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ファレノプシスの生理学的特性と栽培管理法について | CO_2吸収で測定した場合のファレノプシスの昼間の光強度の光飽和点は150μmol/m^2/sであったことからすると、今回得られた結果は非常に高い値であった。実際栽培でも、幅広い光強度範囲での栽培が行われており、ファレノプシスの光合成の最適光強度に関する見解は定まってはいない。したがってファレノプシスの光合成の最適光強度は変わり得るものとも考えられ、低照度での生育促進も可能と考えられた。蛍光燈照射による低照度条件(4000lux)でのファレノプシスの栽培実験では、自然光での栽培に比べ生育は顕著に促進された。35/25°C(昼温/夜温)条件では枯死個体も認められたが、生育は自然光の場合よりも良好であった。ファレノプシスの生育適温と考えられる30/25°C区では、通常の栽培条件よりも生育は格段に優れていた。培養槽内の環境条件は、昼間あるいは夜間の温度が一定であること、高湿度条件であること、光条件は低照度ではあるが一定強度に保たれたことなどが温室環境との大きな違いであり、これらが生育促進の要因と考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-06660031 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06660031 |
補助犬の凍結精液銀行設立のための基礎的研究 | 犬精子は他の動物の精子に比較して耐凍性が低いことが知られている。このため、犬の凍結精液において、希釈液である卵黄トリス・フルクトース・クエン酸液(EYT-FC)に、豚で使用されている合成界面活性剤であるOrvus ES Paste(OEP)を添加しないと、受胎できず、OEP添加は犬の凍結精液の作製には不可欠なものとなっている。この理由としては、OEPの添加によって凍結融解後も精子アクロソーム・キャップが保護され、融解後の精子活力が向上し、長時間活力が維持されるためである。しかし、OEPの主成分はラウリル(ドデシル)硫酸ナトリウム(SLS)であることが知られているが、含有SLS濃度や、それ以外の組成は明らかにされていない。そこで、犬凍結精液においてEYT-FCへのSLSの添加の影響をOEPと比較した。その結果、凍結融解後の精子活力および精子生存率は、SLSを添加した群では2mg/ml添加群が最も高かったが、OEP添加群がそれを上回った。しかし、両者の間に有意差はみられなかった。正常精子アクロソーム・キャップ保有率も、両者の間で差は認められなかった。以上のように、犬の凍結精液の希釈液にOEP添加と同様にSLS2mg/mlの添加が有用であることが明らかとなった。このことから、SLS2mg/mlを添加した犬凍結精液でも、十分な受胎率が期待できることが考えられた。我々がすでに報告している犬凍結精液の作製法は、卵黄トリス-フルクトース-クエン酸液(EYT-FC)で精液を希釈し(1次希釈)、その後、凍結保護物質であるグリセリンおよび界面活性剤であるOrvus ES paste (OEP)を添加したEYTFCを点滴法で希釈し(2次希釈)、ストロー法で簡易凍結器を用いて凍結を行う方法であった。しかし、この方法だと精液採取から凍結処理までに時間がかかること、また、簡易凍結器という特別な大型の機械を使用することが問題となる。このため、これらの方法の簡便化を検討する必要が考えられた。そこで、実験1として、精液の希釈時間を短縮する方法、すなわち1段階希釈法の検討、また実験2として、簡易な凍結方法、すなわち発泡スチロールの中の液体窒素で凍結を行う投げ込み法の検討を行った。その結果、実験1において、1段希釈法および2段希釈法(従来法)の問に、凍結融解後の精液性状には統計学的には有意差は認められなかったが、1段希釈法では精子活力に幅が見られた。これは、精子にとって有害な物質であるグリセリンやOEPを1度に希釈することによって、精子に与えるショックを大きくしてしまったため、精液性状が悪くなるものが生じたためであると思われた。実験2において、凍結融解後の精子活力および精子生存率は、簡易凍結器法に比較して投げ込み法で有意に高値を示した(それぞれ、p<0.01,p<0.05)。以上のことから、犬凍結精液の作製法において、確実で、良好な成績が得るためには、希釈方法は従来の2段階で希釈することが望ましいことが明らかとなった。また、凍結方法として投げ込み法は簡便であり、簡易凍結器法に代わる方法として有効であることが明らかとなった。犬精子は他の動物の精子に比較して耐凍性が低いことが知られている。このため、犬の凍結精液において、希釈液である卵黄トリス・フルクトース・クエン酸液(EYT-FC)に、豚で使用されている合成界面活性剤であるOrvus ES Paste(OEP)を添加しないと、受胎できず、OEP添加は犬の凍結精液の作製には不可欠なものとなっている。この理由としては、OEPの添加によって凍結融解後も精子アクロソーム・キャップが保護され、融解後の精子活力が向上し、長時間活力が維持されるためである。しかし、OEPの主成分はラウリル(ドデシル)硫酸ナトリウム(SLS)であることが知られているが、含有SLS濃度や、それ以外の組成は明らかにされていない。そこで、犬凍結精液においてEYT-FCへのSLSの添加の影響をOEPと比較した。その結果、凍結融解後の精子活力および精子生存率は、SLSを添加した群では2mg/ml添加群が最も高かったが、OEP添加群がそれを上回った。しかし、両者の間に有意差はみられなかった。正常精子アクロソーム・キャップ保有率も、両者の間で差は認められなかった。以上のように、犬の凍結精液の希釈液にOEP添加と同様にSLS2mg/mlの添加が有用であることが明らかとなった。このことから、SLS2mg/mlを添加した犬凍結精液でも、十分な受胎率が期待できることが考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-16780221 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16780221 |
微細構造相関解析法を用いたシナプス前後の協調的成熟を支える分子機構の解明 | シナプス前後構造の接着に関与するシナプス接着分子を中心に遺伝子改変マウスのシナプス構造を解析し、シナプス前後構造の協調的な構築を支える分子を同定する。更に、これらの遺伝子改変マウスの単一シナプスレベルの機能的特徴を電気生理学的に明らかにすることで、各シナプス微細構造の機能との対応関係を明らかにする。また、精神神経疾患モデルマウスのシナプス構造を解析し、シナプス前後構造の協調的な構築機構の破綻と精神神経疾患の発症との関連性を明らかにすることで、病態解明と治療法開発の一助とする。シナプス前後構造の接着に関与するシナプス接着分子を中心に遺伝子改変マウスのシナプス構造を解析し、シナプス前後構造の協調的な構築を支える分子を同定する。更に、これらの遺伝子改変マウスの単一シナプスレベルの機能的特徴を電気生理学的に明らかにすることで、各シナプス微細構造の機能との対応関係を明らかにする。また、精神神経疾患モデルマウスのシナプス構造を解析し、シナプス前後構造の協調的な構築機構の破綻と精神神経疾患の発症との関連性を明らかにすることで、病態解明と治療法開発の一助とする。 | KAKENHI-PROJECT-19H03323 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H03323 |
19世紀イギリスの公衆衛生と自由・権利 | 本研究は、19世紀イギリスの感染症の予防を題材として、公衆衛生と自由を両立させることが可能な思想的基盤を探求することが目的である。平成30年度は、前年度に行った研究のうち、チャドウィックの初期論文の分析についての論文を公表した。また研究計画を変更して、次年度予定の予防接種にまつわる議論、特に反ワクチン運動についての研究を行い、学会発表と、そこでのコメントを参考に、論文を公表した。現在、反ワクチン運動は時代遅れの、科学を無視した運動であるとの主張がなされる。しかし、ダーバックの研究によれば、少なくとも19世紀のイギリスでは、自己統治のひとつの現れとして反予防接種運動が展開されていた。当時、イギリスの労働者たちは、相互扶助組織に代表されるように、自分たちの金銭や労働の管理を自分たちの助け合いで行うことを誇りとしていた。こうした世界観のなかで、労働者たちは、医学もまた、身体を自らの力で治療できる方法を教える代替医療が優れていると判断していた。逆に、医師による治療を本質とする近代医療は、自己統治の世界観にそぐわなかったし、予防接種は強制を本質とするため、とくに労働者たちから反対の声があがっていた。一方、予防接種の法律化は1840年にはじまり、しだいにその強制力を強めていった。その根拠にあるのは、低い接種率と、ときおり起こる天然痘の流行であった。予防接種法には、罰則が設けられており、罰金を払えない場合には、刑務所に入所させられることがあったが、この場合には他の刑事犯と同様に扱われていた。ところで、接種率が低く、また刑罰を課されたのは主に貧困階級の労働者たちであった。フーコーが指摘するように、この時代の予防接種は貧者をコントロールすることにあったが、まさにこの点にこそ予防接種に反対する要点があった、つまり自己統治への侵害と捉えられていたのである。主たる資料の分析はおおむね順調に進んでいる。しかしながら、前年度に行ったチャドウィックの分析についての論文の執筆および公表が遅れている。最終年度に公表していきたいと考えている。最終年度は、1)感染症予防法、公衆衛生法などの法整備の周辺で巻き起こった議論と反発、2)コレラや結核に代表される具体的な感染症の予防とその反発の二点について資料を精読・分析していく。どちらの研究も議会の議事録、法学雑誌、新聞、その他の著作などの当時の資料を分析していく。当時の議事録や新聞については、NII-REOやPROQUESTのようなインターネット・サービスを活用しながら、研究を進めていく。また2)については歴史学分野においてコレラや結核などの感染症の社会史分析は盛んに行われており、昨年度から収集、および分析を進めている。これらを活用することで研究を進めながら、国内で可能な限り研究を進めておき、渡英し研究する際に必要な部分を可能な限り少なくしておく。研究の成果は、積極的に口頭発表を行い、研究を練り上げた上で学術論文として発表していく。本研究は、19世紀イギリスの感染症の予防を題材として、公衆衛生と自由を両立させることが可能な思想的基盤を探求することが目的である。平成29年度は研究の最初の年であり、研究計画に基づいて、研究全体の柱であるチャドウィックとミルの著作の精読、分析を行った。まず、チャドウィックに関しては、彼が公衆衛生運動に関わっていく前の段階で、彼の思想のなかで「健康」とその格差、そして「予防」がどのような位置づけにあるのかを確認した。次に彼の主著である『大英帝国における労働人口集団の衛生状態に関する報告書』とその時代において、彼の思想のなかで「健康」と「予防」がどのように扱われているのか分析した。最後に、その後に執筆された感染症予防に関するいくつかの著作や、彼の周辺の公衆衛生に関係した人物、例えばサウスウッド・スミスやナイチンゲールなどの分析に進んだところで、初年度の研究が終了した。こうした分析の結果について発表や執筆を行う予定であったが叶わなかったため、次年度以降に発表していくことにする。またサウスウッド・スミスたちの著作の分析なども次年度以降に行うことにする。ミルと感染症に関してはすでに論文を執筆しているが、その論文以上の新たな発見をすることはできなかった。したがって、いったんミルの研究については保留して先に進むことにした。また次年度以降の研究に取り組みやすくするため、基礎となる文献に目を通した上で、重要な文献をリストアップし、必要なものについては購入した。この文献のなかで、19世紀イギリスの公衆衛生史に関わる重要ないくつかの著作については分析を行い、本研究全体の見通しをつけた。主たる資料の分析はおおむね順調に進んでいる。しかしながら、次の2点において、やや遅れている。1)チャドウィックやミルの周辺で公衆衛生運動に従事した学者たちの著作の分析が遅れている。2)研究の成果を口頭発表および学術論文として公表する予定であったが、平成29年度はそれが叶わなかった。1)および2)については平成30年度の研究とあわせて行い、その研究成果を発表しながら、遅れを取り戻していく予定である。本研究は、19世紀イギリスの感染症の予防を題材として、公衆衛生と自由を両立させることが可能な思想的基盤を探求することが目的である。平成30年度は、前年度に行った研究のうち、チャドウィックの初期論文の分析についての論文を公表した。また研究計画を変更して、次年度予定の予防接種にまつわる議論、特に反ワクチン運動についての研究を行い、学会発表と、そこでのコメントを参考に、論文を公表した。 | KAKENHI-PROJECT-17K13601 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K13601 |
19世紀イギリスの公衆衛生と自由・権利 | 現在、反ワクチン運動は時代遅れの、科学を無視した運動であるとの主張がなされる。しかし、ダーバックの研究によれば、少なくとも19世紀のイギリスでは、自己統治のひとつの現れとして反予防接種運動が展開されていた。当時、イギリスの労働者たちは、相互扶助組織に代表されるように、自分たちの金銭や労働の管理を自分たちの助け合いで行うことを誇りとしていた。こうした世界観のなかで、労働者たちは、医学もまた、身体を自らの力で治療できる方法を教える代替医療が優れていると判断していた。逆に、医師による治療を本質とする近代医療は、自己統治の世界観にそぐわなかったし、予防接種は強制を本質とするため、とくに労働者たちから反対の声があがっていた。一方、予防接種の法律化は1840年にはじまり、しだいにその強制力を強めていった。その根拠にあるのは、低い接種率と、ときおり起こる天然痘の流行であった。予防接種法には、罰則が設けられており、罰金を払えない場合には、刑務所に入所させられることがあったが、この場合には他の刑事犯と同様に扱われていた。ところで、接種率が低く、また刑罰を課されたのは主に貧困階級の労働者たちであった。フーコーが指摘するように、この時代の予防接種は貧者をコントロールすることにあったが、まさにこの点にこそ予防接種に反対する要点があった、つまり自己統治への侵害と捉えられていたのである。主たる資料の分析はおおむね順調に進んでいる。しかしながら、前年度に行ったチャドウィックの分析についての論文の執筆および公表が遅れている。最終年度に公表していきたいと考えている。平成30年度は、1)感染症予防法、公衆衛生法などの法整備の周辺で巻き起こった議論と反発、2)コレラや結核に代表される具体的な感染症の予防とその反発の二点について資料を精読・分析していく。どちらの研究も議会の議事録、法学雑誌、新聞、その他の著作などの当時の資料を分析していく。研究の成果は、積極的に口頭発表を行い、研究を練り上げた上で学術論文として発表していく。現時点では、日本法哲学会の学術大会の発表を予定している。当時の議事録や新聞については、NII-REOやPROQUESTのようなインターネット・サービスを活用しながら、研究を進めていく。また2)については歴史学分野においてコレラや結核などの感染症の社会史分析は盛んに行われており、昨年度から収集、および分析を進めている。これらを活用することで研究を進めながら、国内で可能な限り研究を進めておき、平成31年度に渡英し研究する際に必要な部分を可能な限り少なくしておく。最終年度は、1)感染症予防法、公衆衛生法などの法整備の周辺で巻き起こった議論と反発、2)コレラや結核に代表される具体的な感染症の予防とその反発の二点について資料を精読・分析していく。どちらの研究も議会の議事録、法学雑誌、新聞、その他の著作などの当時の資料を分析していく。当時の議事録や新聞については、NII-REOやPROQUESTのようなインターネット・サービスを活用しながら、研究を進めていく。また2)については歴史学分野においてコレラや結核などの感染症の社会史分析は盛んに行われており、昨年度から収集、および分析を進めている。 | KAKENHI-PROJECT-17K13601 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K13601 |
高靭性材料を用いた土構造物の耐震性・耐侵食性強化技術 | 河川堤防や貯水池堤体などの耐震強化が遅れており、施工効率に優れ経済的な土構造物の補強技術の開発が要求されている。本研究は、土構造物の強靭化を目的として構造と材料の両面からアプローチした。構造面では、振動台模型実験等の結果に基づき、土構造物表面を部分的に改良することによって、耐震性を向上させる耐震補強技術を提案した。土質材料の開発においては、低利用資源の積極的活用と環境配慮型に配慮して以下の適用性を検討した。すなわち、再生石膏を用いた底泥固化材、竹繊維を用いた繊維補強土、木くずが混入する津波堆積土の土工材料としての利用、再生プラスチックを用いた地山補強土工法の受圧板等である。土構造物の強靭化を目的として構造と材料の両面からアプローチした。構造面では、河川堤防や貯水池堤体など土構造物の経済的な耐震補強技術の開発を目的として、盛土の部分補強について位置・範囲など諸元に関する基本パターンを数種類設定した。本年度は補強パターンとして天端補強、のり面補強、天端+のり面補強を対象とし、縮尺1/30の模型盛土を実験土槽内に作製して振動台実験で完全な崩壊が生じる加速度から耐震性を評価した。また、高速度カメラで加振時の撮影を行い、補強パターンの違いによる部分補強盛土の崩壊形態を分析した。その結果、天端補強がのり面補強よりもより効果的に耐震性が向上することが確認された。また、円弧すべり計算を用いた斜面安定解析により実験結果の再現を試みた。材料面では環境配慮の目的から低利用資源の活用を前提に以下の各種材料に関する利用可能性を検討した。1)廃石膏ボードの再利用法に関しては、再生石膏固化材によるため池改修技術への利用を前提として、その固化性能と環境安全性を室内試験で評価し現場への適用条件を確認した。2)耐震強化を目的とする部分補強改良形式での使用が期待される高靭性材料として、繊維補強固化処理土の適用性を検討した。本年度は、乾湿繰り返し抵抗性の向上効果に優れることを確認した。3)低利用資源の植物繊維の有効利用法に関して、引張強度に優れる竹繊維の有効性を確認した。4)再生プラスチックを用いた土木資材の開発に関して、地山補強土工法において再生プラスチック製受圧板の適用性を確認した。また、SEM撮影画像を用いた微視構造解析を実施し、繊維補強固化処理土への適用性を確認できた。本研究は、土構造物の強靭化を目的として構造と材料の両面からアプローチした。構造面では、土構造物の経済的な耐震補強方法の検討として、高い靭性を有する土質材料を用いて土構造物表面を部分的に改良することによって、全体系の耐震性と耐侵食性を向上させる低コストな土構造物補強技術を確立することである。その第一段階として、盛土の部分補強に関する基本モデルを設定し、剛性だけを高めた材料を用いた振動台模型実験を実施した。その結果から最も効率的な部分改良モデルを評価した。第二段階として柔軟性があり引張抵抗力を有する布状あるいは袋状材料を用いた補強形態を検討し、拘束圧の作用が少ないと補強の効果が発揮できないことを明らかにした。また、実験結果を安定解析で再現することで設計への反映の道筋を得た。土質系靭性材料の開発においては、低利用資源の積極的活用と環境配慮型技術に配慮して以下の各種材料の利用可能性を検討した。1)廃石膏ボード由来の再生石膏固化材について、室内試験ならびに現場施工実験から基本的硬化特性と環境安全性を評価して、実用可能な範囲をある程度設定した。2)繊維補強固化処理土の面状改良体としての利用形態に関して、曲げモードでのひずみ分布を画像解析技術を用いて明らかにする手法を開発した。また、SEM撮影画像による微視構造解析結果から二相材料としての解析が可能である目安を得た。3)低利用かつ自然由来の竹繊維を用いた繊維補強土について基本的な土質改善効果を確認した。一方、東日本大震災の津波堆積土に木くずが混入する理由から通常の土工資材としての活用が進まない状況に対応して、少量の繊維混入が土の工学的性質を改善するか悪化するかという基本的な問題提起を得た。4)再生プラスチックを用いた土木資材開発について、地山補強土工法の受圧板として利用することで耐震補強効果を発揮することを確認した。本研究は、土構造物の強靭化を目的として構造と材料の両面からアプローチした。構造面では、土構造物の経済的な耐震補強方法の検討として、高い靭性を有する土質材料を用いて土構造物表面を部分的に改良することによって、全体系の耐震性と耐侵食性を向上させる低コストな土構造物補強技術を確立することである。構造面のアプローチとして、盛土の部分補強に関する基本モデルを設定し、振動台模型実験により基礎的な動的特性と破壊形態を検討した。前年度の剛性を高めた部分補強材料を用いた実験ケースに続き、柔軟性を有し引張抵抗力を有する袋状材料を用いた補強形態を検討した。その結果、変形追随性がある柔軟性のある補強材の有利性が確認された。この実験結果を震度法安定解析ならびに動的応答解析で再現し、盛土の応力状態を精査した結果、柔軟性のある表層補強材により盛土表面のクラック発生を抑制する効果があることが確認された。土質系靭性材料の開発においては、低利用資源の積極的活用と環境配慮型技術に配慮して以下の各種材料および利用法の可能性を検討した。 | KAKENHI-PROJECT-25420512 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25420512 |
高靭性材料を用いた土構造物の耐震性・耐侵食性強化技術 | 1)再生石膏固化材について、現場における含水比評価方法を明らかにした。また、細粒土の造粒材として適する可能性を確認できた。2)繊維補強固化処理土の面状改良体としての利用に関し、曲げ変形時のひずみ分布を画像解析技術により可視化する手法を開発した。SEM撮影画像による微視構造解析結果から繊維材料の疎水性と親水性の相違が検出できる目安を得た。3)低利用かつ自然由来の竹繊維を用いた繊維補強土について砂質土礫質土における適用限界を確認した。東日本大震災の津波堆積土について、木くず混入量がせん断強度特性に与える影響を評価した。4)再生プラスチックを用いた地山補強土工法の受圧板の柔軟性が支圧特性に与える影響を評価した。河川堤防や貯水池堤体などの耐震強化が遅れており、施工効率に優れ経済的な土構造物の補強技術の開発が要求されている。本研究は、土構造物の強靭化を目的として構造と材料の両面からアプローチした。構造面では、振動台模型実験等の結果に基づき、土構造物表面を部分的に改良することによって、耐震性を向上させる耐震補強技術を提案した。土質材料の開発においては、低利用資源の積極的活用と環境配慮型に配慮して以下の適用性を検討した。すなわち、再生石膏を用いた底泥固化材、竹繊維を用いた繊維補強土、木くずが混入する津波堆積土の土工材料としての利用、再生プラスチックを用いた地山補強土工法の受圧板等である。全体的には順調に進捗していると判断している。材料面の開発については水平展開もあって当初の計画以上に進展した。構造面の検討では、振動台模型実験と数値解析との両者を効率よく使用することを計画していたが、数値解析法の進捗がやや遅れ気味である。実験の遅れは、適切な実験材料の選定に時間を要していることに依るが、次年度の早期に実施できる目途がついている。地盤工学当初計画に従って研究を推進していく。最終年度となる平成27年度では、実施済みの過去2年分で抽出された課題の解決を織り込んだ詳細計画を練り直して執行していく。進展の不十分な研究項目については、研究協力者との連携を強めて取り組んでいく方針である。材料面の検討は当初の計画以上に進展した。構造面の検討については、振動台実験の実施可否が本研究の大きなポイントになることから、その可能性の検討を先行して基本ケースに係わる実験を実施できた。また、安定解析により実験結果を再現する目途がついた。しかし、全体系を対象とする数値解析(地震応答解析)の進捗がやや遅れている。次年度使用額が生じた理由は、今年度購入を計画していた装置の購入を次年度に見送ったことと、消耗品の購入等が計画より少なかったことによる。装置に関しては、振動実験装置に取り付ける任意波形発生装置の導入を予定していたが、今年度の研究結果を踏まえると、本研究で設定する実験条件から同装置の有効性があまり認められないと評価された。さらに来年度計画を考慮すると、汎用せん断試験機の繰り返し制御装置が本研究の目的に適合すると考えられた。当初計画に従って研究を推進していく。初年度の結果から抽出された新たな課題を含めて、次年度の詳細計画を立案して進めていく方針である。進展の不十分な項目については、研究協力者との連携を強めて取り組んでいく。 | KAKENHI-PROJECT-25420512 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25420512 |
心房細動維持機構の可視化と計算科学に基づく新たなアブレーション治療戦略の構築 | 急速に増加しつつある心房細動患者に対する有効な予防・治療対策の確立が急がれる。心房細動の発生・維持に渦巻き型旋回興奮波(Spiral wave: SW)や巣状興奮が重要な役割を果たすことが明らかになっている。本研究では、計算科学に基づいた心房電気興奮シミュレーションモデルで観察される心房細動と動物実験モデルを用いて効果的な心房細動焼灼治療戦略を提案することである。我々の開発した位相分散解析の結果、多電極マッピングのみでSWの存在可能領域の予測が可能になることが判明し、さらに、心筋再分極領域に電気刺激を加えることで細動の駆動源であるSWが消滅する可能性があることを発見した。1.3次元光学計測および電極計測の統合システムによる心房細動動物モデルの心房興奮伝播波面解析:心房細動の発生・持続のメカニズムや、有効なアブレーション条件の検討を動物実験で行うために必要な、電極計測および組織の3次元光学計測の統合計測システムの実現を目標とする。これまでに、心内膜・心外膜同時計測実験、およびカメラ・電極同時計測の予備実験を行った。さらに、光学計測画像の定量的解析手法を開発した。また、組織内の光拡散を用いる新たな3次元計測手法の原理確認を行った。2.慢性(永続的)心房細動動物モデルの作製:ターゲットとする慢性心房細動を生理学的により忠実に再現するための動物実験モデルの作成プロトコルを確立することを目標とする。これまでに、ペースメーカー留置による慢性心房細動モデルの作成に成功した。3.心房モデルの改良と不整脈発生・持続機序とアブレーション手法の検討:解剖学的構造、電気生理学的特性の不均一性を考慮した心房電気興奮シミュレーションを構築し、これに基づいて効果的な心臓細動アブレーション戦略を提案することを目標とする。これまでに、簡略化された心房モデルの興奮伝播シミュレーションが完了している。1.3次元光学計測および電極計測の統合計測システムによる心房細動動物モデルの興奮伝播波面解析:3次元光学計測においては、心外膜・心内膜光学計測における画像レジストレーションアルゴリズムを改良し、内外の電位活動の対応関係をより高い精度で把握可能となった。さらに、組織内の光拡散から組織深部の蛍光強度を推定する光学計測を応用し、パターン照明を利用することで高速な計測を可能とする新たな手法の原理をシミュレーション上で確認した。これにより不整脈現象のような高速かつ非周期的な現象の三次元計測の可能性が示された。一方電極計測においては、カメラによる光学計測と、実際に臨床にも用いられるカテーテル電極による電気計測の同時計測システムの予備実験を行った。また光学計測画像において、旋回興奮軌跡を定量的に解析可能するための、位相分散解析とよぶ新たな信号処理アルゴリズムを開発し、発生・移動・消滅する旋回興奮波の追跡を実現した。2.慢性(永続的)心房細動動物モデルの作製:全身麻酔下のウサギに対して、右心耳心外膜面にペーシングリードを縫縮、ペースメーカー本体を右胸部皮下に植え込む。術後7日に高頻度ペーシングを加えることで心房細動を誘発する事で、6か月以上持続する慢性心房細動モデルを作成した。3.心房モデルの改良と不整脈発生・持続機序とアブレーション手法の検討:簡略化された左右心房のサーフェスモデルをユニットモデル化し、各ユニットに活動電位モデルを組み込んだ心臓モデルを作製した。作製した心臓モデルを用いることで、洞結節からの興奮発生と周囲心房組織への興奮伝播を再現することができている。佐久間・本荘・山崎・中川・小林は心臓突然死につながる不整脈の効果的な治療の実現に向けて、心臓内に発生する旋回興奮波(spiral wave : SW)を効果的に停止させるための通電刺激の効果機序の理解と最適刺激条件の検討を目的とし、昨年度までの研究で提案した位相分散解析によりウサギ摘出心臓灌流標本の光学マッピング結果で観察されるSWの定量的解析を行った。その結果位相分散の高い部分にSWの移動軌跡が高い確率で存在することを示唆するデータを得た。また通電刺激時に通電により位相分散が高い領域が発生し、SWが移動し解剖学的ブロックラインに衝突して消滅する現象を確認した。また興奮後面付近への点通電刺激が複数のSW中心を誘発し、SW中心同士の相互作用によりSW中心の位置が移動するという、点通電刺激によるSWシフトのメカニズムを明らかにしている。また心筋組織のバイドメインモデルを用いたコンピュータシミュレーションにより、同様の現象が生じることを確認した。また、過去に収集した心臓を冷却した状態でのSW発生時の膜電位光学マッピングデータを解析し、同様の傾向があることを確認するとともに、冷却効果を心筋細胞の電気生理学モデルに取り入れたコンピュータシミュレーションを行い、位相分散の高い領域にSWの移動軌跡が高い確率で存在することを明らかにした。芦原・中沢・稲田はコンピュータシミュレーションによる知見を駆使し、臨床的に計測可能な多電極双極表面電位マッピングデータから、心房内の電気的興奮状態をその再分極相も含め再構成する手法を提案し、カテーテルアブレーション部位の決定のための支援データをする研究を進めている。この推定結果の妥当性を検証するための光学マッピングと電極マッピングの同時計測系を佐久間・本荘・山崎が製作し、推定アルゴリズムの検証を行う準備を進めている。心房細動時に観察される旋回性興奮のダイナミクスを解析する新しい手法として、位相分散を用いた手法を提案しその有用性を明らかにしている。 | KAKENHI-PROJECT-15H01801 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H01801 |
心房細動維持機構の可視化と計算科学に基づく新たなアブレーション治療戦略の構築 | 本手法はこれまで観察されてきた現象を、体系的に理解できる可能性が示唆されており、過去の研究で得られた様々な条件(通電条件、薬剤負荷条件、冷却条件等)でのウサギ摘出心臓灌流標本を用いた膜電位光学マッピングデータをこの手法を用いて解析する作業を進めている。その結果位相分散解析が、SWダイナミクスの挙動を解析・推定する上で有用な情報を与えることが示されつつある。通電刺激や心筋組織の興奮伝播の電気焼灼による伝導のブロックの作成が、どのように旋回性興奮のダイナミクス変化をもたらすのかを解析する一定の手段を得たものと考えている。慢性心房細胞動物モデルの開発に関しては、その基本的な動物モデル作成手法はできており、実験的な検討を行う前段階にある。光学マッピングは心筋細胞膜電位の再分極相の情報を得ることを特徴とするが、臨床応用できないことが、研究成果の臨床展開上の大きな課題である。芦原・中沢らが別途開発したコンピュータシミュレーションによる知見を駆使した、臨床応用可能な多電極双極表面電位マッピングデータから心房内の電気的興奮状態をその再分極相も含め再構成する手法は、本研究成果を臨床展開する上で重要な技術であることから、マッピング技術に関してはこの推定結果の妥当性を検証するための光学マッピングと電極マッピングの同時計測系による検討に研究に力点を移した。基礎研究成果の展開の観点から、重要となる心房の解剖構造を考慮した、興奮伝播シミュレーションシステムの開発と治療戦略立案への展開に関しては、興奮伝播モデルを組み込む前段階までの準備が進んでいる状況である。1位相分散解析を用いた解析手法の有用性を、兎摘出灌流モデルを用いた膜電位光学マッピングデータを用いてさらに検討を加えた。その結果、不整脈現象において重要なSpiral Wave(SW)の旋回位置を電気刺激により移動し、解剖学的ブロックラインに衝突させてSWを停止させるという戦略を考える場合、電気刺激に生成される新たな電気興奮前面と、ともとのSWの再分極部分である後面の相互作用が重要であることを明らかにし、論文(Am. J. Physiol.,Heart and Circulatory Physiol.)として発表した。位相分散量の空間的構造によりSWのさまよい運動や電気刺激直後の挙動理解のための重要な情報が得られることを示唆するデータを得た。22次元心臓興奮膜電位モデルを用いたシミュレーションモデルを用いて、実験現象の詳細な検討を行い理論的な解析に取り組んでいる。この知見をもとにコンピュータシミュレーションを行い、通電刺激以外のSWへの介入手法としての局所冷却法性を検討し、局所冷却によりSWを意図する方向へ移動させることが可能であることを確認した。3さらにこれらの知見を臨床応用するための基礎検討として、臨床応用可能な多電極双極表面電位マッピングデータから心房内の電気的興奮状態を最分極相も含め再構成する手法との妥当性を、兎摘出灌流モデルを用いた光学・電極マッピングの同時計測にて検討する実験系を構築し、現在データの蓄積を進めている。得られた実験結果に対して位相分散解析を適用し、本研究で得られた知見を臨床応用への展開の可能性を検討した。4SWのさまよい運動が少ない心房梗塞誘発心房細動モデルを確立し、心房梗塞誘発心房細動の発生機序に酸化ストレスが大きく関与することを発見した。 | KAKENHI-PROJECT-15H01801 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H01801 |
ゾル-ゲル法による二重分子認識場をもつクロマトグラフィー用シリカゲル固定相の調製 | 1.二次分離場の構築:テトラメトキシシランを原料とするゾル-ゲル操作によって、イオン交換能をもつキトサンあるいはキラル配位子交換クロマトグラフィーで高いキラル分離能を示したN-(1-カルボキシブチル)キトサン(NCBC)を包括したシリカゲルを市販HPLC用シリカゲル表面に被覆した。その際のゲルの熟成における反応濃縮液へのデカリンの添加が均一なシリカゲル層の調製に有効であることが分かった。2.二次分離場の特性評価:キトサン包括シリカゲルはアニオン交換分離機能を有していることを芳香族モノカルボン酸類、ジカルボン酸類及びスルホン酸類のHPLC分離で確かめた。NCBC包括シリカゲルの配位子交換キラルクロマト分離性能は主にα-アミノ酸を分析対象物として評価した。ほとんどのα-アミノ酸のキラル分離が可能で、酢酸緩衝液を溶離液として使ったpH効果の検討からpH4.0で最も高い分離度(バリンの分離度:1.37)を得た。3.一次分離場の付与と分離能の評価:常法によってキトサン包括シリカゲルのシラノール基にオクタデシル基を導入した。得られた疎水場をもつシリカゲルは、疎水性の異なる官能基をもつ芳香族モノカルボン酸類やスルホン酸類あるいは芳香族フェノール類のHPLC分離を可能とし、イオン交換モードと逆相クロマトモードが同時に働く二重認識場の構築を確認した。4.今後の展開:シリカゲル表面のシラノール基上へのシス-ジオール認識部位、疎水的包接部位等の一次分離場の構築法を検討し、別種の二重認識場を有するシリカゲルの調製法を確立する予定である。1.被包括高分子の調製:完全脱アセチル化キトサンと種々のα-ケト酸とのシッフ塩基をシアノ水素化ホウ素ナトリウムで還元し,N-(1-カルボキシアルキル)キトサン類(NCAC)を調製した.この際,過酸化水素によって分子量を低めたキトサン(平均分子量20,000-30,000)を用いた場合,より高い置換度のNCACを得ることができた.2.NCACの分離能の評価:α-アミノ酸ラセミ体を分析物とする銅(II)キラル配位子交換クロマトグラフィーで,得られたNCACのキラル分離能を評価した.NCACは市販のHPLC用シリカゲル表面に銅(II)錯体として被覆しキラル固定相とした.より崇高いアルキル基をもつNCACほど分離能は高く,N-(1-カルボキシブチル)キトサンは,バリンに対して3.35の高い分離係数を示した.また,NCACの置換度を高くすると分離係数が高くなる傾向があり,低分子量のキトサンから合成したNCACではピークの半値幅の減少による分離度の向上も見られた.3.二次分離場の構築と特性評価:テトラメトキシシランを原料とするW/Oエマルジョン中でのゾル-ゲル操作によって,イオン交換能をもつキトサンを包括したシリカゲルビーズを調製した.粒子径は添加した界面活性剤Span80の濃度に大きく依存し,5wt%/20mlデカリンでHPLC用として適当な5μmに最大値をもつ粒度分布を得た.表面積は約600m^2/gであった.一方,市販のHPLC用シリカゲル表面にゾル-ゲル法でキトサンあるいはNCACを包括したシリカゲルを被覆する方法も検討し,この方法がより簡便で効率的な二次分離場の構築法であることが分かった.4.今後の展開:シリカゲル表面のシラノール基上への疎水認識部位,シス-ジオール認識部位,疎水的包接部位等の一次分離場の構築法を検討し,二重認識場を有するシリカゲルの調製法を確立する予定である.1.二次分離場の構築:テトラメトキシシランを原料とするゾル-ゲル操作によって、イオン交換能をもつキトサンあるいはキラル配位子交換クロマトグラフィーで高いキラル分離能を示したN-(1-カルボキシブチル)キトサン(NCBC)を包括したシリカゲルを市販HPLC用シリカゲル表面に被覆した。その際のゲルの熟成における反応濃縮液へのデカリンの添加が均一なシリカゲル層の調製に有効であることが分かった。2.二次分離場の特性評価:キトサン包括シリカゲルはアニオン交換分離機能を有していることを芳香族モノカルボン酸類、ジカルボン酸類及びスルホン酸類のHPLC分離で確かめた。NCBC包括シリカゲルの配位子交換キラルクロマト分離性能は主にα-アミノ酸を分析対象物として評価した。ほとんどのα-アミノ酸のキラル分離が可能で、酢酸緩衝液を溶離液として使ったpH効果の検討からpH4.0で最も高い分離度(バリンの分離度:1.37)を得た。3.一次分離場の付与と分離能の評価:常法によってキトサン包括シリカゲルのシラノール基にオクタデシル基を導入した。得られた疎水場をもつシリカゲルは、疎水性の異なる官能基をもつ芳香族モノカルボン酸類やスルホン酸類あるいは芳香族フェノール類のHPLC分離を可能とし、イオン交換モードと逆相クロマトモードが同時に働く二重認識場の構築を確認した。4.今後の展開: | KAKENHI-PROJECT-09875205 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09875205 |
ゾル-ゲル法による二重分子認識場をもつクロマトグラフィー用シリカゲル固定相の調製 | シリカゲル表面のシラノール基上へのシス-ジオール認識部位、疎水的包接部位等の一次分離場の構築法を検討し、別種の二重認識場を有するシリカゲルの調製法を確立する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-09875205 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09875205 |
液相法によるリチウムイオン伝導性酸化物の低温合成 | 27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-13F03371 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13F03371 |
膵管癌細胞における一次繊毛消失機構の解明と癌治療への応用 | 前年度に引き続き、膵管癌細胞における一次繊毛消失に介在する分子機構を解析し以下の知見を得た。(1)ヒストン脱アセチル化酵素HDAC2による一次繊毛抑制は、HDAC2の脱アセチル化酵素活性に依存すること、(2) HDAC2発現抑制により引き起こされる一次繊毛形成は、分裂キナーゼであるAurora Aの異所発現により抑制され、その抑制効果はAurora Aのキナーゼ活性に依存すること、(3) Krasの発現抑制により引き起こされる一次繊毛形成は、Aurora Aの異所発現により抑制されるが、HDAC2の異所発現では抑制されないことを見出した。さらに、一次繊毛の有無が膵管癌細胞の特性に与える影響を調べた結果、一次繊毛形成能を持つ膵管癌細胞と比べて、一次繊毛形成能が低い膵管癌細胞は、増殖能が高いことが分かった。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。これまでの本領域での研究から、(1)膵管癌細胞においてヒストン脱アセチル化酵素HDAC2が一次繊毛形成を抑制するが、一方で先に一次繊毛消失に必要であることが報告されていたHDAC6の阻害、または発現抑制は膵管癌細胞の一次繊毛形成に影響しないこと、(2)HDAC2の発現抑制により一次繊毛の消失を促進するAurora Aキナーゼの発現量が低下することから、Aurora AキナーゼはHDAC2の下流で働くことが示唆されたこと、及び(3)HDAC2とK-rasは独立した経路で膵管癌細胞の一次繊毛形成を抑制することを明らかにした。前年度に引き続き、膵管癌細胞における一次繊毛消失に介在する分子機構を解析し以下の知見を得た。(1)ヒストン脱アセチル化酵素HDAC2による一次繊毛抑制は、HDAC2の脱アセチル化酵素活性に依存すること、(2) HDAC2発現抑制により引き起こされる一次繊毛形成は、分裂キナーゼであるAurora Aの異所発現により抑制され、その抑制効果はAurora Aのキナーゼ活性に依存すること、(3) Krasの発現抑制により引き起こされる一次繊毛形成は、Aurora Aの異所発現により抑制されるが、HDAC2の異所発現では抑制されないことを見出した。さらに、一次繊毛の有無が膵管癌細胞の特性に与える影響を調べた結果、一次繊毛形成能を持つ膵管癌細胞と比べて、一次繊毛形成能が低い膵管癌細胞は、増殖能が高いことが分かった。ヒストン脱アセチル化酵素HDAC2とK-ras、HDAC2の下流分子であるAurora Aキナーゼによる膵管癌細胞における一次繊毛抑制の分子メカニズムが明らかになりつつ有るため。27年度が最終年度であるため、記入しない。HDAC2, K-ras, Aurora Aによる膵管癌細胞における一次繊毛抑制機構を詳細に解析する。また、それぞれの分子の下流タンパク質を探索する。さらに、一次繊毛を形成させた膵管癌細胞の表現型を評価する。27年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PUBLICLY-26112712 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-26112712 |
類洞再生を制御するシグナル分子の解明及び血管内皮前駆細胞を用いた肝再生促進の試み | 再生肝では主に増殖した肝細胞からVEGFの産生がおこり、類洞内皮細胞膜上のレセプターに作用し、類洞内皮細胞の増殖を誘導、それにより増殖肝細胞の群塊のなかに類洞内皮細胞が侵入、正常な肝細胞と類洞の関係が回復する。さらに、肝再生後期に星細胞からAng-1の産生が亢進し、類洞の安定化、その後、さらにVEGF非存在下のAng-2の発現により、アポトーシスが誘導され、不要な血管の退縮がおき、再生肝組織での類洞リモデリングが完成すると考えられた。再生肝では主に増殖した肝細胞からVEGFの産生がおこり、類洞内皮細胞膜上のレセプターに作用し、類洞内皮細胞の増殖を誘導、それにより増殖肝細胞の群塊のなかに類洞内皮細胞が侵入、正常な肝細胞と類洞の関係が回復する。さらに、肝再生後期に星細胞からAng-1の産生が亢進し、類洞の安定化、その後、さらにVEGF非存在下のAng-2の発現により、アポトーシスが誘導され、不要な血管の退縮がおき、再生肝組織での類洞リモデリングが完成すると考えられた。(1)類洞再生を制御するシグナル分子の解明:ラット70%肝切除モデルを用い、まず、はじめに類洞内皮細胞の再生に必須で唯一の増殖因子とされるVGEF、及びその受容体の発現を再生肝組織においてmRNA、さらに蛋白レベルで経時的に評価した。そしてその実験結果より再生肝では、主に増殖した肝細胞からVEGFの産生がおこり、類洞内皮細胞膜上の発現の亢進したFlt-1, KDR/Flk-1 receptorにparacrineに作用し、肝細胞増殖に遅れて類洞内皮細胞の増殖を誘導し、それにより増殖肝細胞の群塊のなかに類洞内皮細胞が侵入、正常な肝細胞と類洞の関係が回復することが強く示唆された。さらには血管内皮細胞の発芽、成熟、安定をTIE-2受容体を介して調節するAngiopoietin-Tiesystemは、VEGF systemにやや遅れ作用すること、つまり、肝再生後期にIto細胞にて、Ang-1の産生が亢進し、類洞の安定化を導き、さらには、VEGF非存在下のang-2の発現により、アポトーシスが誘導、血管の退縮、類洞のリモデリングが完成することが考えられた。(2)血管内皮前駆細胞を用いた肝再生促進の試み:ラット末梢血中の単核球を比重遠沈法で分離する。この単核球分画に存在するEPCは、Thy-1(CD90)、CD31(PECAM-1)、Flt-1(VEGF-2)を発現するとされるが、まず、CD34の発現した細胞をFACScanにより解析し、EPCと推測される細胞集団を分離中である。(1)類洞再生を制御するシグナル分子の解明:ラット70%肝切除モデルを用い、類洞内皮細胞の再生に必須で唯一の増殖因子とされるVGEF、及びその受容体の発現を再生肝組織においてmRNA、さらに蛋白レベルで経時的に評価した。結果より再生肝では、主に増殖した肝細胞からVEGFの産生がおこり、類洞内皮細胞膜上の発現の亢進したFlt-1,KDR/Flk-1 receptorにparacrineに作用し、肝細胞増殖に遅れて類洞内皮細胞の増殖を誘導し、それにより増殖肝細胞の群塊のなかに類洞内皮細胞が侵入、正常な肝細胞と類洞の関係が回復することが強く示唆され、さらには血管内皮細胞の発芽、成熟、安定をTIE-2受容体を介して調節するAngiopoietin-Tiesystemは、肝再生後期にIto細胞にて、Ang-1の産生が亢進し、類洞の安定化を導き、さらには、VEGF非存在下のang-2の発現により、アポトーシスが誘導、血管の退縮、類洞のリモデリングが完成することが結論づけられた。(2)血管内皮前駆細胞を用いた肝再生促進の試み:ラット末梢血中の単核球を比重遠沈法で分離する。この単核球分画中のCD34の発現した細胞をFACScanにより、分離を試みるているが困難を要し、別なアプローチでの検討も考えている。(1)類洞再生を制御するシグナル分子の解明:ラット70%肝切除モデルを用い、類洞内皮細胞の再生に必須で唯一の増殖因子とされるVGEF、及びその受容体の発現を再生肝組織においてmRNA、さらに蛋白レベルで経時的に評価した。結果より再生肝では、主に増殖した肝細胞からVEGFの産生がおこり、類洞内皮細胞膜上の発現の亢進したF1t-1,KDR/F1k-1 receptorにparacrineに作用し、肝細胞増殖に遅れて類洞内皮細胞の増殖を誘導し、それにより増殖肝細胞の群塊のなかに類洞内皮細胞が侵入、正常な肝細胞と類洞の関係が回復することが強く示唆され、さらには血管内皮細胞の発芽、成熟、安定をTIE-2受容体を介して調節するAngiopoietin-Tiesystemは、肝再生後期にIto細胞にて、Ang-1の産生が亢進し、類洞の安定化を導き、さらには、VEGF非存在下のang-2の発現により、アポトーシスが誘導、血管の退縮、類洞のリモデリングが完成することが結論づけられた。 | KAKENHI-PROJECT-21591744 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21591744 |
類洞再生を制御するシグナル分子の解明及び血管内皮前駆細胞を用いた肝再生促進の試み | 閉塞性ラット胆管結紮(BDL)モデルを用いた実験の結果よ、閉塞性黄疸時には、HSCsの数の増加と活性化に伴い、繊維化/増殖抑制因子としてのTGF-β1が強発現しており、また肝組織中のHGFもすでに誘導さおり、肝切除後には活性化HSCsからのHGFの産生低下がおこっており、TGF-β1の発現の亢進と相まって肝再生は抑制・遅延される状態にあることが強く示唆された。(2)血管内皮前駆細胞を用いた肝再生促進の試み:ラット末梢血中の単核球を比重遠沈法で分離する。この単核球分画中のCD34の発現した細胞をFACScanにより、分離を試みているが収量とviabilityなどの問題があり、困難を要している。 | KAKENHI-PROJECT-21591744 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21591744 |
包括的リハビリテーションの冠動脈粥腫親展抑制に関する研究 | 本研究は心臓リハビリテーションによる冠動脈CT造影上のプラークの量・質的変化を検討した前向き研究である。2016年8月から2017年12月に冠動脈硬化症の診断で冠動脈CTを施行した12名(男性10名、平均年齢64±9歳)を登録した。心肺運動負荷試験より3.6メッツの有酸素運動を指示し、日常活動度は9633±3847歩/日であった。1年後冠動脈CTを実施し、プラークの解析が可能であった1例(標的血管は左前下行枝)では、Labeling methodを用いたplaque解析の結果、プラーク体積、脂質成分ともに減少を認め、量的にも質的にも改善を認めた。CTによるプラーク質量解析も可能であった。体軸方向に多数の検出器列を有する多列CT(multidetector CT; MDCT)が開発され、心臓、特に冠動脈領域でのCTは、低侵襲で冠動脈を評価できる方法として近年臨床の場において広く普及している。2008年に登場した320列MDCTは、心臓全体を1回のスキャンでとらえることができ、従来の64列MDCTと比較して撮影時間の短縮、被ばく量の低減が可能になった。我々は、当院で2014年10月1日から2015年4月30日の間に320列MDCTを用いて冠動脈CT検査を施行した症例のうち1心拍での撮影が可能であった209例を対象とし、低電圧撮像、逐次近似応用再構成技術に加え、脈拍数に応じて再構成法を選択することで従来よりも低被曝かつ正確な診断が可能かどうか検討した。その結果、全例で良好な画質を得ることができた。また、実効線量は従来の再構成法で2.0±0.7mSvであったのに比較して、このたび試みた再構成法(フル再構成法)では0.8±0.3mSvと有意に低被ばくでの撮影が可能であった。320列MDCTを用いて撮影法や再構成法を症例ごとに検討することで、従来よりも低被ばくでかつ正確な診断が可能な画像を撮影することができた。今年度は320列MDCTの低侵襲で正確な診断が可能であることを確認した。本研究は2016年4月当院での病院倫理委員会で承認を得た。来年度より実際の被験者のエントリーを開始する予定である。平成27年3月病院倫理委員会にて研究実施の承認を得た。平成29年1月までに60症例を登録する予定である。我々は冠動脈のプラーク量、プラーク性状をより客観的、定量的に評価できるLabeling methodを用いたplaque解析softを開発し、異なる管電圧間でも同等にプラーク性状が評価可能かどうか検討した。現在実際の被験者のエントリーを開始している。急性冠症候群3例、冠動脈硬化症20例を対象として現在経過観察中。目標症例数達成までさらに登録を促進していきたい。本研究は心臓リハビリテーションによって冠動脈CT造影上のプラークの質がどのように変化するかを検討するものである。我々は既に冠動脈のプラーク量、プラーク性状をより客観的、定量的に評価できるLabeling methodを用いたplaque解析softwareを開発しているが、本年度はその技法を用いて、プラーク成分面積を解析した。12名が研究登録した。男性10名、平均年齢は64±9歳、冠動脈硬化症の病型に関しては、急性冠症候群が2例、労作性狭心症が3名、冠動脈硬化症が6名、無症候性心筋虚血が1例であった。標的血管は左前下行枝が8例、左回旋枝が2例、右冠状動脈が2例であった。冠危険因子は高血圧症が7名、糖尿病が3例、脂質異常症が9名、喫煙が2名であった。ベースラインの脂質データは、TG値164±125mg/dl、HDL-C値52±8mg/dl、LDL-C値105±42mg/dlで、空腹時血糖値は104±15mg/dl、HbA1c値は6.4±1.4%であった。運動耐容能に関しては、Peak VO2 20.6±3.9ml/kg/minであり、心肺運動負荷試験より求めた嫌気性代謝閾値(12.8±2.5ml/kg/min)より、約3.6メッツの有酸素運動を指示した。運動実施状況として日常活動度は、9633±3847歩/日であった。1年後フォロー冠動脈CTを2名実施した。プラークの解析が可能であった1例の結果を提示する。標的血管は左前下行枝であり、Labeling methodを用いたplaque解析では冠動脈プラーク体積は871mm3→644mm3、脂質成分は13.5mm3(1.5%) →8.2mm3(1.2%)と、量的にも質的にも改善を認めており、プラークの質の評価も可能であった。今後は残りの症例の1年後の冠動脈CTを解析し、介入の効果を検討していく予定である。本研究は心臓リハビリテーションによる冠動脈CT造影上のプラークの量・質的変化を検討した前向き研究である。2016年8月から2017年12月に冠動脈硬化症の診断で冠動脈CTを施行した12名(男性10名、平均年齢64±9歳)を登録した。 | KAKENHI-PROJECT-15K09128 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K09128 |
包括的リハビリテーションの冠動脈粥腫親展抑制に関する研究 | 心肺運動負荷試験より3.6メッツの有酸素運動を指示し、日常活動度は9633±3847歩/日であった。1年後冠動脈CTを実施し、プラークの解析が可能であった1例(標的血管は左前下行枝)では、Labeling methodを用いたplaque解析の結果、プラーク体積、脂質成分ともに減少を認め、量的にも質的にも改善を認めた。CTによるプラーク質量解析も可能であった。前後320列冠動脈CTのコストを科研費で賄い、より患者さんが研究参加に対して負担がないように検討した。急性冠症候群以外の虚血性心疾患にも対象を拡大することを検討している。動脈硬化症本研究は、心臓リハビリテーションの動脈硬化への影響を冠動脈CTを用いて観察するものである。患者のリクルートに時間がかかり上記金額を次年度へ繰り越したものです。本研究は、心臓リハビリテーションの動脈硬化への影響を冠動脈CTを用いて観察するものである。患者のリクルートに時間がかかり上記金額を次年度へ繰り越した。CT検査は患者負担無しで行うため、CT検査費用を執行予定である。CT検査は患者負担無しで行うため、CT検査費用を執行予定である。 | KAKENHI-PROJECT-15K09128 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K09128 |
着座姿勢の感情推定モデルを用いた2者間感情伝達評価方法の構築 | 非言語コミュニケーションにおける身体の着座姿勢に焦点をあて、日本人における着座姿勢に対して日本人の感情判断の実験を行い、「覚醒度」、「快適度」、「支配度」の感情判断因子を抽出した。また、圧力センサや加速度センサを用いて、因子と身体部位およびセンサ値との関係を分析した結果、感情判断は上体および首の角度、脚および腕の状態、臀部の位置と関係することがわかり、センサを用いた他者による実時間感情判断推定システムを構築し、評価を行った。また、同様な実験を英国人に行ったところ、「覚醒度」、「快適度」の感情判断因子を抽出した。よって、同じ着座姿勢でも文化的な背景が異なると感情判断が異なることが示唆された。非言語コミュニケーションにおける身体の着座姿勢に焦点をあて、日本人における着座姿勢に対して日本人の感情判断の実験を行い、「覚醒度」、「快適度」、「支配度」の感情判断因子を抽出した。また、圧力センサや加速度センサを用いて、因子と身体部位およびセンサ値との関係を分析した結果、感情判断は上体および首の角度、脚および腕の状態、臀部の位置と関係することがわかり、センサを用いた他者による実時間感情判断推定システムを構築し、評価を行った。また、同様な実験を英国人に行ったところ、「覚醒度」、「快適度」の感情判断因子を抽出した。よって、同じ着座姿勢でも文化的な背景が異なると感情判断が異なることが示唆された。建築計画分野の先行研究では着座姿勢を16種類に分類した。それらの着座姿勢に頭部および腕部の状態が異なる着座姿勢サンプルを加え、顔の表情と比較として着座姿勢で表出される感情の構造を探った。また、表出される感情を測定するために、足下、椅子の座面、背もたれに計12個の圧力センサーを装備した、実時間データ無線通信可能な着座姿勢測定装置を開発した。平成22年度は、24姿勢を3名のアクターに表現してもらい、計72着座姿勢サンプル、16感情語、日本人30名の被験者によって心理実験を行った。また、3名のアクターの各着座姿勢の圧力センサー値も同時に記録した。因子分析を用いて被験者全員の各感情語の平均値を分析した結果、「覚醒度」、「快適度」、「防御度」の3心理要因が抽出された。各心理要因と物理要因の関係を分析した結果、「覚醒度」と身体上部の角度と関係があることが判明し、着座姿勢測定装置の圧力センサーで推定可能であることが分かった。「快適度」、「防御度」は、身体本体より、身体部分としての脚部、腕部、頭部の状態に関係があることが分かり、他のセンサーと組み合わせることによって推定可能であることが示唆された。今後は、着座姿勢測定装置と他のセンサーとを組み合わせることにより、「覚醒度」、「快適度」、「防御度」の3心理要因を推定可能な実時間感情推定システムを構築する。また、椅子は座り心地を考慮していないので座り心地のよい着座姿勢測定装置を開発する。前年度の分析結果から、他者が側面から見た着座姿勢の感情構造として、「覚醒度」、「快適度」、「防御度」の3心理要因が抽出された。「覚醒度」と身体上部の角度とに関係があることから、足下、椅子の座面、背もたれに計12個の圧力センサーを装備した着座姿勢測定装置によるセンサー値と「覚醒度」と関係を見つけ、圧力センサーで「覚醒度」が推定可能であることが分かった。「快適度」、「防御度」は、身体本体より、身体部分としての脚部、腕部、頭部の状態に関係があることが分かったので、本年度は、新たに以下の項目について研究を行った。1.「快適度」、「防御度」を推定するために、腕部、頭部の位置センサー値と加速度センサー値を計測し、各種センサー値との関係を分析2.見え方の相違をみるために、側面と正面から見た着座姿勢の感情構造比較分析3.座り心地を考慮したソファーによる「覚醒度」の実時間推定システムの構築以上の3点についての結果として、1.加速度センサーを腕部と頭部に装着すると70%前後の精度で推定が可能になった。ただ、非接触ではないので、今後の課題である。一方、位置センサーは60%前後の精度で、加速度センサーより精度は少し落ちた。両方のセンサー値を利用すれば、「快適度」、「防御度」の精度が向上すると考えられる。今後の課題とする。2.側面と正面から見た着座姿勢の感情構造の相違はなかった。よって、着座姿勢の見え方によらず、感情構造は変化しないことがわかった。3.ソファーにしたことによって、一部のセンサー精度が落ちることがわかった。その影響で「覚醒度」の推定モデルの精度が落ちたが、「覚醒度」の実時間推定システムは完成した。非言語で測定も表情より容易な身体の着座姿勢に焦点をあて、他者による感情判断の構造を分析・モデル化した。日本人による着座姿勢に対して、20代の日本人観察者28名と20代の英国人観察者21名による感情判断の実験を行い、相違点を分析した。その結果、日本人は「覚醒度」、「快適度」、「支配度」という3種類の感情判断因子、英国人は「覚醒度」、「快適度」の2種類の感情判断因子を抽出した。よって、顔の表情や立位姿勢の感情判断の研究でも抽出された「覚醒度」、「快適度」については、着座姿勢でも同様な感情構造があることが分かった。 | KAKENHI-PROJECT-22500190 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22500190 |
着座姿勢の感情推定モデルを用いた2者間感情伝達評価方法の構築 | 一方、日本人観察者はパーソナルスペースに関連する「支配度」判断を行っている一方、英国人観察者は、そのような感情判断をしていないことが分かった。よって、同じ着座姿勢でも、文化的な背景により感情判断が異なることが示唆され、感情のモデル化において注意が必要であることが分かった。また、圧力センサや加速度センサを用いて、因子と身体部位およびセンサ値との関係を分析した結果、感情判断となる身体状態は、「覚醒度」は主に上体および首の角度、腕の状態、「快適度」は主に脚および首の角度、腕の状態、「支配度」は主に腕の状態および臀部の位置、脚組、首の角度と関係することが示唆された。センサを用いた他者による実時間感情判断推定システムを構築した結果、「驚いた」、「喜んだ」、「興奮した」などの「覚醒度」の高い感情語の精度が80%の正答率となり、「悩んだ」、「悲しんだ」などの「快適度」が低い感情語、および、「悩んだ」、「悲しんだ」などの受動的な「支配度」は正答率60、70%となった。その他の感情語は推定が困難であった。ただ、正答率の精度が劣る感情語は、感情判断に個人差があることが分かり、観察者と評価者を同一人物にすれば正答率が上がると考えられるが、一般化が今後の課題となった。9で述べた通り、着座姿勢の分析項目が増えたため、顔の表情と着座姿勢との相互作用による感情分析が実施されていないため、達成度はやや遅れている。24年度が最終年度であるため、記入しない。分析項目が計画より増えたため、顔の表情と着座姿勢との相互作用による感情分析より、重要だと考えられる下記の項目を重点的に行う。1.着座姿勢の「覚醒度」、「快適度」、「防御度」の実時間推定システムの構築2.2者間の感情伝達のためのシステム構築および分析・評価24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22500190 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22500190 |
体性感覚誘発電位(SEP)を用いた歯科用局所麻酔薬投与の基礎および臨床的研究 | 《実験方法》本研究の趣旨を説明し同意の得られた、年齢18歳から24歳までの健康成人12名を対象とした。使用局所麻酔薬として、歯科臨床で汎用される(1)1/8万エピネフリン含有2%リドカイン(以下EL-1/8)、(2)1/20万エピネフリン含有2%リドカイン(以下EL-1/20)、(3)0.03%フェリプレッシン含有3%プロピトカイン(以下EP)の3種類を使用した。局所麻酔薬は上顎中切歯歯肉頬移行部より0.5mlを22G針を用い傍骨膜注射法で注入した。刺激方法は上顎中切歯に円盤電極を装着し0.1ms単発電気刺激を1回/1sec与えた。測定は脳の内的活動や心理過程に関連して変動するSEPの後期成分のうち約150msの陰性波をN1、約250msの陽性波をP2とし、N1-P2の振幅をA成分として測定し、痛み感覚の客観的評価とした。《結果》SEPのA成分は、全局所麻酔薬群で麻酔前に比べ局所麻酔注入2分後には減少し、5分後には3群でA成分の消失がみられた。EL-1/8およびEL-1/20では60分後でもA成分は消失していた。しかし、FPは60分後にはA成分が回復し始めた。各群の局所麻酔薬注入前のA成分の値を100としたA成分の経時的変化は、EL-1/8の各時間の値を対照とした場合、EL-1/20では局所麻酔注入後100分後まで有意な差はみられなかった。しかしFPでは注入40分後から85分後まで有意な差がみられた。(p<0.05)。このことから、EL-1/8はFPと比較し有意に麻酔効果及び効果時間が延長するが、EL-1/20との間には麻酔効果および効果時間に有意の差がみられないものと思われた。《実験方法》本研究の趣旨を説明し同意の得られた、年齢18歳から24歳までの健康成人12名を対象とした。使用局所麻酔薬として、歯科臨床で汎用される(1)1/8万エピネフリン含有2%リドカイン(以下EL-1/8)、(2)1/20万エピネフリン含有2%リドカイン(以下EL-1/20)、(3)0.03%フェリプレッシン含有3%プロピトカイン(以下EP)の3種類を使用した。局所麻酔薬は上顎中切歯歯肉頬移行部より0.5mlを22G針を用い傍骨膜注射法で注入した。刺激方法は上顎中切歯に円盤電極を装着し0.1ms単発電気刺激を1回/1sec与えた。測定は脳の内的活動や心理過程に関連して変動するSEPの後期成分のうち約150msの陰性波をN1、約250msの陽性波をP2とし、N1-P2の振幅をA成分として測定し、痛み感覚の客観的評価とした。《結果》SEPのA成分は、全局所麻酔薬群で麻酔前に比べ局所麻酔注入2分後には減少し、5分後には3群でA成分の消失がみられた。EL-1/8およびEL-1/20では60分後でもA成分は消失していた。しかし、FPは60分後にはA成分が回復し始めた。各群の局所麻酔薬注入前のA成分の値を100としたA成分の経時的変化は、EL-1/8の各時間の値を対照とした場合、EL-1/20では局所麻酔注入後100分後まで有意な差はみられなかった。しかしFPでは注入40分後から85分後まで有意な差がみられた。(p<0.05)。このことから、EL-1/8はFPと比較し有意に麻酔効果及び効果時間が延長するが、EL-1/20との間には麻酔効果および効果時間に有意の差がみられないものと思われた。 | KAKENHI-PROJECT-05857234 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05857234 |
アストログリアのドパミンキノンセンサー分子賦活による新規パーキンソン病治療戦略 | アストログリアでのグルタチオンおよびメタロチオネインの発現誘導およびその放出が,ドパミン神経特異的酸化ストレスであるドパミンキノンによるドパミン神経障害に対する抗酸化機構として重要であるであることを明らかにできた.神経・グリア培養系およびパーキンソン病モデルマウスを用いた検討により,セロトニンアゴニストがアストログリアの増殖誘導ならびにドパミンキノンセンサー分子賦活を介したドパミン神経保護作用を併せ持ったパーキンソン病治療薬となり得る可能性を示すことができた.アストログリアでのグルタチオンおよびメタロチオネインの発現誘導およびその放出が,ドパミン神経特異的酸化ストレスであるドパミンキノンによるドパミン神経障害に対する抗酸化機構として重要であるであることを明らかにできた.神経・グリア培養系およびパーキンソン病モデルマウスを用いた検討により,セロトニンアゴニストがアストログリアの増殖誘導ならびにドパミンキノンセンサー分子賦活を介したドパミン神経保護作用を併せ持ったパーキンソン病治療薬となり得る可能性を示すことができた.1.ドパミンキノン神経障害時のアストログリア抗酸化機構の変化:中脳初代培養神経細胞にドパミン(DA)を添加し,神経細胞の細胞生存率,DAキノン生成の指標としてのキノプロテイン(キノン結合タンパク:QP)の測定を行った.さらに,線条体初代培養アストログリアにDA添加し,グルタチオン(GSH)量,メタロチオネイン(MT)発現量および転写因子Nrf2の核内発現変化を検討した.中脳初代培養神経細胞へのDA添加により,濃度依存的な細胞生存率の低下とQPの増加を認めた.また,初代培養アストロサイトへのDA添加により,MT,GSHの誘導・合成およびNrf2の核内移行が認められた.中脳初代培養神経細胞をアストログリアと共培養すると,DA神経障害が減弱された.さらに,あらかじめDA処置したアストログリアの培養液を中脳初代培養神経細胞に添加すると,DAによる神経細胞死およびキノン体生成が減弱され,この培養液の神経保護効果は抗MT抗体による中和反応で消失した.したがって,アストログリアでのGSHおよびMTの発現誘導およびその放出が,酸化ストレスによるDA神経障害に対する抗酸化機構として重要であると考えられた.2.片側パーキンソン病モデルマスでのL-DOPA連によるドパミンキノン神経障害時のアストログリア抗酸化機構の変化:マウス線条体への6-OHDA注入による片側パーキンソン病(PD)モデルマウスを作製し,L-DOPA/carbidopa連日投与を行い,最終投与1日後のアストログリアの増殖・活性化,アストログリアの抗酸化機構の変化をMTとGFAP/S100βとの蛍光二重染色により評価した,PDモデルマウスへのL-DOPA連日投与により,障害側線条体のアストログリアが増殖・活性化しており,活性化アストロサイトにおけるMTの発現が著しく亢進していた.本年度の研究により,アストロサイトでのGSHおよびMTの発現誘導およびその放出が,酸化ストレス特にDAキノンによるDA神経障害に対する抗酸化機構として重要であるであることを明らかにできた.1.メタンフェタミン投与によるドパミンキノン神経障害時のアストログリア抗酸化機構の変化:昨年度,アストログリアでのグルタチオン(GSH)およびメタロチオネイン(MT)の発現誘導およびその放出が,酸化ストレスによるドパミン(DA)神経障害に対する抗酸化機構として重要であることを,初代培養神経/アストログリア細胞および片側パーキンソン病(PD)モデルマウスを用いて示したが,同じく線条体でのDA放出を介してドパミンキノン毒性を惹起する覚せい剤メタンフェタミン投与マウスでは,アストログリアの増殖・活性化ならびにMT発現の著しい亢進が線条体において特異的に認められた2.アストログリア増殖誘導によるアストログリアの抗酸化機構の変化とドパミン神経保護効果初代培養線条体アストログリアあるいはアストログリア細胞株C6細胞に,5HT1Aアゴニスト8-OH-DPATおよびbuspironeを添加して,アストログリアの増殖誘導がみられる至適条件を見いだした.また,C6細胞では8-OH-DPAT添加によるアストログリアの増殖は,5HT1AアンタゴニストWAY100635およびS100β抗体添加で抑制され,5HT1Aアゴニストによるアストログリア増殖が5HT1Aレセプターへの作用とそれに続くS100β分泌によるものであることを明らかに出来た正常マウスおよび片側PDモデルマウスに8-OH-DPATを連日投与し,アストログリアが増殖することを明らかにし,その至適濃度を見いだした.さらに,8-OH-DPAT連日投与により線条体のGSH量が増加し,DA神経機能が亢進することを明らかにできたこれらより,5HT1Aアゴニストが,アストログリアの増殖誘導を介したDA神経保護作用を併せ持ったPD治療薬となり得る可能性が示唆された1.ドパミン | KAKENHI-PROJECT-21591082 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21591082 |
アストログリアのドパミンキノンセンサー分子賦活による新規パーキンソン病治療戦略 | キノンによる神経障害時のアストログリア抗酸化機構賦活のメカニズム:昨年度までに,アストログリアでのグルタチオン(GSH)およびメタロチオネイン(MT)の発現誘導およびその放出が,ドパミン(DA)神経特異的酸化ストレスであるDAキノンによるDA神経障害に対する抗酸化機構として重要であることを,初代培養神経/アストログリア細胞および片側パーキンソン病(PD)モデルマウスを用いて示したが,今年度はそれらの抗酸化機構分子の発現誘導のメカニズムについて検討した.DA添加による初代培養アストログリアでのMT発現誘導は,DAトランスポーター阻害剤により抑制されたが,DAアンタゴニストでは影響されなかった、また,GSH合成やMT発現を誘導する転写因子Nrf2の核移行ならびにDNA結合活性の亢進がDA添加により認められ,これもDAトランスポーター阻害剤により抑制された.これにより,過剰DA曝露によりアストログリアはDAトランスポーターを介してDAを取込み,Nrf2の活性化を介して,それにより制御されるGSHやMTといった抗酸化分子の合成・発現を誘導することが明らかになった.2.片側パーキンソン病モデルマウスにおけるアストログリアの増殖誘導ならびに抗酸化機構賦活によるドパミン神経保護効果:昨年度までの基礎検討で,5HT1Aアゴニストの8-OH-DPATが培養アストログリアに対して増殖を誘導し,マウスへの連日投与で線条体におけるアストログリアの増殖誘導が認められたが,そこで得られた至適投与量で正常マウスに連日投与した.8-OH-DPAT連日投与により線条体でのアストログリアの増殖誘導,GSH増加だけでなく,グルタミン酸トランスポーターGLT-1およびMTの発現が誘導された.さらに,6-OHDA線条体注入片側PDモデルマウスに8-OH-DPATを1週間連日投与し,DA神経保護効果について検討した.黒質のチロシン水酸化酵素(TH)陽性DA神経細胞の脱落および腹側線条体のTH,DAトランスポーター陽性DA神経終末の脱落がともに,8-OH-DPAT連日投与により抑制された.また,8-OH-DPAT投与により,アストログリアから分泌され神経保護に働くMTの発現が健常側線条体および障害側腹側線条体において有意に増加していた.これらにより,5HT1Aアゴニストがアストログリアの増殖誘導を介したDA神経保護作用を併せ持ったPD治療薬となり得る可能性を示すことができた. | KAKENHI-PROJECT-21591082 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21591082 |
大気圧下沿面放電二酸化炭素プラズマの触媒反応 | 熱力学的に安定な、地球温暖化物資である二酸化炭素の有効利用(再資源化)を目的に、交流無声放電を用いたプラズマ触媒反応器を試作し、その可能性を追求し、性能の評価を行った。室温、大気圧下、流通系反応装置により、(1)二酸化炭素の直接分解、(2)メタン単独の改質および(3)二酸化炭素とメタンとの反応について検討した。また、CCDカメラを用い、プラズマ領域における励起種を測定し、プラズマ触媒反応機構の解析を行った。本反応器は、上記の3反応において、通常の熱-触媒反応を凌駕する性能を示した。反応(1)においては、二酸化炭素は効率的に一酸化炭素と酸素に分解し、炭素の生成は認められなかった。反応(2)においては、酸化剤不存下で、メタンは選択的にC2炭化水素を生成し、さらなる検討が望まれる。反応(3)において、メタン/二酸化炭素比が1の場合選択的に水素と一酸化炭素を生成するが、この比が増加するとC2炭化水素の生成が、減少すると一酸化炭素の生成が増大した。さらに、発光スペクトルおよび動力学的解析の結果、プラズマ領域で励起された反応分子が触媒電極表面上で生成物に変換される、プラズマ=触媒反応機構が示唆された。これらの成果は数報の論文に纏められ、現在、学術誌に投稿中である。結論として、本プラズマ触媒反応の研究は、その緒についた段階であるが、プラズマ励起による反応速度の増大と、触媒作用による反応選択性の向上という相乗効果を期待できるものと考える。今後は、二酸化炭素に限らず、種々の大気汚染物質の除去等、通常の熱-触媒系では難しい、安定物資の反応におけるプラズマ触媒反応の可能性を追及したい。熱力学的に安定な、地球温暖化物資である二酸化炭素の有効利用(再資源化)を目的に、交流無声放電を用いたプラズマ触媒反応器を試作し、その可能性を追求し、性能の評価を行った。室温、大気圧下、流通系反応装置により、(1)二酸化炭素の直接分解、(2)メタン単独の改質および(3)二酸化炭素とメタンとの反応について検討した。また、CCDカメラを用い、プラズマ領域における励起種を測定し、プラズマ触媒反応機構の解析を行った。本反応器は、上記の3反応において、通常の熱-触媒反応を凌駕する性能を示した。反応(1)においては、二酸化炭素は効率的に一酸化炭素と酸素に分解し、炭素の生成は認められなかった。反応(2)においては、酸化剤不存下で、メタンは選択的にC2炭化水素を生成し、さらなる検討が望まれる。反応(3)において、メタン/二酸化炭素比が1の場合選択的に水素と一酸化炭素を生成するが、この比が増加するとC2炭化水素の生成が、減少すると一酸化炭素の生成が増大した。さらに、発光スペクトルおよび動力学的解析の結果、プラズマ領域で励起された反応分子が触媒電極表面上で生成物に変換される、プラズマ=触媒反応機構が示唆された。これらの成果は数報の論文に纏められ、現在、学術誌に投稿中である。結論として、本プラズマ触媒反応の研究は、その緒についた段階であるが、プラズマ励起による反応速度の増大と、触媒作用による反応選択性の向上という相乗効果を期待できるものと考える。今後は、二酸化炭素に限らず、種々の大気汚染物質の除去等、通常の熱-触媒系では難しい、安定物資の反応におけるプラズマ触媒反応の可能性を追及したい。 | KAKENHI-PROJECT-09218245 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09218245 |
緊縛性ショックにおけるケミカル・メディエーターの役割 | 緊縛性ショックにおいて生じる腎障害増悪の因子として報告されているケミカル・メディエーターのうち、ペプチドロイコトリエンの腎臓に与える影響を検討した。実験動物としてウサギを用い、緊縛条件は大腿部に乳児用駆血帯を550mmHgで加圧し5時間緊縛直後群(A群)、緊縛解除後3時間放置群(B群)、緊縛解除後6時間放置群(C群)とし、その他負荷を加えない対照群をもうけ検討した。その結果、血清中のCPKは緊縛開放直後から、BUNはB群およびC群で経時的な増加が認められた。血液中のロイコトリエンは、直後では増加が認められなかったが、B群およびC群ではともに増加が認められた。緊縛部位の筋肉中ロイコトリエンは、緊縛開放直後から負荷群すべてに有意に増加が認められた。形態的な変化としてA群では、腎臓の尿細管および糸球体に変化は認められなかった。B群では腎臓の毛細血管の血管内皮細胞で、時に浮腫および空胞変性が認められた。また近位尿細管においても浮腫および空胞変性が時に認められ、対照群と比較してライソゾームの増加が認められた。C群では上記の変化が頻繁に観察されたが、いずれの実験群でも糸球体には変性は認められなかった。免疫組織学的な所見として、マクロファージ、白血球および緊縛部位骨格筋の線維芽細胞のライソゾームでLTC4/D4の反応陽性が、緊縛開放直後から負荷群すべてに認められた。さらにB群およびC群で、腎臓毛細血管の血管内皮細胞表面および尿細管のライソゾームで反応陽性が認められた。今回われわれの緊縛条件で、緊縛開放3時間後から緊縛部位の骨格筋の線維芽細胞および炎症性細胞からLTが産生放出されることが明らかとなった。また緊縛開放3時間後から腎障害の発生が、生化学的(BUN上昇)および形態学的(血管内皮細胞および近位尿細管における浮腫を主体にした障害像)に認められた。これら浮腫を主体とした障害が、緊縛部位の骨格筋および炎症性細胞由来のペプチドロイコトリエンにより発生した可能性が示唆された。緊縛性ショックにおいて生じる腎障害増悪の因子として報告されているケミカル・メディエーターのうち、ペプチドロイコトリエンの腎臓に与える影響を検討した。実験動物としてウサギを用い、緊縛条件は大腿部に乳児用駆血帯を550mmHgで加圧し5時間緊縛直後群(A群)、緊縛解除後3時間放置群(B群)、緊縛解除後6時間放置群(C群)とし、その他負荷を加えない対照群をもうけ検討した。その結果、血清中のCPKは緊縛開放直後から、BUNはB群およびC群で経時的な増加が認められた。血液中のロイコトリエンは、直後では増加が認められなかったが、B群およびC群ではともに増加が認められた。緊縛部位の筋肉中ロイコトリエンは、緊縛開放直後から負荷群すべてに有意に増加が認められた。形態的な変化としてA群では、腎臓の尿細管および糸球体に変化は認められなかった。B群では腎臓の毛細血管の血管内皮細胞で、時に浮腫および空胞変性が認められた。また近位尿細管においても浮腫および空胞変性が時に認められ、対照群と比較してライソゾームの増加が認められた。C群では上記の変化が頻繁に観察されたが、いずれの実験群でも糸球体には変性は認められなかった。免疫組織学的な所見として、マクロファージ、白血球および緊縛部位骨格筋の線維芽細胞のライソゾームでLTC4/D4の反応陽性が、緊縛開放直後から負荷群すべてに認められた。さらにB群およびC群で、腎臓毛細血管の血管内皮細胞表面および尿細管のライソゾームで反応陽性が認められた。今回われわれの緊縛条件で、緊縛開放3時間後から緊縛部位の骨格筋の線維芽細胞および炎症性細胞からLTが産生放出されることが明らかとなった。また緊縛開放3時間後から腎障害の発生が、生化学的(BUN上昇)および形態学的(血管内皮細胞および近位尿細管における浮腫を主体にした障害像)に認められた。これら浮腫を主体とした障害が、緊縛部位の骨格筋および炎症性細胞由来のペプチドロイコトリエンにより発生した可能性が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-04670366 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04670366 |
網膜神経系のシナプス伝達機構:生理・解剖実験とニューラルネット工学による同時研究 | 本研究の主対象である脊椎動物網膜は発生学的に脳の一部であり、昔から高次神経系研究の格好の材料となっている。視細胞および2次ニューロンである水平細胞が係わる外網膜神経回路について伝達物質受容やシナプス修飾の分子機構、さらに、これらが明・暗順応やS/N環境に依存して受容野や分光特性へ与える可塑的制御の仕組みを生理/薬理実験および免疫学的手法を含む形態学的方法に基づいて究明した。また、水平細胞における視覚信号処理に密接に関係する細胞内Caイオン濃度の調節機構についても多くのことが解明された。さらに、水平細胞以外の網膜ニューロン、特に双極細胞およびアマクリン細胞についても、輪郭協調等の視覚効果や速度検出の問題などに関する実験と理論モデル解析を行った。そして、これらの結果を適当なニューラルネットモデルを用いて計算論的最適化の観点からも評価を行い、成果の一部は新しい環境適応型画像処理装置の開発を目指したビジョンチップの試作という工学的研究に応用された。(1)短波長錐体からH1水平細胞へのシナプス分子機構の解明標記のシナプスの存在は当グループが数年前に発表したもので、これまで、等応答振幅分光入力測定という独自の方法などで、その証拠固めを行うとともに性質の究明にも力を注いできた。成果を総合的にまとめると、(a)符号反転コンダクタンス減少型、(b)2-アミノ-4-フォスフォノ酪酸(APB)がアゴニスト、(c)一酸化窒素(NO)で活性化、(d)明順応で活性化、などが列挙される。また、目下の状況証拠からは、cGMPがsecond messengerで、NOS>NO>sGC>cGMPの細胞内分子機構の存在が示唆される。(2)H1水平細胞分光特性の可塑性に関する研究H1水平細胞の分光感度曲線は暗順応時では赤感受性錐体と同様であるが、網膜が明順応すると短波長領域の感度が下がり、その結果、640nmにある最大感度が急峻になり感度曲線が全体的に尖ってくることが判明した。さらに、ドーパミン(DA)とNOは明順応と、また、APBとヘモグロビンは暗順応と同じ効果を与えることが分かった。このことは、DAとNOが明順応信号となって(1)のシナプスを活性化することを示唆する。(3)明・暗順応およびNOによる水平細胞の可塑的形態変化水平細胞の樹状突起先端の指状構造(spinule)は視細胞の軸策終末に潜り込む形で視細胞に対してシナプスを形成する。このspinuleの潜り込みは明順応またはNO供与で深くなることを電子顕微鏡解析で明らかにした。また、これを反映する効果がH2水平細胞の分光応答特性にも現われていることを確認した。(2)のケースと同様にここでもNOが明順応信号として働くことが分かった。(4)水平細胞内Caイオン濃度調節機構の究明網膜より単離した水平細胞を対象に膜電位固定実験およびFura-2法を用いて標記のことを行った。水平細胞内Caイオンの問題は将来的に(1)-(3)の課題と密接に関係してくるものである。視細胞からの伝達物質とされるグルタミン酸の外液投与との関係で、特にNa-Ca交換機構の動態を明らかにしたことが本研究の特長である。Na-Ca交換電流の分離にも成功し、それがrate-theoryモデルの予測に合うことを示した。(5)その他以下のテーマも本国際学術研究に含まれたものであるが、これらについての成果報告は紙面の関係上内容の詳しい説明は省略する。(b)課題(1-3)で関係するAPB受容体がmGluR6であるという仮定のもとに、本受容体の水平細胞層における局在を免疫組織学に探査(結論未定)。(c)多層ニューラルネットワークのエッジ検出学習:SNR適応受容野をもつ隠れ素子の発現とその解析。(d)速度検出学習で隠れ素子に発現する縞々パターン時空間受容野の発現とその解析。(e)多出力NNにおける隠れ素子の最少化と最大共用化の同時達成。「集束抑制と発散促進アルゴリズム」の開発と応用。(f)上記課題(c)の成果および正則化理論などを反映したビジョンチップの設計と試作および性能評価。本研究の主対象である脊椎動物網膜は発生学的に脳の一部であり、昔から高次神経系研究の格好の材料となっている。視細胞および2次ニューロンである水平細胞が係わる外網膜神経回路について伝達物質受容やシナプス修飾の分子機構、さらに、これらが明・暗順応やS/N環境に依存して受容野や分光特性へ与える可塑的制御の仕組みを生理/薬理実験および免疫学的手法を含む形態学的方法に基づいて究明した。また、水平細胞における視覚信号処理に密接に関係する細胞内Caイオン濃度の調節機構についても多くのことが解明された。さらに、水平細胞以外の網膜ニューロン、特に双極細胞およびアマクリン細胞についても、輪郭協調等の視覚効果や速度検出の問題などに関する実験と理論モデル解析を行った。そして、これらの結果を適当なニューラルネットモデルを用いて計算論的最適化の観点からも評価を行い、成果の一部は新しい環境適応型画像処理装置の開発を目指したビジョンチップの試作という工学的研究に応用された。(1)短波長錐体からH1水平細胞へのシナプス分子機構の解明標記のシナプスの存在は当グループが数年前に発表したもので、これまで、等応答振幅分光入力測定という独自の方法などで、その証拠固めを行うとともに性質の究明にも力を注いできた。 | KAKENHI-PROJECT-06044181 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06044181 |
網膜神経系のシナプス伝達機構:生理・解剖実験とニューラルネット工学による同時研究 | 成果を総合的にまとめると、(a)符号反転コンダクタンス減少型、(b)2-アミノ-4-フォスフォノ酪酸(APB)がアゴニスト、(c)一酸化窒素(NO)で活性化、(d)明順応で活性化、などが列挙される。また、目下の状況証拠からは、cGMPがsecond messengerで、NOS>NO>sGC>cGMPの細胞内分子機構の存在が示唆される。(2)H1水平細胞分光特性の可塑性に関する研究H1水平細胞の分光感度曲線は暗順応時では赤感受性錐体と同様であるが、網膜が明順応すると短波長領域の感度が下がり、その結果、640nmにある最大感度が急峻になり感度曲線が全体的に尖ってくることが判明した。さらに、ドーパミン(DA)とNOは明順応と、また、APBとヘモグロビンは暗順応と同じ効果を与えることが分かった。このことは、DAとNOが明順応信号となって(1)のシナプスを活性化することを示唆する。(3)明・暗順応およびNOによる水平細胞の可塑的形態変化水平細胞の樹状突起先端の指状構造(spinule)は視細胞の軸策終末に潜り込む形で視細胞に対してシナプスを形成する。このspinuleの潜り込みは明順応またはNO供与で深くなることを電子顕微鏡解析で明らかにした。また、これを反映する効果がH2水平細胞の分光応答特性にも現われていることを確認した。(2)のケースと同様にここでもNOが明順応信号として働くことが分かった。(4)水平細胞内Caイオン濃度調節機構の究明網膜より単離した水平細胞を対象に膜電位固定実験およびFura-2法を用いて標記のことを行った。水平細胞内Caイオンの問題は将来的に(1)-(3)の課題と密接に関係してくるものである。視細胞からの伝達物質とされるグルタミン酸の外液投与との関係で、特にNa-Ca交換機構の動態を明らかにしたことが本研究の特長である。Na-Ca交換電流の分離にも成功し、それがrate-theoryモデルの予測に合うことを示した。(5)その他以下のテーマも本国際学術研究に含まれたものであるが、これらについての成果報告は紙面の関係上内容の詳しい説明は省略する。(b)課題(1-3)で関係するAPB受容体がmGluR6であるという仮定のもとに、本受容体の水平細胞層における局在を免疫組織学に探査(結論未定)。(c)多層ニューラルネットワークのエッジ検出学習:SNR適応受容野をもつ隠れ素子の発現とその解析。(d)速度検出学習で隠れ素子に発現する縞々パターン時空間受容野の発現とその解析。(e)多出力NNにおける隠れ素子の最少化と最大共用化の同時達成。「集束抑制と発散促進アルゴリズム」の開発と応用。(f)上記課題(c)の成果および正則化理論などを反映したビジョンチップの設計と試作および性能評価。本研究の目的は、網膜という自然が造った階層型神経回路を対象に、伝達物質受容やシナプス修飾の分子機構、さらに、これらが明/暗順応やS/N環境に依存して受容野や分光特性へ与える可塑的制御の仕組みを究明することである。アプローチとしては生理実験や免疫学的手法を含む形態学的方法、およびニューラルネット工学による解析である。また、これらから期待される成果を応用して、環境適応型画像処理装置の開発に向けた工学モデルの構築も目的に含まれる。 | KAKENHI-PROJECT-06044181 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06044181 |
看護教員の看護学実習における教育実践知の構造-省察的実践論を基盤として- | 医療の高度化や価値観の多様化など変化する社会の中で、質の高い看護職の育成が求められ、看護基礎教育の充実は緊急の課題である。本研究の目的は、専門職の実践を説いたSchon,D.Aの省察的実践論(Schon,D.A.1983/2007)を手がかりに、看護学実習において、看護教員が学生に対して日常的に行っている「看護を教える」という極めて状況依存的な教育実践の成り立ちについて焦点をあて、そこで生成される看護教員の教育実践の知の構造を解明することである。本研究では、日々の教育実践の中に内在する看護教員の教育実践の知を言語化し、明らかにするために、参与観察と半構成的インタビューの手法を用いる。医療の高度化や価値観の多様化など変化する社会の中で、質の高い看護職の育成が求められ、看護基礎教育の充実は緊急の課題である。本研究の目的は、専門職の実践を説いたSchon,D.Aの省察的実践論(Schon,D.A.1983/2007)を手がかりに、看護学実習において、看護教員が学生に対して日常的に行っている「看護を教える」という極めて状況依存的な教育実践の成り立ちについて焦点をあて、そこで生成される看護教員の教育実践の知の構造を解明することである。本研究では、日々の教育実践の中に内在する看護教員の教育実践の知を言語化し、明らかにするために、参与観察と半構成的インタビューの手法を用いる。 | KAKENHI-PROJECT-19K19522 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K19522 |
重症敗血症におけるシンバイオティクス療法の確立 | 腸管は、SIRS(全身性炎症反応症候群)病態において標的となりやすく、腸管が炎症反応の進行や感染症の合併に影響するとも考えられている。SIRS患者では便中短鎖脂肪酸や腸内優勢菌が入院後1週目から健常人に比べ低値であり、長期に低値が持続した。敗血症患者において、死亡例では生存例に比べて、便中ClostridiumやBifidobacteriumがより減少していた。重症敗血症患者に対しシンバイオティクスを投与したところ、感染合併症などに有意差はなかったが、腸内細菌叢や短鎖脂肪酸は保たれた。重症患者に対するシンバイオティクス療法は腸内細菌叢を保持しすることができ、これが病態に影響する可能性がある。腸管が侵襲時の重要な標的臓器であることは広く認識されつつあり、経腸栄養の有用性などが集中治療領域で報告されてきている。昨年発表された米国のSepsis Surviving Campaign Guideline2012や集中治療医学会の敗血症治療ガイドラインでも、栄養療法の稿が新設され、その重要性が論じられているが、敗血症における腸管内治療はいまだ確立されておらず、記載はない。しかしながらプロバイオティクス/シンバイオティクス療法は様々な重症疾患で注目されてきており、敗血症に関わる腸内細菌叢の関わりが明らかになれば、新たな腸管内治療の確立につながる。当研究ではsevere sepsis患者をシンバイオティクス投与群と非投与群に分け、腸内細菌叢(乳酸菌、ビフィズス菌などの善玉菌とMRSA、緑膿菌などの悪玉菌)のバランス、短鎖脂肪酸(有機酸)を中心とする腸管内環境の変化を定量的、経日的にとらえ、全身病態との関連性を明らかにし、さらにシンバイオティクス投与が重篤な感染症の合併を減らす適切な腸管内治療になるかどうかを検討するべく、症例の集積を行っている。特にsevere sepsisに対するシンバイオティクス投与効果に関してのRCTは未だなく、当研究でその有効性を示したい。現在のところ、16歳以上の人工呼吸器管理を要するSevere Sepsis患者を22例登録し、シンバイオティクス投与群と非投与群に無作為に割り付け、通常の敗血症治療(抗生剤、ドレナージ、経腸栄養など)を行ったうえで、それぞれの患者の腸内細菌叢、腸内環境を週ごとに評価し、合わせて感染合併症(腸炎、肺炎、菌血症)発生の有無や28日死亡率、ICU死亡率、腸管蠕動不全の発生率、SIRS指標の変化などにつき評価している。症例集積は少数になってしまったが、今年度、解析を行っていきたい。腸管は、SIRS(全身性炎症反応症候群)病態において標的となりやすく、腸管が炎症反応の進行や感染症の合併に影響するとも考えられている。SIRS患者では便中短鎖脂肪酸や腸内優勢菌が入院後1週目から健常人に比べ低値であり、長期に低値が持続した。敗血症患者において、死亡例では生存例に比べて、便中ClostridiumやBifidobacteriumがより減少していた。重症敗血症患者に対しシンバイオティクスを投与したところ、感染合併症などに有意差はなかったが、腸内細菌叢や短鎖脂肪酸は保たれた。重症患者に対するシンバイオティクス療法は腸内細菌叢を保持しすることができ、これが病態に影響する可能性がある。腸管が侵襲時の重要な標的臓器であることは広く認識されつつあり、経腸栄養の有用性などが集中治療領域で報告されてきている。昨年発表された米国のSepsis Surviving Campaign Guideline2012や集中治療医学会の敗血症治療ガイドラインでも、栄養療法の稿が新設され、その重要性が論じられているが、敗血症における腸管内治療はいまだ確立されておらず、記載はない。しかしながらプロバイオティクス/シンバイオティクス療法は様々な重症疾患で注目されてきており、敗血症に関わる腸内細菌叢の関わりが明らかになれば、新たな腸管内治療の確立につながる。具体的には、腸内細菌叢(乳酸菌、ビフィズス菌などの善玉菌とMRSA、緑膿菌などの悪玉菌)のバランス、短鎖脂肪酸(有機酸)を中心とする腸管内環境の変化を定量的、経日的にとらえ、全身病態との関連性を明らかにし、さらにシンバイオティクス投与が重篤な感染症の合併を減らす適切な腸管内治療になるかどうかを検討するべく、症例の集積を行っている。特に重症敗血症に対するシンバイオティクス投与効果に関しての研究はこれまでなく、世界初のRCTとしてその有効性を示したい。現在のところ、当初の予定通り、16歳以上の人工呼吸器管理を要するSevere Sepsis患者をシンバイオティクス投与群と非投与群に無作為に割り付け、通常の敗血症治療(抗生剤、ドレナージ、経腸栄養など)を行ったうえで、それぞれの患者の腸内細菌叢、腸内環境を週ごとに評価し、合わせて感染合併症(腸炎、肺炎、菌血症)発生の有無や28日死亡率、ICU死亡率、腸管蠕動不全の発生率、SIRS指標の変化などにつき評価している。腸管が侵襲時の重要な標的臓器であることは広く認識されつつあり、経腸栄養の有用性などが集中治療領域で報告されてきている。2102年に発表された米国のSepsis Surviving Campaign Guideline2012や集中治療医学会の敗血症治療ガイドラインでも、栄養療法の稿が新設され、その重要性が論じられているが、敗血症における腸管内治療はいまだ確立されておらず、記載はない。 | KAKENHI-PROJECT-24791939 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24791939 |
重症敗血症におけるシンバイオティクス療法の確立 | しかしながらプロバイオティクス/シンバイオティクス療法は様々な重症疾患で注目されてきており、敗血症に関わる腸内細菌叢の関わりが明らかになれば、新たな腸管内治療の確立につながる。具体的には、腸内細菌叢(乳酸菌、ビフィズス菌などの善玉菌とMRSA、緑膿菌などの悪玉菌)のバランス、短鎖脂肪酸(有機酸)を中心とする腸管内環境の変化を定量的、経日的にとらえ、全身病態との関連性を明らかにし、さらにシンバイオティクス投与が重篤な感染症の合併を減らす適切な腸管内治療になるかどうかを検討するべく、症例の集積を行っている。特に重症敗血症に対するシンバイオティクス投与効果に関しての研究はこれまでなく、世界初のRCTとしてその有効性を示すべくRCTを行った。研究計画に基づき、2施設でRCTを進め、投与群11例、非投与群11例を集積し、その結果を2015年1月の米国集中治療医学会にて報告した。この論文については現在執筆中である。救急・集中治療医学、栄養管理当施設ならびに研究協力施設での症例登録が当初想定よりも少なく、少数にとどまってしまっているが、当初の予定通り解析を行う予定である。当施設での症例が一時的ではあるが減少していたことと、多施設研究としているが他施設の体制確立や倫理委員会承認に時間を要したことなどが相まって当初の予定よりやや遅れている。現状ではこれらの問題は解決しつつあり、順調に症例集積を行っている。予定期間で少ないながらも症例は集積したため、感染合併症や予後の結果を解析し、データ解析を行う。また、腸内細菌叢、腸内有機酸の測定結果から、シンバイオティクス療法のこれらに対する効果と、感染合併症発症率や予後との関係など、詳細に、多面的に検討し、理想的な腸内環境と、そのために必要な更なる治療介入など、新たな側面からも検討を加える。多施設共同前向きrandomized control研究として、平成24年度に引き続きデータを蓄積する。症例が集積出来次第、感染合併症や予後の結果を解析し、データ解析を行う。また、腸内細菌叢、腸内有機酸の測定結果から、シンバイオティクス療法のこれらに対する効果と、感染合併症発症率や予後との関係など、詳細に、多面的に検討し、理想的な腸内環境と、そのために必要な更なる治療介入など、新たな側面からも検討を加える。当該年度では症例数の上積みが予定より少なく、物品費が少額となったこと、海外での学会に発表予定であったが、データ不十分であったため、発表を行わなかったことなどから、支出が予定より少なかった。次年度では、これまでに溜まったデータの解析を行い、その結果を国際学会での発表、ならびに論文作成を併せて行うため、これに用いる。初年度から引き続き、投与する食品(生菌製剤)、解析のための測定試薬、測定キットが消耗品として必要である。また、直接の人事交流を介した情報交換、意見交換を行なうための経費や、国内ならびに海外での成果発表および研究打ち合わせを予定している。研究論文作成に向けた文献校閲、専門的知識の提供や、資料データ整理のための費用も必要である。 | KAKENHI-PROJECT-24791939 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24791939 |
高齢刑余者への福祉的支援に関する研究 | 本研究は、高齢受刑者・高齢刑余者への福祉的支援に関する研究の一環として、高齢者分野(施設・居宅・地域総合支援を含む)の矯正施設退所者に対する、社会福祉施設従事者側の受け入れに関する体制や専門性(スキル・体制・研修体系)等の課題への支援方法を明らかにすることを目的とする。65歳以上の高齢者の検挙人員は他の年齢層と比べ高いものの2008年をピークにほぼ横ばいとなり、司法や福祉の連携や研究が進んできた成果だといえる。しかしながら、社会福祉施設従事者側のスキルや体制について、発展的な研究は極めて少ない。本研究は、施設従事者側の受け入れに対する支援方法について示唆を得ることを意図している。本研究は、高齢受刑者・高齢刑余者への福祉的支援に関する研究の一環として、高齢者分野(施設・居宅・地域総合支援を含む)の矯正施設退所者に対する、社会福祉施設従事者側の受け入れに関する体制や専門性(スキル・体制・研修体系)等の課題への支援方法を明らかにすることを目的とする。65歳以上の高齢者の検挙人員は他の年齢層と比べ高いものの2008年をピークにほぼ横ばいとなり、司法や福祉の連携や研究が進んできた成果だといえる。しかしながら、社会福祉施設従事者側のスキルや体制について、発展的な研究は極めて少ない。本研究は、施設従事者側の受け入れに対する支援方法について示唆を得ることを意図している。 | KAKENHI-PROJECT-19K02206 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K02206 |
内診指接着型胎児オキシメーターを用いた新規胎児モニタリング法の開発 | 2016年2月2018年5月まで国内9施設で多施設共同研(UMIN000020738)を行い、基準値設定のため陣痛時胎児組織酸素飽和度(FtO2)、出生直後の新生児組織酸素飽和度(NtO2)を測定した。期間中に分娩第I期、II期のいずれかまたは両方で分娩時の胎児評価をして登録された症例は196例であった。年齢中央値は32歳、経産回数0.45、経腟分娩169例、吸引分娩25例、帝王切開2例、平均出生体重は3010gであった。I期測定は34例、II期測定は183例であった。臍帯動脈血pH7.20未満を異常とすると異常は15例(196例平均pH7.30)であった。臍帯動脈血pH7.20以上を正常例とすると正常は平均FtO2 43.1%(I期)、42.9%(II期)、平均NtO2は49.0%(1分)、52.0%(3分)、52.9%(5分)、異常はFtO2 35.9%(I期)、38.8%(II期)、NtO2 42.6%(1分)、48.5%(3分)、53.0%(5分)で有害事象は見られなかった。CTG異常は登録196例中36例に見られた。FtO2 40%以上を正常とした場合、36例中12例がFtO2 40%以上かつ臍帯動脈血pH7.2以上でありCTG偽陽性であった。新生児ではNtO2 50%未満が継続する場合呼吸障害で新生児入院率が上昇した。CTG異常例のNtO2出生1分後は平均44.7%と低値であった。指接着型オキシメーターは臍帯動脈血pH低値症例で分娩中に胎児酸素飽和度が低値になることを指摘できる可能性があり、新生児呼吸障害等での入院管理の必要性を出生後3分から予測できる可能性があるため分娩の胎児・新生児モニターを補完する医療機器になり得ると考えた。研究目的は、普及している胎児心拍数(FHR)モニタリング法を補完し、胎児の酸素動態、循環動態を評価しうる胎児モニタリング法を開発し、臨床的評価を行うことである。分娩時の臨床研究として内診指接着型胎児オキシメーターにて分娩第II期での胎児脳組織酸素飽和度と胎児脳総ヘモグロビン指数を連続的に測定し、解析を行った。分娩第II期30例の測定を行い、正常新生児は25例で、平均組織酸素飽和度は65.5±8.58%であった。臍帯動脈血pHとの相関係数は0.52で有意に相関していた(N=30, p=0.03)。総ヘモグロビン指数を解析したところ、異常新生児の症例は低値のことがあることが判明した。この内容はJ Perinat Med誌に2015年に採択された。動物実験として指接着型オキシメーターを用いてマウスの前額部から頬部の組織酸素飽和度と総ヘモグロビン指数を測定した。酸素濃度条件を変更して測定し、酸素濃度と組織酸素飽和度、組織酸素飽和度と総ヘモグロビン指数の相関を検討した。測定後、頬部より採血し血液pHを測定し組織酸素飽和度とpHの相関を求めた。酸素濃度条件は16.7-21%としマウスの組織酸素飽和度は33-54%であり相関係数はr=0.86 (N=9, p<0.01)となり有意な相関を認めた。酸素濃度条件を変えて血液採取して測定したpHと組織酸素飽和度の間には有意な正の相関がみられた(N=9, r=0.9, p<0.01)。この内容はJ Biomed Opt誌に2016年に採択された。臨床研究、動物実験から臨床で侵襲的なためにあまり用いられないが有用と考えられている胎児頭皮採血によるアシドーシスの評価が指接着型オキシメーターでの組織酸素飽和度測定で代用でき、新しい分娩時の胎児wellbeing評価となり得ることが考えられた。これらの内容は第38回日本母体胎児医学会のシンポジウムで発表をした。倫理委員会に承認され、多施設共同研究で内診指接着型胎児オキシメーターを用いた新規分娩時胎児モニタリングとして開始している。多施設共同研究が開始でき、UMIN登録を行ったこと。英文論文として2編発表、課題関連の国内主要学会でのシンポジウム発表を行えたこと。内診指接着型胎児オキシメーターは医療機器(トッカーレ)として認可され、小型携帯式のデバイスとして分娩室、新生児室に持ち運び胎児・新生児のモニタリングが可能となった。平成27年度の研究実績は平成28年4月の第68回日本産科婦人科学会学術講演会シンポジウムで発表した。分娩時の胎児組織酸素飽和度を内診によって測定し、分娩第I期、II期、新生児の正常値を決定し、胎児心拍モニタリングとの併用によって胎児評価ができるかどうかを検討する多施設共同研究を倫理委員会で平成28年2月に承認され、UMIN登録をし開始している。中間報告として平成28年2月から9月までの登録されたものを平成29年4月の第69回日本産科婦人科学会で発表した。 | KAKENHI-PROJECT-15K10667 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K10667 |
内診指接着型胎児オキシメーターを用いた新規胎児モニタリング法の開発 | 中間報告では分娩直後の臍帯動脈血pH7.2未満を異常と定義し、分娩時に胎児組織酸素飽和度を測定できた症例数は異常症例7例、正常症例73例であった。正常例の平均出生体重は3103g、異常例は2705g、臍帯動脈血pHは正常例では7.32、異常例では7.15でこれらは正常と異常で有意差がみられた。分娩第I期、II期の平均酸素飽和度は正常例で47.1%、42.8%、異常例で31.4%、34.8%であった。分娩第I期、II期胎児酸素飽和度のカットオフ値をROC曲線で算出するとそれぞれ25.5%、24.7%であった。カットオフ値から胎児オキシメーターの異常、正常を設定し、胎児オキシメーターを併用することで胎児心拍モニタリングの偽陽性率を低下させられるかであるが、多施設共同研究開始前の昨年度の自施設の結果をまとめたところ有意差をもって胎児モニタリングの偽陽性を低下させた。多施設共同研究で症例が蓄積されていること。全国学会のシンポジウムなどで発表できたこと。新しい胎児評価法として、近赤外線センサーを内診指に装着した組織オキシメーター(FFO)を開発した。本機器は動脈血酸素飽和度でなく組織酸素飽和度(StO2)を測定し、局所の血液量を示す総ヘモグロビン指数(T-HbI)を同時に表示する。既に分娩第II期での胎児のStO2は臍帯動脈血pHと関係していることを報告した。多施設共同研究(UMIN試験ID: UMIN000020738)にてFFOは分娩時に胎児評価検査として有用でかつ安全に使用できるかの検討を行っており、解析可能な症例は197例まで蓄積された。2016年2月から2018年1月で、分娩時に胎児心拍数モニタリング(CTG)と同時にFtO2測定を短時間行い、分娩時(I期、II期)の胎児StO2値の基準値設定を目的とした。分娩直後に臍帯動脈血(UmA)のガス分析を行い、pH7.20未満を異常と定義した。出生直後1分、3分、5分の新生児頭部のStO2を測定した。I期、II期のどちらかで測定できたのは171例でUmApH正常は182例(平均pH7.31)、異常は15例(平均pH7.16)であった。正常例、異常例の平均胎児StO2は分娩I期/II期で43.1%/42.9%、35.9%/38.8%であった。新生児StO2の正常例、異常例は1分/3分/5分で49.0%/52.0%/52.9%、42.6%/48.5%/53.0%であった。CTGで高度変動一過性徐脈などの異常例は44例(平均pH7.29)あり、分娩I期/II期のFtO2は42.3%/38.4%、pH異常例9.1%でII期平均胎児StO2は38.4%で新生児StO2は1分と3分の値が低値となった。新生児入院症例では新生児の3分、5分値が50%を超えなかった。絨毛膜羊膜炎症例ではI期、II期、新生児1分が低値となった。本研究で有害事象を認めなかった。平成30年度末日まで症例登録したため最終解析がなされていない。症例登録は終了したため、この1年以内で解析後、論文、最終報告、学会発表をすることができる。2016年2月2018年5月まで国内9施設で多施設共同研(UMIN000020738)を行い、基準値設定のため陣痛時胎児組織酸素飽和度(FtO2)、出生直後の新生児組織酸素飽和度(NtO2)を測定した。期間中に分娩第I期、II期のいずれかまたは両方で分娩時の胎児評価をして登録された症例は196例であった。年齢中央値は32歳、経産回数0.45、経腟分娩169例、吸引分娩25例、帝王切開2例、平均出生体重は3010gであった。I期測定は34例、II期測定は183例であった。臍帯動脈血pH7.20未満を異常とすると異常は15例(196例平均pH7.30)であった。臍帯動脈血pH | KAKENHI-PROJECT-15K10667 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K10667 |
活性酸素の高耐食性不動態被膜生成への有効利用 | 本研究は,一般には流体機械に振動や騒音、致命的損傷を生じる害悪であるキャビテーション気泡の崩壊時に生じる局所的高圧かつ高温環境下を用いて,キャビテーション噴流が活性酸素を生成することを実証し,この活性酸素の高耐食性不動態被膜生成への有効利用を目的とする。本年度は,昨年度の成果を踏まえて以下の研究を実施した。1.活性酸素生成を目的としたキャビテーション噴流の最適化キャビテーション気泡の崩壊衝撃力の計測等により,キャビテーション噴流の最適噴射条件を明らかにした。キャビテーション噴流をシリコンウェーハ裏面に噴射して生成させた酸化積層欠陥により,ゲッタリング効果があることを実証した。さらにキャビテーション噴流により加工して酸化積層欠陥を生じる場合には,X線回折によりシリコンの結晶構造が乱れていること,ならびにWrightエッチングによりエッチピットを生じる、ことを明らかにした。2.活性酸素による耐食性不動態被膜生成の最適化生成した金属酸化物の酸化被膜が生じる光電効果において,ある一定のひずみを付与することにより,短絡電流が増大して,光起電力が増大する事実を明らかにした。なおこのときには開放電圧はほとんどひずみの影響を受けなかった。しかしながら,この一定値以上のひずみを負荷すると,短絡電流ならびに開放電圧ともに低下して,光起電力が著しく低下することが判明した。すなわち,ひずみによる金属酸化物半導体の光起電力向上においては最適値が存在することが判明した。本研究は,一般には流体機械に振動や騒音、致命的損傷を生じる害悪であるキャビテーション気泡の崩壊時に生じる局所的高圧かつ高温環境下を用いて,キャビテーション噴流が活性酸素を生成することを実証し,この活性酸素の高耐食性不動態被膜生成への有効利用を目的とする。本年度は,以下の研究を実施した。1.キャビテーション噴流による活性酸素生成の検証ルミノール試薬は水溶液中に存在する活性酸素と反応して発光することを利用して,ルミノール試薬により活性酸素の検出を図った。実験により,ルミノール試薬は,金属などと反応した場合に発光が著しく阻害される結果が得られた。そこで,アクリル管やアクリル板を用いて,金属材料を使わずに圧力容器ならびに試験部等を製作し,加圧ヘリウムガスやアルゴンガスによりキャビテーション噴流を発生させるキャビテーション噴流試験装置を製作した。上記の装置を用いてキャビテーションを発生させ,ルミノール試薬により活性酸素の検出を試みた。発光の検出には,ノイズを抑制して微弱な光も撮影することができる設備備品費に計上した冷却CCDカメラを使用した。なおキャビテーション噴流の噴射により試料液が発泡してルミネッセンスによる発光の確認が困難であること,また水道水などを用いても発光する場合もあるなど,ルミノール試薬による活性酸素の定量的検証が困難であることが判明した。2.酸化被膜の半導体特性の検証生成した酸化被膜に,キセノンランプを用いた擬似太陽光線を照射し,光起電力効果を確認した。また光起電力効果において応力を負荷した場合の影響について明らかにした。本研究は,一般には流体機械に振動や騒音、致命的損傷を生じる害悪であるキャビテーション気泡の崩壊時に生じる局所的高圧かつ高温環境下を用いて,キャビテーション噴流が活性酸素を生成することを実証し,この活性酸素の高耐食性不動態被膜生成への有効利用を目的とする。本年度は,昨年度の成果を踏まえて以下の研究を実施した。1.活性酸素生成を目的としたキャビテーション噴流の最適化キャビテーション気泡の崩壊衝撃力の計測等により,キャビテーション噴流の最適噴射条件を明らかにした。キャビテーション噴流をシリコンウェーハ裏面に噴射して生成させた酸化積層欠陥により,ゲッタリング効果があることを実証した。さらにキャビテーション噴流により加工して酸化積層欠陥を生じる場合には,X線回折によりシリコンの結晶構造が乱れていること,ならびにWrightエッチングによりエッチピットを生じる、ことを明らかにした。2.活性酸素による耐食性不動態被膜生成の最適化生成した金属酸化物の酸化被膜が生じる光電効果において,ある一定のひずみを付与することにより,短絡電流が増大して,光起電力が増大する事実を明らかにした。なおこのときには開放電圧はほとんどひずみの影響を受けなかった。しかしながら,この一定値以上のひずみを負荷すると,短絡電流ならびに開放電圧ともに低下して,光起電力が著しく低下することが判明した。すなわち,ひずみによる金属酸化物半導体の光起電力向上においては最適値が存在することが判明した。 | KAKENHI-PROJECT-14655266 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14655266 |
占領期日本における接収住宅に関する研究 | 本年度は、以下のような調査研究を進めた。1、占領期の近畿地方におけるディペンデントハウジング(DH)地区の検討を通して、それらの接収過程及び建設実態、返還後の跡地利用の状況を明らかにした。その結果、DH地区の敷地選定において、接収地は占領軍が示した条件に基づいて選定され、居住者の意向が反映されたこと。一方で、京都御苑など接収に反対する日本側の主張が通った事例や、占領軍将校が接収回避を司令部に働きかけていたことも明らかにした。跡地利用には接収以前の施設を復元したものと新規施設を計画したものがあった。前者は地域に根付いた歴史ある施設の復興を地元が熱望し、実際再建された。後者は、科学技術振興政策や近畿観光圏構想など国策を反映した跡地利用に特徴付けられることを明らかにした。2、占領下日本で接収されたホテルを対象に、ホテル接収の形態とその動向を整理し、接収ホテルの全体像の把握を試みた。占領下のホテル接収は、占領政策開始直後から地域ごとに急速に実施され、その対象は外国人向けホテルが殆どであった。接収ホテルは請負制によって運営され、占領軍ごとに指定しホテルの用途や立地により利用方法が異なった。約7年間に渡る接収は、その後のホテル運営の基礎となったこと、などを明らかにした。3、占領期における建設業界の動向について、日本の建設業の会社史から把握した。その結果、接収建築の改修、アメリカ軍を中心としたキャンプ等の新築工事などの受注が、終戦直後の建設業を下支えしたことを明らかにした。この点は、従来明らかにしたDHに関する考察結果を建設業界全体に敷衍しうることを示し、特に重機を使用した施工技術の向上など、本格的な戦後復興の基盤をなしたことを明確にした。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。今期は初年度として、国内各所で史料の所在調査を分担者が各担当地域で実施。角哲は国立国会図書館、北海道立文書館、青森、岩手、秋田の県立図書館で情報収集を行ない、国会図書館ではALLIED GEOGRAPHICAL SECTION SOUTHWEST PACIFIC AREASPECIAL REPORTの北海道(No.104)と宮城(No.114)を閲覧した。当該資料は米軍が終戦までに情報収集したもので、どのような施設が接収されたかを知る上で有効であると評価された。長田城治は南東北地方を対象に各県図書館や公文書館で資料調査し、接収施設・住宅117件を収集。これら事例は行政・交通機関が集中する町中心部で、RC造建物が優先的に接収され、木造和風建築の場合は内部のみ大規模改造を行い洋風化したことを明らかにした。玉田浩之は、西宮市山手の住宅地区を取り上げ、夙川地区を中心に接収状況を検討した。神戸市塩屋「ジェームス山」についても占領軍家族住宅としての接収実態を明らかにした。神戸大学大学院村上しほりは、兵庫県下の接収施設に関して、国会図書館、県立図書館、市文書館での史料調査を行った。神戸大学文書史料室では接収対策渉外委員会による保存書類綴や関連書簡の閲覧より、土大学に置かれた大規模新築接収住宅「六甲ハイツ」に関する情報収集を行った。広島国際大学砂本文彦は、中国四国地方の接収施設数の概要を把握するとともに、1946年より中四国を占領した英連邦軍の占領体制の確認を行った。接収施設名と住所を特定し、山口県に関する県渉外課関連文書を集中閲覧し、接収施設の利用方法や調度に関する詳細な情報を得た。研究代表者大場は、京都・大阪市域の住宅や施設の接収状況を現地調査と史料調査から検討した。その結果、施設接収後の諸施設は当初の用途に関わらず兵舎やホテルなどに大幅に転用活用された事を明らかにした。本年度はアメリカ公文書館(ワシントンDC)で調査し(参加者:大場・砂本・玉田・角・村上)、GHQ関係の国内で入手できない新資料を収集した。並行して分担者による各地域での調査を進めた。大場は全体を統括するとともに、滋賀県大津市内と宮崎市内における住宅や旧日本陸・海軍諸施設の接収状況を検討した。砂本は、米軍、英連邦軍が占領した岡山において関連文書から接収施設の候補先と実際の接収先について概略を把握し、地図上にプロットした。その結果、おもに戦災区域を避けた駐屯地付近にそれは集中していることを明らかにした。その上で、具体的な接収時の交渉経過を明らかにすることで、日米双方の接収先選定に対する考え方の相違を整理した。玉田は神戸文書館にて阪神間地区の接収地図を収集し、神戸市塩屋では接収された外国人住宅の竣工図面を収集した。滋賀県県政資料室では占領期公文書を閲覧し、占領軍家族住宅(DH)の住宅地図面および指令書を収集した。これらの資料をもとに大津におけるDHの建設経緯および用地接収の実態を明らかにした。村上も国立国会図書館憲政資料室で神戸市内の接収動向に関する米公文書を収集した。神戸市文書館所蔵の軍政関係連絡調整地方事務局の報告書より、神戸市内の接収施設に関する交渉経緯を把握した。角は北海道立文書館と札幌市公文書館にて、札幌の接収施設一般とキャンプ・クロフォード(DH)に関する事務書類や写真等の情報を収集リスト化し、位置図を作成した。また国立国会図書館憲政資料室で室蘭等の工場、外交資料館で札幌の接収経過を把握できる公文書を収集した。長田は、南東北地方3県の接収施設・住宅の事例を国立公文書館や国会図書館憲政資料室、各県立図書館などで収集した。 | KAKENHI-PROJECT-26249086 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26249086 |
占領期日本における接収住宅に関する研究 | 特に事例数が多い山形県山形市と米沢市を対象に地図に落とし込んで位置関係を把握し、住宅が接収された家主等へ接収時の様相について聞取りを行った。当初は2016年度から実施予定であったアメリカ公文書館(ワシントンDC)での資料調査を2015年度前倒しで行ったことにより、日本では得られない新資料をメンバー間で共有することができた。とりわけ、同館における写真資料の保管状況を実際に確認することで、研究資料としての価値と可能性の高さを確認できた。この点を含め、同館での現地調査は今年度以後の研究方針を策定する上で大いに有益な調査となった。大場(研究代表):占領期の滋賀県下における占領軍による保養施設や水耕農園設営の実態、また占領期の福岡市域における「米軍ハウス」の実態を明らかにした。砂本(分担者):岡山の接収住宅に関する発表を行うとともに、米国国立公文書館、広島県立公文書館などで文献調査を行った。広島県立公文書館では広島県内の接収住宅の概要調査を行い、保養施設となった宮島ホテルに関する文書を調査した。その他、関連文献の調査を各県図書館・公文書館にて実施した。玉田(分担者):前年度に引き続き米国国立公文書館で占領期の日本各地の写真を収集した。RG111-SC:Army Signal Corp 1941-54に加え、RG80:General Records of the Department of the Navy, 1798-1947の戦中・戦後の写真を収集した。収集写真の整理も開始した。角(分担者):外務省外交資料館で「連合軍による土地建物その他接収及び解除関係」や「連合軍に関する建設関係」を中心に全国の接収状況を把握し得る文書を収集した。また、会社史から建設業界が得た占領軍関連事業の把握を試み、占領軍の持込んだ工作機械の使用により日本企業の施工技術が向上する様相を把握した。長田(分担者):北関東3県の接収施設・住宅について国立公文書館や国会図書館憲政資料室、各県立図書館などから事例を収集し、地域的な特徴を整理した。特に保養施設として接収された栃木県日光市のホテルに注目し、古写真や文献資料、行政文書等から当時の様相を把握し、接収時の利用実態を検討した。村上(分担者):前年度の米国国立公文書館での収集資料を補うため、国立国会図書館憲政資料室で全国的な占領軍部隊配置と接収住宅に関する米公文書収集を実施した。同資料群と前年までの収集資料の整理を通じて、接収住宅の全国分布と部隊配置の変遷の把握、論文投稿を行った。研究代表者と分担者が当初予定していた、近畿地方を始め中国地方、北海道、東北地方において、占領期の土地や建物、住宅に関する接収状況の実態把握を、米国と日本における資料調査と各地の現地調査により進め、予定にほぼ沿った成果を得た。また、27年度に引き続き28年度においても、アメリカ公文書館での調査を代表者と分担者4人に学生2人が加わり、総勢7人体制で実施した。これにより、占領期における占領軍撮影の写真資料を大量に調査し複写するとともに、占領軍の国内全域にわたる配置実態に関する資料調査に成功した。加えて、メリーランド大学プランゲ文庫の調査も実施した。28年度の米国調査は、当初の想定以上の成果を得たと考えている。 | KAKENHI-PROJECT-26249086 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26249086 |
10年間の変遷から考察する住宅移転と移転復興に対する新しい知見の創出 | 本研究は、自然災害後に集団移転復興を余儀なくされた集落の人びとの10年間の生活を調査し、移転後もその場所で居住し続ける要因について明らかにした。結果、移転に伴う関係性の変化を怖がるのではなく、新しい関係を構築したり、弱くなった関係性を紡ぎ直したりする支援が必要であること、移転を実施した人びとの中には、未来を見据えた移転ではなく、過去ばかりと比較しながら生活をしている場合があり、いかにこの状況を把握し思考を未来へ向けるための契機づくりが必要であること、共通目標の設定や心のよりどころの設定など、新しい場所への価値が1つでも示されることが適応の足がかりになることを示した。本研究は、自然災害後に実施される住宅移転を対象とし、移転を余儀なくされた人々がどのように生きる力を回復していくのか、また新しい土地に適応していくのかについて、日常と非日常の連続性の中からその転換点を見出そうとするものである。特に明らかにしたい目標としては、1同じ集落内外における関係性の変化、2「過去」と「未来」のどちらが重んじられた移転だったのか、3新しい「場所」でどのような価値を見出したのかの3点を明らかにすることとしている。これは、いまだに「復興」が定義されない中で被災した人々がどのように被災生活から日常生活に戻っていくのかを長期的に追うものであり、今後の復興支援、特に移転復興における政策に寄与する研究である。2013年度の研究では、スリランカ(西海岸)における追跡調査および中越地震被災地における追跡調査を実施した。スリランカでの調査では、2006年以降継続して実施している質問紙調査に加え、移転地の復興住宅に居住する住民を対象に聞き取り調査を実施した。すでに住宅の所有者に変更が生じているもの、変わらず移転先での生活を継続するものがみられ、所有者の変更にいたった経緯や現在の生活について聞き取っている。この調査は、2006年に開始し現在に至るまで定期的に同じ集落での調査を行っているもので、2007年の第1回調査時の回答と2010年また今回の調査結果との比較、居住者の生活に対する言葉の変化をみている。調査結果を踏まえて、現在2014年に出版予定の図書(英語)Recovery from Indian Ocean Tsunami: Ten years Hourney (Rajib Shaw Edit.)へ投稿中である。また、中越地震の被災地では、集団移転を実施した集落の経過観察および、近隣の被災集落での参与観察を行い、被災前と後での生活の変化を語っていただいた。本研究は、自然災害後に実施される住宅移転を対象とし、移転を余儀なくされた人びとがどのように生きる力を回復していくのか、また新しい土地に適応していくのかについて、日常と非日常の連続性の中からその転換点を見出そうとするものである。当初より、明らかにしたい目標を、1同じ集落内外における関係性の変化、2「過去」と「未来」のどちらが重んじられた移転だったのか、3新しい「場所」でどのような価値を見出したのかの3点について明らかにすることとしてきた。2014年度の研究では、調査対象としてきたスリランカでの移転調査において、これまでの西海岸側の集落状況と比較検討を行うため東海岸(トリンコマリー県)でのアンケート及び聞き取り調査を実施することができた。移転に至った経緯や、移転先および移転元の土地に対する住民のおもい、新しい居住地に対する愛着に関しての項目でデータ収集をおこなっている。その結果、特に東側の地域では移転先において宗教の課題があることが分かっている。移転先の新しい集落では、タミルとムスリム両民族を同じ居住地にしたため、対立関係を生じさせる事態が起こっていた。また、日本国内の移転事例についても検討を行うため、過去の災害で集団移転促進事業を用いた復興事業のうち、集団移転法成立の契機ともなった熊本県天草市における「天草大水害」の被災地(天草市倉岳町)での聞き取り調査も実施することができた。前年度に引き続き、中越地震の被災地である旧川口町(新潟県)での調査も継続することができ、広く集団移転による住民の生活環境の変化について調査を行うことができた。本研究は、自然災害後に集団移転復興を余儀なくされた集落の人びとが10年という期間を経過する中でどのような生活環境の変化をおこない、新しい生活への適応して行ったのかを明らかにするもので、1集落内での関係性の変化、2移転における「過去」と「未来」の比重、3新しい場所での価値の3つの視点から「そこに住み続ける」にいたる過程とその意味について検討するものであった。本年度は、わが国における災害後の集団移転法の契機ともなった天草大水害の被災地復興を整理し、聞き取り調査や文献調査を実施して、昭和47年当時に度のような視点から法整備を実施し、今現在どのような生活を人びとが送っているのかを明らかにした。その結果、当時の災害後の集団移転法は天草という離島に住む人々が、できる限り地元に住むことができるように考えられた「制度を災害にあわせた」政策であったことが分かった。しかし現在に至るまで大幅な見直しがされる事はなく、近年の自然災害の被害に見合った制度とは言い難い政策になっていることも指摘できる。また、スリランカの集団移転の事例では、昨年度に引き続き継続調査を実施し、移転から10年が経過した集落でグループディスカッションをおこなった。移転によって得られたものや集落の課題について、移転復興経験者と災害後に引越しをしてきた住民15名が参加し、集団移転とその後の生活について話し合う場を設定、参加者が発表する機会を設けることができた。 | KAKENHI-PROJECT-25870930 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25870930 |
10年間の変遷から考察する住宅移転と移転復興に対する新しい知見の創出 | 移転の課題としては、集落内外の人間関係よりも、自宅の劣化に伴う問題が住民の共通問題として挙げられる結果となり、住処の快適さの継続が生活の基盤になっていることが推測できた。本研究は、自然災害後に集団移転復興を余儀なくされた集落の人びとの10年間の生活を調査し、移転後もその場所で居住し続ける要因について明らかにした。結果、移転に伴う関係性の変化を怖がるのではなく、新しい関係を構築したり、弱くなった関係性を紡ぎ直したりする支援が必要であること、移転を実施した人びとの中には、未来を見据えた移転ではなく、過去ばかりと比較しながら生活をしている場合があり、いかにこの状況を把握し思考を未来へ向けるための契機づくりが必要であること、共通目標の設定や心のよりどころの設定など、新しい場所への価値が1つでも示されることが適応の足がかりになることを示した。2013年度の研究では、所属の変更などにより予定より少し遅れての調査になってしまったが、本年度は計画通りスリランカ東海岸(トリンコマレー県)でのアンケート調査、聞き取り調査の実施に至ることができた。また、国内で実施された防災集団移転促進事業35ケースのうち、集団移転法の成立契機ともなった熊本県天草市における聞き取り調査、グループディスカッションも実施できた。10年来継続している、中越地震の被災地(新潟県旧川口町)での聞き取り調査も継続できており、目的にしていた日本とスリランカでの集団移転による影響に関して、広くデータを収集することができた。また、その研究内容については国際学会での発表や報告論文の投稿として国内外に発信できた。復興政策2013年及び2014年度に研究対象とする地域でのデータ収集を行えたため、2015年度はこれらのデータの比較分析を実施し、当初の目標としていた1同じ集落内外における関係性の変化、2「過去」と「未来」のどちらが重んじられた移転だったのか、3新しい「場所」でどのような価値を見出したのか、の3点についてまとめる。また、アンケート調査による量的データだけではなく、聞き取り調査や観察によって得られた質的データを用い、より被災者・集団移転者の実情に沿った研究報告書の作成と発信を予定している。本年度が最終年度となるため、スリランカにおいてグループディスカッションおよびワークショップを実施し、移転後10年の状況を確認するとともに、研究成果の現地での発信を行う予定にしている。当初予定していたスリランカおよび中越地震の被災地での調査は、ほぼ予定通り進められているが2013年度中に実施予定であった日本国内の防災集団移転促進事業実施地域での定住状況視察については実施が行えなかった。年度内に所属の変更が生じたため、時間的な課題があり継続調査を行ってきているスリランカおよび中越被災地での調査を優先させた結果である。しかし、2014年度に実施できるよう、研究協力者と協議し資料の整理等は実施している。国内で実施された防災集団移転促進事業35ケースのうち、聞き取り調査の対象としたのが集団移転法成立契機である「天草大水害」であったため、所属大学からの距離が近く当初の予定より国内調査にかかる交通費が安価に留まった。本年度は、当初より予定しているスリランカ東海岸での調査を実施予定である。 | KAKENHI-PROJECT-25870930 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25870930 |
アデノウイルスベクターを用いた表皮水疱症に対する間葉系幹細胞遺伝子治療の開発 | 遺伝性皮膚疾患である表皮水疱症に対して、アデノウイルスベクターを利用した遺伝子修復を間葉系幹細胞を標的として試みた。アデノウイルスベクターの感染効率が低かったことから実験計画を一部変更したが、治療対象となる間葉系幹細胞を骨髄から末梢へ動員させるための遺伝子発現変化やシグナル伝達経路について新たな知見を得ることができた。これらの結果は幹細胞誘導因子を用いた再生誘導医療へ応用されることが期待される我々はこれまでに、生体内で組織損傷が起こると細胞内から非ヒストン核タンパクであるHMGB1が放出され、骨髄中のPDGFRα陽性の間葉系幹細胞を損傷部位へ動員させることによって組織修復を促進させるという現象を明らかにした。このことは、HMGB1を新しい「再生誘導医薬」として用いることによって自身の再生機構を利用する生理的な方法で様々な損傷の治療を行うことを可能にする。本研究では難治性遺伝性皮膚疾患である表皮水疱症に対して、HMGB1により骨髄間葉系幹細胞を末梢血中に動員したあと正常なVII型コラーゲン遺伝子を相同組換えを利用して組み込むex vivo遺伝子治療を目指すことを目的とした。前年度は間葉系幹細胞への遺伝子導入が困難であることが分かったことから、今年度は骨髄から間葉系幹細胞が動員されるメカニズムに着目し実験を行った。まず始めに間葉系幹細胞におけるHMGB1によるシグナル伝達について検討するため、マウス骨髄から分離培養した間葉系幹細胞にHMGB1またはその細胞遊走活性を持つ断片を添加して、経時的にRNAを回収してDNAマイクロアレイ解析を行った。その結果、細胞遊走活性を有する領域の添加では遺伝子発現の変化が完全長のHMGB1と比較すると圧倒的に少ないことが分かった。遺伝子発現量での変化に乏しいことから、次に細胞内タンパクのリン酸化について検討した。間葉系幹細胞に対してHMGB1を添加し、経時的にタンパクを回収し、Phostagを用いてリン酸化タンパクを濃縮した。濃縮したリン酸化タンパクをSDS-PAGEで展開してリン酸化チロシン抗体でウエスタンブロットを行ったところ、明らかなリン酸化チロシンの増加を認めた。このような方法でリン酸化タンパクを同定することによって、今後その上流のシグナル経路が明らかとなり、HMGB1による再生誘導医療へ応用されることが期待される。遺伝性皮膚疾患である表皮水疱症に対して、アデノウイルスベクターを利用した遺伝子修復を間葉系幹細胞を標的として試みた。アデノウイルスベクターの感染効率が低かったことから実験計画を一部変更したが、治療対象となる間葉系幹細胞を骨髄から末梢へ動員させるための遺伝子発現変化やシグナル伝達経路について新たな知見を得ることができた。これらの結果は幹細胞誘導因子を用いた再生誘導医療へ応用されることが期待される我々の研究グループはこれまでに、組織損傷に伴って放出されたHMGB1の血中濃度が上昇することによって骨髄から間葉系幹細胞を損傷部位に動員され組織再生が行われる機構を明らかにした。このことはすなわちHMGB1を用いることで、生体内に備わっている再生能力を調節することが可能となり、これまでに行われてきた再生医療とは全く異なる「再生誘導治療」の実現への道が開けたと言える。今回の研究の目的は、遺伝性皮膚疾患である表皮水疱症においてHMGB1を投与することで末梢血中に間葉系幹細胞を大量に動員し、採血によって一度体外に取り出して相同組換えによって遺伝子修復をした後に再度生体内に戻すという再生誘導+遺伝子治療を実現するための基礎研究である。本研究では相同組換えのための遺伝子導入法として、ES細胞での実績がある、埼玉医科大学の三谷幸之助教授らが開発した改変型アデノウイルスベクターを利用することにした。まず初めに間葉系幹細胞に対するアデノウイルスの感染効率を検討するため、LacZ発現アデノウイルスベクターを株化されたマウス間葉系幹細胞に感染させたところ、感染効率が非常に低いことが分かった。アデノウイルスの感染は細胞表面上のCAR (coxsackievirus and adenovirus receptor)との結合が必要であるため、マウス間葉系幹細胞でのCARの発現をRT-PCRで検討した。その結果CARの発現は非常に低いことが分かり、このことがアデノウイルスベクターが間葉系幹細胞に感染しにくい原因と考えられた。一方、ターゲッティングベクター用のコンストラクトの作製も同時進行で行っており、BACクローンから7型コラーゲン遺伝子領域を含む約40kbpをクローニングし、ポジティブセレクション用のhygromycin耐性遺伝子を含むカセットが導入されたことを確認した。平成23年度の研究計画として、7型コラーゲンノックアウトマウスの間葉系幹細胞に対して相同組換えを起こさせるターゲッティングベクターをBACクローンから構築することと、アデノウイルスベクターが間葉系幹細胞にどの程度感染することが可能かを検討することであった。まずターゲッティングベクター構築においては、7型コラーゲン遺伝子領域をBACクローンからクローニングしてセレクションマーカーを挿入するところまで完成した。その一方で、上述の通り間葉系幹細胞ではCARの発現が少ないためにアデノウイルスの感染効率が非常に低いことが判明し、遺伝子導入法としてアデノウイルスベクター以外の方法を再検討する必要が生じたために達成度は「やや遅れている」とした。アデノウイルスベクターの間葉系幹細胞への感染効率が低いことが判明したため実験計画の遅れが生じ、結果的に消耗品を予定通り購入して使用しなかったため、平成23年度研究費の一部を次年度へ繰り越す状況となった。 | KAKENHI-PROJECT-23791267 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23791267 |
アデノウイルスベクターを用いた表皮水疱症に対する間葉系幹細胞遺伝子治療の開発 | しかし、近年アデノウイルスベクターはそのファイバータンパク質を改変することによって細胞指向性を標的細胞に合わせることができつつあることから、CAR低発現細胞にも使用可能な改変型アデノウイルスベクターが開発されることが期待され、将来的にそれを用いることができれば本研究の目的は実現できるようになると予想される。具体的な今後の研究としては遺伝子導入方法を再検討する必要があるものの、本研究の概念が正しいことを証明することを優先し、作製したターゲッティングベクターによって7型コラーゲンノックアウトマウスの間葉系幹細胞で相同組換えが起こり、7型コラーゲンを発現させることができるかを検討する。遺伝子導入方法としては汎用されているエレクトロポレーション法を用いることとする。以下、平成24年度研究計画に基づき、相同組換え効率の検討や7型コラーゲンのウエスタンブロットやRT-PCRを行い、最終的には遺伝子修復を行った間葉系幹細胞で7型コラーゲンノックアウトマウスの胎児治療を行い、治療効果を検討することを目標とする。平成24年度研究計画に基づき、研究経費は全て消耗品に用いる。一般的な遺伝子工学・分子生物学的実験に用いる試薬類やキットの他、培養細胞の研究に用いる培地・血清・プラスチック製品の購入に使用する。間葉系幹細胞を取り出したり胎児治療のために用いるマウスも購入する。 | KAKENHI-PROJECT-23791267 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23791267 |
S100A7が象牙質-歯髄複合体創傷治癒に与える影響の解明 | 本研究は、先行研究にて歯髄創傷治癒に関与するタンパクとして同定されたS100A7の歯髄創傷治癒過程における生物学的機能の解明を念頭に、傷害後の歯髄におけるS100A7および関連タンパクの時間空間的局在パターンをを詳細に検討することで、生物学的覆髄剤の開発につなげることを目的としている。研究計画としてはi)In vivoの歯髄傷害モデルを用い、象牙質-歯髄複合体創傷治過程におけるとS100A7および関連タンパクの時間空間的局在パターンの解析ii) siRNAを応用したラット臼歯器官培養モデルを開発し、S100A7が歯髄幹細胞の象牙芽細胞様細胞分化、修復象牙質形成に与える影響を解析iii)レーザーマイクロダイセクション法とLC-MS/MS法を用いた定量的プロテオーム解析をおこなうことを計画した。成果として、歯髄傷害モデルにおいて、破綻した象牙芽細胞層に相当する部位の象牙質の脱灰と、同部歯髄組織中にS100A7の発現を認めた。S100A7の発現が強くなるに従い、受容体であるRAGE陽性細胞の集積が認められ、ピークである歯髄傷害3日後には間葉系幹細胞マーカーであるCD146陽性細胞の遊走も認められ、その一部はRAGEも発現していることが確認された。7日後にはS100A7は消退し、反応象牙質周囲にCD146およびRAGE陽性細胞が認められた。この研究結果から象牙質から放出されたS100A7がCD146・RAGE共陽性である歯髄幹細胞の走化性因子として働くことで歯髄創傷治癒の一端を担っていることが示唆された。過去の報告では歯髄幹細胞をRAGEリガンドで刺激することで石灰化を促進したという報告もあり、生物学的な覆髄剤に応用できるタンパクである可能性がある。実験ii), iii)をおこなうために器官培養モデルの開発に着手したが、安定した培養はまだ実現しておらず、条件設定を試行錯誤中である。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。象牙質-歯髄複合体の創傷治癒メカニズムの解明とより安全かつ効率の良い覆髄剤の開発を念頭に、傷害を受けた歯髄における創傷治癒を促進する分子として同定されたProtein S100-A7 (S100A7)の歯髄創傷治癒過程における生物学的機能の解明を目的とした研究を実施し、以下の成果が得られた。1. 5週齢の雄性Wistar系ラットを用い、全身麻酔下で上顎第一臼歯の歯冠近心面に規格窩洞形成器にて象牙質の半分の深度に至る実験的窩洞を形成。窩洞形成後1, 3, 7および14日後の窩洞直下におけるNestin, MMP20, S100A7, CD146とRAGEの時間空間的局在を、免疫組織化学染色により検索した。その結果、窩洞直下の歯髄組織おいてS100A7とRAGEの発現が上昇し、CD146陽性細胞の遊走および第三象牙質形成が確認された。歯髄組織におけるS100A7の局在の報告は過去に無く、歯髄創傷治癒における幹細胞とDAMPsーPRRsシグナルの関与が示唆された。2. 5週齢の雄性Wistar系ラットを用い全身麻酔下で上顎第一臼歯を抜去し、メスを用いてCEJにて切離後、歯冠側を0.4 5mmのポアメンブレン上に静置し、10%FBS含有培地を用い48 well plateにて培養し経時的にHE染色による組織学的観察をおこなった。その結果、象牙芽細胞層の崩壊と再配列を認め、ラット臼歯器官培養モデルが確立した。ラット臼歯を矢状面にて二等分し培養するモデルは過去に報告があるが、歯根膜由来細胞のコンタミネーションの危険性が問題点であった。今回確立したモデルにおいてはCEJより歯冠側のみを使用することでその危険性を排除することに成功した。おおむね順調に進展している本研究は、先行研究にて歯髄創傷治癒に関与するタンパクとして同定されたS100A7の歯髄創傷治癒過程における生物学的機能の解明を念頭に、傷害後の歯髄におけるS100A7および関連タンパクの時間空間的局在パターンをを詳細に検討することで、生物学的覆髄剤の開発につなげることを目的としている。研究計画としてはi)In vivoの歯髄傷害モデルを用い、象牙質-歯髄複合体創傷治過程におけるとS100A7および関連タンパクの時間空間的局在パターンの解析ii) siRNAを応用したラット臼歯器官培養モデルを開発し、S100A7が歯髄幹細胞の象牙芽細胞様細胞分化、修復象牙質形成に与える影響を解析iii)レーザーマイクロダイセクション法とLC-MS/MS法を用いた定量的プロテオーム解析をおこなうことを計画した。成果として、歯髄傷害モデルにおいて、破綻した象牙芽細胞層に相当する部位の象牙質の脱灰と、同部歯髄組織中にS100A7の発現を認めた。S100A7の発現が強くなるに従い、受容体であるRAGE陽性細胞の集積が認められ、ピークである歯髄傷害3日後には間葉系幹細胞マーカーであるCD146陽性細胞の遊走も認められ、その一部はRAGEも発現していることが確認された。 | KAKENHI-PROJECT-17H06848 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H06848 |
S100A7が象牙質-歯髄複合体創傷治癒に与える影響の解明 | 7日後にはS100A7は消退し、反応象牙質周囲にCD146およびRAGE陽性細胞が認められた。この研究結果から象牙質から放出されたS100A7がCD146・RAGE共陽性である歯髄幹細胞の走化性因子として働くことで歯髄創傷治癒の一端を担っていることが示唆された。過去の報告では歯髄幹細胞をRAGEリガンドで刺激することで石灰化を促進したという報告もあり、生物学的な覆髄剤に応用できるタンパクである可能性がある。実験ii), iii)をおこなうために器官培養モデルの開発に着手したが、安定した培養はまだ実現しておらず、条件設定を試行錯誤中である。当初はS100A7の受容体としてTLR4を用いる予定であったが、よりS10A7に特異的な受容体としてRAGEを用いて実験をおこなった。今後は象牙芽細胞分化と第三象牙質形成におけるこれらの分子の機能解析をおこなうため、器官培養モデルにおいてsiRNA(si-s100a7 or si-rageを応用し、1, 3, 7および14日間培養し、定量PCR法、Western blot法にてS100A7およびRAGEの遺伝子およびタンパクのノックダウン効果と抑制時間の検討をおこなう。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-17H06848 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H06848 |
ラン藻(シアノバクテリア)の概日リズムに関わる多重フィードバック制御機構の解析 | 概日リズムは、光や温度といった環境の日周変動に積極的に適応しようとする、単細胞生物から高等動植物に見られる効率的な生命活動である。従来、概日リズムは、環境情報が入力系を介して概日振動発生系(概日時計)に伝わり、出力系を介して生理的リズムとして現れると考えられてきた。また、概日時計を司るのは時計遺伝子と呼ばれる遺伝子の転写レベルの自己調節により振動を発生させていると考えられている。しかし、概日リズムの安定な振動の維持、周期の温度補償性、光などの環境刺激に対する時計の応答など概日リズムの特性については未だにほとんどが未解明の部分である。一方で、代謝系と概日リズムとの相関についてもこれまで明らかにされてきていない。そこでこれまで機能未知であったラン藻のCbbR相同タンパク質の1つであるRbcRによる代謝系関連遺伝子の発現調節機構を解明することにした。CbbRは化学合成細菌や光合成細菌のルビスコ遺伝子の転写制御因子として機能しているが、ラン藻においては数種その相同タンパク質が見いだされているが機能未知な点が多い。ラン藻の炭酸濃縮機構の遺伝子の1つ、cmpABCDはCbbR相同タンパク質の1つであるCmpRによって炭素欠乏時に正に転写調節されることが明らかになっていたが、ルビスコの遺伝子rbcLSとカルボキシゾームの機能と構成を担うccmKLMNOはCmpRによる制御を受けないことが報告されていた。全ゲノム解析による結果から、ラン藻Synechococcus sp.strain PCC 7942には2種のCbbR相同タンパク質が確認されたので(CmpRとRbcR)、rbcR遺伝子の破壊を試みたが完全に破壊することは出来なかった。これは、rbcR遺伝子がラン藻の生育に必須の因子であることを強く示唆するものである。また、ラン藻内でRbcRを強制発現させるとrbcLSの転写レベルが上昇していたことから、RbcRがrbcLSオペロンの正の制御因子であると結論づけた。概日リズムは、光や温度といった環境の日周変動に積極的に適応しようとする、単細胞生物から高等動植物に見られる効率的な生命活動である。従来、概日リズムは、環境情報が入力系を介して概日振動発生系(概日時計)に伝わり、出力系を介して生理的リズムとして現れると考えられてきた。また、概日時計を司るのは、時計遺伝子と呼ばれる遺伝子の転写レベルの自己調節により振動を発生させていると考えられている。しかし、概日リズムの安定な振動の維持、周期の温度補償性、光などの環境刺激に対する時計の応答など概日リズムの特性については未だにほとんどが未解明の部分である。そこでまず、概日リズムにおいて、生体内の代謝系がどのように関わっているのか、関連遺伝子の発現調節機構を解明することにした。ラン藻Synechococcus sp.PCC 7942の炭酸能動輸送体BCT1(cmpABCD遺伝子)は、炭素欠乏によって発現誘導される。一方、これまでにBCT1が強光によっても転写活性化されることが報告されていたので、LysR型の転写調節因子CmpRを欠失した変異株を用いて解析した。すると、強光、炭素欠乏いずれにおいてもCmpR欠損株ではBCT1遺伝子の転写活性化は減少した。このことから炭素欠乏と強光は、基本的には細胞内で共通のシグナルとして感知されているものと結論づけた。また、強光誘導性遺伝子psbA2,psbA3の炭素欠乏下での発現パターンを解析したところ、野生株に比べCmpR欠損株では、強光・炭素欠乏による転写活性化には変化がなかったものの、CmpRがエンハンスメントに効果のある因子であることが示唆された。また、psbA2,psbA3遺伝子のプロモーターにそれぞれ一カ所ずつ高度に保存されたCmpRが結合しうるモチーフを見いだしたので、ゲルシフトアッセイによってCmpRとpsbAのタンパク質-DNA複合体形成を証明した。概日リズムは、光や温度といった環境の日周変動に積極的に適応しようとする、単細胞生物から高等動植物に見られる効率的な生命活動である。従来、概日リズムは、環境情報が入力系を介して概日振動発生系(概日時計)に伝わり、出力系を介して生理的リズムとして現れると考えられてきた。また、概日時計を司るのは時計遺伝子と呼ばれる遺伝子の転写レベルの自己調節により振動を発生させていると考えられている。しかし、概日リズムの安定な振動の維持、周期の温度補償性、光などの環境刺激に対する時計の応答など概日リズムの特性については未だにほとんどが未解明の部分である。一方で、代謝系と概日リズムとの相関についてもこれまで明らかにされてきていない。そこでこれまで機能未知であったラン藻のCbbR相同タンパク質の1つであるRbcRによる代謝系関連遺伝子の発現調節機構を解明することにした。CbbRは化学合成細菌や光合成細菌のルビスコ遺伝子の転写制御因子として機能しているが、ラン藻においては数種その相同タンパク質が見いだされているが機能未知な点が多い。ラン藻の炭酸濃縮機構の遺伝子の1つ、cmpABCDはCbbR相同タンパク質の1つであるCmpRによって炭素欠乏時に正に転写調節されることが明らかになっていたが、ルビスコの遺伝子rbcLSとカルボキシゾームの機能と構成を担うccmKLMNOはCmpRによる制御を受けないことが報告されていた。 | KAKENHI-PROJECT-03J00612 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03J00612 |
ラン藻(シアノバクテリア)の概日リズムに関わる多重フィードバック制御機構の解析 | 全ゲノム解析による結果から、ラン藻Synechococcus sp.strain PCC 7942には2種のCbbR相同タンパク質が確認されたので(CmpRとRbcR)、rbcR遺伝子の破壊を試みたが完全に破壊することは出来なかった。これは、rbcR遺伝子がラン藻の生育に必須の因子であることを強く示唆するものである。また、ラン藻内でRbcRを強制発現させるとrbcLSの転写レベルが上昇していたことから、RbcRがrbcLSオペロンの正の制御因子であると結論づけた。 | KAKENHI-PROJECT-03J00612 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03J00612 |
高等専門学校の特色を生かした英語教育カリキュラム作成に向けての企画調査 | 本研究の目的は、新しい『高専英語教育カリキュラム』の作成に向けた予備調査をすることである。まず、高専に関係のある企業や大学の教員から高専の英語教育に対する考え方を聞き、当事者である全国の高専の英語教員の考え方を調査した。そして5年一貫という高専の制度を活かすべく、全国レベルでカリキュラムの改善について研究した。今年度の具体的な作業は以下の通りである。1.各高専の英語教育カリキュラムの現状把握2.高専卒業後に必要となる英語能力の分析3.高専での英語教育に有効な教材の検討4.包括的な高専英語教育カリキュラムの試案作成調査の結果、以下のようなことがわかった。1.高専生の英語力は、たしかに大学生などと比較すると劣っており、特に大学では勉学に支障がある。2.企業における英語の重要性も高まっており、英語のできる人材が高専卒にも求められるようになっている。3.高専では、高専独自の英語教育の手法が求められており、これを実現することは可能である。本研究の目的は、新しい『高専英語教育カリキュラム』の作成に向けた予備調査をすることである。まず、高専に関係のある企業や大学の教員から高専の英語教育に対する考え方を聞き、当事者である全国の高専の英語教員の考え方を調査した。そして5年一貫という高専の制度を活かすべく、全国レベルでカリキュラムの改善について研究した。今年度の具体的な作業は以下の通りである。1.各高専の英語教育カリキュラムの現状把握2.高専卒業後に必要となる英語能力の分析3.高専での英語教育に有効な教材の検討4.包括的な高専英語教育カリキュラムの試案作成調査の結果、以下のようなことがわかった。1.高専生の英語力は、たしかに大学生などと比較すると劣っており、特に大学では勉学に支障がある。2.企業における英語の重要性も高まっており、英語のできる人材が高専卒にも求められるようになっている。3.高専では、高専独自の英語教育の手法が求められており、これを実現することは可能である。 | KAKENHI-PROJECT-13898006 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13898006 |
ゼロリコンビネーション光触媒の開発と再結合速度評価法の開発 | 有機溶媒を用いる新規な水熱結晶化法(HyCOM法)によりアナタース型TiO_2の微結晶を合成し、さらに後焼成処理を施して様々な物性を有するTiO_2を調製した。これらを用いてTiO_2の再結合速度評価法の確立を目指した。まず、無酸素下、正孔捕捉剤存在下の光照射により生成するTi^<3+>の量を定量する方法を試みた。Ti^<3+>は表面欠陥サイトで形成されると考えられ、その量は焼成温度を上げる、つまり、TiO_2の結晶化度を高くするほど単調に減少した。このTi^<3+>量はポンプ-プローブ法過渡吸収測定(PP-DRS法)により算出したk_<-r>との間にほぼ比例したことから、TiO_2の再結合特性を表す指標して利用できることがわかった。無酸素下での銀析出-酸素発生反応における銀イオン吸着量([Ag^+]_<ads>)と銀析出速度(R_<Ag>)の間に直線関係が得られる。この反応の速度論的考察によると、[Ag^+]_<ads>-R_<Ag>プロットの傾きの逆数が近似的にe^--h^+の再結合および電子捕捉の速度定数比(k_r/k_e)に比例すると考えられ、HyCOM(973)およびP-25のk_r/k_eは、それぞれ0.79,2.2と求められた。また、ひとつのAg_2SO_4水溶液から、一組の吸着量と反応速度を求める一点法により、各種TiO_2のk_r/k_eを簡便に求められることが明らかになった。そこで、物性の異なるHyCOMTiO_2のk_r/k_eを評価すると、Tcを上げるほどk_r/k_eは減少した。k_r/k_eのTc依存性はTi^<3+>量のTc依存性とは異なるが、k_r/k_eの対数とTi^<3+>量との間に正の相関が見られることから、k_r/k_eは、Ti^<3+>量と同様に再結合特性を表す指標して利用できることがわかった。有機溶媒を用いる新規な水熱結晶化法(HyCOM法)によりアナタース型TiO_2の微結晶を合成し、さらに後焼成処理を施して様々な物性を有するTiO_2を調製した。これらを用いてTiO_2の再結合速度評価法の確立を目指した。まず、無酸素下、正孔捕捉剤存在下の光照射により生成するTi^<3+>の量を定量する方法を試みた。Ti^<3+>は表面欠陥サイトで形成されると考えられ、その量は焼成温度を上げる、つまり、TiO_2の結晶化度を高くするほど単調に減少した。このTi^<3+>量はポンプ-プローブ法過渡吸収測定(PP-DRS法)により算出したk_<-r>との間にほぼ比例したことから、TiO_2の再結合特性を表す指標して利用できることがわかった。無酸素下での銀析出-酸素発生反応における銀イオン吸着量([Ag^+]_<ads>)と銀析出速度(R_<Ag>)の間に直線関係が得られる。この反応の速度論的考察によると、[Ag^+]_<ads>-R_<Ag>プロットの傾きの逆数が近似的にe^--h^+の再結合および電子捕捉の速度定数比(k_r/k_e)に比例すると考えられ、HyCOM(973)およびP-25のk_r/k_eは、それぞれ0.79,2.2と求められた。また、ひとつのAg_2SO_4水溶液から、一組の吸着量と反応速度を求める一点法により、各種TiO_2のk_r/k_eを簡便に求められることが明らかになった。そこで、物性の異なるHyCOMTiO_2のk_r/k_eを評価すると、Tcを上げるほどk_r/k_eは減少した。k_r/k_eのTc依存性はTi^<3+>量のTc依存性とは異なるが、k_r/k_eの対数とTi^<3+>量との間に正の相関が見られることから、k_r/k_eは、Ti^<3+>量と同様に再結合特性を表す指標して利用できることがわかった。 | KAKENHI-PROJECT-14050098 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14050098 |
中近世期における九条家蔵書の形成と流伝に関する研究 | 五摂家の一つ、九条家が近世前期に行った集書、書写活動と蔵書形成・整理の様相を解明し、中世から近世にかけての九条家の蔵書の実態を明らかにすることを目的とした研究を行った。江戸時代の前期、寛永年間の九条家当主であった、九条道房によって行われた蔵書形成の様相を、現存する典籍から明らかにした。同時にそれらの蔵書のルーツを探るべく書承関係を遡り、九条家蔵書から書写され、転成していった書物群の行方を明らかにした。大正期以降これら九条家の蔵書は、巷間への流出を含め、九条家から離れて散佚し諸家に分蔵されているが、それらを出来る限り追跡し、現時点に於ける九条家旧蔵書の所在を明らかにした。九条家旧蔵本の概要を明らかにすべく調査を行った。宮内庁書陵部蔵九条家旧蔵本について調査を行い、九条道房の整理・書写に関わる古典籍類を調査した。結果、道房の行った蔵書整理および蔵書形成に関する活動の詳細を明らかにした。東海大学附属図書館桃園文庫に蔵される『弘安源氏論義』について、九条道房の行った書写活動により書写されたものであることを、書誌的事項から推測・同定し、その報告を行った。天理大学附属天理図書館・島根大学附属図書館・広島大学図書館等において、九条家旧蔵本に関する調査を行い、その様相を明らかにした。研究分担者である佐々木孝浩(慶應大学附属研究所斯道文庫)の協力により、斯道文庫および慶應義塾図書館に所蔵される、九条家旧蔵本の調査を行った。またその書影をデジタル撮影および紙焼き写真として収集した。これまでの九条家旧蔵本に関する知見を纏めた論考「九条家旧蔵本の行方」(『これからの国文学研究のために』笠間書院・2014)を発表した。九条家旧蔵本のうち、宮内庁書陵部蔵の資料を調査した。九条道房による、宮廷故実・儀式次第書などを中心とした、まとまった蔵書の調査については、これを一通り完了した。道房が一見し確認、表紙を改め、外題を付し、奥書を記すなどした典籍については、紙焼き写真または実物を閲覧調査し、書誌データと共に収集した。また必要に応じて書影を入手した。昨年度、新たに、学習院大学に所蔵されていた九条家旧蔵本・逍遥院集(三条西実隆家集)を見出し、閲覧調査を行った。その結果、この典籍が本課題の中心的な部分である、九条道房の下で旺盛な書写活動を行った右筆のものと思われる筆跡で記されていることが判明した。よって、書誌事項の確認とともに、書影の収集を行った。また、新美哲彦(研究協力者)の調査により、正宗文庫に同筆の勅撰和歌集(続後撰和歌集)1点が所蔵されていることが報告された。他に、大阪(大手前大学)京都(龍谷大学ミュージアム)奈良(個人宅)石川(石川県立博物館)熊本(八代市立博物館未来の森ミュージアム・熊本大学附属図書館)愛知(徳川美術館・昭和美術館・個人宅)愛媛(今治・松山・宇和島)などで、関連資料の閲覧調査を行った。九条家旧蔵本の最大のまとまりである、宮内庁書陵部蔵本に於ける、九条道房関連資料の調査を一通り終えたことで、現時点での見通しが立てられている。また、もう一つの纏まった九条家旧蔵本の所蔵がある、天理図書館についても、一昨年に一通りの調査を終えており、その書影の収集を行うことで、相当部分の蔵書の性格が明らかになりつつある。また、現時点で所蔵が判明している九条家旧蔵本については、八割方の閲覧調査を終えており、その実態把握が可能になってきた。その他にも、九条家蔵書の形成をめぐる周辺状況についての新たな知見が得られており、これらを纏めて、一定の見解を示しうる段階に入りつつある。前年度までに、九条家旧蔵本のうち、宮内庁書陵部所蔵の公開分を確認した。その上で、必要な書影を紙焼きで入手し、そのデジタルデータ化を行った。またこれまでに入手した紙焼き写真をデジタルデータ化し、書目の整理を行った。また、前年度に確認した、学習院大学所蔵の九条家旧蔵本・逍遥院集(三条西実隆家集)および島根大学図附属書館蔵・六百番歌合の書影を、デジタルデータ化した。他に、前年度、新美哲彦(研究協力者)によりもたらされた情報により、正宗文庫(岡山県備前市)所蔵の、続後撰和歌集について調査・撮影を行った。これにより、従来知られなかったところの、九条家旧蔵本の中にある、特定の筆跡によって書写された典籍が存在していたことを確認した。そして、天理図書館附属天理図書館の調査により、判明した九条家旧蔵本の書影を可能な限り収集し、それらをデジタルデータ化した。これにより、九条家旧蔵本を分担書写した人々の、数名分の筆跡を調査し、分類・整理することを行った。その他、和歌文学会関西例会(研究代表者の発表を含む)、天理大学附属天理図書館、個人所蔵資料(田中登〈関西大学〉・日比野浩信〈愛知淑徳大学〉)・飯沼山円福寺寺宝展、徳川美術館などで、九条家旧蔵関連資料に関する調査を実施した。最終年度であり、調査の完了を目指し、予定分については調査を終えたもの、いくつかについては、先方の意向により調査を果たせなかったものが、若干残っている。 | KAKENHI-PROJECT-26370209 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26370209 |
中近世期における九条家蔵書の形成と流伝に関する研究 | また、全体のとりまとめについては、研究代表者および研究分担者、研究協力者による、これまでの成果を小冊子にすることを目指したが、今年度はそれを果たせなかった。また、これまでに調査した結果の集成・整理してまとめたものについても、小冊子の中に含めるべく作業したが、データ化は終わったものの、最終的なまとめには至らなかった。大正から昭和初期に散逸し、各地に所蔵される九条家旧蔵本について調査を行った。江戸時代初期、その時期の当主であった九条道房によって行われたと思われる、書写活動を中心とした調査を行った。その結果、鶴見大学・実践女子大学・広島大学・島根大学・東海大学・学習院大学・日本大学・慶應義塾大学・早稲田大学・国文学研究資料館・正宗文庫などに、九条家旧蔵本およびその関連書が所蔵されていることを明らかにした。またその他に、まとまった分量の九条家旧蔵の古典籍を所蔵している機関としては、天理大学付属天理図書館と宮内庁書陵部とがあり、その所蔵書ついて、悉皆的に調査した。これらは、実物の閲覧調査を行って書誌情報と内容を確認したものであり、特に必要なものに関しては、可能な限りの書影を収集した。以上の調査結果を踏まえ、九条家旧蔵本の所蔵と書目、および書影の一覧を作成した。そして、九条家の蔵書の形成過程を明らかにするべく、個々の作品の書承関係を調査した結果、九条道房の弟にあたる、栄厳との関係からと推定される、真言宗寺院の小野随心院・醍醐寺・東寺などとの貸借により、書写活動が行われたいたことが明らかとなった。その際「他筆」と呼ばれる、右筆が書写を担当していたことも、奥書から判明した。その人物の解明と特定を目指したが、現時点ではまだそれは明らかとなっていない。しかし「他筆」は複数人にわたり、九条家関連以外のところでも書写を行っている様相も見られることから、今後さらに追求していく必要がある。また、歌合関係書においては、三条西家の蔵書を利用して書写が行われているらしいことが判明し、当時の禁裏本との関係や、細川家の蔵書との類似点が明らかとなってきた。これらの詳細については、今後の考究課題となるであろう。五摂家の一つ、九条家が近世前期に行った集書、書写活動と蔵書形成・整理の様相を解明し、中世から近世にかけての九条家の蔵書の実態を明らかにすることを目的とした研究を行った。江戸時代の前期、寛永年間の九条家当主であった、九条道房によって行われた蔵書形成の様相を、現存する典籍から明らかにした。同時にそれらの蔵書のルーツを探るべく書承関係を遡り、九条家蔵書から書写され、転成していった書物群の行方を明らかにした。大正期以降これら九条家の蔵書は、巷間への流出を含め、九条家から離れて散佚し諸家に分蔵されているが、それらを出来る限り追跡し、現時点に於ける九条家旧蔵書の所在を明らかにした。各所蔵先での調査はある程度順調に行ったが、それらの情報を整理し、共有するための研究会・シンポジウムなどの開催が、研究代表者・分担者・協力者のスケジュール調整の結果、行えなかった。また、収集資料のデジタル化などの整理も行ったが、それらの纏めはこれからの課題であり、総体的に見ると研究達成度は、やや遅れていると言わざるを得ない。本課題の最終年度であり、調査の完了へ向けての作業の継続を行う。これまでに調査した結果を集成・整理してまとめる。九条家旧蔵本の大きな纏まりを持つ、宮内庁書陵部および天理図書館を中心としたデータを整理一覧する。また、それ以外の各所に所蔵される九条家旧蔵本について集成整理して、一覧する。 | KAKENHI-PROJECT-26370209 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26370209 |
代数多様体の周期とp進解析―p進一意化からのアプローチ | 今年度も引き続き非アルキメデス的幾何学やその周辺からのアプローチにより,代数多様体の周期やそれに付随した微分方程式についての考察を行った.これはほぼ研究計画に述べた内容と同等であると言えるが,前年度の一般的考察を基礎としたp-進解析や非アルキメデス的解析に固有の理論の展開を目指した.また,今年度は退化した曲線の周辺での一意化微分方程式の振る舞いや高次元化への手がかりについても幾つかの結果を得た.本研究とも関連が深く,また以前から継続して研究を行っていた正標数の一意化可能曲線の自己同型を保つ変形理論の代数的及び解析的構成については,オランダのユトレヒト大学にGunther Cornelissen氏を訪問し,共同研究を更に押し進めた.国内での研究者との交流については,東北大学の石田正典氏(12月)を訪問した.今年度は非アルキメデス的幾何学やその周辺からのアプローチを主として,代数多様体の周期やそれに付随した微分方程式についての考察を行った.これはほぼ研究計画に述べた内容と同等であると言えるが,未だ現在の所,p-進解析や非アルキメデス的解析に固有の理論展開というよりは,一般論的側面が多い.p-進解析の本格的導入については,来年度の目標となった.また,今年度は特に試論として,退化した曲線の周辺での一意化微分方程式の振る舞いをも研究し、幾つかの結果を得た.本研究とも関連が深く,また以前から継続して研究を行っていた正標数の一意化可能曲線の自己同型を保つ変形理論の代数的及び解析的構成については,ドイツのMax-Planck-InstitutにおいてGunther Cornelissen氏を訪問し,共同研究を完成させた(11に記載).国内での研究者との交流については,これはほぼ研究計画に挙げた通り,東北大学の石田正典氏(7月),広島大学の都築氏(2月)を訪問等となった.今年度も引き続き非アルキメデス的幾何学やその周辺からのアプローチにより,代数多様体の周期やそれに付随した微分方程式についての考察を行った.これはほぼ研究計画に述べた内容と同等であると言えるが,前年度の一般的考察を基礎としたp-進解析や非アルキメデス的解析に固有の理論の展開を目指した.また,今年度は退化した曲線の周辺での一意化微分方程式の振る舞いや高次元化への手がかりについても幾つかの結果を得た.本研究とも関連が深く,また以前から継続して研究を行っていた正標数の一意化可能曲線の自己同型を保つ変形理論の代数的及び解析的構成については,オランダのユトレヒト大学にGunther Cornelissen氏を訪問し,共同研究を更に押し進めた.国内での研究者との交流については,東北大学の石田正典氏(12月)を訪問した. | KAKENHI-PROJECT-13740010 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13740010 |
ネコのにおいを介した嗅覚コミュニケーションの仕組み解明と糞尿被害防止策の開発 | 少子高齢化社会でペットに安らぎを求める人々が増え、ネコの飼育頭数は年々増加している。それに伴い、幼稚園や公園、住宅街において放し飼いネコや野良ネコによる糞尿被害も増加しており、衛生面、人畜共通伝染病の観点から大きな問題になっている。そこで本研究では、においを介したネコの嗅覚コミュニケーションの仕組みを解明し、ネコの行動原理に基づいた、新たな糞尿防止策の開発を目指した。まず、ネコの縄張りに他のネコ尿を提示した時、ネコは興味を持ってにおいを嗅ぐが、イヌと違いオーバーマーキングしないことを見出した。更にネコの尿抽出物を分画して特定の画分に同様の活性が得られること、その化学組成を明らかにした。少子高齢化社会でペットに安らぎを求める人々が増え、ネコの飼育頭数は年々増加している。それに伴い、幼稚園や公園、住宅街において放し飼いネコや野良ネコによる糞尿被害も増加しており、衛生面、人畜共通伝染病の観点から大きな問題になっている。ネコの糞尿被害を防止する製品は多数販売されているが、十分な効果は得られていない。申請者は、ネコの縄張りに他のネコ尿を提示した時、ネコは興味を持ってにおいを嗅ぐが、イヌと違いオーバーマーキングしないことを見出した。そこで本研究では、においを介したネコの嗅覚コミュニケーションの仕組みを行動レベルから分子レベルまで解明し、ネコの行動原理に基づき、においを使って特定の場所で糞尿をさせない、新たな糞尿防止策を開発を目指している。本年度は、香気成分をマイクロスケールパージ&トラップ-二次元ガスクロマトグラフィー-質量分析計で解析する系を構築して、複数個体のオスネコと去勢オスネコの尿を解析し、種、性、年齢、個体の違いで変動するにおい分子の特定を目指した。オスネコ7頭の尿のヘッドスペースガスを分析した結果、各個体で1000分子種以上の化合物が検出された。得られた結果を多変量解析した結果、本研究ではオスネコに特有な揮発成分、個体差間で差が生じる揮発性化合物を識別することができた。また種に特有な化合物として検出されたメルカプタンの一種については、それを含む尿と含まない尿を調整してネコが嗅ぎ分けることができるかオミッション法で調べた結果、このメルカプタンの有無をネコがにおい嗅ぎで識別していることを明らかにできた。現在、ネコの飼育頭数は年々増加しており、ペット市場の拡大にも大きく貢献している。その一方で幼稚園や公園、住宅街において放し飼いネコや野良ネコによる糞尿被害も増加しており、美観、衛生面、人畜共通伝染病の観点からも大きな問題となっている。そこで本研究では、ネコが他のネコ尿を嗅いだ後に、イヌと違いオーバーマーキングしないで立ち去る行動を提示することを見出し、この行動原理を活用して新たなネコの糞尿防止策を開発したいと考えている。今年度は、ネコ特有な化合物の生合成機構とその詳細な生物活性、また野外試験で糞尿防止効果などを検証した。ネコ特有な化合物の生合成機構にはネコ特有な脂質代謝系の発達が大きく寄与していることが明らかとなり、また餌の脂質顔料をコントロールすることで糞尿のにおいを低減できる可能性があることを示唆する結果が得られた。またこれまで尿にのみ放出していると思われたネコ特有におい物質は糞にも含まれていることが明らかとなり、これが糞臭被害の原因化合物の一つであることも明らかになった。またこの種特有な化合物だけを除いた糞を調整して、ネコが種特有化合物の含有糞と非含有糞を識別できるか行動試験を行った結果、ネコは2つのにおいの差を明確に識別できる嗅覚識別能力を持っていることが明らかとなった。ネコの尿から抽出した脂質を野外に提示して糞尿被害防止効果を検証した結果、少なくても一晩はネコに対して糞尿防止効果が認められることが分かった。本研究は、ネコのにおいを介した嗅覚コミュニケーションの仕組みを行動レベルから分子レベルまで生化学、分析化学、行動学の解析手法を用いて学際的に検証し、ネコの縄張り行動の基本原理の理解を目指した。そして得られた知見を基に幼稚園や公園、住宅街で問題になっている放し飼いネコや野良ネコの糞尿被害を防止する新技術の開発を試みている。最終年度は、ネコ尿抽出物に対する糞尿被害防止効果を検証した。ネコの尿から有機溶媒を使い脂溶性化合物を抽出し、さらにそこから揮発性化合物を分離して、それをガラスプレートに塗布して、野外に一晩提示した。その近辺を赤外線ビデオカメラで撮影し、野良ネコが現れるか、現れた場合、ガラスプレート近辺でどのような行動を提示するか、フレーメンなど特異なフェロモン反応を提示するか、糞や尿のマーキング効果が阻止できるか調べた。その結果、プレート付近に出没した野良ネコは、あたりのにおいを嗅ぎ始めて、最終的にプレートにたどり着き、時間をかけて丹念なにおい嗅ぎやフレーメン反応を提示したが、その後は、尿マーキングや糞の排泄をすることなく、その場を立ち去ることが分かった。以上の結果、ネコの尿にはネコ尿や個体差を特徴付ける化合物が含まれており、それが周囲に放出されること、別なネコは仲間のにおいの存在を認識すると、興味を持ち、においの調査を行うが、イヌのようにオーバーマーキングせずに立ち去ることが明らかになった。少子高齢化社会でペットに安らぎを求める人々が増え、ネコの飼育頭数は年々増加している。それに伴い、幼稚園や公園、住宅街において放し飼いネコや野良ネコによる糞尿被害も増加しており、衛生面、人畜共通伝染病の観点から大きな問題になっている。 | KAKENHI-PROJECT-25850217 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25850217 |
ネコのにおいを介した嗅覚コミュニケーションの仕組み解明と糞尿被害防止策の開発 | そこで本研究では、においを介したネコの嗅覚コミュニケーションの仕組みを解明し、ネコの行動原理に基づいた、新たな糞尿防止策の開発を目指した。まず、ネコの縄張りに他のネコ尿を提示した時、ネコは興味を持ってにおいを嗅ぐが、イヌと違いオーバーマーキングしないことを見出した。更にネコの尿抽出物を分画して特定の画分に同様の活性が得られること、その化学組成を明らかにした。ネコの尿を特徴付けるにおい成分の生合成機構と、その化合物に対するネコの嗅覚識別能力について明らかにできたので、本研究は順調に進んでいると判断した。生化学、分析化学、行動学最終年度は、さらなる野外試験を実施してネコ尿抽出物の糞尿防止効果について検証する。また有効持続時間が長くなるような提示法についても検証したいと考えている。平成27年度は本研究の最終年度なので国際誌への論文投稿、学会発表を行う計画である。ネコの尿には数百、数千種類にもおよぶ有機化合物が存在していると考えられるが、今年度の成果より種の識別に重要なケミカルシグナルの特定に至った。よって本研究は順調に進んでいると判断している。今後は、個体差のある化合物で同様にオミッション法を行い、ネコが個体差の識別に利用している揮発性物質の特定を目指す。またメスネコの尿の分析から、特に発情期のメスネコに特有な化合物が存在するか調べる。 | KAKENHI-PROJECT-25850217 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25850217 |
成人女性の未来展望における喪失感と獲得感-ひとりの受容、つながりの形成との関連- | 本研究は、50歳前後の成人女性の未来展望と未来展望に影響を及ぼす要因について、アンケート調査により実証的に検討することを目的とした。その結果、高齢期におけるソーシャルサポート期待は、子ども(とくに娘)とパートナーに対して高く、社会サービスに対して低いことが示された。将来における獲得感、喪失感については、加齢によって心身の機能や社会とのつながりを失っていくと感じている一方で、内面的には充実していくという感覚を持っていることが示された。さらに、これらの未来展望は、現在の生活状況や心理的発達(「個」の発達、「関係性」の発達)と密接に関連していることが明らかになった。本研究は、人生の折り返し地点にある50歳前後の成人女性がどのような未来展望をもっているのかを明らかにし、成人女性の未来展望に影響を及ぼす要因について、個の発達と関係性の発達の2つの側面から、数量調査によって実証的に検討することを目的とする。26年度は研究全体のデザインを立案し、調査票作成に向けての予備的検討として、質問紙調査を実施した。予備調査では、40歳60歳代の中年期女性50名を対象に、現在の生活状況、生活意識の実態について把握し、将来展望との関連を検討するとともに、これからの人生で「失うもの(喪失)」と「得るもの(獲得)」に対する意識についての質的分析を行った。調査の結果、現在の暮らし向き、健康状態、主観的幸福感は、ポジティブな時間的展望と有意な関連を示すことが明らかになった。また「喪失」と「獲得」の自由記述内容は、『心身の機能』、『人間関係』、『時間』、『仕事・経済力』、『自己の内面的な変化』に大別され、50歳前後の女性がこれからの先の人生に対して「喪失」と「獲得」の両者を含んだ将来展望を抱いていることが確認された。本研究は人生の折り返し地点にある50歳前後の成人女性の未来展望を明らかにし、未来展望に影響を及ぼす要因について、個の発達と関係性の発達の2つの側面から、数量調査によって実証的に検討することを目的とする。27年度は調査票作成に向けての予備的検討として質問紙調査を実施した。予備調査では50歳前後の成人女性99名を対象に、現在の生活状況と生活意識の実態を把握し、個の発達の一側面として「ひとりの時間」の過ごし方や感情・評価、関係性の発達の一側面として高齢期に期待するソーシャルサポートに着目し、分析を行った。調査の結果、1.「ひとりで過ごすことに関する感情・評価」は「孤独・不安」「自立願望」「充実・満足」の3下位尺度、「ひとりの時間」の過ごし方は「自己内省」「個人的活動への没頭」「ストレスからの解放」の3下位尺度から構成されることが明らかになった。共分散構造分析の結果、「ひとりの時間」に個人的活動に没頭したり、自己内省をしたりすることで、ひとりで過ごす充実・満足感が高まり、それが中年期女性の主観的幸福感を促進することが示された。2.高齢期のソーシャルサポート期待については、14項目のうち経済面はパートナー、趣味娯楽を一緒に楽しむことは友人への期待が最も高く、その他12項目はすべて子どもへの期待が最も高かった。因子分析の結果、サポート源によって高齢期に期待するサポート内容の構造に違いがみられた。また、相関分析の結果、子ども以外のサポート源のソーシャルサポート期待は現在の主観的幸福感と、パートナーときょうだいへの期待は現在の暮らし向きと、友人、近隣の人、社会サービスへの期待は社会的活動参加数と有意な正の相関を示した。高齢期におけるパートナーへの期待の高さは現在の経済状況と健康状態、家族以外への期待の高さは現在の社会的ネットワークと関連していることが示された。成人女性の発達をとらえる尺度を検討するために予備調査を実施した。量的調査を実施する前段階として、さらなる尺度項目の検討が必要であると判断し、量的調査は次年度への継続課題となった。2回目の予備調査において、中年期女性の「ひとりの時間」の過ごし方や感情評価及び高齢期に期待するソーシャルサポートの内容や構造について分析できたことは、成人女性の発達を個と関係性の側面からとらえる本研究にとって有益な成果と考える。本研究は、人生の折り返し地点にある50歳前後の成人女性がどのような未来展望をもっているのかを明らかにし、成人女性の未来展望に影響を及ぼす要因について、個の発達と関係性の発達の2つの側面から、数量調査によって実証的に検討することを目的とする。28年度は、27年度に実施した質問紙調査のデータ分析をさらに精査し、中年期女性の高齢期におけるソーシャルサポート期待について、現在の生活状況及び生活意識との関連から分析を行った。高齢期におけるソーシャルサポート期待は、子どもに対する期待が最も高く、次いでパートナーであった。また友人に対しては趣味や娯楽を一緒に楽しむことを期待していた。主観的幸福感は、友人以外のすべてのサポート源に対するソーシャルサポート期待と正の相関がみられた。また、社会的活動への参加数は友人及び社会サービスに対するソーシャルサポート期待と正の相関、暮らし向きと健康状態は、きょうだいに対するソーシャルサポート期待と正の相関がみられた。また28年度は、50歳女性1000名を対象に、現在の生活状況と生活意識、心理的well-being、ひとりの時間のとらえ方、未来展望(ソーシャルサポート期待、獲得感・喪失感)について、質問紙調査を実施した。量的調査を実施する前段階として、26年度、27年度と2回に分けて予備調査を実施した。 | KAKENHI-PROJECT-26350052 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26350052 |
成人女性の未来展望における喪失感と獲得感-ひとりの受容、つながりの形成との関連- | それぞの調査から有益なデータが得られ、分析に時間を要したことにより、量的調査の時期を当初計画よりも1年遅らせたため。成人女性の生活状況、心理的発達、心理的適応と未来展望との関連ついて検証するため、関東1都6県に在住する50歳代の女性1000名を対象にWEBによるアンケート調査を実施した。50歳代女性の家族状況は多様であり、約6割が就労、健康状態は良好な傾向がみられた。世帯年収は3割弱が400万円未満である一方、約2割は1000万円以上であった。高齢期のソーシャルサポート期待については、子どもに対する期待の高さが示された。息子と娘の両方がいる場合には、息子よりも娘に対する期待が高い傾向がみられた。パートナーに対しては、サポート領域にかかわらず、全般的に期待が高いという特徴がみられた。これから先の人生における獲得感と喪失感について、獲得感と喪失感の各領域別得点の差についてt検定を行った結果では、「心身機能」「社会・経済」「社会的関心」「生きがい」は喪失感が獲得感よりも高く、「心理的充足」「自己決定」は喪失感よりも獲得感が高かった。これから先の人生において、心身の機能や社会とのつながりを失っていくと感じている一方で、内面的な充実に対する期待感を持っていることが示された。未来展望に関連する要因について相関分析を行った結果からは、将来における獲得感・喪失感は、現在の生活状況や心理的発達と密接に関連していることが明らかになった。現在の生活において、健康状態がよく、社会的活動に積極的で、幸福感を感じている人ほど獲得感は高まり、喪失感は低まる傾向がみられた。また、心理的発達との関連からは「個」と「関係性」の発達のどちらにおいても適応的な人ほど獲得感が高くなり、喪失感が低くなる傾向がみられた。これらの結果から、現在の生活状況を基盤として未来を展望していること、「個」と「関係性」の2側面での心理的発達の高さが肯定的な未来展望へとつながることが示された。本研究は、50歳前後の成人女性の未来展望と未来展望に影響を及ぼす要因について、アンケート調査により実証的に検討することを目的とした。その結果、高齢期におけるソーシャルサポート期待は、子ども(とくに娘)とパートナーに対して高く、社会サービスに対して低いことが示された。将来における獲得感、喪失感については、加齢によって心身の機能や社会とのつながりを失っていくと感じている一方で、内面的には充実していくという感覚を持っていることが示された。さらに、これらの未来展望は、現在の生活状況や心理的発達(「個」の発達、「関係性」の発達)と密接に関連していることが明らかになった。予備調査の分析から中年期女性の将来展望を「喪失」と「獲得」という2つの観点からとらえられることが確認できたことは、中年期女性の将来展望を検討するための新たな枠組みを呈示する可能性となり重要な成果と考える。量的な調査のための尺度項目の検討については、さらなる精査が必要であると判断したため、次年度への継続課題となった。26年度と27年度に実施した2つの予備調査から得られた結果をもとに、50代の女性を対象とした量的調査を実施し、中年期女性の将来展望に影響を及ぼす要因の検討を行う。研究成果は、学会発表、学術誌等で公表する。 | KAKENHI-PROJECT-26350052 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26350052 |
数理技術データベースシステムの開発 | 数理技術上の一つの問題を示したとき,それに対する必要十分な数学的記述をコンピュータによって編集するシステムの構築を試みた。ハードディスク上に構成された数理技術の体系から,そのテーマの基礎に位置する事項を効率的に構成するものである。数式を頻繋に扱い,印刷された数式が抵抗感なしに受け入れられる必要があり,数式の表示に優れたソフトウェアが要求される。そのために,マッキントッシュの上で超多機能日本語ワープロ“ワルツワード"を用いた。解説文書は,数行から数十行程度のまとまった単位から構成される。それらは基本単位あるいは項目と呼ぶことにする。基本単位にはラベルが付けられている。ラベルに続いて括弧でくくったラベルの列が示されるが,それらはその単位の理解のために必要とされる基礎的な事項のラベルを指している。直接または間接的に引用されるすべての項目を順序を考慮して並べれば,まとまった解説文書ができあがる。その手続きは,項目のラベルの系列を作ることと,文書からその部分をコピーして一つのものに構成することの二つの作業からなっている。解説文書の作成に当たっては,基本単位の大きさ,例の与え方,説明の詳しさ,項目の並べ方などにおいて,いろいろな問題点がある。データとしての解説文書はラベルの引用が正確に行われていれば,項目単位で完成されていればよく,項目の置かれる順序は任意である。ユーザーのために出力されるときにラベルの引用に従って順序づけられる。しかし,解説文書の項目の並べ方が任意であるとすれば,作業時点での検索に対する支援システムが必要となる。ここでは検索用文書を別に設けることによって解決を図った。数理技術上の一つの問題を示したとき,それに対する必要十分な数学的記述をコンピュータによって編集するシステムの構築を試みた。ハードディスク上に構成された数理技術の体系から,そのテーマの基礎に位置する事項を効率的に構成するものである。数式を頻繋に扱い,印刷された数式が抵抗感なしに受け入れられる必要があり,数式の表示に優れたソフトウェアが要求される。そのために,マッキントッシュの上で超多機能日本語ワープロ“ワルツワード"を用いた。解説文書は,数行から数十行程度のまとまった単位から構成される。それらは基本単位あるいは項目と呼ぶことにする。基本単位にはラベルが付けられている。ラベルに続いて括弧でくくったラベルの列が示されるが,それらはその単位の理解のために必要とされる基礎的な事項のラベルを指している。直接または間接的に引用されるすべての項目を順序を考慮して並べれば,まとまった解説文書ができあがる。その手続きは,項目のラベルの系列を作ることと,文書からその部分をコピーして一つのものに構成することの二つの作業からなっている。解説文書の作成に当たっては,基本単位の大きさ,例の与え方,説明の詳しさ,項目の並べ方などにおいて,いろいろな問題点がある。データとしての解説文書はラベルの引用が正確に行われていれば,項目単位で完成されていればよく,項目の置かれる順序は任意である。ユーザーのために出力されるときにラベルの引用に従って順序づけられる。しかし,解説文書の項目の並べ方が任意であるとすれば,作業時点での検索に対する支援システムが必要となる。ここでは検索用文書を別に設けることによって解決を図った。科学技術諸分野において必要な数理技術(応用数学)はきわめて広範囲にわたるが、個人にとって必要な範囲はそれほど広くない。しかし、必要なところだけを選び出して学習することはほとんど不可能であり、必要とは感じない部分まで含めて学習しなければならない。そこで、もしも個々の目的に対して必要十分な解説が提供されるようなシステムが用意されるならば、関係のない事項については学習する必要がなく、数理技術修得のための能率の向上が期待できる。数理技術上の個々の問題に対して、必要十分な説明をコンピュータによって編集するシステムの開発を目指している。まず、数理技術を説明する文書を体系的に収集し、コンピュータに入力し、データベース化を行なう必要がある。そのための基礎データとして、数学ハンドブック(森北出版)から、基礎数学と解析学の範囲をMacintoshコンピュータに入力した。数式入力に適したワープロソフト「ワルツワード」を用いて、以下の処理を円滑に行える見やすい資料の作成を心掛けた。科学・技術における数理技術についても作業を進めている。つぎに、数理技術に関する数学的記述をモジュール化し、相互の関連を調べて木構造に構成する必要がある。構造化を行うため、モジュール化の作業を開始した。また、実際に必要となる事項による検索の手段を考える必要がある。科学技術においてよる現われる技術を上記のデータと結び付けるための方法および検索方法の検討を始めた。数理技術上の一つの問題を示したとき,それに対する必要十分な数学的記述をコンピュータによって編集するシステムの構築を試みた。ハードディスク上に構成された数理技術の体系から,そのテーマの基礎に位置する事項を対率的に構成するものである。数式を頻繁に扱い,印刷された数式が抵抗感なしに受け入れられる必要があり,数式の表示に優れたソフトウエアが要求される。そのために,マッキントッシュの上で超多機能日本語ワープロ“ワルツワード"を用いた。解説文書は,数行から数十行程度のまとまった単位から構成される。それらは基本単位あるいは項目と呼ぶことにする。基本単位にはラベルが付けられている。ラベルに続いて括弧でくくったラベルの列が示されるが,それらはその単位の理解のために必要とされる基礎的な事項のラベルを指している。 | KAKENHI-PROJECT-04451135 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04451135 |
数理技術データベースシステムの開発 | 直接または間接的に引用されるすべての項目を順序を考慮して並べれば,まとまった解説文書ができあがる。その手続きは,項目のラベルの系列を作ることと,文書からその部分をコピーして一つのものに構成することの二つの作業からなっている。解説文書の作成に当たっては,基本単位の大きさ,例の与え方,説明の詳しさ,項目の並べ方などにおいて,いろいろな問題点がある。データとしての解説文書はラベルの引用が正確に行われていれば,項目単位で完成されていればよく,項目の置かれる順序は任意である。ユーザーのために出力されるときにラベルの引用に従って順序づけられる。しかし,解説文書の項目の並べ方が任意であるとすれば,作業時点での検索に対する支援システムが必要となる。ここでは検索用文書を別に設けることによって解決を図った。 | KAKENHI-PROJECT-04451135 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04451135 |
遺伝子改変マウスによる、加齢性難聴の内耳免疫メカニズムの解明 | 加齢性難聴の病態解明・予防法の確立は、超高齢化社会において重要な課題である。これまでの疫学データでは、慢性炎症や免疫機能が、加齢性難聴の発症に影響するとしめされており、内耳免疫は、なんらかの分子メカニズムで加齢性難聴の病態にかかわると考えられる。当研究では、免疫機能を制御する遺伝子であるFkbp5やMifの、ノックアウトマウスの加齢性難聴と、老化過程の内耳形態の検討や、内耳での遺伝子発現の網羅的解析を行う。また、野生型老齢マウスにおいても、加齢性難聴と内耳免疫の関わりを、遺伝子発現解析などにより解明する。本研究は加齢性難聴の研究と診療に、内耳免疫を切り口とした大きな波及効果をもたらす。加齢性難聴の病態解明・予防法の確立は、超高齢化社会において重要な課題である。これまでの疫学データでは、慢性炎症や免疫機能が、加齢性難聴の発症に影響するとしめされており、内耳免疫は、なんらかの分子メカニズムで加齢性難聴の病態にかかわると考えられる。当研究では、免疫機能を制御する遺伝子であるFkbp5やMifの、ノックアウトマウスの加齢性難聴と、老化過程の内耳形態の検討や、内耳での遺伝子発現の網羅的解析を行う。また、野生型老齢マウスにおいても、加齢性難聴と内耳免疫の関わりを、遺伝子発現解析などにより解明する。本研究は加齢性難聴の研究と診療に、内耳免疫を切り口とした大きな波及効果をもたらす。 | KAKENHI-PROJECT-19K18807 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K18807 |
アメーバ性角膜炎迅速診断法に応用可能なアカントアメーバ特異抗原蛋白質の同定と発現 | アカントアメーバのヒト角膜上皮細胞に対する細胞障害性を検討した結果、従来は非病原性とされていた遺伝子型にも傷害性が認められた。この結果は現在用いられている18SrRNA遺伝子による病原性の分類は、角膜炎に関わる病原性を正確に反映するものでは無いことを示唆するものであった。またアカントアメーバが分泌するプロテアーゼが細胞傷害性に大きく影響する可能性は低いこと、さらにはアメーバ性角結膜炎の原因の一つにインターフェロン産生が関与していることが示唆される結果が得られた。病原性種のcDNAライブラリーを作製しウサギ抗体を用いてスクリーニングを実施したが、陽性クローンは得られなかった。本研究は、アカントアメーバの特異抗原蛋白質を標的としたより簡便で迅速な免疫学的検出・同定法開発の基礎となる、アカントアメーバの特異抗原蛋白質の同定を目的として、当該年度は以下の実験を実施した。1)ヒト角膜上皮培養細胞を用いた細胞障害性の検討ヒト角膜上皮培養細胞を用いたAcantahmoeba病原性の評価方法を検討した。病原性の異なるアメーバ(A. castellani、A. polyphaga、A. palestinensisおよびA. astronyxsis)の細胞傷害性を、ヒト角膜上皮細胞(HCE-T)を用いて比較した。その結果、病原性種とされている2種(A. castellanii、A. polyphaga )および非病原性種とされている1種(A. palestinensis)に細胞傷害性が確認された。一方、非病原性種とされている遺伝子型7(T7)であるA. astronyxis 30137株では細胞障害性が認められなかった。現在、細胞傷害性をLactate Dehydrogenase(LDH)で定量化する予備実験中であり、今後はさらに詳細な解析が可能になることが期待される。また、A. castellaniにおいては、昨年度に作製したウサギポリクローナル抗体を用いて中和試験をおこなった結果、。血清をそれぞれ最終濃度50倍、100倍希釈まで細胞傷害性を阻止した。2)蛋白質の解析についてA. polyphaga, hatchetti,およびcastellani(環境およびヒト由来株)のSDS-PAGEをおこなったが、泳動パターンに大きな違いは見られなかった。A. castellaniヒト由来株は、ウサギ免疫血清を作成し原虫抗原のウエスタンブロット解析を行った。現在は当該の抗体を用いて、他のAcanthamoeba属原虫との抗原性の違いを検討中である。アカントアメーバの病原性に関わる抗原蛋白質については未だ明らかになっていない部分が多く、また現在の18SrRNAに基づく病原性種の分類法は、同じ種名のものが別の遺伝子型に分類されるなど分類結果に矛盾が生じる等、新たな分類法の確立が望まれている。そこで本研究では病原性を規定する因子の同定の基礎となるデータの蓄積を目的として次の実験を実施した。1)細胞障害性について:18S rRNA遺伝子による病原性および非病原性種について、ヒト角膜上皮細胞に対する細胞障害性を検討した。その結果、病原性種として分類されている遺伝子型T4であるA. castellani、A. palestinensis、A. hatchettiおよびA. polyphagaではすべての細胞が破壊される強い細胞傷害性が認められた。また従来は非病原性として認識されていた遺伝子型T6であるA. palestinensisにも同様に細胞傷害性が認められた。一方非病原性遺伝子型T7であるA. astronyxsisでは細胞障害性は認められ無かった。これらの結果は、現在普及している18S rRNA遺伝子による病原性の有無の分類は、角膜炎に関わる病原性を正確に反映するものでは無いものであることを示唆するものであった。2)病原性種A. castellaniiの抗原遺伝子同定の試み:A. castellanii 50492株のcDNAライブラリーを作製した。cDNAライブラリーのタイトレーションを実施した結果、オリジナルライブラリーで2.2 x 10の6乗pfu/ml、増幅ライブラリーで6.6 x 10の9乗pfu/mlであった。このライブラリーを、A. castellanii 50492株に対するウサギポリクロナール抗体を用いてイムノスクリーニングを実施したが、陽性クローンは得られなかった。アカントアメーバは局所での寄生はするが全身感染しないため感染血清の確保が難しく、代替として用いたアメーバ破砕抗原への免疫血清ではスクリーニングに適した抗体を得られなかったことがクローンを得られなかった原因であると考えられた。アカントアメーバのヒト角膜上皮細胞に対する細胞障害性を検討した結果、従来は非病原性とされていた遺伝子型にも傷害性が認められた。この結果は現在用いられている18SrRNA遺伝子による病原性の分類は、角膜炎に関わる病原性を正確に反映するものでは無いことを示唆するものであった。またアカントアメーバが分泌するプロテアーゼが細胞傷害性に大きく影響する可能性は低いこと、さらにはアメーバ性角結膜炎の原因の一つにインターフェロン産生が関与していることが示唆される結果が得られた。病原性種のcDNAライブラリーを作製しウサギ抗体を用いてスクリーニングを実施したが、陽性クローンは得られなかった。本研究は、アカントアメーバの特異的抗原蛋白質を標的としたより簡便で迅速な免疫学的検出・同定法開発の基礎となる、アカントアメーバの特異的抗原蛋白質の特定を目的とする。 | KAKENHI-PROJECT-23590836 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23590836 |
アメーバ性角膜炎迅速診断法に応用可能なアカントアメーバ特異抗原蛋白質の同定と発現 | 本年度は、角膜炎患者由来のアカントアメーバ病原性株(Acantahmoeba castelanii)の栄養体に特異的に発現されている抗原蛋白質を、環境由来の非病原性株との比較することによって解析する事を目的に、以下の実験を実施した。1.解析用Acanthamoeba種および株の入手:解析用としてATCCよりA. castellanii、2株(環境由来株および角膜炎患者由来株)、A. polyphaga、1株(角膜炎患者由来株)、A.hatchetti、1株(環境由来株)を入手し、PYGC無菌培地で栄養体を継代維持した。また河川水等からのAcanthamoeba環境株の分離を試みた。その結果、ATCCからの4株については栄養体の増殖が認められ現在遺伝子型の解析を進めている。また10種類の環境試料からのAcanthamoeba株の分離を試みたが、非病原性の遺伝子型の分離には至っていない。2.病原性A. castellaniiに対するポリクロナール抗体の作製:病原性株に特異的に発現している蛋白質解析を実施するため、角膜炎患者由来のA. castellanii ATCC 50492株の可溶化蛋白質に対するウサギポリクロナール抗体の作製を試みた。PYGC培地で無菌的に培養したA. castelanii ATCC30234株栄養体の可溶化蛋白室でウサギ2羽を6週間免疫しポリクロナール抗体を作製し、ELISA法により抗体価上昇を確認した。当初の予定よりやや遅れている理由は以下の通りである。1.次世代シークエンサーを用いたA. castellanii cDNAの網羅的な比較解析を実施する予定で準備を進めていたが、方法として適切でない事が判明し、年度途中よりcDNAライブラリー構築からやり直したため。2.環境分離株の無菌培地への馴化に時間を要してしまい、HCE-T細胞への細胞障害性の検討を行なえなかったため。3.年度途中より1名の分担研究者が休職したため。当初の予定より達成が遅れている理由は以下の通りである。1. Acantamoeba ATCC株のPYGC培地への馴化に時間がかり、充分な細胞数を得られるまでに時間がかったこと。2.環境水からの非病原性株の分離培養が出来なかったこと。3. 23年度より1名の分担研究者が休職したこと。(24年度から復職)4.以上の要因により、病原性および非病原性株の蛋白質、遺伝子レベルの解析を進める事が出来なかった。1)Acanthamoeba病原性種に特異的な蛋白質の解析A. castellaniiのcDNAライブラリーを抗アカントアメーバウサギ抗体によりイムノスクリーニングし、選択したクローンのcDNAの塩基配列を特定し、病原性Acanthamoebaで発現している抗原蛋白質を同定する。2)既報の病原性関連因子と細胞傷害性の関連性の検討既報の病原性に関連するといわれる分子(mannose-binding protein: MBP, serine protease, cysteine protease)については、いまだデータベース上の情報が殆どない。 | KAKENHI-PROJECT-23590836 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23590836 |
正常および難聴モデルマウス内耳の細胞・細胞外基質間の接合とインテグリンの局在 | 正常マウスの蝸牛外側壁における膜貫通型糖タンパクbetal-integrinの局在を、高解像光学顕微鏡レベルで検討した。betal-integrinは蝸牛血管条の辺縁細胞の基底側ならびに中間細胞に発現していた。その発現の時期を出生0日から出生60日に至るまで内耳器官形成の過程で観察したところ、生後12日から15日の間にbetal-integrinの発現強度は飽和しており、血管上の組織学的構造が成熟する時期に一致していた。このbetal-integrinは腎の発生において上皮系細胞と間葉系細胞が接合する際に必須に発現することが報告されており、内耳の器官形成においても上皮系細胞である辺縁細胞と間葉系細胞である中間細胞の接合に重要であることが示唆された。ヒト遺伝性難聴DFN3のモデルであるマウス(Brn4-knockout mouse、癌研究所細胞生物部より供与)の蝸牛外側壁の超微細構造を透過型電子顕微鏡により観察した。このマウスではラセン靭帯の線維細胞の異常や細胞外基質の減少が認められたが、血管条の異常は認められず、辺縁細胞および中間細胞、ならびにその接合部は正常様の形態を呈していた。この動物では線維細胞および細胞外基質に異常が見られたことから、分子レベルではintegrin groupのいずれかの異常が示唆されたが、血管条の構造およびbetal-integrinの発現は保たれていた。以上から、betal-integrinは蝸牛外側壁の器官形成に関与する重要な分子であるが、遺伝性難聴DFN3に関しては直接的な影響を与えていないことが判明した。正常マウス内耳の細胞・細胞外基質間の接合部を形態学的にまた抗インテグリン抗体を用いて免疫組織化学的に解析していく上で、本年度の研究において以下の知見を得た。1.界面活性剤で処理した内耳蝸牛の凍結割断組織を走査型電子顕微鏡を用いて観察した。(1)コルチ器を構成する有毛細胞および支持細胞の細胞接合部位や、支持細胞と蝸牛基底板の細胞・細胞外基質間の接合部を裏打ちする部分にはアクチンに相当する非常に密な細胞骨格構造が認められ、これらを微小管束が連結する規則的な3次元的ネットワークが認められた。この構造は音刺激の振動受容器であるコルチ器の剛性を維持する上で重要な役割を担っていることが示唆された。(2)有毛細胞不動毛間の細胞外架橋構造が、脱膜処理を行った試料においても不動毛の細胞骨格に連結されており、その接合部には径50-70ナノメートルの円盤状の構造が認められた。これらの構造は不動毛間の細胞外架橋構造の付着部にあると考えられている機械電気変換イオンチャンネルが作動する際に、その働きを修飾する可能性があると考えられた。2.抗β1インテグリン抗体(ケミコン社より市販、カタログNo.MAB1997)を用いて成体および発生期のマウス蝸牛におけるβ1インテグリンの発現部位を免疫組織化学的に光学顕微鏡レベルで観察した。蝸牛外側壁の血管条にβ1インテグリンの発現が認められた。発生0日より弱い発現が認められ、生後15日目に染色強度は成体のレベルに達していた。この時期はマウス蝸牛の血管条の成熟と内リンパ電位の形成時期に一致しており、β1インテグリンが血管条の器官形成に関与している可能性が示唆された。正常マウスの蝸牛外側壁における膜貫通型糖タンパクbetal-integrinの局在を、高解像光学顕微鏡レベルで検討した。betal-integrinは蝸牛血管条の辺縁細胞の基底側ならびに中間細胞に発現していた。その発現の時期を出生0日から出生60日に至るまで内耳器官形成の過程で観察したところ、生後12日から15日の間にbetal-integrinの発現強度は飽和しており、血管上の組織学的構造が成熟する時期に一致していた。このbetal-integrinは腎の発生において上皮系細胞と間葉系細胞が接合する際に必須に発現することが報告されており、内耳の器官形成においても上皮系細胞である辺縁細胞と間葉系細胞である中間細胞の接合に重要であることが示唆された。ヒト遺伝性難聴DFN3のモデルであるマウス(Brn4-knockout mouse、癌研究所細胞生物部より供与)の蝸牛外側壁の超微細構造を透過型電子顕微鏡により観察した。このマウスではラセン靭帯の線維細胞の異常や細胞外基質の減少が認められたが、血管条の異常は認められず、辺縁細胞および中間細胞、ならびにその接合部は正常様の形態を呈していた。この動物では線維細胞および細胞外基質に異常が見られたことから、分子レベルではintegrin groupのいずれかの異常が示唆されたが、血管条の構造およびbetal-integrinの発現は保たれていた。以上から、betal-integrinは蝸牛外側壁の器官形成に関与する重要な分子であるが、遺伝性難聴DFN3に関しては直接的な影響を与えていないことが判明した。 | KAKENHI-PROJECT-12770943 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12770943 |
顎関節症;形態変化と滑液成分の関連-破骨細胞を動かす因子に着目して- | 本研究の目的は、顎関節治療の一環として行なわれる関節腔洗浄療法の治療の際に採取される滑液を生化学的に解析するとともに、解剖学的所見と臨床症状を調査し、その関連性を追及することである。本年度におこなった内容は以下の通りである。1.北海道大学病院歯科診療センターを受診しclosed lockを伴う顎関節症患者の顎関節腔内滑液を採取した。今回はさらにそのサンプル数を増やして追試をおこなった。サンプルの上清のみを生化学的分析に用いた。生化学的分析としてはEIA kitにてプロスタグランジン濃度を測定した。またその測定したプロスタグランジン濃度と顎関節の臨床症状および検査結果の関連性を調査した。臨床症状は、開口時摂食時の疼痛度をVASにて評価するとともに開口度を測定した。解剖学的所見はMRIにて骨変化を評価し、関節炎・軟骨変化・癒着に関しては関節穿刺術時に同時に行なわれる関節鏡所見にて評価した。プロスタグランジン量と骨変化・関節炎・軟骨変化・癒着の重症度および臨床症状との相関については現在検討中である。本研究の目的は顎関節治療の一環として行なわれる関節腔洗浄療法の治療の際に採取される滑液を生化学的に解析するとともに、解剖学的所見と臨床症状を調査し、その関連性を追及することである。本年度におこなった内容は以下の3つである。1.北海道大学病院歯科診療センターを受診し、関節腔洗浄療法を受けた患者38名(男性3名、女性35名)の滑液の生化学的分析をおこなった。関節炎マーカーとしてprostaglandin E_2(PGE_2)についてERISAをもちいて計測した。その結果、15名(39.5%)にPGE_2が検出された(70.2ng/mg protein)。同時にタンパク量も測定を行い、PGE2検出群(0.912mg/ml)で非検出群(0.684mg/ml)に対して有意に高い値となった。2.上記患者の解剖学所見(MR所見、関節鏡所見)をPGE_2検出群、非検出群の2群間にて検討した。その結果、骨変化および退行性変化ではPGE_2検出群が有意に重症度の高い評価となった。また癒着に関しても有意差はないもののPGE_2検出群に高い評価となった。3.PGE2検出群の2名において頭部X線規格写真の分析(解剖学的分析)を行ったところ、下顎枝後縁(G-Z-N)の前傾が2症例ともに認められた。来年度はさらに症例数を増やすとともに他のサイトカインについて分析をおこなう。また希釈滑液からの顎関節滑液細胞の単離、培養を試みるとともに骨吸収抑制剤の効果についても検討を行う予定である。本研究の目的は顎関節症治療の一環として行われる関節腔洗浄療法の治療の際に採取される滑液を生化学的に解析するとともに、解剖学的所見と臨床症状を調査しその関連を追及することである。本年度に行なった内容は以下の3点である。1.北海道大学病院歯科診療センターを受診しclosed lockを伴う顎関節症患者の上関節腔内滑液を採取した。その後サンプルを3000×gで10分間遠心分離し、上清のみを生化学的分析に用いた。生化学的分析としてはenzyme immunoassay kitにてプロスタグランジン濃度を測定した。またその測定したプロスタグランジン濃度と顎関節の臨床症状および検査結果の関連性を調査した。臨床症状は、開口時摂食時の疼痛度をVASにて評価するとともに開口度を測定した。解剖学的所見はMRIにて骨変化を評価し、関節炎・軟骨変化・癒着に関しては関節穿刺術時に同時に行なわれる関節鏡所見にて評価した。その結果、プロスタグランジン量と骨変化の重症度に有意な相関が認められた。しかし関節炎、軟骨変化、癒着の重症度とプロスタグランジン量に相関は認められなかった。2.上記患者の滑液サンプルを用いてサイトカイン(IL-1β,-6,TNF-α)に関してenzyme immunoassay kitを用いてサイトカイン濃度を測定を行なった。3.上記患者の滑液サンプル中の滑膜細胞の単離を行ない、10%FCS含有α-MEMにて培養を試みている。その細胞の性質を分析するとともに同細胞に対する骨吸収抑制剤の効果について検討を行なう予定である。本研究の目的は、顎関節治療の一環として行なわれる関節腔洗浄療法の治療の際に採取される滑液を生化学的に解析するとともに、解剖学的所見と臨床症状を調査し、その関連性を追及することである。本年度におこなった内容は以下の通りである。1.北海道大学病院歯科診療センターを受診しclosed lockを伴う顎関節症患者の顎関節腔内滑液を採取した。今回はさらにそのサンプル数を増やして追試をおこなった。サンプルの上清のみを生化学的分析に用いた。生化学的分析としてはEIA kitにてプロスタグランジン濃度を測定した。またその測定したプロスタグランジン濃度と顎関節の臨床症状および検査結果の関連性を調査した。臨床症状は、開口時摂食時の疼痛度をVASにて評価するとともに開口度を測定した。解剖学的所見はMRIにて骨変化を評価し、関節炎・軟骨変化・癒着に関しては関節穿刺術時に同時に行なわれる関節鏡所見にて評価した。プロスタグランジン量と骨変化・関節炎・軟骨変化・癒着の重症度および臨床症状との相関については現在検討中である。 | KAKENHI-PROJECT-17791506 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17791506 |
心肥大の発症機序に関する分子生物学的研究とその臨床応用 | (1)基礎的研究(a)インスリン様増殖因子による心筋細胞肥大(b)内因性エンドセリンによる心筋肥大われわれは以前、ラット培養心筋を用いて、血管収縮物質であるエンドセリン(ET-1)が心筋特異遺伝子発現の亢進を伴う心筋肥大を誘発することを示した(Circ.Res.1991;69:209-215)。本研究では、心筋細胞においてpreproET-1(ppET-1)のmRNAが発現していること、それがangiotensin II(Ang II)により亢進されることをNorthern blot法とin situ hybridization法により示した。さらに内因性のET-1が実際にオートクリン/パラクリン因子として心筋細胞自体に作用している可能性を、最近開発されたETA receptor antagonist(BQ123)を用いる方法、およびppET-1に対するantisense oligonucleotideを用いる方法で示した(J.Clin.Invest.1993;92:398-403)。(2)臨床的研究本研究で、拡張型心筋症および肥大型心筋症の左室心筋において、実験的心肥大で心肥大のマーカーとして用いられるskeletal α-actin mRNAが、肥大の見られない患者群に比べ、増加していることが示された(論文投稿中)。(1)基礎的研究(a)インスリン様増殖因子による心筋細胞肥大(b)内因性エンドセリンによる心筋肥大われわれは以前、ラット培養心筋を用いて、血管収縮物質であるエンドセリン(ET-1)が心筋特異遺伝子発現の亢進を伴う心筋肥大を誘発することを示した(Circ.Res.1991;69:209-215)。本研究では、心筋細胞においてpreproET-1(ppET-1)のmRNAが発現していること、それがangiotensin II(Ang II)により亢進されることをNorthern blot法とin situ hybridization法により示した。さらに内因性のET-1が実際にオートクリン/パラクリン因子として心筋細胞自体に作用している可能性を、最近開発されたETA receptor antagonist(BQ123)を用いる方法、およびppET-1に対するantisense oligonucleotideを用いる方法で示した(J.Clin.Invest.1993;92:398-403)。(2)臨床的研究本研究で、拡張型心筋症および肥大型心筋症の左室心筋において、実験的心肥大で心肥大のマーカーとして用いられるskeletal α-actin mRNAが、肥大の見られない患者群に比べ、増加していることが示された(論文投稿中)。初年度は、ラット心筋培養をもちいたin vitro study中心に行なった。われわれは最近、エンドセリン-1(ET-1)が培養心筋細胞に対して肥大作用をもつことを示した(Circ.Res.1991)ので、本年度はラット培養心筋細胞における、内因性ET-1のオートクリン機構による心筋肥大作用について、ETA receptor antagonistであるBQ-123を用いた実験などで検討した。まずラット培養心筋細胞において、ppET-1mRNAが発現していることがNorthern blotおよびin situ hybridizationにて示された。ppET-1mRNAレベルは、アンギオテンシンII(AngII)、ET-1およびTPAにより30分後をピークに亢進された。つぎに内因性のET-1が実際にautocrine factorとして、心筋細胞自体に作用しているかどうかを検討した。まずBQ-123はET-1によるロイシン取り込みの亢進をdoseーdependentに抑制した。さらに、BQ-123はAngIIによるロイシン取り込みの亢進も同様に抑制した。また、ppET-1のcoding regionに対するantisense oligonucleotideはppET-1mRNAをブロックすることにより、AngIIによるロイシン取り込みの亢進を抑制した。これらのことは、AngIIによる心筋肥大に、内因性ET-1が関与することを示唆すると考えられた。以上により、ET-1が心筋細胞により産生され、内因性ET-1がAngIIによる心筋肥大誘発に関与することが示された。またin vivoにおいてもBQ-123が圧負荷による心肥大を抑制することが示唆された。(1)基礎的研究a)インスリン様増殖因子による心筋細胞肥大b)内因性エンドセリン-1による心筋細胞肥大以前われわれは、血管作動物質であるエンドセリン-1(ET-1)がラット心筋培養細胞に対して、強い肥大誘発作用を持つことを示した(Circ.Res.1991:69:209-215)。本年度はその研究をさらに進展させ、(1)心筋細胞がET-1を産生すること、(2)心筋細胞で産生されたET-1が、オートクリン/パラクリン因子として、心肥大の誘発に関与していることをin vitroで示した(J.Clin.Invest.1993;92:398-403)。(2)臨床的研究われわれは以前、RT-PCR法を用いて心筋生検サンプルより、心筋内のmRNA量を定量化するシステムを開発した(J.Mol.Cell Cardiol.1991;23:1117-1125)。本年度は実際に、各種心疾患患者の心筋生検サンプル中のmRNA量を定量化した。その結果、拡張型心筋症および肥大型心筋症の左室心筋において、実験的心肥大で心肥大のマーカーとして用いられるskeletal α-actin mRNAが、肥大の見られない患者群に比べ、増加していることが示された(論文投稿中)。 | KAKENHI-PROJECT-04670522 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04670522 |
細胞内マグネシウム濃度変化によるG蛋白質制御機構の計算機シミュレーションによる解明 | Mg^<2+>イオンの局所的濃度変化によるG蛋白質の制御機構を解明すべく、以下のことを行った。1.G蛋白質・生体膜・イオン複合体モデルの自動構築プログラムの開発2.ラフトモデルの分子動力学シミュレーションによる生体膜界面の特性の検討3.脂質二重膜モデルのライブラリー拡充とデータベースの構築1.の結果、および、これまでの研究成果を博士論文としてまとめあげた。今後、同内容に追加計算の結果を加え、国際誌に投稿する予定である。2.は、前年度に開発した生体膜構築プログラムGLYMMを用いて、ラフトモデルを構築し、その分子動力学シミュレーションを行い、生体膜界面の電気特性、および、イオン濃度を解析した。その結果を、アルツハイマー病の主因であるアミロイドβのラフト上凝集と絡め、論文としてまとめ、国際誌に投稿した。Reviewerからの意見を参考に再計算をし、再投稿を予定している。脂質分子の違いによって、膜界面でのMg^<2+>イオンの局所的濃度変化が起こるかを明らかにするため、GLYMMを用いて、計90種類の異なる脂質分子から成る脂質二重膜モデルのシミュレーションを行い、3.の膜ライブラリーを構築した。結果をデータベースとして構築し、膜界面でのMg^<2+>イオンの挙動を追う基盤を構築した。データベースは学外の研究者にも使ってもらえるよう公開している。3.の内容も博士論文としてまとめた。今後、加筆修正し、国際誌に投稿する予定である。計算機シミュレーションを用いて、Mg^<2+>イオンの局所的濃度変化によるG蛋白質の制御機構を解明すべく、以下のことを行った。(1)Mg配位型とMg解離型G蛋白質の分子動力学計算(2)糖鎖自動構築プログラムの開発(ラフト構築のため)(3)生体膜モデル(ラフトモデル)の構築プログラムの開発とその分子動力学シミュレーション(4)蛋白質・生体膜・イオン複合体のモデル構築プログラムの開発(5)G蛋白質の生体膜界面における分子動力学計算・構造予測(1)の結果、Mgイオンによる低分子量Gタンパク質の制御機構を明らかにすることができた。この結果は、論文としてまとめ、現在、投稿準備中である。(2)、(3)はVMDというソフトウェアのプラグインとしてプログラムを構築した。このプログラムを用いて、ラフトモデルを構築し、その分子動力学シミュレーションを行い、ラフトモデルの性質を再現することに成功した。そして、この結果を今夏のCBI学会2004年大会、および、今冬の生物物理学会年会にて発表した。さらに、今春の日本薬学会物理系部会フィジカルファーマフォーラム2005でも発表予定である。また、本プログラムを用いた応用研究として、アルツハイマーβ蛋白質のラフト膜上での凝集機構の解明も併せて行い、実験結果を裏付けるシミュレーション結果を得ることができた。(2)、(3)のプログラムを利用して、(4)のタンパク質・生体膜・イオン複合体モデルの構築を行い、生体膜に低分子量Gタンパク質であるH-Rasを結合させ、(5)の分子動力学計算を行った。この結果は、今春の日本薬学会第125年会で発表予定である。Mg^<2+>イオンの局所的濃度変化によるG蛋白質の制御機構を解明すべく、以下のことを行った。(1)Mg配位型とMg解離型G蛋白質の分子動力学計算(2)生体膜モデル構築プログラム"GLYMM"の開発(3)脂質二重膜モデルのライブラリー構築(4)G蛋白質・生体膜・イオン複合体モデルの自動構築プログラムの開発(1)の結果を論文としてまとめ、Journal of the American Chemical Societyに投稿し、採択された。(2)は、GLYMMという名前を付け、VMDのプラグインとしてプログラムを構築した。現在も開発を継続している。このプログラムを用いて、ラフトモデルを構築し、その分子動力学シミュレーションを行った。その結果を、日本薬学会物理系部会PPF2005で発表し、総合優秀論文賞を受賞した。脂質分子の違いによって、膜界面でのMg^<2+>イオンの局所的濃度変化が起こるかを明らかにするため、(2)のプログラムを利用して、異なる脂質分子から成る脂質二重膜モデルのシミュレーションを行い、(3)の膜ライブラリーを構築した。現在までに、POPC, POPE, POPS, DPPC, DPPE, DPPS, DMPC, DMPE, DMPS, N-lauryl-SM, N-myristoyl-SM, N-palmitoyl-SM, N-oleoyl-SM, N-arachidoyl-SMの計15種類の計算を終了している。今後さらに種類を増やし、結果をデータベースとして構築するとともに、膜界面でのMg^<2+>イオンの挙動を追う予定である。(2)のプログラムを拡張して、(4)のタンパク質・生体膜・イオン複合体モデルを自動で構築するプログラムを開発し、生体膜にGタンパク質共役型受容体であるウシロドプシンを自動で埋め込むことに成功した。Mg^<2+>イオンの局所的濃度変化によるG蛋白質の制御機構を解明すべく、以下のことを行った。1.G蛋白質・生体膜・イオン複合体モデルの自動構築プログラムの開発2.ラフトモデルの分子動力学シミュレーションによる生体膜界面の特性の検討3.脂質二重膜モデルのライブラリー拡充とデータベースの構築1.の結果、および、これまでの研究成果を博士論文としてまとめあげた。今後、同内容に追加計算の結果を加え、国際誌に投稿する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-04J03636 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04J03636 |
細胞内マグネシウム濃度変化によるG蛋白質制御機構の計算機シミュレーションによる解明 | 2.は、前年度に開発した生体膜構築プログラムGLYMMを用いて、ラフトモデルを構築し、その分子動力学シミュレーションを行い、生体膜界面の電気特性、および、イオン濃度を解析した。その結果を、アルツハイマー病の主因であるアミロイドβのラフト上凝集と絡め、論文としてまとめ、国際誌に投稿した。Reviewerからの意見を参考に再計算をし、再投稿を予定している。脂質分子の違いによって、膜界面でのMg^<2+>イオンの局所的濃度変化が起こるかを明らかにするため、GLYMMを用いて、計90種類の異なる脂質分子から成る脂質二重膜モデルのシミュレーションを行い、3.の膜ライブラリーを構築した。結果をデータベースとして構築し、膜界面でのMg^<2+>イオンの挙動を追う基盤を構築した。データベースは学外の研究者にも使ってもらえるよう公開している。3.の内容も博士論文としてまとめた。今後、加筆修正し、国際誌に投稿する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-04J03636 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04J03636 |
フォーマル手法およびシミュレーション手法の統合によるハードウェア検証の効率化 | フォーマル手法およびシミュレーション手法はハードウェア検証における2つの方式として実用的に用いられてきている.しかし,この2つの方式を組み合わせる方法については,まだ十分研究されていない.本研究では,カバレッジと呼ばれる量的基準に関して,シミュレーション手法で得られた結果をもとに,達成度が不足している部分に対してフォーマル手法を適用することにより,カバレッジの改善が見られることを,数千ゲート程度のブロックモジュールに対する実験によって示した.フォーマル手法およびシミュレーション手法はハードウェア検証における2つの方式として実用的に用いられてきている.しかし,この2つの方式を組み合わせる方法については,まだ十分研究されていない.本研究では,カバレッジと呼ばれる量的基準に関して,シミュレーション手法で得られた結果をもとに,達成度が不足している部分に対してフォーマル手法を適用することにより,カバレッジの改善が見られることを,数千ゲート程度のブロックモジュールに対する実験によって示した.SoC(システム・オン・チップ)など大規模な集積回路の設計においては,設計検証工程の効率化が依然課題となっている.これに対処すべく,近年,多くの新しい手法や技術が提唱・実用化が進んでいる.主な技術として,シミュレーション手法とフォーマル検証手法が用いられているが,この2つの方式はばらばらに適用されているのが実情である.2つの方式を統合する方法については,ほとんど研究が行われていない.本研究では,一方の方式で検証を行った場合の結果を,他方の方式での検証に利用する手法の確立を目指す.さらに,2つの方式をタイトに組み合わせることにより,より網羅性の高いシームレスな検証結果を効率よく得る手法の確立を目指す本年度は,まず,フォーマル検証の過程で得られる中間的な情報を,シミュレーション手法に転用する手法について検討した.有界モデル検査手法をベースとした手法の検討を行った.有界モデル検査では,SATソルバーが内部エンジンとして用いられているが,有界モデル検査を行ったときに,生成される矛盾節と呼ばれる論理式を,SATソルバー実行時に取り出して,その後,シミュレーション用テストベンチにおいて,制約(満足しなければならない条件)として与えるアルゴリズムを確定した.シミュレーションにおける制約は,制約付きランダムパタン生成の利用を想定しているが,シミュレーションは有界モデル検査と異なり,制約が各サイクル毎に独立して有効になるため,複数のサイクルにまたがる制約を処理することができない.このため,1サイクルにのみ言及している制約を用いることを考えている.現在,考案したアルゴリズムについて実装を進めているSoC(システム・オン・チップ)など大規模な集積回路の設計においては,設計検証工程の効率化が依然課題となっている.主な技術として,シミュレーション手法とフォーマル検証手法が用いられているが,この2つの方式はばらばらに適用されているのが実情である.2つの方式を統合する方法については,ほとんど研究が行われていない.本研究では,一方の方式で検証を行った場合の結果を,他方の方式での検証に利用する手法の確立を目指す.さらに,2つの方式を組み合わせることにより,より網羅性の高い検証結果を得る手法の確立を目指す.23年度は,22年度に検討した,有界モデル検査の途中で得られる矛盾節をシミュレーション用テストベンチで制約として与える手法の実装を主として行った.シミュレーションでは制約が各サイクル毎に独立して有効になるため,複数のサイクルにまたがる制約を処理することができず,1サイクルのみに言及している制約を用いている.人工的に作成した小規模な順序機械の例に対しては,ランダムシミュレーションでは,3時間以上かかってもカバーできない状態に,本手法では20秒前後で到達できることを確認できた.現在,この結果をもとに,さらに実用的な例題について実験を進めようとしている.そのためには,ハードウェア記述言語によって作成された設計例からSATソルバーに入力するための記述を得て,本手法により得られた制約を元の設計記述に埋め込む必要がある.商用ツールを利用してこの変換を行うと最適化機能により,制約と元の記述との対応関係が大きく損なわれ,本手法の効果が確認できないことが判明した.フォーマル検証実験用に作成されたベンチマーク例題を用いた計算機実験を行うよう変更して,このために変換ツールの実装を行っている.並行して,シミュレーション結果をフォーマル検証に利用する手法についても検討を行った.SoC(システム・オン・チップ)など大規模な集積回路の設計においては,設計検証工程の効率化が依然課題となっている.主な技術として,シミュレーション手法とフォーマル検証手法が用いられているが,この2つの方式はばらばらに適用されているのが実情である.2つの方式を統合する方法については,ほとんど研究が行われていない.本研究では,一方の方式で検証を行った場合の結果を,他方の方式での検証に利用する手法の確立を目指している.24年度は,23年度に検討・実験した,有界モデル検査においてSATソルバから得られる途中結果を,シミュレーション用テストベンチで制約として与える手法を,より実用的な設計例に対して適用する実験を行った.この手法は,複雑な論理条件を含む設計例では,カバレッジの改善に有効であることが,前年度の予備実験で確認されていたが,実用例では実際に効果がある例を確認することができなかった.このため,SATソルバの利用方法を改変することとした.具体的にはランダムシミュレーションではカバレッジをあげにくい信号線に対して,できるだけ異なるパターンを複数生成するように改変したSATソルバを適用することとした.このようにして得られたシミュレーションパタンをテストベンチで用いることによって,値を変えにくい信号線の値をより多く変化させることにより,全体のカバレッジを増大させる.特にトグルカバレッジに注目して,この手法を設計例に適用したところ,内部の状態変化のための論理条件が複雑であるような設計例に対しては,ランダムシミュレーションではカバーできなかったポイントをカバーできるようになり,また,カバーしにくかった信号線を特定の評価指標で評価したところ,2倍以上のトグル発生の改善が確認できた. | KAKENHI-PROJECT-22500047 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22500047 |
フォーマル手法およびシミュレーション手法の統合によるハードウェア検証の効率化 | 小規模な例題では効果を確認できたが,実設計例に対しては,9.で述べたように,利用している商用ツールの特性によって,効果を確認するための計算機実験を行うことができなかったため.24年度が最終年度であるため、記入しない。基本的には本来の計画通り実装と計算機実験を進める予定である.ただし,上記で述べたようにツール上の問題については,フォーマル検証実験用のベンチマークを利用することにより対応する予定であり,変換ツールの作成などそのための準備を進めている.24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22500047 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22500047 |
超音波による微小気泡の凝集体形成を利用した生体内細胞デリバリー技術の創成 | 本研究により、細胞に特異的に付着する受容体を用い、細胞を包含した微小気泡の凝集体を形成した。さらに音響放射力を利用して細胞を運搬するための基本的な技術を開発した。微小気泡と細胞はそれぞれ別々の波長で励起発光するように染色した。水槽中に設置された複数の超音波音源からの音波が、蛍光顕微鏡の同一視野内に焦点を形成するような実験系を構築した。形成した音場中の空間的形状や位置を視野内で変化させ、凝集体の動態を画像処理により追跡した。その結果、微小気泡の破壊を押さえることにより、凝集体を制御可能な持続時間を向上させることに成功した。また、超音波照射位置精度を動物実験によって検証し、その有効性を確認した。近年、治療のために特別に調製した細胞を患者に注入する造血幹細胞移植や免疫細胞療法などの細胞移植治療が行われている。特定の部位を標的とする場合はカテーテルを用いる手段もあるが、通常は血流に任せる以外に送達手段が無く、副作用の心配もある。そのため、我々がこれまでに行ってきた音響放射力を利用した微小気泡およびその凝集体の動態制御のための技術を応用することにより、生体内で細胞を送達できる可能性が有る。本研究は、細胞の周囲に微小気泡を付着させた凝集体を形成することにより、超音波の音響放射力を利用して細胞を血流中で運搬するための技術を開発することを目的とする。本研究では、マウス由来のColon-26細胞と、それに特異的に付着するトランスフェリンを表面に付着させた微小気泡(バブルリポソーム)を用いた。微小気泡の細胞への接着を促進するため、懸濁液中に均一に超音波を照射するための円筒形チャンバを製作した。微小気泡と細胞をそれぞれ別々の波長で励起発光するように染色し、細胞表面に接着した微小気泡の量を計測したところ、チャンバ内で音圧100kPa-ppの正弦波、照射時間を30秒とした場合に、細胞の接着量が最も高くなることが分かった。またこの条件で作成された、微小気泡付き細胞を水中に浮遊させ、駆動用超音波として中心周波数5MHzで音圧300kPa-ppの正弦波の平面波を照射したところ、細胞の分布に変化をもたらすことに成功した。一方、微小気泡を接着させていない細胞に関しては、同様の実験での音波照射下でも細胞の位置は変化しなかった。本実験より、微小気泡を細胞に接着させることにより、音響放射力が細胞の動態に影響することが明らかとなった。現在,診断目的で使われている超音波造影剤すなわち微小気泡を用いた低侵襲治療の研究が盛んに行われている.また,細胞を利用した低侵襲ながん治療が開発されている.しかし,体内に投与した微小気泡や細胞の挙動は血流に依存し,体内で拡散するため,投与量に対して疾患部へ到達する量が低いという問題があった.今回は微小気泡の凝集体を用いて2つの試みをしている.1つは,治療応用可能な微小気泡の複数経路同時捕捉を検討した.生体内の血管は分岐を繰り返す複雑な構造をしており複数経路に同時に微小気泡を捕捉できれば治療効率向上が期待できる.2つめに細胞を包含した微小気泡凝集体の動態制御を検討した.静水中,流水中での細胞を包含する微小気泡凝集体の制御法を検証した.静水中の細胞を包含した微小気泡は超音波照射によって音波の進行方向へ誘導することができた.流水中では分岐を有する人工血管流路において所望の経路へと細胞を包含した微小気泡凝集体を誘導できた.本研究では、マウス由来のColon-26細胞と、それに特異的に付着するトランスフェリンを表面に付着させた微小気泡(バブルリポソーム)を用いている。前年度と同様の条件で、細胞を包含した微小気泡凝集体を形成した。微小気泡と細胞はそれぞれ別々の波長で励起発光するように染色している。ポリエチレングリコールモノメタクリレート(PEGMA)にて成形した微小閉空間に凝集体を含んだ懸濁液を封入し、蛍光顕微鏡にて観察する実験系を構築した。微小閉空間内に対して制御用の超音波を照射し、視野内の凝集体の動態を画像処理により追跡した。さらに、超音波の連続照射時間を調整し、凝集体が視野内に常に収まるように複数方向から制御用の超音波を照射することによって凝集体の移動距離を計測した。実験の結果、中心周波数7MHz以上では、照射時間が2secを超えると凝集体を動かすことはできなくなった。一方、中心周波数5MHz以下では、6secの照射時間内に最大1.5mm程度の距離を移動させることができた。またこれまでに用いた全ての周波数範囲において、音場内の最大音圧に比例して凝集体の移動距離は長くなった。微小気泡の共振周波数は10MHz以上であることから、高周波数では微小気泡の崩壊が進み、細胞の推進力が低下したと考えられる。本研究では、マウス由来のColon-26細胞と、それに特異的に付着する微小気泡(バブルリポソーム)を用いて微小気泡ー細胞凝集体を形成し、様々な超音波照射条件の下での凝集体の挙動を観測し、生体に応用するために必要な凝集体の形成条件と、照射音波の時間的または空間的な条件を検討した。微小気泡と細胞はそれぞれ別々の波長で励起発光するように染色した。 | KAKENHI-PROJECT-26242053 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26242053 |
超音波による微小気泡の凝集体形成を利用した生体内細胞デリバリー技術の創成 | 水槽中に設置された単板また2次元アレイトランスデューサが、蛍光顕微鏡の同一視野内に焦点を形成するような実験系を構築した。視野内にはポリエチレングリコールモノメタクリレート(PEGMA)にて成形した微小閉空間を設置し、凝集体を含んだ懸濁液を封入した。ここで形成した超音波音場の変化に対する、凝集体の挙動を計測した。中心周波数37MHzの範囲で、最大500kPa-ppの高音圧で凝集体を押し出す方法では、凝集体の初速度は音圧の2乗に比例して上昇することが分かった。また、その過程で凝集体を数秒10秒程度の連続照射に曝した場合、凝集体の制御能が低下することが分かった。これは、高音圧によって微小気泡が崩壊したためと考えられる。この結果を受けて、最大音圧250kPa-ppの定在波音場を用いて、音圧値の低い節の空間的移動によって凝集体の位置を変化させた場合、制御可能な持続時間が30秒以上にまで向上し、20マイクロメートル/sの速度では60%以上の凝集体を移動させることができた。これは定在波を用いて低音圧の節で捕捉するため、微小気泡の破壊を押さえることができたためと考えられる。本研究により、超音波音場の照射条件に対する凝集体の挙動を解析し、凝集体の特性を評価するための手法を確立した。本研究により、細胞に特異的に付着する受容体を用い、細胞を包含した微小気泡の凝集体を形成した。さらに音響放射力を利用して細胞を運搬するための基本的な技術を開発した。微小気泡と細胞はそれぞれ別々の波長で励起発光するように染色した。水槽中に設置された複数の超音波音源からの音波が、蛍光顕微鏡の同一視野内に焦点を形成するような実験系を構築した。形成した音場中の空間的形状や位置を視野内で変化させ、凝集体の動態を画像処理により追跡した。その結果、微小気泡の破壊を押さえることにより、凝集体を制御可能な持続時間を向上させることに成功した。また、超音波照射位置精度を動物実験によって検証し、その有効性を確認した。現在までに、目的通りに細胞に微小気泡を付着させることと、音響照射力によってその細胞を動かすことに成功したため、おおむね順調に進展していると考えている。微小気泡および細胞の濃度については、生体応用を考慮した場合の現実的な値を設定でき、また照射超音波については生体応用に適している1MHzの連続波を用いて成功している。懸濁液を取り出して微小気泡と細胞の分布を蛍光観測し、微小気泡の付着の度合いや細胞の制御能を評価することについても当初の予定通りである。ただ、現状での実験条件について、使用している細胞は一種類のみであり、しかも直接治療に応用できないため、今後は動物実験を見据えた治療細胞の選定と、細胞に特異的に接着する微小気泡の調整が必要となる。本手法の発展により、同治療における投与効率の欠点を克服し、薬物との連携を様々に設定できる新しい治療法の可能性が拓ける。今後は細胞をT細胞に変更して、同様の試行を試み、細胞ー微小気泡凝集体の制御性を確認する。十分な制御性が確認された場合は、組織への定着実験と、生体内での制御実験に適用する。28年度が最終年度であるため、記入しない。医用生体工学、医用超音波本研究は(a)免疫細胞を含んだマイクロバブル凝集体の形成、(b)局所的音響放射力形成による人工血管内のバブル凝集体の誘導、(c)超音波照射後の細胞に付着した微小気泡の評価、の3段階に分かれている。超音波照射によるマイクロバブルの凝集現象は、これまでの先行研究の通り既知であるので、まず(a)により目的とする細胞を凝集体に含ませる手法を確立する。 | KAKENHI-PROJECT-26242053 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26242053 |
天然高分子のゲル化反応を利用した難濾過性コロイド懸濁質の除去法に関する研究 | 天然高分子であるアルギン酸ナトリウムとカルシウムイオンのゲル化反応を利用し,コロイド粒子をゲル内に包括させ懸濁系から除去する新規なコロイド分離プロセスについて検討を加えた。本研究で得られた結論は以下の通りである。1.アルギン酸ナトリウム水溶液にコロイド粒子としてベントナイトを懸濁させ,この混合液を塩化カルシウム水溶液に滴下し,コロイド包括ゲルを生成させた。この後,ゲル懸濁液を目開き0.84mmの篩に通し,篩に残る程度の強度のゲルが得られる調製条件を求めた。生物工学の分野で菌体・生物細胞などをアルギン酸ゲルに固定化する際には,アルギン酸ナトリウム水溶液,塩化カルシウム水溶液とも10000ppm程度の高濃度で用いられているが,両者ともその10分の1程度の濃度で十分な強度のゲルが得られることがわかった。2.塩化カルシウム水溶液10000ppmの条件下で,ベントナイト包括ゲルを調製し,ゲルを圧搾脱水した。ベントナイト包括ゲルの圧搾速度は,未処理のベントナイトの圧搾速度より速くなっていた。また,単にアルギン酸ナトリウムとベントナイトを混合しただけで,カルシウムによるゲル化を行わない場合には,逆にベントナイト単独の圧搾速度より遅くなった。したがって,ゲル化が圧搾速度の改善に本質的にかかわっていることになる。圧搾速度の尺度である圧密係数を求めたところ,ゲル中のアルギン酸ナトリウムとベントナイトの比が1:92:8程度のところで最大値が得られた。3.上の条件で調製したベントナイト包括ゲルの圧縮透過試験を行ったところ,未処理のベントナイトケ-クに比べ100分の1程度の透過比抵抗を示した。このことと2の結果より,ゲル化により,ベントナイトケ-クの内部の構造が大幅に変化し,脱水処理に適した構造となっていることが推察される。天然高分子であるアルギン酸ナトリウムとカルシウムイオンのゲル化反応を利用し,コロイド粒子をゲル内に包括させ懸濁系から除去する新規なコロイド分離プロセスについて検討を加えた。本研究で得られた結論は以下の通りである。1.アルギン酸ナトリウム水溶液にコロイド粒子としてベントナイトを懸濁させ,この混合液を塩化カルシウム水溶液に滴下し,コロイド包括ゲルを生成させた。この後,ゲル懸濁液を目開き0.84mmの篩に通し,篩に残る程度の強度のゲルが得られる調製条件を求めた。生物工学の分野で菌体・生物細胞などをアルギン酸ゲルに固定化する際には,アルギン酸ナトリウム水溶液,塩化カルシウム水溶液とも10000ppm程度の高濃度で用いられているが,両者ともその10分の1程度の濃度で十分な強度のゲルが得られることがわかった。2.塩化カルシウム水溶液10000ppmの条件下で,ベントナイト包括ゲルを調製し,ゲルを圧搾脱水した。ベントナイト包括ゲルの圧搾速度は,未処理のベントナイトの圧搾速度より速くなっていた。また,単にアルギン酸ナトリウムとベントナイトを混合しただけで,カルシウムによるゲル化を行わない場合には,逆にベントナイト単独の圧搾速度より遅くなった。したがって,ゲル化が圧搾速度の改善に本質的にかかわっていることになる。圧搾速度の尺度である圧密係数を求めたところ,ゲル中のアルギン酸ナトリウムとベントナイトの比が1:92:8程度のところで最大値が得られた。3.上の条件で調製したベントナイト包括ゲルの圧縮透過試験を行ったところ,未処理のベントナイトケ-クに比べ100分の1程度の透過比抵抗を示した。このことと2の結果より,ゲル化により,ベントナイトケ-クの内部の構造が大幅に変化し,脱水処理に適した構造となっていることが推察される。天然高分子であるアルギン酸ナトリウムとカルシウムイオンのゲル化反応を利用し,コロイド粒子をゲル内に包括させ懸濁系から除去する新規なコロイド分離プロセスについて検討を加えた。本年度は,アルギン酸ナトリウム水溶液中にコロイド粒子を懸濁させ,この混合液を塩化カルシウム水溶液に滴下し球状のコロイド包括ゲルを生成させ,このゲルを脱水する最もシンプルな固液分離プロセスについて検討した。本年度得られた結論は以下の通りである。1.アルギン酸の水溶液およびカルシウム水溶液が濃厚であるほど強固なゲルが形成される。また,ゲル懸濁液の上澄み中の遊離アルギン酸量は,混合液中のカルシウムとアルギン酸濃度比が10以上であればほぼ0となった。したがって,これ以上のカルシウム量の下ではアルギン酸は全量ゲル化する。2.圧縮透過試験により,ゲルの平均的な網目の大きさを求めたところ,数10kPa程度の圧力下では数μm程度であった。滴下混合により生ずるゲルの表面はこれ以下の緻密な網目となっているものと予想される。3.ベントナイトを難濾過性コロイド粒子として用い,アルギン酸ゲルに包括させた。ベントナイト包括ゲルの圧縮平衡データは,ベントナイト単独の場合と大略一致しており,ゲル化処理は脱水可能な水分量を変化させるわけではないことが判明した。4.ベントナイト包括ゲルの圧搾速度は,未処理のゲルより速くなっており,100kPaで予圧密し1000kPaで圧搾した場合,圧密係数が二倍程度になっていた。また,圧縮透過試験の結果,ゲル化処理したベントナイトスラッジの透過比抵抗は未処理のものの最大1/1000程度にまで改善されており,本手法が難脱水性スラッジの固液分離処理に極めて有効であることが判明した。 | KAKENHI-PROJECT-07650931 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07650931 |
天然高分子のゲル化反応を利用した難濾過性コロイド懸濁質の除去法に関する研究 | 天然高分子であるアルギン酸ナトリウムとカルシウムイオンのゲル化反応を利用し,コロイド粒子をゲル内に包括させ懸濁系から除去する新規なコロイド分離プロセスについて検討を加えた。本年度得られた結論は以下の通りである。1.アルギン酸ナトリウム水溶液にコロイド粒子としてベントナイトを懸濁させ,この混合液を塩化カルシウム水溶液に滴下し,コロイド包括ゲルを生成させた。この後,ゲル懸濁液を目開き0.84mmの篩に通し,篩に残る程度の強度のゲルが得られる調製条件を求めた。生物工学の分野で菌体・生物細胞などをアルギン酸ゲルに固定化する際には、アルギン酸ナトリウム水溶液,塩化カルシウム水溶液とも10000ppm程度高濃度で用いられているが,両者ともにその10分の1程度の濃度で十分な強度のゲルが得られることがわかった。2.塩化カルシウム水溶液10000ppmの条件下で,ベントナイト包括ゲルを調製し,ゲルを圧搾脱水した。ベントナイト包括ゲルの圧搾速度は,未処理のベントナイトの圧搾速度より速くなっていた。また,単にアルギン酸ナトリウムとベントナイトを混合しただけで,カルシウムによるゲル化を行わない場合には,逆にベントナイト単独の圧搾速度より遅くなった。したがって,ゲル化が圧搾素戸の改善に本質的にかかわっていることになる。圧搾速度の尺度である圧密係数を求めたところ,ゲル中のアルギン酸ナトリウムとベントナイトの比が1:92:8程度のところで最大値が得られた。3.上の条件で調製したベントナイト包括ゲルの圧縮透過試験を行ったところ,ゲル化により,ベントナイトケ-クの内部の構造が大幅に変化し,脱水処理に適した構造になっていることが推察される。 | KAKENHI-PROJECT-07650931 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07650931 |
多元環の表現論とその関連分野の研究 | 先づ、上記研究代表者、研究分担者順に研究実績を報告することにする。1)多元環の表現論において多元環の被覆の表現論の重要性が明らかになりつゝある。特に、被覆上の加群の研究において加群の導来圏との関連が興味ある研究対象となって来ている。〓を多元環Aの被覆とし、Aの大局次元が有限の場合D^b(A)〓mod〓であることが分かっている。本研究においてGrothendieck群の同型:K_o(D^b(A))〓K_o(mod〓)が成立するための条件を完全に決定した。すなわちAのカルタン行列式の値が±1となることである。この結果は多元環の大局次元有限のときカルタン行列式は+1であるという予想と関連して興味ある。2)可換環上のChevalley群について、その中心部分群および正規部分群を決定、また基本部分群の生成元と基本関係による群表示などを研究した。3)導来圏の研究は半遺伝子環の研究を導く。この研究は半遺伝子環で単列的なものの構成と関連している。すなわち、加群の自己準同型環が単列的になる必十条件として、加群の直既約直和因子間の関係、すなわち、どの直和因子も他の直和因子の部分商加群と同型にならないことを証明している。4)Picard-Vessiot理論のホップ代数学的分析をおこない、その拡張をおこなっている。5)ω-安定的加解群について、次の事実を証明した。すなわちランク2の可換部分群が存在するか、その群と初等的に等しい非加算部分群が一つしか存在しないかのいづれかである。6)素数分布に関する本橋、Harmannの結果の拡張に成功した。なお上記以外の分担者による15編以上の研究発表がなされている。先づ、上記研究代表者、研究分担者順に研究実績を報告することにする。1)多元環の表現論において多元環の被覆の表現論の重要性が明らかになりつゝある。特に、被覆上の加群の研究において加群の導来圏との関連が興味ある研究対象となって来ている。〓を多元環Aの被覆とし、Aの大局次元が有限の場合D^b(A)〓mod〓であることが分かっている。本研究においてGrothendieck群の同型:K_o(D^b(A))〓K_o(mod〓)が成立するための条件を完全に決定した。すなわちAのカルタン行列式の値が±1となることである。この結果は多元環の大局次元有限のときカルタン行列式は+1であるという予想と関連して興味ある。2)可換環上のChevalley群について、その中心部分群および正規部分群を決定、また基本部分群の生成元と基本関係による群表示などを研究した。3)導来圏の研究は半遺伝子環の研究を導く。この研究は半遺伝子環で単列的なものの構成と関連している。すなわち、加群の自己準同型環が単列的になる必十条件として、加群の直既約直和因子間の関係、すなわち、どの直和因子も他の直和因子の部分商加群と同型にならないことを証明している。4)Picard-Vessiot理論のホップ代数学的分析をおこない、その拡張をおこなっている。5)ω-安定的加解群について、次の事実を証明した。すなわちランク2の可換部分群が存在するか、その群と初等的に等しい非加算部分群が一つしか存在しないかのいづれかである。6)素数分布に関する本橋、Harmannの結果の拡張に成功した。なお上記以外の分担者による15編以上の研究発表がなされている。 | KAKENHI-PROJECT-01540013 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01540013 |
音楽操作の蓄積と再利用に関する研究 | 我々は要約,簡約,編曲など,これまで音楽家が楽譜に対して行ってきた高次の音楽操作を,一般ユーザでも可能にすることを目指し研究を進めている.曲の一部にユーザが変更を加えたいと考えた場合,2つの問題が生じる.まず,音楽初心者は自分の望むとおりに加工を行うことは難しい.また,むやみに加工を行った場合,音楽的な構造が失われてしまう.我々はこれまで深層学習を用いた音楽構造の抽出や,抽出した構造を用いてメロディを加工する試みを行ってきた.そこで我々は,音楽的な構造を維持しながら楽曲に高次の音楽的操作を適用可能にするための基盤的な枠組みの確立を目的としている.確立する枠組みは,音楽初心者の音楽製作を可能とするだけでなく,音楽製作の現場で生産性を向上させるためのツールとしても用いられることを目指している.本年度は音楽理論GTTMに基づき音楽をコントロールする体験を提供するシステムメロディースロットマシンを構築した.スロットマシンのダイヤルに並んだメロディは音楽理論GTTMに基づくメロディモーフィングによって生成されているため,ダイヤルを回転させてもメロディの装飾的な部分には変化が生じるが,大局的な構造は一貫している.ダイヤルを回転させるとメロディの変化に応じてホログラフィ(AR:拡張臨場感)表示された演奏者の動きも変化する.メロディには音符数の多い激しいものから音符数の少ない穏やかなものまで複数あり、体験者は、スロットダイヤルを使って各時系列におけるバリエーションを設定していくことで、自分の望むメロディを探求することができる.メロディ操作をデモンストレーションできるシステムを構築したことで,我々が目標としている未来の音楽生成の姿をより明確にとらえることが可能となった.メロディモーフィングに加えて様々な音楽操作を音楽理論GTTMに基づき実現していく.深層学習に基づく新たな音楽分析器を構築した.GTTMの分析は,グルーピング構造分析,拍節構造分析,タイムスパン木分析の順に進むが,グルーピングと拍節構造を深層学習により自動獲得することに成功した.また,グルーピング構造を獲得するネットワークと拍節構造を獲得するネットワークを結合して一つのネットワークとしてマルチタスク学習すると,性能がさらに向上することが確認された.正解データを効率的に作成するエディタを開発した.これまで開発した分析ツールは,楽譜は五線譜ではなく,横軸が時間,縦軸が音高となっているピアノロール譜面で構成されていた.本年度,五線譜を用いた分析ツールを開発した.これにより,音楽家が楽曲を分析し,分析結果を入力する作業が大幅に効率化された.プロの音楽家による正解データの蓄積を行った.先行する科研費プロジェクトで8小節の長さの300曲の正解データを作成したが,深層学習を用いてタイムスパン木の抽出を可能とするため,さらなる分析データの拡充を行っている.現在,32小節の長さの50曲の正解データの作成に着手している.ポリフォニ版のGTTMを検討した.オリジナルのGTTMの分析は,モノフォニーおよびフォモフォ二に対応しており,ポリフォニの分析はできない.アイマークカメラで記録したポリフォニーからフォモフォ二への編曲作業を逆にたどることで,ポリフォニのGTTM分析を行う手法を確立した.ポリフォニのGTTM分析データの蓄積を開始した.予定通り順調に進捗している。特に,音楽家による正解データの作成は当初1名の音楽家に依頼する予定であったが,3名に分担いただけることになり大幅に予定を上回るペースで進行している.我々は要約,簡約,編曲など,これまで音楽家が楽譜に対して行ってきた高次の音楽操作を,一般ユーザでも可能にすることを目指し研究を進めている.曲の一部にユーザが変更を加えたいと考えた場合,2つの問題が生じる.まず,音楽初心者は自分の望むとおりに加工を行うことは難しい.また,むやみに加工を行った場合,音楽的な構造が失われてしまう.我々はこれまで深層学習を用いた音楽構造の抽出や,抽出した構造を用いてメロディを加工する試みを行ってきた.そこで我々は,音楽的な構造を維持しながら楽曲に高次の音楽的操作を適用可能にするための基盤的な枠組みの確立を目的としている.確立する枠組みは,音楽初心者の音楽製作を可能とするだけでなく,音楽製作の現場で生産性を向上させるためのツールとしても用いられることを目指している.本年度は音楽理論GTTMに基づき音楽をコントロールする体験を提供するシステムメロディースロットマシンを構築した.スロットマシンのダイヤルに並んだメロディは音楽理論GTTMに基づくメロディモーフィングによって生成されているため,ダイヤルを回転させてもメロディの装飾的な部分には変化が生じるが,大局的な構造は一貫している.ダイヤルを回転させるとメロディの変化に応じてホログラフィ(AR:拡張臨場感)表示された演奏者の動きも変化する.メロディには音符数の多い激しいものから音符数の少ない穏やかなものまで複数あり、体験者は、スロットダイヤルを使って各時系列におけるバリエーションを設定していくことで、自分の望むメロディを探求することができる.メロディ操作をデモンストレーションできるシステムを構築したことで,我々が目標としている未来の音楽生成の姿をより明確にとらえることが可能となった.正解データの蓄積を続け,深層学習に基づき高度な音楽分析を自動で達成する分析器の構築を進める.メロディモーフィングに加えて様々な音楽操作を音楽理論GTTMに基づき実現していく. | KAKENHI-PROJECT-17H01847 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H01847 |
ホウ素元素の特性を活かした創薬研究と中性子捕捉治療への応用 | 中性子照射によって薬物キャリアーからの薬物放出を制御するためのDDS開発を目的として、ホウ素デリバリーシステムを開発した。具体的には、生体膜構成脂質の1つであるホスファチジルコリンの構造に着目して、現在臨床に用いられている低毒性ホウ素イオンクラスター(BSH)を水溶性部位に導入し分子設計した同じ不斉炭素立体構造を有するミリストイル型(C14)、パルミトイル型(C16)、ステアロイル型(C18)のそれぞれエステルリンカー型(DMBL, DPBL, DSBL)、カーバメイトリンカー型(DMCBL, DPCBL, DSCBL)の6種類の光学活性なホウ素含有脂質の合成に成功した。また、ホウ素コレステロールに関してもエステルリンカー型、カーバメイトリンカー型の2種類の合成に成功し、これらを含む粒子径100nmのリポソームを構築した。このリポソームにはポリエチレングリコール(PEG)を修飾し、生体血管内でのステルス性の向上を狙った。リポソームの安定性試験を実施し、ホウ素脂質の至適量を決定した。細胞レベルでの新たな評価系の開発を目的として、ハイスループットスクリーニング法を中性子照射実験系で初めて行えるシステム「Cyborg488」を開発した。このシステムでは、96ウェル細胞プレートをMTTアッセイ法を組み合わせたもので、1回の照射に約500検体を評価することが出来る。30分ホウ素リポソームとcolon26マウス大腸がん細胞を接触させた後、細胞培地を交換し、ホウ素薬剤が培地に存在しない状態で約1時間培養後、30分の中性子照射を行った。アッセイ結果を図2に示す。パルミトイル型ホウ素脂質(DPBL、DPCBL)ならびにステアリル型ホウ素脂質(DSBL)を用いたホウ素PEGリポソームで高い細胞成長阻害活性を示すことを見出した。中性子捕捉療法は脳腫瘍および皮膚がんの治療に用いられてきたが、最近頭頸がんの治療にも成功しその応用範囲の拡大が注目されている。現在、出力の弱い加速器による中性子捕捉治療の実現のためにもがん細胞内へのホウ素の高濃度送達が必要とされている。本研究ではリポソームを用いたドラッグデリバリーシステムに注目し、リポソームの脂質二重膜内にボロンを取り込ませることにより高濃度で腫瘍細胞組織へボロンを選択的に集積させることを目的とし、研究を行った。具体的には、安定したリポソームを形成し、血中滞留性が高くまたリポソーム膜層に高濃度に取り込まれるボロン脂質を開発するために、水溶性ホウ素イオンクラスターであるニド型カルボランを親水性部位に導入したジステアロイルホスファシジルコリン型リン脂質(DSPC)の有機合成を行った。また、合成したホウ素イオンクラスター型脂質とジステアロイルホスファシジルコリン型リン脂質、コレステロールからリポソームを調整した結果、およそ100nmの大きさのリポソームを調整することに成功した。さらに、がんを移植したマウスを用いて中性子照射を行ったところ、ホウ素リポソームを投与しないマウスに比べ1.5倍ほど延命効果が得られた。この結果を踏まえ、さらに新しいホウ素脂質の開発を行った。生体膜を構築しているリン脂質と同じキラリティーを有する様々な長さの炭素鎖を有する二本鎖ホウ素脂質の開発に成功した。中性子照射によって薬物キャリアーからの薬物放出を制御するためのDDS開発を目的として、ホウ素デリバリーシステムを開発した。具体的には、生体膜構成脂質の1つであるホスファチジルコリンの構造に着目して、現在臨床に用いられている低毒性ホウ素イオンクラスター(BSH)を水溶性部位に導入し分子設計した同じ不斉炭素立体構造を有するミリストイル型(C14)、パルミトイル型(C16)、ステアロイル型(C18)のそれぞれエステルリンカー型(DMBL, DPBL, DSBL)、カーバメイトリンカー型(DMCBL, DPCBL, DSCBL)の6種類の光学活性なホウ素含有脂質の合成に成功した。また、ホウ素コレステロールに関してもエステルリンカー型、カーバメイトリンカー型の2種類の合成に成功し、これらを含む粒子径100nmのリポソームを構築した。このリポソームにはポリエチレングリコール(PEG)を修飾し、生体血管内でのステルス性の向上を狙った。リポソームの安定性試験を実施し、ホウ素脂質の至適量を決定した。細胞レベルでの新たな評価系の開発を目的として、ハイスループットスクリーニング法を中性子照射実験系で初めて行えるシステム「Cyborg488」を開発した。このシステムでは、96ウェル細胞プレートをMTTアッセイ法を組み合わせたもので、1回の照射に約500検体を評価することが出来る。30分ホウ素リポソームとcolon26マウス大腸がん細胞を接触させた後、細胞培地を交換し、ホウ素薬剤が培地に存在しない状態で約1時間培養後、30分の中性子照射を行った。アッセイ結果を図2に示す。パルミトイル型ホウ素脂質(DPBL、DPCBL)ならびにステアリル型ホウ素脂質(DSBL)を用いたホウ素PEGリポソームで高い細胞成長阻害活性を示すことを見出した。 | KAKENHI-PROJECT-05F05141 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05F05141 |
コアシェル構造を有する希土類ナノ結晶の光磁気特性 | 二価のユーロピウムEu(II)から構成されるカルコゲナイド(EuX;X=O,S,Se,Te)は強磁性を示す化合物半導体でる。これまでEuXナノ結晶の合成および特異的な光磁気特性が報告されているが、そのナノ結晶の会合状態や配列を制御した例はない1)。大きな磁気光学効果を示すEuXナノ結晶を任意に会合および配列できれば、会合状態に基づく新たな光磁気特性が期待できる。本研究ではEuSのナノサイズ化及びEuSナノ会合体の形状制御を行い、光の放射圧によってナノ粒子を補足して操作するレーザートラッピング法を用いてEuSナノ会合体の形態制御を行った。EuSナノ結晶の原料となるEu(III)錯体は、塩化ユウロピウムと硫黄を含む有機配位子との錯形成により合成した。この錯体を6時間加熱還元し、反応終了後にクロロホルム・ヘキサン混合溶液を用いて精製することにより紫色粉末を得た。得られた紫色粉末のXRD測定の結果より、バルクのEuSのピークと一致することが明らかとなり、Scherer式から算出される平均サイズは11nmとなった。さらに、この立方体型EuSナノ結晶はメタノール中において平均サイズ330nm程度の会合体を形成していることがDLS測定から明らかになった。次にレーザートラッピング法を用いて、ガラス基板上におけるEuS会合体の二次元配列を試みた。レーザートラッピング実験における散乱光強度の経時変化から、段階的な散乱光強度の増大が見られ、会合体が6個捕捉された様子が観測された。さらにこのレーザートラッピング手法を用いてEuS会合体のマニュピレーションを試み、マイクロスケールで任意に配列することに成功した。二価のユーロピウムEu(II)から構成されるカルコゲナイド(EuX;X=O,S,Se,Te)は強磁性を示す化合物半導体でる。これまでEuXナノ結晶の合成および特異的な光磁気特性が報告されているが、そのナノ結晶の会合状態や配列を制御した例はない1)。大きな磁気光学効果を示すEuXナノ結晶を任意に会合および配列できれば、会合状態に基づく新たな光磁気特性が期待できる。本研究ではEuSのナノサイズ化及びEuSナノ会合体の形状制御を行い、光の放射圧によってナノ粒子を補足して操作するレーザートラッピング法を用いてEuSナノ会合体の形態制御を行った。EuSナノ結晶の原料となるEu(III)錯体は、塩化ユウロピウムと硫黄を含む有機配位子との錯形成により合成した。この錯体を6時間加熱還元し、反応終了後にクロロホルム・ヘキサン混合溶液を用いて精製することにより紫色粉末を得た。得られた紫色粉末のXRD測定の結果より、バルクのEuSのピークと一致することが明らかとなり、Scherer式から算出される平均サイズは11nmとなった。さらに、この立方体型EuSナノ結晶はメタノール中において平均サイズ330nm程度の会合体を形成していることがDLS測定から明らかになった。次にレーザートラッピング法を用いて、ガラス基板上におけるEuS会合体の二次元配列を試みた。レーザートラッピング実験における散乱光強度の経時変化から、段階的な散乱光強度の増大が見られ、会合体が6個捕捉された様子が観測された。さらにこのレーザートラッピング手法を用いてEuS会合体のマニュピレーションを試み、マイクロスケールで任意に配列することに成功した。 | KAKENHI-PROJECT-19018017 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19018017 |
ペプチド抗体を用いた葉緑体ATP合成酵素制御領域の研究 | 葉緑体ATP合成酵素のγサブユニットの調節部位の構造変化と調節機能の関係を明らかにすることを目指して、(1)調節領域のアミノ酸への変異の導入、(2)調節領域上のジスルフィド結合を還元するチオレドキシンとの相互作用、(3)抗チオレドキシン抗体を用いたATP合成酵素とチオレドキシンの相互作用の研究、(4)ATP加水分解に伴うγサブユニットの回転の調節の研究を行った。(1)調節機能を担う二つのCysの近傍の荷電アミノ酸のアラニン置換や削除、調節領域の予測されるヘリックス構造の削除などが制御能におよぼす影響を調ベた。その結果、調節領域の構造変化が調節能に直接関与していることが明らかになった。また、負電荷アミノ酸のクラスターを除去することで、ジスルフィド結合の還元によって活性が低下するという本来の機能を逆転させるような機能を付加できることも判明した。この実験に用いたキメラ複合体は、収率が低く不安定で非効率的であるため、好熱菌F_1のαサブユニット、βサブユニットと葉緑体CF_1由来のγサブユニットの大腸菌内での共発現を試み、複合体を得ることに成功した。(2)(3)調節領域とチオレドキシンの相互作用の詳細を調べるために、活性中心のシステインを欠いた変異体を作成した。この変異チオレドキシンを用いて、ATP合成酵素γサブユニットとの相互作用(混合ジスルフィド結合の形成とその還元)を調べた結果、チオレドキシンがATP合成酵素の構造変化を誘導した後に、還元することを見出した。チオレドキシン活性中心に対するモノクローナル抗体は作成したものの、ATP合成酵素へのチオレドキシンの結合を検出するための抗チオレドキシン抗体を使った研究では、明確な結論を導けるような結果を得ていない。(4)葉緑体ATP合成酵素のγサブユニットに蛍光標識アクチンを接続して、一方向の回転を観察することに成功した。さらに、この制御領域を好熱菌由来のATP合成酵素部分複合体に導入し、酵素活性を制御することにも成功した。現在、その回転がどのように制御されるかを解析中である。葉緑体ATP合成酵素のγサブユニットの調節部位の構造変化と調節機能の関係を明らかにすることを目指して、(1)調節領域のアミノ酸への変異の導入、(2)調節領域上のジスルフィド結合を還元するチオレドキシンとの相互作用、(3)抗チオレドキシン抗体を用いたATP合成酵素とチオレドキシンの相互作用の研究、(4)ATP加水分解に伴うγサブユニットの回転の調節の研究を行った。(1)調節機能を担う二つのCysの近傍の荷電アミノ酸のアラニン置換や削除、調節領域の予測されるヘリックス構造の削除などが制御能におよぼす影響を調ベた。その結果、調節領域の構造変化が調節能に直接関与していることが明らかになった。また、負電荷アミノ酸のクラスターを除去することで、ジスルフィド結合の還元によって活性が低下するという本来の機能を逆転させるような機能を付加できることも判明した。この実験に用いたキメラ複合体は、収率が低く不安定で非効率的であるため、好熱菌F_1のαサブユニット、βサブユニットと葉緑体CF_1由来のγサブユニットの大腸菌内での共発現を試み、複合体を得ることに成功した。(2)(3)調節領域とチオレドキシンの相互作用の詳細を調べるために、活性中心のシステインを欠いた変異体を作成した。この変異チオレドキシンを用いて、ATP合成酵素γサブユニットとの相互作用(混合ジスルフィド結合の形成とその還元)を調べた結果、チオレドキシンがATP合成酵素の構造変化を誘導した後に、還元することを見出した。チオレドキシン活性中心に対するモノクローナル抗体は作成したものの、ATP合成酵素へのチオレドキシンの結合を検出するための抗チオレドキシン抗体を使った研究では、明確な結論を導けるような結果を得ていない。(4)葉緑体ATP合成酵素のγサブユニットに蛍光標識アクチンを接続して、一方向の回転を観察することに成功した。さらに、この制御領域を好熱菌由来のATP合成酵素部分複合体に導入し、酵素活性を制御することにも成功した。現在、その回転がどのように制御されるかを解析中である。本年度は、計画当初、(1)葉緑体ATP合成酵素γサブユニット制御領域に対するペプチド抗体の作成、(2)ペプチド抗体を用いた活性制御の妨害、(3)抗体により影響を受ける領域に対する変異導入の三点を中心に研究を行うことを予定していた。ところが、変異導入の研究が予想以上の進展を見せたために、計画を一部変更し直接制御領域のアミノ酸配列を修飾することによって、制御領域の重要残基を特定する研究、およびγサブユニットともに活性制御に重要なεサブユニットの特にβサブユニットと相互作用をしていると思われる部位に変異を導入し、制御機構を直接同定することを先に試みた。これらの研究によってγサブユニツトの制御領域、35残基のアミノ酸領域の中で、特に削除によって制御能に大きく影響する配列(^<210>Glu-^<232>lleの中に存在する)約10アミノ酸を同定することが出来たので、これらに対して、来年度ペプチド抗体を作成する。また、制御領域の荷電アミノ酸の中で、負電荷が三つ連続している領域に注目してこの三アミノ酸を、アラニン置換、リジン置換(正電荷)、および削除の三つの方法で変異導入した。 | KAKENHI-PROJECT-11640643 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11640643 |
ペプチド抗体を用いた葉緑体ATP合成酵素制御領域の研究 | この三アミノ酸は、制御に特に重要であるらしく、アラニン置換、リジン置換では著しく制御能が減少し、削除することによって制御能の逆転(還元すると活性が低下する)をみた(投稿準備中)。このように本年度の研究で、制御に重要な領域はかなり絞り込むことが出来たので、来年度はこれらに対するペプチド抗体の作成によって制御機構の解明を進める予定である。葉緑体ATP合成酵素のγサブユニットの調節部位の構造変化と調節機能の関係を明らかにすることを目指して、(1)調節領域のアミノ酸への変異の導入、(2)調節領域上のジスルフィド結合を還元するチオレドキシンとの相互作用、(3)抗チオレドキシン抗体を用いたATP合成酵素とチオレドキシンの相互作用の研究、を行った。(1)調節機能を担う二つのCysの近傍の荷電アミノ酸のアラニン置換や削除、調節領域の予測されるヘリックス構造の削除などが制御能におよぼす影響を調べた。その結果、調節領域の構造変化が調節能に直接関与していることが明らかになった。また、負電荷アミノ酸のクラスターを除去することで、ジスルフィド結合の還元によって活性が低下するという本来の機能を逆転させるような機能を付加できることも判明した。この実験に用いたキメラ複合体は、収率が低く不安定で非効率的であるため、好熱菌F_1のαサブユニット、βサブユニットと葉緑体CF_1由来のγサブユニットの大腸菌内での共発現を試み、複合体を得ることに成功した。(2)(3)調節領域とチオレドキシンの相互作用の詳細を調べるために、既に作成した活性中心のシステインの一方を欠いた変異体にヒスチジンタグを導入した変異チオレドキシンを作成した。この変異チオレドキシンを用いて、ATP合成酵素γサブユニットとの相互作用(混合ジスルフィド結合の形成)を調べる実験を試みたが、混合ジスルフィド結合の形成に至っていない。このために、チオレドキシン活性中心に対するモノクローナル抗体は作成したものの、ATP合成酵素へのチオレドキシンの結合を検出するための抗チオレドキシン抗体を使った研究は、まだ行っていない。 | KAKENHI-PROJECT-11640643 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11640643 |
ナノ加工と電子波デバイスに関する研究 | 本年度の研究実績をその場加工法に関するもの、その場加工装置に関するもの、電子波デバイスに関するもの、に分けて以下に概要を記す。1.その場加工法低エネルギーSi集束イオンビームを用いて、GaAsおよびAuの上にSiを堆積することに成功した。この技術を応用すれば、基板上の任意の位置に微少なSiのパターンを作製することが可能であり、電子波デバイスの作製プロセスとして非常に有望である。また、低エネルギーSi集束イオンビームを用いて、GaAsにイオン注入(デルタド-ピング)を行い、さらにMBEで結晶再成長を行う事により結晶中に埋め込まれた2次元電子ガスを作製することに成功した。C-V法測定を行い、キャリアの深さ方向の分布とアニール条件の関係を明らかにした。また、真空一貫その場加工装置の中で、試料を搬送するときに問題となる成長中断の影響について実験的、理論的に検討を加えた。実験的には、GaAs中の成長中断界面にできる界面準位による電子の捕獲量がデルタドープしたSiのドープ量に依存している実験結果が得られた。コンピュータを用いた数値計算によってこの現象は成長中断界面にできている界面準位のなかのコンダクションバンドエッジに近い浅い準位に関係していることが明らかとなった。このように真空中でも成長中断界面に発生した界面準位の影響が無視できないことが明らかとなったで、界面準位を低減化するために成長中断界面をAs薄膜で保護する方法を検討した。その結果、成長中断界面をAs膜で保護することにより界面準位が10^<12>cm^<-2>程度低減化することを実験的に確認した。2.その場加工装置上に述べたように、界面準位の分布に関する知見を得、また界面準位の低減化に関する指針を得たわけだが、さらに、成長中断界面の準位密度を低減化するため集束イオンビーム装置にイオンポンプを増設し、真空度の向上を計った。また、低エネルギー集束イオンビームの逆バイアス回路に改良を加えることにより集束特性の改善を試み、リターディングによってイオンエネルギーを低くした状態のときでさえも、試料の透過像を観察することによって、サブミクロン程度のビーム径が得られていることを確認した。3.電子波デバイススプリットゲート型の量子ポイントコンタクトに非対象なバイアスをかけたときの伝導特性について、数値計算および実験を行い、非対象バイアスが閉じ込めポテンシャルの位置だけではなくて強さにも影響を与えていることを明らかにした。電子ビーム露光装置(ケンブリッジ大学)とアルゴンイオンビームエッチング(大阪大学)および反応性イオンエッチング(ケンブリッジ大学)を用いて、直径40nm、周期100nmのアンチドット超格子を作製することに成功した。このデバイスは電子の可干渉長と同程度のサイズであり、電子波干渉の効果と古典的なサイクロトロン運動の両方が観測できる興味深い系であり、今後の解析が期待される。Cr薄膜を電子ビーム直接描画によって選択酸化するプロセスを開発し、そのようなプロセスを用いて微少トンネル接合を作製することに成功した。微少トンネル接合は、電子波デバイスにエネルギーの分散のすくない電子波を注入するためのエミッタとして、非常に重要である。また、近年注目をあつめているクーロンブロッケイドを利用した電子デバイスの基本的な構成要素して、ますますその重要性が認識されてきている。本年度の研究実績をその場加工法に関するもの、その場加工装置に関するもの、電子波デバイスに関するもの、に分けて以下に概要を記す。1.その場加工法低エネルギーSi集束イオンビームを用いて、GaAsおよびAuの上にSiを堆積することに成功した。この技術を応用すれば、基板上の任意の位置に微少なSiのパターンを作製することが可能であり、電子波デバイスの作製プロセスとして非常に有望である。また、低エネルギーSi集束イオンビームを用いて、GaAsにイオン注入(デルタド-ピング)を行い、さらにMBEで結晶再成長を行う事により結晶中に埋め込まれた2次元電子ガスを作製することに成功した。C-V法測定を行い、キャリアの深さ方向の分布とアニール条件の関係を明らかにした。また、真空一貫その場加工装置の中で、試料を搬送するときに問題となる成長中断の影響について実験的、理論的に検討を加えた。実験的には、GaAs中の成長中断界面にできる界面準位による電子の捕獲量がデルタドープしたSiのドープ量に依存している実験結果が得られた。コンピュータを用いた数値計算によってこの現象は成長中断界面にできている界面準位のなかのコンダクションバンドエッジに近い浅い準位に関係していることが明らかとなった。このように真空中でも成長中断界面に発生した界面準位の影響が無視できないことが明らかとなったで、界面準位を低減化するために成長中断界面をAs薄膜で保護する方法を検討した。その結果、成長中断界面をAs膜で保護することにより界面準位が10^<12>cm^<-2>程度低減化することを実験的に確認した。2.その場加工装置上に述べたように、界面準位の分布に関する知見を得、また界面準位の低減化に関する指針を得たわけだが、さらに、成長中断界面の準位密度を低減化するため集束イオンビーム装置にイオンポンプを増設し、真空度の向上を計った。また、低エネルギー集束イオンビームの逆バイアス回路に改良を加えることにより集束特性の改善を試み、リターディングによってイオンエネルギーを低くした状態のときでさえも、試料の透過像を観察することによって、サブミクロン程度のビーム径が得られていることを確認した。3.電子波デバイススプリットゲート型の量子ポイント | KAKENHI-PROJECT-06044137 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06044137 |
ナノ加工と電子波デバイスに関する研究 | コンタクトに非対象なバイアスをかけたときの伝導特性について、数値計算および実験を行い、非対象バイアスが閉じ込めポテンシャルの位置だけではなくて強さにも影響を与えていることを明らかにした。電子ビーム露光装置(ケンブリッジ大学)とアルゴンイオンビームエッチング(大阪大学)および反応性イオンエッチング(ケンブリッジ大学)を用いて、直径40nm、周期100nmのアンチドット超格子を作製することに成功した。このデバイスは電子の可干渉長と同程度のサイズであり、電子波干渉の効果と古典的なサイクロトロン運動の両方が観測できる興味深い系であり、今後の解析が期待される。Cr薄膜を電子ビーム直接描画によって選択酸化するプロセスを開発し、そのようなプロセスを用いて微少トンネル接合を作製することに成功した。微少トンネル接合は、電子波デバイスにエネルギーの分散のすくない電子波を注入するためのエミッタとして、非常に重要である。また、近年注目をあつめているクーロンブロッケイドを利用した電子デバイスの基本的な構成要素して、ますますその重要性が認識されてきている。本年度の研究実績を、ナノ加工法に関するもの、電子波デバイスの試作に関するもの、数値計算に関するものに分けて以下に概要を記す。ナノ加工法に関する研究の分野では、本年度は低エネルギー集束イオンビームと分子線エピタキシ-を組み合わせた真空一貫その場加工装置を完成させ、この装置を用いて低エネルギー集束イオンビーム直接描画による金属膜の堆積などの基礎的な研究を行った。低エネルギー(1KeV)イオンビームの照射損傷に関する研究では、照射量が10^<13>cm^<-2>程度以下では高移動度2次元電子系の伝導にほとんど影響を与えないということがわかった。また、その場加工プロセスの加工特性に関する研究では、その場加工装置の中で試料を搬送するときの成長中断の影響を調べ、中断位置と2次元電子がガスの関係を明らかにした。この時、界面準位とバンド構造の関係が重要であることを指摘した。電子波デバイスの試作に関する研究では、まず、GaAs/AlGaAsシングルヘテロ結晶(大阪大学)に電子ビーム露光技術(ケンブリッジ大学)を用いて極微電極を作製し、電子波デバイスの試行を行い、伝導特性の評価も行っている。また、ケンブリッジ大学で非集束イオンビームと分子線エピタキシ-を組み合わせたその場加工装置を用いて、様々な埋め込み構造を試作した。コンピューターによる数値計算の分野では、一次元電子波導波方向性結合器の障壁層および導波路層の厚さ、導波路のド-ピングの条件などのデバイスパラメータおよびデバイス特性を計算し、作製条件や期待される電子波デバイスの機能を明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-06044137 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06044137 |
非線形双曲型方程式系の外部問題に対する大域解の存在条件の解明 | 線形波動方程式に対する外部問題を考え,その漸近形への収束の速さを明らかにした.応用として半線形波動方程式の外部問題の解の存在時間の下限の精密な評価を得た.また多重伝播速度を持つ波動方程式系の零条件の下での大域解の漸近挙動を調べた.関連して,全空間での初期値問題に関する研究も行い,非線形波動方程式系,クラインーゴルドン方程式系やそれらの連立系などに関して,大域解の存在条件や漸近挙動などを明らかにした線形波動方程式に対する外部問題を考え,その漸近形への収束の速さを明らかにした.応用として半線形波動方程式の外部問題の解の存在時間の下限の精密な評価を得た.また多重伝播速度を持つ波動方程式系の零条件の下での大域解の漸近挙動を調べた.関連して,全空間での初期値問題に関する研究も行い,非線形波動方程式系,クラインーゴルドン方程式系やそれらの連立系などに関して,大域解の存在条件や漸近挙動などを明らかにした非線形波動方程式の外部問題の大域解の存在条件と解の挙動を明らかにするための準備として、本年度は線形波動方程式の外部領域における初期値境界値問題をディリクレ境界条件下で考え、その解の挙動について詳しく研究した。得られた成果は以下の通りである。障害物が非捕捉的であり初期値が有界な台を持つ場合、外部問題の解が、もとの初期値に適切な修正を加えたものを初期値に持つような、全空間(つまり障害物がない空間)における初期値問題の解にエネルギーの意味で近づくことが知られていた。しかし非線形問題への応用を考える場合には、単に近づくことが分かるだけでは不十分であり、どのぐらいの速さで近づくのかが非常に重要になる。そこで、外部問題の解が、(全空間での)初期値問題の解に近づく速さがどの程度であるかの評価を得た。修正された初期値の台は一般には有界にはならないが、遠方で指数的に減衰することも明白にした。また、各点的な漸近形と、そこへ近づく早さに関しても精密な結果を得た(久保英夫氏との共同研究として投稿準備中)。これらの結果を非線形問題に応用することにより、非線形問題の解の存在時間や大域解の存在条件の解明に、かなりの進歩が期待できる。上記の研究と並行して、アリニャックの条件の下で、非線形波動方程式系の(全空間での)初期値問題の解の各点的な漸近挙動についての研究も行った。これまでに分かっていた、自由解に近づく場合と、エネルギーが増加して自由解に近づかない場合以外にも、エネルギーは有界に留まるが自由解には近づかない場合があることが明らかになった。ここで得た知見は外部問題の研究にも大きな役割を果たすと期待できる。本年度は半線形波動方程式の外部問題に対する解の最大存在時間についての研究を行った。非線形項の形と初期値と障害物に依存する量を用いて、解の最大存在時間の詳細な情報を得ることにより、逆に大域解の存在条件を明らかにするのが目的である。本年度に得られた成果は以下の通りである:空間次元が3次元の場合に単独の半線形波動方程式の外部問題を、ディリクレ境界条件の下で考え、初期値の大きさを0に近づけたときの解の最大存在時間の下極限に対する精密な評価を得た。この結果はジョンやヘルマンダーらによって得られた初期値問題の解の最大存在時間に対する結果を、(ディリクレ条件を課した)外部問題の場合に拡張したものといえる。この結果を得るためには昨年度に得た線形波動方程式の外部問題に対する解の漸近挙動が重要な役割を果たす。また特に障害物が球である場合に、球対称解を許すような特別な非線形項と特別な初期値の下では、上記の解の最大存在時間に対する評価式は最適なものであることも明らかにした(久保英夫氏との共同研究として投稿準備中)。今回得られた結果によれば、単独の半線形波動方程式の初期値境界値問題をディリクレ条件下で考えた場合には、いわゆるnull条件が、小さな初期値に対する大域解の存在のための必要十分条件であることが予想される(ただし現時点では最適性は特別な場合にしか得られていないので、null条件が必要十分条件であることが示されたわけではない)。非線形双曲型方程式系の大域解の存在条件の解明と、またその大域解の漸近挙動についての研究を引き続き行った。本年度の主要な研究成果は以下の通りである:3次元空間における、単一の伝播速度をもつような非線形波動方程式系を考えるとき、小さな初期値に対して初期値問題が大域解をもつための条件は、Klainermanによって1980年代に得られた(いわゆるnull条件)。またその条件の下で大域解は漸近自由であることが分かる(つまり時間がたつと非線形項を持たない線形の方程式の解にエネルギーの意味で漸近していく)。成分毎に伝播速度が異なるような非線形連立波動方程式系に関しても、初期値問題に対するnull条件は横山氏らにより導入され、2000年に大域解の存在が示された。この大域解存在の結果はディリクレ境界条件を課した外部問題にも拡張されている。しかし、単一伝播速度の場合とは異なり、複数の伝播速度を持つ場合には、null条件の下で大域解が漸近自由であるかどうかは、全空間の初期値問題においてすらこれまでは分かっていなかった。今回、この問題に取り組み、まず大域解の各点的な漸近挙動を求め、さらに波動方程式の外部領域での散乱理論における方法と組み合わせることにより、エネルギーの意味で大域解が漸近自由であることを示した(投稿準備中)。 | KAKENHI-PROJECT-20540211 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20540211 |
非線形双曲型方程式系の外部問題に対する大域解の存在条件の解明 | 原点から離れた部分の情報のみを使うため、この手法は有界な障害物がある場合の外部問題に対しても有効である。他には、2次元空間におけるクライン-ゴルドン方程式系の初期値問題も考察し、Delortらによるnull条件の下で大域解の存在定理の簡易な別証明を与え、さらに解が漸近自由になることを示した(小澤徹氏、砂川秀明氏との共同研究;投稿中)。 | KAKENHI-PROJECT-20540211 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20540211 |
シェーグレン症候群における唾液腺特異的自己抗原エピトープの同定とその臨床応用 | シェーグレン症候群(以下SSと略す)の臓器特異的な治療法の開発を目的として、SSの自己抗原・α-フォドリンのT細胞エピトープの同定をこころみた。今年度は、前年度の本研究において樹立した、α-フォドリン合成ペプチドに特異的なT細胞クローンについてin vitro、およびin vivoの解析を行った。FACS解析により、SSモデルマウス頚部リンパ節より樹立された本クローンは、IL-2、IFnN-γなどのサイトカインを産生するTh1タイプのCD4陽性T細胞で、T細胞レセプターVβ鎖はVβ6を使用していることが判明した。抗原認識に最も重要とされるT細胞レセプターCDR3領域のアミノ酸配列については、現在解析を進めている。また、本クローンを放射線照射を施した胸腺非摘出NFS/sldマウスに腹腔内投与したところ、唾液分泌量の減少を伴う自己免疫性病変が唾液腺特異的に惹起されたことから、本クローンが認識する抗原ペプチドが原因エピトープである可能性が示唆された。本クローンによる唾液腺組織障害機序については、さらに詳細な検討を行っている。また、SS患者のスクリーニングあるいは早期診断などの臨床応用を目的として、ELISA法による患者血清中の自己抗体価の測定を試みたところ、GST融合リコンビナント蛋白にSDSを添加した変性抗原に対して、SS患者血清は優位な反応を示す傾向がみられた。今後、検出感度、特異度を高め、かつ安定した検出系の確立のために、さらに工夫を加える予定である。シェーグレン症候群、(以下SSと略す)特異的な診断・治療法の開発を目的として、SSの自己抗原・α-fodrinのTおよびB細胞エピトープの同定を試みた。ヒトα-fodrin cDNAより合成したGST融合リコンビナント蛋白を用いたT細胞増殖反応の結果から、T細胞エピトープはN末を含む約120KD、およびμ-カルパインの切断部位を含むドメイン11、12に存在することが示唆された。さらに詳細な検討を加えるために、抗原刺激後のT細胞と唾液腺浸潤T細胞をSSCP解析した後、T細胞レセプターCDR3領域の塩基配列を同定したところ、N末領域のリコンビナント蛋白に対して増殖するT細胞は、唾液腺浸潤T細胞と同様なクローンである可能性が考えられた。これらのことより、T細胞エピトープはN末領域に存在することが示唆されたので、N末を含む約120KDに相当する領域に対して合成ペプチドを作製した。合成ペプチドのT細胞増殖反応を検討したところ数種のペプチド断片に優位な増殖反応が認められた。さらに、α-fodrinに反応するT細胞株を樹立するために、反応を示したペプチドを抗原とする限界希釈法にてT細胞クローンの樹立を試みている。今後、樹立したT細胞クローンの唾液腺上皮細胞に対する細胞障害活性、サイトカイン産生能などの機能を検討するとともに、CDR3領域のアミノ酸配列を明らかにし、治療への応用を試みていく予定である。SSに特異的な診断法の確立を目的として、自己抗体が認識するB細胞エピトープについて検討した結果、モデルマウス血清中のN末領域に対する自己抗体価は病態と相関することが判明した。今後は、さらに感度が高く多数の検体を簡易に検出するために、バキュロウィルスに発現させたα-fodrinリコンビナント蛋白によるELISA法の確立を試みる予定である。シェーグレン症候群(以下SSと略す)の臓器特異的な治療法の開発を目的として、SSの自己抗原・α-フォドリンのT細胞エピトープの同定をこころみた。今年度は、前年度の本研究において樹立した、α-フォドリン合成ペプチドに特異的なT細胞クローンについてin vitro、およびin vivoの解析を行った。FACS解析により、SSモデルマウス頚部リンパ節より樹立された本クローンは、IL-2、IFnN-γなどのサイトカインを産生するTh1タイプのCD4陽性T細胞で、T細胞レセプターVβ鎖はVβ6を使用していることが判明した。抗原認識に最も重要とされるT細胞レセプターCDR3領域のアミノ酸配列については、現在解析を進めている。また、本クローンを放射線照射を施した胸腺非摘出NFS/sldマウスに腹腔内投与したところ、唾液分泌量の減少を伴う自己免疫性病変が唾液腺特異的に惹起されたことから、本クローンが認識する抗原ペプチドが原因エピトープである可能性が示唆された。本クローンによる唾液腺組織障害機序については、さらに詳細な検討を行っている。また、SS患者のスクリーニングあるいは早期診断などの臨床応用を目的として、ELISA法による患者血清中の自己抗体価の測定を試みたところ、GST融合リコンビナント蛋白にSDSを添加した変性抗原に対して、SS患者血清は優位な反応を示す傾向がみられた。今後、検出感度、特異度を高め、かつ安定した検出系の確立のために、さらに工夫を加える予定である。 | KAKENHI-PROJECT-10770991 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10770991 |
チミジンホスホリラーゼ画像化によるがんの治療効果予測:前臨床動物実験による実証 | 申請者らは、多くのがんに高く発現するチミジンホスホリラーゼ(TP)の発現量を画像化する新しい核医学診断薬として、5-[123/125I]iodo-6-[(2-iminoimidazolidinyl)methyl]uracil (IIMU)を開発し、本薬剤がTP発現量に対応して、がんに集積することを明らかにしてきた。またTPは抗がん剤のPaclitaxel, Docetaxel, Mitomycin Cの治療、放射線照射により誘導されるため、これらの抗がん剤や放射線療法との併用により5-FUやそのプロドラッグの効果が増強されることも知られている。これらのことから、TPの発現量やその酵素活性の定量的画像化により、5-FUやそのプロドラッグ、または他の抗がん剤や放射線療法との併用を用いるがん治療の効果が予測可能になると考えられる。そこで本研究では、このIIMUを用いるTP画像化によって、5-FUやそのプロドラッグによるがん治療の効果予測が可能なことを前臨床動物実験で実証することを目的として、平成28年度、平成29年度に続き、平成30年度には以下の検討行った。抗がん剤のPaclitaxelの治療によるTP発現量増加と腫瘍への125I-IIMU集積増加をin vivo実験で実証した。ヒト大腸癌細胞(WiDr)をヌードマウスに移植した担癌マウスにおいて、Paclitaxelを腹腔内に4日間投与後、5日目に125I-IIMUを尾静脈より投与し、腫瘍への125I-IIMUの集積とTP発現量を比較検討した。その結果、腫瘍組織におけるTP発現量の増加が認められ、腫瘍への125I-IIMU集積量も増加傾向を示した。以上の結果によって、IIMUを用いたTP発現量の画像化により、5-FUやそのプロドラッグのがん治療の効果予測の可能性が示唆され、さらなる研究が期待される。申請者らは多くのがんに高く発現するチミジンホスホリラーゼ(TP)の発現量を画像化する新しい核医学診断薬として、5-[123/125I]iodo-6-[(2-iminoimidazolidinyl)methyl]uracil (IIMU)を開発し、本薬剤がTP発現量に対応して、がんに集積することを明らかにしてきた。またTPの酵素活性は抗がん剤の5-フルオロウラシル(5-FU)やそのプロドラッグの活性化にも関与していることから、TPの定量的画像化により、これらの抗がん剤を用いるがんの治療効果が予測可能と考えられる。本研究においては、このIIMUを用いるTP画像化によって、5-FUやそのプロドラッグによるがん治療の効果予測が可能なことを前臨床動物実験で実証することを目的として以下の検討を行った。1) TP発現量の異なる多種の担癌モデル動物において、病理組織学的手法を用いて、TP発現量の評価を行った。その結果、A431腫瘍組織でTP発現レベルが最も高く、HeLaとHCT116腫瘍組織でのTP発現レベルが高かった。AZ521、FaDu、MDA-MB435S、MDA-MB231腫瘍組織でのTP発現レベルは低く、DLD-1腫瘍組織でのTP発現レベルが最も低かった。2) TP発現レベルに及ぼす抗がん剤Paclitaxelの影響をin vitroで検討した。その結果、A431細胞におけるPaclitaxelの処置によるTP発現量には、顕著な増強が認められなかったものの、AZ521細胞においては、Paclitaxelの処置によりTP発現量が増強された。3) 123I-IIMU標識合成条件(中和条件、塩交換条件など)の最適化検討を行なった。その結果、これまでに、中和条件、塩交換条件を含む標識合成条件、及び精製条件の設定をほぼ終了し、現在再現性の確認を行なっている。また福島県立医科大学先端臨床研究センターにおける動物用SPECTイメージング設備の確認を行なった。1) TP発現量の異なる多種の担癌モデル動物において、病理組織学的手法を用いて、TP発現量の評価を行った。2) TP発現レベルに及ぼす抗がん剤Paclitaxelの影響をin vitroで検討した。3) 123I-IIMU標識合成条件(中和条件、塩交換条件など)の最適化検討を行なった。4)福島県立医科大学先端臨床研究センターにおける動物用SPECTイメージング設備の確認を行なった。申請者らは多くのがんに高く発現するチミジンホスホリラーゼ(TP)の発現量を画像化する新しい核医学診断薬として、5-[123/125I]iodo-6-[(2-iminoimidazolidinyl)methyl]uracil (IIMU)を開発し、本薬剤がTP発現量に対応して、がんに集積することを明らかにしてきた。またTPの酵素活性は抗がん剤の5-フルオロウラシル(5-FU)やそのプロドラッグの活性化にも関与していることから、TPの定量的画像化により、これらの抗がん剤を用いるがんの治療効果が予測可能と考えられる。本研究においては、このIIMUを用いるTP画像化によって、5-FUやそのプロドラッグによるがん治療の効果予測が可能なことを前臨床動物実験で実証することを目的として以下の検討を行った。TP発現レベルに及ぼす抗がん剤Paclitaxelの影響をin vivo実験で検討した。その結果、ヒト頭頚部癌FaDu細胞を移植した担癌モデルマウスにおいて、Paclitaxelの処置によるTP発現量には、顕著な増強が認められなかった。しかしヒト大腸がんWiDr細胞を移植した担癌モデルマウスにおいては、Paclitaxelの処置によりTP発現量の増強が認められた。 | KAKENHI-PROJECT-16K10335 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K10335 |
チミジンホスホリラーゼ画像化によるがんの治療効果予測:前臨床動物実験による実証 | これらの結果より、本研究計画当初の予測の通り、抗がん剤Paclitaxelの治療により、腫瘍組織のTP発現量が上昇することが認められ、IIMUを用いたTP画像化の実現が期待される。1)TP発現量の異なる担癌モデルマウス(ヒト頭頸部癌FaDu、大腸癌WiDr)において、病理組織学的手法を用いて、TP発現量の評価を行った。2)TP発現レベルに及ぼす抗がん剤Paclitaxelの影響をin vivo実験で評価した。3)また抗がん剤Paclitaxelの影響について、TP発現量と細胞増殖マーカーのKi-67および血管新生マーカーのCD31との比較を行った。申請者らは、多くのがんに高く発現するチミジンホスホリラーゼ(TP)の発現量を画像化する新しい核医学診断薬として、5-[123/125I]iodo-6-[(2-iminoimidazolidinyl)methyl]uracil (IIMU)を開発し、本薬剤がTP発現量に対応して、がんに集積することを明らかにしてきた。またTPは抗がん剤のPaclitaxel, Docetaxel, Mitomycin Cの治療、放射線照射により誘導されるため、これらの抗がん剤や放射線療法との併用により5-FUやそのプロドラッグの効果が増強されることも知られている。これらのことから、TPの発現量やその酵素活性の定量的画像化により、5-FUやそのプロドラッグ、または他の抗がん剤や放射線療法との併用を用いるがん治療の効果が予測可能になると考えられる。そこで本研究では、このIIMUを用いるTP画像化によって、5-FUやそのプロドラッグによるがん治療の効果予測が可能なことを前臨床動物実験で実証することを目的として、平成28年度、平成29年度に続き、平成30年度には以下の検討行った。抗がん剤のPaclitaxelの治療によるTP発現量増加と腫瘍への125I-IIMU集積増加をin vivo実験で実証した。ヒト大腸癌細胞(WiDr)をヌードマウスに移植した担癌マウスにおいて、Paclitaxelを腹腔内に4日間投与後、5日目に125I-IIMUを尾静脈より投与し、腫瘍への125I-IIMUの集積とTP発現量を比較検討した。その結果、腫瘍組織におけるTP発現量の増加が認められ、腫瘍への125I-IIMU集積量も増加傾向を示した。以上の結果によって、IIMUを用いたTP発現量の画像化により、5-FUやそのプロドラッグのがん治療の効果予測の可能性が示唆され、さらなる研究が期待される。1)HeLa、HCT116がん細胞、またはFaDu、MDA-MB435S、MDA-MB231とDLD-1等TP発現量の異なる多種のがん細胞におけるTP発現量に及ぼす抗がん剤Paclitaxel等の影響をin vitroで測定すること、またこれらのがん細胞において、抗がん剤のPaclitaxel治療後、125I-IIMUの集積量を測定し、TP発現レベルと比較する。さらにこれらのがん細胞を移植した担癌モデル動物においても同様な実験を行う。2)TP高発現および低発現 | KAKENHI-PROJECT-16K10335 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K10335 |
1950/60年代のドイツ連邦共和国におけるホロコースト裁判の事例研究 | 本研究は、ホロコーストの実行犯に対する19501960年代のドイツ連邦共和国の裁判例を分析することで、「過去の克服」における司法の役割を歴史学的観点から再検証する。判例が積み上げられる中で、犯罪者やその犯罪の性格に関してどのような解釈が主流化したのか。一般的に緩慢であったとされる連邦共和国初期の司法訴追における問題点を浮き上がらせることで、ドイツが現在に至るまで訴追を継続する体制を作らざるを得なくなった背景を明らかにする。本研究は、ホロコーストの実行犯に対する19501960年代のドイツ連邦共和国の裁判例を分析することで、「過去の克服」における司法の役割を歴史学的観点から再検証する。判例が積み上げられる中で、犯罪者やその犯罪の性格に関してどのような解釈が主流化したのか。一般的に緩慢であったとされる連邦共和国初期の司法訴追における問題点を浮き上がらせることで、ドイツが現在に至るまで訴追を継続する体制を作らざるを得なくなった背景を明らかにする。 | KAKENHI-PROJECT-19K01088 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K01088 |
内耳蓋膜のプロテオグリカン及びグリコサミノグリカンの生化学的分析 | 内耳蓋膜のプロテオグリカン(PG)及びグリコサミノグリカン(GAG)の生化学的分析をマウスの蓋膜を用いて行った。1.色素化学法によるGAGの定性及び定量蓋膜中のウロン酸を含有するGAGは145ng、ケラタン硫酸は85ng、総GAGは230ng、湿重量百分率で1蓋膜当たり0.46%であった。形態学的に蓋膜のコンドロイチン硫酸やケラタン硫酸の存在を報告した論文は見られるが、生化学的に蓋膜にウロン酸を含有するGAGを同定し得たのは今回が初めてである。2.電気泳動及び免疫化学的分析10%SDS-PAGEでは、抗ケラタン硫酸抗体に対し反応する3個のバンドが認められた。そのうちの一つ、分子量約55、000Daのバンドは抗ファイブロモデュリン抗体とも反応が認められた。0.6%アガロース、1.2%アクリラアミドゲル電気泳動では抗PGADi-6_sにのみ反応し染色されるバンドを認めた。電気泳動、免疫化学的分析で、低分子型のPGは主にケラタン硫酸を側鎖に持ち、高分子型のPGはコンドロイチン硫酸を側鎖にして存在していると思われた。又低分子型PGの1つは、ファイブロモデュリンであると考えられた。3.蓋膜においてはGAGの量は硝子体と軟骨の中間であり、II型コラーゲンは放射状あるいは長軸方向に配列し、聴毛の配列方向に抵抗力を持つと考えられる。したがって蓋膜の聴覚生理における機能の1つとして音感受性の増強作用、即ち蓋膜は聴毛の先端配列を一定に保ち、静止状態で聴毛が傾かないように維持していることが考えられた。内耳蓋膜のプロテオグリカン(PG)及びグリコサミノグリカン(GAG)の生化学的分析をマウスの蓋膜を用いて行った。1.色素化学法によるGAGの定性及び定量蓋膜中のウロン酸を含有するGAGは145ng、ケラタン硫酸は85ng、総GAGは230ng、湿重量百分率で1蓋膜当たり0.46%であった。形態学的に蓋膜のコンドロイチン硫酸やケラタン硫酸の存在を報告した論文は見られるが、生化学的に蓋膜にウロン酸を含有するGAGを同定し得たのは今回が初めてである。2.電気泳動及び免疫化学的分析10%SDS-PAGEでは、抗ケラタン硫酸抗体に対し反応する3個のバンドが認められた。そのうちの一つ、分子量約55、000Daのバンドは抗ファイブロモデュリン抗体とも反応が認められた。0.6%アガロース、1.2%アクリラアミドゲル電気泳動では抗PGADi-6_sにのみ反応し染色されるバンドを認めた。電気泳動、免疫化学的分析で、低分子型のPGは主にケラタン硫酸を側鎖に持ち、高分子型のPGはコンドロイチン硫酸を側鎖にして存在していると思われた。又低分子型PGの1つは、ファイブロモデュリンであると考えられた。3.蓋膜においてはGAGの量は硝子体と軟骨の中間であり、II型コラーゲンは放射状あるいは長軸方向に配列し、聴毛の配列方向に抵抗力を持つと考えられる。したがって蓋膜の聴覚生理における機能の1つとして音感受性の増強作用、即ち蓋膜は聴毛の先端配列を一定に保ち、静止状態で聴毛が傾かないように維持していることが考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-05771300 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05771300 |
所得の地域格差とその要因に関する地理学的研究 | わが国では1990年代後半以降の所得格差の拡大が注目を集めているが、所得の地域格差については実態の解明が遅れている。本研究では、19932008年の住宅・土地統計調査のデータを用いて、世帯あたり等価所得を推定し、都道府県別所得格差の分布とその変化を分析した。地理学的観点からは地域間格差(空間的不均衡)と地域内格差(社会的階層)の概念を区別することが重要である。年齢構成や物価水準等の要因をコントロールした場合、所得の地域間格差は概ね縮小傾向にあるが地域内格差は拡大したことが判明したわが国では1990年代後半以降の所得格差の拡大が注目を集めているが、所得の地域格差については実態の解明が遅れている。本研究では、19932008年の住宅・土地統計調査のデータを用いて、世帯あたり等価所得を推定し、都道府県別所得格差の分布とその変化を分析した。地理学的観点からは地域間格差(空間的不均衡)と地域内格差(社会的階層)の概念を区別することが重要である。年齢構成や物価水準等の要因をコントロールした場合、所得の地域間格差は概ね縮小傾向にあるが地域内格差は拡大したことが判明した都市と地方の地域格差は、今日の最も重要な政策課題である。地域格差はマクロな経済動向だけでなく、それぞれの地域の諸特性に起因している。それゆえ、地域の多様性を扱う地理学は格差現象の解明に寄与することが求められている。本研究の目的は地域格差問題に対する社会的要請に鑑み、(1)所得格差の地域的分布と時間的変化を統計データによって推定し、(2)その背景となる産業や雇用の変化、少子高齢化や人口移動など社会経済要因との関係を分析することにより、(3)格差の地域構造を解明し政策提言に向けて基礎資料を示すことにある。研究の最初にあたる平成21年度は、研究枠組みの検討と資料収集を中心におこなった。従来の所得格差研究では、家計調査や所得再配分調査、国民生活基礎調査が用いられてきた。しかし、これらは標本数が少なく詳細な地域分析には適さない。一方、地域所得格差の指標としては1人あたり県民所得や賃金構造基本統計が用いられるが、前者は経済活動規模の平均値を、後者は勤労者個人の所得を示すにとどまる。本研究では住宅・土地統計調査の「世帯の年間収入」を用いた所得格差の推定方法に改良を加え、格差現象の階層的・空間的な構造とその変化を検証しようとしている。豊田は、都道府県および主要都市別に世帯所得分布推定をおこない、高齢者など無職世帯を分析から除いたとき、地域の産業構造や就業者の職業構成、女性就業率が地域所得差を規定する主要因であること、所得の地域差が出生率や人口の社会増減に影響を及ぼしていること等の仮説を得た。長尾は、大都市圏を対象に地域経済の基盤となる産業集積と社会空間の関係について分析視点の整理をおこなった。中川は、地方圏におけるUターン現象など人口移動と就業機会との関係について調査を開始した。今後は問題意識と分析成果の共有を図りながら、理論と実証の両面から格差の地域構造の分析を進めていく予定である。近年わが国では首都圏への一極集中と地方圏の経済的衰退が深刻化している。こうした地域格差は個人や世帯の所得格差の空間的投影でもある。所得の地域格差はマクロな経済動向だけでなく、それぞれの地域の諸特性に起因している。それゆえ、地域の多様性を扱う地理学は格差現象の解明に寄与することが求められる。本研究の目的は、所得格差の地域的分布と時間的変化を統計データによって推定し、政策提言に向けて基礎資料を示すことにある。研究の2年目にあたる平成22年度は、方法論の検討と平行し資料分析を進めた。従来の所得格差研究では全国を一括して扱うことが多く、地域間の格差は十分論じられてこなかった。一方、地域格差研究では所得の平均値の比較にとどまり、階層間の格差はほとんど無視されている。本研究では住宅・土地統計調査の「世帯の年間収入」を用いて所得格差を推定する方法を独自に提案し、家計所得を地域間格差と階層間格差の両面から検証した。都道府県別に見ると、1990年代後半以降全国的に階層間格差は拡大する傾向にある。地域間格差は景気後退期にあたる19972003年に縮小したが、景気拡大期の200308年には拡大している。さらに、東京特別区や大阪市の区別について比較分析をおこなったところ、人口の都心回帰とともに高所得層が急増する都心区と低所得層が滞留する周辺区で急速に地域間格差が拡大しており、大都市の内部構造に変化が生じていることが確認された。また、都道府県単位で見た所得格差は平均寿命や死亡率など地域の健康水準にも影響を与えている。今後は、リーマンショック以降の新たな経済局面でいかなる影響が及ぶかが注目されるほか、こうした地域の所得格差が雇用環境や人口移動とどのような規定関係にあるか、さらに多くのデータを用いて検証していく予定である。社会経済構造が急速に変化する中で、所得格差に対する関心が世界的に高まっている。わが国においてもかつての「中流神話」が崩壊し、富裕層と貧困層への分極化が指摘されて久しい。また、一極集中が進む首都圏と経済的疲弊に苦しむ地方圏の間で、地域格差をいかに縮小するかは重大な政策的課題である。ところが、家計所得の地域間格差に関する実証研究はこれまで非常に少なかった。格差の把握には何を比較の対象とするかが重要である。 | KAKENHI-PROJECT-21520795 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21520795 |
所得の地域格差とその要因に関する地理学的研究 | 地域間で平均的所得水準に差があること(地域間格差)と、地域内で所得分布にばらつきがあること(地域内格差)は、異なる概念として定義しうる。また、地域間格差を三大都市圏で見た場合、東京と京阪神の間で格差が拡大すると同時に、東京と名古屋の間で格差が縮小しているとき、両者を単純化し一語で表現することはできない。このような意味で地域格差はきわめて複雑な現象と言える。本研究では、住宅・土地統計調査の「世帯の年間収入」を用いて所得格差を推定し、家計所得の分布と変化を地域間格差と地域内格差の両面かち検証した。今年度は新たに非集計ミクロデータを使用することにより、人口高齢化や世帯規模の縮小など人口学的要因の影響を取り除いて推計精度の向上を図った。その結果は、時期や把握法により錯綜した状況を示す。すなわち、19982003年に都道府県の地域間格差は全体として縮小したが地域内格差は拡大した。200308年は逆に、地域間格差は拡大したが地域内格差は縮小した。また、市区町村単位の分析結果からは、東京大都市圏の都心部で高所得層が急速に増加していることが判明した。こうした変動が経済や政策の動向とどう関連しているか、また所得格差が地域間の人口移動や健康水準にいかなる影響を与えているか、理論的な検討と実証的な分析を継続中である。 | KAKENHI-PROJECT-21520795 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21520795 |
妊娠合併症のリスク妊婦へのマタニティヨガの介入による自律神経の鎮静効果の検討 | 2012年8月に倫理審査承認後、9月から研究協力施設の妊婦健診外来およびヨガクラスで、研究対象者のリクルートを開始した。現在、約91名の妊婦から研究協力が得られデータを収集した。縦断調査であるが早産などのために、10か月調査での脱落者が数名見られた。その結果、ヨガを実施することによって、妊娠8か月および10か月時に副交感神経活動が活性化すること、また、夜間にまとめて長く眠れること、ヨガ実施直後のαアミラーゼ値が低下し、ストレスが軽減することが明らかになった。一方、夜の入眠時刻が早いほど夜睡眠時間が長く、副交感神経が活性化され、夜間覚醒が多いほど交感神経が活性化されることが明らかになった。リスク妊婦(PIH・GDM)の妊娠中の自律神経系の変化、および日内変動を正常妊婦との比較によって明らかにする事(目的1)と、リスク妊婦(PIH・GDM)へのマタニティヨガの介入により、妊娠合併症が発症しやすい妊娠末期において、交感神経系が鎮静されるか否かを明らかにする(目的2)事を目的として実施中である。2012年7月に大阪大学医学部保健学倫理委員会で承認され、2012年8月に研究協力施設(パルモア病院)の倫理委員会で承認を得た。2012年9月から妊婦健診外来および、ヨガクラスで対象者の募集を開始した。調査票および睡眠表の回収率は100%である。24時間心拍変動モニタリングや唾液アミラーゼ採取等も対象者への負担を最小限にデータ収集が進んでいる。しかし、縦断調査であるが早産等の為に10か月時調査での脱落者が数名いる現状であり、現在、実施例数は70例(ヨガ群34例、対照群36例)であり、症例数を増やすために2回/週の研究参加者募集を継続中である。2012年8月に倫理審査承認後、9月から研究協力施設の妊婦健診外来およびヨガクラスで、研究対象者のリクルートを開始した。現在、約91名の妊婦から研究協力が得られデータを収集した。縦断調査であるが早産などのために、10か月調査での脱落者が数名見られた。その結果、ヨガを実施することによって、妊娠8か月および10か月時に副交感神経活動が活性化すること、また、夜間にまとめて長く眠れること、ヨガ実施直後のαアミラーゼ値が低下し、ストレスが軽減することが明らかになった。一方、夜の入眠時刻が早いほど夜睡眠時間が長く、副交感神経が活性化され、夜間覚醒が多いほど交感神経が活性化されることが明らかになった。リスク妊婦(PIH・GDM)の妊娠中の自律神経系の変化、および日内変動を正常妊婦との比較によって明らかにする事(目的1)と、リスク妊婦(PIH・GDM)へのマタニティヨガの介入により、妊娠合併症が発症しやすい妊娠末期において、交感神経系が鎮静されるか否かを明らかにする(目的2)事を目的として実施中である。2012年7月に大阪大学医学部保健学倫理委員会で承認され、2012年8月に研究協力施設(パルモア病院)の倫理委員会で承認を得た。2012年9月から妊婦健診外来および、ヨガクラスで対象者の募集を開始した。調査票および睡眠表の回収率は100%である。24時間心拍変動モニタリングや唾液アミラーゼ採取等も対象者への負担を最小限にデータ収集が進んでいる。しかし、縦断調査であるが早産等の為に10か月時調査での脱落者が数名いる現状であり、現在、同意取得例数が28例(ヨガ群14例、対照群14例)に対し、実施例数は25例(ヨガ群11例、対照群14例)であり、症例数を増やすために2回/週の研究参加者募集を継続中である。2012年8月に倫理審査承認後、9月から研究協力施設の妊婦健診外来およびヨガクラスで、研究対象者のリクルートを開始した。2015年度末までに、91名の妊婦から研究協力が得られ研究に参加した。妊娠6か月からデータを収集し、縦断的に8か月、10か月に調査を継続し、途中辞退者を除くと各々68名、60名であった。これらの対象者のうち、ヨガ実施群と実施しない対照群に、アクティブトレーサーによる心拍変動の測定、ストレスを評価するPSS、唾液中αアミラーゼ測定、sleep logによる生活リズムを調査した。研究成果を国際学会に2編、英文誌に現在投稿準備中である。助産学途中で辞退する対象者がいるため、6月までデータ収集の予定である。事例の対象者数が研究全体の目標の1/3程度であり、今後も積極的に対象者のリクルートを行う。同意が得られた対象者からの調査票の回収率は100%である。データ収集と並行して、アクティブトレーサーによるデータ解析を行う。今年中に英文誌に投稿予定である。昨年度と同様に行うが、妊婦健診外来およびヨガクラスで対象者を増やすため、今年度は産科外来に研究協力者募集のポスターを掲示する等、積極的に対象者数を募集する。また、来年度の当研究費または他研究費(運営交付金等)と合わせて、アクティブモニターを更に1台追加購入して、対象者数を増やす方策を検討する。調査票と睡眠表の回答、24時間心拍変動モニタリング、および唾液アミラーゼ採取等のデータ収集を進める。データ収集と併行して、データ解析を順次行う。 | KAKENHI-PROJECT-24660002 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24660002 |
妊娠合併症のリスク妊婦へのマタニティヨガの介入による自律神経の鎮静効果の検討 | 解析に必要なデータ数に満たないため、26年6月までデータ収集を行う予定である。そのため、論文の添削やネイティブチェックに必要な費用を繰り越したため。既に論文中の英文論文の修正後のネイティブチェックや、今後執筆予定の論文の作業等に支出する予定である。該当無し | KAKENHI-PROJECT-24660002 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24660002 |
異種混載ハードウェア環境下におけるNOSQL向け分散システムの研究 | 本研究課題では、異種ハードウェアを混載するNOSQLシステムの電力効率化を目指した。初期段階では、異種KVSハードウェアを実用的に評価するために、Key-value Storeのハードウェアシステムを再設計し、ソフトウェアシステムであるmemcachedのハードウェアキャッシュとして動作する実用的なシステムを構築した。とくにハードウェア内のキャッシュにも考慮し、オンチップRAMをL1キャッシュ、オンボードDRAMをL2キャッシュとした実装としてLaKe(Layered Key-value Store)を開発した。この実装は、10GbEの環境でラインレートを処理することができ、低遅延を達成している。この異種混載システムにおける電力効率について解析した結果、トラフィックの負荷が低いときにはCPUをベースとするソフトウェアシステムで動作するほうが消費電力が低く、トラフィックの負荷が高いときにはFPGAシステムの専用ハードウェアで動作するほうが消費電力が低いことがわかった。この結果をもとに、本研究課題の主たる提案であるIn-network Computing On-demandを提案した。CPUの電力情報をもとにソフトウェアシステムとハードウェアを切り替えるホストベースコントローラおよび、NIC内のトラフィック量をベースとしてハードウェアとソフトウェアを切り替えるネットワークベースコントローラの2つのスキームを制御するユーザアプリケーションコントローラを実際に実装し、オープンソースとしてもコードを公開している。このコントローラを用いることで、NIC搭載型FPGAやCPUが混載する環境で電力効率を改善することができる。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。異種混載ハードウェア環境下におけるNOSQL向けアクセラレータの研究の初段階としてNOSQLキャッシュのハードウェアキャッシュにおける階層化と応用事例の開発に取り組んだ。スイッチやNICを対象としたハードウェア上にオンチップRAM, DRAMを用いた階層化キャッシュの設計や従来技術の省電力化手法を組み合わせることで、電力効率化について従来のハードウェアシステムによりも5.1倍、一般的に使われているソフトウェアよりも24倍の向上を達成した。本課題は、英国ケンブリッジ大学コンピュータ研究所に留学し、同研究所で開発が行われているNetFPGA(本研究課題で開発対象であるFPGAボード)チームに参加し、各種ネットワークデバイスのオープンソース開発の活動を通して、本システムの開発に成功している。本システムについて有名国際会議に投稿中である。今後は、本システムの運用時に発生するワークロードに着目して電力解析を行っていく。また、インターネットにおけるセキュリティ防御システムとしてUDPによるDDoS攻撃を防御するシステムを本研究の応用事例としてmitiKV(Mitigator using Key-value store)を開発した。特別研究員採用前に発表にしたICMPを用いたDDoS攻撃を用いることで、攻撃元のフロー数がハードウェアキャッシュ内の容量に収まる場合には10Gインターフェイスのラインレートにおいて防ぐことができた。一方で、ハードウェアをキャッシュから溢れた場合は、キャッシュ容量内のフローについては防ぐことができており、緩和することができた。今後は、ソフトウェアとのインターフェイスをも考慮し、ハードウェアキャッシュだけではなく、ソフトウェア側のホストPCのメモリを用いることで全フロー数の攻撃防御を目指していく。Key-value Storeの中には、valueにデータ型を持たせるRedisがある。Valueにデータ構造を持たせることで、ユーザ側で様々なセマンティクスに対応してシステムを構築できるという利点を活用して、SNSやWebサービスのバックエンドとしてキャッシュ・ストレージに利用されている。本課題は複数のデータ構造をもつkey-value storeのハードウェア設計を行った。具体的には、STRING、LIST型、HASH型、SET型の4つのデータ型についてそれぞれ専用ハードウェアを設計している。これらのデータ構造について遅延を解析した。昨年度でプロトタイプとして設計・実装したFPGAシステムはXilinx Virtex-5(約12年前にリリースされた)であった。そのため、FPGAのリソースが限らており、FPGAボードに搭載されているDRAMモジュールが288MBと十分であると言えない。そこで、Virtex-7を搭載したNetFPGA-SUMEボード上に再設計を行った。より性能を向上させるためにFPGAシステムをさらに階層化させた設計としてLaKe(Layered Key-value Store)アーキテクチャを提案した。具体的には、ハードウェアキャッシュ内部をDRAM、SRAMやBRAMを階層化させることで高速化している。Key-value Storeの主要なメモリ用途としてデータストアとハッシュテーブルがある。また、メモリ管理としてスラブアロケータを用いているが、便宜的に使用されていないChunkをリストで管理したFreeListを管理する必要がある。電力効率化について従来のハードウェアシステムによりも5.1倍、一般的に使われているソフトウェアよりも24倍の向上を達成した。本研究課題では、異種ハードウェアを混載するNOSQLシステムの電力効率化を目指した。初期段階では、異種KVSハードウェアを実用的に評価するために、Key-value Storeのハードウェアシステムを再設計し、ソフトウェアシステムであるmemcachedのハードウェアキャッシュとして動作する実用的なシステムを構築した。とくにハードウェア内のキャッシュにも考慮し、オンチップRAMをL1キャッシュ、オンボードDRAMをL2キャッシュとした実装としてLaKe(Layered Key-value Store)を開発した。この実装は、10GbEの環境でラインレートを処理することができ、低遅延を達成している。この異種混載システムにおける電力効率について解析した結果、トラフィックの負荷が低いときにはCPUをベースとするソフトウェアシステムで動作するほうが消費電力が低く、トラフィックの負荷が高いときにはFPGAシステムの専用ハードウェアで動作するほうが消費電力が低いことがわかった。この結果をもとに、本研究課題の主たる提案であるIn-network Computing On-demandを提案した。CPUの電力情報をもとにソフトウェアシステムとハードウェアを切り替えるホストベースコントローラおよび、NIC内のトラフィック量をベースとしてハードウェアとソフトウェアを切り替えるネットワークベースコントローラの2つのスキームを制御するユーザ | KAKENHI-PROJECT-17J02958 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J02958 |
異種混載ハードウェア環境下におけるNOSQL向け分散システムの研究 | アプリケーションコントローラを実際に実装し、オープンソースとしてもコードを公開している。このコントローラを用いることで、NIC搭載型FPGAやCPUが混載する環境で電力効率を改善することができる。次年度は、既に決まっているWestern Digitalでのインターン(6月8月)で最新ストレージデバイスを対象としたkey-value storeシステムの開発を行う予定である。大学では手に入りにくい業界の最新デバイスを用いた研究の挑戦、トップレベルの国際会議で活躍する研究者と交流ができる。そのようなハイレベルな研究者がメンターとなり、3ヶ月間の研究課題を遂行していく。本研究課題で設計したシステムは高い負荷を伴うワークロードが発生する際には、電力効率の観点で省電力化に効果的である。しかし、無負荷時について、ハードウェアアクセラレータの静的電力を含めると非効率である場合が考えられる。実際にデータセンタでは、トラフィック量は時間によって変動する。したがって、トラフィック量に応じてハードウェアアクセラレータの機能をスイッチングできるシステムが重要となってくる。そのスイッチングにおけるしきい値をアプリケーション毎に探求し、トラフィック量に応じて機能を動的にスイッチングできる機能を目指していく。この課題はケンブリッジ大学やスイス・USIと協力して進めており、十分な結果が得られ次第、第一著者として今後国際会議で発表する予定である。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-17J02958 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J02958 |
Hippo経路による代謝、肥満、食欲制御 | Hippo経路はショウジョウバエのモザイク解析によって近年発見された新たなシグナル経路であり、この経路の下流転写因子には細胞増殖に関わるTEADの他に脂肪細胞分化に関与するPPARγが含まれている。さらに代謝、肥満、食欲制御に重要なPI3K経路との密接なクロストークの存在が示されていることからも、Hippo経路の糖・脂質代謝、肥満、食欲制御への関与が考えられる。そこで申請者はHippo経路の糖・脂質代謝、肥満、食欲制御への関与を検討するため、脂肪細胞、膵臓β細胞、骨格筋細胞、間葉系幹細胞、視床下部レプチン反応性ニューロンの組織特異的にHippo経路遺伝子を欠損するマウスをそれぞれ作製・解析を行なった。Hippo経路のコア分子の1つであるMOB1の脂肪細胞特異的欠損マウスでは、通常食摂取時においては生後25週齢前後から、白色・褐色脂肪組織の両方で軽度の脂肪組織重量増加障害と低体重を認め、組織的には脂肪滴の小型化が観察された。これらの表現型は高脂肪食を与えることで早期から差が顕著となったことから、高脂肪食投与のマウスを用いて、摂食量・行動量・基礎代謝量検討したところ、ともに変化は認めなかった。次にホルモン・サイトカインの変化を検討したところ、組織重量増加障害に伴う耐糖能の改善、インスリン感受性亢進、血中インスリン値の低下を認め、血中レプチン値の低下はあるものの、血中adiponectin値は不変であった。これらから、脂肪特異的MOB1欠損マウスにみられる脂肪組織重量増加障害と低体重はエネルギー消費の亢進やエネルギー摂食量の低下によるものではないことが示唆された。また野生型マウスでは高脂肪食投与による肥満に伴いMOB1の発現亢進とYAPの発現低下が観察された。ここまでのことから、Hippo経路は肥満によって活性化され、肥満を更に増悪させる経路である可能性が示唆された。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。近年新たなシグナル経路として注目されつつあるHippo経路は、様々なシグナル経路とのクロストークが報告されており、代謝・肥満・食欲制御に重要なPI3K経路との密接なクロストークの存在も示されている。本研究では、脂肪細胞・骨格筋細胞・膵臓β細胞・間葉系幹細胞・視床下部レプチン反応性ニューロンの組織特異的にHippo経路遺伝子を欠損するマウスを作製・解析し、Hippo経路の糖代謝・脂質代謝・肥満・食欲制御に対する作用やその分子機構、PI3K経路依存性を明示することで、Hippo経路の新知見を見出し、メタボリックシンドロームの予防や治療の礎を提示することを目的としている。平成25年度はHippo経路の主要な構成分子のひとつであり、これまでに報告されたHippo経路分子遺伝子改変マウスのうちで最も表現型が劇的であったMob1の脂肪細胞・骨格筋細胞・膵臓β細胞・間葉系幹細胞・視床下部レプチン反応性ニューロンの組織特異的欠損マウスの作製を開始した。まずはAdiponectin-Cre Tgマウスを用いた脂肪細胞特異的Mob1欠損マウスの解析を行なったところ、脂肪細胞特異的Mob1欠損マウスは通常食において20週令前後から有意に低体重を示した。低体重の原因を探るため、体重差に有意な差がみられる前の週令において行動量や摂食量を検討した。脂肪細胞特異的Mob1欠損マウスでは、意外にも行動量や摂食量に有意な差を認めないものの熱産生量が低下していることを見出した。これまでにMob1欠損による羸痩のメカニズムは明らかにできていないもののHippo経路の肥満への関与を示唆した。Hippo経路はショウジョウバエのモザイク解析によって近年発見された新たなシグナル経路であり、この経路の下流転写因子には細胞増殖に関わるTEADの他に脂肪細胞分化に関与するPPARγが含まれている。さらに代謝、肥満、食欲制御に重要なPI3K経路との密接なクロストークの存在が示されていることからも、Hippo経路の糖・脂質代謝、肥満、食欲制御への関与が考えられる。そこで申請者はHippo経路の糖・脂質代謝、肥満、食欲制御への関与を検討するため、脂肪細胞、膵臓β細胞、骨格筋細胞、間葉系幹細胞、視床下部レプチン反応性ニューロンの組織特異的にHippo経路遺伝子を欠損するマウスをそれぞれ作製・解析を行なった。Hippo経路のコア分子の1つであるMOB1の脂肪細胞特異的欠損マウスでは、通常食摂取時においては生後25週齢前後から、白色・褐色脂肪組織の両方で軽度の脂肪組織重量増加障害と低体重を認め、組織的には脂肪滴の小型化が観察された。これらの表現型は高脂肪食を与えることで早期から差が顕著となったことから、高脂肪食投与のマウスを用いて、摂食量・行動量・基礎代謝量検討したところ、ともに変化は認めなかった。次にホルモン・サイトカインの変化を検討したところ、組織重量増加障害に伴う耐糖能の改善、インスリン感受性亢進、血中インスリン値の低下を認め、血中レプチン値の低下はあるものの、血中adiponectin値は不変であった。これらから、脂肪特異的MOB1欠損マウスにみられる脂肪組織重量増加障害と低体重はエネルギー消費の亢進やエネルギー摂食量の低下によるものではないことが示唆された。 | KAKENHI-PUBLICLY-25126719 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-25126719 |
Hippo経路による代謝、肥満、食欲制御 | また野生型マウスでは高脂肪食投与による肥満に伴いMOB1の発現亢進とYAPの発現低下が観察された。ここまでのことから、Hippo経路は肥満によって活性化され、肥満を更に増悪させる経路である可能性が示唆された。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。準備実験から全身性にMob1を部分欠損したマウスでは羸痩がみられたが、このマウスでは高頻度に腫瘍形成もみられるため、この表現型が代謝・肥満・食欲制御に対する作用であるかを検討するために脂肪細胞・骨格筋細胞・膵臓β細胞・間葉系幹細胞・視床下部レプチン反応性ニューロン組織特異的にMob1を欠損するマウスの作製を開始した。はじめに脂肪細胞特異的Mob1欠損マウス作製のためaP2-Cre Tgマウスを用いたところ、aP2-Creは他の組織でも発現するために腫瘍形成などがみられ早期に致死となったため解析が困難であった。次により脂肪細胞特異的であるAdiponectin-Cre Tgマウスに変更し、脂肪細胞特異的Mob1欠損マウスの作製した。この脂肪細胞特異的Mob1欠損マウスでは全身性Mob1部分欠損マウスでみられた羸痩の表現型を再現することができ、Hippo経路と肥満との関与が示唆されたが、観察期間などが長期にわたるためそのメカニズムに関してまでは平成25年度に明らかにすることができなかった。しかしながら、平成26年度は解析用マウスの準備整ってきたため、平成25年度の遅れを取り戻せることを期待している。平成25年度に引続きAdiponectin-Cre Tgマウスを用いた脂肪細胞特異的Mob1欠損マウスの通常食時における羸痩の原因を探りつつ、高脂肪食時においての表現型も明らかにする。脂肪細胞以外の骨格筋細胞・膵臓β細胞・間葉系幹細胞・視床下部レプチン反応性ニューロン組織特異的Mob1欠損マウスのうち作製が最終段階入っているマウスの解析も併せて行なう。Mob1以外のHippo経路分子に関しても脂肪細胞・骨格筋細胞・膵臓β細胞・間葉系幹細胞・視床下部レプチン反応性ニューロン組織特異的に欠損するマウスの作製を開始しており、Mob1と同様にHippo経路の主要な構成分子であるLatsのAdiponectin-Cre Tgマウスを用いた脂肪細胞特異的欠損マウスの作製は最終段階にはいっているため、このマウスと脂肪細胞特異的Mob1欠損マウスの表現型との共通性を検討する。また、糖代謝・脂質代謝・肥満・食欲制御におけるHippo経路とPI3K経路との相互経路依存性を検討するため、Hippo経路下流分子Yap1,TazとPtenの二重(あるいは三重)欠損マウスを作製・解析を行なう。 | KAKENHI-PUBLICLY-25126719 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-25126719 |
動脈硬化モデルのインスリン抵抗性・脂肪組織異常改善効果としてのAT2受容体機能 | 我々は、動脈硬化モデルであるApoEKOマウスとAT2KOマウスを交配させることにより作製したAT2/ApoEKOマウスを用い、これらのマウスにおける動脈硬化性病変や脂肪組織変化をAT2受容体機能に注目して解析した。AT2/ApoEKOマウスでは、ApoEKOマウスに比べて、動脈硬化性病変の増強、血中コレステロール濃度の上昇に加え、脂肪組織では重量増加、脂肪細胞肥大化が認められ、脂肪細胞分化関連因子またインスリンシグナル関連因子、グルコース輸送タンパクの発現が低下した。さらに、胆汁中へのコレステロール排泄も低下した。これらの結果から、AT2受容体の刺激が、脂肪細胞機能の改善やコレステロール代謝の改善をもたらし、メタボリック症候群などの代謝疾患の治療に有用である可能性が示唆された。我々は、動脈硬化モデルであるApoEKOマウスとAT2KOマウスを交配させることにより作製したAT2/ApoEKOマウスを用い、これらのマウスにおける動脈硬化性病変や脂肪組織変化をAT2受容体機能に注目して解析した。AT2/ApoEKOマウスでは、ApoEKOマウスに比べて、動脈硬化性病変の増強、血中コレステロール濃度の上昇に加え、脂肪組織では重量増加、脂肪細胞肥大化が認められ、脂肪細胞分化関連因子またインスリンシグナル関連因子、グルコース輸送タンパクの発現が低下した。さらに、胆汁中へのコレステロール排泄も低下した。これらの結果から、AT2受容体の刺激が、脂肪細胞機能の改善やコレステロール代謝の改善をもたらし、メタボリック症候群などの代謝疾患の治療に有用である可能性が示唆された。本年度は、動脈硬化モデルであるApoEKOマウスと申請者らが保有しているAT1aKO、AT2KOマウスをそれぞれ交配させることにより作製したAT1a/ApoEKOおよびAT2/ApoEKOダブルノックアウトマウスを用い、これらのマウスにおける動脈硬化性病変と脂肪組織変化を比較検討した。ApoEKOマウスはで認められる大動脈の動脈硬化性病変は、AT1a/ApoEKOマウスでは大動脈への脂肪沈着・細胞増殖ともに低下しており、AT2/ApoEKOマウスでは逆に大動脈への脂肪沈着・細胞増殖はApoEKO単独よりも増悪していた。これらマウスの内臓脂肪として、副睾丸周囲脂肪組織と後腹膜脂肪組織を採取し検討した。マウスの体重は10週齢および6が月齢においてAT1aあるいはAT2受容体ノックアウトによる差はみられなかったが、内臓脂肪重量は、AT1a/ApoEKOマウスでは減少し、AT2/ApoEKOマウスでは増加した。組織学的検討では、脂肪細胞サイズも、AT1a/ApoEKOマウスでは減少し、AT2/ApoEKOマウスでは増大した。脂肪組織よりRNAを抽出し、mRNAの発現量をリアルタイムRT-PCR法で測定すると、脂肪細胞分化関連因子である(PPARγ、C/EBP、aP2)またインスリンシグナル関連因子であるアディポネクチン、インスリン受容体、IRS-1、4型グルコース輸送タンパクの発現がAT1a/ApoEKOマウスでは増加し、AT2/ApoEKOマウスでは低下していた。これらの結果は、動脈硬化モデルは脂肪組織もメタボリック症候群にみられるような機能異常を呈しており、その異常はAT1受容体シグナルをブロックすることにより改善し、AT2受容体シグナルをブロックすることにより増悪することを示唆している。次年度はこれらの変化と動脈硬化性病変進展との関連やレニンーアンジオテンシン系の阻害による変化を検討する。本年度は、昨年度の実験結果を踏まえて、レニン-アンジオテンシン(RA)系と脂肪組織機能について、メタボリック症候群での病態解析ということを念頭に置き、さらに動物モデルを用いて検討を加えた。今年度は、まずメタボリック症候群のもう一つのモデルとして、2型糖尿病モデルのKK-Ayマウスを用いて、脂肪組織に及ぼすAT1受容体ブロッカー(ARB)の効果を調べた。KK-Ayマウスは肥満・高血糖・高インスリン血症を呈するが、通常用いられる非糖尿病マウスに比して脂肪組織重量も大きく、脂肪細胞サイズも大きい。このマウスにARBを2週間投与すると、脂肪組織重量の減少と脂肪細胞サイズの縮小が見られた。さらにARB投与は脂肪組織や同じくインスリン感受性臓器の代表である骨格筋におけるグルコース取込みを増加させ、TNF-αといったインスリン抵抗性促進因子の発現を抑制し、インスリンシグナル関連因子や細胞分化促進因子の発現を増加させた。ARBは組織の酸化ストレスを軽減するが、これに対してAT2受容体ブロッカーの投与は組織の酸化ストレスを増強した。これらの結果は、アンジオテンシン受容体のうち、AT1受容体のブロックが脂肪組織機能を改善する方向に働くことを示唆するものである。さらに、AT2受容体は、AT1受容体の作用に対し拮抗的に働き、その作用を抑制することが分かった。AT1受容体シグナルは、細胞内でカルシウム動員を引き起こすことによりその作用を発現する。そこで、カルシウムチャネルブロッカーがAT1受容体ブロッカーと同様の作用をもたらすか実験を行った。カルシウムチャネルブロッカーであるニフェジピンを2型糖尿病モデルであるKK-Ayマウスに投与したところ、脂肪組織重量と脂肪細胞サイズの縮小と、脂肪細胞分化マーカーの発現増加が認められた。これらの結果は、AT1受容体シグナルがカルシウム動員を介して発現することを示唆している。本年度は計画書に従い、メタボリック症候群の最終的病像としての「動脈硬化」とAT1、Ar2受容体の関連を中心に検討した。 | KAKENHI-PROJECT-21590956 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21590956 |
動脈硬化モデルのインスリン抵抗性・脂肪組織異常改善効果としてのAT2受容体機能 | 我々は前年度において動脈硬化モデルマウス(ApoEKOマウス)の血中コレステロール濃度が、AT1受容体欠損により低下し、AT2受容体欠損により上昇することを見出したが、その後の検討で、AT1受容体欠損マウスでは、糞便中へのコレステロール排出が高値であり、また胆汁中のコレステロール濃度も高値であることが明らかとなった。一方、AT2受容体欠損マウスでは、糞便中へのコレステロール排出が低下しており、胆汁中のコレステロール濃度も低下していた。それぞれのマウスでは肝組織中のコレステロール濃度やコレステロール合成の律速酵素の発現は変化がないことも確認された。これらの実験結果から、AT1受容体刺激は血中コレステロール濃度を増加させ、これには\胆汁中へのコレステロール排出低下と腸管からの吸収増加が関与する可能性が示唆された。これに対し、AT2受容体刺激は拮抗的に作用することが明らかとなった。次に我々は、生活習慣病モデル確立のため、動脈硬化マウスに高コレステロール食を12週摂取させ、多臓器病変発症の有無を検討した。このマウスにおいては脂肪組織に明ちかな炎症細胞浸潤が認められ、同様の細胞浸潤は肝臓の実質と膵臓の外分泌腺部分に認められた。この結果は、脂質代謝異常のモデルを用いて、肝臓・膵臓・脂肪組織など糖脂質代謝の重要臓器に炎症性病変や機能異常を誘発することが可能であることを示唆している。また、その後の検討で、AT1受容体欠損マウスでは、これらの病変が軽減することも判明した。これらのことから、レニンーアンジオテンシン系の抑制がメタボリック症候群の発症・増悪の抑制に有効であることが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-21590956 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21590956 |
半導体中電子正孔プラズマの輸送現象についての研究 | 半導体中に生成された高密度電子正孔プラズマが試料中をどのように広がっていくかを観測し、拡散の機構を解明するのが本研究の目的である。我々はGeとGeAsに対して実験を行った。Geに対しては遠赤外磁気光吸収を通してプラズマの非常に速い膨張にともなう自由励起子の速い拡散を観測した。さらにこの励起子の拡散速度が磁場により減少することを見出し、プラズマの膨張が磁場によって押えられることがわかった。一方GaAsに関しては電子正孔プラズマを測定する可能性のある光検知遠赤外サイクロトロン共鳴の実験装置を作成し共鳴信号を測定した。Geは厚さ0.4mmの試料を用意し,まずフォトルミネッセンス観測を行った。この結果薄い試料では表面再結合のため、励起子濃度の上昇が押えられていることがわかった。さらにこの試料について遠赤外吸収を行い励起子によると思われる信号を観測した。これは遠赤外光の波長変化により確認をした。これらの知見に基づき遠赤外吸収の時間、空間分解測定の結果を解釈した。遠赤外吸収で観測している信号は自由励起子であり、その拡散速度が磁場の印加にともない急激に減少している。特に零磁場での拡散速度は7×10^3cm/sと速く、高密度プラズマから自由励起子が飛び出しているか,非常に速く拡散するプラズマの後を自由励起子が追随しているかのどちらかであると考えられる。以上,本年度中に半導体中のプラズマの拡散機構について解明する一歩として、プラズマに付随する励起子の拡散現象を研究し、光検知遠赤外サイクロトロン共鳴の装置を作り、本邦で初めて信号を測定した。半導体中に生成された高密度電子正孔プラズマが試料中をどのように広がっていくかを観測し、拡散の機構を解明するのが本研究の目的である。我々はGeとGeAsに対して実験を行った。Geに対しては遠赤外磁気光吸収を通してプラズマの非常に速い膨張にともなう自由励起子の速い拡散を観測した。さらにこの励起子の拡散速度が磁場により減少することを見出し、プラズマの膨張が磁場によって押えられることがわかった。一方GaAsに関しては電子正孔プラズマを測定する可能性のある光検知遠赤外サイクロトロン共鳴の実験装置を作成し共鳴信号を測定した。Geは厚さ0.4mmの試料を用意し,まずフォトルミネッセンス観測を行った。この結果薄い試料では表面再結合のため、励起子濃度の上昇が押えられていることがわかった。さらにこの試料について遠赤外吸収を行い励起子によると思われる信号を観測した。これは遠赤外光の波長変化により確認をした。これらの知見に基づき遠赤外吸収の時間、空間分解測定の結果を解釈した。遠赤外吸収で観測している信号は自由励起子であり、その拡散速度が磁場の印加にともない急激に減少している。特に零磁場での拡散速度は7×10^3cm/sと速く、高密度プラズマから自由励起子が飛び出しているか,非常に速く拡散するプラズマの後を自由励起子が追随しているかのどちらかであると考えられる。以上,本年度中に半導体中のプラズマの拡散機構について解明する一歩として、プラズマに付随する励起子の拡散現象を研究し、光検知遠赤外サイクロトロン共鳴の装置を作り、本邦で初めて信号を測定した。シリコン等の半導体を光で強励起すると電子正孔プラズマが生成される。試料表面で生成された電子正孔プラズマは高速で試料内に拡散していく。この拡散の機構について2つの模型が提唱されているが、どちらが現象の原因となっているのか結論がでていない。2つの模型とはフォノン風モデルとキャリヤ間相互作用モデルである。我々はGaAsを強励起して電子正孔プラズマからの発光を測定するという方法により、2つのモデルを実験的に試そうと考えた。その結果、フォノン風のモデルでかなり説明できそうなことが明らかとなった。一方論争となっていたシリコン中のプラズマについては、現有の装置では十分なS/N比が得られず、かなり装置の改良が必要である。赤外域におけるフォトンカウンティングの導入等が考えられる。購入した分光器は明るいため赤外域の分光に適している。一方ゲルマニウムを表面励起して遠赤外吸収を観測すると、2K以上の温度で吸収が観測される。この信号はかなり速く拡散することがわかっており、電子正孔プラズマによるものと思われる。この信号はキャリヤ同志の散乱を直接反映するものであり、今後遠赤外吸収を中心に研究を進めていきたい。ゲルマニウムに対してはフォトルミネッセンスが強く観測されているので遠赤外の吸収とフォトルミネッセンスを組み合わせた。光検知プラズマ共鳴を遠赤外域で行う予定で実験準備を進めている。一方GaAs/AlAsタイプII超格子では電子と正孔が空間的に分離しており、バルク試料で観測される電子正孔プラズマと比較すれば、電子-正孔相互作用の拡散に対する寄与が評価できると期待される。半導体中に生成された高密度電子正孔プラズマが試料中をどのように広がっていくかを観測し、拡散の機構を解明するのが本研究の目的である。我々はGeとGaAsに対して実験を行った。Geに対しては遠赤外磁気光吸収を通してプラズマの非常に速い膨張にともなう自由励起子の速い拡散を観測した。さらにこの励起子の拡散速度が磁場により減少することを見出し、プラズマの膨張が磁場によって押えられることがわかった。一方GaAsに関しては電子正孔プラズマを測定する可能性のある光検知遠赤外サイクロトロン共鳴の実験装置を作成し共鳴信号を測定した。 | KAKENHI-PROJECT-04640340 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04640340 |
半導体中電子正孔プラズマの輸送現象についての研究 | Geは厚さ0.4mmの試料を用意し,まずフォトルミネッセンス観測を行った。この結果薄い試料では表面再結合のため、励起子濃度の上昇が押えられていることがわかった。さらにこの試料について遠赤外吸収を行い励起子によると思われる信号を観測した。これは遠赤外光の波長変化により確認をした。これらの知見に基づき遠赤外吸収の時間、空間分解測定の結果を解釈した。遠赤外吸収で観測している信号は自由励起子であり、その拡散速度が磁場の印加にともない急激に減少している。特に零磁場での拡散速度は7×10^3cm/sと速く、高密度プラズマから自由励起子が飛び出しているか,非常に速く拡散するプラズマの後を自由励起子が追随しているかのどちらかであると考えられる。以上,本年度中に半導体中のプラズマの拡散機構について解明する一歩として、プラズマに付随する励起子の拡散現象を研究し、光検知遠赤外サイクロトロン共鳴の装置を作り、本邦で初めて信号を測定した。 | KAKENHI-PROJECT-04640340 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04640340 |
脊髄損傷に対するiPS由来神経幹細胞移植後の造腫瘍性の解明と制御 | 我々は、脊髄損傷に対するマウス及びヒトiPS細胞由来神経幹/前駆細胞(iPS-NS/PCs)移植の有効性を報告してきた。損傷脊髄部へのiPS-NS/PCs移植により、下肢運動機能が改善する一方で、iPS細胞株によっては移植後長期経過後glioma様の腫瘍を形成することも明らかとなった。脊髄損傷に対するiPS細胞療法をヒトに応用する場合、腫瘍化しない“安全な"iPS-NS/PCsの選別が重要である。本研究では、脊髄損傷に対するiPS-NS/PCs移植後の造腫瘍性に関わる候補遺伝子やエピゲノム変異を選別した。腫瘍化しない細胞株の選定と移植前細胞の至適継代数の調整が安全性の確保には重要である。In vitroではいずれも明らかな腫瘍化は認められず、いずれもNeuron優位の分化を示している。Retroviral vectorによる従来法でもpreliminaryには同様の結果が得られている。さらに、長期培養においても明らかなin vitroでの腫瘍形成は認められなかった。これらのiPS-NS/PC各細胞株をNOD-SCIDマウスの胸髄圧挫損傷モデルの損傷中心部に,各5×105個ずつ、損傷後9日目に移植した。移植後3ヶ月間、IVISsystemによるbioimagingで細胞の生着・増殖の評価及び下肢運動機能評価(Basso Mouse Scale: BMS)などの機能評価を行った。移植後3ヶ月の時点で損傷部脊髄を採取し,組織学的解析を行うと共に、移植前の細胞と移植後3ヶ月の損傷中心部脊髄からそれぞれmRNAを抽出し、次世代シーケンサーによる網羅的遺伝子発現解析を行った。造腫瘍性836B3細胞株移植後3ヵ月の脊髄組織において、細胞増殖および腫瘍化に深く関わるFactor X, YのmRNA発現が、非腫瘍性の細胞株に比べて明らかに上昇していることが分かった。これらの組織中でのX, Y発現もまた免疫染色により増加していることが確認され、腫瘍化とX, Yの関連性に関して注目し新たな実験を検討している。当初の計画通りに、作製方法の異なるiPS細胞を用いた腫瘍化に関する解析をin vitro, in vivoで進めることができている。また、in vivoにおいても移植後の長期経過の中で、腫瘍化している組織としていない組織を確認すると共に、そのgenetic epigeneticな差異についての解析結果が徐々に出てきている。我々は、脊髄損傷モデル動物に対するiPS細胞由来神経幹細胞/前駆細胞(iPSC-NS/PCs)を用いた細胞移植の有効性を報告してきたが、一部の細胞株では腫瘍を形成することも明らかとなっている。出来る腫瘍が奇形腫ではなく神経原性腫瘍であることから、未分化細胞の除去のみではなく、安全な細胞株を選定することが重要となってくる。当該年度は、iPSC-NS/PCsの一塩基変異(SNV)解析、コピー数変異(CNV)解析、DNAメチル化解析などを行うことで、腫瘍化を起こすより詳細なメカニズムを解明し、iPSC-NS/PCsの安全性評価項目を作成することを目指した。SNV解析とDNAメチル化解析、CNV解析において、造腫瘍性を持つ細胞株に特異的な変化を認め、その中にPSMD5などの腫瘍抑制遺伝子のゲノム/エピゲノム変異や、第2染色体長腕のCNVを認め、Wntシグナルなどの細胞増殖に関わる腫瘍関連遺伝子のエピゲノム異常が含まれていた。また、SNV解析、DNAメチル化解析、CNV解析結果から、NS/PCsの継代を重ねるとゲノム不安定性が上昇することが分かった。当初の計画通りに、異なるiPS細胞を用いた腫瘍化に関する解析をin vitroおよびin vivoで行い、iPS-NS/PCsの腫瘍化に関わる因子についての成果を挙げると共に、成果の一部を論文として報告できたため。我々は、脊髄損傷モデル動物に対するiPS細胞由来神経幹細胞/前駆細胞(iPSC-NS/PCs)を用いた細胞移植の有効性を報告してきたが、一部の細胞株では腫瘍を形成することも明らかとなっている。そこで細胞移植のためには、安全な細胞株の選定が重要である。前年度は、iPSC-NS/PCsの一塩基変異(SNV)解析、コピー数変異(CNV)解析、DNAメチル化解析などを行うことで、腫瘍化を起こすより詳細なメカニズムを解明し、iPSC-NS/PCsの安全性評価項目を作成することを目指した。京都大学で樹立されたヒトiPS細胞4株(造腫瘍性あり:253G1・836B3、造腫瘍性なし:201B7・414C2)のうち、253G1と201B7およびこれらの各細胞株をiPSC-NS/PCsへ分化誘導したものを用いた。SNV解析とDNAメチル化解析、CNV解析において、造腫瘍性を持つ細胞株に特異的な変化を認め、その中にPSMD5などの腫瘍抑制遺伝子のゲノム/エピゲノム変異や、第2染色体長腕のCNVを認め、Wntシグナルなどの細胞増殖に関わる腫瘍関連遺伝子のエピゲノム異常が含まれていた。また、SNV解析、DNAメチル化解析、CNV解析結果から、NS/PCsの継代を重ねるとゲノム不安定性が上昇することが分かった。本成果を論文として報告した。本成果により、臨床応用可能なiPS-NS/PCsを作製する過程で、安全評価基準の中にその継代数や腫瘍化に関わるDNAメチル化異常の有無の項目を追加することができた。これらの評価項目をさらに詳細に検討すると共に、別のiPS細胞株を用いて同様の実験を行い、評価項目の正当性を確かめている。 | KAKENHI-PROJECT-15K10422 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K10422 |
脊髄損傷に対するiPS由来神経幹細胞移植後の造腫瘍性の解明と制御 | 本研究課題の成果は、安全なiPS細胞株、iPS-NS/PCsの作製と造腫瘍性の制御に役立つものと考えている。我々は、脊髄損傷に対するマウス及びヒトiPS細胞由来神経幹/前駆細胞(iPS-NS/PCs)移植の有効性を報告してきた。損傷脊髄部へのiPS-NS/PCs移植により、下肢運動機能が改善する一方で、iPS細胞株によっては移植後長期経過後glioma様の腫瘍を形成することも明らかとなった。脊髄損傷に対するiPS細胞療法をヒトに応用する場合、腫瘍化しない“安全な"iPS-NS/PCsの選別が重要である。本研究では、脊髄損傷に対するiPS-NS/PCs移植後の造腫瘍性に関わる候補遺伝子やエピゲノム変異を選別した。腫瘍化しない細胞株の選定と移植前細胞の至適継代数の調整が安全性の確保には重要である。iPS-NS/PCが腫瘍化する原因として、もともとin vitroで腫瘍形成能を獲得しているのか、あるいは移植後の損傷脊髄内微小環境により、腫瘍化がおこるのかは不明である。また、1京都大学山中研で樹立されたiPS細胞4株および2これらの各細胞株をiPS-NS/PCへ分化誘導した細胞株3iPSのfeeder細胞4Glioblastoma(GBM)細胞株(U87細胞)5UCLAから得られたGBM患者由来の細胞株をそれぞれ培養し、これらのサンプルからQiagen社のDNeasy®を用いてDNAを抽出する。Illumina社のInfinumシステムを用いて、一塩基多型解析(SNP array)によるcopy number variant(CNV)解析やDNAメチル化の解析を行うことも予定している。これらの結果を通じてiPS細胞由来神経幹細胞移植後の腫瘍化のメカニズムとその予防についての方索を確立することができると考えている。本成果により、臨床応用可能なiPS-NS/PCsを作製する過程で、安全評価基準の中にその継代数や腫瘍化に関わるDNAメチル化異常の有無の項目を追加することができた。これらの評価項目をさらに詳細に検討すると共に、別のiPS細胞株を用いて同様の実験を行い、さらなる知見を得る。本研究課題の成果を包括し、安全なiPS細胞株、iPS-NS/PCsの作製および造腫瘍性の制御の一助としたい。脊髄損傷昨年度はin vitroでの培養実験と腫瘍化に関する研究がメインであったため、microarrayやin vivoの研究が若干予定通りに進行せず、後回しになった。その分余剰金が出た。今年度は、microarrayや候補遺伝子の強制発現実験、in vivoでの長期経過に関する実験を施行するため、前年度の繰り越し金を含めて資金を使用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-15K10422 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K10422 |
複雑領域に対する陰関数ベース高速メッシュレス解析システムの開発 | 本研究の目的は,高速に関数値計算可能な陰関数生成法を確立し,同法を用いて,複雑領域に対する高速メッシュレス解析システムを開発することである.研究成果は,まず,従来のB-Splineを用いた陰関数生成法を改良し,同法で必要な処理の1つを排除することで,陰関数生成に要する時間を最大12.7倍高速化した.また,メッシュレス解析システムの開発のために,まず,連立1次方程式の解法の高速化に取り組み,MICでの並列化で約3倍高速化された.また,メッシュレス法による電磁波伝搬解析をMTDMで行い,時間発展計算が,CPUでのSerial実行と比較して,GPUでは約8.3倍,MICでは約8.16倍高速化された.平成25年度は,まず,前年度にCPU環境において実装した陰関数生成アルゴリズムを改良した.具体的には,解析対象領域表面においてのみ陰関数の値が0になるべきであったが,表面から離れたところでも0になってしまう例が見つかったため,表面から離れた位置で必要な計算のアルゴリズムを見直した.結果として,陰関数として自然な値の変化をするようになり,アルゴリズムの安定性が高まった.なお,計算量はほとんど変化していないため,計算速度も前年度と同様である.また,GPUへの実装は,改良した方法の論文投稿を優先させたため,平成25年度には終えていないものの,改良版もB-Splineに基づいているため,GPU向きのアルゴリズムであることについては前年度から変わっていない.一方,メッシュレス法については,前年度に引き続き,FDTD法にメッシュレス法の形状関数を組み込んだ方法を用いて,複雑な形状の導波管における電磁波伝搬シミュレーションの研究を行った.具体的には,まず,同法を用いたシミュレーションの安定性について理論的に考察し,安定化のために最低限満たす必要のある条件を示した.一方,同法によるシミュレーションの高速化のために,新しい形状関数の導入を試みたが,前述した条件を満足しただけでは安定化させることが難しかった.従って,他の安定条件の存在が予想されるが,それを理論的に導くことはできなかった.しかしながら,幾つかの数値実験によって獲得したデータを基に,形状関数変更時に安定性を保ったまま高速化させる方法について,具体的なパラメータと共に示した.上述の研究成果は,国内外の会議や研究会で積極的に発表した.また,幾つかは論文として投稿しており,何報かは既に採録が決定している.本研究の目的は,高速に関数値計算可能な陰関数生成法を確立し,同法を用いて,複雑領域に対する高速メッシュレス解析システムを開発することである.研究成果は,まず,従来のB-Splineを用いた陰関数生成法を改良し,同法で必要な処理の1つを排除することで,陰関数生成に要する時間を最大12.7倍高速化した.また,メッシュレス解析システムの開発のために,まず,連立1次方程式の解法の高速化に取り組み,MICでの並列化で約3倍高速化された.また,メッシュレス法による電磁波伝搬解析をMTDMで行い,時間発展計算が,CPUでのSerial実行と比較して,GPUでは約8.3倍,MICでは約8.16倍高速化された.平成24年度は,高速メッシュレス解析システムにおいて,領域を表す際に使用する陰関数の生成法について検討した.陰関数生成法としては,B-Splineを利用した方法を改良したものを用いた.従来の方法では,まず,入力点群からMPU法などを利用して一旦通常通りに陰関数を生成した後,その陰関数から格子状に関数値を獲得し,それらをB-Splineによって結合することで,高速に関数値計算可能な陰関数を生成可能とした.一方,我々は,一旦陰関数を生成するプロセスを不要とし,関数値の代わりになる値を入力点群から直接獲得可能とする方法を提案した.CPU環境における提案法の実装によって,従来法よりも高速に格子状のデータを獲得でき,陰関数の関数値計算も高速に実行可能であることを確認した.また,提案法から生成された陰関数の入力点群上における精度は,従来法と数値的に同程度であった.従って,CPU環境においては十分なパフォーマンスを持っており,次年度以降はGPU環境での実装にシフト可能であるといえる.一方,メッシュレス法の研究として,同法において現れる連立1次方程式の解法についても研究し,高速に解くための指針の一例を示した.また,FDTD法にメッシュレス法で用いられる形状関数を組み込むことで,複雑な形状の導波管における電磁波伝搬シミュレーションを容易にする方法についても研究を行い,現時点では2次元問題のシミュレーションコードを開発している.研究成果は,国内外の会議や研究会で積極的に発表した.また,幾つかは論文としても投稿している.平成26年度は,まず,前年度までにCPU環境で実装した陰関数生成アルゴリズムをさらに改良し,最終的にまとまったものをJournal Paperとして投稿した.同アルゴリズムは,B-Splineを利用した方法であり,GPU環境で実装すれば陰関数曲面のリアルタイムレンダリングが可能である.投稿論文では,GPU環境での実装はしていないものの,レンダリングの前段階で必要な処理を最大で約12.7倍高速化した.また,実用的なパラメータ設定をすると,入力節点数にほとんど依存しないアルゴリズムであることを示した.投稿論文は,最終的にアクセプトされた.一方,メッシュレス法については,FDTD法にメッシュレス法の形状関数を組み込んだ方法(Meshless Time-Domain Method, MTDM)を用いて,電磁波伝搬シミュレーションの研究を主に行った. | KAKENHI-PROJECT-24700053 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24700053 |
複雑領域に対する陰関数ベース高速メッシュレス解析システムの開発 | 具体的には,Many Integrated Core (MIC)アーキテクチャを用いたMTDMの並列アルゴリズムを提案した.提案法では,MIC向けの最適化をコンパイラだけに任せるのではなく,独自の最適化を行うことで,より高速化できることを示した.MICでの並列化の第1段階として,提案法の評価は直線導波管で行ったが,1つのCPUコアでの実行と比較して,Offloadモードで約8.16倍の高速化を実現した.提案法をまとめたものは,最終的にJournal Paperとしてアクセプトされ,既に出版されている.研究期間全体では,初年度から高速で安定な陰関数生成アルゴリズムの開発に取り組み,予想以上に時間はかかったものの,最終的にJournal Paperとなった.また,メッシュレス法の中でも,主としてMTDMの安定性と高速化について研究し,Journal Paperも幾つか出版された.数値解析,コンピュータグラフィクス平成25年度は,まず,陰関数生成アルゴリズムを改良し,従来と計算速度を同等に保ったまま,安定性を向上させた.また,同アルゴリズムのGPU環境における実装は終わっていないものの,論文執筆を前倒しで行い,現在投稿中である.さらに,メッシュレス法の研究において進展があり,投稿した論文の幾つかは採録が決定している.以上より,全体としてはおおむね順調に進展していると判断した.平成24年度は,メッシュレス解析システムにおいて解析領域を表すために使用する陰関数について検討し,同システムにおいて求められる性能を持った陰関数をCPU環境で実装することを目的に,研究計画を立てた.実際には,計画段階での構想とは別の方法となったが,メッシュレス解析システムにおいて求められる陰関数を実装し,CPU環境において十分なパフォーマンスを持っていることを確認できた.また,この研究成果については研究会で発表し,今後のGPU環境における実装などについて参加者と議論することができた.現状の研究経過状況より,おおむね順調に進展していると判断した.平成26年度は,様々なメッシュレス法の高速化について取り組む.例えば,連立1次方程式が現れるメッシュレス法においては,連立1次方程式の係数行列を組み上げる処理の高速化が必要であるが,これは平成25年度までに実装した陰関数を利用することで,並列処理によって実現可能であると考えている.また,FDTD法にメッシュレス法の形状関数を組み込んだ方法についても,並列処理によって更なる高速化を目指す.並列処理は,これまでの計画通りにGPUを用いて行うことを考えると同時に,近年開発されたMany Integrated Core (MIC)アーキテクチャを用いることも検討する.MICはGPUが苦手とする処理を扱うことが出来る場合があるため,メッシュレス法を低いコーディングコストで高速化できる可能性がある.GPUとMICを使用するための環境は現時点で整っているため,両環境での並列化を検討していくことで,最終的にそれぞれの環境に特化した高速化が実現できると考えている.平成25年度は,最新のGPU環境を導入し,GPU上で陰関数の関数値計算が並列に高速計算できるように実装することを目標とする.その際には,平成24年度にCPU環境で構築したアルゴリズムをベースに実装する.GPU上で関数値計算を並列に高速計算するためには,生成されたローカル関数の全てが同じ関数表現で定義されている必要がある. | KAKENHI-PROJECT-24700053 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24700053 |
エコ接着のための自己伝播発熱素材の開発とマイクロ鋳込成型技術 | Alナノ粒子に無電解めっきでNiを成膜したAlNiナノ粒子を任意形状に成形し,発熱体の開発に成功した, AlNi成形体にスパークを当てると結晶構造変化が起こり, NiAl化合物ができるために発熱反応した.この反応熱を用いてはんだを溶融させ, Siチップを接着することに成功した.Alナノ粒子に無電解めっきでNiを成膜したAlNiナノ粒子を任意形状に成形し,発熱体の開発に成功した, AlNi成形体にスパークを当てると結晶構造変化が起こり, NiAl化合物ができるために発熱反応した.この反応熱を用いてはんだを溶融させ, Siチップを接着することに成功した.自作した三源マグネトロンスパッタリング装置のスパッタガン二基を用いて100nm厚バイレイヤーを持つAl/Ni多層膜を成膜し,Sn-3.5wt%Agはんだを成膜したSiチップを真空中で瞬間接着する技術を開発した.接着時には2枚のチップ表面から加圧が必要であり,平行度を出すことが重要であった.また,Al/Ni多層膜の発熱反応時に12%程度体積収縮が生じ,反応後のNiAl内にはクラックが生成する.複数点同時に反応開始点を設けることで,クラックの生成メカニズムの解明に着手した.その結果,自己伝播する複数の反応が衝突するところに,大きなクラックが生成されることがわかった.一方,直径100nmのAl粒子表面にNiを無電解鍍金で堆積させる技術の開発を始めた.Al粒子表面には3.5nm程度の自然酸化膜が存在していることをTEMで確認した.それを酸性の溶液でエッチングした後にジンケート処理でZrを析出させ,Niと置換させることで,Al表面にNiを堆積させた.作製したAlNiナノ粒子を用いて発熱反応を試みた結果,多層膜と同じように,発熱反応を生じることを確認した.自作したマグネトロンスパッタリング装置を用いてAlとNiを交互に成膜してAl/Ni多層膜を作製し,その自己伝播発熱反応を利用してSiウェハの瞬間はんだ接着を行った.反応時の結晶構造変化により,反応後のNiAlは12%体積収縮するので,その内部にはクラックが生じる.反応の伝播方向とクラック生成位置とは相関があることがわかった.そこで,マイクロデバイスの封止パッケージを模擬したキャビティを持つSiチップを作り,それに対して複数点同時に反応を誘起させる技術を開発してクラックの位置制御を試みた.その結果,反応同士がぶつかる部分にクラック生成が可能なことを見出した.さらに,接着部の幅を小さくし,Al/Ni多層膜の厚みを薄くすることで,クラックレスのNiAlを製作することに成功した.一方,発熱ナノ粒子の製作について,現在,直径100nm30μmのAl粒子の周りに無電解めっきでNiを被覆する技術の確立を目指している.まず,Al粒子表面の酸化被膜を酸洗いして亜鉛を表面に付着させる陣ケーと処理を行った.次に,亜鉛と置換する形でNi被膜をAl粒子表面に堆積させた.ジンケート処理や無電解めっき条件を種々変化させ,生成エンタルピーが最大になる原子比1:1に成膜する技術を確立した,生成したAlNi粒子を加圧成形により所望の形状に成形し,それに対してスパークで反応を誘起した結果,AlNi粒子成形体も発熱反応を生じた.反応速度はAlNi多層膜より遅く,粒子径や膜厚比などを変えることで,反応速度を制御できることがわかった. | KAKENHI-PROJECT-22656033 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22656033 |
Subsets and Splits
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