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IL-12とIL-18産生によって引き起こされる移植拒絶反応及びGVHDについて | ところで、IL-18は生理活性を欠く前駆体として貯蔵され、適正な刺激により活性化された切断酵素が前駆体を切断して活性型IL-18が分泌される。急性GVHDにおけるIL-18分泌機構を検討したところ、Fas/Fasリガンドにより活性化されるcaspase-1が必須であることが判明した。さらに、caspase-1欠損マウスでは、急性GVHDを誘導しても血清IL-18上昇が認められないばかりでなく、種々の臓器病変も著しく軽減することから、caspase-1阻害を標的にした新たな臨床治療応用の可能性が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-11670331 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11670331 |
原田病の発症機構に関する研究 | これまでの研究実績をもとに、平成4年度は原田病の発症機構について総合的に検討し、以下に述べるような新知見を得た。1.全国疫学調査により、原田病の有病率は100万対13.8、交感性眼炎では100万対1であり、罹患率は原田病100万対4.9、交感性眼炎100万対0.2であった。類縁症患である交感性眼炎は、穿孔性眼外傷や内眼手術後両眼に発症し、眼症状、眼外症状ともに原田病と酷似していた。2.原田病の免疫病態を解析するため、患者末梢血単核球をメラノーマ細胞と混合培養した。その結果、対照に比し活動期患者では著明な増殖反応を示し、本病の病態にはメラノサイト抗原が重要な役割をはたしていることが明らかにされた。これらの免疫異常を抑える目的でFk506による免疫抑制治療を行い、良好な治療効果を得た。ただし、他のぶどう膜炎患者にはみられない耐糖態異常が原田病のみにみられ、この点の発症機序について現在検討中である。3.交感性眼炎患者のHLA-DNAタイピングにより、HLA-DRB1*0405,HLA-DQB1*0401頻度が有意に高く、原田病と全く同一の分子遺伝学的発症因子が見出された。4.実験動物モデルとしてS抗原によるラットの実験的自己免疫性網膜ぶどう膜炎を作成し、抗工CAM-I抗体、抗LFA-I抗体を投与したところ、対照に比し炎症は有意に抑制された。以上より、原田病は穿孔性眼外傷を契機としない交感性眼炎とも考えられ、HLAクラスII遺伝子に規定されて発病するメラノサイト特異的自己免疫症患であることが明らかになった。本病の発病原因として疑われるEBウイルスの抗原提示、HFAとの係り、細胞接着因子の役割をはじめ、本病の発症機構が本研究によりほぼ明らかにされた。1.全国的疫学調査により2064名の原田病患者が登録され、本病の有病率(15.5人/100万人)、罹患率(6.3人/100万人)、臨床症状の出現頻度などが判明した。この調査は200床以上の病院を対象としたものであり、今後さらに調査対象を広げた二次調査およびInternational Uveitis Study Group(IUSG)を介した諸外国の実態調査について準備中である。2.ヒトメラノ-マセルラインであるPー36細胞を用いた細胞障害試験により、本病患者の末梢血リンパ球は特異的反応を示すが、炎症の一つの場である髄液中のリンパ球は示さないことが明らかになった。リンパ球サブセットの解析により、この反応はNK細胞でなく細胞障害性T細胞を主としたものであり、また髄液ではOKT8陽性細胞が有意に減少していることがわかった。従って本病はメラノサイト特異的自己免疫疾患と考えられる。今後、眼内炎症細胞による検討、異なるメラノサイトを用いた場合などの検討が計画されている。3.横浜市大の原田病患者59例のHLA検査が行なわれ、血清学的には従来通りHLAーDR4、DRw53、DQw4が増加し、DRw8、DQw3の減少が確認された。DR4陽性者にPCRーRFLP法によるDNAタイピングが行なわれ、DRB1*0405遺伝子の有意な増加を認めた。これはHLAーDw15に相当するものである。また、DNA分析によりDQβ鎖の70、71番目のアミノ酸が本病発症に関与していることが示唆された。一方、PCRによるウイルス学的検査も行なわれており、原田病患者の髄液中にEBウイルスが証明され、更に検討中である。昨年度の研究実績をもとに、平成3年度は原田病の疫学的検討,免疫病態の検索,さらには分子遺伝学的研究をおこない,以下の様な成績が得られた。1.第2次全国疫学調査をおこない,200床以上の病院879ヶ所中206施設(回収率23.4%)より1059例分の患者情報が得られた。今回は類縁疾患である交感性眼炎についても調査しており,現在両疾患の罹患率,有病率を検討するとともに過去のデ-タとの比較をおこなっている。2.免疫病態の検索では,本病患者がメラノサイト表面抗原に強く感作されており,特に髄液中リンパ球はCD25陽性CD4細胞の著明な増加が明らかにされた。さらにCD45RA,ROなどを検討中である。これらをもとに,新しい免疫抑制剤FK506による免疫抑制治療をおこなったところ,0.150.2mg/kg/dayの経口投与で5例全例にぶどう膜炎の寛解が得られた。FK506治療による副作用は特にみられなかった。3.分子遺伝学的研究では,HLAーDNAタイピングにより,HLAーDRB1*0405,DRB1*0410,DQB1*0401,DQB1*0402の各遺伝子が本病発症の疾患感受性遺伝子として重要な役割をはたしていることが示された。ただしDR遺伝子とDQ遺伝子のどちらかが第一義的に相関しているのかはいまだ不明のままである。4.ウイルス学的検討では,PCR法により本病患者10例全員の髄液中にEBウイルスが証明されたが,対照群ではいずれも陰性であった。以上より、原田病ではある特定の疾患感受性遺伝素因を有するものにEB | KAKENHI-PROJECT-02304049 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02304049 |
原田病の発症機構に関する研究 | ウイルス感染がおこり、これを契機に全身メラノサイトが障害されて病態が成立し、FK506による免疫抑制治療が奏効することが明らかにされた。今後更に発症機構の詳細について検討を加える予定である。これまでの研究実績をもとに、平成4年度は原田病の発症機構について総合的に検討し、以下に述べるような新知見を得た。1.全国疫学調査により、原田病の有病率は100万対13.8、交感性眼炎では100万対1であり、罹患率は原田病100万対4.9、交感性眼炎100万対0.2であった。類縁症患である交感性眼炎は、穿孔性眼外傷や内眼手術後両眼に発症し、眼症状、眼外症状ともに原田病と酷似していた。2.原田病の免疫病態を解析するため、患者末梢血単核球をメラノーマ細胞と混合培養した。その結果、対照に比し活動期患者では著明な増殖反応を示し、本病の病態にはメラノサイト抗原が重要な役割をはたしていることが明らかにされた。これらの免疫異常を抑える目的でFk506による免疫抑制治療を行い、良好な治療効果を得た。ただし、他のぶどう膜炎患者にはみられない耐糖態異常が原田病のみにみられ、この点の発症機序について現在検討中である。3.交感性眼炎患者のHLA-DNAタイピングにより、HLA-DRB1*0405,HLA-DQB1*0401頻度が有意に高く、原田病と全く同一の分子遺伝学的発症因子が見出された。4.実験動物モデルとしてS抗原によるラットの実験的自己免疫性網膜ぶどう膜炎を作成し、抗工CAM-I抗体、抗LFA-I抗体を投与したところ、対照に比し炎症は有意に抑制された。以上より、原田病は穿孔性眼外傷を契機としない交感性眼炎とも考えられ、HLAクラスII遺伝子に規定されて発病するメラノサイト特異的自己免疫症患であることが明らかになった。本病の発病原因として疑われるEBウイルスの抗原提示、HFAとの係り、細胞接着因子の役割をはじめ、本病の発症機構が本研究によりほぼ明らかにされた。 | KAKENHI-PROJECT-02304049 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02304049 |
極性酸化物上の金属超薄膜の磁性に関する研究 | 強磁性体/酸化物積層構造は、スピントロニクスデバイスの性能を決める鍵の一つである。しかし、酸化物の電気的な極性が、隣接する強磁性層に与える効果はよく分かっていなかった。本研究では、ZnO基板のZn・O両極性面上に直接製膜したCo超薄膜の磁気的・構造的特性を調べた。磁気異方性とキュリー温度は、異なる極性面上に製膜された試料間で全く異なることが分かった。Co/O極性面の界面はやや拡散的であり、Co/Zn極性面のそれは原子レベルで平坦であった。これらの結果は、極性表面が強磁性層の特性に重要な役割を果たすことを示す。このような新規の系は、スピントロニクスデバイスに新たな機能をもたらすものと期待される。本研究では、極性酸化物上に製膜した数原子層の強磁性薄膜に注目する。下地酸化物の分極方向に依存した磁性の違いを観測し、その起源を多角的な実験により理解する。極性酸化物上の金属超薄膜では、ビルトインされたバックゲートが加わっている状況を作り出すことが可能である。金属側界面での電子濃度変化の方向は、下地酸化物表面の極性によって決まる。これにより、同じ物質上に製膜しているにも関わらず、下地の極性により磁性が全く異なる可能性がある。例えば磁気異方性は、磁気記録応用にとって最も重要な物性の一つであるが、本研究によって、新たな発想に基づいた物質デザインを可能とする技術の芽を育てることを目指す。研究の結果、同じZnO基板上に同じCo超薄膜を製膜しただけであるが、極性面が異なるだけで全く異なる磁気的性質を示すことが分かった。Zn極性面上の試料は明瞭な面内磁気異方性、O極性上の試料は同じく明瞭な垂直磁気異方性を示した。また、キュリー温度はZn極性面上の試料が約60 K高いという結果が得られた。透過電子顕微鏡を用いて界面付近の構造同定を行ったところ、Zn極性面上に製膜した試料は極めて良好なZnO/Co界面を有しており、Zn終端面直上のCoの1原子層の面内の原子間隔はZnOのa軸の格子定数と同等であることが分かった。一方でO極性面上のCoはZnO基板との混じりあいが生じ、多結晶もしくはアモルファス状の構造であった。CoはOの直上に位置しやすいと考えられ、表面エネルギーが安定化するように構造を再構成し、そのために混じりあいが生じている可能性がある。当初計画通りの研究遂行が行われている。予想していた通りの実験結果が得られ、多角的に行っている解析結果も極めてリーゾナブルである。本研究では、極性酸化物上に製膜した数原子層の強磁性金属薄膜に注目する。下地酸化物の分極方向に依存した磁性の違いを観測し、その起源を多角的な実験により理解することを目的とする。実験により、同種の酸化物と金属磁石の積層構造であっても、酸化物側に電気的な極性があるときには、その極性の符号に依存して金属磁石の構造や磁気的性質が大きく異なることを明らかになった。この結果は、磁気記録や磁気センサに広く用いられている酸化物と金属磁石の積層構造からなる素子をデザインする上で、今後重要な指針を与えることが期待される。具体的には、亜鉛(Zn)・酸素(O)両極性面を表裏にもつ酸化亜鉛(ZnO)基板上に、同じ条件で、数ナノメートル以下の薄いコバルト(Co)を製膜した。その結果、極性面に応じて、製膜されたCoの結晶構造そのものが全く異なることが明らかになった。それだけでなく、亜鉛(Zn)極性面上のCoでは磁化が揃いやすい方向が膜面内にあるのに対し、酸素(O)極性面上では膜面垂直方向に磁化が揃うことが分かった。このように、同じ物質同士を組み合わせた積層構造でも、その性質に劇的な違いがもたらされることを見出した。つまり、シンプルな構造でありつつも、自然界では存在しえない構造を人工的に作り出すことで、新たな機能をもつ磁石が得られることが示された。同構造では、ZnOとCoの界面にビルトインされた電界を有するという意味でも、それを利用した物理的基礎研究や応用研究の舞台となる系を提供するものと期待される。本研究成果は、Scientific Report誌に掲載され、東京大学工学部よりプレスリリースを行った。強磁性体/酸化物積層構造は、スピントロニクスデバイスの性能を決める鍵の一つである。しかし、酸化物の電気的な極性が、隣接する強磁性層に与える効果はよく分かっていなかった。本研究では、ZnO基板のZn・O両極性面上に直接製膜したCo超薄膜の磁気的・構造的特性を調べた。磁気異方性とキュリー温度は、異なる極性面上に製膜された試料間で全く異なることが分かった。Co/O極性面の界面はやや拡散的であり、Co/Zn極性面のそれは原子レベルで平坦であった。これらの結果は、極性表面が強磁性層の特性に重要な役割を果たすことを示す。このような新規の系は、スピントロニクスデバイスに新たな機能をもたらすものと期待される。現在、論文原稿をほぼ完成させているため、これを可能な限り早く投稿し、成果の公表を目指す。また、製膜する材料の幅を拡大すべく、学生などの研究協力者人員を増強する予定である。スピントロニクス | KAKENHI-PROJECT-15K13359 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K13359 |
結合関係表入力による有機化合物立体化学計算システムSTERIC1の完成 | 立体化学を精細に指定した有機化合物の高信頼度の3次元構造は生理活性物質などの分子設計・反応設計に不可欠で、その迅速な取得が強く要望されている。本研究により、示性式入力から3次元座標を計算するエキスパ-ト・システムSTERIC1と、示性式を結合関係表から記号化するENCODEサブシステムのプログラム開発をほぼ完成し、JICSTのデ-タベ-スから無作意に抽出した500個の化合物の約95%を正しく解決し得た。このシステムは東大大型計算機センタ-で公開されている。1.基礎団デ-タベ-スの増強。基本的な基礎団と、アルカロイドなど、縮合・代置では困難な複雑な基礎団を含む化合物をX線結晶デ-タベ-スから検索し、立体化学情報を付加した3次元幾何約540個を収容するデ-タベ-スと、精細な立体化学表現を含む、ENCODE索引ファイルを完成した。2.環の幾何。1.に収容されていない環については、大員環の幾何は小員環の合成により、スピロ環・架橋環を含む、縮合環の幾何はそれを構成する成分の環(単環または縮合環)の幾何から合成する。複素環の実測値が無いときは、IUPAC命名法のア代置法を拡張・導入して、幾何が既知の、類似の基礎団に代置法の修飾語を記述し、原子を代置するとともに、その周辺の幾何を近似的に変更するようにした。4.官能基の幾何の処理。アジドのように通常の数値とは異なる幾何を有する官能基を検出して記号化し、特有の幾何を与えるようにした。5.マニュアルの完成。この研究でSTERIC1の機能を大幅に拡張したので、第5版としてユ-ザ・マニュアル(改訂版)、基礎団のカタログ、システム・マニュアルをワ-プロ入力によって完成した。ユ-ザ・マニュアルは東大大型計算機センタ-で刊行の予定である。立体化学を精細に指定した有機化合物の高信頼度の3次元構造は生理活性物質などの分子設計・反応設計に不可欠で、その迅速な取得が強く要望されている。本研究により、示性式入力から3次元座標を計算するエキスパ-ト・システムSTERIC1と、示性式を結合関係表から記号化するENCODEサブシステムのプログラム開発をほぼ完成し、JICSTのデ-タベ-スから無作意に抽出した500個の化合物の約95%を正しく解決し得た。このシステムは東大大型計算機センタ-で公開されている。1.基礎団デ-タベ-スの増強。基本的な基礎団と、アルカロイドなど、縮合・代置では困難な複雑な基礎団を含む化合物をX線結晶デ-タベ-スから検索し、立体化学情報を付加した3次元幾何約540個を収容するデ-タベ-スと、精細な立体化学表現を含む、ENCODE索引ファイルを完成した。2.環の幾何。1.に収容されていない環については、大員環の幾何は小員環の合成により、スピロ環・架橋環を含む、縮合環の幾何はそれを構成する成分の環(単環または縮合環)の幾何から合成する。複素環の実測値が無いときは、IUPAC命名法のア代置法を拡張・導入して、幾何が既知の、類似の基礎団に代置法の修飾語を記述し、原子を代置するとともに、その周辺の幾何を近似的に変更するようにした。4.官能基の幾何の処理。アジドのように通常の数値とは異なる幾何を有する官能基を検出して記号化し、特有の幾何を与えるようにした。5.マニュアルの完成。この研究でSTERIC1の機能を大幅に拡張したので、第5版としてユ-ザ・マニュアル(改訂版)、基礎団のカタログ、システム・マニュアルをワ-プロ入力によって完成した。ユ-ザ・マニュアルは東大大型計算機センタ-で刊行の予定である。立体化学を精細に指定した有機化合物の高信頼度の3次元構造は生理活性物質などの分子設計・反応設計に不可欠であって、その迅速な取得が強く要望されている。米田は示性式入力から3次元座標を計算するエキスパート・システムSTERIC1と、示性式を結合関係表から記号化するENCODEサブシステムの開発を行ってきた。以下の向上によって、JICSTのデータベースから無作意に抽出した200個の化合物の約95%を正しく解決した。この成果は東大大型計算機センターで公開されている。1.基礎団データベースの増強。比較的簡単な基礎団と、アルカロイドのように、縮合・代置では困難な複雑な基礎団を含む化合物をX線結晶データベースから検索し、自らが作成した処理システムにより立体化学情報を付加した3次元データを約100件を作成、増強した。さらにこれから精細な立体化学表現を含む、ENCODE索引ファイルも併せて作成した。2.縮合環の幾何。スピロ環・架橋環を含む、縮合環の幾何をその構成する成分の環(単環または縮合環)の幾何から合成するプログラムを作成した。二個の飽和環の縮合に当っては、縮合環橋頭原子からの残留水素の選択により立体化学(αー水素など)が決定されるので、倫理的または試行錯誤的にそれを選定するプログラムの基本部分を作成した。3.代置環の処理。複素環の3次元データの実測値が無いときは、IUPAC命名法のア代置法を導入して、幾何が既知の基礎団に代置法の修飾語を記述し、原子を入換えるとともに、その周辺の幾何を近似的に変更するようにした。4.官能基の幾何の処理。 | KAKENHI-PROJECT-63550613 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63550613 |
結合関係表入力による有機化合物立体化学計算システムSTERIC1の完成 | 一般に結合関係表は原子の並びで記述される。これからアジドのように通常の数値とは異なる幾何を有する官能基を検出して記号化し、特有の幾何を与えるプログラムを作成した。立体化学を精細に指定した有機化合物の高信頼度の3次元構造は生理活性物質などの分子設計・反応設計に不可欠で、その迅速な取得が強く要望されている。本研究により、示性式入力から3次元座標を計算するエキスパ-ト・システムSTERIC1と、示性式を結合関係表から記号化するENCODEサブシステムのプログラム開発をほぼ完成し、JICSTのデ-タベ-スから無作意に抽出した500個の化合物の約95%を正しく解決し得た。このシステムは東大大型計算機センタ-で公開されている。1.基礎団デ-タベ-スの増強.基本的な基礎団と、アルカロイドなど、縮合・代置では困難な複雑な基礎団を含む化合物をX線結晶デ-タベ-スから検索し、立体化学情報を付加した3次元幾何約540個を収容するデ-タベ-スと、精細な立体化学表現を含む、ENCODE索引ファイルを完成した。2.環の幾何.1.に収容されていない環については、大員環の幾何は小員環の合成により、スピロ環・架橋環を含む、縮合環の幾何はそれを構成する成分の環(単環または縮合環)の幾何から合成する。複素環の実測値が無いときは、IUPAC命名方のア代置法を拡張・導入して、幾何が既知の、類似の基礎団に代置法の修飾語を記述し、原子を代置するとともに、その周辺の幾何を近似的に変更するようにした。4.官能基の幾何の処理.アジドのように通常の数値とは異なる幾何を有する官能基を検出して記号化し、特有の幾何を与えるようにした。5.マニュアルの完成.この研究でSTERIC1の機能を大幅に拡張したので、第5版としてユ-ザ・マニュアル(改訂版)、基礎団のカタログ,システム・マニュアルをワ-プロ入力によって完成した。ユ-ザ・マニュアルは東大大型計算機センタ-で刊行の予定である。 | KAKENHI-PROJECT-63550613 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63550613 |
Endothelin-1(ET-1)高値は腎不全悪化の予知因子である。 | 血漿エンドセリン-1(ET-1)は強力な血管収縮物質である。血漿ET-1の上昇は心血管疾患及び悪性腫瘍患者の予後マーカーである。しかし、これまでに住民検診の場で多人数に対してET-1を測定した報告はなく、本研究は10年に及ぶ予後調査の結果から、世界において初めて血漿ET-1の上昇が健常者において死亡の予知因子であることを立証した極めて意義深い研究である。しかし10年の追跡調査において血漿ET-1上昇は総死亡と有意な関連を認めたものの、死亡原因として多い、脳・心血管死および癌死との関連は得られず、さらに追跡調査を行うことにより臨床的エビデンスが得られると考えられる。今後、死因別に血漿ET-1がどのように関連しているのかを分析し、予防法や治療法にまで言及することが期待される。血漿エンドセリン-1(ET-1)は強力な血管収縮物質である。血漿ET-1の上昇は心血管疾患及び悪性腫瘍患者の予後マーカーである。我々は、血漿ET-1レベルの上昇はベースライン時に明らかな心血管疾患や悪性腫瘍がなくても被験者の予後マーカーかもしれないという仮説を立てた。健常の40歳以上の1440人(男性:580人、女性:860人)のET-1レベルを測定した。10年間にわたり追跡調査を施行し、追跡率は96.8%であった。ベースラインの血漿ET-1のレベルを四分位に分類した。ベースラインの血漿ET-1濃度は年齢、血圧、HDL-コレステロール、腎機能、尿酸および全死因死亡では関連があったが、心血管死や癌死では関連はなかった。10年後の生死別に見た各変数の平均値及び頻度の差では年齢、性別、収縮期血圧、尿酸、空腹時血糖、HbA1c、喫煙歴、高血圧治療歴及び血漿ET-1は生存者と比較して有意に上昇し、BMI、総コレステロール、eGFRは生存者と比較して有意に低下していた。Kaplan-Meier法の曲線は、全死因死亡率が最も低い四分位数よりもET-1の最高四分位で有意に高かった。Cox比例ハザード回帰分析では、ET-1は全死因死亡の独立した予測因子であった(ハザード比: 1.11, 95%信頼区間1.01-1.23)。交絡因子調整後の最低四分位数に対する血漿ET-1の最高四分位数における全死因死亡のハザード比は1.54であった。(95%信頼区間1.09-2.20)。血漿ET-1レベルは健康な集団における全死因死亡の予測因子である可能性がある。血漿エンドセリン-1(ET-1)は強力な血管収縮物質である。血漿ET-1の上昇は心血管疾患及び悪性腫瘍患者の予後マーカーである。しかし、これまでに住民検診の場で多人数に対してET-1を測定した報告はなく、本研究は10年に及ぶ予後調査の結果から、世界において初めて血漿ET-1の上昇が健常者において死亡の予知因子であることを立証した極めて意義深い研究である。しかし10年の追跡調査において血漿ET-1上昇は総死亡と有意な関連を認めたものの、死亡原因として多い、脳・心血管死および癌死との関連は得られず、さらに追跡調査を行うことにより臨床的エビデンスが得られると考えられる。今後、死因別に血漿ET-1がどのように関連しているのかを分析し、予防法や治療法にまで言及することが期待される。エンドセリン1(ET-1)は1988年に柳沢らにより発見された血管内皮由来の強力な血管収縮作用を持つペプチドであり、高血圧症、肺高血圧症、血管リモデリング、急性・慢性腎不全、慢性心不全などの各種の慢性循環器疾患及び心腎連関と深いかかわりをもつことが示唆されている。腎不全との関係については急性腎不全時に血中ET-1濃度が上昇し、その回復期に低下することが報告されている。またラットを用いた腎動脈の虚血再灌流の実験において血流再開後のGFRの低下に対しET-1の中和抗体を投与すると、GFRの改善が認められたという報告もある。しかし、欧米を含めても急性及び慢性腎不全の患者を対象とした横断研究や動物モデルを用いた報告に限られ、ET-1は腎不全悪化の予知に関連するか前向きな疫学的調査研究は未だない状況である。この田主丸検診の中で我々は1999年に実施した検診において1452名の男女住民に血漿ET-1を測定し、ET-1は早期腎障害と関係しているという結果を横断的研究により報告した。また同検診で1999年時をベースラインとして正常血圧であった1261人の検診受診者を対象に、血漿ET-1と高血圧発症との関連について7年間の縦断研究を施行した結果、血漿ET-1濃度高値は正常血圧者において高血圧の進展に関連があることを報告した。さらに前回の大規模検診時から10年が経過する2009年に田主丸町の同一地区で大規模検診(約2000名)を行っており、eGFRの測定により、腎機能悪化に対して血漿ET-1がどのように関連しているか否かを多変量解析を用いて分析し、ET-1高値者に対する治療法にまで言及することを検討を目的としている。現在対象者全員の予後調査を無事終了することができ、データ整理および分析を行うことで、ET-1は腎機能悪化と関係していることを解析するのみである。 | KAKENHI-PROJECT-23790714 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23790714 |
Endothelin-1(ET-1)高値は腎不全悪化の予知因子である。 | 平成23年度の主な研究計画として、「1999年の住民検診受診者1920名において血漿ET-1を測定した1452名に対し、現在の健康状態、内服薬の有無、癌の発症の有無、高血圧発症の有無、脳・心血管疾患の有無、肝・腎疾患の有無などを確認する手紙を送付し、返信された手紙をもとに、検査・治療を受けた病院・医院からの情報の収集、カルテの閲覧を行い、医学的裏付けを元にデータの信頼性を高いものとする。返信されなかった対象者には直接電話や訪問による調査を行う。また物故者については家族やかかりつけ医に協力を仰ぎ、その死亡時期と死亡原因を特定する。」である。予後調査は終了した状態である。研究施設:久留米大学医学部内科学講座心臓・血管内科に所属する疫学研究室にて主たる研究を遂行する。これまでの検診のデータの保存や保存血清なども当研究室にて保管されており、データーベース化している。研究母体である福岡県久留米市田主丸町でおこなう住民検診は、町の公民館を利用させて頂き住民検診の設備や機材を搬入しておこなう。一般住民を対象とした検診を効果的に行うためには、対象となる地区(田主丸町)の行政機関との連携や協力が必要となる。我々は田主丸町総合支所に働きかけることにより、検診を行うだけでなく、健康教室の実施などにも積極的に参加し、行政及び住民の理解を得る努力を行う計画がある。地元医師会に対して検診結果の発表や講演会を行うなどして、これまでに対象地域との良好な協力体制を確立している。さらに、予後調査を遂行するにあたっては地元の医師会の協力も得られているため、推進対策は万全な状態である。平成24年度は得られたデータを基に解析を行う。解析方法としてLogstic回帰分析、重回帰分析を含めた単及び多変量解析を行う。統計はSASを用いて分析する。さらに本研究成果について学会発表を行うとともに、論文を作成し、疫学的に確かめられた新たなエビデンスとして報告する。住民検診:福岡県田主丸町にて、平成23年度と同様に大規模住民検診の未受診者、特に平成11年の検診受診者を中心に可能な限り電話などで連絡をとり、個別に検診を行う。報告:解析から得られた結果をもとに、血中ET-1濃度と腎不全との関連性について解析を行う。さらに得られた疫学的結果について学会発表を行うとともに、論文を作成し新たなエビデンスとして報告する。解析:平成23年度と同様に、上述の内容について疫学的解析を行う。経年的にサンプル数を増やすことにより、信憑性が高まることが予測される。 | KAKENHI-PROJECT-23790714 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23790714 |
途上国における世帯・個人レベルでの食料摂取状況 | マクロレベルのフードセキュリティについては盛んに研究されつつも、ミクロレベルのフードセキュリティについては、意外にもあまり研究が行われてこなかった。そこで、本研究では、途上国における世帯・個人レベルの食料摂取状況について定量的に解明することを目的とした。今年度は、本研究の目的を達成すべく、RANDが実施した大規模個票データを使用し、経済ショックの一つである鳥インフルエンザが途上国世帯の食料支出額を含む家計支出額に与える影響を定量的に解明した。具体的には、OLS(一般最小二乗法)を適用し、世帯主の教育水準などの基本属性を考慮しつつ、鳥インフルエンザが家計支出額に与える影響を解明した。その結果、都市部に居住する家禽類飼養世帯の家計支出額と鳥インフルエンザの間には明瞭な関連性は見受けられなかったが、農村部に居住する家禽類飼養世帯の家計支出額は鳥インフルエンザとマイナスの関連性があることが明らかとなった。また、インドネシアで行われているアリサン(講)を行う世帯ほど家計支出額が高いことが確認された。以上の結果より、アリサンへの参加を促進することによって、鳥インフルエンザなどの予期せぬ経済的ショックが生じた際にも家計支出額の低下を緩和することができるといった知見を得た。加えて、今年度はインドネシア・ジャカルタ(具体的には、中部ジャカルタのコタ、タナバン、スネン、ジュンパカマス)のストリートチルドレンを対象として、食料摂取状況に関する現地調査を実施した。当該調査は今年度の10月から12月にかけて実施し、約200人のストリートチルドレン(5才以上17才以下)に対して、聞き取り調査を行なった。質問項目には、教育水準などの基本属性に加え、食料摂取状況やソーシャル・キャピタル、健康状態などを設定した。調査結果より、現時点では、インフォーマントの食事内容はおおむね、比較的安価な炭水化物類に偏る傾向があることが確認された。ソーシャル・キャピタルや自家消費可能な食料生産,経済的ショックが世帯・個人レベルでの食料摂取状況に与える影響をIFPRI(International Food Policy Research Institute)や世界銀行が実施した大規模調査の個票データを使用し,簡便な統計手法を用いることによって解明した。具体的には,バングラデシュ都市貧困者居住地域を事例に,切断型ポアソン回帰を適用して,家庭菜園-小規模食料生産-や一時的な経済ショックが女性の食料摂取状況に与える影響を定量的に推計した。その結果,空き地などで小規模な家畜の飼養や野菜・果物生産を行っている世帯の女性ほど,食料摂取状況は良好であるといった知見を得た。一方で,冠水や法外な賃貸料などにより家計がコントロールできなかった経験のある世帯の女性ほど,食料摂取状況が悪いということも明らかとなった。さらに本研究では,インドネシア独立時に大規模な経済ショック(暴動)を経験した東ティモールを事例に,2変量プロビットモデルを適用して,主観的ベーシックニーズ充足度-主観的食料充足度と主観的ヘルスケア充足度-を規定する諸要因を定量的に解明した。特に,主観的食料充足度に関する結果を示すと,(1)世帯主の教育水準が高い,(2)世帯主が男性である,(3)家族員数に占める乳幼児の比率が低い,(4)1人当たり家畜飼養頭数が多い,(5)過去12ヶ月間でコミュニティーグループに参加したことがある,(6)都市・都市近郊部に居住する,(7)NGOなどの機関から食料や農水産業に関する支援を受けたという諸条件を満たす世帯ほど,主観的食料充足度は良好であることが確認された。以上のバングラデシュと東ティモールにおける計測結果を考慮し,なおかつ,発展途上国では短日的に公教育を充実させることが困難であることを勘案すると,自家消費向けの食料生産やマイクロファイナンスなどの拡充によるソーシャル・キャピタルの水準向上が効果的であると推察される。インドネシアを事例に、RANDが2007年に実施した大規模調査の個票データを使用して、世帯主の教育水準などの基本属性やその他諸要因を考慮しつつ、鳥インフルエンザが世帯家計支出(食料支出額を含む)に与える影響を定量的に解明した。その結果、世帯主の教育水準が高い、家族員数が多い、非農業部門に就業する家族員がいる、資産売却額が高い、過去12ヶ月間でアリサン(頼母子講)に参加したことがあるという諸条件を満たす世帯ほど、世帯家計支出額が高いことが確認された。さらに、農村部で鳥インフルエンザに感染した家禽類飼養世帯は、鳥インフルエンザに感染していない家禽類飼養世帯と比較して、家計支出額が低いことが明らかとなった。以上の分析結果に加え、途上国では概してエンゲル係数が高いことを勘案すると、家計支出額を構成する食料支出額についても、概ね同様な傾向があることが推察される。それでは、食料支出額を含む世帯家計支出額を向上させるためには、如何なる政策が効果的であろうか。分析結果より、非農業部門の雇用拡大や教育水準の向上などが世帯家計支出額向上に寄与すると推察される。しかしながら、一般的に途上国では、雇用拡大や公教育充実の実現には、膨大な時間と費用が必要である。そのため、以上の点を考慮し、短期的な視点に立った時には、各地域の文化や歴史等も考慮しつつ、講などのインフォーマルな金融組織への参加を促すことが、鳥インフルエンザなどのショックを受けた時の家計支出額の低下を抑制すると推察される。マクロレベルのフードセキュリティについては盛んに研究されつつも、ミクロレベルのフードセキュリティについては、意外にもあまり研究が行われてこなかった。そこで、本研究では、途上国における世帯・個人レベルの食料摂取状況について定量的に解明することを目的とした。 | KAKENHI-PROJECT-09J05561 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09J05561 |
途上国における世帯・個人レベルでの食料摂取状況 | 今年度は、本研究の目的を達成すべく、RANDが実施した大規模個票データを使用し、経済ショックの一つである鳥インフルエンザが途上国世帯の食料支出額を含む家計支出額に与える影響を定量的に解明した。具体的には、OLS(一般最小二乗法)を適用し、世帯主の教育水準などの基本属性を考慮しつつ、鳥インフルエンザが家計支出額に与える影響を解明した。その結果、都市部に居住する家禽類飼養世帯の家計支出額と鳥インフルエンザの間には明瞭な関連性は見受けられなかったが、農村部に居住する家禽類飼養世帯の家計支出額は鳥インフルエンザとマイナスの関連性があることが明らかとなった。また、インドネシアで行われているアリサン(講)を行う世帯ほど家計支出額が高いことが確認された。以上の結果より、アリサンへの参加を促進することによって、鳥インフルエンザなどの予期せぬ経済的ショックが生じた際にも家計支出額の低下を緩和することができるといった知見を得た。加えて、今年度はインドネシア・ジャカルタ(具体的には、中部ジャカルタのコタ、タナバン、スネン、ジュンパカマス)のストリートチルドレンを対象として、食料摂取状況に関する現地調査を実施した。当該調査は今年度の10月から12月にかけて実施し、約200人のストリートチルドレン(5才以上17才以下)に対して、聞き取り調査を行なった。質問項目には、教育水準などの基本属性に加え、食料摂取状況やソーシャル・キャピタル、健康状態などを設定した。調査結果より、現時点では、インフォーマントの食事内容はおおむね、比較的安価な炭水化物類に偏る傾向があることが確認された。 | KAKENHI-PROJECT-09J05561 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09J05561 |
単一ナノ構造体のレーザー放射圧スペクトロスコピー | 本研究では、単一ナノ構造体における光物理現象を高感度・高精度に解析することを目的とし、レーザー光の放射圧を利用した新しいダイナミック吸収分光計測法を開発した。本手法は、ナノ構造体にレーザー光を照射すると構造体の屈折率、吸収係数(複素屈折率)に依存して放射圧が発生することを利用したものである。すなわち、吸収を光強度の変化としてではなく、吸収に伴って発生する光の力に変換して計測するという全く新しいアイデアに基づく。従って、散乱、迷光等のバックグランドの影響がなく、吸収に比例した観測値を高感度に得ることが可能である。放射圧の測定法としては、ナノ構造体のブラウン運動を直接観測して統計熱力学的な方法により微粒子に作用する力を解析する技術を用いた。本技術によりフェムトニュートンオーダーの放射圧が観測でき、吸収断面積が数平方オングストローム程度の構造体の測定が理論的に実現できる。まず、吸収をもつナノメートルサイズの構造体にレーザー光を照射したとき作用する放射圧を流刑、屈折率、吸収係数をパラメータとして波動理論的に解析し、レーザー放射圧スペクトロスコピーシステムを設計した。また、設計に基づいて半導体励起Nd:YAGレーザーを調整光学系を通して光学顕微鏡に導きナノ構造体に集光して捕捉するとともに、波長可変パルスレーザーを微小構造体に照射して吸収による放射圧を発生させるシステムを開発した。熱的ランダム過程をコンピュータで統計力学的に解析してポテンシャルを計算し、放射圧の3次元ベクトル分布を求めてナノ構造体の吸収と屈折率を推定することを可能にした。システムの検証実験としては、粒径や屈折率が既知な高分子ラテックスに色素をドープした試料の解析を行い、理論と比較して感度、精度、時間分解能等について考察した。本研究では、単一ナノ構造体における光物理現象を高感度・高精度に解析することを目的とし、レーザー光の放射圧を利用した新しいダイナミック吸収分光計測法を開発した。本手法は、ナノ構造体にレーザー光を照射すると構造体の屈折率、吸収係数(複素屈折率)に依存して放射圧が発生することを利用したものである。すなわち、吸収を光強度の変化としてではなく、吸収に伴って発生する光の力に変換して計測するという全く新しいアイデアに基づく。従って、散乱、迷光等のバックグランドの影響がなく、吸収に比例した観測値を高感度に得ることが可能である。放射圧の測定法としては、ナノ構造体のブラウン運動を直接観測して統計熱力学的な方法により微粒子に作用する力を解析する技術を用いた。本技術によりフェムトニュートンオーダーの放射圧が観測でき、吸収断面積が数平方オングストローム程度の構造体の測定が理論的に実現できる。まず、吸収をもつナノメートルサイズの構造体にレーザー光を照射したとき作用する放射圧を流刑、屈折率、吸収係数をパラメータとして波動理論的に解析し、レーザー放射圧スペクトロスコピーシステムを設計した。また、設計に基づいて半導体励起Nd:YAGレーザーを調整光学系を通して光学顕微鏡に導きナノ構造体に集光して捕捉するとともに、波長可変パルスレーザーを微小構造体に照射して吸収による放射圧を発生させるシステムを開発した。熱的ランダム過程をコンピュータで統計力学的に解析してポテンシャルを計算し、放射圧の3次元ベクトル分布を求めてナノ構造体の吸収と屈折率を推定することを可能にした。システムの検証実験としては、粒径や屈折率が既知な高分子ラテックスに色素をドープした試料の解析を行い、理論と比較して感度、精度、時間分解能等について考察した。本研究では、単一ナノ構造体における光物理現象を高感度・高精度に解析することを目的として、レーザー光の放射圧を利用した新しいダイナミック吸収分光計測法の開発を行っている。本手法は、ナノ構造体にレーザー光を照射すると構造体の複素屈折率に依存して放射圧が発生することを利用したものである。すなわち、吸収を光強度の変化としてではなく、吸収に伴って発生する光の力に変換して計測するという全く新しいアイデアに基づく。本年度は、吸収をもつナノメートルサイズの構造体にレーザー光を照射したとき作用する放射圧を粒径、屈折率、吸収係数をパラメータとして波動理論的に解析した。また、放射圧が作用したナノ構造体の熱運動についてシミュレーションを行い、ポテンシャル測定の精度や吸収検出の感度について検討した上で、単一ナノ構造体のレーザー放射圧スペクトロスコピーシステムを設計した。システムは、Nd:YAGレーザーを調整光学系を通して光学顕微鏡に導きナノ構造体に集光して捕捉するとともに、波長可変パルスレーザーを微小構造体に照射して吸収による放射圧を発生させる。また、ナノ構造体を全反射照明し、散乱光を4分割フォトダイオードで検出して微小構造体の熱運動を実時間3次元計測する。この熱的ランダム過程を統計力学的に解析してポテンシャルを計算し、放射圧の3次元ベクトル分布を求めてナノ構造体の吸収と屈折率を推定するシステムを設計に基づいて製作した。本研究では、単一ナノ構造体における光物理現象を高感度・高精度に解析することを目的とし、レーザー光の放射圧を利用した新しいダイナミック吸収分光計測法を開発した。本手法は、ナノ構造体にレーザー光を照射すると構造体の屈折率、吸収係数(複素屈折率)に依存して放射圧が発生することを利用したものである。すなわち、吸収を光強度の変化としてではなく、吸収に伴って発生する光の力に変換して計測するという全く新しいアイデアに基づく。従って、散乱、迷光等のバツクグランドの影響がなく、吸収に比例した観測値を高感度に得ることが可能である。放射圧の測定法としては、ナノ構造体のブラウン運動を直接観測して統計熱力学的な方法により微粒子に作用する力を解析する技術を用いた。 | KAKENHI-PROJECT-13450024 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13450024 |
単一ナノ構造体のレーザー放射圧スペクトロスコピー | 本技術によりフェムトニュートンオーダーの放射圧が観測でき、吸収断面積が数平方オングストローム程度の構造体の測定が理論的に実現できる。本年度は、半導体励起Nd : YAGレーザーを調整光学系を通して光学顕微鏡に導きナノ構造体に集光して捕捉するとともに、波長可変パルスレーザーを微小構造体に照射して吸収による放射圧を発生させるシステムを用いて、熱的ランダム過程をコンピュータで統計力学的に解析してポテンシャルを計算し、放射圧の3次元ベクトル分布を求めてナノ構造体の吸収と屈折率を推定することを可能にした。実験的研究としては、粒径や屈折率が既知な高分子ラテックスに色素をドープした試料の解析を行い、理論と比較して感度、精度、時間分解能等について考察した次に、表面プラズモン励起状態の熱的緩和にナノサイズ効果が現れると期待されている金や銀のコロイド、について単一微粒子の吸収分光を行い、ナノ空間における電子やエキシトン、フォノンの振る舞いを明らかにすることを試みた。 | KAKENHI-PROJECT-13450024 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13450024 |
音楽聴取時における演奏者-聴取者間の相互作用の解析:拍への同期度による検討 | 本研究は、成人対象に手拍子を付加した音楽聴取実験を実施し、演奏者ー聴取者間に生じる相互作用を同期度から解析する。実験では、演奏を2会場へ生中継し、実験群の被験者打拍情報のみ演奏者にフィードバックさせる。演奏者-聴取者間の同期度は、MIDIで記録した演奏データとマイクで録音記録した手拍子音波形を用い、演奏者の演奏リズムと聴取者の打拍リズムの位相差を解析して調べる。聴取者内同期度は、音楽リズム反応記録装置で記録した個別の打拍時刻から解析する。これらを2群間で比較検討する。本研究は、成人対象に手拍子を付加した音楽聴取実験を実施し、演奏者ー聴取者間に生じる相互作用を同期度から解析する。実験では、演奏を2会場へ生中継し、実験群の被験者打拍情報のみ演奏者にフィードバックさせる。演奏者-聴取者間の同期度は、MIDIで記録した演奏データとマイクで録音記録した手拍子音波形を用い、演奏者の演奏リズムと聴取者の打拍リズムの位相差を解析して調べる。聴取者内同期度は、音楽リズム反応記録装置で記録した個別の打拍時刻から解析する。これらを2群間で比較検討する。 | KAKENHI-PROJECT-19K02769 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K02769 |
気管支喘息の病態における好酸球特異的活性化遺伝子の単離と機能解析 | 近年、アレルギー性気道炎症の重要なエフェクター細胞である好酸球の分化及び活性化にはIL-5が重要であることが明らかにされた。本研究はIL-5による好酸球活性化機構を明らかにし、アレルギー性気道炎症を好酸球特異的に不活化し制御するするために、IL-5刺激により好酸球に発現誘導される遺伝子を単離することを研究目的とした。IL-5刺激により好酸球に発現誘導される遺伝子の単離は、サブトラクション法とPCRを組み合わせたRepresentational Difference Analysis(RDA)法を用いて解析した。その結果、Bcl-XやCIS等、発現が予測されたいくつかの既知遺伝子に加えて、IL-5により好酸球に発現、誘導される新規遺伝子(ESTを含む)が8個単離され、その全長cDNAの単離作業中である。そして少なくともこれらの半数以上の遺伝子は、ノザン法にてもIL-5依存的に発現誘導されることを確認した。さらにIL-5依存的発現が強い2つの遺伝子についてはプロモーター領域を単離し、現在、その発現制御機構の解析を行っている。そしてこれらの解析により、好酸球におけるIL-5依存的な遺伝子発現制御機構を明らかにできると考える。またこれらの知見を応用し、好酸球特異的な不活化によるアレルギー性気道炎症の制御を目指したい。また上記実験と平行してIL-5シグナルの下流に位置するSignal transducersand activators of transcription 5(Stat5)のアレルギー性気道炎症における役割をStat5a欠損マウス及びStat5b欠損マウスを用いて解析した。そしてStat5a欠損マウス及びStat5b欠損マウスではアレルギー性炎症における抗原誘発気道好酸球浸潤が著明に低下しており、その原因の一つとしてこれらのマウスでは、IL-5投与による好酸球造血が低下していることを見出した。したがって、Stat5a及びStat5bは、アレルギー性好酸球性炎症の惹起に必須であることを明らかにした(Blood 95:1370,2000)。近年、アレルギー性気道炎症の重要なエフェクター細胞である好酸球の分化及び活性化にはIL-5が重要であることが明らかにされた。本研究はIL-5による好酸球活性化機構を明らかにし、アレルギー性気道炎症を好酸球特異的に不活化し制御するするために、IL-5刺激により好酸球に発現誘導される遺伝子を単離することを研究目的とした。IL-5刺激により好酸球に発現誘導される遺伝子の単離は、サブトラクション法とPCRを組み合わせたRepresentational Difference Analysis(RDA)法を用いて解析した。その結果、Bcl-XやCIS等、発現が予測されたいくつかの既知遺伝子に加えて、IL-5により好酸球に発現、誘導される新規遺伝子(ESTを含む)が8個単離され、その全長cDNAの単離作業中である。そして少なくともこれらの半数以上の遺伝子は、ノザン法にてもIL-5依存的に発現誘導されることを確認した。さらにIL-5依存的発現が強い2つの遺伝子についてはプロモーター領域を単離し、現在、その発現制御機構の解析を行っている。そしてこれらの解析により、好酸球におけるIL-5依存的な遺伝子発現制御機構を明らかにできると考える。またこれらの知見を応用し、好酸球特異的な不活化によるアレルギー性気道炎症の制御を目指したい。また上記実験と平行してIL-5シグナルの下流に位置するSignal transducersand activators of transcription 5(Stat5)のアレルギー性気道炎症における役割をStat5a欠損マウス及びStat5b欠損マウスを用いて解析した。そしてStat5a欠損マウス及びStat5b欠損マウスではアレルギー性炎症における抗原誘発気道好酸球浸潤が著明に低下しており、その原因の一つとしてこれらのマウスでは、IL-5投与による好酸球造血が低下していることを見出した。したがって、Stat5a及びStat5bは、アレルギー性好酸球性炎症の惹起に必須であることを明らかにした(Blood 95:1370,2000)。近年、アレルギー性炎症において重要なエフェクター細胞である好酸球の分化及び活性化にはIL-5が重要であることが明らかにされた。本研究はIL-5による好酸球活性化機構を明らかにし、アレルギー性炎症を好酸球特異的に不活化し制御するするために、IL-5刺激により好酸球に発現誘導される遺伝子を単離することを研究目的とした。IL-5刺激により好酸球に発現誘導される遺伝子の単離は、発現されているすべての遺伝子の一部を効率的に解析するSerial Analysis of Gene Expression(SAGE)法およびサブトラクション法とPCRを組み合わせたRepresentational Difference Analysis(RDA)法を併用して解析を行っている。現在、RDA法による解析が先行し、IL-5により好酸球に発現誘導される新規遺伝子が7個単離され、その全長cDNAの単離及びその機能的解析を始めたところである。SAGE法による解析は、技術的な問題が生じたため、方法自体をリンパ球系の細胞を角いて改良中であり、好酸球おける結果が得られるまでには、もう少し時間が必要である。今後DNAマイクロアレイも併用し、より多くの遺伝子の解析を行う予定である。近年、アレルギー性気道炎症の重要なエフェクター細胞である好酸球の分化及び活性化にはIL-5が重要であることが明らかにされた。 | KAKENHI-PROJECT-11670566 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11670566 |
気管支喘息の病態における好酸球特異的活性化遺伝子の単離と機能解析 | 本研究はIL-5による好酸球活性化機構を明らかにし、アレルギー性気道炎症を好酸球特異的に不活化し制御するするために、IL-5刺激により好酸球に発現誘導される遺伝子を単離することを研究目的とした。IL-5刺激により好酸球に発現誘導される遺伝子の単離は、サブトラクション法とPCRを組み合わせたRepresentational Difference Analysis(RDA)法を用いて解析した。その結果、Bcl-XやCIS等、発現が予測されたいくつかの既知遺伝子に加えて、IL-5により好酸球に発現誘導される新規遺伝子(ESTを含む)が8個単離され、その全長cDNAの単離作業中である。そして少なくともこれらの半数以上の遺伝子は、ノザン法にてもIL-5依存的に発現誘導されることを確認した。さらにIL-5依存的発現が強い2つの遺伝子についてはプロモーター領域を単離し、現在、その発現制御機構の解析を行っている。そしてこれらの解析により、好酸球におけるIL-5依存的な遺伝子発現制御機構を明らかにできると考える。またこれらの知見を応用し、好酸球特異的な不活化によるアレルギー性気道炎症の制御を目指したい。また上記実験と平行してIL-5シグナルの下流に位置するSignal transducersand activators of transcription 5(Stat5)のアレルギー性気道炎症における役割をStat5a欠損マウス及びStat5b欠損マウスを用いて解析した。そしてStat5a欠損マウス及びStat5b欠損マウスではアレルギー性炎症における抗原誘発気道好酸球浸潤が著明に低下しており、その原因の一つとしてこれらのマウスでは、IL-5投与による好酸球造血が低下していることを見出した。したがって、Stat5a及びStat5bは、アレルギー性好酸球性炎症の惹起に必須であることを明らかにした(Blood95:1370,2000)。 | KAKENHI-PROJECT-11670566 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11670566 |
ダブル/エクセプショナル場の理論における非幾何的フラックスコンパクト化の真空構造 | 平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。研究分担者のFernandez-Melgarejo氏が順調に2つの論文を出版した。また、私と彼とが共同で行っている研究も、まだ論文にはまとまっていないものの、いくつか成果が上がっている。このため、おおむね順調に進展していると考えている。研究代表者(杉本)と研究分担者(Fernandez-Melgarejo)が大学院生のChoi氏と共同で行った研究は以下の2つである。まず、4次元のN=4超対称ヤン・ミルズ理論に次元3以下のオペレータを加える変形を加えた理論において、結合定数を含む理論のあらゆるパラメータが時空の座標に依存する状況で超対称性の一部が保たれるための条件を求め、その条件を満たす広いクラスの解を見つけた。この解はGaiotto-Wittenの超対称Janus理論を特殊解として含み、その一般化となっている。この成果は論文としてまとめられPTEP誌に掲載された。それから、超重力理論の一般的な背景においてD3ブレインを配置することで得られるD3ブレイン上の有効作用を求め、上の研究で求めた作用における理論のパラメータと超重力理論の場の間の対応を与えた。また、具体例としてこのD3ブレインに交差するDブレインに対応する超重力理論の解を背景として持つ場合をいくつか解析し、有効作用が上の研究で得た解の一部を再現することを示した。この研究は論文としてまとめられ、JHEP誌に掲載された。研究分担者はさらに他の共同研究者と次の2つの研究を行った。一つ目の研究ではタイプIIB超弦理論でヤン・バクスター変形された背景におけるT双対のモノドロミー行列を求め、Tフォルドとしての大域的な構造を明らかにし、さらにヤン・バクスター変形としては表されないようなある一般化された超重力理論の解についてもTフォルドとみなせることを示した。もう一つは、5次元超重力理論において、非可換なモノドロミーを持つ2つのスーパーチューブに対応した超対称な解を構成し、これがブラックホールの微視的状態として解釈されることを議論した。どちらも既にJHEP誌に論文が掲載されている。現在までに本研究課題に沿ったいろいろなテーマで研究を行い、今年度は4つの論文を出版するなど、着実に成果を上げることができている。これまでの研究によって超重力理論の一般の背景にブレインを配置して得られる有効理論を書き下すことができた。このとき、背景は超重力理論の運動方程式を満たすことが暗に仮定されているが、運動方程式が有効作用に含まれるパラメータにどのような制限を与えるのかは明らかになっていなかった。また背景が超対称性を保つ条件を課すとパラメータはさらに制限されるはずである。そのようなパラメータに対する制限を具体的に求め、それが対応する場の理論における解析において得られたものとどのような関係にあるのかを調べたい。また、場の理論の解析で得られる解の中には超重力理論の解と対応しないものも存在する可能性がある。その場合は一般化された超重力理論の解になっているのか、あるいはそれとも違う方程式に従うのか等のことを明らかにしたい。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-16F16741 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16F16741 |
肝炎ウイルス制圧へ向けての包括的研究 | 本邦にて急増している肝癌の9割以上が肝炎ウイルスによる肝硬変症に合併したものであり,その大半がC型肝炎ウイルス持続感染に起因するものであった.肝癌の前駆状態ともいえるC型慢性肝炎患者の数からみて,肝癌症例数は当分の間さらに増加するものと予想された.しかし一方では,同ウイルスに対して約3割の駆除率を有するインターフェロン療法が肝癌発生を抑制することを示唆するデータが得られた.また,インターフェロン有効率を向上させるための方策について種々の検討が行われた.B型・C型肝炎ウイルスの増殖と肝癌の発癌機序,およびインターフェロンの作用機序等について各研究者により別紙に示す研究業績が発表されるとともに,研究者間の情報交換と問題点の整理のために“C型肝炎ウイルス制圧への基本的戦略",“C型肝炎ウイルスの変異と病態",“インターフェロンと細胞内情報伝達機構"をテーマとして計3回の班会議が開催された.その結果肝炎ウイルス制圧の為には、基本的ウイルス増殖機構の解明に最も精力を注ぐべきであり、それなくしては肝炎ウイルスの制圧はありえないという結論に至った。その具体的方策としては、例えば他のウイルスで増殖が比較的明らかにされているポリオウイルスの研究等から多くを学ぶべきであるという結論に達した。また細胞内情報伝達機構については、抗ウイルス剤(インターフェロン)により引き起こされる多くの第二、第三のメッセンジャーについて、個々の症例で検討すべき点が合意した。これらの知識を集積することが重要であり、本研究班の如き総合戦略が最も重要であるという点で一致した。本邦にて急増している肝癌の9割以上が肝炎ウイルスによる肝硬変症に合併したものであり,その大半がC型肝炎ウイルス持続感染に起因するものであった.肝癌の前駆状態ともいえるC型慢性肝炎患者の数からみて,肝癌症例数は当分の間さらに増加するものと予想された.しかし一方では,同ウイルスに対して約3割の駆除率を有するインターフェロン療法が肝癌発生を抑制することを示唆するデータが得られた.また,インターフェロン有効率を向上させるための方策について種々の検討が行われた.B型・C型肝炎ウイルスの増殖と肝癌の発癌機序,およびインターフェロンの作用機序等について各研究者により別紙に示す研究業績が発表されるとともに,研究者間の情報交換と問題点の整理のために“C型肝炎ウイルス制圧への基本的戦略",“C型肝炎ウイルスの変異と病態",“インターフェロンと細胞内情報伝達機構"をテーマとして計3回の班会議が開催された.その結果肝炎ウイルス制圧の為には、基本的ウイルス増殖機構の解明に最も精力を注ぐべきであり、それなくしては肝炎ウイルスの制圧はありえないという結論に至った。その具体的方策としては、例えば他のウイルスで増殖が比較的明らかにされているポリオウイルスの研究等から多くを学ぶべきであるという結論に達した。また細胞内情報伝達機構については、抗ウイルス剤(インターフェロン)により引き起こされる多くの第二、第三のメッセンジャーについて、個々の症例で検討すべき点が合意した。これらの知識を集積することが重要であり、本研究班の如き総合戦略が最も重要であるという点で一致した。 | KAKENHI-PROJECT-06354010 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06354010 |
北西太平洋における中生代磁気異常形状解析 | 研究の第一段階として北西太平洋の中生代磁気異常縞模様を最新の航海データセットを用いて再検討した。シャツキ-ライズ周辺、中部太平洋海盆、オントンジャバ海台とマニヒキ海台の間の海域で、不明瞭であった磁気異常縞模様の分布を明らかにした。磁気異常形状解析とは磁気異常縞模様と垂直に交わる磁気異常プロファイルの歪みの程度(skewness parameter)を求めることである。skeweness parameterは磁気異常縞模様の走向、磁化層の残留磁化方向、観測地点の観測時の地球磁場の方向の関数である。本研究では、観測された磁気異常データをフーリエ変換を利用したインバージョン的手法でskeweness parameterを求めた。ナウル海盆から中部太平洋海盆に存在するフェニックス磁気異常群において、年代によるskewness parameterの違いを発見した。ナウル海盆のM19(143Ma)以前の磁気異常縞模様のskeweness parameterの値は-160°であり、それより若い海域では-130°である。この-130°の値はナウル海盆の東にある中央太平洋海盆の値と同じである。年代による磁気異常縞模様の走向の違いはほとんど見られないため、このskeweness parameterの違いは、海底の磁化層の残留磁化方向の違いに起因する。この残留磁化方向の違いは、スーパープリュームにより白亜紀に起こった大規模火成活動のために磁化層の残留磁化方向が変化したためであると考えられる。研究の第一段階として北西太平洋の中生代磁気異常縞模様を最新の航海データセットを用いて再検討した。シャツキ-ライズ周辺、中部太平洋海盆、オントンジャバ海台とマニヒキ海台の間の海域で、不明瞭であった磁気異常縞模様の分布を明らかにした。磁気異常形状解析とは磁気異常縞模様と垂直に交わる磁気異常プロファイルの歪みの程度(skewness parameter)を求めることである。skeweness parameterは磁気異常縞模様の走向、磁化層の残留磁化方向、観測地点の観測時の地球磁場の方向の関数である。本研究では、観測された磁気異常データをフーリエ変換を利用したインバージョン的手法でskeweness parameterを求めた。ナウル海盆から中部太平洋海盆に存在するフェニックス磁気異常群において、年代によるskewness parameterの違いを発見した。ナウル海盆のM19(143Ma)以前の磁気異常縞模様のskeweness parameterの値は-160°であり、それより若い海域では-130°である。この-130°の値はナウル海盆の東にある中央太平洋海盆の値と同じである。年代による磁気異常縞模様の走向の違いはほとんど見られないため、このskeweness parameterの違いは、海底の磁化層の残留磁化方向の違いに起因する。この残留磁化方向の違いは、スーパープリュームにより白亜紀に起こった大規模火成活動のために磁化層の残留磁化方向が変化したためであると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-08740355 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08740355 |
昆虫単一神経細胞における入力部位マッピングと細胞内マルチサイトレコーディング | 昆虫単一細胞内の局所的演算機能を明らかにするために、コオロギ気流応答性巨大介在ニューロン(giant interneuron : GI)の樹状突起部での細胞内電位記録と高速Caイメージングの同時記録を行い、活動電位の波形とCa応答パターンの関係を調べた。GIの上向性軸索への逆行性刺激によるbackpropagating spikeと、GIに興奮性入力を持つ1次感覚ニューロンへのシナプス刺激によるsynaptic spikeは、ともに一過性の細胞内Ca濃度上昇を引き起こすが、樹状突起末端での濃度上昇はsynaptic spikeによるものの方が大きかった。このときGIの活動電位波形は記録箇所によって異なり、特にCa濃度上昇に差が見られた樹状突起部から誘導されたsynaptic spikeはbackpropagating spikeよりも振幅・幅ともに大きかった。さらに、左右の1次感覚ニューロン群を別々にシナプス刺激したとき、記録箇所と同側のシナプス刺激は活動電位の振幅を増大させ、その部位でのCa上昇は増強された。以上の結果は、樹状突起末端部での活動電位波形が変化することによって、活性化される電位依存性Caチャネルの数量が影響を受けることを示唆している。さらに活動電位の伝播動態を調べるため、GI内の異なる2カ所から活動電位の誘導(マルチサイト・レコーディング)を行ったところ、dendritic spikeとaxonal spikeの遅れが刺激方向により変化すること、また最終腹部神経節の両側に樹状突起をのばすGIでは、刺激側に近い樹状突起分枝で先行して活動電位が発生することがわかった。以上の結果から、GIにおける活動電位発生箇所はシナプス入力部位に伴って移動し、それに伴って樹状突起末端部での活動電位波形が変化することによってCa応答の入力依存性が生じると考えられる。昆虫単一細胞内の局所的演算機能を明らかにするために、コオロギ気流感覚処理系において、様々な方向からの気流刺激に特異的に応答する1次感覚ニューロンが各巨大介在ニューロン(giant interneuron)の樹状突起のどの部位にシナプス入力しているかを調べた。まずコオロギの最終腹部神経節を露出させ、20μMのFM1-43存在下で尾葉神経束に電気刺激を行ったあと、神経節を摘出して共焦点レーザ顕微鏡で色素取り込みを観察した。その結果、尾葉から伸びる第8神経束から求心性神経線維とその神経終末と思われる構造がFM1-43によって強く染色された。特に正中線を挟んで左右対称に3対の部位に強い蛍光が見られ、それぞれ神経節表面から100140μmの深さに直径約100μmの領域で広がっていた。しかしながら気流刺激によるFM1-43の特異的な取り込みは観察できなかった。そこでgiant interneuronにOregon Green488BAPTA-1を注入し、6方向からの気流刺激に伴う細胞内Ca濃度変化をIntensified-CCDカメラで光学的に計測した。その結果から各樹状突起における方向感受性マップを作製したところ、どの樹状突起においても基本的には膜電位応答のマップに従うが、部位毎に他の部位よりも感受性の強い刺激方向が存在した。すなわち、特定の方向からの気流刺激を受容する1次感覚ニューロン群は、その刺激方向に他の部位よりも高い感受性を示した樹状突起上に入力していると考えられる。したがってPostsynap-tic sitesにおけるカルシウムイメージングによりシナプス入力部位を推測できることが示唆された。昆虫単一細胞内の局所的演算機能を明らかにするために、コオロギ気流応答性巨大介在ニューロン(giant interneuron : GI)の樹状突起部での細胞内電位記録と高速Caイメージングの同時記録を行い、活動電位の波形とCa応答パターンの関係を調べた。GIの上向性軸索への逆行性刺激によるbackpropagating spikeと、GIに興奮性入力を持つ1次感覚ニューロンへのシナプス刺激によるsynaptic spikeは、ともに一過性の細胞内Ca濃度上昇を引き起こすが、樹状突起末端での濃度上昇はsynaptic spikeによるものの方が大きかった。このときGIの活動電位波形は記録箇所によって異なり、特にCa濃度上昇に差が見られた樹状突起部から誘導されたsynaptic spikeはbackpropagating spikeよりも振幅・幅ともに大きかった。さらに、左右の1次感覚ニューロン群を別々にシナプス刺激したとき、記録箇所と同側のシナプス刺激は活動電位の振幅を増大させ、その部位でのCa上昇は増強された。以上の結果は、樹状突起末端部での活動電位波形が変化することによって、活性化される電位依存性Caチャネルの数量が影響を受けることを示唆している。さらに活動電位の伝播動態を調べるため、GI内の異なる2カ所から活動電位の誘導(マルチサイト・レコーディング)を行ったところ、dendritic spikeとaxonal spikeの遅れが刺激方向により変化すること、また最終腹部神経節の両側に樹状突起をのばすGIでは、刺激側に近い樹状突起分枝で先行して活動電位が発生することがわかった。以上の結果から、GIにおける活動電位発生箇所はシナプス入力部位に伴って移動し、それに伴って樹状突起末端部での活動電位波形が変化することによってCa応答の入力依存性が生じると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-12048220 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12048220 |
色嗜好の多様性と流動性に関する実験心理学的研究 | 文脈情報が色嗜好に与える影響を調べるため、米国で使われている色という意味での「米国色」と、日本で古来使われている色という意味での「伝統色」のそれぞれを文脈情報として用い、何も文脈情報を与えないときの色嗜好をベースラインとして、色嗜好の変化を調べた。米国色として色を見た時には32色中9色の、日本伝統色として色を見た時には32色中7色の嗜好度が有意に変化した。このことから「米国色」「日本伝統色」という文脈情報が、色の嗜好度を変化させることが確認できた。また、米国色/伝統色らしいと感じられる色ほど米国色/伝統色として見た時に色嗜好が上昇し、逆に米国色/伝統色らしくないと感じられる色ほど色嗜好が低下するという対応関係が見られた。文脈情報を与えた時の色嗜好の変化は、色嗜好が色から連想されるさまざまな事物の好ましさと連想強度の積和平均に基づくという生態学的誘発性理論の枠組みの中で解釈可能なものであった。さらに、ドイツ人を対象として、色から日本文化の事物を想像させた時に個人の色嗜好がどのように変化するかを調べた。ドイツ人参加者はいずれも日本のことは短期の旅行や各メディアを通じてのみ知っている程度だったが、そのような日本の知識でも色と結びつくことで色嗜好を変化させた。色嗜好の変化は、色から日本の伝統的な風景などを想像し、日本の伝統物に典型的な色の嗜好を上げたり、元々持っていた色と事物の連想が抑制され、嫌いな事物との連想が抑制されたことで嗜好度が上昇したと推測される。いずれの理由も、異文化の想像が個人の色と事物の連想を変化させ、色嗜好を動的に変化させるという生態学的誘発性理論の予測を支持するものであった。監修を担当している学術書のシリーズにおいて、「美感ー感と知の統合ー」(2018,勁草書房)を上梓し、その中で色嗜好研究を中心に紹介する章の執筆を担当した。色嗜好への文化の影響について、国内での実験研究にとどまらず、ドイツのチュービンゲン大学との共同研究が実現したことで新たな展開があった。さらに、関連研究としてチュービンゲン大学が保有する広色域が呈示可能な量子ドットディスプレイを用いて、自然画像の彩度を一般的な色域(Rec 709)から広色域(Rec 2020)のみで呈示可能なレベルまで変化させ、最も好ましいと感じられる画像の彩度、および好悪や強弱など主観的印象の変化との関係を調べ、主観的印象は画像彩度が上がっても下がらないことを確認した。広色域ディスプレイでは画像の彩度はその印象にポジティブな効果を与えることが多いことが分かった。いずれの研究も、国内外での研究発表を行い、国際的な評価を受けたが、学術論文化が課題である。刊行した「美感ー感と知の統合ー」の中で色嗜好研究を中心に紹介する章の執筆を担当したことは、これまでの研究の位置づけ、今後の研究展開にとっても有益であった。配色嗜好について、物体と抽象的概念の嗜好度評定課題、すなわち配色からの連想課題で得られた物体や抽象的概念がどれだけ好まれるかなどを調べることで、日本人の配色嗜好を定量的に明らかにする。さらに、単色嗜好や配色嗜好に関する統合的な説明モデルを提唱する。その要素として,物体や抽象的概念の寄与度が、日本文化における美感の基礎指標を形成していることを明らかにする。計画最終年度となるので、すでに国内外の学会などで研究発表している、日本の伝統色としての色嗜好など文脈の影響や、日本と比較し、ドイツにおける色嗜好と日本文化の影響、さらに広色域ディスプレイにおける色嗜好、特に彩度の影響について、学術論文化を進める。色嗜好度評定課題において、色嗜好を評定する直前に、その色から連想される事物を想起させ、連想されることが色嗜好に影響するかどうかを調べ、その色から連想した事物の嗜好度を反映する形で動的に変化することを確認した。具体的には、実験参加者にユニフォームの色の違いが明確なサッカーの試合(青ユニフォームのアイスランドと赤ユニフォームのオーストリア戦)を鑑賞させ、その前後での色嗜好の変化を確認した。実験操作において、実験者が実験参加者に対してどちらかのチームを応援するように指示することはしなかった。この2カ国の対戦以外にも、青赤ユニフォームの対戦となる日韓戦の動画を用意し、片側のチームへの没入度や勝敗の行方を統制し、色嗜好への短期的な影響も調べた。この実験により、条件毎に色嗜好が動的に変化すること、すなわり赤色のユニフォームのチームを応援していた後には赤色の嗜好度が上昇するが確認され、特定の環境に実験参加者を置くような条件付けにより、色嗜好が無意識のうちに短期的に変化することも明らかにした。すなわち、色嗜好は文脈に依存して、まさにその色の評定をしようとしているときにその色に付随して思い浮かべる物体や抽象的概念に応じて計算されると考えられる。個々の実験参加者のスポーツ嗜好度や国別の親密度などの影響、さらに動画にどれくらい没入していたかという没入度の影響も測定し、それらが色嗜好に影響を与えるかどうかをあわせて確認した。得られた結果の一部を国際会議で発表し、評価を得た。色嗜好が文化によって確定するものではなく、判断時点でその色と強く結びついた事物の嗜好度を動的に反映することが明らかになったので、文化と美感に関して、日本人の色嗜好が物体嗜好度と抽象概念の嗜好度の組み合わせで説明できるかどうかを引き続き調べることにより、嗜好や美感に関する文化差を実験心理学的に解明する。 | KAKENHI-PROJECT-17K18695 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K18695 |
色嗜好の多様性と流動性に関する実験心理学的研究 | 文脈情報が色嗜好に与える影響を調べるため、米国で使われている色という意味での「米国色」と、日本で古来使われている色という意味での「伝統色」のそれぞれを文脈情報として用い、何も文脈情報を与えないときの色嗜好をベースラインとして、色嗜好の変化を調べた。米国色として色を見た時には32色中9色の、日本伝統色として色を見た時には32色中7色の嗜好度が有意に変化した。このことから「米国色」「日本伝統色」という文脈情報が、色の嗜好度を変化させることが確認できた。また、米国色/伝統色らしいと感じられる色ほど米国色/伝統色として見た時に色嗜好が上昇し、逆に米国色/伝統色らしくないと感じられる色ほど色嗜好が低下するという対応関係が見られた。文脈情報を与えた時の色嗜好の変化は、色嗜好が色から連想されるさまざまな事物の好ましさと連想強度の積和平均に基づくという生態学的誘発性理論の枠組みの中で解釈可能なものであった。さらに、ドイツ人を対象として、色から日本文化の事物を想像させた時に個人の色嗜好がどのように変化するかを調べた。ドイツ人参加者はいずれも日本のことは短期の旅行や各メディアを通じてのみ知っている程度だったが、そのような日本の知識でも色と結びつくことで色嗜好を変化させた。色嗜好の変化は、色から日本の伝統的な風景などを想像し、日本の伝統物に典型的な色の嗜好を上げたり、元々持っていた色と事物の連想が抑制され、嫌いな事物との連想が抑制されたことで嗜好度が上昇したと推測される。いずれの理由も、異文化の想像が個人の色と事物の連想を変化させ、色嗜好を動的に変化させるという生態学的誘発性理論の予測を支持するものであった。監修を担当している学術書のシリーズにおいて、「美感ー感と知の統合ー」(2018,勁草書房)を上梓し、その中で色嗜好研究を中心に紹介する章の執筆を担当した。色嗜好への文化の影響について、国内での実験研究にとどまらず、ドイツのチュービンゲン大学との共同研究が実現したことで新たな展開があった。さらに、関連研究としてチュービンゲン大学が保有する広色域が呈示可能な量子ドットディスプレイを用いて、自然画像の彩度を一般的な色域(Rec 709)から広色域(Rec 2020)のみで呈示可能なレベルまで変化させ、最も好ましいと感じられる画像の彩度、および好悪や強弱など主観的印象の変化との関係を調べ、主観的印象は画像彩度が上がっても下がらないことを確認した。広色域ディスプレイでは画像の彩度はその印象にポジティブな効果を与えることが多いことが分かった。いずれの研究も、国内外での研究発表を行い、国際的な評価を受けたが、学術論文化が課題である。刊行した「美感ー感と知の統合ー」の中で色嗜好研究を中心に紹介する章の執筆を担当したことは、これまでの研究の位置づけ、今後の研究展開にとっても有益であった。日本人の色嗜好には、色から連想される物体の嗜好に加えて、色から連想される抽象的概念が影響することが予想される。たとえば、白は「純粋」というイメージと結びつき、「純粋」というイメージは好まれるので、白が好まれるという三段論法的な説明である。一方、『日本の伝統色その色名と色調』(長崎, 2006)などに基づき予備的に分析した結果、日本の伝統色は明度や彩度の低い色が多いことが分かった。Cognitive Science | KAKENHI-PROJECT-17K18695 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K18695 |
扁平足に起因する膝蓋大腿関節症の発生メカニズム解明に向けた研究 | 本研究は正常足と扁平足で膝蓋大腿関節症に関与する協調性パターンを膝蓋大腿関節ストレスを検証することを目的とした.はじめに,正常足の後足部と下腿の協調性パターンに着目し,後足部と下腿にはanti-phaseがあることを明らかにした.次に,ランニング中の足部の動きの性差を調べ,後足部の動きには性差があることを明らかにした.この知見により,正常足と扁平足で男女の人数はマッチさせる必要があることが示唆された.現在,この知見をもとに正常足と扁平足をリクルートし,協調性パターンと膝蓋大腿関節ストレスを比較している.本研究課題は,扁平足に起因する膝蓋大腿関節症の発生メカニズムを解明するため,ランニング中における下腿と後足部間の協調性パターンや膝関節モーメント,膝蓋大腿関節ストレスを検証するものである.初年度において,第一に正常足と扁平足を区別するための足部評価方法は多くあったが,先行研究によって統一できていなく,また動的な足部アライメントを評価できないことが問題として挙げられていた.そこで第1実験として,arch height indexと呼ばれる足部評価方法に着目し,ランニング中の足部回内アライメントを推測できるかを検証した.その結果,この足部評価方法は高い精度でランニング中の足部回内アライメントを推測でき,有用な足部評価方法であることを明らかにした.第1実験でarch height indexが有用な足部評価方法であることが明らかになったため,この評価方法を用いて足部評価を行い,第2実験ではランニングにおける正常足の後足部と下腿間の協調性パターンを検証した.その結果,正常足において従来報告されてきた下腿内旋と後足部回内だけでなく,下腿内旋と後足部回外,下腿外旋と後足部回内の運動連鎖も生じていることが明らかになった.さらに,下腿は後足部と比較してより大きく内旋と外旋を大きく動いていることが明らかになり,2つのセグメント間では動きの優位性があることも明らかになった.現在は扁平足のデータを収集しているため,明らかになった正常足の下腿と後足部間の協調性パターンとの知見と比較していき,さらに運動力学的な観点からも研究を進めていく予定である.有用な足部評価方法を確立し,正常足の検証も終了しているため.本研究課題は,扁平足に起因する膝蓋大腿関節症の発生メカニズムを解明するため,ランニング中における下腿と後足部間の協調性パターンや膝関節モーメント,膝蓋大腿関節ストレスを検証するものであった.初年度においては,正常足における後足部と下腿間の協調性パターンを検証し,従来報告されていた運動連鎖パターンに加えて下腿内旋と後足部回外,下腿外旋と後足部回内のパターンもありことを明らかにした.さらに,ランニング中の足部の動きには性差があることも報告した.この成果を基に,扁平足における下腿と後足部間の協調性パターンも検証しようとしたが,扁平足を扁平足と判定する日本人に特異的な足部評価の基準値が報告されていなかった.そこで,当該年度は日本人男女の220足を対象に,日本人のarch height indexの基準値を検証した.その結果,正常足と扁平足を分類する際,人種に特異的な,日本人のarch height indexの基準値を用いる必要性があることが明らかになった.現在この基準値を用いて正常足と扁平足を分類し,ランニング中における下腿と後足部間の協調性パターンや膝関節モーメント,膝蓋大腿関節ストレスを検証している.本研究は正常足と扁平足で膝蓋大腿関節症に関与する協調性パターンを膝蓋大腿関節ストレスを検証することを目的とした.はじめに,正常足の後足部と下腿の協調性パターンに着目し,後足部と下腿にはanti-phaseがあることを明らかにした.次に,ランニング中の足部の動きの性差を調べ,後足部の動きには性差があることを明らかにした.この知見により,正常足と扁平足で男女の人数はマッチさせる必要があることが示唆された.現在,この知見をもとに正常足と扁平足をリクルートし,協調性パターンと膝蓋大腿関節ストレスを比較している.現在正常足までの解析が終了しているため,扁平足の解析を行い,下腿と後足部間の協調性パターンと関節モーメント,膝蓋大腿関節ストレスを明らかにしていく.29年度が最終年度であるため、記入しない。スポーツ障害29年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-16H07304 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H07304 |
過疎地小規模校における未来型学習スタイルのフロンティア研究 | 小規模校をハンディキャップのある教育環境とするのではなく、むしろ小規模校・少人数学級ならではの質の高い教育方法モデルを開発するという方向性での実践的研究に取り組み、「ICT活用実践コース事例集」を大町市教育委員会と連携して作成した。また、今後の過疎地・小規模校に求められる学習指導および教育観について、長野県上水内郡信濃町立信濃小中学校が義務教育学校になるまでの歩みを事例に、一冊の本「山と湖の小さな町の大きな挑戦」にまとめた。さらに、ニュージーランドの自律的な学習を支援している教育方法を映像資料として撮り集め、「主体的・対話的な学び」という観点から編集した教員研修用のDVD教材を開発した。僻地小規模校の教職員研修ないし授業研究会の指導者として、下水内郡栄村、上水内郡信濃町、木曽郡大桑村、小県郡長和町、大町市美麻および八坂地区などの小中学校に複数回出向き、深刻な少子・人口減少地域における授業づくりについて助言・指導を行い、未来型(次世代型)学習に取り組む学校現場の環境づくりを支援した。それらの概要は各校の紀要等に掲載されている。また、ICT関連企業との勉強会や打ち合わせを重ね、従来の学習スタイルに囚われない柔軟な発想で小規模校でのICT活用授業について検討した。これらは学習モデルとして初年度に作成する予定であったが、質の高いソフトやアプリが続々と新規に開発されていることから、さらに時間をかけてICTを活用した学習モデルを開発することとした。一方、こうした学習モデルを教員養成段階でも取り入れられるように海外の進んだ実践の情報収集にも取り組んだ。8月には別枠の研究助成経費も活用して、学生を引率してニュージーランドへ渡航し、北島オークランド市内でのユニークな学習スタイルの実践校の参観と、南島クライストチャーチ市内での短期教育実習を試行実践した。これらのニュージーランドでの体験実習の成果を「ニュージーランド学校臨床実習」としてプログラム化(仮案)した。クライストチャーチ市内の学校で実践されているアクティブラーニングに関して、その授業方法論と教師の役割を考察し、学内の学生を対象にオープンゼミを開いた。こうした取り組みは、長野県とも連携した事業に繋がり、平成27年5月1920日の「ニュージーランド教育フェアin長野」というイベントに発展し、ニュージーランドからの教育関係者を招いた協同シンポジウムを実現させた。「次世代型学習を考える会」という名称で本プロジェクトの研究分担者と研究協力者を含む研究者および実践者のサークルを起ち上げ,計3回の研究会を主催した。そこで話題になった内容等をまとめて,来年度には著書を刊行すべく執筆を始めることになった。本年度も僻地小規模校の教職員研修ないし授業研究会の指導者として、下水内郡栄村立栄小学校および中学校、上水内郡信濃町立信濃小中学校、木曽郡大桑村立大桑小学校・中学校、小県郡長和町立和田小学校、大町市立美麻小中学校などの小中学校に出向き、深刻な少子・人口減少地域における授業づくりについて助言・指導を行い、未来型(次世代型)学習に取り組む学校現場の環境づくりを支援した。また、大町市のICT教育推進委員長として、2ヶ月に1度の頻度で推進会議やタブレット型PCの研究授業等に指導者として出向き,タブレットを活用した授業のあり方を公立学校の先生たちと共に議論する機会を設けた。また、5月19日20日には民間企業と連携してニュージーランドの教育関係者を招き、「ニュージーランドフェアIN長野」を開催し、シンポジウムや交流会を実施した。その中で、次世代型の教育を構想する上でのヒントを得つつ、日本からの教育体験ツアーの企画を具体化する協議を重ねた。そして、8月にはニュージーランド・クライストチャーチ市内での「ニュージーランド学校臨床実習」を実施し、9月にはデンマーク・ゲントフテ市の公立学校等をフィールドとする教育視察を実施した。そこでは学習者の主体的な学びについてのワークショップ研修にも参加し、次世代型学習のイメージトレーニングを受けた。これら海外での研修報告は、学内で参加学生によるプレゼンテーションの機会を設け、新しい学びのスタイルを研究発表した。計画段階では次世代型学習のモデル授業を最新のICTを活用して試行実践していただく予定であったが,業者から提案された水準のICT活用教育のハードウェアおよびソフトウェアと,公立小中学校から募った協力校の先生方のICT環境および活用能力の水準にはまだ大きなギャップがあるため,モデル授業を強引にすすめるよりも,授業観を柔軟にとらえられるような校内研修やICT機器の活用研修を各学校の実情に合わせて優先することにした。本研究プロジェクトのメンバーにより「次世代型学習を考える会」を結成し、3年間に計7回の学習会を実施して、過疎地小規模校をハンディキャップのある教育環境とするのではなく、むしろ小規模校・少人数学級ならではの質の高い教育方法モデルを開発するという方向性での実践的研究に取り組んだ。そのために必要な条件は何かを洗い出し、ICTを活用しつつ,学習者が自律的かつ協同的に学ぶ学習スタイルを導入する実践を小中学校において実践した。本研究では,未来型学習スタイルと考える授業方法をモデル化し(1年目),小中学校の現職教員の研究協力者らによる実践を通して授業方法を修正・調整し(2年目),その授業方法を過疎地の学校に普及していく上で参考にできる「ICT活用実践コース事例集」を大町市教育委員会と連携して作成した。これにより一般の教員が最先端のICTを活用した協同的な学びと自律的な学習を重視した教育方法を実践していく際のガイドラインが設定できた。また、今後の過疎地・小規模校に求められる学習指導および教育観について、長野県上水内郡信濃町立信濃小中学校が義務教育学校になるまでの歩みを事例に、一冊の本「山と湖の小さな町の大きな挑戦」にまとめることができた。 | KAKENHI-PROJECT-26590188 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26590188 |
過疎地小規模校における未来型学習スタイルのフロンティア研究 | さらに、ニュージーランドをはじめとする海外の自律的な学習を支援している教育方法を映像資料として撮り集め、それらを「主体的・対話的な学び」という観点から編集した教員研修用のDVD教材を開発した。この映像教材は6月より順次長野県の各研修講座にて活用されることになっている。小規模校をハンディキャップのある教育環境とするのではなく、むしろ小規模校・少人数学級ならではの質の高い教育方法モデルを開発するという方向性での実践的研究に取り組み、「ICT活用実践コース事例集」を大町市教育委員会と連携して作成した。また、今後の過疎地・小規模校に求められる学習指導および教育観について、長野県上水内郡信濃町立信濃小中学校が義務教育学校になるまでの歩みを事例に、一冊の本「山と湖の小さな町の大きな挑戦」にまとめた。さらに、ニュージーランドの自律的な学習を支援している教育方法を映像資料として撮り集め、「主体的・対話的な学び」という観点から編集した教員研修用のDVD教材を開発した。当初計画では、1年目にクラウドを利用した双方向型の未来型学習モデルを具体化し、2年目は長野県内の僻地校に勤務している小中学校の教員(研究協力者)に,ICTを活用した学習モデルを実践してもらい、3年目に「指導の手引き」を製作するとしていた。しかし、僻地小規模校での人事異動が予想以上に多く、研究組織体制の再構成に時間を要したことや、実践研究に活用するICT関連ソフトの開発が急速に進化したことから、未来型学習モデルの作成に更に時間をかけることとした。ただし、当初計画に対するこの遅れは、研究成果を高めるためにはむしろ妥当な計画変更であり、2年目となる平成27年度と平成28年度の取り組みにより、目的を達成することは可能である。3年目となる平成28年度は,斬新な未来モデルの学習指導モデルを考案するのではなく,ICTを苦手とする学校・教員をターゲットにして,いかに伝統的な教授スタイルと指導方法から脱却して,新しいICT機器に馴染んでいただけるかという課題をさらに追究するとともに,授業者と学習者との関係性を刷新する次世代型学習の授業モデルを具体的に提案していく実践研究に取り組む。教育方法学2年目となった平成27年度は、4月5月に実践研究を行う予定の学校との連携協議を行い、6月には「次世代型学習を考える会」を発足することになった。8月にはニュージーランドへの10日間の研修に出かけ、9月にはデンマークへ10日間の研修を計画している。これら海外の学校現場でのアクティブラーニングを参考に、未来型学習モデルを複数パターン構築し、11月1月の間に試行実践を行う。長野県内の僻地校に勤務している小中学校の教員(研究協力者)に,ICTを活用した学習モデルを実践してもらい、3年目には「指導の手引き」を製作するという計画は予定通り遂行する。課題としては、学校現場で試行実践を依頼するにあたり、当初計画よりも協力校が増えたために、タブレットPCの数が足りないことであるが、某企業との提携により、リース契約ないしモニター契約をして端末を調達することを検討している。 | KAKENHI-PROJECT-26590188 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26590188 |
構文の下位類に関する記述的及び理論的研究 | 本研究は、各研究分担者の分担構文に関して、現代英語における各構文を詳細かつ網羅的に記述し、それら下位構文に関する通時的及び類型論的研究を行うことを目的とし、コンピュータによる検索に適したコーパスを作成しつつ研究を続けてきた。長原は、関係節についての従来の制限節、非制限節という二分法ではなく、補部の関係節を加えた三分法を提案し、特に、第三の補部の関係節について研究を進めている。児馬は、本概要に記載の著書に加えて、本年度はthat-trace効果に関する英語の歴史的変化と生成文法理論におけるパラメターとの理論的関係についての考察を公刊した。八木は、英語のevenや日本語の「さえ・すら」のような焦点化辞の作用域等の特徴についての説明理論を提案し、既刊の一篇を含む二篇の論文を研究成果報告書に掲載する。河野は、本研究成果報告書掲載の論文に加えて、命題と述語の機能に関する論文と、焦点化とstrippingの関係についての論文を公刊した。バウチャーは、sports commentariesについての研究の一部を1998年に公刊しているが、研究成果報告書には音声面の研究成果を掲載する。本研究は、各研究分担者の分担構文に関して、現代英語における各構文を詳細かつ網羅的に記述し、それら下位構文に関する通時的及び類型論的研究を行うことを目的とし、コンピュータによる検索に適したコーパスを作成しつつ研究を続けてきた。長原は、関係節についての従来の制限節、非制限節という二分法ではなく、補部の関係節を加えた三分法を提案し、特に、第三の補部の関係節について研究を進めている。児馬は、本概要に記載の著書に加えて、本年度はthat-trace効果に関する英語の歴史的変化と生成文法理論におけるパラメターとの理論的関係についての考察を公刊した。八木は、英語のevenや日本語の「さえ・すら」のような焦点化辞の作用域等の特徴についての説明理論を提案し、既刊の一篇を含む二篇の論文を研究成果報告書に掲載する。河野は、本研究成果報告書掲載の論文に加えて、命題と述語の機能に関する論文と、焦点化とstrippingの関係についての論文を公刊した。バウチャーは、sports commentariesについての研究の一部を1998年に公刊しているが、研究成果報告書には音声面の研究成果を掲載する。各分担構文の記述的研究を最大限詳細かつ網羅的にするという方針の下、本年度はまず、言語事実の調査のためのコンピュータ・コーパスの拡充・整備に力を注いだ。Gutenberg Archivesのデータベースを新たに入手し、Helsinki Corpusについては、検索に適した1行1文形式への転換を完了した。また、日本語コーパスについても1985年から1991年までの朝日新聞社説および天声人語を1行1文形式へ転換した。この基礎に基づき、各分担者とも、現在主として現代英語についての言語資料の収集、整理、分析を進めている段階であるが、本研究は下位構文に関する通時的および類型論的研究をも目標としており、この方面でも部分的に進展がある。本年度の進展を以下に略述する。長原は、way等に付く補部的関係節の初期近代英語以降の発達について明らかにしつつある。八木は、焦点化辞evenとの比較で、日本語の「さえ/すら」の作用域等の特徴について調査を進めている。鈴木は、unaccusativityが単に語彙的性質としてではなく、他の文構成要素(tense/aspect等)との合成的関係においても捉えられるべきであることを明らかにしつつある。Bowcherは、sports commentariesに関する資料収集をほぼ終え、音声的分析に着手した。児馬、河野はそれぞの担当構文の資料の収集、整理を行なっている段階である。予定より若干遅れ気味であるが、全体としては、当初計画に従い、ほぼ順調に進捗している。資料の収集、分析に当たっては、コンピュータ・コーパスがまだ一部検索に適した形になっていない、日本語資料の種類と規模がまだ不十分である、等の問題があり、これらについては来年度以降も引き続き対処する方針である。本研究は、各研究分担者の分担構文に関して、現代英語における各構文の下位構文を詳細かつ網羅的に記述し、それら下位構文に関する通時的及び類型論的研究を行うことを目標としている。昨年度は、購入した機材によりGutenberg E-textと朝日新聞社説・天声人語をsourceとする1行1文形式のデータベースを作成するなど、資料作成に重点を置きつつ研究に着手した。本年度はこの資料をさらに活用し、本年度購入の書籍を参考文献に加え、主として現代英語に関する分析と通時的研究を進めた。その成果の一部はすでに論文の形でまとめられ、本年中の刊行が予定されている。具体的には、八木、児馬、河野、鈴木、Bowcherの研究成果の一部が、本報告書裏面に記載の通り現在印刷中である。なお、八木論文は昨年度研究実績報告書に記載の型論的考察を含むものである。それ以外の進展として、長原は、長原(1990)で存在を指摘した「補部の関係節」について、昨年度の初期近代英語以降の発展についての調査に加えて、本年度は、それが時制に関する振る舞いの点でも他の下位構文と異なることを現代英語について検証する作業を進めている。補部の関係節という概念は、現在のところ、広く理解され受け入れられるには至っていない概念であるから、検証ができればその意義は大きいと思われる。通時的研究と類型論的研究は、予定より若干遅れ気味であるが、全体としては、当初計画に従い、ほぼ順調に進捗している。 | KAKENHI-PROJECT-07451097 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07451097 |
構文の下位類に関する記述的及び理論的研究 | 類型論的研究に必要となる日本語資料の種類と量については現在も不十分な状態が続いており、来年度も引き続き対処する予定である。本研究は、各研究分担者の分担構文に関して、現在英語における各論文を詳細かつ網羅的に記述し、それら下位構文に関する通時的及び類型論的研究を行うことを目的とし、コンピュータによる検索に適したコーパスを作成しつつ研究を続けてきたが、以下では、平成9年度の成果について報告する。長原は、関係節についての従来の制限節、比制限節という二分法ではなく、補部の関係節を加えた三分法を提案し、特に、第三の補部の関係節について研究を進めている。児馬は、本年度はthat-tarce効果に関する英語の歴史的変化と生成文法理論におけるパラメターとの理論的関係についての考察を公刊した。八木は、英語のevenや日本語の「さえ・すら」のような焦点化辞の作用域等の特徴についての説明理論を提案し、既刊の一篇を含む二編の論文を研究成果報告に掲載する。河野は、研究成果報告書掲載の論文に加えて、命題と述語の機能に関する論文と、焦点化とstrippingの関係についての論文を公刊した。バウチャーは、sports commentariesについての研究の一部を1998年に公刊しているが、研究成果報告書には音声面の研究成果を掲載する。 | KAKENHI-PROJECT-07451097 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07451097 |
主観的情報処理原理に基づくユーザ支援型地図画像情報システム | 1.主観的情報加工によるデフォルメ地図の生成現在地点から目標地点までの経路を知りたいユーザに,両地点に焦点を当てたデフォルメ地図を呈示することは,とりわけ有用な地図理解支援方法と想定される.本研究では,オリジナル画像あるいは道路ネットワークデータからユーザの主観的選好を反映させつつ,地図画像を対話的に加工することによって,デフォルメ地図画像(略地図)を作成する方法を考察した.ここでは,任意の2地点間の経路を示す略地図を生成することをテーマとし,ユーザの要求条件に柔軟に追随できる経路探索,及びユーザがパラメータにより指定したデフォルメ度合に対応した略地図生成が可能であることが提案手法の特徴である.2.メディア統合・変換に基づく地図理解支援言語メディアと図形メディアにおける情報伝達特性の相補性に着目して,略地図に対応する案内文を,経路の移動に伴い同期的に生成する手法を与えた.提案手法は図形メディアから言語メディアへの変換の一手法と位置付けられる.一方,その逆変換として,ユーザから入力される地理説明文を言語解析し,キーワード列を抽出した後,道路ネットワークと整合する部分を図形情報に変換することにより,経路パターンとして地図画像に重畳描画する手法の基礎検討も行った.3.プロトタイプシステムの構築本研究での成果を有機的に結合させたユーザ支援型地図画像情報システムのプロトタイプを構成し,情報検索,道路ネットワーク生成,経路プラニング,略図生成,案内文生成などのモジュールを整備した.システム化を通して,画像データと記号データの一元的な処理技法が極めて重要であるという知見を得た.今後は,システム化技法に関する問題点を整理すると共に,本システムを特徴付ける主観的情報処理原理の体系化を図って行く.1.主観的情報加工によるデフォルメ地図の生成現在地点から目標地点までの経路を知りたいユーザに,両地点に焦点を当てたデフォルメ地図を呈示することは,とりわけ有用な地図理解支援方法と想定される.本研究では,オリジナル画像あるいは道路ネットワークデータからユーザの主観的選好を反映させつつ,地図画像を対話的に加工することによって,デフォルメ地図画像(略地図)を作成する方法を考察した.ここでは,任意の2地点間の経路を示す略地図を生成することをテーマとし,ユーザの要求条件に柔軟に追随できる経路探索,及びユーザがパラメータにより指定したデフォルメ度合に対応した略地図生成が可能であることが提案手法の特徴である.2.メディア統合・変換に基づく地図理解支援言語メディアと図形メディアにおける情報伝達特性の相補性に着目して,略地図に対応する案内文を,経路の移動に伴い同期的に生成する手法を与えた.提案手法は図形メディアから言語メディアへの変換の一手法と位置付けられる.一方,その逆変換として,ユーザから入力される地理説明文を言語解析し,キーワード列を抽出した後,道路ネットワークと整合する部分を図形情報に変換することにより,経路パターンとして地図画像に重畳描画する手法の基礎検討も行った.3.プロトタイプシステムの構築本研究での成果を有機的に結合させたユーザ支援型地図画像情報システムのプロトタイプを構成し,情報検索,道路ネットワーク生成,経路プラニング,略図生成,案内文生成などのモジュールを整備した.システム化を通して,画像データと記号データの一元的な処理技法が極めて重要であるという知見を得た.今後は,システム化技法に関する問題点を整理すると共に,本システムを特徴付ける主観的情報処理原理の体系化を図って行く.本研究の目的は,画像処理/認識/生成,データベース,知識処理,マルチメディア処理などの諸技術を統合し,多様性のある情報源から,ユーザの要求に応じて,真に必要な情報のみを獲得・加工・生成する,新しいタイプの情報システムを構成すると共に,主観的情報処理と名付ける新しいパラダイムを明確化することにある.本年度は以下のテーマについて考察した。1.地図画像からの論理的情報の獲得と構造化手法の検討本年度は,ユーザの要求を満たす論理的情報を各種の画像処理/理解手法を駆使して地図画像から獲得する方式を明確化し,システムにモジュール化して実装した.ここでは,ベクトル表現された地図画像から,道路と交差点の幾何図形的特徴に着目して,種々の応用に対するデータ源となる道路ネットワーク(交差点,道路をそれぞれ節点,枝とし,長さ,形状,名称などの属性を付加したグラフ)の抽出,構造化手法を考案した.設備備品で購入したワークステーション(SparcStation5)で評価実験を行った結果,95%以上の抽出率を得た.2.インタラクティブ情報加工によるデフォルメ地図作成方式の検討本研究では,ユーザの地図理解を支援するために,オリジナル画像あるいは道路ネットワークデータに基づき,対話的に加工してデフォルメ地図を生成する手法を考察した.本手法では,経路探索基準及びデフォルメ度合にユーザの選好を反映させることができ,さらに地図画像に補足する形式で説明文を表示することができる.本手法を前述のワークステーションに実装し動作例を基に操作性を評価したところ,良好な結果を得た.1.主観的情報加工によるデフォルメ地図の生成現在地点から目標地点までの経路を知りたいユーザに,両地点に焦点を当てたデフォルメ地図を呈示することは,とりわけ有用な地図理解支援方法と想定される.本研究では,オリジナル画像あるいは道路ネットワークデータからユーザの主観的選好を反映させつつ,地図画像を対話的に加工することによって,デフォルメ地図画像(略地図)を作成する方法を考察した.ここでは,任意の2地点間の経路を示す略地図を生成することをテーマとし,ユーザの要求条件に柔軟に追随できる経路探索,及びユーザがパラメータにより指定したデフォルメ度合に対応した略地図生成が可能であることが提案手法の特徴である.2.メディア統合・変換に基づく地図理解支援 | KAKENHI-PROJECT-06680378 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06680378 |
主観的情報処理原理に基づくユーザ支援型地図画像情報システム | 言語メディアと図形メディアにおける情報伝達特性の相補性に着目して,略地図に対応する案内文を,経路の移動に伴い同期的に生成する手法を与えた.提案手法は図形メディアから言語メディアへの変換の一手法と位置付けられる.一方,その逆変換として,ユーザから入力される地理説明文を言語解析し,キーワード列を抽出した後,道路ネットワークと整合する部分を図形情報に変換することにより、経路パターンとして地図画像に重畳描画する手法の基礎検討も行った.3.プロトタイプシステムの構築本研究での成果を有機的に結合させたユーザ支援型地図画像情報システムのプロトタイプを構成し,情報検索,道路ネットワーク生成,経路プラニング、略図生成,案内文生成などのモジュールを整備した.システム化を通して,画像データと記号データの一元的な処理技法が極めて重要であるという知見を得た.今後は、システム化技法に関する問題点を整理すると共に,本システムを特徴付ける主観的情報処理原理の体系化を図って行く. | KAKENHI-PROJECT-06680378 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06680378 |
マイクロ流路を用いた花粉管間相互作用の定量解析 | 花粉管ガイダンスは、雄性配偶体である花粉管を雌性配偶体へと的確に導く受精に重要な機構の一つである。近年、誘引物質が同定されるなど分子レベルの解析が進められているが、雌性配偶体に進入する花粉管数が1本に制限される仕組みはよく分かっていない。本研究課題では微細加工技術を駆使してイクロ流路を作製し、ライブイメージングにより花粉管間における相互作用について調べた。その結果、花粉管同士がかろうじてすれ違うことのできる流路幅においても、顕著な相互作用は認められなかった。花粉管間の相互作用の解析には、二光子顕微鏡を駆使してin vivoにおけるライブイメージングから忌避反応を捉える必要があると考えられる。花粉管ガイダンスは、雄性配偶体である花粉管を雌性配偶体へと的確に導く受精に重要な機構の一つである。近年、誘引物質が同定されるなど分子レベルの解析が進められているが、雌性配偶体に進入する花粉管数が1本に制限される仕組みはよく分かっていない。本研究課題では微細加工技術を駆使してイクロ流路を作製し、ライブイメージングにより花粉管間における相互作用について調べた。その結果、花粉管同士がかろうじてすれ違うことのできる流路幅においても、顕著な相互作用は認められなかった。花粉管間の相互作用の解析には、二光子顕微鏡を駆使してin vivoにおけるライブイメージングから忌避反応を捉える必要があると考えられる。有性生殖を営むすべての生物にとって、次世代へ遺伝子を継承する受精の成否は種の保存と繁栄に重要であり、植物では農作物の収穫量に直結する問題となる。被子植物における花粉管ガイダンスは、雄性配偶体である花粉管を雌性配偶体へと的確に導く受精に重要な機構の一つとして知られている。近年、花粉管が雌性配偶体に誘引される際の誘引物質が同定され、分子レベルの解析が進められている。一方、動物の多精拒否機構が知られるように、植物でも雌性配偶体に進入する花粉管は通常1本のみである。この機構として花粉管同士の反発作用が働く可能性が考えられるが、花粉管間における相互作用については知られていない。雌性配偶体内は複雑で内部をイメージングすることは技術的難易度が高いことが理由の1つと考えられる。そこで、本研究課題では、微細加工技術を駆使してイクロ流路を作製し、ライブイメージングにより花粉管の動態を観察した。その結果、花粉管同士がかろうじてすれ違うことのできる流路幅においても、花粉管間における顕著な相互作用を示す運動は検出されなかった。次に、花粉管の誘引物質に対する反応を従来のT字路型のマイクロ流路を十字路に変更して定量したところ、誘引される花粉管は約60%に留まることが分かり、十字路のマイクロ流路は誘引物質に反応した花粉管のみを集めるのに有効なデバイスであることがわかった。今後、花粉管同士の相互作用をより詳細に調べるためには、誘引応答能を獲得した花粉管同士での相互作用を調べる実験基盤が必要であると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-25650075 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25650075 |
アフリカ村落地域における出産をめぐる男性の役割に関する人類学的研究 | 本研究は、エチオピア西南部に位置する少数民族の村落を調査対象として、出産環境の現状と課題を明らかにすることを目的として、とくに男性が担う役割について検討するものである。2018年度の研究成果としては以下の2点があげられる。1)本研究に関連して、調査地域における医療施設での出産に関するこれまでの調査結果をまとめ、研究ノートとして刊行した。調査地域においては、妊産婦死亡率の低減を目指し、医療施設での出産を推進・浸透させるための方策がおこなわれているが、実際には妊婦に対して心理的負担を強いるような状況をうみだす側面があり、妊産婦ケアという本来の目的にそぐわないものになっていることを指摘した。2)2019年3月9日から26日にかけてエチオピア西南部マーレ農村において、フィールドワークを実施した。世帯訪問をおこない、既婚男女を対象に家族計画の浸透度、選択にかかわる夫婦間の意思決定のプロセスについて聞き取りをおこなった。その結果、内発的に家族計画を推進する動きが女性のあいだでおこっていたことと、そのプロセスにおいて配偶者との交渉が重要であることが示唆された。また、現在においては、女性が積極的に選択をおこなう場合と、男性が家族計画の推進に意欲的な態度を示す場合とがみられた。これらの夫婦間の交渉について、今後の研究において考察を深めていく必要がある。なお、2018年度の計画として当初発表を予定していたthe 20th International Conference of Ethiopian Studiesは、本務との兼ね合いより参加を辞退せざるを得なかった。発表を予定していた国際学会への参加を辞退せざるを得なかったものの、これまでの研究成果をまとめ、論文として刊行するとともに、現地調査は当初の予定通り、順調に終えることができた。2019年度に予定していた学会発表に関しては、所属機関の変更に伴う準備期間の不足から2020年度に見送ることになる予定である。2018年度の調査結果については、2019年度中に論文として取りまとめ、学会誌に投稿予定である。また、数週間から1か月程度の現地調査を実施することにより、出産の場における男性の役割について検討をおこなう。本研究は、エチオピア西南部に位置する少数民族の村落を調査対象として、出産環境の現状と課題を明らかにすることを目的として、とくに男性が担う役割について検討するものである。2018年度の研究成果としては以下の2点があげられる。1)本研究に関連して、調査地域における医療施設での出産に関するこれまでの調査結果をまとめ、研究ノートとして刊行した。調査地域においては、妊産婦死亡率の低減を目指し、医療施設での出産を推進・浸透させるための方策がおこなわれているが、実際には妊婦に対して心理的負担を強いるような状況をうみだす側面があり、妊産婦ケアという本来の目的にそぐわないものになっていることを指摘した。2)2019年3月9日から26日にかけてエチオピア西南部マーレ農村において、フィールドワークを実施した。世帯訪問をおこない、既婚男女を対象に家族計画の浸透度、選択にかかわる夫婦間の意思決定のプロセスについて聞き取りをおこなった。その結果、内発的に家族計画を推進する動きが女性のあいだでおこっていたことと、そのプロセスにおいて配偶者との交渉が重要であることが示唆された。また、現在においては、女性が積極的に選択をおこなう場合と、男性が家族計画の推進に意欲的な態度を示す場合とがみられた。これらの夫婦間の交渉について、今後の研究において考察を深めていく必要がある。なお、2018年度の計画として当初発表を予定していたthe 20th International Conference of Ethiopian Studiesは、本務との兼ね合いより参加を辞退せざるを得なかった。発表を予定していた国際学会への参加を辞退せざるを得なかったものの、これまでの研究成果をまとめ、論文として刊行するとともに、現地調査は当初の予定通り、順調に終えることができた。2019年度に予定していた学会発表に関しては、所属機関の変更に伴う準備期間の不足から2020年度に見送ることになる予定である。2018年度の調査結果については、2019年度中に論文として取りまとめ、学会誌に投稿予定である。また、数週間から1か月程度の現地調査を実施することにより、出産の場における男性の役割について検討をおこなう。 | KAKENHI-PROJECT-18K18252 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K18252 |
高次元データの時間変動相関によるグルーピングの変化の解析 | 多領野fMRIデータを用いた脳領野間の結合を推定するための推定方法の開発を行った。本課題で扱う結合は領野間の活動の相関を因果的にとらえた有向性の結合である。本年度は昨年度課題としていたスパース推定に取り組んだ。結合推定の手法であるDynamic Causal Modeling (DCM)において結合係数の推定は最尤推定によって実行される。一般に目的関数に最適化変数の絶対値を罰則項として導入することによりスパースな解が得られることが知られている(L1スパース推定)。脳の情報処理を調べるには全脳が完全結合していると考えるより、重要な領野間がスパースに結合していると考え調べることが重要だと考えられるため、脳領野間の結合推定にL1スパース推定を用いた。L1スパース推定では予測関数が最適化変数の線形で表せる場合は、高速に最適解を求める方法が知られているため、DCMによるfMRI信号の予測を線形近似してL1スパース推定を行うことを試みた。しかし、DCMにおいては本課題で用いた線形近似では複数領野を経由するような結合がうまく表現できないことが分かった。そこで、予測関数が非線形になる場合のL1スパース推定において用いられる手法を導入し、現在研究結果をまとめている。昨年度、相関解析により多領野間がクラスター状に結合する構造を持つことが分かったが、本年度のL1スパース推定の結果と合わせ、脳領野間の重要な結合を取り出すことにより、脳領野間の結合が時間変動するクラスターに分解できることが期待される。本研究により、多領野のfMRIデータという高次元データから時間変動する結合による脳領野間の結合クラスターの変化を知ることができるため、本申請の目的に対して貢献できたと考えている。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。多領野fMRIデータを用いた脳領野間の活動の結合を推定するための推定方法の開発を行っている。ここで述べている結合は領野間の活動の相関を時間的にとらえた場合の結合で方向を持っている。この結合の推定で近年よく使われている手法であるDynamic Causal Modeling (DCM)がある。そこで、我々はDCMの推定性能の評価を行うために、数値シミュレーションを用い、データを出力したモデルが分かっている場合に、推定モデルに対して何の仮定も置かないモデルからシミュレーションモデルが復元できるかを調べた。該当研究の内容を2015年3月21日(土)に早稲田大学で行われた日本物理学会第70回年次大会において“DCMによる脳領野間の有効結合の推定"という題目で口頭発表した。また、2015年3月11日(水)のワークショップ“Workshop on fluctuating activity in neural networks"にて“Estimating effective connectivity between brain areas with DCM. "というタイトルで口頭発表を行った。多領野の結合推定にDCMを用いるために現在はスパース推定を行うことを取り組んでいる。現在、相関解析により多領野間がクラスター状に結合する構造を持つことが分かっている。我々は、スパース推定を用い脳領野間の重要な結合を取り出すことにより、脳領野間の結合が時間変動するクラスターに分解できるのではないかと考え研究を進めている。本研究が達成されれば、多領野のfMRIデータという高次元データから時間変動するeffective connectivityによる脳領野間の結合クラスターの変化を知ることができるため、本申請の目的が達成できると考えている。多領野fMRIデータを用いた脳領野間の結合を推定するための推定方法の開発を行った。本課題で扱う結合は領野間の活動の相関を因果的にとらえた有向性の結合である。本年度は昨年度課題としていたスパース推定に取り組んだ。結合推定の手法であるDynamic Causal Modeling (DCM)において結合係数の推定は最尤推定によって実行される。一般に目的関数に最適化変数の絶対値を罰則項として導入することによりスパースな解が得られることが知られている(L1スパース推定)。脳の情報処理を調べるには全脳が完全結合していると考えるより、重要な領野間がスパースに結合していると考え調べることが重要だと考えられるため、脳領野間の結合推定にL1スパース推定を用いた。L1スパース推定では予測関数が最適化変数の線形で表せる場合は、高速に最適解を求める方法が知られているため、DCMによるfMRI信号の予測を線形近似してL1スパース推定を行うことを試みた。しかし、DCMにおいては本課題で用いた線形近似では複数領野を経由するような結合がうまく表現できないことが分かった。そこで、予測関数が非線形になる場合のL1スパース推定において用いられる手法を導入し、現在研究結果をまとめている。昨年度、相関解析により多領野間がクラスター状に結合する構造を持つことが分かったが、本年度のL1スパース推定の結果と合わせ、脳領野間の重要な結合を取り出すことにより、脳領野間の結合が時間変動するクラスターに分解できることが期待される。本研究により、多領野のfMRIデータという高次元データから時間変動する結合による脳領野間の結合クラスターの変化を知ることができるため、本申請の目的に対して貢献できたと考えている。スパース推定などの現代的な手法を取り入れ、研究を進めている。現在取り組んでいる脳領野間の結合推定手法に関する推定能力の評価についての研究は、平成25年度に2回の国内会議での口頭発表を行い、また本年度には研究内容を論文にまとめる予定であり、研究については指導教官からの指導も受け順調に進んでいると考えている。27年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-14J01140 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J01140 |
高次元データの時間変動相関によるグルーピングの変化の解析 | 本年度が採用最終年度であるため、研究内容を論文に取りまとめる予定であり、その内容を持って、博士課程の修了を目指す。そのために、「研究実績の概要」でも述べた通り、脳の多領野間の結合推定にDynamic Causal Modeling (DCM)を用いるためにスパース推定を行う。スパース推定は現在活発に研究されている課題の一つであり、脳領野間の結合推定に導入することにより、重要な結合様式に関する新たな発見ができると期待している。本年度はこの研究内容に関して、国際学会での発表を目指す。27年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-14J01140 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J01140 |
ジオキシゲナーゼ型酸素化機能を発現する非ヘム有機鉄活性種の構造と物性 | FeCl_3,ピリジン,ビピリジンをTHF溶媒中で混合して生成する錯体は, 3.5-ジーt-ブチルカテコールのようなアルキル置換カテコールを酸素化する.この酸素機構は種々の点でピロカテカーゼの様な鉄酵素の機構と類似している.しかし,酸素化以外の反応(キノン生成)が起こること,選択性制御機構が不明であることなど解決されるべき多くの点が残されている.本研究では,この錯体を基礎に酵素のような高選択的触媒の改発,酵素反応機構解明に役立つ情報の収集を目的に,反応中間体の構造の分光学的解明と拡張ヒュッケル法による量子化学計算を行い,反応機構の検証を行った.錯体溶液の電子スペクトルは,ピリジン濃度に著しく依存した.低濃度のピリジンでは700nm付近に極大吸収を示す錯体が生成した.この錯体は別途にナトリウセヤミキノナトとFeCl_2との反応でも生成したので,ビリジン配位子のないカテコラート鉄(III)錯体と考えられる.高濃度のビリジン存在下,例えばピリジン溶媒中では, 550nm, 975nmに吸収をもつ錯体が生成した.この錯体は,カテコール:鉄=1.1の錯体で, 1000nm付近でε=1000の吸収を示すこと,置換基を^tBu, Me, Hと変えると短波長側へシフトすることから, Fe→セミキノナート配位子への遷移と考えられた.このことはセミキノナート鉄(II)錯体の生成を示唆するもので, 110Kで測定したメスバウアースペクトルにおける高スピン型鉄(II)錯体の存在と一致した.中間錯体の構造としては種々のものが考えられるが,分光学的には一義的に決められない点がある.可能な構造について,拡散ヒュッケル法で計算すると次のことが判った.1)カテコールの鉄への配位は,置換基に近い側のOH酸素の方が強い.2)単座配位錯体は,セミキノナート鉄(II)への方がカテコラート鉄(III)より安定である.3)酸素が鉄(II)に配位することによりFe-O^-_2は安定化する.FeCl_3,ピリジン,ビピリジンをTHF溶媒中で混合して生成する錯体は, 3.5-ジーt-ブチルカテコールのようなアルキル置換カテコールを酸素化する.この酸素機構は種々の点でピロカテカーゼの様な鉄酵素の機構と類似している.しかし,酸素化以外の反応(キノン生成)が起こること,選択性制御機構が不明であることなど解決されるべき多くの点が残されている.本研究では,この錯体を基礎に酵素のような高選択的触媒の改発,酵素反応機構解明に役立つ情報の収集を目的に,反応中間体の構造の分光学的解明と拡張ヒュッケル法による量子化学計算を行い,反応機構の検証を行った.錯体溶液の電子スペクトルは,ピリジン濃度に著しく依存した.低濃度のピリジンでは700nm付近に極大吸収を示す錯体が生成した.この錯体は別途にナトリウセヤミキノナトとFeCl_2との反応でも生成したので,ビリジン配位子のないカテコラート鉄(III)錯体と考えられる.高濃度のビリジン存在下,例えばピリジン溶媒中では, 550nm, 975nmに吸収をもつ錯体が生成した.この錯体は,カテコール:鉄=1.1の錯体で, 1000nm付近でε=1000の吸収を示すこと,置換基を^tBu, Me, Hと変えると短波長側へシフトすることから, Fe→セミキノナート配位子への遷移と考えられた.このことはセミキノナート鉄(II)錯体の生成を示唆するもので, 110Kで測定したメスバウアースペクトルにおける高スピン型鉄(II)錯体の存在と一致した.中間錯体の構造としては種々のものが考えられるが,分光学的には一義的に決められない点がある.可能な構造について,拡散ヒュッケル法で計算すると次のことが判った.1)カテコールの鉄への配位は,置換基に近い側のOH酸素の方が強い.2)単座配位錯体は,セミキノナート鉄(II)への方がカテコラート鉄(III)より安定である.3)酸素が鉄(II)に配位することによりFe-O^-_2は安定化する. | KAKENHI-PROJECT-62215015 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62215015 |
交通流および自己駆動粒子系の流動機構の解明 | 交通流を典型とする自己駆動粒子系における巨視的な流動形態の形成が、多体効果による動力学的な相転移現象であり、力学系におけるホップ分岐現象として理解できることを理論的に明らかにした。また、ナゴヤドームにおける実車両を使った実証実験を行い、渋滞などの巨視的流動形態の形成過程における詳細な時系列データを測定した。さらに、群衆や生物集団の運動における数理模型による計算機シミュレーションを行い、実現象に見られる流動形態や群知能的振舞いを再現した。交通流を典型とする自己駆動粒子系における巨視的な流動形態の形成が、多体効果による動力学的な相転移現象であり、力学系におけるホップ分岐現象として理解できることを理論的に明らかにした。また、ナゴヤドームにおける実車両を使った実証実験を行い、渋滞などの巨視的流動形態の形成過程における詳細な時系列データを測定した。さらに、群衆や生物集団の運動における数理模型による計算機シミュレーションを行い、実現象に見られる流動形態や群知能的振舞いを再現した。渋滞および動的クラスタ発生の力学的機構は、「粒子集団の多体効果による揺らぎの増幅による一様状態の不安定化」による動的相転移が「マクロな動的クラスタの形成によるシステム全体の安定化」と考えられる。実証実験として、交通流の渋滞形成における非平衡過程の時系列詳細データの計測のため、ドーム球場を利用する円形サーキットにおける走行実験を、天井の全周カメラによる動画像及びレーザースキャナによる計測の方法を開発しチェックし、本実験の準備をした。また、ネットワークトラフィックのデータ計測のため機器を搬入し計測を始め、収集データを解析した。自己駆動粒子系の数理模型(OV模型)は、非線型非対称力による散逸系として、交通流をはじめ多くの流動粒子系に共通の物理的特徴を示す。そのクラスタ形成の動的相転移現象が、新しい型のHopf分岐として理解できることを示した。追従性と排除性を持つ3次元OV模型による群れ形成のシミュレータを試作し試行実験を行なった。非対称相互作用における粒子系は、非平衡系における粒子密度をパラメータとする動的相転移を示し、少数でも多体効果を引き起こし、冪乗則のゆらぎを示し、マクロなクラスタの形成とその多彩な形体と多自由度の運動は、生物系の現象を物理学的に説明する力学としての可能性を示すことを明らかにした。交通渋滞および一般に非平衡系の動的クラスタ発生の力学的機構は、粒子集団の多体効果による一様状態の不安定化による相転移現象である。交通渋滞における物理機構の実証実験および渋滞形成における非平衡過程の詳細データ計測のため、ナゴヤドーム球場アリーナにおいて円周サーキットにおける車両による走行実験を実施した。天井の全周カメラによる動画像を撮影し、同時に高速回転レーザースキャナによる車両位置変化の時系列データを取得した。実験は、二日間で台数を20台から40台まで、2台ずつ増やし、20回におよぶ実験走行を行い、渋滞形成の起こる臨界台数の範囲や複雑な車両流れの揺らぎの詳細な時系列データを得た。現在、得られたデータの解析中である。自己駆動粒子系の数理模型(OV模型)は、非対称力による散逸系として、交通流をはじめ多くの流動粒子系に共通の物理的特徴を示す。このシステムにおいて現れるクラスタ形成の相転移現象が、多体系のHopf分岐現象であり、サブクリティカル型のメタ安定転移であることを解析的に示した。これは、現実の高速道路で発生する渋滞に一般的に見られる性質について、初めて物理的現象として説明できることを(数値シミュレーションではなく)解析計算により理論的に示したものである。2次元OV模型が形成する多彩なマクロ形体と多自由度の運動について、幾何学的安定性の解析を行った。それにより、生物集団の群れ形成現象を物理学的に説明する力学としての可能性を示した。交通渋滞および自己駆動粒子集団の流動クラスタ発生の力学的機構は、非平衡散逸多体系の動力学的な相転移現象である。渋滞形成理論の実証実験および渋滞形成における非平衡過程の詳細データ計測のため、昨年度ナゴヤドーム球場アリーナにおいて円周サーキットにおける走行実験を実施し、本年度は現象解析を行った。今回の実験における20ランから得た測定データは、清浄化を終え、秒単位の車両の位置と速度による基本データを作成し終わった。今後、この1次データより様々な2次データを作成し多角的な分析が可能である。これまでの解析では、サーキット実験における渋滞発生が起こる臨界車両密度は、平均車両間隔で約8.810.0mであり、このあたりが300m程度の走行の長さ・速度スケールにおける臨界車間の範囲であり、渋滞形成が起こる一様流の不安定相の領域と思われる。高速道路における臨界車両密度との比較には物理的なスケール変換が必要だが、実験により世界で初めて臨界密度の数値を特定した。また平均車間8.8m以下の高密度では、渋滞は発生せず、低速な一様流が観測された。高密度状態における低速一様流の存在については、高速道路における観測は難しく、世界的な議論になっており、我々はボトルネックのないサーキット実験により初めて見出した。この成果は、交通渋滞の発生が多体相互作用による動的な相転移現象であるという物理理論を裏付ける重要な証拠となるものである。今回のドーム実験で確立した、広い領域における全体映像の撮影方法と秒単位での個体集団の運動の時系列測定の技術は、今後、群衆などの自己駆動粒子集団の運動の実験・測定に応用可能であり、精密データによる本格的な科学研究の道を拓くものである。 | KAKENHI-PROJECT-20360045 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20360045 |
パターンデザインペプチドライブラリーを用いた天然変性タンパク質の特性解析 | 天然変性タンパク質はアミノ酸配列の保存性は低いにも関わらず、結合と折りたたみの共起によりターゲット分子と相互作用する機構や複数のターゲット分子と相互作用する機構など、まだ多くのことが分かっていない。そこで、天然変性タンパク質がターゲット分子と相互作用する機構・特性を調べるために、配列空間を拡張したパターンデザインペプチドライブラリーを設計・構築し、天然変性タンパク質の特性を解析することを目的として研究を行った。まず、配列パターンの情報解析結果をもとに、mSin3BのPAH1ドメインに結合する天然変性領域について、疎水性、親水性、小側鎖残基等からなるパターンデザインペプチドライブラリーを設計・構築した。次に、それらのペプチドライブラリーから無作為にペプチド配列を選び、GSTプルダウンアッセイによりPAH1ドメインとの結合実験を行ったところ、有意に結合するものは得られなかった。この結果は、従来予想された天然変性領域コンセンサス結合配列パターンを満たすだけでは、PAH1ドメインへの結合には不十分であることを示唆している。そこで、より強く相互作用するペプチド配列を探索するためにファージディスプレイスクリーニングを行った。その結果、ファージディスプレイのサイクルを進めるごとに特徴的なパターンの配列が顕著に選択されてきた。さらに、これらのペプチド配列についてファージELISAを行ったところ、NRSFより強い相互作用を示唆する天然変性領域ペプチド配列も見つかった。今後、これらのペプチド配列について、表面プラズモン共鳴バイオセンサー等により相互作用解析を行うことにより、天然変性結合領域とPAH1ドメインとの相互作用特性をより詳細に解明することができると考えられる。天然変性タンパク質はアミノ酸配列の保存性は低いにも関わらず、結合と折りたたみの共起によりターゲット分子と相互作用する機構や複数のターゲット分子と相互作用する機構など、まだ多くのことが分かっていない。そこで、天然変性タンパク質がターゲット分子と相互作用する機構・特性を調べるために、まず文献や情報解析等により配列パターンを調べ、それに基づくパターンデザインペプチドライブラリーを設計・構築し、天然変性タンパク質の特性解析を行うことを目的として研究を行った。(1)天然変性タンパク質の配列パターン情報解析まず、これまでの天然変性タンパク質の配列解析の研究報告やデータベース等を参考にし、天然変性タンパク質の配列ライブラリーをデザインするために配列パターンを調べた。特にmSin3BのPAH1ドメイン(横浜市大・西村研との共同研究)に結合する天然変性タンパク質配列パターンを調べ、次項のペプチドライブラリー構築を行った。(2)天然変性タンパク質ペプチドライブラリーのパターンデザイン・構築配列パターンの解析結果をもとに、mSin3BのPAH1ドメインに結合する天然変性タンパク質配列パターンをデザインしたペプチドライブラリーを設計・構築した。具体的には、配列パターンデザインペプチドの遺伝子ライブラリーを縮重コドンを用いて設計・構築し、GSTタンパク質やファージコートタンパク質と融合したペプチドライブラリー発現系を作製した。引き続きこのライブラリーを用いて相互作用解析をはじめとした特性・特性解析を行っている。天然変性タンパク質はアミノ酸配列の保存性は低いにも関わらず、結合と折りたたみの共起によりターゲット分子と相互作用する機構や複数のターゲット分子と相互作用する機構など、まだ多くのことが分かっていない。そこで、天然変性タンパク質がターゲット分子と相互作用する機構・特性を調べるために、配列空間を拡張したパターンデザインペプチドライブラリーを設計・構築し、天然変性タンパク質の特性を解析することを目的として研究を行った。まず、配列パターンの情報解析結果をもとに、mSin3BのPAH1ドメインに結合する天然変性領域について、疎水性、親水性、小側鎖残基等からなるパターンデザインペプチドライブラリーを設計・構築した。次に、それらのペプチドライブラリーから無作為にペプチド配列を選び、GSTプルダウンアッセイによりPAH1ドメインとの結合実験を行ったところ、有意に結合するものは得られなかった。この結果は、従来予想された天然変性領域コンセンサス結合配列パターンを満たすだけでは、PAH1ドメインへの結合には不十分であることを示唆している。そこで、より強く相互作用するペプチド配列を探索するためにファージディスプレイスクリーニングを行った。その結果、ファージディスプレイのサイクルを進めるごとに特徴的なパターンの配列が顕著に選択されてきた。さらに、これらのペプチド配列についてファージELISAを行ったところ、NRSFより強い相互作用を示唆する天然変性領域ペプチド配列も見つかった。今後、これらのペプチド配列について、表面プラズモン共鳴バイオセンサー等により相互作用解析を行うことにより、天然変性結合領域とPAH1ドメインとの相互作用特性をより詳細に解明することができると考えられる。 | KAKENHI-PUBLICLY-22113508 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-22113508 |
ソフトコンピューティングに基づく次世代マルチメディアサーチエンジンの研究 | ・タイプ2の概念ファジイ集合の実現方式を、昨年度得られた知見に基づき発展させ提唱した。これは、これまでの文脈依存型の概念という考え方を一歩進め、文脈によって変化するトピックの視点や粒度も考慮した、より人間に近い概念表現モデルである。具体的には対象語の前後に出現している単語列をLocalな文脈情報として抽出し、各単語が持つ様々な概念の可能性分布をファジイ集合で表現している。また、同じ文書内に出現する単語によって表現されるGlobalな文脈情報についても考慮し、Localな文脈情報と融合することで、多種多様な視点や粒度をもつ概念の集合から適切な概念を選択することを可能とした。また、同様の手法を応用することで、サーチエンジンなどで問題となる少数の単語からの適切な文脈清報の抽出の可能性についても、大規模コーパスを用いた実験によって検証を行った。・米国で毎年行われている情報検索の評価型ワークショッブであるText REtrievalConferenceに参加し、ポスターセッションによる研究発表を行うことで、異なる視点をもつ人々と交流を図ることかできた。また、情報検索における最先端の技術者が集う場での議論や発表の聴講を通し、専門分野に対する理解と新たな知識の獲得につながった。・更に、情報検索では、似ている度合いや類似の度合いを表すためにファジィ類似度か必要な尺度となる。本研究では、新しい考え方に基くファジイ類似度を提案した。これは、条件付確率から導かれた非対称の類似度であり、比較する場合に、自分と似た要素か多いか否かにより、他との類似の度合いは異なることを表すことが可能てある。例えば、ユニークさを考慮した類似の関係を表現するのに、極めてふさわしい尺度であることが示された。・タイプ2の概念ファジイ集合の実現方式を、昨年度得られた知見に基づき発展させ提唱した。これは、これまでの文脈依存型の概念という考え方を一歩進め、文脈によって変化するトピックの視点や粒度も考慮した、より人間に近い概念表現モデルである。具体的には対象語の前後に出現している単語列をLocalな文脈情報として抽出し、各単語が持つ様々な概念の可能性分布をファジイ集合で表現している。また、同じ文書内に出現する単語によって表現されるGlobalな文脈情報についても考慮し、Localな文脈情報と融合することで、多種多様な視点や粒度をもつ概念の集合から適切な概念を選択することを可能とした。また、同様の手法を応用することで、サーチエンジンなどで問題となる少数の単語からの適切な文脈清報の抽出の可能性についても、大規模コーパスを用いた実験によって検証を行った。・米国で毎年行われている情報検索の評価型ワークショッブであるText REtrievalConferenceに参加し、ポスターセッションによる研究発表を行うことで、異なる視点をもつ人々と交流を図ることかできた。また、情報検索における最先端の技術者が集う場での議論や発表の聴講を通し、専門分野に対する理解と新たな知識の獲得につながった。・更に、情報検索では、似ている度合いや類似の度合いを表すためにファジィ類似度か必要な尺度となる。本研究では、新しい考え方に基くファジイ類似度を提案した。これは、条件付確率から導かれた非対称の類似度であり、比較する場合に、自分と似た要素か多いか否かにより、他との類似の度合いは異なることを表すことが可能てある。例えば、ユニークさを考慮した類似の関係を表現するのに、極めてふさわしい尺度であることが示された。ファジィ集合を用いて不明瞭な概念の意味内容を明示的に表現することにより,状況や微妙な言葉遣いの違いによってダイナミックに変化する意味の表現を行い,ユーザの検索意図に直結した情報検索を可能とすることを目的に,意味表現のための要素技術の開発と情報検索における検証とを行っている.本年度は,下記を行った.意味表現技術:1.辞書アーキテクチャ検討:語のクラスタリング,Word Net, ODPのそれぞれを基にする方法の3通りの辞書構築手法を構築し検証した.2.CFS(Conceptual Fuzzy Set)と受動・能動的注意の同時処理モデルの融合検討:脳内の分散的記憶モデルに基づいた意味表現モデルを構築し,性能評価を行った.(FSS2003で発表)情報検索における検証:1.概念表現及び情報検索のためのフレームワーク検討:RBF(Radial Basis Function)ネットワークを参考にしたCFSによる語の意味表現モデルを提唱し,それによって文脈依存概念拡張を行う情報検索モデルを構築.それを,Web情報検索及び新規文書発見に応用し性能を評価した.(TREC2003のWeb TrackおよびNovelty Trackで発表)2.マルチメディアデータ検索システムによるフレームワーク検証:テキストベース画像検索全般の技術動向調査を行い,本研究のテーマである意味表現手法を導入することにより検索精度向上を確認した.3.応用検討:Webサイトの意味表現に基づくコミニュニティ発見,およびユーザの意図を推論することによる情報瞬時提示に応用し,成果を得た.(FUZZ-IEEE2003にてそれぞれを発表)本年度は,ソフトコンピューティングを用いた概念表現及び情報検索のための方式提案と,テキストプロセシング系及びマルチメディアデータ系において方式評価を行った.主な内容は下記の通り.1.ソフトコンピューティング基礎検討:ファジィ論理及びラフ集合を用い,大規模データベースからの知識獲得,ルール抽出を行った.特に,ファジィ論理関数を用いた知識のルール化,及びラフ集合に基づく条件付確率の概念を用いたルール群の構築を試みて,その有効性を確認した.・コーパスからの最適化によるCFS構築方法を提唱した.・ | KAKENHI-PROJECT-15500144 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15500144 |
ソフトコンピューティングに基づく次世代マルチメディアサーチエンジンの研究 | ODP(Open Directory)に基づいたCFS構築方法を提唱した.4.画像データの検索:・テキスト情報に基づくWeb画像検索のための方式を提唱.・画像認識と言語知識を統合した画像検索方式の検討を行い,布の検索のためのトイシステムで良好な結果を得た.・タイプ2の概念ファジィ集合の実現方式を,昨年度得られた知見に基づき発展させ提唱した.これは,これまでの文脈依存型の概念という考え方を一歩進め,文脈によって変化するトピックの視点や粒度も考慮した,より人間に近い概念表現モデルである.具体的には対象語の前後に出現している単語列をLocalな文脈情報として抽出し,各単語が持つ様々な概念の可能性分布をファジィ集合で表現している.また,同じ文書内に出現する単語によって表現されるGlobalな文脈情報についても考慮し,Localな文脈情報と融合することで,多種多様な視点や粒度をもつ概念の集合から適切な概念を選択することを可能とした.また,同様の手法を応用することで,サーチエンジンなどで問題となる少数の単語からの適切な文脈情報の抽出の可能性についても,大規模コーパスを用いた実験によって検証を行った.・米国で毎年行われている情報検索の評価型ワークショップであるText REtrievalConferenceに参加し,ポスターセッションによる研究発表を行うことで,異なる視点をもつ人々と交流を図ることができた.また,情報検索における最先端の技術者が集う場での議論や発表の聴講を通し,専門分野に対する理解と新たな知識の獲得につながった.・更に、情報検索では、似ている度合いや類似の度合いを表すためにファジィ類似度が必要な尺度となる。本研究では、新しい考え方に基くファジィ類似度を提案した。これは、条件付確率から導かれた非対称の類似度であり、比較する場合に、自分と似た要素が多いか否かにより、他との類似の度合いは異なることを表すことが可能である。例えば、ユニークさを考慮した類似の関係を表現するのに、極めてふさわしい尺度であることが示された。 | KAKENHI-PROJECT-15500144 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15500144 |
巨大有機金属分子の精密合成と機能研究 | 本研究では、有機遷移金属化合物の構造柔軟性と独特の反応性を活用して、明確な分子構造を有し且つ特異な立体構造・次元構造を有するメゾスコピックサイズの巨大有機金属分子を創製し、新しい機能を引き出すことを目的としている。デンドリティック構造を有する巨大分子とらせんキラルな高分子に焦点を絞って研究を進め、以下のような研究成果を得た。(1)ポルフィリンをコアとする白金アセチリドデンドリマーをコンバージェント法によって第3世代まで合成し、白金アセチリド部位からポルフィリンへの分子内エネルギー移動が起こることを確認した。(2)白金アセチリドデンドリマーの効率的な合成法の改良を進め、ダイバージェント法で巨大有機金属分子を精密に合成する方法を確立し、世界最大の有機金属デンドリマーである第6世代デンドリマーの合成まで発展させることができた(3)トリアリールアミンから誘導されるアセチレンを架橋配位子に用いて、ルテニウムアセチリドデンドリマーを合成し、比較的大きな金属間相互作用を有することを明らかにした。(4)優れた酸化還元特性を有するフェロセンを側鎖に有するらせんキラルなポリイソシアニドを精密合成し、電気化学的な刺激に応答してらせん構造が可逆的にほどけることを見出した。(5)側鎖にポルフィリンを有するらせんキラルなポリイソシアニドでは分子内でエネルギー移動がり、らせん構造が移動効率を高めることに役立つことを明らかにした。また、ポリイソシアニド主査へのポルフィリンの連結様式によっても移動効率が変化することもわかった。(6)より剛直ならせんを形成することが予想されるポリ(オルト置換アリールイソシアニド)をらせん方向選択的に合成することができた。本研究では、有機遷移金属化合物の構造柔軟性と独特の反応性を活用して、明確な分子構造を有し且つ特異な立体構造・次元構造を有するメゾスコピックサイズの巨大有機金属分子を創製し、新しい機能を引き出すことを目的としている。デンドリティック構造を有する巨大分子とらせんキラルな高分子に焦点を絞って研究を進め、以下のような研究成果を得た。(1)ポルフィリンをコアとする白金アセチリドデンドリマーをコンバージェント法によって第3世代まで合成し、白金アセチリド部位からポルフィリンへの分子内エネルギー移動が起こることを確認した。(2)白金アセチリドデンドリマーの効率的な合成法の改良を進め、ダイバージェント法で巨大有機金属分子を精密に合成する方法を確立し、世界最大の有機金属デンドリマーである第6世代デンドリマーの合成まで発展させることができた(3)トリアリールアミンから誘導されるアセチレンを架橋配位子に用いて、ルテニウムアセチリドデンドリマーを合成し、比較的大きな金属間相互作用を有することを明らかにした。(4)優れた酸化還元特性を有するフェロセンを側鎖に有するらせんキラルなポリイソシアニドを精密合成し、電気化学的な刺激に応答してらせん構造が可逆的にほどけることを見出した。(5)側鎖にポルフィリンを有するらせんキラルなポリイソシアニドでは分子内でエネルギー移動がり、らせん構造が移動効率を高めることに役立つことを明らかにした。また、ポリイソシアニド主査へのポルフィリンの連結様式によっても移動効率が変化することもわかった。(6)より剛直ならせんを形成することが予想されるポリ(オルト置換アリールイソシアニド)をらせん方向選択的に合成することができた。新物質の創製や新機能材料の創出には、ミクロな原子・分子とマクロな材料との中間にあるメゾスコピックな視点からのアプローチが重要である。本研究では、従来の機能材料研究のようにミクロな分子を非結合的な配列や超分子構造によって組織化しマクロな材料に導くのではなく、ミクロな分子を化学結合によって連結しメゾスコピックサイズの巨大分子を構築し、それに由来する独特の機能を引き出そうと考えた。特に本研究では、有機遷移金属化合物の構造柔軟性と独特の反応性を活用して、明確な化学構造と立体構造及び多様な次元構造とそれに基づく特有のコンフォメーションを特徴とするメゾスコピックサイズの巨大有機金属分子を設計・合成し、その新機能の探索を行う。この研究計画に従い、本年度は、特にデンドリティック構造をもつ巨大分子とらせんキラルな高分子に焦点をあて、下記の研究成果を得た。1)オポルフィリンを核に、白金-アセチリドを基本骨格とする第1,2および3世代デンドリマーをコンバージェント法で合成することに成功した。各世代デンドリマーの光化学的な性質を可視・紫外、蛍光スペクトルなどで検討した結果、白金アセチルド部からオポルフィリン核への分子内エネルギー移動を観測した。2)外部刺激に対して応答する有機金属高分子の合成を目的にフェロセンを置換基として持つ光学活性イソシアニドを合成し、白金-パラジウム2核錯体を開始剤に重合させ、らせんキラルなポリイソシアニドの合成に成功した。それらの比施光度やCDスペクトルから、(S)-体モノマーから得られたポリマーは右巻の、また、(R)-体モノマーから生成したポリマーは左巻のらせん構造を採っていることが分かった。本研究では、有機遷移金属化合物の構造柔軟性と独特の反応性を活用して、明確な分子構造を有し且つ特異な立体構造・次元構造を有するメゾスコピックサイズの巨大有機金属分子を創製し、新しい機能を引き出すことを目的としている。昨年度の研究成果を踏まえ、本年度もデンドリティック構造を有する巨大分子とらせんキラルな高分子に関しての研究をさらに推進した。 | KAKENHI-PROJECT-14205127 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14205127 |
巨大有機金属分子の精密合成と機能研究 | まず、白金アセチリドを基本骨格とするデンドリマーの効率的な合成法の改良を進め、分子の内側から外側に向かって逐次合成するダイバージェント法で巨大有機金属分子を精密に合成する方法を確立した。本法では世界最大の有機金属デンドリマー(第6世代)も合成することができ、その直径は約10ナノメートル以上に達することも確認した。また、トリアリールアミンから誘導されるアセチレンを架橋配位子に用いて、ルテニウムアセチリドデンドリマーを合成し、比較的大きな金属間相互作用を有することを明らかにした。次に、側鎖にポルフィリンを有するポリイソシアニドを精密合成し、その分子内でエネルギー移動が起こることを確認し、らせん構造が移動効率を高めることに役立つことを見いだした。また、ポリイソシアニド主査へのポルフィリンの連結様式によってもエネルギー移動効率が変化することを明らかにした。さらに、より剛直ならせんを形成することが予想されるポリ(オルト置換アリールイソシアニド)をらせん方向選択的に合成することができた。 | KAKENHI-PROJECT-14205127 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14205127 |
心不全治療を目的としたミオシン軽鎖リン酸化を調節する低分子化合物の開発と臨床応用 | cMLCK特異的阻害剤を開発するために低分子化合物ライブラリー(約20万化合物)を用いてハイスループットスクリーニングを実施し、cMLCK活性を50%以上阻害する化合物を112個同定した。次に、これら112個の化合物に対して特異性を評価するために他のキナーゼを用いてカウンターアッセイを実施し、cMLCK特異的に阻害作用を有する化合物は34個であった。更に、これらに対して濃度依存的阻害作用の確認を実施し、濃度依存的に阻害作用を発揮した25化合物について、phos-tag PAGEを用いて実際に基質のリン酸化が低下することを確認した。cMLCK特異的阻害剤とcMLCKの共結晶構造解析を行うためにまず、cMLCKの大量精製および単分散条件の検討を行った。Sf21昆虫細胞にバキュロウイルスを用いてcMLCKを10Lの大量精製培養システムを構築し、cMLCKを大量に安定して発現させることができた。次に精製したcMLCKの単分散条件について検討した。His tagおよびFlag tagを用いてsequentialにaffinity精製を行った後、ゲルろ過で単分散を確認したところ、ほとんどの蛋白質はvoidに回収され、凝集してしまっていることが確認された。そこで、精製時における界面活性剤の種類と濃度、塩の種類と濃度、キレート剤等の条件を振り、単分散条件の検討を試みたが、上手く行かなかった。そこで活性に影響しない程度にcMLCKのN末端を欠損させていき、それぞれについて単分散を観察した結果、最終的に単分散するN末端欠損cMLCKを得ることが出来た。また、cMLCKの結合蛋白質であるカルモジュリンも大腸菌のシステムを用いて構築し、大量精製に成功した。これらcMLCKとカルモジュリン蛋白質を混合し複合体を形成させた後、ゲルろ過を実施したところ、推測される分子量の高さに単分散して回収できた。ハイスループットスクリーニングを終了し、primary hit化合物を得ることが出来た。cMLCKの単分散条件を得ることが出来た。1)引き続き、力学的負荷(伸展、圧負荷)によるcMLCK活性の影響を検討する。培養心筋細胞に対して力学的負荷を与えて、cMLCK活性とMLC2vのリン酸化状態の変化を観察する。2)cMLCK特異的阻害剤の開発を継続する。実際に基質のリン酸化レベルを低下させた化合物を培養心筋細胞に対して作用させ、基質のリン酸化の減少、心筋収縮性抑制効果、および細胞内カルシウム動態への影響を確認する。3)単分散したcMLCKとカルモジュリン蛋白質を大量精製する。さらに複合体を形成させた後、結晶化条件を検討していく。4)肥大型心筋症を引き起こすサルコメア蛋白質の変異を導入した培養心筋細胞の系を構築する。cMLCK特異的阻害剤を開発するために低分子化合物ライブラリー(約20万化合物)を用いてハイスループットスクリーニングを実施し、cMLCK活性を50%以上阻害する化合物を112個同定した。次に、これら112個の化合物に対して特異性を評価するために他のキナーゼを用いてカウンターアッセイを実施し、cMLCK特異的に阻害作用を有する化合物は34個であった。更に、これらに対して濃度依存的阻害作用の確認を実施し、濃度依存的に阻害作用を発揮した25化合物について、phos-tag PAGEを用いて実際に基質のリン酸化が低下することを確認した。cMLCK特異的阻害剤とcMLCKの共結晶構造解析を行うためにまず、cMLCKの大量精製および単分散条件の検討を行った。Sf21昆虫細胞にバキュロウイルスを用いてcMLCKを10Lの大量精製培養システムを構築し、cMLCKを大量に安定して発現させることができた。次に精製したcMLCKの単分散条件について検討した。His tagおよびFlag tagを用いてsequentialにaffinity精製を行った後、ゲルろ過で単分散を確認したところ、ほとんどの蛋白質はvoidに回収され、凝集してしまっていることが確認された。そこで、精製時における界面活性剤の種類と濃度、塩の種類と濃度、キレート剤等の条件を振り、単分散条件の検討を試みたが、上手く行かなかった。そこで活性に影響しない程度にcMLCKのN末端を欠損させていき、それぞれについて単分散を観察した結果、最終的に単分散するN末端欠損cMLCKを得ることが出来た。また、cMLCKの結合蛋白質であるカルモジュリンも大腸菌のシステムを用いて構築し、大量精製に成功した。これらcMLCKとカルモジュリン蛋白質を混合し複合体を形成させた後、ゲルろ過を実施したところ、推測される分子量の高さに単分散して回収できた。ハイスループットスクリーニングを終了し、primary hit化合物を得ることが出来た。cMLCKの単分散条件を得ることが出来た。1)引き続き、力学的負荷(伸展、圧負荷)によるcMLCK活性の影響を検討する。培養心筋細胞に対して力学的負荷を与えて、cMLCK活性とMLC2vのリン酸化状態の変化を観察する。2)cMLCK特異的阻害剤の開発を継続する。実際に基質のリン酸化レベルを低下させた化合物を培養心筋細胞に対して作用させ、基質のリン酸化の減少、心筋収縮性抑制効果、および細胞内カルシウム動態への影響を確認する。3)単分散したcMLCKとカルモジュリン蛋白質を大量精製する。さらに複合体を形成させた後、結晶化条件を検討していく。 | KAKENHI-PROJECT-18H04050 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H04050 |
心不全治療を目的としたミオシン軽鎖リン酸化を調節する低分子化合物の開発と臨床応用 | 4)肥大型心筋症を引き起こすサルコメア蛋白質の変異を導入した培養心筋細胞の系を構築する。 | KAKENHI-PROJECT-18H04050 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18H04050 |
イーストケープにおける土器の類型化に関する民族考古学的研究 | 本研究は、パプアニューギニア独立国イーストケープの土器づくりの民族誌による土器の類型化に関する民族考古学的なモデルの構築を目的とし、目的の達成に向けてイーストケープの土器製作者と(1)ワリ島の製作者、(2)イブライ区の製作者、(3)ノルマンビー島の消費者らとの関係に主な焦点をあて、イーストケープの製作者を取り巻く社会的ネットワークの解明を課題としている。平成30年度は、前年度までの調査研究の成果と、早稲田大学考古学研究室の調査チームによる調査研究の成果とを総合的に検討した。上記3点の検討課題に則した研究成果の概要は次の通りである。(1)ワリ島の製作技術をもつ女性は、オジとワリ島で生活している間にその妻(ワリ島出身)から技術を学んでおり、異系統技術の獲得には姻族との交流が重要な契機になっている。また、この女性作の模倣土器がワリ島産の土器と瓜二つといっていいほど酷似するのに対し、他の作者の土器ではその外見的特徴のみが模倣されていることから、技術を直接的に体験できる環境がなければ外面的な模倣にとどまることが指摘される。(2)イブライ区の土器づくりは基本的な製作技術は共通するものの、細部にイーストケープには見られない技法が観察される。内陸部や島嶼部との通婚が多い一方で、イーストケープとの通婚は少ないことから、地域間交流の希薄さは通婚の少なさに起因しており、通婚圏は製作技法が共有される範囲に少なからず影響を与えていると考える。(3)イーストケープの住民の多くは、出自を辿るとノルマンビー島からの移住者の系譜に連なる。つまり両者は、共通の祖先をもつ出自集団の構成員という関係にある。ここから、両地域間で土器と作物などを物々交換するキドコという小規模な地方交易は、出自集団内部のネットワークを基礎として成り立っていると考える。なお、これらの研究成果の一部は学術雑誌などで発表した。本研究は、パプアニューギニア独立国イーストケープの土器づくりの民族誌による土器の類型化に関する民族考古学的なモデルの構築を目的とし、目的の達成に向けてイーストケープの土器製作者と(1)ワリ島の製作者、(2)イブライ区の製作者、(3)ノルマンビー島の消費者らとの関係に主な焦点をあて、イーストケープの製作者を取り巻く社会的ネットワークの解明を課題としている。研究実施計画に則り、平成28年度は、ワリ島産土器の模倣土器を製作したイーストケープの製作者と(1)ワリ島の製作者との関係を明らかにするために現地でフィールドワークを実施した。模倣土器製作者の血縁者とワリ島出身者らに対する聞き取りから、そのライフヒストリーや製作技術の学習過程など、当初の計画どおりに情報を収集することができた。また、イーストケープの製作者と(2)イブライ区の製作者、(3)ノルマンビー島の消費者との関係についても、平成28年度は次年度に向けた予備的調査として計画していたが、調査の進展により、イブライ区の土器製作技術や親族組織、婚姻に関する情報、イーストケープとノルマンビー島の人々の出自や系譜に関する情報など、当初の予想を上回る情報を収集することができた。フィールドワークの結果、婚姻を契機とする製作者個人の転居によって模倣土器の製作を可能とする異系統の技術が獲得されたこと(1)、製作技術の違いが婚姻の少なさに起因する可能性があること(2)、イーストケープに存在する出自集団の多くがノルマンビー島からの移民に連なる系譜であること(3)が明らかになり、出自集団と婚姻の動態が社会的ネットワークの形成に深く関わっているという成果が得られた。なお、研究成果の一部は国際学会等で発表した。本研究の実施計画は、研究目的を達成するための検討課題として挙げたイーストケープの土器製作者と(1)ワリ島の製作者、(2)イブライ区の製作者、(3)ノルマンビー島の消費者、の関係解明のうち、平成28年度の計画は現地でのフィールドワークによる検討課題(1)の重点的な調査研究と、検討課題(2)の予備的な調査である。また、平成29年度の計画は現地でのフィールドワークによる検討課題(2)と(3)の重点的な調査研究と本研究の総括である。実施計画に則り平成28年度の現地フィールドワークを実施した結果、先述したとおり検討課題(1)に関する情報はもとより、調査自体の進展と現地協力者のサポートのおかげで、次年度に重点的に調査する予定であった検討課題(2)と(3)についても見込んだ以上の有益な情報を収集することができた。このため、細部については補填的調査を要する可能性はあるが、研究目的を達成するために必要不可欠と想定していた検討課題(1)(2)(3)を考察するための事例を得て、過去の調査成果を含めて総合的に検討できる状況にある。本研究は、パプアニューギニア独立国イーストケープの土器づくりの民族誌による土器の類型化に関する民族考古学的なモデルの構築を目的とし、目的の達成に向けてイーストケープの土器製作者と(1)ワリ島の製作者、(2)イブライ区の製作者、(3)ノルマンビー島の消費者らとの関係に主な焦点をあて、イーストケープの製作者を取り巻く社会的ネットワークの解明を課題としている。当初の研究計画では、平成29年度は、イーストケープの製作者とその隣接地域に居住している(2)イブライ | KAKENHI-PROJECT-16K16945 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K16945 |
イーストケープにおける土器の類型化に関する民族考古学的研究 | 区の製作者、海に隔てられた(3)ノルマンビー島の消費者との関係をフィールドワークによって調査する計画であったが、平成28年度の調査研究によって、イーストケープの製作者を取り巻く社会的ネットワーク解明のための検討課題(1)(2)(3)に関する想定以上のデータを収集することができた。このため、平成29年度は、従前の調査及び平成28年度調査で得られた基礎データの整理とそれらの比較検討を行った。とくに、製作者らの関係性及び生産者と消費者の関係性を考察するためには、検討課題(1)(2)(3)の親族構造、移住の歴史、婚姻関係を把握することが必要不可欠であることから、この点について調査データを比較検討することに重点をおいた。この結果、検討課題(2)(3)について、平成28年度調査での出自集団と婚姻の動態がイーストケープの製作者を取り巻く社会的ネットワークの形成に深く関わっているという予察に、ファミリーツリー及び移住の歴史に関する成果から具体的な裏付けが得られたといえる。なお、研究成果の一部は学術雑誌や国際学会等で発表した。本研究の実施計画は、研究目的を達成するための検討課題として挙げたイーストケープの土器製作者と(1)ワリ島の製作者、(2)イブライ区の製作者、(3)ノルマンビー島の消費者、の関係解明のうち、平成28年度の計画は現地でのフィールドワークによる検討課題(1)の重点的な調査研究と、検討課題(2)の予備的な調査である。また、平成29年度の計画は現地でのフィールドワークによる検討課題(2)と(3)の重点的な調査研究と本研究の総括である。平成28年度のフィールドワーク、及び平成29年度の調査研究によって、研究目的を達成するために必要不可欠と想定していた検討課題(1)(2)(3)を考察するための基盤データはすでに収集できている。したがって、細部については補填的調査を要する可能性はあるが、今後は過去の調査成果と最新の調査成果を総合的に考察し、イーストケープにおける土器の類型化に関する民族考古学的なモデルを構築して本研究を総括したい。本研究は、パプアニューギニア独立国イーストケープの土器づくりの民族誌による土器の類型化に関する民族考古学的なモデルの構築を目的とし、目的の達成に向けてイーストケープの土器製作者と(1)ワリ島の製作者、(2)イブライ区の製作者、(3)ノルマンビー島の消費者らとの関係に主な焦点をあて、イーストケープの製作者を取り巻く社会的ネットワークの解明を課題としている。平成30年度は、前年度までの調査研究の成果と、早稲田大学考古学研究室の調査チームによる調査研究の成果とを総合的に検討した。上記3点の検討課題に則した研究成果の概要は次の通りである。(1)ワリ島の製作技術をもつ女性は、オジとワリ島で生活している間にその妻(ワリ島出身)から技術を学んでおり、異系統技術の獲得には姻族との交流が重要な契機になっている。また、この女性作の模倣土器がワリ島産の土器と瓜二つといっていいほど酷似するのに対し、他の作者の土器ではその外見的特徴のみが模倣されていることから、技術を直接的に体験できる環境がなければ外面的な模倣にとどまることが指摘される。(2)イブライ区の土器づくりは基本的な製作技術は共通するものの、細部にイーストケープには見られない技法が観察される。 | KAKENHI-PROJECT-16K16945 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K16945 |
内在性ウイルス由来エレメントの新機能獲得メカニズムの解明 | ウイルスは宿主となる生物に感染し病気を起こす病原体として認識されることが多いが、稀に感染したウイルスのゲノムが宿主ゲノムに内在化し、生命進化の原動力となる。このように宿主ゲノムに内在化したウイルス由来エレメントはEndogenous viral element (EVE)と呼ばれる。アフリカ獣上目動物はアフリカ大陸で進化した動物で、ゾウやマナティ、ケープハイラックスなどが含まれる。これらの動物ゲノムには、およそ8000万年以上昔に祖先ゲノムに内在化したボルナウイルス(BV)の核タンパク質由来EVE(EBLN)が存在し、機能性タンパク質として発現していることをこれまでの研究で明らかにしてきた。しかし、その機能や進化的な役割は不明である。そこで本研究はEBLNタンパク質の機能の解明を目指し、ゾウと近縁種のケープハイラックス体内におけるEBLNタンパク質(pcEBLN)の発現を解析した。pcEBLNは各組織でmRNAとしてユビキタスに発現していた。そこでpcEBLNのmRNAおよびタンパク質の発現量を組織間で比較したところ、発情期のオスの精巣で特に高く発現していることが明らかになった。そこで免疫染色により発情期と発情が終了したオスの精巣組織におけるpcEBLNの発現局在を比較した。その結果、発情期においてpcEBLNは様々な精子形成過程の精細胞の小胞体と核小体に発現が局在していた。一方、発情が終了した精巣では、精原細胞でのみ発現が観察された。以上の結果より、EBLNはアフリカ獣上目の雄性生殖細胞の維持・分化に関わる機能を果たしている可能性が示唆された。また、BVの核タンパク質は小胞体、核、核小体に局在することが報告されている。従って、pcEBLNは従来のBVの核タンパク質の機能が転用されることによって宿主体内で機能を獲得した可能性が明らかになった。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。ヒトを含め様々な生物のゲノムには、内在化したウイルス由来の塩基配列(EVEs)が数多く存在し、これらEVEsは宿主の進化に寄与してきた。しかし多くのEVEsは、従来、宿主にとって不要であることから、フレームシフトが起こるなどにより進化の過程で遺伝子構造が壊れ、機能を失うことが多い。その中で、進化の過程でORFが維持され続けているEVEsは、宿主体内で蛋白質として発現し、何かしらの機能因子として働くことにより宿主の進化に寄与してきた可能性がある。ゾウやマナティなどが属するアフリカ獣上目動物で発見されたボルナウイルスN遺伝子様配列(EBLN)は、進化の過程で長いORFを8千万年以上も維持し続けており、アミノ酸レベルで負の自然選択圧が検出されている。従って、EBLNはアフリカ獣上目動物の体内で重要な蛋白質として機能している可能性があるが、その蛋白質機能や機能獲得を起こしたメカニズムは不明である。そこで本研究は、アフリカ獣上目動物で発現しているEBLN蛋白質の機能を解明し、EBLN蛋白質がアフリカ獣上目動物の進化の過程で果たして来た役割を明らかにすることを目的とした。アフリカ獣上目EBLNは親水性領域が保存されているため宿主因子と相互作用している可能性がある。そこで共免疫沈降を行ったところ、DNA nu polymerase, TRIM-8, UBA52がEBLN蛋白質と相互作用する候補蛋白質として同定された。一方、ゾウ培養細胞で発現しているEBLNをノックダウンした場合、細胞生存率や遺伝子変動に大きな変化は認められなかった。しかし、ゾウの近縁種であるケープハイラックスの各種臓器ではEBLNがmRNA及び蛋白質として発現していたことから、EBLNはケープハイラックスの体内で機能していることが示唆された。1.ゾウの培養細胞で内因性に発現しているlaEBLNをノックダウンするsiRNAとコントロールsiRNAを設計し、laEBLNをノックダウンした後にゾウ細胞の生存率をコントロールと比較した。しかし、両細胞間で細胞の生存率に有意な差は見られなかった。また、RNAseqによりゾウ細胞で発現しているmRNAの発現変動も比較したが、多重検定を行った統計解析では有意に発現変動を示した遺伝子は同定できなかった。3.生体組織におけるEBLN蛋白質の発現分布を知ることは、EBLN蛋白質の機能を予測する上で有益な情報となる。しかし、これまで研究材料で用いて来たゾウは新鮮組織を得ることが難しいため、組織の発現解析が困難である。ゾウの近縁種であるケープハイラックスはウサギ程のサイズで、広島市安佐動物公園で繁殖させている。そこで、北海道大学の松野先生のご協力を頂き、広島市安佐動物公園から死亡したケープハイラックスの新鮮な組織サンプルを提供して頂いた。またその際にマルミミゾウの血液サンプルも頂くことができた。そこで、ケープハイラックスの各種臓器からmRNAおよび蛋白質を回収し、qRT-PCRおよびウェスタンブロッティングでpcEBLNの発現を解析したところ、pcEBLNのmRNAおよび蛋白質は様々な臓器でユビキタスに発現していた。ウイルスは宿主となる生物に感染し病気を起こす病原体として認識されることが多いが、稀に感染したウイルスのゲノムが宿主ゲノムに内在化し、生命進化の原動力となる。このように宿主ゲノムに内在化したウイルス由来エレメントはEndogenous viral element (EVE)と呼ばれる。アフリカ獣上目動物はアフリカ大陸で進化した動物で、ゾウやマナティ、ケープハイラックスなどが含まれる。 | KAKENHI-PUBLICLY-17H05824 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-17H05824 |
内在性ウイルス由来エレメントの新機能獲得メカニズムの解明 | これらの動物ゲノムには、およそ8000万年以上昔に祖先ゲノムに内在化したボルナウイルス(BV)の核タンパク質由来EVE(EBLN)が存在し、機能性タンパク質として発現していることをこれまでの研究で明らかにしてきた。しかし、その機能や進化的な役割は不明である。そこで本研究はEBLNタンパク質の機能の解明を目指し、ゾウと近縁種のケープハイラックス体内におけるEBLNタンパク質(pcEBLN)の発現を解析した。pcEBLNは各組織でmRNAとしてユビキタスに発現していた。そこでpcEBLNのmRNAおよびタンパク質の発現量を組織間で比較したところ、発情期のオスの精巣で特に高く発現していることが明らかになった。そこで免疫染色により発情期と発情が終了したオスの精巣組織におけるpcEBLNの発現局在を比較した。その結果、発情期においてpcEBLNは様々な精子形成過程の精細胞の小胞体と核小体に発現が局在していた。一方、発情が終了した精巣では、精原細胞でのみ発現が観察された。以上の結果より、EBLNはアフリカ獣上目の雄性生殖細胞の維持・分化に関わる機能を果たしている可能性が示唆された。また、BVの核タンパク質は小胞体、核、核小体に局在することが報告されている。従って、pcEBLNは従来のBVの核タンパク質の機能が転用されることによって宿主体内で機能を獲得した可能性が明らかになった。1. siRNAのノックダウンによる影響が低かった原因として、強制発現したlaEBLN蛋白質は安定性が高そうであったことから、siRNAのノックダウンでは内因性に発現しているEBLN蛋白質を抑制しきれなかった可能性がある。そこで長期的にlaEBLN蛋白質をノックダウンできるsiRNA発現ベクターを用いてゾウ細胞で発現しているlaEBLN蛋白質をノックダウンし、ゾウ細胞の表現系に与える影響(アポトーシスなど)やRNAの発現変動を再度解析し、これまで得られたデータの再現性を確認する。2.質量分析によって同定されたlaEBLN蛋白質と相互作用する可能性がある候補蛋白質が実際にlaEBLN蛋白質と相互作用することを確認するために、内因性に発現している蛋白質を標的とした共免疫沈降反応を行う。また、相互作用する候補蛋白質をノックダウンした際にlaEBLN蛋白質の細胞内局在にどのような影響を与えるのかについても解析する。さらに、laEBLN蛋白質は宿主細胞の核酸(DNAまたはRNA)と相互作用する可能性もあることから、PAR-CLIP法などによりlaEBLN蛋白質に核酸が結合する可能性についても検討する。3. laEBLN蛋白質の小胞体局在シグナルを同定するために、pcEBLN蛋白質の細胞内局在を解析する。もしpcEBLN蛋白質も小胞体に局在した場合、laEBLN蛋白質とpcEBLN蛋白質は共通の小胞体局在シグナルをコードしている可能性がある。小胞体局在シグナルの候補配列が予測された場合、アミノ酸変異を挿入したlaEBLN蛋白質とpcEBLN蛋白質を培養細胞で強制発現し、細胞内局在が変化することを確認することによって小胞体の局在シグナルを同定する。 | KAKENHI-PUBLICLY-17H05824 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-17H05824 |
スタフィロコッカルヌクレアーゼの変異体の作成と折れたたみ機構の解析 | スタフィロコッカルヌクレアーゼ(SNase)の変異体を容易に作成し、さらに大量に獲得できるような大腸菌での発現系を確立した。具体的には、T7プロモーターを有し、ヘルパーファージM13KO7により容易に一本鎖の調製ができる多コピー数プラスミドpMT7を構築し、それにSNaseの遺伝子を導入した(pMT7-SN)。pMT7は、熊谷博士(東大・工)からいただいたプラスミドpUT7(pUC19にpET15bのT7プロモーター領域を導入したもの)に、pUC118のM13oriとマルチクローニング部位とをAatIIとBamHI部位で二重消化後ライゲーションによって導入したものである。pMT7へのSNase遺伝子の導入は、PCR法を用いたSNase遺伝子領域の増幅と5'側にNcoI部位の作成後に、pMT7のNcoI部位とSalI部位の間に挿入することによって行った。pMT7-SNで形質転換した大腸菌BL21(DE3)/pLysSは、IPTGによるインダクション後4時間で大量のSNaseを発現することがSDS-PAGEにより確認された。さらに、このSNaseはInclusion Bodyとしてではなく、活性をもつ状態のまま菌体中に存在することを、SDS-PAGEと活性測定により確かめた。活性から見積られたSNaseの発現量は、1lの大腸菌の培養液あたり約140mgであった。この値は、これまでのlac-tacタンデムプロモーターを用いた系に比べて10倍以上、また、pLプロモーターを用いた系に比べて約23倍にあたる。SNaseの精製は、2回の塩析とゲル濾過及びイオン交換カラムとにより行った。この系により新たに4種類のSNaseのプロリン変異体(P47A,P47T,P56A,P117G)が獲得された。現在、各変異体の巻き戻り反応を各種ストップトフロー法により調べているところである。今後、さらにシャペロニンGroELとの相互作用も調べる予定である。スタフィロコッカルヌクレアーゼ(SNase)の変異体を容易に作成し、さらに大量に獲得できるような大腸菌での発現系を確立した。具体的には、T7プロモーターを有し、ヘルパーファージM13KO7により容易に一本鎖の調製ができる多コピー数プラスミドpMT7を構築し、それにSNaseの遺伝子を導入した(pMT7-SN)。pMT7は、熊谷博士(東大・工)からいただいたプラスミドpUT7(pUC19にpET15bのT7プロモーター領域を導入したもの)に、pUC118のM13oriとマルチクローニング部位とをAatIIとBamHI部位で二重消化後ライゲーションによって導入したものである。pMT7へのSNase遺伝子の導入は、PCR法を用いたSNase遺伝子領域の増幅と5'側にNcoI部位の作成後に、pMT7のNcoI部位とSalI部位の間に挿入することによって行った。pMT7-SNで形質転換した大腸菌BL21(DE3)/pLysSは、IPTGによるインダクション後4時間で大量のSNaseを発現することがSDS-PAGEにより確認された。さらに、このSNaseはInclusion Bodyとしてではなく、活性をもつ状態のまま菌体中に存在することを、SDS-PAGEと活性測定により確かめた。活性から見積られたSNaseの発現量は、1lの大腸菌の培養液あたり約140mgであった。この値は、これまでのlac-tacタンデムプロモーターを用いた系に比べて10倍以上、また、pLプロモーターを用いた系に比べて約23倍にあたる。SNaseの精製は、2回の塩析とゲル濾過及びイオン交換カラムとにより行った。この系により新たに4種類のSNaseのプロリン変異体(P47A,P47T,P56A,P117G)が獲得された。現在、各変異体の巻き戻り反応を各種ストップトフロー法により調べているところである。今後、さらにシャペロニンGroELとの相互作用も調べる予定である。 | KAKENHI-PROJECT-06780525 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06780525 |
失語症者の言語訓練支援ソフトの作成と多様な入力形態装備の日本語入力システムの開発 | 近年、脳卒中による失語症者の増加で、千人におよそ一人患者がいると言われており、症状に応じて様々な失語症訓練が、言語聴覚士により施されている。しかしこれらの訓練で有用な「物の呼称辞典(画像等、呼称名、音声等で構成)」の類は少ない。また失語症者は右手が不自由なケースも多いが、文字入力方法の選択肢は少ない。本研究ではこれらを補う事を目的に、物の呼称辞書を作成し、これを利用した検索、失語症訓練等々のソフトと多様な入力支援するシステムの開発を行った。これらにより、画像と呼称名、合成音声呈示による物の再認識並びに手書き入力、10キー入力、舌等の器官での接触入力による文章の編集等が可能になった。[呼称辞書]:物の画像とデータベースで構成。色々な物を撮影しカテゴリ毎に分類保存した。データベースはこれらの物の画像名、呼称表記[漢字・ひらがな・カタカナ・ヘボン式ローマ字・自由呼称(方言・英語等)]とキーワードで構成される。キーワードは規定のカテゴリー名に加え、使用者が自由に設定可能である。また新たな事物の登録と既存事物の写真の差し替えや追加変更が可能である。[呼称辞書検索ソフト]:データベースと検索キーワード入力により合致した画像の一覧をサムネイル表示し、選択した任意の画像の拡大表示と呼称を漢字・ひらがな・カタカナ・ローマ字・自由呼称で呈示する。また音声ボタンにより合成音声で読み上げる。AquesTalk、OpenJtalk、MicrosoftServerSpeechから音声選択可。[見本合わせプログラム自動生成ソフト]:呼称辞書から選んだ任意の数の「物」を元に、選択肢数、組み合わせ、試行数、呈示場所等のカスタマイズができ、個々の症状に応じたプログラムを容易に生成可能である。[クライアントソフト]:言語聴覚士から提供された見本合わせプログラムを容易に試行する。[書字機能回復ソフト]:タッチペンでの手書き文字を認識してテキスト化、複数の文字候補からの選択や、手書き仮名文字の漢字への変換、音声での読み上げが可能。筆順フォントを使用した任意の文字を呈示し、これをなぞることにより正しい書き方と、また音声による読み上げで文字の再学習や書字機能の回復を行う。[仮想キーボード]:キー配列は通常配列と数種の50音配列から選択可、10キーボードのみを使用した日本語入力。音声による選択中の文字読み上げ、編集部分の拡大表示等が可能である。[1タッチ入力ワープロ]:一定間隔で移動するカーソル上の文字(50音等の表)を一点外部入力(舌等の器官での接触入力)により選択し文章の編集、保存、読み込み等が可能である.近年、脳卒中による失語症者の増加で、千人におよそ一人患者がいると言われており、症状に応じて様々な失語症訓練が、言語聴覚士により施されている。しかしこれらの訓練で有用な「物の呼称辞典(画像等、呼称名、音声等で構成)」の類は少ない。また失語症者は右手が不自由なケースも多いが、文字入力方法の選択肢は少ない。本研究ではこれらを補う事を目的に、物の呼称辞書を作成し、これを利用した検索、失語症訓練等々のソフトと多様な入力支援するシステムの開発を行った。これらにより、画像と呼称名、合成音声呈示による物の再認識並びに手書き入力、10キー入力、舌等の器官での接触入力による文章の編集等が可能になった。[呼称辞書]:物の画像とデータベースで構成。色々な物を撮影しカテゴリ毎に分類保存した。データベースはこれらの物の画像名、呼称表記[漢字・ひらがな・カタカナ・ヘボン式ローマ字・自由呼称(方言・英語等)]とキーワードで構成される。キーワードは規定のカテゴリー名に加え、使用者が自由に設定可能である。また新たな事物の登録と既存事物の写真の差し替えや追加変更が可能である。[呼称辞書検索ソフト]:データベースと検索キーワード入力により合致した画像の一覧をサムネイル表示し、選択した任意の画像の拡大表示と呼称を漢字・ひらがな・カタカナ・ローマ字・自由呼称で呈示する。また音声ボタンにより合成音声で読み上げる。AquesTalk、OpenJtalk、MicrosoftServerSpeechから音声選択可。[見本合わせプログラム自動生成ソフト]:呼称辞書から選んだ任意の数の「物」を元に、選択肢数、組み合わせ、試行数、呈示場所等のカスタマイズができ、個々の症状に応じたプログラムを容易に生成可能である。[クライアントソフト]:言語聴覚士から提供された見本合わせプログラムを容易に試行する。[書字機能回復ソフト]:タッチペンでの手書き文字を認識してテキスト化、複数の文字候補からの選択や、手書き仮名文字の漢字への変換、音声での読み上げが可能。筆順フォントを使用した任意の文字を呈示し、これをなぞることにより正しい書き方と、また音声による読み上げで文字の再学習や書字機能の回復を行う。[仮想キーボード]:キー配列は通常配列と数種の50音配列から選択可、10キーボードのみを使用した日本語入力。音声による選択中の文字読み上げ、編集部分の拡大表示等が可能である。[1タッチ入力ワープロ]:一定間隔で移動するカーソル上の文字(50音等の表)を一点外部入力(舌等の器官での接触入力)により選択し文章の編集、保存、読み込み等が可能である. | KAKENHI-PROJECT-24906009 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24906009 |
ダブルアフィンヘッケ環の表現の構造についての研究 | ダブルアフィンHecke環とは、Cherednikによって90年代に導入された代数で、量子可積分系や多変数直交多項式系など多岐の話題に繋がりをもつ対象である。この代数は、ルート系に付随して定義され、いくつかのパラメータを含み、また多変数Laurent多項式環上への表現を持つことが知られている。この表現は多項式表現と呼ばれている。多項式表現は、代数の持つパラメータが一般の場合については既約性や半単純性などの性質が既に示されているが、パラメータが特殊の場合については未だ知られていないことが多い。研究代表者は、平成19年度に出版された共著論文において、GL型ダブルアフィンHecke環の多項式表現を用いて、量子Knizhnik-Zamolodchikov方程式(以下、量子KZ方程式と呼ぶ)の多項式解を構成じた。この論文では、代数の持つパラメータを特殊化した状況下での非対称Macdonald多項式の性質を用いることで、従来考えられていなかったような量子KZ方程式の多項式解を統一的に構成することに成功した。また研究代表者は、(C^V,G)型ダブルアフィンHecke環の多項式表現について、考えられる様々なパラメータ特殊化の下での表現の構造(既約性、半単純性等)を調べた。さらにそのパラメータ特殊化の下で、非対称Koornwinder多項式の拡張を導入し、表現の線形基底の構成法を示した。この研究結果は、平成20年3月の日本数学会において発表された。私は、A型(GL型)ダブルアフィンHecke環の多項式表現を研究した。代数の持つパラメータが一般の時は多項式表現が既約になることがすでに知られている。私は、代数のパラメータがどのような関係式を満たすときに表現の既約性が崩れるかを調べ、そのようなパラメータの元で現れる部分表現の有限増大列I_1,I_2,...,I_Nを、Laurent多項式に対する零点条件を用いて統一的に記述した。この部分表現の列は多項式表現の組成列になっていることが期待される。私は実際にいくつかの部分についてはこの予想を直接的に証明し、特にもっとも小さい部分I_1については、既約性の証明に加え、非対称Macdonald多項式を用いて具体的な基底を記述した。この研究成果については、2005年度日本数学会年会および第8回代数群と量子群の表現論研究集会において成果発表を行った。また、このI_1についてはPasquier, Di-Francesco, Zinn-Justinらにより変形量子Hall効果や量子Knizhnik-Zamolodchikov方程式との関連があることが最近指摘された。この点について、私は、フランスCEAサクレー研究所所属のPasquier氏と研究打ち合わせを重ね、I_1のある部分空間と、円盤上のリンクパターンのなす空間が、互いにアフィンTemperley-Lieb代数(アフィンHecke環のある商代数)の双対表現の関係になっていることを導いた。この件については、京都大学数理解析研究所および数学教室とソウル大学数学教室との若手数学者交流会において、成果発表を行った。私は,GL型アフィンHecke環(AHA)およびダブルアフインHecke環(DAHA)の多項式表現を用いて,量子Knizhnik-Zamolodchikov方程式(qKZ方程式)の多項式解を構成した.AHAとはアフィンWeyl群を変形したものであり,DAHAとはAHAを拡張する形でI.Cherednikにより導入された代数である.GL型DAHAは代数のパラメータを2つ持ち,その多項式表現については,パラメータが一般の場合は既約であることが知られている.また17年度出版された私の成果によると,あるパラメータ特殊化Sの下では,ある零点条件を用いて部分表現の列が構成できる.一方,I.Frenkel, N.Reshetikhinによって導入されたqKZ方程式とは,量子群の表現に関する頂点作用素の行列要素が満たす差分方程式系である.これまでに,レベル1の場合は頂点作用素のボソン化(小山佳孝氏による)を用いて中屋敷厚氏により多項式解が与えられており,また私とV.Pasquier氏との最近の共同研究では,特別な非対称Macdonald多項式を用いて,レベル-1/2の特別な多項式解が得られていた.私は竹山美宏氏(筑波大)との共同研究で,DAHAの多項式表現や非対称Macdonald多項式を用いて,qKZ方程式の多項式解を構成した.この構成では,代数のパラメータが一般,特殊(S)の場合に応じてそれぞれ方程式のレベルが一般,有理数の場合の解ができる.特に,前述のレベル1や-1/2の解は我々の手法で再構成される.ダブルアフィンHecke環とは、Cherednikによって90年代に導入された代数で、量子可積分系や多変数直交多項式系など多岐の話題に繋がりをもつ対象である。この代数は、ルート系に付随して定義され、いくつかのパラメータを含み、また多変数Laurent多項式環上への表現を持つことが知られている。この表現は多項式表現と呼ばれている。多項式表現は、代数の持つパラメータが一般の場合については既約性や半単純性などの性質が既に示されているが、パラメータが特殊の場合については未だ知られていないことが多い。研究代表者は、平成19年度に出版された共著論文において、GL型ダブルアフィンHecke環の多項式表現を用いて、量子Knizhnik-Zamolodchikov方程式(以下、量子KZ方程式と呼ぶ)の多項式解を構成じた。この論文では、代数の持つパラメータを特殊化した状況下での非対称Macdonald多項式の性質を用いることで、従来考えられていなかったような量子KZ方程式の多項式解を統一的に構成することに成功した。 | KAKENHI-PROJECT-05J02106 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05J02106 |
ダブルアフィンヘッケ環の表現の構造についての研究 | また研究代表者は、(C^V,G)型ダブルアフィンHecke環の多項式表現について、考えられる様々なパラメータ特殊化の下での表現の構造(既約性、半単純性等)を調べた。さらにそのパラメータ特殊化の下で、非対称Koornwinder多項式の拡張を導入し、表現の線形基底の構成法を示した。この研究結果は、平成20年3月の日本数学会において発表された。 | KAKENHI-PROJECT-05J02106 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05J02106 |
弾性波と電磁場応答を統合したコンクリート中鋼材表層部の腐食の非破壊評価手法 | 研究目的を達成するため、H30年度は以下のI、IIのテーマを設定し、研究・開発を行った。I.鋼材腐食の初期段階を精度良く検出可能とする磁場発生方法の開発、II.微小な弾性波と電磁場応答を高感度に検出できる受信システムの開発。Iでは、大電流により磁場の急峻な立上がりを実現するパルス電流発生装置を実現するため、まずは飽和磁束の下で数kHz数100kHzの交流磁場を印加できる計測システムの開発を行った。また、IIでは、動的磁場の影響をキャンセルし、鋼材表層で発生する10μ100μTレベルの微小磁場を選択的に検出可能な計測条件の評価を行った。また、対象とする周波数領域において十分な検出感度を有するサーチコイル方式の電磁場検出センサを構築した。次に、交流磁場を発生する電流を参照信号とし、電磁場検出センサで計測された電磁場応答のロックイン検波(位相敏感検波)により、鋼材表層性状の変化を高精度に測定する高度信号処理手法を試み、性能評価を行った。また、これらの評価対象として、コンクリート中鋼材の評価モデルを電食により作製し、鋼材腐食の初期段階における腐食状況を大気中で再現することにより、磁場発生方法、電磁場検出センサの基本性能評価に供した。具体的には高周波交流電源(500kHz)を適用し、位相敏感検波方式を導入することにより、平板鋼材を対象に薄板鋼材により腐食層を模擬し、腐食による鋼材表面の形状変化(厚さ0.11mm)が電磁場応答に与える影響を評価した。また、鋼材を電食により腐食させた試験体において、電食による減肉厚約50μmにて鋼材表面の形状変化が検出できることを確認した。また、腐食条件を変え腐食部の大きさの検出限界の把握を行った。高周波交流磁場の電磁場応答に関する基礎評価を優先し、平板鋼板を対象とした評価段階にある。今後、具体的な構造物を対象としたコンクリート中鋼材に対して評価を進める。一方、H30年度研究の結果、弾性波応答による腐食層の検出よりも電磁場応答による腐食層の検出の方が検出感度が高いと判断されたため、今後は電磁場応答による腐食層の検出を優先して研究開発し、実験による評価も電磁場応答の検出評価を主体に推進する予定である。以上の結果、さらに検出感度の改善が必要と判断された場合は、弾性波応答による腐食層の検出についても追加検討を行う。H31年度は、実構造物に対応した評価対象ごとに手法の検討、評価を行う。具体的な評価対象としては、A.コンクリート埋設鋼板(平板、鋼管)、B.コンクリート中鉄筋を対象とする計画である。研究テーマとしては、1鋼材腐食の初期段階を精度良く検出可能とする磁場発生方法の検討において、電磁場入力条件(発振周波数、励磁コイル形状・巻数)の最適化、磁路の最適化、コア付き励磁コイル(フェライト、電磁鋼板コア)による検出精度の改善、検出感度の定量的評価を実施予定。2微小な電磁場応答を高感度に検出できる受信システムの検討において、計測配置の最適化(理論検討、解析を援用)、差動型磁気計測回路の評価、磁気勾配検出回路(グラジオメータ方式)、腐食を模擬した局所電流ループモデルの理論化、解析(PHOTO-eddy)を実施予定。3電磁場応答から鋼材腐食を検出するための信号処理・データ解析システムの開発においては、供試体(A、B)の製作、腐食ステージの評価、腐食範囲の可視化検討を進める予定である。当初、弾性波と電磁場応答を統合的に評価することにより、鋼材腐食の初期段階から進展期、加速期に至る諸状況を多面的に把握・可視化できる統合型信号処理・データ処理システムの開発を行うとしていたが、電磁場応答の振幅・位相差情報を評価指標とし、健全な鋼材部の指標値に対して局所的に変化する領域をマッピング処理することにより、腐食段階、腐食範囲を可視化する手法で研究評価を進める。研究目的を達成するため、H30年度は以下のI、IIのテーマを設定し、研究・開発を行った。I.鋼材腐食の初期段階を精度良く検出可能とする磁場発生方法の開発、II.微小な弾性波と電磁場応答を高感度に検出できる受信システムの開発。Iでは、大電流により磁場の急峻な立上がりを実現するパルス電流発生装置を実現するため、まずは飽和磁束の下で数kHz数100kHzの交流磁場を印加できる計測システムの開発を行った。また、IIでは、動的磁場の影響をキャンセルし、鋼材表層で発生する10μ100μTレベルの微小磁場を選択的に検出可能な計測条件の評価を行った。また、対象とする周波数領域において十分な検出感度を有するサーチコイル方式の電磁場検出センサを構築した。次に、交流磁場を発生する電流を参照信号とし、電磁場検出センサで計測された電磁場応答のロックイン検波(位相敏感検波)により、鋼材表層性状の変化を高精度に測定する高度信号処理手法を試み、性能評価を行った。また、これらの評価対象として、コンクリート中鋼材の評価モデルを電食により作製し、鋼材腐食の初期段階における腐食状況を大気中で再現することにより、磁場発生方法、電磁場検出センサの基本性能評価に供した。具体的には高周波交流電源(500kHz)を適用し、位相敏感検波方式を導入することにより、平板鋼材を対象に薄板鋼材により腐食層を模擬し、腐食による鋼材表面の形状変化(厚さ0.11mm)が電磁場応答に与える影響を評価した。 | KAKENHI-PROJECT-18K18883 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K18883 |
弾性波と電磁場応答を統合したコンクリート中鋼材表層部の腐食の非破壊評価手法 | また、鋼材を電食により腐食させた試験体において、電食による減肉厚約50μmにて鋼材表面の形状変化が検出できることを確認した。また、腐食条件を変え腐食部の大きさの検出限界の把握を行った。高周波交流磁場の電磁場応答に関する基礎評価を優先し、平板鋼板を対象とした評価段階にある。今後、具体的な構造物を対象としたコンクリート中鋼材に対して評価を進める。一方、H30年度研究の結果、弾性波応答による腐食層の検出よりも電磁場応答による腐食層の検出の方が検出感度が高いと判断されたため、今後は電磁場応答による腐食層の検出を優先して研究開発し、実験による評価も電磁場応答の検出評価を主体に推進する予定である。以上の結果、さらに検出感度の改善が必要と判断された場合は、弾性波応答による腐食層の検出についても追加検討を行う。H31年度は、実構造物に対応した評価対象ごとに手法の検討、評価を行う。具体的な評価対象としては、A.コンクリート埋設鋼板(平板、鋼管)、B.コンクリート中鉄筋を対象とする計画である。研究テーマとしては、1鋼材腐食の初期段階を精度良く検出可能とする磁場発生方法の検討において、電磁場入力条件(発振周波数、励磁コイル形状・巻数)の最適化、磁路の最適化、コア付き励磁コイル(フェライト、電磁鋼板コア)による検出精度の改善、検出感度の定量的評価を実施予定。2微小な電磁場応答を高感度に検出できる受信システムの検討において、計測配置の最適化(理論検討、解析を援用)、差動型磁気計測回路の評価、磁気勾配検出回路(グラジオメータ方式)、腐食を模擬した局所電流ループモデルの理論化、解析(PHOTO-eddy)を実施予定。3電磁場応答から鋼材腐食を検出するための信号処理・データ解析システムの開発においては、供試体(A、B)の製作、腐食ステージの評価、腐食範囲の可視化検討を進める予定である。当初、弾性波と電磁場応答を統合的に評価することにより、鋼材腐食の初期段階から進展期、加速期に至る諸状況を多面的に把握・可視化できる統合型信号処理・データ処理システムの開発を行うとしていたが、電磁場応答の振幅・位相差情報を評価指標とし、健全な鋼材部の指標値に対して局所的に変化する領域をマッピング処理することにより、腐食段階、腐食範囲を可視化する手法で研究評価を進める。1鋼材腐食の初期段階を精度良く検出可能とする磁場発生方法の検討において、大電流により磁場の急峻な立上がりを実現するパルス電流発生装置につき、H31年度も継続して検討を進める。このため、H30年度実施額の一部をH31年度において使用予定。また、磁路の最適化、コア付き励磁コイル(フェライト、電磁鋼板コア)による検出精度の改善、磁路の改善による検出感度の評価をH30年度の検討に引き続き、H31年度も継続して実施予定。2微小な電磁場応答を高感度に検出できる受信システムの検討において、差動型磁気計測回路の評価、磁気勾配検出回路(グラジオメータ方式)、腐食を模擬した局所電流ループモデルの理論化、解析(PHOTO-eddy)をH31年度実施予定。3電磁場応答から鋼材腐食を検出するための信号処理・データ解析システムの開発、供試体(A、B)の製作、腐食ステージの評価、腐食範囲の可視化検討を予定通り進める予定である。 | KAKENHI-PROJECT-18K18883 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K18883 |
新生児期におけるグルタチオンペルオキシダンゼの発言とその合成能の変化 | 新生児期心筋の虚血再灌流障害が成熟心筋に比べて強く出現することの原因を探るため、フリーラジカルスカベンジャーの一つであるグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)活性に注目し以下の実験を行った。実験1:生後1日目(N群)、7日目(P群)、成熟ラット(A群)を用い、心筋内のグルタチオンペルオキシダーゼ活性と、その原料となるセレン濃度、セリン濃度を測定した。その結果、セレンはN:4.95±2.03, P:4.98±2.03, A:4.34±1.69と有意差を認めず、セリンはN:24.88±3.28, P:17.00±1.19, A:6.40±0.73と全ての群間で有意差を認め、新生仔ラット心筋に高濃度で含まれていた。GPx活性はN:58.66±2.46, P:101.76±3.35,A:115.80±15.02とNとP、A間で有意差を認め、成熟ラットで高濃度に認めた。以上により、胎児期は低酸素状態にありフリーラジカルの発生も少ないためGPx合成が低く、出生後酸素に暴露されることにより促進されるのではないかと考察された。実験2:そこで生後1日目、3日目、7日目のラットを用い、コントロール群(C群)、低酸素、高酸素の負荷を加えた群(P群)、出生前1週間より妊娠ラットに対し高酸素負荷を行った群(O群)、O群に酸素負荷を加えた群(OP群)を作成し、GPx活性を測定した。その結果、生後1日目ではC:58.66±2.46, P:62.54±2.70, O:64.20±2.58, OP:67.20±3.61、3日目ではC:87.24±1.42, P:90.05±2.82, O:94.92±4.44, OP:98.92±3.89とCに比べてO、OPで有意に上昇していた。生後7日目では有意差を認めなかった。これらの結果、GPx合成は胎児期にはあまり合成されず、出生後合成が促進されることが示唆された。またさらに出生前に高酸素負荷を加えることにより、GPx合成が促進されることが示唆された。新生児期心筋の虚血再灌流障害が成熟心筋に比べて強く出現することの原因を探るため、フリーラジカルスカベンジャーの一つであるグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)活性に注目し以下の実験を行った。生後1日目(N)、7日目(P)、成熟ラット(A)を用い、心筋内のグルタチオンペルオキシダーゼ活性と、その原料となるセレン濃度、セリン濃度を測定した。その結果、セレンはN:4.95±2.03,P:4.98±2.03,A:4.34±1.69と有意差を認めず、セリンはN:24.88±3.28,P:17.00±1.19,A:6.40±0.73と全ての群間で有意差を認めた。GPx活性はN:58.66±2.46,P:101.76±3.35,A:115.80±15.02とNとP、A間で有意差を認めた。以上により、胎児期は低酸素状態にありフリーラジカルの発生も少ないためGPx合成が低く、出生後酸素に暴露されることにより促進されるのではないかと考察された。そこで生後1日目、3日目、7日目のラットを用い、コントロール群(C)、低酸素、高酸素の負荷を加えた群(P)、出生前1週間より妊娠ラットに対し高酸素負荷を行った群(O)、O群に酸素負荷を加えた群(OP)を作成し、GPx活性を測定した。その結果、生後1日目ではC:58.66±2.46,P:62.54±2.70,O:64.20±2.58,OP:67.20±3.61、3日目ではC:87.24±1.42,P:90.05±2.82,O:94.92±4.44,OP:98.92±3.89とCに比べてO、OPで有意に上昇していた。生後7日目では有意差を認めなかった。これらの結果、GPx合成は胎児期はあまり合成されず出生後合成が促進され、さらに出生前に高酸素負荷を加えることにより、GPx合成が促進されることが示唆された。新生児期心筋の虚血再灌流障害が成熟心筋に比べて強く出現することの原因を探るため、フリーラジカルスカベンジャーの一つであるグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)活性に注目し以下の実験を行った。実験1:生後1日目(N群)、7日目(P群)、成熟ラット(A群)を用い、心筋内のグルタチオンペルオキシダーゼ活性と、その原料となるセレン濃度、セリン濃度を測定した。その結果、セレンはN:4.95±2.03, P:4.98±2.03, A:4.34±1.69と有意差を認めず、セリンはN:24.88±3.28, P:17.00±1.19, A:6.40±0.73と全ての群間で有意差を認め、新生仔ラット心筋に高濃度で含まれていた。 | KAKENHI-PROJECT-12770719 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12770719 |
新生児期におけるグルタチオンペルオキシダンゼの発言とその合成能の変化 | GPx活性はN:58.66±2.46, P:101.76±3.35,A:115.80±15.02とNとP、A間で有意差を認め、成熟ラットで高濃度に認めた。以上により、胎児期は低酸素状態にありフリーラジカルの発生も少ないためGPx合成が低く、出生後酸素に暴露されることにより促進されるのではないかと考察された。実験2:そこで生後1日目、3日目、7日目のラットを用い、コントロール群(C群)、低酸素、高酸素の負荷を加えた群(P群)、出生前1週間より妊娠ラットに対し高酸素負荷を行った群(O群)、O群に酸素負荷を加えた群(OP群)を作成し、GPx活性を測定した。その結果、生後1日目ではC:58.66±2.46, P:62.54±2.70, O:64.20±2.58, OP:67.20±3.61、3日目ではC:87.24±1.42, P:90.05±2.82, O:94.92±4.44, OP:98.92±3.89とCに比べてO、OPで有意に上昇していた。生後7日目では有意差を認めなかった。これらの結果、GPx合成は胎児期にはあまり合成されず、出生後合成が促進されることが示唆された。またさらに出生前に高酸素負荷を加えることにより、GPx合成が促進されることが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-12770719 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12770719 |
高圧含水マグネシウムケイ酸塩の構造と物性に関する理論的研究 | 本研究の目的は地球内部への水の輸送にかかわる,また地球内部における水の貯蔵相になり得る高圧含水マグネシウムケイ酸塩(DHMS)の構造と物性を明らかにすることである。DHMSの中でも特にマントル遷移層や下部マントル圧力条件下において安定な含水D相、スーパーハイドラスB相、含水B相、含水Y相を対象に研究を行う。高圧下での実験による水素位置の決定は技術的に難しいため、第一原理電子状態計算によって理論的にそれを決定する。本研究に用いた計算手法は擬ポテンシャル法に基づく第一原理電子状態計算法である。まず水素位置を決定し、実験で報告されている格子定数との比較により計算結果の検証を行った。さらに高圧下での圧縮挙動について調べた。計算により得られた圧縮挙動は非常に実験結果と一致した。さらにこの含水D相の水素結合は40GPa以上で対称化され、水素が隣り合う酸素の中間に存在することが予想された。この圧力誘起水素結合対称化転移により含水D相の圧縮挙動が明らかに影響を受けることも判明した。体積弾性率はこの構造変化により20%以上増加する。この転移は、以前報告したδ-AlOOHの圧縮挙動と類似する。転移圧は水素の量子性や温度効果を考慮するとさらに下がることが予想され、実測で報告されている20GPa付近での圧縮挙動の不連続変化と関係すると考えられる。さらに実験結果との比較のために、この含水D相の高圧下における第一原理格子振動計算を行った。O-H伸縮振動の振動数が加圧に伴い、水素結合対称化転移圧まで急激に減少し、対称化後はわずかに増加傾向にあることが判明した。これは氷の高圧相の格子振動測定とも調和的である。本研究の目的は地球内部への水の輸送にかかわる、また地球内部における水の貯蔵相になり得る高圧マグネシウムケイ酸塩(DHMS)の構造と物性を明らかにすることである。DHMSの中でも特にマントル遷移層や下部マントル圧力条件下において安定な含水D相、スーパーハイドラスB相,含水β相、含水γ相を対象に研究を行う。本年度は高圧含水マグネシウムケイ酸塩の中でも最も高圧で安定である含水D相の第一原理電子状態計算を行った。高圧下での実験による水素位置の決定は技術的に非常に難しいため,第一原理電子状態計算によって理論的にそれを決定する。本研究に用いた計算手法は擬ポテンシャル法に基づく第一原理電子状態計算法である。まず、信頼できる計算結果を得るために擬ポテンシャルの作成と計算条件の決定を行った。さらに水素位置を決定し、実験で報告されている格子定数との比較により計算結果の検証を行った。さらに高圧下での圧縮挙動について調べた。計算により得られた圧縮挙動は非常に実験結果とよく一致した。さらにこの含水D相の水素結合は40GPa以上で対称化され、水素が隣り合う酸素の中間に存在することが明らかになった。この圧力誘起水素結合対称化転移により含水D相の圧縮挙動が明らかに影響を受けることも判明した。体積弾性率はこの構造変化により20%以上増加する。この圧力誘起水素結合対称化転移は非常にδ-AIOOHの圧縮挙動と類似する。転移圧は、水素の量子性や温度効果を考慮するとさらに下がることが予想され、実測で報告されている20GPa付近での圧縮挙動の不連続変化と非常に調和的である。本研究の目的は地球内部への水の輸送にかかわる,また地球内部における水の貯蔵相になり得る高圧含水マグネシウムケイ酸塩(DHMS)の構造と物性を明らかにすることである。DHMSの中でも特にマントル遷移層や下部マントル圧力条件下において安定な含水D相、スーパーハイドラスB相、含水B相、含水Y相を対象に研究を行う。高圧下での実験による水素位置の決定は技術的に難しいため、第一原理電子状態計算によって理論的にそれを決定する。本研究に用いた計算手法は擬ポテンシャル法に基づく第一原理電子状態計算法である。まず水素位置を決定し、実験で報告されている格子定数との比較により計算結果の検証を行った。さらに高圧下での圧縮挙動について調べた。計算により得られた圧縮挙動は非常に実験結果と一致した。さらにこの含水D相の水素結合は40GPa以上で対称化され、水素が隣り合う酸素の中間に存在することが予想された。この圧力誘起水素結合対称化転移により含水D相の圧縮挙動が明らかに影響を受けることも判明した。体積弾性率はこの構造変化により20%以上増加する。この転移は、以前報告したδ-AlOOHの圧縮挙動と類似する。転移圧は水素の量子性や温度効果を考慮するとさらに下がることが予想され、実測で報告されている20GPa付近での圧縮挙動の不連続変化と関係すると考えられる。さらに実験結果との比較のために、この含水D相の高圧下における第一原理格子振動計算を行った。O-H伸縮振動の振動数が加圧に伴い、水素結合対称化転移圧まで急激に減少し、対称化後はわずかに増加傾向にあることが判明した。これは氷の高圧相の格子振動測定とも調和的である。 | KAKENHI-PROJECT-03J10333 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03J10333 |
日本人大学生の英文要約の評価に関する研究:分析的な評価尺度の開発と運用 | 本研究では、第二言語(L2)で書かれた文章を読み、その要点を対象言語でまとめる要約(Summary writing)を取り扱い、その中でも、評価ーとりわけ評価尺度(Scoring rubric)ーに焦点を当てた。研究I研究IIIの一連の研究を行い、独自の分析的評価尺度である「L2要約用分析的評価尺度/ Analytic Rating Scale for L2 Summary Writing」を開発した。この評価尺度には、「内容」「言い換え(質)」「言い換え(量)」「言語使用」、そして「全体的な要約の質」の5観点が含まれる。平成24年度は、日本人大学生が書いた英文要約(サマリーライティング)評価用の分析的評価尺度を開発するために、主に以下の2つの事柄を行った。1.分析的評価尺度の内容・形式に関する調査イギリスの大学院で応用言語学を研究している複数の研究者に依頼し、実際に日本人大学生の英文要約の評価を行ってもらうとともに、評価尺度の改善点を指摘を行ってもらった。併せて、日本人大学生の指導に従事している複数の大学教員(本研究グループのメンバー外)にも同様の依頼を行った。平成23年度の終わりに収集したこの評価結果データを分析した結果、既存の尺度には含まれていない内容である「言い換え(パラフレーズ)」の評価が重要であることが分かった。また、尺度の形式としては「できる」というCan-do形式を取ることが望ましいことが分かった。そのため、本研究課題で開発する尺度では「言い換え」に特化した項目を含み、かつCan-do形式を取ることになった。2.分析的尺度の暫定版の作成と専門家の判断上記1の結果を踏まえ、「内容」「言い換えの量」「言い換えの質」「言語使用」の4観点からなる暫定版の評価尺度(英語・日本語のバイリンガル仕様)を作成した。この評価尺度に対して、研究代表者・分担者・協力者が試用を繰り返し、内容や形式、文言の修正を行った。さらに、「専門家の判断(expert judgment)」として、言語テストの分野で多くの研究業績を有する研究者3名に改善のための意見を尋ねた。現在は、上記2で得られた意見の集計と、それを反映した尺度の修正を行っている。平成25年度は、平成24年度の研究にて暫定的に得られた要約評価用の評価尺度を精緻化するために、言語テスティングの専門家3名に対して「専門家の判断(expert judgment)」を求め、得られたコメントを集約することで尺度の改善を行った。その際には、以下の3点を観点として取り入れた。(1)評価のみを目的とした尺度ではなく、指導時にも到達目標とすることができる尺度とする。(2)観点が多く複雑にならないようにし、その記述子を簡潔なものとする。(3)英語母語話者教員、日本人大学教員、大学生が使いやすいように日英語併記とする。その結果、評価尺度の記述子の修正が行われ、「全体的な要約の質(Overall Quality)」の追加が行われ、5つの観点の評価尺度となった。そして、「全体的な要約の質」の観点を含めた場合、世界的に用いられているETS (Educational Testing Service)の尺度よりも高い採点者間信頼性が確認された。ただし、評定者数を減らした場合の一般化可能性係数は十分とはいえず、観点の解釈の補助、および評定者トレーニングの余地があることが確認された。この「専門家の判断」による評価尺度の改良を受けて、外部評価者(英語母語話者3名、日本人英語教員3名)に対して、改良版の評価尺度の試用を依頼した。得られた評価結果を量的に、そして評価における記述コメントを質的に分析することで、以下のことが分かった。(a)改良された5つの観点の評価尺度の信頼性は高く、また評価者からのコメントも好意的なものであった。(b)その高い信頼性は、「全体的な要約の質」の項目を追加したことによって得られていると判断された。本研究では、第二言語(L2)で書かれた文章を読み、その要点を対象言語でまとめる要約(Summary writing)を取り扱い、その中でも、評価ーとりわけ評価尺度(Scoring rubric)ーに焦点を当てた。研究I研究IIIの一連の研究を行い、独自の分析的評価尺度である「L2要約用分析的評価尺度/ Analytic Rating Scale for L2 Summary Writing」を開発した。この評価尺度には、「内容」「言い換え(質)」「言い換え(量)」「言語使用」、そして「全体的な要約の質」の5観点が含まれる。平成23年度は、日本人大学生が書いた英文要約(サマリーライティング)評価用の分析的評価尺度を開発するために、主に以下の2つの研究を行った。1.日本人大学生が書く要約評価における総合的尺度の問題点の把握本研究グループ(研究代表者,研究分担者,研究協力者の3名)によって、EFL/ESL環境の学習者を対象とした、要約・リーディング・ライティングの評価における先行研究の文献研究を行った。同時に、本研究グループの3名が、日本人大学生が書いた英文要約(2大学の学生、計100名の要約)を既存の総合的評価尺度を用いて個別に評価し、その結果を量的・質的観点からまとめた。これらの作業を通して、これまで英文要約の評価に用いられてきた既存の総合的評価尺度の問題点を指摘した。2.複数の下位技能からなる分析的評価尺度の開発 | KAKENHI-PROJECT-23520725 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23520725 |
日本人大学生の英文要約の評価に関する研究:分析的な評価尺度の開発と運用 | 上記1の結果を踏まえ、客観的な方法で分析的評価尺度の項目を得るために、イギリスの大学院で応用言語学を研究している複数の研究者に依頼し、実際に日本人大学生の英文要約の評価を行ってもらうとともに、評価尺度の改善点を指摘を行ってもらった。併せて、日本人大学生の指導に従事している複数の大学教員(本研究グループのメンバー外)にも同様の依頼を行った。これらの調査は、多角的な視点から、分析的評価尺度の望ましい(下位)項目を得るために行われた。これらの結果のうち、1については国際学会での発表を行い、国際学術雑誌に論文投稿中である。また、2についてはデータ収集を終え、現在分析を進めている。交付申請書の目的から若干の方向修正はあったものの、研究成果の公表に関しては国内の全国規模の学会での発表や国際学術誌への投稿を行うなど、総合すると、おおむね当初の「研究の目的」にそった進展があったものと評価できる。交付申請書の目的から若干の方向修正はあったものの、研究成果の公表に関しては国際学会での発表や国際学術誌への投稿を行うなど、当初の計画以上に進展が見られた部分もあった。総合すると、おおむね「研究の目的」にそった進展があったものと評価できる。交付申請書に記載したとおり、暫定的に開発した要約評価用の尺度の改善・修正を行う。その際に、「専門家の判断(expert judgment)」によって得られたデータを分析し、より信頼性と妥当性、そして実用性の高い尺度へと精緻化する。併せて、異なるタスクや対象者に対する研究を行うことで、評価尺度を用いた指導と評価の適用可能性を高めることを目指す。また、最終年度である次年度(平成25年度)は、得られた成果を公表し、指導や評価の経験のある教員から広く意見を得る機会をできる限り設ける。そのため、通常の学会発表以外に、ワークショップ等を開催することで、知見の公表を行うとともに、フィードバックを本研究に取り入れることを目指す。基本的に、計画通りの研究推進を予定している。年度末に学会参加・資料収集のために赴いた海外出張において、当初予定していた渡航額に満たなかったため、12,748円の研究費が未使用のまま繰り越された。次年度(平成25年度)はその分の研究費を、上記「推進方策」に記載したように知見の公表のために有効に活用することで、研究のより効果的な推進を目指す予定である。基本的に、計画通りの使用を予定している。 | KAKENHI-PROJECT-23520725 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23520725 |
生物の生き残り戦略にみられる表現型可塑性を生み出すゲノム遺伝子相関の解明 | (1)自家和合性の進化にみられる共通パターン有性生殖のとくに自家不和合性反応では、雄と雌の利害対立とゲノム相関が重要な役割を果たす。新学術領域での共同研究の成果により、多くの自然種で繰り返して、雄特異性因子の変異で自家和合性が進化したことなど、適応進化での分子レベルでの法則性がみえてきた。これらについて、自殖についての総説を執筆した。現在、高山研究室との共同研究で、倍数体が自家和合性になるためにエピジェネティックな制御が重要である可能性の研究を進めている。(2)異質倍数体での両親ゲノムの組み合わせ異質倍数体は、両親種のゲノムが組み合わさっており、ゲノム相関の解析のモデル系だが、これまで倍数体ゲノムの複雑さのためにほとんど解析が進んでいなかった。そこで、RNA-seq手法HomeoRoqを開発し、シロイヌナズナ属異質倍数体ミヤマハタザオの解析を進めている。ミヤマハタザオは片親ハクサンハタザオから重金属蓄積能を、もう片親のセイヨウミヤマハタザオから低温応答を受け継いで組み合わせてジェネラリストになることで分布域を拡大したことが示唆された。一方、これらのストレス応答遺伝子は異質倍数体では親の半分程度に下がっており、倍数体であることの代償(トレードオフ)のためにスペシャリストである親と競争しても勝てないことが示唆された。カルダミネ属植物C. amaraとC. hirsuta、およびそれらを両親種とする異質倍数体種C. flexuaosaにおいて、環境に応答して発現パターンの変わる遺伝子を網羅的に探索した。シロイヌナズナで孔辺細胞の大きさを制御するMPK12を調べたところ、C. amaraとC. hirsutaでリン酸化されると予測される部位に多型があり、C. flexuosaはどちらのホメオログも保持していた。またC. hirsutaタイプのMPK12がシロイヌナズナのmpk12変異体をより相補することがわかった。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。生物の存続は環境への適応に依存する。変動する環境に順応すること、配偶体の数や大きさを適切に制御すること、また雌にとっては受け入れる雄ゲノムを選別することは、生物個体が生存し次世代を残すにあたり重要な課題である。本研究では、複雑なゲノム構造を持つ異質倍数体植物の環境応答可塑性の遺伝的基盤を明らかにする。また、様々な生物の配偶体発生に関わる遺伝子を明らかにし、動植物に共通される傾向とそれぞれの分子機構の理解を目指している。<1.両親ゲノムがもたらす異質倍数体種の水環境適応に関する可塑性の遺伝的基盤の解明>異なる水環境に生育する両親種の出会いにより生じた異質倍数体種が幅広い環境に適応する際に、両親種由来のゲノムのどのような相関により発生学的特徴・遺伝子変化がもたらされたか、アブラナ科の異質倍数体植物Cardamine flexuosaやミヤマハタザオ・タチスズシロソウと、これを再現した人工倍数体を用いてその遺伝的基盤を解析した。環境が変化した際にホメオログ館の発現比が大きく変化する遺伝子を見出した。<2.親ゲノムによる配偶体への資源投資制御に関わる新規遺伝子の同定>ゲノムワイド関連解析(GWAS)によりシロイヌナズナの花粉(♂配偶体)数決定に関わる候補遺伝子を同定した。<3.受精過程における新規雌雄ゲノム間相互作用をもたらす因子の同定>共同研究により、めしべ柱頭(♀胞子体)で発現する分泌タンパク質を多数同定することに成功した。(1)自家和合性の進化にみられる共通パターン有性生殖のとくに自家不和合性反応では、雄と雌の利害対立とゲノム相関が重要な役割を果たす。新学術領域での共同研究の成果により、多くの自然種で繰り返して、雄特異性因子の変異で自家和合性が進化したことなど、適応進化での分子レベルでの法則性がみえてきた。これらについて、自殖についての総説を執筆した。現在、高山研究室との共同研究で、倍数体が自家和合性になるためにエピジェネティックな制御が重要である可能性の研究を進めている。(2)異質倍数体での両親ゲノムの組み合わせ異質倍数体は、両親種のゲノムが組み合わさっており、ゲノム相関の解析のモデル系だが、これまで倍数体ゲノムの複雑さのためにほとんど解析が進んでいなかった。そこで、RNA-seq手法HomeoRoqを開発し、シロイヌナズナ属異質倍数体ミヤマハタザオの解析を進めている。ミヤマハタザオは片親ハクサンハタザオから重金属蓄積能を、もう片親のセイヨウミヤマハタザオから低温応答を受け継いで組み合わせてジェネラリストになることで分布域を拡大したことが示唆された。一方、これらのストレス応答遺伝子は異質倍数体では親の半分程度に下がっており、倍数体であることの代償(トレードオフ)のためにスペシャリストである親と競争しても勝てないことが示唆された。カルダミネ属植物C. amaraとC. hirsuta、およびそれらを両親種とする異質倍数体種C. flexuaosaにおいて、環境に応答して発現パターンの変わる遺伝子を網羅的に探索した。シロイヌナズナで孔辺細胞の大きさを制御するMPK12を調べたところ、C. amaraとC. hirsutaでリン酸化されると予測される部位に多型があり、C. flexuosaはどちらのホメオログも保持していた。 | KAKENHI-PUBLICLY-26113709 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-26113709 |
生物の生き残り戦略にみられる表現型可塑性を生み出すゲノム遺伝子相関の解明 | またC. hirsutaタイプのMPK12がシロイヌナズナのmpk12変異体をより相補することがわかった。C. flexuosaはC. amaraとC. hirsutaを両親種とする異質倍数体種である。生育環境が変化した際に、C. amara由来の遺伝子、またはC. hirsuta由来の遺伝子で発現比が変わる遺伝子を見出した。これらの遺伝子は、植物が環境に応じて遺伝子を使い分けている可能性を示唆している。このような遺伝子が報告された例はほとんどなく、この成果によりゲノムの進化と環境応答との関わりについて突破口が開けると期待される。27年度が最終年度であるため、記入しない。1.今回見出した発現比が変化する遺伝子について、発現部位や機能を明らかにする。2.ゲノムワイド関連解析(GWAS)によりシロイヌナズナの花粉数決定に関わる候補遺伝子を同定できたので、その遺伝子の機能を明らかにする。3.共同研究により、めしべ柱頭で発現する分泌タンパク質が受精に果たす役割を明らかにする。27年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PUBLICLY-26113709 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-26113709 |
電気化学測定法を用いる不溶性基質の酵素的加水分解反応の速度解析 | デンプン,セルロース等の酵素的加水分解反応は,従来それら多糖懸濁液中での反応の追跡が困難であったため,詳細な速度論的研究は行なわれてこなかった。これまでの研究において筆者らは,グルコアミラーゼによるトウモロコシ由来デンプン粒の加水分解反応およびセロビオヒドロラーゼによる微結晶セルロースの加水分解反応を,電気化学バイオセンサーを用いることにより追跡し,反応初速度の解析を行なった。その結果,加水分解反応速度は,i)酵素の基質表面への吸着,ii)酵素基質複合体の生成,iii)生成物の放出の三段階機構を仮定して導かれた速度式により説明できることが明らかとなった。今年度は,基質を6つの植物種(イネ,コムギ,トウモロコシ,キャッサバ,サツマイモ,ジャガイモ)由来のデンプン粒とした系について検討を行なった。グルコースオキシダーゼを固定化したセンサーを作製し,それにより各種デンプン粒懸濁液中のグルコース濃度に比例した電流値を連続的に測定した。デンプン粒懸濁液中にグルコアミラーゼを添加した後の電流上昇の傾きより,定常状態における加水分解反応速度が得られた。その反応速度は,粒径の小さい,すなわち比表面積の大きいデンプン粒を用いたときほど大きくなった。反応速度および酵素の基質表面への吸着量の解析から各種パラメータを決定した結果,酵素のデンプン表面への吸着しやすさはデンプンの種類による違いがほとんどみられないが,吸着した酵素の活性はデンプンの種類により異なることが示された。速度パラメータとデンプン結晶構造との比較等についても検討し,それらの研究結果を学術誌(Bioscience,Biotechnology,and Biochemistry,71,946-950(2007))において発表した。デンプン粒の酵素的加水分解反応は、従来デンプン懸濁液中での反応の追跡が困難であったため、詳細な速度論的研究は行なわれてこなかった。これまでの研究において筆者らは、グルコアミラーゼによるトウモロコシ由来デンプン粒の加水分解反応を、電気化学バイオセンサーを用いることにより追跡し、反応初速度の解析を行なった。その結果、加水分解反応速度は、i)酵素の基質表面への吸着、ii)酵素基質複合体の生成、iii)生成物の放出の三段階機構を仮定して導かれた速度式により説明できることが明らかとなった。今年度は、基質を微結晶セルロース、加水分解酵素を真菌由来セロビオヒドロラーゼとした系についても検討を行なった。ピロロキノリンキノン依存型グルコースデヒドロゲナーゼを固定化したセンサーを作製し、それにより微結晶セルロース懸濁液中のセロビオース濃度に比例した電流値を連続的に測定した。微結晶セルロース懸濁液中にセロビオヒドロラーゼを添加した後の電流上昇の傾きより、定常状態における加水分解反応速度が得られた。その反応速度は、先のデンプン粒の酵素的加水分解反応と同様の三段階機構を仮定して導かれた速度式により説明できた。可溶性基質を用いた場合との速度パラメータの比較等についても検討し、それらの研究結果を学術誌(Analytical Biochemistry, 357, 257-261(2006))において発表した。また以上の成果は、国際学会(2回)、国内学会(1回)においても発表した。デンプン,セルロース等の酵素的加水分解反応は,従来それら多糖懸濁液中での反応の追跡が困難であったため,詳細な速度論的研究は行なわれてこなかった。これまでの研究において筆者らは,グルコアミラーゼによるトウモロコシ由来デンプン粒の加水分解反応およびセロビオヒドロラーゼによる微結晶セルロースの加水分解反応を,電気化学バイオセンサーを用いることにより追跡し,反応初速度の解析を行なった。その結果,加水分解反応速度は,i)酵素の基質表面への吸着,ii)酵素基質複合体の生成,iii)生成物の放出の三段階機構を仮定して導かれた速度式により説明できることが明らかとなった。今年度は,基質を6つの植物種(イネ,コムギ,トウモロコシ,キャッサバ,サツマイモ,ジャガイモ)由来のデンプン粒とした系について検討を行なった。グルコースオキシダーゼを固定化したセンサーを作製し,それにより各種デンプン粒懸濁液中のグルコース濃度に比例した電流値を連続的に測定した。デンプン粒懸濁液中にグルコアミラーゼを添加した後の電流上昇の傾きより,定常状態における加水分解反応速度が得られた。その反応速度は,粒径の小さい,すなわち比表面積の大きいデンプン粒を用いたときほど大きくなった。反応速度および酵素の基質表面への吸着量の解析から各種パラメータを決定した結果,酵素のデンプン表面への吸着しやすさはデンプンの種類による違いがほとんどみられないが,吸着した酵素の活性はデンプンの種類により異なることが示された。速度パラメータとデンプン結晶構造との比較等についても検討し,それらの研究結果を学術誌(Bioscience,Biotechnology,and Biochemistry,71,946-950(2007))において発表した。 | KAKENHI-PROJECT-18780077 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18780077 |
乳幼児齲蝕のスクリーニングに関する研究-母親の口腔内状態と生活習慣- | 近年,乳幼児の齲蝕罹患者率は年々減少する傾向にあるが,我が国においては依然として高い齲蝕罹患状態を示しているのが現状である。特に,1歳から3歳にかけての時期に齲蝕が急増しており,この時期の適切な歯科的アプローチが希求される。そのためには,乳歯齲蝕の発生に関与している様々な因子の早期発見が必要であり,効果的なスクリーニング方法が望まれる。今回,母親の口腔内状態(齲蝕罹患状態や齲蝕活動性)および生活習慣(間食習慣,歯磨き習慣,衛生習慣等)と乳幼児の口腔内状態との関係を調べることを目的として研究を行った。対象は,月齢1824ヶ月の患児71人とその母親で,口腔内検診,齲蝕活動性試験および母親の生活習慣に関するアンケートを実施した。結果,対象児の齲蝕罹患者率は9.9%,一人平均deftは0.28本であり,平均カリオスタット値は1.34であった。母親の齲蝕罹患者率は100%で,一人平均DMFTは13.6本であった。齲蝕活動性試験より,唾液中のS.mutans数が10^5/ml以上検出された母親は全体の68%で,対象児では44%であった。lactobacillus数に関しては,10^5/ml以上検出されたのは母親で32%,子供では5%であった。また,子供のカリオスタット値はその齲蝕罹患状態および母親のS.mutans数とlactobacillus数と有意な正の相関を示した。また,母親の口腔衛生感と子供のS.mutans数とに正の相関を認めた。すなわち,母親の口腔内状態や生活習慣が,子供の口腔内に反映されていることが示され,低年齢児に対してでも,母親の検査,問診により,齲蝕発生に対するハイリスク者をスクリーニングできる可能性が示唆された。近年,乳幼児の齲蝕罹患者率は年々減少する傾向にあるが,我が国においては依然として高い齲蝕罹患状態を示しているのが現状である。特に,1歳から3歳にかけての時期に齲蝕が急増しており,この時期の適切な歯科的アプローチが希求される。そのためには,乳歯齲蝕の発生に関与している様々な因子の早期発見が必要であり,効果的なスクリーニング方法が望まれる。今回,母親の口腔内状態(齲蝕罹患状態や齲蝕活動性)および生活習慣(間食習慣,歯磨き習慣,衛生習慣等)と乳幼児の口腔内状態との関係を調べることを目的として研究を行った。対象は,月齢1824ヶ月の患児71人とその母親で,口腔内検診,齲蝕活動性試験および母親の生活習慣に関するアンケートを実施した。結果,対象児の齲蝕罹患者率は9.9%,一人平均deftは0.28本であり,平均カリオスタット値は1.34であった。母親の齲蝕罹患者率は100%で,一人平均DMFTは13.6本であった。齲蝕活動性試験より,唾液中のS.mutans数が10^5/ml以上検出された母親は全体の68%で,対象児では44%であった。lactobacillus数に関しては,10^5/ml以上検出されたのは母親で32%,子供では5%であった。また,子供のカリオスタット値はその齲蝕罹患状態および母親のS.mutans数とlactobacillus数と有意な正の相関を示した。また,母親の口腔衛生感と子供のS.mutans数とに正の相関を認めた。すなわち,母親の口腔内状態や生活習慣が,子供の口腔内に反映されていることが示され,低年齢児に対してでも,母親の検査,問診により,齲蝕発生に対するハイリスク者をスクリーニングできる可能性が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-08771948 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08771948 |
バーチャルCT気管支内視鏡を用いた気管内吸引教育システムの開発 | 口腔、鼻腔内より深部の気管内吸引は直接観察できる部位ではないため、技術指導に困難が伴う。本研究ではコンピューテッドトモグラフィデータを用い、気管のバーチャル(仮想)内視鏡画像および頚部三次元画像を構築し、任意の気管内の仮想内視鏡画像をリアルタイムに観察でき、その位置を頚部三次元画像上に表示させるシステムを構築した。そして気管内吸引ドレーン挿入時の解剖学的位置、距離的・曲率的な関係を明らかにし、科学的根拠に基づき、安全かつ非侵襲的に看護学生が実践に近い状態で、気管内吸引技術を習得させることができる教育システムの構築を行った。口腔、鼻腔内より深部の気管内吸引は直接観察できる部位ではないため、技術指導に困難が伴う。本研究ではコンピューテッドトモグラフィデータを用い、気管のバーチャル(仮想)内視鏡画像および頚部三次元画像を構築し、任意の気管内の仮想内視鏡画像をリアルタイムに観察でき、その位置を頚部三次元画像上に表示させるシステムを構築した。そして気管内吸引ドレーン挿入時の解剖学的位置、距離的・曲率的な関係を明らかにし、科学的根拠に基づき、安全かつ非侵襲的に看護学生が実践に近い状態で、気管内吸引技術を習得させることができる教育システムの構築を行った。本研究ではコンピューテッドトモグラフィ(以下CTとする)データを用い、気管のバーチャル(仮想)内視鏡画像および頚部三次元画像を構築し、任意の気管内の仮想内視鏡画像をリアルタイムに観察できるシステムを構築する。そして気管内吸引ドレーン挿入時の解剖学的位置、距離的・曲率的な関係を明らかにし、科学的根拠に基づき、安全かつ非侵襲的に看護学生が実践に近い状態で、気管内吸引技術を習得させることができる教育システムの構築を行う。佐々木かほる、大川美千代、土井一浩は気管内吸引教育時の問題点を提示した。小倉敏裕および土井一浩はその問題を解決すべく仮想気管内吸引トレーニングシステムの構想を考え、視野、視点の設定方法や、仮想ドレーン位置表示方法の設定を考察した。1.仮想気管内吸引トレーニングのためのCT三次元画像データベースの作成を行った。頚部CT画像データは新たに本研究のために撮影する必要は無く、国内外にインアターネットにアップロードされた、無料の公開CT画像データベースが数多く利用でき、5症例を集めた。2. CTデータから気管を抽出し、気管および気管支の三次元画像構築頚部から胸部のCT横断画像データを用いコンピュータに入力し、空気部分を透明表示とし、頚部気管の仮想気管(支)内視鏡画像を構築した。同時に気管の三次元画像上に視点視野を位置と方向を表示させることができることを確認した。さらに唇からの距離も測定し表示させ、各臓器からの距離の測定も測定が可能であることを確認した。この表示によって、仮想ドレーンを挿入した時の先端画像および、頚部三次元画像上における仮想ドレーンの位置を表示できることを確認した。この方法によって、現在のところまだ、使用勝手が悪いが、看護学生が吸引技術の習得のための仮想気管(支)内視鏡画像を観察することができることを確認した。22年度、コンピューテッドトモグラフィデータを用い、気管のバーチャル(仮想)内視鏡画像および頚部三次元画像を構築し、任意の気管内の仮想内視鏡画像をリアルタイムに観察できるシステムを構築した。そして気管内吸引ドレーン挿入時の解剖学的位置を明らかにし、安全かつ非侵襲的に看護学生が実践に近い状態で、気管内吸引技術を習得させることができる教育システムの完成に向けて準備を行った。次年度はモデル人形を用いた気管内吸引トレーニングのみの学習、仮想気管(支)鏡および頚部三次元画像を用いた気管内吸引トレーニング教育システムを併用した場合の教育効果を調査する予定で、そのための、アンケート調査の内容を考察した。佐々木かほる、土井一浩はモデル人形を用いた時の気管内吸引教育の実際と問題点を提示し、また、小倉敏裕および土井一浩は頚部三次元画像を用いた気管内吸引トレーニングシステムがより効果的に学生に適用できるように指導方法および気管内吸引トレーニングシステムの使用の方法、およびトレーニングの手順を考察した。学生教育への実施の前に、自ら仮想気管内吸引トレーニングを体験したところ、実際の人間の口腔内は、口腔を広げて作成されたモデル人形と異なり、意外と狭く感じられ、口腔内粘膜にぶつかる可能性が高かった。しかし、気管および気管支は常時開いているため。容易に挿入、観察できることが分かった。このような点も考慮しながら実習を進める手順を考える必要があった。仮想ドレーンを挿入した時の先端画像および、頚部三次元画像上における仮想ドレーンの位置は当初考えていたように容易に描出することが可能であった。今後、モデル人形を用いた気管内吸引トレーニングのみの学習、仮想気管(支)鏡および頚部三次元画像を用いた気管内吸引トレーニング教育システムを併用した場合の教育効果を実習実践の後に実施するアンケート調査によって判定する。『看護基本技術』の学習項目の中の呼吸・循環を整える技術として吸引(口腔、鼻腔、気管内)がある。口腔、鼻腔、気管内の吸引は臨床現場において頻繁に行われ、また、それが実施されない場合、生死に関わる問題となる。口腔、鼻腔内より深部の気管内吸引は直接観察できる部位ではないため、技術指導に困難が伴い、気管内が観察できた状態での指導が望まれていた。本研究ではCTデータを用い、気管のバーチャル(仮想)内視鏡画像および頚部三次元画像を構築し、任意の気管内の仮想内視鏡画像をリアルタイムに観察できるシステムを構築した。 | KAKENHI-PROJECT-21592703 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21592703 |
バーチャルCT気管支内視鏡を用いた気管内吸引教育システムの開発 | 本システムの使用により、仮想内視鏡画像とともに位置情報がリアルタイムに頚部三次元画像上に表示され、視点の位置と喉頭軟骨など特定の位置からの距離も三次元的に計測可能となった。授業でのアンケート調査の結果として1.実際の臓器の位置関係がよく理解できる。2.授業内容へ興味・関心が持てた。3.管腔内部が具体的にわかった。4.学習に対する向上心が高まった。5.このような画像を用いた仕事に魅力がわいた。6.このような技術を使って患者さんを助けてあげたいと思った。7.解剖学の学習をする方法として有用である。などが得られた。本研究において構築した気管内吸引トレーニングシステムは仮想的に吸引ドレーンを挿入した位置の人体の気管内仮想内視鏡画像がリアルタイムに観察でき、自由に上下左右に視野方向を変化させることができ、安全かつ非侵襲的に看護学生が実践に近い状態で、気管内を観察させることができた。また、学生個人個人が自宅で学習できる気管内吸引教育システムを構築することができた。さらに本法は、学習に対するモチュベーションを向上させることもできた。結果は第13回日本放射線技術学会関東部会において、小倉敏裕,土井一浩,大川美千代,佐々木かほる,バーチャルCT気管支内視鏡を用いた気管内吸引教育システムの構築というタイトルで発表した。 | KAKENHI-PROJECT-21592703 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21592703 |
対称性の破れた相の分類理論の構築と冷却原子系への応用 | 平成28年4月から平成29年3月まではフロケエンジニアリングの手法の拡張に取り組んだ。フロケエンジニアリングは、フロケ理論と呼ばれる線形方程式に対する数学理論に基づいて展開されるが、線形方程式の典型的な例はシュレディンガー方程式である。このためフロケエンジニアリングの適用範囲はこれまで孤立量子系に制限され、基本方程式が非線型である古典開放系、及びブラウン運動のような確率過程に支配された微小系には使えないという困難があった。以上の問題に対して今回の研究では、非線形方程式や確率過程が線形なマスター方程式にマップできることに着目して非線形性に伴う問題を克服し、フロケエンジニアリングの適用範囲を古典系や確率過程に拡大することに成功した。さらに、得られた理論を熱浴と結合した古典磁性体のレーザー下でのダイナミクスの問題に応用し、その磁化がレーザーの強度と周波数を変えることで制御できることを示した。平成28年4月から平成29年3月まではフロケエンジニアリングのトポロジカル物性物理への応用について研究をした。ワイル半金属とはトポロジカル物質の一つであり、その素励起であるワイルフェルミオンはカイラル磁気効果と呼ばれる特異な磁場応答(磁場に平行に電流が流れる)を示す。しかし、ワイル半金属ではワイルフェルミオンが必ず対で現れる(ニールセン・二宮の定理)ために熱平衡状態ではカイラル磁気効果は現れないことが示されていた。上記の問題に対して今回の研究では、まず周期駆動系ではニールセン・二宮の定理が成立せず、カイラル磁気効果が現れうることを明らかにした。更に、ワイルフェルミオンが単独で存在する周期駆動系の模型を構成し、それがカイラル磁気効果を示すことを実証した。最後に、以上の研究を対称性を持つ系にも拡張し、周期駆動系で現れるギャップレストポロジカル励起の分類をし、その包括的理論を構築した。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成28年度は対称性の破れた相の分類に関して、Lie代数の表現を用いたアプローチに基づいて研究した。対称性の破れは自然界に普遍的に現れる現象であり、強磁性体や超伝導体を含む多くの物質は対称性の破れによって理解できる。従って、対称性の破れた相とそこで現れるNambu-Goldstoneモードやトポロジカル励起を分類し、系統的に理解する方法を開発することは、新奇な凝縮相を探索する上で重要である。平成28年度はLie代数とその表現を用いてこの問題に取り組み、対称性の破れた相の多くでは基底状態が同時対角化できる部分Lie代数(Cartan部分代数)の固有状態になっていることを発見し、これらをμ-symmetry breakingと名付けた。具体的には、強磁性体や反強磁性体、スカラーBose-Einstein凝縮体(BEC)、スピン1のスピナーBECの強磁性相及びポーラー相などがμ-symmetry breakingに属する。μ-symmetry breakingに属する相に対してはCartan部分代数の固有値によって系統的な分類が可能であり、Nambu-Goldstoneモードやトポロジカル励起に関しても先行研究で知られている公式よりも簡便な線形代数的手法で計算できることを発見した。特に、Nambu-Goldstoneモードの分散関係を記述する有効ラグランジアンは、Lie代数の標準的な基底であるCartan標準形を用いて対角化される。Nambu-Goldstoneモードは、u(1)Lie代数に対応した巨視的波動関数の位相の揺らぎを記述するモード、su(2)Lie代数に対応した一般化されたSU(2)スピンの歳差運動を記述する放物型分散のモード、su(2)Lie代数に対応した一般化されたSU(2)スピンの振動運動を記述する線形分散のモードの3種類に分類される。平成28年度は物理学において基本的な役割を果たす対称性の破れとそこに発現するトポロジカル励起に関する基礎研究に取り組んでいます。これらは物理学の広範な領域で重要な役割を果たす普遍的な概念である一方で、様々な分野において異なった専門用語で議論され、また、物理だけでなく数学の専門知識が要求される難易度の高い研究分野である。東川君は物性物理学から素粒子論にわたる広範囲な文献を研究したうえで、これまで2つの重要な研究を行った。まず、Lie代数の表現論に基づいて対称性の破れとNambu-Goldstoneモードを含むトポロジカル励起の系統的に調べる方法論を構築した。次に、異なったトポロジカル励起が共存する場合はトポロジカル不変量が保存しない場合が存在するという、これまで個別的に調べられていた現象をWhitehead積という数学的手法を用いて系統的に調べ上げることができる理論を構築した。これは今後のさらなる発展が期待できる。平成29年4月から平成29年5月にかけてトポロジカル励起の共存系の研究を行った。この研究で私は、渦の存在下ではスカーミオンのトポロジカルチャージが必ずしも保存されず、スカーミオン対が連続的に生成できることを発見した。渦が存在しない場合にはスカーミオン対の連続的な生成はトポロジカルに禁止されている、スカーミオン対の生成の前後で影響を受けないという2点から、渦がスカーミオン対の生成において「触媒」としての役割を果たしているということができる。 | KAKENHI-PROJECT-16J03619 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J03619 |
対称性の破れた相の分類理論の構築と冷却原子系への応用 | 上記の結果は、触媒によるトポロジカル励起の連続的な生成と消滅を可能にすると同時に、トポロジカル励起の共存系においてトポロジーが重要な役割を果たす数少ない例の一つであり、トポロジカル励起の研究に重要な知見を与えるものと期待される。上述のトポロジカル励起の共存系の研究と並行して、平成29年5月から平成30年3月まで周期駆動系で現れるワイルフェルミオンについての研究を行った。この研究で私は、周期駆動された結晶系は(エネルギー方向の周期性のために)ニールセン・二宮の定理の制約を受けず、単一のワイルフェルミオンが現れうることを発見し、その具体的な格子模型を構成した。ワイルフェルミオンのスピン運動量固定を反映して、スピン偏極した波束は1周期のポンプでスピンに平行な方向に1サイト分だけ移動する。さらに、この系に磁場をかけた状態で1周期ポンプすると波束は磁場に平行な方向に移動する。これはカイラル磁気効果の周期駆動系でのアナロジーである。さらに上記の模型の冷却原子気体で実装方法についても議論した。以上の結果はトポロジカル半金属についての基本的な定理であるニールセン・二宮の定理の制約を、非平衡性を取り入れることで超えるものであり、トポロジカル絶縁体・半金属の研究に重要な知見を与えるものと期待される。平成29年度はトポロジカル励起の共存系と周期駆動系に関して2つの注目すべき成果を挙げた。前者の研究においては、複数のトポロジカル励起が共存する場合は一方が他方の多様体の構造を本質的に変えてしまうことに起因して、トポロジカル励起を連続的に生成できるという新しい結果を得た。後者の研究では、周期駆動系では、ブリルアンゾーンの周期系に起因するニールセン・二宮の定理の制約からが解放されることを指摘し、単一のワイルフェルミオンが現れうることを発見した。具体的に構成されたモデルはサウレスポンプの3次元版であり、非平衡物理がニールセン・二宮の定理という基本的制約を逃れるキーであることを具体的に示した点に意義がある。いずれの研究成果もトポロジカル量子現象の理解の進展に寄与するものであると判断される。平成28年4月から平成29年3月まではフロケエンジニアリングの手法の拡張に取り組んだ。フロケエンジニアリングは、フロケ理論と呼ばれる線形方程式に対する数学理論に基づいて展開されるが、線形方程式の典型的な例はシュレディンガー方程式である。このためフロケエンジニアリングの適用範囲はこれまで孤立量子系に制限され、基本方程式が非線型である古典開放系、及びブラウン運動のような確率過程に支配された微小系には使えないという困難があった。以上の問題に対して今回の研究では、非線形方程式や確率過程が線形なマスター方程式にマップできることに着目して非線形性に伴う問題を克服し、フロケエンジニアリングの適用範囲を古典系や確率過程に拡大することに成功した。さらに、得られた理論を熱浴と結合した古典磁性体のレーザー下でのダイナミクスの問題に応用し、その磁化がレーザーの強度と周波数を変えることで制御できることを示した。平成28年4月から平成29年3月まではフロケエンジニアリングのトポロジカル物性物理への応用について研究をした。ワイル半金属とはトポロジカル物質の一つであり、その素励起であるワイルフェルミオンはカイラル磁気効果と呼ばれる特異な磁場応答(磁場に平行に電流が流れる)を示す。 | KAKENHI-PROJECT-16J03619 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16J03619 |
食道扁平上皮癌における蛋白合成開始因子の発現とその制御に関する研究 | ヒトの食道扁平上皮癌における蛋白合成開始因子のひとつであるelF4Eの発現を明らかにする目的で45例の食道扁平上皮癌の手術検体に対し免疫染色を行い、同時に腫瘍組織から抽出した遺伝子をRT-PCR法にて処理しelF4EのmRNAの増幅の測定。また、western blot法によりelF4E蛋白の発現の測定を試みてきた。食道癌におけるelF4E蛋白とp21蛋白免疫組織染色の発現程度により3群に分類し、またPCNA indexを各染色に合わせて行った。Elf4eは56%に発現が見られ,腫瘍の先進部に主として発現が見られた。また非腫瘍部では腫瘍に隣接する異型上皮巣の基底膜側に多く発現していた。高分化型の扁平上皮癌20例と中ないし低分化型の扁平上皮癌おのおの25例で発現を比較すると高分化型では高度の発現は20%以下、軽度発現から陰性が60%以上であった。一方、中ないし低分化型の癌では高度の発現が60%で見られた(P=0.002)。また、リンパ節転移についてみると、陽性群では高度発現が50%以上に見られ、転移陰性群では高度の発現は10%以下であった。一方,p21は42.2%に発現が見られ,発現の陽性例は高分化型扁平上皮,発現陰性例は浸潤型増殖様式の症例とリンパ管侵襲陽性例が多かった.PCNA陽性細胞率は分化度,累積生存率に相関し,p21の発現と逆の相関が見られた.Elf4eとp21の組み合わせでみるとelf4e陽性でかつp21陰性例に最もPCNA陽性細胞率が高く,累積生存率が低かった.以上よりelf4e発現例は低分化型扁平上皮癌に多く見られ,増殖が早く予後不良である.P21発現との組み合わせでは食道扁平上皮癌の悪性度の指標になる可能性がある.実験の当初採取した腫瘍組織から抽出した遺伝子をRT-PCR法にて処理しelF4EのmRNAの増幅の測定を試みたが、mRNAレベルでelF4Eの遺伝子増幅を捕らえることは困難であった。また、western blot法によりelF4E蛋白の発現を測定することも同様に困難であった。その理由として、食道癌の手術は腫瘍の摘出までに長時間を要し、手術操作のために腫瘍を含んだ食道組織が長時間低酸素状態に置かれており、腫瘍組織の凍結などの適切な処置を受けるまでの間に、極めて微量にしか存在しないelF4Eの遺伝子が破壊、変性を受けるものと思われた。この隘路を打破するために研究の途中から、術者の協力を得て手術中に少しでも早く新鮮な腫瘍組織を採取でき、測定できるよう努力した。また、内視鏡の生検による腫瘍組織の採取も試みた。さらにヒト食道癌の培養細胞を用いて抽出を試みた。しかし、再現性をもってelF4Eの遺伝子増幅を捕らえることは困難であった。その結果免疫染色によるデータから上記のような結論を導き出し、現在論文投稿中である。ヒトの食道扁平上皮癌における蛋白合成開始因子のひとつであるelF4Eの発現を明らかにする目的で45例の食道扁平上皮癌の手術検体に対し免疫染色を行い、同時に腫瘍組織から抽出した遺伝子をRT-PCR法にて処理しelF4EのmRNAの増幅の測定。また、western blot法によりelF4E蛋白の発現の測定を試みてきた。食道癌におけるelF4E蛋白とp21蛋白免疫組織染色の発現程度により3群に分類し、またPCNA indexを各染色に合わせて行った。Elf4eは56%に発現が見られ,腫瘍の先進部に主として発現が見られた。また非腫瘍部では腫瘍に隣接する異型上皮巣の基底膜側に多く発現していた。高分化型の扁平上皮癌20例と中ないし低分化型の扁平上皮癌おのおの25例で発現を比較すると高分化型では高度の発現は20%以下、軽度発現から陰性が60%以上であった。一方、中ないし低分化型の癌では高度の発現が60%で見られた(P=0.002)。また、リンパ節転移についてみると、陽性群では高度発現が50%以上に見られ、転移陰性群では高度の発現は10%以下であった。一方,p21は42.2%に発現が見られ,発現の陽性例は高分化型扁平上皮,発現陰性例は浸潤型増殖様式の症例とリンパ管侵襲陽性例が多かった.PCNA陽性細胞率は分化度,累積生存率に相関し,p21の発現と逆の相関が見られた.Elf4eとp21の組み合わせでみるとelf4e陽性でかつp21陰性例に最もPCNA陽性細胞率が高く,累積生存率が低かった.以上よりelf4e発現例は低分化型扁平上皮癌に多く見られ,増殖が早く予後不良である.P21発現との組み合わせでは食道扁平上皮癌の悪性度の指標になる可能性がある.実験の当初採取した腫瘍組織から抽出した遺伝子をRT-PCR法にて処理しelF4EのmRNAの増幅の測定を試みたが、mRNAレベルでelF4Eの遺伝子増幅を捕らえることは困難であった。また、western blot法によりelF4E蛋白の発現を測定することも同様に困難であった。その理由として、食道癌の手術は腫瘍の摘出までに長時間を要し、手術操作のために腫瘍を含んだ食道 | KAKENHI-PROJECT-12671274 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12671274 |
食道扁平上皮癌における蛋白合成開始因子の発現とその制御に関する研究 | 組織が長時間低酸素状態に置かれており、腫瘍組織の凍結などの適切な処置を受けるまでの間に、極めて微量にしか存在しないelF4Eの遺伝子が破壊、変性を受けるものと思われた。この隘路を打破するために研究の途中から、術者の協力を得て手術中に少しでも早く新鮮な腫瘍組織を採取でき、測定できるよう努力した。また、内視鏡の生検による腫瘍組織の採取も試みた。さらにヒト食道癌の培養細胞を用いて抽出を試みた。しかし、再現性をもってelF4Eの遺伝子増幅を捕らえることは困難であった。その結果免疫染色によるデータから上記のような結論を導き出し、現在論文投稿中である。食道扁平上皮癌におけるeIF4Eの発現機構と意義を明らかにするためにeIf4eの発現を手術により切除された食道癌組織に免疫組織染色を行い,同時に採取した腫瘍組織からRT-PCRにてm-RNAを,western blot法によりeIF4E蛋白の発現を検討している.現在のところ7例で測定可能であったが,eIF4Eの発現は腫瘍の分化度,進行度との関連性が示唆されている.すなわち,高分化型よりも低分化型の扁平上皮癌に発現が多く,また,表在型の癌よりも深達度の深い例で発現多く,腫瘍の先進部に発現が多い傾向があった.これらは主として免疫組織染色による検討であり,western blotやRT-PCRの検討ではサンプリングの部位や数に限界があり,症例数の少ないこともあり,統計学的な有意差はいまだ見られていない.現在症例数を増やして検討を重ねている.また,同時に測定したp21,cyclin D1,VEGF,thymidine phosphorylase,FGFなどとの発現の関連性ではこのeIF4Eの発現は血管新生増殖因子とされるVEGFやPD-ECGFなどのサイトカインと関連して発現する傾向が窺われた.さらに血管密度やKi67などの核蛋白関連抗原の発現との関連性も示唆され,これに関しても症例を重ねて検討している.一方,自立された食道癌のcell lineを用いて同様の検討を行いこれらのcell lineを対象としたeIF4Eの発現を確認しており,遺伝子導入の予備実験を行っている.[目的と方法]:食道扁平上皮癌におけるeIF4Eの発現の意義を明らかにするために手術により切除された40例の食道癌組織に免疫組織染色を行い,同時に採取した腫瘍組織からRT-PCRにてm-RNAを,western blot法によりeIF4E蛋白の発現を測定することを試みた.[成績]:免疫組織染色ではeIF4Eの発現は癌細胞の細胞質に瀰漫性にみられ,腫瘍の先進部に発現が多い傾向があったが腫瘍周囲の正常食道粘膜にはみられなかった.発現の程度により高度,中等度,軽度陰性の3群に分類した.高分化型の扁平上皮癌20例と中低分化型の扁平上皮癌おのおの20例で発現を比較すると高分化型で高度の発現が20%,軽度から陰性が60%であった.一方,中低分化型では高度発現が60%でみられた(P=0.002). | KAKENHI-PROJECT-12671274 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12671274 |
デジタル映像処理とデータマイニングの統合に基づくスポーツコーチングシステム | 少年剣士の練習光景から少年剣士のフォームをコーチするシステムについては,身長,剣先の高さ,竹刀の角度,剣先の交差距離をデジタル画像から抽出し,それらを数値化したデータから決定木学習によりコーチのためのルールを学習したが,当初は精度が低かった.そのため,剣道の専門家をインタラクティブに有効属性の発見を試みた結果,間合いという概念を[両者の足の間の距離]に置き換え,再度,決定木学習を行った結果,精度の高いルールが学習できた.一方,サッカーコーチシステムの開発については,ワールドカップ2002の全試合を対象にして,ボールをキープしている選手に注目し,ボールの位置と選手の行為(キックやドリブルやパス)に関するデータを収集し,因子分析により,[ボールをつなぐ][カットからの攻撃][効率のよいせめ]という3種類の共通因子を抽出した後に,決定木学習による戦術に関するルールの学習を試みた.その結果,IF[効率のよい攻めができない][カット数が少ない]Then[予選敗退],というような興味深いルールが学習できた.また,すべての選手の位置データを収集する試みについては,サッカー選手の重なりがない場合の人物追跡をほぼ完全に処理できることが確認でき,さらに,選手が交差して離れていく場合,多くの選手がボールに一斉に集まる場合などの複雑な動きに対しては,色情報の導入が効果的であることが確認できた.以上,剣道とサッカーを例にして,スポーツの練習光景などを撮影したデジタル映像から,身体技能の向上に役立つ知識や勝敗を左右する戦術に関する知識を自動抽出するシステムの構築可能性を示すことができた.少年剣士の練習光景を3台のデジタルビデオで撮影した後,人物と竹刀を追跡処理し,身長,両剣士間の距離,剣先の高さと交差距離,竹刀の角度などのデータを取得した.その後,「面打ちにおける剣先位置の良否」を問題として,26種類の少年剣士の構えの画像を剣道教師がみてその良否を評価し,その評価結果と取得済みの数値データを合わせて入力データとし,決定木学習を通して,剣先位置の良否を決定するルールを学習した.最初の学習では26種類すべての画像の良否を正しく判断できなかったが,「攻撃側の剣先延長線と相手の目線からの距離」を新属性として付加した結果,すべての画像の良否を正しく判断できるに改善された.また,サッカーについてはビデオカメラにより撮影された動画像から各選手の動きを抽出し追跡する方法を樹討した.なお,撮影において競技場に備え付けられた大規模なシステムを使うのではなく,汎用のビデオカメラを撮影者が手で持ちながら簡易に撮影された画像を処理するアルゴリズムを検討した.具体的には以下の方針をとった.1移動カメラにより撮影されたグラウンド画像のずれをテンプレートマッチングと射影変換により補正し,位置合わせを行う2各選手の初期位置を,動画像の初期フレームから求める.ここでは,2値化とエッジ検出などの画像処理技法を用いる.3選手の向きや位置によりサイズを変更できるテンプレートを用い,動画像中で各選手の動きを追跡する.以上に方針にもとづき,PC上でプログラムを開発した.選手同士の重なりがない場合はほぼ100%に近い結果が出たが,選手同士が交差した場合に,失敗するケースが多かった.今後は,選手同士が交差しても追跡できる手法の検討が課題となる.′少年剣士の練習光景から少年剣士のフォームをコーチするシステムについては,身長,剣先の高さ,竹刀の角度,剣先の交差距離をデジタル画像から抽出し,それらを数値化したデータから決定木学習によりコーチのためのルールを学習したが,当初は精度が低かった.そのため,剣道の専門家をインタラクティブに有効属性の発見を試みた結果,間合いという概念を[両者の足の間の距離]に置き換え,再度,決定木学習を行った結果,精度の高いルールが学習できた.一方,サッカーコーチシステムの開発については,ワールドカップ2002の全試合を対象にして,ボールをキープしている選手に注目し,ボールの位置と選手の行為(キックやドリブルやパス)に関するデータを収集し,因子分析により,[ボールをつなぐ][カットからの攻撃][効率のよいせめ]という3種類の共通因子を抽出した後に,決定木学習による戦術に関するルールの学習を試みた.その結果,IF[効率のよい攻めができない][カット数が少ない]Then[予選敗退],というような興味深いルールが学習できた.また,すべての選手の位置データを収集する試みについては,サッカー選手の重なりがない場合の人物追跡をほぼ完全に処理できることが確認でき,さらに,選手が交差して離れていく場合,多くの選手がボールに一斉に集まる場合などの複雑な動きに対しては,色情報の導入が効果的であることが確認できた.以上,剣道とサッカーを例にして,スポーツの練習光景などを撮影したデジタル映像から,身体技能の向上に役立つ知識や勝敗を左右する戦術に関する知識を自動抽出するシステムの構築可能性を示すことができた. | KAKENHI-PROJECT-15650176 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15650176 |
胃癌腹腔洗浄液および末梢血中癌細胞の単離と遺伝子解析を用いた補助化学療法薬剤選択 | 昨年度に引き続き腹腔洗浄液中微小がん細胞(PTC)および血中循環がん細胞(CTC)の検出デバイスの改良を行い、3Dフィルター型分離デバイスで捕捉したCTC(PTC)をスライドグラスに転写、4検体の細胞診標本(パパニコロウ染色と免疫染色)を同時に作成できる自動CTC分離装置を企業と共同で試作した。さらにCTCに関しては1例の胃癌患者血液;流出路静脈血(DV)及び末梢血(PB)検体を用いて“CTC細胞診"の診断基準;Keratin陽性異型細胞を確立した。これによりCTCの同定を迅速、正確、客観的に光学顕微鏡下で行うことが可能となった。胃癌CTCの陽性率はDV;3/11(28%, 1123/5ml)、PB;2/11(18%, 126/5ml)と大腸癌に比べて低いものの、大腸癌と同様PBに比べてDVでCTC数が多く認められた。一方、PTC分離に関しても、上記改良型分離デバイスを用いて胃がん(一部大腸癌)患者の腹腔洗浄液中のPTC検出の検討を行なった。その結果、血中CTCの検出と異なり、腹腔洗浄液中PTCの検出ではかなりの数の中皮細胞がフィルター上に残存するため、パパニコロウ染色のみでは中皮細胞との鑑別が問題となるが、CEA免疫染色を併用することにより従来の洗浄細胞診に比べ1回の測定で洗浄液中の全PTCを簡便かつ定量的に評価することが可能となった。また、Trastsuzumab,TDM-1bなどの分子標的治療のためのCTCマウスモデルを確立した。これらのヒト胃癌マウスモデルを用いて分子標的薬治療前後の血中CTCの動態を検討し、治療後早期に一過性にCTC数が増加する傾向があることを見出した。この動員されたCTCの形態は原発腫瘍の組織像を反映していることから、一過性に増加するCTCが原発巣の薬剤感受性と密接に関連しており、CTCによる抗がん剤感受性評価の可能性が示唆された。1腹腔洗浄液中がん細胞(PTC)および末梢血中循環がん細胞(CTC)がん細胞の検出これまでのCTC検出は蛍光染色、暗視野下の検鏡で行なわれてきた。このためCTCの判定基準は蛍光染色パターンのみに基づき、判定は1回の検鏡のみで行なわれてきた。しかし、この判定方法では通常の細胞診で行われる明視野、永久標本での十分な形態学的評価ができず、判定の正確性、再現性に大きな課題を有していた。そこで今年度はこれまで開発してきたサイズ選別性3Dフィルター型CTC分離デバイスで捕捉したCTCを、スライドグラスに転写し、細胞診標本(パパニコロウ染色と免疫染色)を作成できる様にデバイスの改良を行なった。これにより核の形態学的情報が得られる様になり、CTCの同定が正確、客観的になった。一方、腹腔洗浄液中がん細胞(PTC)分離に関しても、マウス腹膜転移モデルを用いて洗浄液中遊離胃がん細胞をパパニコロウ染色とCEA免疫染色にて中皮細胞を除外してがん細胞を客観的に同定することに成功した。以上の結果から、本デバイスは回収したCTCやPTCをスライドグラスに転写することにより従来の蛍光検出法に比べて大幅にCTC判定の客観性が向上し、Liquid biopsyへの応用が期待できる結果であった。上記改良型CTC検出デバイス及び胃がん細胞株CTCマウスモデルを用いて化学療法や分子標的治療のモニタリングが可能なCTCマウスモデルを確立した。細胞数をある程度確保できる場合にはこのスライドグラス標本からがん細胞のDNAを抽出、回収することも可能であり、遺伝子診断への応用も十分可能と考えられる。CTCのフィルター型分離デバイスからのCTCのスライドグラスへの転写と細胞診染色標本作成などデバイスの大幅な改良とCTC検出能向上を達成した。ヒト胃がん(GCIY細胞)CTCマウスモデルを用いてマウス血液から上記デバイスを用いてパパニコロウ染色とサイトケラチン免疫染色標本を作成し、細胞診でCTCを客観的に評価、検出することに成功した。また数例の大腸がん、胃がん患者血液検体を用いた予備的検討でもマウスモデルと同様に、パパニコロウ染色とサイトケラチン免疫染色によりスライドグラス標本上でCTCを検出することを確認した。スライドグラス標本からの遺伝子解析法についてはまだ具体的にマウスモデルや臨床検体での解析には手が回っておらず、今後の課題として残っている。以上、基本的なデバイスに関しては所期の目標を達成したので全体として達成度は70%程度と評価する。1腹腔洗浄液中および末梢血中循環がん細胞(PTC/CTC)の検出デバイスこれまでのCTC検出は蛍光染色パターンの暗視野下での蛍光顕微鏡観察のみで行なわれてきた。しかし、この判定方法では通常の細胞診で行われる明視野、永久標本での客観的な形態学的評価ができず、判定の正確性、再現性に課題を有していた。そこで昨年度は3Dフィルター型CTC分離デバイスで捕捉したCTCを、スライドグラスに転写し、細胞診標本を作成できる様にデバイスの改良を行なった(特許出願中)。本年度はさらに臨床的実用性を向上させるため4検体を同時に自動的にCTC検出できる装置を企業と共同して試作した。これらによりCTCの同定を迅速、正確、客観的に“CTC細胞診"として行うことが可能となった。 | KAKENHI-PROJECT-16K10524 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K10524 |
胃癌腹腔洗浄液および末梢血中癌細胞の単離と遺伝子解析を用いた補助化学療法薬剤選択 | 一方、腹腔洗浄液中がん細胞(PTC)分離に関しては、今年度は上記改良したCTC分離デバイスを用いて、実際の胃がん患者の腹腔洗浄液中のPTC検出の予備的な検討を行なった。その結果、血中CTCの検出と異なり、腹腔洗浄液中PTCの検出では一部の中皮細胞がフィルター上に残存し、これを除外する必要性があるが、パパニコロウ染色とCEA免疫染色の二重染色により中皮細胞を除外でき、PTCを形態学的に同定することに成功した。2 CTC, PTCを用いた抗がん剤感受性、抵抗性予測法上記改良型CTC検出デバイス及び胃がん細胞株CTCマウスモデルを用いて化学療法や分子標的治療のモニタリングが可能なCTCマウスモデルを確立した。このマウス胃がんモデルを用いて抗がん剤及び分子標的薬治療前後の血中CTCの動態を検討し、治療後に一過性にCTC数が増加する傾向があることを見出している。この治療に伴い血中に遊離してきたCTCの形態が原発巣の組織像をよく反映していることから、CTCの一過性増加が原発巣の薬剤感受性と関連している可能性を示唆した。1 CTC/PTC分離デバイスの改良;3Dフィルター型分離デバイスからのCTC/PTCのスライドグラスへの転写と細胞診染色標本作成法を確立し、"CTC/PTC細胞診"の形態学的な診断基準を提案した。さらに自動検出装置の試作機を作成するなど、実用化に向けた改良、改善を達成した。本改良デバイスを用いて胃がん患者(10例)の末梢血、流出路静脈血及び腹腔洗浄液検体を用いたCTC/PTC検出の予備的検討を行った。その結果、暗視野での蛍光検出に依存する従来法に比べ、本法では簡便、迅速、客観的かつ低コストに通常顕微鏡下での検出が可能であることを明らかにした。2 CTC/PTCによる抗がん剤感受性、抵抗性予測と遺伝子解析;マウス血液(心採血)から上記デバイスを用いてCTCを再現性よく検出できる胃がんのCTCマウスモデルを作成することに成功した。本CTCマウスモデルを用いて抗がん剤(PTX)や分子標的治療(Trastsuzumab)の前後の血中CTCの動態を検討し、治療後に一過性にCTC数が増加することを見出した。このCTCの形態が原発巣の組織像をよく反映していることから、CTCの継時的モニタリングによる原発巣の薬剤感受性予測の可能性を示唆した。一方、スライドグラス標本からの遺伝子解析法についてはフィルターからのDNA/RNA抽出及びそれから合成したcDNAを用いたRT-PCR法に成功した。しかしながら、CTC数が少ない末梢血の場合、再現性よくDNA/RNA抽出、RT-PCR法による検出には至っておらず、今後の課題として残っている。以上、デバイス及びマウス及び臨床検体測定に関しては基本的に所期の目標を達成したので全体として達成度は70%程度と評価する。昨年度に引き続き腹腔洗浄液中微小がん細胞(PTC)および血中循環がん細胞(CTC)の検出デバイスの改良を行い、3Dフィルター型分離デバイスで捕捉したCTC(PTC)をスライドグラスに転写、4検体の細胞診標本(パパニコロウ染色と免疫染色)を同時に作成できる自動CTC分離装置を企業と共同で試作した。さらにCTCに関しては1例の胃癌患者血液;流出路静脈血(DV)及び末梢血(PB)検体を用いて“CTC細胞診"の診断基準;Keratin陽性異型細胞を確立した。これによりCTCの同定を迅速、正確、客観的に光学顕微鏡下で行うことが可能となった。 | KAKENHI-PROJECT-16K10524 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K10524 |
人工的石灰化ナノ粒子合成と歯石沈着モデルの確立 | ウシ血清中では、ナノバクテリアモノクロナール抗体に反応するタンパク質はすべてハイドロオキシアパタイト強く結合し、一種類のみがハイドロオキシアパタイトに陽イオン結合し、残りのタンパク質はハイドロオキシアパタイトにアフィニティー結合していた。ハイドロオキシアパタイトに対して陽イオン結合しているタンパク質の単離精製に成功した。残りのタンパク質はゲル濾過クロマトグラフィーにより分離を試みたがその電気泳動像は必ずしも分子量に従って分離されなかった。ウシ血清中では、ナノバクテリアモノクロナール抗体に反応するタンパク質はすべてハイドロオキシアパタイト強く結合し、一種類のみがハイドロオキシアパタイトに陽イオン結合し、残りのタンパク質はハイドロオキシアパタイトにアフィニティー結合していた。ハイドロオキシアパタイトに対して陽イオン結合しているタンパク質の単離精製に成功した。残りのタンパク質はゲル濾過クロマトグラフィーにより分離を試みたがその電気泳動像は必ずしも分子量に従って分離されなかった。本研究課題でははじめにCNPsを構成するタンパク質を萌芽研究「石灰化ナノ粒子による初期う蝕再石灰化の試み」で得られた複合体としてではなく各コンポーネントとして血清、牛乳から分離精製する。さらに分離精製されたタンパク質を質量分析により各コンポーネントを同定する。さらに同定された各コンポーネントとSermon sperm DNAを用いて人工的にCNPsを合成する。この時点で電子顕微鏡による観察によってCNPsの人工的合成に必須のコンポーネントを取捨選択し人工的にCPPs合成の系を確立する。このように合成された人工的CNPsを用いラットを用いた動物実験により投与方法、投与量の検討を行い人工的歯石形成の動物モデルを作成する。昨年度までの本研究課題において,CNPsを構成するタンパク質がハイドロオキシアパタイトに強力に結合することを見いだした。また、これらのタンパク質がハイドロオキシアパタイトに結合している状態を電子顕微鏡による観察で確認することにも成功した。このCNPsの性質を利用してウシ血清からCNPsタンパク質の分離をハイドロオキシアパタイトカラムを利用して分離を行った。その結果、CNPsに対するモノクロナール抗体(8D10)に反応するタンパク質を種類検出することできた。現在、それぞれのタンパク質の単離を試みている。本年度は本研究課題においてこれらのタンパク質を単離し、さらに質量分析によって各タンパク質を同定することを目的とする。さらにこれら各々のタンパク質のDNA結合能をビアコアを用いて検討する予定である。本研究課題では、石灰化ナノ粒子を複合体としてではなく、タンパク質単体として分離精製を行い、単離することを目的としている。昨年度の研究成果である石灰化ナノ粒子はハイドロオキシアパタイトに強く吸着する性質を用いて単離精製を試みた。ハイドロオキシアパタイトに吸着する性質においては、ハイドロオキシアパタイトの性状によりその吸着力が大きく異なり、針状のハイドロオキシアパタイトと吸着した場合、カラムによる精製においては高濃度のリン酸を用いても溶出してこない性質を見いだした。逆に球状のハイドロオキしアパタイトを用いることに溶出に成功した。この性質は現電子顕微鏡による観察により確認を進めている。現在、石灰化ナノ粒子のモノクロナール抗体である8D10に反応するタンパク質は3種類確認できている。本年度においてはウシ血清をサンプルとして陽イオンカラム、陰イオンカラム、ハイドロオキシアパタイトカラム、ゲル濾過カラムを駆使して単離精製を試みた。その結果、1つのタンパク質を単離精製することに成功した。その分子量は100、000kDaを超える大きなタンパク質であった。SDS電気泳動を高感度な銀染色で検討し結果でもシングルバンドとして確認することができた。次年度においては、残りの2種類のタンパク質の単離精製を進めるとともに、これらのタンパク質とハイドロオキシアパタイトの吸着状態を電子顕微鏡で観察するとともに、これらのタンパク質を用いて人工的な歯石形成のモデルを確立する予定である。前年度からの研究に引き続き、ウシ血清からのナノバクテリアモノクロナール抗体に反応するタンパク質の精製を継続して行った。その結果、ナノバクテリアモノクロナール抗体に反応するウシ血清中のタンパク質はすべてハイドロオキシアパタイト強く結合する性質を有していた。これらのタンパク質のうち一種類のみがハイドロオキシアパタイトに陽イオン結合しており、残りのタンパク質はハイドロオキシアパタイトのカルシウムに対して親和性を有しアフィニティー結合していることが明らかとなった。これらのタンパク質のうちハイドロオキシアパタイトに対して陽イオン結合しているタンパク質の単離精製に成功した。残りのタンパク質はすべて陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂をはじめとする市販の様々なクロマトグラフィー用の樹脂に対して同一の性質を示しこれらの樹脂を用いたクロマトグラフィーによる単離は不可能であった。また、これらのタンパク質はハイドロオキシアパタイトを用いたクロマトグラフィーにおいても高濃度のリン酸を使用しないと流出せず、ハイドロオキシアパタイトに対する結合力が強力であることが明らかとなった。分子量を基準に分離できるゲル濾過クロマトグラフィーにより分離を試みたところナノバクテリアモノクロナール抗体に反応するタンパク質は一定のフラクションに集中して回収され、そのフラクションのSDS電気泳動像は必ずしも分子量に従って分離された泳動像ではなかった。このことから、ナノバクテリア抗体に反応するタンパク質のうちハイドロオキシアパタイトに対してアフィニティー結合するタンパク質はウシ血清内では単一のタンパク質ではなく複合体として存在していることが示唆された。そこでSDS電気泳動ゲルから切り出しを行い質量分析によりタンパク質の同定を試みたところ、これらのタンパク質の一部は日と血清中にも存在する脂質複合体の一部でることが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-21592670 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21592670 |
聴力とマスク着用が聞き取りに与える影響の関係について | 【研究目的】不特定多数の人間との接触の多い病院では、医師を始め多くの職員がマスクをしている。しかしマスクで口を覆ってしまうことで、唇の動きなどの視覚情報が減りコミュニケーションの妨げとなる。特に難聴者では視覚情報は重要な手がかりとなる。難聴の程度とマスクの影響を調べることで難聴者各々に合わせてマスクを取り外す診療も可能となり、医療スタッフと難聴者との円滑なコミュニケーションが促進されると思われる。【研究方法】聴力正常者3名、難聴者19名を対象にマスク着用・非着用の話者による単語の聞き取りを行った。話者は5060dBの音圧で発声し、マスクの有無で音圧に大きな差が生じないように騒音計を用いて音圧の確認を行った。単語の聞き取りはマスク有無でそれぞれ50単語を呈示し、対象者に聞こえた通りに返答してもらった。【結果】聴力正常者の50語の正答数の平均はマスク着用時で49.6、マスク非着用時で50.0でマスクの有無で正答数に差を認めなかった。難聴者の正答数の平均はマスク着用時で24.2、マスク非着用時で31.4でマスクの有無で正答数に差を認めた(p<0.01)。マスク有無の正答数の差を平均聴力別に示すと、1019dB(聴力正常者)で0.3、3039dBで2.5、4049dBで5.7、5059dBで10.8、6069dBで7.6であった。【研究成果】難聴者はマスク着用により正答数が下がり、聴力正常者に比べ、より視覚情報の重要性が考えられる。また、60dB以下では、難聴の程度が大きいほどマスク着用による影響が大きくなった。60dB以上の難聴者では、マスクの有無に関わらず、音圧不足により聞き取りが困難であった。難聴者への結果のフィードバックにより難聴者自身がマスクによる聞こえへの影響を認識できた。【研究目的】不特定多数の人間との接触の多い病院では、医師を始め多くの職員がマスクをしている。しかしマスクで口を覆ってしまうことで、唇の動きなどの視覚情報が減りコミュニケーションの妨げとなる。特に難聴者では視覚情報は重要な手がかりとなる。難聴の程度とマスクの影響を調べることで難聴者各々に合わせてマスクを取り外す診療も可能となり、医療スタッフと難聴者との円滑なコミュニケーションが促進されると思われる。【研究方法】聴力正常者3名、難聴者19名を対象にマスク着用・非着用の話者による単語の聞き取りを行った。話者は5060dBの音圧で発声し、マスクの有無で音圧に大きな差が生じないように騒音計を用いて音圧の確認を行った。単語の聞き取りはマスク有無でそれぞれ50単語を呈示し、対象者に聞こえた通りに返答してもらった。【結果】聴力正常者の50語の正答数の平均はマスク着用時で49.6、マスク非着用時で50.0でマスクの有無で正答数に差を認めなかった。難聴者の正答数の平均はマスク着用時で24.2、マスク非着用時で31.4でマスクの有無で正答数に差を認めた(p<0.01)。マスク有無の正答数の差を平均聴力別に示すと、1019dB(聴力正常者)で0.3、3039dBで2.5、4049dBで5.7、5059dBで10.8、6069dBで7.6であった。【研究成果】難聴者はマスク着用により正答数が下がり、聴力正常者に比べ、より視覚情報の重要性が考えられる。また、60dB以下では、難聴の程度が大きいほどマスク着用による影響が大きくなった。60dB以上の難聴者では、マスクの有無に関わらず、音圧不足により聞き取りが困難であった。難聴者への結果のフィードバックにより難聴者自身がマスクによる聞こえへの影響を認識できた。 | KAKENHI-PROJECT-16H00628 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H00628 |
地震波異方性トモグラフィーによる地球内部ダイナミクスの定量化 | 本研究の目的は、実体波を用いて地球内部の異方性(方位異方性および鉛直異方性)の詳細な三次元速度構造を明らかにすることである。そして、本研究で得られた地震学的構造を物質科学やシミュレーション研究と関連づけて、地球内部のダイナミクスを定量的に評価する。本年度は、人工データおよび実データを用いた鉛直異方性および方位異方性解析の結果を用いて、(1)本研究のトモグラフィー解析で仮定する異方性の軸分布の拘束条件(水平面内:方位異方性/鉛直方向:鉛直異方性)や、波線の偏り等によって生じる速度パラメータ間のトレードオフについての検討を行った;その結果、火山周辺域では鉛直異方性が優勢であり、領域全体に方位異方性を仮定することは、構造を正しく得る解析としては最適ではないことがわかった。今後の解析では、対象領域のテクトニックな背景によって方位異方性トモグラフィーと鉛直異方性トモグラフィーを使い分ける、若しくは異方性の軸の分布に自由度がある解析方法(開発済み)を使用する。また、(2)東北地方の島弧マントルウェッジにおけるダイナミクスと火成活動との関係に注目した考察を行った;本研究で得られた異方性分布は、当該地域における小規模対流のシミュレーション研究による異方性分布パターンと調和的であった。本研究で実施している異方性構造解析の有効性を示唆するひとつの傍証が得られたものと考えられる。と同時に、シミュレーション研究で考慮された地球内部の状態を表す様々なパラメータを介することで、本研究における定量的な議論の深化が見込まれる。また,前年度より引き続いて関東地方の方位異方性に関する投稿論文の修正を行った。当該論文は、現在、再投稿のための最終段階にある。前年度末に出産した第2子の保育施設がみつからないまま、規定により研究中断期間の上限をむかえた。そのため、研究再開後においても十分な研究時間を持つことができず、研究計画時の予定よりは多少遅れ気味になっている。これまでに開発した手法を用いて、異方性速度構造解析を続行する。そして、得られた結果を用いて地球内部のダイナミクスの定量化を図る。ただし、この半年間は、研究計画時に想定していたほど研究時間が持てず、また、今後に於いても同様の状況となる可能性も否めない。したがって、解析領域を広げる等して解析時間を短縮し、問題解決に努める。本年度は,以下の研究を実施した(1)データの吟味:解析に用いるHi-net検測値データ(防災科学研究所)を吟味した.地震規模,震源地,検測者の違いによるデータ特性の把握に努めた.今年度は,東北地方の地震データを入手し,解析に向けた準備を始めた.(2)S波方位異方性トモグラフィー法の開発:定量的な議論を進めていくためのひとつの要素として,S波方位異方性の3次元構造推定を開始した.今回は,最初の試みとして,中国・四国地方を対象領域に選定した.まずは,手法とデータ(気象庁一元化データ)の確認のため,数値実験を実施した.加えて,実際の観測データに適用して,当該地域における3次元のS波方位異方性速度構造を求めた.(3)P波鉛直異方性トモグラフィー法の開発:近年,鉛直異方性の重要性が再認識されている.地球規模では標準モデルに組み込まれるほどその存在の重要性と普遍性が確かめられているが,地域的な解析では未だ不明な点が多い.そこで,鉛直異方性を考慮したP波異方性トモグラフィー法を開発し,東北地方の3次元鉛直異方性速度構造推定を実施した.(4)S波異方性の時間変化の検出:異方性と応力場の関係は広く受け入れられているが,この関係は,全ての観測において普遍的にみられるわけではない.この原因として,変動の大きさや観測網の整備状況の問題が挙げられる.そこで本研究では,日本列島規模で地震活動が変化するような変動が齎された東北地方太平洋沖地震に注目し,その発生前後における地殻内の異方性の変化の検出を試みた.対象領域は当該地震の発生により,最も地震活動が変化した茨城-福島県境地域である.(5)関東地方のP波異方性速度構造に関する論文を国際誌に投稿した.実体波を用いて地球内の詳細な三次元異方性速度構造を明らかにし、これを基にして地球ダイナミクスの定量的な議論を行うため、本年度は以下の研究を実施した。(1)P波鉛直異方性トモグラフィー法の開発:近年、鉛直異方性の重要性が再認識されているげ地球規模では標準モデルに組み込まれるほどその存在の重要住と普遍性が確かめられているが、地域的な解析では未だ不明な点が多い。そこで、鉛直異方性を考慮したP波異方性トモグラフィー法を開発した。(2)(1)で開発した鉛直異方性を考慮したP波異方性トモグラフィー法を東北地方の地震データに適用し、東北地方の地殻およびマントルにおける3次元鉛直異方性速度構造推定を実施した.得られた鉛直異方性は、地殻領域では水平方向に伝播する地震波が鉛直方向に伝播する地震は速度よりも速いのに対し、深さ70100kmの深さ領域では鉛直方向に伝播する地震波が水平方向の伝播速度よりも速いという深さ変化を示した。 | KAKENHI-PROJECT-10J09496 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J09496 |
地震波異方性トモグラフィーによる地球内部ダイナミクスの定量化 | また、鉛直異方性の地域性については、地震め等深度線の走行と直交する方向に形成された火山帯の下(ホットフィンガー)で鉛直異方性が強いことが示された。加えて同じデータを用いて三次元方位異方性速度構造推定を実施したところ、最終的な構造に対する走時残差は鉛直異方性解析で得られた構造に対する値よりも大きく、鉛直異方性の重要性が示された。(3)Hi-net(防災科学技術研究所)で記録された全走時データを取得した。(4)関東地方のP波方位異方性速度構造に関する論文の修正版を投稿するための準備を行った。本研究の目的は、実体波を用いて地球内部の異方性(方位異方性および鉛直異方性)の詳細な三次元速度構造を明らかにすることである。そして、本研究で得られた地震学的構造を物質科学やシミュレーション研究と関連づけて、地球内部のダイナミクスを定量的に評価する。本年度は、人工データおよび実データを用いた鉛直異方性および方位異方性解析の結果を用いて、(1)本研究のトモグラフィー解析で仮定する異方性の軸分布の拘束条件(水平面内:方位異方性/鉛直方向:鉛直異方性)や、波線の偏り等によって生じる速度パラメータ間のトレードオフについての検討を行った;その結果、火山周辺域では鉛直異方性が優勢であり、領域全体に方位異方性を仮定することは、構造を正しく得る解析としては最適ではないことがわかった。今後の解析では、対象領域のテクトニックな背景によって方位異方性トモグラフィーと鉛直異方性トモグラフィーを使い分ける、若しくは異方性の軸の分布に自由度がある解析方法(開発済み)を使用する。また、(2)東北地方の島弧マントルウェッジにおけるダイナミクスと火成活動との関係に注目した考察を行った;本研究で得られた異方性分布は、当該地域における小規模対流のシミュレーション研究による異方性分布パターンと調和的であった。本研究で実施している異方性構造解析の有効性を示唆するひとつの傍証が得られたものと考えられる。と同時に、シミュレーション研究で考慮された地球内部の状態を表す様々なパラメータを介することで、本研究における定量的な議論の深化が見込まれる。また,前年度より引き続いて関東地方の方位異方性に関する投稿論文の修正を行った。当該論文は、現在、再投稿のための最終段階にある。最も時間のかかる可能性のあった解析手法の開発は概ね完了し,また,これを用いた解析も始められたのでその点は評価できる.しかし,出産および育児により,申請時に予定していたほど研究時間がとれず,解析が予定よりは多少遅れ気味になっている.また,論文投稿についても予定していたほど捗らなかった.最も時間のかかる可能性のあった解析手法の開発は概ね完了し,また,これを用いた解析も始められたのでその点は評価できる.しかし,育児と更なる妊娠により申請時に予定していたほど研究時間がとれず,解析が予定よりは多少遅れ気味になっている.論文投稿については、査読者からのコメントに答えるための解析を新たに行い、これを基にした修正を終えることができた。来年度中の雑誌掲載が見込まれる。前年度末に出産した第2子の保育施設がみつからないまま、規定により研究中断期間の上限をむかえた。そのため、研究再開後においても十分な研究時間を持つことができず、研究計画時の予定よりは多少遅れ気味になっている。 | KAKENHI-PROJECT-10J09496 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10J09496 |
部派仏教における縁起思想研究 | 昨年度に引き続き、南方上座部(大寺派)の『分別論(Vibhanga)』、説一切有部の『法蘊足論(Dharmaskandha)』、法蔵部の『舎利弗阿毘曇論』に見られる各部派の縁起解釈を検討し、次の二点を明らかにした。1.いずれの論書も『マハー・ニダーナ(Maha-nidana)』という経典に説かれる縁起説を強く意識しており、そのことは、各論書がそれぞれ独自に発展する以前に共通の源泉資料として存在していた頃からすでに、当経典の縁起説が大きな問題となっていて、縁起説と輪廻の関係が解釈上の重要な論題となっていたことを示している。2.こうした議論の傾向こそが、後の論書における三世両重の因果の解釈、すなわち、十二支縁起は過去・現在・未来にわたって輪廻を繰り返す衆生の迷いの生存をあらわすものである、という解釈に連なっている。このように、それぞれの部派は縁起説を解釈する際に輪廻説に対する関心を共有しているのであるが、従来の縁起思想研究においては、縁起説が輪廻と関係するのかどうかという点をめぐって諸学者の見解が異なっていた。本年度は縁起思想に関する研究史についても吟味・検討したが、その作業の過程で、西洋の研究者が仏教思想に対していかに近代的な合理主義的精神をもってアプローチしたか、一方、そうした近代的な研究手法を日本の研究者はどのように受け入れ、同時にどのような内面的葛藤を抱えていたのかという問題を、特に近代仏教学の成立史上重要なF.マックス・ミュラー、南條文雄、笠原研寿の場合について明らかにした。その上で、仏教研究に対するこうした姿勢や方向性の違いが、従来の縁起研究における諸学者のさまざまな見解にも影響を与えていることを確認し、以上の知見を発表した。部派仏教における縁起解釈は、十二支縁起説をそれぞれの部派の教理に従って解釈する立場に基づいているが、原始仏典における縁起思想の発展を見るならば、支分の少ない縁起説の意味内容を明らかにすることも重要である。そして、十二支に充たない縁起説が部派仏教においてどのように扱われているかを調査することも、縁起思想の解明に必要な課題である。この点について、南方上座部(大寺派)の『ヴィバンガ(Vibhanga)』、さらに北伝アビダルマの中で『ヴィバンガ』と密接な関係にあり時代的にも古いとされる、説一切有部の『法薀足論(Dharmaskandha)』、および法蔵部の所伝とされる『舎利弗阿毘曇論』を比較検討した。その結果、『ヴィバンガ』におけるアビダンマ分別の縁起解釈の中に、『マハー・ニダーナ(Maha-nidana)』に説かれる九支縁起説の影響が反映しており、また『法薀足論』や『舎利弗阿毘曇論』も十二支縁起説を解釈する一方で、同時にまた『マハー・ニダーナ』、あるいはそこに説かれる特殊な縁起説をも意識していることが明らかになった。このことは、『マハー・ニダーナ』の縁起説が原始仏典において重要な意義を有しているとともに、初期の論書における縁起解釈において大きな関心事であったことを示していると考えられる。本年度9月18日から3月18日までは科学研究費補助金の外国旅費を使用して、英国オックスフォード大学の東洋学研究所(Oriental Institute)において、以上の研究、および関連する資料の調査を行った。昨年度に引き続き、南方上座部(大寺派)の『分別論(Vibhanga)』、説一切有部の『法蘊足論(Dharmaskandha)』、法蔵部の『舎利弗阿毘曇論』に見られる各部派の縁起解釈を検討し、次の二点を明らかにした。1.いずれの論書も『マハー・ニダーナ(Maha-nidana)』という経典に説かれる縁起説を強く意識しており、そのことは、各論書がそれぞれ独自に発展する以前に共通の源泉資料として存在していた頃からすでに、当経典の縁起説が大きな問題となっていて、縁起説と輪廻の関係が解釈上の重要な論題となっていたことを示している。2.こうした議論の傾向こそが、後の論書における三世両重の因果の解釈、すなわち、十二支縁起は過去・現在・未来にわたって輪廻を繰り返す衆生の迷いの生存をあらわすものである、という解釈に連なっている。このように、それぞれの部派は縁起説を解釈する際に輪廻説に対する関心を共有しているのであるが、従来の縁起思想研究においては、縁起説が輪廻と関係するのかどうかという点をめぐって諸学者の見解が異なっていた。本年度は縁起思想に関する研究史についても吟味・検討したが、その作業の過程で、西洋の研究者が仏教思想に対していかに近代的な合理主義的精神をもってアプローチしたか、一方、そうした近代的な研究手法を日本の研究者はどのように受け入れ、同時にどのような内面的葛藤を抱えていたのかという問題を、特に近代仏教学の成立史上重要なF.マックス・ミュラー、南條文雄、笠原研寿の場合について明らかにした。その上で、仏教研究に対するこうした姿勢や方向性の違いが、従来の縁起研究における諸学者のさまざまな見解にも影響を与えていることを確認し、以上の知見を発表した。 | KAKENHI-PROJECT-01J10462 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01J10462 |
一般日本人女性におけるCOPDの有病率及び潜在性動脈硬化指標との関連に関する検討 | 本学では滋賀県草津市の一般住民から無作為抽出した集団を対象として、潜在性動脈硬化指標とその関連因子を検討する研究を進めている(Shiga Epidemiological Study of Subclinical Atherosclerosis= SESSA研究)。この研究では、このコホート集団に対して国際的に標準化された方法である気管支拡張薬吸入後のスパイロメトリーを用いての呼吸機能検査を行っている。この呼吸機能検査結果を用いて、本コホート集団における女性の慢性閉塞性肺疾患(COPD)の有病率を明らかにすると同時に、潜在性動脈硬化指標と呼吸機能検査との関係を明らかにすることを本研究の目的としている。さらに、これまでの研究データとの比較を行うことで、男女間の違いを明らかにすることも目的としている。本年度は、年度当初に女性を対象としたSESSA研究全体の体制の再構築を行った。それと同時に、呼吸機能検査機器の再整備を行い、また、検査担当の臨床検査技師に対し、国際標準の方法に基づいた呼吸機能検査が行えるように再教育を行った。その上で、コホート集団に属する一般女性住民に対し、研究の趣旨を説明し、同意を取得し、同意が得られた方を対象として、既往歴や呼吸器症状などの自己記入式質問票調査を行い、前述の気管支拡張薬吸入後の呼吸機能検査を継続し行っている。同時に、SESSA研究のそれぞれの担当者が動脈硬化性疾患に関する検査を継続し行っている。順調に女性参加者からの同意を取得し、呼吸機能検査および動脈硬化性疾患に関する検査をおこなっている。呼吸機能検査結果は、呼吸器専門医がすべての結果をチェックし、クオリティ・コントロールを行っている。また、動脈硬化性疾患に関する検査に関しても、SESSA研究担当のそれぞれの専門医や疫学研究者が結果のチェックを行っている。今後は、さらに新たな参加者からのデータを蓄積して、データセットを確定し、解析を行う予定である。本学では滋賀県草津市の一般住民から無作為抽出した集団を対象として、潜在性動脈硬化指標とその関連因子を検討する研究を進めている(Shiga Epidemiological Study of Subclinical Atherosclerosis= SESSA研究)。この研究では、このコホート集団に対して国際的に標準化された方法である気管支拡張薬吸入後のスパイロメトリーを用いての呼吸機能検査を行っている。この呼吸機能検査結果を用いて、本コホート集団における女性の慢性閉塞性肺疾患(COPD)の有病率を明らかにすると同時に、潜在性動脈硬化指標と呼吸機能検査との関係を明らかにすることを本研究の目的としている。さらに、これまでの研究データとの比較を行うことで、男女間の違いを明らかにすることも目的としている。本年度は、年度当初に女性を対象としたSESSA研究全体の体制の再構築を行った。それと同時に、呼吸機能検査機器の再整備を行い、また、検査担当の臨床検査技師に対し、国際標準の方法に基づいた呼吸機能検査が行えるように再教育を行った。その上で、コホート集団に属する一般女性住民に対し、研究の趣旨を説明し、同意を取得し、同意が得られた方を対象として、既往歴や呼吸器症状などの自己記入式質問票調査を行い、前述の気管支拡張薬吸入後の呼吸機能検査を継続し行っている。同時に、SESSA研究のそれぞれの担当者が動脈硬化性疾患に関する検査を継続し行っている。順調に女性参加者からの同意を取得し、呼吸機能検査および動脈硬化性疾患に関する検査をおこなっている。呼吸機能検査結果は、呼吸器専門医がすべての結果をチェックし、クオリティ・コントロールを行っている。また、動脈硬化性疾患に関する検査に関しても、SESSA研究担当のそれぞれの専門医や疫学研究者が結果のチェックを行っている。今後は、さらに新たな参加者からのデータを蓄積して、データセットを確定し、解析を行う予定である。 | KAKENHI-PROJECT-18K08142 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K08142 |
パーキンソン病-男性不妊-癌とを結ぶDJ-1の機能解析と創薬 | 1)DJ-1の機能解析-ドパミン生合成におけるDJ-1の機能DJ-1はTH,DDCに直接結合し、活性を正に制御することを明らかにした。パーキンソン病患者で見られるDJ-1変異体にはその活性がない。また、ヘテロ変異体は野生型DJ-1に対し、dominant negative効果を示し、ヘテロ変異も発症の一因となることが示唆された。H_2O_2,6-OHDAなどで細胞に酸化ストレスを与えると、DJ-1の106番目のシステイン(C106)が、-SOH,SO_2H,SO_3Hと酸化される。軽度のC106酸化はTH,DDC活性を上昇させ、過度の酸化は逆に活性抑制を示したことにより、弧発性パーキンソン病発症におけるDJ-1機能が類推された。2)DJ-1とDJ-1結合化合物による神経変性疾患治療薬への応用虚血性脳梗塞モデルラット脳へのDJ-1注入により顕著に症状が抑制された。DJ-1結合化合物は、DJ-1のC106への過度の酸化を抑制することで、DJ-1活性を維持することを明らかとした。更に、DJ-1結合化合物の更なる活性上昇を狙って、in silicoで構造改変した。また、250万化合物ライブラリーを使ったin silico大規模スクリーニングで、DJ-1結合化合物を複数単離した。1)DJ-1の機能解析-ドパミン生合成におけるDJ-1の機能DJ-1はTH,DDCに直接結合し、活性を正に制御することを明らかにした。パーキンソン病患者で見られるDJ-1変異体にはその活性がない。また、ヘテロ変異体は野生型DJ-1に対し、dominant negative効果を示し、ヘテロ変異も発症の一因となることが示唆された。H_2O_2,6-OHDAなどで細胞に酸化ストレスを与えると、DJ-1の106番目のシステイン(C106)が、-SOH,SO_2H,SO_3Hと酸化される。軽度のC106酸化はTH,DDC活性を上昇させ、過度の酸化は逆に活性抑制を示したことにより、弧発性パーキンソン病発症におけるDJ-1機能が類推された。2)DJ-1とDJ-1結合化合物による神経変性疾患治療薬への応用虚血性脳梗塞モデルラット脳へのDJ-1注入により顕著に症状が抑制された。DJ-1結合化合物は、DJ-1のC106への過度の酸化を抑制することで、DJ-1活性を維持することを明らかとした。更に、DJ-1結合化合物の更なる活性上昇を狙って、in silicoで構造改変した。また、250万化合物ライブラリーを使ったin silico大規模スクリーニングで、DJ-1結合化合物を複数単離した。我々が癌遺伝子として単離したDJ-1は家族性パーキンソン病(PARK7)の原因遺伝子でもある。パーキンソン病は酸化ストレス、ミトコンドリアのcomplex 1の機能阻害、異常タンパク質の凝集が原因と考えられているが詳細な分子機構は明らかでなかった。我々は、DJ-1は転写調節、抗酸化ストレスプロテアーゼ、ミトコンドリアcomplex 1の正の調節機能を有し、機能破綻はパーキンソン病などの脳神経変性疾患の原因となることを明らかとした。DJ-1は106番目のシステイン(C106)の酸化状態で活性が制御される。還元型は弱い活性で、C106がSO_2Hと酸化されることが活性に必須であるが、SO_3H酸化されると不活性となる。孤発性パーキンソン病患者脳においては、還元型DJ-1の欠如と異常な酸型DJ-1(不活性型)の存在を見出した。また、DJ-1は酸化ストレスより自己酸化され活性酸素の消去及び転写因子として抗酸化ストレス関連遺伝子発現を行い、細胞死を防御する。更にドパミン生合成のキー酵素であるチロシンヒドロキシラーゼ(TH)を転写レベル、及びDJ-1-TH相互作用を通じて活性上昇させた。一方、パーキンソン病モデルラットにDJ-1タンパク質を直接注入すると、ドパミン神細胞死と行動異常が劇的に阻止されることを明らかとした。更に、DJ-1の活性部位であるC106に結合し、酸化ストレス誘導神経細胞死を抑制する複数の低分子化合物を同定し、これらがDJ-1タンパク質同様に神経細胞死と行動異常の解除を行うことをin vitro及びパーキンソン病モデルラットで明らかにした。これらの化合物は、血液脳関門を通過する。更に、我々は弧発性パーキンソン病患者の症状に応じて、患者血清にDJ-1が分泌され、DJ-1がパーキンソン病の診断バイオマーカーになる可能性を示した。以上より、DJ-1とその結合化合物は、神経細胞死を抑制することにより、パーキンソン病を始めとする神経変性疾患治療薬の可能性を示した。1)DJ-1の機能解析-ドパミン生合成におけるDJ-1の機能DJ-1はTH, DDCに直接結合し、活性を正に制御することを明らかにした。パーキンソン病患者で見られるDJ-1変異体にはその活性がない。また、ヘテロ変異体は野生型DJ-1に対し、dominant negative効果を示し、ヘテロ変異も発症の一因となることが示唆された。H_2O_2, 6-OHDAなどで細胞に酸化ストレスを与えると、DJ-1の106番目のシステイン(C106)が、-SOH, SO_2H, SO_3Hと酸化される。 | KAKENHI-PROJECT-18390018 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18390018 |
パーキンソン病-男性不妊-癌とを結ぶDJ-1の機能解析と創薬 | 軽度のC106酸化はTH, DDC活性を上昇させ、過度の酸化は逆に活性抑制を示したことにより、弧発性パーキンソン病発症におけるDJ-1機能が類推された。2)DJ-1とDJ-1結合化合物による神経変性疾患治療薬への応用虚血性脳梗塞モデルラット脳へのDJ-1注入により顕著に症状が抑制された。DJ-1結合化合物は、DJ-1のC106への過度の酸化を抑制することで、DJ-1活性を維持することを明らかとした。更に、DJ-1結合化合物の更なる活性上昇を狙って、in silicoで構造改変した。また、250万化合物ライブラリーを使ったin silico大規模スクリーニングで、DJ-1結合化合物を複数単離した。 | KAKENHI-PROJECT-18390018 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18390018 |
内因性 GLP-1 の虚血心筋保護作用の分子メカニズム解明とその臨床的重要性の研究 | 動物実験では、日本白色種ウサギの30分虚血・48時間再灌流モデルを用いて、α-グルコシダーゼ阻害薬のvogliboseとmiglitolの内服が、梗塞サイズを縮小することを確認した。その分子メカニズムとして、血漿GLP-1産生増加、PI3 kinase-Akt-NO pathwayの活性化、mitchondrialKATPchannel開口が関与することを明らかにした。さらに、心臓病患者を対象とした臨床研究では、心機能障害患者においては、心機能正常者に比べて、血漿GLP-1濃度が有意に上昇していること、血漿GLP-1濃度と左室駆出率は逆相関することを明らかにした。以上の結果から、内因性のGLP-1は、虚血性心疾患や左室機能障害において心保護因子であることが示唆された。動物実験では、日本白色種ウサギの30分虚血・48時間再灌流モデルを用いて、α-グルコシダーゼ阻害薬のvogliboseとmiglitolの内服が、梗塞サイズを縮小することを確認した。その分子メカニズムとして、血漿GLP-1産生増加、PI3 kinase-Akt-NO pathwayの活性化、mitchondrialKATPchannel開口が関与することを明らかにした。さらに、心臓病患者を対象とした臨床研究では、心機能障害患者においては、心機能正常者に比べて、血漿GLP-1濃度が有意に上昇していること、血漿GLP-1濃度と左室駆出率は逆相関することを明らかにした。以上の結果から、内因性のGLP-1は、虚血性心疾患や左室機能障害において心保護因子であることが示唆された。日本白色種ウサギを用いて、30分虚血・48時間再灌流モデルを用いて、a-グルコシダーゼ阻害薬のmiglitolが、梗塞サイズを縮小することを確認し、その分子メカニズムを解明した。Miglitol 100mg/kg/dayを7日間内服投与した結果、梗塞サイズは有意に縮小した。この梗塞サイズ縮小効果は、exendin(9-39)(GLP-1 blocker, 1mg/kg)の前投与で、部分的にブロックされた。Miglitol 5mg/kgを虚血前に静注した場合、梗塞サイズは有意に縮小された。Miglitol内服による梗塞サイズ縮小効果が一番大きく、exendin(9-39)により梗塞縮小効果は軽減され、miglitol静注による梗塞縮効果と同等であった。Westernblot解析により、miglitol内服後の心筋組織におけるphospho-PI3 kinase, phospho-Aktの活性化が有意に増大した。すなわち、miglitolの梗塞サイズ縮小効果は、従来我々が報告した虚血中のglycogenolysis抑制によるlactate産生抑制、glycogeの消費抑制による効果に加えて、GLP-1産生によるPI3-kinase活性化、Akt活性化がmiglitolの梗塞サイズ縮小効果に関与することを明らかにした。臨床研究についても順調に進行中である。24年度が最終年度であるため、記入しない。現在取り組み中の、血漿GLP-1濃度と心機能の関係に関する臨床研究をさらに推進し、患者数を増加させる方向で研究を進めていく。24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22590775 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22590775 |
乳幼児期における器楽活動プログラムの構築 | 本研究は、器楽活動の意義について関連領域から探り、フィールドワークとワークショップを通して、乳幼児期における器楽活動のプログラム構築を目指したものである。一連の研究を通して(1)身の回りの環境と関係を築いていく中で、子どもの音楽的な発達も生じていくこと、(2)実際に子どもたちが日常生活を行っている場で音楽表現の芽生えが生じていること、(3)音楽活動そのものが人間の感覚を拓いていくこと、の3点を指摘するに至った。器楽活動の意義について発達的視点、身体論的視点、音楽教育史的視点から探り、フィールドワークとワークショップを通して、乳幼児期における器楽活動のプログラムを構築するものである。本年度はこれまで収集してきた動画記録、ワークショップデータを基に、乳幼児期の器楽活動の様相について、実際の子どもの姿から捉えなおした(日本音楽教育学会第45回共同企画ほかで発表)。また、子どもたちの表現をとらえる視点について検討すべく、これまで収拾したデータを整理・分析し、幼児期の言語表現とそれを生み出す環境について明らかにした。さらに、音楽教育史的視点から器楽教育を捉え直し、器楽活動における意義について「器楽活動を行っている自分自身の身体感覚を拓いていく」という視点を見出した。尚、これらについては現在論文執筆、論文投稿中である。上記内容を踏まえ、保育現場の器楽活動について検討し、ワークショップ、子育て支援活動の環境設定等実践も行っている。器楽活動の意義について、発達的視点、身体論的視点、音楽教育史的視点から探り、フィールドワークとワークショップを通して、乳幼児期における器楽活動のプログラムを構築しようとするものである。本年度は、平成25年度より続けている動画の分析、ワークショップデータの分析を通して、乳幼児が「楽器」を「音を鳴らすモノ」として扱う以前に「身の回りにあるモノとして探索している」姿が見えてくることを示し、乳幼児の音への気づきは、聴覚刺激によるものだけではなく、音を出す際の自分の身体感覚や、モノの振動からも音を感じていることを示した。さらに、これらの子どもの姿から、保育実践の場で「楽器を探求する過程を作る」「多様な感覚を通して音を感じる」ということを念頭に置いた楽器活動の必要性を指摘し、1.楽器に触れ、楽器を見ながら音も感じることを目指した実践、2.子育て支援の場における楽器を含めた環境設定の重要性について指摘するに至った(保育学会第67回大会、日本赤ちゃん学会第14回学術集会等、PECERA2014で発表)。本研究は、器楽活動の意義について発達的視点、脳科学的視点、身体論的視点、音楽教育史的視点から探り、フィールドワークとワークショップを通して、乳幼児期における器楽活動プログラムの構築を目指したものである。従来、音楽科教育における器楽活動の内容・方法において欠如していたと思われる、(1)音が出るモノ、楽器を用いた活動は他者との関係性を育む、(2)モノ・楽器を用いて音を鳴らすという行為は身の回りの環境と関わる事である、(3)モノ・楽器を用いて音を鳴らすという行為は自分自身の感覚を自覚するものである、という内容を重視した。発達研究、脳科学研究、哲学・美学研究等、関連領域の知見の整理を行い、(1)音の認識が他者との関係性を生み出すこと、(2)モノを使って音を鳴らすという行為そのものが、聴覚のみでなく、触覚、筋感覚等を同時に刺激する行為であること、(3)それが乳幼児の自己の意識の基盤となるということなどが指摘できたと考える。また、音楽教育史研究を通して、これまで先人たちが行ってきた音楽教育活動においても、ここに述べたのと同じような視点が散見されることを指摘した。これらの知見を基にして、保育の場で行う楽器遊びの活動例として、一般的な奏法に囚われず子どもの自由な発想を基にした楽器の活用、感覚間相互作用(クロスモダリティ)を活用した活動を提案し、保育現場でワークショップを企画・実践した。さらに、関連学会等での発表、書籍の刊行を通してこれらの内容を公開した。本研究は、器楽活動の意義について関連領域から探り、フィールドワークとワークショップを通して、乳幼児期における器楽活動のプログラム構築を目指したものである。一連の研究を通して(1)身の回りの環境と関係を築いていく中で、子どもの音楽的な発達も生じていくこと、(2)実際に子どもたちが日常生活を行っている場で音楽表現の芽生えが生じていること、(3)音楽活動そのものが人間の感覚を拓いていくこと、の3点を指摘するに至った。ワークショップ等の実践を通して、仮説に合致するような事例が多く得られている。幼児教育音楽教育これまで得られた成果を、今後エビデンスベースとなるよう、データを整理すべく試みる。動画分析をする中で他領域の文献と照らし合わせることができ、乳幼児期の音楽的発達について大枠整理されてきている。現在、客観的なデータに基づいたものとするため実験を進行中である。3月末に実施した海外視察(北欧)渡航経費が次年度での計上となったため。これまでの研究成果を基に、保育施設・子育て支援活動等で実践を進めていく。また、これまで、先行研究と事例の分析を中心に、乳幼児期の音楽的発達について整理をする予定であった。しかし、特に乳児期の器楽に関わる研究が非常に少なく、エビデンスベーストな研究がほとんど行われていない。そのため乳幼児期の子どもと楽器との関わりについて実験を行い、そのデータを分析することを計画し、進めている。3月末に実施したため、既に使用済みである。平成25年度は、研究代表者、研究分担者が、各々が研究をすすめてきた。研究成果をそれぞれ発表する機会が多く取れなかったため、旅費の使用が少なくなってしまった。 | KAKENHI-PROJECT-25381091 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25381091 |
乳幼児期における器楽活動プログラムの構築 | 平成26年度年度は、各々の研究成果を持ち寄り、相互に検討し合うための研究会を持ち研究成果の集約をすすめたい。また、研究成果の公表をして情報交換を進めていきたい。よって、研究会のための経費(旅費、宿泊費)の使用を予定している。また、平成25年度に引き続き、基礎的研究、フィールドワーク、インタビュー、質問紙調査に付随する物品費、旅費、人件費・謝金などの使用も予定している。 | KAKENHI-PROJECT-25381091 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25381091 |
新しいボリオキリ遷移金属錯体。トランスメタル化中間体としての構造と性質。 | 白金錯体と芳香族ボロン酸との反応を行い、トランスメタル化反応の中間体であるボリオキソ白金錯体を単離することに成功した。フェニル(ヨード)白金錯体と芳香族ボロン酸との反応を酸化銀、水の存在下で行った場合にもトランスメタル化反応は円滑に進行した。24時間以上の反応では生成物はトランスメタル化によるジアリール白金錯体であった。一方、同じ反応を短時間(<6時間)で停止した場合の生成物はボロン酸が脱プロトンしたボロナトが配位した錯体であった。種々の実験結果から、酸化銀の役割については塩基としてボロン酸を活性化するとともに、白金-ヨウ素結合を活性化するという二重の役割を果たしていることがわかった。4-メトキシフェニルボロン酸の反応によって得られた2つの生成物、ジアリール白金錯体およびフェニルボロナト白金錯は、いずれもX線構造解析による分子構造の決定を行うことができた。いずれも白金まわりはトランス構造をとり、Pt-C, Pt-O,Pt-P結合の長さは通常の配位結合の範囲にあった。ボロナト白金錯体に芳香族ボロン酸、酸化銀、水を加えて加熱してもジアリール白金錯体は容易に生成することから、この錯体はトランスメタル化反応の中間においても生成していることがわかった。この錯体がトランスメタル化にどのように関与しているかについて、さらに検討を行った結果、反応は逐次的に進行してトランスメタル化生成物を与えることがわかった。本研究によって、10族遷移金属と芳香族ボロン酸との反応におけるトランスメタル化によってアリール遷移金属錯体を合成することができ、量論的なトランスメタル化反応の機構について考察することができた。白金錯体と芳香族ボロン酸との反応を行い、トランスメタル化反応の中間体であるボリオキソ白金錯体を単離することに成功した。フェニル(ヨード)白金錯体と芳香族ボロン酸との反応を酸化銀、水の存在下で行った場合にもトランスメタル化反応は円滑に進行した。24時間以上の反応では生成物はトランスメタル化によるジアリール白金錯体であった。一方、同じ反応を短時間(<6時間)で停止した場合の生成物はボロン酸が脱プロトンしたボロナトが配位した錯体であった。種々の実験結果から、酸化銀の役割については塩基としてボロン酸を活性化するとともに、白金-ヨウ素結合を活性化するという二重の役割を果たしていることがわかった。4-メトキシフェニルボロン酸の反応によって得られた2つの生成物、ジアリール白金錯体およびフェニルボロナト白金錯は、いずれもX線構造解析による分子構造の決定を行うことができた。いずれも白金まわりはトランス構造をとり、Pt-C, Pt-O,Pt-P結合の長さは通常の配位結合の範囲にあった。ボロナト白金錯体に芳香族ボロン酸、酸化銀、水を加えて加熱してもジアリール白金錯体は容易に生成することから、この錯体はトランスメタル化反応の中間においても生成していることがわかった。この錯体がトランスメタル化にどのように関与しているかについて、さらに検討を行った結果、反応は逐次的に進行してトランスメタル化生成物を与えることがわかった。本研究によって、10族遷移金属と芳香族ボロン酸との反応におけるトランスメタル化によってアリール遷移金属錯体を合成することができ、量論的なトランスメタル化反応の機構について考察することができた。 | KAKENHI-PROJECT-03F03267 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03F03267 |
フローマイクロ合成法によるメタノフラーレンの高選択的合成法の開発 | 硫黄イリド法によるPCBMのフロー合成検討において、これまでは反応停止剤である酢酸を添加した受器に集めることで反応を停止させていた。この時、受器中での混合効率によっては十分に反応を停止できていない可能性があったため、三液混合法によるフロー系での反応停止を試みた。その結果、いずれの方法でも同等の結果が得られることが確認できた。これまではシリンジポンプを用いた送液によるフロー合成を行ってきたが、次年度にはLCポンプを用いた連続送液実験を行い、PCBMの大量合成法へと展開する。水系ヒドラゾン法によるPCBMのフロー合成検討については前年度までに、2台の送液ポンプとサンプルインジェクターを用いた送液実験系と、ナトリウムランプによる光異性化ユニットと接続し、ワンフローでのPCBM合成システムを構築した。これを用いて、条件検討を進めてきたが、加熱反応部分における反応器容量の制限から高流速での検討が行うには反応時間(滞留時間)が不足することが明らかとなり、現状からの収率向上が見込めない状態となっている。そこで更なる収率向上のための装置構成の改良を行うべく、樹脂製のチューブを用いた加熱反応部分の容量増大など、フロー合成システムの改良を進めている。本研究課題において、フロー合成における反応条件の最適化探索を継続してきたが、水系ヒドラゾン法によるPCBMのフロー合成検討について構築したワンフローでのPCBM合成システムでは、加熱反応部分における反応器容量の制限から高流速での検討が行うには反応時間(滞留時間)が不足することが明らかとなり、現状からの収率向上が見込めない状態となった。そこで更なる収率向上のための装置構成の改良を行うべく、樹脂製のチューブを用いた加熱反応部分の容量増大など、フロー合成システムの改良を進めている。硫黄イリド法によるPCBMのフロー合成検討については、LCポンプを用いた連続送液実験を行い、PCBMの大量合成法へと展開する。水系ヒドラゾン法によるPCBMのフロー合成検討については、加熱反応部分の容量増大などのフロー合成システムの改良を行い、反応転換率の向上と高流速化による生産性向上につて検討を行う。また、高流速化に伴う光反応部の改良についても併せて検討を行い、PCBMの大量合成法へと展開する平成28年度はスルホニウム塩とフラーレンC60から異性化工程を経ず直接[6,6]PCBMを合成可能な硫黄イリド法によるフローマイクロ合成の検討を試みた。まずバッチ法での条件をフロー系に適用し、数十秒程度の滞留時間での検討を試みたところ、リアクター内では反応が完結しておらず、リアクターから採取した反応液の径時変化を観察したところ、バッチ法と同様数時間かけて反応が進行していることが確認できた。すなわち、バッチ法で反応に用い有機塩基であるDBUではフロー系で用いるに十分な反応速度で硫黄イリドを発生させることができていないことが明らかとなった。そこでフロー系に適用可能な有機塩基の探索を行ったところ、バッチ法において5分以内に反応を完結させることの可能な有機超強塩基を見出すことができた。さらに、この有機強塩基を用いてフロー系での最適条件探索を試みることとした。DBUを塩基とした際と同様、T字型ミキサーを混合器として用いたところ、送液速度の上昇とともにフラーレンへの硫黄イリドのモノ付加体であるPCBMの収率が向上した。これは送液速度の上昇による混合効率の向上がその理由であると考えられることから、より混合性能の高い混合器での検討を行ったところ、PCBMの収率はさらに向上した。送液速度、滞留時間、試薬の等量比などの検討を進め、現在PCBMの収率がバッチ法よりも10%程度上回る収率60%を超える条件を見出すことができた。次年度以降はさらなる収率向上と、初年度に導入した送液ポンプを用いた連続送液による大量合成の検討を実施する。また、初年度での検討が遅れている水系ヒドラゾン法についてもその検討を加速させる。平成28年度は光異性化フロー反応の検討を行うとともに、フラーレンC60から[6,6]PCBMを直接合成する水系二層系反応を用いたフローマイクロ合成へ展開する予定であったが、光異性化用のナトリウムランプや送液ポンプとともに用いるサンプルインジェクターの選定・導入に当初の想定よりも時間を要してしまった。そこで、硫黄イリド法による[6,6]PCBM合成について、フローマイクロ合成法での予備検討を前倒しすることでその進展を図り、バッチ法を大きく上回る収率でPCBMを合成できる条件を見出した。平成29年度は、ナトリウムランプを用いた、[5,6]PCBMから[6,6]PCBMへの光異性化反応の検討を行った。これまでにも他の光源を用いて、単離した[5,6]PCBMから[6,6]PCBMへの光異性化反応について検証したことはあったが、水系二層系ヒドラゾン法のフロー合成化を進める上では、より実際の反応系に即した状態を再現するべきであると判断し、光非照射下におけるフラーレンとヒドラゾンの反応液を用いて、ナトリウムランプによる光異性化検討を行った。送液速度を変更することにより、光異性化反応に要する時間を検証し、異性化反応に必要な時間を算出することができた。この検討結果をもとに、フラーレンとヒドラゾンの反応(加熱条件)から、光異性化反応までのフロー合成の検討を進めることとした。 | KAKENHI-PROJECT-16K06851 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K06851 |
フローマイクロ合成法によるメタノフラーレンの高選択的合成法の開発 | 次に2台の送液ポンプとサンプルインジェクターを用いた送液実験系を構築し、ナトリウムランプによる光異性化ユニットと接続することにより、水系二層系ヒドラゾン法のフロー合成化検討を進めることとした。フラーレンとヒドラゾンの反応(加熱条件)および、光異性化反応共に、リアクター容量を固定し送液速度の変更による反応効率の検証を行った。リアクター容量を固定していたため、加熱条件反応部の滞留時間不足によるフラーレン転換率が低いこと、また、低送液速度でしか反応を実行することができなかった点が課題ではあるが、フラーレンとヒドラゾンから[6,6]PCBMを直接合成するフロー合成系を構築することに成功した。本年度、水系二層系ヒドラゾン法のフロー合成化を、購入した送液ポンプを用いて検討を進めていた。しかし、2台のポンプによる送液時に、双方の送液量に差が出ていることが判明し、その原因究明を行う必要が生じた。送液ポンプだけでなく、マイクロリアクターに使用している各部品(ミキサー、配管など)についても変形や閉塞が生じていないか検証することとなり、結果的にはミキサーの部分的な閉塞によるものと判断できたが、想定していたよりも検証に時間を要してしまい、当初予定していたところまでの研究遂行に至らなかった。硫黄イリド法によるPCBMのフロー合成検討において、これまでは反応停止剤である酢酸を添加した受器に集めることで反応を停止させていた。この時、受器中での混合効率によっては十分に反応を停止できていない可能性があったため、三液混合法によるフロー系での反応停止を試みた。その結果、いずれの方法でも同等の結果が得られることが確認できた。これまではシリンジポンプを用いた送液によるフロー合成を行ってきたが、次年度にはLCポンプを用いた連続送液実験を行い、PCBMの大量合成法へと展開する。水系ヒドラゾン法によるPCBMのフロー合成検討については前年度までに、2台の送液ポンプとサンプルインジェクターを用いた送液実験系と、ナトリウムランプによる光異性化ユニットと接続し、ワンフローでのPCBM合成システムを構築した。これを用いて、条件検討を進めてきたが、加熱反応部分における反応器容量の制限から高流速での検討が行うには反応時間(滞留時間)が不足することが明らかとなり、現状からの収率向上が見込めない状態となっている。そこで更なる収率向上のための装置構成の改良を行うべく、樹脂製のチューブを用いた加熱反応部分の容量増大など、フロー合成システムの改良を進めている。本研究課題において、フロー合成における反応条件の最適化探索を継続してきたが、水系ヒドラゾン法によるPCBMのフロー合成検討について構築したワンフローでのPCBM合成システムでは、加熱反応部分における反応器容量の制限から高流速での検討が行うには反応時間(滞留時間)が不足することが明らかとなり、現状からの収率向上が見込めない状態となった。そこで更なる収率向上のための装置構成の改良を行うべく、樹脂製のチューブを用いた加熱反応部分の容量増大など、フロー合成システムの改良を進めている。平成28年度に検討を進める予定であった光異性化フロー反応の検討と、フラーレンC60から[6,6]PCBMを直接合成する水系二層系反応を用いたフローマイクロ合成へ展開について、平成28年度分の遅れを取り戻すべくその検討を加速する。また、今年度中に導入予定であるもう一台の送液ポンプの導入による、3液混合でのフロー合成についても検討を進めたい。 | KAKENHI-PROJECT-16K06851 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K06851 |
遷移金属触媒を用いるラジカル環化反応:含窒素環状化合物の実用的合成法 | アルカロイド骨格を含む含窒素環状化合物の合成法として、遷移金属触媒を用いるポリハロゲン化合物の環化反応を開発した。窒素上に置換基を有するN-アリルトリクロロアセトアミドを、塩化第一銅とビピリジンからなる触媒で処理すると、容易に炭素-塩素結合の解裂と分子内に存在する炭素-炭素2重結合への付加反応が起こる。実用的合成法の確立を目指した反応条件の検討により、温和な条件下での効率的な環化条件を見い出した。この知見をもとに、N-アリルトリクロロアセトアミドの環化反応により生成する、α、α、γ-トリクロロラクタムのα位の炭素-塩素結合の活性化とα-オレフィンへの付加反応を、同様な触媒を用いて検討した。とくに、オレフィンとしてアリルトリメチルシランを用いた場合、付加反応により生じた化合物をシリカゲルで処理することにより、容易なクロロトリメチルシランの脱離がおこり、ラクタムのα位にアリル基を導入するよい方法となることがわかった。反応条件の最適化をおこなうとともに、生じたアリル化合物の立体化学を検討した。可能性のある2つの立体異性体のうち、トランス体が9:1程度の比で優先的に生成していることが明らかとなった。このトリクロロラクタムとオレフィンとの反応を、分子内反応へと応用した。N-ベンジル-N-ゲラニルトリクロロアセトアミドを同様な触媒で処理すると、5員環と6員環からなる双環性のラクタムが一段階で生成した。反応は本質的に2段階反応であり、温度を下げた実験において、まず、5員環の生成がおこったのちに6員環が生成することが中間体の捕捉により明らかとなった。アルカロイド骨格を含む含窒素環状化合物の合成法として、遷移金属触媒を用いるポリハロゲン化合物の環化反応を開発した。窒素上に置換基を有するN-アリルトリクロロアセトアミドを、塩化第一銅とビピリジンからなる触媒で処理すると、容易に炭素-塩素結合の解裂と分子内に存在する炭素-炭素2重結合への付加反応が起こる。実用的合成法の確立を目指した反応条件の検討により、温和な条件下での効率的な環化条件を見い出した。この知見をもとに、N-アリルトリクロロアセトアミドの環化反応により生成する、α、α、γ-トリクロロラクタムのα位の炭素-塩素結合の活性化とα-オレフィンへの付加反応を、同様な触媒を用いて検討した。とくに、オレフィンとしてアリルトリメチルシランを用いた場合、付加反応により生じた化合物をシリカゲルで処理することにより、容易なクロロトリメチルシランの脱離がおこり、ラクタムのα位にアリル基を導入するよい方法となることがわかった。反応条件の最適化をおこなうとともに、生じたアリル化合物の立体化学を検討した。可能性のある2つの立体異性体のうち、トランス体が9:1程度の比で優先的に生成していることが明らかとなった。このトリクロロラクタムとオレフィンとの反応を、分子内反応へと応用した。N-ベンジル-N-ゲラニルトリクロロアセトアミドを同様な触媒で処理すると、5員環と6員環からなる双環性のラクタムが一段階で生成した。反応は本質的に2段階反応であり、温度を下げた実験において、まず、5員環の生成がおこったのちに6員環が生成することが中間体の捕捉により明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-08245222 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08245222 |
タントラヴァールッティカ祭名章の研究 | 本研究はミーマーンサー学派の大哲学者クマーリラ・バッタの『タントラヴァールッティカ』(『ミーマーンサーの綱理評釈』)第1巻第4章の研究であり2年間で完結することを目指していた。この研究を完結して、ダルマに対する認識手段論を主題とする第1巻全体のタントラヴァールッティカの研究を完成するのが目的であった。本書の出版本は今世紀初頭(1903年以降)に出版されたBenares Sanskrit Seriesを基本として、それに基づいてAnandsrama Sanskrit Series本(1929&1978)などその他の版の出版がなされてきた。しかしそれらは多くの欠陥があり今日の研究に耐えるものではなかった。そこで本研究は、これまで収集した5種類の写本に基づいて、従来の出版本の再検討を行い、原典の再構成を試みた上で祭名章全体の研究を遂行した。またそれに関連して本書の注釈類の発掘を遂行することも本研究の目的であった。写本に基づくテキストは一応の完成をみて、Annual Report of Medical Anthropology and Humanity,No.1(2006)に出版した。これは国内および海外のインド学研究者に送付し、今後研究に裨益することになるであろう。このテキストにもとついて19年度は18年度に引き続き和訳研究を続行し、ソーメーシュワラ作「ニヤーヤスダー」、パリトーシャミシュラ作「アジター」、アンナムバッタ作「ラーナカ・ウッジーヴァニー」といった注釈類を参見して祭名章全体の和訳を完成させた。さらにこの章で最もインド思想史上重要な論題であり、隠喩を論じている「タットシッディ論題」を纏めて「クマーリラの隠喩論」という独立の論文を完成させた。この論文は未発表である。本研究はミーマーンサー学派の大哲学者クマーリラ・バッタの『タントラヴァールッティカ』(『ミーマーンサーの綱理評釈』)第1巻第4章の研究であり2年間で完結することを目指していた。この研究を完結して、ダルマに対する認識手段論を主題とする第1巻全体のタントラヴァールッティカの研究を完成するのが目的であった。本書の出版本は今世紀初頭(1903年以降)に出版されたBenares Sanskrit Seriesを基本として、それに基づいてAnandsrama Sanskrit Series本(1929&1978)などその他の版の出版がなされてきた。しかしそれらは多くの欠陥があり今日の研究に耐えるものではなかった。そこで本研究は、これまで収集した5種類の写本に基づいて、従来の出版本の再検討を行い、原典の再構成を試みた上で祭名章全体の研究を遂行した。またそれに関連して本書の注釈類の発掘を遂行することも本研究の目的であった。写本に基づくテキストは一応の完成をみて、Annual Report of Medical Anthropology and Humanity,No.1(2006)に出版した。これは国内および海外のインド学研究者に送付し、今後研究に裨益することになるであろう。このテキストにもとついて19年度は18年度に引き続き和訳研究を続行し、ソーメーシュワラ作「ニヤーヤスダー」、パリトーシャミシュラ作「アジター」、アンナムバッタ作「ラーナカ・ウッジーヴァニー」といった注釈類を参見して祭名章全体の和訳を完成させた。さらにこの章で最もインド思想史上重要な論題であり、隠喩を論じている「タットシッディ論題」を纏めて「クマーリラの隠喩論」という独立の論文を完成させた。この論文は未発表である。「タントラヴァールッティカ祭名章の研究」と題する本研究を遂行するにあたって最も重要な基本的問題は、本章のサンスクリット原典テキストの不備にあった。すなわちタントラヴァールッティカはインドにおいて過去4回の出版がなされていて、それらが学界で利用されてきたのは事実であるが、実際に利用してみて誰でも気づくことは、それらのいずれもがテキスト校訂上の欠陥を有しているということである。そこで私は先ずこの欠陥を克服するために、とりあえず入手することができた4本のタントラヴァールッティカの写本を検討し、異読も含めてそれら写本の正確な読みを示した原典テキストを作成することを試みた。4本の写本とは次のものである。Asiatic Society S.C.2388、Asiatic Society S.C.970、India Office Library 2152、Bodleian Library WilsonNo.325.前二者はカルカッタのアジアティックソサイエティー、彼の二つはそれぞれロンドンのインディアオフィスおよびオックスフォード大学所蔵の写本である。この成果は研究成果一覧表の二番目に掲げておいた。4つの写本を検討した結果、インドの出版本の不備が判明し、それらを正すことができた。不備の主なものは写本の不正確な読み、写本の読みの数シラブルに及ぶ脱落、誤植である。上の成果に基づいて、「祭名章」の重要なトピックの一つである<隠喩(メタファ)論(第12論題)>の解明に現在取り組んでおり、その成果を平成19年前半に公表することを目指している。この論題はミーマーンサー学の内枠でのみ重要なだけでなく、修辞学、仏教など他学派とも関係し、インド思想史全般にわたり重要な論題である。それら諸学派を批判しつつクマーリラがミーマーンサー説を確立してゆく過程の論理を解明することが目的である。本研究はミーマーンサー学派の大哲学者クマーリラ・ | KAKENHI-PROJECT-18520043 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18520043 |
タントラヴァールッティカ祭名章の研究 | バッタの『タントラヴァールッティカ』(『ミーマーンサーの綱理評釈』)第1巻第4章の研究であり2年間で完結することを目指していた。この研究を完結して、ダルマに対する認識手段論を主題とする第1巻全体のタントラヴァールッティカの研究を完成するのが目的であった。本書の出版本は今世紀初頭(1903年以降)に出版されたBenares Sanskrit Seriesを基本として、それに基づいてAnandsrama Sanskrit Series本(1929&1978)などその他の版の出版がなされてきた。しかしそれらは多くの欠陥があり今日の研究に耐えるものではなかった。そこで本研究は、これまで収集した5種類の写本に基づいて、従来の出版本の再検討を行い、原典の再構成を試みた上で祭名章全体の研究を遂行した。またそれに関運して本書の注釈類の発掘を遂行することも本研究の目的であった。写本に基づくテキストは一応の完成をみて、Anual Report of Medical Anthropology and Humanity、No.1(2006)に出版した。これは国内および海外のインド学研究者に送付し、今後研究に稗益することになるであろう。このテキストにもとづいて19年度は18年度に引き続き和訳研究を続行し、ソーメーシュワラ作「ニヤーヤスダー」、パリトーシャミシュラ作「アジター」、アンナムバッタ作「ラーナカ・ウッジーヴァニー」といった注釈類を参見して祭名章全体の和訳を完成させた。さらにこの章で最もインド思想史上重要な論題であり、隠喩を論じている「タットシッディ論題」を纏めて「クマーリラの隠喩論」という独立の論文を完成させた。この論文は未発表である。 | KAKENHI-PROJECT-18520043 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18520043 |
酸素と炭酸ガスの呼吸リズム発生神経機序にはたす役割 | 呼吸の周期性リズム発生機序における酸素と炭酸ガスの役割について、麻酔ラットのin vivo標本とラット摘出脳切片in vitro標本を併用して検討した。In vivo標本では舌咽神経茎突咽頭筋枝の吸息性活動の観察から、呼吸リズムが延髄内で発生し各呼吸筋への出力に至るまでに、(1)吸息性活動の基本リズム発生と、(2)吸息性活動の同期化の2つの過程を経ることを明らかにした。血中の炭酸ガスを低下させると、まず同期化の障害による横隔神経などの出力信号の低下と次いでリズム周期の延長とリズム停止が認められた。従って炭酸ガスは両過程に必要である。末梢化学受容器からの求心路切断後に低酸素を負荷すると、主に呼吸リズムの周期が延長した。従って末梢化学受容器を介さない(低)酸素の直接作用は基本リズム発生に関与すると考えられた。主に(1)の吸息性活動の基本リズム発生におよぼす炭酸ガスの作用機序解明を目的としたin vitro脳切片標本での検討では、若年成熟ラットの脳切片においても延髄腹側表面と頭側VRGの中間領域のニューロンから周期性活動が観察された。しかも、新生ラットの標本と異なりin vivo標本と同様の周期性発射パターンを示した。これらのニューロンはリズム形成機構内あるいは極めて近傍のニューロンと思われた。新生ラットおよび若年成熟ラット脳切片とも、炭酸ガス濃度の低下によって主に呼吸リズムの周期が延長した。従って炭酸ガスはリズム発生過程に作用したものと考えられた。以上の結果より、炭酸ガス、酸素その他の呼吸リズム制御因子の作用機序解明には上記の(1)および(2)について別個に検討する必要があると判断された。呼吸の周期性リズム発生機序における酸素と炭酸ガスの役割について、麻酔ラットのin vivo標本とラット摘出脳切片in vitro標本を併用して検討した。In vivo標本では舌咽神経茎突咽頭筋枝の吸息性活動の観察から、呼吸リズムが延髄内で発生し各呼吸筋への出力に至るまでに、(1)吸息性活動の基本リズム発生と、(2)吸息性活動の同期化の2つの過程を経ることを明らかにした。血中の炭酸ガスを低下させると、まず同期化の障害による横隔神経などの出力信号の低下と次いでリズム周期の延長とリズム停止が認められた。従って炭酸ガスは両過程に必要である。末梢化学受容器からの求心路切断後に低酸素を負荷すると、主に呼吸リズムの周期が延長した。従って末梢化学受容器を介さない(低)酸素の直接作用は基本リズム発生に関与すると考えられた。主に(1)の吸息性活動の基本リズム発生におよぼす炭酸ガスの作用機序解明を目的としたin vitro脳切片標本での検討では、若年成熟ラットの脳切片においても延髄腹側表面と頭側VRGの中間領域のニューロンから周期性活動が観察された。しかも、新生ラットの標本と異なりin vivo標本と同様の周期性発射パターンを示した。これらのニューロンはリズム形成機構内あるいは極めて近傍のニューロンと思われた。新生ラットおよび若年成熟ラット脳切片とも、炭酸ガス濃度の低下によって主に呼吸リズムの周期が延長した。従って炭酸ガスはリズム発生過程に作用したものと考えられた。以上の結果より、炭酸ガス、酸素その他の呼吸リズム制御因子の作用機序解明には上記の(1)および(2)について別個に検討する必要があると判断された。呼吸リズムが延髄の腹頭側部分で形成されることは判明しているが、リズム発生に必要な酸素と炭酸ガスの作用機序は明らかでない。本年度は、成熟ラットのin vivo全身標本と成熟ラットのin vitroの脳切片標本を用い、延髄腹頭側部分の呼吸ニューロンのリズム性活動発生について酸素と炭酸ガスの作用過程を調べる基礎実験を行い、以下の新知見を得た。1.成熟ラットの全身標本を用いた実験:ウレタン麻酔・人口呼吸下に、横隔神経および呼吸抑制にもっとも強い抵抗を示す舌咽神経茎突咽頭筋枝の神経活動を記録しながら、低酸素、低炭酸ガス、中枢化学感受性領野冷却を行い、呼吸リズム停止および再回復過程におけるこれら吸息性神経活動の変化を比較した。これらの結果、呼吸リズム形成は、延髄腹頭側内のみに限局する基本的吸息性リズム発生過程と、これが各呼吸運動ニューロンに同期した吸息性活動を発生させる過程の2段階に分けられることが判明した。血中酸素と炭酸ガスの中程度減少は、リズム形成機構から末梢への同期した吸息性活動を発生させる機序を機能的に抑制し、強い低酸素と低炭酸ガスは延髄内基本的吸息性リズムの発生を抑制した。2.次に若干成熟ラットのin vitro脳切片(延髄横断)標本を作成し、周期性神経活動発生の可能性を検討した。両側の顔面神経核の尾端と疑核の頭側を含む横断脳切片において、規則的な周期性活動が延髄腹側表層100-200μmの深さから記録できた。低酸素はこの周期性活動の発生を抑制したが、低炭酸ガスを負荷しても周期性活動は抑制されなかった。炭酸ガスの効果はこの標本に含まれない化学感受性領野を介して生じると考えられた。呼吸リズム形成の中枢機序の解明に低酸素耐性の強い新生ラットの延髄標本が用いられてきた。しかし、その周期性呼吸活動の神経発射パターンは成熟ラットのものとは異なり、炭酸ガス感受性のある延髄腹側表層組織とリズム発生機構間の関係は明らかでなかった。 | KAKENHI-PROJECT-07457008 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07457008 |
酸素と炭酸ガスの呼吸リズム発生神経機序にはたす役割 | 本研究では、生後21-35日の若年成熟ラットと生後1-4日の新生ラットの延髄横断脳切片を作成し、呼吸の周期性活動の発射パターン差と炭酸ガス感受性差を比較検討した。標本は延髄腹頭側表面(化学感受性領野)・顔面神経核の下部・腹側呼吸ニューロン群の頭側部・舌下神経核を含む斜横断脳切片(厚さ600-800μm)を含み、人口脳脊髄液CSF中で潅流して神経活動を記録した。新生ラット脳切片では、摘出延髄・脊髄標本と同様に、pre-Botzinger,Botzinger complex,VRGおよびXII神経核から、5-9bursts/分の周期性活動が記録された。burstsの持続時間は600-1200msであった。潅流液の炭酸ガス濃度低下で周期性活動のbursts発射間隔が延長し、呼吸数が減少した。一方、若年成熟ラットにおいては、延髄腹側表層50-200μmの範囲から、bursts頻度12-15/分、bursts持続時間1000-2300msの周期性活動が記録できた。また、延髄腹側表層部分が健在である場合にのみ潅流液の炭酸ガス濃度低下によってbursts頻度が減少した。この結果は脳切片内に周期性活動発生に必要な神経機構が含まれ、また、炭酸ガス感受性機構も標本内に存在することを示した。しかし、周期性活動の発射パターンはbursts時速時間が短く、成熟ラットに見られるgasping様活動に類似している。一方、若年成熟ラットの脳切片から周期性活動が記録きでたことは新しい発見である。脳切片作成の改良によって、周期性活動発生部位の機能が保たれたためと考えられた。また、bursts発射頻度と持続時間はin vivo標本の正常の呼吸神経活動発射パターンに酷似していた。この差は、周期性活動発射機序の差、脳切片内に含まれる神経組織の部位差あるいは標本障害の程度差に基づくものと考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-07457008 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07457008 |
猫カリキウイルスの抗原構造の解析 | 猫カリキウイルス(FCV)は、猫の呼吸器疾患の重要な原因として知られている。FCVは単一血清型とされているが、多くの抗原変異株が存在しており、ワクチンの有効性を妨げる原因と考えられている。そこで、ワクチン改良の基礎データとして、FCVの抗原構造を遺伝子レベルで解析するため、中和モノクローナル抗体(MAb)に対する抵抗性変異株の遺伝子解析を行った。9つの抗FCV・F4株中和MAbに対する抵抗性変異株10株について、その主要構造(カプシド)蛋白遺伝子のvariable領域をPCR法により約500塩基対のcDNAとして増幅し、クローニング後、塩基配列を決定した。変異によるアミノ酸残基の置換を検出し、以下の成績を得た。1)linearな中和エピトープを認識している4つのMAbに対する変異株(5種)においては、variable領域の前半(アミノ酸426441)にアミノ酸残基の置換が認められた。その位置は、抵抗性変異株とMAbの中和試験における交差反応性並びにカプシド蛋白欠損発現系におけるMAb抗体の反応性とよく相関していた。2)conformationalな中和エピト-ブを認識している5つのMAbに対する変異株(5種)においては、variable領域の後半(アミノ酸490520)にアミノ酸残基の置換が認められた。以上の成績から、FCVのカプシド蛋白のvariable領域にはFCVの中和エピトープが多数存在し、その前半部はlinearな中和エピト-ブを形成し、後半部はconformationalな中和エピト-ブを形成していることが示唆された。FCVのconformationalな中和エピト-ブに関しては、現在まで我々の研究のみが知られており、その位置を遺伝子レベルで解明したことは、FCVの抗原構造を考察する上で重要な知見と考えられる。猫カリキウイルス(FCV)は、猫の呼吸器疾患の重要な原因として知られている。FCVは単一血清型とされているが、多くの抗原変異株が存在しており、ワクチンの有効性を妨げる原因と考えられている。そこで、ワクチン改良の基礎データとして、FCVの抗原構造を遺伝子レベルで解析するため、中和モノクローナル抗体(MAb)に対する抵抗性変異株の遺伝子解析を行った。9つの抗FCV・F4株中和MAbに対する抵抗性変異株10株について、その主要構造(カプシド)蛋白遺伝子のvariable領域をPCR法により約500塩基対のcDNAとして増幅し、クローニング後、塩基配列を決定した。変異によるアミノ酸残基の置換を検出し、以下の成績を得た。1)linearな中和エピトープを認識している4つのMAbに対する変異株(5種)においては、variable領域の前半(アミノ酸426441)にアミノ酸残基の置換が認められた。その位置は、抵抗性変異株とMAbの中和試験における交差反応性並びにカプシド蛋白欠損発現系におけるMAb抗体の反応性とよく相関していた。2)conformationalな中和エピト-ブを認識している5つのMAbに対する変異株(5種)においては、variable領域の後半(アミノ酸490520)にアミノ酸残基の置換が認められた。以上の成績から、FCVのカプシド蛋白のvariable領域にはFCVの中和エピトープが多数存在し、その前半部はlinearな中和エピト-ブを形成し、後半部はconformationalな中和エピト-ブを形成していることが示唆された。FCVのconformationalな中和エピト-ブに関しては、現在まで我々の研究のみが知られており、その位置を遺伝子レベルで解明したことは、FCVの抗原構造を考察する上で重要な知見と考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-05760220 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05760220 |
ヒト高次連合野の成熟前後における神経回路特性と神経可塑性の検証 | 平成25年4月以降は、経頭蓋磁気刺激法(TMS)と脳波を組み合わせたTMS-EEG実験(研究目的1および3)を中心に実施した(n=10)。TBSの前後でTMS誘発電位を測定したところ、N100、P180などの成分の振幅の経時的変化をとらえることができた。この予備的結果はTMS誘発電位が前頭連合野の興奮特性や可塑性を反映するバイオマーカーとしての可能性を示唆した。平成25年9月以降は、被験者負担が少なくTMS-EEG実験に特化した実験環境を追求した。新しい実験システムと研究プロトコールによって、TMSアーティファクトの混入が劇的に低減され、TMS誘発電位の超早期成分(N45など)の解析が可能となった。新規プロトコールを用いて、健常成人被験者計13名のデータを取得して、予備的解析を行い、平成26年3月の領域会議にて次の2点を報告した。1)TBS前後でTMS誘発電位を経時的に測定したところ、TBS群はベースラインとの郡内比較でも、シャム群との群間比較においても、N45成分の振幅においてTBSによる増幅効果が40分程度確認された。2)TBS前後で認知機能課題を経時的に測定したところ、TBS群はベースラインとの郡内比較でも、シャム群との群間比較においても、TBSによる作動記憶課題の増強効果が40分程度確認された。本課題で検証されたTMS誘発電位を用いることで、前頭連合野の成熟前後で刺激応答特性や可塑性を比較することが可能となる。さらには、成熟への途上にある前頭連合野と共に過ごす思春期において、必要となる支援の方向性を提言できる可能性に期待している。25年度が最終年度であるため、記入しない。25年度が最終年度であるため、記入しない。平成25年4月以降は、経頭蓋磁気刺激法(TMS)と脳波を組み合わせたTMS-EEG実験(研究目的1および3)を中心に実施した(n=10)。TBSの前後でTMS誘発電位を測定したところ、N100、P180などの成分の振幅の経時的変化をとらえることができた。この予備的結果はTMS誘発電位が前頭連合野の興奮特性や可塑性を反映するバイオマーカーとしての可能性を示唆した。平成25年9月以降は、被験者負担が少なくTMS-EEG実験に特化した実験環境を追求した。新しい実験システムと研究プロトコールによって、TMSアーティファクトの混入が劇的に低減され、TMS誘発電位の超早期成分(N45など)の解析が可能となった。新規プロトコールを用いて、健常成人被験者計13名のデータを取得して、予備的解析を行い、平成26年3月の領域会議にて次の2点を報告した。1)TBS前後でTMS誘発電位を経時的に測定したところ、TBS群はベースラインとの郡内比較でも、シャム群との群間比較においても、N45成分の振幅においてTBSによる増幅効果が40分程度確認された。2)TBS前後で認知機能課題を経時的に測定したところ、TBS群はベースラインとの郡内比較でも、シャム群との群間比較においても、TBSによる作動記憶課題の増強効果が40分程度確認された。本課題で検証されたTMS誘発電位を用いることで、前頭連合野の成熟前後で刺激応答特性や可塑性を比較することが可能となる。さらには、成熟への途上にある前頭連合野と共に過ごす思春期において、必要となる支援の方向性を提言できる可能性に期待している。平成24年5月より経頭蓋磁気刺激法(TMS)を用いた研究に必要な物品(空冷式TMSコイル、TMSニューロナビゲーションシステム、TMS専用脳波キャップなど)の選定と購入を行った。TMSパルスをランダムに発生するシステムの開発を関連業者と共に行った。またMRIスキャナーのボア内でTMSコイルを前頭前野に固定する装置も特注した。当該研究計画について健常成人を対象とした部分について昭和大学医学部の倫理審査委員会での審議を受け、改訂の上で承認を受けた(平成24年9月27日付け)。平成24年10月には研究に必要な全ての物品が揃い、TMS-EEG実験ならびにTMS-fMRI実験の予備実験を繰り返した。TMS-EEGの本実験のデータは既に健常成人7名のデータを取得済みであり、前頭連合野のTMS誘発電位を確認することができた。特にTMSにより惹起される介在ニューロンの活動を反映すると言われているN100成分を同定出来た意義は大きい。TMS誘発電位は刺激強度依存性に変化して、用量反応曲線ではシグモイド状の曲線が認められた。また、シータバースト刺激(TBS)の前後で、TMS誘発電位を経時的に測定したところ、振幅の経時的変化をとらえることができた。以上よりTMS誘発電位が高次連合野の興奮特性や可塑性を反映するバイオマーカーとしての可能性を持ちうることが示唆された。TMSーfMRIの実験は、本領域の研究員と連携しながらTMSによるノイズを軽減するためにパイロット実験を繰り返している。TMSコイルとヘッドコイルの角度を調節することでファントムでも人体でもノイズを大幅に軽減できることが明らかとなった。・研究機器類の特注や開発に予想以上の時間を要したこと。・健常者に脳刺激法を用いる本研究課題について、倫理審査委員会の審議に時間を要したこと。・TMSによるノイズを軽減する技術の確立に時間を要していること。・平成25年度初めにTMSー | KAKENHI-PUBLICLY-24118506 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-24118506 |
ヒト高次連合野の成熟前後における神経回路特性と神経可塑性の検証 | fMRI実験のプロトコールと解析手法を確立する。当該領域内の研究者との連携体制の中でこれを推進したい。fMRIの解析手法に関してはA02班の研究者との連携体制を構築して推進する。・思春期健常者(中高生)のリクルート体制構築と倫理審査委員会での審議を実施する。被験者リクルート体制の構築についてはA01班の協力も得たいと考えている。・成人のデータを解析しながら、重要な研究項目を絞り込み、中高生への負担を減らした実験プロトコールを作成する。25年度が最終年度であるため、記入しない。25年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PUBLICLY-24118506 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-24118506 |
肝静脈血酸素飽和度が患者の予後にいかに効果を与えるかについての評価に関する研究 | 本年は主に肝静脈血酸素飽和度測定の応用を救急患者と術後患者において行った。救急集中治療領域においてはとくに血圧をもとにして循環管理を行うことが多いため、血圧低下によってどのように肝機能が傷害されるかを肝静脈血酸素飽和度を媒介としてコンピューターを用いてシミュレーションした。結果は、(1)人での麻酔中の肝静脈血酸素飽和度の実測値と術後肝機能障害のデータから見た場合、hepatie arterial buffer response(HABR)が標準的な程度に存在するとき、平均血圧45mmHg程度で3時間、25mmHg程度で50分程度まで理論上容認できるが、それ以下の平均血圧では更に短時間までとなるが、その詳しい値は不明である。しかし、HABRが何らかの病態によって全く存在しなくなったとき、容認できる血圧は大幅に上昇し、平均血圧73mmHg程度で3時間、69mmHg程度で50分、67mmHg程度で30分、〓mmHg程度で10分、64mmHg程度で1分程度となった。(2)犬での麻酔中の肝酸素消費量の減少を生ずる肝酸素供給量のcritical pointのデータから見た場合、HABRが標準的な程度に存在するとき、平均血圧24mmHg程度まで容認できる。しかし、HABRが何らかの病態によって全く存在しなくなったとき、容認できる血圧は大幅に上昇し、平均血圧68mmHg程度となった。(3)犬での麻酔中の肝静脈中ケトン体比の減少を生ずる肝酸素運搬量のcritical pointのデータから見た場合、HABRが標準的な程度に存在するとき、平均血圧13mmHg以下まで容認できるがその詳しい値は不明である。しかし、HABRが何らかの病態によって全く存在しなくなったとき、容認できる血圧は大幅に上昇し、平均血圧60mmHg程度となった。次に救急集中治療領域での肝静脈血酸素飽和度の応用として救急集中治療患者の診断と病態について資料を収集した。特に肝切除術後においては術後24時間以降から肝静脈血酸素飽和度が著明に低下し肝再生の影響による肝酸素消費量の増加がある事が分かった。さらにケトン体比とGST-αによる肝小葉の中心壊死のモニタリングを行うことにより、救急患者における肝静脈血酸素飽和度の低下を間接的に知り得ることがわかってきた。本年は主に肝静脈血酸素飽和度測定の応用を救急患者と術後患者において行った。救急集中治療領域においてはとくに血圧をもとにして循環管理を行うことが多いため、血圧低下によってどのように肝機能が傷害されるかを肝静脈血酸素飽和度を媒介としてコンピューターを用いてシミュレーションした。結果は、(1)人での麻酔中の肝静脈血酸素飽和度の実測値と術後肝機能障害のデータから見た場合、hepatie arterial buffer response(HABR)が標準的な程度に存在するとき、平均血圧45mmHg程度で3時間、25mmHg程度で50分程度まで理論上容認できるが、それ以下の平均血圧では更に短時間までとなるが、その詳しい値は不明である。しかし、HABRが何らかの病態によって全く存在しなくなったとき、容認できる血圧は大幅に上昇し、平均血圧73mmHg程度で3時間、69mmHg程度で50分、67mmHg程度で30分、〓mmHg程度で10分、64mmHg程度で1分程度となった。(2)犬での麻酔中の肝酸素消費量の減少を生ずる肝酸素供給量のcritical pointのデータから見た場合、HABRが標準的な程度に存在するとき、平均血圧24mmHg程度まで容認できる。しかし、HABRが何らかの病態によって全く存在しなくなったとき、容認できる血圧は大幅に上昇し、平均血圧68mmHg程度となった。(3)犬での麻酔中の肝静脈中ケトン体比の減少を生ずる肝酸素運搬量のcritical pointのデータから見た場合、HABRが標準的な程度に存在するとき、平均血圧13mmHg以下まで容認できるがその詳しい値は不明である。しかし、HABRが何らかの病態によって全く存在しなくなったとき、容認できる血圧は大幅に上昇し、平均血圧60mmHg程度となった。次に救急集中治療領域での肝静脈血酸素飽和度の応用として救急集中治療患者の診断と病態について資料を収集した。特に肝切除術後においては術後24時間以降から肝静脈血酸素飽和度が著明に低下し肝再生の影響による肝酸素消費量の増加がある事が分かった。さらにケトン体比とGST-αによる肝小葉の中心壊死のモニタリングを行うことにより、救急患者における肝静脈血酸素飽和度の低下を間接的に知り得ることがわかってきた。肝静脈血酸素飽和度モニタリングのためのソフトウエアの開発を行った。このために必要なコンピュータとソフトウエアの購入をした。ここでは肝静脈血酸素飽和の表示のほか低下度と時間との積の表示をできるようにした。これについて臨床応用を行い以下の結果を得た。藤田保健衛生大学医学部付属病院で肝切除を最近行った39例である。肝静脈血酸素飽和度低下時間積分値は平均で479+719%min、最小で1%min、最大で2960%minであった。ここの症例で見ると積分値は肝門部剥離時に急激に増加するものが多かった。肝切除時ではpringle法を行ったもので大きく増加したが、行わないものでは増加は軽度であった。この研究から、肝静脈血酸素飽和度低下時間時間積分は、どの時点で肝が術後トランスアミナーゼが上昇するまでの障害を受けているかを検討するのに役立つことがわかった。患者の予後との関係については術後のケトン対比および総ビリルビンちなどとの検討を行った。 | KAKENHI-PROJECT-09671589 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09671589 |
肝静脈血酸素飽和度が患者の予後にいかに効果を与えるかについての評価に関する研究 | さらにヒアルロン酸値の測定を行った。これらの結果は次年度に明らかにする予定である。これを通じて肝静脈血酸素飽和度モニタリングが患者の予後を改善させるのに役立つかどうか、について次年度に評価を行う予定である。さらに肝静脈血酸素飽和度モニタリングを行う際の挿入手技とカテーテル改良のための検討を行った。これらのために救急集中治療関係の必要な図書の購入をした。術後肝静脈酸素飽和度モニタリングについては、その管理についてまだまだ改良すべき点が多く、次年度にそのためのソフトウエア開発とあわせて研究を行う予定である。本年は主に肝静脈血酸素飽和度測定の応用を救急患者と術後患者において行った。救急集中治療領域においてはとくに血圧をもとにして循環管理を行うことが多いため、血圧低下によってどのように肝機能が傷害されるかを肝静脈血酸素飽和度を媒介としてコンピューターを用いてシミュレーションした。結果は、(1)人での麻酔中の肝静脈血酸素飽和度の実測値と術後肝機能障害のデータから見た場合、hepatic arterial buffer response(HABR)が標準的な程度に存在するとき、平均血圧45mmHg程度で3時間、25mmHg程度で50分程度まで理論上容認できるが、それ以下の平均血圧では更に短時間までとなるが、その詳しい値は不明である。しかし、HABRが何らかの病態によって全く存在しなくなったとき、容認できる血圧は大幅に上昇し、平均血圧73mmHg程度で3時間、69mmHg程度で50分、67mmHg程度で30分、65mmHg程度で10分、64mmHg程度で1分程度となった。(2)犬での麻酔中の肝酸素消費量の減少を生ずる肝酸素供給量のcritical pointのデータから見た場合、HABRが標準的な程度に存在するとき、平均血圧24mmHg程度まで容認できる。しかし、HABRが何らかの病態によって全く存在しなくなったとき、容認できる血圧は大幅に上昇し、平均血圧68mmHg程度となった。(3)犬での麻酔中の肝静脈中ケトン体比の減少を生ずる肝酸素運搬量のcritical pointのデータから見た場合、HABRが標準的な程度に存在するとき、平均血圧13mmHg以下まで容認できるがその詳しい値は不明である。しかし、HABRが何らかの病態によって全く存在しなくなったとき、容認できる血圧は大幅に上昇し、平均血圧60mmHg程度となった。次に救急集中治療領域での肝静脈血酸素飽和度の応用として救急集中治療患者の診断と病態について資料を収集した。特に肝切除術後においては術後24時間以降から肝静脈血酸素飽和度が著明に低下し肝再生の影響による肝酸素消費量の増加がある事が分かった。さらにケトン体比とGST-αによる肝小葉の中心壊死のモニタリングを行うことにより、救急患者における肝静脈血酸素飽和度の低下を間接的に知り得ることがわかってきた。 | KAKENHI-PROJECT-09671589 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09671589 |
人間との共存をめざした絶滅危惧・希少動物の種保存に関する分子・集団遺伝学的研究 | 本年度は本研究の第1ステップとして、イリオモテヤマネコ、ツシマヤマネコ、エゾシカの進化遺伝学的分析を中心に行い、保護管理しようとしている動物種が進化上どのような位置にあるのかを理解することに努めた。(1)イリオモテヤマネコ、ツシマヤマネコについて、各々の集団内におけるミトコンドリアDNA遺伝子(チトクロームb,12SrRNA)の個体変異はみられなかった。ネコ科全体の中で、両ヤマネコは、アジア大陸に広く分布するベンガルヤマネコと極めて近縁であることが明らかとなった。遺伝距離から算出した分岐年代は、イリオモテ-ベンガルヤマネコ間が約20万年前、ツシマ-ベンガルヤマネコ間が約10万年前であり、これらの年代は各々、南西諸島、対馬がアジア大陸から分かれた地質学的年代とほぼ一致した。この結果は、日本産の両ヤマネコの祖先が大陸産ベンガルヤマネコから地理的に隔離された集団であり、各々、島内において独自の進化を遂げながらもいまだに遺伝的に近縁であることを示している。また、両ヤマネコの個体数は各々100頭前後に減少しており、遺伝的にも集団内多様性の低下が示唆された。今後は、個体識別のできるような遺伝子マーカーを開発し、ヤマネコ集団内の変異を詳細に把握していく計画である。(2)ミトコンドリアDNAにおいて最も変異の大きいD-ループ領域を調べたところ、エゾシカ集団の各個体を4つのタイプに分けることができた。その中で、1つのタイプが北海道の広域に分布していた。このような遺伝子タイプの偏りは、エゾシカ集団が明治時代の大雪と乱獲により個体数が極端に減少し(ボトルネック現象)、ごく最近になって急増したという記録を反映していると思われる。今後、さらに調査個体数と調査地域を拡大し、北海道全域におけるエゾシカの遺伝的特性と個体群の移動経路を分析していく計画である。本年度は本研究の第1ステップとして、イリオモテヤマネコ、ツシマヤマネコ、エゾシカの進化遺伝学的分析を中心に行い、保護管理しようとしている動物種が進化上どのような位置にあるのかを理解することに努めた。(1)イリオモテヤマネコ、ツシマヤマネコについて、各々の集団内におけるミトコンドリアDNA遺伝子(チトクロームb,12SrRNA)の個体変異はみられなかった。ネコ科全体の中で、両ヤマネコは、アジア大陸に広く分布するベンガルヤマネコと極めて近縁であることが明らかとなった。遺伝距離から算出した分岐年代は、イリオモテ-ベンガルヤマネコ間が約20万年前、ツシマ-ベンガルヤマネコ間が約10万年前であり、これらの年代は各々、南西諸島、対馬がアジア大陸から分かれた地質学的年代とほぼ一致した。この結果は、日本産の両ヤマネコの祖先が大陸産ベンガルヤマネコから地理的に隔離された集団であり、各々、島内において独自の進化を遂げながらもいまだに遺伝的に近縁であることを示している。また、両ヤマネコの個体数は各々100頭前後に減少しており、遺伝的にも集団内多様性の低下が示唆された。今後は、個体識別のできるような遺伝子マーカーを開発し、ヤマネコ集団内の変異を詳細に把握していく計画である。(2)ミトコンドリアDNAにおいて最も変異の大きいD-ループ領域を調べたところ、エゾシカ集団の各個体を4つのタイプに分けることができた。その中で、1つのタイプが北海道の広域に分布していた。このような遺伝子タイプの偏りは、エゾシカ集団が明治時代の大雪と乱獲により個体数が極端に減少し(ボトルネック現象)、ごく最近になって急増したという記録を反映していると思われる。今後、さらに調査個体数と調査地域を拡大し、北海道全域におけるエゾシカの遺伝的特性と個体群の移動経路を分析していく計画である。 | KAKENHI-PROJECT-07263203 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07263203 |
染色体分離を制御する動原体に働く力バランスの定量 | 本研究の目的は、適度に動的不安定性(自律性・可塑性)を備えた細胞分裂装置により、精緻に進行する染色体分離のダイナミックな分子プロセスの一端を明らかにすることである。そのため細胞分裂装置を駆動している生体分子を蛍光標識し、この生体分子1少数個を3次元空間でイメージングし、少数分子が共同で機能することで始めて出現する挙動の分子機構の解明を目指す。本年度は、細胞分裂を駆動する生体分子のうち、真核生物である出芽酵母の分裂期細胞質ダイニンに着目した。昨年度に構築した3次元位置検出顕微鏡技術と本年度に新たに導入を試みた微細加工技術とを組み合わせ、細胞内の細胞骨格の空間配置に近い状況下でダイニン分子の運動を定量できる実験系を構築し、少数分子のダイニン分子が運動方向を決定する分子機構の解明を試みた。定量の結果、細胞質ダイニンは単独では微小管のマイナス端長軸方向に移動するだけではなく、微小管の周りを両方向にランダムに回っていることを見出した。このことは、従来定説であった運動方向を決定する分子機構とは異なり、ダイニン分子が微小管と結合する反応において運動方向が決定する、ということが示唆された。さらに、少数のダイニン分子がチームとなって共同して運動する場合、微小管側面を一定方向に回り続けることを見出した。少数分子のダイニン分子が協同して機能する際、ランダムな回転運動方向性が一方向性へと転換する分子機構の解明が今後の課題である。25年度が最終年度であるため、記入しない。25年度が最終年度であるため、記入しない。本研究の目的は、適度に動的不安定性(自律性・可塑性)を備えた細胞分裂装置により、精緻に進行する染色体分離のダイナミックな分子プロセスの一端を明らかにすることである。そのため細胞分裂装置を駆動している生体分子を蛍光標識し、この生体分子1少数個を3次元空間でイメージングし、少数分子が共同で機能することで始めて出現する挙動の分子機構の解明を目指す。本年度は、細胞分裂を駆動する生体分子のうち、真核生物である出芽酵母の分裂期細胞質ダイニンに着目した。昨年度に構築した3次元位置検出顕微鏡技術と本年度に新たに導入を試みた微細加工技術とを組み合わせ、細胞内の細胞骨格の空間配置に近い状況下でダイニン分子の運動を定量できる実験系を構築し、少数分子のダイニン分子が運動方向を決定する分子機構の解明を試みた。定量の結果、細胞質ダイニンは単独では微小管のマイナス端長軸方向に移動するだけではなく、微小管の周りを両方向にランダムに回っていることを見出した。このことは、従来定説であった運動方向を決定する分子機構とは異なり、ダイニン分子が微小管と結合する反応において運動方向が決定する、ということが示唆された。さらに、少数のダイニン分子がチームとなって共同して運動する場合、微小管側面を一定方向に回り続けることを見出した。少数分子のダイニン分子が協同して機能する際、ランダムな回転運動方向性が一方向性へと転換する分子機構の解明が今後の課題である。本研究の目的は、適度に動的不安定性(自律性・可塑性)を備えた細胞分裂装置により、精緻に進行する染色体分離のダイナミックな分子プロセスの一端を明らかにすることである。そのために蛍光標識した1分子少数分子の生体分子を3次元空間でイメージングする。本年度は、分裂に必須な生体分子のうち、分裂期キネシン14に着目し、その運動方向を決定する分子機構の解明を試みた。キネシン14の運動性の定量のため、全反射顕微鏡及び3次元位置検出顕微鏡システムを確立した。複数のキネシン14分子が協同して運動する場合、ガラス面やビーズなどに固定する必要があるが、その際に固定する部位によって、微小管上での運動方向が変わることが始めて分かった。このことは、従来、キネシン14は微小管のマイナス端方向に運動することで、分裂装置・紡錘体極の形成に関与すると考えられていたが、結合タンパク質などの外部からの相互作用により運動方向を変えることができ、分裂過程において状況に応じ機能する方向を変える可能性を示唆する結果を得た。さらに、1分子のキネシン14が、連続的に微小管と相互作用して機能し続けることができるようなコンストラクトに改変することに成功し、運動方向を決定する部位の特定を試みた。運動連続性キネシン14を用いた運動の定量により、キネシン14のモーター部位は微小管のプラス端方向に移動し、キネシン14特異的なネック部位がモーター部位の運動方向を逆転させるのに重要な働きをしていることがわかった。このことは、従来考えられていた分子機構とは異なり、「モーター部位が微小管と結合する反応段階で運動方向が決定する」ということが示唆された。運動方向性の決定機構は、どうやって動くのかという運動機構そのものと密接に関連しているため、両者の分子機構を包括的に説明できる可能性がある。染色体分離に関わる構成要素をアフリカツメガエル卵から抽出し、自律的に細胞分裂装置・紡錘体を構築させ染色体の分離過程を再構成する系を確立する過程において、構成成分タンパク質・チューブリンが、重合しにくいことが分かった。観察時の温度制御が不十分であったことがわかり、計画を変更して装置の改善に取り組んだ結果、他の構成生体試料の定量化実験のための最適化が不十分であった。 | KAKENHI-PUBLICLY-24115501 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-24115501 |
染色体分離を制御する動原体に働く力バランスの定量 | 本研究課題の遂行により、新たに分裂期キネシンの運動方向が、外部から負荷のかかる部位に依存し、従来とは異なる分子機構を示唆する結果を得た。これらのキネシンの運動方向決定機構の分子メカニズムを理解するため、以下について更なる改良・検討が必要である。微小管の両端のみを橋のように設置した観察系を確立し、1分子少数分子のモータータンパク質がチャンバー側面と接触せずに3次元方向に運動する様子を定量するのに背景光を低減した照明系の導入が必要がある。また、モータータンパク質の方向性を有した運動が染色体の分離過程にどのように係わっているのかを明らかにするため、再構成した紡錘体様高次構造体の中で少数のモータータンパク質を3次元空間でイメージングできる技術及び力学的な操作が可能な光ピンセット技術を統合した顕微システムを構築する。25年度が最終年度であるため、記入しない。25年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PUBLICLY-24115501 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-24115501 |
自然言語処理とパターン処理を相補的に用いることになる説明文と概念図の統合的理解 | 概念図の持つパターン情報と,説明文の自然言語情報とを統合し,計算機により自動的に多くの情報を文書から取り出すための方法について,以下のような研究を行なった.1.パターン情報と概念との対応のバリエーションを詳細に検討し,概念図におけるパターン情報の使われ方を調査した,その結果,概念図の書き方(意味的構造)には小数の規則のようなものがあり,それが比較的よく守られていることが明らかになった.例えば,典型的なものとしては,物質や情報の流れ,変化,その他の相互作用を表す図の構成規則などがあげられる.2.上記のように得られた複数の概念図の構成規則のうち,実際にどれを基にして図が構成されているかを判断するために,説明文を自然言語処理した結果を用いる方法を明らかにした.具体的には,説明文の動詞の語彙的な知識,格フレームなどの情報を用いることにより,対応する意味的構造を矛盾なく絞り込む方法について研究行った.3.また,得られた意味的構造を用いることによって,説明文で述べられていない情報を概念図から取り出すことについて検討を行なった.実際に,多くの情報を抽出することができることが実験で明らかになった.4.上記の処理により得られた結果は,お互いに対応づけの行なわれたパターン情報とテキスト情報である.これを用いて実際にハイパーテキストを構築し,人間にわかりやすい形で提示するシステムを試作した.このシステムでは,ユーザが図中の知りたい部分を指示すると,その部分の持つ意味を自動的に提示したり,本文中の説明部分,関連部分との相互参照を行うことができる.なお,本補助金で,自然言語辞書,概念図データ等の大量のデータを格納するための,大容量の補助記憶装置(固定磁気ディスク)を備品として購入した.概念図の持つパターン情報と,説明文の自然言語情報とを統合し,計算機により自動的に多くの情報を文書から取り出すための方法について,以下のような研究を行なった.1.パターン情報と概念との対応のバリエーションを詳細に検討し,概念図におけるパターン情報の使われ方を調査した,その結果,概念図の書き方(意味的構造)には小数の規則のようなものがあり,それが比較的よく守られていることが明らかになった.例えば,典型的なものとしては,物質や情報の流れ,変化,その他の相互作用を表す図の構成規則などがあげられる.2.上記のように得られた複数の概念図の構成規則のうち,実際にどれを基にして図が構成されているかを判断するために,説明文を自然言語処理した結果を用いる方法を明らかにした.具体的には,説明文の動詞の語彙的な知識,格フレームなどの情報を用いることにより,対応する意味的構造を矛盾なく絞り込む方法について研究行った.3.また,得られた意味的構造を用いることによって,説明文で述べられていない情報を概念図から取り出すことについて検討を行なった.実際に,多くの情報を抽出することができることが実験で明らかになった.4.上記の処理により得られた結果は,お互いに対応づけの行なわれたパターン情報とテキスト情報である.これを用いて実際にハイパーテキストを構築し,人間にわかりやすい形で提示するシステムを試作した.このシステムでは,ユーザが図中の知りたい部分を指示すると,その部分の持つ意味を自動的に提示したり,本文中の説明部分,関連部分との相互参照を行うことができる.なお,本補助金で,自然言語辞書,概念図データ等の大量のデータを格納するための,大容量の補助記憶装置(固定磁気ディスク)を備品として購入した. | KAKENHI-PROJECT-06780298 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06780298 |
狩野亨吉文書の調査を中心とした近代日本の知的ネットワークに関する基礎研究 | 東京大学駒場図書館所蔵の狩野亨吉文書の書簡に関するデータ入力を約半数終了した。手紙内容の分析により、例えば旧制一高医学部の千葉大学移管にへの関与など、これまで知られてこなかった教育分野における狩野の功績などが徐々に明らかになってきている。また、東北大学や九州大学に所蔵される狩野文庫の多くの書物は、蔵書家としての狩野亨吉の姿を証するが、一方で駒場図書館の狩野亨吉文書からは、上述のように旧制高等学校もしくは京都帝国大学の教員としての狩野亨吉の姿が浮かび上がる。狩野は入学式の祝辞等のメモも几帳面に保存しており、研究メンバーはそれぞれの問題関心にしたがって特に一高校長時代の狩野亨吉について研究を進めてきた。また、昨年度は狩野亨吉の故郷である秋田県大館市で碑文調査および博物館の方々との意見交換や資料蒐集などを行い、知見を深めた。狩野亨吉文書のうち、書簡については約半数のデータ入力を終了し、順調に進行している。また、各々のメンバーの問題関心に沿って、狩野亨吉文書を用いた研究を展開しつつある。当初予定していた資料撮影については、まだ取りかかっていない。個人情報への配慮について慎重に検討した上で、最終年度である令和元年度に取り組む予定である。書簡のデータ入力および調査については、従来通り行う。より多くの情報を集積していくことで、著作の少ない狩野の残した功績を正当に評価できると予想される。各地に分散している狩野亨吉関係資料の情報共有のため、九州大学、東北大学等の研究者とシンポジウムを行い、意見交換を行う。日程は、現在のところ令和元年11月16日(土)を想定している。旧制一高校長だった狩野亨吉の功績と残された資料群の利用価値について、調査結果を進め、それにより得られた知識を広く世間へ還元するため、駒場図書館において展示を行う。展示期間は令和元年7月1日(月)15日(月)の予定である。1.駒場図書館所蔵の狩野亨吉文書についての調査を開始した。夏休み、冬休み、春休みの長期休業期間には学生アルバイトを募った上で、科研費メンバーと合同で文書の整理・封入作業を行った。従来、書簡類は数通まとめて和紙に挟んであるだけのものが多く、中性紙の封筒に一通ずつ整理して収めることで、閲覧利用の便も向上した。封入と併せ、主に研究協力者の川下俊文氏によってデータの入力作業も進められている。2.平成29年11月12日(日)11:00から、「夏目漱石その魅力と周辺の人々」展の見学および狩野亨吉研究の進捗報告会」をせんだいメディアテーク(宮城県仙台市)において開催した。科研のメンバーで夏目漱石展(漱石の交流のあった狩野亨吉に関する資料も展示された)を見学し、その後狩野亨吉研究の進捗について、メンバーがそれぞれ報告した。分担は以下の通りである。本年度の資料調査状況(丹羽・川下)、画像データベースの構築計画(田村)、一高歴史画展(駒場博物館)の紹介(折茂)。3.平成30年3月21日(水)13:00 17:00の日程で、「狩野亨吉研究会」を開催した(会場:東京大学駒場Iキャンパス18号館1階メディアラボ2)。次第は以下の通りである。秋田テレビ制作「秋田人物伝狩野亨吉」(2017.9.30放送)上映、【研究発表】文化資源としての個人文書ー狩野亨吉文書についてー折茂克哉(東京大学)、司馬遼太郎と狩野亨吉丹羽みさと(立教大学)、狩野亨吉と郷土秋田ー秋田県護国神社忠魂碑撰文の経緯ー川下俊文(東京大学・院)、一高旧蔵書と狩野亨吉田村隆(東京大学)。本年度は狩野亨吉文書の整理・調査も概ね順調に進展した。文書の今後の閲覧利用の基盤となる封入・整理作業も大半は終了し、残りを来年度に実施する予定である。川下俊文氏の調査からは秋田の顕彰碑に関わる知見も得られ、上記の秋田テレビの番組で紹介された他、3月の研究会においても報告があった。他機関との連携という点についても、上記の通り、二度の会を持つことができた。本研究課題の拠点である東京大学のほか、東北大学、九州大学、近畿大学の研究者にも参加いただき、有益な議論を交わすことができた。本来は一般公開のシンポジウムなど、大きな規模での開催がより望ましかったが、それは来年度以降に開催したい。東京大学駒場図書館所蔵の狩野亨吉文書の書簡に関するデータ入力を約半数終了した。手紙内容の分析により、例えば旧制一高医学部の千葉大学移管にへの関与など、これまで知られてこなかった教育分野における狩野の功績などが徐々に明らかになってきている。また、東北大学や九州大学に所蔵される狩野文庫の多くの書物は、蔵書家としての狩野亨吉の姿を証するが、一方で駒場図書館の狩野亨吉文書からは、上述のように旧制高等学校もしくは京都帝国大学の教員としての狩野亨吉の姿が浮かび上がる。狩野は入学式の祝辞等のメモも几帳面に保存しており、研究メンバーはそれぞれの問題関心にしたがって特に一高校長時代の狩野亨吉について研究を進めてきた。また、昨年度は狩野亨吉の故郷である秋田県大館市で碑文調査および博物館の方々との意見交換や資料蒐集などを行い、知見を深めた。狩野亨吉文書のうち、書簡については約半数のデータ入力を終了し、順調に進行している。また、各々のメンバーの問題関心に沿って、狩野亨吉文書を用いた研究を展開しつつある。 | KAKENHI-PROJECT-17K02408 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K02408 |
狩野亨吉文書の調査を中心とした近代日本の知的ネットワークに関する基礎研究 | 当初予定していた資料撮影については、まだ取りかかっていない。個人情報への配慮について慎重に検討した上で、最終年度である令和元年度に取り組む予定である。今年度は夏の集中整理作業によって、書簡の残り4000通についても整理・封入作業を終える予定である。その上で、書簡の概略をデータ入力する作業に本格的に移行したいと考えている。画像データベースの構築についても、著作権なども問題に十分配慮しながら進めてゆく。狩野亨吉の事績は研究者間では知られているものの、広く一般に認識されているとは言えず、本研究の成果をわかりやすい形で発信していくことが求められている。今年度は東京において研究会を開催したが、来年度(平成30年度)においては可能であれば九州大学伊都キャンパスにおいて研究会もしくはシンポジウムを開催したいと考えている。最終年度となる平成31年度は、狩野亨吉の出身地である秋田大館で開催することを目指したい。書簡のデータ入力および調査については、従来通り行う。より多くの情報を集積していくことで、著作の少ない狩野の残した功績を正当に評価できると予想される。各地に分散している狩野亨吉関係資料の情報共有のため、九州大学、東北大学等の研究者とシンポジウムを行い、意見交換を行う。日程は、現在のところ令和元年11月16日(土)を想定している。旧制一高校長だった狩野亨吉の功績と残された資料群の利用価値について、調査結果を進め、それにより得られた知識を広く世間へ還元するため、駒場図書館において展示を行う。展示期間は令和元年7月1日(月)15日(月)の予定である。年度途中に丹羽みさと氏を研究分担者に加え、所属機関の立教大学に分担金として直接経費50,000円(間接経費15,000円)を配分したため。当初の計画では、当該年度に狩野亨吉文書の撮影を予定していたが、調査を進める上で書簡類のうち、個人情報等の観点から配慮を要するものについて、調査段階で十分に検討してから撮影に入ることにしたため。駒場図書館作成。8頁に狩野亨吉文書についてのコラムを執筆(田村隆)。 | KAKENHI-PROJECT-17K02408 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K02408 |
相対論的場の偏微分方程式の初期値問題の適切性および非相対論的極限 | 二次の非線形項を持つ非線形ディラック方程式の初期値問題を空間一次元で考察した。初期値の滑らかさを小さいものにし、超関数まで含める負の指数のソボレフ空間での解の一意存在を得ることができた。ディラック方程式が相違なる伝播速度の波動方程式系で記述されることに着眼し解決を見た。具体的な証明はJ.Bourgainのフーリエ制限ノルムを用いたもので双線形の評価に対しては肯定的な結果とともに否定的なものも得ることができた。この仕事は論文「One dimensional Dirac equation with quadratic nonlinearities」として関連雑誌において公表済みである。上記と同じ問題を別のアプローチを行いより小さい指数のソボレフ空間での、つまりより初期値の滑らかさの低い仮定の下で、解の一意存在を証明した。ここでこのソボレフ空間の指数は上記論文の考察における双線形の評価に対する否定的な結果より小さいものであり、根本的な改良が行われたといえる。この仕事は論文「Dirac equation with certain quadratic nonlinearities in one space dimension」として纏められ関連雑誌に掲載が決定している。非斉次輸送方程式の解に対する双線形の評価式を上記二つの論文の二つの双線形評価を元に考察を行った。輸送方程式系の解の一意存在を得た。この仕事は論文「Bilinear estimates for the transport equations」として纏められ関連雑誌に掲載が決定している。第一の研究成果として小澤徹氏、中村誠氏、中西賢次氏との共同研究により、空間三次元、三乗冪の非線型項を持つ非線型ディラック方程式の解の一意存在を示すことができた。詳しく述べると、尺度不変性の議論により得られる臨界指数が1のソボレフ空間において初期値が小さいときに解が一意的に時刻無限まで存在することを証明した。このとき証明の主なブレイクスルーは解の挙動の時間方向と空間方向の統一的評価で、これまで直交座標で研究されていた既存の評価式を極座標で書き直し、動径方向と回転方向のそれぞれに適した関数空間を設定することにより評価構築に成功した。この仕事は論文「Endpoint Strichartz estimates and global solutions for the nonlinear Dirac equation」として纏めることができ現在関連ジャーナルに投稿中である。第二の成果は小澤徹氏、中村誠氏との共同研究で同じく非線型ディラック方程式をより一般の次元、一般の非線型項に対して解の一意存在を証明することができた。上記の時間空間統一評価は既存のものを使い、解を求める関数空間に工夫を施し結論を得ている。この仕事は論文「Small global solutions for nonlinear Dirac equations」として投稿、そして掲載が決定している。第三の成果は同じく非線型ディラック方程式を空間一次元の場合に絞り、更に精度の高い結論を得ることができた。初期値の滑らかさを小さいものにし、解関数まで含める負の指数のソボレフ空間での解の一意存在を得ることができた。ディラック方程式が相違なる伝播速度の波動方程式系で記述されることに着眼し解決を見た。この仕事は論文「One dimensional Dirac equation with quadratic nonlinearities」として投稿中である。第一の研究成果として小澤徹氏、中村誠氏、中西賢次氏との共同研究により、空間三次元、三乗冪の非線型項を持つ非線型ディラック方程式の解の一意存在を示すことができた。詳しく述べると、尺度不変性の議論により得られる臨界指数が1のソボレフ空間において初期値が小さいときに解が一意的に時刻無限まで存在することを証明した。このとき証明の主なブレイクスルーは解の挙動の時間方向と空間方向の統一的評価で、これまで直交座標で研究されていた既存の評価式を極座標で書き直し、動径方向と回転方向のそれぞれに適した関数空間を設定することにより評価構築に成功した。この仕事は論文「Endpoint Strichartz estimates and global solutions for the nonlinear Dirace quation」として纏めることができ関連雑誌Journal of Functional Analysisにおいて公表済みである。第二の成果は同じく非線型ディラック方程式に対し空間一次元の場合に、更に精度の高い結論を得ることができた。初期値の滑らかさを小さいものにし、超関数まで含める負の指数のソボレフ空間での解の一意存在を得ることができた。ディラック方程式が相違なる伝播速度の波動方程式系で記述されることに着眼し解決を見た。具体的な証明はJ.Bourgainのフーリエ制限ノルムを用いたもので双線形の評価に対しては肯定的な結果とともに否定的なものも得ることができた。この仕事は論文「One dimensional Dirac equation with quadratic nonlinearities」として纏められて現在関連雑誌に投稿中である。二次の非線形項を持つ非線形ディラック方程式の初期値問題を空間一次元で考察した。初期値の滑らかさを小さいものにし、超関数まで含める負の指数のソボレフ空間での解の一意存在を得ることができた。ディラック方程式が相違なる伝播速度の波動方程式系で記述されることに着眼し解決を見た。具体的な証明はJ.Bourgainのフーリエ制限ノルムを用いたもので双線形の評価に対しては肯定的な結果とともに否定的なものも得ることができた。この仕事は論文「One dimensional Dirac equation with quadratic nonlinearities」として関連雑誌において公表済みである。上記と同じ問題を別のアプローチを行いより小さい指数のソボレフ空間での、つまりより初期値の滑らかさの低い仮定の下で、解の一意存在を証明した。ここでこのソボレフ空間の指数は上記論文の考察における双線形の評価に対する否定的な結果より小さいものであり、根本的な改良が行われたといえる。 | KAKENHI-PROJECT-15740105 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15740105 |
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