title
stringlengths 0
199
| text
stringlengths 3
3.18k
| id
stringlengths 23
32
| url
stringlengths 56
65
|
---|---|---|---|
光磁気ディスクに収納した医療画像情報の職域健康管理への実用性に関する研究 | 1.じん肺画像のCRTモニタ上での読影実験じん肺の有所見者39名の画像データベース(平成6年度作成)に基づいて読影実験を行った。実験はランダムに取り出したフィルム1枚づつを診断した場合と個人のフィルムを経年的に診断した場合をモニタ上で比較した。これについては後に述べる読影機器やソフトウェアが十分であれば診断精度には大きな変化が認められないことを確認した。2.CRTモニタでの読影における画像表示機能の検討CRTモニタ上で画像を読影する際にどのような機能が必要か検討した。複数ウィンドウ表示、複数画像のアニメーション表示、ガンマ値の変更、反転などを検討した。その結果総合的にアニメーション表示よりは高速の複数画像表示が実用的であった。また、ガンマ値の変更はリアルタイムに変化を確認できる必要があった。反転はガンマ機能がよければそれほど有用性はないことがわかった。3.画像データベースの利用を補助する画像印刷システムの開発画像データベースを実用的に運用することを検討した際常に問題となるのは画像の確認がスピーディに行えないことであった。また、複数スタッフで大量の画像情報を扱うためには単一メディアを共用するような運用では実用上問題のあることがわかった。その対策として、一度データベース化した画像を必要な基本情報とともに縮小印刷して画像のカタログを作成し、メディアと対応させて利用することでこの問題を克服できることがわかった。4.産業保健現場で利用可能なじん肺画像データベース及び読影システムの提案今回の研究により元画像の品質が保証されていれば、パソコンでも十分に画像診断が行えることがわかった。ただし、今回開発した画像の縮小印刷のような運用上の工夫が必要で、これらと組み合わせることで産業保健の現場でも実用可能な総合システムが運用可能である。1.じん肺画像のCRTモニタ上での読影実験じん肺の有所見者39名の画像データベース(平成6年度作成)に基づいて読影実験を行った。実験はランダムに取り出したフィルム1枚づつを診断した場合と個人のフィルムを経年的に診断した場合をモニタ上で比較した。これについては後に述べる読影機器やソフトウェアが十分であれば診断精度には大きな変化が認められないことを確認した。2.CRTモニタでの読影における画像表示機能の検討CRTモニタ上で画像を読影する際にどのような機能が必要か検討した。複数ウィンドウ表示、複数画像のアニメーション表示、ガンマ値の変更、反転などを検討した。その結果総合的にアニメーション表示よりは高速の複数画像表示が実用的であった。また、ガンマ値の変更はリアルタイムに変化を確認できる必要があった。反転はガンマ機能がよければそれほど有用性はないことがわかった。3.画像データベースの利用を補助する画像印刷システムの開発画像データベースを実用的に運用することを検討した際常に問題となるのは画像の確認がスピーディに行えないことであった。また、複数スタッフで大量の画像情報を扱うためには単一メディアを共用するような運用では実用上問題のあることがわかった。その対策として、一度データベース化した画像を必要な基本情報とともに縮小印刷して画像のカタログを作成し、メディアと対応させて利用することでこの問題を克服できることがわかった。4.産業保健現場で利用可能なじん肺画像データベース及び読影システムの提案今回の研究により元画像の品質が保証されていれば、パソコンでも十分に画像診断が行えることがわかった。ただし、今回開発した画像の縮小印刷のような運用上の工夫が必要で、これらと組み合わせることで産業保健の現場でも実用可能な総合システムが運用可能である。本年度の計画目標である各項目において以下のような進展をみた。1.じん肺画像データベースの作成(八幡)対象はじん肺職場に従事する作業者のうちから30名を抜き出し、既設の画像入力用システムでデジタル化してIS&Cに保管した。次いで、バックグラウンドの違いやノイズを処理して撮影条件による差を自動的に補正した。その際に長期間に渡るフィルムを対象としたためにフィルム一枚一枚がフィルム材質や撮影条件が異なっていた。そのため画像処理条件と共にIS&Cに記録した。ついで、パソコン(AppleMacintosh)で解析に必要な健診データや職歴データなどを合わせて入力し、じん肺症例データベースを作成した。この際情報入力の高速化のためにインターフェイスユニットを本予算より購入した。2.読影用コンピューターシステムデザイン(八幡、津田)読影システムとしてパソコン(Apple Macintosh)を用いることとした。これは一つにはユーザーインターフェイスがよいことと画像処理用のソフトウェアが充実していたからである。また、画像利用を光磁気ディスク以外でも可能にするためのプリンタとしてカラープリンタを用いた。これによりコンピューターを利用せずに画像データベースを概観できるようになった。3.至適画像条件の調整(東、津田、織田、八幡)まず、IS&C利用ソフトとして研究用IS&Cシステムを用い、これでIS&Cからパソコン用のフォーマットに変換してPhotoshopなどの画像処理ソフトで至極条件を検討した。その結果画面表示用とプリンタ出力用ののガンマ補正を始めとする画像利用のための画像処理方法を開発した。4.小規模の読影比較実験(東、津田、舟谷)以上環境を整備した後に従来のフィルムによる診断とCRTによる診断の比較検討を行ない、ROC解析を行なった。その結果未処理の画像の比較では診断精度はやや劣るものの、画像処理を加えて見やすくした画像の診断精度はほぼ同等であった。ただし、この画像処理手法の選択にやや手間取るため、処理手法の自動化及び選択が必要である事がわかった。平成6年及び7年の当研究において本年度得られた研究成果について報告する。 | KAKENHI-PROJECT-06670441 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06670441 |
光磁気ディスクに収納した医療画像情報の職域健康管理への実用性に関する研究 | 1.じん肺画像のCRTモニタ上での読影実験じん肺の有所見者39名の画像データベース(平成6年度作成)に基づいて読影実験を行った。実験はランダムに取り出したフィルム1枚づつを診断した場合と個人のフィルムを経年的に診断した場合をモニタ上で比較した。これについては後で述べる読影機器やソフトウェアが十分であれば診断精度には大きな変化が認められないことを確認した。2.CRTモニタでの読影における画像表示機能の検討CRTモニタ上で画像を読影する際にどのような機能が必要か検討した。複数ウィンドウ表示、複数画像のアニメーション表示、ガンマ値の変更、反転などを検討した。その結果総合的にアニメーション表示よりは高速の複数画像表示が実用的であった。また、ガンマ値の変更はリアルタイムに変化を確認できる必要があった。反転はガンマ機能がよければそれほど有用性はないことがわかった。3.画像データベースの利用を補助する画像印刷システムの開発画像データベースを実用的に運用することを検討した際常に問題となるのは画像の確認がスピーディに行えないことであった。また、複数スタッフで大量の画像情報を扱うためには単一メディアを共用するような運用では実用上問題のあることがわかった。その対策として、一度データベース化した画像を必要な基本情報とともに縮小印刷して画像のカタログを作成し、メディアと対応させて利用することでこの問題を克服できることがわかった。4.産業保健現場で利用可能なじん肺画像データベース及び読影システムの提案今回の研究により元画像の品質が保証されていれば、パソコンでも十分に画像診断が行えることがわかった。ただし、今回開発した画像の縮小印刷のような運用上の工夫が必要で、これらと組み合わせることで産業保健の現場でも実用可能な総合システムが運用可能である。 | KAKENHI-PROJECT-06670441 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06670441 |
低周波交流磁場に対するゾウリムシの環境応答-膜チャネルの共鳴メカニズム- | 前年度までの研究により,ゾウリムシは多様な環境要因に対し,敏感な応答を示すことが明らかになってきた.特に,複数のゾウリムシが相互作用することによる,ゾウリムシ間の相互作用の解明が,外来の環境刺激への応答性を解析する上で,必要不可欠であることが分かった.そこで私たちは,細長いチューブ状のリングの中にゾウリムシを入れ,その行動を解析した.この環境は,一次元的な周期境界条件下でのゾウリムシの行動解析を可能とするものである.この設定により,ゾウリムシは,ある一定の臨界密度以上になると,外来の刺激無しでも自発的に集合を始めることが明らかになった.ゾウリムシが密集している領域では,ゾウリムシは典型的な集団的運動を示すことが分かった.私たちは,ゾウリムシの速度分布や遊泳方向の転換頻度を調べることにより,ゾウリムシの転換頻度の制御がゾウリムシの密集状態を安定させること,及び速度の加速が密集の不安定性の引き金になることを明らかにした.これら2つの競合する効果が,集団的運動の自発的ダイナミックスを説明するために有用と思われる.私たちは,遊泳する細胞の集団的運動に内在するメカニズムを明らかにするために,確率論的モデルを提案した。生活環境レベルの(非電離)電磁場が多細胞生物の細胞活動に影響を与えていることは確立された知見である.細胞レベルの知見と生物個体への影響の乖離を埋めるため,単細胞生物であるゾウリムシはストレス影響を個体の行動として示す点でモデル生物として最適である.現在,磁場のゾウリムシへの影響を調べるための,実験装置開発と予備実験を行っている.予備実験では,曝露装置を曝露用とコントロール用に2つ組み、その環境でリアルタイムの画像解析が出来るように顕微鏡をセットアップしている.この装置では、35mmφディッシュを磁場中に置くことができ、円筒形コイル中央付近では、内部の磁場強さをコイルに流れる電流値から計算可能であり、そのメリットを最大限に生かすために我々の装置ではディッシュがコイルの中央付近に位置するようにしてある。また、温度はディッシュにできるだけ近い部分で計測できるように熱電対を用い,外部で定期的に温度計測できる。現在,ゾウリムシに対する磁場曝露装置と画像解析プログラムが完成し,磁場ストレスの生体影響に関する予備実験を行っている.様々なパラメーターの中で,もっとも安定して再現性よくデータが取れる条件を,試行錯誤しながら探っているところである.また,磁場の生体影響に関する各種,最新文献のレビューを行い,その結果は研究発表欄にある解説論文で発表をしている.これらの知見も,今後のゾウリムシ研究で活かす予定である.ゾウリムシをはじめとする指標生物一般の環境応答を定量的に記述するためには、環境応答としての個体行動の変化を、客観的な指標で記述する必要がある。そこで,昨年度開発したデジタル画像処理技術を用いた画像解析プログラムを用いて、ゾウリムシの行動を詳細に調べた.特に、低周波交流磁場に対する応答の予備実験として、ゾウリムシの集団行動の効果を調べた。すなわち、ゾウリムシの個体密度、及びその密度変化と、ゾウリムシの遊泳速度分布、平均速度、方向転換の頻度を調べ始めた。現在、多様な条件下で、統計的に意味のあるデータをとり続けているところである。これらのデータは、低周波交流磁場に対するゾウリムシの環境応答を記述する際の基礎データとなる。一方、環境電磁場の生体への影響をリスク論的に議論するためには、日常生活環境中における電磁場曝露強度を明らかにしておく必要がある。そこで、携帯電話から発生する高周波電磁波(マイクロ波)の受動被曝強度を、実験およびコンピュータを用いた数値実験により明らかにした。この結果は、日常生活環境中における受動被曝強度が、旧来想定されてきたものより何桁も高いレベルに達しうること、および、反射効果によって、ホットスポットと呼ばれる局所的に高い強度領域が生じうることを示した。マイクロ波は、生活環境中電磁場のバックグラウンドとして、in vivoのゾウリムシ実験の際も影響を与えているものであり、ゾウリムシの低周波交流磁場実験を行う際にも、基礎データとなる。前年度までの研究により,ゾウリムシは多様な環境要因に対し,敏感な応答を示すことが明らかになってきた.特に,複数のゾウリムシが相互作用することによる,ゾウリムシ間の相互作用の解明が,外来の環境刺激への応答性を解析する上で,必要不可欠であることが分かった.そこで私たちは,細長いチューブ状のリングの中にゾウリムシを入れ,その行動を解析した.この環境は,一次元的な周期境界条件下でのゾウリムシの行動解析を可能とするものである.この設定により,ゾウリムシは,ある一定の臨界密度以上になると,外来の刺激無しでも自発的に集合を始めることが明らかになった.ゾウリムシが密集している領域では,ゾウリムシは典型的な集団的運動を示すことが分かった.私たちは,ゾウリムシの速度分布や遊泳方向の転換頻度を調べることにより,ゾウリムシの転換頻度の制御がゾウリムシの密集状態を安定させること,及び速度の加速が密集の不安定性の引き金になることを明らかにした.これら2つの競合する効果が,集団的運動の自発的ダイナミックスを説明するために有用と思われる.私たちは,遊泳する細胞の集団的運動に内在するメカニズムを明らかにするために,確率論的モデルを提案した。 | KAKENHI-PROJECT-17654082 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17654082 |
超臨界CO_2中における遷移金属錯体分子のダイナミクスのNMR法による研究 | まず初年度に、自作の^<129>Xe NMR用の高圧高分解能NMRプローブに改良を加え,超臨界CO_2(臨界温度31.0°C,臨界圧72.9atm)の条件で使用できる温度可変(-70+150°C)のin situ固体高圧(200気圧)高分解能NMRプローブを設計・製作した.プローブの性能を確認するためにBruker MSL-200NMR装置を使用し,ミクロポアーやメソポアーをもつ多孔質触媒中の超臨界Xe(T_c=289.8K, P_c=5.8MPa, ρ_c=1.15gcm^<-3>)のNMR測定を行った.この実験法は吸着力が弱い系にも適用できるので、種々のポリマー中の自由体積(ミクロ細孔)の大きさを^<129>Xe NMRにより決定した。これらの細孔径は陽電子消滅法から求められた値とよい相関があることがわかった。次に、典型的なメソ細孔物質FSM-16の細孔径dが1.9,2.7,4.1nmの試料について^<129>Xe化学シフトの圧力依存性を測定した。d=1.9nmの場合、約2MPaから細孔壁と強く相互作用する成分と比較的自由に動ける成分がはっきり分離して観測された。d=4.1nmの場合は、バルクに類似した挙動で、単一の成分しか観測されない。d=2.7nmの場合には中間的な挙動を示し、臨界現象が起こるためにはこの程度の空間が必要であることが示唆された。また細孔内外の交換速度を^<129>Xeの二次元交換NMRで調べた。さらに、試料の形状や水分が吸着挙動に与える影響を定量的に調べるために、細孔径1.0nmのモレキュラーシーブ13Xおよび細孔径0.5nmの5Aの試料について、Xeの臨界点付近での吸着挙動を調べ、両者の吸着特性を比較検討した。まず初年度に、自作の^<129>Xe NMR用の高圧高分解能NMRプローブに改良を加え,超臨界CO_2(臨界温度31.0°C,臨界圧72.9atm)の条件で使用できる温度可変(-70+150°C)のin situ固体高圧(200気圧)高分解能NMRプローブを設計・製作した.プローブの性能を確認するためにBruker MSL-200NMR装置を使用し,ミクロポアーやメソポアーをもつ多孔質触媒中の超臨界Xe(T_c=289.8K, P_c=5.8MPa, ρ_c=1.15gcm^<-3>)のNMR測定を行った.この実験法は吸着力が弱い系にも適用できるので、種々のポリマー中の自由体積(ミクロ細孔)の大きさを^<129>Xe NMRにより決定した。これらの細孔径は陽電子消滅法から求められた値とよい相関があることがわかった。次に、典型的なメソ細孔物質FSM-16の細孔径dが1.9,2.7,4.1nmの試料について^<129>Xe化学シフトの圧力依存性を測定した。d=1.9nmの場合、約2MPaから細孔壁と強く相互作用する成分と比較的自由に動ける成分がはっきり分離して観測された。d=4.1nmの場合は、バルクに類似した挙動で、単一の成分しか観測されない。d=2.7nmの場合には中間的な挙動を示し、臨界現象が起こるためにはこの程度の空間が必要であることが示唆された。また細孔内外の交換速度を^<129>Xeの二次元交換NMRで調べた。さらに、試料の形状や水分が吸着挙動に与える影響を定量的に調べるために、細孔径1.0nmのモレキュラーシーブ13Xおよび細孔径0.5nmの5Aの試料について、Xeの臨界点付近での吸着挙動を調べ、両者の吸着特性を比較検討した。1.当研究室自作の^<129>Xe NMR用の温度可変(-40+80°C)のin situ固体高圧(50気圧)高分解能NMRプローブに改良を加え,超臨界CO_2(臨界温度31.0°C,臨界圧72.9atm)の条件で使用できる温度可変(-70+150°C)のin situ固体高圧(200気圧)高分解機能NMRプローブを設計・製作した.プローブヘッドの断熱シールにはガラス製のデュワーを用いた.ジルコニア製の耐圧セルとCu-Be合金のフランジとの接続のo-リングはインジューム線を使用した.この高圧NMRプローブについて『大阪大学低温センターだより』で報告し,論文をJ.Magn.Reson.に投稿準備中である.2.Bruker MSL-200NMR装置を使用し,ミクロポアーやメソポアーをもつ多孔質触媒中の超臨界Xe(T_c=289.8 K,P_c=5.8 MPa,ρ_c=1.15g cm^<-3>)のNMR測定を行った。まず細孔径2.7nmのFSM-16の^<129>Xe NMRをP=0-10MPa,T=291-323Kの範囲で測定した.各温度において、Xeガスおよび吸着されたXeに対応する2本の共鳴線が観測された。 | KAKENHI-PROJECT-11440176 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11440176 |
超臨界CO_2中における遷移金属錯体分子のダイナミクスのNMR法による研究 | 291Kの場合,Xeガスの化学シフトは,低圧では密度にほぼ比例して緩やかに変化するが、臨界圧力近傍では急激な密度の上昇に伴い,低磁場側へ大きくシフトする.細孔内のXeの化学シフトはXeガスとは異なり,圧力依存性が弱く緩やかな増加を示す.メソ細孔内の実効圧力よりも高いと考えられる.吸着Xeの線形は,臨界圧以下の約2MPaから非常に複雑な圧力依存性を示すことがわかった。323Kの場合,Xeガスおよび吸着Xeの化学シフトは共に,圧力依存性が弱く緩やかな増加を示す.これは,高温で密度が減少するに伴って主としてXeどうしの相互作用が減少することを示唆している。1.本研究課題で製作したin situ固体高圧(200気圧)高分解能NMRプローブを用いて、種々のポリマー中の自由体積(ミクロ細孔)の大きさを^<129>Xe NMRにより決定した。これらの細孔径は陽電子消滅法から求められた値とよい相関があることがわかった。以上の結果をまとめて2編の論文を発表した。(次ページ参照)2.上で述べたように、^<129>Xe NMRは、ミクロ細孔物質の細孔構造や吸着特性を調べるための有力な手段である。しかし、これまでメソ細孔物質に適用した例はほとんどなく、特に超臨界流体下での研究はない。本研究では、Xeの超臨界流体領域におけるメソ細孔内Xeの動的挙動の細孔径依存性と臨界現象の有無を調べるために、典型的なメソ細孔物質FSM-16の細孔径dが1.9,2.7,4.1nmの試料について^<129>Xe化学シフト(δ)の圧力依存性を測定した。また細孔内外の交換速度を調べるために^<129>Xeの二次元交換NMRを測定した。細孔内Xeの化学シフトは細孔の大きさによって特異的な振舞を示す。d=1.9nmの場合、細孔内のXeの化学シフトは低圧領域で圧力依存性が強くなっており、大きく低磁場側ヘシフトする。吸着力が強いゼオライトなどのミクロ細孔物質ではこれと似た傾向が見られる。約2MPaから線幅が徐々にブロードになり、shoulderが現れる。この線形は二つのローレンツ型の成分の重ね合わせと考えることができる。圧力が高くなるにつれて、細孔壁と強く相互作用する成分と比較的自由に動ける成分がはっきり分離して観測されるからである。d=4.1nmの場合は、バルクに類似した挙動で、単一の成分しか観測されない。d=2.7nmの場合には中間的な挙動を示し、臨界現象が起こるためにはこの程度の空間が必要であることが示唆された。この結果をまとめて、現在投稿論文を準備中である。モレキュラーシーブは典型的なゼオライトで、ミクロ細孔を有する。今回、細孔径1.0nmのモレキュラーシーブ13Xおよび細孔径0.5nmの5Aの粉末脱水試料に吸着されたXeの臨界点付近での吸着挙動を、本研究課題で製作したin situ固体高圧(200気圧)高分解能NMRプローブを用いて調べ、両者の吸着特性を比較検討した。モレキュラーシーブ13Xの脱水粉末試料に吸着されたXeの129Xe NMRではfree Xe gasおよび吸着されたXeに対応する共鳴線がそれぞれ高磁場側と低磁場側に観測され、特徴的な化学シフトの圧力依存性を示す。5A試料の場合、吸着されたXeに由来するピークの化学シフトの圧力依存性から、Langmuir型の均一な吸着が起こっていると考えられる。一方、13X試料の場合は、圧力依存性はLangmuir型ではうまく記述できなかった。freeXe gasのピークは、両方の試料とも6MPa付近で低磁場にシフトする度合いが強くなるが、これはXeの臨界圧が6MPa付近であることに起因する。つぎに、13Xの場合、低圧側では見られなかった新たなブロードなピークが4MPa付近から現れた。このピークは、圧力が高くなるにつれて高磁場側にシフトし、Xeの臨界点付近からは、低磁場側にシフトした。また線形は高圧になるにつれてシャープになった。この現象は、細孔の内外のXeの交換スピードが速くなり、4MPaくらいからその交換ピークが観測されるためであると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-11440176 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11440176 |
ニューロコンピューティングによる鉱物処理プロセスのオンライン制御 | 学習能力を有する関数としての観点によりニューラルネットワーク(ANN)によるプロセス制御の可能性を探るために、(1)ANN演算に適したプログラミング言語環境、(2)ANNの学習方法、(3)ANNによるプロセス特性の掌握法、(4)ANNによるプロセス制御法についての検討をおこなった。(1)については、大量データの処理が可能で、高速な配列演算子が用意されたプログラミング言語の開発に成功した。(2)については、数値演算に適するように階層型ANNの計算式を統合・整理することができた。同時にANNのパラメータや学習方法のオプションを検討し、逐次モーメント法がANNの学習にとって効果的であることを見いだした。(3)については、プロセスの動特性を直接学習する試みと、プロセスの特性値を推論するANNの開発をおこなった。前者は、必ずしも安定解に到達し得ず、今後の研究課題となった。後者で、は観測ノイズによる攪乱を除いてほぼ良好な成果が得られた。(4)については、既存の制御器の特性を学習する方法と、プロセスの逆モデルを利用する方法について研究した。前者は、制御特性の向上のための有効な打開策が得られなかった。後者では、適当な参照モデルを用意することによって最適制御ができることが分かった。以上の成果により、ニューロコンピューティングによる鉱物処理プロセスのオンライン制御を実現するための手法と知識が得られた。学習能力を有する関数としての観点によりニューラルネットワーク(ANN)によるプロセス制御の可能性を探るために、(1)ANN演算に適したプログラミング言語環境、(2)ANNの学習方法、(3)ANNによるプロセス特性の掌握法、(4)ANNによるプロセス制御法についての検討をおこなった。(1)については、大量データの処理が可能で、高速な配列演算子が用意されたプログラミング言語の開発に成功した。(2)については、数値演算に適するように階層型ANNの計算式を統合・整理することができた。同時にANNのパラメータや学習方法のオプションを検討し、逐次モーメント法がANNの学習にとって効果的であることを見いだした。(3)については、プロセスの動特性を直接学習する試みと、プロセスの特性値を推論するANNの開発をおこなった。前者は、必ずしも安定解に到達し得ず、今後の研究課題となった。後者で、は観測ノイズによる攪乱を除いてほぼ良好な成果が得られた。(4)については、既存の制御器の特性を学習する方法と、プロセスの逆モデルを利用する方法について研究した。前者は、制御特性の向上のための有効な打開策が得られなかった。後者では、適当な参照モデルを用意することによって最適制御ができることが分かった。以上の成果により、ニューロコンピューティングによる鉱物処理プロセスのオンライン制御を実現するための手法と知識が得られた。近年の計算機のハ-ドウェア面についての急激な進歩に伴い、新たなソフトウェア技術が萌芽を始めている。ファジイ制御やエキスパ-トシステムなどはごく最近になってその実用性が認められるようになった。さらに、ニュ-ラルネットワ-クの理論が現実的になったのもここ数年のことである。一方、鉱物処理プロセスのように複雑な系の制御はこれまでの制御技術では容易ではなく、部分的な制御や現場の経験と勘によるマニュアル調整程度の処理しかおこなわれていなかった。この状態は、資源が豊潤な環境にあってはある程度容認されるものであったが、低品位または難処理資源を対象にしなければならない今後の資源処理プロセスにとっては、計算機による総合的なプロセス制御が必要不可欠なものとなってくる。そこで、ニュ-ラルネットワ-クを中心として制御技法による鉱物処理のプロセスのオンライン制御の研究を試みている。本年の研究では、如何にすればニュ-ラルネットワ-クに最適なプロセス制御方法を学習させられるかを検討した。特に、マニュアルによる教育ではなく、プロセス応答から自動的に学習をおこなうシステムを実現するためのネットワ-ク構造についての検討をおこなった。その結果、プロセス制御を実現する技術を除々に確立されつつある。近年の急速なコンピュ-タの普及などの要因により、鉱物処理プロセスでのコンピュ-タ制御の充実が妥当性をもつようになってきた。しかしながら選鉱工場のプロセスは複雑であり、コンピュ-タ制御を導入することは必ずしも容易ではない。そこで、コンピュ-タ制御を現場に導入するために学習機能を持つ制御機構の開発研究が緊急の課題であると考えられる。本研究では、複合化されたプロセスで構成されている選鉱工場にニュ-ラルネットワ-クによる学習機能を持つ制御機構を導入するための理論と技法についての研究を進めている。昨年度までの研究ではパ-ソナルコンピ-タ上に構築されたニュ-ラルネットワ-クが適切な学習環境を与えられることにより制御能力を獲得し得ることが確認された。本年度の研究では、制御状態の評価量に基づいて制御機構としてのニュ-ラルネットワ-クに適切な教師信号を与えるための機構について検討した。制御状態の課価量それ自体は制御の質の是非の基準ではあるが、制御器の修正方向を示すものではない。従来、ニュ-ラルネットワ-クに対して正しいあるいは適切であると考えられる(この場合には制御動作)信号を与えることで学習をさせてきた。ところが多くの制御ではこのように理想的な教師信号を得ることは不可能である。そこで状態評価量と前回の修正量との組み合わせによって次回の修正量を決定する手法を考えた。現在、この手段で逐次的にニュ-ラルネットワ-クの学習を進行させることに成功しているが、学習速度に問題が残っている。本年度はニューラルネットワーク(ANN)によるプロセス制御の可能性を探る研究をおこなった。 | KAKENHI-PROJECT-02452226 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02452226 |
ニューロコンピューティングによる鉱物処理プロセスのオンライン制御 | この研究で(1)ANNによるプロセス特性の掌握法、(2)ANNによるプロセス制御法、についての検討をおこなった。(1)については、プロセスの動特性を直接学習する試みと、プロセスの特性値を推論できるような複合化させたANNを開発する研究とをおこなった。前者に関しては必ずしも安定解に到達し得ないことが明かとなり、新たなANNの構成法についての研究・開発が必要である。後者についてはある程度の成果を納めることができたが、観測ノイズによる誤認についての対策を検討すべきことが分かった。(2)については、既存の制御器の特性を学習することによりプロセス制御をする方法と、プロセスの逆モデルによって制御を実現する方法について研究した。前者については、既存の制御器よりも優れた制御特性を取得するための方策に腐心したが、十分な学習特性を得るに至らなかった。後者については、適当な参照モデルが用意されれば適切な制御に成功することが分かった。以上の成果により、ニューロコンピューティングによる鉱物処理プロセスのオンライン制御を実現するための手法と知識が得られた。 | KAKENHI-PROJECT-02452226 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02452226 |
地域SNSプロジェクトの類型化と分析・評価 | 地域SNSの理論的検討等により、地域で多様な小集団がゆるやかに連携する構造が、持続的な活動の活性化には望ましいこと、狭域での自治活動と、そこに参加するサブエリートの役割が住民参加促進の鍵であることを明らかにした。また国内の地域SNSを5類型化しそれぞれの特徴をまとめ、運営者・参加者へのアンケート調査等で実態を明らかにした。成果の一部は、総務省『情報通信白書平成22年度』で紹介された。また先進事例等をウェブサイトで紹介した。地域SNSの理論的検討等により、地域で多様な小集団がゆるやかに連携する構造が、持続的な活動の活性化には望ましいこと、狭域での自治活動と、そこに参加するサブエリートの役割が住民参加促進の鍵であることを明らかにした。また国内の地域SNSを5類型化しそれぞれの特徴をまとめ、運営者・参加者へのアンケート調査等で実態を明らかにした。成果の一部は、総務省『情報通信白書平成22年度』で紹介された。また先進事例等をウェブサイトで紹介した。1.ガバナンス論における地域SNSの理論的位置づけの整理とモデル化地域SNS(Social Networking Service)が志向する多主体連携による地域社会のガバナンス論と、電子行政のオープンガバメント論の関係を整理した。日本の文脈では、政府が情報公開等を進めるだけでなく、公開された情報を活用し新たに公共を担う企業や社会組織の活動の活性化が求められる。またLin(2002)らの議論のように、ソーシャルメディアは社会関係資本形成や官民協働の場として機能すると考えられる。地域SNS、Twitter、Facebookが地域の政治関係者にも活用され始めている状況の把握や、住民が選挙以外の方法で地域社会の運営に参加する取組み(静岡県掛川市やデンマーク等)についての訪問・文献調査も行った。2.具体的な活性化手法と運用上の工夫の収集・事例集化と因果関係の分析現地訪問調査や地域SNSへの参加によって収集した、優れた地域活性化手法やSNS運用上の工夫、それらの因果関係分析等の情報を、地域SNS研究会のウェブサイト、SNS、合宿、地域SNS全国フォーラム等を通じて各地の運営者等に紹介した。また全ての地域情報をSNS内部に留めず、様々なツールを組合せ、目的に応じて広域に発信したり別のコミュニティに届けたりするという観点から、地域SNSとTwitterやFacebook等、大手サービスとの連携のあり方について各地の取組みを調査した。地域SNS研究会の情報発信でも実験的なサイト間連携を開始した。3.地域SNSの多様性を反映した類型と評価指標の改良筆者が作成した地域SNSの5類型(「対象地域の広さ」と「紐帯の強弱への志向」による分類)に基づき、運営目的や運営方針、機能、利用状況データ等についてのアンケートを、45kカ所の地域SNS運営者と748人のユーザーに行い、全国の地域SNSの運営状況を俯瞰的に把握した。その結果の一部は総務省との共同研究として2010年版「情報通信白書」に掲載されている。詳細な分析とそれを踏まえた活動評価指標の検討は次年度に引き続き行い、論文化する。SNS型ネットコミュニティを地方自治や地域活性化、ソーシャルキャピタル醸成などに活用する「地域SNS」について、文献調査、現地訪問調査、アンケート調査等により、理論的検討や類型化、モデル化、評価指標の検討を進めた。2005年の地域SNS誕生期から各地の運営者や研究者と築いてきた協力関係を活かし、事象の全体像を捉えた研究となった。1.ガバナンス論における地域SNSの理論的位置づけの整理「ネットワークによるガバナンス」論(Goldsmith and Eggers, 2004))や(R.Putnam, 1993)らの社会関係資本の議論等を元に地域SNSを考察し、地域で多様な市民団体・サークル等がゆるやかに連携する構造が、それらの持続的活性化にとって望ましいことが示唆された。またこのような活動への住民の参加促進については、静岡県掛川市の市民総代会地区集会やデンマーク・コペンハーゲン市のローカル委員会のような挟域の自治活動と、そこに参加するサブエリート「エブリデイ・メーカー」(Bang, 2004)の役割が鍵であると整理した。2.具体的な活性化手法と運用上の工夫の収集・事例集化と因果関係の分析イベント開催や新たなソーシャルメディアとの連携・役割分担の方法など、地域SNSを具体的に地域社会で役に立たせるための様々な手法や、コミュニティを持続可能なものにするための運用上の工夫等について事例を収集しウェブサイト等を通じて公開した。3.地域SNSの多様性を反映した類型と評価(指標)地域SNSを「対象地域の広さ」と「紐帯の強弱への志向」により5類型化し、各類型の運営目的や方針、機能等の特徴をまとめた。また運営者・参加者へのアンケート調査を行い、そのデータ等をもとに地域SNSの基本的な姿を明らかにした。また、この調査を総務省との共同研究により拡張した。成果は総務省『情報通信白書平成22年度』のp55-p62で紹介された。 | KAKENHI-PROJECT-22700263 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22700263 |
乳幼児突然死における脂質代謝異常に関する研究 | 本研究は、(1)カルニチンの欠損による脂質代謝異常に着目し、その分子生物学的成果を用いて乳幼児の突然死における脳細胞や心筋細胞のミトコンドリアの変異・酸化ストレス・アポトーシスの意義を解明すること(2)若年層における乳幼児突然死症候群に関する意識調査により、今後の医療情報伝達のあり方について考察することを目的としてデザインされたものである。当該研究期間において,新たに得られた知見は以下の通りである.1)総カルニチン及び遊離カルニチンの酵素法による定量法及びLC-MS/MSによるスクリーニング法を確立した.2)カルニチンの生体内での合成過程における微量栄養素の影響について検討した結果,従来,脂質代謝とは無縁であると考えられていた水溶性ビタミンであるビタミンCが重要な役割を果たしていることが明らかとなった.[投稿中]3)カルニチン擬似物質の有機合成により,カルニチンの生合成能を阻害し,人工的にカルニチン欠損状態を作り出す条件を確立した.更にその応用として,培養細胞への当該物質の導入過程において生じるストレス及びその結果としてのアポトーシスについて評価した.[投稿中]4)幼児突然死症候群(SIDS)の若年世代における認知度について調査し,日本国内のみならずヨーロッパ・オセアニア諸国からもデータを回収して比較することにより,情報受容者の属性をも考慮に入れた今後の医療情報伝達のあり方について検討した.[投稿中]本研究は、(1)カルニチンの欠損による脂質代謝異常に着目し、その分子生物学的成果を用いて乳幼児の突然死における脳細胞や心筋細胞のミトコンドリアの変異・酸化ストレス・アポトーシスの意義を解明すること(2)若年層における乳幼児突然死症候群に関する意識調査により、今後の医療情報伝達のあり方について考察することを目的としてデザインされたものである。当該研究期間において,新たに得られた知見は以下の通りである.1)総カルニチン及び遊離カルニチンの酵素法による定量法及びLC-MS/MSによるスクリーニング法を確立した.2)カルニチンの生体内での合成過程における微量栄養素の影響について検討した結果,従来,脂質代謝とは無縁であると考えられていた水溶性ビタミンであるビタミンCが重要な役割を果たしていることが明らかとなった.[投稿中]3)カルニチン擬似物質の有機合成により,カルニチンの生合成能を阻害し,人工的にカルニチン欠損状態を作り出す条件を確立した.更にその応用として,培養細胞への当該物質の導入過程において生じるストレス及びその結果としてのアポトーシスについて評価した.[投稿中]4)幼児突然死症候群(SIDS)の若年世代における認知度について調査し,日本国内のみならずヨーロッパ・オセアニア諸国からもデータを回収して比較することにより,情報受容者の属性をも考慮に入れた今後の医療情報伝達のあり方について検討した.[投稿中]本研究は、(1)カルニチンの欠損による脂質代謝異常に着目し、その分子生物学的成果を用いて乳幼児の突然死における脳細胞や心筋細胞のミトコンドリアの変異・酸化ストレス・アポトーシスの意義を解明すること(2)若年層における乳幼児突然死症候群に関する意識調査により、今後の医療情報伝達のあり方について考察することを目的としてデザインされたものである。本年度は、今後の基盤となるカルニチンの測定法、電子顕微鏡および光学顕微鏡による組織標本の作成と形態の観察、実験動物の臓器からの初代培養法の確立と改変、乳幼児突然死症候群に関する若年層における意識調査、脂質代謝に関わる種々の物質及び酸化ストレスについて動物実験による研究を行った。研究論文の発表については、裏面に記載の通りである。その他の学会発表について以下に示す。2003年10月日本の若者における乳幼児突然死症候群(SIDS)の認知度について--第1報2003年10月日本の若者における乳幼児突然死症候群(SIDS)の認知度について--第2報以上第62回日本公衆衛生学会総会2003年11月ODSラットにおけるビタミンC欠乏の影響以上第50回目本法医学会近畿地方会2004年2月日本の若者における乳幼児突然死症候群(SIDS)の認知度について--第3報以上第10回日本SIDS学会来年度は、上記の成果の取りまとめを行い研究論文とすること、今年度確立した手法を用いて、乳幼児突然死における酸化ストレスの意義について体系的に検討する予定である。本研究は、(1)カルニチンの欠損による脂質代謝異常に着目し、その分子生物学的成果を用いて乳幼児の突然死における脳細胞や心筋細胞のミトコンドリアの変異・酸化ストレス・アポトーシスの意義を解明すること(2)若年層における乳幼児突然死症候群に関する意識調査により、今後の医療情報伝達のあり方について考察することを目的としてデザインされたものである。本年度は、人工的カルニチン生合成阻害物質の有機化学合成法の確立とその応用として、培養細胞への当該物質の導入過程において生じるストレス及びその結果としてのアポトーシスについての評価を中心に、乳幼児突然死症候群に関する若年層における意識調査の実施地域を拡大し、ヨーロッパ、オセアニア諸国からのデータを回収した。研究論文の発表については、裏面に記載の通りである。その他の学会発表について以下に示す。2004年6月骨吸収および骨形成過程におけるビタミンC欠乏の影響以上第88回日本法医学会総会2004年3月若年層における乳幼児突然死症候群(SIDS)の認知度について-日本とチェコ共和国における調査結果より--以上第11回日本SIDS学会 | KAKENHI-PROJECT-15390213 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15390213 |
RNAエピジェネティックスと高次生命現象 | 本研究ではRNA修飾が関与する生命現象を明らかにするとともに、RNA修飾病の発症機構を解明することを目的とする。ヒトのミトコンドリアは変則的な遺伝暗号を用いており、通常はIleをコードするAUAコドンがMetに暗号変化している。ミトコンドリアtRNAMetのアンチコドンには5-ホルミルシチジン(f5C)が存在し、この修飾によって、tRNAMetがAUGコドンのみならずAUAコドンもMetに解読することが可能になる。昨年度私たちは、代謝ラベルを用いた実験により、ホルミル基がメチル化とそれに続く酸化反応で形成されることを明らかにし、その最初の反応を担うメチル化酵素NSUN3を同定した(Nakano et al., NatureChem Biol, 2016)。今年度は、水酸化と酸化反応を担う酵素ALKBH1を同定した。ALKBH1のノックアウト細胞の解析から、f5Cはミトコンドリアの機能に必須であることが示された(Kawarada et al., 2017)動物のミトコンドリアの翻訳系においては,しばしば普遍暗号から逸脱した変則暗号が用いられる。ウニやヒトデなど棘皮動物のミトコンドリアにおいては,通常はLysを指定するAAAコドンがAsnを指定するよう暗号変化している。私たちはキタムラサキウニのミトコンドリアからtRNALysを単離精製しRNA-MSにより解析したところ,アンチコドンの3'側の隣接部位に新規の修飾塩基であるヒドロキシ-N6-スレオニルカルバモイルアデノシン(ht6A)を見い出した。リボソームのAサイトにおけるtRNAのコドン認識能を評価したところ,この修飾塩基はAAAコドンへの結合能を抑制する役割のあることが判明した。以上の結果から,棘皮動物のミトコンドリアにおいてtRNALysが新たな修飾塩基を獲得することによりAAAコドンの暗号変化に寄与したと考えられた。RNA修飾の解析と生合成機構の研究に関しては、予想以上の成果が得られたと自己評価している。ミトコンドリアtRNAMetのf5C修飾の生合成機構が明らかになった成果(Nakano et al., 2016, Kawarada et al., 2017)は学術的価値が高い。代謝ラベルを用いた実験により、ホルミル基がメチル化と酸化反応で形成されることが明らかとなり、NSUN3およびALKBH1の発見につなげられたことは、本プロジェクトの特筆すべき成果であると言える。特にf5C修飾を欠損させると、ミトコンドリアの翻訳異常と機能低下が生じたという知見は、f5C修飾の生理学的な意義を初めて明らかにした成果である。私たちの論文がpublishされた後、半年の間に複数のグループから立て続けに関連論文がpublishされたこともこの分野の関心の高さと波及効果を実感している。また、動物のミトコンドリアの変則暗号の獲得に、新規のtRNA修飾であるht6Aが関わっているという発見(Nagao et al., 2017)は学術的価値が高い。特に短期間の間に化学構造の同定と機能解析を成し遂げられたのは、これまでに培ってきた当研究室の解析技術と経験によるものが大きい。これまでに得られた成果をさらに発展させるとともに、新規RNA修飾構造の同定やRNA修飾酵素の探索に集中してプロジェクトを推進する。特に、外部環境の変化や細胞内メタボライトの濃度により、変動するRNA修飾についての解析に取り組む予定である。N4アセチルシチジン(ac4C)は真核生物、バクテリア、アーキアのすべての生物のrRNAやtRNAに見られるRNA修飾であり、リボソームの生合成や遺伝暗号の正確な解読に寄与することが知られている。私たちはバクテリアtRNAにac4Cを導入するTmcAを発見し、ac4C形成にはアセチルCoAとATPを基質にすることなどを見出している(EMBO J. 2008)。今年度、私たちは、18S rRNAの1773位にac4Cが存在することを見出した。またTmcAの酵母ホモログであるKRE33が、この位置のac4C修飾酵素であることを明らかにし、RRA1と命名した。RRA1は必須遺伝子であり、温度感受性変異株の解析から、RRA1はrRNA前駆体のプロセシングおよび40Sサブユニットの成熟に必須であることを明らかにした。また組換えRRA1を用い、アセチルCoAとATP存在下で、ac4C1773を再構成することに成功した。さらに、RRA1は核内アセチルCoAの濃度を感知することで18S rRNAのプロセシングを制御する可能性を示した(JBC, 2014a, JBC誌のBEST of 2014を受賞)。さらに、RRA1のヒトホモログであるNAT10が18S rRNAの1842位にac4Cを導入することを示し、NAT10はrRNAのプロセシングおよび40Sサブユニットの生合成に重要な役割を担っていることを明らかにした(JBCb, 2014)。本研究ではRNA修飾が関与する生命現象を明らかにするとともに、RNA修飾病の発症機構を解明することを目的とする。バクテリアリボソームの生合成において、数あるrRNA修飾のうち、RlmEによる23S rRNA上のたった一か所のメチル化修飾(Um2552)が、45S前駆体から50Sサブユニットへの成熟を促進する役割があることを示した(Arai et al., 2015)。 | KAKENHI-PROJECT-26220205 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26220205 |
RNAエピジェネティックスと高次生命現象 | これまで、非酵素的なリボソーム粒子のアッセンブリーについてはたくさんの研究がなされてきたが、この成果は、アッセンブリー因子の酵素活性によってリボソーム生合成の一部を再現した初めての知見であり、この分野の進展に大きなインパクトを与えた。また、このメチル化の修飾率が変化することで、リボソームの生合成が調節されるという非常に興味深い知見を得ている。この成果はこれまでにstaticでstableと考えられていたRNA修飾が、細胞内のメタボライト濃度を感知してダイナミックに変化することで、様々な生命現象に関わるという全く新しい概念を提唱するものである。tRNAのアンチコドンには多様な修飾が存在し、遺伝暗号の解読に重要な役割を担っている。私たちは、バクテリアtRNAのアンチコドンに存在する5-メトキシカルボニルメトキシウリジン(mcmo5U)の末端メチル化酵素CmoMを同定し、生育相依存的なメチル化修飾の変動を見出した。またこの過程で、新規の修飾塩基である5-methoxycarbonylmethoxy-2'-O-methyl-uridine (mcmo5Um)を発見した。これらの成果はNucleic Acids Research誌に掲載され、上位12%の論文に与えられるBreakthrough Articleに選定された(Sakai et al., NucleicAcids Res, 2016)。RNA修飾の解析と生合成機構の研究に関しては、予想以上の成果が得られたと自己評価している。リボソーム50Sサブユニットの後期アッセンブリー過程において、RlmEによる23S rRNAのたった一か所のメチル化修飾(Um2552)が45S前駆体から50Sサブユニットへの成熟を促進する役割があることを示した(Arai et al., 2015)。これまでに非酵素的なリボソーム粒子のアッセンブリーは多くの研究がなされてきたが、この成果は、アッセンブリー因子の酵素活性によってリボソーム生合成の一部を再現した初めての知見であり、この分野の進展に大きなインパクトを与えた。また、様々な生育条件で細胞内AdoMet濃度が変化した際に、このメチル化が変動することで、リボソームの生合成が調節されるという非常に興味深い知見を得ている。この成果はrRNA修飾が、細胞内のメタボライト濃度を感知してダイナミックに変化することを示唆し、エピトランスクリプトーム研究に全く新しい概念を提唱するものである。本研究ではRNA修飾が関与する生命現象を明らかにするとともに、RNA修飾病の発症機構を解明することを目的とする。私たちは、RNA-MSを駆使した解析により、pre-tRNAの5'末端にメチル化グアノシンキャップ構造が付加されていることを発見した。この現象を“pre-tRNA capping"と命名した。一般にキャップ構造はRNAポリメラーゼIIの転写と共役して導入されることが知られているが、tRNAはRNAポリメラーゼIIIの転写産物であり、この発見は、これまでの常識を覆す知見となった。遺伝学的な解析から、このキャップ構造は、pre-tRNAを5'エキソヌクレアーゼによる分解から保護している役割があることが明らかとなった(Ohira and Suzuki, Nature Chem Biol, 2016)。 | KAKENHI-PROJECT-26220205 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26220205 |
酸分離用シリカ系逆浸透膜の開発 | 本研究は、シリカ系膜の気体および液体透過性を評価し、酢酸の逆浸透分離への応用を目指した。具体的には、(1)異なるシリカプリカーサーで作製したシリカ系膜の気体透過性と細孔評価、(2)中性分子および荷電分子の液体透過性、(3)酢酸逆浸透分離を検討した。異なる有機置換基をもつ7種類のシリカプリカーサーを用い、化学蒸着法でシリカ系膜を作製した。これらのシリカプリカーサーは、有機置換基の種類により、アルキル基グループ、フェニル基グループ、アミノアルキル基グループと3つに分類した。シリカプリカーサーの加水分解粉末の熱重量測定から、各温度での有機置換基の残存量を推定し、各蒸着温度で作製したシリカ系膜の細孔径は、3種類の無機ガスの気体透過性から算出した。これより、有機置換基が減少する温度域で、シリカ系膜の細孔径が大きくなる傾向が示された。大きなフェニル基グループやアミノアルキル基グループのシリカプリカーサーは、最大細孔径が0.6nmよりも大きな膜を得られるため、液体透過性の高い逆浸透膜の開発に適していることを明らかにした。フェニル基をもつシリカ系膜の中性分子と荷電分子の液体透過性を評価したところ、分子量46-972の間で、荷電分子阻止率は中性分子阻止率よりも5-20%高いことがわかった。さらに価数の大きな陰イオンほど阻止率が高いことから、膜表面荷電が分離に影響を与えていることを示した。また細孔径0.9nmに近い大きさのMg2+(0.86nm)をもつ荷電分子は、阻止率が最大となり、分子ふるい機構での分離が示唆された。酢酸逆浸透分離試験は、アミノアルキル基をもつアミノプロピルメチルジエトキシシランを300°Cで蒸着させた膜を用いて行った。酢酸阻止率は20%であった。電離度の低い酢酸は、膜表面との静電的相互作用よりも分子ふるい機構による分離が支配的であることがわかった。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。本研究は、シリカ系膜の気体および液体透過性を評価し、酢酸の逆浸透分離への応用を目指した。具体的には、(1)異なるシリカプリカーサーで作製したシリカ系膜の気体透過性と細孔評価、(2)中性分子および荷電分子の液体透過性、(3)酢酸逆浸透分離を検討した。異なる有機置換基をもつ7種類のシリカプリカーサーを用い、化学蒸着法でシリカ系膜を作製した。これらのシリカプリカーサーは、有機置換基の種類により、アルキル基グループ、フェニル基グループ、アミノアルキル基グループと3つに分類した。シリカプリカーサーの加水分解粉末の熱重量測定から、各温度での有機置換基の残存量を推定し、各蒸着温度で作製したシリカ系膜の細孔径は、3種類の無機ガスの気体透過性から算出した。これより、有機置換基が減少する温度域で、シリカ系膜の細孔径が大きくなる傾向が示された。大きなフェニル基グループやアミノアルキル基グループのシリカプリカーサーは、最大細孔径が0.6nmよりも大きな膜を得られるため、液体透過性の高い逆浸透膜の開発に適していることを明らかにした。フェニル基をもつシリカ系膜の中性分子と荷電分子の液体透過性を評価したところ、分子量46-972の間で、荷電分子阻止率は中性分子阻止率よりも5-20%高いことがわかった。さらに価数の大きな陰イオンほど阻止率が高いことから、膜表面荷電が分離に影響を与えていることを示した。また細孔径0.9nmに近い大きさのMg2+(0.86nm)をもつ荷電分子は、阻止率が最大となり、分子ふるい機構での分離が示唆された。酢酸逆浸透分離試験は、アミノアルキル基をもつアミノプロピルメチルジエトキシシランを300°Cで蒸着させた膜を用いて行った。酢酸阻止率は20%であった。電離度の低い酢酸は、膜表面との静電的相互作用よりも分子ふるい機構による分離が支配的であることがわかった。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-17J11106 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17J11106 |
ニューラルネットワークの対称、非対称構造における認知、記憶機構の計算論的研究 | Non-Fourier Movementのための非対称かつ非線形性の神経回路としてJ.D,VictorはT(p)=p2+pの変換を提案している。この回路の処理能力を明らかにするため、比較の回路として対称回路を取り上げる。この対称回路の変換T(p)=2pを設定した。この二つの回路を同じ刺激条件のもとで処理能力を比較した。最初の運動刺激として正弦波(左側の細胞への刺激coswtおよび右側の細胞への刺激cos(wt+s)、ここで右側の細胞では位相sが進んでいることを仮定している。)を取り上げた。ここでの条件とは左右の細胞の各々のインパルス応答h(t),h'(t)が未知でありかつ位相sを未知としている。上記二つの回路で、3つの未知数を回路のフーリェ変換を適用することによって導出できるかどうかにかかっている。この条件のもとに、非対称回路T(p)と対称回路T(p)の各々の導出から、対称回路では位相sが得られるが、インパルス応答h(t),h^1(t)に関して、情報が得られない。これに対して、非対称回路では位相sおよび刺激波の成分のインパルス応答分h(t),h'(t)が得られることを明らかにした。このことは非対称回路の能力の高さを示している。Non-Fourier Movementのための非対称かつ非線形性の神経回路としてJ.D,VictorはT(p)=p2+pの変換を提案している。この回路の処理能力を明らかにするため、比較の回路として対称回路を取り上げる。この対称回路の変換T(p)=2pを設定した。この二つの回路を同じ刺激条件のもとで処理能力を比較した。最初の運動刺激として正弦波(左側の細胞への刺激coswtおよび右側の細胞への刺激cos(wt+s)、ここで右側の細胞では位相sが進んでいることを仮定している。)を取り上げた。ここでの条件とは左右の細胞の各々のインパルス応答h(t),h'(t)が未知でありかつ位相sを未知としている。上記二つの回路で、3つの未知数を回路のフーリェ変換を適用することによって導出できるかどうかにかかっている。この条件のもとに、非対称回路T(p)と対称回路T(p)の各々の導出から、対称回路では位相sが得られるが、インパルス応答h(t),h^1(t)に関して、情報が得られない。これに対して、非対称回路では位相sおよび刺激波の成分のインパルス応答分h(t),h'(t)が得られることを明らかにした。このことは非対称回路の能力の高さを示している。 | KAKENHI-PROJECT-09268212 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09268212 |
miRNA-エクソソーム輸送複合体の同定とがん病態誘発との関連 | 本研究では、細胞外へとmiRNAを分泌する複合体様式を解析し、その分泌メカニズムを明らかにすることを目的とした。がん細胞株由来のエクソソーム画分を調製し、密度勾配遠心やゲルろ過を組み合わせて、miRNA分泌複合体の特性を解析した。エクソソームに内包されて分泌されるmiRNAの種類は少なく、タンパク質複合体として分泌されているものが多い事が強く示唆された。その分泌に関連する候補タンパク質を質量分析によって複数同定した。これらのノックダウンにより、細胞外へと分泌されるmiRNAが細胞内に蓄積することも明らかにした。今後は、詳細な分子メカニズムの解析を行う。がん特異的に分泌されるmiRー1246は、大腸がん患者血清中からも、高値で検出されることから、診断バイオマーカーとしての応用研究が展開されている(当研究グループと企業との連携研究)。一方、miRー1246は、エクソソームと非常に近い密度を有する複合体(もしくは膜小胞)として分泌されるものの、CD9や他のエクソソームマーカーとは局在ピークが一致しなかった。そこで、エクソソームおよび膜小胞の合成に必須なセラミドの合成阻害とmiRー1246の細胞外分泌との関連を検討した。その結果、miRー1246の細胞内量は、セラミド合成を阻害することで有意に上昇する一方、細胞外への分泌量は減少した。これは、エクソソームに内包されるmiRー21の場合と同様であり、miRー1246の分泌には、セラミド合成(脂質代謝)が必要だと考えられた。次に、エクソソームマーカーたんぱく質であるCD9、CD81、CD63抗体ビーズを用いて、miRー1246の濃縮を試みたが、マーカーたんぱく質の濃縮は見られたものの、miRー1246は濃縮されなかった。以上の結果から、miRー1246は、細胞内でのセラミド合成がその分泌には必要であるが、細胞外へは既知(典型的)のエクソソームとは異なる様式で放出されていることが強く示唆された。さらに、miRー1246が脂質膜に内包されているか否か生化学的な解析を行った。興味深いことに、miRー1246を含む複合体は、熱処理により簡単に構造が破壊されることが強く示唆された。したがって、miRー1246はたんぱく質・脂質と複合体を形成して細胞外へと分泌されていることが強く示唆された。また、この複合体は、エクソソームと類似の密度とサイズ(ゲルろ過による解析)を有していることから、既存のHDLなどとは異なる新規の複合体である可能性を見出した。昨年度に引き続きmiRNAの分泌機構について検討を加えた。miR-1246は、エクソソーム画分へと濃縮されるmiRNAsの一つであり、大腸がん患者由来の血清エクソソーム画分へと濃縮される。当研究グループでは免疫科学的に、効率良く、かつ、簡便にエクソソームを濃縮することに成功した。しかしながら、miRー1246はその方法では濃縮できず、当該miRNAはエクソソームではなく他の複合体もしくは膜小胞に内包された形で細胞外へと分泌される可能性を見出した。各種がん細胞株のエクソソーム画分と内在性のmiRNA発現プロファイルを比較すると、miRー21など内在性の発現が極めて高く、エクソソーム画分でも検出されるmiRNAsとmiRー1246に代表される細胞内での発現はそれほど高くないが、細胞外で極めて高い発現が認められるmiRNAsは、異なるクラスターを形成することが示唆された。両クラスターの代表として、miRー21とmiRー1246を選択し、生化学的に細胞外複合体の特徴を検討した。その結果、miR-21は、RNA分解酵素やたんぱく質分解酵素の処理では分解されず、界面活性剤で前処理した場合でのみRNA分解酵素処理で分解されたことから、エクソソームを介していることが分かった。一方、miRー1246は加熱処理したのみでRNA分解酵素によって分解されたことから、miRー1246はエクソソーム以外の複合体によって分泌されることが示唆された。スクロース密度勾配遠心法の検討から、miRー1246分泌複合体はエクソソームと極めて類似の密度を有していた。興味深いことに、ゲルろ過クロマトグラフィーの結果、miRー1246分泌複合体は、エクソソームと明らかに異なる大きさであることが分かった。これらの結果から、miRNAは複数の経路によって細胞外に分泌されることを見出した。本研究の目的は、miRNAの分泌複合体もしくはエクソソームへと特定miRNAを輸送する複合体の解析である。これまでの結果は、エクソソームへと輸送されるmiRNAは、細胞内で発現が高いことが重要である可能性が示唆された。一方、miRー1246など、特定miRNAsの分泌は、エクソソームではなく未知の複合体を介して行われている可能性が強く示唆された。エクソソームとその複合体を分離することは難しく、ゲルろ過クロマトグラフィーにおいても、カラムの選択を間違えると完全に分離することができない。分離分子量の異なる複数のカラムを用いて、エクソソームとmiRNAs分泌複合体の分離に成功した。本年度中に、miRー1246の複合体をエクソソームとは完全に分離する方法を樹立すれば、最終年度に質量分析によるたんぱく質の網羅的解析を行い、複合体の本体が明らかにできる。 | KAKENHI-PROJECT-26640095 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26640095 |
miRNA-エクソソーム輸送複合体の同定とがん病態誘発との関連 | 近年、細胞の分泌小胞であるエクソソームが、様々な生体の応答反応に重要な役割を有することが明らかとなってきた。がん細胞は積極的にエクソソームを分泌し、自身の微小環境への適応や転移の成立に寄与すること、特定miRNAを含有し、細胞間の遺伝情報の伝達に利用していると考えられている。一方で、がん細胞が如何にして特定miRNAを細胞内でエクソソームへと輸送するか、その分子機構は明らかになっていない。当研究グループでは、様々ながん細胞株及び不死化細胞、さらには臨床検体を用いてエクソソームmiRNAのプロファイリングを行い、miRNAの細胞外分泌には複数の経路が存在する可能性を見出した。本研究では、がん細胞が特定miRNAをエクソソームへと輸送するメカニズムを明らかにすることを目的とした。これまでの結果は、非常に興味深く、エクソソーム画分に含まれるmiRNAはエクソソーム内包型とタンパク質複合体を介して分泌されるものが混在していることを見出した。タンパク質複合体の構成因子の同定を行い、少なくとも14種類の候補分子を同定した。これら候補分子に対するsiRNAを合成し、細胞外へ分泌が減少する因子の絞り込みを行った。さらに興味深いことに、候補分子のノックダウンにより細胞外へのエクソソーム分泌量が増加することがわかった。これらの結果より、miRNA分泌を実行するタンパク質複合体が存在することを見出し、エクソソーム分泌と密に連携していることがわかった。この知見は、新規の分泌複合体による新たなmiRNA分泌機構が、細胞外小胞の分泌システムにも影響を与えていることを強く示唆しており、今後の研究により、がん細胞の新規、かつ重要な特性を明らかにできる可能性を示している。本研究では、細胞外へとmiRNAを分泌する複合体様式を解析し、その分泌メカニズムを明らかにすることを目的とした。がん細胞株由来のエクソソーム画分を調製し、密度勾配遠心やゲルろ過を組み合わせて、miRNA分泌複合体の特性を解析した。エクソソームに内包されて分泌されるmiRNAの種類は少なく、タンパク質複合体として分泌されているものが多い事が強く示唆された。その分泌に関連する候補タンパク質を質量分析によって複数同定した。これらのノックダウンにより、細胞外へと分泌されるmiRNAが細胞内に蓄積することも明らかにした。今後は、詳細な分子メカニズムの解析を行う。当初の予定では、がん特異的エクソソームのたんぱく質を網羅的に解析する予定だったか、miRー1246が既知のエクソソームとは、異なる分泌様式により細胞外へと放出されていることがわかったため、本年度はその分泌様式に関する検討を行った。非常に興味深い結果を得ており、新規の分泌複合体の同定も期待できる。さらに、エクソソーム画分から検出されるmiRNAを網羅的に解析し、膵臓がん、大腸がん、肺がん細胞におけるプロファイルを作成した。本年度解析したmiRー1246は、がん細胞から特異的に分泌されるものの、非がん細胞からは分泌されず、miRー1246が形成する細胞外分泌複合体ががん細胞特異的である可能性が考えられる。150 mmシャーレ30枚からエクソソーム画分の濃縮を行う。画分を500 µlのPBSに懸濁し、ゲルろ過カラムにアプライし、miRー1246複合体とエクソソームの分離を行う。さらに、複合体が局在するフラクションを濃縮し、SDSーPAGE用のサンプルを調整する。 | KAKENHI-PROJECT-26640095 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26640095 |
耐熱ガスバリア膜を用いたガスケット材料の熱酸化特性の向上 | 本研究はガス分子の透過を妨げるガスバリア膜を用い,100-200°C程度の環境におけるガスケット用ゴムシートの熱酸化劣化の抑制手法を検討したものである.検討の結果, Si-O-N系ガスバリア膜を適切な厚さで被覆することにより, 170°C, 24時間の加熱条件においても熱酸化劣化を抑制できることを明らかにした.また,ガスバリア膜が外力によって損傷を受けてもガスバリア性が維持できることも明らかにした.本研究はガス分子の透過を妨げるガスバリア膜を用い,100-200°C程度の環境におけるガスケット用ゴムシートの熱酸化劣化の抑制手法を検討したものである.検討の結果, Si-O-N系ガスバリア膜を適切な厚さで被覆することにより, 170°C, 24時間の加熱条件においても熱酸化劣化を抑制できることを明らかにした.また,ガスバリア膜が外力によって損傷を受けてもガスバリア性が維持できることも明らかにした.平成22年度はガスケット用ゴムシートへの均一なSi-O-N膜のコーティング方法の開発を目的とし,表面研磨および表面化学処理が薄膜の被覆率向上に与える効果を検討した.これにより,ガスケット用ゴムシートのような粗い表面をもつ基板材料への被覆率の向上を目指した.また,熱酸化劣化の抑制効果が発現する条件のしきい値を検討した.まず,ダイヤモンドサスペンションおよびコロイダルシリカを用いてガスケット用ゴムシート表面の研磨を行い,AFMにより表面状態を観察した.その結果,ゴム部が優先的に研磨されるのに対し,繊維部は研磨されにくく,表面粗さを改善できないことがわかった.また,液適法による表面自由エネルギの評価も行ったが,研磨条件の違いによる差異は認められなかった.次に研磨したゴムシート上にdcマグネトロンスパッタリング装置を用いてガスバリア膜を成膜しても表面粗さは改善されず,くぼみ部分が残ったままであった.また,成膜時間を調整して膜厚をそれぞれ30, 60, 120, 180nmとなるようにガスバリア膜の成膜を行ったところ,膜厚の増大にしたがって膜の表面粗さはむしろ増大することがわかった.表面状態を詳しく検討した結果,基板表面に存在するくぼみ部分では膜が薄くなり,成膜時間の増加に従い基板の粗さを拡大するように膜が被覆されることがわかった.したがって,研磨および膜厚の増加によって均一な厚さで被覆することが困難であることがわかった.マッフル炉を用いて大気中,160180°C,624時間の条件で各試験片を加熱し,熱酸化劣化を生じさせた.その後,引張試験や断面観察により熱酸化劣化の度合いを評価した.その結果,ガスバリア膜が均一な厚さで被覆されていなくても170°Cまではガスバリア膜による熱酸化劣化の抑制効果が現れること,ガスバリア膜が厚いほど効果が高いことを明らかにした.平成23年度はガスバリア膜の被覆状態が熱酸化劣化に与える影響を検討した.また,試験片に繰返し曲げ変形を与えることで膜に損傷を与え,その損傷状態と熱酸化劣化の関係の検討を行った.1.ガスバリア機能の再現性の確認:ガスバリア機能の再現性を確認するため,傾斜対向型DCマグネトロンスパッタリング装置を用いて昨年度と同様の条件でSi-O-N膜をPET上に被覆した.その際,Si-O-N層の膜厚をそれぞれ30,60,120,180nm程度で成膜し,ガスバリア性能と膜厚の関係についても再現性を確認した.2.ガスバリア膜被覆状態と熱酸化劣化の関係:PET上で膜厚120nm程度となる時間でガスバリア膜をガスケット用ゴムシート上に被覆した.得られた被覆材をマッフル炉を用いて大気中,160180°C,824時間の条件で加熱した.熱酸化劣化の度合いは引張試験により評価した.また,真空下での加熱処理も行い,劣化に及ぼす酸素の影響を評価した.その結果,170°C以上の加熱では劣化に及ぼす酸素の影響が非常に大きいことが明らかになった.また,ゴムシートにSiOxNy膜を被覆することで加熱後の破断伸びの低下が小さくなり,熱酸化劣化の抑制効果が明らかに現れた.特に,ガスバリア性の高い膜厚60,120nmの試験片では熱酸化劣化を効果的に抑制できた.3.熱酸化劣化に及ぼす膜の損傷の影響:Si-O-N膜を被覆した試験片を曲率半径100mmの円筒表面に繰返し押しつけて膜に損傷を付与した.これを大気中,170°C,24時間加熱し,損傷付与の有無による熱酸化劣化挙動の違いを検討した.検討の結果,膜に損傷を与えた場合でも,加熱後の破断伸びは損傷を与えていない試験片とほとんど変わらず,100回程度の繰返し損傷を与えてもガスバリア膜の被覆によるゴムシートの熱酸化劣化の抑制効果は維持されることが明らかになった.平成24年度はガスケット用ゴムシートを構成する素材のうち,最も熱酸化劣化の影響を受けると考えられるゴム部について,ガスバリア膜の被覆による熱酸化劣化抑制効果の検討を行った.検討に際してはNBRゴムを使用し,平成23年度までに得られた知見をもとにガスバリア膜の被覆を行い,これを大気中で加熱処理した.その後,機械的特性の変化,破断面観察およびFT-IRによる加熱前後の化学結合状態の変化を解析し,熱酸化劣化の抑制に及ぼすガスバリア膜の影響について検討を行った. | KAKENHI-PROJECT-22560083 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22560083 |
耐熱ガスバリア膜を用いたガスケット材料の熱酸化特性の向上 | ガスバリア膜をNBRゴム上に被覆し,大気中160-180°C,8-24時間の条件で加熱後,引張試験を行った.その結果,170°C以下において,ガスバリア膜の被覆によりNBRゴムの硬化を抑制できることがわかった.また,詳細な破断面観察を行ったところ,加熱によって硬化・脆化した深さはガスバリア膜の被覆によって浅いことがわかった.このことからもゴム部の熱酸化劣化の進行がガスバリア膜の被覆によって抑制されることがわかった.また,加熱前後の試験片表面のFT-IRスペクトルの比較を行った.その結果,裸材では加熱後にC-C結合やC=C結合を示すピークが明らかに減少し,熱酸化劣化の進行を示していた.これに対して,被覆材では加熱前後のスペクトルの変化が小さく,熱酸化劣化の進行が抑えられていることがわかった.以上の結果から,ガスバリア膜を適切な条件で被覆することにより,ガスケット用ゴムシートを構成する材料のうち,ゴムと酸素分子との接触を十分に抑制でき,ガスケット用ゴムシートの熱酸化劣化を効果的に抑制できることが明らかになった.平成22及び23年度の結果より,ガスケット用ゴムシートの熱酸化劣化は160°C程度以上で顕著になること,ガスバリア膜の被覆により熱酸化劣化を抑制できること,基板を研磨してもガスバリア膜の被覆による熱酸化劣化抑制効果にあまり効果がないこと,ガスバリア被覆材にある程度の曲げ損傷を与えても熱酸化劣化抑制機能が維持できること,などを明らかにできた.したがって研究め目的は,当初の計画通り順調に進展していると考えている.24年度が最終年度であるため、記入しない。今後の方針としては,薄膜の損傷状態と熱酸化劣化量の関係を詳細に検討すべく,24時間以上の加熱時間で比較検討を行う.また,ガスケットの母相であるゴム単体の熱酸化劣化に及ぼすガスバリア膜の効果を調べ,より適切な被覆状態を明らかにする.24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22560083 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22560083 |
震災エピソードの教材化:認知心理学的アプローチ | 東日本大震災における被災者の体験談を分析し、被災者は体験した出来事だけではなく、自身の感情や教訓なども語っていることを明らかにした。防災教育教材である「稲むらの火」を用いた心理実験を行い、物語の筋にあたる部分は記憶に残りやすいがそうでない部分に相当する津波襲来の場面は記憶に残りにくいこと、教材からの学びが日本人と中国人で異なることを明らかにした。また、震災エピソードを用いた教育講話をデザインし、多くの授業や講演を実践した。東日本大震災における震災エピソードの収集を進めた。収集されたそれぞれのエピソードは、長さや内容において多様性に富んでいるため、震災エピソードを用いた心理実験を行う際、実際に用いる実験材料をどのように統制すべきかを慎重に検討中である。人間が災害等のエピソードを読んだ際に、そこから得られる教訓をオンラインで(自動的に)読み取るのかどうかを明らかにすることは、防災教育教材の作成やそれを用いた教育カリキュラムを考えていくうえで、非常に重要な知見を提供する。そこで、文章読解時における教訓的テーマ推論の認知過程について実験的に検証した。具体的には、あることわざを想起させるような文章を用いて、認知心理学的な実験によって検証した。その結果、日本人の場合は、文章読解中にオンラインでことわざ的な教訓を活性化していることが明らかとなった。しかしながら、中国人を対象とした(中国語の文章による)実験では、明確な結果が得られなかった。また、既存の防災教育教材の効果の検討にも入った。津波防災教育教材「稲むらの火」を用い、津波に関する既有知識の少ない中国人を対象として、それを読んだときにどのような内容が記憶に残るのか、読み手はその教材をどのように要約するのか、文章中で重要だと感じる部分はどこか、文章からどのような教訓を学ぶのかなどを調べた。現在、データの詳細な分析を進めているところであるが、1津波に関する知識が少ない読み手の場合、津波襲来の描写場面が記憶に残りにくく、要約にも用いられにくい、2文章中で重要だと判断する部分が読み手により異なる、3文章から学んだ教訓として必ずしも「津波が予想されるときの迅速な避難行動の重要性」が多く挙げられるわけではない、のような結果の傾向がみられている。東日本大震災時およびそれ以前の地震に伴い発生した津波に対する住民の避難行動についての調査結果を概観した上で、災害時の人間の認知・判断・行動特性について心理学的な観点から分類・整理を行い、災害発生時の人間の情報処理過程のモデル化を行った。さらに、認知・判断・行動に影響を及ぼすさまざまな要因の存在が、迅速な避難行動を抑止している可能性を明らかにした。影響する要因として考えられるのは、具体的には、自分は大丈夫・安全だという勝手な思い込み、受け手の期待による情報のゆがみや無視、情報の持つ曖昧さ・不十分さや情報表現の多様性、受け手の知識不足、ヒューリスティックス(経験則)に基づく判断、心理的コスト、他者の存在、家族の安否への気遣いなどである。また、災害時に必要な情報リテラシーとはどのようなものであるかについて考察し、今後の災害時における情報発信のあり方や防災教育の充実の必要性について、心理学的な観点から提言を行った。また、上述のモデルを枠組みとして震災エピソードの教材化を目標に、震災エピソードのどのような部分が人々の記憶に残るのかを明らかにするための実験を行うための準備として、1地元地方紙に掲載された記事を中心に震災エピソードを収集した、2文章の読み手が文章読解中にそこから示唆される教訓をオンラインで(自動的に)読み取っているのかどうかを検討するための心理実験を行った。今後、さらに震災エピソードを収集し、実験で使用するための文章材料の作成を経て、震災エピソードの記憶実験を行う予定である。第一に、津波防災教育教材「稲むらの火」を用いた文章読解・記憶実験を、日本人大学生を対象として実施し、前年度に実施した中国人の実験結果と比較した。その結果、文章の理解や記憶に関しては、「村人が地震の揺れに気がつかなかった」ことや「津波襲来」の場面で、中国人と日本人の間に違いがみられたものの全体として大きな差はなかった。しかし、文章から何を学んだかについては、日本人が「他者を救うためには損失を恐れない」が多数を占めたのに対して、中国人では意見が分かれており、「津波が来たら高いところへ避難する」「他人を思いやる心が大切だ」「津波の前兆が分かった」「わずかな変化に注意することが大切」など学習者によって異なる学びが成り立っていることが明らかになった。震災エピソードの教材化にあたっては、学習者の知識差に加えて文化差にも注意する必要があることが明らかとなった。第二に、東日本大震災の被災者の体験談の分析を進めた。震災体験談には、実際に起こった出来事に加えて、語り手特有の陳述(後悔、教訓、意味づけ、悟り、感情など)が数多く含まれていることが明らかになってきた。震災体験談を有効な教材として残していくため、個々の陳述を分類・分析するための枠組み構築を開始した。第三に、実際の震災エピソードを取り入れた防災・減災教育の講義や授業を、一般向け、高校生向け、小学生向けにそれぞれ考案し、講演会や出前授業などで研究代表者が講師として実践を行った。いずれにおいても好評を得た。平成27年度からは、本研究成果をさらに発展させ、教材開発のみならず、それを用いた授業デザインおよび授業実践研究を展開する予定である(基盤研究(C)「災害科学の専門知を教養科目に集約する授業開発研究」に採択)。東日本大震災における被災者の体験談を分析し、被災者は体験した出来事だけではなく、自身の感情や教訓なども語っていることを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-24531171 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24531171 |
震災エピソードの教材化:認知心理学的アプローチ | 防災教育教材である「稲むらの火」を用いた心理実験を行い、物語の筋にあたる部分は記憶に残りやすいがそうでない部分に相当する津波襲来の場面は記憶に残りにくいこと、教材からの学びが日本人と中国人で異なることを明らかにした。また、震災エピソードを用いた教育講話をデザインし、多くの授業や講演を実践した。認知心理学東日本大震災の震災エピソードの収集は進んだが、そこには非常に多様なエピソードが存在するため、それらをどのような形で認知心理学実験の材料に用いるかで難航している。しかしながら、その一方で、既存の防災教育教材である「稲むらの火」を用いた心理実験を実施することができ、貴重なデータを得ることができた。震災エピソードの収集は当初の予定よりも少ない状態である。しかし、そうした遅れはあるものの、災害発生時の人間の情報処理モデルを提案することができ、認知心理特性の系統的な分類整理はできている。ただし、提案したモデルは災害発生時に限定した認知過程に関するものであり、今後は、発災前や発災後の応急対応時の認知心理特性にまで視野を広げて行く必要がある(そのためのエピソード収集を続けていかなければならない)。その一方で、今後実施する予定の文章読解・聴解実験のための準備が予定以上に進んだ。具体的には、教訓を含む文章読解に関する基礎実験を進展させることができた。この実験は震災エピソードを含む文章を用いたものではないが、今後実施を計画している読解実験の予備的実験に位置づけられるものである。防災教育教材「稲むらの火」を用いた心理実験を継続し、その有効性の検証を行うとともに、当該教材を用いて防災教育を行う際の課題について、実験結果に基づいて整理を行う。また、東日本大震災の震災エピソードを用いた心理実験実施に向け、継続的に検討を重ね、準備を進めていく。今後は、震災エピソードの収集を続けながらも、震災エピソードを用いた文章の読解・聴解・記憶実験実施に向けた準備に進む。今年度は、実験実施のための文章材料の作成と、可能な限り、それを使用した記憶実験実施にとりかかる。なお、すでに、いわゆる教訓を示唆する文章理解の実験を実施しており、これは、震災エピソードとは関係しない一般的な文章理解研究ではあるが、本研究の予備実験的な位置づけにもなっており、その延長線上で実験を実施できる準備ができている。震災エピソードの実験材料化が難航し、予定していた実験ができなかった。そのため、実験実施に伴う機器や物品の購入や実験実施補助者謝金・実験参加者謝金の執行が十分にできなかった。次年度は、今年度までの研究成果の発表および複数の認知心理実験実施を予定しており、そのための旅費、および物品の購入費や実験実施補助者金・実験参加者謝金に充てる。震災エピソードの収集がやや遅れ、それを行うために予定していた物品費・旅費・謝金の執行が十分にできなかった。次年度も、震災エピソードの収集を継続する予定であり、その分を執行するとともに、次年度に請求する研究費と合わせて、予定している複数の認知心理実験実施のための物品の購入、実験補助等の謝金に充てる。 | KAKENHI-PROJECT-24531171 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24531171 |
脳卒中患者における自動車模擬運転時の危険認知能力の解明 | 本研究の目的は,「自動車運転認知行動評価装置」(特許第5366248号)を利用し,脳卒中患者の自動車運転の特性を明らかにすることである.具体的には,脳卒中患者を対象に上記装置を使用して,模擬運転テストを実施し,既存の健常者データとの比較から脳卒中患者の模擬運転時のハンドル・アクセル・ブレーキの操作応答や手掌部発汗反応(Palmar sweating response:PSR)と皮膚電位反射(Skin Potential Reflex:SPR)を用いた危険予測能力の特性を明らかにすることを目的としている.平成30年度は,前年度再構築した移動が容易な携帯型「自動車運転認知行動評価装置」を用いて,信州大学医学部附属病院に所属しているリハビリテーションスタッフに対し使用感の確認,臨床的応用を考慮した際の修正点などの聴取を行った.さらに,信州大学医学部附属病院で脳外科病棟入院患者を対象とする計測を行うための倫理審査申請を行い,計測環境を整えている.また,より多くの患者からデータを計測するため,鹿教湯三才山リハビリテーションセンター鹿教湯病院において自動車運転評価の業務に携わるスタッフに対し,本研究への協力を要請し,内諾をいただいている.前年度の検討で明らかとなった健常ドライバー(高齢者・若年者)の自動車模擬運転時の操作反応(ハンドル・アクセル・ブレーキ)と手掌部発汗反応,皮膚電位反射手掌部発汗反応の特性に関し,論文を作成し投稿を行っている.昨年度作成した「自動車運転認知行動評価装置」に関する使用感をリハビリテーションスタッフに確認し,修正可能な個所の対応を行っており,実際の患者へは未適応である.また,本研究に関する倫理審査手続きに時間を要しており,臨床場面での計測を開始できていないため,やや遅れていると判断されている.平成31年度は,前年度実施する予定であった脳卒中患者の自動車模擬運転時の操作反応および危険認知能力を明らかにすることを目的とする.具体的な手順として,再構築した装置を用いて,模試運転時のハンドル・アクセル・ブレーキの操作反応と手掌部発汗反応等のデータを計測し,得られたデータを健常者データと比較することで,脳卒中患者の応答特性を明らかにする.手順は以下の通りである.1被験者の決定:被験者は脳卒中患者のうち,日常生活で介助を要するほどの障害がなく,生活行為が自立していること,自動車運転の再開を希望していることを条件に20名程度募集する.2実験及び解析:脳卒中患者20名を対象に携帯型自動車運転認知行動評価装置を用いた模擬運転テストを実施する.運転映像には現有する市街地映像と住宅地映像(各5分)を使用し,危険予測場面,危険場面などの場面に分け,ハンドル・アクセル・ブレーキ・手掌部発汗反応の量や応答潜時を分析する.3健常データとの比較および応答特性の抽出:我々は本研究で実施する実験条件で得た健常者データをすでに保有している.保有するデータには若年から高齢まで男女200名のデータが含まれており,本実験の対象者と年齢・性別をマッチングさせることが可能である.マッチングさせた健常者データを「健常者群」,本実験で得られるデータを医「脳卒中群」として,同一場面におけるハンドル・アクセル・ブレーキの操作反応,手掌部発汗反応を比較検討し,自動車運転時の脳卒中患者の応答特性を明らかにする.4さらに脳卒中患者のデータを用いて、左半側空間無視、左右運動麻痺、認知機能障害等の障害毎に、直進走行、交差点の右左折、一時停止、ボール飛び出し等の運転場面毎の応答特性を明らかにし、障害特性に応じた判定プログラムを作成する。本研究の目的は,「自動車運転認知行動評価装置」(特許第5366248号)を利用し,脳卒中患者の自動車運転の特性を明らかにすることである.具体的には,脳卒中患者を対象に上記装置を使用して,模擬運転テストを実施し,既存の健常者データとの比較から脳卒中患者の模擬運転時のハンドル・アクセル・ブレーキの操作応答や手掌部発汗反応(Palmar sweating response:PSR)と皮膚電位反射(Skin Potential Reflex:SPR)を用いた危険予測能力の特性を明らかにすることを目的としている.平成29年度は,既存の「自動車運転認知行動評価装置」を基本構造とし,移動が容易な携帯型「自動車運転認知行動評価装置」を再構築した.装置の作成には,百瀬英哉氏(株式会社スキノスNAGANO)の協力を得て実施し,複数回の打ち合わせにより,既存の装置と比較し装置を小型化すること,運搬が可能であること,模擬運転実施に耐える強度を持たせることなどの点で改良した携帯型装置を作成し,当該年度内に納品済みとなっている.また,次年度に脳卒中患者のデータを計測し,健常者との比較を行うための準備として,既存のデータを解析し,健常ドライバー(高齢者・若年者)の自動車模擬運転時の操作反応(ハンドル・アクセル・ブレーキ)と手掌部発汗反応,皮膚電位反射手掌部発汗反応の特性を明らかにしている.携帯型の「自動車運転認知行動評価装置」はすでに作成・納品済みであり,設備面は順調に整っている.また,平成30年度の脳卒中患者を対象としたデータ測定については,複数の施設関係者より内諾をいただいており,実験環境も整いつつある.今後は,本学の医倫理審査委員会及び関連機関での承認を得て,データの計測を実施していく.本研究の目的は,「自動車運転認知行動評価装置」(特許第5366248号)を利用し,脳卒中患者の自動車運転の特性を明らかにすることである. | KAKENHI-PROJECT-17K13086 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K13086 |
脳卒中患者における自動車模擬運転時の危険認知能力の解明 | 具体的には,脳卒中患者を対象に上記装置を使用して,模擬運転テストを実施し,既存の健常者データとの比較から脳卒中患者の模擬運転時のハンドル・アクセル・ブレーキの操作応答や手掌部発汗反応(Palmar sweating response:PSR)と皮膚電位反射(Skin Potential Reflex:SPR)を用いた危険予測能力の特性を明らかにすることを目的としている.平成30年度は,前年度再構築した移動が容易な携帯型「自動車運転認知行動評価装置」を用いて,信州大学医学部附属病院に所属しているリハビリテーションスタッフに対し使用感の確認,臨床的応用を考慮した際の修正点などの聴取を行った.さらに,信州大学医学部附属病院で脳外科病棟入院患者を対象とする計測を行うための倫理審査申請を行い,計測環境を整えている.また,より多くの患者からデータを計測するため,鹿教湯三才山リハビリテーションセンター鹿教湯病院において自動車運転評価の業務に携わるスタッフに対し,本研究への協力を要請し,内諾をいただいている.前年度の検討で明らかとなった健常ドライバー(高齢者・若年者)の自動車模擬運転時の操作反応(ハンドル・アクセル・ブレーキ)と手掌部発汗反応,皮膚電位反射手掌部発汗反応の特性に関し,論文を作成し投稿を行っている.昨年度作成した「自動車運転認知行動評価装置」に関する使用感をリハビリテーションスタッフに確認し,修正可能な個所の対応を行っており,実際の患者へは未適応である.また,本研究に関する倫理審査手続きに時間を要しており,臨床場面での計測を開始できていないため,やや遅れていると判断されている.平成30年度は,脳卒中患者の自動車模擬運転時の操作反応および危険認知能力を明らかにすることを目的とする.具体的な手順として,再構築した装置を用いて,模試運転時のハンドル・アクセル・ブレーキの操作反応と手掌部発汗反応等のデータを計測し,得られたデータを健常者データと比較することで,脳卒中患者の応答特性を明らかにする.手順は以下の通りである.1被験者の決定:被験者は脳卒中患者のうち,日常生活で介助を要するほどの障害がなく,生活行為が自立していること,自動車運転の再開を希望していることを条件に20名程度募集する.2実験及び解析:脳卒中患者20名を対象に携帯型自動車運転認知行動評価装置を用いた模擬運転テストを実施する.運転映像には現有する市街地映像と住宅地映像(各5分)を使用し,危険予測場面,危険場面などの場面に分け,ハンドル・アクセル・ブレーキ・手掌部発汗反応の量や応答潜時を分析する.3健常データとの比較および応答特性の抽出:我々は本研究で実施する実験条件で得た健常者データをすでに保有している.保有するデータには若年から高齢まで男女200名のデータが含まれており,本実験の対象者と年齢・性別をマッチングさせることが可能である.マッチングさせた健常者データを「健常者群」,本実験で得られるデータを医「脳卒中群」として,同一場面におけるハンドル・アクセル・ブレーキの操作反応,手掌部発汗反応を比較検討し,自動車運転時の脳卒中患者の応答特性を明らかにする.平成31年度は,前年度実施する予定であった脳卒中患者の自動車模擬運転時の操作反応および危険認知能力を明らかにすることを目的とする.具体的な手順として,再構築した装置を用いて,模試運転時のハンドル・アクセル・ブレーキの操作反応と手掌部発汗反応等のデータを計測し,得られたデータを健常者データと比較することで,脳卒中患者の応答特性を明らかにする.手順は以下の通りである. | KAKENHI-PROJECT-17K13086 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K13086 |
成績証明書と履歴書とを結合・電子化して生涯にわたり活用する可能性 | プログレス・ファイル(Progress File)は、1999年9月からイギリスで導入(特にスコットランドでは本導入)され、成績証明書と履歴書を単に結合するだけでなく、人生前半期の学校教育からその後の学習活動で獲得した学力・職業能力等を逐次更新できることを目指して設計されている。プログレス・ファイルは、到達度およぴ経歴をもれなくきちんと認証を受けた形で記録化ができる点において、従来型の履歴書・内申書が持つ限界や制約を超える可能性がある。ただし、プログレス・ファイルの有効活用のためには、情報環境の整備(「電子化」)が必要となる。具体的には、多種多様な評価の整合的判定を可能とするコンピュータ・データベースの構築と活用である。入力データ間での意味内容の関連づけができていないなら、多種多様な事項の「評価」を行おうにも、事務作業量の点からも対応できない。また、教育現場での評価と企業等採用先人事担当者が求める評価とでは、立場による認識の違いがある。すなわち「評価」において、「形成的(formative)」なものと「総括的(summative)」ものとでせめぎ合いが確かに存在する。きめ細かく「形成的評価」をしたいという教育現場の論理は、プログレス・ファイル所持者の生涯にわたるあらゆる評価を形成的にすることが期待できるという点で優れている。しかし、従来の施策では、簡にして要を得た総括的評価としてしか「教育の外」の社会(具体的には企業等の人事担当者)で通用しなかったことが今後克服されなければならない。さらに、プログレス・ファイルの認知度が、依然として実践現場では低い。しかしながら、以上のような課題や制約を持ちつつも、ブログレス・ファイルには、生涯にわたって「形成的評価」が継続することを目指した書式を全国的に導入していることが、大いに意義があることは決して否定できない。まず、プログレス・ファイル(Progress File)を、履歴書およびポートフォリオ実践の観点から地球規模的にマクロに位置づけするための作業を行っている。イギリスについては、マイケル・F・D・ヤング教授、アンディ・グリーン教授をはじめとするロンドン大学教育研究所に在籍する研究者たちの指導助言も受けつつ、さらに幅広く資料を収集し読解・分析を行っている。また、日本については履歴書式の基準作りに寄与した日本能率協会および全国生活協同組合総連合会から一次資料を取り寄せての検討、オーストラリアについては連邦政府教育・雇用・青年省訓練制度部サンドラ・パーカー課長を、南アフリカについては人間科学調査協会教育訓練部アンドレ・クラーク調査課長をコンタクト・パーソンに検討を始めている。以上にアメリカ・ドイツ・フランスに関する文献資料の検討を含めて、比較分析を進めている。イギリス現地訪問調査についても、その準備を進めている。それに向け、文献資料とインターネット情報の収集・読解および現地キャリアガイダンス用有料データベースのシミュレーションを行っている。調査地は、主として継続教育カレッジ(further education colleges)とする予定である。継続教育カレッジとは、16歳で義務教育年限を終えた学習者を年齢層に関係なく受け入れる教育機関で、学生の量的規模も大きく、イギリス教育において大きな役割を果たしてきた。すでに調査協力の快諾は、スコットランドでのプログレス・ファイル研究開発機関であるストラスクライド継続教育ユニットの現場責任者であるシャム・ナス氏、中央政府主導のキャリアガイダンス全国事業実施組織であるラーンダイレクトのジム・カーン電話相談センター(レスター)管理部長およびロンドン・オープン・カレッジ・ネットワーク・企画調整担当のクリスティン・エドワーズ氏から取り付けた。プログレス・ファイル(Progress File)は、1999年9月からイギリスで導入(特にスコットランドでは本導入)され、成績証明書と履歴書を単に結合するだけでなく、人生前半期の学校教育からその後の学習活動で獲得した学力・職業能力等を逐次更新できることを目指して設計されている。プログレス・ファイルは、到達度およぴ経歴をもれなくきちんと認証を受けた形で記録化ができる点において、従来型の履歴書・内申書が持つ限界や制約を超える可能性がある。ただし、プログレス・ファイルの有効活用のためには、情報環境の整備(「電子化」)が必要となる。具体的には、多種多様な評価の整合的判定を可能とするコンピュータ・データベースの構築と活用である。入力データ間での意味内容の関連づけができていないなら、多種多様な事項の「評価」を行おうにも、事務作業量の点からも対応できない。また、教育現場での評価と企業等採用先人事担当者が求める評価とでは、立場による認識の違いがある。すなわち「評価」において、「形成的(formative)」なものと「総括的(summative)」ものとでせめぎ合いが確かに存在する。きめ細かく「形成的評価」をしたいという教育現場の論理は、プログレス・ファイル所持者の生涯にわたるあらゆる評価を形成的にすることが期待できるという点で優れている。しかし、従来の施策では、簡にして要を得た総括的評価としてしか「教育の外」の社会(具体的には企業等の人事担当者)で通用しなかったことが今後克服されなければならない。さらに、プログレス・ファイルの認知度が、依然として実践現場では低い。しかしながら、以上のような課題や制約を持ちつつも、ブログレス・ファイルには、生涯にわたって「形成的評価」が継続することを目指した書式を全国的に導入していることが、大いに意義があることは決して否定できない。 | KAKENHI-PROJECT-12710151 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12710151 |
変形性顎関節症の分子病態メカニズムならびに分子細胞治療に関する研究 | 本研究では重度変形性顎関節症の発症機序の解明と関節軟骨修復に遺伝子導入を応用することを目的に,(1)CTGF遺伝子を組み込んだアデノウイルスを培養軟骨細胞に導入してその影響を検討するとともに,(2)実験的変形性顎関節症モデルの作製し変形性顎関節症の発症メカニズムについて解析した.1.CTGFの遺伝子導入により細胞数は約1.4倍に増加した.2.CTGFを遺伝子導入した細胞では,CTGF遺伝子の発現が増加しており,CTGFタンパクも産生された.3.CTGFの遺伝子導入により,軟骨細胞の分化マーカーであるアグリカンとtype Xコラーゲン遺伝子発現も遺伝子導入後7日目まで増加していた.また,プロテオグリカン合成も有意に上昇した.4.日本白色ウサギに強制開口行うことにより,ウサギ顎関節部に軟骨組織の象牙化や骨棘形成など,変形性顎関節様の変化を引き起こした.5.骨棘形成周囲の肥大軟骨細胞に軟骨細胞のアポトーシスが認められた。6.アポトーシスを起こしている軟骨細胞の周囲にNO産生細胞やMMP-3産生細胞が存在していた.以上の結果より,軟骨細胞にCTGFを遺伝子導入することにより,軟骨細胞の細胞増殖だけでなく細胞分化も促進されることが明らかになった.また,軟骨基質欠損部にCTGFを応用することにより自己軟骨細胞による軟骨修復の可能性が示唆された.さらに,顎関節部に加えられた過剰なメカニカルストレスは,NOの産生を誘導し,軟骨細胞のアポトーシスとMMP3の産生を介して軟骨破壊を引き起こしていることが示唆されました.本研究で作製した変形性顎関節症モデルが,in vivoでの遺伝子導入による関節軟骨修復研究の進歩につながると推測される.本研究では重度変形性顎関節症の発症機序の解明と関節軟骨修復に遺伝子導入を応用することを目的に,(1)CTGF遺伝子を組み込んだアデノウイルスを培養軟骨細胞に導入してその影響を検討するとともに,(2)実験的変形性顎関節症モデルの作製し変形性顎関節症の発症メカニズムについて解析した.1.CTGFの遺伝子導入により細胞数は約1.4倍に増加した.2.CTGFを遺伝子導入した細胞では,CTGF遺伝子の発現が増加しており,CTGFタンパクも産生された.3.CTGFの遺伝子導入により,軟骨細胞の分化マーカーであるアグリカンとtype Xコラーゲン遺伝子発現も遺伝子導入後7日目まで増加していた.また,プロテオグリカン合成も有意に上昇した.4.日本白色ウサギに強制開口行うことにより,ウサギ顎関節部に軟骨組織の象牙化や骨棘形成など,変形性顎関節様の変化を引き起こした.5.骨棘形成周囲の肥大軟骨細胞に軟骨細胞のアポトーシスが認められた。6.アポトーシスを起こしている軟骨細胞の周囲にNO産生細胞やMMP-3産生細胞が存在していた.以上の結果より,軟骨細胞にCTGFを遺伝子導入することにより,軟骨細胞の細胞増殖だけでなく細胞分化も促進されることが明らかになった.また,軟骨基質欠損部にCTGFを応用することにより自己軟骨細胞による軟骨修復の可能性が示唆された.さらに,顎関節部に加えられた過剰なメカニカルストレスは,NOの産生を誘導し,軟骨細胞のアポトーシスとMMP3の産生を介して軟骨破壊を引き起こしていることが示唆されました.本研究で作製した変形性顎関節症モデルが,in vivoでの遺伝子導入による関節軟骨修復研究の進歩につながると推測される.軟骨細胞に対するCTGF遺伝子の遺伝子導入の効果を検討した.[方法]1.遺伝子導入にはE1A,E1B,E3領域を欠失させた組換えアデノウイルス(5型)を用い,このアデノウイルスの欠失させた部位にCAG promotorと軟骨細胞の増殖,分化を促進する遺伝子として知られているCTGFの遺伝子を組み込んだAx1CACTGFを作製した.2.軟骨細胞としHCS-2/8細胞を用いた.3.HCS-2/8細胞にCTGF遺伝子を遺伝子導入した後,経時的に細胞数を計測した.4.遺伝子導入した細胞から経時的にtotal RNAを回収し,CTGF遺伝子の発現を確認するとともに,軟骨細胞の分化マーカーであるアグリカンとtype Xコラーゲンの遺伝子発現をRT-PCRにて確認した.[結果]1.CTGFの遺伝子導入により細胞数は約1.4倍に増加した.2.CTGFを遺伝子導入した細胞では,CTGF遺伝子の発現が増加していた.また,軟骨細胞の分化マーカーであるアグリカンとtype Xコラーゲン遺伝子発現も遺伝子導入後7日目まで増加していた.以上の結果より,軟骨細胞にCTGFを遺伝子導入することにより,軟骨細胞の細胞増殖だけでなく細胞分化も促進されることが明らかになった.また,軟骨基質欠損部にCTGFを応用することにより自己軟骨紐胞による軟骨修復の可能性が示唆された.本研究では重度変形性顎関節症の発症機序の解明することを目的に,実験的変形性顎関節症モデルを用いて変形性顎関節症の発症メカニズムについて解析した。[方法]1.実験動物には体重2.53.0kgの日本白色ウサギを用いた。2.ネンブタールによる全身麻酔下にて,歯科用開口器による強制開口(開口量:35mm)を1日3時間,5日間行った。3.強制開口終了後7日目(開口群)に顎関節部を摘出し,通法に従い固定,脱灰,パラフィン包埋を行い,切片を作製した。 | KAKENHI-PROJECT-14571843 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14571843 |
変形性顎関節症の分子病態メカニズムならびに分子細胞治療に関する研究 | 作製した切片を用いてTUNEL染色にて軟骨細胞のアポトーシスの有無を検討するとともに,ニトロチロシンならびにMMP-3抗体を用いた免疫染色にて軟骨基質破壊に及ぼすメカニカルストレスの影響を検討した。[結果]1.開口群においては関節頭前方部の骨棘形成周囲の肥大軟骨細胞にTUNEL陽性細胞が認められた.すなわち,軟骨破壊部位に軟骨細胞のアポトーシスが認められた。2.対照群においては,ニトロチロシン陽性細胞は認められなかったのに対し,開口群においてはTUNEL陽性細胞が認められた部位とほぼ同じ部位にニトロチロシン陽性細胞が認められた.また,MMP-3陽性細胞も同様に認められた.以上の結果より,ウサギに強制開口させることにより顎関節部に引き起こされる変形性顎関節症様の組織変化には,メカニカルストレスによる軟骨破壊には軟骨細胞のアポトーシスが関与している可能性が示唆された。また,その軟骨基質破壊にはメカニカルストレスにより産生が誘導されたNOならびにMMP-3が関与している可能性が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-14571843 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14571843 |
無アルブミンラット肝の病的(硬変肝)生理的(部分切除肝)肝再生機序に関する研究 | 無アルブミンラット(NAR)は血清アルブミンが極めて低値であるが,外観発育,繁殖等は正常ラット(SD)と殆ど差のないことが知られている.われわれは, NAR肝組織中に出現するアルブミン陽性細胞を肝再生のマーカーとしてとらえ研究を行ってきた.本研究では, NARの病的(硬変肝)と生理的(部分切除肝)での肝の再生機序の解明をアルブミン陽性細胞を指票として行った. NAR部分切除肝においては,経時的に陽性細胞数が増加する傾向が見られ, 8日後の肝組織においては,多量体細胞が増加する傾向がみられ,総細胞数も3.7倍の増加を認め,肝重量の回復と比例関係がみられた. NAR硬変肝に出現する陽性細胞は,再生結節内に集簇的に出現する傾向を示し, 12週処理後のNARにおいては,再生結節内に30個程度の集簇細胞群として出現した.対照として用いた加齢NAR肝のアルブミン陽性細胞は経時的に増加し, 22週において肝細胞数約一万個当り58個と増加したが,いずれも単一の細胞であった.硬変肝の連続切片をPAP法によりアルブミン染色を行ない,再生結節内のアルブミン陽性細胞のコンピューター解析を行うと,陽性細胞は相互に隣接し同一方向への配向を呈し,単一細胞よりの増殖を思わせる所見であった.集簇するアルブミン陽性細胞群をとりまく陰性細胞の間には,光顕的に差異は見られなかった.部分切除肝におけるアルブミン陽性細胞群は,多くとも2重3重体までであった.さらに密度勾配遠心法による細胞分離で,高比重分画に陽性細胞が約2倍集中する傾向があり,特に48時間の初代培養法により明らかとなった.以上の結果より,病的及び生理的肝再生の理解にアルブミン陽性細胞は極めて有効な手段であった.今後アルブミン陽性細胞の単離,培養により,アルブミン産生細胞と,非産生細胞との生化学的,または超微形態の研究がさらに進展すると思われる.無アルブミンラット(NAR)は血清アルブミンが極めて低値であるが,外観発育,繁殖等は正常ラット(SD)と殆ど差のないことが知られている.われわれは, NAR肝組織中に出現するアルブミン陽性細胞を肝再生のマーカーとしてとらえ研究を行ってきた.本研究では, NARの病的(硬変肝)と生理的(部分切除肝)での肝の再生機序の解明をアルブミン陽性細胞を指票として行った. NAR部分切除肝においては,経時的に陽性細胞数が増加する傾向が見られ, 8日後の肝組織においては,多量体細胞が増加する傾向がみられ,総細胞数も3.7倍の増加を認め,肝重量の回復と比例関係がみられた. NAR硬変肝に出現する陽性細胞は,再生結節内に集簇的に出現する傾向を示し, 12週処理後のNARにおいては,再生結節内に30個程度の集簇細胞群として出現した.対照として用いた加齢NAR肝のアルブミン陽性細胞は経時的に増加し, 22週において肝細胞数約一万個当り58個と増加したが,いずれも単一の細胞であった.硬変肝の連続切片をPAP法によりアルブミン染色を行ない,再生結節内のアルブミン陽性細胞のコンピューター解析を行うと,陽性細胞は相互に隣接し同一方向への配向を呈し,単一細胞よりの増殖を思わせる所見であった.集簇するアルブミン陽性細胞群をとりまく陰性細胞の間には,光顕的に差異は見られなかった.部分切除肝におけるアルブミン陽性細胞群は,多くとも2重3重体までであった.さらに密度勾配遠心法による細胞分離で,高比重分画に陽性細胞が約2倍集中する傾向があり,特に48時間の初代培養法により明らかとなった.以上の結果より,病的及び生理的肝再生の理解にアルブミン陽性細胞は極めて有効な手段であった.今後アルブミン陽性細胞の単離,培養により,アルブミン産生細胞と,非産生細胞との生化学的,または超微形態の研究がさらに進展すると思われる.無アルブミン血症ラット(NAGASE Analbuminemic Rat:NAR)はSDラットより樹立された突然変異種であり、血清アルブミンが極めて低値である一方、外観上通常のラットと全く変化なく、発育,増殖等は正常ラットと差のないことが知られている。われわれは、NARの硬変肝作成とその血漿蛋白合成についての研究で、その硬変肝の作成に成功した。アルブミン陽性肝細胞が集簇的に発現し、血清蛋白の2次元電気泳動法では、アルブミンスポットが顕在化することを明らかにした。従って本研究では、NARの病的(硬変肝)と生理的(部分切除肝)での肝の再生機序の解明を行なうことにより、正常肝での再生機序の研究の実験モデルとして有用であると考えその方法論を確立することを目的し、初年度にNHR部分肝切除肝を作成して組織学的な分布を、酵素抗体法を用いてアルブミン染色を行ないアルブミン陽性細胞が数個の肝細胞塊として発現するが硬変肝に認められるような大きなcell-clusteringは、認めず、またNAR加令により増加するアルブミン陽性細胞よりは多く発現していた。更に、超微構造の研究として、これらNARの電顕検索を行なった。 | KAKENHI-PROJECT-61570354 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61570354 |
無アルブミンラット肝の病的(硬変肝)生理的(部分切除肝)肝再生機序に関する研究 | 透過型電顕では、無処理NAR肝組織に認められるような、SDラットより多い、fctty droplctと粗面小胞体が認められ、滑面小胞体はvesiculaを形成し、ゴルジ装置の発達は不良であった。しかし、これらの所見は、無処置のNARの肝臓との大きな差異とはいえない。今後、可能ならば、アルブミン陽性細胞を分離することにより、アルブミン無産生細胞と産生細胞との生化学的,または超微構造上の研究がさらに進展すると考えられる。その為に現在ではその分離法の開発を行っている。 | KAKENHI-PROJECT-61570354 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61570354 |
限界的超微量試料からの個人識別:クローン化ミトコンドリア遺伝子による解析 | ミトコンドリア遺伝子の多型性に富むローループ領域の断片を合成したプライマーMt333を用いて、PCR法により増幅後、これをベクターに組み込んでクローン化し、独立したそれぞれのクローン塩基配列を決定することによる異同識別を確立した。微量でしかも腐敗、汚染された実際の法医鑑定試料に本法を応用した結果、きわめて有用な成績が得られ、以下にその成果と問題点を述べる。1.腐敗、汚染されたバラバラ女性妊娠死体(6箇所で切断)の異同識別を行う目的で、マルチローカスDNAフィンガープリント法、シングルローカスVNTR法と本法を応用した。その結果、腐敗のためにDNAの分解が高度であったことから、前二法では異同識別の判定が不可能であったが、本法を用いることにより同一死体由来のものであることが明らかになった。2.一方、別の腐敗、汚染された頭部で切断された男性バラバラ死体においても、本法の有用性が確認された。3.ガーゼに付着した膣内容と精液の陣旧性混合斑の試料について、本法を応用して精子のMt333部のシークエンスの決定を試みた。まず、膣止皮細胞のMtDNAと精子由来のMtDNAとを分離する目的で、SDSにより精子由来のMtDNAをおおまかに分画した。次に、このMtDNAのクローン化を試みたが、多くのクローンは膣上皮細胞由来のMtDNAで、精子由来のMtDNAのクローンを選択することが困難であることが判明した。今後は、目的とするMtDNAの分離とクローン化後の各クローンの効率のよい選択法について検討していくつもりである。ミトコンドリア遺伝子の多型性に富むローループ領域の断片を合成したプライマーMt333を用いて、PCR法により増幅後、これをベクターに組み込んでクローン化し、独立したそれぞれのクローン塩基配列を決定することによる異同識別を確立した。微量でしかも腐敗、汚染された実際の法医鑑定試料に本法を応用した結果、きわめて有用な成績が得られ、以下にその成果と問題点を述べる。1.腐敗、汚染されたバラバラ女性妊娠死体(6箇所で切断)の異同識別を行う目的で、マルチローカスDNAフィンガープリント法、シングルローカスVNTR法と本法を応用した。その結果、腐敗のためにDNAの分解が高度であったことから、前二法では異同識別の判定が不可能であったが、本法を用いることにより同一死体由来のものであることが明らかになった。2.一方、別の腐敗、汚染された頭部で切断された男性バラバラ死体においても、本法の有用性が確認された。3.ガーゼに付着した膣内容と精液の陣旧性混合斑の試料について、本法を応用して精子のMt333部のシークエンスの決定を試みた。まず、膣止皮細胞のMtDNAと精子由来のMtDNAとを分離する目的で、SDSにより精子由来のMtDNAをおおまかに分画した。次に、このMtDNAのクローン化を試みたが、多くのクローンは膣上皮細胞由来のMtDNAで、精子由来のMtDNAのクローンを選択することが困難であることが判明した。今後は、目的とするMtDNAの分離とクローン化後の各クローンの効率のよい選択法について検討していくつもりである。 | KAKENHI-PROJECT-04670347 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04670347 |
新型エーラスダンロス症候群の疾患モデル動物の確立と病態メカニズム解明 | 筋拘縮型エーラスダンロス症候群(mcEDS)は、本学医学部から報告された新規疾患である。mcEDSでは、進行性の脊椎変形や、軽微な外圧による巨大皮下血腫等の重篤な症状が認められる。これらの症状に対する治療法開発が望まれているが、本症は疾患概念が確立されてから日が浅く、病態メカニズム解明や治療法確立には至っていない。本研究では、mcEDSの病態メカニズムを解き明かし、将来的な治療法開発に繋げるために、mcEDSの原因遺伝子であるChst14遺伝子欠損マウス(Chst14 KO)を用いた解析を行なった。しかし、Chst14ホモ接合体欠損個体(Chst14-/-)の98%以上が胎生致死であり、成獣での解析は困難であった。そこで、胎生期のChst14-/-を解析したところ、胎盤重量減少や絨毛膜板の血管異常が認められた。さらに、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察から、胎盤絨毛の毛細血管基底膜の菲薄化や断裂を発見した。次に、Chst14-/-の出生率を改善するために、仔育てが上手な系統であるBALB/c系統への戻し交配による繁殖を検討した。その結果、BALB/cに戻し交配した系統(BALB.Chst14 KO)ではChst14-/-の出生率が従来の4倍以上に改善し、成獣での解析が可能となった。BALB.Chst14-/-成獣では、野生型と比べて創傷治癒に遅延が認められ、TEMでは皮膚血管の構造変化を示唆する結果が得られている。これらのことから、Chst14遺伝子が血管の構造や機能維持に重要であることが明らかとなり、mcEDSにおける巨大皮下血腫等の血管合併症との関連性が示唆された。本研究で得られた知見を基に、さらに詳細な解析を行なうために、現在我々は新たに樹立したChst14コンディショナルKOマウスの解析に取りかかっており、将来的なmcEDS研究への貢献が期待できる。平成28年度から平成30年度までに、Chst14 KOマウスを用いたmcEDSの病態解明研究を進めてきた。従来のChst14-/-では、胎生致死の問題から成獣での解析が困難であったが、胎仔期の解析によってChst14遺伝子が胎盤血管の構造や機能に重要であることをGlycobiology誌に報告した。また、BALB/c系統への戻し交配によって、Chst14-/-の出生率改善にも成功し、成獣での解析を可能とした。当初の予定通り、成獣皮膚を解析したところ、創傷治癒の遅延やコラーゲン線維および血管構造の変化を示唆するデータが得られ、mcEDSの皮膚症状に近い疾患モデル動物を開発することができた。さらに現在、mcEDSにおける詳細な血管異常のメカニズムを明らかにするために、申請者は独自にChst14 floxマウスを樹立し、組織特異的Chst14コンディショナルKOマウスの作成に取りかかっており、今後のさらなる発展が期待できる。平成30年度は、BALB.Chst14-/-皮膚の詳細な表現系解析と分子生物学的解析のためのサンプル収集を行なった。また、CRISPR/Cas9による遺伝子導入を試みて、Chst14 flox(コンディショナルKO)マウスの樹立に成功した。平成31年度は、BALB.Chst14-/-皮膚で認められた表現型の再現実験および、リアルタイムPCRによる遺伝子発現解析などを行なう。また、新たに樹立したコンディショナルKOマウスの解析を行なう予定である。エーラスダンロス症候群(EDS)は、皮膚や関節の過進展性と、各種組織の脆弱性を特徴とする疾患である。近年、本学医学部において、CHST14遺伝子変異を原因とする全く新しいタイプのEDS(DDEDS)が発見された。DDEDSでは、転倒などの軽微な外力で巨大な皮下血腫を生じ重篤な出血に至る症状が認められ、病態メカニズム解明と治療法開発が望まれている。しかしながら、本症は疾患概念が確立されて日が浅く、病態メカニズム解明や治療法開発には至っていない。本研究は、DDEDSの疾患モデル動物の確立と、病態メカニズム解明および、基礎医学的知識基盤を構築することを目的としている。そのために、本研究では、DDEDSの原因遺伝子であるChst14遺伝子欠損マウス(Chst14 KO)を用いた解析を行っている。研究代表者は、Chst14 KOを用いた検討を行い、ホモ接合体遺伝子欠損個体(Chst14-/-)の90%以上が胎生致死になることを確認した。また、胎生期のChst14-/-では、胎盤重量の減少や、絨毛膜板の血管異常(虚血や血管径減少など)が認められることを発見した。さらに、透過型電子顕微鏡による観察から、胎盤絨毛の毛細血管基底膜の菲薄化や断裂を新たに発見した。これらの成果は、平成28年度の国際人類遺伝学会で発表し、現在論文投稿準備中である。また、現在飼育中のChst14-/-は胎生致死のため成獣での解析が困難であるが、研究代表者は産仔数の安定した系統への戻し交配によってこの問題が解決出来ることを見出した。 | KAKENHI-PROJECT-16K19396 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K19396 |
新型エーラスダンロス症候群の疾患モデル動物の確立と病態メカニズム解明 | 平成28年度には主に胎仔や胎盤を用いた解析を行い、Chst14遺伝子が血管の発生や機能に重要であることを発見したため、平成29年度には血管に着目した解析を継続して行い、また、よりヒトの病態に近い疾患モデルを樹立・病態メカニズムを解明するために、成獣を用いた解析を進める予定である。当初の計画では、平成28年度には胎盤血管に関する解析や、安定したChst14-/-成獣の作出を予定していた。胎盤血管に関する解析では、研究実績の概要に記したようなデータや成果を得ており、国際誌への論文投稿についても予定通りである。Chst14-/-成獣の作出についても、産仔数の安定した系統への戻し交配(近交化)を、スピードコンジェニック法などを用いて行い、表現型解析を始められる段階にあるため、おおむね順調に進展している。エーラスダンロス症候群(EDS)は、皮膚や関節の過進展性と、各種組織の脆弱性を特徴とする疾患である。近年、本学医学部において、CHST14遺伝子変異を原因とする新しいタイプのEDS(mcEDS)が発見された。mcEDSでは、転倒などの軽微な外力で巨大皮下血腫を生じ重篤な出血に至る症状が認められ、病態メカニズム解明と治療法開発が望まれている。しかし、本症は疾患概念が確立されて日が浅く、病態メカニズム解明や治療法開発には至っていない。本研究は、mcEDSの疾患モデル動物の確立と、病態メカニズム解明および、基礎医学的知識基盤を構築することを目的としている。そのために、本研究ではmcEDSの原因遺伝子であるChst14遺伝子欠損マウス(Chst14 KO)を用いた解析を行っている。しかし、Chst14ホモ接合体遺伝子欠損個体(Chst14-/-)では98%以上が胎生致死になるため、成獣における解析が困難であった。そこで、胎生期のChst14-/-の解析を行い、胎盤重量減少や、絨毛膜板の血管異常(虚血や血管径減少等)が認められることを発見した。さらに、透過型電子顕微鏡による観察から、胎盤絨毛の毛細血管基底膜の菲薄化や断裂を発見した。これらの成果は、平成29年には国際学術雑誌であるGlycobiology(IF: 3.3)に掲載された。研究代表者は、Chst14-/-成獣皮膚で創傷治癒に変化があることを発見した。また、詳細な表現系解析のために、皮膚線維芽細胞の作成を進めている。さらに、Chst14-/-の出生率が遺伝背景による影響を受けることを見いだし、出生率の改善に取り組み、従来困難であった成獣を用いた解析に着手している。前年度からChst14-/-の出生率改善に取り組み、従来の1.3%から5%程度まで改善を行うことができたため、当初の予定通り成獣を用いた解析を進めている。また、初代培養細胞を用いた表現系解にも予定通り着手している。さらに、Chst14-/-胎盤の血管異常に関する論文も報告した。以上のことから、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。筋拘縮型エーラスダンロス症候群(mcEDS)は、本学医学部から報告された新規疾患である。mcEDSでは、進行性の脊椎変形や、軽微な外圧による巨大皮下血腫等の重篤な症状が認められる。これらの症状に対する治療法開発が望まれているが、本症は疾患概念が確立されてから日が浅く、病態メカニズム解明や治療法確立には至っていない。本研究では、mcEDSの病態メカニズムを解き明かし、将来的な治療法開発に繋げるために、mcEDSの原因遺伝子であるChst14遺伝子欠損マウス(Chst14 KO)を用いた解析を行なった。しかし、Chst14ホモ接合体欠損個体(Chst14-/-)の98%以上が胎生致死であり、成獣での解析は困難であった。 | KAKENHI-PROJECT-16K19396 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K19396 |
インフルエンザ経気道ワクチンの開発に関する研究 | 皮下接種インフルエンザワクチンの義務接種は、学童を対象として行われてきた。しかし、この方式は、平成5年度までとなり、今後インフルエンザワクチンは任意接種として行われることになった。このようなワクチンの取扱い方の変貌は、従来の皮下接種インフルエンザワクチンの効果が全般として、期待するレベルに達していなかったということを背景としている。インフルエンザは感染力が高く、また、場合によっては、生命をおびやかす疾患である。そのため、より有効なワクチンの早期実用化が切望されてきた。本研究では、3年間にわたって、より確実な効果が期待できるインフルエンザワクチンとして、経気道ワクチンの開発研究を行ってきた。その結果、経気道ワクチンとして、噴霧接種用不活化インフルエンザワクチンと低温適応変異インフルエンザウイルス生ワクチンの2種類が従来の皮下接種インフルエンザワクチンと同等以上の効果があることを明らかとした。いずれのワクチンも早期実用化可能である。インフルエンザ対策は、集団防衛ではなく、個人防衛を行うことが基本となった。ワクチンの接種対象者は、乳児、小児、成人、高齢者のすベてであり、また、健康人も基礎疾患のある人のすべてである。本研究は、時代の要望を先取りして新しいインフルエンザワクチン開発を行ったものであり、実用化へ向けての具体的な臨床経験を積み重ねた意義は大きい。また、上気表面に直接ワクチンを投与し、気道表面での感染防御力を付与するワクチンは、現在、世界的に注目されている。この方向で実用化可能なワクチンの方向づけをおこなった最初の研究である。皮下接種インフルエンザワクチンの義務接種は、学童を対象として行われてきた。しかし、この方式は、平成5年度までとなり、今後インフルエンザワクチンは任意接種として行われることになった。このようなワクチンの取扱い方の変貌は、従来の皮下接種インフルエンザワクチンの効果が全般として、期待するレベルに達していなかったということを背景としている。インフルエンザは感染力が高く、また、場合によっては、生命をおびやかす疾患である。そのため、より有効なワクチンの早期実用化が切望されてきた。本研究では、3年間にわたって、より確実な効果が期待できるインフルエンザワクチンとして、経気道ワクチンの開発研究を行ってきた。その結果、経気道ワクチンとして、噴霧接種用不活化インフルエンザワクチンと低温適応変異インフルエンザウイルス生ワクチンの2種類が従来の皮下接種インフルエンザワクチンと同等以上の効果があることを明らかとした。いずれのワクチンも早期実用化可能である。インフルエンザ対策は、集団防衛ではなく、個人防衛を行うことが基本となった。ワクチンの接種対象者は、乳児、小児、成人、高齢者のすベてであり、また、健康人も基礎疾患のある人のすべてである。本研究は、時代の要望を先取りして新しいインフルエンザワクチン開発を行ったものであり、実用化へ向けての具体的な臨床経験を積み重ねた意義は大きい。また、上気表面に直接ワクチンを投与し、気道表面での感染防御力を付与するワクチンは、現在、世界的に注目されている。この方向で実用化可能なワクチンの方向づけをおこなった最初の研究である。従来インフルエンザワクチンは、不活化ワクチンの皮下接種が世界的にも主流であったが、その効果については、必ずしも満足できるものではない。インフルエンザウイルスの感染防御においては、血液中の抗体の上昇のみならず、上気道粘膜における防御機構の付与が望まれる。そのために、経気道ワクチン接種を試みた。本年度の研究はインフルエンザ不活化HAワクチンおよびインフルエンザ生ワクチンによる感染防御効果を血液中および局所IgA抗体の動向から検討した。A.噴霧接種用インフルエンザ不活化HAワクチンの接種方式の検討に関する研究皮下接種用不活化インフルエンザHAワクチンに代るワクチンとして、人体用の噴霧接種用不活化インフルエンザHAワクチンが試作され、治験が認可される段階に至った。平成3年度には、噴霧接種用のワクチンの至適投与量、至適投与回数、および最も適当な接種用器具(投薬用スプレ-、アダプタ-付き注射器、耳鼻科用スプレ-など)を検討した。接種前と接種4週後に鼻腔スワブ液と血液を採取し、鼻腔スワブ液中と血清中のインフルエンザ型特異lgA抗体価をELISA法により測定した。血清については、HI抗体価も測定する。各接種方法の評価は、インフルエンザ特異lgA抗体価、HI抗体価の上昇の程度によって行った。B.インフルエンザ生ワクチンの接種試験成人100名を対象として、低温馴化変異組み替えインフルエンザ生ワクチンの接種を行い、接種前および接種後4週の末梢血と鼻腔スワブ液の採取を行った。鼻腔スワブ液中のインフルエンザ特異lgA抗体、インフルエンザ特異血清HI抗体、およびインフルエンザ特異血清lgG,lgA,lgM抗体を接種前後の検体について測定した。平成4年から平成5年にかけての流行期には、過去10年来のインフルエンザの流行があり、インフルエンザの流行抑止あるいは感染防止に関する一般の関心が高まっている。インフルエンザは、典型的な上気道表面の感染症である。われわれは、疾患の発症防止、あるいは流行阻止を目的として使用できるワクチンとして、経気道ワクチンの開発に関する研究を続けてきた。今年度の研究として、噴霧接種用インフルエンザ不活化HAワクチンの接種方式の検討とインフルエンザ生ワクチンの試験的接種を行った。ワクチンの効果の評価法には、われわれの開発した上気道スワブ液中の特異IgA抗体の測定と血中IgA抗体の測定、および標準法による血中HI抗体の測定を用いた。ワクチン濃度、接種量、接種回数、接種器具に関する検討はほぼ終了した段階に至った。 | KAKENHI-PROJECT-03454270 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03454270 |
インフルエンザ経気道ワクチンの開発に関する研究 | 一方、インフルエンザが上気道から感染することから、インフルエンザ生ワクチンを上気道に噴霧して自然感染に類似した状態を作る方向での研究がすすめられてきた。今年度の研究の一環として、インフルエンザ生ワクチンを健常成人に投与し、その免疫学的効果に関する検討を行った。上気表面に直接ワクチンを投与し、気道表面での感染防御力を付与すワクチンは、現在、世界的に注目されている。この方向でのワクチンは、気道から感染する病原体に対する将来のワクチンとして、1つの理想的な形と考えられている。本研究は、インフルエンザだけでなく、その他の上気道から感染する多数の疾患の予防に関する1つの方向づけとなるであろう。近年、粘膜免疫機構の概念が確立され、上気道局所の粘膜面への免疫を付与するためには、ワクチンを直接粘膜に接触させる方法で投与しなければならないことが明らかとなった。インフルエンザは上気道局所でのウイルスの増殖が直接発症につながるので、粘膜免疫が感染・発症の予防に貢献する度合いが非常に大きい。本研究はこの概念を基本としている。【.encircled1.】上気道に直接投与できる【.encircled2.】これまでの研究から安全性有効性の両面でヒトへの投与が可能である。【.encircled3.】実用化への準備が有る程度ととのいつつあるこの3つの条件がととのっているインフルエンザワクチンとして、噴霧接種型不活化インフルエンザワクチンと低温馴化変異インフルエンザウイルス生ワクチンがある。本年度は、この2つのワクチンの免疫源性について検討し、また噴霧型不活化インフルエンザワクチンの有効性を生ワクチンウイルスによるチャレンジテストにより検討した。経気道インフルエンザワクチンとして、上記の2種類のワクチンは、いずれも実用化が可能であるという結果を得た。インフルエンザウイルスが毎年のように変異をしながら流行するという病原体の側の特殊性があり、そのため、接種対象者は有る程度の免疫を既に有していることが多い。インフルエンザワクチンにつては、このような特殊な条件があることを忘れてはならない。インフルエンザ生ワクチンが有効であるのは、既存の免疫が無いか非常に低い対象者であるが、噴霧型不活化インフルエンザワクチンは、既存の免疫の有無にかかわらず有効であることが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-03454270 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03454270 |
鳥類視床下部因子によるプロラクチン細胞分化および機能制御機構 | ニワトリ発生胚発生胚の17日、18日、19日および20日の下垂体を採取し、42度30分間のM199培養液で前培養を行い、その後100nMのVIPを含むM199培養液で60分培養を行い、培養液中に分泌されたプロラクチンの分子動態を限外濾過により濃縮した後に二次元ウェスタンブロット解析により分析した。その結果、昨年度に検出された分泌されたプロラクチンの糖鎖付加型の増加が二次元ウェスタンブロットでも確認された。中でも糖鎖付加型プロラクチンは分子種として4種類から5種類存在することが示された。そしてシグナルの増加は主として等電点が中程の糖鎖付加型アイソフォームの量が大きく増加することで達成されることが判明した。比較対象として成鶏の産卵中、就巣直前、就巣中の個体を用いて同様の実験を行なうために、ウコッケイを用いて行動試験を行い、産卵から就巣に移行する際の行動再現性を確認した。その結果、就巣発現直前の特異的行動として休産日明けのクラッチより産卵のためにうずくまる時間が長くなって行くことを確認し、この産卵行動のパターンは同一個体でなんども繁殖サイクルを通じて再現されることを確認した。この行動再現性を元に、産卵期、就巣直前期の個体同定を行い、就巣期の下垂体とともに培養実験を発生胚と同様に行い、繁殖サイクルを通じて成鶏では発生胚で示されたメイン分子種の他にもやや等電点が低い分子種もほぼ同量存在することが判明し、下垂体の発生分化に伴ってプロラクチンの量的変化とともに、等電点の異なる糖鎖付加型のアイソフォーム比率が変化することが示された。発生に伴う下垂体における糖鎖付加型プロラクチンの量的および質的変化が明らかにされたことから、最終的な分化は視床下部における分泌制御因子の発現と下垂体における糖鎖付加関連遺伝子の発現によって主として制御されていることが判明したこため。また、繁殖サイクル中における視床下部での発現遺伝子のRNAseqを試み、発生胚における遺伝子発現変化をする遺伝子にあたりをつけられたため。過去2年の研究成果より、下垂体におけるプロラクチン細胞の分化は下垂体の視床下部因子に対おする反応性の変化、糖鎖付加型の量的質的変化を制御する酵素遺伝子の発現、および視床下部における分泌制御因子の発現変化によって支配されていることが判明したことから、最終年度は発生胚下垂体および視床下部のRNAseqにより分化に関わる遺伝子の絞り込みを行い、繁殖サイクル中の遺伝子発現変化を比較を行う予定である。本研究ではニワトリ発生胚の下垂体を用いて小腸血管作用ペプチド(VIP)のプロラクチン細胞分化及びプロラクチン分泌能に及ぼす影響を検討した。発生胚14日より20日まで下垂体を採取し、42度30分間のM199培養液で前培養を行い、その後100nMのVIPを含むM199培養液で60分培養を行い、培養液中にプロラクチンが分泌されるのかを検討した。培養液は限外濾過により濃縮し、電気泳動後にウェスタンブロット解析を行った。また、Nグリコシダーゼ処理を行い糖鎖を切断した試料の解析も行った。実験には比較サンプルとしてプロラクチンが多量に含まれる成鶏の下垂体も同様にして実験を行った。ウェスタンブロットによって、下垂体中には16日胚よりプロラクチンがシグナルとして検出されたが、14日-15日胚の下垂体からはシグナルは検出されなかった。16日胚より20日胚までシグナル強度は増加し続けた。培養液中には17日よりプロラクチンが分泌され、下垂体中のプロラクチンに比例するように20日まで分泌される量は増加し続けた。さらに、Nグリコシダーゼ処理を行ったところ、成鶏と同様に23kDaのシグナル一本になった。下垂体中のプロラクチンは発生が進むにつれ糖鎖付加型の量が増加したが、分泌されたプロラクチンにおける糖鎖付加型の比率は大きくは増加しなかった。以上より発生胚下垂体のプロラクチン分泌能は発生胚後期に増加し、これらはVIPに対する応答性が上昇することが背景にあると考えられた。また、発生胚下垂体から分泌されるプロラクチンは繁殖周期中のプロラクチンと基本的には同じ構造を有していると思われるが、糖鎖付加型の比率が低いことから翻訳後の修飾状態にやや違いがあることが示唆された。発生胚下垂体を用いた培養は大きな問題なく遂行することができ、ウェスタンブロットにより下垂体へのVIPの効果もプロラクチンの培養液への分泌という形で証明することができた。また、発生胚から分泌された下垂体は産卵期にプロラクチンと比べやや糖鎖付加型の比率が低いという新しい知見もえられたことから、これまで想定されていなかった細胞内におけるプロラクチンの翻訳後修飾に時間がかかることがしさされ、予定していた以上の成果が得られたため。ニワトリ発生胚発生胚の17日、18日、19日および20日の下垂体を採取し、42度30分間のM199培養液で前培養を行い、その後100nMのVIPを含むM199培養液で60分培養を行い、培養液中に分泌されたプロラクチンの分子動態を限外濾過により濃縮した後に二次元ウェスタンブロット解析により分析した。その結果、昨年度に検出された分泌されたプロラクチンの糖鎖付加型の増加が二次元ウェスタンブロットでも確認された。中でも糖鎖付加型プロラクチンは分子種として4種類から5種類存在することが示された。 | KAKENHI-PROJECT-17K08055 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K08055 |
鳥類視床下部因子によるプロラクチン細胞分化および機能制御機構 | そしてシグナルの増加は主として等電点が中程の糖鎖付加型アイソフォームの量が大きく増加することで達成されることが判明した。比較対象として成鶏の産卵中、就巣直前、就巣中の個体を用いて同様の実験を行なうために、ウコッケイを用いて行動試験を行い、産卵から就巣に移行する際の行動再現性を確認した。その結果、就巣発現直前の特異的行動として休産日明けのクラッチより産卵のためにうずくまる時間が長くなって行くことを確認し、この産卵行動のパターンは同一個体でなんども繁殖サイクルを通じて再現されることを確認した。この行動再現性を元に、産卵期、就巣直前期の個体同定を行い、就巣期の下垂体とともに培養実験を発生胚と同様に行い、繁殖サイクルを通じて成鶏では発生胚で示されたメイン分子種の他にもやや等電点が低い分子種もほぼ同量存在することが判明し、下垂体の発生分化に伴ってプロラクチンの量的変化とともに、等電点の異なる糖鎖付加型のアイソフォーム比率が変化することが示された。発生に伴う下垂体における糖鎖付加型プロラクチンの量的および質的変化が明らかにされたことから、最終的な分化は視床下部における分泌制御因子の発現と下垂体における糖鎖付加関連遺伝子の発現によって主として制御されていることが判明したこため。また、繁殖サイクル中における視床下部での発現遺伝子のRNAseqを試み、発生胚における遺伝子発現変化をする遺伝子にあたりをつけられたため。VIPによる下垂体培養によりプロラクチン分泌の効果と合成状態をより正確に把握するために、翻訳後修飾されたプロラクチンが増加していること及びプロラクチン細胞のVIP応答能を確認するために、過去の実験日齢に基づき、孵化1日、3日の個体の下垂体培養を行い、分泌された糖鎖孵化型プロラクチンの比率がどのように変化するかを追跡調査する。また、予定通りに下垂体中のVIPレセプターの発現量をリアルタイムPCRにより定量するほか、視床下部におけるVIP量の変動を遺伝子レベルで確認する。過去2年の研究成果より、下垂体におけるプロラクチン細胞の分化は下垂体の視床下部因子に対おする反応性の変化、糖鎖付加型の量的質的変化を制御する酵素遺伝子の発現、および視床下部における分泌制御因子の発現変化によって支配されていることが判明したことから、最終年度は発生胚下垂体および視床下部のRNAseqにより分化に関わる遺伝子の絞り込みを行い、繁殖サイクル中の遺伝子発現変化を比較を行う予定である。実験に使用するペプチド合成の完成が遅延したため、年度末に追加で行おうと予定していた孵化個体下垂体の培養実験が行えなかったため。RNAseq解析を外注したが、受注会社の社内連絡ミスにより試料の解析が1ヶ月弱行われなかった。そのために、支払い額が確定しないまま年度末になったため、解析結果が出るまで実験を停止したため。 | KAKENHI-PROJECT-17K08055 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K08055 |
クロム系レーザーにおける利得空間ホールバーニングによるトランジェントホログラム | レーザー媒質の飽和増幅を介して非線形分極を誘起するのに必要な光強度はレーザー活性種であるイオンの誘導放出断面積とレーザー上準位寿命の積に反比例する。Cr^<3+>に比べ、Nd^<3+>は誘導放出断面積は数倍大きく、また、実験にNd : YAGレーザーを光源として使用できることから、実験が用意である。そこで、前段階としてCr^<3+> : LiSAF等の代わりにNd : YAG結晶を非線形媒質として使用し、縮退四光波混合配置によるホログラム記録、位相共役波の再生実験を行った。フラシュランプ励起Nd : YAGロッド中にQ-switch Nd : YAGレーザー光(パルス幅8ns)を入射して、四光波混合を行った結果、シグナル光およびポンプ光フルエンスがそれぞれ1mJ/cm^2、60mJ/cm^2で位相共役波反射率は20%に達した。また、ホログラムとして重要な画像の忠実度をシグナル光と位相共役光のM^2から評価した。忠実度はレーザーロッドヘシグナル光を集光するレンズのNAに大きく依存する。レンズのNAを小さくすると、結晶中でシグナル光、ポンプ光の相互作用長は大きくなり、反射率は向上する。しかしながら、非線形増幅の効果を大きく受けて、シグナル光の持つ空間的な高周波成分は再現されなくなり、位相共役光のM^2はシグナル光のそれより小さくなることがわかった。このことは、回析効率、忠実度のトレードオフからホログラム記録に最適なNAが決まることを意味する。これらを踏まえて、今後Cr^<3+> : LiSAF等のCr^<3+>イオンドープレーサー結晶で実験を行う予定である。レーザー媒質の飽和増幅を介して非線形分極を誘起するのに必要な光強度はレーザー活性種であるイオンの誘導放出断面積とレーザー上準位寿命の積に反比例する。Cr^<3+>に比べ、Nd^<3+>は誘導放出断面積は数倍大きく、また、実験にNd : YAGレーザーを光源として使用できることから、実験が用意である。そこで、前段階としてCr^<3+> : LiSAF等の代わりにNd : YAG結晶を非線形媒質として使用し、縮退四光波混合配置によるホログラム記録、位相共役波の再生実験を行った。フラシュランプ励起Nd : YAGロッド中にQ-switch Nd : YAGレーザー光(パルス幅8ns)を入射して、四光波混合を行った結果、シグナル光およびポンプ光フルエンスがそれぞれ1mJ/cm^2、60mJ/cm^2で位相共役波反射率は20%に達した。また、ホログラムとして重要な画像の忠実度をシグナル光と位相共役光のM^2から評価した。忠実度はレーザーロッドヘシグナル光を集光するレンズのNAに大きく依存する。レンズのNAを小さくすると、結晶中でシグナル光、ポンプ光の相互作用長は大きくなり、反射率は向上する。しかしながら、非線形増幅の効果を大きく受けて、シグナル光の持つ空間的な高周波成分は再現されなくなり、位相共役光のM^2はシグナル光のそれより小さくなることがわかった。このことは、回析効率、忠実度のトレードオフからホログラム記録に最適なNAが決まることを意味する。これらを踏まえて、今後Cr^<3+> : LiSAF等のCr^<3+>イオンドープレーサー結晶で実験を行う予定である。 | KAKENHI-PROJECT-08750048 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08750048 |
新規下垂体糖蛋白ホルモン、サイロスティムリンの生理機能の探索 | 甲状腺、副腎皮質、性腺等の内分泌臓器の働きを支配する下垂体前葉において、新たにサイロスティムリンというホルモンが発見されました。サイロスティムリンの役割を調べる為に、その遺伝子調節機構を調べたところ,炎症を引き起こすサイトカインによって発現が誘導されることが分かりました。また、このホルモンはヒツジ、ブタ、ウシ、ヒトの脳下垂体前葉において、ACTHと言うホルモンと同じ細胞で作られることもわかりました。甲状腺、副腎皮質、性腺等の内分泌臓器の働きを支配する下垂体前葉において、新たにサイロスティムリンというホルモンが発見されました。サイロスティムリンの役割を調べる為に、その遺伝子調節機構を調べたところ,炎症を引き起こすサイトカインによって発現が誘導されることが分かりました。また、このホルモンはヒツジ、ブタ、ウシ、ヒトの脳下垂体前葉において、ACTHと言うホルモンと同じ細胞で作られることもわかりました。サイロスティムリンはGPA2とGPB5の二つのサブユニットから成るヘテロダイマーの糖蛋白ホルモンである。その生理機能を明らかにするためin vivoとin vitroの二つの系から探索を行なっている。2007年度の研究計画の進捗状況を以下に述べる。1.転写調節領域の解析:内分泌組織発生に関与する転写因子、isl-1がGPA2の正の調節を行なうことをReguratoly Peptide誌に発表した。GPB5については、培養細胞系においてILl-bおよびTNFa等の炎症性サイトカインがNFkBを介して発現調節に関与することを明らかにした。2.ELISA系の構築:ELISA系を構築するため、E.Coli大量蛋白発現系でGST-GPB5を発現、家兎に免疫して抗血清を作成中である。3.下垂体免疫染色:8例のヒト剖検下垂体標本において、GPB5の抗血清と、下垂体ホルモン(成長ホルモン、ACTH、TSH、LH、プロラクチン)とで二重免疫染色を行なった。全例でGPB5はACTH産生細胞と共存しており、Corticotroph特異的なホルモンであることが明らかとなった。4.下垂体腫瘍の免疫染色:各種下垂体疾患標本(末端肥大症10例、クッシング病5例、プロラクチノーマ3例、非機能性腺腫10例)において免疫染色を行なったところ、GPB5免疫活性はクッシング病の腫瘍組織にのみ認められ、ACTHとの共存が確認された。他の下垂体腫瘍にはGPB5は検出されなかった。5.各種哺乳類下垂体におけるサイロスティムリンの探索:各種哺乳類(ウシ、ブタ、ヒツジ、イヌ、モルモット、マウス)から下垂体を摘出し、免疫組織染色を行なった。ウシ、ブタ、ヒツジではヒトと同様GPB5陽性であったが、それ以外では陰性であった。比較的高等、大型の哺乳類の下垂体でのみサイロスティムリンが存在するという、種差が観察された。サイロスティムリンはGPA2とGPB5の二つのサブユニットから成るヘテロダイマーの糖蛋白ホルモンである。その生理機能を明らかにするためin vivoとin vitroの二つの系から探索を行なっている。2008年度の研究計画の進捗状況を以下に述べる。1.転写調節領域の解析:内分泌組織発生に関与する転写因子、isl-1がGPA2の正の調節を行なうことをReguratoly Peptide誌に発表した。GPB5については、培養細胞系においてIL1-bおよびTNFa等の炎症性サイトカインがNFkBを介して発現調節に関与することを明らかにし、米国内分泌学会誌、'Endocrinology'に発表した。2.ELISA系の構築:ELISA系を構築するため、E.Coli大量蛋白発現系でGST-GPB5を発現、家兎に免疫して抗血清を作成したが、ELISA系の確立には至らなかった。あらたにeXact tagを付加した哺乳類大量培養系を作成中である。3.下垂体腫瘍の免疫染色:各種下垂体疾患標本(末端肥大症10例、クッシング病5例、プロラクチノーマ3例、非機能性腺腫10例)において免疫染色を行なったところ、GPB5免疫活性はクッシング病の腫瘍組織にのみ認められ、ACTHとの共存が確認された。他の下垂体腫瘍にはGPB5は検出されなかった。この内容を、2008米国内分泌学会学術総会Endo2008で発表した。4.各種哺乳類下垂体におけるサイロスティムリンの探索:各種哺乳類(ウシ、ブタ、ヒツジ、イヌ、モルモット、マウス)から下垂体を摘出し、免疫組織染色を行なった。ウシ、ブタ、ヒツジではヒトと同様GPB5陽性であったが、それ以外では陰性であった。比較的高等、大型の哺乳類の下垂体でのみサイロスティムリンが存在するという、種差が観察された。サイロスティムリンはGPA2とGPB5の二つのサブユニットから成るヘテロダイマーの糖蛋白ホルモンである。その生理機能を明らかにするためin vivoとin vitroの二つの系から探索を行なっている。2009年度の研究計画の進捗状況を以下に述べる。1.転写調節領域の解析:内分泌組織発生に関与する転写因子、isl-1がGPA2の正の調節を行なうことをReguratoly Peptide誌に発表した。GPB5については、培養細胞系においてIL1-bおよびTNFa等の炎症性サイトカインがNFkBを介して発現調節に関与することを明らかにし、米国内分泌学会誌、'Endocrinology'に発表した。 | KAKENHI-PROJECT-19590245 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19590245 |
新規下垂体糖蛋白ホルモン、サイロスティムリンの生理機能の探索 | 2.ELISA系の構築:ELISA系を構築するため、E. Coli大量蛋白発現系でGST-GPB5を発現、家兎に免疫して抗血清を作成したが、ELISA系の確立には至らなかった。あらたにeXact tagを付加した哺乳類大量培養系を作成中した。3.下垂体腫瘍の免疫染色:各種下垂体疾患標本(末端肥大症10例、クッシング病5例、プロラクチノーマ3例、非機能性腺腫10例)において免疫染色を行なったところ、GPB5免疫活性はクッシング病の腫瘍組織にのみ認められ、ACTHとの共存が確認された。他の下垂体腫瘍にはGPB5は検出されなかった。この内容を、2008米国内分泌学会学術総会Endo2008で発表した。4.各種哺乳類下垂体におけるサイロスティムリンの探索:各種哺乳類(ウシ、ブタ、ヒツジ、イヌ、モルモット、マウス)から下垂体を摘出し、免疫組織染色を行なった。ウシ、ブタ、ヒツジではヒトと同様GPB5陽性であったが、それ以外では陰性であった。比較的高等、大型の哺乳類の下垂体でのみサイロスティムリンが存在するという、種差が観察された。 | KAKENHI-PROJECT-19590245 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19590245 |
単結晶理想表面に対する液体純金属のぬれ現象その場観察 | 分担者高橋が中心となり,分子(動)力学等に使用される原子間ポテンシャルの決定方法であるMEAM(Modified Embedded Atom Method)の表面問題への適応を検討した.具体的には,走査型トンネル電子顕微鏡や低速電子線回折などによって計測された固体表面原子の配列とMEAMによるポテンシャルから推定される配列を比較した.検討は,面心立方格子(FCC)構造,体心立方(BCC)構造,単純立方構造,およびダイアモンド構造を取る物質で,MEAMパラメーターが決められている全ての物質に対して行った.その結果,シリコン(111)表面における7×7構造をMEAMポテンシャルはかなり正確に表現することがわかった.また,FCC金属の(110)表面においては理想構造をとるものとMissing Row構造をとるものがあるが,MEAMポテンシャルは多くの系に対し,実験と同じ構造を予言することが判明した.量子化学計算でない方法が表面の原子間結合状に対しこれほど有効であると言うのは驚くべき結果と言える.但し,物質によっては実験値と相反する結果となるものもあり,MEAMの適用は慎重でなければならない一面も明らかになった.同時に,実験における境界条件が真に正しいとも限らない点も考慮する必要がある.しかし,おおむねMEAMは多原子系のポテンシャルとして期待できるという結論をえた.実験的な検討については,従来のシステムを改造することにより,より信頼できるシステムにする事ができたが,結果に関しては今後も検討を続ける予定である.分担者高橋が中心となり,分子(動)力学等に使用される原子間ポテンシャルの決定方法であるMEAM(Modified Embedded Atom Method)の表面問題への適応を検討した.具体的には,走査型トンネル電子顕微鏡や低速電子線回折などによって計測された固体表面原子の配列とMEAMによるポテンシャルから推定される配列を比較した.検討は,面心立方格子(FCC)構造,体心立方(BCC)構造,単純立方構造,およびダイアモンド構造を取る物質で,MEAMパラメーターが決められている全ての物質に対して行った.その結果,シリコン(111)表面における7×7構造をMEAMポテンシャルはかなり正確に表現することがわかった.また,FCC金属の(110)表面においては理想構造をとるものとMissing Row構造をとるものがあるが,MEAMポテンシャルは多くの系に対し,実験と同じ構造を予言することが判明した.量子化学計算でない方法が表面の原子間結合状に対しこれほど有効であると言うのは驚くべき結果と言える.但し,物質によっては実験値と相反する結果となるものもあり,MEAMの適用は慎重でなければならない一面も明らかになった.同時に,実験における境界条件が真に正しいとも限らない点も考慮する必要がある.しかし,おおむねMEAMは多原子系のポテンシャルとして期待できるという結論をえた.実験的な検討については,従来のシステムを改造することにより,より信頼できるシステムにする事ができたが,結果に関しては今後も検討を続ける予定である. | KAKENHI-PROJECT-10875142 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10875142 |
骨再生時のカルスにおける結合組織増殖因子CTGFの発現分析と骨再生促進への応用 | 内軟骨性骨化因子CTGFの有用性が多数指摘されてきた背景をもとにCTGFの骨折回復促進への応用を検討する目的で、in vivoでのCTGFの役割の分析を行った。CTGFはマウスの骨形成の際、増殖軟骨細胞が肥大軟骨細胞へ分化する過程で肥大骨細胞に発現した。ctgfノックアウトマウスを作成し、その骨形成を観察したが、血管形成では野生型と有意差が見らなかったし、発生中期の肝臓における巨核球、単核球系の細胞の密度にも有意差が無く、骨形成でさえ殆ど正常に近かった。しかし、ctgfのノックアウトマウスでは長骨は野生型とはやや異なり、石灰化以降の骨形成は遅延し、軽度の湾曲が見られた。口蓋は吻側から尾側まで完全に分離した重度の口蓋裂を生じ、結局出生直後で死亡し島後期胚で肥大軟骨細胞層の厚さが野生型よりかなり厚かったこと、破骨細胞の肥大軟骨層への集中が見られなかったことが、長管骨の形成に影響したと推測された。即ち、肥大軟骨細胞にCTGFが発現するとアポトーシスが起こり、そこへ向かって破骨細胞が集中するというメカニズムが働いていない可能性が示唆された。そこで、ラットの大腿骨を骨折させてカルスを作り破骨細の動態を観察したところ、最初カルスの周囲にランダムに配置していた破骨細胞は、骨折10日以後長軸に直角に配置し、カルス軟骨部の吸収が活発化することが判明した。これらの結果から、破骨細胞の動向が内軟骨性骨化に影響を与える可能性が示された。次に、肥大軟骨細胞と破骨細胞の関係を確認するため、軟骨細胞と破骨細胞のコンビネーション培養を試みた。培養液にCTGFやSF/HGFの受容体であるc-Metの抗体を添加し、24時間後にTRAP染色によって破骨細胞の移動を比較検討し鳥その結果、抗CTGF抗体を添加すると破骨細胞の増殖も移動活性も有意に上昇するという、in vivoのデータと相反する結果を生じた。内軟骨性骨化因子CTGFの有用性が多数指摘されてきた背景をもとにCTGFの骨折回復促進への応用を検討する目的で、in vivoでのCTGFの役割の分析を行った。CTGFはマウスの骨形成の際、増殖軟骨細胞が肥大軟骨細胞へ分化する過程で肥大骨細胞に発現した。ctgfノックアウトマウスを作成し、その骨形成を観察したが、血管形成では野生型と有意差が見らなかったし、発生中期の肝臓における巨核球、単核球系の細胞の密度にも有意差が無く、骨形成でさえ殆ど正常に近かった。しかし、ctgfのノックアウトマウスでは長骨は野生型とはやや異なり、石灰化以降の骨形成は遅延し、軽度の湾曲が見られた。口蓋は吻側から尾側まで完全に分離した重度の口蓋裂を生じ、結局出生直後で死亡し島後期胚で肥大軟骨細胞層の厚さが野生型よりかなり厚かったこと、破骨細胞の肥大軟骨層への集中が見られなかったことが、長管骨の形成に影響したと推測された。即ち、肥大軟骨細胞にCTGFが発現するとアポトーシスが起こり、そこへ向かって破骨細胞が集中するというメカニズムが働いていない可能性が示唆された。そこで、ラットの大腿骨を骨折させてカルスを作り破骨細の動態を観察したところ、最初カルスの周囲にランダムに配置していた破骨細胞は、骨折10日以後長軸に直角に配置し、カルス軟骨部の吸収が活発化することが判明した。これらの結果から、破骨細胞の動向が内軟骨性骨化に影響を与える可能性が示された。次に、肥大軟骨細胞と破骨細胞の関係を確認するため、軟骨細胞と破骨細胞のコンビネーション培養を試みた。培養液にCTGFやSF/HGFの受容体であるc-Metの抗体を添加し、24時間後にTRAP染色によって破骨細胞の移動を比較検討し鳥その結果、抗CTGF抗体を添加すると破骨細胞の増殖も移動活性も有意に上昇するという、in vivoのデータと相反する結果を生じた。内軟骨性骨化因子として同定されたCTGFの培地への添加によって、軟骨細胞株HCS-2/8の増殖、軟骨芽細胞分化の相反的促進をはじめ、細胞接着向上等、この増殖因子の有用性が多数指摘されてきた。そこで、我々はこの背景をもとにCTGFの骨折回復促進への応用を検討する目的で、in vivoでのCTGFの役割の分析を開始し、正常マウスの骨形成の際、増殖軟骨細胞が肥大軟骨細胞へ分化する過程で肥大軟骨細胞が発現することを報告した。今回、米国のLyones教授からctgfヘテロの個体を供与され、ctgfのノックアウトマウスを作成し、その骨形成を観察した。遺伝子型は12日胚を境に、それ以前は卵黄嚢、それ以後は尾を消化してPCRにより判定した。その結果、CTGF遺伝子発現に見られた2相性、即ち遺伝子発現の最初のピークが79日胚を中心に起こり、以後減衰して13日胚頃から再び上昇する2相性パターンに関連する形態的変化は見られなかった。血管形成も野生型と有意差が見られなかったし、発生中期の肝臓における巨核球、単核球系の細胞の密度にも有意差が無く、骨形成でさえ殆ど正常に近く、Cbfa1をノックアウトしたマウスに見られたような劇的な遅延や骨髄の非形成は見られなかった。しかし、ctgfのノックアウトマウスでは大腿骨等の長骨は野生型とはやや異なり、石灰化以降の骨形成は遅延し、軽度の弯曲が見られた。 | KAKENHI-PROJECT-17591908 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17591908 |
骨再生時のカルスにおける結合組織増殖因子CTGFの発現分析と骨再生促進への応用 | 口蓋は吻側から尾側まで完全に分離した重度の口蓋裂を生じた。結局、出生からわずかの後死亡した。歯胚、腎、心臓は有意差が見られなかった。ctgfのノックアウトマウスの後期胚で骨形成部位を詳細に検討した結果、肥大軟骨細胞層の厚さが野生型よりかなり厚いこと、破骨細胞の肥大軟骨層への集中が見られなかったことが、長管骨の形成に影響したと推測された。即ち、肥大軟骨細胞にCTGFが発現するとアポトーシスが起こり、そこへ向かって破骨細胞が集中するというメカニズムが働いている可能性が示唆された。CTGF遺伝子のノックアウトマウスの後期胚で骨形成部位を詳細に検討した結果、肥大軟骨細胞にCTGFが発現するとアポトーシスが起こり、そこへ向かって破骨細胞が集中するというメカニズムが働いている可能性が示唆された。即ち、破骨細胞の動向が内軟骨性骨化に影響を与える可能性が示された。一方、CTGF同様多機能で知られる肝細胞成長因子SF/HGFは器官培養骨の成長を促進すると報告されている。そこで今回、SF/HGFの受容体として知られるc-Metのノックアウトマウスを用い、内軟骨性骨化部位を中心にTRAP染色によって破骨細胞の配置を比較検討した。c-Met遺伝子をノックアウトすると体節の筋節細胞の移動が起こらないうえ、発生中期まででほとんど死滅するため、骨形成の観察には適さないが今回は、胎盤の栄養芽細胞を4n化することによってレスキューすることを目的に2細胞期の受精卵を集め、60Vの直流パルスで細胞融合した受精卵を用いて17日胚まで発生を進行させたものを用いた。c-met-/-の骨形成は全体的に野生型より若干遅めであったものの、骨形成そのものは起こった。肥大軟骨のアポトーシス部位には野生型のように破骨細胞が集中することは無く、破骨細胞は数も少なく骨梁形成部位にかけて散在する傾向が強かったことはctgf-/-に近似していた。また、臼歯や切歯歯胚の周囲における破骨細胞の配置には大差は無かったが、破骨細胞数は少な目であった。これもctgf-/-と同様であったが、歯胚の形態は正常であった。頭頂骨の骨梁は骨膜内に形成されたものの、骨梁数は野生型より少なかった。以上の観察結果から、仮にc-met-/-がこのまま成長すればctgf-/-のような異常な長管骨の形成が推測され、破骨細胞の数や動向が骨形成の鍵を握っている可能性が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-17591908 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17591908 |
大腸癌におけるE-カドヘリン発現と転移形成能に関する研究 | 細胞間接着分子であるE-カドヘリンは悪性腫瘍の浸潤、転移に重要な役割を果たしていると言われている。大腸癌100例にてE-カドベリンの予後規定因子としての意義を検討した。免疫組織染色を用いて癌組織におけるE-カドヘリンの発現型を評価し、組織型、壁深達度、リンパ節転移などの臨床病理学的因子との関連、さらには予後との関連にを検討した。E-カドヘリンの発現形式はpreserved type 43例、heterogenous type32例、lost type 25例の3群に分類でき、その発現は臨床病理学的因子のうち、臨床病期、組織型、壁深達度、リンパ節転移、肝転移、静脈およびリンパ管侵襲と関連していた。またheterogenous type、lost typeでは再発例が多く、E-カドヘリンの発現は再発とも関連していた。術後生存率との関連では、全症例、治癒切除症例の両者でheterogenous type、lost typeの患者ではpreserved typeの患者に比し、累積生存率が有意に不良であった。多変量解析では。全症例100例ではE-カドヘリン、臨床病期、静脈およびリンパ管侵襲が独立して予後と関連し、治癒切除症例73例ではE-カドヘリンのみが独立して予後に影響を与えていた。以上より、大腸癌患者においてE-カドヘリンの発現形式は独立した予後規定因子であり、heterogenous type、lost typeすなわちE-カドヘリンの発現減弱が大腸癌患者の予後に関与することが明らかとなった細胞間接着分子であるE-カドヘリンは悪性腫瘍の浸潤、転移に重要な役割を果たしていると言われている。大腸癌100例にてE-カドベリンの予後規定因子としての意義を検討した。免疫組織染色を用いて癌組織におけるE-カドヘリンの発現型を評価し、組織型、壁深達度、リンパ節転移などの臨床病理学的因子との関連、さらには予後との関連にを検討した。E-カドヘリンの発現形式はpreserved type 43例、heterogenous type32例、lost type 25例の3群に分類でき、その発現は臨床病理学的因子のうち、臨床病期、組織型、壁深達度、リンパ節転移、肝転移、静脈およびリンパ管侵襲と関連していた。またheterogenous type、lost typeでは再発例が多く、E-カドヘリンの発現は再発とも関連していた。術後生存率との関連では、全症例、治癒切除症例の両者でheterogenous type、lost typeの患者ではpreserved typeの患者に比し、累積生存率が有意に不良であった。多変量解析では。全症例100例ではE-カドヘリン、臨床病期、静脈およびリンパ管侵襲が独立して予後と関連し、治癒切除症例73例ではE-カドヘリンのみが独立して予後に影響を与えていた。以上より、大腸癌患者においてE-カドヘリンの発現形式は独立した予後規定因子であり、heterogenous type、lost typeすなわちE-カドヘリンの発現減弱が大腸癌患者の予後に関与することが明らかとなった上皮性悪性腫瘍の浸潤、転移に重要な役割をはたしているとされるE-カドヘリンの予後規定因子としての意義を大腸癌100を用いて検討した.癌組織におけるE-カドヘリンの発現を免疫組織染色を行い、組織型、壁深達度、リンパ節転移などの臨床病理学的因子との関連、さらには予後との関連について考察した.その結果、E-カドヘリン発現型は43例でpreserved type、32例でheterogenous type、25例でlost typeであった.臨床病理学的因子のうちE-カドヘリンと相関を認めたのは、臨床病期、壁深達度、組織型、リンパ節転移、肝転移、静脈およびリンパ管侵襲であった.E-カドヘリン発現と再発には有意な相関を認め、heterogenous typeおよびlost typeで再発例が多かった.生存率との関連をみると、全症例において、また治癒切除例に限っても、heterogenous typeおよびlost typeの患者ではpreserved typeの患者に比して術後累積生存率は有意に不良であった.生存を目的変数とし、E-カドヘリン発現型を含む臨床病理学的因子を独立変数とした多変量解析の結果、全症例100例では、E-カドヘリンは臨床病期、静脈およびリンパ管侵襲とともに独立した予後規定因子であり、治癒切除例73例ではE-カドヘリンのもが唯一の独立した予後規定因子であった.以上の検討より、大腸癌の予後規定因子としてE-カドヘリン発現型は独立した予後規定因子であり、heterogenous typeおよびlost typeのE-カドへリン発現、すなわちE-カドヘリン発現減弱は患者の予後を不良とすることが明らかにされた.細胞間接着分子であるE-カドヘリンは悪性腫瘍の浸潤、転移に重要な役割を果たしていると言われている。大腸癌100例にてE-カドヘリンの予後規定因子としての意義を検討した。免疫組織染色を用いて癌組織におけるE-カドへリンの発現型を評価し、組織型、壁深達度、リンパ節転移などの臨床病理学的因子との関連、さらには予後との関連にを検討した。E- | KAKENHI-PROJECT-08671434 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08671434 |
大腸癌におけるE-カドヘリン発現と転移形成能に関する研究 | カドヘリンの発現形式はpreserved type 43例、heterogenous type 32例、lost type 25例の3群に分類でき、その発現は臨床病理学的因子のうち、臨床病期、組織型、壁深達度、リンパ節転移、肝転移、静脈およびリンパ管侵襲と関連していた。またheterogenous type、lost typeでは再発例が多く、E-カドヘリンの発現は再発とも関連していた。術後生存率との関連では、全症例、治癒切除症例の両者でheterogenous type、lost typeの患者ではpreserved typeの患者に比し、累積生存率が有意に不良であった。多変量解析では、全症例100例ではE-カドヘリン、臨床病期、静脈およびリンパ管侵襲が独立して予後と関連し、治癒切除症例73例ではE-カドヘリンのみが独立して予後に影響を与えていた。以上より、大腸癌患者においてE-カドヘリンの発現形式は独立した予後規定因子であり、heterogenous type、lost typeすなわちE-カドヘリンの発現減弱が大腸癌患者の予後に関与することが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-08671434 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08671434 |
「外来治療を受けるがん患者のエンパワメントを促進する看護モデル」の臨床適用の検討 | 「外来で治療を受けるがん患者のエンパワメントを促進する看護モデル」に基づく援助プログラムを3つの調査施設で外来化学療法を受ける患者に実践し、その過程と効果の評価からモデルの臨床実践への適用について検討した。看護モデルの適用方法には施設の特徴が反映され、患者への対応の仕方に関する具体的な援助プログラムの作成や、看護行為に対する意味づけにつながった。患者を対象とした質問紙調査の結果、看護モデルに基づく看護援助の提供が、患者のエンパワメントに影響することが示された。「外来で治療を受けるがん患者のエンパワメントを促進する看護モデル」に基づく援助プログラムを3つの調査施設で外来化学療法を受ける患者に実践し、その過程と効果の評価からモデルの臨床実践への適用について検討した。看護モデルの適用方法には施設の特徴が反映され、患者への対応の仕方に関する具体的な援助プログラムの作成や、看護行為に対する意味づけにつながった。患者を対象とした質問紙調査の結果、看護モデルに基づく看護援助の提供が、患者のエンパワメントに影響することが示された。本研究の目的は、「外来で治療を受けるがん患者のエンパワメントを促進する看護モデル」に基づく援助プログラムを外来化学療法を受ける患者に実践し、その効果の評価からモデルの臨床実践への適用について検討することである。平成21年度の研究実績の概要は以下のとおりである。1アクションリサーチチームの編成調査施設は、外来化学療法提供システム、外来化学療法を受ける患者数などが異なる3つの施設(都道府県がん診療拠点病院1施設、地域がん診療連携病院2施設)とした。3施設それぞれに研究者を研究プロジェクトの責任者として置き、外来化学療法看護に携わる看護師に研究プロジェクトの目的、内容、計画を提示してART参加を呼びかけた。施設の看護師の中から1名をARTの臨床側の代表者とし、施設の倫理委員会への申請を行った。2看護モデルを施設の外来化学療法看護に適用する際のシステムや看護師の課題の明確化調査施設において、看護モデルの説明を看護師を対象として行った。そして、ARTの看護師メンバーを対象としたグループインタビューを行い、看護モデルを施設の外来化学療法看護に適用する際のシステムや看護師の課題を明確にした。3援助プログラム実施前の調査調査施設のARTメンバーの看護師に、援助プログラム実施前の横断的な質問紙調査を行った。本研究の目的は、「外来で治療を受けるがん患者のエンパワメントを促進する看護モデル」に基づく援助プログラムを外来化学療法を受ける患者に実践し、その過程と効果の評価からモデルの臨床実践への適用について検討することである。平成22年度は、3つの調査協力施設に、それぞれ大学教員と施設の外来看護師からなるアクションリサーチチームを結成した。そして、施設の外来看護師が、看護モデルに基づく援助プログラムを計画立案し実施した。3カ月に1回程度、援助プログラムを実施しての問題点、改善点について、ARTメンバーで定期的に査定、検討し、援助プログラムの改訂を行った。また、ARTメンバー看護師による自己の看護実践に対する内省について、グループインタビューで明らかにした。各施設の外来看護師の配置状況やケアの提供システムが異なることから、看護モデルの適用方法には施設の特徴が反映された。施設Aでは、看護モデルに基づいて患者への対応の仕方に関する具体的な援助プログラムを作成した。施設Bでは、従来から行っている看護について看護モデルを基に振り返りを行い、看護師の看護行為に対する意味づけにつながった。施設Cでは、看護モデルを基に具体的な援助プログラムの計画・実行と看護行為に対する意味づけを行うことができた。平成23年度は、アクションリサーチを継続するとともに、援助プログラムによる看護を受けた外来化学療法患者の取り組み・エンパワメント・受けた看護に対する評価を、質問紙調査によって明らかにする。1.研究目的:「外来で治療を受けるがん患者のエンパワメントを促進する看護モデル」に基づく援助プログラムを外来化学療法を受ける患者に実践し、その過程と効果の評価からモデルの臨床実践への適用について検討する。2.研究方法:3つの調査協力施設に、研究者と施設の外来看護師からなるアクションリサーチチーム(ART)を結成した。そして、施設の外来看護師が、看護モデルに基づく援助プログラムを計画立案し実施した。適宜、援助プログラムを実施しての問題点、改善点について、ARTメンバーで定期的に査定、検討し、援助プログラムの改訂を行った。また、ARTメンバー看護師による自己の看護実践に対する内省について、グループインタビューで明らかにした。平成23年度は最終年度であり、援助プログラムの実施と看護師による評価を継続するとともに、援助プログラムによる看護を受けた患者の取り組み・エンパワメント・受けた看護に対する評価を質問紙調査によって明らかにした。3.結果:各施設の外来看護師の配置状況やケアの提供システムが異なることから、看護モデルの適用方法には施設の特徴が反映された。ARTメンバー看護師による援助プログラムの評価を質的記述的に分析した結果、【患者への対応に自信が持てるようになった】、【患者が看護師を名前で呼ぶようになり、患者-看護師間の関係が深まる】、【患者に名前で呼ばれることで看護師として認めてもらえたうれしさがある】などの気づきがあることが明らかとなった。また、援助プログラムによる看護を受けた患者に対する質問紙調査を行い(有効回答数117名)、看護に対する評価と患者の取り組み、および看護に対する評価とエンパワメントの相関を解析した結果、看護援助と患者の取り組み、ならびにエンパワメントに有意な関連があることが示された。4.考察:看護モデルは看護師が行う行為を意味づけ自信を持ったケアの提供につながることが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-21592770 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21592770 |
医療法人会計における連結制度導入に向けた理論的基盤の構築に関する研究 | 本研究は,医療法人および医療法人を中心として構成される医療法人グループに対して適用しうる会計制度の構築を最終目標に据えたうえで,その理論的な前提(基礎概念)を明らかにすることを目的として展開した。一般の医療法人に対する財務報告制度は,2015年の第7次医療法改正によって初めて制定されることになったが,その実質的な中身については従来の規定を踏襲したものがベースになっており,医療法人の特性や求められる情報ニーズなどを考慮して構築されたものとは必ずしもいえない。本研究を通じて得られる成果は,医療法人および医療法人グループに対して適用される会計制度も,企業に対して適用される会計制度と同じように,制度に対するニーズから演繹的に設計できるようになるための基礎資料として役立てられることが期待される。具体的な研究成果は以下の通りである。第1に,医療法人に対する財務報告制度は,企業に対する財務報告制度のように専ら資金調達に資することを目的とするのではなく,医療法人経営の実態に即した診療報酬の改正を可能にすること,および,老人ホームなどの附帯事業を外出しするか,医療法人内部で抱えるかの財務的影響が会計数値に及ばないするようにあることの2点に求められること,第2に,医療法人グループの会計を考えるにあたっては,一般に認識されている「医療は非営利」という考え方に固執せず,医療法人と関わりの強いメディカル・サービス法人(いわゆる「MS法人」とよばれるもの)のような営利法人も含めて考える必要性があること,第3に,医療法人グループにおいて実施される連結会計は,企業会計のように親会社株主に帰属する持分計算ではなく,独立行政法人会計基準などの他の会計基準にみられるように「公的資金の流れとその使途を明らかにする」ために行われるべきものであることの以上3点である。本研究は,医療法人における会計ディスクロージャーの一環として,連結会計制度を導入するための課題と要件を明らかにすることを目的としている。少子高齢化や長期にわたる景気の低迷のため,医療をはじめとする社会保障財源の逼迫が声高に叫ばれている。わが国では,税制や保険制度など,医療に対する資金供給源源の確保(医療機関からすれば収入源の工面)の検知からこの問題が語られることが多いが,利用できる財源に限りがある以上,公的資金を受ける医療法人側の支出をコントロールすることも検討しなければならない。医療法人は,関連する他法人(一般にメディカルサービス法人とよばれる)を利用して,資金をプールし,医療法人には禁止されている配当を行っているとの指摘が長期にわたって行われてきた。連結会計制度の導入は,その実態を明らかにするためのひとつの有効な施策となると期待される。研究初年度である2017年度は,2015年改正「医療法」において新設された地域医療連携推進法人に対して課される会計制度について検討した。地域医療連携推進法人は,医療法人を基本としつつも,関連する地方自治体や,福祉サービス,地域サービスを営む民間事業者の活動を1つの組織のもとに集積する新たなフレームワークである。現在,医療法人は「非営利」という名目のもとに民間事業者(企業)とは明確に区別する論調があるが,メディカルサービス法人のような民間企業をその背後で営んでいることが事実上要因されている医療法人の実態があり,また,徳洲会事件で見られたようにそれが医療法人の経営者(経営陣)の資金源として利用されている現実に鑑みれば,この医療法人を企業と区別すべきとする論調に無条件に趣向することはできない。地域医療連携推進法人に関する研究は,将来,医療会計において営利・非営利の境界を撤廃していくための切り口になるものと考えられる。2017年度は,地域医療連携推進法人に関する研究については一定の成果を得たが,主眼である医療法人会計についての研究が予定通りに進捗していないことが原因となっている。全体の研究進捗計画の遅れについては,2018年度中に対処できるものと考えている。本研究は,医療法人および医療法人を中心として構成される医療法人グループに対して適用しうる会計制度の構築を最終目標に据えたうえで,その理論的な前提(基礎概念)を明らかにすることを目的として展開した。一般の医療法人に対する財務報告制度は,2015年の第7次医療法改正によって初めて制定されることになったが,その実質的な中身については従来の規定を踏襲したものがベースになっており,医療法人の特性や求められる情報ニーズなどを考慮して構築されたものとは必ずしもいえない。本研究を通じて得られる成果は,医療法人および医療法人グループに対して適用される会計制度も,企業に対して適用される会計制度と同じように,制度に対するニーズから演繹的に設計できるようになるための基礎資料として役立てられることが期待される。具体的な研究成果は以下の通りである。 | KAKENHI-PROJECT-17K18052 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K18052 |
医療法人会計における連結制度導入に向けた理論的基盤の構築に関する研究 | 第1に,医療法人に対する財務報告制度は,企業に対する財務報告制度のように専ら資金調達に資することを目的とするのではなく,医療法人経営の実態に即した診療報酬の改正を可能にすること,および,老人ホームなどの附帯事業を外出しするか,医療法人内部で抱えるかの財務的影響が会計数値に及ばないするようにあることの2点に求められること,第2に,医療法人グループの会計を考えるにあたっては,一般に認識されている「医療は非営利」という考え方に固執せず,医療法人と関わりの強いメディカル・サービス法人(いわゆる「MS法人」とよばれるもの)のような営利法人も含めて考える必要性があること,第3に,医療法人グループにおいて実施される連結会計は,企業会計のように親会社株主に帰属する持分計算ではなく,独立行政法人会計基準などの他の会計基準にみられるように「公的資金の流れとその使途を明らかにする」ために行われるべきものであることの以上3点である。2018年度は,本研究の最終年度となるため,2017年度に遅れていた医療法人会計の研究に主眼を置いていく必要がある。とりわけ,医療法人の非営利性に係る問題が,会計制度にどのような影響を与えている・与えてきたのかについて精査しなければならない。また,2015年改正「医療法」において強制開示が行われるようになった医療法人について,会計情報を直接取得できるようになったことから,それらの情報を利用して医療法人会計の実態調査をあわせて実施する。最大の差異要因である旅費について,計画では東京への資料収集を行うことにしていたが,これらが校務および所属先異動のため実施できなかった。また,物品費についても同様であり,資料収集にともなう研究作業に遅滞が生じたことから支出が少なくなっている。所属先異動後,校内業務・研究環境が安定してきたことから,本年度は予定通りの実施が可能になる。 | KAKENHI-PROJECT-17K18052 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K18052 |
西洋哲学における宋明理学の受容と展開 | 中国布教に関わるイエズス会宣教師らは有効な布教に資するため深く中国哲学を研究した。とりわけルイ十四世を後ろ盾とするフィリップ・クプレらによる『中国の哲学者孔子』や、スアレス等人文学に精通したフランソワ・ノエルによる『中華帝国の六古典』は、「四書」をラテン語に翻訳したが、その内容は西洋の世界観・価値観を転倒しかねない情報をはらむものであった。これらは張居正(ないしは朱熹)注釈をふまえたものであって、その翻訳は必然的に抗議の宋明理学の影響を直接・間接的に受けるものであった。本研究はこれら中国哲学紹介書のライプニッツ、クリスチャン・ヴォルフ、ビルフィンガーらに対する影響の如何について考察した。中国布教に関わるイエズス会宣教師らは有効な布教に資するため深く中国哲学を研究した。とりわけルイ十四世を後ろ盾とするフィリップ・クプレらによる『中国の哲学者孔子』や、スアレス等人文学に精通したフランソワ・ノエルによる『中華帝国の六古典』は、「四書」をラテン語に翻訳したが、その内容は西洋の世界観・価値観を転倒しかねない情報をはらむものであった。これらは張居正(ないしは朱熹)注釈をふまえたものであって、その翻訳は必然的に抗議の宋明理学の影響を直接・間接的に受けるものであった。本研究はこれら中国哲学紹介書のライプニッツ、クリスチャン・ヴォルフ、ビルフィンガーらに対する影響の如何について考察した。本年度はヨーロッパに与えた宋明理学の内実を深く理解するために以下の作業を行った。朱子自身による儒教古典の解釈が明確に現れる『朱子語類』のうち、『論語』雍也篇をめぐる弟子たちの対話について検討し、これに関する訳注を作成した。さらに宋明理学の受容の様を、「孝」の概念をめぐるヨーロッパ人の翻訳・研究を分析することを通じて検証した。具体的成果としては、イエズス会士フランソワ・ノエル『中華帝国の六古典』のラテン語による最初の『孝経』訳文と、これにもとづいて、中国の孝観念を称揚した啓蒙主義者クリスチャン・ヴォルフの公開講演『中国実践哲学』の文章を照らし合わせ、彼らが大宇宙と小宇宙、支配者と被治者とを運繋す空間生、先行世代から後行世代へと永遠に継続する時間性とを併せもつものであることに見たことを明らかにした。こうした東アジアにおいて共有されていた孝の概念が、ヨーロッパ人のアジア観を規定したことを、イエズス会宣教師の中国古典研究の掉尾を飾るアンジェッロ・ツォットッリのCursus litteratur〓Sinic〓: neo-missionariis accommodatusが、儒教古典の筆頭に康煕帝による『聖諭広訓』の世俗倫理から、国家理念、宇宙論へとつながるの論説を逐語的に訳出していることから論証した。またヴォルフの『中国実践哲学』が、ノエル『中華帝国の六古典』にもとづき、クプレ『中国の哲学者孔子』については講演前に知るところがなかった、としていた点に関して、検討した。講演後に『中国実践哲学』を刊行した際に、クプレ書から中国情報に関して莫大な量の引用を行うが,これは学位論文『普通実践哲学』に始まるヴォルフの思想と、クプレ訳の中国哲学のない用途に強い類似点があるためであることを明確にした。また可能性として、実は『普遍的実践哲学』作成以前に、クプレ書を知っていたからではないかというととについても文献実証的に検討した。本年度はヨーロッパに与えた宋明理学の内実を深く理解するために以下の作業を行った。A.ポーランドのクリスチャン・ヴォルフ生誕の地を訪れ、資料収集した。B.朱子自身による儒教古典の解釈が明確に現れる『朱子語類』のうち、『論語』雍也篇をめぐる弟子たちの対話について検討し、これに関する訳注を作成した。さらに宋明理学の受容の様を、中国古典の「鬼神」「明徳」「理」「性」をめぐるヨーロッパ人の翻訳・研究を分析することを通じて検証した。C.イエズス会士フランソワ・ノエル『中国哲学三論』による最初の「鬼神」論解釈を検討した。彼はイエズス会士における中国哲学有神論説・無神論説を見据える立場に立ち、古代から朱子、宋明期の知識人による鬼神論を比較検討し、注釈にまで遡って可能な限り客観的に解説しようとしていた。彼は祖先-子孫間の期の感応としての鬼神論を、ヨーロッパ的エーテルやアウラの視点から捉えようとしていたことが明らかとなった。D.従来晩年になってからの中国哲学との関連が語られてきたライプニッツが、その研究生活のごく初期の二十歳代から、儒教、就中、朱子学の直接的な影響を得ていたことを、シュピツェル『中国文芸論』所収の易情報、ならびにマテオ・リッチの同僚であったミケーレ・ルッジェリならびに、『中国史』の著者たるマルティノ・マルティニによる複数の『大学』訳文の分析を通じて明らかにした。さらにはプロスペル・イントルチェッタによる『中庸』訳としては最初期の『中国の政治・道徳学』の分析を行い、ライプニッツ哲学形成における中国哲学の影響の可能性があることに関して検証した。本年度はヨーロッパに与えた宋明理学の内実を深く理解するために以下の作業を行った。A.中国をめぐる東西交渉の実情を探るべく中国・北京地を訪れ、学会発表をすると共に資料収集した。B.朱子自身による儒教古典の解釈が的確に現れる『朱子語類』のうち、『論語』雍也篇をめぐる弟子たちの対話について検討し、これに関する訳注を作成した。 | KAKENHI-PROJECT-21520044 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21520044 |
西洋哲学における宋明理学の受容と展開 | さらに宋明理学の受容の様を、中国古典の「鬼神」「明徳」「理」「性」をめぐるヨーロッパ人の翻訳・研究を分析することを通じて検証した。C.イエズス会士フランソワ・ノエル『中国哲学三論』による最初の「鬼神」論解釈を検討した。彼はイエズス会士における中国哲学有神論説・無神論説を見据える立場に立ち、古代から朱子、宋明期の知識人による鬼神論を比較検討し、注釈にまで遡って可能な限り客観的に解説しようとしていた。彼は祖先-子孫間の期の感応としての鬼神論を、ヨーロッパ的エーテルやアウラの視点から捉えようとしていたことが明らかとなった。この件を深く彫り込み諸注と照らし合わせた結果を論文とした。D.ライプニッツと関わって共著書論文と雑誌論文を公にした。従来晩年になってからの中国哲学との関連が語られてきたライプニッツが、その研究生活のごく初期の二十歳代から、儒教、就中、朱子学の直接的な影響を得ていたことを、シュピツェル『中国文芸論』所収の易情報、ならびにマテオ・リッチの同僚であったミケーレ・ルッジェリならびに、『中国史』の著者たるマルティノ・マルティニによる複数の『大学』訳文の分析を通じて明らかにした。さらにはプロスペル・イントルチェッタによる『中庸』訳としては最初期の『中国の政治・道徳学』の分析を行い、ライプニッツ哲学形成における中国哲学の影響の可能性があることに関して検証した。E.ライプニッツ・ヴォルフ学派の命名者であり、両者の強い影響を受け、かつカントの批判期前の物理思想に影響を与えた、ベルンハルト・ビルフィンガーの中国哲学観を浮き彫りとすべく、その物理学書『運動物体に内在する力とそれらの測定に関する力学的証明』を邦訳し、かつカント思想への影響の可能性について考察する論文を公とした。本研究はヨーロッパに与えた宋明理学の内実を深く理解するために以下の作業を行った。A.中国をめぐる東西交渉の実情を探るべく中国・北京地を訪れ、学会発表をすると共に資料収集した。B.朱子自身による儒教古典の解釈が明確に現れる『朱子語類』のうち、『論語』雍也・泰伯篇をめぐる弟子たちの対話について検討し、これに関する訳注作成を進めた。C.イエズス会士フランソワ・ノエル『中国哲学三論』による最初の「鬼神」論解釈を検討した。彼は祖先ー子孫間の期の感応としての鬼神論を、ヨーロッパ的エーテルやアウラの視点から捉えようとしていたことが明らかとなった。この件を深く彫り込み諸注と照らし合わせた結果を論文とした。D.ライプニッツと関わって共著書論文と雑誌論文を公にした。従来晩年になってからの中国哲学との関連が語られてきたライプニッツが、その研究生活のごく初期の二十歳代から、儒教、就中、朱子学の直接的な影響を得ていたことを、シュピツェル『中国文芸論』所収の易・漢字・四書情報、ならびにマテオ・リッチの同僚であったミケーレ・ルッジェリならびに、『中国史』の著者たるマルティノ・マルティニによる複数の『大学』訳文の分析を通じて明らかにした。さらにはプロスペル・イントルチェッタによる『中庸』訳としては最初期の『中国の政治・道徳学』の分析を行い、ライプニッツ哲学形成における中国哲学の影響の可能性があることに関して検証した。 | KAKENHI-PROJECT-21520044 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21520044 |
音楽演奏における感性情報の抽出と分析 | 音楽演奏における感性情報として、複数の演奏者が同一曲のピアノ演奏を聴いたときの印象の違いを支配する情報のうちで特に重電だと言われている打鍵のタイミングについて考察した。すなわち、(1)演奏の差異はどのように体系的に分類できるのか、(2)どのような演奏が好まれるのか、という問題を心理実験および演奏音の物理的分析により探求した。実験のための演奏曲目は、ショパンのワルツ第9番(別れのワルツ)の一部分とした。演奏者は京都市立芸大のピアノ専攻大学院生および卒業生8人で、3種類の意図で演奏した。心理実験および物理分析の結果から、上記24の演奏は「テンポの速さ」と「テンポのゆらぎ」のほぼ独立した二つの要素により分類できることが明らかになった。前者は、「幻想性」、「理知性」、後者は、「表情の豊かさ」、生き生きした印象」等で心理的には特徴づけられている。また、各演奏の心理的印象とタイミング(打鍵時間間隔)の相関係数はかなり高く、タイミングは演奏の印象にかなりの影響を与えていることが明らかになった。さらい、好ましいと判断された演奏は、テンポが中庸で、かつテンポのゆらぎが大きいという両条件を満たしたものであった。しかし例外として、特定の演奏者はペダルの使用法が優れており、このことによって、その演奏者の音色の透明感が高いと評価されることによって、タイミングにおいては他の好ましい演奏とは異なっているにもかかわらず、全体的には好ましいという評価がなされた演奏があった。今後、ペダリングに関してはもう少し詳細な検討を行う。さらに、演奏の好ましさ(良さ)の個人差の分析とその要因の解明も、感性情報処理の分野の研究として重要な課題であるので、次年度に行う予定である。音楽演奏における感性情報として、複数の演奏者が同一曲のピアノ演奏を聴いたときの印象の違いを支配する情報のうちで特に重電だと言われている打鍵のタイミングについて考察した。すなわち、(1)演奏の差異はどのように体系的に分類できるのか、(2)どのような演奏が好まれるのか、という問題を心理実験および演奏音の物理的分析により探求した。実験のための演奏曲目は、ショパンのワルツ第9番(別れのワルツ)の一部分とした。演奏者は京都市立芸大のピアノ専攻大学院生および卒業生8人で、3種類の意図で演奏した。心理実験および物理分析の結果から、上記24の演奏は「テンポの速さ」と「テンポのゆらぎ」のほぼ独立した二つの要素により分類できることが明らかになった。前者は、「幻想性」、「理知性」、後者は、「表情の豊かさ」、生き生きした印象」等で心理的には特徴づけられている。また、各演奏の心理的印象とタイミング(打鍵時間間隔)の相関係数はかなり高く、タイミングは演奏の印象にかなりの影響を与えていることが明らかになった。さらい、好ましいと判断された演奏は、テンポが中庸で、かつテンポのゆらぎが大きいという両条件を満たしたものであった。しかし例外として、特定の演奏者はペダルの使用法が優れており、このことによって、その演奏者の音色の透明感が高いと評価されることによって、タイミングにおいては他の好ましい演奏とは異なっているにもかかわらず、全体的には好ましいという評価がなされた演奏があった。今後、ペダリングに関してはもう少し詳細な検討を行う。さらに、演奏の好ましさ(良さ)の個人差の分析とその要因の解明も、感性情報処理の分野の研究として重要な課題であるので、次年度に行う予定である。 | KAKENHI-PROJECT-04236214 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04236214 |
新しい腫瘍マ-カ-の開発と臨床診断への応用ー複合糖質の変化を中心として | 癌腫については種々の腫瘍マ-カ-が開発されているが、非上皮性腫瘍・肉腫に関しては研究されていない。そこで細胞間マトリックスの豊富な肉腫組織よりマトリックスの主成分であるプロテオグリカンを分離精製し分子の性状を明らかにしたうえで、抗体を作製し、腫瘍の診断を容易かつ確実にすることを目的とした研究を行った。1.平滑筋肉腫組織より、分子量20万のコア蛋白を有するlarge proteoglycanを分離精製することができた。糖側鎖としてコンドロイチン硫酸とデルマタン硫酸のハイブリドよりなるグリコサミノグリカンが同定された。また、良性腫瘍から得られたものとほぼ同じ分子量を有する(45,000)small proteoglycanも同定された。しかし、糖鎖を構成するコンドロイチン硫酸のデルマタン硫酸に対する割合が大であった。large proteoglycanが大量に含まれること、minor componentであるsmall proteoglycan糖鎖のコンドロイチン硫酸含量が豊富であることが悪性腫瘍マトリックスの特性であることが明らかとなった。2.ヒト卵巣に発生した卵黄嚢腫組織よりlarge chondroitin sulfateproteoglycan(分子量約20万のコア蛋白を有する)を分離精製した。これを抗原としてモノクロ-ナル抗体2B1を作製した。ヒト胎児組織では各組織の間質結合組織は抗体2B1による染色強陽性であるが、成人組織においては血管周囲、筋間質の一部に陽性成績をみるにすぎなかった。癌の固有間質、腫瘍細胞基底膜には強い陽性所見が見られ、腫瘍組織、胎児組織の間質の細胞間マトリックスの主成分としてlarge proteoglycanが大量に含まれていること、横紋筋肉腫のマトリックスはlarge proteoglycanによって占められておりその糖鎖としてはコンドロイチン6-硫酸が豊富であることを見出した。抗体2B1とコンドロイチン6-硫酸の証明(市販の抗体3B3による染色)とを併せ行うことは横紋筋肉腫の確定診断を行うために有用である。癌腫については種々の腫瘍マ-カ-が開発されているが、非上皮性腫瘍・肉腫に関しては研究されていない。そこで細胞間マトリックスの豊富な肉腫組織よりマトリックスの主成分であるプロテオグリカンを分離精製し分子の性状を明らかにしたうえで、抗体を作製し、腫瘍の診断を容易かつ確実にすることを目的とした研究を行った。1.平滑筋肉腫組織より、分子量20万のコア蛋白を有するlarge proteoglycanを分離精製することができた。糖側鎖としてコンドロイチン硫酸とデルマタン硫酸のハイブリドよりなるグリコサミノグリカンが同定された。また、良性腫瘍から得られたものとほぼ同じ分子量を有する(45,000)small proteoglycanも同定された。しかし、糖鎖を構成するコンドロイチン硫酸のデルマタン硫酸に対する割合が大であった。large proteoglycanが大量に含まれること、minor componentであるsmall proteoglycan糖鎖のコンドロイチン硫酸含量が豊富であることが悪性腫瘍マトリックスの特性であることが明らかとなった。2.ヒト卵巣に発生した卵黄嚢腫組織よりlarge chondroitin sulfateproteoglycan(分子量約20万のコア蛋白を有する)を分離精製した。これを抗原としてモノクロ-ナル抗体2B1を作製した。ヒト胎児組織では各組織の間質結合組織は抗体2B1による染色強陽性であるが、成人組織においては血管周囲、筋間質の一部に陽性成績をみるにすぎなかった。癌の固有間質、腫瘍細胞基底膜には強い陽性所見が見られ、腫瘍組織、胎児組織の間質の細胞間マトリックスの主成分としてlarge proteoglycanが大量に含まれていること、横紋筋肉腫のマトリックスはlarge proteoglycanによって占められておりその糖鎖としてはコンドロイチン6-硫酸が豊富であることを見出した。抗体2B1とコンドロイチン6-硫酸の証明(市販の抗体3B3による染色)とを併せ行うことは横紋筋肉腫の確定診断を行うために有用である。1.非上皮性腫瘍組織に含まれるプロテオグリカン(以下PGと略す)の化学的性状を究明し、悪性化に伴う変化として平滑筋肉腫、悪性神経鞘腫に共通する次のような事項を明らかにし、Cancer Research1987年1月号に発表した。(1)良性非上皮性腫瘍には一般に正常の線維性結合組織の主要成分であるデルマタン硫酸プロテオグリカン(以下DS-PGと略す)が含まれているが、悪性変化に伴いDS側鎖のプロセシリングが抑えられ、コンドロイチン硫酸(以下CSと略す)に近似の側鎖を有する成分が増加すること。(2)その他に正常の線維性結合組織にはごく微量含まれるにすぎない高分子CSの出現をみることを明らかにした。2.ヒト卵巣線維腫の被膜よりDS-PGを分離精製し、それに対するモノクローナル抗体を作製した。そして正常組織および腫瘍組織における抗原の分布を免疫組織化学的に検索した。その結果この抗体は正常の線維性結合組織に対して陽性反応を示すが、悪性腫瘍間質においては陰性を示し、スキルスのような線維化傾向のつよい間質にも陰性であることから腫瘍間質は正常の疎性結合組織とはかなり異なっていることが明らかとなった。3.CS異性体を識別するモノクローナル抗体を用い、腫瘍間質のCS異性体の分布を調べ正常組織のそれと比較した。 | KAKENHI-PROJECT-61440086 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61440086 |
新しい腫瘍マ-カ-の開発と臨床診断への応用ー複合糖質の変化を中心として | コンドロイチン6硫酸を識別する抗体を用いて免疫染色を行った結果、正常組織では血管等限られた部位に陽性反応をみるにすぎないが、ある種の癌の間質、癌の浸潤性増殖部位、肉腫のマトリックス成分はつよい陽性反応を示すことが明らかとなった。4.卵黄嚢腫瘍よりPG画分を精製し、それに対するモノクローナル抗体を作製した。血管壁、神経鞘、上皮基底膜に対しそれぞれに特異的な反応を示す抗体が得られ、現在各種腫瘍組織の免疫組織化学的検索を行っている。5.骨肉腫軟骨肉腫等よりPGを精製中。プロテオグリカン(PG)の腫瘍組織内局在を免疫組織化学的に検索した.ヒト卵巣より発生した卵黄嚢腫瘍よりPG画分を構製し,コンドロイチン硫酸PG(large PG)を分離し,これに対して作製した多数のモノクローナル抗体のうちlarge PG画分と特異的に反応する抗体2Bー1を得た.この抗体および昨年度の研究において作製したモノクローナル抗体6B6(ヒト卵巣線維腫より精製したsmall PGに対して特異的に反応する抗体)を用いて,免疫組織化学的に種々の腫瘍組織における各PGの局在を観察し,正常組織のそれと比較検討した.また市販の抗体9Aー2および3Bー3(それぞれコンドロイチンー4硫酸と6ー硫酸を認織する)を用いてPGの糖鎖の相違を検討した.癌組織ではかなり特色あるPGの分布がみられた.子宮癌,卵巣癌,結腸癌胃癌,乳癌等検索した限りの癌組織において,癌固有間質に9Aー2陽性成績がみられた.しかしこの部位は抗体6B6染色に対しては陰性で,癌固有間質にはいわゆるsmall PGとは異なったコアを有するコンドロイチン4ー硫酸PGが存在することが明らかとなった.また抗体2Bー1は胎児組織では全身各組織において間質結合組織に陽性を認めるものの,成人正常組織では血管およびその周囲組織で陽性成績をみるのみであったが,癌細胞に伴って増生する固有間質は2Bー1強陽性で,肉胚組織も陽性であった.抗体3Bー3による染色では正常組織における染色結果とは異なって隨所に特異的な陽性成績がみられた.即ち癌細胞の浸潤増殖によってinvolueされ,反応性に増生する血管あるいは粘膜筋板由来の幼若な結合組織につよい3Bー3陽性成績がみられた.癌細胞から出される何らかの増殖促進因子により刺激された間葉細胞によって合成されるPGは抗体3Bー3陽性,2Bー1陽性所見を呈し,このような間質への仂きかけの少なくとも一部は癌の浸潤性増殖や転移に関わっているように思われた.昨年度ヒト卵巣より発生した卵黄嚢腫瘍(yolk sac tumor)より分離精製したコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CHS-PG)に対して作製した多数のモノクローナル抗体のうち、抗体2Blは免疫組織化学的に原発腫瘍の基底膜および腫瘍細胞によって形成される硝子様顆粒(hyaline globule)が強陽性を示す興味ある抗体であることを確認し得た。そこで抗体2Blの同定を行い、この抗体は、抗原として精製したCHS-PGをコンドロイチナーゼABCにより完全に消化した後に得られる分子量約20万のコア蛋白と特異的に反応することを確認した。この抗体2Blは生体内に普遍的に分布しているsmall PG(分子量約45000のコア蛋白よりなる) | KAKENHI-PROJECT-61440086 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61440086 |
覚醒剤中毒患者の尿中排泄βーフェニルエチラミンの測定とその臨床的意義 | 次にラットを代謝ケ-ジで7日間飼育し蓄尿を行った。3日目にMAPを2mg/kg腹腔内投与しPEA及びPAA排泄の変動を観察した。その結果MAP投与後24時間のPEA排泄は16%の一過性の減少が認められ次の24時間で基礎排泄量に復した。一方PAA排泄量はMAP投与により続く24時間で34%の増加が認められた。尿中に排泄されるPAAの由来についてはPhenylalanineの脱アミノ化が主な経路とされているがPEA投与によりPAA排泄は用量依存性に増加することが報告されている。またMAP投与によりラット脳内のPEA産生及び分解が促進されると報告されている。これらの報告及び今回の臨床的、実験的研究からMAPの投与によりPEAの産生が増加し同時により以上にPEAの分解が促進するためPEA排泄の減少とPAA排泄の増加を来したものと考えられる。次にラットを代謝ケ-ジで7日間飼育し蓄尿を行った。3日目にMAPを2mg/kg腹腔内投与しPEA及びPAA排泄の変動を観察した。その結果MAP投与後24時間のPEA排泄は16%の一過性の減少が認められ次の24時間で基礎排泄量に復した。一方PAA排泄量はMAP投与により続く24時間で34%の増加が認められた。尿中に排泄されるPAAの由来についてはPhenylalanineの脱アミノ化が主な経路とされているがPEA投与によりPAA排泄は用量依存性に増加することが報告されている。またMAP投与によりラット脳内のPEA産生及び分解が促進されると報告されている。これらの報告及び今回の臨床的、実験的研究からMAPの投与によりPEAの産生が増加し同時により以上にPEAの分解が促進するためPEA排泄の減少とPAA排泄の増加を来したものと考えられる。PAA排泄量はMAP排泄量と高い相関(R=0.81、p<0.01)が認められた。PAA排泄量について健常者群と比較した場合、患者群で平均値は高いものの有意差はなかった。また、PAAとPEA排泄量には、何等相関は認めなかった。PAAの産生はヒトで一日100mg以上であり、その大部分はphenylalanineが脱アミノされたPEAを経由せずに産生される経路が主だと言われているが、PEAを経口的に投与すると用量依存性にPAAの排泄は増加すると言われている。今回、MAP中毒患者の尿中排泄PAAとMAPに相関が認められ、PEA排泄が減少していたことは、MAPがPEAの産生と分解に多大な影響を及ぼしていることを示唆している。βーphenylethylamine(PEA)およびその代謝産物であるphenylaceticの尿中排泄に及ぼすMethamphetamine(MAP)の影響を調べるために代謝ケ-ジを使った動物実験を行った。すなわちMistar系雄性ラット(体重180ー220g)を食物、水を自由に摂取でき、24時間尿を採取できる代謝ケ-ジで一匹ずつ飼育した。飼育開始後3日間は基礎排泄量測定のため24時間尿を採取した。3日目にMAPを2mg/kg、あるいは4mg/kg腹腔内投与し同様に24時間尿を続く3日間採取した。測定はPEAはGCーMSにて行いPAAはgas chromatographyにて行った。測定法の詳細は前述した方法に依った。PEAの基礎排泄量は2.2±0.52μg/dayであり4mg/kgのMAPを投与した場合PEAの排泄量は21%の増加がみとめられた。この時MAP排泄量とPEA排泄量には高い相関が認められた。一方2mg/kgのMAPを腹腔内投与した場合PEA排泄量は逆に16%の減少が認められ、一方PAA排泄量は34%の増加を認めた。この時MAP排泄量とPEA排泄量には何等相関は認められず、一方MAP排泄量とPAA排泄量には正の相関が認められた。以上のようにMAPの投与量に依ってPEA排泄に逆の結果が認められ、PAAの排泄はMAPの投与量にかかわらず増加が認められたことはBorisonらが報告しているようにMAPはPEAの産生と分解をどちらも促進されるという報告と矛盾しない。これは前年度に報告した臨床研究で覚醒剤中毒患者尿中PEAは健常者に較べ低値であり、MAP排泄量とPAA排泄量に正の相関が見いだされた事実は今回の動物実験の2mg/kg投与の場合に相当すると思われる。PEAの分解が非常に早く尿中に排泄されるPEA量を規定する因子が複雑であることからMAPのPEA代謝に及ぼす影響を観察するには最終代謝産物であるPAAの測定が必要であることを示唆している。 | KAKENHI-PROJECT-63570513 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63570513 |
中生代における海洋頂点捕食者と鞘形類の共進化史復元 | 長い時間軸上の生態系進化を考える場合,これまで1次生産者が特に注目されてきた.一方,この研究は,頂点捕食者とその餌資源に注目している.中生代から新生代における2.5億年間,海洋における頂点捕食者は絶滅と放散を繰り返してきた.特に白亜紀後期は頂点捕食者のターンオーバーが集中しているが,これらの要因や餌資源との関連性については全くの不明である.本研究は,後期白亜紀の頂点捕食者の胃内容物化石を精査することによって,頂点捕食者と頭足類(鞘形類)の捕食被食関係を基にした共進化史を解明することを目的としている.昨年度に続き,野外調査および標本調査によって中生代胃内容物化石の未記載新規標本を得ることができた.また,昨年度の調査研究経験を駆使して,上部白亜系から数十の鞘形類標本を追加で得ることができた.室内では,岩石中からターゲットとする鞘形類化石を可視化する技術開発も並行して行い(国内・海外特許出願中),効率よく岩石中から試料を抽出できるシステムを制作した.これと並行して,画像解析における3Dモデリング手法も最適化した.上部白亜系における現生型頭足類の多様性解明,分類学的検討と並行して,中部白亜系まで繁栄した中生代型鞘形類(ベレムナイト)の化石記録データベースを作成し,これの絶滅や分布変動を総括した論文を執筆した.長い時間軸上の生態系進化を考える場合,これまで一次生産者が特に注目されてきた.一方,この研究は,生態系の頂点に注目する.現在までの2.5億年間,魚竜から鯨類まで,頂点捕食者はそれぞれに絶滅と放散を繰り返してきた.特に白亜紀後期には頂点捕食者のターンオーバーが集中しているが,これらの要因は不明である.本研究は,後期白亜紀の頂点捕食者の胃内容物化石等を精査することによって,頂点捕食者と鞘形類(イカ・タコ類)の捕食被食関係を基にした共進化史を解明することを目的としている.今年度は,日本の上部白亜系と中国の三畳系を対象に野外調査,標本の採集調査,各研究施設に収蔵されている標本調査を行なった.日本の上部白亜系については,北西太平洋地域で地層の連続性と化石の保存性に優れる北海道の蝦夷層群を中心に中川町,小平町,苫前町,羽幌町,夕張市,むかわ町での広域的な調査を行なった.調査の結果,自ら採集した標本に加え,複数の未記載重要標本を得ることができた.室内では,これらの標本の抽出作業を行い分類学的検討を行なった.この結果,高次分類レベルにおいて,海棲爬虫類と頭足類の捕食被食関係を明確にすることができた.中国南部に分布する三畳系ジュラ系についても同様の分析を行なった.さらに,中生代を通した鞘形類の多様性変動復元のためのデータベースの基礎となるデータを文献データと自らのデータをあわせて収集し,解析予備段階まで到達することができた.日本の上部白亜系を中心に標本調査を広域的に行なった.その結果,本研究にとって最も重要な複数の新標本を得られた.これらの室内での分類学的検討や中生代を通した鞘形類のデータベース作成は順調に行えている.一方で,胃内容物化石は,強固な硬組織をもたず,岩石中での破片化が著しいため従来の化石抽出方法での限界がみられた.この問題を解決するために,連続断層画像取得解析技術を応用した分析法を適用し,従来は抽出・可視化できなかった標本まで研究対象にすることが可能になりはじめている.これらのことから,本研究は概ね順調に進展していると考えられる.中生代から新生代の2.5億年間,魚竜から鯨類まで,頂点捕食者はそれぞれに絶滅と放散を繰り返してきた.特に白亜紀後期には頂点捕食者のターンオーバーが集中しているが,これらの要因は不明である.本研究は,後期白亜紀の頂点捕食者の胃内容物化石等を精査することによって,頂点捕食者と頭足類の捕食被食関係を基にした共進化史を解明することを目的としている.昨年度に続き,野外調査および標本調査によって多くの中生代胃内容物化石を得ることが出来た.しかしながら,1内容物として多く含まれる頭足類顎器は従来の研究で示されたものよりも多様で,未記載種が多く,科・属レベルでの分類が困難であること,2内容物として確認できるものは,スラブ標本の表面に見えているものに限られ,胃部分化石の十分な内部情報量が得られないこと,という問題があった.そこで,今年度は,上部白亜系より70を超える頭足類顎器の標本を得て,これの分類学的研究を推進した(従来の研究では,10数標本という限られた標本から分類学的研究が行われていた).本研究によって,胃内容物の顎器を属レベルで分類する上での基礎的情報が提供された.また,岩石内部を詳細に可視化する次世代スキャナの開発に取り組み,これを胃内容物化石に適用する段階まで到達した.さらに,大型放射光X線CTを駆使して,胃内容物化石の高解像での可視化にも成功することができた.今年度の研究によって,これまでの研究の障壁の多くを突破することができた.これまで数種しか知られていない上部白亜系から,従来では考えられないほど多様性の高い鞘形類を見出すことに成功した.さらに,これらの分類学的研究を推進し,胃内容物化石にフィードバックできる多くの知見を得ることができた. | KAKENHI-PROJECT-16K17825 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K17825 |
中生代における海洋頂点捕食者と鞘形類の共進化史復元 | また,これまでの手法では,サイズが小さく,華奢な硬組織からなる胃内容物化石を可視化することは極めて困難であったが,これを解決するために,次世代内部構造スキャナの開発を推進し,この技術を本研究に応用する段階まで到達した.これと並行して,大型放射光X線CTで胃内容物化石の断層像を高解像で取得することに成功した.長い時間軸上の生態系進化を考える場合,これまで1次生産者が特に注目されてきた.一方,この研究は,頂点捕食者とその餌資源に注目している.中生代から新生代における2.5億年間,海洋における頂点捕食者は絶滅と放散を繰り返してきた.特に白亜紀後期は頂点捕食者のターンオーバーが集中しているが,これらの要因や餌資源との関連性については全くの不明である.本研究は,後期白亜紀の頂点捕食者の胃内容物化石を精査することによって,頂点捕食者と頭足類(鞘形類)の捕食被食関係を基にした共進化史を解明することを目的としている.昨年度に続き,野外調査および標本調査によって中生代胃内容物化石の未記載新規標本を得ることができた.また,昨年度の調査研究経験を駆使して,上部白亜系から数十の鞘形類標本を追加で得ることができた.室内では,岩石中からターゲットとする鞘形類化石を可視化する技術開発も並行して行い(国内・海外特許出願中),効率よく岩石中から試料を抽出できるシステムを制作した.これと並行して,画像解析における3Dモデリング手法も最適化した.上部白亜系における現生型頭足類の多様性解明,分類学的検討と並行して,中部白亜系まで繁栄した中生代型鞘形類(ベレムナイト)の化石記録データベースを作成し,これの絶滅や分布変動を総括した論文を執筆した.以下の3点を柱に今後研究を推進し,研究目標を達成する.1胃内容物化石の抽出法の確立:海棲爬虫類の胃内容物として含まれる化石群は,強固な硬組織を持たないために,従来の化石抽出法だけでは胃内容物化石を正確に捉えることができない.この研究の障壁を乗り越えるために,連続断層画像取得・解析技術を応用した新たな分析方法を適用し,研究を推進する.この高精度な標本解析によって,岩石標本に封じ込まれた捕食被食関係を正確に理解することができる.2中生代における鞘形類のデータベース作成:平成28年度に作成したデータベースを基に,これに改訂を繰り返すことでデータベースを完成させ,多様性変動を明らかにする.3海棲爬虫類と頭足類の多様性変動の同期性と捕食被食関係に注目した要因特定:上述1の結果と2を比較検討し,研究の最終目標である捕食被食関係の変化に注目した海棲爬虫類と頭足類の共進化を明らかにする.1胃内容物化石の内部可視化:海棲爬虫類の胃内容物として含まれる化石群は,強固な硬組織を持たないために,従来の化石抽出法だけでは胃内容物化石を正確に捉えることができない.この研究の障壁を乗り越えるために,連続断層画像取得・解析技術を応用した新たな分析方法を適用し,研究をさらに推進する.この高精度な標本解析によって,岩石標本に封じ込まれた捕食被食関係を正確に理解することができる.2頭足類顎器の詳細な分類:今年度に得られた知見を基に,胃内容物として含まれる顎器の分類を,科・属のレベルで行い,頂点捕食者の胃内容物の実態をより詳細に捉える.さらに,各タクサにおける餌の選択性の有無などを検討する.これらのデータを元に,長時間軸上での海棲爬虫類と頭足類の捕食被食関係史をまとめ,成果を国際誌に投稿する.国内での標本調査が未記載標本や自ら新標本を最終するなど予想以上に順調に進展したため,これらの標本の抽出と解析に時間をかけ集中した.胃内容物化石抽出方法の確立も同時に行なった.このため,海外出張にかかるコストが抑えられたため. | KAKENHI-PROJECT-16K17825 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K17825 |
局間干渉、符号間干渉を抑圧するCDMA符号による並列高速伝送システムの小規模化 | 本研究では,実数ZCZ有限長系列を用いたM-ary/DS-SS通信モデムのベースバンド処理部の小規模な構成法を提案し、実際にそれをLSIで試作を行った。実数ZCZ有限長系列セットは,その非周期自己相関関数が端点を除き直交し,相互相関関数がある区間において0となる系列セットである。そのため,この系列を用いたM-ary/DS-SS通信では,系列同士を干渉なく識別することが出来る。しかしながら、実数値をとる系列であるために回路規模が大規模になることが問題となっていた。受信側で用いるマッチフィルタについては,系列を隼成するときに用いた実数直交有限長系列に対するマッチトフィルタを縦続接続させて構成し,さらに共通部分を共有化することによって回路規模を減少させる構成法を提案した。また、送信側で用いる符号発生器については,上記構成のマッチトフィルタを用いることによって小規模な回路で実現できるツリー型符号発生器を提案した。これは、マッチトフィルタのインパルス応答が系列の時間反転波形になることを利用している。これによると,系列セット内の各系列に対する複数のマッチトフィルタに入力するインパルス信号の入力端子と入力タイミングを制御するだけで簡単に,所望の系列を発生させることができる。これらの構成法を適用した、系列長129,系列数8,無相関区間3の実数ZCZ有限長系列を用いたM-ary/DS-SS通信モデムのベースバンド処理部を,東京大学大規模集積システム設計教育研究センタ(VDEC)を介して,実際にLSIの試作を行った。設計は,ハードウェア記述言語の一つであるverilog HDLを用い,シミュレーションはメンターグラフィックス社のmodel sim,またはケーデンス社のverilogXLを,論理合成は,シノプシス社のDesign Compilerを,配置配線には,シノプシス社のApolloを,デザインルールチェック(DRC)とレイアウト対スケマティック(LVS)には,メンターグラフィックス社のCalibreをそれぞれ用いた。試作したLSIは、電源電圧が3.3V、チップ寸法が4.9mm角のCMOS 0.35μmプロセスのLSI(ローム社)である。その結果、送信側、受信側合わせて、系列長129のマッチトフィルタを16個含んでいるのにもかかわらず、2入力のNANDゲート換算で約7.7万ゲートの規模で実装できた。また、80MHzのクロックで動作することが確認できた。これはチップレートが80Mcpsであることを意味する。動作確認の結果、理論通り、同期点の前後1チップの区間において、他の系列による干渉を抑圧出来ていることが確認できた。(1)実数値系列を用いたDS-SS通信モデムの試作M-ary/DS-SS通信モデムを試作する前に、系列を一つ使ったDS-SS通信モデムをユーザの手元で自由に書き換え可能なデバイスであるFPGA(Field Programmable Gate Array)を使用して試作を行った。その結果、約60万ゲートの回路を実装出来るFPGAの約4%のロジックエレメントだけを使用して実現できた。また、AD,DA変換器を使用して、実際に伝送実験を行い、2.5Mbpsの伝送速度で送受信することが確認出来た。(2)実数値系列を用いたM-ary/DS-SS通信モデムの系列長、語長などの仕様の検討実数値系列を用いたM-ary/DS-SS通信モデムの語長や、系列長などの仕様を、計算機シミュレーションによって決定した。また、マッチトフィルタの乗算器の係数語長、加算器の演算語長を有限語長にすることにより発生する内部雑音と、それによる出力での誤差との関係を明らかにし、回路規模と精度を考慮した最適な語長を決定する方法を明らかにした。次年度、ASIC(Application specific IC)で通信モデムを試作する前に、テストのためにFPGAを使用して、通信モデムを試作した。乗算、加算を高速に実行する簡潔な並列処理回路、高速同期の遅延回路をFPGA上に構成して、M-ary/DS-SS通信モデムを試作した。従来の構成法によるマッチトフィルタを使用した場合に比べ、今回提案したツリー構造のマッチトフィルタを使用することにより、通信モデムを約30%の回路規模で実現できた。また、実際にFPGAを搭載したボードに実装されたAD,DA変換器を使用して、伝送実験を行った。本研究では,実数ZCZ有限長系列を用いたM-ary/DS-SS通信モデムのベースバンド処理部の小規模な構成法を提案し、実際にそれをLSIで試作を行った。実数ZCZ有限長系列セットは,その非周期自己相関関数が端点を除き直交し,相互相関関数がある区間において0となる系列セットである。そのため,この系列を用いたM-ary/DS-SS通信では,系列同士を干渉なく識別することが出来る。しかしながら、実数値をとる系列であるために回路規模が大規模になることが問題となっていた。受信側で用いるマッチフィルタについては,系列を隼成するときに用いた実数直交有限長系列に対するマッチトフィルタを縦続接続させて構成し,さらに共通部分を共有化することによって回路規模を減少させる構成法を提案した。また、送信側で用いる符号発生器については,上記構成のマッチトフィルタを用いることによって小規模な回路で実現できるツリー型符号発生器を提案した。これは、マッチトフィルタのインパルス応答が系列の時間反転波形になることを利用している。これによると,系列セット内の各系列に対する複数のマッチトフィルタに入力するインパルス信号の入力端子と入力タイミングを制御するだけで簡単に,所望の系列を発生させることができる。 | KAKENHI-PROJECT-15760266 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15760266 |
局間干渉、符号間干渉を抑圧するCDMA符号による並列高速伝送システムの小規模化 | これらの構成法を適用した、系列長129,系列数8,無相関区間3の実数ZCZ有限長系列を用いたM-ary/DS-SS通信モデムのベースバンド処理部を,東京大学大規模集積システム設計教育研究センタ(VDEC)を介して,実際にLSIの試作を行った。設計は,ハードウェア記述言語の一つであるverilog HDLを用い,シミュレーションはメンターグラフィックス社のmodel sim,またはケーデンス社のverilogXLを,論理合成は,シノプシス社のDesign Compilerを,配置配線には,シノプシス社のApolloを,デザインルールチェック(DRC)とレイアウト対スケマティック(LVS)には,メンターグラフィックス社のCalibreをそれぞれ用いた。試作したLSIは、電源電圧が3.3V、チップ寸法が4.9mm角のCMOS 0.35μmプロセスのLSI(ローム社)である。その結果、送信側、受信側合わせて、系列長129のマッチトフィルタを16個含んでいるのにもかかわらず、2入力のNANDゲート換算で約7.7万ゲートの規模で実装できた。また、80MHzのクロックで動作することが確認できた。これはチップレートが80Mcpsであることを意味する。動作確認の結果、理論通り、同期点の前後1チップの区間において、他の系列による干渉を抑圧出来ていることが確認できた。 | KAKENHI-PROJECT-15760266 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15760266 |
骨のDamage累積速度の推定と大腿骨頚部骨折予知ソフトウェアの開発 | 高令者に多く発生する大腿骨頚部骨折の発生期を予知することは同骨折の回避・予防に役立つ。本骨折は老化による骨代謝活性能の低下や骨粗鬆症に寄因する骨強度の低下が原因する一種の病的骨折である。このように骨の体積密度が低下すると骨梁単位あたりに負担する荷重が正常値より大きくなり発生する微小損傷の割合が増加し、巨視的確断に至る。本研究はMinerのDamage蓄積理論を骨に適応するために、疲労寿命推定のための数学モデルdD/dt=dD/dt-dR/dtを作成した。Rは骨の修復能,Dは機械的に蓄積されるDamage量である。両パラメータをラット腔骨の繰返し力学刺激を行うことで測定した。Rはテトラサイクリン2重標試法によって測定した。これらの結果から、骨の疲労寿命を求めると、繰返し負荷周波数によっては破断しない領域がいずれの荷重振幅においても存在し、その荷重環境の内で使用するならば骨折は回避できることが解った。今後は、患者個々の生活活動性と本研究で明らかになった骨折荷重の関係をどのように評価,対応していくかが課題である。高令者に多く発生する大腿骨頚部骨折の発生期を予知することは同骨折の回避・予防に役立つ。本骨折は老化による骨代謝活性能の低下や骨粗鬆症に寄因する骨強度の低下が原因する一種の病的骨折である。このように骨の体積密度が低下すると骨梁単位あたりに負担する荷重が正常値より大きくなり発生する微小損傷の割合が増加し、巨視的確断に至る。本研究はMinerのDamage蓄積理論を骨に適応するために、疲労寿命推定のための数学モデルdD/dt=dD/dt-dR/dtを作成した。Rは骨の修復能,Dは機械的に蓄積されるDamage量である。両パラメータをラット腔骨の繰返し力学刺激を行うことで測定した。Rはテトラサイクリン2重標試法によって測定した。これらの結果から、骨の疲労寿命を求めると、繰返し負荷周波数によっては破断しない領域がいずれの荷重振幅においても存在し、その荷重環境の内で使用するならば骨折は回避できることが解った。今後は、患者個々の生活活動性と本研究で明らかになった骨折荷重の関係をどのように評価,対応していくかが課題である。 | KAKENHI-PROJECT-06213230 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06213230 |
臨床徴候評価を基盤とした新たな睡眠時ブラキシズム臨床診断基準の策定 | 睡眠中の運動障害と定義される睡眠時ブラキシズム(SB)は,覚醒時の最大咬合力を超える力を伴うものや数分間持続するものがあり,顎口腔系に破壊的に作用する.歯科の二大疾患である齲蝕や歯周病と同様に,近年歯科治療予後を左右する重要なリスクファクターとして明確に位置づけられている.しかし,チェアサイドでの正確な臨床診断方法は確立されておらず,SBの筋活動には様々なパターンがあることが示されているが,臨床的にはこれらの多寡を考慮せず一括りに診断され,画一的な対応がなされているため,正確な診断・治療がなされていないのが現状である.以上を踏まえ,本研究では従来のSB臨床徴候に加えて新しい知見などによる追加項目による診査を行い,睡眠ポリグラフ検査(PSG)により得られるSBイベントとの関連性を調査することで,SBの症型分類が可能な新たな臨床診断基準を策定することを目指す。平成30年度は昨年度に引き続き,被験者募集と睡眠時ブラキシズムレベルの評価を行った。睡眠時ブラキシズムを認める健康成人を対象とし、過去6カ月以内の睡眠同伴者による歯ぎしり音の指摘と、顕著な咬耗の存在・起床時の咀嚼筋の疲労感の存在・咬筋の顕著な肥大の存在から成る睡眠時ブラキシズム臨床診断基準(Dube et al. 2004)を用いて一次スクリーニングを行った。その後、二次スクリーニングとして睡眠中の咀嚼筋筋活動測定を行った。咀嚼筋筋活動測定は、咬筋EMGチャンネルを付加した脳波記録簡易睡眠検査装置Sleep Profilerを用いて行い、睡眠時ブラキシズムレベルの評価(ベースライン測定)を行った。この際、臨床診断基準を満たすが、二次スクリーニングである睡眠中の咀嚼筋筋活動測定で、Lavigneらの診断基準(Lavigne, Rompre and Montplaisir 1996)を満たさない者は除外とした。睡眠ポリグラフ検査装置(PSG)を用いた睡眠時ブラキシズム測定に際し、装置の不具合により、調整が必要となったため、若干遅れている。代替としてPSGとほぼ同等の精度を持つ簡易型睡眠ポリグラフを導入し対応している。簡易型睡眠ポリグラフ装置により被験者の家庭内環境にて測定が可能となった.これにより被験者数を増やし,睡眠中の筋活動の解析をブラキシズムの頻度のみではなく筋電図積分値や周波数解析など別視点で行う.睡眠中の運動障害と定義される睡眠時ブラキシズム(SB)は,覚醒時の最大咬合力を超える力を伴うものや数分間持続するものがあり,顎口腔系に破壊的に作用する.歯科の二大疾患である齲蝕や歯周病と同様に,近年歯科治療予後を左右する重要なリスクファクターとして明確に位置づけられているが,チェアサイドでの正確な臨床診断方法は確立されていない。SBの筋活動には様々なパターンがあることが示されているが,臨床的にはこれらの多寡を考慮せず一括りに診断され,画一的な対応がなされているため,正確な診断・治療がなされていないのが現状である.SBに対する力のコントロールを考えるうえで,チェアサイドでの臨床徴候・症状からSB症型分類(グラインディングタイプとクレンチングタイプ)やSBレベル(頻度・強度)を適確に診断することが可能となれば,国民のQoLを維持・向上することができる.本研究は,チェアサイドより収集されるSBの臨床情報と睡眠ポリグラフ検査(PSG)を用いることで得られるSBの生理学的病態との関連性を明らかにすることで,患者個々の筋活動状態を適確に把握できる臨床診断法の確立を目指し,個別化医療を実践するためのものである。本年度は,被験者の動員,口腔内診査,簡易睡眠検査装置による睡眠中の咀嚼筋活動の評価を行った。健康成人を対象とし、過去6カ月以内の睡眠同伴者による歯ぎしり音の指摘と、顕著な咬耗の存在・起床時の咀嚼筋の疲労感の存在・咬筋の顕著な肥大の存在から成る睡眠時ブラキシズム臨床診断基準を用いて一次スクリーニングを行った。その後、二次スクリーニングとして睡眠中の咀嚼筋筋活動測定を行った。被験者の動員および睡眠中の咀嚼筋活動測定に時間を要している.また,解析項目が多岐にわたり,若干遅れている.睡眠中の運動障害と定義される睡眠時ブラキシズム(SB)は,覚醒時の最大咬合力を超える力を伴うものや数分間持続するものがあり,顎口腔系に破壊的に作用する.歯科の二大疾患である齲蝕や歯周病と同様に,近年歯科治療予後を左右する重要なリスクファクターとして明確に位置づけられている.しかし,チェアサイドでの正確な臨床診断方法は確立されておらず,SBの筋活動には様々なパターンがあることが示されているが,臨床的にはこれらの多寡を考慮せず一括りに診断され,画一的な対応がなされているため,正確な診断・治療がなされていないのが現状である.以上を踏まえ,本研究では従来のSB臨床徴候に加えて新しい知見などによる追加項目による診査を行い,睡眠ポリグラフ検査(PSG)により得られるSBイベントとの関連性を調査することで,SBの症型分類が可能な新たな臨床診断基準を策定することを目指す。平成30年度は昨年度に引き続き,被験者募集と睡眠時ブラキシズムレベルの評価を行った。 | KAKENHI-PROJECT-17K17190 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K17190 |
臨床徴候評価を基盤とした新たな睡眠時ブラキシズム臨床診断基準の策定 | 睡眠時ブラキシズムを認める健康成人を対象とし、過去6カ月以内の睡眠同伴者による歯ぎしり音の指摘と、顕著な咬耗の存在・起床時の咀嚼筋の疲労感の存在・咬筋の顕著な肥大の存在から成る睡眠時ブラキシズム臨床診断基準(Dube et al. 2004)を用いて一次スクリーニングを行った。その後、二次スクリーニングとして睡眠中の咀嚼筋筋活動測定を行った。咀嚼筋筋活動測定は、咬筋EMGチャンネルを付加した脳波記録簡易睡眠検査装置Sleep Profilerを用いて行い、睡眠時ブラキシズムレベルの評価(ベースライン測定)を行った。この際、臨床診断基準を満たすが、二次スクリーニングである睡眠中の咀嚼筋筋活動測定で、Lavigneらの診断基準(Lavigne, Rompre and Montplaisir 1996)を満たさない者は除外とした。睡眠ポリグラフ検査装置(PSG)を用いた睡眠時ブラキシズム測定に際し、装置の不具合により、調整が必要となったため、若干遅れている。代替としてPSGとほぼ同等の精度を持つ簡易型睡眠ポリグラフを導入し対応している。継続して被験者の収集および睡眠中の咀嚼筋活動の測定を行う.また,簡易睡眠検査装置の応用も視野に入れている.簡易型睡眠ポリグラフ装置により被験者の家庭内環境にて測定が可能となった.これにより被験者数を増やし,睡眠中の筋活動の解析をブラキシズムの頻度のみではなく筋電図積分値や周波数解析など別視点で行う.被験者の動員および睡眠中の咀嚼筋活動測定に時間を要しているため,次年度使用額が生じる.また,研究経費の節約も考慮し,簡易睡眠検査装置の応用を行う予定である.次年度は,測定にかかわる備品,消耗品に使用する予定である.また,研究成果の公表のために,国内外にて発表を行う予定である.被験者の収集および睡眠時ブラキシズムの夜間筋活動測定に時間がかかっており、研究経費の節約を考慮して、データ解析は次年度以降にまとめて行うこととしたため、次年度使用額が生じた。解析に関わる消耗品に使用していく予定である。また、広く一般に成果を公表するために、学会発表も行っていく予定である。 | KAKENHI-PROJECT-17K17190 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K17190 |
脳出血後のスキル学習におけるマルチタスクの有効性と脳内作用機序の解明 | 本研究は,脳出血後のスキルトレーニングが大脳皮質感覚運動野におけるAMPA受容体サブユニットに与える影響について検討した.実験動物にはWistar系雄性ラット(250270 g)を用いた。対象を無作為に偽手術群(SHAM群:n=12)、非運動群(ICH群;n=12)とスキルトレーニング群(ICH+AT群;n=12)の3群に分けた。脳出血モデルは,コラゲナーゼ溶液を左線条体に微量注入して作製した.偽手術は,0.9%生理食塩水を微量注入した.全身の協調運動、運動学習が必要なトレーニングとしてアクロバッティック課題を実施した。トレーニング内容は、格子台、縄梯子、綱渡り、平行棒、障壁の5課題とし,各コース長を1 mとした。介入は、術後428日まで、1日4回実施した。感覚運動機能評価はModified limb placingを用いて経時的に実施した。脳出血後14日目と29日目に組織採取を行い,リアルタイムPCRを用いて、両側大脳皮質感覚運動野におけるAMPA受容体サブユニットのGluR1、GluR2、GluR3、GluR4のmRNA発現量を解析した。運動機能評価から前肢の運動機能障害についてICH+AT群は、ICH群より有意な改善を示した。AMPA受容体サブユニットのmRNA発現量の解析から、脳出血後14日目では全サブユニットにおいて全群間に有意差を認めなかったが,脳出血後29日目では,傷害側大脳皮質においてICH+AT群の全サブユニットがICH群より有意に高値を示した。本研究から脳出血後のスキルトレーニングによる前肢運動機能回復の促進は、傷害側大脳皮質感覚運動野の全AMPA受容体サブユニットが関与していることが示された。本年度は、脳出血後のスキル学習おけるマルチタスクが運動機能回復および神経可塑性関連遺伝子に与える影響について検証した。実験動物にはWistar系雄性ラットを用いた.対象を無作為に偽手術群(SHAM群),脳出血+非運動群(ICH群),偽手術+スキルトレーニング群(SHAM+AT群),脳出血+スキルトレーニング群(ICH+AT群)の4群に分けた.脳出血モデルは,コラゲナーゼを微量注入して作製した.スキルトレーニング群は,アクロバッティック課題を実施した.トレーニング内容は,格子台,縄梯子,綱渡り,平行棒,障壁の5課題とした.介入は,術後428日まで,各課題を1日4回実施した.感覚運動機能評価にはmodified limb placingとpostural instability testを用いて経時的に実施した.脳出血後29日目に深麻酔下で潅流脱血を行い,両側の大脳皮質感覚運動野を採取した.リアルタイムPCRを用いて,AMPA受容体サブユニットであるGluR1,GluR2,GluR3,GluR4のmRNA発現量を解析した.定量方法はΔΔCt法を用いた.運動機能評価から前肢の運動機能障害についてICH+AT群は,ICH群より有意な改善を示した.AMPA受容体サブユニットのmRNA発現量の解析から,傷害側大脳皮質の全APMA受容体サブユニットにおいてICH+AT群は,ICH群より有意に高値を示した.本研究から脳出血後のスキルトレーニングによる前肢運動機能回復の促進は,傷害側大脳皮質感覚運動野の全AMPA受容体サブユニットが関与していることが示された.AMPA受容体はシナプスの伝達効率を上げる役割を担っていることから,脳出血後のスキルトレーニングは長期増強を誘導し,機能回復を促進させたと考えられる.今年度は脳出血後のスキル学習におけるマルチタスクの有効性について検証したが、シングルタスクとの比較は現在検証中であり、当初計画よりやや遅れている。本研究は脳出血モデルラットに対するマルチタスクの有効性について検証することを目的としている。本年度は、その有効性について運動機能障害に対する効果を非介入と比較して検証した。マイクロシリンジポンプを用いてコラゲナーゼを左線条体出に微量注入し、脳出血モデルラットを作製した。実験群として非介入群とマルチタスク群を設けた。マルチタスクには3種類の角材を使用し、ラットに角材の上を一定距離自発的に渡らせてトレーニングさせた。トレーニングは、術後2日目から2週間とした。運動機能評価としてForelimb Placingtest、Horizontal laddertest、RotaRod testを術前、術後1日目、8日目、15日目に実施した。Horizontal ladder testでは、前肢が梯子から落下した割合を示すエラー率を解析した。Forelimb placingtestでマルチタスク群は非介入群と比較して有意な改善を示した。また、Horizontal ladder testで前肢機能を評価したところ、マルチタスク群は非介入群と比較してエラー数が有意に減少していた。RotaRodtestでは両群に有意な差は認めなかった。今後は1種類の角材を用いたシングルタスクと比較検証を行い、マルチタスクの有効性について検証する予定である。さらに、脳組織解析を組織学的かつ生化学的に検証する予定である。本年度はマルチタスクの有効性について運動機能の改善効果の側面から調べ、マルチタスクの介入が非介入より効果があることを示した。ただし、シングルタスク群との比較検証は現在進行中であり、全体的にはやや遅れている。本研究は,脳出血後のスキルトレーニングが大脳皮質感覚運動野におけるAMPA受容体サブユニットに与える影響について検討した.実験動物にはWistar系雄性ラット(250270 g)を用いた。 | KAKENHI-PROJECT-16K16445 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K16445 |
脳出血後のスキル学習におけるマルチタスクの有効性と脳内作用機序の解明 | 対象を無作為に偽手術群(SHAM群:n=12)、非運動群(ICH群;n=12)とスキルトレーニング群(ICH+AT群;n=12)の3群に分けた。脳出血モデルは,コラゲナーゼ溶液を左線条体に微量注入して作製した.偽手術は,0.9%生理食塩水を微量注入した.全身の協調運動、運動学習が必要なトレーニングとしてアクロバッティック課題を実施した。トレーニング内容は、格子台、縄梯子、綱渡り、平行棒、障壁の5課題とし,各コース長を1 mとした。介入は、術後428日まで、1日4回実施した。感覚運動機能評価はModified limb placingを用いて経時的に実施した。脳出血後14日目と29日目に組織採取を行い,リアルタイムPCRを用いて、両側大脳皮質感覚運動野におけるAMPA受容体サブユニットのGluR1、GluR2、GluR3、GluR4のmRNA発現量を解析した。運動機能評価から前肢の運動機能障害についてICH+AT群は、ICH群より有意な改善を示した。AMPA受容体サブユニットのmRNA発現量の解析から、脳出血後14日目では全サブユニットにおいて全群間に有意差を認めなかったが,脳出血後29日目では,傷害側大脳皮質においてICH+AT群の全サブユニットがICH群より有意に高値を示した。本研究から脳出血後のスキルトレーニングによる前肢運動機能回復の促進は、傷害側大脳皮質感覚運動野の全AMPA受容体サブユニットが関与していることが示された。脳出血後のスキル学習におけるマルチタスクとシングルタスクが運動機能回復に与える影響について比較検証を行い、機能回復への影響に違いが見られた場合、脳内改善機序の検証を行う。今後はシングルタスク群とマルチタスク群を比較検証する予定である。運動機能回復への影響を比較検証し、脳内解析へと進む予定である。比較検証のための介入実験を翌年度以降実施するため比較検証のための介入群および脳内解析を翌年度実施予定であるため、実験動物および試薬の購入費として使用予定である。対象とする実験動物の購入費として使用予定である。 | KAKENHI-PROJECT-16K16445 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K16445 |
ミニブタ歯牙移動実験系を用いた矯正用Hap/Colオンプラントの実用性の検証 | 歯科矯正臨床におけるTADs(temporary anchorage devices)の導入は、矯正治療における絶対的固定源としてその利便性を大きく推進させるものと期待される。しかし、歯間部歯槽骨に埋入するミニスクリュー型デバイスは歯根や歯胚を損傷する危険性があり、歯間の狭い症例や歯槽骨内に多数の永久歯胚を包含する混合歯列期の症例ではミニスクリュー型デバイスの使用は困難である。そこで歯根や歯胚の損傷の危険性が無い歯槽骨、顎骨の骨表面に固定されるオンプラント型アンカレッジデバイスの開発を目的とした研究に着手した。従来の研究によりハイドロキシアパタイト/コラーゲンナノ複合体(HAp/Col)をコーティングしたチタンロッドをラット頭蓋骨骨膜下に移植したところ、チタンロッドを骨面に固定する充分な量の新生骨が生成された。そこで本研究では、ヒトにおける実用を想定して有限要素法によるシュミレーションモデルを用いてオンプラントと骨の接合力の理論値を算出するとともに、実際にミニブタにシュミレーションに基づいた形状のオンプラントを埋入し、4週間後にオンプラントと骨の接合力およびオンプラント周囲の新生骨の形状等を解析しシュミレーションの想定と比較検討することを目的とした。直径0.5mmの円形、1.0mm×0.5mmの楕円、半円および長方形のチタンロッドを骨正面に固定し生成される新生骨の高さを345μm525μmまで順次変化させる三次元解析モデルを作成、チタンロッドに平行かつ長軸に垂直な力を負荷した際の骨接合強度として骨接合界面における新生骨の破壊強度を求めた。その結果、断面が長方形のロッドでは新生骨の高さが骨接合強度に依存せず、常に最も高い骨接合強度を有することより、オンプラントの断面形状として長方形が最適であることが示唆された。前年度の研究により、オンプラントの最適形状として断面が長方形であることが明らかとなった。さらにこの形状では骨接合力がオンプラント周囲の新生骨の高さに依存しないことも示唆された。今後はこの情報をもとに、実際の動物実験で用いるオンプラントの形状をシュミレーションモデルを構築して3Dプリンターで作成し、実際にミニブタに埋入して、シュミレーションで想定した骨接合力を発揮できるか検証していく予定であり、研究の進歩状況は良好と評価される。前年度の研究により、断面が長方形のものがオンプラントとして最も骨接合力が高いことが明らかとなった。今年度以降はこの結果を踏まえ、これら三次元解析ソフトによって構築されたシュミレーションもでるが実際の動物実験で再現されるか検証する。即ち、ミニブタの上顎骨骨膜下へ埋入するオンプラントを想定し、アンカレッジデバイスとして十分な骨接合力を発揮する形状を有するシュミレーションモデルを作成する。ついで、3Dプリンターを用いてこの形状を有するオンプラントを作成し、ミニブタの上顎骨骨膜下に埋入する。埋入したオンプラント周囲の新生骨の生成状況をCTで観察し、埋入後4週においてオンプラントと骨の接合力の測定を行い。またオンプラントを周囲組織と一塊に摘出して組織学的および組織形態計測法による解析を行う。これら、実際の動物実験によりもたらされる、骨、新生骨の形状、密度、硬度および骨接合力などのデータを、シュミレーションモデルに用いた想定値との比較検討を行い、シュミレーションモデルの精度の向上を図る予定である。歯科矯正臨床におけるTADs(temporary anchorage devices)の導入は、矯正治療における絶対的固定源としてその利便性を大きく推進させるものと期待される。しかし、歯間部歯槽骨に埋入するミニスクリュー型デバイスは歯根や歯胚を損傷する危険性があり、歯間の狭い症例や歯槽骨内に多数の永久歯胚を包含する混合歯列期の症例ではミニスクリュー型デバイスの使用は困難である。そこで歯根や歯胚の損傷の危険性が無い歯槽骨、顎骨の骨表面に固定されるオンプラント型アンカレッジデバイスの開発を目的とした研究に着手した。従来の研究によりハイドロキシアパタイト/コラーゲンナノ複合体(HAp/Col)をコーティングしたチタンロッドをラット頭蓋骨骨膜下に移植したところ、チタンロッドを骨面に固定する充分な量の新生骨が生成された。そこで本研究では、ヒトにおける実用を想定して有限要素法によるシュミレーションモデルを用いてオンプラントと骨の接合力の理論値を算出するとともに、実際にミニブタにシュミレーションに基づいた形状のオンプラントを埋入し、4週間後にオンプラントと骨の接合力およびオンプラント周囲の新生骨の形状等を解析しシュミレーションの想定と比較検討することを目的とした。直径0.5mmの円形、1.0mm×0.5mmの楕円、半円および長方形のチタンロッドを骨正面に固定し生成される新生骨の高さを345μm525μmまで順次変化させる三次元解析モデルを作成、チタンロッドに平行かつ長軸に垂直な力を負荷した際の骨接合強度として骨接合界面における新生骨の破壊強度を求めた。その結果、断面が長方形のロッドでは新生骨の高さが骨接合強度に依存せず、常に最も高い骨接合強度を有することより、オンプラントの断面形状として長方形が最適であることが示唆された。前年度の研究により、オンプラントの最適形状として断面が長方形であることが明らかとなった。さらにこの形状では骨接合力がオンプラント周囲の新生骨の高さに依存しないことも示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-18K09852 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K09852 |
ミニブタ歯牙移動実験系を用いた矯正用Hap/Colオンプラントの実用性の検証 | 今後はこの情報をもとに、実際の動物実験で用いるオンプラントの形状をシュミレーションモデルを構築して3Dプリンターで作成し、実際にミニブタに埋入して、シュミレーションで想定した骨接合力を発揮できるか検証していく予定であり、研究の進歩状況は良好と評価される。前年度の研究により、断面が長方形のものがオンプラントとして最も骨接合力が高いことが明らかとなった。今年度以降はこの結果を踏まえ、これら三次元解析ソフトによって構築されたシュミレーションもでるが実際の動物実験で再現されるか検証する。即ち、ミニブタの上顎骨骨膜下へ埋入するオンプラントを想定し、アンカレッジデバイスとして十分な骨接合力を発揮する形状を有するシュミレーションモデルを作成する。ついで、3Dプリンターを用いてこの形状を有するオンプラントを作成し、ミニブタの上顎骨骨膜下に埋入する。埋入したオンプラント周囲の新生骨の生成状況をCTで観察し、埋入後4週においてオンプラントと骨の接合力の測定を行い。またオンプラントを周囲組織と一塊に摘出して組織学的および組織形態計測法による解析を行う。これら、実際の動物実験によりもたらされる、骨、新生骨の形状、密度、硬度および骨接合力などのデータを、シュミレーションモデルに用いた想定値との比較検討を行い、シュミレーションモデルの精度の向上を図る予定である。今後計画している動物実験で、動物購入費および飼育代に費用がかかると予想されたため。 | KAKENHI-PROJECT-18K09852 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K09852 |
動詞先行型危機言語と日英語から見る身体運動・言語・認知の関係とその普遍性 | これまで応募者は、動詞先行型危機言語であるタロコ語を対象とし,身体運動が言語産出に影響を与えることを示した.本研究課題では,視線計測実験を用いて言語産出初期の認知プロセスに着目し,対象言語を動詞の位置が異なるタロコ語(VOS)・英語(SVO)・日本語(SOV)に拡大させ,(i)身体運動が事象認知の順序に影響を与えるか,(ii)身体運動に伴う主体感が事象認知の際の視点選択に影響を与えるか,(iii)身体運動の事象認知・言語使用への影響があるとすれば,それは言語普遍的かという三つの問いの解決に挑むことにより,身体運動と認知プロセス・言語使用とのインタラクションの本質に多角的側面から迫る.これまで応募者は、動詞先行型危機言語であるタロコ語を対象とし,身体運動が言語産出に影響を与えることを示した.本研究課題では,視線計測実験を用いて言語産出初期の認知プロセスに着目し,対象言語を動詞の位置が異なるタロコ語(VOS)・英語(SVO)・日本語(SOV)に拡大させ,(i)身体運動が事象認知の順序に影響を与えるか,(ii)身体運動に伴う主体感が事象認知の際の視点選択に影響を与えるか,(iii)身体運動の事象認知・言語使用への影響があるとすれば,それは言語普遍的かという三つの問いの解決に挑むことにより,身体運動と認知プロセス・言語使用とのインタラクションの本質に多角的側面から迫る. | KAKENHI-PROJECT-19H01263 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H01263 |
実験的手法を用いた公務員志望者のリスク選好に関する研究 | 本研究の目的は、リスク選好をリスク回避(risk-averse)、慎重さ(prudence)、節制(temperance)に区別した上で、公務員を志望する者が、どのようなリスク選好構造を持ち、どのような条件でそれらの選好が強まるのか、を主に実験的手法を用いて明らかにすることである。加えて、リスク選好と混同されがちな損失回避(loss aversion)、曖昧さ回避(ambiguity aversion)についても調査を行い、公務員志望者の意思決定に関わる選好構造を総合的に解明する。本研究の目的は、リスク選好をリスク回避(risk-averse)、慎重さ(prudence)、節制(temperance)に区別した上で、公務員を志望する者が、どのようなリスク選好構造を持ち、どのような条件でそれらの選好が強まるのか、を主に実験的手法を用いて明らかにすることである。加えて、リスク選好と混同されがちな損失回避(loss aversion)、曖昧さ回避(ambiguity aversion)についても調査を行い、公務員志望者の意思決定に関わる選好構造を総合的に解明する。 | KAKENHI-PROJECT-19K23167 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K23167 |
安定な有機アンチモン化合物を利用した位置、官能基選択的な反応の開発 | テトラフェニルスチボニウムトリフラ-ト(以下、Ph_4SbOTf)は、安定な五価有機アンチモン化合物である。特に、アミンなどの塩基によっても失活しない点は従来の酸触媒にはない特微であり、新分野での利用が期待される。本年度の研究概要は以下に示す通りで、エポキシドのアルコ-ルによる開環反応と、生理活性物質の重要な中間体である環状1、3ージケトンの2位のアルキル化反応を開発することが出来た。溶媒を用いる必要はなく、少過剰量のアルコ-ルと直接反応させることにより、対応する生成物が高収率で得られた。また、生成物の単離に際しても、触媒の除去は必要でなく、直接蒸留する事が可能である。適用できるオキシランも、一置換、二置換ともに可能であり、アルコ-ルは3級のものを除けば実用上問題が無いものとの感触を得た。本アンチモン化合物触媒は、不安定なオキシラン、例えばスチレンオキシド、に対しても重合活性は示さず、従って反応に際しての幅反応を考慮する必要はない。2)環状1、3ージケトンの選択的Cーアルキル化反応シクロペンタンー1、3ージオンの2位のアルキル化がPh_4SbOMeを用いる事により、40°C程度の温和な条件で進行した。アルキンハライドは、エステル基、不飽和結合などを有していても幅反応の起こらない点は、本反応系の重要な特長の一つである。シクロヘキサンー1、3ージオンも同様にアルキル化が可能である。テトラフェニルスチボニウムトリフラ-ト(以下、Ph_4SbOTf)は、安定な五価有機アンチモン化合物である。特に、アミンなどの塩基によっても失活しない点は従来の酸触媒にはない特微であり、新分野での利用が期待される。本年度の研究概要は以下に示す通りで、エポキシドのアルコ-ルによる開環反応と、生理活性物質の重要な中間体である環状1、3ージケトンの2位のアルキル化反応を開発することが出来た。溶媒を用いる必要はなく、少過剰量のアルコ-ルと直接反応させることにより、対応する生成物が高収率で得られた。また、生成物の単離に際しても、触媒の除去は必要でなく、直接蒸留する事が可能である。適用できるオキシランも、一置換、二置換ともに可能であり、アルコ-ルは3級のものを除けば実用上問題が無いものとの感触を得た。本アンチモン化合物触媒は、不安定なオキシラン、例えばスチレンオキシド、に対しても重合活性は示さず、従って反応に際しての幅反応を考慮する必要はない。2)環状1、3ージケトンの選択的Cーアルキル化反応シクロペンタンー1、3ージオンの2位のアルキル化がPh_4SbOMeを用いる事により、40°C程度の温和な条件で進行した。アルキンハライドは、エステル基、不飽和結合などを有していても幅反応の起こらない点は、本反応系の重要な特長の一つである。シクロヘキサンー1、3ージオンも同様にアルキル化が可能である。 | KAKENHI-PROJECT-02650627 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02650627 |
バナッハ環上の位相的な量を保存する写像の代数的性質の研究 | 関数環をはじめとする半単純可換バナッハ環やヒルベルト空間上の作用素からなるバナッハ環に関係した集合で乗法的にスペクトルを保存する写像や非対称に乗法的にスペクトル半径を保存する写像,またある種の距離を保存する写像の代数構造を研究し,それが線形であることや乗法的となる現象について研究を行った。このことによりバナッハ環の間の写像の保存問題についての新たな知見を得ることができた。関数環をはじめとする半単純可換バナッハ環やヒルベルト空間上の作用素からなるバナッハ環に関係した集合で乗法的にスペクトルを保存する写像や非対称に乗法的にスペクトル半径を保存する写像,またある種の距離を保存する写像の代数構造を研究し,それが線形であることや乗法的となる現象について研究を行った。このことによりバナッハ環の間の写像の保存問題についての新たな知見を得ることができた。局所コンパクトHaussdorff空間上の複素数値連続関数で無限遠点で消えるものからなる一様ノルムに関して閉じたバナッハ環を一般化関数環という。バナッハ環としては同形ではない2つの一般化関数環でその間に乗法的にスペクトルを保存する写像が存在するようなものを構成した。これは、単位元のある関数環では乗法的にスペクトルを保存する写像で結ばれる関数環はバナッハ環として同形であることと対比される結果で、単位元の有無がバナッハ環としての同型性に関しては異なった結果を導くことを示している点で興味深いといえる。このことから一般化関数環から一般化関数環への乗法的にスペクトルを保存する写像の形を決定すること、またそのような一般化関数環のあいだの関係は何か、に興味が持たれる。本研究により、一般化関数環から一般化関数環への乗法的にスペクトルを保存する写像はバナッハ空間としての同形写像を与えることが証明され、従ってこのような2つの一般化関数環はバナッハ環として同形といえるとは限らないが、バナッハ空間としては同形であることが分かった。つまり、乗法的にスペクトルを保存すると線形演算は保存されるが、一方では積が保存されるとは限らないという一見ら可換バナッハ環への写像で乗法的にノルムを非対称に保存する写像の研究については来年度以降に発展できると考えている。関数環から関数環への全射Tで単項式的に抹消スペクトルを保存するものの形を決定した。これは、乗法的に抹消スペクトルを保存する写像の結果の一般化である。対象の2変数単項式がm乗n乗の形でmとnの最大公約数が1であれば、対象の写像は荷重合成作用素であることが分かった。またmとnの最大公約数dがlより大きい場合はTのd乗がある荷重合成作用素のd乗であることを示した。この場合にT自身が荷重合成作用素となるとは限らず、線形でも乗法的でもないような例を示した。また、実バナッハ関数空間に対するStone-Weierstrass型の定理を証明した。その際に対象のバナッハ関数空間の分離条件が大切で、既に知られている条件を緩めた条件のもとで作用関数がアファインのみであることを特徴付けた。また、商的にノルムを非対称に保存する写像についてもその形を決定することができた。これは乗法的にノルムを非対称に保存する写像に関する結果を含むものでより一般的なものである。特に対合に対象性を仮定して述べられた半単純可換バナッハ環の間の写像の代数的性質に関する定理を、非可換のバナッハ環の場合も含めて対合の対象性の仮定なしに述べることの可能性を示した点で興味深いものである。また、単位的バナッハ環の可逆元からなる群の位相構造と代数構造の研究を行い,ある種のバナッハ環の可逆元からなる開部分群どおしが距離空間として同形であることと距離付け可能群として同形であることの同知性を示すことができた。この結果はつくばセミナーで発表されまた来年度に行われるアメリカ数学会のスペシャルセッションで講演する予定であり、さらに論文を作成しているところでもある。単位的半単純可換バナッハ環の可逆元からなる群の開部分群から単位的バナッハ環の可逆元からなる群の開部分群への等距離写像Tが単位元を保存するとき,Tはそのバナッハ環の間の実元環としての等距離同形写像に拡張できることを示し,従って対応する可逆元からなる群の間の等距離(群)同形写像であることが示された。Mazur-Ulamの定理を拡張した。その際に亜距離空間を導入し,強鏡映的亜距離空間や超鏡映的亜距離群の間の亜距離を保存する写像の代数構造を決定した。特にコンパクトHausdorff空間X上の正値連続関数からなる群から他のコンパクトHausdorff空間Y上の正値運続関数からなる群へのある種の亜距離を保存する写像の構造を決定した。これは単位的C*環の可逆正要素全体の集合の間のThompson距離保存写像に関するMolnarの結果の可換版と見ることもできる。AとBを単位的な半単純可換バナッハ環とし,SとTをAからBへの単位的な全射でスペクル半径を非対称積的にうつす写像とする。このときSとTは一致して,それらはAからBの上への実同形写像であることを示した。 | KAKENHI-PROJECT-19540169 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19540169 |
バナッハ環上の位相的な量を保存する写像の代数的性質の研究 | また関数環AとBとAの適当な条件をみたす部分集合Iを考えてr,tをIからAへの写像で,S,TをIからBへの写像としてIの任意の関数f,gについてS(f)T(g)の末梢スペクトルがr(f)t(g)の末梢スペクトルに含まれるときBのChoquetからAのChoquet境界への同相写像φが存在してS(f)(y)=r(f)(φ(y))とT(f)(y)=t(f)(φ(y))がIの任意の関数fとBのChoquet境界の任意の点yについて成立することを示した。この結果は乗法的に末梢スペクトルを保存する写像の代数構造に関する既存の結果の拡張になる。また極大イデアル空間の第1Cechコホモロジー群がつぶれている可換C*環ではr(f)=fのm乗やt(f)=fのn乗は全射となるため,この場合には既存の結果を含むことが分かる。 | KAKENHI-PROJECT-19540169 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19540169 |
脳腫瘍治療前後の拡散強調像を用いた画像解析による早期治療効果判定の有用性 | これまでに蓄積してきた脳腫瘍治療前後の拡散強調画像に対し、fDMによる解析を行った。解析にはI-responseを用い、DICOM画像の解析編集はOsiriXを利用した。硼素中性子捕捉療法により治療を行った悪性神経膠腫を対象として、生存期間とfDMの経時的変化を検討した。BNCTでは治療後早期(7日以内)のADC値減少容積(%Vd)が予後との相関を示し、超早期の効果判定の可能性を示した。これまでに蓄積してきた脳腫瘍治療前後の拡散強調画像に対し、fDMによる解析を行った。解析にはI-responseを用い、DICOM画像の解析編集はOsiriXを利用した。硼素中性子捕捉療法により治療を行った悪性神経膠腫を対象として、生存期間とfDMの経時的変化を検討した。BNCTでは治療後早期(7日以内)のADC値減少容積(%Vd)が予後との相関を示し、超早期の効果判定の可能性を示した。これまでに当施設で蓄積してきた脳腫瘍治療前後の拡散強調画像に対し、fDM(Rossほか、Proc Natl Acad Sci USA 2005 ; 102 : 5524-5529)による解析を行った。解析にはI-response fDM analysis(Windows)を用い、DICOM画像の解析編集はOsiriX(Macintosh)を利用した。最初に、悪性神経膠腫症例での標準治療(X線分割外照射+化学療法(テモゾロミド))により治療を行った例で、本解析法を用いたRossらの報告(J Clin Oncol. 2008 Jul 10 ; 26(20) : 3387-94)と対比し、同等の結果が得られ、早期の治療効果・予後判定が可能となることがわかった。そこで次に、当施設で治療を行った症例のうち、棚素中性子捕捉療法(BNCT)により治療を行った悪性神経膠腫を対象として、生存期間などの情報とfDMの経時的変化を検討した。通常の放射線治療(分割外照射)では、腫瘍のADC値は治療が進むにつれADC値上昇の容積(%Vi)が増加し、予後との相関が見られていたが、BNCTでは治療後早期(2, 7日目)のADC値減少の容積(%Vd)が予後との相関を示し、超早期の効果判定の可能性を示した。BNCTでは単回局所高線量の粒子線治療であるごとから、別の機序での細胞死が関与しているものと考えられ、動物実験等による詳細な病理組織学的検証が必要と考えられる。さらに本年度、拡散強調像を用いた病態解析手法として、拡散テンソル画像(FA値解析)を開始し、fDMとの対比を試みており、PETと同時に解析を追加・検証中である。また本年度は、動物実験の開始に先立ち、ラット脳腫瘍モデルを用いて拡散強調画像等のMRI画像を取得し、脳腫瘍モデルが画像上、実際の臨床所見に合致することを確認し、得られた画像を用いてfDM解析が可能であることを確認した。これまでの当施設における脳腫瘍治療例を対象に、治療前後のMRIガドリニウム増強T1像等をもとに、拡散強調画像に対し、fDM(PNAS 2005;102:5524-5529)による解析を行った。解析にはI-response fDM analysis(Windows)を用い、DICOM画像の解析編集はOsiriX(Macintosh)を利用した。最初に、悪性神経膠腫症例での標準治療(X線分割外照射+化学療法(テモゾロミド))により治療を行った例で、本解析法を用いたRossらの報告(J Clin Oncol.2008 26:3387-94)と対比し、同等の結果が得られ、早期の治療効果・予後判定が可能となることがわかった。そこで次に、当施設で治療を行った症例のうち、細胞選択性を有する高線量粒子線治療であるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)により治療を行った悪性神経膠腫を対象として、生存期間などの情報とfDMの経時的変化を検討した。通常の放射線治療(分割外照射)では、腫瘍のADC値は治療が進むにつれADC値上昇の容積(%Vi)が増加し、予後との相関が見られていたが、BNCTでは治療後早期(2,7日目)のADC値減少の容積(%Vd)が予後との相関を示し、超早期の効果判定の可能性を示した。BNCTでは単回局所高線量の粒子線治療であることから、別の機序での細胞死が関与しているものと考えられ、動物実験等による詳細な病理組織学的検証が必要と考えられる。さらに本年度、拡散強調像を用いた病態解析手法として、拡散テンソル画像(FA値解析)を開始し、fDMとの対比を試みており、PETと同時に解析を追加した。治療効果の判定方法として、いずれの画像診断も高感度であったが、fDMによる解析は最も簡便で、頻回の観察に優れていた。全体を通じて結果は良好で、今後の臨床応用に向け有意義な成果を見いだせた。 | KAKENHI-PROJECT-20791021 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20791021 |
光の描材・ライトストリークの実用的教材開発と普及 | 本研究は単なるお絵かき(落書き)になりがちなペンライトアートを発展させ,現行の学習指導要領にも対応し,加法混色など光の性質を学ぶこともできる教材として開発した。なお,本研究において開発された教材を便宜上「ライトストリーク」と名づけた。そして、学会での発表や公開講座を通じて教材の普及をおこなった。当該年度は本事業の2年目であり、1年目の試作および教材開発をベースに、学会での研究発表や教育現場での試行をすすめた。まず教材企画販売会社の協力により、教材の試作品は年度はじめに完成した。その成果については、学術論文としてまとめ、8月に2013アジア基礎造形連合学会天津大会(中国)で発表し、海外研究者からの意見も得ることができた。前年度同様に、7月に教材販売会社が主催する造形ワークショップ(主に都内で図画工作や美術を担当している教諭を対象とした研修会)に講師として参加し、ワークショップを通じて光の描材としての研究をすすめることができた。また、千葉大学教育学部との共同により、10月に同大学附属小学校で児童を対象に教材の試行を実践的におこなった。そういった試作品完成および授業実践を通じて、教材の可能性や可能性や改善点をさらに探求することができた。本研究は単なるお絵かき(落書き)になりがちなペンライトアートを発展させ,現行の学習指導要領にも対応し,加法混色など光の性質を学ぶこともできる教材として開発した。なお,本研究において開発された教材を便宜上「ライトストリーク」と名づけた。そして、学会での発表や公開講座を通じて教材の普及をおこなった。当該年度は本事業の1年目であるが、主に教材企画販売会社の協力を得て、光の描材「ライトストリーク」の教材開発を着実にすすめた。申請書に記載していた通り、先行研究において、ライトストリークの基本的かつ概念的な仕組みは既に出来ていたが、それを実用化(教材化として普及させる完成度)には至っていなかったことが問題であった。ゆえに、本事業では全国の学校に美術教材を販売している教材企画販売会社に協力してもらうように先ず協議した。その結果、具体的な商品化を目指し、数度の試作品づくりを繰り返した。教材企画販売会社を通じて玩具メーカーの協力も得て、本研究者が手作りでつくったプロトタイプでは限界だった問題点を改善することができた。例えば、消耗が激しかったニッケル電球を、使用時間が長いLED電球に変えたりするなど、実際の教育現場で耐えられるような再設計をすることができた。設計を見直したりしたため、試作品づくりは平成24年度中には終わらなかったが、研究実施計画で予想していた通り25年度中には完成する見込みである。同時に、教材販売会社が主催する造形ワークショップ(主に都内で図画工作や美術を担当している教諭を対象とした研修会)に講師として参加し、ワークショップを通じて光の描材としての可能性や改善点を探求することができた。また、本研究の派生として光の加法混色にも着目し、効果的な加法混色の教材化についても研究することができた。研究成果は日本基礎造形学会第23回大会で発表したが、本事業にもフィードバックすることができた(再設計において、混色もできる色光に配色することにした)。本事業の1年目および2年目(平成24年度および25年度)は学会発表をしながら、主に教材の開発をすすめてきた。さらに光の軌跡を表現した作品発表もしながら教材開発をすすめたが、本事業の3年目には平成26年度科研費「ひらめき☆ときめきサイエンス」に採択され、公開講座「光の描材・ライトストリークで、絵を描いたり混色をつくってみよう」(整理番号HT26041)を実施した。講座は平成26年8月9日、会津大学短期大学部体育館にて受講者28名が受講した。なお、プログラムの主な内容は次の通りである。(1)講義「光の絵を描いたり、光の混色をつくる」、(2)実験「光の描画、光の混色」、(3)グループごと光の絵(ライトアート)を制作、(4)完成したライトアート作品の鑑賞および講評、(修了式(児童・生徒に未来博士授与)。また、本研究成果は色彩教育の図書として平成27年6月に発行された「色のまなび事典」(株式会社星の環会発行、茂木一司主著、高橋延昌他共著)では『光であそぶ1光の軌跡』の事例としても掲載された。なお、本事業は教材の開発と普及が主な内容であったが、普及させる目的で予定していた公開講座の部分を上述した平成26年度科研費「ひらめき☆ときめきサイエンス」の予算で消化することができたため、全体収支において残額が増えてしまった。グラフィックデザイン光の描材「ライトストリーク」の教材開発および普及が本研究の目的であるが、教材企画販売会社の協力により、教材モデルそのものの試作は完成に至った。今後は、実際の教育現場で活用するための運用モデルの構築および普及活動が課題となる。ただし、当初計画では試作品を教材として活用するための方法を学生アルバイトで試行しようと考えていたが、より良い完成度を目指して再設計をしたため、そういった研究補助はあまり活用できなかった。光の描材「ライトストリーク」の教材開発および普及が本研究の目的であるが、教材企画販売会社の協力により、教材モデルそのものは商品化した場合の製造コストも考慮され、当初予想していた以上に具体的かつ実用的にすすめられている。ただし、当初計画では試作品を教材として活用するための方法を学生アルバイトで試行しようと考えていたが、より良い完成度を目指して再設計をしたため、そういった研究補助は活用できなかった。 | KAKENHI-PROJECT-24531224 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24531224 |
光の描材・ライトストリークの実用的教材開発と普及 | 次年度で活用する。今後も教材販売会社の協力を得たり、千葉大学教育学部との共同により教育現場での活用を視野に入れながら教材化をすすめる。また、この研究成果をもとに独立行政法人日本学術振興会の「平成26年度ひらめき☆ときめきサイエンスようこそ大学の研究室へ」(プログラム名:光の描材・ライトストリークで、光の絵を描いたり、光の混色をつくってみよう)に採択された。その関連事業との連携により、本研究成果の普及もすすめる。今後も教材販売会社の協力を得て、教材化をすすめる。また、教材の試作については平成25年8月に中国天津で開催されるアジア基礎造形連合学会天津大会で研究発表する予定であり、その成果を本事業へさらにフィードバックする。また、教育現場での具体的な活用を目指して、学生アルバイト等を通じて試行を繰り返しながら、普及に至るノウハウを蓄積する。当初計画では1年目で完成した試作品を教材として活用するための方法を学生アルバイトで試行しようと考えていたが、より良い完成度を目指して再設計をしたため、とくに人件費については研究補助をあまり活用できなかった。教材開発および普及については学生アルバイトを活用する。1.教材企画販売会社や研究分担者との打ち合わせ(国内旅費)2.アジア基礎造形連合学会天津大会での研究発表(海外旅費)3.試作品を試行する学生アルバイト(人件費)4.教材企画販売会社への開発委託費5.データ記録やプリンタ消耗品など(物品費) | KAKENHI-PROJECT-24531224 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24531224 |
ミスマッチ修復欠損大腸癌の化学療法確立の基礎的検討:DNA損傷特異性と薬剤感受性 | 大腸癌の発生機構には多くのがん遺伝子やがん抑制遺伝子の異常の累積が重要な役割を演じている。遺伝子異常の蓄積を誘発する機構の1つとしてDNA mismatch repair(MMR)systemの欠損が知られており、ヒトMMR遺伝子はこれまでにhMLH1やhMSH2など7種が報告されている。また、MMR欠損細胞はシスプラチン(CDDP)などの化学療法剤に抵抗性を示すことが知られている。しかしながら、大腸癌の化学療法に用いられる多くの抗癌剤に対するMMR欠損腫瘍の感受性並びに化学療法後のMMR欠損腫瘍の出現頻度やどのような化学療法剤によって誘起されるのかは不明である。そこで、MMR欠損細胞の抗癌剤感受性とMMRの生理学的意義の解明を中心に以下の検討を行った。1)MMR欠損細胞の薬剤感受性ヒト大腸癌由来細胞株4株2系統の細胞株を用いてclonogenicassayを行い、大腸癌に多用される抗癌剤を中心にそれらの細胞毒性を比較した。その結果、5-FUやirinotecanなどにMMR欠損細胞が抵抗性を示すことならびに感受性に差のない薬剤や欠損細胞に強い細胞毒性を示す臨床応用可能な抗癌剤を見い出した。2)高感受性の作用機作MMR欠損細胞がある種の抗癌薬に高感受性を示す理由を明らかにするためにaphidicolinやhydroxyurea等を用いて解析を行ったところ、MMRは細胞周期のDNA replicatlon completion checkpointに深く関与し、MMR機構はアポトーシスを抑制していることを強く示唆する結果を得た。3)薬剤の迅速なスクリーニング系の開発感受性試験の迅速化を図るため従来の3分の1の期間で評価可能な大腸菌を用いた測定法を確立した。4)臨床検体におけるMMR蛋白の有無の検討大腸癌患者の腫瘍組織の免疫組織化学染色を行い、現在までに数例の非染色検体を見いだしているが、全て初発例であった。再発症例については今後の検討課題となった。大腸癌の発生機構には多くのがん遺伝子やがん抑制遺伝子の異常の累積が重要な役割を演じている。遺伝子異常の蓄積を誘発する機構の1つとしてDNA mismatch repair(MMR)systemの欠損が知られており、ヒトMMR遺伝子はこれまでにhMLH1やhMSH2など7種が報告されている。また、MMR欠損細胞はシスプラチン(CDDP)などの化学療法剤に抵抗性を示すことが知られている。しかしながら、大腸癌の化学療法に用いられる多くの抗癌剤に対するMMR欠損腫瘍の感受性並びに化学療法後のMMR欠損腫瘍の出現頻度やどのような化学療法剤によって誘起されるのかは不明である。そこで、MMR欠損細胞の抗癌剤感受性とMMRの生理学的意義の解明を中心に以下の検討を行った。1)MMR欠損細胞の薬剤感受性ヒト大腸癌由来細胞株4株2系統の細胞株を用いてclonogenicassayを行い、大腸癌に多用される抗癌剤を中心にそれらの細胞毒性を比較した。その結果、5-FUやirinotecanなどにMMR欠損細胞が抵抗性を示すことならびに感受性に差のない薬剤や欠損細胞に強い細胞毒性を示す臨床応用可能な抗癌剤を見い出した。2)高感受性の作用機作MMR欠損細胞がある種の抗癌薬に高感受性を示す理由を明らかにするためにaphidicolinやhydroxyurea等を用いて解析を行ったところ、MMRは細胞周期のDNA replicatlon completion checkpointに深く関与し、MMR機構はアポトーシスを抑制していることを強く示唆する結果を得た。3)薬剤の迅速なスクリーニング系の開発感受性試験の迅速化を図るため従来の3分の1の期間で評価可能な大腸菌を用いた測定法を確立した。4)臨床検体におけるMMR蛋白の有無の検討大腸癌患者の腫瘍組織の免疫組織化学染色を行い、現在までに数例の非染色検体を見いだしているが、全て初発例であった。再発症例については今後の検討課題となった。消化器癌、特に大腸癌の発癌機構には多くのがん遺伝子やがん抑制遺伝子の異常の累積が重要な役割を演じている。遺伝子異常の蓄積を誘発する機構の1つとしてDNA mismatch repair(MMR)systemの欠損が知られており、ヒトMMR遺伝子はこれまでにhMLH1やhMSH2など7種が報告されている。また、MMR欠損細胞はシスプラチン(CDDP)などの化学療法剤にlow levelの抵抗性を示すことが知られている。しかしながら、大腸癌の化学療法に用いられる多くの抗癌剤に対するMMR欠損腫瘍の感受性並びに化学療法後のMMR欠損腫瘍の出現頻度やどのような化学療法剤によって誘起されるのかは不明である。そこで、本年度はMMR欠損細胞が大腸癌治療に用いられる化学療法剤にどのような感受性を示すかを中心に以下の検討を行った。1)MMR欠損細胞の薬剤感受性ヒト大腸癌由来細胞株HCT116およびHCT116+ch3を用いたクロノジェニックアッセイを行い、大腸癌に多用される化学療法剤の細胞毒性を比較した。その結果、5-FUやtegafurといった代謝拮抗薬やカンプトなど多くの抗癌剤に対し、MMR欠損細胞が抵抗性を示すことが明らかとなった。2)高感受性の作用機作MMR欠損細胞が高感受性を示すDNA polymerase阻害剤の作用機作の解明を行ったところ、これら阻害剤はMMR欠損細胞のapoptosisを選択的に誘導することが判明した。3)薬剤の迅速なスクリーニング系の開発感受性試験の迅速化を図るため、GFP標識細胞の樹立に取り組んでいるが、現在のところ樹立には至っていない。4)臨床検体におけるMMR蛋白の有無の検討 | KAKENHI-PROJECT-12671273 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12671273 |
ミスマッチ修復欠損大腸癌の化学療法確立の基礎的検討:DNA損傷特異性と薬剤感受性 | 大腸癌患者の腫瘍組織の免疫組織化学染色を行い、現在までに数例の非染色検体を見いだしている。これらの症例について、治療歴など詳細については検討中である。消化器癌、特に大腸癌の発癌機構には多くのがん遺伝子やがん抑制遺伝子の異常の累積が重要な役割を演じている。遺伝子異常の蓄積を誘発する機構の1つとしてDNA mismatch repair(MMR)systemの欠損が知られており、ヒトMMR遺伝子はこれまでにhMLH1やhMSH2など7種が報告されている。また、MMR欠損細胞はシスプラチン(CDDP)などの化学療法剤にLow levelの抵抗性を示すことが知られている。しかしながら、大腸癌の化学療法に用いられる多くの抗癌剤に対するMMR欠損腫瘍の感受性並びに化学療法後のMMR欠損腫瘍の出現頻度やどのような化学療法剤によって誘起されるのかは不明である。そこで、本年度は昨年度に引き続きMMR欠損細胞の抗癌剤感受性とMMRの生理学的意義の解明を中心に以下の検討を行った。1)MMR欠損細胞の薬剤感受性ヒト大腸癌由来細胞株HCT116およびHCT116+ch3とLoVoおよびLoVo+ch2を用いたクロノジェニックアッセイを行い、大腸癌に多用される抗癌剤の細胞毒性を比較した。その結果、topotecanに対するMMR欠損細胞と非欠損細胞の感受性に差は見られず、また、gemicitabineは欠損細胞に強い細胞毒性を示した。これらの結果から、両薬剤ともにMMR欠損癌細胞の化学療法に有効であることが示唆された。2)高感受性の作用機作MMR欠損細胞がある種の抗癌薬に高感受性を示す理由を明らかにするためにaphidicolinやhydroxyurea等を用いて解析を行ったところ、MMRは細胞周期のDNA replication completion checkpointに深く関与していることを強く示唆する結果を得た。3)薬剤の迅速なスクリーニング系の開発感受性試験の迅速化を図るため、大腸菌を用いた測定法の確立を行い、現在、薬剤の種類を増やして、その評価を行っている。4)臨床検体におけるMMR蛋白の有無の検討大腸癌患者の腫瘍組織の免疫組織化学染色を行い、現在までに数例の非染色検体を見いだしているが、全て、初発例であった。再発症例については、今後の検討課題となった。 | KAKENHI-PROJECT-12671273 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12671273 |
HtrA2ノックアウトマウスにおけるHtrA2基質蛋白蓄積と基底核回路断裂の解析 | われわれは当該研究にて、HtrA2ノックアウト(KO)マウスが生後30日で死亡すること、線条体ニューロンが脱落し、ユビキチン陽性蛋白が蓄積すること、COXIおよびCOXIV、parkinタンパク量が低下し、LC3-IIが増加すること、骨格筋・心筋が萎縮すること、を見出した。さらにHtrA2 KOマウスをParkin KOマウスと掛け合わせたdouble KOマウスはHtrA2 KOマウスよりも寿命が短縮することを示した。さらにわれわれは、アルツハイマー病の老人斑と神経原線維変化・ALSの脊髄前角細胞の細胞質に出現する封入体にHtrA2免疫反応が見られることを明らかにした。われわれは当該研究にて、HtrA2ノックアウト(KO)マウスが生後30日で死亡すること、線条体ニューロンが脱落し、ユビキチン陽性蛋白が蓄積すること、COXIおよびCOXIV、parkinタンパク量が低下し、LC3-IIが増加すること、骨格筋・心筋が萎縮すること、を見出した。さらにHtrA2 KOマウスをParkin KOマウスと掛け合わせたdouble KOマウスはHtrA2 KOマウスよりも寿命が短縮することを示した。さらにわれわれは、アルツハイマー病の老人斑と神経原線維変化・ALSの脊髄前角細胞の細胞質に出現する封入体にHtrA2免疫反応が見られることを明らかにした。本研究の目的は、第13番遺伝性パーキンソニズム(PARK13)の感受性遺伝子と考えられるHtrA2が細胞死を惹起する機序を解明することである。この目的のため、われわれはHtrA2ノックアウトマウスを作成し、その行動解析と病理学的・生化学的解析を行う計画を立てている。平成21年度においてわれわれはまず、HtrA2ノックアウトマウスのheterozygoteをオス1匹に対しメス2または3匹の割合で10組かけ合わせ、91匹の仔を得た。遺伝子型の内訳はwild type(wt:+/+)は25匹(オス:15匹、メス:10匹)、ノックアウト(ko: -/-)は16匹(オス:9匹、メス:8匹)、heterozygote(ht: +/-)は49匹(オス:26匹、メス:23匹)であった。生後10日目から体重測定を開始したが、14日目以降からkoにおいてのみ体重増加が認められず、生後30日でサンプリングするまで7.5g前後で推移した。これに対し、htはwtと同様の体重増加を示した。生後30日の時点でsacrificeし、脳・肝臓・心臓・骨格筋を免疫組織学的および生化学的解析の為に採取した。現在までに行ったパイロット研究の結果、koマウスの脳においてミトコンドリア呼吸鎖複合体IVのサブユニットCOX IおよびCOX IVのタンパク量の顕著な低下が認められた。これらのタンパクはミトコンドリアDNA(mtDNA)によってコードされているが、核がコードする複合体IのサブユニットNDUFA9の発現量には変化が見られなかった。脳から単離したmtDNAの解析でもkoマウスにおいてのみ、その異常を示唆する結果が得られつつあることから、今後はHtrA2の欠損によるミトコンドリアの異常およびそのmtDNAに及ぼす影響について解析を進める予定である。当該年度においてわれわれはHtrA2ノックアウトマウスにおける経時的な神経細胞脱落の評価・POLG蓄積部位の検討・大脳基底核マーカーの局在の検討、および、アルツハイマー病におけるHtrA2の分布の検討を行った。HtrA2ノックアウトマウスは生後1ヶ月で死亡するため、生後10日、20日、およひ30日齢において、エーテルによる深麻酔下に断頭して採取した新鮮脳組織、およびパラホルムアルデヒドにて灌流固定した脳組織から、前頭葉・海馬・線条体・視床・中脳を切り出し、7μm厚の切片を作成して、H & E、K-B、Bielschowsky染色、および、GFAP、Iba-1、CD68に対する免疫組織化学染色を施行した。その結果、このマウスでは生後10日目からすでに線条体ニューロンの著明な脱落が認められた。その他の部位の変性については現在検討中である。また、われわれはPOLGに対する免疫組織化学染色を行ったが、残念ながら有意な免疫反応は認められなかった。この結果はPOLGの異當蓄積が認められないことを意味するわけではなく、抗体の感度に問題があると考えられた。一方、HtrA2ノックアウトマウスにおける太脳基底核回路の断裂を検討するため、線条体・淡蒼球を含む切片において、DAT、calcineurin、calbindin、met-enkephalin、substance Pに対する抗体を用いた免疫染色を行った。その結果、HtrA2ノックアウトマウスの基底核ではこれらのマーカーがすべて著明に脱落していた。この結果は、このマウスでは線条体の中型有棘細胞が脱落していることを示唆している。さらにわれわれは生化学的解析によって、HtrA2ノックアウトマウスの脳においてはユビキチンリガーゼParkinの発現低下が生じていることを明らかにした。最後にわれわれは、アルツハイマー病においてHtrA2免役組織化学を行い、アルツハイマー病の特徴的病理所見である老人斑と神経原線維変化にHtrA2免疫化学反応が見られることを見出し、アルツハイマー病の病因にKtrA2が関与している可能性を指摘する論文発表を行った。最終年度ではHtrA2ノックアウト(KO) | KAKENHI-PROJECT-21500336 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21500336 |
HtrA2ノックアウトマウスにおけるHtrA2基質蛋白蓄積と基底核回路断裂の解析 | マウスの病理学的解析をさらに進め、(1)残存線条体ニューロンの細胞質にユビキチン陽性蛋白が蓄積し、autophagyのmarkerであるLC3の免疫反応が増強、(2)黒質を含めその他の部位は異常なし、(3)骨格筋・心筋の萎縮、を明らかにした。さらに、(4)western blot解析によりHtrA2 KOマウス脳ではautophagy活性化のmarkerであるLC3-IIが増加し、(5)HtrA2 KOとParkin KOの掛け合わせマウスではHtrA2 KOマウスより生存日数が10日短縮することを明らかにした。研究期間全体を通じてわれわれは、(1)HtrA2 KOマウスを作製し、このマウスでは(2)生後14日目から体重増加が見られず、生後30日で死亡、(3)線条体ニューロンが脱落し、残存ニューロンの細胞質にユビキチン陽性蛋白が蓄積し、autophagyが亢進、(4)ミトコンドリア呼吸鎖複合体IVのサブユニットCOX IおよびCOXIVの低下、(5)Parkinタンパク量の低下、(6)LC3-IIの増加、(7)中枢神経では線条体以外の部位に変性なし、(8)骨格筋・心筋の萎縮、を明らかにした。これらの結果から、HtrA2 KOマウスではHtrA2の基質であるPOLGの機能が障害され、ミトコンドリアDNAの発現が障害されることによりCOXI・COXIVが低下してミトコンドリア機能が障害され、線条体や心筋・骨格筋障害が生じると考えられた。さらにわれわれは、(9)HtrA2 KOマウスをParkin KOマウスと掛け合わせたdouble KOマウスはHtrA2 KOマウスよりも寿命が短縮することを明らかにした。これは、doubleKOマウスではHtrA2KOマウスで蓄積した異常ミトコンドリアを、parkin欠損のために除去できず、細胞死が促進されたと考えられる。すなわちこの結果は、parkinが異常ミトコンドリアのmitophagyに関与していることをin vivo実験系で明らかにした初めての成果である。さらにわれわれは、アルツハイマー病の特徴的病理所見である老人斑と神経原線維変化にHtrA2免疫反応が見られること、脳幹型および皮質型Lewy小体においてXIAPとHtrA2が共存していることを明らかにし、アルツハイマー病、パーキンソン病、Lewy小体型認知症の病因にHtrA2が関与している可能性を指摘した。 | KAKENHI-PROJECT-21500336 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21500336 |
細胞ストレスからβ細胞不全、インスリン抵抗性へ:新たなメカニズムの探究 | 小胞体ストレス、酸化ストレスなどの細胞ストレスは細胞機能に種々の変化をもたらし、臓器障害、疾病へと繋がる。本研究では、糖尿病の成因としての細胞ストレスによるβ細胞不全、インスリン抵抗性へのメカニズムの解明を目指す。β細胞においては細胞ストレスによるβ細胞不全への脱分化・運命転換の役割とそのメカニズムを探究する。インスリン抵抗性においては、細胞ストレスによる生体時計の撹乱、なかでも出力系時計遺伝子であるDBP・E4BP4に着目し、肝細胞、マクロファージ(脂肪組織)でのそれらの役割とインスリン抵抗性への関連を探究する。さらには、糖代謝と時計遺伝子の関連をヒトを対象とした臨床研究で明らかにする。小胞体ストレス、酸化ストレスなどの細胞ストレスは細胞機能に種々の変化をもたらし、臓器障害、疾病へと繋がる。本研究では、糖尿病の成因としての細胞ストレスによるβ細胞不全、インスリン抵抗性へのメカニズムの解明を目指す。β細胞においては細胞ストレスによるβ細胞不全への脱分化・運命転換の役割とそのメカニズムを探究する。インスリン抵抗性においては、細胞ストレスによる生体時計の撹乱、なかでも出力系時計遺伝子であるDBP・E4BP4に着目し、肝細胞、マクロファージ(脂肪組織)でのそれらの役割とインスリン抵抗性への関連を探究する。さらには、糖代謝と時計遺伝子の関連をヒトを対象とした臨床研究で明らかにする。 | KAKENHI-PROJECT-19H03710 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H03710 |
食事調査のための食物・栄養データベース構築に関する研究 | 既存の食事記録データから、日本人が日常的に摂取する複数の食品が混在する料理として野菜炒めを選び、典型的なレシピを作成して調理した。その料理を撮影すると共に、体積を測定した。また、調理前後に食材の重量を測定し、調理による食品の重量変化係数を算出した。これらの基礎データを用いて、料理100ml当りの栄養素成分表の作成を試みた。さらに、パソコンの画面上に取り込んだ料理写真から料理の体積を推定する方法を検討した。既存の食事記録データから、日本人が日常的に摂取する複数の食品が混在する料理として野菜炒めを選び、典型的なレシピを作成して調理した。その料理を撮影すると共に、体積を測定した。また、調理前後に食材の重量を測定し、調理による食品の重量変化係数を算出した。これらの基礎データを用いて、料理100ml当りの栄養素成分表の作成を試みた。さらに、パソコンの画面上に取り込んだ料理写真から料理の体積を推定する方法を検討した。【目的】対象者の負担が少ない食事調査法として、近年携帯電話のカメラ機能を活用した画像で食事内容を記録する方法が利用されるようになってきた。しかし、写真から料理ごとに個別の食材重量を推定することは非常に困難な作業である。欧米諸国では保持係数(Retention factors)、水分調整(Moisture adjustment)、脂肪調整(fat adjustment)、料理による食物の重量変化係数(Yield factor)等を用いて料理のレシピデータから栄養素等含有量を算出している。しかし、我が国においては調理による重量変化率が示されている食品は主として野菜類や魚類で、すべての野菜について公表されている訳ではなく、しかも調理方法は「ゆで」や「水煮」がほとんどである。日本の食文化に対応した調理方法別重量変化係数を整備するための基礎資料の集積を本研究の目的とした。【方法】過去に実施した地域住民の秤量記録法による食事調査データに基づき、出現率の高い料理として野菜妙め用いた。使用頻度の高い材料としてにんじん、キャベツ、ピーマン、豚肉を選定した。調理方法は、上述の食材を2種類又は3種類の材料を組み合わせ、加熱時間は予備実験の結果から生の食材重量の約80%まで妙めることとし、家庭用フライパンに材料重量5%の油、0.8%の食塩を用いて加熱調理(IH調理器3.0kW出力レベル4)した。加熱終了時及び終了後3分・5分・20分の重量を測定した。【結果】複数材料の調理では、重量が80%になるまでに要した妙め時間は3分30秒5分50秒であった。また、加熱終了後の重量変化は、放置5分後にほぼ一定になり、調理終了時の重量からさらに5%減少した。【結論】加熱調理終了時には食材重量は8090%に減少した。調理後の重量変化も考慮すると、複数食材を使用する日本の野菜妙めについては、食材生重量の7580%の重量変化係数が適当と考えられた。野菜妙めの調理操作による食材(生)の重量変化率(加熱終了後20分時点)は、単品調理ではにんじん:7178%、キャベツ:7889%、ピーマン:8690%、豚肉:7278%と調理により重量が減少することが示された。複数食材を組み合わせると、(豚肉50g+にんじん100g)で7176%、(豚肉50g+ピーマン100g)で8285%に減少した。単品調理による重量変化率から複数食材を用いた野菜妙めの重量変化率を算出すると、複数食材を実際に調理した時の重量変化率より若干重量変化率は大きかったが、実測値と計算値に有意差は認められなかった。煮物では、かぼちゃの煮物は4人分102108%、2人分で110113%と調味料と水を入れて加熱したため、煮物としての重量は生重量よりやや増加した。肉じゃがでは、かぼちゃと同様調味料と水を加えて加熱したが、過熱時間がかぼちゃより長くかかるため、4人分で92%、2人分で89%と減少した。肉じゃがの食材を単品で煮た時の重量変化率を利用して肉じゃがの料理としての重量変化率を算出して実測値と比較すると、両方法の重量変化率に大差は認められなかった。これらの結果から、妙め物、煮物では、単一の食材の重量変化率を利用して複数の食材を用いた料理の重量変化率を推定できる可能性が示された。料理の体積測定は、(1)料理を食器に盛り付けた状態で赤外線を利用して3D測定器により料理の体積を描出する方法、(2)食器に盛り付けた状態で撮影した画像から体積測定システムを利用して体積を推定する方法、(3)料理を食器から計量カップに移し、表面をならした状態で目盛りを読む簡易法、の3法を検討した。それぞれ短所と長所があるが、(2)の方法が精度と共に実用性も高いと考えられた。しかし、体積測定システムの操作が測定値に影響を及ぼすので、測定者の訓練方法の確立が急務であることが示された。本研究の主目的である2項目について説明する。(1)料理の画像からその料理の体積を推定する方法の妥当性の検討:3次元スキャナ(DAVID Vision Systems GmbH)と3次元画像統合ソフトを用いて3次元座標データを作り、体積の計算にはExcel VBAにより作成したシステムを用いた。測定検討用の立体は1つ当たり7.3mm×2.25mm×1.25mmの消しゴムとし、これを8個組み合わせて数種の立体を作り測定した。 | KAKENHI-PROJECT-22500759 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22500759 |
食事調査のための食物・栄養データベース構築に関する研究 | 測定条件決定後、測定者、測定順、立体の形、1つの角度でのデータの読み取り(撮影)、立体を回転させ複数回読み取ったデータ(スキャン)、交互作用について、体積測定精度(測定体積/実体積)を指標にして検討した。精度は常に1より大きく、測定者と測定順の体積測定への影響は認められず、撮影枚数及び形の違いに有意差を認めたが、補正の可能が示唆された。(2)料理を調理する際の加熱調理による素材食品の重量変化率データ蓄積:現在わが国で公表されている調理の食品別水分調整係数は、調味料を使用しない調理法であるので、食塩(食材の0.8%)と植物油(食材の5%)を用いた加熱調理の水分調整係数を野菜炒めについて検討した。根菜として人参、葉菜としてキャベツ、果菜としてピーマン、肉類として豚肉を用いて食塩、植物油の使用の有無別に、食材の重量、水分含有量、脂質含有量の調理による変化を測定した。植物油の付着は、野菜の種類と食塩添加の有無にかかわらず野菜炒めの4.04.5%であった。調理による食材の重量減少量と水分減少量は、食塩、植物油の使用の有無にかかわらずほぼ一致した。一方、豚肉(こま肉)は、重量減少量と水分減少量は食塩と植物油の添加の有無にかかわらずほぼ一致したが、豚肉の脂身の分布が一様ではないため、豚肉の脂質含有量のばらつきは調理条件の差よりも大きく、一定の傾向が認められなかった。料理の体積を推定する方法の目途はついたが、まだ測定者の訓練方法が確定していない。しかし、訓練方法が決定されれば、調理実験はおおむね順調に進めることが可能になる。24年度が最終年度であるため、記入しない。画像から体積測定システムを利用して料理の体積を測定する者の訓練方法を決定すれば、その後は一般の日本人が家庭で食べる料理で出現頻度が高い料理を選定し、順次調理して重量と体積のデータを蓄積することができる。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22500759 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22500759 |
漁種交替を伴う浮魚類の最適漁獲政策 | 非定常な海洋生態系を漁業によって有効かつ持続的に利用するには、多魚種を一括して管理することが重要である。本研究では、特に資源変動が著しい浮魚類を取り上げ、マイワシ、マサバ、カタクチイワシ、マアジ、サンマ、スルメイカなどの主要魚種を効率的に利用する漁獲政策を検討した。その結果、以下のことが明らかになった。(1)複数の独立に変動する資源がある場合、その時点で優先する魚種を集中して漁獲するスイッチング漁獲という管理方策を検討した。この方策は長期的な草漁獲量を増やすことができ、資源が減ったときの乱獲を防ぎ、保全に有効であり、資源変動幅も小さくなることが理論的に示された(Katsukawa 2002)(2)コホート解析の結果、1990年代のマサバ太平洋系群を以前のように成魚中心に漁獲していれば、資源が回復していた可能性が示唆された。さらに、今後も90年代と同じ漁獲圧をかけ続けた場合、今後資源が回復する可能性がきわめて低いことが示唆された。(松田ら2002)(3)成長乱獲と加入乱獲が将来の漁獲量に与える負荷を現在の漁獲量と比較する統一的な理論を構築した(Matsuda et al. 1999)。さらに、乱獲と保全を繰り返したミナミマグロのような魚種について、齢構成の歪みから今後も単調に資源が回復するのではなく、振動しながら回復し、成魚資源量が一時的に減少する可能性があることを示した(Mori et al. 2001)。なお、本研究の途中で松宮義晴教授が急逝し、その課題を勝川俊雄が引き継いだ。非定常な海洋生態系を漁業によって有効かつ持続的に利用するには、多魚種を一括して管理することが重要である。本研究では、特に資源変動が著しい浮魚類を取り上げ、マイワシ、マサバ、カタクチイワシ、マアジ、サンマ、スルメイカなどの主要魚種を効率的に利用する漁獲政策を検討した。その結果、以下のことが明らかになった。(1)複数の独立に変動する資源がある場合、その時点で優先する魚種を集中して漁獲するスイッチング漁獲という管理方策を検討した。この方策は長期的な草漁獲量を増やすことができ、資源が減ったときの乱獲を防ぎ、保全に有効であり、資源変動幅も小さくなることが理論的に示された(Katsukawa 2002)(2)コホート解析の結果、1990年代のマサバ太平洋系群を以前のように成魚中心に漁獲していれば、資源が回復していた可能性が示唆された。さらに、今後も90年代と同じ漁獲圧をかけ続けた場合、今後資源が回復する可能性がきわめて低いことが示唆された。(松田ら2002)(3)成長乱獲と加入乱獲が将来の漁獲量に与える負荷を現在の漁獲量と比較する統一的な理論を構築した(Matsuda et al. 1999)。さらに、乱獲と保全を繰り返したミナミマグロのような魚種について、齢構成の歪みから今後も単調に資源が回復するのではなく、振動しながら回復し、成魚資源量が一時的に減少する可能性があることを示した(Mori et al. 2001)。なお、本研究の途中で松宮義晴教授が急逝し、その課題を勝川俊雄が引き継いだ。日本近海の各魚種の漁獲量の年変動をデータベース化した。また、漁獲物の年別齢別漁獲尾数から過去の資源尾数を推定する方法について、噛乳類学の分野で新たな研究の展開があり、その方法を取り入れつつ、最尤法を用いて資源尾数を推定する方法を考案した(次年度発表予定)。また、不確実性、非定常性を取り入れた資源管理政策は近年欧米でadaptive managementと呼ばれる方法が定着しつつあり、その紹介を行うとともに(鷲谷・松田1998)、その手法と日本の水産資源学でかって提唱されていたフィードバック管理の類似性を指摘し、後者に基づく管理方策を道東地域エゾシカ保護管理政策に応用した(Matsuda et al.1999:Res.Pop.Ecol.)。これらの管理政策を水産資源管理に応用した場合の有効性と問題点について紹介した(松田1998)。また、浮魚類の過度の利用がどの程度絶滅の恐れを招くかについて解析し(Matsuda et al.1998)、持続可能な漁業と生物多様性保全の関係について論じた(Matsuda1998)。生態系が定常状態になく、短期的にも長期的にも非定常であると言う前提のもとで、漁業資源の有効利用を図る指標として、生態学の繁殖価を応用した収穫価という概念を提唱した(松田、山内ら1999)。また、非定常系における野生生物管理という側面は、水産資源だけでなく、陸上動物にも共通している。北海道から水産学の成果を応用するよう求められ、道東地区エゾシカ保護管理計画策定にかかわり、その理念を発表した(松田・梶ら1999)。これは、生態学的情報の不確実性と非定常性を考慮しつつ、管理に失敗するリスクを最小にするという考え方に基づいている。さらに、資源保護上の問題点として、共有の悲劇を招くことで知られる公開漁場の自由競争下のゲームで、必然的に不平等な分配が行われてしまう可能性について指摘した。 | KAKENHI-PROJECT-10660174 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10660174 |
漁種交替を伴う浮魚類の最適漁獲政策 | これは多くの多細胞生物に見られる異型配偶、つまり精子と卵子の大きさの不平等をもたらす収束不安定性という概念と、同値であることを示した(松田、Abrams1999)。総じて、浮魚資源は人為的な影響がなくても非定常性で、マイワシ、マサバ、カタクチイワシが交替で卓越するが、魚種交替の時期については不確実性がある。このような複雑な浮魚資源を持続的かつ有効に利用するには、来年度には以下のことを実証する。(1)市場の柔軟性(時代によりマイワシ、カタクチイワシなど魚種を替えて流通、消費すること)、(2)漁海況の継続的、科学的監視(魚種交替の時期や、来遊量・加入量の年変動などは海況に左右されるので、それを監視する)、(3)漁獲対象の十年名切り替え(高水準期の魚種を取り、低水準期の魚種を保全する)が必要である日本近海太平洋側のマサバ資源は,1990年代の低迷期に92年と96年の2度にわたり、卓越年級群が発生した.しかし,これらの年級群は未成魚のうちに強い漁獲圧を被り、成魚になる前に減耗し,産卵親魚量の回復には繋がらず、マサバ資源は以前低迷を続けている.1970年代から80年代にかけては成魚を中心に漁獲していたが,1993年以降未成魚の漁獲圧が高まった.1999年の資源状況から出発して,1990年代と同じ頻度で卓越年級群が各年独立に発生すると仮定した数理モデルにより,今後の資源回復状況を予想する数理モデルを開発した。卓越年級群の翌年に未成魚の漁獲を控えた場合,1970-80年代の漁獲圧で獲りつづけた場合に資源がどれだけ回復し,漁獲量が現実より多いか少ないかを,再生産関係の年変動を考慮した個体群生態学モデルを用いて検討した.その結果,90年代の漁獲圧を今後も続けた場合,マサバ資源が回復する可能性はほとんどないこと,70-80年代の漁獲圧を続けた場合,2020年までにマサバ資源が1980年代の水準にまで回復する可能性は5割以上であることが示唆された.また、現在の漁獲圧では卓越年級群直後は漁獲量が増えるものの、成魚資源量の回復に繋がらず,結果として長期的な漁獲量を増やすことができないことがわかった。非定常な海洋生態系を漁業によって有効かつ持続的に利用するには、多魚種を一括して管理することが重要である。本研究では、特に資源変動が著しい浮魚類を取り上げ、マイワシ、マサバ、カタクチイワシ、マアジ、サンマ、スルメイカなどの主要魚種を効率的に利用する漁獲政策を検討した。その結果、以下のことが明らかになった。(1)複数の独立に変動する資源がある場合、その時点で優先する魚種を集中して漁獲するスイッチング漁獲という管理方策を検討した。この方策は長期的な草漁獲量を増やすことができ、資源が減ったときの乱獲を防ぎ、保全に有効であり、資源変動幅も小さくなることが理論的に示された(Katsukawa2002)(2)コホート解析の結果、1990年代のマサバ太平洋系群を以前のように成魚中心に漁獲していれば、資源が回復していた可能性が示唆された。さらに、今後も90年代と同じ漁獲圧をかけ続けた場合、今後資源が回復する可能性がきわめて低いことが示唆された。(松田ら2002)(3)成長乱獲と加入乱獲が将来の漁獲量に与える負荷を現在の漁獲量と比較する統一的な理論を構築した(Matsuda et al. 1999)。さらに、乱獲と保全を繰り返したミナミマグロのような魚種について、齢構成の歪みから今後も単調に資源が回復するのではなく、振動しながら回復し、成魚資源量が一時的に減少する可能性があることを示した(Mori et al. 2001)。なお、本研究の途中で松宮義晴教授が急逝し、その課題を勝川俊雄が引き継いだ。 | KAKENHI-PROJECT-10660174 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10660174 |
DNAメチル化が支配する造血幹細胞の自己複製能 | 本研究では幹細胞発生におけるDNAのメチル化の役割を明らかにするため、DNAメチル化酵素であるDnmt3aまたはDnm3b欠損マウスより胎仔肝を分離後、造血幹細胞を解析し、Dnmt3bが造血幹細胞における自己複製能獲得と維持に必須であることを見出した。Dnmt3aまたはDnmt3b欠損造血幹細胞の多分化能には問題なかった。再構築能と自己複製能についてはDnmt3a欠損造血幹細胞では異常なかったが、Dnmt3b欠損造血幹細胞では障害されていた。造血幹細胞の自己複製には適切な遺伝子発現とゲノムの安定化が必要であることが示唆された。本研究では幹細胞発生におけるDNAのメチル化の役割を明らかにするため、DNAメチル化酵素であるDnmt3aまたはDnm3b欠損マウスより胎仔肝を分離後、造血幹細胞を解析し、Dnmt3bが造血幹細胞における自己複製能獲得と維持に必須であることを見出した。Dnmt3aまたはDnmt3b欠損造血幹細胞の多分化能には問題なかった。再構築能と自己複製能についてはDnmt3a欠損造血幹細胞では異常なかったが、Dnmt3b欠損造血幹細胞では障害されていた。造血幹細胞の自己複製には適切な遺伝子発現とゲノムの安定化が必要であることが示唆された。造血幹細胞は自己複製能と多分化能を併せ持ち、個体の一生にわたってクローナルにすべての血球系を産生し続けることができる。自己複製とは親細胞が分裂を介して自分と全く同じ能力を持つ娘細胞を産生することであるが、どのような分子基盤があればこれを繰り返すことができるのかよく分かっていない。申請者らは以前de novo DNAメチル化酵素であるDnmt3aとDnmt3bのいずれも造血幹細胞の分化には必須ではないが、どちらか一方が自己複製の維持に必須であることを報告した。これは成体骨髄の造血幹細胞を対象にした研究であったが、本研究ではこれらの酵素の造血発生における役割を明らかにすることを目的とした。Dnmt3a+/-マウス同士の交配あるいはDnmt3b+/-マウス同士の交配によって野生型、ヘテロ型、ホモ型の胎仔を得た。それぞれの胎仔から胎生13.5日の肝臓を分離し、致死量の放射線照射したマウスに移植して長期骨髄再構築能を解析した。その結果、Dnmt3a欠損マウスでは造血幹細胞の機能に全く異常がないが、Dnmt3b欠損マウスの造血幹細胞では長期骨髄再構築能が著しく低下していることが明らかとなった。このことは造血幹細胞の発生にDnmt3bが必須であることを示している。胎仔肝臓から造血幹細胞を高度に濃縮したCD48-c-Kit+Sca-1+Lin-細胞を分離し、これらの細胞からgenomic DNAを抽出した。これを用いてDNAメチル化解析を行った。その結果、Dnmt3aおよびDnmt3b特異的DNAメチル化部位が明らかとなった。Dnmt3bによってメチル化されるDNAの部位と造血幹細胞の自己複製能との関連が興味深い。造血幹細胞は自己複製能と多分化能を併せ持ち、個体の一生にわたってクローナルにすべての血球系を産生し続けることができる。自己複製とは幹細胞が分裂を介して自分と全く同じ能力を持つ娘細胞を産生することであるが、どのような分子基盤があればこれを繰り返すことができるのかよく分かっていなかった。申請者らは以前de novo DNAメチル化酵素であるDnmt3aとDnmt3bのいずれも造血幹細胞の分化には必須ではないが、どちらか一方が自己複製の維持に必須であることを報告していた。これは成体骨髄の造血幹細胞を対象にした研究であったが、本研究ではこれらの酵素の造血発生における役割を明らかにすることを目的とした。以前の経験から、コンディショナルノックアウト用いて、これらの遺伝子を完全の欠損させることが容易にでないことが判明していたため、本研究ではその点を憂慮することなく、Dnmt3aまたはDnmt3bの完全欠損による造血幹細胞機能の変化を解析した。Dnmt3a+/-マウス同士の交配あるいはDnmt3b+/-マウス同士の交配によってE13.5胎仔を得た。そして、PCR genotypingによりDnmt3a^<+/+>、Dnmt3a^<+/->、Dnmt3a^<-/->、Dnmt3b^<+/->、Dnmt3b^<+/->、Dnmt3b^<-/->マウスを識別した。一定数の胎仔肝細胞と野生型骨髄細胞を用いて競合的移植実験を行った。また、連続移植によって自己複製能を解析した。その結果、Dnmt3a欠損造血幹細胞の自己複製と分化に異常を検出しなかった。一方、Dnmt3b欠損造血幹細胞の分化に異常を検出しなかったが、自己複製能が著名に低下していることが明らかとなった。Dnmtb3欠損に伴うゲノムの不安定化を検討するするため、CD150^+CD48-c_-Kit^+Sca-1^+Lin-胎仔肝細胞を分離して、gamma H2AX抗体を用いたfoci解析を行っている最中であり、DNAメチル化とゲノムの安定化の関連性が興味深い。組織特異的幹細胞は臓器発生において重要な役割を果たすと考えられてきた。 | KAKENHI-PROJECT-22591029 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22591029 |
DNAメチル化が支配する造血幹細胞の自己複製能 | しかし、幹細胞がどのような機序で発生し、機能的に成熟するのかよくわかっていなかった。DNAのメチル化は代表的なエピゲノム制御のひとつであり幹細胞発生にも関与する可能性が考えられた。本研究では造血幹細胞発生におけるDNAのメチル化酵素の役割を明らかにすることを目的とした。de novoのDNAメチル化酵素であるDnmt3aまたはDnmt3bを欠損した胎仔期マウスから肝臓細胞を分離し、移植実験によって造血幹細胞活性を定量的に解析した。in vitroコロニーアッセイとin vivo競合的再構築実験によってDnmt3aまたはDnmt3b欠損造血幹細胞の多分化能には問題がないことが明らかとなった。一方、再構築能と自己複製能についてはDnmt3a欠損造血幹細胞では異常なかったが、Dnmt3b欠損造血幹細胞では顕著に障害されていた。Dnmt3b欠損造血幹細胞ではp21発現上昇に伴い、アポトーシスが亢進していた。また、生殖系に発現すべき遺伝子が発現していた。さらに、造血幹細胞においてgammaH2AXフォーカス形成によって検出されるDNA損傷の蓄積が認められた。これらより、造血幹細胞が高い自己複製能を獲得するためには適切な遺伝子発現とゲノムの安定化が必要であることが示唆された。以上より、造血幹細胞が繰り返し自己複製を起こすために、Dnmt3aではなく、Dnmt3bによるDNAのメチル化が必須であると結論した。2012年1月、別の研究グループによってDnmt3a欠損造血幹細胞には分化異常があることが報告された(Nat Genet 44:23)。私たちのこれまでの研究結果はDnmt3a欠損造血幹細胞には分化異常も自己複製異常もなく、Dnmt3b欠損造血幹細胞には分化異常はないが、自己複製能の顕著な低下があることを示している。彼らの報告結果と私たちの研究結果とは全く異なり、この不一致の原因を調べる必要が新たに出てきた。24年度が最終年度であるため、記入しない。より定量性の高い方法を用いて、深重に移植実験を繰り返す。Dnmt3a+/-マウス同士の交配あるいはDnmt3b+/-マウス同士の交配によって得たE13.5胎仔から肝臓を分離する。PCR genotypingによりDnmt3a^<+/+>、Dnmt3a^<+/->、Dnmt3a^<-/->、Dnmt3b^<+/->、Dnmt3b^<+/->、Dnmt3b^<-/->マウスを識別する。一定数の胎仔肝細胞と野生型骨髄細胞を用いて競合的移植実験を行う。また、連続移植も行う。さらに、各胎仔肝より造血幹細胞を高度に濃縮したCD150^+CD48-c_-Kit^+Sca-1^+Lin-細胞を分離して、これらをテストドナー細胞とし、一定数の野生型骨髄細胞に対して同様な競合移植、連続移植を行う。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22591029 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22591029 |
EFD/CFD融合解析による三次元内部流動診断技術の開発 | DES(Detached Eddy Simulation)解析によるCFD(Computational Fluid Dynamics)結果と非定常壁面圧力計測によるEFD(Experimental Fluid Dynamics)結果とを用いるEFD/CFD融合解析手法を構築することにより,三次元内部流動診断技術を開発した.この流動診断技術を駆使して,遷音速遠心圧縮機羽根車における旋回失速現象および翼先端漏れ渦の崩壊現象,軸流圧縮機動翼列における旋回失速の初生メカニズム,ならびに半開放形プロペラファンにおける非定常渦流れ現象を明らかにした.DES(Detached Eddy Simulation)解析によるCFD(Computational Fluid Dynamics)結果と非定常壁面圧力計測によるEFD(Experimental Fluid Dynamics)結果とを用いるEFD/CFD融合解析手法を構築することにより,三次元内部流動診断技術を開発した.この流動診断技術を駆使して,遷音速遠心圧縮機羽根車における旋回失速現象および翼先端漏れ渦の崩壊現象,軸流圧縮機動翼列における旋回失速の初生メカニズム,ならびに半開放形プロペラファンにおける非定常渦流れ現象を明らかにした.本研究では,実験流体力学(EFD : Experimental Fluid Dynamics)と計算流体力学(CFD : Computational Fluid Dynamics)とが真に融合したEFD/CFD融合解析手法を構築することにより,実用問題における複雑な三次元内部流動を信頼性高く診断する技術を新たに創出することを目的とする.そのためにまず,CFD解析モデル(流れの基礎方程式)と計測データの差異を評価関数とし,拘束条件としてCFD解析モデルを設定した変分問題から導出される随伴方程式に基づいて,任意のEFD(計測)データとCFD計算との融合手法を定式化した.その際に,融合過程全体にわたる数値計算スキーム上の整合性を保つために,離散化されたCFD解析モデルから随伴方程式(アジョイント方程式)を導いた.また,非定常流れ場への適用まで視野に入れて,4次元変分問題として取り扱うとともに,CFD解析における数値計算スキームとして,k-ωの二方程式乱流モデルをベースとしたDES(Detached Eddy Simulation)計算スキームを構築した.その際に,本EFD/CFD融合解析手法では,Navier-Stokes方程式を拘束条件とした変分問題に基づいてEFD(計測)データをCFD計算に融合することから,通常のCFD解析と比較して極めて膨大な演算を処理する必要があり,スーパーコンピュータ上で高速に本融合解析処理を行うために,解析プログラムの並列コーディングも行った-さらに,CFD解析との親和性に優れたEFD(計測)技術として,感圧塗料による壁面圧力計測を導入することにより,先進的なEFD/CFD融合解析手法を構築する準備を進めた.すなわち,広範囲の壁面にわたる圧力分布の膨大な情報(面情報)を容易に取得できる感圧塗料による壁面圧力計測(PSP壁面圧力計測)をCFD解析との親和性に優れたEFD(計測)技術と位置付け,上記のEFD/CFD融合解析手法の構築と並行して,低速流れ場におけるPSP壁面圧力計測技術の開発を行った.前年度に構築したEFD/CFD融合解析手法を実用問題の複雑な三次元流れ場に適用して,本手法の妥当性を検証した.具体的には,軸流圧縮機動翼列流れおよび半開放形プロペラファンを対象とし,融合解析のためのEFD(計測)データとしては,既存の計測技術により得られたEFDデータ(熱線流速計やLDVによる速度計測データ,圧力センサーによる壁面圧力計測データなど)を用いた.検証結果から,融合解析に対する各計測データの感度もあわせて調べた.その結果,意味のない計測データをCFD計算に融合することは,精度上および計算負荷上で好ましくないことが分かった.また,非定常流れ場へ適用するために,CFD解析における数値計算スキームとして,k-ωの二方程式乱流モデルをベースとしたDES (Detached Eddy Simulation)計算スキームを構築するとともに,そのプログラムにおける並列度のさらなる向上を行った.さらに,圧縮性の効果が顕著に現れる流れ場に対する本融合解析手法の適用性を調べるために,ノズル内の遷音速非粘性流れ問題に本手法を適用した.その際に,EFD(計測)データの代用としてオイラー解析結果を用いた.その結果,圧縮性の効果は本手法の収束性を著しく低下させることが判明し,この点の改善が実用問題への適用上重要であることが分かった.最後に,CFD解析との親和性に優れたEFD(計測)技術の開発という観点から,感圧塗料(PSP)による壁面圧力計測の高精度化を図った,特に,PSP壁面圧力計測における温度補償技術を開発するために,PSPとTSP(感温塗料)の重ね塗りの有効性について調べた.その結果,PSP感度が著しく低下する低速流れにおいて,PSPとTSPの重ね塗りによる温度補償は圧力計測の高精度化に有効であることが明らかになった前年度までに構築したEFD/CFD融合解析手法を工学的な実用問題に適用することによって,従来解明することが出来なかった非定常三次元流れ現象を詳細に解析した.まず,k-ωの二方程式乱流モデルをベースとしたDES (Detached Eddy Simulation)計算結果と高応答圧力センサーによる非定常壁面圧力計測結果とを用いて,遷音速遠心圧縮機羽根車における翼先端漏れ渦の非定常挙動を調べた結果,翼の空力負荷が上昇すると,翼先端漏れ渦の崩壊が全翼間で発生すること,この崩壊により翼先端全周にわたって現れるブロッケージ効果が翼の失速を抑制することが明らかになった. | KAKENHI-PROJECT-21360085 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21360085 |
EFD/CFD融合解析による三次元内部流動診断技術の開発 | 次に,30個の高応答圧力センサーによるケーシング面圧力の同時面計測結果とDES計算結果とから,軸流圧縮機動翼列における旋回失速の初生メカニズムを解析した結果,翼先端部の小規模な前縁はく離が失速初生プロセスの発端を支配していること,この前縁はく離が竜巻状のはく離渦に成長し,隣接翼の圧力面側に移動して旋回失速の初生が始まること,竜巻状のはく離渦によるブロッケージ効果が翼先端漏れ渦を翼前縁から上流側に吐き出すことが解明された.また,高応答圧力センサーによる翼面圧力計測結果とDES計算結果とに基づいて,半開放形プロペラファンの非定常渦流れ挙動を調べた結果,翼端渦自体に発現する非定常性は低いこと,翼端渦とケーシング面との相対運動に起因した非定常性が極めて高いこと,翼端渦とケーシング面との干渉から翼端渦とは逆巻きのはく離渦(縦渦)構造が形成されることがわかった.さらに,CFD解析との親和性に優れた感圧塗料(PSP)による壁面圧力計測を上述の半開放形プロペラファンへ適用した結果,PSP壁面圧力計測における高精度化を実現するためには,PSPとTSP(感温塗料)の重ね塗りによる温度補償が不可欠であることが明らかになった. | KAKENHI-PROJECT-21360085 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21360085 |
心筋イオンチャネルの分化に対する各種環境素因の影響 | 心臓は個体発生の早期から発生分化して拍動を開始(鶏胚では3日)すると報告されているが、哺乳類では中胚葉形成期の胚操作や培養が困難であるため心筋細胞の分化成立の時期とそれに関与する細胞相互間の関係が不明のままである。我々はマウス胚において心筋発生前(胎生6.757.5日)の中胚葉培養系を確率して心筋に特異的な遺伝子の発現と拍動の発現を指標としてこれらの発現に対して細胞相互の関与、各種の成長因子が如何なる役割を果たしているのかを検討することを通して心筋の発生分化の機序を探り、その後の成熟過程において分裂増殖能を失って専ら肥大により順応する形質の変化の過程を検討することを目的とする。心筋の分裂増殖能は哺乳類では胎生期は無論のこと新生児期の数日間維持されている。しかしこの形質が出生後に急速に失われていく過程と機序については十分な検討がなされていない。我々は既に確立したラット新生児心筋の培養系を用いて、新生児心筋細胞の成熟過程における電気興奮とそれに関与する膜イオンチャネル、特に各種のKチャネルの発現を検討し、それらに対して酸素分圧などの環境条件、各種の成長因子、薬物がこれらを如何に修飾するかを検討した。これらの研究を通して、心臓の発生における先天的な異常、後天的要因における心臓の再構築とその病態の成因に関する研究に発展させる手懸りを得ることが出来ると考える。さらにはこの研究がポンプ機能を失った不全心に心筋を甦らせる可能すら秘めているものと期待される。マウス胎生7.5日胚、7.25日胚から胚性中胚葉を単離培養し、心筋分化成立過程を検討した。自発収縮能出現の有無を観察するとともに、心筋に特異的な遺伝子の発現をRT-RCR法により検索し、心筋収縮蛋白を蛍光抗体法にて染色することにより評価した。胎生7.5日胚の単離胚性中胚葉では、培養48時間以内に、全例に自発収縮、心筋特異的遺伝子および収縮蛋白の発現を認め、心筋の分化を示した。これは、近位内胚葉との相互作用や培養液中の因子には依存せず、7.5日胚中胚葉の心臓予定域がこの時点で心筋へコミットメントすることが明らかとなった。次に、近位内胚葉を除去した胎生6.75日胚を培養し、びあよう液中に種々の増殖因子を加えて心筋分化に対する影響を検討した。TGF superfamily増殖因子添加培養では自発収縮能や心筋特異的遺伝子発現の一部に欠如が見られた。TGF superfamily増殖因子よりも血小板由来増殖因子や線維芽細胞増殖因子が心筋分化を促進することが判明した。新生児ラット培養心筋細胞を用いた実験では、培養経過中のイオン電流の発育分化が明らかとなり、慢性低酸素状態におかれた培養細胞はイオン電流(主にI_<to>電流)の分化が遅延もしくは逆分化(Dedifferentiation)を遂げる可能性が示唆された。出生後の心筋においても、イオン電流毎に分化の様式が異なることを発見した。以上、胎生期において心筋へのコミットメントの時期、これにいたる成長因子や細胞間の相互作用について培養系の決定、RT-PCRによる遺伝子発現の解析、心筋収縮蛋白の蛍光抗体染色の方法を確立し、新しい知見を得ることができた。また、生後の心筋も、環境素因に呼応してその発育分化を遂げることが明らかにできた。ただし、当科学研究費補助金の交付決定から今日までわずか4ケ月であり、主たる購入装置である自動インジェクション装置は納入された直後である。したがって、当初予定していたmRNA注入による遺伝子機能発現に関する一連の研究は始まったばかりである。心臓は個体発生の早期から発生分化して拍動を開始(鶏胚では3日)すると報告されているが、哺乳類では中胚葉形成期の胚操作や培養が困難であるため心筋細胞の分化成立の時期とそれに関与する細胞相互間の関係が不明のままである。我々はマウス胚において心筋発生前(胎生6.757.5日)の中胚葉培養系を確率して心筋に特異的な遺伝子の発現と拍動の発現を指標としてこれらの発現に対して細胞相互の関与、各種の成長因子が如何なる役割を果たしているのかを検討することを通して心筋の発生分化の機序を探り、その後の成熟過程において分裂増殖能を失って専ら肥大により順応する形質の変化の過程を検討することを目的とする。心筋の分裂増殖能は哺乳類では胎生期は無論のこと新生児期の数日間維持されている。しかしこの形質が出生後に急速に失われていく過程と機序については十分な検討がなされていない。我々は既に確立したラット新生児心筋の培養系を用いて、新生児心筋細胞の成熟過程における電気興奮とそれに関与する膜イオンチャネル、特に各種のKチャネルの発現を検討し、それらに対して酸素分圧などの環境条件、各種の成長因子、薬物がこれらを如何に修飾するかを検討した。これらの研究を通して、心臓の発生における先天的な異常、後天的要因における心臓の再構築とその病態の成因に関する研究に発展させる手懸りを得ることが出来ると考える。さらにはこの研究がポンプ機能を失った不全心に心筋を甦らせる可能すら秘めているものと期待される。心臓は固体発生の早期から発生分化して拍動を開始(鶏胚では3日)すると報告されているが、哺乳類には中胚葉形成期の胚操作や培養が困難であるため心筋細胞の分化成立の時期とそれに関与する細胞相互間の関係が不明のままである。 | KAKENHI-PROJECT-07407073 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07407073 |
心筋イオンチャネルの分化に対する各種環境素因の影響 | 我々はマウス胚において心筋発生前(胎生6.757.5日)の中胚葉培養系を確立して心筋に特異的な遺伝子の発現と拍動の発現を指標としてこれらの発現に対して細胞相互の関与、各種の成長因子が如何なる役割を果たしているのかを検討することを通して心筋の発生分化の機序を探り、その後の成熟過程において分裂増殖能を失って専ら肥大により順応する形質の変化の過程を検討することを目的とする。心筋の分裂増殖能は哺乳類では胎生期は無論のこと新生児期の数日間維持されている。しかしこの形質が出生後に急速に失われていく過程と機序については十分な検討がなされていない。我々は既に確立したラット新生児心筋の培養系を用いて、新生児心筋細胞の成熟過程における電気興奮とそれに関与する膜イオンチャネル、特に各種のKチャネルの発現を検討し、それらに対して酸素分圧などの環境条件、各種の成長因子、薬物がこれらを如何に修飾するかを検討した。これらの研究を通して、心臓の発生における先天的な異常、後天的要因における心臓の再構築とその病態の成因に関する研究に発展させる手懸りを得ることが出来ると考える。さらにはこの研究がポンプ機能を失った不全心に心筋を甦らせる可能すら秘めているものと期待される。 | KAKENHI-PROJECT-07407073 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07407073 |
再分配制約を考慮に入れた資源配分のマーケットデザイン分析 | 内定年度:2018 | KAKENHI-PROJECT-18KK0342 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18KK0342 |
アロマテラピーによるがん化学療法における副作用の軽減効果 | 健常人ボランティアと抗がん剤投与患者を対象に、アロマテラピーによるストレス軽減効果に関する検証を行った。唾液中ストレスマーカーのアミラーゼ、クロモグラニンAおよびコルチゾールを測定すると共に、Visual Analog Scale(VAS)との相関について検討した。その結果、アロマテラピーによる客観的ストレス指標に有意な変化は認められなかった。またVASについてもアロマテラピーによるストレス軽減効果は確認できなかった。健常人ボランティアと抗がん剤投与患者を対象に、アロマテラピーによるストレス軽減効果に関する検証を行った。唾液中ストレスマーカーのアミラーゼ、クロモグラニンAおよびコルチゾールを測定すると共に、Visual Analog Scale(VAS)との相関について検討した。その結果、アロマテラピーによる客観的ストレス指標に有意な変化は認められなかった。またVASについてもアロマテラピーによるストレス軽減効果は確認できなかった。コルチゾールそのままでは感度が低いため、水酸基をトリメチルシリル誘導体化してGC/MS測定を行った。これまでコルチゾールは、蛍光法やELISA法によって定量されていたが、競合反応や夾雑物の影響が測定精度を高める上で支障となっていた。しかし、GC/MS法を用いることで、類似物質からコルチゾールを分離し、感度を高めることでより正確な濃度算出が可能となった。従来から唾液中のアミラーゼは吸光度測定することでが可能であるが、このアミラーゼの濃度とコルチゾールの唾液中および血液中濃度を比較し、アミラーゼ濃度によるストレス強度の基準値を求めた。さらに実臨床において、がん化学療法とアロマテラピーを同時に実施し客観的ストレス強度とストレスマーカーとの相関を検討した。アミラーゼはがん化学療法30分で29.61kIU/L(66.47%)に減少し、終了時には77.50kIU/L(230.1%)に増加した。アロマテラピー群でもその傾向は認められたが、変動はコントロール群より小さかった。これに対してクロモグラニンAは、開始30分の時点では33.29pmol/mL(139.9%)に増加し、終了時には26.96pmol/mL(116.6%)に低下した。アロマテラピー群は、開始30分では20.99pmol/mL(122.5%)に変化し、コントロール群との上昇度に差を認めた。また、アロマテラピーを実施した群と実施しなかった群とでストレスマーカーの経時的な変動に交互作用があるかどうかを解析した。その結果、全てのストレスマーカーで有意差は認められず、両群のストレスマーカーの変動に違いはないことが明らかとなった。健常人ボランティア18名と抗がん剤投与患者l3名を対象に試験を行い、以下の結果を得た。(1)健常人ボランティアにおけるストレスマーカーの推移健常人ボランティアに対し内田クレペリンテストにより30分間のストレス負荷を実施し、ストレス負荷前後で唾液中のストレスマーカーを測定した。クロモグラニンAとアミラーゼはストレス負荷後に短時間で上昇したが、コルチゾールは短時間での上昇が認められなかった。アロマテラピーの有無によりストレスマーカーがどのように変化したのかを推定周辺平均値で比較したところ、健常人ボランティアのクロモグラニンAはアロマテラピーを行わない場合と比較して、アロマテラピーを行った場合のほうが有意に低下することが明らかとなった(分散分析P=0.0013)。一方、健常人ボランティアのアミラーゼとコルチゾールの推定周辺平均値は、アロマテラピーの有無による有意な変化の違いは認められなかった(分散分析アミラーゼ:P=0.484、コルチゾール:P=0.320)。(2)健常人ボランティアにおけるVSA(Visual Analog Scale)の推移健常人ボランティアに対し内田クレペリンテストによる30分間のストレス負荷を実施し、ストレス負荷前後でVSAによる主観的ストレス評価を行った。身体症状9項目中では、吐気、食欲、ほてり、だるさ、気力が、精神症状5項目中では疲労感、不安感、倦怠感、イライラ感、緊張感がそれぞれ解析可能であった。その結果、アロマテラピーの有無による主観的ストレス強度の推定周辺平均値に有意な変動が認められたのは、食欲と不安感であった(分散分析食欲:P=0.050、不安感:P;0.041)。(3)抗がん剤投与患者におけるストレスマーカーの推移抗がん剤投与患者でアロマテラピーの有無によりストレスマーカーがどのように変化したのかを推定周辺平均値で比較した。ストレスマーカーの変動はがん化学療法にアロマテラピーを併用した場合と併用しなかった場合との間で有意な変化は認められなかった(分散分析クロモグラニンA:P=0.346、アミラーゼ:P=0.799、コルチゾール:P=0.912)。(4)抗がん剤投与患者におけるVASの推移抗がん剤投与患者に対し治療前、治療開始30分後、治療終了時でVSAによる主観的ストレス評価を行った。身体症状11項目中では、食欲、ほてり、眠気、だるさ、気力の5項目が、精神症状7項目中では疲労感、不安感、イライラ感、緊張感、憂うつ、神経過敏の6項目がそれぞれ解析可能であった。その結果アロマテラピーの有無による、主観的ストレス強度の推定周辺平均値に有意な変化の違いは認められなかった。(分散分析)。1抗がん剤の副作用に及ぼすストレスの影響とその関連性の解析引き続き、悪心・嘔吐の強弱、栄養指標を比較し、関連性を明らかにする予定であった。 | KAKENHI-PROJECT-22590146 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22590146 |
アロマテラピーによるがん化学療法における副作用の軽減効果 | しかし、実臨床でアミラーゼ、クロモグラニンA、コルチゾールを指標としたストレス軽減効果が確認できなかったことから、研究方法を変更した。すなわちがん患者では、アロマオイルの種類を患者本人が自由に選択したが、よりストレス緩和作用が期待できるとされるラベンダー、ローズマリーを加え、健常人を対象として比較を行った。被験者唾液中ストレスマーカーの経時的変化をラベンダー群、ローズマリー群、グレープフルーツ群、対照群で解析した結果、クロモグラニンAがP=0.281、アミラーゼがP=0.079といずれも有意差は認められなかった(分散分析)。同様にVASを用いた主観的ストレス評価では、15評価項目中「気力」でP=0.019と有意差が認められ、グレープフルーツ群による「気力」の改善効果が示唆された(分散分析)。しかし、その他の項目では有意差は認められなかった。以上より、アロマオイルの種類を変更しても明らかなストレス軽減効果は認められなかった。2アロマテラピーを用いたストレス緩和によるテーラーメイド治療法の提案がん患者でアミラーゼ、クロモグラニンA、コルチゾールを指標としたストレス軽減効果が確認できなかったことから、ストレスマーカーを見直し、IgAを新たに組み込み、コルチゾールは男性のみの測定とした。抗がん剤投与患者に対するアロマテラピーは治療当日のみの実施であり、十分なストレス緩和効果が得られなかった可能性を考え、健常人を対象に長期間での有用性を検討した。6週間ラベンダーオイルを使用しストレス強度に及ぼすアロマテラピーの影響について検討したが、十分なストレス軽減効果を示すデータを得ることは出来なかった。本件は現在も試験進行中であり、今後詳細な解析を行う。抗がん剤投与患者に対しては、点滴開始前に5種類の香りから最も心地よいと感じたアロマオイルを選択させていたにも関わらず、VASの変動にアロマテラピーの効果が認めらなかったことは予想外の結果であった。クロモグラニンAは、アロマテラピーによるストレス軽減効果を評価する上で有用な唾液中ストレスマーカーであると考えられた。しかし、抗がん剤投与患者では有意なストレス軽減効果を確認できず、その理由は不明である。また、アミラーゼは簡便に測定できることから、臨床現場で利用しやすいストレスマーカーではあるものの、ストレス軽減効果を判定するのに適しているとは確認できなかった。24年度が最終年度であるため、記入しない。本研究では、におい刺激に敏感な抗がん剤投与患者に対する悪影響をできるだけ回避する目的から、柑橘系アロマオイルを選択した。しかし、アロマオイルの効能を優先させ、アロマテラピーを実施することで、ストレス軽減効果が発現する可能性がある。また、アロマオイルには、皮膚からの吸収や、吸入による鼻粘膜や肺からの吸収により効果が発揮されるとの報告もあることから、より積極的な投与方法への変更も必要である。そこで、今後は患者数を増やし、健常人ボランティアで確認されたクロモグラニンAのストレスマーカーとしての有用性に着目し客観的評価を行い、アロマテラピーのストレス軽減効果に対する有用性を明らかにする予定である。 | KAKENHI-PROJECT-22590146 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22590146 |
吹送流の新しいパラダイム-強風下吹送流-に向けた海面バースト層の実証とモデル化 | 本研究は,バースト層を伴う強風下吹送流の実態の解明,さらにそのモデル化により,新しいパラダイム-強風下吹送流-を提示しようとしたものである.具体的には実測結果に基づいてバースト層モデルを構築し,これを新たに開発した沿岸流動モデルCCMに組込んで波浪モデルSWANと結合させ,気象場をメソスケール気象モデルMM5で与える強風下吹送流の計算手法を確立した.さらに,風洞水槽実験結果および現地観測結果との比較によって,その適用性を明らかにし,強風下吹送流が新しいパラダイムとなることを提示した.本研究による主要な成果を以下に列記する.1)バースト層を含めた強風下吹送流の鉛直構造の解明とモデル化非対数則層であるバースト層とその下の対数則層それぞれに対して適合する水平平均流速やレイノルズ応力などの鉛直分布モデルを導き,強風下吹送流の波谷面下の乱流場を明らかにした.2)強風下吹送流を特徴付けるバースト層の実態の解明強風下吹送流のベキ則層と砕波に起因する強い乱流エネルギーを伴うバースト層が共に有義波高にほぼ相当する厚さを持ち,両者が一致することを明らかにした.3)バースト層の乱流構造と風波砕波の撹乱作用のモデル化バースト層の乱流構造を支配する風波砕波の撹乱作用を渦粘性係数によって評価するため,k-ε方程式に砕波による乱流エネルギー生成および散逸項を付加し,これに実測値を与える逆問題として解く」とにより,生成および散逸項に含まれる未知定数を決定してそれらの定式化を行った.4)風波砕波の駆動・撹乱作用を取り込んだバースト層モデルの開発砕波応力項,乱流エネルギー生成項および散逸項の最適化を実測データによって行い,砕波による駆動・撹乱作用を取り込んだバースト層モデルを構築した.5)外洋・内湾連続型の沿岸流動モデルCCMの開発気象場と流動場の間にバースト層を考えると同時に,表層の鉛直格子間隔を水深に依らず一定となる計算法を新たに開発することによって,水深が1000mを超える外洋から水深が数mの内湾までの強風下吹送流を連続的に精度良く計算できることを示した.6)バースト層モデルを組込んだCCM, MM5およびSWANと結合させた強風下吹送流モデルの開発と実海域への適用性の検証バースト層モデルを組み込んだ強風下流動モデルの実海域への適用性を検証するため,そのときの気象場をMM5,波浪場をSWAN,吹送流場をバースト層モデルを組み込んだCCMによってそれぞれ計算しながら結合させ,現地観測データとの比較によって強風下吹送流の鉛直分布が正しく再現できることを実証した.本研究は,バースト層を伴う強風下吹送流の実態の解明,さらにそのモデル化により,新しいパラダイム-強風下吹送流-を提示しようとしたものである.具体的には実測結果に基づいてバースト層モデルを構築し,これを新たに開発した沿岸流動モデルCCMに組込んで波浪モデルSWANと結合させ,気象場をメソスケール気象モデルMM5で与える強風下吹送流の計算手法を確立した.さらに,風洞水槽実験結果および現地観測結果との比較によって,その適用性を明らかにし,強風下吹送流が新しいパラダイムとなることを提示した.本研究による主要な成果を以下に列記する.1)バースト層を含めた強風下吹送流の鉛直構造の解明とモデル化非対数則層であるバースト層とその下の対数則層それぞれに対して適合する水平平均流速やレイノルズ応力などの鉛直分布モデルを導き,強風下吹送流の波谷面下の乱流場を明らかにした.2)強風下吹送流を特徴付けるバースト層の実態の解明強風下吹送流のベキ則層と砕波に起因する強い乱流エネルギーを伴うバースト層が共に有義波高にほぼ相当する厚さを持ち,両者が一致することを明らかにした.3)バースト層の乱流構造と風波砕波の撹乱作用のモデル化バースト層の乱流構造を支配する風波砕波の撹乱作用を渦粘性係数によって評価するため,k-ε方程式に砕波による乱流エネルギー生成および散逸項を付加し,これに実測値を与える逆問題として解く」とにより,生成および散逸項に含まれる未知定数を決定してそれらの定式化を行った.4)風波砕波の駆動・撹乱作用を取り込んだバースト層モデルの開発砕波応力項,乱流エネルギー生成項および散逸項の最適化を実測データによって行い,砕波による駆動・撹乱作用を取り込んだバースト層モデルを構築した.5)外洋・内湾連続型の沿岸流動モデルCCMの開発気象場と流動場の間にバースト層を考えると同時に,表層の鉛直格子間隔を水深に依らず一定となる計算法を新たに開発することによって,水深が1000mを超える外洋から水深が数mの内湾までの強風下吹送流を連続的に精度良く計算できることを示した.6)バースト層モデルを組込んだCCM, MM5およびSWANと結合させた強風下吹送流モデルの開発と実海域への適用性の検証バースト層モデルを組み込んだ強風下流動モデルの実海域への適用性を検証するため,そのときの気象場をMM5,波浪場をSWAN,吹送流場をバースト層モデルを組み込んだCCMによってそれぞれ計算しながら結合させ,現地観測データとの比較によって強風下吹送流の鉛直分布が正しく再現できることを実証した. | KAKENHI-PROJECT-16360243 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16360243 |
吹送流の新しいパラダイム-強風下吹送流-に向けた海面バースト層の実証とモデル化 | 本研究は,バースト層を伴う強風下吹送流の実証と実態の解明,さらにそのモデル化により,新しいパラダイム-強風下吹送流-を提示しようというものである.本年度の主要な成果を以下に列記する.1.海面バースト層の実証観測京都大学防災研究所大潟波浪観測所の観測用桟橋先端にXバンドレーダーを設置し,海面からのレーダエコーの連続画像より波形スペクトルおよび表面流速を各種気象量とともに計測し,台風時に相当する風速20m/s超の強風下での表層流速のデータを取得した.2.バースト層を含めた強風下吹送流の鉛直構造の解明とモデル化二重床風洞水槽実験により,非対数則層であるバースト層とその下の対数則層それぞれに対して適合する水平平均流速やレイノルズ応力などの鉛直分布モデルを導き,強風下吹送流の波谷面下の乱流場を明らかにした.3.バースト層を含む海洋表層における乱流構造の解明実海域海水流動モデルに各種乱流モデルを組込み込んだ計算を行い,その結果を観測結果と比較することにより,強風下吹送流に対してはMellor-Yamada2.5次モデルを初めとする従来モデルは表面流速のみならず水温の鉛直分布の再現においても不十分であり,バースト層モデルが必須となることを明らかにした.4.強風下吹送流を特徴付けるバースト層の実態の解明強風下吹送流のベキ則層と砕波に起因する強い乱流エネルギーを伴うバースト層が共に有義波高にほぼ相当する厚さを持つことから,バースト層が砕波に起因する高周波乱流成分に依って生成されるベキ則層に一致することを明らかにした.5.バースト層における吹送流の駆動力としての砕波応力の鉛直分布モデルレイノルズ方程式に平均流速の実測値を与えて逆問題として解き,バースト層における吹送流駆動作用を担う風波砕波応力項の鉛直分布モデルを導くことに成功した.本研究は,バースト層を伴う強風下吹送流の実態の解明,さらにそのモデル化により,新しいパラダイム-強風下吹送流-を提示しようとしたものである.このため,前年度の結果に基づいてバースト層モデルを構築し,これを新たに開発する沿岸流動モデルCCMに組込んで波浪モデルSWANと結合させ,気象場をメソスケール気象モデルMM5で与える強風下吹送流の計算手法を確立した.さらに,風洞水槽実験結果および現地観測結果との比較によって,その適用性を明らかにし,強風下吹送流が新しいパラダイムとなることを提示した.1)バースト層の乱流構造と風波砕波の撹乱作用のモデル化バースト層の乱流構造を支配する風波砕波の撹乱作用を渦粘性係数によって評価するため,k-ε方程式に砕波による乱流エネルギー生成および散逸項を付加し,これに実測値を与える逆問題として解くことにより,生成および散逸項に含まれる未知定数を決定してそれらの定式化を行った.2)風波砕波の駆動・撹乱作用を取り込んだバースト層モデルの開発砕波応力項,乱流エネルギー生成項および散逸項の最適化を実測データによって行い,砕波による駆動・撹乱作用を取り込んだバースト層モデルを構築した.3)外洋・内湾連続型の沿岸流動モデルCCMの開発気象場と流動場の間にバースト層を考えると同時に,表層の鉛直格子間隔を水深に依らず一定となる計算法を新たに開発することによって,水深が1000mを超える外洋から水深が数mの内湾まで精度良く計算できることを示した.4)バースト層モデルを組込んだCCM, MM5およびSWANと結合させた強風下吹送流モデルの開発と実海域への適用性の検証バースト層モデルを組み込んだ強風下流動モデルの実海域への適用性を検証するため,そのときの気象場をMM5,波浪場をSWAN,吹送流場をバースト層モデルを組み込んだCCMによってそれぞれ計算しながら結合させ,現地観測データを用いて比較・検証を行った. | KAKENHI-PROJECT-16360243 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16360243 |
クロマチンを介した転写因子による転写調節機構のin vitroの解析 | 近年、転写調節因子の中に、SWI/SNIF複合体のようにクロマチンの構造変化に関与するものや、p300/CBPあるいはRbp3pのようにヒストンのアセチル化および脱アセチル化の活性を有している因子が見つかってきた。これらにより転写調節機構解明に向けた転写因子からの研究と遺伝子のクロマチン構造からの研究がまさに交差し合うようになった。私はin vitroでクロマチン鋳型を用いて転写活性とクロマチン構造を同時に解析することが可能な2つのポジショニングしたヌクレオソームからなる極めて単純なdinucleosomeの系を用いて、以下の3点についてクロマチンを介した遺伝子の転写調節機構の研究に取り組んだ。1、アセチル化の程度の異なるヒストンをHeLa細胞から調整し、dinucleosomeを再構成して構造比較を5つの方法(2次元アクリルアミドゲルを用いたヌクレオソーム移動性解析、ヌクレアーゼ消化速度によるヌクレオソーム安定性解析、ヌクレオソームポジション解析、hydroxylradical footprinting、アガロースゲルを用いたリンカーヒストンの結合解析)で行った。その結果アセチル化による構造の変化は何も検出されなかった。しかしXenopus oocyte核抽出液を用いたin vitroの転写では、アセチル化により5S遺伝子の転写が活性化された。2、ビオチン標識したオリゴプローブを用いてPCRでDNA断片を増幅し、non-RIのdinucleosomeを作製、原子間力顕微鏡によるdinucleosomeの構造解析を行った。3、dinuclelsomeの一方の5S遺伝子のプロモーターにSP6プロモーターを挿入して5S遺伝子のプロモーターを破壊した。これにより、2種類の異なるRNA polymeraseで転写される遺伝子を1つずつ含む新しいDNA鋳型を作製した。近年、転写調節因子の中に、SWI/SNIF複合体のようにクロマチンの構造変化に関与するものや、p300/CBPあるいはRbp3pのようにヒストンのアセチル化および脱アセチル化の活性を有している因子が見つかってきた。これらにより転写調節機構解明に向けた転写因子からの研究と遺伝子のクロマチン構造からの研究がまさに交差し合うようになった。私はin vitroでクロマチン鋳型を用いて転写活性とクロマチン構造を同時に解析することが可能な2つのポジショニングしたヌクレオソームからなる極めて単純なdinucleosomeの系を用いて、以下の3点についてクロマチンを介した遺伝子の転写調節機構の研究に取り組んだ。1、アセチル化の程度の異なるヒストンをHeLa細胞から調整し、dinucleosomeを再構成して構造比較を5つの方法(2次元アクリルアミドゲルを用いたヌクレオソーム移動性解析、ヌクレアーゼ消化速度によるヌクレオソーム安定性解析、ヌクレオソームポジション解析、hydroxylradical footprinting、アガロースゲルを用いたリンカーヒストンの結合解析)で行った。その結果アセチル化による構造の変化は何も検出されなかった。しかしXenopus oocyte核抽出液を用いたin vitroの転写では、アセチル化により5S遺伝子の転写が活性化された。2、ビオチン標識したオリゴプローブを用いてPCRでDNA断片を増幅し、non-RIのdinucleosomeを作製、原子間力顕微鏡によるdinucleosomeの構造解析を行った。3、dinuclelsomeの一方の5S遺伝子のプロモーターにSP6プロモーターを挿入して5S遺伝子のプロモーターを破壊した。これにより、2種類の異なるRNA polymeraseで転写される遺伝子を1つずつ含む新しいDNA鋳型を作製した。 | KAKENHI-PROJECT-09277220 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09277220 |
カラムスイッチングHPLCによるアナンダミドおよび類縁体の高感度定量法の開発 | 昨年度は、HPLCによるラット脳内アナンダミドの高感度定量法の開発を行った。今年度は、アナンダミドの蛍光ラベル化に使用する蛍光試薬について再度検討した。以前から使用していたDBD-COClと同様にベンゾフラザン骨格を持つ蛍光試薬としてNBD-COClがある。この蛍光試薬も強い蛍光を生じることが知られている。そこで、これらの蛍光試薬で、アナンダミドを蛍光ラベル化し、その得られる検出感度について比較した。クロマトグラム上に得られたアナンダミドの蛍光ピークについて、FUMI理論を用いて解析した。その結果、DBD-COClを使用した場合の検出限界は2.39fmol、NBD-COClを使用した場合は、16.5fmolと算出された。したがって、DBD-COClを使用した方が、その検出限界が低く、高感度検出できることが明らかとなった。一方、最近になりアナンダミドは、血液中に放出されると、LPSショックの早期メディエーターになりうる可能性が示唆されており、血液中アナンダミドの定量やその除去法の開発が望まれている。そこで、本法が血液中に放出されたアナンダミドの定量、ならびにその除去法の開発研究に利用できるか否かについて、血液を用いて予備検討した。血液にアナンダミドを0-30,000pg/mL(最終濃度)となるように加え、アナンダミド分解酵素の阻害剤であるPhenylmethylsulfonyl fluoride(PMSF)存在下(0.2mM)で、37°Cで2時間インキュベートした。これらの試料を本法で測定した結果、良好な検量線を得ることができた(相関係数0.992)。したがって、本法はこうした研究にも応用できると考えられる。このように、本研究により開発されたカラムスイッチングHPLCは、生体内で生じるアナンダミドの分析研究に広く利用されていくことが期待される。本年度は、HPLCによるラット脳内アナンダミドの高感度定量法の開発を行なった。微量である脳内アナンダミドの検出には、高感度検出法が必要であるため、アナンダミドの水酸基を蛍光試薬DBD-COC1で誘導体化し、蛍光で検出することにした。アナンダミドの標準品を用いた実験では、検出限界が15fmolで高感度検出できたが、生体内には、DBD-COC1と反応する多くの内在性物質があるため、これらを効率よく除去しておく必要があった。それで、本実験に適切な前処理法を検討した。SD系雄性ラットの全脳をアセトン中でホモジナイズし、これにトルエンを加えて液-液抽出を行ない、この有機層を濃縮した。次いで、この残査を個相抽出(アミノプロピルシリカ)カートリッジによって精製し、アナンダミドを多く含む画方のみをDBD-COC1によって、誘導体化した。さらに、試薬の分解物などの來雑物を除くために、固相抽出(ODS)カートリッジで精製後、ODSカラムを接着したHPLCでの分離分析を試みたが、來雑ピークがアナンダミドの定量を妨害していた。そこで、異なる樹脂を充填した2種類のカラムを、六方バルブで接続したカラムスイッチングHPLCでの分離を試みた結果、ラット脳内からアナンダミドのピークを検出することができた(1.65pmol/g)。日内、日間変動は6.5%以内で、検出感度は約10fmolであり、良好であった。アナンダミド様作用の発現が報告されている加水分酵素阻害剤PMSFとアナンダミドの併用投与では、コントロールに比べて約16倍の上昇が見られた。また、PMSF単独投与の場合も、投与後60分までの経時的な増加が見られ、薬理効果との関連に興味が持たれた。現在、マイクロダイアリシスを用いて、その分泌機作を調べている。昨年度は、HPLCによるラット脳内アナンダミドの高感度定量法の開発を行った。今年度は、アナンダミドの蛍光ラベル化に使用する蛍光試薬について再度検討した。以前から使用していたDBD-COClと同様にベンゾフラザン骨格を持つ蛍光試薬としてNBD-COClがある。この蛍光試薬も強い蛍光を生じることが知られている。そこで、これらの蛍光試薬で、アナンダミドを蛍光ラベル化し、その得られる検出感度について比較した。クロマトグラム上に得られたアナンダミドの蛍光ピークについて、FUMI理論を用いて解析した。その結果、DBD-COClを使用した場合の検出限界は2.39fmol、NBD-COClを使用した場合は、16.5fmolと算出された。したがって、DBD-COClを使用した方が、その検出限界が低く、高感度検出できることが明らかとなった。一方、最近になりアナンダミドは、血液中に放出されると、LPSショックの早期メディエーターになりうる可能性が示唆されており、血液中アナンダミドの定量やその除去法の開発が望まれている。そこで、本法が血液中に放出されたアナンダミドの定量、ならびにその除去法の開発研究に利用できるか否かについて、血液を用いて予備検討した。血液にアナンダミドを0-30,000pg/mL(最終濃度)となるように加え、アナンダミド分解酵素の阻害剤であるPhenylmethylsulfonyl fluoride(PMSF)存在下(0.2mM)で、37°Cで2時間インキュベートした。これらの試料を本法で測定した結果、良好な検量線を得ることができた(相関係数0.992)。 | KAKENHI-PROJECT-11771409 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11771409 |
カラムスイッチングHPLCによるアナンダミドおよび類縁体の高感度定量法の開発 | したがって、本法はこうした研究にも応用できると考えられる。このように、本研究により開発されたカラムスイッチングHPLCは、生体内で生じるアナンダミドの分析研究に広く利用されていくことが期待される。 | KAKENHI-PROJECT-11771409 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11771409 |
消費者による協同組合運動の大規模化・広域化に関する日・英比較研究 | 現在急速に事業の統合・広域化を進める消費者生活協同組合がいかなる課題を抱えているか、日本とイギリスの生協について現地調査と理論的考察を進めることにより、「非営利・協同」の事業体として独自の存在意義を訴えることに成功することができたならば、こうした統合化は流通業界におけるユニークで強力な事業体に生活協同組合を発展させ得るものであることを確認することができた。しかしそれは同時に、組合員の「参画型民主主義」という生協本来の価値を揺るがしかねないものでもあって、その解決のためには「ステークホルダー民主主義」のモデルを模索し、確立することが、今何よりももとめられていることを論じ、考察した。現在急速に事業の統合・広域化を進める消費者生活協同組合がいかなる課題を抱えているか、日本とイギリスの生協について現地調査と理論的考察を進めることにより、「非営利・協同」の事業体として独自の存在意義を訴えることに成功することができたならば、こうした統合化は流通業界におけるユニークで強力な事業体に生活協同組合を発展させ得るものであることを確認することができた。しかしそれは同時に、組合員の「参画型民主主義」という生協本来の価値を揺るがしかねないものでもあって、その解決のためには「ステークホルダー民主主義」のモデルを模索し、確立することが、今何よりももとめられていることを論じ、考察した。2007年、英国生協界第2位のユナイテッド・コープと第1位のコーペラティブ・グループが合併し、事業高において全生協の85%を占める圧倒的な巨大生協が誕生した。2009年度の本研究では、それに伴う組織の改革作業、組合員制度や地方組織のあり方、小売事業の進展等について、英国現地に赴いての関係者へのインタビュー調査を2009年6月、2010年2月の2回、実施した。また、そうした全国統合に至るまでの英国生協の合併・吸収過程を調査するため、英国生協の単協史等の資料収集を国内及び英国現地で行った。さらに先進国の消費者生活協同組合の中では圧倒的に高い国内小売シェアを誇るスイスの二大生協コープスイスとミグロについて、その事業的成功の理由はどこにあるのか、日・英両国の生協運動を考察するにあたっての参考事例として、店舗の視察と資料の収集を2009年5月末に行った。これらの調査によって、英国生協運動の全国統合は、社会的責任経営の遂行や倫理的ビジネスの展開と一体となって実施されたものであり、それが成功の大きな要因となっていること、事業連合化を進める日本の生協運動にとっても、こうした側面が教訓となり得ること、を確認することが出来た。日本とイギリスにおける生活協同組合の歴史と現状について、大規模化と連合化という側面を中心に調査・研究・考察を行い、2010年度は以下のような成果を得た。(1)そうした大規模化と連合化=二重権力化が、協同組合における民主的なガバナンスに対していかなる影響を与えるのかについて、口頭報告を行うとともに、論考を発表した。大規模化した組織においては、小規模組織に比べて民主的な意見の集約や意思決定を維持することが困難となることはいうまでもないことであるが、生活協同組合の事業連合化において端的に示されているように、二次的な組織があらたにつくられ、実質的にはそこで事業が遂行されるようになると、協同組合民主主義はそれ以上の困難に直面する。(2)とくに大阪に焦点をあてて、明治以来の生活協同組合運動史を、組合員民主主義や連合会の盛衰を視野に入れてまとめる論考を発表した。生協不毛の地といわれてきた大阪においても、消費者による注目すべき協同組合運動が展開されており、とくに行政との関係や連合会の結成について、ユニークな史実が見出された。日本とイギリスにおける生活協同組合の歴史と現状について、大規模化と連合化という側面を中心に調査・研究・考察を行うことが本研究のテーマであるが、研究最終年度である2011年度には、理論的研究と実地調査によって以下のような成果を得た。(1)大規模化と連合化=二重権力化が、協同組合における民主的なガバナンスに対して与える影響について、ステークホルダー協同組合論の立場から理論的な検討作業を行い、その成果をいくつかの論稿にまとめ、投稿した。そのなかでは、現代の大規模化した協同組合は組合員という中心的ステークホルダーのガバナンスへの参画が物理的に困難となっているという問題を抱えるだけでなく、その連合組織や子会社組織において、ガバナンスへの組合員参加の道がほとんど閉ざされた構造をつくりだしていることを論じている。(2)そしてそれはガバナンスのみならず、組合員の参画型事業という点でも問題を孕んでいることを、内外の生協についての現地調査に基づき、指摘した。協同組合は本来、事業を通じて運動の目標を追求しようという組織であり、たとえば現在ヨーロッパ諸国において展開されている倫理的消費の運動は、生活協同組合にとってまさに真骨頂ともいえる事業活動である。大規模連合化時代の生協がいかにこうした事業に取り組むかを、ステークホルダー論と絡めて論じることができた。 | KAKENHI-PROJECT-21500721 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21500721 |
トカマクプラズマにおける2次元輸送現象の解析 | 1.トカマクプラズマにおける2次元輸送現象を解析するため,新古典輸送理論の2次元定式化を行った.従来の新古典輸送理論では,磁気面平均を行うことによって径方向1次元の輸送方程式が導かれているが,磁気面平均を行うことなく,ポロイダル角依存性を残して粒子束および熱流束を評価した.まずPfirsch-Schluter領域を考え,軸対称プラズマにおける二流体方程式から出発し,磁力線方向の力の釣り合いからポロイダル方向の流束を求め,さらにトロイダル方向の力の釣り合いから径方向の流束を求めた.これらの流束を連続の方程式およびエネルギー方程式に代入することにより,2次元の輸送方程式系を導いた.2.得られた2次元輸送方程式系をフーリエ展開することにより,低次のフーリエ成分に対する連立方程式系を導き,0次成分が従来の新古典輸送理論と一致することを確かめると共に,物理量のポロイダル角依存性を評価した.さらに差分法を用いて2次元輸送方程式を数値的に解く計算コード(TASK/T2)を開発し,定量的解析を試みた.3.周辺プラズマにおける2次元輸送解析を行うため,各粒子種の密度・温度に対する2次元流体コード(TASK/TF)を開発した.磁気流体平衡コードから得られた磁気面座標を用いて要素分割を行い,有限要素法を用いて時間発展を解く.陰解法を用いて,数値的に安定に計算できることを確かめた.4.設備備品費で購入した4台の計算機を1Gbpsの高速ネットワークで接続し,MPIメッセージ交換ライブラリを用いて,2次元解析コードの並列高速化を試みた,行列方程式の直接解法を並列化するアルゴリズムを新たに開発し,CPU台数にほぼ比例する計算速度が得られた.1.トカマクプラズマにおける2次元輸送現象を解析するため,新古典輸送理論の2次元定式化を行った.従来の新古典輸送理論では,磁気面平均を行うことによって径方向1次元の輸送方程式が導かれているが,磁気面平均を行うことなく,ポロイダル角依存性を残して粒子束および熱流束を評価した.まずPfirsch-Schluter領域を考え,軸対称プラズマにおける二流体方程式から出発し,磁力線方向の力の釣り合いからポロイダル方向の流束を求め,さらにトロイダル方向の力の釣り合いから径方向の流束を求めた.これらの流束を連続の方程式およびエネルギー方程式に代入することにより,2次元の輸送方程式系を導いた.2.得られた2次元輸送方程式系をフーリエ展開することにより,低次のフーリエ成分に対する連立方程式系を導き,0次成分が従来の新古典輸送理論と一致することを確かめると共に,物理量のポロイダル角依存性を評価した.さらに差分法を用いて2次元輸送方程式を数値的に解く計算コード(TASK/T2)を開発し,定量的解析を試みた.3.周辺プラズマにおける2次元輸送解析を行うため,各粒子種の密度・温度に対する2次元流体コード(TASK/TF)を開発した.磁気流体平衡コードから得られた磁気面座標を用いて要素分割を行い,有限要素法を用いて時間発展を解く.陰解法を用いて,数値的に安定に計算できることを確かめた.4.設備備品費で購入した4台の計算機を1Gbpsの高速ネットワークで接続し,MPIメッセージ交換ライブラリを用いて,2次元解析コードの並列高速化を試みた,行列方程式の直接解法を並列化するアルゴリズムを新たに開発し,CPU台数にほぼ比例する計算速度が得られた.1.トカマクプラズマにおける2次元輸送現象を解析するため,輸送方程式の2次元定式化を行った.流体方程式から出発し,密度,粒子束,温度,熱流束に磁気面座標の体積要素あるいは面積要素を乗じた物理量を変数にとり,ポロイダル方向にフーリエ展開を行う.各変数の時間発展方程式である連続の方程式,運動方程式,エネルギー方程式,熱流束方程式についてもそれぞれフーリエ展開し,連立方程式系を導いた.力の釣り合いを仮定し,0次フーリエ成分のみを考える場合には,通常の新古典輸送が導かれることを確かめた.2.衝突の少ない高温プラズマでは磁力線方向の輸送が非常に速いので,拡散係数を用いた流体的記述は必ずしも妥当ではない.ボルツマン方程式から出発して積分方程式による記述を導き,拡散方程式による記述との比較を試みた.3.周辺プラズマにおける2次元輸送解析を行うため,各粒子種の密度,速度,温度に対する2次元流体コードを開発した.磁気流体平衡コードの出力を用いて磁気面に沿った要素分割を行い,有限要素法を用いて流体方程式の時間発展を解く.陰解法を用いることによって,比較的長い時間ステップに対しても数値的に安定に計算できることを確かめた.4.設備備品費で購入した4台の計算機を1Gbpsの高速ネットワークで接続し,MPIメッセージ交換ライブラリを用いて,2次元解析コードの並列高速化を試みた.行列方程式の直接解法を並列化するアルゴリズムを新たに開発し,低次のフーリエ成分に対する計算では,CPU台数にほぼ比例する計算速度が得られた.1.トカマクプラズマにおける2次元輸送現象を解析するため,新古典輸送理論の2次元定式化を行った.従来の新古典輸送理論では,磁気面平均を行うことによって径方向1次元の輸送方程式が導かれているが,磁気面平均を行うことなく,ポロイダル角依存性を残して粒子束および熱流束を評価した. | KAKENHI-PROJECT-12680489 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12680489 |
トカマクプラズマにおける2次元輸送現象の解析 | まずPfirsh-Schluter領域を考え,軸対称プラズマにおける二流体方程式から出発し,磁力線方向の力の釣り合いからポロイダル方向の流束を求め,さらにトロイダル方向の力の釣り合いから径方向の流束を求めた.これらの流束を連続の方程式およびエネルギー方程式に代入することにより,2次元の輸送方程式系を導いた.2.得られた2次元輸送方程式系をフーリエ展開することにより,低次のフーリエ成分に対する連立方程式系を導き,0次成分が従来の新古典輸送理論と一致することを確かめると共に,物理量のポロイダル角依存性を評価した.さらに差分法を用いて2次元輸送方程式を数値的に解く計算コード(TASK/T2)を開発し,定量的解析を試みた.3.周辺プラズマにおける2次元輸送解析を行うため,各粒子種の密度・温度に対する2次元流体コード(TASK/TF)を開発した.磁気流体平衡コードから得られた磁気面座標を用いて要素分割を行い,有限要素法を用いて時間発展を解く.陰解法を用いて,数値的に安定に計算できることを確かめた.4.昨年度の設備備品費で購入した4台の計算機を用いて,2次元平衡・1次元輸送解析コード(TASK/EQ/TR)コードの並列高速化を試みた. | KAKENHI-PROJECT-12680489 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12680489 |
英、米、中、韓との比較を通した我が国の美術教育のカリキュラムに関する研究 | 我が国及び諸外国の美術教育に関する教育課程に関する諸資料を収集・整理するとともに、それぞれの特徴を比較し、その違いなどについて明らかにした。また、わが国の学習指導要領を英語、中国語、韓国語に翻訳し、国際学会において提示し、我が国の美術教育の構造について多くの意見を収集することを通して、我が国の美術教育に関する概念や教育課程の構造の特徴を相対的にとらえた。我が国及び諸外国の美術教育に関する教育課程に関する諸資料を収集・整理するとともに、それぞれの特徴を比較し、その違いなどについて明らかにした。また、わが国の学習指導要領を英語、中国語、韓国語に翻訳し、国際学会において提示し、我が国の美術教育の構造について多くの意見を収集することを通して、我が国の美術教育に関する概念や教育課程の構造の特徴を相対的にとらえた。本研究課題は、構造的に整理された諸外国の教育課程を我が国のものと比較、検討することによって、今後の美術教育のあり方を探るための手がかりを得ることを目的とする。比較、検討する対象は、構造的に整理されているとされるイギリスやアメリカ合衆国などの欧米の教育課程、及び、それまで欧米的であったが我が国の子どもの活動を重視する教育課程の影響を強く受けたとされる中国や韓国などの東アジアの教育課程である。これらの教育課程について調査し、詳細に比較、検討することによって、我が国の教育課程の子どもの主体的な活動を重視する姿勢を保ちつつ、教育課程の構造をより明確にするための方策の提示を試みる。今年度は、上記の目的を実現するための準備を進めた。年数回の研究会を開催し、教育課程に関する諸概念等について検討するとともに諸資料を収集・整理・分析した。具体的には、わが国及び諸外国の教育課程に関する諸資料を収集・整理するとともに、我が国の学習指導要領の外国語訳、諸外国の教育課程の日本語訳の作業を進めた(この作業については、来年度も引き続き行う)。また、これにかかわって、教育課程を構成する「目標」「内容」「方法」「評価」といった諸要素の概念について検討した。さらに、昭和22年以降の図画工作、美術、芸術(美術、工芸)の学習指導要領及び児童・生徒指導要録のデータベースを作成し、現行の学習指導要領にいたるまでの過程を様々な角度から検討し、我が国の学習指導要領の構成原理について検討した。本研究課題は、構造的に整理された諸外国の教育課程を我が国のものと比較、検討することによって、今後の美術教育のあり方を探るための手がかりを得ることを目的とする。比較、検討する対象は、構造的に整理されているとされるイギリスやアメリカ合衆国などの欧米の教育課程、及び、それまで欧米的であったが我が国の子どもの活動を重視する教育課程の影響を強く受けたとされる中国や韓国などの東アジアの教育課程である。これらの教育課程について調査し、詳細に比較、検討することによって、我が国の教育課程の子どもの主体的な活動を重視する姿勢を保ちつつ、教育課程の構造をより明確にするための方策の提示を試みる。19年度は、年数回の研究会を開催し、教育課程に関する諸概念等について検討するとともに諸資料を収集・整理・分析した。具体的には、昨年度に引き続き、わが国及び諸外国の教育課程に関する諸資料を収集・整理するとともに、それぞれの特徴を比較、検討し、その違いなどについて検討した。また、今年度は、我が国の学習指導要領の改訂が行われることが明らかであったため、中央教育審議会答申などの関連諸資料を分析し、新しい教育課程についての考え方やそれにかかわる概念の整理などを行った。なお、年度末には新しい学習指導要領が告示されたため、同時に英語、中国語、韓国語へ翻訳し、リーフレットを作成した。これによって得られる資料を基に20年度はさらに詳細に諸外国と我が国の教育課程を比較、検討する予定である。本研究課題は、構造的に整理された諸外国の教育課程を我が国のものと比較、検討することによって、今後の美術教育のあり方を探るための手がかりを得ることを目的とする。比較、検討する対象は、構造的に整理されているとされるイギリスやアメリカ合衆国などの欧米の教育課程、及び、それまで欧米的であったが我が国の子どもの活動を重視する教育課程の影響を強く受けたとされる中国や韓国などの東アジアの教育課程である。これらの教育課程について調査し、詳細に比較、検討することによって、我が国の教育課程の子どもの主体的な活動を重視する姿勢を保ちつつ、教育課程の構造をより明確にするための方策の提示を試みる。今年度は、2008年度に改訂された学習指導要領を英語、中国語、及び韓国語に翻訳したリーフレットを2008年の国際美術教育学会世界大会(InSEA)大阪大会において我が国及び諸外国の美術教育研究者及び関係者に配布し、我が国の学習指導要領のあり方について様々な意見等がを収集した。これをもとに、イギリス、アメリカ合衆国、中国、韓国の教育課程を構成する「目標」「内容」「方法」「評価」といった諸要素の概念とその相互関係を明らかにするとともに、我が国のものと比較・検討し、我が国の教育課程の特徴を相対的に浮かび上がらせた。 | KAKENHI-PROJECT-18530740 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18530740 |
諫早湾における海水流動の変化が有明海奥部海域の環境と生態系に及ぼす影響の評価 | 有明海奥部海域の海底の環境および生態系の調査を実施し、東側海域の泥底で泥分が減少し、西側海域の砂底で泥分が減少していることが判明した。このことは、有明海に1990年代まで存在していた東西方向の潮流の非対称性が崩れ、奥部海域の潮流速が均一化していることを示し、有明海に元来存在する赤潮の発生を抑制する潮流のメカニズムが衰退していることを示している。また、この現象には、諫早湾干拓地における潮受け堤防締め切りによって、上げ潮の諫早湾への侵入が抑制されたことが一因となっていることが演繹される。次の3つの課題について研究を進めた。1.諫早湾における海水流動の回復が有明海奥部における塩分成層の発達に及ぼす影響:諫早湾に建設された潮受け堤防の水門開放がH25年12月に予定されていたが、実現しなかった。そこで、水門が閉じた状態での諫早湾および有明海奥部における水質および海底環境の調査、底生生物群集に関する定量調査を毎月実施し、水質および海底環境、底生生態系に関する現状認識を継続した。2.諫早湾における海水流動の回復と有明海奥部における梅雨期後の成層継続期間の関係:有明海奥部では梅雨期に強い塩分成層が形成され、この成層が梅雨明け後も長期間持続すると底層への酸素供給が制限され続ける。その間に夏季の日射で水温が上昇すると海底堆積物からの酸素消費量が増加し、底層水は貧酸素化する。潮受け堤防の水門の開放は海水流動を回復させ、有明海奥部の塩分成層を早期に解消させる効果が期待される。しかしながら、水門が開放されなかったので、梅雨期終了直後から9月に、同海域での現状の調査を継続した。また、過去の調査例との比較より、潮受け堤防の水門が開放されなくても、その影響を評価できるコンピュータシュミレーションの方法を検討した。3.諫早湾における海水流動の回復が有明海奥部の塩分フロント形成と海底の環境および生態系に及ぼす影響梅雨期における大量の淡水流入による塩分成層の形成時に、諫早湾および有明海奥部で、水質、海底堆積物の採取ならびに底生生物の定量調査を実施した。これらの調査結果より同域における海水構造、海底堆積物の物理化学組成、底生生物群集の豊富さと種組成に関し、それぞれの分布パターンを把握し、相互関係を明らかにした。塩分成層形成時に発生する塩分フロントの場所は、海底堆積物の分布や棲息する底生生物の種組成が大きく変化する境界とも一致し、潮流の流向・流速も関与している関係を示す調査結果が蓄積された。本研究では、諫早湾および有明海奥部海域における水質、海底環境、ならびに底生生物群集の分布とその季節変動に関する精密な調査を実施してきた。それら調査で得られた多岐におよぶ結果をまとめることにより、現在の有明海奥部海域においては密度躍層が湾央部を横断し、さらに諫早湾湾口部を横断する線を境界として、海底環境が大きく変化することを見出した。その境界より湾奥側には有機物含量が高く嫌気的な泥底、湾央側には酸化的な砂底が分布し、さらにそれに対応して、湾奥側には種多様性の低い底生生物群集が、湾央側には種多様性の高い底生生物群集が分布している。また、湾奥側では塩分成層が発達しやすく、その表層では赤潮や底層では夏季に貧酸素水が頻発し、海水構造、海底環境、底生生物群集の群集構造が相互に密接に関連して、現状の環境と沿岸生態系が形成され、季節的な変動を重ねていることがわかった。さらに、このような境界線が1989年時点では有明海湾奥部を縦断していて、その境界より東側では砂底が、西側では泥底が分布していた。このことは、この境界より東側の海域は潮流の流速が速く、泥が堆積しにくい状態が発生していたことを示している。一方、境界線より西側は潮流の流速が弱く、泥が堆積しやすい海域であったことを示している。この境界線の変化は1990年代2000年代に発生し、現在の状態(有明海奥部および諫早湾奥部)は安定的に泥が堆積しやすい、潮流速が遅い、海水の成層構造が発達しやすい、つまり赤潮や貧酸素水が発生しやすい状態が継続している。有明海湾奥部における密度躍層の発達については、調査船を用いた定点観測を通して、密度躍層の発達に伴って海底への懸濁粒子の沈降過程と沈降物の物理化学的特性が変化し、それに伴って海底生態系への影響も変化することがわかった。2015年8月10日、毎年有明海奥部海域で貧酸素水がもっとも発達する夏季の小潮期に、同海域を縦断する定期調査地点10地点で精密な水質調査を実施した。また、他の環境要因分布調査地点でも貧酸素水の発生の有無を確認した。その結果、海底直上水の溶存酸素濃度に関して、貧酸素水発生の基準とする3.0 mg/Lを下回る地点がなく、底生生物の生息に制限を及ぼさない溶存酸素条件が保たれていた。近年の傾向として、梅雨期が終了した7月中旬以降に高温・晴天の日が続くことが少なく、天候が不安定で、しかも台風が接近して強風・強い波浪が発生し、梅雨期の降水で生じた塩分成層が崩壊し、底層に表層の植物プランクトンが生産した酸素が供給される状況が発生している。そのため、底層の貧酸素化が抑制され、海底で嫌気的な環境が発生せず、底生生物群集の密度も比較的高い状態に保たれていた。 | KAKENHI-PROJECT-25281031 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25281031 |
諫早湾における海水流動の変化が有明海奥部海域の環境と生態系に及ぼす影響の評価 | 2015年度には、有明海西部の内湾である諫早湾の9調査定点で、4月、8月、11月に底生生物の定量調査を実施した。上述のような夏季の海洋条件により、8月でも全調査地点で密度が2509,950個体/m2に及ぶ底生生物が生息していた。ただし、優占種は海底環境が不安定化した泥底に卓越することの多いシズクガイおよび数種の小型甲殻類(端脚目)に限定され、群集の種多様性は乏しかった。安定した環境に生息する多年生の長寿命・大型の底生生物はほとんど採集されなかった。これらの結果は、今年は夏季の貧酸素水発生が天候条件によって一時的に抑制され、一見底生生物群集が回復したかのような状況が見られたが、有明海奥部海域にて夏季に貧酸素水が発生するようになった2000年代以前のような種多様性の高い、大型生物が優占するような状況は発生していなかった。このような状態に回復するためには、少なくとも数年以上にわたる安定した海底環境の形成が必要であることがわかる。有明海奥部海域の海底の環境および生態系の調査を実施し、東側海域の泥底で泥分が減少し、西側海域の砂底で泥分が減少していることが判明した。このことは、有明海に1990年代まで存在していた東西方向の潮流の非対称性が崩れ、奥部海域の潮流速が均一化していることを示し、有明海に元来存在する赤潮の発生を抑制する潮流のメカニズムが衰退していることを示している。また、この現象には、諫早湾干拓地における潮受け堤防締め切りによって、上げ潮の諫早湾への侵入が抑制されたことが一因となっていることが演繹される。研究テーマとしては、諫早湾干拓地の潮受け堤防の水門が研究期間中に開門され、締め切り以前の諫早湾における海水流動がある程度回復する状態を想定して、研究計画を立案していた。しかしながら、水門は締め切られたままの状態が続いており、その開門が諫早湾および有明海奥部海域における海水構造や海底環境、海底生態系にどのような変化をもたらすかについては、調査によって結果を得ることができない状態が続いている。しかしながら、諫早湾および有明海奥部海域における現状の海水構造、海底環境、ならびに海底生態系に関する調査を精密に行う一方で、過去の文献に記載された海底環境に関する調査結果と比較することにより、1980年代末から現在における海底環境の変遷が明確となり、そのことから想定される海水構造の変化や底生生態系の変化を推定することが可能となった。また、1990年代後半2000年代にかけて、このようなレジームシフトとも言える大きな変化が発生していることが明らかとなり、諫早湾潮受け堤防が締め切られた1997年と時期的に符合することが多く、両者の因果関係が強く示唆されることが判明した。27年度が最終年度であるため、記入しない。海洋生態学諫早湾干拓地の潮受け堤防の水門は2015年度中に開門される見通しはまったく立っていない。しかしながら、その締め切った状態が続いていることによって進行していると想定される諫早湾および有明海奥部海域の海底、海水構造、ならびに海底生態系の変化は存在する。この変化がさらに顕著に捉えられる可能性は高く、特に、夏季の貧酸素水発生時には、海水構造、海底環境、海底生態系の違いがもっとも顕著になることが予想される。そこで、夏季に諫早湾および有明海奥部海域において詳細な調査を継続することを計画している。本研究は、以下の3つの具体的な課題についての調査、研究を進めることを計画していた。1.諫早湾における海水流動の回復が有明海奥部海域における塩分成層の発達に及ぼす影響2.諫早湾における海水流動の回復と有明海奥部海域における梅雨期後の成層継続期間の関係 | KAKENHI-PROJECT-25281031 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25281031 |
遺伝子高次構造を標的とした複合化機能性中分子の創製 | 近年、核酸は配列情報のみならず、形成される高次構造が遺伝子発現において重要な機能を持つことが明らかとなってきている。特に種々の機能性RNAではその機能を担うモチーフとして、様々なRNAの高次構造が重要であることがわかってきている。しかし現在これらの構造に結合するプローブはほとんど報告されておらず、その機能解明が進んでいない。これらの高次構造に結合しアルキル化反応を誘起するプローブはこれらの構造の役割を明らかにするのみならず、共有結合による強固な結合により高次構造を認識する蛋白質の結合を効率的に阻害できると期待される。本申請研究では核酸高次構造を選択的にアルキル化する中分子として標的核酸に近接し反応を誘起する部位及び標的核酸構造を認識する部位という2つの異なる機能を合わせ持つハイブリッド型核酸標的プローブの開発を目指している。細胞内で標的高次構造を効率的にアルキル化するには、標的近傍でのみ反応性の高い活性種が発生することが必要とされる。H30年度は、種々のビニルキナゾリン安定前駆体を用い、高次構造に対して結合し活性化される構造について検索を行った。高次構造に結合する部位として、複数の高次構造に結合する分子としてアクリジンを用いた。ビニル基をメチルスルフィド基(SMe)、その酸化体(SOMe)、及びフェニルスルフィド基(SPh)を導入したアクリジン結合型ビニルキナゾリン安定前駆体を合成し、グアニン4重鎖DNA(G4DNA)に対するアルキル化について検討した。その結果、その反応性はSOMe>SPh>SMeであることがわかった。非常に興味深いことに、SPh体は水中で非常に安定であるにもかかわらず、G4DNAに対して高い反応性を示すことがわかった。さらにSPh体は他の高次構造であるT-Tミスマッチ、さらには塩基欠損部位を持つ2本鎖DNA内のチミンに対しても反応することがわかった。本研究では核酸高次構造をアルキル化する中分子プローブ開発を目指している。現在までに核酸の高次構造として、塩基欠損部位を持つ2本鎖DNA、T-Tミスマッチ構造を持つ2本鎖DNAさらには4本鎖DNAを標的とする効率的なアルキル化プローブの開発に成功した。さらに今年度は標的近傍でのみ反応性の高い活性種が発生する分子構造の構築に成功した。細胞内には様々な反応活性種が存在することから、今回得られた結果は、細胞内で機能するアルキル化プローブの開発を可能にするものであると考えている。さらに、標的化が難しい、RNAの高次構造に対して結合する分子を探索する方法論についても検討した。RNAの高次構造は非常に多様であることから、それぞれの高次構造に対して結合する分子を設計するのは非常に困難である。そこで今回、プローブが結合できるRNAの高次構造を検索する方法論についても検討した。多種類の高次構造を持つRNAライブラリーを用いて、既知のアクリジン誘導体を用いて検索したところ、非常に興味深いことに4本鎖RNAを取りうる配列が多く観測されることがわかった。この結果からこの方法論はプローブが結合する新たな結合RNA配列大規模解析技術構築に繋がると考えている。さらにこの方法論は従来の方法と異なり、PCRを必要としないため、アルキル化プローブが結合するRNAの高次構造を検索することも可能である。その予備的検討として、前述したアクリジンを持つアルキル化プローブを用いて4本鎖RNAに対するアルキル化について検討した。その結果、アルキル化ではなく、RNAが切断されたバンドが観測された。本プローブは別のRNA高次構造に対してはアルキル化が進行することが確認されている。これらの結果から、このプローブは4本鎖RNAをアルキル化することで、アクリジン誘導体が近接する部分のリン酸基を切断したものと考えている。今後は下記について検討する。1)G-4本鎖構造をアルキル化する中分子プローブの開発:昨年度までにG-カルテット構造内で効率的に活性化されるアルキル化中分子プローブを開発した。さらに4本鎖DNAに選択的に結合する結合分子であるテロメスタチン誘導体(共同研究者である長澤和夫博士にご提供頂いた。)をアルキル化部位に結合させたプローブが、4本鎖DNAを選択的にアルキル化することも見出した。今年度は、種々のテロメスタチン誘導体と反応部位を結合させたプローブを合成し、その反応性について検討する。特に4本差DNAのみではなく、4本鎖RNAに対する反応性についても検討する。2)G-4本鎖RNAを切断するプローブの開発:昨年度、アクリジン誘導体を持つアルキル化プローブがG-4本鎖RNAを選択的に切断することを見出した。本年度はさらにこの詳細な切断機構を検討し、新たなG-4本鎖RNA切断分子の創製について検討する。現在までにG-4本鎖RNAを選択的に切断する分子は知られておらず、非常に興味深いと考えられる。3)RNA高次構造結合分子の検索:昨年度開発したプローブが結合できるRNAの高次構造を検索する方法論を用いて、新規プローブが結合するRNAの高次構造を検索する。さらにアルキル化プローブが結合するRNAの高次構造について検索する方法論を確立し、効率的に、RNAの高次構造をアルキル化する新規プローブの開発を目指す近年、核酸は配列情報のみならず、形成される高次構造が遺伝子発現において重要な機能を持つことが明らかとなってきている。 | KAKENHI-PLANNED-15H05838 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-15H05838 |
遺伝子高次構造を標的とした複合化機能性中分子の創製 | 特に種々の機能性RNAではその機能を担うモチーフとして、様々なRNAの高次構造が重要であることがわかってきている。しかし現在これらの構造に結合するプローブはほとんど報告されておらず、その機能解明が進んでいない。これらの高次構造に結合しアルキル化反応を誘起するプローブは共有結合による強固な結合により、これらの高次構造を認識する蛋白質の結合を効率的に阻害できるものと期待される。本申請研究ではこれらの核酸高次構造を選択的にアルキル化する中分子として標的核酸に近接することで反応を誘起する部位及び標的核酸構造を認識する部位という2つの異なる機能を合わせ持つハイブリッド型核酸標的プローブの開発を目指している。本年度はまず、高次構造のモデルとして脱塩基部位を持つ2本鎖DNAを用いて、反応を誘起する部位について検討を行った。従来用いていた反応性塩基である2-amino-6-vinylpurineの7位を炭素に置換したデアザ体及び7位にアルキンを導入した反応性塩基とヘキストを複合化したプローブを合成しその反応性を評価した。その結果、7位にアルキンを導入したデアザ体が高い反応性及び選択性を示すことを明らかにした。さらに標的にアルキル化した後、7位にクリック反応により蛍光基を導入することにも成功した。また、RNAのバルジ構造を標的としたプローブとして、反応性塩基としてビニルトリアジン誘導体、RNAに対して親和性を持つアクリジン誘導体を導入したプローブの合成にも成功した。これらのプローブは2本鎖RNA中のU-Uミスマッチには反応しなかったものの、2本鎖DNA中のT-Tミスマッチには反応することがわかった。今後さらに、2本鎖RNA中のU-Uミスマッチに反応するプローブの開発を目指す。本研究を進めている際、高次構造のモデルとして脱塩基部位を持つ2本鎖DNAに結合するプローブとして、アクリジンと2-amino-6-vinylpurineを複合化した誘導体を合成した。アクリジンはインターカレーターとして機能する分子であるため、別の核酸高次構造として非常に注目されているG-カルテット構造に結合する可能性を考え、この構造に対するアルキル化能を評価した。その結果、非常に興味深いことにこのプローブがG-カルテット構造に対してもアルキル化反応を誘起することを明らかにした。今後、さらにこの結果に基づき新たな核酸高次構造の標的として、G-カルテット構造をアルキル化するプローブについても検討する予定である。G-カルテット構造は染色体末端に見られる1本鎖テロメア領域で形成されることが明らかとなっている。このG-カルテット構造を安定化する分子は癌細胞で活性化しているテロメラーゼによるテロメア伸長を阻害することから抗がん剤としての可能性を持つと考えられており、非常に意義がある。近年、核酸は配列情報のみならず、形成される高次構造が遺伝子発現において重要な機能を持つことが明らかとなってきている。特に種々の機能性RNAではその機能を担うモチーフとして、様々なRNAの高次構造が重要であることがわかってきている。しかし現在これらの構造に結合するプローブはほとんど報告されておらず、その機能解明が進んでいない。 | KAKENHI-PLANNED-15H05838 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-15H05838 |
Subsets and Splits
No community queries yet
The top public SQL queries from the community will appear here once available.