。ところが最近、Rule184には粒子的動きに着目したLagrange表現が存在することがわかった。この表現もまたMax-Plus代数を用いて表現され、超離散方程式と深い関連が示唆される。そこで、Euler表現とLagrange表現の対応を考慮しつつ、様々な初期値に関する計算機シミュレーション、数式処理計算を行った。その結果、超離散拡散方程式を通して、Euler表現とLagrange表現を結ぶEuler-Lagrange対応の式を具体的に求めることに成功した。さらにこの式を使うことによって、バーガースセルオートマトンからRule184のLagrange表現を具体的に導くことに成功した。またこのEuler-Lagrange対応を多値のバーガースセルオートマトンに適用すると、多速度、長い見通しの交通流モデルのLagrange表現が導け出せることもわかった。計算機シミュレーション、数式処理用マシンとしては、Athlon1900MP+を2基搭載したワークステーションを新たに購入し、その上にシステム構築した。振動的な解を持つ超離散系としては、番号付箱玉の系とバーガースセルオートマトンが挙げられる。本年度はバーガースセルオートマトンに着目し、その解の構造を詳細に調べることにした。バーガースセルオートマトンは交通流モデルとしてよく使われるRule184セルオートマトンを含むことが知られている。またバーガースセルオートマトンは流体力学の流れの場に相当する量に注目したEuler表現の方程式である。ところが最近、Rule184には粒子的動きに着目したLagrange表現が存在することがわかった。この表現もまたMax-Plus代数を用いて表現され、超離散方程式と深い関連が示唆される。そこで、Euler表現とLagrange表現の対応を考慮しつつ、様々な初期値に関する計算機シミュレーション、数式処理計算を行った。その結果、超離散拡散方程式を通して、Euler表現とLagrange表現を結ぶEuler-Lagrange変換の式を具体的に求めることに成功した。この変換式はMax-Plus代数とStep関数の間に成り立っ新たな代数的公式を発見することによって導くことができたものである。変換式は特定の方程式に体存しないものなので、保存系のセルオートマトンに応用できる可能性があり、今後他の交通流モデルへの応用が期待できる画期的なものである。他の系への適用に関する研究を継続して行っていく予定である。 | KAKENHI-PROJECT-13750065 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13750065 |
木造軸組を主とする住宅の新工法,新技術の構法評価に関する研究 | 第1年度(平成6年度)現在全国的に注目されている軸組とパネル壁を組み合わせた軸組パネル化構法について、13社16構法を抽出し、プレカットから建方までの工程を追って、木材の歩留まり、ディテ-ルのシステム、建方における作業性と省力効果、工期短縮などを調査、全体として住宅生産の合理化がいかに行われているかを明らかにした。特に壁パネル、屋根パネルについては、断熱材や窓を組み込んだ工場生産が行われており、高気密、高断熱の住宅生産を中小工務店レベルでも行えるオープンなシステムになってきていることを示し、オープンであるが由の部材の互換性が問題であることを明らかにした。軸組部の改良については、10社の木造軸組新構法を抽出して、在来の継手・仕口と比較することにより、金物の役割を明らかにした。第2年度(平成7年度)木造軸組パネル構法を中心として,在来の軸組,2×4構法も含めて,工場生産過程と現場における部材,部品の互換性を調査検討した。これにより生産単位と施工性を評価することが可能となった。第1年度(平成6年度)現在全国的に注目されている軸組とパネル壁を組み合わせた軸組パネル化構法について、13社16構法を抽出し、プレカットから建方までの工程を追って、木材の歩留まり、ディテ-ルのシステム、建方における作業性と省力効果、工期短縮などを調査、全体として住宅生産の合理化がいかに行われているかを明らかにした。特に壁パネル、屋根パネルについては、断熱材や窓を組み込んだ工場生産が行われており、高気密、高断熱の住宅生産を中小工務店レベルでも行えるオープンなシステムになってきていることを示し、オープンであるが由の部材の互換性が問題であることを明らかにした。軸組部の改良については、10社の木造軸組新構法を抽出して、在来の継手・仕口と比較することにより、金物の役割を明らかにした。第2年度(平成7年度)木造軸組パネル構法を中心として,在来の軸組,2×4構法も含めて,工場生産過程と現場における部材,部品の互換性を調査検討した。これにより生産単位と施工性を評価することが可能となった。現在全国的に注目されている軸組とパネル壁を組み合わせた軸組パネル化構法について、13社16構法を抽出し、プレカットから建方までの工程を追って、木材の歩留まり、ディテ-ルのシステム、建方における作業性と省力効果、工期短縮などを調査、全体として住宅生産の合理化がいかに行われているかを明らかにした。特に壁パネル、屋根パネルについては、断熱材や窓を組み込んだ工場生産が行われており、高気密、高断熱の住宅生産を中小工務店レベルでも行えるオープンなシステムになってきていることを示し、オープンであるが由の部材の互換性が問題であることを明らかにした。軸組部の改良については、10社の木造軸組新構法を抽出して、在来の継手・仕口と比較することにより、金物の役割を明らかにした。また、新技術の目指す方向性として省力化が大きなテーマであることから、接合部のディテ-ルと、生産、施工の合理化の関係を検討した。第1年度(平成6年度)現在全国的に注目されている軸組とパネル壁を組み合わせた軸組パネル化構法について、13社16構法を抽出し、プレカットから建方までの工程を追って、木材の歩留まり、ディテ-ルのシステム、建方における作業性と省力効果、工期短縮などを調査、全体として住宅生産の合理化がいかに行われているかを明らかにした。特に壁パネル、屋根パネルについては、断熱材や窓を組み込んだ工場生産が行われており、高気密、高断熱の住宅生産を中小工務店レベルでも行えるオープンなシステムになってきていることを示し、オープンであるが由の部材の互換性が問題であることを明らかにした。軸組部の改良については、10社の木造軸組新構法を抽出して、在来の継手・仕口と比較することにより、金物の役割を明らかにした。第2年度(平成7年度)木造軸組パネル構法を中心として,在来の軸組,2×4構法も含めて,工場生産過程と現場における部材,部品の互換性を調査検討した。これにより生産単位と施工性を評価することが可能となった。 | KAKENHI-PROJECT-06650675 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06650675 |
痴呆モデルにおける自家神経移植によるセロトニン神経系変化に関する研究 | ラット神経移植の核医学的評価法を確立するため、痴呆モデルの一種である一側前脳基底核破壊ラットに自家迷走神経下神経節の移植を行い、脳血流およびアセチルコリン系に関して定量的オートラジオグラフィにて評価した。前脳基底核破壊ラットはイボテン酸を用いて作成した。神経移植モデルはIkedaの方法に準じ、内頚動脈背側上方レベルの迷走神経下神経節を摘出し、イボテン酸による破壊部の近傍に移植し作成した。脳血流は^<99m>Tc-HMPAOにて、またムスカリン性神経系の変化をアセチルコリン受容体は^3H-QNB、アセチルコリントランスポータは^3H-vesamicolを用いて移植1、2、4週後に定量的オートラジオグラフィにて評価した。脳血流は前脳基底核破壊モデル、移植モデルとも有意の変化を認めず、アセチルコリン系に脳血流はほとんど影響がないことがわかった。アセチルコリン受容体は破壊モデルで減少傾向、移植モデルで改善傾向を示したが患側/健側比にいずれも有意差がなかった。アセチルコリントランスポータは破壊モデルの患側皮質で有意の低下を認め前脳基底核からの投射領域である頭頂葉で低下が著明であった。移植モデルでは経時的に改善傾向を示し、4週後に有意な改善を認めた。以上の結果から痴呆モデルにおける核医学的評価法としては神経移植における^3H-vesamicolによるシナプス小胞アセチルコリントランスポータイメージングが最も適していることが推測された。ラット神経移植の核医学的評価法を確立するため、痴呆モデルの一種である一側前脳基底核破壊ラットに自家迷走神経下神経節の移植を行い、脳血流およびアセチルコリン系に関して定量的オートラジオグラフィにて評価した。前脳基底核破壊ラットはイボテン酸を用いて作成した。神経移植モデルはIkedaの方法に準じ、内頚動脈背側上方レベルの迷走神経下神経節を摘出し、イボテン酸による破壊部の近傍に移植し作成した。脳血流は^<99m>Tc-HMPAOにて、またムスカリン性神経系の変化をアセチルコリン受容体は^3H-QNB、アセチルコリントランスポータは^3H-vesamicolを用いて移植1、2、4週後に定量的オートラジオグラフィにて評価した。脳血流は前脳基底核破壊モデル、移植モデルとも有意の変化を認めず、アセチルコリン系に脳血流はほとんど影響がないことがわかった。アセチルコリン受容体は破壊モデルで減少傾向、移植モデルで改善傾向を示したが患側/健側比にいずれも有意差がなかった。アセチルコリントランスポータは破壊モデルの患側皮質で有意の低下を認め前脳基底核からの投射領域である頭頂葉で低下が著明であった。移植モデルでは経時的に改善傾向を示し、4週後に有意な改善を認めた。以上の結果から痴呆モデルにおける核医学的評価法としては神経移植における^3H-vesamicolによるシナプス小胞アセチルコリントランスポータイメージングが最も適していることが推測された。ラット神経移植の核医学的評価法を確立するため、痴呆モデルの一種である一側前脳基底核破壊ラットに自家迷走神経下神経節の移植を行い、脳血流およびアセチルコリン系に関して定量的オートラジオグラフィにて評価した。前脳基底核破壊ラットはイボテン酸を用いて作成した。神経移植モデルはIkedaの方法に準じ、内頚動脈背側上方レベルの迷走神経下神経節を摘出し、イボテン酸による破壊部の近傍に移植し作成した。脳血流は99mTc-HMPAOにて、またムスカリン性神経系の変化をアセチルコリン受容体は3H-QNB、アセチルコリントランスポータは3H-vesamicolを用いて移植1、2、4週後に定量的オートラジオグラフィにて評価した。脳血流は前脳基底核破壊モデル、移植モデルとも有意の変化を認めず、アセチルコリン系に脳血流はほとんど影響がないことがわかった。アセチルコリン受容体は破壊モデルで減少傾向、移植モデルで改善傾向を示したが患側/健側比にいずれも有意差がなかった。アセチルコリントランスポータは破壊モデルの患側皮質で有意の低下を認め前脳基底核からの投射領域である頭頂葉で低下が著明であった。移植モデルでは経時的に改善傾向を示し、4週後に有意な改善を認めた。以上の結果から痴呆モデルにおける核医学的評価法としては神経移植における3H-vesamicolによるシナプス小胞アセチルコリントランスポータイメージングが最も適していることが推測された。ラット神経移植の核医学的評価法を確立するため、痴呆モデルの一種である一側前脳基底核破壊ラットに自家迷走神経下神経節の移植を行い、脳血流およびアセチルコリン系に関して定量的オートラジオグラフィにて評価した。前脳基底核破壊ラットはイボテン酸を用いて作成した。神経移植モデルはIkedaの方法に準じ、内頚動脈背側上方レベルの迷走神経下神経節を摘出し、イボテン酸による破壊部の近傍に移植し作成した。脳血流は^<99m>Tc-HMPAOにて、またムスカリン性神経系の変化をアセチルコリン受容体は^3H-QNB、アセチルコリントランスポータは^3H-vesamicolを用いて移植1、2、4週後に定量的オートラジオグラフィにて評価した。 | KAKENHI-PROJECT-13670924 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13670924 |
痴呆モデルにおける自家神経移植によるセロトニン神経系変化に関する研究 | 脳血流は前脳基底核破壊モデル、移植モデルとも有意の変化を認めず、アセチルコリン系に脳血流はほとんど影響がないことがわかった。アセチルコリン受容体は破壊モデルで減少傾向、移植モデルで改善傾向を示したが患側/健側比にいずれも有意差がなかった。アセチルコリントランスポータは破壊モデルの患側皮質で有意の低下を認め前脳基底核からの投射領域である頭頂葉で低下が著明であった。移植モデルでは経時的に改善傾向を示し、4週後に有意な改善を認めた。以上の結果から痴呆モデルにおける核医学的評価法としては神経移植における^3H-vesamicolによるシナプス小胞アセチルコリントランスポータイメージングが最も適していることが推測された。 | KAKENHI-PROJECT-13670924 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13670924 |
聴覚障害児童・生徒の数学に関する学力保障の在り方に関する研究 | 聴覚障害児童・生徒の数学的学力は、中学校卒業時において数年の遅れがあると言われている。著者は数学者の立場から彼らの数学学習の自立に向けて、ろう学校及び公立中学校難聴通級クラスに出向き彼らと接してきた。教育現場での教員の努力には殆ど限界に近い状態であることから、教員の授業改善だけを期待しても、彼らの数学的学力の保障は困難であることが確認できた。そこで、ろう学校での通常のカリキュラムに加え、適切な教材の開発と、その実践を外部研究者・講師(ボランティアを含む)にお願いすることを提案したい。その学習時間は放課後・土曜日・日曜日・祭日の学習のために、先ずろう学校等の管理者(校長・教育委員会等)及び教員の意識改革が必要である。もちろん、聴覚障害児童・生徒及びその保護者の理解・意識改革も必要である。聴覚障害児童・生徒の生活体験を考慮するとき、(1)理解・解決するには少し困難さを伴う教材(2)作業を伴う教材(3)達成感の感じられる教材を教材開発の視点としていくつかの教材を開発した。例えば、(1)三角形の内角の和、(2)四角形の内角の和、(3)星形図形の性質、(4)平行四辺形の面積、(5)三角形の面積、(6)四角形の等積変形、(7)サッカーボールを作る(8)正多角形を折る(9)分数を作る(10)独楽を作るなどである。なおこれらを教育現場で実践するにあたって旅費等でSPPの支援も受けていることを記しておく。例えば、中学校における三角形の相似の考え方や、三角形の重心の考え方を適用することで、小学校6年での長方形の紙を1:2に折る教材を開発し、ろう学校6年生に実施している。これは、紙を「折る」という作業・操作活動により、中学校3年での学習内容を事前に体験させ、彼らが中学3年になり相似の学習のとき、より理解し易いようにする為である。このような観点から開発したのが上記の教材である。聴覚障害児童・生徒の数学的学力は、中学校卒業時において数年の遅れがあると言われている。著者は数学者の立場から彼らの数学学習の自立に向けて、ろう学校及び公立中学校難聴通級クラスに出向き彼らと接してきた。教育現場での教員の努力には殆ど限界に近い状態であることから、教員の授業改善だけを期待しても、彼らの数学的学力の保障は困難であることが確認できた。そこで、ろう学校での通常のカリキュラムに加え、適切な教材の開発と、その実践を外部研究者・講師(ボランティアを含む)にお願いすることを提案したい。その学習時間は放課後・土曜日・日曜日・祭日の学習のために、先ずろう学校等の管理者(校長・教育委員会等)及び教員の意識改革が必要である。もちろん、聴覚障害児童・生徒及びその保護者の理解・意識改革も必要である。聴覚障害児童・生徒の生活体験を考慮するとき、(1)理解・解決するには少し困難さを伴う教材(2)作業を伴う教材(3)達成感の感じられる教材を教材開発の視点としていくつかの教材を開発した。例えば、(1)三角形の内角の和、(2)四角形の内角の和、(3)星形図形の性質、(4)平行四辺形の面積、(5)三角形の面積、(6)四角形の等積変形、(7)サッカーボールを作る(8)正多角形を折る(9)分数を作る(10)独楽を作るなどである。なおこれらを教育現場で実践するにあたって旅費等でSPPの支援も受けていることを記しておく。例えば、中学校における三角形の相似の考え方や、三角形の重心の考え方を適用することで、小学校6年での長方形の紙を1:2に折る教材を開発し、ろう学校6年生に実施している。これは、紙を「折る」という作業・操作活動により、中学校3年での学習内容を事前に体験させ、彼らが中学3年になり相似の学習のとき、より理解し易いようにする為である。このような観点から開発したのが上記の教材である。特別支援教育を推進する上で,その学校全体での取り組みに加え,保護者,医療・福祉・教育センター,大学等の公共機関との連携が重要であることは周知の通りである.聴覚障害生徒に対する情報保障については,公的支援や私的なボランティア的支援によりある程度の成果が得られている.しかしながら,彼らに対する学力保障については,教育現場での懸命な努力にも関わらず十分とは言い難い.ここでは,ボランティア的な支援の経験を通して,聴覚障害児童・生徒の数学に関する学力保障の私的校外支援の在り方を検討し,その有効性を明らかにした.著者は5年ほど前から聴覚障害生徒の公立中学校通級学級および都立の聾学校に出向き,現場教師やボランティアと共に放課後や土曜日を中心に「算数・数学教室」を開講している.この教室を通して,児童生徒やその保護者に対する,予習・復習を含む家庭学習の習慣が有効であるという意識を持たせることが,結局は学力保障に繋がることを認識させることができた.(ろう教育科学47(3)(2005)133-143「聴覚障害生徒の算数・数学についての学力保障に対する校外支援の在り方」)また,聴覚障害児童・生徒の算数・数学学習において,多様な見方・考え方を引き出すことが可能な教材の開発を聾学校教員との共同で行い,「算数・数学の授業」(120号)という雑誌に発表した.その1つは,5角形の内角を求める問題である. | KAKENHI-PROJECT-17530649 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17530649 |
聴覚障害児童・生徒の数学に関する学力保障の在り方に関する研究 | 平面図形の問題は,補助線の役割がその解決に重要な役割を果たすといわれているが,ここでは,「任意」直線を補助線としても解決出来ることに触れさせることで,数学の多様性・自由性を感得させることが出来た.さらに,聴覚障害生徒の数学的思考の様相を立体図形の分類を例に分析し,この事例では,普通児に劣っていないことが確認出来た.聴覚障害児童・生徒の数学的学力は、中学校卒業時において数年の遅れがあると言われている。著者は数学者の立場から彼らの数学学習の自立に向けて、ろう学校及び公立中学校難聴通級クラスに出向き彼らと接してきた。教育現場での教員の努力には殆ど限界に近い状態であることから、教員の授業改善だけを期待しても、彼らの数学的学力の保障は困難であることが確認できた。そこで、ろう学校での通常のカリキュラムに加え、適切な教材の開発と、その実践を外部研究者・講師(ボランティアを含む)にお願いすることを提案したい。その学習時間は放課後・土曜日・日曜日・祭日の学習のために、先ずろう学校等の管理者(校長・教育委員会等)及び教員の意識改革が必要である。もちろん、聴覚障害児童・生徒及びその保護者の理解・意識改革も必要である。聴覚障害児童・生徒の生活体験を考慮するとき、(1)理解・解決するには少し困難さを伴う教材(2)作業を伴う教材(3)達成感の感じられる教材を教材開発の視点としていくつかの教材を開発した。例えば、(1)三角形の内角の和、(2)四角形の内角の和、(3)星形図形の性質、(4)平行四辺形の面積、(5)三角形の面積、(6)四角形の等積変形、(7)サッカーボールを作る(8)正多角形を折る(9)分数を作る(10)独楽を作るなどである。なおこれらを教育現場で実践するにあたって旅費等でSPPの支援も受けていることを記しておく。例えば、中学校における三角形の相似の考え方や、三角形の重心の考え方を適用することで、小学校6年での長方形の紙を1:2に折る教材を開発し、ろう学校6年生に実施している。これは、紙を「折る」という作業・操作活動により、中学校3年での学習内容を事前に体験させ、彼らが中学3年になり相似の学習のとき、より理解し易いようにする為である。このような観点から開発したのが上記の教材である。 | KAKENHI-PROJECT-17530649 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17530649 |
合成siRNAを基礎とする蚊に特異的な殺幼虫剤の開発 | 野外採取された52匹のヒトスシシマカのメス成虫の中腸より,mRNAを抽出し,中腸由来のcDNAライブラリーを作製した。そして,中腸由来のcDNAライブラリーから,ランダムに868個のクローンを選択し,塩基配列の決定を行った。そして,各クローンに対するBlastNの検索結果は,これらクローンが,342個のcDNAクラスターに分類されることを示した。さらに,クローンとクラスターを,分泌タンパク質遺伝子,ハウスキーピング遺伝子,未知遺伝子の3つのカテゴリーに分類した。その結果,それぞれのカテゴリーに属するクローンは,41%,28%,31%であった。また,それぞれのカテゴリーに属するクラスターは,14%,30%,56%であった。次いで,同一クラスターに含まれるクローンの平均数数を求めた結果,分泌タンパク質遺伝子,ハウスキーピング遺伝子,未知遺伝子は,『各々7.37,2.36,1.39であった。したがって,中腸では,分泌タンパク質潰伝子をコードするmRNAが多く重複して発現していることが示された。また,分泌タンパク質の多くは,タンパク質消化酵素であり,中腸は,吸血により摂取された血液のタンパク質を消化する重要な器官であることが推測された。また,未知遺伝子が,数多く発現していることが示され,蚊の中腸は,生物種の中で特異的な器官であることも推測された位今後,これら未知遺伝子の機能などを解析し,殺虫剤の開発につなげる必要性があると考えられる。蚊のmitogen-activated protein kinase (MAPK)familyに関する報告は少なく、その詳細についてはあまり知られていない。しかし、多くの生物種と同様に、蚊のMAPK fmailyも様々な生体の恒常性維持に重要な役割を担っていることが推測される。我々は、本研究費を用いて、ヒトスジシマカの若齢幼虫の成長に関するMAPK familyの役割を解明するために、若齢幼虫に対するMAPK family活性化阻害剤の曝露(10μMおよび20μM)を試みた。そして、両濃度において、c-Jun N-terminal kinase(JNK)の活性化阻害剤が、extracellular signal related kinase (ERK) 1/2阻害剤やp38阻害剤と比較して高い致死効果を持つことを示した。さらに、ヒトスジシマカ若齢幼虫に対し、C6/36細胞由来のJNK配列をもとにデザインされた21merの合成siRNA(JNK-siRNA)を曝露した(10μM)。そして、JNK-siRNAの若齢幼虫の成長に対する影響を観察した。コントロール(scramble-siRNA)には、蚊にはなく、他の節足動物由来の遺伝子にも高い相同性を示さない配列の合成siRNAが用いられた。この実験において、JNK-siRNAの曝露によるヒトスジシマカ若齢幼虫の致死は、48時間後に50%を示した。しかし、scramble-siRNAの曝露によるヒトスジシマカ若齢幼虫の致死は、48時間後には観察されなかった。以上の結果、JNKの阻害は、ヒトスジシマカ若齢幼虫の成長を抑制することから、若齢幼虫の発育には、JNKの活性化が必要であることが示された。野外採取された52匹のヒトスシシマカのメス成虫の中腸より,mRNAを抽出し,中腸由来のcDNAライブラリーを作製した。そして,中腸由来のcDNAライブラリーから,ランダムに868個のクローンを選択し,塩基配列の決定を行った。そして,各クローンに対するBlastNの検索結果は,これらクローンが,342個のcDNAクラスターに分類されることを示した。さらに,クローンとクラスターを,分泌タンパク質遺伝子,ハウスキーピング遺伝子,未知遺伝子の3つのカテゴリーに分類した。その結果,それぞれのカテゴリーに属するクローンは,41%,28%,31%であった。また,それぞれのカテゴリーに属するクラスターは,14%,30%,56%であった。次いで,同一クラスターに含まれるクローンの平均数数を求めた結果,分泌タンパク質遺伝子,ハウスキーピング遺伝子,未知遺伝子は,『各々7.37,2.36,1.39であった。したがって,中腸では,分泌タンパク質潰伝子をコードするmRNAが多く重複して発現していることが示された。また,分泌タンパク質の多くは,タンパク質消化酵素であり,中腸は,吸血により摂取された血液のタンパク質を消化する重要な器官であることが推測された。また,未知遺伝子が,数多く発現していることが示され,蚊の中腸は,生物種の中で特異的な器官であることも推測された位今後,これら未知遺伝子の機能などを解析し,殺虫剤の開発につなげる必要性があると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-18658049 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18658049 |
血管平滑筋の収縮性における内皮細胞の役割 | 著者は内皮細胞による血管収縮性のオンライン制御機構について主として二つの観点から研究を行い、本分野の初期の段階から報告してきた(Vasodilatation,ed.P.M.Vanhoutte et al.,P.P.231241,1984)。それは1)内皮機能は多様性に富み血管収縮性制御についても弛緩・収縮の両面性を考えねばならぬ事、2)血液(成分)-内皮-血管平滑筋の連鎖機構が血管収縮性を定める要因として重要であることの指摘であった。この基本的考えは今日広く認められるようになった。著者は本研究課題の遂行中途にして帝京大学より静岡薬科大学教授として転任した。著者の担当する講座は循環系薬理学の研究を続行するための設備および研究協力者は皆無で苦難の日々であった。しかし本科学研究助成に鼓舞され以下の成果をあげ得た。1)血液成分、特に赤血球および溶血成分や酸化ヘモグロビン(OxyHb)による筋原性トーヌス(myogemic tone)の著るしい増強反応は内皮依存性にCaチャネルの活性化を介していること。2)この増強作用はCa拮抗薬で有効に抑制されること。3)脳血管内外腔を分離した潅流標本において、赤血球溶血成分やOxyHbを外腔から与えても内皮を介する収縮反応を誘起しうること。4)新規に開発した螢光分光光度計を用いて脳血管収縮と細胞内【Ca^(2+)】濃度を【Ca^(2+)】指示薬fra2/AMを用いCaトランジェントとして同時測定した。収縮力とトランジェントはOxyHbや種々の刺激でほぼ同一の時間経過をたどって増強された。5)アドレナリン【α_1】作用による血管収縮反応の内皮剥離による増強は内皮由来物質の【α_1】アドレナリン受容体への作動薬の結合低下を誘起している可能性を示唆した。これらの成果は日本薬理学総会シンポジュウム(昭和61年4月新潟)および日本脈管学会シンポジュウム(昭和61年10月)において血管収縮性と内皮機能について招待講演を行った。さらに論文として報告あるいは印刷中である。今後さらに内皮由来物質の同定、さらにCaトランジェトと収縮の同時測定の改良をめざす。著者は内皮細胞による血管収縮性のオンライン制御機構について主として二つの観点から研究を行い、本分野の初期の段階から報告してきた(Vasodilatation,ed.P.M.Vanhoutte et al.,P.P.231241,1984)。それは1)内皮機能は多様性に富み血管収縮性制御についても弛緩・収縮の両面性を考えねばならぬ事、2)血液(成分)-内皮-血管平滑筋の連鎖機構が血管収縮性を定める要因として重要であることの指摘であった。この基本的考えは今日広く認められるようになった。著者は本研究課題の遂行中途にして帝京大学より静岡薬科大学教授として転任した。著者の担当する講座は循環系薬理学の研究を続行するための設備および研究協力者は皆無で苦難の日々であった。しかし本科学研究助成に鼓舞され以下の成果をあげ得た。1)血液成分、特に赤血球および溶血成分や酸化ヘモグロビン(OxyHb)による筋原性トーヌス(myogemic tone)の著るしい増強反応は内皮依存性にCaチャネルの活性化を介していること。2)この増強作用はCa拮抗薬で有効に抑制されること。3)脳血管内外腔を分離した潅流標本において、赤血球溶血成分やOxyHbを外腔から与えても内皮を介する収縮反応を誘起しうること。4)新規に開発した螢光分光光度計を用いて脳血管収縮と細胞内【Ca^(2+)】濃度を【Ca^(2+)】指示薬fra2/AMを用いCaトランジェントとして同時測定した。収縮力とトランジェントはOxyHbや種々の刺激でほぼ同一の時間経過をたどって増強された。5)アドレナリン【α_1】作用による血管収縮反応の内皮剥離による増強は内皮由来物質の【α_1】アドレナリン受容体への作動薬の結合低下を誘起している可能性を示唆した。これらの成果は日本薬理学総会シンポジュウム(昭和61年4月新潟)および日本脈管学会シンポジュウム(昭和61年10月)において血管収縮性と内皮機能について招待講演を行った。さらに論文として報告あるいは印刷中である。今後さらに内皮由来物質の同定、さらにCaトランジェトと収縮の同時測定の改良をめざす。 | KAKENHI-PROJECT-60571093 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-60571093 |
森林ミクロデータの有効利用に関する研究 | 森林資源に関するデータについて、作成状況、保存・利用状況について検討を行った。森林資源現況に関するデータは、国有林については営林局にて、民有林については都道府県林務部局森林計画係において、別々な方法で調査されデータベース化されている。このほか、森林保険の査定にかかわる森林調査資料、金融機関・電力会社が有する森林調査資料も、総合的な森林資源調査には有益な資料であることがわかった。森林資源調査全般にみられる課題を検討した結果、集計システムの重要な部分を構成する収穫表の多くが調製後20年以上を経過しており、データの妥当性に関する検証が必要な時期に来ていることがわかった。データ作成過程に関する問題点として、(1)森林に関する情報収集ならびにデータ作成目的の明確化、(2)基礎資料、データの整備、(3)各種森林データの有効利用、が重要であることがわかった。民有林に関する基本的な森林資源資料である森林簿について、保存・利用状況を調査した結果、(1)資料の保存期間が林業経営に必要とされる期間と比べ著しく短いこと、(2)保存方法が都道府県により、また、時期により異なること、がわかった。長期にわたる森林資源データが利用できような形で保存されておらず、データの有効利用以前の課題として、資料の保管体制を確立する必要があることがわかった。また、森林簿の開示規定には改善すべき点が多いこと、特に情報処理機器の変化に十分対応できていないことがわかった。森林ミクロデータの有効利用が進んでいない状況について検討した結果、(1)過去における利用実態の少なさ、(2)長期間を要する森林調査は周辺状況の変化を常に伴うこと、(3)調査内容が変化しないまま、データ処理技術のみ変化してきたこと、(4)精度に対する信頼性が揺らいでいること、(5)関係機関に人的資源が不足していること、が明らかになった。森林資源に関するデータについて、作成状況、保存・利用状況について検討を行った。森林資源現況に関するデータは、国有林については営林局にて、民有林については都道府県林務部局森林計画係において、別々な方法で調査されデータベース化されている。このほか、森林保険の査定にかかわる森林調査資料、金融機関・電力会社が有する森林調査資料も、総合的な森林資源調査には有益な資料であることがわかった。森林資源調査全般にみられる課題を検討した結果、集計システムの重要な部分を構成する収穫表の多くが調製後20年以上を経過しており、データの妥当性に関する検証が必要な時期に来ていることがわかった。データ作成過程に関する問題点として、(1)森林に関する情報収集ならびにデータ作成目的の明確化、(2)基礎資料、データの整備、(3)各種森林データの有効利用、が重要であることがわかった。民有林に関する基本的な森林資源資料である森林簿について、保存・利用状況を調査した結果、(1)資料の保存期間が林業経営に必要とされる期間と比べ著しく短いこと、(2)保存方法が都道府県により、また、時期により異なること、がわかった。長期にわたる森林資源データが利用できような形で保存されておらず、データの有効利用以前の課題として、資料の保管体制を確立する必要があることがわかった。また、森林簿の開示規定には改善すべき点が多いこと、特に情報処理機器の変化に十分対応できていないことがわかった。森林ミクロデータの有効利用が進んでいない状況について検討した結果、(1)過去における利用実態の少なさ、(2)長期間を要する森林調査は周辺状況の変化を常に伴うこと、(3)調査内容が変化しないまま、データ処理技術のみ変化してきたこと、(4)精度に対する信頼性が揺らいでいること、(5)関係機関に人的資源が不足していること、が明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-10113205 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10113205 |
着生根における呼吸と養分吸収との量的相互関係 | 1)栄養生長期におけるイネ着生根の呼吸速度は、前培養液および測定中の窒素濃度が0,10,50ppmNでそれぞれ1.8,3.7,4.1mgCO_2gDW^<-1>h^<-1>(25°C)であった。着生根の呼吸測定中に^<15>Nを添加して窒素濃度を上昇させると、呼吸速度は速やかに増加した。定常的呼吸速度に対する増加割合は、0->2ppmNで25%,0->10ppmNおよび0->50ppmNで34-48%であり、前培養液濃度が低く、添加濃度が高い時に大きかった。また、この増加は3時間の測定期間中持続した。また、同一期間における窒素吸収量は、0->2,10,50ppmNで0.82-0.96であり、10->50ppmNで1.2、50->100ppmNで0.16mgN/gDWであった。窒素添加後に増加した呼吸量と窒素吸収量とから、窒素吸収の呼吸効率を推定したところ、0->2,10,50ppmNで1.22-0.63、10->50ppmNで5.1、50->100ppmNで1.7gN/gCH_2Oであった。すなわち、ある程度の窒素を与えられて旺盛に生育している植物体に適度の窒素が添加されたときに、窒素吸収効率は高かった。2)リンについて同様の測定をしたところ、呼吸速度はリン(^<32>P)添加直後に高くなり、定常状態に対する増加割合は、0-〉0.5,2,10ppmPで24%、0.5->2,10ppmPで30-45%、10->20ppmPで9%であった。しかし、呼吸速度は時間の経過とともに低下し、約1時間後には定常的速度にもどった。これは、リンでは、窒素と異なり、急激にリンが供給されても吸収・同化にある程度の時間がかかり、また、植物体が新たな代謝に対応するのに時間がかかることを意味する。リン吸収の呼吸効率は、0->0.5,2,10ppmNで0.55-3.3、0.5->2,10ppmpで1.2-1.4,10->20ppmNで9.3mgP/gCH_2Oと、添加前のリン濃度が高く、また、添加濃度が高いときに大きかった。1)栄養生長期におけるイネ着生根の呼吸速度は、前培養液および測定中の窒素濃度が0,10,50ppmNでそれぞれ1.8,3.7,4.1mgCO_2gDW^<-1>h^<-1>(25°C)であった。着生根の呼吸測定中に^<15>Nを添加して窒素濃度を上昇させると、呼吸速度は速やかに増加した。定常的呼吸速度に対する増加割合は、0->2ppmNで25%,0->10ppmNおよび0->50ppmNで34-48%であり、前培養液濃度が低く、添加濃度が高い時に大きかった。また、この増加は3時間の測定期間中持続した。また、同一期間における窒素吸収量は、0->2,10,50ppmNで0.82-0.96であり、10->50ppmNで1.2、50->100ppmNで0.16mgN/gDWであった。窒素添加後に増加した呼吸量と窒素吸収量とから、窒素吸収の呼吸効率を推定したところ、0->2,10,50ppmNで1.22-0.63、10->50ppmNで5.1、50->100ppmNで1.7gN/gCH_2Oであった。すなわち、ある程度の窒素を与えられて旺盛に生育している植物体に適度の窒素が添加されたときに、窒素吸収効率は高かった。2)リンについて同様の測定をしたところ、呼吸速度はリン(^<32>P)添加直後に高くなり、定常状態に対する増加割合は、0-〉0.5,2,10ppmPで24%、0.5->2,10ppmPで30-45%、10->20ppmPで9%であった。しかし、呼吸速度は時間の経過とともに低下し、約1時間後には定常的速度にもどった。これは、リンでは、窒素と異なり、急激にリンが供給されても吸収・同化にある程度の時間がかかり、また、植物体が新たな代謝に対応するのに時間がかかることを意味する。リン吸収の呼吸効率は、0->0.5,2,10ppmNで0.55-3.3、0.5->2,10ppmpで1.2-1.4,10->20ppmNで9.3mgP/gCH_2Oと、添加前のリン濃度が高く、また、添加濃度が高いときに大きかった。 | KAKENHI-PROJECT-05660066 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05660066 |
単原子メモリーの基礎研究 | 本研究は、原子サイズの空間での電子のトンネル効果を制御して、原子1個を1単位とする情報記録方式の開発を目的とした基礎研究である。本年度は、トンネル効果で電子放射を誘起するための探針加工法と電界放射特性の関係を明らかにするとともに、それに基づく微小電界放射電子源の開発を行った。種々の熱処理や雰囲気の違いによる電界放射特性の変化を“その場"測定できる独特の測定系を開発した。(1)水酸化カリウム水溶液を用いたシリコン(Si)の異方性エッチングとArイオン照射によるスパッタリングを組み合わせることで、先端の曲率半径が約10nmの探針を加工できる。(2)スパッタエッチングしたSi探針は、表面が非晶質化するが、600°C以上の熱処理により結晶性は回復し、他の加工法に比べて優れた電界放射特性を示す。また、熱処理温度を800°Cまで上昇すると、探針表面の清浄化により、電界放射特性は改善される。しかし、900°C以上の熱処理を施すと逆に放射特性は劣化する。これは、熱処理中の原子移動で探針先端が鈍くなるためと考えられる。(3)水素雰囲気中ではSi探針の電界放射電流を大きく増加させることができる。MIS型構造の容量一電圧特性を評価した結果、Si表面への水素吸着により、表面準位密度が変化したためであることが示唆された。(4)真空中では、トンネル電流の雑音は1/f(周波数)特性を示すのに対し、水素雰囲気中では1/f^n(n>1)となり、またショット雑音も増加する。これは雑音が表面での原子の移動および吸着脱離が組み合わさって生じているためと考えられる。(5)スパッタ蒸着の周り込みを制御して、自己整合で作製できる微小電界放射電子源の作製法を開発した。本研究は,原子サイズの空間での電子のトンネル効果を制御して,原子1個を1単位とする情報記録方式の開発を目的とした基礎研究である。本年度は,この種のトンネル効果を利用するのに必要な探針の形状と特性に関するシミュレ-ションおよび探針の加工法に関する実験研究を行った。探針の形状と特性に関しては,探針の開き角が小さい程電界集中係数を大きくでき有利であること,加工形状のずれがトンネル電流の大きさに指数関数的に影響するが,仕事関数の小さい材料を用いればそれを抑制することができること等を明らかにした。探針の加工法に関しては,材料としてシリコン(Si)を選び,(1)水酸化カリウム水溶液を用いた異方性エッチング,(2)四弗化炭素ガスを用いた等方性プラズマエッチング,(3)Arイオンミリングによるスパッタエッチングを検討した結果,以下の点を明らかにした。(1)の方法は制御性には優れるが,探針先端の曲率半径が100nm程度に制限されてしまう,探針の開き角が約70度に固定されてしまうという問題がある。これに対し(2)の方法は制御性に関しては(1)の方法よりも劣るが,(111)方位のSi単結晶を用いれば探針の開き角を30度以下にでき,かつ先端の曲率半径も10nm以下に鋭く加工できる。(3)の方法は,イオンビ-ムの入射角を適当に設定することにより探針先端の曲率半径を10nm以下に尖鋭化できる。尖鋭化される理由は,従来考慮されていなかった結晶面方位の違いによるスパッタ率の差が関与しているものと考えられる。以上より探針の加工法としては,等方性プラズマエッチングで加工し,さらにイオンミリングで尖鋭化する方法が最も適していることを明らかにした。超高真空中でのトンネル電流放射特性の測定からもこの方法が優れていることを明らかにした。本研究は、原子サイズの空間での電子のトンネル効果を制御して、原子1個を1単位とする情報記録方式の開発を目的とした基礎研究である。本年度は、トンネル効果で電子放射を誘起するための探針加工法と電界放射特性の関係を明らかにするとともに、それに基づく微小電界放射電子源の開発を行った。種々の熱処理や雰囲気の違いによる電界放射特性の変化を“その場"測定できる独特の測定系を開発した。(1)水酸化カリウム水溶液を用いたシリコン(Si)の異方性エッチングとArイオン照射によるスパッタリングを組み合わせることで、先端の曲率半径が約10nmの探針を加工できる。(2)スパッタエッチングしたSi探針は、表面が非晶質化するが、600°C以上の熱処理により結晶性は回復し、他の加工法に比べて優れた電界放射特性を示す。また、熱処理温度を800°Cまで上昇すると、探針表面の清浄化により、電界放射特性は改善される。しかし、900°C以上の熱処理を施すと逆に放射特性は劣化する。これは、熱処理中の原子移動で探針先端が鈍くなるためと考えられる。(3)水素雰囲気中ではSi探針の電界放射電流を大きく増加させることができる。MIS型構造の容量一電圧特性を評価した結果、Si表面への水素吸着により、表面準位密度が変化したためであることが示唆された。(4)真空中では、トンネル電流の雑音は1/f(周波数)特性を示すのに対し、水素雰囲気中では1/f^n(n>1)となり、またショット雑音も増加する。これは雑音が表面での原子の移動および吸着脱離が組み合わさって生じているためと考えられる。(5)スパッタ | KAKENHI-PROJECT-03452083 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03452083 |
単原子メモリーの基礎研究 | 蒸着の周り込みを制御して、自己整合で作製できる微小電界放射電子源の作製法を開発した。本研究は、原子サイズの空間での電子のトンネル効果を制御して、原子1個を1単位とする情報記録方式の開発を目的とした基礎研究である。本年度は、トンネル効果で電子放射を誘起するための探針加工法と電界放射特性の関係を明らかにするとともに、それに基づく微小電界放射電子源の開発を行った。種々の熱処理や雰囲気の違いによる電界放射特性の変化を“その場"測定できる独特の測定系を開発した。(1)水酸化カリウム水溶液を用いたシリコン(Si)の異方性エッチングとArイオン照射によるスパッタリングを組み合わせることで、先端の曲率半径が約10nmの探針を加工できる。(2)スパッタエッチングしたSi探針は、表面が非晶質化するが、600°C以上の熱処理により結晶性は回復し、他の加工法に比べて優れた電界放射特性を示す。また、熱処理温度を800°Cまで上昇すると、探針表面の清浄化により、電界放射特性は改善される。しかし、900°C以上の熱処理を施すと逆に放射特性は劣化する。これは、熱処理中の原子移動で探針先端が鈍くなるためと考えられる。(3)水素雰囲気中ではSi探針の電界放射電流を大きく増加させることができる。MIS型構造の容量一電圧特性を評価した結果、Si表面への水素吸着により、表面準位密度が変化したためであることが示唆された。(4)真空中では、トンネル電流の雑音は1/f(周波数)特性を示すのに対し、水素雰囲気中では1/f^n(n>1)となり、またショット雑音も増加する。これは雑音が表面での原子の移動および吸着脱離が組み合わさって生じているためと考えられる。(5)スパッタ蒸着の周り込みを制御して、自己整合で作製できる微小電界放射電子源の作製法を開発した。 | KAKENHI-PROJECT-03452083 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03452083 |
マイクロ化学センサーを用いた乱流拡散係数の測定 | 1.ガスやエアロゾルを経由する沈着過程(乾性沈着)は地表面の形態や性質に強く依存し、乾性沈着の測定には空間的にも時間的にも稠密な観測が必要となるが、既存の機器ではこのような測定は困難である。この研究ではマイクロ化学センサーが微小であることの特徴を生かした乾性沈着測定手法を提案した。(1)沈着面直上のガスの濃度勾配の測定を行う。沈着面直上の輸送過程は分子拡散であるから、この値と分子拡散係数から流束が求まる。センサーを用い沈着面近傍までの濃度分布からの外挿により沈着面直上の濃度勾配を評価する。(2)マイクロ風速センサーにより沈着面近傍の風速と風温の鉛直分布を連続測定し、Aero dyanmical Profile法を用い乱流拡散係数を推定する。通常Aero dynamical Profile法を実施するには測定高度の10000倍の水平一様な観測面が必要であると言われている。十数cmの高さでの鉛直風速分布から数平方mの平坦地でこの方法が適応可となると、これまで測定が難しいと考えられていた地域でのこの方法による乾性沈着量の測定が可能となる。2.(2)による方法は技術的にも完成し、森林地帯の斜面という従来Aero dynamical Profile法では不可能と考えられてきた地点で既存の方法(熱収支ボーエン比法)との平行観測を行った。双方の沈着流束(オゾン)の測定結果は良い一致をみた。水蒸気センサー、NO2、O3センサーを用いて、(1)の方法により野外で測定を試みたが、未だ輸送係数を求めるには至っていない。その原因はこれまで一般に推測されていたよりも沈着面付近の濃度分布の変動が速く(風速分布の変動よりも速い)、現在適応出来るセンサーの測定速度がこの変動に追随出来ないためと考えられる。そこで、マクロ化学センサーの特徴を生かし、化学センサーを多数配置し水平濃度分布の時間変動により沈着量を求める観測を行った。1.ガスやエアロゾルを経由する沈着過程(乾性沈着)は地表面の形態や性質に強く依存し、乾性沈着の測定には空間的にも時間的にも稠密な観測が必要となるが、既存の機器ではこのような測定は困難である。この研究ではマイクロ化学センサーが微小であることの特徴を生かした乾性沈着測定手法を提案した。(1)沈着面直上のガスの濃度勾配の測定を行う。沈着面直上の輸送過程は分子拡散であるから、この値と分子拡散係数から流束が求まる。センサーを用い沈着面近傍までの濃度分布からの外挿により沈着面直上の濃度勾配を評価する。(2)マイクロ風速センサーにより沈着面近傍の風速と風温の鉛直分布を連続測定し、Aero dyanmical Profile法を用い乱流拡散係数を推定する。通常Aero dynamical Profile法を実施するには測定高度の10000倍の水平一様な観測面が必要であると言われている。十数cmの高さでの鉛直風速分布から数平方mの平坦地でこの方法が適応可となると、これまで測定が難しいと考えられていた地域でのこの方法による乾性沈着量の測定が可能となる。2.(2)による方法は技術的にも完成し、森林地帯の斜面という従来Aero dynamical Profile法では不可能と考えられてきた地点で既存の方法(熱収支ボーエン比法)との平行観測を行った。双方の沈着流束(オゾン)の測定結果は良い一致をみた。水蒸気センサー、NO2、O3センサーを用いて、(1)の方法により野外で測定を試みたが、未だ輸送係数を求めるには至っていない。その原因はこれまで一般に推測されていたよりも沈着面付近の濃度分布の変動が速く(風速分布の変動よりも速い)、現在適応出来るセンサーの測定速度がこの変動に追随出来ないためと考えられる。そこで、マクロ化学センサーの特徴を生かし、化学センサーを多数配置し水平濃度分布の時間変動により沈着量を求める観測を行った。提案した乱流輸送係数を求める方法を再録する。表面直上までの物質の鉛直濃度が測定出来れば分布の表面への外挿により表面直上での濃度勾配が求まる。表面直上での輸送係数は分子拡散係数であるから表面への物質流束が求まる。定常状態では物質流束は一定となるから乱流領域での濃度勾配から乱流輸送係数が求まる。現在入手可能な最も安定な素子としてH_2O濃度センサーを選択し、このセンサーを同時に8個測定するシステムを制作した。更に、多数の湿度センサーを同時に校正するためのチャンバーを制作した。このチャンバーは飽和水蒸気と乾燥空気を混合することによりH_2O濃度が調整出来る。これを用いて、センサー間の出力の器差を測定した。長時間での変動が特に問題となるので数日間の機差測定を行った。前述した方法が正当か否かは十分大きなな流束を持った物質で乱流輸送観測を行い、それらの結果と比較検討する必要がある。出力に有為の差の見られなかったH_2O濃度センサーを用いて以下の2個所で観測を行った。a)中国・北京市でSO_2の乾性沈着をエアロダイナミカル法;b)長野県・大柴高原でO3の乾性沈着をエネルギー収支法。大芝高原では降雨のため湿度センサーによるH_2Oの鉛直濃度差は小さく、解析は北京市を優先して行っている。北京市にて0.24,1.16,2.46,4.06mの高さでSO_2(パルス蛍光法),および風速、温度、H_2O濃度をセンサーを用いて各々の鉛直分布を測定した。 | KAKENHI-PROJECT-11680540 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11680540 |
マイクロ化学センサーを用いた乱流拡散係数の測定 | 観測時の北京市の地表2mでのSO_2濃度は数十ppbであり、0.24mでのSO_2濃度差は数十ppbであった。風速とSO_2の鉛直分布が相似になった観測例で乱流輸送係数を計算し、これらの値からSO_2の地表面への流束を推定した。SO_2の鉛直分布と風速の鉛直分布は相似にならない多数の例が観測された。そこで、現在は定常状態と見なせる状態(風速とSO_2およびH_2Oの鉛直分布が相似になった観測例)でSO_2の流束とH_2O濃度鉛直分布との関係を検討している。1.マイクロ風速センサーを用いたエアロダイナミックス法:北京市の比較的狭い(フェッチが短い)地域でマイクロ風速センサーを用いた地表面直上まで風速および風温度の測定おこない乱流拡散係数を求めた。乱流輸送係数は大きな日値変動を示した。乱流拡散係数の測定と同時にSO2の鉛直4高度の測定を行うことによりSO2の沈着流束を求めた。2.マイクロ化学センサーを用いた鉛直濃度分布の測定:マイクロセンサーを用いた観測を長野県・大芝高原で行った(10月,8月)。センサーを用いた測定項目はNOxセンサーによる地表面直上での鉛直濃度分布の測定、および温度、湿度の鉛直分布の測定である。エアロダイナミックスが比較的安定している(定常)と考えられる林内で観測をおこなったが、現象は予想より複雑であった。地表から11mまで8点で高感度センサーにより20分間隔で測定を行ったがその鉛直分布の経時変化は極めて複雑であった。昨年の観測結果を踏まえたマイクロセンサーの調整および新規開発を行った。具体的には以下の2点である。環境測定に相応しい濃度域のマイクロオゾンセンサーの製作(メーカとの協議により0-1000ppbの測定範囲を0-200ppbに狭める);観測に使用しているNOxと同様の原理による新規オキシダント測定センサーの開発。3.論文発表:この研究で新規に得られた方法論を用い、これまで不可能であると考えられてきた実大気環境でのエアロゾルの地表面への沈着流束を過去の観測結果の再検討することにより求め、その結果を論文として公表した。1.ほぼ技術的に完成したマイクロ風速センサーによる流束測定と、既存の方法(熱収支ボーエン比法)による流束測定との平行観測を行った。観測地点は森林地帯の斜面(日光)であり、従来このような地点はAero dynamical Profile法の適応は不可能と考えられてきた。なおこの地域はオゾンによる森林被害が推測されている。各々の方法による時間定数の違いはあるものの、双方のオゾン流束の値はよい一致を示した。これはマイクロ風速センサーの微弱風に対する応答性能と無指向性によるものと考えられる。ただ降雨の影響および直射日光の影響を低減する更なる技術開発が必要と思われる。2.これまでNO2,O3,H2Oなどの化学物質センサーを用いて野外で流束測定を試みたが、未だ輸送係数を求めるには至っていない。その原因はこれまで一般に推測されていたよりも沈着面付近の化学物質の濃度分布変動が速く(風速分布の変動よりも速い)、現在適応出来るセンサーの測定速度がこの変動に追随出来ないためと考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-11680540 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11680540 |
マイクロアレイを用いた大腸癌術後遠隔転移の予測および新規遠隔転移関連遺伝子の検討 | 大腸癌外科的治療後の遠隔転移を来すハイリスク症例を選別できれば、ハイリスク症例に対して積極的な術後補助化学療法、あるいはintensiveな術後フォローアップを行うことにより、大腸癌外科治療後の予後の向上が期待できる。しかし、現在までに大腸癌外科的治療後の遠隔転移を高精度で予測するマーカーは確立されていない。今回、DNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析により、大腸癌手術後に遠隔転移を来す症例を予測し、大腸癌に対するテーラーメイド治療を可能にすることを目的とした。外科的切除が行われ、手術時に切除された大腸癌組織が直ちに凍結して保存されていて、術後5年以上経過観察されて遠隔転移の有無が確認されている症例のうち、大腸癌組織を用いた遺伝子研究に対してインフォームドコンセントが得られている128症例を対象とした。対象症例の凍結標本よりSepazolを用いtotal RNAを抽出し、T7-oligo(dT)24primerを用いcDNAへ逆転写後、biotin標識cRNAを合成し、Affymetrix社のGeneChipにハイブリダイズして大腸癌発生及び転移や薬剤感受性に関連が考えられる約54,000種類の遺伝子発現解析を行った。遠隔転移の認められた38例と認められなかった90例の間で有意に発現の差のあった64遺伝子を抽出した。この64遺伝子を用いて、肝転移の予測式を作成した。予測式を作成する際には、GeneSpring(silicon genetics社)を用い、leave-one-out法の一種であるKNN法にて行った。この結果、予測精度68%で遠隔転移の有無の予想が可能であった。今後は、独立した症例により予測式のvalidationを行っていく必要があるが、本予測式により、遠隔転移ハイリスク例に対するテーラーメード治療が行える可能性がある。大腸癌の外科治療後の予後を規定する主たる因子は肝転移、肺転移あるいは骨転移などの遠隔転移である。そこで、大腸癌外科的治療後にこれらの遠隔転移を来すハイリスク症例を選別できれば、ハイリスク症例に対して積極的な術後補助化学療法、あるいはintensiveな術後フォローアップを行うことにより、大腸癌外科治療後の予後の向上が期待できる。しかし、現在までに国内、国外何れの報告においても、大腸癌外科的治療後の血行性転移を高精度で予測するマーカーは確立されていない。今回、DNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析により、大腸癌の外科手術後に血行性転移を来す症例を予測し、大腸癌に対するテーラーメイド治療を可能にすることを目的とした。外科的切除が行われ、手術時に切除された大腸癌組織が直ちに凍結して保存されていて、術後5年以上経過観察されて遠隔転移の有無が確認されている症例のうち、大腸癌組織を用いた遺伝子研究に対してインフォームドコンセントが得られている90症例を対象とした。対象症例の凍結標本よりSepazolを用いtotal RNAを抽出し、T7-oligo(dT)24primerを用いcDNAへ逆転写後、biotin標識cRNAを合成し、Affymetrix社のGeneChipにハイブリダイズして大腸癌発生及び転移や薬剤感受性に関連が考えられる約54,000種類の遺伝子発現解析を行った。肝転移の認められた24例と認められなかった66例の間で有意に発現の差のあった88遺伝子を抽出した。この88遺伝子を用いて、肝転移の予測式を作成した。予測式を作成する際には、GeneSpring(sil icon genetics社)を用い、leave-one-out法の一種であるKNN法にて行った。この結果、予測精度68%で血行性転移の有無の予想が可能であった。今後は、症例数を増やして予測精度を高め、さらに独立した症例により予測式のvalidationを行っていく予定である。大腸癌外科的治療後の遠隔転移を来すハイリスク症例を選別できれば、ハイリスク症例に対して積極的な術後補助化学療法、あるいはintensiveな術後フォローアップを行うことにより、大腸癌外科治療後の予後の向上が期待できる。しかし、現在までに大腸癌外科的治療後の遠隔転移を高精度で予測するマーカーは確立されていない。今回、DNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析により、大腸癌手術後に遠隔転移を来す症例を予測し、大腸癌に対するテーラーメイド治療を可能にすることを目的とした。外科的切除が行われ、手術時に切除された大腸癌組織が直ちに凍結して保存されていて、術後5年以上経過観察されて遠隔転移の有無が確認されている症例のうち、大腸癌組織を用いた遺伝子研究に対してインフォームドコンセントが得られている128症例を対象とした。対象症例の凍結標本よりSepazolを用いtotal RNAを抽出し、T7-oligo(dT)24primerを用いcDNAへ逆転写後、biotin標識cRNAを合成し、Affymetrix社のGeneChipにハイブリダイズして大腸癌発生及び転移や薬剤感受性に関連が考えられる約54,000種類の遺伝子発現解析を行った。遠隔転移の認められた38例と認められなかった90例の間で有意に発現の差のあった64遺伝子を抽出した。この64遺伝子を用いて、肝転移の予測式を作成した。予測式を作成する際には、GeneSpring(silicon genetics社)を用い、leave-one-out法の一種であるKNN法にて行った。この結果、予測精度68%で遠隔転移の有無の予想が可能であった。今後は、独立した症例により予測式のvalidationを行っていく必要があるが、本予測式により、遠隔転移ハイリスク例に対するテーラーメード治療が行える可能性がある。 | KAKENHI-PROJECT-20659211 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20659211 |
変形性膝関節症の疲学的検討 | 平成7年度福島県田島町の基本検診時に、併せて膝検診を行った。対象は1125例(男369例、女756例)であり、平均年齢は男64.6歳(4089歳)、女61.9歳(4088歳)であった。膝検診は、全例整形外科医による直接検診(膝痛に関する問診および理学検査)により行われた。同意を得た受診者に対してX線撮影(両膝立位正面)を行った。理学検査の側方動揺性の有無は、同一検者による膝屈曲30°での徒手ストレス検査を行い、左右差を基準にして判定した。検討は、(1)膝痛の有病率、(2)膝痛の影響因子、(3)X線学的検討、に対して行った。[結果](1)膝痛の有病率:検診時に膝痛を有していたのは、1125例中333例(30%)であった。性別でみると、男は19%、女は39%であり、有意差をもって、女の有病率が高かった(P<0.0001)。(2)膝痛の影響因子:(a)加齢;男女とも加齢とともに、膝痛の有病率は高くなっていた(Mann-Whitney検定P<0.0001)。(b)肥満(Body Mass Index≧26);男では、肥満と膝痛の有病率の間に関連を認めなかった。女の膝痛の有病率は、肥満例で47%、正常例で30%と、有意に肥満例で高かった(P<0.0001)。(c)側方動揺性;膝痛の有病率は、側方動揺性を有する例で45%、有さない例で24%と、動揺性を有する例に有意に高かった(P<0.0001)。(3)X線学的検討:(a)有病率と北大分類;変形が高度な程、有病率は高くなっていた(Mann-Whitney検定P<0.0001)。(b)側方動揺性と北大分類;変形が高度な程、側方動揺性を有する頻度が高くなっていた(Mann-Whitney検定P<0.0001)。しかし、膝痛の既往を有するが、現在、膝痛がない例を対象に検討してみると、側方動揺性と北大分類との間に有意の関係を認めなかった(P=0.21)。すなわち、関節症変化の進行とともに側方動揺性が消失し、疼痛が軽減する例が存在することが推察された。平成7年度福島県田島町の基本検診時に、併せて膝検診を行った。対象は1125例(男369例、女756例)であり、平均年齢は男64.6歳(4089歳)、女61.9歳(4088歳)であった。膝検診は、全例整形外科医による直接検診(膝痛に関する問診および理学検査)により行われた。同意を得た受診者に対してX線撮影(両膝立位正面)を行った。理学検査の側方動揺性の有無は、同一検者による膝屈曲30°での徒手ストレス検査を行い、左右差を基準にして判定した。検討は、(1)膝痛の有病率、(2)膝痛の影響因子、(3)X線学的検討、に対して行った。[結果](1)膝痛の有病率:検診時に膝痛を有していたのは、1125例中333例(30%)であった。性別でみると、男は19%、女は39%であり、有意差をもって、女の有病率が高かった(P<0.0001)。(2)膝痛の影響因子:(a)加齢;男女とも加齢とともに、膝痛の有病率は高くなっていた(Mann-Whitney検定P<0.0001)。(b)肥満(Body Mass Index≧26);男では、肥満と膝痛の有病率の間に関連を認めなかった。女の膝痛の有病率は、肥満例で47%、正常例で30%と、有意に肥満例で高かった(P<0.0001)。(c)側方動揺性;膝痛の有病率は、側方動揺性を有する例で45%、有さない例で24%と、動揺性を有する例に有意に高かった(P<0.0001)。(3)X線学的検討:(a)有病率と北大分類;変形が高度な程、有病率は高くなっていた(Mann-Whitney検定P<0.0001)。(b)側方動揺性と北大分類;変形が高度な程、側方動揺性を有する頻度が高くなっていた(Mann-Whitney検定P<0.0001)。しかし、膝痛の既往を有するが、現在、膝痛がない例を対象に検討してみると、側方動揺性と北大分類との間に有意の関係を認めなかった(P=0.21)。すなわち、関節症変化の進行とともに側方動揺性が消失し、疼痛が軽減する例が存在することが推察された。 | KAKENHI-PROJECT-07671610 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07671610 |
IT技術と集合知を活用した「わび」と「さび」の再定義(わびさび2.0) | 主要な検索エンジンを対象に「わび」、「さび」「わびさび」に関する画像を収集した。検索クエリについて、「わび」を例に説明すると、「wabi-さび-寂び-sabi」、「wabi-さび-寂び-sabi-わびさび-侘び寂び-wabi-sabi-wabisabi」、「わび-さび-寂び-sabi」、「わび-さび-寂び-sabi-わびさび-侘び寂び-wabi-sabi-wabisabi」、「侘び-さび-寂び-sabi」、「侘び-さび-寂び-sabi-わびさび-侘び寂び-wabi-sabi-wabisabi」というように、重複しないような工夫をして機械的に検索結果を保存した。収集期間が終了した後、研究対象として逸脱しているもの、検索カテゴリ間で重複するものを除外した。研究対象として逸脱していると判断した基準は文字や人物が主となっている画像であり、重複のチェックには画像ファイルのハッシュ値を用いた。その結果、「わび」について3,336、「さび」について4,162、「わびさび」について3,620、合計11,118の画像を得た。楽天市場の商品レビューデータ63,553,087件から「わびさび」の文言をレビュー本文か商品名に含むレビュー165件を取得した。Wikipediaの記事と名刺を分散表現ベクトル化したデータベース、日本語Wikipediaエンティティベクトルを用いて、分散表現ベクトルを介した「わびさび」の理解を試みた。画像収集と同様に、いくつかの表記で「わび」と「さび」について類似度の高い語句を収集し、その内容から「わび」、「さび」、「わびさび」の解釈したところ、「わびさび」は表記通り「わび」と「さび」の複合体であると解釈することができた。「わび」と「さび」の違いについては、「さび」は「わび」よりも対象に関する制作意図への探求心が含まれた概念であると考察することができた。初年度導入予定であった高性能計算機の導入こそ時間を要してしまったものの、時間をかけて通常の計算機を使用して画像収集と言語データの収集および解析を行うよう計画を変更することにより、予定していたものに準じる成果を上げることができたと考えている。また、初年度に行った調査に基づく判断から、実施内容を申請時の計画から修正、改良した。このことにより初年度に発生した進捗の遅れを取り戻すことができた。資料および情報の収集は計画通り順調に実施することができた。主要と思われる資料については初年度に入手済みであったため、本年度は補足的な資料を中心に収集した。また、情報収集については関連する研究をすでに実施した研究者の成果報告会など特に有益な機会を得ることができた。本年度に導入した高性能計算機を活用した研究を推進する予定である。そのために、収集した画像から心理実験に使用する画像の選別を行っている。画像の選別が完了した後は、できるだけ早期にインターネットを介した大規模評価実験を開始する。この実験で得られた画像に対する評価と関連する画像特徴を高性能計算機で探索する。インターネットを介した研究は、近年心理学の分野でも注目され多数の実施事例が報告されており、同時にインターネットを介した研究ならではの問題点も指摘されている。これら先行事例を参考にできるだけ良質なデータを取得できるよう工夫した実験を実施することが課題であると考えている。インターネットサイトから「わび」と「さび」に関する記述を自動的に収集し、得られた言語表現から「わび」および「さび」に関連の強い語句を明らかにし、そこから「わび」と「さび」を再定義し、意味構造の解明を行う計画であった。後述するように、必要となるハイエンドPCの調達を延期せざるを得なくなったため、代替手段として「わび」と「さび」に関連する茶道、和歌、日本庭園など日本の伝統文化に関する学術書、入門書、解説書を入手した。画像の収集についても同様に、ハイエンドPCを使用する予定であったが、代替手段として茶碗や庭園、風景などの写真集の入手と一般的な機能のPCを用いた画像収集を実施した。言語表現については資料の収集を完了とし、分析のためにテキストデータ化する作業を行う人員を募集し、謝金を支払うことで遂行する予定であったが、会計処理の都合もあり、新年度以降の開始となっている。画像収集についても同様に、スキャナによる電子データ化の作業を新年度より謝金を支払うことで遂行する予定である。収集した言語表現に対する分析については精度の良い技術を選定するための情報収集を行っており、収集した画像に対する機械学習についても当該分野の研究動向に関する情報収集と技術習得を前倒しで進めている状況である。ハイエンドPCの導入については、現在も市場動向を見守っているところであるが、状況によっては性能を下げてでも早期に導入せざるを得ないと考えている。当初計画においても初年度は研究成果を得るための準備段階と考えており、進捗は計画に比べて遅れているものの、計画通りの方向性で研究を遂行できていると考えている。効率のよい機械学習を実行する上で必須となるnvidia社製GPUを搭載したハイエンドPCが、仮想通貨マイニングブームの影響により品薄、価格高騰しており、調達計画の見直しを行う必要があった。動向を見守りつつ諸々検討した結果、購入を延期したために、機械学習の環境構築および言語表現と学習画像データの収集において当初計画からの遅延が発生してしまった。 | KAKENHI-PROJECT-17K00394 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K00394 |
IT技術と集合知を活用した「わび」と「さび」の再定義(わびさび2.0) | 主要な検索エンジンを対象に「わび」、「さび」「わびさび」に関する画像を収集した。検索クエリについて、「わび」を例に説明すると、「wabi-さび-寂び-sabi」、「wabi-さび-寂び-sabi-わびさび-侘び寂び-wabi-sabi-wabisabi」、「わび-さび-寂び-sabi」、「わび-さび-寂び-sabi-わびさび-侘び寂び-wabi-sabi-wabisabi」、「侘び-さび-寂び-sabi」、「侘び-さび-寂び-sabi-わびさび-侘び寂び-wabi-sabi-wabisabi」というように、重複しないような工夫をして機械的に検索結果を保存した。収集期間が終了した後、研究対象として逸脱しているもの、検索カテゴリ間で重複するものを除外した。研究対象として逸脱していると判断した基準は文字や人物が主となっている画像であり、重複のチェックには画像ファイルのハッシュ値を用いた。その結果、「わび」について3,336、「さび」について4,162、「わびさび」について3,620、合計11,118の画像を得た。楽天市場の商品レビューデータ63,553,087件から「わびさび」の文言をレビュー本文か商品名に含むレビュー165件を取得した。Wikipediaの記事と名刺を分散表現ベクトル化したデータベース、日本語Wikipediaエンティティベクトルを用いて、分散表現ベクトルを介した「わびさび」の理解を試みた。画像収集と同様に、いくつかの表記で「わび」と「さび」について類似度の高い語句を収集し、その内容から「わび」、「さび」、「わびさび」の解釈したところ、「わびさび」は表記通り「わび」と「さび」の複合体であると解釈することができた。「わび」と「さび」の違いについては、「さび」は「わび」よりも対象に関する制作意図への探求心が含まれた概念であると考察することができた。初年度導入予定であった高性能計算機の導入こそ時間を要してしまったものの、時間をかけて通常の計算機を使用して画像収集と言語データの収集および解析を行うよう計画を変更することにより、予定していたものに準じる成果を上げることができたと考えている。また、初年度に行った調査に基づく判断から、実施内容を申請時の計画から修正、改良した。このことにより初年度に発生した進捗の遅れを取り戻すことができた。資料および情報の収集は計画通り順調に実施することができた。主要と思われる資料については初年度に入手済みであったため、本年度は補足的な資料を中心に収集した。また、情報収集については関連する研究をすでに実施した研究者の成果報告会など特に有益な機会を得ることができた。収集した画像に対する「わび」および「さび」度合いの評価について、インターネット調査会社を利用することで大勢の回答者を募ることを検討している。このことにより、実験室実験に比べて画像に対する評価に要する時間が大幅に短縮できるからである。本年度に導入した高性能計算機を活用した研究を推進する予定である。そのために、収集した画像から心理実験に使用する画像の選別を行っている。画像の選別が完了した後は、できるだけ早期にインターネットを介した大規模評価実験を開始する。この実験で得られた画像に対する評価と関連する画像特徴を高性能計算機で探索する。 | KAKENHI-PROJECT-17K00394 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K00394 |
「共有」物をめぐる規律とその多元性 | 人々が財産を共有する局面において、その財産の使用や管理を中心とする共有者間の法的規律がどのようにあるべきか、主としてフランス法の展開の分析を通じて検討する。共有が生ずる原因、対象となる財産の性質、合意の有無など、様々な要因が規律内容にもたらす影響を意識して分析を進めると同時に、「共有」という統一的枠組みの中で規律を設ける現行民法の在り方にどのような意義と限界が見いだされるのかも考察する。人々が財産を共有する局面において、その財産の使用や管理を中心とする共有者間の法的規律がどのようにあるべきか、主としてフランス法の展開の分析を通じて検討する。共有が生ずる原因、対象となる財産の性質、合意の有無など、様々な要因が規律内容にもたらす影響を意識して分析を進めると同時に、「共有」という統一的枠組みの中で規律を設ける現行民法の在り方にどのような意義と限界が見いだされるのかも考察する。 | KAKENHI-PROJECT-19K13560 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K13560 |
複合酸化物薄膜の電気化学的エピタキシャル成長 | 複合酸化物の一つであるLaMnO_3ペロブスカイトを白金電極上に作製する場合,これが陽分極のもとで生成するときのインピ-ダンスの変化を測定した。この結果Le含有量が増加すると膜の抵抗が大幅に増大することが明らかとなった。電解生成膜は非晶質であるが,この増大はLaがMnO_2膜に化学的に取り込まれていることを示している。同様の減少はLaCoO_3ペロブスカイト膜生成時にも観測されている。単結晶電極上へのエピタキシャル成長なルチル(TiO_2)電極上へのβーPbO_2電解析出についても見られたが,150°C以上の高い温度が必要とされた。この析出においてはβーPbO_2の格子定数がTiO_2のそれに近づくように変化することが確認され,このような現象は溶液中でははじめての発見である。この電極上にSnO_2のエピタキシャル成長も試みた。SnO_2は高温よりむしろ室温においてエピタキシャル成長しており,この結果,TiO_2(半導体)/βーPbO_2(金属)/SnO_2(半導体)の超格子ができる可能性があり,さらにβーPbO_2において量子井戸の形成が考えられる。そこではじめにTiO_2上にβーPbO_2をエピタキシャル成長させ,その後SnO_2を室温で析出した。これらの膜厚は200Å程度とした。このようにして作製したTiO_2/SnO_2膜に光照射し,そのスペスペクトル特性を求めた。このようにして作製した膜では約leVに光電流が観測され,これは形成した量子井戸によると考えられたが,現在では,これをさらに確認するため再現性,光導電性のスペクトル特性を測定している。このように電気化学的エピタキシャル成長,さらにこれを発展させた超格子膜の作製は本研究の優れた成果によるものと考えられる。複合酸化物の一つであるLaMnO_3ペロブスカイトを白金電極上に作製する場合,これが陽分極のもとで生成するときのインピ-ダンスの変化を測定した。この結果Le含有量が増加すると膜の抵抗が大幅に増大することが明らかとなった。電解生成膜は非晶質であるが,この増大はLaがMnO_2膜に化学的に取り込まれていることを示している。同様の減少はLaCoO_3ペロブスカイト膜生成時にも観測されている。単結晶電極上へのエピタキシャル成長なルチル(TiO_2)電極上へのβーPbO_2電解析出についても見られたが,150°C以上の高い温度が必要とされた。この析出においてはβーPbO_2の格子定数がTiO_2のそれに近づくように変化することが確認され,このような現象は溶液中でははじめての発見である。この電極上にSnO_2のエピタキシャル成長も試みた。SnO_2は高温よりむしろ室温においてエピタキシャル成長しており,この結果,TiO_2(半導体)/βーPbO_2(金属)/SnO_2(半導体)の超格子ができる可能性があり,さらにβーPbO_2において量子井戸の形成が考えられる。そこではじめにTiO_2上にβーPbO_2をエピタキシャル成長させ,その後SnO_2を室温で析出した。これらの膜厚は200Å程度とした。このようにして作製したTiO_2/SnO_2膜に光照射し,そのスペスペクトル特性を求めた。このようにして作製した膜では約leVに光電流が観測され,これは形成した量子井戸によると考えられたが,現在では,これをさらに確認するため再現性,光導電性のスペクトル特性を測定している。このように電気化学的エピタキシャル成長,さらにこれを発展させた超格子膜の作製は本研究の優れた成果によるものと考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-03805069 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03805069 |
顧客満足度生成メカニズムの解明による経営成果への影響の定量化とその日米比較 | 消費者の顧客満足度という概念は、競争市場内における企業の経営戦略の在り方やその成果についての客観的指標にとどまらず、産業レベルでの市場間の動向についての比較、さらにはそれらを内包する国家レベルでの経済的背景に対しても大きな要因となっている。本研究では主に、顧客満足度の代表例であるアメリカのACSIおよび、日本の主要耐久消費財を対象に調査してきた品質向上期待度という尺度に基づいて独自に算出した顧客満足度の2種類を対象としてきた。これまでの研究から、顧客満足度の主な生成要因として「期待」と「知覚品質」を前提とした上で、それぞれに影響を与える先行要因の存在を突き止めた。ひとつは主に株価や消費者の心理的期待感に基づく景気感によって説明され、期待に作用することで負の影響を与える要因。もうひとつは収入や支出などの消費によって説明され、知覚品質に作用することで正の影響を与える要因である。これら2つの先行要因の存在は日米の集合的な顧客満足度に対して共通して認められるものであり、特に負の要因については「景気感バイアス」として一般化されている。日本の顧客満足度についてはその指標の性質上、景気感バイアスの影響が非常に顕著であり、この影響を考慮することで企業の経営成果に対して正の関連性が示されている。さらに顧客満足度そのものの大きさは、性別や年代といった顧客属性によって差があることがACSIによる調査からも報告されており、その原因として購買・使用経験の多寡が指摘されている。日本の満足度データについても、同様な分析を行うことで、ACSIと共通した傾向が示されており、さらには満足度指標の性質による差異についても考慮した知見を得ることができた。消費者の顧客満足度という概念は、競争市場内における企業の経営戦略の在り方やその成果についての客観的指標にとどまらず、産業レベルでの市場間の動向についての比較、さらにはそれらを内包する国家レベルでの経済的背景に対しても大きな要因となっている。その最も特徴的な作用として、顧客満足度を構成する心理的要因およびその生成メカニズムに着目することで、株価に代表される当該時期の景気感に対して負の影響を受けるという「景気感バイアス」の存在がある。これまでの研究では、顧客満足度の代表例であるアメリカのACSIおよび、日本の主要耐久消費財を対象に調査してきた品質向上期待度という尺度に基づいて独自に算出した顧客満足度の2種類を対象としてきた。それらの説明変数として、従来の株価等の経済指標群に加えて、日米の消費者の景気に対する心理的期待感を示す尺度であるConsumer Confidence Index(消費者態度指数)を用いた分析を行うことで、景気感バイアスに相当する因子が顧客満足度に対して作用する日米共通の最も大きな要因として抽出することができた。その上で、消費支出に基づいた充足能力や将来的な期待感などの存在から、景気感バイアスとは独立した正の影響を持つ因子も同時に抽出できたことから、顧客満足度の外的要因には両者の間で一定の共通性を示すことができた。さらに、セクターレベルで算出したACSIについても分析することで、対象となる産業間で景気感バイアスによる影響の大きさに明確な差がある事も確認した。これは上述した正の因子とのバランスについて違いがあることを示唆し、その背景には市場ごとの企業間競争の激しさや、それに付随したスイッチングコストの高さによる差異があると考えられる。消費者の顧客満足度という概念は、競争市場内における企業の経営戦略の在り方やその成果についての客観的指標にとどまらず、産業レベルでの市場間の動向についての比較、さらにはそれらを内包する国家レベルでの経済的背景に対しても大きな要因となっている。本研究では主に、顧客満足度の代表例であるアメリカのACSIおよび、日本の主要耐久消費財を対象に調査してきた品質向上期待度という尺度に基づいて独自に算出した顧客満足度の2種類を対象としてきた。これまでの研究から、顧客満足度の主な生成要因として「期待」と「知覚品質」を前提とした上で、それぞれに影響を与える先行要因の存在を突き止めた。ひとつは主に株価や消費者の心理的期待感に基づく景気感によって説明され、期待に作用することで負の影響を与える要因。もうひとつは収入や支出などの消費によって説明され、知覚品質に作用することで正の影響を与える要因である。これら2つの先行要因の存在は日米の集合的な顧客満足度に対して共通して認められるものであり、特に負の要因については「景気感バイアス」として一般化されている。日本の顧客満足度についてはその指標の性質上、景気感バイアスの影響が非常に顕著であり、この影響を考慮することで企業の経営成果に対して正の関連性が示されている。さらに顧客満足度そのものの大きさは、性別や年代といった顧客属性によって差があることがACSIによる調査からも報告されており、その原因として購買・使用経験の多寡が指摘されている。日本の満足度データについても、同様な分析を行うことで、ACSIと共通した傾向が示されており、さらには満足度指標の性質による差異についても考慮した知見を得ることができた。 | KAKENHI-PROJECT-04J54091 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04J54091 |
情報通信ネットワークを活用した遠隔観察・実験授業法に関する研究 | PHS回線を利用した情報通信ネットワークを構築し、大阪府教育センターと研究協力員の小学校において、物理領域(1校)、化学領域(3校)、生物領域(2校)の遠隔実験授業を実践した。通信用のソフトウェアとしてはMicrosoft社のNetMeetingを使用している、画像等はデジタルビデオカメラで、音声はマイクでパソコンに取り込まれ、PHSで学校に配信される。通信速度が最大64kbsであるため、フレーム数は1秒間に1ないし2コマである。電波状態が良好な場合でも、速い現象には追随できない。動画は予め、ファイルで転送しておく。配信された画像やファイルはクラス全員が見やすいようにプロジェクターで拡大した。授業内容については、物理領域においては、「電流のはたらき」による発熱に焦点をあてた。発熱と発光に関連して、液体窒素中で炭素芯に電流を流し、発光させ、電球への仕組みへと発展させた。化学分野については「ものの溶け方」の項目の中で溶液からの巨大結晶づくりに関連するものであった。生物分野ではモンシロチョウの卵から成虫になる過程や昆虫の体のつくりを学習させた。特に、昆虫の食べ物や食べ方に焦点をあて、電子顕微鏡を用いた昆虫の口のつくりの観察を含めて小学校3年で2校実践した。授業実施後の児童へのアンケート調査によれば、今後も今回のような遠隔授業を受けたいと答えたものが96.7%あった。また、授業の内容がよくわかった及びだいたいわかったと答えたものの割合も81.5%あり、今回の授業の内容が発展的であることを考えあわせると、この遠隔授業により、児童の興味関心が引き出され、理解を進めたといえる。PHS回線を利用した情報通信ネットワークを構築し、大阪府教育センターと研究協力員の小学校において、物理領域(1校)、化学領域(3校)、生物領域(2校)の遠隔実験授業を実践した。通信用のソフトウェアとしてはMicrosoft社のNetMeetingを使用している、画像等はデジタルビデオカメラで、音声はマイクでパソコンに取り込まれ、PHSで学校に配信される。通信速度が最大64kbsであるため、フレーム数は1秒間に1ないし2コマである。電波状態が良好な場合でも、速い現象には追随できない。動画は予め、ファイルで転送しておく。配信された画像やファイルはクラス全員が見やすいようにプロジェクターで拡大した。授業内容については、物理領域においては、「電流のはたらき」による発熱に焦点をあてた。発熱と発光に関連して、液体窒素中で炭素芯に電流を流し、発光させ、電球への仕組みへと発展させた。化学分野については「ものの溶け方」の項目の中で溶液からの巨大結晶づくりに関連するものであった。生物分野ではモンシロチョウの卵から成虫になる過程や昆虫の体のつくりを学習させた。特に、昆虫の食べ物や食べ方に焦点をあて、電子顕微鏡を用いた昆虫の口のつくりの観察を含めて小学校3年で2校実践した。授業実施後の児童へのアンケート調査によれば、今後も今回のような遠隔授業を受けたいと答えたものが96.7%あった。また、授業の内容がよくわかった及びだいたいわかったと答えたものの割合も81.5%あり、今回の授業の内容が発展的であることを考えあわせると、この遠隔授業により、児童の興味関心が引き出され、理解を進めたといえる。PHS回線を利用した通信ネットワークを構築し、ダイヤルアップで大阪府教育センターのコンピュータと学校のコンピュータを接続して遠隔実験授業を小学校4校で4時間実施した。通信用のソフトウェアとしてはMicrosoft社のNetMeetingを使用した。PHSの電波状態は、教育センターの各実験室、学校の各教室ともおおむね良好であった。通信の状況については、音声は電話程度の音質で同時に双方向で話をすることができ、授業の中で説明を行うについては十分であった。動面については、クラス全員が見やすいようにプロジェクターで拡大したが、それに耐えうる細かさを確保すると、コマ送り的なフレームレートにならざるを得なかったが、動きの少ないものを提示しながら説明するのには支障はなかった。動きの大きな実験の様子を示すには、学校のコンピュータに予め録画した動画ファイルを保存しておき、授業時にそのファイルを再生しながらそれにあわせて教育センターから担当者が説明をする方法をとった。授業内容については、物理分野と化学分野について開発し、物理分野については1回、化学分野については3回の授業を実施した。物理分野で開発した教材は、電流のはたらきによる発熱に関連するのもの、化学分野は、ものの溶け方の項目の中で溶液からの巨大結晶づくりに関連するものであった。授業実施後の児童へのアンケート調査によれば、今後も今回のような遠隔授業を受けたいと答えたものが約95%あった。また、授業の内容がよくわかった及びだいたいわかったと答えたものの割合も約75%あり、今回の授業の内容が発展的であることを考えあわせると、この遠隔授業により、児童の興味関心が引き出され、理解を進めたといえる。PHS回線を利用した情報通信ネットワークを構築し、大阪府教育センターと研究協力員の小学校において、生物領域(2校)の遠隔実験授業を実践した。電波状況がかなり悪い状態ではあったが、前年度の経験を生かすことで次に示す好結果を残せた。授業内容は、生物分野で、モンシロチョウの卵から成虫になる過程や昆虫の体のつくりを学習させた。特に、昆虫の食べ物や食べ方に焦点をあて、電子顕微鏡を用いた昆虫の口のつくりの観察を含めて小学校3年で2校実践した。 | KAKENHI-PROJECT-13680273 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13680273 |
情報通信ネットワークを活用した遠隔観察・実験授業法に関する研究 | 授業実施後の児童へのアンケート調査によれば、今後も今回のような遠隔授業を受けたいと答えたものが98.4%あった。また、授業の内容がよくわかった及びだいたいわかったと答えたものの割合も89%あり、今回の授業の内容がストーリー性を考慮したもので、その結果が現れている。この遠隔授業により、児童の興味関心が引き出され、理解を進めたといえる。これらの内容も含め、全国理科センター協議会物理部会において、物理領域での遠隔観察・実験について発表を行った。内容は電球への発展と、液体窒素中での発熱発光の仕組みを説明した。大阪府教育センター研究フォーラムでは、小・中・高等学校の教員に対象に講演発表を行い、報告集録で理科の遠隔授業の試み(全38頁)にまとめた。PHSを使った遠隔授業のシステムに始まり、物理領域、化学領域、生物領域、地学領域の4領域について、教材、実践、アンケートについて報告している。 | KAKENHI-PROJECT-13680273 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13680273 |
日清・日露戦間期における日本外交の再考―日清追加通商航海条約を中心に― | 日清戦争から日露戦争までの日本外交は、清を舞台とする国際関係の推移のなかでいかなる展開をみせたのか、という点が当研究の問題意識である。本年度は当研究課題に関する先行研究や基礎資料の収集と、北京議定書の調印をめぐる日本外交の分析に力点を置いた。そのため、国内では外交史料館にて義和団事件に関する「外務省記録」・「林董関係文書」、国立国会図書館にて「福島安正関係文書」や新聞雑誌の調査を行った。海外ではイギリス国立公文書館や大英図書館で公文書と私文書の調査を行った。収集した史料群と刊行されている『日本外交文書』の双方を突き合わせて分析することにより、列国協調といわれる義和団事件の処理をめぐる日本の交渉姿勢が、多元的に展開していたことが明らかになった。ただし、日清追加通商航海条約締結交渉の分析につなげるには、交渉姿勢だけではなく北京議定書の内容に対するより具体的な分析も必要である。その点については次年度に持ち越すことになった。また、当研究課題の全体像については、10月に行われた大阪大学歴史教育研究会での報告によって西洋史や東洋史の専門家との議論を行い、世界史として成り立たせるうえでの課題点を確認した。このほか、2019年4月に刊行された『ハンドブック近代中国外交史』(岡本隆司・箱田恵子編、ミネルヴァ書房)への寄稿(「下関条約・三国干渉」、「通商航海条約の改定(対英、米、日)」)も研究実績となった。2年連続で所属研究機関が変更することになったためである。本年度は全く研究成果をあげていないわけではないが、新たな所属機関への順応と次年度の所属先への移行準備に時間を要した。その結果、調査の一部を見合わせ、史料分析のための時間もやや不十分となってしまった。以上の進捗状況から「やや遅れている」と判断した。ただし2度にわたる所属研究機関の変更を経て、長期的な視点で研究に向き合える安定した環境が整った。そのため今後はこのメリットを活かして研究に取り組むつもりである。今後は本年度にやり残した史料の分析を速やかに進めると同時に、ボストンで資料調査を行い、アメリカの視点を加えて東アジアにおける当時の日本外交を分析する予定である。日清戦争から日露戦争までの日本外交は、清を舞台とする国際関係の推移のなかでいかなる展開をみせたのか、という点が当研究の問題意識である。本年度は当研究課題に関する先行研究や基礎資料の収集と、北京議定書の調印をめぐる日本外交の分析に力点を置いた。そのため、国内では外交史料館にて義和団事件に関する「外務省記録」・「林董関係文書」、国立国会図書館にて「福島安正関係文書」や新聞雑誌の調査を行った。海外ではイギリス国立公文書館や大英図書館で公文書と私文書の調査を行った。収集した史料群と刊行されている『日本外交文書』の双方を突き合わせて分析することにより、列国協調といわれる義和団事件の処理をめぐる日本の交渉姿勢が、多元的に展開していたことが明らかになった。ただし、日清追加通商航海条約締結交渉の分析につなげるには、交渉姿勢だけではなく北京議定書の内容に対するより具体的な分析も必要である。その点については次年度に持ち越すことになった。また、当研究課題の全体像については、10月に行われた大阪大学歴史教育研究会での報告によって西洋史や東洋史の専門家との議論を行い、世界史として成り立たせるうえでの課題点を確認した。このほか、2019年4月に刊行された『ハンドブック近代中国外交史』(岡本隆司・箱田恵子編、ミネルヴァ書房)への寄稿(「下関条約・三国干渉」、「通商航海条約の改定(対英、米、日)」)も研究実績となった。2年連続で所属研究機関が変更することになったためである。本年度は全く研究成果をあげていないわけではないが、新たな所属機関への順応と次年度の所属先への移行準備に時間を要した。その結果、調査の一部を見合わせ、史料分析のための時間もやや不十分となってしまった。以上の進捗状況から「やや遅れている」と判断した。ただし2度にわたる所属研究機関の変更を経て、長期的な視点で研究に向き合える安定した環境が整った。そのため今後はこのメリットを活かして研究に取り組むつもりである。今後は本年度にやり残した史料の分析を速やかに進めると同時に、ボストンで資料調査を行い、アメリカの視点を加えて東アジアにおける当時の日本外交を分析する予定である。所属研究機関の変更によって調査対象となる国内資料所蔵機関へのアクセシビリティに変化が生じたほか、年度途中で次年度以降の研究機関変更が決まり、予定していた調査の一部を差し控えたためである。そのため、先延ばしとなった調査の費用に振り替えて使用する。 | KAKENHI-PROJECT-18K12505 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K12505 |
音声言語の文字化における韻律ラベリングの自動化 | 1.共通日本語の基本周波数パターンの特徴パラメータおよび入力指令の自動抽出法の確立共通日本語音声の韻律ラベリングを自動的に行うことを最終の目的として,発話の言語的情報が既知ないし所与の場合を対象とし,研究代表者らの独創による基本周波数パターン生成過程のモデルとテキストからの韻律生成規則とを組み合わせることにより,まず対象とする音声の韻律ラベリングの第1近似としての韻律記号を言語情報のみから作成し,それから導かれるモデルパラメータを出発点とするAnalysis-by-Synthesis法によって,与えられた音声の基本周波数パターンのパラメータを精密に推定し,その最終結果から,この音声に付与すべき韻律ラベルを決定するという新しい方式を提案した。予備的な実験の結果,この方式の妥当性を示した。2.共通日本語の韻律の特徴を的確に表現するための韻律記号の決定上記1.の検討結果にもとづいて,若干の共通日本語音声データの基本周波数パターンの分析を行い,その韻律の特徴を的確に記述するのに必要十分な韻律記号を決定するための検討を行った。その結果,本研究のめざす究極的な韻律ラベリングにおいては,言語情報の離散性を反映する韻律記号のみでなく,パラ言語情報および非言語情報の連続性を定量的に表現するパラメータ値を,同時に抽出し表記する必要があること確認した。なお,上記1.および2.を遂行するため,ワークステーション(日本サン・マイクロシステムズ社SPARCstation5)を購入し,主記憶の拡張(32MB)および大容量のハードディスク装置(ニューテック社NVS4.0XL)の増設を行い,処理に用いた。また,音声資料の入出力を行うため,オ-ディオアンプ(SONY社TA-FA5-ES)およびスピーカ(JBL社Control 5 plus)を購入した。1.共通日本語の基本周波数パターンの特徴パラメータおよび入力指令の自動抽出法の確立共通日本語音声の韻律ラベリングを自動的に行うことを最終の目的として,発話の言語的情報が既知ないし所与の場合を対象とし,研究代表者らの独創による基本周波数パターン生成過程のモデルとテキストからの韻律生成規則とを組み合わせることにより,まず対象とする音声の韻律ラベリングの第1近似としての韻律記号を言語情報のみから作成し,それから導かれるモデルパラメータを出発点とするAnalysis-by-Synthesis法によって,与えられた音声の基本周波数パターンのパラメータを精密に推定し,その最終結果から,この音声に付与すべき韻律ラベルを決定するという新しい方式を提案した。予備的な実験の結果,この方式の妥当性を示した。2.共通日本語の韻律の特徴を的確に表現するための韻律記号の決定上記1.の検討結果にもとづいて,若干の共通日本語音声データの基本周波数パターンの分析を行い,その韻律の特徴を的確に記述するのに必要十分な韻律記号を決定するための検討を行った。その結果,本研究のめざす究極的な韻律ラベリングにおいては,言語情報の離散性を反映する韻律記号のみでなく,パラ言語情報および非言語情報の連続性を定量的に表現するパラメータ値を,同時に抽出し表記する必要があること確認した。なお,上記1.および2.を遂行するため,ワークステーション(日本サン・マイクロシステムズ社SPARCstation5)を購入し,主記憶の拡張(32MB)および大容量のハードディスク装置(ニューテック社NVS4.0XL)の増設を行い,処理に用いた。また,音声資料の入出力を行うため,オ-ディオアンプ(SONY社TA-FA5-ES)およびスピーカ(JBL社Control 5 plus)を購入した。 | KAKENHI-PROJECT-07207225 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07207225 |
金属ガリウム溶媒の磁性機能性流体による省エネルギー型熱 | 本研究では金属液体として金属ガリウムを使用し、分散させる強磁性粒子には数百nmの粒子径で温度の上昇とともに飽和磁化が低下する感温性がある鉄合金粒子をシリカ被覆してガリウムに分散させやすくして使用した。ガリウム中に3%程度の本粒子径の鉄合金粒子を分散させると、流体は外力でやわらかく変形するゲル状になった。本流体は流動性が少ないため、流動性がある磁性流体よりは懸濁液であるMR流体に近いと考えられる。この金属流体へ磁界の印加の有無によるトルクと角速度の関係を円錐平板型粘度計および共軸二重円筒型にて測定した。磁界中での流体の粘度変化が少なければ、応用として磁界の印加でオンとオフで移動できるスイッチ、あるいは、磁界印加状態で温度が変化すると流体が保持されなくなることによる温度スイッチなどが考えられる。本研究では金属液体として金属ガリウムを使用し、分散させる強磁性粒子には数百nmの粒子径で温度の上昇とともに飽和磁化が低下する感温性がある鉄合金粒子をシリカ被覆してガリウムに分散させやすくして使用した。ガリウム中に3%程度の本粒子径の鉄合金粒子を分散させると、流体は外力でやわらかく変形するゲル状になった。本流体は流動性が少ないため、流動性がある磁性流体よりは懸濁液であるMR流体に近いと考えられる。この金属流体へ磁界の印加の有無によるトルクと角速度の関係を円錐平板型粘度計および共軸二重円筒型にて測定した。磁界中での流体の粘度変化が少なければ、応用として磁界の印加でオンとオフで移動できるスイッチ、あるいは、磁界印加状態で温度が変化すると流体が保持されなくなることによる温度スイッチなどが考えられる。本年度では金属液体として、金属ガリウムを使用し、分散させる強磁性粒子には数百nmの粒子径で温度の上昇とともに飽和磁化が低下する感温性がある鉄合金粒子をシリカ被覆してガリウムに分散させやすくして使用した。強磁性粒子の合成方法は、第一鉄を主成分とし、ニオブ、バナジウムを含有する酸性水溶液にアルカウ性の水素化ホウ素ナトリウムを添加することによりこれらの金属イオンを還元して作成した。合成した粒子の組成をICP-OES装置で分析したところ、鉄、ニオブ、バナジウム、ホウ素の原子比率は80:3:4:13のFeNbVB粒子であった。金属鉄はガリウムと反応しやすいので、ガリウムと親和性の高いシリカを合成した鉄合金粒子に被覆する。テトラエトキシシランを加水分解・脱水縮合反応させることによりシリカを鉄合金粒子に被覆した。シリカ被覆前後のFeNbVB粒子の飽和磁化を試料振動型磁化測定装置(VSM)により測定した。室温300K付近では鉄合金粒子の飽和磁化は0.72Tであるが、非磁性のシリカを被覆すると飽和磁化は0.50Tと低下し、約10nmのシリカが被覆されていると考えられる。ついで、シリカ被覆した鉄合金粒子をガリウムに添加して分散させて流体を製造した。金属ガリウム中に微細シリカ粒子を約1%添加するとガリウムの融点は低下し、293Kでも長時間、金属ガリウムは液体状態を保持した。また、ガリウム中に3%程度の本粒子径の鉄合金粒子を分散させると、流体は外力でやわらかく変形するゲル状になった。電磁石中で0.59Tの磁束密度を作用させ3x10-3kgの金属流体を重力に逆らって移動させることができた。磁界中での流体の粘度変化が少ないので、応用として磁界の印加でオン位置とオフ位置を移動できるスイッチとしての応用が期待される。金属ガリウム中に20から30nmのFeNbVB強磁性粒子をシリカを被覆して約3%分散させたゲル状金属ガリウム流体を製造した。この金属流体へ磁界の印加の有無によるトルクと角速度の関係を円錐平板型粘度計および共軸二重円筒型にて測定し以下の事項が明らかとなった。円錐平板型粘度計では、円錐平板と垂直に磁界の無印加と最大磁束密度0.09 Tを印加した場合、磁界を作用させた方が低角速度ではトルクが大きく、角速度が4rad/s以上では磁界の影響はほとんど現れなくなった。磁界の印加の有無にかかわらず、角速度が上昇するとトルクが減少する傾向が観察された。共軸二重円筒型では、回転軸と平行に最大磁束密度0.09 Tを印加した場合、低回転数では若干、磁界印加したほうがトルクは大きいが、速度の上昇とともに検出されるトルクの差は減少した。円錐平板の結果と同様に回転速度が大きくなるに従って角速度が上昇するとトルクが減少する傾向が観察された。高回転になるとガリウム流体と接触する粘度計のステンレス(SUS304)板との間に隙間が生じるからと考えられる。電磁石中で0.55Tの磁束密度を作用させ、金属流体を重力に逆らって移動させることができた。磁界中での流体の粘度変化が少ないので、応用として磁界の印加でオンとオフで移動できるスイッチへの応用が考えられる。24年度が最終年度であるため、記入しない。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22656202 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22656202 |
基準システムへの変換を考慮した多状態システムの最適設計に関する研究 | 2018年度は,最初に,1)多状態システムとしてMulti-stateconsecutive k-out-of-n:Fsystemを取り上げ,任意の状態に対して,その状態以上となる確率を最大とすることを評価関数とする最適配置問題を考察した.そして,a)システムがbinaryconsecutive k-out-of-n:Fsystemに帰着する場合の条件について考察し,帰着可能なシステムに対して通常の2値システムの方法を利用し,b)帰着できない場合には,一部のMulti-stateconsecutive k-out-of-n:F systemに対して(条件付き)不変な最適配置の条件を導出した.また,2)2次元のconsecutive k-systemであるConnected-(r,s)-out-of-(m,n):F Lattice Systemに対して特殊な場合に対してあるが,従来方法に比して効率的な信頼度計算を提案,さらに信頼度最大という基準の下で最適配置を効率的に導出するアルゴリズムを提案した.さらに,3)上記で得た最適配置の必要条件を修理系への適用に拡張すべく,その準備のために1次元のconsecutive k-systemであるconsecutive k-out-of-nsystemに対して単純保全(システム故障時に全取替)や時間計画保全方策の下での最適方策を導出した.さらに,4)上記の考えをベースにネットワークシステムに対して信頼度算出について効率的なアルゴリズムの提案と信頼度の新たな上下限値の提案のための準備を行った.また,5)生産管理のスケジューリング問題やバランシング問題解法のための一モデルである多期間サイクルモデルについても,作業者(または機械)の新たな最適配置の必要条件,さらに従来モデルの仮定を緩めた問題に対しても必要条件を提案した.上記の成果を論文6本,国際学会12件,国内学会16件にまとめた.2018年度は,2値システムへの変換可能な多状態システムの範囲の確認や変換方法の提案,また変換が困難な多状態システムに対して1部のシステムではあるが,実際に最適配置の必要条件の提案を行った.また,その提案段階において,新な信頼度計算アルゴリズムの導出を行い,当初計画では想定しなかった修理系への発展が可能であることを実証するために最適保全計画の導出を行った.また,来年度実施予定であった生産管理などの他分野への応用について実施した.しかし,一般システムの基準システム可能性について,一部のシステムについてのみ検討したが,まだ不十分と判断し,総合的に考えて概ね順調とした.2018年度の成果により,多状態システムが“2状態システムや多状態連続型k-システム"(基準システム)に帰着可能かどうかの変換可能性を表す指標(以後,変換指標)として,極小カットまたは極小パスの重複を表現する指標を取り上げ,その指標により多状態システムを分類する.そして,基準システムに対しては,昨年度までで,システム特有の性質を考慮した性能評価指標の効率的算出方法を提案済み,最適配置の存在範囲(条件)や“(条件付き)不変な最適配置"の存在条件を導出済みであるが,さらに継続的な検討を進め,任意の状態に対して,その状態以上となる確率を評価関数を最大とする目的の下で,基準システムに対する効率的な最適配置探索方法を提案予定である.多状態システムに対しても上記の変換指標により分類したシステムごとに,最適配置の存在範囲(条件)や(条件付き)不変性などの性質を導出し,それを利用した最適配置探索方法を比較検討し,最終的に多状態システムの最適配置を効率的に探索する統一的な探索方法を提案する予定である.また,2018年度と同様に上記考えの修理系の評価や生産管理分野への適用考察を継続的に実施する.さらに、作業者のスケジューリング問題を別視点から考慮するリセット多期間制約サイクルモデルに対して最適配置問題に関し,作業者の能力に対応して少数のグループに分けられる場合を考え,作業者の最適な配置の必要条件を導出することにより,最適配置問題の効率的な解法を提案した.また、エッジに信頼度とコストが付加されているネットワークシステムの最適設計(全点間信頼度制約の下でコスト最少)問題の効率的解法において最適な構成となり得ないシステムを除外するために有効となる全点間信頼度を最大とするネットワーク構成について考察した.上記の結果を論文6本(内,1本は印刷中)、国際学会4件、国内学会9件にて発表した.2017年度は,多状態システムの最適配置問題解法を主眼にして,多状態システムの最適配置問題とその解法, 2状態システムと多状態連続型k-システムの最適配置問題解法を再調査した.その段階で,一部の2状態システムの信頼度算出方法や最適配置問題解法に新たな考えによる解法を提案できた.この考えは,多状態システムに対しても有用と思われる.多状態システムは,例えばコンポーネント状態(ベクトル)に全順序関係があれば容易に2状態システムに帰着でき,多状態システムの性能評価指標算出も容易となる.そのために多状態システムの2状態システムへの変換可能性の検討を行った.一般的に多状態システムのコンポーネント状態は半順序関係となることから,一部のコンポーネント状態間でのみ全順序関係が成立する条件を調査した.全順序関係が成立するコンポーネント集合の重複具合(積集合の大きさ)により多状態システムへの2状態システムへの変換の難しさが評価できる可能性を見出した.多状態システムの性能評価指標については,システム自体、それを取り巻く環境やシステムユーザーの価値観により多種多様な指標が考えられるために、一般的に有用とされる性質を有する評価関数を導入し、それをもとに最適配置問題を定式化することとした。 | KAKENHI-PROJECT-17K01259 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K01259 |
基準システムへの変換を考慮した多状態システムの最適設計に関する研究 | また,多状態システムの多状態連続型k-システムへの変換可能性についても,多状態連続型k-システムに変換可能な多状態システムとはどのような性質を持つシステムかを考察することとした.以上より,ある程度の成果は得られたことにより,おおむね順調と判断した.2018年度は,最初に,1)多状態システムとしてMulti-stateconsecutive k-out-of-n:Fsystemを取り上げ,任意の状態に対して,その状態以上となる確率を最大とすることを評価関数とする最適配置問題を考察した.そして,a)システムがbinaryconsecutive k-out-of-n:Fsystemに帰着する場合の条件について考察し,帰着可能なシステムに対して通常の2値システムの方法を利用し,b)帰着できない場合には,一部のMulti-stateconsecutive k-out-of-n:F systemに対して(条件付き)不変な最適配置の条件を導出した.また,2)2次元のconsecutive k-systemであるConnected-(r,s)-out-of-(m,n):F Lattice Systemに対して特殊な場合に対してあるが,従来方法に比して効率的な信頼度計算を提案,さらに信頼度最大という基準の下で最適配置を効率的に導出するアルゴリズムを提案した.さらに,3)上記で得た最適配置の必要条件を修理系への適用に拡張すべく,その準備のために1次元のconsecutive k-systemであるconsecutive k-out-of-nsystemに対して単純保全(システム故障時に全取替)や時間計画保全方策の下での最適方策を導出した.さらに,4)上記の考えをベースにネットワークシステムに対して信頼度算出について効率的なアルゴリズムの提案と信頼度の新たな上下限値の提案のための準備を行った.また,5)生産管理のスケジューリング問題やバランシング問題解法のための一モデルである多期間サイクルモデルについても,作業者(または機械)の新たな最適配置の必要条件,さらに従来モデルの仮定を緩めた問題に対しても必要条件を提案した.上記の成果を論文6本,国際学会12件,国内学会16件にまとめた.2018年度は,2値システムへの変換可能な多状態システムの範囲の確認や変換方法の提案,また変換が困難な多状態システムに対して1部のシステムではあるが,実際に最適配置の必要条件の提案を行った.また,その提案段階において,新な信頼度計算アルゴリズムの導出を行い,当初計画では想定しなかった修理系への発展が可能であることを実証するために最適保全計画の導出を行った. | KAKENHI-PROJECT-17K01259 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K01259 |
3次元非構造格子電磁粒子コードによる宇宙飛翔体環境シミュレータの開発 | 本研究では、人工衛星近傍のプラズマ電磁環境を精密に再現することができる3次元のプラズマ電磁粒子コードの開発を行った。衛星の形状をモデルとして正確に扱うことを可能にするためには、まず電磁界を扱う空間格子として非構造4面体要素を用いて空間を離散化する。それをマックスウェル方程式に適用し電磁界の時間発展を計算する。さらに衛星近傍のプラズマの挙動を正確にモデル化するためには、プラズマを粒子として取り扱い、上記の電磁界によって与えられるローレンツ力を考慮した運動方程式を個々の粒子について解き進める。さらに、プラズマ粒子の運動によって発生する空間電荷や、電流密度をマックスウェル方程式に反映させることにより自己無撞着(self-consistent)なシミュレーションコードを完成する。本年度は、可能な限り現実的なモデルを取り扱うことを目標とし、衛星形状のモデル構築および大規模3次元シミュレーションコードの開発、最適化を行った。3次元CADを使用し、球プローブの非構造格子モデルを作成し実験を行う一方で、地球シミュレータを使用した大規模3次元シミュレーションコードの最適化を行った。大規模3次元シミュレーションコードは、1000×1000×1000グリッドのモデルを扱うことが可能になり、静止衛星軌道上の衛星を扱う場合10km立方の空間をモデル化することが可能になった。非構造シミュレーションコードでは、球プローブモデルをおよそ1万節点の4面体要素でモデル化し、実験を行った。今後、理論計算との比較を行い、シミュレーション精度の評価を行う予定である。すでに定式化された2次元および3次元の電磁粒子コードをプログラム化するため、小規模な開発用コンピュータの導入を行った。開発は主に市販の高性能パーソナルコンピュータを使用し、開発用ソフトウェアを導入した。基本的な衛星の材質、形状等をモデル化するためのデータ入力、格子生成を行う一方、広大な宇宙空間を再現するため外部境界を実現するアルゴリズム等、既存の技術を調査、検討するための調査をおこなった。電磁界を計算する4面体要素を生成する手法は、モデルを作成する段階において非常に大きな労力を必要とし、実用的なモデルを作成するためには必須の技術である。これを自動で実現する手法として計算流体力学(CFD)分野において使用されている自動要素分割アルゴリズムが本電磁粒子コードおいても応用可能であることが分かり、コードの精度、要素分割の自由度、モデルとなる衛星の形状特性等比較検討した。年度後半においては、これまでの進捗状況を学会において報告するとともに、論文の印刷を行った。基本的なモデルに対するデータの可視化テストを行い、アニメーション化を試みた。基本的なコード開発に目処が立った時点において、大規模なコード開発にむけた準備を始め、スーパーコンピュータレベルでのコード開発、高速化を行う作業を開始した。本研究では、人工衛星近傍のプラズマ電磁環境を精密に再現することができる3次元のプラズマ電磁粒子コードの開発を行った。衛星の形状をモデルとして正確に扱うことを可能にするためには、まず電磁界を扱う空間格子として非構造4面体要素を用いて空間を離散化する。それをマックスウェル方程式に適用し電磁界の時間発展を計算する。さらに衛星近傍のプラズマの挙動を正確にモデル化するためには、プラズマを粒子として取り扱い、上記の電磁界によって与えられるローレンツ力を考慮した運動方程式を個々の粒子について解き進める。さらに、プラズマ粒子の運動によって発生する空間電荷や、電流密度をマックスウェル方程式に反映させることにより自己無撞着(self-consistent)なシミュレーションコードを完成する。本年度は、可能な限り現実的なモデルを取り扱うことを目標とし、衛星形状のモデル構築および大規模3次元シミュレーションコードの開発、最適化を行った。3次元CADを使用し、球プローブの非構造格子モデルを作成し実験を行う一方で、地球シミュレータを使用した大規模3次元シミュレーションコードの最適化を行った。大規模3次元シミュレーションコードは、1000×1000×1000グリッドのモデルを扱うことが可能になり、静止衛星軌道上の衛星を扱う場合10km立方の空間をモデル化することが可能になった。非構造シミュレーションコードでは、球プローブモデルをおよそ1万節点の4面体要素でモデル化し、実験を行った。今後、理論計算との比較を行い、シミュレーション精度の評価を行う予定である。 | KAKENHI-PROJECT-14740286 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14740286 |
画像による物体の3次元形状復元の解析的手法 | 1.単一画像からの多面体形状復元。多面体の線画においてどの辺と辺が直交しているか、あるいは平行かを発見的に仮説検定する手法を確立し、誤差を最小にする最適化手法を数学的に完全に定式化した。また、実際の画像を用いた実験を行ったところ、良好な結果を得た。これに関しては国際学会IAPR Workshop on Computer Vision(昭63.10東京)およびIEEE ICCV(昭63.12米国フロリダ州)において研究発表を行った。また電子情報通信学会論文誌およびInt.J.Comput.Vosionに論文掲載が決定している。2.対応点を用いない運動認識。形状が既知の物体の画像が与えられたとき、既知の物体モデルのどの点が画像のどの点に対応しているかという知識を用いないで、物体の3次元的位置を計算する手法を確立した。これは画像を特徴づける巨視的な「特徴量」を元にするものであり、任意形状の物体に適用できる。実際の画像を用いた実験を行ったところ、良好な結果を得た。これに関しては情報処理学会(昭63.7東京)および非破壞検査協会(昭和63.7東京)において研究発表を行った。またJ.Infor.Process.に論文掲載が決定している。3.道路画像の3次元復元。スプライン補間を施した道路画像をもとにして、道路3次元形状を決定する微分方程式を導き、これを数値積分して3次元復元を行う手法を提案した。さらに計測誤差に対処するための種々の計算の安定化手法を開発した。また実際の画像を用いた実験を行ったところ、良好な結果を得た。これに関しては国際学会IEEE Int.Workshop on Intelligent Robots and Systems(昭和63.10-11)において研究発表をおこなった。現在IEEE Trans.Robotics Automationに投稿中である。4.その他。これらの基礎となる数理的手法に関する著書を執筆した。1.単一画像からの多面体形状復元。多面体の線画においてどの辺と辺が直交しているか、あるいは平行かを発見的に仮説検定する手法を確立し、誤差を最小にする最適化手法を数学的に完全に定式化した。また、実際の画像を用いた実験を行ったところ、良好な結果を得た。これに関しては国際学会IAPR Workshop on Computer Vision(昭63.10東京)およびIEEE ICCV(昭63.12米国フロリダ州)において研究発表を行った。また電子情報通信学会論文誌およびInt.J.Comput.Vosionに論文掲載が決定している。2.対応点を用いない運動認識。形状が既知の物体の画像が与えられたとき、既知の物体モデルのどの点が画像のどの点に対応しているかという知識を用いないで、物体の3次元的位置を計算する手法を確立した。これは画像を特徴づける巨視的な「特徴量」を元にするものであり、任意形状の物体に適用できる。実際の画像を用いた実験を行ったところ、良好な結果を得た。これに関しては情報処理学会(昭63.7東京)および非破壞検査協会(昭和63.7東京)において研究発表を行った。またJ.Infor.Process.に論文掲載が決定している。3.道路画像の3次元復元。スプライン補間を施した道路画像をもとにして、道路3次元形状を決定する微分方程式を導き、これを数値積分して3次元復元を行う手法を提案した。さらに計測誤差に対処するための種々の計算の安定化手法を開発した。また実際の画像を用いた実験を行ったところ、良好な結果を得た。これに関しては国際学会IEEE Int.Workshop on Intelligent Robots and Systems(昭和63.10-11)において研究発表をおこなった。現在IEEE Trans.Robotics Automationに投稿中である。4.その他。これらの基礎となる数理的手法に関する著書を執筆した。 | KAKENHI-PROJECT-63550268 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63550268 |
応力発光現象の応用による地盤内部のリアルタイムな応力分布可視化技術の開発 | 本研究課題では、応力発光現象を応用することで地盤内の応力分布をリアルタイムに可視化する新しい計測手法の開発を目的としている。平成29年度には、文献調査により適した応力発光材料の検討を行い、ユウロピウムを発光中心としたアルミン酸ストロンチウムを採用した。応力発光材料とエポキシ樹脂を混合した塗料を利用することにより、ガラスビーズに塗布することで作用力の増分に応じて発光する粒子を作成して、キャリブレーションを行った。このキャリブレーションでは新たな知見として、粒子間の接点で発生する強い発光に着目することで粒子間接触力についてもリアルタイムな可視化が可能であることを示した。平成30年度にかけて、作成した発光粒子を用いて、二次元断面における単調載荷実験を行った。各粒子や接点から換算された力と供試体の境界に設置したロードセルで計測された力とを比較することで、地盤内の作用力とその分布の検証を行い、定量的に一致することを示した。加えて、載荷速度を調整可能な載荷実験機を製作し、閉端杭の貫入時における先端抵抗と地盤内部で発生する作用力分布の可視化について検討を開始している。試検討において、閉端杭の先端にくさび状の作用力が大きい領域が確認され、二次元断面の実験と同様に載荷過程で一部の粒子と接点が強く発光し、それらが連なったり分岐したりしながら力を伝達する応力鎖という粒状体らしい現象の推移を観察することができた。これまでに、本研究に適した応力発光材料を選定し、発光粒子を作成してキャリブレーションを実施している。また、新たに粒子間接触力についてもリアルタイムな可視化が本手法によって可能となることを示せている。要素試験として、二次元断面での載荷実験において粒状体内に作用する力の分布とその推移を可視化し、定量的に検証をすることができたので、当初の予定を順調に達成できている。また、作成した発光粒子を用いた地盤工学の問題への応用として、閉端杭の貫入時における先端抵抗を可視化する載荷実験機を製作して動作確認と試検討を実施していることからも、当初の予定通りに進んでいると考えている。平成31年度では研究のとりまとめとして、閉端杭の貫入時における先端抵抗を可視化する載荷実験により、既往の解析解との比較検証などを実施する予定である。また、この実験においても、粒子や接点のミクロな情報に加え、平均配位数、ファブリックテンソルなどのメゾスケールの情報、マクロスケールな閉端杭の貫入抵抗といったマルチスケールな観点からのメカニズムの検討を実施してまとめる予定である。本研究課題では、応力発光現象を応用することで地盤内の応力分布をリアルタイムに可視化する新しい計測手法の開発を目的としている。平成29年度には、大きく4つの内容を実施した。まず、文献調査により本研究に適した応力発光材料の検討を行い、ユウロピウムを発光中心としたアルミン酸ストロンチウムを採用した。発光粒子の作成では、応力発光材料とエポキシ樹脂を混合した塗料を利用することにより、ガラスビーズに塗布することで実現した。なお、塗膜厚さの均一性は発光強度のばらつきに影響するため、X線CT装置による撮影画像から確認を行っている。次に、作成した発光粒子について、荷重増分と粒子の平均発光強度の関係についてキャリブレーションを行った。特に、このキャリブレーションでは新たな知見として、粒子間の接点で更に強い発光が確認され、粒子の平均発光強度と同様に荷重増分に対する校正係数を得ることができた。つまり、地盤内の応力分布について、粒子単位の作用力だけでなく、さらに詳細な情報として粒子間接触力のリアルタイムな可視化も可能であることを示した。最後に、作成した発光粒子を用いて、二次元断面における単調載荷実験を行った。載荷過程では、一部の粒子と接点が強く発光し、それらが連なったり分岐したりしながら力を伝達する応力鎖という粒状体らしい現象の推移を観察することができた。応力鎖の発達過程は、載荷条件や地盤条件によって強く影響を受けると考えられるため、平成30年度に作成する載荷実験機により検討を進めていく予定である。これまでに、本研究に適した応力発光材料を選定し、発光粒子を作成してキャリブレーションを行い、二次元断面での載荷実験において粒状体内に作用する力の分布とその推移を可視化できたことから、概ね当初の予定を順調に達成できている。また、新たに粒子間接触力についてもリアルタイムな可視化が本手法によって可能となることを示せたので、この成果を今後の研究において総合しながら検討を進めていくことで、より高度な成果を得ることができると考えている。また、来年度以降に実施する種々の載荷条件や地盤条件を変更可能な載荷実験機についても文献調査による効果的な検討対象や具体的な設計に向けた事前検討を行っており、予定通りに進んでいると考えている。本研究課題では、応力発光現象を応用することで地盤内の応力分布をリアルタイムに可視化する新しい計測手法の開発を目的としている。平成29年度には、文献調査により適した応力発光材料の検討を行い、ユウロピウムを発光中心としたアルミン酸ストロンチウムを採用した。応力発光材料とエポキシ樹脂を混合した塗料を利用することにより、ガラスビーズに塗布することで作用力の増分に応じて発光する粒子を作成して、キャリブレーションを行った。このキャリブレーションでは新たな知見として、粒子間の接点で発生する強い発光に着目することで粒子間接触力についてもリアルタイムな可視化が可能であることを示した。平成30年度にかけて、作成した発光粒子を用いて、二次元断面における単調載荷実験を行った。 | KAKENHI-PROJECT-17K14725 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K14725 |
応力発光現象の応用による地盤内部のリアルタイムな応力分布可視化技術の開発 | 各粒子や接点から換算された力と供試体の境界に設置したロードセルで計測された力とを比較することで、地盤内の作用力とその分布の検証を行い、定量的に一致することを示した。加えて、載荷速度を調整可能な載荷実験機を製作し、閉端杭の貫入時における先端抵抗と地盤内部で発生する作用力分布の可視化について検討を開始している。試検討において、閉端杭の先端にくさび状の作用力が大きい領域が確認され、二次元断面の実験と同様に載荷過程で一部の粒子と接点が強く発光し、それらが連なったり分岐したりしながら力を伝達する応力鎖という粒状体らしい現象の推移を観察することができた。これまでに、本研究に適した応力発光材料を選定し、発光粒子を作成してキャリブレーションを実施している。また、新たに粒子間接触力についてもリアルタイムな可視化が本手法によって可能となることを示せている。要素試験として、二次元断面での載荷実験において粒状体内に作用する力の分布とその推移を可視化し、定量的に検証をすることができたので、当初の予定を順調に達成できている。また、作成した発光粒子を用いた地盤工学の問題への応用として、閉端杭の貫入時における先端抵抗を可視化する載荷実験機を製作して動作確認と試検討を実施していることからも、当初の予定通りに進んでいると考えている。平成29年度では、キャリブレーションを行った発光粒子を用いて二次元断面での載荷実験を行うことで、粒子への作用力と粒子間接触力の分布を可視化することができた。平成30年度は、まず二次元断面での載荷実験で得られた可視化結果について、各粒子や接点から換算された力と供試体の境界に設置したロードセル計測された力とを比較することで、地盤内の作用力とその分布の定量的な検証を行う。また、粒状体としての挙動に関する既往の研究成果(平均配位数、ファブリックテンソルなど)との比較やその推移の観察から、成果を得られるよう検討を実施していく予定である。なお、これらの検討と並行して、種々の載荷条件や地盤条件における発光の様子を観察するための載荷装置を製作することで、より詳細に応力分布の可視化による定量的な観察を行っていく予定である。平成31年度では研究のとりまとめとして、閉端杭の貫入時における先端抵抗を可視化する載荷実験により、既往の解析解との比較検証などを実施する予定である。また、この実験においても、粒子や接点のミクロな情報に加え、平均配位数、ファブリックテンソルなどのメゾスケールの情報、マクロスケールな閉端杭の貫入抵抗といったマルチスケールな観点からのメカニズムの検討を実施してまとめる予定である。 | KAKENHI-PROJECT-17K14725 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K14725 |
レーザーシュタルク分光法による対称コマ分子の回転定数A_0の精密決定 | 1.レーザーシュタルクスペクトルの帰属と解析本研究によりレーザーシュタルクスペクトルの解析が効率良く行なえる様になった。特に複雑なスペクトルを解析するためのコンピュータプログラムを開発し、従来帰属できなかったホットバンド等の弱いスペクトルも容易に帰属できた。以下の対称コマ分子についてスペクトルの解析を行なった。2.対称コマ分子の回転定数A_0の決定(1)CH_3Br分子2ν^2_6-ν_6およびν_6バンドの測定データと、2ν^2_6バンドの既に報告されているデータを同時解析し、この分子の対称軸まわりの回転定数A_0,D^0_K、H^0_Kを二種類のBr同位体についてそれぞれ精密に決定できた。A_0、D^0_Kは従来より12桁高精度で求まり、特にH^0_Kの値はこの種の分子としては初めて得られたものである。これらの定数が決定できた事から他の振動回転バンドの詳細な解析への手がかりが得られた。一例としてν_3+ν_6とν_5バンド間のフェルミ共鳴の問題がある。両バンドについては最近量子数Kの大きな遷移の測定が報告され解析が試みられているが、他の未知の摂動のためフェルミ共鳴の存在の有無について充分な知見は得られていない。本研究で得られた回転定数からこの別の摂動はν_5とν_3+ν_6の間の△l=±2、△k=±1準位の交差によるものと結論できた。これについては更にν_3+ν_6-ν_3バンドのデータを含めて解析を進める計画である。(2)CH_3C〓CH分子この分子については本研究の進行中にほぼ同様の方法によるA_0の決定が報告された。しかしながらその精度は充分なものとは言えず、また低波数振動の存在のためそのスペクトルには不明の点が多い。そこで基本的なν_5バンドについて新しいデータを含めて詳しく解析した。ν_5とフェルミ相互作用を通して3ν^3_<10>準位のバンドオリジンが精度良く求まった(発表予定)。ν_<10>振動の非調和項について知見が得られ、この分子のスペクトルの系統的理解とA_Oの精密決定のための糸口が見つかった。1.レーザーシュタルクスペクトルの帰属と解析本研究によりレーザーシュタルクスペクトルの解析が効率良く行なえる様になった。特に複雑なスペクトルを解析するためのコンピュータプログラムを開発し、従来帰属できなかったホットバンド等の弱いスペクトルも容易に帰属できた。以下の対称コマ分子についてスペクトルの解析を行なった。2.対称コマ分子の回転定数A_0の決定(1)CH_3Br分子2ν^2_6-ν_6およびν_6バンドの測定データと、2ν^2_6バンドの既に報告されているデータを同時解析し、この分子の対称軸まわりの回転定数A_0,D^0_K、H^0_Kを二種類のBr同位体についてそれぞれ精密に決定できた。A_0、D^0_Kは従来より12桁高精度で求まり、特にH^0_Kの値はこの種の分子としては初めて得られたものである。これらの定数が決定できた事から他の振動回転バンドの詳細な解析への手がかりが得られた。一例としてν_3+ν_6とν_5バンド間のフェルミ共鳴の問題がある。両バンドについては最近量子数Kの大きな遷移の測定が報告され解析が試みられているが、他の未知の摂動のためフェルミ共鳴の存在の有無について充分な知見は得られていない。本研究で得られた回転定数からこの別の摂動はν_5とν_3+ν_6の間の△l=±2、△k=±1準位の交差によるものと結論できた。これについては更にν_3+ν_6-ν_3バンドのデータを含めて解析を進める計画である。(2)CH_3C〓CH分子この分子については本研究の進行中にほぼ同様の方法によるA_0の決定が報告された。しかしながらその精度は充分なものとは言えず、また低波数振動の存在のためそのスペクトルには不明の点が多い。そこで基本的なν_5バンドについて新しいデータを含めて詳しく解析した。ν_5とフェルミ相互作用を通して3ν^3_<10>準位のバンドオリジンが精度良く求まった(発表予定)。ν_<10>振動の非調和項について知見が得られ、この分子のスペクトルの系統的理解とA_Oの精密決定のための糸口が見つかった。 | KAKENHI-PROJECT-63540374 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63540374 |
ニューラルネットワークの非対称、対称構造における認知、記憶機構の計算論的研究 | 本研究では、ニューラルネットの非対称構造および対称構造の機能を、今まで、われわれが進めてきた、catfishなどの網膜神経回路に見られる非対称構造の機能解析の結果を、大脳皮質の視覚領の部位のV1野及びMT野に適用して、これらの大脳皮質の回路構造の特徴を計算論的に明らかにずることである。この網膜部位の非対称構造とは、Bipolar cell-Amacrine N-type cellの線形系経路及びBipolar cell-Amacrine C-type cell-Amacrine N-typecellの非線形系経路がAmacrine cellでも一緒になり、非対称構造を形成する。、Catの網膜の非線形特性として、米国のCornell大学りJ.Victor教授らは3次の非線形性は少なく、4次の非線形性もいくらか、みられることを実験的に示している。われわれは、これらの知見を基に、線形性経路、非線形性経路からなる非対称構造のネットワークについて、刺激の左右の動きに対して、どのような回路としての反応性を示すかについて、計算論的に明らかにしてきた。この結果、非線形回路構造でも、奇数次の非線形性と偶数次の非線形性を持つ非対称構造が、左右の刺激の動きに対して、きわめて、敏感であることを計算詮的に明らかにしてきた。視覚機能を司るV1野及びMT野の研究は米国のNew York大学のSimoncelliとHeegerにより、その構造が明らかにされ、並列、対称構造である那非線形性としてHalf-wave Rectificationを有することを示している。本研究では、この非対称、並列構造のネットワークは刺激の変化に対して、きわめて、敏感であることを計算論的に明らかにした。ここでは、非線形性と並列性が重畳作用となり、ネットワークのアンサンブル処理が加わり。冗長性をもって、適確に情報を捉える頑健なシステムとなることを明らかにした。以上の知見をまとめ、V1とMTの、2層構造の情報を捉えだすアンサンブルネットワークとなることを計算論的に示した。このアンサンブル処理の考え方をテキストマイニングの処理に適用して、有効な結果を示した。本研究では、ニューラルネットの非対称構造および対称構造の機能を、今まで、われわれが進めてきた、catfishなどの網膜神経回路に見られる非対称構造の機能解析の結果を、大脳皮質の視覚領の部位のV1野及びMT野に適用して、これらの大脳皮質の回路構造の特徴を計算論的に明らかにずることである。この網膜部位の非対称構造とは、Bipolar cell-Amacrine N-type cellの線形系経路及びBipolar cell-Amacrine C-type cell-Amacrine N-typecellの非線形系経路がAmacrine cellでも一緒になり、非対称構造を形成する。、Catの網膜の非線形特性として、米国のCornell大学りJ.Victor教授らは3次の非線形性は少なく、4次の非線形性もいくらか、みられることを実験的に示している。われわれは、これらの知見を基に、線形性経路、非線形性経路からなる非対称構造のネットワークについて、刺激の左右の動きに対して、どのような回路としての反応性を示すかについて、計算論的に明らかにしてきた。この結果、非線形回路構造でも、奇数次の非線形性と偶数次の非線形性を持つ非対称構造が、左右の刺激の動きに対して、きわめて、敏感であることを計算詮的に明らかにしてきた。視覚機能を司るV1野及びMT野の研究は米国のNew York大学のSimoncelliとHeegerにより、その構造が明らかにされ、並列、対称構造である那非線形性としてHalf-wave Rectificationを有することを示している。本研究では、この非対称、並列構造のネットワークは刺激の変化に対して、きわめて、敏感であることを計算論的に明らかにした。ここでは、非線形性と並列性が重畳作用となり、ネットワークのアンサンブル処理が加わり。冗長性をもって、適確に情報を捉える頑健なシステムとなることを明らかにした。以上の知見をまとめ、V1とMTの、2層構造の情報を捉えだすアンサンブルネットワークとなることを計算論的に示した。このアンサンブル処理の考え方をテキストマイニングの処理に適用して、有効な結果を示した。本研究では、われわれが今まで研究してきた、ニューラルネットの非対称構造および対称構造の機能を、大脳皮質の視覚領の部位のV1野及びMT野に適用して、これらの大脳皮質の回路構造の性質を計算論的に明らかにすることである。視覚機能を司るV1野及びMT野の研究は多くの研究者から、研究されている部位である。特に米国のNew York大学のSimoncelliとHeegerにより、その構造が明らかにされ、並列、対称構造であるが非線形性としてHalf-wave Rectificationを有することを示し、そのモデル的構造を提示している。彼らの研究では大脳皮質V1野は非線形性を有する対称構造を持ち、V1野からの出力は、同様な並列、対称構造をもつMT野の構造となることを提示している。本研究ではこれらの知見をベースにして、非線形性を有する並列、対称構造のネットワークが非線形性の性質により、非対称、並列構造のネットワークと同じ機能を有していることを計算論的に導き出した。この非対称、並列構造のネットワークは刺激の変化に対して、きわめて、敏感であることを計算論的に明らかにした。これらの研究のアイデアはcatfishの網膜構造の非対称構造の回路網の機能について2004年の英国(University of Stirling)のInt.Conf.on Brain Inspired Cognitive Systems(BICS2004国際会議)において発表した内容に基づいている。大脳皮質のV1野とMT野の2段構成のネットワークは刺激の変化を捉えるための十分条件となることを計算論的に示した。 | KAKENHI-PROJECT-17500154 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17500154 |
ニューラルネットワークの非対称、対称構造における認知、記憶機構の計算論的研究 | また非線形性と並列性が重畳作用となり、適確に情報を捉える大きな冗長性となることを明らかにした。以上の知見をまとめ、V1とMTの2層構造のネットワークが情報機能として、十分となることを計算論的に示した。この論文はInt.Conf.IWANN(2005、Lecture Notes in Springer-Verlag)およびSNPD05(IEEE Publication)で発表することができた。本研究では、ニューラルネットの非対称構造および対称構造の機能を、今まで、われわれが進めてきた、catfishなどの網膜神経回路に見られる非対称構造の機能解析の結果を、大脳皮質の視覚領の部位のV1野及びMT野に適用して、これらの大脳皮質の回路構造の特徴を計算論的に明らかにすることである。この網膜部位の非対称構造とは、Bipolar cell-Amacrine N-type cellの線形系経路及びBipolar cell-Amacrine C-type cell-Amacrine N-type cellの非線形系経路がAmacrine cellで、一緒になり、非対称構造を形成する。Catの網膜の非線形特性として、米国のCornell大学りJ.Victor教授らは3次の非線形性は少なく、4次の非線形性もいくらか、みられることを実験的に示している。われわれは、これらの知見を基に、線形性経路、非線形性経路からなる非対称構造のネットワークについて、刺激の左右の動きに対して、どのような回路としての反応性を示すかについて、計算論的に明らかにしてきた。この結果、非線形回路構造でも、奇数次の非線形性と偶数次の非線形性を持つ非対称構造が、左右の刺激の動きに対して、きわめて、敏感であることを計算論的に明らかにしてきた。視覚機能を司るV1野及びMT野の研究は米国のNew York大学のSimoncelliとHeegerにより、その構造が明らかにされ、並列、対称構造であるが非線形性としてHalf-wave Rectificationを有することを示している。本研究では、この非対称、並列構造のネットワークは刺激の変化に対して、きわめて、敏感であることを計算論的に明らかにした。ここでは、非線形性と並列性が重畳作用となり、適確に情報を捉える大きな冗長性となることを明らかにした。以上の知見をまとめ、V1とMTの2層構造のネットワークとなることが情報機能として、十分となることを計算論的に示した | KAKENHI-PROJECT-17500154 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17500154 |
果実糖濃度の決定要因 | ソース葉で光合成によって生産された糖は,スクロースとして籠管を経由してシンクである果実に輸送される.果実へ流入する水の大半は節管経由であると考えられている.そのため,果実の糖濃度は節管液の糖濃度に大きく依存すると予想される。本研究では,トマトを材料に用い、師管液糖濃度を測定する方法を開発するとともに、師管液の糖濃度と果実糖濃度との関係を、明らかにすることを目的とした.本方法は、切断された果柄の切り口を直ちにEDTA溶液に浸すと、カルシウムがキレートされて維管束を塞ぐカロースの形成が阻害され、師部液が流出し続けることを利用したものである.まず、果実を切り落とした切り口を,細胞膜非透過性の蛍光色素(HPTS)を含むEDTA溶液に浸し,流出液(導管液+篩管液)を回収した.次に,ヒートガードリングにより篩部輸送を阻害した後,再び流出液(導管液)を回収した.HPTSの吸光度の変化から,流出液量を定量した,この方法により050μL程度の師管液が定量的に回収され,流出した糖の量から師部液の糖濃度を決定した。ただし、現段階では植物の状態により再現性がなく安定して液を回収するまでには至っていない.一方で、木部液は安定して回収することができ、木部液に高濃度に含まれるカルシウム濃度を決定することはできた.果実に含まれるカルシウム量を定量することにより、木部液の流入量を推定することが可能で、さらに師部液の流入量・師部液糖濃度を推定することができた。ソース/シンク比を様々に変えた個体間で比較したところ、師部液糖濃度と果実の画形分含量との間に明らかな正の相関関係が認められた.このことは、果実糖濃度の決定において師部液糖濃度が主要な要因であることを示した。ソース葉で光合成によって生産された糖は,スクロースとして籠管を経由してシンクである果実に輸送される.果実へ流入する水の大半は節管経由であると考えられている.そのため,果実の糖濃度は節管液の糖濃度に大きく依存すると予想される。本研究では,トマトを材料に用い、師管液糖濃度を測定する方法を開発するとともに、師管液の糖濃度と果実糖濃度との関係を、明らかにすることを目的とした.本方法は、切断された果柄の切り口を直ちにEDTA溶液に浸すと、カルシウムがキレートされて維管束を塞ぐカロースの形成が阻害され、師部液が流出し続けることを利用したものである.まず、果実を切り落とした切り口を,細胞膜非透過性の蛍光色素(HPTS)を含むEDTA溶液に浸し,流出液(導管液+篩管液)を回収した.次に,ヒートガードリングにより篩部輸送を阻害した後,再び流出液(導管液)を回収した.HPTSの吸光度の変化から,流出液量を定量した,この方法により050μL程度の師管液が定量的に回収され,流出した糖の量から師部液の糖濃度を決定した。ただし、現段階では植物の状態により再現性がなく安定して液を回収するまでには至っていない.一方で、木部液は安定して回収することができ、木部液に高濃度に含まれるカルシウム濃度を決定することはできた.果実に含まれるカルシウム量を定量することにより、木部液の流入量を推定することが可能で、さらに師部液の流入量・師部液糖濃度を推定することができた。ソース/シンク比を様々に変えた個体間で比較したところ、師部液糖濃度と果実の画形分含量との間に明らかな正の相関関係が認められた.このことは、果実糖濃度の決定において師部液糖濃度が主要な要因であることを示した。トマト果実へ流入する水と糖の量の日変化を推定するため、師部液のスクロース濃度の日変化と果実成長の日変化とを調べた。開花2週間後のトマトを12時聞日長,昼/夜温23/16°C,PPFD400mol/m/sの人工気象室に入れ,開花3週間後に師管液の糖濃度を測定した。果柄部を切り取り、切り口から流出する液を2時間間隔で24時間にわたって採取した。これを師管液と木部液の混合液とした。次に果柄をヒートガードリングして,同様に2時間間隔で24時間にわたり切り口からの流出する液を採取した,これを木部液とした。1日目に流出した木部液の流出量の日変化を2日目に流出した木部液の流出量と同様であると仮定し、これらの差し引きによって1日目に採取された篩管液の流出量を推定した.師部液の流出量とスクロースの流出量から師部液の糖濃度の変化を計算した。その結果,篩管液スクロース濃度は明期に入ると増加し続け,8時間で最大値6%に達し,その後徐々に低下して,暗期の終わりには2%まで低下した.一方果実の生長を、変位計を用いて経時的に測定したところ、明期のはじめに一時的に速くなった後に再び通常の成長速度にもどって一定となり暗期に入ると同時に一時的に低下したのちに通常の成長速度に戻った。平均的な果実の成長速度は、昼・夜温が23/16°Cでは日中のほうが速かったが、昼・夜温を20°C一定とすると成長速度に差は認められなかった。したがって、果実成長速度は師管液糖濃度とは関係なく、気温のみで決定されている。 | KAKENHI-PROJECT-15380023 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15380023 |
果実糖濃度の決定要因 | 果実の生長は水の流入を示すので、師管液糖濃度が低い夜間にもかなりの水が流入していることを示した。それにも関わらず果実の炭水化物濃度が高く維持されていることは、積極的に果実から水を取り除く機構があることを示唆する。1.師管液の糖濃度と果実糖濃度との関係についてこれまでの実験では、果実あたりの葉の枚数を5枚まで増加させたところ、それに比例して果実糖濃度が増加した。そこでこの実験では、葉の枚数をさらに増加させて、師部液糖濃度と果実糖濃度との相関をさらに高濃度の師部液濃度について調べた。第2果房に1果実を残し他の果実は取り除き、葉の枚数を1,5,7,11枚とした。その結果、師管液糖濃度は、葉5枚以上で有意な差は見られず、7.3-8%の範囲にあり、1枚の場合は3.4%まで減少した。果実糖濃度にも、葉5枚以上では有意な差は見られなかった。師管液糖濃度と果実糖濃度とを散布図にプロットすると、師管液糖濃度7%までは果実糖濃度との間に相関がみられたが、7%を越えるとはっきりとした相関は見られなくなった。したがって,師管液スクロース濃度が7%の付近で果実糖濃度の調節が働いていることが示唆された.2.師管液糖濃度の変化が果実における遺伝子発現に与える影響について第2果房に1果実を残し、他の果実は取り除き、開花14日後に葉の枚数を0または8枚となるよう摘葉した。1週間後に果実を採取して、RNAを抽出してトマト果実のマイクロアレイに対してハイブリダイゼーションを行った。葉が8枚の場合、果実では細胞伸展に関するエクステンシン、キシログルカンエンドトランスフェラーゼ(XET)などの発現が強く、一方葉が0枚の場合には、デンプン代謝に関わるグルコアミラーゼやスクロースリン酸合成酵素、老化・成熟に関わるACCオキシダーゼ、ポリガラクツロナーゼ、スパーオキシドジスムターゼ(SOD)などの発現が高かった。糖の供給が低下した場合には、細胞成長が抑制されるとともに、貯蔵炭水化物の再利用が進み、老化・成熟がすすむことが示唆された。トマトの一般的な栽培環境下では,ソース能力がシンク能力を上回っているため,シンクが乾物生産の制限要因となり,葉の潜在的光合成能力は十分に発揮されていないと考えられる.本研究では,ソース過剰条件において果実糖濃度を制限している要因を調査するため,摘葉によってシンク・ソース比を変え,それが果実糖濃度や果実における遺伝子の発現プロファイルに与える影響を調査した.養液栽培しトマト`サターン'を用いた.第2果房に1果を残して他の果房、果実は取り除き、葉数を12葉に摘葉した.開花2週間後に葉数を2,4,または12葉とし,開花3週間後に調査を行った.2葉区では果実の生長が抑制されただけでなく,果実糖濃度が1.7%まで低下した.一方,8葉区と12葉区はいずれも約5%であり,果実糖濃度が上限に達していると考えられた.篩管液糖濃度は,2葉区より8葉区の方が数倍高く,12葉区は8葉区よりわずかに高かった.果実糖濃度と篩管液スクロース濃度との間には高い相関があり篩管液スクロース濃度が果実糖濃度を決定する主要因であることを示した。しかし、8葉区と12葉区とを比較すると還元糖濃度が12葉区のほうがやや低く、スクロースの蓄積がみられた。このことは,12葉区でスクロースの加水分解が抑制されていることを示唆した.cDNAアレイを用いて,遺伝子発現プロファイルを調べた結果,12葉区ではキシログルカンエンド転移酵素(XTH)や液胞型インベルターゼの発現低下がみられた.ソースが過剰な条件では,インベルターゼによるスクロースの加水分解や細胞壁の伸長が抑制されている可能性があった.果実へ流入する水の大部分は師部を通って果実に到達するため,果実を構成する炭水化物と水は大部分が師部液により構成されると考えられる. | KAKENHI-PROJECT-15380023 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15380023 |
体内無給電型人工心臓駆動用磁気式アクチュエータの開発 | 本研究は平成8年度から3カ年に亘って遂行した計画であり,以下の研究実績を得た。1.リング形状永久磁石の試作Nd-Fe-B系永久磁石材料を外径27mm,内径15mm,厚さ1.6mmのリング形状に加工し,各片面をN極およびS極の2極に均等面積着磁したものを試作した。2.アクチュエータの機構試作試作したリング形状磁石を3個同軸上に配置でき,両側の2個の磁石を回転運動させ,中央の磁石の回転運動を拘束する機構を設計・試作し,中央に配置された磁石の直線往復運動動作を確認した。3.ポンプの負荷試験装置の製作試作したポンプの出力特性測定を目的とした負荷試験装置を製作した。アクチュエータの回転運動磁石の回転角および直線往復運動磁石の変位を計測するため,エンコーダ,リニアポテンショメータ,電子回路,ディジタルオシロスコープおよびパソコンなどからなる計測システムを構築した。4.アクチュエータおよびポンプの特性評価試験試作したポンプを負荷試験装置に接続し,水圧をかけたときのポンプの出力特性を実測した。ここで,回転連動磁石の回転数は070rpmの範囲で測定した。5.電気・機械形エネルギー変換動作の解析回転磁石の駆動法を工夫し,従来の一定回転駆動から階段波駆動にすることで,約2倍のポンプ出力を得た。6.実験および数値解析によるポンプの総合評価アクチュエータに与える回転運動エネルギーをトルクメータにより測定し,この値をディジタル信号化してアクチュエータ入力を算出した。これとポンプ入力よりアクチュエータの効率を計算し,これが90%以上の高効率であることを確認した。さらに,ポンプ出力から,ポンプ効率を求め,これが50%程度であることを確認した。ポンプ出力としては,ヒトの心臓の約20%程度の出力を得ることに成功した。本研究は平成8年度から3カ年に亘って遂行した計画であり,以下の研究実績を得た。1.リング形状永久磁石の試作Nd-Fe-B系永久磁石材料を外径27mm,内径15mm,厚さ1.6mmのリング形状に加工し,各片面をN極およびS極の2極に均等面積着磁したものを試作した。2.アクチュエータの機構試作試作したリング形状磁石を3個同軸上に配置でき,両側の2個の磁石を回転運動させ,中央の磁石の回転運動を拘束する機構を設計・試作し,中央に配置された磁石の直線往復運動動作を確認した。3.ポンプの負荷試験装置の製作試作したポンプの出力特性測定を目的とした負荷試験装置を製作した。アクチュエータの回転運動磁石の回転角および直線往復運動磁石の変位を計測するため,エンコーダ,リニアポテンショメータ,電子回路,ディジタルオシロスコープおよびパソコンなどからなる計測システムを構築した。4.アクチュエータおよびポンプの特性評価試験試作したポンプを負荷試験装置に接続し,水圧をかけたときのポンプの出力特性を実測した。ここで,回転連動磁石の回転数は070rpmの範囲で測定した。5.電気・機械形エネルギー変換動作の解析回転磁石の駆動法を工夫し,従来の一定回転駆動から階段波駆動にすることで,約2倍のポンプ出力を得た。6.実験および数値解析によるポンプの総合評価アクチュエータに与える回転運動エネルギーをトルクメータにより測定し,この値をディジタル信号化してアクチュエータ入力を算出した。これとポンプ入力よりアクチュエータの効率を計算し,これが90%以上の高効率であることを確認した。さらに,ポンプ出力から,ポンプ効率を求め,これが50%程度であることを確認した。ポンプ出力としては,ヒトの心臓の約20%程度の出力を得ることに成功した。本研究は平成8年度から3カ年に亘って遂行する計画であり,平成8年度においては以下の実績を得た。また,成果の一部を電気学会論文誌A(1997年117巻2号pp.118-121)に掲載した。1.リング形状永久磁石の試作Nd-Fe-B系永久磁石材料を外径27mm,内径15mm,厚さ1.6mmのリング形状に加工し,各片面をN極およびS極の2極に均等面積着磁したものを試作した。また,この磁石による空間磁界を計算し,磁石間に働く力の推定値を求めた。2.アクチュエータの機構試作試作したリング形状磁石を3個同軸上に配置でき,両側の2個の磁石を回転運動させ,中央の磁石の回転運動を拘束する機構を設計・試作し,中央に配置された磁石の直線往復運動動作を確認した。3.ポンプの機構試作および動作確認直線往復運動動作をする磁石をピストンの如く機能させたポンプを試作し,基本動作の確認を行った。4.ポンプの負荷試験装置の製作試作したポンプの出力特性測定を目的とした負荷試験装置を製作した。アクチュエータの回転運動磁石の回転角および直線往復運動磁石の変位を計測するため,エンコーダ,リニアポテンショメータ,電子回路,ディジタルオシロスコープおよびパソコンなどからなる計測システムを構築した。5.アクチュエータおよびポンプの特性評価試験試作したポンプを負荷試験装置に接続し,水圧をかけたときのポンプの出力特性を実測した。ここで,回転運動磁石の回転数は070rpmの範囲で測定した。本研究は平成8年度から3カ年に亘って遂行する計画であり,平成9年度においては以下の実績を得た。1.ポンプの改良 | KAKENHI-PROJECT-08650328 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08650328 |
体内無給電型人工心臓駆動用磁気式アクチュエータの開発 | 試作昨年度試作したポンプに比較して,水流抵抗を削減した弁およひ流入・流出口を製作した。2.ポンプ負荷試験装置の高精度化水圧設定の高精度化を図った装置とした。3.改良ポンプの特性評価試験改良ホンプの動作確認を行い,従来に比較して高出力特性を得た。4.電気・機械形エネルギー変換動作の解析回転磁石の駆動法を工夫し,従来の一定回転駆動から階段波駆動にすることで,約2倍のポンプ出力を得た。本研究は平成8年度から3カ年に亘って遂行した計画であり,平成10年度は以下の研究実績を得た。1.実験および数値解析によるポンプの総合評価アクチュエータに与える回転運動エネルギーをトルクメータにより測定し,この値をディジタル信号化してアクチュエータ入力を算出した。これとポンプ入力よりアクチュエータの効率を計算し,これが90%以上の高効率であることを確認した。さらに,ポンプ出力から,ポンプ効率を求め,これが50%程度であることを確認した。ポンプ出力としては,ヒトの心臓の約20%程度の出力を得ることに成功した。2.論文発表下記のフルペーパーが出版された。 | KAKENHI-PROJECT-08650328 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08650328 |
点滅光の明るさ知覚における新現象の解明とその応用 | 1.コンピュータにより制御された点滅刺激光呈示装置を作成した。2.ディュ-ティー比が小さく高強度の点滅光を視覚刺激として用いることにより視覚系の非線形性を捉える新手法を確立した。ディュ-ティー比の小さい点滅光は、平均強度が等しく実効的な明るさが同程度の定常光と比較して、点灯中の瞬間的な強度が非常に強くなるので、視覚系の初期過程で点滅光に追従していれば、その過程に内在する非線形性が色知覚に大きな影響を及ぼすと期待され、またそのような効果が以下の実験により確認された。3.上述の視覚刺激を用い視覚系の非線形性が色の3属性、明るさ、色相、彩度に及ぼす影響を点滅光の点滅周波数の関数として測定した。4.実験全体をとおして明らかになったことは、点滅が知覚されなくなる周波数(CFF)以上の周波数では、時間平均の等しい定常光と等価になるというタルボ-・プラトーの法則がほぼ成り立っていること、CFFより若干高い周波数でも非線形効果が若干のこっているが、その効果は微弱であることである。5.明るさ知覚に関しては、30Hz付近で点滅光の効率が落ち、時間平均の等しい定常光と比べて暗くなることがわかった。6.色相・彩度の知覚に関してはCFFより周波数が低下するにしたがって色相はベゾルド-ブリュッケ効果(刺激強度を上げたときに起こる色相のシフト)と同じ方向にシフトし、彩度は長波長領域の刺激光以外は低下することがわかった。7.これらの非線形色知覚現象を統一的に説明するために、網膜上の錐体視細胞の時間応答特性がロ-パス型であり、シグモイド型の非線形性を有すると仮定し、その出力の時間平均が定常光と等価な効果を持つと考えてモデルを構築した。その結果このモデルにより実験データが定量的に説明されることがわかった。8.今後の課題としてこれらの非線形効果が本当に錐体レベルの非線形性のみに依存しているのかを明らかにする必要がある。1.コンピュータにより制御された点滅刺激光呈示装置を作成した。2.ディュ-ティー比が小さく高強度の点滅光を視覚刺激として用いることにより視覚系の非線形性を捉える新手法を確立した。ディュ-ティー比の小さい点滅光は、平均強度が等しく実効的な明るさが同程度の定常光と比較して、点灯中の瞬間的な強度が非常に強くなるので、視覚系の初期過程で点滅光に追従していれば、その過程に内在する非線形性が色知覚に大きな影響を及ぼすと期待され、またそのような効果が以下の実験により確認された。3.上述の視覚刺激を用い視覚系の非線形性が色の3属性、明るさ、色相、彩度に及ぼす影響を点滅光の点滅周波数の関数として測定した。4.実験全体をとおして明らかになったことは、点滅が知覚されなくなる周波数(CFF)以上の周波数では、時間平均の等しい定常光と等価になるというタルボ-・プラトーの法則がほぼ成り立っていること、CFFより若干高い周波数でも非線形効果が若干のこっているが、その効果は微弱であることである。5.明るさ知覚に関しては、30Hz付近で点滅光の効率が落ち、時間平均の等しい定常光と比べて暗くなることがわかった。6.色相・彩度の知覚に関してはCFFより周波数が低下するにしたがって色相はベゾルド-ブリュッケ効果(刺激強度を上げたときに起こる色相のシフト)と同じ方向にシフトし、彩度は長波長領域の刺激光以外は低下することがわかった。7.これらの非線形色知覚現象を統一的に説明するために、網膜上の錐体視細胞の時間応答特性がロ-パス型であり、シグモイド型の非線形性を有すると仮定し、その出力の時間平均が定常光と等価な効果を持つと考えてモデルを構築した。その結果このモデルにより実験データが定量的に説明されることがわかった。8.今後の課題としてこれらの非線形効果が本当に錐体レベルの非線形性のみに依存しているのかを明らかにする必要がある。 | KAKENHI-PROJECT-05750034 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05750034 |
空間移動と状態変化の表現の並行性に関する統一的通言語的研究 | 本プロジェクトは、諸言語における空間移動と状態変化を表す表現について、統一的な調査方法に基づき通言語的研究を行うものである。空間移動と状態変化には言語表現上の共通性があるという主張はかねてからなされてきたが、その並行性についての検証は十分に行われてきたとは言えない。そこで本プロジェクトでは、両者に関する統一的な調査を、14の多様な言語に関して行う。具体的には、1)移動と状態変化に関する体系的語彙項目調査を行い、さらに、2)特定の移動と状態変化を表現する構文に関して、実験調査(及び一部の言語ではコーパス調査)による数量的研究を行う。その結果を通言語的に考察して並行性の性質を解明する。本プロジェクトは、諸言語における空間移動と状態変化を表す表現について、統一的な調査方法に基づき通言語的研究を行うものである。空間移動と状態変化には言語表現上の共通性があるという主張はかねてからなされてきたが、その並行性についての検証は十分に行われてきたとは言えない。そこで本プロジェクトでは、両者に関する統一的な調査を、14の多様な言語に関して行う。具体的には、1)移動と状態変化に関する体系的語彙項目調査を行い、さらに、2)特定の移動と状態変化を表現する構文に関して、実験調査(及び一部の言語ではコーパス調査)による数量的研究を行う。その結果を通言語的に考察して並行性の性質を解明する。 | KAKENHI-PROJECT-19H01264 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H01264 |
LBおよび有機分子線エピタキシー法による超高速光電変換有機超薄膜の作成 | 本年度は、申請者らがここ数年来進めて来た一分子内に電子受容(A)、増感色素(S)、電子供与(D)の三つの機能を有する両親媒性化合物単分子膜によるサブn秒以下の超高速光電変換分子素子の分子設計を一段と飛躍させて、数p秒の応答速度を持つ分子素子を作成することを目的とした。S-A-D分子のAが親水性、S、Dが疎水性であり、かつS-A間の距離がA-D間の距離より短い場合、このS-A-D分子は水側にAが空気側末端にDがその中間の位置にSがくるように折れ曲がり構造をとることができる。この折れ曲がり型S-A-D単分子膜の光電変換機能及ぼす、(1)累積時の表面圧の効果、(2)電極電位の効果、(3)入射光の波長依存性、(4)連結炭化水素鎖長の効果、(5)Dの存在の有無の効果等を検討した。昨年度改良したp秒パルスレーザーホトリシス装置により光誘起電子移動速度の測定を行った。S-A-D単分子膜ではS-A間およびD-A間の電子移動が競争するため螢光寿命測定による個々の電子移動速度の評価は困難であった。したがって、S-AおよびS-D分子を合成し、その単分子膜を石英板上に累積し、p秒およびn秒パルスレーザーホトリシスによる螢光寿命測定を行った。折れ曲り型S-A-D分子ではS-D間の電子移動が空間を通して進むため、A-S間の結合を通した電子移動とは距離依存性が異なる。このような複雑さを避けるために、直線状のA-S-D分子を合成し、その光電変換機能を評価した。光合成の初期過程では、光はアンテナ分子により補集され、このエネルギーはエネルギー移動によって反応中心に移り、後続する光誘起電子移動反応によって光電荷分離が達成される。そこでA-S'-Dとアンテナ分子の混合単分子膜を用いて人工的に光合成の初期過程をシミュレートした。本年度は、申請者らがここ数年来進めて来た一分子内に電子受容(A)、増感色素(S)、電子供与(D)の三つの機能を有する両親媒性化合物単分子膜によるサブn秒以下の超高速光電変換分子素子の分子設計を一段と飛躍させて、数p秒の応答速度を持つ分子素子を作成することを目的とした。S-A-D分子のAが親水性、S、Dが疎水性であり、かつS-A間の距離がA-D間の距離より短い場合、このS-A-D分子は水側にAが空気側末端にDがその中間の位置にSがくるように折れ曲がり構造をとることができる。この折れ曲がり型S-A-D単分子膜の光電変換機能及ぼす、(1)累積時の表面圧の効果、(2)電極電位の効果、(3)入射光の波長依存性、(4)連結炭化水素鎖長の効果、(5)Dの存在の有無の効果等を検討した。昨年度改良したp秒パルスレーザーホトリシス装置により光誘起電子移動速度の測定を行った。S-A-D単分子膜ではS-A間およびD-A間の電子移動が競争するため螢光寿命測定による個々の電子移動速度の評価は困難であった。したがって、S-AおよびS-D分子を合成し、その単分子膜を石英板上に累積し、p秒およびn秒パルスレーザーホトリシスによる螢光寿命測定を行った。折れ曲り型S-A-D分子ではS-D間の電子移動が空間を通して進むため、A-S間の結合を通した電子移動とは距離依存性が異なる。このような複雑さを避けるために、直線状のA-S-D分子を合成し、その光電変換機能を評価した。光合成の初期過程では、光はアンテナ分子により補集され、このエネルギーはエネルギー移動によって反応中心に移り、後続する光誘起電子移動反応によって光電荷分離が達成される。そこでA-S'-Dとアンテナ分子の混合単分子膜を用いて人工的に光合成の初期過程をシミュレートした。 | KAKENHI-PROJECT-63604534 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63604534 |
情報記録および画像表示機能を有する塗布型MO膜の開発 | 本研究では,現在までの蓄積した技術に立脚して,優れた光磁気特性を持つBi-YIG超微粒子粉末を共沈法を用いて合成し,この粉末を用いて塗布法により大面積の磁気光学(MO)薄膜を作製し,その性能向上をはかることを目的とする.さらに,光磁気記録、情報デバイス、磁気カードへの視覚情報の書き込みおよび表示など各種の応用分野の開拓を行う.以下の研究成果を得た.1)性能指数の高い光磁気効果を持つ微粒子合成共沈法によりBi置換量をかえたアモルファス微粒子を合成し,これを熱処理することによりBi置換鉄ガ-ネット微結晶粒子の合成に成功した.この微粒子の格子定数の精密測定を行いガ-ネット中のBi置換量の推定を行った結果,低温度で熱処理を行ったほうが,置換可能なBi量の最大値は増大することがわかった.さらに微粒子中の鉄イオンの一部をAlイオンで置換することにより可視域での光吸収が減少し性能指数が増大することがわかった.2)可視光領域で性能の高いMO膜の作製高濃度でBiを置換した微粒子をバインダー中に充分分散し磁気光学塗料を作り,この塗料を透明プラスチックシート上にバ-コートすることによりMO膜を得た.この膜の性能指数は可視光波長領域で2(deg)の値を示した.この値は,同量のBiを置換し,スパッタ法で作製したMO膜と同程度の値である.塗布法では粒子をさらに微細化し,塗料に改良を加えることによりスパッタ膜以上の性能を持つ膜が期待できる.3 )磁気記録パターンの可視化作製したMO塗布膜では多くの磁気記録材料に記録された情報のパターンを直接目で見える情報に変換することに成功している.今後はMO塗布膜に磁気ヘッド等により直接情報を記録できるようにするため,粒子の磁気特性,特に保磁力の制御に関する基礎的研究が必要である.現在,MO膜に磁気書き込み,光読み出し実験を開始している.本研究では,現在までの蓄積した技術に立脚して,優れた光磁気特性を持つBi-YIG超微粒子粉末を共沈法を用いて合成し、この粉末を用いて塗布法により大面積の磁気光学(MO)薄膜を作製し,その性能向上をはかることを目的とする.さらに,光磁気記録、情報デバイス、磁気カードへの視覚情報の書き込みおよび表示など各種の応用分野の開拓を行う.以下の研究成果を得た.1)性能指数の高い光磁気効果を持つ微粒子合成共沈法によりBi置換量をかえたアモルファス微粒子を合成し,これを熱処理することによりBi置換鉄ガ-ネット微結晶粒子の合成に成功した.この微粒子の格子定数の精密測定を行いガ-ネット中のBi置換量の推定を行った結果,低温度で熱処理を行ったほうが,置換可能なBi量の最大値は増大することがわかった.さらに微粒子中の鉄イオンの一部をAlイオンで置換することにより可視域での光吸収が減少し性能指数が増大することがわかった.2)可視光領域で性能の高いMO膜の作製高濃度でBiを置換した微粒子をバインダー中に充分分散し磁気光学塗料を作り,この塗料を透明プラスチックシート上にバ-コートすることによりMO膜を得た.この膜の性能指数は可視光波長領域で2(deg)の値を示した.この値は,同量のBiを置換し,スパッタ法で作製したMO膜と同程度の値である.塗布法では粒子をさらに微細化し,塗料に改良を加えることによりスパッタ膜以上の性能を持つ膜が期待できる.3)磁気記録パターンの可視化作製したMO塗布膜では多くの磁気記録材料に記録された情報のパターンを直接目で見える情報に変換することに成功している.今後はMO塗布膜に磁気ヘッド等により直接情報を記録できるようにするため,粒子の磁気特性,特に保磁力の制御に関する基礎的研究が必要である.本研究では,現在までの蓄積した技術に立脚して,優れた光磁気特性を持つBi-YIG超微粒子粉末を共沈法を用いて合成し,この粉末を用いて塗布法により大面積の磁気光学(MO)薄膜を作製し,その性能向上をはかることを目的とする.さらに,光磁気記録、情報デバイス、磁気カードへの視覚情報の書き込みおよび表示など各種の応用分野の開拓を行う.以下の研究成果を得た.1)性能指数の高い光磁気効果を持つ微粒子合成共沈法によりBi置換量をかえたアモルファス微粒子を合成し,これを熱処理することによりBi置換鉄ガ-ネット微結晶粒子の合成に成功した.この微粒子の格子定数の精密測定を行いガ-ネット中のBi置換量の推定を行った結果,低温度で熱処理を行ったほうが,置換可能なBi量の最大値は増大することがわかった.さらに微粒子中の鉄イオンの一部をAlイオンで置換することにより可視域での光吸収が減少し性能指数が増大することがわかった.2)可視光領域で性能の高いMO膜の作製高濃度でBiを置換した微粒子をバインダー中に充分分散し磁気光学塗料を作り,この塗料を透明プラスチックシート上にバ-コートすることによりMO膜を得た.この膜の性能指数は可視光波長領域で2(deg)の値を示した.この値は,同量のBiを置換し,スパッタ法で作製したMO膜と同程度の値である.塗布法では粒子をさらに微細化し,塗料に改良を加えることによりスパッタ膜以上の性能を持つ膜が期待できる. | KAKENHI-PROJECT-07555498 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07555498 |
情報記録および画像表示機能を有する塗布型MO膜の開発 | 3 )磁気記録パターンの可視化作製したMO塗布膜では多くの磁気記録材料に記録された情報のパターンを直接目で見える情報に変換することに成功している.今後はMO塗布膜に磁気ヘッド等により直接情報を記録できるようにするため,粒子の磁気特性,特に保磁力の制御に関する基礎的研究が必要である.現在,MO膜に磁気書き込み,光読み出し実験を開始している.本研究では,現在までの蓄積した技術に立脚して,優れた光磁気特性を持つBi-YIG超微粒子粉末を共沈法を用いて合成し,この粉末を用いて塗布法により大面積の磁気光学(MO)薄膜を作製し,その性能向上をはかることを目的とする.さらに,光磁気記録、情報デバイス、磁気カードへの視覚情報の書き込みおよび表示など各種の応用分野の開拓を行う.以下の研究成果を得た.1)性能指数の高い光磁気効果を持つ微粒子合成共沈法によりBi置換量をかえたアモルファス微粒子を合成し,これを熱処理することによりBi置換鉄ガ-ネット微結晶粒子の合成に成功した.この微粒子の格子定数の精密測定を行いガ-ネット中のBi置換量の推定を行った結果,低温度で熱処理を行ったほうが,置換可能なBi量の最大値は増大することがわかった.さらに微粒子中の鉄イオンの一部をAlイオンで置換することにより可視域での光吸収が減少し性能指数が増大することがわかった.2)可視光領域で性能の高いMO膜の作製高濃度でBiを置換した微粒子をバインダー中に充分分散し磁気光学塗料を作り,この塗料を透明プラスチックシート上にバ-コートすることによりMO膜を得た.この膜の性能指数は可視光波長領域で2(deg)の値を示した.この値は,同量のBiを置換し,スパッタ法で作製したMO膜と同程度の値である.塗布法では粒子をさらに微細化し,塗料に改良を加えることによりスパッタ膜以上の性能を持つ膜が期待できる.3)磁気記録パターンの可視化作製したMO塗布膜では多くの磁気記録材料に記録された情報のパターンを直接目で見える情報に変換することに成功している.今後はMO塗布膜に磁気ヘッド等により直接情報を記録できるようにするため,粒子の磁気特性,特に保磁力の制御に関する基礎的研究が必要である.現在,MO膜に磁気書き込み,光読み出し実験を開始している. | KAKENHI-PROJECT-07555498 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07555498 |
気中ワイヤ放電加工の研究 | 気中ワイヤ放電加工は,液中加工に比べて加工精度が良い,電解腐食が生じないなどの利点がある.しかし,従来の液中加工と比較して,短絡率が高いことや,加工屑の排出が困難であることから,加工速度が低いという問題点がある.そこで,工作物を超音波振動で加振することで短絡を減らし,加工速度を向上させることを試みた.加工送り方向に垂直な加振では,平行な加振の約2倍の加工速度が得られた.超音波振動の周波数は放電頻度と同程度であるため,振動に同期して接近した瞬間に放電となり,放電遅れ時間中にギャップが広がることにより短絡を防止しつつ高い頻度で有効放電が生じていることが明らかとなった.また,サーボ電圧,振動振幅を変化させることで,最適な加工条件を見出した.サーボ電圧は低めで,振動全振幅が4μmの条件が最適であった.横加振は縦加振と比較して加工速度が1.3倍程度向上する.この理由として,横加振は短絡の頻度も高いが,それ以上に総放電頻度が高いため,結果として正常放電頻度が高くなっていることが挙げられる.さらに,ピエゾアクチュエータを用いて振動周波数を変化させたときの放電遅れ時間について調べた.振動周波数が低い時は放電遅れ時間のヒステリシスの面積が大きく,熱の影響を受けていることがわかった.超音波ではヒステリシスの回転方向がピエゾアクチュエータを用いた場合と逆となる.このことより,超音波加振では熱の影響を受けずに放電の周期のみの影響を受けて放電していると考えられる.気中ワイヤ放電加工は,液中加工に比べて加工精度が良い,電解腐食が生じないなどの利点がある,しかし,従来の液中加工と比較して,短絡率が高いことや,加工屑の排出が困難であることから,加工速度が低いという問題点がある.そこで,工作物を超音波振動で加振することで短絡を減らし,加工速度を向上させることを試みた.これより,200Hz程度の低い周波数では加工速度は向上しないことが明らかになった.しかし,23.5kHzの超音波の加振では効果が見られた.これは,超音波振動の周波数が放電頻度と同程度であるため,振動に同期して放電が生じ,接近した瞬間に放電し,放電遅れ時間中にギャップが広がることにより短絡を防止しつつ高い頻度で有効放電を生じさせることが加工であることを明らかにした.つまり,放電頻度と同期する加振周波数の場合,加工速度が向上すると考えられる.特に,加工送り方向に垂直な加振では,平行な加振の約2倍の加工速度が得られた.これは,横加振が縦加振時に比べ,ワイヤ電極の工作物への接近の機会が2倍になるという原理から説明できる.さらに,従来の無加振の場合と比較して,約7倍の加工速度の向上を得ることが出来た.また,気中形彫り放電加工においても,超音波の加振を付与することで,加工速度の向上が見られた.また,電極消耗率も2%以下と従来の気中加工の特徴を備えたままであることが明らかになった.気中ワイヤ放電加工は,液中加工に比べて加工精度が良い,電解腐食が生じないなどの利点がある.しかし,従来の液中加工と比較して,短絡率が高いことや,加工屑の排出が困難であることから,加工速度が低いという問題点がある.そこで,工作物を超音波振動で加振することで短絡を減らし,加工速度を向上させることを試みた.加工送り方向に垂直な加振では,平行な加振の約2倍の加工速度が得られた.超音波振動の周波数は放電頻度と同程度であるため,振動に同期して接近した瞬間に放電となり,放電遅れ時間中にギャップが広がることにより短絡を防止しつつ高い頻度で有効放電が生じていることが明らかとなった.また,サーボ電圧,振動振幅を変化させることで,最適な加工条件を見出した.サーボ電圧は低めで,振動全振幅が4μmの条件が最適であった.横加振は縦加振と比較して加工速度が1.3倍程度向上する.この理由として,横加振は短絡の頻度も高いが,それ以上に総放電頻度が高いため,結果として正常放電頻度が高くなっていることが挙げられる.さらに,ピエゾアクチュエータを用いて振動周波数を変化させたときの放電遅れ時間について調べた.振動周波数が低い時は放電遅れ時間のヒステリシスの面積が大きく,熱の影響を受けていることがわかった.超音波ではヒステリシスの回転方向がピエゾアクチュエータを用いた場合と逆となる.このことより,超音波加振では熱の影響を受けずに放電の周期のみの影響を受けて放電していると考えられる. | KAKENHI-PROJECT-02J11290 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02J11290 |
大環状エラジタンニンの全合成と超分子化学への展開 | これまでの研究で,私は,エラジタンニンに特徴的な様々な多置換ジアリールエーテル結合の新規合成法を開発している。その方法は,鍵合成中間体であるオルトキノンモノケタール構造を有する求電子剤へのフェノールのオキサ・マイケル付加脱離とオルトキノンモノケタール部分の選択的な還元から成る。昨年度,本反応を鍵反応としてルゴシンAの全合成を達成したが,合成した天然物は微量しかなかった。詳しい生物活性調査やより複雑な二量体や三量体エラジタンニンを合成するには,単純なモノマーエラジタンニンをグラムスケールで合成できる力量が必要である。従って,最初に,本法を鍵反応としてラエビガチンAのグラムスケール全合成を行い,次に二量体エラジタンニンであるラエビガチンEの全合成を達成した。合成は,テトラールのカップリング反応から行った。テトラールのカップリングと,続くベンジル化は8グラムスケールでも高収率で進行した。得られたチオグルコシドのグルコシルエステル化はα選択的に進行し,収率も良好であった。このグルコシルエステル化反応では,隣接基関与してβ選択性を与えそうなアシル基が2位に有るにも関わらず, α選択的に進行した。合成した化合物のTIPS保護を除去し,フェノールを得た。これを求核剤としたオキサ・マイケル付加・脱離,還元的芳香族化とベンジル化は,高収率で進行した。この3段階は3.6グラムスケールで行うことができ,鍵段階のスケールアップが容易であることが明らかとなった。最後にアルデヒドをピニック酸化によりカルボン酸に変換し,全てのベンジル保護を除去してラエビガチンAの全合成を達成した。ラエビガチンEの合成では,ラエビガチンAの合成中間体の2つをα選択的グルコシルエステル化し,全てのBn基を除去することで合成した。合成した天然物の1HNMRが一致し全合成を達成したことを確認した。研究課題は平成26年度が最終年度のため、記入しない。研究課題は平成26年度が最終年度のため、記入しない。エラジタンニン類は多置換ジアリールエーテル結合によって複雑で多様性に富んだ構造をしている。特に二量体以上のエラジタンニンに頻出し,合成法を確立すれば合成可能なエラジタンニンの数が格段に増加する。私は,独自に開発した合成法の汎用性を示すために, 1.バロネオイル基の構造確認, 2.テルガロイル基の構築と構造確認, 3.ルゴシンAの初の全合成の達成の3つの成果を挙げた。1.独自に開発した新規ジアリールエーテル合成法を用いたバロネオイル基の構築と構造確認申請書に記した新規ジアリールエーテル合成法によりバロネオイル基の骨格が構築できていることを確認するため,既知化合物まで誘導した。2.テルガロイル基の構築と構造確認最も合成が難しいオルト四置換ジアリールエーテルであるテルガロイル基の骨格構築に適用できることを示した。テルガロイル基の骨格構築は,実施計画にはなかったが,合成できるエラジタンニンの数を増やすためには,必要と判断して行った。この骨格の構築に初めて成功し,本法がエラジタンニンに含まれる多置換ジアリールエーテルに一般的に適用できることを示した。3.バロネオイル基を有するエラジタンニンであるルゴシンAの初の全合成バロネオイル基を有するエラジタンニンであるルゴシンAの初の全合成を達成し,本法に全合成を達成する力量があることを示した。本研究成果により,合成できるエラジタンニンの数が格段に増加したと考えられる。これまでの研究で,私は,エラジタンニンに特徴的な様々な多置換ジアリールエーテル結合の新規合成法を開発している。その方法は,鍵合成中間体であるオルトキノンモノケタール構造を有する求電子剤へのフェノールのオキサ・マイケル付加脱離とオルトキノンモノケタール部分の選択的な還元から成る。昨年度,本反応を鍵反応としてルゴシンAの全合成を達成したが,合成した天然物は微量しかなかった。詳しい生物活性調査やより複雑な二量体や三量体エラジタンニンを合成するには,単純なモノマーエラジタンニンをグラムスケールで合成できる力量が必要である。従って,最初に,本法を鍵反応としてラエビガチンAのグラムスケール全合成を行い,次に二量体エラジタンニンであるラエビガチンEの全合成を達成した。合成は,テトラールのカップリング反応から行った。テトラールのカップリングと,続くベンジル化は8グラムスケールでも高収率で進行した。得られたチオグルコシドのグルコシルエステル化はα選択的に進行し,収率も良好であった。このグルコシルエステル化反応では,隣接基関与してβ選択性を与えそうなアシル基が2位に有るにも関わらず, α選択的に進行した。合成した化合物のTIPS保護を除去し,フェノールを得た。これを求核剤としたオキサ・マイケル付加・脱離,還元的芳香族化とベンジル化は,高収率で進行した。この3段階は3.6グラムスケールで行うことができ,鍵段階のスケールアップが容易であることが明らかとなった。最後にアルデヒドをピニック酸化によりカルボン酸に変換し,全てのベンジル保護を除去してラエビガチンAの全合成を達成した。ラエビガチンEの合成では,ラエビガチンAの合成中間体の2つをα選択的グルコシルエステル化し,全てのBn基を除去することで合成した。 | KAKENHI-PROJECT-13J08098 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13J08098 |
大環状エラジタンニンの全合成と超分子化学への展開 | 合成した天然物の1HNMRが一致し全合成を達成したことを確認した。研究課題は平成26年度が最終年度のため、記入しない。研究課題は平成26年度が最終年度のため、記入しない。合成できるエラジタンニンの数を格段に増やすことには,成功したものの,エラジタンニンを二量化させるまでに至っていない。研究目的を達成するには,二量化が必須であるためやや遅れていると判断した。1.モノマーエラジタンニンの大量合成法の確立最も単純なモノマーエラジタンニンの合成法は確立したものの,スケールが小さく合成できる量が少ない。今回合成した化合物は,今後の検討では,合成中間体になるため大量合成法を確立する必要がある。2.大環状エラジタンニン, woodfordin Cの全合成二量化方法の検討を行い,全合成を達成する。woodfordin Cの合成法に倣って2つの天然エラジタンニンを合成する。4.機能性分子としての能力評価合成した化合物が包接化合物として使えることを示し,分子マシンを合成する。 | KAKENHI-PROJECT-13J08098 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13J08098 |
三世代の親子関係と世代間で交換される社会的資源及び感情 | 研究期間全体を通して、27名の祖父母より面接調査に協力が得られた。祖父母の居住地域別人数の内訳は、関東圏16名、関西圏11名であった。また孫の年齢別人数の内訳は、歩行開始期13名、思春期14名であった。収集された面接データの一部が分析され、1件のポスター発表(国際学会)と2編の論文にまとめられた。歩行開始期の孫を持つ祖父母世代は、彼らの子ども世代が仕事と子育ての両立に苦悩していたことから、子育ての役割を担いながら人生の先輩としてサポートを継続していた。一方思春期の孫を持つ祖父母世代は、戦争体験を有する人が少なくなかった。彼らは年齢的にも人生の最終段階にはいり、懸命に世代継承性と対峙していた。平成24年度に実施された思春期の孫を持つ祖父母世代への調査協力者のうち、面接に協力可能と回答した祖父母20名を対象に、面接調査を実施した。とはいえ、実際に面接調査を実施する際、高齢者が多いため現時点での体調を考慮する必要があった。そのため、今年度協力を得られたのは10名であった。面接データは専門業者に委託して全て文字転記され、その文字転記記録に基づいた分析が行われた。既に実施された質問紙調査と面接調査の結果を包含した分析から、次の結果が見出された。祖父母世代と親世代との間で授受される資源(経済的、道具的、精神的)の認識は、2世代間で必ずしも一致しなかった。しかし不一致は否定的な意味合いをもたず、不一致であっても双方の世代の満足度は高かった。また、この年代の祖父母の子ども時代は、第二次世界大戦という時代背景(文化的要因)の影響を大きく受けていた。各個人の親世代におけるテーマが、統合されつつ祖父母世代のテーマへと遷移する様相が析出された。彼らの喪失体験は、次世代への価値(精神的、物質的)の引継ぎに反映されていた。また、今年度は中学生である孫のデータをも分析に組み込み、文字通り三世代データの分析に着手して成果を発表した。なお、面接データの一部を含む研究成果は次のように発表された。日本発達心理学会第26回大会(東京大学本郷キャンパス)において、自主シンポジウム1件(生涯発達と世代性)、ポスター発表2件(歩行開始期及び思春期の子ども・親・祖父母の世代性(9)、歩行開始期及び思春期の子ども・親・祖父母の世代性(10))を行い、英国心理学会年次総会(開催地はバーミンガム)においてポスター発表1件(Comparison of the nature of generativity between parents and grandparents)を行った。最終年度の研究成果は、祖父母の協力者合計17名に対する面接調査を実施し、全員分の文字記録を作成したことである。協力者の居住地域別人数の内訳は、関東圏8名、関西圏9名であった。研究期間全体を通しての面接調査協力者は、合計27名であった。協力者の居住地域別人数内訳は、関東圏16名、関西圏11名であった。また孫の年齢別の祖父母協力者の人数内訳は、歩行開始期13名、思春期14名であった。収集された面接データの一部が分析され、2編の論文にまとめられた。歩行開始期の孫を持つ祖父母世代は、彼らの子ども世代が正に仕事と子育ての両立に苦悩していたことから、子育ての役割をも担いながら人生の先輩としてサポートを継続していた。一方思春期の孫を持つ祖父母世代は、戦争体験を有する人が少なくなかった。彼らは年齢的にも人生の最終段階にはいり、懸命に世代継承性と対峙していた。すでに実施された質問紙調査の結果によれば、親世代に協力的な祖父母世代が多かった。面接調査の結果からは当初から安定的な親子関係が維持されていたケースばかりでなく、孫の育児をめぐって葛藤が引き起こされたケースがあることも明らかとなった。研究期間全体を通して、27名の祖父母より面接調査に協力が得られた。祖父母の居住地域別人数の内訳は、関東圏16名、関西圏11名であった。また孫の年齢別人数の内訳は、歩行開始期13名、思春期14名であった。収集された面接データの一部が分析され、1件のポスター発表(国際学会)と2編の論文にまとめられた。歩行開始期の孫を持つ祖父母世代は、彼らの子ども世代が仕事と子育ての両立に苦悩していたことから、子育ての役割を担いながら人生の先輩としてサポートを継続していた。一方思春期の孫を持つ祖父母世代は、戦争体験を有する人が少なくなかった。彼らは年齢的にも人生の最終段階にはいり、懸命に世代継承性と対峙していた。調査対象者の事情(体調や仕事の都合)により、全ての対象者に面接を実施することができなかった。そのため、「おおむね」と評価した。教育心理学平成26年度に実施することができなかった思春期の孫をもつ祖父母への面接調査を実施する。また予定している歩行開始期の孫を持つ祖父母への面接調査を実施する。思春期の孫を持つ祖父母世代の語りからは、戦争などの時代背景が浮き彫りになった。歩行開始期の孫を持つ祖父母世代と比較することによって、時代背景や社会の変化などが際立つのではないかと予想される。祖父母性の語りの共通点と相違点を析出することが重要なポイントとなるだろう。研究最終年度になるので、祖父母、親、孫の三世代のデータを組み込んだ分析を行い、新たな知見を公表することも課題である。次年度使用額が生じた理由は2点ある。 | KAKENHI-PROJECT-26590142 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26590142 |
三世代の親子関係と世代間で交換される社会的資源及び感情 | 第一に、対象者の都合により調査を予定した対象者全員に調査ができなかった。そのため、家庭訪問や面接のための要員の確保人数が予定より少なかったことである。それに連動して、対象者の面接記録を文字化するための予算も、予定より少なくなった。第二に、連携研究者のうち1名の学会出張旅費を、本会計から支出しなかったことによる。研究者の都合により、所属大学の研究費から支出したことが理由である。次年度は、家庭訪問による面接調査をさらに進めること、そして既に2015年英国心理学会において研究発表が採択されたので、その渡英費用に宛てる予定である。 | KAKENHI-PROJECT-26590142 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26590142 |
腸管幹細胞の分化調節と膵β細胞の再生-Isl-1の意義について- | 今回、我々はPdx1蛋白とSUMO-1が結合することを解明した(Am J Physiol, Endocrinologyand Metabolism,284,E830-840,2003)。Pdx1蛋白はリン酸化以外にSUMO化による修飾を受け、Pdx1蛋白が46kDaの分子量を示すことはSUMO-1蛋白と結合したためであると考えられた。またSUMO-1発現を抑制すると、Pdx1のmRNA発現は変化せずPdx1の蛋白レベルのみに発現抑制を認めたことから、SUMO化はPdx1の蛋白発現に影響し、またpost-translational modificationに関与することが示唆された。さらにPdx1蛋白の機能調節機構にSUMO化が関与することを報告した。SUMO化によりPdx1蛋白は核内に局在し、insulin遺伝子のpromoterに作用しその活性を上昇させることが示唆された。またSUMO化されないPdx1蛋白はproteasomeにて分解されると考えられ、SUMO化がPdx1蛋白の安定化に重要であると考えられた。以上よりSUMO-1のPdx1蛋白における修飾はPdx1蛋白の核内局在や安定化に関与し、その結果Pdx1によるinsulin遺伝子の転写調節を促進することを解明した。さらに、過酸化脂質が耐糖能に如何なる影響を及ぼすかを検討する目的で、ビタミンE欠乏過酸化脂質食にてラットを飼育し、何週目より耐糖能異常をきたすか否かを検討した。飼育されたラットは食餌中の過酸化脂質濃度に応じて、血中及びひらめ筋肉中の酸化化脂質濃度は上昇し、耐糖能異常は8週目より認められた。ビタミンEと過酸化脂質を同時に加えた食餌を与えても耐糖能異常は認められたことから、過酸化脂質が直接に耐糖能異常を惹起することを証明した。このメカニズムは1)膵臓においては過酸化脂質が膵β細胞に作用することでNFk-Bの発現を誘導し、膵β細胞死を惹起しインスリン分泌低下をきたすこと、2)筋肉においては過酸化脂質がインスリンreceptorに関与するIRS-1の蛋白発現を低下させ、耐糖能異常を惹起することを証明した(Diabetes research and clinical practice,67(2005)99-109)。今回、我々はPdx1蛋白とSUMO-1が結合することを解明した(Am J Physiol, Endocrinologyand Metabolism,284,E830-840,2003)。Pdx1蛋白はリン酸化以外にSUMO化による修飾を受け、Pdx1蛋白が46kDaの分子量を示すことはSUMO-1蛋白と結合したためであると考えられた。またSUMO-1発現を抑制すると、Pdx1のmRNA発現は変化せずPdx1の蛋白レベルのみに発現抑制を認めたことから、SUMO化はPdx1の蛋白発現に影響し、またpost-translational modificationに関与することが示唆された。さらにPdx1蛋白の機能調節機構にSUMO化が関与することを報告した。SUMO化によりPdx1蛋白は核内に局在し、insulin遺伝子のpromoterに作用しその活性を上昇させることが示唆された。またSUMO化されないPdx1蛋白はproteasomeにて分解されると考えられ、SUMO化がPdx1蛋白の安定化に重要であると考えられた。以上よりSUMO-1のPdx1蛋白における修飾はPdx1蛋白の核内局在や安定化に関与し、その結果Pdx1によるinsulin遺伝子の転写調節を促進することを解明した。さらに、過酸化脂質が耐糖能に如何なる影響を及ぼすかを検討する目的で、ビタミンE欠乏過酸化脂質食にてラットを飼育し、何週目より耐糖能異常をきたすか否かを検討した。飼育されたラットは食餌中の過酸化脂質濃度に応じて、血中及びひらめ筋肉中の酸化化脂質濃度は上昇し、耐糖能異常は8週目より認められた。ビタミンEと過酸化脂質を同時に加えた食餌を与えても耐糖能異常は認められたことから、過酸化脂質が直接に耐糖能異常を惹起することを証明した。このメカニズムは1)膵臓においては過酸化脂質が膵β細胞に作用することでNFk-Bの発現を誘導し、膵β細胞死を惹起しインスリン分泌低下をきたすこと、2)筋肉においては過酸化脂質がインスリンreceptorに関与するIRS-1の蛋白発現を低下させ、耐糖能異常を惹起することを証明した(Diabetes research and clinical practice,67(2005)99-109)。我々は小腸幹細胞を膵β細胞に分化させる機序を解明することで、小腸幹細胞からインスリン産生細胞を樹立することをテーマに研究を行っている。Pdx1遺伝子は小腸から膵芽が形成される際にmaster keyとなる遺伝子であることが知られているが、この蛋白が膵β細胞において如何なる機能調節を受けるか不明であった。我々は本蛋白の翻訳後修飾の機構を明らかにした。詳細には(1)本蛋白は遺伝子から想定される分子量は31kDaであるが、膵β細胞では46kDaの蛋白として同定され、リン酸化を含めた翻訳後修飾が関与すると考えられていたが、この機構がsmall ubiquitin-relatedmidifier-I(SUMO-1)蛋白とPdx1蛋白との結合によることを証明した。(2)Pdx1蛋白はSUMO-1と核内で結合することでインスリン遺伝子のエンハンサーに作用し、インスリン遺伝子の転写活性を有意に増強させることを報告した。(3)SUMO-1と結合していないPdx1は速やかに細胞質に存在する | KAKENHI-PROJECT-14570010 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14570010 |
腸管幹細胞の分化調節と膵β細胞の再生-Isl-1の意義について- | プロテオゾームで分解され、Pdx1蛋白の安定化にSUMO-1蛋白の結合が重要であることを解明した。さらには、(4)Pdx1とIsl-1遺伝子を組み込んだアデノウイルスを作成し、ラットの十二指腸に投与すると、ある種類の小腸内分泌細胞においてインスリンの産生が認められた。現在、インスリン産生を認めたラットについて血液中のインスリン、糖濃度を測定中である。以上の本年度の我々の研究は小腸幹細胞を用いた膵β細胞の再生という観点から重要な新知見である。我々は小腸幹細胞株であるIEC-6細胞及び膵β細胞株であるβTC細胞を用いて以下の所見を発見した。すなわち、(1)Pdx1とSUMO-1が結合し、膵β細胞におけるインスリン合成に関与すること、(2)Pdx1がSUMO化することでプロテオゾームでの本蛋白の分解を抑制し、結果として核内発現量を増加させること、(3)核内発現量が増強したPdx1はインスリン遺伝子プロモーターに作用し、mRNA発現を増強させること、以上の三点である。詳細にはPdx1はリン酸化以外にSUMO化による修飾を受け、本蛋白が46kDaの分子量を示すことはSUMO-1との結合による。加えてSUMO-1発現を抑制すると、Pdx1のmRNA発現は変化せずPdx1の蛋白レベルのみに発現抑制を認めたことから、SUMO化はPdx1のpost-translational modificationに関与し、蛋白発現を増加させることが示唆された。今回、Pdx1がSUMO-1の標的蛋白となることからPdx1の機能不全によって発症する若年型糖尿病(MODY)の病態解明に光明となると考えられ意義深い(Am J Physiol, endocrinology and metabolism 2003)。さらに、我々は食事中に含まれる過酸化物質が生体内において膵β細胞死を誘発し、結果として糖尿病を惹起することをラットを用いた検討で明らかにした。この時、vitamin Eである抗酸化剤を投与しても、この細胞死は軽減することなく、生体内で発生する過酸化脂質ではなく食事由来の過酸化物質が糖尿病を惹起することも今回の検討で明らかにした(Diabetes Res Clin Pr. Inpress)。この中で食事由来の過酸化物質は膵β細胞に対しては細胞死を誘導し、筋肉においてはinsulin receptor substrate1 (IRS-1)の蛋白量を低下させることでインスリン抵抗性が増強されることを発見した。 | KAKENHI-PROJECT-14570010 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14570010 |
実時間対話を実現するインターネットワーク上の仮想環境 | 平成14年度と15年度の間,筆者らは以下を行った.(平成14年度)1.競合型タスク文脈をもつアプリケーションモデルの一例として,ネットワーク対戦格闘技ゲームにおけるプレイヤの振る舞いをマルコフモデルにより解析し,対戦相手のアクションを予測するシステムを試作して評価した.また,予測誤差自体を評価関数として適宜これを減少させる適応型予測フィルタを開発し,これを遠隔対戦型レーシングゲームに応用し,その評価を行った.2.協調型タスク文脈をもつアプリケーションモデルの一例として,迷路追従型ゲームにおける相手の動きを互いに単純線形予測モデルにより予測し,タスクパフォーマンスの向上率を評価した.3.実時間3次元モデリングの一手法として,高速かつなめらかで位相のあいまいさを排除した,面心立方格子配列による3次元ポリゴンモデルの再構成手法を開発し従来法との比較でその有効性を確認した.(平成15年度)4.遅延と更新間隔を統合したレイテンシの要因と,それにより生ずる情報損との関連を理論的に解析した.具体的には,更新間隔を基本とするTaylor展開により推定可能な情報の,次数や更新間隔への依存度を,理論と数値実験の対比により調査し,モデルを評価した.5.競合型タスクモデルの一例として,ネットワーク対戦フィールド型DVEモデルを考察しこの応答性に着目したピアツーピア型プロトコルを独自に開発した.6.実時間性の弱いタスクモデルの応用として,遠隔アンサンブル演奏システムと遠隔授業用コミュニケーションツールの2つのシステムを開発した.前者では演奏のし易さに着目した遅延の安定化を,後者では同期型学習と非同期型学習の統合化ツールをそれぞれ実現した.この結果,想定し得る種々のヒューマンプロトコル(実時間性の強弱と競合・協調という文脈型)に対応したアプリケーションプロトコルモデルを提案した.平成14年度と15年度の間,筆者らは以下を行った.(平成14年度)1.競合型タスク文脈をもつアプリケーションモデルの一例として,ネットワーク対戦格闘技ゲームにおけるプレイヤの振る舞いをマルコフモデルにより解析し,対戦相手のアクションを予測するシステムを試作して評価した.また,予測誤差自体を評価関数として適宜これを減少させる適応型予測フィルタを開発し,これを遠隔対戦型レーシングゲームに応用し,その評価を行った.2.協調型タスク文脈をもつアプリケーションモデルの一例として,迷路追従型ゲームにおける相手の動きを互いに単純線形予測モデルにより予測し,タスクパフォーマンスの向上率を評価した.3.実時間3次元モデリングの一手法として,高速かつなめらかで位相のあいまいさを排除した,面心立方格子配列による3次元ポリゴンモデルの再構成手法を開発し従来法との比較でその有効性を確認した.(平成15年度)4.遅延と更新間隔を統合したレイテンシの要因と,それにより生ずる情報損との関連を理論的に解析した.具体的には,更新間隔を基本とするTaylor展開により推定可能な情報の,次数や更新間隔への依存度を,理論と数値実験の対比により調査し,モデルを評価した.5.競合型タスクモデルの一例として,ネットワーク対戦フィールド型DVEモデルを考察しこの応答性に着目したピアツーピア型プロトコルを独自に開発した.6.実時間性の弱いタスクモデルの応用として,遠隔アンサンブル演奏システムと遠隔授業用コミュニケーションツールの2つのシステムを開発した.前者では演奏のし易さに着目した遅延の安定化を,後者では同期型学習と非同期型学習の統合化ツールをそれぞれ実現した.この結果,想定し得る種々のヒューマンプロトコル(実時間性の強弱と競合・協調という文脈型)に対応したアプリケーションプロトコルモデルを提案した.本研究では実時間性の高いインターネット上の対話型アプリケーションの性質を調査している.今年度は1.通信遅延の模擬環境の構築2.ネットワーク上で起きる遅延や更新間隔の大小と,対話性劣化の関係の調査3.相互予測による実時間対話性確保の実験4.仮想空間中の輻輳と調節による視覚特性の調査を行っている.ここで1.ではインターネット上の実時間対話環境を想定し,任意の通信環境(帯域幅,遅延,遅延変動,パケット損失等)を模擬できるハードウェア・ソフトウェア環境を構築した.具体的には研究室内にネットワークルータを設置し,そのルータ上に遅延シミュレータソフト,NistNet(米国National Institute of Standards and Technology製)を導入して実現した.次に2.では仮想環境の操作性・対話性に関して,遅延量,遅延変動,更新間隔の3つの要因が及ぼす影響について情報理論的に考察し,モデル化ならびにその評価実験を検討した[2].すなわち,遅延量x,遅延量の標準偏差y,更新間隔zと一般化されたタスクパフォーマンスの間の関係をモデル化しこれを実際のタスクパフォーマンス実験で評価中である[4].更に3.では予測を用いた通信相手との実時間インタラクション手法:PFL (Predictive Feedback Loop)を実装し,模擬遅延のあるネットワーク環境でのタスクパフォーマンス評価実験を行った[1].実験で採用した協調作業においてはユーザーどうしが互いに協力的に作業を遂行することから、位置、速度ならびに加速度のみをパラメータとする上記の力学モデルなどの単純な予測手法でもパフォーマンス向上が見込める(約数十%のパフォーマンス向上が示された)ことを確認した.また4.では輻輳と調節を独立に制御できるATR社製HMD (Head Mounted Display)を用いて仮想空間中の移動物体に対する動的視覚(輻輳,調節の寄与)の調査を行った[3][5].平成15年度の研究実績概要(文献の番号は11.研究発表の番号を引用)1.本課題申請時に研究計画として挙げた,ネットワーク型仮想環境のヒューマンファクタの考察を行い,下記に示す5つの知見を得た. | KAKENHI-PROJECT-14580442 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14580442 |
実時間対話を実現するインターネットワーク上の仮想環境 | 2.遅延と更新間隔を統合したレイテンシの要因と,それにより生ずる情報損との関連を理論的に解析した.具体的には,更新間隔を変数の微小区間と捉えることにより,更新間隔と通信遅延量に基づく離散信号のTaylor展開を考案した.この手法により推定可能な情報が,Taylor展開の次数や更新間隔の細かさにより,どのように変化するかを理論と数値実験の対比により調査し,モデルの有効性を評価した((塙2003)).3.上記の手法を利用して「同期更新型協調タスク」の予測操作の危険性を,事前に推定する理論モデルを考察し,更新間隔のパラメータの重要性を定量的に明らかにした((Dai2004),(米倉2002)).4.競合型タスクモデルの一例として,ネットワーク対戦フィールド型DVEモデルを考察し・この応答性に着目したピアツーピア型プロトコルを独自に開発した((米倉2003),(Dai2004)).5.協調型タスクモデルの一例として,多人数参加型コロコロ迷路を開発したこれは板の動きを複数のプレイヤが協調して制御し3D迷路上の球をゴールへと誘導するもので,これにより協調型の種々のタスクモデルを模擬することが可能となる((米倉2002)).6.実時間性の弱いタスクモデルの応用として,遠隔アンサンブル演奏システムと遠隔授業用コミュニケーションツールの2つのシステムを開発した.前者では演奏のし易さに着目した遅延の安定化を(Yuka2003),後者では同期型学習と非同期型学習の統合化ツールをそれぞれ実現した(Kazuki2004).上記の結果,種々のヒューマンプロトコル(実時間性の強弱と競合・協調という文脈型)に対応したプロトコルモデルを提案した.今後は上記を利用した実協調タスクの評価を行う予定である. | KAKENHI-PROJECT-14580442 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14580442 |
歯周組織再生における骨シアロタンパク質の役割と発現調節機構 | 骨シアロタンパク質(BSP)は,石灰化組織特異的に発現し,アパタイト結晶形成能を有する細胞外マトリックスである。ROS17/2.8骨芽細胞様細胞を用いてエナメルマトリックスタンパク質(エムドゲイン:EMD)およびリポポリサッカライド(LPS)によるBSPの転写調節機構について解析を行った。EMD(50μg/ml)にてROS17/2、8細胞を刺激すると,BSPmRNA量は12時間後に増加し,-425および-801塩基対上流までのBSPプロモーター活性を上昇させた。その転写調節はホメオボックス応答配列(HOX)およびTGF-β応答配列(TAE)を介すると考えられ,ゲルシフトアッセイの結果,HOXとTAEに結合する核内タンパク質が,EMD刺激後12時間後に増加した。ROS17/2.8細胞を,大腸菌由来の低濃度のLPS(0.O1μg/ml)で12時間刺激すると,BSPmRNA量は増加し,高濃度のLPS(0.1,1μg/ml)にて12時間刺激すると,BSPmRNA量は減少した。1μg/mlのLPSは,経時的(3,6,12時間)にBSPmRNA発現を抑制し,-108塩基対上流までのBSPプロモーター活性を抑制した。リン酸化阻害剤を用いた結果,LPSの効果はAキナーゼおよびチロシンキナーゼ系を介し,また,抗酸化剤(NAC)がLPSの効果を阻害することから,LPSは活性酸素を介してBSPの転写を抑制すると考えられた。さらに,BSPプロモーターの-116塩基対上流までの転写因子結合配列の中で,逆方向のCCAAT配列,cAMP応答配列(CRE),FGF2応答配列(FRE)に2塩基対ずつ変異を挿入したミューテーションプラスミドを用いて実験を行った結果,LPSの効果は,ラットBSPプロモーターの-84から-108塩基配列に存在するCREおよびFREを介すると考えられた。骨シアロタンパク質(BSP)は,石灰化組織特異的に発現し,アパタイト結晶形成能を有する細胞外マトリックスである。ROS17/2.8骨芽細胞様細胞を用いてエナメルマトリックスタンパク質(エムドゲイン:EMD)およびリポポリサッカライド(LPS)によるBSPの転写調節機構について解析を行った。EMD(50μg/ml)にてROS17/2、8細胞を刺激すると,BSPmRNA量は12時間後に増加し,-425および-801塩基対上流までのBSPプロモーター活性を上昇させた。その転写調節はホメオボックス応答配列(HOX)およびTGF-β応答配列(TAE)を介すると考えられ,ゲルシフトアッセイの結果,HOXとTAEに結合する核内タンパク質が,EMD刺激後12時間後に増加した。ROS17/2.8細胞を,大腸菌由来の低濃度のLPS(0.O1μg/ml)で12時間刺激すると,BSPmRNA量は増加し,高濃度のLPS(0.1,1μg/ml)にて12時間刺激すると,BSPmRNA量は減少した。1μg/mlのLPSは,経時的(3,6,12時間)にBSPmRNA発現を抑制し,-108塩基対上流までのBSPプロモーター活性を抑制した。リン酸化阻害剤を用いた結果,LPSの効果はAキナーゼおよびチロシンキナーゼ系を介し,また,抗酸化剤(NAC)がLPSの効果を阻害することから,LPSは活性酸素を介してBSPの転写を抑制すると考えられた。さらに,BSPプロモーターの-116塩基対上流までの転写因子結合配列の中で,逆方向のCCAAT配列,cAMP応答配列(CRE),FGF2応答配列(FRE)に2塩基対ずつ変異を挿入したミューテーションプラスミドを用いて実験を行った結果,LPSの効果は,ラットBSPプロモーターの-84から-108塩基配列に存在するCREおよびFREを介すると考えられた。2.ルシフェラーゼベクターに,長さを調節したBSPプロモーター遺伝子を挿入し,Saos2またはUMR106細胞に導入し,TNF-α,PGE2または静磁場で刺激を行った。TNF-αはBSPの転写活性を変化させなかったが,PGE2(12h)および静磁場(24h)はBSPプロモーターの-ll6+60塩基対を含むコンストラクトの転写を上昇させた。BSPプロモーターの-116塩基上流には,逆方向のCCAAT配列,cAMP応答配列(CRE),FGF2応答配列(FRE),Pit-1配列が存在する。FREおよびCRE配列に2塩基の変異を挿入すると,PGE2の効果が消失し,FREおよびPit-1配列の変異では,静磁場刺激によるルシフェラーゼ活性の上昇が認められなかった。以上の結果より,BSPプロモーター中のFREとCRE配列を介してPGE2による転写調節が,FREおよびPit-1配列を介して静磁場によるによる転写調節が行われていると考えられた。1.ROS17/2.8骨芽細胞様細胞を,塩基性線維芽細胞成長因子(FGF2,10ng/ml)および細胞内cAMPを上昇させるフォルスコリン(FSK;1μM)にて単独または同時に刺激後,全RNAを抽出し,Real-time PCRを行った。FGF2とFSKは,6時間後にそれぞれBSPmRNA量を5.4倍および8.2倍増加させた。一方,FGF2とFSKで同時に刺激するとBSPmRNA量は,約20.4倍増加した。 | KAKENHI-PROJECT-16592081 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16592081 |
歯周組織再生における骨シアロタンパク質の役割と発現調節機構 | 2.ルシフェラーゼベクターに,長さを調節したBSPプロモーター遺伝子を挿入し,ROS17/2.8細胞に導入後,FGF2(10ng/ml)およびFSK(1μM)にて単独または同時に刺激を行った。FGF2(10ng/ml)およびFSK(1μM)にて6時間刺激を行うと,BSPプロモーターの-116+60塩基対を含むコンストラクトの転写活性は,2.6倍および5.3倍上昇し,FGF2とFSKにて同時に刺激すると,転写活性は約15倍上昇した。BSPプロモーター配列中の,逆方向のCCAAT配列,cAMP応答配列(CRE),FGF2応答配列(FRE),Pit-1配列に2塩基ずつの変異を挿入すると,FGF2およびFSKの効果は減少した。3.上記の4つの応答配列に対する核内タンパク質の結合を,ゲルシフトアッセイにて検索した。FREへの核内タンパク質の結合はFGF2およびFGF2+FSK刺激で増加し,Pit-1への核内タンパク質の結合は無刺激のコントロールで認められ,FSKおよびFGF+FSK刺激で,減少した。CCAATおよびCREへの核内タンパク質の結合量は変化しなかった。以上の結果から,FGF+FSKは同時刺激することにより相乗効果を示し,BSPプロモーター中のCCAAT,CRE,FREおよびPit-1の4つの応答配列を介して作用することが明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-16592081 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16592081 |
地球史を通じた大気海洋二酸化炭素濃度変動 | 地球史を通じた大気海洋CO2濃度変動を明らかにするために、世界12地域9つの時代の海洋底枕状溶岩の空隙を埋める熱水性石英中に保存されている流体包有物の分析を行った。その結果、太古代前期から中期においては暗い太陽を補うことができるだけの大気CO2による温室効果があったこと、太古代後期から原生代前期かけて大気海洋CO2濃度が劇的に減少したこと、が明らかになった。さらに、この太古代後期に始まった大気海洋CO2濃度の減少が地球史最初の超大陸の形成と分裂に関係している可能性、さらに、このCO2濃度の減少が22億年前まで続き全球凍結を引き起こした可能性を初めて地質記録に基づき示すことができた。20億年前以前、太陽輝度は現在の約80%以下であり、地球大気組成が現在と同じだと仮定すると地球表層は凍り付くほど寒冷であったと予想されている。しかし、地質記録は38億年前から液体の海洋が存在していたことを示している。この矛盾(暗い太陽のパラドックス)を解消するために、初期大気は温室効果ガスであるCO2に富んでいたとする仮説が数値計算から提唱されている。本研究ではこの仮説を検証するために海洋底玄武岩の空隙を埋める熱水性石英中の流体包有物組成(CO2濃度、Ar同位体比、炭素同位体比)に基づき定量的に『大気海洋CO2濃度変動』を解読し、この仮説を検証することを目的としている。平成25年度はこれまでに収集してきた世界12地域9つの年代(35、32、29、28、27、26、22、5、0.05億年前)の熱水性石英試料約1000個について岩石学的記載を行った。その結果、35、32、22億年前の試料の保存状態が良く分析に適していることが明らかになった。尚、真空ラインの改良を行い、35億年前と22億年前の試料について分析を行った。分析は初生的流体包有物を多く含む試料から二次的流体包有物を多く含む試料について系統的に行った。その結果、35億年前の初生的流体包有物はアルゴン同位体比が低くCO2に富むことが明らかになり、一方、22億年前の試料については初生的流体包有物はCO2濃度が低いことが明らかになった。これは太古代初期では海水CO2濃度が高く22億年前はCO2濃度が相対的に低いことを示している。20億年前以前、太陽輝度は現在の約80%以下であり、地球大気組成が現在と同じだと仮定すると地球表層は凍り付くほど寒冷であったと予想されている。しかし、地質記録は38億年前から液体の海洋が存在していたことを示している。この矛盾(暗い太陽のパラドックス)を解消するために、初期大気は温室効果ガスであるCO2に富んでいたとする仮説が数値計算から提唱されている。本研究ではこの仮説を検証するために海洋底玄武岩の空隙を埋める熱水性石英中の流体包有物組成(CO2濃度、Ar同位体比、炭素同位体比)に基づき定量的に『大気海洋CO2濃度変動』を解読し、この仮説を検証することを目的としている。平成26年度は、昨年度までに終了していなかった流体包有物の均質化温度、氷点温度測定を行い、熱水性石英と流体包有物の岩石学的一次記載を完了した。これにより、保有している12地域9つの年代の試料のうち7地域6つの年代の試料が本研究に比較的適していることが明らかになった。平成26年度は、これらの試料のうち特に保存状態の良い32億年前の試料(同年代2地域)と29億年前の一部の試料について分析を行った。その結果、32億年前の試料の流体包有物は2地域ともCO2濃度が高いことが明らかになった。したがって、本研究で使用している熱水性石英中の流体包有物は全球的な海水組成を保持している可能性が高まった。昨年度までの結果と合わせると、太古代前期から中期は海水中のCO2濃度が高く、太古代後期から原生代前期にかけて海水中CO2濃度が著しく減少したことが明らかになった。20億年前以前、太陽輝度は現在の約80%以下であり、地球大気組成が現在と同じだと仮定すると地球表層は凍り付くほど寒冷であったと予想されている。しかし、地質記録は38億年前から液体の海洋が存在していたことを示している。この矛盾(暗い太陽のパラドックス)を解消するために、初期大気は温室効果ガスであるCO2に富んでいたとする仮説が数値計算から提唱されている。本研究ではこの仮説を検証するために海洋底玄武岩の空隙を埋める熱水性石英中の流体包有物組成(CO2濃度、Ar同位体比、炭素同位体比)に基づき定量的に『大気海洋CO2濃度変動』を解読し、この仮説を検証することを目的としている。平成27年度は、投稿した論文原稿を改定する段階で、初生的流体包有物と二次的流体包有物区別してCO2を検出する必要が生じた。この問題を解決するために、レーザーラマンを用いた流体包有物の局所分析を試みた。その結果、比較的CO2濃度の高い流体包有物(32億年前の試料)に関しては、包有物の直径約10μm以上、レーザーパワー100mW(at sample)以上であれば、バックグラウンドより優位に高いCO2スペクトルを検出できることが明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-25707038 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25707038 |
地球史を通じた大気海洋二酸化炭素濃度変動 | 一方で比較的CO2濃度の低い流体包有物(22億年前の試料)に関しては上記の条件ではCO2は検出限界以下であることがわかった。この分析は当初の予定にはなかったが、これまで得られていた結果と解釈をサポートする新たなデータを得ることができた。また、投稿論文の改定の際に必要になった追加分析(真空破砕抽出)、試料記載についても行った。尚、比較的CO2濃度が低いと予想される後期太古代試料の分析の効率化を図るために、真空ラインの増設及び消耗品の交換を行い、後期太古代の試料について分析を開始した。本研究の目的は、海洋底玄武岩の空隙を埋める熱水性石英中の流体包有物組成(CO2濃度、Ar同位体比、炭素同位体比)から大気海洋CO2濃度変動を解読することである。平成27年度は、まだ分析を行っていない後期太古代の試料について分析を完了する予定であったが、投稿論文の改定で必要になったレーザーラマン分析を優先的に行ったため、後期太古代の試料の真空破砕抽出分析は完了していない。尚、当初予定していた真空ラインの増設及び消耗品の交換は完了した。総合的には、当初の計画を超えて行った分析と遅れている分析があり、進捗状況は「おおむね順調」とした。20億年前以前、太陽輝度は現在の約80%以下であり、地球大気組成が現在と同じだと仮定すると地球表層は凍り付くほど寒冷であったと予想されている。しかし、地質記録は38億年前から液体の海洋が存在していたことを示している。この矛盾(暗い太陽のパラドックス)を解消するために、初期大気は温室効果ガスであるCO2に富んでいたとする仮説が数値計算から提唱されている。本研究ではこの仮説を検証するために海洋底玄武岩の空隙を埋める熱水性石英中の流体包有物組成(CO2濃度、Ar同位体比、炭素同位体比)に基づき定量的に『大気海洋CO2濃度変動』を解読し、この仮説を検証することを目的としている。平成28年度は、これまで分析した保存状態の良い試料(35、32、29、22億年前)に加え、保存状態が中程度の試料も分析を進めたものの、流体包有物の抽出量が少なく定量に至らない試料も多くあることがわかった。また、抽出できた場合も、CO2濃度、炭素同位体比、アルゴン同位体比に相関は見られず、海水CO2濃度に定量的な制約を与えることはできなかった。しかしながら、当初予定していた世界12地域9つの年代の試料について、分析可能な試料すべてからデータを得ることができた。これにより、地球史を通じた大気海洋CO2濃度変動について初めて地質試料から制約を与えることができた。また、熱水性石英を保持する変質玄武岩の熱水変質作用についても分析・解析を行い、流体包有物分析の結果と調和的であることを示した。この一連の結果から、1)太古代前期から中期においては暗い太陽を補うことができるだけの大気CO2による温室効果があったこと、2)太古代後期から原生代前期かけて大気海洋CO2濃度が劇的に減少したこと、が明らかになった。さらに、この太古代後期に始まった大気海洋CO2濃度の減少が地球史最初の超大陸の形成と分裂に関係している可能性を示した。地球史を通じた大気海洋CO2濃度変動を明らかにするために、世界12地域9つの時代の海洋底枕状溶岩の空隙を埋める熱水性石英中に保存されている流体包有物の分析を行った。その結果、太古代前期から中期においては暗い太陽を補うことができるだけの大気CO2による温室効果があったこと、太古代後期から原生代前期かけて大気海洋CO2濃度が劇的に減少したこと、が明らかになった。さらに、この太古代後期に始まった大気海洋CO2濃度の減少が地球史最初の超大陸の形成と分裂に関係している可能性、さらに、このCO2濃度の減少が22億年前まで続き全球凍結を引き起こした可能性を初めて地質記録に基づき示すことができた。 | KAKENHI-PROJECT-25707038 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25707038 |
国際モビリティーの意義:日本におけるモンゴル人留学生に関する総合的研究 | 一国に留まらないヒト・モノ・カネ・情報のグローバル化が進展している中、質のより良い教育を受ける目的で海外を渡る留学生の移動は、強くその影響を受けながら拡大している。本研究は、国際移動・モビリティー研究の一環として、留学という営みの主体と同時に対象者である学生(また元留学生)に着目し、留学の経験について構築主義的アプローチに基づき、量と質の双方の側面から総合的に分析するものである。具体的に、日本を留学先として選択し、国費ないし私費で日本の高等教育機関などに在籍中の、または卒業したモンゴル人を対象に、モビリティーの意義をどのように捉えればよいのかに対して、留学過程における結果、その背景における諸要因を探り、明確にし、分析の新たな枠組みを提示することを目的にしている。目的達成のために、2017年12月から2018年3月にかけて日本の博士課程・修士課程・短大・専門学校・専修学校・日本語学校において「在留」資格を有している者及び卒業後日本で働いている元モンゴル人留学生を対象にオンライン調査を実施した。オンライン調査を行う一方で、日本のみならず、モンゴルでも利用可能なデータを探すために、モンゴルで「日本語学習」、「日本留学派遣」に関係している民間団体や語学学習センター、国立・私立教育機関、さらに公文書保管所などを訪問し、文献調査及び聞き取り調査を行った。2017年度は、国際留学生のモビリティーの現状、外国人留学生受け入れについて日本政策の特徴について投稿論文を執筆し、さらに日本在住のモンゴル人留学生にみられるモビリティー傾向について考察した上で日本国内外の学会などで発表した。1年目の前半にかけて、まず本研究の第1段階である質問票調査の設計及びパイロット調査に注意を払った。質問票調査に先駆け、留学のニーズが高まった背景として、高度人材の獲得をはじめとする世界及び各国のマクロとメゾレベルでの外発的な諸要因が影響していることを取り上げている文献を調査し、検討を行なった。これを踏まえた上で、日本全国に在住しているモンゴル人留学生・卒業者が、留学の意図及び目的、目的達成、留学終了後の予定などについてどの程度認識しており、それらにどのような諸要因が働きかけているのかを明らかにするため、文部科学省及びJASSOの基礎データを基に質問紙調査票の作成、サンプルの規模設定、プリテスト調査を行った。調査方法として、最も低コストでかつ早い方法であるオンライン調査を行うことにした。日本在住の多様なモンゴル人留学生の母集団(1,843人)から分析対象となるサンプルを得るために在日モンゴル人コミューニティーやモンゴル人留学生のソーシャルネットワークを活用した。その結果、200の回答が得られ、現在データの加工及び分析作業を行なっている。2017年度に行った作業は、2018年度の分析作業に関連しているため、2018年度の後半にオンライン調査の分析と同様に、文献調査を継続する予定である。2018年度の第1の段階としての定量(質問票)調査の分析を完了し、学会誌への投稿ないし日本国内外での学会発表を行う。さらに、その結果を精査し、第2段階の定性調査に向けて、理論と実践における先行研究についてさらなる検討を行うと同時に、単一課題調査の内容を定め、調査を開始する。一国に留まらないヒト・モノ・カネ・情報のグローバル化が進展している中、質のより良い教育を受ける目的で海外を渡る留学生の移動は、強くその影響を受けながら拡大している。本研究は、国際移動・モビリティー研究の一環として、留学という営みの主体と同時に対象者である学生(また元留学生)に着目し、留学の経験について構築主義的アプローチに基づき、量と質の双方の側面から総合的に分析するものである。具体的に、日本を留学先として選択し、国費ないし私費で日本の高等教育機関などに在籍中の、または卒業したモンゴル人を対象に、モビリティーの意義をどのように捉えればよいのかに対して、留学過程における結果、その背景における諸要因を探り、明確にし、分析の新たな枠組みを提示することを目的にしている。目的達成のために、2017年12月から2018年3月にかけて日本の博士課程・修士課程・短大・専門学校・専修学校・日本語学校において「在留」資格を有している者及び卒業後日本で働いている元モンゴル人留学生を対象にオンライン調査を実施した。オンライン調査を行う一方で、日本のみならず、モンゴルでも利用可能なデータを探すために、モンゴルで「日本語学習」、「日本留学派遣」に関係している民間団体や語学学習センター、国立・私立教育機関、さらに公文書保管所などを訪問し、文献調査及び聞き取り調査を行った。2017年度は、国際留学生のモビリティーの現状、外国人留学生受け入れについて日本政策の特徴について投稿論文を執筆し、さらに日本在住のモンゴル人留学生にみられるモビリティー傾向について考察した上で日本国内外の学会などで発表した。1年目の前半にかけて、まず本研究の第1段階である質問票調査の設計及びパイロット調査に注意を払った。質問票調査に先駆け、留学のニーズが高まった背景として、高度人材の獲得をはじめとする世界及び各国のマクロとメゾレベルでの外発的な諸要因が影響していることを取り上げている文献を調査し、検討を行なった。これを踏まえた上で、日本全国に在住しているモンゴル人留学生・卒業者が、留学の意図及び目的、目的達成、留学終了後の予定などについてどの程度認識しており、それらにどのような諸要因が働きかけているのかを明らかにするため、文部科学省及びJASSOの基礎データを基に質問紙調査票の作成、サンプルの規模設定、プリテスト調査を行った。調査方法として、最も低コストでかつ早い方法であるオンライン調査を行うことにした。 | KAKENHI-PROJECT-17K04679 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K04679 |
国際モビリティーの意義:日本におけるモンゴル人留学生に関する総合的研究 | 日本在住の多様なモンゴル人留学生の母集団(1,843人)から分析対象となるサンプルを得るために在日モンゴル人コミューニティーやモンゴル人留学生のソーシャルネットワークを活用した。その結果、200の回答が得られ、現在データの加工及び分析作業を行なっている。2017年度に行った作業は、2018年度の分析作業に関連しているため、2018年度の後半にオンライン調査の分析と同様に、文献調査を継続する予定である。2018年度の第1の段階としての定量(質問票)調査の分析を完了し、学会誌への投稿ないし日本国内外での学会発表を行う。さらに、その結果を精査し、第2段階の定性調査に向けて、理論と実践における先行研究についてさらなる検討を行うと同時に、単一課題調査の内容を定め、調査を開始する。国際出張先が、アメリカでの国際学会参加からモンゴル国内での調査に変わったために生じた。次年度、国際学会の参加のため、使用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-17K04679 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K04679 |
ナイーブCD4T細胞における運命決定機構 | 本課題ではナイーブT細胞の分化機構の解析を目的とした。マウスのナイーブCD4T細胞にLy6ChighとLy6Clowとの2種の細胞が存在すること、これらは活性化後の機能が異なり、Ly6Clow細胞の分化に転写因子Bcl6が必要であることを見出した。胸腺CD4T細胞は、IFNa,IFNg刺激でLy6Cの発現誘導が引き起こされるが、Bcl6欠損CD4T細胞ではより低濃度でLy6Cの発現が誘導された。本研究からナイーブCD4T細胞は複数の細胞が存在し、Bcl6はIFNa,IFNgの感受性を調整することで、ナイーブCD4T細胞の分化に関与していることが示唆された。本課題ではナイーブT細胞の分化機構の解析を目的とした。マウスのナイーブCD4T細胞にLy6ChighとLy6Clowとの2種の細胞が存在すること、これらは活性化後の機能が異なり、Ly6Clow細胞の分化に転写因子Bcl6が必要であることを見出した。胸腺CD4T細胞は、IFNa,IFNg刺激でLy6Cの発現誘導が引き起こされるが、Bcl6欠損CD4T細胞ではより低濃度でLy6Cの発現が誘導された。本研究からナイーブCD4T細胞は複数の細胞が存在し、Bcl6はIFNa,IFNgの感受性を調整することで、ナイーブCD4T細胞の分化に関与していることが示唆された。1)ナイーブCD4T細胞の不均一性の検証野生型マウスの脾臓より調整したリンパ球を用いて、CD62+CD44-ナイーブCD4T細胞の表面抗原の解析を行い、Ly6C陽性と陰性との2種類のナイーブ細胞が存在することを明らかにした。これら細胞の局在を調べた結果、二次リンパ臓器や、肺などの末梢臓器でも2種類の細胞が検出されたが、胸腺のCD4T細胞ではLy6C陰性のみしか存在しなかった。さらに2種類の細胞の性質の違いを検討するために細胞内のタンパクの発現を調べた結果、Ly6C陰性の細胞で転写因子Bcl6の発現が軽度認められ、Ly6C陽性の細胞では発現していないことを明らかにし、遺伝子発現レベルでも同様の結果を得た。そこでこれら細胞分化におけるBcl6の役割を検証する目的でBcl6欠損マウス由来ナイーブCD4T細胞を解析した結果、脾臓、リンパ節、肺ではLy6C陽性の細胞のみが存在した。しかし、胸腺CD4T細胞はLy6C陰性であった。このことから、ナイーブCD4T細胞は胸腺から末梢へ流出後にLy6Cの発現が誘導されること、Bcl6がLy6C陽性細胞への分化を抑制していることが明らかになった。2)Ly6C陽性ナイーブCD4T細胞の分化機序野生型およびBcl6欠損マウス胸腺よりCD4+CD8-細胞を分取し、CFSEで染色後、野生型コンジェニックマウスに移入してLy6Cの発現を解析した。移入後2日3日で野生型マウス由来胸腺細胞は約50%がLy6Cを発現するのに対し、Bcl6欠損マウス由来胸腺細胞はほとんどの細胞でLy6Cを発現した。Ly6Cの発現を誘導する因子を明らかにする目的で野生型胸腺細胞を様々なサイトカインで刺激した結果、IFNa,IFNgの刺激でLy6Cの発現が誘導され、Bcl6欠損胸腺細胞はどちらの刺激においてもより少量で誘導されることが明らかになった。CD4T細胞は活性化後にサイトカインの分泌や細胞表面分子の発現を介して免疫応答を調整するとともにメモリーT細胞としても維持される。また、胚中心では活性化B細胞の抗原親和性が亢進するが、この胚中心の形成、B細胞の分化に胚中心CD4T細胞が必須である。私たちはこれらメモリーCD4T細胞、胚中心CD4T細胞分化に転写因子Bcl6が関わっていることを報告した。しかし、これらT細胞の機能分化がいつからどのような機構で決定されているかの詳細は、明らかにされていない。そこで本課題では活性化前のナイーブT細胞の分化機構の解析を目的とする。マウスのナイーブCD4T細胞の表面抗原をFACSで解析した結果、Ly6ChighとLy6Clowとの2種の細胞が存在することを見出した。Ly6Chighの細胞は、活性化後にIFNg、TNFa、IL2を多く産生しLy6Clowとは機能的に異なる細胞である可能性が示唆された。この2つの細胞を分取し分化に関わる転写因子の発現を比較した結果、Ly6Clow細胞でBcl6の発現が高く、Bcl6欠損マウスではLy6Clow細胞が著減していたことから、Ly6Clow細胞の分化にBcl6が必要であることが明らかになった。胸腺CD4T細胞でのLy6Cの発現はBcl6欠損CD4T細胞でも野生型CD4T細胞でもともに認められなかったが、これらを野生型マウスに移入するとBcl6欠損CD4T細胞でLy6Cの発現が有意に上昇した。さらに、胸腺CD4T細胞をさまざまなに刺激しLy6Cの発現を誘導する因子を検索した結果、IFNa、IFNg刺激でLy6Cの発現誘導が引き起こされることを見出し、Bcl6欠損CD4T細胞ではより低濃度でLy6Cの発現が誘導される結果を得た。 | KAKENHI-PROJECT-25670227 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25670227 |
ナイーブCD4T細胞における運命決定機構 | 本研究からナイーブCD4T細胞は単一の細胞集団ではなく活性化後に異なる機能を示す複数の細胞が存在し、Bcl6はIFNa、IFNgの感受性を調整することで、ナイーブCD4T細胞の分化に関与していることが示唆された。免疫学1)ナイーブCD4T細胞の不均一性の検証2)Ly6C陽性ナイーブCD4T細胞の分化機序の当該年度の目的に対し、明確な結果を得ることができた。ナイーブ細胞にLy6C陰性と陽性の細胞とが存在し、この分化にBcl6が関与していることが明らかになった。さらにこれらの細胞の機能の違いを解析し、免疫応答制御の基盤とする。培養系における機能解析野生型マウスよりLy6C陰性と陽性のナイーブCD4T細胞を分取し、抗CD3/CD28抗体で刺激後、活性化能、サイトカイン分泌能等を解析することで機能的な違いを明らかにする。生体内での機能解析分取したLy6C陰性と陽性のナイーブCD4T細胞をコンジェニックマウスやCD28欠損マウスに移入後免疫して、濾胞ヘルパーT細胞への分化、抗体産生への関与、記憶細胞への分化を検証する。この解析により、Ly6C陰性と陽性のナイーブCD4T細胞の生理的な意味合いを明らかにする。細胞の生理学的な検討には多種のマウスが必要であり、準備に少し時間がかかっている。必要なマウスは入手できているので、匹数がそろった時点で実験を開始する。Ly6C陰性と陽性のナイーブCD4T細胞の培養系および生体内での機能解析を行う。実験にはコンジェニックマウスやCD28欠損マウスが必要となり飼育中であるが、数がそろい、準備ができ次第実験を行う。研究費はマウスの飼育、細胞解析のための抗体、ELISAのシステム等の購入に使用する。 | KAKENHI-PROJECT-25670227 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25670227 |
低周波電解の生体作用機序解明の基礎研究 | 電解曝露に伴なう人の脳波を計測してスペクトル変化を解析し,覚醒水準の評価などを行った。その結果、電解曝露後には振幅指標で覚醒度が下がる結果が得られた。しかしこの結果が単に長時間閉眼安静を保つことによるものか調べるために、同条件で電解曝露をせずに計測を行った結果、覚醒度は下がらなかった。従って電解曝露が覚醒度を下げていることが明らかとなった。また電解曝露ににより体毛が振動して被験者に感知され、心理的影響が作用した可能性がある。これを確かめる為、揺らぎ風を被験者に与えて体毛振動の感触を奪い、さらに眠気防止の為に雑音を提示して実験した結果、電解曝露中は覚醒度があがり、曝露後には元の水準に戻る結果となった。しかし風を与える条件は結果的に被験者の体温を奪う事にもなったので覚醒度が上昇して曝露後に覚醒度が下がる方向にならなかったものと考えられる。次に電解曝露に伴なう手甲皮膚温度、心電図および血圧を計測して解析した。皮膚温度は電解曝露直前まで上昇傾向であったものが、曝露開始とともに低下傾向に転じ、曝露後には一段と低下傾向が強まる結果となった。この時の心電図を基に交感神経、副交感神経活動の解析を行った結果、電解曝露に伴って副交感神経活動が弱まり、交感神経活動が活性化され、体温調節部位も活性化される結果となった。しかし血圧および血圧変化には電解曝露前後で変化は観測されなかった。最後に皮膚温度の低下現象は局所的な末梢応答が関与するかどうかを調べる目的で腕の局所曝露を行い、その時の皮膚温度、筋電図、脈波を同時計測して解析を行った。その結果、皮膚温度の低下減少は特定の被験者では電界強度が非常に高い場合に見られる場合もある事が分かった。そのときの筋電図活動は皮膚温度の推移と無相関であった。しかし皮膚温度の低下現象も個人差が大きく、さらに大規模で詳細な検討が必要と考えられる結果となった。電解曝露に伴なう人の脳波を計測してスペクトル変化を解析し,覚醒水準の評価などを行った。その結果、電解曝露後には振幅指標で覚醒度が下がる結果が得られた。しかしこの結果が単に長時間閉眼安静を保つことによるものか調べるために、同条件で電解曝露をせずに計測を行った結果、覚醒度は下がらなかった。従って電解曝露が覚醒度を下げていることが明らかとなった。また電解曝露ににより体毛が振動して被験者に感知され、心理的影響が作用した可能性がある。これを確かめる為、揺らぎ風を被験者に与えて体毛振動の感触を奪い、さらに眠気防止の為に雑音を提示して実験した結果、電解曝露中は覚醒度があがり、曝露後には元の水準に戻る結果となった。しかし風を与える条件は結果的に被験者の体温を奪う事にもなったので覚醒度が上昇して曝露後に覚醒度が下がる方向にならなかったものと考えられる。次に電解曝露に伴なう手甲皮膚温度、心電図および血圧を計測して解析した。皮膚温度は電解曝露直前まで上昇傾向であったものが、曝露開始とともに低下傾向に転じ、曝露後には一段と低下傾向が強まる結果となった。この時の心電図を基に交感神経、副交感神経活動の解析を行った結果、電解曝露に伴って副交感神経活動が弱まり、交感神経活動が活性化され、体温調節部位も活性化される結果となった。しかし血圧および血圧変化には電解曝露前後で変化は観測されなかった。最後に皮膚温度の低下現象は局所的な末梢応答が関与するかどうかを調べる目的で腕の局所曝露を行い、その時の皮膚温度、筋電図、脈波を同時計測して解析を行った。その結果、皮膚温度の低下減少は特定の被験者では電界強度が非常に高い場合に見られる場合もある事が分かった。そのときの筋電図活動は皮膚温度の推移と無相関であった。しかし皮膚温度の低下現象も個人差が大きく、さらに大規模で詳細な検討が必要と考えられる結果となった。交流強電界の中でも微弱な生体信号が計測可能な、脳波用および心電図用テレメータを新たに開発した。厚生省の認可を受け安全性の確認されている理学診療用の電界曝露装置を用いて、人体にELF(Extreamly Low Frequency)電界を曝露したときの脳波、心電図、血圧を各種テレメータを用いて同時計測し、解析を行った。心電図より得た心拍変動の平均および標準偏差の解析評価、交感神経、副交感神経活動の指標となるHFおよびLF/HFの解析評価などを行った結果、電界暴露に伴って副交感神経活動が弱まり、交感神経活動が活性化され、体温調節に関係する部位も少し活性化されるという初期データを得た。同時に計測した手甲部体温は電界暴露中より低下する傾向があり、電界暴露により皮膚交感神経が働いて皮膚血流を減少させたためであることが推定された。しかしながら、血圧変化および血圧差変化には電界暴露前後で目立った変化は観測されなかった。人体の電界曝露に伴なう自発脳波を計測し、δ波、θ波、α波、β波のスペクトルパワーの変化を評価し、覚醒水準の推移の評価、α波の1/f揺らぎ解析による快適性変化の評価などを行った。その結果、電界暴露後に主に脳波低周波成分が増加して、覚醒度が下がる結果が得られた。 | KAKENHI-PROJECT-10837014 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10837014 |
低周波電解の生体作用機序解明の基礎研究 | しかし、この結果が単に閉眼状態で長時間椅子に座っていることによるものかどうか調べるために、同条件で電界暴露をせずに計測を行った結果、覚醒度が下がる結果にはならず、電界暴露が覚醒度を下げていることが明らかとなった。また、強電界を暴露すると、体毛が振動して被験者に感知され、心理的影響が作用した可能性がある。これを検証するため、70dbのホワイトノイズ音と揺らぎのある風を被験者に与えて同様に実験した結果、電界暴露中は覚醒度があがる傾向があり、暴露後には元の水準に戻ることが明らかになった。しかし、風を与える条件は被験者の体温を奪うことにもなったので、暴露後に覚醒度が下がる方向にならなかったものと考えられる。厚生省の認可を受け安全性の確認されている理学診療用の電界曝露装置を用いて、人体にELF電界を曝露したときの生体情報を計測し、解析を行った。まず、人体に電界を全身曝露する前後および曝露中の手甲皮膚温度と心電図を計測し、解析した。被験者間にかなりの個人差が目立ったが、平均的な手甲皮膚温度は電界曝露直前まで上昇傾向であったものが、電界曝露開始と共にほんのわずかではあるが低下傾向に転じ、曝露後には一段と低下傾向が強まる結果となった。この時同時計測した心電図を基に交感神経、副交感神経活動の指標となる心拍変動のHFおよびLF/HF成分の解析を行った結果、電界曝露に伴って副交感神経活動が弱まり、交感神経活動が活性化され、体温調節に関係する部位も少し活性化されるというデータを得た。交感神経の活性化は曝露開始直後では見られず、曝露半ば以降、曝露後まで持続する一方で、体温調節に関係する成分は曝露直後から曝露後まで活性化する結果であった。従って曝露直後の皮膚温度降下は体温調節中枢の弱い効果が現れ、その後少し時間を置いて皮膚交感神経が働いて皮膚血流を減少させて皮膚温が低下するものと推定される結果が得られた。次に手甲皮膚温度の低下現象は局所的な末梢応答が関与するかどうかを調べる目的で腕のみの局所曝露を行い、皮膚温度、筋電図、脈波を同時計測して解析を行った。その結果、手甲皮膚温度の低下減少は電界強度が非常に高い場合に見られる場合もある事が分かった。その時の筋電図活動は皮膚温度の推移と無相関であった。また、皮膚温度が低下する被験者に関しては、電界曝露に伴って末梢血管低抗および末梢血流量が変化している現象が見受けられた。しかし、皮膚温度の低下現象も個人差が大きく、さらに大規模で詳細な検討が必要と考えられる結果となった。 | KAKENHI-PROJECT-10837014 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10837014 |
等質物語世界的小説の語りの構造に関する共時的・通時的研究 | (1)等質物語世界的語りをカヴァーし得る物語り状況の共時モデルを策定し、(2)さらにその共時モデルを用いて、プレモダンとポストモダンに顕著な等質物語世界的小説の語りの変容を記述することが本研究の課題である。(1)等質物語世界的語りの物語り状況の共時モデルたる本研究が提案する類型論は、Stanzel(1979:改定2版1982)及びGenette(1973:1983)の物語り状況の類型論の折衷として試みられる。但し、O'Neill(1994)の「物語内容は、二重の媒介、つまり「語る声」と「見る眼差し」を通して提示される、あるいは、物語テクストにと変形される」という認識を前提として、(a)語りの水準の特定化を含む語りの「コミュニケーションの場」の範疇、(b)「語る声」の分節範疇としての「声」の範疇、(c)「見る眼差し」の分節範疇としての「焦点化」の範疇を不可避の範疇として設定する。そして等質物語世界的語りの物語り状況にとって、最も重要と思われる(d)語り手の<わたし>と登場人物の<わたし>の関係性の範疇を設定する。(2)この(d)の分節範疇から言えることは、17・18世紀の等質物語世界的小説(例えば、自伝的形式、旅行記形式、日記・書簡体形式の小説)の多くにあって、登場人物の<わたし>と語り手の<わたし>の間の齟齬はきわめて稀であって、この両者の連続性が語りの信頼性を保証する。それに対して、ポストモダンのいわゆる実験的小説のみならず20世紀後半の多くの等質物語世界的小説にあっては、登場人物の<わたし>と語り手の<わたし>の間の関係性の棄却・齟齬という現象が一般的に見られる。これは、語りの信頼性の問題圏域を越えて、<わたし>という主体概念の基本的な変容に関わる現象として分析されるべきである。(1)等質物語世界的語りをカヴァーし得る物語り状況の共時モデルを策定し、(2)さらにその共時モデルを用いて、プレモダンとポストモダンに顕著な等質物語世界的小説の語りの変容を記述することが本研究の課題である。(1)等質物語世界的語りの物語り状況の共時モデルたる本研究が提案する類型論は、Stanzel(1979:改定2版1982)及びGenette(1973:1983)の物語り状況の類型論の折衷として試みられる。但し、O'Neill(1994)の「物語内容は、二重の媒介、つまり「語る声」と「見る眼差し」を通して提示される、あるいは、物語テクストにと変形される」という認識を前提として、(a)語りの水準の特定化を含む語りの「コミュニケーションの場」の範疇、(b)「語る声」の分節範疇としての「声」の範疇、(c)「見る眼差し」の分節範疇としての「焦点化」の範疇を不可避の範疇として設定する。そして等質物語世界的語りの物語り状況にとって、最も重要と思われる(d)語り手の<わたし>と登場人物の<わたし>の関係性の範疇を設定する。(2)この(d)の分節範疇から言えることは、17・18世紀の等質物語世界的小説(例えば、自伝的形式、旅行記形式、日記・書簡体形式の小説)の多くにあって、登場人物の<わたし>と語り手の<わたし>の間の齟齬はきわめて稀であって、この両者の連続性が語りの信頼性を保証する。それに対して、ポストモダンのいわゆる実験的小説のみならず20世紀後半の多くの等質物語世界的小説にあっては、登場人物の<わたし>と語り手の<わたし>の間の関係性の棄却・齟齬という現象が一般的に見られる。これは、語りの信頼性の問題圏域を越えて、<わたし>という主体概念の基本的な変容に関わる現象として分析されるべきである。近・現代小説の始発と終端に特徴的な一人称の語りあるいは等質物語世界的語りをカヴァーし得る物語り状況の共時モデルを策定することが本年度の目標である。等質物語世界的語りの物語り状況の共時モデルたる本研究が提案する類型論は、シュタンツェル(1979:改定2版1982)及びジュネット、(1973:1985)の物語り状況の類型論の折衷として試みられる。但し、オニール(1994)の「物語内容は、二重の媒介、つまり「語る声」と「見る眼差し」を通して提示される、あるいは、物語テクストにと変形される」という認識を前提として。(1)語りの水準の特定化を含む語りの「コミュニケーションの場」の範疇、(2)「語る声」の分節範疇としての「声」の範疇、(3)「見る眼差し」の分節範疇としての「焦点化」の範疇を不可避の範疇として設定する。そして等質物語世界的語りの物語り状況にとって、最も重要と思われる(4)語り手のくわたし>と登場人物の<わたし>の関係性の範疇を設定する。 | KAKENHI-PROJECT-14510538 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14510538 |
等質物語世界的小説の語りの構造に関する共時的・通時的研究 | (1)の「コミュニケーションの場」の分節範疇はジュネットの語りの水準の範疇の読み替えとして、(2)の「声」の範疇はシュタンツェルの叙法の範庸の一部及びジュネットの距離の範疇の読み替えとして、(3)の「焦点化」の範疇はシュタンツェル及びジュネットのパースペクティヴの範疇の読み替えとして、そして(4)語り手の<わたし>と作中人物の<わたし>の関係性の範庸はシュタンツェルにおいて問題とされた「物語るわたし」と「体験するわたし」との実存的な関係の読み替えとして設定される。コーン(1981)は、シュタンツェル(1979)とジュネット(1973)の差異を評して、「ジュネットのアプローチがより分析的であるのに対して、シュタンツェルのアプローチはより統合的である」と述べたことがある。この観点からすれば、わたしたちのアプローチはシュタンツェルよりはむしろジュネットに近いと言える。なぜなら、等質物語世界的語りの可能な類型を統合的に提示するというよりはむしろ、そうした類型を記述するためのモデルを提示することを主たる目的としているからである。しかし、シュタンツェルにしろジュネットにしろ、一人称の語りあるいは等質物語世界的語りの類型論において弁別されるのは、結局、内実は異なるものの3つの類型にすぎない。このように考えれば、本研究が提案する記述モデルとしての等質物語世界的語りの類型論の方が、少なくとも、プレモダンとポストモダン双方の小説に顕著な等質物語世界的語りの多様性をカヴァーするという観点からすれば、より便宜に適ったものと言える。(1)近・現代小説の始発と終端に特徴的な一人称の語りあるいは等質物語世界的語りをカヴァーし得る物語り状況の共時モデルを策定し、(2)さらにその共時モデルを用いてプレモダンとポストモダンに顕著な等質物語世界的小説の語りの変容、すなわち通時的に有意味な変容を確認できるかいなかが本研究の課題である。(1)等質物語世界的語りの物語り状況の共時モデルたる本研究が提案する類型論は、シュタンツェル(1979:改定2版1982)及びジュネット(1973:1983)の物語り状況の類型論の折衷として試みられる。但し、オニール(1994)の「物語内容は、二重の媒介、つまり「語る声」と「見る眼差し」を通して提示される、あるいは、物語テクストにと変形される」という認識を前提として、(a)語りの水準の特定化を含む語りの「コミュニケーションの場」の範疇、(b)「語る声」の分節範疇としての「声」の範疇、(c)「見る眼差し」の分節範疇としての「焦点化」の範疇を不可避の範疇として設定する。そして等質物語世界的語りの物語り状況にとって、最も重要と思われる(d)語り手の<わたし>と登場人物の<わたし>の関係性の範疇を設定する。(a)の「コミュニケーションの場」の分節範疇はジュネットの語りの水準範疇の読み替えとして、(b)の「声」の範疇はシュタンツェルの叙法の範疇の一部及びジュネットの距離の範疇の読み替えとして、(c)の「焦点化」の範疇はシュタンツェル及びジュネットのパースペクティヴの範疇の読み替えとして、そして(d)語り手の<わたし>と作中人物の<わたし>の関係性の範疇はシュタンツェルにおいて問題とされた「物語るわたし」と「体験するわたし」との実存的な関係の読み替えとして設定される。(2)等質物語世界的語りの物語状況の通時的な変容の記述にとって、もっとも有意味な分節範疇は(d)語り手の<わたし>と登場人物の<わたし>の関係性の範疇である。この分節範疇から言えることは、17・18世紀の等質物語世界的小説(例えば、自伝的形式、旅行記形式、日記・書簡体形式の小説)の多くにあって、登場人物の<わたし>と語り手の<わたし>の間の齟齬はきわめて稀であって、両者の連続性が語りの信頼性を保証する事例が顕著である。それに対して、ポストモダンのいわゆる実験的小説のみならず20世紀後半の多くの等質物語世界的小説にあっては、登場人物の<わたし>と語り手の<わたし>の間の関係性の棄却・齟齬が一般的な特徴と言える。これは、単に語りの信頼性の問題圏域を越えて、<わたし>という主体の変容の問題圏域に関わる現象であることを示唆しているように思われる。 | KAKENHI-PROJECT-14510538 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14510538 |
受精阻害モノクローナル抗体認識ヒト精子先体蛋白抗原エピトープの分子生物学的解析 | 受精現象において精子先体部は卵透明帯への精子の接着、結合に関与するだけでなく、先体反応を起こして先体酵素を放出し、精子の透明帯貫通に不可欠である。このように生殖生理学上大変重要な機能をになっている精子先体に特異的に反応するモノクローナル抗体を作成し、その対応抗原の性状分析を行なう事は、精子一卵透明帯相互反応に関与する物質を同定し受精現象の分子レベルでの解明に貢献するだけでなく、精子抗原を用いた新しい避妊ワクチンの開発にもつながる重要な研究課題である。本研究では(1)ヒト精子(capatitation誘起)免疫マウスの脾細胞とマウスミエローマ細胞との細胞融合により、ヒト精子先体部蛋白抗原と特異的に反応し、かつヒト精子に対して受精阻害作用を示すモノクローナル抗体1G1の作成に成功した。(2)この抗体の対応抗原について解析した結果27kDaの精子先体上に存在する蛋白抗原であることが判明した。(3)この抗体をもちいてヒト精巣cDNAライブラリーより対応抗原をコードする遺伝子を部分的に単離することに成功した。その遺伝子解析よりアミノ酸配列を決定したところ、ubiquitinをコードしていることが判明した。さらに、一部分に今までに報告のないアミノ酸配列が存在していることが同時に判明した。今後、さらにすべての領域をコードする遺伝子を単離して対応抗原の性状を解析することが残された課題であり、現在も研究を進めている。以上のように、本研究により、ヒト精子先体に存在する受精現象に関与する蛋白抗原を同定した。この抗原を解析することにより精子と卵透明帯との結合の機構の解明に重要な手掛かりを与えるものと期待される。受精現象において精子先体部は卵透明帯への精子の接着、結合に関与するだけでなく、先体反応を起こして先体酵素を放出し、精子の透明帯貫通に不可欠である。このように生殖生理学上大変重要な機能をになっている精子先体に特異的に反応するモノクローナル抗体を作成し、その対応抗原の性状分析を行なう事は、精子一卵透明帯相互反応に関与する物質を同定し受精現象の分子レベルでの解明に貢献するだけでなく、精子抗原を用いた新しい避妊ワクチンの開発にもつながる重要な研究課題である。本研究では(1)ヒト精子(capatitation誘起)免疫マウスの脾細胞とマウスミエローマ細胞との細胞融合により、ヒト精子先体部蛋白抗原と特異的に反応し、かつヒト精子に対して受精阻害作用を示すモノクローナル抗体1G1の作成に成功した。(2)この抗体の対応抗原について解析した結果27kDaの精子先体上に存在する蛋白抗原であることが判明した。(3)この抗体をもちいてヒト精巣cDNAライブラリーより対応抗原をコードする遺伝子を部分的に単離することに成功した。その遺伝子解析よりアミノ酸配列を決定したところ、ubiquitinをコードしていることが判明した。さらに、一部分に今までに報告のないアミノ酸配列が存在していることが同時に判明した。今後、さらにすべての領域をコードする遺伝子を単離して対応抗原の性状を解析することが残された課題であり、現在も研究を進めている。以上のように、本研究により、ヒト精子先体に存在する受精現象に関与する蛋白抗原を同定した。この抗原を解析することにより精子と卵透明帯との結合の機構の解明に重要な手掛かりを与えるものと期待される。1.受精阻害モノクローナル抗体の作製CBA/Nマウスをヒト精子膜分画にて免疫した後、そのマウスよりリンパ球を分離し、マウス骨髄腫細胞NS-1と細胞融合することによって抗精子モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを多数樹立することに成功した。それらの培養上清を用いてヒト精子を蛍光抗体法にて染色し、精子と反応する抗体を選別した。さらに、透明帯除去ハムスター卵及びヒト透明帯とヒト精子を用いた受精実験系において、受精現象を阻害する抗体を選別した。その結果受精阻害モノクローナル抗体(MAb)を産生するハイブリドーマ1G12を得た。このMAb1G12は、強いヒト精子不動化作用も有していた。2.MAb1G12が認識するヒト精子抗原の同定ヒト精子抽出蛋白をポリアクリルアミドゲル電気泳動にて分画し、MAb1G12を用いてWestern blot法にて対応抗原を解析したところ、非環元および還元条件下で、ともに15-25kDに多様性バンドを認めた。TFMS処理したヒト精子蛋白を用いた場合には、約15kDの単一バンドを認めた。ヒト精漿を用いた同様の実験でも、同じ結果を得た事から、MAb1G12の対応抗原は、精子付着精漿抗原と考えられる。現在ヒト精子を用いて抗原蛋白を精製し、そのアミノ酸配列を決定することを試みている。3.MAb1G12の対応抗原遺伝子の単離対応抗原のアミノ酸配列が決定されていないので、遺伝子の単離に関しては、MAb1G12を用いる方法を行った。ヒト精巣cDNAライブラリーをMAb1G12でスクリーニングした結果1つ陽性クローンの分離に成功した。このcDNAクローンは、塩基配列を決定したところ334アミノ酸残基をコードすることが判明した。さらに5'上流にコーディング領域が存在する事も判明した。現在その領域遺伝子の単離を行っている。また、このcDNAを発現ベクターに組み込み、大腸菌に導入し発現させた蛋白は、MAb1G12と反応することを確認した。現在さらに対応抗現エピトープ等について解析を行っているところである。 | KAKENHI-PROJECT-04671026 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04671026 |
受精阻害モノクローナル抗体認識ヒト精子先体蛋白抗原エピトープの分子生物学的解析 | 受精現象において精子先体部は卵透明帯への精子の接着、結合に関与するだけでなく、先体反応を起こして先体酵素を放出し、精子の透明帯貫通に不可欠である。このように生殖生理学上大変重要な機能をになっている精子先体に特異的に反応するモノクローナル抗体を作成し、その対応抗原の性状分析を行なう事は、精子-卵透明帯相互反応に関与する物質を同定し受精現象の分子レベルでの解明に貢献するだけでなく、精子抗原を用いた新しい避妊ワクチンの開発にもつながる重要な研究課題である。本研究では(1)ヒト精子(capatitation誘起)免疫マウスの脾細胞とマウスミエローマ細胞との細胞融合により、ヒト精子先体蛋白抗原と特異的に反応し、かつヒト精子に対して受精阻害作用を示すモノクローナル抗体1Glの作成に成功した。(2)この抗体の対応抗原について解析した結果27kDaの精子先体上に存在する蛋白抗原であることが判明した。(3)この抗体をもちいてヒト精巣cDNAライブラリーより対応抗原をコードする遺伝子を部分的に単離することに成功した。その遺伝子解析よりアミノ酸配列を決定したところ、ubiquitinをコードしていることが判明した。さらに、一部分に今までに報告のないアミノ酸配列が存在していることが同時に判明した。今後、さらにすべての領域をコードする遺伝子を単離して対応抗原の性状を解析することが残された課題であり、現在も研究を進めている。以上のように、本研究により、ヒト精子先体に存在する受精現象に関与する蛋白抗原を同定した。この抗原を解析することにより精子と卵透明帯との結合の機構の解明に重要な手掛かりを与えるものと期待される。 | KAKENHI-PROJECT-04671026 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04671026 |
ファイブロティックアクティビティから薬物性歯肉増殖症の発症リスクを診断する | 本研究は、薬物性歯肉増殖症の発症リスクを病態が似ている強皮症の活動指標であるファイブロティックアクティビティの概念に基づいて評価する試みである。すなわち、質量分析法を用いて薬物性歯肉増殖症患者の歯肉溝滲出液(GCF)中のタンパク質を網羅的に解析し、薬物性歯肉増殖症に高濃度に検出されるバイオマーカーとなり得るタンパク質を探索する。さらに、探索したタンパク質の歯周組織での局在を明らかにし、患者の歯周組織をアウトグロースさせて得た上皮細胞または線維芽細胞から、そのタンパク質の遺伝子発現の解析、細胞からの分泌量の定量を行うことで薬物性歯肉増殖症の病態とバイオマーカーになり得るタンパク質との関連を明らかにすることを目的としている。平成24年度は質量分析法を用いた歯肉溝滲出液中の薬物性歯肉増殖症発症マーカーの探索を試みた。徳島大学病院歯科を受診した薬物性歯肉増殖症患者(responder:R)、該当薬剤服用中でも歯肉増殖症を認めない患者(non-responder:NR)、該当薬剤を服用していない歯周病患者(Periodontitis:P)、健常者(healthy:H)のうち同意の得られたものを本研究の被験者とした。部位別の歯肉増殖症の判定、歯周ポケットの深さ、歯肉出血、歯肉炎指数などの歯周病の臨床指標を検査した後、ペーパーストリップ法にて歯肉溝滲出液を採取し、ペリオトロンを用いて容量を定量した。6人の被験者から計58サンプル(R:29、NR:23、P:5、H:1)を得ることができた。本研究は、薬物性歯肉増殖症の発症リスクを病態が似ている強皮症の活動指標であるファイブロティックアクティビティの概念に基づいて評価する試みである。すなわち、質量分析法を用いて薬物性歯肉増殖症患者の歯肉溝滲出液(GCF)中のタンパク質を網羅的に解析し、薬物性歯肉増殖症に高濃度に検出されるバイオマーカーとなり得るタンパク質を探索する。さらに、探索したタンパク質の歯周組織での局在を明らかにし、患者の歯周組織をアウトグロースさせて得た上皮細胞または線維芽細胞から、そのタンパク質の遺伝子発現の解析、細胞からの分泌量の定量を行うことで薬物性歯肉増殖症の病態とバイオマーカーになり得るタンパク質との関連を明らかにすることを目的としている。平成24年度は質量分析法を用いた歯肉溝滲出液中の薬物性歯肉増殖症発症マーカーの探索を試みた。徳島大学病院歯科を受診した薬物性歯肉増殖症患者(responder:R)、該当薬剤服用中でも歯肉増殖症を認めない患者(non-responder:NR)、該当薬剤を服用していない歯周病患者(Periodontitis:P)、健常者(healthy:H)のうち同意の得られたものを本研究の被験者とした。部位別の歯肉増殖症の判定、歯周ポケットの深さ、歯肉出血、歯肉炎指数などの歯周病の臨床指標を検査した後、ペーパーストリップ法にて歯肉溝滲出液を採取し、ペリオトロンを用いて容量を定量した。6人の被験者から計58サンプル(R:29、NR:23、P:5、H:1)を得ることができた。本研究は、薬物性歯肉増殖症の発症リスクを病態が似ている強皮症の活動指標であるファイブロティックアクティビティの概念に基づいて評価する試みである。すなわち、質量分析法を用いて薬物性歯肉増殖症患者の歯肉溝滲出液(GCF)中のタンパク質を網羅的に解析し、薬物性歯肉増殖症に高濃度に検出されるバイオマーカーとなり得るタンパク質を探索する。さらに、探索したタンパク質の歯周組織での局在を明らかにし、患者の歯周組織をアウトグロースさせて得た上皮細胞または線維芽細胞から、そのタンパク質の遺伝子発現の解析、細胞からの分泌量の定量を行うことで薬物性歯肉増殖症の病態とバイオマーカーとなり得るタンパク質との関連を明らかにすることを目的としている。平成24年度は質量分析法を用いた歯肉溝浸出液中の薬物性歯肉増殖症発症マーカーの探索を試みた。徳島大学病院歯科を受診した薬物性歯肉増殖症患者(responder:R)、該当薬剤服用中でも歯肉増殖症の認められない患者(non-responder:NS)、該当薬剤を服用していない歯周病患者(Periodontitis:P)、健常者(healthy:H)のうち、同意の得られたものを本研究の被験者とした。部位別の歯肉増殖症の判定、歯周ポケットの深さ、歯肉出血、歯肉炎指数などの歯周病の臨床指標を検査した後、ペーパーストリップ法にて歯肉溝滲出液を採取し、ぺリオトロンを用いて容量を定量した。6人の被験者から計58サンプル(R:29、NS:23、P:5、H:1)を得ることができた。年度の開始時から申請者の体調が悪く、予定通りに研究が進まなかった。その後、数か月の病気休暇を取得することになり、研究の遂行が困難になった。申請者の体調不良(病気休暇、休職)により研究の継続が困難となり、廃止の申請予定。廃止を予定しているため次年度の使用計画はなし | KAKENHI-PROJECT-24593124 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24593124 |
労動市場の需給決定に関するマクロ非線形計量経済モデルの構築とその実証研究 | 労働市場のミスマッチを考慮した不均衡計量経済モデルを提案するにあたり、モデルを時系列的に拡張する際に有用と考えられるモデルの攪乱項部分の扱い方に関する成果を、学会報告という形で発表した。この成果は労働市場の分析のみならず、一般的な時系列モデルにおける成果でもある。成果の内容は、定常時系列モデルをデータ系列に適用する際に、系列をBox-Cox変換してARMAモデルの次数、係数を推定するアルゴリズムを考案し、実際の経済データにモデルを適用したことである。変数系列をBox-Cox変換することは、モデルの攪乱項部分の正規性を比較的簡便な方法で保持させる目的がある。提案したアルゴリズムは、Hannan, E.J. and Rissanen, Jの提案した3段階法による定常時系列モデルの推定方法をもとにしているが、データ系列に最も適する変数変換のパラメータの値をARMAモデルの係数の値と同時に推定させるところに特徴がある。シミュレーションによるモデルの評価では次数、係数、変換の係数の推定および攪乱項の正規性について、いずれも良好な結果を得た。またモデルの経済データへの適用として、日本のコールレートとTOPIXのレベルデータの2変量ARMAモデルを推計した。推計の結果、TOPIXにおける変換の変数について1を超える値が推計され、従来の研究ではみられない特徴が出ていると言える。さらに試みとして、変換の変数についての仮説検定をDavidson and MacKinnonの議論に沿って実施した。帰無仮説として変換の変数の値が0、対立仮説がそれ以外の任意の値として尤度比検定を適用した。成果は日本統計学会2003年度第71回大会で、「Box-Cox変換を伴う多変量時系列モデルの統計的推測とその応用」(東北大学大学院経済学研究科細谷雄三と共同)、および2003年度日本経済学会秋季大会で「Box-Cox変数変換を含む多変量ARMAモデルの推定とその応用」のタイトルで発表した。 | KAKENHI-PROJECT-15730100 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15730100 |
乳幼児の自己主張行動と親の両義的応答の共同発達過程:親の心理社会的状況の視角から | 本研究では、2歳の幼児とその母親を対象に幼児が5歳に達するまでの縦断調査を実施した。一回の調査はインタビュー調査と実験調査により構成される。インタビュー調査は日常での幼児の自己主張・自己抑制行動とそれへの母親の応答や感情、さらに、その背景となる母親の心理社会的状況について聞き取るインタビュー1、および実験での母子の様子を振り返り語ってもらうインタビュー2により構成される。実験では母子でパズルに取り組んでもらい、そこでの母子のやりとりを記録した。これにより、母子の共同発達過程の一側面としての幼児の自己制御機能の発達過程をその背景となる母の認知的枠組みや心理社会的状況の影響をも含めて明らかにした。本研究では、2歳の幼児とその母親を対象に幼児が5歳に達するまでの縦断調査を実施した。一回の調査はインタビュー調査と実験調査により構成される。インタビュー調査は日常での幼児の自己主張・自己抑制行動とそれへの母親の応答や感情、さらに、その背景となる母親の心理社会的状況について聞き取るインタビュー1、および実験での母子の様子を振り返り語ってもらうインタビュー2により構成される。実験では母子でパズルに取り組んでもらい、そこでの母子のやりとりを記録した。これにより、母子の共同発達過程の一側面としての幼児の自己制御機能の発達過程をその背景となる母の認知的枠組みや心理社会的状況の影響をも含めて明らかにした。乳幼児期の自己主張行動と親の両義的応答の関係性、および、その背景としての親の心理・社会的状況の共同発達過程を明らかにするために、1歳前後になる子どもとその親への参与観察および親へのインタビュー調査を実施した。参与観察では、子どもの自己主張行動と親の両義的応答の相互作用を中心に、インタビュー調査では、自己主張行動をめぐる親子関係について、その背景としての親の心理社会的状況を中心に調査した。調査結果の分析においては、現象を探索的に捉えるためのコード(「子育て情報の入手経路」/「両親以外の子育てに関わる人々」/「親子間のコミュニケーション」/「歌を歌うこと」/「子ども側からのコミュニケーション」/「親側からのコミュニケーション」/「子どもの具体的行動」/「親の具体的行動」「親の考え」/「大人の間での意見の一致とズレ」)を設定し、これにより質的分析を行い、次の点が見出された。(1)自己主張的行動の多様性:自己主張という現象は、自己の感情表出、または他者に対して必要に応じて自己の感情や欲求を適切な形で表出する自己制御など、様々なレベルで捉えられ、各レベルの発生過程および時期も異なることが明らかにされた。今後、本研究では自己制御機能としての自己主張に焦点をしぼりその発生的観点からの検討をすることが必要であることが見出された。(2)乳幼児の自己主張と親からの応答性の不可分性:(1)で見出されたように、自己主張という現象は発達的にさまざまなレベルで捉えられるが、各レベル特有の自己主張の成立は、親からの応答性と不可分な関係であることが見出された。(3)社会的状況に埋め込まれた親子の共同発達過程:親子を取巻く社会的状況が乳幼児の自己主張と親の反応の共同発達過程に不可分な関わりをしていることが明らかにされた。更に、今後その点を明確にするために、社会状況が明確に異なる異文化との比較が必要であることが見出された。調査実施:前年度から継続的行われている幼児とその親を対象とする縦断調査を実施した。調査対象者は調査開始時に2歳2歳半にあたる子どもとその母親であり、7組の親子に対して、1カ月半に一度のペースで調査を実施した。調査は以下のように実験とインタビュー調査で構成されている。1実験:親子で共同してパズルに取り組んでもらい、そこでの親子のやりとりを映像データとして記録した。この実験は子どもがパズル開始から完成にいたるまでの過程を自己制御の過程と捉え、そこで発生する子どもからの自己主張・自己抑制的行動とそれに対する親の両義的応答性(受容と拒否)が如何に子どもの自己制御に織り込まれているかを明らかにすることを目的としている。2インタビュー:母親に対して実施し全調査から今回の調査までの子どもの自己主張または自己抑制行動に変化があったか、またそれに伴って親からの対応に変化があったか等について自由に回答してもらった。更に、その調査時に記録された実験の映像を母親に見せ、そこでの親子のやりとりについて自由に語ってもらった。これにより親子の自己制御の共同発達過程の背景をなすと考えられる親の価値観を明らかにするとともに、親子のやりとりとその背景となる親の価値観が、親子のどのような生活状況に結びついているかなど生態学的理解を目指した。調査の整理と分析:主にインタビューデータの音声データを文書化し、それをもとにコードを設定し、コードによる分析から理論構築を開始し、現在その精緻化を行っている。調査実施:本研究プロジェクト開始時から継続的に行われている幼児とその親を対象とする縦断調査を実施した。調査対象者はプロジェクト開始時に2歳2歳半にあたる子どもとその母親であり、7組の親子に対して、1カ月半に一度のペースで調査を実施した。調査は以下のように実験とインタビュー調査で構成されている(途中で調査協力者の転居により6組)。1実験:親子で共同してパズルに取り組んでもらいそこでの親子のやりとりを映像データとして記録した。この実験では、パズル開始から完成に至るまでの過程を、子どもの自己制御と親の応答性の共同性として捉えている。2インタビュー:母親に対して実施し、主に子どもの自己主張と自己抑制とそれに対する親の応答について前調査からの変化を語ってもらった。更に、実験の映像を母親に見せ、そこでの親子のやりとりについて自由に語ってもらった。 | KAKENHI-PROJECT-21730527 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21730527 |
乳幼児の自己主張行動と親の両義的応答の共同発達過程:親の心理社会的状況の視角から | これにより親子の自己制御の共同発達過程の背景となる親の価値観を明らかにするとともに、これらの現象が親子のどのような生活状況に結びついているかといった生態学的理解を目指した。調査の整理と分析:主にインタビューデータの音声データを文書化し、それをもとにコードを設定した。本年度は本縦断調査の最終時期であり、主に3歳後半から4歳代にかけての調査を実施した。この時期は子どもの言語発達とそれに伴うより複雑な認知機能の発達により、親子間のやりとりや自己制御にも大きな質的転換が見られる。このような時期ならではの様相を捉えられるような理論構築をコードによる分析に基づき取り組んだ。総括:調査の採集時期にあたるため、本プロジェクト開始からの縦断研究のデータの一部(インタビューデータ)について、総括的な分析を行った。主に、幼児の自己制御機能が、親子の共同発達という観点から捉えられるという本研究ならではの理論構築とそれを実証的に指示するデータ整理・分析を行った。平成23年度においては調査の実施およびそこで得られたインタビューデータの整理と分析を主な目的としている。平成23年度の計画については、ほぼ完了したことから、上記の区分となった。25年度が最終年度であるため、記入しない。平成24年度においては、平成23年度までの調査を継続的に実施するとともに、平成24年度までのインタビューデータの分析と総括、観察データの整理および分析を目指す。ただし、そのうちの観察データの整理および分析が滞っており、平成25年度にこれらを実施することになっている。25年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-21730527 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21730527 |
タイにおける「実践研究者としての教員」の養成・研修に関する研究 | 本研究を通じて、タイでは「実践研究者としての教員」の養成や研修が、法制度ならびに導入・実施のための基準や実施要項等を伴うかたちで整備されており、教育実習生がアクション・リサーチの報告書を完成させるに至っていることが明らかになった。他方、教育実習生の指導にあたる現職教員の資格要件としてアクション・リサーチの指導・助言ができる、アクション・リサーチの研究実績があるという基準が明示的に盛り込まれていないこと。また、現職教員がアクション・リサーチについての理解を深め、また実践に繋がるような研修機会が十分に整備されていないという課題も明らかになった。本研究の目的は、タイにおける「実践研究者としての教員(teacher as researcher)」の養成・研修の意義と課題について、制度と実態の両面から解明することである。この目的を達成するために、次の4つの具体的研究課題の解明に取り組む。すなわち、(1)タイにおける「実践研究者としての教員」概念の受容過程、(2)教員養成におけるアクション・リサーチ関連科目の教授内容と指導方法、(3)教育実習生によるアクション・リサーチと指導体制をめぐる課題、(4)アクション・リサーチの効用に対する教育実習生ならびに現職教員の意識、の解明である。初年度である今年度は、上記の具体的研究課題のうち(2)教員養成におけるアクション・リサーチと関連科目の教授内容と指導方法ならびに(3)教育実習生によるアクション・リサーチと指導体制をめぐる課題にかかる関連資料の収集を行うための現地調査を実施した。併せて、上記の具体的研究課題(1)(4)を解明するための基礎となる教員養成課程認定制度についての基礎的な資料も収集した。以上の現地調査により収集した資料をもとに、タイにおける教員養成課程認定基準の検討、ならびに教育実習生によるアクションリサーチの研究題目の検討を行い、それぞれ学会の年次大会において口頭発表を行った。当初の計画通り、「9.研究実績の概要」欄に記入した具体的研究課題(1)(4)のうち2つの研究課題にかかる現地調査を実施し、また、その成果について、学会の年次大会において公表することができたため。本研究の目的は、タイにおける「実践研究者としての教員(teachers as researchers)」の養成・研修の意義と課題について、制度と実態の両面から解明することである。この目的を達成するために、次の4つの具体的研究課題の解明に取り組む。すなわち、(1)タイにおける「実践研究者としての教員」概念の受容過程、(2)教員養成におけるアクション・リサーチ関連科目の教授内容と指導方法、(3)教育実習生によるアクション・リサーチと指導体制をめぐる課題、(4)アクション・リサーチの効用に対する教育実習生ならびに現職教員の意識、の解明である。2年目にあたる平成28年度は、初年度に収集した文献資料等の分析を進めて、とくに、具体的研究課題(1)に関連する研究成果の一部について国内の学会で口頭発表、ポスター発表の計2回を行った。それぞれ日本教師教育学会第26回研究大会(帝京大学)において口頭発表(タイにおける優秀教師群像ー『Prawat Khru(教師列伝)』の内容分析ー)、国際開発学会第27回大会(広島大学)においてポスター発表(タイにおける優秀教師群像(2)ー『Prawat Khru(教師列伝)』の内容分析ー)である。国際開発学会のポスター発表は、優秀ポスター発表賞を受賞した。また、本研究の成果を国際的に発信し、問題・研究関心を同じくする海外の研究者との国際情報交換を図るため、国際学会における成果発表の準備を進めた。その結果、平成29年度には、ICET2017(チェコ・ブルノ)、13thICTS(タイ・チェンマイ)、2017UKFIET(イギリス・オックスフォード)の計3回、発表を行うことになっている。当初の計画通り「9.研究実績の概要」欄に記入した具体的研究課題(1)(4)のうち、具体的研究課題(1)に関連する研究成果の一部について国内の学会で口頭発表、ポスター発表の計2回を行うことができた。また、国際開発学会のポスター発表は、優秀ポスター発表賞を受賞するなど一定程度、本研究の取り組みが評価されているため。また、最終年度は、本研究の成果を国際的に発信し、問題・研究関心を同じくする海外の研究者との国際情報交換を図るための国際学会における成果発表の準備が整っているため。本研究の目的は、タイにおける「実践研究者としての教員(teachers as researchers)」の養成・研修の意義と課題について、制度と実態の両面から解明することである。この目的を達成するために、次の4つの具体的研究課題の解明に取り組む。すなわち、(1)タイにおける「実践研究者としての教員」概念の受容過程、(2)教員養成におけるアクション・リサーチ関連科目の教授内容と指導方法、(3)教育実習生によるアクション・リサーチと指導体制をめぐる課題、(4)アクション・リサーチの効用に対する教育実習生ならびに現職教員の意識、の解明である。最終年度にあたる平成29年度は、アクション・リサーチの指導体制に関する関係法規ならびに実施要項に盛り込まれた教育実習校の指導教員に求められる資格要件の分析に取り組んだ。その結果、教育実習生のアクション・リサーチを指導する立場にある教育実習校の指導教員にはアクション・リサーチの実績が明確には求められていないことが明らかになった。また、関係者への聞き取り調査から、教育実習校の指導教員を対象とするアクション・リサーチの研修機会も制度的には十分整備されていないことも明らかになった。これらはタイにおける「実践研究者としての教員」の養成・研修の課題であると言えよう。 | KAKENHI-PROJECT-15K17385 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K17385 |
タイにおける「実践研究者としての教員」の養成・研修に関する研究 | さらに、最終年度は、本研究の成果を国際的に発信し、問題・研究関心を同じくする海外の研究者との国際情報交換を図るため、ICET2017(チェコ・ブルノ)、13thICTS(タイ・チェンマイ)、2017UKFIET(イギリス・オックスフォード)の計3回の発表を行った。これらの口頭発表については、目下、国際学術誌に、英語論文として投稿を進めている。本研究を通じて、タイでは「実践研究者としての教員」の養成や研修が、法制度ならびに導入・実施のための基準や実施要項等を伴うかたちで整備されており、教育実習生がアクション・リサーチの報告書を完成させるに至っていることが明らかになった。他方、教育実習生の指導にあたる現職教員の資格要件としてアクション・リサーチの指導・助言ができる、アクション・リサーチの研究実績があるという基準が明示的に盛り込まれていないこと。また、現職教員がアクション・リサーチについての理解を深め、また実践に繋がるような研修機会が十分に整備されていないという課題も明らかになった。平成28年度は、「9.研究実績の概要」欄に記入した具体的研究課題(1)と(4)に取り組むとともに、昨年度と同様に、学会の年次大会において成果の一部を公表する。本研究の成果を国際的に発信し、問題・研究関心を同じくする海外の研究者との学術交流を図るための国際学会における成果発表の準備を進めるとともに、「9.研究実績の概要」欄に記入した具体的研究課題(1)(4)全体の総括を進める。比較教育学、教師教育、タイ地域研究初年度は、研究課題関連図書・雑誌を選定して購入する計画であったが、選定にかかる時間を十分に確保することができなかった。本研究を遂行する過程で、本研究成果を国際的に発信する機会をもつ必要性を強く感じ、いくつかの国際的な学術交流・情報交換の場を模索した。その結果、平成29年度の交付内定額では、その旅費を補うことが難しいと判断し、平成28年度の旅費の一部を平成29年度の旅費の一部として用いることとしたため。平成28年度は、研究課題関連図書・雑誌の選定、購入を進める予定である。平成29年度6月には、ICET2017(チェコ・ブルノ)、13thICTS(タイ・チェンマイ)、9月には2017UKFIET(イギリス・オックスフォード)の計3回、発表を行うことになっており、これらの旅費の一部として使用する。 | KAKENHI-PROJECT-15K17385 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K17385 |
特定地域における物的流通システム解析および設計 | 顧客の要求を多様化し、製品の寿命が短縮化しつつある今日、企業において取り扱う品目は増大し、景気の停滞もあり、何に対応するかが大きな問題になってきている。原材料の調達の方法から、工場立地の選定、製品を市場に供給をするための統合生産-物流システムは益々複雑化してきている。また、2工場間の関係を考慮した工場立地選定方法のアルゴリズムを得た研究がまとめられ“複数工場の立地選定モデルに関する研究"として発表した。さらに、複数工場を立地する場合、工場間の関係を考慮した選定アルゴリズムを構築し、立地候補地点の組合せ問題が複雑になるか、これを解決する方法を提示した。生産拠点における原材料の調達方法に関しては、その発注方式について研究を行った。年間使用金額の多い購入品群を対象とする定期発注方式において、先方の状況を考慮した方式として、在庫量変動と共に発注量変動をも考慮した制御可能な定期発注方式の研究が完成した。その後、伝達関数法による従来の方式をさらに発展せるために、最適制御理論を在庫管理に適用を試み、定式化ができたためその成果を発表した。顧客の要求を多様化し、製品の寿命が短縮化しつつある今日、企業において取り扱う品目は増大し、景気の停滞もあり、何に対応するかが大きな問題になってきている。原材料の調達の方法から、工場立地の選定、製品を市場に供給をするための統合生産-物流システムは益々複雑化してきている。また、2工場間の関係を考慮した工場立地選定方法のアルゴリズムを得た研究がまとめられ“複数工場の立地選定モデルに関する研究"として発表した。さらに、複数工場を立地する場合、工場間の関係を考慮した選定アルゴリズムを構築し、立地候補地点の組合せ問題が複雑になるか、これを解決する方法を提示した。生産拠点における原材料の調達方法に関しては、その発注方式について研究を行った。年間使用金額の多い購入品群を対象とする定期発注方式において、先方の状況を考慮した方式として、在庫量変動と共に発注量変動をも考慮した制御可能な定期発注方式の研究が完成した。その後、伝達関数法による従来の方式をさらに発展せるために、最適制御理論を在庫管理に適用を試み、定式化ができたためその成果を発表した。顧客の要求が多様化し、製品の寿命が短縮化しつつある今日、企業において扱う品目は増大し、原材料調査から、生産工程を経て製品として顧客に供給するまでの物流システムは複雑化し、その立地を含めたシステムの再構築が必要とされてきている。本研究では、1)ものの流れを考慮した立地選択方法の開発2)ある生産拠点における発注方式の開発3)多段階在庫の在庫管理方式の開発を、目的としている。今年度は、立地選択方法については、国・内外に2っの研究発表を行い、大きな成果を得ることができた。1つはアメリカにおける工場立地要因選定をAHPを活用した選定アルゴリズムを得た研究であり、1つはヨーロッパ(EC)における統合化に対応した工場立地要因を選定し、AHPを活用した選定アルゴリズムを得た研究である。また、2工場間の相互関係を考慮した工場立地選定法のアルゴリズムを得た研究がまとめられた。ある生産拠点の発注方式の研究は、在庫量変動と発注量変動の両変動を制御する定期発注方式が完成したので、最適制御を用いる発注方式の研究に取り組み、研究発表を行った。階層型ニューラルネットワークと相互結合型ニューラルネットワークを流通問題・物流問題に活用するための基礎研究として、国内・外に3つの研究発表を行い、大きな成果を得ることきができた。立地選定方法に関する研究については,アメリカ,次いでECに立地する場合の選定方法について,意思決定支援システム(DSS)を設計したが,これらは1工場の立地選定であった。本年度は,複数工場を立地させる場合について,工場間の関係を考慮した選定アルゴリズムを構築し,学会で成果を発表した。2工場以上を考える場合には,立地候補地点の組み合わせ問題となり,計算時間が膨大なものとなるが,これを解決する方法を提示した。生産拠点における発注方式に関しては,在庫量変動と発注量変動を同時に制御する定期発注方式について,最適制御理論を適用し,定式化を行い解を得,その成果を学会で発表した。以上の成果をとりまとめ,・最適制御理論を用いた定期発注システムの一研究・工場における資材,部品,仕掛品の保管倉庫の割当の適正化等の論文として,学会誌に掲載(投稿中も含む)した。 | KAKENHI-PROJECT-05680343 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05680343 |
電子レセプトデータを用いた医療の質の指標化と改善 | 本研究では、医療の質向上のために不可欠であるデータに基づく質の評価を可能にするため、「1複雑な構造であるものの質評価の有望な情報源である電子レセプトデータを用いたデータベース基盤の構築(個人情報保護(匿名化)を考慮)」と「2上記基盤を活用した医療の質(診療・経営の質)の指標化」を実施した。これは、医療機関による医療の質の継続的な評価と改善につながる研究であり、医療の標準化や均てん化、医療の質と安全性・効率性の向上に貢献したと考えられる。本研究は、“容易に分析可能なデータベース基盤を電子レセプトデータを用いて構築し、その基盤において、医療の質の指標化と改善を実施すること"を目的とした研究である。そのため当該年度は、前年度に引き続いてのデータ収集・管理・分析のための基盤環境の設計、およびその設計に基づいたデータベース(プロトタイプ)の作成を実施した。また、医療の質評価のための評価指標に関して、前年度に引き続き検討を実施するとともに、試行的に指標の算出を試みた。各々の成果は、以下の通りである。1データ収集・管理・分析のための基盤環境の設計とその設計に基づくプロトタイプの作成データ収集・管理・分析のための基盤環境の設計に関しては、昨年度に引き続き、データ収集方法や分析用データベース構築方法に関する検討(設計)を実施し、その後プロトタイプを作成した。具体的には、実際のレセプトデータを用いて、個人情報保護や情報セキュリティ、およびデータ分析の容易さ等の視点を考慮したデータベースを構築した。2医療の質評価のための評価指標の検討とそれら指標の試行的算出医療の質評価のための評価指標を検討するとともに、候補となる評価指標の算出を試みた。具体的には、本研究のために構築したデータベース(プロトタイプ)を用いて、医療の質(診療・経営の質)を評価するための指標を算出した。また、算出した指標について、妥当性・信頼性・有用性等について検討した。本研究では、医療の質向上のために不可欠であるデータに基づく質の評価を可能にするため、「1複雑な構造であるものの質評価の有望な情報源である電子レセプトデータを用いたデータベース基盤の構築(個人情報保護(匿名化)を考慮)」と「2上記基盤を活用した医療の質(診療・経営の質)の指標化」を実施した。これは、医療機関による医療の質の継続的な評価と改善につながる研究であり、医療の標準化や均てん化、医療の質と安全性・効率性の向上に貢献したと考えられる。本研究は、“容易に分析可能なデータベース基盤を電子レセプトデータを用いて構築し、その基盤において、医療の質の指標化と改善を実施すること"を目的とした研究である。そのため当該年度はまず、データ収集・管理・分析のための基盤環境整備に向けて多方面にわたる知識・技術の習得し、それに基づいて基盤環境整備の設計を一部実施した。また、医療の質評価のための評価指標の検討も実施した。各々の成果は以下の通りである。1データ収集・管理・分析のための基盤環境の整備の設計データ収集・管理・分析のための基盤環境の整備の設計に関しては、個人情報保護や情報セキュリティマネジメントシステムについての知識や技術を習得した。また習得した知識や技術に基づき、データ収集方法や分析用データベース構築方法に関する検討(設計)を実施した。具体的には、医療施設からデータを収集する際に匿名化すべき項目についての検討や、その検討結果に基づく匿名化を可能とするデータ変換ツールの検討、複雑な構造である電子レセプトデータを分析可能な形式へ変換してデータを管理する方法の検討を実施した。2医療の質評価のための評価指標(診療・経営の質指標)の検討医療の質評価のための評価指標を検討するために、既存の指標についての把握と検討を実施した。その後それらの指標を参考に、本研究に合致した指標に関する開発を開始した。具体的には、先行研究のレビューや実務者・専門家とのディスカッションを通じて、既存の指標と新たに作成する指標の妥当性・信頼性・実現可能性について検討を重ね、本研究の目的に合致した指標の暫定版を開発した。本研究は、"容易に分析可能なデータベース基盤を電子レセプトデータを用いて構築し、その基盤において、医療の質の指標化と改善を実施すること"を目的とした研究である。最終年度である当該年度は、前年度までの研究成果を活かして、データベース基盤をさらに強化するとともに、医療の質に関する有用な評価指標の作成を実施した。これにより、複雑な構造であるものの有望な質評価の情報源である電子レセプトデータによるデータベース基盤の構築と、その基盤を活用した医療の質(診療・経営の質)の指標化と改善を実施することが出来た。研究期間全体を通しての具体的な成果としては、「個人情報保護を満たす(匿名化)データ収集ツールの開発」「複雑な構造である電子レセプトデータを分析可能なデータベースに変換する方法論・ツールの開発」「既存の指標と新たな臨床指標の妥当性・信頼性・実現可能性についての検討を踏まえた上での医療の質評価指標の開発」「医療機関から収集した電子レセプトデータを用いた医療の質評価指標の作成」があげられる。質評価の指標の一例としては、患者数(入院・外来)、受診日数、診療報酬(1日単価等)、転帰等の基本項目とともに、糖尿病患者に対する血液検査(血糖、HbA1c)の実施状況、手術患者に対する肺血栓塞栓症の予防対策実施状況等の診療行為(臨床指標)に関する指標等を作成した。本研究により、電子レセプトデータを用いた医療の質向上のための基盤構築が可能となった。 | KAKENHI-PROJECT-24790525 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24790525 |
電子レセプトデータを用いた医療の質の指標化と改善 | これは、医療機関による継続的な医療の質の評価と改善につながるため、医療の標準化や均てん化、医療の質と安全性・効率性の向上の一助になったと考えられる。医療マネジメント前年度生じた遅れの影響が、まだ若干残っているため。年度内に所属がかわり、当初予定していた研究時間を確保することが困難であったため。今後は、整備されたデータ収集・管理・分析のための基盤環境(プロトタイプ)に対して、さらに強化・改良を適宜実施する。また、構築された環境(データ収集され構築されたデータベース)を用いて、医療の質評価のための評価指標(診療・経営の質指標)の作成(算出)、研究参加施設へのフィードバックを実施し、医療の質改善につながるように試みる。今後は、実施したデータ収集・管理・分析のための基盤環境整備の設計に基づき基盤環境を整備し、さらに基盤環境の強化・改良を適宜実施する。また、構築された環境(データ収集され構築されたデータベース)を用いて、医療の質評価のための評価指標(診療・経営の質指標)の作成(算出)、研究参加施設へのフィードバックを実施して、医療の質改善につながるように試みる。当初予定していた病院職員等とのディスカッションの準備が間に合わず、そのタイミングが次年度になったため。次年度は、分析用データベースの強化・改良のためのPC周辺機器や文房具等の購入のための物品費、病院の職員や研究者とのディスカッション等に伴う旅費、情報整理補助業務に係る賃金、印刷費・通信運搬費等の経費、システム開発会社への支払い経費を使用予定である。次年度は、分析用データベース構築のためのPC周辺機器や文房具等の購入のための物品費、病院の職員や研究者とのディスカッション等に伴う旅費、情報整理補助業務に係る賃金、印刷費・通信運搬費等の経費、システム開発会社への支払い経費を使用予定である。また個人情報保護や情報セキュリティマネジメントシステムに関する包括的な知識や技術を習得する目的で、当初は外部機関が開催している研修を受講する予定であったが日程があわなかったため繰越額が生じたが、次年度それらの研修を受講予定である。 | KAKENHI-PROJECT-24790525 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24790525 |
新しい陽電子手法による,水の液体構造および活性種のナノ秒領域の反応に関する研究 | 東日本大震災の影響で,全体の研究が遅れることとなった。1年間の期間延長をしたが,実験施設側の不具合などで継続して使用禁止となったため,実験や準備などを行うことができずに,研究が滞ることとなった。その中で,装置開発途中で測定したデータを,より詳細な解析を行うこととなり,新しい現象を見出すことに成功した。この発見を利用し,陽電子を利用して作ることが出来る,液体中のサブナノバブルのGHz振動とサブナノ秒減衰を計測する手法を,イオン液体をモデル試料として開発することに成功した。ナノスケールで存在する複雑な液体構造を研究するための新しい手法であり,将来,水の液体構造の研究にも貢献できると期待される。LSOシンチレータを用いて,計数効率を格段に向上させるため,上面30mmφ,下面40mmφ,高さ30mmの比較的大きなもの2個を用いた。シンチレータが大きくなると時間分解能の向上が難しくなると想定され,BaF2に比べ,100ピコ秒ほど劣る,350ピコ秒程度の時間分解能を,Na-22を用いた陽電子寿命測定で実現したいと考えていたが,実際には,従来と同じ手法で行ったところ,半値幅で200ピコ秒ほど悪い,450ピコ秒程度の時間分解能となることがわかった。そこで,光電子増倍管から信号を通常はアノードから取り出すが,ダイノードから取り出した信号は信号波形の初期の立ち上がりが速く,ごく小さい変化量からタイミング信号を取り出すことが可能となり,100ピコ秒程度の時間分解能の改善を得ることに成功した。また,LSOはシンチレータ自体に自然放射能を多く含んでおり,自ら発光しているが,その発光強度は,Na-22の陽電子の試料中への入射を知らせる1.27MeVのガンマ線による全吸収ピークと干渉することはなく,全吸収ピークの部分のみを使用することで,ランダム同時計数による信号ノイズ比の劣化も起こらないことを明らかとした。また,消滅ガンマ線のタイミングも全吸収ピーク部分を用いることで,さらに時間分解能が向上し,300ピコ秒程度,つまりBaF2に比べて50ピコ秒程度の劣化に抑えることに成功した。これはLSOの発光がBaF2に比べ非常に遅いことを考えると画期的な結果である。さて,最終的には半導体検出器も加えた3つの検出器による3光子同時計測で行うため,さらに信号ノイズ比が改善されることとなり,消滅時刻の計測にはコンプトン領域も入れることが可能となる。一方,時間分解能が劣化することとなり,実際の測定時の時間分解能は現状で370ピコ秒程度である。計数率は従来の装置に比べ目標の10倍の実現に近づいている。高温高圧水測定用セルを製作し,昇温昇圧試験を完了した。本来計画していた装置の高エネルギーX線ビーム径が30ミリあり,試料中で電子対生成で作られた高エネルギー陽電子の拡散などを計算した結果,拡散距離が大きく,セルが非常に大きくなることが分かった。高温高圧で実験を行うため,容器は小さい必要がある。一方,最近,つくばの産総研において,ビーム径2ミリの高エネルギーX線が開発され,高温高圧セルの容積を大幅に低減でき,測定等において大きなメリットがあるため,ビーム径2ミリの高エネルギーX線用のセルを作成した。一方,LSOシンチレータを利用した陽電子消滅寿命-運動量相関(AMOC)測定装置の開発は,前年度まで順調に進み,計数率の増大,要求される時間分解能を実現しており,国際会議でも発表を行った。現在は,震災後の実験室の整備等のため,実験が出来ない状況にあるが,再開後,水の測定に着手する。また,液体構造の研究につなげるため,イオン液体を試料に用いて研究を行った。AMOC測定による研究から,イオン液体中では多くの現象がサブナノスケールで非常に遅いことを見出した。その特性を利用し,以下の新しい手法開発を行った。従来は消滅確率が一定であることにより,陽電子消滅平均寿命を計測し,静的なサブナノスケールの情報を得ることが行われてきた。今回,イオン液体中で,電子と陽電子の結合状態であるポジトロニウムがバブルを形成する際に,安定なバブルへと移行するまでに起こる振動を,消滅確率の振動として捕らえることに成功した。これはAMOC手法による研究から,時間分解能100200ピコ秒で十分に捉えられる遅い現象であることが解明されたことから,実現したものであり,水などの液体への応用が可能であるかは,今後検討が必要であるが,サブナノスケールの全く新しい動的測定手法を実現したものである。東日本大震災の影響で,全体の研究が遅れることとなった。1年間の期間延長をしたが,実験施設側の不具合などで継続して使用禁止となったため,実験や準備などを行うことができずに,研究が滞ることとなった。その中で,装置開発途中で測定したデータを,より詳細な解析を行うこととなり,新しい現象を見出すことに成功した。この発見を利用し,陽電子を利用して作ることが出来る,液体中のサブナノバブルのGHz振動とサブナノ秒減衰を計測する手法を,イオン液体をモデル試料として開発することに成功した。ナノスケールで存在する複雑な液体構造を研究するための新しい手法であり,将来,水の液体構造の研究にも貢献できると期待される。 | KAKENHI-PROJECT-23600011 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23600011 |
新しい陽電子手法による,水の液体構造および活性種のナノ秒領域の反応に関する研究 | 東日本大震災の影響で管理区域内の実験室が使用不可能であったため,実質的な研究の進展はない.購入予定であった物品のうち,すでに仕様等が決まっている,光電子増倍管の購入を行った.国内外の学会等に参加し,調査は行っている.また,研究協力者である,ポーランドのGoworek教授とは電子メールで情報交換をし,研究の打ち合わせ等を行った.26年度は,非密封RI使用の実験施設で,給排気系のトラブルが原因で長期間実験室が使用禁止となり,本研究課題の多くの実験とその準備が出来ない状態となった。しかしながら,東日本大震災の影響で使用不可能となったインキュベータの代替となる装置を導入し,他の実験施設において温度制御を実現した陽電子消滅寿命測定が可能となった。この装置を用いて,水の液体構造の研究につなげるため,内部の構造が均一でなく,同様に複数の異なる構造をもつイオン液体の研究を中心に行った。その結果,オルソーポジトロニウムの消滅率の温度依存性が,通常の液体と異なり,高温で小さくなっていかないことを新たに見出した。これは,従来,水中でのみ見られた現象である。また,この消滅率は,巨視的な表面張力と多くの液体で相関が見られるものであったが,イオン液体では不均一な構造を反映し,その相関から大きくずれることが新たに明らかとなった。ポジトロニウムは液体中ではバブルが形成する。イオン液体中では,このバブルの形成が本研究課題で実現した高計数率AMOC装置による測定で,比較的長時間かかって安定化していることが今までに示唆されていた。また,バブル形成初期の消滅率の変化から,バブルの振動が起こっていることを見出していた。26年度は,さらに,新たに導入した温度制御装置による測定において,高温ほど振動数が小さく,また,その基本振動の減衰が早いことが明らかとなった。また,基本振動が消えた後で,高調波の振動成分が残ることも明らかとなった。振動現象は,イオン液体中のイオンで構成されている相の情報を,表面張力と消滅率の相関からのずれは,ファンデルワールス力で構成されている相の情報を反映していると考えられる。このような新しい現象を,水の液体構造研究への応用が可能であるかは,今後検討が必要であるが,サブナノスケールの新しい動的測定手法を実現することに成功した。陽電子科学研究の進展としては当初の計画通りに進んでいるが,東日本大震災の影響で実質的に1年間以上実験などが遅れることとなり,結果として当初の予定と比較すると1年程度の遅れが出ていると考えられる。しかしながら,目標としてきた装置開発においては,懸案となっていた時間分解能において,新しい手法を導入し,大きく改善が見られ,装置の計数率も計画していたものに近づきつつある。今後はさらにスタート信号用の検出器を増やすことで計数率の向上を計画しており,おそらく,目的の計数率を実現できる。これは使用する線源が弱くても計測に時間がかからなくなることとなり,試料への照射効果を低減でき,当初計画していたとおりの実験が計画通りに可能になる。また,高温高圧水の測定を目指してドイツのグループと連絡を密にとり,測定用セルの設計において、シミュレーション計算など行い、進めているが、震災後に他の研究や業務などを行う必要があったため、同様に遅れが出ている。現状での唯一の懸案事項は,試料の温度コントロールに使用する予定であった,インキュベータが震災の影響で破損し,使用できなくなっていることであり,試料の温度制御の方法を考える必要がある。特に,25°C以下で安定した測定を行うのには何かしらの冷却システムが必要となる。この件も全体の達成度に影響を及ぼす可能性もあり,他から借用できるものを探すなど,対策を急いでいる。 | KAKENHI-PROJECT-23600011 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23600011 |
光電変換機能を持つDNAフィルム | 本研究の目的は、DNA二重らせん鎖が電子導電性(ホール輸送能)を持つことを利用し、電子輸送能を持つカチオン性脂質とDNA配向化フィルムを作製し、色素分子(電子キャリー)をインターカレートすることにより、有機エレクトロルミネッセント(EL)素子や色素増感型太陽電池を構築することにある。これらの目的に基づき研究を進め、3年間で以下の成果を挙げた。1)電子輸送能を持つカチオン性脂質の合成と探索色素に電子を注入する時に、ジアルキル型のカチオン脂質では絶縁材として働く可能性があり、より積極的に電子を注入することを目的として、DNAとコンプレックスを形成するカチオン性脂質に電子輸送能を持つ官能基を導入し化合物を合成した。2) EL素子の構築ガラス基板上にITO透明電極をくし形に蒸着し、その上に色素をインターカレートしたDNA配向化フィルムをスピンコートし、フィルムの上からCa、Alを蒸着し、ITを陽極、Alを陰極としてELセルを構築した。電極間に1-2Vの電位を印加するとDNAフィルムが発光し、EL素子として働いていることを確かめた。本研究の目的は、DNA二重らせん鎖が電子導電性(ホール輸送能)を持つことを利用し、電子輸送能を持つカチオン性脂質とDNA配向化フィルムを作製し、色素分子(電子キャリー)をインターカレートすることにより、有機エレクトロルミネッセント(EL)素子や色素増感型太陽電池を構築することにある。これらの目的に基づき研究を進め、3年間で以下の成果を挙げた。1)電子輸送能を持つカチオン性脂質の合成と探索色素に電子を注入する時に、ジアルキル型のカチオン脂質では絶縁材として働く可能性があり、より積極的に電子を注入することを目的として、DNAとコンプレックスを形成するカチオン性脂質に電子輸送能を持つ官能基を導入し化合物を合成した。2) EL素子の構築ガラス基板上にITO透明電極をくし形に蒸着し、その上に色素をインターカレートしたDNA配向化フィルムをスピンコートし、フィルムの上からCa、Alを蒸着し、ITを陽極、Alを陰極としてELセルを構築した。電極間に1-2Vの電位を印加するとDNAフィルムが発光し、EL素子として働いていることを確かめた。本研究の目的は、DNA二重らせん鎖が電子導電性(ホール輸送能)を持つことを利用し、電子輸送能を持つカチオン性脂質とDNA配向化フィルムを作製し、色素分子(電子キャリー)をインターカレートすることにより、有機エレクトロルミネッセント(EL)素子や色素増感型太陽電池を構築することにある。これらの目的に基づき研究を進め、今年度は以下の成果を挙げた。1)DNA配向化フィルムの作製とホール輸送能の測定サケ白子から分子量3,000万、平均分子長10mmのDANを抽出精製し、カチオン性脂質とコンプレックス化して、ホットプレス法によりフィルム化することに成功した。。電極間距離5μmの透明電極(ITO)のくし形電極上に接着して、DNA鎖に沿った電導性を測定することを試みた。2)色素に電子を注入する時に、ジアルキル型のカチオン脂質では絶縁材として働く可能性があり、より積極的に電子を注入することを目的として、DNAとコンプレックスを形成するカチオン性脂質に電子輸送能を持っ官能基を導入し、5種の化合物を合成した。本研究の目的は、DNA二重らせん鎖が電子導電性(ホール輸送能)を持つことを利用し、電子輸送能を持つカチオン性脂質とDNA配向化フィルムを作製し、色素分子(電子キャリー)をインターカレートすることにより、有機エレクトロルミネッセント(EL)素子や色素増感型太陽電池を構築することにある。これらの目的に基づき研究を進め、今年度は以下の成果を挙げた。1)電子輸送能を持つカチオン性脂質の合成と探索色素に電子を注入する時に、ジアルキル型のカチオン脂質では絶縁材として働く可能性があり、より積極的に電子を注入することを目的として、DNAとコンプレックスを形成するカチオン性脂質に電子輸送能を持つ官能基を導入し化合物を合成した。2)EL素子の構築ガラス基板上にITO透明電極をくし形に蒸着し、その上に色素をインターカレートしたDNA配向化フィルムをスピンコートし、フィルムの上からCa、Alを蒸着し、ITOを陽極、Alを陰極としてELセルを構築した。電極間に1-2Vの電位を印加するとDNAフィルムが発光し、EL素子として働いていることを確かめた。本研究の目的は、DNA二重らせん鎖が電子導電性(ホール輸送能)を持つことを利用し、電子輸送能を持つカチオン性脂質とDNA配向化フィルムを作製し、色素分子(電子キャリー)をインターカレートすることにより、有機エレクトロルミネッセント(EL)素子や色素増感型太陽電池を構築することにある。これらの目的に基づき研究を進め、3年間で以下の成果を挙げた。1)電子輸送能を持つカチオン性脂質の合成と探索色素に電子を注入する時に、ジアルキル型のカチオン脂質では絶縁材として働く可能性があり、より積極的に電子を注入することを目的として、DNAとコンプレックスを形成するカチオン性脂質に電子輸送能を持つ官能基を導入し化合物を合成した。2)EL素子の構築ガラス基板上にITO透明電極をくし形に蒸着し、その上に色素をインターカレートしたDNA配向化フィルムをスピンコートし、フィルムの上からCa、Alを蒸着し、ITOを陽極、Alを陰極としてELセルを構築した。 | KAKENHI-PROJECT-18201023 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18201023 |
光電変換機能を持つDNAフィルム | 電極間に1-2Vの電位を印加するとDNAフィルムが発光し、EL素子として働いていることを確かめた。 | KAKENHI-PROJECT-18201023 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18201023 |
口腔癌の細胞膜脂質構造の特異性を利用したDrug Delivery System | 腫瘍の組織型の違いにより抗癌剤の抗腫瘍効果に差を生じることはよく知られている。我々は無血清培養条件で5種類のヒト由来癌細胞のシスプラチン(CDDP),ペプロマイシン(PEP)およびドキソルビシン(DXR)に対する感受性の違いについて,その増殖を指標に検討した。無血清培養下においてCDDPは唾液腺由来腺癌細胞(SAC)に対して口腔由来扁平上皮癌細胞(SCC)よりも高い殺細胞作用を示し,SCCはCDDPに対して比較的抵抗性を示すことがわかった。一方,SCCはSACに比較してPEPとDXRに対して高い感受性を示すことが明らかになった。CDDP, PEPおよびDXRは受動輸送により細胞内に取り込まれることから抗癌剤の感受性は細胞内の薬剤濃度に依存していると考えられる。従って抗癌剤の殺細胞効果の違いは癌細胞の膜透過性の差によるものと推測された。膜透過性を決定する細胞膜脂質組成について検討した結果,SCCでは膜脂質の70%以上がリン脂質であり,残りはcholesterolであった。一方,SACでは80%以上がtriglycerideとcholesterol esterを中心とした中性脂質で残りの20%がリン脂質で占められていた。SACの中性脂質の上昇は細胞膜の流動性の低下を招き,結果的にSCCに比較してCDDPの細胞の細胞内濃度の上昇を示すものと考えられた。しかしSCCの膜脂質は主にphospholipidから成るため膜の流動性はSACに比較して高く,PEPとDXRはSCCに高い親和性を示したものと考えられた。これらの結果より癌細胞膜の脂質組成の相違が抗癌剤の感受性を決定する主要な因子と考えられた。そこでSCCの細胞膜の脂質組成と同組成のCDDP封入リポゾームを作製し,培養細胞に作用させ殺細胞効果について検討した。その結果,CDDP単独あるいはCDDPとリポゾームの混和物に比較してCDDP封入りポゾームはSCCに対して殺細胞効果の増強を示したが,SACに対しては増強作用は示さなかった。腫瘍の組織型の違いにより抗癌剤の抗腫瘍効果に差を生じることはよく知られている。我々は無血清培養条件で5種類のヒト由来癌細胞のシスプラチン(CDDP),ペプロマイシン(PEP)およびドキソルビシン(DXR)に対する感受性の違いについて,その増殖を指標に検討した。無血清培養下においてCDDPは唾液腺由来腺癌細胞(SAC)に対して口腔由来扁平上皮癌細胞(SCC)よりも高い殺細胞作用を示し,SCCはCDDPに対して比較的抵抗性を示すことがわかった。一方,SCCはSACに比較してPEPとDXRに対して高い感受性を示すことが明らかになった。CDDP, PEPおよびDXRは受動輸送により細胞内に取り込まれることから抗癌剤の感受性は細胞内の薬剤濃度に依存していると考えられる。従って抗癌剤の殺細胞効果の違いは癌細胞の膜透過性の差によるものと推測された。膜透過性を決定する細胞膜脂質組成について検討した結果,SCCでは膜脂質の70%以上がリン脂質であり,残りはcholesterolであった。一方,SACでは80%以上がtriglycerideとcholesterol esterを中心とした中性脂質で残りの20%がリン脂質で占められていた。SACの中性脂質の上昇は細胞膜の流動性の低下を招き,結果的にSCCに比較してCDDPの細胞の細胞内濃度の上昇を示すものと考えられた。しかしSCCの膜脂質は主にphospholipidから成るため膜の流動性はSACに比較して高く,PEPとDXRはSCCに高い親和性を示したものと考えられた。これらの結果より癌細胞膜の脂質組成の相違が抗癌剤の感受性を決定する主要な因子と考えられた。そこでSCCの細胞膜の脂質組成と同組成のCDDP封入リポゾームを作製し,培養細胞に作用させ殺細胞効果について検討した。その結果,CDDP単独あるいはCDDPとリポゾームの混和物に比較してCDDP封入りポゾームはSCCに対して殺細胞効果の増強を示したが,SACに対しては増強作用は示さなかった。当科で継代培養している扁平上皮癌細胞と唾液腺由来腺癌細胞を用いてシスプラチンとペプロマイシンに対する感受性を検討した結果,扁平上皮癌細胞はペプロマイシンに対して高い感受性を示し,唾液腺腺癌細胞ではシスプラチンに対して高い感受性を示すことを明らかにした。その原因を究明するため抗癌剤の細胞内濃度について検討し,感受性の相違は抗癌剤の細胞内への取り込みの違いに起因していることがわかった。さらに各培養細胞の細胞膜の脂質組成の分析を行い,扁平上皮癌細胞では細胞膜の脂質の60%以上がリン脂質であるのに対し,唾液腺腺癌細胞では80%が中性脂質であることが判明した。すなわち脂質組成の相違により生じる細胞膜の疎水性の違いが抗癌剤の細胞内への取り込みに影響を与えているものと示唆される結果を得た。そこで扁平上皮癌細胞の細胞膜の脂質組成と同組成の抗癌剤封入リポゾームを作製し,培養細胞に対する殺細胞効果について検討を行った。その結果,扁平上皮癌細胞に対しては抗癌剤封入リポゾーンは抗癌剤単独投与に比較して高い抗腫瘍効果を示したが,唾液腺腺癌細胞に対しては抗癌剤単独と同等の殺細胞効果しか得られないことが判明し,リポゾームの脂質組成と同組成の細胞膜を有する標的細胞のみに高い効果を示すことが示唆され,本法は有用なDrug delivery systemと成り得るものと考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-06807158 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06807158 |
口腔癌の細胞膜脂質構造の特異性を利用したDrug Delivery System | 以上の結果を第53回日本癌学会総会(名古屋),第39回日本口腔外科学会総会(名古屋)において発表した。今後,唾液腺腺癌細胞の細胞膜と同組成の脂質組成で構成されたリポゾームを作製し,培養細胞に対する効果を検討するとともにヌードマウス移植腫瘍を用いてより臨床に即した検索を行う予定である。腫瘍の組織型の違いにより抗癌剤の抗腫瘍効果に差を生じることはよく知られている。われわれは無血清培養条件で5種類のヒト由来癌細胞のシスプラチン(CDDP),ペプロマイシン(PEP)およびドキソルビシン(DXR)に対する感受性の違いについて,その増殖を指標に検討した。無血清培養下においてCDDPは唾液腺由来腺癌細胞(SAC)に対して口腔由来扁平上皮癌細胞(SCC)よりも高い殺細胞作用を示し,SCCはCDDPに対して比較的抵抗性を示すことがわかった。一方,SCCはSACに比較してPEPとDXPに対して高い感受性を示すことが明らかになった。CDDP,PEPおよびDXRは受動輸送により細胞内に取り込まれることから,抗癌剤の感受性は細胞内の薬剤濃度に依存していると考えられる。したがって抗癌剤の殺細胞効果の違いは癌細胞の膜透過性の差によるものと推測された。膜透過性を決定する細胞膜脂質組成について検討した結果,SCCでは膜脂質の70%以上がリン脂質であり,残りはcholesterolであった。一方,SACでは80%以上がtriglycerideとcholesterol esterを中心とした中性脂質で残りの20%がリン脂質で占められていた。SACの中性脂質の上昇は細胞膜の流動性の低下を招き,結果的にSCCに比較してCDDPの細胞内濃度の上昇を示すものと考えられた。しかしSCCの膜脂質は主にphospholipidから成るため膜の流動性はSACに比較して高く,PEPとDXRはSCCに高い親和性を示したものと考えられた。これらの結果より癌細胞膜の脂質組成の相違が抗癌剤の感受性を決定する主要な因子と考えられた。そこでSCCの細胞膜の脂質組成と同組成のCDDP封入リポゾームを作製し,培養細胞に作用させ殺細胞効果について検討した。その結果,CDDP単独あるいはCDDPとリポゾームの混和物に比較してCDDP封入リポゾームはSCCに対して殺細胞効果の増強を示したが,SACに対しては増強作用は示さなかった。 | KAKENHI-PROJECT-06807158 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06807158 |
固体表面に吸着した有機金属錯体の光化学反応における表面の効果 | 固体表面に吸着した分子の光化学反応は気相や液相とは異なった振る舞いをする。本研究では固体表面に吸着した有機金属錯体の光分解反応において表面の物理・化学的性質が反応に及ぼす影響を研究している。今年度は、銀表面上に100K以下の低温で吸着したペンタ鉄カルボニルの光分解収率の波長依存性が、気相ペンタ鉄カルボニルの吸収スペクトルとは異なり、320nm付近に極大を示すことが見出されたので、この波長依存性を金(111)単結晶表面の反応との比較で研究した。その結果、銀表面、320nm付近のペンタ鉄カルボニルの分解は表面近傍でのみ起こることが見出され、銀の表面プラズモン励起(3.88eV【similar or equal】320nm)による分解と推定された。一方、金表面上ても300nmより長波長側で無視できないほどのペンタ鉄カルボニルの分解が起こることが見出されたが、表面プラズモン励起(500nm付近)では分解が起こらないことがわかった。金の場合、長波長側の分解は吸着による吸収スペクトルの赤方遷移と考えられ、これは銀についても起こると考えられる。したがって、銀表面上、320nm付近の分解収率の極大は、表面プラズモン励起のみによるものではなく、吸収の赤方遷移との複合効果によると結論された。また、銀については物理吸着状態と化学吸着状態のペンタ鉄カルボニルがあるが、光分解収率は前者の方が若干大きいことがわかった。これは化学吸着では光励起状態からの脱励起が物理吸着よりも速いことを示固体表面に吸着した分子の光化学反応は気相や液相とは異なった振る舞いをする。本研究では固体表面に吸着した有機金属錯体の光分解反応において表面の物理・化学的性質が反応に及ぼす影響を研究している。今年度は、銀表面上に100K以下の低温で吸着したペンタ鉄カルボニルの光分解収率の波長依存性が、気相ペンタ鉄カルボニルの吸収スペクトルとは異なり、320nm付近に極大を示すことが見出されたので、この波長依存性を金(111)単結晶表面の反応との比較で研究した。その結果、銀表面、320nm付近のペンタ鉄カルボニルの分解は表面近傍でのみ起こることが見出され、銀の表面プラズモン励起(3.88eV【similar or equal】320nm)による分解と推定された。一方、金表面上ても300nmより長波長側で無視できないほどのペンタ鉄カルボニルの分解が起こることが見出されたが、表面プラズモン励起(500nm付近)では分解が起こらないことがわかった。金の場合、長波長側の分解は吸着による吸収スペクトルの赤方遷移と考えられ、これは銀についても起こると考えられる。したがって、銀表面上、320nm付近の分解収率の極大は、表面プラズモン励起のみによるものではなく、吸収の赤方遷移との複合効果によると結論された。また、銀については物理吸着状態と化学吸着状態のペンタ鉄カルボニルがあるが、光分解収率は前者の方が若干大きいことがわかった。これは化学吸着では光励起状態からの脱励起が物理吸着よりも速いことを示 | KAKENHI-PROJECT-06239205 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06239205 |
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