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居住環境における微量化学物質の生物学的モニタリング
なおこれらの測定法で、1-5ppmのホルムアルデヒドに曝露した解剖実習生の尿を測定したところ1.5-49.3μg/mLのホルムアルデヒドが検出された。今後は、曝露モニタリングに適切な採尿時期と曝露濃度との対応を検討する予定にしている。(2)キシレンに由来する尿中メチル馬尿酸については、当初の予定通りメチル化後のGC-FIDとGCMS法を検討した。しかしながら通常の居住環境で遭遇するキシレン濃度に対応すると思われる推定値(1-10μg/mL)付近では、感度とともに分離能の点で十分な結果は得られていない。そこで次年度以降は代謝産物に含まれる窒素(N)に着目したGC-NPD法、あるいは塩素を含有するエステル化剤での誘導体をGC-ECDで分離定量する方法等、更に高感度で特異性の高い方法を検討する予定にしている。3上記のうちHPLCを用いた研究には、本年度予算で購入したセミミクロUV-VIS検出器を用いた。今年度は、居住環境汚染で問題となっているフタル酸化合物を対象とした分析方法と、昨年度に引き続きアルデヒド類の蛍光検出法を検討した。生体試料中フタル酸の分析には、新たにインチューブ固相マイクロ抽出/高速液体クロマトグラフィー(インチューブSPME/HPLC)による全自動オンライン分析システムの開発し、以下の成績を得た。1私達が開発したインチューブSPME/HPLC法を用いて、生体試料のモデルとした輸液および液体医薬品中のフタル酸エステル類を分析した。プラスチック製容器中の輸液からフタル酸ジ-n-ブチル(DBP)が検出され、バッグやボトル容器の印字インクおよびラベル紙接着剤中のDBPがプラスチック容器を透過して輸液を汚染している可能性が示された。またポリ塩化ビニル製の点滴用チューブを通過した液体中からフタル酸-2-エチルヘキシル(DEHP)が検出された。人の生体試料からの検出と生物学的モニタリングへの応用は次年度以降の課題である。2昨年に引き続き尿試料からのアルデヒド類を蛍光検出器付きHPLC法で定量する方法を検討した。この方法の問題点は、検出感度は向上するが低濃度域で安定性が悪くなることである。比較的高濃度と予測した解剖実習生のホルムアルデヒド曝露後尿を、従来法のUV検出器HPLCによる方法とともに蛍光法でも測定し、曝露濃度との関連を調べたが明確な量一影響関係は見いだせなかった。アルデヒド類のような水溶性の化学物質を生物学的モニタリングの対象とする場合は、試料採取と保存する場所の空気中に対象物質含まれていると、採取後に混入して測定値に影響する可能性があることが示唆された。研究目的新築建造物内に居住・就労する人々に様々な健康障害が発生する「シックハウス症候群」が問題となっている。今年度はトルエン、キシレン、スチレン等芳香族の揮発性有機化合物(VOC)の尿中代謝物を対象として、GC/MSによる微量定量法を検討した。実験方法測定対象とした尿中代謝物は、馬尿酸(HA):トルエン、o-,m-,p-メチル馬尿酸.(o-,m-,p-MHA):キシレン・マンデル酸(MA)およびフェニルグリオキシル酸(PGA):スチレンとした。試料尿に内部標準(I.S.)としてベンゾイルロイシンを添加し、酸性条件下でジエチルエーテルで抽出した溶媒留去後、塩酸-メタノール法でメチルエステル誘導体化を行い、ペンタンで抽出・溶媒留去した。その残渣を酢酸エチルに溶解し、DB-1キャピラリーカラム付きGC/MSを用いて、カラム温度150°Cから250°Cまで10°C/minで昇温分析した。SIMモード分析は、m/z=105(HA)、m/z=119(MHA)、m/z=107(MA)、m/z=105(PGA)を選択した。
KAKENHI-PROJECT-13670365
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13670365
腸管NAMPT-NAD合成系を標的としたNMNによるインスリン抵抗性予防法の開発
哺乳類NAD+合成系の鍵酵素であるNAMPT(nicotinamide phosphoribosyltransferase)は環境・栄養状態に応答することでNAD+量を調節し、サーチュインに代表されるNAD+消費酵素を介して代謝疾患などにおいて重要な役割を果たすことが明らかにされてきた。さらに、インスリン抵抗性、2型糖尿病などにおいてNAMPTの酵素反応産物であるNMN(nicotinamide mononucleotide)や、NR(nicotinamide riboside)などのNAD+中間代謝産物がNAD+量を増加させ、病態を改善することも報告されている。近年、加齢により小腸のNAD+量が低下することも報告され、平成30年度より腸管NAMPT-NAD+合成系の糖代謝およびインスリン抵抗性発症制御における役割の検討を目指して研究を開始した。第一に、高脂肪食負荷による全身のインスリン抵抗性発症の過程で、主要代謝臓器に先行して炎症を生じる腸管におけるNAMPT-NAD+合成系を、C57BL/6マウスを用いて評価した。高脂肪食負荷早期より大腸のNamptが低下し、続いて小腸のNamptが低下した。このような腸管におけるNampt発現量の低下の意義を検討するため、腸管上皮細胞特異的Namptノックアウトマウスを新規に作成した。通常食投与では、コントロールマウスとノックアウトマウスの2群間で、3-4か月齢までは有意な体重差は認めなかった。今後、腹腔内インスリン負荷試験、腹腔内ブドウ糖負荷試験、経口ブドウ糖負荷試験を行い、腸管NAMPT-NAD+合成系の糖代謝およびインスリン抵抗性発症制御における役割の検討をすすめる。本研究により、加齢および高脂肪食負荷による肥満に伴う、糖代謝障害およびインスリン抵抗性発症における腸管NAD+量の低下の意義を明らかとする。平成30年度に申請者は腸管上皮細胞特異的Namptノックアウト(Intestinal epithelial cells-specific Nampt knockout)マウスを作成に成功した。平成31年度は、まず第一に、腸管上皮細胞でのNAD+の枯渇が、全身の糖代謝やインスリン抵抗性を制御するかを検討するべく、腹腔内インスリン負荷試験、腹腔内ブドウ糖負荷試験、経口ブドウ糖負荷試験を行う。さらに、腸管NAMPT-NAD+合成系の障害が、腸管構造に与える影響を検討するために、小腸・大腸の長さ、H.E染色での絨毛長、陰窩長、炎症細胞の浸潤などを評価する。これらのパラメーターに変化を認めた際には、腸内細菌叢の変化の関与も検討する。最終的には、NAD+中間代謝産物であるNMN(nicotinamide mononucleotide)を経口投与し、腸管上皮細胞のNAD+量を回復させた際に、糖代謝障害、インスリン抵抗性、腸管構造変化が正常に復するかを評価する。哺乳類NAD+合成系の鍵酵素であるNAMPT(nicotinamide phosphoribosyltransferase)は環境・栄養状態に応答することでNAD+量を調節し、サーチュインに代表されるNAD+消費酵素を介して代謝疾患などにおいて重要な役割を果たすことが明らかにされてきた。さらに、インスリン抵抗性、2型糖尿病などにおいてNAMPTの酵素反応産物であるNMN(nicotinamide mononucleotide)や、NR(nicotinamide riboside)などのNAD+中間代謝産物がNAD+量を増加させ、病態を改善することも報告されている。近年、加齢により小腸のNAD+量が低下することも報告され、平成30年度より腸管NAMPT-NAD+合成系の糖代謝およびインスリン抵抗性発症制御における役割の検討を目指して研究を開始した。第一に、高脂肪食負荷による全身のインスリン抵抗性発症の過程で、主要代謝臓器に先行して炎症を生じる腸管におけるNAMPT-NAD+合成系を、C57BL/6マウスを用いて評価した。高脂肪食負荷早期より大腸のNamptが低下し、続いて小腸のNamptが低下した。このような腸管におけるNampt発現量の低下の意義を検討するため、腸管上皮細胞特異的Namptノックアウトマウスを新規に作成した。通常食投与では、コントロールマウスとノックアウトマウスの2群間で、3-4か月齢までは有意な体重差は認めなかった。今後、腹腔内インスリン負荷試験、腹腔内ブドウ糖負荷試験、経口ブドウ糖負荷試験を行い、腸管NAMPT-NAD+合成系の糖代謝およびインスリン抵抗性発症制御における役割の検討をすすめる。本研究により、加齢および高脂肪食負荷による肥満に伴う、糖代謝障害およびインスリン抵抗性発症における腸管NAD+量の低下の意義を明らかとする。平成30年度に申請者は腸管上皮細胞特異的Namptノックアウト(Intestinal epithelial cells-specific Nampt knockout)マウスを作成に成功した。平成31年度は、まず第一に、腸管上皮細胞でのNAD+の枯渇が、全身の糖代謝やインスリン抵抗性を制御するかを検討するべく、腹腔内インスリン負荷試験、腹腔内ブドウ糖負荷試験、経口ブドウ糖負荷試験を行う。さらに、腸管NAMPT-NAD+合成系の障害が、腸管構造に与える影響を検討するために、小腸・大腸の長さ、H.E染色での絨毛長、陰窩長、炎症細胞の浸潤などを評価する。これらのパラメーターに変化を認めた際には、腸内細菌叢の変化の関与も検討する。最終的には、NAD+中間代謝産物であるNMN(nicotinamide mononucleotide)を経口投与し、腸管上皮細胞のNAD+量を回復させた際に、糖代謝障害、インスリン抵抗性、腸管構造変化が正常に復するかを評価する。
KAKENHI-PROJECT-18K15399
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K15399
腸管NAMPT-NAD合成系を標的としたNMNによるインスリン抵抗性予防法の開発
購入予定であったNMNについては、腸管上皮細胞特異的Namptノックアウトマウスを作成し、表現型を確認した後に投与期間・投与量を決める必要があると考え、翌年度に購入することとした。
KAKENHI-PROJECT-18K15399
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K15399
強力な抗腫瘍活性を有するヘテロ環系天然物の合成化学的研究
(1)抗腫瘍活性バンレイシアセトゲニン類の合成研究を行い、構造未定であったモンタナシンD, Eの合成を達成した。また、ピラニシンがDNAポリメラーゼ、トポイソメラーゼ等の酵素の強力な阻害剤になることを見出した。(2)腫瘍血管新生を阻害するテルペノイド(オバリシン、フマジリン)の効率的合成法を検討し、Sharpless不斉酸化反応と分子内メタセシス反応を鍵段階とする短段階合成ルートを開発した。(1)抗腫瘍活性バンレイシアセトゲニン類の合成研究を行い、構造未定であったモンタナシンD, Eの合成を達成した。また、ピラニシンがDNAポリメラーゼ、トポイソメラーゼ等の酵素の強力な阻害剤になることを見出した。(2)腫瘍血管新生を阻害するテルペノイド(オバリシン、フマジリン)の効率的合成法を検討し、Sharpless不斉酸化反応と分子内メタセシス反応を鍵段階とする短段階合成ルートを開発した。強力な抗腫瘍作用を有するバンレイシアセトゲニン類の全合成を達成し、構造活性相関研究を通してその標的分子の探索等を行うことを主な目的としている。まず、立体化学が未だ不明であるモンタナシンDやカムバリニンの構造決定に有用なテトラヒドロピランユニットの効率的合成法を開発した。分子内付加反応を基盤としたこの環状エーテル合成法は、近傍水酸基が遊離であっても高選択的に進行するため、種々の誘導体の合成が可能であった。この反応を活用してモンタナシンDの右半分に相当するラクトン部分を構築した。また、シャープレスの不斉酸化反応等を利用してモンタナシンDの左半分テトラヒドロフラン誘導体を合成した。当初の予定であったこれら2つのセグメントの分子間メタセシス反応によるカップリングは、いくつか条件を検討したにもかかわらず不成功に終わった。一方、スペーサーを介して両分子をつなぎ、分子内でカップリングさせたところ高收率でモンタナシンDの全炭素骨格を構築することに成功した。バンレイシアセトゲニン類は細胞毒性や数種のcancer cell lineに対する阻害作用の報告はあるものの、DNAポリメラーゼ、トポイソメラーゼ等の酵素に対する作用は報告されていなかった。こういった酵素の阻害剤は有望な抗腫瘍剤になる可能性が高いため、合成品並びにそれらの立体異性体を用いて、ポリメラーゼ、トポイソメラーゼおよびhuman cancer cell line、HL-60に対する阻害作用を調べた。その結果、モノテトラヒドロピランアセトゲニンであるピラニシンが強力な阻害作用を示した。詳細なバイオアッセイを行ったところ、ピラニシンは哺乳類のポリメラーゼに特異的に作用し、植物ポリメラーゼや微生物起源の酵素等には効果が少ないことを見いだした。また、humanトポイソメラーゼI,IIにも効果的であった。これまでに多数知られている抗腫瘍活性バンレイシアセトゲニンの中でも、カムバリニンD(1)は4位水酸基が環状エーテルを形成し、他のアセトゲニン類とは大きく異なる構造化学的特徴を有している。このエーテル環の存在は、分子のコンホメーション自由度を大きく規制し、活性発現に重要な影響を及ぼすことが予想される。よって、1は作用機作を調べる上での重要なモデルになると考えられたが、天然からはごく微量しか得られていなかったため立体化学の一部が不明であるばかりでなく、活性の評価もなされていなかった。そこで、この天然物の絶対構造をも決定する目的で合成法の開発を行った。まず、未決定である分子右半分コアに相当する2種のラクトンを、生合成ルートを考慮に入れてデザインし、分子間アルキル化を利用して合成した。一方分子左半分は分子内エーテル化により合成した。両者のカップリングは分子間メタセシスによりスムーズに進行し、脱保護を経て2種のジアステレオマーを合成した。合成品のスペクトルデータを天然物のものと詳細に比較すると、一方の異性体が天然物のものと一致することがわかり、天然物の絶対構造を合成化学的に明らかにすることに成功した。腫瘍血管新生を阻害するテルペノイド(オバリシン、フマジリン)の短段階合成ルートを検討し、新規誘導体創製も可能な効率的合成法を開発した。まず、市販のアルコール誘導体からSharplessの不斉酸化反応を利用して数段階で鎖状オレフィン化合物を合成した。次いで分子内メタセシス反応によってシクロヘキセン誘導体を構築した。ここで酸化を行うと反応は立体選択的に進行し、望むジオールを与えた。エポキシ環の構築を経てシクロヘキサノン誘導体とし、側鎖部を導入するとオバリシンの第二世代合成が達成できた。また、シクロヘキセン誘導体から数段階で、文献既知のフマジリン合成中間体へも変換できた。
KAKENHI-PROJECT-19580130
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19580130
エナメル上皮腫による新しい直接的骨溶解機構の解明
エナメル上皮腫は日本で最も多い歯原性腫瘍であり、顎骨内での増殖・拡大は、腫瘍が放出するRANKLにより周囲の破骨細胞を活性化することにより起きると考えられてきた。しかしながら我々は、エナメル上皮腫自身が破骨細胞と同様にV-ATPase及びCLC-7を細胞膜表面に有し、それらを活性化することにより周囲骨組織を直接溶解し増殖・拡大していくことを、培養細胞(AM-1)を用いた各種実験手法及びエナメル上皮種の亜型である叢状型、濾胞型及び基底細胞型の各摘出病理組織切片を用いて明らかにした。昨年度の結果からAM-1は細胞表面にV-ATPaseおよびCLC-7を有し、破骨細胞と同様にリン酸カルシウムを溶解すること、V-ATPaseの選択的阻害薬であるbafilomycinによりその溶解は抑制されること、骨粗鬆症薬であり破骨細胞の活性を抑制するalendronateやethidronateには感受性を示さなかったこと、自らRANKLを放出するだけでなく、破骨細胞と同様にRANKを有することを示したことなどが挙げられるが、本年度は1)の更なる検討として、RANKシグナル下流の機構に焦点を絞って実験を行った。AM-1は細胞外Ca負荷およびRANKL刺激により、細胞融合を引き起こすが、この機構は破骨細胞様のRANKの活性化によるTRAF6の亢進からc-fosのリン酸化や細胞内Ca上昇を経て、NFATc1の脱リン酸化(亢進)するだけでなく、細胞外Ca負荷(1mM Ca)によりNFATc2の亢進という2つの経路により活性されることが明らかとなった。さらに、摘出組織を用いてV-ATPaseおよびCLC-7の局在を組織免染にて検討したところ、AM-1のoriginであるplexiform型はもちろんのこと、follicular型およびbasal cell型においても細胞膜近辺に両者の局在を認めた。以上の結果から、エナメル上皮腫は破骨細胞と同様に細胞表面にV-ATPaseおよびCLC-7を有し骨融解を引き起こすこと、また骨融解において発生した局所の細胞外Caおよび自らも放出するRANKLをRANKにて受容することによりNFATc1およびNFATc2を活性化させることで破骨細胞と同様に細胞融合を引き起こしていることが明らかとなった。本研究の目的は、エナメル上皮腫細胞による新しい直接骨吸収とその機構の解明と現在まで広く行われてきた外科的治療の補助もしくはそれに代わる新たな内科的治療法の開発である。研究計画として、1) AM-1の骨無基質溶解(骨吸収)のメカニズムの解明と選択的阻害薬の検索、2)他のエナメル上皮種の亜型や他の腫瘍細胞(悪性も含む)での骨溶解・浸潤におけるV-ATPaseおよびCLC-7の関与の検討、という二大テーマを掲げ、本年度は主に1)に重点を置き実験を遂行した。詳細としては、bafilomycinやconcanamycinといったV-ATPase阻害薬によりエナメル上皮腫細胞であるAM-1による骨溶解が抑制されるものの、etidronateやalendronateといった破骨細胞の活性を抑制するbisphoshonatesの投与では、骨溶解は阻害されなかった。一方でAM-1は、自らの細胞膜上に存在するV-ATPaseやCLC-7によって放出されるH+やCl-により骨溶解を引き起こすだけでなく、骨有機質を溶解させるcathepsin Kをも有していることがウエスタンブロットにて明らかとなった。またAM-1は、破骨細胞の分化を促進する物質であるRANKLを放出し周囲の破骨細胞をだけでなく、自らもRANKL受容体であるRANKを有していることが明らかとなった。さらにAM-1は、自らが溶解した骨基質からの細胞外Caにより形態が変化し、破骨細胞様に融合・多核化・巨大化し、がん細胞の転移時に観察される上皮間葉転換の指標となる間葉系マーカーが発現するだけでなく、破骨細胞分化のマーカーやマクロファージのマーカーをも発現していることが明らかとなった。以上の結果から、AM-1は上皮間葉転換だけでなく、一部マクロファージ様に転換し、形態変化及び骨溶解を引き起こしている可能性が示唆された。本研究はエナメル上皮腫細胞による新しい直接骨吸収とその機構を解明することである。これまで、エナメル上皮腫細胞は、骨転移したがん細胞と同様にRANKLを放出し、それにより腫瘍周囲の破骨細胞を活性化し、骨吸収・腫瘍増大を引き起こしていると考えられてきた。しかしながらエナメル上皮腫と骨転移したがんの浸潤様式は臨床的なX線像としても全く異なる形式であり、またその浸潤・腫瘍増大のスピードも全く異なっている。以上の事実を踏まえ、我々はエナメル上皮腫細胞(AM-1)および高浸潤性・高転移性である舌がん細胞のHST-3を用いて、破骨前駆細胞であるマウス・マクロファージ(RAW246.7)との共培養、擬似骨プレートを用いた実験、ウエスタンブロット、免疫蛍光染色、TRAP染色、各種チャネル阻害薬などの様々な手法により、エナメル上皮腫は破骨細胞を活性化させるほどのRANKLを発現していないこと、エナメル上皮腫自体の細胞膜上に破骨細胞と同様にプロトンポンプであるV-ATPase、塩素トランスポーターであるCLC-7を発現し、エナメル上皮腫自身が骨を溶解していることが明らかにした。加えて、その溶解効率は、破骨細胞に比して約60倍低く、また細胞増殖の速度も約5倍遅かった。以上の結果は、エナメル上皮腫の臨床的背景とほぼ一致しており、今後のエナメル上皮腫の治療への新たなるアプローチの一つとなった。
KAKENHI-PROJECT-24592991
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24592991
エナメル上皮腫による新しい直接的骨溶解機構の解明
尚、この研究成果は現在、国際歯科研究雑誌に投稿中である。本研究ではエナメル上皮腫による新しい骨吸収機構の解明を目的とした。エナメル上皮腫は本邦における良性歯原性腫瘍の中で最も頻度の高い疾患であり、顎骨内で悪性腫瘍細胞と同様にRANKLを発現し、破骨細胞を活性化させることにより骨吸収を行い増大していくと考えられていた。しかし本研究の結果、エナメル上皮腫細胞株(AM-1)におけるRANKL蛋白質の発現量は高転移性の舌癌由来口腔扁平上皮癌細胞株(HSC-3)に比べて極めて少ないことが、ウエスタンブロッティング法にて確認された。マウスマクロファージ細胞株(RAW 264.7)とAM-1およびHSC-3との共培養実験において、TRAP陽性多核細胞の計測により破骨細胞形性能を調べるとHSC-3との共培養では多くのTRAP陽性多核細胞を認めたのに対し、AM-1との共培養ではTRAP陽性多核細胞は殆ど認められなかった。このことは、低いRANKL産生によるものと考えられた。そこで、エナメル上皮腫による直接的な骨吸収の可能性を検討した。AM-1をリン酸カルシウムのコーティングされたプレート上で培養すると多くの吸収窩が形成された。この吸収窩は、vacuolar-type H+-ATPase (V-ATPase)の阻害剤添加により抑制された。さらに、AM-1の細胞膜上へのV-ATPaseとH+/Clーexchangetransporter 7 (CLC-7)の発現が膜蛋白質のビオチン化標識実験及び免疫蛍光染色にて認められた。エナメル上皮腫の病理組織切片を免疫蛍光染色法にて観察すると培養細胞での所見と同様にV-ATPaseとCLC-7の細胞膜への局在が、叢状型、濾胞型、基底細胞型の組織切片において観察された。しかし、AM-1の骨基質溶解活性は破骨細胞に比して60分の1程度であり、細胞増殖率も皮膚正常細胞株のHaCaTおよびHSC-3に比して5分の1程度であった。以上の結果よりエナメル上皮腫の顎骨内での緩やかな進展は、緩徐な細胞増殖と骨基質溶解によりもたらされることが示唆された。以上の研究結果を国際雑誌で報告した。エナメル上皮腫は日本で最も多い歯原性腫瘍であり、顎骨内での増殖・拡大は、腫瘍が放出するRANKLにより周囲の破骨細胞を活性化することにより起きると考えられてきた。しかしながら我々は、エナメル上皮腫自身が破骨細胞と同様にV-ATPase及びCLC-7を細胞膜表面に有し、それらを活性化することにより周囲骨組織を直接溶解し増殖・拡大していくことを、培養細胞(AM-1)を用いた各種実験手法及びエナメル上皮種の亜型である叢状型、濾胞型及び基底細胞型の各摘出病理組織切片を用いて明らかにした。本研究は、年度内に論文に仕上げる予定であったが、計画が遅れてしまい、現在投稿中である。そのため、H27年度まで研究期間を延長し、論文を受理されるまで実験を続けることとした。イオンチャネル病態生理学現在、論文投稿中であることから、今後、リバイスとなれば追加実験を行い、論文受理に漕ぎつける予定である。今年度までの成果としては、エナメル上皮腫細胞であるAM-1の骨溶解に関する細胞膜上のイオンチャネル/トランスポーターの発現のみに焦点を当ており、その点に関しては予想通りに結果が出ている。
KAKENHI-PROJECT-24592991
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24592991
ナノ構造における電子系量子凝縮相の微視的理論に基づく研究
本研究は、電子を主体とする量子凝縮相のナノ構造における物性の解明を目指して、(1)高温超伝導体に見られる超伝導2次元層の積層構造(2)NbSe3等のリング状微小結晶の電荷密度波秩序(3)グラフェン等炭素系化合物と超伝導体の接合系に関して、微視的理論に基づく研究を展開し、新奇現象に関する知見を得た。また、走査型SQUID顕微鏡の画像解析技術についても研究を行い、新規技術の開発に成功した。本研究は、電子を主体とする量子凝縮相のナノ構造における物性の解明を目指して、(1)高温超伝導体に見られる超伝導2次元層の積層構造(2)NbSe3等のリング状微小結晶の電荷密度波秩序(3)グラフェン等炭素系化合物と超伝導体の接合系に関して、微視的理論に基づく研究を展開し、新奇現象に関する知見を得た。また、走査型SQUID顕微鏡の画像解析技術についても研究を行い、新規技術の開発に成功した。本年度はナノ構造における諸物性の解明を目指して次の各研究を行った。(1)多重ジョセフソン接合系のダイナミクスの数値シミュレーションに基づく研究高温超伝導体に見られるような多重ジョセフソン接合系に関して、その各接合の位相差の時間発展を記述する微分方程式を数値的に解く事によって、定電流下および電流を変化させた場合などにおける発生電圧の振る舞いを明らかにした。特に、非線形方程式に特有のブリーザー・モードという解が、電圧の発生および超伝導状態から抵抗状態への遷移において重要な役割を果たしている事を見出し、日本物理学会および論文として発表した。(2)リング状微小結晶の位相欠陥の分布に関する研究NbSe3等のリング状のトポロジカル結晶における位相欠陥の分布を、線形弾性論の範囲内で考察し、リングの周長と厚さの関係によって、いくつかの位相欠陥分布の状態が可能である事を明らかにした。それによると、1ミクロン以上の周長の結晶の場合、(数ナノ・メートルといった極端に薄い結晶を除き)位相欠陥はほぼ一様に分布する事が分かった。また、周長が1ミクロン以下になると位相欠陥が動径方向の弾性的結合を壊してしまうような状況も実現する事が分かった。これらの結果は論文として発表した。(3)走査型SQUID顕微鏡(SSM)の画像SSMの画像の高解像度化を目指して、画像処理の応用による解像度改善の可能性について研究を行った。本年度は、数値的なシミュレーションを用いて、我々が従来から提案している方法の有効性を検証した。さらに、観測領域の周辺に磁場がゼロでない領域が存在する画像に逆変換を施すと、画像全体においてノイズが増強されてしまうという現象を確認した。この現象を克服するための改良法については現在検討中である。これらの結果は日本物理学会において発表した。(1)近年実験的にも作成が可能となってきた微小なリング状の電荷密度波の相転移について、Ginzburg-Landau理論に基づく解析を行い、これまでに知られている実験結果との比較を行った。その結果、1ミクロン程度より大きな半径を持つリング状電荷密度波の場合には、リング化伴うストレスによる転移温度の低下は無視出来るほど小さいことが分かった。このことは、実験的にはリング状電荷密度波においても目立った転移温度の低下が起きていないことと対応している。この結果は論文として発表した。さらに、Bogoliubov-de Gennes理論による電荷密度波のダイナミクスを記述する方法についても検討を行い、特に位相欠陥の周辺での準粒子の非平衡状態を記述する数学的な枠組みについて一定の結果を得た。(2)微小なリング状超伝導体の動的特性について、時間に依存するギンツブルグ・ランダウ方程式に基づく数値シミュレーションによって解析を行った。特に、定電流下での解析を可能にするために超伝導電極から一定の電流が流れ込んでいる状況を仮定し、それを数値的に表現出来るモデルを構築した。本年度は最も簡単なリング構造の場合に、磁場下での電気抵抗の振る舞い(Little-Parks効果)を解析し、特に外部ノイズとして交流電流を当てたときには、シャピロ・ステップ的な奇妙な振る舞いをすることを明らかにした。このことについては発表準備中である。また、この結果をBogoliubov-de Gennes理論を用いたミクロな理論に拡張する可能性についても検討を行った。(1)前年度からBogoliubov-de Gennes理論に基づき電荷密度波のダイナミクスを記述する方法について検討を行ってきた。今年度は、これらの成果をふまえ、準粒子の自由度をあらわに考慮した形の、時間に依存するギンツブルグ・ランダウ方程式を半現象論的に導出し、その妥当性について数値計算によって確認した。この方程式は準粒子のマクロな自由度(密度および流れ)を変数として含むので、位相欠陥の運動に伴う準粒子-凝縮体間の電荷のやり取りを記述できる。この方程式に基づき、数値シミュレーションによって1次元の電荷密度波における滑り伝導を解析し、電極付近での準粒子の非平衡分布やその付近での位相欠陥の生成が再現できることを確認した。(2)グラフェンは近年新しい物性研究の対象として注目されているが、本研究では超伝導との接合系について、特に準粒子による近接効果の特性に着目して研究を行った。具体的には超伝導体の間に単層または多層のグラフェンを挟んで接合系を作ったときに、超伝導電極間に流れる超伝導電流の大きさを温度および接合館距離の関数として計算した。なお、計算には電子のミクロな自由度を記述できる温度グリーン関数法を用いた。
KAKENHI-PROJECT-18540335
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18540335
ナノ構造における電子系量子凝縮相の微視的理論に基づく研究
その結果、単層の場合には近接効果の特性は常伝導金属の場合と定性的に変わらないが、2層系の場合には準粒子の干渉効果による振動が現れることが分かった。今後はこれらの現象の実験的な検証可能性についてざらに考察をすすめたい。
KAKENHI-PROJECT-18540335
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18540335
中国における飲料水を介した砒素、フッ素への複合曝露による健康障害の解明
中国内モンゴル農村部の砒素汚染地区の深井戸水に高濃度の砒素(As)が検出され、同時にフッ素(F)も高濃度に検出された。汚染地域住民で尿中Asが高く砒素曝露が確認され男女差は無かった。尿中Fも同傾向だった。皮膚および頭髪の元素定性分析で汚染地域住民にAsのピークが検出され、Asの生体組織沈着が確認された。汚染地域住民に手掌・足底の角化症、皮膚色素異常が見られ、一部には歯牙フッ素症も観察された。砒素皮膚病変および歯牙フッ素症ともに男性に発症が多かった。動物実験で、雄雌のC57BL/6Nマウスに50、100日間に飲料水としてAs(10ppm)、F(1または5ppm)を単独およびAs・Fを混合で投与した。大腿骨断面積は雌性50日曝露のF群およびAs群で大きかった。雄性50日曝露では実験群で断面積が大きかったが100日曝露では差が無かった。骨密度に関して50日曝露の雄雌ともにAs群で高値を示したが、100日曝露では各群間に差がなかった。骨強度は50日曝露で雄雌共に各群間に差がなかったが、100日曝露の雄ではF群とAs・F群で低値、雌のF群で低値であった。以上よりFとAsはそれぞれ濃度や曝露期間毎に結果が異なるものの、骨の発育、密度や強度に影響を及ぼし、影響には性差があることがわかった。血清中GM-CSFは雄雌共に50、100日曝露で各群間に一定傾向はなかった。AsおよびFに同時に曝露する集団の砒素中毒症状がAsの濃度や曝露期間だけで説明できないことから、汚染物質につき生体影響を評価するには複合曝露する物質の相互作用につき考慮する必要が示された。特にF曝露による骨影響は知られているが、Asによる骨への影響を報告した例は無く、慢性砒素中毒発生地域において骨に関する健康調査も実施する必要があると思われる。中国内モンゴル農村部の砒素汚染地区の深井戸水に高濃度の砒素(As)が検出され、同時にフッ素(F)も高濃度に検出された。汚染地域住民で尿中Asが高く砒素曝露が確認され男女差は無かった。尿中Fも同傾向だった。皮膚および頭髪の元素定性分析で汚染地域住民にAsのピークが検出され、Asの生体組織沈着が確認された。汚染地域住民に手掌・足底の角化症、皮膚色素異常が見られ、一部には歯牙フッ素症も観察された。砒素皮膚病変および歯牙フッ素症ともに男性に発症が多かった。動物実験で、雄雌のC57BL/6Nマウスに50、100日間に飲料水としてAs(10ppm)、F(1または5ppm)を単独およびAs・Fを混合で投与した。大腿骨断面積は雌性50日曝露のF群およびAs群で大きかった。雄性50日曝露では実験群で断面積が大きかったが100日曝露では差が無かった。骨密度に関して50日曝露の雄雌ともにAs群で高値を示したが、100日曝露では各群間に差がなかった。骨強度は50日曝露で雄雌共に各群間に差がなかったが、100日曝露の雄ではF群とAs・F群で低値、雌のF群で低値であった。以上よりFとAsはそれぞれ濃度や曝露期間毎に結果が異なるものの、骨の発育、密度や強度に影響を及ぼし、影響には性差があることがわかった。血清中GM-CSFは雄雌共に50、100日曝露で各群間に一定傾向はなかった。AsおよびFに同時に曝露する集団の砒素中毒症状がAsの濃度や曝露期間だけで説明できないことから、汚染物質につき生体影響を評価するには複合曝露する物質の相互作用につき考慮する必要が示された。特にF曝露による骨影響は知られているが、Asによる骨への影響を報告した例は無く、慢性砒素中毒発生地域において骨に関する健康調査も実施する必要があると思われる。我々のフィールド調査により、中国で飲料水を介した砒素およびフッ素への複合曝露により健康障害が発生していることが明らかとなっている。そこで今回の初年度は、動物実験により慢性砒素中毒がフッ素への複合曝露により受ける修飾について検討した。雄・雌の4週齢のC57BL/6Nマウスに、50および100日間にわたり飲料水として、砒素、フッ素および砒素フッ素を混合で投与した。砒素投与は亜砒酸ナトリウムを砒素として1ppm(1m9/L)および10ppm(10m9/L)、フッ素投与はフッ化ナトリウムをフッ素として1ppm(1m9/L)、混合投与は砒素・フッ素それぞれ1ppm(1m9/L)に蒸留水で調整して給水瓶にて自由に飲水させた。対照群には蒸留水を与えた。給水瓶は1週間に2度調整し、投与前・後の給水瓶の重量を測定し飲水量を求めた。雄では、高濃度砒素群、フッ素群、フッ素砒素混合群に飲水量の低下が見られた。雌ではフッ素群の飲水量が増加した。曝露終了後、炭酸ガス過麻酔にてマウスを安楽死させる。
KAKENHI-PROJECT-10470099
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10470099
中国における飲料水を介した砒素、フッ素への複合曝露による健康障害の解明
それぞれの曝露量の評価は、砒素について尿中・血中砒素量の測定、フッ素について尿中フッ素量の測定で行った。左下腹部の皮膚を外側下方の方向に切りだし10%ホルマリンPBS溶液にて固定後に顕微鏡組織標本を作成した。また、およそ1cm平方の腹部皮膚および脾臓のおよそ半分からmRNAを抽出し、GM-CSFおよびTGFαのmRNA発現量を観察した。さらに脊柱および大腿骨の骨強度および骨密度を測定した。砒素の曝露により皮膚の硬化が起こり組織学的にも真皮層のコラーゲン線維束の太化が観察された。これらの変化にGM-CSFの関与が示唆された。一方、フッ素の混合曝露が砒素による硬化を抑制する可能性がある。フッ素曝露のみならず砒素単独曝露によっても骨の脆弱化が観察された。現在、これらの可能性につき検索中である。In vivo実験:C57B/6Nマウスに対して10ppmの亜砒酸ナトリウムと1ppmのフッ化ナトリウムを50日あるいは100日間、飲料水として自由に摂取させた。尿中に排泄される砒素あるいはフッ素の量は互いに影響を及ぼさなかった。砒素曝露によってもたらされる躯幹部皮膚の硬化はフッ素の混合曝露によってやや軽減された。砒素曝露マウスにおいて骨の脆弱性が観察されたが、これに対するフッ素混合曝露の影響は現在のところ明らかではない。In vitro実験:ヒト正常肝細胞株を用いて、in vitro培養系に10μMの亜砒酸ナトリウムを添加し、さらにフッ化ナトリウムを10から100μM添加し、細胞増殖活性を指標として細胞毒性を観察した。亜砒酸ナトリウム添加により60%の増殖の抑制が見られた。一方、フッ化ナトリウム単独の添加では細胞毒性が見られなかったが、混合添加によって亜砒酸ナトリウム添加時に見られる細胞毒性の減弱化が見られた。In vivo、in vitro両方の実験から、砒素の中毒症状発現に対してフッ素が同時に存在する場合に影響を及ぼすことがわかった。現在、中国において我々が行っているフィールド調査において、住民が砒素とフッ素の両方に曝露されていることから、砒素中毒症状を判断するさいにはフッ素の曝露量ついても考慮に入れる必要性が示唆された。中国内モンゴル農村部の砒素汚染地区の深井戸水に高濃度の砒素(As)が検出され、同時にフッ素(F)も高濃度に検出された。汚染地域住民で尿中Asが高く砒素曝露が確認され男女差は無かった。尿中Fも同傾向だった。皮膚および頭髪の元素定性分析で汚染地域住民にAsのピークが検出され、Asの生体組織沈着が確認された。汚染地域住民に手掌・足底の角化症、皮膚色素異常が見られ、一部には歯牙フッ素症も観察された。砒素皮膚病変および歯牙フッ素症ともに男性に発症が多かった。動物実験で、雄雌のC57BL/6Nマウスに50、100日間に飲料水としてAs(10ppm)、F(1または5ppm)を単独およびAs・Fを混合で投与した。大腿骨断面積は雌性50日曝露のF群およびAs群で大きかった。雄性50日曝露では実験群で断面積が大きかったが100日曝露では差が無かった。骨密度に関して50日曝露の雄雌ともにAs群で高値を示したが、100日曝露では各群間に差がなかった。骨強度は50日曝露で雄雌共に各群間に差がなかったが、100日曝露の雄ではF群とAs・F群で低値、雌のF群で低値であった。以上よりFとAsはそれぞれ濃度や曝露期間毎に結果が異なるものの、骨の発育、密度や強度に影響を及ぼし、影響には性差があることがわかった。血清中GM-CSFは雄雌共に50、100日曝露で各群間に一定傾向はなかった。AsおよびFに同時に曝露する集団の砒素中毒症状がAsの濃度や曝露期間だけで説明できないことから、汚染物質につき生体影響を評価するには複合曝露する物質の相互作用につき考慮する必要が示された。
KAKENHI-PROJECT-10470099
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10470099
密集市街地における震災後の仮設市街地のマネジメントの技術基準に関する緊急研究
本研究は、「仮設市街地のマネジメントの技術基準」として、1規模設定(被害予測にもとづく仮設市街地の必要量)、2候補地区の選定基準(公有地を基本として不足分を民有地で充填)の内容を明らかにすることを目的としている。国交省による既往のガイドラインや被災地(岩手県等)の状況に対する調査分析等を踏まえた上で、応急仮設住宅の建設候補地選定ガイドラインを考案し、志摩市におけるケーススタディを通じて、その有用性を評価した。平成25年度の研究成果は、以下の通りである。第一に前年度の研究成果を全体的に精査して、「公有地を対象とした仮設住宅の建設候補地選定に関するガイドラインの検討」と題した査読付論文をとりまとめ、日本都市計画学会の学術研究論文発表会にて発表した。第二に前年度の研究成果において課題として上げられていた仮設住宅の建設候補地と災害廃棄物の仮置場の候補地との調整について検討し、国(環境省・国立環境研究所)や学会(廃棄物資源循環学会)による関連ガイドライン、被災県(岩手県・宮城県)の災害廃棄物処理計画を収集し、仮置場の選定基準をとりまとめた。そして仮設住宅の建設候補地の選定基準との比較分析を通じて、両者の候補地が重複しないように調整するための判断基準等を明らかにした。第三に災害廃棄物の仮置場の選定のプロセスを考案し、仮設住宅の建設候補地選定フローの中に新たに組み込むことにより、前年度の研究成果である仮設住宅の建設候補地選定のガイドライン案の改良を行った。第四に平成26年度の研究に向けて、平成25年度末に公表された三重県の新しい地震被害想定調査結果と三重県新地震・津波対策行動計画を三重県防災対策部より収集した。本研究は、「仮設市街地のマネジメントの技術基準」として、1規模設定(被害予測にもとづく仮設市街地の必要量)、2候補地区の選定基準(公有地を基本として不足分を民有地で充填)の内容を明らかにすることを目的としている。国交省による既往のガイドラインや被災地(岩手県等)の状況に対する調査分析等を踏まえた上で、応急仮設住宅の建設候補地選定ガイドラインを考案し、志摩市におけるケーススタディを通じて、その有用性を評価した。平成24年度の研究成果は、以下の通りである。第一に研究体制として、研究会を立ち上げるとともに研究推進にあたり志摩市と三重県の協力を得ることが出来る体制づくりを行った。また東日本大震災の被災地の現状調査にあたり、岩手大学三宅諭先生の協力が得られる体制づくりを行った。これらの協力体制を活かして、後述の研究成果を上げることが出来た。第二に三重県における防災関連情報の最新データとして、防災危機管理部の協力のもとで、三重県地域防災計画、平成16年および平成23年に実施した被害想定のデータを収集して内容の把握に努めた。これらのデータは、仮設市街地の建設候補地選定ガイドラインの内容を検討するにあたり活用している。なお密集市街地の最新データは、平成24年に三重県が三重県密集市街地基本整備方針を廃止したことを踏まえて収集を中止し、研究実施計画を修正して密集市街地に限定せずに津波被害が想定される自治体の行政区全体を対象とするように範囲を拡げることとした。第三に仮設市街地のマネジメントの技術基準のデータとして、既往ガイドラインである厚生労働省と日本赤十字社による「応急仮設住宅の設置に関するガイドライン」、国土交通省による「応急仮設住宅建設必携(中間とりまとめ)」、三重県による「応急仮設住宅建設の事務処理マニュアル」を収集し、内容の特徴と課題について分析した。また岩手県の被災地の仮設市街地における現状調査を実施し、関連資料の収集や行政担当者へのヒアリング調査を行った。第四に上述の成果をもとに仮設市街地の技術基準の一部である建設候補地選定のガイドライン案を検討し、志摩市においてケーススタディを実施し、志摩市の現状と課題、ガイドラインの課題と有用性について検討を行った。平成26年度の研究成果は、以下の通りである。第一に前年度の研究成果を全体的に精査して、「災害廃棄物の発生を考慮した応急仮設住宅の建設候補地選定に関する研究」と題した論文をとりまとめ、日本都市計画学会中部支部研究発表会において発表を行った。第二に前年度までの研究成果において課題として上げられていた点を踏まえて、既往研究成果である仮設市街地の建設候補地選定のガイドライン案の改良を行った。具体的には、まず発災後に主に必要となる暫定的な土地利用として災害廃棄物以外に救援用地(自衛隊等の野営地)もあることから、救援用地の候補地の選定基準を明らかにした上で、仮設住宅の建設候補地として利用できる可能性の有無について検討を行った。救援用地については、発災後34か月程度で自衛隊等が撤収すると考えられることから、その後は仮設住宅の建設地として活用することができる可能性が高いが、救援用地は災害廃棄物の仮置場として利用することも考えられることから、救援用地を仮設住宅の建設地として含む場合と含まない場合の両方を検討することとした。また既往研究では、三重県が平成17年に公表した被害想定を用いていたが、三重県による新しい被害想定が平成26年に公表されたため、これを用いてケーススタディを全面的にやり直すこととした。第三に上述の成果を踏まえて、暫定的な土地利用を考慮した仮設住宅の建設候補地選定のガイドライン案の改良を検討し、志摩市におけるケーススタディを通じて、志摩市の現状と課題、ガイドラインの有用性と課題について検討を行った。
KAKENHI-PROJECT-24560744
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24560744
密集市街地における震災後の仮設市街地のマネジメントの技術基準に関する緊急研究
都市計画第一に当初は最終年度に研究成果をとりまとめて学術雑誌へ投稿する予定だったが、仮設住宅の建設候補地の選定に関する技術基準のデータ収集、志摩市におけるケーススタディが想定以上に順調に進み、十分に有用な知見が得られたことから、(予定より1年早く)二年度目に日本都市計画学会の査読付論文としてとりまとめて投稿し、審査の結果、採択を受け、研究発表の実績を上げることが出来た。第二に前年度の研究成果において課題として上げられていた災害廃棄物の仮置場に関して研究を進めるために、国や学会等による関連ガイドラインのデータ、被災県(岩手県・宮城県)における災害廃棄物処理計画のデータを予定通りに収集することが出来た。第三に前年度に引き続き、三重県における防災関連情報の最新データ(新しい地震被害想定調査結果、三重県新地震・津波対策行動計画)の収集も予定通りに行うことが出来た。第一に研究体制の構築としては、研究推進にあたり志摩市と三重県、岩手大学三宅諭先生の協力が得られる体制づくりに取り組み、ほぼ予定通りに行うことが出来た。第二に三重県における防災関連情報の最新データの収集もほぼ予定通りに行うことが出来た。なお密集市街地の最新データは、平成24年に三重県が三重県密集市街地基本整備方針を廃止したために収集を中止し、研究実施計画を修正して津波被害が想定される自治体の行政区全体を対象とするように範囲を拡げることとした。第三に仮設市街地のマネジメントの技術基準のデータの収集もほぼ予定通りに行うことが出来た。当初は平成25年に実施予定であった岩手県の情報収集と現地調査は、協力体制が構築出来たことから、予定を早めて実施することが出来た。第四に上述の研究成果を踏まえて、仮設市街地の建設候補地選定のガイドライン案の検討と志摩市におけるケーススタディもほぼ予定通りに行うことが出来た。本研究で対象とする仮設市街地のマネジメントの技術基準は、1規模設定、2候補地区の選定基準、3計画基準、4マネジメント手法から成るが、平成24年度と平成25年度においては、主に1と2を対象に仮設市街地の建設候補地選定のガイドラインを考案して論文にとりまとめ、日本都市計画学会にて論文発表を行った。また考案したガイドラインの課題であった災害廃棄物の仮置場の候補地と調整するための判断基準(両者の候補地が重複する可能性のある選定基準の明確化)についても明らかにしてガイドラインに補足し、ガイドラインがより有用な技術基準となるように努めた。平成26年度においては、第一に平成25年度末に三重県によって新しい地震被害想定が公表されたことを受けて、考案したガイドラインで使用する被害想定の位置づけについて見直しを行い、必要に応じてガイドラインにおける建設候補地選定フロー等の改良を行う。第二に3計画基準、4マネジメント手法に関する検討を行う。検討にあたっては、東日本大震災後の新しい情報と知見を得るために、被災県(岩手県)における現地調査を行うとともに、日本都市計画学会や日本建築学会の委員会やシンポジウムに参加して情報収集を行う。第三に上述の内容を踏まえて、研究を総括して仮設市街地のマネジメントの技術基準を構築して研究報告書を作成し、三重県や県内の市町の担当部局に対して研究報告書を送付して提言するとともに、三重大学主催の防災シンポジウムや講演会、みえ防災塾の講義の場等における発表を通じて、研究成果を広く一般公開する。
KAKENHI-PROJECT-24560744
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24560744
阻害剤の作用機構研究を基盤とするミトコンドリア複合体-?の動態解明
ミトコンドリアNADH-ユビキノン酸化還元酵素(複合体-I)は、細胞のエネルギー代謝において重要な役割を担う呼吸鎖酵素であり、45の異なるサブユニットで構成される膜タンパク質である。本酵素の基礎研究の進展は、パーキンソン病等の複合体-Iの機能傷害に起因する疾患のメカニズムの解明や、合成農薬や抗寄生虫薬のターゲットとしての応用が期待される。本研究において代表者らは、特異的阻害剤であるキナゾリンを用いた光親和性標識実験により、膜ドメイン(ND1)と親水性ドメイン(49kDa)との接触点に阻害剤結合部位が存在し、本領域が両ドメインの相互作用において重要な機能を果たしていることを明らかにした。ミトコンドリアNADH-ユビキノン酸化還元酵素(複合体-I)は、細胞のエネルギー代謝において重要な役割を担う呼吸鎖酵素であり、45の異なるサブユニットで構成される膜タンパク質である。本酵素の基礎研究の進展は、パーキンソン病等の複合体-Iの機能傷害に起因する疾患のメカニズムの解明や、合成農薬や抗寄生虫薬のターゲットとしての応用が期待される。本研究において代表者らは、特異的阻害剤であるキナゾリンを用いた光親和性標識実験により、膜ドメイン(ND1)と親水性ドメイン(49kDa)との接触点に阻害剤結合部位が存在し、本領域が両ドメインの相互作用において重要な機能を果たしていることを明らかにした。ミトコンドリアNADH-ユビキノン酸化還元酵素(複合体-I)は、細胞のエネルギー代謝に置いて重要な役割を担う呼吸鎖酵素である。本研究は酵母複合体-Iにおけるキナゾリン型阻害剤/ユビキノン結合部位の同定と相互作用の解析を行うことを研究の目標とした。好気性酵母(Y. lipolitica)ミトコンドリアより単離された複合体-Iを用いて、光親和性キナゾリン型プローブ([125I]AzQ)による光親和性標識実験を行った。[125I]AzQの酵母複合体-Iに対するIC50はおよそ20nMであり、本プローブはリン脂質存在で下49kDaサブユニットを特異的に標識した。22年度は(1)49kDaにおける[125I]AzQ結合部位の解析(2)酸化還元状態の変化とプローブラベル率との関係についての考察を進める予定である。一方、複合体-Iにおけるユビキノン結合部位を明らかにする目的で、ビオチン化光反応性ユビキノンプローブの合成を行った。本年度は、同じ出芽酵母(S. cerevisiae)由来の酸化還元酵素であるNdil(ロテノン非感受性NADH-キノン酸化還元酵素)におけるキノン反応部位の解析を行った。ウエスタンブロットなどの生化学解析、エドマン分解や質量分析等の機器分析を駆使した結果、シングルアミノ酸での結合部位の同定には至らなかったものの、補酵素であるFADイソアロキサジン環近傍のG374-E399の領域(26アミノ酸)にキノン反応部位が存在することを明らかにした。(Murai et al. (2010)Biochemistry 49, 2973-2980)今後、複合体-Iに対しても同様の標識実験を行う予定である。ミトコンドリアNADH-ユビキノン酸化還元酵素(複合体-I)は、細胞のエネルギー代謝において重要な役割を担う呼吸鎖酵素である。本研究は複合体-Iにおける阻害剤/ユビキノン結合部位の同定と相互作用の解析を行うことを研究の目標とした。前年度に引き続き、好気性酵母(Y.lipolitica)に由来する精製複合体-Iを用いて、光親和性キナゾリン型プローブ([^<125>I]AzQ)による光親和性標識実験を行った。本プローブは49kDaサブユニットを特異的に標識したものの,それ以降の解析に十分な標識量を達成することが出来なかった。そこで、実験材料をウシ心筋由来の単離複合体-Iに変更したところ、本酵素は一定量のリン脂質存在下でAzQに対して高い感受性を示した。49kDaおよびND1サブユニットに対する[^<125>I]AzQの標識反応の特異性も、リン脂質存在下で顕著に認められた。これらの結果は、単離酵素の構造がリン脂質によって保持・安定化されていることを示すものである。続いて、[^<125>I]AzQによって標識された49kDaおよびND1サブユニットを単離し、プロテアーゼ消化によるマッピングを行った。その結果49kDaサブユニットはN末端領域に(Asp41-Arg63)、ND1サブユニットはマトリックス側第3ループ領域(Asp199-Lys262)に、[^<125>I]AzQが結合していることが明らかになった。当研究室の先行研究から、本ループ領域は他の阻害剤の結合部位でもあることがわかっている。このことから、本ループ領域が阻害剤結合部位を構成すると同時に、膜ドメイン(ND1)と親水性ドメイン(49kDa)との接触点となって両ドメインの相互作用において重要な機能を果たしていることが示唆された。本成果は現在、論文発表の準備中である。
KAKENHI-PROJECT-21880024
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21880024
分子非線形音響学を創成し、マイクロスケールの質量・運動量・エネルギ輸送を切り拓く
非線形効果と非平衡効果が共存し,かつそれらの間に相互作用が存在する基本問題を取り上げて,現象の理解のために質量・運動量・エネルギー輸送を解明することが重要であることを実証すべく理論解析と数値解析を行って,下記の成果を得た:(1)Boltzmann方程式に基づく漸近解析による気体の非線形音響共鳴振動の解明.(2)分子動力学による微小液滴の平衡・非平衡状態の解明.(3)蒸気と液体の界面での音の反射と透過への蒸発・凝縮の効果の解明.非線形効果と非平衡効果が共存し,かつそれらの間に相互作用が存在する基本問題を取り上げて,現象の理解のために質量・運動量・エネルギー輸送を解明することが重要であることを実証すべく理論解析と数値解析を行って,下記の成果を得た:(1)Boltzmann方程式に基づく漸近解析による気体の非線形音響共鳴振動の解明.(2)分子動力学による微小液滴の平衡・非平衡状態の解明.(3)蒸気と液体の界面での音の反射と透過への蒸発・凝縮の効果の解明.系の代表長に対する気体分子の平均自由行程の比はKnudsen数とよばれ、気体の希薄度を特徴づける無次元パラメータである。一般に、Knudsen数が1に比べて十分に小さければ(たとえば100分の1)、希薄化の効果(分子運動が局所平衡でないことによる効果)は十分小さく、粘性応力に対するNewton流体の仮定と熱流に対するFourierの法則を用いる流体力学が有効であると考えられている。しかしながら、かりにKnudsen数が1000分の1程度であっても、音波のMach数が同程度であるときに、音波だけを考慮して希薄化の効果を無視することが許されるとはかぎらない。実際、大きな温度差をもつ小さなデバイスの内部の定常状態の気体に、希薄化の効果が現れて流体力学の基礎方程式が適用できなくなることは、Ghost effectとしてすでに知られているところである。しかしながら、定常流でなく音波の場合にどのような効果が現れるか、さらに音波特有の非線形効果にどのような影響が生じるか、などはこれまで調べられたことがない。本年度は、(1)気液界面における質量・運動量・エネルギー輸送を支配する法則を明らかにするための理論および数値解析と、(2)局所平衡の仮定が成り立たない大振幅・高振動数の音波の伝播過程に関する基礎データ取得のための数値解析を行い、それぞれについて有意義な成果を得た。系の代表長に対する気体分子の平均自由行程の比はKnudsen数とよばれ、気体の希薄度を特徴づける無次元パラメータである。一般に、Knudsen数が1に比べて十分に小さけれぱ(たとえば100分の1)、希薄化の効果(分子運動が局所平衡でないことによる効果)は十分小さく、粘性応力に対するNewton流体の仮定と熱流に対するFourierの法則を用いる流体力学が有効であると考えられている。しかしながら、かりにKnudsen数が1000分の1程度であっても、音波のMach数が同程度であるときに、音波だけを考慮して希薄化の効果を無視することが許されるとはかぎらない。実際、大きな温度差をもつ小さなデバイスの内部の定常状態の気体に、希薄化の効果が現れて流体力学の基礎方程式が適用できなくなることは、Ghost effectとしてすでに知られているところである。しかしながら、定常流でなく音波の場合にどのような効果が現れるか、さらに音波特有の非線形効果にどのような影響が生じるか、などはこれまで調べられたことがない。本年度は、(1)音源と気液界面ではさまれた空間の多原子分子気体中に励起される線形定在波に対して、多原子分子気体に適用可能なGaussian-BGK-Boltzmann方程式に基づいた漸近解析を行い、分子気体効果が音波に与える影響を解析した。(2)飽和蒸気中の微小液滴に対する分子動力学解析を行い、蒸気圧と表面張力の液滴半径依存性を明らかにした。(3)音波が気液界面で反射される際、界面で蒸発あるいは凝縮が生じていれば、その髭響は音波の反射率に現れる。これを利用して気液界面の蒸発係数の測定を行う方法論の提案を行った。系の代表長に対する気体分子の平均自由行程の比はKnudsen数とよばれ、気体の希薄度を特徴づける無次元パラメータである。一般に、Knudsen数が1に比べて十分に小さければ(たとえば100分の1)、希薄化の効果(分子運動が局所平衡でないことによる効果)は十分小さく、粘性応力に対するNewton流体の仮定と熱流に対するFourierの法則を用いる流体力学が有効であると考えられている。しかしながら、かりにKnudsen数が1000分の1程度であっても、音波のMach数が同程度であるときに、音波だけを考慮して希薄化の効果を無視することが許されるとはかぎらない。実際、大きな温度差をもつ小さなデバイスの内部の定常状態の気体に、希薄化の効果が現れて流体力学の基礎方程式が適用できなくなることは、Ghost effectとしてすでに知られているところである。しかしながら、定常流でなく音波の場合にどのような効果が現れるか、さらに音波特有の非線形効果にどのような影響が生じるか、などはこれまで調べられたことがない。本年度は昨年度に引き続き、(1)音源と気液界面ではさまれた空間の多原子分子気体中に励起される線形定在波に対して、多原子分子気体に適用可能なGaussian-BGK-Boltzmann方程式に基づいた漸近解析を行い、分子気体効果が音波に与える影響を解析した。
KAKENHI-PROJECT-19360077
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19360077
分子非線形音響学を創成し、マイクロスケールの質量・運動量・エネルギ輸送を切り拓く
(2)飽和蒸気中の微小液滴に対する分子動力学解析を行い、蒸気圧と表面張力の液滴半径依存陸を明らかにした。(3)音波が気液界面で反射される際、界面で蒸発あるいは凝縮が生じていれば、その影響は音波の反射率に現れる。これを利用して気液界面の蒸発係数の測定を行う方法論の提案を行った。詳細は発表文献に示す。
KAKENHI-PROJECT-19360077
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19360077
糖尿病性腎症の発症機構にマクロファージが果たす役割の解明―ICAM-1 KO mouseとMacrophage scavenger receptor KO mouseを用いた研究―
糖尿病性腎症はわが国における末期腎不全の原因疾患の第一位を占め、現在も増加を続けている。糖尿病性腎症の発症機構を明らかにして新しい治療法を開発することは、糖尿病患者の生命予後を改善し、末期腎不全患者の増加を阻止するための重要な課題である。糖尿病性腎症患者の腎組織には糸球体と間質にマクロファージの浸潤が認められることから、腎症の成因にマクロファージを中心とした炎症メカニズムが関与することが示唆される。我々は、これまでに、糖尿病性腎症におけるマクロファージの浸潤はICAM-1によって誘導されていることを明らかにした。本研究では、糖尿病性腎症の成因におけるマクロファージの役割を解明する目的で、ICAM-1ノックアウトマウス(ICAM-1 KOマウス)とmacrophage scavenger receptor-Aノックアウトマウス(SR-A KOマウス)を用いた。両マウスとwild typeマウスにstreptozotocinを投与して糖尿病を惹起し、6ヶ月間観察し腎組織を採取した。ICAM-1 KOマウスでは、wild typeマウスに比べて、糖尿病発症後の腎臓へのマクロファージの浸潤が抑制されるとともに、アルブミン尿、糸球体でのTGF-βの発現、メサンギウム基質の増加と間質の線維化が抑制された。この結果から、糖尿病性腎症の成因にマクロファージが重要な役割を果たすことが証明された。一方、SR-A KOマウスにおいてもICAM-1 KOマウスの場合と同様に、腎組織へのマクロファージの浸潤が減少するとともに腎障害の進展が抑制された。このことから、SR-Aは糖尿病状態における腎組織へのマクロファージの浸潤に関与していることが明らかとなった。さらに両実験系において、DNAマイクロアレイを用いて腎組織における遺伝子発現プロファイルを比較した。その結果、wild typeマウスの腎臓で、糖尿病発症後に増加する炎症関連遺伝子群を同定した。次に、これらの炎症関連遺伝子群の中で、ICAM-1 KOマウスではwild typeマウスと比較して発現が抑制される遺伝子群を同定した。これらの分子は、糖尿病性腎症の発症と進展に関与している可能性がある。糖尿病性腎症はわが国における末期腎不全の原因疾患の第一位を占め、現在も増加を続けている。糖尿病性腎症の発症機構を明らかにして新しい治療法を開発することは、糖尿病患者の生命予後を改善し、末期腎不全患者の増加を阻止するための重要な課題である。糖尿病性腎症患者の腎組織には糸球体と間質にマクロファージの浸潤が認められることから、腎症の成因にマクロファージを中心とした炎症メカニズムが関与することが示唆される。我々は、これまでに、糖尿病性腎症におけるマクロファージの浸潤はICAM-1によって誘導されていることを明らかにした。本研究では、糖尿病性腎症の成因におけるマクロファージの役割を解明する目的で、ICAM-1ノックアウトマウス(ICAM-1 KOマウス)とmacrophage scavenger receptor-Aノックアウトマウス(SR-A KOマウス)を用いた。両マウスとwild typeマウスにstreptozotocinを投与して糖尿病を惹起し、6ヶ月間観察し腎組織を採取した。ICAM-1 KOマウスでは、wild typeマウスに比べて、糖尿病発症後の腎臓へのマクロファージの浸潤が抑制されるとともに、アルブミン尿、糸球体でのTGF-βの発現、メサンギウム基質の増加と間質の線維化が抑制された。この結果から、糖尿病性腎症の成因にマクロファージが重要な役割を果たすことが証明された。一方、SR-A KOマウスにおいてもICAM-1 KOマウスの場合と同様に、腎組織へのマクロファージの浸潤が減少するとともに腎障害の進展が抑制された。このことから、SR-Aは糖尿病状態における腎組織へのマクロファージの浸潤に関与していることが明らかとなった。さらに両実験系において、DNAマイクロアレイを用いて腎組織における遺伝子発現プロファイルを比較した。その結果、wild typeマウスの腎臓で、糖尿病発症後に増加する炎症関連遺伝子群を同定した。次に、これらの炎症関連遺伝子群の中で、ICAM-1 KOマウスではwild typeマウスと比較して発現が抑制される遺伝子群を同定した。これらの分子は、糖尿病性腎症の発症と進展に関与している可能性がある。糖尿病性腎症の成因にマクロファージが果たす役割を解明するために、腎糸球体へのマクロファージの浸潤を長期間抑制できるモデルとしてICAM-ノックアウトマウス(ICAM-1 KOマウス)を用いて以下の実験を行った。ICAM-1-KOマウスと対照群(wild type)の糖尿病マウスにストレプトゾトシンを投与して糖尿病を惹起して6ヶ月間観察し、腎症の変化を比較検討した。糖尿病ICAM-1 KOマウスでは糖尿病wild typeマウスに比較して、糸球体へのマクロファージの浸潤とアルブミン尿が有意に少なく、腎肥大、糸球体肥大が有意に抑制された。また、糸球体のメサンギウム領域の拡大も有意に抑制されていた。さらに糸球体内のTGF-βの発現とtype Iおよびtype IV collagenの局在を検討したところ、糖尿病ICAM-1 KOマウスではTGF-βの発現とcollagenの増加が有意に抑制されていた。以上のことから、ICAM-1 KOマウスでは糸球体肥大、腎肥大と糸球体硬化が抑制されると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-13671116
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13671116
糖尿病性腎症の発症機構にマクロファージが果たす役割の解明―ICAM-1 KO mouseとMacrophage scavenger receptor KO mouseを用いた研究―
この結果は2001年米国糖尿病学会および日本糖尿病学会総会において発表した。今後、DNAフィルターアレイを用いて糸球体内の遺伝子発現プロファイルの差を検討する予定である。またマクロファージスカベンジャーレセプター(MSR)ノックアウトマウスに関しては、上記と同じプロトコールで実験が進行中である。糖尿病性腎症患者の腎組織には、ICAM-1をはじめとする細胞接着分子の発現冗進とマクロファージの浸潤が認められることから、腎症の成因に炎症メカニズムが関与することが示唆される。本研究では、糖尿病性腎症の成因におけるマクロファージの役割を解明する目的で、ICAM-1ノックアウトマウス(ICAM-1 KOマウス)とmacrophage scavenger receptor-Aノックアウトマウス(SR-A KOマウス)を用いた。両マウスとwild typeマウスにstreptozotocinを投与して糖尿病を惹起し、6ヶ月間観察し腎組織を採取した。ICAM-1 KOマウスでは、wild typeマウスに比べて、糖尿病発症後のアルブミン尿が有意に少なく、腎組織においてメサンギウム基質の増加と間質の線維化が抑制され、さらに糸球体でのTGF-βの発現の抑制が認められた。この結果から、糖尿病性腎症の成因にマクロファージが重要な役割を果たすことが明らかとなった。一方、SR-AKOマウスにおいても同様の結果が得られた。このことから、SR-Aが糖尿病状態における腎組織へのマクロファージの浸潤に重要な役割を果たしていることが示唆された。さらに両実験系において、腎組織における遺伝子発現プロファイルをDNAアレイを用いて比較した。その結果、wild typeマウスの腎臓で、糖尿病発症後に増加する炎症関連遺伝子群を同定した。さらにこれらの遺伝子群の中でICAM-1 KOマウスとSR-A KOマウスの腎組織で、wild typeマウスと比較して発現が抑制されているサイトカイン等の遺伝子群を同定した。これらの遺伝子が糖尿病性腎症の発症に関与する可能性があると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-13671116
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慢性関節リウマチ患者の体力測定と運動療法
1)運動負荷による免疫機能の変化:本学陸上部学生10名を対象にして、最大酸素摂取量測定時(以下VO2max負荷)、Aerobic thresholdの強度で60分の負荷(以下Aet負荷)とAnerobic thresholdの強度で30分の負荷(以下Ant負荷)の3段階の異なった負荷を行い、その負荷前負荷直後に末消血の免疫グロブリンを測定した。結果:IGGとIGAは、いずれの負荷直後も有意に上昇し、VO2max負荷、Art負荷、Aet負荷と負荷が強いほど増加が大きかった。IGMは、Aet負荷の場合を除き、VO2max負荷とAnt負荷では負荷直後に増加し、負荷が強いほどより増加した。2)本学陸上部学生10名を対象とし、Aet負荷での自転車エルゴメーター走行時のペダルにかかる反力を測定し、歩行あるいは走行時の床反力との比較を行った。垂直方向分力の比較では、Aet負荷での自転車エルゴメーターのペダルの反力は、平均14.0Nmであり、歩行時の床反力の平均69.1Nmの20.5%に、走行時の床反力の平均125.9Nmの11.3%に相当した。3)慢性関節リウマチの関節不働化のモデルとして、ラット片側坐骨神経、大腿神経切離による麻痺足を作成し、Freund's complete Adjuvant関節炎に及ぼす影響を検討した。麻痺側にAdjuvantを注入した場合、非麻痺側に注入した場合に比して関節炎の抑制が認められた。目的:慢性関節リウマチ(以下RA)患者の体力の指標として、有酸素性作業閾値であるAerobicthreshold(以下Aet)を測定しRA活動性との関連について検討する。またAetでの運動負荷を強度とする運動療法行い、その効果について検討する。方法:多段階漸増負荷試験法を行い、4分間の各段階毎に、血中乳酸値・心拍数・血圧・呼気ガスを測定した。次にAetでの運動負荷を強度とし、週3回、1回1時間の頻度とし、自転車エルゴメーターを用いた運動処方にて運動療法を行った。トレーニングの効果の指標として、Aetでの酸素摂取量、Lansbury指数を用いた。結果:Aet測定は9例中7例で可能であったが、最大酸素摂取量は全員測定不可能で、RA患者の体力の指標としてAetが適当であろうと考えられる。また体力とLansbury指数との関係について検討してみた。体力の指標としてAetでの酸素摂取量を用いたが、その相関係数は0.22であり、この両者に相関があるとはいえなかった。3名について運動療法を行った。全員4週後よりAetでの酸素摂取量はつまり体力が増加したが、6ケ月後では1名はLansbury指数の改善と伴に体力は増加し、1名はLansbury指数の悪化と伴に体力は低下し、1名はLansbury指数が悪化したにもかかわらず体力が増加した。このようにRAの活動性に対する運動療法の効果は一定ではなかった。今後の課題:1)体力測定と運動療法の対象患者をふやし検討する。2)滑膜炎のある関節を動かしても滑膜炎が増悪しないような運動処方はどのようなものか?現在行っているAetの強度でよいか?という疑問に対し、運動負荷中及び前後で体温(深部温,関節部皮膚温,関節内温,筋肉内温等)測定,血中ホルモン測定,また自転車エルゴメーターのペダルにつけたフォースプレートにより下肢関節にかかっている負荷量を測定し検討する。慢性関節リウマチ患者を対象とした体力測定では,最大酸素摂取量の測定は不可能だが, Aerobic thresholdでの酸素摂取量の測定は全員で可能であった.運動療法では股関節,膝関節に関節破壊や滑膜炎が強くない症例で, 8週間以上の運動療法の継続と体力の増加を認めた.Aerobic thresholdでの1回の運動負荷前後で疼痛関節数の減少を認める例が多いが,血中ホルモン(コルチソール, ACTH),細胞性免疫機能に有意の差は認めなかった.食道温のより高くなった症例で疼痛関節の改善が大きい傾向にあった.医学部学生10名を対象とし,自転車ユルゴメーターを利用して最大酸素摂取量を測定した.最大酸素摂散量測定時,最大酸素摂取量の50%の負荷と75%の負荷の3段階の負荷を行い,その負荷前と負荷直後で, βーendorphine, cortisolCTH,末梢T細胞(OKT3),インデューサー/ヘルパーT細胞(OKT4),サプレッサー/細胞障害性T細胞(OKT8)を測定した. βーendorphineは最大負荷時(14.2±6.9→85±69.9pg/ml)と75%負荷時(19.2±15.3→45.4±35.1pg/ml)で有意に負荷後に増加し,負荷が強いほど増加は大きかった.cortisolは最大負荷時には有意の変化を示さなかったが, 75%負荷時には負荷後増加(17.4±5→22.1±10.1μg/d6)し, 50%では負荷後減少(16±5.8→11.6±4.2μg/dl)した. ACTHは最大負荷時(22.5±8.2→136.4±117.6pg/dl)と75%負荷時(30.3±17.4→101.2±69.5pg/dl)で負荷後有意に増加し,負荷が強いをほど増加は大きかった.
KAKENHI-PROJECT-61480325
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慢性関節リウマチ患者の体力測定と運動療法
OKT3は最大負荷時(69±6.3→55.2±5.9%), 75%負荷時(70.3±7.6→63.3±7.1%)と50%負荷時(70.3±6.7→64±5.5%)にいずれも負荷後減少した.OKT4でも最大負荷時(37.1±8.3→26±7.1%), 75%負荷時(39.9±9.8→31.8±7.2%)と50%負荷時(39.8±9.5→34.9±6.6%)にいずれも負荷後減少し,負荷が強いほど大きく減少した.OKT8はいずれの負荷でも有意の差はなかった.1)運動負荷による免疫機能の変化:本学陸上部学生10名を対象にして、最大酸素摂取量測定時(以下VO2max負荷)、Aerobic thresholdの強度で60分の負荷(以下Aet負荷)とAnerobic thresholdの強度で30分の負荷(以下Ant負荷)の3段階の異なった負荷を行い、その負荷前負荷直後に末消血の免疫グロブリンを測定した。結果:IGGとIGAは、いずれの負荷直後も有意に上昇し、VO2max負荷、Art負荷、Aet負荷と負荷が強いほど増加が大きかった。IGMは、Aet負荷の場合を除き、VO2max負荷とAnt負荷では負荷直後に増加し、負荷が強いほどより増加した。2)本学陸上部学生10名を対象とし、Aet負荷での自転車エルゴメーター走行時のペダルにかかる反力を測定し、歩行あるいは走行時の床反力との比較を行った。垂直方向分力の比較では、Aet負荷での自転車エルゴメーターのペダルの反力は、平均14.0Nmであり、歩行時の床反力の平均69.1Nmの20.5%に、走行時の床反力の平均125.9Nmの11.3%に相当した。3)慢性関節リウマチの関節不働化のモデルとして、ラット片側坐骨神経、大腿神経切離による麻痺足を作成し、Freund's complete Adjuvant関節炎に及ぼす影響を検討した。麻痺側にAdjuvantを注入した場合、非麻痺側に注入した場合に比して関節炎の抑制が認められた。
KAKENHI-PROJECT-61480325
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61480325
ストレスに応答したIGFBP-1遺伝子転写制御の分子機構
タンパク質栄養状態が悪い「低栄養ストレス」時には、成長期の動物で成長遅滞が生じる。この成長遅滞は、成長を司るホルモンであるIGF-Iの作用を、IGF結合タンパク質のひとつであるIGFBP-1が抑制することによって生じる。本研究ではタンパク質低栄養ストレスがIGFBP-1合成を増加させる機構を分子レベルで解析することを目的として行なった。その結果、1)栄養ストレスは動物個体においてmTOR経路を不活性化してインスリンによるIGFBP-1合成抑制を阻害すること、2)栄養ストレスは動物個体においてmTOR非依存的にもIGFBP-1合成を促進すること、3)栄養ストレスによるmTOR不活性化は酸化ストレスの抑制によって解除できないこと、4)栄養ストレスによって生じるmTOR非依存的なIGFBP-1合成の促進は酸化ストレスによって引き起こされること、を明らかにした。本研究の結果から、タンパク質低栄養のシグナルは一部が酸化ストレスに変換されて動物の成長を制御することが明らかとなった。タンパク質栄養状態が悪い「低栄養ストレス」時には、成長期の動物で成長遅滞が生じる。この成長遅滞は、成長を司るホルモンであるIGF-Iの作用を、IGF結合タンパク質のひとつであるIGFBP-1が抑制することによって生じる。本研究ではタンパク質低栄養ストレスがIGFBP-1合成を増加させる機構を分子レベルで解析することを目的として行なった。その結果、1)栄養ストレスは動物個体においてmTOR経路を不活性化してインスリンによるIGFBP-1合成抑制を阻害すること、2)栄養ストレスは動物個体においてmTOR非依存的にもIGFBP-1合成を促進すること、3)栄養ストレスによるmTOR不活性化は酸化ストレスの抑制によって解除できないこと、4)栄養ストレスによって生じるmTOR非依存的なIGFBP-1合成の促進は酸化ストレスによって引き起こされること、を明らかにした。本研究の結果から、タンパク質低栄養のシグナルは一部が酸化ストレスに変換されて動物の成長を制御することが明らかとなった。平成19年度は,酸化ストレスおよび栄養ストレスがmTORを不活性化する機構を明らかにすることを主要な目的として研究を行った。その結果,以下の2点について明らかにすることができた。(1)栄養ストレスは動物個体においてmTOR経路を不活性化する:タンパク質低栄養モデルとして,無タンパク質食で成長期のWistar系雄ラットを7日間飼育し,摂食刺激(インスリン刺激)によるmTORを介した遺伝子(インスリン様成長因子結合タンパク質-1,IGFBP-1)の発現制御を解析した。その結果,通常食摂取ラットではインスリンに応答したIGFBP-1遺伝子発現制御が見られたのに対し,栄養ストレス負荷ラットではこの制御が消失していた。(2)栄養ストレスによるmTOR不活性化は酸化ストレスの抑制によって解除できる:無タンパク質食摂取ラットでmTOR依存性IGFBP-1遺伝子発現制御が消失していたが,無タンパク質食に抗酸化物質(α-トコフェロール,アスコルビン酸)を添加して摂取させて酸化ストレスを抑制した場合(酸化ストレスマーカー値の低下により確認),インスリンによるmTOR依存性遺伝子発現制御がふたたび見られるようになった。一連の結果は,低栄養ストレスが生体内で酸化ストレスを介してmTORを介したIGFBP-1遺伝子の転写制御に影響を及ぼしている可能性を強く示していた。さらに,この制御が動物個体の摂食応答という,生理的なモデルで得られたことの意義は大きいと考えられる。申請者らはこれまでに、低タンパク質食摂取による低栄養ストレスと酸化ストレスが、いずれもシグナル伝達分子であるmammalian target of rapamycin(mTOR)の不活性化を介してインスリン様成長因子結合タンパク質-1(IGFBP-1)遺伝子発現を増加させ、IGFBP-1が体タンパク質同化ホルモンであるIGF-I活性を抑制することにより動物の低成長を引き起こす可能性を見いだしてきた。そこで本研究では、ストレスに応答したIGFBP-1遺伝子転写制御の共通性の高い分子機構を解明することを目的として研究を行なった。2008年度は、低タンパク質食摂取(低栄養ストレス)によるmTORを不活性化に酸化ストレスがどのように関与するかを、mTOR制御下にあるIGFBP-1mRNA発現制御を指標として解析した。Wistar系雄ラットを低タンパク質食で7日間飼育するとIGFBP-1mRNAレベルが上昇し,インスリンによるIGFBP-1mRNA低下作用も阻害された。また、グルタチオン量が低下し、酸化ストレスマーカーが上昇した。抗酸化成分の同時摂取によって酸化ストレスレベルを低下させると、低タンパク質食摂取によるIGFBP-1mRNAレベルの上昇が抑制される一方、インスリンによるIGFBP-1mRNA発現抑制作用は回復しなかった。mTORリン酸化およびmTOR基質のリン酸化は、抗酸化成分の摂取の有無にかかわらず抑制されていた。一連の結果から、低タンパク質食摂取により酸化ストレスを介して基礎的なIGFBP-1合成が増加する一方、インスリンによるmTORを介したIGFBP-1合成抑制は低タンパク質食摂取により酸化ストレス非依存的に阻害されることを示した。これらの結果から、ストレスによる体タンパク質異化の促進は、抗酸化物質の摂取で一部が抑制可能であることを示した。
KAKENHI-PROJECT-19580150
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19580150
超音波応答性ナノバブルによる抗体デリバリーシステムの開発と乳がん治療戦略
前年度までの検討で見出したFcドメインと高い結合活性を有するリンカーペプチド(proteinA結合性ペプチド及びproteinG結合性ペプチド)を用い、リンカーペプチド修飾PEGリポソームを調製し、標的抗体修飾法ならびにその有用性を評価した。リンカーペプチド修飾PEGリポソームに、抗CD146抗体または抗HER2抗体を添加混合する簡便な手法で抗体修飾リポソームを作製したところ、CD146高発現細胞(血管内皮細胞)またはHER2高発現細胞(乳がん細胞)に対し、効率的なリポソームの取り込みが観察された。またこれら抗体修飾リポソームに超音波造影用ガスを封入したナノバブルを調製したところ、抗体特異的な細胞との相互作用が観察された。以上のことから、本リンカーペプチドを利用した抗体修飾法は、様々な抗体に対し応用可能であることが示された。更に抗体修飾ナノバブルのin vivoでの有用性を評価するため、担がんモデルマウスを用いたがん組織への超音波造影効果を検討した。結果、抗体未修飾のナノバブルと比較し、抗CD146抗体修飾ナノバブルで持続的な造影効果を示した。次に超音波照射を併用した抗体デリバリーシステムの構築の可能性について検討した。蛍光ラベル化抗体を修飾したナノバブルに超音波を照射し、HER2高発現細胞に対する抗体の送達能を蛍光顕微鏡にて調べた。その結果、標的細胞において蛍光ラベル化抗体が観察され、超音波照射に伴う抗体デリバリーの可能性が示された。以上のことから、リンカーペプチドを用いた超音波応答性抗体修飾ナノバブルは、超音波診断および抗体医薬のデリバリーを融合(Theranostics)させる新規乳がん治療ツールとなりうるものと期待される。前年度検討で用いたリポソームへの抗体修飾のためのリンカーペプチド(proteinA結合性ペプチド)よりも更にFcドメインと高い結合活性が期待されるリンカーペプチド(proteinG結合性ペプチド)を用いてマレイル化PEGリポソームと反応させ、リンカーペプチド修飾PEGリポソームとした。さらに抗HER2抗体を添加混合する簡便な手法で抗体修飾リポソームの調製を行い、HER2高発現細胞へのリポソームの取り込み能を蛍光顕微鏡にて評価したところ、効率的な取り込みが観察された。以上のことから、proteinA結合性ペプチドと同様にproteinG結合性ペプチドを利用した場合でも、簡便なリポソームの抗体搭載が可能となることが示された。さらに抗がん活性の増強を期待して、ドキソルビシン内封リポソームへの抗HER2抗体修飾を行い、細胞障害性をMTTアッセイにて評価した結果、未修飾に比べ、抗体修飾群において顕著な障害活性が認められたことから、本抗体修飾法の有用性が示された。次に抗HER2抗体搭載リポソームのバブル化の可能性を明らかにするために、調製した抗HER2抗体搭載リポソームに超音波造影用ガス(パーフルオロプロパンガス)を封入したところ、平均粒子径約500 nmのバブルリポソームが作製できた。細胞相互作用性を蛍光顕微鏡にて調べたところ、蛍光ラベルした抗HER2抗体搭載バブルリポソームは、HER2高発現細胞に安定に細胞表面に結合できることが示された。また、抗体搭載は、リンカーペプチド修飾バブルリポソームの調製後でも可能となることも明らかとなった。以上のことから、リンカーペプチドを利用することで、抗体のターゲティング能を維持した状態で簡便に超音波応答性の抗体搭載バブルリポソームを調製できることが示された。本手法は、様々な抗体搭載バブルリポソームの開発にも有用となることが期待される。今年度は、抗体搭載リポソーム調製法の更なる条件検討を行った。はじめにproteinG結合性ペプチドを用いて、in vitro実験にて抗体修飾効率を検証したところ、proteinGでも抗HER2抗体のリポソーム修飾が簡便に行えることが示された。さらに受容体へのターゲティング能を維持した状態で簡便に抗体搭載バブルリポソームの調製に成功した。これらの結果は、種々の細胞膜受容体を標的化するマウス・ラット由来IgG抗体を用いても、簡便にリポソームやバブルリポソームへの抗体修飾が可能となることを示唆している。以上より、本研究は順調に進捗していると考えられる。本年度計画では、抗体搭載リポソームの調製法の最適化を進めた。はじめにリポソームへの抗体搭載を行うために、DSPC, DSPE-PEG2000を基本構成脂質としてリポソームを作製し、活性基(マレイミド基)を有するPEG脂質を挿入させた。さらにマレイル化PEGリポソームへの抗体修飾を簡便に修飾するために、組換えリンカーペプチド(proteinA結合性ペプチド)を調製(大腸菌内でGST融合ペプチドとしてアフィニティー精製し、大量かつ高純度のものを得ることができた。これをマレイル化PEGリポソームと反応させ、リンカーペプチド修飾PEGリポソームとした。また、リポソームへの修飾用抗体には、乳がん細胞特異的抗原:HER2を認識するハーセプチンと同機能を有する抗体を用い、ヒト型の組換え抗体の抗原結合部位をヒトIgG Fcに連結した一本鎖抗体(scFv-Fc)遺伝子を293細胞に産生させた安定発現細胞株の培養上済を利用してprotein Aカラムクロマトグラフィーにて精製し、大量かつ高純度のものを得た。リンカーペプチド修飾PEGリポソームへの表面修飾は、scFv-Fcを添加混合することで行った。
KAKENHI-PROJECT-16K12916
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超音波応答性ナノバブルによる抗体デリバリーシステムの開発と乳がん治療戦略
実際にリポソームへの抗体搭載を検証するために、組換えHER2タンパク質を固相化したプレートを利用して、蛍光ラベル化抗体搭載リポソームの標的受容体への相互作用性を評価したところ、HER2への高い結合性が示された。さらにHER2を過剰発現している乳がん細胞への取り込み能をリポソームを蛍光ラベル化することで蛍光顕微鏡にて評価したところ、抗体修飾依存的かつ効率的な取り込みが観察された。以上のことから、リンカーペプチドを利用することで、簡便なリポソームの抗体修飾が可能となることが示された。得られた知見は、今後の抗体デリバリーシステムの構築を促進させるものと期待される。今年度は、乳がん治療に有用な抗体デリバリーシステムの構築の鍵となるリポソームの抗体修飾法の確立を目指し、調製法の検討を進め、得られたリポソームの機能性をin vitro実験にて検証した。実際にリポソームへの抗体修飾を簡便に行うために、proteinA結合性ペプチドを用いたところ、乳がん細胞を標的化する抗体修飾リポソームの調製が簡便に行えることが示された。今後、リポソームと抗体との結合性の高い結合性ペプチドについても検討する余地はあると思われるが、今年度目標の乳がん細胞を標的化する抗体をリポソーム搭載する簡便な手法を確立することを達成することができた。以上より、本研究は順調に進捗していると考えられる。前年度までの検討で見出したFcドメインと高い結合活性を有するリンカーペプチド(proteinA結合性ペプチド及びproteinG結合性ペプチド)を用い、リンカーペプチド修飾PEGリポソームを調製し、標的抗体修飾法ならびにその有用性を評価した。リンカーペプチド修飾PEGリポソームに、抗CD146抗体または抗HER2抗体を添加混合する簡便な手法で抗体修飾リポソームを作製したところ、CD146高発現細胞(血管内皮細胞)またはHER2高発現細胞(乳がん細胞)に対し、効率的なリポソームの取り込みが観察された。またこれら抗体修飾リポソームに超音波造影用ガスを封入したナノバブルを調製したところ、抗体特異的な細胞との相互作用が観察された。以上のことから、本リンカーペプチドを利用した抗体修飾法は、様々な抗体に対し応用可能であることが示された。更に抗体修飾ナノバブルのin vivoでの有用性を評価するため、担がんモデルマウスを用いたがん組織への超音波造影効果を検討した。結果、抗体未修飾のナノバブルと比較し、抗CD146抗体修飾ナノバブルで持続的な造影効果を示した。次に超音波照射を併用した抗体デリバリーシステムの構築の可能性について検討した。蛍光ラベル化抗体を修飾したナノバブルに超音波を照射し、HER2高発現細胞に対する抗体の送達能を蛍光顕微鏡にて調べた。その結果、標的細胞において蛍光ラベル化抗体が観察され、超音波照射に伴う抗体デリバリーの可能性が示された。以上のことから、リンカーペプチドを用いた超音波応答性抗体修飾ナノバブルは、超音波診断および抗体医薬のデリバリーを融合(Theranostics)させる新規乳がん治療ツールとなりうるものと期待される。本年度計画では、抗体搭載リポソームおよびバブルリポソームの有用性評価を進める。1.抗体搭載バブルリポソームの安定性評価
KAKENHI-PROJECT-16K12916
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K12916
ナノ医用診断のためのSQUID磁気センサの高性能化設計用シミュレーションの開発(国際共同研究強化)
フロリダ州立大学では、昨年度に続き、超高磁場下でのREBCOマグネットの電磁的挙動について、シミュレーションを通じて検討してきた。本事業で滞在中に世界最高DC磁場の発生に成功した(Nature誌に掲載決定)が、その際に予見できなかった現象をシミュレーションなどを通じて検討を図ってきた。とくに、遮蔽磁場がREBCOテープ線を内部から破壊する可能性があり、遮蔽磁場のシミュレーションを実施し、内部応力のシミュレーションを実施してきた。将来的の50テスラを超えるような超高磁場発生の礎を築くことができたと確信する。また、本研究成果は、国際会議の招待講演などを含めて、国内外で多くの講演および論文発表を行ってきた。マサチューセッツ工科大学では、1.3GHz NMRの開発に携わり、インサート・コイルであるREBCOマグネットがクエンチした場合の電磁的・力学的挙動について検討してきた。とくに、インサート・コイルであるREBCOコイルがクエンチした時の安全性について、シミュレーションを通じて検討してきた。しかし、実際には、REBCOマグネットが励磁中に破損し、シミュレーションと実験の一致を確認することはできなかった。ただし、以前よりシミュレーションを通じて予見していたクエンチ後のトルクが観測され、シミュレーションの有用性を改めて示すことができた。本研究の成果も、国際共著論文として公表してきた。最終年度の研究を通じて、それまでに開発してきた電磁、熱、力の連成シミュレーションの有用性を示すことができた。その成果が認められ、国際会議の招待講演などで研究成果をこうひょうできた。内定年度:2015マサチューセッツ工科大学では、1.3GHz NMRマグネットの開発に携わり、インサート・コイルであるREBCOマグネットの個々パンケーキコイルの特性評価実験および遮蔽電流による不正磁場の測定を実施した。今後、インサート・コイルとしての組み立て、またアウター・コイルと組み合わせることで発生する遮蔽電流、遮蔽電流磁場のシミュレーションに必要な実験データを取得した。フロリダ州立大学では、高温超伝導体を使用したマグネットとして世界最高となる44テスラの発生に成功した。また、遮蔽電流および遮蔽電流磁場シミュレーション・プログラムを開発し、シミュレーション結果と先実験との比較を実施した。比較的よく一致することを確認した。また、開発したシミュレーション・プログラムが高度であることから、一般的な使用に適さないため、遮蔽電流および遮蔽電流磁場の簡易計算法を提案した。今後、国際会議などで公表していく予定である。さらに、44テスラ発生実験で、高磁場下での新たな現象もしくは問題として、トルクやホール効果の問題があることが示唆された。これらの現象は、これまでにも発生しているはずであるが、10テスラ程度では現象として確認されにくく、44テスラのような高磁場下で顕在した問題である。現在、これらの現象をシミュレーションにより裏付けすることを目標に、解析ツールを開発している。該当年度では、それらを明らかにするために、これまで開発してきた部分要素等価回路法(PEEC法)を44テスラ発生実験に適用させる修正を実施した。今後、トルク、ホール効果の影響を明らかにしていく予定である。遮蔽磁場、遮蔽電流磁場のシミュレーション・コードは、次年度に開発する予定であったが、すでに完成した。そして、新たに顕在化した現象についての解析コード開発に取り組んでいる。フロリダ州立大学では、昨年度に続き、超高磁場下でのREBCOマグネットの電磁的挙動について、シミュレーションを通じて検討してきた。昨年度はトルクやホール効果など現象が問題となる可能性を示唆してきたが、該当年度はそれらの検討を開発したシミュレーション・ツールから進めて、特にホール効果の際立った現象を明らかにしてきた。さらに、フロリダ州立大学で、世界最高DC磁場となる45.5テスラ発生に成功した。その実験結果より、新たに電磁応力、歪みが超高磁場発生の問題となることが明らかとなり、メカニズム解明のためのシミュレーション・ツールを開発した。これら開発したシミュレーション・ツールより、45.5テスラ発生時のREBCOマグネット内の電磁的・熱的・力学的挙動について解析を行った。マサチューセッツ工科大学では、1.3GHz NMRの開発に携わり、インサート・コイルであるREBCOマグネットがクエンチした場合の電磁的・力学的挙動について検討してきた。インサート・コイルであるREBCOマグネットがクエンチした場合に、アウトサート・コイルへの影響も無視できず、今後も安全な遮断方法について検討する必要がある。さらに、フロリダ州立大学の研究成果からも、マグネット保護には電磁応力に関する検討が必要不可欠であることが判った。1.3GHz NMRマグネットのクエンチ後の電磁応力評価について、現在実施している。帰国後に、電磁応力についての再検討を実施している。フロリダ州立大学とマサチューセッツ工科大学に滞在時には、主にフープ力によりREBCO層が基板であるハステロイから剥離する現象について検討してきた。その後、内部的なREBCO層の破損などが明らかになったことから、電流転流時のREBCOテープ線材内の電流分布解析ツールを開発した。今後、明らかになった電流転流時の電流分布から詳細な電磁応力を検討していく。当該年度に開発する予定であった遮蔽磁場、遮蔽電流磁場のシミュレーション・コードは、昨年度に開発した。そして、本年度は当初予定になかったが、新たに顕在化した現象(トルク、電磁力、ホール効果など)についての解析コード開発に取り組んだ。したがって、概ね順調に進展していると判断した。フロリダ州立大学では、昨年度に続き、超高磁場下でのREBCOマグネットの電磁的挙動について、シミュレーションを通じて検討してきた。
KAKENHI-PROJECT-15KK0192
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15KK0192
ナノ医用診断のためのSQUID磁気センサの高性能化設計用シミュレーションの開発(国際共同研究強化)
本事業で滞在中に世界最高DC磁場の発生に成功した(Nature誌に掲載決定)が、その際に予見できなかった現象をシミュレーションなどを通じて検討を図ってきた。とくに、遮蔽磁場がREBCOテープ線を内部から破壊する可能性があり、遮蔽磁場のシミュレーションを実施し、内部応力のシミュレーションを実施してきた。将来的の50テスラを超えるような超高磁場発生の礎を築くことができたと確信する。また、本研究成果は、国際会議の招待講演などを含めて、国内外で多くの講演および論文発表を行ってきた。マサチューセッツ工科大学では、1.3GHz NMRの開発に携わり、インサート・コイルであるREBCOマグネットがクエンチした場合の電磁的・力学的挙動について検討してきた。とくに、インサート・コイルであるREBCOコイルがクエンチした時の安全性について、シミュレーションを通じて検討してきた。しかし、実際には、REBCOマグネットが励磁中に破損し、シミュレーションと実験の一致を確認することはできなかった。ただし、以前よりシミュレーションを通じて予見していたクエンチ後のトルクが観測され、シミュレーションの有用性を改めて示すことができた。本研究の成果も、国際共著論文として公表してきた。最終年度の研究を通じて、それまでに開発してきた電磁、熱、力の連成シミュレーションの有用性を示すことができた。その成果が認められ、国際会議の招待講演などで研究成果をこうひょうできた。引き続き、フロリダ州立大学で、トルク、ホール効果の影響を明らかにする数値シミュレーション・コードの開発に取り組む。これらは、数年前にProf. Hahnにより提案された無絶縁巻線技術が関係しており、高磁場下ではその現象が顕在化する。現時点での40テスラ超マグネットは、実験的な小さなマグネットであるため、これらの現象により破滅的な問題とはならないが、NMRなどの実応用を目指した時に、大きな問題となる恐れがある。したがって、シミュレーションによりその影響を明確にする必要が新たに発生した。そのために、シミュレーション・コード開発とともに、今後予定されているREBCOコイルによる45テスラ発生実験に携わり、それらの実験結果と比較検討することで、シミュレーション手法の妥当性検証を実施する予定である。また、予定を変更し、2017年8月にふたたびマサチューセッツ工科大学へ移動する予定である。昨年度の部分コイルの実験により、シミュレーションに必要なパラメータ同定は終了したが、1.3GHz NMRマグネットが作る不正磁場のシミュレーションを実施する。さらに、上記でも問題にした、トルク、ホール効果の影響もシミュレーションにより確認する予定である。2017年10月より、日本に戻り、REBCO
KAKENHI-PROJECT-15KK0192
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15KK0192
自己集合型ナノキャリアの創製
光刺激で活性化されるpH応答性蛍光ナノプローブの開発これまでの成果である構造活性相関に基づく自己集合型ナノプローブの合理的な背一計を基にして、集合状態を形成すると予測された光分解性保護基を導入した自己集合型ナノプローブを合成し、その機能の詳細を検討した。光分解性保護基は、特定の波長の光によって脱保護することができる。実際の自己集合型ナノプローブは、光照射前には自己集合体を形成しており、無蛍光でありながら、光照射をおこなうことで蛍光性を回復し、自己集合状態を維持したままpHプローブとして利用できることが明らかとなった。この細胞内での利用を検討し、細胞内への導入のプロセスの検討や、細胞内においてもpH応答能を試験管内と同様に示すことが確認され、光刺激をトリガーとするpH応答性蛍光ナノプローブとして利用できることが明らかとなった。自己集合型ナノプローブのナノキャリアとしての利用自己集合型ナノプローブとしては、これまでに応答性等を改良してきた自己集合型ナノプローブを採用し、薬剤の内包能を検討した。いくつかの薬剤は自己集合体内に内包されていることが示唆された。自己集合型ナノプローブには、ニトロリダクターゼ(NTR)応答性が付与されているため、NTRによる蛍光の回復により自己集合体の分散過程が評価可能である。実際に内包自己集合型ナノプローブをNTRで処理したところ、顕著な蛍光の回復と、自己集合体に内包された薬剤がNTRの存在により、放出されたことが示唆された。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。・合理的設計に基づいたナノプローブの創製我々の自己集合化ナノプローブは、導入する疎水性保護基の疎水性置換基定数を指標とすることで、自己集合状態と分散状態をあらかじめ推測することができる。この特徴を利用することで、合理的設計指針に基づいたナノプローブの創製が可能となる。本年度はその応用例として、フッ素イオンに応答して脱離するシリル基を保護基として採用し、種々のシリル基の中から疎水性置換基定数を指標として、TBDPSを選定した(図1)。設計したSNARF-OTBDPSは、期待した通り、水溶液中で自己集合体を形成していた。特筆すべき点として、自己集合状態となっているため、本来加水分解しやすいシリル基が水溶液中で安定に存在していることが明らかとなった。また、そのイオン選択性を評価したところ、期待通り、フッ素イオンに対して選択的に応答し、蛍光が回復することが明らかとなった。このことから、我々の疎水性置換基定数を指標とした自己集合化ナノプローブの合理的設計の有用性を示すことに成功した。・ニトロ還元酵素応答型ナノプローブの機能評価これまでに開発したニトロ還元酵素をトリガーとしたナノプローブは、その反応性が低く、細胞内での機能評価において長時間の観察を要するという問題があった。そこで構造を最適化することで、自己集合性は保持しつつもその反応性を大幅に改善することに成功し、大腸菌由来の内在性ニトロ還元酵素の検出を評価し、良好な結果を得た。光刺激で活性化されるpH応答性蛍光ナノプローブの開発これまでの成果である構造活性相関に基づく自己集合型ナノプローブの合理的な背一計を基にして、集合状態を形成すると予測された光分解性保護基を導入した自己集合型ナノプローブを合成し、その機能の詳細を検討した。光分解性保護基は、特定の波長の光によって脱保護することができる。実際の自己集合型ナノプローブは、光照射前には自己集合体を形成しており、無蛍光でありながら、光照射をおこなうことで蛍光性を回復し、自己集合状態を維持したままpHプローブとして利用できることが明らかとなった。この細胞内での利用を検討し、細胞内への導入のプロセスの検討や、細胞内においてもpH応答能を試験管内と同様に示すことが確認され、光刺激をトリガーとするpH応答性蛍光ナノプローブとして利用できることが明らかとなった。自己集合型ナノプローブのナノキャリアとしての利用自己集合型ナノプローブとしては、これまでに応答性等を改良してきた自己集合型ナノプローブを採用し、薬剤の内包能を検討した。いくつかの薬剤は自己集合体内に内包されていることが示唆された。自己集合型ナノプローブには、ニトロリダクターゼ(NTR)応答性が付与されているため、NTRによる蛍光の回復により自己集合体の分散過程が評価可能である。実際に内包自己集合型ナノプローブをNTRで処理したところ、顕著な蛍光の回復と、自己集合体に内包された薬剤がNTRの存在により、放出されたことが示唆された。研究計画書では、外部刺激応答性ナノキャリアの候補として、ニトロ還元酵素を挙げたが、その応答性の改良に関しては、良好な結果を得ており、27年度の予定であった細胞内評価まで着手できている。また、同じく27年度評価予定であった光応答性ナノキャリアについても一部着手できている。さらには、他の外部刺激として、新たにフッ素イオンについて評価し、外部発表までおこなえた点で、予定以上に進行していると考えている。一方で、26年度評価予定であった薬剤の内包の評価に関しては、現在進行中であり、完了できていない部分があるため、全体としては、「おおむね、順調に進行している」とした。27年度が最終年度であるため、記入しない。薬剤を内包した蛍光性ナノキャリアの創製とその細胞内の評価について引き続き27年度に遂行していく。27年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-26107710
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-26107710
骨コラーゲンの質的要素を考慮した有限要素解析による骨強度測定法の確立
臨床上骨脆弱性を有するにも関わらず骨密度の低下を認めない患者が存在する。骨脆弱性に伴う骨折を未然に防ぐためには、骨脆弱性を有する患者を骨折する前に骨粗鬆症と診断し、治療を開始すべきである。その為には骨密度測定以上の骨強度診断技術の確立が必要である。CT有限要素解析により、骨強度を測定することが可能となっているが、骨強度は骨構造以外の骨質の要素も影響しており、この骨密度と骨構造のみの三次元モデルでは表現しきれているとは言えない。我々は、これらの要素を骨密度と骨構造の要素に加える事によって、より正確な骨強度を測定を目指し、研究を行った。新鮮凍結屍体8体(男性4体女性4体、平均年齢86.1歳)の上腕骨頭の海綿骨のCT値、骨強度、総AGEs量を計測。Young率ならびに降伏応力と骨密度の関係はそれぞれρ= 3597.1σ2.2944(r=0.721)、ρ= 372.78σ2.3728(0.766)であり相関関係を認めた。さらにこれを計測可能な4検体ごとにまとめ、その検体のAGEごとの相関関係のグラフを作成すると、総AGEs量が高値であるほどYoung率、降伏応力が低く、総AGEs量が低値であるほど、Young率、降伏応力が高い値を示していた。今回の研究から骨密度と骨強度の関係は過去の報告通り指数関数的に相関が得られ、さらにAGEsはその係数に影響をあたえることが示唆された。この事から、将来的にAGEsを含めたHounsfield値ごとの材料特性(Young率、降伏応力)換算式を求めることが予期された。新鮮凍結屍体8体(男性4体女性4体、平均年齢86.1歳)の上腕骨頭の海綿骨を常温にて解凍し、直径10mmの円柱状に30検体を採取した。採取した検体の重量、高さを測定し、体積を計算したのち、ファントムとともにCT像を撮影した。撮影したCTーDICOMデータはMechanical Finder(計算力学研究、東京)を用いてHounsfield Unit値を抽出し、検体のvolumetric Bone Mineral Density(vBMD)を計測した。円柱状の検体をオートグラフAG-20kNXplus, loadcell: 5kN (Shimadzu, Kyoto, Japan)を用いて力ー変位曲線を求め、さらに検体の断面積、高さより応力ーひずみ曲線を作成し、0.2%耐力を降伏応力とした。また、降伏応力の20%から80%までの応力ーひずみ曲線の傾きをヤング率と規定し、計測した。【結果】検体の重量、体積、骨密度実測値はそれぞれ平均(SD)0.560(0.199)g, 786.1(140.4)mm3、であった。HounsfieldUnit値は4.52(1.37)で、骨密度値は0.070(0.024)g/cm3であった。Young's率、降伏応力はそれぞれ平均(SD)10.91(10.38)MPa、0.980(0.932)MPaであった。Young率(E)ならびに降伏応力(ρ)と骨密度(σ)の関係はそれぞれρ= 3597.1σ2.2944(r=0.721)、ρ= 372.78σ2.3728(0.766)であり相関関係を認めた。Young率(E)ならびに降伏応力(ρ)と骨密度(σ)の関係は過去のKellar等による計算式とおおよそ同様の値を示した。現在、各検体のペントシジン濃度を計測中である。新鮮凍結屍体より適切に検体を採取でき、力学試験も過去の報告と同様の値を示していたことより、ここまでの研究結果は想定されたとおりである。しかし、検体の生化学検査の評価が終了しておらず、関係性を見出すには至っていない新鮮凍結屍体8体(男性4体女性4体、平均年齢86.1歳)の上腕骨頭の海綿骨を常温にて解凍し、直径10mmの円柱状に30検体採取した。採骨した検体をCT撮影しvBMDをそれぞれ計測。さらに力学試験によって、それぞれの検体におけるYoung率ならびに降伏応力を計測した。Young率並びに降伏応力と骨密度の関係はそれぞれρ= 3597.1σ^2.2944 (r=0.721)、ρ= 372.78σ^2.3728(r=0.766)であり相関関係を認めた。さらにこれを計測可能な4検体ごとにまとめ、その検体のAGEごとの相関関係のグラフを作成すると、総AGEs量が高値であるほどYoung率、降伏応力が低く、総AGEs量が低値であるほど、Young率、降伏応力が高い値を示していた。AGEsは従来、糖尿病や腎不全など特殊な環境下においてのみその役割が注目されてきたが、近年骨強度を低下させる骨質劣化要因として認識されている。しかし、AGEsが骨密度と比較し、どの程度骨強度に影響をあたえるかは明らかではなかった。今回の研究から骨密度と骨強度の関係は過去の報告通り指数関数的に相関が得られ、さらにAGEsはその係数に影響をあたえることが示唆された。この事から、将来的にAGEsを含めた骨密度ごとの材料特性(Young率、降伏応力)換算式を求めることが予期された。
KAKENHI-PROJECT-16K10886
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K10886
骨コラーゲンの質的要素を考慮した有限要素解析による骨強度測定法の確立
上記内容に関してはpilot studyとして学会報告を行っている。先行研究として、予想している傾向が得られた。このまま検体を重ねていくことでより精度の高い計算式を得ることが出ると推測されるため臨床上骨脆弱性を有するにも関わらず骨密度の低下を認めない患者が存在する。骨脆弱性に伴う骨折を未然に防ぐためには、骨脆弱性を有する患者を骨折する前に骨粗鬆症と診断し、治療を開始すべきである。その為には骨密度測定以上の骨強度診断技術の確立が必要である。CT有限要素解析により、骨強度を測定することが可能となっているが、骨強度は骨構造以外の骨質の要素も影響しており、この骨密度と骨構造のみの三次元モデルでは表現しきれているとは言えない。我々は、これらの要素を骨密度と骨構造の要素に加える事によって、より正確な骨強度を測定を目指し、研究を行った。新鮮凍結屍体8体(男性4体女性4体、平均年齢86.1歳)の上腕骨頭の海綿骨のCT値、骨強度、総AGEs量を計測。Young率ならびに降伏応力と骨密度の関係はそれぞれρ= 3597.1σ2.2944(r=0.721)、ρ= 372.78σ2.3728(0.766)であり相関関係を認めた。さらにこれを計測可能な4検体ごとにまとめ、その検体のAGEごとの相関関係のグラフを作成すると、総AGEs量が高値であるほどYoung率、降伏応力が低く、総AGEs量が低値であるほど、Young率、降伏応力が高い値を示していた。今回の研究から骨密度と骨強度の関係は過去の報告通り指数関数的に相関が得られ、さらにAGEsはその係数に影響をあたえることが示唆された。この事から、将来的にAGEsを含めたHounsfield値ごとの材料特性(Young率、降伏応力)換算式を求めることが予期された。まずは、ペントシジン濃度の評価が終了し次第、Young率(E)、ペントシジン濃度、ならびに降伏応力(ρ)と骨密度(σ)の関係式を作成する。そこで相関関係が確立された段階で、臨床に応用すべくペントシジンの血中濃度と骨中濃度の評価を進めると同時に、ラットを用いた基礎的なデータ収集を進める今後、検体数を重ね精度の高い計算式を求めていく。計算式が確立した段階で、臨床の患者に対してCTを撮影し、また採血等の非侵襲的な検体採取法を用いてコラーゲンによる骨質を加味した骨強度測定することで、より正確な手術シミュレーションを目指す生化学試験に要する費用がまだ執行されていないため動物試験に使用する費用が執行されていないため予想以上にスムーズに研究が進み、追加実験を回避できたため。次年度は検体数を増やすことでよりAGE測定に費用を費やす予定現在進行している結果がで次第、次の段階の研究を始める方針
KAKENHI-PROJECT-16K10886
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K10886
細胞干渉を介在する細胞外分泌微粒子EVsによる角膜内皮細胞変性制御
B並びにC。細胞内miR34aの機能解析と細胞外分泌型miR並びにExosome含有miRの分子種解析。miR34aはp53誘導性として知られる。p53は解糖系応答を抑制し、成熟分化細胞はOXPHOS系に偏奇し、p53発現から解糖系エネルギー代謝抑制に至る経路への関与を検討した。増殖期非目的細胞では、P53によりmiR34が増強すると共に、miR34mimicによりC-Myc CD44が減弱する。逆に言えばGuttata形成で角膜内皮細胞密度が低下している角膜内皮組織ではmiR34の減弱を介してC-Myc, CD44が増強する。miR34a-5pは培養角膜内皮細胞では細胞が増殖分化期を経て、成熟期で急激に発現量が増強する。C-MycとCD44の発現量は培養角膜内皮細胞の亜集団間で正の相関関係にあり、miR34とCD44は負の相関関係にある。c-MycとmiR34の発現も負の相関関係にある。一方、miR34とRhoAタンパク発現・RhoA活性は負の相関関係に、CD44とRhoAタンパク発現・RhoA活性は正の相関関係にあることが判明した。免疫染色の結果ではmiR34とMMP2, Bcl2, CD44発現が負の相関関係にあることも判明した。水疱性角膜症患者の角膜内皮組織では、細胞内miR34aと共にmiR378aも低下するが、これらの細胞では、細胞老化関連経路に係るサイトカインとしてIL8, MCP1が多く分泌されると共にExosome包埋型miRとして23a-3p, 24-3p, 92b-5p, 184, 1273e, 1285-3pが多く分泌されることが判明した。この内、23a-3p, 1273e, 1285-3pは角膜内皮細胞形質の変性に関与することが判明し、「細胞干渉を介する細胞外分泌微粒子EVsによる角膜内皮細胞変性制御」の存在とその分子機序の一端が明らかになった。「細胞干渉を介する細胞外分泌微粒子EVsによる角膜内皮細胞変性制御」の存在とその分子機序の一端が明らかになり、所期の目的は達成できている。23a-3p, 1273e, 1285-3pを包埋するエキソゾームが実際に角膜内皮細胞形質の変性を如何なる機序で惹起するのか、結果、miR34a, miR378の細胞内発現を抑制するのかの解明が未達事項で3年度目の課題となる。病態をシミレーションするmiR34a, miR378低発現細胞から産生される23a-3p, 1273e, 1285-3pを包埋するエキソゾームが実際に角膜内皮細胞形質の変性を惹起することでmiR34a, miR378の細胞内発現を抑制するという増幅回路が存在するのか、23a-3p, 1273e, 1285-3pを包埋するエキソゾームの遊離を惹起する分子機構がいかなるものかの解明が3年度目になる31年度の課題である。遺伝子発現の変化の網羅的検索や代謝リプログラミングへの影響、患者由来の組織を用いての変性形質の確認などが重要となる。B並びにC。細胞内miR34aの機能解析と細胞外分泌型miR並びにExosome含有miRの分子種解析。miR34aはp53誘導性として知られる。p53は解糖系応答を抑制し、成熟分化細胞はOXPHOS系に偏奇し、p53発現から解糖系エネルギー代謝抑制に至る経路への関与を検討した。増殖期非目的細胞では、P53によりmiR34が増強すると共に、miR34mimicによりC-Myc CD44が減弱する。逆に言えばGuttata形成で角膜内皮細胞密度が低下している角膜内皮組織ではmiR34の減弱を介してC-Myc, CD44が増強する。miR34a-5pは培養角膜内皮細胞では細胞が増殖分化期を経て、成熟期で急激に発現量が増強する。C-MycとCD44の発現量は培養角膜内皮細胞の亜集団間で正の相関関係にあり、miR34とCD44は負の相関関係にある。c-MycとmiR34の発現も負の相関関係にある。一方、miR34とRhoAタンパク発現・RhoA活性は負の相関関係に、CD44とRhoAタンパク発現・RhoA活性は正の相関関係にあることが判明した。免疫染色の結果ではmiR34とMMP2, Bcl2, CD44発現が負の相関関係にあることも判明した。水疱性角膜症患者の角膜内皮組織では、細胞内miR34aと共にmiR378aも低下するが、これらの細胞では、細胞老化関連経路に係るサイトカインとしてIL8, MCP1が多く分泌されると共にExosome包埋型miRとして23a-3p, 24-3p, 92b-5p, 184, 1273e, 1285-3pが多く分泌されることが判明した。
KAKENHI-PROJECT-17H04352
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H04352
細胞干渉を介在する細胞外分泌微粒子EVsによる角膜内皮細胞変性制御
この内、23a-3p, 1273e, 1285-3pは角膜内皮細胞形質の変性に関与することが判明し、「細胞干渉を介する細胞外分泌微粒子EVsによる角膜内皮細胞変性制御」の存在とその分子機序の一端が明らかになった。「細胞干渉を介する細胞外分泌微粒子EVsによる角膜内皮細胞変性制御」の存在とその分子機序の一端が明らかになり、所期の目的は達成できている。23a-3p, 1273e, 1285-3pを包埋するエキソゾームが実際に角膜内皮細胞形質の変性を如何なる機序で惹起するのか、結果、miR34a, miR378の細胞内発現を抑制するのかの解明が未達事項で3年度目の課題となる。病態をシミレーションするmiR34a, miR378低発現細胞から産生される23a-3p, 1273e, 1285-3pを包埋するエキソゾームが実際に角膜内皮細胞形質の変性を惹起することでmiR34a, miR378の細胞内発現を抑制するという増幅回路が存在するのか、23a-3p, 1273e, 1285-3pを包埋するエキソゾームの遊離を惹起する分子機構がいかなるものかの解明が3年度目になる31年度の課題である。遺伝子発現の変化の網羅的検索や代謝リプログラミングへの影響、患者由来の組織を用いての変性形質の確認などが重要となる。
KAKENHI-PROJECT-17H04352
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17H04352
大洋島、ハワイ諸島における穏花植物相と種分化に関する研究
ハワイ諸島のカウアイ島、モロカイ島、オアフ島、マウイ島、ハワイ島で地衣類、蘇類、苔類、シダ類を中心とした穏花植物調査を実施した。収集した標本は約5000点で、乾燥標本として国立科学博物館に保管した。現在これらの標本をもとに分類学的研究を継続中である。地衣類:カラタチゴケ属とマツゲゴケ属を中心に分類学的研究を行った。カラタチゴケ属に関しては25種が確認され、そのうちRamalina furcata他6新種が確認された。25種のうちアジアとの共通種は1種(0.04%)のみであるが、南アメリカとの共通種が全体の40%を占める。マツゲゴケ属では4種が確認され、その中のRimelia clavuliferaな同諸島新産である。蘇苔類:蘇苔類の種多様性が最も高い地域は標高1000m以上のMeterosiderosを優占種とする湿性の森林であり、Mniobryoidesをはじめとする固有属もここに生育する。また、標高900m以下の低地には乾燥を好む種が多い。苔類ではスジゴケ科を中心に分類学的検討を加え、2属10種を認めた。本諸島の特徴としては熱帯林には広く分布するクサリゴケ科が非常に少ない上、ヤクシマスギバゴケ科が全く生育しないことである。PorellaとPellia属に2新種が発見され、ケゼニゴケには形態的にも遺伝的にも2型が認められ、互いに明瞭な住み分け現象が起きている。シダ類:Deparia cataracticolaが近縁種であることが確認された。また、Deparia節はハワイ諸島特産であることがわかった。ハワイ諸島の維管束植物やシダ類の固有率は70%を越えるが、地衣類、蘇苔類の固有率は一般に低く、分類群によって著しい差が認められる。ハワイ諸島のカウアイ島、モロカイ島、オアフ島、マウイ島、ハワイ島で地衣類、蘇類、苔類、シダ類を中心とした穏花植物調査を実施した。収集した標本は約5000点で、乾燥標本として国立科学博物館に保管した。現在これらの標本をもとに分類学的研究を継続中である。地衣類:カラタチゴケ属とマツゲゴケ属を中心に分類学的研究を行った。カラタチゴケ属に関しては25種が確認され、そのうちRamalina furcata他6新種が確認された。25種のうちアジアとの共通種は1種(0.04%)のみであるが、南アメリカとの共通種が全体の40%を占める。マツゲゴケ属では4種が確認され、その中のRimelia clavuliferaな同諸島新産である。蘇苔類:蘇苔類の種多様性が最も高い地域は標高1000m以上のMeterosiderosを優占種とする湿性の森林であり、Mniobryoidesをはじめとする固有属もここに生育する。また、標高900m以下の低地には乾燥を好む種が多い。苔類ではスジゴケ科を中心に分類学的検討を加え、2属10種を認めた。本諸島の特徴としては熱帯林には広く分布するクサリゴケ科が非常に少ない上、ヤクシマスギバゴケ科が全く生育しないことである。PorellaとPellia属に2新種が発見され、ケゼニゴケには形態的にも遺伝的にも2型が認められ、互いに明瞭な住み分け現象が起きている。シダ類:Deparia cataracticolaが近縁種であることが確認された。また、Deparia節はハワイ諸島特産であることがわかった。ハワイ諸島の維管束植物やシダ類の固有率は70%を越えるが、地衣類、蘇苔類の固有率は一般に低く、分類群によって著しい差が認められる。本研究は平成9年度から3年計画で実施する予定で,今年はその初年度にあたる.本年度の調査研究は研究組織全員が参加して,平成9年10月14日-平成9年11月22日までの40日間にわたってハワイ諸島のカウアイ島,モロカイ島,オアフ島で実施された.三島は北東の季節風の影響を強く受けて,北側斜面では雨量が多く逆に南斜面は非常に乾燥している.今年度の現地調査は,標高900m以上のMeterosiderosを優占種とする常緑自然林,400-800m付近のアカシア,ユ-カリ属を主とする二次林,低地のマメ科植物を主とする雑木林,海岸の溶岩植生などを中心に行なわれた.900m付近から上部にの自然林では,樹幹や林床には多様な蘚苔類,シダ類が見られた.特こ脊梁山地に形成される雲霧林には苔類が優占する群落が確認された.ハワイ諸島の蘚苔類相の研究はいまだ十分にはなされていないが,今回の調査期間は生殖器官を形成する時期に当たり,分類学的研究を行うために適した標本が多数採集され同島に生育する蘚苔類の分類系統学的研究を行う上で貴重な資料が得られた.シダ類に関してはハワイ固有属であるSadleria(シシガシラ科)やオオシケシダ属の新種と思われるものが発見された.これらは,川の最上流部に形式される滝を伴った急斜面の渓谷で見つかったが,このような場所は種の地域的隔離作用が強く働くと考えられる.
KAKENHI-PROJECT-09041169
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大洋島、ハワイ諸島における穏花植物相と種分化に関する研究
地衣類は海岸岩上から脊梁山脈上部まではば広く分布することが確認されたが,高度や植生によって生育している種類は著しく異なっている.特に海岸の溶岩台地や尾根部の露岩上では,カラタチゴケ属の種分化が著しいことが確認された.また,分類群によって種分化の程度に著しい偏りがあることが確認された.ハワイ諸島新産属としてMyelochroa(ウメノキゴケ科)とNiebla(カラタチゴケ科)が確認された.本調査で採集した資料は蘚苔類1500点,地衣類1200点,シダ類400点である.これらは平成10年1月に科博に到着し,目下標本の整理作業と分類学的研究が進められている.蘚類,シダ類に関しては生の資料が持ち帰られ,分子系統学的な分析を継続中である.本研究は平成9年度から3年計画で実施する予定で,今年はその次年度にあたる.本年度の調査研究は研究組織全員が参加して,平成10年5月25日-平成10年6月30日までの37日間(柏谷,古木,山口,スミス),8月27日-9月8日までの13日間(加藤)にわたってハワイ諸島のマウイ島とオアフ島で実施された.今年度の現地調査は,標高2800m以上の乾燥溶岩原,900m以上のMeterosiderosを優占種とする常緑自然林,高層湿原,400-800m付近のアカシア,ユーカリ属を主とする二次林,低地のマメ科植物を主とする二次林,海岸の溶岩植生などを中心に行なわれた.これまでに得られた資料は,地衣類約1500点,蘇苔類約1000点,シダ類約200点,海草類約150点である.これらを検討した結果,地衣類では海岸岩上のカラタチゴケ属の種分化が著しいことが確認された.また,ハワイ諸島新産属であるウチキウメノキゴケ属,ニエブラ属をはじめ,マツゲゴケ属の新種も発見された.シダ類では,カウアイ島の滝の水しぶきをかぶるコケの間に生えているオオシケシダ属の1種が形態比較と分子系統解析の結果から新種であることが確認された.苔類についてはケゼニゴケに形態的にも遺伝的にも2型があって住み分けていることが明らかになったが,さらに形態学的及び分子系統学的見地からの分析を継続中である.本研究は平成9年度から3年計画で実施され,今年はその最終年度にあたる.本年度の調査研究は研究組織全員が参加して,平成10年5月24日-6月25日までの33日間(柏谷,樋口,スミス;古木は31日間),5月29日-6月6日までの9日間(加藤)にわたってハワイ諸島のハワイ島とラナイ島で実施された.今年度の現地調査は,標高2800m以上の乾燥溶岩原,900m以上のMeterosiderosを優占種とする常緑自然林,高層湿原,400-800m付近のアカシア,ユーカリ属を主とする二次林,他地のマメ科植物を主とする二次林,海岸の溶岩植生などを中心に行なわれた.本調査で得られた資料は,地衣類約800点,蘇苔類約600点,シダ類約70点,海草類約50点である.これらの資料は全て日本に到着し,乾燥標本(一部液浸標本)として保管され平成9年度,10年度で得られた資料と共に分類学的検討を行っている。これまでに得られた結果では,維管束植物やシダ類の固有率が70%を越えるのとは対照的に,ハワイ諸島に生息する隠花植物の固有率は一般に低く,かつまた,分類群によって著しく異なっていることがわかった。例えば,地衣類のうち樹枝状地衣類のカラタチゴケ属の固有率は11.5%,マツゲゴケ属では27.9%,Nieblaでは100%と属によって大きな差があることが確認された。また,蘇苔類の固有率は約50%であった。シダ類では,カウアイ島の滝の水しぶきをかぶるコケの間に生えているオオシケシダ属の1種が形態比較と分子系統解析の結果から新種であることが確認された。苔類についてはケゼニゴケに形態的にも遺伝的にも2型があって住み分けていることが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-09041169
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無補強及び補強地盤の破壊における粒子径の影響の研究
無補強地盤とゼオテキスタイルや鉄筋ストリップで引張り補強された地盤の強度に対する粒径の影響を、材料実験・模型実験で検討し、それを定量的に解析できる有限要素法を開発する研究を行った。即ち、以下の研究を行った。(1)20倍の範囲で径が異なり、球形から非常に角ばった粒子まで大幅に形状を変えた多数の世界各国の代表的研究用砂礫とグラスビーズを収集した。(2)自動図形処理による粒径・形状定量化システムを新たに開発し、試験粒状体の粒径・形状を測定した。(3)これら試料を用いて、幅8cm,長さ16cm,高さ20cmの中型供試体と幅25cm、長さ25cm、高さ60cmの大型供試体で平面ひずみ圧縮試験を行い、0.0001%のひずみレベルからの正確な応力ひずみ関係とピーク強度を求め、定式化した。更に、透明な中間主応力面を通じて試験中に供試体の写真を多数撮影し、それからピーク以後でのせん断層の幅と、横ズレ量・ダイレイタンシー量と供試体応力状態の関係を求め、粒子径と形状の関数として定式化した。(4)粒径が異なる複数の試料を用い、引張り補強した供試体の平面ひずみ圧縮試験と無補強と引張り補強水平地盤上の帯基礎の二次元支持力模型実験を行った。(5)ピークまでの応力・ひずみ関係とせん断層の構成式を取り入れた有限要素法で平面ひずみ圧縮試験と模型実験の結果を解析した。この解析方法では、破壊しつつある地盤内でのせん断層にそった応力状態はせん断層の横ズレ量の関数であり、従って粒子径の影響を受ける。この解析方法は、他の境界値問題(アンカーの引き抜き問題等)にも適用できる一般的なものである。無補強地盤とゼオテキスタイルや鉄筋ストリップで引張り補強された地盤の強度に対する粒径の影響を、材料実験・模型実験で検討し、それを定量的に解析できる有限要素法を開発する研究を行った。即ち、以下の研究を行った。(1)20倍の範囲で径が異なり、球形から非常に角ばった粒子まで大幅に形状を変えた多数の世界各国の代表的研究用砂礫とグラスビーズを収集した。(2)自動図形処理による粒径・形状定量化システムを新たに開発し、試験粒状体の粒径・形状を測定した。(3)これら試料を用いて、幅8cm,長さ16cm,高さ20cmの中型供試体と幅25cm、長さ25cm、高さ60cmの大型供試体で平面ひずみ圧縮試験を行い、0.0001%のひずみレベルからの正確な応力ひずみ関係とピーク強度を求め、定式化した。更に、透明な中間主応力面を通じて試験中に供試体の写真を多数撮影し、それからピーク以後でのせん断層の幅と、横ズレ量・ダイレイタンシー量と供試体応力状態の関係を求め、粒子径と形状の関数として定式化した。(4)粒径が異なる複数の試料を用い、引張り補強した供試体の平面ひずみ圧縮試験と無補強と引張り補強水平地盤上の帯基礎の二次元支持力模型実験を行った。(5)ピークまでの応力・ひずみ関係とせん断層の構成式を取り入れた有限要素法で平面ひずみ圧縮試験と模型実験の結果を解析した。この解析方法では、破壊しつつある地盤内でのせん断層にそった応力状態はせん断層の横ズレ量の関数であり、従って粒子径の影響を受ける。この解析方法は、他の境界値問題(アンカーの引き抜き問題等)にも適用できる一般的なものである。
KAKENHI-PROJECT-05452238
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高等教育におけるグローバル人材を育成する学習環境デザインに関する研究
本研究の目的は、高等教育におけるグローバル人材を育成する学習環境をデザインするための要件を明らかにすることである。事例としてグローバルなフィールドで働く卒業生を多く輩出するX大学を取り上げ、卒業生に対する調査から現在とつながる学習環境について抽出した。結果、1大学入学前の学生個々の経験とグローバルなフィールドで働くことの接続、2本当にやりたいことの問い直しの機会、3意思を後押しする他者関係、4グローバルなフィールドで働くための領域設定と能力形成の機会、が学習環境として重要であることが示唆された。本研究の目的は、高等教育におけるグローバル人材を育成する学習環境をデザインすることである。具体的には、グローバル人材とはそもそもどのような特徴を持つ人材を指すのか、またそれらの人材が高等教育課程における学習環境の中でどのように成長したのか、そのプロセスに注目し、関係する要因から学習環境をデザインする要件を抽出する。目的達成のために、平成27年度は以下の2点を目標とした。(1)実際にグローバルなフィールドで活動する、あるいは活動することを目指している人材を選定し、複数回インタビューすること。(2)TEAの理論枠組みを参照してインタビューを分析し、ライフヒストリーを描くこと。その結果、以下の成果を得た。1)対象者として8名を選定し、インタビューを実施した。8名の内訳は、国際機関勤務1名、海外ボランティア3名、海外勤務3名(内2名は起業)、海外勤務希望者1名であった。2)対象者へのインタビュー結果をすべて文字化し分析データとした。また、そのデータをTEAに基づいて分析し、それぞれのライフヒストリーを描いた。グローバル人材といっても、その活動やそれぞれの具体的な成長プロセスは多様であることが分かった。平成27年度は、計画していた対象者選定のためのサンプリングとインタビューの実施を行うことができた。また、インタビューデータを分析し、対象者それぞれのライフヒストリーを描くことができた。しかし、当初計画では初年度に複数回のインタビューを実施することを予定していたが、半数にとどまった。その理由として、当初の想定よりもグローバルなフィールドで活動する対象者のライフヒストリーが多様であり、それぞれの分析に時間がかかったことによる。しかし、平成27年度終了時点で1回目のインタビュー分析は終了しており、残りのインタビューは平成28年度上半期中に実施する予定であり、遅れは軽微なものと判断し、概ね順調に進展していると判断できる。本研究の目的は、高等教育におけるグローバル人材を育成する学習環境をデザインするための要件を明らかにすることである。具体的には、グローバル人材とはそもそもどのような特徴を持つ人材を指すのか、またそれらの人材が高等教育課程における学習環境の中でどのように成長したのか、そのプロセスに注目し、関係する要因から学習環境をデザインする要件を示す。目的達成のために平成28年度は、平成27年度に収集したデータをTEA(複線経路等至性アプローチ)、PAC分析など複数の研究方法論を用い多面的にグローバル人材を育成する学習環境の分析を目標とした。平成28年度の分析では、まずグローバルなフィールドで何らかの取り組みを志すようになるには、個人の歴史性が強く影響していることが分かった。しかし、それは幼少期の異文化体験が決定的であるということを意味しない。本研究の対象者の多くは大学進学前に何らかの異文化体験を経たものが多かった一方、全く異文化経験のない者もおり、「グローバル人材=幼少期の異文化経験」という等式は成立しないことが示唆された。次に、様々な大学での活動において「自分はどうなりたいのか」というキャリアに関する問い直しを迫る機会が設けられていることが重要であった。加えて、当人の意思決定を後押しする他者関係、特に友人関係が重要であることが分かった。最後に、対象者は大学においてどのような領域において自身が活動するかを具体的にイメージし、そのための専門性と言うべき能力形成のための機会を得ていたことが分かった。実際にグローバルなフィールドにおいて活動した後に専門を変えたり職を変えたりすることはあるが、少なくともグローバルなフィールドへ参入しようとする際に何らかの専門を有することは重要であり、その決定と育成の機会を大学にて得ていたことが分かった。本研究の目的は、高等教育におけるグローバル人材を育成する学習環境をデザインするための要件を明らかにすることである。事例としてグローバルなフィールドで働く卒業生を多く輩出するX大学を取り上げ、卒業生に対する調査から現在とつながる学習環境について抽出した。結果、1大学入学前の学生個々の経験とグローバルなフィールドで働くことの接続、2本当にやりたいことの問い直しの機会、3意思を後押しする他者関係、4グローバルなフィールドで働くための領域設定と能力形成の機会、が学習環境として重要であることが示唆された。平成28年度は、対象者8名の半数に対して2回目のインタビューを実施する。2回目のインタビューでは、研究者の分析結果を対象者に提示し、解釈結果の妥当性を高める作業を行う。これらは、平成28年度上半期中に完遂する。また同時に、それぞれに異なっていた各対象者の分析結果の中から共通項を見出す作業を行う。平成28年度下半期は、各対象者の分析結果の中から見出した共通項を基に、分担研究者間で高等教育におけるグローバル人材を育成する学習環境についてまとめる。教育工学平成27年度中に予定していた調査対象者へのインタビューが、調査対象者の都合により平成28年度へ変更となった。そのため、調査のために計上していた予算(国内旅費)が当初計画通りに執行できず、次年度使用とした。平成28年度は、平成27年度に実施したインタビューをもとに、2回目のインタビューを行う。
KAKENHI-PROJECT-15K12430
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高等教育におけるグローバル人材を育成する学習環境デザインに関する研究
また、平成27年度と平成28年度に取得したデータを分析した結果を、日本教育工学会、日本教育メディア学会、質的心理学会等で報告する。それぞれに必要な出張旅費を計上する。また、各種学会にて論文を投稿、得られた知見を報告書として印刷するための印刷費を計上する。平成27年度に予定していたインタビューは、平成28年度中に実施される。そのため、調査のために計上したが執行されなかった予算については、平成28年度使用額として、調査のための国内旅費として使用される。
KAKENHI-PROJECT-15K12430
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都市震害の防止に関する研究
地震多発地域を控える都市圏として,仙台市を想定し,地震動の地域的特性の要因軸出を行う目的のため, 1978年宮城県沖地震による塩釜市と宮古市で観測された強震動記録のシミュレーション解析を実施した.地震の震源域での破壊過程を考慮した理論地震動モデルによる実測地震動の波形関数及びスペクトル特性実現の試みを上記の観測点の地震動について比較・検討した.ふの結果,塩釜市の場合は,波形関数,及びスペクトル特性の何れも理論地震動モデルと実地震動とがよく一致している.しかし,宮古市の場合は,全体の波形関数そのものについては,理論地震動モデルと実地震動の両者は比較的よい対応関係を示すものの,スペクトル特性については,両者の間には若干の差異が認められた.これは,宮古市の観測地点での敷地条件特有の問題と考えられ,今後更に検討を加える必要があることが分かったが,震源域と都市圏を結ぶ伝播経路地盤のグリーン関数から,都市の耐震安全性を検討する地震動モデルを作成する可能性を示した.更に,この地震では,仙台市の東を南北に連ねる利府-長町地質構造線を境界とする地層構成の変動の著しい地域で震害の顕著であったことが判明した.地震動特性に及ぼす地層構成の影響を理論的に評価する目的で,地震基盤としての硬質地盤との地層境界が任意形状を成す不整形多層沖積地盤に正弦平面波動が入射する場合の地表面及び地中の震動特性を離散化波数積分法を用いて解析し,観測点近傍での堆積層表層の形状,速度構成が地動特性に与える影響について調べた.不整形多層地盤モデルでは,両端の地層境界にり生成される表面波によって沖積地盤の地動応答は,より複雑に増幅し,地震動の継続時間も延びることを主な結論として見いだし,従って,地層構成の変動の著しい都市域での地盤では,重複反射理論によって地震応答を予測し得ないことを指摘した.地震多発地域を控える都市圏として,仙台市を想定し,地震動の地域的特性の要因軸出を行う目的のため, 1978年宮城県沖地震による塩釜市と宮古市で観測された強震動記録のシミュレーション解析を実施した.地震の震源域での破壊過程を考慮した理論地震動モデルによる実測地震動の波形関数及びスペクトル特性実現の試みを上記の観測点の地震動について比較・検討した.ふの結果,塩釜市の場合は,波形関数,及びスペクトル特性の何れも理論地震動モデルと実地震動とがよく一致している.しかし,宮古市の場合は,全体の波形関数そのものについては,理論地震動モデルと実地震動の両者は比較的よい対応関係を示すものの,スペクトル特性については,両者の間には若干の差異が認められた.これは,宮古市の観測地点での敷地条件特有の問題と考えられ,今後更に検討を加える必要があることが分かったが,震源域と都市圏を結ぶ伝播経路地盤のグリーン関数から,都市の耐震安全性を検討する地震動モデルを作成する可能性を示した.更に,この地震では,仙台市の東を南北に連ねる利府-長町地質構造線を境界とする地層構成の変動の著しい地域で震害の顕著であったことが判明した.地震動特性に及ぼす地層構成の影響を理論的に評価する目的で,地震基盤としての硬質地盤との地層境界が任意形状を成す不整形多層沖積地盤に正弦平面波動が入射する場合の地表面及び地中の震動特性を離散化波数積分法を用いて解析し,観測点近傍での堆積層表層の形状,速度構成が地動特性に与える影響について調べた.不整形多層地盤モデルでは,両端の地層境界にり生成される表面波によって沖積地盤の地動応答は,より複雑に増幅し,地震動の継続時間も延びることを主な結論として見いだし,従って,地層構成の変動の著しい都市域での地盤では,重複反射理論によって地震応答を予測し得ないことを指摘した.地震多発地域を控える都市圏として、仙台市を想定し、地震動の地域的特性の要因抽出を行う目的のため、1978年宮城県沖地震による塩釜市と宮古市で観測された強震動記録のシミュレーション解析を実施した。地震の震源域での破壊過程を考慮した理論地震動モデルによる実測地震動の波形関数及びスペクトル特性実現の試みを上記の観測点の地震動について比較・検討した。その結果、塩釜市の場合は、波形関数、及びスペクトル特性の何れも理論地震動モデルと実地震動とがよく一致している。しかし、宮古市の場合は、全体の波形関数そのものについては、理論地震動モデルと実地震動の両者は比較的よい対応関係を示すものの、スペクトル特性については、両者の間には若干の差異が認められた。これは、宮古市の観測地点での敷地条件特有の問題と考えられ、今後更に検討を加える必要があることが分かったが、震源域と都市圏を結ぶ伝播経路地盤のグリーン関数から、都市の耐震安全性を検討する地震動モデルを作成する可能性を示した。更に、この地震では、仙台市の東を南北に連ねる利府-長町地質構造線を境界とする地層構成の変動の著しい地域で震害の顕著であったことが判明した。地震動特性に及ぼす地層構成の影響を理論的に評価する目的で、地震基盤としての硬質地盤との地層境界が任意形状を成す不整形多層沖積地盤に正弦平面波動が入射する場合の地表面及び地中の震動特性を離散化波数積分法を用いて解析し、観測点近傍での堆積層表層の形状、速度構成が地動特性に与える影響について調べた。
KAKENHI-PROJECT-61550411
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61550411
都市震害の防止に関する研究
不整形多層地盤モデルでは、両端の地層境界より生成される表面波によって沖積地盤の地動応答は、より複雑に増幅し、地震動の継続時間も延びることを主な結論として見いだし、従って、地層構成の変動の著しい都市域での地盤では、重複反射理論によっては地動応答を予測し得ないことを指摘した。
KAKENHI-PROJECT-61550411
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61550411
TRPV1/TRPA1シグナルによる角膜リンパ管新生制御の解明とその阻害戦略
TRPV1またはTRPA1シグナルによる角膜リンパ管新生制御の解明とその阻害戦略として、カチオンチャンネル受容体TRPV1またはTRPA1シグナルの角膜でのリンパ管新生での役割を計画した。TRPV1またはTRPA1の遺伝子ノックアウトマウスをもちいた研究を行う。(所属で繁殖中)。当初の計画では、10-0ナイロン糸を留置したマウスモデルでの角膜輪部からのリンパ管新生を作製する予定であったが、まずは、より容易な方法として、角膜中央部をパクレンにて焼灼する事で、炎症惹起しリンパ管誘導を作成する方法を採用した。予備的に野生型マウスでホールマウント標本と凍結切片でのLYVE-1(リンパ管内皮細胞)染色方法をVEOS顕微鏡にて確立できた。同様に行ったBrdU免疫染色による細胞増殖状況も評価したが、差異を見るにはいたらなかった。ホールマウント標本では、LYVE-1は輪部から角膜中央にループ状の形態で侵入していたが、角膜の中央にまでは進展していなかった。これは同実験系で行ったCD31ホールマウント染色と類似した形態であった。リンパ管新生誘導時のF4/80(マクロファージ)、ミエロペロキシダーゼ(好中球)浸潤とVEGF-B発現が抑制されたが、VEGF-C/D測定は準備の段階である。次年度からTRPV1ノックアウトマウスとTRPA1ノックアウトマウスを用いた検討に入る予定であったが、退職のため、本年度で研究課題が廃止手続きを行った。角膜疾患では治癒だけでなく透明性の維持が視機能維持に重要となる。これは治癒に至る過程で、炎症によって引き起こる角膜の新生血管や瘢痕化のため恒久的な混濁が残存しるうからである。この時並行して、角膜輪部からリンパ管も新生される。以前、TRPV1やTRPA1は感覚神経終末の角膜実質の血管新生に関与していることを報告した。(Tomoyose k,et al.J Opthalmol,2015.)。一方リンパ管の新生に関しては報告がなく、TRPイオンチャンネルファミリーのリンパ管新生に関与に関してあ角膜以外の組織においてもまだ報告がない。本研究ではTRPV1、TRPA1の二つのチャンネルに標的を絞って、角膜リンパ管新生での役割を解明しようとする。平成28年度絵は、1)TRPV1またはTRPa1の遺伝子ノックアウトマウスを用いて、ナイロン糸にて角膜に損傷を与え、角膜輪部からのリンパ管新生を誘導する。継時的に屠殺し、眼球摘出する。免疫染色を行う。また、同時にパラフィン切片を作成し、免疫染色を行い。角膜輪部から角膜中央に進展するリンパ管の先端と角膜輪部の距離を測定し、統計処理を行う。2)野生型マウスとアンタゴ二ストを用いた研究。野生型マウスに上記同様にリンパ管新生を誘導する。TRPV1アンタゴ二スト、またはTRPA1アンタゴ二ストを用いて上記同様に種々の日程でリンパ管新生、炎症と遺伝子発現を免疫染色とreal-time RT PCRで評価する。継続して予定通り研究を行う。またその結果を踏まえて、野生型マウスとアンタゴ二ストを用いた研究を行なっていくTRPV1またはTRPA1シグナルによる角膜リンパ管新生制御の解明とその阻害戦略として、カチオンチャンネル受容体TRPV1またはTRPA1シグナルの角膜でのリンパ管新生での役割を計画した。TRPV1またはTRPA1の遺伝子ノックアウトマウスをもちいた研究を行う。(所属で繁殖中)。当初の計画では、10-0ナイロン糸を留置したマウスモデルでの角膜輪部からのリンパ管新生を作製する予定であったが、まずは、より容易な方法として、角膜中央部をパクレンにて焼灼する事で、炎症惹起しリンパ管誘導を作成する方法を採用した。予備的に野生型マウスでホールマウント標本と凍結切片でのLYVE-1(リンパ管内皮細胞)染色方法をVEOS顕微鏡にて確立できた。同様に行ったBrdU免疫染色による細胞増殖状況も評価したが、差異を見るにはいたらなかった。ホールマウント標本では、LYVE-1は輪部から角膜中央にループ状の形態で侵入していたが、角膜の中央にまでは進展していなかった。これは同実験系で行ったCD31ホールマウント染色と類似した形態であった。リンパ管新生誘導時のF4/80(マクロファージ)、ミエロペロキシダーゼ(好中球)浸潤とVEGF-B発現が抑制されたが、VEGF-C/D測定は準備の段階である。次年度からTRPV1ノックアウトマウスとTRPA1ノックアウトマウスを用いた検討に入る予定であったが、退職のため、本年度で研究課題が廃止手続きを行った。TRPV1またはTRPa1の遺伝子ノックアウトマウスを用いて予定していた研究を継続して行う。またその研究結果を踏まえて、野生型マウスとアンタゴ二ストを用いた研究も予定通り行っていく。
KAKENHI-PROJECT-16K11296
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K11296
アメリカ合衆国における教員・校長の免許資格構造の特質に関する研究
教員・校長の免許資格構造の考察(歴史的および今日的方向)各州における教員・校長の免許資格要件、特に専門養成内容(修士等の学位所得の有無、所得単位と履修内容の関連)、能力試験(Competency Testing)実施の有無とその内容、初任者研修(Beginning Teacher Inservise Education)と免許資格の対応関係、州間免許状の互換性(Reciprocity)の実態、教員免許資格と校長免許資格の相互関連性についての分析を行った。主要の知見は次の通りである。(日本教育行政学会で-94年10月1日、日本教育制度学会で-94年10月30日発表)(1)アメリカでは「終身免許状」の発行それ自体については1920年代までに批判はみられない。むしろ当時は、教職に就いたあと、十分な職能成長を遂げた者には与えられるべきとの考え方が強かった。しかし1930年代以降には終身免許状発行に対する論議が高まっていった。今日までの傾向としては、終身免許状を発行することなく、数種類の等級別・有効期限付免許状を教職経験とともに一定の単位あるいは修士号所得等により、更新・上進させる傾向が強まった。(2)1940年代以降、「臨時免許状」が漸次大量に発行されることになったが、この発行は各州の免許基準を相対的に引き下げたかどうか判定することは困難とも考えられた。しかし通常臨免所有者は大学教育を修了しており、この結果普通免許状の資格がないことは、不十分な養成教育の問題ではなく、むしろ州免許状に固有する特定要件の一部分を満たすことができないことに帰するのであった。(3)「州間免許状の互換性」は歴史的に進展しており、明白な制限的要件は今日みられない。教員・校長の免許資格構造の考察(歴史的および今日的方向)各州における教員・校長の免許資格要件、特に専門養成内容(修士等の学位所得の有無、所得単位と履修内容の関連)、能力試験(Competency Testing)実施の有無とその内容、初任者研修(Beginning Teacher Inservise Education)と免許資格の対応関係、州間免許状の互換性(Reciprocity)の実態、教員免許資格と校長免許資格の相互関連性についての分析を行った。主要の知見は次の通りである。(日本教育行政学会で-94年10月1日、日本教育制度学会で-94年10月30日発表)(1)アメリカでは「終身免許状」の発行それ自体については1920年代までに批判はみられない。むしろ当時は、教職に就いたあと、十分な職能成長を遂げた者には与えられるべきとの考え方が強かった。しかし1930年代以降には終身免許状発行に対する論議が高まっていった。今日までの傾向としては、終身免許状を発行することなく、数種類の等級別・有効期限付免許状を教職経験とともに一定の単位あるいは修士号所得等により、更新・上進させる傾向が強まった。(2)1940年代以降、「臨時免許状」が漸次大量に発行されることになったが、この発行は各州の免許基準を相対的に引き下げたかどうか判定することは困難とも考えられた。しかし通常臨免所有者は大学教育を修了しており、この結果普通免許状の資格がないことは、不十分な養成教育の問題ではなく、むしろ州免許状に固有する特定要件の一部分を満たすことができないことに帰するのであった。(3)「州間免許状の互換性」は歴史的に進展しており、明白な制限的要件は今日みられない。
KAKENHI-PROJECT-06610238
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ヒト嗅球律動脳波の頭皮上からの記録とその応用による嗅覚検査法の開発
ヒト左右前頭部に感電極と不感電極を設置し耳後部を接地して得た電位を生体電気増幅器(周波数帯域15100Hz)で増幅した。その出力を更にバンドパスフィルター(3060Hz)に通し、サーマルドットアレイコーダで記録し観察したが、ニオイを吸気することによる変化は肉眼上確認できなかった。そこで、A/D変換を通してパーソナルコンピューターに取り込んだ。また、鼻前に呼吸ピックアップ用サーミスタを付け、呼吸曲線を同時記録した。この装置で、自然呼吸している被験者の鼻前に嗅素を提示した時と嗅素なしの時の電位変化を収集した。吸気時における電位変化を観察すると、前者と後者の差は肉眼上は確認できなかったが、自己相関関数を求めた後、FFTを行うと、40Hz前後のピークが認められた。そして、この周波数スペクトルのピークが、ニオイのある時の方が、無いときより、鋭くなっている傾向があるように思われた。ウサギの研究では、嗅球の脳波はカオスであるとされていることから、我々の観測した周波数スペクトルのピークの幅の変化は、ニオイによるフラクタル次元の変化を反映した可能性があるが、実験のノイズの可能性もあるため、システムの精度と再現性の向上が現在の課題である。また今後、よりデータの得易い、実験動物による実験を行い上記現象の意味を解明してゆく予定である。ヒト左右前頭部に感電極と不感電極を設置し耳後部を接地して得た電位を生体電気増幅器(周波数帯域15100Hz)で増幅した。その出力を更にバンドパスフィルター(3060Hz)に通し、サーマルドットアレイコーダで記録し観察したが、ニオイを吸気することによる変化は肉眼上確認できなかった。そこで、A/D変換を通してパーソナルコンピューターに取り込んだ。また、鼻前に呼吸ピックアップ用サーミスタを付け、呼吸曲線を同時記録した。この装置で、自然呼吸している被験者の鼻前に嗅素を提示した時と嗅素なしの時の電位変化を収集した。吸気時における電位変化を観察すると、前者と後者の差は肉眼上は確認できなかったが、自己相関関数を求めた後、FFTを行うと、40Hz前後のピークが認められた。そして、この周波数スペクトルのピークが、ニオイのある時の方が、無いときより、鋭くなっている傾向があるように思われた。ウサギの研究では、嗅球の脳波はカオスであるとされていることから、我々の観測した周波数スペクトルのピークの幅の変化は、ニオイによるフラクタル次元の変化を反映した可能性があるが、実験のノイズの可能性もあるため、システムの精度と再現性の向上が現在の課題である。また今後、よりデータの得易い、実験動物による実験を行い上記現象の意味を解明してゆく予定である。
KAKENHI-PROJECT-06857121
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06857121
戦間期日本の石油市場と石油産業
昨年提出した「科学研究費補助金交付申請書」中の「研究の目的」に基づきつつ、研究の進捗状況を踏まえ同申請書中の「研究実施計画」を若干変更し、本年度の研究は展開された。内容は以下の通りである。(1)石油精製業の展開。まず、昨年度執筆した論文「工場制の定着」を、更に若干の修正を加えた上で岡崎哲二編『生産組織の経済史』(東京大学出版会、2005年9月刊行)第2章として発表した。次いで、中小精製業者の石崎製油所(のち、他の精製業者と合同して大協石油現コスモ石油となる)の経営帳簿(『原油仕入帳』・『当座帳』)の内容を分析した。そして、同製油所への主たる原油供給者であった中野鉱業の経営帳簿(『元帳』各年)を、新潟市(旧新津市)金津に現存する中野家を訪問して閲覧・複写した。その結果、石崎製油所は中野家と原油取引を行う以前は原油入手に苦労し、灯油製造と製油所周辺へのその販売を主業としていたが、同家から安定した原油供給を得られて以降は機械油の製造・販売へと主業を移行させつつ事業を拡大していったことが明らかとなった。更に、石崎製油所が恐らくは大規模化した事業に見合う一層多量の原油入手のため、他の個人精製業者及び中野家とともに外国原油の購入を目的として1921年に設立した(株)石油共同販売所の、営業報告書等の基本資料(これさえも他では入手不可能)も、中野家が所蔵していることが判明した。そこで、上記の分析済諸資料の内容をまとめつつ、同共同販売所資料の収集・分析に努めた。完成次第所属先紀要に投稿予定である。(2)石油政策の形成と展開。第一次大戦後の日本の石油産業・石油市場・石油政策については、研究史が非常に分厚いことを踏まえ、本年度は上記研究史の成果と問題点を整理した上で自分の研究方向を明らかにする作業に徹した。現在、以上の作業をサーベイ論文あるいは研究ノートとしてまとめ、やはり紀要に投稿すべく準備中である。昨年提出した「科学研究費補助金(若手研究(B))交付申請書」中の「研究の目的」及び「研究実施計画」に基づき、本年度の研究は展開された。内容は以下の通りである。(1)石油鉱業の展開と地域経済まず主として明治後期から1920年代の秋田県における石油鉱業の展開について、地域史研究・地方誌・新聞記事(主として『秋田魁新報』)を秋田県立図書館等で収集した。次いで石油鉱業の発展とそれが地域経済に与えた影響について、秋田県を先発の新潟県と比較・検討した。以上の結果をもとに、2003年9月末に開催された国際鉱山ヒストリー会議(赤平)において、REGIONAL ECONOMIES AND THE DEVELOPMENT OF THE PETROLEUM INDUSTRY : NIIGATA AND AKITAという題目で報告を行った。(2)石油精製業の展開まず18901910年代の帝国大学・高等工業学校卒業者の中で斯業就職者を卒業生名簿・同窓会誌等から全て割り出し、彼らが当該期の斯業の展開に果たした役割を検討した。次いで昭和石油の祖となった個人精製業者新津恒吉に関する資料を新潟県立図書館等で収集し、併せて恒吉の子息の経営する(株)丸新での聞き取り調査を行い、当該期の個人業者の活動の事例分析とした。更に現在とは大きく異なる当時の石油精製技術について、灯油製造と機械油(潤滑油)製造の違いに焦点を合わせ、文献収集と内容分析を行った。以上の結果をもとに、「大規模工場の成立と中小業者の存続-1870年代から1910年件の石油精製業-」という題目の論文を執筆した。同論文は岡崎哲二編『生産組織の経済史-工場制の比較制度分析-』(仮題、東京大学出版会)に収録予定で、編者の査読とそれに基づく修正を踏まえて2004年度中に刊行予定である。昨年提出した「科学研究費補助金(若手研究(B))交付申請書」中の「研究の目的」に基づきつつ、研究の進捗状況を踏まえ、同申請書中の「研究実施計画」を若干変更して、本年度の研究は展開された。内容は以下の通りである。(1)石油精製業。昨年度執筆した論文「大規模工場の成立と中小業者の存続」は、それが収録される予定の論文集全体との関係を考慮した編者の査読・助言に基づき、題名を「工場制の定着」に変更するとともに、内容的にも、当時の主導的企業である日本石油(及び宝田石油)の石油精製事業を中心に記述し、中小石油精製業者の活動は削除した。こうして同論文を脱稿(岡崎哲二編著『生産組織の経済史』東京大学出版会、2005年6月刊行予定)するとともに、これら中小業者の活動に関する考察を更に深め、独立の論文として発表することが課題となった。そのため、当時の中小業者で、のちに現コスモ石油の前身となる大協石油の、更に前身となる石崎製油所について、当時の当主石崎清助の曾孫に当たる石崎青也氏(東京都大田区在住)を訪問し、調査・資料収集を行った。収集した資料は現在分析中である。(2)石油金融の展開。
KAKENHI-PROJECT-15730166
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戦間期日本の石油市場と石油産業
本年度当初予定にはなかったテーマであるが、日本石油・宝田石油の立地した新潟県における有力地方銀行であった六十九銀行及び長岡銀行の石油金融について、両行の後身である北越銀行の資料室(長岡市)から関係資料の閲覧を許可されたため、同行を訪れ、調査・資料収集を行った。その結果、両行とも貸付は行っていないこと、長岡銀行が荷為替取組という形での石油金融を行っていることが判明した。詳細については、次年度に更に分析を深めたいと考えている。(3)なお、直接対象とする時期は若干ずれるが、以上の研究過程で得られた知見を論文「官営石油事業の挫折」に組み込み、高村直助編著『明治前期の日本経済』(日本経済評論社、2004年10月)中の1章として発表した。昨年提出した「科学研究費補助金交付申請書」中の「研究の目的」に基づきつつ、研究の進捗状況を踏まえ同申請書中の「研究実施計画」を若干変更し、本年度の研究は展開された。内容は以下の通りである。(1)石油精製業の展開。まず、昨年度執筆した論文「工場制の定着」を、更に若干の修正を加えた上で岡崎哲二編『生産組織の経済史』(東京大学出版会、2005年9月刊行)第2章として発表した。次いで、中小精製業者の石崎製油所(のち、他の精製業者と合同して大協石油現コスモ石油となる)の経営帳簿(『原油仕入帳』・『当座帳』)の内容を分析した。そして、同製油所への主たる原油供給者であった中野鉱業の経営帳簿(『元帳』各年)を、新潟市(旧新津市)金津に現存する中野家を訪問して閲覧・複写した。その結果、石崎製油所は中野家と原油取引を行う以前は原油入手に苦労し、灯油製造と製油所周辺へのその販売を主業としていたが、同家から安定した原油供給を得られて以降は機械油の製造・販売へと主業を移行させつつ事業を拡大していったことが明らかとなった。更に、石崎製油所が恐らくは大規模化した事業に見合う一層多量の原油入手のため、他の個人精製業者及び中野家とともに外国原油の購入を目的として1921年に設立した(株)石油共同販売所の、営業報告書等の基本資料(これさえも他では入手不可能)も、中野家が所蔵していることが判明した。そこで、上記の分析済諸資料の内容をまとめつつ、同共同販売所資料の収集・分析に努めた。完成次第所属先紀要に投稿予定である。(2)石油政策の形成と展開。第一次大戦後の日本の石油産業・石油市場・石油政策については、研究史が非常に分厚いことを踏まえ、本年度は上記研究史の成果と問題点を整理した上で自分の研究方向を明らかにする作業に徹した。現在、以上の作業をサーベイ論文あるいは研究ノートとしてまとめ、やはり紀要に投稿すべく準備中である。
KAKENHI-PROJECT-15730166
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自己集積型粘土の合成とその電極修飾膜への応用
本研究の目的は、チオール基を面上に有する粘土鉱物様の無機層状化合物を合成して修飾電極に応用することを目的とした。このために、(1)自己集積粘土の合成と構造解析、(2)金表面への自己集積をプローブ顕微鏡による追跡、(3)修飾電極の電気化学活性の評価を行って来た。自己集積粘土の合成では、各種2価金属イオンの存在下で、SH基を有するシラノール化剤を加水分解した。その結果、確かに層状構造を有するコロイド状に分散した粘土様物資が得られた(山岸、高橋)。得られた粘土様粒子をクロロホルム中で金表面に自己集積させた。その過程を水晶振動子マイクロバランス法を用いて追跡した。さらに、原子間力顕微鏡によって、金上に粘土単分子層からなる超薄膜が形成されることを確認した(谷口)。この薄膜は、ナノスケールで厚さと配向を制御した粘土粒子からなる薄膜であった。次に、この修飾電極を用いて電気化学測定を行った(谷口、高橋)。実際に測定してみると、用いたシラノール化剤、2価金属イオンの種類によって電気化学活性(DNAの酸化分解等)が大きく変わることがわかった。得られた結果について検討の結果、一定した電気化学活性を得るためには金表面上中の粘土粒子の吸着状態を厳密に評価することが不可欠となった。そのために表面反射赤外吸収、AFM等の測定をおこなった(山岸、谷口)。今後この結果を詳しく解析して、大きな電気化学活性を示すような自己集積する粘土鉱物を設計、合成していくことを目指している。本研究の目的は、チオール基を面上に有する粘土鉱物様の無機層状化合物を合成して修飾電極に応用することを目的とした。このために、(1)自己集積粘土の合成と構造解析、(2)金表面への自己集積をプローブ顕微鏡による追跡、(3)修飾電極の電気化学活性の評価を行って来た。自己集積粘土の合成では、各種2価金属イオンの存在下で、SH基を有するシラノール化剤を加水分解した。その結果、確かに層状構造を有するコロイド状に分散した粘土様物資が得られた(山岸、高橋)。得られた粘土様粒子をクロロホルム中で金表面に自己集積させた。その過程を水晶振動子マイクロバランス法を用いて追跡した。さらに、原子間力顕微鏡によって、金上に粘土単分子層からなる超薄膜が形成されることを確認した(谷口)。この薄膜は、ナノスケールで厚さと配向を制御した粘土粒子からなる薄膜であった。次に、この修飾電極を用いて電気化学測定を行った(谷口、高橋)。実際に測定してみると、用いたシラノール化剤、2価金属イオンの種類によって電気化学活性(DNAの酸化分解等)が大きく変わることがわかった。得られた結果について検討の結果、一定した電気化学活性を得るためには金表面上中の粘土粒子の吸着状態を厳密に評価することが不可欠となった。そのために表面反射赤外吸収、AFM等の測定をおこなった(山岸、谷口)。今後この結果を詳しく解析して、大きな電気化学活性を示すような自己集積する粘土鉱物を設計、合成していくことを目指している。
KAKENHI-PROJECT-10131206
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メタボリックシンドロームにおける和漢薬の血管内皮機能保護作用に関する研究
クロスオーバーデザインによる比較臨床試験により、漢方薬・桂枝茯苓丸がメタボリックシンドローム関連因子を有する患者の血管内皮機能を改善することを明らかにした。即ち、すべての検査を施行した49例の解析において、4週間の桂枝茯苓丸投与期間後、Endo-PAT2000で評価した血管内皮機能の指標(L_RHI)は有意に増加し、血清の非エステル化脂肪酸(NEFA)、酸化ストレスのマーカー(MDA)及び可溶性血管細胞接着分子-1(sVCAM-1)は有意に低下した。また、投与期間のL_RHI及び血清NEFA、MDAの変化は、コントロール期間における変化との間に有意差を認めたクロスオーバーデザインによる比較臨床試験により、漢方薬・桂枝茯苓丸がメタボリックシンドローム関連因子を有する患者の血管内皮機能を改善することを明らかにした。即ち、すべての検査を施行した49例の解析において、4週間の桂枝茯苓丸投与期間後、Endo-PAT2000で評価した血管内皮機能の指標(L_RHI)は有意に増加し、血清の非エステル化脂肪酸(NEFA)、酸化ストレスのマーカー(MDA)及び可溶性血管細胞接着分子-1(sVCAM-1)は有意に低下した。また、投与期間のL_RHI及び血清NEFA、MDAの変化は、コントロール期間における変化との間に有意差を認めた本研究の目的は、メタボリックシンドロームにおける動脈硬化の初期病変の形成に関与する血管内皮機能障害に対する和漢薬治療の臨床効果を明らかにすることである。そのために、富山大学附属病院和漢診療科外来通院中の患者のうち、メタボリックシンドロームの診断項目(肥満、脂質異常、血圧高値、高血糖)に該当する因子を有し、インフォームドコンセントにより本研究に参加することの同意が得られた者を対象として、血管内皮細胞機能検査機器(Periperal Arterial Tonometry、PAT)による血管内皮機能ならびにメタボリックシンドローム関連因子などに及ぼす和漢薬治療の影響を検討することを計画した。方法として、桂枝茨苓丸(けいしぶくりょうがん)の院内製剤を1日3丸(分3、毎食後)投与前と投与4週後、あるいは枝茨苓丸を投与しない4週間の前後で、以下の項目を評価した。(1)身体所見:身長、体重、体脂肪、腹囲、血圧など。(2)血管内皮機能検査:PATによるPAT ratio。(3)血液生化学検査:一般生化学、脂質、血糖、インスリン、高感度CRP、アディポネクチン、レプチン、接着因子、酸化ストレスのマーカー、一酸化窒素代謝物など。研究は計画通り順調に進行しており、実施期間の初年度にあたる平成22年度は、のべ約50例のデータを集積した。次年度以降もデータを集積し、最終的に統計解析を行い、結果を発表する予定である。本研究の目的は、メタボリックシンドロームにおける動脈硬化の初期病変の形成に関与する血管内皮機能障害に対する和漢薬治療の臨床効果を明らかにすることである。そのために、富山大学附属病院和漢診療科外来通院中の患者のうち、メタボリックシンドロームの診断項目(肥満、脂質異常、血圧高値、高血糖)に該当する因子を有し、インフォームドコンセントにより本研究に参加することの同意が得られた者を対象として、血管内皮細胞機能検査機器(Peripheral Arterial Tonometry、PAT)による血管内皮機能ならびにメタボリックシンドローム関連因子などに及ぼす和漢薬治療の影響を検討することを計画した。方法として、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)の院内製剤を1日3丸(分3、毎食後)投与前と投与4週後、あるいは枝茯苓丸を投与しない4週間の前後で、以下の項目を評価した。(1)身体所見:身長、体重、体脂肪、腹囲、血圧など。(2)血管内皮機能検査:PATによるPATratio。(3)血液生化学検査:一般生化学、脂質、血糖、インスリン、高感度CRP、アディポネクチン、レプチン、接着因子、酸化ストレスのマーカー、一酸化窒素代謝物など。研究は計画通り順調に進行しており、実施期間の2年目にあたる平成23年度までに、約100例のデータを集積した。次年度もデータ集積を継続し、最終的な統計解析を行い、結果を発表する予定である。本研究の目的は、メタボリックシンドロームにおける動脈硬化の初期病変の形成に関与する血管内皮機能障害に対する和漢薬治療の臨床効果を明らかにすることである。そこで、富山大学附属病院和漢診療科外来に通院中の患者のうち、メタボリックシンドロームの診断項目の因子(肥満、脂質異常、血圧高値、高血糖)を1つ以上有し、インフォームドコンセントにより本研究への参加同意が得られた者を対象として、血管内皮機能検査機器(Reactive Hyperemia Peripheral Arterial Tonometry、RH-PAT)を用いて和漢薬治療の影響を検討することを計画した。方法として、クロスオーバーデザインによる比較臨床試験により、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)の院内製剤を1日3丸(6g、分3、毎食後)投与前と投与4週後、及び枝茯苓丸を投与しない4週間の前後で、以下の項目を評価した。1身体所見:体重、腹囲、血圧など。2血管内皮機能検査:RH-PATによるL_RHI。3血液生化学検査:一般生化学検査、細胞接着因子、酸化ストレスのマーカーなど。本年度はデータ集積を終え、統計解析を行った。
KAKENHI-PROJECT-22590649
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22590649
メタボリックシンドロームにおける和漢薬の血管内皮機能保護作用に関する研究
結果として、すべての検査を行い得た49例において4週間の桂枝茯苓丸投与期間に、L_RHIは有意に増加し、血中の非エステル化脂肪酸(NEFA)、マロンジアルデヒド(MDA)、sVCAM-1は有意に低下した。また、桂枝茯苓丸投与期間におけるL_RHI、NEFA、MDAの変化は、コントロール期間における変化と有意差を認めた。以上より、桂枝茯苓丸は抗酸化作用を介して血管内皮機能障害を改善する作用を有し,動脈硬化進展予防に有用である可能性が示唆された。以上の研究成果を学会及び論文で発表した。これまでに約100例のデータ集積を終え、計画通り順調に進展している。24年度が最終年度であるため、記入しない。データ集積を継続し、最終的な統計解析を行い、それらの結果を学会および論文として発表する。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22590649
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22590649
分子標的MRIを基盤とした低酸素・活性酸素種・レドックス活性可視化への挑戦
酸素は、生体が生命活動を維持するために必要なエネルギーの産生に不可欠な物質であり、その消費は様々な生命機能と深く関わっている。例えば、成長過程など細胞が活発な活動をする際にはエネルギーの産生が必要であり、酸素消費が増進する。一方、酸化ストレス等により細胞内ミトコンドリアに異常が起こると、酸素消費量は低下する。従って、酸素と生命機能には強い相関があり、細胞内での酸素量をリアルタイムに可視化する分子プローブの開発が求められている。そこで本新学術領域研究では、細胞核内にプローブを送達するHoechst33258とりん光発光性ルテニウム錯体との複合化により、新しい細胞核内酸素濃度検出プローブ(Ru-Hoechst)を設計・合成し、その機能を評価した。まず、Ru-Hoechstプローブの水溶液に、405 nmの励起光を照射すると、600 nm付近にルテニウム錯体由来のりん光発光が観測された。水溶液の溶存酸素濃度を変化させたところ、ルテニウム錯体に由来するりん光発光は、酸素濃度の増大に伴い減弱した。従って、Ru-Hoechstプローブは、酸素濃度の変動を可視化する機能を有することが明らかとなった。なお、Stern-Volmerプロットから算出したKSV値は982 M-1であり、りん光発光は、酸素濃度の変動に対する応答であることが示された。Ru-Hoechstプローブは高いDNA結合特性を有する。すなわち、A549細胞の細胞核にRu-Hoechstプローブを集積させ。培地中の酸素濃度を20%から0%に変化させ、再度20%に戻した結果、酸素濃度の変動に応答したりん光発光強度の増減が観測された。以上の様に、Ru-Hoechstプローブは、細胞の分化・発生において重要な役割を果たす細胞核の機能解明に有効なプローブである。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。腫瘍組織には通常の組織とは異なり、細胞の増殖が速すぎるために血管新生が追い付かず、血管から離れた場所に低酸素領域が存在する。この低酸素領域は初期の腫瘍から存在し、酸素が少ないために活性酸素種が発生し難いため、放射線治療に対して抵抗性を有する。そのため、この低酸素領域が、腫瘍の悪性度や転移能を高める原因の一つと考えられている。そこで、まず、研究代表者は、2ーニトロイミダゾール(2ーNI)に着目した。2ーNIは、低酸素環境下で機能する放射線増感剤であり、低酸素環境下の細胞内において、一電子還元酵素による還元を受け、親水性が向上、あるいは細胞内物質と結合する。その結果、細胞膜逆透過が抑制され、腫瘍細胞内に蓄積すると考えられている。次に、診断方法として、研究代表者が開発した独創的「分子標的NMR/MRI法」に着目した。分子標的MRI法の基礎となる三重共鳴NMR法は、分子プローブの特定の1Hシグナル(1H-13C-15N配列の1H)のみを高選択的に観測する優れた手法である。すなわち本法を用いることにより、生体内の水や脂質由来の1Hによるバックグラウンドノイズは完全に消去され、13C、15N核を有する分子プローブのみを高選択的に検出可能となる。そこで平成27年度は、以上のプローブ設計指針に基づき、2ーNIと13C/15N二重ラベル化ホスホリルコリンとを、鎖長が異なるアルキル鎖を介して複合化した13C/15NーNIPCプローブの合成に成功した。さらに、in vitroでの機能評価により、アルキル鎖長が6である13C/15NーNIPC 6が低酸素環境下、最も高い放射線増感能を示すこと、および細胞夾雑物が多数存在する系においても三重共鳴NMRにより、13C/15NーNIPC 6プローブのみを高選択的に検出可能であることを明らかにした。本公募研究では、生体内の「酸素」環境をリアルタイムに画像化するため、「分子標的MRI法」に有効な3種類の新しい13C/15Nーラベル化双極性ポリマープローブ(造影剤)の開発を目指している。その中で、平成27年度は、「生体内の低酸素領域に高集積し、同時に放射線増感剤としての機能を維持する13C/15NーNIPCの開発」に成功した。さらに、感度向上のために、母骨格であるホスホリルコリンの原子移動ラジカル重合(ATRP)を行い、13C/15NーPMPC/NIの合成と機能評価が必要であるが、第一の研究テーマである(1)生体内の低酸素領域に高集積し、同時に放射線増感剤としての機能を維持する13C/15NーNIPCの開発については、順調に進展している。酸素は、生体が生命活動を維持するために必要なエネルギーの産生に不可欠な物質であり、その消費は様々な生命機能と深く関わっている。例えば、成長過程など細胞が活発な活動をする際にはエネルギーの産生が必要であり、酸素消費が増進する。一方、酸化ストレス等により細胞内ミトコンドリアに異常が起こると、酸素消費量は低下する。従って、酸素と生命機能には強い相関があり、細胞内での酸素量をリアルタイムに可視化する分子プローブの開発が求められている。
KAKENHI-PUBLICLY-15H01403
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-15H01403
分子標的MRIを基盤とした低酸素・活性酸素種・レドックス活性可視化への挑戦
そこで本新学術領域研究では、細胞核内にプローブを送達するHoechst33258とりん光発光性ルテニウム錯体との複合化により、新しい細胞核内酸素濃度検出プローブ(Ru-Hoechst)を設計・合成し、その機能を評価した。まず、Ru-Hoechstプローブの水溶液に、405 nmの励起光を照射すると、600 nm付近にルテニウム錯体由来のりん光発光が観測された。水溶液の溶存酸素濃度を変化させたところ、ルテニウム錯体に由来するりん光発光は、酸素濃度の増大に伴い減弱した。従って、Ru-Hoechstプローブは、酸素濃度の変動を可視化する機能を有することが明らかとなった。なお、Stern-Volmerプロットから算出したKSV値は982 M-1であり、りん光発光は、酸素濃度の変動に対する応答であることが示された。Ru-Hoechstプローブは高いDNA結合特性を有する。すなわち、A549細胞の細胞核にRu-Hoechstプローブを集積させ。培地中の酸素濃度を20%から0%に変化させ、再度20%に戻した結果、酸素濃度の変動に応答したりん光発光強度の増減が観測された。以上の様に、Ru-Hoechstプローブは、細胞の分化・発生において重要な役割を果たす細胞核の機能解明に有効なプローブである。生体内の「酸素」環境のリアルタイムでの画像化を実現する以下の革新的分子プローブ(1)(3)を開発する。さらに「診断」と放射線等による「治療」とを同時に実現するセラノスティックプローブの開発へと展開し、本新学術領域研究「酸素生物学」が目指す「酸素の生物学的理解」に貢献する。(1)生体内の低酸素領域に高集積し、同時に放射線増感剤としての機能を維持する13C/15NーNIPCの開発(2)抗酸化活性を“その場"観測する13Cで二重ラベルした分子プローブの設計・合成と、分子標的MRI法による生体内での活性酸素種の可視化(3)レドックス活性を観る13C/15Nーラベル化MRIプローブを設計・合成する。合成した分子プローブが、溶液、組織、動物レベルで低酸素領域・抗酸化活性・レドックス活性を「分子標的MRI法」を用いて定量的に画像化する。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-15H01403
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代数構造と表現について
本研究では、有限群・多元環・頂点作用素代数等の表現論的な構造について考察し,同時に有限幾何的な構造,組合せ論的な構造,数論的な構造等との関連を調べた。特に,シャープ指標の分類問題に関連した問題として,有限群とその指標に関する表現グラフの構造によって,有限群の構造がどのぐらい制限されるかを考察。さらに,abelian defect groupsをもった有限群のブロックに関するブルエ予想とドノバン予想等について研究し,具体的には,以下の成果を得た。平成10年度の主な成果:1.指標の平方に含まれる既約成分が少ない群の決定。2.2つの群環が多元環として同型なとき,正規化群のシロー群による剰余群が可換群となるための必要十分条件について。3.2つの群環の各ブロックイデアルがMorita同値になるための条件平成11年度の主な成果:1.マシユー群M_<12>に対するGreen対応のLoewy seriesを計算。2.Fischer群F_<24>の局所部分群の構造を調べ,直交群O(7,3)の2種類の非分裂拡大の直接的な構成法を与えた。3.ホモロジー代数的な手法を用いて、可換な局所環のフィルトレーションに付随する次数付き環のある種の性質を明らかにした。なお,これらの結果は、Journal of Algebra等の雑誌に発表,あるいは掲載予定である。本研究では、有限群・多元環・頂点作用素代数等の表現論的な構造について考察し,同時に有限幾何的な構造,組合せ論的な構造,数論的な構造等との関連を調べた。特に,シャープ指標の分類問題に関連した問題として,有限群とその指標に関する表現グラフの構造によって,有限群の構造がどのぐらい制限されるかを考察。さらに,abelian defect groupsをもった有限群のブロックに関するブルエ予想とドノバン予想等について研究し,具体的には,以下の成果を得た。平成10年度の主な成果:1.指標の平方に含まれる既約成分が少ない群の決定。2.2つの群環が多元環として同型なとき,正規化群のシロー群による剰余群が可換群となるための必要十分条件について。3.2つの群環の各ブロックイデアルがMorita同値になるための条件平成11年度の主な成果:1.マシユー群M_<12>に対するGreen対応のLoewy seriesを計算。2.Fischer群F_<24>の局所部分群の構造を調べ,直交群O(7,3)の2種類の非分裂拡大の直接的な構成法を与えた。3.ホモロジー代数的な手法を用いて、可換な局所環のフィルトレーションに付随する次数付き環のある種の性質を明らかにした。なお,これらの結果は、Journal of Algebra等の雑誌に発表,あるいは掲載予定である。本研究は、有限群・多元環・頂点作用素代数等の表現論的な構造を明らかにし、同時に有限幾何的な構造、組合せ論的な構造、整論的な構造等との関連を調べることである。まず,シャープ指標の分類問題に関連した問題として、有限群Gとその指標xに関する表現グラフD(G,x)の構造によって,有限群Gの構造がどのぐらい制限されるかを考察し,次の結果が明らかにされた。すなわち,グラフD(G,x)がループを持つことを許す道の場合には,シャープな(G,x)しか存在しないことが清田による研究で解明された。この結果は,代数的組み合わせ論に応用され,群アソシエーションスキームX(G)がQ-多項式的スキームなときの群Gの構造を完全に決定するものであり,シャープ指標の研究が,アソシエーションスキームの研究とも密接な関連があり、ある意味で相補うものであることを裏付けているように思われる。次に,頂点作用素代数に関連した研究だが,これに関してはまだ成果が出ていない。しかし,一連の研究の中で,多様体のL-関数を定義する際,Affine Kac-Moody Lie代数あるいは頂点作用素代数の表現が必要になるのではないかと推測され,今後,いかなるAffine Kac-Moody Lie代数あるいは頂点作用素代数の表現を用いれば重み2のHecke作用素の固有関数となる保型形式が得られるか興味深いものがある。実際,重み2の固有保型形式は,Hecke環の表現と同じものなので,この問題はAffine Kac-MoodyLie代数あるいは頂点作用素代数の表現とHecke環の表現の間の関係を与えることになるので是非とも解明したい。本研究は,有限群・多元環・頂点作用素代数等の表現論的な構造を明らかにし,同時に有限幾何的な構造,組合せ論的な構造,整論的な構造等との関連を調べることである。まず,シヤープ指標の分類問題に関連した問題として,有限群Gとその指標Xに関する表現グラフD(G,X)の構造によって,有限群Gの構造がどのくらい制限されるかを考察し,次の結果が明らかにされた。すなわち,グラフD(G,X)がループを持つことを許す道の場合には,シャープな(G,X)しか存在しないことが清田による研究で解明された。この結果は,代数的組み合わせ論に応用され,群アソシエーションスキームX(G)がQ-多項式的スキームなときの群Gの構造を完全に決定するものであり,シャープ指標の研究が,アソシエーションスキームの研究とも密接な関連があり,ある意味で相補うものであることを裏付けているように思われる。
KAKENHI-PROJECT-10640005
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代数構造と表現について
次に,頂点作用素代数に関連した研究では,北詰によりある符号頂点作用素代数の自己同型群が決定され,ヤコビ不等式を含む,ある種の恒等式を証明した。さらに,一連の研究の中で,多様体のL-関数を定義する際,Affine Kac-Moody Lie代数あるいは頂点作用素代数の表現が必要なことが解明され,今後,いかなるAffine Kac-Moody Lie代数あるいは頂点作用素代数の表現を用いれば重み2のHecke作用素の固有関数となる保型形式が得られるか興味深いものがある。実際,重み2の固有保型形式は,Hecke環の表現と同じものなので,この問題はAffine Kac-Moody Lie代数あるいは頂点作用素代数の表現とHecke環の表現の間の関係を与えることになるので,今後の課題として解明したい。
KAKENHI-PROJECT-10640005
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画像・電気同時計測による脂質分子の自己集積化初期過程の研究
(1)形成初期過程観測法の開発昨年度までに構築したシステム[画像計測:生物顕微鏡(オリンパス)+CCDカメラ(Opteon製、SB1J30)、電気計測:LCRハイテスタ(日置電機製、3522-50)]の同時計測速度向上を行った。デユアルCPU搭載コンピュータ(別予算購入)を用いたマルチスレッドプログラミングを画像計測に導入し、モノクロ79万画素8ビットのCCDカメラ画像を、30Hzで非圧縮保存することに成功した。このとき電気計測データの保存も別コンピュータを同期させて行っており、30Hzでの同時計測が可能となった。この速度は、昨年度(9.3Hz)の3倍以上であり、大幅な性能向上を達成したといえる。(2)単一脂質二分子膜形成初期過程の観測上記で開発した手法により、単一脂質(ジフィタノイルフォスファチジルコリン)二分子膜形成初期過程観測を行った。まず初めに、膜形成用の穴を水平に配置し、上方から水浸対物レンズを利用した顕微鏡観測を試みた。しかし、この配置では、穴に展開した膜形成液が浮力のため浮上してしまい、うまく二分子膜形成しなかった。そこで、膜形成用の穴を垂直に配置し、側方からの観測を行える特製セルを設計・構築した。これにより、予備的な膜形成の観測に成功した。しかし、条件を一定かつ安定に制御した膜形成およびその観測のためには、マイクロマニピュレータを用いた膜形成液の展開が必要であることがわかり、新たに必要となる部品を設計中である。この改良装置が完成すれば、1で開発した同時計測による膜形成初期過程の詳細な観測が可能になると考えている。画像・電気同時計測により、脂質二分子膜形成(脂質分子の自己集積化)の初期過程を解明する事を目指し、以下の二つの研究を行った。1:膜形成初期過程の観測・解析法の確立二分子膜形成の初期過程、すなわち二分子膜構造が創生する瞬間を、出来る限り詳しく観測するために、画像・電気同時計測システムの改良を図った。画像計測では、まず顕微鏡部分をより開口数の高い生物顕微鏡(オリンパス)に変更した。CCDカメラとしては、モノクロ79万画素8ビットの解像度を持ち、毎秒30フレームの画像を記録可能である購入備品の計測用デジタルカメラ(Opteon製、S B1J 30)を組み込んだ。一方、電気計測では、計測速度を重視し、購入備品のLCRハイテスタ(日置電機製、3522-50)を組み込んだ。これらを制御するプログラムを組み、性能テストを行うと、同時計測速度は9.3Hz(以前のシステムの2.6倍)まで向上していた。さらに、種々の調査の結果、デユアルCPUを用いたマルチスレッドプログラミングを画像計測用コンピュータに導入すれば、さらに30Hz近くまでの速度向上が期待できる事が分かった。現在、この路線に沿ったシステム速度向上の途上であり、改良システムによる膜形成過程の観測はまだ行っていない。2:単一脂質二分子膜成長の観測1の研究と並行し、予備実験として、既存の画像・電気同時計測システムにより、単一脂質分子(ジフィタノイルホスファチジルコリン)の二分子膜成長を観測した。得られたデータを解析した結果、膜形成液滴の付着・放置後に、まず膜厚約60nmになるまで薄膜化し、その後二分子膜に相当する膜厚4nmの領域が出現し、その構造を保ったまま拡大・成長する事が確認された。(1)形成初期過程観測法の開発昨年度までに構築したシステム[画像計測:生物顕微鏡(オリンパス)+CCDカメラ(Opteon製、SB1J30)、電気計測:LCRハイテスタ(日置電機製、3522-50)]の同時計測速度向上を行った。デユアルCPU搭載コンピュータ(別予算購入)を用いたマルチスレッドプログラミングを画像計測に導入し、モノクロ79万画素8ビットのCCDカメラ画像を、30Hzで非圧縮保存することに成功した。このとき電気計測データの保存も別コンピュータを同期させて行っており、30Hzでの同時計測が可能となった。この速度は、昨年度(9.3Hz)の3倍以上であり、大幅な性能向上を達成したといえる。(2)単一脂質二分子膜形成初期過程の観測上記で開発した手法により、単一脂質(ジフィタノイルフォスファチジルコリン)二分子膜形成初期過程観測を行った。まず初めに、膜形成用の穴を水平に配置し、上方から水浸対物レンズを利用した顕微鏡観測を試みた。しかし、この配置では、穴に展開した膜形成液が浮力のため浮上してしまい、うまく二分子膜形成しなかった。そこで、膜形成用の穴を垂直に配置し、側方からの観測を行える特製セルを設計・構築した。これにより、予備的な膜形成の観測に成功した。しかし、条件を一定かつ安定に制御した膜形成およびその観測のためには、マイクロマニピュレータを用いた膜形成液の展開が必要であることがわかり、新たに必要となる部品を設計中である。この改良装置が完成すれば、1で開発した同時計測による膜形成初期過程の詳細な観測が可能になると考えている。
KAKENHI-PROJECT-15750013
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水晶体におけるアミロイドβ蛋白の解析と認知機能との相関に関する研究
アルツハイマー病(Alzheimer's disease ; AD)患者の剖検水晶体におけるアミロイドβ蛋白(Aβ)の蓄積が報告されたが,白内障手術検体を含め水晶体中のAβの定量法は未確立である.本研究では非認知症患者における白内障水晶体中のAβの抽出方法およびELISAによる定量化を検討した結果,認知症を伴わない白内障患者において,水晶体中にAβx-42が少量ながら蓄積し,白内障の増悪に伴って増加している事が確認された.アルツハイマー病(Alzheimer's disease ; AD)患者の剖検水晶体におけるアミロイドβ蛋白(Aβ)の蓄積が報告されたが,白内障手術検体を含め水晶体中のAβの定量法は未確立である.本研究では非認知症患者における白内障水晶体中のAβの抽出方法およびELISAによる定量化を検討した結果,認知症を伴わない白内障患者において,水晶体中にAβx-42が少量ながら蓄積し,白内障の増悪に伴って増加している事が確認された.ヒト水晶体中にはアルツハイマ一病(Alzheimer's disease;AD)脳の特徴的蓄積物質であるアミロイドβ蛋白(amyloid βprotein;Aβ)のAβ1-40やAβ1-42が同定されているが、本研究では、白内障の手術で得られた水晶体を用いて、Aβの定量をはじめとする生化学的検討を行う。本年度はまず認知機能が正常な対象の水晶体に含まれるAβの定量を行なった。白内障手術により破砕され、生理食塩水とともに回収された水晶体試料は、-20度で保存した。溶解時にプロテアーゼ阻害剤を加え混和した。10万G、4°C、1時間の超遠心後、水晶体試料のペレットを得た。こうして得られたペレットは、4°C、プロテアーゼ阻害剤の存在下でテフロン製マイクロホモジェナイザーを用いて、ホモジェナイズし、各種溶液にて水晶体蛋白をその可溶性に応じて連続的に抽出した。各分画のAβペプチドをAβx-40およびAβx-42に対するC末端特異的なELISA系にて定量した。TBS分画、Triton X分画並びにグアニジン分画では、AβはAβx-40およびAβx-42測定系のいずれにおいても検出感度以下であり、可溶性の高い状態では、その存在量はごく少量と考えられた。次に、アルツハイマー病脳でのAβペプチド蓄積と同様に、水晶体でもAβペプチドが、その蓄積に伴って重合・凝集し、その可溶性が極めて低下している可能性を想定し、アミロイドの拙出法に倣って、抽出性の極めて高いギ酸抽出を行った。一部サンプルのAβが測定感度以下であり、これらのAβ量を0と仮定した場合、N=39(sample No1149)でAβx-40は平均0.08fmol/mgレンズSD=0.17であり、Aβx-42は平均0.28 fmo1/mgレンズSD=0.24であった。今後、年齢や認知機能などとの相関を解析していく予定である。アルツハイマー病(Alzheimer's disease ; AD)患者の剖検水晶体におけるアミロイドβ蛋白(Aβ)の蓄積が報告された[Goldsteonら,Lancet 2003].もし認知症の顕在化以前に水晶体にAβが蓄積するならば,白内障手術の際に回収される水晶体中のAβを定量する事で,ADの早期診断ができる可能性がある.しかし,白内障手術検体を含め,水晶体中のAβの定量法は未確立である.本研究では非認知症患者における白内障水晶体中のAβの抽出方法およびELISAによる定量化を検討した.通常の白内障手術時に回収し,研究目的使用に同意が得られた水晶体試料(N=86)より,Aβを溶解度の異なる各種溶液(TBS,1%TritonX-100,ギ酸)を用いて連続的に抽出し,ELISAにてAβ量を測定した.次にELISAで検出されたAβの存在を確定するためにウエスタンブロッティング(WB)を行った.連続抽出した上清中のうち,ギ酸分画でAβを検出した.血漿や脳脊髄液同様,個人差が大きかったが,タンパク重量あたりのAβx-42は平均7.13±1.96pg/mg(Mean±SEM)であった,Aβx-40は感度以下であった.性別,年齢,白内障LOCSIII分類別の分析では,Aβx-42は白内障グレードの上昇に伴い有意に増加し,年齢の上昇に伴って増加する傾向が示唆された.WBの結果では,Aβx-42の存在が確認されたが,抗体の反応性の違いから,水晶体中Aβでは構造変化が生じている可能性が示唆された.認知症を伴わない白内障患者において,水晶体中にAβx-42が少量ながら蓄積し,白内障の増悪に伴って増加している事が確認された.今後,軽度認知機能障害を含めた様々な白内障患者の認知機能との定量比較と,白内障水晶体におけるAβx-42の翻訳後修飾等の同定を行い,水晶体Aβに適合した測定系の開発を行う事で,ADの早期診断につながる可能性が見出された.アルツハイマー病(Alzheimer's disease;AD)
KAKENHI-PROJECT-20590987
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水晶体におけるアミロイドβ蛋白の解析と認知機能との相関に関する研究
患者の剖検水晶体におけるアミロイドβ蛋白(Aβ)の蓄積が報告された[Goldsteonら,Lancet 2003]が,白内障手術検体を含め,水晶体中のAβの定量法は未確立である.本年度は非認知症患者における白内障水晶体中のAβの抽出方法およびELISAによる定量化を更に検討した.ウエスタンブロッティングでは、主にAβダイマーが確認された。4G8と6E10の混合抗体では、ウエスタンプロッティングのシグナルは非常に弱く、抗Aβ(1-42)C末端特異抗体ではより強いシグナルが確認された。今回の水晶体試料は上清中にAβが残存していた可能性があり、全眼水晶体試料を用いて、回収時の遠心条件を想定した検討を行った。その結果は、48Krpmの超遠心に比べ低速(3K、6Krpm)ではAβがそれぞれ48%、16%程度上清に残存していた。今回検討に用いた白内障水晶体試料はいずれも非認知症患者のものであったが、白内障の乳白濁度が増加した水晶体では、Aβが有意に蓄積しており、認知症発症以前から水晶体中にAβが蓄積する可能性が示唆された。年齢別の比較では、年齢が増加するに従ってAβが増加する傾向がみられたが、年齢とグレード別間では相関はみられず、年齢による早期診断への影響は無視できるものと考えられた。ウエスタンブロッティングでのAβの確認試験では、Aβダイマーの存在が確認された。また、4G8と6E10の混合抗体での反応性が悪かったことより、4G8と6E10のエピトープ近傍に存在するアスパラギン酸が、ラセミ化を起こし、立体構造が変化している可能性が示唆された。αBクリスタリンなどの水晶体中の他のタンパクは同様に、白内障水晶体中のAβはラセミ化やイソ化などの翻訳後修飾や重合が進んだ状態で存在している可能性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-20590987
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リゾホスファチジン酸産生酵素オートタキシンの生理機能の解明
ゼブラフィッシュで軟骨組織を観察するため、軟骨細胞特異的にGFPを発現するcol2a1:EGFPトランスジェニックゼブラフィッシュを確立した。このフィッシュに対し、LPA_1またはATXのアンチセンスモルフォリノ(MO)を投与した所、いずれにおいても下顎の軟骨細胞の配列の乱れが観察された。よってATXから産生されたLPAがLPA_1を介して軟骨細胞の配列制御を行っている可能性が示唆された。またwhole mount in situ hybridizationの解析結果から、LPA_1及びATXの発現部位は軟骨細胞であることが明らかとなった。次にin vitoの系でこの分子メカニズムを明らかにすることを目的とし、軟骨細胞とその細胞外基質への接着作用に着目した。マウスより初代軟骨細胞を調製し、II型コラーゲンに対する接着能を評価した所、LPA_1 KOマウス由来の軟骨細胞においてその接着作用及びdishへの接着面積が有意に低下していることを見出した。一方でコントロールマウス由来の軟骨細胞はLPA刺激によって接着能が亢進することも明らかとなった。これらの実験結果から、LPA_1 signalがβ_1 integrinによる細胞接着作用を強めることで軟骨細胞の配置を制御すると考え、col2a1:EGFPフィッシュにβ_1 integrin MOを投与した所、LPA_1またはATX MOと類似の表現型が観察された。本研究によって、軟骨細胞に発現しているATXがLPAを産生し、LPA_1を介して軟骨細胞の配置制御を行っていることが示唆された。これまでに個体レベルでATXがLPAを産生し、特定のLPA受容体へ作用させるという報告は存在せず、本研究はその可能性を初めて示唆した点で新規性がある。(1)ATX^<lox/->マウスの骨形成異常の解明ATX^<lox/->およびLPA_1 KOマウスにみられる頭部骨格異常の原因を調べるため、同様の表現型を示すマウスの文献検索を行った。すると、頭蓋骨の長さを決定するとされる頭蓋底と呼ばれる部位に異常を示す報告が多数認められたことから、ATX^<lox/->およびLPA1_KOマウスにおいても頭蓋底を観察した。その結果、野生型のマウスに比べてATX^<lox/->およびLPA_1 KOマウスにおいては頭蓋底の軟骨部が早期に癒合している様子が観察され、これらマウスでみられる頭部骨格異常は頭蓋底の異常に起因することを明らかにできた。さらに、抗体を用いた蛍光免疫染色法やレーザーマイクロダイセクションと定量PCRを組み合わせた方法によって、頭蓋底軟骨部でのATXおよびLPA受容体の発現を解析したところ、この部位においてLPA_1受容体が特に高く発現していること、ATXはより成熟段階の進んだ軟骨細胞に高く発現していることを見出した。これらのことから、ATX-LPA_1シグナルは、頭蓋底の軟骨細胞に作用し、増殖もしくは成熟過程に作用していることが示唆された。(2)ゼブラフィッシュを用いたATX-LPA-LPA_1 pathwayの骨形成への関与の評価現在、ATXおよびLPA_1の機能抑制によってゼブラフィッシュにおいてもマウスと同様に頭蓋軟骨に形態異常を示すことを明らかにしている。軟骨特異的にEGFPを発現するゼブラフィッシュの確立に成功したので、今後はこのゼブラフィッシュを利用して軟骨形成におけるLPAシグナルの分子機構の解明を目指す。ゼブラフィッシュで軟骨組織を観察するため、軟骨細胞特異的にGFPを発現するcol2a1:EGFPトランスジェニックゼブラフィッシュを確立した。このフィッシュに対し、LPA_1またはATXのアンチセンスモルフォリノ(MO)を投与した所、いずれにおいても下顎の軟骨細胞の配列の乱れが観察された。よってATXから産生されたLPAがLPA_1を介して軟骨細胞の配列制御を行っている可能性が示唆された。またwhole mount in situ hybridizationの解析結果から、LPA_1及びATXの発現部位は軟骨細胞であることが明らかとなった。次にin vitoの系でこの分子メカニズムを明らかにすることを目的とし、軟骨細胞とその細胞外基質への接着作用に着目した。マウスより初代軟骨細胞を調製し、II型コラーゲンに対する接着能を評価した所、LPA_1 KOマウス由来の軟骨細胞においてその接着作用及びdishへの接着面積が有意に低下していることを見出した。一方でコントロールマウス由来の軟骨細胞はLPA刺激によって接着能が亢進することも明らかとなった。これらの実験結果から、LPA_1 signalがβ_1 integrinによる細胞接着作用を強めることで軟骨細胞の配置を制御すると考え、col2a1:EGFPフィッシュにβ_1 integrin MOを投与した所、LPA_1またはATX MOと類似の表現型が観察された。本研究によって、軟骨細胞に発現しているATXがLPAを産生し、LPA_1を介して軟骨細胞の配置制御を行っていることが示唆された。これまでに個体レベルでATXがLPAを産生し、特定のLPA受容体へ作用させるという報告は存在せず、本研究はその可能性を初めて示唆した点で新規性がある。
KAKENHI-PROJECT-10J06237
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J06237
HIV排除を目指した、糖代謝リプログラミングを介したウイルス複製制御機構の解明
HIV感染症/AIDSは未だ根治には至っていない。根治を妨げている要因には、HIVの有する高度な変異性やHIV潜伏感染の存在がある。これまでに30種類を超える薬剤が開発され多剤併用療法が行われているが、現在の多剤併用療法では薬剤耐性ウイルスや潜伏感染ウイルスには効果を示さない場合がある。そこで本研究では、薬剤耐性ウイルスや潜伏感染ウイルスに効果を示す新規治療標的の同定を目指す。そのために申請者は、実際にHIV感染時に生体内で起こる細胞環境変化の中でもエネルギー産生経路に着目し、薬剤耐性ウイルスや潜伏感染ウイルスの存在によって変化する「タンパク質」に着目した研究を行う。HIV感染症/AIDSは未だ根治には至っていない。根治を妨げている要因には、HIVの有する高度な変異性やHIV潜伏感染の存在がある。これまでに30種類を超える薬剤が開発され多剤併用療法が行われているが、現在の多剤併用療法では薬剤耐性ウイルスや潜伏感染ウイルスには効果を示さない場合がある。そこで本研究では、薬剤耐性ウイルスや潜伏感染ウイルスに効果を示す新規治療標的の同定を目指す。そのために申請者は、実際にHIV感染時に生体内で起こる細胞環境変化の中でもエネルギー産生経路に着目し、薬剤耐性ウイルスや潜伏感染ウイルスの存在によって変化する「タンパク質」に着目した研究を行う。
KAKENHI-PROJECT-19K16674
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K16674
南部アフリカにおける政治変動と国民形成に関する研究
大半のアフリカ諸国で、国民統合は言語やエスニシティの同一性によってもたらされはしなかった。冷戦後の現代においても国民形成はアフリカでは最重要な課題であり続けている。この問題を民主化、移動、都市化と関連させて検討した。都市第一世代であった年長者に比して、現在の都市青年層はより教育を受けているが就業が困難であり、彼らの国民的そしてエスニックなアイデンティティの動向に注目する必要がある。大半のアフリカ諸国で、国民統合は言語やエスニシティの同一性によってもたらされはしなかった。冷戦後の現代においても国民形成はアフリカでは最重要な課題であり続けている。この問題を民主化、移動、都市化と関連させて検討した。都市第一世代であった年長者に比して、現在の都市青年層はより教育を受けているが就業が困難であり、彼らの国民的そしてエスニックなアイデンティティの動向に注目する必要がある。小倉はルサカの二つの居住区で調査を行い、20年前に実施したルサカ調査結果と比較した結果、農村との絆も弱まり、出稼ぎ還流型の様相はかなり弱くなっていることが判明した。若い世代ほど教育程度の高さに比しフォーマル・セクター就学者の比率が少なく、教育による社会的上昇の期待が満たされていないため、アフリカ政治に影響を与える存在である。青木はアンゴラの政治動向に影響を与えている中国の政策に注目し、中国に赴きアフリカに「出稼ぎ」に行った場合の条件などの聞き取り調査を行った。さらにアフリカ研究センターを訪問し、研究スタッフとの討議を行った。なおアンゴラの政治変動と国民形成に関する資料・文献などの収集も併せておこなった。井上はジンバブウェで選挙管理委員会副委員長、再定住相、そしてジンバブウェ大学教授等へのインタビューそして資料の収集をおこなった。また農村部においては、再定住政策の成果ならびにジンバブウェ・ドルの廃止に伴う商品の交換状況の調査をおこなった。遠藤は南部アフリカにおける「民主化」動向に関し、一方で従来民主化とされてきた政治変動のあり方を「民主化なき移行」と再認識するなどの理論研究をめぐる最近動向の文献調査を行うとともに、ザンビアにおける新憲法制定の現状把握を目指した現地調査を実施した。船田はモザンビークの国民形成に重要な役割を果たした脱植民地化プロセスに注目し、同プロセスに東西冷戦が与えた影響について、米国の対ポルトガル政策の推移をアイゼンハワーからケネディ政権への移行期に注目して行った。眞城は民主化後のエチオピア政治について、ティグライ州で調査を行った。前年に実施された総選挙とそれに伴う地方政治の変容について調査をし、南部アフリカと対比して考察した。さらに、民主化後のティグライ州のローカルNGOと政党、またディアスポラの関係に着目して研究を行った。小倉はザンビアの首都ルサカにおける3つの居住区で、民族意識・政治意識調査を行った。ザンビア人であるという意識や民族間紛争を回避してきたことへの誇りが強いことが判明した。都市第二・第三世代である青年層の教育程度はかなり高いが、かつての年長者のようには就業機会に恵まれず、低所得層の青年の不満はきわめて強いことが判明した。青木は南アフリカ、ボツワナ両国での中国系企業および中国人の進出に関する現地調査を行った。井上はジンバブウェにおける選挙権威主義体制(競合的権威主義体制)の展開について現地調査をおこなった。遠藤は2011年8月に行われたザンビアでの総選挙の事前動向の調査を実施した。政権交代が予測され、実際に政権交代が起こったこともあり、国際的な監視団も数多く関与していたほか、初めて事前の世論調査が行われるなど、民主化を検討する際の新たな材料を得られた。また、選挙実施に関わる管理体制にかんしても資料収集を行った。舩田は近年モザンビークで進む二つのレベルの異なった政治・社会変動、すなわち国レベルでの政権の権威主義化、そしてモザンビーク北部における換金作物栽培とジェンダー関係の変化について、文献収集及び首都マプトとニアサ州で現地調査を行った。眞城は南部アフリカにおける国民形成の特徴を明らかにする比較研究の一環として、エチオピアのティグライにおける民族と地域再編に関する調査・資料収集を行った小倉はザンビアの首都における都市第二世代・第三世代である青年層の民族・国民意識と民族間関係についての2010年・11年調査結果に基づき分析を行い、その結果をまとめた。さらにジンバブウェのムガベ政権と政策変化を国際社会学的な視点で考察し、それらを踏まえ、研究分担者とともに、研究成果を『現代アフリカ社会と国際関係』として取りまとめた。青木は南アフリカ、ナミビア、レソト、マラウィで、これら諸国と中国との関係について資料収集と聞き取りを行った。井上はジンバブウェにおける政治変動と国民形成に関する研究の一環として、ジンバブウェにて現地調査をおこなった。現地においては都市部ならびに農村部における現政権(連立政権)に対する市民意識および国家に対する帰属意識の調査をおこなった。遠藤は2011年9月の総選挙で20年ぶりに政権交替が行われた結果誕生した愛国戦線(Patriotic Front)のサタ政権における諸政策の現状と課題に関する現地調査を実施した。中国との関係においては、従来の強硬姿勢を変更した協調傾向が見られる。今後の大きな課題としては、高齢の大統領の後継問題などとも関わる中期的な政権運営を指摘することができる。舩田はモザンビークにおいて、紛争後の平和構築と民主化が、国民の間の分断にどのような影響を及ぼしたのかについて、同国北部の2州の各3村での現地聞き取り調査に基づき検討を行った。
KAKENHI-PROJECT-22402007
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22402007
南部アフリカにおける政治変動と国民形成に関する研究
その結果、「和解」の傾向がみられる一方、戦後の競争的複数政党制選挙の導入、独立以来政権に就き続ける現政権の権力集中、格差と不平等の進行により、集団内部で複雑な亀裂が生み出されていることが明らかになった。眞城はエチオピア・エリトリア間の国境により分断されたティグライ民族と独立後のエリトリアについて調査をし、南部アフリカと対比をして、エリトリアとその中のティグライの国民意識について明らかにした。研究代表者・分担者ともに、当初の目的に沿った現地調査を行うことが出来た。その結果有益な調査結果が得られ、かつ資料収集も順調に進んだ。24年度が最終年度であるため、記入しない。次年度が最終年度となるため、補充的な調査を行うとともに、3年間に渡る各自の研究成果をまとめる作業に入る。なおこの作業にとって有益であると判断される場合は、各自の担当地域のみならず、他の分担者の調査地に赴く。それにより、知見を広め、比較の視点を援用しつつ対象地域の特徴の把握に努める。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22402007
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糖尿病を併せ持つ精神疾患患者に疾病の自己管理を促す患者参画型糖尿病教室の開発
糖尿病を併せ持つ精神疾患患者を対象とし,グループダイナミックスを活用して患者の精神症状の安定と意欲・参画力を高められる患者参画型糖尿病教室を開発した。患者参画型糖尿病教室に1年以上継続して参加した11名のうち7名の糖化ヘモグロビン値が,教室初回参加時と比較して低下した。また,患者参画型糖尿病教室の参加した患者と看護師にエンパワメントを見いだすことができた。糖尿病を併せ持つ精神疾患患者を対象とし,グループダイナミックスを活用して患者の精神症状の安定と意欲・参画力を高められる患者参画型糖尿病教室を開発した。患者参画型糖尿病教室に1年以上継続して参加した11名のうち7名の糖化ヘモグロビン値が,教室初回参加時と比較して低下した。また,患者参画型糖尿病教室の参加した患者と看護師にエンパワメントを見いだすことができた。糖尿病を併せ持つ精神疾患患者の糖尿病自己管理に向けた介入研究を行っている。具体的には当該の精神科病院に入院中もしくはデイケア通所中の糖尿病を併せ持つ精神疾患患者6名を対象とし,患者参画型糖尿病教室を実施し,患者のやる気と自己教育力の育成をめざしている。研究実施予定の精神科病院において研究協力者を募集し,精神科医師1名,栄養士2名,看護師5名と共に糖尿病および参画理論に関する学習会を4回実施した。その後参加者に対して,2週間に1回のペースで患者参画型糖尿病教室を開催している。まず,糖尿病に関する知識をKJ法により整理し,知りたいことや取り組んでみたいことを明らかにし,それに沿って学習計画を立案した。糖尿病に関する知識として,どんな疾患でどのような副作用があるのかは理解できている患者が6名中4名,ほとんど理解できていない患者が2名であった。しかし全員が,どうして血糖が高くなるのか,インスリンの役割は何か,なぜ運動が必要なのか等,糖尿病のメカニズムに関して理解できておらず,様々な疑問が出された。また,運動や間食について具体的な方法が理解できていないことや,清潔などの日常生活での留意点に関してほとんど知識がないことも明らかとなった。そこで,自分たちの食生活を知ることを目標に,各自が1週間食事やおやつをデジカメで撮影し,栄養士に分析を受けた。運動に関して,万歩計を貸与し1週間測定した。それを元に自己の目標を設定し,発表会を行うようにした。6か月後,「デジカメで食事を撮影すると意識してよい」「万歩計をつけて意識的に歩くようになった」などの言葉が聞かれ,6名中4名にデータ状の改善と体重減少がみられた。2名に関してデータの改善はみられていないが,そのうち1名は,実際に摂取した量をありのままに報告できることを目標にし,間食制限を開始した段階にある。今後は,12か月に1回程度,各自の目標を自己評価しながらフォローアップ研修を実施していく予定である。参加者および研究協力者のインタビュー内容を分析し,意識の変化を明らかにする予定である。また,新たな施設においても患者参画型糖尿病教室を開催する予定にしている。1.目的糖尿病を併せ持つ精神疾患患者の糖尿病自己管理に向けたエンパワメントと,スタッフのコーチングスキルを明らかにすることを目的としている。2.方法精神科病院に入院中もしくはデイケア通所中の糖尿病を併せ持つ精神疾患患者14名とスタッフ10名を対象とし,患者参画型糖尿病教室を展開する介入研究3.活動内容A精神科病院において6名の参加者を対象に1回/月,B精神科デイケアにおいて8名の参加者を対象に2回/月の患者参画型糖尿病教室を展開している。毎回,患者の希望により活動テーマを決め,学習会やディスカッションを実施している。時々ディスカッションの中で振り返りを行い,各自のできるようになったことや変化,課題などを確認している。4.意義・重要性患者参画型糖尿病教室の様子の参加観察記録とディスカッションの記録をデータとして,ベレルソンの内容分析法を用いて,参加者のエンパワメントを明らかにすることができた。また,関わっているスタッフにインタビューし,その内容から,スタッフの意識の変化や,エンパワメントを高めるためのコーチングスキルを抽出することができている。これを明らかにすることは,精神障害者の糖尿病自己管理だけでなく,他の疾病自己管理に向けたエンパワメントと,それを引き出すコーチングスキルとして応用範囲が広いと考える。患者参画型糖尿病教室を企画した目的は,患者の参画力(自らそこにコミットメントし,課題解決に向かう行動を企画・実施・評価・伝承していく力)を育成することである。A精神科病院とB精神科デイケアにおいて,68名のグループを作り,1か月に12回の割合で教室を開催した。その進め方は,まず,患者に糖尿病に関して知っていることを書き出してもらい,KJ法により既知と未知を整理する図解を作成する。図解をもとに,メンバー参画により学習会を企画していくものである。何回か学習会を実施した後に振り返りを行い,各自が目標設定をするセッションを取り入れるようにした。Aグループは2年以上,Bグループも1年以上継続し,その効果を糖尿病検査データの推移で実証できた(石橋,第5回島根看護学術集会論文集,2010)(石橋,第2回日中韓看護学会,2010)。
KAKENHI-PROJECT-21592937
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糖尿病を併せ持つ精神疾患患者に疾病の自己管理を促す患者参画型糖尿病教室の開発
今年度は,患者の振り返りの語りから,アウトカムとしてのエンパワメントを抽出し,「オープン性の高まり」「現実に立ち向かう意欲」「自己成長」「生活の質の改善」「能力の開花」「希望の感覚」「コントロール感」「自己決定」のパワーが高められたことを明らかにした(石橋,第37回日本看護研究学会,2011)。また,患者参画型糖尿病教室を担当してきた援助者に,フォーカス・グループ・ディスカッションを行い,エンパワメントにつながった援助方法として,「ペースを合わせる」「グループダイナミクスを活用する」「関心を向け続ける」「成功体験を活用する」「やりたいことに取り組む」「メカニズム(原理)を伝える」「入念な準備をする」「具体的に対応する」「認める」「自分で考える機会を提供する」などを明らかにした(石橋,第6回島根看護学術集会,2011)。
KAKENHI-PROJECT-21592937
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カルシウムシグナルによるタンパク質の産生・輸送・分解の制御機構
研究代表者等は、哺乳動物細胞に極めて近い細胞内情報伝達系を持ち、厳密な分子遺伝学的解析が可能な分裂酵母モデル系を用いて、カルシウム依存性脱リン酸化酵素であるカルシニューリンが細胞質分裂等の多様な細胞機能を制御することを明らかにしてきた。この過程で、カルシウムシグナルがタンパク質の分解や輸送系の制御を示唆する多くの結果を得ている。本研究は、分裂酵母モデル系の分子遺伝学的解析を行うことでカルシウムシグナルによるタンパク質の産生・輸送・分解の制御機構を解明し、この制御機構の破綻による細胞病態を明らかにする事を目的とした。1)細胞内小胞輸送を担うアダプチン遺伝子とカルシニューリンの遺伝学的関連について高温感受性と免疫抑制薬感受性を同時に示す分裂酵母変異体を単離し,その遺伝子を決定した。その結果,変異遺伝子は,ゴルジ・エンドソームからの小胞輸送を担うことが知られているミュー・アダプチンをコードしていることが明らかになった。また,アダプチン遺伝子ノックアウトでも同様の表現型が認められることも確認した。これらの結果から,細胞内輸送とカルシニューリンとの関連が明らかになった。2)mRNA制御における安定性制御の重要性についてタンパク質産生においては,mRNA量制御がきわめて重要である。これまでは,シグナル伝達系によりmRNA量が制御される場合は,主に転写の制御が考えられていたが,我々は,分裂酵母ではカルシニューリンとマップキナーゼがクロライドイオンホメオスタシスに関して拮抗的関係にあることを利用し,RNA結合タンパク質のリン酸化によるmRNAの安定性制御が重要であることを明らかにした。(1)ゴルジのカルシウムポンプPmr1とNrampホモログPdt1によるマンガンホメオスターシス制御機構の解明Ca^<2+>/カルシニューリン(CN)により遺伝子発現が制御されているPmr1の遺伝子発現がMn^<2+>によっても調節されていることを示した。また,Pmr1遺伝子KO株の表現型を過剰発現により抑圧する遺伝子として,NrampホモログPd t1を単離した。Pmr1とPdt1のダブルKO細胞は極めて異常な細胞形態を示し,この異常が細胞外へのMn^<2+>の添加により回復することを示した。(2)細胞内ユビキチン量制御因子Lub1の発見ストレス感受性を指標とした遺伝学的スクリーニングによりlub1遺伝子を発見した。lub1遺伝子KO細胞は,ストレス感受性を示すとともにユビキチン量が著しく低下した。また,過剰発現により表現型を抑圧する遺伝子としてポリユビキチン遺伝子が単離された。またLub1はCdc48と複合体を形成することで細胞内での安定性を獲得していることも明らかにした。(3)新規RNA結合蛋白質Rnc1の発見CNのKO表現型を相補する多コピー抑圧遺伝子として,新規RNA結合蛋白質をコードするrnc1遺伝子を単離した。Rnc1は,マップキナーゼを抑制すると思われるPmp1マップキナーゼホスファターゼのmRNAと結合する事が示された。さらに,マップキナーゼにより燐酸化されたRnc1は燐酸化されていないRnc1よりも強くPmp1mRNAに結合し,安定化することが明らかになった。(4)CNの下流で働くzincfinger型転写因子Prz1の同定CNの下流で働きカルシウムポンプPmr1やPmc1の遺伝子発現を制御する転写因子Prz1を同定した。さらに,CNの下流にPrz1を介する経路と介さない経路があり,マップキナーゼと拮抗するのはPrz1を介さない系であることも明らかにした。研究代表者等は、哺乳動物細胞に極めて近い細胞内情報伝達系を持ち、厳密な分子遺伝学的解析が可能な分裂酵母モデル系を用いて、カルシウム依存性脱リン酸化酵素であるカルシニューリンが細胞質分裂等の多様な細胞機能を制御することを明らかにしてきた。この過程で、カルシウムシグナルがタンパク質の分解や輸送系の制御を示唆する多くの結果を得ている。本研究は、分裂酵母モデル系の分子遺伝学的解析を行うことでカルシウムシグナルによるタンパク質の産生・輸送・分解の制御機構を解明し、この制御機構の破綻による細胞病態を明らかにする事を目的とした。1)細胞内小胞輸送を担うアダプチン遺伝子とカルシニューリンの遺伝学的関連について高温感受性と免疫抑制薬感受性を同時に示す分裂酵母変異体を単離し,その遺伝子を決定した。その結果,変異遺伝子は,ゴルジ・エンドソームからの小胞輸送を担うことが知られているミュー・アダプチンをコードしていることが明らかになった。また,アダプチン遺伝子ノックアウトでも同様の表現型が認められることも確認した。これらの結果から,細胞内輸送とカルシニューリンとの関連が明らかになった。2)mRNA制御における安定性制御の重要性についてタンパク質産生においては,mRNA量制御がきわめて重要である。これまでは,シグナル伝達系によりmRNA量が制御される場合は,主に転写の制御が考えられていたが,我々は,分裂酵母ではカルシニューリンとマップキナーゼがクロライドイオンホメオスタシスに関して拮抗的関係にあることを利用し,RNA結合タンパク質のリン酸化によるmRNAの安定性制御が重要であることを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-15032231
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15032231
スルファチドの合成研究
スフィンゴ糖脂質は細胞間の認識や相互作用に重要な役割を担っているがそのうちスルファチドと呼ばれる硫酸基を含む一群の化合物については生理的意義がよくわかっていない。スルファチドは混合物であるが、それは主として糖脂質部中の脂質部セラミドが混合物であることに帰因する。従って、化学的に純粋なスルファチドを合成するためには、セラミド、特にそれを構成する基本塩基のスフィンゴシンを純粋に合成することが必要である。また糖脂質の糖部に対する位置選択的硫酸化法の開拓も重要な課題である。この二つの問題を解決すべく本研究を行い、以下の成果をえた。(1)糖類の位置選択的酸化反応を経由するアミノ糖の合成入手容易な天然糖類をキラル源として、これを位置選択的に酸化してオキソ糖に導く方法を開拓し、さらにこれらを立体選択的にアミノ糖に変換する方法を確立した。この方法を用いて、グルコシダーゼ阻害剤として注目されている抗生物質ノジリマイシンの実用的合成法を開発した。(2)スフィンゴシンへの共通中間体の合成上記の方法でキシロースよりアミノアラビノース誘導体を合成し、これを目的のスフィシゴシンへの共通中間体に変換した。これよりCー18スフィンゴシンの合成を行った。(3)糖類の位置選択的硫酸化モデルとして各種のガラクトース誘導体を、ジブチルスズオキシド法で硫酸化し、選択的に3位硫酸化が起ることを明らかとした。(4)糖硫酸エステルの分析法糖祭酸エステルのような、UV吸収をもたず、高い極性の化合物は、HPLCで検出が困難であるが、吸光度検出イオンクロマトグラフィー(PIC)がよい結果を与えることを明らかとした。スフィンゴ糖脂質は細胞間の認識や相互作用に重要な役割を担っているがそのうちスルファチドと呼ばれる硫酸基を含む一群の化合物については生理的意義がよくわかっていない。スルファチドは混合物であるが、それは主として糖脂質部中の脂質部セラミドが混合物であることに帰因する。従って、化学的に純粋なスルファチドを合成するためには、セラミド、特にそれを構成する基本塩基のスフィンゴシンを純粋に合成することが必要である。また糖脂質の糖部に対する位置選択的硫酸化法の開拓も重要な課題である。この二つの問題を解決すべく本研究を行い、以下の成果をえた。(1)糖類の位置選択的酸化反応を経由するアミノ糖の合成入手容易な天然糖類をキラル源として、これを位置選択的に酸化してオキソ糖に導く方法を開拓し、さらにこれらを立体選択的にアミノ糖に変換する方法を確立した。この方法を用いて、グルコシダーゼ阻害剤として注目されている抗生物質ノジリマイシンの実用的合成法を開発した。(2)スフィンゴシンへの共通中間体の合成上記の方法でキシロースよりアミノアラビノース誘導体を合成し、これを目的のスフィシゴシンへの共通中間体に変換した。これよりCー18スフィンゴシンの合成を行った。(3)糖類の位置選択的硫酸化モデルとして各種のガラクトース誘導体を、ジブチルスズオキシド法で硫酸化し、選択的に3位硫酸化が起ることを明らかとした。(4)糖硫酸エステルの分析法糖祭酸エステルのような、UV吸収をもたず、高い極性の化合物は、HPLCで検出が困難であるが、吸光度検出イオンクロマトグラフィー(PIC)がよい結果を与えることを明らかとした。ミエリンなどの軸索,脳脂質に多く存在するスルファチドは,糖脂質硫酸エステルであり,脂質部の構造を異にする数種の化合物の混合物である.本研究は,これらスルファチドを化学的に純粋な単一の化合物として合成し,スルファチドの生成機能開明に役立てることを目的としている.スルファチドの合成は,基質となるべき糖脂質(例えばガラクトシルセラミド)の合成(I),その糖部への位置選択的硫酸化(II)の二つの問題を含んでおり,さらに糖脂質の合成(I)は,それを構成する脂質部(セラミド)の合成(I-a)と,それに対する糖結合の形成(I-b)の二つに分けられる. I-aに関する研究は従来数多いが,任意の脂質鎖に対応できる一般的方法はない.我々はキシロースより誘導した唯一つの前駆体から,スフィンゲニン,フィトスフィンゲニン,さらにはセラミドを合成する一般的方法を開拓し,この問題を独自に解決した.本法は合成の最終段階で脂質部を導入するもので,任意の長さの脂質鎖に対応できる利点を有している.ついで糖水酸基の位置選択的硫酸化反応(II)の研究を開始し,先に我々が開拓したジブチルスズオキシド法がこの目的に有効であることを確立した.さらに糖硫酸エステル類の分離分析のためのモデル化合物として,グルコースー6-硫酸,グルコースー3-硫酸,ガラクトースー3-硫酸およびそれらの誘導体を合成し,種々なカラムを用いたHPLCを検討した結果,これら高極性の糖硫酸エステル類は,吸光度検出イオンクロマトグラフィー(PIC)によって,はじめて高感度に分離分析しうることを明らかとした.硫酸基をもった糖脂質の一群であるスルファチドの化学的純合成は、基質となるべきスフィンゴ糖脂質の合成、スフィンゴ糖脂質への位置選択的硫酸化の二つの過程よりなる。スフィンゴ糖脂質は、セラミドと糖部から成立っており、セラミドはさらにスフィイゴシンとアシル部にわけられる。天然スフィンゴシンは炭素鎖が1618のものの混合物である。
KAKENHI-PROJECT-62570935
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62570935
スルファチドの合成研究
従って、化学的に純粋なスルファチドを合成するためには、スフィンゴシンの純粋な合成が必須となる。このような各種のスフィンゴシンは、単一の共通中間体より合成するのが最も効率よく、望ましい。本年度はこの問題に焦点をしぼって研究を行った。そのため、スフィンゴシンの二つの不斉中心の構築に、キラル源として天然に豊富な糖類を利用することを考えた。まず、糖類の位置選択的な酸化法を確立し、オキソ糖類の効率よい合成法を開拓した。次にこれらを立体選択的にアミノ基に変換して、アミノ糖類の有効な合成法を開発した。この方法でえた4-アミノ-4-デオキシアラビノースより、短工程で下記の構造の、目的の共通中間体を合成した。本品は、各種のイリドによるWittig反応によってスフィンゲニン類を、またグリニヤル反応によってフィトスフィンガニンを(保護された形で)うることができる。また、本研究のさらなる成果として、グルコシダーゼ阻害剤として注目されている抗生物質のジリマイシン(5-アミノ-5-デオキシ-D-グルコース)の実用的な合成法を開拓することができた。
KAKENHI-PROJECT-62570935
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62570935
新興病原生物の進化における宿主個体群の遺伝的構造の役割
コイヘルペスウイルス(CyHV3)感染症をモデルとし、宿主個体群遺伝構造と新興病原体の相互作用を評価するための解析手法の確立と基礎的知見の取得を行った。まず、宿主個体群の遺伝的構造を迅速に明らかにするための環境DNA手法を開発した。この手法を野外に適用し、各地のコイ個体群の遺伝的構造を迅速に評価することに成功した。また、自然水域から採取したCyHV3の遺伝子解析より、CyHV3が日本に導入された数年後には、複数の遺伝子型が出現したことを明らかとした。日本には単一系統のCyHV3が導入されたことより、導入後に遺伝的変異が生じたことが示唆された。本研究課題は、新興感染症コイヘルペスウイルスをモデルシステムとし、宿主個体群の遺伝的構造が病原ウイルスの進化に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。そのためには、宿主個体群と病原ウイルス双方の遺伝解析が必要となるが、2014年度は、宿主コイ個体群の遺伝的構造を評価する手法の確立に重点を置き、研究を行った。日本の河川・湖沼には、古来から日本に生息する在来系統のコイに加え、ユーラシア大陸から人為導入された外来系統のコイが生息している。そして、在来系統は外来系統に比べ、コイヘルペスウイルスに対する耐性が低いことが分かっている。そこで、宿主個体群の遺伝的構造を、在来系統由来の遺伝子と外来系統由来の遺伝子の集団における頻度によって評価することとした。まず、複数の宿主個体群の遺伝的構造を迅速に解析するため、研究代表者による先行研究および本研究において、環境DNA(水に含まれる生物に由来するDNA)を用いた在来:外来遺伝子頻度の定量手法を実験室レベルで確立した(論文投稿中)。さらに、本定量手法を野外へ適用する妥当性を検討した。すると、実際に湖沼から捕獲したコイの在来:外来遺伝子頻度は、環境DNAを用いた定量手法から推定された在来:外来遺伝子頻度と良く一致することが分かった。これらの結果より、環境DNAを用いた在来:外来遺伝子頻度定量法を野生コイ個体群に適用すれば、各個体群の遺伝的構造を迅速に把握できることが確かめられた。本研究では、2003年に日本へと導入された新興感染症コイヘルペスウイルスをモデルシステムとし、宿主個体群遺伝構造と新興病原体の相互作用を評価するための解析手法の確立と基礎的知見の取得を行った。宿主個体群の遺伝的構造を迅速に評価するため、環境DNA(水に含まれる、生物に由来するDNA)を利用した解析手法の開発を試みた。まず、一塩基の違いを高感度に区別できるサイクリングプローブ技術を用いたリアルタイムPCRにより、一塩基多型に基づいて2つの遺伝子型を判別するとともに、両者の頻度を定量する環境DNA手法を水槽実験レベルで確立した。さらに本手法の実用性を確認するため、本手法を自然水域へと適用したところ、複数のコイ地域個体群の遺伝的構造を広域的かつ迅速に評価することに成功した。環境DNAによる宿主個体群遺伝構造解析に関わる研究成果は、平成27年度に国際学術誌に公表された。また、2008年から2009年にかけて自然水域から採取されたコイヘルペスウイルスの遺伝子解析を行った。すると、日本には単一系統のコイヘルペスウイルスのみが導入されたのにも関わらず、導入数年後には複数の遺伝子型が存在することが明らかとなった。つまり、日本への導入後、コイヘルペスウイルスに遺伝的変異が生じたことが示唆された。以上の成果より、宿主コイ個体群遺伝構造とコイヘルペスウイルスの相互作用プロセスを検証するための土台を構築することができた。コイヘルペスウイルス(CyHV3)感染症をモデルとし、宿主個体群遺伝構造と新興病原体の相互作用を評価するための解析手法の確立と基礎的知見の取得を行った。まず、宿主個体群の遺伝的構造を迅速に明らかにするための環境DNA手法を開発した。この手法を野外に適用し、各地のコイ個体群の遺伝的構造を迅速に評価することに成功した。また、自然水域から採取したCyHV3の遺伝子解析より、CyHV3が日本に導入された数年後には、複数の遺伝子型が出現したことを明らかとした。日本には単一系統のCyHV3が導入されたことより、導入後に遺伝的変異が生じたことが示唆された。半年という短い研究期間のうちに、本研究課題を遂行する上で非常に重要となる、宿主個体群の遺伝的構造の迅速解析手法の確立に成功した。従来は、宿主個体群の遺伝的構造を把握するためには、宿主生物の捕獲に加え、個体毎の遺伝解析が必要であったため、ひとつの地域個体群の解析を行うだけでも多大な時間と労力を要した。しかし、2014年度に確立した環境DNAを用いた手法では、生息水域から水を採取し、抽出したDNAを用いて解析を行えば、その水域の個体群の遺伝的構造を迅速に評価することが可能である。2014年度の成果により、2015年度より本格的に開始する、宿主個体群の遺伝的構造と病原ウイルスの遺伝的変化の関係に関する実験と解析を、円滑に進めていくための土台ができあがった。27年度が最終年度であるため、記入しない。生態学2014年度の研究により、環境DNAを用い、宿主コイ個体群における在来:外来遺伝子頻度を定量する手法を確立した。環境DNAを用いる本手法の利点は、時間と労力のかかる宿主コイの捕獲を行わなくとも、水を採取し、そこから環境DNAを抽出するだけで、宿主個体群の遺伝的構造の把握が可能となることである。
KAKENHI-PROJECT-26881007
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26881007
新興病原生物の進化における宿主個体群の遺伝的構造の役割
そこで、2015年度は、調査範囲を拡大し、複数の水域における宿主個体群の遺伝的構造解析を実施することを目指す。同時に、水からコイヘルペスウイルスDNAを回収し、病原ウイルスの遺伝解析も進めていく。水中のコイヘルペスウイルス濃度は、春から夏にかけて増大するので、この時期にあわせてサンプリングを行う予定である。複数の水域における、宿主個体群と病原ウイルスの遺伝解析結果を得ることにより、本研究課題が目標とする、宿主個体群の遺伝的構造が病原ウイルスの進化に及ぼす影響の評価を実現することができると考えられる。27年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-26881007
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脳卒中患者の家族介護者に対する在宅支援介入プログラムに関する研究
本研究課題は、脳卒中患者の在宅移行看護介入プログラムの作成と検証を目指すが、検討中に看護師の認識と家族の病気の不確かさの関与が考えられ、今年度は入院数日後(T1)と集中治療室退室後(T2)の家族の病気の不確かさの変化を調査した。概要は以下の通りである:不確かさ得点はT1の85.8からT2の78.0に低下したが有意差はなかった。全31項目の平均得点を比較すると、T1での高得点項目は「必要時にはそこにいる看護師に私は頼ることができる」「医師や看護師は日常的な言葉を使ってくれるので言っていることは理解できる」「退院したらどのように私は家族の世話をして行くのか漠然としている」「私が説明を受けたことは全て理解している」「家族に何が起こるのかはっきりしない」「症状は予測なく変化を続ける」「1つ1つの治療の目的は私にははっきりしている」「どれくらいで私自身で世話をすることができるようになるのか決め難い」で、この全てがT2で低下した(このうち5項目は逆転項目)。また、T1での低得点項目は、「痛みがどう悪化して行くのかはっきりしない」「何がどう悪いのかわからない」「病がどれくらいで終わるのか予測できる」「検査結果は矛盾が多い」「家族について受けた説明に対する私の印象ははっきりしないというものだ」で、最初の2項目以外はT2で上昇した。以上のことから、1)入院時から家族の今後に対する支援が必要である、2)入院時の医療者の病状説明や親身な関わりは不確かさを低下させる、3)患者の病状変化があった時の医療者の説明や関わりは不確かさを低下させる可能性がある、4)集中治療室退室後も医療者が家族に注目していることを行動で示す必要がある、ことが効果的であると考えられた。本調査は、入院数日後の家族を対象としたため調査協力が難しく、対象者数確保に時間を要し、効果的な介入は明らかになったが、検証に至らなかった。初年度は、本研究の最終目的である介入プログラムの効果測定に向けて、研究協力者の研究実施に向けた準備、脳卒中患者の家族に対する介入プログラム暫定版の作成、比較群調査の準備を計画した。天理よろづ相談所病院の協力を得て、脳血管系患者を収容する5部署から研究協力者となる15名の看護師の推薦を受け、研究チームを構築した。研究代表者が中心となって国内外の論文を提示し、それらを抄読しながら、急性期から回復期までの各部署で現在行っている家族支援の実際と照らし、現実に即した介入方法についてディスカッションした。その結果、以下のケアの重要性が確認された:1.急性期から介護者の情報ニーズに積極的に応じること、2.早期から介護者となる予定の家族成員をケアに巻き込み共に考えること、3.効果的な介入となるタイミングを外さないこと、4.介護者の認知的評価やコーピング、性格傾向に感心を寄せスクリーニングすること、5.介護者の意思決定を促進し支持すること、6.介護者自身の生活の質やメンタルヘルスに関心を向け維持すること。しかし、病期の異なる複数の部署での一貫したケアを提供する具体的なプログラムを作成するには、転棟(部署移動)時のケアの継続性における課題とケースワーカー等の関連他職種との調整における課題が残り、実践可能なプログラム作成には至らなかった。介入プログラムは本研究の核となるものであり、十分な検討を必要とすると考えることから、平成27年度も介入プログラムの検討は継続することとした。一方、研究協力者の研究実施に向けた教育については、研究に対する苦手意識が強いために、介入プログラム検討のための論文抄読の際に研究方法についても言及し、時間をかけて準備を整えているところである。本研究は、脳卒中患者の円滑な在宅移行と長期的な在宅介護を可能にする急性期から在宅までの連続的な看護介入プログラムの開発とその効果を検証することを主たる目的としている。2年目となる今年度は、これまで脳卒中を受け入れる急性期病棟・亜急性期病棟・回復期リハビリテーション病棟、協力施設の看護部担当者、大学内の研究協力者と構築してきた本研究チームにおいて、特に、脳卒中患者の家族介護者の体験や彼らに対する介入の効果に関する文献を検討しながら、研究チーム員の脳卒中患者の看護体験を踏まえて、効果的な看護介入やその時期、患者の回復に応じて転棟する中で継続的看護を実施する方法、本介入プログラムのアウトカムやその測定用具について検討を重ねた。その結果、救急搬送された超急性期から急性期・亜急性期・回復期・在宅期へと患者の回復過程に応じた家族成員への看護介入の内容を整理した。このプログラムは、次々と転棟あるいは転院を余儀なくされる脳卒中患者とその家族に対して、部署あるいは施設ごとに異なるケアを行うのではなく、連続的なケアを目指すもので、患者の回復を促進するケアを実施すると同時に、入院時から家族と積極的に関係を築き、内の関係性や家族のニーズを把握しながら、急性期には、情報・保証・接近・安楽のニーズを充足すること、家族の在宅介護の意向を把握しながら、在宅移行を実現するための支援と在宅介護を継続するための支援を柱とするものである。次年度は、プログラムを洗練させて、これに基づく看護実践に取り組む予定である。本研究課題の初年度からの研究チーム員のリクルートや研究協力者の研究に関する教育による遅れが現在に影響している。過去2年間で、介入プログラムの素案が作成できたため、現行の介入との比較調査を実施する予定であった。
KAKENHI-PROJECT-26463362
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脳卒中患者の家族介護者に対する在宅支援介入プログラムに関する研究
しかし、介入プログラム作成の最終段階の検討の中で、ICUやSCUなど発症後まもない患者を看護する部署では、看護師によっては、家族に対して在宅介護や介護者役割に向けた看護介入の必要性すら意識していない可能性もあるのではないかという懸念が上がった。新たに作成する在宅移行を支援する入院早期からのプログラムの効果を検証する予定であったが、プログラムそのものではなく、実施する看護師にその効果が大きく影響を受ける可能性も考えられたことから、脳卒中患者を収容する急性期から回復期までの病棟の看護師を対象として、脳卒中患者の家族に対する介護者役割あるいは在宅介護に関する看護師の認識を明らかにする研究に取りかかった。現在、予定対象者数の半数程度のデータ収集を終え、次年度も引き続きデータ収集を行い、分析する予定である。これまでに得られたデータからは、在宅移行期病棟の看護師は、在宅介護に関する関心が高く、当然のこととして家族を支援しているが、急性期ケア病棟の看護師の在宅看護に関する家族支援は、これまでの看護経験に影響を受けると考えられる。つまり、急性期ケア病棟に配属されるまでに、脳卒中患者のケアの経験がある者や在宅療養を要する患者や家族の援助経験のある者は、早期から在宅介護を念頭においた情報収集や看護援助を行なっていた。この調査は、次年度に継続する予定である。また、脳卒中患者の家族成員に関する先行研究を検討する中で、脳卒中という疾病の特徴から、家族の不確かさが発症時から1ヶ月半経過した後も継続するという報告があったことから、家族の抱える不確かさを軽減できることに焦点化した介入も必要であると考えられ、次年度に患者の発症後からの家族の不確かさの縦断的調査を行う予定である。初年度からの遅れも影響しているが、今年度は、介入プログラムの効果の検証を視野に、その研究計画書を検討した中で、新たな問題点に気づき、それを解決するための調査に取りかかったことで、全体の進行が遅れた。本研究は、脳卒中発症早期の在宅移行に向けた介入プログラムの作成と効果の検証を目的として開始した。しかし、効果的な看護介入プログラを検討する中で、それを実施する看護師の認識と家族の病気に対する不確かさが大きく関わると考えられ、それぞれの調査を実施した。看護師の認識調査の結果概要は以下のとおりである:1)ICU・SCU看護師は共に、患者の生命維持を最優先にしながら家族の心理的安寧の援助を行っていたが、SCU看護師はそれに加えて、自宅での介護をイメージして、患者の機能障害の程度・自宅退院の希望と家族の介護力・自宅退院に対する思いのバランスを検討して自宅退院への土壌づくりをしているのに対して、ICU看護師にはその実践はなかった;2)回復期リハビリテーション病棟(回リハ)看護師は、患者と家族の自宅退院に対する思い・患者の生活の自立度・家族の状況を総合的に判断すること、患者の生活の自立度を高める支援、家族が患者の状態を現実的に捉えられる援助を同時に実施して、回リハに居られる期日までに、家族が皆で共に生きる当たり前の生活を実現できるようにしたいと考えていた。以上のことから、脳卒中患者の早期在宅移行を推進するために看護師には以下の点が望まれると考えた:1)ICU・SCU看護師には、その患者と家族が置かれる状況を予測する能力が必要である;2)回リハ看護師には、いつまでも「患者」「家族」ではなく、彼らを「独自のありようで自律的に生活する生活者」と捉える視点が不可欠である。
KAKENHI-PROJECT-26463362
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ナノ構造電極界面を用いたCYPの電気化学酵素反応制御法の開発と応用
ヒト薬物代謝酵素(CYP)の薬剤代謝能力を低コストで迅速に測定可能な新しい手法を開発するために、電気的にその能力を調べる技術開発を行った。様々な表面状態を有する電極の作製と試験を行った結果、酵素サイズのナノ凹凸を有する界面を用いると、電圧を印加して電流を計るだけの非常にシンプルな方法でCYPの薬剤代謝活性を計測できる可能性があることを発見した。本成果は安全で有効な薬物療法の実現に役立つ基盤技術になると考えられる。ヒト薬物代謝酵素(CYP)の薬剤代謝能力を低コストで迅速に測定可能な新しい手法を開発するために、電気的にその能力を調べる技術開発を行った。様々な表面状態を有する電極の作製と試験を行った結果、酵素サイズのナノ凹凸を有する界面を用いると、電圧を印加して電流を計るだけの非常にシンプルな方法でCYPの薬剤代謝活性を計測できる可能性があることを発見した。本成果は安全で有効な薬物療法の実現に役立つ基盤技術になると考えられる。本年度は、主に以下のアプローチでナノ構造を有する電極界面を作製し、その電極上へのヒト薬物代謝酵素(シトクロムP450:CYP)の固定化と電極によるCYP酵素反応駆動の検討を行った。1.チオール有機分子を用いた界面:アミノ基、カルボキシル基やポリエチレングルコール基を有する親水性のチオール分子と芳香族環やアルキル基を有する疎水性のチオール分子を用いて、親水的なドメインと疎水的なドメインを有する電極界面構造を作製し、CYP分子の固定化と電気化学応答を検討したところ、疎水性ドメインにCYP分子が安定に固定化されることを見出した。また、電極からCYPへ電子を供給して酵素反応を駆動するためには、アルキル基よりも芳香族分子により構築された疎水性界面構造が有効であることも明らかにした(電流応答で10倍以上の差が観測された)。2.ナノピラー、ナノ微粒子界面:電極界面上にナノサイズのピラーや微粒子構造を構築し、疎水性薄膜によるCYP分子の固定化とその電気化学応答を検討したところ、ナノ微粒子により構築された界面が電極-CYP間の電子授受に重要であることを見出し、現在詳細な検討を行っている。上記1および2で得られたCYPの電極駆動に適した界面を、薬物研究現場で用いられているCYP試料(CYP分子が脂質膜に結合した状態の試料:ミクロソーム試料)に適用したところ、比較的安定に固定化されることを見出し、さらに電極駆動による薬物代謝反応を進行させることに成功した。個人に対応した安全で有効な薬物療法の実現において、ヒト薬物代謝酵素(CYP)の薬物及び薬物候補化合物に対する代謝活性を計測することは非常に重要である。本研究では、安価な電極を電子源かつ検出プローブとして利用し、従来よりも低コストで迅速簡便にCYP活性を駆動・計測する技術の開発と応用を目指す。本年度は、電極界面ナノ構造とCYP酵素の電気化学反応効率の相関の詳細な検討と、本研究過程で見出したCYP酵素反応制御(駆動)に有用なナノ電極界面を用いた酵素反応解析を主に行い、以下の成果を得ることができた。1.種々の方法を用いて作製した様々なナノ構造電極界面を用いてCYPの電極反応を調べたところ、酵素サイズのナノ窪みを有する界面がCYPの電気化学応答に非常に有用であることが明らかになった。また、汎用的なスパッタリング法を用いて同界面を作製及びCYPの電気化学駆動に成功し、工業利用にも有意であることを示すことができた。2.上記ナノ構造電極を用いて、ヒトCYPの主要な分子種であるCYP3A4及び2C9の電気化学酵素反応解析を行い、既存の方法で得られている値と同等な酵素反応パラメータを算出できることを実証できた。3. CYP3A4を固定化したナノ構造電極を用いてテストステロンの電解反応を検討分析したところ、6β水酸化テストステロンが主要反応生成物として確認され、電極(電圧)駆動による医薬品代謝物の簡便な合成を行えることが示された。
KAKENHI-PROJECT-20790048
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計算内在暗号化技術の計算モデル
本年度においては計算内在型暗号のモデルとして行列ーベクトル積に人為的雑音を加えるフレームワークに着目し,その計算能力および暗号理論的安全性に関する研究を行った.特に,現在米国標準技術研究所が実施している耐量子暗号標準化に対してMelchorらが2018年に提案している行列ーベクトル積に雑音を加える誤り訂正符号ベースの公開鍵暗号システムHQCにおいてその暗号文上での準同型演算を解析し,線形関数計算および大小比較計算を可能にする秘匿計算プロトコルの構成を行った.またその暗号理論的安全性を誤り訂正符号における計算困難問題に基づいて証明した.この秘匿計算プロトコルにおいて参加者Aが入力xを持ち,参加者Bが関数f(例えば線型関数f(x)=ax+bの場合にはfの記述である対(a,b),大小比較の場合にはx>bならf(x)=1,それ以外ならf(x)=0を記述する値b)を持っている場合に,それぞれが相手に自身の持つ情報を明らかにせずに計算結果f(x)を得ることが可能となる.既存のプロトコルでも同様の計算を可能とするものが既に提案されているが,それらと比較して本研究提案のプロトコルでは量子計算機による有効な攻撃が見つかっていない点ならびに紛失通信と呼ばれる高コストのプロトコルを利用しない点について優越性を持っている.またその他関連する計算モデルとしてブール型有限ダイナミカルシステムの研究を行い,その計算量理論的な性質の解明を行った.特に本モデルにおいて利用できる素子の種類を限定した場合のエデンの園問題と呼ばれるブール型有限ダイナミカルシステムモデルにおける計算困難性の解析を行い,計算モデルの能力およびその限界についての知見を得た.当初研究計画においては新たな計算モデルによる様々な計算内在型暗号化技術に取り組む予定であった.昨年度・今年度の研究によって行列ーベクトル積に人為的雑音を付与するフレームワークの計算内在型暗号プロトコルへの適性についての理解が深まり,その理解に基づいて秘匿計算プロトコルといった発展的な高度な暗号プロトコルの構成とその安全性証明についての成果を得ることができている.また今年度の結果を足掛かりにして本フレームワークにおける効率的な暗号プロトコル構成の可能性や高い安全性証明の可能についての研究課題も明らかになりつつあり,期待していたような研究の進展を得ることができた.今年度の研究においては行列ーベクトル積に人為的雑音を付与するフレームワークについての基礎的な知見および秘匿計算プロトコルといったその計算内在型暗号化技術への適用例を得ることができた.さらに高度な計算および効率化を可能とするために,本フレームワークにおける暗号理論的に必要な性質をさらに解明することを目指す.また新たに得た暗号理論的性質によりさらに秘匿計算プロトコルなどの計算内在型暗号化技術の効率化や安全性解析,さらにはより汎用的な暗号プロトコル設計の可能性について追究を進める.2015年にCanettiらは内部乱数を持つような論理回路を難読化する確率的論理回路難読化器が満たすべきいくつかの性質および安全性を定義し,その中で静的入力識別不可能性と呼ばれる安全性を満たす確率的論理回路難読化器の構成を穴開け可能疑似ランダム関数と準指数時間安全な決定性論理回路に対する識別不可能性難読化器から示していた.今年度の研究において彼らが定義していた最悪時入力識別不可能性という安全性について検討し,その亜種の安全性を満たすような確率的論理回路難読化器の構成を準指数時間安全な疑似ランダム関数と準指数時間安全な識別不可能性難読化器から示した.また難読化器から構成され,また難読化器に近い機能を持つ汎用標本器という暗号プリミティブがあり,様々な暗号プロトコルのセットアップアルゴリズムを実行する信頼された機関を統一化するために元々構成されていたが,高度な暗号プロトコル構成に有用であることも知られており,例えば2016年にHofheizらによって通常の公開鍵暗号と汎用標本器を組合わせることでIDベース公開鍵暗号が構成されていた.今年度の研究では,彼らの構成を一般化することで階層型IDベース公開鍵暗号を構成し,その安全性を示した.また,同様に汎用標本器から階層型IDベース公開鍵暗号を構成する方法として2017年のMaらの構成が知られていたが,彼らの構成方法および本研究における構成方法の効率解析し,効率を比較することで本研究における構成方法の効率が優れていることを示した.当初の研究計画において,研究開始初年度では標準的な計算モデルの亜種について着目し,その亜種に関する考察から計算モデル内在暗号における計算モデル設計の指針を検討する予定であった.今年度の実際の研究においては確率的論理回路という標準的な論理回路の亜種における難読化器の研究に取り組み,標準的計算モデルの亜種における計算内在暗号化技術の構成方法およびその安全性解析についての知見を得ることができた.さらに,計算内在暗号化技術の一つである識別不可能性難読化器から構成される暗号プリミティブの汎用標本器の新たな応用技術として階層型IDベース公開鍵暗号の構成方法を与えることで計算モデル内在暗号の応用展開の方法について新たな知見を得ることができた.さらに既存研究における構成方法と本研究における構成方法の効率解析を行うことで,計算内在暗号化技術の応用技術の効率化についても新たな知見を得ることができた.以上のように,計画していた内容の研究を実施し,期待していた成果を得ることができた.本年度においては計算内在型暗号のモデルとして行列ーベクトル積に人為的雑音を加えるフレームワークに着目し,その計算能力および暗号理論的安全性に関する研究を行った.特に,現在米国標準技術研究所が実施している耐量子暗号標準化に対してMelchorらが2018年に提案している行列ーベクトル積に雑音を加える誤り訂正符号ベースの公開鍵暗号システム
KAKENHI-PROJECT-17K12640
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K12640
計算内在暗号化技術の計算モデル
HQCにおいてその暗号文上での準同型演算を解析し,線形関数計算および大小比較計算を可能にする秘匿計算プロトコルの構成を行った.またその暗号理論的安全性を誤り訂正符号における計算困難問題に基づいて証明した.この秘匿計算プロトコルにおいて参加者Aが入力xを持ち,参加者Bが関数f(例えば線型関数f(x)=ax+bの場合にはfの記述である対(a,b),大小比較の場合にはx>bならf(x)=1,それ以外ならf(x)=0を記述する値b)を持っている場合に,それぞれが相手に自身の持つ情報を明らかにせずに計算結果f(x)を得ることが可能となる.既存のプロトコルでも同様の計算を可能とするものが既に提案されているが,それらと比較して本研究提案のプロトコルでは量子計算機による有効な攻撃が見つかっていない点ならびに紛失通信と呼ばれる高コストのプロトコルを利用しない点について優越性を持っている.またその他関連する計算モデルとしてブール型有限ダイナミカルシステムの研究を行い,その計算量理論的な性質の解明を行った.特に本モデルにおいて利用できる素子の種類を限定した場合のエデンの園問題と呼ばれるブール型有限ダイナミカルシステムモデルにおける計算困難性の解析を行い,計算モデルの能力およびその限界についての知見を得た.当初研究計画においては新たな計算モデルによる様々な計算内在型暗号化技術に取り組む予定であった.昨年度・今年度の研究によって行列ーベクトル積に人為的雑音を付与するフレームワークの計算内在型暗号プロトコルへの適性についての理解が深まり,その理解に基づいて秘匿計算プロトコルといった発展的な高度な暗号プロトコルの構成とその安全性証明についての成果を得ることができている.また今年度の結果を足掛かりにして本フレームワークにおける効率的な暗号プロトコル構成の可能性や高い安全性証明の可能についての研究課題も明らかになりつつあり,期待していたような研究の進展を得ることができた.今年度の研究を踏まえて,さらに計算内在暗号化技術とその基となる計算モデルについての研究を進める.計算内在暗号化技術に適した計算モデルの検討,種々の暗号プロトコルにおける計算内在暗号化技術の応用展開,またその構成の効率化を図るための技術および安全性の解析技術について検討する.特に次年度においては識別不可能性難読化器をはじめとする計算内在暗号化技術の最たる応用技術である秘匿計算プロトコルを計算内在暗号化技術および計算モデルの観点から検討・解析し,秘匿計算プロトコルにおいて効率的な計算を可能とする計算モデルの設計およびその性質の解明に取り組む.またその計算能力の高さの解析,効率化のための技術についての検討を行う.今年度の研究においては行列ーベクトル積に人為的雑音を付与するフレームワークについての基礎的な知見および秘匿計算プロトコルといったその計算内在型暗号化技術への適用例を得ることができた.さらに高度な計算および効率化を可能とするために,本フレームワークにおける暗号理論的に必要な性質をさらに解明することを目指す.また新たに得た暗号理論的性質によりさらに秘匿計算プロトコルなどの計算内在型暗号化技術の効率化や安全性解析,さらにはより汎用的な暗号プロトコル設計の可能性について追究を進める.
KAKENHI-PROJECT-17K12640
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オスナ法によるセンチネルリンパ節微小転移の臨床的意義と術前化学療法への応用
研究1.乳癌術前化学療法症例の腋窩リンパ節転移検索におけるOSNA法の有用性を調べた。平成23年9月から25年9月までの92例において摘出リンパ節を病理検索とOSNA法により検索したところ、OSNA法の転移検出感度は84.4%、特異度は93.5%、陰性的中率は95.8%であった。術前化学療法症例にセンチネルリンパ節生検を施行し、OSNA法で陰性であれば腋窩郭清を省略できる可能性がある。研究2.センチネルリンパ節生検症例833例をもとに、OSNA法を用いた非センチネルリンパ節転移予測モデルを作成した。ROC曲線による正確度は0.704で、術中に非センチネルリンパ節転移が予測できることが示された。研究1.【目的】乳癌術前化学療法(NAC)症例における腋窩リンパ節転移検索に対するOSNA法の有用性を検討する。【方法】平成23年9月より平成24年12月までのNAC施行原発乳癌70例に対して、摘出リンパ節(1症例最大4個)を4分割し、切片を交互に病理とOSNAにより検索した。病理検索はhemaoxyline-eosin染色(HE)とcytokeratin 19に対する免疫染色(IHC)により行った。【結果】OSNA法と、術中迅速診断および術後HE/IHCによる総合的病理診断との比較は233リンパ節で可能であった。OSNA-/病理-:169、OSNA-/病理+:8、OSNA+/病理-:11、OSNA+/病理+:45で、OSNA法の転移検出感度は84.9%、特異度は93.9%、一致率は91.8%、陽性的中率は80.4%、陰性的中率は95.5%であった。【考察】NAC症例では早期乳癌症例に比して感度がやや低いものの特異度と陰性的中率はほぼ同等であり、NAC症例においてもOSNA法によるリンパ節転移診断は十分可能であることが示唆された。研究2.【目的】センチネルリンパ節(SLN)転移陽性早期乳癌症例での非センチネルリンパ節(nonSLN)転移予測におけるOSNA法の有用性を検討する。【方法】平成23年10月より平成24年12月までの357症例に対しセンチネルリンパ節生検を施行し、OSNA陽性例に対して腋窩郭清を追加した。【結果】98例に腋窩郭清が施行され、22例で非センチネルリンパ節に転移を認めたが、すべてOSNA5000copy以上のマクロ転移例であった。NonSLN転移と臨床病理学的因子との関連では、OSNA法によるcopy数のみが有意に関連を認めた(p<0.001)。【結語】OSNA法によるSLN転移CK-19copy数を用いたnonSLN転移予測モデルの可能性が示された。研究1.【目的】乳癌術前化学療法(NAC)症例における腋窩リンパ節転移検索に対するOSNA法の有用性を検討する。【方法】平成23年9月より平成25年9月までのNAC施行原発乳癌92例に対して、摘出リンパ節(1症例最大4個)を4分割し、切片を交互に病理とOSNAにより検索した。病理検索はhemaoxyline-eosin染色(HE)とcytokeratin 19に対する免疫染色(IHC)により行った。【結果】OSNA法と、術中迅速診断および術後HE/IHCによる総合的病理診断との比較は309リンパ節で可能であった。OSNA-/病理-:229、OSNA-/病理+:10、OSNA+/病理-:16、OSNA+/病理+:54で、OSNA法の転移検出感度は84.4%、特異度は93.5%、一致率は91.6%、陽性的中率は77.1%、陰性的中率は95.8%であった。【考察】NAC症例では早期乳癌症例に比して感度がやや低いが特異度と陰性的中率はほぼ同等であり、NAC症例でもセンチネルリンパ節生検(SNB)を行いOSNA法で転移陰性と判定された症例には腋窩郭清省略が可能であることが示された。研究2.【目的】センチネルリンパ節(SLN)転移陽性早期乳癌症例での非センチネルリンパ節(nonSLN)転移予測におけるOSNA法の有用性を検討する。【方法】833症例に対しSNBを施行し、OSNA陽性例には腋窩郭清を追加した。【結果】nonSLN転移と関連があった因子はSLN転移個数、CK19mRNAコピー数、腫瘍径であった。腋窩郭清が施行された161例をランダムに2群に分け、一方を用いてnonSLN転移予測モデルを作成し、これを用いて他方のnonSLN転移予測を行ったところ、ROC曲線による正確度は0.704であった。このモデルは術後病理学的因子を含まないため、術中転移予測に有用であることが示された。研究1.乳癌術前化学療法症例の腋窩リンパ節転移検索におけるOSNA法の有用性を調べた。平成23年9月から25年9月までの92例において摘出リンパ節を病理検索とOSNA法により検索したところ、OSNA法の転移検出感度は84.4%、特異度は93.5%、陰性的中率は95.8%であった。
KAKENHI-PROJECT-23591893
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オスナ法によるセンチネルリンパ節微小転移の臨床的意義と術前化学療法への応用
術前化学療法症例にセンチネルリンパ節生検を施行し、OSNA法で陰性であれば腋窩郭清を省略できる可能性がある。研究2.センチネルリンパ節生検症例833例をもとに、OSNA法を用いた非センチネルリンパ節転移予測モデルを作成した。ROC曲線による正確度は0.704で、術中に非センチネルリンパ節転移が予測できることが示された。目的:乳癌術前化学療法症例における腋窩リンパ節転移検索に対するOSNA法の有用性を検討する。方法:平成23年9月より平成24年2月末までの術前化学療法施行原発性乳癌31症例に対して、摘出リンパ節(LN)(1症例最大4個)を4分割し、切片を交互に病理検査とOSNAによる検索をおこなった。病理検索は通常のヘマトキシリン・エオジン染色法(HE)とサイトケラチン19に対する抗体を用いた免疫染色法(CK19-IHC)により行った。結果:OSNA法とHE法との比較は31症例112リンパ節、OSNA法とIHC法との比較は61リンパ節まで進んでいる。OSNA法とHE法との比較ではOSNA-/HE-:71、OSNA-/HE+:3、OSNA+/HE-:14、OSNA+/HE+:24であった。病理法を基準とすると、OSNA法の転移検出感度は88.9%、特異度は83.5%であった。しかし、OSNA+/HE-の14個のうち4個にIHCで転移が見つかっており、これを考慮すると感度は90.3%、特異度は87.7%、一致率は88.4%であった。OSNA法とIHC法の比較では、OSNA-/IHC:37-、OSNA-/IHC+:1、OSNA+/IHC-:8、OSNA+/IHC+:15LNでIHCを基準とすると感度は93.8%、特異度は82.2%、一致率は85.2%であった。考察:早期乳癌手術例における報告ではOSNA法の感度は82.7-100%、特異度は94.3-98.4%であるので、転移検出感度はほぼ同等であるものの特異度がやや低い傾向にあることが示唆された。さらに症例数を増やして検討する必要があるが、negative predictive valueはHE法との比較で95.9%と非常に高く、センチネルリンパ節がOSNAで陰性であれば術前化学療法症例においても腋窩非郭清として良いことが示唆された。症例の集積はほぼ予定どおりにできており、中間解析結果でもほぼ予測に近いデータが出ている。当該施設における臨床研究倫理審査委員会の承認を待って、平成23年9月より研究を開始した。術前化学療法施行の乳癌は月平均5症例のペースでリンパ節のサンプリングと解析を行っている。OSNAによる解析は手術当日に臨床検査部において当研究として施行している。HE染色による病理検索は病理部において通常臨床として行われており、術後約2週で結果が得られている。病理の残りサンプルを用いたCK19に対する免疫染色は当研究室において約2ケ月ごとに施行している。N0症例は月約10症例のペースで手術が行われており、OSNA解析はルーチンの臨床として施行されている。術前化学療法症例、N0早期乳癌症例ともに可能なところまで追加し、最終解析を行う。術前化学療法症例では、摘出されたリンパ節ベースでの解析を行うとともに、センチネルリンパ節生検施行症例における患者ベースでの解析を行い、OSNA法が病理法と同等の診断能を有するかどうか、術前化学療法症例でのセンチネルリンパ節生検転移検索に用いて安全かどうかの検討を行う。N0早期乳癌症例ではOSNA法によるCK-19copy数と他の臨床病理学的因子を組み合わせ、非センチネルリンパ節転移予測式の作成を試みる。
KAKENHI-PROJECT-23591893
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23591893
環状ホスファチジン酸による抗動脈硬化作用を利用した治療創薬の基盤開発
生理活性脂質であるcPAはNon-injury内膜肥厚モデルにおいて有意に内膜肥厚を抑制した。さらに、ApoE欠損マウスにcPAを短期腹腔内投与を繰り返したところ、cPA投与群では有意にLDLコレステロール値が低下した。一方で、HDLコレステロールについては有意に増加した。動脈硬化症関連遺伝子については、いずれもcPA投与により顕著な発現レベルの抑制が観察された。これらの成果より、これまでの欠点を克服した新規な動脈硬化症治療法を明らかにすることに成功した、今後、臨床への貢献度が益々大きくなることを期待している。環状フォスファチジン酸(cPA)は慢性炎症関連疾患の制御に関与することが示唆されるリン脂質である。申請者はcPAが核内受容体の1つであるPPARγのアンタゴニストであることを明らかにしたが、同時にcPAアナログであり、PPARγアゴニストであるリゾフォスファチジン酸(LPA)により誘発される内膜肥厚形成を有為に抑制することを報告した。この結果はcPAを介したPPARγの制御機構の解明が動脈硬化症の予防および治療に対して重要であることを示唆している。しかしながらその詳細なin vivoにおける病態分子メカニズムは未だ解明されていない。本申請は我々のグループで確立した「徐放化ハイドロゲル-cPA」を中心とした新規な動脈硬化症および糖尿病における発症制御機構を明らかにすることを目的としている。25年度は徐放化ハイドロゲル-cPAのin vitroにおける生活習慣病患者由来の冠状動脈内皮細胞(D-HCAEC)と病態分子メカニズムを明らかにした。本研究ではD-HCAEC細胞において強いPPARγの発現が認められ,細胞の増殖や遊走に重要な役割をしている血管内皮成長因子の1つであるVEGFの発現が有為に高いことを明らかにした。さらに、D-HCAEC細胞にcPAを添加すると,細胞増殖および遊走が抑制され,また、VEGFの発現量および細胞外分泌も低下した。興味深いことにLPAおよびそのアルキル化LPAはcPAと逆の作用を示した。今後これらの細胞レベルでの結果をマウスモデルを利用することでその詳細なメカニズムを明らかにして行く予定である。本研究では我々が新規に発見した内在性PPARγアンタゴニストcPAによる内膜肥厚形成の抑制作用を利用した動脈硬化症治療に向けた治療標的分子を同定することを目標とし、LPAおよびcPAにより発現が制御される細胞増殖および炎症に関連する遺伝子の同定を行う。申請者はcPAが新生内膜肥厚の抑制に関与する因子であることを明らかにしたが、これらの現象を制御する病態分子機構については未だ不明のままである。今後、創薬を含めた臨床試験へ移行するためには、これらの分子機構の全解明が必須である。そこで、平成26年度ではヒト動脈内皮細胞(HCAECおよびD-HCAEC細胞)を利用し、各薬剤処理をした細胞からRNAを抽出し、遺伝子発現解析を行った。LPAで誘発させたヒト動脈内皮細胞を対照サンプルとしたときに、cPAでヒト動脈内皮細胞を供処理した試験区において、遺伝子の発現が制御されたもので、増殖や炎症に関与する遺伝子を探索し同定した。さらにLPAに特異的に結合する蛋白質としてFABP3が明らかになり、本遺伝子はLPAで誘発された内膜肥厚の形成を促進する可能性が示され、治療標的分子の一つであることが期待された。今後、同定された遺伝子の中から、cPAに対する反応が最も強く、増殖・炎症に関与するものを選びだし、それらのcPAによる制御をリアルタイムPCR、ウエスタンブロット法、免疫染色法等を組み合わせた生化学的解析法によるin vitro実験で裏付けを取る予定である。アテローム性動脈硬化症は動脈硬化の一種で、高血圧や高血糖などにより血管内膜が傷害され、炎症が生じると、その隙間から血管内膜下に入り込んだコレステロールをきっかけとしたプラーク発生とその破綻が主な原因と考えられている。血清脂質であり脂質メディエーターのひとつであるアルキル型LPA(AGP)は動脈硬化症の前段階で認められる血管内膜肥厚の発生に関与しており、これは核内受容体の1つであるPPARγの活性化を介している。一方で、我々はアンタゴニスト活性を持つ新規生理活性脂質、環状ホスファチジン酸(cPA)を発見し、AGP依存的に誘発される内膜肥厚形成を有為に抑制することを報告した。cPA依存的に発現制御される動脈硬化関連遺伝子についても同定した。さらに、ApoE欠損マウスにおいて、cPAを短期腹腔内投与繰り返したところ、cPA投与群では有意にコレステロール値(T-CHO)及びLDLコレステロール値が低下した。一方で、HDLコレステロールについては有意に増加した。また、動脈硬化関連遺伝子であるCD36、PPARγ、FABP4、VEGFについては、いずれもcPA投与により顕著な発現レベルの抑制が観察された。本研究では新規な動脈硬化症の予防および治療法における成果を得ることに成功した。今後、臨床研究への橋渡しが一段と進むことが期待される。これまでプラーク破綻の抑制が期待されるような薬剤の評価が進まなかった原因として、有効な疾患モデルの存在がなかったことがあげられる。本申請はこれまでの欠点を克服した新しい疾患モデルによる新規な動脈硬化治療法を提案したものであり、今後、臨床への貢献度も大きくなることを期待している。生理活性脂質であるcPAはNon-injury内膜肥厚モデルにおいて有意に内膜肥厚を抑制した。
KAKENHI-PROJECT-25293274
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25293274
環状ホスファチジン酸による抗動脈硬化作用を利用した治療創薬の基盤開発
さらに、ApoE欠損マウスにcPAを短期腹腔内投与を繰り返したところ、cPA投与群では有意にLDLコレステロール値が低下した。一方で、HDLコレステロールについては有意に増加した。動脈硬化症関連遺伝子については、いずれもcPA投与により顕著な発現レベルの抑制が観察された。これらの成果より、これまでの欠点を克服した新規な動脈硬化症治療法を明らかにすることに成功した、今後、臨床への貢献度が益々大きくなることを期待している。前年度までに達成するべきin vitro実験は終了しており、本年度は動物実験に移行できるため。27年度が最終年度であるため、記入しない。脂質生化学前年度に明らかにした治療標的遺伝子候補に対するsiRNA発現アデノウイルスベクターを構築する。アデノウイルスベクターはホ乳類細胞に遺伝子を導入する最も強力な方法の1つであるが、通常の細胞には感染することは可能であるが増殖することはないため、安全かつ高効率な遺伝子導入法として個体レベルで遺伝子機能を解析するツールとして非常に有用である。cPA, LPAで処理させた新生内膜肥厚内へsiRNA発現アデノウイルスベクターを導入し、内膜肥厚形成の抑制に対する治療効果を検討する。内膜肥厚形成の抑制作用を呈した遺伝子を新規治療標的分子とする。細胞レベルの実験は25年度で終了しており、26年度に予定している動物モデル実験も既に進行中である。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。動脈硬化症モデルマウスを利用したcPA治療効果を明らかにする。基礎的データとして血液生化学的検査を始め,cPAを経口投与した際のcPA依存的に発現が変動する遺伝子で増殖や炎症に関与する遺伝子を探索し同定する。また、in vitroで明らかにしたcPAによるVEGFレベルの発現変動が動物モデルにおいても確認されるか明らかにし,cPAの有効性を明らかにする。27年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-25293274
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2013:数値目標失効後の世界-機能が低下した地球環境ガバナンスの行方
2012年に終了した京都議定書第一約束期間後、国際社会は国際法的には数値目標が失効した状況に入った。本研究では、数値目標失効後の変容した気候変動ガバナンスの特徴は、各国が自主的に決定した国内対策を積み上げて気候変動抑制を目指すボトムアップ型アプローチにあると分析した。また、この制度の形成過程では、多様な先進国・発展途上国の国益を踏まえつつ、全会一致で合意を形成するために、気候変動交渉参加国が重視している点として、京都議定書や炭素市場で明らかになった国家間の不公平感を払拭し、意思決定が頭越しになされないことをあげた。気候変動問題に関する国際規定を定めた京都議定書は、先進国に対し、2008-12年(京都議定書第一約束期間)の温室効果ガス排出の数値目標を定めている。しかし、第一約束期間が終了した後の国際対策の在り方は規定がないため、京都議定書が発効した2005年以降、国際交渉が続けられてきた。当初交渉の期限とされていた2009年の気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)では、各国の首脳級が参加して議論が行われたが、交渉は決裂したため、国際的な気候変動対策の不透明性が高まり、数値目標が失効することによる地球環境ガバナンスの機能低下が懸念されていた。本研究の対象は、気候変動問題に関する地球環境ガバナンスシステムとしての気候変動枠組条約体制である。2012年末に終了する京都議定書第一約束期間以降、気候変動対策の国際制度は、それまでの国際制度と大きく変質することとなる。そこで、平成24年度は、調査代表者は気候変動枠組条約第18回締約国会議(COP18)に参加し、政府間交渉で模索されている2013年以降の地球環境ガバナンスシステムの制度設計の決定過程について情報収集を行った。COP18では、最終的に一部の先進国が第二約束期間の設定に合意し、京都議定書改正が合意され、2013年以降の空白期間は一定程度抑制されることとなった。同時に米国や発展途上国を含む全ての主要排出国を対象とした国際制度の在り方に関する議論が開始されたが、具体的な制度の内容は今後の交渉に委ねられることとなった。また、気候変動枠組条約を補完する地域的、国際的な取り組みについても調査を行った。調査対象とした、気候変動問題を含む地球環境ガバナンスの強化が議論された国連持続可能な開発会議(リオ+20)については、政府のみならず多くのステークホルダーを巻き込むグリーン経済の取り組みの強化に向けた国際社会の対応とその課題を分析した。気候変動問題に関する国際規定を定めた京都議定書は、2012年にドーハで開催された気候変動枠組条約第18回締約国会議(COP18)で改正(ドーハ改正)された。しかし、ドーハ改正では、EUなどの先進国の一部に数値目標が課されたものの、日本、アメリカ、カナダ、ロシアなどには数値目標が課されなかった。さらにドーハ改正は、未だ発効しておらず、2013年以降は、国際法上は、数値目標失効後の世界を迎えている。本研究は、2013年以降の数値目標が失効した後の世界で、機能が低下した地球環境ガバナンスがどのように変容し、再構成されるのかに研究関心を寄せている。具体的な研究の対象は、気候変動問題に関する地球環境ガバナンスシステムとしての気候変動枠組条約体制である。そこで、平成25年度は、調査代表者は気候変動枠組条約第19回締約国会議(COP19)と作業部会に参加し、政府間交渉で模索されている地球環境ガバナンスシステムの制度設計の決定過程について情報収集を行った。COP19では、2020年以降の気候変動問題に関する地球環境ガバナンスシステムを2015年までに策定するための作業部会で、今後の方向性を探る議論が開始されたが、京都議定書に参加しなかったアメリカや世界最大の二酸化炭素排出国となった中国を含む世界規模での国際制度設計の具体的な内容は、様々な意見は出たものの、方向性は収束せず、今後の交渉に委ねられることとなった。また、気候変動枠組条約を補完し、地球環境ガバナンスを支えている、地域的、国際的な取り組みについても調査を行った。調査対象とした気候変動問題を含む地域的な国際環境制度の現状や、今後の動向についても、とくにアジアにおける国際社会の対応とその課題を分析した。2012年に終了した京都議定書第一約束期間後、国際社会は国際法的には数値目標が失効した状況に入った。本研究では、数値目標失効後の変容した気候変動ガバナンスの特徴は、各国が自主的に決定した国内対策を積み上げて気候変動抑制を目指すボトムアップ型アプローチにあると分析した。また、この制度の形成過程では、多様な先進国・発展途上国の国益を踏まえつつ、全会一致で合意を形成するために、気候変動交渉参加国が重視している点として、京都議定書や炭素市場で明らかになった国家間の不公平感を払拭し、意思決定が頭越しになされないことをあげた。先進国に対し、2008-12年(京都議定書第一約束期間)の温室効果ガス排出の数値目標を定めた京都議定書では、2013年以降の数値目標は何ら規定されていないため、京都議定書が発効した2005年以降、2013年以降の先進国の数値目標、及び経済発展が著しい発展途上国の目標について国際交渉が続けられてきた。2009年に開催された気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)は、交渉の期限とされていたため、オバマ大統領や鳩山首相をはじめ各国の首脳級が参加した重要な会議となったが、大きな成果は得られなかった。
KAKENHI-PROJECT-23530189
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2013:数値目標失効後の世界-機能が低下した地球環境ガバナンスの行方
その結果、2013年以降の国際制度のあり方は不透明な状況にある。本研究の対象は、気候変動に関する地球環境ガバナンスシステムとしての気候変動枠組条約体制である。2012年末に終了する京都議定書第一約束期間以降、気候変動対策の国際制度は、法的拘束力を持つ数値目標が存在しない状況を迎える可能性が高い。そこで平成23年度は、調査代表者は気候変動枠組条約第17回締約国会議(COP17)に参加し、政府間交渉で模索されている地球環境ガバナンスシステムの決定過程について情報収集を行った。COP17では、最終的に一部の先進国は京都議定書第二約束期間の設定に合意し、同時に米国や発展途上国を含む全ての主要排出国を対象とした国際制度を2020年以降機能させることが合意された。これにより、2013年以降の空白期間は一定程度抑制されることとなったが、具体的な制度の内容は、今後の交渉にゆだねられることとなった。また、気候変動枠組条約を補完する地域的、国際的な取り組みについても、文献調査を中心に行い、その成果を原稿にまとめた。これにより、数値目標が失効することにより機能が低下する地球環境ガバナンスへの国際社会の様々な対応を調査した。本研究申請(2010年11月)の前年に開催された気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)での合意決裂を受け、2012年末に期限切れを迎える京都議定書第一約束期間後の後継国際制度は見通しが不明であった。そこで、本研究は、数値目標の失効による地球環境ガバナンスの変容の解明を目指し、特にCOP15での決裂を修復し、新たな気候変動ガバナンスを定める国際交渉の力学に主たる焦点を当て事例分析を行った。各国の自主的な約束を積み上げて気候変動の抑制をはかる方向性を定めたカンクン合意(COP16, 2010年12月)をうけ、COP17では、2020年以降の気候変動ガバナンスを2015年までに成立させるとしたダーバン合意が定められた。これにより、米国や主要発展途上国を含む全世界が、国内で定めた約束に基づき気候変動の抑制をめざすボトムアップ型アプローチによって気候変動ガバナンスを達成する方向性が定まり、京都議定書のように交渉会議で数値目標を定めるトップダウン型アプローチからの転換が図られることとなった。ただ、各国の自主的な約束を積み上げるだけでは全体では緩い目標になる懸念があったため、野心的な目標を目指しつつ、先進国も途上国も含む全政府が合意できる内容をいかにして達成するかが、研究期間中の交渉内容であった。平成26年度は、COP20と作業部会に参加し、政府間交渉で模索している地球環境ガバナンスシステムの制度設計とその決定過程について情報収集を行った。COP20では、2020年以降の国際体制の交渉草案が議論されると共に、各国が自主的に提出する約束の内容や、約束の提出時期に合意した。ここまでの交渉の経緯については、原稿にまとめつつある。また、気候変動ガバナンスを支える地域的な取り組みについても分析を行った。この分析結果は環境法政策学会で報告し、その報告内容に加筆した論文を学会誌に掲載した。国際関係論平成24年度は、12月に開催された気候変動枠組条約第18回締約国会議(COP18)に参加し、事例分析に必要な情報収集に努めた。
KAKENHI-PROJECT-23530189
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日本住血吸虫症に対する防御免疫能および慢性期肝症患の重症化を決定する宿主要因の解析
1)ヒト血清中の坑中卵抗原抗体の認識する主要抗原のクローニング感受性の高いあるいはHLAのタイプを有する人たちの免疫応答性をさらに詳細に解析する目的で、慢性期のT細胞応答を刺激するとされている虫卵由来の主要抗原分子の探索を行った。患者のプール血清を用いて虫卵ラムダgt11cDNAライブラリーから陽性のクローン400個を分離し、そのうち146個のクローンのDNA配列を決定した。結果はすべて同じ遺伝子ですでに遺伝子バンクに登録されているmiracidial antigenと高い相同性が認められた。現在組み換えタンパクを準備中である。2)中国江西省の浸淫地での集団治療後の再感染抵抗性の解析藩陽湖周辺の3つの地区を対象に集団治療後の再感染状況の疫学調査とその解析を行い、これらの地域では年齢依存性の抵抗性が観察されないこと、同様の高い危険度を有する漁民の中にも感染感受性の高い人と低い人が存在することが明らかとなった。これらの人たちの血清中抗体化や遺伝マーカーを調べたが、対象とした患者数の不足などから明らかな相違は現在までのところ見つかっていない。3)中国ブタを用いた組み換えパラミオシンのワクチン効果の検討集団治療後になお5%前後の感染率を示す地区では家畜の感染が重要であることが指摘されており、家畜ワクチンの開発は防圧対策に寄与するところが大きい。また防御免疫を考えた上でも重要である。そこで比較的取り扱いの容易なブタを用いて組み換えパラミオシンのワクチン効果について検討した。その結果中国ブタは住血吸虫に高い感受性があり、その感染はワクチンにより有意に減少することが明らかとなった。(Vaccine2000 in press)1)ヒト血清中の坑中卵抗原抗体の認識する主要抗原のクローニング感受性の高いあるいはHLAのタイプを有する人たちの免疫応答性をさらに詳細に解析する目的で、慢性期のT細胞応答を刺激するとされている虫卵由来の主要抗原分子の探索を行った。患者のプール血清を用いて虫卵ラムダgt11cDNAライブラリーから陽性のクローン400個を分離し、そのうち146個のクローンのDNA配列を決定した。結果はすべて同じ遺伝子ですでに遺伝子バンクに登録されているmiracidial antigenと高い相同性が認められた。現在組み換えタンパクを準備中である。2)中国江西省の浸淫地での集団治療後の再感染抵抗性の解析藩陽湖周辺の3つの地区を対象に集団治療後の再感染状況の疫学調査とその解析を行い、これらの地域では年齢依存性の抵抗性が観察されないこと、同様の高い危険度を有する漁民の中にも感染感受性の高い人と低い人が存在することが明らかとなった。これらの人たちの血清中抗体化や遺伝マーカーを調べたが、対象とした患者数の不足などから明らかな相違は現在までのところ見つかっていない。3)中国ブタを用いた組み換えパラミオシンのワクチン効果の検討集団治療後になお5%前後の感染率を示す地区では家畜の感染が重要であることが指摘されており、家畜ワクチンの開発は防圧対策に寄与するところが大きい。また防御免疫を考えた上でも重要である。そこで比較的取り扱いの容易なブタを用いて組み換えパラミオシンのワクチン効果について検討した。その結果中国ブタは住血吸虫に高い感受性があり、その感染はワクチンにより有意に減少することが明らかとなった。(Vaccine2000 in press)1.日本住血吸虫感染後肝線維症の免疫遺伝学的解析本研究開始までにすでに、中国江西省玉山県でのフィールド調査を完了し、住民のうち10年以上の病歴を伴う慢性住血吸虫患者の超音波による肝実質変化の診断およびDNA解析のための採血を完了していた。また、肝繊維化のレベルからこの集団ではgradeOが44名、grade1が81名、grade2,3が105名存在するということが判明した。これら各群のHLA-DRB1,DQA1,DQB1のDPA1,DPB1のタイプを今回すべて決定し、gradeOとHLA-DRB1*1101との正の相関を、また、grade2,3とHLA-DPA1*0202との負の相関を発見した。さらに前者のHLA-DR1101の者では、血清中の抗虫卵IgG1抗体価が有意に上昇しており、このHLAにより免疫応答性に変化が起こることが示唆された。2.再感染抵抗性と宿主免疫応答性との関係中国江西省Poyang-Hu周辺の高度侵淫地における集団治療後の再感染抵抗群あるいは、感受性群の住血吸虫に対する免疫応答性の相違を検討し、住血吸虫感染に対する防御免疫のメカニズムを解析することを目的として研究を行なった。対象としたのは、湖周辺の2つの村の住民約3000人でこのうち、治療前、および治療後の虫卵検査結果の明らかな者を抽出し、水接触度や、抗体価などを考慮し、再感染抵抗性の者109名および対照とする群103名を分別した。これらの人について、HLA-DRB1を調べ、HLA-DR1202が抵抗性に1201が感受性になること見出した。この2つのHLAには、抗原ペプチド結合性に僅かな違いしかないため、今後の解析に有用であると考えられた。1.住血吸虫感染後肝線維症の感受性を決定するHLA-クラスIIアレルの解析前年度までに、中国江西省の湖沼型住血吸虫侵淫地である南山島における住民のHLAタイヒングを行ない、抵抗性アレルであるHLA-
KAKENHI-PROJECT-09470071
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09470071
日本住血吸虫症に対する防御免疫能および慢性期肝症患の重症化を決定する宿主要因の解析
DRB1^*1101,OPB1^*0201および感受性であるHLA-DRBF^*1501を有する患者のリストアップを完了した。タイピングを行なった対象者については、超音波診断も同時に行ない、玉山地区でのこれまでの結果と同様な傾向を得ることができた。今年度は、これらのアレルを有する患者より、末梢血リンパ球を分離し、虫体あるいは、虫卵抗原によるin vitro刺激後のIL-4,IFN-γ産生細胞数をELISPOT法により解析し、DR1101の患者では、特に虫卵に対するIL-4産生T細胞の増加、またDR1501(感受性)では虫体に対するIFN-γ産生細胞の増加する傾向が観察された。現在これらの患者よりT細胞株の樹立を試みている.2.再感染抵抗性とHLAとの関連について南山での過去5年に亘る集団治療と虫卵検査の結果を解析し、高リスク集団として特に漁民を対象とした虫卵検査の結果を観察することにより、抵抗性の集団を決定することが可能であると考えられた。入手できたデータは、約200名分であるが、そのうち、上記の解析を行ない抵抗性を確認したのは約20名であった。現在、遺伝解析に耐えられる十分なサイズの新たな対象地区を検索中である。1)ヒト血清中の抗虫卵抗原抗体の認識する主要抗原のクローニング感受性の高いあるいは低いHLAのタイプを有する人たちの免疫応答性をさらに詳細に解析する目的で、慢性期のT細胞応答を刺激するとされている虫卵由来の主要抗原分子の探索を行った。患者のプール血清を用いて虫卵ラムダgtllcDNAライブラリーから陽性のクローン400個を分離し、その内146個のクローンのDNA配列を決定した。結果はすべて同じ遺伝子ですでに遺伝子バンクに登録されているmiracidial antigenと高い相同性が認められた。現在組み替えタンパクを準備中である。2)中国江西省の浸淫地での集団治療後の再感染抵抗性の解析藩陽湖周辺の3つの地区を対象に集団治療後の再感染状況の疫学調査とその解析を行い、これらの地域では年齢依存性の抵抗性が観察されないこと、同様の高い危険度を有する漁民の中にも感染感受性の高い人と低い人が存在することが明らかとなった。これらの人たちの血清中抗体価や遺伝マーカーを調べたが、対象とした患者数の不足などから明らかな相違は現在までのところ見つかっていない。3)中国ブタを用いた組み替えパラミオシンのワクチン効果の検討集団治療後になお5%前後の感染率を示す地区では家畜の感染が重要であることが指摘されており、家畜ワクチンの開発は防圧対策に寄与するところが大きい。また防御免疫を考えた上でも重要である。そこで比較的取り扱いの容易なブタを用いて組み替えパラミオシンのワクチン効果について検討した。その結果中国ブタは住血吸虫に高い感受性があり、その感染はワクチンにより有意に減少することが明らかとなった。(Vaccine 2000 in Press)
KAKENHI-PROJECT-09470071
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09470071
コケ植物を介した大気-森林間の物質動態に関する研究
環境-生態系の物質循環には未だ解明できていない過程があり、地球環境変動の仕組みを理解しようとする上での問題となっている。こうした中、申請者は、未解明な物質循環過程の一つである、コケ植物による大気降下物の吸収に着目することで、森林生態系の物質循環の解明につながると考えている。特に、黄砂などの大気降下物量が年々増加しており、そこに含まれる栄養塩類や有害物質による陸域や水域への直接的な影響が懸念されている。大気降下物の物質組成および起源を知るためには、直接、大気降下物質を採集する必要がある。しかし、その採集装置は非常に高価であり、移動させることが難しい。そのため、特に採集装置の設置が難しい森林生態系において簡易的に大気降下物質の評価を行える方法が求められている。本研究において私は、近畿、中国および北陸地域でコケ植物およびスギ葉のサンプリングを行い、それらのストロンチウムおよび鉛の安定同位体比を測定した。そしてその結果から、大気降下物の起源や降下量を推定することを試みた。その結果をGIS上でマッピングした結果、日本海側の地域ではスギの葉と比較して、コケ植物の値が黄砂の安定同位体比に近くなる傾向を示した。一般的に日本海側では大陸由来の黄砂の降下量が多いことは、様々な先行研究から報告されており、本データはそれらを裏付ける結果となった。しかし、同じ地域で採集したコケ植物でも安定同位体比に有意な差が生じるなど、結果にばらつきが生じることも散見された。つまり、コケ植物の安定同位体比を生物指標として用いる際は、採集地点の微環境や繰り返しの数など注意が必要であることも分かった。また、本研究において、コケと同様に大気降下物を直接吸収し、栄養塩としている地衣類の硫黄同位体比を測定した。その結果から、海塩由来の栄養塩が森林生態系において、どの程度のスケールで供給されているか推定することに成功した。本年度採択者が実施した研究は以下のとおりである。1大気降下物量が異なると考えられる5つのサイトに、コケマットおよび大気湿性沈着物のサンプラーを設置し、定期的にサンプルの回収を行った。そして、その大気湿性沈着物およびコケサンプルのストロンチウムおよび鉛安定同位体比を測定し、両者がどの程度相関するかを検討した。その結果、大気降下物との安定同位体比は若干の相関関係を示したが、コケには高濃度のストロンチウムおよび鉛のような重金属が元々蓄積されており、その影響で同位体の変化率は非常に小さかった。つまり、コケ中に含まれる重金属はより長期間の間に降下した物質が蓄積していることが分かった。2森林地域に生育するコケ植物は、大気降下物以外にも、樹幹流由来の物質も吸収する。その結果、樹木が高密度で生育し、樹冠が閉じたような場所においてコケは、植物(樹幹流)由来の物質を取り込んでる可能性がある。つまり、コケ植物を用いて正しく大気降下物の起源を推定するためには、林冠の開空度を意識しつつ、採集しないといけない。そこで我々は、金沢大学・環日本海域共同研究センターの能登スーパーサイト付近の森林において、林冠が開けたサイトと閉じたサイトを選定し、それぞれからコケ植物と樹木の葉を採集した。その結果、林冠がより閉じた場所では、コケは樹木由来の物質を多く取り込んでおり、その安定同位体比は大気降下物の値を反映していないことがわかった。3コケ植物の安定同位体比をより広域スケールで比較するために、昨年度コケおよび樹木葉を10府県において106箇所採集した。そして、安定同位体比および元素濃度を測定した。まだ測定途中ではあるが、高標高域で採集したサンプルは、中国の黄沙の安定同位体比に近い値を示した。つまり、気流の安定している高標高域では、大陸由来の物質が多く降下している可能性が示唆された。予定していた、コケ植物と大気降下物の安定同位体比比較実験は終了し、多くの改善点が見つかった。林冠の開空度が異なる場所で採集したコケの安定同位体比の比較実験は、既にストロンチウムおよび鉛の安定同位体分析を終えた。また、コケ植物の安定同位体比の広域スケールでの比較に関しては、野外調査は予定通り全て完了することができた。サンプルの安定同位体分析はすでに開始しており、40%程度のサンプルは既に分析を終えることができた。環境-生態系の物質循環には未だ解明できていない過程があり、地球環境変動の仕組みを理解しようとする上での問題となっている。こうした中、申請者は、未解明な物質循環過程の一つである、コケ植物による大気降下物の吸収に着目することで、森林生態系の物質循環の解明につながると考えている。特に、黄砂などの大気降下物量が年々増加しており、そこに含まれる栄養塩類や有害物質による陸域や水域への直接的な影響が懸念されている。大気降下物の物質組成および起源を知るためには、直接、大気降下物質を採集する必要がある。しかし、その採集装置は非常に高価であり、移動させることが難しい。そのため、特に採集装置の設置が難しい森林生態系において簡易的に大気降下物質の評価を行える方法が求められている。本研究において私は、近畿、中国および北陸地域でコケ植物およびスギ葉のサンプリングを行い、それらのストロンチウムおよび鉛の安定同位体比を測定した。そしてその結果から、大気降下物の起源や降下量を推定することを試みた。
KAKENHI-PROJECT-17K12827
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K12827
コケ植物を介した大気-森林間の物質動態に関する研究
その結果をGIS上でマッピングした結果、日本海側の地域ではスギの葉と比較して、コケ植物の値が黄砂の安定同位体比に近くなる傾向を示した。一般的に日本海側では大陸由来の黄砂の降下量が多いことは、様々な先行研究から報告されており、本データはそれらを裏付ける結果となった。しかし、同じ地域で採集したコケ植物でも安定同位体比に有意な差が生じるなど、結果にばらつきが生じることも散見された。つまり、コケ植物の安定同位体比を生物指標として用いる際は、採集地点の微環境や繰り返しの数など注意が必要であることも分かった。また、本研究において、コケと同様に大気降下物を直接吸収し、栄養塩としている地衣類の硫黄同位体比を測定した。その結果から、海塩由来の栄養塩が森林生態系において、どの程度のスケールで供給されているか推定することに成功した。コケマットと大気降下物との比較実験は、1年間の設置実験では評価可能な結果が出なかったため、より長期間にわたる設置実験を考えている。また、今後重金属フリーなコケ植物を実験室において作成し、野外実験に用いるなどの対策を考えている。林冠の開空度が異なる場所で採集したコケの安定同位体比の比較実験は、今後データ解析を進め、論文化する予定である。昨年度、広域スケールで採集したコケ植物の安定同位体分析の進捗率がまだ40%程度であるため、引き続き実施する。本分析は2018年度8月頃までに全てを完了させ、データ解析を行う。その後、論文執筆を開始し、12月頃までに論文にまとめ、国際的な環境科学雑誌に投稿する。さらに、コケ植物と同じく大気降下物を表皮組織から吸収し、大気降下物の指標となる地衣類に関しても同時に研究を進めて行く予定である。昨年度3月末に出張先で利用したレンタカーの料金が予定していた額よりも安くなってしまったため。本余剰金(4644円)は翌年度に繰り越し、物品費に充てる。
KAKENHI-PROJECT-17K12827
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原発性肝癌の進展・転移におけるDYRKファミリーによる癌幹細胞制御機構の解明
原発性肝癌の根治的治療としては外科的切除が第一であり、早期には肝内病変治療としてラジオ波焼灼療法(RFA)、肝動脈塞栓療法(TACE)等がときに有効であるが、遠隔転移、胆管・血管内浸潤を呈するようになると予後不良であるため、より早期の診断法の確立及び新規治療法が切望されている。現在、切除不能肝細胞癌に対して臨床で使用される腫瘍の細胞増殖と血管新生を阻害する分子標的薬の効果は非常に限定的である。このような背景から選択的に癌細胞(癌幹細胞)のみを傷害するような治療標的分子の同定による新たな新規治療法の開発が急務であると考えられる。本研究では、肝癌幹細胞における自己複製・分化・転移制御メカニズムを解明することで、将来的な癌幹細胞を標的とする新規治療法への開発応用を目指すことを目的とする。これまでに進行乳癌等でリン酸化酵素であるDYRK2発現低下が癌の増殖・転移・浸潤に関与することが報告されている(Taira et al. JClin Invest, 2012 / Mimoto etal.Cancer Lett, 2013)。しかし肝癌におけるDYRKfamily分子の機能についての詳細は未だ不明である。そこで本研究では、肝癌幹細胞におけるDYRK family分子の機能を解析し、肝癌の進展・転移制御機構の解明を目指すとともに、将来的に癌幹細胞を標的とした新規治療法の開発へと発展させたい。原発性肝癌の根治的治療としては外科的切除で、早期には肝内病変治療としてラジオ波焼灼療法、肝動脈塞栓療法等がときに有効であるが、遠隔転移、胆管・血管内浸潤を呈するようになると予後不良であるため、より早期の診断法の確立及び新規治療法が切望されている。現在、切除不能肝細胞癌に対して臨床で使用される唯一の分子標的薬であり、腫瘍の細胞増殖と血管新生を阻害するsorafenibの効果は非常に限定的である。このような背景から選択的に癌細胞(癌幹細胞)のみを傷害するような治療標的分子の同定による新たな新規治療法の開発が急務であると考えられる。本研究では、肝癌幹細胞における自己複製・分化・転移制御メカニズムを解明することで、将来的な癌幹細胞を標的とする新規治療法への開発応用を目指すことを目的とする。これまでに進行乳癌等でリン酸化酵素であるDYRK2発現低下が1癌幹細胞分画の増加をもたらすこと、2c-Junやc-Mycの蓄積を引き起こし細胞増殖が亢進すること、3Epithelial-Mesenchymal Transition(EMT)を制御することで癌の転移・浸潤に関与することが報告されている(Taira et al. J Clin Invest, 2012/ Mimoto etal.Cancer Lett, 2013)。しかし肝癌におけるDYRKfamily分子の機能については未だ不明である。そこで本研究では、肝癌幹細胞におけるDYRK family分子の機能を解析し、肝癌の進展・転移制御機構の解明を目指すとともに、将来的に癌幹細胞を標的とした新規治療法の開発へと発展させたい。本研究ではヒト肝癌細胞株におけるDYRK2の関与について検討を行った。DYRK2 mRNAは数種のヒト肝癌細胞株に発現が認められ、ヒト正常肝細胞と比較しその発現が低いことが明らかとなった。ヒト肝癌細胞株のうちDYRK2の発現の低い細胞株HLFにおいてウイルスを用いた遺伝子導入によりDYRK2の強制発現を行ったところ、HLFの増殖が抑制された。またmigration assayおよびinvasion assayを行ったところDYRK2強制発現によりHLFのmigrationおよびinvasionが抑制されることを明らかにした。次にCRISPER/Cas9システムを用いた遺伝子改変によるDYRK2ノックアウトを試みたが、現在までのところ系がうまく作動せずノックアウト細胞株の樹立には至っていない。しかし同時並行でshRNAシステムおよびウイルスを用いた遺伝子導入によりDYRK2遺伝子をノックダウンすることで肝癌細胞株における機能解析を行った。DYRK2発現の比較的高いHuH1肝癌細胞株においてDYRK2遺伝子のノックダウンによりin vitro培養系で増殖の有意な亢進を認めた。またmigration assayおよびinvasion assayを行ったところmigrationおよびinvasionは促進され、DYRK2は肝癌細胞株の増殖および転移能の制御に関与する可能性が示唆された。原発性肝癌の根治的治療としては外科的切除が第一であり、早期には肝内病変治療としてラジオ波焼灼療法(RFA)、肝動脈塞栓療法(TACE)等がときに有効であるが、遠隔転移、胆管・血管内浸潤を呈するようになると予後不良であるため、より早期の診断法の確立及び新規治療法が切望されている。現在、切除不能肝細胞癌に対して臨床で使用される腫瘍の細胞増殖と血管新生を阻害する分子標的薬の効果は非常に限定的である。このような背景から選択的に癌細胞(癌幹細胞)のみを傷害するような治療標的分子の同定による新たな新規治療法の開発が急務であると考えられる。本研究では、肝癌幹細胞における自己複製・分化・転移制御メカニズムを解明することで、将来的な癌幹細胞を標的とする新規治療法への開発応用を目指すことを目的とする。これまでに進行乳癌等でリン酸化酵素であるDYRK2発現低下が癌の増殖・転移・浸潤に関与することが報告されている(Taira et al. JClin Invest, 2012 / Mimoto etal.Cancer Lett, 2013)。
KAKENHI-PROJECT-16K09378
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原発性肝癌の進展・転移におけるDYRKファミリーによる癌幹細胞制御機構の解明
しかし肝癌におけるDYRKfamily分子の機能についての詳細は未だ不明である。そこで本研究では、肝癌幹細胞におけるDYRK family分子の機能を解析し、肝癌の進展・転移制御機構の解明を目指すとともに、将来的に癌幹細胞を標的とした新規治療法の開発へと発展させたい。本研究ではヒト肝癌細胞株におけるDYRK2の関与について解析検討をおこなった。DYRK2 mRNAは数種のヒト肝癌細胞株に発現が認められ、ヒト正常肝細胞と比較しその発現が低いことが明らかとなった。ヒト肝癌細胞株においてウイルスを用いた遺伝子導入によりDYRK2遺伝子の強制発現を行ったところin vitro培養でヒト肝癌細胞株の増殖が有意に抑制された。また一方でshRNAシステムおよびウイルスを用いた遺伝子導入によりDYRK2遺伝子をノックダウンするとヒト肝癌細胞株の増殖の有意な亢進を認めた。これらの結果より、DYRK2は肝癌細胞株の増殖能の制御に深く関与する可能性が示唆された。次にCRISPER/Cas9システムを用いた遺伝子改変によるDYRK2遺伝子のノックアウトを試みているが、試行錯誤しているものの現在までのところ系がうまく作動せずノックアウト細胞株の樹立には至っていない。原発性肝癌の根治的治療としては外科的切除が第一であり、早期には肝内病変治療としてラジオ波焼灼療法(RFA)、肝動脈塞栓療法(TACE)等がときに有効であるが、遠隔転移、胆管・血管内浸潤を呈するようになると予後不良であるため、より早期の診断法の確立及び新規治療法が切望されている。現在、切除不能肝細胞癌に対して臨床で使用される腫瘍の細胞増殖と血管新生を阻害する分子標的薬の効果は非常に限定的である。このような背景から選択的に癌細胞(癌幹細胞)のみを傷害するような治療標的分子の同定による新たな新規治療法の開発が急務であると考えられる。本研究では、肝癌幹細胞における自己複製・分化・転移制御メカニズムを解明することで、将来的な癌幹細胞を標的とする新規治療法への開発応用を目指すことを目的とする。これまでに進行乳癌等でリン酸化酵素であるDYRK2発現低下が癌の増殖・転移・浸潤に関与することが報告されている(Taira et al. JClin Invest, 2012 / Mimoto etal.Cancer Lett, 2013)。しかし肝癌におけるDYRKfamily分子の機能についての詳細は未だ不明である。そこで本研究では、肝癌幹細胞におけるDYRK family分子の機能を解析し、肝癌の進展・転移制御機構の解明を目指すとともに、将来的に癌幹細胞を標的とした新規治療法の開発へと発展させたい。これまでの結果よりDYRK2発現低下は肝癌細胞の増殖や遊走・浸潤を制御し肝癌の進展・転移に強く関与する可能性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-16K09378
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神経可塑性における細胞接着分子Arcadlinの役割
てんかん原性の獲得や発作の進展に対するArcadlinの作用を調べるために、arcadlinノックアウトマウス(acad-/-)と野生型マウス(wt)を用いて、扁桃体慢性キンドリング実験を行い、両群の発作脳波や痙攣行動を比較検討した。キンドリングは1日1回、閾値+50uAの刺激強度で実施し、脳波と行動を同時に記録・観察した。慢性キンドリングでは、扁桃体刺激によって発作脳波(after discharge:AD)が誘発され、その程度によりてんかんに関連した行動変化(Stage 1:facial twitch, headnodding; Stage 2:forelimb clonus, realing; Stage 3:unilateral hindlimbclonus; Stage 4:bilateral hindlimbclonus, imbalance, sitting; Stage 5:falling)が起こることがわかっているため、acad-/-とwtを比較し扁桃体におけるてんかん原性の獲得や発作の進展に対するArcadlinの作用を調べた。閾値強度に差はなかったが、AD durationの進展ではacad-/-の方が有意に早く進展し、total AD durationもacad-/-の方が有意に長かった。また、stage5が5日連続で発生するまでに要した日数はacad-/-の方が有意に少なかった。また、キンドリング後の海馬において、9日以降にArcadlinタンパクの発現が強まっていた。以上より、Arcadlinはてんかん発作の進展を促進することがわかった。また、痙攣発作自体がArcadlinの誘導に関わっていることがわかっているため、てんかん痙攣発作が繰り返されれば、新たに誘導されたArcadlinが次の痙攣発作を悪化させるという相互作用があると考えられた。平成26年度は海馬の生理的な神経可塑性におけるArcadlinの役割を調べるために、記憶・学習機能を中心にマウスの行動学的解析を行った。16週令雄の野性型マウス(WT)とarcadlin knockout mice (acad-/-)を同環境で飼育し行動実験を行った。Open fieldtestではWTよりacad-/-の方が有意に速いスピードで歩き、一定時間内の歩行距離は有意に長かった。Light-dark testでは、暗所と明所を分けるドアを開けてから暗所においたマウスが明所に初めて出るまでの潜時がacad-/-で有意に短く、1回の明所滞在時間は有意に短く暗所から明所への移動回数はacad-/-の方が多い傾向を示した。つまり、Open field test、Light-dark testの結果から、acad-/-は新しい環境下では行動量が増え、明るい場所に飛び出すなど衝動的な行動もすることがわかった。次に、社会性評価のためにWT同士、acad-/-同士のペアでBoxに入れて互いの干渉を見るSocial InteractionとNest形成を観察したが、2匹間の接触回数や時間に有意な差はなくNest形成にも有意な差は認められなかった。続いて、海馬記憶を見るためにMorris water mazeを実施したところ、最初から前半の学習プロセスにおいては、acad-/-の方がgoalに達するまでに時間がかかり、より長い距離を泳いでいることがわかった。しかし、後半の記憶学習効果はWTと差はなく、最終的な学習到達度にも差はなかった。また、痛みを伴う記憶へのArcadlinの作用を見るためにpassive avoidance testを行ったが、有意な差は認められなかった。以上の結果から、acad-/-はWTに比べて新しい環境におかれた場合に総行動量と衝撃的行動が増えるものの、記憶学習機能は低下していないのではないかと考えられた。25年度に得られたてんかん性と26年度に得られた多動性衝動性行動と記憶学習機能の保持という結果から、Arcadlinはattention deficit hyperactivity disorder (ADHD)に関係している可能性が示唆された。平成27年度は、前年度のArcadlinノックアウトマウス(arc(-/-))の結果を受けて、Arcadlinの細胞内情報伝達で重要な役割を果たしているTao2に焦点を絞り、Tao2ノックアウトマウス(Tao2(-/-))と野生型マウスを用いて行動解析を行い両群を比較検討した。まず、arc(-/-)で認められたOpen field testでの行動量の増加やLight-dark testでの明所暗所移動回数増加、明所滞在時間短縮など、多動傾向を示す行動異常はTao2(-/-)では認められなかった。しかし、暗所から明所に最初に出るまでの潜時はarc(-/-)同様にTao2(-/-)で有意に短く、Tao2(-/-)に衝動性があることが示された。また、Morris water mazeにおいては、最終的にarc(-/-)は学習することはできるものの学習記憶過程に遅延があり、前年度の報告では詳細な分析が終了していなかったが、その後の経時的変化の分散分析においてそこに有意な差があることがわかっていた。ところが、Tao2(-/-)ではその差は認められなかった。その他に、arc(-/-)と同じく、Social interactionやNest形成には有意な差は認められなかった。以上の結果から、arc(-/-)に認められた多動傾向と衝動性のうち、衝動性はTao2(-/-)にも認められたものの、多動生については確認することができなかった。これらの結果をふまえ、行動異常に関係するArcadlinの細胞内情報伝達メカニズムについては、再検討する必要があると考えられた。
KAKENHI-PROJECT-25461563
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神経可塑性における細胞接着分子Arcadlinの役割
平成27年度の計画において、動物の繁殖、実験環境ともに問題はなかったが、公私の事情により当初予定していた本研究のエフォートを確保することができず、結果として当初の計画通りに実験を進めることができなかった。その分については、遅延申請を行い、平成28年度に継続して行うこととした。本年度は、小動物用MRIを用いて20週齢のarcadlin knockout mice (acad-/-)10匹とwild type mice (wt)10匹のMRI画像を6枚ずつ取得し、脳全体、大脳皮質、線条体、海馬の面積を測定し、それぞれの部位ごとに6枚分を合算し、それをその個体の値として両群を比較した。その結果、脳全体はacad-/-が有意に小さかったにも関わらず、大脳皮質はacad-/-の方が有意に大きかった。そのため、脳全体における大脳皮質の割合は、acad-/-が有意に高かった。一方、線条体と海馬の面積については、両群間に有意な差は認められなかった。また、water maze testについては、これまでの実験からマウスの週令による差が観察されたため、今年度は1216週齢のacad-/-10匹とwt12匹、20週齢のacad-/-8匹とwt8匹を用いて、それぞれwater maze testを行い週齢ごとに分散分析を用いて両群の比較を行った。その結果、1216週齢の比較で、学習記憶過程においてacad-/-に有意な遅延が認められたが、20週齢の比較では有意差は認められなかった。以上の結果から、Arcadlinは週齢依存的に記憶学習に関わることがわかった。MRIで観察された20週齢のacad-/-の大脳皮質がwtに比べて有意に大きかったことが、1216週齢のacad-/-で見られた学習記憶過程の遅延が20週齢のacad-/-では消失したことにどのように関係してくるのか、今後さらに検討する必要があると考えられた。平成26年度の研究実施計画に示した実験結果から、生理的な脳機能におけるArcadlinの役割が明確になった。これまでの研究結果から、Arcadlinが注意欠如多動性障害(attention-deficit /hyperactivity disorder: ADHD)に関わる可能性が浮上してきた。ヒトのADHDでは、症状に関連して脳部位(前頭前皮質、大脳基底核、小脳虫部)の委縮が認められることがわかっている。arc(-/-)において行動実験で観察された反射的反応に関係が深い線条体(尾状核、被殻)や淡蒼球(腹側、外側)の体積が野生型マウスと比較して小さくないかどうか、小動物用MRIを用いて調べる。この計画は、平成27年度に実施予定であったができなかったため、次年度の延長期間において実施する。このテーマを着実に進めて研究結果を総括し、研究成果として発表したいと考えている。
KAKENHI-PROJECT-25461563
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系の不確かさを克服し、目標値の先見情報を合理的に利用する制御法の開発
本研究は,平成7年度科学研究費奨励研究A(#07750513)で行なった予見制御に関する研究をさらに発展させたものであり,系の不確かさと予見情報を合理的に処理する制御法の開発を試みた.本年度は,1)ロバスト予見制御系の構成,2)ロバスト性の検討,3)柔軟構造物の大振幅制御法の開発,の具体的な課題について以下の結果を得た.1)制御対象の不確かさを克服する予見制御系の構成:予見制御系の不確かさをH^∞制御の立場から定式化し,目標値に対する追従誤差の予見的抑制と不確かさに対するH^∞外乱抑制を達成する制御則を導いた.そして,制御器が有限次元の演算から直接構成できることを示した.2)ロバスト制御性能の解析:1)で得られた制御系に対して,与えられた目標軌道への追従を最も劣化させる系の不確かさを陽に導いた.そして得られた結果が,初期値変動を考慮したH^∞制御問題と共通した解を与えることを明らかにした.3)柔軟構造物の大振幅制御法の開発:柔軟構造物の大振幅制御は,不確かな振動モードを含む系を予め定めた目標値に追従させる問題であり,系の安定性と良好な過渡特性が同時に要求される.本年度は実際に実験モデルを作成し,ビームの位置決め制御における予見制御の効果を検討した.実験結果から,予見補償を導入した場合,高次モードの励起が少なく,整定時間をより短くできることを確認した.今後は,高次モードをどのように定式化するとスピルオーバに対するロバスト性と目標値への追従特性の調整が可能になるか検討する.現在,3)に関して残されている項目の実験を進め,一般の予見制御系におけるロバスト制御性能の解析法を調べている.本研究は,平成7年度科学研究費奨励研究A(#07750513)で行なった予見制御に関する研究をさらに発展させたものであり,系の不確かさと予見情報を合理的に処理する制御法の開発を試みた.本年度は,1)ロバスト予見制御系の構成,2)ロバスト性の検討,3)柔軟構造物の大振幅制御法の開発,の具体的な課題について以下の結果を得た.1)制御対象の不確かさを克服する予見制御系の構成:予見制御系の不確かさをH^∞制御の立場から定式化し,目標値に対する追従誤差の予見的抑制と不確かさに対するH^∞外乱抑制を達成する制御則を導いた.そして,制御器が有限次元の演算から直接構成できることを示した.2)ロバスト制御性能の解析:1)で得られた制御系に対して,与えられた目標軌道への追従を最も劣化させる系の不確かさを陽に導いた.そして得られた結果が,初期値変動を考慮したH^∞制御問題と共通した解を与えることを明らかにした.3)柔軟構造物の大振幅制御法の開発:柔軟構造物の大振幅制御は,不確かな振動モードを含む系を予め定めた目標値に追従させる問題であり,系の安定性と良好な過渡特性が同時に要求される.本年度は実際に実験モデルを作成し,ビームの位置決め制御における予見制御の効果を検討した.実験結果から,予見補償を導入した場合,高次モードの励起が少なく,整定時間をより短くできることを確認した.今後は,高次モードをどのように定式化するとスピルオーバに対するロバスト性と目標値への追従特性の調整が可能になるか検討する.現在,3)に関して残されている項目の実験を進め,一般の予見制御系におけるロバスト制御性能の解析法を調べている.
KAKENHI-PROJECT-08750551
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高イオン伝導性を有する貴金属カルコハライドガラスの機能とネットワーク構造
「ガラス化によってなぜ高イオン伝導性が出現するのか?」。これは、固体でありながら室温で電解質水溶液なみのイオン伝導性を示すことで知られる「高イオン伝導性ガラス」分野での究極の疑問である。本研究では、MI-As_2X_3(M:Ag,Cu,X:S,Se)系に着目し、イオン伝導度や熱物性などの精密測定、中性子回折、高エネルギーX線回折およびEXAFS測定を実施し、可動イオン周囲の環境構造とガラスネットワーク構造双方に対する詳細な解析を進めることで、ガラスにおける高イオン伝導性発現メカニズムの解明に挑戦した。MI-As_2Se_3系は60mol%MI組成までバルクガラスが安定に得られ、そのイオン伝導度はMIの添加とともに指数関数的に増加することが分かった。MIを過剰添加したガラスの室温でのイオン伝導度は、MI室温結晶相の伝導度をはかるにしのぐ。EXAFS、高エネルギーX線および中性子線回折実験データに対する精密定量構造解析の結果、添加されたMIは、(1)AsSe_<3/2>ガラスネットワークの層間に二層分離的に溶け込むこと、(2)その時のM周囲の環境構造は、室温結晶相よりも歪みの度合いがかなり高くなること、(3)それによって室温結晶相には存在しないM-M近距離相関が生じること、(4)このような歪んだMI構造単位の連結によるMイオン伝導パスの形成が示唆されること、などの重要な知見を見出した。これに対し、As_2S_3系ではガラス化範囲も狭く、イオン伝導度の上昇も鈍い。構造解析の結果でも、添加MIとガラス母体であるAs_2S_3との間に明瞭な結合が生じ、Mイオンがガラスネットワークに消費されて、可動状態とならないことが判明した。これらのことから、ガラス中における高イオン伝導特性発現には、MI-As_2Se_3系のように擬二元混合状態が達成されていることが非常に重要であると結論付けられた。「ガラス化によってなぜ高イオン伝導性が出現するのか?」。これは、固体でありながら室温で電解質水溶液なみのイオン伝導性を示すことで知られる「高イオン伝導性ガラス」分野での究極の疑問である。可動イオン周囲の環境構造とガラスネットワーク構造双方に対し、独立に詳細な解析が可能な系を対象として、早急に研究を進める必要がある。この狙いに合致する系として我々が注目しているのは、ガラス形成物質に貴金属イオンを含まないAgI-カルコゲナイド系ガラス(AgI-As_2X_3(X:S,Se))である。本研究では、このようなAgI-As_2Se_3系ガラスに対し、交流インピーダンス方による電気伝導度の測定、DSCによる熱物性の測定を行った。また、中性子回折、X線回折およびEXAFS測定を実施し、ガラス中でのAgイオン周囲の配位環境やガラスを形成するネットワーク構造とイオン輸送現象との相関を調査した。その結果、AgI-AS_2Se_3系は60mol%AgI組成までバルクガラスが得られ、そのイオン伝導度はAgIの添加とともに指数関数的に増加することが分かった。また、熱物性の詳細な調査から、ガラス転移点がAgIの結晶相転移温度を下回るところでガラス化不可能となることが判明した。EXAFS信号に対する最小自乗解析の結果、ガラス骨格の形成に寄与しているAs-Se相関は、AgIが添加されても大きく変化せず、共有結合性の結合を保持していること、Ag-I結合距離も結晶AgIにおけるものとほぼ同様な値を示し、Ag周囲の配位環境はガラス中でも結晶AgIとほぼ同様であることが伺えた。回折実験で得られた二体分布関数において、2.4Å付近の鋭いピークは共有結合性As-Se結合相関に対応する。AgIの添加とともにこのピークが減衰し、逆に2.8Å付近にサブピークが成長する。同時に、第2配位圏において45Å付近の成分が成長している。これらはいずれも、結晶AgI中に存在する最近接Ag-I距離およびI-I距離に対応している。X線および中性子線回折実験データに対する定量構造解析の結果、As-Se相関は組成によらず結合距離約2.41Å、配位数約3、Ag-I相関は結合距離約2.78Å、配位数約4であることが分かった。また、構造因子S(Q)のプレピーク(FSDP)がAgIの添加とともに低Qシフトすることから、AgIの添加によってAs-Seネットワークチェーンの相関距離が増大することも判明した。これらのことから、本系のガラス構造は、共有結合性As(Se_<1/2>)_3ピラミッドユニットの連結により形成されたネットワーク中に、それらとは構造的に分離する形で、AgI由来の伝導パスが形成されていることが示唆される。このような擬二元混合状態が達成されていることが、本系の高イオン伝導特性と密接に関連していると結論付けられる。「ガラス化によってなぜ高イオン伝導性が出現するのか?」。これは、固体でありながら室温で電解質水溶液なみのイオン伝導性を示すことで知られる「高イオン伝導性ガラス」分野での究極の疑問である。本研究では、MI-As_2X_3(M:Ag,Cu,X:S,Se)系に着目し、イオン伝導度や熱物性などの精密測定、中性子回折、高エネルギーX線回折およびEXAFS測定を実施し、可動イオン周囲の環境構造とガラスネットワーク構造双方に対する詳細な解析を進めることで、ガラスにおける高イオン伝導性発現メカニズムの解明に挑戦した。MI-As_2Se_3系は60mol%MI組成までバルクガラスが安定に得られ、そのイオン伝導度はMIの添加とともに指数関数的に増加することが分かった。
KAKENHI-PROJECT-15760495
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15760495
高イオン伝導性を有する貴金属カルコハライドガラスの機能とネットワーク構造
MIを過剰添加したガラスの室温でのイオン伝導度は、MI室温結晶相の伝導度をはかるにしのぐ。EXAFS、高エネルギーX線および中性子線回折実験データに対する精密定量構造解析の結果、添加されたMIは、(1)AsSe_<3/2>ガラスネットワークの層間に二層分離的に溶け込むこと、(2)その時のM周囲の環境構造は、室温結晶相よりも歪みの度合いがかなり高くなること、(3)それによって室温結晶相には存在しないM-M近距離相関が生じること、(4)このような歪んだMI構造単位の連結によるMイオン伝導パスの形成が示唆されること、などの重要な知見を見出した。これに対し、As_2S_3系ではガラス化範囲も狭く、イオン伝導度の上昇も鈍い。構造解析の結果でも、添加MIとガラス母体であるAs_2S_3との間に明瞭な結合が生じ、Mイオンがガラスネットワークに消費されて、可動状態とならないことが判明した。これらのことから、ガラス中における高イオン伝導特性発現には、MI-As_2Se_3系のように擬二元混合状態が達成されていることが非常に重要であると結論付けられた。
KAKENHI-PROJECT-15760495
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15760495
低レイノルズ数回転翼の流れ解明
風車回転翼の翼面近傍流れを実験的に明らかにした。翼根付近の翼素の場合,流れは大きな半径方向速度成分を持ち,翼面の圧力分布は二次元翼特性から求められる負圧より低くなる。翼面上の境界層内の速度分布は翼前縁付近で平板上の層流境界層内の速度分布に近く,翼前縁付近から中央部で乱流境界層へ遷移していることを明らかにした。測定速度から算出した翼面圧力分布と圧力測定翼により測定した翼面圧力分布は概ね一致した。風車回転翼の翼面近傍流れを実験的に明らかにした。翼根付近の翼素の場合,流れは大きな半径方向速度成分を持ち,翼面の圧力分布は二次元翼特性から求められる負圧より低くなる。翼面上の境界層内の速度分布は翼前縁付近で平板上の層流境界層内の速度分布に近く,翼前縁付近から中央部で乱流境界層へ遷移していることを明らかにした。測定速度から算出した翼面圧力分布と圧力測定翼により測定した翼面圧力分布は概ね一致した。本研究では,翼面近傍の速度分布計測から,非定常,低レイノルズ数の翼面境界層を考察する.また,回転翼の中心付近は,2次元流れにおける失速角よりも大きな迎え角まで揚力を発生することが知られている.この理由は,翼面の境界層内の流れが遠心力の影響を受けるためであると推測されているが,速度分布計測から明らかにされた例はない.この理由を回転中の翼面の流れ状態の観察から明らかにし,流れ状態の把握から小型風車回転翼の新規の設計手法につなげることを目的としている実験は三重大学ベンチャービジネスラボラトリの大型風洞設備を用いて行う.風洞に設置されている2次元レーザドップラ流速計(LDV)は,測定体積を通過する粒子速度を2成分について計測できる.このような,非接触流速計と精密な位置決めを可能にするステージの組み合わせにより,境界層内部に流れ状態を明らかにする.翼面境界層の測定では,レーザ変位計を使用し高精度で把握しておく.非回転状態の境界層測定は,三重大学エネルギー環境工学実験棟内の回流型風洞を用いて行った.回転翼の翼面境界層の測定では,直径2.4m試験風車,LDV,4軸ステージ,レーザ変位計の組み合わせ,翼面境界層の3次元成分を測定できるシステムを構築した.本計測システムにより回転翼境界層内のスパン方向成分を含む3成分の流れについて明らかにした.また,翼表面流れは,油膜による可視化を行い,境界層内の速度分布との整合性を検証した.静止状態の測定では,乱れ強度を変化させて翼面境界層を圧力分布より明らかにした.静止状態での流れ状態,および回転状態での流れを比較することにより,小型風車回転翼の作動について考察した.本研究では,翼面近傍の速度分布計測から,非定常,低レイノルズ数の翼面境界層を考察する.低レイノルズ数における翼の性能は翼負圧面に形成される層流剥離泡に大きく依存する.このような翼面境界層について速度分布測定から明らかにする.実験は三重大学の大型風洞設備(口径3.6m)を用いて行う.供試風車は,翼面境界層および圧力分布測定が可能である.2次元レーザ流速計のプローブを2か所に配置してそれぞれ2成分の測定を行い,流れ場の3成分の速度取得を行った.なおプローブは21年度に導入した精密な位置決めを可能にするステージに設置され,翼面近傍の境界層内部に計測点を配置できる.また翼面形状はレーザ変位計を使用し高精度で把握した.21年度の計測に引き続き翼面境界層の速度分布データの蓄積を行った.さらに,翼面境界層の測定を非定常流れについて測定する.風洞内で風車を風に対して正対しない状態(斜め流入状態)に設置することで,回転角変化に伴う翼流入状態の周期的な変化を生じさせる.ある半径翼素の迎え角および相対速度は回転角に応じて変動することになる.この周期的な変化状態を用いて非定常な翼面境界層を再現し,測定する.斜め流入の角度は,30゚について検討した.風車正対および斜め流入状態について翼素の作動状態を速度分布,圧力分布から検討した.翼面境界層の速度場は,圧力分布計測により判定できる剥離領域と一致していることが確認できた.また翼周囲流れに基づく循環量の計算結果から求めた翼素の揚力は,圧力分布による揚力と一致する.よって非定常状態における翼面流れの速度場と圧力分布で一致がみられた.また,斜め流入状態の翼はスパン方向流れの影響を大きく受けていることが明らかになった.さらに,次年度の流速分布測定に用いる翼形状の異なる風車翼についても,性能計測および圧力分布の計測を行った.本研究では,翼面近傍の速度分布計測から,非定常,低レイノルズ数の翼面境界層を考察する.低レイノルズ数における翼の性能は翼負圧面に形成される層流剥離泡に大きく依存する.このような翼面境界層について速度分布測定から明らかにする.実験は三重大学の大型風洞設備(口径3.6m)を用いて行う.供試風車は,翼面境界層および圧力分布測定が可能である.2次元レーザ流速計のプローブを2か所に配置して,流れ場の3成分の速度を取得した.なおプローブは21年度に導入した精密な位置決めを可能にするステージに設置され,翼面近傍の境界層内部に計測点を配置できる.また翼面形状はレーザ変位計を使用し高精度で把握した.
KAKENHI-PROJECT-21560172
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21560172
低レイノルズ数回転翼の流れ解明
これまでの計測に引き続き翼面境界層の速度分布データの蓄積を行った.本年度は,翼面境界層の測定をスパン方向の分布ついて詳細に検討した.測定半径位置はr/R=0.3,05,0.7,0.9とした.各翼スパン位置について翼素の作動状態を速度分布,圧力分布から検討した.翼スパン方向位置で測定速度から算出した翼面圧力分布と圧力測定翼により測定した翼面圧力分布は概ね一致し,LDVによる速度測定法の妥当性が示された.翼スパン方向での流れの特徴は.翼根付近(r/R=0.3)の場合,半径方向速度成分が幾何流入風速の25%程度であり,流れは強い三次元性を示す.よって翼面上速度は軸方向と周方向の速度成分のみから得られる二次元速度より大きく,翼面の負圧は二次元翼特性から求められる負圧より低くなると考えられる.またx/c=0.3上の境界層は平板上の層流境界層に近いことが確認された.溜=0.7における翼弦中央部(x/c=0.5)上の境界層は,乱流境界層の速度分布に類似している.このことから,翼面近傍の流れは,翼前縁付近から中央部(x/c=0.305)の間で乱流境界層へ遷移したと考えられる.
KAKENHI-PROJECT-21560172
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高効率・低コスト化を実現する電荷マネージメント層を用いた高透明太陽電池の開発
有機薄膜太陽電池と色素増感型太陽電池の特徴を複合させた低コスト、且つ高透過性の全塗布型有機無機薄膜太陽電池の開発を目的とした。発電層中の電子アクセプターとして酸化物半導体プリカーサーを採用。従来のC60PCBMの代替材料として、その機能を検証し、酸化物半導体プリカーサーの分子構造により発電層中の相分離構造制御が可能であることを提言。電子輸送性能の改善やバッファー層の最適化により、効率改善を実施。光吸収端波長が900nm程度である電子アクセプター材料を用いた発電素子とのタンデム化により高い光電変換効率が得られることを発電層の光吸収スペクトより説明した。有機薄膜太陽電池と色素増感型太陽電池の特徴を複合した低コスト、且つ高透過性を有する全塗布型有機無機太陽電池の開発を目的とする。本年度は特に、酸化物半導体プリカーサーを用いた電荷分離/電荷輸送層の相分離構造制御による高効率化を中心に研究を実施した。p型半導体高分子であるMDMO-PPVをドナー材料、アクセプター材料として無機酸化物半導体プリカーサーを用いて、太陽電池素子を作製し、電荷分離及び電荷輸送が発現することを確認。アクセプター材料として一般的に用いられているフレーレン誘導体(C60PCBM)を用いた場合に比べ、解放端電圧が増加することを確認。太陽電池素子の飽和限界電流の比較から、電荷分離後のフリーキャリアの再結合確率が減少したためであると推測できる。更に長波長吸収材料であるPTB7をドナー材料として採用。酸化物半導体プリカーサーとの組み合わせにより、光電荷分離を確認。太陽電池素子の外部量子収率スペクトルから、長波長吸収由来の電荷分離であることが示された。本結果より、エネルギーレベルの整合性については電荷分離の発現に十分であることが明らかとなった。一方、C60PCBMをアクセプター材料として用いた場合に比べ、短絡電流密度が低下し、当初予想していた通り、フリーキャリアーの輸送性が低いことが推測できる。本課題を既に報告しているソルビリティーパラメーター(SP値)を指標とした相分離構造制御手法を用いて改善を行った結果、異なるSP値の溶媒を用いることにより短絡電流密度が大幅に変化することを確認した。高SP値溶媒を用いることにより、低SP値溶媒を用いた場合に比べ、大幅に短絡電流密度が増加することを見出した。今後は混合溶媒による検討を行い、最適な溶媒を見出すと共に、研究計画に記載のアクセプター材料の高電子輸送性の付与について検討を実施する予定である。有機薄膜太陽電池と色素増感型太陽電池の特徴を複合させた低コスト、且つ高透過性の全塗布型有機無機薄膜太陽電池の開発を目的とした。昨年度は酸化物半導体プリカーサーを用いて発電/電荷輸送層の相分離構造制御を発電層形成用インク主成分である溶媒のSP値を指標として行い、高SP値の溶媒を用いることにより低SP値溶媒を用いた場合に比べ、太陽電池素子の短絡電流密度が大幅に増加することを示した。本年度は更なる高効率化を目指し、酸化物半導体プリカーサーの分子構造に着目し、電荷分離及び電荷輸送に最適な発電層形成を目指した。酸化物半導体前駆体として異なる分子構造を有した4種類のチタンアルコキシドを用いて分子構造が相分離構造に与える影響を検証した。その結果、特にチタニウムイソプロポキシドとチタニウムエトキサイドを用いた場合に高いJscを得ることができた。チタニウムブトキシドポリマー及びチタニウムブトキシドを用いた場合に比べ、電荷分離及び電荷輸送に適した微細で且つ共連続な相分離構造が形成されていることがSEMの観察結果より明らかになった。最も高い発電特性を得たチタニウムイソプロポキシドと一般的な電子アクセプターとして用いられているフラーレン誘導体(C60PCBM)においてそれらの太陽電池特性の比較を行った結果、有機電極を用いた全塗布型の素子において、ほぼ同等の短絡電流密度を得ることができた。更に、発電層中バルクでの電子輸送能の改善を目的とし、TiO2微粒子の添加を行った結果、短絡電流密度の改善が認められた。今後は微粒子の添加量や添加する微粒子の分散に用いる分散剤の検討を行い、電子輸送能の改善による更なる発電効率の向上を目指す。有機薄膜太陽電池と色素増感型太陽電池の特徴を複合させた低コスト、且つ高透過性の全塗布型有機無機薄膜太陽電池の開発を目的とした。平成25年度は酸化物半導体プリカーサーを用いて発電/電荷輸送層の相分離構造制御を発電層形成用インク主成分である溶媒のSP値を指標として行い、高SP値の溶媒を用いることにより低SP値溶媒を用いた場合に比べ、太陽電池素子の短絡電流密度が大幅に増加することを示した。平成26年度は更なる高効率化を目指し、酸化物半導体プリカーサーの分子構造に着目した。その結果、分子構造により発電層の相分離構造が大きく変わることを確認し、特にチタニウムイソプロポキシドとチタニウムブトキシドを用いた場合に高いJscを得ることができ、ポリマーの相分離サイズが励起子拡散長である20nm程度となっていることSEMの観察により明らかにした。一方、光吸収量の増加による更なる発電特性の向上を目指し、発電層の厚膜化を行った。その結果、短絡電流密度の低下が起こり、従来のC60PCBMに比べ、電子輸送性が低いことが実験的に明らかとなった。そこで当年度はチタンアルコキシド中への酸化チタンナノ粒子の添加、混合により、電子輸送性の改善を目指した。
KAKENHI-PROJECT-25871029
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25871029
高効率・低コスト化を実現する電荷マネージメント層を用いた高透明太陽電池の開発
湿式のビーズミルを用いて、種々の分散剤との組み合わせにより、チタンアルコキシド中への分散を検討した結果、平均粒子径が数10nmとなる分散条件の確立に成功。電子輸送性の改善により、従来の発電層を用いた場合に比べ、エネルギーレベルの整合性や発電層との親和性を考慮したバッファー層との組み合わせにより、最大2.6倍の発電効率の改善が実現した。光吸収端波長が900nm程度である電子アクセプター材料を用いた発電素子とのタンデム化により高い光電変換効率が得られることを発電層の光吸収スペクトより説明することができた。有機薄膜太陽電池と色素増感型太陽電池の特徴を複合させた低コスト、且つ高透過性の全塗布型有機無機薄膜太陽電池の開発を目的とした。発電層中の電子アクセプターとして酸化物半導体プリカーサーを採用。従来のC60PCBMの代替材料として、その機能を検証し、酸化物半導体プリカーサーの分子構造により発電層中の相分離構造制御が可能であることを提言。電子輸送性能の改善やバッファー層の最適化により、効率改善を実施。光吸収端波長が900nm程度である電子アクセプター材料を用いた発電素子とのタンデム化により高い光電変換効率が得られることを発電層の光吸収スペクトより説明した。当初の計画通り、酸化物半導体プリカーサーを電子アクセプターとした有機無機ハイブリッド発電層において、その電荷分離機能を確認することができ、本年度は昨年度に引き続き、相分離構造制御による発電効率の向上と電子輸送能の改善による短絡電流密度の改善を実施した。相分離構造制御においては、酸化物半導体プリカーサーの分子構造による影響を確認し、高効率化の可能性を示した。また、電子輸送能の向上を目指した検討ではn型半導体微粒子の添加により、その有効性を示した。従って本研究は当初の計画に対し、概ね順調に進展していると言える。エネルギー変換素子の開発今後は引き続き、チタンアルコキシドの加水分解の制御や添加剤の利用による発電層の電子輸送能の改善を行い、更なる発電効率の向上を目指す。特に発電層中バルクでの電子輸送能の改善を目的とし、TiO2微粒子の添加量及び微粒子の分散に用いる最適な分散剤の検討を実施する。更に相互浸透型界面の構築による陰極バッファー層の導入及び陽極バッファー層の選定による高効率化を行う。当初の計画である酸化物半導体プリカーサーと長波長吸収ポリマーから成る活性層による光電荷分離を確認することができ、エネルギーレベルの整合が示唆された。一方、溶解度パラメーター(SP値)を指標とした相分離構造制御を実施した結果、高SP値溶媒を用いることにより短絡電流密度が大幅に増大することを確認し、SP値を指標とした相分離制御が本系にも有効であることを見出した。従って、本研究は当初の計画に対し、おおむね順調に進展していると言える。平成26年度の研究計画遂行に係る費用として計上した物品費が研究代表者所属機関経費で賄うことができたため、次年度に繰り越して使用することとした。SP値を指標とした単一溶媒における相分離制御に加え、接触角などを指標とした複合溶媒における相分離制御を行い、最適な相分離構造を見出す。さらに研究計画に記載のアクセプター材料の高電子輸送性の付与について検討を実施する。
KAKENHI-PROJECT-25871029
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被災地の地域再生と多文化共生:「災害時ユートピア」の継承可能性についての探究
本研究の目的は、被災地に暮らす外国出身者が震災後にどのような状況に置かれていたのかをトータルに把握することである。調査で明らかになった主な点は、次の通りである。1多くの外国出身者が被災直後においては支援されつつも、支援する側に回っていたこと、2震災という共通の経験を持つことで地域に対する一体感が強まった考えられる事例が多数みられること。3その一方で被災地では、外国人が犯罪をしているという流言が広範に広がっていたこと。4流言を聞いた人のうちの8割以上の人がそれを信じたこと、5流言を信じるか信じないかという態度の差は地域や性別、収入、職業などとほとんど無関係であることである。2014年度は、被災地、特に石巻市沿岸地域在住の外国出身者の被災直後の経験とそのあとの生活再建の状況を調査した。その結果、次のことが明らかになった。1多くの外国出身者が特に被災直後においては支援される側以上に、むしろ、支援する側に回り、地域住民の生活や生命の維持に関わっていたこと、2その結果として、今日に至るまで地域において外部との連絡の窓口になるなど重要な役割を果たすようになった外国出身者がいること、3震災という共通の経験を持つことで地域に対する一体感が強まった考えられる事例が多数あること、などである。調査対象者は、今年は主にコリアンとした。調査実施日は次の通りである。4月27日、5月2526日、7月2728日、10月28日30日、11月26日27日。これらの調査を踏まえ、1月31日には、立命館大学土曜講座にて「災害と多文化共生住民は外国人とどう向き合うのか」と題して、講演を行った(末川記念会館講義室)。また、3月には雑誌『震災学』6号(荒蝦夷出版)に「冬眠から覚めた愛」は自然に眠るのかー災害ユートピアの継承可能性」と題した論文を発表した。この論文では、震災直後における被災地を中心とした利他的な行動の連鎖について、特に外国出身者と日本人住民の関係を中心に論じ、その危機的状況で生まれた「共生の実践」をいかに現在に継承していくのか、という点を、上記の調査を踏まえて考察した。「共生の実践」とはソルニットのいう「災害時ユートピア」に他ならないが、これを日本人及び外国出身者が共通に経験したことを踏まえたとき、震災後に拍車がかかっている人口減少に対しては、外国出身者を地域のフルメンバーとして迎え入れる地域政策が有効かつ現実的であることを最後に示した。2015年度は、主に12014年度に続き、被災地特に石巻在住の外国出身者の被災後の経験の聞き取りを続けるとともに、2新たに、非常事態における日本人と外国出身者の苦境の共有経験が今後の多文化共生社会の構築にどのようなインパクトを与えうるのか、理論的な考察をしてきた。調査については、5月1日3日に盛岡周辺地域、5月30日31日に石巻、6月13日14日に石巻、6月2728日に石巻(牡鹿半島)、8月1日2日に石巻、11月28日29日に石巻にて調査を行った。これらの調査からは引き続き夫婦関係を軸とした家族関係が安定し、その結果、生き生きと日々を送っている外国出身者と、そうでない外国出身者に分かれつつある現状が見えてきた。特に仮設に暮らしている高齢の外国出身者(在日コリアン)のような場合、生きる意味を見いだせない状況に直面してもいる。また震災直後において「外国人犯罪の噂」が流れていたが、当事者自身がこうした現実をなるべく見ないようにしているという側面も見えてきた。総じて、震災時の共助の関係が新しい共生の形を切り開くという見込みも、今のところ、きわめて局所的にしか現実化していないのが現実である。こうした認識から、災害時のユートピア的側面の裏面である「外国人犯罪の噂」(流言飛語)がどのように拡散し、どのように外国出身者が自分の来歴をオープンにすることを妨げているかということを研究の柱とする必要を感じるに至った。震災から5年が経過した現在、新しく外国出身者に会い、その経験や現在の状況を聞き出すことが徐々に難しくなっている。また今年度の聞き取りの途中から、外国人をめぐる災害時の流言飛語をめぐって調査することの必要性を感じ、それに関する質問を含めたアンケートを行うことに方針を替えたことから、そのための準備(災害時の流言飛語に関する文献調査や、流言の内容の把握など)を始めたため、アンケートは今年度、実施することができなかった。本研究の主要な目的の一つは、被災地に暮らす外国出身者が震災後にどのような状況に置かれていたのかをトータルに把握することであるが、2016年度は特に、震災後に広範に広がった「外国人による犯罪」の流言について、それが日本人の一般市民の間でどの程度、広がり、どの程度、信じられたか、また信じるか信じないかという態度の差は何に規定されているのか、さらに流言が広がったのはなぜか、という点を主にアンケート調査を元に考察した。アンケートの概要、主旨、アンケート票、全ての単純集計結果、主要な分析結果については、東北学院大学地域共生推進機構のウェブページに公開してある。また研究結果は、河北新報、中日新聞、毎日新聞、朝日新聞、NHKなど諸々のメディアを通して紹介された。また複数の多文化共生や人権に関するセミナーで調査結果を元に講演を行った。論文としては、「震災後の『外国人犯罪』の流言」(震災学10号)を公表した。
KAKENHI-PROJECT-26510015
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26510015
被災地の地域再生と多文化共生:「災害時ユートピア」の継承可能性についての探究
アンケートから得られた主要な知見は、次の通りである。つまり、「外国人が犯罪をしている」という流言について、仙台市では1過半数の人が聞いており(東京都新宿区は約4割)、2それを聞いた人のうちの8割以上の人がそれを信じ(新宿区もほぼ同じ)、3その流言の中で中国人を犯罪の主体として聞き、信じていた人たちが6割にのぼる。4流言を信じるか信じないかという態度の差は地域や性別、収入、職業などとほとんど無関係であり、したがって「ほとんどの人が信じやすい」と考えれる。さらに5合理的な批判や、流言のターゲットにされた人たちに共感するという態度はごくわずかにしか見られない。データから考えれば、災害時に発生する、外国人犯罪の流言に対する対策を早急に講じるべきだといえる。外国人犯罪の流言についてのアンケート調査は、申請時には想定していなかったが、研究の進展の中で、必要と考えられ、また研究の当初の目的にも合致しているために、2016年度に急きょ、行うことになったが、他の研究者の協力を得ることで、十分に納得のできる調査を実施し、社会的にも意味のあるデータを獲得できたため。本研究の主要な目的は被災地に暮らす外国出身者の震災後の状況、またその「復興期」の情況をトータルに把握することである。2014年度から2015年度までは主に、被災当時、外国出身者と日本人住民がその生活世界において相互扶助の関係にあったことを聞き取り調査を元に明らかにした。それはソルニットが言うところの「災害時ユートピア」の一環として考えることができる。ついで、2016年度には震災後に広範に広がった「外国人による犯罪」の流言について調査を行った。調査目的は主に、1その流言は日本人の一般市民の間でどの程度、広がり、どの程度、信じられたか、2信じるか信じないかという態度の差は何に規定されているのか、3流言が広がったのはなぜか、という点である。アンケートは、仙台市と東京新宿区に在住する日本国籍者を対象に行った。アンケートの結果については、東北学院大学のウェブページに公開してある。また河北新報、中日新聞、毎日新聞、朝日新聞、NHKなど諸々のメディアを通して紹介された。2017年度以降は、研究成果を論文として、「震災後の『外国人犯罪』の流言」(震災学10号)などで公表した。アンケートから得られた主要な知見は、次の通りである。つまり、「外国人が犯罪をしている」という流言について、1仙台市で過半数、新宿で4割の人が聞いており、両地域でそれを聞いた人のうちの8割以上の人が信じていた。2それを信じるか信じないかという態度の差は地域や性別、収入、職業などとほとんど無関係である。3流言は当時、日本人を美化する言説が広範に広がっていたことと関係がある。流言は外国人に「汚名」を着せることで、日本人の美化言説を維持する機能を果たすことで、拡散したと考えられる。被災地の国を超えた相互扶助の現実とは乖離した流言が広範に広がった現実を考えれば、外国人犯罪の流言に対する対策を早急に講じるべきだといえる。本研究の目的は、被災地に暮らす外国出身者が震災後にどのような状況に置かれていたのかをトータルに把握することである。調査で明らかになった主な点は、次の通りである。1多くの外国出身者が被災直後においては支援されつつも、支援する側に回っていたこと、2震災という共通の経験を持つことで地域に対する一体感が強まった考えられる事例が多数みられること。3その一方で被災地では、外国人が犯罪をしているという流言が広範に広がっていたこと。
KAKENHI-PROJECT-26510015
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日本人男性(徳島地域)の表現型(身長、骨格等)とY染色体多型の研究
徳島県在住の男性の特徴をY染色体で分類した後,表現型を組み合わせて考察できるように研究を行った。まず,Y染色体上のY-SNPを検出し分類を試みた。O系,C系,D系,N系,P系に分類し,さらにO系はO_2系とO_3系,C系はC_1系とC_3系のY-SNPを検出できるように,Cycling probe法を調製した。O_2系とO_3系はP31とMl22,C_1系とC_3系はM8とM217,N系とP系はM231,P228をマルチ検出した。マルチ化するにあたり,アニーリング温度は,RNase H活性のための至適温度である55°Cを47°Cまで引き下げて行った。そのため若干の非特異的な蛍光が観察されたが,検出結果に影響を及ぼすほどのものではなかった。Cycling probe法によるY-SNPs検出を行うことにより,操作の簡略化及び検出時間の短縮が可能となった。この手法により,血縁関係のない徳島県在住の男性172名の分類を試みた。結果,縄文系のC系とD系は46%,弥生系のO系は52%,N系は1%,P系は0.6%が観察された。特に,C系において,Nonakaら(2007)の報告による各県の比率より高い値を示した。C系をさらに詳細に観察すると,C_1系は58.3%,C_3系は37.5%とC_3系が高い値を示し,徳島県独特の傾向を示した。C_1・C_3系に当てはまらない検体は,C_2系と考えられ,過去に報告されていなかったものである。このことから,C系が徳島地域男性の特徴を持つものと推察された。このC系に対し,表現型(身長,顔貌等)の特徴を検討したが,本研究においては有意な差は認められなかった。この原因は,おそらく検体数によるものであると考えられ,今後検体数の増加を検討すると共に海外の人種との差を検討していく必要があると考えられた。徳島県在住の男性の特徴をY染色体で分類した後,表現型を組み合わせて考察できるように研究を行った。まず,Y染色体上のY-SNPを検出し分類を試みた。O系,C系,D系,N系,P系に分類し,さらにO系はO_2系とO_3系,C系はC_1系とC_3系のY-SNPを検出できるように,Cycling probe法を調製した。O_2系とO_3系はP31とMl22,C_1系とC_3系はM8とM217,N系とP系はM231,P228をマルチ検出した。マルチ化するにあたり,アニーリング温度は,RNase H活性のための至適温度である55°Cを47°Cまで引き下げて行った。そのため若干の非特異的な蛍光が観察されたが,検出結果に影響を及ぼすほどのものではなかった。Cycling probe法によるY-SNPs検出を行うことにより,操作の簡略化及び検出時間の短縮が可能となった。この手法により,血縁関係のない徳島県在住の男性172名の分類を試みた。結果,縄文系のC系とD系は46%,弥生系のO系は52%,N系は1%,P系は0.6%が観察された。特に,C系において,Nonakaら(2007)の報告による各県の比率より高い値を示した。C系をさらに詳細に観察すると,C_1系は58.3%,C_3系は37.5%とC_3系が高い値を示し,徳島県独特の傾向を示した。C_1・C_3系に当てはまらない検体は,C_2系と考えられ,過去に報告されていなかったものである。このことから,C系が徳島地域男性の特徴を持つものと推察された。このC系に対し,表現型(身長,顔貌等)の特徴を検討したが,本研究においては有意な差は認められなかった。この原因は,おそらく検体数によるものであると考えられ,今後検体数の増加を検討すると共に海外の人種との差を検討していく必要があると考えられた。
KAKENHI-PROJECT-21930004
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21930004
日系企業のBOP戦略とビジネス生態系モデルに関する研究
本研究の目的は、フィリピン最大のマイクロファイナンス事業を行っているNGO組織(CARD MRI)の「貧困女性」への小口金融戦略とMicroビジネスの育成戦略を調査することによって、日系企業とフィリピン同NGOとの協働によって、現地の「自律的ビジネス生態系」を基盤としたビジネスモデルの理論的基盤の構築と具体的提起を目指してきた。そして本研究の成果は、フィリピン固有の財閥型ファミリービジネスと多国籍企業との協働による主要産業支配の構図の下で、CARDが貧困層へのマイクロファイナンスの提供とビジネスサポートによって、自律的ビジネス生態系をどのように構築しようとしてきたかを明らかにしえた点にある。本研究の目的は、フィリピン最大のマイクロファイナンス事業を行っているNGO組織(CARD MRI)の「貧困女性」への小口金融戦略とMicroビジネスの育成戦略を調査することによって、日系企業とフィリピン同NGOとの協働によって、現地の「自律的ビジネス生態系」を基盤としたビジネスモデルの理論的基盤の構築と具体的提起を目指してきた。そして本研究の成果は、フィリピン固有の財閥型ファミリービジネスと多国籍企業との協働による主要産業支配の構図の下で、CARDが貧困層へのマイクロファイナンスの提供とビジネスサポートによって、自律的ビジネス生態系をどのように構築しようとしてきたかを明らかにしえた点にある。*23年度に行っていたフィリピンNGOのPBSPとの共同アンケート調査の回収作業と回収企業数が予定通りに進捗していない関係上、フィリピン大学のF.Diola准教授とアテネオ大学のF.Aldaba教授に共同調査を依頼中である。また、同NGOが現地企業と共同で行っている各種の社会的解決課題事業に関するアンケートの回答企業は23社にとどまっているため、対象企業に対してさらなる協力を依頼中である。*23年度は、さらに同国のNGOであり最大のマイクロファイナンス銀行でもあるCARD MRIの協力により、同銀行の主要な貸し手である女性土地なし農民のサリサリストアをはじめとする対BOP層に対するビジネスの実態と、このマイクロファイナンスによる現地貧困女性の対BOP層へのビジネスがどのように彼女らを貧困ラインから抜け出すことにつながっているのかを現地でヒアリング調査を行った。*マニラ首都圏チーム(林・井口・荒井・伊藤)は、同地域に進出している日系企業12社、セブ地域チーム(関・高橋・金綱)は日系3社を訪問調査し、営利ビジネスとソーシャル・ビジネスとの調整に関するヒアリングを行った。これらの3点から、昨年度の調査研究を踏まえた現時点での小括は、多国籍企業による営利ビジネス単独では、現地の貧困解消に直結するようなビジネスモデルとはなることは極めて低い可能性にとどまる。むしろ、現地のBOP層に対してもろもろの対策を講じている現地NGOやマイクロファイナンスを行っている銀行との連携による新たなソーシャル・ビジネスとしてのビジネスモデルの開発がより現実的であると判断している。本研究は、多国籍企業が事業活動をグローバルな規模で展開する中で、新興経済圏の市場開発と貧困解消とをどのように解決していくのか、その理論的解明と実践的モデル化を追及した。その中心的中身は、「現地コミュニティの知識・知恵を踏まえた国際的ソーシャル・ビジネス」型の「日系企業を軸とした独自の国際的ビジネス生態系モデル」の提起を目指したものである。本研究では、フィリピン最大のマイクロファイナンス事業を行っているNGO組織(CARD MRI)の「貧困の土地なし女性」への小口金融戦略とMicroビジネスの育成戦略を調査することによって、日系企業とフィリピン同NGOとの協働による「民衆の知恵」と「科学技術的知識」との融合によって、日系企業独自の現地の「自律的ビジネス生態系」を基盤としたビジネスモデルの理論的基盤の構築と具体的提起を目指している。主な調査研究実施場所は、フィリピンNGO組織CARDがフィリピンのほぼ全地域に有している支店網のうち、規模の大きいSan Pablo州にある拠点地域の融資対象顧客・企業、および在マニラ日系企業への訪問調査であった。研究調査結果およびその成果は、以下の通りである。多国籍企業の現地での事業活動を通したBOP層の経済的自立化を促す効果は極めて限定的であること、むしろ、現地NGOが行うマイクロファイナンス事業を通したSelf employment形式による事業創出のほうがより効果的であること。そのさい、日系の中小企業のほうがより適切な技術的サポートを適切なタイミングで提供しうることであった。24年度の主要調査は、(1)貧困層に対してマイクロファイナンスの機会を提供することを通して、貧困層の経済的自立化を図る方法と、(2)多国籍企業が現地子会社での事業活動を通して、現地の経営資源が活用され、現地貧困層(BOP)に就業機会と所得の向上を図る方法のどちらが、有効であるのかを実態調査することに置かれてきた。(1)に対しては、現地NGOの協力を得て、現地最大のマイクロファイナンス機関であるCARD MRIにインタビュー調査を2度行った。さらに、このCARD MRIの協力により、マイクロファイナンスを受けているSari Sari Storeを調査する機会を得た。その結果、こうしたサリサリストアで零細事業を行っている多くの女性たちは、経済的自立化に向けてかなり成功しているように思われた。しかしながら、事業形態はあくまで零細事業範疇であり、不安定就業形態を免れてはいない。他方、(2)の場合は、現地に進出している日系企業12社を訪問調査した結果、現地の経営資源が、低賃金労働を除いて、ほとんど活用されていないケースが多くを占めていた。主要な部材の多くは、日本、中国から持ち込まれていた。(1)と(2)の問題意識と課題に対して、調査結果からは、インフォーマルセクターに滞留する多くの人たちが、専門職を身に着けながらいわゆる中間層へと台頭していくメカニズムが(1),(2)双方とも欠落している点であった。
KAKENHI-PROJECT-23402038
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23402038
日系企業のBOP戦略とビジネス生態系モデルに関する研究
調査研究から見えてきたことは、「現地BOPが経済的にいわゆる中間層へと台頭していくメカニズムは、現地NGOと多国籍企業によるコラボレーションのシステムがより有効となる」という点であった。現地NGOに依頼していたアンケート調査の回収作業の遅れと、アンケート回答現地企業数がいまだ予定数に達していないことによる。25年度が最終年度であるため、記入しない。本研究の課題は、基本的に以下の7点である。すなわち、(1)多国籍企業の国際経営戦略とBOP戦略の理論的位置づけと従来の競争戦略論の限界、(2)フィリピン現地企業の自立的経済基盤と多国籍企業との取引構造の解明、(3)貧困削減に果たすフィリピンNGOと経済界(企業)の役割、および両者による協働の現状の分析、(4)企業が共同で設立したNGO「Philippine Business for SocialProgress (PBSP)」の組織構造とガバナンス、同NGOによる貧困削減プログラムの内容、メンバー企業(外資系含む)および受益者となる地域住民との関係の分析、(5)フィリピン最大のマイクロファイナンス機関のCARDの貧農女性自立化プログラムの実態と意義、(6)フィリピンにおける企業・NGO協働の最もすぐれた貧困削減モデルの抽出とそのメカニズムの解明、そして(7)日系企業独自の現地NGOとの協働による貧困削減モデルとしてのビジネス生態系モデルの提示、以上である。以上の7点の主要課題のうち、2011年度、および2012年度は、(1)、(2)、(3)、(4)、そして(5)について、現地調査を踏まえた研究を行ってきた。上記の(4)については、分担研究者の伊藤が、このPBSPと20年ほどの関係を続けており、このプロジェクトチームのリーダーとして貢献している。しかし、PBSPの上部内で伊藤氏と日常的にコミュニケーションをとってきた方が退職したこともあり、同組織内での活動の実態に関する内部情報が入手しにくい状況となってきている。その結果、(4)については現在までの達成度はほぼ50%前後にとどまっている。そのほかの(1)(2)(3)(5)については、計画の70-8の達成度であると認識している。当面の調査研究課題は、現地NGOのCARD MRIとPBSPとの協力関係をいかに深めていくかにある。現地BOP層へのアンケート調査、およびBOP向けビジネスを行っているサリサリストアをはじめとするインフォーマルセクターに従事する人々の生の情報を得るにはこれらNGOの協力なしには困難となる。幸い、分担者の伊藤道夫教授がこれらNGOと深いパイプを有しているので、本研究調査においても一層の協力を要請しているところである。25年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-23402038
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表面吸着種の動的過程における表面電子状態の役割の研究
ナノサイズの物質には固有の量子サイズ効果があり,固体中では得られない新しい電気的あるいは磁気的特性があり,近年,大きな関心が寄せられている。ナノグラファイトはナノサイズのグラフィン(グラファイト単一層)が積層してできているため,フラーレンやナノチューブと異なり,炭素原子の周端(Edge)構造があり,それら周端がこの物質の特異な電子特性と磁気特性をもたらす重要な役割を果たしている。この物質を生かした材料科学の発展のためには,ナノグラフィンの電子構造の詳細な知識を得ること,そして,その電子状態がどのように周端構造に支配されているかを明らかにすることが重要である。周端の領域で考えられる電子状態には,炭素間の結合におけるσ軌道とπ軌道に起因した2種類がある。ナノグラフィンリボンの理論計算では,周端に局在したπバンドが,この物質の電子スピンの新しい起源であることを示す。ナノグラファイトの周端は他の原子に化学吸着され易い。したがって,周端の化学的な変化がナノグラフィンの電子構造にどの程度影響するか知ることは重要である。この情報は,この物質の新奇な特性の起源を探知するためだけではなく,この物質の化学的変化を制御するためにも有効である。本研究では,Pt(111)表面上に生成された60Å程度の平均直径のナノグラフィンの電子構造における重水素の終端効果における電子状態の変化を3光子電子分光および紫外光電子分光で測定した。その結果,ナノグラフィンの重水素による終端が2つのナノグラフィンの電子状態-σ^*電子状態とπ電子状態-にどのように影響するかを示した。ナノグラフィンはサイズが十分に大きいため,エネルギーと分散関係において,固体グラファイトと同様の性質を示しているが,2つの電子状態は重水素による終端に対し強く影響をうけることがわかった。特に,σ^*電子状態はπ電子状態に比べ,周端の化学的変化に非常に敏感であることがわかった。金属表面の表面電子状態は、表面に局在しているため、金属表面での原子・分子の吸着、脱離、解離といった動的過程に大きな役わりを果たすと考えられる。しかし、表面準位と吸着種の動的過程の関係についての研究は少なく、詳細は不明である。本研究は、金属表面上での原子・分子の振る舞いにおける表面電子状態の役割を明らかにすることを目的とする。Pd(111)清浄表面では、フェルミ準位上近傍に表面準位(ショックレー状態)が存在する。この表面準位が原子・分子の吸着によってどのように変化していくか、そのエネルギー準位を測定するために、Pd(111)の清浄化、及び水素などの吸着種分子の超高真空チェンバーへの導入に対し、信頼のおけるガスラインを確保する必要がある。そのため、ターボ分子ポンプによって排気できるガスラインを作製した。超高真空チェンバーへの導入は3ポートとした。ナノサイズの物質には固有の量子サイズ効果があり,固体中では得られない新しい電気的あるいは磁気的特性があり,近年,大きな関心が寄せられている。ナノグラファイトはナノサイズのグラフィン(グラファイト単一層)が積層してできているため,フラーレンやナノチューブと異なり,炭素原子の周端(Edge)構造があり,それら周端がこの物質の特異な電子特性と磁気特性をもたらす重要な役割を果たしている。この物質を生かした材料科学の発展のためには,ナノグラフィンの電子構造の詳細な知識を得ること,そして,その電子状態がどのように周端構造に支配されているかを明らかにすることが重要である。周端の領域で考えられる電子状態には,炭素間の結合におけるσ軌道とπ軌道に起因した2種類がある。ナノグラフィンリボンの理論計算では,周端に局在したπバンドが,この物質の電子スピンの新しい起源であることを示す。ナノグラファイトの周端は他の原子に化学吸着され易い。したがって,周端の化学的な変化がナノグラフィンの電子構造にどの程度影響するか知ることは重要である。この情報は,この物質の新奇な特性の起源を探知するためだけではなく,この物質の化学的変化を制御するためにも有効である。本研究では,Pt(111)表面上に生成された60Å程度の平均直径のナノグラフィンの電子構造における重水素の終端効果における電子状態の変化を3光子電子分光および紫外光電子分光で測定した。その結果,ナノグラフィンの重水素による終端が2つのナノグラフィンの電子状態-σ^*電子状態とπ電子状態-にどのように影響するかを示した。ナノグラフィンはサイズが十分に大きいため,エネルギーと分散関係において,固体グラファイトと同様の性質を示しているが,2つの電子状態は重水素による終端に対し強く影響をうけることがわかった。特に,σ^*電子状態はπ電子状態に比べ,周端の化学的変化に非常に敏感であることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-12740187
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動脈瘤治療用細径カバードステントの開発:プラズマ技術による表面及び薬剤徐放制御
ステントグラフトは,致死的な結果を招く大動脈瘤に対し瘤内への血液を遮断する役割を果たす,血管内治療には重要な医療器具である.本研究では,この医療器具の課題であるエンドリーク(動脈瘤内への血液の再流入)を抑止する方法として,プラズマ技術により表面形状制御」および薬剤徐放制御を融合し,細胞の接着・増殖を制御できる新規材料の開発を目指した.本研究により,ポリマーナノファイバー表面におけるプラズマ処理により、ナノファイバー表面の形状制御および薬剤徐放制御を実現した.またbFGFを含浸させたポリマーナノファイバー不織布上にa-C:H膜をパターニングすることで血管内皮細胞が増殖することを明らかにした.近年注目されているカバードステントを用いた動脈瘤治療の問題点には,血管壁とカバードステントの隙間からの血液再流入(エンドリーク)による動脈瘤の再発やカバー内腔に付着した血栓による内腔の閉塞,カバードステントの構造的な柔軟性の低さのために留置に困難を伴う点が挙げられる.本研究では,ナノファイバー紡糸技術とプラズマ技術によるカバー表面形状制御及び薬剤除法システムの融合により,上記課題を一挙に解決出来る新規カバードステントを開発することを目的としている.当該年度では下記1,2について明らかにした.1.塩基性細胞増殖因子(bFGF)を含浸させたリン脂質ポリマー(MPC)上にダイヤモンドライクカーボン(DLC)をマイクロパターニングすることで薬剤徐放システムを構築した.このシステムは,bFGF徐放が可能であり,医療用金属(SUS316L)に比べ,血小板付着数を95%以上抑制し優れた抗血栓性を示した.また,bFGF徐放性によりbFGFを徐放しない場合に比べ,培養12時間後から試料の内皮細胞被覆率に有意な差がみられ,培養72時間後には内皮細胞の被覆率に約20%の差があらわれた.このことからbFGFによる内皮細胞の増殖性向上が確かめられた.2.溶液濃度を変えたMPC溶液を用いて,エレクトロスピニング(ES)法により直径の違うMPCナノファイバーを作製し,血小板付着試験により抗血栓性を評価した.その結果,ファイバー径の増大に従って,血小板付着数も増加する結果が得られた.これより,ファイバー径が太くなるほど抗血栓性が低下することが明らかになった.当該年度の計画では,DLCをマイクロパターニングしたリン脂質ポリマーへの,bFGF徐放性付与の影響を評価することが目的であった.研究についてはほぼ計画通りサンプル作製,評価を実施できており,おおむね順調に推移していると言える.近年注目されているカバードステントを用いた動脈瘤治療の問題点には、血管とカバードステントの隙間からの血液再流入(エンドリーク)による動脈瘤の再発やカバー内腔に付着した血栓による内腔の閉塞、カバードステントの構造的な柔軟性の低さのために留置に困難をともなう点が挙げられる。本研究は、ナノファイバー紡糸技術とプラズマ技術によるカバー表面形状制御及び薬剤徐放システムの融合により、上記課題を一挙に解決出来る新規カバードステントを開発することを目的としている。当該年度では、下記について明らかにした。1,塩基性線維芽細胞増殖因子(Basic fibroblast growth factor : bFGF)を含浸させたポリウレタン(PU)をエレクトロスピニング法によってナノファイバー化した。PUはジクロロメタン:エタノール=4:6の溶媒に溶解させ、5 wt%のPU溶液を作製した。そこにbFGF100 μg/mLの水溶液を加え、0.1 wt%のbFGFが含まれたPU溶液とした。その結果、平均直径が数百μmのナノファイバー不織布を得た。本研究結果より、bFGFとナノファイバー不織布の組み合わせは血管内皮細胞増殖足場として有効であると確認された。当該年度の計画では、bFGFを含浸したナノファイバー上における、bFGFの徐放および細胞増殖の促進まで進められる予定であった。計画についてはほぼ予定通りサンプル作製、評価を実施できており、予測される結果を得ることができ、おおむね順調に推移していると言える。近年注目されているカバードステントを用いた動脈瘤治療の問題点には、血管とカバードステントの隙間からの血液再流入(エンドリーク)による動脈瘤の再発やカバー内腔に付着した血栓による内腔の閉塞、カバードステントの構造的な柔軟性の低さのために留置に困難をともなう点が挙げられる。本研究は、ナノファイバー紡糸技術とプラズマ技術によるカバー表面形状制御及び薬剤徐放システムの融合により、上記課題を一挙に解決出来る新規カバードステントを開発することを目的としている。当該年度では、下記について明らかにした.1,MPCナノファイバーの血小板付着試験を実施した結果,血小板が付着しているものの,凝集しないことが示された.2, MPCナノファイバーをエレクトロスピニング法によりステントに直接巻き付けることで,カバードステントを試作した.ファイバーの紡糸量を調整することで,カバーの厚さを調節でき,最小8 ±5.5 μmの厚さのカバーを作製し,既存のカバードステントのカバーより10%以下の厚さのカバーの作製に成功した.3,試作したカバードステントの透水量は,カバーの厚さが72.7±4.7 μmのときに,56.6 mL/min/cm2であり,実用可能ラインとされる250 mL/min/cm2以下であった.これより臨床利用されているカバードステントより薄いカバーでありながら,実用可能な血液遮断性能を有するカバードステントの試作に成功した.
KAKENHI-PROJECT-15K06492
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K06492
動脈瘤治療用細径カバードステントの開発:プラズマ技術による表面及び薬剤徐放制御
4,MPCナノファイバーに薬剤を含浸させ,DLC薄膜をマイクロパターニングした基板上において血管内皮細胞の生着と増殖が確認された.ステントグラフトは,致死的な結果を招く大動脈瘤に対し瘤内への血液を遮断する役割を果たす,血管内治療には重要な医療器具である.本研究では,この医療器具の課題であるエンドリーク(動脈瘤内への血液の再流入)を抑止する方法として,プラズマ技術により表面形状制御」および薬剤徐放制御を融合し,細胞の接着・増殖を制御できる新規材料の開発を目指した.本研究により,ポリマーナノファイバー表面におけるプラズマ処理により、ナノファイバー表面の形状制御および薬剤徐放制御を実現した.またbFGFを含浸させたポリマーナノファイバー不織布上にa-C:H膜をパターニングすることで血管内皮細胞が増殖することを明らかにした.次年度はbFGF徐放性抗血栓性ナノファイバーへの作製・評価を第一目的として研究を遂行する.抗血栓性ポリマー溶液にbFGF溶液を混合後,ES法によりナノファイバー化を実施する.作製したbFGF徐放性抗血栓性ナノファイバーのbFGF徐放特性や抗血栓性,内皮細胞増殖性を評価していくことで,最終年度の動物実験につなげていく.次年度は、bFGFを含浸したPUナノファイバーを実際のステントに一体成型することを第一目標として研究を遂行する。エレクトロスピニング法によって、ナノファイバー膜を吹付け、作製されたカバードステントは、耐圧試験、拡張性試験を経て、基準をクリアするよう最適化されたのち、動物実験にてその有効性を確認する。構造・機能材料実験計画修正により物品の購入を繰越した為理由は主に2点ある。1点目は、発表予定であった材料系国際学会において、今回は他研究の発表を実施したため、本研究における発表を次年度に延期した。2点目は、分析機器使用量として予定していた額であるが、予定していたサンプルよりも少量のみ実施できたため、現在のところ予定額より少額に収まった。次年度計画に組み込み,物品購入予定上記2点について、予定通り材料系国際学会において発表を予定しており、さらに作製サンプルについて、引き続き予定していたサンプル数を分析するために計上する予定である。
KAKENHI-PROJECT-15K06492
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K06492
複合要因による損傷を有した鋼・コンクリート接合部の耐荷性能および危険性評価
本研究では,目視できない鋼・コンクリート接合部や定着部を対象に,力学的要因(動的荷重)と環境的要因(鋼材の腐食やコンクリートの乾燥収縮)による損傷度を統一的かつ定量的に評価可能な解析手法の開発を目指す。具体的には,力学的要因と環境的要因による影響を実験から把握すると同時に,それらの要因を統一的な損傷度として評価可能な力学モデルを構築する。さらに,損傷度を変えた接合部の非破壊検査による出力値と残存耐荷性能(実験・解析)の関係性を明らかにし,接合部の余寿命予測手法を提案するとともに,内部損傷に対する補修工法の一種である断面修復注入工法の有用性について検討する。本研究では,目視できない鋼・コンクリート接合部や定着部を対象に,力学的要因(動的荷重)と環境的要因(鋼材の腐食やコンクリートの乾燥収縮)による損傷度を統一的かつ定量的に評価可能な解析手法の開発を目指す。具体的には,力学的要因と環境的要因による影響を実験から把握すると同時に,それらの要因を統一的な損傷度として評価可能な力学モデルを構築する。さらに,損傷度を変えた接合部の非破壊検査による出力値と残存耐荷性能(実験・解析)の関係性を明らかにし,接合部の余寿命予測手法を提案するとともに,内部損傷に対する補修工法の一種である断面修復注入工法の有用性について検討する。
KAKENHI-PROJECT-19K15079
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K15079
ホンコン肺がんおよび鼻咽頭がん患者の嫌気性菌に関する研究
ホンコンでは、わが国と比べ鼻咽頭がんの罹患率が高く、EBウィルスと関係、あるいは塩魚との関係が注目されてきた。しかし、一般集団のEBウィルスへの感染率は日本、ホンコンとも極めて高く、EBウィルスのみでは、日本とホンコンとの差、あるいは発病すめ者としない者の差を説明しきれない。つまり、別の因子の介在している可能性が充分に考えられる。今回、気道内の細菌のプロモ-ション活性に注目して、研究を実施した。ホンコン・バプティスト病院へ通院中の鼻咽頭がん患者5名(男子4名、女子1名、年齢40ー68歳)の鼻咽頭部から粘液を採取、直ちにGAM寒天培地を用い、好気・嫌気両方の条件で37°C、48時間培養を行った。また、コントロ-ルとして、同病院で働く職員を5名(男子3名、女子2名、年齢36ー64歳)選び、鼻咽頭部粘液を同様に培養した。それぞれの培養菌体を一旦凍結乾燥したのち、その溶解物を用い、プロテインキナ-ゼC、^<32>PーATP、Ca、フォスファチジルセリンの存在下で、ヒストンに取り込まれる^<32>Pの量を測定することにより、プロテインキナ-ゼCの活性を観察した。プロテインキナ-ゼCの活性(mU/10μg)は次の通りであった(平均値と標準偏差):鼻咽頭がん患者からの検体の好気培養...20.0 ±11.0鼻咽頭がん患者からの検体の嫌気培養...13.2 ±11.0対照者からの好気培養.........5.18 ±6.16対照者からの嫌気培養.........10.4 ±17.16つまり、好気培養・嫌気培養の結果とも、鼻咽頭がん患者からの菌体の方で高い活性値が認められ、特に好気培養でその傾向が顕著であった。また、ホンコンにおいては、女性の喫煙率が低いにもかかわらず、女性肺がんが高率であり、一般集団での慢性の咳・痰も日本の約10倍と推定されている。そこで慢性痰を有する女性3名の喀痰を37°C、好気および嫌気条件下で48時間培養後、一旦凍結乾燥し、以下の燥作を行い、nonーTPAタイププロモ-タ-であるオカダ酸クラスが示す、プロテインキナ-ゼの活性作用を検討した。すなわち、凍結乾燥菌体を酵素で消化、凍結乾燥後、メタノ-ルで抽出し、その抽出液をジクロロメタン/イソプロパノ-ルに溶解する分画Iと、その沈渣である分画II、さらにメタノ-ル抽出の沈渣をジクロロメタン/イソプロパノ-ルに溶解した分画IIIに分け、酵素活性への影響を観察した。好気培養で発育した菌は、どの分画においてもプロテインキナ-ゼの活性作用であるオカダ酸様作用を示さなかった。しかし、2名から得た嫌気培養発育菌は比較的強い活性(特に分画Iにおいて)を示した。分離同定の結果、その菌はStreptococcus sanguisであることが判明した。以上、鼻咽頭患者の腫瘍部あるいはその近辺から採取した細菌の菌体(あるいはその分泌物)に何らかのプロモ-ション活性を示すものが存在する可能性を示唆する結果を得た。しかし、診断後時間経過の短い患者を選んだが、既にがんが発生した後の鼻咽頭部からの菌の分折であり、がん発生以前の状況は不明のままである。また、ホンコンの肺がん患者10例から喀痰を採取し、凍結乾燥を終えているので、慢性の咳・痰を有する患者の成績と比較すべく、分折を継続中である。ホンコンでは、わが国と比べ鼻咽頭がんの罹患率が高く、EBウィルスと関係、あるいは塩魚との関係が注目されてきた。しかし、一般集団のEBウィルスへの感染率は日本、ホンコンとも極めて高く、EBウィルスのみでは、日本とホンコンとの差、あるいは発病すめ者としない者の差を説明しきれない。つまり、別の因子の介在している可能性が充分に考えられる。今回、気道内の細菌のプロモ-ション活性に注目して、研究を実施した。ホンコン・バプティスト病院へ通院中の鼻咽頭がん患者5名(男子4名、女子1名、年齢40ー68歳)の鼻咽頭部から粘液を採取、直ちにGAM寒天培地を用い、好気・嫌気両方の条件で37°C、48時間培養を行った。また、コントロ-ルとして、同病院で働く職員を5名(男子3名、女子2名、年齢36ー64歳)選び、鼻咽頭部粘液を同様に培養した。それぞれの培養菌体を一旦凍結乾燥したのち、その溶解物を用い、プロテインキナ-ゼC、^<32>PーATP、Ca、フォスファチジルセリンの存在下で、ヒストンに取り込まれる^<32>Pの量を測定することにより、プロテインキナ-ゼCの活性を観察した。プロテインキナ-ゼCの活性(mU/10μg)は次の通りであった(平均値と標準偏差):鼻咽頭がん患者からの検体の好気培養...20.0 ±11.0鼻咽頭がん患者からの検体の嫌気培養...13.2 ±11.0対照者からの好気培養
KAKENHI-PROJECT-02042001
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02042001
ホンコン肺がんおよび鼻咽頭がん患者の嫌気性菌に関する研究
.........5.18 ±6.16対照者からの嫌気培養.........10.4 ±17.16つまり、好気培養・嫌気培養の結果とも、鼻咽頭がん患者からの菌体の方で高い活性値が認められ、特に好気培養でその傾向が顕著であった。また、ホンコンにおいては、女性の喫煙率が低いにもかかわらず、女性肺がんが高率であり、一般集団での慢性の咳・痰も日本の約10倍と推定されている。そこで慢性痰を有する女性3名の喀痰を37°C、好気および嫌気条件下で48時間培養後、一旦凍結乾燥し、以下の燥作を行い、nonーTPAタイププロモ-タ-であるオカダ酸クラスが示す、プロテインキナ-ゼの活性作用を検討した。すなわち、凍結乾燥菌体を酵素で消化、凍結乾燥後、メタノ-ルで抽出し、その抽出液をジクロロメタン/イソプロパノ-ルに溶解する分画Iと、その沈渣である分画II、さらにメタノ-ル抽出の沈渣をジクロロメタン/イソプロパノ-ルに溶解した分画IIIに分け、酵素活性への影響を観察した。好気培養で発育した菌は、どの分画においてもプロテインキナ-ゼの活性作用であるオカダ酸様作用を示さなかった。しかし、2名から得た嫌気培養発育菌は比較的強い活性(特に分画Iにおいて)を示した。分離同定の結果、その菌はStreptococcus sanguisであることが判明した。以上、鼻咽頭患者の腫瘍部あるいはその近辺から採取した細菌の菌体(あるいはその分泌物)に何らかのプロモ-ション活性を示すものが存在する可能性を示唆する結果を得た。しかし、診断後時間経過の短い患者を選んだが、既にがんが発生した後の鼻咽頭部からの菌の分折であり、がん発生以前の状況は不明のままである。また、ホンコンの肺がん患者10例から喀痰を採取し、凍結乾燥を終えているので、慢性の咳・痰を有する患者の成績と比較すべく、分折を継続中である。
KAKENHI-PROJECT-02042001
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02042001
NK細胞のリステリア感染における役割と2本鎖RNAによる感染抵抗性増強機構の解明
これまでNK細胞は感染後Interferon-γを多量に産生することから、細胞内寄生細菌(リステリア)に対して防御的に働いていると考えられていたが、実際は増悪的に働くこと、また逆にPolyI:Cを投与するとリステリアに対する感染抵抗性が増大するだけでなく、そこにNK細胞が深く関与していることが明らかとなった。このように、本研究はこれまでの既成概念を打ち破るだけでなく、細胞内寄生細菌感染におけるNK細胞の新たな役割を明らかにしたという点において、細菌学、更には免疫学の発展に寄与するところが極めて大である。これまでNK細胞は感染後Interferon-γを多量に産生することから、細胞内寄生細菌(リステリア)に対して防御的に働いていると考えられていたが、実際は増悪的に働くこと、また逆にPolyI:Cを投与するとリステリアに対する感染抵抗性が増大するだけでなく、そこにNK細胞が深く関与していることが明らかとなった。このように、本研究はこれまでの既成概念を打ち破るだけでなく、細胞内寄生細菌感染におけるNK細胞の新たな役割を明らかにしたという点において、細菌学、更には免疫学の発展に寄与するところが極めて大である。これまでの研究において、ナチュラルキラー(NK)細胞(細胞表面にNK1.1分子を発現する)は感染後速やかにインターフェロン-γを産生することから、リステリア感染に対する防御に必須であると考えられていた。しかし、NK1.1を発現する細胞には、NK細胞だけでなく、NKT細胞も存在することから、どちらの細胞あるいは両細胞がリステリア感染に対して防御的に働くのかについては明らかではなかった。本研究では、NK細胞のリステリア感染症における真の役割を明らかにするため、各種遺伝子欠損マウスおよび/または各種抗体を用いてNK細胞を消失させたマウスにリステリアを感染し、感染抵抗性を比較検討すると共に、その機構を細胞・分子・タンパクレベルで明らかにした。即ち、(1)iNKT細胞欠損(Jα18-/-・β2m-/-・RAG-1-/-)マウス、NK細胞・invariant NKT細胞欠損(IL-15-/-)マウス、高濃度の抗アシアロGM1抗体によりNK細胞を消失させた(Jα18-/-・C57BL/6)マウス、抗NK1.1抗体によりNK1.1+細胞を消失させた(J・α18-/-・β2m-/-・RAG-/-・IL-15-/-・C57BL/6)マウス、並びにコントロール(C57BL/6)マウスにListeria monocytogenes(EGD株)を感染し、感染抵抗性(生存率・臓器内菌数)、標的臓器の病理学的変化、標的臓器に存在・集積する各種細胞の動態を測定した。その結果、予想に反し、NK細胞非存在下において、リステリアに対する感染抵抗性の増大すること、並びに臓器障害が亢進することが明らかとなった。このことは、これまでの既成概念が間違っていること、即ちNK細胞はリステリア感染に対して増悪的に作用していることを示唆している。昨年度は、各種遺伝子欠損マウスおよび/または各種抗体を用いてNK細胞を消失させたマウスにListeria monocytogenes (EGD株)を感染し、感染抵抗性並びに標的臓器における肉眼的並びに病理学的解析を行った。そこで本年度は、NK細胞のリステリア感染症における真の役割を明らかにするため、各種遺伝子欠損マウスおよび/または各種抗体を用いてNK細胞を消失させたマウスにListeria monocytogenes (EGD株)を感染し、血液中並びに標的臓器のサイトカイン産生量、および標的臓器に存在または集積する細胞の動態を解析した。その結果、NK細胞が存在している状態と比べて、NK細胞の存在しない状態では、予想通り血液中のインターフェロン-γのレベル並びに標的臓器におけるインターフェロン-γ産生細胞数が著しく減少することが明らかとなった。また、リステリア感染前後における標的臓器内に存在あるいは集積してくる炎症性細胞数を比較したところ、NK細胞の存在しない状態のほうが、NK細胞の存在する状態よりも炎症性細胞の数が有意に減少していること、並びにNK細胞の存在しない状態では、樹状細胞と思われる非常にユニークな細胞の出現してくることが明らかとなった。これらのことは、これまでNK細胞が多量にインターフェロン-γを産生することにより、細胞内寄生細菌感染症に対する防御に重要な働きをしているという既成概念を覆すだけでなく、NK細胞から産生されるインターフェロン-γは細胞内寄生細菌感染に対しては重要な役割をしていないことを強く示唆している。以上のことから、本研究は、細菌学、更には免疫学の発展に寄与するところが極めて大である。昨年度は、各種遺伝子欠損マウスおよび/または各種抗体を用いてNK細胞を消失させたマウスにListeria monocytogenes (EGD株)を感染し、感染抵抗性並びに標的臓器の肉眼的並びに病理学的変化を比較検討すると共に、その機構を細胞・タンパクレベルで明らかにした。また、NK細胞の活性化剤として知られているPolyI:Cをマウスに投与すると、逆にリステリアに対する感染抵抗性の増強することも明らかにした。そのため、本年度は、NK細胞を活性化するPolyI:Cを投与することにより認められるリステリア感染抵抗性増強機構を、各種遺伝子欠損マウスおよび/または各種抗体を用いてNK細胞を消失させたマウスを用いて細胞・タンパクレベルで検討した。
KAKENHI-PROJECT-22590388
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22590388