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新規炎症細胞を起点とする肝臓の炎症誘導機序の解明とNASH治療への応用
本研究は、新たに同定した新規炎症細胞(肝臓APDP細胞)が非アルコール性脂肪肝炎(NASH)において炎症を惹起・進展させると考え、APDP細胞を起点としたNASHの病態形成機序を解明し、NASHの治療法開発に応用することを目的とする。我々は脂肪組織において脂肪前駆細胞由来のAPDP(Adipocyte progenitor-derived proinflammatory)細胞が、脂肪組織炎症のトリガーを引くことを見出した。興味深いことに、肝臓炎症においてもAPDP類似細胞が存在し、炎症性サイトカインを発現することを見出している。NASHの進行過程における肝臓炎症と線維化における肝臓APDP細胞の機能を解明し、治療標的の可能性を検討する。炎症誘導時の肝臓におけるAPDP細胞の機能を解明するため、はじめに高脂肪食負荷またはCCl4投与により肝臓の炎症を誘導し、APDP細胞数や炎症関連遺伝子発現、APDP細胞ならびに免疫細胞のトランスクリプトームをRNA-seqで解析し、免疫細胞との相互作用を制御するサイトカイン候補を同定した。さらに、肝臓APDP細胞とともにマクロファージや単球等の免疫細胞の動態を解析し、肝臓APDP細胞と免疫細胞との関連について解析を行った。また肝臓APDP細胞の由来は未だ明らかではないことから、RNA-seq結果に基づき肝臓APDP細胞のマーカー遺伝子を同定した。これらの結果を踏まえてAPDP細胞の分化・増殖について詳細に解析する。当初の研究計画の通り、肝臓APDP細胞のマーカー遺伝子の探索や、炎症誘導時の肝臓APDP細胞の炎症関連遺伝子発現の解析を行い、免疫細胞動態と関連するような遺伝子やサイトカインについての情報が得られた。APDP細胞のマーカー遺伝子や炎症関連遺伝子の発現解析の結果をもとに、引き続き肝臓APDP細胞の分化・増殖機構について解析を行う。得られた結果よりAPDP細胞機能やAPDP細胞を起点とする肝臓炎症・線維化を司るメディエータ・シグナル機序への介入がNAFL・NASHに対する予防・治療効果を持つかを評価する。本研究は、新たに同定した新規炎症細胞(肝臓APDP細胞)が非アルコール性脂肪肝炎(NASH)において炎症を惹起・進展させると考え、APDP細胞を起点としたNASHの病態形成機序を解明し、NASHの治療法開発に応用することを目的とする。我々は脂肪組織において脂肪前駆細胞由来のAPDP(Adipocyte progenitor-derived proinflammatory)細胞が、脂肪組織炎症のトリガーを引くことを見出した。興味深いことに、肝臓炎症においてもAPDP類似細胞が存在し、炎症性サイトカインを発現することを見出している。NASHの進行過程における肝臓炎症と線維化における肝臓APDP細胞の機能を解明し、治療標的の可能性を検討する。炎症誘導時の肝臓におけるAPDP細胞の機能を解明するため、はじめに高脂肪食負荷またはCCl4投与により肝臓の炎症を誘導し、APDP細胞数や炎症関連遺伝子発現、APDP細胞ならびに免疫細胞のトランスクリプトームをRNA-seqで解析し、免疫細胞との相互作用を制御するサイトカイン候補を同定した。さらに、肝臓APDP細胞とともにマクロファージや単球等の免疫細胞の動態を解析し、肝臓APDP細胞と免疫細胞との関連について解析を行った。また肝臓APDP細胞の由来は未だ明らかではないことから、RNA-seq結果に基づき肝臓APDP細胞のマーカー遺伝子を同定した。これらの結果を踏まえてAPDP細胞の分化・増殖について詳細に解析する。当初の研究計画の通り、肝臓APDP細胞のマーカー遺伝子の探索や、炎症誘導時の肝臓APDP細胞の炎症関連遺伝子発現の解析を行い、免疫細胞動態と関連するような遺伝子やサイトカインについての情報が得られた。APDP細胞のマーカー遺伝子や炎症関連遺伝子の発現解析の結果をもとに、引き続き肝臓APDP細胞の分化・増殖機構について解析を行う。得られた結果よりAPDP細胞機能やAPDP細胞を起点とする肝臓炎症・線維化を司るメディエータ・シグナル機序への介入がNAFL・NASHに対する予防・治療効果を持つかを評価する。
KAKENHI-PROJECT-18K15113
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K15113
野生植物における組み換え種分化の分子分類学的再検討
組み換え種分化によって生じたと考えられる2種の野生植物,エヒメテンナンショウ(Arisaema ehimense)とヒメイカリソウ(Epimedium trifoliatobinatum)が,交雑起源であるかどうかを分子マーカーを用いて検討した。エヒメテンナンショウとその推定母種2種の複数集団からサンプリングを行い,酵素多型解析を行った。エヒメテンナンショウには,推定母種に見られないようなユニークな対立遺伝子はほとんど見られなかったことから,この種が交雑起源である可能性は高い。ただし、母種に特異的なマーカーが見つからなかったことから,雑種起源以外の仮説を完全に排除することはできない。ヒメイカリソウについては,RAPD(Random Amplified Polymorphic DNA)を用いて,交雑起源の検討を行った。ヒメイカリソウとその推定母種2種の集団から複数個体からサンプリングを行い,複数のランダムプライマーを用いてPCRを行い,各個体の遺伝子型を決定した。RAPDでは酵素多型を用いる場合よりも高い変異を検出することができる。ヒメイカリソウでは,母種に見られないバンドが検出された。これは,ヒメイカリソウが交雑によって起源してから長い時間が経っている可能性,ヒメイカリソウが交雑起源ではない可能性,RAPDの突然変異率が極端に高い可能性の3つを示唆しているが,そのどれであるかは今回の研究からだけでは明らかにすることができない。今後,葉緑体DNAや核DNAのITS領域の塩基配列変異を解析することによって,これらの仮説のどれが正しいかを明らかにすることが出来ると思われる。組み換え種分化の一例として考えられているエヒメテンナンショウ(Arisaema ehimensis J.Murata et Ohno)とその推定母種を対象に、本年は酵素多型解析を行った。エヒメテンナンショウの6集団、推定母種であるアオテンナンショウ(A.serratum(Thunb.)Schott)とカントウマムシグサ(A.tosaense Makino)のそれぞれ6集団、3集団から集団サンプリングを行った。12酵素種における17多型遺伝子座について、対立遺伝子を計算し、3種間の遺伝的同一度ならびに遺伝的距離を求めたところ、エヒメテンナンショウは、推定母種のどちらかに特に近いということはなかった。また、酵素多型遺伝子頻度をもとに集団間のフェノグラムを作成したところ、エヒメテンナンショウは一つにまとまらず、アオテンナシショウに近い集団やカントウマムシグサに近い集団の両方が見られた。これは、エヒメテンナンショウが、推定母種から交雑によって生じたという仮説を部分的に指示する。また、エヒメテシナンショウが交雑起源によって起源したとすると、推定母種の遺伝的多様性を両方から受け継いでいるため、遺伝的多様性が高い可能性が考えられたが、実際にエヒメテンナンショウは遺伝的多様性が両推定母種よりも高い傾向が見られた。これらのことから、エヒメテンナンショウが組み換え種分化により推定母種から分化した可能性は高い。エヒメテンナンショウが組み換え種分化によって生じたかどうかをさらに詳細に検討するためには、酵素多型よりも変異性が高い遺伝的マーカーを用いた解析や、塩基配列情報をもとにした解析が今後必要であると考えられる。組み換え種分化によって生じたと考えられる2種の野生植物,エヒメテンナンショウ(Arisaema ehimense)とヒメイカリソウ(Epimedium trifoliatobinatum)が,交雑起源であるかどうかを分子マーカーを用いて検討した。エヒメテンナンショウとその推定母種2種の複数集団からサンプリングを行い,酵素多型解析を行った。エヒメテンナンショウには,推定母種に見られないようなユニークな対立遺伝子はほとんど見られなかったことから,この種が交雑起源である可能性は高い。ただし、母種に特異的なマーカーが見つからなかったことから,雑種起源以外の仮説を完全に排除することはできない。ヒメイカリソウについては,RAPD(Random Amplified Polymorphic DNA)を用いて,交雑起源の検討を行った。ヒメイカリソウとその推定母種2種の集団から複数個体からサンプリングを行い,複数のランダムプライマーを用いてPCRを行い,各個体の遺伝子型を決定した。RAPDでは酵素多型を用いる場合よりも高い変異を検出することができる。ヒメイカリソウでは,母種に見られないバンドが検出された。これは,ヒメイカリソウが交雑によって起源してから長い時間が経っている可能性,ヒメイカリソウが交雑起源ではない可能性,RAPDの突然変異率が極端に高い可能性の3つを示唆しているが,そのどれであるかは今回の研究からだけでは明らかにすることができない。今後,葉緑体DNAや核DNAのITS領域の塩基配列変異を解析することによって,これらの仮説のどれが正しいかを明らかにすることが出来ると思われる。
KAKENHI-PROJECT-10740396
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10740396
膵癌の発癌進展過程を通じ高発現する膵癌特異的抗原の機能解析と臨床応用
膵癌発癌過程の早期から進行期までを通じ高発現している抗原PSCA(prostate stem cell antigen)は、膵癌の発癌機序の根幹に関わる可能性があり、治療標的かつ早期診断にも応用できる可能性がある。我々の樹立した遺伝子改変膵発癌マウスモデルでも、前癌病変に比べ進行癌でのPSCAの高発現がみられた。ヒト膵癌細胞株のPSCAをノックダウンすると、細胞増殖が著明に抑制されアポトーシスを生じており、PSCAの機能的重要性が示唆された。しかしPSCAとTGF-beta-SMAD系を含む各種細胞内シグナルとの関係には有意な所見が見出されず、今後その分子機能とその機序の解明が必要である。膵癌の発癌過程において早期から進行期までを通じ高発現している抗原PSCAは、膵癌の発癌機序の根幹にかかわっている可能性があると共に、治療標的であり、かつ早期診断にも用いることが出来る可能性がある。我々は、臨床の膵癌組織像をよく再現する遺伝子改変マウスモデル(膵臓上皮特異的変異型Kras発現+Tgfbr2ノックアウト)を樹立し既に報告している。このマウス膵癌組織から樹立した膵癌細胞では、前癌病変の細胞(変異型Kras発現のみ)に比べ、PSCAは有意に高発現している。本研究では、このPSCA分子の機能解析を行うため、もともとPSCAを高発現しているヒト膵癌細胞株のPSCAを恒常的にノックダウンしたところ、in vitroにおける細胞増殖が著明に抑制され細胞死に至った。この結果から、PSCAの機能的重要性が示唆される。これと並行してPSCA発現ベクターをデザインし、ノックダウン株に強制発現したが、細胞増殖の抑制は十分には回復されず、ウイルスベクターによるPSCA発現量が不十分であったと考えられる。PSCAは機能や細胞内シグナルに与える影響が未知であり、PSCAノックダウン細胞におけるMAPK,PI3Kシグナルの変化をWestern blotにて検討したが、有意な変化は見られなかった。また、マウス膵癌細胞でのPSCAノックダウン株、およびテトラサイクリン誘導性のPSCAノックダウン細胞株も樹立した。PSCAは中和抗体を用いて細胞傷害性T細胞の殺細胞効果による治療への応用が臨床的に試験されているため、これをC57BL/6野生型マウスへ移植しin vivoにおけるPSCAの機能解析を行っていく予定であり、移植の条件を検討している。またテトラサイクリン誘導性ノックダウンについてこれまでの条件検討に基づき細胞内遺伝子発現プロファイルの変化を解析する。膵癌発癌過程の早期から進行期までを通じ高発現している抗原PSCA(prostate stem cell antigen)は、膵癌の発癌機序の根幹に関わる可能性があり、治療標的かつ早期診断にも応用できる可能性がある。我々の樹立した遺伝子改変膵発癌マウスモデルでも、前癌病変に比べ進行癌でのPSCAの高発現がみられた。ヒト膵癌細胞株のPSCAをノックダウンすると、細胞増殖が著明に抑制されアポトーシスを生じており、PSCAの機能的重要性が示唆された。しかしPSCAとTGF-beta-SMAD系を含む各種細胞内シグナルとの関係には有意な所見が見出されず、今後その分子機能とその機序の解明が必要である。膵癌の発癌過程において早期から進行期までを通じ高発現している抗原PSCAは、膵癌の発癌機序の根幹にかかわっている可能性があると共に、治療標的であり、かつ早期診断にも用いることが出来る可能性がある。我々は、臨床の膵癌組織像をよく再現する遺伝子改変マウスモデル(膵臓上皮特異的変異型Kras発現+Tgfbr2ノックアウト)を樹立し既に報告している。自験データでも、このマウス膵癌組織から樹立した膵癌細胞では、前癌病変の細胞(変異型Kras発現のみ)に比べ、PSCAは有意に高発現している。本研究では、このPSCA分子の機能解析を行うため、ヒト及びマウスの膵癌細胞においてPSCAの恒常的ノックダウン細胞株の樹立を試みた。複数のヒト・マウスの膵癌細胞株におけるPSCA発現をスクリーニングし、もともとPSCAを高発現しているヒト膵癌細胞株のPSCAを恒常的にノックダウンすると、in vitroにおける細胞増殖が著明に抑制され細胞死に至った。この結果から、PSCAの機能的重要性が示唆された。これと並行してPSCA発現ベクターをデザインし、ノックダウン株に強制発現をすることにより、細胞増殖の抑制がキャンセルされることを確認しようとした。十分なPSCA発現を達成できるウイルスベクターの樹立には時間を要した。今後これを用いてPSCAノックダウン株における細胞増殖抑制という表現型がoff target効果ではないことを確認し、PSCAノックダウンが惹起する遺伝子発現プロファイル変化をマイクロアレイにより網羅的に解析する。また、テトラサイクリン誘導性にPSCA発現をノックダウンするシステムを用いた細胞株の樹立も進めている。さらに、マウス膵癌細胞においてもPSCAノックダウン株を樹立し、C57BL/6野生型マウスに移植しin vivoにおけるPSCAの機能解析を今後行っていく予定である。膵癌の発癌過程において早期から進行期までを通じ高発現している抗原PSCA(prostate stem cell antigen)は、膵癌の発癌機序の根幹にかかわっている可能性があると共に、治療標的かつ早期診断にも用いることが出来る可能性がある。我々は、臨床の膵癌組織像をよく再現する遺伝子改変マウスモデル(膵臓上皮特異的変異型Kras発現+Tgfbr2ノックアウト)を樹立し既に報告している。このマウス膵癌組織から樹立した膵癌細胞では、前癌病変の細胞(変異型Kras発現のみ)に比べ、PSCAが有意に高発現していた。また、PSCAは前癌病変の段階から発現が増強し始めているとの報告もある。
KAKENHI-PROJECT-24591007
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24591007
膵癌の発癌進展過程を通じ高発現する膵癌特異的抗原の機能解析と臨床応用
本研究にて、ヒト膵癌細胞株のPSCAを恒常的にノックダウンしたところ、in vitroにおける細胞増殖が著明に抑制され細胞死に至った。この結果から、PSCAの機能的重要性が示唆された。次に、テトラサイクリン誘導性のヒトPSCAノックダウン細胞株も樹立し、PSCAノックダウンを誘導すると、やはり対照株と比較し細胞増殖が抑制され細胞死に至り、アポトーシスが生じていることがわかった。PSCAが細胞内シグナル伝達に与える影響はこれまで不明であり、PSCAノックダウン細胞でのMAPK, PI3K, STAT3シグナルの変化を検討したが、対照と比較し有意な変化は得られなかった。PSCAの発現とTGF-betaシグナルとの関連を検討したところ、TGF-beta刺激によりPSCA発現が減弱する傾向、SMAD4ノックダウンによりPSCA発現が増強する傾向を示したが、有意差は得られなかった。これまでの検討にてPSCAの機能的重要性は示されたが、その機序の詳細はまだ不明な点が多い。臨床的にPSCA中和抗体を用いた治療法が検討されており、PSCA分子の機能とその機序につき新たな知見が得られると新規治療の開発に有用である。消化器内科学膵癌ヒトおよびマウス膵癌細胞を用いたPSCAの恒常的ノックダウン細胞を樹立し、その表現型の変化を見出すと共に、遺伝子発現プロファイルの変化を網羅的に解析し、PSCAの惹起する細胞内シグナルや標的分子を明らかにする計画であったが、PSCAという分子の扱いが容易ではない。もともとPSCAが高発現のヒト膵癌細胞株でのPSCAノックダウンにて著明な細胞増殖抑制効果がみられており、機能的に重要な分子であると考えられる。複数のヒト膵癌細胞において、mRNA発現量と蛋白発現量との乖離がみられ、これはpseudogeneの存在のためと考えられること、マウス細胞ではよいPSCA抗体がなく、蛋白量の制御を直接確認することが困難であること、ヒト膵癌細胞株で恒常的ノックダウン細胞を樹立でき、この細胞についてはmRNA発現量と蛋白発現量とは相関していたが、増殖が著明に抑制されその他の表現型を検討することが困難なこと、またノックダウン細胞でのMAPK, PI3Kシグナルの変化は不明瞭であるなど、PSCAの機能解析の上で問題点が多い。ヒトおよびマウス膵癌細胞を用いたPSCAの恒常的ノックダウン細胞を樹立し、その表現型の変化を見出すと共に、遺伝子発現プロファイルの変化を網羅的に解析し、PSCAの惹起する細胞内シグナルや標的分子を明らかにする計画であったが、PSCAという分子の扱いが容易ではなかったため、解析に用いるノックダウン細胞の樹立に時間を要した。ヒト膵癌細胞においては、mRNA発現量と蛋白発現量との乖離がよくみられた。これは、pseudogeneの存在のためと考えられた。またマウス細胞ではよいPSCA抗体がなく、蛋白量の制御を直接確認することが困難であった。
KAKENHI-PROJECT-24591007
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24591007
層状粘土鉱物中のセシウム特異吸着サイトの研究
本研究では,ポジトロニウム分光法により層状粘土鉱物中のセシウム特異吸着について調べた。1枚および2枚のナノシートが層間に挿入されてできる局所構造中には,サイズにして0.3 nmと0.9 nmのナノ空間が生成される。これらナノ空間には,pH1.0の高濃度酸でも除去できないほど強くセシウムが吸着する,つまり特異吸着サイトとして寄与していることがわかった。ナノ空間中にはナノシートエッジサイトとくさび形状の分子サイトが局所的に存在しており,これらがセシウム特異吸着に寄与していると考えられる。土壌中のセシウム吸着メカニズムの解明に向けて,層状粘土鉱物において,これまで見出されていないセシウム特異吸着サイト(セシウムを特異的に強く吸着するサイト)を解明することが本研究の目的である。セシウム吸着サイトとして,これまで考えられてきた層表面(オングストロームスケールの層間)に加えて,新たな吸着サイト(空間サイト)に焦点を当てる。層間を含めた様々なオングストローム空間サイトの検出,およびそのサイズと量の評価はポジトロニウム寿命計測により行う。次に,陽電子寿命・運動量相関(AMOC計測)により,オルトポジトロニウムピックオフ消滅に起因する消滅ガンマ線光子の運動量分布を抽出し,ポジトロニウム寿命計測で得られた空間サイト近傍のセシウム元素分析を行う。ポジトロニウム寿命計測で得られた空間サイトに対して,AMOC計測でセシウムが検出されれば,本研究で見出された空間サイトがセシウム吸着に寄与することが実証されることになる。次に,セシウムを導入した試料を高濃度塩酸を用いた洗浄後,再びAMOC計測により空間サイト近傍のセシウム分析を推進する。洗浄後にも,空間サイト近傍に,セシウムが吸着していれば特異吸着と判断される。最終的に,ポジトロニウム寿命計測で得られた様々な空間の中で,セシウム特異吸着として機能するサイトを明らかにする。本研究では,層状粘土鉱物のナノシートエッジ端面が構成する空間サイトに着目し,そこで起こるセシウム特異吸着性を幾何学的な捕捉性や化学吸着の観点から考察する。土壌中のセシウム吸着メカニズムの解明に向けて,層状粘土鉱物において,これまで見出されていないセシウム特異吸着サイト(セシウムを特異的に強く吸着するサイト)を解明することが本研究の目的である。セシウム吸着サイトとして,これまで考えられてきた層表面(オングストロームスケールの層間)に加えて,新たな吸着サイト(空間サイト)に焦点を当てる。層間を含めた様々なオングストローム空間サイトの検出,およびそのサイズと量の評価はポジトロニウム寿命計測により行う。次に,陽電子寿命・運動量相関(AMOC計測)により,オルトポジトロニウムピックオフ消滅に起因する消滅ガンマ線光子の運動量分布を抽出し,ポジトロニウム寿命計測で得られた空間サイト近傍のセシウム元素分析を行う。ポジトロニウム寿命計測で得られた空間サイトに対して,AMOC計測でセシウムが検出されれば,本研究で見出された空間サイトがセシウム吸着に寄与することが実証されることになる。次に,セシウムを導入した試料を高濃度塩酸を用いた洗浄後,再びAMOC計測により空間サイト近傍のセシウム分析を推進する。洗浄後にも,空間サイト近傍に,セシウムが吸着していれば特異吸着と判断される。最終的に,ポジトロニウム寿命計測で得られた様々な空間の中で,セシウム特異吸着として機能するサイトを明らかにする。本研究では,層状粘土鉱物のナノシートエッジ端面が構成する空間サイトに着目し,そこで起こるセシウム特異吸着性を幾何学的な捕捉性や化学吸着の観点から考察する。セシウム導入前後のスメクタイト鉱物試料について,ポジトロニウム(Ps)寿命計測と陽電子寿命ー運動量相関(AMOC)計測を組み合わせたナノ空間解析は,ナノ空間サイトに対するセシウム吸着を分析するために,本研究課題で確立されたルーチンワークである。このルーチンワークを最終年度である平成27年度も引き続き推進した。ヘクトライトやスティーブンサイトなど,サポナイトと類似なスメクタイト鉱物についてもナノ空間計測を推進した。とりわけ最終年度は,特異的に強いセシウム吸着サイト(特異吸着サイト)に着目した。セシウム導入後の試料について,水素イオン指数(ph)が3以下の高濃度塩酸を用いて洗浄し,洗浄した試料に対して再びポジトロニウム寿命計測とAMOC計測を推進し,空間近傍の元素分析を試みた。その結果,ナノシートが一枚層間に挿入されたタイプの局所構造,二枚層間に挿入されたタイプの局所構造が含むオングストロームスケールの空隙中に存在するエッジサイトと酸素六員環が対向するサイトにセシウムが特異吸着することが明らかになった。本研究では,ポジトロニウム分光法により層状粘土鉱物中のセシウム特異吸着について調べた。1枚および2枚のナノシートが層間に挿入されてできる局所構造中には,サイズにして0.3 nmと0.9 nmのナノ空間が生成される。これらナノ空間には,pH1.0の高濃度酸でも除去できないほど強くセシウムが吸着する,つまり特異吸着サイトとして寄与していることがわかった。ナノ空間中にはナノシートエッジサイトとくさび形状の分子サイトが局所的に存在しており,これらがセシウム特異吸着に寄与していると考えられる。平成26年度は,予定通りサポナイト無機層状化合物に1Mの塩化セシウム水溶液を用いてイオン交換によりセシウムを導入した。
KAKENHI-PROJECT-25400318
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25400318
層状粘土鉱物中のセシウム特異吸着サイトの研究
セシウム導入後のサポナイトに対して,ポジトロニウム(Ps)寿命計測と陽電子寿命ー運動量相関(AMOC)計測を推進し,ナノ空間のサイズ定量,空間近傍の元素分析を行った。Ps寿命計測により,セシウム導入前試料と同様に半径0.3 nm,0.9 nmの大小二種類のナノ空間が検出された。また,水和とともに緻密化していく自己集積化減少も確認された。セシウム導入により,自己集積化する時間スケールが10日間から20日間に増加した。ナトリウムと比較してセシウムが水和しにくいため,自己集積化が抑制されていることが推測できる。セシウム導入試料について,AMOC計測により得られた運動量パラメータが,高運動量領域で有意な増加が確認された。このことは,Ps寿命計測により検出されたナノ空間にセシウムが吸着していることが示唆している。以上より,当初予定していたサポナイト無機層状粘土鉱物中のナノ空間に対するセシウム吸着の調査は順調に進んだと言える。現在までの達成度はおおむね順調と判断する。物性物理学セシウム導入前後のスメクタイト鉱物試料について,ポジトロニウム(Ps)寿命計測と陽電子寿命ー運動量相関(AMOC)計測を組み合わせたナノ空間解析は,ナノ空間サイトに対するセシウム吸着を分析するために,本研究課題で確立されたルーチンワークであり,最終年度である平成27年度も引き続き継続して推進する。ヘクトライトやスティーブンサイトなど,サポナイトと類似なスメクタイト鉱物についてもナノ空間計測を推進する。とりわけ最終年度は,特異的に強いセシウム吸着サイト(特異吸着サイト)に着目する。セシウム導入後の試料について,水素イオン指数(ph)が3以下の高濃度塩酸を用いて洗浄する。塩酸洗浄した試料に対して再びポジトロニウム寿命計測とAMOC計測を推進し,空間近傍の元素分析を試みる。高濃度塩酸で洗浄後にセシウムが検されれば,本研究で見出された空間サイトがセシウム特異吸着に寄与していることが実証される。このような一連のルーチンワークを推進し,ポジトロニウム寿命計測で得られた様々な空間の中で,セシウム特異吸着として機能するサイトを明らかにする。平成25年度は,粘土鉱物として合成無機層状化合物試料として,実際に土壌中に豊富に存在するスメクタイト粘土鉱物であるサポナイト合成無機層状化合物を調達・調整した。セシウム導入前の試料に対して,ポジトロニウム(Ps)寿命計測による空間サイトの検出,陽電子寿命ー運動量相関(AMOC)計測による空間サイト近傍の元素分析を推進した。半径0.3 nm,0.9 nmの大小二種類の空隙を検出し,絶乾状態では0.9 nmスケールの空隙が,水和が進んだ状態では0.3 nmスケールの空隙が支配的であることを見出した。水和が進むにつれ,0.9 nmスケールの空隙が0.3 nmスケールの空隙に徐々に変化して緻密化していく自己集積化現象も見出した。湿式型レーザー回折式粒度分布測定による粒度分布の定量を試みたが,凝集のため,精度よく定量することはできなかった。以上より,当初予定していた層状粘土鉱物の調達・調整,セシウム導入前の試料に対しての空間サイトの調査は順調に進んだと言える。現在までの達成度はおおむね順調と判断する。
KAKENHI-PROJECT-25400318
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25400318
数値的相対論による非軸対称重力崩壊する天体の最終状態に関する研究
重力崩壊する天体の崩壊過程や最終状態を明らかにすることは、一般相対論における最も重要な理論的問題の1つである。また、5-10年後から開始予定の重力波直接検出計画においても、重力崩壊する天体は有力な重力波源の1つであるので、その崩壊過程に伴って放出される重力波の波形を正確に予言しておくことが求められている。これらの問題を解き明かすには、一般相対論の基礎方程式であるアインシュタイン方程式を解く必要があるが、アインシュタイン方程式は大変複雑な方程式であるので、数値シミュレーションを行う以外解く方法がない。そこで本研究では、アインシュタイン方程式を近似なしに一般的な問題において解くことを目標にシミュレーションコードを開発し、おおよそ完成した。本年度は、開発したコードを用いて主に2体問題に対するシミュレーションを行った。具体的には、2つの球対称天体を用意し、ケプラー速度を与えて合体させる、といったシミュレーションを数例行った。そして最終状態が、ブラックホールになるか、新たな天体が形成されるかを調べたり、また重力波の波形の解析を行った。2体が合体する様子をを完全に一般相対論的にシミュレーションした研究はこれまで世界において例が無く、12月にパリで行われた「19回一般相対論に関するテキサス会議」で発表したときには、同様な研究を行う研究者から注目を集めた。なお、シミュレーションで得られた結果は、論文にまとめて現在投稿中である。重力崩壊する天体の最終状態を明らかにすることは、一般相対論における最も重要な問題の1つである。しかしこれまでの研究は、球対称性、軸対称性を仮定するなどして行なわれており、一般的な場合についての研究は全くなされていない。この現状をふまえ本研究では、対称性を仮定しない一般的な重力崩壊における最終状態の解析を行なうことを目標としている。本年度は特に、解析を行なうためのコンピュータプログラムを開発することを目指し、ほぼ完成した。プログラムは以下のような主要部分からなる。(1)アインシュタイン方程式を解く部分。より具体的には、アインシュタイン方程式は計量に対する方程式なので、計量を解く部分。(2)物質としては、無衝突粒子の多体系を考えたが、それら粒子に対する相対論的運動方程式を解く部分。(3)重力崩壊した天体は、大雑把にはブラックホールになるか、あるいは何らかの準平衡状態に落ち着く。従って本研究では、ブラックホールになったかどうかを判断する必要があるが、そのためのプログラムも完成させた。以上のプログラムを用いて、重力崩壊の最終状態に関する解析を現在行なっている。これまでの所得られた結果は、以下のようである。(1)重力崩壊する前に、球対称に近い形状を持つものは、最終的にブラックホールになる。(2)偏平楕円体は崩壊とともに始めはディスクを形成するが、やがてそのディスクも重力崩壊して、球体に近付いていき、最終的にはブラックホールに落ち着く。(3)偏長楕円体の場合は、重力崩壊と共に棒状の物体を形成するが、その棒状の物体が軸対称に近く、かつ短軸が長軸に比べ十分に短ければ、大変曲率の大きな物体となるが、ブラックホールにはならない。以上の結果から、形が球に近い重力崩壊物体はブラックホールに落ち着くが、そうでない場合には、最終状態として様々な可能性があることが分かった。重力崩壊する天体の崩壊過程や最終状態を明らかにすることは、一般相対論における最も重要な理論的問題の1つである。また、5-10年後から開始予定の重力波直接検出計画においても、重力崩壊する天体は有力な重力波源の1つであるので、その崩壊過程に伴って放出される重力波の波形を正確に予言しておくことが求められている。これらの問題を解き明かすには、一般相対論の基礎方程式であるアインシュタイン方程式を解く必要があるが、アインシュタイン方程式は大変複雑な方程式であるので、数値シミュレーションを行う以外解く方法がない。そこで本研究では、アインシュタイン方程式を近似なしに一般的な問題において解くことを目標にシミュレーションコードを開発し、おおよそ完成した。本年度は、開発したコードを用いて主に2体問題に対するシミュレーションを行った。具体的には、2つの球対称天体を用意し、ケプラー速度を与えて合体させる、といったシミュレーションを数例行った。そして最終状態が、ブラックホールになるか、新たな天体が形成されるかを調べたり、また重力波の波形の解析を行った。2体が合体する様子をを完全に一般相対論的にシミュレーションした研究はこれまで世界において例が無く、12月にパリで行われた「19回一般相対論に関するテキサス会議」で発表したときには、同様な研究を行う研究者から注目を集めた。なお、シミュレーションで得られた結果は、論文にまとめて現在投稿中である。
KAKENHI-PROJECT-09740336
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09740336
ピッチ/有機金属複合体を出発原料とするメソポア活性炭の開発と応用
種々の有機金属錯体を含有するピッチを、有機金属錯体およびピッチのテトラヒドロフラン溶液を混合後これらの溶媒を減圧除去することにより得た。さらにエア-ブロ-イングにより多環芳香族の縮合度を上げた後、紡糸してピッチ繊維を得、水蒸気賦活により活性炭素繊維を得た。得られた活性炭素繊維のボアサイズ、比表面積等の細孔特性を調べた結果、希土類金属錯体を含有するピッチを用いた場合比表面積が大きくメソポアが高度に発達した活性炭素繊維が得られた。ピッチ中の希土類金属錯体量の影響を調べた結果、希土類金属錯体量とともにメソポアの割合が上昇した。これらの結果希土類金属がメソポアの生成に効果を示すことが明らかになった。イットリウムアセチルアセテート含有ピッチから得られた活性炭素繊維中のイットリウムの状態を電子線プローブマイクロアナライザーで調べた結果、酸化イットリウムが活性炭素繊維中に均一に分散していることが認められた。メソポアが発達した活性炭素繊維の場合巨大分子の吸着性に優れると考えられる。得られたメソポアが発達した活性炭素繊維への、ビタミンB_<12>および水道原水中に含まれ消毒用塩素と反応することにより発ガン性のトリハロメタンを生成すると考えられているフミン酸の吸着性を調べた。これらの巨大分子のメソポア活性炭素繊維への吸着量は、他の金属錯体含有ピッチから得られた活性炭素繊維および市販のミクロポアが発達した活性炭素繊維よりも2-3倍高い値を示し、本研究で得られたメソポア活性炭素が巨大分子の吸着性に優れることが明らかになった。種々の有機金属錯体を含有するピッチを、有機金属錯体およびピッチのテトラヒドロフラン溶液を混合後これらの溶媒を減圧除去することにより得た。さらにエア-ブロ-イングにより多環芳香族の縮合度を上げた後、紡糸してピッチ繊維を得、水蒸気賦活により活性炭素繊維を得た。得られた活性炭素繊維のボアサイズ、比表面積等の細孔特性を調べた結果、希土類金属錯体を含有するピッチを用いた場合比表面積が大きくメソポアが高度に発達した活性炭素繊維が得られた。ピッチ中の希土類金属錯体量の影響を調べた結果、希土類金属錯体量とともにメソポアの割合が上昇した。これらの結果希土類金属がメソポアの生成に効果を示すことが明らかになった。イットリウムアセチルアセテート含有ピッチから得られた活性炭素繊維中のイットリウムの状態を電子線プローブマイクロアナライザーで調べた結果、酸化イットリウムが活性炭素繊維中に均一に分散していることが認められた。メソポアが発達した活性炭素繊維の場合巨大分子の吸着性に優れると考えられる。得られたメソポアが発達した活性炭素繊維への、ビタミンB_<12>および水道原水中に含まれ消毒用塩素と反応することにより発ガン性のトリハロメタンを生成すると考えられているフミン酸の吸着性を調べた。これらの巨大分子のメソポア活性炭素繊維への吸着量は、他の金属錯体含有ピッチから得られた活性炭素繊維および市販のミクロポアが発達した活性炭素繊維よりも2-3倍高い値を示し、本研究で得られたメソポア活性炭素が巨大分子の吸着性に優れることが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-09243228
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がんおよび肉腫の発生・進展におけるin vivoでのHGF/SFの役割-HGF/SFトランスジェニックマウスを用いた解析-
肝腫瘍の発生頻度は、FVB/Nでは7/71(10%)にみられたのに対し、HGF/SFトランスジェニックマウスでは24/49(50%)と高率であり、肝癌に限ってみるとFVB/Nでは71匹中肝癌のみられたものはないのに対しHGF/SFトランスジェニックマウスでは11/49(22%)に発生がみられた。得られた腫瘍組織を分子生物学的に解析した結果、75%の腫瘍でc-Metレセプターの活性化が検出され、HGF/c-Metのオートクリン機構による発癌の可能性が考えられた。また、腫瘍組織中ではHGF/SFの発現に平行してVEGFの発現が促進しており、また肝癌組織にも異常な血管新生が認められたことからHGF/SF自体、あるいはHGF/SFにより誘導されたVEGFによる間接的な血管新生が発癌を促進させた可能性が考えられた。これまでHGF/SFは肝癌発生を抑制する因子として位置付けられて来たが、この結果より肝癌発生・増殖の促進因子であることが明らかになった。HGF/SFトランスジェニックマウスおよびFVB/Nコントロールマウスの2群に対し、化学発癌剤(diethy hirosamine,DEN)を腹腔内投与し、肝発癌におけるHGF/SFの役割を調べている。現在、投与後約10ヶ月が経過し、経時的にマウスを開腹、肝腫瘍の有無を観察中である。これまでに、HGF/SFトランスジェニックマウス14匹中4匹に肝腫瘍の発生がみられたのに対し、コントロールマウス27匹中では肝腫瘍の発生したものはみられなかった。今後投与後12ヶ月以降の検討を行ない発生した肝腫瘍の個数を詳細に検討するとともに、得られた腫瘍組織を用いて、個々の腫瘍の分子生物学的特性をDNA、RNA、およびタンパク質レベルで明らかにして行く。また、複数のトランスジェニックマウスにおいて肝臓以外の臓器にも腫瘍の発生がみられており、これらに対して詳しく病理組織学会、分子生物的解析を行なってゆく予定である。HGF/SFトランスジェニックマウスとc-Ha-Rasトランスジェニックマウスと交配しダブルトランスジェニックマウスの作製を試みたが、まだ少数の子孫しか得られていない。ダブルトランスジェニックマウスは胎生致死である可能性もあり、現在引き続き子孫を繁殖中である。肝腫瘍の発生頻度は、FVB/Nでは7/71(10%)にみられたのに対し、HGF/SFトランスジェニックマウスでは24/49(50%)と高率であり、肝癌に限ってみるとFVB/Nでは71匹中肝癌のみられたものはないのに対しHGF/SFトランスジェニックマウスでは11/49(22%)に発生がみられた。得られた腫瘍組織を分子生物学的に解析した結果、75%の腫瘍でc-Metレセプターの活性化が検出され、HGF/c-Metのオートクリン機構による発癌の可能性が考えられた。また、腫瘍組織中ではHGF/SFの発現に平行してVEGFの発現が促進しており、また肝癌組織にも異常な血管新生が認められたことからHGF/SF自体、あるいはHGF/SFにより誘導されたVEGFによる間接的な血管新生が発癌を促進させた可能性が考えられた。これまでHGF/SFは肝癌発生を抑制する因子として位置付けられて来たが、この結果より肝癌発生・増殖の促進因子であることが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-11680817
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高温気相反応速度は超臨界水領域へ適用できるか-OHラジカルの反応を例として-
高温水中でOHラジカルの反応動力学を調べるには,OHラジカルの吸光度変化を追跡するのが一番直接的である。これまで,室温の水中でOHラジカルの測定を試みた例はあるが,高温水中での測定例はなかった。OHラジカルの直接観測で困難となるのは,高圧セルに用いているサファイア窓による吸収である。この窓による吸収を的確に補正することにより,高温水中でのOHラジカルの吸収スペクトルを測定した。高温水中でのOHラジカルの吸収スペクトルは,室温でのそれに比べて,若干短波長側へシフトした。吸収の裾は,300nmから観測された。また,250nmにおける分子吸光係数は,温度の増加につれ減少した。室温での分子吸光係数は約500であるが,200°C以上で急激に減少し,350°Cでは,約200であった。OHラジカル同士の反応速度の温度依存性について検討した。125°Cまでは,ほぼアレニウス型温度依存性を示すが,125°C以上では,反応速度定数は温度に依存しなかった。125°Cにおける速度定数は1x10^<10>M^<-1>s^<-1>であった。高温水中でOHラジカルの反応動力学を調べるには,OHラジカルの吸光度変化を追跡するのが一番直接的である。これまで,室温の水中でOHラジカルの測定を試みた例はあるが,高温水中での測定例はなかった。OHラジカルの直接観測で困難となるのは,高圧セルに用いているサファイア窓による吸収である。この窓による吸収を的確に補正することにより,高温水中でのOHラジカルの吸収スペクトルを測定した。高温水中でのOHラジカルの吸収スペクトルは,室温でのそれに比べて,若干短波長側へシフトした。吸収の裾は,300nmから観測された。また,250nmにおける分子吸光係数は,温度の増加につれ減少した。室温での分子吸光係数は約500であるが,200°C以上で急激に減少し,350°Cでは,約200であった。OHラジカル同士の反応速度の温度依存性について検討した。125°Cまでは,ほぼアレニウス型温度依存性を示すが,125°C以上では,反応速度定数は温度に依存しなかった。125°Cにおける速度定数は1x10^<10>M^<-1>s^<-1>であった。水中で,水分子のイオン化により生じる水和電子をOHラジカルへ変換するために,N_2Oが用いられている。そのため,N_2Oが電子を受け取る能力つまり電子親和力の知見は重要である。気相におけるN_2Oの電子親和力は+0.22eVとハンドブックなどに掲載されている。しかし,ab initio計算では-0.2eV程度となった。一方,水中ではN_2Oアニオンの電子親和力は+2eV程度であった。また,気相と水中でのN_2Oアニオンの解離ポテンシャル曲線を求めた。水中では,N-O結合が解離するためには,小さなポテンシャル障壁(約0.2eV)を越える必要があるが,過剰の振動エネルギーがあれば,容易にN_2とO^-アニオンへ解離することが示された。高温水中での水和電子とN_2Oとの反応速度は,300°Cまではアレニウス型温度依存性を示した。しかし,水の臨界温度近傍では,反応速度は急激に減少し,その後また増大した。このような特異な温度依存性は,電子とN_2Oの溶媒和の違いを考えることにより,定性的に説明できた。これまで,水和電子とN_2Oとの反応は,拡散律速反応と考えられていたが,300°C以下では,非常に小さな活性化障壁を越える反応であることが分かった。溶媒効果を取り入れたab initio計算により,N_2O^-アニオンの水中での生成自由エネルギーおよび反応の自由エネルギーが求められた。高温水中でOHラジカルの反応動力学を調べるには,OHラジカルの吸光度変化を追跡するのが一番直接的である。これまで,室温の水中でOHラジカルの測定を試みた例はあるが,高温水中での測定例はなかった。OHラジカルの直接観測で困難となるのは,高圧セルに用いているサファイア窓による吸収である。この窓による吸収を的確に補正することにより,高温水中でのOHラジカルの吸収スペクトルを測定した。高温水中でのOHラジカルの吸収スペクトルは,室温でのそれに比べて,若干短波長側へシフトした。吸収の裾は,300nmから観測された。また,250nmにおける分子吸光係数は,温度の増加につれ減少した。室温での分子吸光係数は約500であるが,200°C以上で急激に減少し,350°Cでは,約200であった。OHラジカル同士の反応速度の温度依存性について検討した。125°Cまでは,ほぼアレニウス型温度依存性を示すが,125°C以上では,反応速度定数は温度に依存しなかった。125°Cにおける速度定数は1x10^<10>M^<-1>s^<-1>であった。
KAKENHI-PROJECT-15560660
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チャム社会における織物生産と女性の役割-ベトナム中南部の事例より
平成16年度はこれまでに収集した資料を整理すると同時に,夏季休暇および春季休暇を利用し,観光地や都市におけるチャムの織物の流通状況などに関する現地調査を実施した。2004年8月には,ベトナムのチャンパ遺跡周辺にある土産物屋やチャムの村落にある織物工房,直売店などにおいてその流通,販売状況などを調べた。更に2005年3月にはホーチミン市におけるチャムの織物工房,倉庫などを訪問し布の流通,販売状況を調べたほか,昨年度定点調査を行った集落の人々が原料の買い付けに訪れる糸販売店を訪問し,補足調査を行った。調査の結果,以下のことが明らかになった。まず,商品として市場に出回っているチャムの織物の多くは,ニントゥアン省にあるM集落において生産されている紋織りの布にほぼ限られているということである。こうした布の流通にはチャム以外の民族すなわちベトナムのマジョリティを占めるキン族も多く関わっており,原料である糸は,ホーチミン市の華人が経営する工場や販売店で取引きされている。また,ベトナムが本格的に市場経済化の影響を受けはじめてから10年以上経った現在では,チャムの織物を販売する土産店やそこで売られる商品は取り立てて珍しいものではなくなってきているが,こうしたなか,古い模様の復興作業が試みられるなど,模様のデザインに対する織り手の意識の変化もみられはじめた。以上のように,かつて村落社会で自給生産的に行われていた織物生産は、貨幣経済の中において都市や他民族との社会関係を取り結び,現代的に変化しながらも引き続き行なわれているのである。なお,研究以外にも,シンガポール国立大学アジア研究センターにて開催された国際シンポジウム『現代のチャンパ学』に参加・発表をし,あらゆる国の研究者とチャンパおよび現在のチャムに関する学問的交流を行った。本年度に実施した調査活動は以下の通りである。昨年の8月から9月にかけてビントゥアン省バクビン県B集落で実施した現地調査では、布の慣習的な利用法、機織りに技術に関する調査を実施した他、15歳以上の女性658人の就労状況を考察した。また、機織りに従事しているとされる女性115人のうち20人の生活サイクルを観察し、可能な場合はライフヒストリーを聞き取った。調査の結果、B集落では伝統的な機織りは主な収入の手段とはなっておらず、機織りに対する関心は年齢が下がるにつれ薄くなっており、技術の習得率も若くなるほど下降していることが明らかになった。伝統的な機織りに従事しているとされる女性でも、農作業や子守のほか儀礼に関する仕事などをこなさねばならず、また時間はあっても糸の調達ができないなどの理由で、いわゆる「専業」として機織りをする女性はわずかである。B村落で生産される布はいわゆる商品的な価値が低いものであるが、既存の社会においては贈与財や交換財として依然重要な意味をもち、チャム社会内部での取引は盛んである。なお、B村落ではNGOや省の工業局による織物プロジェクトも行われており、在来機である腰機ではなく高機を用いた商品としての布の生産を指導しているが、技術的な問題もあり成功をおさめていない。研究の成果は、ホーチミン社会人文科学研究科人類学部門、神戸大学国際文化学会などにおいて口頭発表をしたほか、「バクビン県におけるチャムの伝統織物生産と女性の役割研究第2期第2回報告書(ホーチミン社会人文科学大学提出・ベトナム語)」、「織物生産と女性の役割-ベトナム中南部チャム族の事例から(国際交流基金次世代リーダーフェローシップ研修報告書)」としてまとめた。平成16年度はこれまでに収集した資料を整理すると同時に,夏季休暇および春季休暇を利用し,観光地や都市におけるチャムの織物の流通状況などに関する現地調査を実施した。2004年8月には,ベトナムのチャンパ遺跡周辺にある土産物屋やチャムの村落にある織物工房,直売店などにおいてその流通,販売状況などを調べた。更に2005年3月にはホーチミン市におけるチャムの織物工房,倉庫などを訪問し布の流通,販売状況を調べたほか,昨年度定点調査を行った集落の人々が原料の買い付けに訪れる糸販売店を訪問し,補足調査を行った。調査の結果,以下のことが明らかになった。まず,商品として市場に出回っているチャムの織物の多くは,ニントゥアン省にあるM集落において生産されている紋織りの布にほぼ限られているということである。こうした布の流通にはチャム以外の民族すなわちベトナムのマジョリティを占めるキン族も多く関わっており,原料である糸は,ホーチミン市の華人が経営する工場や販売店で取引きされている。また,ベトナムが本格的に市場経済化の影響を受けはじめてから10年以上経った現在では,チャムの織物を販売する土産店やそこで売られる商品は取り立てて珍しいものではなくなってきているが,こうしたなか,古い模様の復興作業が試みられるなど,模様のデザインに対する織り手の意識の変化もみられはじめた。以上のように,かつて村落社会で自給生産的に行われていた織物生産は、貨幣経済の中において都市や他民族との社会関係を取り結び,現代的に変化しながらも引き続き行なわれているのである。なお,研究以外にも,シンガポール国立大学アジア研究センターにて開催された国際シンポジウム『現代のチャンパ学』に参加・発表をし,あらゆる国の研究者とチャンパおよび現在のチャムに関する学問的交流を行った。
KAKENHI-PROJECT-03J03058
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03J03058
一人暮らしの高齢者の生活意識と社会関係の変化に関する縦断的研究
1.社会関係と生活意識の変化社会関係は、ADL(日常生活動作能力)によって左右されやすく、健康状態がよくないほど近隣関係は消極的となる。その理由を相互作用を支える規範の互酬性からみると、自分から出かけたり、働きかけることが困難となるため、自分をとりまく他人の意志や関心に依存することを回避する傾向をもつようになるためと考えられる。しかも年齢が高くなるにつれて社会関係に占める子どものウエイトが大きくなっていくことは、一人暮らしの高齢者に対する子どもの側の情緒的なアタッチメントや扶養規範が老親との持続的な関係を維持させる結果といえ、一人暮らしの高齢者の生活にとって、高齢になるほど家族の占める位置は大きいといえる。2.高齢者の生活環境が与える社会関係への効果農漁村地域の近隣関係の重層性は、都市地域のそれに比較すると大きな相違を示しており、近隣関係における生活の可視性[お互いの生活を観察する機会の程度]が大きい農漁村地域ほど近隣関係に対する依存を避けようとする傾向がみられ、反対に、例え遠距離にあるとしても家族結合に対する期待と現実の相互作用が強化されるという傾向がみられる。3.国際比較研究への視点:今後の課題一人暮らしの高齢者の国際比較研究は、対象をコントロールすることができる点で、最も比較可能性を保障するものである。家族結合に収斂する高齢時の日本の高齢者の社会関係の特質を考慮するとき、高齢者離婚の増加が指摘されている日本の状況は、家族結合の構造的な弱化を招くことを予測させから、その代替的機能がどのように働くことになるのかを、現在すでに離婚率が高い西欧社会との比較によって可能にしうる。1.社会関係と生活意識の変化社会関係は、ADL(日常生活動作能力)によって左右されやすく、健康状態がよくないほど近隣関係は消極的となる。その理由を相互作用を支える規範の互酬性からみると、自分から出かけたり、働きかけることが困難となるため、自分をとりまく他人の意志や関心に依存することを回避する傾向をもつようになるためと考えられる。しかも年齢が高くなるにつれて社会関係に占める子どものウエイトが大きくなっていくことは、一人暮らしの高齢者に対する子どもの側の情緒的なアタッチメントや扶養規範が老親との持続的な関係を維持させる結果といえ、一人暮らしの高齢者の生活にとって、高齢になるほど家族の占める位置は大きいといえる。2.高齢者の生活環境が与える社会関係への効果農漁村地域の近隣関係の重層性は、都市地域のそれに比較すると大きな相違を示しており、近隣関係における生活の可視性[お互いの生活を観察する機会の程度]が大きい農漁村地域ほど近隣関係に対する依存を避けようとする傾向がみられ、反対に、例え遠距離にあるとしても家族結合に対する期待と現実の相互作用が強化されるという傾向がみられる。3.国際比較研究への視点:今後の課題一人暮らしの高齢者の国際比較研究は、対象をコントロールすることができる点で、最も比較可能性を保障するものである。家族結合に収斂する高齢時の日本の高齢者の社会関係の特質を考慮するとき、高齢者離婚の増加が指摘されている日本の状況は、家族結合の構造的な弱化を招くことを予測させから、その代替的機能がどのように働くことになるのかを、現在すでに離婚率が高い西欧社会との比較によって可能にしうる。1.大都市のひとり暮らしの高齢者の追跡調査の実施5年前(1985年)に実施した札幌市のひとり暮らしの高齢者170人をパネル調査の対象として設定して追跡調査を平成2年(1990年)に実施したが、今年度はその際に転居等により不明者であった60人を対象として補充調査を実施した。調査の結果としては、病院への入院および施設への入所者が多く、ひとり暮らしを継続しているケ-スは少ない。またひとり暮らしから子供との同居へのパタ-ンが発生しにくい構造が浮き彫りとなった。またすでにデ-タとして確保している追跡調査のデ-タ分析を行った。2.農村地域の高齢者に関する追跡調査の実施10年前に実施した農村地域の高齢者対象80世帯を対象として生活意識と社会関係の変化を中心として縦断的研究を設計し、平成3年11月に追跡調査を行った。このとき新たに縦断的研究設計のための新規のサンプル抽出による262人を対象とした社会関係と生活意識に関する訪問面接調査を実施した。回収率は70.5%(241人)であり、内訳は、ひとり暮らし12人、夫婦のみ94人、三・四世代世帯の高齢者129人、その他の世帯の高齢者6人のデ-タを得た。現在、分析中であるが、家族意識の強さが定住志向と家族ネットワ-クの強さと関連していることが把握された。3.ひとり暮らしの全国および海外調査文献について全国社会福祉協議会、東京都老人総合研究所および国立国会図書館を中心として資料収集を実施した。1.社会関係と生活意識の変化社会関係は、ADL(日常生活動作能力)によって左右されやすく,健康状態がよくないほど近隣関係は消極的となる。その理由を相互作用を支える規範の互酬性からみると、自分から出かけたり、働きかけることが困難となるため、自分をとりまく他人の意志や関心に依存することを回避する傾向をもつようになるためと考えられる。しかも年齢が高くなるにつれて社会関係に占める子どものウエイトが大きくなっていくことは、一人暮らしの高齢者に対する子どもの側の情緒的なアタッチメントや扶養規範が老親との持続的な関係を維持させる結果といえ、一人暮らしの高齢者の生活にとって、高齢になるほど家族の占める位置は大きいといえる。
KAKENHI-PROJECT-03451029
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03451029
一人暮らしの高齢者の生活意識と社会関係の変化に関する縦断的研究
2.高齢者の生活環境が与える社会関係への効果農漁村地域の近隣関係の重層性は、都市地域のそれに比較すると大きな相違を示しており、近隣関係における生活の可視性[お互いの生活を観察する機会の程度]が大きい農漁村地域ほど近隣関係に対する依存を避けようとする傾向がみられ、反対に、例え遠距離にあるとしても家族結合に対する期待と現実の相互作用が強化されるという傾向がみられる。3.国際比較研究への視点:今後の課題一人暮らしの高齢者の国際比較研究は、対象をコントロールすることができる点で、最も比較可能性を保障するものである。家族結合に収斂する高齢時の日本の高齢者の社会関係の特質を考慮するとき、高齢者の離婚の増加が指摘されている日本の状況は、家族結合の構造的な弱化を招くことを予測させから、その代替的機能がどのように働くことになるのかを、現在すでに離婚率が高い西欧社会との比較によって可能にしうる。
KAKENHI-PROJECT-03451029
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03451029
音響特性を利用した切断品質診断システムの開発
プラズマアーク切断中に発生する切断音は、溶融金属排出状態およびドロス付着状態と密接に関係する。特に、ドロスフリー切断時に発生する切断音は、溶融金属の排出面積、傾き角および開き角の時系列変化と同様に規則的に変化することが分かった。また、LabVIEWを用いて製作した切断品質診断システムは、ドロス付着状態を判別することが可能であり、今後のプラズマアーク切断品質診断システムの開発に向けた基礎資料を得ることができた。プラズマアーク切断中に発生する切断音は、溶融金属排出状態およびドロス付着状態と密接に関係する。特に、ドロスフリー切断時に発生する切断音は、溶融金属の排出面積、傾き角および開き角の時系列変化と同様に規則的に変化することが分かった。また、LabVIEWを用いて製作した切断品質診断システムは、ドロス付着状態を判別することが可能であり、今後のプラズマアーク切断品質診断システムの開発に向けた基礎資料を得ることができた。プラズマアーク切断中に発生する騒音をただ単に騒音と捉えるのではなく,この騒音に含まれる信号と溶融金属排出状態との関係を高速ビデオ画像からの解析によって,切断溝形成伴う加工現象とそこから発せされる切断音との関係について実験的に検討した。プラズマアーク切断装置を用いて切断条件を変化させて被切断材(軟鋼板SS400)を切断し,無指向性マイクロホンを用いて切断音を集音すると同時にデジタルビデオカメラ2台を用いて溶融金属排出状態を記録し,信号解析ソフト及び画像解析ソフトにより溶融金属排出状態を解析した。切断速度変化における溶融金属排出の面積,開き角及び傾き角は,時間の経過に伴って変化することが分かった。切断速度90と120cm/minの場合,溶融金属は広範囲に飛散して被切断材裏面に多くのドロスが付着した。一方,ドロスフリーが実現できた切断速度150と180cm/minの場合は,溶融金属が細く絞られた状態もに保たれて排出された。次に,切断音と溶融金属排出挙動との関係を検討した。切断速度90cm/minの場合,音圧,溶融金属排出の面積,傾き角及び開き角は不規則に変動しており,それぞれのピークには対応性がなく,溶融金属の排出面積は断続的な挙動を呈した。一方,ドロスフリーが実現できた切断速度150cm/minの場合,時間の経過に伴って微小な変動があるものの安定した排出が進行し音圧レベルが最大となった。FFT解析結果によると,ドロスフリーが実現できた150と180cm/minの場合,切断音と溶融金属排出面積の両方において21Hz付近に特徴的なピークが出現することが確認できた。切断音の特性は溶融金属排出挙動及びドロス付着状態と密接に関係することから,今後の切断品質診断システムの構築に向けた基礎資料を得ることができた。プラズマアーク切断中に発生する騒音をただの騒音として捉えるのではなく、これらの騒音に含まれる信号と切断溝開拓に伴う溶融金属排出状態の分析・解析によって、切断溝形成に伴う切断加工現象とそこから発生する加工音の特徴を抽出し、インプロセスで検出できる切断品質診断システムを実現するために検討した。インバータタイプのプラズマアーク切断機を用いて、切断条件(切断電流、切断速度、トーチ高さ)を変化させて、軟鋼板を被切断材として切断を行い、切断中に発せられる切断音を無指向性マイクロホンにより集音した。同時に、デジタルビデオカメラを用いて切断溝から排出される溶融金属の状態を記録した。その後、両者の信号を信号解析ソフト及び画像解析ソフトを用いて切断音及び溶融金属排出の特徴を検討した。切断音信号の解析には周波数解析(FFT)以外にも、離散ウエーブレット変換の拡張であるウェーブレットパケットによる解析を試みた。その結果、切断速度の変化に伴ってドロス付着状態は異なり、特に、ドロスがまったく付着しないドロスフリー状態においては高周波域に特徴的なピークが出現することが見出された。今回の結果は、溶融金属排出の挙動による影響以外に、切断溝内に形成される陽極点の複雑な変動がその原因ではないかと思われる。今回の研究から切断音の特徴的なパワースペクトルを見出したことは、今後の音響による切断品質診断システムの開発において重要となるバンドパスフイルターの製作に役立つものと思われる。
KAKENHI-PROJECT-19560720
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19560720
新物質探索による5f電子系化合物の物性研究
本研究は,高γ値をもつ新物質を探索することを目的とする。この際,探索の指針としfー原子間の距離とfー原子の環境効果に注目し,狙いを定め合成と分析を行ってきた。本年度は効率よく,計5つの化合物をあつかったが,結果として,物性的に興味ある3つの物質を開発することが出来た。すなわちEr_2Fe_3Si_5,Er_2Fe_4Si_9,UZn_<12>である。第1の化合物Er_2Fe_3Si_5は2.8Kにincomensurate,2.4Kにcomensurate磁気相転移をもつ反強磁性体であるが,さらに低温の0.93Kで超伝導状態に転移することを発見した。磁気秩序の低温側に超伝導転移を示す物質として,これまで知られている4物質:Y_9Co_7(T_N=5K,Tc=1.5K),URu_2Si_2(T_n=17.5K,Tc=1.1K),UPd_2Al_3(T_n=14K,Tc=2K),UNi_2Al_3(T_n=4.6K,Tc=1K)に加えて,今回,の我々の発見したEr_2Fe_3Si_5は第5番目となる。今後,この物質の超伝導と磁気秩序の共存状態の解明,さらに,R_2T_3S_<15>相の系統的な物質合成とそれらの磁性・超伝導研究の展開が重要課題として浮上してきた。第2のEr_2Fe_4Si_9は、構造的には希土類イオンが平面三角格子を形成しそれが面に垂直方向に積層した層状構造をとっているため,スピン揺動系となることが期待される。結果は,予測したように,600mJ/mol*K^2にいたる高γ値を示し,5.6Kに磁気秩序を示す比熱のピークが現れ,さらに,低温でC/Tにupーturnが見られる。これは,重い電子系として非常に興味ある兆候であり,今後,展開すべき重要課題の一つなった。第3の化合物UZn_<12>は本研究代表者奥田が東大物性研客員の際石川征靖所員との共同研究としてスタートし,その後,石川グループの努力によって単一相化に成功されたものである。やはり,900mJ/molK^2にいたる高γ値を示し,磁気秩序が0.4Kまで見えない点において重い電子系研究の重要試料の一つとなると考えられる。5f電子系に見られる重い電子物性の解明を目指し,ウランを含む新しい三元化合物を探索するとともに,それらの磁化,電気抵抗,比熱の測定を行った。物質探索に当たっては,ウラン原子の環境効果を重視し,ウランを頂点とし底辺をTーX,T=鉄族元素,X=IIIーV族元素,とする三角相図において底辺TーXに近く,且つ,Xに近い部分を新物質探索領域と定めた.物質合成にはア-ク溶解炉を使用,物質相の同定に際してはSEMによる組織観察とEPMAによる原子比の定量分析を行った.結晶構造の同定はX線粉末回折パタ-ンの測定とRietvelt解析によった.その結果,一つの新しい化合物系UTGa_5,T=Fe,Co,Ni,を得た。結晶構造は空間群P4/mmmの正方晶に属し,格子定数は,それぞれ,a=4.21Å,c=6.80Åである.T原子層とUーGa(1)層の間にGa(2)層が挿入されたHoCoGa_5型構造をとることが解った.磁化率の温度依存性ついては,T=Fe,Niは高温域では局在型キュリ-ワイス則に従い,特に,UNiGa_5は84Kに反強液性秩序を表すピ-クを示す.これらに対し,UCoGa_5の磁化率は殆ど温度に依存せず,むしろ温度下降に伴って僅かに減少し,遍歴的であることがわかる.低温の電子比熱係数γはT=Fe,Co,Niに対し,それぞれ,42,6.9,30mJ/K^2・molと求められ,UCoGa_5のf電子は遍歴,バンドとなっていると考えられる.電気抵抗の温度依存性は金属的で,UNiGa_5はT^N以下で磁気秩序を反映し急激に減少する.今後,この化合物系においては,UNi_<1ーx>CoXGa_5を作成し5f電子の遍歴から極在型にいたる過程を追跡するとともに,この系の単結晶化を行い物性を精密化する.さらに,新物質の探索と物性評価を行う.本研究は,高γ値をもつ新物質を探索することを目的とする。この際,探索の指針としfー原子間の距離とfー原子の環境効果に注目し,狙いを定め合成と分析を行ってきた。本年度は効率よく,計5つの化合物をあつかったが,結果として,物性的に興味ある3つの物質を開発することが出来た。すなわちEr_2Fe_3Si_5,Er_2Fe_4Si_9,UZn_<12>である。第1の化合物Er_2Fe_3Si_5は2.8Kにincomensurate,2.4Kにcomensurate磁気相転移をもつ反強磁性体であるが,さらに低温の0.93Kで超伝導状態に転移することを発見した。
KAKENHI-PROJECT-03452045
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03452045
新物質探索による5f電子系化合物の物性研究
磁気秩序の低温側に超伝導転移を示す物質として,これまで知られている4物質:Y_9Co_7(T_N=5K,Tc=1.5K),URu_2Si_2(T_n=17.5K,Tc=1.1K),UPd_2Al_3(T_n=14K,Tc=2K),UNi_2Al_3(T_n=4.6K,Tc=1K)に加えて,今回,の我々の発見したEr_2Fe_3Si_5は第5番目となる。今後,この物質の超伝導と磁気秩序の共存状態の解明,さらに,R_2T_3S_<15>相の系統的な物質合成とそれらの磁性・超伝導研究の展開が重要課題として浮上してきた。第2のEr_2Fe_4Si_9は、構造的には希土類イオンが平面三角格子を形成しそれが面に垂直方向に積層した層状構造をとっているため,スピン揺動系となることが期待される。結果は,予測したように,600mJ/mol*K^2にいたる高γ値を示し,5.6Kに磁気秩序を示す比熱のピークが現れ,さらに,低温でC/Tにupーturnが見られる。これは,重い電子系として非常に興味ある兆候であり,今後,展開すべき重要課題の一つなった。第3の化合物UZn_<12>は本研究代表者奥田が東大物性研客員の際石川征靖所員との共同研究としてスタートし,その後,石川グループの努力によって単一相化に成功されたものである。やはり,900mJ/molK^2にいたる高γ値を示し,磁気秩序が0.4Kまで見えない点において重い電子系研究の重要試料の一つとなると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-03452045
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熱核とリーマン多様体の収束
まずウェイト付きコンパクトリーマン多様体の間の「スペクトル距離」をその熱核に注目して新しい導入し、与えられたウェイト付きコンパクトリーマン多様体の族が、スペクトル距離に関して、全有界となるための緩やかで自然な条件を与えた。さらにその極限として一般に連続な推移密度関数(熱核)をもつ正則ディリクレ空間が現れることを示した。-(1)リッチ曲率が一様に下から押さえられた族;(2)正の山辺不変量をもつリーマン多様体の共形類;(3)有界な平均曲率をもつ部分多様体の族;(4)与えられた二つのリーマン多様体を底とファイバーにもつリーマン沈め込みでファイバーがすべて全測地的であるものの族、など。(1)については、極限に現れる正則ディリクレ空間は、強局所型、つまり拡散型であることを示し、さらに熱核の漸近挙動を調べた。(2)のクラスでは、所謂“bubbling-out"現象に対応する典型的例を構成した。このことは、微分方程式,変分問題二関する解析学の立場から,一つの多様体と測度を固定して研究されてきたデリィクレ形式の収束理論(ガマン収束、レゾルベント収束の理論)では、捕らえられないものであり、スペクトル距離収束のひとつの特徴,応用の可能性を示唆している。(3)のクラスでも同様の結果を示した。これに関連して,位相的に複雑になっていくスペクトル距離収束例を構成した。それから(4)のクラスは、接続の理論・群作用の理論と密接に関係しているが、これを含めて、一般に極限に現れるディリクレ空間の解析は今後の課題である。とくに(1)のクラスのもっと精緻な解析を実行することによって、リーマン多様体の収束理論とリッチ曲率に関する基本的問題の解決に貢献できることを期待している。まずウェイト付きコンパクトリーマン多様体の間の「スペクトル距離」をその熱核に注目して新しい導入し、与えられたウェイト付きコンパクトリーマン多様体の族が、スペクトル距離に関して、全有界となるための緩やかで自然な条件を与えた。さらにその極限として一般に連続な推移密度関数(熱核)をもつ正則ディリクレ空間が現れることを示した。-(1)リッチ曲率が一様に下から押さえられた族;(2)正の山辺不変量をもつリーマン多様体の共形類;(3)有界な平均曲率をもつ部分多様体の族;(4)与えられた二つのリーマン多様体を底とファイバーにもつリーマン沈め込みでファイバーがすべて全測地的であるものの族、など。(1)については、極限に現れる正則ディリクレ空間は、強局所型、つまり拡散型であることを示し、さらに熱核の漸近挙動を調べた。(2)のクラスでは、所謂“bubbling-out"現象に対応する典型的例を構成した。このことは、微分方程式,変分問題二関する解析学の立場から,一つの多様体と測度を固定して研究されてきたデリィクレ形式の収束理論(ガマン収束、レゾルベント収束の理論)では、捕らえられないものであり、スペクトル距離収束のひとつの特徴,応用の可能性を示唆している。(3)のクラスでも同様の結果を示した。これに関連して,位相的に複雑になっていくスペクトル距離収束例を構成した。それから(4)のクラスは、接続の理論・群作用の理論と密接に関係しているが、これを含めて、一般に極限に現れるディリクレ空間の解析は今後の課題である。とくに(1)のクラスのもっと精緻な解析を実行することによって、リーマン多様体の収束理論とリッチ曲率に関する基本的問題の解決に貢献できることを期待している。
KAKENHI-PROJECT-06640134
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06640134
2型糖尿病疾患感受性遺伝子CDKAL1の脂肪細分化・脂肪蓄積における役割の解明
日本人のゲノムワイド関連解析(GWAS)における2型糖尿病疾患感受性遺伝子として、我々はCDKL1を含む複数の遺伝子を同定した(Nat Genet 2010 Oct;42(10):864-8, Nat Genet 2008 Sep;40(9):1092-7.1098-1102)。CDKL1は欧米人においても2型糖尿病の疾患遺伝子として同定され、インスリン分泌に加えてインスリン抵抗性に関連することが報告されている(Diabetes 2008 Apr;57(4):1093-100)。我々のPreliminaryな検討により、CDKAL1を脂肪細胞に過剰発現させると脂肪細胞分化・脂肪蓄積が著明に抑制される事を見出した。一方、CDKAL1をsiRNAを用いてノックダウンすると、脂肪細胞分化が促進され、脂肪細胞の制御因子の変化を検討した所、PPARγやC/EBPαなどのマスターレギュレーターおよび、その下流で糖脂質代謝にかかわる標的遺伝子の著明な発現抑制が認められた。その抑制はPPARγの強制発現によりレスキューされることから、次にPPARγを制御する経路への作用を検討したところ、PPARγと脂肪細胞分化に抑制性に作用するWnt経路が、分化の早期の段階から(12時間)活性化を受けていることが明らかとなった。また、デリーション作成や点変異型Cdkal1による解析では、ドメインN末側に存在する鉄硫黄クラスターが、脂肪細胞分化抑制作用に必須であることが示された。当初認められたCdkal1による脂肪細胞分化の抑制作用について、各種分化制御因子への作用の検討により、Wnt経路へ作用している可能性が示唆された。そのほかのアプローチ(細胞内局在、改変動物のコンストラクト作成、PPARγのリン酸化への影響など)についても、現在当初の計画に従い、Cdkal1の脂肪細胞における役割について検討を進めている。本研究により明らかにされたCdkal1による脂肪細胞分化の抑制作用および、Wnt経路への作用について、その経路のどのステップで作用が認められるか同定を試みる。その他のアプローチ(細胞内局在、改変動物のコンストラクト作成、PPARγのリン酸化への影響など)についても、現在当初の計画に従い、Cdkal1の脂肪細胞における役割について検討を進める。本計画は、研究代表者が新学術研究(計画)「新規糖尿病感受性遺伝子による脂肪蓄積制御機構の解明とエピゲノムの意義」の代表者になることにともない、新学術研究の重複制限に該当するため、廃止になるが、研究内容は、計画研究領域の一部として継続する。日本人のゲノムワイド関連解析(GWAS)における2型糖尿病疾患感受性遺伝子として、我々はCDKL1を含む複数の遺伝子を同定した(Nat Genet 2010 Oct;42(10):864-8, Nat Genet 2008 Sep;40(9):1092-7.1098-1102)。CDKL1は欧米人においても2型糖尿病の疾患遺伝子として同定され、インスリン分泌に加えてインスリン抵抗性に関連することが報告されている(Diabetes 2008 Apr;57(4):1093-100)。我々のPreliminaryな検討により、CDKAL1を脂肪細胞に過剰発現させると脂肪細胞分化・脂肪蓄積が著明に抑制される事を見出した。一方、CDKAL1をsiRNAを用いてノックダウンすると、脂肪細胞分化が促進され、脂肪細胞の制御因子の変化を検討した所、PPARγやC/EBPαなどのマスターレギュレーターおよび、その下流で糖脂質代謝にかかわる標的遺伝子の著明な発現抑制が認められた。その抑制はPPARγの強制発現によりレスキューされることから、次にPPARγを制御する経路への作用を検討したところ、PPARγと脂肪細胞分化に抑制性に作用するWnt経路が、分化の早期の段階から(12時間)活性化を受けていることが明らかとなった。また、デリーション作成や点変異型Cdkal1による解析では、ドメインN末側に存在する鉄硫黄クラスターが、脂肪細胞分化抑制作用に必須であることが示された。当初認められたCdkal1による脂肪細胞分化の抑制作用について、各種分化制御因子への作用の検討により、Wnt経路へ作用している可能性が示唆された。そのほかのアプローチ(細胞内局在、改変動物のコンストラクト作成、PPARγのリン酸化への影響など)についても、現在当初の計画に従い、Cdkal1の脂肪細胞における役割について検討を進めている。本研究により明らかにされたCdkal1による脂肪細胞分化の抑制作用および、Wnt経路への作用について、その経路のどのステップで作用が認められるか同定を試みる。その他のアプローチ(細胞内局在、改変動物のコンストラクト作成、PPARγのリン酸化への影響など)についても、現在当初の計画に従い、Cdkal1の脂肪細胞における役割について検討を進める。本計画は、研究代表者が新学術研究(計画)「新規糖尿病感受性遺伝子による脂肪蓄積制御機構の解明とエピゲノムの意義」の代表者になることにともない、新学術研究の重複制限に該当するため、廃止になるが、研究内容は、計画研究領域の一部として継続する。
KAKENHI-PUBLICLY-23126506
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-23126506
膀胱癌発生頻度における男性優位性に関する研究
実験1:下垂体一睾丸系におけるテストステロン制御への影響を検討した。LH・RH analogue投与にて、血清中LH,FSHおよびテストステロンは投与開始1週までは上昇し、その後、テストステロンは除睾状態まで低下した。また、この蛍光にBBNは何ら影響を与えなかった。結果:テストステロンの抑制によりBBN発癌が抑制されたが、その抑制方法により発癌の抑制状態が異なっていた。即ち、LH・RH analogueを発癌のpromotion期および全期間にわたって投与した群の発癌抑制が最も強力であった。このことは単にテストステロンの血中濃度の低下のみが発癌抑制いに関与しているのではなく、広く視床下部-下垂体-睾丸系の男性ホルモン抑制系の関与が示唆された。これはLH・RH analogueの発癌抑制における直接効果の検討とともに今後、十分検討すべき問題であると考えられた。実験1:下垂体一睾丸系におけるテストステロン制御への影響を検討した。LH・RH analogue投与にて、血清中LH,FSHおよびテストステロンは投与開始1週までは上昇し、その後、テストステロンは除睾状態まで低下した。また、この蛍光にBBNは何ら影響を与えなかった。結果:テストステロンの抑制によりBBN発癌が抑制されたが、その抑制方法により発癌の抑制状態が異なっていた。即ち、LH・RH analogueを発癌のpromotion期および全期間にわたって投与した群の発癌抑制が最も強力であった。このことは単にテストステロンの血中濃度の低下のみが発癌抑制いに関与しているのではなく、広く視床下部-下垂体-睾丸系の男性ホルモン抑制系の関与が示唆された。これはLH・RH analogueの発癌抑制における直接効果の検討とともに今後、十分検討すべき問題であると考えられた。実験第1段階として0.05%BBNの投与時期を6週間とし, LH・RH analogue(1mg/kg, depot)の投与はBBNの投与開始時期と同時とした.実験群は(1)age mutched-control(2)BBN投与(3)LH・RH投与(4)LH・RH+BBN投与(5)を去勢(除睾丸術)とした. LH・RH analogueの投与にてラット,テストステロンの値は,第1日目には正常値の56と上昇したが1週目以後は去勢値となった. LHおよびFSHも同様の変化を示した. (第75回日本泌尿器科学会総会において発表)次に,この条件下での腫瘍病変の発現頻度を比較した. BBN単独投与群では,諸家の報告と同様の発癌パターンが観察されたが, BBN+LH・RH analogue投与群では, 8週時点での内眼的病変数,および乳頭腫,癌,上皮内癌の発生頻度がBBN単独投与群に比して高かった.その後, 20週, 26週では癌および上皮内癌の頻度は逆に低値となった.このことは, LH・RH analogueの投与時期に問題があったと考えられた.即ち, LH・RH analogue投与直後より約1週間の間は, testosterone値は増加し,このことがBBN発癌のinitiationにむしろ促進的に作用し,その後のcastration phaseは発癌のpromotion期と一致し,この時点でtestosterone不在が発癌に関して抑制的に作用したものと考えることも可能である.現在,この点を明確にするための実験が進行中である.BBN投与による膀胱癌発癌の各時期(initiaion,promotion)にLH・RH analogueを投与し、腫瘍の発生頻度、数及び大きさを拡大鏡下に観察したのち、H・E染色標本を作成し、顕微鏡下に腫瘍の組織学的検討を行った。1.方法投与したBBNの量は0.05%(水道水)とし、LH・RHanalogueは4週毎にdopot typeを1mg/kg体重皮下注した。実験群は、1群:BBN単独投与(n=45)、2群:BBN投与に加え、BBN投与開始2週前と開始2週後の2回LH・RHanalogueを投与した(n=25)、3群:BBN投与6週後より4週毎LH・RHanalogueを22週まで投与した(n=25)、4群:BBN投与開始2週前より開始後22週まで4週毎にLH・RH analogueを加えた(n=24)、5群:BBN投与開始1週前に両側睾丸を摘除した(n=24)。2.結果テストステロンが抑制されることにより、(1)BBN膀胱発癌は抑制された。(2)両側除睾術を受けた群に比較して、LH・RHanalogueを投与した群の方が発癌の抑制は強度であった。(3)LH・RHanalogueをpromotion期(第3群)または全期間(第4群)投与した群での発癌の抑制の程度はintiaion期(第2群)に投与した群に比して強度であった。以上のことから少なくとも雄性RatにおけるBBN膀胱発癌においてはテストステロンが関与すること(LH・RHanalogue投与によりテストステロンが去勢レベルまで低下することは前年度の研究で確認した。)また、特にその関与は発癌のpromotionの時期と深い関係があることが判明した。またLH・RHanalogue投与群に除睾術群より強い発癌抑制効果が認められたことより、膀胱癌発癌と視床下部-下垂体-睾丸における男性ホルモン制御系の関与、あるいはLH・RHanalogueの発癌抑制における直接効果の検討をさらに行う必要性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-62570718
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62570718
レチノイン酸耐性獲得白血病細胞のプロティンホスファターゼ解析と分化再誘導
私どもは、HL-60細胞のレチノイン酸による顆粒球系細胞分化にはSer/Thrホスファターゼ2A型酵素のダウンレギュレーションが関与することを報告した。分化能を有するヒト白血病細胞株HL-60とレチノイド分化耐性変異株HL-60RA^rを用い、分化能欠如とSer/Thrホスファターゼの相互関係、及びHL-60RA^rを用いてレチノイン酸による分化能の再誘導を促進する薬物を検討した。【結果】HL-60RA^r細胞の細胞質におけるSer/Thrホスファターゼ活性はHL-60細胞の約50%であり、オカダ酸による抑制試験により2A型ホスファターゼ活性が減少していることによることが明らかとなった。Western Blot法により、HL-60及びHL-60RA^r細胞の1型ホスファターゼの蛋白量は同程度であるが、HL-60RA^rの2A型ホスファターゼ蛋白はHL-60細胞より減少していることが確認された。HL-60細胞と異なり分化耐性株HL-60RA^rは2A型酵素が細胞質に少ないためレチノイン酸を加えても2A型ホスファターゼのダウンレギュレーションは観察されなかった。1型/2A型ホスファターゼ阻害剤カリクリンAやオカダ酸がレチノイド耐性株HL-60RA^rのレチノイン酸による分化誘導抵抗性を部分的に解除することが観察された。さらにHL-60RA^rに活性型ビタミンD_3を添加すると親株HL-60同様単球系細胞に分化誘導され、1型ホスファターゼはトランスロケーションすることが明らかとなった。【考察】Ser/Thrホスファターゼ1型及び2A型は骨髄系血球細胞の分化・増殖の制御機構及び分化誘導耐性に深く関与していると考えられる。Ser/Thrホスファターゼ系と血球細胞の分化系列の関連性の詳細については更に継続研究が必要である。私どもは、HL-60細胞のレチノイン酸による顆粒球系細胞分化にはSer/Thrホスファターゼ2A型酵素のダウンレギュレーションが関与することを報告した。分化能を有するヒト白血病細胞株HL-60とレチノイド分化耐性変異株HL-60RA^rを用い、分化能欠如とSer/Thrホスファターゼの相互関係、及びHL-60RA^rを用いてレチノイン酸による分化能の再誘導を促進する薬物を検討した。【結果】HL-60RA^r細胞の細胞質におけるSer/Thrホスファターゼ活性はHL-60細胞の約50%であり、オカダ酸による抑制試験により2A型ホスファターゼ活性が減少していることによることが明らかとなった。Western Blot法により、HL-60及びHL-60RA^r細胞の1型ホスファターゼの蛋白量は同程度であるが、HL-60RA^rの2A型ホスファターゼ蛋白はHL-60細胞より減少していることが確認された。HL-60細胞と異なり分化耐性株HL-60RA^rは2A型酵素が細胞質に少ないためレチノイン酸を加えても2A型ホスファターゼのダウンレギュレーションは観察されなかった。1型/2A型ホスファターゼ阻害剤カリクリンAやオカダ酸がレチノイド耐性株HL-60RA^rのレチノイン酸による分化誘導抵抗性を部分的に解除することが観察された。さらにHL-60RA^rに活性型ビタミンD_3を添加すると親株HL-60同様単球系細胞に分化誘導され、1型ホスファターゼはトランスロケーションすることが明らかとなった。【考察】Ser/Thrホスファターゼ1型及び2A型は骨髄系血球細胞の分化・増殖の制御機構及び分化誘導耐性に深く関与していると考えられる。Ser/Thrホスファターゼ系と血球細胞の分化系列の関連性の詳細については更に継続研究が必要である。
KAKENHI-PROJECT-07671194
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07671194
自己組織再生能を有するナノハニカムシートによる心筋再生治療法の確立
直径数マイクロメーターサイズの微細孔が、規則正しくパターン化された基材表面上で細胞を培養すると、細胞の増殖や形態、機能に影響を与えることが知られている。両親媒性高分子溶液を高湿度下で基板上にキャストすることで、規則的なハニカム(蜂の巣)構造を有するパターン化フィルムを作製することができる。本研究では、生分解性材料からなるハニカム構造膜上で心筋再生の細胞源として用いられている細胞を培養し、心筋再生用スキャホールドとしての可能性を検討した。ラット筋芽細胞株L6では、無孔平膜とハニカム構造膜上では、細胞の形態に差は見られなかった。細胞増殖率においてハニカム構造膜は平膜と比較して有意な増加を認めた。また、細胞と基材との接着に関するタンパク質であるintegrinベータ1の遺伝子の転写量を測定した結果、増加する傾向が認められた。脂肪間葉系幹細胞についても、細胞増殖率においてハニカム構造膜は平膜と比較して有意な増加を認めた。ラット初代筋芽細胞をラミニンコートを施したハニカム構造膜で培養した場合、無処理の膜と比較して筋芽細胞の増殖が促進された。ハニカム構造膜を引き伸ばして伸展させた膜上で初代心筋細胞を培養し、SEM・免疫染色による形態観察を行った。心筋細胞の配向がハニカム膜の伸展方向と一致する様子が観察された。さらに、ハニカム構造膜をラット背部皮下に移植した結果、ハニカム構造膜により誘導された再細胞化が観察された。以上の結果から、筋芽細胞株L6、骨髄間葉系幹細胞、脂肪間葉系幹細胞、筋芽細胞などの増殖性が高い細胞種において、ハニカム構造膜は増殖を促進する効果をあることが示された。伸展させたハニカム構造膜上では、心筋細胞の配向がハニカム膜の伸展方向と一致することから、基材の構造を制御することにより、細胞の形態や配向を制御することが示された。直径数マイクロメーターサイズの微細孔が、規則正しくパターン化された基材表面上で細胞を培養すると、細胞の増殖や形態、機能に影響を与えることが知られている。両親媒性高分子溶液を高湿度下で基板上にキャストすることで、規則的なハニカム(蜂の巣)構造を有するパターン化フィルムを作製することができる。本研究では、生分解性材料からなるハニカム構造膜上で心筋再生の細胞源として用いられている細胞を培養し、心筋再生用スキャホールドとしての可能性を検討した。ラット筋芽細胞株L6では、無孔平膜とハニカム構造膜上では、細胞の形態に差は見られなかった。細胞増殖率においてハニカム構造膜は平膜と比較して有意な増加を認めた。また、細胞と基材との接着に関するタンパク質であるintegrinベータ1の遺伝子の転写量を測定した結果、増加する傾向が認められた。脂肪間葉系幹細胞についても、細胞増殖率においてハニカム構造膜は平膜と比較して有意な増加を認めた。ラット初代筋芽細胞をラミニンコートを施したハニカム構造膜で培養した場合、無処理の膜と比較して筋芽細胞の増殖が促進された。ハニカム構造膜を引き伸ばして伸展させた膜上で初代心筋細胞を培養し、SEM・免疫染色による形態観察を行った。心筋細胞の配向がハニカム膜の伸展方向と一致する様子が観察された。さらに、ハニカム構造膜をラット背部皮下に移植した結果、ハニカム構造膜により誘導された再細胞化が観察された。以上の結果から、筋芽細胞株L6、骨髄間葉系幹細胞、脂肪間葉系幹細胞、筋芽細胞などの増殖性が高い細胞種において、ハニカム構造膜は増殖を促進する効果をあることが示された。伸展させたハニカム構造膜上では、心筋細胞の配向がハニカム膜の伸展方向と一致することから、基材の構造を制御することにより、細胞の形態や配向を制御することが示された。最近、我々は、生分解性多孔体足場(スキャホールド)に、細胞を播種せず、細胞外基質のみをseedingし、移植することにより、再細胞化が起こり、最終的には自己組織化し、その場所で組織再生による治癒が起こる可能性を発見した。今回、我々は組織再構築法の開発と移植法の開発、ナノ構造を有する自己支持性パターン化フィルムを導入技術とし、以下の研究課題を検討する。まず骨格筋等の細胞培養に適したハニカム構造を有する自己支持性パターン化フィルムを作成し、そのハニカム上において骨格筋芽細胞を培養し、フィルム両面における細胞の挙動を詳細に観察しながら培養条件などを中心に検討を行った。血管内皮前駆細胞、及び血管新生因子をハイカムの接着面の構成細胞として用い、グラフト内の血管構築を増強さ、血管構築を増強させることにより、vitroでの心筋片の酸素透過性を向上させ、よりvitroにおいて重厚な高機能化心筋グラフトを作成した。続いて作製した骨格筋グラフトを心筋梗塞モデルラット、または大動物に移植した。心筋グラフトとレシピエント心筋との各種接着蛋白の発現、vivoにおける心筋グラフトのviabilityの評価、レシピエント心との電気的結合、耐久性、機能改善の評価を行った。研究開発の成果については、研究当初に予定していた(1)作成した三次元心筋様組織が移植に適した自己拍動性・同期収縮性を有すること。(2)人への臨床応用において必要とされる、(A)三次元心筋様組織のサイズ(5×5cm程度)および(B)細胞の生着数(1.0×106個以上)の予定は達成された。
KAKENHI-PROJECT-16209042
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16209042
自己組織再生能を有するナノハニカムシートによる心筋再生治療法の確立
細胞を効率的にデリバリーできるため播種細胞数を縮小でき、通常困難とされる細胞ソースの増幅過程における作業の大幅な削減が可能となる。さらに、今回の成果をさらに前進させることにより自己拍動性・同期収縮性を有するグラフトすなわち`高機能化心筋グラフト'が実用化されれば、不整脈を生じる恐れの少ないより効果的な治療法を提供することができる。以上より、本成果は新しい心臓治療方法の実現への足がかりとなることが期待される。最近、我々は、生分解性多孔体足場(スキャホールド)に、細胞を播種せず、細胞外基質のみをseedingし、移植することにより、再細胞化が起こり、最終的には自己組織化し、その場所で組織再生による治癒が起こる可能性を発見した。今回、我々は組織再構築法の開発と移植法の開発、ナノ構造を有する自己支持性パターン化フィルムを導入技術とし、以下の研究課題を検討する。まず骨格筋等の細胞培養に適したハニカム構造を有する自己支持性パターン化フィルムを作成し、そのハニカム上において骨格筋芽細胞を培養し、フィルム両面における細胞の挙動を詳細に観察しながら培養条件などを中心に検討を行った。血管内皮前駆細胞、及び血管新生因子をハニカムの接着面の構成細胞として用い、グラフト内の血管構築を増強、血管構築を増強させることにより、vitroでの心筋片の酸素透過性を向上させ、よりvitroにおいて重厚な高機能化心筋グラフトを作成した。続いて作製した骨格筋グラフトを心筋梗塞モデルラット、または大動物に移植した。心筋グラフトとレシピエント心筋との各種接着蛋白の発現、vivoにおける心筋グラフトのviabilityの評価、レシピエント心との電気的結合、耐久性、機能改善の評価を行った。移植した心筋グラフトは移植後ほぼ1週間で消失することが判明した。この結果、さらに心筋グラフトの生着を促すため十分な血流確保が必要であるため、大網を用いて血流確保を行っている。また、レシピエント側の電気信号と心筋グラフトとの電気的結合は見られず、さらには、心筋グラフト内での電気的結合は見られなかった。このため、現在、connexin43を用いて心筋グラフト内での電気的結合がみられるよう試みている。しかし、レシピエント側の心機能は、梗塞後に比し、有意に改善した。このことは、骨格筋芽細胞から分泌されるHGF, FGFの効果であろうと考えられた。今後、connexin43を遺伝子導入した十分な数の骨格筋芽細胞による心筋グラフトを作成し、これが長期間、生存、生着することで、さらなる心機能の改善が予測される。
KAKENHI-PROJECT-16209042
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レ-ザ-アブレ-ション超微粒子のレ-ザ-プラズマ軟X線分光
レ-ザ-プラズマ軟X線吸収分光法を時間分解測定法として新たに開発し、この手法の有効性を示した後、IV族固体のシリコン(Si),ゲルマニウム(Ge)及びカ-ボン(C)のレ-ザ-アブレ-ションによって生成される超微粒子の形態、電子状態について調べることが、本研究の主目的である。本年度は、新しく設計,製作したレ-ザ-プラズマ軟X線分光装置について、ナノ秒パルス軟X線の発生と検出のための基礎実験を行い、次に、その分光測定を試みた。具体的には、種々のレ-ザ-タ-ゲットを使用してX線源のテストを行い、100eVから1keVまでのパルスX線に対する斜入射X線光学系(トロイダルミラ-,ポリクロメ-タ-)と検出器系の調整により、発生したパルス軟X線のスペクトルを調べ、基礎デ-タの集積を行った。装置は、20J出力のNd:YAG/ガラスレ-ザ-(パルス幅:10ns)と真空チェンバ-とその中のX線光学系・検出器系等からできている。レ-ザ-基本波(1.06μm)を7Jの第2高調波に変換し、真空中のタ-ゲット(Al,Ti,Fe,Cu,Mo,Au)に照射し、発生プラズマから放出されたパルスX線をトロイダルミラ-で集光した。その後にポリクロメ-タ-で分光し、1024チャネルのマイクロチャンネルプレ-トで検出する。本実験から、100eVから1kaVまでの軟X線分光単発測定が可能であることが判明した。更に高エネルギ-側の測定も試み、X線の発生している所まで検証することが出来た。レ-ザ-プラズマ軟X線吸収分光法を時間分解測定法として新たに開発し、この手法の有効性を示した後、IV族固体のシリコン(Si),ゲルマニウム(Ge)及びカ-ボン(C)のレ-ザ-アブレ-ションによって生成される超微粒子の形態、電子状態について調べることが、本研究の主目的である。本年度は、新しく設計,製作したレ-ザ-プラズマ軟X線分光装置について、ナノ秒パルス軟X線の発生と検出のための基礎実験を行い、次に、その分光測定を試みた。具体的には、種々のレ-ザ-タ-ゲットを使用してX線源のテストを行い、100eVから1keVまでのパルスX線に対する斜入射X線光学系(トロイダルミラ-,ポリクロメ-タ-)と検出器系の調整により、発生したパルス軟X線のスペクトルを調べ、基礎デ-タの集積を行った。装置は、20J出力のNd:YAG/ガラスレ-ザ-(パルス幅:10ns)と真空チェンバ-とその中のX線光学系・検出器系等からできている。レ-ザ-基本波(1.06μm)を7Jの第2高調波に変換し、真空中のタ-ゲット(Al,Ti,Fe,Cu,Mo,Au)に照射し、発生プラズマから放出されたパルスX線をトロイダルミラ-で集光した。その後にポリクロメ-タ-で分光し、1024チャネルのマイクロチャンネルプレ-トで検出する。本実験から、100eVから1kaVまでの軟X線分光単発測定が可能であることが判明した。更に高エネルギ-側の測定も試み、X線の発生している所まで検証することが出来た。
KAKENHI-PROJECT-03246206
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安定化ヘリカルペプチドを用いた標的タンパク質分解誘導剤の創製
低分子医薬品と抗体医薬の利点を併せ持つペプチド医薬品は新たな創薬シーズとして注目を集めている。本研究では、ペプチドのヘリカル二次構造制御に関する研究、核内受容体-コアクチベータ結合阻害ペプチドに関する研究、プロテインノックダウン法による標的タンパク質分解誘導剤に関する研究、を併せることで、「安定化ヘリカルペプチドを用いた標的タンパク質の分解誘導剤の創製」を行うことを目的とした。研究期間内に、核内受容体を標的とした、転写活性化阻害ペプチド、および分解誘導ペプチドの開発に成功した。また、これらのペプチドを細胞内へ効率的に導入するための細胞膜高透過性ペプチドの開発にも成功した。【目的】標的タンパク質の表面に結合できるペプチドをリガンドとして用いた分解誘導剤の開発を行うことを目的とした。モデル受容体として、ユビキチン-プロテアソーム系で分解できるエストロゲン受容体(ER)を標的とした分解誘導ペプチドの開発を行った。すなわち、cIAPリガンド(ベスタチン:BS)とER阻害ペプチド(PERM-1)をスペーサーで繋いだ分子を合成し、ERの分解を評価した。【結果・考察】BS-PERM-1のER分解能を評価した結果、BS-PERM-1はERαを分解していないこと、さらに、PERM-1、BS-PERM-1ともに細胞死を誘導していないことが明らかとなった。その原因として、これらのペプチドが細胞膜を通過していない可能性が考えられた。そこで、PERM-1の膜透過性を評価すること、さらに膜透過フラグメント(R7)を導入することで膜透過性を高めることを目的として、ペプチドFAM-PERM-1-R7を合成した。それらの膜透過能の評価を行った結果、FAM-PERM-1は10μMにおいても細胞膜を透過できないこと、一方でR7修飾したFAM-PERM-1-R7は0.1μMでも細胞内へ導入されることを明らかとした。現在、PERM-1-R7のER阻害活性評価、PERM-1-R7にBSを導入した分解誘導ペプチドを合成中である。【目的】標的タンパク質の表面に結合できるペプチドをリガンドとして用いた分解誘導剤の開発を行うことを目的とした。モデルタンパク質として、ユビキチン-プロテアソーム系で分解できるエストロゲン受容体(ER)を標的とした分解誘導ペプチドの開発を行った。すなわち、cIAPリガンド(MV1)とER阻害ペプチド(PERM3)、細胞膜透過ペプチド(R7)をスペーサーで繋いだ分子MV1-PERM3-R7を合成し、そのER分解能を評価した。【方法】ERに対して強い結合親和性を持つPERM3のC末端にR7を、N末端にPEGスペーサーを介してMV1を繋いだ分子(MV1-PERM3-R7)を合成した。ヒト乳癌細胞由来MCF-7を用いてMV1-PERM3-R7のER分解能をウェスタンブロッティングにより評価した。【結果・考察】ペプチドスクリーニングの結果、PERM3のN末端リジン(K)側鎖に一定の長さ以上のPEGスペーサーを介してMV1を導入したペプチドがER分解活性を持つことが明らかとなった。PEGスペーサーをアミドリンカーに置換したペプチドについても同等の活性を有していた。またこれらのペプチドは、ERと同じコアクチベータ(SRC-1)に作用するアンドロゲン受容体(AR)の分解も誘導できることが明らかとなった。今後は、他の核内受容体への展開を検討する。本年は、核内受容体であるエストロゲン受容体、アンドロゲン受容体の分解誘導ペプチドの開発に成功した。低分子医薬品と抗体医薬の利点を併せ持つペプチド医薬品は新たな創薬シーズとして注目を集めている。本研究では、ペプチドのヘリカル二次構造制御に関する研究、核内受容体-コアクチベータ結合阻害ペプチドに関する研究、プロテインノックダウン法による標的タンパク質分解誘導剤に関する研究、を併せることで、「安定化ヘリカルペプチドを用いた標的タンパク質の分解誘導剤の創製」を行うことを目的とした。研究期間内に、核内受容体を標的とした、転写活性化阻害ペプチド、および分解誘導ペプチドの開発に成功した。また、これらのペプチドを細胞内へ効率的に導入するための細胞膜高透過性ペプチドの開発にも成功した。核内転写活性化阻害能を示したペプチドPERM3-R7に、ユビキチンリガーゼリガンド(ベスタチン、BS)をコンジュゲートしたペプチドBS-PERM3-R7を設計、合成した。このペプチドは核内受容体(ER、AR、VDR)を分解誘導することを明らかとした。また、これらの活性ペプチドを細胞内へ効率的に導入するための細胞膜高透過性ペプチドの開発にも成功した。低分子医薬品と抗体医薬の利点を併せ持つペプチド医薬品は新たな創薬シーズとして注目を集めている。本研究では、ペプチドのヘリカル二次構造制御に関する研究、核内受容体-コアクチベータ結合阻害ペプチドに関する研究、プロテインノックダウン法による標的タンパク質分解誘導剤に関する研究、を併せることで、「安定化ヘリカルペプチドを用いた標的タンパク質の分解誘導剤の創製」を行うことを目的とした。本年度は、1NOTCHタンパク質を分解誘導できるペプチド、2Hisタグ融合タンパク質を分解誘導できるペプチドの開発を行なった。1に関しては、NOTCHに結合するコアクチベータの部分配列をテンプレートとして側鎖架橋によるヘリカル構造の安定化を行ったペプチドと、ユビキチンリガーゼに結合するMV1をコンジュゲートした分子MV1-PEPを設計-合成した。MOLT-4細胞を用いてタンパク質の分解をウェスタンブロットにより評価した結果、MV1-PEPは、NOTCH1を選択的に分解誘導することを明らかとした。
KAKENHI-PROJECT-26460169
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安定化ヘリカルペプチドを用いた標的タンパク質分解誘導剤の創製
2に関しては、ユビキチンリガーゼに結合するMV1、代表的な細胞膜透過ペプチドであるノナアルギニンR9、およびHisタグリガンドであるNiNTAをコンジュゲートした分子MV1-R9-NiNTAを設計-合成した。HT1080細胞にHisタグCRABP-IIタンパク質を安定発現させ、MV1-R9-NiNTAによるタンパク質の分解誘導を評価した結果、Hisタグタンパク質を効率的に分解誘導できることを明らかとした。本手法は、ユビキチン-プロテアソーム系で分解誘導できるタンパク質のスクリーニング、タンパク質の機能解析などに応用できる。低分子医薬品と抗体医薬の利点を併せ持つペプチド医薬品は新たな創薬シーズとして注目を集めている。本研究では、ペプチドのヘリカル二次構造制御に関する研究、核内受容体-コアクチベータ結合阻害ペプチドに関する研究、プロテインノックダウン法による標的タンパク質分解誘導剤に関する研究、を併せることで、「安定化ヘリカルペプチドを用いた標的タンパク質の分解誘導剤の創製」を行うことを目的とした。研究期間内に、核内受容体を標的とした、転写活性化阻害ペプチド、および分解誘導ペプチドの開発に成功した。また、これらのペプチドを細胞内へ効率的に導入するための細胞膜高透過性ペプチドの開発にも成功した。本年は、ペプチドの効率的合成法(マイクロ波を利用した迅速合成)の確立と細胞評価系の構築を行った。また、目的ペプチドを効率的に細胞内へと導入する手法を確立した。次年度は下記の3段階に分けて研究を遂行する。1.分解誘導活性を示したペプチドの構造最適化2.他の核内受容体への応用3.他の疾患関連タンパク質(Mdm2、Notchなど)への応用本研究では、細胞内へ目的のペプチドを効率的に輸送できる膜透過ペプチドの開発も同時に行なっている。次年度、この輸送キャリアとして機能を持つペプチドの開発を精緻におこない、これまでに開発した標的タンパク質分解誘導ペプチドの活性向上に繋げたいと考えている。創薬化学次年度以降は下記の4段階に分けて研究を遂行する。1.合成したペプチドのER転写活性化阻害能の評価(エストロゲン刺激によるpS2の発現上昇を指標にペプチドの阻害効果を評価)2.ウェスタンブロッティングによるER分解能の評価3.ペプチドの構造最適化4.他の疾患関連タンパク質(アンドロゲン受容体、ビタミンD受容体、Mdm2受容体など)への応用細胞評価のための消耗品購入を次年度に繰り越したため。当該研究テーマにおいて他の研究補助金も同時に使用していたため。エストロゲン受容体親和性測定キットの購入を次年度に繰り越したため。他の受容体に対する親和性測定キットの購入をおこなう。次年度は、活性ペプチドを細胞内へ効率的に輸送できるキャリアの開発と、それらを用いた高活性な標的タンパク質分解誘導ペプチドの開発を行う。助成金は、上記の研究を遂行するための消耗品として使用する予定である。親和性測定キットの購入を行う。
KAKENHI-PROJECT-26460169
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26460169
Z-ジエンを基質に用いる分子内ディールスーアルダー反応と天然物合成への応用
本申請者は、その反応性の低さから合成戦略に積極的に取り入れられることの少なかった(Z)-ジェンの潜在能力を有効利用し、高立体選択的な分子内ディールス-アルダー反応の達成を目的として研究を行った。標的化合物として、中性スフィンゴミエリナーゼを特異的に阻害するという興味深い報告が最近なされたマクアリミシンAを選んだ。立体化学を考慮してマクアリミシンAの逆合成解析を行うと、(E, E, Z)-トリエン誘導体からのエキソ環化付加、または(E, Z, E)-トリエン誘導体からのエンド環化付加の2つのルートが侯補に挙げられる。しかしながら、基質として前者を用いた場合には、立体化学の制御が困難であると思われた。一方、後者の環化付加反応においては、立体的な制約によりシス縮環のエンド型遷移状態しかとり得ない。しかも、アリル位の置換基の立体配置が大きく反応のπ-面選択性に関与することが期待される。したがって、立体選択的に分子内ディールス-アルダー反応を行うためには、アリル位に適切な立体化学を有する(E, Z, E)-トリエン誘導体が基質として適当であると考えた。まず、そのような(Z)-ジエンを有するモデル化合物を合成し、それを基質に用いて環化付加反応の検討を行った。その結果、マクアリミシンAのテトラヒドロインダン環部と同一の立体化学を有する環化付加体が単一の異性体として得られた。さらに、マクアリミシンAが有するD環を組み込んだ基質を合成し、同様にして分子内ディールス-アルダー反応を行ったところ、期待した通り、きわめて高い立体選択性を実現することができた。得られた環化付加体は、マクアリミシンAのすべての不斉中心を正しい立体化学にて有しており、全合成を行うにあたり重要な中間体となり得る。このように本研究によって、(Z)-ジエンを用いた分子内ディールス-アルダー反応の有用性を見出すことができた。本申請者は、その反応性の低さから合成戦略に積極的に取り入れられることの少なかった(Z)-ジエンの潜在能力を有効利用し、高立体選択的な分子内ディールス-アルダー反応の達成を目的として研究を行った。標的化合物として、中性スフィンゴミエリナーゼを特異的に阻害するという興味深い報告が最近なされたマクアリミシンAを選んだ。立体化学を考慮してマクアリミシンAの逆合成解析を行うと、(E,E,Z)-トリエン誘導体からのエキソ環化付加、または(E,Z,E)-トリエン誘導体からのエンド環化付加の2つのルートが候補に挙げられる。しかしながら、基質として(E,E,Z)-トリエン誘導体を用いた場合には、エンド付加とエキソ付加の制御が困難であると思われた。一方、(E,Z,E)-トリエン誘導体においては、立体的な制約によりシス縮環のエンド型遷移状態しかとり得ない。しかも、アリル位の置換基(例えば保護基を有する水酸基)の立体配置が大きくπ-面選択性に関与することが期待される。したがって、立体選択的に分子内ディールス-アルダー反応を行うためには、適切な立体化学を有する(E,Z,E)-トリエン誘導体が基質として適当であると考えた。平成13年度は、そのような(Z)-ジエン化合物を合成し、それを基質に用いて環化付加反応の検討を行った。すなわち、立体選択的なメチル基の1,4-付加反応、アルキン化、パラジウム(O)によるクロスカップリング、リンドラー還元などを経て望む立体化学を有する基質を合成し、分子内ディールス-アルダー反応を行ったところ、マクアリミシンAのテトラヒドロインダン環部と同一の立体化学を有する環化付加体が単一の異性体として得られた。期待した通り、きわめて高い立体選択性を実現することができた。本申請者は、その反応性の低さから合成戦略に積極的に取り入れられることの少なかった(Z)-ジェンの潜在能力を有効利用し、高立体選択的な分子内ディールス-アルダー反応の達成を目的として研究を行った。標的化合物として、中性スフィンゴミエリナーゼを特異的に阻害するという興味深い報告が最近なされたマクアリミシンAを選んだ。立体化学を考慮してマクアリミシンAの逆合成解析を行うと、(E, E, Z)-トリエン誘導体からのエキソ環化付加、または(E, Z, E)-トリエン誘導体からのエンド環化付加の2つのルートが侯補に挙げられる。しかしながら、基質として前者を用いた場合には、立体化学の制御が困難であると思われた。一方、後者の環化付加反応においては、立体的な制約によりシス縮環のエンド型遷移状態しかとり得ない。しかも、アリル位の置換基の立体配置が大きく反応のπ-面選択性に関与することが期待される。したがって、立体選択的に分子内ディールス-アルダー反応を行うためには、アリル位に適切な立体化学を有する(E, Z, E)-トリエン誘導体が基質として適当であると考えた。まず、そのような(Z)-ジエンを有するモデル化合物を合成し、それを基質に用いて環化付加反応の検討を行った。その結果、マクアリミシンAのテトラヒドロインダン環部と同一の立体化学を有する環化付加体が単一の異性体として得られた。さらに、マクアリミシンAが有するD環を組み込んだ基質を合成し、同様にして分子内ディールス-アルダー反応を行ったところ、期待した通り、きわめて高い立体選択性を実現することができた。
KAKENHI-PROJECT-13750803
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13750803
Z-ジエンを基質に用いる分子内ディールスーアルダー反応と天然物合成への応用
得られた環化付加体は、マクアリミシンAのすべての不斉中心を正しい立体化学にて有しており、全合成を行うにあたり重要な中間体となり得る。このように本研究によって、(Z)-ジエンを用いた分子内ディールス-アルダー反応の有用性を見出すことができた。
KAKENHI-PROJECT-13750803
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13750803
キネステティク概念を応用した体位変換技術の快適さ、およびリハビリテーション効果
ドイツにおいて看護実践に取り入れられているキネステティク概念を応用したケア技術を確実な技術とするために、研究代表者が昨年度に引き続きドイツでの研修に参加し、今年度は褥瘡予防に関する研修、患者が最も重篤な状況と考えられるICUでの看護実践の研修に参加した。それにより、キネステティク概念は、患者の力を引き出すための概念であることが再認識でき、まさに「看護」に応用すべき概念であることが学べた。また、それらの知識や技術をもとに、宮城県内で数回開催した研究会で臨床看護師と共に実際の患者へのケアへの応用を考えた。そして、次年度に入院施設における長期寝たきり患者に対してキネステティク概念を応用した体位変換技術を導入するために、1病院の看護師に対し、その概念の講義と演習を含んだ技術指導を行った。この病院では、看護師が積極的にこの体位変換技術を取り入れ、病棟全体の看護師に普及させるためにパネルを用いて患者への体位変換を工夫し、患者の可動域拡大につながったため、今後学会にて発表する予定である。また、第8回聖路加看護学会学術大会にて、「キネステティクの概念を応用した体位変換に関する考察」という演題名で口演発表を行い、今まで体位変換に取り入れられてきたボディメカニクスの原理に基づく体位変換との違いを主に、キネステティク概念を体位変換に取り入れたときのメリットについて発表し、キネステティク概念に関する意見交換を行った。ドイツにおいて看護実践に取り入れられているキネステティク概念を応用したケア技術を確実な技術とするために、研究代表者が昨年度に引き続きドイツでの研修に参加し、今年度は褥瘡予防に関する研修、患者が最も重篤な状況と考えられるICUでの看護実践の研修に参加した。それにより、キネステティク概念は、患者の力を引き出すための概念であることが再認識でき、まさに「看護」に応用すべき概念であることが学べた。また、それらの知識や技術をもとに、宮城県内で数回開催した研究会で臨床看護師と共に実際の患者へのケアへの応用を考えた。そして、次年度に入院施設における長期寝たきり患者に対してキネステティク概念を応用した体位変換技術を導入するために、1病院の看護師に対し、その概念の講義と演習を含んだ技術指導を行った。この病院では、看護師が積極的にこの体位変換技術を取り入れ、病棟全体の看護師に普及させるためにパネルを用いて患者への体位変換を工夫し、患者の可動域拡大につながったため、今後学会にて発表する予定である。また、第8回聖路加看護学会学術大会にて、「キネステティクの概念を応用した体位変換に関する考察」という演題名で口演発表を行い、今まで体位変換に取り入れられてきたボディメカニクスの原理に基づく体位変換との違いを主に、キネステティク概念を体位変換に取り入れたときのメリットについて発表し、キネステティク概念に関する意見交換を行った。
KAKENHI-PROJECT-15791272
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15791272
日本型POE(Post occupancy evaluation)手法の開発に関する研究
1.まず、文化ホールの事例として宮城県北部の「登米祝祭劇場」を対象に、音響調査や運営調査を含めた総合的な調査を実施した。その結果、(1)楽屋からステージまでの動線が分かりにくいこと、舞台袖が狭いことなどの使用上の問題が明らかになり、さらに、(2)バルコニーの下はよく聞こえないこと、客の入により、また楽器の種類により音響評価が異なること、などの音響計画上の問題が明らかになる一方で、(3)住民の多くを惹きつけ不思議な魅力をもつホールとして好意的に受け止められていることなどを知った。これらから総合的な評価手法の基礎的知見を得るとともに、その手法確立の必要性を再認識することになった。2.また、最終年度に当り、これまでの研究を総括する上での補助調査を、今日、社会問題の1つとなっている痴呆性高齢者の入所施設「仙台市茂庭台豊齢ホーム(老人保健施設痴呆専門棟)」「仙台基督共育児院シオンの園(特別養護老人ホーム)」で行った。調査員が介護人になりすまして痴呆性高齢者の一人ひとりの行動を観察した。その結果、(1)居室と共有スペース(食堂など)との物理的な位置関係や見通しの得られやすさなどの空間相互のつながりが、痴呆性高齢者の行動に著しく影響を及ぼすこと。(2)これまでの計画論では見過ごしてきた、アルツハイマー型痴呆と脳血管性痴呆の疾患による行動特性の差異を予感し得る観察結果が得られたこと。(3)施設計画においても家庭的な特質を保持すべきこと、物理的環境が痴呆の進行を抑止するなど治癒的手段にとって有効であることを前提に、痴呆性高齢者の諸特性に十分配慮した施設計画手法の構築が急務であることなど評価手法確立の基礎的知見を得た。1.まず、文化ホールの事例として宮城県北部の「登米祝祭劇場」を対象に、音響調査や運営調査を含めた総合的な調査を実施した。その結果、(1)楽屋からステージまでの動線が分かりにくいこと、舞台袖が狭いことなどの使用上の問題が明らかになり、さらに、(2)バルコニーの下はよく聞こえないこと、客の入により、また楽器の種類により音響評価が異なること、などの音響計画上の問題が明らかになる一方で、(3)住民の多くを惹きつけ不思議な魅力をもつホールとして好意的に受け止められていることなどを知った。これらから総合的な評価手法の基礎的知見を得るとともに、その手法確立の必要性を再認識することになった。2.また、最終年度に当り、これまでの研究を総括する上での補助調査を、今日、社会問題の1つとなっている痴呆性高齢者の入所施設「仙台市茂庭台豊齢ホーム(老人保健施設痴呆専門棟)」「仙台基督共育児院シオンの園(特別養護老人ホーム)」で行った。調査員が介護人になりすまして痴呆性高齢者の一人ひとりの行動を観察した。その結果、(1)居室と共有スペース(食堂など)との物理的な位置関係や見通しの得られやすさなどの空間相互のつながりが、痴呆性高齢者の行動に著しく影響を及ぼすこと。(2)これまでの計画論では見過ごしてきた、アルツハイマー型痴呆と脳血管性痴呆の疾患による行動特性の差異を予感し得る観察結果が得られたこと。(3)施設計画においても家庭的な特質を保持すべきこと、物理的環境が痴呆の進行を抑止するなど治癒的手段にとって有効であることを前提に、痴呆性高齢者の諸特性に十分配慮した施設計画手法の構築が急務であることなど評価手法確立の基礎的知見を得た。今年度はPOEのうち利用者を中心にその評価を得ることを目標とし、不特定多数の利用に供される仙台市健康増進センターを対象として主にその利用者を中心として調査を展開した。(1)健康増進センターに関する評価対象施設の内容についての主な改善のポイントとしては、a.駐車場の各緒の必要性、b.駐車場退出方法の再検討、c.料金体系の再検討、d.健康度測定の総合指導の効率的運営を可能にする適正な人員配置と室構成、e.オープンスペースにおけるサインの徹底、f.更衣室床の適切な除水、g.リラックスエリアの平面、危惧の再検討、h.ロッカーの大きさと数の再検討の8項目を得ることが出来た。さらに、これから一般的同種建物の指針として、i.柔軟な料金体系、j.駐車場の確保、k.オープンな空間と個別対応空間の並設、l.トラック周長の延長・コース数の検討・コース曲率の縮小、m.リラックスエリアの対利用者数面積の拡大の5項目を得た。(2)POE手法に関する留意点として上記調査を展開する中で、POE手法のアンケート調査票作成時に留意すべき点として、次のようなことがわかった。利用者に施設の包括的な評価をしてもらい、なおかつデザインゲームへむけて実務性を持たせるためにはより具体的な指針を得る必要があるが、その結果評価項目は多岐にわたらざるを得ない。アンケートに応えてもらうには一人当りの評価項目数にはおのずと限界があり、それ故その幅と深さをどの点に収束させるか熟考する必要がある。今年度は、身体障害者福祉ホームの「仙台ありのまま舎」を対象にPOE手法を用いた調査を実施し、居住者の施設建築評価を把握して改善課題及び同種施設の計画指針を明らかにしようとした。同施設(定員20名)は、重度の身体障害者が自分でボランティアを集め、入居料を払い、各々が独立した生活を営むという自立ホームをめざして設計された。居室はキッチン、トイレを含み、単身室(3×5.5M)16室、夫婦室(6.5×5.5M)2室でそれぞれ同一の平面からなる。
KAKENHI-PROJECT-06650670
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06650670
日本型POE(Post occupancy evaluation)手法の開発に関する研究
居住者の不満評価は、自立生活の大部分の行為が行われる居室に集中して表れ、介護ボランティアとの一緒の生活が必須のため、そして車椅子使用のため、その狭さに起因した問題点が抽出された。また、居住者の自立度や障害の種類・程度などの個人差が大きく、同一の平面の問題やトイレなどの画一的な寸法などが問題として表れ、設計計画における個別的対応の重要性が改めて明らかになった。つまり、単身者といえども自立生活を継続するためには介護者との同居が不可欠となり、夫婦室と同程度の広さの居室を必要としていること、それが不可能な場合においては、車椅子使用を円滑に行うため、壁の両側に家具配置しても中央部で車椅子の回転寸法を確保できるよう4m以上の間口をとり、さらにキッチン、トイレなどの小集団での共用を進めること、キッチン、トイレなどにおいて可変型への対応を考慮することなどを実証的に明らかにすることができた。1.まず、文化ホールの事例として宮城県北部の「登米祝祭劇場」を対称に、音響調査や運営調査を含めた総合的な調査を実施した。その結果、(1)楽屋からステージまでの動線が分かりにくいこと、舞台袖が狭いことなどの使用上の問題が明らかになり、さらに、(2)バルコニーの下はよく聞こえないこと、客の入により、また楽器の種類により音響評価が異なること、などの音響計画上の問題が明らかになる一方で、(3)住民の多くを惹きつけ不思議な魅力をもつホールとして好意的に受け止められていることなどを知った。これから総合的な評価手法の基礎的知見を得るとともに、その手法確立の必要性を再認識することになった。また、最終年度に当り、これまでの研究を総括する上での補助調査を、今日、社会問題の1つとなっている痴呆性高齢者の入所施設「仙台市茂庭台豊齢ホーム(老人保健施設痴呆専門棟)」「仙台基督共育児院シオンの園(特別養護老人ホーム)」で行った。調査員が介護人になりすまして痴呆性高齢者の一人ひとりの行動を観察した。その結果、(1)居室と共有スペース(食堂など)との物理的な位置関係や見通しの得られやすさなどの空間相互のつながりが、痴呆性高齢者の行動に著しく影響を及ぼすこと。(2)これまでの計画論では見過してきた、アルツハイマー型痴呆と脳血管性痴呆の疾患による行動特性の差異を予感し得る観察結果が得られたこと。(3)施設計画においても家庭的な特質を保持すべきこと、物理的環境が痴呆の進行を抑止するなど治癒的手段にとって有効であることを前提に、痴呆性高齢者の諸特性に十分配慮した施設計画手法の構築が急務であることなど評価手法確立の基礎的知見を得た。
KAKENHI-PROJECT-06650670
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06650670
放射性廃液から陰イオンを選択的に分離回収できる配位高分子の開発
本研究では、汚染水や高レベル放射性廃液などに含まれる放射性陰イオン(TcO4-,SeO42-,IO4-)等を分離することを目的に実験を行った。特にTcO4-には、有効な吸着剤すらない現状のため、まずコールド実験でReO4-(TcO4-のアナログ)の分離を試みた。また、陰イオン選択的な吸着剤は殆ど報告されていないため、本研究では置換基を導入したテレフタル酸誘導体を用いて、Uio-66を合成して、様々な細孔サイズのMOFを利用してReO4-の分離能力を調べ、元素の分離回収方法の模索や、イオン選択性がどのように発現するか、その傾向を調べた。初年度は9種類の様々に細孔サイズの違うMOFを合成し、どのMOFが高い吸着効率を持つかを調べると同時に、環境中に含まれる陰イオンの中でも、特に原子力の廃液に混入しやすいCl-やNO3-に対する選択性を比較検討した。その結果、Uio-66においては、NO3-より、Cl-に対するReO4-選択性が高いことが明らかとなった。ReO4-がUio-66に吸着する過程で、Zrに配位すると考えられるが、この配位能力がCl-では低いためと考えられる。また、どの吸着剤も酸性条件下で高い吸着能力をもち、疎水性が高いMOFにおいては、Kd>1000(cm3/g)程度の吸着力を持つ。このことから低濃度の純粋なReO4-が含まれた水溶液からの吸着分離において、十分に実用性のあるMOFが得られたと言える。逆に弱塩基性溶液においては、これらのMOFは非常に吸着能力が弱く、ZrにReO4-が吸着出来ずに、OH基が配位すると考えられる。この性質を利用し、ReO4-を酸性条件で吸着させ、これを更に弱塩基性条件にすることで、MOFに吸着したReO4-の95%を5分以内に脱着させることに成功した。これは、放射性元素を分離回収できる可能性を示し、非常に有用なデータである。陰イオンを分離できる吸着剤の報告は乏しく、どのような細孔が陰イオン分離に向いているかを示すデータは殆どない。本研究は、細孔を使ったReO4-の吸着分離において、疎水性置換基の有効性を示したとともに、これまでにない分離回収法を見出すことで今後に大きな指針を示すことが出来た。これは、今後の分離剤開発に非常に有効な知見であり、物性を改善するにあたって、調査すべきターゲットを絞り込むことに成功している。また、基本的に塩化物中での選択性が非常に高く、吸着能力が高く、分離回収が可能なMOFを得ることも既に出来ていることから、本研究は順調に進展している。疎水性の細孔については、配位高分子のみならず、これにポリマーや小分子で複合的に疎水基を組み合わせることでも、安価で疎水性の配位高分子複合材料が作れる可能性も高い。既に分離回収手法や選択性の発現についての指針が初年度で得られていることから、今後は、今までのようなMOF合成のみならず、「疎水性の導入による性能の改善」という観点から、陰イオンの分離がより効率的に行える材料の探索を行う。本研究では、汚染水や高レベル放射性廃液などに含まれる放射性陰イオン(TcO4-,SeO42-,IO4-)等を分離することを目的に実験を行った。特にTcO4-には、有効な吸着剤すらない現状のため、まずコールド実験でReO4-(TcO4-のアナログ)の分離を試みた。また、陰イオン選択的な吸着剤は殆ど報告されていないため、本研究では置換基を導入したテレフタル酸誘導体を用いて、Uio-66を合成して、様々な細孔サイズのMOFを利用してReO4-の分離能力を調べ、元素の分離回収方法の模索や、イオン選択性がどのように発現するか、その傾向を調べた。初年度は9種類の様々に細孔サイズの違うMOFを合成し、どのMOFが高い吸着効率を持つかを調べると同時に、環境中に含まれる陰イオンの中でも、特に原子力の廃液に混入しやすいCl-やNO3-に対する選択性を比較検討した。その結果、Uio-66においては、NO3-より、Cl-に対するReO4-選択性が高いことが明らかとなった。ReO4-がUio-66に吸着する過程で、Zrに配位すると考えられるが、この配位能力がCl-では低いためと考えられる。また、どの吸着剤も酸性条件下で高い吸着能力をもち、疎水性が高いMOFにおいては、Kd>1000(cm3/g)程度の吸着力を持つ。このことから低濃度の純粋なReO4-が含まれた水溶液からの吸着分離において、十分に実用性のあるMOFが得られたと言える。逆に弱塩基性溶液においては、これらのMOFは非常に吸着能力が弱く、ZrにReO4-が吸着出来ずに、OH基が配位すると考えられる。この性質を利用し、ReO4-を酸性条件で吸着させ、これを更に弱塩基性条件にすることで、MOFに吸着したReO4-の95%を5分以内に脱着させることに成功した。これは、放射性元素を分離回収できる可能性を示し、非常に有用なデータである。陰イオンを分離できる吸着剤の報告は乏しく、どのような細孔が陰イオン分離に向いているかを示すデータは殆どない。
KAKENHI-PROJECT-18K05004
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K05004
放射性廃液から陰イオンを選択的に分離回収できる配位高分子の開発
本研究は、細孔を使ったReO4-の吸着分離において、疎水性置換基の有効性を示したとともに、これまでにない分離回収法を見出すことで今後に大きな指針を示すことが出来た。これは、今後の分離剤開発に非常に有効な知見であり、物性を改善するにあたって、調査すべきターゲットを絞り込むことに成功している。また、基本的に塩化物中での選択性が非常に高く、吸着能力が高く、分離回収が可能なMOFを得ることも既に出来ていることから、本研究は順調に進展している。疎水性の細孔については、配位高分子のみならず、これにポリマーや小分子で複合的に疎水基を組み合わせることでも、安価で疎水性の配位高分子複合材料が作れる可能性も高い。既に分離回収手法や選択性の発現についての指針が初年度で得られていることから、今後は、今までのようなMOF合成のみならず、「疎水性の導入による性能の改善」という観点から、陰イオンの分離がより効率的に行える材料の探索を行う。H30年度に研究代表者の機関内異動が発生し、実験に係る環境整備や状況把握に時間を要することになり、当初計画を一部変更してH30年度の備品等整備をH31年度に持ち越したため、次年度使用額が生じることとなった。次年度使用額はH31年度経費と合わせて備品購入費用や材料内疎水性の置換基導入手法の構築に係る費用に使用する。
KAKENHI-PROJECT-18K05004
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K05004
アルゴンレーザーを用いた悪性脳腫瘍に対する光化学療法の研究
移植脳腫瘍に対する光化学療法の効果は、HpD静注後24時間でも72時間でも同程度に、脳腫瘍および皮下腫瘍共に照射部位に一致して約4mmの深さで腫瘍細胞の変性あるいは壊死がみられることにより示された。ソフテックス撮影では、脳および皮下腫瘍共に照射部位に一致して腫瘍血管の造影が不良で、血流障害が認められた。24時間後の早期からすでに腫瘍細胞の変性および壊死と血流障害が同時にみられていることから、またin vitroでの研究結果から、腫瘍細胞に対する作用と栄養血管に対する作用の両者が初めから関与していることが推定される。臨床症例における光化学療法の治療結果は、HpDを使用した6例では、再手術により摘出された病理組織標本における検討上治療効果と考えられる所見が見られたものの、著明なものではなく再発までの期間や生存期間の点からも効果ありとの結論は導きだせなかった。しかし、最近の1症例では光化学療法の著明な効果と考えられる所見が得られた。まだ日本では入手困難なPhotofrin IIを使用し、腫瘍の再発を疑い再手術したが、摘出標本の病理組織学的検索では腫瘍細胞のnestが一部あるものの大部分は腫瘍そのものではなく壊死組織であった。放射線壊死ではなく、光化学療法による結果と考えられた。この症例での特徴は、(1)HpDより強力な光感受性物質であるPhotofrin IIを使用したこと、(2)レーザー光の出力を高くしたこと、(3)腫瘍を肉眼的にほぼ全摘出したことなどであった。この新しい光感受性物質には、悪性脳腫瘍に対するきわめて高い治療の可能性があると思われるので、今後これを用いて光化学療法を行ない、症例数を増加させてその有効性を確認することが望まれる。移植脳腫瘍に対する光化学療法の効果は、HpD静注後24時間でも72時間でも同程度に、脳腫瘍および皮下腫瘍共に照射部位に一致して約4mmの深さで腫瘍細胞の変性あるいは壊死がみられることにより示された。ソフテックス撮影では、脳および皮下腫瘍共に照射部位に一致して腫瘍血管の造影が不良で、血流障害が認められた。24時間後の早期からすでに腫瘍細胞の変性および壊死と血流障害が同時にみられていることから、またin vitroでの研究結果から、腫瘍細胞に対する作用と栄養血管に対する作用の両者が初めから関与していることが推定される。臨床症例における光化学療法の治療結果は、HpDを使用した6例では、再手術により摘出された病理組織標本における検討上治療効果と考えられる所見が見られたものの、著明なものではなく再発までの期間や生存期間の点からも効果ありとの結論は導きだせなかった。しかし、最近の1症例では光化学療法の著明な効果と考えられる所見が得られた。まだ日本では入手困難なPhotofrin IIを使用し、腫瘍の再発を疑い再手術したが、摘出標本の病理組織学的検索では腫瘍細胞のnestが一部あるものの大部分は腫瘍そのものではなく壊死組織であった。放射線壊死ではなく、光化学療法による結果と考えられた。この症例での特徴は、(1)HpDより強力な光感受性物質であるPhotofrin IIを使用したこと、(2)レーザー光の出力を高くしたこと、(3)腫瘍を肉眼的にほぼ全摘出したことなどであった。この新しい光感受性物質には、悪性脳腫瘍に対するきわめて高い治療の可能性があると思われるので、今後これを用いて光化学療法を行ない、症例数を増加させてその有効性を確認することが望まれる。今年度は主として移植脳腫瘍ラットにおいてhematoporphyrin derivative(HpD,伊藤ハム)の投与後24,48,72時間でアルゴンレーザー照射を行ない、腫瘍内でのHpDの動態を検索した。多少当初の目標とは異なるところもあるが、得られた結果は以下のごとくである。移植腫瘍ラットの実験ではHpD15mg/kg静注後48時間でも72時間でも同程度に、脳腫瘍および皮下腫瘍共に照射部位に一致して約4mmの深さで腫瘍壊死が見られた。また、どちらのソフテックス撮影でも照射部位に一致して腫瘍血管の造影が不良で血流障害が見られた。これは、腫瘍組織あるいは腫瘍血管に取り込まれたHpDが72時間後もかなりの程度残存していることを示している。HpDが腫瘍や腫瘍血管のどの部に取り込まれるかは明らかではないが、組織からの消失が遅いことはやはりHpDが大部分細胞内に存在することを支持するものと思われる。光化学療法の作用機序に関しては、照射24時間後すでに腫瘍細胞の変性および壊死と血流障害が同時に見られることから、腫瘍細胞に対する作用と栄養血管に対する作用の両者が始めから関与していることが推定された。今年度は本治療法の適応のある悪性神経膠腫症例が少なく、治療効果に関する十分な臨床的および病理学的検討は可能でなかった。照射手技については、腫瘍を可能な限り摘除して浸潤部分を少なくし、アルゴンレーザー514.5nmの波長光を約3-5cmの距離から摘出腔をまんべんなくわずかにオーバーラップするように、径20mmの範囲ずつ0.5Wで10-15分照射するのが現在のところ適切と考えられた。レーザー照射装置は電源プラグを工夫し、また冷却水用の排水機構を整えて手術室で使用可能とした。照射部位周囲の熱発生の程度については、2度以上の上昇は見られなかった。今後、引き続き実験での検討を行ない、臨床症例を増して治療効果の改善に結び付けたい。今年度は、培養細胞を用いた実験的基礎研究と臨床例における治療を行なった。
KAKENHI-PROJECT-04670851
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04670851
アルゴンレーザーを用いた悪性脳腫瘍に対する光化学療法の研究
後者では、臨床例に新しく入手可能となった光感受性物質を投与して光化学療法を施行し、その結果を得た。著効と考えられる所見を示した臨床例があり、現在詳細な検討を行なっているところであるが、注目すべき症例であると考え、主にこの症例についてその概要を述べる。56歳神経膠芽腫症例で、ほぼ全摘出した後、光化学療法を行ない、術後放射線照射60Gyを行なった。術後2週間のMRIで摘出腔周囲壁が約8mmの厚さで造影剤により増強されるのが認められた。その後、周囲に脳浮腫が発生進展してきたため腫瘍の再発を疑い、増強される部を摘出した。病理組織学的検索にて、腫瘍細胞は認められず壊死組織と診断された。この増強効果は術後2週間目から認められていることから放射線壊死によるものとは考えられず、光化学療法の結果と考えられた。術後経過は順調であった。この症例で今までと異なる点は、(1)新しい、強力な光感受性物質Photofrin II(LB3055-8d,Lederle)を使用したこと、(2)レーザー光の出力を高くしたこと、(3)腫瘍を肉眼的にほぼ全摘除したことなどであった。従来、効果の深達度は約5mm程度とされているが、この症例では約10mm程度であったと考えられる。過去2年間文部省科学研究費補助を受けて実験においておよび臨床において研究をつづけてきたが、この新しい光感受性物質にはきわめて高い根治の可能性が追及できると思われるので、今後これを用いて同様の方法で光化学療法を施行した症例数を増加させ、その有効性を確認することが必要と考えられる。
KAKENHI-PROJECT-04670851
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04670851
生体ナノポアプローブを用いた細胞観察プラットフォームの開発
本申請研究では、細胞培養や溶液調整を行うマイクロ流体制御技術と局所的なナノポアセンシングが可能な生体ナノポアプローブを組み合わせることで、全く新しい細胞観察プラットフォームの開発を目指す。本細胞観察プラットフォームでは、生体ナノポアプローブを用いてマイクロ流路内で培養した細胞から放出される様々な細胞放出物を直接観察する。細胞から分泌される様々な生体分子は、細胞のシグナル伝達物質として用いられ、また様々な疾患のバイオマーカーとしても注目されているため、生体ナノポアプローブにより一分子レベルでの細胞分泌物質の研究が可能となれば、新たな細胞観察手法として非常に有用である。本申請研究では、細胞培養や溶液調整を行うマイクロ流体制御技術と局所的なナノポアセンシングが可能な生体ナノポアプローブを組み合わせることで、全く新しい細胞観察プラットフォームの開発を目指す。本細胞観察プラットフォームでは、生体ナノポアプローブを用いてマイクロ流路内で培養した細胞から放出される様々な細胞放出物を直接観察する。細胞から分泌される様々な生体分子は、細胞のシグナル伝達物質として用いられ、また様々な疾患のバイオマーカーとしても注目されているため、生体ナノポアプローブにより一分子レベルでの細胞分泌物質の研究が可能となれば、新たな細胞観察手法として非常に有用である。
KAKENHI-PROJECT-19K15418
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K15418
尿細管・糸球体フィードバック機構の解明
尿細管・糸球体フィードバック(TGF)機構の異常が、各種腎症の発症・進展に関わっていると考えられる。本研究目的は、TGF機構の伝達機序の全容を明らかにし、腎症の発症・進展におけるTGFの関与、さらにTGF機構の伝達物質に焦点を当てた新たな腎症治療法の開発である。1.TGF機構を評価する方法として高感度ペンシル型CCDカメラを使用するin vivo dynamic analysis法が確立:麻酔下で左腎臓を露出後、腎臓表面に高感度ペンシル型CCDカメラ(倍率:1000)を装着し、同一糸球体の輸入・輸出細動脈の内径を連続的に測定した。無刺激状態における正常血圧SDラットの輸入、輸出細動脈の内径は、8.55+/-0.22,8.06+/-0.28μmであった。アセタゾラミドを投与すると、輸入細動脈の内径は6.25+/-0.17μmへと低下が、輸出細動脈の内径には変化がなかった。フロセミドは、輸入細動脈の内径をアセタゾラミド投与前値に回復させた。本法によりin vivo TGF活性を評価出来ることを確認した。2.腎症を発症させるDahl食塩感受性高血圧ラットにおけるTGF機構の評価:6週齢のDSラットを高食塩食(H:8%NaCl)および低食塩食(L:0.3%NaCl)でそれぞれ4週間飼育した。無刺激状態におけるDSHラットの輸入細動脈の内径は6.09+/-0.49μmで、DSLラットの内径(8.80+/-0.22μm)に比べ有意に小であった。DSLラットのTGF活性は、SDラットと差がなかった。しかし、DSHラットではTGF活性の亢進していた。3.TGF伝達物質の特定:腎間質中のアデノシン、ATP、一酸化窒素濃度を、腎動脈圧変化時に測定したところ、ATP濃度が腎血管抵抗の変化と最も良い相関を示した。以上、TGF活性評価法を確立した。Dahl食塩感受性高血圧ラットではTGF活性が上昇し、この結果輸入細動脈は収縮していた。高血圧および腎症の原因は、TGF活性の上昇と考えられる。したがって、TGF活性の正常化が腎症・高血圧の治療戦略である。現在、TGF機構伝達物質であるATP受容体遮断薬の効果を検討中である。尿細管・糸球体フィードバック(TGF)機構の異常が、各種腎症の発症・進展に関わっていると考えられる。本研究目的は、TGF機構の伝達機序の全容を明らかにし、腎症の発症・進展におけるTGFの関与、さらにTGF機構の伝達物質に焦点を当てた新たな腎症治療法の開発である。1.TGF機構を評価する方法として高感度ペンシル型CCDカメラを使用するin vivo dynamic analysis法が確立:麻酔下で左腎臓を露出後、腎臓表面に高感度ペンシル型CCDカメラ(倍率:1000)を装着し、同一糸球体の輸入・輸出細動脈の内径を連続的に測定した。無刺激状態における正常血圧SDラットの輸入、輸出細動脈の内径は、8.55+/-0.22,8.06+/-0.28μmであった。アセタゾラミドを投与すると、輸入細動脈の内径は6.25+/-0.17μmへと低下が、輸出細動脈の内径には変化がなかった。フロセミドは、輸入細動脈の内径をアセタゾラミド投与前値に回復させた。本法によりin vivo TGF活性を評価出来ることを確認した。2.腎症を発症させるDahl食塩感受性高血圧ラットにおけるTGF機構の評価:6週齢のDSラットを高食塩食(H:8%NaCl)および低食塩食(L:0.3%NaCl)でそれぞれ4週間飼育した。無刺激状態におけるDSHラットの輸入細動脈の内径は6.09+/-0.49μmで、DSLラットの内径(8.80+/-0.22μm)に比べ有意に小であった。DSLラットのTGF活性は、SDラットと差がなかった。しかし、DSHラットではTGF活性の亢進していた。3.TGF伝達物質の特定:腎間質中のアデノシン、ATP、一酸化窒素濃度を、腎動脈圧変化時に測定したところ、ATP濃度が腎血管抵抗の変化と最も良い相関を示した。以上、TGF活性評価法を確立した。Dahl食塩感受性高血圧ラットではTGF活性が上昇し、この結果輸入細動脈は収縮していた。高血圧および腎症の原因は、TGF活性の上昇と考えられる。したがって、TGF活性の正常化が腎症・高血圧の治療戦略である。現在、TGF機構伝達物質であるATP受容体遮断薬の効果を検討中である。尿細管糸球体フィードバック(TGF)機構の異常が、各種腎症の発症・進展に関わっていると考えられる。しかし、TGF機構自体の評価が困難のため解析が進んでいない。本研究目的は、TGF機構の刺激伝達メカニズムの全容を解明し、様々な病態の発症・進展におけるTGFの関与、新たなる治療法の開発にある。本年度では、1 TGF機構における刺激伝達メカニズムを直接評価する実験法として、高感度ペンシル型CCDカメラを使用するin vivo dynamic analysis法を確立し、2腎間質中に遊離する各種生理物質濃度を解析し伝達候補物質を絞り込む。
KAKENHI-PROJECT-14370783
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14370783
尿細管・糸球体フィードバック機構の解明
1 in vivo dynamic analysis法の確立:麻酔ラットの左腎露出後、腎臓表面にペンシル型高感度CCDカメラ(倍率:1000)を装着し、単一ネフロンの腎輸入・輸出細動脈尿細管部位を同定し、腎輸入・輸出細動脈の内径を連続的に測定した。無刺激状態での腎輸入・輸出細動脈の内径は、それぞれ8.55±0.22μm,8.06±0.28μmであった。TGF機能を亢進させるため、アセタゾラミド(100μg/kg)を静脈内に投与すると、輸入細動脈の内径は8.55±0.22μmから6.25±0.17μmへと収縮したが、輸出細動脈の内径に変化が認められなかった。次いで、アセタゾラミド投与下でTGF機能を減弱させるフロセミド(1mg/kg)を静脈内に投与すると、輸入細動脈の内径は6.25±0.17μmから8.78±0.26μmへと正常値に回復した。一方、輸出細動脈の内径に変化が認められなかった。高感度CCDカメラの使用により、in vivoの条件下でTGF機能を正確に評価出来ることを明らかにした。2 TGF伝達物質の特定:腎動脈圧を変化させた時の、腎間質中アデノシン・ATP・一酸化窒素(NOx)をファイバー型微小透析プローベを用いて測定した。動脈圧上昇時にはTGF機能が活性化されるが、TGF機能は間質中のATP濃度と正相関した。以上、本年度の研究により、TGF機能のin vivo評価法を確立することが出来た。また、TGF伝達物質の特定に関しては、ATPがその候補物質である可能性が高い結果を得た。本研究目的は、TGF機構の伝達機序の全容を明らかにし、腎症の発症・進展におけるTGFの関与、さらにTGF機構を変化させる新たな腎症治療法の開発である。昨年度の研究により、TGF機構を評価する方法として高感度ペンシル型CCDカメラを使用するin vivo dynamic analysis法が確立出来た。本年度では、腎症を発症させるDahl食塩感受性高血圧ラットにおけるTGF機構の評価、次いでTGF機構の伝達候補物質の動態を検討し、新たな治療法確立の基礎とする。1.Dahl食塩感受性(DS)高血圧ラットにおけるTGF機構の評価:6週齢のDSラットを高食塩食(H:8%NaCl)および低食塩食(L:0.3%NaCl)でそれぞれ4週間飼育した。腎臓表面に高感度ペンシル型CCDカメラを装着し、輸入・輸出細動脈の内径を連続的に測定した。無刺激状態におけるDSHラットの輸入細動脈の内径は6.09+/-0.49μmで、DSLラットの内径(8.80+/-0.22μm)に比べ有意に小であった。DSLラットにアセタゾラミドを投与すると、輸入細動脈の内径は7.72+/-0.25μmへと低下した。フロセミドは、輸入細動脈内径をアセタゾラミド投与前値に回復させた。一方、DSHラットにアセタゾラミドを投与しても輸入細動脈の内径には全く変化が認められなかった。しかし、フロセミドにより輸入細動脈内径は8.01+/-0.92μmへと増加した。2.TGF伝達物質の特定:腎間質中のアデノシン、ATP、一酸化窒素濃度を、腎動脈圧変化時に測定したところ、ATP濃度が腎血管抵抗の変化と最も良い相関を示した。以上、Dahl食塩感受性高血圧ラットではTGF活性が上昇し、この結果輸入細動脈は収縮していた。高血圧および腎症の原因は、TGF活性の上昇と考えられる。したがって、TGF活性の正常化が腎症・高血圧の治療戦略である。
KAKENHI-PROJECT-14370783
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多重学習機構を導入したロボットの知的処理と協調の枠組み
自律移動ロボットの制御を動作レベルと行動レベルに分け,それぞれに対する制御方法を提案した.動作レベルでは強化学習により環境から得られるセンサー情報から,重みやパラメータの値を学習した.これにより,環境に順応した動作が可能となった.一方,行動レベルでは協調行動計画において行動規則を帰納的に学習した.これにより,人間のアドバイスから行動規則を汎化することで,人間の意図に対応した行動が可能となった.さらに千葉県工業技術展においてコンパニオンロボットをデモし,人間機械協調における特性や問題点を明らかにした.その際,一般の人々に対してロボットの応用例に関するアンケートを実施し,どういう領域に対してロボットを導入すれば良いかを調査した.一方,オフィスロボットに関しては,2台の異機種のロボットが存在する仮想的なオフィス環境を設定し,秘書ロボットの特性や問題点を考察した.その結果,人間協調ロボットを実現するには,人間からのアドバイスが必要不可欠で,そのようなアドバイスを処理する方法として,帰納学習が有効であることを確認した.自律移動ロボットの制御を動作レベルと行動レベルに分け,それぞれに対する制御方法を提案した.動作レベルでは強化学習により環境から得られるセンサー情報から,重みやパラメータの値を学習した.これにより,環境に順応した動作が可能となった.一方,行動レベルでは協調行動計画において行動規則を帰納的に学習した.これにより,人間のアドバイスから行動規則を汎化することで,人間の意図に対応した行動が可能となった.さらに千葉県工業技術展においてコンパニオンロボットをデモし,人間機械協調における特性や問題点を明らかにした.その際,一般の人々に対してロボットの応用例に関するアンケートを実施し,どういう領域に対してロボットを導入すれば良いかを調査した.一方,オフィスロボットに関しては,2台の異機種のロボットが存在する仮想的なオフィス環境を設定し,秘書ロボットの特性や問題点を考察した.その結果,人間協調ロボットを実現するには,人間からのアドバイスが必要不可欠で,そのようなアドバイスを処理する方法として,帰納学習が有効であることを確認した.
KAKENHI-PROJECT-08235222
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U1に依存しない新規スプライシング機構の解明
mRNA前駆体におけるスプライシング初期過程において、U1 snRNPは5'スプライス部位の認識に不可欠とされているが、私達はヒトF1γ遺伝子の第9イントロンがU1に依存しないスプライシングを受けることを見出している。本研究では、F1γ遺伝子におけるU1非依存型スプライシングが、Fox蛋白質による選択的スプライシング制御に必要なことを明らかにした。また、U1 snRNP機能を阻害した試験管内実験系において、制御シス配列領域の同定を行い、このスプライシング機構の解明を進めている。mRNA前駆体におけるスプライシング初期過程において、U1 snRNPは5'スプライス部位の認識に不可欠とされているが、私達はヒトF1γ遺伝子の第9イントロンがU1に依存しないスプライシングを受けることを見出している。本研究では、F1γ遺伝子におけるU1非依存型スプライシングが、Fox蛋白質による選択的スプライシング制御に必要なことを明らかにした。また、U1 snRNP機能を阻害した試験管内実験系において、制御シス配列領域の同定を行い、このスプライシング機構の解明を進めている。真核生物遺伝子を分断化するイントロン配列は、RNAスプライシングによって除去される。スプライシング初期過程において、U1 snRNPは5'スプライス部位の認識に不可欠である。これに対し、本研究では、U1 snRNPに依存しない新規スプライシング反応の分子メカニズムを明らかにするとともに、これまで見過ごされてきたU1非依存的にスプライシングされる遺伝子群を探索し、この機構の一般性を検証するとともに、U1非依存的スプライシングの生理的な役割に光を当て、ゲノム情報発現における意義を解明することを目的とする。ヒトF1γ遺伝子の第9イントロンにはU1 snRNPが結合せず、U1 snRNPに依存しないスプライシングが行われている。これに対し、5'スプライス部位の配列を保存配列に置換すると通常のU1依存型スプライシングとなった。選択的スプライシング制御因子Fox蛋白質は第9イントロンの抑制によって第9エキソンのスキッピング誘導を行う(Fukumura et al., Nucleic Acids Res., 2007)が、第9イントロンをU1依存型に置換した場合にはFox蛋白質による誘導が行われなくなった。また、第9イントロンの5'スプライス部位配列に相補的な配列を持つサプレッサーU1 snRNAを強制発現した場合にも、Fox蛋白質による制御が阻害された。これらのことから、ヒトF1γ遺伝子におけるU1 snRNPに依存しないスプライシングは、Fox蛋白質による選択的スプライシング制御に必須なことが明らかとなった。真核生物遺伝子を分断化するイントロン配列は、核内のRNAスプライシングによって除去される。スプライシング初期過程において、U1 snRNPは5'スプライス部位の認識に不可欠である。これに対し、本研究では、(1)U1 snRNPに依存しない新規スプライシング反応の分子メカニズムを明らかにする、(2)U1非依存的にスプライシングされる遺伝子群を探索し、この機構の一般性を検証するとともに、(3)U1非依存的スプライシングの生理的な役割に光を当て、ゲノム情報発現における意義を解明することを目的とする。これまでに、ヒトF1γ遺伝子の第9イントロンにはU1 snRNPが結合せず、U1 snRNPに依存しないスプライシングが行われていること、またこの機構が、Fox蛋白質による選択的スプライシング制御に必要なことを明らかにしてきた。一方、熱ストレス条件下では、一般に、U1 snRNPの機能阻害によってRNAスプライシングの抑制が起こることが報告されている。これに対し、いくつかのヒートショック遺伝子においては効率よいスプライシングが起こることから、これらの遺伝子ではU1 snRNPに依存しないスプライシングが起こっているのではないかとの作業仮説のもとに解析を進めてきたが、現時点でこの仮説を支持する結果は得られていない。真核生物遺伝子を分断化するイントロン配列は、核内のRNAスプライシングによって除去される。スプライシング初期過程において、U1snRNPは5'スプライス部位の認識に不可欠である。これに対し、本研究では、(1)U1snRNPに依存しない新規スプライシング反応の分子メカニズムを明らかにする、(2)U1非依存的にスプライシングされる遺伝子群を探索し、この機構の一般性を検証するとともに、(3)U1非依存的スプライシングの生理的な役割に光を当て、ゲノム情報発現における意義を解明することを目的とする。これまでに、ヒトF1γ遺伝子の第9イントロンにはU1snRNPが結合せず、U1snRNPに依存しないスプライシングが行われていること、またこの機構が、Fox蛋白質による選択的スプライシング制御に必要なことを明らかにしてきた。HeLa細胞の核抽出液を用いたin vitro実験系においてアンチセンスオリゴを用いてU1snRNP機能を阻害した実験系において、さまざまな領域を改変したヒトF1γmRNA前駆体を基質としてU1snRNPに依存しないスプライシング機構に必要な制御配列領域の同定を行った。この制御配列領域に相互作用するRNA結合タンパク質を制御候補因子として同定し、培養細胞においてこの因子のRNAiによるノックダウン実験を行うことにによってU1非依存的なスプライシングへの関与の検証を進めているところである。
KAKENHI-PROJECT-21510204
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細菌の細胞膜結合型ペルオキシダーゼに関する基礎的研究
侵襲性歯周炎原因菌であるAggregatibacter actinomycetemcomitansの活性酸素除去及び毒素産生に関与する細胞膜結合型キノールペルオキシダーゼ(QPO)の大腸菌ホモログであるYhjAの過剰発現系を構築し、本酵素の部分精製まで行うことができた。また、A. actinomycetemcomitansのQPO阻害剤を化合物ライブラリーを用いてスクリーニングすることにより、新たにアスコクロリン及びイリシコリンBを見出し、その阻害様式が各々competitive inhibition、mixed-type inhibitionであることを明らかにした。侵襲性歯周炎原因菌であるAggregatibacter actinomycetemcomitansから発見されたヘムcを有する細胞膜結合型キノールペルオキシダーゼ(QPO)は、本菌の過酸化水素耐性及び毒素産生に密接に関わる一方、Escherichia coliは基質となるシトクロムcをもたないにも拘らず、QPO相同遺伝子であるyhjAをもっており、病原性大腸菌の毒素産生に関与している可能性がある。本研究では、E. coli YhjAの生化学的性質の解明を目的として、リコンビナントYhjAの発現及び精製系の構築を試みた。その結果、シトクロムc成熟因子群ccmA-Hの同時過剰発現及びγ-アミノレブリン酸の添加によりYhjAの発現量増加が確認され、本酵素の部分精製まで行うことができた。また、A. actinomycetemcomitansのQPO阻害剤を化合物ライブラリーを用いてスクリーニングすることにより、新たにアスコクロリン及びイリシコリンBを見出し、その阻害様式が各々competitive inhibition、mixed-type inhibitionであることを明らかにした。QPO阻害剤に関する成果については、二件の学会発表を行った。侵襲性歯周炎原因菌であるAggregatibacter actinomycetemcomitansの活性酸素除去及び毒素産生に関与する細胞膜結合型キノールペルオキシダーゼ(QPO)の大腸菌ホモログであるYhjAの過剰発現系を構築し、本酵素の部分精製まで行うことができた。また、A. actinomycetemcomitansのQPO阻害剤を化合物ライブラリーを用いてスクリーニングすることにより、新たにアスコクロリン及びイリシコリンBを見出し、その阻害様式が各々competitive inhibition、mixed-type inhibitionであることを明らかにした。過去の研究により、侵襲性歯周炎原因菌であるAggregatibacter actinomycetemcomitansから発見された新規のヘムcを有する細胞膜結合型キノールペルオキシダーゼ(QPO)は、本菌の過酸化水素耐性及び毒素産生に密接に関わっていることが明らかになった。病原微生物における過酸化水素除去機能は、宿主の免疫機能からの防御および自身の呼吸鎖エネルギー代謝系の副産物除去の面から感染成立に重要な因子であると考えられる。従って、このQPOは病原細菌の新たな薬剤ターゲットとなり得る。興味深いことに、Escherichia coli (K12及びO157:H7)は基質となるシトクロムcをもたないにも拘らず、QPO相同遺伝子であるyhjAをもっている。このyhjAに関する論文はPartridgeらによって2007年に報告されたものだけであり、欠損させることにより嫌気下における外因性H2O2耐性が低下すること、また酸素応答に関与するFNR及びOxyRによって発現制御されていることしか明らかになっていない。即ち、YhjAは大腸菌において発現し表現型に影響することは明らかであるが、未だ単離・精製されておらず、その機能や構造については解っていない。そこで本研究は、QPOホモログであるYhjAをもつEscherichia coli K12株及びO157:H7株を材料として基礎的な解析を行い、本酵素の大腸菌における生理的意義及び病原性との関連について明らかにすることを目的とした。本年度においては、E. coli YhjAの過剰発現系を確立した。本年度においては、まずE. coli YhjAの過剰発現系構築を行った。発現及び精製手法に関しては、当講座において行われた組換えQPOの発現・精製方法を基盤として行った。しかしながら、QPOと同様の方法では安定した過剰発現が得られなかったため、各種培養条件を検討し一部改変を加えることにより、下記のような過剰発現系を構築した。供試菌株として、ペリプラズム性プロテアーゼDegPを欠損したE. coli Keio::JW0157 (DE3)株を用いた。YhjAの過剰発現は、T7プロモーター支配下にyhjA遺伝子をクローン化したプラスミドを構築し、IPTG添加誘導により行った。また、YhjAのアミノ酸配列解析から、本タンパク質はヘムc結合サイトを3つ持つと予測されたため、シトクロムcの成熟化に関わる遺伝子群であるccmA-Hオペロン全長を持つプラスミドを構築し、両プラスミドを移入した株を作製した。さらに、ヘムcの前駆体であるγ-アミノレブリン酸を培地に添加することで安定した過剰発現が観察された。申請書においては、今年度中にYhjAの精製法を構築する予定であったが、上記のように過剰発現系の確立に時間を要したため、現在精製法の構築を行っている。また、部分精製標品であるが、YhjA過剰発現試料においてユビキノール-1を基質として過酸化水素を水に還元する活性が観察された。即ち、E. coli YhjAはA. actinomycetemcomitansのQPOと同様にキノールペルオキシダーゼ活性を持つことが確認できた。
KAKENHI-PROJECT-24791971
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細菌の細胞膜結合型ペルオキシダーゼに関する基礎的研究
過剰発現系が構築でき、部分精製標品にキノールペルオキシダーゼ活性があることを確認できたことから、現在組換えYhjA精製法の構築中である。精製手順に関しては下記のように、当講座において行われた組換えQPOの精製方法を基盤に行っている。フレンチプレス法により回収したE. coliの膜画分を界面活性剤SM-1200を用いて可溶化し、カラムクロマトグラフィー(ハイドロキシアパタイト、DEAEなど)によって精製を行い、最終的に>95%精製標品を調製する。なお指標として、SDS-PAGE、ヘム染色、吸光度測定(412 nm:シトクロムcのSoret吸収帯)、キノールペルオキシダーゼ活性測定を各精製処理後に行い、精製効率を算出する。本年度同様25年度においても、プラスチック・ガラス器具、組換えDNA実験試薬などの消耗品、特に培養関連試薬を中心に多くの経費を計上している。また、平成25年度においてはQPO阻害剤のスクリーニングに用いる化合物ライブラリーに300千円を算定した。研究成果は積極的に学会発表及び誌上発表する予定であり、それらは平成25年度の消耗品項目の論文別刷り、また国内・国外旅費項目の研究打ち合わせ旅費、成果発表に算入した。なお、全体の研究経費のうち、90%を超える、もしくは特に大きな割合を占めるような経費項目はない。
KAKENHI-PROJECT-24791971
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転写因子のターゲット部位予側からのゲノム機能推定
ゲノム機能の解明の一端を担うため1)計算科学的なアブローチから、転写因子それぞれの結合部位を予測する、2)共通の転写因子をもつ遺伝子をクラスタリングすることによって遺伝子間の相互作用を推定すること、この二つを目的として本研究を行った。今年度は、1)に関して進展した。本研究では、DNA結合蛋白質とDNAの複合体から統計ポテンシャルを求め、そのポテンシャルを用いてゲノム上からDNA結合蛋白質のターゲット部位を探す。そのため、まず、年々増加しつづけている蛋白質-DNA複合体の立体構造に対応して、自動的に導出し、定期的にアップデートするシステムを構築した。その結果、冗長性のない複合体を150得た。その複合体の解析を行い、統計ポテンシャルを更新した。また、DNA結合蛋白質は、ゲノムのORFの上流・下流に結合して、転写を制御していることが知られている。そこで、任意の長さの上流・下流のDNA配列を抽出することを行った。その抽出した配列に対して、更新したポテンシャルを用いて、蛋白質のフォールドタイプを探すスレッディングのアナロジーにより、DNA結合蛋白質のターゲット部位を探すことを行った。どの蛋白質がどの遺伝子を制御しているか、現在解析中である。また、更新した統計ポテンシャルを用いて、さまざまなDNA結合蛋白質とそのターゲット配列の認識機構の違いを定量的に評価することができた。ゲノム機能の解明の一端を担うため1)計算科学的なアブローチから、転写因子それぞれの結合部位を予測する、2)共通の転写因子をもつ遺伝子をクラスタリングすることによって遺伝子間の相互作用を推定すること、この二つを目的として本研究を行った。今年度は、1)に関して進展した。本研究では、DNA結合蛋白質とDNAの複合体から統計ポテンシャルを求め、そのポテンシャルを用いてゲノム上からDNA結合蛋白質のターゲット部位を探す。そのため、まず、年々増加しつづけている蛋白質-DNA複合体の立体構造に対応して、自動的に導出し、定期的にアップデートするシステムを構築した。その結果、冗長性のない複合体を150得た。その複合体の解析を行い、統計ポテンシャルを更新した。また、DNA結合蛋白質は、ゲノムのORFの上流・下流に結合して、転写を制御していることが知られている。そこで、任意の長さの上流・下流のDNA配列を抽出することを行った。その抽出した配列に対して、更新したポテンシャルを用いて、蛋白質のフォールドタイプを探すスレッディングのアナロジーにより、DNA結合蛋白質のターゲット部位を探すことを行った。どの蛋白質がどの遺伝子を制御しているか、現在解析中である。また、更新した統計ポテンシャルを用いて、さまざまなDNA結合蛋白質とそのターゲット配列の認識機構の違いを定量的に評価することができた。
KAKENHI-PROJECT-15014232
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15014232
透明感知覚の神経機構の解明
透き通ったガラスや、柔らかい陰影を持つゴムや人肌など、現実世界の物体がもつ透明感・半透明感は非常に複雑かつ多様である。本研究では、これらの多様な透明感の違いを見分ける脳内神経機構を明らかにすることを目的とし、ヒトに近い質感認知機能を持つサルの高次視覚野において、透明感知覚にかかわる神経活動の計測を試みる。実験では、コンピュータグラフィクス(CG)を用いて作成した、様々な異なる透明度を持つリアルな物体画像群をサルに見せ、サルの視覚野の神経細胞が、物体の透明度が異なるとどのように活動を変化させるかを計測する。透き通ったガラスや、柔らかい陰影を持つゴムや人肌など、現実世界の物体がもつ透明感・半透明感は非常に複雑かつ多様である。本研究では、これらの多様な透明感の違いを見分ける脳内神経機構を明らかにすることを目的とし、ヒトに近い質感認知機能を持つサルの高次視覚野において、透明感知覚にかかわる神経活動の計測を試みる。実験では、コンピュータグラフィクス(CG)を用いて作成した、様々な異なる透明度を持つリアルな物体画像群をサルに見せ、サルの視覚野の神経細胞が、物体の透明度が異なるとどのように活動を変化させるかを計測する。
KAKENHI-PROJECT-19K24367
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K24367
エピトランスクリプトミクス機構の解明 ‐新規癌分子機序の提唱を目指して‐
我々は2種の質量分析計を用いる事でエピトランスクリプトミクス研究基盤体制を構築している。本研究課題ではDNA/RNA脱メチル化酵素遺伝子であるALKBHファミリーを中心とした癌における分子機序の解析について取り組むことを旨としている。ALKBHファミリーリコンビナントタンパク質を用いて新規RNA修飾基質の探索的検討を行った。約40種のRNA修飾を対象とした検討からは既存基質に対する反応性は確認されたものの、残念ながらの新規の基質同定には至っていない。各ALKBH分子によって適切な反応条件が異なる可能性が考えられるため、引き続き反応条件を再構築し検討を行う。一方、質量分析計の活用から本研究課題申請時には構築されていなかったアンターゲットメタボローム解析の体制を整えることが出来た。そこで、ALKBHファミリーのうち機能に関する報告がなく解析が最も遅れているALKBH6に特に着目し検討に着手した。ALKBH6ノックダウン細胞における代謝物変化を解析するとADP-ribose 2'-phosphateをはじめとした様々な特徴的変化が確認された。ALKBH6と癌との関連について検討したところ、淡明細胞型腎細胞癌癌部における高発現と予後不良性との相関が示唆される結果が得られている。ADP-ribose 2'-phosphateは酸化ストレスに対する応答性に関与していることが報告されている事からALKBH6は癌細胞の酸化ストレスに対する防御機構として機能し癌悪性化に寄与している可能性を現在検証している。ALKBHファミリーと会合するRNAの探索実験、及びALKBHファミリー発現抑制における各会合候補RNAのタンパク質発現について検討を行っておりALKBHファミリーがRNAと会合することによってタンパク質発現にどのような影響を及ぼし得るのか順次解析を行っている段階である。さらに、アンターゲットメタボローム解析から機能未知遺伝子であるALKBH6の生物学的意義についての片鱗が確認されつつあり、ALKBHファミリーの機能に関する新たな知見が得られている。ただし、ALKBHファミリーリコンビナントタンパク質を用いたALKBHファミリーの基質RNA修飾塩基の探索と同定を行う実験計画については、既知のRNA修飾への反応性は認められている一方で求めていたALKBHファミリーの新規基質の同定までには至っていない。そこで、現在反応条件を再考し検討を継続している。ALKBHファミリーによるRNA修飾制御に関して、反応条件を改善しリコンビナントタンパク質を用いて新規基質の探索実験を継続する。一方で各ALKBHタンパク質は単体では活性が十分ではなく、他のタンパク質との相互作用により酵素活性を発揮している可能性が考えられる。そこで、リコンビナントタンパク質を用いた検討に加えALKBHファミリー発現抑制細胞におけるRNA修飾の解析を平行して実施する。そしてこの細胞レベルでの検討からALKBHファミリーによるRNA修飾制御の可能性が示唆されれば会合タンパク質の探索も行う。この会合タンパク質の同定に関してはRNA修飾解析にも使用しているドリフトタイムイオンモビリティー搭載四重極飛行時間型質量分析計を活用することにより実施可能である。また一方で、この質量分析計を用いてアンターゲットメタボローム解析が実施可能な体制を整えることができた。これはALKBH発現抑制および過剰発現時における癌細胞表現型解析に応用できると考えており、エピトランスクリトミクスおよびメタボロミクスを統合的に研究していきたいと考えている。我々は2種の質量分析計を用いる事でエピトランスクリプトミクス研究基盤体制を構築している。本研究課題ではDNA/RNA脱メチル化酵素遺伝子であるALKBHファミリーを中心とした癌における分子機序の解析について取り組むことを旨としている。ALKBHファミリーリコンビナントタンパク質を用いて新規RNA修飾基質の探索的検討を行った。約40種のRNA修飾を対象とした検討からは既存基質に対する反応性は確認されたものの、残念ながらの新規の基質同定には至っていない。各ALKBH分子によって適切な反応条件が異なる可能性が考えられるため、引き続き反応条件を再構築し検討を行う。一方、質量分析計の活用から本研究課題申請時には構築されていなかったアンターゲットメタボローム解析の体制を整えることが出来た。そこで、ALKBHファミリーのうち機能に関する報告がなく解析が最も遅れているALKBH6に特に着目し検討に着手した。ALKBH6ノックダウン細胞における代謝物変化を解析するとADP-ribose 2'-phosphateをはじめとした様々な特徴的変化が確認された。ALKBH6と癌との関連について検討したところ、淡明細胞型腎細胞癌癌部における高発現と予後不良性との相関が示唆される結果が得られている。ADP-ribose 2'-phosphateは酸化ストレスに対する応答性に関与していることが報告されている事からALKBH6は癌細胞の酸化ストレスに対する防御機構として機能し癌悪性化に寄与している可能性を現在検証している。ALKBHファミリーと会合するRNAの探索実験、及びALKBHファミリー発現抑制における各会合候補RNAのタンパク質発現について検討を行っておりALKBHファミリーがRNAと会合することによってタンパク質発現にどのような影響を及ぼし得るのか順次解析を行っている段階である。さらに、アンターゲットメタボローム解析から機能未知遺伝子であるALKBH6の生物学的意義についての片鱗が確認されつつあり、ALKBHファミリーの機能に関する新たな知見が得られている。ただし、ALKBHファミリーリコンビナントタンパク質を用いたALKBHファミリーの基質RNA修飾塩基の探索と同定を行う実験計画については、既知のRNA修飾への反応性は認められている一方で求めていたALKBHファミリーの新規基質の同定までには至っていない。そこで、現在反応条件を再考し検討を継続している。ALKBHファミリーによるRNA修飾制御に関して、反応条件を改善しリコンビナントタンパク質を用いて新規基質の探索実験を継続する。
KAKENHI-PROJECT-18K14653
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K14653
エピトランスクリプトミクス機構の解明 ‐新規癌分子機序の提唱を目指して‐
一方で各ALKBHタンパク質は単体では活性が十分ではなく、他のタンパク質との相互作用により酵素活性を発揮している可能性が考えられる。そこで、リコンビナントタンパク質を用いた検討に加えALKBHファミリー発現抑制細胞におけるRNA修飾の解析を平行して実施する。そしてこの細胞レベルでの検討からALKBHファミリーによるRNA修飾制御の可能性が示唆されれば会合タンパク質の探索も行う。この会合タンパク質の同定に関してはRNA修飾解析にも使用しているドリフトタイムイオンモビリティー搭載四重極飛行時間型質量分析計を活用することにより実施可能である。また一方で、この質量分析計を用いてアンターゲットメタボローム解析が実施可能な体制を整えることができた。これはALKBH発現抑制および過剰発現時における癌細胞表現型解析に応用できると考えており、エピトランスクリトミクスおよびメタボロミクスを統合的に研究していきたいと考えている。質量分析計の不具合により一部研究計画に遅れが生じた。これに伴い質量分析に係る実験費用および学会発表が延期となり、翌年に予算を残す必要が生じたため。
KAKENHI-PROJECT-18K14653
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K14653
フランス・スポーツ基本法の成立と展開に関する研究
1現行のフランスにおけるスポーツ基本法である1984年7月16日の法律について解説付きの逐条訳を行った論文を公表した。また,同論文の解説において1984年以降のスポーツ基本法の改正の歴史的な展開を次の通り示した。1985年1月3日の法律第85-10号による改正,1987年12月7日の法律第87-979号による改正,1992年7月13日の法律第92-652号による改正,1993年12月6日の法律第93-1282号による改正,1994年8月8日の法律第94-679号による改正,1995年1月21日の法律第95-73号による改正。2フランススポーツ基本法のスポーツ法体系における位置について,論文「フランススポーツ法典の構成」の中で示し,スポーツ基本法が基礎となりフランスのスポーツ法体系および各種の関係する制度が発展していることを明らかにした。3特にスポーツ保険法制度の指導的判例であり,スポーツ基本法のスポーツ保険理論の展開の前提となった1989年10月24日の破棄院判決を判例研究した。また,スポーツ基本法におけるスポーツ保険制度の歴史的な形成の過程を明らかにし,論文を公表した。4特にスポーツ指導者資格制度に関する法の歴史的発展の過程を明らかにし,論文を公表した。5スポーツ連盟の公役務および公権力の特権を行使することによる制裁に関わる指導的な判例研究を行い,論文を公表する。6スポーツに関する特別な法律が誕生する1940年以前において,1907年から1920年に国会に提出された体育を義務化する法律案が存在し,これらが1940年のスポーツ組織に関する法律に与えた影響を検討し,論文を公表する。7今後は,これまで行ってきた研究成果を踏まえて,フランスにおけるスポーツ基本法の成立と展開に関する歴史的な過程をまとめ,平成11年度以降に論文としてまとめる予定である。1フランス・スポーツ基本法に関係する未収集の資料(法律議事録、法文、雑誌論文、関係図書)を収集した。2体育およびスポーツの発展に関する1975年10月29日の法律の成立過程について、成立背景、立法経過の視点からまとめ、学会誌に掲載された。3現行の1984年7月16日の法律を、同法制定から現在までの改正がすべて明らかになる形で、解説し、逐条訳を神戸大学発達科学部研究紀要に投稿した。4スポーツ基本法の判例による法形成の視点として、1981年10月13日ナンテ-ル大審裁判所判決、1984年3月2日ベルサイユ控訴院中間判決、1984年6月29日ベルサイユ控訴院判決、1986年7月16日破棄院判決の内容を明らかにし、同判決のスポーツ基本法のスポーツ保険に関わる法規定への影響を明らかにし、専門分科会誌に掲載された。平成9年度日本スポーツ法学会において、ダローズ社「スポーツ法典」に占める1984年のスポーツ基本法の中心的な役割について関連発表をした。これまで行ってきたスポーツ基本法の研究に関係する論文等を時系列的に整理し、ファイルに目次を付けてまとめた。1現行のフランスにおけるスポーツ基本法である1984年7月16日の法律について解説付きの逐条訳を行った論文を公表した。また,同論文の解説において1984年以降のスポーツ基本法の改正の歴史的な展開を次の通り示した。1985年1月3日の法律第85-10号による改正,1987年12月7日の法律第87-979号による改正,1992年7月13日の法律第92-652号による改正,1993年12月6日の法律第93-1282号による改正,1994年8月8日の法律第94-679号による改正,1995年1月21日の法律第95-73号による改正。2フランススポーツ基本法のスポーツ法体系における位置について,論文「フランススポーツ法典の構成」の中で示し,スポーツ基本法が基礎となりフランスのスポーツ法体系および各種の関係する制度が発展していることを明らかにした。3特にスポーツ保険法制度の指導的判例であり,スポーツ基本法のスポーツ保険理論の展開の前提となった1989年10月24日の破棄院判決を判例研究した。また,スポーツ基本法におけるスポーツ保険制度の歴史的な形成の過程を明らかにし,論文を公表した。4特にスポーツ指導者資格制度に関する法の歴史的発展の過程を明らかにし,論文を公表した。5スポーツ連盟の公役務および公権力の特権を行使することによる制裁に関わる指導的な判例研究を行い,論文を公表する。6スポーツに関する特別な法律が誕生する1940年以前において,1907年から1920年に国会に提出された体育を義務化する法律案が存在し,これらが1940年のスポーツ組織に関する法律に与えた影響を検討し,論文を公表する。7今後は,これまで行ってきた研究成果を踏まえて,フランスにおけるスポーツ基本法の成立と展開に関する歴史的な過程をまとめ,平成11年度以降に論文としてまとめる予定である。
KAKENHI-PROJECT-09780063
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09780063
ホッピング伝導に起因する高抵抗GaNの共振周波数緩和機構の解明
本研究では,超音波共鳴法を用いて高抵抗GaNの共振周波数緩和の振動モードおよび圧電特性依存性を明らかにすることにより,高抵抗GaNの非デバイ型共振周波数緩和の発現機構の解明,およびそれに対する新たな緩和モデルの構築に取り組む.そして,構築したモデルを用いて,高抵抗GaNのホッピング伝導メカニズムを解明することにより,デバイスへの応用上重要な電気伝導特性や弾性波の伝播特性を正確に評価することを目指す.本研究では,超音波共鳴法を用いて高抵抗GaNの共振周波数緩和の振動モードおよび圧電特性依存性を明らかにすることにより,高抵抗GaNの非デバイ型共振周波数緩和の発現機構の解明,およびそれに対する新たな緩和モデルの構築に取り組む.そして,構築したモデルを用いて,高抵抗GaNのホッピング伝導メカニズムを解明することにより,デバイスへの応用上重要な電気伝導特性や弾性波の伝播特性を正確に評価することを目指す.
KAKENHI-PROJECT-19K15450
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K15450
折りたたみ/展開技術の開発とその航空宇宙工学への応用に関する研究
我国の伝統文化の一つの折りたたみ法、これに基づく折りたたみ構造が持つ機能特性と力学的特性あるいはこれ等を融合させた特性を利用して、(1)簡素な収納と容易な展開性を有するインフレータブル構造や、(2)軽量コアモデルの開発や3次元ハニカム構造等を創製し、この技法の実用化を実現するための一連の研究を行い、論文7編でその詳細を報告した。それらを短くまとめると以下のようになる。(1);次世代の宇宙構造物として期待されているインフレータブル構造を実現させるための基本の構造要素である円筒、円錐形状膜、円形膜あるいは応用例としてパラボラ面等の簡素な折りたたみ収納モデルを開発するとともに、インフレータブル型式の2m高さの円筒構造や簡易収納型式の2m径のパラボラ面状膜を設計し、製作されたこれらの膜構造の展開過程を調べて、その展開性能が理論モデル通りであることが確かめられた。また半円球状膜構造、円球状膜構造や楕円球状膜構造の折りたたみモデルを新たに開発した。円形筒等の基本構造についてはその展開過程のコンピューターグラフィック化を試みた。(2);複雑・多数の折り線で構成される平板を3次元化してコア材料の加工を行うためのフレキシブル金型を開発し、折紙加工に類する多数の曲げ加工を瞬時に行うことが可能になった。これにより0.2mm厚さまでのアルミニウム合金板を用いて2軸方向に強化されたコア材(DCコア)を製作し、この製造方法の問題点とその解決を計った。また、周期的に多数のスリットを設けたアルミ合金製平板を折り曲げて製作するハニカムコアの製造方法の開発を行い、製作された0.10.2mm厚さのアルミニウム合金製のコア材料及びハニカムコア材料の強度評価試験を行い、期待通りの結果を得た。また、新たにスポンジコアのモデルを提案した.我国の伝統文化の一つの折りたたみ法、これに基づく折りたたみ構造が持つ機能特性と力学的特性あるいはこれ等を融合させた特性を利用して、(1)簡素な収納と容易な展開性を有するインフレータブル構造や、(2)軽量コアモデルの開発や3次元ハニカム構造等を創製し、この技法の実用化を実現するための一連の研究を行い、論文7編でその詳細を報告した。それらを短くまとめると以下のようになる。(1);次世代の宇宙構造物として期待されているインフレータブル構造を実現させるための基本の構造要素である円筒、円錐形状膜、円形膜あるいは応用例としてパラボラ面等の簡素な折りたたみ収納モデルを開発するとともに、インフレータブル型式の2m高さの円筒構造や簡易収納型式の2m径のパラボラ面状膜を設計し、製作されたこれらの膜構造の展開過程を調べて、その展開性能が理論モデル通りであることが確かめられた。また半円球状膜構造、円球状膜構造や楕円球状膜構造の折りたたみモデルを新たに開発した。円形筒等の基本構造についてはその展開過程のコンピューターグラフィック化を試みた。(2);複雑・多数の折り線で構成される平板を3次元化してコア材料の加工を行うためのフレキシブル金型を開発し、折紙加工に類する多数の曲げ加工を瞬時に行うことが可能になった。これにより0.2mm厚さまでのアルミニウム合金板を用いて2軸方向に強化されたコア材(DCコア)を製作し、この製造方法の問題点とその解決を計った。また、周期的に多数のスリットを設けたアルミ合金製平板を折り曲げて製作するハニカムコアの製造方法の開発を行い、製作された0.10.2mm厚さのアルミニウム合金製のコア材料及びハニカムコア材料の強度評価試験を行い、期待通りの結果を得た。また、新たにスポンジコアのモデルを提案した.我国の伝統文化の一つの折りたたみ法、これに基づく折りたたみ構造が持つ機能特性と力学的特性を応用して、(1)簡素な収納と容易な展開が可能なインフレータブル構造や(2)新しい形の軽量コア構造やハニカム構造等を創製し、この技法の工業的応用とその実用化を実現するための一連の研究を行い、下記の研究成果を得た。(1);次世代の宇宙構造物として期待されているインフレータブル構造を開花させるための基本の構造要素である円筒、あるいは応用例としてパラボラ面等の簡素な折りたたみ収納モデルを開発するとともにこれらのモデルに基づいて、インフレータブル型式の2m高さの円筒構造(直径0.6m)や簡易収納型式の2m径のパラボラ面状膜を実際に設計・製作し、製作されたこれらの膜構造の展開の過程を観測して、その展開性能が理論モデル通りであることが確かめられた。また半円球状膜構造、円球状膜構造や楕円球状膜構造の折りたたみモデルを新たに開発するとともに、4角形等の異型状の筒構造や角錐等の折りたたみモデルを異なる要素形状を組合わせる手法を用いて開発した。円形筒についてはその展開過程のコンピュターグラフィック化が試みられた。(2);複雑・多数の折り線で構成される平板を3次元化してコア材料の加工を行うためのフレキシブル金型を新たに開発した。この金型によって、折紙加工に類する多数の曲げ加工を瞬時に行うことが可能になった。これによりアルミニュウム合金板(0.2mm厚さ)を用いて2軸方向に強化(double corrugation(DC))されたコア材(DCコア)を製作し、この製造方法の問題点とその解決を計った。
KAKENHI-PROJECT-13650962
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13650962
折りたたみ/展開技術の開発とその航空宇宙工学への応用に関する研究
また,周期的に多数のスリットを設けたアルミ合金製平板を折り曲げて製作するハニカムコアの製造方法の開発を行い、製作された0.10.2mm厚さのアルミ合金製のコア材料及びハニカムコア材料の強度評価試験を行い、期待通りの結果を得た。我国の伝統文化の一つである折紙技術を数理的に進化させて、一枚の紙(あるいは板)を3次元化(コア構造化)することにより得られる構造強化特性と3次元化した構造物を効率よく折り畳む(あるいは逆に折りたたんだ構造を簡易に展開する)機能特性を利用・発展させるための研究・開発を行った。なされた研究項目は大別すると(1)一枚の平板から作られる斬新な3次元ハニカム構造のモデルの開発とその製作方法の開発、および(2)次世代の宇宙構造用のインフレタブル型の膜構造を設計・製作するため折りたたみ/展開可能な3次元膜構造のモデル開発とそれらの12m寸法の小型モデルの製作である。得られた具体的な研究成果を以下に記す。(1)一枚のアルミニュウム製薄板に周期的に切断線を導入し、これを折曲げて作られる1方向テーパー状及び2方向テーパー状ハニカムコアモデル、同方法で作られるブリッジ型ハニカムコアモデル、および翼断面形状型のハニカムコアモデルの開発(本研究成果は横浜開港記念館にて、平成14年10月911日に行われた日本航空宇宙学会主催の第40回飛行機シンポジュウムにて発表)(2)折りたたみ/展開型の半球状膜構造、および楕円形状断面筒のモデルの製作およびソーラーセイル用高効率(1/30に収納)の円形膜の巻取り収納モデルの開発。(後者の研究成果については宇宙科学研究所主催の第18回宇宙構造・材料シンポジュウム、平成14年10月8日開催にて発表)我が国の伝統文化の一つである折紙技術を数理化することによって、一枚の紙(あるいは板)を三次元化(コア構造化)することにより得られる構造強化特性、三次元化した構造物を効率よく折りたたむ(あるいは逆に折りたたんだ構造を簡易に展開する)機能特性及びこれ等を融合させた特性を開発する研究を行った。なされた研究項目は大別すると(1)一枚の平板から作られる斬新な三次元ハニカム及びスポンジコア構造のモデルの開発とその製作方法の開発、(2)次世代の宇宙構造用のインフレタブル型膜構造を設計・製作するために折りたたみ/展開可能な三次元膜構造のモデル開発、特に膜構造の中に空を導入して、これを効率的に収納する方法の開発である。得られた具体的な研究成果を以下に記す。(1)一枚のアルミニウム製薄板に周期的な切抜き部を導入し、これを折り曲げて作られるテーパー状及び2方向テーパー状立方体スポンジコアモデル、同方法で作られる切隅正4面体、8面体スポンジコアの開発(本研究は浜名湖畔で行われた第6回航空宇宙材料フォーラム、及び東京で行われた第10回日本機械学会関東支部講演会にて発表)(2)空の概念を膜構造の簡易収納に取り入れた展開収納型モデルの開発及びソーラーセイルの効率的収納法についての開発(豊橋で行われた日本航空宇宙学会主催第44回構造強度に関する講演会にて発表)
KAKENHI-PROJECT-13650962
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13650962
妊娠中や授乳中における精神科治療の意思決定支援システムの開発と有効性に関する研究
向精神薬の薬物療法を受ける必要のある妊婦が精神科医師と意見を共有しながら治療選択するシェアードデシジョンモデルに基づく意思決定支援システムシステムのプログラムの効果検証のための無作為化比較対照試験を平成27年度に続き実施した。平成28年度は22人の参加者から同意を得た。現時点で介入プログラムに関連した有害事象は発生していない。また、シェアードデシジョンモデルに基づく意思決定支援システム実施のための、精神科医・保健師・産科医・助産師などのための手引きを出版した。また、本プログラムの内容を厚生労働省子どもの心の診療拠点病院事業の母子保健メンタルケア指導者研修会の研修プログラムの中に取り入れ、均てん化を図った。平成29年度も引き続き無作為化比較対照試験を実施し、解析を行い、プログラムの効果を検証する予定である。現在、無作為化比較対照試験を実施中であり、平成29年度に予定していたサンプル数に達する予定である。平成29年度に無作為化比較対照試験を完了し、解析を行い、向精神薬の薬物療法を受ける必要のある妊婦が精神科医師と意見を共有しながら治療選択するシェアードデシジョンモデルに基づく意思決定支援システムシステムのプログラムの無作為化比較対照試験の効果検証を行う。また、本プログラムの内容を厚生労働省子どもの心の診療拠点病院事業の母子保健メンタルケア指導者研修会などの研修会の中に取り入れ、プログラムの均てん化を図っていく。平成29年度の無作為化比較対照試験実施についての費用及び、プログラムの均てん化のための経費に使用予定である。妊娠中に精神疾患のため精神科治療が必要な患者に対し、精神科医師と意見を共有しながら治療を選択するシェアードデシジョンモデルに基づく意思決定支援システムの開発を行った。シェアードデシジョンモデルに基づき、意思決定支援を行うための精神科医用のマニュアル「精神科医のための妊娠・授乳中の向精神薬処方の手引き」を作成した。このマニュアルは、妊娠中及び授乳中の向精神薬内服についてのリスク・ベネフィットについてこれまでの研究からわかっていることおよび、英国NationaL Institute for Health and Care Excellenceのガイドラインである"Antenatal and Postnatal Mental Health"をもとに、妊娠中期で精神科治療が必要な患者にエビデンスの情報を提供しながら治療選択する意思決定支援プログラムを医療者にわかりやすく解説したものである。このマニュアルを使い、国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター産科に通院中で精神科治療が必要な妊婦に対し、精神科治療における意思決定支援プログラムのパイロットスタディを行った。その結果、介入プログラムの効果があり無作為化比較対象試験実施が妥当であると考えられた。介入プログラムの効果検証を無作為化比較対象試験の手法を用い平成28年度から行っている。当初の研究計画よりも早く、シェアードデシジョンモデルに基づく意思決定支援システムのプログラムを開発した。そして、そのプログラムをもとに、国立成育医療研究センター周産期・母性診療センターに通院中で精神科治療を要する妊婦に対し、パイロットスタディを行い、主要アウトカムである利用者満足度質問票日本語版合計点について、介入群の平均点が対照群に比し高い結果を得た。また参加者のアンケートから介入プログラムを改善した。パイロットスタディの結果から本介入プログラムについて、無作為化比較対象試験実施が妥当であると判断した。そのため、平成27年度から無作為化比較対象試験を開始している。向精神薬の薬物療法を受ける必要のある妊婦が精神科医師と意見を共有しながら治療選択するシェアードデシジョンモデルに基づく意思決定支援システムシステムのプログラムの効果検証のための無作為化比較対照試験を平成27年度に続き実施した。平成28年度は22人の参加者から同意を得た。現時点で介入プログラムに関連した有害事象は発生していない。また、シェアードデシジョンモデルに基づく意思決定支援システム実施のための、精神科医・保健師・産科医・助産師などのための手引きを出版した。また、本プログラムの内容を厚生労働省子どもの心の診療拠点病院事業の母子保健メンタルケア指導者研修会の研修プログラムの中に取り入れ、均てん化を図った。平成29年度も引き続き無作為化比較対照試験を実施し、解析を行い、プログラムの効果を検証する予定である。現在、無作為化比較対照試験を実施中であり、平成29年度に予定していたサンプル数に達する予定である。平成28年度中に研究計画の目標症例数の研究エントリーを完了し、また、データ入力・解析を進める。データはintention-to-treatで解析し、評価項目に対する介入プログラムの効果を共分散分析を用いて解析する。また、意思決定支援プログラムに用いた場合の抑うつ尺度改善度及び治療コンプライアンスの予測因子について、ロジスティック回帰分析を用いて同定する。平成29年度に無作為化比較対照試験を完了し、解析を行い、向精神薬の薬物療法を受ける必要のある妊婦が精神科医師と意見を共有しながら治療選択するシェアードデシジョンモデルに基づく意思決定支援システムシステムのプログラムの無作為化比較対照試験の効果検証を行う。また、本プログラムの内容を厚生労働省子どもの心の診療拠点病院事業の母子保健メンタルケア指導者研修会などの研修会の中に取り入れ、プログラムの均てん化を図っていく。シェアードデシジョンモデルに基づく意思決定支援システムのマニュアルの作成・パイロットスタディ実施・パイロットスタディ参加者のアンケートによる介入プログラムの修正が早く進んだ。そのため、無作為化比較対象試験のエントリー開始を早め、それに伴い、研究参加者への謝金が多く発生したため。今年度の所要額は、無作為化比較対照試験の実施にかかる諸費用が主であり、支出額が予定よりも少額で済んだため。
KAKENHI-PROJECT-15K09880
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K09880
妊娠中や授乳中における精神科治療の意思決定支援システムの開発と有効性に関する研究
平成28年度も引き続き無作為化比較対象試験を継続していくため、主たる研究費目として研究参加者に対する謝金を予算計上している。平成29年度の無作為化比較対照試験実施についての費用及び、プログラムの均てん化のための経費に使用予定である。
KAKENHI-PROJECT-15K09880
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グローバル生産体制の再編と雇用管理の変化に関する調査研究-電機産業の事例-
本研究は、グローバル化の下で日本企業が生産・分業体制の再編をどのように進めているのか、また、それが国内の産業や雇用にいかなる影響を及ぼしているのかを明らかにすることを課題とした。研究の柱の一つは家電産業のグローバル生産体制及び東南アジアでの生産実態の調査であった。この調査で、第一にアジアでの現地生産の多くは市場立地型であり、国内の生産を維持しているとこちが少なくない。第二にその背景には技術や輸送費、納期などの問題があるが、同時に消費者の嗜好が地域によって異なることもあり、国内生にはメリットがある。第三に東南アジアでは現地市場にむけ地域ニーズに対応した製品を生産しているが、生産基盤は整っており、現地生産の障害は少ない。第四にアジアに移転したのはほとんどが量産工程である。研究開発や設計、試作などは日本国内に維持されており、その役割は大きいことなどが明らかになった。研究のもう一つの柱は海外生産が地域産業や雇用へ及ぼす影響に関する調査である。生産の海外移転の地域経済への影響は多様であり、地域産業構造によって異なる。福島県のように組立て工程を中心にした産業構造の場合は、量産機能がアジアに移転したため生産の縮小が顕著で、地域産業の「空洞化」や雇用の削減が進んでいる。他方、坂城町や北上市のように多様な基盤的技術をもつ中小企業が立地し、複合的な構造をもつ地域では、取引先が海外シフトしても、生産品を見直し、取引を多様化することなどによって対応できている。ただ、中小企業では受注ロットの縮小、単価の低下などが生じており、それへの対応が迫られている。雇用の大きな削減は生じていないが、正社員は幅に減少し、正社員の非正社員への置き換えが進んでいる。とくに製造業の求人では業務請負業が大きな割合を占めている。この結果、雇用機会が量的に確保されても、雇用の中身には問題が生じているということができる。本研究は、グローバル化の下で日本企業が生産・分業体制の再編をどのように進めているのか、また、それが国内の産業や雇用にいかなる影響を及ぼしているのかを明らかにすることを課題とした。研究の柱の一つは家電産業のグローバル生産体制及び東南アジアでの生産実態の調査であった。この調査で、第一にアジアでの現地生産の多くは市場立地型であり、国内の生産を維持しているとこちが少なくない。第二にその背景には技術や輸送費、納期などの問題があるが、同時に消費者の嗜好が地域によって異なることもあり、国内生にはメリットがある。第三に東南アジアでは現地市場にむけ地域ニーズに対応した製品を生産しているが、生産基盤は整っており、現地生産の障害は少ない。第四にアジアに移転したのはほとんどが量産工程である。研究開発や設計、試作などは日本国内に維持されており、その役割は大きいことなどが明らかになった。研究のもう一つの柱は海外生産が地域産業や雇用へ及ぼす影響に関する調査である。生産の海外移転の地域経済への影響は多様であり、地域産業構造によって異なる。福島県のように組立て工程を中心にした産業構造の場合は、量産機能がアジアに移転したため生産の縮小が顕著で、地域産業の「空洞化」や雇用の削減が進んでいる。他方、坂城町や北上市のように多様な基盤的技術をもつ中小企業が立地し、複合的な構造をもつ地域では、取引先が海外シフトしても、生産品を見直し、取引を多様化することなどによって対応できている。ただ、中小企業では受注ロットの縮小、単価の低下などが生じており、それへの対応が迫られている。雇用の大きな削減は生じていないが、正社員は幅に減少し、正社員の非正社員への置き換えが進んでいる。とくに製造業の求人では業務請負業が大きな割合を占めている。この結果、雇用機会が量的に確保されても、雇用の中身には問題が生じているということができる。本研究は、経済のグローバル化の下で日本企業がグローバルな生産・分業体制の再編をどのように進めているか、またその下でいかなる雇用管理が行われ、それがマクロレベルの労働市場にどのような影響を及ぼしているのか、実証的に考察することを課題としている。今年度は、電機企業などの聞き取り調査を行い、家電産業のグローバル生産体制及び東南アジアでの生産実態について分析した。これらの調査を通じて、第一に、家電製品のアジアへの生産移管は進み、海外生産比率は高まっているが、海外生産の多くは現地市場にむけたもので市場立地型といえる。したがって、日本国内むけ製品は国内生産を維持しているところが少なくないことがわかった。第二に、日本国内むけに国内生産を維持している背景には、技術の問題や雇用維持の方針、輸送費コストの問題などがあるが、同時に消費者の嗜好性が地域によって異なることもある。また、製品の変化が激しく短納期が求められることもあり、日本市場むけ製品を国内で生産することは一定のメリットがある。第三に、東南アジアでの生産は、一部に日本市場むけもあるが、東南アジアおよび周辺地域の市場むけが中心で、それらの地域ニーズに対応した製品を生産していることが明らかになった。現地のオペーレーションは大体順調といえる。とくにタイの場合は、日系企業の集積が進んでおり、労働力、技術、部品調達等多くの点で現地生産に問題がないといえよう。第四に、日系企業のなかには中国での生産を拡大しているところが増えているが、それは中国市場向けのものが中心であり、低コスト生産をめざした生産の移管ということになっていない。東南アジアでの生産を維持しつつ、中国市場の伸びにあわせて中国に生産拠点を設けるというのが多くの企業の戦略である。
KAKENHI-PROJECT-14530062
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グローバル生産体制の再編と雇用管理の変化に関する調査研究-電機産業の事例-
現地での日系企業の集積や部品調達などを考えた場合、東南アジアでの生産を中国に移管するメリットは小さいといえる。本年度は、昨年までに行った東南アジアでの日本企業の生産・事業活動の調査や日本の多国籍企業の国際戦略についてまとめるとともに、グローバル化の地域産業や地域労働市場へ及ぼす影響について福島県と長野県で調査を行った。これらの調査を通じて、生産の海外移転は、企業により、また生産品によって実態や戦略上の位置づけが異なっているが、全体としては、量産工程は海外展開が進んでいる一方、研究開発や設計、試作などは日本国内に維持されていること、また、新モデルや技術的な変化の早い製品などは国内で生産されているものが少なくないことが明らかになった。こうしたなかで、生産の海外シフトの地域経済や中小企業などへの影響も多様である。地域産業への影響という点では、福島県のように、従来から組立て型の量産工程を中心にした産業構造の場合には、量産機能の多くがアジアなどに移転したため、生産の縮小が顕著で、中小企業へ大きな影響をもたらしつつ地域産業の「空洞化」とその下での雇用の縮小が進んでいる。他方、独自の産業的な展開をしてきた長野県などをみると、取引先は海外シフトしても、生産品を見直し、取引を多様化することなどによって対応しており、生産はかなり維持されている。ただ、地域の中小企業では、受注ロットの縮小、単価の低下などが生じており、生産変動やコストダウンへの対応が迫られている。こうしたなかでリストラも行われているが、雇用機会は確保されており、雇用への影響は小さい。しかし、雇用の中身をみると、コストダウンの下で正社員は大幅に減少し、正社員の非正社員への置き換えが進んでいる。求人の面でもパート、派遣、業務請負などが増大しており、とくに製造業の求人については、業務請負業の求人が大きな割合を占めてきている。この結果、雇用機会が量的に確保されても、雇用の中身には問題があるということができる。本年度も、引き続いて東南アジアにおける日系企業の海外生産について聞き取り調査に取り組むとともに、地域産業政策について事例研究を行なった。本年度はマレーシアで調査を行ない、日系企業がアジアでの生産再編に取り組んでいることが明らかになった。マレーシアでは、日系企業の撤退もはじまっており、立地件数も減少傾向にある。その要因の一つは、マレーシアでの賃金上昇と不安定な労使関係である。とくに、マレーシアには電機関連の部品生産が集積し、アジア各地の生産を支えていたが、部品生産は国際競争がとりわけ厳しく、たえずコスト削減が求められている。そのため、マレーシアよりも低賃金の地域へ生産拠点の移転が進んでいる。第二に、日本の電機メーカーは最適地生産の確立をめざし、生産拠点の集約化の方向で生産体制を見直している。その際、東南アジアレベルで生産の集約化を進めており、それがマレーシアでの生産縮小に結びついている。マレーシアも経済発展の下で、サービス産業をはじめ、より付加価値の高い産業構造への転換を進めている。日本企業のなかには、研究開発を現地化する動きもある程度みられるが、それが従来の日本国内での研究開発体制を変えるものとはいえないであろう。
KAKENHI-PROJECT-14530062
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14530062
遍歴的重い電子のスピン量子揺らぎと秩序形成に関する研究
(1-1)重い電子のSDW転移とスピンキャップ形成に関する研究、(1-2)T=0の量子転移研究。(1-1) (1-2)の研究はCe(Ru4-_xRh_x)2Si2の単結晶について研究し新しい成果を得た。特に量子臨界点近傍のx=0.5の化合物率及び磁気抵抗の実験による量子相転移の研究では外場Hにより量子臨界点を調節し1)H>2T、フェルミ液体、2)T>H>スピンの揺らぎの平均場理論の適用領域、3)100Gauss>H、量子Griffiths相と理解出来る成果を得た。さらには、x=0いて線形磁化率及び非線形磁化率の測定を50mkの低温迄行い強磁性的スケーリング関数で表される事を明らかにした。緩和率の測定を30mkの低温まで行いT=0の量子Griffiths相転移として理解できる事を明らかにした。(II)の研究はUR_u2Si2単結晶の圧力下の中性子散乱の研究により四重極交換相互作用と反強磁性的交換相互作用との競合した*成功し、17.5kの相転移は四重極相転移である事を示した。UR_u2Si2は1986年に17.5kで0.03μBのordered momentであり、1.5k以下で超伝導が現れる磁性と超伝導の共存した系として注目されていた。我々は非線形磁化率の測定からと***の共存であり、磁気的には動的に揺らいでいる可能性を指摘していた。通常、重い電子は圧力下では磁気モーメントに小さくなるがUR_u2Si2の場合は圧力を加えると大きくなり、-1.5GP_2で1次相転移によりイジング型の反強磁性が生じ1.5G力下では常磁性であることが明らかになった。(1-1)重い電子のSDW転移とスピンキャップ形成に関する研究、(1-2)T=0の量子転移研究。(1-1) (1-2)の研究はCe(Ru4-_xRh_x)2Si2の単結晶について研究し新しい成果を得た。特に量子臨界点近傍のx=0.5の化合物率及び磁気抵抗の実験による量子相転移の研究では外場Hにより量子臨界点を調節し1)H>2T、フェルミ液体、2)T>H>スピンの揺らぎの平均場理論の適用領域、3)100Gauss>H、量子Griffiths相と理解出来る成果を得た。さらには、x=0いて線形磁化率及び非線形磁化率の測定を50mkの低温迄行い強磁性的スケーリング関数で表される事を明らかにした。緩和率の測定を30mkの低温まで行いT=0の量子Griffiths相転移として理解できる事を明らかにした。(II)の研究はUR_u2Si2単結晶の圧力下の中性子散乱の研究により四重極交換相互作用と反強磁性的交換相互作用との競合した*成功し、17.5kの相転移は四重極相転移である事を示した。UR_u2Si2は1986年に17.5kで0.03μBのordered momentであり、1.5k以下で超伝導が現れる磁性と超伝導の共存した系として注目されていた。我々は非線形磁化率の測定からと***の共存であり、磁気的には動的に揺らいでいる可能性を指摘していた。通常、重い電子は圧力下では磁気モーメントに小さくなるがUR_u2Si2の場合は圧力を加えると大きくなり、-1.5GP_2で1次相転移によりイジング型の反強磁性が生じ1.5G力下では常磁性であることが明らかになった。科研基盤B(1998)報告重い電子系化合物Ce(Ru1-xRhx)2Si2は1)x<0.03,フェルミ液体,2)0.03<x<0.4,SDW,3)0.4<x<0.5,非フェルミ液体,4)x>0.5,局在型のスピンの反強磁性等多彩な基底状態が現われる。この混晶系の研究に特に力を注いだ。(I)重い電子系化合物Ce(Ru1-xRhx)2Si2(x=0,0.03and0.05)はKondo効果により約5K以下非常に狭い準粒子バンド(30K)が形成されフェルミ液体になる。準粒子のスピンの揺らぎと相転移について研究した。(イ)比熱、帯磁率の結果をSCR理論により解析しJ.Phys.Soc.Jpnに投稿した。(ロ)電気抵抗、μSRによる研究。論文投稿準備中(フランスとの共著)。(ハ)中性子散乱実験。論文準備中。また、ドイツの共同研究継続中。(ロ)μSR及電気抵抗。(1)の結果と共にフェルミ,非フェルミ液体中のスピンの揺らぎに関する論文を投稿準備中。(IV)U2Rh3Si5は四重極相転移を伴った反強磁性相転移を示す。熱膨張、磁歪についての研究がPhys.Rev.B(11月、1997)に掲載された(オランダのグループとの共著)。また、強磁場(20T)でのメタ磁性転移について解析中(オランダのグループとの共同研究)。
KAKENHI-PROJECT-09440137
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遍歴的重い電子のスピン量子揺らぎと秩序形成に関する研究
(1) CeRu_2Si_2は近藤温度が24Kで基底状態はフェルミ液体である。100K以上の高温ではCeの4f電子のスピンは局在しているが低温では遍歴的な準粒子になっている。この転移により結晶に大きな体積変化が生ずる。この2つの異なる電子状態間の温度による遷移を3d電子系のFe合金に見られるlow spin-high spin statesの2準位間の転移によるINVAR効果と対比させて研究した。(2)最近の重い電子系研究のトピックスとして非フェルミ液体的振舞いの原因とその基底状態の研究がある。非フェルミ液体的振舞いは常磁性と反強磁性相の境界付近で現れT=0の量子相転移の可能性が指摘されている。Ce(RU_<1-x>Rh_x)_2Si_2の基底状態は0.03<x<0.4がSDW,x>0.5がq(1/2,1/2,0)の反強磁性である。この物質は3つの臨界点をもつ利点がある。x=0.03ではフェルミ液体であり、q_3(0,0,0.35)の相関長は60Åである。x=0.03の臨界点ではT=0の相転移を示唆ミュオン・スピンの緩和の温度変化が得られた。他方、x=0.4と0.5では非フェルミ液体的振る舞いを示しμSRの実験では、微小磁気クラスターの揺らぎが観測されGriffiths相的な基底状態であることをしめした。また非フェルミ液体的振舞いはRu,Rhのランダム分布のため磁気相互作用の競合が生じshort range orderの発達がないことがμSRにより示唆されている。Ce(Ru_<1-x>Rh_x)_2Si_2の非フェルミ液体を示すx=0.4,0.5等について相転移をT_N<0の領域にまで拡張したscaling理論により解析しT=0で帯磁率、比熱は発散傾向を示すが、転移温度はT_N=<0でありT=0で相転移がない事を示した。このscaling則による研究結果はμSRの結果を支持するものである。(Iー1)重い量子のSDW転移とスピンギャッフ形成に関する研究、(I-2)T=0の量子相転移研究、(I-1)と(I-2)の研究はCe(Rul-xRhx)2Si2の単結晶について研究し新しい成果を得た。特に量子臨界点近傍のx=0.5の化合物に対する磁化率及び磁気抵抗の実験による量子相転移の研究では外場Hにより量子臨界点を調節し1)H>2T、フェルミ液体、2)1T>H>100Gauss、スピンの揺らぎの平均場理論の適用領域、3)100Gauss>H、量子Griffiths相と理解できる成果を得た。さらには、x=0.5の試料について線形磁化率及び非線形磁化率の測定を50mkの低温迄行い強磁牲的スケーリング関数で表される事を明らかにした。μSRによる緩和率の測定を30mKの低温まで行いT=0の量子Griffiths相転移として理解できる事を明らかにした。(II)の研究はURu2Si2単結晶の圧力下の中性子散乱の研究により四重極交換相互作用と反強磁性的交換相互作用との競合した磁性の**に成功し、17.5Kの相転移は四重極相転移である事を示した。URu2Si2は1989年に17.5Kで0.03μBのorderd momentを持つ**性である。1.5K以下で超伝導が現れる磁性と超伝導の共存した系として注目されていた。我々は非線形磁化率の測定から四重極相転移と超伝導の共存であり、磁気的には動的に揺らいでいる可能性を指摘していた。通常、重い量子は圧力下では磁気モーメントは圧力と共に小さくなるがURu2Si2の場合は圧力を加えると大きくなり、-1.5GPaで1次相転移によりイジング型の反強磁性が生じ1.5GPa以下の圧力下では常磁性であることが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-09440137
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繊維強化複合材料へのクラック進展阻止機構の導入
繊維強化複合材料は次世代材料として喧伝されて久しいが、当初予想された程の実用化には至っておらず、その特性や信頼性の向上が課題となっている。この課題を解決するためには変形中に繊維・マトリックス破断により形成されるクラックの進展を阻止する機構を導入する必要がある。本研究では、炭化珪素繊維強化TiAl金属間化合物および炭化珪素繊維強化BMAS(結晶化ガラス)を用いて実験的検討を行うとともに、それらをもとに、界面や構成要素の種類・量を設計できる複合材料特有の長所を利用したクラック進展阻止機構のの導入条件を予測できるモデル化・シミュレーション法の開発を行った。主な結果は以下のように要約される。(1)モードIクラック先端のエネルギー解放率は剥離長さの増加と共に急激に低下すること、また、その結果、低強度・低靭性の原因となるモードI破壊を阻止するためには僅かの界面剥離(繊維径の数倍程度)で大きな効果があることを明らかにした。(2)界面剥離が生じる条件として、モードIIタイプの破壊がモードIタイプの破壊に先駆けて生じることが必要で有ることを実験的に明らかにした。また、破壊力学計算より前者と後者の比が約0.3以下のときこの条件が満足されることを見いだした。(3)界面剥離はマトリックスの弾性率が低く、繊維体積率が低い場合は不安定に成長するが、そうでない場合は、安定成長することを明らかにした。(4)マトリックスに引張残留応力、繊維に圧縮残留応力が存在する場合、マトリックス破壊に起因する界面剥離は促進され、繊維破壊に起因するそれは遅らされることを明らかにした。繊維破断・マトリックス破断が材料内各所で空間的にばらついて発生する場合の界面剥離の進行を記述するには、破断点間の相互作用を解かねばならず、これまで重要な課題であるにも拘らずほとんど踏み込んだ研究は無かった。本研究では、モデリング・シミュレーション法を開発した。(5)マトリックス側を高弾性、繊維側を低弾性となるような繊維への傾斜および多重コーティングは、コーティング層が壊れてモードI破壊が起こる場合にも、繊維強度低下を防ぐ効果があることを明らかにした。また、マトリックスやコーティング層の多重破断はクラック間隔の減少により、クラック先端のエネルギー解放率を低下させることを明らかにした。(6)炭化珪素繊維強化TiAl金属間化合物および炭化珪素繊維強化BMAS(結晶化ガラス)を用いて、繊維への応力伝達をそれほど低下させない程度に界面を弱くすることによりクラック進展阻止できることを実験的に証明した。炭化珪素繊維強化TiAl金属間化合物および炭化珪素強化BMAS(結晶化ガラス)を用いて、主として界面接着を弱くすることによるクラック進展阻止機構の導入を検討した。また、平行して同試料を用いてマトリックスの多重破断による効果を吟味した。主な結果は以下のように要約される。(1)インストロン試験機を用いて、応力-歪曲線、引張強さ、荷重-COD曲線および破壊靱性を測定した。同時に、繊維破断、界面剥離、クラック形成、クラック進展等の挙動を現有の測微顕微鏡やSEMで観察した。その結果、界面剥離が生じた場合、クラックの進展は止められることが実証できた。(2)界面剥離が生じる条件として、モードIIタイプの破壊がモードIタイプの破壊に先駆けて生じることが必要であることを実験的に明らかにした。また、破壊力学計算より前者と後者の比が約0.3以下のときこの条件が満足されることを見いだした。(3)界面剥離のエネルギー解放率は、繊維・マトリックスの弾性定数や繊維体積率によって異なり、マトリックスの弾性率が高く繊維のそれが低いほど、また繊維体積率が低いほど大きくなることを明らかにした。(4)界面剥離はマトリックスの弾性率が低く、繊維体積率が低い場合は不安定に成長するが、そうでない場合は、安定成長することを証明した。(5)マトリックスの多重破断はモードIタイプのクラック進展のエネルギー解放率を低減することを明らかにした。繊維強化複合材料は次世代材料として喧伝されて久しいが、当初予想された程の実用化には至っておらず、その特性や信頼性の向上が課題となっている。この課題を解決するためには変形中に繊維・マトリックス破断により形成されるクラックの進展を阻止する機構を導入する必要がある。本研究では、炭化珪素繊維強化TiAl金属間化合物および炭化珪素繊維強化BMAS(結晶化ガラス)を用いて実験的検討を行うとともに、それらをもとに、界面や構成要素の種類・量を設計できる複合材料特有の長所を利用したクラック進展阻止機構のの導入条件を予測できるモデル化・シミュレーション法の開発を行った。主な結果は以下のように要約される。(1)モードIクラック先端のエネルギー解放率は剥離長さの増加と共に急激に低下すること、また、その結果、低強度・低靭性の原因となるモードI破壊を阻止するためには僅かの界面剥離(繊維径の数倍程度)で大きな効果があることを明らかにした。(2)界面剥離が生じる条件として、モードIIタイプの破壊がモードIタイプの破壊に先駆けて生じることが必要で有ることを実験的に明らかにした。また、破壊力学計算より前者と後者の比が約0.3以下のときこの条件が満足されることを見いだした。(3)界面剥離はマトリックスの弾性率が低く、繊維体積率が低い場合は不安定に成長するが、そうでない場合は、安定成長することを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-07555491
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繊維強化複合材料へのクラック進展阻止機構の導入
(4)マトリックスに引張残留応力、繊維に圧縮残留応力が存在する場合、マトリックス破壊に起因する界面剥離は促進され、繊維破壊に起因するそれは遅らされることを明らかにした。繊維破断・マトリックス破断が材料内各所で空間的にばらついて発生する場合の界面剥離の進行を記述するには、破断点間の相互作用を解かねばならず、これまで重要な課題であるにも拘らずほとんど踏み込んだ研究は無かった。本研究では、モデリング・シミュレーション法を開発した。(5)マトリックス側を高弾性、繊維側を低弾性となるような繊維への傾斜および多重コーティングは、コーティング層が壊れてモードI破壊が起こる場合にも、繊維強度低下を防ぐ効果があることを明らかにした。また、マトリックスやコーティング層の多重破断はクラック間隔の減少により、クラック先端のエネルギー解放率を低下させることを明らかにした。(6)炭化珪素繊維強化TiAl金属間化合物および炭化珪素繊維強化BMAS(結晶化ガラス)を用いて、繊維への応力伝達をそれほど低下させない程度に界面を弱くすることによりクラック進展阻止できることを実験的に証明した。繊維系複合材料の特性や信頼性の向上を実現するには変形中に繊維・マトリックス破断により形成されるクラックの進展を阻止する機構を導入する必要がある。本年度は、界面制御効果について検討を行った。主な成果は以下のように要約される。(1)界面接着が強いと繊維への応力伝達効率は高いがモードIクラックの進展のため複合料強さは低い。界面接着を弱めると小規模の剥離を生じ、比較的高い応力伝達効率とクラック進展阻止能力を併せ持つ状態となり強さは高くなる。しかし界面接着を弱めすぎる大規模剥離が生じ、クラックは進展しないものの、繊維への応力伝達効率がきわめて低くなり、強さは低くなる傾向がある。炭素繊維強化炭素(C/C)、炭化珪素繊維強化炭化珪素(SiC/SiC)複合材ではこの傾向を実験的に確認し、シェア・ラグ・シミュレーション法で再現した。(2)複合材中に存在するクラックの進展を防ぐには、クラック進展(モードI破壊)前に界面剥離(モードII破壊)を生じさせ、クラック先端を鈍化させる必要がある。そのための条件を破壊力学的計算から求めた。その結果、モードIクラック進展の臨界エネルギー解放率の約30%以下にモードIIクラック進展の臨界江エネルギー解放率を押さえるよう界面を制御すれば強度低下を妨げることがわかった。繊維強化複合材料は次世代材料として喧伝されて久しいが、当初予想された程の実用化には至っておらず、その特性や信頼性の向上が課題となっている。この課題を解決するためには変形中に繊維・マトリックス破断により形成されるクラックの進展を阻止する機構を導入する必要がある。本研究では、炭化珪素繊維強化TiAl金属間化合物および炭化珪素繊維強化BMAS(結晶化ガラス)を用いて実験的検討を行うとともに、それらをもとに、界面や構成要素の種類・量を設計できる複合材料特有の長所を利用したクラック進展阻止機構のの導入条件を予測できるモデル化・シミュレーション法の開発を行った。主な結果は以下のように要約される。(1)モードI
KAKENHI-PROJECT-07555491
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法的親子関係の成否と子の利益
法的な親子関係の認定にあたって、血縁関係の有無が考慮要素となることはいうまでもない。しかし、血縁上の親子関係と法律上の親子関係が一致しない場合が生ずることは避けられない。その場合に、直截に血縁関係の存否に即して法的な親子関係の成否を決するのか、それとも何らかの例外を認めるべきなのかといった問題は、実親子法の根幹にかかわる問題である。本研究は、ドイツ親子法との比較研究に示唆を得ることにより、法的な親子関係の成否を決するにあたり考慮すべき要素を明らかにするとともに、重大な利害関係人である子の利益を法的な親子関係の創設・否認の場面でどのように位置づけ、確保すべきかについて検討することを目的とする。法的な親子関係の認定にあたって、血縁関係の有無が考慮要素となることはいうまでもない。しかし、血縁上の親子関係と法律上の親子関係が一致しない場合が生ずることは避けられない。その場合に、直截に血縁関係の存否に即して法的な親子関係の成否を決するのか、それとも何らかの例外を認めるべきなのかといった問題は、実親子法の根幹にかかわる問題である。本研究は、ドイツ親子法との比較研究に示唆を得ることにより、法的な親子関係の成否を決するにあたり考慮すべき要素を明らかにするとともに、重大な利害関係人である子の利益を法的な親子関係の創設・否認の場面でどのように位置づけ、確保すべきかについて検討することを目的とする。
KAKENHI-PROJECT-19K23157
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乳癌個別化診断を目標とする新規エストロゲンシグナル経路の解析と検査法の開発
エストロゲン依存性乳癌において,その存在が示唆されながらも詳細が不明であったた膜型エストロゲン受容体(ER)の信号経路を解析するために選択的リガンドを開発した。このリガンドにより刺激された膜型ERの信号系にはERK系のリン酸化経路が関与しており,核内ERをリン酸化して活性化するほか,Elk-1など他の転写因子をも活性化していることが示唆された。さらにエストロゲン枯渇耐性株を用いた研究から,耐性株では極微量のエストロゲンを効率よく利用するために膜型ERの発現が増加し,より低濃度で増殖可能であるなど,膜型ERはホルモン療法耐性に一定の関与をしていることを明らかにした。24年度の研究は膜型エストロゲン受容体(ER)選択的リガンドを活用することによる各種細胞の応答性と核内ERαへの信号伝達経路・応答遺伝子の解析を主として進め,我々が開発したリガンドが細胞内へ侵入しないさらなるエビデンス,核内ERへの信号伝達にMAPK系のリン酸化カスケードが関与している可能性が示唆された。先に開発したestradiol (E2)の6位に量子マテリアルQdotを結合したQdot-E2およびQdot-6-estrone (Qdot-E1)ををERE-GFPレポーター遺伝子を安定導入したMCF-7E10細胞に作用させたところ,Edot-E2と遊離E1は遊離E2と同様に細胞増殖,ERE活性を亢進したのに対し,Qdot-E1はこれらの応答を起こさなかった。遊離E1は細胞内に取り込まれた後E2に変換されて活性を発現すると考えられ,この結果はエストロゲンがQdotから切断されて細胞内に取り込まれていないことを指示している。また,ERE活性の亢進はルシフェラーゼアッセイによっても確認される一方,これらの効果は抗エストロゲン剤の添加によって抑制され,さらに当研究室で樹立したエストロゲン枯渇耐性株2種のうち,核内ER高発現型は応答し,ER消失型が不応答であったことから,膜型ERより核内ERへの信号伝達が行われていることが確認された。これらの結果は膜型ERと核内ERが密接に関連していることを示唆している。一方,Qdot-E2で刺激した細胞における各種リン酸化経路に関わる分子の解析を行ったところ,MAPK系のERK1/2のリン酸化亢進が認められ,このリン酸化経路が膜ERからの信号伝達に関与している可能が示された。これに対してPI3K系(Akt)のリン酸化亢進は認められなかった。25年度は,膜型エストロゲン受容体(ER)とestradiolの6位に量子マテリアルQdotを結合した膜型ER特異的リガンド(Qdot-E2)との相互作用を視覚的に確認するとともに,膜型ERのホルモン療法耐性への関与について検討した。ERE-GFPレポーター遺伝子を安定導入したMCF-7-E10細胞に担体であるQdotのみを添加し,共焦点顕微鏡を用いて観察するとその赤色螢光はまばらで集塊状に分布していたのに対し,Qdot-E2添加時にはリガンドに反応したGFP陽性細胞を囲むように細胞膜に沿ってQdotの赤色蛍光が確認された。さらに,GFPを結合しかつ核移行ドメイン配列を欠損させたER遺伝子ベクターGFP-ER(ΔNLS)を作成してMCF-7細胞に導入し,この細胞にQdot-E2を添加したところ,ERの緑色蛍光とQdotの赤色蛍光が重なっている像を観察することができ,膜型ERとQdot-E2が結合していることが示された。また,ERα遺伝子よりリガンド依存的活性化領域のみを切り出しmammalian one-hybrid assayを行うことにより,Qdot-E2が核内に移行していないことを機能面からも確認した。引き続き,本研究室でホルモン療法耐性モデルとして樹立されたエストロゲン枯渇耐性(ER陽性)株を用いて膜型ERの枯渇耐性への関与について検討を加えた。各細胞画分におけるERαの分布を比較したところ,耐性株では膜画分におけるERαの分布比(膜/核)が2-3倍上昇しており,Qdot-E2添加時には親株より低濃度で増殖応答が見られることを確認した。この結果より,エストロゲン枯渇状態下では低濃度のリガンドを有効に利用するためERαの核内から膜への移行が促進されていると考えられ,膜型ERは枯渇耐性機序にある程度関与していることが推測された。現在投稿論文準備中である。エストロゲン依存性乳癌において,その存在が示唆されながらも詳細が不明であったた膜型エストロゲン受容体(ER)の信号経路を解析するために選択的リガンドを開発した。このリガンドにより刺激された膜型ERの信号系にはERK系のリン酸化経路が関与しており,核内ERをリン酸化して活性化するほか,Elk-1など他の転写因子をも活性化していることが示唆された。さらにエストロゲン枯渇耐性株を用いた研究から,耐性株では極微量のエストロゲンを効率よく利用するために膜型ERの発現が増加し,より低濃度で増殖可能であるなど,膜型ERはホルモン療法耐性に一定の関与をしていることを明らかにした。23年度の研究は膜型エストロゲン受容体(ER)特異的リガンドの作製と機能評価を中心に行い,その結果,従来膜型ERの候補とされてきたGPR-30とは異なり,核内ERαと類似した構造を持つ膜型ERが存在するとの結論を得た。
KAKENHI-PROJECT-23590658
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乳癌個別化診断を目標とする新規エストロゲンシグナル経路の解析と検査法の開発
Estradiol(E2)の6位および17位にカルボキシル基を導入した誘導体をアミノ化された種々の不溶性担体に固定化し,調製した各種リガンドを乳癌細胞培養系に添加して細胞の応答を検討した。乳癌細胞として代表的なMCF-7にERE-GFPレポーター遺伝子を安定導入したMCF-7-E10株を活用し,ER活性および増殖を指標として評価した。その結果,大きさ,流動性,均一性などの点から担体としてnmサイズの量子マテリアルであるQdotを採用した。またE2の6位を介して結合させたQdot-6-Eでは遊離E2と同程度に増殖誘導とGFP発現がみられたのに対し,17位を介して結合させたQdot-17-Eでは効果がみられなかった。この結果は膜ERへのリガンド結合から核内ERへと繋がる信号系が存在すること,および受容体-E2コンフォメーションの重要性を示している。他のER陽性株T-47DにおいてもQdot-6-Eに対し同様の応答が認められたが,ER陰性株であるMDA-MB-231, SK-BR-3では応答がみられなかった。さらにMCF-7-E10培養系に抗ERα抗体を添加したところ,Qdot-6-Eによる上記の効果は抑制されたが,E2およびその6位誘導体の効果に変動は見られなかった。一方,従来膜ERとしての機能を持つとされているGPR-30に対する抗体を添加してもQdot-6-Eの効果は変わらず,今回応答しているERはGPR-30とは異なる分子である可能性が示唆された。前段で応答を観察した細胞4株は全てGPR-30陽性とされており,この結論を支持している。24年度の研究実施計画では主として細胞応答と信号経路・応答遺伝子の解析を目的とした。1) Qdot-E2とQdot-E1による細胞応答の評価より担体から遊離したエストロゲンあるいは結合体そのものが細胞核内に侵入していないことが支持された。2)代表的な細胞内リン酸化経路に関わる分子を検討し,MAPK系が亢進し,PI3K系は変化していないという結果が得られた。3)Qdot-E2によるエストロゲン応答遺伝子の変動解析は現在進行中である。23年度の研究実施計画とそれに対する結果は以下の通りである;1)種々のエストロゲン誘導体(ハプテン)を粒子系の異なるアミノ化不溶担体に固定化した膜型ERリガンド候補の作製。それぞれ複数種のハプテンと不溶性担体を組合せたリガンド候補10種のを作製を試みた。これらから最適と思われる機材を選択するために以下2)3)の検討を行った。2)各種リガンドの乳癌細胞培養系への添加による,細胞内への侵入やエストロゲンシグナル発現の検討。ERE-GFPレポーター遺伝子を安定導入した乳癌細胞株を用い,核内ER活性および増殖を指標として評価した。その結果,リガンドが膜ERを刺激し得ること,膜ERから核内ERへと伝達される信号経路が存在する可能性が示された。抗体添加実験の結果はリガンドが細胞内に侵入していないことを支持するものである。さらにこの結果から,リガンドに応答している膜ERは従来から示唆されていたGPR-30とは異なる分子であり,かつERαと類似構造を持つことが示唆された。3)ハプテンの構造,担体の違いによるリガンド特性の検討と選定。2)と並行して進め,流動性,均一性などを考慮した結果,ナノ粒子であるQdotが担体として最適と判断した。また,エストロゲンの結合位置が異なるQdot-6-EとQdot-17-Eに対する細胞応答の違いから,核内ER同様コンフォメーションの重要性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-23590658
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23590658
希望の原理としての法と政治
本研究は、「希望」という主題が、法学や政治学にとって論ずるに値する重要テーマであることを証明しようとする研究プロジェクトであり、いわば問題提起それ自体を目的とする、問題索出型の研究プロジェクトであった。結果として、各論としては、地域における司法過疎、医療現場におけるインフォームド・コンセント、売買春における人権問題への取り組み、不安定化する社会における所得保障、さらに非正規化する雇用問題への対応といった諸側面から、希望の問題に取り組んだ。結果として、現代社会における人権保障、紛争解決、合意形成という側面において、「希望」という視点を取り入れた上で、法や政治の諸問題に取り組むことの意義が示された。他方、総論としては、「希望」という視点が、ユートピアを前提とすることなく社会理論を構築する必要のある現代という時代において、新たな理論形成のための一つの鍵となること、また市民社会論をはじめとする既存の社会理論との接合が可能であることが示された。権力による強制という契機を含む法や政治の領域において、安易に、「希望」という主観的側面を含む要因を扱うことには、十分な注意が必要である。とはいえ、一人ひとりの個人が自らの人生を一定の時間軸において考え、社会的関係を結ぶ際に、希望という視点は不可欠である。今後、さらに、「希望」の定義、既存の諸観念との関係、操作可能性を含め、法学・政治学における「希望」研究は深められて行くべきであろう。今回の研究はその基盤を形成したと評価できる。本研究は、「希望」という主題が、法学や政治学にとって論ずるに値する重要テーマであることを証明しようとする研究プロジェクトであり、いわば問題提起それ自体を目的とする、問題索出型の研究プロジェクトであった。結果として、各論としては、地域における司法過疎、医療現場におけるインフォームド・コンセント、売買春における人権問題への取り組み、不安定化する社会における所得保障、さらに非正規化する雇用問題への対応といった諸側面から、希望の問題に取り組んだ。結果として、現代社会における人権保障、紛争解決、合意形成という側面において、「希望」という視点を取り入れた上で、法や政治の諸問題に取り組むことの意義が示された。他方、総論としては、「希望」という視点が、ユートピアを前提とすることなく社会理論を構築する必要のある現代という時代において、新たな理論形成のための一つの鍵となること、また市民社会論をはじめとする既存の社会理論との接合が可能であることが示された。権力による強制という契機を含む法や政治の領域において、安易に、「希望」という主観的側面を含む要因を扱うことには、十分な注意が必要である。とはいえ、一人ひとりの個人が自らの人生を一定の時間軸において考え、社会的関係を結ぶ際に、希望という視点は不可欠である。今後、さらに、「希望」の定義、既存の諸観念との関係、操作可能性を含め、法学・政治学における「希望」研究は深められて行くべきであろう。今回の研究はその基盤を形成したと評価できる。本研究は、「希望」という主題が、法学や政治学にとって論ずるに値する重要テーマであることを証明しようとする研究プロジェクトであり、いわば問題提起それ自体を目的とする、問題索出型の研究プロジェクトである。はたして、現代において「希望」がしばしば論じられているのはなぜなのか、その背景にある問題意識は何なのか、.そしてとくに法学・政治学という分野においてとくにこのテーマに着目するのはなぜなのか。本年度は、これらの論点について、参加者間の問題意識のすりあわせを行った。そのためにまず、各自が「希望」というテーマと関連して、論文を執筆した。その成果が研究発表欄にある一連の論文であり、本プロジェクトの参加者の論文を中心に、一つの雑誌の特集を構成するに至った。その際にはとくに、ジェンダーの問題、医療における患者の人格の問題、記憶の問題に焦点があてられた。他方で、さらなる研究のために、全体としての理論的枠組みの構築を目指した。その結果、以下のような論点が浮上してきた。(1)「心の問題」と経済・社会構造や法・政治制度の関係、(2)自己決定論の再検討(とくにネオリベラリズムとの関係)、(3)希望と時間の関係(記憶、いまだ到来していないものへのコミットメント)、(4)労働の新たなる意味づけ、(5)グローバル社会における社会的ネットワークと差別、である。本年度は、これらの論点ごとに討論を行い、今後の論文執筆のための理論的土台が構築された一年であった。本年度は研究のとりまとめにあたる年であり、法学・政治学の視点から希望について考える本研究のこれまでの研究成果の発表に重点が置かれた。法学においては研究成果にもあるように、広渡が憲法学、佐藤が法社会学の視点から研究を発表した。このうち、佐藤のものは、本研究で行った岩手県釜石市における地域調査の結果でもある。また水町が労働法の視点から希望について口頭発表し、今後論文にまとめる予定である。政治学では、岡野が政治学会の年報で希望をサブテーマの一つとする特集に論文を発表した他、宇野が同じく政治学会大会の共通論題で希望と格差について研究発表を行った。さらに希望をめぐる日本での考察について世界の他の地域と比較を行うため、国際シンポジウムを開催し、アメリカ、オーストラリアなどから多数の研究者を招き、発表と討議を行った。希望は従来、法学や政治学では十分に議論されてこなかったテーマであるが、格差や排除に注目が集まる今日、法学や政治学においても真剣な取り組みが求められるテーマとなっている。
KAKENHI-PROJECT-18530003
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18530003
希望の原理としての法と政治
本研究は、このような要請に応えるべく、法学や政治学の各分野において希望という視点を取り入れることで、どのように議論が豊かになるかを示すためのものであったが、上記のようにその役割を十分にはたしたと言える。たしかに権力との関係抜きは議論をすることができない法学・政治学の領域において、希望という捉えがたい、主観的な要因を取り扱うことには十分な注意が必要である。とはいえ、一人ひとりの個人が自らの人生を一定の時間軸において考え、社会的関係を結ぶ際に、希望という視点は不可欠である。ただし、いまだ法学や政治学における希望論はその初期段階にとどまり、定義や、既存の諸概念との関係も確定的ではない。今後さらにこれらの点についての議論を整理し、さらなる発展を目指す必要がある。
KAKENHI-PROJECT-18530003
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輸送規模の経済と集積の経済を含む空間経済システムの自己組織過程に関する研究
都市・輸送システムをはじめとした経済の空間システムが、マクロレベルでは、いわゆるランクサイズルール-に代表される、法則的な一極集中型を安定的な構造として持つことが、多くの実証研究で示されてきた。都市の人口、都市の輸送ハブとしての規模、さらに、都市における産業特化パターン(立地産業の種類・多様性)が強い相関を持つことは、すでに数多く指摘されており、上記の構造法則性が、単に現象として興味を惹くだけでなく、地域間貿易、および、交通・産業プロジェクトなどによる地域開発政策にも重要な問題を提起するものであることは明らかであった。一方、こうしたマクロレベルの構造法則性の創発メカニズムは、未だ明らかにされていない。本研究では、人口集積の経済および輸送における規模の経済を考慮することにより、大規模な都市・輸送システムの自己組織化をモデル化し、現実に観察される空間システムにおける構造法則性の創発メカニズムの解明に貢献した。研究期間中の成果として、次ぎが得られた。1997年度:輸送における規模の経済と産業立地の関係に焦点を当て、輸送における規模の経済(輸送密度の経済)が、内生的ハブ形成を通して産業集積の主要因になり得ることを示した。(研究成果は文献[1][2]参照)。1998年度:1)前年度に構築した、ハブ形成-産業集積モデルを基に、輸送密度および距離の経済を考慮して、ハブの形成、ハブの規模・位置・数、およびハブ間の階層構造を内生的に説明する、輸送網の自己組織化モデルを構築した。このモデルを用い、輸送における規模の経済の存在が、都市・輸送システムの構造法則性の創発を説明し得ることを示した(研究成果は文献[3]参照)。なお、このモデルの分析は現在も進行中である。2)消費財の多様性に基づく人口集積の経済を考慮することにより、都市形成、都市規模・位量・数を内生的に説明する都市システムの自己組織化モデルを構築し、人口集積の経済が、一極集中型の都市システム構造を生成する主要因になることを示した(研釧究成果は文献[4][5][6]参照)。3) (1)(2)のモデルを基に、都市・輸送システムの相互依存的自己組織化プロセスのモデル化を現在進行している(文献[8]参照)。本年度は、輸送費用が経済立地、更には、国際・地域経済の空間構造に及ぼす影響を、生産または消費外部性に起因する集積の経済、および、輸送密度の経済が存在する下で次のように分析した。1)輸送密度の経済が存在せず、集積の経済のみが働く状況を想定して、連続地域空間において、集積の経済と輸送費のバランスにより、都市の規模、位置、産業構造など、地域経済の空間構造が決まるメカニズムを明らかにした。また、開発された理論モデルを用い、数値シミュレーションによって、都市システムの階層的構造や工業ベルト地帯の形成などを説明した。2)1)モデル外生的に輸送ノードを導入することにより、輸送ノードで発生するハブ効果と集積の経済の相互作用についても分析した。3)輸送密度の経済を導入し、2)で考慮した輸送ノードの形成を内生的にモデル化し、ハブ効果と産業立地の相互作用の分析を行った。とくに、生産・消費の外部性による集積の経済が存在せず、輸送密度の経済のみが働く状況を想定して、離散地域空間において、地理的要因、生産技術、要素賦存が同一な地域群のある地域に輸送ハブが形成され、産業集積が起こり得ることを示した。また、輸送密度の経済の下では、輸送経路は集約化され、物流・人流が特定の経路に集中する傾向にあるため、画一的な輸送網の高度化より、特定の輸送経路を集中的に高度化(とくに輸送ハブ形成など)する方が効率的であることが示された。都市・輸送システムをはじめとした経済の空間システムが、マクロレベルでは、いわゆるランクサイズルール-に代表される、法則的な一極集中型を安定的な構造として持つことが、多くの実証研究で示されてきた。都市の人口、都市の輸送ハブとしての規模、さらに、都市における産業特化パターン(立地産業の種類・多様性)が強い相関を持つことは、すでに数多く指摘されており、上記の構造法則性が、単に現象として興味を惹くだけでなく、地域間貿易、および、交通・産業プロジェクトなどによる地域開発政策にも重要な問題を提起するものであることは明らかであった。一方、こうしたマクロレベルの構造法則性の創発メカニズムは、未だ明らかにされていない。本研究では、人口集積の経済および輸送における規模の経済を考慮することにより、大規模な都市・輸送システムの自己組織化をモデル化し、現実に観察される空間システムにおける構造法則性の創発メカニズムの解明に貢献した。研究期間中の成果として、次ぎが得られた。1997年度:輸送における規模の経済と産業立地の関係に焦点を当て、輸送における規模の経済(輸送密度の経済)が、内生的ハブ形成を通して産業集積の主要因になり得ることを示した。(研究成果は文献[1][2]参照)。1998年度:1)前年度に構築した、ハブ形成-産業集積モデルを基に、輸送密度および距離の経済を考慮して、ハブの形成、ハブの規模・位置・数、およびハブ間の階層構造を内生的に説明する、輸送網の自己組織化モデルを構築した。このモデルを用い、輸送における規模の経済の存在が、都市・輸送システムの構造法則性の創発を説明し得ることを示した(研究成果は文献[3]参照)。なお、このモデルの分析は現在も進行中である。
KAKENHI-PROJECT-09730009
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09730009
輸送規模の経済と集積の経済を含む空間経済システムの自己組織過程に関する研究
2)消費財の多様性に基づく人口集積の経済を考慮することにより、都市形成、都市規模・位量・数を内生的に説明する都市システムの自己組織化モデルを構築し、人口集積の経済が、一極集中型の都市システム構造を生成する主要因になることを示した(研釧究成果は文献[4][5][6]参照)。3) (1)(2)のモデルを基に、都市・輸送システムの相互依存的自己組織化プロセスのモデル化を現在進行している(文献[8]参照)。
KAKENHI-PROJECT-09730009
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3次元形状取得のためのスマートCMOSイメージセンサ
三次元形状計測は、産業用の検査技術、自動運転等様々な領域で大きな注目を浴びる技術となっている。中でも、比較的近距離を精緻に測距可能な三角測量に基づく光切断法は、高速・実時間に高精度な測距が可能な手法として産業用などへの応用が進んでいる。光切断法は、対象物体にシート状の1次元光を投影し、その物体上の輝線を高速に高精度に検出することが不可欠で、本研究では、チップのカラムごとに埋め込まれた最小電圧検出回路を用い二分探索手法にて輝線のおおよその位置を高速に探索したうえで、対象区間のみを精緻に施系探索することで、すべてのピクセルの輝度値をすべて読み出すことなく、高速、高精度に輝線位置の検出を可能とする手法の検討を行い、チップ試作を行うとともにシミュレーションにより評価を行った。本手法を実装することにより、高速・高効率な3次元形状取得の実現が可能となる。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。光切断法と呼ばれる3次元形状取得手法を、CMOSイメージセンサを用いて高速化する手法について、研究を行った。CMOSイメージセンサに必要な基本的な評価を、デバイスシミュレーションおよび回路シミュレーションを用いて行った。また、CMOSイメージセンサ上に実装可能な、輝線検出アルゴリズムの数値計算による評価を行った。光切断法においては、レーザー輝線を対象の物質に投影し、その輝線の位置を画像より検出することが必要であり、このステップの高速化が全体の高速化に寄与する。とくに、基線位置情報は、その計算に用いる2次元画像に比べて情報量が小さいため、何らかのアルゴリズムを用いて効率的に検出可能であることが期待される。本研究では、近年注目されているCompressed Sensingを用いた手法などについて検討を行った。また、このような回路を、コストを大きく増大させることなく実現可能な回路アーキテクチャについても検討を行った。Compressed Sensing以外にも、2分探索をベースとした手法などの検討も行い、回路的実現に関する同様の検討を行った。光切断法と呼ばれる3次元形状取得手法を、高速化する手法について、研究を行った。光切断法では、レーザー光による輝線の位置が重要である。この輝線検出を、従来のように、センサー外部の信号処理回路・CPUによって行うのではなく、センサー内部で検出が可能であるようなセンサーを提案した。従来は、このようなセンサーをつくろうとすると、センサー内部に大きな処理回路を置く必要があるため、センサーの解像度劣化が問題になった。本研究では、最小電圧回路を用いた2分探索・線形探索を提案し、この方式を用いることで、処理回路が占める面積を最小限に留めることができることを示した。提案したセンサーの輝線検出性能を確かめるために、シミュレーションを行った。これにより、最小電圧回路は輝線位置を検出するのに十分な性能を持っているため、輝線検出精度は、2分探索・線形探索が持つ元々の限界に近い性能を達成できる見込みであることを示した。また、提案したセンサーを実際に製造し、これを動作させるのに必要な制御部分の設計・製作も行った。制御部には、FPGAとよばれる、任意のディジタル回路を実現することができるデバイスを用いた。また、センサー上に組み込まれた制御回路に必要なデータを生成するために、FPGAに組み込まれたCPUを用いた。この制御回路をもちいて、製造したセンサーの基本的な性能と動作を確認した。測定結果について、期待と異なる部分については、設計に反映を行った。三次元形状計測は、産業用の検査技術、自動運転等様々な領域で大きな注目を浴びる技術となっている。中でも、比較的近距離を精緻に測距可能な三角測量に基づく光切断法は、高速・実時間に高精度な測距が可能な手法として産業用などへの応用が進んでいる。光切断法は、対象物体にシート状の1次元光を投影し、その物体上の輝線を高速に高精度に検出することが不可欠で、本研究では、チップのカラムごとに埋め込まれた最小電圧検出回路を用い二分探索手法にて輝線のおおよその位置を高速に探索したうえで、対象区間のみを精緻に施系探索することで、すべてのピクセルの輝度値をすべて読み出すことなく、高速、高精度に輝線位置の検出を可能とする手法の検討を行い、チップ試作を行うとともにシミュレーションにより評価を行った。本手法を実装することにより、高速・高効率な3次元形状取得の実現が可能となる。次に実現するべき手法について、数値計算などをもとにしたシミュレーションをもとに評価を行い、実現の可否や、それに必要な情報を収集することができた。実現に必要な制御部の設計・作成等を行い、基本的な性能の測定を行った。測定の結果を設計にフィードバックし、改良版の設計を完了した。27年度が最終年度であるため、記入しない。検討を行った新しい手法について、実際に回路およびシステムとして実現する。3次元測定システムとして全体を完成し、性能を測定して研究成果としてまとめる。既存の周波数・位相変調と今回の技術の組み合わせや、当研究室で研究しているセキュリティ分野と3次元測定の組み合わせのような技術についても検討し、3次元システムの性能向上を目指す。27年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-13J07038
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13J07038
一軸圧を駆使した有機超伝導体の基礎研究と高温有機超伝導体の探索
(BDA-TTP)2I3の超伝導の転移温度と臨界圧力のおける一軸圧印加方向依存性を測定し、HOMO軌道から生じる二つのバンド間の重なりWoの大きさの変化より基底状態を1/2充填バンドから1/4充填バンドに変化すること、基底状態が1/4充填バンドと考えられる領域において超伝導が出現し、有効電子相関に関係する全バンド幅Wの変化から超伝導臨界圧力の一軸圧印加方向依存性を定性的に説明した。また、a、b、c軸圧下の結晶構造解析を行った。(BDA-TTP)2I3の超伝導の転移温度と臨界圧力のおける一軸圧印加方向依存性を測定し、HOMO軌道から生じる二つのバンド間の重なりWoの大きさの変化より基底状態を1/2充填バンドから1/4充填バンドに変化すること、基底状態が1/4充填バンドと考えられる領域において超伝導が出現し、有効電子相関に関係する全バンド幅Wの変化から超伝導臨界圧力の一軸圧印加方向依存性を定性的に説明した。また、a、b、c軸圧下の結晶構造解析を行った。He循環型低温装置を購入し電気伝導度測定システムを立ち上げた。この装置を用いて圧力誘起超伝導体(BDA-TTP)_2I_3の絶縁体領域の電気特性を研究したところ、c軸圧下において非線形伝導が現れることを見出した。超伝導転移圧力の一軸圧印加方向依存性から、c軸圧下において超伝導が出現するのは電子構造が1/4充填バンド的になっているためと考えられるが、1/4充填バンドにおいては電荷秩序により絶縁化することもある。今回観測した非線形伝導が電荷秩序相に起因するものであれば、一軸圧により1/2充填バンドから1/4充填バンドへと電子構造が変化する仮説を支持するものとして重要な発見である。(BDA-TTP)_2IBr_2においても(BDA-TTP)_2I_3と超伝導転移圧力の一軸圧印加方向依存性を示すことを明らかにした。バンド幅と超伝導臨界圧力の相関や電子構造と超伝導転移温度の相関などを明らかにするためには、一軸圧下での結晶構造解析が必要である。現在所有しているクランプ型の圧力セルより、試料室を大きした圧力セルを用いて結晶構造解析を試みたが、圧力の駈け過ぎによりベリリウムが破損したため、一軸圧下での構造解析には成功していないが、次年度は破損しない範囲の圧力において構造解析を行い、バンド幅と超伝導臨界圧力の関連性を明らかにする予定である。新たなドナー分子を用いて高温有機超伝導体に向けた研究としては新規TTPドナー分子から低温まで金属的挙動を示す錯体を開発した。これらの錯体は電子構造はかなり違うがいずれも低温まで金属的挙動を示すことは今後の物質開発の何らかの知見になると期待できる。圧力誘起超伝導体(BDA-TTP)_2I_3では、一軸圧印加方向を変えることにより、電子構造が1/2充填バンドから1/4充填バンドへと変化することが期待できる。そこで本研究では電子構造の変化に伴う超伝導の出現範囲及び超伝導特性を解明し、高温有機超伝導体の探索することを目的としている。本年度は、1/4充填バンドであると考えられ、c軸近傍の超伝導発現領域ならびに超伝導転移温度を調べるとともに、圧力下でも1/2充填バンドである考えられるa軸近傍に関しても超伝導が出現しないか、15kbar以上の高圧下において電気特性を調べた(大阪市立大村田研との共同研究)。その結果、a軸圧力下では17kbarから、b軸圧力下では18kbarから超伝導が出現することを見出した。しかし、c軸圧下では高圧では超伝導が出現しなかった。今回は高圧下のみでしか測定を行っていないため、c軸圧下、712kbarで出現する超伝導と高圧で出現した超伝導の関係は明白ではなく、次年度の研究課題として残されている。バンド幅と超伝導臨界圧力の相関や電子構造と超伝導転移温度の相関などを明らかにするためには、一軸圧下での結晶構造解析が必要である。前年度の経験を生かして作製した試料室を大きくした圧力セルを用いると、結晶は壊れず、反射スポットも観測されたが、結晶構造解析まで至っていない。ベリリウムなどからの反射点の除去法や吸収補正法など確立して、次年度には構造解析を行い、」は可能であると、圧力の駈け過ぎによりベリリウムが破損したため、一軸圧下での構造解析には成功していないが、次年度は破損しない範囲の圧力において構造解析を行い、バンド幅と超伝導臨界圧力の相関など明らかにする。圧力誘起超伝導体(BDA-TTP)_2I_3における超伝導の転移温度と臨界圧力のおける一軸圧印加方向依存性を解明するため、推定構造をもとに上下バンド間の重なりWo、上部バンド幅Wu、全バンド幅Wを求め、Woの大きさにより基底状態を1/2充填バンドから1/4充填バンドに変化すること、基底状態が1/4充填バンドと考えられる領域においては超伝導が出現し、有効電子相関に関係するWから超伝導臨界圧力の一軸圧印加方向依存性を定性的に説明できることを明らかにした。c軸印加方向でWoは大きくなり基底状態は1/4充填バンドと考えられるが、有効電子相関が小さくなるWが小さな印加方向はa軸に垂直な方向であり、この方向で超伝導臨界圧力は極大を観測する。この結果はJACSに論文として発表した。
KAKENHI-PROJECT-21350080
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21350080
一軸圧を駆使した有機超伝導体の基礎研究と高温有機超伝導体の探索
さらに昨年度、大阪市立大村田研との共同研究で見出したa軸圧およびb軸圧下で、15kbar以上で出現する超伝導を再確認し、現在その詳細は論文に投稿中である。一軸圧下での結晶構造解析に関しては前年度の経験を生かして作製した試料室を大きくした圧力セルを用い、ベリリウムなどからの反射点の除去法や吸収補正法など確立し,2kbarまで測定に成功した。a軸圧力およびb軸圧下では、一軸圧印加により、圧力印加方向の格子定数の収縮が最も大きかったが、c軸印加では、格子定数aの縮みが最も大きかった。しかし4kbarまで加圧すると完全な構造解析には成功していないが、c軸の収縮が最も大きくなった。このことからバンド幅などの推定に用いた考え方は妥当なものと考えられる。
KAKENHI-PROJECT-21350080
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21350080
長期臥床に伴う関節拘縮に起因する軟骨変性をリハビリテーションで予防する
本研究は、関節拘縮に伴う軟骨変性を予防するリハビリテーション介入方法を検討することを目的とした研究である。前年度実施された研究活動スタート支援の発展形として、ラット関節不動モデルを用いて、関節拘縮に伴う軟骨変性の病態の解析と、同モデルに対するリハビリテーション介入機器開発が実施された。軟骨はメカニカルストレスによりその組織構造や機能を維持するため、関節拘縮下の軟骨変性においても、荷重もしくは非荷重の状態が及ぼす影響は異なると考えられる。ラット関節不動モデルにおける8週間の関節不動と再関節運動介入は、軟骨の領域ごとに異なる変性状態を有するとの報告をもとに(Nagai et al., 2016)、再関節運動介入を行った際の軟骨の変性病態について、形態学的手法、力学的手法、超微細構造観察による解析を行った。また同モデルに対するリハビリテーション介入に向けて、介入頻度や角度の調節が可能な関節可動域訓練介入装置の作成を行った。評価領域は荷重部とその周辺部とし、力学試験より、骨軟骨複合体の硬度は荷重部より周辺部で経時的に高くなることが明らかになった。透過型電子顕微鏡(TEM)と走査型顕微鏡(SEM)を用いた超微細構造観察では、荷重領域では軟骨細胞の顕著な核萎縮像が、周辺領域では細胞膜内に複数の空胞を有する軟骨細胞が複数観察され、これらは先行研究の領域特異的な嚢胞様変性像と類似していた。一方、両評価領域とも軟骨表面のコラーゲン形態は正常に近い像であることが明らかとなった。また、完成した関節可動域訓練介入装置は、現在後続研究者によって活用されている。本研究により、関節不動後の再関節運動介入が及ぼす領域ごとに異なる軟骨変性病態は、軟骨細胞の変性に加え骨軟骨複合体硬度の相違が一因である可能性が示唆された。その一方で、同介入は軟骨表面形態には良好な影響を及ぼす可能性が示唆された。本研究は、関節拘縮に伴う軟骨変性を予防するリハビリテーション介入方法を検討することを目的とした研究である。前年度実施された研究活動スタート支援の発展形として、ラット関節不動モデルを用いて、関節拘縮に伴う軟骨変性の病態の解析と、同モデルに対するリハビリテーション介入機器開発が実施された。軟骨はメカニカルストレスによりその組織構造や機能を維持するため、関節拘縮下の軟骨変性においても、荷重もしくは非荷重の状態が及ぼす影響は異なると考えられる。ラット関節不動モデルにおける8週間の関節不動と再関節運動介入は、軟骨の領域ごとに異なる変性状態を有するとの報告をもとに(Nagai et al., 2016)、再関節運動介入を行った際の軟骨の変性病態について、形態学的手法、力学的手法、超微細構造観察による解析を行った。また同モデルに対するリハビリテーション介入に向けて、介入頻度や角度の調節が可能な関節可動域訓練介入装置の作成を行った。評価領域は荷重部とその周辺部とし、力学試験より、骨軟骨複合体の硬度は荷重部より周辺部で経時的に高くなることが明らかになった。透過型電子顕微鏡(TEM)と走査型顕微鏡(SEM)を用いた超微細構造観察では、荷重領域では軟骨細胞の顕著な核萎縮像が、周辺領域では細胞膜内に複数の空胞を有する軟骨細胞が複数観察され、これらは先行研究の領域特異的な嚢胞様変性像と類似していた。一方、両評価領域とも軟骨表面のコラーゲン形態は正常に近い像であることが明らかとなった。また、完成した関節可動域訓練介入装置は、現在後続研究者によって活用されている。本研究により、関節不動後の再関節運動介入が及ぼす領域ごとに異なる軟骨変性病態は、軟骨細胞の変性に加え骨軟骨複合体硬度の相違が一因である可能性が示唆された。その一方で、同介入は軟骨表面形態には良好な影響を及ぼす可能性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-16K16424
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K16424
Sukhavativyuhaの成立史的研究
所謂東方偈には仏の微笑、放光という授記の物語によく見られるモチーフが使われている。類似する物語は小品般若経系統の経典に見られるが、東方偈のものとは表現上の若干の相違がある。Sukh全体としては、般若経系統の思想を体系的に取り入れたという証拠はなく、東方偈についてもその影響を受けたと考えるのは難しい。東方偈の内容は有部系のAvadana文献における授記物語のものとも対応するが、成立年代が東方偈の方が古い分、表現はそれらほど冗長ではない。Sukhは内容や構成の点で物語としてはavadana的な特徴を持ち、Avadana文献と近い関係にあったことが推測されるが、東方偈が直接影響を受けたという積極的な証拠はない。Sukhは前半の法蔵(Dharmakara)菩薩の前世の物語と、後半の阿弥陀仏(Amitabha/Amitayus)の衆生救済の物語に大別することが出来る。阿弥陀仏は他の経論によく知られているが、その前身の法蔵菩薩に言及する経論は少ないばかりか、十五種の異説まで存在する。それらの異説を持つ経論の多くがSukhの成立年代と近い段階のものであり、Sukhの成立当初から後代まで、阿弥陀仏ほど法蔵菩薩は知られていなかったと考えられる。このことは一例であるが、あくまでSukhの中核は阿弥陀仏の物語であり、jataka或はavadanaといった形式の物語の影響のもとに前世の物語が付加されてSukhが成立したのではないかと考えられる。Sukhにおける法蔵菩薩の誓願の内容と誓願の成就の記述の分析を行った。特に偈頌に見られる誓願の内容は誓願文や後半部散文よりも単純で、より古い段階を示すと推測される。「仏の光明」と「衆生の安楽」並びに「聞名による救済」が誓願の中核と考えられるが、讃仏偈(歎仏偈)に現れない「聞名による救済」の誓願は前二者よりも遅れて成立した可能性がある。所謂東方偈には仏の微笑、放光という授記の物語によく見られるモチーフが使われている。類似する物語は小品般若経系統の経典に見られるが、東方偈のものとは表現上の若干の相違がある。Sukh全体としては、般若経系統の思想を体系的に取り入れたという証拠はなく、東方偈についてもその影響を受けたと考えるのは難しい。東方偈の内容は有部系のAvadana文献における授記物語のものとも対応するが、成立年代が東方偈の方が古い分、表現はそれらほど冗長ではない。Sukhは内容や構成の点で物語としてはavadana的な特徴を持ち、Avadana文献と近い関係にあったことが推測されるが、東方偈が直接影響を受けたという積極的な証拠はない。Sukhは前半の法蔵(Dharmakara)菩薩の前世の物語と、後半の阿弥陀仏(Amitabha/Amitayus)の衆生救済の物語に大別することが出来る。阿弥陀仏は他の経論によく知られているが、その前身の法蔵菩薩に言及する経論は少ないばかりか、十五種の異説まで存在する。それらの異説を持つ経論の多くがSukhの成立年代と近い段階のものであり、Sukhの成立当初から後代まで、阿弥陀仏ほど法蔵菩薩は知られていなかったと考えられる。このことは一例であるが、あくまでSukhの中核は阿弥陀仏の物語であり、jataka或はavadanaといった形式の物語の影響のもとに前世の物語が付加されてSukhが成立したのではないかと考えられる。Sukhにおける法蔵菩薩の誓願の内容と誓願の成就の記述の分析を行った。特に偈頌に見られる誓願の内容は誓願文や後半部散文よりも単純で、より古い段階を示すと推測される。「仏の光明」と「衆生の安楽」並びに「聞名による救済」が誓願の中核と考えられるが、讃仏偈(歎仏偈)に現れない「聞名による救済」の誓願は前二者よりも遅れて成立した可能性がある。
KAKENHI-PROJECT-00J01406
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血漿リポタンパク質のタンパク質脂質相互作用に関する分光学的研究
本研究は血漿リポタンパク質を振動分光学的手法で調べることにより、タンパク質脂質相互作用を解析する方法論の開発とその臨床化学的な応用を目的とし、次のようなテーマに焦点を絞って研究を推進した。(1)超低密度、低密度リポタンパク質(VLDL,LDL)の状態解析:VLDL、LDLの構成物質について溶液中と固体フィルムの赤外・ラマン測定を調べた。リポタンパク質の赤外スペクトルを帰属するために、脂質のスペクトルデータをベース化した。1750-1700cm^<-1>付近のエステルCO伸縮振動領域に着目したところ、リポタンパク質中のコレステロールエステルのマーカーになるだけでなく、遊離脂肪酸のカルボキシル基も反映する可能性が高いことがわかった。(2)高密度リポタンパク質(HDL)亜分画のタンパク質脂質相互作用:HDL亜分画のタンパク質と脂質の構造解析を赤外分光法で調べた。その結果、タンパク質と脂質の組成、構造の違いがエステルCOバンドとアミドバンドの強度に反映されることが明らかになった。各HDL亜分画のアミドIバンドのパターンは、主成分タンパク質であるアポリポタンパク質A-Iのパターンと類似していた。従って、HDL中のアポリポタンパク質A-Iの二次構造は脂質との相互作用によりほとんど起きていないことがわかった。(3)FTIR法のモデル動物血漿への応用:高脂血症モデル動物(ウサギ)の血漿をFTIR法を用いて解析したところ、血漿中のコレステロールエステル、中性脂肪の状態解析の切り口になることがわかった。さらに、フンボルトペンギンの孵化前後の血漿を調べたところ、孵化前に血中の中性脂肪濃度が増加することを赤外エステルCO伸縮振動バンドを用いて追跡できることがわかった。今後ヒト血清に適用すれば、コレステロールエステル、中性脂肪の新しい状態解析法として確立されることが期待できる。本研究は血漿リポタンパク質を振動分光学的手法で調べることにより、タンパク質脂質相互作用、水和構造を解析する方法論の開発を目的とした。平成13年度は次のようなテーマに焦点を絞って研究を推進した。(1)超低密度、低密度リポタンパク質(VLDL、LDL)の状態解析: VLDL、LDLの構成物質について溶液中と固体フィルムの赤外測定を調べた。溶液中とフィルムを比較すると、脂質に由来するバンドは類似していたが、タンパク質由来のバンドに違いが見られた。リポタンパク質の赤外スペクトルを帰属するために、脂質のスペクトルデータをベース化した。1750-1700cm^<-1>付近のエステルCO伸縮振動領域に着目したところ、リポタンパク質中のコレステロールエステルのマーカーになるだけでなく、遊離脂肪酸のカルボキシル基も反映する可能性が高いことがわかった。これまでの研究成果の一部をChem. Phys. Lipids, in pressにて発表した。(2)高密度リポタンパク質(HDL)亜分画のタンパク質脂質相互作用: HDL亜分画のタンパク質と脂質の構造解析を赤外分光法で調べた。その結果、タンパク質と脂質の組成、構造の違いがエステルCOバンドとアミドバンドの強度に反映されることが明らかになった。各HDL亜分画のアミドIバンドのパターンは、主成分タンパク質であるアポリポタンパク質A-1のパターンと類似していた。従って、HDL中のアポリポタンパク質A-1の二次構造は脂質との相互作用によりほとんど変わらないことがわかった。平成14年度では低密度リポタンパク質の亜分画レベルに関して振動分光学的なキャラクタリゼーションを行う。また、さらに高脂血症モデル動物の血漿を分光学的手法を用いて解析することにより、臨床化学的に方法の新しい切り口として発展させる。本研究は血漿リポタンパク質を振動分光学的手法で調べることにより、タンパク質脂質相互作用を解析する方法論の開発とその臨床化学的な応用を目的とし、次のようなテーマに焦点を絞って研究を推進した。(1)超低密度、低密度リポタンパク質(VLDL,LDL)の状態解析:VLDL、LDLの構成物質について溶液中と固体フィルムの赤外・ラマン測定を調べた。リポタンパク質の赤外スペクトルを帰属するために、脂質のスペクトルデータをベース化した。1750-1700cm^<-1>付近のエステルCO伸縮振動領域に着目したところ、リポタンパク質中のコレステロールエステルのマーカーになるだけでなく、遊離脂肪酸のカルボキシル基も反映する可能性が高いことがわかった。(2)高密度リポタンパク質(HDL)亜分画のタンパク質脂質相互作用:HDL亜分画のタンパク質と脂質の構造解析を赤外分光法で調べた。その結果、タンパク質と脂質の組成、構造の違いがエステルCOバンドとアミドバンドの強度に反映されることが明らかになった。各HDL亜分画のアミドIバンドのパターンは、主成分タンパク質であるアポリポタンパク質A-Iのパターンと類似していた。従って、HDL中のアポリポタンパク質A-Iの二次構造は脂質との相互作用によりほとんど起きていないことがわかった。(3)FTIR法のモデル動物血漿への応用:高脂血症モデル動物(ウサギ)の血漿をFTIR法を用いて解析したところ、血漿中のコレステロールエステル、中性脂肪の状態解析の切り口になることがわかった。さらに、フンボルトペンギンの孵化前後の血漿を調べたところ、孵化前に血中の中性脂肪濃度が増加することを赤外エステルCO伸縮振動バンドを用いて追跡できることがわかった。今後ヒト血清に適用すれば、コレステロールエステル、中性脂肪の新しい状態解析法として確立されることが期待できる。
KAKENHI-PROJECT-13740324
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大脳皮質の層・領野構造形成に及ぼす入力線維の役割に関する研究
大脳皮質の層・領野構造はその細胞構築の基盤であり、脳形成の原理を内包している。従来、大脳皮質における細胞分化や回路形成の過程で、内因的な要因に加えて視床軸索や神経活動などの外因的要因が重要な役割を果たすことが示唆されてはいるものの、そのメカニズムについてはほとんど明らかにされていない。本研究では、この問題を解明することを目指した。これまでに視床皮質軸索の標的層に発現する遺伝子の探索を行い、細胞表面分子や転写調節因子を含む遺伝子群が発生期大脳皮質2/3-4層に限局して発現することを見出しているが(Zhong et al.,2004)、中でもunc5h4(netrin受容体の新規分子)の発現は4層への限局が明瞭である。この発現パターンと領野の区分との関連性について詳細に調べた。その結果、視覚性、体性感覚性の視床から直接強い入力を受ける皮質領野に一致してunc5h4の発現が不連続に強いことが示された。このことは、視床線維との相互作用によって皮質細胞の分化や結合性が制御される可能性を示唆するものである。第2に、視床皮質軸索や皮質内回路を介する神経活動の関与を調べるために、視床-大脳共培養系にナトリウムチャネルやグルタミン酸受容体のブロッカーを加えて培養し、視床皮質投射の結合パターンを解析した。その結果、いずれの場合も視床皮質軸索の枝分かれが対照群に比べて減少するとともに、4層での特異性が著しく低下することが明らかになってきた。このことは、層特異的な神経回路形成に必要な皮質細胞でのリガンド分子や視床皮質軸索上の受容体分子の正常な発現に神経活動が関与することを示唆している。大脳皮質の層・領野構造はその細胞構築の基盤であり、脳形成の原理を内包している。従来、大脳皮質における細胞分化や回路形成の過程で、内因的な要因に加えて視床軸索や神経活動などの外因的要因が重要な役割を果たすことが示唆されてはいるものの、そのメカニズムについてはほとんど明らかにされていない。本研究では、この問題を解明することを目指した。これまでに視床皮質軸索の標的層に発現する遺伝子の探索を行い、細胞表面分子や転写調節因子を含む遺伝子群が発生期大脳皮質2/3-4層に限局して発現することを見出しているが(Zhong et al.,2004)、中でもunc5h4(netrin受容体の新規分子)の発現は4層への限局が明瞭である。この発現パターンと領野の区分との関連性について詳細に調べた。その結果、視覚性、体性感覚性の視床から直接強い入力を受ける皮質領野に一致してunc5h4の発現が不連続に強いことが示された。このことは、視床線維との相互作用によって皮質細胞の分化や結合性が制御される可能性を示唆するものである。第2に、視床皮質軸索や皮質内回路を介する神経活動の関与を調べるために、視床-大脳共培養系にナトリウムチャネルやグルタミン酸受容体のブロッカーを加えて培養し、視床皮質投射の結合パターンを解析した。その結果、いずれの場合も視床皮質軸索の枝分かれが対照群に比べて減少するとともに、4層での特異性が著しく低下することが明らかになってきた。このことは、層特異的な神経回路形成に必要な皮質細胞でのリガンド分子や視床皮質軸索上の受容体分子の正常な発現に神経活動が関与することを示唆している。
KAKENHI-PROJECT-17023030
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超音速分子線を用いた半導体表面反応ダイナミックスの分子論的解明
本年度の研究目的は、結晶成長反応の試験的な系として、Ge(100)及びSi(100)上のアルカリ原子と、O_2の反応を分子線技法にて調べる事である。とりわけ、直接的解離吸着反応と物理吸着拡散反応の断面積を評価する事である。清浄表面にCsを吸着させ、エネルギーEiが0.30eVと0.09eVの2種類のO_2ビームを照射し、散乱してくるO_2を四重極質量分析計で測定した。散乱収量はO_2ビームのドーズと共に増大し、やがて飽和した。飽和した時の散乱強度を基準して、各ドーズでの吸着確率Sを求めた。照射初期の吸着確率SoをCsの被覆率の函数としてGe及びSi表面に対して実験を行った。その結果、Ge(100)表面でのSoはSi(100)でのSoよりも各Cs被覆率に於て大きくなった。又、更に、入射エネルギーが0.09eVと小さくなる事によりGe(100)ではSoは大きくなった。入射エネルギーが低下すると、物理吸着確率が大きくなるが、この事実をもとにすると、Ge表面では、物理吸着を経る事によりCsによる吸着促進作用が増大することが言える。そこで、反応断面積を評価する為に、指数函数的に減衰するSのドーズ変化のシュミレーションを行った。その結果、直接的に反応する断面積は約27A^2、表面拡徒を供う断面積は60A^2が得られた。この様な評価は、本研究が初めてである。更に同じ様な評価をSi(100)でも試みた。Si(100)では、拡散によっては、吸着Csとは反応できないことが判明した。Ge(100)とSi(100)のこの違いは、Ge-Ge間結合エネルギーがSi-Si間結合エネルギーよりも小さいということに由来している。この様な研究手法により、近い将来、吸着GaとAs_2分子の反応断面積の評価を行って行く予定である。本年度の研究目的は、結晶成長反応の試験的な系として、Ge(100)及びSi(100)上のアルカリ原子と、O_2の反応を分子線技法にて調べる事である。とりわけ、直接的解離吸着反応と物理吸着拡散反応の断面積を評価する事である。清浄表面にCsを吸着させ、エネルギーEiが0.30eVと0.09eVの2種類のO_2ビームを照射し、散乱してくるO_2を四重極質量分析計で測定した。散乱収量はO_2ビームのドーズと共に増大し、やがて飽和した。飽和した時の散乱強度を基準して、各ドーズでの吸着確率Sを求めた。照射初期の吸着確率SoをCsの被覆率の函数としてGe及びSi表面に対して実験を行った。その結果、Ge(100)表面でのSoはSi(100)でのSoよりも各Cs被覆率に於て大きくなった。又、更に、入射エネルギーが0.09eVと小さくなる事によりGe(100)ではSoは大きくなった。入射エネルギーが低下すると、物理吸着確率が大きくなるが、この事実をもとにすると、Ge表面では、物理吸着を経る事によりCsによる吸着促進作用が増大することが言える。そこで、反応断面積を評価する為に、指数函数的に減衰するSのドーズ変化のシュミレーションを行った。その結果、直接的に反応する断面積は約27A^2、表面拡徒を供う断面積は60A^2が得られた。この様な評価は、本研究が初めてである。更に同じ様な評価をSi(100)でも試みた。Si(100)では、拡散によっては、吸着Csとは反応できないことが判明した。Ge(100)とSi(100)のこの違いは、Ge-Ge間結合エネルギーがSi-Si間結合エネルギーよりも小さいということに由来している。この様な研究手法により、近い将来、吸着GaとAs_2分子の反応断面積の評価を行って行く予定である。
KAKENHI-PROJECT-04227219
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21水酸化酵素欠損症の成因ならびに治療に関する研究
21水酸化酵素欠損症は先天性副腎過形成のうち最も頻度が多く、新生児スクリーニングにより新生児期から経過観察出来治療されるようになっている疾患である。21水酸化酵素欠損症の治療目的は、(1)生命の維持、(2)男性化の防止、(3)健全な成長発育である。(3)に関しては内因性ハイドロコーチゾン分泌(6-8mg/m^2従来はこの2倍とされていた)に対し、過投与しなければならない症例が多いため,最終的に低身長となる例があると考えられる。異常副腎からのコルチゾル・アルドステロン前駆体分泌が、antagonistとして働くため過投与となり、酵素失活が重篤なほど治療の課題が多い。新生児期から本症の副腎計測を超音波断層法により経時的に行った。21水酸化酵素(CYP21)遺伝子は染色体6番目に存在し、近傍に偽遺伝子が存在する。CYP21遺伝子のEXON3をはさむ形で特異的にCYP21のみを遺伝子増幅法(PCR法)で増幅する系を作り、CYP21遺伝子全体の塩基配列を出来るようにした。副腎超音波断層法をCAHの診断・治療のモニターとして検討し、副腎腫大持続例は、検査成績を正常化するためハイドロコーチゾン投与量増加する事が示された。現在まで10家系を調べCYP21遺伝子の完全欠失例2例を見いだした。新生児期から副腎計測を行った本症3例のうち副腎腫大持続例では、本法によりCYP21遺伝子の欠出が証明された。症例の集積とさらなる、直接塩基配列決定法によるDNA塩基配列に至る解析を行っている。最終的な論文発表は、新生児期より経過を追った症例数10をメドに現在の系を用いた解析を行いまとめる。21水酸化酵素欠損症は先天性副腎過形成のうち最も頻度が多く、新生児スクリーニングにより新生児期から経過観察出来治療されるようになっている疾患である。21水酸化酵素欠損症の治療目的は、(1)生命の維持、(2)男性化の防止、(3)健全な成長発育である。(3)に関しては内因性ハイドロコーチゾン分泌(6-8mg/m^2従来はこの2倍とされていた)に対し、過投与しなければならない症例が多いため,最終的に低身長となる例があると考えられる。異常副腎からのコルチゾル・アルドステロン前駆体分泌が、antagonistとして働くため過投与となり、酵素失活が重篤なほど治療の課題が多い。新生児期から本症の副腎計測を超音波断層法により経時的に行った。21水酸化酵素(CYP21)遺伝子は染色体6番目に存在し、近傍に偽遺伝子が存在する。CYP21遺伝子のEXON3をはさむ形で特異的にCYP21のみを遺伝子増幅法(PCR法)で増幅する系を作り、CYP21遺伝子全体の塩基配列を出来るようにした。副腎超音波断層法をCAHの診断・治療のモニターとして検討し、副腎腫大持続例は、検査成績を正常化するためハイドロコーチゾン投与量増加する事が示された。現在まで10家系を調べCYP21遺伝子の完全欠失例2例を見いだした。新生児期から副腎計測を行った本症3例のうち副腎腫大持続例では、本法によりCYP21遺伝子の欠出が証明された。症例の集積とさらなる、直接塩基配列決定法によるDNA塩基配列に至る解析を行っている。最終的な論文発表は、新生児期より経過を追った症例数10をメドに現在の系を用いた解析を行いまとめる。
KAKENHI-PROJECT-05670658
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中咽頭がん術後の摂食嚥下障害のアセスメントを導くアルゴリズムの検証
目的:中咽頭がん術後の摂食嚥下機能をベッドサイドで簡便にアセスメントするツールとして、術式から摂食嚥下障害の状況を特定するまでのアセスメントのプロセスを可視化するアルゴリズム案を作成し、臨床での実施可能性、妥当性を確認の後修正案を作成した。アルゴリズム修正案の信頼性と臨床での汎用性を検証することを目的とした。研究期間:2年間(平成28、29年度)の予定で実施したが、予定症例数に満たなかったため、平成31年3月31日まで研究期間を延長してデータ収集を行った。対象と方法:がん専門病院2施設における術後中咽頭がん患者13名(男性11名、女性2名、平均年齢64.2歳、再建なし3名、再建あり10名)、当該病棟の看護師13名(女性10名、男性3名、頭頸部外科病棟平均4.8年)を対象とした。看護師がアルゴリズムを用いて術後患者の摂食嚥下機能をアセスメントし、至適基準を嚥下造影検査(Videofluorography:VF)結果として、9項目のアセスメント判定結果の敏感度(アルゴリズムで問題あり/VFで問題あり)と特異度(アルゴリズムで問題なし/VFで問題なし)を算出した。VFの評価基準は、嚥下造影の標準的検査法(詳細版)(日摂食嚥下リハ会誌2004)に準拠した。結果と考察:他の頭頸部がんにて手術歴のあった1名を除く12名を分析した。アセスメント所要時間の平均は、13.8分であった。各アセスメント項目の敏感度の平均0.28、特異度の平均0.78で敏感度が低かった。アルゴリズムを用いたアセスメントでは、VF結果で問題があった項目を診査するための身体診査は導き出すことができていた。しかし、看護師の身体診査実施経験が少なかったこと、今回のアセスメントでは、身体診査の実施が1回のみであったことが、敏感度の低さに繋がったと考える。今後は、身体診査の普及や身体診査の実施回数を増やす必要があると考える。手術療法に伴う中咽頭の構造的・機能的変化を観察することは難しく、炎症反応による創部浮腫の経日的変化により、中咽頭がん術後の摂食嚥下機能のアセスメントは看護師にとって困難であると考えられる。また、看護チームとして複数の看護師がケアを提供するため、当該領域の経験が浅い看護師であっても、術後の摂食嚥下機能をアセスメントできるツールが求められる。そこで、中咽頭がん術後の摂食嚥下機能をベッドサイドで簡便にアセスメントするツールとして、術式から摂食嚥下障害の状況を特定するまでのアセスメントのプロセスを可視化するアルゴリズム原案を平成22年度に作成した。国内のがん専門病院3施設において、このアルゴリズム原案を用いて、看護師がアセスメントを実施し、信頼性を検討した。その検討結果に基づきアルゴリズムを修正したため、本研究では、アルゴリズム修正案の信頼性と臨床での汎用性を検証することを目的とした。平成27年度は、看護師が中咽頭がん術後患者の摂食嚥下機能をアルゴリズム修正案を用いてアセスメントを実施し、アルゴリズムの修正案の信頼性を検証するとともに、アセスメントの対象となった患者に対する生活の質(QOL)の質問紙調査を実施し、患者の術式、栄養状態、アセスメントの結果等との関連性を確認するため、研究計画書を作成した。本研究計画は、平成27年11月に愛知県立大学研究倫理審査委員会より実施許可を得、現在は研究協力者の摂食・嚥下障害看護認定看護師が所属する埼玉県立がんセンターの倫理審査委員会にて審査中である。本研究計画は、平成27年11月に愛知県立大学研究倫理審査委員会より実施許可を得、現在は埼玉県立がんセンターの倫理審査委員会にて審査中である。当該年度中の実施には至らなかったが、倫理審査委員会からの実施許可が出次第、データ収集を開始する予定であり、研究は順調に進展していると考えられる。手術療法に伴う中咽頭の構造的・機能的変化を観察することは難しく、炎症反応による創部浮腫の経日的変化により、中咽頭がん術後の摂食嚥下機能のアセスメントは看護師にとって困難であると考えられる。また、看護チームとして複数の看護師がケアを提供するため、当該領域の経験が浅い看護師であっても、術後の摂食嚥下機能をベッドサイドで簡便にアセスメントできるツールが求められる。そこで、中咽頭がん術後の摂食嚥下機能をベッドサイドで簡便にアセスメントするツールとして、術式から摂食嚥下障害の状況を特定するまでのアセスメントのプロセスを可視化するアルゴリズム原案を平成22年度に作成した。国内のがん専門病院3施設において、このアルゴリズム原案を用いて、看護師がアセスメントを実施し、信頼性を検討した。その検討結果に基づきアルゴリズムを修正した為、本研究は、アルゴリズム修正案の信頼性と臨床での汎用性を検討することを目的とした。看護師が中咽頭がん術後患者の摂食嚥下機能をアルゴリズム修正案を用いてアセスメントを実施し、その信頼性を検証するとともに、アセスメントの対象となった患者に対する生活の質(QOL)の質問紙調査を実施し、患者の術式、栄養状態、アセスメントの結果等との関連性を検証するため研究計画書を作成した。本研究計画は、平成27年11月愛知県立大学研究倫理審査委員会より実施許可を得た。
KAKENHI-PROJECT-15K20712
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中咽頭がん術後の摂食嚥下障害のアセスメントを導くアルゴリズムの検証
平成28年度は埼玉県立がんセンター及び愛知県がんセンター中央病院の倫理審査委員会の実施許可を得、現在データ収集中であり、目標の対象数に到達するまで実施する予定である。データ収集中であり計画通りに進んでいる。中咽頭がん術後患者の看護において、中咽頭の構造的・機能的変化を理解することが、摂食嚥下機能に関する的確な観察や問題の把握につながると考える。一方、手術による中咽頭の構造的・機能的変化は観察が困難であること、術後の口腔・咽頭は炎症反応によって浮腫を来し経日的に変化することが、看護師にとってのアセスメントを難しくさせている。また、看護チームの複数の看護師によってケアが提供されるため、当該領域の経験の浅い看護師にも活用でき、術後の摂食嚥下機能をアセスメントできるツールが求められている。そこで、中咽頭がん術後の摂食嚥下機能をベッドサイドで簡便にアセスメントするツールとして、術式から摂食嚥下障害の状況を特定するまでのアセスメントのプロセスを可視化するアルゴリズム案を2010年度に作成した。国内のがん専門病院3施設において、看護師がアルゴリズム案を用いてアセスメントを実施し、その信頼性を検討した。その結果から見出された改善策をもとに、アルゴリズム修正案を作成し、本研究は、その信頼性と臨床での汎用性を検証することを目的とした。平成27年度に所属施設である愛知県立大学研究倫理審査委員会の承認を得、平成28年度に研究実施施設である愛知県がんセンター中央病院及び埼玉県立がんセンター倫理審査委員会にて承認を得た。平成28、29年度は研究実施施設において、データ収集を実施した。中咽頭がん術後患者の摂食嚥下機能について、看護師がアルゴリズム修正案を用いてアセスメントを実施し、その信頼性をアセスメント結果と嚥下造影検査結果との比較によって検証した。平成29年8月までの研究成果は、第23回日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会において発表した。研究実施施設2施設において、現在までに14名のデータが収集されている。平成30年度は、予定症例数30例となるまで引き続きデータ収集を行う。平成28,29年度の研究実施施設における中咽頭がんの手術件数が、例年よりも大幅に少なかったため、2年間のデータ収集で目標の症例数には到達しなかった。目的:中咽頭がん術後の摂食嚥下機能をベッドサイドで簡便にアセスメントするツールとして、術式から摂食嚥下障害の状況を特定するまでのアセスメントのプロセスを可視化するアルゴリズム案を作成し、臨床での実施可能性、妥当性を確認の後修正案を作成した。アルゴリズム修正案の信頼性と臨床での汎用性を検証することを目的とした。研究期間:2年間(平成28、29年度)の予定で実施したが、予定症例数に満たなかったため、平成31年3月31日まで研究期間を延長してデータ収集を行った。対象と方法:がん専門病院2施設における術後中咽頭がん患者13名(男性11名、女性2名、平均年齢64.2歳、再建なし3名、再建あり10名)、当該病棟の看護師13名(女性10名、男性3名、頭頸部外科病棟平均4.8年)を対象とした。看護師がアルゴリズムを用いて術後患者の摂食嚥下機能をアセスメントし、至適基準を嚥下造影検査(Videofluorography:VF)結果として、9項目のアセスメント判定結果の敏感度(アルゴリズムで問題あり/VFで問題あり)と特異度(アルゴリズムで問題なし/VFで問題なし)を算出した。VFの評価基準は、嚥下造影の標準的検査法(詳細版)(日摂食嚥下リハ会誌2004)に準拠した。結果と考察:他の頭頸部がんにて手術歴のあった1名を除く12名を分析した。
KAKENHI-PROJECT-15K20712
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K20712
人工遺伝子回路を用いた細胞パターン形成機構の構成的理解
本研究では、反応拡散機構で哺乳類培養細胞上に空間パターンを作ることを目指して、Nodal-Leftyシグナルの反応拡散系を単純化した人工遺伝子回路をHEK293細胞上に作製した。この人工遺伝子回路は、Nodal(アクチベーター)、Lefty(インヒビター)、Co-receptor、下流の転写因子、ルシフェラーゼレポーター、という5つの遺伝子部品から成っており、いわゆるアクチベーター・インヒビター型の反応拡散回路になっている。この人工遺伝子回路を組み込んだ細胞では、レポーター陽性ドメインと陰性ドメインから成るパターンが自発的に形成され、維持される様子が観察できた。そこでこのパターン形成の機構を調べるため、NodalとLeftyの細胞外分布を測定したところ、Nodalの細胞外分布は、Leftyにくらべて3分の1程度と非常に狭いことがわかった。これは、Nodalタンパク質内のFinger1と呼ばれるドメインのせいだとわかった。実際、NodalのFinger1ドメインをLeftyに移植すると、Leftyの分布が狭くなり、パターン形成も阻害された。さらに、実測・推定した生化学パラメーターを用いて数理モデルを構築し、パターン形成の条件を考察した。以上の結果は、世界初の哺乳類細胞における人工反応拡散パターンの作成例と言え、これらの成果は2018年12月にNature Communications誌上で発表した(Sekine et al, Nat Commun, 9, 5456, 2018)。本研究では、いわゆるTuringパターンと呼ばれる、細胞の空間パターン形成機構を再構成することを目指す。初年度である本年度は、Nodal-Leftyシグナルの反応拡散系を単純化した人工遺伝子回路を哺乳類培養細胞上に作製した。人工遺伝子回路は、Nodal、Lefty、Co-receptor、下流の転写因子、ルシフェラーゼレポーター、という5つの遺伝子部品から成っている。それぞれの部品は、トランスポゾンベクターを用いてHEK293細胞のゲノムに安定に組み込んだ。そして、この最小限の遺伝子回路を組み込んだ細胞は、レポーター陽性の細胞集団と陰性の細胞集団を自発的に形成した。つまり、最小限のNodal-Lefty遺伝子回路でドメイン形成が可能であるとわかった。一方で、パターン形成の条件を探り、パターンを更に改良するためには、遺伝子回路の定量化が重要である。そこで細胞外のNodalとLeftyの可視化を試みた。はじめは蛍光タンパク質と融合させたが、シグナルが弱すぎる、タンパク質の機能が阻害されるなどでうまくいかなかった。そこで新しい発光タンパク質などを色々試した結果、最近ついにNodalとLeftyの細胞外分布が測定できるようになった。以上のように、本研究はおおむね順調に進行している。今後はこの実験系を用いて拡散係数、分解係数、合成関数などの定量化を進め、現在形成されているドメインをよりきれいなパターンへと改良していく予定である。最小限のNodal-Lefty遺伝子回路を作ったところ、自発的にドメインが形成されており、パターン形成への第一段階が達成できたと言える。また、NodalとLeftyの定量化はずっとうまくいっていなかったが、HiBiTという新しい分割ルシフェラーゼシステムを用いることにより、細胞外分布を可視化することに成功した。よって、研究は計画通り進んでいると言える。本研究では、反応拡散機構で哺乳類培養細胞上に空間パターンを作ることを目指している。これまでに、Nodal-Leftyシグナルの反応拡散系を単純化した人工遺伝子回路をHEK293細胞上に作製した。人工遺伝子回路は、Nodal(アクチベーター)、Lefty(インヒビター)、Co-receptor、下流の転写因子、ルシフェラーゼレポーター、という5つの遺伝子部品から成っている。まず、コントロールとして作製したLeftyを含まない人工遺伝子回路では、最初はレポーター陽性の細胞がランダムに点在しているが、しだいに陽性の細胞ドメインが周囲の細胞に広がって、2日後には全ての細胞がレポーター陽性となった。一方、完成版の遺伝子回路では、初期のレポーター陽性ドメインの広がり方はコントロール回路と似ているが、1日後頃に陽性ドメインの成長が止まり、陽性ドメインと陰性ドメインから成るパターンが形成され維持された。よって、拡散性のアクチベーターNodalとインヒビターLeftyの相互作用によるパターンが作製できた。さらに昨年度は、このパターンの形成機構を知るべくNodalとLeftyの拡散機構を重点的に調べた。Nodalの細胞外分布は、Leftyにくらべて3分の1程度と非常に狭く、実質1細胞分くらいの距離しか届かないとわかった。これは、Nodalタンパク質内のFinger1と呼ばれるドメインのせいだとわかった。さらにこの時、細胞外のNodalは細胞の下(basal側)に局在していることが観察された。一般的に拡散というと、細胞の上(apical側)や培養液中で起こるイメージだが、Nodalの場合は細胞と培養皿の間に囲いこまれており、これがNodalの拡散が遅い原因と推測された。Nodal-Leftyによる細胞パターンが作製できた。また、Nodalの拡散がLeftyに比べて遅いのは、Nodal finger1ドメインと細胞の下への局在に原因があるとわかった。さらに、人工遺伝子回路のいくつかの生化学パラメーターを実験的に変化させることにも成功している。よって、計画はおおむね順調に進んでいると言える。本研究では、反応拡散機構で哺乳類培養細胞上に空間パターンを作ることを目指して、Nodal-Leftyシグナルの反応拡散系を単純化した人工遺伝子回路をHEK293細胞上に作製した。
KAKENHI-PROJECT-16KT0080
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16KT0080
人工遺伝子回路を用いた細胞パターン形成機構の構成的理解
この人工遺伝子回路は、Nodal(アクチベーター)、Lefty(インヒビター)、Co-receptor、下流の転写因子、ルシフェラーゼレポーター、という5つの遺伝子部品から成っており、いわゆるアクチベーター・インヒビター型の反応拡散回路になっている。この人工遺伝子回路を組み込んだ細胞では、レポーター陽性ドメインと陰性ドメインから成るパターンが自発的に形成され、維持される様子が観察できた。そこでこのパターン形成の機構を調べるため、NodalとLeftyの細胞外分布を測定したところ、Nodalの細胞外分布は、Leftyにくらべて3分の1程度と非常に狭いことがわかった。これは、Nodalタンパク質内のFinger1と呼ばれるドメインのせいだとわかった。実際、NodalのFinger1ドメインをLeftyに移植すると、Leftyの分布が狭くなり、パターン形成も阻害された。さらに、実測・推定した生化学パラメーターを用いて数理モデルを構築し、パターン形成の条件を考察した。以上の結果は、世界初の哺乳類細胞における人工反応拡散パターンの作成例と言え、これらの成果は2018年12月にNature Communications誌上で発表した(Sekine et al, Nat Commun, 9, 5456, 2018)。現在の最重要課題は、Nodal-Leftyシグナルのドメイン形成をきれいなパターン形成へと改良することである。そのために、現在の人工遺伝子回路を定量化し、どのパラメーターを調整すべきか指針を得る予定である。最近、HiBiTシステムを用いることでNodalやLeftyを可視化できるようになったので、これを用いて、NodalやLeftyの拡散係数、分解係数などを定量化する。細胞パターンができ、その形成機構もわかってきたので、今後はデータの精度を上げて論文化する。また、パターン形成を説明する数理モデルをいくつか構築しているので、その比較や解析を行う。本年度の研究が順調に進捗したため、次年度の研究用の試薬を購入するべく前倒し請求をしたが、実際の購入が間に合わないものがでたため。パターン形成の観察やNodalやLeftyの細胞外分布を測定するための実験条件を確定させるのに思ったより時間がかかったことと、発光イメージング用の顕微鏡が混み合っていたため、繰り返し実験があまりできなかった。よって、それらの実験に使う試薬代などに誤差が生じた。来年度はその分の繰り返し実験も行い、再現性の検証やデータの精度を上げる。計画通り、次年度分の試薬の購入にあてる。
KAKENHI-PROJECT-16KT0080
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心疾患に関連する新奇生理活性物質 D-グルタミン酸の合成酵素に関する研究
本研究の目的は、遊離のD-グルタミン酸(D-Glu)の合成活性を有する酵素として最近同定した、ラットGluラセマーゼ(L-GluとD-Gluの相互変換を触媒する酵素)の機能の詳細を解明することである。本酵素は哺乳類で初めて見出されたGluラセマーゼであり、細菌で既に同定されているGluラセマーゼとは異なるファミリーに属する。本酵素とは別に、我々は最近、生体内でD-Gluを分解する唯一の酵素としてD-Gluシクラーゼを同定し、この酵素の欠損マウスの心臓ではD-Glu含量が著しく増加することなどを明らかにした。すなわち、哺乳類は心機能に関連する新奇な生理活性物質としてD-Gluを利用していると考えられる。そこで本研究では、ラットGluラセマーゼの酵素学的性質・機能のほか、種々のアミノ酸の細胞内および細胞外含量に与える影響の解明を試みる。平成30年度は、大腸菌で発現させて精製したラット組換えGluラセマーゼを酵素標品として、本酵素の酵素学的性質・機能を解析した。具体的には、本酵素の(1)オリゴマー構造、(2)反応特異性、(3)基質特異性、(4)補酵素要求性、および(5)補因子要求性を解析した。その結果、本酵素が(1)モノマーとして存在すること、(2)ラセマーゼ反応のみならず、デヒドラターゼ反応も触媒すること、(3)ラセマーゼ反応においてはL-GluとD-Gluを基質とし、デヒドラターゼ反応においてはL-セリン、D-セリンおよびL-スレオニンを基質とすること、(4)細菌のGluラセマーゼとは異なり、ピリドキサール-5'-リン酸を補酵素として要求すること、および(5)哺乳類で報告されている唯一のアミノ酸ラセマーゼであるセリンラセマーゼとは異なり、金属陽イオンやヌクレオチドを補因子として要求しないことが明らかになった。本研究の開始当初における研究計画は、主に次の2つに大別される。すなわち、1つは、(1)大腸菌で発現させて精製したラット組換えグルタミン酸(Glu)ラセマーゼを酵素標品として用いて、本酵素の酵素学的性質・機能を解析することである。もう1つは、(2)哺乳類由来の培養細胞株を用いて、本酵素が細胞内および細胞外アミノ酸含量に与える影響を解析することである。また、上記(1)の具体的な研究計画は、本酵素のオリゴマー構造、反応特異性、基質特異性、補酵素要求性、補因子要求性、至適pH、至適温度、および動力学定数を明らかにすることであった。一方、上記(2)の具体的な研究計画は、本酵素遺伝子をノックアウトした哺乳類由来培養細胞株を樹立し、本酵素の細胞内および細胞外アミノ酸含量に与える影響を明らかにすることであった。平成30年度は、主に上記(1)の研究を進め、ラットGluラセマーゼのオリゴマー構造、反応特異性、基質特異性、補酵素要求性、および補因子要求性を明らかにした。すなわち、計画していた研究全体の約35 40%程度が進行したと思われる。したがって、本研究は「おおむね順調に進展している」と考えられる。平成31年度は、平成30年度に引き続き、大腸菌で発現させて精製したラット組換えグルタミン酸(Glu)ラセマーゼを酵素標品として用いて、本酵素の酵素学的性質・機能を解析する。具体的には、本酵素のラセマーゼ反応およびデヒドラターゼ反応それぞれにおける至適pHならびに至適温度を決定する。また、ラセマーゼ反応およびデヒドラターゼ反応それぞれの反応において基質とするアミノ酸に対する動力学定数を決定する。さらに、平成31年度には、本酵素遺伝子をノックアウトした哺乳類由来培養細胞株を樹立する。もし、目的とするノックアウト株が樹立できない場合には、当教室で既に確立・経験済みのsiRNAを用いたノックダウン法により本酵素遺伝子の発現を抑制した細胞株を樹立して対応する。また、ノックダウン法による発現抑制株の樹立も難しい場合には、当教室で既に確立・経験済みの遺伝子導入法により本酵素遺伝子を高発現させた細胞株を樹立して対応する。平成32年度には、樹立したノックアウト株、ノックダウン株、または高発現株の細胞内および細胞外(培養上清中)のD-Glu含量を経時的に測定し、本酵素が生体内においてD-Glu合成酵素として機能しているかどうかを確認する。同様に、D-Glu以外のアミノ酸含量に与える影響も解析する。本研究の目的は、遊離のD-グルタミン酸(D-Glu)の合成活性を有する酵素として最近同定した、ラットGluラセマーゼ(L-GluとD-Gluの相互変換を触媒する酵素)の機能の詳細を解明することである。本酵素は哺乳類で初めて見出されたGluラセマーゼであり、細菌で既に同定されているGluラセマーゼとは異なるファミリーに属する。本酵素とは別に、我々は最近、生体内でD-Gluを分解する唯一の酵素としてD-Gluシクラーゼを同定し、この酵素の欠損マウスの心臓ではD-Glu含量が著しく増加することなどを明らかにした。すなわち、哺乳類は心機能に関連する新奇な生理活性物質としてD-Gluを利用していると考えられる。そこで本研究では、ラットGluラセマーゼの酵素学的性質・機能のほか、種々のアミノ酸の細胞内および細胞外含量に与える影響の解明を試みる。平成30年度は、大腸菌で発現させて精製したラット組換えGluラセマーゼを酵素標品として、本酵素の酵素学的性質・機能を解析した。
KAKENHI-PROJECT-18K06117
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K06117
心疾患に関連する新奇生理活性物質 D-グルタミン酸の合成酵素に関する研究
具体的には、本酵素の(1)オリゴマー構造、(2)反応特異性、(3)基質特異性、(4)補酵素要求性、および(5)補因子要求性を解析した。その結果、本酵素が(1)モノマーとして存在すること、(2)ラセマーゼ反応のみならず、デヒドラターゼ反応も触媒すること、(3)ラセマーゼ反応においてはL-GluとD-Gluを基質とし、デヒドラターゼ反応においてはL-セリン、D-セリンおよびL-スレオニンを基質とすること、(4)細菌のGluラセマーゼとは異なり、ピリドキサール-5'-リン酸を補酵素として要求すること、および(5)哺乳類で報告されている唯一のアミノ酸ラセマーゼであるセリンラセマーゼとは異なり、金属陽イオンやヌクレオチドを補因子として要求しないことが明らかになった。本研究の開始当初における研究計画は、主に次の2つに大別される。すなわち、1つは、(1)大腸菌で発現させて精製したラット組換えグルタミン酸(Glu)ラセマーゼを酵素標品として用いて、本酵素の酵素学的性質・機能を解析することである。もう1つは、(2)哺乳類由来の培養細胞株を用いて、本酵素が細胞内および細胞外アミノ酸含量に与える影響を解析することである。また、上記(1)の具体的な研究計画は、本酵素のオリゴマー構造、反応特異性、基質特異性、補酵素要求性、補因子要求性、至適pH、至適温度、および動力学定数を明らかにすることであった。一方、上記(2)の具体的な研究計画は、本酵素遺伝子をノックアウトした哺乳類由来培養細胞株を樹立し、本酵素の細胞内および細胞外アミノ酸含量に与える影響を明らかにすることであった。平成30年度は、主に上記(1)の研究を進め、ラットGluラセマーゼのオリゴマー構造、反応特異性、基質特異性、補酵素要求性、および補因子要求性を明らかにした。すなわち、計画していた研究全体の約35 40%程度が進行したと思われる。したがって、本研究は「おおむね順調に進展している」と考えられる。平成31年度は、平成30年度に引き続き、大腸菌で発現させて精製したラット組換えグルタミン酸(Glu)ラセマーゼを酵素標品として用いて、本酵素の酵素学的性質・機能を解析する。具体的には、本酵素のラセマーゼ反応およびデヒドラターゼ反応それぞれにおける至適pHならびに至適温度を決定する。また、ラセマーゼ反応およびデヒドラターゼ反応それぞれの反応において基質とするアミノ酸に対する動力学定数を決定する。さらに、平成31年度には、本酵素遺伝子をノックアウトした哺乳類由来培養細胞株を樹立する。もし、目的とするノックアウト株が樹立できない場合には、当教室で既に確立・経験済みのsiRNAを用いたノックダウン法により本酵素遺伝子の発現を抑制した細胞株を樹立して対応する。また、ノックダウン法による発現抑制株の樹立も難しい場合には、当教室で既に確立・経験済みの遺伝子導入法により本酵素遺伝子を高発現させた細胞株を樹立して対応する。平成32年度には、樹立したノックアウト株、ノックダウン株、または高発現株の細胞内および細胞外(培養上清中)のD-Glu含量を経時的に測定し、本酵素が生体内においてD-Glu合成酵素として機能しているかどうかを確認する。同様に、D-Glu以外のアミノ酸含量に与える影響も解析する。
KAKENHI-PROJECT-18K06117
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K06117
家禽の破卵および脚弱を制御するリン代謝調節機構の解明
鶏では起立不能の脚弱あるいは卵殻の薄化による破卵が頻発し、多大な経済的損失を被っている。これらは、いずれも、リンとカルシウムからなる骨の代謝異常に起因する。本研究では、リン輸送を司るナトリウム依存性リン酸トランスポーター(NaPi-II)が腎臓ならび腸管で発現しており、成熟とともにその発現量は増加しリン吸収が増加していることを明らかにした。また、これらリン代謝はエストロジェンによって生成された活性型ビタミンD3によって調節されていることを示唆した。平成26年度では、以下の研究成果が得られた。1.産卵鶏におけるナトリウム/リン酸共輸送体サブタイプ(NaPi-IIaおよびNaPi-IIb)の遺伝子発現リアルタイムPCRにより、産卵鶏の腸管、腎臓、卵管および骨髄骨におけるNaPi-IIサブタイム遺伝子の相対的発現量を検討したところ、NaPi-IIaは腎臓でのみ発現していることが示された。一方、NaPi-IIbは、腸管、骨髄骨ならびに卵管で発現がみられ、とりわけ、十二指腸(相対値1.00)で最も高く、卵管卵殻腺部(0.48)、卵管卵白分泌部(0.44)、卵管峡部(0.32)、空腸(0.32)でも比較的高い発現量を示した。骨髄骨(0.03)、回腸(0.001)、直結腸(0.001)では、わずかな発現量を示すにすぎなかった。このことより、NaPi-IIaは主に腎臓でのリンの再吸収に関与していることが示唆された。また、NaPi-IIbは腸管でのリンの吸収(能動輸送)に関与しており、とりわけ十二指腸ならびに空腸でリンの吸収が行われていることが示唆された。卵管でもNaPi-IIbが高発現していることが示され、卵殻形成にリン吸収もしくは排出が何らかの関与をしていることが考えられた。10日齢の未成熟産卵鶏と産卵鶏の腸管および腎臓におけるNaPi-IIサブタイプ遺伝子の相対的発現量を比較したところ、産卵鶏の腎臓でNaPi-IIa遺伝子発現量が3.39倍に増加していた。また、NaPi-IIbは十二指腸で1.80倍、空腸で6.94倍増加していた。このことより、鶏は産卵の開始に伴い腎臓でのリンの再吸収が増加するとともに、十二指腸ならびに空腸でリンの吸収が増加することが考えられた。平成27年度では、以下の研究成果が得られた。産卵鶏の血中リンおよびカルシウム濃度を計測するとともに、リアルタイムPCRにより腸管および腎臓におけるナトリウム/リン酸共輸送体サブタイプ(NaPi-IIaおよびNaPi-IIb)とカルシウム結合タンパク質(CaBP)の相対的発現量について、卵殻形成の行われていない時期(卵白分泌期)と卵殻形成の行われている時期(卵殻形成期)の間で比較した。その結果、血中リン濃度は卵白分泌期において4.79 mg/dL、卵殻形成期において6.79 mg/dLであり、卵殻形成期でリン濃度が有意に増加した。しかしながら、血中カルシウム濃度は産卵周期に伴う変化はみられなかった。NaPi-IIa遺伝子の相対的発現量は卵白分泌期と比較して、卵殻形成期の腎臓では0.73倍であった。NaPi-IIb遺伝子の相対的発現量は、卵白分泌期と比較して卵殻形成期の腎臓では0.53倍、十二指腸では0.40倍、空腸では0.33倍、回腸では2.56倍、直結腸では0.28倍で多くが低い発現量を示した。CaBP遺伝子の相対的発現量は卵白分泌期と比較すると、卵殻形成期では腎臓では0.53倍、十二指腸では0.40倍、空腸では0.38倍、回腸では0.98倍、盲腸では0.66倍、直結腸では1.13倍を示し低かった。このことは、卵殻形成期では腎臓ならびに腸管でのリンおよびカルシウムの吸収は減少していることを示している。しかしながら、血中リン濃度は卵殻形成期で増加していることから、卵殻形成時には骨髄骨からの骨吸収によりカルシウムが供給され、卵殻が形成されていることが示された。現在の養鶏産業においては、ブロイラーでは起立不能となる脚弱、産卵鶏では卵殻の薄化による破卵が頻発し、多大な経済的損失を被っている。これらは骨疾患であり、また、卵殻のカルシウム供給源は骨であることから、カルシウムに加え、骨の主成分であるリンもその原因に深く関わっていることが推測される。家禽におけるリン代謝を解明する上で、腸管ならびに腎臓でのリン(再)吸収能の動態を明らかにすることは重要である。本研究では、リン吸収を示す指標としてNaPi-IIサブタイプに着目し、各器官での発現の有無と相対的発現量を検討した。その結果、腎臓にはNaPi-IIaが、腸管ではNaPi-IIbが発現しており、リンの再吸収と吸収に関与していることを示した。また、これらリンの腎臓での再吸収と腸管での吸収は、産卵の開始とともに増加することを明らかにした。加えて、産卵鶏では、産卵周期に伴いNaPi-IIサブタイプとCaBP遺伝子の相対的発現量が変化することを初めて明らかにした。すなわち、卵殻形成期にも関わらず、リンおよびカルシウムの腎臓での再吸収と腸管での吸収は、いずれも低下していることを示した。このことは、卵殻形成に必要なカルシウムは骨髄骨から供給されていることを示唆している。
KAKENHI-PROJECT-26450374
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26450374
家禽の破卵および脚弱を制御するリン代謝調節機構の解明
以上のように、本研究の主要目的である家禽のリン代謝が明らかになり、本研究はおおむね順調に進んでいると評価できる。今後は、これらリン代謝を調節しているホルモンを探るとともに、飼料中のカルシウム濃度がリン代謝に及ぼす影響について検討する。平成28年度では、以下の研究成果が得られた。1.未成熟鶏(10日齢)にエストロジェンを投与することで血中カルシウムおよびリン濃度が増加した。カルシウムの能動輸送を司るカルシウム結合タンパク質(CaBP D28k)遺伝子の発現量は空腸、回腸および盲腸において有意に増加し、リンの能動輸送を司るナトリウム/リン酸共輸送体(NaPi)サブタイプIIb遺伝子の発現量も腸管において増加がみられた。また、血中の活性型ビタミンD3濃度もエストロジェン投与によって増加した。しかしながら、エストロジェン投与によりエストロジェンおよびビタミンD受容体遺伝子発現量は増加しなかった。2.通常飼料区の未成熟鶏(40日齢)において、エストロジェン投与により腸管ならびに腎臓でのカルシウムおよびリン吸収が増加した。通常飼料区とビタミンD欠乏飼料区の間でのエストロジェン作用について比較したところ、ビタミンD欠乏飼料区において血中活性型ビタミンD3濃度が有意に減少し、血中カルシウム濃度、腸管ならびに腎臓におけるCaBP D28kの発現量も減少した。しかし、血中リン濃度およびNaPi遺伝子の発現量は変化しなかった。3.産卵鶏にタモキシフェンを投与してエストロジェン受容体の働きを阻害すると、血中カルシウムおよびリン濃度が有意に減少し、腸管におけるCaBP D28k、腸管および腎臓におけるNaPi-II遺伝子の発現量が有意に減少した。また、血中活性型ビタミンD3濃度も有意な減少がみられた。以上の結果から、エストロジェンは活性型ビタミンDの生成を介してカルシウムならびにリン代謝を調節していることが示唆された。また、平成26-27年度の結果を合わせて考えると、産卵鶏では成熟に伴う卵胞からのエストロジェンの分泌により、活性型ビタミンD生成を介して腸管ならびに腎臓でのカルシウムおよびリン吸収が促進するものと推察される。鶏では起立不能の脚弱あるいは卵殻の薄化による破卵が頻発し、多大な経済的損失を被っている。これらは、いずれも、リンとカルシウムからなる骨の代謝異常に起因する。本研究では、リン輸送を司るナトリウム依存性リン酸トランスポーター(NaPi-II)が腎臓ならび腸管で発現しており、成熟とともにその発現量は増加しリン吸収が増加していることを明らかにした。また、これらリン代謝はエストロジェンによって生成された活性型ビタミンD3によって調節されていることを示唆した。現在の養鶏産業においては、ブロイラーでは起立不能となる脚弱、産卵鶏では卵殻の薄化による破卵が頻発し、多大な経済的損失を被っている。これらは骨疾患であり、また、卵殻のカルシウム供給源は骨であることから、カルシウム代謝はもちろんこと、骨の主成分であるリンの代謝も深くその原因に関わっていることが推測される。家禽におけるリン代謝を解明する上で、腸管ならびに腎臓でのリン吸収能の動態を明らかにすることは重要である。本研究では、リン吸収能を示す指標として、NaPi-IIサブタイプに着目し、各器官での発現の有無と相対的発現量を検討した。その結果、腎臓ではNaPi-IIaが、腸管ではNaPi-IIbが発現しており、リンの再吸収と吸収に関与していることが明らかとなった。また、哺乳類とは異なり、腸管では十二指腸で最もリン吸収が行われていることを示した。
KAKENHI-PROJECT-26450374
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26450374
酵素免疫測定法の特徴に関する研究
酵素免疫測定法は免疫反応を解析し易い特徴を持つ。この特徴を応用した研究の成果を報告する。1.微生物の酵素免疫測定法に関する研究。種々の微生物,柑橘潰瘍病,虫菌菌,黄色ブドウ球菌,在郷軍人病菌,ナス科植物青枯水病菌,コレラ菌,植物病原菌フザリウムにつき、同菌種の異株を共通して測定できる高感度の酵素免疫測定法が開発出来た。2.特異抗体の作製研究。各種の抗癌剤、ピューロマイシン,3-N-(p-hydroxyphenyl)mitomjcin C,アクラシノマイシンA,クロモマイシンA-3,オリボマイシンやミスラマイシン等に対するそれぞれの高感度な酵素免疫測定法を開発した。また、コリスチンやセファレキシンの酵素免疫測定法を開発し、虹鱒や鶏にこれらの医薬品を投与した場合に、体内に残流する医薬品の検出と定量が出来た。3.特異抗体の性状解析研究。特異抗体ブラスチサンジンS抗体の精製法を詳細に検討し、その最適条件を確立した。この精製法でネオカルチノスタチンに対する特異抗体を精製し、この抗体に高感度で高精度な酵素免疫測定法を開発出来た。また、改良酵素標識法を利用して、人のIgGに対する高感度で高精度の酵素免疫測定法を開発した。特異抗体の抗原に対する結合定数を測定することは従来法では容易で無かったので、酵素免疫測定法を用いた簡便な新しい測定法を開発することが出来た。4.モノクローン抗体の作製研究。バイオマイシンに対する2種類のモノクローン抗体を作製し、その性状を詳しく解析した結果両抗体はバイオマイシン分子のみを確認し、担体蛋白質や蛋白とハプテンとの結合部を認識しないことが判明した。酵素免疫測定法は免疫反応を解析し易い特徴を持つ。この特徴を応用した研究の成果を報告する。1.微生物の酵素免疫測定法に関する研究。種々の微生物,柑橘潰瘍病,虫菌菌,黄色ブドウ球菌,在郷軍人病菌,ナス科植物青枯水病菌,コレラ菌,植物病原菌フザリウムにつき、同菌種の異株を共通して測定できる高感度の酵素免疫測定法が開発出来た。2.特異抗体の作製研究。各種の抗癌剤、ピューロマイシン,3-N-(p-hydroxyphenyl)mitomjcin C,アクラシノマイシンA,クロモマイシンA-3,オリボマイシンやミスラマイシン等に対するそれぞれの高感度な酵素免疫測定法を開発した。また、コリスチンやセファレキシンの酵素免疫測定法を開発し、虹鱒や鶏にこれらの医薬品を投与した場合に、体内に残流する医薬品の検出と定量が出来た。3.特異抗体の性状解析研究。特異抗体ブラスチサンジンS抗体の精製法を詳細に検討し、その最適条件を確立した。この精製法でネオカルチノスタチンに対する特異抗体を精製し、この抗体に高感度で高精度な酵素免疫測定法を開発出来た。また、改良酵素標識法を利用して、人のIgGに対する高感度で高精度の酵素免疫測定法を開発した。特異抗体の抗原に対する結合定数を測定することは従来法では容易で無かったので、酵素免疫測定法を用いた簡便な新しい測定法を開発することが出来た。4.モノクローン抗体の作製研究。バイオマイシンに対する2種類のモノクローン抗体を作製し、その性状を詳しく解析した結果両抗体はバイオマイシン分子のみを確認し、担体蛋白質や蛋白とハプテンとの結合部を認識しないことが判明した。
KAKENHI-PROJECT-59460196
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-59460196
植物の過敏感反応の誘導と抑制機構の解析
植物の過敏感反応(HR)誘導のシグナル伝達に関与する因子を単離するために、BY-2細胞及びHRエリシター・エリシチンのモデル系において、HR誘導時に活性化、もしくは不活性化される遺伝子群の単離をすすめた。これまでにいくつかの新規防御応答遺伝子を見いだしたが、本年度は、その中で特に、受容体型キナーゼ遺伝子に注目し、本分子を介したシグナル伝達機構について解析を行った。本キナーゼは、少なくとも3つのメンバーよりなるファミリーを形成していることが明らかとなり、さらにそのうちの2つがエリシチン及び、ジェネラルエリシターにより発現が特異的に誘導されることが示された。また、構造解析の結果より、本キナーゼは、レクチンと高い相同性を持つ構造を受容体様ドメインとして有し、間に膜貫通ドメインをもつ、セリン/スレオニンタイプのプロテインキナーゼであることが示された。防御応答に関与する受容体型プロテインキナーゼとしては、イネの抵抗性遺伝子Xa21が知られており、タンパク質-タンバク質の相互作用を介したシグナル伝達経路が予想されている。今回単離されたキナーゼもリガンド-レセプターを介して、キナーゼによりそのシグナルを下流に伝達するというモデルが推測されるが、受容体としてレクチン様のドメインを有していることから、多糖類、もしくは糖タンパク質をリガンドとして認識する新しいシグナル伝達経路の存在が示唆される。そこで、現在、本遺伝子の組み換えタンパク質を作製し、上流のリガンド分子及び下流のターゲット分子の探索を行っている。また、本遺伝子の過剰発現系、サイレンシングの系を構築しており、今後これらの組み換え植物の解析をさらに詳細にすすめていくことで、本分子を介したシグナル伝達経路とともに、過敏感反応シグナル伝達経路の全貌についても少しづつ明らかとなるものと考えている。植物の過敏感反応(HR)誘導のシグナル伝達に関与する因子を単離するために、BY-2細胞及びHRエリシター・エリシチンのモデル系において、HR誘導時に活性化、もしくは不活性化される遺伝子群の単離をすすめた。これまでにいくつかの新規防御応答遺伝子を見いだしたが、本年度は、その中で特に、受容体型キナーゼ遺伝子に注目し、本分子を介したシグナル伝達機構について解析を行った。本キナーゼは、少なくとも3つのメンバーよりなるファミリーを形成していることが明らかとなり、さらにそのうちの2つがエリシチン及び、ジェネラルエリシターにより発現が特異的に誘導されることが示された。また、構造解析の結果より、本キナーゼは、レクチンと高い相同性を持つ構造を受容体様ドメインとして有し、間に膜貫通ドメインをもつ、セリン/スレオニンタイプのプロテインキナーゼであることが示された。防御応答に関与する受容体型プロテインキナーゼとしては、イネの抵抗性遺伝子Xa21が知られており、タンパク質-タンバク質の相互作用を介したシグナル伝達経路が予想されている。今回単離されたキナーゼもリガンド-レセプターを介して、キナーゼによりそのシグナルを下流に伝達するというモデルが推測されるが、受容体としてレクチン様のドメインを有していることから、多糖類、もしくは糖タンパク質をリガンドとして認識する新しいシグナル伝達経路の存在が示唆される。そこで、現在、本遺伝子の組み換えタンパク質を作製し、上流のリガンド分子及び下流のターゲット分子の探索を行っている。また、本遺伝子の過剰発現系、サイレンシングの系を構築しており、今後これらの組み換え植物の解析をさらに詳細にすすめていくことで、本分子を介したシグナル伝達経路とともに、過敏感反応シグナル伝達経路の全貌についても少しづつ明らかとなるものと考えている。
KAKENHI-PROJECT-01J04333
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『医心方』所引の仏教関連書籍から見る東アジアの仏教医学伝播の諸相
1.中国における文献調査鳥インフルエンザ蔓延の恐れがあったため延期されていた中国調査を本年度行った。調査地は北京である。北京では、国家図書館・北京大学図書館・北京中医薬大学の善本室で、明治期に流出した日本の古医籍を中心に『医心方』所引の典籍や目録を調査し、一部史料の複印を得た。また若干の収書を行った。この成果については、平成23年度に学会発表および論文発表を予定している。北京中医薬大学では、中国医学史の研究者である梁永宣教授を、北京大学では、唐代の西域仏教医学の研究者である陳明教授を訪問、当地の中国医学研究者と情報を交換し、交流を図った。2.日本における文献調査国立国会図書館・金沢文庫・京都大学などで、『医心方』および中国医学関連の文献を精査した。この調査により、隋唐時代までの中国古医籍の残存状態の理解および『医心方』所引の典籍の研究が進んだ。また、12月から翌1月にかけて杏雨書屋・岩瀬文庫・内藤記念くすり博物館図書館を調査、江戸医学館で『医心方』安政刊本の編集・発刊に貢献した小島宝素旧蔵書の実態について、知見を得た。この成果については、本年7月に京都大学人文科学研究所の共同研究「術数学-中国の科学と占術」(武田時昌教授)で発表(本来は3月13日に当該研究班東京ワークで発表予定だったが、東日本大震災のため、9月に延期された)、目録については、今年度中に出版助成を受ける予定である。3.『医心方』所引の仏教医学文献の輯佚と復元購入した書籍を利用し、『医心方』所引の仏教医学文献の内、「僧深方」を輯佚し、復元を試みている。今年度は『外台秘要方』所引僧深方および先行医書との校合を続けた。この成果については、本年9月刊行の国際日本文化研究センターの『日本研究』47号に掲載予定である。総合的な輯佚の結果については、出版助成を受ける予定である。成果の一部はCD-ROM化して海外の学会で配布した。(本来は3月13日に配布予定だったが、延期となったので随時配布に変更)1.台湾における文献調査本年度の海外調査は、当初中国を予定していたが、調査予定時に鳥インフルエンザ蔓延の恐れがあったため、平成22年度に予定していた台湾に調査地を変更した。台湾では、台北市の故宮博物院と国家図書館の善本室で、明治期に流出した日本の古医籍を中心に『医心方』所引の典籍を調査し、一部史料の複印を得た。また若干の収書を行った。この成果については、平成21年度に学会発表および論文発表を予定している。また、台中市に赴き、中国医学史の研究者である中興大学の林富士教授および中国医薬大学立夫中医薬展示館を訪問、当地の中国医学研究者と情報を交換し、交流を図った。2.日本における文献調査国立国会図書館・北里大学・金沢文庫・京都大学などで、『医心方』および中国医学関連の文献を精査した。この調査により、隋唐時代までの中国古医籍の残存状態の理解および『医心方』所引の典籍の研究が進んだ。また、7月に兵庫県豊岡市において、但馬国府跡の祢布ケ森遺跡出土の習書木簡を調査、平安期における日本の漢籍受容の実態について、知見を得た。この成果については、12月に木簡学会で発表、来年度(平成21年12月刊行予定)の『木簡研究』に論文掲載予定である。3.『医心方』所引の仏教医学文献の輯佚と復元購入した書籍を利用し、『医心方』所引の仏教医学文献の内、「僧深方」を輯佚し、復元を試みている。この成果については、12月に京都大学人文科学研究所の共同研究「陰陽五行のサイエンス」(武田時昌教授)で発表、論文は平成22年度刊行予定の同共同研究の報告論文集に掲載予定である。(1)香港におはる文献調査本年度の海外調査は、当初中国を予定していたが、調査予定時にH1N1型新型インフルエンザの流行があり、調査に支障を来す可能性があったため平成21年度に予定していた香港に調査地を変更した。香港では、香港大学図書館と香港中文大学図書館で、明治期に流出した日本の古医籍を中心に、幕府医学館で『医心方』復刻に当たった小島宝素関連等の典籍を調査した。この成果については、平成22年度に国際シンポジウム(8月南京大学)および学会・論文発表を予定している。また、香港大学では、中国科学史の馮錦榮助教授と交流を図った。(2)日本における文献調査国立国会図書館・金沢文庫・京都大学などにおいて、『医心方』および中国医学関連の文献を精査した。この調査により、隋唐時代までの中国古医籍の残存状態の理解および『医心方』所引の典籍の研究が進んだ。(3)『医心方』所引の仏教医学文献の輯佚と復元科研費で購入した書籍を利用し、『医心方』『外台秘要方』所引の仏教医学文献の内、「僧深方」を輯佚し、復元を試みている。この成果については、昨年9月に日本宗教学会で発表し、3月刊行の国際日本文化研究センター『日本研究』41号および日本宗教学会『宗教研究』83(4)に掲載された。
KAKENHI-PROJECT-20652004
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『医心方』所引の仏教関連書籍から見る東アジアの仏教医学伝播の諸相
(4)一昨年7月に兵庫県豊岡市において、但馬国府跡の祢布ケ森遺跡出土の習書木簡を調査、この成果を同12月に木簡学会で発表したものの成果については、昨年12月刊行の木簡学会『木簡研究』31号に掲載された。1.中国における文献調査鳥インフルエンザ蔓延の恐れがあったため延期されていた中国調査を本年度行った。調査地は北京である。北京では、国家図書館・北京大学図書館・北京中医薬大学の善本室で、明治期に流出した日本の古医籍を中心に『医心方』所引の典籍や目録を調査し、一部史料の複印を得た。また若干の収書を行った。この成果については、平成23年度に学会発表および論文発表を予定している。北京中医薬大学では、中国医学史の研究者である梁永宣教授を、北京大学では、唐代の西域仏教医学の研究者である陳明教授を訪問、当地の中国医学研究者と情報を交換し、交流を図った。2.日本における文献調査国立国会図書館・金沢文庫・京都大学などで、『医心方』および中国医学関連の文献を精査した。この調査により、隋唐時代までの中国古医籍の残存状態の理解および『医心方』所引の典籍の研究が進んだ。また、12月から翌1月にかけて杏雨書屋・岩瀬文庫・内藤記念くすり博物館図書館を調査、江戸医学館で『医心方』安政刊本の編集・発刊に貢献した小島宝素旧蔵書の実態について、知見を得た。この成果については、本年7月に京都大学人文科学研究所の共同研究「術数学-中国の科学と占術」(武田時昌教授)で発表(本来は3月13日に当該研究班東京ワークで発表予定だったが、東日本大震災のため、9月に延期された)、目録については、今年度中に出版助成を受ける予定である。3.『医心方』所引の仏教医学文献の輯佚と復元購入した書籍を利用し、『医心方』所引の仏教医学文献の内、「僧深方」を輯佚し、復元を試みている。今年度は『外台秘要方』所引僧深方および先行医書との校合を続けた。この成果については、本年9月刊行の国際日本文化研究センターの『日本研究』47号に掲載予定である。総合的な輯佚の結果については、出版助成を受ける予定である。成果の一部はCD-ROM化して海外の学会で配布した。(本来は3月13日に配布予定だったが、延期となったので随時配布に変更)
KAKENHI-PROJECT-20652004
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新生産系と再生生産系における魚類資源変動の比較生態学的研究
亜寒帯水域の資源が23桁の幅で量的に大変動するのに対して、亜熱帯水域の資源は23倍の変動幅の中に安定していることに着目し、ニシン科魚類を対象として、変動様式の南北差の基礎となる生態的特性を明らかにすることを目的とした。・熱帯水域に分布の中心があるキビナゴのうち串本周辺海域に分布する群では、孵化後34ヶ月で成熟体長60mmに達して再生産に加入し、高速で世代回転することがわかった。・東シナ海に分布の中心があるウルメイワシについて土佐湾で調査した結果、孵化後半年で成熟体長に達し、ほぼ周年にわたって産卵することがわかった。・西東日本沿岸の温帯水域に生息するコノシロを相模湾で調べた結果、仔魚期前半に相模川河口域へ集まり、稚魚期には河口から数km上流まで進入することがわかった。・西日本沖の温帯水域から千島列島沖の亜寒帯水域に分布するマイワシの知見を整理した結果、年々の加入量は2桁以上の幅で変動し、資源量変動に対応して生態学的特性を大きく変動させることがわかった。・亜寒帯水域のニシンを宮古湾で調べた結果、2000年級は低水準であったのに対して、2001年級は著しく高水準となり、年々の加入量水準が桁違いに異なることを観測した。2001年級が卓越群となったのは、水温と餌条件に恵まれた結果であると判断された。亜寒帯水域の資源が23桁の幅で量的に大変動するのに対して、亜熱帯水域の資源は23倍の変動幅の中に安定していることに着目し、ニシン科魚類を対象として、変動様式の南北差の基礎となる生態的特性を明らかにすることを目的とした。・熱帯水域に分布の中心があるキビナゴのうち串本周辺海域に分布する群では、孵化後34ヶ月で成熟体長60mmに達して再生産に加入し、高速で世代回転することがわかった。・東シナ海に分布の中心があるウルメイワシについて土佐湾で調査した結果、孵化後半年で成熟体長に達し、ほぼ周年にわたって産卵することがわかった。・西東日本沿岸の温帯水域に生息するコノシロを相模湾で調べた結果、仔魚期前半に相模川河口域へ集まり、稚魚期には河口から数km上流まで進入することがわかった。・西日本沖の温帯水域から千島列島沖の亜寒帯水域に分布するマイワシの知見を整理した結果、年々の加入量は2桁以上の幅で変動し、資源量変動に対応して生態学的特性を大きく変動させることがわかった。・亜寒帯水域のニシンを宮古湾で調べた結果、2000年級は低水準であったのに対して、2001年級は著しく高水準となり、年々の加入量水準が桁違いに異なることを観測した。2001年級が卓越群となったのは、水温と餌条件に恵まれた結果であると判断された。今年度は野外調査によるデータの蓄積と関連分野の最新知見の収集に力点を置いた。ニシンの再生産に関する野外調査を北海道厚岸湾で行う予定であったが、調査頻度を高めるためと地元の水産関連期間との協力関係を考慮して、岩手県宮古湾に変更した。1999年9月から野外調査を開始し、毎月1回の湾内の物理、生物環境調査を継続中である。2000年1月から湾内へ回帰した産卵親魚に関するデータ収集を開始し、3月現在も継続中である。また、回帰親魚を用いた人工受精を行い、ふ化した仔魚をいくつかの餌密度および水温条件で飼育して、仔魚の環境変動に対する応答解析のための基礎資料を収集しつつある。キビナゴについて、過去のシラス船曳網漁獲物を調べ、仔魚の出現時期が秋期に多いことを確認した。1999年10月以降、和歌山県串本高に水揚げされる漁獲物について、生物学的データを収集している。これによると、体長7cm前後の個体でも性成熟に達し、生物学的最小形はこれまで考えられていたよりかなり小型である可能性がある。1999年10月に調査船江ノ島丸による採集を試みたが、仔魚を少数採集するにとどまった。マイワシについては、さまざまな海域で得られたデータを合併すれば生命表解析が可能であることがわかったが、資源量変動に伴う生物学的パラメタの経年変動については、過去のデータが欠除していることがわかった。ニシン研究の国際シンポジウム(Herring2000)に参加して、ニシンに関する北米とヨーロッパでの研究の動向について、最新の情報を収集した。1.1998年に孵化して岩手県宮古湾内で成長したニシンの天然稚魚(体長58cm)と、同じ年に人工種苗生産された後に湾内に放流された稚魚について、耳石日輪に基づく成長解析を行った結果、天然稚魚の成長が湾内放流後の人工稚魚の成長を大きく上回ることが分かった。2.1999年9月から岩手県宮古湾内の物理,生物環境調査を毎月1回の割合で継続した結果、湾奥におけるニシンの餌生物は34月に密度が高く5月以降大きく低下すること、水温は2月以降連続的に上昇することが分かった。3.人工種苗生産され、2000年4月に放流された稚魚と5月に放流されたニシン稚魚の成長を比較したところ、餌料密度が低いが水温が高い5月に放流された稚魚の方が成長が速かった。
KAKENHI-PROJECT-11460086
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11460086
新生産系と再生生産系における魚類資源変動の比較生態学的研究
4.串本周辺海域におけるキビナゴの成長を耳石日輪に基づいて解析した結果、孵化後約3ヶ月で初回成熟体長60mmに達すること、孵化後1年で最大体長の100mmに達することが分かった。5.キビナゴ卵巣の組織学検査から、産卵期は3月9月の7ヶ月にわたること、産卵期前半に生まれた仔魚は、産卵期後半には成熟して産卵する可能性があることが分かった。6.ニシン科魚類の繁殖生態と資源変動に関するシンポジウムを行い、ニシン、ウルメイワシ、コノシロ、サッパ、キビナゴについての知見を総括した。1.北海道春ニシンの19101950年の漁獲物データについて解析した結果、4歳魚の平均体長が25.530.3cmの幅で経年変動したこと、この体長変動は4歳魚の資源尾数の変動によって説明できず、密度独立的に起こったことが分かった。日本海のマイワシでは、2歳魚の平均体長が密度依存的に変動することが分かり、亜寒帯水域に生息するニシンと温帯域に生息するマイワシでは、成長速度変動が異なるしくみで起こったことが明らかとなった。2.2000年24月に宮古湾で23歳のニシン産卵親魚が1596尾採集されたが、この年に生まれて春から夏にかけて採集された仔稚魚は1尾のみであった。これに対して、2001年には産卵親魚採集数が2000年の約1/3であったが、20100mmの仔稚魚849尾が春から秋にかけて産卵場周辺で採集された。湾内に放流された人工孵化稚魚の成長速度は2000年に比べて2001年に速かった。孵化後約半年間におけるニシン仔稚魚の生残と成長にとって2001年の湾内環境が好適であったことが分かった。3.長崎県で飼育した仔魚を用いて、耳石微細輪紋が日輪であることを確認した。日輪数から串本周辺で5月に採集された成魚が前年の秋生まれであること、春から夏に採集した仔稚魚から求めた成長曲線と一致することが確認された。4.神奈川県相模川河口域で6月と8月に仔稚魚約200個体を採集した。コノシロは45月に相模湾東部海域で産卵すること、仔魚期前半に砕波帯に接岸することが知られているが、仔魚期後半から稚魚期には河川内へ進入することがわかった。5.土佐湾の仁淀川河口域において、2000年9月から2001年4月にウルメイワシ仔魚をシラス船曳網で採集し、孵化日と成長速度を個体別に求めた。孵化月コーホートごとに成長速度を比較した結果、冬季の12月と1月生まれ群の成長速度が、911月および2月生まれより遅いことが分かった。
KAKENHI-PROJECT-11460086
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11460086
易感染性宿主における日和見感染予防を目指した口腔細菌学的研究
本研究では易感染性宿主を対象として、Candidaを中心に据えて口腔常在微生物叢の検索を行い、さらに全身状態の把握も行い、易感染性宿主では致命的になりうる日和見感染症発症の危険性を検討することを目的とした。被験者は1)施設に入居する高齢者、2)糖尿病患者、3)ダウン症者を含む知的障害者、4)長期間免疫抑制剤を投与される小児腎移植患者、5)HIV陽性者で、1)5)の被験者と年齢の一致した健常者を対照とした。その結果、1)施設に入居する高齢者はCandidaの分離頻度が高く、吻Candidaの菌数も高値を示した。2)糖尿病患者では空腹時血糖値が高い被験者ほどCandidaの分離頻度と菌数が高い傾向を示し、血糖値コントロールにより、この値が改善されることが分かった。3)ダウン症者はCandidaが優勢なきわめて特徴的な口腔常在微生物叢を持ち、歯周疾患とカンジダ症のリスクが高いことが示された。4)小児腎移植患者は健常コントロールと変わらない口腔常在微生物叢を示し、Candidaの分離頻度も菌数も差はなかった。5)HIV陽性者のCandidaの分離頻度は健常対照者と比べて高く、Candidaの菌数も高値であった。また、HIV陽性者ではCandidaにより壊死性潰瘍性歯肉炎が発症する可能性が示された。以上の結果から、小児腎移植患者以外の易感染性宿主は健常者と比べて明らかにCandidaの分離頻度、菌数ともに高い傾向を示し、カンジダ症発症のリスクが高いことが示唆された。本研究では易感染性宿主を対象として、Candidaを中心に据えて口腔常在微生物叢の検索を行い、さらに全身状態の把握も行い、易感染性宿主では致命的になりうる日和見感染症発症の危険性を検討することを目的とした。被験者は1)施設に入居する高齢者、2)糖尿病患者、3)ダウン症者を含む知的障害者、4)長期間免疫抑制剤を投与される小児腎移植患者、5)HIV陽性者で、1)5)の被験者と年齢の一致した健常者を対照とした。その結果、1)施設に入居する高齢者はCandidaの分離頻度が高く、吻Candidaの菌数も高値を示した。2)糖尿病患者では空腹時血糖値が高い被験者ほどCandidaの分離頻度と菌数が高い傾向を示し、血糖値コントロールにより、この値が改善されることが分かった。3)ダウン症者はCandidaが優勢なきわめて特徴的な口腔常在微生物叢を持ち、歯周疾患とカンジダ症のリスクが高いことが示された。4)小児腎移植患者は健常コントロールと変わらない口腔常在微生物叢を示し、Candidaの分離頻度も菌数も差はなかった。5)HIV陽性者のCandidaの分離頻度は健常対照者と比べて高く、Candidaの菌数も高値であった。また、HIV陽性者ではCandidaにより壊死性潰瘍性歯肉炎が発症する可能性が示された。以上の結果から、小児腎移植患者以外の易感染性宿主は健常者と比べて明らかにCandidaの分離頻度、菌数ともに高い傾向を示し、カンジダ症発症のリスクが高いことが示唆された。易感染性宿主の口腔常在細菌叢内の微生物,とくに代表的な日和見感染病原体であるCandidaを中心に以下の群で検索した.I特別養護老人ホームに入居する高齢者群;(6580歳,111名),健康な高齢者群(新潟県在住,70歳,45名,鶴見大学歯学部病院外来に来院した患者,65歳以上,29名),II糖尿病患者群:東京医大病院内科に入院中の重症糖尿病患者(2070歳,20名),III知的障害者群:知的障害者対象の養護施設に入居するダウン症候群およびそれ以外の知的障害者(2050歳,45名).その結果,高齢者群では,特別養護老人ホーム群の方が健康な対照群に比べて,Candidaの分離頻度が高く,両者間には統計学的に有意な差(χ^2-test,P<0.05)が認められ,Candidaの菌数も前者の方が高値を示した.このことから,健康な高齢者に比べて日常動作(ADL)値が低い高齢者の口腔でCandidaの分離頻度,菌数ともに上昇する可能性が示唆された.また,義歯装着者群は非装着者群に比べてCandidaの菌数が有意に高かった(Mann-Whitney U-test).さらに,義歯装着群では唾液中のS.mutans groupの分離頻度およびLactobacilliの菌数ともに非装着群より有意に高く,義歯表面のplaque形成にこれらの微生物が共生的に関与している可能性が示唆された.糖尿病患者群:糖尿病患者群は高齢者群と同様に舌表面からのCandidaの出現頻度が高い傾向を示し,とくに若年の糖尿病患者では血糖値コントロール前にCandidaが多く分離されたが,コントロール後にはほとんど分離されなくなった.知的障害者群:知的障害者群ではダウン症候群患者の舌表面からのCandidaの分離頻度が有意に高く,ダウン症候群以外の知的障害者群との間に統計学的に有意な差が認められた(χ^2-test,P<0.05).1:糖尿病-肥満と歯周疾患-咀嚼能の関係の関する調査
KAKENHI-PROJECT-10470402
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10470402
易感染性宿主における日和見感染予防を目指した口腔細菌学的研究
糖尿病患者(750名)、肥満患者(100名)、対象健常者(130名)に対して、総歯数、アタッチメントロス数、健全歯根数、咀嚼指数を調査した。糖尿病患者では総歯数、アタッチメントロス数、健全歯根数、咀嚼指数ともに低下し、他の群との間に統計学的に有意な差があった。また、糖尿病患者の中で網膜症、腎症、神経障害などの合併症を認める群では合併症のない群よりも総歯数が有意に少なく、咀嚼指数も低下していたが、その他の項目は差が見られなかった。以上の結果から、糖尿病患者では歯周疾患の合併が多く、糖尿病特有の合併症を伴うとさらに歯周疾患の合併が多くなり、咀嚼能も低下することが示唆された。2:ダウン症者の口腔常在微生物と口腔環境に関する調査ダウン症者(DW)、ダウン症以外の知的障害者(MR)群および健常者群の口腔常在微生物叢を検査し、3群間で比較した。齲蝕に関連する項目;DW群はMRおよび健常者群と比べて、齲蝕原生細菌(lactobacilliのCFU、mutans streptococciのclass分類)数が多かったが、一方で唾液中のsIgA濃度も3群中で最も高値を示し、結果的にはDF歯率は3群ともほぼ同じ値を示した。歯周疾患に関連する項目;歯周組織の炎症程度を見るために行ったprobing depth(PD)、gingicalindex(GI)、plaque index(PlI)、bleeding on probingなどの臨床的パラメーターは健常者群に比べてDW、MR群ともに有意に高値を示し、同様に歯肉ポケット内の総菌数、歯周病関連菌(黒色コロニー形成性グラム陰性嫌気性桿菌群)数も有意に多かった。日和見感染症にに関連する項目;カンジダ症の原因微生物であるCandida albicansはDW群で最も多数分離された。以上の結果から、ダウン症者はカンジダが優勢なきわめて特徴的な口腔常在微生物叢を持ち、歯周疾患とカンジダ症のリスクが高いことが示された。
KAKENHI-PROJECT-10470402
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10470402
コンタクトストレスによる窒化けい素系セラミックスの変形挙動と微細組織に関する研究
4種類の窒化ケイ素系セラミックス焼結体をホットプレスにより作製し、その表面に球状ダイヤモンド圧子を圧入し、そのときに発生する変形挙動と微細組織との関係を調べた。その結果、窒化ケイ素系セラミックス焼結体の球状圧子圧入による変形挙動は、焼結体の微細組織に大きく影響を受け、物性値だけでは論ずることができないことが判り、構造材料として使用する場合の設計指針となる知見が得られた。具体的成果は以下の通りである。1.球状ダイヤモンド圧子の圧入により,球冠状の圧痕,ラジアルクラック,リング状のダメージが形成され,圧痕外周円付近には盛り上がりが観察された.2.球状ダイヤモンド圧子により形成される圧痕の径は,ビッカース硬度と相関した.しかし,圧痕の深さは圧子圧入深さの1/6程度で、かつ,試料による差が大きかった.圧痕外周円の盛り上がりも試料による差が大きく,今後定量的議論が必要と考えられた.3.圧痕周辺に発生するラジアルクラックの長さは,試料を構成する窒化ケイ素の粒径に支配され,平均粒径の大きい試料ほどラジアルクラックは長かった.4.ヘルツクラックは,平均粒径の小さい試料のみに発生した.5.圧子圧入-除荷履歴を求める装置を試作した。この装置により求めた圧入-除荷履歴曲線は、粒界相の量に依存することが判った。4種類の窒化ケイ素系セラミックス焼結体をホットプレスにより作製し、その表面に球状ダイヤモンド圧子を圧入し、そのときに発生する変形挙動と微細組織との関係を調べた。その結果、窒化ケイ素系セラミックス焼結体の球状圧子圧入による変形挙動は、焼結体の微細組織に大きく影響を受け、物性値だけでは論ずることができないことが判り、構造材料として使用する場合の設計指針となる知見が得られた。具体的成果は以下の通りである。1.球状ダイヤモンド圧子の圧入により,球冠状の圧痕,ラジアルクラック,リング状のダメージが形成され,圧痕外周円付近には盛り上がりが観察された.2.球状ダイヤモンド圧子により形成される圧痕の径は,ビッカース硬度と相関した.しかし,圧痕の深さは圧子圧入深さの1/6程度で、かつ,試料による差が大きかった.圧痕外周円の盛り上がりも試料による差が大きく,今後定量的議論が必要と考えられた.3.圧痕周辺に発生するラジアルクラックの長さは,試料を構成する窒化ケイ素の粒径に支配され,平均粒径の大きい試料ほどラジアルクラックは長かった.4.ヘルツクラックは,平均粒径の小さい試料のみに発生した.5.圧子圧入-除荷履歴を求める装置を試作した。この装置により求めた圧入-除荷履歴曲線は、粒界相の量に依存することが判った。異なる粒径を有する窒化けい素と量の異なる焼結助剤を原料粉末とすることにより、粒径や粒界相の量と組織などの微細組織を違えた窒化けい素系セラミックス焼結体を作製し、その表面に球状のダイヤモンド圧子を圧入し、そのときに発生するコンタクトダメージと微細組織との関係を調べた。その結果、以下のことが明らかとなった。1.球状ダイヤモンド圧子の圧入により、窒化けい素系セラミックス焼結体上に29N以上の圧入荷重において球冠上の圧痕が形成され、その外周円周辺に盛り上がりが観察された。2.微細組織に関係なく、147N以上の圧入荷重において圧痕から放射状に伸びるラジアルクラックの形成が認められた。3.ラジアルクラックは、平均粒径の大きい窒化けい素系セラミックス焼結体ほど長さが長く、かつ粒を切って進展することが判った。4.平均粒径の小さい窒化けい素系セラミックス焼結体の場合には、196および247Nの圧入荷重において円形のヘルツクラックの形成が認められた。5.球冠状の圧痕の深さは、粒界相の多い窒化けい素系セラミックス焼結体ほど深いことが判った。以上の結果のように、窒化けい素系セラミックス焼結体のコンタクトダメージは、焼結体の微細組織に大きく影響を受けることが判った。今後は、圧子圧入後の窒化けい素系セラミックス焼結体中に残留する内部応力とダメージとの関係を明らかにし、さらに、圧子圧入時の変形挙動の定量化を目指す。粒径の異なる窒化ケイ素粉末を原料とし、焼結助剤の量を変えることにより、粒径、粒径相の量ならびに構造などの微細組織を違えた4種類の窒化ケイ素系セラミックス焼結体をホットプレスにより作製し、その表面に球状ダイヤモンド圧子を圧入し、そのときに発生する変形挙動と微細組織との関係を調べた。その結果、以下のことが明らかになった。1.球状ダイヤモンド圧子の圧入により,球冠状の圧痕,ラジアルクラック,リング状のダメージが形成され,圧痕外周円付近には盛り上がりが観察された。2.球状ダイヤモンド圧子により形成される圧痕の径は,ビッカース硬度と相関した。しかし,圧痕の深さは圧子圧入深さの1/6程度で,かつ,試料による差が大きかった。圧痕外周円の盛り上がりも試料による差が大きく,今後定量的議論が必要と考えられた。
KAKENHI-PROJECT-04650706
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04650706
コンタクトストレスによる窒化けい素系セラミックスの変形挙動と微細組織に関する研究
3.圧痕周辺に発生するラジアルクラックの長さは,試料を構成する窒化ケイ素の粒径に支配され,平均粒径の大きい試料ほどラジアルクラックは長かった。4.ヘルツクラックは,平均粒径の小さい試料のみに発生した。5.装置を試作して圧子の圧入-除荷履歴を求めたところ、履歴曲線は粒界相の量に依存しすることが判った。以上の結果のように,窒化ケイ素系セラミックス焼結体の圧子圧入による変形挙動は、焼結体の微細組織に大きく影響を受け、物性値だけでは論ずることができないことが判った。
KAKENHI-PROJECT-04650706
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04650706
PTHrP遺伝子導入による口腔癌治療についての基礎的研究
ヒト歯肉由来ケラチノサイト、NDUSD-1(SV40遺伝子由来のSVori-とヒトc-fos遺伝子を移入することによって不死化された歯肉角化細胞株)に対するPTHrP[1-34],PTHrP[34-53],PTHrP[107-139]の角化に及ぼす影響について検討を行ってきた。約4,900の遺伝子の発現プロファイリングcDNAマイクロアレイで検討した結果、PTHrP[1-34]の培地添加で、UV照射に関連する蛋白の発現が有意に増加した、しかしPTHrP[1-34],PTHrP[34-53],PTHrP[107-139]の培地への添加による、そのターゲット遺伝子の発現を定量RT-PCR反応で確認したところ有意な上昇は見られなかった。UV照射による培地中のC-PTHrP(RIA法),PTHrP(1-84,IRMA法),サイクリックAMP,1,25-(OH)2ビタミンDの変化を調べたが有意な変化は見られなかった。PTHrP外因性増殖分化調節は困難である結果が出た。そこで細胞周期関連遺伝子およびhTERTによる遺伝子治療の可能性を検討した。UVB照射後にcDNA合成を行い関連遺伝子の一つrad9のreal-timePCR(RT-PCR)を施行した。UVBを照射し,6,14,24時間後、細胞内のRad9発現量は増加し,すべてで2倍以上の増加が見られた。照射を行った細胞においてG0-G1期で細胞数の増加,S期とG2+M期で細胞数の減少を示していた。またATR, chk1,cdc25Bの発現レベルとの関係も検討した。Rad9に関連した遺伝子治療の可能性があると考えられた。そして、私達はhTERT(テロメラーゼ)のcDNAマイクロアレイ検討において口腔角化細胞(老化)の細胞周期関連遺伝子発現への影響を認めた。ヒト歯肉由来ケラチノサイト、NDUSD-1(SV40遺伝子由来のSVori-とヒトc-fos遺伝子を移入することによって不死化された歯肉角化細胞株)に対するPTHrP[1-34],PTHrP[34-53],PTHrP[107-139]の角化に及ぼす影響について検討を行ってきた。約4,900の遺伝子の発現プロファイリングcDNAマイクロアレイで検討した結果、PTHrP[1-34]の培地添加で、UV照射に関連する蛋白の発現が有意に増加した、しかしPTHrP[1-34],PTHrP[34-53],PTHrP[107-139]の培地への添加による、そのターゲット遺伝子の発現を定量RT-PCR反応で確認したところ有意な上昇は見られなかった。UV照射による培地中のC-PTHrP(RIA法),PTHrP(1-84,IRMA法),サイクリックAMP,1,25-(OH)2ビタミンDの変化を調べたが有意な変化は見られなかった。PTHrP外因性増殖分化調節は困難である結果が出た。そこで細胞周期関連遺伝子およびhTERTによる遺伝子治療の可能性を検討した。UVB照射後にcDNA合成を行い関連遺伝子の一つrad9のreal-timePCR(RT-PCR)を施行した。UVBを照射し,6,14,24時間後、細胞内のRad9発現量は増加し,すべてで2倍以上の増加が見られた。照射を行った細胞においてG0-G1期で細胞数の増加,S期とG2+M期で細胞数の減少を示していた。またATR, chk1,cdc25Bの発現レベルとの関係も検討した。Rad9に関連した遺伝子治療の可能性があると考えられた。そして、私達はhTERT(テロメラーゼ)のcDNAマイクロアレイ検討において口腔角化細胞(老化)の細胞周期関連遺伝子発現への影響を認めた。ヒト歯肉由来ケラチノサイト、NDUSD-1(SV40遺伝子由来のSVori-とヒトc-fos遺伝子を移入することによって不死化された歯肉角化細胞株)に対するPTHrP[1-34],PTHrP[34-53],PTHrP[107-139]の角化に及ぼす影響について検討を行ってきたが、これらの培地への添加はインボルクリン、CK5,6,18,CK10,CK14の蛋白発現にはほとんど影響を及ぼさず、わずかにインボルクリン、CK5,6,18の蛋白発現増加がみられたのみであった。今回、私たちはNDUSD-1細胞におけるケラチンなどの分化の指標となる蛋白のmRNA発現の変化についてcDNAマイクロアレイを用いて検討した。PTHrPペプチドはN-末端、ヒトPTHrP[1-34](Sigma, St. Louis, MO, USA)を使用した。約4,900の遺伝子の発現プロファイリングをAtlas Glass 1.0,3.8(CLONTECH社)の2つのcDNAマイクロアレイで検討した。GAPDH ; G3PDH、cytoplasmic beta-action(ACTB)、ubiquitinの変化はほとんど認められなかった。PTHrP[1-34]添加によりkeratin, hair, acidic,3Aは1.9倍、keratin 16は1.8倍の増加が認められた。他の26種のkeratinは1.4倍から1.0倍の増減で有意な変化とは考えられなかった。
KAKENHI-PROJECT-13470442
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13470442
PTHrP遺伝子導入による口腔癌治療についての基礎的研究
またInvolcurin、loricrin、protein kinase C eta type(NPKC-eta); PKC-Lにおいても有意な変化はみられなかった。KeiserらはヒトケラチノサイトでPTHrPのanti sensemediated irhibitionの結果から内因性のPTHrPがケラチノサイトの分化を亢進している可能性を報告している。今回の結果でPTH/PTHrP typeI receptorの遺伝子発現はないと判定できたのでNDUSD-1細胞では異なるreceptorが存在し、内因性に作用する可能性が残る。NDUSD-1細胞において培地添加のPTHrP[1-34]はケラチンのmRNA発現に影響を及ぼさないようであった。keratin, hair, acidic,3Aとkeratin 16は軽度の増加が認められたが断定はできなかった。今後は内因性の影響の確認が必要である。ヒト歯肉由来ケラチノサイト、NDUSD-1(SV40遺伝子由来のSVori-とヒトc-fos遺伝子を移入することによって不死化された歯肉角化細胞株)に対するPTHrP[1-34],PTHrP[34-53],PTHrP[107-139]の角化に及ぼす影響について検討を行ってきたが、本年度は細胞に対する紫外線(UV)照射の影響について検討を行った。これは約4,900の遺伝子の発現プロファイリングAtlas Glass 1.0,3.8(CLONTECH社)の2つのcDNAマイクロアレイで検討した結果、PTHrP[1-34]の培地添加で、UV照射に関連する蛋白の発現が有意に増加したからである。しかしPTHrP[1-34],PTHrP[34-53],PTHrP[107-139]の培地への添加による、そのターゲット遺伝子の発現をRT-PCR反応で確認したところ有意な上昇は見られなかった。RT-PCR反応はABI Prism 7700sequence Detection System、TaqMan probe(Applied Biosystem)を用いて行った。内在性コントロールとしてはGAPDHを用いた。その原因は現在検討中であるが未だ不詳である。そこでUV照射による培地中のC-PTHrP(RIA法),PTHrP(1-84,IRMA法),サイクリックAMP,1,25-(OH)2ビタミンDの変化を調べたが有意な変化は見られなかった。PTHrP[1-34]の添加でprotein kinase C eta type(NPKC-eta);PKC-LのmRNA発現も有意な変化としてはみられなかった。PTH/PTHrPtypeI receptorの遺伝子発現も見られなかったので外因性の影響はないのかも知れない。内因性のPTHrPが影響している可能性がある。現在、テロメラーゼとPTHrPの関係も検討中である。現在までPTHrP遺伝子発現によるヒト歯肉由来ケラチノサイト、NDUSD-1(SV40遺伝子由来のSVori-とヒトc-fos遺伝子を移入することによって不死化された歯肉角化細胞株)およびSCC-25細胞の外因性増殖分化調節は困難である結果が出た。そこで本年度は細胞周期関連遺伝子およびhTERTによる遺伝子治療の可能性を探るため基礎実験を行った。細胞は以上のcell lineに追加して正常ヒト表皮角化細胞を用いた。UVC照射およびUVB照射(120,250,600,1200,2500mJ/cm2)を行った。
KAKENHI-PROJECT-13470442
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訪問看護ステーション機能の第3者評価基準作成ー地域包括ケアを視点にー
本研究は、現在の社会的環境の変化に対応して、地域医療と地域包括ケアの視点を取り入れ、客観的であり、かつ、活用できる、訪問看護ステーションの機能の第3者評価モデルを開発することを目的とする。訪問看護ステーションは地域包括ケアの第一線機関として重要な役割を担っている。その機能を的確に評価し、かつその資料をデータベース化することによって、訪問看護の現状、効果などを詳細に分析し、訪問看護の質の向上、地域包括ケアの推進に貢献することができる。初年度において、まず、訪問看護ステーションの機能評価の項目を作成し、的確なエビデンスとなる資料を選択することを計画した。研究方法:1.国内外の文献による調査項目の検討。2.訪問看護師、医療機関看護師に対して、デルファイ法を用いて調査を実施。結果:1.調査項目の検討において、文献レビューを行った。訪問看護ステーションの機能評価では、自己評価が中心であり、第3者評価の指標は数文献にとどまった。内容は、管理的内容と看護の評価になるが、地域包括ケアの視点を取り入れたものは見当たらない。加えて、看護の質を評価する客観的な指標は見いだせなかった。2.デルファイ法による訪問看護ステーション管理者および所長に聞き取り調査を実施した。その結果、以下のことが明らかになった。1)評価の現状として、介護保険制度における自己評価および訪問看護自己評価、利用者満足度調査は実施しているが、公開していない。2)地域包括ケアシステムに関わる訪問看護ステーションの活動評価項目への示唆。3)訪問看護の質の評価としてのindicaterを考案する必要性。例として、みとりの事例数、特別加算取得状況など。考察:第3位者評価に用いる指標を作成するための示唆を得た。特に、訪問看護の質の評価として、客観的な指標を開発する必要性があることがわかった。進捗状況を「やや遅れている」とした理由は以下のとおりである。1.訪問看護ステーションの第3者評価に関する文献レビューにおいて、諸外国の事情を把握し、参考にする計画であった。しかし、訪問看護ステーションの評価に関する文献数は少なかった。特に自己評価、患者満足度評価における文献はあるが、第3者評価に関するものは希少であった。このために、評価指標を作成する作業が遅延した。2.研究期間初年度(平成30年度)に、訪問看護ステーション管理者へ第3者評価に関する質問紙調査を計画していたが、実施できなかった。デルファイ法による調査は実施できた。特に、地域包括ケアシステムに関心を持ち、地域連携をし、かつ地域貢献活動をしている訪問看護ステーションを選択して、インタビューした。その結果を踏まえ、質問紙調査の内容を構成する計画である。現在、質問紙作成中であり、研究期間2年目(令和元年度)に調査を実施する計画である。研究2年目(令和元年度)計画は以下の通りである。1.訪問看護ステーション第3者評価指標の開発をする。そのために、以下の3つの方法を計画中である。2.方法:1)質問紙調査を実施して訪問看護ステーション機能評価の第3者評価に関する評価項目を選択する。(1)対象者:訪問看護ステーション管理者、所長など。(2)調査内容:第3者評価に関する意識の現状、評価項目への意見など。(3)調査方法:郵送法もしくはインターネット利用。(4)実施時期:令和31年9月12月頃を予定。2)前年度収集した文献およびデルファイ法によるインタビュー結果を参考にした評価項目の選択。研究者が中心となって、評価項目を作成する。3)米国における訪問看護ステーション機能評価の実際を調査し、参考にする。訪問看護ステーション管理者に聞き取り調査する予定。研究3年目(令和2年度)計画1.第3者評価指標に関する試行と訪問看護ステーション管理者からの意見聴取をし、第3者評価指標を完成させる。計画2.訪問看護ステーション第3者評価の実践に向けた検討。本研究は、現在の社会的環境の変化に対応して、地域医療と地域包括ケアの視点を取り入れ、客観的であり、かつ、活用できる、訪問看護ステーションの機能の第3者評価モデルを開発することを目的とする。訪問看護ステーションは地域包括ケアの第一線機関として重要な役割を担っている。その機能を的確に評価し、かつその資料をデータベース化することによって、訪問看護の現状、効果などを詳細に分析し、訪問看護の質の向上、地域包括ケアの推進に貢献することができる。初年度において、まず、訪問看護ステーションの機能評価の項目を作成し、的確なエビデンスとなる資料を選択することを計画した。研究方法:1.国内外の文献による調査項目の検討。2.訪問看護師、医療機関看護師に対して、デルファイ法を用いて調査を実施。結果:1.調査項目の検討において、文献レビューを行った。訪問看護ステーションの機能評価では、自己評価が中心であり、第3者評価の指標は数文献にとどまった。内容は、管理的内容と看護の評価になるが、地域包括ケアの視点を取り入れたものは見当たらない。加えて、看護の質を評価する客観的な指標は見いだせなかった。2.デルファイ法による訪問看護ステーション管理者および所長に聞き取り調査を実施した。その結果、以下のことが明らかになった。1)評価の現状として、介護保険制度における自己評価および訪問看護自己評価、利用者満足度調査は実施しているが、公開していない。2)地域包括ケアシステムに関わる訪問看護ステーションの活動評価項目への示唆。3)訪問看護の質の評価としてのindicaterを考案する必要性。
KAKENHI-PROJECT-18K10594
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K10594
訪問看護ステーション機能の第3者評価基準作成ー地域包括ケアを視点にー
例として、みとりの事例数、特別加算取得状況など。考察:第3位者評価に用いる指標を作成するための示唆を得た。特に、訪問看護の質の評価として、客観的な指標を開発する必要性があることがわかった。進捗状況を「やや遅れている」とした理由は以下のとおりである。1.訪問看護ステーションの第3者評価に関する文献レビューにおいて、諸外国の事情を把握し、参考にする計画であった。しかし、訪問看護ステーションの評価に関する文献数は少なかった。特に自己評価、患者満足度評価における文献はあるが、第3者評価に関するものは希少であった。このために、評価指標を作成する作業が遅延した。2.研究期間初年度(平成30年度)に、訪問看護ステーション管理者へ第3者評価に関する質問紙調査を計画していたが、実施できなかった。デルファイ法による調査は実施できた。特に、地域包括ケアシステムに関心を持ち、地域連携をし、かつ地域貢献活動をしている訪問看護ステーションを選択して、インタビューした。その結果を踏まえ、質問紙調査の内容を構成する計画である。現在、質問紙作成中であり、研究期間2年目(令和元年度)に調査を実施する計画である。研究2年目(令和元年度)計画は以下の通りである。1.訪問看護ステーション第3者評価指標の開発をする。そのために、以下の3つの方法を計画中である。2.方法:1)質問紙調査を実施して訪問看護ステーション機能評価の第3者評価に関する評価項目を選択する。(1)対象者:訪問看護ステーション管理者、所長など。(2)調査内容:第3者評価に関する意識の現状、評価項目への意見など。(3)調査方法:郵送法もしくはインターネット利用。(4)実施時期:令和31年9月12月頃を予定。2)前年度収集した文献およびデルファイ法によるインタビュー結果を参考にした評価項目の選択。研究者が中心となって、評価項目を作成する。3)米国における訪問看護ステーション機能評価の実際を調査し、参考にする。訪問看護ステーション管理者に聞き取り調査する予定。研究3年目(令和2年度)計画1.第3者評価指標に関する試行と訪問看護ステーション管理者からの意見聴取をし、第3者評価指標を完成させる。計画2.訪問看護ステーション第3者評価の実践に向けた検討。助成金残額が生じた理由は以下のとおりである。1.計画していた質問紙調査が行えなかった。訪問看護ステーション機能評価に関する文献、特に第3者評価に関する文献は非常に少なく、調査項目を作成する作業に時間を要して、研究初年度に調査を実施できなかった。そのため、郵送費、質問紙印刷費用、結果入力作業のための人件費などを使用しなかった。研究2年目(令和元年度)にこの質問紙調査を計画している。
KAKENHI-PROJECT-18K10594
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K10594
食道癌幹細胞マーカーを用いた血中癌細胞分離に基づく新規診断・治療標的の探索
神経成長因子受容体p75NTRをマーカーとして食道癌幹細胞を分離し静止期細胞が含まれることを示し、さらに抗体とDNA選択的染色試薬を組み合わせることでp75NTR陽性静止期癌幹細胞をviableな状態で分離することに成功した。続いて食道癌症例より末梢血液5mlを採取し、EpCAM+/p75NTR+をマーカーとして臨床病理学的悪性度と相関するCTCを検出し、セルソーターを用いて分離した細胞が異形細胞であることを確認した。また、胃癌について癌幹細胞マーカーCD44を用いて臨床病理学的悪性度と相関するCTCを検出し、セルソーターを用いて分離した細胞が異形細胞であることを確認した。1)食道癌におけるCTC検出:食道扁平上皮癌切除症例10例の術前、術後および対照として健常人10人より末梢血液10mlを採取し、単核球層を分離しEpCAM/p75NTRおよびEpCAM/CD44の組み合わせを用いてCTCを検出したところ、EpCAM陽性細胞数は健常人に比べて食道癌症例で有意に多数検出された。EpCAM陽性CTCに占めるp75NTR陽性細胞の割合は平均56.7%であったのに対してEpCAM陽性CTCに占めるCD44陽性細胞の割合は平均98.6%とCD44ではなくp75NTRを用いてEpCAM陽性CTCをサブセットに分けられる可能性が考えられた。EpCAM陽性/p75NTR陽性細胞カウントは切除標本における静脈侵襲と有意な相関を示した一方、EpCAM陽性/p75NTR陰性細胞カウントはどの臨床病理学的因子との相関も示さなかった。また、セルソーターを用いて分離したEpCAM陽性/p75NTR陽性細胞は細胞診にて異形細胞であることを確認した。現在、分離したCTCの末梢血液循環癌幹細胞としての形質を検証している。2)胃癌におけるCTCの検出:胃癌症例26例および対照健常人12例より末梢血液10mlを採取し1)と同様にEpCAM-CD44陽性細胞を検出したところ、EpCAM/CD44陽性細胞は胃癌患者において有意に多く検出され、胃癌担癌の感度、特異度はそれぞれ92.3%、100%であった。EpCAM陽性/CD44陽性細胞カウントは切除標本におけるT因子および静脈侵襲と有意な相関を示した一方、EpCAM陽性/CD44陰性細胞カウントはどの臨床病理学的因子との相関も示さなかった。3)まとめ:これらより食道癌においてはp75NTR、胃癌においてはCD44がCTCのなかでもより転移と関わる細胞サブセットのマーカーとなる可能性が考えられた。研究実績の概要に記した通り、食道癌においてはp75NTR、胃癌においてはCD44がCTCのなかでもより転移と関わる細胞サブセットのマーカーとなる可能性を示した。分離したCTCを生細胞として回収し分子生物学的解析を行う予定であったが、回収方法の調整に時間を要している。食道癌および胃癌症例を対象に上皮細胞マーカー(EpCAM)と癌幹細胞マーカー(p75NTRおよびCD44)との組み合わせに基づき、フローサイトメトリーを用いて末梢血液循環癌細胞(CTC)を検出しその臨床的意義について検討した。1) P75NTRを用いた食道扁平上皮癌幹細胞の同定:食道扁平上皮癌培養細胞を用いてp75NTR陽性細胞を分離し、幹細胞関連分子(Nanog、Bmi1、p63)および上皮間葉転換マーカー分子が高発現していること、高いコロニー形成能、マウス皮下移植腫瘍形成能、および抗癌剤耐性能を示すことを確認した。さらに、p75NTR陽性/静止期細胞がp75NTR陽性細胞の中でもより高い癌幹細胞形質を示すことを見出した。2)食道癌におけるCTC検出:食道扁平上皮癌切除症例10例の術前、術後および対照として健常人10人より末梢血液10mlを採取し、単核球層を分離しEpCAM/p75NTRの組み合わせを用いてCTCを検出したところ、EpCAM陽性/p75NTR陽性細胞カウントは切除標本における静脈侵襲と有意な相関を示したのに対し、EpCAM陽性/p75NTR陰性細胞カウントはどの臨床病理学的因子との相関も示さなかった。また、セルソーターを用いて分離したEpCAM陽性/p75NTR陽性細胞は細胞診にて異形細胞であることを確認した。3)胃癌におけるCTCの検出:胃癌症例26例および対照健常人12例より末梢血液10mlを採取し1)と同様にEpCAM-CD44陽性細胞を検出したところ、EpCAM陽性/CD44陽性細胞カウントは切除標本におけるT因子および静脈侵襲と有意な相関を示した。以上の結果から、食道癌においてはp75NTR、胃癌においてはCD44がCTCのなかでもより転移と関わる細胞サブセットのマーカーとなる可能性が考えられた。食道癌および胃癌症例を対象に上皮細胞マーカー(EpCAM)と癌幹細胞マーカー(p75NTRおよびCD44)との組み合わせに基づき、フローサイトメトリーを用いて末梢血液循環癌細胞(CTC)を検出しその臨床的意義について検討し、食道癌においてはp75NTR、胃癌においてはCD44がCTCのなかでもより転移と関わる細胞サブセットのマーカーとなる可能性を示した。当初の計画から発展して、食道扁平上皮癌培養細胞を用いてp75NTR
KAKENHI-PROJECT-15K10088
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K10088
食道癌幹細胞マーカーを用いた血中癌細胞分離に基づく新規診断・治療標的の探索
陽性細胞を分離し、幹細胞関連分子(Nanog、Bmi1、p63)および上皮間葉転換マーカー分子が高発現していること、高いコロニー形成能、マウス皮下移植腫瘍形成能、および抗癌剤耐性能を示すことを確認した。さらに、p75NTR陽性/静止期細胞がp75NTR陽性細胞の中でもより高い癌幹細胞形質を示すことを見出した。現在、分離したCTCの末梢血液循環癌幹細胞としての形質を検証しているが、生かした状態での細胞分離が困難であり、細胞分離回収方法の調整に時間を要している。また、胃癌について癌幹細胞マーカーCD44を用いて臨床病理学的悪性度と相関するCTCを検出し、セルソーターを用いて分離した細胞が異形細胞であることを確認した(Oncology Letters 2017)。神経成長因子受容体p75NTRをマーカーとして食道癌幹細胞を分離し静止期細胞が含まれることを示し、さらに抗体とDNA選択的染色試薬を組み合わせることでp75NTR陽性静止期癌幹細胞をviableな状態で分離することに成功した。続いて食道癌症例より末梢血液5mlを採取し、EpCAM+/p75NTR+をマーカーとして臨床病理学的悪性度と相関するCTCを検出し、セルソーターを用いて分離した細胞が異形細胞であることを確認した。また、胃癌について癌幹細胞マーカーCD44を用いて臨床病理学的悪性度と相関するCTCを検出し、セルソーターを用いて分離した細胞が異形細胞であることを確認した。1)さらに症例数を積み重ね、臨床病理学的因子との相関を明らかにする。2)分離したCTCの末梢血液循環癌幹細胞としての形質を検証する。3)マイクロ流体デバイスを用いてCTCを検出検し、フローサイトメトリーを用いたデータと比較する。1) P75NTRを用いた食道扁平上皮癌幹細胞の同定:p75NTR陽性/静止期細胞における癌幹細胞形質の検証を行い、静止期癌幹細胞を検出する単一表面マーカーの探索を進めるる。2)食道癌におけるCTC検出:さらに症例数を蓄積しEpCAM/p75NTRの組み合わせを用いたCTC検出と臨床病理学的因子との相関を検討する。また、静止期癌幹細胞を検出する単一表面マーカーが得られた際には、これを用いたCTC検出を行う。3)胃癌におけるCTCの検出:さらに症例数を蓄積しCTC検出と臨床病理学的因子との相関を検討する。4)分離したCTCを生かして回収可能な手法を確立し、末梢血液循環癌幹細胞としての形質を検証する。5)マイクロ流体デバイスを用いたCTC検出を行い、上述のフローサイトメトリーを用いた検出と比較する。消化器外科学分離したCTCを生細胞として回収し分子生物学的解析を行う予定であったが、回収方法の調整に時間を要したため、マイクロアレイ解析など大型の費用を次年度に繰り越した。また、食道癌培養細胞から分離した癌幹細胞を用いたマイクロアレイ解析結果が得られたばかりであり、候補分子分の分子生物学的検討が始まったばかりである。セルソーターを用いた生細胞の分離に難渋し、分離細胞を用いた幹細胞形質の検討に進めていない。また、FACSを用いた解析に加えて、マイクロ流体チップを用いたCTSC補足を計画していたが、2種類の抗体を付着したマイクロ流体チップの開発に時間を要している。患者末梢血から分離分したCTCを用いた分子生物学的機能解析および、食道癌培養培細胞を用いた幹細胞制御分子の機能解析に使用する。食道癌培養細胞から分離した静止期幹細胞を用いたマイクロアレイ解析から、幹細胞マーカーとして有望な単一分子を複数見出しており、この分子を用いたCTC検出と分離を開始する。
KAKENHI-PROJECT-15K10088
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ミャンマーの古代湖における淡水魚類の起源と進化から探る生物多様性の創出機構
本研究はミャンマーの古代湖・インレー湖周辺域における生物多様性の創出機構の解明を目的としている。本地域で特に多様性の高い淡水魚類に注目し、2つのアプローチから目的の達成を試みる。1)インレー湖固有種について網羅的な分子系統解析および分岐年代推定を行い、本地域における魚類相形成プロセスの概観を明らかにする。2)本地域で特に多様化しているコイ科魚類について、適応進化と種分化に注目して固有種の創出機構を明らかにする。本研究はミャンマーの古代湖・インレー湖周辺域における生物多様性の創出機構の解明を目的としている。本地域で特に多様性の高い淡水魚類に注目し、2つのアプローチから目的の達成を試みる。1)インレー湖固有種について網羅的な分子系統解析および分岐年代推定を行い、本地域における魚類相形成プロセスの概観を明らかにする。2)本地域で特に多様化しているコイ科魚類について、適応進化と種分化に注目して固有種の創出機構を明らかにする。
KAKENHI-PROJECT-19J23130
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19J23130
四色定理の理論的別証を導く切断多面体の正規性予想の肯定的解決への挑戦
本挑戦的萌芽研究の目的は、研究代表者らの従来の研究成果を踏襲し、切断多面体の正規性予想の肯定的な解決に挑戦することであった。切断多面体の正規性予想が、特に、組合せ論の研究者を魅惑するのは、「切断多面体の正規性予想が肯定的ならば、四色定理が従う。」という結果(David E. Speyer)に負う。研究代表者は、切断多面体の膨らましの組合せ論の観点、および、切断イデアルのグレブナー基底のイニシャルイデアルの観点から、切断多面体の正規性予想の肯定的な解決に挑戦するとともに、否定的な解決も視野に入れながら、切断多面体と切断イデアルの多角的な研究を展開した。有限グラフに付随する切断多面体の正規性の探究を、グレブナー基底の代数的理論の観点、及び、凸多面体の組合せ論の観点から、多角的に展開し、切断多面体の正規性予想と呼ばれる懸案の予想「有限グラフに付随する切断多面体が正規であるための必要十分条件は、その有限グラフが5次の完全グラフをマイナーとして持たないことである。」を肯定的に解決することが、本挑戦的萌芽研究の目的である。その背景には、切断多面体の正規性予想の肯定的な解決から、四色定理が従う(David E. Speyer)ことが潜んでいる。平成25年度は、切断多面体のトーリックイデアル(切断イデアルと呼ぶ)のグレブナー基底の構造定理の創設をマイルストーンとし、研究を推進した。特に、squarefreeなinitial idealを持つ切断イデアルの分類問題に挑戦する土台を構築することを念頭に置き、頂点の個数が小さな状況では、有限グラフが5次の完全グラフをマイナーとして持たないことと、切断イデアルがsquarefreeなinitial idealを持つことが同値であることを、膨大な計算機実験を遂行し、確認するに至った。有限グラフに付随する切断多面体の正規性の探究を、グレブナー基底の代数的理論の観点、及び、凸多面体の組合せ論の観点から、多角的に展開し、切断多面体の正規性予想と呼ばれる懸案の予想「有限グラフに付随する切断多面体が正規であるための必要十分条件は、その有限グラフが5次の完全グラフK_5をマイナーとして持たないことである」を肯定的、あるいは、否定的な解決に挑戦することが、本挑戦的萌芽研究の目的である。その背景には、切断多面体の正規性予想の肯定的解決から、四色定理が従う(David E. Speyer)ことが潜んでいる。平成25年度は、切断多面体の正規性予想の肯定的な解決に挑戦したが、平成26年度は、研究の方針を転換し、切断多面体の正規性予想の否定的解決、すなわち、反例を構成する研究に着手した。平成25年度の計算機実験による結果を検討し、従来の研究を踏襲すると、肯定的な解決に向けての努力をすることが妥当なように思えるが、しかしながら、平成25年度の研究から、肯定的であるとの絶対的な状況証拠が得られたとは言い難い。それゆえ、平成26年度は、切断多面体の正規性予想の否定的な解決に向けての研究を展開することを決断した。もっとも、闇雲に、反例を探すことをしても無駄であるから、切断多面体のHilbert basisを有限グラフの組合せ論を使って記述し、切断多面体の膨らましに含まれる整数点の状況を可能な限り厳密に把握することから、切断多面体の正規性予想が肯定的であると思われる有限グラフの類の幾つかを特定し、その類に含まれない有限グラフの切断多面体から反例を探す方針で研究を推進した。有限グラフに付随する切断多面体の正規性の探究を、グレブナー基底の代数的理論の観点、及び、凸多面体の組合せ論の観点から、多角的に展開し、切断多面体の正規性予想と呼ばれる懸案の予想「有限グラフに付随する切断多面体が正規であるための必要十分条件は、その有限グラフが5次の完全グラフK_5をマイナーとして持たないことである。」の肯定的な、あるいは、否定的な解決に挑戦することが、本挑戦的萌芽研究の目的である。その背景には、切断多面体の正規性予想の肯定的な解決から四色定理が従う(David E. Speyer)ことが潜んでいる。平成25、26年度の研究を踏襲し、平成27年度も研究を展開したが、切断多面体の正規性予想の肯定的な、あるいは、否定的な解決に至ることはなかった。しかしながら、切断多面体の正規性予想に挑戦する研究を契機とし、平成27年度は、有限グラフに関連するグレブナー基底に関する顕著な結果が得られた。具体的には、有限半順序集合の重複鎖に付随する次数dの単項式が生成するトーリック環のトーリックイデアルを議論し、そのトーリックイデアルが二次生成であること、そのトーリックイデアルが二次のグレブナー基底を持つこと、及び、その半順序集合の比較可能グラフが弦グラフであること、の3個の条件が同値であることを示すことに成功した。切断多面体のトーリックイデアルは、2水準の一部実施計画との関連が既知である。本挑戦的萌芽研究でも、トーリックイデアルの実験計画への応用を議論し、平成27年度は、3水準のBox--Behnken計画に関する頻度データに対し、D型のルート系に付随する配置のcentrally symmetric configurationが、自然な統計モデルに対応することを示した。その結果は、多水準の計画に付随するトーリックイデアルに関する、先駆的なものである。
KAKENHI-PROJECT-25610032
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四色定理の理論的別証を導く切断多面体の正規性予想の肯定的解決への挑戦
本挑戦的萌芽研究の目的は、研究代表者らの従来の研究成果を踏襲し、切断多面体の正規性予想の肯定的な解決に挑戦することであった。切断多面体の正規性予想が、特に、組合せ論の研究者を魅惑するのは、「切断多面体の正規性予想が肯定的ならば、四色定理が従う。」という結果(David E. Speyer)に負う。研究代表者は、切断多面体の膨らましの組合せ論の観点、および、切断イデアルのグレブナー基底のイニシャルイデアルの観点から、切断多面体の正規性予想の肯定的な解決に挑戦するとともに、否定的な解決も視野に入れながら、切断多面体と切断イデアルの多角的な研究を展開した。本挑戦的萌芽研究はエフォート10%の研究であるから、十分な時間を費やすことは困難である。しかしながら、切断多面体の正規性予想が肯定的であると思われる有限グラフの類の幾つかを特定することから、切断多面体の正規性予想の反例となる候補を列挙することができたから、研究の展開としては十分であると判断している。計算可換代数と組合せ論切断多面体の正規性予想の肯定的解決と否定的解決の両面から研究を展開する。本挑戦的萌芽研究のエフォートは10%であるから、十分な研究時間を費やすことは困難である。しかしながら、膨大な計算機実験から、squarefreeなinitial idealを持つ切断イデアルの分類問題に挑戦する糸口に到達することに成功している。従って、初年度の研究成果としては、十分であると判断している。ドイツの共同研究者のスケジュールの変更により、外国出張を翌年に延期した。切断多面体の正規性予想の肯定的な解決への挑戦に向けての着想を育む。第1に、平成25年度の研究成果を踏まえ、squarefreeなinitial idealを持つ切断イデアルの分類問題の解決に向けての研究を展開する。第2に、切断多面体の膨らましに含まれる格子点の状況を厳密に把握し、正規性の定義(すなわち、整分割性)に従い、凸多面体論の範疇において、切断多面体の正規性予想の肯定的な解決が可能か否かを検討する。その際、有限グラフの頂点の個数が小さい状況において、計算機を駆使し、切断多面体のEhrhart多項式の計算を実施する。第3に、切断イデアルはレギュラーな2水準一部実施計画のトーリックイデアルを含むことから、切断多面体の正規性予想を、レギュラーな2水準一部実施計画のトーリックイデアルに一般化することを検討する。その準備として、レギュラーな2水準一部実施計画のトーリック環が正規である自然な類を探究する。外国出張ドイツの共同研究者のスケジュールの変更により、外国出張を翌年に延期した。外国旅費
KAKENHI-PROJECT-25610032
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