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アポトーシス関連遺伝子を用いた癌遺伝子治療法の開発 | 一方、yama/cpp32の上流でアポトーシスを抑制するBcl-2を過剰に発現しておくと、yama/cpp32遺伝子導入の効果は得られなかった。従って、yama/cpp32遺伝子を用いた遺伝子治療はBcl-2低発現腫瘍において効果的に機能すると考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-09671304 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09671304 |
在宅における身体的および精神的予備力のモニタリングに関する研究 | 本研究は、日常生活において、(1)身体活動のモニタリングの方法の確立、(2)精神活動のモニタリングの方法の確立、(3)身体的および精神的予備力の推定法の確立を目指した。しかし、分担研究者の移動や家庭でのモニタリングの困難により研究実施が予定より大幅に遅れ、研究期間が終了した時点で、まだデータ収集が継続中である。本研究において開発したセンサステーションは、赤外近接センサ、音センサ、温度センサ、湿度センサ、照度センサ、振動センサを内臓し、家庭に2基設置して、常時生活活動行われるところと、身体的および精神的予備力が高いときにのみ活動が行われるところの活動度の違いから、予備力の推定を行うものである。身体活動度については、アクチグラフとの相関、精神的活動度については、記述による生活の記録をもとに、センサ情報を解析する。センサステーション2基はすでに完成し、機能の確認およびデータ解析の準備が整い、アクチグラフデータとの比較の計測試験を進めており、独居高齢者の住宅でのデータ収集の準備も進めている。研究期間の終了までに発表できるデータを収集するまでに至らなかったことは大きな誤算であったが、研究の方向はほぼ当初の計画通り進んでおり、身体的および精神的予備力の指標を得るという目標は現在でも妥当であることから、成果が期待できるものと考える。反省点として、家庭でのデータ収集の困難についての見通しの甘さ、とくにプライバシーへの配慮が足りなかったことが大きな支障となったので、今後これらの点を十分考慮した上で研究を続け、本研究のために費やした補助金を無駄にすることなく、成果を挙げるよう努力する所存である。本研究は、日常生活において、(1)身体活動のモニタリングの方法の確立、(2)精神活動のモニタリングの方法の確立、(3)身体的および精神的予備力の推定法の確立を目指した。しかし、分担研究者の移動や家庭でのモニタリングの困難により研究実施が予定より大幅に遅れ、研究期間が終了した時点で、まだデータ収集が継続中である。本研究において開発したセンサステーションは、赤外近接センサ、音センサ、温度センサ、湿度センサ、照度センサ、振動センサを内臓し、家庭に2基設置して、常時生活活動行われるところと、身体的および精神的予備力が高いときにのみ活動が行われるところの活動度の違いから、予備力の推定を行うものである。身体活動度については、アクチグラフとの相関、精神的活動度については、記述による生活の記録をもとに、センサ情報を解析する。センサステーション2基はすでに完成し、機能の確認およびデータ解析の準備が整い、アクチグラフデータとの比較の計測試験を進めており、独居高齢者の住宅でのデータ収集の準備も進めている。研究期間の終了までに発表できるデータを収集するまでに至らなかったことは大きな誤算であったが、研究の方向はほぼ当初の計画通り進んでおり、身体的および精神的予備力の指標を得るという目標は現在でも妥当であることから、成果が期待できるものと考える。反省点として、家庭でのデータ収集の困難についての見通しの甘さ、とくにプライバシーへの配慮が足りなかったことが大きな支障となったので、今後これらの点を十分考慮した上で研究を続け、本研究のために費やした補助金を無駄にすることなく、成果を挙げるよう努力する所存である。初年度において、身体的および精神的予備力を推定できる指標を、日常生活活動のモニタリングから抽出する試みの準備を行った。身体的予備力の指標として、固定バイク(セノーV70)を用い、体力測定モードによって体力指標および酸素摂取量換算の代謝率が得られることを確認した。被検者には毎日定時に体力測定を行うように指示する。精神的予備力の指標には、集中力を要するビデオゲームを用いる計画で、適当なソフトを選定中であり、やはり毎日定時に集中力評価を行うように指示する。日常生活活動の分析のために監視カメラを用いる。一般住宅に設置しやすいように、無線式の監視カメラ(インターナショナル電子CMOS-RR)により、4チャンネル同時記録できるビデオレコーダー(インターナショナル電子LDR-400S)を用いて、被検者の日常生活を4箇所で記録する。現在は計測システムの準備中であり、まだデータ収集に至っていないが、分析項目の絞込みを行っている。訪問者への対応の速さが有用な指標となる可能性を検討しており、出入り口に監視カメラを設置する計画を進めている。訪問者への対応が予備力の指標となるなら、インターフォンの付加機能として容易に実用化できるので、その可能性を追求する。そのほか、起床、炊事、洗濯、掃除、整理・整頓、入浴、就寝などの生活習慣の変動をとらえるとともに、外出時間および頻度、階段昇降速度など、簡単なセンサで検出可能な項目に重点そおいて監視データの分析を行うように準備を進めている。平成17年度当初において、(1)身体的予備力の推定、(2)精神的予備力の推定、(3)予備力推定の評価、(4)予備力自動検知システムの設計製作を計画し、体力測定、集中力測定、監視カメラによる日常行動データ収集の準備を進めた。計画遂行予定が計画より遅れているものの、体力測定および、集中力測定については実施できる見通しである。しかし、監視カメラによるデータ収集は、プライバシーの問題で協力者が得にくいことがわかり、監視領域を限定的な範囲にとどめる一方、自動検知システムを用いるように計画を変更した。現在設計製作している自動検知システムは、赤外近接センサ、音センサ、温度センサ、照度センサを内蔵し、データロガーにデータを連続記録するものである。このシステム2基を住宅の日常的に使用頻度の高いところと低いところに設置し、生活のための必要度が大きく異なる2箇所の活動状態から予備力の指標を抽出できる可能性を評価しようとするものである。 | KAKENHI-PROJECT-16300163 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16300163 |
在宅における身体的および精神的予備力のモニタリングに関する研究 | この方式は、設置が簡単で、プライバシーの問題がほとんどなく、被検者の協力が得やすいので、この方式を完成させて最終年度の総合的評価実験に備える。なお、分担研究者の小川充洋が平成17年8月よりフランスのマイクロヴィテ社に就職したため、平成18年度の研究組織からはずさなければならなくなったが、当該社においてモニタリング機器の開発を行っており、先方の上司も研究協力を希望しているので、データ分析等において今後も当研究に間接的に参加できる見通しである。本研究は、日常生活において、(1)身体活動のモニタリングの方法の確立、(2)精神活動のモニタリングの方法の確立、(3)身体的および精神的予備力の推定法の確立を目指した。しかし、分担研究者の移動や家庭でのモニタリングの困難により研究実施が予定より大幅に遅れ、研究期間が終了した時点で、まだデータ収集が継続中である。本研究において開発したセンサステーションは、赤外近接センサ、音センサ、温度センサ、湿度センサ、照度センサ、振動センサを内臓し、家庭に2基設置して、常時生活活動行われるところと、身体的および精神的予備力が高いときにのみ活動が行われるところの活動度の違いから、予備力の推定を行うものである。身体活動度については、アクチグラフとの相関、精神的活動度については、記述による生活の記録をもとに、センサ情報を解析する。センサステーション2基はすでに完成し、機能の確認およびデータ解析の準備が整い、アクチグラフデータとの比較の計測試験を進めており、独居高齢者の住宅でのデータ収集の準備も進めている。研究期間の終了までに発表できるデータを収集するまでに至らなかったことは大きな誤算であったが、研究の方向はほぼ当初の計画通り進んでおり、身体的および精神的予備力の指標を得るという目標は現在でも妥当であることから、成果が期待できるものと考える。反省点として、家庭でのデータ収集の困難についての見通しの甘さ、とくにプライバシーへの配慮が足りなかったことが大きな支障となったので、今後これらの点を十分考慮した上で研究を続け、本研究のために費やした補助金を無駄にすることなく、成果を挙げるよう努力する所存である。 | KAKENHI-PROJECT-16300163 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16300163 |
グリーンアメニティデザイン支援システムの作成 | 1.観葉植物が室内の温熱環境、温熱快適性に及ぼす影響を、春期と夏期の実験によって解析した結果、春期では、蒸散の盛んなカポックを窓際一列配置することによって、室内の相対湿度を26%も上昇させることが可能であることを明らかにした。また、夏期では、ほとんど蒸散しないマッサンギアナを室内点在配置することによって、相対湿度の上昇を3%に抑えられることを明らかにした。一方、室内の温熱環境、温熱快適性を予測するシミュレーションモデルを、窓際一列配置の場合と室内点在配置の場合について、作成した。このモデルによって、観葉植物の種類・配置方法、窓の方位、季節、地方などが異なる場合の予測が可能となった。2.生理・心理効果を、脳波の測定・解析とSD法によるアンケート調査によって解析した。観葉植物、花(バラ)、香りが存在する場合については、花の存在は、視覚を通して認識され、意識上の人間の心理に影響を及ぼすことを明らかにした。これに対し、香りは、鼻の粘膜細胞に直接作用するため、生理的反応の評価を含むと考えられる脳波に反映しやすいことを明らかにした。また、別の実験で、α波の出現量をβ波の出現量で割った値を快適性の指標としたところ、被験者のα/β値の平均は、室内点在配置が最も大きく、窓際一列配置、ロッカー・衝立の順に低くなり、対照区が最も小さかった。アンケート調査の結果からも、植物を配置することによる快適性が認められた。3.グリーンアメニティの総合的効果が最も大きくなるようなデザイン(部屋の使用目的・大きさ・向き、居住する人間の性別・年令、季節、地方などに基づいて、植物の品種・本数・配置方法を決定する)を支援するシステムをパソコン上で作成し、最適デザインの検討を行った。1.観葉植物が室内の温熱環境、温熱快適性に及ぼす影響を、春期と夏期の実験によって解析した結果、春期では、蒸散の盛んなカポックを窓際一列配置することによって、室内の相対湿度を26%も上昇させることが可能であることを明らかにした。また、夏期では、ほとんど蒸散しないマッサンギアナを室内点在配置することによって、相対湿度の上昇を3%に抑えられることを明らかにした。一方、室内の温熱環境、温熱快適性を予測するシミュレーションモデルを、窓際一列配置の場合と室内点在配置の場合について、作成した。このモデルによって、観葉植物の種類・配置方法、窓の方位、季節、地方などが異なる場合の予測が可能となった。2.生理・心理効果を、脳波の測定・解析とSD法によるアンケート調査によって解析した。観葉植物、花(バラ)、香りが存在する場合については、花の存在は、視覚を通して認識され、意識上の人間の心理に影響を及ぼすことを明らかにした。これに対し、香りは、鼻の粘膜細胞に直接作用するため、生理的反応の評価を含むと考えられる脳波に反映しやすいことを明らかにした。また、別の実験で、α波の出現量をβ波の出現量で割った値を快適性の指標としたところ、被験者のα/β値の平均は、室内点在配置が最も大きく、窓際一列配置、ロッカー・衝立の順に低くなり、対照区が最も小さかった。アンケート調査の結果からも、植物を配置することによる快適性が認められた。3.グリーンアメニティの総合的効果が最も大きくなるようなデザイン(部屋の使用目的・大きさ・向き、居住する人間の性別・年令、季節、地方などに基づいて、植物の品種・本数・配置方法を決定する)を支援するシステムをパソコン上で作成し、最適デザインの検討を行った。1.植物を配置した室内の温熱環境、温熱快適性を予測するモデルを作成した。観葉植物の種類ごとにシミュレーションを行い、実測値と比較した。その結果、作成したモデルの妥当性が確認できた。2.新規に購入した脳波解析システムで、観葉植物を配置した室内の居住者の心理的快適性の解析を行った。α波の出現量をβ波の出現量で割った値を、快適性の指標とした。対象としては、観葉植物を窓際に一列に配置、観葉植物を点在に配置、ロッカーや衝立などを配置、何も配置しない(対照区)の4つとした。その結果、被験者のα/β値の平均は、点在配置が最も大きく、窓際1例配置、ロッカー・衝立の順に低くなり、対照区が最も小さかった。また、閉眼時と開眼時の比較をすると、α/β値は開眼時の方が大きい。さらに、植物を配置した対象のα/β値と植物を配置しない対象のα/β値の差も、開眼時の方が大きいことから、視覚を通した効果とも考えられる。3.上記の実験時にSD法に基づいたアンケート調査も行った。その結果、意識レベルでも、植物を配置することによる快適性が認められた。4.植物の香りによりアメニティ効果について、脳波測定とSD法に基づいたアンケートによって解析した。その結果、植物の香りによって快適性が向上することがわかったが、その時観葉植物や切り花が見えるか、見えないかによっても差があることがわかった。5.観葉植物および土壌のもつベンゼン除去作用の解析を行った。その結果、観葉植物の呼吸は温度(13°C、20°C、27°C)によって変化したのに対して、ベンゼン吸収量は温度に関わらずほとんど変化しなかった。 | KAKENHI-PROJECT-08456131 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08456131 |
グリーンアメニティデザイン支援システムの作成 | 土壌のCO_2放出量、ベンゼン吸収量は、鹿沼土のみよりも鹿沼土と腐葉土の混合土の方が多く、また、腐葉土の割合が大きいほどCO_2放出量、ベンゼン吸収量とも多かった。グリーンアメニティの各効果に関して、下記の実験、計算を行った。1.観葉植物が室内の温熱環境、温熱快適性に及ぼす影響を、春期と夏期の実験によって解析した。その結果、春期では、蒸散の盛んなカポックを窓際一列配置することによって、室内の相対湿度を26%も上昇させることが可能であることを明らかにした。また、夏期では、ほとんど蒸散しないマッサンギアナを室内点在配置することによって、相対湿度の上昇を3%に抑えられることを明らかにした。一方、観葉植物を配置した室内の温熱環境、温熱快適性を予測するシミュレーションモデルを、窓際一列配置の場合と室内点在配置の場合について、作成した。このモデルによって、観葉植物の種類・配置方法、窓の方位、季節、地方などが異なる場合の、室内の温熱環境、温熱快適性を予測することが可能となった。2.生理・心理効果を、脳波の測定・解析とSD法によるアンケート調査によって解析した。その結果、「α/β値」(被験者ごとに、各対象のα波をβ波で割り、さらに、その値を基準となる対象の値で割り、相対値にしたもの)は、被験者の両側に観葉植物を配置した対象と、その他の対象(被験者の右側に植物、左側に衝立を配置など)の間では、差がみられた。アンケート調査では、植物を配置した対象は高い評価を得た。3グリーンアメニティの総合的効果が最も大きくなるようなデザイン(部屋の使用目的・大きさ・向き、居住する人間の性別・年令、季節、地方などに基づいて、植物の品種・本数・配置方法を決定する)を支援するシステムをパソコン上で作成し、最適デザインの検討を行った。 | KAKENHI-PROJECT-08456131 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08456131 |
インド経済政策の転換とIT(情報技術)産業の成長 -インド・日本における新たな国際分業体制の実証的分析- | 近年、インドのIT企業が日本企業との結びつき強化に積極的になり始めた背景には、日本に進出するインド企業は増加の途を辿っているものの、本格的なビジネス展開に至っている事例がまだ限られているという現実がある。2001-2002年度のインドのソフトウェア輸出総額は約80億米ドルとされているが、その内訳では、米国が62%、欧州が24%、日本は依然4%に留まっている。その原因にはインド企業に対する情報不足や、お互いのビジネス慣行に対する理解の欠如など文化的な要因もあると考えられる。また、米国、欧州のように外国の人材活用に馴染みの深い市場とは異なり、外国人を国内において活用するノウハウの蓄積が薄い日本企業自体の体質上の問題も考えられる。しかし、日本企業への情報不足については、それを補おうとするインド側の努力も目立ってきている、在日インドIT関連企業と、日本企業の交流、情報交換を目的に設立されたインドITクラブが中心となり、新潟、岐阜、石川、京都、大阪においてITセミナーを開催する等、日本全国をターゲットに日本企業との結びつきを深めようとする動きに出ているからである。さらに、インドが単なる下請けではなく、高度な技術の供給源であるということをよりアピールするインド政府の政策も注目に値するものである。その典型が、インド政府による130カ国の発展途上国に対する技術支援プログラム(技術研修の操供)であり、また、日本人を対象とするインドたおけるIT研修コースの創設でもある。人材育成のプログラムを通してIT先進国としてのインドを世界にアピールし、市場確保に乗り出す政策が、どのような効果を生み出すのかは注目に値するだろう。同時に、インドITの質的評価を適切に行い、それをどう企業戦略に組み込んでいくのかは、日本企業自体の戦略における課題でもある。ソフトを含めたIT産業全体のインドにおける成長率は、近年驚異的な伸びを示している。新経済政策の開始された1991年には、さしたる産業とは認められなかったIT産業であったが、その2000年度の売上げは、約83億ドルに上り、40万人の雇用を創出、インドの輸出を15%も押し上げたとの分析もある。そして、その年平均の成長率は50%増である。また、Fortuneが選んだ世界の優良企業500社のうち、104社がインド企業にソフトウェアのアウトソーシングを行っている。90年代初頭まで低迷を続けてきたインド経済の実績とは対照的に、インド経済は、「IT産業」によって、新しい躍進を遂げつつある。だが、ここで、重要なことは、いかにインドがIT産業において国際優位性を確立しつつあるのかということだけではない。製造業を発展させてきた既存の産業インフラを充足せずして、このような一大産業を成長させたおそらく、最初の国であるインドにおいて、いかにこのIT産業は産業としての離陸をなし得たかに注目しなければならない。つまり、インドは、確固たるインフラを欠いた状況で、IT産業を離陸させたが、その背景にある経済政策の転換にも目を向けなければならないのある。そして、その軌跡に基づく国際優位性の分析こそが、製造業に基づく雁行形態的経済成長の枠組みとは別の新たな経済発展モデルの示唆にも繋がると考える。本年度は、それらの問題を念頭に置きつつ、まず、インドIT産業の成長の契機となった経済転換の研究を顧みた。そして、特にITのうちのソフトウェア産業に焦点を当て、NASSCOM(インド全国ソフトウェア・サービス業協会)加盟企業に対する聞き取りを通して、その成長要因を課題とともに検討し、IT産業におけるインドの国際競争優位性の実態を検討した。日本企業で働く外国人システムエンジニア(SE)が増加しているが、その中でも、インドのSEの存在は大きいものとなりつつある。そして、インド人SEはソフトウェア開発の下請的存在ではなく、既に中核を担いつつある。外国人SEの増加の背景としては、日本における技術者不足の深刻な状況がある。特に90年代半ばのバブル経済の崩壊で、日本企業が情報化投資の抑制に乗り出したため、1995年の情報サービス業の従業員数は40万7千人と、その前のピークだった91年に比べて2割近く減少した。しかし、その時期は、世界がインターネット時代に突入した時期であった。日本は、その重要な時期に、ネット時代を担う人材の育成に対しての投資を抑制してしまったために、深刻な人材不足を招いてしまった。その人材不足の解消として、注目されているのが、インド人SEをはじめとする外国人技術者の存在である。インドからのソフトウェア会社の進出も1990年代から目立っている。欧米企業との取引で、実力をつけたソフトウェア会社が、日本にも取引先を求めて進出してきたのである。その数は、現在約50社にも上る。全世界に1万9千人の技術者を抱えるインド最大のソフトウェア会社、タタ・コンサルタンシー・サービスズも約百人の最高レベルの技術者を日本に駐在させているという。日本企業としても、今から、進歩の激しい分野での人材確保にあっては、日本国内からの供給に固執することなく、むしろ、多様化するニーズに即応できる柔軟な人材として、インド人技術者の利用に積極的に乗り出している。既に、日本においても、ソフトウェアをめぐっての分業体制は、インド人をはじめとする外国人技術者を巻きこんで進んでいるといえる。近年、インドのIT企業が日本企業との結びつき強化に積極的になり始めた背景には、日本に進出するインド企業は増加の途を辿っているものの、本格的なビジネス展開に至っている事例がまだ限られているという現実がある。 | KAKENHI-PROJECT-13873015 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13873015 |
インド経済政策の転換とIT(情報技術)産業の成長 -インド・日本における新たな国際分業体制の実証的分析- | 2001-2002年度のインドのソフトウェア輸出総額は約80億米ドルとされているが、その内訳では、米国が62%、欧州が24%、日本は依然4%に留まっている。その原因にはインド企業に対する情報不足や、お互いのビジネス慣行に対する理解の欠如など文化的な要因もあると考えられる。また、米国、欧州のように外国の人材活用に馴染みの深い市場とは異なり、外国人を国内において活用するノウハウの蓄積が薄い日本企業自体の体質上の問題も考えられる。しかし、日本企業への情報不足については、それを補おうとするインド側の努力も目立ってきている、在日インドIT関連企業と、日本企業の交流、情報交換を目的に設立されたインドITクラブが中心となり、新潟、岐阜、石川、京都、大阪においてITセミナーを開催する等、日本全国をターゲットに日本企業との結びつきを深めようとする動きに出ているからである。さらに、インドが単なる下請けではなく、高度な技術の供給源であるということをよりアピールするインド政府の政策も注目に値するものである。その典型が、インド政府による130カ国の発展途上国に対する技術支援プログラム(技術研修の操供)であり、また、日本人を対象とするインドたおけるIT研修コースの創設でもある。人材育成のプログラムを通してIT先進国としてのインドを世界にアピールし、市場確保に乗り出す政策が、どのような効果を生み出すのかは注目に値するだろう。同時に、インドITの質的評価を適切に行い、それをどう企業戦略に組み込んでいくのかは、日本企業自体の戦略における課題でもある。 | KAKENHI-PROJECT-13873015 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13873015 |
内鞘細胞幹細胞性原理の解明 | 植物の細胞は全能性を持っていると言われるがすべての細胞が全能性を持っているわけではない。多くの場合、分化に伴う核内倍加によって増殖、再生能力を失うと考えられている。一方、幹細胞は増殖、再生のポテンシャルを維持している。内鞘細胞は側根形成能力を持つ幹細胞であり、シロイヌナズナでは道管側の内鞘細胞(xylem-pole pericycle: XPP細胞)のみが幹細胞としての機能を持っているが、オーキシンシグナルを受けるまでは静止している。オーキシンシグナルを受けると不当分裂を起こし、小さい方の細胞の子孫が将来の側根原基を形成する。XPP以外の根の細胞はオーキシンに応答した分裂をおこさない。ここでは、内鞘細胞はこの特殊な幹細胞性機能を発揮する分子機構を明らかにすることが研究の目的である。本年度は、未だ不明な点が多い内鞘細胞の細胞周期を調べた。細胞周期マーカー用いたタイムラプス観察およびDNA合成基質アナログの取り込み実験によって、内鞘細胞はG2停止しており、オーキシンによってこれがG2停止が解除されることを明らかにした。また、これまでに私たちは内鞘細胞のアイデンティティーを決定する転写因子を探索し、これを見出していた。本年度は、これらの遺伝子の多重変異体を作成した。多重変異体においては、側根原基および側根数が減少していることを見出した。このことは、これらの転写因子が内鞘細胞のマスター調節因子であることを示している。また、これらの結果は、細胞分裂能力を維持しながらも再生能力を保つ内鞘細胞の特殊な幹細胞性の理解を大きく発展させるものと考えている。これまで不明確であった内鞘細胞の細胞周期を明らかにし、オーキシンがG2停止解除を行うことを示した。また、内鞘細胞アイデンティティー決定因子候補の遺伝子の突然変異体において、内鞘アイデンティティーが失われることを示したため。内鞘細胞がG2停止していることを示したが、論文公開用に今後さらに高精度の実験を行う必要がある。内鞘細胞アイデンティティー決定のマスター転写因子の多重変異体に、内鞘細胞マーカーの導入を行う。また、マスター転写因子のターゲットを見出す。植物の細胞は全能性を持っていると言われるがすべての細胞が全能性を持っているわけではない。多くの場合、分化に伴う核内倍加によって増殖、再生能力を失うと考えられている。一方、幹細胞は増殖、再生のポテンシャルを維持している。内鞘細胞は側根形成能力を持つ幹細胞であり、シロイヌナズナでは道管側の内鞘細胞(xylem-pole pericycle: XPP細胞)のみが幹細胞としての機能を持っているが、オーキシンシグナルを受けるまでは静止している。オーキシンシグナルを受けると不当分裂を起こし、小さい方の細胞の子孫が将来の側根原基を形成する。XPP以外の根の細胞はオーキシンに応答した分裂をおこさない。ここでは、内鞘細胞はこの特殊な幹細胞性機能を発揮する分子機構を明らかにすることが研究の目的である。本年度は、未だ不明な点が多い内鞘細胞の細胞周期を調べた。細胞周期マーカー用いたタイムラプス観察およびDNA合成基質アナログの取り込み実験によって、内鞘細胞はG2停止しており、オーキシンによってこれがG2停止が解除されることを明らかにした。また、これまでに私たちは内鞘細胞のアイデンティティーを決定する転写因子を探索し、これを見出していた。本年度は、これらの遺伝子の多重変異体を作成した。多重変異体においては、側根原基および側根数が減少していることを見出した。このことは、これらの転写因子が内鞘細胞のマスター調節因子であることを示している。また、これらの結果は、細胞分裂能力を維持しながらも再生能力を保つ内鞘細胞の特殊な幹細胞性の理解を大きく発展させるものと考えている。これまで不明確であった内鞘細胞の細胞周期を明らかにし、オーキシンがG2停止解除を行うことを示した。また、内鞘細胞アイデンティティー決定因子候補の遺伝子の突然変異体において、内鞘アイデンティティーが失われることを示したため。内鞘細胞がG2停止していることを示したが、論文公開用に今後さらに高精度の実験を行う必要がある。内鞘細胞アイデンティティー決定のマスター転写因子の多重変異体に、内鞘細胞マーカーの導入を行う。また、マスター転写因子のターゲットを見出す。 | KAKENHI-PUBLICLY-18H04837 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-18H04837 |
日本中世における政治と宗教の関係についての研究 | 本研究の目的は、「研究目的・研究実施計画」に記したように、日本の中世における王朝や幕府と天台・真言宗といった旧仏教との相依関係の実態を具体的に検討し、政治と仏教の関係、当時の表現を用いれば「王法」と「仏法」との関係を構造的に解明することにあった。本年度は、とくに南北朝期における公武の祈祷的世界に注目した。後七日御修法や五壇法などの主要な修法が誰によってどのように行われ、またどのように変化していったかをまず調べた。その結果、五壇法の主催権の公家から武家への移行、換言すれば室町幕府による同法主催権の剥奪を可能にしたのは、将軍の身辺に編成された武家護持僧であったことなどが明らかになった。続いて、同時期の代表的な護持僧たる醍醐寺三宝院の賢俊について掘り下げることによって、その祈祷僧としての性格と役割とを明らかにした。賢俊は天皇、将軍双方の護持僧を兼任したが、次第に武家方に重点がかかってきたこと、賢俊に対する将軍足利尊氏の絶大な信頼、帰依、経済的援助と賢俊自身の将軍護持僧としての自覚は相互に作用して、賢俊の心に驚くべき忠誠心を芽生えさせたこと、真言密教の最高ポストに位置する賢俊の、将軍護持僧としての活動は幕府支配のための強力な精神的支柱となったであろうことなどのことがらを史料を踏まえて具体的に指摘した。本研究の目的は、「研究目的・研究実施計画」に記したように、日本の中世における王朝や幕府と天台・真言宗といった旧仏教との相依関係の実態を具体的に検討し、政治と仏教の関係、当時の表現を用いれば「王法」と「仏法」との関係を構造的に解明することにあった。本年度は、とくに南北朝期における公武の祈祷的世界に注目した。後七日御修法や五壇法などの主要な修法が誰によってどのように行われ、またどのように変化していったかをまず調べた。その結果、五壇法の主催権の公家から武家への移行、換言すれば室町幕府による同法主催権の剥奪を可能にしたのは、将軍の身辺に編成された武家護持僧であったことなどが明らかになった。続いて、同時期の代表的な護持僧たる醍醐寺三宝院の賢俊について掘り下げることによって、その祈祷僧としての性格と役割とを明らかにした。賢俊は天皇、将軍双方の護持僧を兼任したが、次第に武家方に重点がかかってきたこと、賢俊に対する将軍足利尊氏の絶大な信頼、帰依、経済的援助と賢俊自身の将軍護持僧としての自覚は相互に作用して、賢俊の心に驚くべき忠誠心を芽生えさせたこと、真言密教の最高ポストに位置する賢俊の、将軍護持僧としての活動は幕府支配のための強力な精神的支柱となったであろうことなどのことがらを史料を踏まえて具体的に指摘した。 | KAKENHI-PROJECT-01510210 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01510210 |
胃がんのマウスモデルとヒト血球DNAメチル化の解析 | 発症数と死亡数が多い胃がんの中でも、未分化型胃がん(DGC)は特に予後が悪い。我々はヒトDGCに形態学的にも分子生物学的にもよく似た胃がんを発症する世界初のマウスモデル(DCKO)を作製し、その胃がんから初代培養細胞株(MDGC)を樹立することにも成功した。我々はDCKOマウスにおいて早期診断を可能にする新規腫瘍マーカーとして4種類の血中miRNAを同定し、ヒト胃がん患者にも一部応用可能であることを示した。また、DCKOマウスとMDGC細胞株を利用した解析により、その発症にエピジェネティクス異常が強く関与しており、その治療にはエピジェネティクス治療薬が有効であることを示唆できた。発症数と死亡数が多い胃がんの中でも、未分化型胃がん(DGC)は特に予後が悪い。我々はヒトDGCに形態学的にも分子生物学的にもよく似た胃がんを発症する世界初のマウスモデル(DCKO)を作製し、その胃がんから初代培養細胞株(MDGC)を樹立することにも成功した。我々はDCKOマウスにおいて早期診断を可能にする新規腫瘍マーカーとして4種類の血中miRNAを同定し、ヒト胃がん患者にも一部応用可能であることを示した。また、DCKOマウスとMDGC細胞株を利用した解析により、その発症にエピジェネティクス異常が強く関与しており、その治療にはエピジェネティクス治療薬が有効であることを示唆できた。1.未分化型胃がんのマウスモデルの解析近年、micro(mi)RNAとがんとの関連が明らかになってきた。血中のmiRNA量は、がんの診断マーカーの一つとして注目されている。我々は、担がんDCKOマウスにおいて、血清、原発がん、リンパ節転移巣におけるmiRNA量をマイクロアレイ法で解析した。その結果、血清と原発がんでともに高いmiRNAなど、いくつかを候補とした。DCKOとコントロールマウスについて、3,6,12か月に血清を得て、これらのmiRNA量を定量的に測定した。その結果、4種のmiRNAでは、6か月と12か月齢において、DCKOマウスの血清中でコントロールマウスより有意に高かった。一方、まだがんができていない3か月齢では、差は無かった。以上から、血清中のmiRNA量は、がんの診断マーカーになりうることが示唆された。2.血液白血球DNAのメチル化の程度とがんの有無、および生活習慣との関連の解析IGF2遺伝子のメチル化を詳しく調べるため、胃がん患者の血液白血球DNAをbisulfite処理した後、クローニングして各々のクローンの位置12と13のCpGのメチル化を解析した。アレルについては、制限酵素処理で塩基の違いを確認した。その結果、調べた5例はすべて、インプリンティング状態を保持していた。しかし、メチル化(+)アレルでは脱メチル化が、またメチル化(-)アレルでは新たなメチル化が頻度はいろいろであったが見られた。従って、IGF2遺伝子のメチル化状態は変わりうることがわかった。1.新規バイオマーカーとしての血中マイクロRNA量と胃がんとの関連我々はヒトの未分化型胃がん(DGC)に形態学的にも分子生物学的にもよく似た胃がんを発症するマウスモデル(DCKO)を作製した。最近、がんの新たなバイオマーカーとして血中マイクロ(mi)RNA量が注目されている。そこで、DCKOマウスを用いて、胃がんの早期診断を可能にする血中miRNAの候補の同定を試みた。担がんDCKOマウスと正常コントロールマウスの血清miRNA量をマイクロアレイで比較して、担がんDCKOマウスで高く、正常マウスで低い複数のmiRNAを候補とした。次に定量的PCRで個別のマウスの血清中でのmiRNAの量を解析した結果、miR-103・107・194・210の4個のmiRNAが有益ながんのバイオマーカーとしての可能性を示した。さらにこれらのmiRNAについて、ヒト未分化型胃がん患者と非がん対照者の血漿中での量を解析したが、有意な差は検出できなかった。しかし、miR-107は50歳未満ではヒト胃がん患者群の方が高かった。2.未分化型胃がんマウスを利用したエピジェネティクス治療薬の探索DCKOマウスのDGCの分子メカニズムを解明するため遺伝子発現プロファイルを解析した結果、胃がんで高頻度にエピジェネティクス変化を受けている遺伝子群の発現低下と、それらのエピジェネティクス変化を制御する遺伝子群の発現上昇が認められた。そこで、DGCの発症にはエピジェネティクス変化が重要な役割を果たしていると考え、エピジェネティクス治療薬をマウスDGC由来細胞株に処理した。その結果、DNAメチル化阻害剤とEzh2阻害剤がDGC由来細胞株に対してのみ細胞増殖抑制効果を示した。また、HDAC阻害剤とSuv39h1阻害剤は低濃度でもスフェア形成を顕著に阻害し、さらにin vivoでも有意に腫瘍増殖抑制効果を示した。1.新たながんのバイオマーカーとしての血中マイクロRNA量と胃がんとの関連に関する研究我々はヒトの未分化型胃がん(DGC)に形態学的にも分子生物学的にもよく似た胃がんを発症する世界初のマウスモデル(DCKO)を作製した。最近、がんの新たなバイオマーカーとして血中のマイクロ(mi)RNA量が注目されているので、我々の胃がんマウスモデルを用いて、胃がんの早期診断に利用可能な血中miRNAの候補の同定を試みた。始めに担がんマウスと正常コントロールマウスの血清をmiRNAマイクロアレイで比較して、担がんマウスで高く、コントロールマウスで低い複数のmiRNAを候補とした。次に定量的 | KAKENHI-PROJECT-23300342 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23300342 |
胃がんのマウスモデルとヒト血球DNAメチル化の解析 | PCRで個別のマウスの血清中miRNAを定量した結果、4個のmiRNAが進行がんだけでなく、早期でも違いを示し、有益ながんのバイオマーカーとしての可能性を示した。現在、上記のmiRNAについて、ヒト胃がん患者と非がん対照者の血漿中での量を定量的に測定し、胃がんの早期診断などに応用できるかを解析している。2.エピジェネティクス治療薬のスクリーニングDGCの遺伝子発現プロファイルを解析した結果、がんで高頻度にエピジェネティクス変化を受けている遺伝子群の発現低下と、それらのエピジェネティクス変化を制御する遺伝子群の発現上昇が認められた。そこで、エピジェネティクス治療薬をDGC由来細胞株に処理した。p53ノックアウトマウス胎仔胃粘膜上皮由来細胞株(Trp53-/-、造腫瘍能なし)とDCKOマウスのDGC由来細胞株(Cdh1-/-Trp53-/-、造腫瘍能あり)にDNAメチル化阻害剤、HDAC阻害剤などの既存のエピジェネティクス治療薬を処理した結果、DNAメチル化阻害剤がマウスDGC細胞株に対してのみ細胞増殖抑制を示した。今後、臨床応用可能なエピジェネティクス治療薬の検索を目指す。DGCのマウスモデルでは、がんから培養細胞株を樹立できた。従って、今後トランスフェクション実験などで遺伝子の機能を培養細胞系でも解析可能となったため。血球DNAのメチル化程度とがんとの関連については、追加実験を行ったことにより、論文が受理されたため。25年度が最終年度であるため、記入しない。1.胃がんにおけるエピジェネティクス変化とそのバイオマーカーとしての応用新たに、最近注目されている血中miRNAレベルに着目し、胃がんマウスモデルにおいて、バイオマーカーとして有望な4個のmiRNAを同定できた。2.未分化型胃がん(DGC)マウスモデルの解析と応用マウスモデルDGCの遺伝子発現プロファイルを解析した結果、ヒト胃がんで高頻度にエピジェネティクス変化を受けている遺伝子群の発現低下と、それらのエピジェネティクス変化を制御する遺伝子群の発現上昇を認めた。この結果よりDGCの発症にはエピジェネティクス変化が重要な役割を果たしていることを明らかにした。おおむね順調に進展しているので、当初の方針どおり進める予定である。25年度が最終年度であるため、記入しない。1.胃がんにおけるエピジェネティクス変化とそのバイオマーカーとしての応用平成25年度は最終年度になるので、胃がんマウスモデルで同定した4個のmiRNAについて、ヒト胃がん患者と非がん対照者の血漿中での量を定量的に測定し、ヒト胃がんの早期診断などに応用できるかを解析する。2.未分化型胃がん(DGC)マウスモデルの解析と応用DGC由来細胞株の培養系と免疫不全マウスにおける移植系を用いて、複数のエピジェネティクス治療薬の抗腫瘍効果を検索して、臨床応用可能な治療薬の開発を目指す。 | KAKENHI-PROJECT-23300342 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23300342 |
ディペンダブル分散システム実現のための耐故障アルゴリズムのモデル検査 | コンセンサスアルゴリズムと呼ばれる,複数の計算機から構成される分散システム上で耐故障性を実現するためのアルゴリズムに対し,その正しさを自動的に検証する手法を開発した.抽象度の高いシステムモデルを仮定した場合,対象システムが計算機10台程度の規模であれば,プログラムを用いて機械的に検証が可能ことを実験的に示した.コンセンサスアルゴリズムと呼ばれる,複数の計算機から構成される分散システム上で耐故障性を実現するためのアルゴリズムに対し,その正しさを自動的に検証する手法を開発した.抽象度の高いシステムモデルを仮定した場合,対象システムが計算機10台程度の規模であれば,プログラムを用いて機械的に検証が可能ことを実験的に示した.ネットワーク上に構築される情報システムである分散システムを対象に,検証技術の開発を行った.具体的には,代表的な耐故障分散アルゴリズムであるコンセンサスアルゴリズムに対し,モデル検査という検証法を用いて,アルゴリズムの正しさを自動的に検証する手法について研究した.本年度の研究成果は以下の二つである.まず,検証できる対象の規模の向上を実現した.モデル検査を直接適用する検証手法では,システムがコンピュータ3台もしくは4台という小規模な場合についてしか,検証を行うことができなかった.これを, 8台程度に拡大することに成功した.これは,モデル検査の範囲をアルゴリズムの動作のごく一部に限定し,動作全体の検証は,モデル検査の結果とインダクションを組み合わせることで検証するというアプローチによって実現した.これと並行して,分散アルゴリズムの開発者が,容易に検証を実行できることを目指し,関連するツール群を作成した.より具体的には,擬似コードをそのまま表現できる計算機言語を設計し,擬似コードで記述された検証対象のアルゴリズムを入力することで,自動的に正しさを検証することができる手法を開発した.設計した言語に従って記述されたアルゴリズムは,作成した変換プログラムによって,モデル検査システムSPINの入力言語PROMELAに自動的に変換される.こうして得られたPROMELAモデルにSPINを適用することで,アルゴリズムの自動検証が実現される.耐故障分散アルゴリズムであるコンセンサスアルゴリズムに対し,モデル検査という検証法によって,アルゴリズムの正しさを自動的に検証する手法について研究した.コンセンサス問題は,分散システムの耐故障化において基礎となる問題であるが,一般に分散アルゴリズムは設計・検証が困難なため,上記手法の発展は,ディペンダブル分散システム開発の容易化に寄与する.平成21年度の具体的な研究成果は,以下の二つである.まず,平成20年度に開発した,モデル検査とインダクションを組み合わせる手法を,検証の専門家ではなく,アルゴリズムの設計者が利用できる仕組みを構築した.この仕組みは,(1)アルゴリズムの記述のための専用言語,および,(2)アルゴリズム記述から数式による動作記述への変換系,からなる,この仕組みを,C言語を用いて実装し,数種類のコンセンサスアルゴリズムを適用例として,実際に検証を行えることを示した.成果のもう一つは,平成20年度に開発した検証手法の,分散システムの異なる計算モデルへの適用である.これまでに開発した検証手法は,ラウンドモデルとよばれる抽象度の高い分散計算のモデルを前提としていた.そこで,より抽象度の低いモデル上で,現実のプログラムレベルに近い言語(具体的にはPROMELA)で記述されたアルゴリズムへの,開発した検証手法の適応を実現した.ただし,正確性の基準のうち活性の検証については,ラウンドモデルと異なりプロセスがブロッキングし得るので,今後の課題とした.コンセンサスは分散システムの耐故障化における基礎問題であるが,アルゴリズムの設計・検証は一般に困難である.そこで,本研究では,高信頼システムの開発容易化への寄与を目的として,コンセンサスアルゴリズムに対し,自動検証手法であるモデル検査法を適用することで,その設計の正しさを検証する手法について研究した.平成22年度の具体的な研究成果は,以下の二つである.まず,平成20年度および21年度に開発したモデル検査とインダクションを組み合わせる手法を,4種類のアルゴリズムに対して適用し,包括的な実験的結果を得ることができた.具体的には,アルゴリズムによって異なるが,7プロセス(コンピュータ)から13プロセスの規模のシステム上での動作に関して,アルゴリズムの正しさを検証することができた.また,活性という性質の検証に限定すれば,どのアルゴリズムについても14プロセスの規模の検証が可能であった.もう一方の成果は,平成21年度に開発した,抽象度の低いモデルにおけるアルゴリズムの検証手法の拡張である.現実のプログラムレベルに近い言語レベルでアルゴリズムを記述した場合,動作が詳細になるために検証できるシステム規模は大幅に制限されるが,より詳細な不具合検出が可能となる.平成21年度の段階では,安全性と活性という二つの正確性の基準について,前者のみ検証が可能であった.本年度は,故障検出に関する能力をモデル化することによって,活性についても検証可能とすることができた. | KAKENHI-PROJECT-20700026 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20700026 |
過去4万年間の宇宙線強度変動・太陽圏構造と地球環境変動 | 本研究では、樹木年輪および氷床コアに含まれる宇宙線生成核種の分析を行い、太陽活動と銀河宇宙線の変動特性を明らかにするとともに、太陽圏磁場構造の長期的変化について検証を行った。また、太陽活動が気候変動に及ぼす影響を明らかにするため、樹木年輪中の酸素同位体比を分析し、古気候の復元を行った。研究の結果、太陽活動が気温に加えて降水にも重大な影響を及ぼしていることが判明した。併せて、太陽の自転周期に着目し、太陽活動の気象への影響についても解析を行った。その結果、気象レベルでも太陽活動が重大な影響を及ぼしていることが示唆された。また、太陽活動が気候システムに影響するプロセスについても示唆が得られた。本研究では、銀河宇宙線が地球の気候変動に与える影響を明らかにし、また気候システムが宇宙線変動に応答する詳細なプロセスを明らかにすることを目的としている。そのため、樹木年輪中の宇宙線生成核種・炭素14および氷床コア中の宇宙線生成核種・ベリリウム10の分析による過去の宇宙線量変動の復元、樹木年輪中の安定同位体比の分析による古気候復元データの取得、気象データ解析による宇宙線影響の素過程の研究、気候モデル実験による宇宙線影響の伝搬プロセスの吟味を行い、多角的に研究を進めている。平成25年度は、4万年前および2万年前の宇宙線量の11年/22年周期変動の復元に向けて、分析のための樹木年輪試料のブロック出し、単年分解能での削り出しを進めた。また、加速器質量分析計の一部設備更新にともない、予備実験として基礎データの取得を行った。その他、炭素14濃度の初期分析を行った。また、実験設備の拡張を行った。併せて、台湾および国内3箇所から採取された樹木について単年ごとにセルロースを抽出して酸素同位体比の分析を行い、主に小氷期における気候変動を復元した。それを既に取得済みの炭素14データと比較し、22年周期変動の強度や位相について解析を行った。また、宇宙線にたいする気候システム応答をトレースするため、宇宙線の27日変動に着目し、人工衛星による大気成分の観測データの解析を行った。併せて、予備実験として2次元での気候モデル実験のデータの解析を行い、27日変動シグナルの解析を行った。本研究では、太陽活動の11年2000年スケールの変動に伴う銀河宇宙線の強度変動および太陽圏環境の変動を明らかにすることを目的としている。また、宇宙線変動が気候システムに及ぼす影響とそのプロセスを明らかにすることを目的としている。そのため、樹木年輪中の宇宙線生成核種・炭素14および南極氷床コア中の宇宙線生成核種・ベリリウム10の分析に加えて、樹木年輪中の安定同位体の分析を進めている。また、宇宙線が気候に作用する詳細なプロセスをトレースするため、気象データの解析も併せて進めている。本年度は、2万年前、4万年前の樹木年輪について重点的に試料調整を進め、加速器質量分析計を用いて炭素14濃度の単年分解能での分析を開始した。また、2600年前の太陽活動極小期、17世紀のマウンダー極小期、西暦1859年のキャリントンフレアーに対応する年輪についても炭素14濃度の分析を進めた。そのほか、3万年前付近を対象に、40年の時間分解能で南極氷床コア中のベリリウム10濃度の分析を進めた。また、宇宙線変動に対する気候応答を吟味するため、屋久杉中の安定同位体についても分析を進めた。酸素18と炭素13について、過去1800年間の変動を概ねカバーするデータを得た。そのほか、加速器質量分析計による炭素14濃度分析のさらなる高精度化に向けた基礎研究および解析コードの開発を行った。本研究では、太陽活動の11年2000年スケールの変動に伴う銀河宇宙線の強度変動および太陽圏環境の変動を明らかにすることを目的としている。また、宇宙線変動が気候システムに及ぼす影響とそのプロセスを明らかにすることを目的としている。そのため、樹木年輪中の宇宙線生成核種・炭素14および南極氷床コア中の宇宙線生成核種・ベリリウム10の分析に加えて、樹木年輪中の安定同位体の分析を進めている。また、宇宙線が気候に作用する詳細なプロセスをトレースするため、気象データの解析も併せて進めている。本年度は、昨年度に引き続き、17世紀のマウンダー極小期と4万年前の樹木年輪について重点的に試料調整を進め、加速器質量分析計を用いて炭素14濃度の単年分解能での分析を行った。また、2600年前の太陽活動極小期についても炭素14濃度の分析を進めた。そのほか、20万年前付近を対象に、高時間分解能で南極氷床コア中のベリリウム10濃度の分析を進めた。また、宇宙線変動に対する気候応答を吟味するため、屋久杉および伊勢スギ中の安定同位体についても分析を進めた。酸素18と炭素13について、過去1000年間の変動をカバーする1年値データと、過去1800年間を概ねカバーするデータを得た。そのほか、加速器質量分析計による炭素14濃度分析のさらなる高精度・高確度化に向けて、昨年に引き続き基礎実験を行い、測定に先立つ加速器のチューニング手法の改良を行った。加速器質量分析計のチューニング手法の改良により、炭素14の高精度・高確度の測定が継続的に達成できている。また、ベリリウム10および安定同位体の分析も順調に進んでいる。 | KAKENHI-PROJECT-25287051 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25287051 |
過去4万年間の宇宙線強度変動・太陽圏構造と地球環境変動 | 本研究では、銀河宇宙線が地球の気候変動に与える影響を明らかにし、また気候システムが宇宙線変動に応答する詳細なプロセスを明らかにすることを目的としている。そのため、樹木年輪中の宇宙線生成核種・炭素14および氷床コア/堆積物中の宇宙線生成核種・ベリリウム10の分析による過去の宇宙線量変動の復元、樹木年輪中の安定同位体比の分析による古気候復元データの取得、気象データ解析による宇宙線影響の素過程の研究、気候モデル実験による宇宙線影響の伝搬プロセスの吟味を行い、多角的に研究を進めている。平成28年度は、昨年度に引き続き、4万年前の樹木年輪と17世紀のマウンダー極小期について重点的に炭素14濃度の測定を進めたほか、14世紀、15世紀の樹木年輪についても試料調製を進めた。加速器質量分析計による炭素14濃度分析の高精度・高確度化に向けた基礎実験も、昨年に引き続き行った。また、宇宙線変動に対する気候応答を吟味するため、屋久杉、伊勢杉、秋田杉について安定同位体の分析を進めた。加えて、太陽活動の気候/気象への影響の伝搬過程について検証するため、気象データに見られる太陽自転周期の解析を行った。分析およびデータ解析は順調に進んでいる。本研究では、太陽活動と銀河宇宙線の周期的変動特性を明らかにするとともに、太陽活動の低下にともなう太陽圏磁場の変化について検証することを目的とし、樹木年輪中の宇宙線生成核種・炭素14および氷床コア/堆積物中の宇宙線生成核種・ベリリウム10の分析による過去の宇宙線量変動の復元を行った。また、太陽活動/宇宙線変動が気候変動におよぼす影響を明らかにするため、樹木年輪中の安定同位体比の分析により古気候の復元を行った。併せて、太陽活動/宇宙線変動に気候システムが応答するプロセスを明らかにするため、太陽の自転周期に着目し、その影響と伝搬プロセスについて気象データを用いた検証を行った。本年度は、マウンダー極小期、シュペーラー極小期、ウォルフ極小期について、炭素14の高精度分析を行い、11年/22年周期変動特性について精査するとともに、マウンダー極小期についてはベリリウム10も併用し、絶対年代軸での詳細な宇宙線変動プロファイルの取得を行った。また、4万年前の地磁気強度低下期の樹木についても初期解析を行った。また、樹木年輪中の酸素同位体比の分析により、小氷期後半の中部日本の相対湿度の変動を明らかにし、太陽活動の低下にともなって相対湿度が増加することや、太陽活動に対して降水変動が遅れて応答することなどを明らかにした。太陽の自転周期に着目した雷データの解析からは、太陽活動が気象のレベルでも影響していることや、その影響が九州地方から中部日本/北日本へと移動していることが示された。太陽活動が気候システムに影響する際、まず低緯度地域に強い作用を及ぼし、それが中高緯度に伝搬している可能性が示唆された。本研究では、樹木年輪および氷床コアに含まれる宇宙線生成核種の分析を行い、太陽活動と銀河宇宙線の変動特性を明らかにするとともに、太陽圏磁場構造の長期的変化について検証を行った。また、太陽活動が気候変動に及ぼす影響を明らかにするため、樹木年輪中の酸素同位体比を分析し、古気候の復元を行った。研究の結果、太陽活動が気温に加えて降水にも重大な影響を及ぼしていることが判明した。併せて、太陽の自転周期に着目し、太陽活動の気象への影響についても解析を行った。その結果、気象レベルでも太陽活動が重大な影響を及ぼしていることが示唆された。また、太陽活動が気候システムに影響するプロセスについても示唆が得られた。 | KAKENHI-PROJECT-25287051 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25287051 |
位相反転膨張波により実現される液体の準安定状態とキャビテーション初生の動力学 | 蒸留水中での集束超音波のレーザ誘起気泡界面での後方散乱に起因するキャビテーション初生圧力の計測とキャビテーション気泡クラウドの成長過程の可視化を行った.また,気泡クラウド先端位置での液体圧力を計測することにより,キャビテーション初生圧力の算出に成功した.その結果,以下の知見が得られた.(1)気泡クラウドは,集束超音波の後方散乱によって,キャビテーション初生に十分な強さの負圧を形成できる圧力領域中で成長する.(2)水温の増加に伴い,気泡クラウドの大きさも増加する.(3)水温23 °Cでのキャビテーション初生圧力は約-26 MPaである.(4) -26 MPaを臨界圧力としたとき,平衡理論に基づく気泡核のサイズは2.15 nmと推定された.(5)同程度の水温かつ脱気した範囲内(約2.0 mg/L<DO<3.5 mg/L)であればDO(酸素濃度)によらずにキャビテーション初生圧力はほぼ一定である.さらに,グリセリン水溶液中での集束超音波のレーザ誘起気泡界面での後方散乱によって形成されるキャビテーション気泡クラウドを観測した.Ghost Fluid法を用いて,気泡界面での集束超音波の後方散乱による圧力場を解析した.実験と計算結果の比較から,気泡クラウドは段階的にキャビテーション初生を繰り返すことで,層形成を伴って成長すること,また,計算で得られた最小負圧の位置と実験での初生位置は定性的に一致することが明らかとなった.さらに,単一気泡が大振幅振動圧力場で膨張・収縮する場合について,気泡半径,気泡内部の温度及び圧力,質量流束等の時間変化を非平衡蒸発・凝縮を考慮した気泡の運動方程式により調査した結果,気泡径の時間変化については非平衡,平衡による相違は大きくないが,気泡内部の温度と圧力,気液界面での質量流束については非平衡蒸発・凝縮の影響が現れることが示された.平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。集束超音波の焦点近傍に生成したレーザ誘起気泡に,圧力振幅をコントロールした集束超音波を照射し,集束超音波がレーザ誘起気泡の界面で後方散乱する際の,キャビテーションの初生とその後のキャビテーションクラウドの成長を,高速度ビデオカメラを用いて可視化するとともに,光ファイバー・プローブ・ハイドロフォンにより圧力計測した.その結果,以下の知見が得られた.(1)レーザ誘起気泡界面から初生位置までの距離は,気泡崩壊の特性時間と超音波の伝播の特性時間の比と相関があり,その距離は,集束超音波の波長の0.050.3倍である.このことは,Ghost Fluid法による数値解析結果とも符合している.(2)超音波の後方散乱による圧力の実測に成功し,キャビテーションクラウド先端の界面近傍において強い負圧域が形成されていることが確認された.キャビテーション初生時には後方散乱により-30MPa程度の負圧が観測された.(3)レーザ誘起気泡の生成位置を焦点から超音波の伝播方向へ変位させるにつれてキャビテーションクラウドの高さは高くなり,超音波の伝播と逆方向へ変位させるにつれてキャビテーションクラウドの高さは低くなる.すなわち,キャビテーションクラウドの先端位置が焦点に近くより強い音圧域にあるときほど,その成長速度が速くなる.(4)集束超音波の焦点からキャビテーションクラウドの先端までの距離は,レーザ誘起気泡の生成位置に依らずほぼ一定値を取る.すなわち,キャビテーションクラウドが成長できる領域は入射波の正圧分布により規定される.非平衡蒸発ならびに凝縮を考慮して,球形気泡の成長モデルを構築し,非平衡相変化が,気泡の成長に及ぼす影響を検討した.光ファイバー・プローブ・ハイドロフォンを用いた,気泡界面での集束超音波の後方散乱時の圧力測定に成功し,およそのキャビテーション初生圧力を見積もることができた.また,キャビテーションクラウドの成長を詳細に観測した結果,クラウドの成長が止まった時のクラウド先端と集束超音波の焦点との距離は一定であることがわかった.このことから,クラウド先端位置での圧力を測定することにより,キャビテーション初生圧力を評価できることがわかった.また,キャビテーション気泡核の成長モデルを構築した.集束超音波の焦点近傍に生成したレーザ誘起気泡に,圧力振幅をコントロールした集束超音波を照射し,集束超音波がレーザ誘起気泡の界面で後方散乱する際の,キャビテーションの初生とその後のキャビテーションクラウドの成長を,高速度ビデオカメラを用いて可視化するとともに,光ファイバプローブハイドロフォンにより圧力計測した.また,実験に対応する数値解析を行った.その結果,以下の知見が得られた.(1)キャビテーションクラウド先端のキャビテーション初生の限界位置での圧力測定に成功した.この圧力はキャビテーション初生圧力と判断され,その値は約-24MPaであった.(2)集束超音波の後方散乱に起因するレーザ誘起気泡周囲の圧力分布を計測した結果,気泡界面から約0.3λ(λは超音波の波長)の位置で最小圧力(最大負圧)を取り,そこで後方散乱による最初のキャビテーションが初生する.また,集束超音波の伝播軸上の液体圧力は,約0.5λごとに極小値を取る.(3)種々の濃度のグリセンリン水溶液中に生成したレーザ誘起気泡界面での後方散乱によるキャビテーション初生を観測した. | KAKENHI-PROJECT-16H04270 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H04270 |
位相反転膨張波により実現される液体の準安定状態とキャビテーション初生の動力学 | その結果,水溶液の粘度の増加に伴い,クラウドの成長が抑制されること,クラウドの崩壊周期が延びることが示された.(4)レーザ誘起気泡を想定した球状の気泡の近傍(超音波の伝播軸上)に微小な気泡を置いて,集束超音波の後方散乱をGhost Fluid法で計算した結果,微小気泡の横側に強い負圧領域が形成されることが示された.この強い負圧がキャビテーションクラウドが層状に発達していく要因となる.非平衡・蒸発ならびに凝縮を考慮した球形気泡の成長モデルを用いて,非平衡相変化が,気泡の成長に及ぼす影響を検討した.高速度ビデオ撮影と圧力計測を同時に行うことにより,キャビテーションが初生する限界位置(キャビテーションクラウドの先端)での圧力の定量化に成功した.この圧力はキャビテーション初生圧力と判断されるため,このことは,キャビテーション初生圧力の直接計測が可能となったことを示している.また,集束超音波の後方散乱によるレーザ誘起気泡周囲の圧力分布を計測できた.ここで得られた圧力分布は,キャビテーション初生ならびにクラウド形成の機構に関し,重要な知見を与える.さらに,グリセリン水溶液を用いた実験方法が確立できた.数値解析においては,レーザ誘起気泡を想定した球状の気泡の近傍(超音波の伝播軸上)に微小な気泡を置いて,集束超音波の散乱をGhost Fluid法で計算した結果,微小気泡の横側に強い負圧領域が形成されることが示された.この強い負圧がキャビテーションクラウドが層状に発達していく要因となり,実験結果と符合することが明らかとなった.蒸留水中での集束超音波のレーザ誘起気泡界面での後方散乱に起因するキャビテーション初生圧力の計測とキャビテーション気泡クラウドの成長過程の可視化を行った.また,気泡クラウド先端位置での液体圧力を計測することにより,キャビテーション初生圧力の算出に成功した.その結果,以下の知見が得られた.(1)気泡クラウドは,集束超音波の後方散乱によって,キャビテーション初生に十分な強さの負圧を形成できる圧力領域中で成長する.(2)水温の増加に伴い,気泡クラウドの大きさも増加する.(3)水温23 °Cでのキャビテーション初生圧力は約-26 MPaである.(4) -26 MPaを臨界圧力としたとき,平衡理論に基づく気泡核のサイズは2.15 nmと推定された.(5)同程度の水温かつ脱気した範囲内(約2.0 mg/L<DO<3.5 mg/L)であればDO(酸素濃度)によらずにキャビテーション初生圧力はほぼ一定である.さらに,グリセリン水溶液中での集束超音波のレーザ誘起気泡界面での後方散乱によって形成されるキャビテーション気泡クラウドを観測した.Ghost Fluid法を用いて,気泡界面での集束超音波の後方散乱による圧力場を解析した.実験と計算結果の比較から,気泡クラウドは段階的にキャビテーション初生を繰り返すことで,層形成を伴って成長すること,また,計算で得られた最小負圧の位置と実験での初生位置は定性的に一致することが明らかとなった. | KAKENHI-PROJECT-16H04270 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H04270 |
同位体分別を補正した次世代型同位体トレーサー法に基づく脱窒速度定量 | 一般の植物が利用できる固定態窒素(硝酸やアンモニア等)を一般の植物が利用できない窒素ガスに変える脱窒過程は、地球上で最も重要な物質循環過程の一つである。本研究では、三種の酸素同位体の相対組成を指標に使った新しいin-vitro脱窒速度定量手法の開発に挑戦する。本研究が提案する新手法は、酸素-17を濃縮した硝酸を少量添加した上で培養し、初期に存在した硝酸の消費速度から脱窒速度を求める。気体分子(窒素ガスや一酸化二窒素)を定量する従来手法とは違って、試料を密閉容器に移す必要がなくなるので、手順が簡便となる。また、既存のサンプラーをそのまま培養系に活用できるので、より現場に近い環境で、確度の高い脱窒速度を求めることができ、正確な固定態窒素の収支やその経年変化を様々な時空間スケールで見積もれるようになることが期待される。本研究では、新手法である三酸素同位体トレーサー法を使って、沿岸域の海底堆積物(伊勢湾および三河湾)、湖底堆積物(中栄養湖である琵琶湖および富栄養湖である諏訪湖)や河床堆積物(天白川)における脱窒速度を定量化し、新手法に問題がないか確認した。コアサンプラー等採取容器を用いて表層堆積物を採取し、各採取容器中の試料について、酸素-17-濃縮硝酸試薬を添加して暗所培養を行い、脱窒速度を求めた。また、同じ試料について、密閉容器内に移し、従来法であるアセチレンブロック法を用いて脱窒速度を算出し、比較・検証を行った。初年度の目標は、水ー堆積物インターフェースにおいて、新手法である「三酸素同位体トレーサー法」と、従来法である「アセチレンブロック法または窒素同位体トレーサー法」を用いた培養実験を同時に行って結果を比較・検証し、三酸素同位体トレーサー法による脱窒速度定量法を確立することである。コアサンプラー等を用いて海底・湖底・河床堆積物を採取する手法や培養条件等の検討を行い、脱窒速度が比較的速い堆積物環境においては、十分脱窒速度が定量できることが確認でき、その成果は学会発表を通じて報告している。二年目は、引き続きコアサンプラーやチャンバー等を用いて、様々な水ー堆積物インターフェースにおける脱窒速度の定量を行う。特に、脱窒速度が遅い堆積物環境では、さらに高度に酸素-17濃縮した硝酸添加試薬を作成し、それを添加して培養することを試みる。また、セジメントトラップ等を用いて沈降粒子を採取し、水ー沈降粒子(微小還元環境)インターフェースにおける脱窒速度の定量にも挑戦する。また、各試料について密閉容器内に移し、従来法であるアセチレンブロック法を用いて脱窒速度を算出する。これらの結果を比較し、三酸素同位体トレーサー法の確度を検証する。ただし、三酸素同位体トレーサー法で求められるのは硝酸還元速度、アセチレンブロック法で求められるのは一酸化二窒素化速度という違いがある。さらに、浅瀬などの有光環境では、遮光した上で培養した場合でも、一部の硝酸は同化(光合成)によって有機態窒素化される可能性がある。これらの点に注意して結果を比較・検証し、手法を改善して観測を繰り返す。海洋観測は沿岸域である伊勢湾・三河湾等で観測する他、外洋域である日本海や太平洋でも観測を行う予定である。また、湖沼観測についてもなるべく多くの湖沼型(富栄養湖貧栄養湖)で観測を行う予定である。その他、硝酸濃度の比較的高い河床環境でも観測を行う予定である。一般の植物が利用できる固定態窒素(硝酸やアンモニア等)を一般の植物が利用できない窒素ガスに変える脱窒過程は、地球上で最も重要な物質循環過程の一つである。本研究では、三種の酸素同位体の相対組成を指標に使った新しいin-vitro脱窒速度定量手法の開発に挑戦する。本研究が提案する新手法は、酸素-17を濃縮した硝酸を少量添加した上で培養し、初期に存在した硝酸の消費速度から脱窒速度を求める。気体分子(窒素ガスや一酸化二窒素)を定量する従来手法とは違って、試料を密閉容器に移す必要がなくなるので、手順が簡便となる。また、既存のサンプラーをそのまま培養系に活用できるので、より現場に近い環境で、確度の高い脱窒速度を求めることができ、正確な固定態窒素の収支やその経年変化を様々な時空間スケールで見積もれるようになることが期待される。本研究では、新手法である三酸素同位体トレーサー法を使って、沿岸域の海底堆積物(伊勢湾および三河湾)、湖底堆積物(中栄養湖である琵琶湖および富栄養湖である諏訪湖)や河床堆積物(天白川)における脱窒速度を定量化し、新手法に問題がないか確認した。コアサンプラー等採取容器を用いて表層堆積物を採取し、各採取容器中の試料について、酸素-17-濃縮硝酸試薬を添加して暗所培養を行い、脱窒速度を求めた。また、同じ試料について、密閉容器内に移し、従来法であるアセチレンブロック法を用いて脱窒速度を算出し、比較・検証を行った。初年度の目標は、水ー堆積物インターフェースにおいて、新手法である「三酸素同位体トレーサー法」と、従来法である「アセチレンブロック法または窒素同位体トレーサー法」を用いた培養実験を同時に行って結果を比較・検証し、三酸素同位体トレーサー法による脱窒速度定量法を確立することである。 | KAKENHI-PROJECT-18K19853 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K19853 |
同位体分別を補正した次世代型同位体トレーサー法に基づく脱窒速度定量 | コアサンプラー等を用いて海底・湖底・河床堆積物を採取する手法や培養条件等の検討を行い、脱窒速度が比較的速い堆積物環境においては、十分脱窒速度が定量できることが確認でき、その成果は学会発表を通じて報告している。二年目は、引き続きコアサンプラーやチャンバー等を用いて、様々な水ー堆積物インターフェースにおける脱窒速度の定量を行う。特に、脱窒速度が遅い堆積物環境では、さらに高度に酸素-17濃縮した硝酸添加試薬を作成し、それを添加して培養することを試みる。また、セジメントトラップ等を用いて沈降粒子を採取し、水ー沈降粒子(微小還元環境)インターフェースにおける脱窒速度の定量にも挑戦する。また、各試料について密閉容器内に移し、従来法であるアセチレンブロック法を用いて脱窒速度を算出する。これらの結果を比較し、三酸素同位体トレーサー法の確度を検証する。ただし、三酸素同位体トレーサー法で求められるのは硝酸還元速度、アセチレンブロック法で求められるのは一酸化二窒素化速度という違いがある。さらに、浅瀬などの有光環境では、遮光した上で培養した場合でも、一部の硝酸は同化(光合成)によって有機態窒素化される可能性がある。これらの点に注意して結果を比較・検証し、手法を改善して観測を繰り返す。海洋観測は沿岸域である伊勢湾・三河湾等で観測する他、外洋域である日本海や太平洋でも観測を行う予定である。また、湖沼観測についてもなるべく多くの湖沼型(富栄養湖貧栄養湖)で観測を行う予定である。その他、硝酸濃度の比較的高い河床環境でも観測を行う予定である。 | KAKENHI-PROJECT-18K19853 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K19853 |
エイズウイルスに対する中和抗体の新しい作用機序の解析 | 脂質二重膜であるHIV-1エンベロープの流動性を薬物等で低下させると、HIV-1の感染は抑制される。HIV-1のgp120に附着しHIV-1を中和する抗体は、エンベロープ流動性を低下させた。また、HIV-1上の非特異的蛋白を認識する抗体では、HIV-1を中和すれば、エンベロープの流動性を低下させた。以上より、HIV-1特異的あるいは非特異的蛋白を認識する抗体は、中和抗体であれば、その附着によりエンベロープの流動性を抑制した。これはウイルスの新しい中和機序であると思われる。脂質二重膜であるHIV-1エンベロープの流動性を薬物等で低下させると、HIV-1の感染は抑制される。HIV-1のgp120に附着しHIV-1を中和する抗体は、エンベロープ流動性を低下させた。また、HIV-1上の非特異的蛋白を認識する抗体では、HIV-1を中和すれば、エンベロープの流動性を低下させた。以上より、HIV-1特異的あるいは非特異的蛋白を認識する抗体は、中和抗体であれば、その附着によりエンベロープの流動性を抑制した。これはウイルスの新しい中和機序であると思われる。ウイルスの細胞への侵入にはレセプターとウイルス糖蛋白スパイクの複数の結合が必要で、その複数の結合に脂質二重膜の流動性が利用されfusion poreが形成される。本研究では、ウイルスの感染性をなくす中和抗体の作用にウイルスのレセプターへの吸着阻止以外の機序があることの証明を試みた。その結果;(1)HIV-1吸着後に抗体を作用させウイルス感染性の抑制をみるpost-attachment neutralizationでは、中和抗体である抗V3抗体ではその作用が認められたが、非中和抗体である抗gp41や抗C5抗体では観察されなかった。(2)HIV-1由来の抗原ではなく細胞由来のHLA-IIやHTLV-Igp46の蛋白がもしHIV-1ウイルス表面に存在するなら、それらの抗体である抗HLA-II抗体やHTLV-Iの中和抗体であるLAT27は、HIV-1を中和した。以上の結果、HIV-1の抗体による中和が細胞のレセプターへの吸着阻止以外の方法で行われていることを示していた。そこで、これらのHIV-1を中和する抗体を用いてウイルスエンベロープ(細胞膜と同じ脂質二重膜)の流動性への影響を調べた。ウイルスエンベロープや細胞膜の流動性は、5-doxyl stearic acidでラベルし、その薬剤の膜での動きを電子スピン法で測定し、膜の流動性とした。結果は;(1)HIV-1中和抗体である抗V3抗体の結合はHIV-1エンベロープや細胞膜の流動性を抑制した。非中和抗HIV-1抗体ではそのような作用はみられなかった。(2)抗HLA-II抗体でも、同様の流動性抑制が認められた。以上の結果、新しいウイルス中和の機序として、レセプターへの吸着阻止以外に、抗体の結合による脂質二重膜の流動性抑制が示唆された。この作用で、fusion poreの形成が抑制されたものと思われた。これまでの研究成果として、HIV-1の特異的中和抗体である抗V3抗体や非特異的中和抗体である抗HLA-II抗体がHIV-1粒子に作用したとき、ウイルスエンベロープの脂質二重膜流動性を低下させることを報告してきた。これら中和抗体が脂質二重膜へ附着することによりウイルスの侵入を妨げているものと思われたが、この膜への影響をさらに詳しく調べるためウイルス粒子のかわりに細胞を使用し、細胞膜に附着する抗体の細胞膜の流動性へ与える影響を調べた。細胞としてHLA-IIやHTLV-Iのエンベロープ糖蛋白を細胞膜上に発現しているMT-2細胞を用いた。反応させる抗体は抗HLA-II抗体やHTLV-Iの中和抗体であるLAT27や非中和抗体であるLAT12を使用した。MT-2細胞を5-doxyl stearic acidでラベルし、抗体を作用させ、細胞膜の流動性をESRで測定した。中和作用を有した抗HLA-II抗体はMT-2細胞の膜流動性も有意差をもって低下させた。また、中和抗体であるLAT27は膜流動性を低下、非中和抗体LAT12は亢進させる傾向にあったが有意差は認められなかった。以上の結果から、抗体が膜流動性を低下させるには、膜上に抗体が作用する抗原の量と抗体の結合力が関与していると思われた。この二つの因子が、何らかの形で膜にstericな変化と流動性抑制を与えていると考えられた。今後、さらに解析を加えていくためには、ESRのように多量の細胞と抗体が要求される系ではなく、FRAP法のような細胞一個レベルでの解析が必要である。 | KAKENHI-PROJECT-19590478 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19590478 |
高齢者の権利擁護に向けた看護職のレジリエンス向上のための教育プログラムの開発 | 介護サービス事業所に勤務する看護職の高齢者虐待の認識とレジリエンスについて調査結果から分析した。虐待に該当する行為の経験は3割程度に認められ、その経験には、虐待防止対策、仕事継続意思、虐待に関する研修受講等が関連していた。看護職のレジリエンスには、職務満足、健康状態や職員の学習状況の関与が示された。また、レジリエンスと虐待や不適切な行為との関与も予測された。権利擁護、虐待、倫理の研修受講経験および受講希望は3割以下であった。高齢者の権利擁護に向けた取り組みとして、レジリエンス向上につながる教育内容の検討と倫理に関する研修への参加促進の重要性が示唆された。26年度は、1.高齢者虐待の現状と防止対策および看護職におけるレジリエンスに関する文献検討を行うこと、2.本研究の基盤として実施した事前調査の分析を行い、看護職の高齢者虐待に関する認識と関連要因を明らかにすることを目的とした。1.文献検討の結果:高齢者虐待に関する調査の多くが介護職員や介護支援専門員を対象としたものであり、介護サービス事業所に勤務する看護職を対象とした報告は少ない。そのため虐待防止に関する研修や教育の実態についてよく分かっていない現状である。レジリエンスについては、介護サービス事業所の看護職を対象とした調査報告はみられず、その実状は明らかになっていない。これらのことから、今後予定している、教育の実態やレジリエンスに焦点をあてた調査・分析の必要性について再確認することができた。2.調査結果の分析:A県介護サービス事業所529施設の看護職を対象とした質問紙調査の結果、310(58.6%)の回答が得られ、分析対象は284(53.7%)であった。虐待について、日常のケア場面において3割の者が、自分の行為が虐待に該当するのではないかという認識を持っていた。その内容は心理的虐待、身体的虐待、介護・世話の放棄・放任に該当する行為の順に多かった。また、虐待に該当する行為や不適切な行為をしそうになったことの有無についても約3割があると回答し、理由として多忙、認知症の方で理解が得られなかった等を挙げていた。虐待の認識には、職場での虐待防止への取り組みや研修の受講状況、スタッフ間の情報交換・連携、職員のこころの健康状態が関連していることが分かった。虐待防止へ向けて、事業所に今回の調査結果を還すことが重要であると考え、調査報告書を作成し、事業所への送付を行った。27年度は、1.事前調査(対象529施設の看護職)結果から、介護サービス事業所の看護職の職場環境やストレス、仕事継続意思の状況を明らかにし、高齢者の権利擁護に向けた示唆を得ること、2.看護職のレジリエンスの実態と関連要因を明らかにするため質問紙調査を行うことを目的とした。1.高齢者の権利擁護には、職場環境や職業倫理、ストレス状況等が重要な要因と考えられ、実態把握のため、職場環境およびストレスの状況、仕事継続意思について分析した。1職場環境とストレスについて:調査内容は職場環境(人間関係、情報交換の状況他)、心の健康状態、職業性ストレス簡易調査票・日本語版努力ー報酬不均衡モデル職業性ストレス調査票等であった。分析対象284の努力報酬得点平均値は0.73(SD=0.33)、ハイリスクのストレスとされる者の割合は18.3%であり、日本人全対象や一般管理職よりもストレスフルな状況下で勤務していることが分かった。職員間の関係や雇用形態、心の健康状態等がストレスに関連しており、ストレスの要因と対処についての分析、職場環境整備の必要性が示唆された。2仕事継続意向について:調査内容は仕事継続意思、主観的健康感、職場の人間関係、施設管理・ケアマニュアルの認知状況、研修受講状況また継続意思がないと回答した理由であった。分析対象290の約3割が仕事継続意思がなく、理由は勤務体制の不満、施設看護の難しさ、施設の方針への不満等であった。継続意思がない者は、心身の健康状態がよくない、他職種等スタッフとの関係がよくない、施設管理・ケアマニュアルを知らない、認知症研修受講経験がないと回答した者が多かった。職員の健康、良好な人間関係、認知症を含めたケアの理解促進、労働環境と教育体制の整備の重要性が示唆された。2.質問紙調査票の内容および対象について検討を行った。調査は28年度に実施する。1.事前調査の分析を行い、その一部を学会で報告した。2.1.の分析に時間を要したこと、分析結果をもとに予定していた質問項目および対象について見直しを行い、時間を要したため、調査票の完成、調査実施までに至らなかった。高齢者ケアに従事する看護職のレジリエンスについて、全国の介護サービス事業所2,000施設の看護職を対象に質問紙調査を実施した。施設内訳は、介護保険施設、ショートステイ、小規模多機能型居宅介護、グループホームとした。レジリエンスの測定には、精神的回復力尺度(21項目,Range:21-105;小塩他,2002)を用いた。他の調査項目は、職場環境、研修受講と自己研鑽の状況、職務満足、仕事継続意思、虐待に該当する行為および不適切な行為をしそうになった経験、健康状態、仕事以外の悩みとした。665(回収率32.8%)の回答が得られ、そのうち精神的回復力尺度の回答に不備のない639(32.0%)を分析対象とした。 | KAKENHI-PROJECT-26861949 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26861949 |
高齢者の権利擁護に向けた看護職のレジリエンス向上のための教育プログラムの開発 | 対象者の精神的回復力尺度得点は平均75.2(SD=10.3)であり、年齢が高い者、看護職経験20年以上、管理職で高かった。職務に関する要望を伝える機会あり、職務への満足感あり、仕事継続意思ありと回答した者、就職時に倫理の研修を受けた、職場における倫理の勉強会あり、職場外研修への自発的参加あり、自己研鑽ありと回答した者、心身の健康状態がよい、仕事以外の悩みなしと回答した者において得点が高かった。また、虐待に該当する行為の経験あり、不適切な行為をしそうになった経験ありと認識している者、職場で虐待防止対策なしと回答した者において、下位尺度「感情調整」の得点が低かった。以上の結果から、職務満足感や仕事継続意思、健康状態がレジリエンスを高めることに関与する可能性があると推察された。また教育体制や看護職自身の学習への取り組み状況との関係も示されたことから、職場内外における学習の充実を図る必要があるといえる。一方、レジリエンスと高齢者虐待や不適切な行為との関与も予測され、虐待防止へ向けた示唆が得られた。介護サービス事業所に勤務する看護職の高齢者虐待の認識とレジリエンスについて調査結果から分析した。虐待に該当する行為の経験は3割程度に認められ、その経験には、虐待防止対策、仕事継続意思、虐待に関する研修受講等が関連していた。看護職のレジリエンスには、職務満足、健康状態や職員の学習状況の関与が示された。また、レジリエンスと虐待や不適切な行為との関与も予測された。権利擁護、虐待、倫理の研修受講経験および受講希望は3割以下であった。高齢者の権利擁護に向けた取り組みとして、レジリエンス向上につながる教育内容の検討と倫理に関する研修への参加促進の重要性が示唆された。1.文献等により本研究の位置づけと意義を確認した。2.予定していた事前調査の分析を行い、その一部を学会で報告した。また、調査報告書を作成し、事業所への送付に至った。1.看護職のレジリエンスの実態と関連要因について明らかにするために質問紙調査を行う。結果の分析から高齢者の権利擁護に向けた今後の取り組みについて示唆を得る。老年看護学1.事前調査の結果において、まだ報告していない内容について学会等で報告する。2.これまでの調査をもとに対象を拡大し、介護サービス事業所に勤務する看護職の権利擁護に関連した研修・教育の状況およびレジリエンスに関する質問紙調査を実施する。3.調査結果の分析から、現在の教育状況やレジリエンスの実態および関連要因について明らかにし、高齢者の人権を尊重したケアに向けた教育の示唆を得る。 | KAKENHI-PROJECT-26861949 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26861949 |
オーキシン情報伝達系の分子機構研究 | MSG2タンパク質を検出するために、ルシフェラーゼ融合タンパク質として検出することを試みた。その結果、シロイヌナズナ黄化芽生えでのMSG2 promoter (pMSG2)::MSG2::LUC活性は、pMSG2::LUCの1/10程度だった。この差がMSG2タンパク質にかかる分解調節だと考えられる。このMSG2::LUC活性はプロモーター活性同様、オーキシン処理によって早期に増加した。明所で栽培した芽生えでは、プラシノステロイドによってMSG2のメッセージが増加することが報告されているが、MSG2::LUCを用いて調べたところ、MSG2タンパク質レベルも同様に増加することが分かった。Aux/IAAとARFとの相互作用を物理的な蛍光相関分光法(fluorescence correlation spectroscopy)を用いて測定した。Aux/IAAとしては、MSG2とAXR2とSLR、ARFのタンパク質問相互作用ドメインとしてはNPH4/ARF7とMP/ARF5のドメインIIIとドメインIV(CTD)を選んで、両者をHeLa細胞に一過的に発現させ、蛍光強度の相関係数を測定した。その結果、Aux/IAAとARF-CTDの相互作用は強く、両者はほぼ100%結合すること、一方Aux/IAA同士、またはARF-CTD同士の結合は比較的弱く、この場合は20%程度しか結合していないことが分かった。このことは、Aux/IAAレベルの小さい変動でもARFの結合状態を変化させうることを示唆している。I.ARFとAux/IAA遺伝子族の機能の包括的研究:これら遺伝子族の機能を明らかにするために、遺伝子破壊株の表現型を調べた。シロイヌナズナに23個存在するARFについてはその内の16個、29個存在するAux/IAAについては、MSG2/IAA19とタンパク質構造とプロモーター配列の両方が類似しているIAA6、ドメインIIを持っていない非典型的Aux/IAAであるIAA20など、7個について遺伝子破壊株の表現型を調べた。その結果、最終的な結果はまだ得られていないものの、ARF8以外は表現型異常は観察されなかった。同変異体は、光非感受性突然変異体で、ARF8は光感受性の正の調節因子であると考えられる。同変異体のオーキシン感受性は野生型とほぼ変わらなかった。しかし、胚軸の屈光性は反応性がやや減少していたので、オーキシン感受性もわずかではあるが減少している可能性がある。II.IAA19の上流因子の探索:オーキシンの初発反応の分子機構を明らかにするためにIAA19遺伝子発現に異常をきたした突然変異体の単離を試みた。IAA19プロモーターGFP融合遺伝子を導入したシロイヌナズナ形質転換体を変異原処理し、GFPの発現が野生型より低下している系統を数十系統単離した。現在、これらの系統を整理中である。III.ARF7の下流因子の探索:胚軸の屈性反応におけるARF7/NPH4の標的遺伝子を明らかにする目的で、野生型とnph4-102の遺伝子発現プロフィールをDNAマイクロアレーを用いて比較した。標的遺伝子の候補が数個得られ、現在その確認をおこなっている。(1)オーキシン応答性転写調節因子族(ARF)の機能を包括的に明らかにするために、特にARF7/NPH4に類似した遺伝子に焦点を当てて、T-DNA挿入株の表現型を調べた。その結果、ARF8がGH3族遺伝子を標的にして、オーキシンレベルのフィードバック調節を行っていることがわかった。すなわち、ARF遺伝子族はオーキシンの感受性ばかりでなくオーキシンレベルの調節もおこなっていることがわかった。また、ARF8はARF6や他の未同定の遺伝子と協同してシロイヌナズナの稔性を支配していることもわかり、現在その問題の遺伝子を同定する作業を行っている。(2)NPH4が支配している下流因子を明らかにするために、nph4-103の抑制突然変異体のスクリーニングを行い、3系統の変異体を得た。その内の2系統の成長はそれぞれブラシノステロイド要求性と高感受性であったので、NPH4の信号伝達系路にはブラシノステロイド信号伝達系も関わっていることが新しく示唆された。(3)IAA19/MSG2の上流因子を探るため、IAA19プロモーターGFPを導入した形質転換体を突然変異処理し、GFP発現が減少した突然変異体を4系統単離した。これらの系統についてマッピングを行い、原因遺伝子を同定する作業を行った。(4)IAA19の機能を明らかにするために、IAA19と重複して働いていると考えられるよく似た遺伝子、IAA5、IAA6との多重突然変異体を作って、その性質を調べる作業をおこなった。(5)弱いオーキシン非感受性突然変異体の原因遺伝子がAXR6の新規対立遺伝子であることを明らかにした。既報のaxr6対立遺伝子は優性であるが本対立遺伝子は劣性で、この対立遺伝子の研究はAXR6の機能を明らかにするのに有効と考えられる。オーキシンによる屈性反応の中心であるNPH4/ARF7とMSG2/IAA19の相互作用の特異性を調べるために、MSG2遺伝子のプロモーター・スワッピング実験をおこなった。msg2とaxr2/iaa7のcDNAをAXR2のプロモーターで駆動する構築物で形質転換した植物を調べると、axr2 cDNAの場合はほぼaxr2の表現型が観察されたのに対し、msg2 cDNAの場合は、ほぼmsg2の表現型を示した。 | KAKENHI-PROJECT-14036201 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14036201 |
オーキシン情報伝達系の分子機構研究 | このことは、生理現象を規定しているのは個々のAux/IAAタンパク質の特性であって、たとえ同じ発現パターンで発現させても、違うAux/IAAタンパク質は同じ反応を引き起こさないことを示している。一方、AXR2タンパク質とよく似たアミノ酸配列を持つslr/iaa14のcDNAをAXR2プロモーターで駆動すると比較的axr2に似た表現型を示す形質転換体が得られたので、アミノ酸配列が似ていれば、二つのAux/IAAタンパク質は交換可能でもあることもわかった。屈性反応でNPH4の下流で働く因子を同定するために、nph4-103の抑制変異snpの単離・同定をおこなった。その結果、3個の抑制変異遺伝子座を得たが、遺伝地図をもとにしたマッピングの結果、SNP2はブラシノステロイド(BR)合成酵素遺伝子DWARF4(DWF4)であることがわかった。snp2は、nph4の屈光性と屈地性異常の両方を部分的に回復させる。dwf4ではBRレベルが下がっているので、BR合成阻害剤の効果を調べたところ、同阻害剤もnph4の屈性異常を抑制した。この結果は、BRが屈性の負の調節因子であることを示しており、屈性はオーキシンとBRの二つの植物ホルモンによって拮抗的に調節されていることを初めて明らかにした。オーキシンによって調節される屈性反応のマスター遺伝子と考えられるMSG2/IAA19の機能を明らかにするために、屈性反応時の同遺伝子の発現をプロモーターGUSレポーター遺伝子を用いて調べた。その結果、3日齢黄化芽生え胚軸上部では均一にみられるシグナルが、青色光刺激を側方の一方向から与えると、照射側のシグナルが低下することによって、24時間後には胚軸の横方向に偏差的なシグナルが生じることがわかった。最も強いシグナルは胚軸の内鞘で観察されるが、内鞘でも青色光刺激後、偏差的なシグナルが生じた。同様な偏差的シグナルは重力刺激でも観察され、屈性反応時にはMSG2の偏差的発現調節が起こることがわかった。msg2突然変異体は稔性が低いので、次にその原因を研究した。msg2の花粉を人工授粉すると正常な稔性を示すので、msg2は配偶子形成は正常である。雌蘂と雄蘂の成長を観察すると、花が若いときは雌蘂の成長に比べて雄蘂の成長が遅くなっているが、開花する項雄蘂の成長が一段と促進され、その結果、雄蘂の長さが雌蘂の長さを追い越し、受粉が成立する。msg2では、開花時の雄蘂の成長促進が起こらず、その結果受粉の確率が低下していることがわかった。雄蘂の伸長は花糸が担っているが、花糸表皮の細胞列を構成する細胞数を調べると花糸の長さに関わらず一定であることから、花糸の伸長成長は、細胞分裂の増加によるのではなく、細胞伸長の促進で起こることもわかった。MSG2遺伝子発現をプロモーターGUSを用いて調べたところ、MSG2は花では雄蘂特異的に発現し、しかも雄蘂が雌蘂に比べて一段と伸長するとき以降に発現することがわかった。以上のことから、花の受粉に関わる花糸の伸長の一層の促進をMSG2が調整していることがわかり、同遺伝子は偏差的成長ばかりでなく、器官によっては均一な成長反応も調節していることが明らかになった。MSG2タンパク質を検出するために、ルシフェラーゼ融合タンパク質として検出することを試みた。 | KAKENHI-PROJECT-14036201 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14036201 |
人口減少国日本の地方圏への外国人誘導政策の実行可能性に関する試験的研究 | 本計画では、現代日本の人口減少という問題の処方箋として、日本に流入する外国人を地方圏に誘導する可能性を検討した。まず、人口や経済の停滞や衰退に直面した地方の再生策として、カナダやオーストラリアの誘導政策の詳しいレビューを行った後、類似した政策の日本への導入方法について考察した。その結果、低熟練労働力としての外国人を対象とする在留資格「地方創生1号」と熟練労働力として外国人を対象とする「地方創生2号」の新設を提案した。これは、一定年数の地方圏での居住・就労を義務づける制度である。この政策の導入には、地方圏の自治体による流入外国人への雇用・住宅・定住支援サービスの提供が必要である。当初、平成27年度に予定していたオーストラリア調査と平成28年度に予定していたカナダ調査の順番を逆にし、カナダ調査を最初に行った。日本への導入を想定した場合、カナダの政策である州指名プログラム(Provincial Nomination Program)のほうがより示唆に富んでいると判断したためである。このプログラムの導入が、カナダ国内で最も成功していると評価されているマニトバ州の政府職員、カナダ連邦政府のCIC(Citizenship and Immigration Canada)においてこのプログラムを統括している部署の職員、および、オンタリオ工科大学の研究者に、詳細なインタビュー調査を実施するとともに、関連のデータや文書を収集した。この調査により、政策導入の経緯・背景や、政策の効果や問題点などについて、詳細な成果を得た。例えば、この移民政策は州主導で実施しうる点が重要な特色となっているが、政策の導入には、労働市場の活況度の違いの影響をうけて、明らかな地域差があり、フランス語圏の大西洋諸州で低調であり、英語圏にあたるマニトバ以西のプレーリー諸州や太平洋岸のブリティッシュコロンビア州で好調である。マニトバ州では、州都のウイニペグはもちろんのこと、第2位以下の中小都市や農村部への移民の分散にも、大きな貢献をしていることが判明した。カナダの州指名プログラムが、疲弊感を強めている日本の地方圏の活性化に、重要な一つのモデルとなることは、間違いないように思われる。一方、日本の地方圏の自治体での調査は、予算の制約のため、ほとんど実施できなかった。カナダでのインタビュー調査によって、たとえば、次のような重要な知見を得た。12007-2014年のデータによると、州指名プログラムによる流入者数は、マニトバ以外の州(特に、サスカチュワン州・アルバータ州・ブリティッシュコロンビア州)でも急増している。2このプログラムによる移民は、カナダ入国当初から目的地選択の自由を約束されているにもかかわらず、流入した州に定着する傾向が顕著で、他州への流出は少ない。とはいえ、インタビュー調査による被験者からの回答内容や、入手した一連の文書の分析は、まだ不充分であり、今後詳細に分析する必要がある。2017年3月にオーストラリアを訪問し、SSRMSがもっとも成功している州と評価されている南オーストラリア州政府の移民担当部署(Immigration SA)、キャンベラにあるオーストラリア政府の移民担当部署(Department of Immigration and Border Protection)、およびシドニーにある2大学の研究者を訪問し、聞き取りを行うとともに、関連データや文書の収集を行った。得られた主な知見は、以下のとおりである。主な移民送出国は、イギリスの他、インドや中国をはじめとする多くのアジア諸国に及んでいる。SSRMSによる移民は、熟練労働力に限定され、高い英語能力が求められるとともに、流入した州に通常2年継続居住する必要がある。当該の州に残留する移民の割合については、詳しい調査がなく不明である。この制限期間が過ぎたあとは、シドニーやメルボルンといった大都市に流出する人口が、一定数いるようである。この政策導入後の20年間における州・準州ごとの受入数を見ると、最初の3年間は南オーストラリア州が最多であったが、1999/00年から2008/09年にはビクトリア州が最多を記録している。2013/14年以降はニュー・サウス・ウェールズ州も数を伸ばしている。カナダの事例に関する検討は、2016年3月の訪問をきっかけに順調に進んでいる。2017年3月のオーストラリア訪問によって入手した資料やデータや、聞き取り調査結果の詳細な分析は、2017年度に実施の予定である。SSRMS導入後に受け入れた移民数の州・準州ごとの変化はやや複雑であり、経済動向以外に、オーストラリア政府の移民受け入れに関する姿勢の変化の影響も受けていることがわかった。カナダのProvincial Nomination Program (PNP)とオーストラリアのSSRMSは、いずれも1990年代後半に、地方圏における経済の停滞や、人口変動(特に流入人口)の低調さという類似の理由を背景として、互いに独立的に導入された点が、興味深い。両国間における主な違いは、以下のようにまとめることができる。移民の地方圏誘導政策の対象となっているのは、カナダでは半熟練・熟練労働力、オーストラリアでは熟練労働力である。前者では、憲法で居住地選択の自由が保障されているため、移民が流入先の州に一定期間居住する必要はない。にもかかわらず、例えば、マニトバ州におけるPNPによる移民の残留率が高いうえ、州内の小都市や農村部への移民の分散に成果をあげている。後者では、流入先の州で少なくとも2年間の居住を義務付けられていることが多い。南オーストラリア州の場合、SSRMSによる移民の州都であるアデレードの都市圏への集中が顕著であり、州内での分散は進んでいない。日本では、総人口が2008年にピークに達し、その後減少が続いている。 | KAKENHI-PROJECT-15K12951 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K12951 |
人口減少国日本の地方圏への外国人誘導政策の実行可能性に関する試験的研究 | しかし、地方圏の道県では1980年代から人口減が始まっており、一極集中の進む東京圏との格差が拡大している。その結果、今日では地方圏の衰退が大きな問題となっている。人口減少というこの問題に対し、これまで、外国人の受け入れを含む様々な議論がみられる。しかし、こうした議論は、政策的な干渉がない限り、国内に在住する外国人が、日本人以上に東京に一極集中する可能性が大きくなるという問題に気づいていない。本計画では、現代日本における人口減少という問題の処方箋として、日本に流入する外国人を地方圏に政策的に誘導する可能性を検討するものである。まず、日本と同様、人口や経済の停滞や衰退に直面した地方の再生策として、1990年代後半に導入され、一定の成功を収めてきたカナダの州指名計画やオーストラリアの州特定地域移動計画をモデルとして、類似した政策の日本への導入について検討した。その結果、それぞれ、低熟練労働力と熟練労働力としての外国人を対象とした在留資格である「地方創生1号」と「地方創生2号」の新設を提案した。これは、一定年数の地方圏での居住・就労によって、日本での永住につながる制度であり、これによって地方圏の著しい人口減少に歯止めがかかると期待される。この新しい在留資格の導入には、地方圏の自治体による流入外国人への雇用・住宅・定住支援サービスの提供が必要である。さらに、国としても、以上のような誘導政策を支えるため、社会的統合策の策定によってバックアップすることが必要である。本計画では、現代日本の人口減少という問題の処方箋として、日本に流入する外国人を地方圏に誘導する可能性を検討した。まず、人口や経済の停滞や衰退に直面した地方の再生策として、カナダやオーストラリアの誘導政策の詳しいレビューを行った後、類似した政策の日本への導入方法について考察した。その結果、低熟練労働力としての外国人を対象とする在留資格「地方創生1号」と熟練労働力として外国人を対象とする「地方創生2号」の新設を提案した。これは、一定年数の地方圏での居住・就労を義務づける制度である。この政策の導入には、地方圏の自治体による流入外国人への雇用・住宅・定住支援サービスの提供が必要である。当初、平成27年度に予定していたオーストラリア調査を、平成28年度に実施の予定である。具体的な調査は、地方圏の州・準州の振興のために実施されている州特定地域人口移動(State-specific and Regional Migration)プログラムが、オーストラリア国内で最も成功していると評価されている南オーストラリア州の政府職員、および、オーストラリア政府においてこのプログラムを統括している部署の職員に、詳細なインタビュー調査を実施するとともに、関連のデータや文書を収集する予定である。1年目のカナダ、2年目のオーストラリアの事例研究の成果を踏まえ、3年目の2017年度には、日本の地方圏への外国人の政策的誘導の可能性について、外国人関連の現行の諸施策に関する具体的な考察を通じ、検討を進める予定である。 | KAKENHI-PROJECT-15K12951 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K12951 |
G型肝炎ウイルスおよび本態不明肝炎の感染病態解析 | G型肝炎ウイルス(HGV)の分子疫学調査から、ミャンマー、ベトナムにおいて、従来のゲノタイプ分類には属さない新しいHGV株を分離することができたので、その分子生物学的特徴を解析した。検体および方法は、5'UTR領域の塩基配列解析から、新たなゲノタイプに属すミャンマー人由来株(HGV-MY14)およびベトナム人由来株(HGV-VT48)を対象とした。塩基配列は、サブクローニング法にて決定した。また得られた塩基配列をもとに木村の8パラメーター法で遺伝的距離を確定し、近接合法を用いて分子系統樹解析を実施した。その結果、5'UTRの終末部を除くほぼ全長のHGV遺伝子を2株分離することができた。両者共に9928ntよりなり、2842個のアミノ酸をコードするpolyproteinを有していた。また2株共16aaからなる短いコア領域を有していた。3'UTRはHGV-MY14は313nt、HGV-VT48は315ntからなり、末端にはいずれもpoly Aは存在しなかった。HGV-MY14とHGV-VT48の全長塩基レベルでの相同率は86%、アミノ酸レベルでは96%であった。4型株の既知のHGV株(13型)に対する塩基の相同率は78%84%、アミノ酸レベルレベルでは92%93%であったが、3型株に対してより高い相同性を示した。また既知のHGV株28株を加えた全長遺伝子領域における分子系統樹解析においてもHGVーMY14およびHGV-VT48は従来の分類には属さず、新たな分類(4型)であることが確認された。以上の成績は、自然界におけるHGvの生態、ウイルスの起源、民族疫学、感染経路などを知る上で興味深い。G型肝炎ウイルス(HGV)の分子疫学調査から、ミャンマー、ベトナムにおいて、従来のゲノタイプ分類には属さない新しいHGV株を分離することができたので、その分子生物学的特徴を解析した。検体および方法は、5'UTR領域の塩基配列解析から、新たなゲノタイプに属すミャンマー人由来株(HGV-MY14)およびベトナム人由来株(HGV-VT48)を対象とした。塩基配列は、サブクローニング法にて決定した。また得られた塩基配列をもとに木村の8パラメーター法で遺伝的距離を確定し、近接合法を用いて分子系統樹解析を実施した。その結果、5'UTRの終末部を除くほぼ全長のHGV遺伝子を2株分離することができた。両者共に9928ntよりなり、2842個のアミノ酸をコードするpolyproteinを有していた。また2株共16aaからなる短いコア領域を有していた。3'UTRはHGV-MY14は313nt、HGV-VT48は315ntからなり、末端にはいずれもpoly Aは存在しなかった。HGV-MY14とHGV-VT48の全長塩基レベルでの相同率は86%、アミノ酸レベルでは96%であった。4型株の既知のHGV株(13型)に対する塩基の相同率は78%84%、アミノ酸レベルレベルでは92%93%であったが、3型株に対してより高い相同性を示した。また既知のHGV株28株を加えた全長遺伝子領域における分子系統樹解析においてもHGVーMY14およびHGV-VT48は従来の分類には属さず、新たな分類(4型)であることが確認された。以上の成績は、自然界におけるHGvの生態、ウイルスの起源、民族疫学、感染経路などを知る上で興味深い。【目的】G型肝炎ウイルス(HGV)の全長ウイルスをクローニングし、その分子ウイルス学的特徴を明らかにすることを目的とした。更に、分離株の変異速度を求めた。【患者】HBV,HCV,HGVの持続感染を認める日本人肝硬変患者を対象とした。さらに、現在と12年前の血清からHGVを分離し比較検討した。【方法】血清100ulよりRNAを抽出しnestedRT-PCR法によりHGVの各領域を増幅後、サブクローニング法にて塩基配列を決定した。5UTRおよび3UTR領域はRACE法にて増幅した。分離株はGenBankより入手した既知のHGVを含めて、分子系統樹解析を行った。【結果】全長9387ntよりなるHGV(HGV-IM71)を分離した。HGV-IM71は2873個のアミノ酸をコードするpolyproteinと、458ntと310ntよりなる5UTRと3UTR各々有していた。3UTRには、poly-Aの存在は認められなかった。既知のGBV-C/HGV株を比較すると、塩基レベルで西アフリカ株(GBV-C)とは81.1%、米国株(HGV-PNF2161)とは85.1%、日本株(GT230)とは86.5%の相同性を有していた。分子系統樹解析では大きく三群に大別でき、HGV-IM71はアジア型に分類できた。更に同一患者から12年前に分離された約6Kbの遺伝子との比較から、その変異速度は0.8×10^<-3>/site/yearと推定された。【結語】日本人由来のHGV全長遺伝子を分離した。HGV-IM71は既知のHGV/GBV-C株とは高い相同性を有していた。 | KAKENHI-PROJECT-10670222 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10670222 |
G型肝炎ウイルスおよび本態不明肝炎の感染病態解析 | 一般のRNAウイルスと同様に時間の推移による遺伝子変異を認めたが、HCVにみられる高変異領域を示唆する所見は得られなかった。G型肝炎ウイルス(HGV)の分子疫学調査から、ミャンマー、ベトナムにおいて、従来のゲノタイプ分類には属さない新しいHGV株を分離することができたので、その分子生物学的特徴を解析した。検体および方法は、5'UTR領域の塩基配列解析から、新たなゲノタイプに属すミャンマー人由来株(HGV-MY14)およびベトナム人由来株(HGV-VT48)を対象とした。塩基配列は、サブクローニング法にて決定した。また得られた塩基配列をもとに木村の8パラメーター法で遺伝的距離を確定し、近隣接合法を用いて分子系統樹解析を実施した。その結果、5'UTRの終末部を除くほぼ全長HGV遣伝子を2株分離することができた。両者共に9228ntよりなり、2842個のアミノ酸をコードするpolyproteinを有していた。また2株共16aaからなる短いコア領域を有していた。3'UTRはHGV-MY14は313nt、HGV-VT48は315ntからなり、末端にはいずれもpoly Aは存在しなかった。HGV-MY14とHGV-VT48の全長塩基レベルでの相同率は86%、アミノ酸レベルでは96%であった。4型株の既知のHGV株(13型)に対する塩基の相同率は7884%、アミノ酸レベルでは9293%であったが、3型株に対してより高い相同性を示した。また既知のHGV株28株を加えた全長遺伝子領域における分子系統樹解析においてもHGV-MY14およびHGV-VT48は従来の分類には属さず、新たな分類(4型)であることが確認された。さらに4型株はミャンマーとベトナムにおいてのみ、その存在が確認された。以上の成績は、自然界におけるHGVの生態、ウイルスの起源、民族疫学、感染経路などを知る上で興味深い。 | KAKENHI-PROJECT-10670222 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10670222 |
集団変動性の知覚の心理的・行動的結果に関する実証的研究 | ある集団の実体性を保証するような背景情報(集団の歴史や特徴に関する情報)と,その集団に所属する成員の,ある特性や特徴の次元(向性や人種など)での多様性(変動性)の知覚が,どのように認知処理されて,その集団に対するステレオタイプや偏見が維持されたり,変化したりするのかを明らかにするための研究の足がかりとなる実験を2つ行なった.実験1では,237名の被験者は,ある集団に関する背景情報を呈示された後に,その集団の成員6名文分の記述情報を逐次呈示された.その成員情報は,内向性-外向性の次元で変動性の大小が操作されていた。変動性の大きい条件で,それが小さい条件でよりも,背景情報に関する再認成績が阻害されるという有意な結果を得た.実験2は,実験1の追試であったが,次の2点で異なっていた.(1)102名の被験者は,成員情報を先に,背景情報を後に呈示された.(2)成員情報の抽象化認知処理を促す教示と,情報の具現化認知処理を促す教示がなされる条件がそれぞれ加えられた.抽象化を促進された条件では,変動性が小さいときに,それが大きいときよりも,背景情報に関する再認成績が阻害されるという有意な結果を得た.実験1と実験2から,集団に関する背景情報と成員情報(の変動性)が相互に影響しあっていることが示唆されたが,その相互影響の仕方についての2つの実験結果の非整合性の問題が今後の課題として残された.ある集団の実体性を保証するような背景情報(集団の歴史や特徴に関する情報)と,その集団に所属する成員の,ある特性や特徴の次元(向性や人種など)での多様性(変動性)の知覚が,どのように認知処理されて,その集団に対するステレオタイプや偏見が維持されたり,変化したりするのかを明らかにするための研究の足がかりとなる実験を2つ行なった.実験1では,237名の被験者は,ある集団に関する背景情報を呈示された後に,その集団の成員6名文分の記述情報を逐次呈示された.その成員情報は,内向性-外向性の次元で変動性の大小が操作されていた。変動性の大きい条件で,それが小さい条件でよりも,背景情報に関する再認成績が阻害されるという有意な結果を得た.実験2は,実験1の追試であったが,次の2点で異なっていた.(1)102名の被験者は,成員情報を先に,背景情報を後に呈示された.(2)成員情報の抽象化認知処理を促す教示と,情報の具現化認知処理を促す教示がなされる条件がそれぞれ加えられた.抽象化を促進された条件では,変動性が小さいときに,それが大きいときよりも,背景情報に関する再認成績が阻害されるという有意な結果を得た.実験1と実験2から,集団に関する背景情報と成員情報(の変動性)が相互に影響しあっていることが示唆されたが,その相互影響の仕方についての2つの実験結果の非整合性の問題が今後の課題として残された. | KAKENHI-PROJECT-08710078 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08710078 |
社会福祉専門教育改善のためのIT活用に関する研究 | 社会福祉学は実践の学であり、社会福祉専門教育は高度な実学教育である。従って内容の充実した社会福祉実習などをベースとした"フィールド・ラーニング"が極めて重要となる。こうした実習やそれと連動した演習に十分な時間をとり、現実から学ぶことを可能にすることによって、はじめて社会福祉を全体的に現実感覚を持って理解し、実践力を養うことが可能となる。こうした"フィールド・ラーニング"をサポートするために、講義系科目、実習系科目、専門演習や卒業研究系科目のそれぞれにおいて、遠隔学習やマルチメディアの手法を含む効果的なIT活用の可能性とその効用に関する実証的研究が本研究の目的である。本研究においては京都光華女子大学人間関係学部の社会福祉学科と人間関係学科メディア情報専攻の教員や学生の協力の下に、講義系科目における教材の電子化、BlackboardやMediaDEPO等を用いたe-learning手法の実験、実習支援のためのサイト「福祉どっとこむ」の構築と運用実験、TV会議システムによる実習支援の運用実験等を行った。また、福祉系大学におけるIT活用の状況に関して、見学やヒアリングを行い、今後の方向性と課題について検討した。そうした結果として、社会福祉専門教育における今後の教育水準の向上や実習教育重点化の方向に向けて、積極的なIT活用による講義系科目でのe-learning手法の効用が確認できたこと、また、実習支援における手法に関しても一定の見通しを持つことが出来た。しかし、こうした取り組みが大きな成果を挙げるためには教員個々の努力では大いに限界があり、大学としての組織的な取り組みが不可欠であることも確認できた。社会福祉学は実践の学であり、社会福祉専門教育は高度な実学教育である。従って内容の充実した社会福祉実習などをベースとした"フィールド・ラーニング"が極めて重要となる。こうした実習やそれと連動した演習に十分な時間をとり、現実から学ぶことを可能にすることによって、はじめて社会福祉を全体的に現実感覚を持って理解し、実践力を養うことが可能となる。こうした"フィールド・ラーニング"をサポートするために、講義系科目、実習系科目、専門演習や卒業研究系科目のそれぞれにおいて、遠隔学習やマルチメディアの手法を含む効果的なIT活用の可能性とその効用に関する実証的研究が本研究の目的である。本研究においては京都光華女子大学人間関係学部の社会福祉学科と人間関係学科メディア情報専攻の教員や学生の協力の下に、講義系科目における教材の電子化、BlackboardやMediaDEPO等を用いたe-learning手法の実験、実習支援のためのサイト「福祉どっとこむ」の構築と運用実験、TV会議システムによる実習支援の運用実験等を行った。また、福祉系大学におけるIT活用の状況に関して、見学やヒアリングを行い、今後の方向性と課題について検討した。そうした結果として、社会福祉専門教育における今後の教育水準の向上や実習教育重点化の方向に向けて、積極的なIT活用による講義系科目でのe-learning手法の効用が確認できたこと、また、実習支援における手法に関しても一定の見通しを持つことが出来た。しかし、こうした取り組みが大きな成果を挙げるためには教員個々の努力では大いに限界があり、大学としての組織的な取り組みが不可欠であることも確認できた。社会福祉士国家試験受験資格取得のための大学カリキュラムは大別して講義系が13科目(国家試験科目)と演習・実習系が3科目の計16科目である。こうしたことから社会福祉系大学の場合、卒業までに修得すべき単位が140150単位以上となり、更にPSWなどの受験資格も取得する場合は170単位程度となる。しかし社会福祉専門教育は高度な実学教育であるためフィールドラーニング(実習)に多くの時間を割く必要がある。社会福祉系大学等の教員を対象に行なったアンケートでもこうした状況においてIT技術やマルチメディアを活用して教育の効率化を図ることのニーズが確認されている。本研究ではこうした現実を踏まえて(1)専門の講義系科目についての豊かで効率的な学習支援のあり方、(2)実習系科目についてのリアルタイムなスパービジョンのあり方、(3)専門演習や卒業研究系科目についての演習方法や論文指導等を実施するためのITの有効な活用方法について考察をしてきた。(1)については(あ)講義で使用するテキストやプリント等の全文を電子化し、キーワードに関する解説文などを入れて学生の予習を支援する。(い)授業内容を豊富にするための補完的教材(登場する人物や関連する事項に関する動画情報など)を提示する。(う)復習教材として授業の録画をキーワード検索の出来る状態で配信する等が有効であることが本学及び他大学の先行事例によって明らかになった。今後はこうした作業を容易にする方法や学生の質問等にどう対応していくか、その効果的で安全な方法を模索する必要がある。(2)については(あ)実習現場に関するデータベースを提供し、学生の実習フィールドや課題選択を支援する。(い)実習日誌や学生の実習に関する相談をメールで受付け、リアルタイムに実習指導できる体制をつくる。(う)現場ごとの実習日程や学生の実習状況等、学科として共有すべきデータを配信するなどのニーズが高く、学生と教員にとって有効であることが明らかになった。(3)については今後の課題であるが、学生を交えた実習現場との共同研究にも資する道を模索することを含めてITによる具体的な学習支援の方法を検討する予定である。以上の研究に関して2004年度は同志社大学、同志杜女子大学、佛教大学、龍谷大学、岐阜経済大学、関西学院大学、立教大学等を見学し、先行事例について研究した。今後は日本福祉大学、吉備国際大学、武庫川女子大学、淑徳大学等の事例を研究する。また、今後は(1)(2)(3)について学生や教員によるモニタリングを行ない、システムやコンテンツの改良を図る計画である。 | KAKENHI-PROJECT-16530384 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16530384 |
社会福祉専門教育改善のためのIT活用に関する研究 | 社会福祉士のための厚生労働大臣の指定科目は大別して講義系が13教科(14科目)と演習・実習系が2教科(3科目)、合計15教科(17科目)であり、これに精神保健福祉士関係の科目を加えると、合計で講義系が20科目、演習・実習系が5科目となる。しかし、社会福祉専門教育は高度な実学教育であるため、フィールドラーニング(現場実習、現地調査、個別ヒアリング、ボランティア活動、インターンシップなど)を軸として専門演習や卒業研究による知識・技術の総合化や社会福祉的な感性及び意識の向上が不可欠である。特に近年の社会福祉は地域福祉志向である。従って社会福祉教育においても、従来の施設福祉中心時代と異なり、自分自身もその一員である地域社会(学校社会や職場社会を含む)での実践力が求められる。本研究においては社会福祉系学部教育における講義系カリキュラムと実習・演習・卒業研究系カリキュラムの連携を強化し、且つ、両者のバランスを改善するために如何にITを活用すべきかをテーマとしている。平成17年度においては日本福祉大学等の先行事例に学ぶと同時に、京都光華女子大学でのBlackboardやMediaDEPOを使った1年間の予習・復習支援に関する分析評価、実習教育への応用可能性に関する研究等に重点を置き、TV会議システムによる現場とのシミュレーションを行った。2年間の研究では次のような点で一定の成果が見られた。(1)講義系科目に関しては、かなりの科目をEラーニングに移行することで、フィールドラーニングに少しでも多くの時間を確保するという目論見は、この研究期間中には実現には至らなかったが、特定科目に関してBlackboardやMediaDEPOを使った授業が一定の成果を挙げたこと、また、教科書を含む新しい教材の在り方に関しても一定の見通しがたったと思われる。(2)実習系科目に関しては、実習先のデータベース化や事前学習のための情報提供の試みや、TV会議システム(I-collabo)を活用した現場とのタイアップによるスーパービジョン等の試みにより、京都光華女子大学の通年型実習に適したサポート方法について一定の考察ができた。(3)社会福祉専門演習や卒業研究指導に関しては、本学の社会福祉学科が平成18年度に完成年度を迎える関係で、17年度段階での最上級生が3年次生であったために具体的な場面での研究ができなかったが、研究分担者(情報系)の経験を参考に、一定のイメージを描くことはできた。今後はこうした研究成果をもとに更なる実験や実践を重ね、また、他大学との経験交流を進めて、社会福祉教育の発展に向けて更なるIT活用の具体的な方法を究明していきたい。 | KAKENHI-PROJECT-16530384 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16530384 |
樹状細胞の3次元での動きを制御する分子ネットワークとその時空間ダイナミクス | 細胞運動は、膜の極性化と細胞骨格のダイナミクスを必要とする最も基本的な細胞機能の1つであり、2次元での解析結果から、RacやRho、脂質キナーゼやホスファターゼといったシグナル分子の時空間制御の重要性が指摘されてきた。しかしながら近年、3次元での細胞運動に特異的に必要とされるシグナル分子が同定されるに至り、新たなパラダイムの構築が急務となっている。本研究は、DOCK8を欠損した樹状細胞では、3次元環境下での遊走が特異的に障害されるという申請者の知見を基に、その制御機構を解明することを目的とする。このため本年度は、以下のような研究を行い、研究の進展につながる成果を得た。1.T細胞や好中球を用いて遊走実験を行い、これらの細胞においても、DOCK8欠損により3次元環境下での遊走が障害されることを確認した。2.レトロウイルスベクターを用いて、Lifeact-GFPやミオシンL鎖-GFPを、DOCK8欠損細胞に発現させることに成功した。3.プルダウン法で解析する限り、DOCK8欠損樹状細胞でも、Cdc42の活性化は正常におこることを見いだした。これは恐らく、他のGEFにより、DOCK8欠損の影響が機能的に代償されているためだと考えられ、空間情報を加味した研究の必要性が示唆された。4.DOCK8の発現を欠く細胞株に、HAタグを融合させた野生型DOCK8およびその欠失変異体を発現させたトランスフェクタントを樹立し、DOCK8の局在や機能に重要なドメインを同定した。細胞運動は、膜の極性化と細胞骨格のダイナミクスを必要とする最も基本的な細胞機能の1つであり、2次元での解析結果から、RacやRho、脂質キナーゼやホスファターゼといったシグナル分子の時空間制御の重要性が指摘されてきた。しかしながら近年、3次元での細胞運動に特異的に必要とされるシグナル分子が同定されるに至り、新たなパラダイムの構築が急務となっている。DOCK8はヒト免疫不全症の責任分子であることから近年注目を集めている分子である。研究代表者は、DOCK8の生理的機能の解明に向けて、ノックアウトマウスを作製し、以下の成果を得た。1.野生型マウスおよびDOCK8 KOマウスの骨髄細胞からGM-CSFを用いて樹状細胞を準備し、所属リンパ節へのホーミングを解析した結果、DOCK8が樹状細胞の所属リンパ節へのホーミングに重要な役割を演じることを明らかにした。2.野生型マウスの耳介より単離した皮膚組織に、野生型およびDOCK8欠損樹状細胞を取り込ませ、皮下組織内での運動性やリンパ管への侵入を比較解析した結果、DOCK8を欠損した樹状細胞は、リンパ管に正常に侵入できるものの、真皮組織における運動性が顕著に低下していることを見いだした。3.コラーゲンゲルを用いた3次元培養を行ったところ、DOCK8欠損樹状細胞では、運動性が障害されていた。一方、2次元環境下では、野生型樹状細胞とDOCK8欠損樹状細胞の間で遊走能に差を認めなかった。このことから、DOCK8は3次元環境下での樹状細胞の運動を選択的に制御していることが示唆された。細胞運動は、膜の極性化と細胞骨格のダイナミクスを必要とする最も基本的な細胞機能の1つであり、2次元での解析結果から、RacやRho、脂質キナーゼやホスファターゼといったシグナル分子の時空間制御の重要性が指摘されてきた。しかしながら近年、3次元での細胞運動に特異的に必要とされるシグナル分子が同定されるに至り、新たなパラダイムの構築が急務となっている。本研究は、DOCK8を欠損した樹状細胞では、3次元環境下での遊走が特異的に障害されるという申請者の知見を基に、その制御機構を解明することを目的とする。このため本年度は、以下のような研究を行い、研究の進展につながる成果を得た。1.T細胞や好中球を用いて遊走実験を行い、これらの細胞においても、DOCK8欠損により3次元環境下での遊走が障害されることを確認した。2.レトロウイルスベクターを用いて、Lifeact-GFPやミオシンL鎖-GFPを、DOCK8欠損細胞に発現させることに成功した。3.プルダウン法で解析する限り、DOCK8欠損樹状細胞でも、Cdc42の活性化は正常におこることを見いだした。これは恐らく、他のGEFにより、DOCK8欠損の影響が機能的に代償されているためだと考えられ、空間情報を加味した研究の必要性が示唆された。4.DOCK8の発現を欠く細胞株に、HAタグを融合させた野生型DOCK8およびその欠失変異体を発現させたトランスフェクタントを樹立し、DOCK8の局在や機能に重要なドメインを同定した。DOCK8が3次元環境下での樹状細胞の運動を選択的に制御していることを明らかにする等(Blood2012)、当初の予想を上回るスピードで研究が進展したから。研究は順調に進行しており、多くの成果が得られている。次年度は最終年度であるため、この成果をできるだけ早くまとめて論文発表を行うと共に、特に重要な成果に関しては、HPやマスメディア等を利用して広く国民に発信し、説明責任を果たしたい。 | KAKENHI-PUBLICLY-23111522 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-23111522 |
安定セシウム循環の組み込みによる森林生態系内の放射性セシウム移行予測の高度化 | 福島県および茨城県の森林において放射性および安定セシウム動態を観測した。林内の雨および堆積有機物を通過する水に含まれる放射性セシウム濃度は、夏季に濃度が上昇する変動を示しながら徐々に低下した。土壌水中では、放射性セシウム濃度は深度を増すことにより急激に低下したが、安定セシウム濃度は深度を増しても必ずしも低下せず、鉱物風化による供給と粘土鉱物による捕捉がバランスしていることが示唆された。観測データに放射性セシウム動態モデルを適用したところ、安定セシウムのデータは樹木による土壌中の放射性セシウム吸収量の場所による違いを表現することに利用可能で、モデルの高度化に役立つと考えられた。福島県郡山市のスギ・ヒノキ林および落葉広葉樹林において、林内雨、リター層通過水、深度10 cmおよび30 cmで採取した土壌水を定期的に採取し、放射性セシウム濃度を測定した。同試験林においては、これらの測定を2012年より継続している。林内雨とリター層通過水中の放射性セシウム濃度(溶存態および懸濁態)および移動量は、2012年から2015年にかけて変動しながら低下した。夏季に濃度および移動量が大きくなることがあり、このときは懸濁態の寄与が大きかった。2014年以降においては、林外雨中の溶存態Cs-137濃度は、スギ・ヒノキ林、落葉広葉樹林のいずれにおいても1 Bq/L未満まで低下した。リター層通過水中の放射性セシウム濃度も低下し、スギ・ヒノキ林で1 Bq/L前後、落葉広葉樹林で1 Bq/L未満であった。土壌水では、深度10 cmでは両林分とも0.1 Bq/L未満、深度30 cmでは両林分とも0.01 Bq/L未満であった。同様のモニタリングを行っている茨城県石岡市のスギ林においても、林内雨、リター層通過水中の放射性濃度が年々低下する傾向が認められた。茨城県石岡市のスギ林の林内雨および土壌水中の安定セシウム濃度を測定したところ、両者とも0.1 μg/L以下であることが多く、季節変動が認められた。森林内放射性物質動態予測モデル(RIFE1)を、林野庁が福島県内で2011年から行っているモニタリングのデータを用いてパラメタリゼーションし、放射性セシウムの動態をモデル化した。単位面積あたりの放射性セシウムの森林内の分布予測は、Hashimoto et al.(2013)と近い結果となった。根からの吸収をモデルに組み込み、吸収が主に有機物層で起こる場合と、その下の鉱質土壌で起こる場合をそれぞれ想定して計算したところ、将来の木材内部の放射性セシウム濃度の予測値が異なることが判明した。現地における試料採取は計画通り進み、放射性セシウム、安定セシウムの分析も進んでいる。また、セシウム動態モデルの改良に着手し、根からの吸収をモデルに組み込んだ。これらの成果の一部については学会発表も行った。土壌水の放射性セシウムは低濃度であるため、通常の方法では検出できないが、固相抽出ディスクを用いた濃縮方法を確立できているので定量が可能になっており、次年度以降、モデルに土壌水中の放射性セシウム濃度を入力できる。福島県郡山市のスギヒノキ人工林および落葉広葉樹林において、林内雨、リター層通過水、深度10cmおよび30cmの土壌水を定期的に採取し、ゲルマニウム半導体検出器を用いて溶存態の放射性セシウム(Cs-137)濃度を測定した。低濃度の試料については、セシウムを選択的に吸着する固相抽出ディスクを用い、510Lの試料に含まれる放射性セシウムを濃縮して測定した。林内雨およびリター層通過水中の放射性セシウム濃度は、0.1Bq/Lのオーダーであり、夏季にやや上昇する傾向を示しながら、徐々に低下していた。深度10cmで採取した土壌水中の放射性セシウム濃度は、0.01Bq/Lのオーダーであった。深度30cmでは、0.001Bq/Lのオーダーであり、この林分を含む小流域から流出する渓流水と同レベルであった。このように土壌水中の放射性セシウム濃度は深度の増加とともに急激に低下するため、樹木による根を通じた放射性セシウムの吸収を評価する際には、吸水深度をどのように定めるかが重要になる。これらの水試料について、天然に存在する安定セシウム(Cs-133)の濃度を測定した。測定にはICP質量分析装置を用いた。林内雨、リター層通過水、土壌水中には、0.01μg/Lのオーダーで安定セシウムが含まれていた。土壌水中の放射性セシウム濃度は深度を増すことにより急激に低下するのに対して、安定セシウム濃度は深度を増しても必ずしも低濃度にはならないことが明らかになった。このことは、安定セシウムが土壌を構成する鉱物に含有されており、そこから溶出する影響と考えられる。現地調査、試料の採取、放射性セシウムおよび安定セシウムの分析は順調に進んでいる。特に、これまでデータが乏しかった森林生態系内の安定セシウム循環に関する情報の蓄積が進んだ。このことは、最終年度の森林生態系内の放射性セシウム移行予測モデルの高度化につながる。 | KAKENHI-PROJECT-15H04522 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H04522 |
安定セシウム循環の組み込みによる森林生態系内の放射性セシウム移行予測の高度化 | 福島県郡山市のスギヒノキ人工林および落葉広葉樹林において、林内雨、リター層通過水、深度10cmおよび30cmの土壌水を定期的に採取し、ゲルマニウム半導体検出器を用いて溶存態の放射性セシウム(Cs-137)濃度を、ICP質量分析装置を用いて安定セシウム(Cs-133)濃度を測定した。林内雨中の放射性セシウム濃度は、スギヒノキ林では2012年から2017年まで低下傾向が続いたが、落葉広葉樹林では2015年以降ほぼ横ばいとなった。事故当時、樹冠での放射性セシウムの捕捉が常緑針葉樹では多く、落葉広葉樹では少なかったことが反映されている可能性がある。土壌水中の放射性セシウム濃度は深度を増すことにより急激に低下するのに対して、安定セシウム濃度は深度を増しても必ずしも低下せず、鉱物の風化による供給と粘土鉱物による捕捉がバランスしていることが示唆された。得られた観測データに、森林内での放射性セシウム動態をより細かくトレースできるよう改良したRIFE1モデルを適用した。土壌はリター、鉱質土壌0-5cm, 5-10cm, 10-20cmのコンポーネントに分けた。またタイムステップを月単位とした。土壌部分においては次のプールへの移行は地温に指数関数的に反応する構造にした。本課題で得られた観測データに加え、本試験地に距離・条件の近い大玉村における森林総合研究所のモニタリングデータを用いてパラメータを決定し、シミュレーションを行った。その結果、リター層から鉱質土壌層への移動量が夏季に増加しする傾向、事故後経年的に夏季のピークが低下する傾向がモデルでも再現された。また検討の結果、安定セシウムのデータは少なくとも樹木による土壌中のCs吸収量のサイト間の差を表現することに利用可能で、パラメタリゼーションの高度化に利用できると考えられた。福島県および茨城県の森林において放射性および安定セシウム動態を観測した。林内の雨および堆積有機物を通過する水に含まれる放射性セシウム濃度は、夏季に濃度が上昇する変動を示しながら徐々に低下した。土壌水中では、放射性セシウム濃度は深度を増すことにより急激に低下したが、安定セシウム濃度は深度を増しても必ずしも低下せず、鉱物風化による供給と粘土鉱物による捕捉がバランスしていることが示唆された。観測データに放射性セシウム動態モデルを適用したところ、安定セシウムのデータは樹木による土壌中の放射性セシウム吸収量の場所による違いを表現することに利用可能で、モデルの高度化に役立つと考えられた。現地モニタリングを継続して行い、データセットを充実させる。モデルの改良が順調に進んでいるため、原発事故後初期から取得している福島県郡山市および茨城県石岡市の森林の放射性セシウムに関するデータセットを入力してモデルパラメータの最適化を行う。これと並行して安定セシウムに関するデータセットを揃え、定常状態にあると考えられる安定セシウムについてもモデルパラメータの最適化を行い、より長期の予測が可能なモデルを構築する。森林における放射性セシウムおよび安定セシウムのフローおよびストックに関するデータセットを整理する。これらデータセットを用いて放射性セシウム移行予測モデルのパラメータの最適化を行う。これにより高度化したモデルを用いて、森林における放射性セシウム移行の中長期の予測を行う。29年度が最終年度であるため、記入しない。森林土壌学29年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-15H04522 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H04522 |
食道癌放射線治療効果を予測する先行指標としての癌関連遺伝子とアポトーシスの研究 | 【目的】食道癌放射線治療効果を予測する先行指標を見い出すことを目的にp53遺伝子産物あるいはアポトーシス関連p53依存性遺伝子産物と放射線治療1次効果および予後の関係を検討した。【対象および方法】1997年5月1998年12月までに手術不能な食道癌13例に対して高エネルギーphoton(10MVX)により6070Gy(平均67Gy)の放射線単独治療を施行した。癌組織採取は照射前、照射10Gy後、終了後1ヵ月以内に経内視鏡下生検によりを行った。採取した組織はホルマリン固定後、パラフィン包埋を行った。p53、WAF1、Bax、ならびにBcl-2蛋白の蓄積誘導は、抗p53抗体、抗WAF1抗体、抗Bax抗体、抗Bcl-2抗体を用いて、免疫染色法(ABC法)で検討した。【結果】1.1次治療効果は、CR3例、PR9例、NC1例で奏功率は92.3%であった。3例は再燃により58ヵ月(平均6.3ヵ月)で死亡、3例に再燃・再発を認めており、平均生存期間は12.5ヵ月(521ヵ月)であった。2.照射前のp53あるいはWAF1の量が低い症例ほどCR率が高い傾向にあった。3.照射前のp53の量が低い症例ほど予後(6ヵ月生存率)が良い傾向にあった。4.照射後のp53あるいはWAF1の誘導量が高い症例ほどCR率、予後が良い傾向にあった。【結論】正常型p53遺伝子を持つと考えられる食道癌症例は変異型p53遺伝子を持つと考えられる症例よりも予後良好であった。これらの症例では放射線によって明らかなWAF1の形質発現が誘導され、しかも、CR率と予後との相関性も高く認められ、p53遺伝子型とWAF1遺伝子発現誘導度が食道癌放射線治療の先行指標となり得る可能性が示峻された。本研究期間は2年で症例数と観察期間は不十分であり、有用性の評価にはさらなる症例の蓄積と長期経過観察が必要である。【目的】食道癌放射線治療効果を予測する先行指標を見い出すことを目的にp53遺伝子産物あるいはアポトーシス関連p53依存性遺伝子産物と放射線治療1次効果および予後の関係を検討した。【対象および方法】1997年5月1998年12月までに手術不能な食道癌13例に対して高エネルギーphoton(10MVX)により6070Gy(平均67Gy)の放射線単独治療を施行した。癌組織採取は照射前、照射10Gy後、終了後1ヵ月以内に経内視鏡下生検によりを行った。採取した組織はホルマリン固定後、パラフィン包埋を行った。p53、WAF1、Bax、ならびにBcl-2蛋白の蓄積誘導は、抗p53抗体、抗WAF1抗体、抗Bax抗体、抗Bcl-2抗体を用いて、免疫染色法(ABC法)で検討した。【結果】1.1次治療効果は、CR3例、PR9例、NC1例で奏功率は92.3%であった。3例は再燃により58ヵ月(平均6.3ヵ月)で死亡、3例に再燃・再発を認めており、平均生存期間は12.5ヵ月(521ヵ月)であった。2.照射前のp53あるいはWAF1の量が低い症例ほどCR率が高い傾向にあった。3.照射前のp53の量が低い症例ほど予後(6ヵ月生存率)が良い傾向にあった。4.照射後のp53あるいはWAF1の誘導量が高い症例ほどCR率、予後が良い傾向にあった。【結論】正常型p53遺伝子を持つと考えられる食道癌症例は変異型p53遺伝子を持つと考えられる症例よりも予後良好であった。これらの症例では放射線によって明らかなWAF1の形質発現が誘導され、しかも、CR率と予後との相関性も高く認められ、p53遺伝子型とWAF1遺伝子発現誘導度が食道癌放射線治療の先行指標となり得る可能性が示峻された。本研究期間は2年で症例数と観察期間は不十分であり、有用性の評価にはさらなる症例の蓄積と長期経過観察が必要である。1997年5月より1998年2月までに進行食道癌9例に対して放射線治療単独で総線量60Gy以上の治療を施行した。症例の内訳は、年齢が57から77歳(平均67.8歳)で、全例男性であった。PSは0-1で、Stageは食道癌取扱い規約でIIが3例、IIIが2例、IVが4例であった。病理組織型は全例扁平上皮癌であった。放射線治療は高エネルギーphoton(10MVX〕により総線量は60から70Gy(平均69.0Gy〕照射し、70Gyを照射した8例のうち^<60>Coによる10Gyの腔内照射を併用したのは3例であった。食道造影、超音波内視鏡、MRIによる画像診断での治療効果はCR3例、PR6例であった。1998年3月現在、1例が再燃により治療開始より7か月で死亡した。また1例が再燃を認めているが、その他の7例については再燃、再発なく生存している。(観察期間:治療開始より3-8か月、平均5.9か月〕。 | KAKENHI-PROJECT-09670949 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09670949 |
食道癌放射線治療効果を予測する先行指標としての癌関連遺伝子とアポトーシスの研究 | 組織標本は治療前、10Gy照射時、治療終了後1ヵ月以内での腫瘍組織を採取し、一部はホルマリン固定後パラフィンブロックで保存し、一部は凍結保存した。来年度は、パラフィンブロックから切片を取り出して、アポトーシスの出現の有無をApo Tag染色およびHE染色で判定する予定である。また、癌抑制遺伝子産物であるp53およびwaf1、bcl-2,bax、Rbなどのp53を中心としたシグナルトランスダクション経路の遺伝子産物の発現について免疫染色法により判定する予定である。さらに食道癌の予後との関連性がいわれているcyclin Dについても免疫染色法により、その発現の有無を判定する予定である。また、凍結組織からRNAを抽出し、RT後PCR-SSCP法によりp53、waf1、bcl-2,bax、Rb遺伝子などの発現や変異の有無について検討する予定である。さらに来年度は、20症例を目標に11例の症例を追加し。癌関連遺伝子の増幅や変異ならびに放射線治療初期(10Gy照射時)のアポトーシスの出現の有無と一次治療効果および再燃、再発、生存との関連について明かにする予定である。【目的】食道癌放射線治療効果を予測する先行指標を見い出すことを目的にp53遺伝子産物あるいはアポトーシス関連p53依存性遺伝子産物と放射線治療1次効果および予後の関係を検討した。【対象および方法】1997年5月1998年12月までに手術不能な食道癌13例に対して高エネルギーphoton(10MVX)により6070Gy(平均67Gy)の放射線単独治療を施行した。癌組織採取は照射前、照射10Gy後、終了後1カ月以内に経内視鏡下生検によりを行った。採取した組織はホルマリン固定後、パラフィン包埋を行った。p53、WAF1、Bax、ならびにBcl-2蛋白の蓄積誘導は、抗p53抗体、抗WAF1抗体、抗Bax抗体、抗Bcl-2抗体を用いて、免疫染色法(ABC法)で検討した。【結果】1.1次治療効果は、CR3例、PR9例、NC1例で奏功率は92.3%であった。3例は再燃により58カ月(平均6.3カ月)で死亡、3例に再燃・再発を認めており、平均生存期間は12.5カ月(521カ月)であった。2.照射前のp53あるいはWAF1の量が低い症例ほどCR率が高い傾向にあった。3.照射前のp53の量が低い症例ほど予後(6カ月生存率)が良い傾向にあった。4.照射後のp53あるいはWAF1の誘導量が高い症例ほどCR率、予後が良い傾向にあった。【結論】正常型p53遺伝子を持つと考えられる食道癌症例は変異型p53遺伝子を持つと考えられる症例よりも予後良好であった。これらの症例では放射線によって明らかなWAF1の形質発現が誘導され、しかも、CR率と予後との相関性も高く認められ、p53遺伝子型とWAF1遺伝子発現誘導度が食道癌放射線治療の先行指標となり得る可能性が示唆された。本研究期間は2年で症例数と観察期間は不十分であり、有用性の評価にはさらなる症例の蓄積と長期経過観察が必要である。 | KAKENHI-PROJECT-09670949 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09670949 |
科学教育における子どもの高次の思考技能育成に関する基礎研究 | 本研究では,まず理科教育における高次の思考技能が要求される場面として,問題解決と意思決定場面を設定した.そして高次の思考技能育成に不可欠な要素として,問題の正確な把握・理解,可能な限り多くの解決方法を創出すること,解決あるいは決定に到る前段階での予備的評価,解決あるいは決定に関係する人々の利害・価値・信念の同定,そして望ましい解決方法を選択するためのトレードオフの5点を指摘した.しかしながら現在アメリカでは,こういった技能育成そのものの妥当性と可能性に関する批判が,科学的リテラシーの意味内容との関連で多くなされており,特にMorris Shamosの論を中心にそれをまとめた.次に,アメリカのBSCSによって開発されたミドルスクール対象の理科カリキュラム"Middle School Science & Technology"を題材に,そこでなされている高次の思考技能育成の具体的方策を検討した.その結果,第一の目的で指摘した高次の思考技能育成の場面が,主にグループを単位とした,ビデオ,読み物,各種科学的データの分析を中心にした活動に沿って展開されていることを指摘した.特にそこではロールプレイが重要な意味を持った活動として展開されており,コミュニケーションのスキル育成が高次の思考技能育成のための鍵となる活動として位置づけられていた.以上の結果より,従来の理科教育で言われてきた科学的思考能力の育成に加え,高次の思考技能の育成が,近年科学的リテラシーの育成を目指す中で,研究レベルでもカリキュラム開発のレベルでも重視されてきていることを明らかにした.今後その具体的中身を吟味すると共に,子どもたちが高次の思考技能をどの程度身につけているのかというその実態を明らかにしていく必要がある.本研究では,まず理科教育における高次の思考技能が要求される場面として,問題解決と意思決定場面を設定した.そして高次の思考技能育成に不可欠な要素として,問題の正確な把握・理解,可能な限り多くの解決方法を創出すること,解決あるいは決定に到る前段階での予備的評価,解決あるいは決定に関係する人々の利害・価値・信念の同定,そして望ましい解決方法を選択するためのトレードオフの5点を指摘した.しかしながら現在アメリカでは,こういった技能育成そのものの妥当性と可能性に関する批判が,科学的リテラシーの意味内容との関連で多くなされており,特にMorris Shamosの論を中心にそれをまとめた.次に,アメリカのBSCSによって開発されたミドルスクール対象の理科カリキュラム"Middle School Science & Technology"を題材に,そこでなされている高次の思考技能育成の具体的方策を検討した.その結果,第一の目的で指摘した高次の思考技能育成の場面が,主にグループを単位とした,ビデオ,読み物,各種科学的データの分析を中心にした活動に沿って展開されていることを指摘した.特にそこではロールプレイが重要な意味を持った活動として展開されており,コミュニケーションのスキル育成が高次の思考技能育成のための鍵となる活動として位置づけられていた.以上の結果より,従来の理科教育で言われてきた科学的思考能力の育成に加え,高次の思考技能の育成が,近年科学的リテラシーの育成を目指す中で,研究レベルでもカリキュラム開発のレベルでも重視されてきていることを明らかにした.今後その具体的中身を吟味すると共に,子どもたちが高次の思考技能をどの程度身につけているのかというその実態を明らかにしていく必要がある. | KAKENHI-PROJECT-08780145 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08780145 |
hu-PBL-SCIDマウスを用いたヒト同種培養表皮移植モデルの解析 | 1.ヒト表皮細胞の培養:数名の健常人ボランティアの皮膚生検組織よりトリプシン処理によって得たヒト表皮細胞を、Greenらの方法に従って、マイトマンシン処理した3T3細胞の共存下で培養した。2.SDIDマウスへの培養表皮移植モデルの確立:コンフルエントになった培養表皮細胞をディスパーゼ処理することにより得られたシート状の培養表皮を、SCIDマウスの背部皮下筋膜上に移植し、シリコンチェンバーで保護した。未処置SCIDマウスにおいて、培養表皮移植片が長期生着することを組織学的に確認した。3.hu-PBL-SCIDマウスの作製:健常人ボランティア末梢血より分離したヒトリシパ球(hu-PBL)(1×10^6/ml)を100ng/mlの抗CD3抗体(OKT3)存在下で2日間培養後、前日に20μ1の抗asialoGM1抗体を投与したSCIDマウスの腹腔内に2×10^7個移入することにより、hu-PBL-SCIDマウスを作製した。hu-PBL-SCIDマウスの各臓器におけるhu-PBLの再構築についてフローサイトメトリーを用いて解析した結果、ヒトCD45陽性細胞の割合は腹腔内>リンパ節・脾臓>末梢血の順に高く、hu-PBL移入後24日のリンパ節では1.5-25.5%(平均9.1%)の再構築が認められた。再構築したhu-PBLの内、CD4/CD8陽性細胞はそれぞれ36%/40%であった。4.hu-PBL-SCIDマウスへの同種培養表皮移植:hu-PBL移入後14日に、同種培養表皮をhu-PBL-SCIDマウスに移植した。組織学的に同種培養表皮移植後10日で移植片の脱落が認められた。また、免疫染色で同種培養表皮移植片直下にヒトCD3陽性T細胞の浸潤を確認した。1.ヒト表皮細胞の培養:数名の健常人ボランティアの皮膚生検組織よりトリプシン処理によって得たヒト表皮細胞を、Greenらの方法に従って、マイトマンシン処理した3T3細胞の共存下で培養した。2.SDIDマウスへの培養表皮移植モデルの確立:コンフルエントになった培養表皮細胞をディスパーゼ処理することにより得られたシート状の培養表皮を、SCIDマウスの背部皮下筋膜上に移植し、シリコンチェンバーで保護した。未処置SCIDマウスにおいて、培養表皮移植片が長期生着することを組織学的に確認した。3.hu-PBL-SCIDマウスの作製:健常人ボランティア末梢血より分離したヒトリシパ球(hu-PBL)(1×10^6/ml)を100ng/mlの抗CD3抗体(OKT3)存在下で2日間培養後、前日に20μ1の抗asialoGM1抗体を投与したSCIDマウスの腹腔内に2×10^7個移入することにより、hu-PBL-SCIDマウスを作製した。hu-PBL-SCIDマウスの各臓器におけるhu-PBLの再構築についてフローサイトメトリーを用いて解析した結果、ヒトCD45陽性細胞の割合は腹腔内>リンパ節・脾臓>末梢血の順に高く、hu-PBL移入後24日のリンパ節では1.5-25.5%(平均9.1%)の再構築が認められた。再構築したhu-PBLの内、CD4/CD8陽性細胞はそれぞれ36%/40%であった。4.hu-PBL-SCIDマウスへの同種培養表皮移植:hu-PBL移入後14日に、同種培養表皮をhu-PBL-SCIDマウスに移植した。組織学的に同種培養表皮移植後10日で移植片の脱落が認められた。また、免疫染色で同種培養表皮移植片直下にヒトCD3陽性T細胞の浸潤を確認した。1.ヒト表皮細胞の培養:数名の健常人ボランティアの皮膚生検組織よりトリプシン処理によって得た表皮細胞を、Greenらの方法に従って、マイトマイシン処理した3T3細胞の共存下で培養した。培養表皮細胞は、サブコンフルエントになった時点でトリプシン/EDTA処理により継代し、一部を凍結保存した。2.SCIDマウスへの培養表皮移植:培養表皮移植の2週間前に、SCIDマウス背部皮下にグラスディスクを挿入し、移植床を作製した。コンフルエントになった培養表皮細胞をディスパーゼ処理することにより得られたシート状の培養表皮を、グラスディスク下に形成された肉芽上に移植し、シリコンチェンバーで保護した。未処理SCIDマウスにおいて、培養表皮移植片が長期生着することを組織学的に確認した。4.今後、hu-PBL-SCIDマウスに培養表皮移植を行い、組織学的に移植片が拒絶されることを確認後、拒絶反応を担うリンパ球サブセット及びそのエフェクターメカニズムを明らかにする予定である。1.hu-PBL-SCIDマウスの作製:ヒト末梢血より分離したリンパ球(hu-PBL)(1×10^6/ml)を100ng/mlの抗CD3抗体(OKT3)存在下で2日間培養後、前日に20μlの抗asialoGM1抗体を投与したSCIDマウスの腹腔内に2×10^7個移入することにより、hu-PBL-SCIDマウスを作製した。hu-PBL-SCIDマウスの各臓器におけるhu- | KAKENHI-PROJECT-08670954 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08670954 |
hu-PBL-SCIDマウスを用いたヒト同種培養表皮移植モデルの解析 | PBLの再構築についてフローサイトメトリーを用いて解析した結果、ヒトCD45陽性細胞の割合は腹腔内>リンパ節・脾臓>末梢血の順に高く、hu-PBL移入後24日のリンパ節では1.5-25.5%(平均9.1%)の再構築が認められた。再構築したhu-PBLの内、CD4/CD8陽性細胞はそれぞれ36%/40%であった。2.hu-PBL-SCIDマウスへの同種培養表皮移植:hu-PBL移入後14日に、同種培養表皮をhu-PBL-SCIDマウスの背部皮下筋膜上に移植し、シリコンチェンバーで保護した。未処置SCIDマウスでは培養表皮移植片は生着したが、hu-PBL-SCIDマウスでは同種培養表皮移植後10日で移植片の脱落が組織学的に認められた。また、免疫染色で同種培養表皮移植片直下にヒトCD3陽性T細胞の浸潤を確認した。 | KAKENHI-PROJECT-08670954 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08670954 |
ミクロスケール題材を用いた展示デザインの検討-研究現場と博物館展示をつなぐ試み- | 本研究は、展示施設や研究機関において活用できるミクロスケール題材を扱う展示の開発視点を示すことを目的として実施した。博物館等の展示施設における展示のうち、ミクロスケールの題材を扱う展示を対象として国内外の既存展示調査を行い、展示の特徴と課題を整理した。2回のミクロスケール展示モデルの開発実践と、それらを用いた評価を通じて、ミクロスケール題材を扱う展示開発における質的・人的・技術的留意点を示すことができた。本研究は,研究現場の可視化技術・成果を活用した展示物の開発と評価を通して,生物機能や生態の理解に必要なミクロの視点を効果的に扱う「ミクロスケール展示」の展示デザインモデルを提案するものである.本研究はミクロスケール展示に関する既存展示調査と,展示開発・評価の2つの流れで実施する.国内外ミクロスケール展示の現状,及び実際の展示開発より抽出される研究現場と博物館展示制作者の恊働に必要な要素を合わせて考察し,分かりやすく教育効果の高い情報発信を行うための知見を研究者・展示制作者に還元することを目指す.平成26年度は,既存展示調査について質問紙調査の調査項目及び実施方法の検討を行うとともに,国外博物館調査については対象施設の絞りこみを行った.また展示開発・評価について,細胞生理学研究を行う東京大学の研究室と連携し,ウニの体を題材に小器官の機能と構造を紹介する展示セットを開発した.展示セットは日本動物学会が主催した一般市民向けイベントで公開した.さらに京都大学瀬戸臨海実験所が主催する大阪府内の高校生を対象とした実習において,開発物の評価を行った.26年度に実施した研究により,ミクロスケール展示開発に必要とされる質的要素(題材や着眼点など),人的要素(研究者や技術者の関わりなど),技術的要素(必要とされる機材や計画など)を抽出し,開発物の評価を行うことができた.今年度はこれらを検討し以後の開発・評価実践に役立てるとともに,既存展示の調査を進めていく.本研究は、研究現場の可視化技術・成果を活用した展示物の開発と評価を通して、生物機能や生態の理解に必要なミクロの視点を効果的に扱う「ミクロスケール展示」の展示デザインモデルを提案するものである。本研究はミクロスケール展示に関する既存展示調査と、展示開発・評価の2つの流れで実施する。国内外ミクロスケール展示の現状、及び実際の展示開発より抽出される研究現場と博物館展示制作者の恊働に必要な要素を合わせて考察し、分かりやすく教育効果の高い情報発信を行うための知見を研究者・展示制作者に還元することを目指す。平成27年度は、展示開発・評価について、民間企業の水族館と連携して肺魚の体構造と生態を紹介する展示映像コンテンツを開発し、実践した。当該コンテンツでは視聴環境として携帯端末とAR(拡張現実感)技術を用いることで、コンテンツの見せ方までを含めたデザインを提案できた。さらに開発したコンテンツを用いて、一般利用者を対象とした評価を実施した。一方既存展示調査のうち国外博物館調査の第一回目として、欧州の自然史系博物館及び水族館13館の展示調査を実施した。27年度は前年度の成果を受け、ミクロスケール展示開発に必要とされる題材や着眼点などの質的要素、研究者や技術者の関わりなどの人的要素、必要とされる機材や計画などの技術的要素に注目しながら第二回目の実践を行うことができた。またもう一方の柱である既存展示の現地調査を進めることができた。今年度は開発実践のまとめと既存展示の調査を中心に研究を進め、ミクロスケール展示開発のモデルを構築していく。本研究の柱の一つである展示開発と評価について、他機関と連携した第二回目の検討を計画通りに遂行することができた。展示調査については昨年延期となった国外展示調査を実施することができた。当初の計画から1年遅れての実施となっているが、今年度も引き続き計画を実施していく。国内展示調査については概ね計画通りに進んでいる。質問紙を用いた調査については、現地調査の過程でその内容及び方法を再度検討する必要ができたため、現在はその対応中である。本研究は、研究現場の可視化技術・成果を活用した展示物の開発と評価を通して、生物機能や生態の理解に必要なミクロの視点を効果的に扱う「ミクロスケール展示」の展示デザインモデルを提案するものである。本研究はミクロスケール展示に関する既存展示調査と、展示開発・評価の2つの流れで実施する。国内外ミクロスケール展示の現状、及び実際の展示開発より抽出される研究現場と博物館展示制作者の恊働に必要な要素を合わせて考察し、分かりやすく教育効果の高い情報発信を行うための知見を研究者・展示制作者に還元することを目指す。平成28年度実績の概要は次の通りである。既存展示調査については、欧州および北米の自然史系博物館及び水族館13館の展示調査を完了した。国内展示調査は一部を残し計画の概ねを完了した。前年度までに実施した調査結果について取りまとめ、応用生態工学会にて発表した。展示開発・評価については、平成27年度に民間の水族館と連携して開発した映像コンテンツ(第2回開発展示)について、一般利用者を対象とした評価を実施した。評価の結果、携帯端末とAR(拡張現実感)技術を用いた当該映像コンテンツでは、コンテンツの利用率及び内容への興味関心が高まることが示された。この結果は、日本展示学会及び世界水族館会議にて発表した。また初年度に開発したインタラクティブ映像展示(第1回開発展示)を用い、学校現場における利用評価を実施した。本研究の柱の一つである展示開発を計画通りに遂行し、その評価から有益な知見を得ることができた。一方の柱である展示調査については、国外展示調査分を完了し、国内展示調査については概ね計画通りに進んでいる。 | KAKENHI-PROJECT-26750074 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26750074 |
ミクロスケール題材を用いた展示デザインの検討-研究現場と博物館展示をつなぐ試み- | 当初計画していた質問紙調査は、現地調査の結果を受けて内容及び方法を再検討し、聞き取りを中心とした調査に変更した。これらの成果はそれぞれ学会で発表した。現在、展示開発と評価に関する論文を投稿している。本研究は、研究現場の可視化技術・成果を活用した展示物の開発と評価を通して、生物機能や生態の理解に必要なミクロの視点を効果的に扱う「ミクロスケール展示」の展示デザインモデルを提案するものである。本研究はミクロスケール展示に関する既存展示調査と、展示開発・評価の2つの流れで実施した。国内外ミクロスケール展示の現状、及び実際の展示開発より抽出される研究現場と博物館展示制作者の恊働に必要な要素を合わせて考察し、分かりやすく教育効果の高い情報発信を行うための知見を研究者・展示制作者に還元することを目指している。平成29年度研究実績の概要は次の通りである。第1に、国内外の既存展示調査を全て完了した。開発プロセスが確認できた調査結果を取り上げ、微小な生物の生態やマイクロハビタットの映像化について整理することができた。さらに撮影・編集・投影システム設計に関して、それぞれ留意点を指摘した。本結果は応用生態工学誌において論文として発表した。第2に、展示開発・評価について、平成28年度に続き学校現場において利用評価を実施した。調査コンテンツには、初年度に専門機関と連携して開発したウニの小器官を扱うインタラクティブ映像展示(第1回開発展示)を用いた。第1回開発展示の開発プロセス、展示評価、および研究期間中に開発した2つのコンテンツの利用実践について、それぞれ学会にて発表した。最後に、これまでに得られた成果の総合考察より、ミクロスケール題材を用いた展示デザインに関する報告書の取りまとめを行った。本研究は、展示施設や研究機関において活用できるミクロスケール題材を扱う展示の開発視点を示すことを目的として実施した。博物館等の展示施設における展示のうち、ミクロスケールの題材を扱う展示を対象として国内外の既存展示調査を行い、展示の特徴と課題を整理した。2回のミクロスケール展示モデルの開発実践と、それらを用いた評価を通じて、ミクロスケール題材を扱う展示開発における質的・人的・技術的留意点を示すことができた。本研究の柱の一つである展示開発と評価について,他機関と連携し,初回の検討をほぼ計画通りに遂行することができた.展示調査については研究代表者の所属機関変更により年度をまたいだ質問紙調査を見送ったが,今年度の実施に向けた準備ができている.国外調査については予定したスケジュールが業務上やむを得ない事由で中止となったため,改めてスケジュールを調整し実施する予定である.今年度は当初予定からやや遅れている国内外展示調査を重点的に進めると同時に、研究のまとめと発表に向けたデータの解析を進めていく。展示開発については6月の日本展示学会での発表に加え、投稿論文も準備中である。今年度は得られた結果のまとめ及び追加調査、論文投稿作業等を進め、総合的な考察を含めて報告書を作成する。 | KAKENHI-PROJECT-26750074 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26750074 |
芳香属性指数の異なる溶媒を用いた石炭モデル物質の水素化分解生成物の検討 | オートクレーブを用い、べンジルフェニルエーテルを試料として、合成硫化鉄触媒、2環系の溶媒(デカリン、テトラリン、ナフタレン)を単独、または混合して用い、水素初圧3MPaとして673748Kに30min保持した。反応後液状生成物はアセトンで希釈して、メンブランフィルターにて触媒を除いた後、GS/MSとGCによって生成物の同定と定量を行った。いずれの反応においても、べンジルフェニールエーテルの転化率は100%であった。デカリン単独溶媒を用いた反応において、分解生成物(トルエン、フェノールと微量のべンゼン)が最も多く生成した。テトラリン、ナフタレンの単独溶媒を用いた反応では、分解ラジカルのべンジル基が溶媒と反応したべンジルテトラリン、べンジルナフタレンを生成して、分解生成物生成量を減少させた。デカリン/ナフタレン、デカリン/テトラリンの混合割合を変えて、同じ芳香族指数fa(全炭素数に対する芳香族炭素数の割合)の溶媒を用いた反応では、分解生成物の収率にはそれほど大きな差は認められないが、デカリン/ナフタレン混合溶媒系の反応において、デカリン/テトラリン混合系溶媒による反応よりも、分解生成物が若干多く生成する傾向が認められた。しかし、単独溶媒の場合よりも混合溶媒を用いる反応において、分解生成物を多く生成する芳香族性指数の値があることが認められた。今後はこの点について、反応前後の溶媒組成変化による、溶媒の質(例えば供与性水素量など)を考慮した研究が必要である。オートクレーブを用い、べンジルフェニルエーテルを試料として、合成硫化鉄触媒、2環系の溶媒(デカリン、テトラリン、ナフタレン)を単独、または混合して用い、水素初圧3MPaとして673748Kに30min保持した。反応後液状生成物はアセトンで希釈して、メンブランフィルターにて触媒を除いた後、GS/MSとGCによって生成物の同定と定量を行った。いずれの反応においても、べンジルフェニールエーテルの転化率は100%であった。デカリン単独溶媒を用いた反応において、分解生成物(トルエン、フェノールと微量のべンゼン)が最も多く生成した。テトラリン、ナフタレンの単独溶媒を用いた反応では、分解ラジカルのべンジル基が溶媒と反応したべンジルテトラリン、べンジルナフタレンを生成して、分解生成物生成量を減少させた。デカリン/ナフタレン、デカリン/テトラリンの混合割合を変えて、同じ芳香族指数fa(全炭素数に対する芳香族炭素数の割合)の溶媒を用いた反応では、分解生成物の収率にはそれほど大きな差は認められないが、デカリン/ナフタレン混合溶媒系の反応において、デカリン/テトラリン混合系溶媒による反応よりも、分解生成物が若干多く生成する傾向が認められた。しかし、単独溶媒の場合よりも混合溶媒を用いる反応において、分解生成物を多く生成する芳香族性指数の値があることが認められた。今後はこの点について、反応前後の溶媒組成変化による、溶媒の質(例えば供与性水素量など)を考慮した研究が必要である。オートクレーブを用い、ベンジルフェニルエーテルを試料として、合成硫化鉄触媒、2環系の溶媒(デカリン、テトラリン、ナフタレン)を単独、または混合して用い、水素初圧30kg・cm^2として400475°Cに30min保持した。反応後オートクレーブを水中で急冷し室温まで降温した。ガスは微量しか生成しなかった。液状生成物はアセトンで希釈しメンブランフィルターにて触媒を除いた後、GS/MSとGCによって生成物の同定と定量を行った。何れの反応においても、ベンジルフェニールエーテルの転化率は100%であった。単独溶媒を用いた反応では、反応温度にかかわらずデカリン溶媒を用いた反応において、分解生成物(トルエン、フェノールと微量のベンゼン)が最も多く生成した。テトラリン、ナフタレンを溶媒に用いると、デカリンの場合に比べて溶媒とベンジル基の反応によるベンジルテトラリン、ベンジルナフタレンが生成するので、分解生成物特にトルエンの生成量が減少した。デカリン/ナフタレン(De+Na)、デカリン/テトラリン(De+Te)の混合割合を変えて同じ芳香族指数fa(全炭素数に対する芳香族炭素数の割合)の溶媒を用いて反応すると、De+Na系ではフェノールが、De+Te系ではトルエンがそれぞれ多くなった。ナフタレンが存在する系ではテトラリンの存在する系よりもベンジル基と溶媒との反応が多くなるためである。しかし、テトラリン単独溶媒とDe+Na系のfa=0.6の溶媒で比較すると、それ程大きな相違は認められない。またDe+Na系においてナフタレン量を多くすると、テトラリン単独の場合よりも分解生成物が多くなるfa値が存在することが認められた。今後はこの点について、反応前後の溶媒の組成変化、溶媒の質的指数を考慮して検討を進める予定である。オートクレーブを用い、ベンジルフェニルエーテルを試料として、合成硫化鉄触媒、2還系の溶媒(デカリン、テトラリン、ナフタレン)を単独、または混合して用い、水素初圧3MPaとして673748Kに30min保持した。反応後液状生成物はアセトンで希釈して、メンブランフィルターにて触媒を除いた後、GS/MSとGCによって生成物の同定と定量を行った。いずれの反応においても、ベンジルフェニールエーテルの転化率は100%であった。デカリン単独溶媒を用いた反応において、分解生成物(トルエン、フェノールと微量のベンゼン)が最も多く生成した。 | KAKENHI-PROJECT-10650767 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10650767 |
芳香属性指数の異なる溶媒を用いた石炭モデル物質の水素化分解生成物の検討 | テトラリン、ナフタレンの単独溶媒を用いた反応では、分解ラジカルのベンジル基が溶媒と反応したベンジルテトラリン、ベンジルナフタレンを生成して、分解生成物生成量を減少させた。デカリン/ナフタレン、デカリン/テトラリンの混合割合を変えて、同じ芳香族指数fa(全炭素数に対する芳香族炭素数の割合)の溶媒を用いた反応では、分解性生物の収率にはそれほど大きな差は認められないが、デカリン/ナフタレン混合溶媒系の反応において、デカリン/テトラリン混合系溶媒による反応よりも、分解生成物が若干多く生成する傾向が認められた。しかし、単独溶媒の場合よりも混合溶媒を用いる反応において、分解生成物を多く生成する芳香族性指数の値があることが認められた。今後はこの点について、反応前後の溶媒組成変化による、溶媒の質(例えば供与性水素量など)を考慮した研究が必要である。 | KAKENHI-PROJECT-10650767 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10650767 |
細胞内寄生性原虫の感染防御機構 | TLR非依存的にIFN-γが産生される分子機序について、T.cruzi感染により引き起こされる宿主の細胞内カルシウムイオンの濃度上昇が関与しているかどうかを検討する目的で、FK506を用いてカルシウムシグナルを阻害したところ、T.cruzi感染によるIFN-γ産生が減少した。また、FK506がカルシニューリンの阻害剤であることから、カルシニューリンの下流に存在するNFATc1のT.cruzi感染によるIFN-γ産生における役割について検討したところ、T.cruzi感染によりNFATc1が核移行し、さらにNFATc1欠損細胞においてはT.cruzi感染によるIFN-γ産生が減少した。さらに、NFATc1欠損樹状細胞はT.cruzi感染による活性化が著しく減弱した。以上のことから、T.cruzi感染後TLR非依存的にNFATc1を介して自然免疫担当細胞よりIFN-γが産生され宿主自然免疫応答が惹起されることが判明した。これらの結果より、T.cruzi感染に対し宿主がTLR依存的・非依存的な自然免疫応答を引き起こす防御機構を有していることが明らかとなった。本研究目的は、細胞内寄生性原虫に対する宿主自然免疫応答に関連する分子を探索し、個体レベルでのその免疫学的役割及び抗原虫作用を検討することである。本研究者は、本年度に自然免疫系に必須の役割を有しているToll-like receptor (TLR)のシグナル伝達分子Triblの生理的役割をTribl欠損マウスの解析を通じて明らかにした。Triblはセリンスレオニンキナーゼ用の分子であるが、そのキナーゼドメインは活性中心を欠いており従ってその活性は失われている。Tribl欠損マウス由来のマクロファージの解析から、Tribl欠損マクロファージでは野生型細胞に比べて、ある一群のLPS誘導性遺伝子群の有意な過剩発現が認められ、それらはTriblと結合する分子の探索から転写因子であるC/EBPファミリー分子の一つであるNF-IL6(C/EBPβ)により制御される遺伝子群であることが判明した。Triblを過剩発現させると、NF-IL6依存的な遺伝子の活性化が量依存的に低下した。また、Triblの過剩発現により、NF-IL6のタンパク質レベルが低下することがその原因と考えられた。逆に、Triblの欠損によりNF-IL6のDNA結合能が上昇し、NF-IL6のタンパク質量及びmRNA量も増大していたことから、Tribl欠損細胞において認められたNF-IL6制御性遺伝子の過剩発現は、NF-IL6の過剩存在により引き起こされたことが考えられた。以上のことから、自然免疫系担当細胞におけるTriblの役割を本研究者は本年度明らかにした。TLR非依存的にIFN-γが産生される分子機序について、T.cruzi感染により引き起こされる宿主の細胞内カルシウムイオンの濃度上昇が関与しているかどうかを検討する目的で、FK506を用いてカルシウムシグナルを阻害したところ、T.cruzi感染によるIFN-γ産生が減少した。また、FK506がカルシニューリンの阻害剤であることから、カルシニューリンの下流に存在するNFATc1のT.cruzi感染によるIFN-γ産生における役割について検討したところ、T.cruzi感染によりNFATc1が核移行し、さらにNFATc1欠損細胞においてはT.cruzi感染によるIFN-γ産生が減少した。さらに、NFATc1欠損樹状細胞はT.cruzi感染による活性化が著しく減弱した。以上のことから、T.cruzi感染後TLR非依存的にNFATc1を介して自然免疫担当細胞よりIFN-γが産生され宿主自然免疫応答が惹起されることが判明した。これらの結果より、T.cruzi感染に対し宿主がTLR依存的・非依存的な自然免疫応答を引き起こす防御機構を有していることが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-19041046 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19041046 |
プレートダイナミクスモデルの構築 | (1)二次元モデルにおいて、レオロジーに過去の変形の歴史を考慮、プレート運動を再現するモデルを構築した。また、これをもとに片側沈み込みを再現するモデルを構築した。片側沈み込みが起こるためには、何らかの物性量の非対称性が要求されるが、本研究においてはレオロジカルな非対称性が強調された(2)リッジプッシュ等の力が、どの程度あれば沈み込みが開始するかを系統的に調べるために上記のモデルをもとにして沈み込みの開始のモデルを構築した。(3)三次元球殻モデルにおいて、現在のプレート運動を再現するような基礎モデルを構築した。本研究では、プレート境界の粘性を下げる事によりプレート運動を生成する事を目指したが、その粘性率の大きさとプレート運動らしさの関係について主に調べた。その結果、粘性を下げるとプレート運動に近くなるが、その方向や大きさについては、現実のものと異なり、密度異常の分布、あるいはプレート境界のレオロジカルな構造についてのさらなる研究の必要性が明らかになってきた。(4)三次元モデルにおいて、大陸の熱遮蔽効果を考慮して大陸が動くモデルを構築した。本研究においては大陸と対流との完全な力学的カップリングは、考慮出来なかったが、熱遮蔽効果により大陸が分裂する様子等は再現出来た。(5)島弧にそった地球科学的観測量(火山の分布等)の変化を説明するために、三次元モデルにおいて、背弧で小規模対流が生じる条件を求め、その地学的根拠について考察した。(6)プレート境界において重要な役割を果たすと思われる、破壊現象の数値シミュレーションを行なった。手法はDEMであるが、本研究では、各要素間の回転の効果を系統的に調べ、その重要性を明らかにした。(7)マントル対流が地球史に与える影響についてパラメータ化対流論を用いて考察し、プレートテクトニクスの開始時期について考察した。(1)二次元モデルにおいて、レオロジーに過去の変形の歴史を考慮、プレート運動を再現するモデルを構築した。また、これをもとに片側沈み込みを再現するモデルを構築した。片側沈み込みが起こるためには、何らかの物性量の非対称性が要求されるが、本研究においてはレオロジカルな非対称性が強調された(2)リッジプッシュ等の力が、どの程度あれば沈み込みが開始するかを系統的に調べるために上記のモデルをもとにして沈み込みの開始のモデルを構築した。(3)三次元球殻モデルにおいて、現在のプレート運動を再現するような基礎モデルを構築した。本研究では、プレート境界の粘性を下げる事によりプレート運動を生成する事を目指したが、その粘性率の大きさとプレート運動らしさの関係について主に調べた。その結果、粘性を下げるとプレート運動に近くなるが、その方向や大きさについては、現実のものと異なり、密度異常の分布、あるいはプレート境界のレオロジカルな構造についてのさらなる研究の必要性が明らかになってきた。(4)三次元モデルにおいて、大陸の熱遮蔽効果を考慮して大陸が動くモデルを構築した。本研究においては大陸と対流との完全な力学的カップリングは、考慮出来なかったが、熱遮蔽効果により大陸が分裂する様子等は再現出来た。(5)島弧にそった地球科学的観測量(火山の分布等)の変化を説明するために、三次元モデルにおいて、背弧で小規模対流が生じる条件を求め、その地学的根拠について考察した。(6)プレート境界において重要な役割を果たすと思われる、破壊現象の数値シミュレーションを行なった。手法はDEMであるが、本研究では、各要素間の回転の効果を系統的に調べ、その重要性を明らかにした。(7)マントル対流が地球史に与える影響についてパラメータ化対流論を用いて考察し、プレートテクトニクスの開始時期について考察した。本年度は、並列計算機(PCクラスター32台、64CPU)を購入し、そのセットアップを行い、並列化したマントル対流のプログム(二次元・三次元箱型、三次元球殻)を実装し動作確認を行った。また、本研究の予備的研究をいくつかまとめ、雑誌に発表した。1.二次元箱型における降伏の歴史を考慮したレオロジーを持つマントル対流に関する数値実験を行いプレート運動に近い振るまいをすることを確認した。2.フィリッピンプレートが、何故、現在示されるような方向に運動を行っているかについて、プレートにかかるスラブプル、スラブドラッグ等の推定から考察した。3.プレート運動を引き起こすレオロジカルな原因として重要と考えられる破壊現象について、個別要素法を用いた一軸圧縮の数値シミュレーションの立場から解析を行った。この他、本研究のメンバーである本多と岩瀬は、渡米し、カリフォルニア大学のPaul J.Tackley氏らとマントル対流の数値シミュレーションの問題点について議論した。また、瀬野はOHPシンポジウム(山梨県、ホテルマウント富士)に参加し、巨大な浅発地震が起こるメカニズムについて、規則性を見つけ、プレートにかかるいろいろな力を考慮する事により説明を試み、本多は、同シンポジウムで降伏の歴史を考慮したレオロジーを持つマントル対流において、降伏応力が水平方向に変化する場合は、沈み込みが同じ場所で繰り返す事を示唆した。現在のプレート運動を実現するために三次元球殻内のマントル対流コードを用いて研究を行った。本研究ではプレートのような運動を実現させるために、プレート境界の粘性を周囲のそれに比較して強制的に下げた。対流を駆動する密度異常としては、震源分布に対応した密度異常のモデルおよび沈み込みの歴史より推定した密度異常のモデルを用いた。その結果、プレート運動の大まかな動きを再現する事が出来たが、太平洋プレートに対して他のプレートが速く動きすぎるなどの問題が残った。 | KAKENHI-PROJECT-12440122 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12440122 |
プレートダイナミクスモデルの構築 | また、プレート境界のレオロジーをより物理的なモデル(例えば降伏)に変化させた場合の検討が必要となるが、この点については予備的な結果が出始めている。二次元モデルを用いた降伏および、その履歴効果を考えた片側沈み込みの研究を行らた結果、定常的なモデルの作成は困難であり、その原因は主に海嶺が海溝に比較して動きやすい事である事が分かった。しかし、これは海嶺におけるweakeningのメカニズムが解明される必要があり、この点は今後の課題である。また、二次元計算においても計算量は、かなり多く、三次元への拡張のためには、モデルの特性を生かしつつ計算量を減らす工夫が必要である。プレート境界を弱くするメカニズムとして岩石の破壊は重要である。これに関して従来のDiscrete Element Methodを拡張し、要素間の相互作用の影響を考察した。この他、プレート運動解明の基本となるプレートテクトニクスの理論に関してまとめを行い出版した。現在のプレート運動を説明するモデルの構築においては、プレート境界のレオロジーがプレート運動に与える効果を調べた。その結果、プレート境界を適度に柔らかくすれば、どのようなレオロジーを考慮しても、結果に大きな影響を与えない事が判明した。また、このモデルを地球シミュレータに実装し、プレートの沈み込み角度がプレート連動に与える影響に関する予備的な計算を行い、沈み込み角度がプレート同士のカップリングに影響を与えそうな事が判明した。沈み込み帯の背弧側のマントルの流れの様相を明らかにするために三次元モデルを構築し、背弧に小規模対流の存在の可能性について検討を行った。その結果、背弧に粘性が1018Pa secから1019 Pa secであり厚さが80km程度の低粘性層が存在すれば、火山の分布等から推定されているHot Fingersを説明しうる可能性が明らかにされた。沈み込みが、どのように開始されるかを詞べる為に、二次元のダイナミックな沈み込み帯のモデルを構築し、いわゆるリッジ・プッシュ等の影響を調べた。その結果、スラブが150-230kmの深さになった時、はじめて自発的に沈み込みが始まる事が分かった。その他、マントル対流と大陸の相互作用について、大陸の動きをある程度、考慮したモデルを構築し、大陸が地表面の約30%程度を覆えば、大陸の離合・集散が起こる事を示した。また、パラメータ化対流論を用いて、プレートテクトニクスの開始時期について考察した。 | KAKENHI-PROJECT-12440122 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12440122 |
鼻副鼻腔炎粘膜における血管増殖制御機構に関する基礎的研究―難治性慢性気道炎の病態解明と治療をめざして― | 鼻汁中の血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は、対アルブミン比でアレルギー性鼻炎群(AR)、ARを合併した慢性副鼻腔炎群(AS),ARを合併しない慢性副鼻腔炎群(NAS)の3群間で比較したところ、NAS群で他の2群と比べて有為に少なかった。アレルギー性鼻副鼻腔疾患(AR & AS)の鼻副鼻腔粘膜を用いた免疫組織化学的検討では、浸潤好酸球等以外にも漿液腺細胞に抗VEGF抗体陽性の所見が認められた。AR群およびAS群では、固有粘膜の腺組織の漿液腺、粘液腺への明らかな分化に基づく腺組織の増殖が認められる一方で、NAS群では漿液腺、粘液腺への分化が不明確な腺組織の増殖を認め、この腺組織の増殖様式の違いが、鼻汁中VEGFに影響を与えていると思われた。末梢血中のVEGFは、鼻汁中に比べて極めて微量であり、VEGF産生が炎症局所の粘膜由来であることをうかがわせる。また、鼻副鼻腔炎疾患のある例では、それらの疾患を認めないコントロール群と比較検討して血中VEGFが有為に多かったが、AR、AS、NASの3群間で有為な差は認められなかった。手術で摘出した鼻茸由来の線維芽細胞の培養細胞を用いた検討で、VEGFは、腫瘍細胞でのこれまでの検討報告と同様に、低酸素刺激に対して産生増加を認めた。しかし、インフルエンザ桿菌エンドトキシン単独刺激では、産生増加は認められなかった。低酸素下でのエンドトキシン刺激では、低酸素単独刺激時と同様に有為なVEGF産生増加を認めた。低酸素刺激に対するVEGFの産生増加は、DMSOやアンピシリンにて抑制されなかったが、ロキシスロマイシンやクラリスロマイシン等の14員環系マクロライドやデキサメサゾン(ステロイド)は抑制的に作用した。低酸素刺激による線維芽細胞からのVEGF産生亢進の細胞内シグナル伝達系に検討で、PD098059の投与で、Gliotoxinの投与よりも著明に産生が抑制された。これは、VEGF産生の際の細胞内シグナル伝達系が、主にNFκBの核内転移の系よりも、MAPキナーゼのリン酸化経路に依存していることが示唆された。鼻汁中の血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は、対アルブミン比でアレルギー性鼻炎群(AR)、ARを合併した慢性副鼻腔炎群(AS),ARを合併しない慢性副鼻腔炎群(NAS)の3群間で比較したところ、NAS群で他の2群と比べて有為に少なかった。アレルギー性鼻副鼻腔疾患(AR & AS)の鼻副鼻腔粘膜を用いた免疫組織化学的検討では、浸潤好酸球等以外にも漿液腺細胞に抗VEGF抗体陽性の所見が認められた。AR群およびAS群では、固有粘膜の腺組織の漿液腺、粘液腺への明らかな分化に基づく腺組織の増殖が認められる一方で、NAS群では漿液腺、粘液腺への分化が不明確な腺組織の増殖を認め、この腺組織の増殖様式の違いが、鼻汁中VEGFに影響を与えていると思われた。末梢血中のVEGFは、鼻汁中に比べて極めて微量であり、VEGF産生が炎症局所の粘膜由来であることをうかがわせる。また、鼻副鼻腔炎疾患のある例では、それらの疾患を認めないコントロール群と比較検討して血中VEGFが有為に多かったが、AR、AS、NASの3群間で有為な差は認められなかった。手術で摘出した鼻茸由来の線維芽細胞の培養細胞を用いた検討で、VEGFは、腫瘍細胞でのこれまでの検討報告と同様に、低酸素刺激に対して産生増加を認めた。しかし、インフルエンザ桿菌エンドトキシン単独刺激では、産生増加は認められなかった。低酸素下でのエンドトキシン刺激では、低酸素単独刺激時と同様に有為なVEGF産生増加を認めた。低酸素刺激に対するVEGFの産生増加は、DMSOやアンピシリンにて抑制されなかったが、ロキシスロマイシンやクラリスロマイシン等の14員環系マクロライドやデキサメサゾン(ステロイド)は抑制的に作用した。低酸素刺激による線維芽細胞からのVEGF産生亢進の細胞内シグナル伝達系に検討で、PD098059の投与で、Gliotoxinの投与よりも著明に産生が抑制された。これは、VEGF産生の際の細胞内シグナル伝達系が、主にNFκBの核内転移の系よりも、MAPキナーゼのリン酸化経路に依存していることが示唆された。鼻アレルギー例(NA)、NAを有する慢性副鼻腔炎例(AS)、NAを有しない慢性副鼻腔炎例(NAS)の3群間で、鼻汁および末梢血を採取し血管内皮増殖因子(VEGF)の定量比較を対アルブミン比(/Alb.)で行った。その結果、まず鼻副鼻腔炎有疾患例では鼻汁中VEGF/ALb.は、末梢血中VEGF/Alb.よりも有為に高かった。そして、鼻汁中VEGF/ALb.はNA、ASで有為にNASよりも高かった。また、末梢血中VEGF/Alb.は、疾患群間で有為差を認めなかったが、鼻副鼻腔炎有疾患例で、疾患を有しない例と比べて有為に高かった。 | KAKENHI-PROJECT-11671694 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11671694 |
鼻副鼻腔炎粘膜における血管増殖制御機構に関する基礎的研究―難治性慢性気道炎の病態解明と治療をめざして― | 抗VEGFモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学的検討にて、炎症巣における浸潤細胞では、リンパ球、マクロファージ、好酸球で陽性像を呈し、腺組織では漿液腺の腺房細胞に陽性を示した。また、上皮細胞の一部にも陽性像が認められた。以上の研究内容の一部は、「副鼻腔炎の有無を検査する方法、特に慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎患者における副鼻腔炎併発の診断に有効な検査方法および検査薬の提供」と題して特許の出願を既に行った。(整理番号=S10217G1)ヒト鼻茸由来培養線維芽細胞を用いて、低酸素やインフルエンザ菌エンドトキシン刺激による血管内皮細胞増殖因子(VEGF)産生について検討を行った。低酸素刺激では、未刺激と比べて有意にVEGF産生は亢進した。エンドトキシン刺激では、有意な産生能の変化は認められなかった。一方、RANTESやIL8などのケモカインは、エンドトキシン刺激では産生が有意に亢進し、低酸素刺激では産生が有意に低下した。低酸素下のエンドトキシン刺激では、VEGF産生およびRANTESやIL8などのケモカイン産生ともに有意に亢進した。低酸素下でのVEGF産生は、細胞内シグナル伝達系でNFκBの核内転移をGliotoxinにより抑制することにより逆に産生が増加したが、PD 098059によりMAPKキナーぜを抑制することにより産生は抑制された。エンドトキシン刺激によるRANTESやIL8などのケモカイン産生は、細胞内シグナル伝達系でNFκBの核内転移をGliotoxinにより抑制することにより産生は有意に抑制された。しかし、PD 098059によるMAPKキナーぜの抑制では、IL8産生は有意に亢進し、RANTES産生は、Gliotoxinより軽度の抑制がかかった。以上より、線維芽細胞からのVEGF産生は、炎症細胞の遊走に関連したケモカインとはことなった条件、あるいは細胞内シグナル伝達系で制御されていると考えられた。ヒト鼻茸由来線維芽細胞の培養細胞を用いた研究で、低酸素刺激により血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の産生増加が認められた。しかし、この時IL8やRANTESといったケモカインの産生増加は認められなかった。同じ細胞の培養系を用いた研究で、インフルエンザ菌エンドトキシンの刺激では、逆にケモカインの産生増加は認められるもののVEGFの産生増加は認められなかった。低酸素刺激でのVEGF産生増加に対して、DMSOやアンピシリンは抑制作用を有しなかったが、ロキシスロマイシンやクラリスロマイシン等の14員環系マクロらイドやデキサメサゾン(ステロイド)は抑制的に作用した。低酸素刺激による線維芽細胞からのVEGF産生亢進の細胞内シグナル伝達系に検討で、PDO98059の投与で、Gliotoxinの投与よりも著明に産生が抑制された。これは、VEGF産生の際の細胞内シグナル伝達系が、主にNFκBの核内転移の系よりも、MAPキナーゼのリン酸化経路に依存していることが示唆された。今後は、直接プロモータ領域の検討を行うことによりもっと明確な細胞内シグナル伝達系に関する情報が得られると考えられる。VEGFの生理活性は、血管の増殖であり、透過性の亢進でありいずれも炎症反応には欠かせないものである。今後、上記のようなシグナルのより詳細な検討により、より効率的な制御が可能になると思われ治療への応用が期待される。 | KAKENHI-PROJECT-11671694 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11671694 |
次世代型超高密度記録用バリウムフェライト薄膜ハードディスク高速形成装置の開発 | 本研究では、スパッタ法を用いた六方晶バリウムフェライト薄膜ハードディスクに対する・低温形成法の確立を主目的としている。これに必要な装置として対向ターゲット式スパッタ装置を基本として、複合型ターボポンプ、高性能永久磁石、基板加熱等目的にかなった機能を付加してバリウムフェライト薄膜ハードディスクの形成装置を試作した。特に、高性能排気系の導入により、ハスッタガスを主バルブを閉じることなく数Torrまで導入でき、これによって不純物ガスの極めて少ない状態での薄膜形成が可能となった。純鉄などの強磁性ターゲットを用いた装置の特性評価によって、高密度プラズマの形勢が容易にできることを明らかにした。バリウムフェライト薄膜を室温もしくは低基板温度で形成し、その後大気中で熱処理を施すことによって結晶化を行うといった、実際の記録媒体の大量生産に適応できるようなプロセスを提案し、薄膜の特性評価を行った。あわせて、通常用いられている直流2極マグネトロンスパッタ法とのちがいについても検討を加えた。その結果、マグネトロンスパッタ法では組成ずれが大きくバリウムの濃度が減少していること、またその結晶化温度は本研究で試作した対向ターゲット式スパッタ法によって得られた薄膜と比較して高いということを明らかにした。このことは実際の製造プロセスにおける大きなメリットとなる。さらに、試作した形成装置において、基板温度を変化して形成した薄膜について検討した結果、薄膜形成時の基板温度によって結晶配向方位が異なるということが明らかになった。低温で形成した薄膜は、その磁気的性質、特に記録媒体として重要な因子である保磁力の制御が熱処理温度で制御できることが明らかになった。実際のハードディスクを試作し、その電磁変換特性を評価した結果、作製条件などの最適化はなされてないが100kbpit程度の高密度記録が容易に実現できることが明らかになった。今後、レーザー光等を用いた高速結晶化ならびに結晶粒子の微細化の研究を展開していくことによって、より高性能なバリウム薄膜ハードディスクの形成が可能となる。本研究では、スパッタ法を用いた六方晶バリウムフェライト薄膜ハードディスクに対する・低温形成法の確立を主目的としている。これに必要な装置として対向ターゲット式スパッタ装置を基本として、複合型ターボポンプ、高性能永久磁石、基板加熱等目的にかなった機能を付加してバリウムフェライト薄膜ハードディスクの形成装置を試作した。特に、高性能排気系の導入により、ハスッタガスを主バルブを閉じることなく数Torrまで導入でき、これによって不純物ガスの極めて少ない状態での薄膜形成が可能となった。純鉄などの強磁性ターゲットを用いた装置の特性評価によって、高密度プラズマの形勢が容易にできることを明らかにした。バリウムフェライト薄膜を室温もしくは低基板温度で形成し、その後大気中で熱処理を施すことによって結晶化を行うといった、実際の記録媒体の大量生産に適応できるようなプロセスを提案し、薄膜の特性評価を行った。あわせて、通常用いられている直流2極マグネトロンスパッタ法とのちがいについても検討を加えた。その結果、マグネトロンスパッタ法では組成ずれが大きくバリウムの濃度が減少していること、またその結晶化温度は本研究で試作した対向ターゲット式スパッタ法によって得られた薄膜と比較して高いということを明らかにした。このことは実際の製造プロセスにおける大きなメリットとなる。さらに、試作した形成装置において、基板温度を変化して形成した薄膜について検討した結果、薄膜形成時の基板温度によって結晶配向方位が異なるということが明らかになった。低温で形成した薄膜は、その磁気的性質、特に記録媒体として重要な因子である保磁力の制御が熱処理温度で制御できることが明らかになった。実際のハードディスクを試作し、その電磁変換特性を評価した結果、作製条件などの最適化はなされてないが100kbpit程度の高密度記録が容易に実現できることが明らかになった。今後、レーザー光等を用いた高速結晶化ならびに結晶粒子の微細化の研究を展開していくことによって、より高性能なバリウム薄膜ハードディスクの形成が可能となる。本研究では、スパッタ法を用いた六方晶バリウムフェライト薄膜ハードディスクに対する高速・低温形成法の確立を主目的としている。これに必要なスパッタ装置として対向ターゲット式スパッタ装置を基本にして、複合型ターボ分子ポンプ、高性能永久磁石、紫外線照射用石英窓、反応ガス導入端子そして基板加熱等の目的にかなった機能を付加してバリウムフェライト薄膜ディスク形成装置を試作した。ターボポンプを設置したことにより、短時間で10^<-7>Torrまで排気可能となった。また真空槽が新しく残留ガスとして水をかなり含んでいるがこれはある程度時間が経過すれば解決するものである。一方、スパッタガスの導入は数Torrまで主バルブを閉じることなくガスを導入できることが明らかになった。これによって不純物のきわめて少ない薄膜が形成可能になる。永久磁石としてNd-Fe-B系を用いた結果、プラズマ収束用磁界は放電空間中心において約300ガウスの強磁界となっていることが明らかになった。これによってバリウムフェライトターゲットを用いた放電において約400ボルト程度とスパッタリングにおける最適放電電圧が実現されている。また基板電位は+5ボルト程度の正電位となっていた。酸素などの反応性ガスは薄膜形成ではスパッタリング速度を低下させるためターゲット近傍に導入するのは得策ではない。この反応性ガスは酸化物薄膜の反応成長にのみ必要であるため、ここでは基板表面に直接吹き付ける構造として酸化反応の促進ならびに薄膜の高速付着を図った。基板加熱はカンタルヒーター線により、最高700°Cまで可能であった。今後は紫外光照射によるバリウムフェライト薄膜の低温・高速形成 | KAKENHI-PROJECT-06555093 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06555093 |
次世代型超高密度記録用バリウムフェライト薄膜ハードディスク高速形成装置の開発 | ならびにハードディスクでの電磁変換特性の評価に関する研究を展開する。本研究では、スパッタ法を用いた六方晶バリウムフェライト薄膜ハードディスクに対する・低温形成法の確立を主目的としている。これに必要な装置として対向ターゲット式スパッタ装置を基本として、複合型ターボポンプ、高性能永久磁石、基板加熱等目的にかなった機能を付加してバリウムフェライト薄膜ハードディスクの形成装置を試作した。特に、高性能排気系の導入により、スパッタガスを主バルブを閉じることなく数Torrまで導入でき、これによって不純物ガスの極めて少ない状態での薄膜形成が可能となった。純鉄などの強磁性ターゲットを用いた装置の特性評価によって、高密度プラズマの形勢が容易にできることを明らかにした。バリウムフェライト薄膜を室温もしくは低基板温度で形成し、その後大気中で熱処理を施すことによって結晶化を行うといった、実際の記録媒体の大量生産に適応できるようなプロセスを提案し、薄膜の特性評価を行った。あわせて、通常用いられている直流2極マグネトロンスパッタ法とのちがいについても検討を加えた。その結果、マグネトロンスパッタ法では組成ずれが大きくバリウムの濃度が減少していること、またその結晶化温度は本研究で試作した対向ターゲット式スパッタ法によって得られた薄膜と比較して高いということを明らかにした。このことは実際の製造プロセスにおける大きなメリットとなる。さらに、試作した形成装置において、基板温度を変化して形成した薄膜について検討した結果、薄膜形成時の基板温度によって結晶配向方位が異なるということが明らかになった。低温で形成した薄膜は、その磁気的性質、特に記録媒体として重要な因子である保磁力の制御が熱処理温度で制御できることが明らかになった。実際のハードディスクを試作し、その電磁変換特性を評価した結果、作製条件などの最適化はなされてないが100kbpit程度の高密度記録が容易に実現できることが明らかになった。今後、レーザー光等を用いた高速結晶化ならびに結晶粒子の微細化の研究を展開していくことによって、より高性能なバリウム薄膜ハードディスクの形成が可能となる。 | KAKENHI-PROJECT-06555093 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06555093 |
熱電子・スパッタ法による一次元ナノ・カーボン・ファイバを含む複合炭素薄膜 | 研究題目「フィラメント・アシスト・スパッタ法による一次元ナノ・カーボン・ファイバを含む複合炭素薄膜」に関して、本年度研究目標とした中で、*1)一次元カーボン・ファイバを含む複合炭素薄膜の再現性の確立、*2)複合炭素薄膜の結晶性評価、に焦点を絞り重点的に研究を進めた。*1)に関しては、スパッタ法に付加したフィラメント効果を調べ、再現性を図るため、基板温度を室温から650度C、フィラメント温度を2000度Cまで変化させ、実験を積み重ねた。その結果、高分解能電子顕微鏡、原子間力顕微鏡による観察では、フィラメント温度がその熱電子放出温度1800度C以上において、結晶性薄膜の中に微細炭素繊維(ナノサイズ)が再現性よく含まれて居ることを確認した。*2)に関して、電子分光分析装置を用いた結合エネルギーの分離による結晶組成の評価及び電子線回折による構造解析から、得られた薄膜中に、フィラメントの素材であるタングステンは含まれず、微結晶粒子より成り立つ六方晶系黒鉛類似のものであることを確認している。研究題目「フィラメント・アシスト・スパッタ法による一次元ナノ・カーボン・ファイバを含む複合炭素薄膜」に関して、本年度研究目標とした中で、*1)一次元カーボン・ファイバを含む複合炭素薄膜の再現性の確立、*2)複合炭素薄膜の結晶性評価、に焦点を絞り重点的に研究を進めた。*1)に関しては、スパッタ法に付加したフィラメント効果を調べ、再現性を図るため、基板温度を室温から650度C、フィラメント温度を2000度Cまで変化させ、実験を積み重ねた。その結果、高分解能電子顕微鏡、原子間力顕微鏡による観察では、フィラメント温度がその熱電子放出温度1800度C以上において、結晶性薄膜の中に微細炭素繊維(ナノサイズ)が再現性よく含まれて居ることを確認した。*2)に関して、電子分光分析装置を用いた結合エネルギーの分離による結晶組成の評価及び電子線回折による構造解析から、得られた薄膜中に、フィラメントの素材であるタングステンは含まれず、微結晶粒子より成り立つ六方晶系黒鉛類似のものであることを確認している。 | KAKENHI-PROJECT-13875060 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13875060 |
急性期精神分裂病患者のQOLおよびケアの満足度に関する看護の質の比較研究 | 本研究の目的は、1)患者のQOLと満足度の自記式調査紙と患者の記録物からの2つの方法による調査、2)精神病院の設置主体や規模等の違いが患者のQOLと満足度にどのように関連しているかを明らかにすることであった。患者のQOLとケアの満足度に関する調査用紙は、米国で使用されたBASIS32とperception of careを日本語訳し、さらにバックトランスレーションをして日本語版を作成したものを使用した。また自分の健康に対しての認識を日本語版が作成されているSF36を用いた。昨年度に引き続き東京都内公立病院をフィールドにし、今年度はさらに三重県の公立病院、大阪府内の私立精神病院をフィールドに調査を実施した。急性期の精神分裂病入院患者を対象に、そのQOLと満足度の調査を実施したが、データについては現在集計中である。米国での調査では急性期の精神分裂病患者のみに絞っても対象数の確保が可能であったが、日本国内の施設では精神分裂病急性期患者だけに対象を絞ると、十分な対象数が得られないため、現在までの結果を集計するとともに、さらに対象を広げての調査を検討中である。また、現段階では米国の医療システムと我が国のそれとではあまりにも保険制度等が違うため、当初は入院期間の違いによっての比較を試みる予定であったが、精神科医らを交えた本研究への示唆では、我が国の状況を十分鑑みた分析を行う必要性を指摘され、現在詳細な医療看護の質の側面について分析方法を検討中である。本研究の目的は、1)患者のQOLと満足度の自記式質問紙と患者記録の調査からの2つの方法による実態調査、2)精神病院の設置主体や規模等の違いが患者のQOLと満足度にどのように関連しているか実態を明らかにすることである。今年度はまず、東京都内の公立精神病院をフィールドにして急性期精神分裂病の入院患者を対象にし、そのQOLと満足度の調査を実施した。同時に精神科看護機能評価マニュアルを中心に看護の評価基準について検討を行った。国内の他の施設については研究依頼交渉中である。また、患者記録による急性期治療の妥当性についての検討を行っており、その結果を集計中である。今後は患者のQOLと満足度との関連を比較検討する。米国でのデータは既に収集済みであり、今後はさらに東京都のデータと米国の調査データとの比較をおこなう。結果について、ケアの質の要素として、(1)技術的要素、(2)人間関係的要素、(3)アメニティ要素の3側面から検討を加え、患者の満足度との関連について考察する予定である。さらに精神科看護の質の向上に対するケア技術。看護管理のモデルを検討する。患者のQOLとケアの満足度に関する調査用紙については、BASIS32等を用いている。自記式調査用紙についてはSF36を用いている。本研究の目的は、1)患者のQOLと満足度の自記式調査紙と患者の記録物からの2つの方法による調査、2)精神病院の設置主体や規模等の違いが患者のQOLと満足度にどのように関連しているかを明らかにすることであった。患者のQOLとケアの満足度に関する調査用紙は、米国で使用されたBASIS32とperception of careを日本語訳し、さらにバックトランスレーションをして日本語版を作成したものを使用した。また自分の健康に対しての認識を日本語版が作成されているSF36を用いた。昨年度に引き続き東京都内公立病院をフィールドにし、今年度はさらに三重県の公立病院、大阪府内の私立精神病院をフィールドに調査を実施した。急性期の精神分裂病入院患者を対象に、そのQOLと満足度の調査を実施したが、データについては現在集計中である。米国での調査では急性期の精神分裂病患者のみに絞っても対象数の確保が可能であったが、日本国内の施設では精神分裂病急性期患者だけに対象を絞ると、十分な対象数が得られないため、現在までの結果を集計するとともに、さらに対象を広げての調査を検討中である。また、現段階では米国の医療システムと我が国のそれとではあまりにも保険制度等が違うため、当初は入院期間の違いによっての比較を試みる予定であったが、精神科医らを交えた本研究への示唆では、我が国の状況を十分鑑みた分析を行う必要性を指摘され、現在詳細な医療看護の質の側面について分析方法を検討中である。 | KAKENHI-PROJECT-09772080 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09772080 |
単身女性の公的年金制度と貧困に関する研究 | 2018年度は、大きく以下の2点からの検討を行った。第1に、女性の非正規労働と年金加入に関する実態について、家族モデルへの依存から検討した。非正規労働の女性はその働き方によって将来の年金受給に影響を及ぼすことを整理した。公的年金制度には一定の家族モデルが組み込まれているために、多くの女性が非正規労働に従事している現状がある。女性はパート労働に代表されるような非正規労働の中心であるが、家族に包摂されて非正規労働の問題は見えにくくなっている。しかし、離婚などでその包摂から外れたときに一般的なワーキングプアの問題となってしまいかねない現実を示した。そこにはまた、非正規労働者が置かれた年金制度へのアクセスの圧倒的な不利がある。女性は高齢期になれば低年金に陥りやすいことから、制度修正として、年金離婚分割や厚生年金の適用拡大が施行されるものの、それほど効果は表れていないことを厚生労働省の既存統計から明らかにした。さらに、公的年金制度における第3号被保険者や遺族年金は、一見、女性を優遇する制度であるかのようだが、家族(主に夫)に依存しているあいだは貧困は見えにくく、その後、自分自身の収入が低いまま離死別により単身になれば、「依存」してきたことによる高齢期の貧困となりかねないことを示唆した。第2に、その実態を具体的な事例から把握・検証するために、シングルマザーとなった女性5人のインタビューを実施した。シングルマザーとなったプロセスには、カップルでいたときにそのほとんどがDV関係にあったことが語られた。そのなかで、本人はそれがDVであるとの認識に及ばないが、全員が経済的DVを受けていた。直接的ではないにしろそのことが結果として年金の加入に影響を及ぼしていた実態が明らかになった。インタビュー等は順次進めており、研究自体は順調である。しかし調査を進めるにつれ、やや、制度の基礎的理解と制度改定に向けての最近の議論、あるいは周辺分野の文献の検討を同時並行して進める必要があると考えている。また、インタビューにより、一見、無関係であるような年金加入と家庭内のDVについての影響も語られた。この点についてもさらに検討を深めたい。2019年度は引き続きヒアリングをすすめ、可能な限り多くの事例から、その職歴・結婚歴・家族歴から、傾向を見出したい。また、年金制度の中で女性がどのように扱われてきたのかを、制度変遷から検討を行う(論文執筆予定)。2018年度は、大きく以下の2点からの検討を行った。第1に、女性の非正規労働と年金加入に関する実態について、家族モデルへの依存から検討した。非正規労働の女性はその働き方によって将来の年金受給に影響を及ぼすことを整理した。公的年金制度には一定の家族モデルが組み込まれているために、多くの女性が非正規労働に従事している現状がある。女性はパート労働に代表されるような非正規労働の中心であるが、家族に包摂されて非正規労働の問題は見えにくくなっている。しかし、離婚などでその包摂から外れたときに一般的なワーキングプアの問題となってしまいかねない現実を示した。そこにはまた、非正規労働者が置かれた年金制度へのアクセスの圧倒的な不利がある。女性は高齢期になれば低年金に陥りやすいことから、制度修正として、年金離婚分割や厚生年金の適用拡大が施行されるものの、それほど効果は表れていないことを厚生労働省の既存統計から明らかにした。さらに、公的年金制度における第3号被保険者や遺族年金は、一見、女性を優遇する制度であるかのようだが、家族(主に夫)に依存しているあいだは貧困は見えにくく、その後、自分自身の収入が低いまま離死別により単身になれば、「依存」してきたことによる高齢期の貧困となりかねないことを示唆した。第2に、その実態を具体的な事例から把握・検証するために、シングルマザーとなった女性5人のインタビューを実施した。シングルマザーとなったプロセスには、カップルでいたときにそのほとんどがDV関係にあったことが語られた。そのなかで、本人はそれがDVであるとの認識に及ばないが、全員が経済的DVを受けていた。直接的ではないにしろそのことが結果として年金の加入に影響を及ぼしていた実態が明らかになった。インタビュー等は順次進めており、研究自体は順調である。しかし調査を進めるにつれ、やや、制度の基礎的理解と制度改定に向けての最近の議論、あるいは周辺分野の文献の検討を同時並行して進める必要があると考えている。また、インタビューにより、一見、無関係であるような年金加入と家庭内のDVについての影響も語られた。この点についてもさらに検討を深めたい。2019年度は引き続きヒアリングをすすめ、可能な限り多くの事例から、その職歴・結婚歴・家族歴から、傾向を見出したい。また、年金制度の中で女性がどのように扱われてきたのかを、制度変遷から検討を行う(論文執筆予定)。人件費等が予定より若干低く抑えられたため。研究遂行に影響しない程度の少額であり、参考書籍などを購入予定。 | KAKENHI-PROJECT-18K02152 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K02152 |
最低賃金の引き上げに伴う知的障害者を雇用する企業の行動に関する研究 | 最低賃金の引き上げに伴い知的障害者を雇用している企業はどのような行動をとるのか。特例子会社と中小企業のご協力を得て、「知的障害のある労働者の賃金と労務管理に関する企業の意識」調査を行った。現段階の分析ではあるが、大企業を親会社にもつ特例子会社においては2009年から2013年の間に知的障害者の雇用が減少したとはいえない。中小企業において抑制的な傾向(採用時の最低賃金減額特例の申請や採用の見送り)が見られた。日本の障害者雇用の現場では、特に特例子会社においては最低賃金の引き上げよりも割当雇用の影響が大きいことが示唆されるが、一方で「労労」代替の可能性も否定できない。本研究は、最低賃金の引き上げにより、最低賃金もしくは、適用除外により最低賃金を下回る賃金で働いている知的障害のある労働者に対して、実際に企業がどのような行動をとるのか、その実態を明らかにすることを目的としている。調査対象は障害者を雇用することを目的に設立された特例子会社(平成24年6月1日現在349社)と社団法人全国重度障害者雇用事業所協会(324社)である。調査方法は半構造化面接法によるインタビュー調査とアンケート調査による。調査の分析概念は、1企業は雇用を抑制するのか、2適用除外とする労働者の対象を拡大するのか、3生産性を上回る賃金でも法令遵守を重視する企業イメージを維持するコストとして支払うのか、4技能形成を促し、職域拡大による生産性の向上を模索するのか、である。研究の目的を達成するために平成20年から22年にかけて実施したインタビュー調査(文部科学省科学研究費補助金:課題番号20530356研究代表者:眞保智子)の結果を踏まえながら、本研究の仮説の設定と作業仮説へと落とし込み、作業仮説を実証する有効な測定指標の設定を目的として、平成23年度に引き続きインタビュー調査を実施した。大手精密機械メーカーの特例子会社OT社、大手学習支援サービス企業の特例子会社B社、大手情報サービス企業の特例子会社RS社にて行うとともに、特例子会社約30社の経営者及びマネジャーが集う研究会(NPO法人eキャリア・雇用プロジェクトkが主催するダイバーシティ研究会)にて経営者へのインタビューを実施してきた。これらの成果として、社団法人全国重度障害者雇用事業所協会より全数調査の全面的な協力体制を構築でき、今年10月に実施することが可能となった。本研究は、最低賃金の引き上げにより、最低賃金もしくは適用除外により最低賃金を下回る賃金で働いている知的障害のある労働者に対して、企業はどのような経営行動をとるのか、その実態を明らかにすることを目的としている。調査対象は障害者を雇用することを目的に障害者雇用促進法の規定により設立された特例子会社と社団法人全国重度障害者雇用事業所協会(324社)である。調査の視点は1企業は雇用を抑制するのか、2適用除外とする労働者の対象を広げるのか、3生産性を上回る賃金でも法令遵守を重視する企業イメージを維持するコストとして容認するのか4技能形成を促し、職域拡大による生産性の向上を模索するのか、である。仮説の構築と作業仮説を設定し、作業仮説を実証する有効な測定指標を得るため平成23年度、平成24年度は大手精密機械メーカーの特例子会社OT社、大手学習支援サービス企業の特例子会社B社、大手情報サービス企業の特例子会社RS社と特例子会社約30社の経営者およびマネージャーが集う研究会(NPO法人障がい者ダイバーシティ研究会)と通じて経営者へのインタビュー調査を実施した。現段階の分析ではあるが、大企業を親会社にもつ特例子会社においては2009年から2013年の間に雇用が減少したとはいえない。できる仕事の幅を広げる、労働者側の訓練努力と企業側の新規業務獲得と職域拡大の努力および労働時間の調整により企業負担の軽減を図っていた。一方で中小企業も含まれる全重協調査では、中小企業において抑制的な傾向(採用時の最低賃金適用除外申請や採用の見送り)が見られた。また、インタビュー調査では、これまで雇用してこなかった精神障害者の雇用を検討する企業の存在が確認できた。本調査では精神障害者の賃金も最低賃金近辺であった。最低賃金の引き上げに伴い知的障害者を雇用している企業はどのような行動をとるのか。特例子会社と中小企業のご協力を得て、「知的障害のある労働者の賃金と労務管理に関する企業の意識」調査を行った。現段階の分析ではあるが、大企業を親会社にもつ特例子会社においては2009年から2013年の間に知的障害者の雇用が減少したとはいえない。中小企業において抑制的な傾向(採用時の最低賃金減額特例の申請や採用の見送り)が見られた。日本の障害者雇用の現場では、特に特例子会社においては最低賃金の引き上げよりも割当雇用の影響が大きいことが示唆されるが、一方で「労労」代替の可能性も否定できない。本研究は、最低賃金の引き上げにより、最低賃金近辺もしくは、適用除外により最低賃金を下回る賃金で働いている知的障害のある労働者に対して、実際に企業がどのような行動をとるのか、その実態を明らかにすることを目的とする。研究の趣旨から調査対象は障害者を雇用することを目的に設立された特例子会社(平成22年4月281社)と全重協会員企業(約320社)である。方法は、半構造化面接法によるインタビュー調査とアンケート調査による。調査の分析概念は、(1)企業は雇用を抑制するのか、 | KAKENHI-PROJECT-23530490 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23530490 |
最低賃金の引き上げに伴う知的障害者を雇用する企業の行動に関する研究 | (2)適応除外とする労働者の対象を拡大するのか、(3)生産性を上回る賃金でも法令遵守を重視する企業イメージを維持するコストとして支払うのか、(4)技能形成を促し、職域拡大による生産性の向上を模索するのか、である。今年度は、平成2022年にかけて実施してきたインタビュー調査の結果を踏まえ、有効な指標を抽出し、質問項目に落とし込み、インタビュー要項と調査対象企業の選定について検討を行った。インタビュー調査は、以下の企業を対象に実施した。大手百貨店特例子会社IS社、大手製薬メーカー特例子会社DSH社、大手製薬メーカー特例子会社LI社、大手精密機械メーカー特例子会社NT社、鉄道事業者特例子会社W社である。インタビュー調査の結果から、最低賃金の引き上げに際して、特例子会社は、一部従業員に対してはベースアップによる対応を取っていた。最低賃金の引き上げに伴う人件費の増加への対応として、目標管理による仕事の達成度の評価と観察によって、より難度が高い仕事に挑戦できる従業員に対しては、日常的に行うOJTにより、難度を上げた仕事やできる仕事の種類を増やすなどの戦力化が図られていた。一方で、インタビュー対象企業ではないが、調査の過程で、より難度の高い仕事に挑戦する戦力化よりも企業への定着を重視した仕事配分を行っている企業の存在も指摘された。特例子会社(平成24年6月1日現在349社)と社団法人全国重度障害者雇用事業所協会(324社)を計画している。特例子会社については、平成20年からの3ヵ年の研究時に信頼関係や実績を構築できていたが、社団法人全国重度障害者雇用事業所協会については、組織の協力を得ての調査になるか、つてをたどっての個人的なものになるか不透明であった。しかし、平成24年度のインタビュー調査や折衝においてアンケート調査が協会の全面協力のもと行えることになり、研究計画における最大の懸念事項をクリアすることができたことにより、おおむね順調に推移していると考える。平成23年度は、年度当初は東北大震災の影響もあり、企業への調査を実施することが困難な状況も生じたが、年度後半に集中して企業調査を実施できたことから、おおむね順調に進展していると考えている。これまでの予備調査を踏まえて、研究目的を達成することができる質問紙構築を行うと同時に、調査結果の分析手法についての検討するとともに専門家とともに調査全体の計画を最終的に吟味し、本年10月にアンケート調査を実施し、年内に単純集計を終了し、年度末の報告書にまとめるべく分析・考察を行う。今年度は、平成23年度に引き続き、インタビュー調査を実施する。今年度のインタビュー調査は特に、社団法人全国重度障害者雇用事業所協会(以下全重協)会員企業を対象に実施する。調査により得られた結果を質問紙に反映させるとともに、調査の集計方法について、統計を専門領域としている研究協力者に専門的アドバイスを受け質問票を作成する。質問紙調査の対象である特例子会社はここ数年、毎年1割強増加しており、今後検討を要するが、現段階では全数の調査を予定する。配布、回収方法は、回収率を高めるために、調査協力者として各地域の就労支援施設の担当者に、支援に関わっているなど関係のある特例子会社への配布を依頼するとともに、首都圏など特例子会社が集中している地域では、すでに企業が連携して情報交換、勉強会を実施する組織ができているため、そうした場での配布を行い、後日郵送で返送する方法とする。 | KAKENHI-PROJECT-23530490 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23530490 |
単純ヘルペスウイルスのDNA複製に関与する蛋白質の同定及びその機能について | トポイソメラーゼ【II】(Topo【II】)の阻害剤として知られるVP-16-213を用い、単純ヘルペスウイルス(HSV)DNA合成にTopo【II】の関与があるかどうかを検討した。HSV2型DNA合成は10ug/mlのVP-16により80%以上抑制され、その阻害曲線は細胞DNA合成のそれと類似していた。HSV.DNA合成がほとんど完全に抑制される薬剤存在下でも、ウイルスの初期蛋白質合成に阻害は認められなかった。また、VP-16で感染細胞を処理すると、新生ウイルスDNA錠に切断が生ずることがわかった。試験管内でのTopo【II】反応系にVP-16を加えると二重鎖切断を起こすことが確認された。以上の結果は、HSVDNA複製にTopo【II】が関与していることを強く示唆している。しかし、感染後のTopo【II】活性には変化が認められないこと、VP-16に抵抗性のウイルスが分離されないことなどから、HSVDNA複製に作用しているのは細胞由来の酵素である可能性が強い。HSV DNA複製に中心的な役割を果しているウイルスDNAポリメラーゼについては、付随する3 ́→5 ́エキソヌクレアーゼの機能について検討し、また一次構造の決定を行なった。3 ́末端を放射標識したdA4000/dT46〔【^3H】〕dT1とdA4000/dT46〔【^3H】〉dC1を基質として用いHSV DNAポリメラーゼの至適条件下で反応を行なわせると、mismatched pairを形成している3 ́末端の〔【^3H】〉dCが急速に除去された。また、HSV ONAポリメラーゼは、大腸菌のpolIに比べ有意に高い3 ́→5 ́エキソヌクレアーゼ/ポリメラーゼ活性比をもっていることが明らかになった。HSV DNAポリメラーゼは、1240個のアミノ酸から構成され、1型とのbsuologyは91%であった。アフィジュリン抵抗性株の変異部位、1型及びEBV DNAポリメラーゼの一次構造との比較などから、活性中心の形成に重要な領域はC末側の1/2に含まれていることが推定された。トポイソメラーゼ【II】(Topo【II】)の阻害剤として知られるVP-16-213を用い、単純ヘルペスウイルス(HSV)DNA合成にTopo【II】の関与があるかどうかを検討した。HSV2型DNA合成は10ug/mlのVP-16により80%以上抑制され、その阻害曲線は細胞DNA合成のそれと類似していた。HSV.DNA合成がほとんど完全に抑制される薬剤存在下でも、ウイルスの初期蛋白質合成に阻害は認められなかった。また、VP-16で感染細胞を処理すると、新生ウイルスDNA錠に切断が生ずることがわかった。試験管内でのTopo【II】反応系にVP-16を加えると二重鎖切断を起こすことが確認された。以上の結果は、HSVDNA複製にTopo【II】が関与していることを強く示唆している。しかし、感染後のTopo【II】活性には変化が認められないこと、VP-16に抵抗性のウイルスが分離されないことなどから、HSVDNA複製に作用しているのは細胞由来の酵素である可能性が強い。HSV DNA複製に中心的な役割を果しているウイルスDNAポリメラーゼについては、付随する3 ́→5 ́エキソヌクレアーゼの機能について検討し、また一次構造の決定を行なった。3 ́末端を放射標識したdA4000/dT46〔【^3H】〕dT1とdA4000/dT46〔【^3H】〉dC1を基質として用いHSV DNAポリメラーゼの至適条件下で反応を行なわせると、mismatched pairを形成している3 ́末端の〔【^3H】〉dCが急速に除去された。また、HSV ONAポリメラーゼは、大腸菌のpolIに比べ有意に高い3 ́→5 ́エキソヌクレアーゼ/ポリメラーゼ活性比をもっていることが明らかになった。HSV DNAポリメラーゼは、1240個のアミノ酸から構成され、1型とのbsuologyは91%であった。アフィジュリン抵抗性株の変異部位、1型及びEBV DNAポリメラーゼの一次構造との比較などから、活性中心の形成に重要な領域はC末側の1/2に含まれていることが推定された。 | KAKENHI-PROJECT-61570227 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61570227 |
イギリス「寛容な社会」についての政治学的研究 | 1960年代のイギリスでは、戦後の経済成長と豊かな社会を背景に、人びとの価値観や規範が多様化し、寛容な社会が出現した。本研究では、そうした社会変化を後押しした一連の寛容化の立法改革をめぐる政治過程を考察し、それらの改革がどのような政治勢力によって推進され、またどのような政治構想にもとづいて追求されたのかを考察した。改革を推進した保守党内の進歩的保守派と労働党内の修正社民派の政治構想を検討することで、寛容化の改革が、戦後の福祉国家建設のつぎの段階に取り組むべき課題として実行されたことを明らかにした。1960年代のイギリスでは、戦後の経済成長と豊かな社会を背景に、人びとの価値観や規範が多様化し、寛容な社会が出現した。本研究では、そうした社会変化を後押しした一連の寛容化の立法改革をめぐる政治過程を考察し、それらの改革がどのような政治勢力によって推進され、またどのような政治構想にもとづいて追求されたのかを考察した。改革を推進した保守党内の進歩的保守派と労働党内の修正社民派の政治構想を検討することで、寛容化の改革が、戦後の福祉国家建設のつぎの段階に取り組むべき課題として実行されたことを明らかにした。本研究の目的は、1950年代後半から60年代のイギリスにおいて行なわれた社会の寛容化に向けた諸改革について考察し、その背景となった社会思想・政治構想の特質を明らかにすることである。平成23年度の研究においては、寛容化の諸改革が行なわれた前半期にあたる、保守党政権のバトラー内相時代(1957年62年)に焦点を当てて研究を進めた。具体的には、1、寛容化の諸改革を主導した保守党政治家の思想と言説を検討すること、2、一次資料を考察しながら保守党政権内部の政策決定過程の分析を行なうことに取り組んだ。1、保守党政治家の思想と言説R・A・バトラーやT・レイゾンといった政治家の著作や演説の考察を通じて、当時の保守党の内部では、社会の寛容化を押し進めることが、統治の現代化という観点からとらえられていたことが明らかになった。2、保守党政権内部の政策決定過程平成24年23月に渡英し、オックスフォード大学のBodleian Library所蔵のConservative Party Archiveにおさめられている諸資料の収集と調査を行なった。とりわけ、当時の保守党政権の政策決定において重要な役割を果たしたSteering Committeeの詳細な議事録が入手できたことや、保守政治家たちの未公表の演説原稿が多数入手できたことは、非常に大きな成果であった。これらの資料にもとづいて、政権内部での政策決定の過程とそれを取り巻く政治的対抗関係を明らかにすることができた。本研究は、戦後のイギリスで行なわれた社会の寛容化に向けた諸改革を考察し、その政治的・思想的な背景を明らかにすることを目的としている。平成23年度に行なった、保守党政権のバトラー内相時代(195762年)の寛容化の改革についての検討をふまえて、平成24年度においては、その後の労働党政権(196470年)のもとで行なわれた寛容化の改革について研究を進めた。具体的には、1、労働党内で寛容化の改革を積極的に推進した理論家の思想や言説を検討すること、2、寛容化の改革の具体的な立法過程の検証を行なうことに取り組んだ。1、労働党内の理論家の思想と言説の考察:平成25年1月2月に渡英し、ロンドン大学(LSE)付属図書館に所蔵されている労働党関係の資料の収集と調査を行なった。とりわけ、労働党内で寛容化の改革を積極的に支持する議論を展開したA・クロスランドの個人所蔵資料(クロスランドペーパー)を閲覧できたことは非常に大きな成果であった。それらの資料の分析を通して、労働党内では寛容化の改革が、福祉国家建設と経済成長の達成という戦後当初の目標が達成された次の段階で取り組むべき課題として重視されていたことが明らかできた。2、寛容化の立法過程の分析:同性愛の合法化、中絶規制の緩和、離婚の自由化の三つの改革を中心に議会の議事録資料を用いて、具体的な立法過程を考察し、それらをめぐる議会での政治的対抗関係を明らかにした。これらの改革への賛否は、保守・労働の政党間対立とは独自の位相をもっており、したがって、保守・労働両党それぞれの内部に改革を支持する勢力が存在したことを確認できた。以上の研究の成果を、平成24年6月に行なわれた日本比較政治学会において「イギリス福祉国家と寛容な社会」と題して報告したほか、平成25年3月に論文としてまとめ、一橋大学大学院社会学研究科の紀要『一橋社会科学』に投稿した。本研究においては、関連する二次文献を精読することに加えて、議会議事録や公文書、政党内資料などの一次資料を収集・分析することが重要な課題となるが、いずれの点でもほぼ当初の計画通りに研究を進めることができている。特に、一次資料の収集・分析については、オックスフォード大学の図書館スタッフの協力を得て、順調に進めることができた。24年度が最終年度であるため、記入しない。今後の研究としては、まず平成23年度に得られた成果を学会報告や投稿論文のかたちで発表するとともに、寛容化の諸改革が行なわれた後半期にあたる労働党政権のジェンキンス内相時代についての研究を深めていくことで、イギリスの「寛容な社会」の全体像の把握につとめたいと考えている。研究を進めるうえで必要な労働党内の報告書やパンフレット等の関連資料を入手するために、平成24年度にも再度渡英し、マンチェスターの労働史博物館等を訪れて、資料の収集・調査に当たる予定である。 | KAKENHI-PROJECT-23830023 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23830023 |
イギリス「寛容な社会」についての政治学的研究 | 24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-23830023 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23830023 |
新規ペプチドホルモンINSL6の心臓リモデリングにおける意義 | INSL6の心臓における作用を検討した。INSL6欠損(INSL6 KO)マウスを用いた検討で、通常状態ではINSL6 KOマウスと野生型マウスの心臓形態に差はなく、アンジオテンシンII刺激後のINSL6 KOマウスは、野生型マウスと比較して有意に心機能が低下し、心筋線維化が著明となった。INSL6は心筋線維化や心臓リモデリングに関与している可能性が示唆された。研究の意義と重要性;心不全はいまだ難治性疾患であり、その発症・進展には様々な機序に起因する心臓リモデリングが関与している。1999年に新たに同定されたInslin-like peptide 6 (INSL6)はINSULIN/IGF/RELAXINスーパーファミリーに属するペプチドホルモンであり、同じファミリーに属するリラキシン2は急性心不全治療薬として臨床試験が進行中である。しかしながら、INSL6の作用は未だほとんどわかっておらず、特に心臓における作用に関しては研究がなされていない現状である。研究の目的;本研究では、マウスを用いて、心不全に深く関与する心臓リモデリングにINSL6が関与するか否かを明らかにし、その心臓における分子機序を解明し、新しい治療ターゲットの可能性について検討する。研究実施計画;INSL6欠損(KO)および過剰発現(TG)マウスを用い、アンジオテンシンII刺激による心臓リモデリングモデルを作成する。心エコーによる心機能解析および心臓組織解析により、INSL6の心臓リモデリングにおける役割を明らかにする。研究成果;野生型マウスにおいて、アンジオテンシンII刺激後に心臓でのINSL6の発現は軽度亢進した。通常状態ではINSL6 KOマウスと野生型マウスの心臓形態に差はなく、アンジオテンシンII刺激後のINSL6 KOマウスは、野生型マウスと比較して有意に心機能が低下し、心筋線維化が増悪した。しかしながら、MCK INSL6 TGマウスにおいては、通常状態でも、アンジオテンシンII刺激後でも、野生型と比較して心機能に明らかな有意差を認めなかった。マウスを用いた実験は計画どおりに進行している。また、心臓におけるINSL6の作用解明が期待されるような研究成果が得られている。研究の目的と重要性:心不全はいまだ難治性疾患であり、その発症・進展には様々な機序に起因する心臓リモデリングが関与している。1999年に新たに同定されたInslin-like peptide 6(INSL6)は、INSULIN/IGF/RELAXINスーパーファミリーに属するペプチドホルモンであり、同じファミリーに属するリラキシン2は急性心不全治療薬として臨床試験が進行中である。しかしながら、INSL6の作用はいまだほとんどわかっておらず、特に心臓における作用に関しては研究がなされていない現状にあった。本研究では、マウスを用いて、心不全に深く関与する心臓リモデリングにINSL6が関与するか否かを明らかにし、その心臓における分子機序を解明し、新しい治療ターゲットの可能性について検討した。研究成果:INSL6欠損(KO)および過剰発現(TG)マウスを用い、アンジオテンシンII刺激による心臓リモデリングを作成した。野生型マウスにおいて、アンジオテンシンII刺激後に心臓でのINSL6の発現は軽度亢進した。通常状態では、INSL6 KOマウスと野生型マウスの心臓形態に差はなく、アンジオテンシンII刺激後のINSL6 KOマウスは、野生型マウスと比較して有意に心機能が低下し、心筋線維化が増悪した。MCK INSL6 TGマウスにおいては、通常状態でもアンジオテンシンII刺激後でも野生型と比較して心機能に明らかな有意差を認めなかった。しかしながら、野生型マウスにアデノウイルスを用いてINSL6を過剰発現したマウスを作成し、アンジオテンシンII負荷を行うと、コントロールに比較して、INSL6過剰発現群は心筋線維化が減弱し、心機能の低下が抑制された。以上の結果より、INSL6はアンジオテンシンII過剰によって引き起こされる心筋線維化、心機能低下を抑制する作用を有することが明らかとなった。INSL6の心臓における作用を検討した。INSL6欠損(INSL6 KO)マウスを用いた検討で、通常状態ではINSL6 KOマウスと野生型マウスの心臓形態に差はなく、アンジオテンシンII刺激後のINSL6 KOマウスは、野生型マウスと比較して有意に心機能が低下し、心筋線維化が著明となった。INSL6は心筋線維化や心臓リモデリングに関与している可能性が示唆された。野生型マウスにアデノウイルスを用いてINSL6を過剰発現させたマウスを作成し、同様にアンジオテンシンII負荷後の変化を検討する。INSL6がどのような機序でアンジオテンシンII刺激に対する心臓リモデリング変化から防御的に作用しているのかを明らかにする。生活習慣病国際学会での発表がなく、旅費が必要なかったため。次年度の物品購入費として使用予定である。 | KAKENHI-PROJECT-15K21201 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K21201 |
フォトクロミズムの流体計測への応用 | 本研究では,フォトクロミズムを流体計測に応用するための基礎的な実験を行い,以下に示す結果を得た。(1)フォトクロミック色素の吸光度;スピロピラン系のフォトクロミック色素を5種類用意し,エタノ-ルを溶媒とした各色素の照射光波長に依存した吸光度を調査した。その結果,1,3,3^ーTrimethylindolino^ー6′^ーnitrobenzopyrylospiranが紫外域において他の色素の10倍近い吸光度を示した。(2)レ-ザ入射による発色線の長さ;フォロクロミズムを流体計測に応用するためには,最適な色素濃度およびレ-ザパワ-を設定することが必要である。そこで,エキシマレ-ザ(XeClにで発振,波長308nm)光を各色素を溶解したエタノ-ル中へ入射させ,色素濃度(0.040.00075重量%)とレ-ザパワ-に関する発色線の長さをCCDカメラによって撮影した結果から調査した。色素濃度とレ-ザパワ-がともに高い場合(0.04質量%)には発色線の長さは45cmであり,レ-ザ光の吸収による局所的な温度上昇のため,対流現象が発生する。色素濃度とレ-ザパワ-がともに低い。また,発色線の長さが最も長くなる色素濃度値が存在する場合には,発色線は715cmと長くなるが,色が薄くなる(0.0750.00075重量%)。これらの結果から,フォトクロミズムの流体計測への応用に関する色素濃度とレ-ザパワ-の最適な範囲,すなわち,長くて発色強度の強いタイムラインを発生させるための最適な範囲を明らかにした。本研究では,フォトクロミズムを流体計測に応用するための基礎的な実験を行い,以下に示す結果を得た。(1)フォトクロミック色素の吸光度;スピロピラン系のフォトクロミック色素を5種類用意し,エタノ-ルを溶媒とした各色素の照射光波長に依存した吸光度を調査した。その結果,1,3,3^ーTrimethylindolino^ー6′^ーnitrobenzopyrylospiranが紫外域において他の色素の10倍近い吸光度を示した。(2)レ-ザ入射による発色線の長さ;フォロクロミズムを流体計測に応用するためには,最適な色素濃度およびレ-ザパワ-を設定することが必要である。そこで,エキシマレ-ザ(XeClにで発振,波長308nm)光を各色素を溶解したエタノ-ル中へ入射させ,色素濃度(0.040.00075重量%)とレ-ザパワ-に関する発色線の長さをCCDカメラによって撮影した結果から調査した。色素濃度とレ-ザパワ-がともに高い場合(0.04質量%)には発色線の長さは45cmであり,レ-ザ光の吸収による局所的な温度上昇のため,対流現象が発生する。色素濃度とレ-ザパワ-がともに低い。また,発色線の長さが最も長くなる色素濃度値が存在する場合には,発色線は715cmと長くなるが,色が薄くなる(0.0750.00075重量%)。これらの結果から,フォトクロミズムの流体計測への応用に関する色素濃度とレ-ザパワ-の最適な範囲,すなわち,長くて発色強度の強いタイムラインを発生させるための最適な範囲を明らかにした。平成元年度までに、フォトクロミズムを流体計測に応用するための基礎的な実験を行ない、以下に示す結果を得た。(1)フォトクロミック色素の吸光度;スピロピラン系のフォトクロミック色素を5種類用意し、エタノ-ルを溶媒とした各色素の照射光波長に依存した吸光度を調査した。その結果、1,3,3-Trimethylindolino-6-nitrobenzopyrylospiran(色素A)が紫外域において他の色素の10倍近い吸光度を示した。(2)レ-ザ入射による着色線の長さ;フォトクロミズムを流体計測に応用するためには、最適な色素濃度およびレ-ザパワ-を設定することが必要である。そこで、エキシマレ-ザ(XeClにて発振、波長308nm)光を各色素を溶解したエタノ-ル中へ入射させ、色素濃度とレ-ザパワ-に関する着色線の長さをスチルカメラによって撮影したフィルムから調査した。色素濃度とレ-ザパワ-がともに高い場合(0.01質量%)には着色線が短く、レ-ザ光の吸収による局所的な温度上昇のため、対流現象が発生する。色素濃度とレ-ザパワ-がともにが低い(0.00125%)場合には、着色線は長くなるが色が薄くなる。これらの結果から、各色素の流体計測への応用に関する色素濃度とレ-ザパワ-の最適な範囲を明らかにした。なかでも、色素Aは、その最適範囲が広く、しかも着色線の寿命が長い点でも優れていることが知れた。平成2年度には、フォトクロミズムにより流れ場に形成される多くのタイムラインあるいはメッシュをCCDカメラにより撮像し、画像処理により流れ場を解析する手法を確立する。さらに、可視化計測法の有効性を調査するために油槽を製作し、これを用いて円柱後流のカルマン渦列の可視化を行なう。また、境界層の厳密解の知られている円柱まわりの流れについて実験を行なう。 | KAKENHI-PROJECT-01550143 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01550143 |
フォトクロミズムの流体計測への応用 | 平成2年度までに,フォトクロミズムを流体計測に応用するための基礎的な実験を行い,以下に示す結果を得た。(1)フォトクロミック色素の吸光度;スピロピラン系のフォトクロミック色素を5種類用意し,エタノ-ルを溶媒とした各色素の照射光波長に依存した吸光度を調査した。その結果,1,3,3ーTrimethylindolinoー6'ーnirtobenzopyrylospiranが紫外域において他の色素の10倍近い吸光度を示した。(2)レ-ザ入射による発色線の長さ;フォロクロミズムを流体計測に応用するためには,最適な色素濃度およびレ-ザパワ-を設定することが必要である。そこで,エキシマレ-ザ(XeClにて発振,波長308nm)光を各色素を溶解したエタノ-ル中へ入射させ,色素濃度(0.040.00075重量%)とレ-ザパワ-に関する発色線の長さをCCDカメラによって撮影した結果から調査した。色素濃度とレ-ザパワ-がともに高い場合(0.04重量%)には発色線の長さは45cmであり,レ-ザ光の吸収による局所的な温度上昇のため,対流現象が発生する。色素濃度とレ-ザパワ-がともに低い。また,発色線の長さが最も長くなる色素濃度値が存在する場合には,発色線は715cmと長くなるが,色が薄くなる(0.0750.00075重量%)。これらの結果から,フォトクロミズムの流体計測への応用い関する色素濃度とレ-ザパワ-の最適な範囲,すなわち,長くて発色強度の強いタイムラインを発生させるための最適な範囲を明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-01550143 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01550143 |
腸内細菌を基盤にしたimmunoparalysisの病態形成と治療法に関する検討 | 腸内細菌が生体の免疫機能を調節して各種炎症性疾患の発症に関連することに着目し、敗血症急性期のSIRSから晩期のImmunoparalysisへ移行する際の腸内細菌の変動を解析し、腸内細菌を利用して低下した免疫機能を賦活できるかを検討するために以下の実験を行ってきた。1盲腸結紮穿刺(CLP)敗血症モデルマウスでの腸内細菌の変動解析のためにCLPモデルマウスの作成を行った。2採取した便検体は敗血症と敗血症以外のSIRSを来す患者、すなわちICUに入室した患者すべてで便検体の採取を行った。4患者重症度スコアSOFAと便中のmediatorとの関連性について検討中である。盲腸結紮穿刺(CLP)敗血症モデルマウスの作成を完了し、便中のmediatorの解析を行った。さらに、CLPモデルの便と患者検体との相関性を確認するため、ICU患者での腸内細菌の変動解析のためのサンプル採取をおこなった。これらのサンプルに関しても同様に解析を行っている。患者サンプルと患者重症度SOFA、死亡率の相関を検討する。さらに当初は敗血症の患者にフォーカスを当てていたが、現在は、ICU入室患者すべてを対象に研究を進めており、すでに外傷患者、脳出血患者、膵炎患者など敗血症以外の便検体も収集し、解析を行っている。中断期間平成28年4月1日平成29年3月31日、産前産後休暇及び育児休暇のため。産前産後休暇・育児休暇で研究を中断していたため。腸内細菌が生体の免疫機能を調節して各種炎症性疾患の発症に関連することに着目し、敗血症急性期のSIRSから晩期のImmunoparalysisへ移行する際の腸内細菌の変動を解析し、腸内細菌を利用して低下した免疫機能を賦活できるかを検討するために以下の実験を行った。1盲腸結紮穿刺(CLP)敗血症モデルマウスでの腸内細菌の変動解析のためにCLPモデルマウスの作成を行った。2患者および正常人の便検体を採取した。これらの予備実験で得られたサンプルをもちいて腸内細菌叢を次世代シークエンサーで解析し、腸内細菌の変動を明らかにする予定である。盲腸結紮穿刺(CLP)敗血症モデルマウスの作成を完了した。また、ICU患者での腸内細菌の変動解析のためのサンプル採取をおこなった。そのためおおむね順調に進展していると考えている。腸内細菌が生体の免疫機能を調節して各種炎症性疾患の発症に関連することに着目し、敗血症急性期のSIRSから晩期のImmunoparalysisへ移行する際の腸内細菌の変動を解析し、腸内細菌を利用して低下した免疫機能を賦活できるかを検討するために以下の実験を行ってきた。1盲腸結紮穿刺(CLP)敗血症モデルマウスでの腸内細菌の変動解析のためにCLPモデルマウスの作成を行った。2採取した便検体は敗血症と敗血症以外のSIRSを来す患者、すなわちICUに入室した患者すべてで便検体の採取を行った。4患者重症度スコアSOFAと便中のmediatorとの関連性について検討中である。盲腸結紮穿刺(CLP)敗血症モデルマウスの作成を完了し、便中のmediatorの解析を行った。さらに、CLPモデルの便と患者検体との相関性を確認するため、ICU患者での腸内細菌の変動解析のためのサンプル採取をおこなった。これらのサンプルに関しても同様に解析を行っている。今後は敗血症の患者と非敗血症の患者の2群において、これらのパラメーターと次世代シークエンサーを利用したメタゲノム解析を用いて腸内細菌叢の変動との相関、さらに血液中のメディエーターや核酸を測定し、解析する予定。さらにCLPモデルを利用してimmunoparalysisを誘導し、ヒトと同様に腸内細菌の変動が起こるか解析する。当初の予定では患者の便を用いて「ICU入室患者の腸内細菌のメタゲノム解析を行い、Immunoparalysisの原因となる腸内細菌を同定する」予定であった。しかし、腸内細菌(患者の便)の解析の問題点は、患者の敗血症に至った原因が不均一で、さらに便の採取は多くの細菌叢から形成されるという問題点をもち、そのため情報解析にかかる計算機コストや多くの時間を費やす可能性が危惧された。そこで今後の研究の推進方策としては、よりサンプル採取が容易な腸内細菌以外のサンプル(例えば、唾液など腸内細菌叢との連続性をもつサンプルを利用する)を考慮することでこれらの問題点を克服して得られた細菌叢を次世代シークエンサーで解析し、腸内細菌の変動を明らかにする予定である。患者サンプルと患者重症度SOFA、死亡率の相関を検討する。さらに当初は敗血症の患者にフォーカスを当てていたが、現在は、ICU入室患者すべてを対象に研究を進めており、すでに外傷患者、脳出血患者、膵炎患者など敗血症以外の便検体も収集し、解析を行っている。産前産後休暇・育児休暇で研究を中断していたため。産休のためin silico解析が研究のメインテーマであったため次年度使用額が0より大きくなった。今後はin vivoの研究がメインとなり、実験試薬と動物の飼育費用に研究費を充てる予定。CLPマウスの作成を他の研究者と同時に進めた。そのため他の研究者が用いた手法を応用することで当初の予定よりも必要なマウスの数が少なかった。 | KAKENHI-PROJECT-16K20387 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K20387 |
腸内細菌を基盤にしたimmunoparalysisの病態形成と治療法に関する検討 | また倫理審査通過後にヒトの便検体を採取したが、倫理審査に多くの時間を有したため便サンプルの解析が少しおくれたため次年度使用額が生じた。今年度はすでに患者(ICU入室患者)便サンプルの解析も可能であることを確認したため、そのまま解析を継続する。平成28年度に行う予定であった実験に使用する。 | KAKENHI-PROJECT-16K20387 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K20387 |
ラミニンの細胞特異的な機能部位の同定と組織特異的作用メカニズムの解明 | 個体の発生や分化に重要な働きをしている基底膜の主要成分のラミニンに注目し、ラミニンの機能に関わる活性ペプチドの同定と、器官発生、神経再生、創傷治癒などの高次生命現象に及ぼす役割を解明し、細胞特異的に働く活性ペプチドを医薬分野などに応用するための基盤づくりを目的に研究を行った。まず、ラミニン-1分子の細胞接着活性部位の情報をもとに他のラミニンアイソフォーム上の相同部位に由来する部分ペプチド(300種類)を合成し、単層培養系を用いた細胞接着活性の測定を行うことにより、5種類の強い細胞接着活性をもつものを同定することができた。この中には、神経突起伸長やがん転移を促進するものが同定できた。これらの研究からラミニンα鎖のGドメインが生物活性に重要な働きをしていることがわかってきた。そこで、ラミニンα3鎖、α4鎖、α5鎖のGドメインにおける生理学的な意味を解明するため、数種類の組換えタンパク質を動物細胞を用いて発現し、それらの生物活性の解析を行った。さらにGドメインのアミノ酸配列をすべて網羅した合成ペプチドを約千種類作成し、活性部位の同定を行った。また、組換えタンパクと合成ペプチドを用いてこれら3種類のGドメインのヘパリン結合部位の同定や、α3鎖Gドメインへの細胞接着はシンデカンに依存していることの証明を行った。本研究成果は、従来のECMの受容体といえばインテグリン一辺倒であった時代からの脱却を促すものである。また、これらの研究からシンデカンがインテグリンと何らかの相互関係を保持しているという新たな側面もみえてきた。以上の研究結果は、ラミニン活性ペプチドの器官発生、神経再生、創傷治癒や血管新生などの高次生命現象に及ぼす組織特異的な役割を分子レベルで解明していくことの可能性と、組織特異的に働くラミニン活性ペプチドの医薬分野への応用の可能性を示唆するものである。個体の発生や分化に重要な働きをしている基底膜の主要成分のラミニンに注目し、ラミニンの機能に関わる活性ペプチドの同定と、器官発生、神経再生、創傷治癒などの高次生命現象に及ぼす役割を解明し、細胞特異的に働く活性ペプチドを医薬分野などに応用するための基盤づくりを目的に研究を行った。まず、ラミニン-1分子の細胞接着活性部位の情報をもとに他のラミニンアイソフォーム上の相同部位に由来する部分ペプチド(300種類)を合成し、単層培養系を用いた細胞接着活性の測定を行うことにより、5種類の強い細胞接着活性をもつものを同定することができた。この中には、神経突起伸長やがん転移を促進するものが同定できた。これらの研究からラミニンα鎖のGドメインが生物活性に重要な働きをしていることがわかってきた。そこで、ラミニンα3鎖、α4鎖、α5鎖のGドメインにおける生理学的な意味を解明するため、数種類の組換えタンパク質を動物細胞を用いて発現し、それらの生物活性の解析を行った。さらにGドメインのアミノ酸配列をすべて網羅した合成ペプチドを約千種類作成し、活性部位の同定を行った。また、組換えタンパクと合成ペプチドを用いてこれら3種類のGドメインのヘパリン結合部位の同定や、α3鎖Gドメインへの細胞接着はシンデカンに依存していることの証明を行った。本研究成果は、従来のECMの受容体といえばインテグリン一辺倒であった時代からの脱却を促すものである。また、これらの研究からシンデカンがインテグリンと何らかの相互関係を保持しているという新たな側面もみえてきた。以上の研究結果は、ラミニン活性ペプチドの器官発生、神経再生、創傷治癒や血管新生などの高次生命現象に及ぼす組織特異的な役割を分子レベルで解明していくことの可能性と、組織特異的に働くラミニン活性ペプチドの医薬分野への応用の可能性を示唆するものである。基底膜の主要糖タンパク質ラミニンは、α、β、γの3種類のサブユニットからなる複合体で様々な生命現象に関与している。現在までのところ、5種類のα鎖、3種類のβ鎖、3種類のγ鎖が組み合わさった12種類のラミニンアイソフォームが知られており、それらが組織特異的あるいは発生時の各段階で特異的に発現し、様々な役目を果たしている。ラミニン由来の活性ペプチドが器官発生、神経再生、創傷治癒や血管新生などの高次生命現象に及ぼす役割を解明し、組織特異的に働くラミニン活性ペプチドを医薬分野に応用するための基盤をつくることを目的に研究を行った。生体において最も多く発現しているラミニンα5鎖の機能部位を同定する目的で、生物活性の最も重要と考えられるラミニンα5鎖Gドメイン(約千アミノ酸)をすべて網羅した113種類のペプチドを合成した。これらのペプチドをプレートにコートする方法とビーズに結合する方法で細胞接着活性のスクリーニングを行ったところ、5種類のペプチドに強い細胞接着活性が確認された。これらのペプチドの細胞接着活性はヘパリンで阻害された。また、このGドメインの組換えタンパクを合成したところ、強い細胞接着活性とヘパリン結合活性があることがわかった。このGドメインの組換えタンパクの細胞接着活性とヘパリン結合活性はペプチドによるスクリーニングから得られた活性ペプチドによって阻害された。このことから、新たに見つかった活性部位の生理学的意味が確認された。さらに、血管内皮細胞に多く発現しているラミニンα4鎖の機能部位を同定する目的で、ラミニンα4鎖Gドメイン((約千アミノ酸)由来のペプチドを24種類合成し、細胞接着活性のスクリーニングを行い、3種類の活性ペプチドを同定した。 | KAKENHI-PROJECT-11470480 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11470480 |
ラミニンの細胞特異的な機能部位の同定と組織特異的作用メカニズムの解明 | 上記のペプチドの細胞接着活性を、表皮、神経、血管内皮、線維芽細胞、上皮系組織など異なった由来の株細胞を用いて検討を行った。ラミニン-1に存在する50種類の細胞接着部位をもとに他のラミニンアイソフォーム上の相同部位に由来する部分ペプチドを用いて組織特異的な活性部分ペプチドを同定し、ラミニンの高次生命現象に及ぼす機能を明らかにすることを目的に検討を行った。ラミニンα5鎖、α4鎖、α3鎖のLG1LG5までの5つのドメインからなるGドメインの細胞接着及びヘパリン結合活性部位のスクリーニングを組換えタンパクを用いて行った。α5鎖、α4鎖、α3鎖いずれのスクリーニングにおいても4番目のドメインLG4に細胞接着及びヘパリン結合活性が認められた。次に、このLG4ドメインの活性部位を同定するために、LG4ドメインのシークエンスを全て網羅した70種類の合成ペプチドを用いて検討した。α5鎖A5G81(AGQWHRVSVRWG)、α4鎖A4G82(TLFLAHGRLVFM)、α3鎖A3G75(KNSFMALYLSKG)が細胞接着やヘパリン結合活性を示した。また、この3種類のペプチドがそれぞれのLG4組換えタンパクの細胞接着やヘパリン結合を阻害したことから、これらの部位がそれぞれの鎖でのGドメインの活性中心であることが示唆された。これらのレセプターとしてα3鎖A3G75がインテグリンに、α4鎖A4G82がシンデカンに作用することがわかった。さらに、PC12細胞を用いて神経突起伸張活性の測定を行ったところ、A3G75が神経突起伸長を促進することがわかった。現在、新たに同定された3種類のペプチドの血管内皮細胞への影響、唾液腺発生過程での活性ペプチドの器官発生に及ぼす効果を検討中である。一方、唾液腺発生に関係あるα5鎖Gドメインのペプチド113種類を用いて検討したところ、A5G77(LVLFLNHGHFVA)が唾液腺発生を阻害することがわかった。現在、A5G77のレセプター及び作用メカニズムを検討中である。基底膜の主要成分・ラミニンには5種類のα鎖、3種類のβ鎖、3種類のγ鎖からなる15種類が知られており、中でもα鎖のC末端部位に存在するGドメイン(約1000アミノ酸残基)が生物活性に最も深く関与していると考えられている。今年度は、ラミニンの高次生命現象に及ぼす機能を明らかにすることを目的にα1鎖、α3鎖、α4鎖、α5鎖のGドメインの組換えタンパクとそれらを網羅した約400種類の合成ペプチドを作成し細胞接着及びヘパリン結合活性部位のスクリーニングを行った。GドメインはLG1LG5の5つのLGモジュールからなるが、4種類のいずれのα鎖Gドメインのスクリーニングにおいても4番目のモジュールのLG4に細胞接着及びヘパリン結合活性が認められた。また、α1鎖AG73(PKRLQVQLSIRT)、α3鎖A3G75(KNSFMALYLSKG)、α4鎖A4G82(TLFLAHGRLVFM)、α5鎖A5G81(AGQWHRVSVRWG)が強い細胞接着やヘパリン結合活性を示した。さらに、これらの4種類のペプチドがそれぞれのLG4組換えタンパクの細胞接着やヘパリン結合を阻害したことから、これらの部位がそれぞれの鎖でのGドメインの活性中心であることが示唆された。これらのレセプターとしてα1鎖AG73がシンデカン-1と、α3鎖A3G75とα4鎖A4G82がシンデカン | KAKENHI-PROJECT-11470480 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11470480 |
酸化物超伝導体の特性評価と高電流密度線材化の基礎研究 | 酸化物超伝導体の特性評価と線材化に向けての研究成果をまとめる。(1)酸化物超伝導体の臨界電流密度をAC法(微小交流磁界重畳法)や交流帯磁率測定により定量的に評価した。特に、AC法ではバルク材における粒内と粒間の臨界電流密度を分離する方法を、磁束線の可逆運動が顕著な場合でも交流帯磁率の虚部_χ^<''>から臨界電流密度を評価する方法を示した。(2)燒結法で作製したY系バルク材における低い電流密度の原因が結晶粒間の弱結合であることを実験的に明らかにした。また、Y系バルク材に対してフッ素添加や溶融法によって結晶配向を揃え臨界電流特性の向上が実現できた。結晶配向が揃った領域の長さは数mmから数10mmと限られているが、1T程度の磁界中でも10^4A/cm^2以上の臨界電流密度が得られた。(3)Y系溶融試料における211相分散粒子による巨視的ピン止め力の理論的検討を行い、211相粒子の分散形態が異なる試料の臨界電流特性の実験結果を評価した。その結果、ピン止め力の温度依存性や分散粒子表面積依存性から50K以上の比較的高温領域では主なピンニング中心が211相分散粒子であることを明らかにした。一方、臨界電流密度の測定値が理論的予測値の約1/5程度であることから、結晶配向した領域でもクラックや小角結晶界面等の弱結合が存在することを示唆し、臨界電流密度の低下を議論した。さらに、磁束クリ-プによる臨界電流密度の緩和に伴う特性劣化を理論的に説明し、改善方法を示した。(4)酸化物超伝導体の線材化を目指して、常伝導金属との複合化における接触抵抗率が冷却安定性に及ぼす影響の定量化、Y系溶融試料における結晶配向領域を広域化するための反応条件の定量化、スピンコ-ト熱分解法によるBi系超伝導薄膜の特性改善、等の研究成果を得た。酸化物超伝導体の特性評価と線材化に向けての研究成果をまとめる。(1)酸化物超伝導体の臨界電流密度をAC法(微小交流磁界重畳法)や交流帯磁率測定により定量的に評価した。特に、AC法ではバルク材における粒内と粒間の臨界電流密度を分離する方法を、磁束線の可逆運動が顕著な場合でも交流帯磁率の虚部_χ^<''>から臨界電流密度を評価する方法を示した。(2)燒結法で作製したY系バルク材における低い電流密度の原因が結晶粒間の弱結合であることを実験的に明らかにした。また、Y系バルク材に対してフッ素添加や溶融法によって結晶配向を揃え臨界電流特性の向上が実現できた。結晶配向が揃った領域の長さは数mmから数10mmと限られているが、1T程度の磁界中でも10^4A/cm^2以上の臨界電流密度が得られた。(3)Y系溶融試料における211相分散粒子による巨視的ピン止め力の理論的検討を行い、211相粒子の分散形態が異なる試料の臨界電流特性の実験結果を評価した。その結果、ピン止め力の温度依存性や分散粒子表面積依存性から50K以上の比較的高温領域では主なピンニング中心が211相分散粒子であることを明らかにした。一方、臨界電流密度の測定値が理論的予測値の約1/5程度であることから、結晶配向した領域でもクラックや小角結晶界面等の弱結合が存在することを示唆し、臨界電流密度の低下を議論した。さらに、磁束クリ-プによる臨界電流密度の緩和に伴う特性劣化を理論的に説明し、改善方法を示した。(4)酸化物超伝導体の線材化を目指して、常伝導金属との複合化における接触抵抗率が冷却安定性に及ぼす影響の定量化、Y系溶融試料における結晶配向領域を広域化するための反応条件の定量化、スピンコ-ト熱分解法によるBi系超伝導薄膜の特性改善、等の研究成果を得た。 | KAKENHI-PROJECT-03210109 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03210109 |
化学物質リスク評価における不確実性分析に基づく基準値信頼性の分類と指標の提案 | リスク評価の不確実性を解析し、健康影響に関する化学物質の水質基準項目について分類を行った。結果、大きく3つに分類できた。1つめは無機系物質の項目で、諸外国に比べ厳しい基準値が設定されている傾向があり、また、疫学調査の結果を用いて評価を行った項目が多かった。2つめは有機系物質の項目であり、動物試験に基づく評価が多いのが特徴であった。また通常の不確実係数(UF)に加えて追加のUFが考慮されている項目が多いのも特徴であった。最後は消毒副生成物の項目である。この項目は、国等により水質管理の考え方から異なるという特徴があった。また、リスク評価に向けた放射性セシウムの環境水中動態の不確実性も検討した。化学物質のリスク評価は大きく「毒性評価」と「暴露評価」に分けることができ、いずれにも不確実性が存在する。本年度は昨年度の「暴露評価」に引き続き「毒性評価」における不確実性の抽出を行った。毒性評価において不確実性が生じる項目として、非発がん影響をエンドポイントとする場合は、採用された毒性評価の種類(疫学調査、動物実験など)の定性的な不確実性、また、動物実験の場合は、NOAELを用いた評価を行っているかベンチマークドース法による評価を行っているかによる違いが大きい。NOAEL法の場合は、NOAELとLOAELの投与量の違い、あるいはNOAELが存在するか否かが大きな不確実性の要因として考えられた。ベンチマークドース法の場合は、動物実験の結果の50%値と95%下限値を採用した場合の出発点の違いにより不確実性が示されることが推測された。発がん影響を見た場合も、同様にベンチマークドース法を使用しているか否か、また結果の50%値と95%値の違いを指標とすることができる可能性が示唆された。また、水道水中に残留する化学物質のリスク評価に必要なデータ構造を整理するとともに、考慮すべき不確実性について検討した。日本の水質基準、米国環境庁による水質基準、欧州指令値とを比較した結果、同じ水質基準項目の基準値が異なる場合があることに加え、水質基準項目自体にも違いがあることが示された。これは、毒性評価から水質基準値設定に至るまでのプロセスの違いに原因があると考えられた。さらには、基準値設定だけではなく、その運用方法についても大きな違いがあることがわかった。放射性物質のリスク評価に関する不確実性については、環境水に対する環境動態モデルを用いて検討した結果、放射性セシウムの分配係数に大きな不確実性が存在することが示された。化学物質のリスク評価は大きく「毒性評価」と「暴露評価」に分けることができ、いずれにも不確実性が存在する。平成24年度においては、暴露評価を中心に不確実性に関連するパラメータに関する研究を行った。化学物質の暴露評価においては、毒性評価より得られる一日耐用摂取量(ヒト体重1kg当たり)をもとに基準値設定の際の参考となる評価値が算出される。ヒトの健康に係る飲料水に対する水質基準の場合、現状の日本の場合は、平均体重50kgと一日飲水量として2Lが代表値として与えられている。本研究では一日飲水量の不確実性について考慮するために、摂水量調査を行った。夏と冬の2回にわたり行われた摂水量調査の解析を行った結果、水道水(スープなど汁物からの飲用も含む)からの摂水量は、算術平均値として夏、1159mL,冬、1124mL、95%値として、夏、2400mL,冬2200mLが得られた。これに、ボトル水や市販飲料を加えた液体としての全摂水量は算術平均値として夏、1936mL,冬、1638mL, 95%値として、夏、3570mL,冬2900mLが得られた(速報値として)。水道水由来の摂水量は夏と冬には大きな違いが無かった。しかし、液体全体の摂水量としては夏と冬に大きな差があり、これはアルコール飲料を含めた市販飲料の摂水量に季節差が大きいことがわかった。これを水質基準設定にあてはめると、水道水由来の摂水量で考えるべき化学物質と飲水量全体で規制すべき化学物質があり、化学物質によっては1日2Lという飲水量の代表値では不十分になる可能性が示唆された。また、放射性物質のリスク評価において、放射性セシウムの水からの摂取量に与える因子を調べた結果、最も影響が大きい物はセシウムの環境水中の形態であり、特に懸濁態と溶存体のいずれの形態で存在するかが摂取量に大きな影響を与えていることが示された。化学物質に関する基準値は科学的知見をもとに「評価値」を求め、この評価値をベースに基準値などを決定する。「評価値」の算出には「毒性評価」と「曝露評価」が行われ、このどちらにも化学物質の性質や曝露の性質によって不確実性が存在する。さらには、評価値から基準値の決定の際には、他の規制とのバランス、リスクと便益とのバランス、技術的な実現可能性、処理可能性、モニタリングの費用や効率・実現可能性、環境中のバックグラウンドレベル、などと言った要素について検討が行われる。これらも一種の不確実性と見なすことができる。そこで、本研究では「毒性評価」、「曝露評価」、「評価値から基準値決定まで」の間に組み込まれている不確実性について抽出し、それらを比較することで基準値の信頼性について議論することを目的としている。 | KAKENHI-PROJECT-24510052 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24510052 |
化学物質リスク評価における不確実性分析に基づく基準値信頼性の分類と指標の提案 | つまり、信頼性を不確実性の質と量とに分けて検討し、分類ごとの不確実性の特徴を明らかにすることを試みている。さらに、上記のさまざまな不確実性を未知による不確実性(Uncertainty)と、本質的に存在する不確実性つまり個人差などと言ったばらつき(Variability)に分類することも検討する。以上より今年度は、基準値の信頼性をデータの不確実性の視点から定量評価することを目的に、不確実性の類型化を行うとともに、情報の不足、変動性に関する指標の構築を行った。また、放射性物質のリスク評価に関する不確実性について、今年度は放射性セシウムの存在形態の違いに関する検討を行った。放射性セシウムは、水環境中において懸濁態へ吸着している場合と溶存態で存在している両方の場合が存在する。浄水処理は固液分離を基盤としている場合が多いことから、いかにして溶存態のセシウムを懸濁態へと移行できるかがということが、飲料水を通じたヒトの健康リスク評価に影響を与えることが明らかとなった。化学物質に関する基準値等は、科学的な知見を基に求めた評価値をベースに決定する。水質基準のうち健康影響項目の不確実性の解析を行った結果、大きな特徴として、水質項目により3つに分類された。1つは無機系物質の項目で、他国に比べ厳しい基準等設定が多かった。疫学調査が多く、不確実性係数(UF)の適用がないものも多かった。次に、有機系物質の項目で、動物実験に基づく評価が多かった。通常のUF100に加えて、追加UFを考慮しているものが多かった。他国等との比較では、値にばらつきが見られ、基準設定の考え方の違いが示唆された。最後は、消毒副生成物である。地域により基準設定項目が異なり、例えば米国や欧州ではトリハロメタン(THM)を個別物質としてではなく、総THMだけで管理している。日本においては、THMを物質群総和および個別物質の両方で管理している。消毒副生成物は、他2分類のように環境中に汚染源が存在するわけではなく、消毒剤によって副次的に生成するため、科学的根拠は低くとも一群として管理を行うという考えに基づいている。基準値はリスク評価に加え、その他要因によって意思決定がなされる。このことから、基準等はその値と共に超過時の健康影響、主要汚染源、制御方法、監視方法などの追加の情報も伝えられる方が効果的と考えられた。また、放射性セシウムは水質基準値ではなく目標値という位置づけである。放射性セシウムの環境水中での挙動についてモデル解析を行い、分配係数の不確実性および吸着脱着の非平衡性の2要因が長期予測の不確実性の主要因と示された。また一般的な状態では通常処理で除去出来ることが示された。水質基準等の設定は毒性評価のみに基づくものではなく、曝露評価の影響が大きいこと、特に水道水のように処理工程が加わるものは、その処理性についても考慮に入れた上で、どのように水質を管理するかを決定していく必要がある。リスク評価の不確実性を解析し、健康影響に関する化学物質の水質基準項目について分類を行った。結果、大きく3つに分類できた。1つめは無機系物質の項目で、諸外国に比べ厳しい基準値が設定されている傾向があり、また、疫学調査の結果を用いて評価を行った項目が多かった。2つめは有機系物質の項目であり、動物試験に基づく評価が多いのが特徴であった。また通常の不確実係数(UF)に加えて追加のUFが考慮されている項目が多いのも特徴であった。最後は消毒副生成物の項目である。 | KAKENHI-PROJECT-24510052 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24510052 |
マイアー主導のバウハウス建築教育における心理学、生物学、社会学、統一科学の空間化 | 1920年代末、H.マイアー主導のバウハウスはモダニズム建築の典型的形式を忌避し、心理学、生物学、社会学、及び統一科学に基づく分析を重視した理論を教授していた。本研究はそのような理論を建築空間化する方法を明らかにした。マイアーにおいて統一科学の理論は概念構成のレベルで空間化され、心理学、生物学、社会学は設計過程の各段階で空間化された。マイアー指導の学生作品においても諸科学が段階的に空間化された。1920年代末、H.マイアー主導のバウハウスはモダニズム建築の典型的形式を忌避し、心理学、生物学、社会学、及び統一科学に基づく分析を重視した理論を教授していた。本研究はそのような理論を建築空間化する方法を明らかにした。マイアーにおいて統一科学の理論は概念構成のレベルで空間化され、心理学、生物学、社会学は設計過程の各段階で空間化された。マイアー指導の学生作品においても諸科学が段階的に空間化された。本年度は主として、1.図面・写真資料の収集、研究情報の収集、2.著作と論文の収集・分析、3.研究経過の発表を行った。1.図面・写真資料の収集とGG再表現を通した分析、研究情報の収集分析の基軸となる学生作品としてP.トルツィナー等の「社会主義国家の労働者のための集合住宅」案(1930)の図面4枚のデジタル・データをヴァイマール・バウハウス大学およびバウハウス資料館より入手した。またコンスタンツ大学哲学資料館より本テーマに関する哲学分野の研究情報を収集した。しかし、CG再表現を通した分析については報告者の主宰する研究室の事情により実行できなかったため、来年度実施することにした。2.著作と論文の収集・分析コンスタンツ大学哲学資料館所蔵の0.ノイラートおよびR.カルナップのアーカイブのマイクロフィルムを閲覧し、1920年代から30年代の講演原稿等の資料を入手した。特に建築分野では殆ど知られていなかったカルナップのバウハウスでの講演原稿も入手した。3.研究経過の発表デッサウ・バウハウスにおける活動に焦点を当てた展覧会のカタログ『バウハウス・デッサウ展BAUHAUSexperience, dessau』に本研究の背景と概略に相当する内容を掲載した。さらに収集した資料を基にH.マイアーとO.ノイラート及びR.カルナップの概念構成の類似性について分析し、『日本建築学会中国支部研究報告集』において公表した。本年度は、1.マイアーにおける諸科学と建築理論・空間の関係の分析、2.マイアー指導の学生作品における諸科学の建築空間化の過程の分析、3.研究成果の整理を行った。1に関する分析の結果、以下の内容が明らかになった。まず社会学についてはダイアグラムを用いた分析とそれを基にする空間の類型化という手法によって建築空間化された。次に心理学的については、(1)建築の社会的組織を建築形態から把握させる空間と、(2)ランドスケープ(環境)とその眺望により建築内部にいる人々を精神的にリラックスさせる空間として建築空間化された。そして生物学については、狭義の生物学においては日照時間のダイアグラムの計算や必要換気量の計算を通して建築空間化され、以上の3分野の諸科学は広義の意味での生物学の建築空間化としてまとめられた。最後に統一科学は以上に述べたような科学的認識により世界を把握する概念構成そのものとして建築空間化された。2に関しては、CG再表現による分析をマイアー指導の学生作品「社会主義国家の工場労働者用共同住宅」案(P.トルティナー、T.ヴァイナー)に適用した結果、生活の科学的な分析結果を単位住戸においては段階的に組み合わせ建築空間化し、建築全体においては構成単位が集合する際には社会構成上の単位が認識できるように建築空間化していることが明らかになった。そして1・2の分析を総合した結果、マイアー主導のバウハウスにおいて統一科学の理論は概念構成というレベルで建築空間化され、他の生物学、心理学、社会学は設計過程の各段階で建築空間化されることが明らかになった。今後、上記の成果を査読付論文雑誌に投稿し評価と課題を明確化していくと同時に、他のモダニズムの建築家達の状況との比較を行い、近代建築の歴史上に位置付ける。 | KAKENHI-PROJECT-20760433 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20760433 |
環と加群の構造のホモロジー代数学的研究 | 環と加群の構造の研究においては,Auslander-Gorenstein環の極小移入分解における最終項のsocleがessentialになるという興味ある性質を持つことを示した。(Journal of Pure and Applied Algebraに発表予定)これにより,我々が既に得ていた結果と併せると,極小移入分解における最終項の性質がかなり究明されたことになる。又,環に関するAuslanderの条件が3角行列環に移行するかという問題についても,アルテイン環の場合ではあるが,一般の次数の3角行列環について肯定的であることを示した。(Communications in Algebraに発表予定)一方,幾何学の研究分野では,複素定曲率空間内の実超曲面に関して、ある特定な性質を持った曲面の分類を試みた。その結果,R(S-aA)=0なる性質を持つ超曲面を分類した。(Bull.T.U.I.に発表予定)又,正則断面曲率のある条件下で,複素射影空間内の実超曲面を分類した。(Bull.T.U.I.に発表予定)環と加群の構造の研究においては,Auslander-Gorenstein環の極小移入分解における最終項のsocleがessentialになるという興味ある性質を持つことを示した。(Journal of Pure and Applied Algebraに発表予定)これにより,我々が既に得ていた結果と併せると,極小移入分解における最終項の性質がかなり究明されたことになる。又,環に関するAuslanderの条件が3角行列環に移行するかという問題についても,アルテイン環の場合ではあるが,一般の次数の3角行列環について肯定的であることを示した。(Communications in Algebraに発表予定)一方,幾何学の研究分野では,複素定曲率空間内の実超曲面に関して、ある特定な性質を持った曲面の分類を試みた。その結果,R(S-aA)=0なる性質を持つ超曲面を分類した。(Bull.T.U.I.に発表予定)又,正則断面曲率のある条件下で,複素射影空間内の実超曲面を分類した。(Bull.T.U.I.に発表予定) | KAKENHI-PROJECT-06640030 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06640030 |
甲状腺外TSH受容体:遺伝子発現調節機構およびその病態生理的意義 | 1.リンパ球におけるTSH受容体遺伝子発現:正常人、バセドウ病患者、橋本病患者の末梢血より単核球を採取し、1%Phitohemagulutinin(PHA)存在下にて7日間培養し細胞数を増加させた後、各種薬剤添加をして培養を行いmRNAを抽出した。次にReverse Transcriptaseを用いてcDNAを作成し、Polymerase Chain Reaction(PCR)を行いTSH受容体の遺伝子の増幅を行ないTSH受容体mRNAの測定を行った。TSH受容体の細胞外部分及び細胞内部分を増幅するPCR primerを用いて増幅を行ったがTSH受容体に特異的なmRNAの増幅が認められリンパ球にTSH受容体が存在することが判明した。また、Reverse TranscriptionにおいてPCRの3'のprimerを用いることにより定量的PCRを行いTSH受容体mRNAの定量を試みた。正常人、橋本病患者に比較してバセドウ病患者リンパ球においてはmRNAの量が多い傾向が認めら,バセドウ病の進展にリンパ球TSH受容体が何らかの役割を果たしていることが示唆された。次にリンパ球におけるTSH受容体mRNAに対する各種薬剤の影響を検討した。まず、PHAはTSH受容体mRNAを減少させたがTransforminggrowthfactor(TGF)-bのmRNAを増加させた。TSHによる影響は認められなかった。次に細胞の分化を促進するRetinoic Acid及びPhorbolesterであるPMAにおいても影響が認められなかった。その他、IL-6,TGF-b,Endothelinの影響を検討したが影響は認められなかった。2.線維芽細胞におけるTSH受容体遺伝子発現:まず、正常人皮膚線維芽細胞を用いてリンパ球と同様にTSH受容体mRNAの測定をPCR法を用いて行った。Fetal Calf Serum(FCS)存在下で培養した細胞も、無血清で培養下細胞においてもTSH受容体mRNAは認められなかった。また、TSH,IL-6,TGF-b,bFGFによる影響を検討したがTSH受容体mRNAの発現は認められなかった。次に、Pretibial dermopathyの認められたバセドウ病患者1例の患部皮膚線維芽細胞について検討を行ったところTSH受容体mRNAが認められ、線維芽細胞TSH受容体の発現の病態生理的意義が示唆された。1.リンパ球におけるTSH受容体遺伝子発現:正常人、バセドウ病患者、橋本病患者の末梢血より単核球を採取し、1%Phitohemagulutinin(PHA)存在下にて7日間培養し細胞数を増加させた後、各種薬剤添加をして培養を行いmRNAを抽出した。次にReverse Transcriptaseを用いてcDNAを作成し、Polymerase Chain Reaction(PCR)を行いTSH受容体の遺伝子の増幅を行ないTSH受容体mRNAの測定を行った。TSH受容体の細胞外部分及び細胞内部分を増幅するPCR primerを用いて増幅を行ったがTSH受容体に特異的なmRNAの増幅が認められリンパ球にTSH受容体が存在することが判明した。また、Reverse TranscriptionにおいてPCRの3'のprimerを用いることにより定量的PCRを行いTSH受容体mRNAの定量を試みた。正常人、橋本病患者に比較してバセドウ病患者リンパ球においてはmRNAの量が多い傾向が認めら,バセドウ病の進展にリンパ球TSH受容体が何らかの役割を果たしていることが示唆された。次にリンパ球におけるTSH受容体mRNAに対する各種薬剤の影響を検討した。まず、PHAはTSH受容体mRNAを減少させたがTransforminggrowthfactor(TGF)-bのmRNAを増加させた。TSHによる影響は認められなかった。次に細胞の分化を促進するRetinoic Acid及びPhorbolesterであるPMAにおいても影響が認められなかった。その他、IL-6,TGF-b,Endothelinの影響を検討したが影響は認められなかった。2.線維芽細胞におけるTSH受容体遺伝子発現:まず、正常人皮膚線維芽細胞を用いてリンパ球と同様にTSH受容体mRNAの測定をPCR法を用いて行った。Fetal Calf Serum(FCS)存在下で培養した細胞も、無血清で培養下細胞においてもTSH受容体mRNAは認められなかった。また、TSH,IL-6,TGF-b,bFGFによる影響を検討したがTSH受容体mRNAの発現は認められなかった。次に、Pretibial dermopathyの認められたバセドウ病患者1例の患部皮膚線維芽細胞について検討を行ったところTSH受容体mRNAが認められ、線維芽細胞TSH受容体の発現の病態生理的意義が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-04671500 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04671500 |
発がんとがん予防における腸内フローラの役割の解明と機能的腸内菌の開発 | 大腸癌の発生における腸内菌の役割を調べるために、ラットに大腸発癌剤azoxymethane(AOM)もしくは2-amino-1-methyl-6-phenylimidazo[4,5-b]pyridine(PhIP)を投与し、それらによって誘発される大腸癌の前癌病変であるaberrant crypt foci(ACF)の形成に、腸内菌がどのような影響を与えるのかを調べた。その結果、次のことがわかった。1.Lactobacillus acidophilusおよびClostridium perfringensの培養液または培養上清を雄Sprague-Dawleyラットに摂取させると、AOM誘発ACFの形成が抑制された。3.機能的腸内菌のモデルとして遺伝子工学的に構築したリコペン産生Escherichia coliの菌体を雄Fisher 344ラットに投与すると、生理食塩水投与群に比べて、4つ以上のcryptからなるACF数が有意に減少した。また、ベクタープラスミド保有E.coliを投与した群と比較すると、ACFの総数および4つ以上のcryptからなるACF数が有意に減少した。フィトエン産生E.coliは、AOM誘発ACF形成に対する抑制効果を示さなかった。大腸癌の発生における腸内菌の役割を調べるために、ラットに大腸発癌剤azoxymethane(AOM)もしくは2-amino-1-methyl-6-phenylimidazo[4,5-b]pyridine(PhIP)を投与し、それらによって誘発される大腸癌の前癌病変であるaberrant crypt foci(ACF)の形成に、腸内菌がどのような影響を与えるのかを調べた。その結果、次のことがわかった。1.Lactobacillus acidophilusおよびClostridium perfringensの培養液または培養上清を雄Sprague-Dawleyラットに摂取させると、AOM誘発ACFの形成が抑制された。3.機能的腸内菌のモデルとして遺伝子工学的に構築したリコペン産生Escherichia coliの菌体を雄Fisher 344ラットに投与すると、生理食塩水投与群に比べて、4つ以上のcryptからなるACF数が有意に減少した。また、ベクタープラスミド保有E.coliを投与した群と比較すると、ACFの総数および4つ以上のcryptからなるACF数が有意に減少した。フィトエン産生E.coliは、AOM誘発ACF形成に対する抑制効果を示さなかった。 | KAKENHI-PROJECT-09253240 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09253240 |
日本近代法のゆらぎ―土地・家族・村の実証的研究 | (1)3年の研究期間中に、中国地方旧広島控訴院管内7か所の裁判所を延べ86回訪れ、所蔵文書の調査を行った。そしてデータをデジタル化し、保存の措置を施した。(2)調査により得た重要な史資料について、翻刻作業を行うとともに、その意義・位置づけ等につき相互検討・討議を重ねた。成果は学術雑誌への発表、学会・研究会での報告等の形で発表した。(3)「近代法史像」再検討の課題について、実証的かつ理論的検討を深めた。法の立法過程と施行過程研究の理論と方法、近代法体系生成期および過渡期における司法・裁判制度の位置づけ、訴訟頻発現象に対応する司法側の具体的対応、家族・土地・地方に関する裁判例の検討などである。(1)旧広島控訴院管内各裁判所保管資料を閲覧し、デジタルカメラにて撮影をおこなった。出張した裁判所と回数はつぎの通り。広島地方裁判所8回、広島地方裁判所呉支部4回、山口地方裁判所5回、松江地方裁判所7回、鳥取地方裁判所3回、鳥取地方裁判所米子支部3回、その他である。(2)また公立図書館・文書館等において、資料調査をおこなった。調査した公的施設はつぎのとおり。広島県公文書館、広島県立図書館、島根県立図書館、鳥取県立図書館、愛媛県立図書館その他。(3)裁判所で収集した資料のうち重要と思われる資料について、翻刻し、発表した。(4)本研究テーマに関する研究報告を研究会でおこなった。(5)広島修道大学「明治期の法と裁判」研究会において、本プロジェクト参加者が各自の研究の進展について報告を行った。(1)旧広島控訴院管内各裁判所保管史料を閲覧し、デジタルカメラにて撮影を行った。出張した裁判所と回数は次の通りである。広島地方裁判所12回、山口地方裁判所6回、松江地方裁判所雲南簡易裁判所6回、鳥取地方裁判所2回、鳥取地方裁判所倉吉支部1回。(2)公立図書館・文書館等において、資料調査を行った。調査した公的施設は次の通りである。島根県立図書館、鳥取県立図書館、愛媛県立図書館その他。(3)本研究テーマに関する論文を作成し、公刊した。(4)裁判所で収集した資料のうち重要と思われる資料について、翻刻し紹介を行った。(5)本研究テーマに関する研究報告を行った。(6)広島修道大学「明治期の法と裁判」研究会を開催し、本プロジェクト参加者が各自の研究の進展について報告を行った。(1)旧広島控訴院管内裁判所の文書調査を実施し、裁判所に保管されている明治・大正・昭和戦前期の文書を閲覧し、デジタルカメラにて撮影・記録の作業を実施した。訪れた裁判所と回数は、以下の通り。広島地方裁判所(18回)、山口地方裁判所(3回)、鳥取地方裁判所(4回)、松江地方裁判所雲南簡裁(4回)。(2)公立図書館・文書館等において資料調査を実施した。調査した公的施設は、島根県立図書館、鳥取県立図書館、愛媛県立図書館などである。(3)本研究テーマに関する論文を作成し、公刊した。また、裁判所で収集した資料のうち重要と考えられる資料につき、翻刻を作成し紀要等に掲載・公刊した。(4)各種研究会において、本研究テーマに関する研究発表を行った。(5)広島修道大学「明治期の法と裁判」研究会を実施した。研究会では、本調査の進行状況報告、分担分野に関する各自の報告と討論を実施した。科研代表および分担者・協力者に加え、外部の研究者・学識経験者等が参加した。(1)3年の研究期間中に、中国地方旧広島控訴院管内7か所の裁判所を延べ86回訪れ、所蔵文書の調査を行った。そしてデータをデジタル化し、保存の措置を施した。(2)調査により得た重要な史資料について、翻刻作業を行うとともに、その意義・位置づけ等につき相互検討・討議を重ねた。成果は学術雑誌への発表、学会・研究会での報告等の形で発表した。(3)「近代法史像」再検討の課題について、実証的かつ理論的検討を深めた。法の立法過程と施行過程研究の理論と方法、近代法体系生成期および過渡期における司法・裁判制度の位置づけ、訴訟頻発現象に対応する司法側の具体的対応、家族・土地・地方に関する裁判例の検討などである。中国地方旧広島控訴院管内各裁判所を訪問し資料収集を行う作業を継続している。これによって、収集した資料は着実に増加している。とくに今年度は、これまで確認しえなかった資料(金銭債務臨時調停その他の調停における調停調書など)を発見し、そのデータを集積しつつある。今後の分析が期待される。収集した資料に基づいた論文作成、資料翻刻の作業も順調に進んでいる。広島修道大学「明治期の法と裁判」研究会主宰の研究会を開催し、本プロジェクト参加者各自の進展状況を報告し、討論した。その他の研究会においても、本研究テーマに関する報告を行った。「近代法のゆらぎ」に関する理論的検討は、分析を継続している。日本法制史中国地方旧広島控訴院管内各裁判所について、訪問及び資料収集を継続し、未収集の資料の採録を続ける。今後は、広島地方裁判所、山口地方裁判所、松江地方裁判所、鳥取地方裁判所の調査を続ける。収集した裁判所文書の目録作成、重要文書の解読と翻刻を継続する。収集した資料を分析した成果を個別研究として発表する。広島修道大学「明治期の法と裁判」研究会主宰の研究会を開催し、本プロジェクト参加者各自の進展状況を報告し、討論する。 | KAKENHI-PROJECT-25380020 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25380020 |
日本近代法のゆらぎ―土地・家族・村の実証的研究 | とくに今年度は、研究計画の最終年度に当たっているので、研究テーマ「近代法のゆらぎ」に対する研究参加者の見解をとりまとめ、3カ年の研究の総括として成果を発表することを課題とする。中国地方旧広島控訴院管内各裁判所の訪問と資料収集は順調に推移している。「明治期の法と裁判」研究会主催の研究会を開催した。複数の研究会・学会等において、本研究テーマに関する報告を行った。理論研究については、基礎的文献の収集と分析を進めている段階であり、おおむね順調に推移している。広島修道大学および広島大学においては、予算額についてほぼ予定通りの予算執行を行った。島根大学配分額は若干の未執行額を生じたが、当初に予定された回数の調査を行うことができなかったためである。中国地方旧広島控訴院管内各裁判所について、訪問及び調査を継続し、未収集の資料の採録を続ける。今後は山口地方裁判所、松江地方裁判所、鳥取地方裁判所倉吉支部などの調査を続ける。収集した裁判所文書の目録作成、重要文書の解読と翻刻を継続する。理論研究について、視野を拡大するとともに、各種理論の比較検討を行う。島根大学配分額については、調査回数を増やすとともに、研究とりまとめを進める際必要な諸費用(データベース作成、統計処理等)に充当する。天候不順(寒冷と積雪)のため、計画していた出張調査のうち実施できなかった回があったためである。次年度において、出張調査の回数を増やし、旅費を使用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-25380020 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25380020 |
弾性定数から見たネマチック-スメクチック相転移の前駆現象 | 液晶の弾性定数は通常液晶セルの配向方向に対し垂直方向に電場や磁場を印加し、配向の変化が起こり始める(フレデリックス転移)臨界場を測定することによって決定される。ところがツイスト弾性定数【K_(22)】に関しては、スプレー、ベンド変形に対する弾性定数【K_(11)】,【K_(33)】の測定に用いられる通常の方法が使えない。本研究の第一の目的は強制レーリー散乱法による【K_(22)】の測定システムを完成させることにあった。この目的のために、これまで行ってきた通常の強制レーリー散乱法による染料分子の液晶中での拡散定数測定をネマチック液晶からスメクチックA液晶やスメクチックB液晶に拡張したり、信号強度の温度依存性を詳細に検討したりして、強制レーリー散乱法自身の検討、改良を行う一方、磁場中での強制レーリー散乱装置を製作した。標準試料としてよく用いられる5CBを用いて実験したところ、ある臨界磁場で過渡回折光強度の緩和時間が変化し始めることが確認された。このことは磁場による配向変化によって拡散定数が変化したことを意味し、この臨界磁場から5CBの【K_(22)】が決定された。得られた結果は最近提案されたいくつかの方法による結果と良く一致することが確認された。本研究の最終目的である臨界現象を観測する為、8CBを用いて予備実験を行った結果、ネマチック-スメクチックA相転移点の約1度以内で【K_(22)】の増加が観測された。しかし、現在のところ臨界指数など定量的な測定はできていない。この原因はおもに温度制御の不備に依るので少なくとも百分の一度の温度精度を実現するため改良を検討中である。このようにまだ研究の最終目的は達成していないが、強制レーリー散乱法によってこれまで困難であった【K_(22)】測定が容易にできるようになったことは大きく評価される。液晶の弾性定数は通常液晶セルの配向方向に対し垂直方向に電場や磁場を印加し、配向の変化が起こり始める(フレデリックス転移)臨界場を測定することによって決定される。ところがツイスト弾性定数【K_(22)】に関しては、スプレー、ベンド変形に対する弾性定数【K_(11)】,【K_(33)】の測定に用いられる通常の方法が使えない。本研究の第一の目的は強制レーリー散乱法による【K_(22)】の測定システムを完成させることにあった。この目的のために、これまで行ってきた通常の強制レーリー散乱法による染料分子の液晶中での拡散定数測定をネマチック液晶からスメクチックA液晶やスメクチックB液晶に拡張したり、信号強度の温度依存性を詳細に検討したりして、強制レーリー散乱法自身の検討、改良を行う一方、磁場中での強制レーリー散乱装置を製作した。標準試料としてよく用いられる5CBを用いて実験したところ、ある臨界磁場で過渡回折光強度の緩和時間が変化し始めることが確認された。このことは磁場による配向変化によって拡散定数が変化したことを意味し、この臨界磁場から5CBの【K_(22)】が決定された。得られた結果は最近提案されたいくつかの方法による結果と良く一致することが確認された。本研究の最終目的である臨界現象を観測する為、8CBを用いて予備実験を行った結果、ネマチック-スメクチックA相転移点の約1度以内で【K_(22)】の増加が観測された。しかし、現在のところ臨界指数など定量的な測定はできていない。この原因はおもに温度制御の不備に依るので少なくとも百分の一度の温度精度を実現するため改良を検討中である。このようにまだ研究の最終目的は達成していないが、強制レーリー散乱法によってこれまで困難であった【K_(22)】測定が容易にできるようになったことは大きく評価される。 | KAKENHI-PROJECT-60540199 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-60540199 |
隙間を考慮した地盤反力特性のモデル化と構造物-地盤系の地震応答解析への適用 | 構造物基礎地盤系の地震時挙動で見落とされてきた現象のひとつに,軟弱地盤で発生する「杭頭付近の隙間」の影響がある.本研究では,地盤構造物系の一体解析によって「隙間」が地震応答特性に与える影響の評価を試みた.「隙間」を考慮した地盤反力モデルは,「弾塑性論に基づく押し拡げ理論」に基づいて定式化された.さらにこのモデルでは「繰り返し載荷の効果」も考慮されている.その解析結果は、遠心模型実験法で検証された.解析で想定した一体系構造物は杭基礎で支えられた仮設の自立型タワークレーンである.この解析例によって,隙間の発生と進展が振動特性にどのような影響を与えるかを解析した.平成14年度は,「隙間」を考慮した地盤反力モデルの高精度化を行なうとともに,ばね-質点系モデルで応答解析を行った.比較のために,遠心模型実験を使用して杭基礎模型を用いて,上部構造物の応答特性を解析するとともに,杭に生じる曲げモーメントを実験結果と比較検討した.平成15年度には,粘土地盤模型を用いて遠心模型実験によって,自立型クレーンの振動特性の変化と動的安定性をより詳細に検討した.平成16年度は,粘土地盤模型を用いて自立型タワークレーンの動的安定性を検討した.その結果,加振に伴う地盤の劣化現象により,応答加速度,曲げモーメントが減少するが,相対変位は増大するということを確認した.以上のことより,杭頭付近に発生する隙間とその進展によって地盤杭基礎構造物系の振動特性が変化して,入力特性によっては上部構造物が過大な応答する可能性があることが明らかになった.また,その挙動を解析できる「隙間」を考慮した地盤反力モデルが定式化された.構造物基礎地盤系の地震時挙動で見落とされてきた現象のひとつに,軟弱地盤で発生する「杭頭付近の隙間」の影響がある.本研究では,地盤構造物系の一体解析によって「隙間」が地震応答特性に与える影響の評価を試みた.「隙間」を考慮した地盤反力モデルは,「弾塑性論に基づく押し拡げ理論」に基づいて定式化された.さらにこのモデルでは「繰り返し載荷の効果」も考慮されている.その解析結果は、遠心模型実験法で検証された.解析で想定した一体系構造物は杭基礎で支えられた仮設の自立型タワークレーンである.この解析例によって,隙間の発生と進展が振動特性にどのような影響を与えるかを解析した.平成14年度は,「隙間」を考慮した地盤反力モデルの高精度化を行なうとともに,ばね-質点系モデルで応答解析を行った.比較のために,遠心模型実験を使用して杭基礎模型を用いて,上部構造物の応答特性を解析するとともに,杭に生じる曲げモーメントを実験結果と比較検討した.平成15年度には,粘土地盤模型を用いて遠心模型実験によって,自立型クレーンの振動特性の変化と動的安定性をより詳細に検討した.平成16年度は,粘土地盤模型を用いて自立型タワークレーンの動的安定性を検討した.その結果,加振に伴う地盤の劣化現象により,応答加速度,曲げモーメントが減少するが,相対変位は増大するということを確認した.以上のことより,杭頭付近に発生する隙間とその進展によって地盤杭基礎構造物系の振動特性が変化して,入力特性によっては上部構造物が過大な応答する可能性があることが明らかになった.また,その挙動を解析できる「隙間」を考慮した地盤反力モデルが定式化された.平成14年度の研究実施計画に対する研究実績は以下の通りである。◎遠心載荷実験による構造物杭基礎地盤模型の加振実験気乾状態の乾燥砂(豊浦砂)地盤及び粘土(藤森粘土)地盤中に模型杭4本で支えられた構造物模型を設置して遠心場(18.8G)で加振実験(最大入力加速度2Gの正弦波加振)を行った。その結果、構造物の固有振動数が高くなると、杭基礎の構造物や地盤の固有振動数ではなく、全体系の固有振動数付近で杭に生じる曲げモーメントも最大となることが明らかになった。そして、杭頭付近の地盤剛性は、離れたところよりも軟らかく杭頭周辺に加振時には隙間が生じていたことが推測された。◎動的地盤反力特性モデルの高精度化降伏条件を非排水せん断強度で表した「隙間を考慮した動的地盤反力モデル」の適用範囲を広げ、より高精度なモデルとするために、今年度はこの繰り返し載荷の効果をこれまで以上に精度良くモデル化できた。その成果、構造物杭基礎地盤系の応答解析結果と遠心模型実験結果の良い対応が見られた。この結果は、目的としたモデルの高精度化が行われたことを示している。◎構造物杭基礎地盤系の応答解析定式化された「隙間を考慮した動的地盤反力モデル」を用いた構造物杭基礎地盤系の動的解析の結果、(1)杭基礎地盤系と構造物の卓越振動数が共振するとき、全体系の応答倍率が増大し、(2)杭基礎の曲げモーメントは構造物の固有振動数と杭基礎地盤系の卓越振動数で大きくなることが明らかになった。さらに、本研究で定式化された「隙間を考慮した動的反力モデル」は、乾燥砂地盤を用いた遠心模型実験の結果を良く説明できた。平成15年度の研究実施計画に基づき実施した研究の実績は以下の通りである。◎遠心場における構造物杭基礎模型地盤模型の加振実験 | KAKENHI-PROJECT-14550484 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14550484 |
隙間を考慮した地盤反力特性のモデル化と構造物-地盤系の地震応答解析への適用 | 平成15年度の遠心実験では、上部構造物の振動特性の違いによって、隙間の発生状況がどのように異なるかを明らかにするため、具体的な構造物として杭基礎を有するタワークレーンの振動実験を行った。タワークレーン模型には、載荷時と非載荷時を再現するため、設置した錘の位置を変えた。その加振実験によりタワークレーン杭基礎系が弓形に撓った形になるとき、杭頭付近に隙間が生じるとともに、杭頭の曲げモーメントが大きくなり損傷する可能性があることが明らかになった。このことは、構造物杭基礎地盤系において、杭頭付近の応答が大きくなる「2次モード」的な変形を取らないように設計することが肝要であることを示唆している。◎数値解析による構造物杭基礎模型地盤模型の動特性の解明タワークレーン杭基礎地盤系をバネ・質点系でモデル化して応答解析を行った。地盤に関して線型モデルを用い、また杭地盤を繋ぐ地盤反力バネも線形として解析を行った。このような、線形応答解析の範囲でも遠心模型実験で示された応答特性がほぼ再現された。しかし、地震時に構造物杭基礎地盤系が「2次モード」的な応答を示すときに杭頭が破壊するかどうかの最終判断は、地盤や地盤反力特性が非線形を考慮した解析を待つ必要がある。◎杭要素の載荷実験平成15年度は砂地盤模型を用いた載荷実験を行った。その実験結果(相対変位地盤反力関係)は粘性土地盤の場合と同様に支持力曲面を用いて説明できること明らかになった。さらに、その結果をもとに弾塑性モデルで定式化を行い、そのモデルを用いた数値解析より、このモデルが十分な精度で杭要素の相対変位地盤反力関係相対変位地盤反力関係を説明することが明らかにできた。以上、総括すると遠心模型実験で杭基礎が破壊すると思われる振動モードが明らかになり、数値解析でもその可能性が大きいことが分かった。さらに、杭要素試験の結果より砂地盤における杭要素の相対変位地盤反力関係が定式化された。今後の課題としては、定式化された非線形地盤反力特性を考慮した応答解析と、その解析結果に基づく地震時杭頭破壊の可能性の評価が残されている。平成16年度に実施した実験解析及び数値解析によって、得られた知見及び総合的な考察結果を以下に述べる。◎遠心場における構造物杭基礎模型地盤模型の加振実験構造物杭基礎地盤系の例として杭基礎を有する自立型タワークレーン模型を用いて遠心場模型加振実験を実施した。その結果、吊り荷状態、地盤種別(砂地盤、粘土地盤)に関わらず、2次モード的な振動モードが卓越して杭頭付近で曲げモーメントが最大となった。また、隙間の影響を調べるために、小加振、大加振、小加振の3回の連続加振を行った。その結果、大加振によって杭頭付近に隙間が生じた後に加振すると構造物の応答加速度は小さくなった。このことから、隙間の発生は構造物の応答加速度を減少させる「効果」があると推測された。しかしながら、応答変位は増大した。◎数値解析による構造物杭基礎模型地盤模型の動特性の解明実験に用いた自立型タワークレーンのモード解析によれば、2次モードが卓越した。しかしながら、タワークレーン部が高くなった場合には地中の杭基礎部に最大曲げモーメントが生じる場合もあった。数値解析によれば、遠心加振実験で用いた杭基礎の長さの2倍程度の高さを有するスレンダーな上部構造物の場合には、杭頭に最大曲げモーメントが生じることが明らかになった。遠心加振実験と同じように隙間の発生は上部構造物の応答変位を減少させた。 | KAKENHI-PROJECT-14550484 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14550484 |
マルチファンクショナル人工ベクターの開発 | 安全で効率が高く、操作が簡便で迅速にかつ安価に調製できる非ウイルスベクターの開発を目指し、細胞内プロセスを効率的にクリアできる機能をハイブリッドしたマルチファンクショナルナノマシーンを創製すべく検討を行い、以下の成果を得た。1.デュアルリガンドポリプレックスは細胞内導入の効率を高める上で有効な手段であると共に、ビオチン-アビジンを利用した非ウイルスベクターのパッケージング手法の有用性を明らかとすることが出来た。2.光応答性脂質は細胞内にエンドサイトーシスで導入した核酸複合体の細胞質への脱出に有用であることを見出した。今後は、照射波長の長波長化が課題となる。3.核内輸送因子の使用は外部遺伝子の核内輸送に効果的であり、細胞質へ膜融合により封入物を効率的に導入するHVJ-Eベクターと組合わせることで、当初の目的であるマルチファンクショナルベクターの一つを達成することに成功した。今後は、より高い活性、そして、in vivoでの評価を行っていきたい。4.光開裂性架橋剤により得られる高分子量化PEIは光に応答し、DNA親和性を制御可能となった。しかし、トランスフェクション効率の向上には直結せず、今後細胞内動態の制御を克服した上で、DNAリリース機能の付与を検討すべきであろう。5.生体適合性・生分解性を有する天然高分子などを基体する非ウイルスベクターの開発に成功した。今後、本研究で得られたマルチファンクションの導入を行い、安全性に優れ、効率の高い非ウイルスベクターの構築を目指したい。安全で効率が高く、操作が簡便で迅速にかつ安価に調製できる非ウイルスベクターの開発を目指し、細胞内プロセスを効率的にクリアできる機能をハイブリッドしたマルチファンクショナルナノマシーンを創製すべく検討を行い、以下の成果を得た。1.デュアルリガンドポリプレックスは細胞内導入の効率を高める上で有効な手段であると共に、ビオチン-アビジンを利用した非ウイルスベクターのパッケージング手法の有用性を明らかとすることが出来た。2.光応答性脂質は細胞内にエンドサイトーシスで導入した核酸複合体の細胞質への脱出に有用であることを見出した。今後は、照射波長の長波長化が課題となる。3.核内輸送因子の使用は外部遺伝子の核内輸送に効果的であり、細胞質へ膜融合により封入物を効率的に導入するHVJ-Eベクターと組合わせることで、当初の目的であるマルチファンクショナルベクターの一つを達成することに成功した。今後は、より高い活性、そして、in vivoでの評価を行っていきたい。4.光開裂性架橋剤により得られる高分子量化PEIは光に応答し、DNA親和性を制御可能となった。しかし、トランスフェクション効率の向上には直結せず、今後細胞内動態の制御を克服した上で、DNAリリース機能の付与を検討すべきであろう。5.生体適合性・生分解性を有する天然高分子などを基体する非ウイルスベクターの開発に成功した。今後、本研究で得られたマルチファンクションの導入を行い、安全性に優れ、効率の高い非ウイルスベクターの構築を目指したい。より安全で効率が高く、操作が簡便で迅速にかつ安価に調製できる非ウイルスベクターの開発を目指し細胞内プロセスを効率的にクリアできる機能のハイブリッドを目指して研究を行った。ウイルスが細胞内障壁を克服するのと同様に挙動するマルチファンクショナルナノマシーン創製を行うために、プラスミドDNAの効率的な導入・発現を達成するために必要な複数機能のパッケージング法を種々検討した。具体的には以下の実験を行った。1.非ウイルスベクターに必要な機能を与える各機能性タンパク・ペプチドであるトランスフェリン・GALA・核内輸送因子(インポーティンβ)の調製を組換えタンパク発現もしくは固相合成した。得られた各因子のビオチンラベル化を行い、HPLCにて精製し、SDS-PAGE,MALDI-TOFマススペクトルなどにより構造確認を行った。2.生体適合性・生分解性を示し、抗原性の低い生体高分子にPEGスペーサーを介してビオチンを導入した。3.合成したビオチンラベル化カチオンポリマーとプラスミドDNAの複合体形成能を確認した。4.ビオチン化カチオンポリマーとプラスミドDNAの複合体にさらにビオチン化トランスフェリン・ビオチン化GALA・ビオチン化インポーティンβを加え、ストレプトアビジンでこれらのアッセンブリーを行った。5.培養細胞へのトランスフェクション活性を評価した。その結果、プラスミドDNA/PEI(ポリエチレンイミン)複合体に複数のレセプター結合因子を導入することによって、一種のレセプター結合因子を導入した複合体と比較して高い遺伝子発現効率を示す細胞種が存在することを見いだした。さらに、この要因として、遺伝子発現効率の向上が見られる細胞種では、複数のレセプター結合因子を導入することによって、細胞内導入効率がさらに向上することを明らかにした。6-アミノ-6-デオキシキトサン(6ACT)へのガラクトース残基の導入を行った(Ga1-6ACT)。HepG2(ヒト肝がん細胞)に対するトランスフェクション効率は修飾率に依存し、修飾率18-50%の範囲でポリエチレンイミン(PEI)と同等、6ACTに対しては最大10倍の効率に達した。一方でトランスフェクション効率に細胞特異性は認められなかった。また、アシアロ糖タンパクレセプターへの結合の阻害実験においてもトランスフェクション効率・細胞内導入効率は変化が見られなかった。DNA複合体は粒子径測定結果から、トランスフェクション活性の高い条件では1mm以上の大きな粒子に凝集していた。 | KAKENHI-PROJECT-17550159 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17550159 |
マルチファンクショナル人工ベクターの開発 | クラスリン経由のエンドサイトーシスでは100nm程度以上の粒子はほとんど取り込まれないことが知られており、Ga1-6ACTのトランスフェクション活性が向上した要因は、細胞内導入効率の向上が要因ではなく、エンドソーム脱出や核内移行などの細胞内動態において、有利に作用したと考えられる。一方、レセプター結合因子としてトランスフェリン,トランスフォーミンググロースファクターαをビオチン-ストレプトアビジンの強い相互作用を利用して、それぞれ非ウィルスベクターに導入し、プラスミドDNAと複合体を形成させた。一種のレセプター結合因子を導入した複合体と比較して高い遺伝子発現効率を示す細胞種が存在することを見いだした。さらに、遺伝子発現効率の向上が見られる細胞種では、複数のレセプター結合因子を導入することによって、細胞内への取り込み効率がさらに向上することを明らかにした。これより、遺伝子導入効率の向上が遺伝子発現効率向上の一因となっていると考えられる。また、複数のレセプター結合因子の導入による遺伝子発現・取り込み効率の向上には、レセプターを介して取り込まれることが重要であることを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-17550159 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17550159 |
インド古典音楽文献に見られる音律・音階・旋法 | 本研究は13世紀インド音楽の音律と音階を明らかにする目的で行われたもので,その方法として,13世紀のインド音楽全書サンギータラトナーカラに記録された横笛群の音律復元と同書に記録された各種旋法の譜例の復元を試みた。前者については,記録の文献学的調査を行いそれに基づいて模型を作成。楽器奏者,物理学者の協力の下で当該楽器の開口端補正の量を測定し,それに基づいて同書の数十に及ぶ横笛の音律を復元した。そこから各横笛群が約2オクターブの音域を確保しようとしたものであることを明らかにしたが,各音階音の音高が理想的に設定されているものでないことも明確にし,文献学的部分を中心にインド思想史学会において発表した。一方,旋法譜例の復元は,サンギータラトナーカラの試訳中に発表し,古典インド旋法の一般的形態の一部を看取した。現在当該分野の先行文献の梵本写本も入手しており,その調査も含めて本研究での課題を今後明らかにしていく予定である。本研究は13世紀インド音楽の音律と音階を明らかにする目的で行われたもので,その方法として,13世紀のインド音楽全書サンギータラトナーカラに記録された横笛群の音律復元と同書に記録された各種旋法の譜例の復元を試みた。前者については,記録の文献学的調査を行いそれに基づいて模型を作成。楽器奏者,物理学者の協力の下で当該楽器の開口端補正の量を測定し,それに基づいて同書の数十に及ぶ横笛の音律を復元した。そこから各横笛群が約2オクターブの音域を確保しようとしたものであることを明らかにしたが,各音階音の音高が理想的に設定されているものでないことも明確にし,文献学的部分を中心にインド思想史学会において発表した。一方,旋法譜例の復元は,サンギータラトナーカラの試訳中に発表し,古典インド旋法の一般的形態の一部を看取した。現在当該分野の先行文献の梵本写本も入手しており,その調査も含めて本研究での課題を今後明らかにしていく予定である。 | KAKENHI-PROJECT-22901003 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22901003 |
水利慣行をめぐる村落間秩序の形成 | 群馬県高崎市の旧38か町村の水田を灌漑する長野堰用水系において、渇水期に下流村落が上流堰を一時的に取り払い、上流村落によって堰の修復が行われるまでの間、流下した水を引くオタハライ慣行を中心に調査を行った。その結果、上小塙堰、浜尻堰、貝沢堰、佐野堰、一貫堀用水系の4つの用水支線でオタハライ慣行が行われていることが確認された。オタハライ慣行を行うのは、いずれも用水の流末の村落であり、渇水時には下流村落の権利として上流村落の承認の下に一定の形式により行われてきた。しかし、上流村落との関係は、絶対的な用水量の多寡やその歴史的な経緯によって異なり、上流優先の原則を前提としつつも用水を上流と下流で融通し合う相互扶助的な関係が見られる地域や、裁判すら辞さない極めて厳しい対立関係にある地域など多様である。そのうち、後者の地域である大類地区の五具堰をめぐるオタハライ慣行について、江戸時代から明治時代にかけての水論・裁判資料から、もともと上流村落が専用権を持っていた堰に対して、下流村落が次第に堰を払って水を引く権利を拡大していった変遷過程が明らかになった。そこには、用水の平等分配の考え方が認められる。用水の平等分配の考え方は、長野堰幹線水路で行われた下げ水という慣行にも窺える。下げ水も渇水時に行われる慣行である。ある程度、上流村落に水が回ったのを見計らって、上流堰の取水を一時停止し、下流村落に水を流す慣行であり、下流村落の申し出によって開始される。この慣行は、長野堰用水系全体において、水不足となっている下流域に対して上流域から水を融通するというものであり、時間分水である番水に近い配水慣行であるが、オタハライと共通する村落間の用水に対する考え方が看取されるのである。1.渇水期に、同一用水路を利用する下流村落が、上流の堰を破却し、上流村落によるその堰の修復までの間に流下した水を引くことができるオタハライという水利慣行について、群馬県高崎市の旧38か町村の水田を灌概する長野堰用水系において、その存在の有無を現地調査した。その結果、19の用水支線のうち、上小塙堰、浜尻堰、貝沢堰、新井堰、一貫堀(五具堰)において、当該慣行の存在が確認された。関係村落は、破却される堰を持っ上流村落、破却する下流村落を含めて上小塙、上並榎、筑縄、下小鳥、浜尻、貝沢、和田多中、飯塚、下佐野、南大類、中大類、宿大類、下大類、綿貫、柴崎、栗崎、旧高崎駅の17地区におよび、来年度以降の調査によってさらに増えていくことが予想される。2.長野堰土地改良区は、長野堰本流に設置された本堰と呼ばれる水門(かっ七のオタ)を管理し、それ以外の用水支線のオタおよびそこからの引水については、各水掛かり地区に委ねられている。長野堰本流においては渇水期に、水掛かり地域を上流・中流・下流あるいは上流・下流に分けて時間分水である番水を行う「下げ水」=「皆払い」という慣行が行われていることを確認した。「下げ水」は完全な時間分水であるので、オタハライとはやや形態が異なるが、下流への用水の融通という点で共通性があり、オタハライと併せて長野堰用水系における渇水期の慣行システムとして調査研究対象とする必要がある。3.高崎市史編纂委員会によって紹介された一貫堀用水系中大類地区の近世嘉永期の文書について、その内容を調査し、五具堰のオタハライ(当該地区ではトメハライ)慣行形成過程に関わる重要な史料であることを確認した。群馬県高崎市の旧38か町村の水田を灌漑する長野堰用水系において、渇水期に下流村落が上流堰を一時的に取り払い、上流村落によって堰の修復が行われるまでの間、流下した水を引くオタハライ慣行を中心に調査を行った。その結果、上小塙堰、浜尻堰、貝沢堰、佐野堰、一貫堀用水系の4つの用水支線でオタハライ慣行が行われていることが確認された。オタハライ慣行を行うのは、いずれも用水の流末の村落であり、渇水時には下流村落の権利として上流村落の承認の下に一定の形式により行われてきた。しかし、上流村落との関係は、絶対的な用水量の多寡やその歴史的な経緯によって異なり、上流優先の原則を前提としつつも用水を上流と下流で融通し合う相互扶助的な関係が見られる地域や、裁判すら辞さない極めて厳しい対立関係にある地域など多様である。そのうち、後者の地域である大類地区の五具堰をめぐるオタハライ慣行について、江戸時代から明治時代にかけての水論・裁判資料から、もともと上流村落が専用権を持っていた堰に対して、下流村落が次第に堰を払って水を引く権利を拡大していった変遷過程が明らかになった。そこには、用水の平等分配の考え方が認められる。用水の平等分配の考え方は、長野堰幹線水路で行われた下げ水という慣行にも窺える。下げ水も渇水時に行われる慣行である。ある程度、上流村落に水が回ったのを見計らって、上流堰の取水を一時停止し、下流村落に水を流す慣行であり、下流村落の申し出によって開始される。 | KAKENHI-PROJECT-13610356 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13610356 |
水利慣行をめぐる村落間秩序の形成 | この慣行は、長野堰用水系全体において、水不足となっている下流域に対して上流域から水を融通するというものであり、時間分水である番水に近い配水慣行であるが、オタハライと共通する村落間の用水に対する考え方が看取されるのである。1.渇水期に、同一用水路を利用する下流村落が、上流の堰を破却し、上流村落によるその堰の修復までの間に流下した水を引くことができるオタハライという水利慣行について、長野堰用水系の佐野堀で下佐野の2集落によって行われていたことを確認した。佐野堰ではハライタテと呼ばれており、番水による上流地域の田植が済むとハライタテが行われ、最下流の下佐野だけにその権限があったという。貝沢堀における貝沢も同様で、貝沢のハライタテが通過する上流の飯塚地区での調査でも最下流の貝沢のみがハライタテの権利を有していたことを確認した。この2つの地区に比べると、一貫堀水系の末流地域でのオタハライは、行う村落が複数重層していること、堰を払う方と留める方の地域の対立が非常に激しいことなどの差異があることが指摘しうる。オタハライの機能と村落間の関係を考える上で、留意すべき点である。2.長野堰土地改良区保有の『長野堰史』『長野堰事業史』などの資料や、群馬県立歴史博物館所蔵の長野堰普通水利組合関係資料の調査から、長野堰の加用水として開削された榛名湖疏水の起業認可から工事にいたる過程の詳細を知ることができた。これまで、榛名湖疏水の開削は榛名湖の水を使用している現吾妻郡東村岡崎新田との対立と調整の問題が中心に論ぜられることが多かったが、長野堰普通水利組合内部においてもその賛否をめぐりさまざまな動きがあったことが明らかになった。オタハライ慣行とは直接関係はないが、用水源をめぐる村落間対立、また水利組合内での村落間対立という問題であり、その調整の結果として現在にまでつながる村落間秩序が形成されたと見ることができる。水利をめぐる村落間の関係を動態的に把握する良好な資料を得ることができたと考える。1.渇水期に、同一用水路を利用する下流村落が、上流の堰を破却し、上流村落によるその堰の修復までの間に流下した水を引くことができるオタハライという水利慣行について、長野堰下流地区で調査を行った。その結果、地域によっては同一村落内で、慣行のやり方について異なる規範を持つ事例を確認した。あるいは、慣行の時代による変化の各段階のあり方に対応した規範がそれぞれ伝承されてきたとも考えられるが、同世代の話者が異なる規範を伝承しており、規範成立の時代的差の結果であるとはいいがたい。今回の事例については、村落内部の耕地のまとまりや用水支線ごとに異なる利水状況が、慣行のやり方に影響を与えたということも考えられる。この点についてはより詳細な検討が必要であるが、一村落の水利組織を構成する単位水利集団のあり方とも関係があると思われ、慣行の伝承と変化、その担い手を考える上で、注目すべき視点を提供する事例である。また、こうした規範の異同に対して、上流村落がどう対応するのか-許容するのか、あるいは規制するのかという点も、村落間秩序をみる上で重要であると思われる。2.長野堰用水系に関係する地域の郷土誌等の文献について、当該水利慣行に関する記載の有無を改めて調査した。直接の記述は見出せなかったが、オタハライ慣行において上流堰を払う権利を有している村落がいずれも用水支線末流部の相対的に水の不足する地域であることを確認した。 | KAKENHI-PROJECT-13610356 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13610356 |
非同期緩和法原理に基づく超並列コンピュ-タア-キテクチャの研究 | 本研究の主要な成果は,以下のようである.(1)先行仮実行方式の提案と設計判断分岐文を含むプログラムについては,判断結果が判明するまではどの分岐を選択するかが不明なため,これまでは逐次的な実行方法しかなかった.これに対して,本研究では可能な分岐の全てについて並列に実行して,後で正しい結果を選択するという先行仮実行方式を提案した.本方式を採用することによって,プログラムの実行速度を3ー5倍程度まで高速化できることを,実際のプログラムについて実証した.さらに,先行仮実行方式をデ-タフロ-制御方式を基本に実現する方法を考え,これに基づいたCPUのハ-ドウェア回路を設計した.現在,VLSI化を図るべく回路シミュレ-ションを実施しているところである.(2)マルチア-キテクチャコンパイラの開発アレイコンピュ-タとベクトルコンピュ-タの複合体を対象に,単一プログラムを分割して効率よく両者を使って分散処理するシステムの研究を行った.本システムはプログラムの並列性を解析して,ベクトル向きとアレイ向きの部分を分類し,それぞれをコンパイルする.なお,本システムの特長として,コンパイルの結果はア-キテクチャの依存しない中間コ-ドを生成する.これにより,今後出現するであろう新しいア-キテクチャの並列処理計算機に対しても容易に適用が可能となる.なお,この研究の過程においてル-プ文の効率的な並列化の方法を提案した.(3)並列応用プログラムシステムの開発アレイコンピュ-タの上で,効率的に実行できる有限要素法ソルバシステムの研究を進めた.収束が速くかつ並列化しやすいアルゴリズムを考案して,それを実装して並列化の効果の評価を行った.この結果に基づいて,グリッドポイントの生成および結果の可視化が可能なソルバシステムの開発を進めている.本研究の主要な成果は,以下のようである.(1)先行仮実行方式の提案と設計判断分岐文を含むプログラムについては,判断結果が判明するまではどの分岐を選択するかが不明なため,これまでは逐次的な実行方法しかなかった.これに対して,本研究では可能な分岐の全てについて並列に実行して,後で正しい結果を選択するという先行仮実行方式を提案した.本方式を採用することによって,プログラムの実行速度を3ー5倍程度まで高速化できることを,実際のプログラムについて実証した.さらに,先行仮実行方式をデ-タフロ-制御方式を基本に実現する方法を考え,これに基づいたCPUのハ-ドウェア回路を設計した.現在,VLSI化を図るべく回路シミュレ-ションを実施しているところである.(2)マルチア-キテクチャコンパイラの開発アレイコンピュ-タとベクトルコンピュ-タの複合体を対象に,単一プログラムを分割して効率よく両者を使って分散処理するシステムの研究を行った.本システムはプログラムの並列性を解析して,ベクトル向きとアレイ向きの部分を分類し,それぞれをコンパイルする.なお,本システムの特長として,コンパイルの結果はア-キテクチャの依存しない中間コ-ドを生成する.これにより,今後出現するであろう新しいア-キテクチャの並列処理計算機に対しても容易に適用が可能となる.なお,この研究の過程においてル-プ文の効率的な並列化の方法を提案した.(3)並列応用プログラムシステムの開発アレイコンピュ-タの上で,効率的に実行できる有限要素法ソルバシステムの研究を進めた.収束が速くかつ並列化しやすいアルゴリズムを考案して,それを実装して並列化の効果の評価を行った.この結果に基づいて,グリッドポイントの生成および結果の可視化が可能なソルバシステムの開発を進めている.本年度の主要な研究内容は以下のようである。(1)要素プロセッサの設計ー晴ーは1024台のプロセッサ(要素プロセッサ)から構成される。要素プロセッサはデ-タフロ-制御方式をとる。本年度はプロセッサの実行ユニットの回路設計を終了した。設計結果はゲ-ト数は約23000ゲ-ト、実行性能は約5MFLOPSである。(2)記憶構成の設計大域記憶として、マルチアクセス可能なメモリの方式設計を行ない、その性能をシミュレ-ションで評価した。また、アクセス衝突の影響の最小化のために、先行読み出し方式を採用した。(3)プログラム並列コンパイル技術の研究プログラムから並列性を抽出するために、従来からの繰返し文の並列実行に加えて、条件文を含むプログラムの高速並列実行のための新方式として仮実行方式を提案し、その実装法を検討した。また、サブル-チンを含むプロセスの並列実行方式について検討した。さらに、依存距離が一定でないル-プについても並列実行可能とした。(4)並列アルゴリズムの研究有限要素法の並列アルゴリズムを研究した。 | KAKENHI-PROJECT-02650275 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02650275 |
DNA損傷による細胞周期抑制の新規メカニズム | SCF^<Fbxl12>はCul1、Rbx1、Skp1、Fbxl12からなるユビキチンリガーゼ複合体で、DNA損傷や細胞分化に関与することが示唆されている。本申請者は、SCF^<Fbxl12>がプロテアソーム活性化因子PA28γと複合体を形成し、相反する機能で増殖抑制因子p21の細胞内量を調節していること、またこの機構がUV刺激によって減弱することを明らかにした。さらにFbxl12のイントロン領域にプロモーター活性が存在し、UV刺激依存的にN末端を欠いたFbxl12を発現させることを新たに見出した。p21は細胞周期の抑制やDNA修復など多様な機能を持つことが知られたタンパク質で、mRNAやタンパク質での、発現、分解、安定化が厳密に制御されている。近年、細胞内でのp21量の制御異常が、癌を始めとする様々な疾患を引き起こすのではないかと考えられるようになってきた。しかしながら、その詳細な分子メカニズムについては明らかとなっていない。本研究では、ユビキチンリガーゼFbxl12ならびにプロテアソーム活性化因子PA28gammaがp21と結合して複合体を形成し、p21の安定化を正に制御すること、さらにUV照射によって、この複合体が乖離してp21が分解することを見出した。さらにFbxl12のイントロン領域にプロモーター活性を有する領域が存在し、UV刺激依存的にshort formのFbxl12の発現を上昇させることを見出した。以上の結果から。Fbxl12ならびにPA28gammaはUV照射依存的なp21発現量を制御するタンパク質であることが示唆された。SCF^<Fbxl12>はCul1、Rbx1、Skp1、Fbxl12からなるユビキチンリガーゼ複合体で、DNA損傷や細胞分化に関与することが示唆されている。本申請者は、SCF^<Fbxl12>がプロテアソーム活性化因子PA28γと複合体を形成し、相反する機能で増殖抑制因子p21の細胞内量を調節していること、またこの機構がUV刺激によって減弱することを明らかにした。さらにFbxl12のイントロン領域にプロモーター活性が存在し、UV刺激依存的にN末端を欠いたFbxl12を発現させることを新たに見出した。紫外線照射による環境ストレスは、突然変異やゲノムの不安定性を誘発し、細胞の癌化を誘導する。一方、細胞はDNA損傷による癌化を抑制するため、細胞周期を停止させ、その間に損傷を受けたDNAを修復する機構を有することが知られている。通常、紫外線照射などでDNA損傷が起こると、ATMやATRといったセリン/スレオニンキナーゼが活性化してp53を安定化させ、CDK inhibitor p21を発現誘導する。それゆえp21は紫外線照射による増殖抑制の主要なメディエーターとして考えられている。その一方で、異なった条件下では、p21は紫外線照射によって分解誘導される系も報告されており、DNA損傷後のp21の発現量制御の詳細な分子メカニズムは未だ明らかとなっていない。本研究では、新規F-boxタンパク質Fbxl12が、p21をユビキチン非依存的に分解制御すること、また紫外線照射によってp21が蓄積する新しいメカニズムの可能性を見出した。課題1 SCFFbxl12によるp21分解機構の解析当初考えていた仮説とは多少異なるデータが得られたが、新しい可能性を検証し、p21の分解制御に関してこれまで知られていなかった新規メカニズムを見出すことに成功した。課題2 Fbxl12ΔFによるSCFFbxl12制御機構の解析Fbxl12ΔFによるSCFFbxl12の活性制御の解析に関しては、比較的順調に進展しているが、Fbxl12ΔFの発現制御の解析は当初考えていたより若干進展が遅い感がする。ただ、これは課題1の軌道修正に多少時間を費やしたためであり、総じて比較的順調に進んでいるのではないかと考えている。課題1に関しては、比較的しっかりしたデータが揃いつつあるので、本年度中に論文として発表していく(現在執筆中)。課題2は、Fbxl12ΔF発現制御の分子メカニズムを中心に解析し、本年度中には論文を投稿していきたいと考えている。主として分子生物学実験、細胞生物学実験の消耗品、試薬等に利用予定である。また論文校正ならびに出版費にも利用していく。また繰越金26万円相当は、抗体や試薬等、一般消耗試薬などに利用していく。 | KAKENHI-PROJECT-23770218 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23770218 |
in situポア・ディメンジョン評価法によるATP放出アニオンチャネル種の確定 | 細胞は虚血や低浸透圧刺激などのストレスに対して、緊急アラーム信号としてATPを細胞外に放出し、そのATPを細胞外シグナルとして用いることが知られている。例えば、上皮細胞では低浸透圧刺激による細胞膨張時においてATP放出が見られ、そのATPは細胞外から容積調節能を高める役割を果していることが知られている。また、心筋細胞では心筋梗塞時や虚血・低酸素刺激時においてATP放出が見られ、その役割が注目されている。その細胞外ATP放出の非エキソサイトーシス性通路としてマキシアニオンチャネル、容積感受性外交整流性(VSOR)Cl^-チャネル及びCFTR Cl^-チャネルなどが挙げられてきた。本研究の目的は、これら3種のチャネルのポアのサイズが、実際にATPのサイズより大きいかどうかを調べることにある。種々の大きさを持った非電解質有機分子(ポリエチレングリコールなど)のポア内侵入によってシングルチャネルコンダクタンスが現象することを指標にしてポアサイズを測定した。その結果、マキシアニオンチャネルのポアサイズは約1.3nmであり、VSOR Cl^-チャネルのそれは0.63nmであり、CFTR Cl^-チャネルのそれは内側入口は約1nmで、外側入口は約0.6nmしかないことが判明した。ATP^<4->やMgATP^<2->の実効サイズは0.60.7nmであるので、VSORポア及びCFTRポア外側入口の大きさはATPサイズとほぼ等しく、それらが自由に大量にATPを透過させることは考えにくいことが判明した。一方、マキシアニオンチャネルのポアサイズはATPサイズよりもはるかに大きく、これが最もATPチャネルとして働くのに適したポアサイズを持つことが明らかになった。細胞は虚血や低浸透圧刺激などのストレスに対して、緊急アラーム信号としてATPを細胞外に放出し、そのATPを細胞外シグナルとして用いることが知られている。例えば、上皮細胞では低浸透圧刺激による細胞膨張時においてATP放出が見られ、そのATPは細胞外から容積調節能を高める役割を果していることが知られている。また、心筋細胞では心筋梗塞時や虚血・低酸素刺激時においてATP放出が見られ、その役割が注目されている。その細胞外ATP放出の非エキソサイトーシス性通路としてマキシアニオンチャネル、容積感受性外交整流性(VSOR)Cl^-チャネル及びCFTR Cl^-チャネルなどが挙げられてきた。本研究の目的は、これら3種のチャネルのポアのサイズが、実際にATPのサイズより大きいかどうかを調べることにある。種々の大きさを持った非電解質有機分子(ポリエチレングリコールなど)のポア内侵入によってシングルチャネルコンダクタンスが現象することを指標にしてポアサイズを測定した。その結果、マキシアニオンチャネルのポアサイズは約1.3nmであり、VSOR Cl^-チャネルのそれは0.63nmであり、CFTR Cl^-チャネルのそれは内側入口は約1nmで、外側入口は約0.6nmしかないことが判明した。ATP^<4->やMgATP^<2->の実効サイズは0.60.7nmであるので、VSORポア及びCFTRポア外側入口の大きさはATPサイズとほぼ等しく、それらが自由に大量にATPを透過させることは考えにくいことが判明した。一方、マキシアニオンチャネルのポアサイズはATPサイズよりもはるかに大きく、これが最もATPチャネルとして働くのに適したポアサイズを持つことが明らかになった。容積依存性・電圧依存性マキシアニオンチャネルはアニオン型ATPを透過させるATP放出チャネルであることを示すデータを私達は既に報告した。しかしその最終的な証明のためには、このチャネルのポアのディメンジョンにATPサイズの分子を透過させる条件が具わっていることを確認する必要がある。本研究では、C127乳腺由来細胞膜に単一チャネル記録法を適用して、次の2つの方法によって、ポアディメンジョンを評価した。1)細胞外液のCl^-を有機アニオンに置換して、そのサイズを次第に大きくしていくと、それに伴ってCl^-に比べての透過性が減少していくが、比較的大きな有機アニオンであるlactobionateに対しても透過性を残すことが明らかとなった。その結果、本マキシアニオンチャネルのポアの半径はlactobionateのカットオフ半径の0.487nmより大きいことが判明した。2)種々のサイズのポリエチレングリコール(PEG)を投与して、この非電解質がポア内に入りこめばCl^-コンダクタンスが減少するので、そのような効果を示すPEG分子のカットオフ半径から本チャネルポアの半径を推定したところ約1.3nmという値が得られた。この値は、ATP^<4->やMgATP^<2->の半径(約0.6nm)よりも相当大きいことが判明した。以上の結果から、アニオン型ATPを透過させる条件を具えていることが結論された。昨年度はマキシアニオンチャネルのポアサイズ測定を行ったので、本年度はcAMP依存性Cl^-チャネルCFTRと容積感受性外向整流性Cl^-チャネルVSORのボアサイズを、種々のサイズのポリエチレングリコール(PEG)のポア内分配によるコンダクタンス減によってモニターした。ヒト上皮Intestine407細胞のVSOR単一チャネル電流はPEG200-300(実効0.27-0.53nm)により抑制されるが、PEG400-4000(実効半径0.62-1.91nm)は殆んど又は全く無効であった。これらのデータからVSORチャネルポアの半径は0.63nmであると査定された。CFTR遺伝子を強制発現させたHEK293T細胞からCFTR単一チャネル電流を観察して同様の実験を行った。 | KAKENHI-PROJECT-15590201 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15590201 |
in situポア・ディメンジョン評価法によるATP放出アニオンチャネル種の確定 | その結果、CFTRチャネルポアの半径は、PEGを細胞内側から与えた場合には約1.0nmであるのに対して、細胞外側から与えた場合には約0.6nmであった。AMP-PNPを細胞内から与えておくと、細胞外側ポアは約0.75nmまで拡がったので、細胞内側におけるヌクレオチド結合によってポアサイズは一定程度拡大するものと推定された。以上から、VSORやCFTRのポアはアニオン型ATP(実効半径0.6-0.7nm)を全く通せないことはないが、マキシアニオンチャネルのポア(半径約13nm)に比べてその透過効率は極めて低いものと推定された。 | KAKENHI-PROJECT-15590201 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15590201 |
肺移植後の拒絶反応に関する組織学的・免疫学的研究 | 本研究は肺移植後の拒絶反応に関する研究としてスタ-トしたが、初年度は移植後の生存期間延長の為に、雑種成犬を対象とする循環動態的な研究が主となった。その要旨は"IIistologic and hemodynamic investigation on canine lungallografts"としてJap.J.Surgery(vol.18,1988)に掲載した。小動物(ラット)ては拡大顕微鏡を使用したsinglelung transplantationを繰り返し、その成果については"ラット肺移植実験の手術手技"(福岡大学医学紀要vol.15,1988)に掲載した。2年目以降、本格的に拒絶反応の場を対象とする、組織学的・免疫学的研究に取り組んだ。これ迄肺における拒絶反応については、その発症を肺胞障害とする考えがあったが、我々の成犬を対象とする光顕・電顕的研究では拒絶反応は単核球浸潤による肺小血管の内皮細胞と血管基底膜の障害をスタ-トとする、との結論が確認された。この血管障害に関し、担当細胞の種類の同定の為、ラット移植肺で免疫染色を実施してみたが、移植肺生着例が期待した程得られず、結局不十分な結果となった。上記の研究より発生する形となったが、2年目以降double lungの移植及び肺葉移植を行い、single lung移植時と同様な循環動態・組織反応に関する検討を行なった。それらの成果についても、関係医学誌に掲載した。本研究は肺移植後の拒絶反応に関する研究としてスタ-トしたが、初年度は移植後の生存期間延長の為に、雑種成犬を対象とする循環動態的な研究が主となった。その要旨は"IIistologic and hemodynamic investigation on canine lungallografts"としてJap.J.Surgery(vol.18,1988)に掲載した。小動物(ラット)ては拡大顕微鏡を使用したsinglelung transplantationを繰り返し、その成果については"ラット肺移植実験の手術手技"(福岡大学医学紀要vol.15,1988)に掲載した。2年目以降、本格的に拒絶反応の場を対象とする、組織学的・免疫学的研究に取り組んだ。これ迄肺における拒絶反応については、その発症を肺胞障害とする考えがあったが、我々の成犬を対象とする光顕・電顕的研究では拒絶反応は単核球浸潤による肺小血管の内皮細胞と血管基底膜の障害をスタ-トとする、との結論が確認された。この血管障害に関し、担当細胞の種類の同定の為、ラット移植肺で免疫染色を実施してみたが、移植肺生着例が期待した程得られず、結局不十分な結果となった。上記の研究より発生する形となったが、2年目以降double lungの移植及び肺葉移植を行い、single lung移植時と同様な循環動態・組織反応に関する検討を行なった。それらの成果についても、関係医学誌に掲載した。本年度は雑種成犬を対象とする肺移植(左肺単独)と,ラットを対象とした肺移植の2種の実験を主体に実施した.まず前者においては,雑種成犬20頭を利用して,通常の左肺単独移植を行ない,気管支吻合部周囲に有茎で腹腔内より持ちあげた大網を被覆した.移植手術後,経時的に内視鏡的観察を行ない,気管支吻合部の治癒過程を観察,〓殺あるいは剖検死の際の組織所見と対比した.大網移植の効果は吻合部治癒に有効な影響を及ぼす事が判明した.この結果については第10回日本気管支学会総会のワークショップ"肺移植実験における気管支鏡検査"においてその成果の一部を発表した.更に論文"Lung allograft withand withoutomentopexy"としてJapanese Jourmal of Surgeryに提出中である.移植時の組織所見,特に拒絶反応を電顕的に検討した論文"Ultrastructural study on acute rejection・・・"はJoumal of Thoracic and Cardiovascular Surgeonに掲載された(別紙).62年度後半は特殊な肺移植実験として,異所性肺葉移植実験を行なった.すなわち10頭の雑犬を対象にrecipient犬の肺はそのままの形でdonorの一部肺(肺葉)をrecipient胸腔内に移植する方法である.実験犬は全て1ヵ月内に死亡したがlimited lung transplantationとして評価されてよい実験と考えている.その成果は論文"An experimental trial for pulmonary lobe allotransplantation"としてThoraxに提出した.また62年末の肺・心肺移植研究会において発表した.ラットを対象として実施した肺移植は当初,麻酔事故等でかなり死亡したが, 62年後半より手術自体も成巧するケースが増えた.最長3ヵ月生存のラットが得られており,現在更に生存数を増している状態である.異種ラット間での肺移植が軌道にのれば拒絶反応部位の免疫組織学的検討を実施する(63年, 64年)予定である.なおラット肺移植実験については担当の筒井による論文"ラット肺移植実験の手術手技"が提出されている.今年度は本研究課題の2年目にあたり、以下の成果を得た。すなわち当初の計画である雑種成犬対象の片側肺移植あるいはラット片肺移植実験は、初年度においてほぼその目標を達成し得た。従って、今年度は更にそれらと類似した実験を推進させた。内容は1.両肺移植実験2.異所性肺葉移植実験3.気管移植実験等である。両肺移植実験は人工心肺を利用した同時両肺移植であり、わが国では具体的な研究成果は未だ出されていない。10頭の雑種成犬を対象として実施したが、移植手技の確立、移植直後の循環動態変化のチェックを目的とした。 | KAKENHI-PROJECT-62480300 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62480300 |
肺移植後の拒絶反応に関する組織学的・免疫学的研究 | 雑種成犬を対象としたことより長期生存は困難であったが、有益な情報が得られ、その成果を昭和63年度の日本胸部外科学会総会において発表した。なお従来からのラット肺移植実験は手術手技の工夫、その成果を昭和63年度の日本呼吸器外科学会総会でビデオ供覧した。雑種成犬を対象とする肺葉移植実験はlimited lung transplantation、すなわちrecipientの両肺を既存の形のままとして新たに異所性にdonor肺葉を移植したものであり、移植肺の脱落によってもrecipient肺を救い得るmeritを狙ったものである。最長1ヶ月の生存犬しか得られなかったが、気管支移植部への血流を維持する事により生着の可能性が高くなる事実を知り得た。その成果については昭和63年度日本胸部外科学会総会および心肺移植研究会で発表した。気管移植実験は肺移植成功の鍵となる気管支吻合部の生着について、吻合部の拒絶反応、組織反応を観察するために雑種成犬を対象として実施したものである。12頭の成犬を対象として実施し、主に気管支鏡による観察を行ない、現在最長10ヵ月に達する生存犬を得ている。その成果については平成元年の日本呼吸器外科学会総会および日本気管支学会総会で発表する予定である。本年度の本研究では、昨年度に引き続き、犬・ラットの2種を研究対象として実験を行った。移植肺においては移植後、1週目頃より、細・小血管周囲・やや遅れて小気管支周囲に拒絶反応の主体的役割を担う単核球の浸潤がみられる。これら単核球の浸潤機序、ならびに役割について光顕的・電顕的・免疫組織学的解析を行なった結果、(1)当初focalな形で単核球浸潤がみられ、続いて血管内皮細胞の障害が生ずる。この内皮細胞障害には移植後早期において過酸化脂質(白血球)の関与も考えられる。(2)拒絶反応においては、血管基底膜障害より、肺脂系への破壊が進み水腫性変化を移行する。(3)浸潤単核球はcytotoxicCTリンパ球とmacrophageで構成されている。以上の結論等を得た。ラット肺移植では研究者辞退の為、予定した成功率が得られず、実験中途より犬移植肺研究を主体とするものにきりかえた。特に実験後半では、気管支吻部の拒絶反応に関して組織学的研究を詳しく行ったが、結論として、(1)実質肺組織にみられるfocalな単核球集蔟とは異なり、リンパ球浸潤はびまん性・散在性である。(2)実質肺組織に比して、拒絶反応に発現は一般に極めて弱い。(3)気管支吻合部生着の為には、十分な血行の確保が重要であり、大綱皮覆が有効である。以上の結論を得た。これらの研究成果については各種学会、或は、論文において発表した。 | KAKENHI-PROJECT-62480300 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62480300 |
インフラマソームを標的とした低出力超音波パルスを用いた新規歯内治療の基盤構築 | マクロファージにより分泌されるIL-1βは、根尖性歯周炎の炎症を憎悪させ病態形成に重要な因子である。本研究の目的はIL-1βの分泌を制御している細胞内タンパク複合体であるインフラマソームに対する低出力超音波パルス(Low intensity pulsed ultrasound:以下LIPUS)の抗炎症効果について明らかにすることである。昨年度、マウスマクロファージ様株化細胞J774.1にLPS、ATP刺激、LIPUS照射を行い、pro-IL-1β、インフラマソームの構成分子であるNLRP3、Caspase1の遺伝子発現をリアルタイムPCR法、タンパク発現をウエスタンブロット法にて解析を行った結果、pro-IL-1β、NLRP3、Caspase1ともにLIPUS照射群では有意な遺伝子発現およびタンパクの抑制がみられたことをふまえ、今年度はより詳細な抗炎症作用のメカニズムの解析を行った。今年度はまずLIPUS照射におけるIκ-Bへの影響をウエスタンブロット法にて解析を行った。LPSによるIκ-Bの分解はLPS添加後30分後には回復してきたことをふまえ、LPS刺激後30分でのIκ-Bの分解に対してLIPUSの影響を検討したところ、LIPUS照射はIκ-Bの分解には関与していないことが示唆された。次にLIPUS照射によるIL-1β産生の抑制がどのシグナル伝達経路で生じているものかをウエスタンブロット法にて解析を行った。J774.1をLPSで刺激するとp65のリン酸化が誘導さたがLIPUS照射を行うとリン酸化は抑制された。すなわち、NFκ-B経路の活性化を抑制していることが示唆された。次年度はこれらの知見をもとにLIPUSによる詳細な抗炎症作用のメカニズムをさらに解析していく予定である。初年度、今年度と研究計画であるインフラマソームに対するLIPUS照射による抗炎症作用の検討に関してマウスマクロファージ様株化細胞J774.1を用いて解析を行った。J774.1をLPSで刺激する際、LIPSU照射を同時に行ったところ、pro-IL-1β、NLRP3、Caspase1ともにLIPUS照射群では有意な遺伝子発現およびタンパクの抑制がみられたことをふまえ、NFκ-B経路の活性化の有無を検討したところ、LIPUS照射によりp65のリン酸化が優位に抑制されていた。この解析をもとにさらに詳細な抗炎症作用のメカニズムの解析を進めることにより次年度の継続課題とすることができる。従って、以上の結果から現在までの研究の達成度は概ね順調と言える。初年度および今年度の研究成果、すなわちインフラマソームに対するLIPUS照射による抗炎症作用に対してより詳細なシグナル伝達経路を明らかにしていくことが今後の研究目標となる。マクロファージにより分泌されるIL-1βは、根尖性歯周炎の炎症を憎悪させ、病態形成に重要な因子である。本研究の目的はIL-1βの分泌を制御している細胞内タンパク複合体であるインフラマソームに対する低出力超音波パルス(Low intensity pulsed ultrasound:以下LIPUS)の抗炎症効果について明らかにすることである。LIPUSは硬組織形成促進作用があることが知られているが、インフラマソームへの効果は知られていない。今年度はまずLIPUS照射における細胞毒性の実験を行った結果、マウスマクロファージ様株化細胞J774.1にLIPUS照射したところ明らかな細胞死は見られなかった。またJ774.1をLPSで刺激する際、LIPUS照射を同時に行いELISA法にて解析を行ったところ、IL-1βの分泌が有意に抑制された。さらにELISAの結果をふまえ、J774.1にLPS、ATP刺激、LIPUS照射を行い、pro-IL-1β、インフラマソームの構成分子であるNLRP3、Caspase1の遺伝子発現をリアルタイムPCR法にて解析を行った結果、pro-IL-1β、NLRP3、Caspase1ともにLIPUS照射群では有意な遺伝子発現の抑制がみられた。LIPUS照射によるpro-IL-1β、NLRP3、Caspase1の遺伝子発現が抑制されたことをふまえ、タンパク発現をウエスタンブロット法にて解析を行った結果、pro-IL-1β、NLRP3、Caspase1ともにLIPUS照射群でタンパク発現が優位に抑制された。次年度はこれらの知見をもとにLIPUSによるより詳細な抗炎症作用のメカニズムを解析していく予定である。初年度の研究計画であるインフラマソームに対するLIPUS照射による抗炎症作用の検討に関してマウスマクロファージ様株化細胞J774.1を用いて解析を行った。J774.1をLPSで刺激する際、LIPUS照射を同時に行ったところ、IL-1βの分泌が遺伝子レベルで有意に抑制された。またインフラマソームの構成分子であるNLRP3、Caspase1ともにLIPUS照射群では有意な遺伝子・タンパク発現の抑制がみられた。この解析をもとにLIPUS照射による抗炎症作用についてさらに詳細なメカニズムの解析を進めることにより次年度以降の継続課題とすることができる。従って、以上の結果から現在までの研究の達成度は概ね順調と言える。マクロファージにより分泌されるIL-1βは、根尖性歯周炎の炎症を憎悪させ病態形成に重要な因子である。本研究の目的はIL-1βの分泌を制御している細胞内タンパク複合体であるインフラマソームに対する低出力超音波パルス(Low intensity pulsed ultrasound:以下LIPUS)の抗炎症効果について明らかにすることである。 | KAKENHI-PROJECT-17K17116 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K17116 |
インフラマソームを標的とした低出力超音波パルスを用いた新規歯内治療の基盤構築 | 昨年度、マウスマクロファージ様株化細胞J774.1にLPS、ATP刺激、LIPUS照射を行い、pro-IL-1β、インフラマソームの構成分子であるNLRP3、Caspase1の遺伝子発現をリアルタイムPCR法、タンパク発現をウエスタンブロット法にて解析を行った結果、pro-IL-1β、NLRP3、Caspase1ともにLIPUS照射群では有意な遺伝子発現およびタンパクの抑制がみられたことをふまえ、今年度はより詳細な抗炎症作用のメカニズムの解析を行った。今年度はまずLIPUS照射におけるIκ-Bへの影響をウエスタンブロット法にて解析を行った。LPSによるIκ-Bの分解はLPS添加後30分後には回復してきたことをふまえ、LPS刺激後30分でのIκ-Bの分解に対してLIPUSの影響を検討したところ、LIPUS照射はIκ-Bの分解には関与していないことが示唆された。次にLIPUS照射によるIL-1β産生の抑制がどのシグナル伝達経路で生じているものかをウエスタンブロット法にて解析を行った。J774.1をLPSで刺激するとp65のリン酸化が誘導さたがLIPUS照射を行うとリン酸化は抑制された。すなわち、NFκ-B経路の活性化を抑制していることが示唆された。次年度はこれらの知見をもとにLIPUSによる詳細な抗炎症作用のメカニズムをさらに解析していく予定である。初年度、今年度と研究計画であるインフラマソームに対するLIPUS照射による抗炎症作用の検討に関してマウスマクロファージ様株化細胞J774.1を用いて解析を行った。J774.1をLPSで刺激する際、LIPSU照射を同時に行ったところ、pro-IL-1β、NLRP3、Caspase1ともにLIPUS照射群では有意な遺伝子発現およびタンパクの抑制がみられたことをふまえ、NFκ-B経路の活性化の有無を検討したところ、LIPUS照射によりp65のリン酸化が優位に抑制されていた。この解析をもとにさらに詳細な抗炎症作用のメカニズムの解析を進めることにより次年度の継続課題とすることができる。従って、以上の結果から現在までの研究の達成度は概ね順調と言える。初年度の研究成果、すなわちインフラマソームに対するLIPUS照射による抗炎症作用に対して、その詳細なシグナリング伝達経路を明らかにしていくことが今後の研究の目標となる。初年度および今年度の研究成果、すなわちインフラマソームに対するLIPUS照射による抗炎症作用に対してより詳細なシグナル伝達経路を明らかにしていくことが今後の研究目標となる。(理由)次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である。(使用理由)平成29年度請求額とあわせ、平成30年度の研究遂行に使用する予定である。(理由)次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である。(使用理由)平成30年度請求額と合わせて、平成31年度の研究遂行に使用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-17K17116 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K17116 |
視覚刺激の3次元空間配置が視覚誘導性自己運動知覚に及ぼす効果の実験心理学的検討 | 視覚刺激による自己運動知覚(ベクション)に及ぼす視覚刺激の3次元的布置の効果を心理実験を用いて検討し、(1)視覚刺激の奥行き知覚に変動がない条件においても、視野中心部に呈示された視覚刺激は、同一の面積をもつ周辺刺激と同等の強度を持つベクションを誘導可能であること、(2)静止背景によるベクション抑制には視野の周辺部が、静止前面によるベクション促進には視野の中心部がより大きな影響を持つこと、などを明らかとした。視覚刺激による自己運動知覚(ベクション)に及ぼす視覚刺激の3次元的布置の効果を心理実験を用いて検討し、(1)視覚刺激の奥行き知覚に変動がない条件においても、視野中心部に呈示された視覚刺激は、同一の面積をもつ周辺刺激と同等の強度を持つベクションを誘導可能であること、(2)静止背景によるベクション抑制には視野の周辺部が、静止前面によるベクション促進には視野の中心部がより大きな影響を持つこと、などを明らかとした。本研究は、視覚誘導性自己運動知覚(ベクション)に及ぼす視覚刺激の3次元空間内での配置の効果を分析することにより、環境への行動的適応に必要不可欠な自己身体の空間的定位が、どのような知覚情報処理プロセスにより実現されていちのかを実験心理学的手法を用いて解明することを目指すものである。本年度は、研究計画の初年度として、内外の研究動向を精査し、研究計画を再調整したうえで、実験環境の整備を行った。さらに、視覚刺激の空問特性のうち、これまでその自己運動知覚に及ぼす影響が組織的には検討されて来なかった、視覚刺激の剛体性の効果を心理実験を用いて検討し、1)等速運動を行なう広視野視覚刺激に重畳された付加的視覚刺激振動が視覚刺激の剛体性感を向上させ、より強い自己身体運動を誘導すること、2)付加振動の同期性や斉一性を低減させることにより、視覚刺激の剛体性感が低減することにより、それに量的に比例する形で自己運動強度が低下することを見出した。これらの結果は、視覚刺激の2次元/3次元的配置という物理的な空間特性と同様に、その剛体性感という知覚的特性が、自己運動知覚の生起に大きな影響を及ぼしうることを示唆するものである。今後は、剛体性など視覚刺激の多様な空間特性の効果を引き続き検討し、それらの要因が3次元空間内での運動刺激の配置の効果とどのような関係にあるのかを明らかとすることにより、視覚情報に基づく自己運動知覚に関する心理学モデルの構築を目指す。本研究計画は、視覚誘導性自己運動知覚(ベクション)に及ぼす視覚刺激の3次元空間内での配置の効果を分析することにより、環境への行動的適応に必要不可欠な自己身体の空間的定位が、どのような知覚情報処理プロセスにより実現されているのかを解明することを目指す。本年度は、単に視覚刺激の呈示領域を操作するのみでなく、近年自己運動知覚の強力な促進要因であることが明らかとされているジター運動(ノイズ様のランダム運動)の関与が、刺激呈示の3次元的布置によりどのように変化するのかを検討した。12名の観察者が参加した心理実験の結果、視野の中心部にジター運動を呈示した場合に、視野周辺部にそれを付加した場合よりも、より強力な自己運動知覚が誘導されることが明らかとなった。この結果は、刺激提示の大きさ(面積)が均一であれば運動刺激呈示の離心度はベクション誘導に影響を及ぼしえないとした前年度の研究結果と対比をなしており、加速度運動を含むジター運動刺激によるベクション増強が、通常の(等速運動成分のみで構成されている)視覚刺激によるベクション誘発とは異なるメカニズムによることが示唆される。次年度は、研究計画の最終年度として、ベクションに及ぼす視覚刺激の3次元空間内での配置の効果に関するこれまでの心理実験の結果を取りまとめ、その効果を定量的に表現可能な心理学的モデルの構築を目指す。これにより、ベクションに大きな影響を及ぼすと考えられる視覚刺激の3次元空間内布置の問題に関し、統合的に検討を進める理論的枠組みを構築することが可能となる。本研究は、視覚誘導性自己運動知覚(ベクション)に及ぼす視覚刺激の3次元空間内での配置の効果を分析することにより、環境への行動的適応に必要不可欠な自己身体の空間的定位が、どのような知覚情報処理プロセスにより実現されているのかを実験心理学的手法を用いて解明することを目指すものである。本年度は、研究計画の最終年度として、自己身体運動に関わる心理実験を継続し、得られた結果に基づき、自己身体運動知覚に及ぼす視覚情報の効果を総合的に考察した。本年度得られた主な知見を以下にまとめる。1)視覚刺激(オプティカルフロー)が鼻側網膜に投影された遠心運動成分を持つが場合に、ベクションがより強くなる。この結果は、自己運動知覚に皮質下経路に媒介された視覚情報処理が関与していることを示唆する。2)刺激属性(輝度および色度)の斉一な変動が、視覚刺激による自己運動知覚誘導を強力に抑制する。このことは、単に視覚刺激の空間配置(空間特性)のみならず、その画像特性もが自己運動知覚に大きな影響を及ぼしうることを示している。3)ベクションにおけるジター優位性(単純運動ではなく、複雑な加速度を有する視覚刺激がより強いベクションを引き起こす)に及ぼす網膜離心度の効果を検討し、ジター優位性がジター付加面積に依存して強化されること、視野中心部の効果が高いことなどを確認した。この結果により、ジター運動の効果は、周辺視野優位であると考えられてきたベクションにおける刺激呈示領域依存性とは異なる傾向を示すことが理解できた。 | KAKENHI-PROJECT-20530671 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20530671 |
子宮内膜における着床現象の解明 | 今年度は、子宮内膜上皮細胞において精子による刺激がどんな影響を及ぼすかについて検討した。精子や精液中にはacrosinやprostasinなどのprotease activated receptor (PAR)-2を活性化するセリンプロテアーゼが含まれている。子宮内膜ではPAR-1、2の存在が確認されており特に、PAR-2は着床期周辺に発現が増強することが報告されている。今回は、R&D社製のMAP kinaseアレイキットを用いて検討を行った。in vitroで培養した子宮内膜上皮細胞に精子をふりかけて刺激したところ、種々のMAP kinaseのリン酸化が増強された。また、このリン酸化の増強はPAR-1のantagonistでは抑制されず、PAR-2のantagonistで抑制された。このことから、子宮内膜上皮細胞において、精子はPAR-2を介してシグナル伝達の活性化を引き起こしている可能性が示唆された。ただし、この実験だけでは精子中のどの成分がPAR-2を活性化しているか不明である。今後の検討課題と思われる。今回の研究は2010年7月に開催された第28回日本受精着床学会において世界体外受精会議記念賞候補演題となり口演で発表させていただいた(未受賞)。今年度は、子宮内膜上皮細胞において精子による刺激がどんな影響を及ぼすかについて検討した。精子や精液中にはacrosinやprostasinなどのprotease activated receptor (PAR)-2を活性化するセリンプロテアーゼが含まれている。子宮内膜ではPAR-1、2の存在が確認されており特に、PAR-2は着床期周辺に発現が増強することが報告されている。今回は、R&D社製のMAP kinaseアレイキットを用いて検討を行った。in vitroで培養した子宮内膜上皮細胞に精子をふりかけて刺激したところ、種々のMAP kinaseのリン酸化が増強された。また、このリン酸化の増強はPAR-1のantagonistでは抑制されず、PAR-2のantagonistで抑制された。このことから、子宮内膜上皮細胞において、精子はPAR-2を介してシグナル伝達の活性化を引き起こしている可能性が示唆された。ただし、この実験だけでは精子中のどの成分がPAR-2を活性化しているか不明である。今後の検討課題と思われる。今回の研究は2010年7月に開催された第28回日本受精着床学会において世界体外受精会議記念賞候補演題となり口演で発表させていただいた(未受賞)。 | KAKENHI-PROJECT-22791538 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22791538 |
アタキシア・テランジェクタシアを用いたヒト放射線感受性遺伝子の単離と解析 | 放射線高感受性を特徴とするヒト遺伝病のAT(アタキシタ・テランジェクタシア)を用い、ヒト放射線感受性遺伝子を単離することを目的として研究をおこない以下の成果を得た。1.AT遺伝子の座位するヒト染色体11q23領域に欠失をもつと同時に放射線抵抗性を消失した細胞2859/4-1を用い、このヒト11q23欠失染色体をもつマウス細胞株を微小核融合法で作成した。ヒトAlu配列をプライマーにしたIRS-PCR法で欠失領域を解析し、AT遺伝子に近接する2種のDNAマーカーを単離した。11q23領域に切断点をもつX/11転座染色体を用いて、ヒト11q23微小断片をもつ放射線ハイブリドを作成した。クローンRH12/1はAT細胞の放射線高感受性を相補するが他の2クローン(MH12/1,MH12/3)は相補せず、両者の差異領域に遺伝子が存在するという作業仮説を設定して解析をすすめた。11q23領域内のDNAマーカーを用いて3クローンのヒト断片を解析した。RH12/1に固有のマーカーはなく、AT遺伝子にもっとも近接するとされるD11S384をも欠いていた。遺伝子がD11S384よりテロメア側DRD2D11S351領域内にあるという新しい可能性を示唆する。RH12/1から作成したコスミドライブラリーから256個のヒト由来のクローンを分離し、21個の11番染色体由来クローンを同定したが、この中にはAT遺伝子を含むものはなかった。一方RH12/1からのIRS-PCR産物のなかから単離したプラスミドpBM8.9は11番染色体上のRH12/1に固有の領域内にあり、AT遺伝子にきわめて近接する可能性が高い。このマーカーをもとにAT遺伝子を探索してゆきたい。放射線高感受性を特徴とするヒト遺伝病のAT(アタキシタ・テランジェクタシア)を用い、ヒト放射線感受性遺伝子を単離することを目的として研究をおこない以下の成果を得た。1.AT遺伝子の座位するヒト染色体11q23領域に欠失をもつと同時に放射線抵抗性を消失した細胞2859/4-1を用い、このヒト11q23欠失染色体をもつマウス細胞株を微小核融合法で作成した。ヒトAlu配列をプライマーにしたIRS-PCR法で欠失領域を解析し、AT遺伝子に近接する2種のDNAマーカーを単離した。11q23領域に切断点をもつX/11転座染色体を用いて、ヒト11q23微小断片をもつ放射線ハイブリドを作成した。クローンRH12/1はAT細胞の放射線高感受性を相補するが他の2クローン(MH12/1,MH12/3)は相補せず、両者の差異領域に遺伝子が存在するという作業仮説を設定して解析をすすめた。11q23領域内のDNAマーカーを用いて3クローンのヒト断片を解析した。RH12/1に固有のマーカーはなく、AT遺伝子にもっとも近接するとされるD11S384をも欠いていた。遺伝子がD11S384よりテロメア側DRD2D11S351領域内にあるという新しい可能性を示唆する。RH12/1から作成したコスミドライブラリーから256個のヒト由来のクローンを分離し、21個の11番染色体由来クローンを同定したが、この中にはAT遺伝子を含むものはなかった。一方RH12/1からのIRS-PCR産物のなかから単離したプラスミドpBM8.9は11番染色体上のRH12/1に固有の領域内にあり、AT遺伝子にきわめて近接する可能性が高い。このマーカーをもとにAT遺伝子を探索してゆきたい。放射線の生物作用のメカニズムを解析するため、放射線高感受性を特徴とするヒト劣性遺伝病のアタキシア・テランジェクタシア(AT)を用い、その原因遺伝子の単離を目的とした本研究計画の初年度である本年度は、染色体11q23領域内のAT遺伝子座位近傍の解析と、この領域からのDNAマーカーの分離とクローン化を試み、以下の成果が得られた。1.AT患者由来の永代細胞株AT2KYSVを受容細胞とした染色体移入実験から、AT遺伝子座位を染色体11q23領域に同定した。この実験の過程で、AT座位を含む11q23領域に染色体微小欠失をもつAT細胞クローン2859/4-1を得た。2859/4-1からマウスA9細胞への微小核融合を行い、欠失染色体を単一に保有する1クローンA9(2859/4/1/2)-1を得た。2.マウス細胞内でのヒト染色体のDNAを調べるためAlu配列をプライマーとしたPCRによる解析を行った。AluプライマーのTC65と517を用い、ヒト第11番染色体の種々の領域を含むヒト/マウス雑種細胞および今回作成したA9(2859/4/1/2)-1のDNA間で比較した。PCR産物相互のサザン解析から、A9(2859/4/1/2)-1で消失したPCR産物が複数個確認された。これらはプラスミドベクターpUCBM20にクローン化し、AT遺伝子座位近傍を解析するためのDNAマーカーとして用いる予定である。 | KAKENHI-PROJECT-04808032 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04808032 |
アタキシア・テランジェクタシアを用いたヒト放射線感受性遺伝子の単離と解析 | 3.ヒト/マウス雑種細胞ックローンA9(3552)-2に高線量X線(30120Gy)を照射後マウス細胞と融合し、AT遺伝子座位近傍の微小染色体断片をもつ放射線ハイブリドを作成した。AT遺伝子座位近傍からのゲノムライブラリー作成の出発材料とする予定である。放射線高感受性を特徴とするヒト劣性遺伝病のアタキシア・テランジェクタシア(AT)はヒト細胞にたいする放射線の作用機構を解析するための有用なモデル系である。放射線感受性に関係するこのATの原因遺伝子の単離を目的とした本研究の第2年度である今年度は、ヒト染色体11q23領域の解析とここからのDNAの分離を試み、以下の成果が得られた1.AT細胞への染色体移入実験からAT遺伝子の座位はヒト染色体11q23領域にマップされた。AT遺伝子座近傍に転座点をもつ11/X転座染色体と放射線による染色体の断片化を用いて、この遺伝子座位を含む微小な染色体断片をもつ放射線ハイブリドを作成した。2.得られた放射線ハイブリドについて、ヒト特異的反復配列をプライマーとしたPCR法によって染色体の細片化のみられたクローンを選別し、その染色体領域を調べた。5クローンの染色体断片は11/X転座点から11S14411S385間に亙るものであり、うち1クローン(RH12/1)がAT細胞の放射線高感受性を相補した。3.ATの原因遺伝子を含むヒト染色体断片をもつクローンRH12/1からコスミドのゲノム・ライブラリーを作成した。作成したライブラリーから、ヒト特異的反復配列をプローブに用いてヒト由来のコスミドクローンを選択した。得られたクローン間相互の位置関係とこれらの放射線感受性の相補能について解析中である。放射線高感受性を特徴とするヒト遺伝病のAT(アタキシア・テランジェクタシア)を用い、ヒト放射線感受性遺伝子を単離することを目的として研究をおこない以下の成果を得た。1.ATの原因遺伝子が座位するヒト染色体11q23領域に切断点をもつX/11転座染色体を用いて、11q23領域の微小ヒト断片をもつ放射線ハイブリドを作成した。クローンRH12/1はAT細胞の放射線高感受性を相補するが他の2クローン(MH12/1,MH12/3)は相補せず、両者の差異領域に遺伝子が存在するという作業仮説を設定して以後の解析をすすめた。2.11q23領域内のDNAマーカーの存否を調べたところ、3クローンとも調べた11マーカー中D11S144とD11S351の2マーカーのみを保持しており、RH12/1に固有の既知のマーカーはなかった。これは11番染色体上のRH12/1に固有の領域がきわめて微小であることを示す。注目されるのは、リンケージ解析からAT遺伝子にもっとも接近するとされるD11S384をも欠いていることであり、遺伝子がD11384よりテロメア側DRD2D11S351領域内にあるという新しい可能性を示唆する。3.RH12/1からsCos1をベクターに用いてコスミドライブラリーを作成した。50万個のクローンから256個のヒト由来のクローンを分離し、21個の11番染色体由来クローンを同定したが、この中にはAT遺伝子を含むものはなかった。一方RH12/1からのIRS-PCR産物のなかから単離したプラスミドpBM8.9は11番染色体上のRH12/1に固有の領域内にあり、AT遺伝子にきわめて近接する可能性が高い。このマーカーをもとにAT遺伝子を探索してゆきたい。 | KAKENHI-PROJECT-04808032 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04808032 |
看護師の役割機能に焦点を当てた療養病床における専門職連携実践のあり様に関する研究 | 本研究では、療養病床での多職種連携実践において、看護師が発揮している役割機能とその特徴を明らかにするために、療養病床で働く看護師と他職種者にグループインタビューと多職種連携実践力調査を行った。その結果、看護師は多職種チームの中で、情報を統合し患者の目標の到達に向けて他多職種者に働きかけ、患者の療養生活が円滑に進むよう活動する役割機能を発揮していた。連携実践力の調査結果では、看護師集団は他職種者集団と比較して実践力の自己評価が低く、連携実践の発想をもつ者の割合が低かった。管理職者では、他職種者と同程度の評価であった。これには、看護師集団が看護チームとして働いている現状が影響していると考えられた。本研究では、療養病床での多職種連携実践において、看護師が発揮している役割機能、チームメンバーが期待する役割機能を明らかにすることを目指して、療養病床で働く看護師と同チームで働く他多職種者(医師、介護福祉士、理学療法士、作業療法士、栄養士、医療ソーシャルワーカー等)にフォーカスグループインタビューと自記式調査票による多職種連携実践力調査を行った。フォーカスグループインタビューによる調査から、療養病床において看護師が多職種チームの中で、患者中心の立場を貫き、患者に関する情報を統合し、患者の目標の到達に向けて他職種者に働きかけ、かつ、家族との中継役を担い、日々の患者の生活および他職種者の実践が円滑に進められるように活動する役割機能をもつことが示唆され、患者の療養生活を支援する上で重要な役割を担うことが明らかになった。しかし、多職種連携実践力の調査結果では、看護師スタッフ集団は他職種者と比較して実践力の評価が低く、多職種チームで連携した実践の発想をもつ者の割合が低いことが明らかになった。管理職者では、他職種者と同等の評価であった。これは、看護師集団が看護チームとして働いているために、一看護スタッフとしては他職種者との関わりが必要のない現状が影響していると考えられる。今後の展開として、看護師集団の特徴を鑑み、看護師集団のリーダーを担う者を対象に他職種者との連携実践力を培う教育を促進すること、スタッフ看護師を対象に、看護師チームとして患者に関わりながら他職種者をも含めたケアとして日々の実践を考えられるシステムを構築することが療養病床における多職種協働ケアの実践、ひいてはケアの質の向上に向けて有効であると考える。本研究では、療養病床での多職種連携実践において、看護師が発揮している役割機能とその特徴を明らかにするために、療養病床で働く看護師と他職種者にグループインタビューと多職種連携実践力調査を行った。その結果、看護師は多職種チームの中で、情報を統合し患者の目標の到達に向けて他多職種者に働きかけ、患者の療養生活が円滑に進むよう活動する役割機能を発揮していた。連携実践力の調査結果では、看護師集団は他職種者集団と比較して実践力の自己評価が低く、連携実践の発想をもつ者の割合が低かった。管理職者では、他職種者と同程度の評価であった。これには、看護師集団が看護チームとして働いている現状が影響していると考えられた。当初計画では、本年度に高齢者専門病院の療養病床における調査票を用いた量的調査とグループインタビューによる質的調査を実施する予定であった。しかし、調査項目を精錬する段階で、考慮すべき概念(Team Climate)を発見し、検討に時間を要したために、調査予定を繰り下げ、本年度は調査票の再構成に取り組んだ。本研究においては、多職種で連携したチームにおける実践力の測定を試み、職種による特徴の差異を量るため、チームの状況を測定することが必要不可欠であると判断した。本年度は、このTeam Climateに関する文献精査、翻訳に取り組み、調査票への組み入れの検討を中心に行った。Team Climateとは、革新性の高い組織を創るために必要な要素を組織における目標設定、参加的環境、革新性の保持、方向性の設定、相互作用の程度の5因子に整理されたものであり、その評価尺度が開発されている。Team Climateの概念は、英国研究者らによって開発されたものであるが、欧州各国で活用され、信頼性が確認されている他、病院や訪問看護師集団といった保健医療にかかわる組織の調査においても活用された実績がある。現在、このTeam Climateの調査項目を取り込んだ調査票がほぼ完成し、研究実施について倫理審査委員会の承認を得ている。当初計画より実施時期が遅延しているため、計画より時間的に逼迫することとなっているが、研究目的を遂行するために、データ収集方法について再検討し、調査対象の範囲を狭め、研究協力者を募る準備をした。また、高齢者医療の先進国であるスウェーデンにて、個人主義を貫きシステム化された連携のあり様、看護職者の役割機能を視察した。ケア、看護という営み、またそのシステム化においては、文化が反映されており、日本独自の連携実践のあり様を明らかにする重要性を確認した。本年度は、調査を実施する予定であったが、文献検討の段階で調査に組み入れるべきと判断する新たな概念を発見し、その精査、調査票の精錬のために時間を要した。そのため当初計画よりもやや遅れている。しかし、研究目的を達成するためには、必要不可欠な過程である。当初計画で平成24年度に実施予定であった高齢者専門病院の療養病床における調査と平成25年度に実施予定である総合病院の療養病床における調査を同時に実施する。計画では、全国の療養病床から選定する予定であったが、研究者から地理的に近い施設に狭めて研究協力施設を募り、研究の遂行を可能とする。 | KAKENHI-PROJECT-24792569 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24792569 |
看護師の役割機能に焦点を当てた療養病床における専門職連携実践のあり様に関する研究 | 手順は、当初計画と変更なく、調査票による量的調査とインタビューによる質的調査の方法論的トライアンギュレーションを用いて多面的に分析を進める。平成24年度は、当初計画で調査を実施する予定であったが、調査票の精錬が必要と判断し、調査実施を繰り下げた。そのために、次年度への繰越金が発生した。平成25年度は、調査票を用いた調査のための費用(郵送費、印刷費、データ入力、謝礼)やインタビュー調査のための費用(研究者交通費、逐語録作成、謝礼)等に研究費を活用し、研究を遂行する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-24792569 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24792569 |
ウェーブレット解析による耕うんづめの耕うん抵抗変動現象の解析 | 周波数解析には,簡便ではあるが最も完成度が高いフーリエ解析の使用が一般的である。しかし,ここで研究対象とする耕うん時における耕うんづめの変動現象は被切削土壌表面に形成される亀裂と関係をもち,耕うんづめの変動と亀裂形成の場所の相関をも解析対象とする。このため,単なる周波数解析のみばかりでなく振動が発生した場所(時間位置)の推定も必要とされ,周波数解析ツールであるフーリエ解析では不十分である。耕うんづめの耕うん抵抗変動の解析にウェーブレット解析を導入することによって,変動の周波数と変動が発生した場所(時間)の推定が同時に可能になった。ここでは,耕うん時の耕うんづめの変動に16,22,27,34Hzの個別の周波数値が求められ,耕うん作用である大きな波形上に重なり合った変動波形(変動成分)の発生場所(時間位置)が,切削開始時からそれぞれ0.02s,0.04s,0.07s,0.1s後であることが計算された。これにより,被切削土壌表面上の亀裂形成の可視化により亀裂形成位置と耕うんづめの変動位置(時間)の関係を求め,未耕地土壌表面の亀裂形成の要因の探求が今後展開される。また,フーリエ解析における周波数解析では基本周波数に依存した解析精度であったが,ウェーブレット解析には基本周波数に対応する概念がなく,コンピュータの性能とプログラミング方法によってより高精度な周波数の計算が可能となることがわかった。さらに,ウェーブレット解析にはウィンドウ関数を用いる必要性はなく,不連続データについてもアナライジングウェーブレットでダイレクトに解析可能であることなどその拡張性の広さが認識された。周波数解析には,簡便ではあるが最も完成度が高いフーリエ解析の使用が一般的である。しかし,ここで研究対象とする耕うん時における耕うんづめの変動現象は被切削土壌表面に形成される亀裂と関係をもち,耕うんづめの変動と亀裂形成の場所の相関をも解析対象とする。このため,単なる周波数解析のみばかりでなく振動が発生した場所(時間位置)の推定も必要とされ,周波数解析ツールであるフーリエ解析では不十分である。耕うんづめの耕うん抵抗変動の解析にウェーブレット解析を導入することによって,変動の周波数と変動が発生した場所(時間)の推定が同時に可能になった。ここでは,耕うん時の耕うんづめの変動に16,22,27,34Hzの個別の周波数値が求められ,耕うん作用である大きな波形上に重なり合った変動波形(変動成分)の発生場所(時間位置)が,切削開始時からそれぞれ0.02s,0.04s,0.07s,0.1s後であることが計算された。これにより,被切削土壌表面上の亀裂形成の可視化により亀裂形成位置と耕うんづめの変動位置(時間)の関係を求め,未耕地土壌表面の亀裂形成の要因の探求が今後展開される。また,フーリエ解析における周波数解析では基本周波数に依存した解析精度であったが,ウェーブレット解析には基本周波数に対応する概念がなく,コンピュータの性能とプログラミング方法によってより高精度な周波数の計算が可能となることがわかった。さらに,ウェーブレット解析にはウィンドウ関数を用いる必要性はなく,不連続データについてもアナライジングウェーブレットでダイレクトに解析可能であることなどその拡張性の広さが認識された。 | KAKENHI-PROJECT-06760219 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06760219 |
新奇π電子系オリゴマー類の合成法の開発とそれらの機能に関する研究 | 長い空洞を有する包接ホスト分子及び拡張π電子系としての興味が持たれる分子量一定のナノチューブ類の合成法の確立を目的として、1.構成単位としてのピロメッリト酸ジイミド基盤マクロサイクル類の効率的合成法の開発、2.連結基(エチニル基、臭素)を導入したマクロサイクル類の合成法の開発、3.連結基(特にエチニル基)で置換されたマクロサイクル類の連結反応条件の最適化を、マイクロフロー法を利用して行った。長い空洞を有する包接ホスト分子及び拡張π電子系としての興味が持たれる分子量一定のナノチューブ類の合成法の確立を目的として、1.構成単位としてのピロメッリト酸ジイミド基盤マクロサイクル類の効率的合成法の開発、2.連結基(エチニル基、臭素)を導入したマクロサイクル類の合成法の開発、3.連結基(特にエチニル基)で置換されたマクロサイクル類の連結反応条件の最適化を、マイクロフロー法を利用して行った。○チューブ状分子の合成と特異な包接挙動の解明分子量一定で直径約1.5-2nmの空洞を持つチューブ分子の合成ルートとして、分子内に2個の環化部位と2個の連結部位を持つ基本骨格の左右の部位を環化してマクロサイクル(構成単位)を合成し、次に、構成単位の上下の連結部位を共有結合で段階的に連結して構築する方法を検討した。まず、酸無水物とアミンとの環化反応条件を種々検討したが、中-高希釈条件でピロメリット酸ジイミドを2個および3個含むマクロサイクルでそれぞれ10-15%,7-8%程度であり、更なる収率の向上が必要である。この反応はアミック酸生成と引き続いての脱水反応の二段階反応であり、最初の反応は室温でも進行するので、マイクロフロー反応器を用いる合成を行うことにし、現在、装置の組み立てと反応条件検討を行っている。また、光反応の前駆体である[3_3](1,3,5)シクロファン類の合成にはTosMIC環化法を用いており、この環化法もマイクロフロー反応に適していると判断されるので、高希釈条件の代わりにマイクロフロー反応を用いる環化反応を検討している。この研究の主題である「空間的反応集積化」に関する成果は未だ得られていないが、研究を遂行する過程で幾つかの反応においてマイクロフロー反応装置を用いる合成反応が有効であると確信したので、現在、環化反応、光反応、薗頭反応、酸化的アセチレン二量化反応等にこの方法を用いる予定で準備を進めており、まず、光化学反応と環化反応から始めている。A01及びA02班員との共同研究を積極的に進め、より高いレベルの研究成果を得る予定である。○チューブ状分子の構成単位となるピロメリット酸ジイミド基盤マクロサイクル類は、ピロメリット酸無水物とアミンとの脱水縮合を希釈条件で行い、その後生成したアミック酸を無水酢酸で脱水縮合することにより合成される。今年度はこの反応をマイクロリアクターを用いたフロー反応で行い、反応溶媒、温度、濃度について詳細に調べた。ピロメリット酸無水物とアミンのTHF溶液を反応用セル中で混合して50°Cで1分間反応させ、その後、生成したアミック酸を脱水してから分離を行うと、バッチ反応と同程度の収率で目的のマクロサイクルが得られた。未だ収率の改善が必要であるが、フロー反応では副生成物が少なく、また、マクロサイクルの環サイズは使用する溶媒の種類により選択的に合成できることが明らかになった。今後は、フロー反応を環化反応、光反応、金属触媒を用いるクロスカップリング反応等にも適用する予定である。○ピロメリット酸ジイミドを3個含むマクロサイクルは、空孔内にアニリン四量体を包接した興味ある超分子構造体を生成する。一方、このマクロサイクルはN,N-ジメチルアニリンによりゲル化し、このゲルを遠心分離機で分離してからN,N-ジメチルアニリンを真空中で除くと、多孔質ナノファイバーが得られた。これは、マクロサイクルが自己集合により積層してチューブ構造を形成し、更にこれらのチューブ構造がバンドル化してファイバーが形成されると考えられる。この多孔質ナノファイバーはケモセンサーとしての応用や、酸素に比較的安定なラジカルアニオン種が生成するので、有機導電体としての応用を調べている。○ピロメリット酸ジイミド基盤マクロサイクル類を連結するためには、イミドのベンゼン環にハロゲン等の置換基を導入する必要がある。長年、臭素を置換したマクロサイクルの合成を検討して来たが、脱水環化反応では目的物の収率が低く量的に得ることが困難であった。最近、環化反応にアセチレンの二量化反応であるGlaser反応が、Pd触媒存在下、有機酸化剤を用いることにより円滑に進行して目的の臭素置換マクロサイクルを収率良く生成することを見出した。○π電子不足の空孔を持つピロメリット酸ジイミド基盤[3+3]マクロサイクルは、N,N-ジメチルアニリンによりゲル化して多孔質ナノファイバーを形成する事を昨年度報告した。この多孔質ナノファイバーを構成しているピロメリット酸ジイミドはπ電子受容体であり、段階的に還元されてラジカルアニオン、ジアニオン種へ変換すると予想される。実際に、多孔質ナノファイバーにヒドラジン蒸気を曝すとナノファイバーのラジカルアニオン種が生成する事がESRスペクトルにより確認された。また、金電極間に自己集積により形成したナノファイバーにヒドラジン蒸気を曝した後、電極間に電圧をかけると電圧に比例して電流が流れる事が分かり、自己集積型多孔質ナノファイバーのラジカルアニオン種が電気伝導体となる事が確認された。 | KAKENHI-PLANNED-21106015 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-21106015 |
新奇π電子系オリゴマー類の合成法の開発とそれらの機能に関する研究 | この多孔質ナノファイバーの更なる機能開発を行っている。○ピロメリット酸ジイミド基盤マクロサイクルの合成法として、ピロメリット酸無水物と2,5-ジアルコキシ-1,4-ビス(アミノメチル)ベンゼンとの二段階脱水縮合反応を、マイクロフロー合成法によるアミック酸合成、引き続いてのバッチ法によるアミック酸脱水縮合反応を用いて行った所、従来のバッチ法による合成法よりもはるかに高い収率、環サイズ選択性でマクロサイクルが得られる事が分かった。特に、アミック酸脱水縮合反応の際に、DABCO等の第3級アミンを共存させると、マクロサイクルの収率と環サイズ選択性が大きく向上する事が明らかになった。○ジメチルアミノエチル基等の電子供与性側鎖を有する芳香族ジイミド類では、光照射によるアミンからジイミドへの分子内光電子移動反応が起こり、着色した電荷分離状態になる。この電荷分離状態は、暗室では中性のジイミドに戻り、元の色に戻る。このように、分子内光電子移動反応に基づくフォトクロミズム現象を見出し、フォトクロミズム現象と結晶構造との相関関係を精査した。新しい包接ホスト分子及び拡張π電子系としての興味が持たれる分子量一定のナノチューブ類の合成法を開発する目的で、構成単位としてのピロメリット酸ジイミド基盤[3+3]マクロサイクル類、及びマクロサイクル間を連結するユニットとしての臭素及びアセチレンが置換したマクロサイクル類の合成法を開発した。連結反応の基礎実験として、Glaser反応条件下でのoligomerizationに特化したフローリアクターを作製し、1,4-ジエチニルベンゼンのGlaser反応を行った所、5量体や分子量分布の小さな生成物が得られバッチ反応とは異なるフロー反応独特の特徴が観測された。現在、本フロー反応を利用して、エチニル置換マクロサイクル類のGlaser反応によるチューブ状化合物の合成を検討している。また、合成したピロメリット酸ジイミド基盤[3+3]マクロサイクル類は電子不足の空孔を持つために、電子の豊富なゲスト分子(トルエン、p-キシレン、アニリン類、[2.2.2]パラシクロファン)を電荷移動相互作用により包接する事、N,N-ジメチルアニリンの場合にはマクロサイクルが自己集合してチューブ状構造を形成し、このチューブ状構造が更にバンドル化して多孔質ナノファイバーを形成する事を見出した。また、芳香族ジイミドの化学に関連して、電子供与基が置換したナフタレンビスイミドが光励起着色現象及び結晶の屈曲現象を示す事を発見し、それらの理由について解明した。電子受容性を有するピロメリット酸ジイミド基盤マクロサイクル類は電子受容性の空孔を持つので、電子供与性ゲスト分子の選択的包接が観測される他、ピロメリット酸ジイミドのラジカルアニオン種の生成に基づく物性についても興味が持たれる。本研究では、1.基盤となるマクロサイクルの収率の向上, 2.連結部位となるエチニル置換大環状化合物の合成法の開発、3.エチニル置換マクロサイクル類のGlaser反応による連結反応、について研究するとともに、合成したマクロサイクル類の電子スペクトル及び酸化還元挙動について調べた。また、芳香族ジイミドの化学に関連して、電子のドナー性側鎖を有するナフタレンジイミドの光電子移動反応に基づくフォトクロミズム現象及び結晶の屈曲現象を見出し、それらの現象が起こる理由について調べた。 | KAKENHI-PLANNED-21106015 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-21106015 |
脂肪の味覚受容機構の解明 | 1.脂肪を味覚受容する可能性に関する研究本研究では、脂肪が味覚受容される可能性について検討することを目的としている。しかし、脂肪を摂取する際には味覚、嗅覚、物性、代謝後の影響のいずれもが作用しているため、ラットが味覚で得た情報のみに基づいて脂肪を選択する系を確立し、さらにその系を用いて脂肪が味覚受容されるか検討を行った。(1)味覚情報の評価系の確立増粘多糖類であるキサンタンガムを溶媒として用いることで物性による影響を排除し、摂取時間を5分間にすることで代謝後の影響を排除し、硫酸亜鉛溶液を鼻腔に流して嗅粘膜を剥離させることで嗅覚による影響を排除した。一般に行われる二瓶選択実験法を基に上記の方法を併せ、またラットが5分間で試料を摂取するための訓練、嗅覚が確実に喪失していることを評価するために特定の臭いに対して忌避するための条件付けも併せて行うことにより、味覚情報の評価系を確立した。(2)長鎖脂肪酸、トリグリセリドに対する選択性上記の評価系を用いて食品に含まれる代表的な長鎖脂肪酸であるオレイン酸、またトリグリセリドとしてトリオレインに対する選択性を調べた。ラットは0.2%以下の濃度のオレイン酸、トリオレインを選択しなかったが、0.5%以上の濃度のオレイン酸、トリオレインを選択した。この結果は、脂肪は味覚受容されることを強く示唆するものである。1.脂肪を味覚受容する可能性に関する研究本研究では、行動・神経・細胞レベルで様々な脂肪に対する応答を測定することにより脂肪が味覚受容される可能性について検討し、さらに脂肪の味覚受容機構を解明することを目的としている。しかし、脂肪を摂取する際には味覚、嗅覚、物性、代謝後の影響のいずれもが作用しており、行動レベルにおいてはこれまではそれらの総合的な評価しか得ることができなかった。そこで本研究では、まずラットが味覚で得た情報のみに基づいて脂肪を選択する系を確立し、さらにその系を用いて脂肪が味覚受容されるか検討を行った。(1)味覚情報の評価系の確立味覚情報を評価するためには嗅覚、物性、代謝後の影響を排除した系を確立することが必要である。そこで、脂肪を懸濁する溶媒に増粘多糖類であるキサンタンガムを用いることで物性による影響を排除し、摂取時間を5分間にすることで代謝後の影響を排除し、硫酸亜鉛溶液を鼻腔に流して嗅粘膜を剥離させることで嗅覚による影響を排除した。一般に行われる二瓶選択実験を基に上記の方法を併せ、またラットが5分間で試料を摂取するための訓練、嗅覚が確実に喪失していることを評価するために特定の臭いに対して忌避するための条件付けも併せて行うことにより、味覚情報の評価系を確立した。(2)オレイン酸に対する選択性上記の評価系を用いて食品に含まれる代表的な脂肪酸であるオレイン酸に対する選択性を調べた。ラットは0.2%以下の濃度のオレイン酸を選択しなかったが、0.5%以上の濃度のオレイン酸を選択した。この結果は、脂肪は味覚受容されることを強く示唆するものである。1.脂肪を味覚受容する可能性に関する研究本研究では、脂肪が味覚受容される可能性について検討することを目的としている。しかし、脂肪を摂取する際には味覚、嗅覚、物性、代謝後の影響のいずれもが作用しているため、ラットが味覚で得た情報のみに基づいて脂肪を選択する系を確立し、さらにその系を用いて脂肪が味覚受容されるか検討を行った。(1)味覚情報の評価系の確立増粘多糖類であるキサンタンガムを溶媒として用いることで物性による影響を排除し、摂取時間を5分間にすることで代謝後の影響を排除し、硫酸亜鉛溶液を鼻腔に流して嗅粘膜を剥離させることで嗅覚による影響を排除した。一般に行われる二瓶選択実験法を基に上記の方法を併せ、またラットが5分間で試料を摂取するための訓練、嗅覚が確実に喪失していることを評価するために特定の臭いに対して忌避するための条件付けも併せて行うことにより、味覚情報の評価系を確立した。(2)長鎖脂肪酸、トリグリセリドに対する選択性上記の評価系を用いて食品に含まれる代表的な長鎖脂肪酸であるオレイン酸、またトリグリセリドとしてトリオレインに対する選択性を調べた。ラットは0.2%以下の濃度のオレイン酸、トリオレインを選択しなかったが、0.5%以上の濃度のオレイン酸、トリオレインを選択した。この結果は、脂肪は味覚受容されることを強く示唆するものである。 | KAKENHI-PROJECT-10780082 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10780082 |
安定線から遠く離れた短寿命不安定核の製造と研究 | 本研究は平成3年9月初めに仙台で開催予定の「質量分離装置とその応用技術に関する第12回国際会議」に対する準備として行なわれたものであり、本国際会議の中心テ-マに的をしぼり、行なわれたものである。まずはじめに、本研究のための研究内容の詳細を定めると同時に、本国際会議の細織方針を審議するため、本研究の分担者の内から国際会議の組織委員を含む少数名(14名)より成る検討会を平成2年11月30日に仙台にて開催した。上記に基づき、分担者各自において研究を進め、その成果を持ち寄つて、「安定線から遠く離れた短寿命不安定核の製造と研究」と題する研究会を平成3年3月18、1日に仙台にて開催した。研究会参加者数は約50名、30余の研究発表会が行なわれた。予算上の制約のため当初計画の70名の参加者数には達しなかったが、第1第4のプレナリ-セッションに恒って熱心な発表と討議が行なわれた。第1セッションでは不安定核の予想される諸性質につき、主として理論的な考察が行なわれた。第2セッションでは、安定線から遠く離れたエキゾチックな短寿命不安定核を製造するために不可欠な(広議の)「オンライン質量分離装置」の日本における現状が報告され、また日本における質量分離の初期の歴史も紹介された。第3セッションではオンライン質量分離に関係する測定装置について(レ-ザ-核分光ほか)について、また最後の第4セッションでは上記にもれた装置その他について報告・討論された。この研究会は装置の現状報告(将来計画も含む)、ポイントとなる核物理の現状と目標にも配慮したものであり、大変ユニ-クな試みであり、大きな成果が得られたものと思われる。以上のように、本番の国際会議に似た形式の研究会を行うことが出来、この分野に大きな刺激を与えたとともにここに国際会議に対する(研究面での)準備が完全にととのったと云える。本研究は平成3年9月初めに仙台で開催予定の「質量分離装置とその応用技術に関する第12回国際会議」に対する準備として行なわれたものであり、本国際会議の中心テ-マに的をしぼり、行なわれたものである。まずはじめに、本研究のための研究内容の詳細を定めると同時に、本国際会議の細織方針を審議するため、本研究の分担者の内から国際会議の組織委員を含む少数名(14名)より成る検討会を平成2年11月30日に仙台にて開催した。上記に基づき、分担者各自において研究を進め、その成果を持ち寄つて、「安定線から遠く離れた短寿命不安定核の製造と研究」と題する研究会を平成3年3月18、1日に仙台にて開催した。研究会参加者数は約50名、30余の研究発表会が行なわれた。予算上の制約のため当初計画の70名の参加者数には達しなかったが、第1第4のプレナリ-セッションに恒って熱心な発表と討議が行なわれた。第1セッションでは不安定核の予想される諸性質につき、主として理論的な考察が行なわれた。第2セッションでは、安定線から遠く離れたエキゾチックな短寿命不安定核を製造するために不可欠な(広議の)「オンライン質量分離装置」の日本における現状が報告され、また日本における質量分離の初期の歴史も紹介された。第3セッションではオンライン質量分離に関係する測定装置について(レ-ザ-核分光ほか)について、また最後の第4セッションでは上記にもれた装置その他について報告・討論された。この研究会は装置の現状報告(将来計画も含む)、ポイントとなる核物理の現状と目標にも配慮したものであり、大変ユニ-クな試みであり、大きな成果が得られたものと思われる。以上のように、本番の国際会議に似た形式の研究会を行うことが出来、この分野に大きな刺激を与えたとともにここに国際会議に対する(研究面での)準備が完全にととのったと云える。 | KAKENHI-PROJECT-02352003 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02352003 |
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