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原発性肺腺癌の早期診断・治療標的の開発をめざした戦略的プロテオーム解析 | 原発性肺腺癌の癌部及び非癌部の凍結標本を用いて網羅的プロテオーム解析を行い、Anterior gradient homolog 2 (AGR2)をバイオマーカー候補として同定した。原発性肺腺癌症例における免疫染色にて、癌部でのAGR2の発現上昇を確認した。血中AGR2値は肺腺癌の早期発見及び術後再発予知を含む予後予測マーカーとして有用であると評価された原発性肺腺癌の癌部及び非癌部の凍結標本を用いて網羅的プロテオーム解析を行い、Anterior gradient homolog 2 (AGR2)をバイオマーカー候補として同定した。原発性肺腺癌症例における免疫染色にて、癌部でのAGR2の発現上昇を確認した。血中AGR2値は肺腺癌の早期発見及び術後再発予知を含む予後予測マーカーとして有用であると評価された肺癌は悪性腫瘍の中でも悪性度の高い腫瘍として知られ多くの先進諸国で癌死のなかで最も頻度の高い腫瘍である。診断方法や治療方法に進歩はあるものの、現在の集学的治療を含む治療方針では死亡率の劇的な低下は望みにくい状況である。死亡率の劇的な低下には早期発見及び個別化治療に代表される新しい治療戦略が必要であるとされ、そのためのバイオマーカーの開発が切望されている。今回、我々は肺癌の診療に有用なバイオマーカーを探索するため、ヒト肺腺癌組織を用いてプロテオーム解析による網羅的なタンパク質発現解析を行った。当院で手術を施行した原発性肺癌症例12例の癌部及び非癌部の凍結標本にiTRAQ試薬を用いて癌部及び非癌部組織を比較定量しつつLC-MS/MS解析を行った。その結果、高頻度に、また非癌部と比較して癌部に高発現しているタンパク質がいくつか認められた。その中で、主な発現部位が細胞外腔であるタンパク質に注目し、その内の一つであるAnterior gradient 2 homolog(AGR2)が新規バイオマーカー候補として選出された。AGR2に特異的な抗体を用いて原発性肺腺癌組織268例に免疫染色を行ったところ94%で陽性となり、病理学的病期I期に限っても同様の割合で陽性であった。また、発現強度と既知の予後相関因子となる各種臨床病理的パラメーターとの相関を検討したがいずれも統計学的に有意な相関はなく、カプラン・マイヤー法を用いた単変量生存解析でAGR2の発現強度により有意に予後の差が認められた。これによりAGR2は独立した予後予測因子と考えられた。肺癌は悪性腫瘍の中でも悪性度の高い腫瘍として知られ、多くの先進諸国で癌死の中でもっとも頻度の高い腫瘍になっている。診断方法や治療方法に進歩はあるものの、現在の集学的治療を含む治療方針では死亡率の劇的な低下は望みにくい状況である。死亡率の低下には早期発見および個別化治療に代表される新しい治療戦略が必要であるとされ、そのためのバイオマーカーの開発が切望されている。今回我々は、肺癌の診療に有用なバイオマーカーを探索するため、ヒト肺腺癌組織を用いてプロテオーム解析による網羅的なタンパク質発現解析をおこなった。当院で手術を施行した原発性肺線癌症例12例の癌部および非癌部の凍結標本にiTRAQ試薬を用いて癌部及び非癌部組織を比較定量しつつLS-MS/MS解析を行った。その結果、高頻度に、また非癌部と比較して癌部に高発現しているタンパク質をいくつか認められた。その中で主な発現部位が細胞外腔であるタンパク質に注目、そのうちのAnterior gradient 2 homolog(AGR2)が新規バイオマーカー候補として選出された。AGR2に特異的な抗体を用いて原発性肺腺癌組織268例に免疫染色を行ったところ94%で陽性となった。免疫染色でのAGR2の発現強度と各種臨床パラメーターとの統計解析を行ったところ、カプラン・マイヤー法を用いた生存解析で独立した予後予測因子となることが判明した。また、原発性肺腺癌組織111例の血清ARG2濃度をELISA法を用いて測定し、同様に臨床パラメーターとの統計解析を行ったところ、カプラン・マイヤー法を用いた生存解析で予後予測因子となることが判明した。以上より、AGR2は臨床診療上有用な肺腺癌マーカーとなりうることが示された。肺癌は悪性腫瘍の中でも悪性度の高い腫瘍として知られ、多くの先進諸国で癌死の中でもっとも頻度の高い腫瘍になっている。診断方法や治療方法に進歩はあるものの、現在の集学的治療を含む治療方針では死亡率の劇的な低下は望みにくい状況である。死亡率の低下には早期発見および個別化治療に代表される新しい治療戦略が必要であるとされ、そのためのバイオマーカーの開発が切望されている。今回我々は、肺癌の診療に有用なバイオマーカーを探索するため、ヒト肺腺癌組織を用いてプロテオーム解析による網羅的なタンパク質発現解析をおこなった。当院で手術を施行した原発性肺線癌症例12例の癌部および非癌部の凍結標本にiTRAQ試薬を用いて癌部及び非癌部組織を比較定量しつつLS-MS/MS解析を行った。その結果、高頻度に、また非癌部と比較して癌部に高発現しているタンパク質をいくつか認められた。その中で主な発現部位が細胞外腔であるタンパク質に注目、そのうちのAnterior gradient 2 homolog (AGR2)が新規バイオマーカー候補として選出された。AGR2に特異的な抗体を用いて原発性肺腺癌組織268例に免疫染色を行ったところ94%で陽性となった。 | KAKENHI-PROJECT-22591573 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22591573 |
原発性肺腺癌の早期診断・治療標的の開発をめざした戦略的プロテオーム解析 | 免疫染色でのAGR2の発現強度と各種臨床パラメーターとの統計解析を行ったところ、カプラン・マイヤー法を用いた生存解析で独立した予後予測因子となることが判明した。また、原発性肺腺癌組織111例の血清ARG2濃度をELISA法を用いて測定し、同様に臨床パラメーターとの統計解析を行ったところ、カプラン・マイヤー法を用いた生存解析で予後予測因子となることが判明した。以上より、AGR2は臨床診療上有用な肺腺癌マーカーとなりうることが示された。肺腺癌のプロテオミクス解析の結果から候補蛋白を同定し、臨床診療上有用な肺腺癌マーカーとなりうる蛋白AGR2を発見するにいたった。AGR2の血清濃度が予後予測因子となることが示され、臨床への実用化も検討可能なものと考えられた。以上より、当初の研究目標であった肺腺癌の新たなバイオマーカーの同定に近い結果を得ることができたと評価する。今後はAGR2の機能解析を行い、個別化治療に代表される新しい治療戦略の一助となるか検討する。24年度が最終年度であるため、記入しない。ヒト肺腺癌細胞株よりウエスタンブロットにてAGR2蛋白を発現している細胞株を選出し、siRNAを用いてこの蛋白の発現をノックダウンすることによりこの蛋白の機能解析をおこなう。また、肺腺癌のプロテオーム解析によりAGR2蛋白以外に肺腺癌のバイオマーカー候補を選出し、同様に臨床診療上有用な肺腺癌マーカーとなりうるかを評価する。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22591573 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22591573 |
三次元蛍光イメージングによる発生初期胚のアトラスの作成とデータベースの構築 | 生物の発生において、受精卵から胚が形成される過程はダイナミックな形態の変化を伴う。このような初期胚の形成過程における、細胞の挙動や、遺伝子・蛋白質の時間的・空間的に特異的な発現を追跡することは、発生過程を解析するために重要である。ライトシート型顕微鏡「DSLM」(Digital Scanned Light-Sheet Microscope)では、非常に薄いシート状のレーザー光を試料に照射し、その照射光と直交するCCDカメラで照射層からの蛍光画像を検出する。この特殊な光学系を有するDSLMは、生体試料を傷つけずに深部まで観察でき、胚などの比較的大きな生体試料を丸ごと、ライブイメージングが可能な顕微鏡である。また、様々な角度からの観察が可能で、試料の全体像を三次元画像で捉えることができる。本研究課題では、DSLMを用いて、種々の生物についての測定条件を確立すると共に、様々な発生段階の胚について三次元蛍光像を撮影し、細胞の挙動や、遺伝子発現、組織・器官の形成の様子等をまとめ、アトラスを作成することを目的とする。メダカ胚は、試料をアガロースゲルに包埋して観察するDSLMに適した生物である。また、研究所はメダカバイオリソースプロジェクトの中核機関として、ライブリソースとしてメダカの各種系統を利用者に提供している。各種系統における、変異遺伝子や導入遺伝子等の標的遺伝子の発現の様子が画像で閲覧できれば、その情報量が増加すると考えられる。そこで、種々の遺伝子導入メダカについて、受精後から孵化までの様々な発生過程でサンプリングし、生きたまま、あるいは固定後DSLMの観察試料とした。遺伝子導入メダカの数系統について、胚を固定後、様々な方向から観察し、画像を撮影した。得られた画像データは、MATLAB、ImageJ等の画像解析ソフトを用いて処理し、試料の全体像の三次元画像を構築した。得られた三次元蛍光画像から目的蛋白質の発現の様子の詳細が解析でき、各発生段階におけるその時間的、空間的な発現の様子を胚の全体像として捉えることができ、組織、器官の構造等についても詳細に観察できた。今回、測定条件が確立できたので、今後はアトラスの作成に向けてデータを蓄積していきたい。生物の発生において、受精卵から胚が形成される過程はダイナミックな形態の変化を伴う。このような初期胚の形成過程における、細胞の挙動や、遺伝子・蛋白質の時間的・空間的に特異的な発現を追跡することは、発生過程を解析するために重要である。ライトシート型顕微鏡「DSLM」(Digital Scanned Light-Sheet Microscope)では、非常に薄いシート状のレーザー光を試料に照射し、その照射光と直交するCCDカメラで照射層からの蛍光画像を検出する。この特殊な光学系を有するDSLMは、生体試料を傷つけずに深部まで観察でき、胚などの比較的大きな生体試料を丸ごと、ライブイメージングが可能な顕微鏡である。また、様々な角度からの観察が可能で、試料の全体像を三次元画像で捉えることができる。本研究課題では、DSLMを用いて、種々の生物についての測定条件を確立すると共に、様々な発生段階の胚について三次元蛍光像を撮影し、細胞の挙動や、遺伝子発現、組織・器官の形成の様子等をまとめ、アトラスを作成することを目的とする。メダカ胚は、試料をアガロースゲルに包埋して観察するDSLMに適した生物である。また、研究所はメダカバイオリソースプロジェクトの中核機関として、ライブリソースとしてメダカの各種系統を利用者に提供している。各種系統における、変異遺伝子や導入遺伝子等の標的遺伝子の発現の様子が画像で閲覧できれば、その情報量が増加すると考えられる。そこで、種々の遺伝子導入メダカについて、受精後から孵化までの様々な発生過程でサンプリングし、生きたまま、あるいは固定後DSLMの観察試料とした。遺伝子導入メダカの数系統について、胚を固定後、様々な方向から観察し、画像を撮影した。得られた画像データは、MATLAB、ImageJ等の画像解析ソフトを用いて処理し、試料の全体像の三次元画像を構築した。得られた三次元蛍光画像から目的蛋白質の発現の様子の詳細が解析でき、各発生段階におけるその時間的、空間的な発現の様子を胚の全体像として捉えることができ、組織、器官の構造等についても詳細に観察できた。今回、測定条件が確立できたので、今後はアトラスの作成に向けてデータを蓄積していきたい。 | KAKENHI-PROJECT-21918009 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21918009 |
コイルによる動脈管塞栓術(動物モデルを用いた閉鎖メカニズムの基礎的研究) | 新生児ブタ10頭を使用し、動脈管コイル閉鎖術を施行した。閉鎖術後約2ヶ月後に血管内エコー、組織学的検討を行い、新生内膜の増生により、動脈管が完全に閉鎖していることを確認した。更にコイル周囲への新生内皮の増生が認められ、大動脈、肺動脈内に突出しているコイルの周囲も新生内皮で覆われていた。この時期には、コイルの部分での血栓形成などの所見は認められなかった。以上より動脈管コイル閉鎖術の閉鎖メカニズムに動脈管及びコイル周囲への新生内皮の増生が主体となっていることが確認された。以上のことを臨床例でも明らかにするために、以下の内容で検討を行なった。対象は、動脈管開存症症例42例、平均年齢7.0歳、平均体重26kgであった。これらの症例に動脈管コイル閉鎖術を施行した。閉鎖術の前、直後、更に6ヶ月後に、血管内エコーを施行しコイル、及びコイル周囲を観察した。コイル挿入直後には、コイルの高信号を認めていた。しかし、6ヶ月後の時点では、コイル周囲は新生内皮で覆われており、この新生内皮の増生により動脈管が閉鎖していることが確認された。さらに、大動脈造影で、コイル閉鎖術直後と6ヶ月後ではコイルの形態が変化していた。これは、コイル周囲の新生内皮増生によりコイルの形態が変化していったものと考えられた。また、血管内エコーによる大動脈横断径に対するコイルの突出度は、術直後22.1±13.6%から、6カ月後には9.7±3.6%と有意に低下していた(p<0.001)。新生内皮が増生することにより、コイルの形態も変化し、さらに動脈側へのコイル突出の軽減にも関連していることが示唆された。新生児ブタ10頭を使用し、動脈管コイル閉鎖術を施行した。閉鎖術後約2ヶ月後に血管内エコー、組織学的検討を行い、新生内膜の増生により、動脈管が完全に閉鎖していることを確認した。更にコイル周囲への新生内皮の増生が認められ、大動脈、肺動脈内に突出しているコイルの周囲も新生内皮で覆われていた。この時期には、コイルの部分での血栓形成などの所見は認められなかった。以上より動脈管コイル閉鎖術の閉鎖メカニズムに動脈管及びコイル周囲への新生内皮の増生が主体となっていることが確認された。以上のことを臨床例でも明らかにするために、以下の内容で検討を行なった。対象は、動脈管開存症症例42例、平均年齢7.0歳、平均体重26kgであった。これらの症例に動脈管コイル閉鎖術を施行した。閉鎖術の前、直後、更に6ヶ月後に、血管内エコーを施行しコイル、及びコイル周囲を観察した。コイル挿入直後には、コイルの高信号を認めていた。しかし、6ヶ月後の時点では、コイル周囲は新生内皮で覆われており、この新生内皮の増生により動脈管が閉鎖していることが確認された。さらに、大動脈造影で、コイル閉鎖術直後と6ヶ月後ではコイルの形態が変化していた。これは、コイル周囲の新生内皮増生によりコイルの形態が変化していったものと考えられた。また、血管内エコーによる大動脈横断径に対するコイルの突出度は、術直後22.1±13.6%から、6カ月後には9.7±3.6%と有意に低下していた(p<0.001)。新生内皮が増生することにより、コイルの形態も変化し、さらに動脈側へのコイル突出の軽減にも関連していることが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-08770604 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08770604 |
人間における形状創成メカニズムのバーチャルフォーミングによる研究 | 本研究では、塑性加工分野における逐次成形動作を、バーチャルフォーミングを活用して人間の試行錯誤的成形動作を解析し、それを基にプロセスを最適化するシステムの基本構造について考察し、論理型プログラミング言語prologを用いてToy sytemを試作した。今回取り扱った成形対象はある曲率分布をもったはり要素であり、非線形性をもつ連続はりの数値シミュレータを作成し、加工手順を自動生成させる試みを行った。本システムでは、加工操作をまずオペレータが試行錯誤的に行い、その動作をシステムが記憶することで知識獲得が行われる。そして、知識獲得後、システムが自動的に加工動作を生成する。このシステムは簡単な節形式のデータベースを作成し利用する。そして知識ベース作成のためにオペレータの入力からの学習機能を持っている。また、知識ベースの編集機能をもっており、多数の知識群が作られた場合に同じ素材から同じ形状を得る異なった加工手順の存在などの冗長な知識を取り除くことができる。ここでは、能率が悪い知識を削除するようになっている。このシステムにより、例えば人間の操作により19回の動作が必要であった成形作業が、知識ベースを基にした加工動作では5回の動作で成形が終了することを確認した。さらに、このシステムを未知形状の成形に適用し、蓄えた知識を利用して見かけ上新しい問題に対して対処することができることを確認した。本研究では、塑性加工分野における逐次成形動作を、バーチャルフォーミングを活用して人間の試行錯誤的成形動作を解析し、それを基にプロセスを最適化するシステムの基本構造について考察し、論理型プログラミング言語prologを用いてToy sytemを試作した。今回取り扱った成形対象はある曲率分布をもったはり要素であり、非線形性をもつ連続はりの数値シミュレータを作成し、加工手順を自動生成させる試みを行った。本システムでは、加工操作をまずオペレータが試行錯誤的に行い、その動作をシステムが記憶することで知識獲得が行われる。そして、知識獲得後、システムが自動的に加工動作を生成する。このシステムは簡単な節形式のデータベースを作成し利用する。そして知識ベース作成のためにオペレータの入力からの学習機能を持っている。また、知識ベースの編集機能をもっており、多数の知識群が作られた場合に同じ素材から同じ形状を得る異なった加工手順の存在などの冗長な知識を取り除くことができる。ここでは、能率が悪い知識を削除するようになっている。このシステムにより、例えば人間の操作により19回の動作が必要であった成形作業が、知識ベースを基にした加工動作では5回の動作で成形が終了することを確認した。さらに、このシステムを未知形状の成形に適用し、蓄えた知識を利用して見かけ上新しい問題に対して対処することができることを確認した。 | KAKENHI-PROJECT-05750115 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05750115 |
神奈川県大磯丘陵の火山灰層序学的地質図の作成 | 1丘陵全域および周辺地域の25000分の1に地質図・説明書を作成した.その特徴は以下のとうりである.(1)ほぼ全域,全層準にわたって, 350mをこえる数100枚のラフラを用いて,岩相区分地質図でなく,時代区分地質図を作成した.しかし南東部と南西部の海成層の対比・区分には不安が残る.(2)中後期更新琉・完新統を7層に大区分し,さらに記号を用いて17層に細分した.(3)各層については,記号を用いて,風成ラフラ相,泥相,砂相,礫相に区分し,堆積環境を表示し,古地理を読みとれるように工夫した.(4)新しい時代の地層については,武蔵野変動の影響で段丘化している地点が多いこうした地殻変動の状況を読みとれるように,記号を用いて地形面(段丘面)の表示も行なった.2地質図を作成した結果,いくつかの興味ある成果や疑問点がうかびあがってきた.以下に,2・3紹介する.(1)約9050万年前の海浸堆積物(二宮層群ー大磯;足柄層群上部ー足柄)中のラフラのある程度の対比ができた,その結果,二宮層群中のラフラの給源火山が足柄地域の畑沢火山・古箱根火山と推定された.もしこのとうりなら,テフラのアイソパックの異常を修正するため,これらの火山をのせる伊豆地塊を2010Kmほど南東にひきもどす必要がありそうである.(2)丘陵東部の生沢構造谷については,いわゆるフィリッピン海プレートのeduct問題を扱ううえで大変重要な構造谷である.ここでは,南北圧縮の応力場のもとで北側の地塊がせりあがり,不整合面がひきちぎられ一部逆転している.南側の地塊は"衝突"しつつ,もぐり込んでいるらしい.さらに調査が可能である.1.丘陵北西部・秦野盆地・北東部・南東部の5000分の1地質図ほぼ完成、全域の25000分の1暫定地質図ほぼ完成。実績はこのとうりであるが、いくつか興味ある結果ないしは疑問点が得られたので以下記載する。2(1)本丘陵は10090万年前以降一貫して、概略NNWSSEの水平圧縮応力場に置かれ、ほぼ南北に短縮してきた。N45°Wより西向きではない。(2)本丘陵南東部鷹取山山地と南東端高麗山山地を構成する先中部更新統は同一層準であっても岩相が違いすぎる。両者の間の生沢構成谷は現在巾500m1500mで変動帯となっている。後者は本来もっと南方にあった可能性が周辺地域の地質構造の総合的判断としてありうる。(3)フィリッピン海プレートの北東側境界断層にあたるとされた国府津・松田断層は32万年前あたりから地表に影響を与えるようになった新しい断層で約50万年前あたりから地表に影響を与えだした生沢構造谷より"新顔"である。古地理図(水陸境界図)を書いてみても、関東大地震の測地学的データと本丘陵の基盤ブロックの隆起傾向とを比較しても、全体として"生沢変動"と"国府津松田変動"は、対等の影響力をもっている。古い時代は前者の変動のみで、新しい時代になると後者の変動も目立つようになる。国府津・松田変動による本丘陵構造発達史の一元的説明は困難であり、従って地表地質研究者としては、同断層がプレート境界断層だとする説には賛同しえない。新しすぎるのではないか?(4)本丘陵が、時計廻りに50°以上も回転したとする古地磁気学的データ〔小山(1986)〕は層序学的に証拠不充分で、むしろ、同断層の右横すべりの激しさの証拠となるものである。(5)本丘陵が箱根父山に対して、最近50万年間に数km南進したとする仮説については充分な証拠が得られない。1丘陵全域および周辺地域の25000分の1に地質図・説明書を作成した.その特徴は以下のとうりである.(1)ほぼ全域,全層準にわたって, 350mをこえる数100枚のラフラを用いて,岩相区分地質図でなく,時代区分地質図を作成した.しかし南東部と南西部の海成層の対比・区分には不安が残る.(2)中後期更新琉・完新統を7層に大区分し,さらに記号を用いて17層に細分した.(3)各層については,記号を用いて,風成ラフラ相,泥相,砂相,礫相に区分し,堆積環境を表示し,古地理を読みとれるように工夫した.(4)新しい時代の地層については,武蔵野変動の影響で段丘化している地点が多いこうした地殻変動の状況を読みとれるように,記号を用いて地形面(段丘面)の表示も行なった.2地質図を作成した結果,いくつかの興味ある成果や疑問点がうかびあがってきた.以下に,2・3紹介する.(1)約9050万年前の海浸堆積物(二宮層群ー大磯;足柄層群上部ー足柄)中のラフラのある程度の対比ができた,その結果,二宮層群中のラフラの給源火山が足柄地域の畑沢火山・古箱根火山と推定された.もしこのとうりなら,テフラのアイソパックの異常を修正するため,これらの火山をのせる伊豆地塊を2010Kmほど南東にひきもどす必要がありそうである. | KAKENHI-PROJECT-61460054 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61460054 |
神奈川県大磯丘陵の火山灰層序学的地質図の作成 | (2)丘陵東部の生沢構造谷については,いわゆるフィリッピン海プレートのeduct問題を扱ううえで大変重要な構造谷である.ここでは,南北圧縮の応力場のもとで北側の地塊がせりあがり,不整合面がひきちぎられ一部逆転している.南側の地塊は"衝突"しつつ,もぐり込んでいるらしい.さらに調査が可能である. | KAKENHI-PROJECT-61460054 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61460054 |
ストレスMAPキナーゼ経路を介した発癌制御機構の解明 | ASK1-MAPキナーゼ系は当研究室で明らかにされたアポトーシズのシグナル伝達系路であり、その後のさらなる解析により、細胞の機能において、Ca^<2+>シグナリングや、酸化ストレスに起因するレドックスシグナル、FasやTNFからのサイトカインシグナリングのなかでASK1が強く活性化され、最終的にミトコンドリアを介してカスパーゼの活性化を誘導することが示されており、ASK1-MAPキナーゼ系はストレス誘導性アポトーシスにおけるシグナル伝達機構の本体である可能性が強く示唆されている。そこで、本研究ではASK1-MAPキナーゼ経路の異常と発癌との関連性を明らかにするために以下のような研究を行った。1)各種癌細胞におけるASK1-MAPキナーゼ経路のシグナル伝達異常の解析各種株化癌化細胞を用いて、様々なストレス(活性酸素種、紫外線(UV)、放射線、血清除去等)に対する感受性とASK1-MAPキナーゼ系の活性化の程度、またアポトーシスの惹起との関係について、TUNEL法ならびに抗活性化型タンパク質抗体によるウエスタンブロッティング法を用いて調べ、ASK1-MAPキナーゼ系のシグナル伝達異常によってアポトーシス異常が誘導されている細胞のスクリーニングを行った。2)ASK1ノックアウトマウスを用いた発癌実験細胞レベルで発癌機構におけるASK1-MAPキナーゼ系の関与が示されたので、ASK1ノックアウトマウスの皮膚発癌実験を行い、免疫組織化学的な観点から評価・検討することにより個体レベルでの癌の発生におけるASK1-MAPキナーゼ系の関与の解明を試みた。また、個体の癌組織における癌の進展におけるASK1-MAPキナーゼ系の分子機構の関与についても検討した。また、ASK1ノックアウトマウスを用いた皮膚発癌実験を行うことにより、発癌のASK1-MAPキナーゼ経路の関与を個体レベルで調べた。ASK1-MAPキナーゼ系は当研究室で明らかにされたアポトーシズのシグナル伝達系路であり、その後のさらなる解析により、細胞の機能において、Ca^<2+>シグナリングや、酸化ストレスに起因するレドックスシグナル、FasやTNFからのサイトカインシグナリングのなかでASK1が強く活性化され、最終的にミトコンドリアを介してカスパーゼの活性化を誘導することが示されており、ASK1-MAPキナーゼ系はストレス誘導性アポトーシスにおけるシグナル伝達機構の本体である可能性が強く示唆されている。そこで、本研究ではASK1-MAPキナーゼ経路の異常と発癌との関連性を明らかにするために以下のような研究を行った。1)各種癌細胞におけるASK1-MAPキナーゼ経路のシグナル伝達異常の解析各種株化癌化細胞を用いて、様々なストレス(活性酸素種、紫外線(UV)、放射線、血清除去等)に対する感受性とASK1-MAPキナーゼ系の活性化の程度、またアポトーシスの惹起との関係について、TUNEL法ならびに抗活性化型タンパク質抗体によるウエスタンブロッティング法を用いて調べ、ASK1-MAPキナーゼ系のシグナル伝達異常によってアポトーシス異常が誘導されている細胞のスクリーニングを行った。2)ASK1ノックアウトマウスを用いた発癌実験細胞レベルで発癌機構におけるASK1-MAPキナーゼ系の関与が示されたので、ASK1ノックアウトマウスの皮膚発癌実験を行い、免疫組織化学的な観点から評価・検討することにより個体レベルでの癌の発生におけるASK1-MAPキナーゼ系の関与の解明を試みた。また、個体の癌組織における癌の進展におけるASK1-MAPキナーゼ系の分子機構の関与についても検討した。また、ASK1ノックアウトマウスを用いた皮膚発癌実験を行うことにより、発癌のASK1-MAPキナーゼ経路の関与を個体レベルで調べた。 | KAKENHI-PROJECT-03J61519 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03J61519 |
インフレ期待の変動メカニズムの解明 | 本課題の目的は、サーベイデータと市場データを統合的に記述できる均衡型の資産価格モデルを構築し、インフレ期待の変動メカニズムやその変動に起因するリスクプレミアムを解明することである。提案モデルは、効用関数のパラメータを経済や市場を動かす状態変数に依存させて、投資家のリスクオン・オフといった選好の変化を捉えられるようにした。この拡張により、債券と株式の期間構造について、従来のモデルをはるかに上回る記述力を実現した。さらに、消費や配当の変動過程にジャンプを導入することによって、選好やインフレ期待についてより現実的な経済学的解釈を可能にした。本課題の目的は、サーベイデータと市場(価格)データを用いてインフレ期待の変動メカニズムを明らかにし、その変動に起因するリスクプレミアムを推定することである。両データを統合的に記述できる経済モデルを提案し、それぞれのデータの長所を活かして精度の高い推定を試みるところに本課題の特色がある。理論面では、消費者の選好を明示した上で価格付けを行う均衡型モデルを開発した。均衡型モデルは、汎用性の高さからデータを統合的に記述するという点では優れているものの、均衡という制約条件の強さから各データを高い精度で説明するという点では難がある。そこで開発したのがこの難点を克服するモデルである。克服の鍵は、消費者の選好が経済状態に応じて変化する性質を取り入れたことである。先行研究にはない当モデルによって、市場価格やサーベイデータに内在する期待を、我々の選好と直接関連付けて論ずる道を切り拓くことができた。当初計画では、均衡型モデルの利用を想定していなかったため、理論面においては大きな進展があったと言える。実証面では、インフレ見通しに関するサーベイデータの予測力について分析を行った。一般に公開されているサーベイデータは、日本では「EPSフォーキャスト調査」「内閣府消費動向調査」「日本銀行生活意識に関するアンケート調査」があり、米国では「Livingston」「SPF」「Michigan」がある。均衡型モデルの推定にこれらのデータをすべて用いることは困難であるため、予測力の高いデータに絞ることを意図して分析を行った。その結果、日本では、エコノミスト(いわゆるプロ)によるEPSフォーキャストの予測が、内閣府や日銀が集計した一般個人や家計の予測よりも大幅に良いことがわかった。一方、米国では、多数の一般消費者から得た予測の中央値は、プロの予測と遜色のないことがわかった。理論面では、当初計画以上の進展があった。当初計画では、消費者の選好を明示しない誘導型モデルの利用を考えていた。誘導型モデルは、データに対する説明力が高い反面、経済学的含意を得るという点では均衡型モデルに劣る。研究実績の概要で述べた通り、均衡型モデルでも誘導型モデルと同程度の説明力を確保できる目処が立ったため、このモデルを核にして実証分析を進める。実証面は、ほぼ当初計画通りである。ただし、均衡型モデルを用いることにしたため、モデル推定を含む実証分析において新たに克服すべき課題が浮上した。この点は、今後の推進方法で述べる。本課題の目的は、サーベイデータと市場(価格)データを用いてインフレ期待の変動メカニズムを明らかにし、その変動に起因するリスクプレミアムを推定することである。両データを統合的に記述できる経済モデルを提案し、それぞれのデータの長所を活かして精度の高い推定を試みるところに本課題の特色がある。今年度は、均衡型モデルの精緻化に注力した。前年度で既に、Epstein and Zinの提案した再帰的効用関数のリスク回避度を状態変数に依存させた上で均衡における資産価格を導くという成果を得ていた。今年度は、この効用関数の主観的割引率も状態変数に依存させるという拡張を行った。この拡張により、従来の均衡型モデルでは記述することが困難とされてきた、実質金利の期間構造(イールドカーブ)が平坦にも右上がりにもなるという現象を捉えることが可能となった。このモデルを先行研究の誘導型モデル(均衡条件を課していないモデル)を利用してカリブレイトした結果、実質金利、名目金利、配当に関する3つの期間構造を記述できることが確かめられた。3つの期間構造を同時に記述した均衡型モデルは先行研究になく、大きな成果と言える。このモデルから、投資家はリスク回避度を大きく変える一方で、主観的割引率はあまり変動させないことがわかった。この成果は、「An Equilibrium Model of Term Structures of Bonds and Equities」という題目でワーキングペーパーにまとめた。セミナー報告を既に2件行い、今後も続ける。得られたコメントを基に論文を改善し、次年度中に海外学術誌へ投稿する。理論面では、当初計画以上の進展があった。当初計画では、消費者の選好を明示しない誘導型モデルの利用を考えていた。誘導型モデルは、データに対する説明力が高い反面、経済学的含意を得るという点では均衡型モデルに劣る。研究実績の概要で述べた通り、均衡型モデルでも実質金利、名目金利、配当に関する期間構造を記述できることを数値実験により確かめたため、このモデルを用いて実証分析を進めていく。この確認に手間取ったため、実証面では計画よりやや遅れがあるが、これは次年度で十分に挽回できるものである。本課題の目的は、サーベイデータと市場(価格)データを用いてインフレ期待の変動メカニズムを明らかにし、その変動に起因するリスクプレミアムを推定することである。両データを統合的に記述できる経済モデルを提案し、それぞれのデータの長所を活かして精度の高い推定を試みるところに本課題の特色がある。 | KAKENHI-PROJECT-15K03538 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K03538 |
インフレ期待の変動メカニズムの解明 | 平成29年度は、平成28年度に構築した均衡モデルの中で、期待インフレ率が資産価格に影響を及ぼす経路を拡充した。従来の均衡モデルにおける主な経路は、期待インフレ率と消費成長率との相関であるが、実際のマクロ・データを用いた相関は高くないため、実証的な裏付けに乏しかった。そこで、上述の経路に加え、期待インフレ率がリスク回避度や主観的割引率といった選好パラメータに直接影響を及ぼす経路を確立した。この拡充により、投資家のインフレ期待やインフレ・リスクプレミアムが資産価格に反映されやすくなり、様々な資産価格データから高い精度で推定できるようになった。この成果は、平成28年度に作成した論文「An Equilibrium Model of Term Structures of Bonds and Equities」を改訂する形でまとめた。その他にも、消費や配当の変動過程にジャンプを導入したり、投資家のリスク回避度が現実的な範囲に収まるように工夫したりするなど、モデルやカリブレーションの精緻化を行った。学会やセミナーで計3件の報告を行い、得られたコメントも改訂版に反映させ、海外学術誌に投稿できる準備を整えた。本課題の目的は、サーベイデータと市場データを統合的に記述できる均衡型の資産価格モデルを構築し、インフレ期待の変動メカニズムやその変動に起因するリスクプレミアムを解明することである。提案モデルは、効用関数のパラメータを経済や市場を動かす状態変数に依存させて、投資家のリスクオン・オフといった選好の変化を捉えられるようにした。この拡張により、債券と株式の期間構造について、従来のモデルをはるかに上回る記述力を実現した。さらに、消費や配当の変動過程にジャンプを導入することによって、選好やインフレ期待についてより現実的な経済学的解釈を可能にした。均衡型モデルはより複雑な構造を持つため、実データを用いた推定負荷は必然的に高くなる。従って、データを事前に厳選しておく必要があり、そのためのデータ分析を引き続き行う。さらに、プログラミングについても負荷軽減のための工夫を図る。大規模な金融緩和政策を導入した中央銀行の役割をモデルに取り入れるという当初計画は、具体的に次の通り実現させる。緩和政策の帰結として短中期のイールドカーブが長らくゼロ近辺に張り付いている状態を説明するために、金利の下限制約(zero lower bound)と金利水準に(非線形に)依存した金利ボラティリティを均衡型モデルに導入する。これによって、ゼロ(あるいは若干の負の)金利の長期化が我々のインフレ期待やリスク選好にどのような影響を及ぼしているかを明らかにする。今年度は数値実験によりモデルの良さを確かめた。その実験では、リスク回避度や主観的割引率を駆動する状態変数の1つとして期待インフレ率を用い、これが価格(金利や株価)にどのような影響を及ぼすかを理解した。次年度は、いよいよ実データを用いたモデル推定に移る。 | KAKENHI-PROJECT-15K03538 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K03538 |
筋肉内注射技術の科学的根拠に関する研究 | 1.調査の同意を得た成人を対象として、(1)汎用超音波診断装置FFソニックUF-4100A(以下エコー)リニアプローブ7.5MHZによる筋肉内注射部位の三角筋部(肩峰3横指下部)、中殿筋部(ホッホシュテッター部位、クラークの点、4分3分法部位)の皮下組織厚測定、(2)身長、体重、体脂肪率測定、BMI算出、(3)皮下脂肪計(ヤガミMK-60)による肩峰3横指下部と上腕部背面の皮下脂肪厚の測定を行った。対象者数は男性174名、女性156名である。エコーによる皮下組織厚(cm)の平均は肩峰3横指下部で男性0.59±0.18、女性0.71±0.23。中殿筋部では65歳以上と1864歳で有意差がありホッホシュテッター部位の平均は男性65歳未満0.79±0.31、65歳以上0.58±0.28、女性65歳未満1.05±0.41、65歳以上0.76±0.29、クラークの点の平均は男性65歳未満0.85±0.34、65歳以上0.63±0.25、女性65歳未満1.16±0.42、65歳以上0.92±0.43、4分3分法部位の平均は男性65歳未満1.05±0.43、65歳以上0.68±0.30、女性65歳未満1.41±0.48、65歳以上1.20±0.68。エコーによる皮下組織厚と皮下脂肪計による値との間に強い相関関係があり、皮下組織厚を算出する回帰式を求めた。算出された数値以上に注射針を刺入する必要があると考える。2.実験動物(ウサギ)を用いて筋肉内注射用薬剤(プロゲデポー)の安全性を検証した。筋肉内に注射した結果、病巣(炎症、浮腫、筋壊死)は限局する傾向にあったが、皮下注射では広範囲に及んだことから、組織傷害性の強い油性注射液は確実に筋肉内に注射することの重要性が示唆された。3.山形大学医学部内藤輝教授(解剖学担当)の協力を得て解剖実習用遺体を用いて筋肉内注射部位の観察を行った。1.調査の同意を得た成人を対象として、(1)汎用超音波診断装置FFソニックUF-4100A(以下エコー)リニアプローブ7.5MHZによる筋肉内注射部位の三角筋部(肩峰3横指下部)、中殿筋部(ホッホシュテッター部位、クラークの点、4分3分法部位)の皮下組織厚測定、(2)身長、体重、体脂肪率測定、BMI算出、(3)皮下脂肪計(ヤガミMK-60)による肩峰3横指下部と上腕部背面の皮下脂肪厚の測定を行った。対象者数は男性174名、女性156名である。エコーによる皮下組織厚(cm)の平均は肩峰3横指下部で男性0.59±0.18、女性0.71±0.23。中殿筋部では65歳以上と1864歳で有意差がありホッホシュテッター部位の平均は男性65歳未満0.79±0.31、65歳以上0.58±0.28、女性65歳未満1.05±0.41、65歳以上0.76±0.29、クラークの点の平均は男性65歳未満0.85±0.34、65歳以上0.63±0.25、女性65歳未満1.16±0.42、65歳以上0.92±0.43、4分3分法部位の平均は男性65歳未満1.05±0.43、65歳以上0.68±0.30、女性65歳未満1.41±0.48、65歳以上1.20±0.68。エコーによる皮下組織厚と皮下脂肪計による値との間に強い相関関係があり、皮下組織厚を算出する回帰式を求めた。算出された数値以上に注射針を刺入する必要があると考える。2.実験動物(ウサギ)を用いて筋肉内注射用薬剤(プロゲデポー)の安全性を検証した。筋肉内に注射した結果、病巣(炎症、浮腫、筋壊死)は限局する傾向にあったが、皮下注射では広範囲に及んだことから、組織傷害性の強い油性注射液は確実に筋肉内に注射することの重要性が示唆された。3.山形大学医学部内藤輝教授(解剖学担当)の協力を得て解剖実習用遺体を用いて筋肉内注射部位の観察を行った。科学的根拠に基づく筋肉内注射技術の検討のために今年度は以下の研究を実施した。1.調査の同意が得られた健康成人23名、入院療養中及び外来通院中の成人、老人73名の超音波診断装置(エコー)による筋肉内注射部位の皮下組織厚の測定、皮下脂肪計による皮下組織厚の測定、BMIの算出を行った。前年度行ったデータを加えて男女別、年代別(1829歳、3064歳、65歳以上)に分けて分析を行った。その結果、エコーで行った組織厚の平均値は、男性は女性より全ての部位で薄く、肩峰三横指下部は0.5cm、ホッホシュテッツの部位とクラークの部位は0.6cm、4分3分法の部位はばらつきがあり0.70.9cmで年齢が高いほど薄かった。 | KAKENHI-PROJECT-15592237 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15592237 |
筋肉内注射技術の科学的根拠に関する研究 | 女性の平均値は、肩峰三横指下部は0.70.8cm、ホッホシュテッツの部位は0.81.0cmで年齢が高いほど薄く、クラークの部位は0.91.0cm、4分3分法の部位は1.21.4cmで30歳64歳が最も厚かった。今後年代別、男女別の対象者のばらつきを少なくするように対象を増やし、筋肉内注射の注射針刺入深度のアセスメント法を検討する。2.注射用薬剤が指示と異なる部位に注入された場合の薬理作用と組織傷害性について実験動物(ウサギ)を用いて検討した。筋肉内注射用薬剤であるプロゲデポーを皮下組織に注入した際、外部から肉眼的に観察できなかった組織傷害性が明らかとなった。皮下注射薬剤であるインスリンを用い、血糖値をパラメーターとしてその変動を検索した実験では、薬剤が筋肉内に注入された場合、薬効発現が30分以上速くなることを確認した。3.山形大学医学部情報構造統御学講座形態構造医学分野の協力を得て解剖実習用遺体を用い筋肉内注射部位の観察を行った。肩峰三横指下部の筋肉内注射時に損傷の危険性のある腋窩神経と後上腕回旋動脈、橈骨神経と上腕深動脈を確認した。殿部は腸骨と中殿筋の位置、ホッホシュテッツの部位、クラークの部位、4分3分法の部位を確認し、坐骨神経、上殿神経の走行を確認した。科学的根拠に基づく筋肉内注射技術の検討のために以下の研究を実施した。1.調査の同意を得た成人を対象として、1)汎用超音波診断装置FFソニックUF-4100A(以下エコーとする)リニアプローブ7.5MHzによる筋肉内注射部位の三角筋部(肩峰3横指下部)、中殿筋部(ホッホシュテッター部位、クラークの点、4分3分法部位)の皮下組織厚測定、2)身長、体重、体脂肪率測定、BMI算出、3)皮下脂肪計(ヤガミMK-60)による肩峰3横指下部と上腕部背面の皮下脂肪厚の測定を行った。2003年からの調査と合わせ、対象者数は男性174名、女性156名。エコーによる肩峰3横指下部の皮下組織厚(単位をcmとする)の平均は男性0.59(SD=0.18)、女性0.71(SD=0.23)、ホッホシュテッター部位の平均は男性0.75(SD=0.31)、女性0.96(SD=0.40)、クラークの点の平均は男性0.81(SD=0.33)、女性1.1(SD=0.43)、4分3分法部位の平均は男性1.0(SD=0.43)、女性1.3(SD=0.56)。エコーによる皮下組織厚の平均値と皮下脂肪計による肩峰3横指下部の皮下組織厚との間に強い相関関係があったため回帰式を求め、男女別の皮下組織厚を求めるアセスメント式を導きだした。その結果を基に、知覚計を改良し、三角筋部注射部位の皮下を摘んだ値から皮下組織厚が知覚計に示されるような試行品を開発中である。2.実験動物(ウサギ)を用いて筋肉内注射用薬剤(プロゲデポー)の安全性を検証した。筋肉内に注射した結果、病巣(炎症、浮腫、筋壊死)は限局する傾向にあったが、皮下注射では広範囲に及んだことから、組織傷害性の強い油性注射液は確実に筋肉内に注射することの重要性が示唆された。3.山形大学医学部内藤輝教授(解剖学担当)の協力を得て解剖実習用遺体を用いて筋肉内注射部位の観察を行った。 | KAKENHI-PROJECT-15592237 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15592237 |
児へのワクチン接種を拒否する保護者のリスクコミュニケーションに関する研究 | 本研究の目的は予防接種を受けた児と保護者の育児上の方針から予防接種を受けていない児が共同体の中で健康かつ安全に生育するための方略を模索することである。保護者は、感染症を集団という視点で考える機会がないこと、保護者間で予防接種を積極的に話題にはしないことが明らかになった。保護者の中には接種の是非について悩み、講演会、ウェブサイト等だけを頼りに情報を収集、接種させないことに決定した例がある。現在、感染症や予防接種について学ぶ機会が少ない。そこで、若い保護者をターゲットにしたビジュアルをメインとした感染症、予防接種、集団免疫をキーワードとしたサイトをウェブ上で展開することを始めた。本研究の目的は予防接種を受けている児と保護者の育児上の方針を理由として予防接種を受けていない児が地域共同体の中で健康かつ安全に生育するためのよりよい方略を模索することである。本年度はフォーカスグループインタビューを行い、予防接種を積極的に拒否している保護者と児への接種実施済の保護者の間の問題点を鋭敏化した。調査協力者である予防接種年齢あるいは予防接種年齢未到達児を持つ保護者(母親)を5名前後にわけてフォーカスグループインタビューを実施した。85%の保護者は我が児へ定期予防接種を実施済みまたは実施途中であった。インタビューは各グループともに2時間前後、個人的属性等質問紙調査を併用した形式で実施した。結果、予防接種年齢未到達児、接種済み児と接種なし児が地域社会で接触、交流することに保護者からは多少の不安の声は聞かれたが、児に予防接種を与えていない保護者を非難するような発言はなかった。その背景には、予防接種済み児を持つ保護者は、予防接種なし児の保護者のことを「ある種、尊敬の対象、自分には不可能な子育てを行っている母親」、「理想的育児の実践者」、「子どもを病気から守る知識と技能を持ち、丁寧な子育てを行っている」等、よき母親というポジティブなイメージで捉えていることが考えられた。予防接種なし児による地域での感染症流行のリスク増加は、「彼女たち(接種なし児の母親)だったら、他者への感染リスクコントロールは可能なはず、すでに行っているはずだ」という信頼の声が聞かれた。つまり、育児上の理由から児に予防接種を与えない保護者の一部に見られるオリジナリティの高い出産、ライフスタイル、健康管理へのこだわりは、保護者のピアレビューで1つの望ましい育児像として他の保護者から評価されている可能性が示唆された。しかしながら評価の根拠は印象やイメージであり、根拠となるエビデンスへの言及はみられなかった。ワクチン接種を育児上のハイリスク要因と捉え、我が子の感染症罹患リスクは子育てを丁寧に行うことで軽減可能という判断に基づいた保護者の存在はこれまでの研究から確認されている。本研究の目的は共同体の中でワクチン接種児と接種拒否児が健康にかつ安全に過ごすための方略を模索することである。その手段として接種拒否から接種への意識変容、行動変容の可能性を探ること、変容を支援するあるいは不安軽減に繋がるリスクコミュニケーション資料の作成など積極的なアプローチを検討している。本年度までの研究から「予防接種を行わないことで発生するリスクとその対応」、「ワクチン接種を行わなかったことで自児が他者(特にワクチン年齢に到達していない乳児、高齢者などの社会的弱者)へ感染症を蔓延させてしまった場合の対応」、「共同体で感染症の被害者、加害者にならないようにするために、保護者はどうしたらいいと思うか」の3点を中心に聞き取り調査を実施した。保護者は予防接種を行うか、行わないか、どちらを選んでも我が子に何かしら影響(リスク)があることに対して、納得できる説明を希望しているにもかかわらずそれが十分に叶えられていない点に不満と不安があることが明らかになった。研究遂行上、平成27年度下半期には、感染症予防活動を積極的に展開している小児科開業医集団に協力を依頼し、保護者への調査から明らかになったワクチン拒否保護者の問題点について開業小児科医とのディスカッションとリスクコミュニケーション資料作りを実施する予定であったが遅延している。そのため次年度はこのステップからさらに研究を進めていく予定である。平成27年度上半器の「フォーカスグループインタビューの実施」の準備に手間取ったため、下半期の研究計画項目である「開業小児科医とのディスカッションとリスクコミュニケーション資料作りの準備」が遅延してしまい、本年度中に実施することができなかった。そこで次年度に実施する予定で準備中である。本研究の目的は育児方針により自児に予防接種を行っていない保護者、予防接種は行ったが不安感が強いという保護者に対して、積極的にリスクコミュニケーションを行い、感染症のリスクを正しく理解してもらい、保護者自身による自発的行動変容、不安軽減を促すことである。平成28年度の予定ではワクチン接種を拒否する保護者、接種に不安を持つ保護者の不安軽減と意識変容を目的としたわかりやすいリスクコミュニケーション資料集の作成、Web上での公開を予定していた。が、研究の遅れにより平成27年度の研究計画(フォーカスグループインタビューの実施、開業小児科医とのディスカッション、リスクコミュニケーション資料づくり)が未完であるために、当初予定していた資料集づくりに着手が出来なかった。現在、遅れを取り戻すために鋭意研究進行中である。平成28年度に勤務先の大学において管理職を命じられた。はじめての経験で、自分のスケジュールをうまくコントロール出来ず、当初の予定よりも研究エフォートが少なくなってしまったため。保護者の育児方針により乳幼児期に予防接種を与えられていない子どもが存在することは、昨今の先進国に共通してみられる特徴の1つである。 | KAKENHI-PROJECT-26460618 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26460618 |
児へのワクチン接種を拒否する保護者のリスクコミュニケーションに関する研究 | 本研究は、予防接種を与えられた子どもと与えられていない子どもが地域の共同体の中で健康かつ安全に生育するためのよりよい方策を模索することを目的とした研究である。保護者は、我が子の感染症を「集団」あるいは「共同体」というフレームの中で考える機会が少ないこと、また、保護者同士のコミュニケーションの中で子どもの傷病の情報交換はあっても、予防接種を積極的に話題にする機会は少ないことが明らかになった。それは、予防接種が軽視されているからではなく、むしろ気軽に話す話題としては適当ではないという判断が働くという理由からであった。現在、予防接種法により乳幼児の予防接種は保護者の「努力義務」で接種が行われている。接種の最終判断は保護者によるところが大きい。対象児の体調等、身近な保護者の観察の上で接種がなされているが、保護者によっては接種の是非について判断に悩み、予防接種を主題とする講演会への参加、インターネットによる情報収集等を行った結果、接種させないことに決定するという例がある。また、法による「義務」ではないことを知り不安を感じたという保護者も多い。その原因の1つとして考えられるのは、我が国では、感染症、予防接種などについて義務教育等を含めて学ぶ機会が少ない。多くの自治体では妊婦に対して母子健康手帳と一緒に感染症、予防接種に関する資料を配布しているが、活字中心の資料は伝わりにくく、若い保護者には敬遠されてしまう。そこで、本年は小児科医、ウェブデザイナーとディスカッションを重ね、若い保護者をターゲットにし、ビジュアルをメインとした感染症の基礎、予防接種の重要性、集団免疫等、予防接種解説のためのサイトをウェブ上で展開した。本研究の目的は予防接種を受けた児と保護者の育児上の方針から予防接種を受けていない児が共同体の中で健康かつ安全に生育するための方略を模索することである。保護者は、感染症を集団という視点で考える機会がないこと、保護者間で予防接種を積極的に話題にはしないことが明らかになった。保護者の中には接種の是非について悩み、講演会、ウェブサイト等だけを頼りに情報を収集、接種させないことに決定した例がある。現在、感染症や予防接種について学ぶ機会が少ない。そこで、若い保護者をターゲットにしたビジュアルをメインとした感染症、予防接種、集団免疫をキーワードとしたサイトをウェブ上で展開することを始めた。平成26年度および平成27年度上半期までの研究計画であった項目のうち、(1)リスクコミュニケーション実施のための情報収集は予定通り実施できた。(2)リスクコミュニケーションの実施準備も予定通り進行できた。(3)質問形式によるリスクコミュニケーションの協力者の登録、(4)質問形式によるリスクコミュニケーションの実施は、協力者の登録が完全には完了していないため進行が遅れている一方、平成27年度上半期に実施予定にしていた(5)フォーカスグループインタビューは前倒しで平成26年度にスタート、成果を得ることができた。 | KAKENHI-PROJECT-26460618 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26460618 |
半導体超格子膜の環境調和型マテリアルズプロセシング | 非水溶媒中において、銅-ドデカンチオール錯体を熱分解することにより、単分散硫化銅ナノ粒子の合成を行った。析出相は、Cu_2Sの高温相であり、これはチオールによりCu(II)が還元されるためであると考えられる。この方法では系に水が存在しないため、Cu_<1.8>S等の不定比化合物や硫酸塩などの副生成物が生じない。これは、硫化銅のバンドギャップ構造が組成比に大きく左右されることを考慮すると、ナノ粒子の物性研究の観点から非常に優れた合成法であるといえる。TEMやUV-vis等によりナノ粒子のキャラクタリゼーションを行った。今回得られた硫化物ナノ粒子は球状(多面体状)であったが、補助界面活性剤を添加することにより、コイン状のナノ粒子が得られた。高分解能TEM観察により、コインの短軸は(001)方向と一致する。界面活性剤が(001)面に特異的に吸着し、(001)軸方向の成長が阻害されたためと考えられる。本法で得られたナノ粒子は、表面にチオール由来の炭化水素基を有しているため、親油性でありヘキサンやトルエンなどの有機溶剤によく分散する。このコロイド溶液をカーボン基板上に滴下することにより、超格子膜の生成が可能である。超格子は、一般的に最密充填構造であるHCPおよびFCC構造をとることが多いが、本系では非最密充填型構造であるストライプアレイが観察された。これは、1層目のサドルサイトにスタッキングすることで現れる構造である。これは、ナノ粒子の晶癖によるものではないかと考えられるが、詳細は不明である。非水溶媒中において、銅-ドデカンチオール錯体を熱分解することにより、単分散硫化銅ナノ粒子の合成を行った。析出相は、Cu_2Sの高温相であり、これはチオールによりCu(II)が還元されるためであると考えられる。この方法では系に水が存在しないため、Cu_<1.8>S等の不定比化合物や硫酸塩などの副生成物が生じない。これは、硫化銅のバンドギャップ構造が組成比に大きく左右されることを考慮すると、ナノ粒子の物性研究の観点から非常に優れた合成法であるといえる。TEMやUV-vis等によりナノ粒子のキャラクタリゼーションを行った。今回得られた硫化物ナノ粒子は球状(多面体状)であったが、補助界面活性剤を添加することにより、コイン状のナノ粒子が得られた。高分解能TEM観察により、コインの短軸は(001)方向と一致する。界面活性剤が(001)面に特異的に吸着し、(001)軸方向の成長が阻害されたためと考えられる。本法で得られたナノ粒子は、表面にチオール由来の炭化水素基を有しているため、親油性でありヘキサンやトルエンなどの有機溶剤によく分散する。このコロイド溶液をカーボン基板上に滴下することにより、超格子膜の生成が可能である。超格子は、一般的に最密充填構造であるHCPおよびFCC構造をとることが多いが、本系では非最密充填型構造であるストライプアレイが観察された。これは、1層目のサドルサイトにスタッキングすることで現れる構造である。これは、ナノ粒子の晶癖によるものではないかと考えられるが、詳細は不明である。 | KAKENHI-PROJECT-16656227 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16656227 |
免疫系の複合疾患感受性遺伝子の同定に向けての研究 | 前年度、RA、SLEを対象とした関連研究において検出したLIR1多型とRAとの有意な関連は、LIR1と連鎖不平衡にある他の近傍の遺伝子によるものである可能性も考えられた。そのため、隣接して存在するLIR6、LIR5遺伝子について、同様に多型解析、関連研究を行った。LIR6遺伝子の多型スクリーニングの結果、計24箇所のSNPsが日本人において主要な2種のハプロタイプを形成することが見出された。このうち、マイナーハプロタイプLIR6.02陽性率のSLEにおける有意な減少が見出された(P=0.02,OR=0.64)。次に、LIR5について解析を行った。多型スクリーニングにより、計29箇所の多型が検出された。LIR1、LIR6遺伝子とは対照的に、日本人における主要なハプロタイプを決定できなかった。ゆえに、RA、SLEを対象とした関連研究は、機能的に重要であると予想される多型について行った。その結果、最終的に-965G>A多型、Gアリル頻度のRA群における有意な増加(P=0.0005,OR=1.60)とc.-306C>T多型、TアリルのSLE群における有意な減少(P=0.005,OR=0.37)が検出された。RAと有意な関連を示したLIR1.EC01/.EC01とLIR5-965G間、SLEと有意な関連を示したLIR6.02とLIR5 c.-306T間にはそれぞれ有意な連鎖不平衡が認められた。そのため、それぞれの多型部位で検出された疾患との有意な関連が、遺伝的に独立なものか遺伝子座間関連解析により検討した。その結果、LIR5-965Gは独立にRA感受性に関与し、LIR1.EC01/.EC01もまたその可能性が高いことが示唆された。一方、SLE感受性においてはLIR5 c.-306Tが一義的な感受性遺伝子でありLIR6.02との関連は連鎖不平衡による二次的なものであることが示唆された。RAとの有意な関連が認められた多型によるリガンドとの結合能の変化の有無を調べるために、九州大学生体防御医学研究所ワクチン開発構造生物学分野研究室において研究に従事した。(5月21日6月3日、7月15日17日、8月18日20日)修士課程において検出したヒトCD19遺伝子の3'非翻訳領域繰り返し多型のうち疾患感受性アリルを持つB細胞におけるCD19発現量の解析とともにCD19とSLEを含む免疫異常との関連を確立するために強皮症における関連研究を行った。また、別の疾患感受性候補遺伝子としてヒトLIR遺伝子ファミリーに注目し、系統的な多型解析、関連研究を行った。1.日本人対照健常者11人、全身性エリテマトーデス(SLE)患者15人をSLEとの関連が検出されたヒトCD19遺伝子の3'非翻訳領域繰り返し多型c.*132(GT)_<15.18>アリル陽性群と陰性群に分け、末梢血から単離したB細胞におけるCD19mRNAレベルを定量的RT-PCRにより比較した。同様に日本人対照健常者15人、SLE患者7人を用いてCD19陽性B細胞におけるCD19タンパクレベルを定量的フローサイトメトリーにより比較した。その結果、得られるCD19 c.*132(GT)_<15.18>アリル陽性の検体数が少ないために有意差には達しなかったが、c.*132(GT)_<15.18>アリル陽性群におけるCD19発現低下の傾向が認められた。2.すでにCD19発現増強が報告されている強皮症を対象としたCD19多型の関連研究を行った。その結果、CD19遺伝子の3'非翻訳領域繰り返し多型とともにプロモーター多型-499G>Tとの関連が検出されたが、対照群と疾患群の出身地に地域差が認められたため、さらなる検討が必要であると考えられる。3.新たな関節リウマチ(RA)、SLEの疾患感受性候補遺伝子としてLIRファミリー遺伝子に注目し、そのうちLIR1の多型解析、関連研究を行った。日本人健常群18サンプルを用いて全遺伝子領域領域のダイレクトシークエンスを行った結果、非同義置換5箇所を含む17箇所の多型を検出した。そのうち、プロモーター領域から細胞外までの12箇所の多型は日本人31家系を用いた解析により主に3つのハプロタイプに分かれることが分かった。このうちひとつのディプロタイプ(LIR1.01/.01)が確立されたRA疾患感受性因子であるHLA-DRB1 shared epitope(SE)を持つかどうかで層別化して解析を行った結果、SE陰性群同士の比較においてRA患者で有意に増加していた(P=0.037)。SLEとの関連は認められなかった。前年度、RA、SLEを対象とした関連研究において検出したLIR1多型とRAとの有意な関連は、LIR1と連鎖不平衡にある他の近傍の遺伝子によるものである可能性も考えられた。そのため、隣接して存在するLIR6、LIR5遺伝子について、同様に多型解析、関連研究を行った。LIR6遺伝子の多型スクリーニングの結果、計24箇所のSNPsが日本人において主要な2種のハプロタイプを形成することが見出された。 | KAKENHI-PROJECT-02J61408 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02J61408 |
免疫系の複合疾患感受性遺伝子の同定に向けての研究 | このうち、マイナーハプロタイプLIR6.02陽性率のSLEにおける有意な減少が見出された(P=0.02,OR=0.64)。次に、LIR5について解析を行った。多型スクリーニングにより、計29箇所の多型が検出された。LIR1、LIR6遺伝子とは対照的に、日本人における主要なハプロタイプを決定できなかった。ゆえに、RA、SLEを対象とした関連研究は、機能的に重要であると予想される多型について行った。その結果、最終的に-965G>A多型、Gアリル頻度のRA群における有意な増加(P=0.0005,OR=1.60)とc.-306C>T多型、TアリルのSLE群における有意な減少(P=0.005,OR=0.37)が検出された。RAと有意な関連を示したLIR1.EC01/.EC01とLIR5-965G間、SLEと有意な関連を示したLIR6.02とLIR5 c.-306T間にはそれぞれ有意な連鎖不平衡が認められた。そのため、それぞれの多型部位で検出された疾患との有意な関連が、遺伝的に独立なものか遺伝子座間関連解析により検討した。その結果、LIR5-965Gは独立にRA感受性に関与し、LIR1.EC01/.EC01もまたその可能性が高いことが示唆された。一方、SLE感受性においてはLIR5 c.-306Tが一義的な感受性遺伝子でありLIR6.02との関連は連鎖不平衡による二次的なものであることが示唆された。RAとの有意な関連が認められた多型によるリガンドとの結合能の変化の有無を調べるために、九州大学生体防御医学研究所ワクチン開発構造生物学分野研究室において研究に従事した。(5月21日6月3日、7月15日17日、8月18日20日) | KAKENHI-PROJECT-02J61408 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02J61408 |
アルギニン・バソプレシンのメサンギウム細胞のサイトカイン誘導アポトーシスへの影響 | ラット培養メサンギウム細胞(MC)に部いて、アルギニン・バソプレシン(AVP)のサイトカイン誘導による一酸化窒素(nitric oxide : NO)産生への影響および、サイトカイン誘導アポトーシスへの影響を検討した。MCを培養し、lipopolysaccharide (LPS)とinterleukin-1β(IL-1β)を培養液中に添加すると、inducible-NO synthase (i-NOS)誘導による24時間後のNO産生増加が確認され、アポトーシスも増加した。これに対し、AVPの同時添加は濃度依存性にNO産生を抑制し、アポトーシスの増加も抑制された。更に、AVPのV1レセプター阻害剤をAVPと同時添加するとNO産生抑制効果とアポトーシス発現抑制効果は解除された。一方、オキシトシン・レセプター阻害剤の同時添加ではAVPのNO産生抑制効果とアポトーシス発現抑制効果は解除されなかった。これらよりAVPの作用は、V1-レセプターを介して抑制すると考えられた。また、LPSとIL-1β、AVPを同時に添加し、更に、C-キナーゼ系阻害薬のcalphostin Cやstaurosprineを添加するとAVPのNO産生抑制効果は解除され、アポトーシス発現抑制効果も解除された。AVPのNO産生抑制に関する細胞内情報伝達系に関して、C-キナーゼ系の関与が示唆された。これらよりMCにおいてAVPは、IL-1βおよびLPS刺激によるアポトーシス誘導をNO産生抑制を介して間接的に抑制すると考えられ、その機序の一つとしてC-キナーゼ系の関与が考えられた。ラット培養メサンギウム細胞(MC)において、アルギニン・バソプレシン(AVP)のサイトカイン誘導による一酸化窒素(nitric Oxide : NO)産生への影響および、サイトカイン誘導アポトーシスへの影響を検討した。MCを培養し、lipopolysaccharide(LPS)とinterleukin-1β(IL-1β)を培養液中に添加すると、inducible-NO synthase(i-NOS)誘導による24時間後のNO産生増加が確認された。これに対し、AVPの同時添加は濃度依存性にNO産生を抑制した。また、LPSとIL-1βを培養液中に添加すると、非添加時に比べMCのアポトーシスも増加した。これに対し、AVPまたはL-NMMAを同時添加すると、アポトーシスの増加は抑制された。これらからNOのアポトーシスへの関与が示唆された。またMCにおけるAVPの、IL-1βとLPSの刺激によるアポトーシス誘導の抑制機序としてNO産生抑制を介している可能性が示唆された。更に、AVPのV1レセプター阻害剤である、[1-(β-mercapto-β,β-cyclopen tamethylene propionic acid),2-(O-Me)Tyr^2,Arg^8]vasopressinを同時添加するとAVPのNO産生抑制効果とアポトーシス発現抑制効果は解除された。これに対し、LPSとIL-1β、AVPに、オキシトシン・レセプター阻害剤の[d(CH_2)_5,Tyr(Me)^2,Orn^8]vasotocinを同時添加するとAVPのNO産生抑制効果とアポトーシス発現抑制効果は解除されなかった。これらよりMCにおいてAVPは、IL-1βおよびLPS刺激によるアポトーシス誘導をV1-レセプターを介しNO依存性に抑制する可能性が示唆された。ラット培養メサンギウム細胞(MC)において、アルギニン・バソプレシン(AVP)のサイトカイン誘導による一酸化窒素(nitric oxide : NO)産生への影響およびアポトーンス発現への影響を引き続き検討した。ラットよリsieving methodにより糸球体を単離した後MCを培養した。lipopolysaccharide(LPS)とinterleukin-1β(IL-1β)を培養液中に添加し24時間後のNO産生増加を確認し、これを継代培養し研究に使用した。前回AVPの同時添加によリサイトカイン誘導性NO産生の抑制とアポトーシス発現の抑制を報告した。今回はこのAVPのアポトーシス発現抑制機序としてNO産生抑制を介した間接的なものかあるいは直接アポトーシス誘導を抑制する機序が存在するのかに関してさらに検討した。MCにおいてサイトカインのかわりに、外因性NO供与剤であるsodium nitropursside(SNP)を培養液に添加すると、24時間後のNO産生増加とアポトーシス発現が認められた。これに対し、AVPを同時添加してもNO産生抑制効果とアポトーシス発現抑制効果は認められなかった。これらよりMCにおいてAVPは、IL-1βおよびLPS刺激によるアポトース誘導をNO産生抑制を介して間接的に抑制することが示唆された。またAVPがどのようにしてサイトカイン誘導によるNO産生を抑制するのかについてはいまだに不明な点か多く、今後さらに検討が必要と考えられた。ラット培養メサンギウム細胞(MC)に部いて、アルギニン・バソプレシン(AVP)のサイトカイン誘導による一酸化窒素(nitric oxide : NO)産生への影響および、サイトカイン誘導アポトーシスへの影響を検討した。MCを培養し、lipopolysaccharide (LPS)とinterleukin-1β(IL-1β)を培養液中に添加すると、inducible-NO synthase (i-NOS)誘導による24時間後のNO産生増加が確認され、アポトーシスも増加した。これに対し、AVPの同時添加は濃度依存性にNO産生を抑制し、アポトーシスの増加も抑制された。 | KAKENHI-PROJECT-14770554 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14770554 |
アルギニン・バソプレシンのメサンギウム細胞のサイトカイン誘導アポトーシスへの影響 | 更に、AVPのV1レセプター阻害剤をAVPと同時添加するとNO産生抑制効果とアポトーシス発現抑制効果は解除された。一方、オキシトシン・レセプター阻害剤の同時添加ではAVPのNO産生抑制効果とアポトーシス発現抑制効果は解除されなかった。これらよりAVPの作用は、V1-レセプターを介して抑制すると考えられた。また、LPSとIL-1β、AVPを同時に添加し、更に、C-キナーゼ系阻害薬のcalphostin Cやstaurosprineを添加するとAVPのNO産生抑制効果は解除され、アポトーシス発現抑制効果も解除された。AVPのNO産生抑制に関する細胞内情報伝達系に関して、C-キナーゼ系の関与が示唆された。これらよりMCにおいてAVPは、IL-1βおよびLPS刺激によるアポトーシス誘導をNO産生抑制を介して間接的に抑制すると考えられ、その機序の一つとしてC-キナーゼ系の関与が考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-14770554 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14770554 |
植物におけるフェニル酢酸の合成経路とオーキシンとしての生理機能の解明 | オーキシンは植物の成長や分化の制御において非常に重要な役割をもつ植物ホルモンの一種である。天然オーキシンの一種であるフェニル酢酸(PAA)の生合成経路とその生理的役割はまだ解明されていない。本研究では、マメ科やコケ植物、アブラナ科のモデル実験植物を使ってPAAの生合成に関与する可能性のある候補遺伝子の欠損変異体を作成し、これらを用いてPAAの生合成や生理的役割、微生物との相互作用における役割を明らかにする。コケ植物のヒメツリガネゴケを用いて、PAAの生合成に関与する候補遺伝子をCRISPR/Cas9法でノックアウトするため、それに必要なコンストラクトの作成を行った。現在、そのコンストラクトを用いてヒメツリガネゴケの形質転換を進めている。また、マメ科植物のMedicago truncatulaにおいても、PAAの生合成に関与する候補遺伝子をCRISPR/Cas9法でノックアウトするため、それに必要なコンストラクトの作成を進めている。シロイヌナズナにおいてインドール酢酸(IAA)とPAAの生理的役割の差を明らかにするため、これらのオーキシン処理により誘導される遺伝子をRNAseqで網羅的に解析する実験を進めた。異なるタイムポイントでオーキシンをシロイヌナズナに処理し、それぞれのサンプルからmRNAを抽出した。これらのサンプルを使ってRNAseqを行い、現在そのデータ解析を進めている。また、シロイヌナズナにおいて、PAAの生合成に関与する可能性のある候補遺伝子のT-DNA挿入変異体の整備を進めている。ジェノタイピングによりホモ系統の選抜を行った。研究計画通り、シロイヌナズナおよびコケ植物とマメ科植物のモデル実験植物を使って、PAAの生合成研究を行うための研究基盤の整備を進めた。CRISPR/Cas9法によりノックアウト変異体を作成するために、これに用いるコンストラクトの作成を予定通り進めることができた。また、形質転換に使用するコケ植物とマメ科植物の栽培法も新たに実験室で確立することができた。次年度に形質転換を行う予定である。シロイヌナズナを用いてIAAとPAA処理により誘導される遺伝子の違いを解析するため、液体培養中でのオーキシン処理実験を行った。異なるタイムポイントで、微生物の感染を抑えながら多数のオーキシン処理サンプルを作成することに成功した。これらを使ってRNAseqデータを集め、順調に解析を進めている。研究計画に従って、ヒメツリガネゴケとMedicago truncatulaを用いて形質転換体の作成を行う。また、オーキシン代謝物分析を行うため、ぞれぞれの野生型の系統を使って各代謝物の予備分析を行う。その後、PAA生合成の候補遺伝子の欠損変異体を使ってオーキシン代謝物分析を行い、候補遺伝子とPAA量との関係性を調べる。シロイヌナズナの実験において、IAAとPAA処理により発現量に有意差が見られる遺伝子を選抜し、2つのオーキシンによる遺伝子制御の違いを調べる。また、PAA生合成候補遺伝子のノックアウト変異体の表現型とオーキシン代謝物分析を行い、候補遺伝子とPAA量の関係性を調べる。オーキシンは植物の成長や分化の制御において非常に重要な役割をもつ植物ホルモンの一種である。天然オーキシンの一種であるフェニル酢酸(PAA)の生合成経路とその生理的役割はまだ解明されていない。本研究では、マメ科やコケ植物、アブラナ科のモデル実験植物を使ってPAAの生合成に関与する可能性のある候補遺伝子の欠損変異体を作成し、これらを用いてPAAの生合成や生理的役割、微生物との相互作用における役割を明らかにする。コケ植物のヒメツリガネゴケを用いて、PAAの生合成に関与する候補遺伝子をCRISPR/Cas9法でノックアウトするため、それに必要なコンストラクトの作成を行った。現在、そのコンストラクトを用いてヒメツリガネゴケの形質転換を進めている。また、マメ科植物のMedicago truncatulaにおいても、PAAの生合成に関与する候補遺伝子をCRISPR/Cas9法でノックアウトするため、それに必要なコンストラクトの作成を進めている。シロイヌナズナにおいてインドール酢酸(IAA)とPAAの生理的役割の差を明らかにするため、これらのオーキシン処理により誘導される遺伝子をRNAseqで網羅的に解析する実験を進めた。異なるタイムポイントでオーキシンをシロイヌナズナに処理し、それぞれのサンプルからmRNAを抽出した。これらのサンプルを使ってRNAseqを行い、現在そのデータ解析を進めている。また、シロイヌナズナにおいて、PAAの生合成に関与する可能性のある候補遺伝子のT-DNA挿入変異体の整備を進めている。ジェノタイピングによりホモ系統の選抜を行った。研究計画通り、シロイヌナズナおよびコケ植物とマメ科植物のモデル実験植物を使って、PAAの生合成研究を行うための研究基盤の整備を進めた。CRISPR/Cas9法によりノックアウト変異体を作成するために、これに用いるコンストラクトの作成を予定通り進めることができた。また、形質転換に使用するコケ植物とマメ科植物の栽培法も新たに実験室で確立することができた。次年度に形質転換を行う予定である。シロイヌナズナを用いてIAAとPAA処理により誘導される遺伝子の違いを解析するため、液体培養中でのオーキシン処理実験を行った。異なるタイムポイントで、微生物の感染を抑えながら多数のオーキシン処理サンプルを作成することに成功した。これらを使ってRNAseqデータを集め、順調に解析を進めている。研究計画に従って、ヒメツリガネゴケとMedicago truncatulaを用いて形質転換体の作成を行う。 | KAKENHI-PROJECT-18F18708 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18F18708 |
植物におけるフェニル酢酸の合成経路とオーキシンとしての生理機能の解明 | また、オーキシン代謝物分析を行うため、ぞれぞれの野生型の系統を使って各代謝物の予備分析を行う。その後、PAA生合成の候補遺伝子の欠損変異体を使ってオーキシン代謝物分析を行い、候補遺伝子とPAA量との関係性を調べる。シロイヌナズナの実験において、IAAとPAA処理により発現量に有意差が見られる遺伝子を選抜し、2つのオーキシンによる遺伝子制御の違いを調べる。また、PAA生合成候補遺伝子のノックアウト変異体の表現型とオーキシン代謝物分析を行い、候補遺伝子とPAA量の関係性を調べる。 | KAKENHI-PROJECT-18F18708 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18F18708 |
上皮組織の硬度化を司るタンパク質架橋酵素反応の統合的分子基盤 | 本研究は、体表などを覆ったり空間に面したりする組織である上皮組織の硬度化について、生体内で多彩な働きを担う「タンパク質架橋化酵素・トランスグルタミナーゼ(以下TGase)」がどのように貢献するのか、あるいは異常状態をもたらすのか、という点を中心にいくつかの動物・細胞のシステムを用いて明らかにしようとするものである。TGaseは、基質の特定のグルタミン残基とリジン残基との間に、カルシウムイオン依存的に架橋を形成する反応を触媒する。本研究課題で対象とする組織は、皮膚表皮、肝臓および腎臓を中心とした動物組織である。細胞内で、硬度化を構築するのに必要なTGaseで架橋されるタンパク質群を明らかにするために、次のようなアプローチをした。我々はTGase群に特異的に反応する基質ペプチドを有しているが、これはグルタミン残基側の基質として、活性検出や基質探索に有用であるため、本研究課題でも多く活用した。平成30年度は、表皮形成を模倣できるヒト初代培養細胞株を用いて、活性の変動パターンを明らかにし、TG1とTG3が同時に発現して、後者が前者よりも遅く発現してくることを示した。あわせて、表皮細胞での基質探索を試みた。また、より探索の正確性を増すために、ネガティブコントロールとしての、TG1またはTG3を遺伝子欠損させた表皮細胞株の作製も進めている。また、腎臓と肝臓においては、正常状態の腎臓での基質探索を完了した。これをもとに、線維症の進行に伴う基質(とその産物)の変動を追跡できる基盤が完了した。また、この線維症進行に伴い細胞死や炎症に向かって進んだ場合のTGaseの関与を細胞株を用いて検討した。一方、モデル生物としてのメダカについてはTGase群の欠損した個体を有しており、このうち表皮のTGaseに相当する類似遺伝子変異体を用いて、硬度化との関わりを調べるための予備的な観察行った。我々が有する高反応性基質ペプチドを活用して、上皮組織での硬度化の対象として、昨年度は表皮、腎臓、肝臓を対象とし、正常な段階での表皮並びに腎臓での基質探索を行った。表皮については、初代培養で表皮形成を再現できるシステムを活用し、TG1およびTG3の活性が表皮分化のどの段階で出現するのかを明確にするとともに、TG1, TG3をsiRNAで阻害した場合の表皮角化形成への影響をこれまでの形態観察に加えて(論文業績FEBS J. 2019)、角化した表層タンパク複合体(cornified envelop)についても調べた。すでに行っていた条件をより詳細に検討し、TG1が発現しない表皮細胞は、TG3の発現抑制に比べてより重篤な影響が表れることを見出した。これはノックアウトマウスやヒト疾患での重篤さと相関する。また、初代表皮培養細胞での基質探索を標識基質ペプチドと質量分析を用いて行った。腎臓については組織自体を硬度化する線維症に伴う基質候補を明らかにすることを最終目的に、初年度は正常な状態での基質探索を行った(ABB 2018)。さらに線維化を伴う硬度化を促進する過程では、上皮細胞においては、細胞外マトリクスタンパク質を細胞外に分泌する線維芽細胞へと変換(EMT)が生じる。硬度化に結び付くこの現象中でのTGase反応が関与する可能性を見出しており、どのような変化がこの現象に関係するのか興味が持たれる。モデル生物としてのメダカについては、表皮細胞に異常をきたした個体を中心に、塩濃度の高い高浸透圧環境の中は稚魚の生存率が下がることを見出した(BBB 2018)。これは浸透圧など外液環境を鋭敏に感じるシステムの可能性があり、今後硬度化を促進する分子の探索系に発展させられる。今年度も、表皮・腎臓・肝臓の上皮組織に相当する領域を対象に、タンパク質架橋化反応が硬度化に及ぼす影響を研究する。これまで標識して用いてきた高反応性基質ペプチドの活用に加え、各組織由来の細胞株を用いて、酵素が欠損された細胞株を樹立して比較する、というアプローチも行う。酵素遺伝子の欠損方法はゲノム編集法を細胞レベルで用いて行い、また逆に誘導的に酵素を発現する細胞株の確立にも挑戦したい。すでにこれまでsiRNAでの結果を得ているが、表皮細胞においてTG1(and/or)TG3を自在に欠損させて、立体培養系において表皮の硬度化にどのような影響を与えるかを解析したい。これはまた、基質探索を行うにあたって、これら欠損株をネガティブコントロールとすることで、より正確な基質群の同定や、TG1・TG3の役割分担を明らかにできる。腎臓および肝臓については細胞株での解析を通じて、架橋基質の候補がすでに得られているので、実際にin vivo, in vitroにおいて硬度化に影響するのかどうかを、架橋産物を再現作製して、これを細胞に与えた際の効果や細胞内での挙動を解析する。また由来する細胞株を用いて、EMTに対するタンパク質架橋化酵素の関与を調べる。モデル生物としてのメダカについては、表皮に存在するTGaseの欠損体を用いて、表皮の回復・硬度化を復帰させる薬剤の探索に向け、最も感度良く野生型と差のでる条件を探す。また、複数種のタンパク質架橋化酵素群の欠損変異体を得ているのでこれらを掛け合わせる(二重変異体)ことも試みる。以上のアプローチにより、表皮・腎臓・肝臓で共通する硬度化に関わる因子、これが反応で修飾される産物、産物が細胞内外で与える挙動についてより情報を収集したい。 | KAKENHI-PROJECT-18H02134 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H02134 |
上皮組織の硬度化を司るタンパク質架橋酵素反応の統合的分子基盤 | 本研究は、体表などを覆ったり空間に面したりする組織である上皮組織の硬度化について、生体内で多彩な働きを担う「タンパク質架橋化酵素・トランスグルタミナーゼ(以下TGase)」がどのように貢献するのか、あるいは異常状態をもたらすのか、という点を中心にいくつかの動物・細胞のシステムを用いて明らかにしようとするものである。TGaseは、基質の特定のグルタミン残基とリジン残基との間に、カルシウムイオン依存的に架橋を形成する反応を触媒する。本研究課題で対象とする組織は、皮膚表皮、肝臓および腎臓を中心とした動物組織である。細胞内で、硬度化を構築するのに必要なTGaseで架橋されるタンパク質群を明らかにするために、次のようなアプローチをした。我々はTGase群に特異的に反応する基質ペプチドを有しているが、これはグルタミン残基側の基質として、活性検出や基質探索に有用であるため、本研究課題でも多く活用した。平成30年度は、表皮形成を模倣できるヒト初代培養細胞株を用いて、活性の変動パターンを明らかにし、TG1とTG3が同時に発現して、後者が前者よりも遅く発現してくることを示した。あわせて、表皮細胞での基質探索を試みた。また、より探索の正確性を増すために、ネガティブコントロールとしての、TG1またはTG3を遺伝子欠損させた表皮細胞株の作製も進めている。また、腎臓と肝臓においては、正常状態の腎臓での基質探索を完了した。これをもとに、線維症の進行に伴う基質(とその産物)の変動を追跡できる基盤が完了した。また、この線維症進行に伴い細胞死や炎症に向かって進んだ場合のTGaseの関与を細胞株を用いて検討した。一方、モデル生物としてのメダカについてはTGase群の欠損した個体を有しており、このうち表皮のTGaseに相当する類似遺伝子変異体を用いて、硬度化との関わりを調べるための予備的な観察行った。我々が有する高反応性基質ペプチドを活用して、上皮組織での硬度化の対象として、昨年度は表皮、腎臓、肝臓を対象とし、正常な段階での表皮並びに腎臓での基質探索を行った。表皮については、初代培養で表皮形成を再現できるシステムを活用し、TG1およびTG3の活性が表皮分化のどの段階で出現するのかを明確にするとともに、TG1, TG3をsiRNAで阻害した場合の表皮角化形成への影響をこれまでの形態観察に加えて(論文業績FEBS J. 2019)、角化した表層タンパク複合体(cornified envelop)についても調べた。すでに行っていた条件をより詳細に検討し、TG1が発現しない表皮細胞は、TG3の発現抑制に比べてより重篤な影響が表れることを見出した。これはノックアウトマウスやヒト疾患での重篤さと相関する。また、初代表皮培養細胞での基質探索を標識基質ペプチドと質量分析を用いて行った。腎臓については組織自体を硬度化する線維症に伴う基質候補を明らかにすることを最終目的に、初年度は正常な状態での基質探索を行った(ABB 2018)。さらに線維化を伴う硬度化を促進する過程では、上皮細胞においては、細胞外マトリクスタンパク質を細胞外に分泌する線維芽細胞へと変換(EMT)が生じる。硬度化に結び付くこの現象中でのTGase反応が関与する可能性を見出しており、どのような変化がこの現象に関係するのか興味が持たれる。 | KAKENHI-PROJECT-18H02134 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H02134 |
TGF-βによるEMTを介した癌細胞の浸潤・転移制御機構の解析 | マウス乳腺上皮細胞を用いた解析から、TGF-βはZEB1とSIP1を介してESRPの発現を抑制し、種々の遺伝子の選択的スプライシングを上皮型から間葉系型へ変化させることが明らかとなった。ヒト乳癌細胞パネルにおいてZEB1とSIP1、ESRPの発現は負に相関し、ESRPの発現が高い乳癌細胞株はLuminal型に、ESRPの発現が低い乳癌細胞株はBasal型に分類された。このことからESRPの発現は乳癌細胞の悪性度と相関し、ESRPの発現低下に伴う遺伝子の選択的スプライシングの変化が癌の悪性化に重要な役割を果たしていることが示唆された。また、乳癌患者の組織検体の遺伝子発現データセットを用いた解析から、肺転移の認められた症例では肺転移の認められなかった症例よりもESRPの発現が低い傾向が認められた。さらに、ESRPの発現量が低い患者群では発現量が高い患者群と比較して無(肺)転移生存率が低く、ESRPの発現低下が乳癌患者の予後不良因子として有用なマーカーとなりうることが示唆された。そこで、ESRPの発現が癌の悪性化に及ぼす影響を調べるためにESRPの過剰発現を行ったところ、ESRPを過剰発現させた乳癌細胞は線維芽細胞様の形態から敷石状の形態へと変化し、E-cadherinのタンパク量が上昇した。これまでZEB1とSIP1はE-cadherinのプロモーター上に直接結合することでE-cadherinの転写を抑制することが知られていたが、今回の結果から、ESRPの発現抑制を介してもE-cadherinの発現を調節していることが明らかとなった。現在、RNA-sequenceによりESRPの下流で選択的スプライシングが変化する遺伝子の同定を進めている。EMTに伴いスプライシングが変化する遺伝子の同定やその制御機構の解明は、EMTを標的とした新規治療戦略の開発へとつながる可能性がある。TGF-β誘導性EMTに伴う選択的スプライシングの変化を網羅的に調べるため、NMuMG(マウス乳腺上皮)細胞を用いて、無刺激とTGF-β刺激したサンプルとでExon arrayを行った。すると、約7000個の遺伝子がTGF-β刺激により有意な選択的スプライシングの変化を受けることがわかった。その中には、ESRP(epithelialsplicing regulatory protein)によりスプライシングが制御されることが報告されている遺伝子がいくつか含まれていた。そこでTGF-β刺激によるESRPの発現変動を解析したところ、TGF-βはSmad依存的な経路でESRPの発現を減少させることがわかった。ヒト乳癌細胞株23種類を用いてESRPの発現を比較したところ、その発現量はE-cadherinの発現と正の相関を示していた。そこで、E-cadherinの転写を制御するEMT関連転写因子の発現との比較を行ったところ、ZEB1とSIP1の発現と負の相関を示すことがわかった。そこで、ZEB1とSIP1の過剰発現やノックダウンを行いTGF-βによるESRPの発現変動を解析した結果、TGF-βはZEB1とSIP1を介してESRPの発現を抑制することがわかった。また、ESRPをほとんど発現していない細胞株は、免疫不全マウスに移植すると高い浸潤能を示す報告がなされており、ESRPの発現減少は癌の悪性化につながる可能性が示唆された。ESRPの過剰発現の実験から、さらに興味深い結果が得られた。ESRPを過剰発現させた細胞では、TGF-βによるE-cadherinの発現減少が抑制された。一方で、ESRPをノックダウンしてもE-cadherinの発現には影響が見られなかった。このことは、ESRPはE-cadherinの転写を直接抑制してはおらず、何か他の因子のスプライシングを介してE-cadherinの発現を制御する可能性を示唆している。E-cadherinの発現調節への選択的スプライシングの関与はこれまで報告が無く、TGF-βによる新規のEMT誘導機構の解明につながると期待される。TGF-β誘導性EMTと選択的スプライシングの変化の関係を解明することを目的として、研究を継続した。これまでに、NMuMG(マウス乳腺上皮)細胞におけるノックダウンや過剰発現の実験から、TGF-βはZEB1とSIP1の発現を介してESRP2(epithelial splicing regulatory protein 2)の発現を抑制することを明らかにしている。そこで、ZEB1とSIP1に対する抗体を用いてChromatin IPを行った。その結果、ZEB1とSIP1がESRP2のプロモーター上にリクルートされていることを確認した。そこで、内在性のZEB1とSIP1の発現が高く、ESRPの発現が低いヒト乳癌細胞株(MDA-MB-231細胞、BT549細胞)を用いてZEB1とSIP1のノックダウンを行ったところ、ESRPの発現上昇が認められ、NMuMG(マウス乳腺上皮)細胞同様、ヒト乳癌細胞株においてもZEB1とSIP1によるESRP抑制機構が働いていることを明らかにした。さらに、MDA-MB-231細胞にESRPを過剰発現させ、colony formation assayを行った結果、コロニー形成が抑制されたことから、ESRPを過剰発現させた細胞では足場非依存的増殖能が低下することがわかった。また、ESRPを過剰発現させるとE-cadherinの発現が上昇したことから、ESRPは細胞にMET(mesenchymal-epithelial transition)様の変化を誘導することがわかった。 | KAKENHI-PROJECT-09J05735 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09J05735 |
TGF-βによるEMTを介した癌細胞の浸潤・転移制御機構の解析 | このことは、スプライシング制御因子とEMTとの関与を示唆する結果であり、TGF-βによる新規のEMT誘導機構の解明につながると期待される。マウス乳腺上皮細胞を用いた解析から、TGF-βはZEB1とSIP1を介してESRPの発現を抑制し、種々の遺伝子の選択的スプライシングを上皮型から間葉系型へ変化させることが明らかとなった。ヒト乳癌細胞パネルにおいてZEB1とSIP1、ESRPの発現は負に相関し、ESRPの発現が高い乳癌細胞株はLuminal型に、ESRPの発現が低い乳癌細胞株はBasal型に分類された。このことからESRPの発現は乳癌細胞の悪性度と相関し、ESRPの発現低下に伴う遺伝子の選択的スプライシングの変化が癌の悪性化に重要な役割を果たしていることが示唆された。また、乳癌患者の組織検体の遺伝子発現データセットを用いた解析から、肺転移の認められた症例では肺転移の認められなかった症例よりもESRPの発現が低い傾向が認められた。さらに、ESRPの発現量が低い患者群では発現量が高い患者群と比較して無(肺)転移生存率が低く、ESRPの発現低下が乳癌患者の予後不良因子として有用なマーカーとなりうることが示唆された。そこで、ESRPの発現が癌の悪性化に及ぼす影響を調べるためにESRPの過剰発現を行ったところ、ESRPを過剰発現させた乳癌細胞は線維芽細胞様の形態から敷石状の形態へと変化し、E-cadherinのタンパク量が上昇した。これまでZEB1とSIP1はE-cadherinのプロモーター上に直接結合することでE-cadherinの転写を抑制することが知られていたが、今回の結果から、ESRPの発現抑制を介してもE-cadherinの発現を調節していることが明らかとなった。現在、RNA-sequenceによりESRPの下流で選択的スプライシングが変化する遺伝子の同定を進めている。EMTに伴いスプライシングが変化する遺伝子の同定やその制御機構の解明は、EMTを標的とした新規治療戦略の開発へとつながる可能性がある。 | KAKENHI-PROJECT-09J05735 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09J05735 |
膵癌に対する癌抗原ペプチドワクチンと抗癌剤併用療法の開発 | 本研究においては、癌免疫療法と化学療法を組み合わせることにより、臨床効果のある膵癌治療法の開発を目指した。癌ペプチドワクチン療法に関する論文を研究期間中に2編発表した。一つはMUC1ペプチドを用いた第I相臨床試験をまとめた。9例を対象とし、MUC1ペプチドを300から3,000mgの範囲で投与量をふり、投与する免疫療法である。Primary endpointである有害事象としては軽度の投与局所における発赤・腫脹を認めた。Secondary endpointである治療効果としては、血液中の抗MUCIIgG抗体増加と治療効果との間に相関する傾向を認め、stable disease(SD)を8例中1例に認めた。一つは癌抗原ペプチドワクチン療法の第I相臨床試験をまとめた。11例を対象とした。患者末梢血単核球のペプチドに対する反応性をスクリーニングし、HLA-A2症例では16種類、HA-A24症例では14種類のペプチドの中から、患者に適合したもの最大4種類を選択・投与するテーラーメイド型免疫療法である。Primary endpointである有害事象としては投与局所の発赤・腫脹を7例に認めた。Secondary endpointである免疫能の検討ではペプチド特異的CTL増加を8例中4例に、ペプチド特異的IgG抗体増加を10例中4例に認めた。臨床効果として3回以上ワクチン投与を受けた10症例の6ヶ月生存率は80%で、12ヶ月生存率は20%であった。これらの研究成果に基づき、癌抗原ペプチドワクチン療法とGemcitabine(GEM)による抗癌剤併用療法の第I相臨床試験を施行した。癌抗原ペプチド量を1mg、2mg、3mgとレベルを設定した。13例に施行し有害事象は認めなかった。ペプチドは3mgが推奨用量であることが確認された。今後は癌抗原ペプチドワクチン療法とGEMによる抗癌剤併用療法の第II相臨床試験を計画中である。本研究においては、癌免疫療法と化学療法を組み合わせることにより、臨床効果のある膵癌治療法の開発を目指した。癌ペプチドワクチン療法に関する論文を研究期間中に2編発表した。一つはMUC1ペプチドを用いた第I相臨床試験をまとめた。9例を対象とし、MUC1ペプチドを300から3,000mgの範囲で投与量をふり、投与する免疫療法である。Primary endpointである有害事象としては軽度の投与局所における発赤・腫脹を認めた。Secondary endpointである治療効果としては、血液中の抗MUCIIgG抗体増加と治療効果との間に相関する傾向を認め、stable disease(SD)を8例中1例に認めた。一つは癌抗原ペプチドワクチン療法の第I相臨床試験をまとめた。11例を対象とした。患者末梢血単核球のペプチドに対する反応性をスクリーニングし、HLA-A2症例では16種類、HA-A24症例では14種類のペプチドの中から、患者に適合したもの最大4種類を選択・投与するテーラーメイド型免疫療法である。Primary endpointである有害事象としては投与局所の発赤・腫脹を7例に認めた。Secondary endpointである免疫能の検討ではペプチド特異的CTL増加を8例中4例に、ペプチド特異的IgG抗体増加を10例中4例に認めた。臨床効果として3回以上ワクチン投与を受けた10症例の6ヶ月生存率は80%で、12ヶ月生存率は20%であった。これらの研究成果に基づき、癌抗原ペプチドワクチン療法とGemcitabine(GEM)による抗癌剤併用療法の第I相臨床試験を施行した。癌抗原ペプチド量を1mg、2mg、3mgとレベルを設定した。13例に施行し有害事象は認めなかった。ペプチドは3mgが推奨用量であることが確認された。今後は癌抗原ペプチドワクチン療法とGEMによる抗癌剤併用療法の第II相臨床試験を計画中である。切除不能膵癌に対する臨床効果のある治療法の開発を目指して癌ペプチドワクチン療法とGemcitabine(GEM)による抗癌剤併用療法の第I相試験を施行している。本癌ペプチドワクチン療法は68種類の中から患者に適合したものを選択するテーラーメイド型である。本治療による免疫能の検討は、投与ペプチドに対する細胞性免疫を末梢血よりペプチド刺激で誘導したペプチド特異的細胞障害性Tリンパ球の抗腫瘍活性をIFN-γアッセイにて測定・検討し、投与ペプチドに対する液性免疫を血中のペプチド特異的抗体価をELISAにて測定・検討する。対象は、1)切除不能及び術後再発膵癌患者であること、2)HLA-A2もしくは-A24を有し、使用する癌ペプチドワクチンに対してペプチド特異的末梢血リンパ球の反応または特異的抗ペプチドIgG抗体を認めること、3)十分な臓器機能を有し、文書でinformed consentが得られていること、などの条件を満たした症例である。Primary endpointは安全性で、化学療法第I相試験に準拠し、外来治療を念頭にしてNCI-CTCのgrade3以上の非血液毒性および免疫療法を併用するためgrade2以上の血液毒性をDLTと定義し、毒性を評価する。Secondary endpointは臨床効果および投与ペプチドに対する細胞性免疫および液性免疫の検討である。投与方法はGEM点滴30分後に、患者末梢血の免疫反応に応じて事前に選択した最大4種類のペプチドワクチンを大腿部に皮下投与した。GEMは1000mg/m^2、週1回の3投1休を1クールとして、2クール8週を1コースとした。ペプチドワクチンは用量設定:1mg/ペプチド、2mg/ペプチド、3mg/ペプチドの毎週投与を行い、8週間投与を1コースとした。これまで1例が登録された。 | KAKENHI-PROJECT-16591324 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16591324 |
膵癌に対する癌抗原ペプチドワクチンと抗癌剤併用療法の開発 | 有害事象はワクチン投与部発赤のみであった。臨床効果はPDであった。今後症例を重ねて検討していく。本研究では免疫療法として、癌ペプチドワクチン療法を選択した。根拠となる癌ペプチドワクチン療法に関する論文を研究期間中に2編発表した。一つはペプチドワクチンとしてMUC1ペプチドを用いた第I相臨床試験をまとめた。切除不能、再発膵・胆管癌症例9例を対象とし、MUC1ペプチドを300から3,000mgの範囲で投与量をふり、14日ごとに投与する免疫療法である。Primary endpointである有害事象としては軽度の投与局所における発赤・腫脹を認めた。Secondary endpointである治療効果としては、血液中の抗MUC1 IgG抗体増加と治療効果との間に相関する傾向を認め、stable disease (SD)を8例中1例に認めた。一つは本研究で選択した癌ペプチドワクチン療法の第I相臨床試験をまとめた。切除不能、再発膵癌症例11例を対象とした。この論文での癌ペプチドワクチン療法は、患者末梢血単核球のペプチドに対する反応性をスクリーニングし、HLA-A2症例では16種類、HLA-A24症例では14種類のペプチドの中から、患者に適合したもの最大4種類を選択し、14日ごとに投与するテーラーメイド型免疫療法である。Primary endpointである有害事象としては、血液毒性など重篤な事象は認めなかったが、頻度の多い事象として投与局所の発赤・腫脹を7例に認めた。Secondary endpointである免疫能の検討ではペプチド特異的CTL増加を8例中4例に、ペプチド特異的IgG抗体増加を10例中4例に認めた。臨床効果として、SDが3例で、3回以上ワクチン投与を受けた10症例の6ヶ月生存率は80%で、12ヶ月生存率は20%であった。これらの研究成果に基づき、切除不能膵癌に対する臨床効果のある治療法の開発を目指して癌ペプチドワクチン療法とGemcitabine (GEM)による抗癌剤併用療法の臨床試験を立案した。本研究で使用した癌ペプチドワクチンは、前述論文の30種類から68種類に増やし、その中から患者に適合したものを選択するようにした。本研究は現在、有害事象および免疫能や臨床効果などを検証中であるが、癌ペプチドワクチン療法単独より臨床効果が期待できるが、今後更なる検討を要する。 | KAKENHI-PROJECT-16591324 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16591324 |
教員人事・評価制度「有効モデル」構築のための国際比較実証研究 | 本年度は、中国における調査研究を中心に行った。中国における教員人事・異動制度は、総括的には都市部の優秀な教員を農村部や条件の悪い学校へ異動させようとする傾向を有している。特に近年、教育行政部門の強い指導によりこの傾向が加速されているが、未だ定数の空き状況をもとに異動させる旧来の制度枠組みが強固に残り、意図通りの異動が難しい側面も残っている。とはいえ、異動と評価が明確に結びつけられるようになったため、教員個人にとっては、異動が職務進級の必須条件とされており、そのことは異動の円滑さを促進する要因の一つとなっている。加えて、近年、省内各県に対する行政評価(均衡的発展評価)の評価項目に定期異動政策の有無が加えられたことは、今後の人事異動政策の進展に一定の影響を及ぼし得ることを示唆している。また、研究期間全体を通して明らかとなった点として、比較対象国米国においては、従来、地方分権的特色の下、教員評価も伝統的に各州あるいは各学区において多様であったが、この傾向が近年連邦政府による積極的関与の下、変化しつつあることである。公教育全体に対するアカウンタビリティ追求の機運とともに、教育スタンタンダードの作成や統一的標準化テストの実施など、連邦主導の教育政策が強く押し進められ、そのことが教員評価制度にも大きく影響している。そのため、教員評価においても、専門職としての評価基準の創設や実践的成果を評価するための児童生徒の学力スコアの活用等が積極的に導入されるようになってきた。教員の能力をどう評価するかという点において、科学的、実証的観点は重要ではあるが、近年米国では、アウトカムの側面が偏重され過ぎ、教員の能力評価を教室内における教科指導、とりわけ英語や数学などのテスト科目の成果に矮小化される傾向がある点は看過できない課題として指摘しなければならない。研究初年度であった平成28年度は、申請研究課題に関係する関連文献の渉猟及び入手、さらには日本国内における対象事例の抽出とその検討を行った。対象事例としては、H県を取り上げ、当該県における人事評価制度が地方公務員法の改正により、どのように改正されているのか、そのシステムの実態を分析した。その結果、それまで当該県独自で展開されていた人事評価制度が基本的に踏襲されつつも、地公法が求めている評価結果の開示をはじめ、当該県にそれまで存在していなかった新たな仕組みが加味され、当該県の制度上一定の改善がなされている実態が明らかとなった。それらの成果の一部は、日本教育経営学会で現在編纂中である印刷物に掲載の予定である。また、外国に関しては、中国を対象として調査を行い、関連情報を収集した。中国の教員評価に関しては、特に訪問地である北京市を中心に調査し、その情報分析にあたっているところであり、現時点では最終的な調査結果を報告できる段階にはないが、中国においても我が国同様、教員の評価をめぐり様々な問題点が指摘され、個々の教員の成果をシビアに評価し、処遇に反映しようとしている点は明らかである。今後、分析をすすめて関係学会等において報告する予定である。以上の研究成果を勘案すると、平成28年度の研究実績としては、一部研究計画に遅れがみられる部分はあるものの、次年度における研究計画を先取りしている部分もあり、「おおむね順調」に進行しているといえよう。上述のように「おおむね順調に進展している」ものの、国内調査に関しては、全国調査の進捗状況に遅れがあり、そのため「おおむね」と判断した。研究2年目の平成29年度にその遅れを取り戻すべき研究計画を修正している。同時に、本来、研究2年目に実施する予定であった外国調査に関しては、対象国である中国を前倒しで調査し始めており、相殺すると、全体的にみてほぼ予定通りと評価できる。本研究は、諸外国における訪問調査を実施することを予定していたが、対象国すべての訪問ができず、次年度に持ち越す国が出たことは、予定外であった。本年度の知見としては、米国の教員人事評価においては、州毎に異なる状況はあるものの、特定州(ミネソタ州)では、教職の専門職化の重要性を認識し、教員評価制度改革が進められており、興味深かった。同州では、州内教員のアカウンタビリティ・システムの構築と専門職化の実現といういわば車の両輪とも言うべき課題に向けて意欲的な取組みがなされており、その動向は我が国の教員評価制度を検討する上でも大いに示唆的であった。また、本年度訪問調査した国の一つにモンゴルがあり、当該国においても、教員人事・評価を含む各種の教育制度上、仮説通り新自由主義的な教育改革が進んでいることが明白となった。特に都市部ウランバートルでは、急速な人口流入の煽りもあり、生徒数の急増に対応した的確な教員の確保に苦労している現状があった。モンゴルの公立学校は、都市部・農村部を問わず、一つの学校に6歳から18歳までが通学する一貫制の公立学校が一般的であるが、特に地方農村部においては、もともと広大な国土に僅かな人口という当該国の特性もあり、極めて広範囲の地域から児童生徒が通学している。そのため、多くの学校は彼らのための寄宿舎を用意して教育活動を展開しているが、これら地方農村部における教員確保の問題は、質と量のいずれの側面においても課題が多い。特に教員の任用に関しては、各学校単位において実施されているため、その異動も基本的に存在せず、教員の長期的な資質能力の向上という点においては、課題の残るところである。29年度は、当初予定した調査対象国全体に訪問調査が行えず、その意味で十分な進捗状況とは言い難かった。 | KAKENHI-PROJECT-16K04549 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K04549 |
教員人事・評価制度「有効モデル」構築のための国際比較実証研究 | 学内業務との調整がつかず、予定していた相手方との日程がおりあわなかった点が、課題である。積み残しの課題は、次年度に持ち越して研究のスピードアップ化を図りたい。本年度は、中国における調査研究を中心に行った。中国における教員人事・異動制度は、総括的には都市部の優秀な教員を農村部や条件の悪い学校へ異動させようとする傾向を有している。特に近年、教育行政部門の強い指導によりこの傾向が加速されているが、未だ定数の空き状況をもとに異動させる旧来の制度枠組みが強固に残り、意図通りの異動が難しい側面も残っている。とはいえ、異動と評価が明確に結びつけられるようになったため、教員個人にとっては、異動が職務進級の必須条件とされており、そのことは異動の円滑さを促進する要因の一つとなっている。加えて、近年、省内各県に対する行政評価(均衡的発展評価)の評価項目に定期異動政策の有無が加えられたことは、今後の人事異動政策の進展に一定の影響を及ぼし得ることを示唆している。また、研究期間全体を通して明らかとなった点として、比較対象国米国においては、従来、地方分権的特色の下、教員評価も伝統的に各州あるいは各学区において多様であったが、この傾向が近年連邦政府による積極的関与の下、変化しつつあることである。公教育全体に対するアカウンタビリティ追求の機運とともに、教育スタンタンダードの作成や統一的標準化テストの実施など、連邦主導の教育政策が強く押し進められ、そのことが教員評価制度にも大きく影響している。そのため、教員評価においても、専門職としての評価基準の創設や実践的成果を評価するための児童生徒の学力スコアの活用等が積極的に導入されるようになってきた。教員の能力をどう評価するかという点において、科学的、実証的観点は重要ではあるが、近年米国では、アウトカムの側面が偏重され過ぎ、教員の能力評価を教室内における教科指導、とりわけ英語や数学などのテスト科目の成果に矮小化される傾向がある点は看過できない課題として指摘しなければならない。今後の推進方策については、研究計画書に記載した内容を基本的に踏襲しつつ、前述のような研究計画修正部分を考慮して行く予定である。30年度は、申請研究最終年度にあたるため、昨年度の遅れを取り戻し、予定の研究成果の創出につなげたい。そのため、残りの調査対象国への訪問調査を早期に完了し、その調査分析を速やかに完了する。また、これまでの研究成果との突合作業を通して、本研究調査対象国全体を通した分析対象事項の異同や特徴などを比較析出することに務めたい。そして、本研究の最終的な目標である「有効モデル」構築のための試案を検討し、我が国教員人事・評価制度の改善指針の提示を行う予定である。当初計画していた国内訪問自治体をすべて訪問できなかったため、その旅費及び関係資料入手のための実費が消費できなかったため。予定していた海外調査訪問が期間内に実行できなかったためであり、その分は最終年度に執行する予定である。初年度に訪問できなかった自治体への訪問を2年度計画に修正追加し、経費の執行にあてることを予定している。 | KAKENHI-PROJECT-16K04549 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K04549 |
超並列がん進化シミュレーションによる腫瘍内不均一性生成機構の解明 | がんはDNAに傷が入りそれが原因で細胞増殖のプログラムに異常をきたした結果、細胞が異常増殖することで起きる病気ですが、その過程で、異なるDNAの傷をもつ複数の細胞集団が生み出されることが近年明らかになっています。この現象を腫瘍内不均一生と呼びますが、本研究はがん化の過程で腫瘍内不均一生が生み出される様子をコンピュータシミュレーションを用いて再現し、それが生み出される機構を調べます。がんはDNAに傷が入りそれが原因で細胞増殖のプログラムに異常をきたした結果、細胞が異常増殖することで起きる病気ですが、その過程で、異なるDNAの傷をもつ複数の細胞集団が生み出されることが近年明らかになっています。この現象を腫瘍内不均一生と呼びますが、本研究はがん化の過程で腫瘍内不均一生が生み出される様子をコンピュータシミュレーションを用いて再現し、それが生み出される機構を調べます。 | KAKENHI-PROJECT-19K12214 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K12214 |
3次元モデルにもとづく視覚認識システムの基礎研究 | 本研究では、視覚認識のための3次元モデルの自動構築手法の基礎確立をめざすことを目標とした。ステレオデータからの立体モデル自動生成の研究を実施し進捗が得られた。通常のステレオ法ではエッジ等の特徴点を有する物体のみが扱われ、植生等は対象とされてこなかった。本研究では、植生について、その特徴点の性質を調べステレオ立体視を可能とした。また双方向マッチと呼ぶ手法を開発して信頼性を高めている。この手法により植生等の自然情景の再構成に使える有用な手法を得た。ソリッドモデルに基づく屋外非人工物の位置と姿勢推定について、遺伝的アルゴリズムを適用して効率的に対象とモデルとの照合を行う手法を得た。また、レンズと撮像面の距離を変化させながら複数の画像を撮像し、明度変化のぼけモデルを使った距離計測について成果が得られている。全体として、視覚観測データから構造化されたデータとする手法、また画像から立体構造を抽出し、距離データと相補的に用いる手法について基礎的な成果が得られ、研究目標はほぼ達成された。本研究では、視覚認識のための3次元モデルの自動構築手法の基礎確立をめざすことを目標とした。ステレオデータからの立体モデル自動生成の研究を実施し進捗が得られた。通常のステレオ法ではエッジ等の特徴点を有する物体のみが扱われ、植生等は対象とされてこなかった。本研究では、植生について、その特徴点の性質を調べステレオ立体視を可能とした。また双方向マッチと呼ぶ手法を開発して信頼性を高めている。この手法により植生等の自然情景の再構成に使える有用な手法を得た。ソリッドモデルに基づく屋外非人工物の位置と姿勢推定について、遺伝的アルゴリズムを適用して効率的に対象とモデルとの照合を行う手法を得た。また、レンズと撮像面の距離を変化させながら複数の画像を撮像し、明度変化のぼけモデルを使った距離計測について成果が得られている。全体として、視覚観測データから構造化されたデータとする手法、また画像から立体構造を抽出し、距離データと相補的に用いる手法について基礎的な成果が得られ、研究目標はほぼ達成された。視覚認識のための3次元モデルの自動構築手法の基礎研究に着手した。このため距離情報入力システムの設計・製作を行い半導体レーザ投影系を用いて距離データを入力するシステムの基本構成を行った。距離データから得られる部分構造(面と面の隣接関係、面間の交線と面との相互関係、特徴点と面との相互関係などを記述)からソリッドデータ構造化するための手法について基礎実験を行った。またステレオデータからの立体構造の復元実験に着手し、植生のステレオデータから立体情報を復元する実験に成功した。本研究では、視覚認識のための3次元モデルの自動構築手法の基礎確立をめざすことを目標とした。2年度に亙る研究の初年度には研究の立ち上げと展開をはかり方向性を確立した。具体的には半導体レーザ投影系を用いて距離データを入力し、ソリッドデータ構造化する手法、視覚情報による3次元情報の復元、ステレオ入力用テレビカメラを用いてステレオデータからの立体モデル自動生成の研究を実施し進捗が得られた。特にステレオ視については植生等の自然情景の再構成に使える有用な手法を得た。2年度目には前年度の成果をふまえて研究の進展をはかるとともに全体のまとめを行った。ソリッドモデルに基づく屋外非人工物の位置と姿勢推定、遺伝的アルゴリズムの活用、ぼけモデルの明度変化を使った距離計測について成果が得られている。全体として、視覚観測データから構造化されたデータとする手法、また画像から立体構造を抽出し、距離データと相補的に用いる手法について基礎的な成果が得られ、研究目標はほぼ達成された。 | KAKENHI-PROJECT-07680384 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07680384 |
トロピカルNevanlinna-Cartan理論の完成と複素解析的手法への還元 | 解析的な函数はそのべき級数表示を通して数学のみならず理工学の幅広い分野で利用されている。それらの多くは複素平面全体に有理型に接続でき、指数函数や楕円函数などの特徴的な方程式の解として与えられる。これら超越函数を統一的に取り扱うためRolf Nevanlinnaが値分布論を完成して90年が経過した。本研究では解析函数のみがこれら応用を実現し得るのかとの問題を、Nevanllinna理論さらにはその正則曲線への拡張であるHenri Cartanの値分布理論を、実数直線上で定義された区分的線型な連続関数と正則曲線の値分布論に変換し、そのmax-plusべき級数展開からも類似した応用可能性を確認した。今年度の研究実績として最も重要なことは、max-plus infinite seriesで表現されている、いわゆるトロピカル超越整関数に関するものである。前研究課題に於ける成果として、今回も連携研究員をお願いしている石崎教授(放送大学)と共同でq-series expansionを持つ複素平面上の整函数に関する対数の意味での位数とタイプについて、その展開係数との関係を表す評価式を与えていた。The workshop in thehonour of Ilpo's 70th birthdayにてその成果を発表した際、複数の参加者から有益な関連情報を得た。それを動機づけとして、級数展開の係数の0への収束と超越的な函数の大きさ自体の急激な増大の評価方法は、実際は複素解析学に限定されず、例えばトロピカル直線としての実軸上で定義される区分的線型な連続関数についても同様な評価が導かれることを示すに至った。複素解析とmax-plus解析とが、関数の級数表示、結論としての評価式さらにはその証明法のすべてに於いて形式的な超離散化を通して1対1に対応しているというのがその趣旨である。特にq-解析との相性の良さについてはPainleve方程式の特殊解の対応関係などで良く知られていることから、今後はその方向での研究成果を期待している。また多変数関数に関する理論構築への可能性の模索としてRisto Korhohen氏と共にトロピカル射影空間の正則曲線に関する値分論の提案を行ったほか、多変数複素函数についても上記した対数位数とタイプとの関係を確認した。本研究課題達成と更なる発展のためには、整函数を係数にもつ複素常微分方程式の有理型函数解についてより深い理解が必要であることから、Gol'dberg, Ostrovskii and Petrenkoがこれらの増大度に関する深淵な問題を提案していたことを知り、その解決に向けてJanne Heittokangas氏を招聘して議論を積み重ねた。これらについては一定の成果を得て共著論文の形にまとめている。Tropical NevanlinnaTheoryの完成とそのself-containedな書籍を出版するという本研究の主目的はRisto Korhonen, Ilpo Laine, Kazuya Tohge共著の"Tropical Value Distribution Theory and Ultra-discreteEquations" (World Scientific Pub.Co.Inc.ISBN-10:9814632791)により間もなく達成される。本年度のエフォートの殆どを同原稿の完成、その過程で得た知見に依る研究成果の改良と拡張に充てた。例えば`Cartanの等式'という古典的なネバンリンナ理論とAhlforsによる被覆面の理論との繋がりを示す結果が、1変数のトロピカル有理型函数、つまりmax-plus代数上で定義された区分的線型な連続関数についても、ある種の「翻訳規則」に従えば古典的な理論と同様な議論により証明が可能であることはこうして導かれた。特に、Tropicalと古典的の両値分布理論の間に見通しの良い「辞書」が存在することを明らかできたのは重要である。それは単に特殊な関数に対し既知の結果と類似した理論展開が可能なことを示し得ただけではない。例えば`Vojtaの辞書'の名で知られる古典的ネバンリンナ理論とディファントス近似論との類似性が如何なる理由で成り立つかの解明への端緒と成り得たと期待する。両理論の中間に位置するトロピカルNevanlinna-Cartan理論がディオファントス近似論へ直接に繋がるとの期待はある意味自然である。書籍執筆の過程で差分、q-差分、超離散の各パンルベ方程式に関する様々な研究をひとつの道標とし、それらに寄与し得る知見や手法として何が期待されているかを認識できたことは、今後の研究の展開を見極める上で極めて有益であった。この他、Laine氏との共同研究としてトロピカル値分布論を有限区間上で定義される区分的線型な連続関数への拡張を試み、その成果を国際研究集会で招待講演を行った。また、特別な超離散方程式の一般解とはどのようなものであるか、またその導出にどのような手法が可能かについての新たな知見を得た。これらは当該年度前半に出版された著書Tropical Value Distribution Theory and Ultra-discreteEquationsの内容を改良・発展させる成果となっている。当初の計画では完成した理論の応用としては、ある程度形式的なものに留まるを得ないと予想されていた。然し、複素常微分方程式の整函数あるいは有理型函数解に関する結果と、それらを超離散化して得られるある種の超離散方程式に対して具体的な解を構成することによりその可積分性を導くことができ、さらにそこから動機づけられて指数関数の多項式を係数にもつ複素線形微分方程式の解の増大度の正則性に関して考察が進んだ。複素射影空間の正則曲線に対するカルタンンの値分布理論については、先の研究で微分作用素を差分作用素にて置き換え同様な理論を構成していたが、本研究では課題としていた2つお応用を完成し得た。 | KAKENHI-PROJECT-25400131 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25400131 |
トロピカルNevanlinna-Cartan理論の完成と複素解析的手法への還元 | 一つは有理型函数の場合と同様に「動く的」への拡張であり、他方はトロピカルな実射影空間への区分的線型な曲線の値分布論としての完成である。これらの何れも、当該課題開始以前から何度も試みながら完全に解決できなかったテーマであり、それらを何れも評価の高い出版誌に発表でき、期待した以上の成果となった。併せて、論文執筆の途中ではあるが、ユークリッド的なシフト作用を、有限区間内のいわゆる双曲的なシフト作用素に置き換えてトロピカルアイアイ分布理論を構成するという目標についても、本年度の研究に於いてほぼ満足できる形で達成ができた。以上は本研究課題を計画した際には思いもよらなかった進展となっており、それが上記の区分を選択した理由である。解析的な函数はそのべき級数表示を通して数学のみならず理工学の幅広い分野で利用されている。それらの多くは複素平面全体に有理型に接続でき、指数函数や楕円函数などの特徴的な方程式の解として与えられる。これら超越函数を統一的に取り扱うためRolf Nevanlinnaが値分布論を完成して90年が経過した。本研究では解析函数のみがこれら応用を実現し得るのかとの問題を、Nevanllinna理論さらにはその正則曲線への拡張であるHenri Cartanの値分布理論を、実数直線上で定義された区分的線型な連続関数と正則曲線の値分布論に変換し、そのmax-plusべき級数展開からも類似した応用可能性を確認した。本研究成果の出版という主たる目的は達成した。しかし発売予定日が当初は本年3月であったが、装丁等について出版社と著者間の連絡に時間を要するなどして5月に予定変更となったこと、また投稿中の論文2編の査読が終了しておらず、いずれの出版も本年度内とならなかったことの2点で、今回の自己点検評価を「おおむね」とした。ただし、研究成果の内容だけで自己評価するならば、当初計画の時点では想定すらしていなかった成果が得られており、十二分に満足できる達成度であった。これを通して、本研究が将来どのような方向に進むべきかについて本報告者は非常に明快な指針を得ることができた。例えば、q-解析と超離散「解析」の間に見出されるべき緊密な対応関係や複素解析学の代数学への貢献をmax-plus級数を用いた解析学で表現し直すことについての可能性などは、現時点では報告者自身の当該分野に対する理解が不十分なため準備段階にあって「期待」あるいは「夢」と表現するしかないものの、少なくともいくつかの具体的な事象についての確認ができている。これらを上記著書のAppendicesなどで可能な限り述べたいと考えたが、紙数制限や著者間での理解の相違等もあり一部しか含めることができなかった。改めてこれらの確認を本研究の目的の一部に加えたうえで、それらを達成することができれば次年度つまり本課題の最終年度こそは上記の評価を迷いなく(1)のレベルにできると確信している。 | KAKENHI-PROJECT-25400131 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25400131 |
全方位画像と画像認識を用いた屋外移動時における視覚障害者の為のデザイン | 初年度では主に下記を実施した.1.PCおよびスマートフォン端末において実時間にて物体検出可能なシステム開発:これについてはすでにSSDやYOLOといった物体検出手法を利用し,それらの開発基盤を整えることに注力した.学習に関わる人為的な作業プロセスを見直し,用意したデータセットをシームレスに学習させ,テストするためのフレームワーク開発を終えた.2.視覚障害者支援用途としてのデータセット設計及びテスト可能なデータセット構築:COCOやImagenet等の既存大規模データセットでは本研究開発には対応できないことがわかっていたため,自らそれらデータセット開発をスタートした.念密に議論した32クラスに対し,全体で20,000程度のアノテーションを行った.またヒューマンエラーやアノテーション効率を向上させるため,アノテーションツールキットも合わせて開発した.,3.短時間で効率的なアノテーション手法の開発:上記アノテーションや,実際の動作テストにおけるノウハウから必要なアノテーションに関して議論をし,従来のデータオーグメンテーションとは異なる手法で,短期間に大量のアノテーションデータを作成するためのフレームワークを開発した.本システムはスマートフォン上で動作し,ユーザは5分程度のアノテーションで一つの物体に対して200程度のアノテーションが可能になった.,4.開発データセットによる動作テスト:実際に開発した検出器を利用して,広島平和記念公園や大学周辺にてフィールドワークを行なった.記念碑や段差などの認識に対し,機能することを実地にて確認できた.認識システム部分に関して順調に進められた.ユーザ参加型アノテーション登録につしては大方の設計やインタラクションに関して十分に議論できた.代表者である馬場は2019年度に主にナビゲーション部分に関わる検討を行う.昨年度を通じ収集したデータセットおよび,開発した認識システムを用いて,検出された物体をどのような形でユーザにフィードバックするのかを様々なプロトタイピングを元に明らかにしていく.現時点では音声読み上げを行なっているが,検出物体個数が多い場合は本手法は当事者にとってノイズとなってしまう.そこで,今年度にはフィードバック手法にソニフィケーションベースな聴覚,触覚提示を同時に行うことを検討し,実験までを行う.今年度後半ではそれらの結果を元にデバイスを開発する.分担者の渡邉は昨年度行ったデータ構築設計において,ユーザ参加型アノテーションシステムにおける設計・評価を行う.また,現地でデータ収集やユーザ評価なども並行する.分担者の釜江は昨年度同様にandroid用とのシステムをベースに画像処理やGPS,などその他のセンシング手法に関する可能性検討を継続するほか,フィールドワークやプロジェクト全体のコーディネート役を担う.初年度では主に下記を実施した.1.PCおよびスマートフォン端末において実時間にて物体検出可能なシステム開発:これについてはすでにSSDやYOLOといった物体検出手法を利用し,それらの開発基盤を整えることに注力した.学習に関わる人為的な作業プロセスを見直し,用意したデータセットをシームレスに学習させ,テストするためのフレームワーク開発を終えた.2.視覚障害者支援用途としてのデータセット設計及びテスト可能なデータセット構築:COCOやImagenet等の既存大規模データセットでは本研究開発には対応できないことがわかっていたため,自らそれらデータセット開発をスタートした.念密に議論した32クラスに対し,全体で20,000程度のアノテーションを行った.またヒューマンエラーやアノテーション効率を向上させるため,アノテーションツールキットも合わせて開発した.,3.短時間で効率的なアノテーション手法の開発:上記アノテーションや,実際の動作テストにおけるノウハウから必要なアノテーションに関して議論をし,従来のデータオーグメンテーションとは異なる手法で,短期間に大量のアノテーションデータを作成するためのフレームワークを開発した.本システムはスマートフォン上で動作し,ユーザは5分程度のアノテーションで一つの物体に対して200程度のアノテーションが可能になった.,4.開発データセットによる動作テスト:実際に開発した検出器を利用して,広島平和記念公園や大学周辺にてフィールドワークを行なった.記念碑や段差などの認識に対し,機能することを実地にて確認できた.認識システム部分に関して順調に進められた.ユーザ参加型アノテーション登録につしては大方の設計やインタラクションに関して十分に議論できた.代表者である馬場は2019年度に主にナビゲーション部分に関わる検討を行う.昨年度を通じ収集したデータセットおよび,開発した認識システムを用いて,検出された物体をどのような形でユーザにフィードバックするのかを様々なプロトタイピングを元に明らかにしていく.現時点では音声読み上げを行なっているが,検出物体個数が多い場合は本手法は当事者にとってノイズとなってしまう.そこで,今年度にはフィードバック手法にソニフィケーションベースな聴覚,触覚提示を同時に行うことを検討し,実験までを行う.今年度後半ではそれらの結果を元にデバイスを開発する.分担者の渡邉は昨年度行ったデータ構築設計において,ユーザ参加型アノテーションシステムにおける設計・評価を行う.また,現地でデータ収集やユーザ評価なども並行する.分担者の釜江は昨年度同様にandroid用とのシステムをベースに画像処理やGPS,などその他のセンシング手法に関する可能性検討を継続するほか,フィールドワークやプロジェクト全体のコーディネート役を担う. | KAKENHI-PROJECT-18H03486 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H03486 |
重イオン生物応答メカニズムのテーラーメードマイクロビーム照射による解析 | 高LET重イオンの生物作用機構を明らかにし、重粒子線がん治療の高度化や宇宙放射線影響リスク評価への適用に発展させていくため、重イオンマイクロビームを用いた生物照射実験を行う。研究では、ラピッドプロトタイピングを用い、照射実験の要件ごとに最適化した形状の照射容器を開発することで、従来の手法では実現できなかった生物試料への重イオン照準照射を実現し、これを用いて、重イオンの生物照射効果の分子メカニズムを明らかにする。H30年度は、H29年度に確立したバイスタンダー効果の距離依存性を解析するためのテーラーメード容器を用いた細胞照射実験を行った。30mm×40mmの大判カバーガラス上にラピッドプロトタイピングを用いて製作した枠を貼り付けることで、幅2mm、長さ100mmの溝を迷路状に配置したテーラーメードマイクロビーム細胞照射容器にヒト子宮頸がん由来培養細胞HeLaを播種した。細胞が底面のカバーガラスに接着した後に、迷路状の溝の片端のエリアを、量研高崎研TIARAのコリメーション式重イオンマイクロビーム装置で形成した直径250μmの炭素イオンビームで2Gy照射した。照射後、細胞を継続培養を行い、バイスタンダー効果の誘導を照射位置からの距離との関係で解析を進めた。H28年度からの実施した本研究計画で、従来のマイクロビーム照射容器では実現が難しかった重イオン照射効果の解析を、テーラーメード照射容器を製作することで実現することが可能とした。研究計画終了後は、本研究で実現した照射技術を用いて重イオンの生物作用機構を明らかにしていく高LET重イオンの生物作用機構を明らかにし、重粒子線がん治療の高度化や宇宙放射線影響リスク評価への適用に発展させていくため、重イオンマイクロビームを用いた生物照射実験を行う。実験では、ラピッドプロトタイピングを用い、照射実験の要件ごとに最適化した形状の照射容器を開発することで、従来の手法では実現できなかった生物試料への重イオン照準照射を実現し、これを用いて、重イオンの生物照射効果の分子メカニズムを明らかにする。平成28年度は、ラピッドプロトタイピングによるテーラーメード照射容器を製作するためのデスクトップ切削加工機を導入し、容器の設計を行うとともに、容器細胞接着面の細胞培養条件の検討を行った。テーラーメード照射容器は、実験デザインに即した容器枠に、細胞接着面とするポリプロピレンフィルムを接着して製作する。ポリカーボネート板を導入したデスクトップ切削加工機を用いて3D CADで設計した容器枠の形状に加工した結果、高い精度の容器枠を作成することができた。また、細胞接着面となるポリプロピレンフィルムは、表面処理を行わない場合、細胞の接着と増殖が市販組織培養容器と比べて低かったが、接着面を真空プラズマ処理することで細胞接着と増殖を改善することができた。これに加え、集束式マイクロビーム装置における生体蛍光染色を用いた細胞認識効率を向上するため、当該システムへの高感度EMCCDカメラの組み込みと、LED落射光源の導入を行い、従来よりも高速かつ正確な細胞自動認識を実現することができた。採択された研究計画で予定していた平成28年度の実施項目である、テーラーメード照射容器政策手法の確立と照射容器における細胞培養条件の検討について、研究を実施し、おおむね計画通りに成果を得ることができた。高LET重イオンの生物作用機構を明らかにし、重粒子線がん治療の高度化や宇宙放射線影響リスク評価への適用に発展させていくため、重イオンマイクロビームを用いた生物照射実験を行う。実験では、ラピッドプロトタイピングを用い、照射実験の要件ごとに最適化した形状の照射容器を開発することで、従来の手法では実現できなかった生物試料への重イオン照準照射を実現し、これを用いて、重イオンの生物照射効果の分子メカニズムを明らかにする。平成29年度は、前年度までに導入したラピッドプロトタイピング技術を用い、従来のマイクロビーム照射容器では実現が難しい、バイスタンダー効果距離依存性を解析するために、100 mm以上離れた細胞への細胞間シグナル伝達を解析できるテーラーメードマイクロビーム照射容器の設計と製作を行った。製作した容器は、幅2mmの溝を迷路状に30mm×40mmのサイズに配置することで、最長240mmまでのバイスタンダー効果距離依存性を解析できる。容器はポリカーボネートのフレームと細胞接着面となるカバーガラスを組み合わせることで構成される。カバーガラス表面は真空プラズマ処理を行うことで、細胞接着性を向上させ、市販の細胞培養用シャーレと同等の細胞接着性を付与した。この容器を用い、重イオンマイクロビームを用いた細胞照射実験条件の検討を行った。容器にHeLa細胞を播種し、細胞接着面への細胞接着を確認した。この試料を重イオンマイクロビーム装置の試料台に設置し、細胞照準系による目的とする領域の照準が可能であること、また、細胞へのイオン数を制御した炭素イオンマイクロビーム照射を行うことが可能であることを確認することができた。採択された研究計画で予定していた平成29年度の実施項目である、バイスタンダー効果の距離依存性を解析するためのテーラーメード容器の設計製作と、これを用いた細胞試料調製技術を確立することができた。一方で、マイクロビーム装置を設置した量研高崎研TIARAのサイクロトロンに不具合が生じ、全体の運転時間が減少したためにビームが必要となる実験を中心に計画の実施に一部遅れが出ている。これについては、オフビームで可能な技術開発を中心に計画の予定を進め、当初計画で企図した成果の実現に向けて計画を遂行していく。 | KAKENHI-PROJECT-16K00552 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K00552 |
重イオン生物応答メカニズムのテーラーメードマイクロビーム照射による解析 | 高LET重イオンの生物作用機構を明らかにし、重粒子線がん治療の高度化や宇宙放射線影響リスク評価への適用に発展させていくため、重イオンマイクロビームを用いた生物照射実験を行う。研究では、ラピッドプロトタイピングを用い、照射実験の要件ごとに最適化した形状の照射容器を開発することで、従来の手法では実現できなかった生物試料への重イオン照準照射を実現し、これを用いて、重イオンの生物照射効果の分子メカニズムを明らかにする。H30年度は、H29年度に確立したバイスタンダー効果の距離依存性を解析するためのテーラーメード容器を用いた細胞照射実験を行った。30mm×40mmの大判カバーガラス上にラピッドプロトタイピングを用いて製作した枠を貼り付けることで、幅2mm、長さ100mmの溝を迷路状に配置したテーラーメードマイクロビーム細胞照射容器にヒト子宮頸がん由来培養細胞HeLaを播種した。細胞が底面のカバーガラスに接着した後に、迷路状の溝の片端のエリアを、量研高崎研TIARAのコリメーション式重イオンマイクロビーム装置で形成した直径250μmの炭素イオンビームで2Gy照射した。照射後、細胞を継続培養を行い、バイスタンダー効果の誘導を照射位置からの距離との関係で解析を進めた。H28年度からの実施した本研究計画で、従来のマイクロビーム照射容器では実現が難しかった重イオン照射効果の解析を、テーラーメード照射容器を製作することで実現することが可能とした。研究計画終了後は、本研究で実現した照射技術を用いて重イオンの生物作用機構を明らかにしていく平成29年度は、これまでの研究で確立したテーラーメード照射容器を用い、重イオンマイクロビームによる照射および照射効果解析条件の検討を進める。これらの条件決定の後、年度後半では、計画に従い重イオンシングルヒット効果及び重イオン誘発バイスタンダー効果の解析実験に着手する。平成30年度は、これまでの研究で確立したバイスタンダー効果の距離依存性の解析を進めるとともに、これまでに得られた成果を取りまとめて原著論文として公表することで研究の総括を行う。デスクトップ切削加工機の導入にあたり、最新の製品情報をもとに導入機種を再検討した結果、計画で計上していた導入費用に対し差額が生じた。(理由)H29年度計画で出席と成果の公表を予定していた第13回マイクロビーム国際ワークショップ(開催予定地:イギリス・マンチェスター市)が、5月に起きた爆発物事件の影響で中止となったため、計上していた国際会議出張旅費に差額が生じた。(使用計画)H30年度に使用する成果公開費及び実験消耗品費として使用を予定している。H29年度以降に使用する実験消耗品費として使用を予定。 | KAKENHI-PROJECT-16K00552 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K00552 |
中性子散乱法を基軸とした水溶液中タンパク質のメゾスコピックダイナミクス研究 | 本研究では、中性子小角散乱及び中性子スピンエコー法を基軸とし、溶液中のタンパク質一分子の構造とダイナミクスの統計情報を定量的に評価した。モデルとして水溶性で残基数149の小球状タンパク質である黄色ブドウ球菌由来の核酸分解酵素Staphylococcal nuclease(SNase)を生合成で大量に生成し、中性子小角散乱測定を大強度陽子加速器施設J-PARCのBL15「大観」で、中性子スピンエコー測定をフランスのラウエ・ランジュバン研究所(ILL )のIN15分光器を用いてそれぞれ行った。得られた散乱データを詳細に解析することで、SNaseの溶液中の構造とダイナミクスを評価した。本研究は、タンパク質の機能発現に重要であるαヘリックス・βシートなどに代表される各ドメインの水溶液中での構造とダイナミクスを、中性子小角散乱法及び中性子スピンエコー法を用いて評価することで、タンパク質の機能発現とダイナミクスの相関を明らかとする事を目的として遂行された。モデルタンパク質として、黄色ブドウ球菌の核酸分解酵素で残基数149の小球状のタンパク質であるStaphylococcal nuclease(SNase)を用い、中性子小角散乱測定をJ-PARCのBL15「大観」で、中性子スピンエコー測定をフランスのラウエ・ランジュバン研究所(ILL)のIN15分光器を用いてそれぞれ行った。中性子小角散乱測定においては、水溶液濃度0.5 - 5wt%での測定を行い、溶液中の分子構造とX線結晶構造解析から得られた構造との比較を行う事ができた。その結果、絶対強度との比較から水和構造が必要であり、更に水溶液中での構造は、結晶構造と異なっている事を示唆する結果が得られた。中性子スピンエコー測定においては、最大時間250ナノ秒に及ぶダイナミクスを評価する事が出来た。タンパク質のダイナミクスを、並進拡散・回転拡散・内部振動の3つのモードに分けて評価した結果、SNaseの内部振動が他のタンパク質よりも大きい事が分かった。これ迄の研究において、SNaseが核酸を切る際にドメインの大きな揺らぎ重要であるということが示唆されていたが、この実験において、直接SNaseの動きを捉える事に成功した。以上の結果は、日本物理学会の年次大会等で発表を行った。現在は、基準振動解析等の手法を用いて中性子散乱データのより定量的な解析を進めており、今後は他のタンパク質を用いても同様に構造とダイナミクス評価を容易にできる環境を整備していく。本研究では、中性子小角散乱及び中性子スピンエコー法を基軸とし、溶液中のタンパク質一分子の構造とダイナミクスの統計情報を定量的に評価した。モデルとして水溶性で残基数149の小球状タンパク質である黄色ブドウ球菌由来の核酸分解酵素Staphylococcal nuclease(SNase)を生合成で大量に生成し、中性子小角散乱測定を大強度陽子加速器施設J-PARCのBL15「大観」で、中性子スピンエコー測定をフランスのラウエ・ランジュバン研究所(ILL )のIN15分光器を用いてそれぞれ行った。得られた散乱データを詳細に解析することで、SNaseの溶液中の構造とダイナミクスを評価した。本研究の目的は、中性子散乱法を主な手法として用いる事で、溶液中のタンパク質一分子の構造とダイナミクスを定量的に評価する手法を確立し、その機能発現とダイナミクスの相関を明らかにする事である。初年度は、モデルタンパク質としてStaphylococcal nuclease(SNase)を生合成することで大量(300mg以上)に精製し、動的光散乱測定を用いて水溶液中での拡散係数を評価し、高純度かつ会合が無い状態で溶液中に分散している事を確認した。また、X線小角散乱法を用い、SNaseの溶液中の構造と単結晶によって決定された構造との違いを評価する計算プログラムを作成する事で定量的に評価し、溶液中のSNaseが結晶状態より広がった形状を取っていることを確かめた。現在のタンパク質研究は、結晶状態の構造を評価する事が主流であるが、溶液中、すなわち単一分子状態における形態と、結晶構造とが異なる可能性を考慮すべきとの意見は以前からあった。SNaseの場合、その様な指摘が極めて的を得ているという知見を得る事が出来た。以上の結果は、SNaseが本研究のモデルタンパク質として極めて優れていることを示し、今後行う予定の中性子散乱実験お呼びコンピューターシミュレーションを用いたダイナミクス解析を行う上で極めて有用な情報である。また、これらの研究成果は、日本物理学会年次大会などで発表した。本研究は2年間の期間で行う。初年度である昨年度では、モデルタンパク質であるStaphylococcal nuclease(SNase)の合成と精製を行い、中性子散乱測定に必要な300mg以上の分量を得た。更にX線小角散乱測定と動的光散乱測定を用いてSNaseのキャラクタリゼーションを行い、試料が本研究を進める上で極めて優れている事を確認した。中性子散乱実験は、震災の影響で施設(研究用原子炉JRR-3及びスパレーション中性子源J-PARC)の稼働が停止中またはスケジュールが大幅に遅れたため、初年度は実施出来なかったが、次年度は5月中に中性子小角散乱実験をJ-PARCで、中性子スピンエコー測定をフランスILLで行う予定であり、既にビームタイム配分を確約されている。従って、中性子散乱測定に依って必要な実験データは全て得られる予定である。以上の理由で、研究の現在迄の達成度を「おおむね順調に進展している」と評価した。 | KAKENHI-PROJECT-23740323 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23740323 |
中性子散乱法を基軸とした水溶液中タンパク質のメゾスコピックダイナミクス研究 | 次年度は中性子散乱測定に注力し、そのデータ解析を、数値計算を用いて行う。次年度、J-PARCで行う予定の中性子小角散乱実験では、飛行時間法を用いた回折装置で測定を行うことから、広い空間領域(実空間で1100ナノメートル程度)を高分解能で測定する事が可能であり、αヘリックスやβシートのドメインから分子全体の形状までを定量的に評価する事ができる可能性がある。更にフランスILLで行う中性子スピンエコー実験では、小角散乱で測定した空間領域における100ナノ秒程度に及ぶ時間領域の時間相関関数が測定でき、タンパク質の並進と回転拡散、更に分子内振動に関する知見が定量的に得られるものと期待している。以上の中性子散乱によって得られるデータは、タンパク質一分子のナノメートル・ナノ秒の時空間スケールにおける構造とダイナミクスの詳細を反映したものであり、その定量的な解析は数値計算によって厳密に行う必要がある。本研究では、弾性ネットワークモデルと基準振動解析を組み合わせた手法を用い、計算機を用いた数値計算によって散乱データを詳細に解析し、タンパク質のダイナミクスの詳細を明らかにする手法を確立する。初年度は試料調製用の試薬や機材、高速演算が可能な計算機を購入したが、次年度では中性子散乱実験に必要な試薬及び物品の購入が主になる。また、海外で中性子散乱実験を行う予定である事から、旅費が多めにかかる事が予想される。 | KAKENHI-PROJECT-23740323 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23740323 |
小笠原諸島において水文気候条件が植生構造に与える影響に関する観測研究 | 本研究の目的は,小笠原諸島父島の乾性低木林を調査対象に,詳細な気象観測に加え,植物の生理生態的プロセスの観測を新たに展開することで,既存の研究では明確にされてこなかった水文気候条件と植生構造との因果関係を明らかにすることである.本研究ではまず,父島気象観測所で観測された78年分の月別気温および降水量データを解析した.その結果,小笠原諸島における20世紀中の水文気候環境は乾燥化の傾向があり,特に夏期乾燥期が顕在化することが分かった.このことは,小笠原諸島において今後の気候変動による植生へ影響を明らかにするためには,夏期乾燥期における水文気候条件と植生との因果関係を把握する必要があることを示す.次に,水文気候条件の異なる父島の2地点(初寝山および東平観測点)で気候および植物の生理的特性についての詳細な観測を行った.デンドロメータによる観測結果から夏期乾燥期における乾燥の度合いに対応して幹生長量が異なっていることが分かった.また,夏季乾燥期に,初寝山および東平観測点に生育するシマイスノキの葉の水ポテンシャルを計測した結果,初寝山の方が東平に比べ,夜明け前のシマイスノキの葉の水ポテンシャルは有意に低かった.これらのことから,夏期乾燥期に強い乾燥ストレスを受けた場所ではシマイスノキの幹の肥大生長が抑制されると考えられた.さらに,シマイスノキの蒸散流量の観測結果から,乾性低木林の優占種であるシマイスノキは蒸散を抑制し,水利用様式を変化させることで,夏期乾燥期に卓越する季節的な乾燥ストレスに耐えて生育していることが明らかになった.以上のことから,乾性低木林の構成種は,夏期乾燥期の水文気候条件に応答して生理生態的プロセスを変化させており,その結果として植生構造に地理的な変化がみられると考察した.本研究の目的は,小笠原諸島父島の乾性低木林を調査対象に,詳細な気象観測に加え,植物の生理生態的プロセスの観測を新たに展開することで,既存の研究(例えば,吉田ほか,2002など)では明確にされてこなかった水文気候条件と植生構造との因果関係を明らかにすることである.平成17年度は以下の3点について調査および研究を行った.1.既存研究のレビュー小笠原諸島を対象とした観測研究について,これまでの研究成果をレビューし,今後の課題をまとめた.小笠原諸島では最近2030年に気候の乾燥化が顕著であり,その植生に対する影響を多くの研究者が危惧していることが分かった.このような気候変動による植生へ影響を明らかにするためにも,早急に水文気候条件と植生構造との因果関係を把握する必要があることを確認した.2.幹生長量の連続観測水文気候条件の異なる2地点(初寝山および東平観測点)において,乾性低木林の優占種であるシマイスノキを対象にデンドロメータを設置し,幹生長量の季節変化を観測した.その結果,両者に幹生長量およびその季節変化パターンには差異がみられた.乾燥しない場所(東平)では夏季乾燥期に幹生長がみられるのに対し,乾燥する場所(初寝山)では夏季乾燥期を避けるような幹生長の季節パターンが観測された.3.植物の水ポテンシャルの測定夏季乾燥期であった2005年8月に,初寝山および東平観測点に生育するシマイスノキの葉のサンプリングを行い,実験室にて葉の水ポテンシャルを計測した.その結果,初寝山の方が東平に比べ,夜明け前のシマイスノキの葉の水ポテンシャルが有意に低かった.このことは,初寝山に成立する乾性低木林が,水文気候条件の差異を反映して,夏季乾燥期により強い乾燥ストレスを受けていることを示す.本研究の目的は,小笠原諸島父島の乾性低木林を調査対象に,詳細な気象観測に加え,植物の生理生態的プロセスの観測を新たに展開することで,既存の研究では明確にされてこなかった水文気候条件と植生構造との因果関係を明らかにすることである.本研究ではまず,父島気象観測所で観測された78年分の月別気温および降水量データを解析した.その結果,小笠原諸島における20世紀中の水文気候環境は乾燥化の傾向があり,特に夏期乾燥期が顕在化することが分かった.このことは,小笠原諸島において今後の気候変動による植生へ影響を明らかにするためには,夏期乾燥期における水文気候条件と植生との因果関係を把握する必要があることを示す.次に,水文気候条件の異なる父島の2地点(初寝山および東平観測点)で気候および植物の生理的特性についての詳細な観測を行った.デンドロメータによる観測結果から夏期乾燥期における乾燥の度合いに対応して幹生長量が異なっていることが分かった.また,夏季乾燥期に,初寝山および東平観測点に生育するシマイスノキの葉の水ポテンシャルを計測した結果,初寝山の方が東平に比べ,夜明け前のシマイスノキの葉の水ポテンシャルは有意に低かった.これらのことから,夏期乾燥期に強い乾燥ストレスを受けた場所ではシマイスノキの幹の肥大生長が抑制されると考えられた.さらに,シマイスノキの蒸散流量の観測結果から,乾性低木林の優占種であるシマイ | KAKENHI-PROJECT-17700640 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17700640 |
小笠原諸島において水文気候条件が植生構造に与える影響に関する観測研究 | スノキは蒸散を抑制し,水利用様式を変化させることで,夏期乾燥期に卓越する季節的な乾燥ストレスに耐えて生育していることが明らかになった.以上のことから,乾性低木林の構成種は,夏期乾燥期の水文気候条件に応答して生理生態的プロセスを変化させており,その結果として植生構造に地理的な変化がみられると考察した. | KAKENHI-PROJECT-17700640 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17700640 |
卵巣癌細胞の薬剤感受性と遺伝子プロファイルに基づいた治療法の確立 | 本研究課題内において以下のような成果を挙げた。1患者腹水検体より腹膜中皮腫細胞株を樹立することに成功した。2樹立細胞株を使った2次元および3次元培養下での薬剤感受性試験を実施した。悪性中皮腫標準治療に使用される薬剤ペメトレキセドは2次元培養下では薬剤感受性があったのに対し、3次元培養下では薬剤効果はなかった。結果は臨床経過と一致し生体内環境を模倣した薬剤感受性試験の実施が可能であった。3卵巣癌患者の腫瘍病変組織片より、スフェロイドを形成することを可能とし生体内構造に類似する腺管構造を作り出すことに成功した。卵巣癌腫瘍組織由来のスフェロイド形成に成功したのは本研究が初であり有用な成果となった。近年、ヒトでの安全性と体内動態が既に確認されている既存薬から新たな多疾患に奏効する薬剤を見つけるいわゆるドラッグリポジショニングが注目されている。ドラッグリポジショニングの利点として、新薬開発に比較し薬剤が原因となって発症する予期せぬ副作用が出現する確率が低いこと、新薬開発に比較し、臨床試験にかかる時間とコストを大幅に削減できるなどの利点がある。卵巣癌は婦人科腫瘍の中でも最も予後が短期であり、進行期で発見される症例が少なくないことから個別化治療法の確立が望まれるが、現在実施されている分子標的治療薬はベバシズマブが適応承認を得ているのみである。その理由として卵巣癌の分子機構が十分に解明されていないこと、罹患率が他癌と比較して低いために企業が採算性を考慮して積極的に開発や臨床試験を行わないなどの理由が考えられる。このような背景から難治性卵巣癌の個性診断に基づいた個別化治療パイプラインの創出は喫緊の課題である。しかし商業化ベースで取り扱われている細胞を用いた基礎実験はvivo実験に応用すると生体内では異なる結果を示すことが少なくない。そこで本研究において卵巣癌症例に対する腹水検体を使用した個別化治療法の確立を目的とし、患者由来腹水検体より安定した腫瘍細胞の樹立手技の確立を行った。患者同意のもと、腹水細胞を採取し細胞成分を遠沈法にて集細胞後、培養液中に浮遊させ3日間静置後培地交換を行った。その結果、腫瘍細胞が持つ本来の性質である細胞増殖能の高い細胞のみが培養液中に生き残った。さらに複数回の培地交換の後、単クローン性に増殖する細胞集塊を継代培養することで細胞樹立に成功した。本研究内で確立した細胞樹立手技は遺伝子操作や不死化などの操作を行っておらず患者本来の腫瘍組織の性質を残した臨床検体に近い細胞であると推測され、本細胞を用いた薬剤感受性の結果は個別化治療法へと応用可能であると考える。本年度は申請時に株細胞の樹立手技を確立する予定とし予算配分を少額にしている。以降は抗がん剤等の薬剤等を購入した研究実施を予定して計画を行っていることから、研究内容や手技の確立等、研究全体の進捗状況においても計画通りに遂行され、本年度の実施目標は達成できたと考える。抗癌剤抵抗性の難治性卵巣癌に対してはセカンドライン以降に確立された治療法が乏しい。本研究は難治性卵巣癌にドラッグリポジショニングを導入するための基礎研究である。卵巣癌組織や腹水細胞からprimary culture(初代培養)を行い、薬剤感受性試験、ゲノム解析および遺伝子発現解析を施行、パスウェイ解析上で読み解く。本成果によりコンパニオン診断に基づいたドラッグリポジショニングのためのパイプラインが確立されれば難治性卵巣癌の奏効や予後の改善が期待されるだけでなく副作用の軽減や医療経済上も有用となる可能性が高く、患者自身の生活の質(Quality of life: QOL)向上も可能となる。本研究では全期間を通して患者本人より検体使用の同意が得られた卵巣癌例の新鮮癌組織または腹水細胞より初代培養を施行している。樹立可能であった細胞を対象に薬剤感受性試験(drug sensitivity and resistance testing: DSRT)にて高感受性を示す薬剤を検出するとともに、ゲノム解析と遺伝子発現解析から薬剤感受性に関連する遺伝子を同定し、パスウェイ解析にてドラッグリポジショニング候補薬を同定する。このようなアプローチを構築することで個別化医療を確立するための基盤的検討を行った。申請者らは卵巣癌、卵管癌および腹膜癌を対象とした腹水からの初代培養を施行している。今年度はこれまでの手技に加え、培養液中に腹水上清を添加することでより生体内に近い培養環境を作り出し、初代培養が高率に成功した。現在は最適化した初代培養細胞方法を用いて薬剤感受性試験系の構築を行っている。本年度の研究業績として、これまでの研究にて我々が樹立した悪性腹膜中皮腫細胞株を使った2次元およびゲル包埋法による3次元培養下での薬剤感受性試験を実施した。悪性腹膜中皮腫由来の樹立細胞(KomyX)は、腹膜中皮腫治療中の患者腹水より樹立された細胞である。現在までに悪性腹膜中皮腫症例の腹水細胞より樹立された細胞株は報告されていない。細胞樹立された症例は悪性中皮腫の標準治療薬であるぺネトレキセド化学療法中であったが、本細胞の樹立時に採取された腹水中には、悪性中皮腫細胞が多数出現しており、臨床的に化学療法抵抗性の状態で採取された。 | KAKENHI-PROJECT-15K10730 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K10730 |
卵巣癌細胞の薬剤感受性と遺伝子プロファイルに基づいた治療法の確立 | 薬剤感受性試験の方法として、樹立細胞KomyXを384wellのmultiplateに播種し、2次元および3次元培養状態を作成し、プレートの各well上で72時間培養した後、36種の薬剤を各wellに6つの濃度に割り振り分けて添加しさらに72時間培養した。その後CellTiter-Go Luminescent Cell Viability AssaykitにてATP活性の蛍光強度を測定することで生存細胞数を測定し、各種薬剤のIC50を求めた。その結果、悪性中皮腫の標準治療に使用される薬剤ペメトレキセドは2次元培養下でのIC50値で薬剤感受性を示したのに対し、3次元培養下では薬剤感受性を示さず、3次元培養下のIC50値は樹立細胞の腹水が採取された時点の臨床経過と一致しぺネトレキセド抵抗性であった。本結果より、一般的に実施されている単層培養法ではなく、ゲル包埋法による3次元培養は生体内の状態を反映していると考えられた。本研究課題内において以下のような成果を挙げた。1患者腹水検体より腹膜中皮腫細胞株を樹立することに成功した。2樹立細胞株を使った2次元および3次元培養下での薬剤感受性試験を実施した。悪性中皮腫標準治療に使用される薬剤ペメトレキセドは2次元培養下では薬剤感受性があったのに対し、3次元培養下では薬剤効果はなかった。結果は臨床経過と一致し生体内環境を模倣した薬剤感受性試験の実施が可能であった。3卵巣癌患者の腫瘍病変組織片より、スフェロイドを形成することを可能とし生体内構造に類似する腺管構造を作り出すことに成功した。卵巣癌腫瘍組織由来のスフェロイド形成に成功したのは本研究が初であり有用な成果となった。今後は樹立した卵巣癌由来の腫瘍細胞株を使用した薬剤感受性試験の実施を計画している。樹立細胞株は、腹膜中皮腫および遺伝性腫瘍が疑われる症例の卵巣癌細胞株が樹立されているが、現在進行中の症例もあり、実施数は増加する予定である。卵巣癌とは症例は異なるが、腹膜中皮腫はもともと発症する症例が少ないうえ、奏功する治療法も少ないことから本研究内にて腹膜中皮腫についても薬剤感受性の検討を実施することで有用な治療薬の選択が期待できる。これまで組織検体を使用した培養法は成功率が低いことが課題であったが、我々が現在までに確立した成功条件と三次元培養手技を応用することで初代培養成功率の向上を目指している。今後は新規開発技術として、腹水細胞上清に含まれるサイトカインの分析及び、卵巣癌における細胞増殖性の比較から培養条件の至適化を行う予定である。今年度は細胞株樹立のみの実施計画であったため、細胞培養関連消耗品への使用と染色体解析のみを行った。研究実施の際、細胞培養消耗品を節約したため金額に残りが生じた。多数例を集積してから同時に解析することにしたため。次年度は樹立した培養細胞株と患者腹水より採取した細胞を使用し、薬剤感受性試験を実施する。薬剤(抗がん剤)の単価は高額であるため、前年度の残金は薬剤購入に使用する予定である。検査委託、論文成果準備料・投稿料に充当予定である。 | KAKENHI-PROJECT-15K10730 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K10730 |
多種トレーサーガスを用いた多数室換気量の測定に関する研究 | 昨年度は、建設省建築研究所の人工気象室内にあるシリンダーハウス(換気量既知の試験住宅)にて、パッシブ換気時の多種トレーサーガス法の測定精度検定を行い、4室と5室モデルにおいて測定精度が2030%の範囲内に収まることを確認した。本年度は、北海道大学キャンパス内に建設されたローエネルギーハウスを対象に、夏と冬のパッシブ換気の実態把握を行った。夏期の上方開放熱対流型換気や通風換気では、トレーサーガスの「濃度むら」をそのまま「むら」として活用した根気量の測定を試み、温度積層や主流域を形成する換気の場合に、有用な測定法であることを確認した。また、冬期のスタック型のパッシブ換気では、濃度瞬時一様拡散の仮定が必要になるが、4室に4種ガスを放出しても、ターゲットを絞り3室化することで、リーズナブルな外気流入量及び室間換気量が推定可能なことを見出された。昨年度は、建設省建築研究所の人工気象室内にあるシリンダーハウス(換気量既知の試験住宅)にて、パッシブ換気時の多種トレーサーガス法の測定精度検定を行い、4室と5室モデルにおいて測定精度が2030%の範囲内に収まることを確認した。本年度は、北海道大学キャンパス内に建設されたローエネルギーハウスを対象に、夏と冬のパッシブ換気の実態把握を行った。夏期の上方開放熱対流型換気や通風換気では、トレーサーガスの「濃度むら」をそのまま「むら」として活用した根気量の測定を試み、温度積層や主流域を形成する換気の場合に、有用な測定法であることを確認した。また、冬期のスタック型のパッシブ換気では、濃度瞬時一様拡散の仮定が必要になるが、4室に4種ガスを放出しても、ターゲットを絞り3室化することで、リーズナブルな外気流入量及び室間換気量が推定可能なことを見出された。多種トレーサーガス法では、(1)測定対象空間の瞬時一様拡散仮定を満足させる空間平均濃度をどの様にして測定するか、(2)ガス放出後、何時の時点のガス濃度を用いて換気量を算定するのが妥当か、(3)対象室のガス濃度の設定には、ガス減衰法、ガス一定供給法、ガス定濃度法の3通りあるが、どの組み合わせが、外環境変動時の多数室間換気量の算定を容易にするか、(4)換気量の算定に際し、ガスの濃度平衡は微分表現と積分表現が可能であるが、微分表現、積分表現、その混合表現の何れが有利になるか、(5)最小自乗法を用いた場合の妥当な濃度測定データー(逐次的間欠サンプリング)数はどの程度が良いか、など、幾つかの困難な課題が残されている。本申請研究の目的は、以上のような多数室換気量の測定に係わる上記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)の諸懸案事項を実家屋の実測を通じて解決すると共に、高断熱高気密住宅のパッシブ換気計画を可能にするための、外気侵入量及び室間換気の動的な性状を把握することにある。初年度では、換気量の算定に際し、ガスの濃度平衡は微分表現と積分表現が可能であるが、微分表現、積分表現、その混合表現の何れが有利になるかを確認した。次いで、換気量既知の試験住宅を対象にして、瞬時一様拡散仮定を満足させる空間平均濃度の測定、ガス放出後、何時の時点のガス濃度を用いて換気量を算定するのが妥当かを確認し、高断熱高気密住宅での室間換気量の測定を試みている。昨年度は、建設省建築研究所の人工気象室内にあるシリンダーハウス(換気量既知の試験住宅)にて、パッシブ換気時の多種トレーサーガス法の測定精度検定を行い、4室と5室モデルにおいて測定精度が2030%の範囲内に収まることを確認した。本年度は、北海道大学キャンパス内に建設されたローエネルギーハウスを対象に、夏と冬のパッシブ換気の実態把握を行った。夏期の上方開放熱対流型換気や通風換気では、トレーサーガスの「濃度むら」をそのまま「むら」として活用した根気量の測定を試み、温度積層や主流域を形成する換気の場合に、有用な測定法であることを確認した。また、冬期のスタック型のパッシブ換気では、濃度瞬時一様拡散の仮定が必要になるが、4室に4種ガスを放出しても、ターゲットを絞り3室化することで、リーズナブルな外気流入量及び室間換気量が推定可能なことを見出された。 | KAKENHI-PROJECT-10450208 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10450208 |
エキノコックス感染初期(虫卵から多胞化嚢胞)における遺伝子発現の推移 | エキノコックス(多包条虫)症は人獣共通感染症の一つで、北海道では野生動物間で高度に流行している。人への感染は、虫卵の経口摂取により起こり、肝臓に移行した幼虫が、定着し、嚢胞・多胞化し、その後の無制限の多胞化により、人で重篤な疾患を引き起こす。我々の研究は、この虫卵から多胞化までの感染初期における、寄生虫の様々な遺伝子発現を網羅的に解明する事を目的とした。まず、これらの初期の寄生虫からmRNAを採取し、次世代シーケンサーにより、各遺伝子の発現状況を解明した。特に、ワクチンおよび診断用抗原に焦点を絞り、発現状況を明らかにした。多包条虫を含むテニア科条虫の幼虫感染において、免疫応答が寄生虫の定着時期に決定的な役割を演じ、顕著な獲得抵抗性を示すようになる。本実験では次世代シーケンサーを用いて、この感染極初期の発現分子を解明するために、虫卵、活性化虫卵、感染初期シストおよび培養嚢胞のトランスクリプトーム解析を目的とした。先ず、多包条虫実験感染犬の糞便から大量の虫卵を分離した。当初の計画では、虫卵の分離は食物残渣のほとんど無い犬の糞便から採取する予定であったが、腸内環境が正常犬と異なると正常な虫卵が得られない可能性を予想し、通常の糞便量のものから大量の虫卵採取を試みた。簡易沈殿法および様々なメッシュの使用により大量の虫卵採取に成功し、更に、RNA抽出に成功し、次世代シーケンサーを用いて発現遺伝子を解析した。ただ、この実験では、虫卵の活性化に失敗し、二回目実験で新たに実験感染した犬の個体の糞便から虫卵を採取し、再度活性化を試み、成功した。ただ、これらの活性化虫卵から抽出したRNAの質は悪く、現在検討中である。肝臓に寄生する実験感染初期の嚢胞(宿主成分を含む)については、病変部からRNAを注出し、次世代シーケンサーを用いて回読したところ、ほとんどが宿主由来であり、寄生虫の発現遺伝子については部分的な解析となった。なお、この感染ごく初期病変を模倣するための培養による微小嚢胞(宿主成分を含まない)については培養成功し、RNA抽出後次世代シーケンサーによる大量の解読には成功した。したがって、現在まで、活性化前虫卵および培養嚢胞の発現遺伝子のアノテーションまで行った。ただ、Trinityによるアッセンブルにおいて塩基数500以上の遺伝子に絞ったが、現在、再度200以上にして解析をやり直している。ただ、塩基数500以上のもののみの解析においても、虫卵特異的なものおよび発現量が顕著に嚢胞とは異なるものが見つかっている我々は次世代シーケンサーを用いて、多包条虫の虫卵、活性化虫卵および感染初期嚢胞および培養微小嚢胞のトランスクリプトームを解析し、さらに、すでにサンガー研究所から公表されている成熟嚢胞、未熟成虫、受胎成虫のデータと合わせて、in silico解析を行い、各発育段階の発現量を比較した。まず、虫卵がその蛋白を発現していることがすでに判明しているEG95 (EMY162)、Major egg Antigenについては、同類の分子が同定され、虫卵だけでなく幼虫や成虫でも発現している分子が発見された。次に、幼虫感染の診断用抗原である、Antigen B、Eg 19、Antigen 5については、主に幼虫において高い発現が見られたが、Antigen Bグループでは、EnAgB8/3は3種含まれ、いずれもが成虫においても発現し、EmAg B8/5は成虫にのみ発現が見られた。虫卵では、これらのAntigenB、Eg19、Antigen 5はほとんど発現していなかったが、Antigen II/3については、すべての発育段階で発現し、特に、虫卵での発現が顕著であった。Taeniasoliumの成虫の診断用抗原として知られている糖タンパク抗原Diagnostic antigengp50については、今回の解析で35種の存在が予想された、発現量が高いものとしては24種あり、そのうち成虫で顕著に高いものは15種、虫卵で高いものは6種、活性化後虫卵から感染初期幼虫にかけて高いものは5種あったが、成熟幼虫ではいずれも顕著な発現はなかった。したがって、幼虫周囲のlaminated layerにおけるgp50の関与はないものと推察された。その他、様々な糖蛋白、蛋白への糖鎖付加酵素、糖代謝系について、様々な発育段階における発現量の比較解析を行ない、現在この作業を継続している。多包条虫症は国内おいても重要な人獣共通寄生虫であり、人では虫卵の経口摂取後肝臓に寄生した幼虫が無性増殖することにより重篤な疾病を引き起こす。この虫卵から感染初期の幼虫に関する研究は遅れており、今回の研究ではこの時期の寄生虫のトランスクリプトームを解析することである。今年度は、前年度から引き続き様々な分子に関しての解析を続けるとともに、以下のように幼虫のapomucinについて調べた。エキノコックスの幼虫周囲はlaminated layer (LL)が取り囲み、これが幼虫と宿主のインターフェイスである。この主成分は糖タンパクであり、これらの分子の機能が注目されている。多包条虫の培養微小嚢胞の結果からLLに発現する分子、特にapomucinについてin silico解析した。有鉤嚢虫の論文からGP50が主要なLLの糖タンパクと予想したが、意外なことにエキノコックスでは虫卵や成虫では多く発現したが、幼虫における発現量は少なかった。一方、単包条虫の研究ではLLについて他の糖蛋白が注目されており、いくつかのapomucinが候補と考えられている。 | KAKENHI-PROJECT-25450425 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25450425 |
エキノコックス感染初期(虫卵から多胞化嚢胞)における遺伝子発現の推移 | 我々はこれらのapomucinの相同性検索から、多包条虫におけるapomucinを解析した。さらに、機能解析のためにRNA干渉を試みた。我々はこれまで原頭節(LLが無い)を用いたRNA干渉については確立してきたが、今回は培養嚢胞(LLがある)を用いて検討した。様々な大きさの培養嚢胞を作成し、浸漬法の様々な条件設定で行い、そのsiRNAの取り込みを確認しようとしたが、残念ながら全く成功しなかった。今後はエレクトロボレーションの様々な条件設定行う必要があると思われた。エキノコックス(多包条虫)症は人獣共通感染症の一つで、北海道では野生動物間で高度に流行している。人への感染は、虫卵の経口摂取により起こり、肝臓に移行した幼虫が、定着し、嚢胞・多胞化し、その後の無制限の多胞化により、人で重篤な疾患を引き起こす。我々の研究は、この虫卵から多胞化までの感染初期における、寄生虫の様々な遺伝子発現を網羅的に解明する事を目的とした。まず、これらの初期の寄生虫からmRNAを採取し、次世代シーケンサーにより、各遺伝子の発現状況を解明した。特に、ワクチンおよび診断用抗原に焦点を絞り、発現状況を明らかにした。解析時に、シーケンス結果をde novoアッセンブリーにより行ったが、混入した細菌遺伝子などの問題があり、サンガー研究所が昨年公開したエキノコックスのゲノムのデータを用いて、解析し直した。獣医寄生虫病学サンガー研究所が昨年公開したエキノコックスのゲノムのデータを用いて、このまま解析を続行する。このように、サンガーのデータを用いることにより、発育後期(成塾幼虫から受胎成虫まで)のデータも比較することが可能となり、エキノコックスの一生全体について遺伝子発現の推移を把握することが可能となった。上述したように、寄生虫材料材料採取に手間取り、やや遅れているが、ほぼ材料採取は成功したと思われるが、この判断についてもシーケンスの結果により最終的に判断されできるようになる。次世代シーケンサーによって得られた遺伝子のシーケンスデータの解析方法を変更したため解析が遅れ、使用しなかった。今後、活性化虫卵の次世代シーケンサーの結果および200塩基以上の遺伝子の解析を行い、全ての発育段階もまとめて解析、虫卵の発現遺伝子の特長を解明する。感染初期シストについては、以前に調べた次世代シーケンサーのデータを利用し、同様の解析方法で解析し、加えて比較したい。また、活性化虫卵のRNAの質の問題はアッセンブルの結果が出てから考えたい。遅れを取り戻すために、前年度分を使用して、研究を精力的に継続する。 | KAKENHI-PROJECT-25450425 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25450425 |
線虫をモデルとした自発行動制御の神経回路メカニズムの解明 | 動物は自らの意思で自発的に行動するがその脳内機構はよく分かっていない。本研究は線虫の脳活動と行動を定量的に解析するための実験基盤の開発と自発行動の神経回路を明らかにすることを目的とした。自動追尾装置と高速スキャンレーザー顕微鏡を統合したイメージングシステムICaSTを開発した。ICaSTにより自由行動下の線虫のカルシウムイメージングを行い、自発後退運動に先行、随伴する神経活動を見出した。神経活動と行動の関連を解析するため光遺伝学操作とイメージングの同時計測システムを開発した。これらのシステムは線虫だけではなく他の動物の自発行動の神経回路とシナプス機構の研究にも有用であると考えられる。動物は、外部からの感覚刺激がなくても行動を開始し制御するが、自発行動発現の神経メカニズムはよくわかっていない。本研究は、シンプルな脳を持つ線虫を対象にして、自発行動を生成・制御する神経回路メカニズムを明らかにすることを目的としている。線虫はわずか302個のニューロンしかなく、全神経回路接続が記載されている唯一の動物である。行動発現に関わる神経回路を明らかにするためには、行動中の動物の神経活動をリアルタイムで可視化する必要がある。我々は、高速レーザー顕微鏡に自動追尾装置を統合した顕微鏡システムを開発してきたが、さらに操作性に改良を加え、イメージングシステム(ICaST)を確立した。また、頭部神経節ニューロンにG-CaMPあるいはR-CaMPを発現するトランスジェニック線虫を複数系統作出した。線虫は主に前進しながら餌を探索するが、時々自発的に後退する。ICaSTシステムを用いてG-CaMP/R-CaMP発現線虫の行動と頭部神経活動を記録し、前進から後退へのスイッチングに着目して神経活動を解析した。その結果、後退運動の開始前、開始時、および後退運動中に活動が活性化あるいは抑制されるいくつかのニューロンを見出した。本年度は、所属研究室で開発された改良型カルシウムプローブを組み込んだ線虫を作成するとともに、ICaSTシステムを開発した。これにより、自由行動中の任意の部位の神経活動を高倍率・高解像度で可視化・解析することが可能になり、自発行動のイメージング実験系が確立されたことは大きな進展であった。さらに神経活動と行動の因果関係を明らかにするために、チャネルロドプシンを発現する線虫を作成して解析を行っているが、特定のニューロンのみを光刺激する実験系についてはさらなる検討が必要である。本研究は全神経回路が記載されている線虫をモデルに用いて自由行動中の神経活動を可視化・解析することにより、自発行動発現に関わる神経回路を明らかにすることを目的としている。線虫は主に前進運動で餌を探索するが、時折自発的に後退運動あるいは深い屈曲運動を行い進行方向を変えることが知られている。今回、自発的な後退運動に関わる神経回路機能を明らかにするため自由行動下における脳活動の長期可視化を行った。動く動物の神経活動をリアルタイムで可視化するため本研究で新しいイメージングシステムICaSTを開発した。ICaSTは自動追尾装置と高速スキャンレーザー顕微鏡を統合しており、線虫の体の任意の領域を自動追尾しながら神経シグナルを高倍率で長時間イメージングすることが可能になった。また、高輝度・高感度な新しいカルシウムプローブを線虫神経系に適用し、新たな遺伝子改変動物を作成した。これらの動物の自発的行動と頭部神経節(脳)の神経細胞のカルシウム動態をICaSTで同時記録し定量的に解析した。我々はこれまで自発的な後退運動開始前に先行して活動するドーパミンニューロンを同定しているが、今回さらに前進・後退運動のスイッチングでカルシウムシグナルが顕著に変動するいくつかの神経細胞を同定した。その中で後退運動のスイッチングに伴う特定の神経の顕著な活動抑制に着目した。活動抑制の神経基盤と上位ニューロンとの関わりを明らかにするため、抑制性神経伝達物質の変異体を用いて体系的なイメージング解析を行いモノアミンのextrasynapticな作用が重要であることを見出した。今後は行動と神経活動の因果関係を明らかにするため特定の神経活動を制御する光遺伝学的アプローチを行う必要があると考えられる。動物は自らの意思で自発的に行動するがその脳内機構はよく分かっていない。本研究は線虫の脳活動と行動を定量的に解析するための実験基盤の開発と自発行動の神経回路を明らかにすることを目的とした。自動追尾装置と高速スキャンレーザー顕微鏡を統合したイメージングシステムICaSTを開発した。ICaSTにより自由行動下の線虫のカルシウムイメージングを行い、自発後退運動に先行、随伴する神経活動を見出した。神経活動と行動の関連を解析するため光遺伝学操作とイメージングの同時計測システムを開発した。これらのシステムは線虫だけではなく他の動物の自発行動の神経回路とシナプス機構の研究にも有用であると考えられる。光遺伝学的手法、および神経細胞のレーザー破壊等で、行動と神経活動の関連について解析を進める。特定のニューロンにチャネルロドプシン等の光アクチュエータ分子を発現するため、IR-LEGO法も検討し、光遺伝学の実験系を確立する。また、神経系変異体を用いてイメージング解析を行い、自発後退運動の制御に関わる分子を探索する。神経生理学 | KAKENHI-PROJECT-15K14308 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K14308 |
地熱水の高度エネルギー利用とシリカスケール発生防止 | 地熱水からのシリカ除去のためにシリカゲルを用いたシード添加法を提案し、シリカスケールがシードに析出する様子を実験的に検討した。(1)シードを模擬地熱水に添加し、シードの粒子径・初期比表面積・初期気孔径がシリカ除去性能に及ぼす効果を検討した。シリカ析出量や細孔面積などの最終値にシード粒子径が及ぼす影響はあまり見られなかった。しかし、シードの初期細孔径を増加させると、粒子の単位表面積あたりのシリカ析出量は増加した。シリカの析出速度係数は、シード粒子径を減少させるほど増加し、初期細孔径を増加させるほど増加した。(2) pHおよび種々の操作条件がシリカ除去性能に及ぼす影響を検討した。本研究では地熱水を地上に噴出させた後、気液分離する操作を想定し、pHを調整し終えた時点からシードを添加するまでの期間をプレシーディング時間、シードを添加してからの期間を反応時間と定義する。プレシーディング時間を03600秒まで変化させ、初期シード濃度を0.12.0kg-seed・m^<-3>まで変化させた。初期シリカ濃度が0.50kg-SiO2・m^<-3>のとき、シリカ除去量は初期pHの増加とともに増加する(ただし、実験範囲pH=59)。一方、初期pHが同じとき、シリカ除去量は温度の増加とともに増加し、初期シリカ濃度の減少とともに増加する。シリカ除去量は、初期シリカ濃度が低い場合(0.50kg-SiO2・m^<-3>)はプレシーディング時間によって影響されないが、初期シリカ濃度が比較的高い場合(0.70kg-SiO2・m^<-3>)プレシーディング時間が長くなるにしたがっては大きく減少する。一方、初期シリカ濃度が低い場合(0.50kg-SiO2・m^<-3>)、プレシーディング時間はシリカ除去効率に影響を及ぼさない。(3)溶存塩がシリカ除去性能に及ぼす影響を検討した。このため、国内外の実際の地熱水中に溶解しているイオンとシード(シリカゲル粒子)を模擬地熱水に加え、シードに析出するシリカ除去量を測定した。カリウムおよびナトリウムイオンは、塩析効果によって過飽和度を増加させ、結果としてシリカ除去を促進する。カルシウムおよび鉄イオンは、塩析効果とともにシリカ化合物を生成して、シリカ除去を促進する。ホウ酸はシリカ除去にほとんど影響しない。地熱水からのシリカ除去のためにシリカゲルを用いたシード添加法を提案し、シリカスケールがシードに析出する様子を実験的に検討した。(1)シードを模擬地熱水に添加し、シードの粒子径・初期比表面積・初期気孔径がシリカ除去性能に及ぼす効果を検討した。シリカ析出量や細孔面積などの最終値にシード粒子径が及ぼす影響はあまり見られなかった。しかし、シードの初期細孔径を増加させると、粒子の単位表面積あたりのシリカ析出量は増加した。シリカの析出速度係数は、シード粒子径を減少させるほど増加し、初期細孔径を増加させるほど増加した。(2) pHおよび種々の操作条件がシリカ除去性能に及ぼす影響を検討した。本研究では地熱水を地上に噴出させた後、気液分離する操作を想定し、pHを調整し終えた時点からシードを添加するまでの期間をプレシーディング時間、シードを添加してからの期間を反応時間と定義する。プレシーディング時間を03600秒まで変化させ、初期シード濃度を0.12.0kg-seed・m^<-3>まで変化させた。初期シリカ濃度が0.50kg-SiO2・m^<-3>のとき、シリカ除去量は初期pHの増加とともに増加する(ただし、実験範囲pH=59)。一方、初期pHが同じとき、シリカ除去量は温度の増加とともに増加し、初期シリカ濃度の減少とともに増加する。シリカ除去量は、初期シリカ濃度が低い場合(0.50kg-SiO2・m^<-3>)はプレシーディング時間によって影響されないが、初期シリカ濃度が比較的高い場合(0.70kg-SiO2・m^<-3>)プレシーディング時間が長くなるにしたがっては大きく減少する。一方、初期シリカ濃度が低い場合(0.50kg-SiO2・m^<-3>)、プレシーディング時間はシリカ除去効率に影響を及ぼさない。(3)溶存塩がシリカ除去性能に及ぼす影響を検討した。このため、国内外の実際の地熱水中に溶解しているイオンとシード(シリカゲル粒子)を模擬地熱水に加え、シードに析出するシリカ除去量を測定した。カリウムおよびナトリウムイオンは、塩析効果によって過飽和度を増加させ、結果としてシリカ除去を促進する。カルシウムおよび鉄イオンは、塩析効果とともにシリカ化合物を生成して、シリカ除去を促進する。ホウ酸はシリカ除去にほとんど影響しない。1.液相流動層型熱交換器によるシリカスケール生成防止法(1)液相流動層型熱交換器を製作し、流動粒子にガラスビーズを用い、伝熱促進効果について実験的に検討した。熱交換器本体は内径120mmのアクリル樹脂製とし、冷却管は外径45mm肉厚2.9mmの銅製で冷却水を冷却管下部へ導入するために銅管内に塩化ビニル管を挿入し二重管構造とした。流動粒子による伝熱促進効果が認められ、さらに粒径を変えた実験から粒径が大きくなるほど伝熱促進効果は大きくなることが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-09650824 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09650824 |
地熱水の高度エネルギー利用とシリカスケール発生防止 | (2)上記の熱交換器において流動粒子にシリカゲルを用いた場合、地熱水中の溶存シリカがシリカゲルへ析出することにより地熱水から除去されることが期待されるため、地熱水からのシリカ除去についても検討を行った。モデル地熱水として珪酸ナトリウム溶液を熱交換器に流通し、流動層入口と出口でのシリカ濃度を測定し、シリカ除去量を算出した。その結果、本実験条件(流量8.33×10^<-6>m^3/s、入口温度70°C、出口温度50°C、シリカゲル充填量600g)では80%以上のシリカ除去率が得られ、高いシリカスケール生成防止効果が示された。2.水晶振動子微量天秤によるシリカ析出挙動の観測水晶振動子上に析出した物質の極微少な質量変化を共振周波数変化として測定できる水晶振動子微量天秤を用いてシリカ析出挙動を観測した。モデル地熱水に水晶振動子を浸し、共振周波数の経時変化を測定し、シリカ析出量をSauerbreyの式より算出した。また、モリブデンイエロ-法によりシリカモノマー濃度の経時変化を測定し、前者と比較した。その結果、初期シリカ濃度が高いほど水晶振動子上へのシリカ析出量は高く、シリカモノマーのみならず、低分子量のシリカポリマーもシリカ析出に寄与していることが明らかとなった。(1)シリカ除去性能に及ぼすプレシーディング時間の影響本研究では地熱水を地上に噴出させた後、気液分離する操作を想定し、pHを調整し終えた時点からシードを添加するまでの期間をプレシーディング時間、シードを添加してからの期間を反応時間と定義する。プレシーディング時間を03600秒まで変化させた。初期シリカ濃度が比較的高い場合(0.70kg-SiO_2・m^<-3>)、プレシーディング時間が長くなるにしたがってシリカ除去効率は大きく減少する。一方、初期シリカ濃度が低い場合(0.50kg-SiO2・m^<-3>)、プレシーディング時間はシリカ除去効率に影響を及ぼさない。過飽和シリカ溶液において、ある時間までシリカモノマー同士の重合反応は起こらず、シリカモノマー濃度が変化しない期間(誘導期間)が現れる場合がある。プレシーディング時間の影響は、誘導期間の長さに依存し、初期シリカ濃度が高い地熱水において高シリ力除去効率を得るためには、できるだけプレシーディング時間を短くする必要があることが判明した。(2)シリカ除去性能に及ぼす初期シード濃度の影響初期シード濃度を0.12.0kg-seed・m^<-3>まで変化させたシリカ除去実験を行った。初期シリカ濃度0.7kg-SiO2・m^<-3>、初期pH7.0では初期シード濃度が高くなるにつれてシリカ除去効率は増加するが、ある初期シード濃度を越えるとシリカ除去効率の増加度合は小さくなった。また、同じ初期シード濃度では温度が高いほどシリカ除去効率は高くなる。地熱発電所における還元時の地熱水の温度は333K以上であるので、333K以上の温度で高いシリカ除去効率を得るためには、初期シード濃度は0.50kg-seed・m^<-3>以上が望ましい。しかし、初期シード濃度を1.0kg-seed・m^<-3>以上に増加させてもシリカ除去効率の大幅な改善が得られないと思われる。 | KAKENHI-PROJECT-09650824 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09650824 |
標準佐々木計量とAdS/CFT対応 | 本研究では、偏極トーリック多様体の幾何学的不変式論的な安定性、および、その標準ケーラー計量の存在との関係に関して主に次の3つの結果を得た:(1)漸近的チャウ半安定であるための障害として知られていた積分不変量の族がヒルベルト級数の微分と等価である。(2)漸近的チャウ不安定なケーラー・アインシュタイン多様体を初めて発見した。(3)チャウ半安定であるための必要条件を、対応する多面体の組み合わせ論の情報により表現した。本研究では、偏極トーリック多様体の幾何学的不変式論的な安定性、および、その標準ケーラー計量の存在との関係に関して主に次の3つの結果を得た:(1)漸近的チャウ半安定であるための障害として知られていた積分不変量の族がヒルベルト級数の微分と等価である。(2)漸近的チャウ不安定なケーラー・アインシュタイン多様体を初めて発見した。(3)チャウ半安定であるための必要条件を、対応する多面体の組み合わせ論の情報により表現した。佐々木多様体における標準計量、特に佐々木・アインシュタイン計量の存在問題は幾何的に重要であるだけでなく、素粒子論(弦理論)における「AdS/CFT対応」の究明においても重要な役割を演じる。本研究は、佐々木・アインシュタイン計量の存在問題を2つの異なるケーラー幾何(横断的ケーラー構造およびケーラー錐構造)を通して研究し、さらに「AdS/CFT対応」の数学的な理解を得ることを目的としている。本年は逆に「AdS/CFT対応」の研究の中で得られた発想(体積最小化)を拡張し、それを複素幾何の問題に適用することで興味深い結果を得ることが出来た。具体的には下の通りである;体積最小化とは佐々木・アインシュタイン計量が存在するための障害の一つ(佐々木・二木不変量)が体積汎関数の第1変分として得られることであった。一方、佐々木多様体は「偏極ケーラー多様体」の一つの一般化と捉えることができる。本研究では佐々木計量の空間上のある(体積汎関数を含む)無限個の関数列の母関数(Hilbert級数)の第1変分が、すでに知られている偏極多様体の「漸近的Chow半安定性」の障害と本質的に一致することを証明した。さらに、トーリックファノ多様体の場合に、対応する扇の組み合わせ論的な情報を用いてHilbert級数の第1変分を実際に計算することで、この障害に関する幾つかの予想を解決した。この手法はある意味「超越的な」方法により代数的対象を調べているという点で大変興味深い結果である。本研究の目的は、佐々木多様体の標準計量を2つの異なるケーラー幾何(横断的ケーラー構造及びケーラー錐構造)を通して研究し、さらに弦理論において現在活発に研究されている「AdS/CFT対応」の数学的な理解を得ることである。そのためにはケーラー幾何のさらなる理解が重要である。そこで本年度はケーラー幾何だけからは得られない「佐々木幾何的な手法」を用いて、ケーラー幾何の問題を解決することを試みた。その結果、ケーラー幾何で予想される「多様体版小林・ヒッチン対応」(標準ケーラー計量の存在と幾何学的不変式論の意味での安定性の等価性)に関して新たな結果を得た。まず、AdS/CFT対応の研究(Martelli-Sparks-Yauによる、佐々木・アインシュタイン計量の体積最小性)において、トーリック佐々木多様体のヒルベルト級数の主要項の微分と佐々木・二木不変量との関係が指摘されていたが、より一般に、トーリックファノ多様体を変形して得られるトーリック佐々木多様体においては、ヒルベルト級数の微分はある積分不変量の族と等価な情報を持つことを示した(二木昭人氏、佐野友二氏との共同研究。)この積分不変量の族は、regularなトーリック佐々木多様体の場合、つまり、トーリックファノ多様体においては、漸近的Chow半安定性のための障害を与える。このことを用いて、漸近的Chow不安定な7次元コンパクトトーリックケーラー・アインシュタイン多様体が存在することを示した(佐野友二氏、四ツ谷直人氏との共同研究。)このように、標準ケーラー計量を持つが、幾何学的不変式論の意味で不安定な例は今まで存在が知られていなかったものである。本研究の目的は、佐々木多様体の標準計量を2つの異なるケーラー幾何(横断的ケーラー構造及びケーラー錐構造)を通して研究し、さらに弦理論において現在活発に研究されている「AdS/CFT対応」の数学的な理解を得ることである。この目標のもと、平成20年度に、本研究において、「AdS/CFT対応」の研究の中で得られる発想の一つである「体積最小化」を拡張し、それを複素幾何の問題に適用することで、次のような興味深い結果を既に得ていた:『トーリックファノ多様体に対して、佐々木計量の変形空間上に定義された無限個の関数族の母関数(Hilbert級数)の第一変分は既に知られている偏極多様体の漸近的Chow半安定性の障害と本質的に一致する。』本年は、ファノとは限らない偏極トーリック多様体について、その(漸近的ではなく)Chow半安定性をより直接、幾何学的不変式論に基づいた方法により調べることで、対応するDelzant多面体の組み合わせ的な情報によりChow半安定性を判定する幾つかの方法を得た。(例えば、その一つとして、偏極トーリック多様体がChow半安定であるためには、対応するDelzant多面体の重心と整数点の平均が一致することが必要であることを示した。) | KAKENHI-PROJECT-20740032 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20740032 |
標準佐々木計量とAdS/CFT対応 | これらの結果の応用として、次の2つも得た:1.ファノではない場合でもHilbert級数の第一変分が漸近的Chow半安定性の障害を与えることが示せる。2.トーリック退化に関するK-安定性や相対K-安定性と漸近的Chow半安定性との関係を「テスト配位」の概念を導入することなしに組み合わせ論および、局所線形な凸関数に関する情報のみで与えることが出来ることがわかった。 | KAKENHI-PROJECT-20740032 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20740032 |
成人T細胞白血病の制御へ向けたHTLV-1プロウイルス解析 | 本研究では、HTLV-1感染者およびATL患者検体を解析することで、以下の点を明らかにしてきた。ATL患者検体およびATL細胞株において、HTLV-1プロウイルスのエピジェネティックな解析を行ったところ、宿主細胞のDNA結合蛋白CTCFがHTLV-1プロウイルスに直接結合している事が明らかとなった(Satou et al PNAS 2017)。ウイルスの転写制御における重要な1つのメカニズムと考えられる。HTLV-1組み込み部位を用いたATL早期診断法確立へ向けた研究では、臨床検体収集を行った。今後研究を継続する予定。成人T細胞白血病の制御へ向けたHTLV-1プロウイルス解析を進めている。プロウイルスの宿主ゲノムへの組み込み部位解析系をセットアップして、それぞれの感染クローンの特定とクローン性増殖の度合いを評価出来るようになった。今後は、遺伝子との位置関係、エピゲノムの特徴との関連性など、データの3次解析を進めていく予定。研究に必要な症例検体の集積も順調に進行している。現在のところ約20症例、40検体分の末梢血単核球が収集されている。今後も、収集を継続する事でより多くの検体、長期経過観察が可能な検体数を増やす予定。プロウイルスのエピゲノム解析では、クロマチン免疫沈降法(ChIP assay)が昨年度までに確立していたが、本年度はChIP-seqの立ち上げを行った。より詳細で精度の高いプロウイルスエピゲノム情報が入手可能となった。今後はChIP-seq解析の低コスト化を実現する事で、多くの臨床検体の解析を進めていく予定。その結果、高精度にプロウイルス転写制御機構を理解する事が可能になると期待される。エピゲノム解析では、プロウイルス内に、宿主のインスレータータンパクが結合する事を見出し、プロウイルスのエピゲノムパターン形成、転写制御機構において重要な因子である事が示唆された。上記内容をまとめた論文を国際的なピアレビュー雑誌に投稿中で、現在論文のリバイス中である。また、同内容に関してH27年3月-4月アメリカで開催のKeystone Symposia(Viruses and Human Cancer)で招待講演を行った。成人T細胞白血病の制御へ向けたHTLV-1プロウイルス解析を継続して行った。プロウイルスの宿主ゲノムへの組み込み部位解析系をセットアップした。HTLV-1感染クローンの特定とクローン増殖の定量が可能になった。今後は解析検体数を増やし、経時的なサンプルの検体解析を進める予定。臨床症例の集積も順調に進んでいる。現在50症例を超える検体が保存された。HTLVーIのプロウイルスのエピゲノム解析に関して、インスレータータンパクであるCTCFがHTLV-1のゲノムに直接結合し、ウイルスの転写制御、宿主遺伝子の転写制御にも影響を与える事を報告した。(Satou et al, PNAS in press)さらに、DNAプローブを用いたプロウイルスDNA配列の濃縮法を確立し、高感度かつ効率的にプロウイルス解析を行うことが可能となった。(論文投稿中)実験系のセットアップが予定以上にスムースに進んだ。臨床検体の集積も、予定数を上回るペースで順調に進んだ。研究成果の発表も、国内、国際学会、論文と積極的に行った。H26年度、H27年度に引き続き、成人T細胞白血病の制御へ向けたHTLV-1プロウイルス解析を行った。経時的なHTLV-1感染者サンプルの集積を継続した。合計50症例を超える末梢血単核球検体の保存を行った。HTLVーIのプロウイルスのエピゲノム解析に関して、昨年度インスレータータンパクであるCTCFのHTLV-1のゲノムへの結合を示しが(Satou et al, PNAS 2016)、さらに、HTLV-1のプロウイルスのエピジェネティックな転写制御メカニズム解析を効率的に進めるため、DNAプローブを用いたプロウイルスDNA配列の濃縮法を確立し、高感度かつ効率的にプロウイルス解析を行うことが可能となった。(Miyaszato P etal Sci Rep2016)同方法を活用することで、HTLV-1のエピゲノム状態を詳細に解析した結果、プロウイルス内に、顕著なオープンクロマチン領域を特定し、これまで報告が無い新規エンハンサー領域が存在する事を見出した。(Matsuo et al未発表データ)エンハンサー領域のヒストン修飾パターンを調べたところ、エンハンサーに特徴的な修飾を認めた。さらに、エンハンサー領域に結合する転写因子の特定も行い、分子メカニズムの解析が進んだ。HTLV-1の持続潜伏感染において重要な役割を果たしている事が示唆された。上記研究成果について、学会発表、論文発表、メディアによる情報発信等を通じて、広く社会に周知した。本研究では、HTLV-1感染者およびATL患者検体を解析することで、以下の点を明らかにしてきた。ATL患者検体およびATL細胞株において、HTLV-1プロウイルスのエピジェネティックな解析を行ったところ、宿主細胞のDNA結合蛋白CTCFがHTLV-1プロウイルスに直接結合している事が明らかとなった(Satou et al PNAS 2017)。ウイルスの転写制御における重要な1つのメカニズムと考えられる。HTLV-1組み込み部位を用いたATL早期診断法確立へ向けた研究では、臨床検体収集を行った。今後研究を継続する予定。・プロウイルスの宿主ゲノムへの組み込み部位解析系をセットアップして、それぞれの感染クローンの特定とクローン性増殖の度合いを評価出来るようになった。・研究遂行に必要な、臨床検体の収集が予定通り進んでいる。 | KAKENHI-PROJECT-26461428 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26461428 |
成人T細胞白血病の制御へ向けたHTLV-1プロウイルス解析 | (約20症例、40検体)・エピゲノム解析は、1つ論文を投稿して現在revision中である。ウイルス組み込み部位に関してはデータ解析を改良する。症例集積を進める。さらに高精細なプロウイルス解析を進める。血液内科学・ウイルス組み込み部位解析に関して、データの3次解析を進めていく予定。・症例の収集を更に進める。・ChIP-seq解析の低コスト化を実現する事で、多くの臨床検体の解析を進めていく予定。その結果、高精度にプロウイルス転写制御機構を理解する事が可能になると期待される。当初20万円の未使用見込(次年度繰越)の予定だったが、研究計画の変更が生じたため支払いの必要が生じた。その残額が695円となった。次年度の試薬購入や旅費に充てたいと考えている。 | KAKENHI-PROJECT-26461428 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26461428 |
小規模病院の連携で創る中山間地域の看護師の継続教育プログラムとその評価 | 人口減少と少子高齢化が進み、過疎化が著しい中山間地域では、医師・看護師不足が深刻化し、安定した継続的な地域医療を確保する体制づくりが課題である。加えて、急性期医療施設が少ない中での医療・看護活動には、都市部の医療・看護活動とは異なる知識・実践力が求められる。中山間地域の小規模病院では、スタッフの人員不足ならびに経験・年齢層の偏りのため、継続教育の実践に困難を生じている。そこで、本研究では、小規模病院間の連携を基礎に、中山間地域で活躍できる看護師の継続教育のプログラム(中山間地域継続教育プログラム)を構築し、実施・評価することを目的とし、中山間地域の看護師の生涯学習体制の整備をねらいとしている。人口減少と少子高齢化が進み、過疎化が著しい中山間地域では、医師・看護師不足が深刻化し、安定した継続的な地域医療を確保する体制づくりが課題である。加えて、急性期医療施設が少ない中での医療・看護活動には、都市部の医療・看護活動とは異なる知識・実践力が求められる。中山間地域の小規模病院では、スタッフの人員不足ならびに経験・年齢層の偏りのため、継続教育の実践に困難を生じている。そこで、本研究では、小規模病院間の連携を基礎に、中山間地域で活躍できる看護師の継続教育のプログラム(中山間地域継続教育プログラム)を構築し、実施・評価することを目的とし、中山間地域の看護師の生涯学習体制の整備をねらいとしている。 | KAKENHI-PROJECT-19K10806 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K10806 |
肝の病態生理における肝類洞壁細胞の意義と新らしい治療法の開発 | 1.エンドトキシン(Ex)誘発肝障害の機序。Ex投与と盲腸結紮穿刺モデルにおいて、類洞内皮のICAM-ImRNA及びICAM-1の発現亢進を認め、肝マクロファージ(Mφ)をブロックすることにより、これらが抑制されることを明らかにした。そして、好中球枯渇モデルではEx肝障害が軽減することを示し、本病態の発生機序における肝Mφ-接着分子-好中球系の意義を明らかにした。また、血管収縮、血小板凝集に関与するトロンボキサンA_2(TXA_2)の受容体が類洞内皮に存在することを証明し、TXA_2合成酵素阻害剤がEx肝障害を軽減することから、本病態と類洞内TXA_2受容体系の関連性を示した。2.肝冷保存・再灌流傷害の発生機序とその対策。肝冷保存時には肝Mφがプライミング及至は活性化の状態になっていることを、アシアロGM1発現の解析、TNFα産生能の測定により明らかにし、肝Mφをブロックすることにより、類洞内凝固を抑制し、微小循環傷害にもとづく再灌流傷害を防止出来ることを示した。更には、冷保存時間とともに類洞内皮のICAM-1発現が高まり、白血球接着が亢進したが、肝Mφのブロックによりこれらを抑制することも明らかにした。3.活性化伊東細胞におけるNa^+-Ca^<++>交換体の発現。活性化伊東細胞のコラーゲン合成能や微小循環に関与する収縮能がCa^<++>のシグナルに依存するとの観点から細胞内Ca^<++>濃度の抑制機構の研究過程において発見した。活性化伊東細胞の新しいマーカーとなること、肝線維化の早期診断に応用しうる可能性を示した。4.新しい肝特異遺伝子(kan-1)の分子生物学、医学的意義について。本遺伝子はラットでは420個、ヒトでは418個のアミノ酸残基からなる分子量的46キロダルトンの蛋白をコードすることを明らかにした。ラットでは胎生期の肝では発現はなく、出生直後より発現し、一種の分化マーカーの可能性が考えられた。ヒトkan-1は、胆管細胞癌、転移性肝癌では全く発現せず、肝細胞癌にのみ種々の程度で発現する。そして、その発現強度と予後が有意に相関し、低発現例では著しく不良であった。肝細胞癌の新しい予後因子として期待され、現在、特異抗体の作成にも成功している。1.エンドトキシン(Ex)誘発肝障害の機序。Ex投与と盲腸結紮穿刺モデルにおいて、類洞内皮のICAM-ImRNA及びICAM-1の発現亢進を認め、肝マクロファージ(Mφ)をブロックすることにより、これらが抑制されることを明らかにした。そして、好中球枯渇モデルではEx肝障害が軽減することを示し、本病態の発生機序における肝Mφ-接着分子-好中球系の意義を明らかにした。また、血管収縮、血小板凝集に関与するトロンボキサンA_2(TXA_2)の受容体が類洞内皮に存在することを証明し、TXA_2合成酵素阻害剤がEx肝障害を軽減することから、本病態と類洞内TXA_2受容体系の関連性を示した。2.肝冷保存・再灌流傷害の発生機序とその対策。肝冷保存時には肝Mφがプライミング及至は活性化の状態になっていることを、アシアロGM1発現の解析、TNFα産生能の測定により明らかにし、肝Mφをブロックすることにより、類洞内凝固を抑制し、微小循環傷害にもとづく再灌流傷害を防止出来ることを示した。更には、冷保存時間とともに類洞内皮のICAM-1発現が高まり、白血球接着が亢進したが、肝Mφのブロックによりこれらを抑制することも明らかにした。3.活性化伊東細胞におけるNa^+-Ca^<++>交換体の発現。活性化伊東細胞のコラーゲン合成能や微小循環に関与する収縮能がCa^<++>のシグナルに依存するとの観点から細胞内Ca^<++>濃度の抑制機構の研究過程において発見した。活性化伊東細胞の新しいマーカーとなること、肝線維化の早期診断に応用しうる可能性を示した。4.新しい肝特異遺伝子(kan-1)の分子生物学、医学的意義について。本遺伝子はラットでは420個、ヒトでは418個のアミノ酸残基からなる分子量的46キロダルトンの蛋白をコードすることを明らかにした。ラットでは胎生期の肝では発現はなく、出生直後より発現し、一種の分化マーカーの可能性が考えられた。ヒトkan-1は、胆管細胞癌、転移性肝癌では全く発現せず、肝細胞癌にのみ種々の程度で発現する。そして、その発現強度と予後が有意に相関し、低発現例では著しく不良であった。肝細胞癌の新しい予後因子として期待され、現在、特異抗体の作成にも成功している。1.エンドトキシン(Ex)誘発肝障害の機序。Ex投与と盲腸結紮穿刺モデルにおいて、類洞内皮のICAM-1mRNA及びICAM-1の発現亢進を認め、肝マクロファージ(Mφ)をブロックすることにより、これらが抑制されることを明らかにした。そして、好中球枯渇モデルではEx肝障害が軽減することを示し、本病態の発生機序における肝Mφ-接着分子-好中球系の意義を明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-06454383 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06454383 |
肝の病態生理における肝類洞壁細胞の意義と新らしい治療法の開発 | また、血管収縮、血小板凝集に関与するトロンボキサンA_2(TXA_2)の受容体が類洞内皮に存在することを証明し、TXA_2合成酵素阻害剤がEx肝障害を軽減することから、本病態と類洞内TXA_2-TXA_2受容体系の関連性を示した。2.肝冷保存・再灌流傷害の発生機序とその対策。肝冷保存時には肝Mφがプライミング乃至は活性化の状態になっていることを、アシアロGM1の発現の解析、TNFα産生能の測定により明らかにし、肝Mφをブロックすることにより、類洞内凝固を抑制し、微小循環障害にもとづく再灌流傷害を防止出来ることを示した。更には、冷保存時間とともに類洞内皮のICAM-1発現が高まり、白血球接着が亢進したが、肝Mφのブロックによりこれらを抑制することも明らかにした。3.新しい肝特異遺伝子(kan-1)の分子生物学、医学的意義について。本遺伝子はラットでは420個、ヒトでは418個のアミノ酸残基からなる分子量的46キロダルトンの蛋白をコードすることを明らかにした。ラットでは胎生期の肝では発現はなく、出生直後より発現し、一種の分化マーカーの可能性が考えられた。ヒトkan-1は、胆管細胞癌、転移性肝癌では全く発現せず、肝細胞癌にのみ種々の程度で発現する。そして、その発現強度と予後が有意に相関し、低発現例では著しく不良であった。肝細胞癌の新しい予後因子として期待され、現在、特異抗体の作成にも成功している。I.エンドトキシン血症誘発肝傷害の機序とその制御について。エンドトキシン血症では肝マクロファージ(Mφ)が活性化し、TNFα、IL-1などの炎症性サイトカインやスーパーオキシドなどのフリーラジカルを過剰に産生することを示した。そして、これらが肝類洞内皮細胞傷害、白血球接着、類洞内凝固を誘導し、肝微小循環障害をもたらすことを明らかにした。そして、肝Mφのブロック、TXA_2合成酵素阻害剤の傷害抑制作用を示した。II.冷保存肝移植後のearly graft failureにおける肝Mφ及び類洞内皮細胞の関与。肝の冷保存、再灌流により肝Mφが活性化することを肝MφのアシアロGM1やTNF αmRNAの発現度により明らかにした。類洞内皮のICAM-1発現も冷保存に伴い上昇し、肝Mφのブロックによりその上昇が抑制されることを示した。再灌流傷害は肝Mφのブロック、抗TNFα抗体、TXA_2合成酵素阻害剤、抗ICAM-1抗体により有意に抑制された。超微形態学的にも肝冷保存中には肝実質細胞よりも類洞内皮細胞の傷害がより早期に生じることを観察した。IV.肝特異遺伝子(kan-1)について。その後の検索にてkan-1はヒトの胆汁酸抱合酵素の一つをコードする遺伝子であることが明らかになった。肝細胞癌、転移性肝癌約30例においてkan-1のmRNA発現を解析した結果、mRNA発現度は両者の鑑別に有用であること、さらに、肝細胞癌においては通常の臨床病理学的因子と独立した予後予知因子であることを患者の生存率、及び多変量解析により明らかにした(高発現は予後良好、低発現は予後不良)。 | KAKENHI-PROJECT-06454383 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06454383 |
合成作用素とスペクトル保存写像の研究 | 合成作用素の従来の研究をもとに,スペクトル保存写像と合成作用素の関連を調べた.そして,単位的な半単純可換バナッハ環の間で,乗法的にスペクトルを保存する全射の写像が,合成作用素に似た形で表現できることを証明した.さらに,末梢スペクトルの保存でも同様の結果を導いた.これらは,バナッハ環の保存問題への部分解答である.また,バナッハ空間上のシフト作用素の研究や,ハイヤーズ・ウラム安定性の応用面の開拓なども行った.合成作用素の従来の研究をもとに,スペクトル保存写像と合成作用素の関連を調べた.そして,単位的な半単純可換バナッハ環の間で,乗法的にスペクトルを保存する全射の写像が,合成作用素に似た形で表現できることを証明した.さらに,末梢スペクトルの保存でも同様の結果を導いた.これらは,バナッハ環の保存問題への部分解答である.また,バナッハ空間上のシフト作用素の研究や,ハイヤーズ・ウラム安定性の応用面の開拓なども行った.この研究の目的は,Banach環の保存問題を,合成作用素と関連づけて研究するものである。とくに,スペクトル保存に注目し,次の問題を考える。問題:Banach環の間のどんなスペクトル保存写像が,合成作用素を用いて表現されるか?この問題の部分的な解答が,2002年に,L.Molnarによって与えられた。それは,「ある仮定のもと,連続関数環C(X)上の単位的かつ乗法的な全射スペクトル保存写像が,合成作用素を用いて表現される」というものである。そこで,C(X)を関数環に拡張することを考え,次の定理を導いた(下記1番目の論文)。定理1:関数環の間の単位的かつ乗法的な全射スペクトル保存写像が,合成作用素を用いて表現される。この定理の証明には,峰関数を利用するという独自の方法を用いた。また,ほぼ同時に発表されたN.V.Rao and A.K.Royの結果と重なる部分もあるが,定理1は,スペクトル保存を値域保存と関連づけていて,より広い観点をもっている。これ結果は,羽鳥理(新潟大)氏と三浦毅(山形大)氏との共同研究による。まさに,これがこの研究課題のきっかけになった。その後,同メンバーで,定理1の関数環をBanach環に拡張する試みをし,定理1の「関数環」を「単位的半単純可換Banach環」に拡曝しても,同様のことが成り立つことをつきとめた(下記の2番目の論文)。この拡張には,分担者の高橋眞映(山形大)氏との別の研究で得たアイディアを用いた。他に,この研究に関連して,関数空間上の作用素に関する研究もすすめた。分担者の高橋氏とは,Hyers-Ulamの安定性をもつ作用素についての研究を行ってきたが,今回は,f(x+y)+cf(x)f(y)=k(x+y)とf(x+y)+cf(x)f(y)=k(x)k(y)という型の関数方程式について,その可解性とHyers-Ulam安定性を示した(下記の3番目の論文)。この研究の目的は,Banach環の保存問題を,合成作用素と関連づけて研究することである.とくに,スペクトル保存に注目し,次の問題を考えている.問題:Banach環の間のどんなスペクトル保存写像が,合成作用素を用いて表現されるか?この問題に関し,羽鳥理氏(新潟大・理)と三浦毅氏(山形大院・理工)との共同研究で,平成18年度末,次の定理を発表した.定理:巣位的半単純可換Banach環の間の単位的かつ乗法的なスペクトル保存写像は,合成作用素として表現される.平成19年度は、この定理のさらなる一般化を探ってきた.われわれの証明は、もともと関数環の概念(峰関数など)を活用しているので,Banach環としての一般化には新しい考え方が必要であり,それを求めるために,研究分担者の高橋氏にBanach環に関する情報をいただいてきた.一方で,われわれの証明は,「関数」としての解釈が強く,「スペクトル保存」にしても「値域保存」と捉えられるので,定理の「単位的半単純可換Banach環」を具体的な関数環や関数空間にあてはめられる可能性を秘めている.そのような場合に,どのような局面が現れるのかが,今後の発展に重要であることがわかってきた.上記の問題に関しては,羽鳥氏が,新潟大において研究グループを形成している.「バナッハ環セミナー」(筑波大)や「関数環研究集会」(信州大)などでは,彼らと議論が中心になった.とくに,「関数環研究集会」は,今年度は主催者側であったこともあり,関連分野の研究にも進展があった.平成18年度に問題点を指摘していたシフト作用素の問題や,スラントToeplitz作用素のスペクトルについて,院生との研究の中でいくつかの発見があった.その一部は口頭発表した.この研究は、次の定理が得られたことに、端を発する。定理:関数環の間の乗法的にスペクトルを保存する単位的全射写像は、合成作用素として表現される。この定理のアイディアを活かして、Banach環の保存問題を、合成作用素と関連づけて研究することが、この研究課題の目的である。上の定理は、羽鳥理氏(新潟大・理)と三浦毅氏(山形大・理工研)との共同研究で得られたものだが、さらに,分担者の高橋眞映氏(山形大・理工研)の協力を得て、その技法の発展を探ってきた。そして、上記定理の仮定 | KAKENHI-PROJECT-18540167 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18540167 |
合成作用素とスペクトル保存写像の研究 | 「スペクトル保存」は、「末梢スペクトル保存」に緩められることがわかった。また、単位元をもたない環の場合の考察も行った。さらに保存問題への観点を広げて、関数環の間の2-局所同型写像(全射)や2-局所等長写像(全射)をとりあげ、それらが合成作用素として表現できることを、つきとめた。一方で、合成作用素のひとつであるシフト作用素の研究もすすんだ。Hilbert空間上のシフト作用素の共役作用素が自然にもつ性質を、Banach空間の上で考えたシフト作用素が共有するかが、明らかになった。また、閉区間上の連続微分可能な関数の空間の上では、シフト作用素が存在しないことも、わかった。他に、高橋眞映氏とは、Hyers-Ulamの安定性問題と関連させて、Banach環上の作用素のCaushy-Euler型の分解についての新しい観点を発見した。また、Hua型不等式の応用結果も得た。「関数環研究集会」(2008年11月)や「つくばセミナー」(2009年3月)は、われわれの研究グループが中心になって開催し、関連の研究者が多く参集した。そこでは、上記の話題の他、ハーディ空間上のスラントToeplitz作用素のスペクトルに関する院生との共同研究の結果も発表した。 | KAKENHI-PROJECT-18540167 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18540167 |
ヒトトレハラーゼの分子学的検討と臨床的意義 | トレハラーゼは二糖類トレハロースを特異的に加水分解し、2分子のグルコースを生成する。本酵素は哺乳動物では主に腎臓および小腸の刷子縁に存在ており、腎尿細管障害で尿中に多く排泄される。しかしその構造や病態による排泄機能は知られていなかった。我々はまず本酵素のcDNAをRabbitトレハラーゼcDNAを用いたプラークハイブリダイゼーションにより決定した。その後本酵素のmRNAは肝臓にも発現していることを明らかにした。また免疫染色の結果、トレハラーゼは肝実質細胞内に存在していることが明らかになった。そこですでに我々が尿中トレハラーゼを測定するために構築していたELISAを用いて血清中の本酵素を測定し、その病態による変動を検討した。我々はまず健常人(82名)における血清中トレハラーゼ酵素量の検討を行った。そのうち98%は感度以下であり健常人での血清中濃度は極めて低いことが明かとなった。新生児肝炎(1例はサイトメガロウイルス肝炎、2例は原因不明)と先天性胆道閉鎖症の症例について検討したところ、両者とも上昇(20-27ng/ml)がみられたが、その値に差はなかった。また特異な症例であるが、ドクツルタケ(毒きのこ)摂取による肝機能障害では血清中トレハラーゼは216ng/mlと著明な高値が認められた。本症例でのGOTは7,098単位、GTPは7,862単位と異常高値であり血漿交換を必要とした。その後回復に伴い、GOT、GPTとともにトレハラーゼも正常化(感度以下)した。10歳女児のウイルス性肝炎(原因不明)でも肝機能に伴い変動した.(GOT:628単位、GPT:878単位、トレハラーゼ:39.8ng/ml)から(GOT:51単位、GPT:95単位、トレハラーゼ:20.7ng/ml)以上から肝機能障害患者では血清トレハラーゼの上昇がみられた。その上昇はその存在部位から肝細胞そのものの崩壊によるものと考えられた。また血清トレハラーゼの上昇がみられた患者ではその尿中トレハラーゼの上昇はみられず、尿中トレハラーゼは腎尿細管由来、血清中トレハラーゼは肝臓由来であることが明らかとなった。トレハラーゼは二糖類トレハロースを特異的に加水分解し、2分子のグルコースを生成する。本酵素は哺乳動物では主に腎臓および小腸の刷子縁に存在しており、腎尿細管障害で尿中に多く排泄される。しかしその構造や病態による排泄機能は知られていなかった。我々はまず本酵素のcDNAをRabbitトレハラーゼcDNAを用いたプラークハイブリダイゼーションにより決定した。その後本酵素のmRNAは肝臓にも発現していることを明らかにした。また免疫染色の結果、トレハラーゼは肝実質細胞内に存在していることが明らかになった。そこですでに我々が尿中トレハラーゼを測定するために構築していたELISAを用いて血清中の本酵素を測定し、その病態による変動を検討した。我々はまず健常人(82名)における血清中トレハラーゼ酵素量の検討を行った。そのうち98%は感度以下であり健常人での血清中濃度は極めて低かった。新生児肝炎(1例はサイトメガロウイルス肝炎、1例は原因不明)と先天性胆道閉鎖症の症例について検討したところ、両者とも上昇(20-27ng/ml)がみられたが、その値に差はなかった。また特異な症例であるが、毒きのこ摂取による肝機能障害では血清中トレハラーゼは216ng/mlと著明な高値が認められた。本症例でのGOTは7,098単位、GPTは7,862単位と高値であり血漿交換を必要とした。その後回復に伴い、GOT、GPTとともにトレハラーゼも正常化した。10歳女児のウイルス性肝炎(原因不明)でも肝機能に伴い変動した.(GOT:628単位、GPT:878単位、トレハラーゼ:39.8ng/ml)から(GOT:51単位、GPT:95単位、トレハラーゼ:20.7ng/ml以上から肝機能障害患者では血清トレハラーゼの上昇がみられた。その上昇はその存在部位から肝細胞そのものの崩壊によるものと考えられた。今回、先天性胆道閉鎖症と新生児肝炎との血清中の本酵素量に差はみられなかったが、さらに症例を重ね、また今後組織を含めた検討を行う予定である。トレハラーゼは二糖類トレハロースを特異的に加水分解し、2分子のグルコースを生成する。本酵素は哺乳動物では主に腎臓および小腸の刷子縁に存在ており、腎尿細管障害で尿中に多く排泄される。しかしその構造や病態による排泄機能は知られていなかった。我々はまず本酵素のcDNAをRabbitトレハラーゼcDNAを用いたプラークハイブリダイゼーションにより決定した。その後本酵素のmRNAは肝臓にも発現していることを明らかにした。また免疫染色の結果、トレハラーゼは肝実質細胞内に存在していることが明らかになった。そこですでに我々が尿中トレハラーゼを測定するために構築していたELISAを用いて血清中の本酵素を測定し、その病態による変動を検討した。我々はまず健常人(82名)における血清中トレハラーゼ酵素量の検討を行った。そのうち98%は感度以下であり健常人での血清中濃度は極めて低いことが明かとなった。 | KAKENHI-PROJECT-13770415 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13770415 |
ヒトトレハラーゼの分子学的検討と臨床的意義 | 新生児肝炎(1例はサイトメガロウイルス肝炎、2例は原因不明)と先天性胆道閉鎖症の症例について検討したところ、両者とも上昇(20-27ng/ml)がみられたが、その値に差はなかった。また特異な症例であるが、ドクツルタケ(毒きのこ)摂取による肝機能障害では血清中トレハラーゼは216ng/mlと著明な高値が認められた。本症例でのGOTは7,098単位、GTPは7,862単位と異常高値であり血漿交換を必要とした。その後回復に伴い、GOT、GPTとともにトレハラーゼも正常化(感度以下)した。10歳女児のウイルス性肝炎(原因不明)でも肝機能に伴い変動した.(GOT:628単位、GPT:878単位、トレハラーゼ:39.8ng/ml)から(GOT:51単位、GPT:95単位、トレハラーゼ:20.7ng/ml)以上から肝機能障害患者では血清トレハラーゼの上昇がみられた。その上昇はその存在部位から肝細胞そのものの崩壊によるものと考えられた。また血清トレハラーゼの上昇がみられた患者ではその尿中トレハラーゼの上昇はみられず、尿中トレハラーゼは腎尿細管由来、血清中トレハラーゼは肝臓由来であることが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-13770415 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13770415 |
エージェントを用いた日本語教育のための柔軟な協調学習環境の研究 | また,近年,インターネットの普及により,時間・場所の制約を越えて,様々な国の人々がサイバースペース上で容易にコミュニケーションできるようになってきた.本研究では,ソフトウェアエージェントの介在により,サイバースペースでの言語学習を支援する学習環境Anckleを提案した.Anckleは,コミュニカティブアプローチに基づき,サイバースペース内での母語話者とのコミュニケーションによる言語学習を支援する.また,外国語学習で大きなで問題となる言語転移に着目して,エージェントがコミュニケーションに介入し,学習者の理解状態に合わせて教授を行う.我々は,コミュニケーションギャップモデル(CGM)を提案し,中国人による日本語学習を支援するシステムを試作した.また,近年,インターネットの普及により,時間・場所の制約を越えて,様々な国の人々がサイバースペース上で容易にコミュニケーションできるようになってきた.本研究では,ソフトウェアエージェントの介在により,サイバースペースでの言語学習を支援する学習環境Anckleを提案した.Anckleは,コミュニカティブアプローチに基づき,サイバースペース内での母語話者とのコミュニケーションによる言語学習を支援する.また,外国語学習で大きなで問題となる言語転移に着目して,エージェントがコミュニケーションに介入し,学習者の理解状態に合わせて教授を行う.我々は,コミュニケーションギャップモデル(CGM)を提案し,中国人による日本語学習を支援するシステムを試作した.本研究の目的は,エージェント技術を用いて,日本語教育のための柔軟な協調学習環境を構築することである.我々は,その学習対象として,作文教育を選び,ネットワークを通じて添削作業が可能な学習支援システムを構築した.また,仮想環境MOOを利用した協調学習環境における日本語教育を試みた.学習者と教師が協調しながら行う添削作業を,コンピュータを用いて分散環境で可能とするシステムCoCoA(Communicative Correction Assisting System)を構築した.また,実験によりCoCoAの学習環境における添削に必要となる添削記号や支援機能を抽出した.その考察結果をもとに,添削文章の変換方式としてCCML(Communicative Correction Markup Language)を提案した.さらに,システムを試作し,評価実験を行い,CoCoAとCCMLの有効性を示した.また,本研究では,MOOを用いて構築された仮想環境及びそれを利用した協調学習とその実験的な評価を行った.MOOと呼ばれるマルチユーザシミュレーション環境は,複数の利用者が共有データベースにアクセスして,互いに話をしたり,共同でものを作ったりすることができる仮想空間として注目を集めている.我々は,仮想的な協調学習環境VirsicleとそのグラフィカルユーザインタフェースMooEr(MooExplorer)を構築した.この仮想学習環境は,バーチャルクラスルームとして試用し,試験を含むすべての授業,演習がそこで行われた.半年にわたる実験的な評価の結果,Virsicleは協調学習に適し,学習者の積極的な参加による学習効果の向上が期待できることがわかった.なお,本システムは,SUNワークステーション上にTcl/Tkを用いて構築しており、着実に研究成果をあげている.本研究の目的は,エージェント技術を用いて,日本語教育のための柔軟な協調学習環境を構築することである.我々は,その学習対象として,作文教育を選び,ネットワークを通じて添削作業が可能な学習支援システムを構築した.また,仮想環境MOOを利用した協調学習環境における日本語教育を試みた.学習者と教師が協調しながら行う添削作業を,コンピュータを用いて分散環境で可能とするシステムCoCoA(Communicative Correction Assisting System)を構築した.また,実験によりCoCoAの学習環境における添削に必要となる添削記号や支援機能を抽出した.その考察結果をもとに,添削文章の交換方式としてCCML(Communicative Correction Markup Language)を提案した.さらに,システムを試作し,評価実験を行い,CoCoAとCCMLの有効性を示した.また,本研究では,MOOを用いて構築された仮想環境及びそれを利用した協調学習とその実験的な評価を行った.MOOと呼ばれるマルチユーザシミュレーション環境は,複数の利用者が共有データベースにアクセスして,互いに話をしたり,共同でものを作ったりすることができる仮想空間として注目を集めている.我々は,仮想的な協調学習環境VirsicleとそのグラフィカルユーザインタフェースMooEr(Moo Explorer)を構築した.この仮想学習環境は,バーチャルクラスルームとして試用し,試験を含むすべての授業,演習がそこで行われた.半年にわたる実験的な評価の結果,Virsicleは協調学習に適し,学習者の積極的な参加による学習効果の向上が期待できることがわかった.本研究の目的は,エージェント技術を用いて,日本語教育のための柔軟な協調学習環境を構築することである.我々は,その学習対象として,作文教育を選び,ネットワークを通じて添削作業が可能な学習支援システムを構築した.学習者と教師が協調しながら行う添削作業を,コンピュータを用いて分散環境で可能とするシステムCoCoA(Communicative Correction Assisting System)を構築した.また,実験によりCoCoAの学習環境における添削に必要となる添削記号や支援機能を抽出した.その考察結果をもとに,添削文章の交換方式としてCCML(Communicative Correction Markup Language)を提案した.さらに,システムを試作し,評価実験を行い,CoCoAとCCMLの有効性を示した.また,近年,インターネットの普及により,時間・場所の制約を越えて,様々な国の人々がサイバースペース上で容易にコミュニケーションできるようになってきた.本研究では,ソフトウェアエージェエントの介在により,サイバースペースでの言語学習を支援する学習環境Anckle(Agent-based Communicative Kanji Learninge Environment)を提案した.Anckleは,コミュニカティブアプローチに基づき,サイバースペース内での母語話者とのコミュニケーションによる言語学習を支援する.また,外国語学習で大きなで問題となる言語転移に着目して,エージェントがコミュニケーションに介入し,学習者の理解状態に合わせて教授を行う. | KAKENHI-PROJECT-09480036 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09480036 |
エージェントを用いた日本語教育のための柔軟な協調学習環境の研究 | 我々は,コミュニケーションギャップモデル(CGM)を提案し,中国人による日本語学習を支援するシステムを試作した.本研究の目的は,エージェント技術を用いて,日本語教育のための柔軟な協調学習環境を構築することである.我々は,その学習対象として,作文教育を選び,ネットワークを通じて添削作業が可能な学習支援システムを構築した.学習者と教師が協調しながら行う添削作業を,コンピュータを用いて分散環境で可能とするシステムCoCoA(Communicative Correction Assisting System)を構築した.また,実験によりCoCoAの学習環境における添削に必要となる添削記号や支援機能を抽出した.その考察結果をもとに,添削文章の交換方式としてCCML(Communicative Correction Markup Language)を提案した.さらに,システムを試作し,評価実験を行い,CoCoAとCCMLの有効性を示した.また,近年,インターネットの普及により,時間・場所の制約を越えて,様々な国の人々がサイバースペース上で容易にコミュニケーションできるようになってきた.本研究では,ソフトウェアエージェントの介在により,サイバースペースでの言語学習を支援する学習環境Anckle(Agent-based Communicative Kanji Learning Environment)を提案した.Anckleは,コミュニカティブアプローチに基づき,サイバースペース内での母語話者とのコミュニケーションによる言語学習を支援する.また,外国語学習で大きなで問題となる言語転移に着目して,エージェントがコミュニケーションに介入し,学習者の理解状態に合わせて教授を行う.我々は,コミュニケーションギャップモデル(CGM)を提案し,中国人による日本語学習を支援するシステムを試作した. | KAKENHI-PROJECT-09480036 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09480036 |
第二次大戦後フランス自動車産業の多国籍企業化と産業政策の意義 | 1.国際化時代におけるフランス自動車産業の変貌過程と同国政府による政策的関与の実態の解明。寡占企業の多国籍化プロセスの実態分析の一環として、国有化企業ルノ-公団と私企業プジョーを取り上げ、その経営戦略(製造モデル政策と企業集中活動への取組み)の分析をつうじて、戦略対応の差異ならびに産業構造の転換等について検討を加えた。フランスでは大手企業による中小の淘汰をつうじた産業構造の寡占化が進展するが、一方で寡占企業間の「協調」体質が形成された結果、産業構造の脆弱性は温存され、その抜本的改善が遅延し激化する国際競争への有効な対応策を欠いた点を明らかにした。また、上記企業の行動様式には明確な相違の存在することが判明し、企業成長パターンの類型化に向けて一定の展望を得ることができた。これらについては論稿として公表した。併せて、1960年代の北米展開ならびに企業集中等の分析を行った。一連の検討により、北米進出は仏がその体質的脆さを認識する契機となり大型提携=ルノ-・プジョー協定の実現を導く役割を果たしたこと等を理解できた。政府の政策展開については、60年代初頭に政府審議会による報告書の作成等をつうじて総合的な政策提言が行われていることをつかみ、実態解明への有益な手がかりを知ることができた。今後、分析によって得られた新たな知見をふまえ、国際化時代におけるフランスの対応の特質の一端を公表する予定である。2.第二次世界大戦後の仏・欧州経済および自動車産業に関する欧米文献・資料等のデータベース化作業の進展ならびに同データベースのWindows環境への移行。本年度は、継続してより一層の情報収集を行うとともに、パソコン設備の更新によってDOS環境からWindows環境への移行が可能となり、上記作業の効率的な遂行ならびにデータベースの活用を行うことができた。1.国際化時代におけるフランス自動車産業の変貌過程と同国政府による政策的関与の実態の解明。寡占企業の多国籍化プロセスの実態分析の一環として、国有化企業ルノ-公団と私企業プジョーを取り上げ、その経営戦略(製造モデル政策と企業集中活動への取組み)の分析をつうじて、戦略対応の差異ならびに産業構造の転換等について検討を加えた。フランスでは大手企業による中小の淘汰をつうじた産業構造の寡占化が進展するが、一方で寡占企業間の「協調」体質が形成された結果、産業構造の脆弱性は温存され、その抜本的改善が遅延し激化する国際競争への有効な対応策を欠いた点を明らかにした。また、上記企業の行動様式には明確な相違の存在することが判明し、企業成長パターンの類型化に向けて一定の展望を得ることができた。これらについては論稿として公表した。併せて、1960年代の北米展開ならびに企業集中等の分析を行った。一連の検討により、北米進出は仏がその体質的脆さを認識する契機となり大型提携=ルノ-・プジョー協定の実現を導く役割を果たしたこと等を理解できた。政府の政策展開については、60年代初頭に政府審議会による報告書の作成等をつうじて総合的な政策提言が行われていることをつかみ、実態解明への有益な手がかりを知ることができた。今後、分析によって得られた新たな知見をふまえ、国際化時代におけるフランスの対応の特質の一端を公表する予定である。2.第二次世界大戦後の仏・欧州経済および自動車産業に関する欧米文献・資料等のデータベース化作業の進展ならびに同データベースのWindows環境への移行。本年度は、継続してより一層の情報収集を行うとともに、パソコン設備の更新によってDOS環境からWindows環境への移行が可能となり、上記作業の効率的な遂行ならびにデータベースの活用を行うことができた。 | KAKENHI-PROJECT-08730026 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08730026 |
下垂体ホルモン分泌の分子機構に関する研究 | 我々は、ラット下垂体細胞を用いてGHRHとSRIFの投与下においてRab3BとSNARE機構を構成するSNAP-25、syntaxinとの関連について検討した。GH、Rab3Bの免疫組織化学二重染色の共焦点レーザー顕微鏡による観察では、GHRH投与下でGHの染色性の減少とRab3Bの染色性の増加、SRIF投与下でGHの染色性の増加とRab3Bの染色性の低下を認め、Rab3BはGHを取りまくように存在することが示された。Rab3BとSNAP-25、syntaxinとの免疫組織化学二重染色の共焦点レーザー顕微鏡による観察では、対照群に比しGHRH投与下でRab3BとSNAP-25、syntaxinの共存が見られるようになりSRIF投与下でこれらの共存が減退することが示された.異なる蛍光波長を持つgreenfluorescent protein(GFP)でGHとRab3、syntaxin、SNAP-25の細胞内動態を同一細胞内で観察した。ラットGHのcDNAとラットRab3BのcDNAに対して制限酵素サイトをPCRに付加し組換えを行い、2種類のGFPと融合させた。これらのGHとRab3Bの組換えcDNAを、ラット下垂体細胞株であるGH3細胞に導入した。GHとRab3Bの発現をおのおの同一生細胞内でリアルタイムに共焦点レーザー顕微鏡下に観察した。GH分泌の初期よりRab3Bが関与していることが明らかになった。syntaxin、SNAP-25についても同様の実験を行い、GH分泌の最後の過程でsyntaxin、SNAP-25が関与していることが明らかになった。また、Rab3Bの発現抑制によりRab3Bを抑制することにより、GHの細胞内輸送と分泌が阻害されることを確認した。我々は、ラット下垂体細胞を用いてGHRHとSRIFの投与下においてRab3BとSNARE機構を構成するSNAP-25、syntaxinとの関連について検討した。GH、Rab3Bの免疫組織化学二重染色の共焦点レーザー顕微鏡による観察では、GHRH投与下でGHの染色性の減少とRab3Bの染色性の増加、SRIF投与下でGHの染色性の増加とRab3Bの染色性の低下を認め、Rab3BはGHを取りまくように存在することが示された。Rab3BとSNAP-25、syntaxinとの免疫組織化学二重染色の共焦点レーザー顕微鏡による観察では、対照群に比しGHRH投与下でRab3BとSNAP-25、syntaxinの共存が見られるようになりSRIF投与下でこれらの共存が減退することが示された.異なる蛍光波長を持つgreenfluorescent protein(GFP)でGHとRab3、syntaxin、SNAP-25の細胞内動態を同一細胞内で観察した。ラットGHのcDNAとラットRab3BのcDNAに対して制限酵素サイトをPCRに付加し組換えを行い、2種類のGFPと融合させた。これらのGHとRab3Bの組換えcDNAを、ラット下垂体細胞株であるGH3細胞に導入した。GHとRab3Bの発現をおのおの同一生細胞内でリアルタイムに共焦点レーザー顕微鏡下に観察した。GH分泌の初期よりRab3Bが関与していることが明らかになった。syntaxin、SNAP-25についても同様の実験を行い、GH分泌の最後の過程でsyntaxin、SNAP-25が関与していることが明らかになった。また、Rab3Bの発現抑制によりRab3Bを抑制することにより、GHの細胞内輸送と分泌が阻害されることを確認した。我々は、ラット下垂体細胞を用いてGHRHとSRIFの投与下においてRab3BとSNARE機構を構成するSNAP-25、syntaxinとの関連について検討した。GHRHまたはSRIF投与後、ラット下垂体組織を摘出し、光顕下にGH、Rab3B、SNAP-25、syntaxinの免疫組織化学を行った。GH、Rab3Bの免疫組織化学二重染色の共焦点レーザー顕微鏡による観察では、GHRH投与下でGHの染色性の減少とRab3Bの染色性の増加、SRFI投与下でGHの染色性の増加とRab3Bの染色性の低下を認め、Rab3BはGHを取りまくように存在することが示された。Rab3BとSNAP-25、syntaxinとの免疫組織化学二重染色の共焦点レーザー顕微鏡による観察では、対照群に比しGHRH投与下でRab3BとSNAP-25、syntaxinの共存が見られるようになりSRFI投与下でこれらの共存が減退することが示された。ついで異なる蛍光波長を持つgreenfluorescent protein(GFP)でGHとRab3B、syntaxin、SNAP-25の細胞内動態を同一細胞内で観察した。ラットGHのcDNAとラットRab3BのcDNAに対して制限酵素サイトをPCRに付加し組換えを行い、2種類のGFPと融合させた。これらのGHとRab3Bの組換えcDNAを、ラット下垂体細胞株であるGH3細胞に導入した。GHとRab3Bの発現をおのおの同一生細胞内でリアルタイムに共焦点レーザー顕微鏡下に観察した。GH分泌の初期よりRab3Bが関与していることが明らかになった。syntaxin、SNAP-25についても同様の実験を行い、GH分泌の最後の過程でsyntaxin、SNAP-25が関与していることが明らかになった。Rab3Bの発現抑制によりGHの分泌動態がどのように変化するかについて実験を行った。ラットGHのcDNAとラットRab3BのcDNAに対して制限酵素サイトをPCRに付加し組換えを行い、2種類のGFPと融合させた。これらのGHとRab3Bの組換えcDNAを、ラット下垂体細胞株であるGH3細胞に導入した。 | KAKENHI-PROJECT-14571334 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14571334 |
下垂体ホルモン分泌の分子機構に関する研究 | このGFP融合GHを発現したGH3細胞を培養し、Rab3Bに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドをトランスフェクションした。Rab3Bに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの塩基配列については過去に発表されたもの(Nature 1993, 364 : 540-544)を利用した。センス、スクランブル配列のオリゴヌクレオチド投与群、オリゴヌクレオチド非投与群を対照試験とした。Rab3Bの発現が抑制されていることをwestern blottingで確認した後、GFP融合GHを発現したGH3細胞におけるGHの分泌動態を生細胞内でリアルタイムに共焦点レーザー顕微鏡下に観察した。同様にsyntaxin、SNAP-25の2種類のSNARE機構を構成する蛋白についてもその動態を共焦点レーザー顕微鏡下に観察した。これらの実験系を通じて、Rab3Bを抑制することにより、GHの細胞内輸送と分泌が阻害されることを確認した。GHの分泌動態においてRab3Bが不可欠であることを明らかにした。これらの成果については今後発表していく予定である。 | KAKENHI-PROJECT-14571334 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14571334 |
血管内超音波イメージンブによる肺動脈の病理組織学的評価;生検病理組織との対比 | 本研究の目的は、血管内超音波イメージング法を用いて1)肺動脈の病理組織学適評価をおこなうこと2)内科的薬物療法の適応を明確にすることである。1.本年度、剖検心27例(肺高血圧症を伴う7例心肺病変を持たない20例)の肺動脈各40部位を用いて血管内超音波イメージング法により得られた画像と同一部位の病理組織像を比較検討した。肺高血圧症を伴う7例20部位では中膜、内膜の肥厚を中心とした3層構造を認め同部位の病理祖織像と一致した。またHeath-Edward grade III以上の群では、著明な内膜の肥厚所見を認めた。また心血管病変を持たない20例においては、血管内超音波イメージング像は1層構造を呈した。この結果は1994年米国心臓会議にて発表した。2.臨床例への応用としては25例に行い剖検心と同様の結果が得られた。すなわち肺高血圧症が軽度の例では中膜の肥厚を中心とした像が得られ、肺高血圧が高度の例では内膜の肥厚を中心とした像が得られ通常の肺生検部位と良好な相関を示した。また、正常な肺動脈圧をもつ群においては、肺血管は1層構造を示した。この結果は、剖検心を用いた結果と一致していた。この結果は1994年小児循環器学会にて発表した。3.酸素負荷をおこなった3症例、プロサイリン負荷をおこなった1症例では血管内超音波イメージング法にて肺動脈の良好な拡張を認め治療効果の予測が可能であった。今後高度の肺高血圧症への新しい治療法として効果的とされるNO吸入療法の適応決定および治療効果判定などの応用が考えられる。本研究の目的は、血管内超音波イメージング法を用いて1)肺動脈の病理組織学適評価をおこなうこと2)内科的薬物療法の適応を明確にすることである。1.本年度、剖検心27例(肺高血圧症を伴う7例心肺病変を持たない20例)の肺動脈各40部位を用いて血管内超音波イメージング法により得られた画像と同一部位の病理組織像を比較検討した。肺高血圧症を伴う7例20部位では中膜、内膜の肥厚を中心とした3層構造を認め同部位の病理祖織像と一致した。またHeath-Edward grade III以上の群では、著明な内膜の肥厚所見を認めた。また心血管病変を持たない20例においては、血管内超音波イメージング像は1層構造を呈した。この結果は1994年米国心臓会議にて発表した。2.臨床例への応用としては25例に行い剖検心と同様の結果が得られた。すなわち肺高血圧症が軽度の例では中膜の肥厚を中心とした像が得られ、肺高血圧が高度の例では内膜の肥厚を中心とした像が得られ通常の肺生検部位と良好な相関を示した。また、正常な肺動脈圧をもつ群においては、肺血管は1層構造を示した。この結果は、剖検心を用いた結果と一致していた。この結果は1994年小児循環器学会にて発表した。3.酸素負荷をおこなった3症例、プロサイリン負荷をおこなった1症例では血管内超音波イメージング法にて肺動脈の良好な拡張を認め治療効果の予測が可能であった。今後高度の肺高血圧症への新しい治療法として効果的とされるNO吸入療法の適応決定および治療効果判定などの応用が考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-05770580 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05770580 |
随意性追跡眼球運動の神経機構の生理学的研究 | 小脳が運動学習に深く関与していることが、前庭動眼反射(VOR)を代表とする眼球反射の適応性変化における小脳片葉の役割の研究結果から強く示唆されている。しかしながら、小脳中で運動学習の原因が生じるのか、それとも単に運動学習に必要な信号が小脳を通過しているだけであるのでないかと見解が大きく分かれている。この論点の食い違いには、片葉の神経細胞にはVOR(反射)に関与するものと、追跡眼球運動をはじめとする随意運動に関与するものがそれぞれ独立に存在していることが根底にあり、それらを区別しているかによって見解が異なるのでないかと想定される。そこで、VORに特異的に応答するプルキンエ細胞と追跡眼球運動に特異的に応答するプルキンエ細胞の空間的分布を片葉とそれに隣接する腹側傍片葉において、生理学及び解剖学的に検討した。その結果、VORに選択的に反応するプルキンエ細胞は、片葉に存在するのに対して、追跡眼球運動に選択的に応答するプルキンエ細胞は、腹側傍片葉に存在することが明かになった。さらに、片葉と腹側傍片葉の解剖学的特徴を検索してみたが、片葉は主に前庭神経核に出力しているのに対して、腹側傍片葉は主に小脳歯状核に中位核に出力していた。また片葉には、前庭神経筋や前庭核、橋被蓋網様核から苔状線維が主に入力していたが、腹側傍片葉には、橋被蓋網様核や橋核から苔状線維が入力していた。一方、下オリーブ核内の起始細胞は、片葉、腹側傍片葉ともに内側副核に存在した。これらの所見を総合すると、猿の片葉は、前庭系からの頭の信号を、登上線維系の誤差信号を使って修飾してVORを制御しているのに対して、腹側傍片葉には、主に橋由来の視標の速度ないし眼球運動の速度を、登上線維系の誤差信号を使って修飾しその結果を小脳歯状核ないし中位核に送り、随意運動である追跡眼球運動を制御していると考えられる。小脳が運動学習に深く関与していることが、前庭動眼反射(VOR)を代表とする眼球反射の適応性変化における小脳片葉の役割の研究結果から強く示唆されている。しかしながら、小脳中で運動学習の原因が生じるのか、それとも単に運動学習に必要な信号が小脳を通過しているだけであるのでないかと見解が大きく分かれている。この論点の食い違いには、片葉の神経細胞にはVOR(反射)に関与するものと、追跡眼球運動をはじめとする随意運動に関与するものがそれぞれ独立に存在していることが根底にあり、それらを区別しているかによって見解が異なるのでないかと想定される。そこで、VORに特異的に応答するプルキンエ細胞と追跡眼球運動に特異的に応答するプルキンエ細胞の空間的分布を片葉とそれに隣接する腹側傍片葉において、生理学及び解剖学的に検討した。その結果、VORに選択的に反応するプルキンエ細胞は、片葉に存在するのに対して、追跡眼球運動に選択的に応答するプルキンエ細胞は、腹側傍片葉に存在することが明かになった。さらに、片葉と腹側傍片葉の解剖学的特徴を検索してみたが、片葉は主に前庭神経核に出力しているのに対して、腹側傍片葉は主に小脳歯状核に中位核に出力していた。また片葉には、前庭神経筋や前庭核、橋被蓋網様核から苔状線維が主に入力していたが、腹側傍片葉には、橋被蓋網様核や橋核から苔状線維が入力していた。一方、下オリーブ核内の起始細胞は、片葉、腹側傍片葉ともに内側副核に存在した。これらの所見を総合すると、猿の片葉は、前庭系からの頭の信号を、登上線維系の誤差信号を使って修飾してVORを制御しているのに対して、腹側傍片葉には、主に橋由来の視標の速度ないし眼球運動の速度を、登上線維系の誤差信号を使って修飾しその結果を小脳歯状核ないし中位核に送り、随意運動である追跡眼球運動を制御していると考えられる。平成2年度は、猿の小脳片葉及び傍片葉の眼球運動に対する役割を同定する研究を、電気生理学及び薬理学的方法を用いて行った。まず1頭の猿で、片葉及び傍片葉にタングステン微小電極を刺入し、眼球運動中のプルキンエ細胞の単一発射活動を記録し、暗闇の中で頭を回転した時に生じる前庭動眼反射と追跡眼球運動に対する反応を検討した。その結果、片葉プルキンエ細胞は、前庭動眼反射時には、頭の回転速度と同期した活動を示すのに対し、片葉の背側に接する傍片葉のプルキンエ細胞は、追跡眼球眼球速度と同期した活動を特異的に示すことが明かになった。さらに、視覚応答や、前庭動眼反射と視覚刺激を組み合わせた眼球運動に対する応答も検討したが、総合的には、片葉が反射性の眼球運動、傍片葉が随意性の眼球運動をそれぞれ制御しているという知見を得た。このことから、眼球運動における小脳の各部の機能分担が整理された。以上の結果を、平成2年京都で行われた第14回神経科学学術集会で発表した。次に、眼球運動の制御機構を解析するために、小脳の神経細胞の活動を修飾する薬物を片葉に局所投与し、その効果を調べた。小脳神経細胞には、長期抑圧と呼ばれる、シナプス伝達の可塑性があり、それが小脳による運動学習の基本機構であるという仮説があるが、それを特に検討した。 | KAKENHI-PROJECT-02670046 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02670046 |
随意性追跡眼球運動の神経機構の生理学的研究 | 即ち、長期抑圧を特異的にブロックする作用のあるヘモグロビンを片葉に局所投与し、運動学習のモデルである前庭動眼反射の適応性変化に対する影響を、猿及び兎で検討した。その結果、ヘモグロビンは特異的に、前庭動眼反射の学習を阻害することがわかった。なお、この結果を、平成2年に東京でおこなわれた第13回国際バラニ-学会で講演発表するとともに、平成3年速報として、ニュ-ロレポ-ト誌に掲載する予定である。本年度は、日本猿を実験材料として用いて、追跡眼球運動の神経機構を解析するために、微小電極を用いた生理実験とトレ-サ-を用いた解剖学的研究を併行して行った。2頭の無麻酔覚醒の日本猿の小脳片葉と腹側傍片葉のプルキンエ細胞の単一発射の活動を記録し、随意運動である追跡眼球運動をさせた時と、頭が回転した時に生じる前庭動眼反射の際の反応を比較した。その結果、腹側傍片葉には追跡眼球運動が生じた時に特異的反応が生じるが、前庭動眼反射時にはそのような反応を示さない、対照的に、片葉には、追跡眼球前庭動眼反射にのみ、これを促進する反応が観察された。このことは、片葉は霊長類では、前庭動眼反射よりもむしろ追跡眼球運動の制御を行っているという通説を否定するきわめて重要な所見であり、速報としてニュ-ロレポ-ト誌に発表した。この所見を解剖学的に確認するために、猿5頭を用いて、片葉もしくは傍片葉にWGAーHRPを微小注入し、順行性もしくは逆行性に標識される細胞要素を検討し、それぞれへの入出力部位を検討した。その結果、片葉からはおもに前庭核に出力するのに対して、腹側傍片葉からは、主に小脳前中位核、歯状核に出力することが確認された。さらに、片葉には前庭神経節、前庭核、橋被蓋網様核が主として入力しているのに対して、腹側傍片葉には、橋核が主たる入力部位であることがわかった。これらの解剖所見は生理学的知見とよく対応しており、蓋長類では、片葉が前庭動眼反射を、腹側傍片葉が追跡眼球運動をそれぞれ制御していることになる。これらの所見を平成4年度の生理学会に公表するとともに、本年の夏チェコスロバキアでおこなわれる第14回国際バラニ-学会で講演する予定である。前庭動眼反射(VOR)に特異的に応答するプルキンエ細胞と、追跡眼球運動に特異的に応答するプルキンエ細胞の空間的分布を、片葉及び隣接する腹側傍片葉において、生理学及び解剖学的に検討した。慢性猿標本を用いてユニット発射活動の記録したが、VORに応答し主に頭の回転速度に選択的に反応するプルキンエ細胞は、片葉に存在するのに対して、追跡眼球運動の速度に選択的に応答するプルキンエ細胞は、腹側傍片葉に存在した。さらに、VORを猿の頭と同時に動く視標を注視させて抑えた時(VOR-supression)には、片葉プルキンエ細胞はVORの時と同じように頭の速度に特異的に反応するのであるが、腹側傍片葉の細胞はVOR-supressionの時により強く反応した。次に、片葉と腹側傍片葉のそれぞれの解剖学的特徴を検索してみた。6例の猿の片葉もしくは腹側傍片葉にWGA-HRP、1例にはPHA-Lを微小注入し、順行性に標識される神経終末、逆行性に標識される神経細胞体部の脳内分布をそれぞれ組織化学的に調べた。その結果、片葉は主に前庭神経核(内側核、外側核、上核)に出力しているのに対して、腹側傍片葉は主に小脳歯状核と中位核に出力していた。また苔状線維入力の起源の分布にも差があり、片葉には、前庭神経節や前庭核、橋被蓋網様核から主に入力していたが、腹側傍片葉には、橋被蓋網様核や橋核から主に入力していた。一方、もう1つの入力系である登上線維系の下オリーブ核内の起始細胞は、片葉、腹側傍片葉ともに内側副核に見られた。 | KAKENHI-PROJECT-02670046 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02670046 |
老化促進マウスを用いた造血系老化の研究 | 我々は、老化促進モデルマウス(SAM-P)には、加齡に伴って末梢血球数、特に白血球数の有意な減少が見られることを、既に報告している。本研究では、先ず、これが造血幹細胞の機能的老化によるものか、脾や骨髄など造血組織の間質細胞の造血支持機能の低下によるものかを明かにするために、老若マウス間で骨髄相互移植を行った。老若それぞれのマウスから採取した造血幹細胞を同年齢の宿主マウスに移植する限り、その脾コロニー形成能には変化が認められなかった。即ち、造血幹細胞には老化現象は見られなかった。一方、同年齢のマウスから採取した造血幹細胞を老齢マウス、幼若マウスそれぞれに移植した場合には、幼若マウスでの造血系の回復が、より良好であった。また、老化マウスにおいて、特に白血球前駆細胞である顆粒球・マクロファージコロニー形成細胞の数に顕著な減少が見られた。これは、加齢マウスでみられる末梢血球の減少が造血支持環境の、細胞分化誘導機能の低下によるものであることを示唆する。次いで、この加齢に伴って低下する造血支持能の要因を明らかにするために、老若マウス骨髄細胞からの顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)の産生を調べた。加齢マウスでは、GM-CSFの産生量が明かに減少していたが、IL-3や細胞内毒素(LPS)刺激に反応して起るGM-CSFの産生誘導/亢進には差が認められなかった。以上、本年度の研究によって、加齢マウスにおける末梢白血球数の減少が、造血組織の白血球誘導因子産生能の低下のために、成熟白血球までの分化が低減するという、造血支持機能の老化を主たる原因とすることが明らかになった。我々は、老化促進モデルマウス(SAM-P)には、加齡に伴って末梢血球数、特に白血球数の有意な減少が見られることを、既に報告している。本研究では、先ず、これが造血幹細胞の機能的老化によるものか、脾や骨髄など造血組織の間質細胞の造血支持機能の低下によるものかを明かにするために、老若マウス間で骨髄相互移植を行った。老若それぞれのマウスから採取した造血幹細胞を同年齢の宿主マウスに移植する限り、その脾コロニー形成能には変化が認められなかった。即ち、造血幹細胞には老化現象は見られなかった。一方、同年齢のマウスから採取した造血幹細胞を老齢マウス、幼若マウスそれぞれに移植した場合には、幼若マウスでの造血系の回復が、より良好であった。また、老化マウスにおいて、特に白血球前駆細胞である顆粒球・マクロファージコロニー形成細胞の数に顕著な減少が見られた。これは、加齢マウスでみられる末梢血球の減少が造血支持環境の、細胞分化誘導機能の低下によるものであることを示唆する。次いで、この加齢に伴って低下する造血支持能の要因を明らかにするために、老若マウス骨髄細胞からの顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)の産生を調べた。加齢マウスでは、GM-CSFの産生量が明かに減少していたが、IL-3や細胞内毒素(LPS)刺激に反応して起るGM-CSFの産生誘導/亢進には差が認められなかった。以上、本年度の研究によって、加齢マウスにおける末梢白血球数の減少が、造血組織の白血球誘導因子産生能の低下のために、成熟白血球までの分化が低減するという、造血支持機能の老化を主たる原因とすることが明らかになった。加齢に伴って末梢血白血球数、造血幹細胞・前駆細胞数の減少が見られる老化促進マウス(SAM-P/1)は、造血系老化研究のモデルとして有用である。今年度は、この加齢に伴う造血能の低下が造血幹細胞の老化によるものか、或は造血支持微小環境の老化を原因とするものかを明かにするために、老若マウス間の骨髄移植を行い、造血系回復のカイネティックスを調べた。若齢マウスの骨髄細胞を移植されたマウスに比べて、老齢マウスの骨髄細胞を移植されたマウスでは、末梢血白血球数の回復に有意な遅延が見られた。造血幹細胞数・前駆細胞数に関しては、若齢マウスの骨髄細胞を移植したマウスより、むしろ老齢マウスの骨髄細胞を移植したマウスの方が早い回復を示した。一方、若齢マウスへの骨髄移植を行った場合に比べて老齢マウスへの骨髄移植を行った場合には、脾における造血前駆細胞(顆粒球・マクロファージ前駆細胞)数の回復に有意な遅延が見られた。以上の観察結果は、造血系の老化は、造血幹細胞自体の老化によるものではなく、造血微小環境、特に造血幹・前駆細胞の分化を支持する脾間質細胞の機能低下によるものであることを示唆する。しかし異系マウス(ddY)を宿主として骨髄移植を行った実験では、若齢マウス骨髄細胞を移植した場合に比べて、老齢マウス骨髄細胞を移植したマウスでは造血幹細胞による脾コロニー形成数が約半数となった。これは、少なくとも異系骨髄移植拒絶反応に対する造血幹細胞の抵抗性には、加齢に伴う機能低下が起こることを示す。なお、造血因子IL-6に関しては、加齢に伴う産生能の変動は見られなかった。 | KAKENHI-PROJECT-05834004 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05834004 |
老化促進マウスを用いた造血系老化の研究 | 我々は、老化促進モデルマウス(SAM-P)には、加齢に伴って末梢血球数、特に白血球数の有意な減少が見られることを、既に報告している。昨年度は、老若マウス間で骨髄相互移植を行った実験から、これが加齢マウスでみられる末梢血球の減少が造血支持環境の、細胞分化誘導機能の低下によるものであることを示めした。本年度は、この加齢に伴って低下する造血支持機能の要因を明らかにするために、老若マウス骨髄細胞からのGM-CSFの産生を調べた。幼若マウスに較べて加齢マウスでは、GM-CSFの産生量が明らかに減少していたが、LA-3刺激に反応して起る、このGM-CSFの産生誘導/亢進には差が認められなかった。しかし、これらの刺激を受けた時のGM-CSFの総産生量は幼若マウスの産生量より少ないことが判明した。なお、細菌内毒素(LPS)刺激に対する反応には、老若マウス間で差は認められなかった。これは、IL-3と違って、非造血制御因子による強い外来刺激に対する反応には、僅かな機能低下の影響がみられないためと思われる。また、IL-6の産生に関しては、老若マウスの間に有意な差はみられなかった。以上、本年度の研究によって、加齢マウスにおける末梢白血球数の減少が、造血組織の白血球誘導因子産生能の低下のために、成熟白血球までの分化が低減するという、造血支持機能の老化を主たる原因とすることが明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-05834004 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05834004 |
没入空間内における視覚・力覚の高度な融合による遠隔協調作業支援システムの構築 | 本研究では、遠隔地間でのIPTを用いた共有空間に触覚情報を付与することにより、非常に現実感の高い協調作業環境を構築することを目指した。まず、IPTのように広い可動範囲を持つディスプレイを用いる場合において、等身大のモデルとインタラクションを行なう場合に触覚情報を呈示することで作業能率が上がることが確認された。一方で、触覚呈示においてはサーボループの更新周波数と応答遅延が呈示される触覚に大きな影響を与えることが明らかになり、特に遠隔地間での触覚作業を行なう場合、通信遅延がシステムのパフォーマンスを左右する主要因となることが確認された。本研究では、遠隔地間での協調作業で問題となる、このような通信遅延に対して矛盾のないモデル管理を行なうことのできる触覚サーバシステムを構築し、実験によりその有効性を示した。さらにこのシステムを用いた本格的な組み立て協調作業環境を遠隔IPT間で展開することができた。また一方で、分散型システムとの特性の違いを比較し、求められる触覚共有のレベルに応じた適切な管理システムが考えられることを示した。本システムにより、遠隔地間での空間共有の臨場感がより一層高まることが期待される。設計・生産に関わる様々なシミュレーションに応用されることを望む一方で、さらに聴覚・味覚なども含めたマルチモーダルな共有空間構築がなされていくことを期待する。本研究では、遠隔地間でのIPTを用いた共有空間に触覚情報を付与することにより、非常に現実感の高い協調作業環境を構築することを目指した。まず、IPTのように広い可動範囲を持つディスプレイを用いる場合において、等身大のモデルとインタラクションを行なう場合に触覚情報を呈示することで作業能率が上がることが確認された。一方で、触覚呈示においてはサーボループの更新周波数と応答遅延が呈示される触覚に大きな影響を与えることが明らかになり、特に遠隔地間での触覚作業を行なう場合、通信遅延がシステムのパフォーマンスを左右する主要因となることが確認された。本研究では、遠隔地間での協調作業で問題となる、このような通信遅延に対して矛盾のないモデル管理を行なうことのできる触覚サーバシステムを構築し、実験によりその有効性を示した。さらにこのシステムを用いた本格的な組み立て協調作業環境を遠隔IPT間で展開することができた。また一方で、分散型システムとの特性の違いを比較し、求められる触覚共有のレベルに応じた適切な管理システムが考えられることを示した。本システムにより、遠隔地間での空間共有の臨場感がより一層高まることが期待される。設計・生産に関わる様々なシミュレーションに応用されることを望む一方で、さらに聴覚・味覚なども含めたマルチモーダルな共有空間構築がなされていくことを期待する。(1)遠隔協調作業システムにおける問題点の考察と検討遠隔協調作業システムにおいて、基礎実験により通信遅延が触覚呈示に大きな影響を及ぼすことを確認した。これを踏まえて、システムのネットワークに東京大学IML(文京区本郷)と岐阜テクノプラザ(岐阜県各務原市)を結ぶギガビットネットワークを用いる評価実験を行い、広帯域回線の利用により通信遅延が軽減されることを確認した。また、より多自由度の力覚表現を行うため、8本のワイヤを持つHapticGEARを再開発した。(2)遠隔協調作業システムの構築システムとして、集中管理型・分散処理型の2種を構築し、そのパフォーマンスを検証した。実験のための通信環境としては、東京大学IML、東京大学先端研(目黒区駒場)、岐阜テクノプラザの3ヶ所それぞれのIPT間を結ぶネットワークを用いた。集中管理型システムにおいては、IMLのサーバで触覚演算を行い、更新情報を先端研、岐阜テクノプラザに配信する方式をとった。一方、分散処理型システムでは、3ヶ所に設置したサーバ間でサーバの持つ情報をその他のサーバへと互いに送信し合うことによって同期を取ることにした。これらのシステムにおいて行う検証実験として、円柱モデルを持ち上げる、板モデルを弾性変形させるという2つの作業を行った。前者の持ち上げ実験においては、3者の指先情報間の同期が必要になるため、分散処理型システムより集中管理型システムの方が優れた結果が出た。後者の板の変形実験においては、逆に分散処理型システムが優れているという結果になった。これは、3ヶ所のサーバそれぞれに触覚情報を持ち、触覚情報更新ループがローカルで閉じている分散処理システムの方が有利であるためである。これらの実験により、遠隔地でのモデル情報の共有が要求される場合は集中管理型システムが、高精細な触覚呈示・触覚更新が必要とされる場合は分散処理型システムが優れているという結論に達し、状況に応じて有効なシステムを選択する必要があることが示された。本研究では,装着型力覚提示装置を仮想環境および実世界環境でおもにコミュニケーションに利用する技術を確立することを目的とした.このための基礎技術として,ネットワークを介した力覚情報の共有手法に関する検討,力覚情報提示のためのモデリング手法,実世界環境における情報提示のための空間位置計測技術などに関する検討を行った.これらの研究をとおして,力覚情報を利用したコミュニケーションの可能性を明らかにし,その新規性や有用性を示すことができたと考えている.視覚的に没入感の高いIPT空間を作業の舞台に設定したことにより,デスクトップ作業では実現できなかった,視覚・力覚が高度に融合した自由度の高いアプリケーションの可能性を開くことができた. | KAKENHI-PROJECT-13450098 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13450098 |
没入空間内における視覚・力覚の高度な融合による遠隔協調作業支援システムの構築 | 本研究で構築した触覚サーバシステムは,触覚協調作業を行なうことを想定した設計理念により,モデル情報がダイナミックに変化するアプリケーションであっても十分に有効な触覚環境を提供することができる.分散型システムでの協調作業は,モデルの更新が多地点間で行なわれるため,システム全体としての遅延ボトルネックが多地点間を結ぶ全ての通信路の中で最も遅延の大きい回線に依存する.これに対して,触覚サーバを利用した集中型のシステムでは接続するクライアント間でパフォーマンスの頭打ちが起きないような統制の取れたシステムを提供できる.触覚サーバシステムは遠隔協調作業において効果的な環境を提供することができる.これらの成果は,また,没入型多面ディスプレイを利用した仮想空間生成技術およびウェアラブルコンピューティングの分野の伸展にも寄与するものと確信している. | KAKENHI-PROJECT-13450098 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13450098 |
高齢者向けアシストと自律のハイブリッド操作系の構築 | 高齢者は加齢にともない、認知能力や判断能力の低下により、機械の操作が難しくなる。本研究では、このような課題に対して、操作者の状態やタスクの達成度をみながら、シームレスにアシスト制御や自律制御の選択を行うスーパーバイズド制御系を提案する。具体的には、人の状態としては注意集中度に着目し、脳波(随伴陰性変動)から動作実施前の準備状態を判断する。タスクの達成度は目標軌道からの偏差で判断し、機械学習(SVM)により識別を行う。得られた識別器は85%の正解率が得られ,所望の選択制御を可能にした。本研究では、アシスト制御、自律制御、およびそれらを複合化したハイブリッド制御を用いて、高齢者にとって優しい機械の操作系の実現を目指している。初年度、具体的な認知、判断、操作を伴う運転タスクを検討するために、実験用の機材としてドライビングシミュレータ(CarSimDS)、およびモバイルロボット(RoboCar)を購入した。前者のドライビングシミュレータを用いて、白線を自動で追従する自律操舵系をモデル予測制御に基づき作成し、良好にレーンキーピングが可能であることを確認した。またその出力(ステアリング舵角)をアシスト制御を行うための反力マニピュレータ(PhantomOMNI)への目標値として用いてアドミタンス制御を適用することで、レーンキーピングを行うためのガイド的な反力の生成を可能にした。上記のモデル予測制御系は現在の状況から2秒先まで先読みして最適制御問題をアクティブセット法によりリアルタイムで解いているため、人の操作を先導するようなアシストトルクの生成を可能にしている。一方、後者のモバイルロボットについては、自律制御を行うための前段階として、レーザーセンサを用いた自己位置推定の実験準備に取り掛かっている。また認知、判断、操作を表す人のモデリングを行うために、目標追従タスクにおけるターゲット位置、関節角度、筋電位、および操作力を計測し、筋骨格モデル系のパラメータの最適化を実施した。またこれと並行して、ARMAモデルに対するパラメータの同定を予測誤差法を用いて実施した。その結果、関節角度については96%、操作力については71%の精度で予測することが可能になった。本研究では、アシスト制御、自律制御、およびそれらを複合化したハイブリッド制御を用いて、高齢者にとって優しい機械の操作系の実現を目指している。人の上肢の運動は身体的な幾何学的拘束があるため、ロボットアームのような可操作性を考慮して操作系を設計する必要がある。本年度は、上肢の関節位置に装着したマーカを画像認識することで上肢の姿勢を計測し、特異値分解を適用することで可操作楕円の長径・短径・傾きをリアルタイムで推定可能とした。また人が機械を目標値に追従操作をする場合、視覚と運動のマッピングが行われている。本年度は、これらの関係を表すモデルとしてガウス混合モデルを作成し、パラメータをEMアルゴリズムで同定した。その結果、高齢化模擬装置を用いた実験から、加齢に伴う身体的拘束の有無を機械学習で判別可能になった。また初年度に購入したドライビングシミュレータ等を用いた実験の際に、人の状態を脳波から推定する手法の検討を実施している。具体的には、脳波から随伴陰性変動を抽出し、注意集中度の判定に応用する予定であり、そのためのサーベイ検討を行っている。本研究では、アシスト制御、自律制御、およびそれらを複合化したハイブリッド制御を用いて、高齢者にとって優しい機械の操作系の実現を目指している。高齢者の加齢に伴う能力低下に応じて、全く負荷が働かない自動運転、すなわち自律制御も必要となる。本年度はこの自律制御系として、占有格子地図とパーティクルフィルタを用いた自己位置推定法に基づくSLAM技術を検討し、ロボットカーを用いて自律制御系の実験評価を実施した。その結果、ウェイポイントを連結した目標軌跡を追従可能な自律制御系を構築することが可能になった。また最終的な目標として、操作する人の状態やタスクの達成度をみながら、シームレスにアシスト制御や自律制御の選択を行うスーパーバイズドな上位制御系の検討を実施した。具体的には人の状態としては、脳波から随伴陰性変動(CNV)を抽出し、注意集中度の判定に使用した。またタスクの達成度は目標軌跡からの横方向変位で表し、これらを特徴ベクトルとみなして機械学習(サポートベクターマシン)によりアシストと自律の選択識別制御系(上位制御系)を設計した。また下位制御系に関しては、アシスト制御系をインピーダンス制御則を用いて設計し、自律制御系をロバスト制御手法である定量的フィードバック理論(QFT)を用いて設計した。ドライビングシミュレータを用いた走行実験(故障車の回避課題を予告刺激のある場合の反応応答課題で表現)により、スーパーバイズド制御系の識別性能についての有効性が確認できた。高齢者は加齢にともない、認知能力や判断能力の低下により、機械の操作が難しくなる。本研究では、このような課題に対して、操作者の状態やタスクの達成度をみながら、シームレスにアシスト制御や自律制御の選択を行うスーパーバイズド制御系を提案する。具体的には、人の状態としては注意集中度に着目し、脳波(随伴陰性変動)から動作実施前の準備状態を判断する。タスクの達成度は目標軌道からの偏差で判断し、機械学習(SVM)により識別を行う。得られた識別器は85%の正解率が得られ,所望の選択制御を可能にした。(理由)平成26年度の研究実施計画は、4人の操作フェーズに対するアシスト制御の設計、5人の認知フェーズの対するアシスト制御の設計、の2点である。 | KAKENHI-PROJECT-25330247 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25330247 |
高齢者向けアシストと自律のハイブリッド操作系の構築 | 4の操作フェーズについては、可操作楕円を考慮した操作系の検討をしており、5の認知フェーズについては、視覚と運動のマッピングをガウス混合モデルで表し機械学習を実施した。よって、当初の実施計画はおおむね順調に進展していると考えられる。制御工学平成27年度の研究実施計画は、6自動運転を表す自律制御の作成、7アシスト制御と自律制御を切り替えるスーパーバイズド制御の構築、の2点であり、これを順次、計画的に実施する予定である。特に6については、ドライビングシミュレータの知見をモバイルロボットへ展開できるように計画している。7のスーパーバイズド制御の構築については、本研究の最終目標であるので、なるべく前倒しして検討できるように計画する予定である。平成25年度の研究実施計画は、1人の認知、判断、操作を表すシミュレーションモデルの作成、2シミュレーションモデルのパラメータの同定、3人の判断フェーズに対するアシスト制御の設計の3点である。1のモデリングについては、物理モデルである筋骨格モデルとブラックボックスモデルであるARMAモデルの両者を検討しており、2のパラメータ同定としては、物理モデルについては最適化の手法で、ARMAモデルについては予測誤差法の手法で同定を実施した。3のアシスト制御の設計については、ドライビングシミュレータと反力マニピュレータを組み合わせた系に対して、モデル予測制御とアドミタンス制御を複合し、レーンキーピングしやすい操作系の実機評価および効果検証を行った。よって、当初の実施計画はおおむね順調に進展していると考えられる。研究の実施計画を考慮すると、平成27年度に脳波計の電極等の購入が必要と判断したため。平成26、27年度の研究実施計画は、4人の操作フェーズに対するアシスト制御の設計、5人の認知フェーズに対するアシスト制御の設計、5自動運転を表す自律制御の作成、6アシスト制御と自律制御を切り替えるスーパーバイズド制御の構築、の4点であり、これを順次、計画的に実施する予定である。特に4については可操作楕円をリアルタイムで計算するための上肢姿勢の計測がポイントであり、画像認識などを検討する。また5については、ドライビングシミュレータで先行的に実施しているので、これをモバイルロボットへ展開することを計画している。6のスーパーバイズド制御の構築については、本研究の最終目標であるので、なるべく前倒しして検討できるように計画する予定である。脳波計の電極等を平成27年度に増強することで、タスク実行時の人の状態を詳細に計測可能になり、スーパーバイズド制御の構築がしやすくなる。これによって、人と機械のインターラクションの研究が加速すると思われる。研究の実施計画を考慮すると、平成26年度に実験機材(ドライビングシミュレータ)のソフトウェア更新が必要と判断したため。ドライビングシミュレータの保守費として平成26年度に使用することで、最新のバージョンが研究に適用できるようになり、人への情報提示がしやすくなる。これによって、人と機械のインターラクションの研究が加速すると思われる。 | KAKENHI-PROJECT-25330247 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25330247 |
HIV感染者において発現が変動するmiRNAの網羅的解析 | 本研究は、本来の細胞内に存在するmicroRNA(miRNA)を利用したHIV増殖抑制性レンチウイルスを作製するため、まずT細胞の分化段階に応じて発現するmiRNAを網羅的に解析し、それらmiRNAの発現フロファイルを健常人とHIV感染者間で比較することにより病態に関わるmiRNAを決定することを目的とした.具体的方法を以下に述べる。まず健常者血液由来PBMCを精製、ブローサイトメーターを用いて細胞の分化段階応じてCD4陽性、ならびにCD8陽性T細胞をソートした、ソートした細胞をRNAlaterで保存し、RNAqueous-Microにより全RNAを精製した、これらRNAを用いてmiRNAに物異的なブライマーを用いた逆転写と、その後のTaqManブローブを用いたReal time PCR解析を基にしたHuman MicroRNA Array(トータル365種願ヒトmiRNA)による網羅的定量的解析を行った。Taqman MicroRNA Arrayより得られたデータから、特にセントラルメモリーT細胞で発現量の高いmiRNA、ならびに既にT細胞以外のリンパ球で分化、機能制御に関わると報告されているmiRNAより計12種類のmiRNAに着目した。合計15人の健常者血液由来PBMCに関して定量PCRによるmiRNA発現解析を行った結果、セントラルメモリー細胞においてけmiR-20a、miR-146bが、エフェクターメモリーT細胞においてはmiR-155、mi-24が特に高発現している事が明らかとなった。以上、今回得られた健常者におけるmiRNA発現ブロファイルと比較し、今後HIV感染者における病態の進行と細胞に内在するmicroRNAの発現バターンを解析することにより、HIV増殖阻害効果のあるmiRNAを同定することが可能となる.このような研究は未だ報告が無く、その後のHIV増殖抑制性レンチベクターの開発へと発展することが出来れば、世界に先駆ける研究となる事期待れる。本年度はその上で期待通りの進展であったと考えられる。本研究は、本来の細胞内に存在するmicroRNA(miRNA)を利用したHIV増殖抑制性レンチウイルスを作製するため、まずT細胞の分化段階に応じて発現するmiRNAを網羅的に解析し、それらmiRNAの発現フロファイルを健常人とHIV感染者間で比較することにより病態に関わるmiRNAを決定することを目的とした.具体的方法を以下に述べる。まず健常者血液由来PBMCを精製、ブローサイトメーターを用いて細胞の分化段階応じてCD4陽性、ならびにCD8陽性T細胞をソートした、ソートした細胞をRNAlaterで保存し、RNAqueous-Microにより全RNAを精製した、これらRNAを用いてmiRNAに物異的なブライマーを用いた逆転写と、その後のTaqManブローブを用いたReal time PCR解析を基にしたHuman MicroRNA Array(トータル365種願ヒトmiRNA)による網羅的定量的解析を行った。Taqman MicroRNA Arrayより得られたデータから、特にセントラルメモリーT細胞で発現量の高いmiRNA、ならびに既にT細胞以外のリンパ球で分化、機能制御に関わると報告されているmiRNAより計12種類のmiRNAに着目した。合計15人の健常者血液由来PBMCに関して定量PCRによるmiRNA発現解析を行った結果、セントラルメモリー細胞においてけmiR-20a、miR-146bが、エフェクターメモリーT細胞においてはmiR-155、mi-24が特に高発現している事が明らかとなった。以上、今回得られた健常者におけるmiRNA発現ブロファイルと比較し、今後HIV感染者における病態の進行と細胞に内在するmicroRNAの発現バターンを解析することにより、HIV増殖阻害効果のあるmiRNAを同定することが可能となる.このような研究は未だ報告が無く、その後のHIV増殖抑制性レンチベクターの開発へと発展することが出来れば、世界に先駆ける研究となる事期待れる。本年度はその上で期待通りの進展であったと考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-08J04845 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08J04845 |
クラック進展過程における侵入型原子の反遮蔽場効果 | 本研究では,金属が易動性侵入型原子によって脆化する現象に理解を与えることを目途して,グロー放電チャージ法を用いて,鉄系合金結晶に種々の侵入型ガス元素を添加しながら破壊靭性試験を行い,クラック進展過程を追跡した.まず,水素及び不活性なガス元素ヘリウムを添加ガス元素として試料に添加しながら,破壊靭性試験を行ったところ,クフック進展時の負荷応力拡大係数の低下が観察された.不活性なヘリウム原子によっても脆化したことから,易動性の侵入型元素による脆化は一般的に生ずる現象であると考えられる.また,ヘリウムを添加した場合の破壊靭性試験において,クラック進展速度を遅くすると負荷応力拡大係数が低下するという,負荷応力拡大係数のクラック進展速度依存性が見られた.しかも,この依存性は水素を添加した場合よりも大きかった.これにより侵入型不純物による脆化現象は,侵入型不純物のクラック先端への集合が影響することが考えられる.さらに,クラック進展速度が7X10^<-7>m/secより遅いとき,水素よりもヘリウムを添加した方が,クラック進展時の負荷応力拡大係数が小さかった.これはヘリウムの方が水素より原子のサイズの効果が大きいためと考えられる.クラック先端近傍の応力状態の計算機シミュレーションを行ったところ,侵入型不純物の添加により,外力を負荷していないにも関わらず,クラック先端近傍に引張の応力集中が見られた.これは侵入型不純物による反遮蔽効果によるものである.また,添加ガス元素のクラック先端近傍の濃度分布についても計算機によるシミュレーションを行った.以上の結果に基づき,水素やヘリウムなどの侵入型不純物による金属の脆化の原因について考察し,クラック先端近傍にそれら侵入型原子が集積すると,その反遮蔽場効果によって応力集中がより進行し,クラックの進展が促進されることを明かにした.本研究では,金属が易動性侵入型原子によって脆化する現象に理解を与えることを目途して,グロー放電チャージ法を用いて,鉄系合金結晶に種々の侵入型ガス元素を添加しながら破壊靭性試験を行い,クラック進展過程を追跡した.まず,水素及び不活性なガス元素ヘリウムを添加ガス元素として試料に添加しながら,破壊靭性試験を行ったところ,クフック進展時の負荷応力拡大係数の低下が観察された.不活性なヘリウム原子によっても脆化したことから,易動性の侵入型元素による脆化は一般的に生ずる現象であると考えられる.また,ヘリウムを添加した場合の破壊靭性試験において,クラック進展速度を遅くすると負荷応力拡大係数が低下するという,負荷応力拡大係数のクラック進展速度依存性が見られた.しかも,この依存性は水素を添加した場合よりも大きかった.これにより侵入型不純物による脆化現象は,侵入型不純物のクラック先端への集合が影響することが考えられる.さらに,クラック進展速度が7X10^<-7>m/secより遅いとき,水素よりもヘリウムを添加した方が,クラック進展時の負荷応力拡大係数が小さかった.これはヘリウムの方が水素より原子のサイズの効果が大きいためと考えられる.クラック先端近傍の応力状態の計算機シミュレーションを行ったところ,侵入型不純物の添加により,外力を負荷していないにも関わらず,クラック先端近傍に引張の応力集中が見られた.これは侵入型不純物による反遮蔽効果によるものである.また,添加ガス元素のクラック先端近傍の濃度分布についても計算機によるシミュレーションを行った.以上の結果に基づき,水素やヘリウムなどの侵入型不純物による金属の脆化の原因について考察し,クラック先端近傍にそれら侵入型原子が集積すると,その反遮蔽場効果によって応力集中がより進行し,クラックの進展が促進されることを明かにした. | KAKENHI-PROJECT-04650599 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04650599 |
コンピュータ昇圧療法システムの開発 | 癌化学療法の中でも、アンジオテンシン【II】(以下A【II】)を用いた昇圧療法に寄せられる期待は大きい。本療法は【^TA】【II】の静脈内投与下で、平均動脈圧が150mmHgの域を越えない限り、腫瘍の血流量は選択的・特異的である」という微小循環特性を用いて制癌剤の選択的到達性を昂進せしめる方法で、癌床応用においても良好な治療成績が報告されている。しかし臨床治療では術者がA【II】を数十分間持続注入しながら、常時血圧変動を測定し、昇圧過程を監視して、制癌剤の投与をしているのが現状であり、術者の経験と手技に依存するとともに、その負担は大きなものがある。本研究は、昇圧療法にコンピュータを導入し、それを支援するシステムの開発を目的とする。開発するシステムは「動脈圧をオンライン自動計測しながらA【II】と制癌剤を自動投与する閉ループコンピュータ制御」と「患者の治療計画(A【II】・制癌剤の濃度や投与タイミング)のコンピュータ管理」を実現するもので、患者にとって最適な治療のみならず昇圧療法の飛躍的な効果増大,安全性の向上そして広範囲な普及を達成するものである。本年度はA【II】昇圧療法システムのコンピュータ化に必要とされる医学的・工学的基礎条件の確立を図ることを目ざして、以下のことを行った。(1)A【II】昇圧療法の臨床治験例の調査に基づき、患者の個々の病理・生理状況に応じた最適な昇圧過程・A【II】投与時間・制癌剤投与タイミングなどの確立を図った。(2)A【II】のコンピュータ制御の動物(犬)実験を実施して、最適な昇圧過程を達成する制御アルゴリズムを確立した。(3)システムは自動血圧測定装置・マイクロコンピュータ・自動薬剤注入装置から構成されるが、このシステムの基本設計を行い、プロトタイプシステムを完成させた。癌化学療法の中でも、アンジオテンシン【II】(以下A【II】)を用いた昇圧療法に寄せられる期待は大きい。本療法は【^TA】【II】の静脈内投与下で、平均動脈圧が150mmHgの域を越えない限り、腫瘍の血流量は選択的・特異的である」という微小循環特性を用いて制癌剤の選択的到達性を昂進せしめる方法で、癌床応用においても良好な治療成績が報告されている。しかし臨床治療では術者がA【II】を数十分間持続注入しながら、常時血圧変動を測定し、昇圧過程を監視して、制癌剤の投与をしているのが現状であり、術者の経験と手技に依存するとともに、その負担は大きなものがある。本研究は、昇圧療法にコンピュータを導入し、それを支援するシステムの開発を目的とする。開発するシステムは「動脈圧をオンライン自動計測しながらA【II】と制癌剤を自動投与する閉ループコンピュータ制御」と「患者の治療計画(A【II】・制癌剤の濃度や投与タイミング)のコンピュータ管理」を実現するもので、患者にとって最適な治療のみならず昇圧療法の飛躍的な効果増大,安全性の向上そして広範囲な普及を達成するものである。本年度はA【II】昇圧療法システムのコンピュータ化に必要とされる医学的・工学的基礎条件の確立を図ることを目ざして、以下のことを行った。(1)A【II】昇圧療法の臨床治験例の調査に基づき、患者の個々の病理・生理状況に応じた最適な昇圧過程・A【II】投与時間・制癌剤投与タイミングなどの確立を図った。(2)A【II】のコンピュータ制御の動物(犬)実験を実施して、最適な昇圧過程を達成する制御アルゴリズムを確立した。(3)システムは自動血圧測定装置・マイクロコンピュータ・自動薬剤注入装置から構成されるが、このシステムの基本設計を行い、プロトタイプシステムを完成させた。 | KAKENHI-PROJECT-61015096 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61015096 |
放射光X線共鳴非弾性散乱による銅酸化物高温超伝導体のスピン・電荷励起 | 近年著しく技術が進歩した放射光X線共鳴非弾性散乱法により、銅酸化物高温超伝導体のスピン、及び、電荷の励起状態を観測することで、電荷ドープされたモット絶縁体の電子の運動状態を研究した。電子ドープ系のスピン励起はドープが進むにつれて幅を広げながらより高エネルギーにシフトするのに対し、ホールドープ系では、励起の幅は広がるものの、母物質のスピン励起のエネルギーをほぼ維持していることが明らかとなった。また、電子ドープ系ではスピン励起より高エネルギー側に大きな分散を持った電荷励起が存在し、電子ドープが進むにつれてそのピーク位置が高エネルギー側にシフトしていることがわかった。本課題では、ここ数年の間に著しく技術が進歩した放射光X線を用いた共鳴非弾性散乱法(RIXS)により、銅酸化物高温超伝導体を対象として、スピン、及び、電荷の動的相関、励起状態を観測し、電荷ドープされたモット絶縁体の電子の運動状態を研究する。適切な吸収端、偏光条件を利用した実験を行うことで、電子の運動状態を記述する基本的物理量であるスピン・電荷の動的相関関数をブリルアンゾーン全域に渡って観測する。その系統的なドーピング依存性を調べることにより、モット絶縁体がキャリアドープにより金属化していく過程での、電子ダイナミクスの変遷を明らかにすることを目的とする。まず、電子ドープ系については、Nd2-xCeCuO4のRIXS実験から以下の成果が得られた。銅のL3吸収端で観測された100 meV以上にある高エネルギースピン励起は、ドープが進むにつれて幅を広げながらより高エネルギーにシフトすることがわかった。この結果は、ドーピングをしてもほとんど分散が変化せず、母物質の局在スピンの特徴が残存するホールドープ系とは対照的である。さらに、電子ドープした試料のL3吸収端のRIXSスペクトルでは、Γ点近くで磁気励起よりも高エネルギー側に励起強度が観測された。その運動量依存性は、K吸収端で観測される電荷励起(上部ハバードバンドでのバンド内励起)の分散と滑らかにつながっていることから同じ起源の電荷励起と考えられ、K吸収端では観測が難しかったΓ点近くの電荷励起の素性も明らかにすることができた。一方、ホールドープ系についてはオーバードープ域にあるホールドープ型銅酸化物La2-xSrxCuO4 (x = 0.25, 0.30)について銅のL3吸収端でのRIXS実験をESRFで行った。現在、その解析を進めている。本課題では、ここ数年の間に著しく技術が進歩した放射光X線を用いた共鳴非弾性散乱法(RIXS)により、銅酸化物高温超伝導体を対象として、スピン、及び、電荷の動的相関、励起状態を観測し、電荷ドープされたモット絶縁体の電子の運動状態を研究する。適切な吸収端、偏光条件を利用した実験を行うことで、電子の運動状態を記述する基本的物理量であるスピン・電荷の動的相関関数をブリルアンゾーン全域に渡って観測する。その系統的なドーピング依存性を調べることにより、モット絶縁体がキャリアドープにより金属化していく過程での、電子ダイナミクスの変遷を明らかにすることを目的とする。ホールドープ系については2013年度に実験を行ったオーバードープLa2-xSrxCuO4の銅L3吸収端のRIXSの解析を進めた。ホールドープ系の高エネルギースピン励起は、これまでドーピングしてもほとんど分散が変化しないという報告がいくつかなされていたが、この特徴は運動量(pi,0)方向の特徴であり、(pi,pi)方向についてはゾーン端でドーピングによりソフト化していることがわかった。一方、電子ドープ系については、Nd2-xCexCuO4について銅K吸収端のRIXSによる電荷励起の測定を行った。分解能向上により低エネルギー側まで観測が可能になったことで、低運動量側ではバンド内励起のピーク位置が電子ドープが進むにつれて高エネルギー側にシフトしていることが確認でき、最近行った銅L3吸収端のRIXSでも捉えられていた特徴を銅K吸収端のRIXSでも確認することができた。今後、理論計算で得られる電荷の動的相関関数との比較を行うことで、銅酸化物超伝導体の電子ダイナミクスの理解を進めて行きたいと考えている。本課題では、ここ数年の間に著しく技術が進歩した放射光X線を用いた共鳴非弾性散乱法(RIXS)により、銅酸化物高温超伝導体を対象として、スピン、及び、電荷の動的相関、励起状態を観測し、電荷ドープされたモット絶縁体の電子の運動状態の研究を行った。特に、系統的なドーピング依存性を調べることにより、モット絶縁体がキャリアドープにより金属化していく過程での、電子ダイナミクスの変遷を明らかにすることを目的とした。電子ドープ系については、Nd2-xCeCuO4のRIXS実験から100 meV以上にある高エネルギースピン励起はドープが進むにつれて幅を広げながらより高エネルギーにシフトすることがわかった。一方、ホールドープ系はオーバードープLa2-xSrxCuO4の実験を行った。ホールドープ系の高エネルギースピン励起は、これまでドーピングしてもほとんど分散が変化しないという報告がいくつかなされていたが、この特徴は運動量(pi,0)方向の特徴であり、(pi,pi)方向についてはゾーン端でドーピングによりソフト化していることがわかった。以上の結果から、銅酸化物高温超伝導体のスピン励起は電子とホールで対照的なドーピング依存性を示すことが明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-25400333 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25400333 |
放射光X線共鳴非弾性散乱による銅酸化物高温超伝導体のスピン・電荷励起 | さらに、電子ドープ系の実験では、Γ点近くでスピン励起よりも高エネルギー側に電荷励起と考えられる励起が観測され、これまでは観測が難しかったΓ点近くの電荷励起の素性も明らかにすることができた。平成27年度はこれらの成果報告・とりまとめに加え、銅酸化物高温超伝導体の類縁物質である梯子格子銅酸化物において、電荷秩序が融解したときに生じる電荷励起、電荷揺らぎのエネルギー運動量依存性を明らかにし、その成果も報告した。近年著しく技術が進歩した放射光X線共鳴非弾性散乱法により、銅酸化物高温超伝導体のスピン、及び、電荷の励起状態を観測することで、電荷ドープされたモット絶縁体の電子の運動状態を研究した。電子ドープ系のスピン励起はドープが進むにつれて幅を広げながらより高エネルギーにシフトするのに対し、ホールドープ系では、励起の幅は広がるものの、母物質のスピン励起のエネルギーをほぼ維持していることが明らかとなった。また、電子ドープ系ではスピン励起より高エネルギー側に大きな分散を持った電荷励起が存在し、電子ドープが進むにつれてそのピーク位置が高エネルギー側にシフトしていることがわかった。研究実績の概要で述べたホールドープ系の銅L吸収端のRIXSの成果は、現在論文として投稿中である。銅K吸収端については、高エネルギー分解能での実験を進めているところである。電子ドープ系については、銅L吸収端のRIXSを中心にまとめた論文が2014年4月に発表できた。その後、2014年度には銅K吸収端での測定を行うことができ、現在、解析を進めている。以上のことから、概ね、順調に成果を達成できていると考えている。放射光X線散乱による固体物理の研究ホールドープ系については、銅K吸収端の測定を進めると同時に、電荷励起の観測を目的として酸素K吸収端の実験を計画している。昨年度、別の目的で行ったLa2-xSrxCuO4の酸素K吸収端RIXSの実験で、電荷励起を観測できる可能性を得たため、より系統的なドーピング、運動量依存性の測定を行う。今年度は本科研費の最終年度であるので、後半は成果とりまとめ、論文作成を中心に行う予定である。電子ドープ系については、L3吸収端とK吸収端でのRIXS実験データを詳細に解析し、その結果を論文に取りまとめて発表した。その内容は研究実績の概要に記した通りである。K吸収端の実験では、分光アナライザーの改良によりより高いエネルギー分解能(約100 meV)が得られるようになっており、それを利用した測定もほぼ終えている。ホールドープ系については、L3吸収端の実験が順調に進み、データの解析を進めているところである。できれば2014年度中に行いたいとしていた海外放射光施設(ESRF)でのビームタイムが2015年4月となったため、そのための旅費を2015年度に繰り越した。電子ドープ系では高エネルギー分解能で得られたK吸収端のデータの解析を進める。ホールドープ系についてはL3吸収端の解析を進める一方、高エネルギー分解能でのK吸収端での実験を行う。以上の結果から、電子ドープとホールドープの類似点や相違点を明らかにし、銅酸化物超伝導体におけるスピン・電荷励起の全体像を解明する。また、ホールドープ系のアンダードープ領域に見られる電荷秩序にも着目し、電荷秩序と関係した励起の探索も進めて行く。2015年4月の海外放射光施設(ESRF)での実験への旅費として使用する。 | KAKENHI-PROJECT-25400333 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25400333 |
レニンアンジオテンシン系を標的としたワクチンの開発 | プロレニンは不活性レニン前駆物質として知られていたが、近年(プロ)レニン受容体((P)RR)を介した炎症を惹起するシグナル経路が報告されている。糖尿病患者においてプロレニン濃度は高く、(P)RR阻害が糖尿病性網膜症、腎症に対して有効であることが示されており、ワクチンを用いた治療法が確立できれば、一度に長期的で効率の良い治療効果が期待できるため社会的メリットは大きいと考えられる。我々はProsegment配列から3種類のワクチンを設計しマウス(C57BL/6J)に免疫したところ、Handle領域を含む配列で免疫したマウスで高い抗体価を示した。さらに血清中抗体の特異性を検討したところ、レニンには反応せずプロレニンにのみ特異的に反応しプロレニン特異的なワクチンの構築に成功した。さらに薬効評価として2型糖尿病モデル(db/db)マウスをプロレニンワクチンまたはコントロールで3回免疫し(8週齢、10週齢、17週齢)、抗体価はワクチン群にて12週齢より上昇を示したが、コントロール群と比較して体重、随時血糖には影響は見られなかった。しかしながら網膜電図を用いて網膜神経機能の評価を行ったところ、網膜神経障害はワクチン群では有意な改善が認められた(16週齢、20週齢)。グリア細胞の細胞培養系において、アンジオテンシンIIの添加に比してプロレニンの添加で炎症性サイトカインの発現が有意に高いことから、プロレニンを直接的に阻害する意義は大きいと考えた。さらに糖尿病性腎臓病を組織染色にて病理的評価を実施したところ、コントロール群で認められた腎糸球体肥大などはワクチン群において改善していることがわかった(20週齢)。これによりプロレニンワクチンが糖尿病性腎臓病に対して改善効果があることが示唆された。超高齢社会の我が国において高血圧患者は増加の一途を辿っており、複数の降圧剤を用いても降圧が不充分な症例も多く、多大な医療費を費やしている現状がある。そこで次世代高血圧ワクチンで年に1ー2回程度ワクチンを投与することによって降圧剤の代価治療が出来れば、社会的なメリットは大きいと考える。プロレニンはレニン・アンジオテンシンの上流に位置する分子であるが、糖尿病性網膜症の患者では血中のプロレニン濃度が高く、重症度と比例するなどの報告もある。プロレニン受容体が臓器に発現していることから、プロレニンがレニン・アンジオテンシン系非依存的に作用している可能性も示唆されているが、その生理学的意義は明らかでない。そこで我々はプロレニン特異的なワクチンを設計し、糖尿病網膜症モデルでその作用を検討した。レニンを認識しない抗原を用いたワクチンを設計することにより、プロレニン特異的なワクチンを複数設計し、マウスに2週おきに3回投与して抗体価の上昇を確認した。結果、抗体価の上昇が最も高いワクチンを候補ワクチンとして選定し、薬効試験に用いることとした。一方、アンジオテンシンIIワクチンに関しても、ペプチドワクチンとDNAワクチンの両方のワクチンを開発した結果、併用療法での検討を軸に進めることとした。それぞれを単独で使用したとき、および併用したときの抗体価の上昇の評価とそのときのIgGサブタイプの確認から初期の併用ワクチンの挙動はペプチドワクチンに類似していることが分かった。プロレニンのワクチンの合成・設計が終了し、候補ワクチンの選定も終了した。今後薬効試験へ移行する予定である。プロレニンは不活性レニン前駆物質として知られていたが、近年(プロ)レニン受容体((P)RR)を介した炎症を惹起するシグナル経路が報告されている。糖尿病患者においてプロレニン濃度は高く、(P)RR阻害が糖尿病性網膜症、腎症に対して有効であることが示されており、ワクチンを用いた治療法が確立できれば、一度に長期的で効率の良い治療効果が期待できるため社会的メリットは大きいと考えられる。我々はProsegment配列から3種類のワクチンを設計しマウス(C57BL/6J)に免疫したところ、Handle領域を含む配列で免疫したマウスで高い抗体価を示した。さらに血清中抗体の特異性を検討したところ、レニンには反応せずプロレニンにのみ特異的に反応しプロレニン特異的なワクチンの構築に成功した。さらに薬効評価として2型糖尿病モデル(db/db)マウスをプロレニンワクチンまたはコントロールで3回免疫し(8週齢、10週齢、17週齢)、抗体価はワクチン群にて12週齢より上昇を示したが、コントロール群と比較して体重、随時血糖には影響は見られなかった。しかしながら網膜電図を用いて網膜神経機能の評価を行ったところ、網膜神経障害はワクチン群では有意な改善が認められた(16週齢、20週齢)。さらに糖尿病性腎障害を組織染色にて病理的評価を実施したところ、コントロール群で認められた腎糸球体肥大などはワクチン群において改善していることがわかった(20週齢)。これによりプロレニンワクチンの糖尿病に対して改善効果があることがわかった。プロレニンワクチンの薬効評価として、糖尿病モデルマウスにおいて網膜症と腎症の改善効果が認められた。プロレニンは不活性レニン前駆物質として知られていたが、近年(プロ)レニン受容体((P)RR)を介した炎症を惹起するシグナル経路が報告されている。糖尿病患者においてプロレニン濃度は高く、(P)RR阻害が糖尿病性網膜症、腎症に対して有効であることが示されており、ワクチンを用いた治療法が確立できれば、一度に長期的で効率の良い治療効果が期待できるため社会的メリットは大きいと考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-16K09514 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K09514 |
レニンアンジオテンシン系を標的としたワクチンの開発 | 我々はProsegment配列から3種類のワクチンを設計しマウス(C57BL/6J)に免疫したところ、Handle領域を含む配列で免疫したマウスで高い抗体価を示した。さらに血清中抗体の特異性を検討したところ、レニンには反応せずプロレニンにのみ特異的に反応しプロレニン特異的なワクチンの構築に成功した。さらに薬効評価として2型糖尿病モデル(db/db)マウスをプロレニンワクチンまたはコントロールで3回免疫し(8週齢、10週齢、17週齢)、抗体価はワクチン群にて12週齢より上昇を示したが、コントロール群と比較して体重、随時血糖には影響は見られなかった。しかしながら網膜電図を用いて網膜神経機能の評価を行ったところ、網膜神経障害はワクチン群では有意な改善が認められた(16週齢、20週齢)。グリア細胞の細胞培養系において、アンジオテンシンIIの添加に比してプロレニンの添加で炎症性サイトカインの発現が有意に高いことから、プロレニンを直接的に阻害する意義は大きいと考えた。さらに糖尿病性腎臓病を組織染色にて病理的評価を実施したところ、コントロール群で認められた腎糸球体肥大などはワクチン群において改善していることがわかった(20週齢)。これによりプロレニンワクチンが糖尿病性腎臓病に対して改善効果があることが示唆された。糖尿病モデルマウスを用いて、プロレニンワクチンによる薬効評価を行う。糖尿病性網膜症の評価に加えて、耐糖能の評価も併せて行う。糖尿病モデルマウスを用いてプロレニンワクチンの糖尿病性合併症に対する薬効のさらなる検討を行う。糖尿病発症後の腎の機能的評価、レニンーアンジオテンシン系への影響も併せて検討を行う。 | KAKENHI-PROJECT-16K09514 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K09514 |
指示忘却による記憶抑制が睡眠中の記憶処理及び夢内容に及ぼす影響の検討 | 記憶課題の想起成績が、記憶抑制法(記銘前後に忘れるように指示する指示忘却法など)により低下することが報告されている。また、睡眠は記憶の定着を促進することが明らかにされている。一方、記憶抑制下での恐怖文脈記憶後に睡眠剥奪を行うと、恐怖文脈記憶が逆に増強されることも報告されている。しかしながら、この背景メカニズムは明らかではない。本研究ではfMRIを用い、睡眠による記憶抑制された恐怖記憶の処理に関わる背景神経メカニズムを検討した。健康成人40名を20名ずつ、睡眠群と覚醒群に無作為に割り付けた。睡眠群は、19時(セッション1)から記憶・指示・再認課題を実施し、0時から7時間程度の夜間睡眠をとり、9時(セッション2)から再認課題を行った。覚醒群は、8時(セッション1)から記憶・指示・再認課題を実施し、19時(セッション2)から再認課題を行った。記憶課題は、単語96対を記憶する課題であり、そのうち48対で指尖電気刺激を用い恐怖条件付けを行った。指示課題では、単語対の一方を提示した際に対を覚える(指示記銘)あるいは忘れる(指示忘却)指示を与えた。再認課題では、指示課題で提示しなかった対刺激を提示し、これに対する記憶課題での提示の有無を判断させた。指示・再認課題中はfMRIによって脳活動を測定し、睡眠中は睡眠ポリグラフ測定を行い、睡眠内容を客観的に測定した。その結果、指示忘却により、睡眠群で中性刺激の再認課題正答数がセッション1と比較してセッション2で有意に低下し、これに関連して指示忘却条件で海馬傍回活動がセッション1と比較してセッション2で有意に低下した。一方、指示忘却条件におけるセッション2の再認課題正答数と睡眠段階REM出現率に負の相関傾向が認められた。以上により、忘却指示後に睡眠をとることで、海馬傍回活動が低減し記憶成績が低下すること、これにはREM睡眠が関連していることが示唆された。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。情動記憶の想起成績が記憶抑制操作(指示忘却法)により低下することが報告されている。また、睡眠は記憶の定着を促進すること、恐怖文脈記憶後に睡眠剥奪を行うと恐怖記憶が減弱することが明らかにされている。一方、記憶抑制下での恐怖文脈記憶後に睡眠剥奪を行うと、恐怖文脈記憶が逆に増強される。睡眠剥奪による恐怖記憶減弱は、睡眠中の記憶増強プロセスの剥奪によって説明づけられるが、記憶抑制後の睡眠剥奪により恐怖文脈記憶が増強する背景メカニズムは明らかではなく、これを検討する。本研究は恐怖記憶の抑制に関する基礎的なデータを得ることが目的であるが、将来的にはPTSDの治療の一助となる応用的な展開も視野に入れている研究であり、基礎と臨床を結ぶトランスレーショナルリサーチにも位置している。本年度は、睡眠と指示忘却が恐怖記憶処理に及ぼす影響を検討した。健常成人36名を睡眠群と覚醒群にランダムに割り付け、記憶、指示、再認課題を実施した。その後、睡眠または覚醒維持をとり、再度再認課題を行った。現在、睡眠、覚醒維持前後の記憶成績や磁気共鳴機能画像法(fMRI)による脳活動の比較等、分析を実施している。記憶課題の想起成績が、記憶抑制法(記銘前後に忘れるように指示する指示忘却法など)により低下することが報告されている。また、睡眠は記憶の定着を促進することが明らかにされている。一方、記憶抑制下での恐怖文脈記憶後に睡眠剥奪を行うと、恐怖文脈記憶が逆に増強されることも報告されている。しかしながら、この背景メカニズムは明らかではない。本研究ではfMRIを用い、睡眠による記憶抑制された恐怖記憶の処理に関わる背景神経メカニズムを検討した。健康成人40名を20名ずつ、睡眠群と覚醒群に無作為に割り付けた。睡眠群は、19時(セッション1)から記憶・指示・再認課題を実施し、0時から7時間程度の夜間睡眠をとり、9時(セッション2)から再認課題を行った。覚醒群は、8時(セッション1)から記憶・指示・再認課題を実施し、19時(セッション2)から再認課題を行った。記憶課題は、単語96対を記憶する課題であり、そのうち48対で指尖電気刺激を用い恐怖条件付けを行った。指示課題では、単語対の一方を提示した際に対を覚える(指示記銘)あるいは忘れる(指示忘却)指示を与えた。再認課題では、指示課題で提示しなかった対刺激を提示し、これに対する記憶課題での提示の有無を判断させた。指示・再認課題中はfMRIによって脳活動を測定し、睡眠中は睡眠ポリグラフ測定を行い、睡眠内容を客観的に測定した。その結果、指示忘却により、睡眠群で中性刺激の再認課題正答数がセッション1と比較してセッション2で有意に低下し、これに関連して指示忘却条件で海馬傍回活動がセッション1と比較してセッション2で有意に低下した。一方、指示忘却条件におけるセッション2の再認課題正答数と睡眠段階REM出現率に負の相関傾向が認められた。以上により、忘却指示後に睡眠をとることで、海馬傍回活動が低減し記憶成績が低下すること、これにはREM睡眠が関連していることが示唆された。本年度(2014年度)は、睡眠と指示忘却が恐怖記憶処理に及ぼす影響を検討した。第一四半期に実験準備と予備実験を実施し、明らかになった問題点から、実験方法を一部新たにした。 | KAKENHI-PROJECT-14J09711 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J09711 |
指示忘却による記憶抑制が睡眠中の記憶処理及び夢内容に及ぼす影響の検討 | 第二四半期より本実験を開始し、睡眠群20名、覚醒群16名分のデータを取り終えた。第二年度に、覚醒群5名程度を追加し、第一実験を終了する予定である。これは当初の計画通りの進展といえる。27年度が最終年度であるため、記入しない。次年度(2015年度)について、第一四半期に第一実験の参加者人数を増やし、随時分析を行っていき、第二四半期中には第一実験終了する予定である。第二四半期から、第二実験の準備、実施を行う。27年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-14J09711 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J09711 |
シナプスリボンの動態に関する電顕的研究 | ミドリガメを水温23°Cの定温水槽に飼育し、さまざまな照明条件下に置いたのち、眼球を摘出、網膜の超薄切片を透過電顕にて観察した。水面上の照度100luxで6時点灯18時消灯の明暗周期に置くと、杆状体細胞のシナプスリボンは著明な日周変化を示す。すなわち、0時にはほとんど単一棒状で平滑な輪郭を有するが、以後次第に核下部に向かって伸長するとともに多層化し、10時12時には68層に並ぶようになる。同時に、各リボンの輪郭は平滑でなくなり、夕刻には崩壊し、17時には多数の断片に千切れる。消灯後は数個の球となり、0時に再び単一棒状に戻る。照度を1luxに下げても、同様な日周変化がおこる。18時点灯6時消灯と明暗を逆転させると、シナプスリボンの日周変化のリズムも逆転し、12時に単一棒状、22時24時に多層となる。したがって、リボンの変化を起こさせる因子は照明条件であろうと考えられる。次に、6時点灯18時消灯で数日間飼育したのち、18時以降も点灯を継続して明状態に置くと、リボンはほぼ17時の形態、すなわち多くの断片の集合の形にとどまる。また、明暗を続けたのち6時に点灯せず暗状態を継続すると、リボンはほぼ5時の形態すなわち23層に多層化した形にとどまる。さらに、一眼を遮蔽し他眼は無処置のままにして明暗周期下に置くと、無処置側のシナプスリボンは正常動物におけると同様の日周変化を示すが、遮蔽側のリボンは単一棒状のままに推移し、日周変化を示さない。以上の所見から、杆状体細胞シナプスリボンの日周変化を起こさせる因子は周期的な光刺激であり、周期的光刺激を停止すればリボンの日周変化も停止すること、したがって内因的な周期とは考えにくいこと、両眼を共に支配するような諸因子の影響は明らかには認められずおそらく眼内の局所的な反応の思われることの2点が結論される。ミドリガメを水温23°Cの定温水槽に飼育し、さまざまな照明条件下に置いたのち、眼球を摘出、網膜の超薄切片を透過電顕にて観察した。水面上の照度100luxで6時点灯18時消灯の明暗周期に置くと、杆状体細胞のシナプスリボンは著明な日周変化を示す。すなわち、0時にはほとんど単一棒状で平滑な輪郭を有するが、以後次第に核下部に向かって伸長するとともに多層化し、10時12時には68層に並ぶようになる。同時に、各リボンの輪郭は平滑でなくなり、夕刻には崩壊し、17時には多数の断片に千切れる。消灯後は数個の球となり、0時に再び単一棒状に戻る。照度を1luxに下げても、同様な日周変化がおこる。18時点灯6時消灯と明暗を逆転させると、シナプスリボンの日周変化のリズムも逆転し、12時に単一棒状、22時24時に多層となる。したがって、リボンの変化を起こさせる因子は照明条件であろうと考えられる。次に、6時点灯18時消灯で数日間飼育したのち、18時以降も点灯を継続して明状態に置くと、リボンはほぼ17時の形態、すなわち多くの断片の集合の形にとどまる。また、明暗を続けたのち6時に点灯せず暗状態を継続すると、リボンはほぼ5時の形態すなわち23層に多層化した形にとどまる。さらに、一眼を遮蔽し他眼は無処置のままにして明暗周期下に置くと、無処置側のシナプスリボンは正常動物におけると同様の日周変化を示すが、遮蔽側のリボンは単一棒状のままに推移し、日周変化を示さない。以上の所見から、杆状体細胞シナプスリボンの日周変化を起こさせる因子は周期的な光刺激であり、周期的光刺激を停止すればリボンの日周変化も停止すること、したがって内因的な周期とは考えにくいこと、両眼を共に支配するような諸因子の影響は明らかには認められずおそらく眼内の局所的な反応の思われることの2点が結論される。 | KAKENHI-PROJECT-61570002 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61570002 |
新時代に対応した戦後史学習のプログラム開発―世代間断絶と東アジアの視座から― | 本年度は研究会活動とフィールド調査を柱に研究活動を進めた。2018年10月に実施した研究会では、研究代表者・分担者がそれぞれの研究課題について報告と討議を行った。具体的には、小瑶が1日本の高等学校における歴史教育の改革動向について、山口が2日本の歴史学研究における現代史研究の動向について、國分が3韓国の歴史教育の動向について、それぞれ報告を行った。その中で、特に高等学校に新設される「歴史総合」および「日本史探究」の性格や方向性について協議したほか、歴史学研究の動向を検討するのなかで植民地責任論を引き受ける視点や人々の「生」に向き合う必要性を確認した。その上で、本プロジェクトの焦点や意味・意義について改めて協議し、今後の方向性を検討し、東アジア的視座を備え、かつ日本の高校生の関心を刺激する学習プログラムの必要性を確認した。その後、2019年2月には韓国・ソウル市にてフィールド調査を実施した。同調査には、研究代表者と分担者に加え、3名の現職高校教員が研究協力者として参加し、次年度以降に取り組む教材開発の基礎資料の収集を進めた。主な調査地は、板門店・軍事境界線周辺地域、植民地歴史博物館、孫基禎記念館、白凡記念館などである。これらの訪問地で植民地期および解放後の朝鮮社会に対する理解を深めるとともに、教材になりうる基礎的な資料の収集を進めた。またフィールド調査に付随して研究会を実施し、学校教育現場における戦後史の取り組みや高校生の問題関心などについて意見交換を行った。概ね当初の研究計画に沿って進んでおり、2年目以降に実施する予定であった現職教員を含めたフィールド調査を前倒しで実施することができた。今後は、東アジア的視座を備え、日本の高校生の関心を刺激する戦後史学習の素材を具体的に探り出し、その教材化を進めて検証授業を実施することを予定している。2年目は、現職教員に研究協力を要請して、研究会活動とフィールド調査等を交えながら教材開発作業を共同で進める予定である。3年目は、開発した教材の効果検証を行う方針である。本年度は研究会活動とフィールド調査を柱に研究活動を進めた。2018年10月に実施した研究会では、研究代表者・分担者がそれぞれの研究課題について報告と討議を行った。具体的には、小瑶が1日本の高等学校における歴史教育の改革動向について、山口が2日本の歴史学研究における現代史研究の動向について、國分が3韓国の歴史教育の動向について、それぞれ報告を行った。その中で、特に高等学校に新設される「歴史総合」および「日本史探究」の性格や方向性について協議したほか、歴史学研究の動向を検討するのなかで植民地責任論を引き受ける視点や人々の「生」に向き合う必要性を確認した。その上で、本プロジェクトの焦点や意味・意義について改めて協議し、今後の方向性を検討し、東アジア的視座を備え、かつ日本の高校生の関心を刺激する学習プログラムの必要性を確認した。その後、2019年2月には韓国・ソウル市にてフィールド調査を実施した。同調査には、研究代表者と分担者に加え、3名の現職高校教員が研究協力者として参加し、次年度以降に取り組む教材開発の基礎資料の収集を進めた。主な調査地は、板門店・軍事境界線周辺地域、植民地歴史博物館、孫基禎記念館、白凡記念館などである。これらの訪問地で植民地期および解放後の朝鮮社会に対する理解を深めるとともに、教材になりうる基礎的な資料の収集を進めた。またフィールド調査に付随して研究会を実施し、学校教育現場における戦後史の取り組みや高校生の問題関心などについて意見交換を行った。概ね当初の研究計画に沿って進んでおり、2年目以降に実施する予定であった現職教員を含めたフィールド調査を前倒しで実施することができた。今後は、東アジア的視座を備え、日本の高校生の関心を刺激する戦後史学習の素材を具体的に探り出し、その教材化を進めて検証授業を実施することを予定している。2年目は、現職教員に研究協力を要請して、研究会活動とフィールド調査等を交えながら教材開発作業を共同で進める予定である。3年目は、開発した教材の効果検証を行う方針である。 | KAKENHI-PROJECT-18K02649 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K02649 |
つくること表すことによる「生きる力」としての学びの基礎理論の構築と教育の体系化 | 本研究は、今日の子どもにかかわる諸問題は、子どもの論理による学びが成立していないこと、すなわち、子どもの学びが今を生きることに成り得ていないことによるものであるとの認識に立ち、子どもの学びの実践の場に臨み、その論理を総合的にとらえ、子どもの論理による教育の体系化を目指した。このため、次のような研究を行なった。(1)子どもの論理による学びの成立がみられる、子どものつくること、表すことの行為に着目し、その実践の場に臨み、その論理を行為分析等の臨床学的手法を援用してとらえることとした。(2)子どもの論理によるつくること、表すことの行為をとらえ、学びの論理を明らかにするため、現象学的発達心理学、談話行為論、相互行為論、状況的認知論等の考え方をとり入れた学際的な研究を行なった。その結果、(a)子どものつくること、表すことの行為は、子どもの身体性を働かせた<感じること、考えること、表すこと>による相互作用・相互行為による意味生成の実践過程であって、常に<いま、ここ>を<私>として生きる学びの実践であるとともに、子どものすべての学びの基礎理論となり得ること。(b)子どものつくること、表すことの行為は、子どもの<生>の論理による学ぶこと生きることが一体となったものであるとともに、他者と相互行為的にかかわり、学び合い、行き合い、意味生成と、<私>と<他者>をともに生成する過程であり、「生きる力」を育む過程であること。(c)子どもの論理による学ぶこと、生きることの生成過程は、子どもと相互行為的にかかわり、ともにその過程を実践する教師の学習臨床あるいは意味生成カウンセリング的な関与に支えられること。以上の論理を総合することによって、子どもの論理による学びのカリキュラムの構成が十分に可能であることを明らかにすることができた。本研究は、今日の子どもにかかわる諸問題は、子どもの論理による学びが成立していないこと、すなわち、子どもの学びが今を生きることに成り得ていないことによるものであるとの認識に立ち、子どもの学びの実践の場に臨み、その論理を総合的にとらえ、子どもの論理による教育の体系化を目指した。このため、次のような研究を行なった。(1)子どもの論理による学びの成立がみられる、子どものつくること、表すことの行為に着目し、その実践の場に臨み、その論理を行為分析等の臨床学的手法を援用してとらえることとした。(2)子どもの論理によるつくること、表すことの行為をとらえ、学びの論理を明らかにするため、現象学的発達心理学、談話行為論、相互行為論、状況的認知論等の考え方をとり入れた学際的な研究を行なった。その結果、(a)子どものつくること、表すことの行為は、子どもの身体性を働かせた<感じること、考えること、表すこと>による相互作用・相互行為による意味生成の実践過程であって、常に<いま、ここ>を<私>として生きる学びの実践であるとともに、子どものすべての学びの基礎理論となり得ること。(b)子どものつくること、表すことの行為は、子どもの<生>の論理による学ぶこと生きることが一体となったものであるとともに、他者と相互行為的にかかわり、学び合い、行き合い、意味生成と、<私>と<他者>をともに生成する過程であり、「生きる力」を育む過程であること。(c)子どもの論理による学ぶこと、生きることの生成過程は、子どもと相互行為的にかかわり、ともにその過程を実践する教師の学習臨床あるいは意味生成カウンセリング的な関与に支えられること。以上の論理を総合することによって、子どもの論理による学びのカリキュラムの構成が十分に可能であることを明らかにすることができた。平成10年度は、以下の視点から研究会を開催し,子どものつくり表す「行為=学び」についての学際的な検討と基礎理論の構築をおこなった。ウィトゲンシュタインの哲学の視点より「子どもの哲学」について(永井均)。認知科学における状況的認知の視点より,「社会・個人・発達の社会ー道具的構成」及び「発達や学習を可視化するテクノロジー」について(上野直樹)。美学・現代思想(電脳空間論)の視点より,「社会・文化の地殻変動に立ち向かう〈思想〉の現在形」について(吉岡洋)。言語心理学の視点より,「言語ー相互行為ー社会」及び「談話の認知科学」について(茂呂雄二)。デザイン理論及び記号論の視点より,「〈人〉と〈物〉のアイデンティティ」及び「記号論の思想」について(宇波彰)。また,上越教育大学の現職派遣院生の協力得て,つくり表す行為のもつ意味生成の在り方に着目した授業実践分析プロジェクトを推進した。本年度本学に導入した授業観察機器一式及び授業分析機器一式により,状況的認知,エスノメソドロジー,談話の認知科学等の知見に基き,子どもの作り表す行為場面の談話並びに相互行為分析を行った。以上より,子ども個人及び相互におけるつくり表す「行為=学び」の実践過程の意味形成機能の特徴として,つくり表す行為と談話との連鎖と関係性が,自己,文化的実践共同体(社会),子どもの生きる世界(文化)を,状況的・相互的に同時に構築していることが明らかになった。平成11年度は,研究協力校である富山市立豊田小学校,上越市立東本町小学校で算数科の授業,長野市立豊栄小学校で図画工作科の授業の観察調査を行った。 | KAKENHI-PROJECT-10480044 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10480044 |
つくること表すことによる「生きる力」としての学びの基礎理論の構築と教育の体系化 | 調査事例をもとに,子どものつくり表す「行為=学び」による学習の成立構造と,学習過程に現れる子どもの「行為=学び」の論理と方法ついて,エスノメソドロジーの相互行為分析の視点,言語心理学における談話分析の視点から事例の分析研究を進め,成果を基に公開研究会「子どもの学習成立と学びの行為の相互行為分析」(西野・松本・西阪外)「子どもの学習成立と談話分析」(茂呂・西野・松本外)「見ることの相互行為分析」(西野・松本・西阪外)「美術と社会の創造」(北澤・西野・松本外)を開催した。つくり表す「行為=学び」による学習成立場面では,子どもと子ども,子どもと教師とが同じ場や対象へ向う「参与フレームの身体的組織化」を相互に行っている。この身体的組織化を背景にして自他が相互に行う,発話,身ぶり,視線等の行為が互いに連鎖するなかで,「大きさ」「重さ」「つくり表そうとする意味」等の対象の意味が,子ども行為の関係と連鎖の中で成立する。例えば,「計る」身ぶりに連鎖する他者の発話,見ぶり,視線等が,「長さ」という学びの対象と,計ったり,つくり表したりする行為の意味とを相互反映的に同時形成する。このように,自他の間における意味生成による学習の成立は,自己と対象と他者との関係,それらをつなぐ自他相互の行為の関係全体の変容でもある。こうした自他相互の行為の関係全体の変容場面においては,子どもの<私>と<私>の世界もまた,他者の行為を媒介にして行う自己の行為の遂行過程において,同時に変容して成立することが明らかになった。平成12年度は,つくること表すことによる「生きる力」としての子供の「行為=学び」の内容構造の理論的解明と,設計単位事例の相互行為分析による実証的解明とについて,以下のAからCの研究分担と研究計画に基づき調査並びに研究協議を行い,3年間の本研究のまとめを行った。A.学際的研究により、子供の「生」と「知」の生成過程と,つくり表す「行為=学び」の内容構造及び,その範囲と連鎖、構造の相互関係を明らかにする。B.子供のつくり表す「行為=学び」の形成過程における単元内事例と単元間連鎖の相互関係性について,相互行為分析を行い、カリキュラムの体系化のための論理と方法を抽出する。C.国語科・数学科・音楽科・図画工作科・総合的な学習の時間における子供のつくり表す「行為=学び」の事例設計と実践調査(研究協力校)を行い、カリキュラム設計の理論と方法を構築する。研究協力校である品川区立大原小学校(国語科,生活科,総合的な学習の時間),長野県高山村立高山小学校(図画工作科)の他,長野市立栄小学校(図画工作科),長野県坂井村立坂井小学校(理科),新潟県長岡市立表町小学校(図画工作科),同四郎丸小学校(生活科),津南町立外丸小学校(生活科,総合的な学習の時間),十日町市立十日町中学校(美術科)において,調査校教諭並びに上越教育大学現職派遣大学院生,同修了生の協力の下,設計事例の実践調査と相互行為分析を行った。これにより,(a)個々の子どもが身体性を働かせて,対象に対していまここで行う行為により,自らの<感じ方-考え方-行い方>を互いに組替え,新たな<私>,新たな自他関係(社会),新たな<私>と<他者>との世界の意味生成をする過程が,「生きる力」を育む学びの過程と学びの成り立ちのためのカリキュラム体系の基本理論であることを確認した。(b)こうした学びの過程と成り立ちは,教科間に通底し,かつ,教科等の相互関連・相互作用として学びであること。(c)子供の学びの過程と学びの成り立ちを「学び合い・生き合い」として常に総合的にとらえ,一体となった子供の学びの実践の場をつくり支えることが,子供の学びに基づく教育の新たな体系化において必要であると結論づけた。 | KAKENHI-PROJECT-10480044 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10480044 |
加齢に伴う脳機能の変動におけるオルニチン摂取の役割 | 本研究の目的は,オルニチン摂取により観察される脳タンパク質合成の増加のメカニズムを明らかにすることである。脳タンパク質合成速度は,対照群でオルニチン摂取で有意に増加したが,脳下垂体摘出によりオルニチンの効果は消失した。脳タンパク質合成の促進作用は,アルギニンよりもオルニチンの方が明らかに高かった。海馬の神経成長因子は,その濃度が,オルニチン摂取で有意に増加し,mRNAレベルはオルニチンの影響を受けなかった。以上の結果から,オルニチン摂取による脳タンパク質合成のメカニズムには,オルニチン自身の重要性,成長ホルモンの寄与が示され,mRNAレベルでは寄与していないことが示唆された。本研究の目的は,脳タンパク質合成を例として,脳機能におけるタンパク質非構成アミノ酸であるオルニチンの役割について,調節メカニズムを明らかにすることである。今年度は,成長ホルモンの役割について明らかにするため,脳下垂体摘出成熟ラットを用いて脳タンパク質合成への影響を決定した。24週齢の雄ラットを,擬似手術群,擬似手術+オルニチン摂取群,脳下垂体摘出群,脳下垂体摘出+オルニチン摂取群の4群に分け,試験食として20%カゼイン食あるいは20%カゼイン+0.7%オルニチン添加食を10日間摂取させた。Garlickらの放射性フェニルアラニンの大量投与法により大脳,小脳,海馬,脳幹のタンパク質合成速度を決定し,併せてRNA/Proteinを測定することで,RNA activityを算出した。脳の各部位のタンパク質合成速度並びにRNA activityは,擬似手術群ではオルニチン摂取で有意に増加したが,脳下垂体摘出によりオルニチンの効果は消失した。脳におけるタンパク質合成速度とRNA activityの間には,強い正の相関が観察された。一方脳の各部位のRNA/Proteinは脳下垂体摘出で減少したが,オルニチン摂取の影響は受けなかった。以上の結果から,オルニチン摂取による脳タンパク質合成の増加メカニズムには,体内成長ホルモン濃度の関与が強く示唆された。また本条件における脳タンパク質合成の調節機作の1つとして,RNA activityの変化が考えられた。本研究の目的は,脳タンパク質合成を例にして,脳機能におけるタンパク質非構成アミノ酸であるオルニチンの役割について,調節メカニズムを明らかにすることである。今年度は,オルニチンの代謝産物であるアルギニンの役割について明らかにするため,24週齢の成熟ラットを用いて脳タンパク質合成への影響を決定した。meal-feedingに慣れさせたラットを5群に分け,20%カゼイン食,0.25%アルギニン,0.5%アルギニン,0.7%アルギニン,0.7%オルニチンのいずれかを添加した食餌を3時間のみ1回与え,血漿中成長ホルモン濃度を測定した。またラットを3群に分け,20%カゼイン食,20%カゼイン+0.7%アルギニン添加食,20%カゼイン+0.7%オルニチン添加食を10日間摂取させた。放射性フェニルアラニンの大量投与法により,大脳,小脳,海馬のタンパク質合成速度を決定し,併せてRNA/proteinを測定することで,RNA activityを算出した。脳の各部位のタンパク質合成速度,血漿中成長ホルモン濃度は,オルニチン並びにアルギニンの摂取により有意に増加し,オルニチン摂取で最も高い値を示した。以上の結果から,脳タンパク質合成への促進作用はアルギニンよりもオルニチンの方が明らかに高く,オルニチンによる脳タンパク質合成の増加において,アルギニンの寄与は少ないと考えられ,主としてオルニチン自身が成長ホルモンを増加させ,脳タンパク質合成を促進させる可能性が示唆された。本条件における脳タンパク質合成の調節機作の1つとして,RNA activityの変化が考えられた。本研究の目的は,脳タンパク質合成を例にして,脳機能におけるタンパク質非構成アミノ酸であるオルニチンの役割について,調節メカニズムを明らかにすることである。平成25年度は,オルニチンによる脳タンパク質合成の調節における成長ホルモンの影響を脳下垂体摘出ラットを用い決定した。脳タンパク質合成速度は,擬似手術群ではオルニチン摂取で有意に増加したが,脳下垂体摘出によりオルニチンの効果は消失した。平成26年度は,オルニチンの代謝産物であり、成長ホルモン分泌を促進するアルギニンの役割について,脳タンパク質合成への影響を決定し,脳タンパク質合成の促進作用はアルギニンよりもオルニチンの方が明らかに高かった。最終年度は,脳組織の維持・生存や学習・記憶機能に係わるタンパク質成分であるNerve Growth Factor(NGF)の転写過程に着目し,オルニチンの脳タンパク質合成への影響について24週齢の成熟ラットを用いて決定した。20%カゼイン食群,20%カゼイン+0.7%オルニチン塩酸塩食群の2群に分け,10日間試験食を摂取させた。NGFの濃度並びにmRNAは,NGF量をELISA法で,mRNAはRT-PCR法で決定した。海馬のNGF量は,食餌からのオルニチン摂取により有意に増加し,他方海馬におけるNGF mRNAのレベルは,オルニチン摂取の影響を受けなかった。以上の結果から,オルニチン摂取による脳タンパク質合成の調節メカニズムには,体内成長ホルモン濃度の関与が示唆されること,アルギニンの寄与は少なく,主としてオルニチン自身が脳タンパク質合成を促進させる可能性が示唆されたこと,またオルニチンが脳組織の維持・生存に関与している可能性並びに脳タンパク質合成の転写過程において,少なくともmRNAレベルでは寄与していない可能性が示された。 | KAKENHI-PROJECT-25350125 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25350125 |
加齢に伴う脳機能の変動におけるオルニチン摂取の役割 | 本研究の目的は,オルニチン摂取により観察される脳タンパク質合成の増加のメカニズムを明らかにすることである。脳タンパク質合成速度は,対照群でオルニチン摂取で有意に増加したが,脳下垂体摘出によりオルニチンの効果は消失した。脳タンパク質合成の促進作用は,アルギニンよりもオルニチンの方が明らかに高かった。海馬の神経成長因子は,その濃度が,オルニチン摂取で有意に増加し,mRNAレベルはオルニチンの影響を受けなかった。以上の結果から,オルニチン摂取による脳タンパク質合成のメカニズムには,オルニチン自身の重要性,成長ホルモンの寄与が示され,mRNAレベルでは寄与していないことが示唆された。交付申請書で提案した平成26年度の研究計画は,「オルニチンによる脳タンパク質合成の調節におけるアルギニンの役割」であり,成熟ラットを用い,血中成長ホルモン濃度,脳タンパク質合成に及ぼすアルギニンの影響をオルニチンと比較検討することである。計画通りに順調に研究が進められ,研究実績の概要に示したとおり,脳タンパク質合成の促進作用はアルギニンよりもオルニチンの方が明らかに高く,オルニチンによる脳タンパク質合成の増加において,アルギニンの寄与は少ないと考えられ,主としてオルニチン自身が成長ホルモンを増加させ,脳タンパク質合成を促進させる可能性が示唆された。研究計画は順調に進展していると考えられる。栄養学本研究課題は,平成26年度は順調に進展した。今後次年度は,低タンパク質栄養で低下が判明している海馬NGFの濃度,並びにmRNAについて,オルニチンの役割を成熟ラットで検討する。本研究実施により,オルニチン摂取がタンパク質合成の転写過程を促進させるかどうか明らかになると思われ,タンパク質非構成アミノ酸であるオルニチンによるタンパク質合成の調節について理解がより深まると考えられ,脳機能に対するタンパク質,アミノ酸栄養の寄与について飛躍的に貢献できる。次年度以降,成果を国内外の学会での発表,学術論文誌への成果発表を進めたい。交付申請書で提案した平成25年度の研究計画は,「オルニチンによる脳タンパク質合成の調節における成長ホルモンの影響」であり,成熟ラットを用い,擬似手術ラットと脳下垂体摘出ラットにおける脳タンパク質合成に及ぼすオルニチン摂取の影響を検討することである。計画通りに,順調に研究が進められ,研究実績の概要に示したとおり,脳下垂体を摘出していない擬似手術ラットでは,オルニチン摂取により脳の各部位のタンパク質合成は促進され,他方,脳下垂体摘出による成長ホルモン欠乏ラットでは,オルニチンの影響は消失することから,オルニチン摂取による脳タンパク質合成の促進には,成長ホルモンの寄与が示唆された。研究計画は順調に進展していると考えられる。本研究課題は,平成25年度は順調に進展した。今後次年度以降,1)オルニチンの代謝産物であるアルギニンの脳タンパク質合成への影響を,脳下垂体切除ラットを用いて,脳において決定する。すでに予備実験として,アルギニンの0.7%添加食の摂取で血中成長ホルモン濃度が増加するが,オルニチンの同等濃度の摂取時よりかなり低いことを認めている。 | KAKENHI-PROJECT-25350125 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25350125 |
エコマテリアルの開発と機作に関する学際的研究 | リチウム二次電池の正極材料LiCoO_2よりも安価で、資源として豊富なLiNiO_2系材料の合成と評価を行った。NiサイトにMnを20wt%固溶させると、充・放電時の結晶系も安定化し、サイクル特性が向上した。透明導電性薄膜、ITOに匹敵する電導性が、ZnO-In_2O_3系スパッタ膜で得られた。ダイオキシン発生を抑制する燃焼触媒として、ゲーサイト(α-FeOOH)を前駆体として、使用した場合、低温でも完全燃焼する事が明らかとなった。また、ゲーサイトの熱分解機構、燃焼機構について検討した。(中林)今日、使用済みプラスチックスの廃棄、燃焼については、炭酸ガス、ダイオキシンなど環境汚染物質の発生と関連して、大きな社会問題となっている。本研究では、特に生分解性が期待できる環境保全プラスチックスを合成し、その重合反応機構と生分解性について調べた。(田中)環境汚染物質の測定法について検討した。また、これらについてオークランド大学Jim B.Metson準教授らのグループと討議を行なった。(本仲)ポーラスコンクリートの水質浄化機能の向上には高炉スラグおよび人工ゼオライトの使用が有効であることを明らかにした。また,産業副産物であるフライアッシュを高流動コンクリートへ多量使用する場合の問題点である硬化遅延には,硬化促進効果を持つ材料を適量添加することで解決できることを明らかにした。(水口)層間を有機、無機及び金属錯体陰イオンで修飾したナノ複合材料である層状複水酸化物を用いて、環境保全システム構築用材料開発を行った。(金崎)アークイオンプレーティング法、マグネトロンスパッタリング法及びマイクロスパーク法をつかってSUS304ステンレス鋼の表面にセラミック薄膜を被覆して、疲労強度の及ぼす表面化異質の影響を系統的に調べた。その結果、SUS304ステンレス鋼が比較的低硬度鋼であることからセラミック膜のような高硬度鋼の被覆は疲労強度を向上させないことが分かった。(村上)リチウム二次電池の正極材料LiCoO_2よりも安価で、資源として豊富なLiNiO_2系材料の合成と評価を行った。NiサイトにMnを20wt%固溶させると、充・放電時の結晶系も安定化し、サイクル特性が向上した。透明導電性薄膜、ITOに匹敵する電導性が、ZnO-In_2O_3系スパッタ膜で得られた。ダイオキシン発生を抑制する燃焼触媒として、ゲーサイト(α-FeOOH)を前駆体として、使用した場合、低温でも完全燃焼する事が明らかとなった。また、ゲーサイトの熱分解機構、燃焼機構について検討した。(中林)今日、使用済みプラスチックスの廃棄、燃焼については、炭酸ガス、ダイオキシンなど環境汚染物質の発生と関連して、大きな社会問題となっている。本研究では、特に生分解性が期待できる環境保全プラスチックスを合成し、その重合反応機構と生分解性について調べた。(田中)環境汚染物質の測定法について検討した。また、これらについてオークランド大学Jim B.Metson準教授らのグループと討議を行なった。(本仲)ポーラスコンクリートの水質浄化機能の向上には高炉スラグおよび人工ゼオライトの使用が有効であることを明らかにした。また,産業副産物であるフライアッシュを高流動コンクリートへ多量使用する場合の問題点である硬化遅延には,硬化促進効果を持つ材料を適量添加することで解決できることを明らかにした。(水口)層間を有機、無機及び金属錯体陰イオンで修飾したナノ複合材料である層状複水酸化物を用いて、環境保全システム構築用材料開発を行った。(金崎)アークイオンプレーティング法、マグネトロンスパッタリング法及びマイクロスパーク法をつかってSUS304ステンレス鋼の表面にセラミック薄膜を被覆して、疲労強度の及ぼす表面化異質の影響を系統的に調べた。その結果、SUS304ステンレス鋼が比較的低硬度鋼であることからセラミック膜のような高硬度鋼の被覆は疲労強度を向上させないことが分かった。(村上)平成10年11月、ガオ副教授を徳島に迎え、徳島大学工学部において、高温材料の開発研究等についての研究討論を行った。平成11年1月、本学部森吉教授、田中教授及び金崎助教授がニュージーランド国オークランド大学を訪問し、同大学工学部に於て、それぞれ、有機ポリマーの超臨界状態での分解についての研究、高分子エコマテリアルの合成についての研究、及び、粘土鉱物層間を利用した有害物質除去法の検討及び開発についての研究等について研究討論を行った。それぞれの研究討論に於て、同一及び周辺研究分野の研究者多数に対して、これまでの研究成果を各自が講演により紹介した後、両国に於ける研究状況の相違点及び類似点、これからの研究の進め方等について、質疑応答形式で議論した。更に、研究室の相互訪問を実施し、実際の研究遂行上の問題点等を議論した。更に、両大学問での学術交流について、研究者間で意見を交換した。特に、平成11年度に開催予定の、徳島大学主催の国際研究集会に対するオークランド大学の協力を確認した。その結果、これらの研究の基礎科学的側面のみならず、応用工学的側面についての、二国間の研究の実情についての共通の認識が得られた。又、今後更に二大学間の研究協力を発展させると共に、学術交流協定の精神を尊重して、研究集会の開催等による研究交流を協力して継続することで意見の一致をみた。森吉教授は、ナイロン系・ウール・ | KAKENHI-PROJECT-10045044 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10045044 |
エコマテリアルの開発と機作に関する学際的研究 | 皮革クズ・下水汚泥等の有機系廃棄物について高圧水熱条件下で分解反応を行い、資源化の見地から反応条件と生成物の関係について検討した。一方、水熱分解の反応機構および生成物の触媒作用等に関する知見を得る目的で、カルボン酸、アルデヒド、エステル等の低分子化合物の水熱反応についても調べた。それらの結果は、平成12年1月に実施したオークランド大学でのセミナーで発表した。中林教授は、平成12年1月、オークランド大学においてFerguson教授及びMetson教授らと層状リチウム銅酸化物の固体NMRおよびXPSの測定結果について研究討論。酸化鉄の触媒発現機構について討論実施。石炭灰の有効利用及びゲーサイトによる燃焼時のダイオキシン発生の抑制などについて講演。Welch教授と材料一般について研究討論。Gao教授とケイ酸カルシウム水和物の有効利用について研究討論。更に今後の共同研究の進め方について意見を交換した。村上教授は、平成12年1月、オークランド大学においてFerguson教授とエコマテリアルについての研究討論実施後SEM測定し、破面に超疲労寿命特有の破面模様を観察。Gao教授とエコマテリアルの開発について討論。エレクトロスパーク法を使ったステンレス鋼表面のNi-Cr合金層創製等について討論した。更に、Jackson教授と機械材料に関する研究討論実施。Ferguson教授、Chen教授、Battacharya教授らとエコマテリアルとしての複合材料の有用性について資料収集実施。又、電磁波吸収機能を持つ複合材料についてセミナーを実施。Boys教授と電気材料に適用可能なエコマテリアルの可能性について討論を行い,共同研究の打ち合わせ実施。これらの結果、二国間の研究の実情について一層の深い認識が得られた。又、平成10年度、平成11年度に引き続き、平成12年度も学術交流協定の精神を尊重し、研究交流を協力して継続することで意見の一致をみた。平成13年1月19日から27日まで、水口、村上、本仲は、オークランド大学を訪問し、本研究に関する最終的なディスカッションを行った。理学部James B.Metson博士とは機能性ダイアモンドの開発に関して、また工学部のW.George Ferguson博士、Wei Gao博士、Margret M.Hyland博士とは、それぞれ機能性複合材料開発、高温材料開発、膜の表面分析結果に対してディスカッションを行った。研究協力に基ずく相補的、有機的な発展を期した研究結果が得られた。また、オークランド大学工学部長Peter W.Brothers博士、電気電子工学科長John T.Boys博士、機械工学科長Debes Bhattacharyya博士らとも本研究テーマについて討論することができた。更に、本年度は、3年計画で実施してきた本研究最後の年度であるので、研究全体のまとめを行い、その後、今後の研究計画を議論した。その結果、現在、科研費基盤研究(B)(2)海外学術調査に申請中の新たな研究課題 | KAKENHI-PROJECT-10045044 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10045044 |
痛覚伝達におけるカルシトニン遺伝子関連ペプチドの役割に関する薬理学的研究 | 1.ラットの両側後肢にアジュバントを皮内接種すると、後根神経節中の免疫活性CGRP(i-CGRP)濃度が、接種後15及び26日目で有意に増加し40日目では回復の傾向が見られた。この経日変化は後肢の腫脹および侵害受容閾値の低下(痛覚過敏)のそれと、大まかに一致していた。神経ペプチドなどの軸索輸送阻害作用を有すcolchicine(0.2mg)を脊髄クモ膜下腔内投与(i.t.)すると、その18時間後の後根神経節中のi-CGRP濃度は、アジュバント非接種ラットでは有意な変化を示さなかったが、アジュバント接種ラットではその増加作用が有意に促進された。抗炎症性鎮痛薬diclofenac Na(3mg/kg/day p.o.)をアジュバント接種の16日後から10日間反復投与すると、後肢の腫脹と痛覚過敏が有意に抑制されると共に、後根神経節中のi-CGRPの増加も抑制された。2.ラットの腰髄背側部切片のin vitro灌流液中にcapsaicin 3μMを添加するとi-CGRPの遊離量が著しく増加した。予め後根を切断しておいたラットの腰髄切片ではi-CGRPのcapsaicinによる誘発遊離が著明に減少したので、この誘発遊離は主に一次感覚神経の終末からの遊離を反映していると考えられる。アジュバント関節炎ラットの腰髄切片ではi-CGRPのcapsaicin誘発遊離量が有意に増加した。以上の結果1、2から、アジュバント関節炎ラットでは一次感覚神経におけるCGRPの生合成、軸索輸送と遊離が増加していることが示唆される。3.2種類のCGRP抗血清(10μl)を痛覚過敏を示しているアジュバント関節炎ラットにi.t.投与すると、圧刺激に対する痛覚過敏が有意に抑制された。非関節炎ラットでは抗血清の作用の観察される場合と観察されない場合があった。アジュバント関節炎ラットの熱刺激に対する痛覚過敏もCGRP抗血清で有意に抑制された。従って、アジュバント関節炎ラットにおける痛覚過敏の発現に少なくとも一部は一次感覚神経からの脊髄後角へのCGRPの遊離量増加が関与していると考えられる。1.ラットの両側後肢にアジュバントを皮内接種すると、後根神経節中の免疫活性CGRP(i-CGRP)濃度が、接種後15及び26日目で有意に増加し40日目では回復の傾向が見られた。この経日変化は後肢の腫脹および侵害受容閾値の低下(痛覚過敏)のそれと、大まかに一致していた。神経ペプチドなどの軸索輸送阻害作用を有すcolchicine(0.2mg)を脊髄クモ膜下腔内投与(i.t.)すると、その18時間後の後根神経節中のi-CGRP濃度は、アジュバント非接種ラットでは有意な変化を示さなかったが、アジュバント接種ラットではその増加作用が有意に促進された。抗炎症性鎮痛薬diclofenac Na(3mg/kg/day p.o.)をアジュバント接種の16日後から10日間反復投与すると、後肢の腫脹と痛覚過敏が有意に抑制されると共に、後根神経節中のi-CGRPの増加も抑制された。2.ラットの腰髄背側部切片のin vitro灌流液中にcapsaicin 3μMを添加するとi-CGRPの遊離量が著しく増加した。予め後根を切断しておいたラットの腰髄切片ではi-CGRPのcapsaicinによる誘発遊離が著明に減少したので、この誘発遊離は主に一次感覚神経の終末からの遊離を反映していると考えられる。アジュバント関節炎ラットの腰髄切片ではi-CGRPのcapsaicin誘発遊離量が有意に増加した。以上の結果1、2から、アジュバント関節炎ラットでは一次感覚神経におけるCGRPの生合成、軸索輸送と遊離が増加していることが示唆される。3.2種類のCGRP抗血清(10μl)を痛覚過敏を示しているアジュバント関節炎ラットにi.t.投与すると、圧刺激に対する痛覚過敏が有意に抑制された。非関節炎ラットでは抗血清の作用の観察される場合と観察されない場合があった。アジュバント関節炎ラットの熱刺激に対する痛覚過敏もCGRP抗血清で有意に抑制された。従って、アジュバント関節炎ラットにおける痛覚過敏の発現に少なくとも一部は一次感覚神経からの脊髄後角へのCGRPの遊離量増加が関与していると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-63571094 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63571094 |
心筋細胞におけるPGC-1を調節するメカニズム | (目的)PGC-1は、酸化的リン酸化、グルコース代謝、ミトコンドリアのエネルギー産生に関わる細胞内酵素を調節している。加えて、PGC-1はミトコンドリアの数と呼吸機能をも調節している。我々は、estradiolが心筋細胞においてPGC-1の発現を誘導することを示した。今回、この誘導のシグナル伝達経路を明らかにすることを目的とした。(方法・結果)ラット新生児心筋細胞をestradiol (1μM)と種々の阻害剤存在下で培養し、RT-PCR法、タンパク質ブロット法を用いてシグナル伝達経路の検討を行った。PI3-kinase阻害剤であるLY294002は、PGC-1 mRNAと蛋白質の発現を抑制した。さらに、Akt阻害剤であるSH6もPGC-1 mRNAと蛋白質の発現を抑制した。また、estrogen receptor antagonistであるICI182,780におけるPGC-1 mRNAおよびタンパク質の発現抑制効果は弱いものであった。また、estradiolによる転写活性能とそのシグナル伝達経路をみるために、ER-luciferaseレポーターを用いて検討した。lucihase活性はestradiolおよびPGC-1の存在下で著名に亢進するが、これは、LY294002、SH-6、ICI182,780により抑制された。(まとめ)心筋細胞において、estradiolによるPGC-1発現の誘導が認められ、この誘導のシグナル伝達経路は、核内のestrogen receptorを介さないnonnuclear作用が関係している。このカスケードには、PI3 kinase、Aktが関与していることが示された。また、この経路は、PGC-1の発現だけではなく、PGC-1の転写活性能も調節していることが示唆された。(目的)PGC-1は、酸化的リン酸化、グルコース代謝、ミトコンドリアのエネルギー産生に関わる細胞内酵素を調節している。加えて、PGC-1はミトコンドリアの数と呼吸機能を調節している。心筋細胞において、エネルギー産生の源であるミトコンドリアの調節機構を解明する事を目的とした。(方法・結果)心筋細胞においてPGC-1の発現を誘導する刺激の検討をおこなうために、ラット新生児心筋細胞を用いてIsoproterenol、phenylephrine、17-β-estradiol(E2)、T3によるPGC-1の発現を調べた。心筋細胞を無血清条件下で12時間培養後、刺激を加えた。経時的にPGC-1の発現を検討したところ、刺激後12時間の時点で、RT-PCR法において、Isoproterenol(1μMおよ10μMとE2 (1μM)はPGC-1mRNAの発現を上昇させた。刺激後12時間では、E2刺激においてPGC- 1蛋白質およびcytochrorae C蛋白質の発現上昇も認められた。24時間以降では、IsoproterenolとE2によるPGC-1の誘導は認められなかった。また、phenirephrinとT3によるPGC-1の発現誘導は認められなかった。(まとめ)心筋細胞において、isoproterenol、E2によるPGC-1の誘導が認められた。今後は、更なる刺激の検討、および、IsoproterenolとE2による心筋細胞の細胞内シグナル伝達の解明を行なう予定である。(目的)PGC-1は、酸化的リン酸化、グルコース代謝、ミトコンドリアのエネルギー産生に関わる細胞内酵素を調節している。加えて、PGC-1はミトコンドリアの数と呼吸機能をも調節している。我々は、estradiolが心筋細胞においてPGC-1の発現を誘導することを示した。今回、この誘導のシグナル伝達経路を明らかにすることを目的とした。(方法・結果)ラット新生児心筋細胞をestradiol (1μM)と種々の阻害剤存在下で培養し、RT-PCR法、タンパク質ブロット法を用いてシグナル伝達経路の検討を行った。PI3-kinase阻害剤であるLY294002は、PGC-1 mRNAと蛋白質の発現を抑制した。さらに、Akt阻害剤であるSH6もPGC-1 mRNAと蛋白質の発現を抑制した。また、estrogen receptor antagonistであるICI182,780におけるPGC-1 mRNAおよびタンパク質の発現抑制効果は弱いものであった。また、estradiolによる転写活性能とそのシグナル伝達経路をみるために、ER-luciferaseレポーターを用いて検討した。lucihase活性はestradiolおよびPGC-1の存在下で著名に亢進するが、これは、LY294002、SH-6、ICI182,780により抑制された。(まとめ)心筋細胞において、estradiolによるPGC-1発現の誘導が認められ、この誘導のシグナル伝達経路は、核内のestrogen receptorを介さないnonnuclear作用が関係している。このカスケードには、PI3 kinase、Aktが関与していることが示された。また、この経路は、PGC-1の発現だけではなく、PGC-1の転写活性能も調節していることが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-15790390 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15790390 |
太陽系星雲の起源と変遷 | (1)惑星系の生成過程に関する理論的研究では、分子雲コアからまわりのガスへの角運動量輸送能率が、コアの回転の減衰時間はアルフベン質の掃引したまわりのガスの慣性能率がコアの慣性能率に等しくなる時間に等しいとの条件から定まること、及び、分子雲コアが磁束と角運動量とを失いつつ収縮する過程では、初めはまわりのガスと共回転状態であり後には角運動量を保存しながら収縮することを明らかにした。また観測的研究では、暗黒星雲から原始星を経てTタウリ型星に至る間の氷のふるまいと原始星のまわりの塵運の構造とについて明解なスキームを描いた。なおプリズム型測光偏光器が完成し上松1m赤外線望遠鏡で観測を行い所期の性能の達成を確認した。(2)隕石磁気に関しては、炭素質隕石ALLENDE、Y74662及びY81020の含有磁性鉱物の科学組成・基本的磁気特性の精密測定を行った上で、それらの自然残留磁化諸特性を測定し結果を解析した。これら3個の原始隕石の自然残留磁化は原始太陽系初期に300°C0°Cの温度範囲で13Oeの磁場中で熱残留磁化又は結晶残留磁化の機構により獲得したものであることがほぼ確実である。(3)星雲の熱史と固体の形成・集積過程に関する理論的研究では、自転角運動量については太陽重力下での衝突過程から自然に説明されること、微惑星の遠距離散乱の公式が求められたこと、が示された。太陽系星雲の熱史については観測と斉合するモデルが作られつつある。また固体の形成については超新星の放出ガス中において、ガスの混合がないときは炭素質微粒子が、混合があるときは著しく酸化的雰囲気中での微粒子生成がおこりAL_2O_3、Fe_3O_4及びMg_2SiO_4のサブミクロン以下の微粒子が生成されることが示され、特に後者の場合放出ガスのクランピー構造がなければ超新星は約800日でブラックアウトする。(1)惑星系の生成過程に関する理論的研究では、分子雲コアからまわりのガスへの角運動量輸送能率が、コアの回転の減衰時間はアルフベン質の掃引したまわりのガスの慣性能率がコアの慣性能率に等しくなる時間に等しいとの条件から定まること、及び、分子雲コアが磁束と角運動量とを失いつつ収縮する過程では、初めはまわりのガスと共回転状態であり後には角運動量を保存しながら収縮することを明らかにした。また観測的研究では、暗黒星雲から原始星を経てTタウリ型星に至る間の氷のふるまいと原始星のまわりの塵運の構造とについて明解なスキームを描いた。なおプリズム型測光偏光器が完成し上松1m赤外線望遠鏡で観測を行い所期の性能の達成を確認した。(2)隕石磁気に関しては、炭素質隕石ALLENDE、Y74662及びY81020の含有磁性鉱物の科学組成・基本的磁気特性の精密測定を行った上で、それらの自然残留磁化諸特性を測定し結果を解析した。これら3個の原始隕石の自然残留磁化は原始太陽系初期に300°C0°Cの温度範囲で13Oeの磁場中で熱残留磁化又は結晶残留磁化の機構により獲得したものであることがほぼ確実である。(3)星雲の熱史と固体の形成・集積過程に関する理論的研究では、自転角運動量については太陽重力下での衝突過程から自然に説明されること、微惑星の遠距離散乱の公式が求められたこと、が示された。太陽系星雲の熱史については観測と斉合するモデルが作られつつある。また固体の形成については超新星の放出ガス中において、ガスの混合がないときは炭素質微粒子が、混合があるときは著しく酸化的雰囲気中での微粒子生成がおこりAL_2O_3、Fe_3O_4及びMg_2SiO_4のサブミクロン以下の微粒子が生成されることが示され、特に後者の場合放出ガスのクランピー構造がなければ超新星は約800日でブラックアウトする。 | KAKENHI-PROJECT-63611006 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63611006 |
映像表示デバイスにおける観察者自身の立体感感受性を向上させる技術 | 本研究では,映像表示デバイスに提示された風景画像に固視微動を模した動的ノイズを付加することによって観察者の立体感の感受性を向上させる技術を確立することを目的としている.平成30年度は,絵画的奥行き手掛かりと動的ノイズの時間周波数特性を独立変数にし,奥行き感を従属変数とした感性評価実験をおこなった.このテーマによって,風景写真毎に異なる主要な絵画的奥行き手掛かりに合わせて適切なノイズを選択するための手がかりを得ることを目指した.独立変数としての奥行き手掛かりは,絵画的奥行き手がかりの中から「線遠近法」,「物の大小関係と重なり」,「きめの勾配」とした.また,固視微動モデルにおける動的ノイズの時間周波数特性として,ホワイトノイズと1/f^2ノイズを用いた.ノイズ強度は4段階を用意した.絵画的奥行き手がかりを操作しやすいコンピュータグラフィックスを用いて,実験刺激画像を生成した.結果として,すべての奥行き手掛かり画像においてノイズ付加による奥行き感の向上が確認された.線遠近の画像においては, 1/f^2であってもホワイトであってもどちらの周波数特性でも,高ノイズ強度において奥行き感の向上が見られた.大小関係および遮蔽関係,テクスチャ勾配の画像においては,主にホワイトの周波数特性を持つノイズでの奥行き感の向上効果が大きかった.ノイズの付加による奥行き感の向上効果については,著者らによるこれまでの実験結果を裏付ける結果となった.ただし,先行研究における風景写真に対する実験結果とは,最適な周波数特性において一致していなかった.これは,コンピュータグラフィックスによる刺激画像が明瞭な輪郭線を描画していたためではないかと推測された.平成30年度は,絵画的奥行き手掛かりと動的ノイズの時間周波数特性を独立変数にし,奥行き感を従属変数とした感性評価実験をおこなった.一つめの独立変数である絵画的奥行き手掛かりとしては,「線遠近法」,「物の大小関係と重なり」,「きめの勾配」を用いた.二つめの独立変数である動的ノイズの時間周波数特性として,ホワイトノイズと1/f^2ノイズを用いた.これらの変数にあわせて,コンピュータグラフィックスを用いて,実験刺激画像を生成した.そしてこれらの条件における奥行き感評価の実験をおこなった.これらは,実験計画で予定していた内容であり,おおむね順調に進展しているといえる.これらの研究成果は,平成31年度(令和元年度)に学会発表する準備をしている.実験計画の中で,表示デバイスの解像度と大きさに関する条件が統制すべき独立変数として取り上げるべきであるということが浮上してきた.そのため,平成30年度に購入を予定していた高解像度モニタの購入は見送り,平成30年度は現有の通常のモニタを使用して実験をおこなった点が研究計画とは異なる.平成31年度(令和元年度)は,当初の計画にはなかったが,表示デバイスの解像度,大きさ,ならびに表示画像の周波数特性を独立変数として追加する.これは,平成30年度の実験結果から,表示デバイスの解像度,大きさ,ならびに表示画像の周波数特性が結果に及ぼす影響を無視できないことがわかったからである.このように,独立変数が増えたため,実験に必要な期間が増加することが予想される.そこで,計画にもあった絵画的奥行き手掛かりについては,条件を限定して独立変数とすることを予定している.その上で動的ノイズの時間周波数特性を独立変数にし,奥行き感を従属変数とした感性評価実験をおこなう.本研究では,映像表示デバイスに提示された風景画像に固視微動を模した動的ノイズを付加することによって観察者の立体感の感受性を向上させる技術を確立することを目的としている.平成30年度は,絵画的奥行き手掛かりと動的ノイズの時間周波数特性を独立変数にし,奥行き感を従属変数とした感性評価実験をおこなった.このテーマによって,風景写真毎に異なる主要な絵画的奥行き手掛かりに合わせて適切なノイズを選択するための手がかりを得ることを目指した.独立変数としての奥行き手掛かりは,絵画的奥行き手がかりの中から「線遠近法」,「物の大小関係と重なり」,「きめの勾配」とした.また,固視微動モデルにおける動的ノイズの時間周波数特性として,ホワイトノイズと1/f^2ノイズを用いた.ノイズ強度は4段階を用意した.絵画的奥行き手がかりを操作しやすいコンピュータグラフィックスを用いて,実験刺激画像を生成した.結果として,すべての奥行き手掛かり画像においてノイズ付加による奥行き感の向上が確認された.線遠近の画像においては, 1/f^2であってもホワイトであってもどちらの周波数特性でも,高ノイズ強度において奥行き感の向上が見られた.大小関係および遮蔽関係,テクスチャ勾配の画像においては,主にホワイトの周波数特性を持つノイズでの奥行き感の向上効果が大きかった.ノイズの付加による奥行き感の向上効果については,著者らによるこれまでの実験結果を裏付ける結果となった.ただし,先行研究における風景写真に対する実験結果とは,最適な周波数特性において一致していなかった.これは,コンピュータグラフィックスによる刺激画像が明瞭な輪郭線を描画していたためではないかと推測された.平成30年度は,絵画的奥行き手掛かりと動的ノイズの時間周波数特性を独立変数にし,奥行き感を従属変数とした感性評価実験をおこなった.一つめの独立変数である絵画的奥行き手掛かりとしては,「線遠近法」,「物の大小関係と重なり」,「きめの勾配」を用いた.二つめの独立変数である動的ノイズの時間周波数特性として,ホワイトノイズと1/f^2ノイズを用いた.これらの変数にあわせて,コンピュータグラフィックスを用いて,実験刺激画像を生成した.そしてこれらの条件における奥行き感評価の実験をおこなった. | KAKENHI-PROJECT-18K11503 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K11503 |
映像表示デバイスにおける観察者自身の立体感感受性を向上させる技術 | これらは,実験計画で予定していた内容であり,おおむね順調に進展しているといえる.これらの研究成果は,平成31年度(令和元年度)に学会発表する準備をしている.実験計画の中で,表示デバイスの解像度と大きさに関する条件が統制すべき独立変数として取り上げるべきであるということが浮上してきた.そのため,平成30年度に購入を予定していた高解像度モニタの購入は見送り,平成30年度は現有の通常のモニタを使用して実験をおこなった点が研究計画とは異なる.平成31年度(令和元年度)は,当初の計画にはなかったが,表示デバイスの解像度,大きさ,ならびに表示画像の周波数特性を独立変数として追加する.これは,平成30年度の実験結果から,表示デバイスの解像度,大きさ,ならびに表示画像の周波数特性が結果に及ぼす影響を無視できないことがわかったからである.このように,独立変数が増えたため,実験に必要な期間が増加することが予想される.そこで,計画にもあった絵画的奥行き手掛かりについては,条件を限定して独立変数とすることを予定している.その上で動的ノイズの時間周波数特性を独立変数にし,奥行き感を従属変数とした感性評価実験をおこなう.平成30年度に実験計画を具体化するに当たって予備実験をおこない,表示モニターの解像度と表示画像の解像度が実験パラメータとして統制すべき項目であることが予想された.そこで平成30年度での実験は,通常解像度のモニターを使用して当初通りの実験を行うことにした.よって,主に高解像度モニターの購入を予定していた物品費の使用額が抑制される結果となった.平成31年度(令和元年度)は,高解像度モニターを購入して,高解像度画像において視覚ノイズが奥行き感におよぼす影響について実験をおこなう予定である.また,解像度に関する実験条件が増加したため,実験に必要な費用や謝金が増加する.そのための費用として次年度使用額を用いる予定である. | KAKENHI-PROJECT-18K11503 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K11503 |
生涯学習の「より広い便益」に関する日瑞比較研究 | 本研究は、すべての人々に人生のあらゆる段階で、学校教育のみならず、家庭、地域、職場など生活のなかに広がる多様な学びの機会を保障することを目指す「生涯学習社会」において、学習が個々の学習者および社会全般にもたらす様々な効果を、イギリスのTom Schullerらの提唱するwider benefits of learningの理論を援用しつつ質的に明らかにすることを主な目的とした。その際、日本とスウェーデンにおいて多様な学習機会に参加している成人学習者に焦点をあてた。20年度は、1819年度に日本およびスウェーデンにおいて実施した生涯学習の効果に関するインタビュー調査の結果をふまえて、インタビュー項目を改善し、両国における調査をさらに進め、スウェーデンの共同研究者とともに比較分析を行った。具体的には、下記を実施した。(1)日本とスウェーデンにおいて成人学習者に対するインタビューの追加調査(日本6件、スウェーデン12件)を行い、それらの比較分析を行った。スウェーデンにおけるインタビュー調査に関しては、同国在住の共同研究者ストックホルム大学国際教育研究所研究員Dr. Kiwako Okuma-NystromおよびDr. Ann-Kristin Bostomヨンショーピン大学講師が実施した。(2)インタビュー調査結果の分析のために、Dr .Ann-Kristin Bostomを10月に、Dr. Kiwako Okuma-Nystromを2月に日本に招聘した。(3)上記と並行して、日本国内の生涯学習研究の専門家を大学に招き、年4回の研究会を実施し、本研究課題に関する意見交換を行った。(4)2008年9月にスウェーデン・ヨーテボリ大学およびヨンショーピン大学で開催された学会において中間報告を発表し、最終成果報告をまとめた。本研究は、すべての人々に、人生のあらゆる段階で学校教育、家庭、地域、職場など生活のなかに広がる多様な学びの機会を保障することを目指す「生涯学習社会」において、学習が個々の学習者および社会全般にもたらす様々な効果を質的に明らかにすることを主な目的とする。その際、日本とスウェーデンにおいて多様な学習機会に参加している成人学習者に焦点をあてる。今年度は、日本およびスウェーデンの成人学習者(OECD、UNESCO等の定義による16歳以上の学習者)と生活のなかに広がる多様な学習機会、ならびに学習者の支援に関する現状と2000年代の傾向、世代間、ジェンダー間にみられるそれぞれの格差を、既存の調査報告、統計資料等をもとに正確に明らかにする作業を行った。また、学習のより広い便益等に関する内外の学術図書・論文ならびに統計資料の収集とそれらの内容の分析を行い、次年度の日瑞の成人学習者に対するインタビュー調査の質問項目ならびに分析のための枠組みについての検討を行った。本研究は、すべての人々に人生のあらゆる段階で、学校教育、家庭、地域、職場などのなかに広がる多様な学びの機会を保障することを目指す「生涯学習社会」において、学習が個々学習者及び社会先般にもたらす様々な効果を質的に明らかにすることを主な目的とする。その際、日本とスウェーデンにおいて多様な学習機会に参加している成人学習者に焦点をあてる。19年度は、昨年度に引き続き、日本とスウェーデンの生涯学習政策と政策評価の現状、ならびに学習のより広い便益に関する理論についての文献を検討し、知見を深めた。また、日本およびスウェーデンの成人学習者6名に対するインタビュー調査を実施し、質問項目と分析枠組の妥当性について検討を行った。日本国内においては、インタビュー調査に合わせて研究会を開催し、地域で様々な社会的活動に積極的に取り組んでいる学習者の方々から、本調査研究に関する意見も聴取した。スウェーデンには、2月末に訪問し、スウェーデン人成人学習者に対して英語でのインタビュー予備調査を行った。また、現地の研究協力者であるDr.Ann-Kristin BostomおよびDr.kiwako Nystromより本調査研究に関する専門的立場からの助言を得た。また、9月には、ボスニア・ヘルツェゴヴィナのサラエボ大学にて開催された第13回世界比較教育学会に参加(旅費は聖心女子大学が負担)し、上記のスウェーデンの研究協力者とともに生涯学習の国際比較研究に関するワークショップを開催し、本研究の中間報告を行った。本研究は、すべての人々に人生のあらゆる段階で、学校教育のみならず、家庭、地域、職場など生活のなかに広がる多様な学びの機会を保障することを目指す「生涯学習社会」において、学習が個々の学習者および社会全般にもたらす様々な効果を、イギリスのTom Schullerらの提唱するwider benefits of learningの理論を援用しつつ質的に明らかにすることを主な目的とした。その際、日本とスウェーデンにおいて多様な学習機会に参加している成人学習者に焦点をあてた。20年度は、1819年度に日本およびスウェーデンにおいて実施した生涯学習の効果に関するインタビュー調査の結果をふまえて、インタビュー項目を改善し、両国における調査をさらに進め、スウェーデンの共同研究者とともに比較分析を行った。具体的には、下記を実施した。(1)日本とスウェーデンにおいて成人学習者に対するインタビューの追加調査(日本6件、スウェーデン12件)を行い、それらの比較分析を行った。スウェーデンにおけるインタビュー調査に関しては、同国在住の共同研究者ストックホルム大学国際教育研究所研究員Dr. Kiwako Okuma-NystromおよびDr. Ann-Kristin Bostomヨンショーピン大学講師が実施した。(2)インタビュー調査結果の分析のために、Dr .Ann-Kristin Bostomを10月に、Dr. Kiwako Okuma-Nystromを2月に日本に招聘した。(3)上記と並行して、日本国内の生涯学習研究の専門家を大学に招き、年4回の研究会を実施し、本研究課題に関する意見交換を行った。(4)2008年9月にスウェーデン・ヨーテボリ大学およびヨンショーピン大学で開催された学会において中間報告を発表し、最終成果報告をまとめた。 | KAKENHI-PROJECT-18653091 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18653091 |
「総合農政」の展開と東北農民に関する実証的研究 | 本研究は、1970年代以降の「総合農政」のもとで展開されてきた農政の浸透過程とそれに対する農民の対応を、意識と行動の次元で実証的に把えていくことを目的としている。われわれ共同研究グループは、この研究目的を達成するため、本研究期間中、福島県の北会津村(「米生産調整」政策)、霊山町(地域農政特別対策事業)、そして、三春町(農村地域工業導入)の三地域を対象に、それぞれの農政の展開と農業、農村の変動、そして、農民の農政に対する対応関係の把握を実証的に行なうことを試みてきた。本年度は、これら三地域のうち、前二地域に関しては、現地調査によって収集してきた資料をもとに、研究会を開き、研究成果のとりまとめの作業を行なってきた。さらに、福島県三春町に関しては、前年度の調査において不充分であった。町行政、農業改良普及所、農協をはじめとする既存の農業団体等関係機関を中心とした農政の推進体制や農村地域工業導入促進法の展開による農家経営、農家経済に与えた影響、さらには農民の対応をめぐって、行政、農業団体等関係機関の既存資料の収集、農家訪問による聴き取りの補充調査を行なってきた。これらの事例のうち、とくに研究成果のとりまとめの進んでいる北会津村霊山町の事例の実証的研究によって得られた結論について述べておくならば、行政ならびに農業関係団体等の農政への主体的対応、「むら」の積極的活用、上層、中農上層農民を中心に据えた農民の組織化、さらには地域の農業構造等の諸条件等の諸要因の有機的関連が政策課題の達成に大きな役割を果しているといえる。反面、兼業農家化の促進さらに脱農業、農民化の傾向の増長などの問題を惹き起こしている。なかでも注目すべきは、広範な農民をとらえつつある農業に対する意欲の後退そして農業への展望の後退であり、今後に於いて現状以上に、農業、農村社会の維持、発展に危機を感じざるをえない。本研究は、1970年代以降の「総合農政」のもとで展開されてきた農政の浸透過程とそれに対する農民の対応を、意識と行動の次元で実証的に把えていくことを目的としている。われわれ共同研究グループは、この研究目的を達成するため、本研究期間中、福島県の北会津村(「米生産調整」政策)、霊山町(地域農政特別対策事業)、そして、三春町(農村地域工業導入)の三地域を対象に、それぞれの農政の展開と農業、農村の変動、そして、農民の農政に対する対応関係の把握を実証的に行なうことを試みてきた。本年度は、これら三地域のうち、前二地域に関しては、現地調査によって収集してきた資料をもとに、研究会を開き、研究成果のとりまとめの作業を行なってきた。さらに、福島県三春町に関しては、前年度の調査において不充分であった。町行政、農業改良普及所、農協をはじめとする既存の農業団体等関係機関を中心とした農政の推進体制や農村地域工業導入促進法の展開による農家経営、農家経済に与えた影響、さらには農民の対応をめぐって、行政、農業団体等関係機関の既存資料の収集、農家訪問による聴き取りの補充調査を行なってきた。これらの事例のうち、とくに研究成果のとりまとめの進んでいる北会津村霊山町の事例の実証的研究によって得られた結論について述べておくならば、行政ならびに農業関係団体等の農政への主体的対応、「むら」の積極的活用、上層、中農上層農民を中心に据えた農民の組織化、さらには地域の農業構造等の諸条件等の諸要因の有機的関連が政策課題の達成に大きな役割を果しているといえる。反面、兼業農家化の促進さらに脱農業、農民化の傾向の増長などの問題を惹き起こしている。なかでも注目すべきは、広範な農民をとらえつつある農業に対する意欲の後退そして農業への展望の後退であり、今後に於いて現状以上に、農業、農村社会の維持、発展に危機を感じざるをえない。 | KAKENHI-PROJECT-59410003 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-59410003 |
中国計画経済期(1949-78年)の財政金融制度に関する通時的・地域間比較研究 | 本研究は、中国の計画経済期(1949-78年)における財政金融制度に注目し、その中央-地方政府(主に省・直轄市・自治区レベル)間の財政移転関係および各地方の財政構造を通時的・地域間比較的に検討したものである。本研究の分析を通じて、中央政府による財政移転を通じた地方財政コントロールの実態が明らかになり、また各地方の財政収支構造の通時的変動における一般的傾向と地域的な多様性が確認された。本研究は、中国の計画経済期(1949-78年)における財政金融制度に注目し、その中央-地方政府(主に省・直轄市・自治区レベル)間の財政移転関係および各地方の財政構造を通時的・地域間比較的に検討したものである。本研究の分析を通じて、中央政府による財政移転を通じた地方財政コントロールの実態が明らかになり、また各地方の財政収支構造の通時的変動における一般的傾向と地域的な多様性が確認された。本研究は、中国社会主義経済体制、とりわけ計画経済期(1949-1978年)の財政金融制度の構造と作用を通時的および体制内の地域間比較という2つの視点から解明することを目的とする。その上で最も基本的な資料は、中国各省・市・県の「地方志」と呼ばれる地方財政金融関係資料であり、これらの系統的な収集・整理が最も肝要である。そこで初年度にあたる本年度は、各省・直轄市レベル(実効支配していない台湾省を除く全国22省、5の自治区、北京・上海・天津・重慶の4の直轄市)の財政金融関係資料を網羅的に収集することを目標に活動を進め、結果としてその大半を購入あるいは複写することができた。未入手のものについてもすでに入手見通しがついており、通時的・地域間相互比較分析を全面的に行う基盤を形成できたと言える。また、上記の資料収集活動の一環として、北京の中国国家図書館、中国社会科学院経済研究所図書館、および日本国内では有数の中国経済史関係蔵書を誇る京都大学経済学研究科図書館等での集中的な資料調査を行った。その過程において、当時の中央政府機関の内部閲覧雑誌である『中央財政公報』や定期刊行物『中国金融』など貴重な資料を入手することができた。これらが利用可能になることにより、中心となる地方財政金融分析に加えて中央政府の財政政策分析も進展が期待され、より重層的に研究を展開できる可能性が広がった。以上の本年度における系統的な地方財政金融資料収集の成功および新史料の発見は、次年度以降に予定されている相互比較分析の重要な基礎となるであろう。本研究は、中国社会主義経済体制、とりわけ計画経済期(1949-1978年)の財政金融制度の構造と作用を通時的および体制内の地域間比較という2つの視点から解明することを目的としている。初年度にあたる昨年度には、本研究の基本的な資料である中国各省・市・県の在地レベルでの地方財政金融関係資料の系統的な収集・整理につとめ、一定の成果を挙げた。本年度は、前年度に引き続き地方レベルの財政金融関係資料の系統的な収集・整理を進めたほか、中国上海の上海市档案館および上海図書館において上海市および周辺他地域の財政金融に関する資料調査を行い、補足的な資料を得た。また昨年度収集した中央政府機関の関係資料等の整理を進め、通時的・地域間相互比較分析を全面的に行う基盤を整えた。以上の本年度における系統的な資料収集の成功および対外発信によるフィードバックは、最終年度にあたる平成22年度に予定されている地域横断的・通時的な相互比較分析および研究成果の最終的な発表の重要な基礎となるであろう。研究計画の最終年度にあたる平成22年度は、これまでの研究期間において系統的に収集してきた中国の計画経済期(1949-78年)の財政金融関係資料を基礎として、データの整理および分析を進めるとともに、研究成果の総括および公開に関する準備を進めた。具体的には、2011年1月31日-2月1日に香港を訪問し、計画経済期中国の経済に関する資料を大量に所蔵する香港中文大学中国研究服務中心にて財政金融関係資料の収集・分析を行った。研究の総括および公開については、研究成果の一部をAssociation for Asian Studies-International Convention of Asia Scholars Joint Conference 2011(2011年3月31日同年4月4日、米国・ハワイ州)にて報告し、海外の研究者から研究の取りまとめに関して貴重なコメントを得た。また、2011年4月26日には、東京大学社会科学研究所現代中国研究拠点経済部会と連動する形でワークショップ「中国財政金融システムの歴史的展開」を開催した。同ワークショップにおいて、研究代表者は本研究の核となる部分を報告し、中国の財政金融の専門家であるその他の報告者やコメンテーターから有益なコメントをいただいた。なお、同ワークショップは、当初2011年3月25日に予定されていたが、同年3月11日に発生した東日本大震災の影響により開催を延期せざるをえず、ワークショップの報告者招聘旅費を確保するために平成22年度予算を一部翌年度に繰越しした。以上の活動を通じて、研究計画で当初設定した目標はおおむね達成され、その成果は、東京大学社会科学研究所現代中国研究拠点研究シリーズNo.10『中国計画経済期財政の研究省・直轄市・自治区統計から』(2012年3月刊)という形で刊行される。 | KAKENHI-PROJECT-20730228 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20730228 |
算数科の特設型問題解決による資質・能力の育成に関する研究 | 指導内容の系列として記述されてきた学習指導要領とその実現としての教科書においては、各単元の導入や応用段階での問題解決教材が注目されやすいが、実際の授業では、知識・技能の指導に追われ、数学的な考え方などの学習者の資質・能力の育成が十分ではなく、それを補完すべき特設型問題解決はほとんど実践されていない。このような現状を打開していくために、資質・能力の育成を主眼とする特設型問題解決教材の開発を推進する研究を附属小学校や公立小学校の算数科教師と協同で行い、その成果を教育現場に発信していくことによって、算数科における数学的な考え方などの資質・能力の育成を支援していくことが本研究の目的である。指導内容の系列として記述されてきた学習指導要領とその実現としての教科書においては、各単元の導入や応用段階での問題解決教材が注目されやすいが、実際の授業では、知識・技能の指導に追われ、数学的な考え方などの学習者の資質・能力の育成が十分ではなく、それを補完すべき特設型問題解決はほとんど実践されていない。このような現状を打開していくために、資質・能力の育成を主眼とする特設型問題解決教材の開発を推進する研究を附属小学校や公立小学校の算数科教師と協同で行い、その成果を教育現場に発信していくことによって、算数科における数学的な考え方などの資質・能力の育成を支援していくことが本研究の目的である。 | KAKENHI-PROJECT-19K02816 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K02816 |
現代台湾の社会変容下における農村「コミュニティ」関係変化の研究 | 「老いてゆくアジア」(大泉2007)の一つとして、現代台湾はプレ人口減少社会ともいうべき社会状況に直面している。90年代まで都市へ安価な労働力を供給していた農村部は、急速な人口流出と高齢化へみまわれるようになった。本研究はマクロな人口減少の趨勢の中で台湾農村が経験しているミクロなコミュニティ変容の様態を明らかにすることを目的とする。同目的のため、本研究では家族・祭祀・地域づくりの3局面における農村側からの社会的対応に着目した。平成29年度は昨年度の調査成果の整理・公表に重点を置いた。調査成果の整理のため調査対象村(台南市後壁区D村)にて補足的な村落調査を実施した。補足調査では、昨年度の3回の調査で不明確であった屋敷地の相続プロセスについて確認を行うとともに、神明会による祭祀儀礼の参与観察を実施した。補足調査をふまえ過去の調査内容を2篇の論文と2回の口頭発表にとりまとめた。分析テーマ2つめの祭祀(祭祀の村廟化)に関する英文論文1篇を『アジア地域文化研究』(Komaba journal of Asian studies, the University of Tokyo)第14号に投稿し、平成29年12月に掲載が決定した(印刷中)。分析テーマ1つめの家族(屋敷地の相続)に関しては別途の英文論文1篇を平成30年2月に『台湾人類学刊』(Taiwan Journal of Anthropology)に投稿し現在審査中である。また、同内容に関連する口頭報告を日本村落研究学会(平成29年11月、日本語)および台湾・国立台北藝術大学での学術交流会(平成29年12月、中国語)でそれぞれ実施した。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。「老いてゆくアジア」(大泉2007)の一つとして、現在の台湾はプレ人口減少社会ともいうべき段階にある。とりわけ、かつて都市へと安価な労働力を送出していた農村部では現在急速な人口流出と高齢化が進行している。本研究は人口減少のマクロな社会状況のもと再編されゆく漢人農村コミュニティ構造の変化をフィールド調査から明らかにすることが目的である。左記の目的のため本研究では家族・祭祀・地域づくりの3局面における村落からの社会変化への対応へ着目する。平成28年度は家族・祭祀につき12016年6月、2同年910月、3同年12月翌2017年3月の計3回130日間の村落調査を実施した。(1)家族に関しては家族集団によって共有されてきた「住まい」へ着目した。「住まい」については建築学・ハウジング論・郊外論などの角度から多く研究がなされてきたが、本研究では「住まい」を軸に村落内外へ展開する家族関係について着目した調査を行った。調査を通じ明らかとなった1970年代以降の新住居への住み替えと住み替えに際した旧住居処理の問題について分析を行った。(2)台湾漢人の祭祀については社会人類学・宗教研究などを中心に植民地期から長い研究蓄積がある。本研究では戦後社会の人口動態(急増から急減へ)のなかで村落での祭祀がいかに変容していったかを調査した。調査を通じ調査地域の各村落に存在する廟とその祭祀が歴史的には20世紀以降、それも経済成長が進んだ戦後以降のきわめて新しい段階で成立したことが明らかとなった。平成28年度は調査村(台南市後壁区D村)において3回の現地フィールド調査を実施した。調査日程は次の12016年6月、2同年910月、3同年12月翌2017年3月の計3回130日間であった。第1回・第2回の調査を通じ、調査村インフォーマントとの良好な関係構築に成功したため、現地家屋を借用して長期調査の実施(第3回調査)が可能となった。第1回の調査を踏まえた第2回調査ではキーインフォーマントからの情報に基づき、所有類型ごとの屋敷地サンプル6箇所を事例として選択した。続けて屋敷地の現住民・近隣他出者・一時帰省者に対して屋敷地の居住状況・管理状況および権利の分割状況について半構造化インタビューによる聞き取り作業を行った。調査により1960年代以降にコンクリート製2階建て住宅への住み替えが急速に進行したこと、それとともに過去に父系原則にのっとって構成されていた大規模家族であるほど屋敷地継承が困難となり、空家化・空地化している状況が明らかとなった。第3回調査では第2回調査のデータ整理後不足していた権利の分割状況に関するデータの補充作業をまず行った。続けて村内5集落それぞれにある集落住民共有の廟に関するデータ収集を行った。データ収集は廟での定期祭祀に対する参与観察および住民内から選出される運営者に対する半構造化インタビューによって行われた。データ収集により廟を中心とした祭祀が成立するに足る過去のプロセスと現在の祭祀運営資金に関する各廟の財務運営状況が明らかになった。以上の調査内容は、日本台湾学会および中国文化大学公開セミナーにおいて口頭で報告を行った。「老いてゆくアジア」(大泉2007)の一つとして、現代台湾はプレ人口減少社会ともいうべき社会状況に直面している。90年代まで都市へ安価な労働力を供給していた農村部は、急速な人口流出と高齢化へみまわれるようになった。本研究はマクロな人口減少の趨勢の中で台湾農村が経験しているミクロなコミュニティ変容の様態を明らかにすることを目的とする。同目的のため、本研究では家族・祭祀・地域づくりの3局面における農村側からの社会的対応に着目した。 | KAKENHI-PROJECT-16J06753 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J06753 |
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