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過食で増加する規格外遺伝子の同定と生活習慣病における役割解明 | 本研究では、過食による肥満・生活習慣病マウスにおける規格外遺伝子(異所性翻訳停止コドンを有するナンセンス型mRNA)の発現量の変化とその意義について検討した。結果、過食性肥満の一部の組織(腎臓や褐色脂肪組織)においてナンセンス型mRNAの発現が増加していることを明らかにした。ナンセンス型mRNAとそれに由来するタンパク質の役割を検討した結果、それらが生活習慣病の病態形成に影響する可能性が示唆された。本研究では、過食による肥満マウスにおける規格外遺伝子(異所性翻訳停止コドンを有するナンセンス型mRNA)の発現量とその制御機構(NMD機構)の役割を検討した。平成23年度の研究で、肥満マウスの腎臓および褐色脂肪組織でTmem183AおよびNktr遺伝子、肝臓でIntersectin遺伝子のナンセンス型mRNA発現量が増加することを明らかにした。平成24年度の解析では、肝臓でTmem183AおよびNktr遺伝子のナンセンス型mRNA発現量は増加しなかった。他のマーカー遺伝子Flot1の発現も同様で、肥満の肝臓ではナンセンス型mRNA発現量は基本的には増加せず、Intersectin遺伝子の結果はNMD機構に依存しない可能性が示唆された。このことから、平成23年度の研究でみられた肥満マウス組織におけるストレス応答因子eIF2alphaのリン酸化亢進は、単独ではナンセンス型mRNA発現量増加に至らない可能性が示唆された。今回、Tmem183AおよびNktr遺伝子のタンパク質を解析した。Nktrのナンセンス型mRNAは、正規タンパク質の7%のアミノ酸鎖長であるが101アミノ酸をコードし、リン酸化やATP/GTP結合モチーフを一部保持するものであった。Tmem183Aのナンセンス型mRNA由来タンパク質は、正規タンパク質の63%のアミノ酸鎖を保持し且つ膜貫通領域を欠く新しい変異タンパク質であった。一方、ヒト組織で発見した規格外遺伝子SREBP1deltaのナンセンス型mRNA発現の増加が構成的活性型タンパク質を産生し脂質合成酵素GPAT1の発現を高めることを見出したが、SREBP1deltaはマウスには発現しないヒト特異的な規格外遺伝子であることがわかった。以上、本研究では過食性肥満の一部の組織でナンセンス型mRNA発現が増加し、生活習慣病の病態形成に寄与する可能性を示唆した。本研究では、過食による肥満・生活習慣病マウスにおける規格外遺伝子(異所性翻訳停止コドンを有するナンセンス型mRNA)の発現量の変化とその意義について検討した。結果、過食性肥満の一部の組織(腎臓や褐色脂肪組織)においてナンセンス型mRNAの発現が増加していることを明らかにした。ナンセンス型mRNAとそれに由来するタンパク質の役割を検討した結果、それらが生活習慣病の病態形成に影響する可能性が示唆された。私たちの細胞では正規の遺伝子(mRNA)発現に加えて、選択的スプライシングにより2,000種以上もの規格外遺伝子(ナンセンスコドンを有するナンセンスmRNA)が発現する。規格外遺伝子からは、生体恒常性を破綻に追い込む異常タンパク質が数多く産生されると考えられているが、そのほとんどは同定されておらず役割と意義も明らかでない。本研究では、過食を基盤とする生活習慣病(ここでは遺伝性肥満)において発現が増加する規格外遺伝子を明らかにするとともに、生活習慣病における役割を解明する。6週齢の対照マウスおよび過食モデルであるob/obマウスを購入し、4週間飼育した。飼育終了時にマウス体重および血糖値を測定した。マウスから各組織(肝臓,白色脂肪組織,褐色脂肪組織,筋肉,腎臓,肺,脾臓および心臓)を採取しそれぞれからRNAを抽出した。規格外遺伝子(ナンセンスmRNA)を産生することがわかっているマーカー遺伝子(Tmem183A, Nktr, Srrm1, Intersectin1)について、ナンセンスmRNA/総mRNAの比(発現割合)を定量的リアルタイムRT-PCR法により解析した。結果、肥満マウスの腎臓および褐色脂肪組織(Tmem183AおよびNktr)あるいは肝臓(Intersectin1)においてマーカー遺伝子のナンセンスmRNA発現割合の増加が認められた。各組織において、ナンセンスmRNAの分解に働くナンセンスコドン依存的mRNA分解機構(NMD機構)の機能を調べるため、NMD因子(UPF1)およびNMD阻害因子(eIF2alpha;のリン酸化)をウエスタンブロット法にて検討した。結果、肥満マウスの各組織においてeIF2alphaのリン酸化亢進が認められた。以上の結果から、過食による肥満において規格外遺伝子(ナンセンスmRNA)の発現が増加する候補組織を明らかにした。平成23年度の主要な本研究実施計画は、(1)規格外遺伝子の発現に対する過食の影響解明(各組織一斉解析)および(2)ナンセンスコドン依存的mRNA分解機構(NMD機構)に対する過食の影響解明であった。(1)については、用いた規格外遺伝子マーカーの種類(Tmem183AおよびNktrの追加)および解析手段(RT-PCR法から定量的リアルタイムRT-PCR法へ移行)に少しの変更はあったが、いずれの場合も研究目的・目標に影響するものではなくむしろ解析の質を向上するものであった。(2)においては、ウエスタンブロット法にてNMD因子あるいはNMD阻害因子の発現解析条件が整い、おおむね当初の研究計画に沿った実験が進行している。過食による肥満(ここでは遺伝性肥満)で規格外遺伝子(ナンセンスmRNA)の発現が増加すると予想された組織(平成23年度の研究)について、発現する規格外遺伝子を同定する。 | KAKENHI-PROJECT-23700906 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23700906 |
過食で増加する規格外遺伝子の同定と生活習慣病における役割解明 | エキソンアレイ法を導入することで、各遺伝子について、隣接する他のエキソンに比べて発現量が特徴的に増加(エキソン挿入)あるいは減少(エキソン欠失)するエキソンを網羅的に同定できる。各エキソンの配列情報から、異所性にナンセンスコドンが出現する規格外遺伝子をスクリーニングできる。その他の方法として、すでに配列が報告されている各種規格外遺伝子(ナンセンスmRNA)について、定量的リアルタイムRT-PCR法にて発現量の変化を明らかにすることもできる。ヒトとマウスの間で規格外遺伝子の種類は大きく異なる可能性が予測できることから、ヒト培養細胞に発現する規格外遺伝子(ナンセンスmRNA)の検討も考慮する。この場合、肥満マウスで見られたNMD機構の阻害をヒト培養細胞において薬理学的手法あるいは分子生物学的手法により再現する。その後、興味深い規格外遺伝子について、その翻訳領域を遺伝子導入用発現プラスミドに組み込み、培養細胞に発現させることで規格外タンパク質の機能を解析する。正規のタンパク質に対して(1)機能を持たないタンパク質、(2)機能を保持するタンパク質、あるいは(3)機能が異なるタンパク質のいずれであるかを明らかにする。タンパク質機能の解析結果をまとめ、生活習慣病における規格外遺伝子の役割を明らかにする。試薬類として、PCR関連試薬,塩基配列解析用試薬,エキソンアレイ用試薬,細胞培養用試薬,発現プラスミド作成用試薬,細胞への遺伝子導入用試薬およびタンパク質機能解析用試薬の購入を予定している。その他、実験用の各種消耗品(細胞培養ディッシュやリアルタイムPCR用ガラスキャピラリーなど)の購入を予定している。エキソンアレイは高価であり、解析のため一部受託サービス料も必要となるため、必要最小限の解析を検討する(対象組織あるいは細胞を2種までに限定する)。国内旅費は主に学会参加の目的で、1回分で算出している。 | KAKENHI-PROJECT-23700906 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23700906 |
反応性末端を有するバイオポリエステルの微生物合成と構造制御による高性能化 | 本研究ではグラム陽性細菌であるBacillus cereus YB-4由来重合酵素(PhaRC)が示す加アルコール分解能に着目し研究を行っている。PhaRCを発現させた遺伝子組換え大腸菌株をアルコール存在下にて培養すると、合成したPHAをPhaRCが加アルコール分解し、カルボキシ末端にアルコールが付与されたPHAが生産される。片末端に官能基を有する一部のアルコールを用いた場合には、分子鎖末端に官能基を有したPHAが得られる。今年度は、分子鎖末端に付与した官能基の反応性について調査するべく、これまでに作成したサンプルの分析を行った。このサンプルはカルボキシ末端にチオール基を有するPHAに、チオール基標識試薬である4-ジメチルアミノフェニルアゾフェニル-4'-マレイミド(DABMI)を反応させたものである。これをクロロホルムを溶離液としてHPLCにて分析した結果、PHAの分子量分布は二峰性を示し、低分子量側にDABMI由来の吸収が確認された。ここから、低分子量側のPHAはDABMIと反応性を有することが分かった。一方、高分子量側で吸収が確認されなかったのは、こちらのPHAは末端チオール基をほとんど有さないことが大きな原因であると考えられる。本研究ではPhaRCによる加アルコール分解により末端官能基を導入しているため、高分子量側のPHAはほとんど分解が起きておらず官能基が導入されていないと考えられる。本年度は6月から翌年1月まで研究を一時中断させて頂いた。DABMIがPHA鎖に結合していたことから、重合酵素による加アルコール分解を用いて付与した末端チオール基が反応性を示すことを明らかにした。一方、高分子量側のPHAには色素の結合は確認できなかった。高分子量側のPHAは殆ど分解されていないため、それに伴う末端基の付与もなされなかったことに由来すると考えられる。末端チオール基を有するPHAを分子量ごとに分画し、低分子量側の末端官能基を有するPHAを用いて反応を実施する。分子量ごとの分画は、クロロホルムとヘキサンの混合液を用いて実施する予定である。得られた末端修飾PHAを他分子と反応させ、構造制御されたPHA作成と評価を行う。グラム陽性細菌Bacillus cereus YB-4由来のポリヒドロキシアルカン酸(PHA)重合酵素(PhaRC)は、合成したPHAのエステル結合を切断しアルコールを付与する加アルコール分解能を有する。本研究ではこの分解能を用いて、分子鎖末端に官能基を有するPHAの微生物合成と、それを用いた構造制御された高分子材料の創製を目指す。本年度はまず、付与可能な末端構造を調査した。PhaRCを発現させたEscherichia coliにPHAを合成させた後、各種アルコールを添加した培地中で培養し、得られたPHAの末端構造をNMRにより解析した。その結果、3-メルカプト-1-プロパノールや2-プロピン-1-オールを添加することで、チオール基やエチニル基といった反応性の高い官能基をPhaRCの触媒能によりカルボキシ末端へ導入できることを確認し、これらの末端構造を有するPHAの微生物合成に成功した。次いで、これら末端修飾PHAの生産を高めるための培養条件について検討した。糖を炭素源としたPHA生産時には、エタノールが同時生産されることが報告されている。PhaRCはエタノールを基質としてもPHAを加アルコール分解することを確認しているため、任意のアルコールによる修飾率を高めるにはエタノール生産が少ないことが望ましい。したがって本研究ではPHA合成に伴うエタノール生産が少ないことが報告されているE. coli XL1-Blueを宿主に選択し、2-プロピン-1-オールを末端修飾の基質として添加したところ、修飾率97.1%で末端にエチニル基を有し、分子量分布が単峰性のPHAを合成することができた。今年度はPhaRCを用いて、反応性の高い官能基を末端に有するPHAを合成することができた。またPHA生産の宿主を選択することにより、高い末端修飾率を有するPHAを約7 g/Lと高効率で生産できた。この値は、アルコール添加による宿主の生育阻害はほとんど無いことを示しており、同時に高修飾率を達成している。このように当初の計画通り研究が進展していることから、研究はおおむね順調に進展したと判断している。昨年度までに、グラム陽性細菌Bacillus cereus YB-4由来のポリヒドロキシアルカン酸(PHA)重合酵素(PhaRC)を用いることで分子鎖末端に官能基を有するPHAの微生物合成が可能であることを立証した。高分子の末端はその自由度が低いため、低分子と比べて反応性に乏しい可能性が考えられる。したがって本年度は、分子鎖末端に付与した官能基の反応性について調査することとした。まず、PhaRCを発現する培養系に3-メルカプト-1-プロパノールを添加し、チオール基を末端に有するPHAを合成した。構造分析は核磁気共鳴分光法により行い、末端チオール基を有するPHAが含まれていることを確認した。またゲル浸透クロマトグラフィーにより、二峰性の分子量分布であることがわかった。本研究で得られる末端修飾PHAの末端官能基はPhaRCが加アルコール分解によりPHAを切断する際に付与されるため、官能基を有するPHAのほとんどは低分子量側に存在すると考えられる。これを確かめるため、チオール基標識試薬である4-ジメチルアミノフェニルアゾフェニル-4'-マレイミド(DABMI)を用いてチオール基末端を有するPHAの標識を試みた。 | KAKENHI-PROJECT-15K16147 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K16147 |
反応性末端を有するバイオポリエステルの微生物合成と構造制御による高性能化 | クロロホルム中、室温にて反応を行い、メタノールにて未反応のDABMIを除去、精製したところ黄色のサンプルを得た。反応に用いたPHAは白色であることから、DABMIがマレイミド基を介しPHAのチオール基に結合したサンプルを得たと考えられる。研究一時中断のため、本年度は9月まで研究を実施した。PHAはクロロホルム以外の溶媒への溶解性が低いため、標識試薬との反応はクロロホルム溶媒下にて行う必要があり、クロロホルムへの溶解性が高い試薬を用いなければならなかった。今回、クロロホルムへの溶解性が高く、かつメタノール中での精製も可能なDABMIの利用を見出すことができ、標識試薬がPHAに結合したと思われるサンプルを取得することができた。平成28年10月1日平成30年3月31日まで産前産後の休暇および育児休業のため研究中断していた。本年度は1年を通して研究中断をさせて頂いた。このため前年度と同区分を選択した。本研究ではグラム陽性細菌であるBacillus cereus YB-4由来重合酵素(PhaRC)が示す加アルコール分解能に着目し研究を行っている。PhaRCを発現させた遺伝子組換え大腸菌株をアルコール存在下にて培養すると、合成したPHAをPhaRCが加アルコール分解し、カルボキシ末端にアルコールが付与されたPHAが生産される。片末端に官能基を有する一部のアルコールを用いた場合には、分子鎖末端に官能基を有したPHAが得られる。今年度は、分子鎖末端に付与した官能基の反応性について調査するべく、これまでに作成したサンプルの分析を行った。このサンプルはカルボキシ末端にチオール基を有するPHAに、チオール基標識試薬である4-ジメチルアミノフェニルアゾフェニル-4'-マレイミド(DABMI)を反応させたものである。これをクロロホルムを溶離液としてHPLCにて分析した結果、PHAの分子量分布は二峰性を示し、低分子量側にDABMI由来の吸収が確認された。ここから、低分子量側のPHAはDABMIと反応性を有することが分かった。一方、高分子量側で吸収が確認されなかったのは、こちらのPHAは末端チオール基をほとんど有さないことが大きな原因であると考えられる。本研究ではPhaRCによる加アルコール分解により末端官能基を導入しているため、高分子量側のPHAはほとんど分解が起きておらず官能基が導入されていないと考えられる。本年度は6月から翌年1月まで研究を一時中断させて頂いた。DABMIがPHA鎖に結合していたことから、重合酵素による加アルコール分解を用いて付与した末端チオール基が反応性を示すことを明らかにした。一方、高分子量側のPHAには色素の結合は確認できなかった。高分子量側のPHAは殆ど分解されていないため、それに伴う末端基の付与もなされなかったことに由来すると考えられる。今後の推進方策としては、付与した末端官能基の反応性について調査することを第一とする。高分子の末端はその自由度が低いため、低分子と比べて反応性に乏しい可能性がある。そこで付与した官能基と反応性を示す標識試薬を用いて、末端官能基の反応性を調査する。 | KAKENHI-PROJECT-15K16147 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K16147 |
伝統パッケージの多様性から考える持続可能性とソーシャルデザイン・プログラムの展開 | 6月に山形県を訪れ、五代続く農家で農業を継ぎながら藁細工の継承活動をおこなう若手を取材した。また、新庄民話の会の語り部で先の継承活動者の師である長老に会い、当時どのように藁が生活に活かされていたか取材した。米を収穫した後の稲藁は、余すところなくさまざまな用途に使用された。かつて日本各地で行われた藁編みは、冬の農閑期に農民の創意工夫によって生み出される愉悦を伴う手仕事であった。地元のデザイナーやプロデューサーにも会い、地域の自然遺産や伝統文化を積極的に活用・再生する動きが若い世代によって行われていることがわかった。灘五郷は江戸時代に酒造りで発展し、樽廻船で江戸に酒を輸送するための菰樽づくりも盛んであったが、現在は樽づくりや菰づくりをおこなう企業は数件のみで、藁菰に関しては全国でも兵庫県のわずか2カ所を残すのみになっている。1月にそのうちの1社を取材し、菰づくりの工程と現状を調査し、職人にインタビューをおこなった。樽を包む藁菰(わらごも)は、印菰(しるしごも)と呼び、商標や酒質など表示している。もともと酒を輸送する際に木樽を保護する目的で、藁を編んだ筵(むしろ)に屋号のしるしを刷り込んだものを巻いたりしていた。それが次第に装飾性を帯びるようになった。現在は、酒造米の山田錦の藁を使用してつくる藁菰はわずかで、多くは食米の藁を使用し、樽も本来の杉樽が使用されるのは限られ、神社やディスプレイ用に使用される菰樽の樽は発泡スチロールやプラスチックが使用されている。後半は、これまでの本研究成果を統合してビジュアル化し、コミュニケーションデザインとして広く発信するために、ホームページの制作に取り組んでいる。日本の伝統包みに潜む、固有の文化や精神性、デザインについて考察し、そこから新たな時代の光明への手がかりを探求し、視覚的に発信するウェブサイトを現在構築中である。日本独自のスタイルを形成した包みの文化を、「祈る」、「贈る」、「保存する」、「運ぶ」、「飾る」の視点で再構築し、心豊かで持続的な暮らしへの提案を、グラフィックデザイナーの能力を生かして言葉や絵を統合しビジュアルライズする。合わせて、伝統パッケージの固有価値、文化多様性の保持の重要性、先人たちの「ものを包む」行為の意味についての考察、現代パッケージと消費文化への言及をおこなう。研究自体は予定通りに進んでおり、現在ウェブサイトの内容の充実をはかっている。1山形の農家の5代目として生まれ、地元の役場でまちづくり事業を手掛けたのち退職し、現在、家業を継ぐかたわら、古きよき地域ならではの〈宝〉を多方面に情報発信する活動に取り組んでいる方を取材した。氏は、農村のくらしから自然発生的にうまれ、現在は消滅している「卵の藁苞」をはじめとする稲藁を使った手仕事のワークショップをとおして、日本人が古来、親しんできた藁の文化を現代の生活にフィットするかたちで提案している。取材では、藁の文化や伝承野菜、伝統行事などについてもヒアリングし、農村のくらしや家族の役割などについてもお聞きした。2奈良県吉野地域の杉を樽用に加工する樽丸師を取材した。木材の産地で樽丸師によって一次加工された樽材は、灘の製樽工場に送られて樽として組み上げられる。さらに菰製造業者によって菰掛けがおこなわれ、最終、灘の酒造メーカーに納入される。取材によってさまざまな問題点が明らかになるとともに、今後の課題も発見できた。また、以前は仕込み用の酒樽が醤油樽や味噌樽にリサイクルされて使用されていたが、現在は仕込み用の大桶製造そのものが消滅の危機にあることが判明した。3和紙の包みの調査において、全国の和紙を取り扱う問屋の経営者から情報を入手するとともに、パッケージにおける和紙の可能性について学んだ。4先行研究である『日本の伝統パッケージ』(美術出版社1965)に掲載されている伝統パッケージの現状について主にネットで調査をおこない6割程度は現存を確認できた。並行して、日本の伝統文化や美意識に関する多角的な文献調査をおこなった。当初の研究計画では調査・取材を1年目に終了している予定であったが、まだ取材ができていない地域があるので、引き続き平成29年度の研究計画と並行して取材を行う。調査・取材の遅れはあるものの、平成29年度に行う予定であった研究を一部前倒しして行ったり、取材を進める中で多様な地域の取り組みについて新たな発見や情報が得られ、研究に必要なネットワークも着実に構築されつつあり、そこから研究の発展の可能性を見出している。調査・分析の結果、「用の包み」としての藁苞や竹籠は消滅したが、注連縄や工芸竹籠の職人が「用の包み」の継承活動をおこなっていることがわかった。工場生産に適した形態をとる酒や味噌の瓶やパックでも、醸造用の桶はあえて昔ながらの杉桶にこだわる企業があり、地方の老舗醸造元から木桶への回帰がある。郷土の特産品・伝統食の包み(富山の鱒寿司、瀬戸内の濱焼桜鯛など)は、パッケージの意匠性自体が特産品を示し土産物や贈答として残り、途絶えた商品や製法を復活させる動きもある。酒の菰かぶりは、ハレの日の用途や神社への奉納として残るが、内樽の多くはプラスチック製である。また菰の生産を行う工場は限られる。茶道の文化から派生した由緒・伝統の包みは、全国に点在するが、圧倒的に京都に多い。 | KAKENHI-PROJECT-16K00730 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K00730 |
伝統パッケージの多様性から考える持続可能性とソーシャルデザイン・プログラムの展開 | 一部の老舗は伝統の継承者であるとともに革新的な新たな取り組みをおこなっている。これらの調査・分析を踏まえ、二方向から研究対象の絞り込みをおこなった。一つは包みの「素材」を切り口にして、山形県最上地方の稲藁と、奈良県吉野地方の杉の樽材を取り上げた。もう一方は、神道や武家の折形にみる文化的背景から発展した和紙を使用した包みに着目した。明治時代の近代的洋紙技術の導入によって、それまで全国各地でおこなわれていた紙漉きが廃業に追い込まれたが、現代に受け継がれる伝統包みには、未だに和紙が使用されている。コミュニケーションデザインの観点から、日本の「包みの文化」起源/卵の藁苞/折形/菰樽/暖簾(ブランド)/風呂敷の6つのテーマを設定し、本学の学生と各方面の専門家との協働でソーシャルデザイン・プログラムを立ち上げた。伝統パッケージの持続性の知恵や精神性から学んだことを、いかに現代のグローバル社会に対して示唆を与えうるような社会的プロジェクトとして実現していくか、また「包みの文化」の保持の方法について参加者との議論をおこなっている。現在、各方面の若手専門家とともに研究を進めている。日本の伝統パッケージや贈答の習慣において、日本人の精神文化に深く根ざした神道が反映されてきた。日本人の信仰における根本思想である「産霊(むすひ)」や、贈答文化の起源である神への捧げものとして「祭祀にまつわる奉納」と「贈る調え」について、現代の生活者の視点から研究を行う専門家に協力を仰ぎ、現代の贈答との関係性や包みの変容について知見を深めている。長年、藁細工を通して郷土の文化と手業を次世代に引き継ぐ活動をおこなってきた、山形県最上地方の民族文化伝承者の長老を師匠とする専門家に協力いただき、藁苞のワークショックをとおして研究を展開している。実践を通して「守り伝える伝承ではなく、新たな伝統を作る」ことを目指す、折形(おりかた)の研究者でデザイナーの協力者とともに、和の作法や時代を経て変容してきた折形について学ぶワークショップをおこなった。また、和紙問屋業を営む専門家の協力を得て、手漉き和紙の産地である阿波、因州、越前の紙漉き職人と家内工業について聞き取りをおこない、和紙を用いた新たな提案を進めている。6月に山形県を訪れ、五代続く農家で農業を継ぎながら藁細工の継承活動をおこなう若手を取材した。また、新庄民話の会の語り部で先の継承活動者の師である長老に会い、当時どのように藁が生活に活かされていたか取材した。米を収穫した後の稲藁は、余すところなくさまざまな用途に使用された。かつて日本各地で行われた藁編みは、冬の農閑期に農民の創意工夫によって生み出される愉悦を伴う手仕事であった。地元のデザイナーやプロデューサーにも会い、地域の自然遺産や伝統文化を積極的に活用・再生する動きが若い世代によって行われていることがわかった。灘五郷は江戸時代に酒造りで発展し、樽廻船で江戸に酒を輸送するための菰樽づくりも盛んであったが、現在は樽づくりや菰づくりをおこなう企業は数件のみで、藁菰に関しては全国でも兵庫県のわずか2カ所を残すのみになっている。1月にそのうちの1社を取材し、菰づくりの工程と現状を調査し、職人にインタビューをおこなった。樽を包む藁菰(わらごも)は、印菰(しるしごも)と呼び、商標や酒質など表示している。もともと酒を輸送する際に木樽を保護する目的で、藁を編んだ筵(むしろ)に屋号のしるしを刷り込んだものを巻いたりしていた。それが次第に装飾性を帯びるようになった。 | KAKENHI-PROJECT-16K00730 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K00730 |
学習につまずきのある子どもへの多層指導モデル(MIM)開発に関する研究 | 本研究では,通常の学級における学習につまずきのある子どもへの多層指導モデル(Multilayer Instruction Model : MIM【ミム】)を開発した。このモデルは,通常の学級において,異なる学力層の子どものニーズに対応した指導・支援を提供していこうとするモデルである。特に,子どもが学習につまずく前に,また,つまずきが深刻化する前の指導・支援の提供をめざした。結果,指導領域として取り上げた特殊音節に留まらず,読み書き全般において,効果がみられた。また,この傾向は,MIMが特に焦点を当てた読み書きにつまずく危険性のある子どもの群だけでなく,読み書きが得意と評価できる群も含め,異なる学力層においても同様にみられた。こうした効果の背景には,MIMの一貫で行われる定期的なプログレスモニタリング(Multilayer Instruction Model-Progress Monitoring : MIM-PM)の開発・実施によって,教員が客観的な視点を取り入れながら,子どもに対してより早く,かつ,深く,正確な状態像の把握を遂げたこと,更には,MIMというフレームワークや方法論の導入により,教員による指導形態の柔軟化や指導内容,教材の多様化が進んだこと,MIM-PMの結果を鑑みながら,体系的に指導を組み立てていったことが要因として挙げられる。本研究では,通常の学級における学習につまずきのある子どもへの多層指導モデル(Multilayer Instruction Model : MIM【ミム】)を開発した。このモデルは,通常の学級において,異なる学力層の子どものニーズに対応した指導・支援を提供していこうとするモデルである。特に,子どもが学習につまずく前に,また,つまずきが深刻化する前の指導・支援の提供をめざした。結果,指導領域として取り上げた特殊音節に留まらず,読み書き全般において,効果がみられた。また,この傾向は,MIMが特に焦点を当てた読み書きにつまずく危険性のある子どもの群だけでなく,読み書きが得意と評価できる群も含め,異なる学力層においても同様にみられた。こうした効果の背景には,MIMの一貫で行われる定期的なプログレスモニタリング(Multilayer Instruction Model-Progress Monitoring : MIM-PM)の開発・実施によって,教員が客観的な視点を取り入れながら,子どもに対してより早く,かつ,深く,正確な状態像の把握を遂げたこと,更には,MIMというフレームワークや方法論の導入により,教員による指導形態の柔軟化や指導内容,教材の多様化が進んだこと,MIM-PMの結果を鑑みながら,体系的に指導を組み立てていったことが要因として挙げられる。小学校1,2年生を対象に,学習面でのっまずきが重篤化する前の段階で,子どもの教育的ニーズを把握し,速やかな支援へつなげるためのアセスメントのプロトタイプを開発した。このアセスメントは,ターゲットを読み,特に特殊音節の読みに絞り,通常の学級内で,一斉に,2分間で実施できる簡便なものである。また,一度のみのアセスメントではなく,継続して行うものとなっている。こうすることで,子どもの伸びが把握できるとともに,より妥当性,信頼性のある子どもの状態像を反映し得るものとなっている。今年度は,1年生206名(7クラス),2年生140名(4クラス)が1年間,継続的に参加し,アセスメントデータを取った。あわせて,特殊音節の読みに関する指導方法の開発も行った。まずは,全体の授業で,MIMの方法論を用いた授業が展開された。また,授業のみでは習得が完全に達成されなかった児童に対しては,第2段階目の指導として小集団での指導を授業時,または朝学習,給食準備時に実施した。更に,それでも尚,習得が難しい場合には,第3段階目の指導として,放課後に小集団,または個別の指導を行った。特に,第3段階目の指導を児童5人に対して実施した結果,4回(1回の指導は40分)の指導で,全ての児童が特殊音節の読みのテストで,指導前と比較して,統計的に有意に高い得点を挙げた。さらに,開発したアセスメントが一般化できるかを検証するため,年度の終わりには,統制群を募り,1年生約700名,2年生650名の参加を得た。1年間,研究に参加した児童と,統制群とで比較を行うことで,指導の効果,アセスメント自体の効果についても,今後検証する予定である。学習が進んでいくにつれ,つまずきが顕在化する子どもを,つまずく前の段階で把握するためのアセスメントMultilayer Instruction Model-Progress Monitoring(以下MIM-PMとする)の開発を行った。これは,全ての学習領域に影響し得る早期の読み能力,特に特殊音節の正確で素速い読みに焦点を当て,計2分で実施するテストである。また,一度でなく,継続的に実施することで,真の能力を発揮する機会が多く得られるとともに,子どもの伸びについても把握できる。1年間を通じて参加したのは初年度は,小学1年7クラス計208名,2年生4クラス計144名,比較のための統制群が1年生31クラス790名,2年生30クラス759名であった。MIM-PMと標準化されている読書力検査の得点との相関を調べた結果,rs≧.50の値がみられた(ps<.01)。また,参加群の1学期中盤のMIM-PMの結果と3学期の結果との間にはrs≧.60の値がみられ(ps<.01),1学期中盤という早期の時点で,学年末の読み能力の状態を予測できる可能性が示された。参加した担任に行った質問紙調査では,82%の教員がMIM-PMの結果を指導に活かすことができるものだったと回答した。 | KAKENHI-PROJECT-18683008 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18683008 |
学習につまずきのある子どもへの多層指導モデル(MIM)開発に関する研究 | さらに,通常の学級における学習につまずきのある子どもへの多層指導モデル(MIM)を用いて小学1年生7クラス計208名に行った特殊音節の指導の効果が,学習につまずく危険性のある子どもをはじめ,その他の異なる学力層の子どもにおいてもみられるかを統制群小学1年生31クラス計790名との比較により行った。年度末に,参加群,統制群に対して,読み書きに関する諸検査を実施した結果,参加群が高く,有意差がみられた。あわせて,参加群の担任教員が行った授業の変容を複数観察者により評価・分析した結果,MIM導入後では,指導形態や内容,教材の多様化がみられ,クラス内で約90%の子どもが取り組んでいると評定された割合がMIMによる指導前と比較して,2倍近くにまで上昇していた。通常の学級において,特殊音節に関する多層指導モデル,Multilayer Instruction Model(MIM:海津,田沼,平木,伊藤,Vaughn,2008)を実施した。多層指導モデル(MIM)は,まずは通常の学級において全ての子どもに対し,効果的な指導が実施される1stステージ,1stステージ指導のみでは伸びが十分でない子どもに対する通常の学級内での補足的な指導である2ndステージ,それでも依然,伸びが乏しい子どもに対し,より柔軟な形態で集中的な指導として実施される3rdステージで構成される。ここでは,3rdステージ指導に進んだ9名の子ども(平均年齢7.2歳,標準偏差0.24)への指導効果を評価した。3rdステージ指導は,3学期1月以降に週1度,給食の準備時間や放課後に一回20分から40分,小集団(5名以下)にてMIM特殊音節指導パッケージを用いて行った。このパッケージでは,(a)視覚化や動作化を通じた特殊音節の音節構造の理解,(b)日頃よく用いる語を逐字でなく,視覚的なかたまりとして捉えることによる読みの速度の向上,(c)日常語彙の拡大と使用を焦点においた。指導前後の効果測定には,特殊音節の読みのアセスメント,MIM-Progress Monitoring(MIM-PM;海津・平木・田沼・伊藤・Vaushn,2008)を用いた。結果,指導後に得点の上昇が有意にみられ,さらに読みに対する子どもの捉え方も肯定的なものへ変化した。 | KAKENHI-PROJECT-18683008 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18683008 |
先進的リアルタイムイメージング法によるクオラムセンシング阻害剤の作用機序の解析 | 多剤耐性菌に対する新規治療法の開発は喫緊の課題となっている。そこで、新規化合物である緑膿菌クオラムセンシングのオートインデューサーアナログの効果について、先進的実験方法を用いて検討を行い、その作用機序の解析を行った。その結果、このアナログは抗菌薬と併用することにより抗菌薬の殺菌作用を増強する効果があることを見出した。また、この作用機序は、クオラムセンシング抑制効果ではなく、ストレス応答に重要なrpoS遺伝子の発現を抑制し、抗菌薬抵抗性を低下させているためであることが明らかとなった。本研究で用いたアナログは、新たな感染症治療法の開発につながるリード化合物になることが期待される。多剤耐性菌に対する新規治療薬の開発は喫緊の課題となっており、細菌クオラムセンシング(QS:細胞密度依存的)機構を阻害するQS阻害剤が注目されている。本研究課題では、先進的リアルタイムイメージング法による実験モデル系と分子生物学的手法を駆使して、QS阻害剤の作用機序解明を目指す。1)リアルタイムイメージングのための発光性緑膿菌の作製と新規マウス薬効評価系の作製:IVIS Luminaを用いるリアルタイムイメージング法を活用するために、緑膿菌PAO1株由来の各種発光性緑膿菌を作製した。新たに作製した発光性緑膿菌をマウス大腿部感染モデルにおいて評価し、発光性の改良を重ねた。一方で、QS阻害剤と各種抗菌薬との併用効果の検討に有用であると考えられる尿路バイオフィルム感染症モデルの作製に着手した。2)QS阻害剤による抗菌薬感受性化メカニズムの検討:in vitroで殺菌試験を行い、QS阻害剤の抗菌薬抵抗性に及ぼす影響について検討を行った。その結果、PAO1株に対してQS阻害剤を添加することで、抗菌薬添加後の生存率が抗菌薬のみ添加した場合に比べて大きく低下したことから、QS阻害剤が抗菌薬抵抗性に影響を与えていることが示唆された。3)プロモーター活性測定用緑膿菌の作製:QS阻害剤添加による緑膿菌遺伝子発現の影響を検討するため、lasB、rhlA遺伝子のプロモーターにGFPを連結したプロモーター活性測定用の菌株を作製した。多剤耐性菌に対する新規治療薬の開発は喫緊の課題となっており、細菌クオラムセンシング(QS:細胞密度依存的)機構を阻害するQS阻害剤が注目されている。本研究課題では、先進的リアルタイムイメージング法による実験モデル系と分子生物学的手法を駆使して、QS阻害剤の作用機序解明を目指す。1QS阻害剤(QSI-1)のQSシステムに対する効果の検討:QSI-1添加による緑膿菌遺伝子発現の影響を検討するため、lasB、rhlA遺伝子発現の経時的な解析を行った。また、lasI、rhlI遺伝子欠損株を作製し、殺菌試験を行った。その結果、QSI-1はQSシステムとは異なるメカニズムで、抗菌薬感受性を増強している可能性が強く示唆された。2QS阻害剤(QSI-1)による抗菌薬抵抗性への影響:これまでに、in vivoリアルタイムイメージング法により、QSI-1がカルバペネム抗菌薬であるビアペネムだけでなく、キノロン系、アミノグリコシド系抗菌薬に対しても併用効果があることを見出している。in vitroの殺菌試験においても、QSI-1はこれらの抗菌薬との併用効果があることを明らかにした。3QS阻害剤(QSI-1)による抗菌薬耐性菌への効果の検討:in vitroでの殺菌試験において、標準株(PAO1株)由来および臨床分離株由来の抗菌薬耐性菌に対して、抗菌薬の濃度を増加することにより、QSI-1との併用効果が発揮され、QSI-1が耐性菌に対しても有効であることを明らかとした。4in vivo実験:新規マウス薬効評価系である発光性緑膿菌による尿路感染症モデルを再現性のある実験モデルとして確立した。マウス大腿部感染モデルでは、外膜透過孔蛋白質(OprD)が欠損したビアペネム中等度耐性菌に対しても、ビアペネムとQSI-1との併用効果が確認された。多剤耐性菌に対する新規治療薬の開発は喫緊の課題となっており、細菌クオラムセンシング(QS:細胞密度依存的)機構を阻害するQS阻害剤が注目されている。本研究課題では、先進的リアルタイムイメージング法による実験モデル系と分子生物学的手法を駆使して、QS阻害剤の作用機序解明を目指す。1)薬剤耐性菌に対するQS阻害剤(QSI-1)の影響について:これまでに、PAO1株において、QSI-1が抗菌薬(ビアペネム)の殺菌効果を増強させる効果があることを、マウスを用いた感染モデルで、リアルタイムイメージング法により明らかにしてきた。一方、in vitroの殺菌試験において、その効果を確認することができた。さらに、作用機序の異なるカルバペネム系、キノロン系、アミノグリコシド系抗菌薬が、同様の効果を発揮することを明らかにした。また、薬剤耐性菌やバイオフィルム形成菌に対しても殺菌効果を増強することが確認された。2) QS阻害剤(QSI-1)による作用メカニズムの検討:これまでに、QSI-1はQS阻害効果がそれ程強くなく、殺菌効果の増強はQS阻害以外のメカニズムによるためであることが示唆された。そこで、QSI-1の緑膿菌に対する影響を検討するため、マイクロアレイを用いてQSI-1添加による遺伝子発現の変動を検討したところ、QSI-1が2成分制御系や転写調節因子など多くの遺伝子発現に影響を与えていることが確認された。1) QS阻害剤(QSI-1)の薬剤耐性菌への効果:in vitro殺菌試験において、薬剤耐性菌への効果を検討するため、PAO1株の外膜タンパクOprD | KAKENHI-PROJECT-25461512 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25461512 |
先進的リアルタイムイメージング法によるクオラムセンシング阻害剤の作用機序の解析 | 欠損株を作製した。ビアペネムに耐性を示すこの株に対して、QSI-1を添加することで、殺菌効果が発揮された。さらに臨床分離株を用いた検討において、排出タンパク過剰産生によるカルバペネム系およびキノロン系抗菌薬の2剤耐性菌に対して、QSI-1を添加することで、ビアペネム、レボフロキサシンそれぞれの薬剤添加後の生存率が抗菌薬のみ添加した場合に比べて大きく低下したことから、QSI-1が抗菌薬抵抗性に影響を与えていることが明らかとなった。2) QS阻害剤(QSI-1)によるバイオフィルム形成菌への効果の検討:ペグバイオフィルムシステムを用いてバイオフィルムを形成させた後、QSI-1を作用させ,その後抗菌薬で処理してバイオフィルムを剥離し生菌数を測定したところ、QSI-1を作用させていない群に比較して、併用では生菌数が有意に低下していることを確認した。3) QS阻害剤(QSI-1)による遺伝子発現への影響の検討:マイクロアレイを用いて、QSI-1添加による遺伝子発現の変動を検討したところ、2成分制御系や様々な転写因子の発現が上昇、または低下しており、QSI-1が多くの遺伝子発現に影響を与えていることが確認された。多剤耐性菌に対する新規治療薬の開発は喫緊の課題となっており、細菌クオラムセンシング(QS:細胞密度依存的)機構を阻害するQS阻害剤が注目されている。本研究課題では、先進的リアルタイムイメージング法による実験モデル系と分子生物学的手法を駆使して、QS阻害剤の作用機序解明を目指し研究を行った。QS阻害剤として見出された新規化合物は、異なったメカニズムにより耐性を示す緑膿菌臨床分離株3株に対し、カルバペネム系抗菌薬のビアペネム、キノロン系のレボフロキサシン、アミノグリコシド系のトブラマイシンを併用することで、それぞれの抗菌薬による殺菌効果の増強に寄与していることが確認された。さらにこの作用メカニズムを明らかにするためにRT-PCRにより遺伝子発現の変動を解析したところ、この化合物はQSのオートインデューサーのアナログではあるが、QS阻害効果はほとんど無いことが確認された。しかし、RNAポリメラーゼσ因子の1つであるrpoS遺伝子を有意に抑制していることが明らかになった。ウェスタンブロットによる解析でもRpoSタンパク質を明らかに抑制していた。そこで、rpoS遺伝子の欠損株やプラスミドによる過剰発現株を作製し、殺菌試験を行ったところ、rpoS遺伝子は抗菌薬抵抗性に関与していることが確認された。本研究により、緑膿菌QSオートインデューサーの新規アナログは、rpoS遺伝子を抑制することにより、抗菌薬の殺菌効果を高めていることが判明し、新たな感染症治療薬のリード化合物になる可能性を秘めていることが明らかとなった。多剤耐性菌に対する新規治療法の開発は喫緊の課題となっている。そこで、新規化合物である緑膿菌クオラムセンシングのオートインデューサーアナログの効果について、先進的実験方法を用いて検討を行い、その作用機序の解析を行った。その結果、このアナログは抗菌薬と併用することにより抗菌薬の殺菌作用を増強する効果があることを見出した。 | KAKENHI-PROJECT-25461512 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25461512 |
知識集約型ビジネスのグローバル経営の理論化 | 知識集約型ビジネス(経営コンサルティング・ファーム)は、ローカルな競争優位性を基盤とした集合体に制限されるものではなく、多様な形態のグローバル経営(戦略)を遂行できることが理論的・実証的に示された。その鍵となるのは、プロフェッショナル・サービスを提供しつつも、「知識」を「収益化」するというビジネスモデルを構築し、かつそのビジネスモデルがグローバルな競争優位性と一体化することを志向することにある。知識集約型ビジネス(経営コンサルティング・ファーム)は、ローカルな競争優位性を基盤とした集合体に制限されるものではなく、多様な形態のグローバル経営(戦略)を遂行できることが理論的・実証的に示された。その鍵となるのは、プロフェッショナル・サービスを提供しつつも、「知識」を「収益化」するというビジネスモデルを構築し、かつそのビジネスモデルがグローバルな競争優位性と一体化することを志向することにある。本研究は、平成20年度から平成22年度までの3カ年にわたる研究期間を想定している。平成20年度は、その初年度に該当し、研究計画に則り、次年度以降の実証的考察に必要となる分析フレームワークの構築を試みた。実施した研究内容は、以下の通りである。第1に、先行研究のレビューである。レビューの対象となる文献は、グローバル経営に関する文献と知識集約型ビジネスに関する文献の大きく2つの領域に分けられる。前者については、本研究の相対的な位置づけを明らかにするという狙いもあり、対象を広くとり、サービス企業の国際化、グローバル化に関する先行研究に関して、ジャーナル論文を中心にレビューを実施した。後者については、文献の絶対的な分量という点で、ジャーナル論文だけでは十分ではないと判断したため、書籍、論文集(いずれも洋文献)も対象に含めてレビューを行った。第2に、これまでの研究成果の整理である。筆者は、本研究に関連した研究をこれまでも継続して行ってきているが、その研究成果について再検討を行った。知識集約型ビジネス、とりわけ、本研究で直接的な研究対象としている経営コンサルティング・ビジネスは、エンロン事件が発生した2000年前後から急速な業界再編が進んでいる。加えて、ICTの進歩により既に上梓している研究内容の陳腐化も少なからず発生している。そのため、現在の最新の業界状況を踏まえながら、これまでの研究成果の位置づけを確認することを行った。以上の考察の結果、知識集約型ビジネスのグローバル経営については、大枠の戦略の類型化という点においては、サービス企業、特にプロフェッショナル・サービス・ファームの分析フレームワークが援用できるものの、実証的考察という点においては、ローカル市場(日本市場)におけるコンサルティング方法論の活用の実態といった戦略の内容分析が不可欠であることが示された。本研究は、平成20年度から平成22年度までの3ヵ年にわたる研究期間を想定している。平成21年度は、その中間年度に該当し、研究計画に則り、初年度の研究成果において構築した知識集約型ビジネスにおけるグローバルな競争優位性に関する分析フレームワーク(仮説モデル)を活用し、本研究の目的である知識集約型ビジネスのグローバル経営の理論化を進展させるべく実証的考察を試みた。実施した研究内容は、以下の通りである。第1に、分析フレームワーク(仮説モデル)の内的妥当性の検証である。これまで行ってきた量的調査(2003年度のアンケート調査)・質的調査(20数社に及ぶインタビュー調査)の成果に対して、実際に、分析フレームワーク(仮説モデル)を用いた分析を実施した。その結果、十分な内的妥当性を持つと判断できる分析結果を得ることができた。第2に、主として質的調査にもとづいた単一事例研究、比較事例研究の実施である。上述の分析結果から、分析フレームワーク(仮説モデル)を用いた分析が有効であると想定し、加えて外的妥当性を担保できるような幾つかの事例研究に着手した。最初に、分析フレームワーク(仮説モデル)から理論的に導出できる複数の戦略類型を提示し、次に、それらの戦略類型と適合性の高い事例を抽出し、各戦略類型の成功要因、ビジネスモデル等に関する考察、インプリケーションの導出を行った。以上の考察の結果、知識集約型ビジネスのグローバル経営とは、先行研究によって指摘されていたマルチドメスティックな経営モデルによる地域的な集合体に留まるものではなく、グローバルに適用可能な知識を活用することで、多様な形態でのグローバルな競争優位性、グローバル戦略を構築することが可能であることが実証的に示された。本研究は、平成20年度から平成22年度までの3ヵ年にわたる研究期間を想定している。平成22年度は、その最終年度にあたり、主として研究成果全体のとりまとめと今後新たに取り組むべき課題の特定を試みた。実施した研究内容は、以下の通りである。第1に、昨年度、博士論文として上梓した研究成果の精査を行った。博士論文では、本研究の具体的な対象である外資系の経営コンサルティング・ファームのグローバル戦略に関し、理論的及び実証的考察を展開した。その中で、幾つかの課題が明らかとなっていた。課題の一つである知識集約型ビジネスのグローバル化の理論的骨子となる経営知識のグローバル化の現象については、加筆修正を行い、著書として刊行した。同様に、本研究における分析フレームワークの考察で構成概念の規定に関して不十分な点があったため、その精緻化に努めた。第2に、共同研究及びアクションリサーチによる新たな課題の特定である。本研究において、主要なケーススタディとして、ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社をとりあげているが、このケースを更に深掘りするため、笠原民子氏(四国大学)と共同研究を行った(学会報告及びディスカッションペーパーの執筆)。 | KAKENHI-PROJECT-20730253 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20730253 |
知識集約型ビジネスのグローバル経営の理論化 | 加えて、知識集約型ビジネスのビジネスモデル、ビジネスモデルのイノベーションに関して、より実践的な状況での検討が必要であると判断したため、探索的ではあるがアクションリサーチに着手した。対象は、筆者の勤務地に近い、神戸市内のメディア関係のコンサルティング・ファームである。同社の協力を得て、ビジネスモデルの再構築に関する会議等ヘオブザーバーとして参加することができた。その成果については、平成23年度において公表する予定である。以上の考察により、本研究の目的である知識集約型ビジネスのグローバル経営の理論化に関して、学術・実践の両両側面において、大きな成果をあげることができた。 | KAKENHI-PROJECT-20730253 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20730253 |
結晶スポンジ法によるゲノムマイニングのワークフロー刷新 | 生体から化合物を探索し構造決定することは、化学ばかりでなく創薬の観点からも意義深い。ゲノムマイニングは化合物を合成するタンパク質をゲノム情報から探索できるため、新規化合物を供給する強力な手法になることが期待されている。しかしながら、確度高く化合物の構造を求めるため大スケールでの培養実験が必要とされることが実験者の負担となっており、化合物の探索速度を制限する原因となっている。結晶スポンジ法は近年開発された分子構造解析手法であり、わずかな試料から化合物の三次元構造を与える。本研究では、ゲノムマイニングのワークフローに結晶スポンジ法を導入し、実験系の省スケール化・高速化を実現する。生体から化合物を探索し構造決定することは、化学ばかりでなく創薬の観点からも意義深い。ゲノムマイニングは化合物を合成するタンパク質をゲノム情報から探索できるため、新規化合物を供給する強力な手法になることが期待されている。しかしながら、確度高く化合物の構造を求めるため大スケールでの培養実験が必要とされることが実験者の負担となっており、化合物の探索速度を制限する原因となっている。結晶スポンジ法は近年開発された分子構造解析手法であり、わずかな試料から化合物の三次元構造を与える。本研究では、ゲノムマイニングのワークフローに結晶スポンジ法を導入し、実験系の省スケール化・高速化を実現する。 | KAKENHI-PROJECT-19J22015 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19J22015 |
次世代In vivoオートファジー測定系開発とその応用 | オートファジーの様々な疾患への強い関与が示唆されており、その効率的な測定系の開発が待ち望まれている。本研究ではHalotag-LC3を用いた効率的なオートファジーの測定を可能にする新しい測定系を樹立し、in vivoへの応用の礎とすることを目標とする。Halotag融合LC3タンパク質を発現する細胞を作成し、ビオチンリガンドを用いたLC3のpulse-chase実験系と、複数の蛍光リガンドを同時に用いたオートファゴソーム標識によるオートファジー活性の測定系を樹立した。本研究より、Halotag-LC3の実験系が目的によってカスタマイズ可能な自由度が高いオートファジー測定系である事が示された。オートファジーは、饑餓時に細胞が生存に必要な最小限のエネルギーとタンパク質合成に必要なアミノ酸を確保するために自己成分を非選択的に分解する経路として知られる。それに加え、近年の研究によりオートファジーは、特定のタンパク質を選択性をもって分解する事が明らかとなりつつあり、異常ミトコンドリアや細胞内に侵入した細菌などを分解する選択的オートファジーが様々な疾患を予防する生体防御機構として注目されている。それゆえ、オートファジーの活性をin vivoでモニターする手法の開発が待望されている。細胞レベルでは様々な手法が開発されている。所属研究室で開発されたGFP-RFPのタンデムタグをオートファゴソームのマーカーであるLC3に付加したtfLC3システム(tandem-fluorescent-tagged LC3)はオートファゴソームの数だけでなく、その内容物の分解過程までをモニターできるため、しばしば見られるオートファジーの阻害によるオートファゴソームの蓄積による解釈の誤りを回避できる。私は、これをin vivoに応用するために、そのままではRFPシグナルが蓄積するという問題を回避するため、Haloタグというリガンド結合性のタグをLC3に付加したタンパク質を利用する。本年度はHalo-LC3コンストラクトの作成およびモニター系としての細胞レベルの評価、また既存のシステムとの比較検討を行った。また、Halo-GFP-LC3というタンデムタグの評価を行った。これより、効率的なin vivoオートファジー測定系を構築するための後ろ盾となる知見が得られた。Halo-LC3およびHalo-GFP-LC3の実験系および評価系の構築が進んでおり、現在既存のシステムとの比較を行っている。近年、オートファジーの様々な疾患を予防する生体防御機構としての機能が大きく注目されている。それゆえ、オートファジーの活性をin vivoでモニターする手法の開発が待望されている。GFP-RFPのタンデムタグをオートファゴソームのマーカーであるLC3に付加したtfLC3システム(tandem-fluorescent-tagged LC3)はオートファゴソームの数だけでなく、その内容物の分解過程までをモニターできるため、しばしば見られるオートファジーの阻害によるオートファゴソームの蓄積による解釈の誤りを回避できる。本研究ではこれをin vivoに応用するために、Haloタグというリガンド結合性のタグをLC3に付加したタンパク質を利用する。前年度までに研究代表者はHalo-LC3コンストラクトの作成およびモニター系としての細胞レベルの評価、また既存のシステムとの比較検討を行った。また、Halo-GFP-LC3というタンデムタグの評価を行い、効率的なin vivoオートファジー測定系を構築するための後ろ盾となる知見が得られた。本年度はさらにin vivoへの応用を鑑み、複数の異なるリガンドのコンビネーションおよび至適濃度の設定によるコストの削減を試み、おおよそ1/10の負担でも効率的にオートファジーをモニターする方法を開発した。現在、さらに広く用いられるモデルの作成のため、アフィニティーの高いHaloタグを用いた実験系を構築しており、マウス、線虫、イモリ等の複数のモデル生物による検証を行う予定である。オートファジーの様々な疾患への強い関与が示唆されており、その効率的な測定系の開発が待ち望まれている。本研究ではHalotag-LC3を用いた効率的なオートファジーの測定を可能にする新しい測定系を樹立し、in vivoへの応用の礎とすることを目標とする。Halotag融合LC3タンパク質を発現する細胞を作成し、ビオチンリガンドを用いたLC3のpulse-chase実験系と、複数の蛍光リガンドを同時に用いたオートファゴソーム標識によるオートファジー活性の測定系を樹立した。本研究より、Halotag-LC3の実験系が目的によってカスタマイズ可能な自由度が高いオートファジー測定系である事が示された。立ち上げた測定系を用い、培養細胞を用いたオートファジーの誘導もしくは阻害剤の検証を進める。Haloタグはリガンドを変える事で自在に測定系を改変できる。しかし、リガンドが比較的高価であるため、効率的にオートファジーを測定できる系の構築を模索する。さらに、in vivo測定系の構築と検証を進める。細胞生物学、遺伝学 | KAKENHI-PROJECT-16K14595 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K14595 |
東南アジア諸語版「ラーマーヤナ」の比較研究 | 平成9年から11年までの3年間に亙る「東南アジア諸語版ラ-マ-ヤナの研究」は各年度毎に次のような形で研究を推進した。(1)研究期間の初年度には第14回国際ラ-マ-ヤナ学会(開催地・米国フ-ストン市・5月)に参加して、ビルマ語版ラ-マ物語とラオス語版、雲南省のタイ語版ラ-マ物語との比較研究の結果を発表した。同年9月にはジャワのプランバナン及びパナタラン両遺跡のラ-マ-ヤナ浮き彫りに関する調査結果をジャカルタ大学の考古学科及びジャワ語学科で発表し、インドネシア研究者との間で討議を行なった。(2)第2年度目初頭には南インドの国際タミ-ル研究所に客員教授として3か月間招聘されたため専らインド国内のラ-マ-ヤナ一次資料の蒐集とその内容分析とに従事した。同年8月には第15回国際ラ-マ-ヤナ学会(開催地・トリニダド・トバゴ)に出席して北部タイ版ラ-マ物語とラオス語版ラ-マ物語との共通性を明らかにした。(3)第3年度目の10月には第1回国際ラ-マ-ヤナ・マハ-バ-ラタ学会(開催地・マレ-シア大学)に出席してスンダ語版ラ-マ物語の内容について、同年12月には第16回国際ラ-マ-ヤナ学会(開催地・ニュ-デリ-)に参加してランナ-語版ラ-マ物語について、それぞれその構成及び特徴に関して発表を行なった。平成9年から11年までの3年間に亙る「東南アジア諸語版ラ-マ-ヤナの研究」は各年度毎に次のような形で研究を推進した。(1)研究期間の初年度には第14回国際ラ-マ-ヤナ学会(開催地・米国フ-ストン市・5月)に参加して、ビルマ語版ラ-マ物語とラオス語版、雲南省のタイ語版ラ-マ物語との比較研究の結果を発表した。同年9月にはジャワのプランバナン及びパナタラン両遺跡のラ-マ-ヤナ浮き彫りに関する調査結果をジャカルタ大学の考古学科及びジャワ語学科で発表し、インドネシア研究者との間で討議を行なった。(2)第2年度目初頭には南インドの国際タミ-ル研究所に客員教授として3か月間招聘されたため専らインド国内のラ-マ-ヤナ一次資料の蒐集とその内容分析とに従事した。同年8月には第15回国際ラ-マ-ヤナ学会(開催地・トリニダド・トバゴ)に出席して北部タイ版ラ-マ物語とラオス語版ラ-マ物語との共通性を明らかにした。(3)第3年度目の10月には第1回国際ラ-マ-ヤナ・マハ-バ-ラタ学会(開催地・マレ-シア大学)に出席してスンダ語版ラ-マ物語の内容について、同年12月には第16回国際ラ-マ-ヤナ学会(開催地・ニュ-デリ-)に参加してランナ-語版ラ-マ物語について、それぞれその構成及び特徴に関して発表を行なった。1.1996年11月に慶應大学で開催された「アジア・ルネサンス・フォーラム」で発表した「ビルマ語版ラ-マ-ヤナの特徴」の原稿を,金子量重編『ラ-マ-ヤナの伝播』(春秋社,1998)に掲載したいとの要請を受けたので,新たに手を加えて増補した内容を,「ビルマのラ-マ-ヤナ」と改題の上寄稿,掲載(pp.166-199)された。2.1997年5月23日から25日間で3日間に亘って米国ヒューストン市で開催された第14回国際ラ-マ-ヤナ学会に出席し,ビルマのラ-マ-ヤナとラオス,雲南のラ-マ-ヤナ3版の比較研究を発表した。3.1997年9月23日から29日間で1週間インドネシアへ出張,中部ジャワのプランバナン及び東ジャワのパナタラン両遺跡のラ-マ-ヤナ・レリーフに関する研究成果をジャカルタのインドネシア大学文学部考古学科およびジャワ語学科において発表し,インドネシア人研究者との間で討議を行なった。考古学科ではテイテイ・スルティー・ナステイテイ(Titi Surti Nastiti)助教授,ジャワ語学科ではワフヤテイ・プラデイプタ(Wahyati Pradipta)教授が,それぞれ座長役を努めてくれた。ジャワの遺跡に残るラ-マ-ヤナ・レリーフとジャワ語のラ-マ-ヤナ文献とは基本的に共通しているが,レリーフには文献には見られない幾つかの要素が見られ,ジャワ文化の多重性が窺われる。研究期間の第2年目に当る平成10年度には南インドの国際タミール研究所に各員教授として招聘(1998.1月-3月)された事もあり、インド諸語版ラーマーヤナの内容精査に専念した。その結果、次のような事実が判明した。1、インド国内にはヴァールミーキ版の流れを汲むラーマーヤナの系列がある。例えば、タミール語版、ベンガル語版、アッサム語版、オリヤ語版、テルグ語版等である。2、同じサンスクリット語で編纂されたとは言うもののその内容がヴァールミーキ版よりは簡縮化された形のものとして15世紀に成立したアドヤートマ・ラーマーヤナがある。現代インド諸語版の中には、このアドヤートマ版の流れを汲むものもある。ヒンデー語版、マラヤーラム語版等がそうである。この系列に属するラーマーヤナの特徴は、ヴィシュヌ神への信仰、帰依がヴァールミーキ版以上に強烈に表現されている事である。 | KAKENHI-PROJECT-09610526 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09610526 |
東南アジア諸語版「ラーマーヤナ」の比較研究 | 3、ヒンドウー教を背景に成立した上記1、2とは別に、ジャイナ教を背景とするラーマーヤナの一群がある。プラークリット語によるパウマ・チャリヤやヴァースデーヴァ・ヒンデイ、及びカンナダ語版等がそうである。これらの版の特徴は、主要登場人物の全てが熱心なジャイナ教徒だとされている点である。4、インド諸語版ラーマーヤナの中にはその独特のエピソードから見て東南アジアのラーマーヤナに直接影響を与えたと考えられる版がある。テルグ語版からマラヤ版ヒカヤット・スリ・ラーマヘ、タミール語版からタイ語版ラーマキエンへ、ベンガル語版からビルマ語版へと言った複数の交錯した関係が窺われる。研究期間の最終年度に当る平成11年には、次の3項目を中心に研究を行なった。(1)わが国では従来その内容が明らかでなかったインドネシア語版のラーマ物語(スナルデイ編「ラーマーヤナ」)、影絵の脚本として国内で広く使用されているマレーシアのラーマ物語「チェリタ・マハラジャ・ワナ」、ポルポト政権以前のカンボジアで使われていた口承のラーマ物語「レアムケー」等、ラーマーヤナ研究では未開拓であった分野を中心にその内容および特徴を分析した。(2)マレーシア大学で10月に開催された第l回国際ラーマーヤナ・マハーバーラタ学会及びニューデリーで12月に開かれた第16回国際ラ-マーヤナ学会に出席して研究発表を行なった。前者ではスンダ語版ラーマ物語、後者では北部タイのランナ一語版ラーマ物語について、それぞれその特徴を指摘し周辺諸版との関係を明らかにした。(3)初年度および第2年度に行なった東南アジア諸国のラーマ物語(ジャワ語版、スンダ語版、タイ語版、ラオス語版、ビルマ語版、モン語版、フィリピン版、雲南省のタイ語版等)及びインド諸語版ラーマーヤナ(梵語のヴァールミーキ版、タミール語のカンパン版、テルグ語のランガナ一タ版、ベンガル語のクリッテイヴァサ版及びジャイナ教のラーマーヤナ等)の研究で解明した内容を整理して最終報告書の原稿執筆を行なった。 | KAKENHI-PROJECT-09610526 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09610526 |
オーロラキナーゼ制御システムの破綻による染色体不安定性獲得機構の解明 | HP1は染色体パッセンジャー複合体(CPC; Chromosomal Passenger Complex)に結合しCPCの活性を増強する。がん細胞ではこのHP1のCPCに結合する量が低下していることが分かったが、HP1によるCPC活性の減少がどのように「染色体不安定性」を発生させ、いかにがんの悪性化に寄与しうるのかは未だに不明である。本研究では、異数体細胞の導入とncRNAの関与を見いだして、染色体不安定性とCPC機能との関係、がん細胞でHP1の結合量が減少する原因を明らかにする。続いてがん幹細胞系列でCPCシステムの破綻とがんの悪性化の関連性を検討し染色体不安定性の病理機構を明らかにしたい。HP1は染色体パッセンジャー複合体(CPC; Chromosomal Passenger Complex)に結合しCPCの活性を増強する。がん細胞ではこのHP1のCPCに結合する量が低下していることが分かったが、HP1によるCPC活性の減少がどのように「染色体不安定性」を発生させ、いかにがんの悪性化に寄与しうるのかは未だに不明である。本研究では、異数体細胞の導入とncRNAの関与を見いだして、染色体不安定性とCPC機能との関係、がん細胞でHP1の結合量が減少する原因を明らかにする。続いてがん幹細胞系列でCPCシステムの破綻とがんの悪性化の関連性を検討し染色体不安定性の病理機構を明らかにしたい。 | KAKENHI-PROJECT-19K16727 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K16727 |
超離散可積分系の等位集合の大域構造 | 周期的可積分セルオートマトンの等位集合に関する分配関数のフェルミ型公式と呼ばれる、組合せ論の分野における新しい数学公式を発見し証明した。また、古典可積分系として有名な戸田格子の特殊な離散化であるトロピカル周期戸田格子に対して、二色の帯によるセルオートマトン的な記述を考案し、それを用いてこの力学系の相空間構造の決定に重要な可換なフェイズフロー(一般化された時間発展)を構成することに成功した。周期的可積分セルオートマトンの等位集合に関する分配関数のフェルミ型公式と呼ばれる、組合せ論の分野における新しい数学公式を発見し証明した。また、古典可積分系として有名な戸田格子の特殊な離散化であるトロピカル周期戸田格子に対して、二色の帯によるセルオートマトン的な記述を考案し、それを用いてこの力学系の相空間構造の決定に重要な可換なフェイズフロー(一般化された時間発展)を構成することに成功した。1.周期的可積分セルオートマトン(CA)の分配関数に対するフェルミ型の公式を得たことが主な研究実績である。以下にその内容を説明する。(1)本研究はアフィン・リー代数に関連した周期的可積分CAを研究対象とする。それはソリトンと呼ばれる孤立波が相互作用しながら伝播する1次元CAであり、古典可積分系と量子可積分系を橋渡しする系の実現という点で重要な意義を持つ。(2)可積分CAは古典力学における完全積分可能系と同様に時間発展のもとで変化しない物理量の組である保存量をもつ。今の場合それは各振幅を持つソリトンの個数というデータである。与えられた保存量をもつような系の状態全体からなる集合を等位集合とよぶ。その構造を調べることが本研究の課題であった。(3)一方、統計力学の2次元可解格子模型では、角転送行列の方法により分配関数および1点関数が1次元状態和として計算され、ある場合にはそれはq二項係数をもちいた具体的公式(フェルミ型公式)として求められる。周期的可積分CAの状態に対しても、角転送行列に相当するエネルギーを用いた一種の分配関数を定義することができる。A型ランク1の場合に、等位集合上において定義されるその分配関数がフェルミ型公式で書き表せるという予想が得られていた。(4)計算機実験による予想のチェックを経て、様々な試行錯誤の末に予想を証明することができた。結果は論文にまとめ、専門誌において発表するとともに学会講演などでも解説した。この結果は「X=M予想」と呼ばれる良く知られた予想のある種の精密化を与えているという点で重要である。2.一方、ランク一般の場合の等位集合の構造の解明については計画通りの進展は見られなかった。原因は主として第1項の予想の証明を行うのに時間を大幅に費やしてしまったことにある。今年度はこちらの課題に取り組む予定で準備を進めている。本研究の目的はアフィン・リー代数に関連した周期的可積分セルオートマトンを構成し、その等位集合の構造を解明することである。平成23年度の研究成果は以下のとおりである。1.可積分セルオートマトン(箱玉系)の過去10年間の研究結果を詳しく調べ直し、記号や用語の不統一などを修正し、現在の視点から見てその内容がより明確になるような定式化を行った。その結果をレビュー論文として出版した。2.可積分系の文脈における超離散化の概念の精密化を得た。すなわち「トロピカル化」と「(狭義の)超離散化」の区別を明確化した。前者は必ずしも従属変数の離散化を意味せず、有理写像を区分的線形写像に変えるものである。この精密化は超離散周期戸田格子と呼ばれている力学系(トロピカル周期戸田格子)と周期箱玉系との区別を明確化し、前者については可換なフェイズフローの構成がいまだに成されていないという事実を明らかにしたという点で重要であると考えられる。3.前項の帰結として、超離散可積分系をトロピカル可積分系の特殊化とみなす視点が本研究の目的遂行のために有望であるという考察に到達した。4.トロピカル周期戸田格子の可換なフェイズフローを、周期箱玉系の場合の構成法および量子群の結晶基底の概念の一般化により構成可能であるという予想を得た。ハミルトン系におけるアーノルド・リウビルの定理の証明から推測されるように、フェイズフローは等位集合の構造の解明につながる重要な鍵であると考えられる。本研究の目的はアフィン・リー代数に関連した周期的可積分セルオートマトンを構成し、その等位集合の構造を解明することである。平成24年度の研究成果は以下のとおりである。1.トロピカル周期戸田格子(超離散周期戸田格子)の可換なフェイズフローを、周期箱玉系の場合の構成法の一般化および量子群の結晶基底に対する纏絡写像の一般化により構成することに成功した。この力学系については、ラックス形式に基づく離散周期戸田方程式の保存量のトロピカル化を使って定義される「スペクトル曲線」の滑らかさ(ソリトンの振幅に重複がないこと)の仮定のもとに、ヤコビ多様体のトロピカル化として等位集合を記述するという先行研究があるが、可換なフェイズフローの構成法については知られていなかった。本研究ではまずこの力学系を2色の帯により「セルのないセルオートマトン」として実現した。量子群の結晶基底を幾何学化した幾何クリスタルの理論において双有理的な纏絡写像が構成されており、その超離散化としてクリスタルの組合せ論的な纏絡写像が得られることが知られていた。 | KAKENHI-PROJECT-22540241 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22540241 |
超離散可積分系の等位集合の大域構造 | 本研究では超離散化(従属変数を含む全変数離散化)はせずにトロピカル化(方程式の区分線形化)のみを行なって得られる纏絡写像の満たすヤン・バクスター関係式を用いるというアイデアにより、上述の2色の帯による記述と合わせて可換なフェイズフローの構成を行なった。結果は論文として出版し、国外および国内学会において発表した。この結果を基にして、スペクトル曲線の滑らかさを仮定しない場合の等位集合の構造に関して研究が進展中である。2.等位集合の構造を反映する概念として、周期的可積分セルオートマトンのエルゴード性を考察し、素数の性質と関連したいくつかの興味深い観察を得た。学術上の新たな知見となりうるか現在検証中である。ランクが高い場合のアフィン・リー代数に関連した周期的可積分セルオートマトンはその構造が複雑であり、さまざまな解析を試みたもののその等位集合に関する予想の証明を完成させることはできなかった。使える手法がないか、いくつかの研究会に参加して他の研究者との研究情報の交換を行ったが、あまり良いアイデアが見つかっていない。24年度が最終年度であるため、記入しない。研究実績に述べたように、超離散化の概念が精密化された。これにより、問題は超離散可積分系を特殊ケースとして含む「トロピカル可積分系」の等位集合の大域構造を解明することに帰着されたように思われる。少なくともA型と呼ばれる場合については、アフィン・リー代数に関連した周期的可積分セルオートマトンを(ランクについて一般化された)トロピカル周期戸田格子の特殊ケースとして取り扱うという方針が有望であると考えられる。そのため、当初の研究計画は変更し、まずは(ランク1の)トロピカル周期戸田格子について、その等位集合の大域構造解明につながると考えられる可換なフェイズフローの構成法を完成させることをめざして研究を推進したい。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22540241 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22540241 |
擬似乱数のための代数と統計の応用 | 擬似乱数生成法に対する統計的評価法として、NIST SP800-22およびTestU01は最も有名な検定パッケージである。本研究では、奥富秀俊氏・中村勝洋氏の提唱した三重検定を用いて、統計的検定が適切な精度でp値を出力できているか、実験的に評価する手法の開発とその妥当性を検証し、SP800-22およびTestU01に適用し具体的な改善方法を提唱した。とくにSP800-22は15種類すべての検定について、個々の検定に対する最新の改善手法が有効であることをシミュレーションによって示すことができた。TestU01に関しては、この研究により初めて本格的な信頼性調査を実施することができ、これまで未発見であった8つの検定法の誤りを発見し、そのうち4つの検定法については数学的・実用的観点から修正を施すことができた。これらの研究成果について広島大学の松本眞教授と共著論文を作成したところ、査読付き論文誌Mathematics and Computers in Simulationに採録された。また、本研究を基として、64ビット擬似乱数生成法に対応するTestU01の後継パッケージの開発を、提唱者のカナダモントリオール大学の研究チームと開始することとなった。さらに、2017年度に実施した、NIST SP800-22の二重検定における第2段階のサンプルサイズ上限の決定に関する研究の続きとして、これまで研究を行なった3種類の検定に加えて、新たに6種類の検定法についても上限を与えることができた。特に総当たり法では上限計算が不可能なものに対しては、モンテカルロ法による近似計算により、比較的小さいサンプルサイズで実用上十分な精度の上限を与えることができた。NISTSP800-22についてはすべての検定について、その検定の妥当性を検証することができた。特にRandom Excursions検定およびRandom Excursions Variant検定については三重検定による解析の結果、NISTが推奨するサイクル数の最小値500では検定結果のp値に偏りが見られることと、その最小値を2000程度まで大きくすれば十分な精度でp値の計算が可能であることを実験的に示すことができた。また離散フーリエ変換検定も、様々な指標で提唱された改善案を統一した尺度によよって評価し、最新の研究成果が最もよいパラメータを与えていることが判明した。TestU01についても100種類中70種類の検定法について評価が完了したことで、64ビット対応にむけての契機となる研究が実施できた。当初計画していた三重検定プログラムのコード公開については遅れているものの、二重検定のサンプルサイズに関して、これまで本研究課題で対象とした3種類の検定に加えて新たに6種類の検定について適切な上限を与えることに成功した。またモンテカルロ法を用いたp値の分布計算によってサンプルサイズの上限を近似計算しても、実用上十分な値を与えることができた。2019年度は、TestU01の64ビット版の開発、およびNISTの二重検定のサンプルサイズ上限に関する研究を行う。前者に関してはモントリオール大学を3週間程度訪問して開発を行うことと、現在未検証の離散型確率分布に従う統計量を用いた検定の三重検定による実験的評価を行う。後者に関しては7月にシドニー工科大学で開催される国際研究集会MCM 2019の擬似乱数分科会において口頭発表を行う。さらに、現時点で上限計算を実施していない6つの検定についても、数値実験を試みる予定である。また、時間的余裕があれば、物理・化学シミュレーションで用いられるソフトウェアに実装されている擬似乱数生成法について、高速化・高精度化・並列化という観点から高性能化を実現するためのプログラム開発を行う。擬似乱数生成法を評価する際、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)の統計的検定パッケージが広く用いられている。このパッケージに含まれるいくつかの検定法に対し、二重検定時に第1段階の近似誤差が第2段階の検定に与える影響をカイ二乗食い違い量を用いて評価し、第2段階のサンプルサイズの上界を与えた。特にPareschi, Rovatti, Settiの連検定に対する効率的なp値の近似計算方法を利用して、頻度検定と階数検定と合わせ3種類の検定に対しての上界を得ることができた。これにより、これまでのサンプルサイズでは棄却できなかった線形合同法による擬似乱数生成法を頻度検定でも棄却できるなど、検出力を向上させることが可能となった。この結果に関して広島大学の松本眞教授と共著論文を作成し、査読付き報告集Proceedings of MCQMC2016での掲載が決定した。さらに、検定パッケージに含まれる個々の検定について、奥富秀俊氏・中村勝洋氏の提唱した三重検定を利用し、検定統計量の計算誤差や近似精度が適切であるかを実験的に判断する手法の確立に取り組んだ。これは第2段階の検定として計算誤差を含まないものを選択し、サンプルサイズを向上させつつ全体の近似誤差の累積を二重検定程度に抑えることで、p値の経験分布と理論的な分布の乖離をより精密に測る方法である。本年度は、NISTの最新版パッケージに含まれる13種の検定の再検証に加えて、TestU01に含まれる検定群Crushに対する健全性評価を行い、モンテカルロ法・準モンテカルロ法に関する国際研究集会MCM2017にて口頭発表を行った。NISTの二重検定に対して、平成28年度までの成果に加えて連検定に関しても適切なサンプルサイズの上界を与えることが可能となった。また、実験的にはよく知られている、第2段階のサンプルサイズが極端に大きいとどんな擬似乱数でも棄却してしまう現象について、カイ二乗食い違い量からの説明を与えることができた。 | KAKENHI-PROJECT-17K14234 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K14234 |
擬似乱数のための代数と統計の応用 | さらに、これまでは本格的な調査が行われていなかったTestU01に含まれる個々の検定の信頼性について、いくつかの理論上・実装上の誤りを具体的に指摘し、適切な改善を提案することができた。さらに離散フーリエ変換検定についても様々なパラメータが異なる視点から提唱されている状況に対して、統一的に比較する実験結果を提示した。擬似乱数生成法に対する統計的評価法として、NIST SP800-22およびTestU01は最も有名な検定パッケージである。本研究では、奥富秀俊氏・中村勝洋氏の提唱した三重検定を用いて、統計的検定が適切な精度でp値を出力できているか、実験的に評価する手法の開発とその妥当性を検証し、SP800-22およびTestU01に適用し具体的な改善方法を提唱した。とくにSP800-22は15種類すべての検定について、個々の検定に対する最新の改善手法が有効であることをシミュレーションによって示すことができた。TestU01に関しては、この研究により初めて本格的な信頼性調査を実施することができ、これまで未発見であった8つの検定法の誤りを発見し、そのうち4つの検定法については数学的・実用的観点から修正を施すことができた。これらの研究成果について広島大学の松本眞教授と共著論文を作成したところ、査読付き論文誌Mathematics and Computers in Simulationに採録された。また、本研究を基として、64ビット擬似乱数生成法に対応するTestU01の後継パッケージの開発を、提唱者のカナダモントリオール大学の研究チームと開始することとなった。さらに、2017年度に実施した、NIST SP800-22の二重検定における第2段階のサンプルサイズ上限の決定に関する研究の続きとして、これまで研究を行なった3種類の検定に加えて、新たに6種類の検定法についても上限を与えることができた。特に総当たり法では上限計算が不可能なものに対しては、モンテカルロ法による近似計算により、比較的小さいサンプルサイズで実用上十分な精度の上限を与えることができた。NISTSP800-22についてはすべての検定について、その検定の妥当性を検証することができた。特にRandom Excursions検定およびRandom Excursions Variant検定については三重検定による解析の結果、NISTが推奨するサイクル数の最小値500では検定結果のp値に偏りが見られることと、その最小値を2000程度まで大きくすれば十分な精度でp値の計算が可能であることを実験的に示すことができた。また離散フーリエ変換検定も、様々な指標で提唱された改善案を統一した尺度によよって評価し、最新の研究成果が最もよいパラメータを与えていることが判明した。TestU01についても100種類中70種類の検定法について評価が完了したことで、64ビット対応にむけての契機となる研究が実施できた。当初計画していた三重検定プログラムのコード公開については遅れているものの、二重検定のサンプルサイズに関して、これまで本研究課題で対象とした3種類の検定に加えて新たに6種類の検定について適切な上限を与えることに成功した。 | KAKENHI-PROJECT-17K14234 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K14234 |
体幹部組織群の配置転換現象におけるファイブロネクチンダイナミクスの役割 | 組織群の形態形成機構を細胞挙動とその足場(細胞外基質)制御の観点から理解する為、体節ー内胚葉ー脊索間隙に特徴的な蓄積パターンを示すフィブロネクチン(FN)繊維に注目し、その蓄積パターンが細胞挙動に果たす特異的役割、蓄積パターンができる仕組み、足場情報を細胞内へ伝える分子機構をタイムラプス観察解析により明らかにした。発生初期の平面的な組織配置パターンから立体的なからだの構造ができる際、各組織の相対的な位置関係が大きく変化する。この現象がどのような細胞生物学的なメカニズムにより制御されているのかは、謎である。このしくみを理解する手がかりとして、本研究では体節ー内胚葉ー脊索の間隙に分布する、長いファイブロネクチン繊維のパターニングに注目した。前年度までの実験で、モデル動物として用いるウズラ胚の体節・内胚葉の各細胞挙動のタイムラプス観察を行う実験系を確立し、また、ウズラのフィブロネクチン1遺伝子(全長)の単離を行い、ドミナントネガティブ型フィブロネクチンとshRNAコンストラクトを作製した。さらに、EGFP融合フィブロネクチンおよびAlexa488融合フィブロネクチンを作製し、これらをそれぞれウズラ胚内に発現または注入して、体節ー内胚葉ー脊索の間隙におけるフィブロネクチンの分布パターン変化のタイムラプス観察に成功した。平成25年度は、前年度に作製した上記ツールを用いて、ウズラ胚の体節ー内胚葉ー脊索間隙のフィブロネクチンがどの組織に由来し、どのようにして分布パターンを形成するのかを検証した。その結果、(1)フィブロネクチンは内胚葉と体節から供給されること。(2)フィブロネクチンの正常な分布には、体節上皮細胞が基底膜側に伸びる糸状仮足が関わっていること。(3)糸状仮足でのインテグリン受容体、タリンを介したアクチン細胞骨格との相互作用がフィブロネクチンパターンを制御すること。(4)糸状仮足とフィブロネクチン間の相互作用は、体節上皮細胞の伸長に重要な役割を担っていること。以上が明らかになった。組織群の形態形成機構を細胞挙動とその足場(細胞外基質)制御の観点から理解する為、体節ー内胚葉ー脊索間隙に特徴的な蓄積パターンを示すフィブロネクチン(FN)繊維に注目し、その蓄積パターンが細胞挙動に果たす特異的役割、蓄積パターンができる仕組み、足場情報を細胞内へ伝える分子機構をタイムラプス観察解析により明らかにした。1.体節・内胚葉の各細胞挙動の可視化と定量背側大動脈が側方から脊索近傍へたどり着くまでに、隣接する体節と内胚葉の細胞がどう動くのかをタイムラプス観察により詳細にするため、ウズラ胚の体節および内胚葉細胞の核をH2B-mCherryで標識し、タイムラプス観察を行った。画像解析技術をもとに、細胞群の移動速度・方向の計測、空間面積の自動抽出などの方法論を確立した。2.ウズラファイブロネクチン1遺伝子の単離とshRNA法によるノックダウン解析ファイブロネクチン遺伝子全長(7.5kb)をウズラcDNAライブラリーから単離した。機能的なフィブロネクチンであることを培養細胞を用い、確認した。また、この配列をもとにshRNA法によるノックダウンコンストラクションとドミナントネガティブ型分子を作製した。これを用い、フィブロネクチンの発現を体節近傍で局所的に阻害する実験に成功した。3.ファイブロネクチン繊維束のアッセンブル・ディスアッセンブル過程の観察ファイブロネクチンがアッセンブルする際に、外から加えたファイブロネクチンが取り込まれる性質を利用し、ウズラ胚のファイブロネクチン繊維束を以下の方法で可視化した。(1)細胞培養用のファイブロネクチンを蛍光標識。(2)作製した蛍光標識ファイブロネクチンを、ウズラ胚へマイクロインジェクションし、共焦点レーザー顕微鏡を用いてタイムラプス観察した。これにより、ファイブロネクチン繊維束が、背側大動脈トランスポジションの時期に体節ー背側大動脈ー内胚葉ー脊索間にアッセンブルされ、やがて消失する現象がどのようにして起こるのかをタイムラプス観察に成功した。また、同時進行で、GFP融合型ファイブロネクチンも作製した。これも予想通りに機能することが、検証済みである。7.5kbほどの長さのウズラファイブロネクチン1遺伝子を、スムーズに単離することができた為、その後の機能解析の為の遺伝子改変(shRNAやドミナントネガティブ型、GFP融合型等の作製)が順調に進み、それらが予想どおりに機能することも確かめることができた。実験材料作りをゼロから始めたにも関わらず、すでに実験・解析の段階に進んでおり、順調である。1.ファイブロネクチン繊維束の欠損が、体節・背側大動脈・内胚葉細胞の挙動へ及ぼす影響ファイブロネクチン繊維束が、細胞群の動きに対してにどのような役割を果たしているのかを明らかにするため、ファイブロネクチンの繊維化を阻害する70kDaファイブロネクチンを局所的に発現させ、各細胞の挙動の変化をタイムラプス観察解析する。2.背側大動脈へのVEGF伝播とファイブロネクチン繊維束の分布パターンとの関わり脊索や内胚葉の中軸部で発現するVEGFは、背側大動脈のトランスポジションに必要であることがすでに知られている。VEGFアイソフォームのVEGF164は、細胞外基質への親和性が高い為、中軸組織から分泌されるVEGFがファイブロネクチンに依存して拡散し、受容体VEGFR2を発現する背側大動脈に作用すると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-24770215 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24770215 |
体幹部組織群の配置転換現象におけるファイブロネクチンダイナミクスの役割 | ファイブロネクチン繊維束がVEGFシグナルの伝播に直接的に関わるかどうかを明らかにするため、(1)背側大動脈が移動を開始する時期に発現するVEGFアイソフォームを同定する。(2)VEGF164の発現を抑制するshRNAコンストラクトを脊索へエレクトロポレーションし、背側大動脈・体節・内胚葉細胞の挙動に及ぼす影響をタイムラプス観察解析する。(3)胞外基質群に依存せず自由拡散するVEGF120は、背側大動脈の細胞挙動にどのような変化を及ぼすのかを検証する。VEGF120発現ベクターと、VEGF164発現を特異的に阻害するshRNAベクターとを脊索へ共導入した胚をタイムラプス観察し、細胞挙動への影響を正常胚と定量的に比較する。(4)以上の結果を、ファイブロネクチン繊維形成を阻害した場合の細胞の挙動と比較し、VEGFシグナル伝播におけるファイブロネクチン繊維の役割を考察する。初年度と同様に、上記実験計画の遂行に必要な試薬類およびガラス・プラスチック器具の購入を行う。 | KAKENHI-PROJECT-24770215 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24770215 |
結婚・出産タイミングの社会経済的要因とキャッチアップ効果に関する国際比較分析 | 今年度も研究目的ならびに研究実施計画に記載の通り、出生や結婚に関する社会経済的要因ならびにイベントヒストリー分析によるタイミングの研究については、論文「1970年代以降わが国のコーホート別出生関数の測定および就業上の地位にみる要因分析」としてまとめ、わが国における研究としても数少ない「出生関数」の推定まで試みました。さらに前半期はとくにコーホート・コンポーネント法による将来人口推計を独自に実施し、国内唯一の公的な国立社会保障・人口問題研究所推計との比較研究から、出生率がキャッチアップ(反転上昇)するメカニズムも明らかとなり、それに伴う政策的に設定した出生率によっては総人口の静止状態へ移行するプロセスについてもシミュレーションしました。この成果については大淵・兼清編『少子化の社会経済学』第1章「21世紀の少子化と人口動向」として公表しました。後半期にはこのような人口動向に対応したマクロ経済指標との関係に関する解析ならびに政策的な含意を導くための研究に費やしました。とくに計量的な世代重複モデル分析のひとつである世代会計分析の手法によって年金などの社会保障の政策シミュレーション分析をするとともに、流動化する労働市場への影響についても分析しました。さらにフランスやスウェーデンなどの出生率を回復させた先進諸国における出生・結婚動向を踏まえて、とくに育児支援政策を中心とした家族政策を参考にしながら、わが国の人口政策のあり方について研究しました。またこれは本研究計画には直接関連しないことですが、今回の研究を通じて、イベントヒストリー分析を用いてコーホートの動向とマクロ消費や投資との関係を計量的に明らかにするための理論的な着想を得たので、今後はこの分野の研究に今回の研究実績を活かしたいと考えています。今年度は、研究目的ならびに研究実施計画に記載の通り、少子化の進行している先進諸国の結婚や出生に関するデータ収集とコーディング作業を進めています。本格的な分析はこのような準備作業を経て次年度に予定していますが、コーディング作業の参考のためにパイロットケースとして、我が国の個票データを用いて初婚行動と第1子出生のタイミングの社会経済要因に関するプロビット分析とパラメトリック・モデルのサバイバル分析を試みました。その結果、異なる調査データをプーリングする場合、説明変数のもつ概念のわずかな違いによって統計的な有意性の確保が困難になるという問題点、コーホート分析の必要性、それぞれの経済変数間に想定される理論仮説の再検討の必要性などが明らかとなりました。同様に研究実施計画に記載の通り、イベントヒストリー分析に関する解析手法についても研究しました。特に、時間依存性の観点から変動効果と固定効果を同時にノンパラメトリックでモデル化することには統計学的に問題のあることが判明しました。しかし本研究の目的は結婚や出生に関するタイミングとその経済的要因の説明力を推定にありますので、そのような問題を解決する統計手法の開発に検討を重ねたところ、従来のサバイバル分析にフーリエ解析を組み合わせて、ベースラインハザードの区分期間ごとに共変量パラメータを推定してそれらを接続すれば、動学的な逐次決定計画の推定にも有効ではないかという知見を得るとともに、さらに別の解析的な接近として、追跡的パネルデータを利用できるなら、ベルマン最適性原理による動的計画法とマルコフ確率過程理論を組み合わせることで最適停止問題の解析手法を結婚や出生の意思決定への応用も可能ではないかという着想を得ました。これらについてはまだ着想段階ですので、次年度以降、統計的な解析手法についてさらに検討を重ねる予定です。今年度も、研究目的ならびに研究実施計画に記載の通り、先進諸国を中心とした結婚や出生に関するデータ収集ならびに解析を進めました。解析方法としては、初婚行動と第1子出生のタイミングの社会経済要因に関するプロビット分析とパラメトリック・モデルのサバイバル分析を試みました。その結果、やはり労働時間、就業状態、学歴、職種、所得といった雇用条件が結婚や出産の要因として統計的に有意であることが確認されるとともに、親との同居(パラサイト・シングル)、親の就業状態(社会威信度)といった家族関係、あるいは居住地域の都市化率といった文化的背景もその因子であることが明らかにされました。また、今年度特に重点を置いた要因としては、年金などの社会保障制度です。若年非典型労働者による第2号被保険者への未加入の増加や、いわゆる第3号被保険者問題などが個人のライフサイクルを通じて結婚結婚や出生行動を規制しているという知見が得られました。さらに、純粋に人口統計学の範囲内で、つまり経済社会的外生因子を組み込まないシミュレーション分析を試み、出生のキャッチアップ効果について計量分析したところ、将来的にその規模は小さく、出生率が反転上昇して少子化を解消するようなことはあまり期待できないという結果も得られました。しかし換言すれば、要因分析によって特的できた因子を政策的にコントロールすることができれば、誘導的に出生率を少しでも改善することも不可能ではないでしょう。なお、昨年度、ベルマン最適性原理による動的計画法とマルコフ確率過程理論を組み合わせた手法は理論的あるいは質的にはモデル化することはできたのですが、実証段階へ応用するにあたり、データ資料の限界があり、これの応用については今年度はまだ計量分析に至っておりません。今年度も研究目的ならびに研究実施計画に記載の通り、出生や結婚に関する社会経済的要因ならびにイベントヒストリー分析によるタイミングの研究については、論文「1970年代以降わが国のコーホート別出生関数の測定および就業上の地位にみる要因分析」としてまとめ、わが国における研究としても数少ない「出生関数」の推定まで試みました。 | KAKENHI-PROJECT-14730030 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14730030 |
結婚・出産タイミングの社会経済的要因とキャッチアップ効果に関する国際比較分析 | さらに前半期はとくにコーホート・コンポーネント法による将来人口推計を独自に実施し、国内唯一の公的な国立社会保障・人口問題研究所推計との比較研究から、出生率がキャッチアップ(反転上昇)するメカニズムも明らかとなり、それに伴う政策的に設定した出生率によっては総人口の静止状態へ移行するプロセスについてもシミュレーションしました。この成果については大淵・兼清編『少子化の社会経済学』第1章「21世紀の少子化と人口動向」として公表しました。後半期にはこのような人口動向に対応したマクロ経済指標との関係に関する解析ならびに政策的な含意を導くための研究に費やしました。とくに計量的な世代重複モデル分析のひとつである世代会計分析の手法によって年金などの社会保障の政策シミュレーション分析をするとともに、流動化する労働市場への影響についても分析しました。さらにフランスやスウェーデンなどの出生率を回復させた先進諸国における出生・結婚動向を踏まえて、とくに育児支援政策を中心とした家族政策を参考にしながら、わが国の人口政策のあり方について研究しました。またこれは本研究計画には直接関連しないことですが、今回の研究を通じて、イベントヒストリー分析を用いてコーホートの動向とマクロ消費や投資との関係を計量的に明らかにするための理論的な着想を得たので、今後はこの分野の研究に今回の研究実績を活かしたいと考えています。 | KAKENHI-PROJECT-14730030 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14730030 |
質量分析計を基盤技術とした高感度スフィンゴ脂質分析法の開発と組織分布解析への応用 | 本研究の目的は、LC-MS/MS及びIMSを用い、微量組織切片中スフィンゴ脂質の含有量、細胞間濃度勾配及び分布局在を分子マッピングにて解析し、脂質メディエーターとしての作用を明らかにすることである。初めに、LC-MS/MS測定及びIMS測定に用いる組織の前処理において、ヒートスタビライザーによる組織萎縮無しにスフィンゴ脂質を安定して測定する条件を最適化し、赤脾髄及び白脾髄に含有されるスフィンゴ脂質分布の違いを明らかにした。さらに、LC-MS/MSを用いる微量がん組織におけるスフィンゴ脂質解析から、がん部におけるスフィンゴ脂質定量値とSPHKあるいはSPL発現量の相関を明らかにした。本研究の目的は、LC-MS/MS及びIMSを分析基盤技術として用いる一細胞スフィンゴ脂質評価系を開発し、微量組織切片中スフィンゴ脂質の含有量、細胞間濃度勾配及び分布局在を明らかにすることである。また、スフィンゴ脂質代謝関連分子の発現量との分布相関を分子マッピングにて解析し、脂質メディエーターとしての作用を明らかにすることである。平成27年度は、LC-MS/MSによる精密定量分析法の超高感度化を実施し、レーザーマイクロダイセクション(LMD)により切り出された組織切片に含有されるスフィンゴ脂質をヒートスタビライザーの条件を最適化することにより高い再現性で測定可能にすることに加え、IMSによるスフィンゴ脂質の相関分布解析法を構築することが目的であった。現在までに、LMDで切り出された微量組織切片中に含まれるスフィンゴ脂質を高い再現性で安定して定量することに成功した。また、IMSを用いるスフィンゴ脂質測定では、MALDIに用いるマトリックスの選択と塗布方法の検討により、一部のスフィンゴ脂質を除き、脾臓のイメージング画像を取得することに成功した。さらに、脾臓の連続切片による、H&E染色、LMD切片のLC-MS/MS測定及びIMS測定を実施したところ、赤脾髄及び白脾髄に含有されるスフィンゴ脂質分布の違いを明らかにすることに成功した。平成28年度は、より高感度且つ高精度なスフィンゴ脂質のイメージング画像を得ると共に、組織切片におけるSK、S1PR、Spns及びApoMの発現量を測定し、スフィンゴ脂質含有量の濃度勾配、分布局在との相関解析を実施する。また、これら分子の阻害剤投与若しくは発現遺伝子欠損マウスを用い、スフィンゴ脂質代謝系の変化を解析し、脂質メディエーター機能を明らかにする予定である。初めに、組織切片に含まれるスフィンゴ脂質を、高い再現性にて安定して測定することを目的とし、ヒートスタビライザーを用いた。ヒートスタビライザーは、通常95°C、1分間の加熱処理により酵素を失活させることで、代謝物の分解を抑制するが、高温で処理されるため、組織に萎縮がみられ、LMDによる正確な定量や、イメージングMSによる分布解析に適さない状態になる。そこで、初めに脾臓におけるヒートスタビライザーの温度及び時間の最適化を実施した結果、65°Cで30秒間処理した時に、組織の萎縮なく且つスフィンゴ脂質の分解を抑制することが示された。また、最適化した条件を用い、マウスの脾臓組織から連続切片を作成し、染色、LC-MS/MS及びIMS解析を実施したところ、一部のスフィンゴ脂質(スフィンゴシン等)は、赤脾髄及び白脾髄における定量値とイメージング画像の相関が観察された。以上の点は、概ね順調に進捗していると考えられる。一方、本研究に用いたIMSは、質量分解能及び感度が低いことから、組織含有濃度が低いと想定された一部のスフィンゴ脂質は、明確なイメージ画像が得られなかった。現在、高分解能を有するIMSを用いた脾臓におけるスフフィンゴ脂質のイメージング測定を実施している。また、10細胞程度の組織切片からのスフィンゴ脂質の定量は、現在までに成功しておらず、nanoLCを組み合わせる等、さらなるLC-MS/MSの高感度化が必要と考えられる。以上の成果から、目標とした110細胞に含まれるスフィンゴ脂質の定量に課題があると共に、IMS測定においても、より高感度な測定を実施する必要があると想定され、実際よりも研究が遅れていると判断している。平成28年度は、前年度のIMSによるスフィンゴ脂質測定を受け、MALDI-FTMSあるいはDESI-IMSを用いた高感度化を目指したが、何れも脾臓において必要な検出感度が得られなかった。そこで、IMSの専門家である大阪大学の新間博士に研究協力を依頼したところ、最終的には9-AAのスプレー法を組み合わせることで、最も高感度に検出できることが判った。以上の検討から、今までIMSで検出することが難しいと考えられてきたスフィンゴ脂質の中でも、特にS1Pの脾臓組織分布画像を得ることに成功した。本研究によって得られた成果は、現在論文投稿準備中である。また、一細胞スフィンゴ脂質分析を目指した研究は、nanoLCを用いたが感度向上が認められなかったため、超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)を用いる検討を実施した。その結果、昨年度までの手法と比較し、スフィンゴ脂質は10倍程度の検出感度上昇が認められた。現在、添加回収実験によるバリデーションを実施しており、今後一細胞分析に応用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-15K18842 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K18842 |
質量分析計を基盤技術とした高感度スフィンゴ脂質分析法の開発と組織分布解析への応用 | 一方で、各種ノックアウトマウスによる、LC-MS/MS及びIMSを用いるスフィンゴ脂質測定に関しては、ノックアウトマウスが得ることが困難であったため、既に我々の研究からスフィンゴ脂質関連遺伝子発現量に差があることが判っている、ヒト肝がん組織を用いるスフィンゴ脂質解析を行った。LC-MS/MSを用いる微量がん組織におけるスフィンゴ脂質解析の結果、がん部におけるスフィンゴ脂質の定量値とSPHK1,2あるいはSPLの発現量に相関がみとめられた。現在、がん部と非がん部を含む組織を入手し、IMSによるスフィンゴ脂質分布解析を進めている。本研究の目的は、LC-MS/MS及びIMSを用い、微量組織切片中スフィンゴ脂質の含有量、細胞間濃度勾配及び分布局在を分子マッピングにて解析し、脂質メディエーターとしての作用を明らかにすることである。初めに、LC-MS/MS測定及びIMS測定に用いる組織の前処理において、ヒートスタビライザーによる組織萎縮無しにスフィンゴ脂質を安定して測定する条件を最適化し、赤脾髄及び白脾髄に含有されるスフィンゴ脂質分布の違いを明らかにした。さらに、LC-MS/MSを用いる微量がん組織におけるスフィンゴ脂質解析から、がん部におけるスフィンゴ脂質定量値とSPHKあるいはSPL発現量の相関を明らかにした。平成28年度は、初めにイメージングMS測定の高感度化を目的とし、MALDIにFourier transform (FT) MSを組み合わせた装置もしくはdesorption electrospray ionization mass spectrometry, DESI-MSにイオンモビリティを搭載した装置を用いた組織切片に含有されるスフィンゴ脂質の解析を実施する。また、イメージングMSの感度向上は、現在最も課題になっていることから、専門家の指導を積極的に受けて研究を進める。また、LC-MS/MSの超高感度化測定法の構築は、初めにnanoLCを使用した測定手法を構築し、微量組織切片(10細胞程度)に含有されるスフィンゴ脂質の定量を試みる。また同時に、原子間力顕微鏡(AFM)を用い、分析カラムの球状シリカへのスフィンゴ脂質の結合状態をリアルタイム分析し、ODSへの保持及び抽出条件を最適化することで、多方面からスフィンゴ脂質の高感度測定条件を検討する予定である。次に、マウス組織切片を用い、SK、S1PR、Spns及びApoMを、組織免疫染色抗体を用いて染色し、同時に作成した連続組織切片を、平成27年度に開発したLC-MS/MS及びIMSによる分析法で測定する。得られたMS測定の結果は、染色画像と重ね合わせ、スフィンゴ脂質の分布局在の相関性を解析する。また、SK、S1PR、Spns及びApoMの阻害剤投与若しくは発現遺伝子欠損マウスを用い、スフィンゴ脂質代謝系の変化を解析し、脂質メディエーター機能を明らかにする予定である。分析化学 | KAKENHI-PROJECT-15K18842 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K18842 |
D-paracompact spacesの研究 | D-paracompact spacesの研究を次の二つの観点から研究した。すなわち1,D-Paracompact spaceのmapping propertiesであり2,D-paracompact spaceとdevelopable spaceとの関係についてである。1については次の定理を証明することができた定理:f:X→Yが完全写像とする。この時もしXがD-paracompact Σ-spaceならば、Yも同じである。この定理はこれまで知られている結果を一般化したものであり、二方向の結果を一本化したものである。2についてはDevelopable spaceの閉写像によるイメージを総合的に研究した。その結果クラスCなる空間族を得ることができた。すなわちFrechet空間で次の性質をもつσ-hereditarily closure-preserving pair-nerwork Pをもつものの全体である。もしPEUEΥx,Z→Pならば、P=(P_1,P_2)EPでPEP_1CP_2CUかつZを等終的に含むPが存在する。クラスCについてLas^^Vner spaceと対応する性質が多々あることを証明し、今後発展性あるクラスであることを示した。D-paracompact spacesの研究を次の二つの観点から研究した。すなわち1,D-Paracompact spaceのmapping propertiesであり2,D-paracompact spaceとdevelopable spaceとの関係についてである。1については次の定理を証明することができた定理:f:X→Yが完全写像とする。この時もしXがD-paracompact Σ-spaceならば、Yも同じである。この定理はこれまで知られている結果を一般化したものであり、二方向の結果を一本化したものである。2についてはDevelopable spaceの閉写像によるイメージを総合的に研究した。その結果クラスCなる空間族を得ることができた。すなわちFrechet空間で次の性質をもつσ-hereditarily closure-preserving pair-nerwork Pをもつものの全体である。もしPEUEΥx,Z→Pならば、P=(P_1,P_2)EPでPEP_1CP_2CUかつZを等終的に含むPが存在する。クラスCについてLas^^Vner spaceと対応する性質が多々あることを証明し、今後発展性あるクラスであることを示した。 | KAKENHI-PROJECT-04640034 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04640034 |
ビタミンD及びリトコール酸の受容体であるビタミンD受容体のリガンド選択的作用機構 | リガンド依存性転写因子ビタミンD受容体(VDR)のリガンド選択的作用機構解明を目的とし、細胞及び動物での研究を進めた。1、細胞レベルでの研究:先行研究では腸管由来細胞株において、VDR標的遺伝子transient receptor potential vanilloid 6(TRPV6)の転写誘導パターンが活性型ビタミンD_3と胆汁酸lithocholic acid(LCA)誘導体において異なることを見出した。昨年度までに、p38阻害剤はTRPV6遺伝子選択的に転写誘導を阻害すること、リガンド依存性のTRPV6プロモーター活性に対してp38阻害剤の効果が軽微であること、タンパク質合成阻害剤シクロヘキシミド処理によってTRPv6転写が顕著に抑制されることを明らかにした。本年度は、p38αのsiRNA導入実験を検討した。活性型ビタミンD_3依存性のTRPV6転写は、p38αsiRNAによって抑制された。一方、代表的なVDR標的遺伝子Cytochrome P450 24a1(CYP24A1)は抑制されなかった。さらにTRPV6転写誘導に必要な新規合成タンパク質候補として、growtharrest and DNA damage-inducible gene 45A(GADD45A)を同定した。GADD45Aは活性型ビタミンD_3処理1時間から3時間の間に発現誘導した。GADD45A siRNAの導入は、活性型ビタミンD_3によるTRPV6転写誘導を抑制した。CYP24A1転写誘導はGSAD45A siRNAに影響を受けなかった。以上の結果より、活性型ビタミンD_3によるTRPV6選択的な転写誘導メカニズムにp38とGADD45Aが関与することを明らかにした。2、動物での研究:先行研究では、マウスにおいて1αヒドロキシビタミンD_3と同程度に、LCA誘導体はCyp24a1を誘導したが、Trpv6の転写誘導と血中カルシウム濃度上昇は見られなかった。昨年度は、マウスCyp24a1のVDR標的臓器における転写誘導を評価し、活性型ビタミンD_3の効果が十二指腸及び空腸で強く、LCAの効果は回腸で最も強いことを示した。さらにVdrヘテロ及びホモ欠損マウスを用い、回腸での網羅的遺伝子解析を行い、LCA選択的なVDR標的遺伝子の候補遺伝子について、野生型マウスとVdr欠損マウスに活性型ビタミンD_3又はLCAを投与し、リガンド依存性発現変化と、VDR依存性発現変化を評価した。本年度は、腸管部位別の胆汁酸トランスポーター、胆汁酸結合タンパク質発現レベル、リガンド依存性発現変化を比較し、LCAの腸管部位選択的なCyp24a1転写誘導メカニズムを解析した。LCAがCyp24a1を効果的に転写誘導する回腸では、他の腸管部位に比べて胆汁酸トランスポーター、胆汁酸結合タンパク質の発現が顕著に高く、LCAを組織内に多く取り込みやすいことが示唆された。以上の結果は胆汁酸代謝関連の病態機構解明に有用である。リガンド依存性転写因子ビタミンD受容体のリガンド選択的作用機構解明を目的とし、細胞及び動物での研究を進めた。(1)細胞での研究:先行研究では腸管由来細胞株を用い、VDR標的遺伝子でありカルシウムチャネルであるtransient receptor potential vanilloid 6(TRPV6)の転写誘導パターンは2種類のVDRリガンド活性型ビタミンD_3と胆汁酸lithocholic acid(LCA)誘導体において異なることを見出した。リガンド選択的な転写誘導機構の解明のため、各種mitogen activated protein kinase(MAPK)阻害剤の効果を検討したところ、活性型ビタミンD_3依存性TRPV6転写誘導はp38阻害剤によって阻害された。活性型ビタミンD_3と同程度にTRPV6を転写誘導するLCA誘導体濃度では、p38阻害剤による阻害はみられなかった。(2)動物での研究:マウスでの先行研究では、1αヒドロキシビタミンD_3とLCA誘導体は、VDR標的遺伝子Cytochrome P450 24al(Cyp24al)を同程度誘導するが、1αヒドロキシビタミンD_3で見られるTrpv6の転写誘導と血中カルシウム濃度上昇は、LCA誘導体では見られなかった。胆汁酸反応性VDR標的遺伝子の探索のため、野生型マウスに活性型ビタミンD_3又はLCAを投与し、VDR標的臓器(十二指腸、空腸、回腸、大腸、腎臓)でのCyp24a1転写誘導を評価した。活性型ビタミンD_3はすべての組織でCyp24alを転写誘導したが、LCAは腸管でのみCyp24alを転写誘導した。腸管における活性型ビタミンD_3の効果は、十二指腸及び空腸で強かったが、LCAの効果は回腸で最も強かった。VDRヘテロ型マウスとVDR欠損マウスにLCAを投与し、回腸での網羅的遺伝子解析を行い、VDR依存性に発現変化する遺伝子解析を行っている。本研究成果は、胆汁酸代謝関連の病態機構解明に有用である。リガンド依存性転写因子ビタミンD受容体(VDR)のリガンド選択的作用機構解明を目的とし、細胞及び動物での研究を進めた。(1)細胞での研究:先行研究では腸管由来細胞株において、VDR標的遺伝子transient receptor potential vanilloid 6 (TRPV6)の転写誘導パターンが活性型ビタミンD_3と胆汁酸lithocholic acid (LCA)誘導体において異なることを見出した。昨年度までに、p38阻害剤はTRPV6遺伝子選択的に転写誘導を阻害することを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-09J03828 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09J03828 |
ビタミンD及びリトコール酸の受容体であるビタミンD受容体のリガンド選択的作用機構 | 本年度はTRPV6プロモーター活性に対するp38阻害剤の効果を検討した。活性型ビタミンD_3依存性プロモーター活性に対してp38阻害剤の効果は軽微であった。TRPV6転写に対するタンパク質合成の関与を検討するため、シクロヘキシミド処理を行ったところ、TRPV6転写は顕著に抑制された。(2)動物での研究:先行研究では、マウスにおいて1αヒドロキシビタミンD_3と同程度に、LCA誘導体はVDR標的遺伝子Cytochrome P450 24al (Cyp24al)を誘導したが、Trpv6の転写誘導と血中カルシウム濃度上昇は見られなかった。昨年度は、マウスCyp24alのVDR標的臓器における転写誘導を評価し、活性型ビタミンD_3の効果が十二指腸及び空腸で強く、LCAの効果は回腸で最も強いことを示した。本年度は、Vdrヘテロ及びホモ欠損マウスを用い、回腸での網羅的遺伝子解析を行った。LCA選択的なVDR標的遺伝子の候補遺伝子について、野生型マウスとVdr欠損マウスに活性型ビタミンD_3又はLCAを投与し、リガンド依存性発現変化と、VDR依存性発現変化を評価した。本研究成果は、胆汁酸代謝関連の病態機構解明に有用である。リガンド依存性転写因子ビタミンD受容体(VDR)のリガンド選択的作用機構解明を目的とし、細胞及び動物での研究を進めた。1、細胞レベルでの研究:先行研究では腸管由来細胞株において、VDR標的遺伝子transient receptor potential vanilloid 6(TRPV6)の転写誘導パターンが活性型ビタミンD_3と胆汁酸lithocholic acid(LCA)誘導体において異なることを見出した。昨年度までに、p38阻害剤はTRPV6遺伝子選択的に転写誘導を阻害すること、リガンド依存性のTRPV6プロモーター活性に対してp38阻害剤の効果が軽微であること、タンパク質合成阻害剤シクロヘキシミド処理によってTRPv6転写が顕著に抑制されることを明らかにした。本年度は、p38αのsiRNA導入実験を検討した。活性型ビタミンD_3依存性のTRPV6転写は、p38αsiRNAによって抑制された。一方、代表的なVDR標的遺伝子Cytochrome P450 24a1(CYP24A1)は抑制されなかった。さらにTRPV6転写誘導に必要な新規合成タンパク質候補として、growtharrest and DNA damage-inducible gene 45A(GADD45A)を同定した。GADD45Aは活性型ビタミンD_3処理1時間から3時間の間に発現誘導した。GADD45A siRNAの導入は、活性型ビタミンD_3によるTRPV6転写誘導を抑制した。CYP24A1転写誘導はGSAD45A siRNAに影響を受けなかった。以上の結果より、活性型ビタミンD_3によるTRPV6選択的な転写誘導メカニズムにp38とGADD45Aが関与することを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-09J03828 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09J03828 |
マシニングセンター加工の自動CAM技術 | マシニングセンター加工に用いるためのNCプログラムを作成する作業を、工程設計と作業設計により、できるだけ自動的に処理するようなCAM(計算機援用製造)ソフトウェアシステムの技術を確立することを目的として、加工特徴入力という新しい原理を用いる方法を研究した。工作物を小寸法角物(ブロックと呼ぶ)、板物及び大寸法角物(板物と呼ぶ)及び溶接・鋳鍛造品(成形素材)の三つに大別し、ブロック加工に対応する自動CAM処理ソフトウェアは、エンジニアリングワークステーション(EWS)を用いてすでに可能となっていた。本研究は、経済性の高いパーソナルコンピュータ(PC)上で、ウィンドウズ対応の、使いやすいソフトウェアにする方法を研究し、ブロック加工については、これを実現して、ブロック加工パイロットショップにおける試用に供している。またEWS上のソフトウェアについては、作業設計の機能の中で、加工条件を自動決定する方法の高度化を行った。板物加工に対応する自動CAM処理ソフトウェアは、EWS上で、ブロック加工に対応するものに工程設計の機能を付加し、新たに研究した切取り加工も行え、また部分的には、成形素材の加工も行えるシステムを作成し、学内のマシニングセンターショップにおける実用に供している。また成形素材に対応する自動CAM処理は、EWSを用いて、加工特徴入力による本研究の方法が可能なことを加工実験まで行って確認した。一方、将来の実用に供するには、全てのソフトウェアを経済性の高いPCによって行うことが必要であるため、現在はブロック加工のみに対応しているPC上のソフトウェアを拡張して、板物加工も行えるようにする研究を開始した。これらの研究実績を2件の欧文論文により発表した。マシニングセンター加工に用いるためのNCプログラムを作成する作業を、工程設計と作業設計により、できるだけ自動的に処理するようなCAM(計算機援用製造)ソフトウェアシステムの技術を確立することを目的として、加工特徴入力という新しい原理を用いる方法を研究した。工作物を小寸法角物(ブロックと呼ぶ)、板物及び大寸法角物(板物と呼ぶ)及び溶接・鋳鍛造品(成形素材)の三つに大別し、ブロック加工に対応する自動CAM処理ソフトウェアは、エンジニアリングワークステーション(EWS)を用いてすでに可能となっていた。本研究は、経済性の高いパーソナルコンピュータ(PC)上で、ウィンドウズ対応の、使いやすいソフトウェアにする方法を研究し、ブロック加工については、これを実現して、ブロック加工パイロットショップにおける試用に供している。またEWS上のソフトウェアについては、作業設計の機能の中で、加工条件を自動決定する方法の高度化を行った。板物加工に対応する自動CAM処理ソフトウェアは、EWS上で、ブロック加工に対応するものに工程設計の機能を付加し、新たに研究した切取り加工も行え、また部分的には、成形素材の加工も行えるシステムを作成し、学内のマシニングセンターショップにおける実用に供している。また成形素材に対応する自動CAM処理は、EWSを用いて、加工特徴入力による本研究の方法が可能なことを加工実験まで行って確認した。一方、将来の実用に供するには、全てのソフトウェアを経済性の高いPCによって行うことが必要であるため、現在はブロック加工のみに対応しているPC上のソフトウェアを拡張して、板物加工も行えるようにする研究を開始した。これらの研究実績を2件の欧文論文により発表した。 | KAKENHI-PROJECT-08650134 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08650134 |
遺伝性自己免疫疾患のエピジェネティックス | 胸腺上皮細胞で強く発現しているAIREは、自己抗原の発現に関与していることが知られているがそのメカニズムは未だ明らかにされていない。そこで、我々は胸腺上皮細胞においてAireがエピジェネティックな制御機構を介して、自己抗原の発現に関与しているのではないかと考え、Ins2遺伝子座におけるDNAのメチル化やヒストン修飾について解析を行った。その結果、少なくとも解析した3つの領域においてDNAのメチル化レベルの違いは見られなかった。胸腺上皮細胞で強く発現しているAIREは、自己抗原の発現に関与していることが知られているがそのメカニズムは未だ明らかにされていない。そこで、我々は胸腺上皮細胞においてAireがエピジェネティックな制御機構を介して、自己抗原の発現に関与しているのではないかと考え、Ins2遺伝子座におけるDNAのメチル化やヒストン修飾について解析を行った。その結果、少なくとも解析した3つの領域においてDNAのメチル化レベルの違いは見られなかった。胸腺上皮細胞で強く発現しているAIREは,その変異によって自己,非自己の識別機構に傷害を受け自己免疫疾患を発症させる。このように,AIREは胸腺上皮細胞における自己抗原の発現に関与していることが知られているがそのメカニズムは未だ明らかにされていない。平成19年度,我々は胸腺上皮細胞におけるAireの発現がエピジェネティックな制御,つまりDNAのメチル化によって制御されているかについて検討を行った。そこで,我々はAireがあまり発現していない脾臓や脳を含めた各種臓器からDNAを抽出した。また,胸腺上皮細胞は胸腺からMACSカラムを用いてCD45(-),MHC ClassII (+)のフラクションを分離し,DNAを抽出した。DNAのメチル化解析は,Bisulfite Sequencing法を用いてAireの上流に位置するCpGアイランド領域を解析した。その結果,解析したすべての臓器においてAireのCpGアイランドが非メチル化状態であることがわかった。つまり,少なくともマウスにおいてAire遺伝子は,メチル化によって制御されていないことがわかった。逆に,Hela細胞などを含めたヒトの細胞では,AIREの上流領域がメチル化されていた。つまり,今回の研究からAIRE/Aire遺伝子の制御がヒトとマウスで異なっている可能性が示唆された。つぎに,我々はAireによる染色体ドメインレベルの遺伝子発現制御機構を解析するため,Igf2, Ins2遺伝子座に着目し解析を行った。この領域は,ゲノム刷り込みをうける遺伝子がクラスターを形成している領域であると同時にAire依存的な自己抗原遺伝子Ins2が位置する領域でもあります。先に別の研究グループから胸腺上皮細胞においてIgf2遺伝子が両アレル発現をすることが示されていたのでこのことも含め,Aireがどのようなエピジェネティックな制御を介して自己抗原の転写に関与しているか検討した。そこで,B6マウスとBALB/cマウスから生まれたF1マウスを用いてアレルを識別し胸腺上皮細胞においてIgf2遺伝子の刷り込み状態を検討した。しかしながら,先に報告された結果と異なりIgf2遺伝子は父方からのみ発現を示していた。今後,AireKOマウスなどを用いることでこの領域のゲノム刷り込み遺伝子の発現様式を詳細に解析する必要があると思われる。胸腺上皮細胞で強く発現しているAIREは,その変異によって自己,非自己の識別機構に傷害を受け自己免疫疾患を発症させる。このように, AIREは胸腺上皮細胞における自己抗原の発現に関与していることが知られているがそのメカニズムは未だ明らかにされていない。そこで,我々は胸腺上皮細胞においてAireがエピジェネティックな制御機構を介して,自己抗原の発現に関与しているのではないかと考え, Ins2遺伝子座におけるDNAのメチル化やピストン修飾について解析を行った。Igf2, Ins2遺伝子座はゲノム刷り込みを受ける遺伝子がクラスターを形成している領域であり,染色体ドメインレベルの発現制御機構が知られる。我々はこの領域におけるエピジェネティックな修飾がAire依存的であるかどうか解析するため,(1)HeLa細胞,(2)Aireを強制発現させたHeLa細胞,(3)RNAiでAireをノックダウンさせたHeLa細胞の3つの細胞株を用いて, Igf2, Ins2遺伝子座のDNAメチル化状態およびヒストン修飾を解析した。DNAのメチル化解析は, Bisulfite Sequencing法を用いてIns2およびIgf2, H19遺伝子の上流に位置するCpGリッチな領域を解析した。その結果,少なくとも解析した3つの領域においてDNAのメチル化レベルの違いは見られなかった。その上,各々のプロモーター領域のヒストン修飾の状態は,アセチルH3,アセチルH4,ジメチルH3-K4,ジメチルH3-K9,トリメチルH3-K27のピストン修飾を認識する抗体を用いて, DNA免疫沈降法(ChIPアッセイ)を行ったが明確な違いは見受けられなかった。今後,より高次なクロマチン構造であるクロマチンループ構造の変異がないか検討する。 | KAKENHI-PROJECT-19790237 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19790237 |
H^+,K^+‐ATPaseファミリーの構造-機能相関についての分子生物学的研究 | 胃H^+,K^+-ATPaseは胃酸の分泌に携わるプロトンポンプである。これまで、このポンプについてはcDNAを機能的に発現することができなかったため、ポンプの構造と機能との関連についての研究が進んでいなかった。私は、ウサギの胃H^+,K^+-ATPaseのα、βサブユニットのcDNAに修飾を施したのち、ヒト腎臓由来の培養細胞、HEK-293に導入することによってこのATPaseを機能的に発現させることに成功した。前項に述べた機能的な発現系を用いて、H^+,K^+-ATPaseの触媒中心やイオン認識部位に変異を導入し、その機能的な変化を観察した。触媒中心にリン酸化部位(Asp-387)に変異を導入すると、変異体はすべて活性を失った。Asp→Gluという形でカルボキシル基を保持して側鎖の大きさを変えただけでも失活がおこった。このことから、リン酸化部位には厳格な一定の構造が要求されるものと考えられた。また、αサブユニットの4番目の膜貫通領域(M4)に存在するグルタミン酸残基(Glu-345)に変異を導入すると、多くの変異体は活性を完全に失ったが、グルタミン変異体(E345Q)は、野生型の約40%の活性を保持した。この変異体は、K^+に対する親和性が低下するとともに、ATPに対する親和性が上昇していた。このことから、Glu-345がK^+の認識に関与していること、またGlu-345と原形質側のリン酸化部位Asp387、ATP結合部位Lys-519をつなぐM4セグメントがATPの加水分解とイオンの認識、輸送とを結びつけるエネルギー伝達に重要な役割を果たすものと考えられた。胃H^+,K^+-ATPaseは胃酸の分泌に携わるプロトンポンプである。これまで、このポンプについてはcDNAを機能的に発現することができなかったため、ポンプの構造と機能との関連についての研究が進んでいなかった。私は、ウサギの胃H^+,K^+-ATPaseのα、βサブユニットのcDNAに修飾を施したのち、ヒト腎臓由来の培養細胞、HEK-293に導入することによってこのATPaseを機能的に発現させることに成功した。前項に述べた機能的な発現系を用いて、H^+,K^+-ATPaseの触媒中心やイオン認識部位に変異を導入し、その機能的な変化を観察した。触媒中心にリン酸化部位(Asp-387)に変異を導入すると、変異体はすべて活性を失った。Asp→Gluという形でカルボキシル基を保持して側鎖の大きさを変えただけでも失活がおこった。このことから、リン酸化部位には厳格な一定の構造が要求されるものと考えられた。また、αサブユニットの4番目の膜貫通領域(M4)に存在するグルタミン酸残基(Glu-345)に変異を導入すると、多くの変異体は活性を完全に失ったが、グルタミン変異体(E345Q)は、野生型の約40%の活性を保持した。この変異体は、K^+に対する親和性が低下するとともに、ATPに対する親和性が上昇していた。このことから、Glu-345がK^+の認識に関与していること、またGlu-345と原形質側のリン酸化部位Asp387、ATP結合部位Lys-519をつなぐM4セグメントがATPの加水分解とイオンの認識、輸送とを結びつけるエネルギー伝達に重要な役割を果たすものと考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-07772159 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07772159 |
シリコン基板上の選択再成長による窒化ガリウム系ノーマリオフ型デバイスに関する研究 | 有機金属気相成長(MOCVD)法を用いてシリコン基板上AlGaN (5nm) /GaNヘテロエピタキシャル層上に、選択的にAlGaN層(15nm)を再成長し、ノーマリオフ特性(しきい値電圧が正)を目的にしたエピ構造を作製した。選択再成長のマスクはSiO2を用い、リソグフィーとバッファードフッ酸によるエッチングを行うことで再成長領域を形成した。MOCVDにより、AlGaN層(15nm)を再成長し、アクセス領域への2DEGの形成を行った。選択再成長技術を用いて作製したトランジスタは、最大ドレイン電流160 mA/mm、しきい値電圧+0.4 Vのノーマリオフ特性を示した。有機金属気相成長(MOCVD)法を用いてシリコン基板上AlGaN (5nm) /GaNヘテロエピタキシャル層上に、選択的にAlGaN層(15nm)を再成長し、ノーマリオフ特性(しきい値電圧が正)を目的にしたエピ構造を作製した。選択再成長のマスクはSiO2を用い、リソグフィーとバッファードフッ酸によるエッチングを行うことで再成長領域を形成した。MOCVDにより、AlGaN層(15nm)を再成長し、アクセス領域への2DEGの形成を行った。選択再成長技術を用いて作製したトランジスタは、最大ドレイン電流160 mA/mm、しきい値電圧+0.4 Vのノーマリオフ特性を示した。有機金属気相成長(MOCVD)法を用いてサファイア基板上に成長したGaN(2.0μm)を用いて、選択再成長した時の成長速度及び表面平坦性の成長圧力(100torr、300torr、500torr、760torr)依存性を調べた。選択再成長用にマスクとしては、SiO_2を用いた。また、カソードルミネッセンス(CL)法を用いて暗点欠陥の数を測定することにより、暗点欠陥密度の選択再成長面積依存性を調べた。設計値の成長膜厚を100nmとした場合の選択再成長領域の端部及び中心部での膜厚は、100torrでは263nm、159nm、300torrでは511nm、228nm、500torrでは407nm、152nm、760torrでは346nm、148nmとなった。選択再成長領域の端部において、成長膜厚が大きくなっていることから、成長速度が大きい結果が得られた。これが、マスクとして使用したSiO_2上をGaがマイグレーションし選択再成長領域の端部に到達したためと考えられる。また、100torrの成長圧力では、成長速度の場所依存性が小さかった。また、原子間力顕微鏡を用いた中心部の表面平坦性の測定(RMS)では、100torrでは0.138nm、300tofrでは0.124nm、500torrでは0.094nm、760torrでは0.165nmとなり、大きな依存性は見られなかった。EBIC法を用いた暗点欠陥密度の選択再成長面積依存性では、選択再成長させる面積が小さいほど、暗点欠陥密度が減少する傾向にあった。本研究の目的は、Si基板上にノーマリオフ特性(しきい値電圧:正)を有するAlGaN/GaN HEMTを選択再成長法により作製することである。結晶成長は、有機金属気相成長(MOCVD)法を用いて、Si基板上にAlN/AlGaN層を高温成長させ、その後、歪超格子、GaN層、AlNスペーサ層、AlGaNバリア層(5 nm)を成長させる。そして、選択再成長用のマスクとしてSiO2を用い、リソグラフィーとバッファードフッ酸によるエッチングを行うことで再成長領域を形成した。その後、MOCVD法により、選択的にAlGaN層(15nm)を再成長し、ノーマリオフAlGaN/GaN HEMTの試作を行った。選択成長(AlGaN 15nm)を行った後のTLM測定から、シート抵抗260Ω/□であった。この値はAlGaN層を連続成長させたときに得られるシート抵抗(330400Ω/□)とほぼ同等の値であった。従って、再成長を行うことでAlGaN下に2次元電子ガス層の形成されていることが示唆された。デバイス作製のプロセスは、RIEを用いた素子間分離、SiO2表面保護膜の形成、ソース、ドレインとなるオーミック電極の形成、ゲートとなるショットキー電極の形成の順に行った。再成長AlGaNをゲート近傍まで再成長した構造を持つHEMTは、最大ドレイン電流160 mA/mm,相互コンダクタンス120 mS/mm,しきい値電圧+0.4Vの特性が得られ、ノーマリオフ特性を確認した。地球温暖化問題の主要因とされるCO2の排出削減のために種々の分野で省エネルギー化が取り上げられている。従来のSiを用いたMOSFETやIGBT等のSiデバイスでは、Siの物性限界に直面し大幅な性能向上はもはや困難な状況にある。本研究では、コスト、サイズ、放熱性、生産性・量産性を考慮して選択再成長技術を用いて大口径Si基板上にノーマリオフ型AlGaN/GaN HEMTを実現することを目的とする。有機金属気相成長法を用いて、成長速度及び表面平坦性の選択成長時のIII/V比依存性及び成長圧力依存性(100 Torr-760 Torr)を調べるとともに、ノーマリオフ型のAlGaN/GaN HEMTの試作に関する研究を行った。 | KAKENHI-PROJECT-23360154 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23360154 |
シリコン基板上の選択再成長による窒化ガリウム系ノーマリオフ型デバイスに関する研究 | サファイア基板及びSi基板上に選択再成長技術を用いてAlGaN/GaN HEMT構造を成長させた。この構造では、しきい値電圧が正のノーマリオフ型のデバイス特性を得るために、最初の成長ではAlが低く、かつ薄いAlGaN層を成長させた。その後、SiO2を選択再成長用のマスクとして、Al組成の高いAlGaN層を成長させた。成長圧力が高い場合、SiO2の上にも成長され、選択的な成長が行われなかった。成長圧力が低いほど、選択再成長させる領域に成長できたが、周辺部分での成長層の膜厚増加が観察された。これは、Gaのマイグレーションによる効果で周辺部分の成長速度が増加したためと考えられる。選択再成長させる領域の面積とその領域に成長させた結晶のカソードルミネッセンス(CL)法による結晶性の評価を行った。成長させる面積が小さいほど、結晶性が改善される傾向にあった。有機金属気相成長(MOCVD)法を用いて成長したGaNを用いて、選択再成長した時の成長速度及び表面平坦性の成長圧力依存性、暗点欠陥密度の選択再成長面積依存性を調べ、基本的な成長条件が明らかになった。25年度が最終年度であるため、記入しない。有機金属気相成長法を用いて、サファイア基板及びSi基板上にAlGaN/GaN HEMT構造を選択再成長させ、成長速度及び表面平坦性の選択成長時のIII/V比依存性及び成長圧力依存性(100 Torr-760 Torr)を調べた。この構造では、しきい値電圧が正のノーマリオフ型のデバイス特性を得るために、最初の成長ではAlが低く、かつ薄いAlGaN層を成長させた。その後、SiO2を選択再成長用のマスクとして、Al組成の高いAlGaN層を成長させた。成長圧力が高い場合、SiO2の上にも成長され、選択的な成長が行われなかった。成長圧力が低いほど、選択再成長させる領域に成長できたが、周辺部分での成長層の膜厚増加が観察された。これは、Gaのマイグレーションによる効果で周辺部分の成長速度が増加したためと考えられる。選択再成長させる領域の面積とその領域に成長させた結晶のカソードルミネッセンス(CL)法による結晶性の評価を行った。成長させる面積が小さいほど、結晶性が改善される傾向にあった。以上の結果から、AlGaN層を選択再成長した時の成長速度及び表面平坦性の成長条件依存性、選択再成長面積依存性を調べ、基本的な成長条件が明らかになった。選択再成長した時の成長速度、表面平坦性、暗点欠陥密度のIII/V比依存性を調べることにより、選択再成長条件の最適化を行い、これを用いたデバイス(ショットキーダイオード、AIGaN/GaN HEMT)特性評価を行う。25年度が最終年度であるため、記入しない。ノーマリオフ型AlGaN/GaN HEMTの試作を中心とした研究開発を行う。有機金属気相成長法により、4インチSi基板上に選択再成長技術を用いてHEMT構造を成長する。この構造では、しきい値電圧が正のノーマリオフ型のデバイス特性を得るために、最初の成長ではAl組成が比較的低く、かつ薄いAlGaN層を成長する。但し、このままの状態では、ソース及びドレインとなるオーミック電極を形成してもコンタクト抵抗が高くなり、良好な電流ー電圧特性を得ることが困難であるため、ソース及びドレイン領域にAl0.25Ga0.75N層を選択的に再成長させる。デバイスは、反応性イオンエッチング(RIE)を用いた素子間分離、SiO2表面保護膜の形成、ソース、ドレインとなるオーミック電極の形成、ゲートとなるショットキー電極の形成の順に行う。 | KAKENHI-PROJECT-23360154 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23360154 |
骨形成タンパク質(BMP)レセプターと細胞内シグナル伝達 | 骨形成タンパク質(BMP)はTGF-βスーパーファミリーに属するタンパク質で、骨芽細胞の分化に強く関与していることが示唆されている。本研究ではBMPレセプターをクローニングすると共に、それらのレセプターを持っている、骨芽細胞様株細胞を用い、細胞内シグナル伝達の機構解析を行った。実験に用いたBMPは主にBMP-7(OP-1)で細胞はMC3T3-E1およびST-2細胞で方法としはDifferential Display法を用いBMPによって発現する遺伝子の解析をおこなった。主な結果は以下のごとくである。1) BMP-7でアルカリホスファターゼ活性が増加した。2)アルカリホスファターゼの活性上昇に続いてオステオカルシン遺伝子の発現を確認した。4)単離した遺伝子の多くは既知のものであった。5) BMPにより誘導される遺伝子、発現が抑制される遺伝子についてさらに詳細に検討した。これらの他に、TGF-βスーパーファミリーの細胞内シグナル伝達に関与しているsmad遺伝子の発現についても検討した。骨形成タンパク質(BMP)はTGF-βスーパーファミリーに属するタンパク質で、骨芽細胞の分化に強く関与していることが示唆されている。本研究ではBMPレセプターをクローニングすると共に、それらのレセプターを持っている、骨芽細胞様株細胞を用い、細胞内シグナル伝達の機構解析を行った。実験に用いたBMPは主にBMP-7(OP-1)で細胞はMC3T3-E1およびST-2細胞で方法としはDifferential Display法を用いBMPによって発現する遺伝子の解析をおこなった。主な結果は以下のごとくである。1) BMP-7でアルカリホスファターゼ活性が増加した。2)アルカリホスファターゼの活性上昇に続いてオステオカルシン遺伝子の発現を確認した。4)単離した遺伝子の多くは既知のものであった。5) BMPにより誘導される遺伝子、発現が抑制される遺伝子についてさらに詳細に検討した。これらの他に、TGF-βスーパーファミリーの細胞内シグナル伝達に関与しているsmad遺伝子の発現についても検討した。骨タンパク質(BMP)はTGF-βスパーファミリー属するタンパク質でこのファミリーは細胞の分化誘導に関与していることが数多く報告されている。BMPを中心にこのファミリーの分化誘導の細胞内シグナル伝達の経路を解明するために、バキュロウイルスのタンパク質発現系を用い、まずBMP大量生産し精製するシステムを確立した。またBMPによる骨形成能に影響を与える可能性があるいくつかのタンパク質を大腸菌のタンパク質発現系で大量に調製した。これらのリコンビナントタンパク質に反応性の高い培養株細胞(特に骨芽細胞に分化誘導されるもの)を用いシグナル伝達の経路を解析中である。シグナルに関与している分子としてBMPタイプIおよびII型レセプターをラットよりクローニングし、さらに細胞内シグナル伝達に関与している可能性のある遺伝子としてSmadファミリーをクローニングし、これらのこのファミリーのBMPの細胞分化誘導のための細胞内シグナル伝達経路への関与を検討中である。骨形成タンパク質(BMP)の作用機構を解明するために、遺伝子工学的にBMPを作製し数十mgの活性タンパク質得ることができた。この生理活性物質は市販されておらず、かりに市販されても非常に高価であることが予想される(この類似タンパク質TGF-βは1μg約2万円で市販されている)。この十分なBMPを用い骨形成細胞への作用機構を研究した。作用機構の解明のためそのレセプター及び細胞内シグナル伝達タンパク質(smad)をクローニングし細胞内での発現させるための実験用ベクターを構築した。これらを用い骨形成細胞でのシグナル伝達の詳細な解明を進めている。また、クローニングしたBMP及びそのファミリータンパク質、それらのレセプター、シグナル伝達タンパク質、BMPの作用に影響を与えるタンパク質の遺伝子発現について、歯の発生及び歯槽骨の修復過程でも検索し、数多くの成果をえた(論文として発表)。骨形成に関与するこれらのタンパク質は歯の形成、歯槽骨の修復にも深く関与していることが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-08457488 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08457488 |
自己増殖型ニューラルネットワークによる知識獲得に関する研究 | (1)SOINNの拡張としての、安定して動作し大きくオーバーラップするクラスタも分離可能な教師なし学習法"Enhanced-SOINN"の研究開発:SOINNは教師なし学習法であるが、大きくオーバーラップするクラスタを自律的に分離・抽出することは難しい。またSOINNは原理的に若干動作が不安定といつた問題もある。そこで本研究ではこれらの問題の解決を図り、新たに"Enhanced SOINN(E-SOINN)"法として提案した。(2)SOINNの教師あり学習の枠組みへの拡張とそのパターン認識への応用:パターン認識の問題では各クラスのパターンに教師ラベルが与えられる場合があるが、本研究ではSOINNをそうした教師あり学習問題にも適用可能なように拡張する。本研究によれば、ノイズに強く、計算が軽く、多クラスに対応可能で高精度な上、追加学習も可能、といった教師あり学習器が実現できる。こうした学習器は世界的に見ても他に例がなく、学術的に興味深いだけでなく実利用性も極めて高い。(3)SOINNの発展としてのオンライン準教師あり能動学習手法の構築とその認知発達ロボティクスへの応用:SOINNは教師なし学習法であるが、SOINNが形成するクラスタのトポロジに「重み」の概念を導入することにより、SOINNを発展させたオンラインの準教師あり能動学習手法を構築する。この手法は計算が軽いほか、耐ノイズ性や追加学習可能性といったSOINNの有用な性質を全て受け継いでおり、世界的に見て他に類を見ない。また性能的にも、予備実験の結果、2005年のニューラルネットワーク研究分野では最高レベルの国際会議、Neural Information Processing Systems(NIPS)にて報告された従来型(学習に膨大な時間がかかり追加学習が不可能)の準教師あり能動学習手法に匹敵する認識精度が得られることが分かっている。一般に既存の機械学習手法は学習過程と認識過程が明確に分かれていて新規データの追加学習が困難であるほか、ノイズに対する耐性に乏しい。本研究では、耐ノイズ性を有し、教師なしの追加的クラスタリング・位相学習が可能な独自の自己増殖型ニューラルネットワーク(SOINN : Self-organizing Incremental Neural Network)を提案する。提案するネットワークでは、ローカルの累積誤差により新しいノードを挿入すると、追加学習が実現できる。またノードの挿入が必要かを判断するメカニズムを入れることにより、ノード数の過度の増加を抑制できる。さらに、提案手法には類似性しきい値を導入し、その入力信号と最も近いノードの間の距離がしきい値より大きい場合、入力信号は新しいクラスタを形成させる。これが新奇な知識の学習の基盤となる。入力信号の低密度領域にあるノードを削除することにより、重複したクラスタを分けることもできる。2次元人工データを用いた実験を通じ、SOINNと従来手法の性能比較を行っている。比較の結果、提案手法は、(1)追加学習の可能性、(2)ノイズに対する耐性、(3)クラスタリング性能、(4)位相学習における柔軟性、のいずれにおいても、従来手法に優れるとしている。SOINNを顔画像の認識に適用した実験では、10人分の顔画像を教師なしに適切にクラスタリングできたことを示している。SOINNを手書き文字画像データベースOptdigitsに適用した実験では、SOINNがOptdigitsの各クラスの位相を適切に表現し、それらを他の代表的なパターン識別手法であるSupport Vector Machine(SVM)よりも高精度に識別できたことを示している。(1)SOINNの拡張としての、安定して動作し大きくオーバーラップするクラスタも分離可能な教師なし学習法"Enhanced-SOINN"の研究開発:SOINNは教師なし学習法であるが、大きくオーバーラップするクラスタを自律的に分離・抽出することは難しい。またSOINNは原理的に若干動作が不安定といつた問題もある。そこで本研究ではこれらの問題の解決を図り、新たに"Enhanced SOINN(E-SOINN)"法として提案した。(2)SOINNの教師あり学習の枠組みへの拡張とそのパターン認識への応用:パターン認識の問題では各クラスのパターンに教師ラベルが与えられる場合があるが、本研究ではSOINNをそうした教師あり学習問題にも適用可能なように拡張する。本研究によれば、ノイズに強く、計算が軽く、多クラスに対応可能で高精度な上、追加学習も可能、といった教師あり学習器が実現できる。こうした学習器は世界的に見ても他に例がなく、学術的に興味深いだけでなく実利用性も極めて高い。(3)SOINNの発展としてのオンライン準教師あり能動学習手法の構築とその認知発達ロボティクスへの応用:SOINNは教師なし学習法であるが、SOINNが形成するクラスタのトポロジに「重み」の概念を導入することにより、SOINNを発展させたオンラインの準教師あり能動学習手法を構築する。この手法は計算が軽いほか、耐ノイズ性や追加学習可能性といったSOINNの有用な性質を全て受け継いでおり、世界的に見て他に類を見ない。また性能的にも、予備実験の結果、2005年のニューラルネットワーク研究分野では最高レベルの国際会議、Neural Information Processing Systems(NIPS)にて報告された従来型(学習に膨大な時間がかかり追加学習が不可能)の準教師あり能動学習手法に匹敵する認識精度が得られることが分かっている。 | KAKENHI-PROJECT-05J08385 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05J08385 |
オンライン同位体分離器用多価イオン源の開発 | この研究の目的は、安定元素の高効率多価イオン源として実績のあるECRイオン源をオンライン同位体分離器(ISOL)用のイオン源として適用し、不安定原子核の多価イオンの大量生成を目指そうとするものである。当初我々は電磁石を用いてミラ-磁場をつくり出す方針で設計を進めていたが、昨年度、電磁石を用いず永久磁石のみを用いてミラ-磁場をつくり出す事に方針を変更した。その特徴、有用性は昨年度の実績報告書で報告しているので省略するが、永久磁石のみ使用する事により、ISOL用イオン源として必要不可欠な条件である。コンパクト化、省パワ-、メンテナンスの容易化が実現された設計となった。我々の設計したイオン源は強磁性体を有効につかい、小さな永久磁石により十分なミラ-磁場をつくり出すもので、この方法は安定元素用のECRイオン源でもはじめての試みであり(大きな永久磁石での例は数件最近報告されている)、もちろんISOL用イオン源でも例がない。そのため未知の部分、開発すべき要素が大きく、今年度は永久磁石及び強磁性体を強い磁場の力の中で容易に取りかえられるようにし、容易に様々な種類の試験を可能にするなどのイオン源の構造の細部の変更、及びイオン源の基礎デ-タ(ミラ-磁場の分布、マイクロ波のパワ-の吸収高率、等)の収集及び改良を行ない、目標とする性能に達するべく努力した。現在、問題点の解明及びその解決がかなり進んできた。基礎デ-タで満足すべき性能に達ししだい、当初の予定通り安定元素(Ar,Ne,O等ガス)を用いてオフ・ラインテストを行ない、その後、東京大学原子核研究所SFサイクロトロン施設に既存のISOLにとりつけてSFサイクロトロンからのビ-ムを用いてオン・ビ-ムテストを行なう予定である。この研究の目的は、安定元素の多価イオン源として実績のあるECRイオン源をオンライン同位体分離器(ISOL)用のイオン源として適用し、不安定原子核の多価イオンの大量生成を目指そうとするものである。昭和63年度はISOL用として適合するECRイオン源の設計及びミラー磁場の計算を行ない、平成元年度にこのイオン源のオフライン及びオンラインテストを行なうという、当初の予定通り進めている。今年度は、このECRイオン源の基本設計を検討し、最終仕様まで進めた。我々のイオン源の基本設計の特徴と、その理由は以下の通りである。(1)ECR共鳴の周波数を2.45GHzとする安定元素のイオン源において、1価2価用大強度イオン源で2.45GHz、多価イオン源では6.4GHz以上のマイクロ波が主流である。我々のイオン源は、従来のISOL用イオン源が2価イオンの生成量が通常極めて小さく、1価イオンも特定の元素を除き大量生成が難しい事と考慮し、まず2価イオンの生成、及び1価イオンの大量生成を目指す事とし、2.45GHzを用いる事とした。取り扱いも2.45GHzの方が手軽であり、当初のテストに用いるのにふさわしい。(2)ミラー磁場を永久磁石のみを用いてつくる。当初我々はソレノイドコイルを用いてミラー磁場をつくるつもりで検討を進めていた。しかし、最近、永久磁石のみを用いて、省パワー、コンパクト化をはかったイオン源が発達してきた。これはISOL用イオン源として重要な要素である。ソレノイドと永久磁石の両方を並行して検討し、永久磁石と磁性体の使用によりミラー磁場をつくる事にした。このイオン源は予定通り平成元年度にまずオフラインテストでガスに対するイオン化効率をテストし、その後ISOLに取付け、不安定核のイオン化効率をオンラインテストで調べる予定である。この研究の目的は、安定元素の高効率多価イオン源として実績のあるECRイオン源をオンライン同位体分離器(ISOL)用のイオン源として適用し、不安定原子核の多価イオンの大量生成を目指そうとするものである。当初我々は電磁石を用いてミラ-磁場をつくり出す方針で設計を進めていたが、昨年度、電磁石を用いず永久磁石のみを用いてミラ-磁場をつくり出す事に方針を変更した。その特徴、有用性は昨年度の実績報告書で報告しているので省略するが、永久磁石のみ使用する事により、ISOL用イオン源として必要不可欠な条件である。コンパクト化、省パワ-、メンテナンスの容易化が実現された設計となった。我々の設計したイオン源は強磁性体を有効につかい、小さな永久磁石により十分なミラ-磁場をつくり出すもので、この方法は安定元素用のECRイオン源でもはじめての試みであり(大きな永久磁石での例は数件最近報告されている)、もちろんISOL用イオン源でも例がない。そのため未知の部分、開発すべき要素が大きく、今年度は永久磁石及び強磁性体を強い磁場の力の中で容易に取りかえられるようにし、容易に様々な種類の試験を可能にするなどのイオン源の構造の細部の変更、及びイオン源の基礎デ-タ(ミラ-磁場の分布、マイクロ波のパワ-の吸収高率、等)の収集及び改良を行ない、目標とする性能に達するべく努力した。現在、問題点の解明及びその解決がかなり進んできた。基礎デ-タで満足すべき性能に達ししだい、当初の予定通り安定元素(Ar,Ne,O等ガス)を用いてオフ・ラインテストを行ない、その後、東京大学原子核研究所SFサイクロトロン施設に既存のISOLにとりつけてSFサイクロトロンからのビ-ムを用いてオン・ビ-ムテストを行なう予定である。 | KAKENHI-PROJECT-63460012 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63460012 |
モデル理論における単純性と融合可能性に関する研究 | PAのモデルに関する研究:自然数の上の乗法は加法だけからdefinableではない.この現象をより詳しく解析をした.そのためには自然数の超準モデルが必要になる.MをPAの超準モデルとする.I⊆MをMの始切片とする.すなわち,ω⊂Iであり,a<b∈Iならば常にa∈Iとなる部分集合とする.このとき,Mの加法構造へのreduct M|{+}の拡張M'であって,I上だけで乗法構造が一致するものが存在することを示した.本研究は村上雅彦氏との共同研究である.有限性を持つ理論に関する研究:関係記号だけからなる有限言語Lの構造Mにおいて,2点間の距離(自然数値)が定義される.またこの距離をもとに近傍概念が定義される.一般に近傍の状況を完全に記述することは不可能であるが,ここに局所有限性を仮定すると可能になる.その局所有限性とは各点a∈Mの各n∈ω近傍B_n(a)が有限になることである.また,さらに強い条件としてa∈Mの取り方によらずB_n(a)の大きさが一様に制限されるとき,一様局所有限性を持つといわれる.タイル理論に関連して(F. Ogerが定義したものとして)局所同型性がある.この研究では,これら二つの概念をモデル理論的に考察して,既存の概念を使った同値な表現を得ることに成功した.PAのモデルに関する研究:自然数の上の乗法は加法だけからdefinableではない.この現象をより詳しく解析をした.そのためには自然数の超準モデルが必要になる.MをPAの超準モデルとする.I⊆MをMの始切片とする.すなわち,ω⊂Iであり,a<b∈Iならば常にa∈Iとなる部分集合とする.このとき,Mの加法構造へのreduct M|{+}の拡張M'であって,I上だけで乗法構造が一致するものが存在することを示した.本研究は村上雅彦氏との共同研究である.有限性を持つ理論に関する研究:関係記号だけからなる有限言語Lの構造Mにおいて,2点間の距離(自然数値)が定義される.またこの距離をもとに近傍概念が定義される.一般に近傍の状況を完全に記述することは不可能であるが,ここに局所有限性を仮定すると可能になる.その局所有限性とは各点a∈Mの各n∈ω近傍B_n(a)が有限になることである.また,さらに強い条件としてa∈Mの取り方によらずB_n(a)の大きさが一様に制限されるとき,一様局所有限性を持つといわれる.タイル理論に関連して(F. Ogerが定義したものとして)局所同型性がある.この研究では,これら二つの概念をモデル理論的に考察して,既存の概念を使った同値な表現を得ることに成功した.(A)可算言語Lに対する非可算L-構造Mがquasi-minimalとは次の条件が成立することである.●任意のL(M)-formulaφ(x)に対して,その解集合φ^Mが可算またはその補集合-φ^Mが可算になる.strongly minimalな構造は必ず,quasi-minimalになる.また,ω_1-categoricalな構造がquasi-minimalになるのは,strongly minimalであるときに限る.しかし,unstableな構造であっても,quasi-minimalになるものは数多く存在することがわかる.我々の研究では,quasi-minimalな構造に対して,ある種の構造定理を構築したのをはじめ,次のような結果を得た:1.Tがω-stableの場合に次の二つの条件は同値になる:●Tはquasi-minimalなモデルを持つ:●Tはquasi-minimalなω-saturatedな構造を持つ.(B)また,ペアノ公理系(PA)のモデルに関する研究を行った.この研究では,PAのnonstandard modelの加法部分から乗法部分がどの程度決定されるかを考察した.その結果,我々は次を得た:2.PAのnonstandard modelに対して,そのreduct M_o=M|{+}を考える.M_oのPA言語への拡張M'でM≠M'(構造として)となるものがある.さらにこのM'はMと同型なものがとれる.融合とは二つの理論または構造の共通拡大である.その共通拡大がある条件を満たすように拡大できるか否かを研究した.genericな同型写像の存在問題は重要な問題であるが,これにはPAPAが関係している.PAPAはモデル上の同型写像に対する融合条件である.安定な(model complete)理論のモデルはPAPAを自動的に持つ.そこで問題となるのは非安定な場合である.Qの拡張についてはPAPAのないものが知られていたが,我々の研究では(*)independence propertyを持つランダムグラフ,ランダム2部グラフなどがPAPAを持たないことを示したこの結果はフランスでのSimpleton 2002研究集会数学会(秋季)などで発表した.また,Peano公理系は加法と乗法(および順序<)に関する理論で加法と乗法の融合と考えることができる.Peano公理系に関する研究を行い次のような結果を得た.(**)MをPeano公理系の超準モデルとしてIを切片とする.Iが乗法について閉じていればIの上の加法,乗法を保存するMの加法同型でIより上の乗法を保存しないものが存在する. | KAKENHI-PROJECT-13640099 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13640099 |
モデル理論における単純性と融合可能性に関する研究 | この結果は村上雅彦氏との共同研究であり,ノンスタンダード研究集会2002(弘前大学)で発表した. | KAKENHI-PROJECT-13640099 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13640099 |
ラマン分光法による水素結合型強誘電体の相転移の研究 | 本研究では、強誘電性を誘起する分極の実体の解明、水素結合型強誘電体の誘電相転移の発現機構に関する知見を得ようとする目的で、強誘電物質PbHPO_4(LHP)とその同型物質であるPbHAsO_4(LHA)のラマン分光および顕微ラマン分光を行い、さらにこれらの反射、吸収、発光など光学スペクトルの温度依存性の測定を行った。1. LHPのラマン分光については申請者等によりこれまで詳細に調べられている。本研究では、LHAのラマンスペクトルを初めて測定することに成功し、これらの温度依存性の詳細な測定をおこなった。これらの結果をLHPの結果と比較し、検討を行った結果、LHAにも10Kで72cm^<-1>にソフト化するモードが観測されること、その温度依存性はLHPのそれに比べて緩やかであることがわかった。さらに、観測されたラマン線のモード同定についても、偏光実験などによりこれを行うことができた。これらの研究成果については、J.Korean Phys.Soc.誌に発表し、さらに現在J.Chem.Phys.にも投稿準備中である。2. LHPとLHPの基礎吸収領域の偏光反射、吸収、発光、励起の各スペクトルを詳細に測定し,その光学的性質および電子構造について考察した。その結果をまとめると、LHPとLHAの基礎吸収は低温でそれぞれ5.1eVと4.6eVに存在すること、吸収端はアーバック則がよく成り立つこと、反射スペクトルの測定により、それぞれ5.7eVと5.3eVに偏光特性の著しい顕著な励起子構造が観測されることがわかった。得られた吸収端のスティープネス係数は低温から約180Kまで単調に増大するが、そののち減少しT_c以上では一定となるような特異な振る舞いを示すことがわかった。さらに,このスティープネス係数の異常な振る舞いは自発分極の温度依存性と密接な関係があることもわかった.すなわち,LHPでは励起子が水素の秩序化と強く相互作用している系であることをはじめて示した。これらの研究成果についてはJ.Electron Spectrosc.Relat.Phenom誌およびFerroelectrics誌に投稿し、いずれもこの4月に掲載予定である。本研究では、強誘電性を誘起する分極の実体の解明、水素結合型強誘電体の誘電相転移の発現機構に関する知見を得ようとする目的で、強誘電物質PbHPO_4(LHP)とその同型物質であるPbHAsO_4(LHA)のラマン分光および顕微ラマン分光を行い、さらにこれらの反射、吸収、発光など光学スペクトルの温度依存性の測定を行った。1. LHPのラマン分光については申請者等によりこれまで詳細に調べられている。本研究では、LHAのラマンスペクトルを初めて測定することに成功し、これらの温度依存性の詳細な測定をおこなった。これらの結果をLHPの結果と比較し、検討を行った結果、LHAにも10Kで72cm^<-1>にソフト化するモードが観測されること、その温度依存性はLHPのそれに比べて緩やかであることがわかった。さらに、観測されたラマン線のモード同定についても、偏光実験などによりこれを行うことができた。これらの研究成果については、J.Korean Phys.Soc.誌に発表し、さらに現在J.Chem.Phys.にも投稿準備中である。2. LHPとLHPの基礎吸収領域の偏光反射、吸収、発光、励起の各スペクトルを詳細に測定し,その光学的性質および電子構造について考察した。その結果をまとめると、LHPとLHAの基礎吸収は低温でそれぞれ5.1eVと4.6eVに存在すること、吸収端はアーバック則がよく成り立つこと、反射スペクトルの測定により、それぞれ5.7eVと5.3eVに偏光特性の著しい顕著な励起子構造が観測されることがわかった。得られた吸収端のスティープネス係数は低温から約180Kまで単調に増大するが、そののち減少しT_c以上では一定となるような特異な振る舞いを示すことがわかった。さらに,このスティープネス係数の異常な振る舞いは自発分極の温度依存性と密接な関係があることもわかった.すなわち,LHPでは励起子が水素の秩序化と強く相互作用している系であることをはじめて示した。これらの研究成果についてはJ.Electron Spectrosc.Relat.Phenom誌およびFerroelectrics誌に投稿し、いずれもこの4月に掲載予定である。本年度は、PbHPO_4(LHP)とその同型物質であるPbHAsO_4(LHA)の単結晶を作成し、通常のラマン分光、顕微ラマン分光を行い、さらに反射、吸収の光学スペクトルの温度依存性の測定を詳細に行った。得られた結果を以下にまとめる。1.LHPのラマン分光については申請者等によりこれまで詳細に調べられている。本研究では、LHAのラマンスペクトルを初めて測定することに成功し、これらの結果をLHPの結果と比較し、検討を行った。その結果、LHAにも10Kで72.2cm^<-1>にソフト化するモードが観測されたこと、その温度依存性はLHPのそれに比べても緩やかであることがわかった。さらに、観測されたラマン線のモード同定についても、偏光実験などによりこれを行うことができた。これらの研究成果については、1997年8月に韓国ソウルで開催された第9回強誘電体国際会議において発表した。2.LHPとLHAの基礎吸収領域の反射、吸収スペクトルの温度依存性を行った。 | KAKENHI-PROJECT-09640409 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09640409 |
ラマン分光法による水素結合型強誘電体の相転移の研究 | 低温における基礎吸収の立ち上がりはそれぞれ5.1eVと4.6eVにあり、さらに反射スペクトルにはそれぞれ5.7eVと5.3eVに顕著な励起子構造が観測されることを初めて明らかにした。これらの光学スペクトルの温度依存性を詳しく調べ、自発分極のそれと比較し検討を行った。これらの研究成果については、1997年11月に大阪で開催された光物性研究会'97で発表するとともに、この4月に開催の物理学会でも報告する予定である。さらに、本年8月のLos Angelesで開催の第12回VUV国際会議、スイスMontreuxで開かれる第11回ISAFと第4回ECAPDの合同国際会議にも発表を予定している。完成年度である本年度では、強誘電体PbHPO_4(LHP)とその同型物質であるPbHAsO_4(LHA)単結晶のラマン分光および顕微ラマン分光を行い、さらにこれらの反射、吸収、発光などの光学スペクトルの温度依存性の測定を詳細に行った。得られた結果を以下にまとめる。1. LHPのラマン分光については申請者等によりこれまで詳細に調べられている。本研究では、LHAのラマンスベクトルを初めて測定することに成功し、これらの温度依存性の詳細な測定をおこなった。これらの結果をLHPの結果と比較し、検討を行った結果、LHAにも10Kで720m^<-1>にソフト化するモードが観測されること、その温度依存性はLHPのそれに比べて緩やかであることがわかった。さらに、観測されたラマン線のモード同定についても、偏光実験などによりこれを行うことができた。これらの研究成果については、J.Korean Phys.Soc.誌に発表し、さらに現在J.Chem.Phys.にも投稿準備中である。2. LHPとLHAの基礎吸収領域の偏光反射、吸収、発光、励起の各スペクトルを詳細に測定し,その光学的性質および電子構造について考察した。その結果をまとめると、LHPとLHAの基礎吸収は低温でそれぞれ5.1eVと4,6eVにあること、吸収端はアーバック則がよく成り立つこと、反射スペクトルの測定にはそれぞれ5.7eVと5.3eVに偏光特性の著しい顕著な励起子構造が観測されることがわかった。得られた吸収端のスティープネス係数は低温から約180Kまで単調に増大するが、そののち減少し相転移温度以上では一定となるという特異な振る舞いを示すことがわかった。さらに,このスティープネス係数の異常な振る舞いは自発分極の温度依存性と密接な関係があることもわかった.これらの研究成果についてはJ.Electron Spectrosc.Relat.Phenom誌およびFerroelectrics誌に投稿し、いずれもこの4月に掲載予定である。 | KAKENHI-PROJECT-09640409 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09640409 |
光合成機能統御におけるカルシウムシグナルの発生と伝達の分子生物学的研究 | 本研究の目的は、光合成機能発現におけるカルシウムシグナル発生の分子機構を明らかにする研究の一環として、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)のCa^<2+>流入欠損株(mid1変異株)の致死性を相補する高等植物のcDNAを単離し、その機能を解析することである。昨年度はそのcDNAを単離することに成功したので、本年度はそのcDNA(ATU2と命名)の性質を調べ、次のような成果を得た。また、出芽酵母のMIDI遺伝子産物は伸展活性化Ca^<2+>透過チャネルであることを発見した(Kanzaki et al., Science285:882-886,1999)。なお、伸展活性化Ca^<2+>透過チャネルの遺伝子の発見は世界で初めてのことである。1.ATU2 cDNAは421アミノ酸残基のタンパク質をコードしており、Atu2タンパク質はMid1タンパク質と34%の相同性を有していた。2.ATU2 cDNAは酵母細胞内で発現させるとCa^<2+>の取込みを著しく増大させた。このことは、Atu2タンパク質が確かにCa^<2+>流入に関与することを示している。3.シロイヌナズナの各器官からmRNAを調製しノーザン解析を行った結果、ATU2は花、花茎、葉、根で発現していることが明かとなった。したがって、ATU2は間違いなく植物体で発現しているので、今後これらの器官における役割を明らかにする。4.そのために、ATU2欠損株の樹立、およびアンチセンスRNA発現トランスジェニック植物の作製を行った。本研究の目的は、光合成機能発現におけるカルシウムシグナル発生の分子機構を明らかにする研究の一環として、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)のCa^<2+>流入欠損株(mid1変異株)の致死性を相補する高等植物のcDNAを単離し、その機能を解析することである。昨年度はそのcDNAを単離することに成功したので、本年度はそのcDNA(ATU2と命名)の性質を調べ、次のような成果を得た。また、出芽酵母のMIDI遺伝子産物は伸展活性化Ca^<2+>透過チャネルであることを発見した(Kanzaki et al., Science285:882-886,1999)。なお、伸展活性化Ca^<2+>透過チャネルの遺伝子の発見は世界で初めてのことである。1.ATU2 cDNAは421アミノ酸残基のタンパク質をコードしており、Atu2タンパク質はMid1タンパク質と34%の相同性を有していた。2.ATU2 cDNAは酵母細胞内で発現させるとCa^<2+>の取込みを著しく増大させた。このことは、Atu2タンパク質が確かにCa^<2+>流入に関与することを示している。3.シロイヌナズナの各器官からmRNAを調製しノーザン解析を行った結果、ATU2は花、花茎、葉、根で発現していることが明かとなった。したがって、ATU2は間違いなく植物体で発現しているので、今後これらの器官における役割を明らかにする。4.そのために、ATU2欠損株の樹立、およびアンチセンスRNA発現トランスジェニック植物の作製を行った。 | KAKENHI-PROJECT-11151207 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11151207 |
非線形振動理論の研究 | 中立型関数微分方程式の解の振動行動を決定するために,解空間の構造を解析した。高階の微分作用素と差分作用素を主要部として持つ中立型関数微分方程式の摂動項が定符号の場合,すべての非振動解は,その漸近行動でクラス分けする事ができる。すべての非振動解のクラスについて,空集合となるための必要十分条件が得られれば,それらを組み合せる事によって,方程式のすべての解が振動するための必要十分条件を得る事ができる。まず,非振動解のクラス分けであるが,差分微分作用素の逆作用素としての和分積分作用素を適切に設定する必要がある。本研究の特色である,代数,幾何および解析の広い分野の手法を用いる事により,これらの作用素の持つ基本的な性質について,かなりの部分が明らかにされた。さらに,ある種の漸近行動を持つ関数空間にこの和分積分作用素を施して得られる空間についても,代数的,位相的および解析的な性質が明確になった。次いで、各々のクラスに属する解の存在性である。これを解明するには,差分微分方程式を適当な和分積分方程式に変形し,うまく設定された関数空間の中の不動点として,解を構成する必要がある。この部分についても新たな知見が得られ,非振動解が存在するための十分条件が確立された。今後の研究では,非振動解が存在するために必要条件を解析する事により,上記の中立型関数微分方程式の振動理論を構築する予定である。中立型関数微分方程式の解の振動行動を決定するために,解空間の構造を解析した。高階の微分作用素と差分作用素を主要部として持つ中立型関数微分方程式の摂動項が定符号の場合,すべての非振動解は,その漸近行動でクラス分けする事ができる。すべての非振動解のクラスについて,空集合となるための必要十分条件が得られれば,それらを組み合せる事によって,方程式のすべての解が振動するための必要十分条件を得る事ができる。まず,非振動解のクラス分けであるが,差分微分作用素の逆作用素としての和分積分作用素を適切に設定する必要がある。本研究の特色である,代数,幾何および解析の広い分野の手法を用いる事により,これらの作用素の持つ基本的な性質について,かなりの部分が明らかにされた。さらに,ある種の漸近行動を持つ関数空間にこの和分積分作用素を施して得られる空間についても,代数的,位相的および解析的な性質が明確になった。次いで、各々のクラスに属する解の存在性である。これを解明するには,差分微分方程式を適当な和分積分方程式に変形し,うまく設定された関数空間の中の不動点として,解を構成する必要がある。この部分についても新たな知見が得られ,非振動解が存在するための十分条件が確立された。今後の研究では,非振動解が存在するために必要条件を解析する事により,上記の中立型関数微分方程式の振動理論を構築する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-08640219 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08640219 |
包摂型力学系による二脚ロボットの複雑環境内自在移動制御 | 1環境情報を逐次取り込みながらロボットの移動すべき方向を即座に決定する上位誘導制御器、2地形と転倒防止条件に基づいて足着地位置を即座に決定する制御器、3脚・重心を協調させる下位制御器から成る包摂型二脚ロボット制御系を開発した.下位層は上位層から介入を受けながらも間断なく時間発展し、全体として一貫した力学系を構成するため、ロボットの状態や環境の変化を全て数ミリ秒程度の周期でフィードバックすることが可能になった.本年度は、(1)仮想流れ場形成器、(2)支持状態遷移制御器、(3)脚・重心協調制御器の開発を課題とした。(1)については、障害物により視野が制限される環境におかれたロボットが、現在の可視領域内に流れ場を形成し、それに従って移動しながら、可視領域と流れ場を動的に更新していくアルゴリズムを開発した。これにより、未知環境内の探索と経路計画を効率的に同時遂行することが可能になった。(3)について、当初は比較的開けた環境において重心を誘導する制御器を開発し、これを拡張して足場に制約のある環境に適用することを考えていた。しかし研究を進める過程で、重心の誘導を主とする制御器と足の踏み出し位置誘導を主とする制御器では、設計方針を変えるべきであることが分かった。このため、前者を重心誘導型制御器、後者を足着地位置誘導型制御器と位置づけ、別々に開発した。また、両者をシームレスに切り替えることも可能になった。このことを優先したため、(2)は次年度に保留することにした。シミュレータ上ではあるが、操縦者がロボットのおかれた環境・状況を認識し、上記の二つの制御器を切り替えて、飛び石のように足場が著しく制限される環境や段差の多い環境内でロボットを移動させることに成功した。上記のように、(1)(3)の課題のうち(2)を保留し、(3)の展開に充てた。重心誘導と足着地位置誘導とで制御器の設計方針を変えるべきであることが分かったのは、有用であった。またこのことに基づいて、足着地位置誘導型制御という新たな問題設定と解決を行うことができた。その結果、動的な環境変化や外力による摂動、操縦者からの指令変更に対してよりロバストな制御系を構築する下地ができたものと考える。このことによって、(2)で解決すべき問題はより単純化された。(1)と組み合わせる方法も明確になった。本年度は、昨年度保留した支持状態遷移制御器の拡張と、昨年度開発した足着地位置誘導型制御器とそれとの統合を主な課題とした。前者においては、開けた環境において両脚と体幹を矛盾なく目標地点へと運ぶための誘導則を離散制御器として設計し、目標地点が動的に変更されてもロバストに追跡することを達成していた。これを地形情報、すなわち着地点候補の凹凸や傾斜を自動的に反映するよう拡張した。地形は面切片の集合として与えられているものと仮定し、凹凸によって制約された足配置可能な領域を自動的に検出し、さらに傾斜に合わせて適応的に足の着地姿勢を修正する方法を開発した。後者については、特段の困難は無かった。開発していた足着地位置誘導型制御器は、従来の方法と比較して計算が軽量で、フィードバック量の計測・推定に対する要求精度も低減され、かつ目標地点の動的な変更に対し十分なロバスト性を有していた。上記の支持状態遷移制御器は離散制御器として実装され、また任意のタイミングにおける目標地点の変更を許容していたため、これらの二者は生来的に親和性が高かった。シミュレーション環境内に5度程度の傾斜を持つ階段状地形を設定し、それを挟んでロボットの10歩強程度前方に目標地点を設定したとき、ロボットは自律的に地形を踏破し目標地点に到達できた。また、階段状地形上を歩行している途中に目標地点を後方に急変更したとき、ロボットは転倒せず即座にそれに応答できた。さらに、昨年度開発した重心誘導型制御器を改良し、開けた環境でのロバスト全方位歩行の性能を更に向上することができた。本研究では、(1)仮想流れ場形成器、(2)支持状態遷移制御器、(3)脚・重心協調制御器それぞれの開発および拡張と、それらの統合によってロバストな二脚ロボット移動制御を達成することが目的である。初年度に(1)(3)の開発を達成し、同時に(3)は(3a)重心誘導型制御器および(3b)足着地位置誘導型制御器に分離して開発する方が望ましいと考え、計画を若干修正した。このことによって(2)と(3)の統合方法がより明確になった。すなわち(3b)は(2)と融合するが、(3a)は(2)を経由せず(1)と直接統合することが可能と分かった。2年目となる本年度は(2)の開発、(2)と(3b)の融合、(3a)の改良を達成した。結果的に、2か年かけて当初計画に実態をほぼ一致させられたと考えている。上記のように制御器を優先した代わりに、視覚処理による実環境の計測・モデル自動作成システムの開発および(1)への適用は保留した。本年度は予定通り、視覚処理による環境計測と地形地図自動生成システムの開発、それを用いたロボット誘導技術の開発、誘導技術と足着地位置誘導型制御器との統合を行った。環境計測は、シミュレーション上でエレベーションマップ(2.5次元地図)をオンライン逐次生成する方法を開発した。 | KAKENHI-PROJECT-15H02762 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H02762 |
包摂型力学系による二脚ロボットの複雑環境内自在移動制御 | OpenGLの深度マップを用いてレンジセンサを模擬し、地形の幾何形状モデルをレンダリングすることでセンサ計測値に相当するデータを得た。その際、実際の製品仕様に照らして計測誤差を(実際よりも低い精度条件で)乱数的に混入させたが、提案方法によってロボットの移動に問題ない程度の精度で地形を復元できることを確認した。逐次計算によるため高速かつ要求メモリが比較的小さいこと、共分散に基づいて推定された地形の局所的信頼性を同時に評価できる点が特長である。ロボット誘導としては、当初計画にあった仮想流れ場形成とそれに基づく支持状態遷移制御器の組み合わせではなく、上記の局所的信頼性に基づいて支持状態遷移を直接決定する方法を開発した。これは、足を接地可能な領域、ロボットの現在の状態に対し転倒せずに動作維持できる足着地位置候補の集合領域、運動学的に足先が到達可能な領域の共通領域の中で、指定された目標位置に最も効率的に接近できる足配置を決定するものである。エレベーションマップの構造をうまく利用することで、上記の三つの条件を満たす足配置をサブミリ秒で見出すことが可能になった。さらに前年度までに開発した足着地位置誘導型制御器をそのまま接続することで、即応的な二脚ロボット誘導システムを構成できた。操縦者により目標位置が急変更されても、また地形が動的に変化しても、鄒十ミリ秒オーダで応答し動作継続することが可能になった。1環境情報を逐次取り込みながらロボットの移動すべき方向を即座に決定する上位誘導制御器、2地形と転倒防止条件に基づいて足着地位置を即座に決定する制御器、3脚・重心を協調させる下位制御器から成る包摂型二脚ロボット制御系を開発した.下位層は上位層から介入を受けながらも間断なく時間発展し、全体として一貫した力学系を構成するため、ロボットの状態や環境の変化を全て数ミリ秒程度の周期でフィードバックすることが可能になった.予定通り、視覚処理による実環境の計測・モデル自動作成システムを開発する。(1)で仮想環境を対象に実装したアルゴリズムを、実環境に適用できるようにする。また、(1)と(3)の重心誘導型制御器を統合する。(1)で形成された仮想流れ場内にロボットがおかれたとき、流れベクトルがそのまま重心のノミナル目標速度となる。したがって、障害物の少ない開けた環境であればこれは問題なく行えるものと期待する。さらに、(1)に組み込む形で(2)支持状態遷移制御器を開発する。(1)においては、可視領域/不可視領域という観点で流れ場を形成した。これに合わせて地形情報を考慮することで、踏破可能性まで考慮した流れ場と、同時に踏破可能な領域の検出を行い、同領域上に動的に支持状態の候補を配置するアルゴリズムを開発する。残る課題は、保留した視覚処理による実環境の計測・モデル自動作成システムの開発および(1)への適用、(1)と(3a)の統合、(1)と(2)の統合である。環境モデルは、現在のところ面切片群として与えられるとしており、これにより地形の凹凸や傾斜が誤差なく分かるという仮定を置いている。実際に用いる予定の測域センサを想定し、視点からの距離に応じて集められる点群密度が異なる条件で、2.5次元地図を逐次的に作成・更新する方法を開発する。またそれに即した(1)の実装を行う。(1)と(3a)および(1)と(2)の統合は、昨年度の実績報告書に記した通り問題なく行えるものと見込んでいる。29年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-15H02762 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H02762 |
糖鎖修飾による小胞体品質管理の制御機構 | 本研究では,糖鎖修飾による小胞体品質管理制御のメカニズムを明らかにすることを目的としている.マンノース転移酵素Pmt2pによる異常タンパク質のO-マンノシル化は,小胞体におけるタンパク質の変性修復の機構のひとつであると考えられる.われわれはこれまでに,2種類の異常タンパク質をO-マンノシル化の基質として同定したが,これらはともに可溶性タンパク質の変異体であった.本年度は,Pmt2p依存にO-マンノシル化を受ける異常タンパク質として,出芽酵母Nep98pの温度感受性変異体を新たに同定した.Nep98pは膜貫通領域をひとつ持つ膜内在性の核膜タンパク質であり,温度感受性変異は内腔側領域に存在する.以上の結果は,高次構造に異常を示す領域が内腔側に存在することがO-マンノシル化を受けるためには必要であり,O-マンノシル化と基質の膜への結合性との間に関連がないことを示唆している.本研究では,マウスEDEMの酵母ホモログであり.ERADシグナルとなる糖鎖構造を認識する因子の有力な候補であるMnl1pの機能解析も目的としている.われわれは,ゲノム配列の解析から,シロイヌナズナのMnl1pホモログを見いだし,その機能が多細胞生物の個体レベルでどのような意義を持つかについても解析を行なっている.本年度は,シロイヌナズナのMnl1pホモログの機能について,酵母mnl1変異体のERAD欠損の相補能を指標として検討した.しかし,シロイヌナズナMnl1pホモログは,同時にその活性の検討を行ったマウスEDEMと共に,酵母mnl1変異体のERAD欠損の相補能を持たないことが明らかとなった.本研究では,糖鎖修飾による小胞体品質管理制御のメカニズムを明らかにすることを目的としている.異常タンパク質のO-マンノシル化は,小胞体におけるタンパク質の変生修復の機構のひとつであると考えられる.O-マンノシル化をうけることによって異常タンパク質は凝集体を形成しにくくなり,O-マンノシル化を受けた異常タンパク質は細胞外に分泌されるようになる.本年度はO-マンノシル化による異常タンパク質の修復機構について以下の解析を行なった.pmt2変異とder1変異(またはcue1変異)の両方を持つ2重変異株は,O-マンノシル化と小胞体関連分解(ERAD)の両方に欠損を持つ.この株では,恒常的な小胞体ストレス応答の活性化と,ツニカマイシン処理に対する感受性の上昇が観察された.また2重変異株では,O-マンノシル化を受ける異常タンパク質の一つであるΔproとhsp70ファミリーの分子シャペロンBiPが小胞体内で凝集体を形成していることを示唆する局在を示した.以上の結果は,O-マンノシル化とERADは小胞体における異常タンパク質の処理機構として相補的な関係にあることを示唆している.本年度はさらに,Δproを基質としたO-マンノシル化反応のin vitro再構成系の確立も行なった.本研究では,ERADシグナルとなる糖鎖構造を認識する因子の有力な候補である酵母Mnl1pの機能解析も目的としている.われわれは,ゲノム配列の解析から,シロイヌナズナのMnl1pホモログを見いだし,その機能が多細胞生物の個体レベルでどのような意義を持つかについても解析を行なっている.本年度は,GFP融合タンパク質を用いた解析から,シロイヌナズナMnl1pホモログが小胞体に局在することを示すとともに,RNA干渉を利用したノックダウンの系の作製を行なった.本研究では,糖鎖修飾による小胞体品質管理制御のメカニズムを明らかにすることを目的としている.マンノース転移酵素Pmt2pによる異常タンパク質のO-マンノシル化は,小胞体におけるタンパク質の変性修復の機構のひとつであると考えられる.われわれはこれまでに,2種類の異常タンパク質をO-マンノシル化の基質として同定したが,これらはともに可溶性タンパク質の変異体であった.本年度は,Pmt2p依存にO-マンノシル化を受ける異常タンパク質として,出芽酵母Nep98pの温度感受性変異体を新たに同定した.Nep98pは膜貫通領域をひとつ持つ膜内在性の核膜タンパク質であり,温度感受性変異は内腔側領域に存在する.以上の結果は,高次構造に異常を示す領域が内腔側に存在することがO-マンノシル化を受けるためには必要であり,O-マンノシル化と基質の膜への結合性との間に関連がないことを示唆している.本研究では,マウスEDEMの酵母ホモログであり.ERADシグナルとなる糖鎖構造を認識する因子の有力な候補であるMnl1pの機能解析も目的としている.われわれは,ゲノム配列の解析から,シロイヌナズナのMnl1pホモログを見いだし,その機能が多細胞生物の個体レベルでどのような意義を持つかについても解析を行なっている.本年度は,シロイヌナズナのMnl1pホモログの機能について,酵母mnl1変異体のERAD欠損の相補能を指標として検討した.しかし,シロイヌナズナMnl1pホモログは,同時にその活性の検討を行ったマウスEDEMと共に,酵母mnl1変異体のERAD欠損の相補能を持たないことが明らかとなった. | KAKENHI-PROJECT-15040210 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15040210 |
メンタルイメージ想起中の心理生理的反応とイメージスキル獲得過程に関する研究 | 本研究は元一流競泳選手1名を対象に運動イメージをおこなわせ、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて、関連する脳内賦活部位を抽出することを目的としたものである。イメージトレーニングの有用性を検証するとともに、応用的な観点からイメージトレーニングの目的に応じた有効なイメージ方法の探索を試みた。イメージ課題には、1)自動化されている泳動作のイメージと不慣れな走動作のイメージ、2)漠然としたイメージとキューワードを用いたイメージ、3)技術習熟に焦点を当てたメンタルプラクティスと試合をシミュレートするメンタルリハーサルの比較検討を狙いとした5課題(漠然とした泳動作、キューワード使用の泳動作、試合リハーサル、漠然とした走動作、キューワード使用の走動作)が含まれた。安静とイメージを交互に5試行ずつおこなうブロックパラダイムを用い、EPI法で測定した。試合のリハーサルイメージを除いた4課題において補足運動野の賦活がみられ、先行研究の結果と一致した。漠然とイメージした場合、泳動作と走動作の両者において、補足運動野のほかに運動前野と第一次運動野の賦活が認められた。また、漠然とした泳動作イメージにのみ、わずかではあったが右小脳の賦活が確認された。これらの部位は先行研究において運動関連領野として同定されているものであり、イメージ想起が運動実行と類似したシミュレーション的なニューラルネットワーク活動であることを支持するものである。しかし、今回の実験では課題間の差異を実証しうる結果は得られなかった。本研究は1名を対象とした事例的報告であるため、賦活部位の大まかな把握は可能であったが、データ数と解析精度という点で課題が残っており、今後さらなる検討が必要である。本研究は元一流競泳選手1名を対象に運動イメージをおこなわせ、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて、関連する脳内賦活部位を抽出することを目的としたものである。イメージトレーニングの有用性を検証するとともに、応用的な観点からイメージトレーニングの目的に応じた有効なイメージ方法の探索を試みた。イメージ課題には、1)自動化されている泳動作のイメージと不慣れな走動作のイメージ、2)漠然としたイメージとキューワードを用いたイメージ、3)技術習熟に焦点を当てたメンタルプラクティスと試合をシミュレートするメンタルリハーサルの比較検討を狙いとした5課題(漠然とした泳動作、キューワード使用の泳動作、試合リハーサル、漠然とした走動作、キューワード使用の走動作)が含まれた。安静とイメージを交互に5試行ずつおこなうブロックパラダイムを用い、EPI法で測定した。試合のリハーサルイメージを除いた4課題において補足運動野の賦活がみられ、先行研究の結果と一致した。漠然とイメージした場合、泳動作と走動作の両者において、補足運動野のほかに運動前野と第一次運動野の賦活が認められた。また、漠然とした泳動作イメージにのみ、わずかではあったが右小脳の賦活が確認された。これらの部位は先行研究において運動関連領野として同定されているものであり、イメージ想起が運動実行と類似したシミュレーション的なニューラルネットワーク活動であることを支持するものである。しかし、今回の実験では課題間の差異を実証しうる結果は得られなかった。本研究は1名を対象とした事例的報告であるため、賦活部位の大まかな把握は可能であったが、データ数と解析精度という点で課題が残っており、今後さらなる検討が必要である。本研究は2年間の継続研究とし、本年度はイメージトレーニング・プログラムの開発に取り組み、現場からのフィードバックを得ることで、より実践に即したプログラムの考案を目的とした。1)競技特性(競泳)に適合するイメージトレーニング・プログラムの開発:本研究は介入研究であるため、より高い学習効果を得るには適切なプログラムの開発が重要課題であり、したがって第1段階として、競技力向上を狙いとするイメージトレーニング・プログラムの開発と導入を当面の課題とした。・段階的アプローチを考案し、基礎編、応用編、専門的実践編に大別・基礎編/応用編:2週間に1回の頻度で講習会を実施し、その間に行うイメージの練習内容を細かく指示し、グループで自主的に実施・専門実践編:水中練習の中にイメージトレーニングを導入し、レースペースを中心とした試合感覚を身につける効果を目的としたイメージ想起2)予備実験:基礎編・応用編でイメージトレーニングについて選手に理解してもらったところで、3名に対して予備実験を行い、生体反応測定(脳波・心拍数、呼吸)、イメージ想起タイムの測定、およびイメージ内容についての自己評価と内省報告を実施した。これら複数の指標を用いた分析結果をもとに、イメージトレーニングの学習効果の評価方法について検討中である。本研究は競泳選手のためのイメージトレーニング・プログラムの開発を主な目的とし,イメージ能力向上とパフォーマンス力向上への効果について検討することとした.第一段階として選手や指導者が必要と考えるイメージトレーニングの内容についてアンケート調査を行ったところ,トレーニング期,試合期,調整期で求められるイメージは同質でないことが明らかになった.この結果から,まずはトレーニング期におけるイメージの利用にテーマを絞り,全国学生選手権上位8位入賞レベルの大学生競泳選手6名を対象とし,4週間のトレーニング期間を設け,学習効果を事例的に検討することとした.トレーニング期に必要とされる「泳ぎの改善」に向け,ビデオ分析にて各自設定した課題を,水中練習中および時間外にイメージを用いて実践的にトレーニングした.学習効果の評価は2本立てとし, | KAKENHI-PROJECT-11680061 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11680061 |
メンタルイメージ想起中の心理生理的反応とイメージスキル獲得過程に関する研究 | 1)プログラム前後に課題イメージを行い,内容の自己評価および心拍数を用いてイメージ能力を測定,2)プログラム終了直後に行われた試合にて,選手と指導者の評価からパフォーマンス向上に関する学習効果を測定した.分析の結果,イメージ能力は視覚的イメージより感覚的イメージへ移行する傾向が見られ,イメージのでき具合は体調や気分などコンディションに依存することが認められた.パフォーマンス評価は,課題が十分に完成されていなかったことからも,試合で課題が十分発揮されたか,技術面・心理面での安定性につながったかという問いに対しては評価にばらつきが見られた.一方,イメージトレーニングによって練習中・試合での目的意識が高まったという点では共通して高く評価されていた.このことから,トレーニング期に課題に焦点をあててイメージトレーニングすることは,技能向上のみならず,やる気や目的意識の向上という二次的効果が期待できることが明らかとなった.心拍変動との関連については続報にて報告するものとする. | KAKENHI-PROJECT-11680061 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11680061 |
機能性ナノキャピラリ中の生体分子移動のモデリング | 電解質水溶液(一価イオン)の濃度が100mMから0.1μMのとき、水溶液のデバイ長(イオンが局所的な電場の影響を受ける距離)はナノメートルのオーダーになる。チャネルの壁が電荷を持ち、チャネルの幅がデバイ長さよりも小さい場合はチャネルの内部は実質的に対イオン(壁の電荷と逆符号の電荷をもつイオン)のみのユニポーラな水溶液となる。一方、チャネルの幅がデバイ長さよりも大きい場合はチャネルの内部は対イオンと副イオン(壁の電荷と逆符号と同符号の電荷をもつイオン)のバイポーラな水溶液となる。いずれの条件においても、チャネルの一部の表面電荷を外部電極に電圧を加える等により変化させると、半導体のトランジスタと同様の原理で、ナノチャネル内部の電流(イオンの流れ)を制御することができる。前者においては電界効果トランジスタと似た特徴をもち、後者においては接合型トランジスタと似た特徴をもつ。しかし後者においては、チャネルの幅がデバイ長さよりも遥かに大きくなると、電気泳動によるイオンの流れの制御よりも、電気浸透による液体の流れの制御の効果が強くなり、いわゆるマイクロポンプとなる。本研究においては、理論計算により、シリカナノチューブと電解質水溶液によって接合型トランジスタやダイオードと同様な動作原理をもつ装置が実現できることを示し、その装置を組み合わせることによって、バイオセンサーとして利用することができることを指摘した。電解質水溶液(一価イオン)の濃度が0.1Mから0.1μMのとき、水溶液のデバイ長(イオンが局所的な電場の影響を受ける距離)はナノメートルのオーダーになる。チャネルの壁が電荷を持ち、チャネルの幅がデバイ長と同程度であると、チャネルの内部が全て電気二重層の内部となり,カウンターイオン(壁の電荷と逆符号の電荷をもつイオン)のみがチャネル内に入ることができる。このような状態を人工的に作り出すことによってさまざまな応用を考えることができる。例えば、(1)チャネルの両端に電位差を与えると電気泳動現象が見られるが、壁面に生体分子や化学物質を吸着させることにより表面電荷密度を制御すると、チャネルを流れる電流が変わる。この現象はセンサーに応用することができる。また、(2)チャネルの両端に圧力差を与えると流体が動き、その結果、電流、電圧を生じるが、力学的な仕事を電気エネルギーに変えることに着目すれば、小型発電装置に応用することができる。今年度は主に、機能性ナノチャネルを用いた様々な装置について、熱、物質、電気移動現象を解析することにより、その実現可能性について検討した。特に、ナノチャネルの内部を液体で満たしたナノフルイディックチャネルを対象とし、表面を機能化することにより、センサー、発電装置として応用できることを示した。また、装置の原理を提案するだけでなく、実用化に際して問題点となる箇所を明らかにした。電解質水溶液(一価イオン)の濃度が100mMから0.1μMのとき、水溶液のデバイ長(イオンが局所的な電場の影響を受ける距離)はナノメートルのオーダーになる。チャネルの壁が電荷を持ち、チャネルの幅がデバイ長さよりも小さい場合はチャネルの内部は実質的に対イオン(壁の電荷と逆符号の電荷をもつイオン)のみのユニポーラな水溶液となる。一方、チャネルの幅がデバイ長さよりも大きい場合はチャネルの内部は対イオンと副イオン(壁の電荷と逆符号と同符号の電荷をもつイオン)のバイポーラな水溶液となる。いずれの条件においても、チャネルの一部の表面電荷を外部電極に電圧を加える等により変化させると、半導体のトランジスタと同様の原理で、ナノチャネル内部の電流(イオンの流れ)を制御することができる。前者においては電界効果トランジスタと似た特徴をもち、後者においては接合型トランジスタと似た特徴をもつ。しかし後者においては、チャネルの幅がデバイ長さよりも遥かに大きくなると、電気泳動によるイオンの流れの制御よりも、電気浸透による液体の流れの制御の効果が強くなり、いわゆるマイクロポンプとなる。本研究においては、理論計算により、シリカナノチューブと電解質水溶液によって接合型トランジスタやダイオードと同様な動作原理をもつ装置が実現できることを示し、その装置を組み合わせることによって、バイオセンサーとして利用することができることを指摘した。 | KAKENHI-PROJECT-16760149 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16760149 |
単一光子検出法による0.1meV領域の宇宙由来アクシオンの探索 | 本研究では、暗黒物質の正体をアクシオンであると考え、リドベルグ原子を用いた単一光子検出装置による探索実験を行うことを目的としている。具体的には、これまでの探索実験装置における課題であった共振空胴中の残留電場による影響を解決すべく現有装置CARRACKを改良し、全ての標準的アクシオン模型に感度のある探索実験を行い、質量ma = 100μeV近傍の領域における暗黒物質・アクシオンの存在の検証を行う。平成30年度は昨年度に引き続き、現有装置CARRACKの改良を主として行った。具体的には、1)リドベルグ原子ビームとして残留電場の影響を受けにくいカリウムを採用したバンチ化原子ビーム発生装置の開発、2)アクシオン転換光子を吸収したリドベルグ原子を検出するためのフィールドイオン化装置の改良である。1)は、原子ビーム発生部・第一圧縮部・加速部・第二圧縮部・速度選別部・ビームモニター部からなる。本年度は昨年度に発生した真空リークを修正後、引き続き性能試験を行うとともに、レーザーの光学系の整備を進めた。前年度までの個別試験の結果に基づき光学径路を設計した。2)は長時間の測定において不安定であった既存の検出器(チャンネルトロン)から、加速電極・シンチレータ・光ファイバー・光電子増倍管からなるシステムへの変更である。昨年度に行ったテスト用真空装置での性能試験で判明した光電子増倍管の熱雑音によるバックグラウンドをおさえるべく、冷却装置の設計と組み込みを行った。ハードウェア及びソフトウェアからなるデータ取得システムの整備も開始した。昨年度の実験場所の変更に伴う遅れを回復するには至っていない。また、新しい実験場所は借用料が必要なため、当初予定していた予算配分を変更せざるを得なくなった。物品の新規購入を控えて、いくつかの老朽化した装置(真空ポンプ、検出回路等)を修理をしながら使用しているため、時間的な遅れが生じている。バンチ化原子ビーム発生装置については、引き続いて、第二圧縮部・速度選別部を組み込んでテスト実験を行う。フィールドイオン化部については、光電子増倍管の冷却装置のテストを行い、全体としての性能確認試験を行う。さらにCARRACK装置の各部分(共振空洞、超伝導マグネット、励起用レーザー、希釈冷凍機、制御・データ取得系)についてメンテナンスと性能確認テストを行い、探索実験に備える。最終的に全体を組み立ててテスト運転を行い、アクシオン探索実験に十分な性能が得られていることを確認する。我々は暗黒物質の正体をアクシオンであると考え、リドベルグ原子を用いた単一光子検出装置による探索実験を行う。これまでの探索実験の課題であった共振空胴中の残留電場による影響を解決すべく現有装置CARRACKを改良し、全ての標準的アクシオン模型に感度のある探索実験を行い、質量ma = 100 μeV近傍の領域における暗黒物質・アクシオンの存在の検証を行うことを目的としている。平成28年度は現有装置CARRACKの改良を主として行った。具体的には、1)重いターゲット質量に合わせて高次モードで使用する共振空胴の設計、2)外場の影響を受けにくい原子種としてカリウムの選定、3)バンチ化原子ビーム発生装置の開発である。特に3)は1)の高次モード使用に伴う有効体積の減少によって生じる検出効率の低下を補償するためのものである。具体的には、これまで連続的であったリドベルグ原子ビームを空胴中の原子数を保ちながら(高輝度化)、フィールドイオン化検出装置のパルス電場のタイミングに合わせてバンチ化する。レーザー冷却の原理を応用し、回転ディスク型速度選別機の利用により、空間的・時間的に広がりの小さな集団にして局所化する。このバンチ化原子群が共振空胴中に常に一つだけ存在し、かつフィールドイオン化部でパルス電場のタイミングと一致するように制御する。申請時点でいくつかの部品の設計と製作は行っていたので、本年度は残る回転ディスク型速度選別機について検討を行い、設計を進めた。また、レーザー冷却・加速には多数のレーザー光を使用するため、複数台の外部共振器型半導体レーザーの整備も行った。またフィールドイオン化部の電子検出器について、申請時には想定していなかったが、より長時間の安定動作が可能な検出器のアイディアをシミュレーション等で確認し、それに基づき設計を始めた。申請時に使用を予定していた実験室が事情により使用できなくなったため、平成28年度は代表者・分担者の各機関で分散して開発・研究を行うことになった。代表者・分担者間の連絡はメール・テレビ会議などで密に行っていたが、各機関での実験室の物理的なスペースの制約等もあり、当初計画よりは多少の遅れが生じてしまった。なお、29年度からは別の実験室の確保ができたため、そちらに改良・開発中の装置を集約することにより、効率的な開発研究を進め、遅れを取り戻していきたい。本研究では、暗黒物質の正体をアクシオンであると考え、リドベルグ原子を用いた単一光子検出装置による探索実験を行うことを目的としている。具体的には、これまでの探索実験装置における課題であった共振空胴中の残留電場による影響を解決すべく現有装置CARRACKを改良し、全ての標準的アクシオン模型に感度のある探索実験を行い、質量ma = 100μeV近傍の領域における暗黒物質・アクシオンの存在の検証を行う。平成30年度は昨年度に引き続き、現有装置CARRACKの改良を主として行った。 | KAKENHI-PROJECT-16H03974 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H03974 |
単一光子検出法による0.1meV領域の宇宙由来アクシオンの探索 | 具体的には、1)リドベルグ原子ビームとして残留電場の影響を受けにくいカリウムを採用したバンチ化原子ビーム発生装置の開発、2)アクシオン転換光子を吸収したリドベルグ原子を検出するためのフィールドイオン化装置の改良である。1)は、原子ビーム発生部・第一圧縮部・加速部・第二圧縮部・速度選別部・ビームモニター部からなる。本年度は昨年度に発生した真空リークを修正後、引き続き性能試験を行うとともに、レーザーの光学系の整備を進めた。前年度までの個別試験の結果に基づき光学径路を設計した。2)は長時間の測定において不安定であった既存の検出器(チャンネルトロン)から、加速電極・シンチレータ・光ファイバー・光電子増倍管からなるシステムへの変更である。昨年度に行ったテスト用真空装置での性能試験で判明した光電子増倍管の熱雑音によるバックグラウンドをおさえるべく、冷却装置の設計と組み込みを行った。ハードウェア及びソフトウェアからなるデータ取得システムの整備も開始した。昨年度の実験場所の変更に伴う遅れを回復するには至っていない。また、新しい実験場所は借用料が必要なため、当初予定していた予算配分を変更せざるを得なくなった。物品の新規購入を控えて、いくつかの老朽化した装置(真空ポンプ、検出回路等)を修理をしながら使用しているため、時間的な遅れが生じている。本研究では、暗黒物質の正体をアクシオンであると考え、リドベルグ原子を用いた単一光子検出装置による探索実験を行うことを目的としている。具体的には、これまでの探索実験装置における課題であった共振空胴中の残留電場による影響を解決すべく現有装置CARRACKを改良し、全ての標準的アクシオン模型に感度のある探索実験を行い、質量ma = 100μeV近傍の領域における暗黒物質・アクシオンの存在の検証を行う。平成29年度は昨年度に引き続き、現有装置CARRACKの改良を主として行った。具体的には、1)リドベルグ原子ビームとして残留電場の影響を受けにくいカリウムを採用したバンチ化原子ビーム発生装置の開発、2)アクシオン転換光子を吸収したリドベルグ原子を検出するためのフィールドイオン化装置の改良である。1)は、原子ビーム発生部・第一圧縮部・加速部・第二圧縮部・速度選別部・ビームモニター部からなる。本年度は第二圧縮部・速度選別部を除く部分について、組み合わせを変更しながら性能確認試験を進めた。第一圧縮部及び加速部については、電磁石・永久磁石を用いてビームパイプ内に適切な磁場を生成しているが、後述する運送時のトラブルにより、想定していた磁場プロファイルからのずれが確認されたため、修正を行った。また、組み立て後に真空試験を行った結果、リーク箇所があることが判明した。2)は長時間の測定において不安定であった既存の検出器(チャンネルトロン)から、加速電極・シンチレータ・光ファイバー・光電子増倍管からなるシステムへの変更である。昨年度までに行ったシミュレーションに基づいて設計製作を行い、テスト用真空装置への組み込みを行い、初期の性能試験を行った。当初予期していなかった事情により実験場所を変更する必要に迫られ、実験装置の運搬を行った。その際にバンチ化原子ビーム発生装置の一部にダメージを負った。具体的には「研究実績の概要」に書いた、磁場プロファイルのずれと真空漏れである。 | KAKENHI-PROJECT-16H03974 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H03974 |
政治改革のインパクトの理論的・実証的分析-選挙・政治資金・議会過程- | 1.議員立法の活性化の分析を進めるため,1947年の第1回国会から1998年の第144回国会までの衆議院議員提出法律案(衆法)について,提出者の所属会派,各院における付託日,委員会議決,会派ごとの賛否の情報,本会議議決,修正・否決の場合の回付,衆議院再議決,法案成立の場合の公布日などの分析用データ・ファイルを作成した.2.近年の議員立法の活性化と対照をなす1950年代以降の議員立法の衰退に関して,数量分析で特質を分析し,議員立法発議要件過重化に至る国会法改正過程を検討し,政治アクターたちにとって国会法改正がどのような意味をもったかを分析した.議員立法の衰退の原因は,国会法改正よりもその後に別に形成された制度ルールが重要だったことがわかった.3.1994年の政治資金規正法改正により透明度の高まった政治資金全国調査データを利用して,政治資金支出と選挙競争の関連性に関する初の包括的研究を行った.4.2000年9月から官報および全国47都道府県の公報に順次掲載された1999年政治資金収支報告書の概要(中央届け出分および地方届け出分),および,2000年6月25日執行の衆議院総選挙の選挙運動費用収支報告書の概要に関する全国47都道府県の公報掲載資料を収集し,データ入力した.2000年総選挙における小選挙区結果データおよび比例代表選挙結果データを小選挙区単位で政党ごとに集計し直したデータ・ファイルを作成した.また,市区町村ごとに集計された1995年国勢調査データを小選挙区単位で集計し直したデータ・ファイルを作成した.5.4で作成したすべてのデータを統合することにより,政治改革のインパクトの理論的・実証的分析のためのデータ・ファイルを作成し,1996年および2000年総選挙における戦略投票,政党間協力,政治資金の効果に関する分析を進めていく.1.議員立法の活性化の分析を進めるため,1947年の第1回国会から1998年の第144回国会までの衆議院議員提出法律案(衆法)について,提出者の所属会派,各院における付託日,委員会議決,会派ごとの賛否の情報,本会議議決,修正・否決の場合の回付,衆議院再議決,法案成立の場合の公布日などの分析用データ・ファイルを作成した.2.近年の議員立法の活性化と対照をなす1950年代以降の議員立法の衰退に関して,数量分析で特質を分析し,議員立法発議要件過重化に至る国会法改正過程を検討し,政治アクターたちにとって国会法改正がどのような意味をもったかを分析した.議員立法の衰退の原因は,国会法改正よりもその後に別に形成された制度ルールが重要だったことがわかった.3.1994年の政治資金規正法改正により透明度の高まった政治資金全国調査データを利用して,政治資金支出と選挙競争の関連性に関する初の包括的研究を行った.4.2000年9月から官報および全国47都道府県の公報に順次掲載された1999年政治資金収支報告書の概要(中央届け出分および地方届け出分),および,2000年6月25日執行の衆議院総選挙の選挙運動費用収支報告書の概要に関する全国47都道府県の公報掲載資料を収集し,データ入力した.2000年総選挙における小選挙区結果データおよび比例代表選挙結果データを小選挙区単位で政党ごとに集計し直したデータ・ファイルを作成した.また,市区町村ごとに集計された1995年国勢調査データを小選挙区単位で集計し直したデータ・ファイルを作成した.5.4で作成したすべてのデータを統合することにより,政治改革のインパクトの理論的・実証的分析のためのデータ・ファイルを作成し,1996年および2000年総選挙における戦略投票,政党間協力,政治資金の効果に関する分析を進めていく.1.議員立法の活性化の分析を進めるため,当初の計画では1992年の第125国会以降現在までの衆議院議員提出法律案(衆法)について,提出者の所属会派,各院における付託日,委員会議決,会派ごとの賛否の情報,本会議議決,修正・否決の場合の回付,衆議院再議決,法案成立の場合の公布日などの分析用データファイルの作成をめざしたが,予定よりも順調に進み,昨年度に作成済みの第1第31国会のデータと合わせて,現在までのすべての衆法データを完成させた.2.近年の議員立法の活性化と対照をなす1950年代以降の議員立法の衰退に関して,数量分析で特質を分析し,議員立法発議要件過重化に至る国会法改正過程を検討し,政治アクターたちにとって国会法改正がどのような意味をもったかを分析した.議員立法の衰退の原因は,国会法改正よりもその後に別に形成された制度ルールが重要だったことがわかった.3.1994年の政治資金規正法改正により透明度の高まった政治資金全国調査データを利用して,政治資金支出と選挙競争の関連性に関する初の包括的研究を行った.分析の結果,候補者の選挙運動費用支出をもっとも強く規定するのは法定選挙運動費用であり,選挙運動規制が選挙運動および選挙運動費用のあり方を決定するというよく知られた事実が確認された.他方で,候補得票率の分析において,選挙運動費用,小選挙区支部支出,資金管理団体支出が得票率に対して影響力をもつことが明らかとなった.また,実際に得票率を変化させる効果は,選挙運動費用と資金管理団体支出はほぼ同じか後者の方が大きかった. | KAKENHI-PROJECT-11620068 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11620068 |
政治改革のインパクトの理論的・実証的分析-選挙・政治資金・議会過程- | このことから,結局,政治と金の問題は,政治資金の効果はあるがそれほど大きくないことから引き起こされており,政治に金がかかるという政治家の嘆きは,巨額の資金に見合う効果がわずかしかないということだったと考えられるのである.1.2000年9月から官報および全国47都道府県の公報に順次掲載された1999年政治資金収支報告書の概要(中央届け出分および地方届け出分),および,2000年6月25日執行の衆議院総選挙の選挙運動費用収支報告書の概要に関する全国47都道府県の公報掲載資料を収集した.本報告書執筆現在,政治資金収支報告書はすべて収集を終えたが,選挙運動費用収支報告書は6都県がまだ公表していないため41道府県分について収集できている.これらのデータの入力を順次進めている.2.2000年総選挙における小選挙区結果データを入力・整理するとともに,比例代表選挙結果データを入手し,小選挙区単位で政党ごとに集計し直したデータ・ファイルを作成した.また,市区町村ごとに集計された1995年国勢調査データを小選挙区単位で集計し直したデータ・ファイルを作成した.3.1で作成を進めている政治資金データ,選挙運動費用データを2で作成した総選挙データ,国勢調査データと統合することにより,政治改革のインパクトの理論的・実証的分析のためのデータ・ファイルを作成する.現段階では,1のデータが未完成であるが,部分的に完成した分から分析に活用して,1996年および2000年総選挙における戦略投票,政党間協力,政治資金の効果に関する分析を進めていく.4.2000年総選挙に関する予備的な分析結果として,読売新聞2000.7.6の「論点2000年総選挙」欄へ「森政権信任選挙協力の産物」を発表し,また,編著書の『現代の政党と選挙』(有斐閣,アルマ・シリーズ,2001年)の第7章「日本の政党間競争と選挙」を発表した.その要点は,「不人気でかつ首相としての資質が問われていた森首相であったにもかかわらず,森政権を信任した」という逆説的結果を有権者が選んだ2000年総選挙結果を,小選挙区中心の選挙制度の特性に対応して,連立与党が徹底した候補調整を行って無駄な競合をなくした選挙協力の成功に求めた.2000年総選挙結果は,有権者の側の戦略投票および政党の側の選挙協力とが交錯した中で生じたものであり,政治改革に対して合理的に適応しようとするアクターたちが織りなす政治過程であったと捉えている. | KAKENHI-PROJECT-11620068 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11620068 |
社会的要因を中心とした高血圧有病・未治療・コントロール不良を規定する因子の解明 | 国民代表集団である一般住民コホート「NIPPON DATA80/90/2010」のデータを使用し、以下の2点について研究を進めた。1社会的要因を中心とした高血圧有病、無自覚、無治療、コントロール不良の規定要因の解明研究1については、前年度内に論文化が完了した。世帯年収が低いほど高血圧有病率が高いという結果であった。本年度は質問票および電話による対象者の追跡調査を継続し、糖尿病の新規発症、脳卒中および心疾患の発症情報を収集した。2社会的要因と将来の脳心血管疾患発症との関連の解明研究2に関して、NIPPONDATA80と昭和55年国民生活基礎調査の前身となる厚生行政基礎調査との統合作業が完了した。データ整備は現在進行中で、完了後本データを使用し、社会要因と予後に関し解析を進め、学会発表および論文化を進める。また現在、NIPPON DATA90と平成2年国民生活基礎調査との統合データを使用し、平成2年時の社会要因が20年追跡時のADL低下にどの程度影響を与えるのかを解析中である。解析終了後、学会発表および論文化を速やかに進める予定である。厚生労働省より受領した国民生活基礎調査等のデータは年代が古いこともあり、当方のNIPPON DATAと連結するのに多大な時間を要したため、本年度中の解析開始はかなわなかったが、今後も継続して社会要因と脳心血管疾患との関連について研究を進めていく予定である。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。主研究課題「社会的要因を中心とした高血圧有病・未治療・コントロール不良を規定する因子の解明」に関して、国民代表集団の大規模コホートNIPPON DATA2010ベースラインデータ(20歳以上の男女2891名)を解析し、下記の成果を得た。1独身かつ1人暮らしの者は、既婚者に比べ高血圧(140/90 mmHg以上)有病割合が有意に高値。2高血圧者において、高学歴者(短期大学以上)は低学歴者(中学校以下)に比べ、無治療割合が有意に高値。3上記結果について、性差、年齢による差を認めなかった。4高血圧コントロール不良に関連する社会的要因は認めなかった。以上を、第25回欧州高血圧学会年会(2016年6月、ミラノ、イタリア)にてポスター発表し、現在Journal of Hypertension誌への投稿へ向け準備中である。主の研究課題に加え、昨年度は当研究室で実施している滋賀潜在性動脈硬化疫学研究(SESSA)のベースライン(2006-2008年調査)データを用いた解析を実施した。対象は滋賀県草津市の4079歳男性919名とした。家庭血圧は起床後1時間以内、排尿後、朝食前、2分間の安静後、座位にて対象者自身が自動血圧計で測定し、解析には朝1回、7日分の平均値を使用した。診察室血圧は静謐な環境下で5分間会話をせず安静を保持させた後、座位にて医師が自動血圧計で2回測定し、その平均値を解析に使用した。評価項目として冠動脈石灰化(Agatston Score 10以上)を用いた。厳格に測定した診察室血圧と、家庭血圧の値に有意な差はみられず、冠動脈石灰化との関連においても、両血圧で有意な差を認めなかった。本結果について、第38回日本高血圧学会総会(松山、愛媛)にて口頭発表、および米国心臓協会/疫学セッション2016(フェニックス、米国)にてポスター発表を行った。現在論文化を進めている。私は昨年度、第25回欧州高血圧学会にて「社会的要因と高血圧有病・無自覚・無治療・コントロール不良との関連:NIPPON DATA2010」についてポスター発表を行い、加えて当研究室で実施している地域ベースのコホート研究データを用いた解析結果を国内学会にて口頭発表1回、および国外学会にてポスター発表を1回実施し、研究活動は順調に進行したといえる。また、NIPPON DATA2010コホートの追跡作業においても、質問票の作成・電話による対象者からの聴取などに積極的に携わり、無事完遂することができた。さらに私は、平成22年国民生活基礎調査とNIPPON DATA2010ベースラインデータとの統合作業において、データハンドリング等の主要な役割を果たした。1年目の研究計画が概ね完遂できたことに加え、もう1つ異なるコホート研究データ解析および学会発表を実施できたことから、進捗は期待以上であったと評価する。主研究課題「社会的要因を中心とした高血圧有病・未治療・コントロール不良を規定する因子の解明」に関して、一昨年度、国民代表集団の大規模コホートNIPPON DATA2010ベースラインデータ(20歳以上の男女2623名)を解析し得た下記の成果13について、英語論文を作成し、国際高血圧学会誌「Journal of Hypertension」2017年2月号に掲載された。1独身かつ1人暮らしの者は、既婚者に比べ高血圧(140/90 mmHg以上)有病割合が有意に高値。2上記結果について、性差、年齢による差を認めなかった。3高血圧無自覚・未治療・コントロール不良に関連する社会的要因は認めなかった。実績2. NIPPONDATA90と平成2年国民生活基礎調査との統合データクリーニング作業NIPPON DATA | KAKENHI-PROJECT-15J12632 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15J12632 |
社会的要因を中心とした高血圧有病・未治療・コントロール不良を規定する因子の解明 | 90は1990年(平成2年)に実施された第4次循環器疾患基礎調査および国民栄養調査の受検者を対象とした約8000名のコホート研究である。NIPPON DATA90対象者は同年の国民生活基礎調査の受検者でもあり、今回、世帯支出、世帯構成、婚姻状況といった社会要因の解析を行う目的で、データの統合作業を一昨年度に実施済みである。昨年度は、統合データのクリーニング作業を実施し、変数のずれ、外れ値といったデータの整合性を細かく確認した。私はその実務を主として担当した。本年度は、この統合データセットを使用した、社会要因と循環器死亡との関連について解析検討していく予定である。交付申請書に記載の研究1および研究2に関して、進捗を報告する。研究1:社会的要因を中心とした高血圧有病、無自覚、無治療、コントロール不良の規定要因の解明に関しては、論文化が完了したため、当初の予定通り進展したといえる。研究2:社会的要因と脳心血管疾患との関連の解明に関しては、解析用データセットの整備までは到達したが、解析作業には至ることができなかった。以上より、完全に予定通りではないが、おおむね順調に研究は進展していると考えられる。国民代表集団である一般住民コホート「NIPPON DATA80/90/2010」のデータを使用し、以下の2点について研究を進めた。1社会的要因を中心とした高血圧有病、無自覚、無治療、コントロール不良の規定要因の解明研究1については、前年度内に論文化が完了した。世帯年収が低いほど高血圧有病率が高いという結果であった。本年度は質問票および電話による対象者の追跡調査を継続し、糖尿病の新規発症、脳卒中および心疾患の発症情報を収集した。2社会的要因と将来の脳心血管疾患発症との関連の解明研究2に関して、NIPPONDATA80と昭和55年国民生活基礎調査の前身となる厚生行政基礎調査との統合作業が完了した。データ整備は現在進行中で、完了後本データを使用し、社会要因と予後に関し解析を進め、学会発表および論文化を進める。また現在、NIPPON DATA90と平成2年国民生活基礎調査との統合データを使用し、平成2年時の社会要因が20年追跡時のADL低下にどの程度影響を与えるのかを解析中である。解析終了後、学会発表および論文化を速やかに進める予定である。厚生労働省より受領した国民生活基礎調査等のデータは年代が古いこともあり、当方のNIPPON DATAと連結するのに多大な時間を要したため、本年度中の解析開始はかなわなかったが、今後も継続して社会要因と脳心血管疾患との関連について研究を進めていく予定である。本年度は、主課題の論文投稿を完遂させること、NIPPON DATA2010の6年目追跡作業を主として実施していく。また、NIPPON DATA90コホートと平成2年国民生活基礎調査とを統合したデータセット(昨年度末作成済み)をデータクリーニング後に、基礎調査データに含まれる婚姻・世帯支出等の社会要因と20年追跡中の循環器疾患死亡および総死亡との関連について解析を実施する予定である。本年度は、研究2:社会的要因と脳心血管疾患との関連の解明の解析作業、論文作成を主として進める。研究2ではNIPPON DATA90コホートと平成2年国民生活基礎調査との統合データを使用する。 | KAKENHI-PROJECT-15J12632 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15J12632 |
核および染色体構造形成におけるBAFの機能解析 | dsDNA、LEMドメインタンパク質、ラミンと相互作用するクロマチンタンパク質、Barrier-to-Autointegration Factor (BAF)の機能を明らかにするため、ショウジョウバエのBAF null変異体を用いて解析を進めている。これまでに変異体が致死となる三齢幼虫後期または前蛹の初期の中枢神経組織細胞の間期核で、クロマチンの異常な凝集と核膜の異常なコンボリューションおよび、異常なDNA複製が観察されたことから、BAFが核の活性調節や核の構造形成に重要な機能を持っていることを示している。今回は、BAF null変異体の中枢神経および成虫原基の組織形成を幼虫初期から詳細に観察し、二齢幼虫の中枢神経組織では神経芽細胞において核膜の異常なコンボリューションが既に生じており、さらに成虫原基組織では組織が発育しておらず、変性が生じていることを見いだした。成虫原基組織に関しては、活性型Driceに対する抗体とTUNEL反応を用いて解析を進め、アポトーシスが高頻度で誘導されていることも検出している。一方、中枢神経組織ではアポトーシスは検出されなかったが、BAFの消失により生じるクロマチンの凝集と核膜のコンボリューションはプレアポトーティックな核の構造変化と類似している。これらのことは、アポトーシス過程の初期に見られる核構造の不可逆的変化にBAFの分解または修飾が関与している可能性を示唆する。アポトーシス誘導因子であるhidを強制的に発現させることができる組換えショウジョウバエを用いて、アポトーシス誘導中に見られる各種核構造タンパク質とBAFの動態を免疫組織学的に比較することにより解析を進めたところ、実際にBAFはアポトーシス誘導後、Bタイプラミンと同じく、アポトーシス初期に免疫像が消失することが観察された。さらにBAFとDNA複合体のみを認識できる特異的な抗体を用いて動態を追跡すると、この抗体を用いた免疫像の消失が、BAFを認識できる抗体の免疫像の消失に先行することが明らかとなった。BAFの消失によりクロマチンの凝集と核膜のコンボリューションが生じることから、BAFのDNA結合能の消失がアポトーシス初期に見られる核構造の変化に直接関与していることを示唆する。dsDNA、LEMドメインタンパク質、ラミンと相互作用するクロマチンタンパク質、Barrier-to-Autointegration Factor (BAF)の機能を明らかにするため、ショウジョウバエのBAF null変異体を用いて解析を進めている。これまでに変異体が致死となる三齢幼虫後期または前蛹の初期の中枢神経組織細胞の間期核で、クロマチンの異常な凝集と核膜の異常なコンボリューションおよび、異常なDNA複製が観察されたことから、BAFが核の活性調節や核の構造形成に重要な機能を持っていることを示している。今回は、BAF null変異体の中枢神経および成虫原基の組織形成を幼虫初期から詳細に観察し、二齢幼虫の中枢神経組織では神経芽細胞において核膜の異常なコンボリューションが既に生じており、さらに成虫原基組織では組織が発育しておらず、変性が生じていることを見いだした。成虫原基組織に関しては、活性型Driceに対する抗体とTUNEL反応を用いて解析を進め、アポトーシスが高頻度で誘導されていることも検出している。一方、中枢神経組織ではアポトーシスは検出されなかったが、BAFの消失により生じるクロマチンの凝集と核膜のコンボリューションはプレアポトーティックな核の構造変化と類似している。これらのことは、アポトーシス過程の初期に見られる核構造の不可逆的変化にBAFの分解または修飾が関与している可能性を示唆する。アポトーシス誘導因子であるhidを強制的に発現させることができる組換えショウジョウバエを用いて、アポトーシス誘導中に見られる各種核構造タンパク質とBAFの動態を免疫組織学的に比較することにより解析を進めたところ、実際にBAFはアポトーシス誘導後、Bタイプラミンと同じく、アポトーシス初期に免疫像が消失することが観察された。さらにBAFとDNA複合体のみを認識できる特異的な抗体を用いて動態を追跡すると、この抗体を用いた免疫像の消失が、BAFを認識できる抗体の免疫像の消失に先行することが明らかとなった。BAFの消失によりクロマチンの凝集と核膜のコンボリューションが生じることから、BAFのDNA結合能の消失がアポトーシス初期に見られる核構造の変化に直接関与していることを示唆する。クロマチンタンパク質BAFの機能を明らかにするためショウジョウバエの分子遺伝学を利用し、BAF遺伝子を完全に欠失させた固体を作成し解析を進行させている。BAF遺伝子を欠失させた変異体は第3幼虫後期でも成虫原基の形成は見られず、神経組織の発生は初期で停止している状態である。神経組織を用いた核膜の構造および細胞分裂に関する研究により、これまでにBAFが核膜および染色体の構造を規定する重要なタンパク質であり、さらにDNA複製の制御にも機能していることが明らかになっている(Furukawa et.al.,J Cell Sci 2003)。成虫原基組織が形成されないことに関して、当初は神経組織同様BAFのタンパク質の消失による細胞分裂の停止が考えられたが、成虫原基の形成を初期から詳細に解析した結果、成虫原基組織の形成初期にアポトーシスが高頻度で誘発されていることを見いだしている。神経組織では組織特性の違いのためかアポトーシスは誘導されておらずTUNELもネガティブであったが、BAFの消失によって誘導される核膜構造の変化は最近報告されているプレアポトーティックな核構造の変化と類維している様に思われた。核ラミナタンパク質であるラミンや核膜タンパク質であるLEMドメインタンパク質はアポトーシスが誘導されるとカスパーゼに特異的に分解されることが知られている。 | KAKENHI-PROJECT-16570155 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16570155 |
核および染色体構造形成におけるBAFの機能解析 | BAFはDNAと結合するとともにラミンとLEMドメインタンパク質と相互作用していることが既に明らかにされており、また人為的に誘導されたアポトーシスの初期にBAFも消失している事を見いだしている。これらのことはBAFがアポトーシスの初期にカスパーゼにより特異的に分解され、それが核の構造変化と深く関わっていることを示唆する。dsDNA、LEMドメインタンパク質、ラミンと相互作用するクロマチンタンパク質、Barrier-to-Autointegration Factor(BAF)の機能を明らかにするため、ショウジョウバエのBAF null変異体を用いて解析を進めている。これまでに変異体が致死となる三齢幼虫後期または前蛹の初期の中枢神経組織細胞の間期核で、クロマチンの異常な凝集と核膜の異常なコンボリューションおよび、異常なDNA複製が観察されたことから、BAFが核の活性調節や核の構造形成に重要な機能を持っていることを示している。今回は、BAF null変異体の中枢神経および成虫原基の組織形成を幼虫初期から詳細に観察し、二齢幼虫の中枢神経組織では神経芽細胞において核膜の異常なコンボリューションが既に生じており、さらに成虫原基組織では組織が発育しておらず、変性が生じていることを見いだした。成虫原基組織に関しては、活性型Driceに対する抗体とTUNEL反応を用いて解析を進め、アポトーシスが高頻度で誘導されていることも検出している。一方、中枢神経組織ではアポトーシスは検出されなかったが、BAFの消失により生じるクロマチンの凝集と核膜のコンボリューションはプレアポトーティックな核の構造変化と類似している。これらのことは、アポトーシス過程の初期に見られる核構造の不可逆的変化にBAFの分解または修飾が関与している可能性を示唆する。アポトーシス誘導因子であるhidを強制的に発現させることができる組換えショウジョウバエを用いて、アポトーシス誘導中に見られる各種核構造タンパク質とBAFの動態を免疫組織学的に比較することにより解析を進めたところ、実際にBAFはアポトーシス誘導後、Bタイプラミンと同じく、アポトーシス初期に免疫像が消失することが観察された。さらにBAFとDNA複合体のみを認識できる特異的な抗体を用いて動態を追跡すると、この抗体を用いた免疫像の消失が、BAFを認識できる抗体の免疫像の消失に先行することが明らかとなった。BAFの消失によりクロマチンの凝集と核膜のコンボリューションが生じることから、BAFのDNA結合能の消失がアポトーシス初期に見られる核構造の変化に直接関与していることを示唆する。 | KAKENHI-PROJECT-16570155 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16570155 |
水・森林土壌生態系におけるフミン物質など溶存有機炭素の動態と環境影響の解明 | 湖沼など閉鎖的な水域では富栄養化などによる有機汚濁が問題になっている。琵琶湖でも、1985年以後、生物化学的酸素要求量(BOD)の変化は小さいのに対し、化学的酸素要求量(COD)が毎年増加しており、これは微生物に分解されない難分解性の溶存有機物質(DOM)が増加しているためと考えられる。しかし、増加している難分解性有機物の特性や起源については明らかでない。山田らは、フミン物質(フミン酸、フルボ酸)が主な原因物質ではないかと考え、フミン物質分析用に開発した蛍光検出-ゲルクロマトフラフ法と疎水性樹脂などを用いるカラム分画法を用いて琵琶湖水および淀川水系河川水の分析を行った。その結果、フミン物質に加えて植物プランクトンによる内部生産の寄与が大きく、COD増加は植物プランクトン種の変遷と関係があることを見出した。そこで、難分解性有機物生成への植物プランクトンの影響を明らかにするために3種類の植物プランクトンを培養し、その一次生産物および分解性生成物について蛍光検出-ゲルクロマトフラフ法および三次元蛍光分光光度(3-DEEM)法などを用い、その特性を評価すると共に、琵琶湖水中の難分解性有機物への寄与を解析した。藻類由来有機物にはフルボ酸様物質とタンパク質様蛍光物質が存在し、藻類由来のフルボ酸様物質は土壌起源のフルボ酸と同じ蛍光特性をもつが主に親水性であり、タンパク質様蛍光物質はフルボ酸様物質より高分子量で疎水性であることを明らかにした。3種類の植物プランクトンについて培養時における単位体積あたりの藻類由来DOMは、クリプトモナス>ミクロキスティス>スタウラスツルムの順となった。湖沼など閉鎖的な水域では富栄養化などによる有機汚濁が問題になっている。琵琶湖でも、1985年以後、生物化学的酸素要求量(BOD)の変化は小さいのに対し、化学的酸素要求量(COD)が毎年増加しており、これは微生物に分解されない難分解性の溶存有機物質(DOM)が増加しているためと考えられる。しかし、増加している難分解性有機物の特性や起源については明らかでない。山田らは、フミン物質(フミン酸、フルボ酸)が主な原因物質ではないかと考え、フミン物質分析用に開発した蛍光検出-ゲルクロマトフラフ法と疎水性樹脂などを用いるカラム分画法を用いて琵琶湖水および淀川水系河川水の分析を行った。その結果、フミン物質に加えて植物プランクトンによる内部生産の寄与が大きく、COD増加は植物プランクトン種の変遷と関係があることを見出した。そこで、難分解性有機物生成への植物プランクトンの影響を明らかにするために3種類の植物プランクトンを培養し、その一次生産物および分解性生成物について蛍光検出-ゲルクロマトフラフ法および三次元蛍光分光光度(3-DEEM)法などを用い、その特性を評価すると共に、琵琶湖水中の難分解性有機物への寄与を解析した。藻類由来有機物にはフルボ酸様物質とタンパク質様蛍光物質が存在し、藻類由来のフルボ酸様物質は土壌起源のフルボ酸と同じ蛍光特性をもつが主に親水性であり、タンパク質様蛍光物質はフルボ酸様物質より高分子量で疎水性であることを明らかにした。3種類の植物プランクトンについて培養時における単位体積あたりの藻類由来DOMは、クリプトモナス>ミクロキスティス>スタウラスツルムの順となった。フミン物質は環境中の主たる有機成分であり、環境中での金属の存在状態や水道水中のトリハロメタン(THM)生成に影響を与え、近年は有害な有機化合物と結合し、その残留や拡散に影響することが指摘されている。しかし、フミン物質は広い分子量分布を有する複雑な混合分子系であるため、これまで環境中での挙動はほとんど明らかにされていなかった。山田らは、フミン物質の濃度と分子量を同時に測定する方法を開発し、琵琶湖水や淀川水系河川水中フミン物質の動態解析を行うと共に、環境での働きを明らかにしてきたが、琵琶湖の有機汚濁はフミン物質のみの影響では説明できないことを見出した。平成17年度は、Amberlite製XAD-7HPを用い、琵琶湖水及び淀川水系河川水中溶存有機物質(DOM)を疎水性有機物と親水性有機物に分画し、溶存有機炭素濃度を求めた。疎水性酸は、既に開発している蛍光検出-ゲルクロマトグラフ法により求めたフミン物質濃度と比較した。さらに、水道水中THMの前駆物質解明のため、分画した画分を塩素化することにより、疎水性酸、疎水性中性物質及び親水性有機物質のTHM生成能に及ぼす寄与率を求めた。DOMに疎水性酸が占める割合は、河川水では3060%、琵琶湖北湖水では25%前後で、河川水の方が高いという結果が得られた。THM生成能は、河川水ではフミン物質など疎水性酸の寄与が70%前後と高く、一方、琵琶湖北湖水では疎水性酸の寄与は30%前後で、親水性有機物質の寄与と同程度であった。琵琶湖水中DOMでは疎水性中性有機物質が1520%と高い割合で存在しており、疎水性中性物質のTHM生成能への寄与は約40%と疎水性酸や親水性有機物質の寄与より大きい。琵琶湖水における親水性画分の単位有機炭素あたりのTHM生成能は、河川の約2倍で、これは、親水性有機物質の種類が、河川と湖水では異なるためではないかと推測できる。 | KAKENHI-PROJECT-17310008 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17310008 |
水・森林土壌生態系におけるフミン物質など溶存有機炭素の動態と環境影響の解明 | フミン物質は環境中の主たる有機成分であり、環境中での金属の存在状態や水道水中のトリハロメタン(THM)生成に影響を与え、近年は有害な有機化合物と結合し、その残留や拡散に影響することが指摘されている。しかし、フミン物質は広い分子量分布を有する複雑な混合分子系であるため、これまで環境中での挙動はほとんど明らかにされていなかった。山田らは、フミン物質の濃度と分子量を同時に測定する方法を開発し、琵琶湖水や淀川水系河川水中フミン物質の動態解析を行うと共に、環境での働きを明らかにしてきたが、琵琶湖の有機汚濁はフミン物質のみの影響では説明できないことを見出した。疎水性のXAD-7HP樹脂を用い、琵琶湖水及び淀川水系河川水中溶存有機物質(DOM)を疎水性有機物と親水性有機物に分画し、DOMに疎水性酸が占める割合は、河川水では3060%、琵琶湖北湖水では25%前後で、河川水の方が高いという結果が得られた。THM生成能は、河川水ではフミン物質など疎水性酸の寄与が70%前後と高く、一方、琵琶湖北湖水では疎水性酸の寄与は30%前後で、親水性有機物質の寄与と同程度であった。琵琶湖水中DOMでは疎水性中性有機物質が1520%と高い割合で存在しており、疎水性中性物質のTHM生成能への寄与は約40%と疎水性酸や親水性有機物質の寄与より大きい。琵琶湖水における親水性画分の単位有機炭素あたりのTHM生成能は、河川の約2倍で、これは、親水性有機物質の種類が、河川と湖水では異なるためではないかと推測できる。そこで、琵琶湖水を毎月採水し、DOMを疎水性のDAX-8樹脂でカラム分画し、DOMの特性や起源について検討した。さらにMicrocystisなど植物プランクトンを培養し、その一次生産物及び分解生成物について解析を行い、琵琶湖で増加傾向にある微生物に分解されない難分解性有機物汚濁への寄与を検討した。湖沼など閉鎖的な水域では富栄養化などによる有機汚濁が問題になっている。琵琶湖でも、1985年以後、生物化学的酸素要求量(BOD)の変化は小さいのに対し、化学的酸素要求量(COD)が毎年増加しており、これは微生物に分解されない難分解性の溶存有機物質(DOM)が増加しているためと考えられる。しかし、増加している難分解性有機物の特性や起源については明らかでない。山田らは、フミン物質(フミン酸、フルボ酸)が主な原因物質ではないかと考え、フミン物質分析用に開発した蛍光検出-ゲルクロマトフラフ法と疎水性樹脂などを用いるカラム分画法を用いて琵琶湖水および淀川水系河川水の分析を行った。その結果、フミン物質に加えて植物プランクトンによる内部生産の寄与が大きく、COD増加は植物プランクトン種の変遷と関係があることを見出した。そこで、難分解性有機物生成への植物プランクトンの影響を明らかにするために3種類の植物プランクトンを培養し、その一次生産物および分解性生成物について蛍光検出-ゲルクロマトフラフ法および三次元蛍光分光光度(3-DEEM)法などを用い、その特性を評価すると共に、琵琶湖水中の難分解性有機物への寄与を解析した。藻類由来有機物にはフルボ酸様物質とタンパク質様蛍光物質が存在し、藻類由来のフルボ酸様物は土壌起源のフルボ酸と同じ蛍光特性をもつが主に親水性であり、タンパク質様蛍光物質はフルボ酸様物質より高分子量で疎水性であることを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-17310008 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17310008 |
蛋白導入法および細胞膜透過性ペプチド核酸による蛋白置換癌治療法の開発 | 直接p53蛋白を細胞内に導入する蛋白質セラピー(11R-p53)と細胞膜透過性ペプチド核酸(PNA)による核局在型アンチジーンセラピーを組み合わせることにより、癌細胞内のp53蛋白を変異型から正常型に置換する蛋白置換願治療法の開発を目的とした研究を遂行し、以下のことを明らかにした。1)p53遺伝子にハイブリダイズする膜透過性PNA(11R-PNA p53)の作製に成功した。2)11R-PNA p53を口腔癌患者から樹立したNOS-1,HSC-3細胞の培養液中に添加することにより、細胞内へ効率よく導入されることを明らかにした。また、同PNAが癌細胞内で核内に導入されることも確認した。3)NOS-1,HSC-3細胞に1μM 11R-PNA p53を導入し、48時間後における内因性p53の発現について、定量RT-PCRおよびウェスタンブロティング法にて検討したところ、有意に発現を抑制していた。4)11R-PNA p53および11R-p53を口腔癌細胞に導入し、48時間後における内因性p53および11R-p53の発現を検討したところ、endogenous p53の発現が抑制され11R-p53の発現が強く認められた。すなわち、p53蛋白の変異型から正常型への置換療法に成功した。直接p53蛋白を細胞内に導入する蛋白質セラピー(11R-p53)と細胞膜透過性ペプチド核酸(PNA)による核局在型アンチジーンセラピーを組み合わせることにより、癌細胞内のp53蛋白を変異型から正常型に置換する蛋白置換願治療法の開発を目的とした研究を遂行し、以下のことを明らかにした。1)p53遺伝子にハイブリダイズする膜透過性PNA(11R-PNA p53)の作製に成功した。2)11R-PNA p53を口腔癌患者から樹立したNOS-1,HSC-3細胞の培養液中に添加することにより、細胞内へ効率よく導入されることを明らかにした。また、同PNAが癌細胞内で核内に導入されることも確認した。3)NOS-1,HSC-3細胞に1μM 11R-PNA p53を導入し、48時間後における内因性p53の発現について、定量RT-PCRおよびウェスタンブロティング法にて検討したところ、有意に発現を抑制していた。4)11R-PNA p53および11R-p53を口腔癌細胞に導入し、48時間後における内因性p53および11R-p53の発現を検討したところ、endogenous p53の発現が抑制され11R-p53の発現が強く認められた。すなわち、p53蛋白の変異型から正常型への置換療法に成功した。 | KAKENHI-PROJECT-15025251 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15025251 |
北方ユーラシアにおける古代・中世交流史の総合的研究 | 本年度は、2回の研究会議を開催したほか、野外調査としてモンゴル・ウランヘレム遺跡およびその周辺土城の測量調査を行った。また中央アジア史料調査、モンゴル周辺出土中国陶磁器調査、モンゴル中世遺跡データベース作成を行った。5月21日に東京にて第1回研究集会を行った。11月26日には東京にて研究会議を開催し、モンゴル契丹土城の諸様相について研究発表・討議を行った。8月後半にモンゴル・ウランヘレム遺跡および周辺のウイグル・遼代・元代の土城の測量調査を、GPSおよびトータルステーションを用いて行った。その結果、ウランヘレム遺跡が4辺を略方形に外周2.6kmの二重の土塁と堀によって囲む城郭であることが判明した。また城壁には馬面を築き、馬面の外側下に平坦面を対置すること、城壁の南・西・東側中央に甕城を有する城門を各一門築くこと、城内は東西南北の門をつなぐ幅20m以上の道により大きく4分されること、基壇跡や塔跡と考えられる遺構を配する大区画も存在するが、小区画が城内の大半を占めることが明らかとなった。遺物分布調査では城内から契丹の瓦や陶器を採集した。測量調査と並行して現地でモンゴル出土中国陶磁器の資料調査を行い、元青花などの実測図作成・写真撮影を行った。およびデータベース作成を行った。帰国後にデータベース作成を行った。現地調査のほかに国内において中央アジア史料調査を国内で行ったほか、モンゴル中世遺跡データベース作成を行った。本年度は、2回の研究会議を開催したほか、野外調査としてモンゴル・ウランヘレム遺跡およびその周辺土城の測量調査を行った。また中央アジア史料調査、モンゴル周辺出土中国陶磁器調査、モンゴル中世遺跡データベース作成を行った。5月21日に東京にて第1回研究集会を行った。11月26日には東京にて研究会議を開催し、モンゴル契丹土城の諸様相について研究発表・討議を行った。8月後半にモンゴル・ウランヘレム遺跡および周辺のウイグル・遼代・元代の土城の測量調査を、GPSおよびトータルステーションを用いて行った。その結果、ウランヘレム遺跡が4辺を略方形に外周2.6kmの二重の土塁と堀によって囲む城郭であることが判明した。また城壁には馬面を築き、馬面の外側下に平坦面を対置すること、城壁の南・西・東側中央に甕城を有する城門を各一門築くこと、城内は東西南北の門をつなぐ幅20m以上の道により大きく4分されること、基壇跡や塔跡と考えられる遺構を配する大区画も存在するが、小区画が城内の大半を占めることが明らかとなった。遺物分布調査では城内から契丹の瓦や陶器を採集した。測量調査と並行して現地でモンゴル出土中国陶磁器の資料調査を行い、元青花などの実測図作成・写真撮影を行った。およびデータベース作成を行った。帰国後にデータベース作成を行った。現地調査のほかに国内において中央アジア史料調査を国内で行ったほか、モンゴル中世遺跡データベース作成を行った。 | KAKENHI-PROJECT-18251011 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18251011 |
加齢により発現変化する筋衛星細胞機能遺伝子の同定 | 申請者は自身が見いだしたマウス系統間の差再生能力の差異に着目し、再生能力の優れている、C57BL/6と再生能力の劣っているDBA/2系統の筋衛星細胞の遺伝子発現解析を行った。単純な筋衛星細胞同士の比較では嗅覚受容体等,筋幹細胞の活性との関連が不明な物が多く候補遺伝子の選定が困難だったため,比較対照となる別の細胞(筋芽細胞、骨格筋内在性間葉系前駆細胞)も準備して解析を行った.その結果, 69個の遺伝子がC57B/6の筋芽細胞で2倍以上発現しており,そのうち60個の遺伝子は間葉系前駆細胞では発現がC57BL/6とDBA/2で違いが無かった.骨格筋は優れた再生能力を有しており、それを可能としているのが骨格筋幹細胞である、筋衛星細胞である。しかし、遺伝性筋疾患等では、新しくつくられた筋細胞もすぐに壊れてしまう為に、筋衛星細胞の再生能力が疲弊するのが病態進行の一つの原因と考えられている。申請者は自身が見いだしたマウス系統間の差再生能力の差異に着目し、再生能力の優れている、C57BL/6と再生能力の劣っているDBA/2系統の筋衛星細胞の遺伝子発現解析を行った。単純な筋衛星細胞同士の比較では嗅覚受容体等,筋幹細胞の活性との関連が不明な物が多く,候補遺伝子の選定が困難だったため,比較対照となる別の細胞も準備して,解析を行う事にした.最終的に、C57BL/6とDBA/2の間にSNPがあるものとして、Rpl29,等に絞れた。また、加齢に伴う、筋量低下もC57BL/6とDBA/2の間には大きさ差異がある事がしられており、DBA/2は顕著な筋重量減少をしめす。筋ジストロフィーのモデルマウスであるmdxをDBA/2背景にした場合には、18ヶ月齢では若齢の1/5程の筋重量になった。これら筋重量低下の原因は筋衛星細胞の機能低下よるものと考えられるため、24ヶ月齢の筋衛星細胞をC57BL/6とDBA/2から準備したが、寿命自身がDBA/2の方が短いため、十分な細胞の採取にはいたっていない。今後はRpl29と長期的な筋再生の関連を明らかにするとともに、筋衛星細胞だけではなく、他の細胞も視野にいれた包括的な研究が必要である。骨格筋は優れた再生能力を有しており、それを可能としているのが骨格筋幹細胞である、筋衛星細胞である。しかし、遺伝性筋疾患等では、新しくつくられた筋細胞もすぐに壊れてしまう為に、筋衛星細胞の再生能力が疲弊するのが病態進行の一つの原因と考えられている。申請者は自身が見いだしたマウス系統間の差再生能力の差異に着目し、再生能力の優れている、C57BL/6と再生能力の劣っているDBA/2系統の筋衛星細胞の遺伝子発現解析を行った。単純な筋衛星細胞同士の比較では嗅覚受容体等,筋幹細胞の活性との関連が不明な物が多く,候補遺伝子の選定が困難だったため,比較対照となる別の細胞(筋芽細胞、骨格筋内在性間葉系前駆細胞)も準備して,解析を行った.その結果, 69個の遺伝子がC57B/6の筋芽細胞で2倍以上発現しており,そのうち60個の遺伝子は間葉系前駆細胞では発現がC57BL/6とDBA/2で違いが無かった.その中にはSerpina6, Tcstv3, Krtap1-5, Mgl2, Supt4h1, Polr2h, Tox4, Duxbl, Cbx7や17個のolfactory receptorが含まれていた.一方Rpl2やVamp5等の9個の遺伝子は筋芽細胞と間葉系前駆細胞の両方で発現低下が見られた.またDBA/2-mdxの利便性に関しては多くの研究者に周知頂いた事で,実験動物中央研究所とMTAを契約する事で、より多くの研究者に使用して頂けるように準備を行った.申請者は自身が見いだしたマウス系統間の差再生能力の差異に着目し、再生能力の優れている、C57BL/6と再生能力の劣っているDBA/2系統の筋衛星細胞の遺伝子発現解析を行った。単純な筋衛星細胞同士の比較では嗅覚受容体等,筋幹細胞の活性との関連が不明な物が多く候補遺伝子の選定が困難だったため,比較対照となる別の細胞(筋芽細胞、骨格筋内在性間葉系前駆細胞)も準備して解析を行った.その結果, 69個の遺伝子がC57B/6の筋芽細胞で2倍以上発現しており,そのうち60個の遺伝子は間葉系前駆細胞では発現がC57BL/6とDBA/2で違いが無かった.若齢C57BL/6とDBA/2マウスからSM/C-2.6 (筋衛星細胞特異的なモノクローナル抗体)陽性、CD31陰性、CD45陰性分画に含まれる筋衛星細胞をFACS Aria IIを用いて単離し,Affymetrix microarrayを用いて網羅的な遺伝子発現解析を行った.高齢マウスの筋衛星細胞も単離し,遺伝子発現解析に用に細胞をプールしているが数が十分確保できていない.また,SNPデータベースを組み合わせた解析を予定しているが,現在のところは特定の遺伝子同定にはまだ至っていない. | KAKENHI-PROJECT-23650433 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23650433 |
加齢により発現変化する筋衛星細胞機能遺伝子の同定 | 高齢,若齢のC57BL/6とDBA/2マウスの解析を行った結果,高齢DBA/2でのみ顕著な筋重量低下が観察され,また筋衛星細胞数の減少も観察できた.しかしながら,筋再生後にできる筋線維の大きさは若齢・高齢DBA/2で大きな違いが無かったことから,DBA/2の筋衛星細胞の増殖はその週齢に関わらずC57BL/6よりも低く,筋線維構築能が弱い事が示唆された.実際申請者は若齢のC57BL/6とDBA/2の筋衛星細胞の増殖アッセイを行った結果,DBA/2の筋衛星細胞の増殖能はC57BL/6よりも低い事を明らかにしている。よって若齢C57BL/6とDBA/2の筋衛星細胞の遺伝子発現の違いから筋衛星細胞の増殖に関わる因子の同定が可能ではないかと考え,in vivoの活性化筋衛星細胞の遺伝子発現解析も行い,こちらもSNP解析を組み合わせることで,目的の遺伝子を抽出することを現在試みている.計画通りにいかなかった最大の理由は、C57BL/6とDBA/2の筋衛星細胞の遺伝子発現解析の結果が、あまりにも沢山あり、そこから絞り込む事が困難であった。この点を改善するために、筋衛星細胞、筋芽細胞、間質細胞をそれぞれC57BL/6とDBA/2から用意し比較することにした。さらに、SNPのデータベースを組み合わせる事で、最も発現変化のあったRpl29を同定できたのは、大きな進捗であると期待される。さらに、C57BL/6とDBA/2の筋再生の表現型を決定しているのは、複数の細胞や複数の遺伝子あることも否定はできない。こんごこれらの「長期的な筋重量や筋再生」を調節してる機構を包括的に網羅的に行うことで、加齢による筋重量阻止に対して道が開かれると期待される。既に、若齢C57BL/6マウスとDBA/2マウスの静止期筋衛星細胞、活動期筋衛星細胞の網羅的遺伝子発現解析は終了し、SNPデータベースを用いた遺伝子の抽出に着手している。高齢マウスの遺伝子発現プロファイルまでH23年度中に作製できれば、より達成度は高かったが、高齢DBA/2マウスから筋衛星細胞が予想よりも採取する事ができなかったことが残念であった。ただ、今年度構築した遺伝子発現プロファイルから、筋衛星細胞の維持や、増殖に関わる因子の同定につながる事は期待出来る。Bioinfomaticsの専門家に遺伝子発現プロファイルとSNPデータベースを組み合わせた解析法を近日中に協力して頂けることになったのも、本課題を遂行する上で大きなアドバンテージになった。さらに、同定遺伝子のin vitro機能解析にむけたvirus感染実験、感染細胞の分取、遺伝子発現変化の解析等の実験系を当研究室で実施できるシステムを構築できた。これにより、同定遺伝子の機能解析が迅速に行えると期待できる。また、将来的な同定遺伝子の機能解析を行う上で、非常に有用なPax7-CreERT2マウスの搬入ならび、実験系の確立を行った。このマウスを用いることで、好きなタイミングで筋衛星細胞においてのみ目的遺伝子を欠損することができる。このように、本年度で遺伝子同定後の解析システムをすべてセットアップできたことは大きな進展であった。現在、申請者は別のプロジェクトにおいて、筋衛星細胞の維持メカニズムの解明を目的に研究を進めている。そのなかで、に必要である事を明らかにしつつある。これら筋衛星細胞の維持に関わる因子や経路の機能破綻が、加齢に伴う筋衛星細胞の数や能力の減少につながると考えられる。本申請で用いたDBA/2系統のマウスはC57BL/6系統のマウスに比較して、極めて長期的な再生能力や加齢に伴う筋重量の低下を呈する。これま二系統間の比較を継続することで、NotchやCalcitonin receptorの下流因子につながる可能性もある一方、これまでのアプローチでは同定が困難であった、筋衛星細胞の維持に関わる遺伝子の同定につながる可能性がある。オミックスデータをバイオインフォマティクス専門の研究者と共同で進めることで、加齢にもとなう筋重量減少を食い止める事のできる分子標的の同定を続けていく予定である。 | KAKENHI-PROJECT-23650433 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23650433 |
波しぶきの水平移流が促す台風急発達 | 通常は、風が吹いた地点で水蒸気が供給されるという仮定のもと、数値天気予報が行われている。しかし、現実の多湿な台風状況下では、水滴の蒸発には数十秒数分間かかるため、波しぶきが発生したあと、台風の中心に向かう吹き込みで数キロほど運ばれながら、徐々に大気を湿らせていくと考えられる。台風の強さは水蒸気供給が起こる位置に鋭敏であることから、本研究では、これまで無視されてきた波しぶきの移動が、台風強度にどれだけ影響するのかを理想化された数値実験により評価した。本研究の結果、非常に猛烈な台風の場合、波しぶきの移動により、発達率が大きくなり準定常状態の台風の中心気圧も10 hPa程度低下することが分かった。中心気圧や最大風速に代表される台風の強度は、地球科学・自然災害学上、非常に重要な物理量である。しかし、高解像度大気海洋結合シミュレーションモデルでは、猛烈な台風の強度を過小評価する傾向にあることが知られてきた。多湿な台風状況下では、水滴の蒸発には数十秒数分間かかるため、中心へ吹き込む流れに波しぶきが数キロほど運ばれながら、徐々に大気を湿らせていくと考えられる。近年の研究により、現実の台風の強度は中心近傍において凝結が起こる位置に非常に鋭敏であり、凝結が通常よりほんの数キロ中心に近いところで起こるだけでも、発達率が大きくなることが分かってきた。しかし、既存のモデルではこの波しぶきの移流の効果を考慮していない。本研究では、この効果が無視されていることが台風強度の過小評価の原因ではないかという仮説を立て、波しぶきの水平移流を考慮できる新たなシステムの開発を試みている。初年度にあたる平成28年度は、Andreasが提案した波しぶきの粒径時間変化をテーブル化した。具体的には、初期粒径・相対湿度・気圧・気温・海面水温・塩濃度・風速を入力値として、波しぶきの生成量・滞空時間・蒸発時間を出力できるようにした。さらに、これを高解像度大気海洋結合モデルの下端境界に与え、現実の台風状況下での波しぶきの移流が台風の強化を引き起こすことを明らかにした。この初期結果について、気象学会や低気圧と暴風雨に係るワークショップで発表を行った。微物理モデルのテーブル化、それを台風モデルに実装する作業、台風強度のシミュレーションは順調に実行されている。海面における水蒸気供給のモデル化として、通常は風が吹いた地点で水蒸気が供給されるバルク法が採用されている。しかし、現実の多湿な台風状況下では、水滴の蒸発には数十秒数分間かかるため、中心へ吹き込む流れに波しぶきが数キロほど運ばれながら、徐々に大気を湿らせていくと考えられる。そこで、この波しぶきの移流という物理過程が台風強度や急発達に対して、どれだけ影響があるのかを数値実験により調べた。最終年度である平成29年度は、初年度に構築した波しぶきの蒸発時間スケールの表を数値モデルに適用し、波しぶきの速度が風速と異なるという想定の数値実験、波しぶきからの水蒸気供給の割合を変化させた数値実験、蒸発の時間スケールが長くなるとする数値実験を実施した。また、結果の信頼性を高めるため、すべての実験を初期条件を少しずつかえたアンサンブル実験とした。通常は、風が吹いた地点で水蒸気が供給されるという仮定のもと、数値天気予報が行われている。しかし、現実の多湿な台風状況下では、水滴の蒸発には数十秒数分間かかるため、波しぶきが発生したあと、台風の中心に向かう吹き込みで数キロほど運ばれながら、徐々に大気を湿らせていくと考えられる。台風の強さは水蒸気供給が起こる位置に鋭敏であることから、本研究では、これまで無視されてきた波しぶきの移動が、台風強度にどれだけ影響するのかを理想化された数値実験により評価した。本研究の結果、非常に猛烈な台風の場合、波しぶきの移動により、発達率が大きくなり準定常状態の台風の中心気圧も10 hPa程度低下することが分かった。これまでの研究によって、波しぶきの水平移流が猛烈な台風をさらに強めるような効果をもっていることが明らかとなった。二年目となる平成29年度は、より計算結果の信頼度を高めるため、アンサンブルシミュレーションを行う。また、台風強度が波しぶきの移流で強くなったことを物理的に説明するため、風速、気温、最大風速半径などとの関連を詳細に調査する。結果がまとまり次第、気象学会をはじめとする諸学会で成果を報告するとともに、英文誌に研究内容を投稿し、広くアピールすることに努める。気象学 | KAKENHI-PROJECT-16K13884 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K13884 |
耐久性と生体親和性に優れたガラス繊維で強化した支台築造用ポストの開発 | Na_2O-K_2O-CaO-ZrO_2-SiO_2系ガラス繊維とポリメタクリレートを複合したファイバーポスト(CZポストと略す)を引抜き法および連続加熱重合法で成形して,曲げ特性を調べて,さらにサーマルサイクル試験および温水浸漬試験を行ない耐久性について昨年に続いて詳細に調べた.1.引抜き法で成形したCZポストの曲げ弾性係数(E)はガラス繊維体積含有率(V_f)を大とすると直線的に大となり,V_f 40%では31.5GPaであり,EとV_fの関係はE=0.71 V_f+3.1であった.ポストの曲げ強さはV_f 40%で670MPaであった.また,CZポストのサーマルサイクル試験(試験回数20000回)の曲げ弾性係数は31.1GPaとなり,その変化率は98.7%であった.温水浸漬試験(60°C,20日間浸漬)の曲げ弾性係数は30.3GPaとなり,その変化率は96.2%であった.いずれの耐久性試験でも曲げ弾性係数はほとんど変化しなかった.2.連続加熱重合法で成形したポストの曲げ弾性係数もV_fを大とすると直線的に大となり,V_f 40%では28.1GPaであり,EとV_fの関係はE=0.65V_f+3.1であった.ポストの曲げ強さはV_f 40%で805.3MPaであった.また,ポストのサーマルサイクル試験の曲げ弾性係数は29.7GPaとなり,その変化率は100%であった.温水浸漬試験の曲げ弾性係数は27.7GPaとなり,その変化率は99%であった.いずれの耐久性試験でも曲げ弾性係数はほとんど変化しなかった.以上,CZポストの弾性係数は金属ポストに比較して象牙質に近似し,耐久性と生体親和性に優れたポストであり,実用の可能性が示唆された.Na_2O-K_2O-CaO-ZrO_2-SiO_2系ガラス繊維とポリメタクリレートを複合したファイバーポスト(CZポストと略す)を引抜き法および連続加熱重合法で成形して,曲げ特性を調べて,さらにサーマルサイクル試験および温水浸漬試験を行ない耐久性について昨年に続いて詳細に調べた.1.引抜き法で成形したCZポストの曲げ弾性係数(E)はガラス繊維体積含有率(V_f)を大とすると直線的に大となり,V_f 40%では31.5GPaであり,EとV_fの関係はE=0.71 V_f+3.1であった.ポストの曲げ強さはV_f 40%で670MPaであった.また,CZポストのサーマルサイクル試験(試験回数20000回)の曲げ弾性係数は31.1GPaとなり,その変化率は98.7%であった.温水浸漬試験(60°C,20日間浸漬)の曲げ弾性係数は30.3GPaとなり,その変化率は96.2%であった.いずれの耐久性試験でも曲げ弾性係数はほとんど変化しなかった.2.連続加熱重合法で成形したポストの曲げ弾性係数もV_fを大とすると直線的に大となり,V_f 40%では28.1GPaであり,EとV_fの関係はE=0.65V_f+3.1であった.ポストの曲げ強さはV_f 40%で805.3MPaであった.また,ポストのサーマルサイクル試験の曲げ弾性係数は29.7GPaとなり,その変化率は100%であった.温水浸漬試験の曲げ弾性係数は27.7GPaとなり,その変化率は99%であった.いずれの耐久性試験でも曲げ弾性係数はほとんど変化しなかった.以上,CZポストの弾性係数は金属ポストに比較して象牙質に近似し,耐久性と生体親和性に優れたポストであり,実用の可能性が示唆された.支台築造用ポストの弾性率を人歯象牙質の値に近づけるために、工業用Eガラス繊維で強化したファイバーポストが市販されている。しかしEガラス繊維は生体親和性に優れない。そこで、本研究は強化材に生体親和性と化学的耐久性に優れたジルコニア含有ガラス繊維とマトリクスポリマーにウレタンジメタクリレートを用いた新しいファイバーポスト(以後CZポストと略す)の開発を目的とした。著者らはすでに、ジルコニア含有ガラス繊維は生体類似溶液への耐久性が大きく生体材料用FRPの強化材として適すること、またCZポストはV_fが大きくなるほど曲げ強さ、曲げ弾性率が増大することについて発表した。本年度はまずCZポストの新しい成形方法について検討した。一般にモノマーは同時に加熱して重合させると体積収縮による欠陥が表面に見られる.そこで,本実験ではモノマーを充填した付形チューブの下方より上方に連続的に加熱重合させる装置を考案して,この連続加熱成形法の重合条件について検討した。その結果、連続加熱成形法で成形したCZポストの表面は平滑であったが,一般的な成形方法である同時加熱成形法では表面に重合収縮による縞模様が見られ平滑でなかった.これより,CZポストの一次重合の条件は90°Cで連続加熱成形する方法が適することが明らかになった.また、CZポストを37°Cの人工唾液中に30日間浸漬し,曲げ弾性率の変化率を調べた。V_fが30%のCZポストでは人工唾液に浸漬した後の曲げ弾性率はコントロールの94.8%GPaとなり,わずかに低下した.また長期間の耐久性試験も必要と考えている。 | KAKENHI-PROJECT-16591966 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16591966 |
耐久性と生体親和性に優れたガラス繊維で強化した支台築造用ポストの開発 | その他、ジルコニア含有ガラス繊維、Eガラス繊維について家兎の皮下および骨内に埋入して、生体組織反応の試験も進めている。本研究は強化材に生体親和性と化学的耐久性に優れたジルコニア含有ガラス繊維,マトリクスポリマーにウレタンジメタクリレートを用いた新しいファイバーポスト(以後CZポストと略す)の開発を目的とした.著者らはすでに,ジルコニア含有ガラス繊維は生体類似溶液への耐久性が大きく生体材料用FRPの強化材として適すること,またCZポストはV_fが大きくなるほど曲げ強さ,曲げ弾性率が増大することについて発表した.本年度は昨年につづいてCZポストの新しい成形方法について詳細に検討した.一般にモノマーは同時に加熱して重合させると体積収縮による欠陥が表面に見られる.そこで,本実験ではモノマーを充填した付形チューブの下方より上方に連続的に加熱重合させる装置を考案して,この連続加熱成形法の重合条件について検討した.その結果,連続加熱成形法で成形したCZポストの表面は平滑であり,CZポストの一次重合の条件は90°Cで移動速度1.13mm/minで連続加熱成形する方法が適することが明らかになった.また,CZポストのガラス繊維体積含有率(V_f)を変化させて成形し機械的性質を詳細に調べた結果,CZポストの弾性率(E)はV_fが大になると弾性率も大となり,E=0.67V_f+2.0の実験式を得た.これより所定の弾性率を持ったCZポストはV_fを変化させて材料設計できることを明らかにした.また,CZポストの耐久性評価としてサーマルサイクル試験で曲げ強さ(713MPa)の変化を調べた結果,10,000回までは変化が無く,20,000回では610.1MPaとなり初期強さの85.6%になった.また,CZポストを別の引き抜き成形法で成形して,同様に機械的性質を調べて,前述の連続加熱成形法と比較検討している.その他,ジルコニア含有ガラス繊維,Eガラス繊維について家兎の皮下および骨内に埋入して,生体組織反応の試験も進めている.Na_2O-K_2O-CaO-ZrO_2-SiO_2系ガラス繊維とポリメタクリレートを複合したファイバーポスト(CZポストと略す)を引抜き法および連続加熱重合法で成形して,曲げ特性を調べて,さらにサーマルサイクル試験および温水浸漬試験を行ない耐久性について昨年に続いて詳細に調べた.引抜き法で成形したCZポストの曲げ弾性係数(E)はガラス繊維体積含有率(V_f)を大とすると直線的に大となり,V_f40%では31.5GPaであり,EとV_fの関係はE=0.71V_f+3.1であった.ポストの曲げ強さはV_f40%で670MPaであった.また,CZポストのサーマルサイクル試験(試験回数20000回)の曲げ弾性係数は31.1GPaとなり,その変化率は98.7%であった.温水浸漬試験(60°C,20日間浸漬)の曲げ弾性係数は30.3GPaとなり,その変化率は96.2%であった.いずれの耐久性試験でも曲げ弾性係数はほとんど変化しなかった.連続加熱重合法で成形したポストの曲げ弾性係数もV_fを大とすると直線的に大となり,V_f40%では28.1GPaであり,EとV_fの関係はE=0.65V_f+3.1であった.ポストの曲げ強さはV_f40%で805.3MPaであった.また,ポストのサーマルサイクル試験の曲げ弾性係数は29.7GPaとなり,その変化率は100%であった.温水浸漬試験の曲げ弾性係数は27.7GPaとなり,その変化率は99%であった.いずれの耐久性試験でも曲げ弾性係数はほとんど変化しなかった.以上,CZポストの弾性係数は金属ポストに比較して象牙質に近似しているのでポストとして実用の可能性が示唆された. | KAKENHI-PROJECT-16591966 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16591966 |
極低速度研削加工における特異現象の発生機構に関する研究 | 砥石周速度V_s=13m/sの極低速度域における炭素鋼S45Cの研削時に,砥石摩耗速度の急増に伴って研削抵抗が極小となり,さらに表面粗さが顕著に劣化するなどの特異現象が発生する。本研究ではこの特異現象の発生機構を解明するために,砥粒研削点温度の測定,砥石面付着物の観察さらに付着物と切り屑の硬度比較に関する解析を行った。得られた主な結論は以下のとおりである。(1)特異現象は砥粒研削点温度の,ある特定領域で発生し,これは切削加工における構成刃先の発生温度領域が限定される現象と定性的に一致する。(2)切り屑と砥石面付着物とには,特異現象の発生領域において硬度差が存在し,これは切削加工の構成刃先と切り屑との硬度差と同程度である。(3)特異現象の発生する速度域における砥粒付着物の断面組織は切削加工の構成刃先と同様の層状組織を示す。以上の結論から,極低速度域の13m/sにおける砥粒研削点に切り屑硬度以上に加工硬化された層状組織を有する構成刃先が発現するものと推定される。また,前報^<1)>で特異現象が発生する速度領域以下では品質・精度の観点から極低速度研削加工の適用範囲が十分に存在することを示した。砥石周速度V_s=13m/sの極低速度域における炭素鋼S45Cの研削時に,砥石摩耗速度の急増に伴って研削抵抗が極小となり,さらに表面粗さが顕著に劣化するなどの特異現象が発生する。本研究ではこの特異現象の発生機構を解明するために,砥粒研削点温度の測定,砥石面付着物の観察さらに付着物と切り屑の硬度比較に関する解析を行った。得られた主な結論は以下のとおりである。(1)特異現象は砥粒研削点温度の,ある特定領域で発生し,これは切削加工における構成刃先の発生温度領域が限定される現象と定性的に一致する。(2)切り屑と砥石面付着物とには,特異現象の発生領域において硬度差が存在し,これは切削加工の構成刃先と切り屑との硬度差と同程度である。(3)特異現象の発生する速度域における砥粒付着物の断面組織は切削加工の構成刃先と同様の層状組織を示す。以上の結論から,極低速度域の13m/sにおける砥粒研削点に切り屑硬度以上に加工硬化された層状組織を有する構成刃先が発現するものと推定される。また,前報^<1)>で特異現象が発生する速度領域以下では品質・精度の観点から極低速度研削加工の適用範囲が十分に存在することを示した。 | KAKENHI-PROJECT-03650107 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03650107 |
農業集落の社会維持機能に関する比較農業史的研究 | 本研究は、自治村落論を基礎にして、農業集落が備えている「社会維持機能(Social Safety net)」に着目しつつ、日本を中心にアジア諸国における農村社会の機能と組織及びその意義について、歴史的に比較・検討することに、目的がある。取り上げた地域は、日本本土、沖縄、韓国、インドネシア、ミャンマーであり、村落の社会的構造とその機能について、農業団体、生活改善、行政権力への対応、相互金融、障害者への対応等の具体的諸機能に即して検討した。いずれの地域の農業集落も社会の貧困層である小農で形成され、多様な形態の相互扶助的な社会維持の組織と多様な機能が見られ、農村外部の社会的経済的環境の変動によって農家の破綻する事態を、多少とも防止していた。しかし全体として、次のような特徴が指摘できる。1)これら「社会維持機能」は、単に貧困の程度に応じて形成されるのではないこと2)その機能と組織は多様であり、その相違は、基本的には歴史的に形成されてきた農家家族のあり方と、それが形成する農村社会における農家の関係性によること3)農村社会の「社会維持機能」のあり方を規定する要素は、農村社会内部のものだけに止まらず、上部行政権力との関係が重要な要素として作用していることなお、報告書に記載された各章では、それぞれの課題に即した社会維持機能の組織と機能について、詳細に検討されている。本研究は、自治村落論を基礎にして、農業集落が備えている「社会維持機能(Social Safety net)」に着目しつつ、日本を中心にアジア諸国における農村社会の機能と組織及びその意義について、歴史的に比較・検討することに、目的がある。取り上げた地域は、日本本土、沖縄、韓国、インドネシア、ミャンマーであり、村落の社会的構造とその機能について、農業団体、生活改善、行政権力への対応、相互金融、障害者への対応等の具体的諸機能に即して検討した。いずれの地域の農業集落も社会の貧困層である小農で形成され、多様な形態の相互扶助的な社会維持の組織と多様な機能が見られ、農村外部の社会的経済的環境の変動によって農家の破綻する事態を、多少とも防止していた。しかし全体として、次のような特徴が指摘できる。1)これら「社会維持機能」は、単に貧困の程度に応じて形成されるのではないこと2)その機能と組織は多様であり、その相違は、基本的には歴史的に形成されてきた農家家族のあり方と、それが形成する農村社会における農家の関係性によること3)農村社会の「社会維持機能」のあり方を規定する要素は、農村社会内部のものだけに止まらず、上部行政権力との関係が重要な要素として作用していることなお、報告書に記載された各章では、それぞれの課題に即した社会維持機能の組織と機能について、詳細に検討されている。初年である本年度は、研究分担者による既存研究の整理、自治村落論をベースにした農業集落に関する理論的深化、農業集落の機能に関する具体的検討を目的として、研究会を2回開催し、あわせて沖縄県で農業集落調査を実施した。第一回研究会では、京都大学東南アジア研究センターの藤田幸一氏から「ミャンマーの農村社会について」という報告をいただき、行政統治機構、地方自治、徴税、農村組織と農村社会構造との関連を、日本を中心とした他国との比較を中心に、討議を行った。また斎藤仁氏からは「農業集落をめぐる理論的・方法論的課題」というテーマで報告をいただき、中間理論としての農村社会理論と経済学との関連について、認識を深めた。さらに研究分担者から既存研究の検討を行った。第二回研究会では、前回に引続き斎藤仁氏のコメンテータとして参加のもと、沖縄国際大学の来間泰男氏から「沖縄農業と農村社会構造」について報告をいただき、封建時代が欠落した琉球王朝時代以降における沖縄の村落社会の特徴を、日本本土の村落社会のと比較しつつ、討議した。琉球王府の地方行政制度、農業生産力の水準、薩摩藩による支配機構と収奪等により、村落社会の自治能力が、本土のそれと比較して相対的に弱いことが、相違の根本にあったことを確認した。さらに、研究分担者から、インドネシアの労働慣行、及び山形県における農業集落機能の変化と現状について、報告を行った。同時に行った沖縄県国頭郡今帰仁村での聞取り調査では、集落長から村落統合の重要行事である祭祀の実施、特に「ノロ」といわれる女性神官の社会的地位とその継承問題、市町村行政と集落業務の関連、地域振興等について、説明を受けた。本プロジェクト2年目の本年は、研究分担者間で研究視角の共通化を図るため、インドネシアジョクジャカルタ周辺の農村で実態調査を行った。調査に当っては、ガジャマダ大学のS.ハルトノ教授の協力を得て、また斎藤仁氏にも参加を要請した。調査の目的は、第一に98年以降の経済危機で荒廃した山林の資源回復を目的とした「ソーシャルフォレストリー」政策の実施とその基盤である農村集落との関係、第二に農業集落を基盤とした相互扶助の具体的事業である「相互金融(Arisan)」をめぐる社会関係とその機能に、焦点をあてた。第一の課題に関しては、「ソーシャルフォレストリー」は、経済危機以降急速に荒廃した山林の回復策で、20名以上の農民のグループが植林コストを負担する「分収林」であり、植林後林間に農作物を間作すること、6年目以降農民グループは協同組合を組織すること、等がこの制度の概要である。ジョクジャカルタ周辺の3農村での聞取り調査によると、いずれも植林開始間もないが、農民グループの組織範囲は各村で多様であり、集落(Dusun)ぐるみというケースはみられなかった。また間作では、商品作物が主であった。 | KAKENHI-PROJECT-14560174 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14560174 |
農業集落の社会維持機能に関する比較農業史的研究 | 第二の無尽講(Arisan)は、調査村のいずれも古くから無尽講が行われており、その参加者は地縁、血縁、村内の各組織等多様な関係をベースにしていた。無尽講はいずれも貯蓄が主目的であり、メンバーに資金を貸出すこともあり、文字通り相互金融的性格が強いこと、日本の無尽講との相違は、農村の社会と外部社会との関連の相違にあることが確認された。1月に研究会を開催し、インドネシアでの調査結果の検討を行うとともに、各自の研究の進捗状況を報告し、来年度の課題を整理した。本プロジェクトの最終年度の本年は、研究報告書の作成に関して、事実認識の共有化と、比較軸の確認を目的として、韓国忠清北道青川面の同族集落において、農家調査を行った。調査に当たっては、忠北大学農業経済学科朴鍾燮教授の協力を得、また当プロジェクトの問題意識を共有する北海道大学大学院農学研究科助教授朴紅先生にも参加して頂いた。調査は、第一に高度経済成長の影響による労働力流出の実態把握と社会構造との関連に焦点を当てた。韓国の農家家族は、日本とは大きく異なり、「家の精神」に基づく「家」の縛りが希薄であることが確認された。第二に流出の結果農村部に残存した高齢者と流出した家族との関係について調査し、農地を含む財産の相続が基本的に男子分割相続であることから、農地の細分化と不在地主が多数発生していることが確認された。その結果農地の受委託関係が広汎に見られるが、日本のように集落を主体とする受託組織が見られず、個人間のつながりによる賃貸借が主流となっている。しかし第三に先祖祭祀に関しては、「同高祖八寸」という伝統的な親族組織で行われ、祭祀費用はこの親族組織による共同財産の運用で行われていることも確認できた。このように韓国の農業集落の社会維持機能は、日本と比較してかなり限定された機能に止まり、むしろ親族組織が主体となっていることが、調査の結論である。これを共通認識として、各自の課題に沿って報告書の執筆を行った。 | KAKENHI-PROJECT-14560174 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14560174 |
地域共有の文化資源としてのアイヌ文化の歴史遺産 | 本年度は、まず北海道日高地方に位置する平取町二風谷地区において「イオル(伝統的生活空間)再生事業」を中心とする文化的景観に関連する現在までの取り組みに関して聞き取りを行い、同事業の具体的内容など概要を把握することができた。これに加え、日高管内13の博物館を訪問・見学するとともに、各館所蔵のアイヌ民具などの資料の来歴やアイヌ文化の振興に関する取り組みの情報収集を行うことができた。これらの調査により、本研究費で実施しているポー川史跡自然公園を中心とする標津町での事例と比較する情報を得ることができた。また国立アイヌ民族博物館準備室では、同準備室の現況や業務内容を把握することができ、標津町での調査事例の位置づけを考える情報を得ることができた。また昨年度に引き続き、ポー川史跡自然公園で現地のアイヌ系住民の方々が開催されたイチャルパや縄文祭りを見学した。これらの調査は、過去4年間実施し毎年観察を行っているが、その結果ポー川史跡自然公園や同イチャルパを巡る社会状況の変化を捉えることができた。以上のような現地調査を基に、本年度は、次のような研究成果を公開・提示することができた。まず弘前大学で開催された日本文化人類学会第52回研究大会において標津町での現地調査に基づく口頭発表を行い、その成果の一端を提起した。またマレーシア・ペナン(マレーシア科学大学)で開催される国際先住民会議(CHAGS)12で、アイヌ文化の歴史遺産を対象とした公共人類学・考古学をテーマとしたセッションを主宰するとともに、個人でも口頭発表を行った。これに加え、千葉県鴨川市で開催された生態人類学会第24回研究大会においてポスター報告を実施した。この他、本研究に関連する学術論文数編が査読制の学会誌や一般書籍の論集などに掲載された。本年度は、北海道日高地方の平取町において本研究の申請時に計画していた現地調査を実施することができた。具体的には、同町内の二風谷地区において推進されている「イオル(伝統的生活空間)再生事業」を中心とする文化的景観に関連する現在までの取り組みに関して、現地の研究・行政機関の担当者の方々に聞き取り調査を実施し、当該地域におけるアイヌ文化の歴史遺産に関する知識や認識を収集することができた。この調査により、北海道内で最も先駆的にアイヌ文化の歴史遺産を文化的景観として位置づけ保護し活用しようとする取り組みの概要を把握することができた。またこうした成果は、本研究の主要な対象であるポー川史跡自然公園を中心とする標津町におけるアイヌ文化の歴史遺産の特徴やその活用を考える上で貴重な比較・参照事例となった。いっぽう、本年度は、国内外の学会で2回の口頭発表と1回のポスター発表を実施した。まずCHAGS12で主催したセッションでは、国立アイヌ民族博物館準備室や北海道大学アイヌ先住民センターなどのメンバーの報告に加え、アイヌ民族としてのアイデンティを有する研究者からのコメントも設けることができたため、本研究成果を国際発信するとともにアイヌ文化の継承・推進のあり方を問う貴重な機会になった。また日本文化人類学会第52回研究大会と生態人類学会第24回研究大会では、標津町における聞き取りに基づくアイヌ文化史跡に対する地域住民の景観認識に関する調査成果を提示することができた。なお本年度は、自然災害によって標津町における現地調査を実施することができなかったものの、これまでの進捗状況から次年度中には申請計画を完了する目途がついている。以上のように、本年度も申請時に計画した調査をほぼ予定通り実施しデータを収集することができた。最終年度は、まず過去2年間に収集した既存のデータを踏まえ、平成30年度に自然災害のため断念した北海道標津町内の「崎無異」と「標津」の二地域における聞き取り調査を実施する。この二地域の調査を行うことができれば、同町内に存在する9地域全ての調査が完了し、質的にも量的にも過去に実施した7地区での調査成果と対比しうるデータが得られるため、当該地域内における住民の方々のアイヌ文化の歴史遺産に対する意識を把握できる。これに加え、次年度は、同じく自然災害のため実施を断念した羅臼町の北方四島引揚者団体に聞き取り調査を実施する。申請者らは、過去に標津町在住の北方四島引揚者に対して、当該地域のアイヌ文化に関する記憶の聞き取りを行っているため、その調査成果との比較検討を試みる。この他、次年度もポー川史跡自然公園で開催されるアイヌ系住民の方々による「イチャルパ(鎮魂祭)」に参加し、アイヌ系のエスニシティを保持する住民と日本社会におけるマジョリティ系住民がどのような交流を形成しているか継続調査を行い、その現状把握を試みる。またこれまでの成果の社会還元として、地域住民の方々を対象としたワークショップに加え、アイヌの星空に関する景観認識をプラネタリウムで投影し解説する、という地域住民を対象としたイベントを企画し開催する。このイベント企画によって、エスニシティの枠を超えアイヌ文化の歴史遺産を地域共有資源として活用するあり方を、当該地域に暮らす住民の方々と共に検討する。以上のような調査研究や社会還元を基に、本研究では、平取町二風谷地区における「イオル(伝統的生活空間)再生構想」をはじめとするアイヌ文化の歴史遺産を活用した先駆的な取り組みと比較検討する。その最終的な成果として、ポー川自然史跡公園を中核とする考古遺跡などの史跡が、地域コミュニティにとっての共有資源として活用しうる可能性を提示する。本年度は、まず北海道東部に位置する標津町の「北標津」・「忠類」の二地域において、地域住民の方々21名に聞き取り調査を実施することができた。 | KAKENHI-PROJECT-17K03301 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K03301 |
地域共有の文化資源としてのアイヌ文化の歴史遺産 | この調査では、当該住民の方々が自らが暮らす地に位置するポー川史跡自然公園を中心とするアイヌ文化関連の歴史遺産に対して、どのような知識や認識あるいは価値づけを保持しているか把握することができた。特に聞き取り調査では、同地のみならずアイヌの人々の文化・歴史に対する意識を問うとともに、その結節点となるポー川自然史跡公園そのものや同公園で開催されているクナシリメナシの戦いの犠牲者に対するイチャルパ(慰霊祭)などに対する意見などの収集を行った。いっぽう、こうした聞き取り調査に加え、現地標津町において地域住民の方々を対象とした公開ワークショップを開催し、調査成果の現地社会への還元を行うことができた。この企画では、単なる一方通行的な成果報告ではなく、アイヌ文化の歴史遺産の活用方法を考えるための地域住民の方々の御意見を収集することができた。以上のような現地調査を基に、本年度は、次のような研究成果を公開・提示することができた。まず神戸大学で開催された日本文化人類学会第51回研究大会において標津町での現地調査に基づく口頭発表を行い、その成果の一端を提起した。また2018年度にマレーシア・ペナン(マレーシア科学大学)で開催される国際先住民会議(CHAGS)12で、アイヌ文化の歴史遺産を対象とした公共人類学・考古学をテーマとしたセッションを企画し受理された。この他、本研究に関連する学術論文数編が、査読制の学会誌や一般書籍の論集などに掲載された。本年度は、北海道東部の根室郡標津町において本研究の申請時に計画していた現地調査を実施することができた。具体的には、同町内の「北標津」と「忠類」の二地区で21名の地域住民の方々に聞き取り調査を実施し、ポー川史跡自然公園を中心とするアイヌ文化の歴史遺産に関する知識や認識を収集することができた。この調査で対象とした二地区は、沿岸部と内陸部、酪農と漁業、江戸時代以前に遡る集落と明治以降の開拓移民村、という性格を異にする非常に対照的な集落であるため、なによりも本研究で重視している地域内の住民の多様な知識・意見・認識を収集することができたと評価している。くわえて、本年度は、当初の計画よりも早く現地でワークショップを開催し、調査に御協力いただいた地域住民の方々に成果を公開することができた。またこうした公開ワークショップは、調査の社会還元という意義のみならず、地域住民ととともにアイヌ文化の歴史遺産の保護と活用のあり方を考えるオープンサイエンスの実践という意味でも貴重な企画であったと評価している。なお、本年度は行政やNPOなどの取り組みに関する直接的な調査は着手していないものの、次年度以降に実施する計画を策定することができた。他方で、マレーシア・ペナンで開催されるCHAGS12に申請し受理されたパネルは、国立アイヌ民族博物館準備室や北海道大学アイヌ先住民センターなどのメンバーとの共同であることから、本研究成果の国際発信のみならず、アイヌ文化の継承・推進のあり方を問う貴重な意見交換の機会になることが期待できる。またアイヌ民族としてのアイデンティを有する研究者からのコメントも加わっているため、本研究の推進にとっても十二分の成果になると期待できる。以上のように、本年度は、申請時に計画した調査をほぼ予定通り実施しデータを収集することができた。 | KAKENHI-PROJECT-17K03301 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K03301 |
スピニック・データストレージ・メディア作製装置の試作 | 代表者等は垂直磁気記録の新しいパラダイムと考えられる、情報をメディア微結晶粒数個分の領域に記録する単磁区磁性微粒子記録、いわゆるスピニック・データ・ストレージ、の工学的体系を確立する研究を行なっている。本課題では、この記録媒体の垂直スピニック・ストレージ・メディアに関する設計指針の基本コンセプトと作製技術の確立が目標である。とくに、記録媒体としての最適化を行なうため、膜の磁気的微細構造の解明と成膜プロセス制御などをスパッタ成膜の物理に立脚して検討している。初年度には、清浄雰囲気成膜用アルミニウムチャンバを備えたマルチターゲットスパッタ装置の設計を行ない、多層膜構造の高密度磁気ディスクを高速作製するためには、多元カソードとロードロック機構を具備した装置が必要とした。その上で装置試作を完了し、10^<-9>Torrの高真空度を達成した。最終年度には、本装置での最適成膜条件を決定して垂直磁気記録媒体を試作した。その記録特性を評価した結果、本装置により微粒子型微細構造を持つ垂直記録媒体が実現できていること、高真空成膜では垂直結晶異方性が増加し、同時に磁性膜を構成する微粒子間の磁気的な分離がより促進されること、しかし、一方で粒子サイズは肥大化すること、などを見出した。さらに高密度記録再生の実験から、媒体ノイズの明瞭な低下が見られ高密度記録に重要な高いSN比を示す媒体となることが実験的に明らかになった。これらの物性解析と高密度記録再生実験の結果は、垂直磁化ハードディスクメディアの設計指針として有用である。以上、当初計画の高性能垂直磁気記録作製装置の試作はその所望の性能を発揮して目的を達し、最適化した成膜条件下で作製した高密度磁気ディスク媒体の優れた記録性能を確認した。これらの実験結果は、今後さらに理想的なスピニック・ストレージ・メディア実現の糸口であり、超高密度記録方式の実用化検討の基礎となるものである。代表者等は垂直磁気記録の新しいパラダイムと考えられる、情報をメディア微結晶粒数個分の領域に記録する単磁区磁性微粒子記録、いわゆるスピニック・データ・ストレージ、の工学的体系を確立する研究を行なっている。本課題では、この記録媒体の垂直スピニック・ストレージ・メディアに関する設計指針の基本コンセプトと作製技術の確立が目標である。とくに、記録媒体としての最適化を行なうため、膜の磁気的微細構造の解明と成膜プロセス制御などをスパッタ成膜の物理に立脚して検討している。初年度には、清浄雰囲気成膜用アルミニウムチャンバを備えたマルチターゲットスパッタ装置の設計を行ない、多層膜構造の高密度磁気ディスクを高速作製するためには、多元カソードとロードロック機構を具備した装置が必要とした。その上で装置試作を完了し、10^<-9>Torrの高真空度を達成した。最終年度には、本装置での最適成膜条件を決定して垂直磁気記録媒体を試作した。その記録特性を評価した結果、本装置により微粒子型微細構造を持つ垂直記録媒体が実現できていること、高真空成膜では垂直結晶異方性が増加し、同時に磁性膜を構成する微粒子間の磁気的な分離がより促進されること、しかし、一方で粒子サイズは肥大化すること、などを見出した。さらに高密度記録再生の実験から、媒体ノイズの明瞭な低下が見られ高密度記録に重要な高いSN比を示す媒体となることが実験的に明らかになった。これらの物性解析と高密度記録再生実験の結果は、垂直磁化ハードディスクメディアの設計指針として有用である。以上、当初計画の高性能垂直磁気記録作製装置の試作はその所望の性能を発揮して目的を達し、最適化した成膜条件下で作製した高密度磁気ディスク媒体の優れた記録性能を確認した。これらの実験結果は、今後さらに理想的なスピニック・ストレージ・メディア実現の糸口であり、超高密度記録方式の実用化検討の基礎となるものである。代表者等は垂直磁気記録の新しいパラダイムと考えられる、情報をメディア微結晶粒数個分の領域に記録する単磁区磁性微粒子記録、いわゆるスピニック・データ・ストレージ、の工学的体系を確立する研究を行なっている。本課題では、このためのスパッタ成膜の物理に立脚して磁性微粒子を整然と配向させた垂直スピニック・ストレージ・メディアにおけるスパッタ成膜機構とその最適化、膜の磁気的微細構造の解明と制御などの研究を通じて、基本コンセプトと作製技術の確立が目標である。本年度は、申請者らが提案した新しいプラズマ閉じこめ型スパッタターゲット及び本所付属工場と連携して作製した特殊処理を施した清浄雰囲気成膜用アルミチャンバーを具備したマルチターゲット高真空スパッタ装置の試作を完了した。本装置は全金属ガスケットによる真空シールや予備室の装備など、実用装置として配慮されている。排気特性や到達による真空シールや予備室の装備など、実用装置として配慮されている。排気特性や到達真空度もすでに10^<-8>Torrの高真空度を達成し、次年度での実験成果が期待できる。これまで、垂直磁化ハードディスクメディアの設計指針を得るために物性解析と高密度記録再生実験の両面の検討を行ない、微粒子型構造を持つ垂直記録媒体の結晶粒を微細化し磁気的な分離を促進した媒体ほど、高密度記録に重要な高いSN比を示すことを明らかにしている。加えて、このような微細粒子から成る媒体では平滑なメディア表面性が重要で異常析出物の少ない媒体ほど、超高密度記録に必須なヘッドとメディア間の微小スペーシングを実現できることを確認した。以上、本年度に計画した主な課題はその結果を得ることができたので、さらに次年度にはこれらの実験結果を発展させて、スピニック・ストレージ方式についての可能性の検証と実用化への検討を行う。 | KAKENHI-PROJECT-07505004 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07505004 |
スピニック・データストレージ・メディア作製装置の試作 | 代表者等は垂直磁気記録の新しいパラダイムと考えられる、情報をメディア微結晶粒数個分の領域に記録する単磁区磁性微粒子記録、いわゆるスピニック・データ・ストレージ、の工学的体系を確立する研究を行なっている。本課題では、この記録媒体の垂直スピニック・ストレージ・メディアに関する設計指針の基本コンセプトと作製技術の確立が目標である。とくに、記録媒体としての最適化を行なうため、膜の磁気的微細構造の解明と成膜プロセス制御などをスパッタ成膜の物理に立脚して検討している。昨年度は、清浄雰囲気成膜用アルミニウムチャンバを備えたマルチターゲットスパッタ装置の試作を完了して、10^<-8>Torrの高真空度を達成したのて、本年度はこれを用いて成膜実験を行なった。本成膜装置は本年度の細部調整で、10^<-9>Torrの真空度に到達している。研究では、最適成膜条件を決定して垂直磁気記録媒体を試作し、その記録特性を評価する点に力点を置いた。その結果、本装置により微粒子型微細構造を持つ垂直記録媒体が実現できていること、高真空成膜では垂直結晶異方性が増加し、同時に磁性膜を構成する微粒子間の磁気的な分離がより促進されること、しかし、一方で粒子サイズは肥大化すること、などを見出した。さらに高密度記録再生の実験から、媒体ノイズの明瞭な低下が見られ高密度記録に重要な高いSN比を示す媒体となることが実験的に明らかになった。これらの物性媒体と高密度記録再生実験の結果は、垂直磁化ハードディスクメディアの設計指針として有用である。以上、当初計画の高性能垂直磁気記録作製装置の試作はその所望の性能を発揮して目的を達し、最適化した成膜条件下で作製した高密度磁気ディスク媒体の優れた記録性能を確認した。これらの実験結果は、今後さらに理想的なスピニック・ストレージ・メディア実現の糸口であり、超高密度記録方式の実用化検討の基礎となるものである。 | KAKENHI-PROJECT-07505004 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07505004 |
唾液中ヒト成長ホルモン測定による新しい成長ホルモン分泌不全症の診断法 | 対象と方法:低身長を主訴に検査入院した9名を対象とた。3種類の薬物負荷試験や夜間分泌試験などの結果から、成長ホルモン分泌不全(GHD)と正常低身長(NS)の2群に分類した。GHD群は4名で(男:女=3:1)、年齢410歳。NS群は5名で(男:女=3:2)、年齢513歳。唾液は2gの脱脂綿を口腔内に含ませ30分後に取り出し1,500rpm、5分間遠心し採取。唾液中のGHの測定は、高感度酵素免疫測定(EIA)を用いた。血中GHの測定は、栄研キットの二抗体ビーズ法で行った。希釈試験:希釈試験の結果から唾液50μlを被検唾液量とした。測定系の感度は0.03pg/tube、したがって唾液中GHの検出限界は、0.6pg/mlとなった。基礎値:唾液中GHの基礎値は、GHD群で3.8±4.6pg/m1(mean±SD)、NS群では、5.2±4.5pg/ml(mean±SD)となり有意差を認めなかった。低値が予測されたGHDの唾液中GH基礎値においても本法を用いれば十分測定可能であった。薬物負荷による唾液中GHの変動パターンは、血中GHの変動パターンとパラレルに変化した。両群ともに薬物負荷後の血中GHの上昇から3090分遅延して唾液中GHのピークが認められ、多くの症例で両者の変動パターンはほぼ一致した。この結果から、唾液中GH濃度は、血中GH濃度に依存しており唾液中のGH測定でGH分泌能の評価が可能であると考えられた。相関:血中GH頂値と唾液中GH頂値を比較したところ良好な相関を得た(y=1.93x-3.31,r=0.84,p<0.001,n=22)。唾液分泌量は種々の刺激により変動する。成長ホルモン濃度を唾液中の物質で補正した。標準化物質として唾液中のIgGを同時に測定し唾液中hGH値を補正した。その結果、y=0.18x-0.24,r=0.86,p<0.001,n=17とさらに良好な相関を得た。対象と方法:低身長を主訴に検査入院した9名を対象とた。3種類の薬物負荷試験や夜間分泌試験などの結果から、成長ホルモン分泌不全(GHD)と正常低身長(NS)の2群に分類した。GHD群は4名で(男:女=3:1)、年齢410歳。NS群は5名で(男:女=3:2)、年齢513歳。唾液は2gの脱脂綿を口腔内に含ませ30分後に取り出し1,500rpm、5分間遠心し採取。唾液中のGHの測定は、高感度酵素免疫測定(EIA)を用いた。血中GHの測定は、栄研キットの二抗体ビーズ法で行った。希釈試験:希釈試験の結果から唾液50μlを被検唾液量とした。測定系の感度は0.03pg/tube、したがって唾液中GHの検出限界は、0.6pg/mlとなった。基礎値:唾液中GHの基礎値は、GHD群で3.8±4.6pg/m1(mean±SD)、NS群では、5.2±4.5pg/ml(mean±SD)となり有意差を認めなかった。低値が予測されたGHDの唾液中GH基礎値においても本法を用いれば十分測定可能であった。薬物負荷による唾液中GHの変動パターンは、血中GHの変動パターンとパラレルに変化した。両群ともに薬物負荷後の血中GHの上昇から3090分遅延して唾液中GHのピークが認められ、多くの症例で両者の変動パターンはほぼ一致した。この結果から、唾液中GH濃度は、血中GH濃度に依存しており唾液中のGH測定でGH分泌能の評価が可能であると考えられた。相関:血中GH頂値と唾液中GH頂値を比較したところ良好な相関を得た(y=1.93x-3.31,r=0.84,p<0.001,n=22)。唾液分泌量は種々の刺激により変動する。成長ホルモン濃度を唾液中の物質で補正した。標準化物質として唾液中のIgGを同時に測定し唾液中hGH値を補正した。その結果、y=0.18x-0.24,r=0.86,p<0.001,n=17とさらに良好な相関を得た。対象と方法低身長を主訴に検査入院した9名を対象とた。3種類の薬物負荷試験や夜間分泌試験などの結果から、成長ホルモン分泌不全(GHD)と正常低身長(NS)の2群に分類した。GHD群は4名で(男:女=3:1)、年齢410歳。NS群は5名で(男:女=3:2)、年齢513歳。唾液は2gの脱脂綿を口腔内に含ませ30分後に取り出し1,500rpm、5分間遠心し採取。唾液中のGHの測定は、高感度酵素免疫測定(EIA)を用いた。血中GHの測定は、栄研キットの二抗体ビーズ法で行った。希釈試験希釈試験の結果から唾液50μ1を被検唾液量とした。測定系の感度は0.03pg/tube、したがって唾液中のGHの検出限界は、0.6pg/mlとなった。 | KAKENHI-PROJECT-09670820 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09670820 |
唾液中ヒト成長ホルモン測定による新しい成長ホルモン分泌不全症の診断法 | 基礎値薬物負荷による唾液中のGHの変動パターンは、血中GHの変動パターンとパラレルに変化した。両群ともに薬物負荷後の血中GHの上昇から3090分遅延して唾液中GHのピークが認められ、多くの症例で両者の変動パターンはほぼ一致した。この結果から、唾液中のGH濃度は、血中GH濃度に依存しており唾液中のGH測定でGH分泌能の評価が可能であると考えられた。相関平成9年度に測定感度、希釈試験、再現性試験、添加回収試験、特異性試験等の基礎実験を行い唾液中hGHの測定方法を確立した。平成10年度では引き続き症例を集積し、薬物刺激試験中の血液中、唾液中hGHの変動パターンの比較や血中GH頂値と唾液中GH頂値を比較検討した。唾液分泌量は種々の刺激により変動するため成長ホルモン濃度を唾液中の他の物質で補正した。標準化物質として唾液中のIgGを同時に測定し唾液中hGH値を補正し検討した。血中GH頂値と唾液中GH頂値を比較したところ良好な相関(y=1.92x+0.72,r=0.74,p=0.006,n=17)を得た。唾液中GH頂値を唾液中IgGで補正した場合、y=0.18X-0.24,r=0.86p<0.001,n=17とさらに良好な相関を得た。臨床的に実用可能であるか、特異度と敏感度について検討した。唾液中IgG補正なしの場合は、それぞれ83.3%と71.4%で唾液中IgG補正ありの場合は、それぞれ66.7%と85.6%であった。唾液中1gG測定で補正しなくとも実用可能と考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-09670820 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09670820 |
電気化学効果を用いたナノメータ超微細加工プロセスと電子通信機能素子への応用 | 1.陽極酸化アルミナレジストを用いた超微細電極作製プロセスの研究開発と50ナノメータ電極の実現電気化学作用である陽極酸化法を用いて、基板上のAl薄膜表面を5nm程度酸化し、その酸化膜をレジストとしてエッチングを行うプロセスを研究開発し、幅50nm、厚さ30nmのAl超微細電極を実現した。これにより、10nm以下の電極作製技術の基礎を確立した。2.17GHzコヒーレント弾性表面波の送受信に成功本研究により作製された弾性表面波励振用超微細すだれ状電極を用いて、17GHzコヒーレント弾性表面波の送受信に成功した。10GHz帯以上での、コヒーレント弾性表面波励振は世界的に例がなく、弾性表面波素子の適用周波数範囲として20GHz帯以上の可能性を示したものであり、その意義は大きい。3.10GHz帯フィルタの作製本研究により作製された、すだれ状電極を用いた弾性表面波フィルタにより、10GHz帯で挿入損失15.7dBのトップデータを得た。これにより、10GHz弾性表面波デバイスの実用化の見込みを得た。4.電気化学効果による選択エッチングを用いた微細電極作製プロセスの研究開発と一方向性すだれ状電極を用いた低損失フィルタの作製電気化学効果を用いた場合の、印加電圧とCrエッチングレートの関係を明らかにし、Al、Crの選択エッチングプロセスを研究開発した。これにより膜厚差を有するすだれ状電極の作製に重ね合わせ露光が不要になり、従来の適用周波数上限が約10倍になった。また、本方法で1GHz帯のフィルタを作製したところ、挿入損失2.9dBの特性を得た。これにより、膜厚差型一方向性すだれ状弾性表面波変換器の作製上の問題が解決され、その高効率特性を生かしたデバイスの研究開発が可能となった。1.陽極酸化アルミナレジストを用いた超微細電極作製プロセスの研究開発と50ナノメータ電極の実現電気化学作用である陽極酸化法を用いて、基板上のAl薄膜表面を5nm程度酸化し、その酸化膜をレジストとしてエッチングを行うプロセスを研究開発し、幅50nm、厚さ30nmのAl超微細電極を実現した。これにより、10nm以下の電極作製技術の基礎を確立した。2.17GHzコヒーレント弾性表面波の送受信に成功本研究により作製された弾性表面波励振用超微細すだれ状電極を用いて、17GHzコヒーレント弾性表面波の送受信に成功した。10GHz帯以上での、コヒーレント弾性表面波励振は世界的に例がなく、弾性表面波素子の適用周波数範囲として20GHz帯以上の可能性を示したものであり、その意義は大きい。3.10GHz帯フィルタの作製本研究により作製された、すだれ状電極を用いた弾性表面波フィルタにより、10GHz帯で挿入損失15.7dBのトップデータを得た。これにより、10GHz弾性表面波デバイスの実用化の見込みを得た。4.電気化学効果による選択エッチングを用いた微細電極作製プロセスの研究開発と一方向性すだれ状電極を用いた低損失フィルタの作製電気化学効果を用いた場合の、印加電圧とCrエッチングレートの関係を明らかにし、Al、Crの選択エッチングプロセスを研究開発した。これにより膜厚差を有するすだれ状電極の作製に重ね合わせ露光が不要になり、従来の適用周波数上限が約10倍になった。また、本方法で1GHz帯のフィルタを作製したところ、挿入損失2.9dBの特性を得た。これにより、膜厚差型一方向性すだれ状弾性表面波変換器の作製上の問題が解決され、その高効率特性を生かしたデバイスの研究開発が可能となった。 | KAKENHI-PROJECT-06452226 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06452226 |
共生スパイラルに着目した森林昆虫関連微生物の探索とその多様性創出機構の解明 | キクイムシ類、カミキリムシ類、クワガタムシ類、シロアリ類、ゾウムシ類、ハナムグリ類、キバチ類、ガ類、タマバエ類等を捕獲し、その習性(穿孔様式、成育特性、繁殖様式など)を確認した。キクイムシ類については、遺伝的分布様式を考察し、人工飼育系も導入した。虫体や生息場所に潜むダニ類、菌類、線虫を検出し、種同定と系統解析を行った。新種の発見、分布範囲の確認、特殊生態の発見、時間的変化や相互作用系も解明した。キクイムシ類、カミキリムシ類、クワガタムシ類、シロアリ類などの樹木穿孔性昆虫を、各調査地で見つけ捕り、あるいは倒木を回収して羽化を待った。また、人為的に伐採・放置して餌木も用意、あるいは生け捕りトラップを設置した。実体顕微鏡下で成虫の形態を観察し、種同定した。生息場所における習性(穿孔様式、成育特性、繁殖様式など)も確認した。とくに、西表島においては、キクイムシ類が他種の共生菌を盗んだり(養菌窃盗性)、奪ったり(養菌強奪性)していることを発見した。また、人工飼育によるキクイムシ類の繁殖生態の解明にも取り組んだ。供試虫の体表や生息場所を実体顕微鏡で丹念に観察し、ダニ類が潜んでいないか確かめた。ダニ類の形態を観察して種同定するとともに、生息場所における習性(存在様式、成育特性、繁殖様式など)を明らかにした。昆虫とダニを解剖し、菌類の保持状態も詳細に観察した。共生菌を各種の人工培地を用いて分離・培養、純化した後、光学顕微鏡で詳細に観察した。また、DNAを抽出し、塩基配列データを得た。これらの形態的および分子的情報に基づいて、種同定と系統解析を行った。解剖時に線虫も釣り上げて培養し、同様の手法を用いて種同定と系統解析を行った。また、キクイムシ類の細胞内における細菌の多重共生に関する理論的解析も行った。新種の発見、特殊な生態の発見など、成果を国内外の学会で発表し、論文を作成した。予定通り、前年の調査・実験を追試するとともに、相互作用系の解明や系統地理学的解析も進展させた。キクイムシ類、カミキリムシ類、クワガタムシ類、ガ類などの樹木穿孔性昆虫を、各調査地で見つけ捕り、あるいは寄主木ごと回収した。タマバエ類などのゴール形成昆虫は、植物フェノロジーをモニタリングしながら、ゴールごと捕獲した。実体顕微鏡下で形態を観察し、種同定した。キクイムシ類については、虫体のDNAデータから個体群の遺伝的分布様式を考察した。また、生息場所を切開して内部状態を調べ、その習性(穿孔様式、成育特性、繁殖様式など)も確認した。キクイムシ類については、人工飼育法を駆使して利他的行動を発見した。供試虫の体表や生息場所を実体顕微鏡で丹念に観察し、ダニ類が潜んでいないか確かめた。形態を観察して種同定するとともに、生息場所における習性(存在様式、成育特性、繁殖様式など)を明らかにした。共生菌を各種の人工培地を用いて分離・培養、純化した後、光学顕微鏡で詳細に観察した。また、DNAを抽出し、塩基配列データを得た。これらの形態的および分子的情報に基づいて、種同定と系統解析を行った。一部の分離菌株については、寄主木への作用も実証した。さらに、解剖時に線虫も釣り上げて培養し、同様の手法を用いて種同定と系統解析を行った。新種の発見、分布範囲の確認、特殊な生態の発見、分離菌株の特性に加え、相互作用の仕組みや時間的変化、系統地理学的解析などの成果について、国内外の学会で発表し、論文を作成した。キクイムシ類、カミキリムシ類、クワガタムシ類など、甲虫の樹木穿孔性昆虫について、2年間充実したデータが得られている。とくに線虫の成果は申し分ないと思われる。また、今年度はタマバエ類のゴール形成昆虫も捕獲でき、新たな共生系の研究を進められた。さらに、キクイムシ類については、来年度の予定であった系統地理学的解析をすでに実施できた。ただ、クビナガキバチ類などのハチ目の樹木穿孔性昆虫から菌と線虫の分離を行うことができなかった。最終年度も、1供試虫の捕獲・同定と生態調査、2ダニ類の検出・同定と生態調査、3菌類保持器官の探索、4菌類の分離・同定、5線虫の分離・同定、6相互作用系の解明を継続し、7系統地理学的解析も実施した。具体的には、キクイムシ類、カミキリムシ類、クワガタムシ類、ゾウムシ類、ハナムグリ類、キバチ類、ガ類などを、各調査地で見つけ捕り、あるいは寄主木あるいは果実ごと採集し、種同定した。また、生息場所を切開して内部状態を調べ、その習性(分布様式、成育特性、繁殖様式など)も確認した。キクイムシ類については、人工飼育系も導入した。供試虫の体表や生息場所にダニ類が潜んでいないか確かめ、種同定するとともに、習性を明らかにした。例えば、シロテンハナムグリ寄生ダニは、名古屋港の埋立緑地では低い寄生率であり、つくば市周辺では高い寄生率が維持された。共生菌を各種の人工培地を用いて分離・培養、純化した後、形態的および分子的情報に基づいて、種同定と系統解析を行った。キクイムシ類の細胞内に存在する細菌については、直接DNA解析を実施した。 | KAKENHI-PROJECT-26292083 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26292083 |
共生スパイラルに着目した森林昆虫関連微生物の探索とその多様性創出機構の解明 | さらに、解剖時に線虫も釣り上げて培養し、同様の手法を用いて種同定と系統解析を行った。例えば、ヒゲナガカミキリ族に便乗する細菌食性線虫は、生息域が重なるような条件下での細かい種分化が確認された。新種の発見、分布範囲の確認、特殊な生態の発見に加え、時間的変化や相互作用系の成果も国内外の学会で発表し、論文を作成した。そして、すべの結果をまとめて、8森林生態系における共生スパイラル成立関わる統一理論の構築を試みた。キクイムシ類、カミキリムシ類、クワガタムシ類、シロアリ類、ゾウムシ類、ハナムグリ類、キバチ類、ガ類、タマバエ類等を捕獲し、その習性(穿孔様式、成育特性、繁殖様式など)を確認した。キクイムシ類については、遺伝的分布様式を考察し、人工飼育系も導入した。虫体や生息場所に潜むダニ類、菌類、線虫を検出し、種同定と系統解析を行った。新種の発見、分布範囲の確認、特殊生態の発見、時間的変化や相互作用系も解明した。キクイムシ類、カミキリムシ類、クワガタムシ類など、甲虫の樹木穿孔性昆虫について、充実したデータが得られた。クビナガキバチ類のようなハチ目の樹木穿孔性昆虫、またタマバエ類などのゴール形成昆虫は扱うことができなかった。一方で、シロアリ類において、とくに線虫の分離を実施できた。最終年度も、これまでの調査・実験を継続しながら、系統地理学的解析も進展させる。クビナガキバチ類などのハチ目の樹木穿孔性昆虫については、引き続き確保に努める。そして、すべての結果をまとめて、種多様性、遺伝的多様性、生態系多様性を統合的に考察する。学会発表と論文作成も順次行う。28年度が最終年度であるため、記入しない。森林保護学キクイムシ類、カミキリムシ類、クワガタムシ類、シロアリ類などの研究レベルをより高めるとともに、クビナガキバチ類、タマバエ類などの確保に努める。予定していた調査・実験に関する出張や消耗品購入の一部が実施できなかったため。28年度が最終年度であるため、記入しない。消耗品の見積もりに少しの誤差があり、14,377円の残金となった。最終年度は国際学会もあり、予定通りの使用計画で問題ないと思われる。28年度が最終年度であるため、記入しない。予定通りの使用計画で問題ないと思われる。28年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-26292083 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26292083 |
比較景観生態学手法にもとづく里山の評価システムの開発 | 里山の変化とそれが我が国の生物多様性におよぼした影響を明らかにし、優先して保全再生すべき里山の抽出と管理について検討した。日本全土での里山の分布や都市拡大による消失リスクを、国土数値情報を用いて抽出する手法を開発した。絵図等により,江戸時代にマツを中心とする植生景観が維持されていたことを明らかにした。里山の管理手法に活かすため、従来の管理が生態系におよぼしてきた影響を整理した。里山の生態系サービスの景観評価手法に関して検討した。里山の変化とそれが我が国の生物多様性におよぼした影響を明らかにし、優先して保全再生すべき里山の抽出と管理について検討した。日本全土での里山の分布や都市拡大による消失リスクを、国土数値情報を用いて抽出する手法を開発した。絵図等により,江戸時代にマツを中心とする植生景観が維持されていたことを明らかにした。里山の管理手法に活かすため、従来の管理が生態系におよぼしてきた影響を整理した。里山の生態系サービスの景観評価手法に関して検討した。人間活動によって形成・維持されてきた二次的自然である里山を中心とした自然と文化の評価と保全・再生計画について、地理情報システムを用いた手法を検討した。複数時期にわたって作成された地形図,空中写真などをGISを用いて統合し,過去50年から100年間の景観変遷について明らかにした。中国山地では、過去100年間の時系列林相図を作成して解析を行ったところ、荒地面積は明治33年では占有率21.3%であったが,現在では0.9%と非常に減少していた。南九州低地丘陵では、大きな景観変化は直近の50年間で起きていること、拡大造林政策による針葉樹林の被覆増加のうち広葉樹林および草地からの転用がそれぞれ28%、および26%であったことなどを明らかにした。千葉県北総地域の台地上に樹枝状に切刻した谷津景観の時空間構造の解析を実施した。景観変化と生物多様性の関係について解析を試みた。数十年前に利用が中止された薪炭林では、ブナ優占とナラ優占では、林床の種構成が明瞭に異なることが明らかになったことから、時系列の林床植生評価が景観スケールで行える可能性が示唆された。また、鳥取県のレッドリスト種84種の分布について1976年と1997年の土地分類の変化について検討した。レッドリスト種は21年間に土地利用が変化していない場所に多く,特に継続して森林に分類される場所に多かった。里山に関する近年の社会的関心の高まりに関して、里山の持つどのような側面がとらえられてきたかについて整理し、過去数十年の間に変化した要因とその変化の特徴を検討した。丹後半島山間部および琵琶湖西岸では、地域ごとの土地利用と地形との関係、森林利用に関わる技術など、里山景観の形成や変遷と関係する要因について明らかにした。兵庫県淡路島では竹林拡大の現状と管理手法ならびに海岸林における現代の生態系サービスと人間の福利の関係について検討した.本研究は、里山の評価のための景観生態学的手法の開発を目的としている。そのため、(1)時系列地理情報の統合的な利活用のための、過去の空中写真、衛星画像、旧版地形図や各種主題図の時空間データベースの構築を進めてきた。時空間データベースを利用して、地形や土地利用、都市との関係などが異なる複数の流域で、明治期以降の里山景観の変遷や関連する施策を比較検討し、地域資源利用や土地利用パターンに注目して里山の地域性とは何か考察した。しかし、同一流域内においても、社会的条件の変化の影響が標高、傾斜などの自然的立地条件によって異なり、異なるパターンの土地利用変化を引き起こしていた(2)里山利用の変化が、地域植生に及ぼす影響のメカニズムを解明するための現地調査を行った。数十年前に利用が中止された薪炭林において、林冠樹種の成長にともなう林床の種構成変化を景観スケールで評価することを目的として、開葉期に空中写真を撮影し、樹冠分布図を作成した。さらに、撮影地域のブナ・ナラ混交二次林において展葉期と落葉期に一週間間隔で光量子センサーにより林床の光合成有効光量子束密度を測定した。また、里地里山に生育する希少植物の分布特性を、複数の空間スケールを用いて把握した。(3)里山の持つ生態系サービスと、その維持に必要な人の関わり方を検討した。「にほんの里100選」事業や里山・里海SGAに参画した過程で、生態系サービスの概念が整理され、里山の森林生態系は近年、生態系の供給サービスは増加しているが、利用量は減少していると見ることになった。具体的には、海岸クロマツ林、徳島県千年の森などを事例として、植生の構造、機能および立地環境の検討を行った結果、地域住民の生活に必要不可欠な機能を持つ里山林・海岸林は、現在では希少な植生の生育立地に成立しており、植生の保全を含めた維持管理が重要であると考えられた。里山ランドスケープの変化とそれが我が国の生物多様性におよぼした影響を明らかにし、優先して保全再生すべき里山の抽出と管理について検討した。(1)日本全土での里山の分布や都市拡大による消失リスクを、国土数値情報を用いて抽出する手法を開発した。また、時系列地理情報の統合的な活用を海外地域(上海,バンコク,ジャカルタ)において実証した。 | KAKENHI-PROJECT-20241009 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20241009 |
比較景観生態学手法にもとづく里山の評価システムの開発 | (2)絵図等により,除伐や下刈りといった管理が,江戸時代の社寺風致林の管理として一般的に行われ,マツを中心とする植生景観が維持されていたことを明らかにした。(3)里山の管理手法に活かすため、従来の管理が生態系におよぼしてきた影響を整理した。空中写真による解析によって、ナラ枯れ初期ではナラ枯れ被害の発生しやすい条件(谷沿いの林縁部や頂部斜面)があることがわかった。また、林冠構成樹種の違いが林床の融雪速度と光環境に季節的な違いを生じさせ、林床の植物相の出現を規定していることが示唆された。採草地等の開地環境の消失が多くの生物の絶滅危惧の要因になっていることを明らかにした。鳥類では、複数の環境を利用するジェネラリストと特定環境のみ利用するスペシャリストに区分でき,環境要素の管理と配置が鳥類多様性に影響していることを明1らかにした。(4)里山の生態系サービスの景観評価手法に関して検討した。海岸林では,季節風の向き,後背地の景観構造により生態系サービスが異なり,里山における植生の配置は標高などの環境要因との関係がみられた.(5)これらの解析に基づいて、国連大学高等研究所主唱の里山里海サブグローバル評価に参加し、里山の多義的な性格を整理し、生物多様性と生態系サービス保全機能の現状と変化、その要因、今後のシナリオを取りまとめた。それらの成果を、環境省里地里山保全活用行動計画策定に活かすなど、政策への展開と普及を行った。 | KAKENHI-PROJECT-20241009 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20241009 |
大型加速器制御とPCの連携システムの創造 | 1.PCとUnix加速器制御システムのCORBAによる連携PC(WindowsNT)にCORBA機能サポートを含むJava開発環境を整備し、既存のUnixベースの加速器制御システム(KEK電子陽電子入射器)で開発を行った。第1に、PC上のJava appletとUnix側CORBA serverを接続する試験を行なった。加速器機器情報をリアルタイム表示(1秒refresh)させるJava appletを試作し、基本動作を確認した。なお、開発したJava appletは、Unix/Macintosh/Linuxでも動作するが、高い移植性のためには新しいgraphic classは使いにくいなどの問題がみつかった。第2に、Visual Basicを既存のCORBA serverに接続するために、汎用CORBA通信DLL gatewayを開発している。KEK入射器の機器server(klystron)への接続試験を現在も継続中である。第3に、既存の加速器制御システムでCORBA規約の機器サーバを立ち上げ、CORBAが既存資産(いわゆるLegacy system)の再利用に有効であることを示した。2.国内外での成果発表3.汎用加速器API開発の国際協力異る加速器間での共有を前提とした汎用加速器API(Application interface)の開発について、PCaPAC2000会議やEPICS協力会議(Oak Ridge、2000年11月)で他研究所(LANL,JLAB,SLAC,DESY,etc.)と議論した。汎用APIを検討するには近年の情報技術(特にXMLやUML)での定義を先行させ、その後Javaなど具体的言語に還元するべきという結論を得た。具体的な開発協力体制支援のために、平成13年度科研費「情報技術を活用した加速器情報データベースの汎用化の研究」を申請した。1.PCとUnix加速器制御システムのCORBAによる連携PC(WindowsNT)にCORBA機能サポートを含むJava開発環境を整備し、既存のUnixベースの加速器制御システム(KEK電子陽電子入射器)で開発を行った。第1に、PC上のJava appletとUnix側CORBA serverを接続する試験を行なった。加速器機器情報をリアルタイム表示(1秒refresh)させるJava appletを試作し、基本動作を確認した。なお、開発したJava appletは、Unix/Macintosh/Linuxでも動作するが、高い移植性のためには新しいgraphic classは使いにくいなどの問題がみつかった。第2に、Visual Basicを既存のCORBA serverに接続するために、汎用CORBA通信DLL gatewayを開発している。KEK入射器の機器server(klystron)への接続試験を現在も継続中である。第3に、既存の加速器制御システムでCORBA規約の機器サーバを立ち上げ、CORBAが既存資産(いわゆるLegacy system)の再利用に有効であることを示した。2.国内外での成果発表3.汎用加速器API開発の国際協力異る加速器間での共有を前提とした汎用加速器API(Application interface)の開発について、PCaPAC2000会議やEPICS協力会議(Oak Ridge、2000年11月)で他研究所(LANL,JLAB,SLAC,DESY,etc.)と議論した。汎用APIを検討するには近年の情報技術(特にXMLやUML)での定義を先行させ、その後Javaなど具体的言語に還元するべきという結論を得た。具体的な開発協力体制支援のために、平成13年度科研費「情報技術を活用した加速器情報データベースの汎用化の研究」を申請した。本年度は、ミドルクラスPC(Windows/NT)、及びCORBA機能を含むJava開発支援ソフトウエア(J-Builder3)を購入した。このPCを高エネルギー研の電子陽電子入射器に導入し、既存の制御システム(Unix-based)とPC間でのCORBA規約による通信テストが自由にできるよう整備した。2.PC上のJava appletとUnix側CORBA serverを接続する試験電子陽電子入射器の機器情報をリアルタイム表示させる例として、真空データ表示(Java applet)およびサーバ(CORBA server)、また運転モード表示およびその情報サーバを試作した。原理的な基本動作を確認した。表示側プログラムであるJava appletはPC(J-Builder環境)で動作する他、downloadすればUnixやlinux、Windows98など他のplatformでも動作し、移植性の高さを実証できた。またサーバ開発では、既存のC-baseの制御システムライブラリをCORBA(C++)から利用するが、そのためのwrapper class設計などで経験の蓄積が必要であった。一方、Javaのversion差異による動作不良、複数のCORBAORB(Object Request Broker)を共存させる場合のサーバ設計の制限などでは、現在も検討が続いている。今後、試作したプログラムを実際の加速器運転で月単位の長期に渡って使用し、問題点を洗い出す予定である。3.国際集会での成果発表および意見交換1999年10月の国際大型加速器・物理装置の制御会議(ICALEPCS'99,イタリア)で、試作したプログラムおよび開発状況の報告を行った。会議では、Java、CORBAとも強い関心を持って受け入れられていた(ESRFのTANGO/CORBA環境、CERNの共通Java加速器class開発など)が、両者を同時に使うメリットを強調しているのはまだ我々だけのようであった。2.加速器運転用Javaアプリケーション/CORBAサーバの整備平成11年度の試験ではJavaアプリケーションやCORBAサーバを商用CORBA製品(VisiBroker)で開発したが、本年度はfreeのCORBA製品(ORBacus)への移行を進めた。実用レベルのKEK電子陽電子入射器Klystronの表示ソフトの環境がおおむね整ってきている。 | KAKENHI-PROJECT-11640299 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11640299 |
大型加速器制御とPCの連携システムの創造 | 開発の途中経過報告を物理学会(2000年春)で、また成果報告をPCaPAC2000会議(Hamburg、2000年10月)で行なった。3.加速器アプリケーション共有をめざした汎用加速器API/汎用加速器classの開発異る加速器間での共有を前提とした汎用加速器API(Application interface)の開発について、関連した活動のあるDESYのスタッフと議論した(PCaPAC会議後の約3日間)。汎用APIを検討するには、Javaをベースにするより近年の情報技術(特にXMLやUML)での定義を先行させ、その後Javaに還元するべきという結論を得た。今後の具体的な開発協力体制支援のために、平成13年度科研費「情報技術を活用した加速器情報データベースの汎用化の研究」を申請した。4.共有できる加速器アプリケーションの開発本研究の企画時にはKEK内の複数の加速器で共有できるアプリケーションとしてHistory archiverの開発を検討してきたが、我々とは独立にEPICS communityでも同様のソフト開発が議論されている。両者の活動を統合するため、EPICS meeetingに参加した(Oak Ridge、2000年11月)。多数のグループ(LANL,JLAB,SLAC,DESY,etc.)から多数のデータ形式、多数の計算機環境(PC/Windowsを含む)への要求があるため、特にCORBAの経験がある我々KEKの実績が注目された。しかし、具体的な仕様策定にはさらなる議論と時間が必要な状況で、今後の仕様策定作業にKEKの貢献が期待されている。 | KAKENHI-PROJECT-11640299 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11640299 |
5-ALA光線力学治療によるグリオーマ幹細胞の治療抵抗性の克服 | グリオーマ幹細胞の放射線・化学療法に対する治療抵抗性は、悪性グリオーマの治療における大きなハードルである。本研究では、グリオーマ幹細胞株(mesenchymal type 3種類、proneural type 2種類)を用いてALA-PDTを行った。その結果、ALA-PDTは、グリオーマ幹細胞に対してむしろ感受性が高く、PDT治療後には幹細胞性が低下するなどの優れた特性があることが判明した。最も予後が悪いmesenchymal typeのヒトグリオーマ幹細胞株(GBM13,GBM30,GBM1123)を用いた。いずれも腫瘍形成能、放射線抵抗性が確認されている。また、上記幹細胞株(以下GSCs)のコントロールとしては、接着培養条件下で腫瘍分化細胞(以下GDCs)を用いた。1)細胞内プロトポルフィリンIX(以下PpIX)の測定: 28時間5-ALA300μMで培養し、細胞内に生成したPpIXをFACSを用いて測定した。その結果、GBM13,GBM30においてGSCsにおいてPpIXが数倍多く生成していることが判明した。2)5-ALA光線力学療法の感受性評価: 5-ALA 300μM環境下で4時間培養し、405nmの波長し96wellに5000cell/wellとなるように分注し405nmの光照射(027J)を行った。その3日後にWST-8アッセイにて細胞生存率を評価した。その結果、光照射のみではGSCsの方がGDCsよりも有意差を持って耐性がある。5-ALAを負荷することにより、GSCとGDCは共に治療感受性が増強する。この増強効果はGSCがGDCよりもより顕著であることが判明した。これは、グリオーマ幹細胞は、5-ALAによる光線力学療法に対して、治療抵抗性はなく、むしろ治療感受性があることを示すものである。ヒト神経膠芽腫より樹立された神経膠芽腫幹細胞(MD13)を用いて、ALA-PDTの治療効果をin vitroで検討した。ABCG2阻害剤であるImatinibをALA-PDTに併用すると、神経膠芽腫幹細胞内のPpIX濃度は上昇し、その治療効果も有意に増強された。予定通りの実験計画が進んでいる。問題点として、ABCG2阻害による細胞内ポルフィリン量の上昇が当初の想定よりは低いことである。ヒト神経膠芽腫より樹立された神経膠芽腫幹細胞(MD13)を用いて、ALA-PDTの治療効果をin vitroで検討した。ALA-PDTは神経膠芽腫幹細胞および神経膠芽腫分化娘細胞の双方に治療効果を認めたが、ALA-PDTに対する感受性はGBM幹細胞の方が有意に高かった。ABCG2阻害剤であるImatinibをALA-PDTに併用すると、神経膠芽腫幹細胞内のPpIX濃度は上昇し、その治療効果も有意に増強された。今年度では、他に準備した神経膠芽腫幹細胞においても同様の治療抵抗性の克服効果が見られることを確認し、普遍的な現象である可能性を検証した。グリオーマ幹細胞の放射線・化学療法に対する治療抵抗性は、悪性グリオーマの治療における大きなハードルである。本研究では、グリオーマ幹細胞株(mesenchymal type 3種類、proneural type 2種類)を用いてALA-PDTを行った。その結果、ALA-PDTは、グリオーマ幹細胞に対してむしろ感受性が高く、PDT治療後には幹細胞性が低下するなどの優れた特性があることが判明した。ヒトグリオーマ幹細胞には、5-ALAによる治療感受性があることが判明した。これは予想されたものの、予想以上であり、現在ex vivoでの検討に進んでいる。複数の神経膠芽腫の幹細胞株を用いてABCG2阻害による幹細胞の治療抵抗性の克服が普遍的なものかを確認する。脳神経外科 | KAKENHI-PROJECT-26870722 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26870722 |
麻酔作用発現機構の界面振動分光法による分子論的評価 | ステアリン酸ナトリウム分子の石英基板上への吸着をSFG分光法により追跡した。水中では、ステアリン酸分子は二分子膜を形成するが、乾燥雰囲気下では二分子膜が崩壊し高配向した単分子膜が形成することが分かった。テアリン酸ナトリウム分子の吸着過程におよぼす濃度の影響についても調べ、分子の濃度が臨界ミセル濃度よりも高いと、高配向の単分子膜は形成されにくいことが分かった。次にトレハロースの脂質二分子膜の構造安定化への影響についても調べた。二分子膜を水中で形成させた後、乾燥雰囲気下に置くと、二分子膜は崩壊し単分子膜となるが、トレハロース濃度が高いと乾燥雰囲気下でも二分子膜が安定に存在することが分かった。生体反応の多くは、細胞膜表面などの界面での反応が重要な役割を果たしている。このような生体反応を理解するためには細胞表面・界面における分子(水、タンパク質、脂質など)の構造あるいは動的挙動を反応が進行しているその場(水溶液中)で、かつ高い空間・時間分解能で明らかにすることが重要となる。本研究では生体内の過程を分子レベルで高い空間分解能を付与した界面顕微分光法を新たに構築し、生体界面(細胞膜、脂質二分子膜)構造・反応、および機能発現に重要な役割を果たしていると言われている界面水の構造、ダイナミクスの追跡を行う。このような生体界面の構造・ダイナミクスを分子レベルで明らかにしていくことで、生命現象の解明に寄与することを目指す。本年度は、トレハロースの脂質2分子膜におよぼす効果についての検討を行った。トレハロースは脂質2分子膜に作用し、乾燥保護、凍結保護などの効果を示すことが知られている。しかしながら、その構造や相互作用についていまだ不明瞭な点が多く残っている。そこで本研究では、界面振動分光法および原子間力顕微鏡を用い、トレハロースの脂質2分子膜におよぼす効果について調べた。生体反応の多くは,細胞膜表面などの界面での反応が重要な役割を果たしている。このような生体反応を理解するためには細胞表面・界面における分子(水、タンパク質、脂質など)の構造あるいは動的挙動を反応が進行しているその場(水溶液中)で、かつ高い空間・時間分解能で明らかにすることが重要となる。本研究では生体界面(細胞膜、脂質二分子膜)構造・反応、および機能発現に重要な役割を果たしていると言われている界面水の構造、ダイナミクスの追跡を行う。このような生体界面の構造・ダイナミクスを分子レベルで明らかにしていくことで、生命現象の解明に寄与することを目指す。本年度は、昨年度に引き続きトレハロースの脂質二分子膜の安定化に対する効果をトレハロース類似の糖類についても検討を行い、分子間相互作用および糖類のサイズ効果について、振動分光法および原子間力顕微鏡を用い調べた。ステアリン酸ナトリウム分子の石英基板上への吸着をSFG分光法により追跡した。水中では、ステアリン酸分子は二分子膜を形成するが、乾燥雰囲気下では二分子膜が崩壊し高配向した単分子膜が形成することが分かった。テアリン酸ナトリウム分子の吸着過程におよぼす濃度の影響についても調べ、分子の濃度が臨界ミセル濃度よりも高いと、高配向の単分子膜は形成されにくいことが分かった。次にトレハロースの脂質二分子膜の構造安定化への影響についても調べた。二分子膜を水中で形成させた後、乾燥雰囲気下に置くと、二分子膜は崩壊し単分子膜となるが、トレハロース濃度が高いと乾燥雰囲気下でも二分子膜が安定に存在することが分かった。生体反応の多くは,細胞膜表面などの界面での反応が重要な役割を果たしている。このような生体反応を理解するためには細胞表面・界面における分子(水、タンパク質、脂質など)の構造あるいは動的挙動を反応が進行しているその場(水溶液中)で、かつ高い空間・時間分解能で明らかにすることが重要となる。本研究では生体内の過程を分子レベルで高い空間分解能を付与した界面顕微分光法を新たに構築し、生体界面(細胞膜、脂質二分子膜)構造・反応、および機能発現に重要な役割を果たしていると言われている界面水の構造、ダイナミクスの追跡を行う。このような生体界面の構造・ダイナミクスを分子レベルで明らかにしていくことで、生命現象の解明に寄与することを目指すものである。本年度は、細胞膜のモデル系でもある界面活性剤(ステアリン酸ナトリウム)の固体/溶液界面での吸着過程および構造を界面選択的な振動分光法のひとつである和周波発生分光法により調べた。その結果、溶液中でステアリン酸ナトリウムは固体表面(石英)上に高配向な単分子層を形成するが、溶液中の濃度がステアリン酸ナトリウムの臨界ミセル濃度を超えるとランダムな構造へ変化することが明らかとなった。細胞膜表面などの界面での反応を分子レベルで明らかにするという点で、本研究課題は順調に進行していると言える。本年度は、生体膜のモデル系として固体/溶液界面でのステアリン酸ナトリウム単分子膜の固体基板上への吸着過程の追跡を行い、和周波発生分光法で構造評価可能であることが確認できた。また、並行して、本来の目的である脂質二分子膜上での分子構造評価に向け、ベシクルフュージョン法による二分子膜形成を原子間力顕微鏡により確認している。よって、今後行う二分子膜上のでの分子構造評価を行う準備は出来ている。今後は、トレハロース以外の類似化合物を脂質2分子膜に添加し、細胞膜-トレハロース管に働く総合作用および構造の効果について、引きつづき界面振動分光法および、AFM観察により分子レベルで明らかにすることを目指す。 | KAKENHI-PROJECT-23550033 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23550033 |
麻酔作用発現機構の界面振動分光法による分子論的評価 | さらにシャボン膜の構造安定化についても、トレハロースの効果を検討する。今後は、二分子膜を固体基板上に形成し、二分子膜上での分子構造評価を行っていく。シャボン膜の構造安定化についても振動分光学的に検討を行う。水槽の表面に展開させた脂質単分子膜に、ティップ・ディップ法によりガラスキャピラリー先端に平面脂質二分子膜を形成することが出来る。このガラスキャピラリー先端に集光した可視光と赤外光を照射することで、膜界面の局所的なSFG分光が可能となる。キャピラリー内の環境(温度、pH、イオン濃度)を変化させ、環境変化に伴う膜の分子構造変化、あるいは周囲の溶媒との間に働く相互作用(水素結合、親水・疏水性相互作用など)の変化を追跡し、生体膜界面の構造・機能と水の役割を明らかにする。また、同様に界面活性剤を用いることでガラスキャピラリー先端にシャボン膜を形成させ、ピペット内の圧を変える(陰圧、陽圧)ことでシャボン膜の形状を任意に変えながらシャボン膜の膨張、縮小、あるいは崩壊する際の界面活性剤の構造、および水の構造をSFG測定により分子レベルで詳細に明らかにする。さらに、トレハロースの効果についても合わせて検討を行う。次年度の研究費は、試薬、光学部品等の消耗品に使用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-23550033 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23550033 |
半導体ヘテロ界面の異方的量子ドットの多電子束縛状態とトンネル速度と磁場効果 | 半導体ヘテロ界面に作成された異方的量子ドットの、界面垂直方向の磁場印加下の多電子基底状態を非制限ハートレーフォック法を用いて調べた。電子数がN【less than or equal】12の範囲で以下の研究を行なった。(1)量子ドットの微分容量の計算を行ない、古典電磁気学から計算される静電気容量との関係、電子数依存性と磁場依存性の解明。(2)磁場印加下の多電子束縛状態の計算を行ない、量子ドットの基底状態の磁場誘起転移と化学ポテンシャルの磁場依存以下の結論が得られた。1.異方的量子ドットの基底状態は、磁場強度増加に伴い多数の状態転移を起こす。転移は化学ポテンシャルの磁場依存性にカスプとして現れる。転移はランダウ量子化と交換相互作用とハートレー相互作用の競合により引き起こされ、スピンゼーマン効果の寄与は非常に小さい。2.量子ドット集合の帯磁率は、常磁性項と反磁性項から成る。反磁性項は電子間相互作用により強められる。常磁性項は基底状態が有限のL_Zを持つ特定の電子数のみで現れる。3.量子ドットの微分容量の磁場依存性には、基底状態転移に対応した顕著なカスプが現れる。4.異方性が大きい場合の量子ドットの厚み効果は、スピンが完全分極していない磁場領域のみに現れる。スピンが完全分極した強磁場領域では、交換相互作用とハートレー項の厚さ変化が打ち消し合い、厚み効果は消失する。半導体ヘテロ界面に作成された異方的量子ドットの、界面垂直方向の磁場印加下の多電子基底状態を非制限ハートレーフォック法を用いて調べた。電子数がN【less than or equal】12の範囲で以下の研究を行なった。(1)量子ドットの微分容量の計算を行ない、古典電磁気学から計算される静電気容量との関係、電子数依存性と磁場依存性の解明。(2)磁場印加下の多電子束縛状態の計算を行ない、量子ドットの基底状態の磁場誘起転移と化学ポテンシャルの磁場依存以下の結論が得られた。1.異方的量子ドットの基底状態は、磁場強度増加に伴い多数の状態転移を起こす。転移は化学ポテンシャルの磁場依存性にカスプとして現れる。転移はランダウ量子化と交換相互作用とハートレー相互作用の競合により引き起こされ、スピンゼーマン効果の寄与は非常に小さい。2.量子ドット集合の帯磁率は、常磁性項と反磁性項から成る。反磁性項は電子間相互作用により強められる。常磁性項は基底状態が有限のL_Zを持つ特定の電子数のみで現れる。3.量子ドットの微分容量の磁場依存性には、基底状態転移に対応した顕著なカスプが現れる。4.異方性が大きい場合の量子ドットの厚み効果は、スピンが完全分極していない磁場領域のみに現れる。スピンが完全分極した強磁場領域では、交換相互作用とハートレー項の厚さ変化が打ち消し合い、厚み効果は消失する。 | KAKENHI-PROJECT-08247209 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08247209 |
東南アジア諸国における環境汚染物質の処理・再資源化 | 東南アジアの開発途上国の実情に適合した環境保全技術を開発するために、タイ国の環境汚染状況を把握するとともに、タイ国のおける有用生物資源を調査採集し、さらにそれを利用した環境汚染物質の処理、再資源化技術を開発を行った。具体的には以下の点についての検討を行い、成果を得た。1.タイ国産の糸状性ラン藻を用いた環境中重金属の除去タイ国バンコク市内を流れるチャオプラヤ河沿岸およびバンコク南部の工業地帯の水路において、糸状性ラン藻の採取を行った。また、タイ国立科学技術研究所(TISTR)に保存されている株の中から糸状性ラン藻を選んだ。このようにして得られた17株の中から、カドミウム除去に適したTolypothrix tenuisを見出し、カドミウム除去に及ぼす種々の環境条件の影響を明らかにした。本研究は、糸状であるため固定化が可能で環境水中からの回収も容易であるなど、優れた性質を持つラン藻バイオマスを、安価な生物材料として環境中の重金属除去に活用できることを示し、今後東南アジア諸国において深刻な問題となると予想される重金属汚染の解決の一つの糸口となると考えられる。2.高温性藻類を利用した炭酸ガスの有機資源化タイ国チェンマイ市郊外の温泉から高温性藻類Chroococcidiopsis sp.TS-821株を単離した。炭酸ガス濃度、光強度、培地成分などのTS-821株の培養条件を検討し、高密度培養のための至適条件を求めた。高密度培養により得られた菌体を用いて蛋白質、糖、脂質の各成分を分析したところ、凍結乾燥菌体成分中にそれぞれ49%、37%、12%を占めていることが明らかとなった。さらに青色を呈する蛋白質を精製し、詳細に分析した結果、本蛋白質はフィコシアニンであることが明らかとなった。フィコシアニンは青色の着色料としての需要があるが、その低い安定性のため十分な供給がなされていない。本フィコシアニンは高温菌由来の物質であるため、安定性も高いことが期待される。3.凝集性藻類による活性汚泥処理水からのリン・窒素の同時除去凝集性藻類マットを利用して、活性汚泥処理水から窒素とリンの同時除去を試みた。曝気槽と沈降槽とからなる連続培養装置を用いて、全窒素10ppm、全リン1ppmの濃度の活性汚泥処理水の高度処理を行った。まず、凝集性藻類の増殖への初発pHならびに振とう方法の違いによる影響を回分培養で調べた。その結果、初発pHはアルカリ性の方が良く、増殖の最適値はpH910にあった。また、振とう培養より静値培養の方が明らかに増殖は良好であった。藻類再利用連続培養を行った結果、4週間で定常状態が出現し、窒素、リンの除去率はそれぞれ約50%、70%に達した。このように、凝集性藻類を用いて窒素とリンを同時に除去できる新しいシステムが構築された。4.淡水魚における肝メタロチオネイン誘導を生物指標とする環境評価バンコクでは産業・生活排水による河川の汚染状況を正しく把握することが重要となっている。そこでバンコク市内の河川魚を採取し、水系に住む生物のメタロチオネイン(MT)応答を生物学的モニタリング法として環境汚染評価を試みた。バンコク市内のチャオプラヤ河沿岸およびバンコク南部の工業地帯の水路において、水および魚を採取した。まず、ICPによる水の分析から、チャオプラヤ河川水の汚染は極めて低かったが、工業地帯の用水には亜鉛、マンガン、銅、鉄などが高濃度で検出された。次に採取した魚の臓器中MT濃度を分析したところ、多くの魚が日本の鮒の正常値より有意に高い肝臓中MT含量を示した。Threee spot gouramiやCommon climbing perchなどは肝臓中のMT含量が劇的に変動し、環境評価の好適種になると考えられた。5.ラン藻を用いた抗菌性物質の生産カビに対して抗菌性を示す物質を生産するラン藻を、タイ国立科学技術研究所(TISTER)に保存されている株の中から探索し、Calothrix sp.TISTR8913を得た。さらにこの株が抗菌性物質を生産するための培養条件の最適化を行い、大量生産を試みた。このようにして得られた藻類粗抽出物を用いて、大豆に感染させたカビColletotrichum truncatumのコントロールを試みたところ、750μg/seedの濃度で、タイ国で商業的に用いられている抗カビ剤のMancozeb(400μg/seed)と同程度の抗菌性が見られた。以上の結果より、微細藻類は生物活性物質の新しいスクリーニング源として有望であることがわかった。東南アジアの開発途上国の実情に適合した環境保全技術を開発するために、タイ国の環境汚染状況を把握するとともに、タイ国のおける有用生物資源を調査採集し、さらにそれを利用した環境汚染物質の処理、再資源化技術を開発を行った。具体的には以下の点についての検討を行い、成果を得た。1.タイ国産の糸状性ラン藻を用いた環境中重金属の除去タイ国バンコク市内を流れるチャオプラヤ河沿岸およびバンコク南部の工業地帯の水路において、糸状性ラン藻の採取を行った。また、タイ国立科学技術研究所(TISTR)に保存されている株の中から糸状性ラン藻を選んだ。このようにして得られた17株の中から、カドミウム除去に適したTolypothrix tenuisを見出し、カドミウム除去に及ぼす種々の環境条件の影響を明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-07044145 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07044145 |
東南アジア諸国における環境汚染物質の処理・再資源化 | 本研究は、糸状であるため固定化が可能で環境水中からの回収も容易であるなど、優れた性質を持つラン藻バイオマスを、安価な生物材料として環境中の重金属除去に活用できることを示し、今後東南アジア諸国において深刻な問題となると予想される重金属汚染の解決の一つの糸口となると考えられる。2.高温性藻類を利用した炭酸ガスの有機資源化タイ国チェンマイ市郊外の温泉から高温性藻類Chroococcidiopsis sp.TS-821株を単離した。炭酸ガス濃度、光強度、培地成分などのTS-821株の培養条件を検討し、高密度培養のための至適条件を求めた。高密度培養により得られた菌体を用いて蛋白質、糖、脂質の各成分を分析したところ、凍結乾燥菌体成分中にそれぞれ49%、37%、12%を占めていることが明らかとなった。さらに青色を呈する蛋白質を精製し、詳細に分析した結果、本蛋白質はフィコシアニンであることが明らかとなった。フィコシアニンは青色の着色料としての需要があるが、その低い安定性のため十分な供給がなされていない。本フィコシアニンは高温菌由来の物質であるため、安定性も高いことが期待される。3.凝集性藻類による活性汚泥処理水からのリン・窒素の同時除去凝集性藻類マットを利用して、活性汚泥処理水から窒素とリンの同時除去を試みた。曝気槽と沈降槽とからなる連続培養装置を用いて、全窒素10ppm、全リン1ppmの濃度の活性汚泥処理水の高度処理を行った。まず、凝集性藻類の増殖への初発pHならびに振とう方法の違いによる影響を回分培養で調べた。その結果、初発pHはアルカリ性の方が良く、増殖の最適値はpH910にあった。また、振とう培養より静値培養の方が明らかに増殖は良好であった。藻類再利用連続培養を行った結果、4週間で定常状態が出現し、窒素、リンの除去率はそれぞれ約50%、70%に達した。このように、凝集性藻類を用いて窒素とリンを同時に除去できる新しいシステムが構築された。4.淡水魚における肝メタロチオネイン誘導を生物指標とする環境評価バンコクでは産業・生活排水による河川の汚染状況を正しく把握することが重要となっている。そこでバンコク市内の河川魚を採取し、水系に住む生物のメタロチオネイン(MT)応答を生物学的モニタリング法として環境汚染評価を試みた。バンコク市内のチャオプラヤ河沿岸およびバンコク南部の工業地帯の水路において、水および魚を採取した。まず、ICPによる水の分析から、チャオプラヤ河川水の汚染は極めて低かったが、工業地帯の用水には亜鉛、マンガン、銅、鉄などが高濃度で検出された。次に採取した魚の臓器中MT濃度を分析したところ、多くの魚が日本の鮒の正常値より有意に高い肝臓中MT含量を示した。Threee spot gouramiやCommon climbing perchなどは肝臓中のMT含量が劇的に変動し、環境評価の好適種になると考えられた。5.ラン藻を用いた抗菌性物質の生産カビに対して抗菌性を示す物質を生産するラン藻を、タイ国立科学技術研究所(TISTER)に保存されている株の中から探索し、Calothrix sp.TISTR8913を得た。さらにこの株が抗菌性物質を生産するための培養条件の最適化を行い、大量生産を試みた。 | KAKENHI-PROJECT-07044145 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07044145 |
分子気体力学による低圧気流の理論的研究 | 研究計画に基づき,採択内定時より研究を始動させ,次のような成果を挙げた.1.CabannesおよびGatignolは離散分子速度モデルによる流れの研究を進めていたが,青木の協力により,このモデルによって蒸発・凝縮を伴う流れを扱うことを可能にした.さらにこれを応用し,蒸発・凝縮の2平面問題を解析した.このモデルでは簡単に解析解を求めることができる場合が多い反面,大胆なモデル化のため虚偽の流れが導かれることがGatignolと曾根の検討により明らかにされた。Gatignolがさらにこれを検討することになった.2.蒸発を伴う流れに関し,曾根,杉元は従来から関心の高かった円柱から真空中への蒸発流の精密な解析に成功し,それに関連した数学上の諸問題を仏側に提供した.また曾根,高田は球からの弱い蒸発流のボルツマン方程式に基づく研究を完成させ,その成果とLhuillierが従来から進めていた非平衡熱力学による凝縮相界面近傍の研究との比較検討をLhuillier,青木と共同で進めている.3.曾根が導いた物体を過ぎる低希薄度の気流の漸近理論によって,複雑な領域における低希薄度気流の数値解析はその困難さを大幅に軽減される.この理論を適用する際に必要となるすべり係数とクヌーセン層関数を,Golse,大和田,若林が共同で求めた.4.曾根,青木,杉元は希薄気体の2次元ベナ-ル問題および希薄気体特有な温度場によって誘起される流れを解析した.これらは物理的に非常に興味があるばかりでなく,状況あるいは解析の精密さによって解の振舞が大きく変わる問題である.これらの解析結果は,本研究の目的の一つである解析法等の検討のための重要な資料として仏側に提供された.5.仏国の数学者(Bardos,Golse)との共同作業により,上記の具体的成果の他に,応用力学.数学両分野へ各分野の成果が大きく浸透した.これは共同研究の大きな成果である.研究計画に基づき,採択内定時より研究を始動させ,次のような成果を挙げた.1.CabannesおよびGatignolは離散分子速度モデルによる流れの研究を進めていたが,青木の協力により,このモデルによって蒸発・凝縮を伴う流れを扱うことを可能にした.さらにこれを応用し,蒸発・凝縮の2平面問題を解析した.このモデルでは簡単に解析解を求めることができる場合が多い反面,大胆なモデル化のため虚偽の流れが導かれることがGatignolと曾根の検討により明らかにされた。Gatignolがさらにこれを検討することになった.2.蒸発を伴う流れに関し,曾根,杉元は従来から関心の高かった円柱から真空中への蒸発流の精密な解析に成功し,それに関連した数学上の諸問題を仏側に提供した.また曾根,高田は球からの弱い蒸発流のボルツマン方程式に基づく研究を完成させ,その成果とLhuillierが従来から進めていた非平衡熱力学による凝縮相界面近傍の研究との比較検討をLhuillier,青木と共同で進めている.3.曾根が導いた物体を過ぎる低希薄度の気流の漸近理論によって,複雑な領域における低希薄度気流の数値解析はその困難さを大幅に軽減される.この理論を適用する際に必要となるすべり係数とクヌーセン層関数を,Golse,大和田,若林が共同で求めた.4.曾根,青木,杉元は希薄気体の2次元ベナ-ル問題および希薄気体特有な温度場によって誘起される流れを解析した.これらは物理的に非常に興味があるばかりでなく,状況あるいは解析の精密さによって解の振舞が大きく変わる問題である.これらの解析結果は,本研究の目的の一つである解析法等の検討のための重要な資料として仏側に提供された.5.仏国の数学者(Bardos,Golse)との共同作業により,上記の具体的成果の他に,応用力学.数学両分野へ各分野の成果が大きく浸透した.これは共同研究の大きな成果である. | KAKENHI-PROJECT-06044117 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06044117 |
糸状菌・放線菌の糖質関連酵素の新規構造決定と機能解析 | 糸状菌および放線菌由来の糖質関連酵素のうち、立体構造未知で新規性の高いものを対象に、立体構造解析と機能解析を行った。その結果、アセチルキシランエステラーゼの結晶構造を分解能1.9Åで決定することに成功した。この構造は新規性が高く、他の酵素には見られない特徴的なループ構造を見出した。さらに、立体構造を元に機能変換を目指した改変を行い、これにフェルラ酸エステラーゼ活性を付与することに成功した。糸状菌および放線菌由来の糖質関連酵素のうち、立体構造未知で新規性の高いものを対象に、立体構造解析と機能解析を行った。その結果、アセチルキシランエステラーゼの結晶構造を分解能1.9Åで決定することに成功した。この構造は新規性が高く、他の酵素には見られない特徴的なループ構造を見出した。さらに、立体構造を元に機能変換を目指した改変を行い、これにフェルラ酸エステラーゼ活性を付与することに成功した。ヘミセルロースの側鎖を分解する酵素群(アクセサリー酵素)は数多く存在し、興味深い研究対象である。本研究では、Aspergillus属またはStreptomyces属由来の糖質関連酵素(主にヘミセルラーゼ)のうち、立体構造未知で新規性の高いものを対称に、立体構造解析を軸に機能解析も平行して行う。Aspergillus属由来の立体構造未知なヘミセルラーゼのうち、最も新規性の高いアクセサリー酵素であるアセチルキシランエステラーゼをPichia酵母で発現し、結晶化を行った。その結果、分解能1.9Aで基質フリーの構造決定に成功した。活性中心残基間の相互作用が明らかになり、基質のアセチル基が結合すると予想されるポケットが存在した。この酵素の属するファミリーでは初めての立体構造であり、構造の新規性は極めて高い。また、アセチルキシランエステラーゼとフェルラ酸エステラーゼの基質特異性の構造基盤が明らかになったことから、両酵素の間の機能変換が可能になった。さらに、Aspergillus属由来のアクセサリー酵素のうち、新規なフェルラ酸エステラーゼの結晶化に向けて、Pichia酵母での発現に着手した。本酵素の属するファミリーも立体構造が報告されていないため、構造新規性が極めて高い。一方、Streptomyces属由来のヘミセルラーゼのクローニングは完了したが、発現系を構築した結果、いずれも不溶性画分に発現した。可溶性発現条件の探索が必要である。ヘミセルロースの側鎖を分解する酵素群(アクセサリー酵素)は数多く存在し、興味深い研究対象である。本研究では、Asperfillus属またはStreptomces属由来の糖質関連酵素(主にヘミセルラーゼ)のうち、立体構造未知で新規性の高いものを対象に、立体構造解析と機能解析を行った。Aspergillus属由来の立体構造未知なヘミセルラーゼのうち、最も新規性の高いアクセサリー酵素であるアセチルキシランエステラーゼの結晶構造を分解能LgÅで決定することに成功した。活性中心残基間の相互作用が明らかになり、基質のアセチル基が結合すると予想されるポケットが存在した。さらに、他のエステラーゼには見られない特徴的なループ構造およびβシート構造が存在することを発見した。この酵素の属するファミリーでは初めての立体構造であり、構造の新規性は極めて高い。また、アセチルキシランエステラーゼの立体構造を元に機能変換を目指した改変を行い、これにフェルラ酸エステラーゼ活性を付与することに成功した。これまで類似の成功例はなく、現在原著論文を執筆中である。さらに、Aspergillus属由来のアクセサリー酵素のうち、新規なフェルラ酸エステラーゼの結晶化に向けて、pichia酵母でのタンパク質発現を行い、結晶化を行った。その結果、native結晶で分解能1.8Åのデータセットを測定することに成功し、今後の構造決定に向けた結晶化条件の設定がほぼ完了した。 | KAKENHI-PROJECT-19780071 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19780071 |
日本人によるショパン作品の演奏解釈の変遷と研究との関わり | 最終年度の平成30年度は、代表者岡部玲子と協力者2名(武田幸子、多田純一)による共同研究がNIFC主催のショパン学会の発表に採択され、9月に3名で共同発表`Performance Styles of Chopin's Music by Japanese Musicians during the Meijiperiod'を実現した。更に岡部玲子は、ショパン作品に独自の演奏方法について演奏と楽譜の関係を分析・考察し、「ショパンの前打音に関する一考察ー《バラード》第3番変イ長調作品47を例としてー」を発表した。一方、分担者の加藤一郎氏は、第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクール(ワルシャワ、9月214日)を視察し、その成果を「「第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクール」の芸術的・社会的意義に関する研究ー演奏解釈と楽器及び楽譜の関連を通してー」として発表した。本研究の目的は、日本人によるショパン(1810-1849年)の作品の演奏解釈の変遷と研究との関わりについて考察することである。具体的には、時代によって内容に変化が生じる楽譜という研究成果が、どのように演奏に反映されているのかを検証する。そのために、初年度となる平成28年度は、楽譜と音源を可能な限り収集することに重点を置いた。最初に考察する作品は、日本人ピアニストによる録音数の最も多い《ワルツ》op.64 No.2とした。資料収集については、国内では《ワルツ》op.64 No.2の日本人ピアニストの録音54件、楽譜は国内および国外で出版された計34の版を入手した。国外ではポーランドのNIFC(国立フリデリク・ショパン研究所、ワルシャワ)にて現地調査および資料収集の交渉を行った。NIFCでは当該作品に関する3つの手稿譜をはじめ、ショパンに直接関わる資料を写真撮影によって入手した。また、撮影は許可されなかったが、ショパンの姉イェンジェイエヴィチョーヴァの楽譜の原本の調査を行った。これらの資料を使用し、初年度は楽譜に焦点を当てた論文を、研究代表者を筆頭執筆者として、研究分担者、研究協力者2名の計4名の連名にて1件発表した。国際ショパンピアノコンクールについては、第11回を除く第5回から第15回までの日本人参加者のすべての音源資料を入手した。さらに参加者が使用した楽譜の種類が記されている資料についても確認することができた。プライベートな内容が含まれているためすべての資料の精査は許可されなかったが、その代わりにすべての資料から楽譜に関する記述のみリストアップした資料作成、後日送付の約束を取り付けことができた。また、ラジェヨヴィツェにあるトゥフルツェ宮殿で行われた国際ショパン学会に参加し、ショパンの楽譜や音源、演奏に関する最新情報の収集に努めた。平成28年度の研究実施計画では、楽譜資料の収集および考察、音源資料の収集および考察、ショパン国際学会におけるショパンの楽譜や音源に関する最新情報の収集考察の3点を目標としていた。また、具体的にはショパン作品における前打音について、ショパンは自身の弟子の楽譜に拍と同時に打鍵することを指示している箇所を挙げ、研究成果がいつの時代から楽譜に示されるようになったのかを考察するとしていた。このうち、楽譜資料の収集および考察は、観点を日本人ピアニストによる録音数の最も多い作品である《ワルツ》op.64No.2に変更し、考察を行った。また、国際ショパン学会に参加し、ショパンの楽譜や音源、演奏に関する最新情報の収集に努めると共に、NIFC(国立フリデリク・ショパン研究所、ワルシャワ)にて現地調査および資料収集の交渉を行ったことにより、想定以上の成果を得ることができた。その一方で、音源については、資料の収集は順調に進んだが考察にまでは至っていない状況である。その理由として、資料収集が順調に進んだことで収集した資料の整理に時間が必要であったことが挙げられる。また、平成28年度の研究実施計画の例として挙げたショパン作品における前打音を拍と同時に打鍵することに関しては、観点を変更したことで考察対象作品を変更したが、考察すべき内容であることは研究代表者をはじめ研究分担者、研究協力者を含む4名の共通認識である。そのため、平成29年度、あるいは平成30年度に振り替えて分析を行い、論文として発表する予定である。本研究の目的は、日本人によるショパン(1810-1849)の作品の演奏解釈の変遷と研究との関わりについて考察することである。初年度であった平成28年度は、楽譜と音源を可能な限り収集することに重点を置き、日本人ピアニストによる録音数の最も多い《ワルツ》嬰ハ短調作品64-2について楽譜の観点から考察した。本年度は音源の観点から考察する予定であったが、研究分担者加藤一郎氏のNIFC(ポーランド国立ショパン研究所)主催によるInternational Chopin Conference国際ショパン学会(ワルシャワ大学)での発表を実現するために、協力者も含めてサポートし、“Chopin's Study of Canons: Technical Development, Chromaticism and their Relationship to the Aesthetics of his Late Style"の発表を実現した。4人全員で学会に参加し、その際にNIFCにて、前年度に収集した資料の不足分についての確認と、さらなる資料収集の交渉を行った。その結果、第1回からのショパン国際ピアノ・コンクールのプログラムでNIFCに所蔵されているもの全て、そして、同コンクール出場者が使用したエディションについてのデータを入手することができた。このデータは、コンクール主催者が出場者に対して第15回(2005年)から提出させるようになったものであり、第15回(2005年)、第16回(2010年)、及び第17回(2015年)の全てのデータを提供していただいた。 | KAKENHI-PROJECT-16K02323 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K02323 |
日本人によるショパン作品の演奏解釈の変遷と研究との関わり | それをもとに、共著で研究論文「フリデリク・ショパン国際ピアノ・コンクールにおけるエディションの選択とその変化」を発表した。平成29年度は、前年度の《ワルツ》嬰ハ短調作品64-2のエディション研究で明らかになったことが演奏とどのような関連が見られるのか、音響ソフトを用いて演奏におけるテンポの速さや揺れ、強弱の変化等を考察する予定であったが、この研究は、多大な時間を要することと、演奏と楽譜との関連性を明らかにすることが難しいため、現段階では本格的には行われていない。また、他の作品において、ショパンの作品の特徴的な記譜法(拍と同時に前打音を打鍵することなど)について、演奏方法における時代的特徴の傾向を分析し考察する研究には取掛かっているが、纏めには至っていない。そして、平成30年度の国際ショパン学会(9月26-28日、ワルシャワ)に、3名の連名で応募した発表が認められた。発表が認められたこと自体が大きな成果といえるが、さらに発表に向けて全力を尽くす。最終年度の平成30年度は、代表者岡部玲子と協力者2名(武田幸子、多田純一)による共同研究がNIFC主催のショパン学会の発表に採択され、9月に3名で共同発表`Performance Styles of Chopin's Music by Japanese Musicians during the Meijiperiod'を実現した。更に岡部玲子は、ショパン作品に独自の演奏方法について演奏と楽譜の関係を分析・考察し、「ショパンの前打音に関する一考察ー《バラード》第3番変イ長調作品47を例としてー」を発表した。一方、分担者の加藤一郎氏は、第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクール(ワルシャワ、9月214日)を視察し、その成果を「「第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクール」の芸術的・社会的意義に関する研究ー演奏解釈と楽器及び楽譜の関連を通してー」として発表した。平成28年度は、ショパン作曲《ワルツ》op.64 No.2についてエディション研究を主とした論文を4名の連名にて1件発表した。平成29年度は、前述の論文において、楽譜における異同の内容および分類(1.ショパンによる弟子の楽譜への書き込みが伝承により一般化する例、2.類似箇所の音などが転用され定着する例、3. 2つの資料からの選択あるいはそれらの混合/改変が行われる例、4.表現の変化が見られる例、5.長い間共通認識となっていたタイの例、6.校訂者が改善を試みた例)、そして海外で出版された楽譜が国内で出版された楽譜にどのような影響を与えたのかを明らかにした上で、美的考察を行った。平成29年度は、それらのエディション研究で明らかになったことが、演奏にはどのような関連が見られるのかを考察する。具体的には、音響ソフトを用いて演奏におけるテンポの速さや揺れ、強弱の違い等を考察する。 | KAKENHI-PROJECT-16K02323 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K02323 |
計算機による身体言語理解に関する基礎研究 | 人と計算機の対話、さらには計算機支援により人の間のコミュニケ-ションを促進する方法として、本研究では人間のコミュニケ-ションで重要な役割を果たしているノンバ-バル言語に注目し、特に身体言語を導入するための基礎研究を行った。1.2次元身体骨格からの3次元形態の推定計算機との対話によって2次元画像から抽出した身体骨格と、計算機がもつ身体寸法、関節の可動域などの知識に基づいて、3次元空間での人の形態を推定するアルゴリズムの有効性を再確認した。本法により、計算機は約52万の可能性を少数個の3次元形態の候補にまで絞り込むことができた。2.全身の形態を扱える形態コ-ドの導出昨年度に提案した手のコ-ドとは異なる観点で全身形態コ-ドを作成した。これは関節の可動域を等分割し、それにパラメ-タを割り当てる方法であり、24のコ-ドで全身形態が記述される。また音声言語の表記法と身振りとの対比を行って、2.のコ-ドと手の形態コ-ドを用いて身振りを記述する手法を導出した。この方法が計算機処理に適しており、入力文に対応する指文字刊などをグラフイック表示できることを確認した。4.人体皮膚の写実的表示法の導出人の皮膚を皮膚色要素と形態要素に分け、それぞれを皮膚らしくグラフィック表示するための基本アルゴリズムを導出した。各要素のパラメ-タを指定することで多様な皮膚を表現できる。これらを人体モデルにマッピングすることで比較的リアルな表示を得ることができる。人と計算機の対話、さらには計算機支援により人の間のコミュニケ-ションを促進する方法として、本研究では人間のコミュニケ-ションで重要な役割を果たしているノンバ-バル言語に注目し、特に身体言語を導入するための基礎研究を行った。1.2次元身体骨格からの3次元形態の推定計算機との対話によって2次元画像から抽出した身体骨格と、計算機がもつ身体寸法、関節の可動域などの知識に基づいて、3次元空間での人の形態を推定するアルゴリズムの有効性を再確認した。本法により、計算機は約52万の可能性を少数個の3次元形態の候補にまで絞り込むことができた。2.全身の形態を扱える形態コ-ドの導出昨年度に提案した手のコ-ドとは異なる観点で全身形態コ-ドを作成した。これは関節の可動域を等分割し、それにパラメ-タを割り当てる方法であり、24のコ-ドで全身形態が記述される。また音声言語の表記法と身振りとの対比を行って、2.のコ-ドと手の形態コ-ドを用いて身振りを記述する手法を導出した。この方法が計算機処理に適しており、入力文に対応する指文字刊などをグラフイック表示できることを確認した。4.人体皮膚の写実的表示法の導出人の皮膚を皮膚色要素と形態要素に分け、それぞれを皮膚らしくグラフィック表示するための基本アルゴリズムを導出した。各要素のパラメ-タを指定することで多様な皮膚を表現できる。これらを人体モデルにマッピングすることで比較的リアルな表示を得ることができる。 | KAKENHI-PROJECT-01633515 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01633515 |
スポーツクライミングにおける人体の運動知能の獲得と最適化 | 本年度は,モーションキャプチャシステム及び力覚センサを組み合わせることによって,スポーツクライミングの運動計測システムを開発した.まず,モーションキャプチャシステムにおいては,クラミング壁によって一方向が遮蔽されているため,既存のモデルでは計測が困難である.そのため,クラミング専用全身モデルを開発し,計測を行った.次に,多種多様なホールドの取り付けが可能な力覚センサシステム開発を行った.6軸力覚センサを壁とホールドの間に設置し,カバー等を組み合わせることで,ホールドのみに適切に力がかかるよう設計した.さらに,3次元レーザスキャナFAROを用いて壁形状,ホールドの3次元位置計測を行った.これらの同期処理を行い,情報を統合することで,幾何的な運動データと力学的な運動データを同時に計測可能なシステムを構築した.また,本システムを用いて,実際のクライミングジムにおいて運動計測実験を行った.初級者と上級者それぞれの乗り込み動作を比較し,重心の軌跡や各ホールドにかかる力・モーメントを計測・解析した.これらのデータを比較することで,初級者と上級者の動作の間に有意な差が認められた.この結果は従来研究結果を裏付けるものであり,クライミングの課題設定を行うルートセッターによって結果が妥当であることを確認した.これらの運動計測実験により提案システムの有効性を確認した.また同時に,従来研究とは異なる運動特徴が力覚センサにより計測されており,詳細を解析中である.概ね当初の計画通りに研究が進んでいる.ただし,力センサの無線化については,設置スペースの関係から見送っている.本年度の実験結果を精査し,構築したシステムの改良を行う.その後,計測データから全身の内力や各部位にかかる負荷の計算を行う.また,計測データを競技者に提示するインターフェース開発を行う.これにより運動計測後,競技者に計測データを速やかに適切に提示し,コーチングやトレーニングに利用することが可能となる.また,今年度の研究成果をもとに学会発表を行う.本年度は,モーションキャプチャシステム及び力覚センサを組み合わせることによって,スポーツクライミングの運動計測システムを開発した.まず,モーションキャプチャシステムにおいては,クラミング壁によって一方向が遮蔽されているため,既存のモデルでは計測が困難である.そのため,クラミング専用全身モデルを開発し,計測を行った.次に,多種多様なホールドの取り付けが可能な力覚センサシステム開発を行った.6軸力覚センサを壁とホールドの間に設置し,カバー等を組み合わせることで,ホールドのみに適切に力がかかるよう設計した.さらに,3次元レーザスキャナFAROを用いて壁形状,ホールドの3次元位置計測を行った.これらの同期処理を行い,情報を統合することで,幾何的な運動データと力学的な運動データを同時に計測可能なシステムを構築した.また,本システムを用いて,実際のクライミングジムにおいて運動計測実験を行った.初級者と上級者それぞれの乗り込み動作を比較し,重心の軌跡や各ホールドにかかる力・モーメントを計測・解析した.これらのデータを比較することで,初級者と上級者の動作の間に有意な差が認められた.この結果は従来研究結果を裏付けるものであり,クライミングの課題設定を行うルートセッターによって結果が妥当であることを確認した.これらの運動計測実験により提案システムの有効性を確認した.また同時に,従来研究とは異なる運動特徴が力覚センサにより計測されており,詳細を解析中である.概ね当初の計画通りに研究が進んでいる.ただし,力センサの無線化については,設置スペースの関係から見送っている.本年度の実験結果を精査し,構築したシステムの改良を行う.その後,計測データから全身の内力や各部位にかかる負荷の計算を行う.また,計測データを競技者に提示するインターフェース開発を行う.これにより運動計測後,競技者に計測データを速やかに適切に提示し,コーチングやトレーニングに利用することが可能となる.また,今年度の研究成果をもとに学会発表を行う.(理由)学会発表を次年度に行う予定に変更したため,旅費の支出が少なかった.(使用計画)次年度の学会発表の旅費に使用する予定である. | KAKENHI-PROJECT-18K17824 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K17824 |
立体保護されたp性の高いリンを鍵構造とするリン版ポリアニリンの合成研究 | 嵩高い芳香族置換基導入により結合角が大きく、高いp性を有し、更に立体保護されたリン原子を鍵構造とするリン版ポリアニリンの合成を目指した合成研究を展開した。嵩高い芳香族置換基を有するジクロロホスフィンへの求核置換及び還元反応により、2つの芳香族置換基を有するリン版ポリアニリンの部分構造に相当する2級ホスフィンを合成した。さらに遷移金属錯体を用いたクロスカップリング反応によるリン版ポリアニリン合成の単量体に相当する、2、6位にアルキル或はアリール基が置換した4-ブロモフェニルホスフィン誘導体を対応するジクロロホスフィンやホスホン酸ジエステルの還元により合成し、その反応性を検討した。立体混雑したリン版ポリアニリン合成における重要な鍵合成中間体となることが期待できる「芳香環上に容易に官能基導入が可能であるジアリールホスフィン誘導体」の合成を検討した。まず、2-ヨード-1,3,5-トリブロモベンゼンとアリールGrignard試剤との反応により進行する2回の連続したベンザインの生成及びアリールGrignard試剤の付加を経由して得られる4-ブロモ-2,6-ジアリールフェニルGrignard試剤をヨウ素で捕捉することにより2,6位にアリール基を有する4-ブロモヨードベンゼン誘導体を合成した。次に、ヨウ素を選択的にハロゲンーメタル交換し三塩化リンと反応させることによりリン原子上には2つの嵩高いm-ターフェニル型置換基が置換し、更にm-ターフェニル型置換基上にはリン原子の4位にブロモ基が置換した立体混雑したジアリールクロロホスフィンを合成することが出来た。特にアリール基として4-t-ブチルフェニル基を用いることにより遠隔からリン原子周辺を覆うことができた。更に対応するトリアリールホスフィンへと誘導し、その構造をX線結晶構造解析により明らかにした。これに関しては既に投稿、受理され2014年度中に発表予定である。一方、4位に電子吸引基を有する立体混雑したトリアリールホスフィンの光化学の研究過程において、いくつかの誘導体では近紫外から可視光の照射により効率良くリンー炭素結合が切断され低濃度では主にジアリールホスフィンが生成することを見出した。この反応は安定な前駆体からの立体混雑したリン版ポリアニリン合成における鍵反応として用いることが出来る可能性があり、立体混雑したトリアリールホスフィンがリン版ポリアニリンの前駆体と成りうることが示唆された。立体保護されたリン版ポリアニリン合成における重合反応における単量体やリン版ポリアニリンのモデル化合物合成を目的として4-ブロモアリール基を有する立体保護された1級及び2級ホスフィンの合成を検討した。特に平成25年度に引き続き検討した立体保護基としてm-ターフェニル型置換基を有するホスフィンについては、立体保護されたリン版ポリアニリン合成における遷移金属錯体触媒を用いたクロスカップリング反応による重合反応の単量体に相当する4-ブロモ-2,6-ビス(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)フェニル基を有する1級ホスフィンを合成し安定な化合物として単離することが出来た。更に単量体ユニットに相当する4-ブロモ-2,6-ビス(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)フェニル基及びフェニル基を有する2級ホスフィンを合成し空気中安定な化合物として単離した。また、立体保護されたリン版ポリアニリンの部分構造や末端部に相当する嵩高いアリール基と4ーブロモフェニル基や5-ブロモ-2-チエニル基を有するジアリールホスフィンを3塩化リンにアリール基を連続して導入することにより合成した。一方でこれらの2級ホスフィンのブロモ基のアルキルリチウムを用いたハロゲン-メタル交換及びクロロホスフィン類との反応についてはハロゲン-メタル交換に関してtーブチルリチウム等の比較的強い条件を要することが分かった。2015年度は立体保護されたリン版ポリアニリンへの遷移金属錯体触媒存在下でのクロスカップリング反応によるアプローチを目指し、単量体として期待される2,6位に嵩高いアリール基或いはアルキル基を有する4-ブロモフェニルホスフィンの合成を行った。前年度に合成した4-ブロモ-2,6-ビス(2,4,6-トリイソプロピフフェニル)ホスフィンは1級ホスフィンとしては空気中安定であった反面、反応性の低さやジクロロホスフィンの水素化リチウムアルミニウム還元時の脱臭素が見られたため、新規に4-ブロモ-2,6-ジイソプロピルフェニルホスフィン及び4-ブロモ-2,6-ジシクロヘキシルフェニルホスフィンを、対応する1,3-ジアルキル-5-ブロモ-2-ヨードベンゼンをヨウ素-リチウム交換とクロロリン酸ジエチルとの反応により(ブロモアリール)ホスホン酸ジエチルとし、さらに還元することにより合成した。(ブロモアリール)ホスホン酸ジエチルの1級ホスフィンへの還元では水素化ジイソブチルアルミニウムを用いることにより脱臭素は回避できたが高収率を得るためには過剰の還元剤を要した。これらの単量体を用いてパラジウム錯体触媒存在下のクロスカップリング反応による重合反応を検討した。本研究を通じて多様な大きさ、形のアルキル基、アリール基を2,6位に有する立体保護された4-ブロモフェニルホスフィンを合成することができた。また、リン版ポリアニリンの部分構造に相当する立体保護されたジアリールホスフィン等を合成することができた。一方で、一連の4-ブロモアリール基を有する1級ホスフィンの多量化反応についてはリン-炭素結合のみならずリン-リン結合や炭素-炭素結合の形成が示唆されており生成物は広義のリン版ポリアニリンに留まると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-25600020 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25600020 |
立体保護されたp性の高いリンを鍵構造とするリン版ポリアニリンの合成研究 | 精密に構造制御されたリン版ポリアニリンの合成には更なる反応条件の検討が必要である。嵩高い芳香族置換基導入により結合角が大きく、高いp性を有し、更に立体保護されたリン原子を鍵構造とするリン版ポリアニリンの合成を目指した合成研究を展開した。嵩高い芳香族置換基を有するジクロロホスフィンへの求核置換及び還元反応により、2つの芳香族置換基を有するリン版ポリアニリンの部分構造に相当する2級ホスフィンを合成した。さらに遷移金属錯体を用いたクロスカップリング反応によるリン版ポリアニリン合成の単量体に相当する、2、6位にアルキル或はアリール基が置換した4-ブロモフェニルホスフィン誘導体を対応するジクロロホスフィンやホスホン酸ジエステルの還元により合成し、その反応性を検討した。東日本大震災後に震災対策として建てられた免震新棟が2015年9月に完成し、10月から12月にかけて大型機器の移動を含む大規模な引っ越しがあり実験停止となったため研究が遅延した。有機典型元素化学、物理有機化学平成26年度までに合成した4-ブロモ-2,6-ビス(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)フェニルホスフィンに代表される「4位にブロモ基を有する立体保護基」を有する1級ホスフィンのパラジウム,銅等の遷移金属錯体触媒を用いたクロスカップリングによる立体保護されたリン版ポリアニリンの合成研究を遂行する。同時に上記ホスフィン類のジハロベンゼン、チオフェン誘導体等との遷移金属錯体触媒を用いたクロスカップリング反応や、上記ブロモアリールホスフィン類合成時の合成中間体として得られるクロロホスフィン類へのアリールリチウム等の求核試剤との反応を用いることによりリン版ポリアニリンの部分構造、オリゴマーの合成を検討する。また、「4位にブロモ基を有する立体保護基」を有する2級ホスフィン誘導体はp-フェニレンジアミン等のアニリン誘導体との遷移金属錯体触媒を用いたクロスカップリングや銅触媒を用いたウルマン型カップリングによりポリホスフィンーポリアニリン共重合体へと誘導できることが期待される。そこで、上記ブロモアリール基を有する2級ホスフィン誘導体への遷移金属触媒反応によるジアリールアミン部位の構築を検討しポリホスフィンーポリアニリン共重合体合成を検討する。さらに、ブロモアリール基を有する2級ホスフィン誘導体を鍵合成中間体とする遷移金属触媒反応によるジアリールアミン部位の構築や求核的な窒素官能基導入と還元によるポリホスフィンーポリアニリン共重合体の部分構造の構築についても検討する。最終的には、これらリン版ポリアニリン、そのオリゴマー、ポリアニリンとの共重合体の構造を分光学的測定により明らかにするとともに、その酸化還元的性質の電気化学的測定や化学的酸化による探究やプロトン化による電子状態の変化を明らかにする。本研究で用いるジアリールクロロホスフィン等の合成中間体は、立体混雑したトリアリールホスフィン等の多様な興味深い化合物へと誘導することが出来、更にホスフィニルラジカル等の興味深い反応中間体の前駆体と成るものも多い。また、合成的な可能性や反応性を明らかにすることは該当する合成中間体の実践的な大きさや有用性を見積もることにつながる。このような検討を並行しながら研究を進めた結果、結果的に研究上の寄り道が多くなり研究の進行が遅れた。 | KAKENHI-PROJECT-25600020 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25600020 |
甲状腺癌細胞内情報伝達機能異常の解析による癌治療への基礎的検討 | 1.放射線照射による甲状腺細胞の応答について甲状腺細胞において放射線照射による生理的および癌化後の細胞内応答変化を調べるために、甲状腺初代培養細胞と癌細胞継代株を用いて実験をおこなった。まず放射線2Gy照射後の生存率は初代細胞18%、癌細胞株では58%以上であった。また細胞周期解析では初代細胞ではG1期周期停止を認めたが、p53遺伝子に変異を持つ癌細胞ではG1期周期停止はおこらずG2期で周期停止を認めた。こうした現象は細胞内蛋白p53の異常の有無に由来するためと考えられた。さらに放射線照射により甲状腺細胞に特異的な反応が起こりうるかp53下流遺伝子群(p21/WAF1,GADD45,Bax,FAS)の反応について調べたところp21/WAF1では照射後に発現増加を認めたがGADD45、Bax、FASは発現に変化を認めなかった。また、初代培養細胞では正常p53が存在するにもかかわらず放射線によるアポトーシスが起こりにくいことがわかった。これより、放射線に対し甲状腺細胞では特異的な反応が認められることが確かめられた。この結果はCancer Res.に掲載された。2.セミオート尿中ヨード測定法の開発甲状腺の分化、増殖に関与する因子の一つとしてヨードがある。このヨード摂取の量を正確かつ迅速に測定するために、尿中ヨードのセミオートマチック測定法を開発した。この測定法では多数のサンプル(30/時間)を処理することが可能であり従来の測定法と比較検討し同程度以上の感受性を有していた。この結果はClinical Chemistryに掲載された。1.放射線照射による甲状腺細胞の応答について甲状腺細胞において放射線照射による生理的および癌化後の細胞内応答変化を調べるために、甲状腺初代培養細胞と癌細胞継代株を用いて実験をおこなった。まず放射線2Gy照射後の生存率は初代細胞18%、癌細胞株では58%以上であった。また細胞周期解析では初代細胞ではG1期周期停止を認めたが、p53遺伝子に変異を持つ癌細胞ではG1期周期停止はおこらずG2期で周期停止を認めた。こうした現象は細胞内蛋白p53の異常の有無に由来するためと考えられた。さらに放射線照射により甲状腺細胞に特異的な反応が起こりうるかp53下流遺伝子群(p21/WAF1,GADD45,Bax,FAS)の反応について調べたところp21/WAF1では照射後に発現増加を認めたがGADD45、Bax、FASは発現に変化を認めなかった。また、初代培養細胞では正常p53が存在するにもかかわらず放射線によるアポトーシスが起こりにくいことがわかった。これより、放射線に対し甲状腺細胞では特異的な反応が認められることが確かめられた。この結果はCancer Res.に掲載された。2.セミオート尿中ヨード測定法の開発甲状腺の分化、増殖に関与する因子の一つとしてヨードがある。このヨード摂取の量を正確かつ迅速に測定するために、尿中ヨードのセミオートマチック測定法を開発した。この測定法では多数のサンプル(30/時間)を処理することが可能であり従来の測定法と比較検討し同程度以上の感受性を有していた。この結果はClinical Chemistryに掲載された。甲状腺癌ではTGF-β1およびその受容体の発現を認めることがすでに報告されている。甲状腺癌細胞株を用いTGF-β1の作用を調べたところ、細胞増殖抑制作用を認めた。TGF-β1の増殖抑制作用がどのようなメカニズムを介して起こっているかを増殖に関連する遺伝子c-mycを指標として調べたところTGF-β1の量依存症c-myc mRNAの発現低下を認めた。またc-mycの上流にTGF-βの反応領域があるかを調べたところc-myc上流-86-63領域に結合する核蛋白をTGF-β1が抑制を介して、c-mycの発現を抑制していることがわかった。この結果はEndocrinology 135:1378,1994に掲載された。さらに甲状腺C-細胞においてはRET遺伝子の正常な発現がその分化を規定していると考えられる。甲状腺髄様癌においてRET遺伝子の点突然変異を調べたところ散発性髄様癌におけるRET遺伝子の点突然変異を調べたところ散発性髄様癌10例中4例にエクソン16のコドン918においてATGがACG(メチオニンがスレオニン)に変異していることが証明された。この結果はEnndocrine Journalに掲載予定である。またチェルノブイリ原発事故後の小児甲状腺癌の発生に関して、スクリーニング調査を現地で行なった。その結果新たに事故後に甲状腺癌増加が認められ、その結果をまとめた。1,甲状腺細胞に対する放射線の生理学的な反応の解析長崎被爆者やチェルノブイリ事故後の疫学調査の結果、甲状腺組織は放射線照射により癌化しやすい組織であることが報告されているが、細胞レベルでどのような反応がおこっているかについては理解されていない。我々は甲状腺初代細胞および甲状腺癌細胞株に放射線を照射することでどのような反応がおこるか解析をおこなった。p53正常の初代細胞ではp53変異を持つ癌細胞に比べ放射線照射後の生存率の低下を認めることがわかった。さらに照射後の細胞周期を調べると初代培養細胞ではG1期で細胞周期の停止(G1アレスト)を誘導されるが癌細胞ではG1アレストを認めずG2期での細胞周期停止(G2アレスト)を認めた。 | KAKENHI-PROJECT-06671039 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06671039 |
甲状腺癌細胞内情報伝達機能異常の解析による癌治療への基礎的検討 | 即ちG1アレストは正常p53に依存性であるがG2アレストは正常p53に非依存性であることがわかった。さらに放射線照射後のアポトーシスに関しては甲状腺細胞ではp53の状態にかかわらず起こりにくいことがあきらかになった。正常p53により転写活性が増強する遺伝子群の放射線照射後の発現増加について調べたところG1アレストに関与する遺伝子p21/WAF1の発現の増加は認めたがGADD45遺伝子の発現は不変であり、他の組織との放射線照射後の細胞内反応の違うことが明らかになった。2,甲状腺髄様癌における遺伝子異常散発性の甲状腺髄様癌においてRET癌遺伝子の変異について解析したところ、コドン918の部位に40%の頻度で変異があることが明らかになった。この変異が髄様癌の発症の一因になっていることが推測された。 | KAKENHI-PROJECT-06671039 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06671039 |
カルニチン欠乏症(JVS)マウスの病態発生に及ぼす環境ストレスの影響 | C3H.OHに発生したJVSマウスのjvs遺伝子をC57BL/6マウスに戻し交配して得られたB6-jvsマウスを生産し、JVSマウス、jvsヘテロ(表現型は正常)、正常ホモマウスで、以下の実験を行った。動物は34ヶ月齢で実験に供した。1)熱産生、体温の測定環境温度32°Cでの酸素消費にはJVS群と対象群に差は見られず、基礎代謝に違いの無いことが推察された。環境温度24°Cとすると、酸素消費増加量には有意な差が見られ、JVSマウスで有意に低かった。またJVSマウスへのカルニチン添加食の給餌により若干の酸素消費量増加が見られた。さらに環境温度24,28,30,32°Cにおける体温は24°Cで有意な低下が観察され、環境温度上昇と共に高くなり、3032°Cでほぼ一定となったが、正常マウスに比べるとやや低い傾向が見られた。従ってJSVマウスは熱産生能が低く、至適飼育温度は30度前後であることが示唆されたが、32°C環境においても有意差はないものの、低体温になる傾向が観察されたことから、長期飼育による観察を要するものと推察された。2)環境温度24°CでのJVSマウスの寿命通常の飼育室(約24°C)でのJVSマウスの寿命は、通常の自由給水自由摂餌下では正常マウスの23年に比べ有意に短く、平均寿命355日であった。このことより、JVSマウスでは老化が促進していることが示唆された。また、24度室温下で飼育されたJVSマウスの血清中の免疫グロブリン量は、正常個体に比べ差は見られなかったが、血清中のチロシンキナーゼを測定したところ、JVSマウスで有意に低い値となっており、寿命短縮と免疫系の異常の探索を要するものと推察された。C3H.OHに発生したJVSマウスのjvs遺伝子をC57BL/6マウスに戻し交配して得られたB6-jvsマウスを生産し、JVSマウス、jvsヘテロ、正常ホモマウスで、以下の実験を行った。動物は34ヶ月齢で実験に供した。1)熱産生、体温の測定環境温度32°Cでの酸素消費および体温にはJVS群と対照群に差は見られず、基礎代謝に違いの無いことが推察された。環境温度24°Cとすると、酸素消費増加量には有意な差が見られ、JVSマウスで有意に低かった。またJVSマウスへのカルニチン添加食の給餌により若干の酸素消費量増加が見られた。さらにJVSマウスでは、体温にも環境温度24°Cで有意な低下が観察され、JVSマウスの熱産生能が低いことが示唆された。24度室温下で飼育されたJVSマウスではNatural Killer活性が対照群に比べ有意に低かった。3)血清イムノグロブリンおよび甲状腺ホルモン(チロシンキナーゼ)測定24度室温下で飼育されたJVSマウスの血清中の免疫グロブリン量(IgMおよびIgG)は、正常個体に比べ差は見られなかったが、血清中の甲状腺ホルモン(チロシンキナーゼ)を測定したところ、JVSマウスで有意に低い値となった。今後はマイトジェン刺激による免疫グロブリン産生応答あるいは細胞性免疫応答について検討するとともに、差の見られた項目については、環境温度32度で飼育、馴化したマウスにおいて検討を行う。C3H.OHに発生したJVSマウスのjvs遺伝子をC57BL/6マウスに戻し交配して得られたB6-jvsマウスを生産し、JVSマウス、jvsヘテロ(表現型は正常)、正常ホモマウスで、以下の実験を行った。動物は34ヶ月齢で実験に供した。1)熱産生、体温の測定環境温度32°Cでの酸素消費にはJVS群と対象群に差は見られず、基礎代謝に違いの無いことが推察された。環境温度24°Cとすると、酸素消費増加量には有意な差が見られ、JVSマウスで有意に低かった。またJVSマウスへのカルニチン添加食の給餌により若干の酸素消費量増加が見られた。さらに環境温度24,28,30,32°Cにおける体温は24°Cで有意な低下が観察され、環境温度上昇と共に高くなり、3032°Cでほぼ一定となったが、正常マウスに比べるとやや低い傾向が見られた。従ってJSVマウスは熱産生能が低く、至適飼育温度は30度前後であることが示唆されたが、32°C環境においても有意差はないものの、低体温になる傾向が観察されたことから、長期飼育による観察を要するものと推察された。2)環境温度24°CでのJVSマウスの寿命通常の飼育室(約24°C)でのJVSマウスの寿命は、通常の自由給水自由摂餌下では正常マウスの23年に比べ有意に短く、平均寿命355日であった。このことより、JVSマウスでは老化が促進していることが示唆された。また、24度室温下で飼育されたJVSマウスの血清中の免疫グロブリン量は、正常個体に比べ差は見られなかったが、血清中のチロシンキナーゼを測定したところ、JVSマウスで有意に低い値となっており、寿命短縮と免疫系の異常の探索を要するものと推察された。 | KAKENHI-PROJECT-09780776 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09780776 |
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